エンシェントエルフとダークエルフ6
今回は、Aランクの依頼を二人で受けた。
剣士である京楽の元で半月修行した成果を見るためだった。
依頼の内容は、ある洋館に出る、ガーゴイルの退治だった。
ガーゴイルは普段はただの石像だ。それが、人が近づいたりすると、石の体で襲ってくる。
本来ならBランクでもいい内容なのだが、すでに死人が出ており、Aランクの依頼になっていた。
「ガーゴイルか・・・・魔法の上達ぶりを見るのは、コボルトやオークやゴブリンの群れのほうが圧倒的に分かりやすいんだが、かけだし冒険者の依頼を食いつぶすのもなんだしな」
浮竹は、あまり乗り気ではなかったが、その洋館に京楽と共にやってきた。
ガーゴイルの石像が12個あった。
近づくと、12体のガーゴイルがいきなり襲い掛かってきた。
「エターナルアイシクルワールド!」
京楽が、氷の上級魔法を発動させると、全てのガーゴイルが凍り付いた。
しかし、まだ生きている。
ガーゴイルを倒すには、粉々にするしかない。
「アシッドエンチャント!」
水魔法から派生した酸をミスリルの剣に付与して、ガーゴイルを切断しながら溶かしていく。
切断面を溶かされたガーゴイルは、翼を全部切られていた。
これで、もう飛ぶことはできない。
「グラビティ・ゼロ!」
重力で京楽はガーゴイルたちを粉々にして壊していった。
「なぁ、京楽、俺たち・・・・・」
「うん、これなら絶対いけるよ!」
「じゃあ受けるか!Aランク昇格試験!」
「うん!」
ガーゴイルの魔石を回収し、報酬金の金貨40枚と魔石の買取り額の金貨10枚をアイテムポケットに入れると、オカマのギルドマスターを呼び出した。
「あらなぁに、うっきーちゃんに春ちゃん」
「Aランクへの昇格試験を受けたい」
「本気なの?」
くねくねしていたギルドマスターは、真剣な表情で浮竹と京楽を見た。
「あなたたち、Bランクに昇格してまだ1年も経っていないでしょう?普通、BランクからAランクへ昇格するには3年はかかるわ」
「俺たちは強くなった」
「僕も強くなったよ。ギルドマスターが紹介してくれた場所で、半月修行をした。Aランクの依頼も難なくこなせたよ」
「命あってのものだと思うけど、いいでしょう。Aランクの昇格試験、ギルドのほこるゴーレムの討伐よ!」
「ギルドのゴーレム?」
「そうよ。このギルドでは、昔の古代文明の遺跡から発掘されたゴーレムをAランク昇格試験にしているの。ちなみにミスリル製よ。そんじょそこらの武器や魔法で倒せるとは思わないことね」
「受けてたってやる」
浮竹は、ミスリルの剣に酸をエンチャントする。
「アシッドエンチャント」
「アイシクルランス!」
二人は、酸の攻撃と氷の魔法で攻撃した。
普通なら、傷一つつかないはずであった。
だが、浮竹が切った部分には解けており、浮竹が放った氷の魔法があたった部分には、罅が入っていた。
「いけるよ、浮竹!」
「ああ、全力でいこう!」
「うん!」
「「エターナルファイアフェニックス」」
ごおおおおおおお。
高温で羽ばたく不死鳥は、ミスリルのゴーレムを溶かしていく。
「ちょ、ちょっと待って!中止よ、中止!あなたたちの勝ちよ!」
「ギルドマスター、手加減はいらないんだろう?なら、俺たちが手加減する必要はないよな?」
「うん、そうだよね。ミスリル製とか、最初から殺しにかかってるようなもんだし」
「「ゴッドエターナルフェニックス」」
さっきの魔法より更に高温の魔法で、ミスリル製のゴーレムはドロドロに解けてしまった。
「きゃあああああ!あたしたちのギルドのゴーレムが!!」
「確か、お抱えの鍛冶師がいただろう?それに直してもらうのはどうだ?」
「ああん、こんなに溶けちゃったら、なかなか元の姿に戻せないんじゃないの。まぁいいわ。おめでとう、Aランク昇格試験合格よ!!」
「やったぞ、京楽!」
「やったね、浮竹!」
二人は、ギルドに正式にAランク冒険者と認められた。
普通は、昇格と共に金貨が支給されるのだが、ゴーレムをだめにした罰として、昇格への報奨金はなしとなった。
「これで、Sランクの依頼が受けれる。いってみるか?」
「うん、いってみよう。どこまで僕らの力が通じるのか」
依頼内容は、ファイアドラゴンの退治。
浮竹と京楽は、転移魔法陣を使って、ファイアドラゴンの出るアサーニャ火山にきていた。
イアラ帝国の更に南にある、ウズール王国にアサーニャ火山はあった。
アサーニャ火山には、ファイアドラゴンが住み着いている。
浮竹と京楽は、ファイアドラゴンの巣に忍び込んだ。
「アイスエンチャント!」
「エターナルアイシクルワールド!!」
浮竹が氷を付与した剣で尻尾を切り、京楽がさらに切られた尻尾から内側を凍らせていく。
「GYAOOOOOO!!」
ファイアドラゴンの尾が、わずかだが切れた。うろこが5枚はげ落ちてそれを素早くアイテムポケットに収納した。
「GYAAAAAA!!!」
尾の中身を氷漬けにされて、ファイアドラゴンは痛がって暴れまくった。
「うわ!」
大地が裂ける。
「京楽、飛べ!」
「フライウィング!」
京楽は浮竹を抱き抱えて、宙を風の魔法で飛ぶ。
「SHAYOOOOOOO!!!」
ドラゴンブレスがやってきた。
そのあまりの灼熱地獄に、シールドを3重に二人ではって、合計6重ではったのに、火傷を全身に負った。
「セイントヒール」
傷はすぐ癒えたが、次のドラゴンブレスがくる前に、二人はファイアドラゴンのためこんだお宝の上に着地して、ファイアドラゴンがドラゴンブレスを吐くのをやめるようにした。
そして、浮竹と京楽は、ものすごいスピードでお宝の山をアイテムポケットにいれていく。
「GYARUUUUUUUU」
爪の攻撃を風で何とか押し流して、浮竹と京楽はファイアドラゴンの巣から逃げ出した。
逃げ出したが、転んでもただでは起きない。
まんまと財宝の一部を奪い、逃げていった。
冒険者ギルドに戻ってくると、みんな生きていることを不思議がった。
すでにお葬式の用意もされてあって、遺影まであった。
さすがにそれには、浮竹も京楽も切れた。
「責任者でてこい!」
「あらやだん、うっきーちゃん、春ちゃん、生きてたのね。死んだと思って、葬式の用意までしてあげたのに」
明らかな嫌がらせだった。
ギルドにゴーレムを壊したことが、よほど頭にきているらしい。
「依頼内容は失敗。だけど、賠償金は出ない依頼だよね?」
「そうねぇ」
「おっしゃああ!!」
浮竹は喜んだ。
「何をそんなに喜んで・・あああ、それはファイアドラゴンの幻の鱗!!」
鱗が5枚と、逃げる前にぱくっていった金銀財宝を取り出して、買取りしてもらった。
鱗は1枚金貨100枚でうれて、合計金貨500枚。財宝は
剣士である京楽の元で半月修行した成果を見るためだった。
依頼の内容は、ある洋館に出る、ガーゴイルの退治だった。
ガーゴイルは普段はただの石像だ。それが、人が近づいたりすると、石の体で襲ってくる。
本来ならBランクでもいい内容なのだが、すでに死人が出ており、Aランクの依頼になっていた。
「ガーゴイルか・・・・魔法の上達ぶりを見るのは、コボルトやオークやゴブリンの群れのほうが圧倒的に分かりやすいんだが、かけだし冒険者の依頼を食いつぶすのもなんだしな」
浮竹は、あまり乗り気ではなかったが、その洋館に京楽と共にやってきた。
ガーゴイルの石像が12個あった。
近づくと、12体のガーゴイルがいきなり襲い掛かってきた。
「エターナルアイシクルワールド!」
京楽が、氷の上級魔法を発動させると、全てのガーゴイルが凍り付いた。
しかし、まだ生きている。
ガーゴイルを倒すには、粉々にするしかない。
「アシッドエンチャント!」
水魔法から派生した酸をミスリルの剣に付与して、ガーゴイルを切断しながら溶かしていく。
切断面を溶かされたガーゴイルは、翼を全部切られていた。
これで、もう飛ぶことはできない。
「グラビティ・ゼロ!」
重力で京楽はガーゴイルたちを粉々にして壊していった。
「なぁ、京楽、俺たち・・・・・」
「うん、これなら絶対いけるよ!」
「じゃあ受けるか!Aランク昇格試験!」
「うん!」
ガーゴイルの魔石を回収し、報酬金の金貨40枚と魔石の買取り額の金貨10枚をアイテムポケットに入れると、オカマのギルドマスターを呼び出した。
「あらなぁに、うっきーちゃんに春ちゃん」
「Aランクへの昇格試験を受けたい」
「本気なの?」
くねくねしていたギルドマスターは、真剣な表情で浮竹と京楽を見た。
「あなたたち、Bランクに昇格してまだ1年も経っていないでしょう?普通、BランクからAランクへ昇格するには3年はかかるわ」
「俺たちは強くなった」
「僕も強くなったよ。ギルドマスターが紹介してくれた場所で、半月修行をした。Aランクの依頼も難なくこなせたよ」
「命あってのものだと思うけど、いいでしょう。Aランクの昇格試験、ギルドのほこるゴーレムの討伐よ!」
「ギルドのゴーレム?」
「そうよ。このギルドでは、昔の古代文明の遺跡から発掘されたゴーレムをAランク昇格試験にしているの。ちなみにミスリル製よ。そんじょそこらの武器や魔法で倒せるとは思わないことね」
「受けてたってやる」
浮竹は、ミスリルの剣に酸をエンチャントする。
「アシッドエンチャント」
「アイシクルランス!」
二人は、酸の攻撃と氷の魔法で攻撃した。
普通なら、傷一つつかないはずであった。
だが、浮竹が切った部分には解けており、浮竹が放った氷の魔法があたった部分には、罅が入っていた。
「いけるよ、浮竹!」
「ああ、全力でいこう!」
「うん!」
「「エターナルファイアフェニックス」」
ごおおおおおおお。
高温で羽ばたく不死鳥は、ミスリルのゴーレムを溶かしていく。
「ちょ、ちょっと待って!中止よ、中止!あなたたちの勝ちよ!」
「ギルドマスター、手加減はいらないんだろう?なら、俺たちが手加減する必要はないよな?」
「うん、そうだよね。ミスリル製とか、最初から殺しにかかってるようなもんだし」
「「ゴッドエターナルフェニックス」」
さっきの魔法より更に高温の魔法で、ミスリル製のゴーレムはドロドロに解けてしまった。
「きゃあああああ!あたしたちのギルドのゴーレムが!!」
「確か、お抱えの鍛冶師がいただろう?それに直してもらうのはどうだ?」
「ああん、こんなに溶けちゃったら、なかなか元の姿に戻せないんじゃないの。まぁいいわ。おめでとう、Aランク昇格試験合格よ!!」
「やったぞ、京楽!」
「やったね、浮竹!」
二人は、ギルドに正式にAランク冒険者と認められた。
普通は、昇格と共に金貨が支給されるのだが、ゴーレムをだめにした罰として、昇格への報奨金はなしとなった。
「これで、Sランクの依頼が受けれる。いってみるか?」
「うん、いってみよう。どこまで僕らの力が通じるのか」
依頼内容は、ファイアドラゴンの退治。
浮竹と京楽は、転移魔法陣を使って、ファイアドラゴンの出るアサーニャ火山にきていた。
イアラ帝国の更に南にある、ウズール王国にアサーニャ火山はあった。
アサーニャ火山には、ファイアドラゴンが住み着いている。
浮竹と京楽は、ファイアドラゴンの巣に忍び込んだ。
「アイスエンチャント!」
「エターナルアイシクルワールド!!」
浮竹が氷を付与した剣で尻尾を切り、京楽がさらに切られた尻尾から内側を凍らせていく。
「GYAOOOOOO!!」
ファイアドラゴンの尾が、わずかだが切れた。うろこが5枚はげ落ちてそれを素早くアイテムポケットに収納した。
「GYAAAAAA!!!」
尾の中身を氷漬けにされて、ファイアドラゴンは痛がって暴れまくった。
「うわ!」
大地が裂ける。
「京楽、飛べ!」
「フライウィング!」
京楽は浮竹を抱き抱えて、宙を風の魔法で飛ぶ。
「SHAYOOOOOOO!!!」
ドラゴンブレスがやってきた。
そのあまりの灼熱地獄に、シールドを3重に二人ではって、合計6重ではったのに、火傷を全身に負った。
「セイントヒール」
傷はすぐ癒えたが、次のドラゴンブレスがくる前に、二人はファイアドラゴンのためこんだお宝の上に着地して、ファイアドラゴンがドラゴンブレスを吐くのをやめるようにした。
そして、浮竹と京楽は、ものすごいスピードでお宝の山をアイテムポケットにいれていく。
「GYARUUUUUUUU」
爪の攻撃を風で何とか押し流して、浮竹と京楽はファイアドラゴンの巣から逃げ出した。
逃げ出したが、転んでもただでは起きない。
まんまと財宝の一部を奪い、逃げていった。
冒険者ギルドに戻ってくると、みんな生きていることを不思議がった。
すでにお葬式の用意もされてあって、遺影まであった。
さすがにそれには、浮竹も京楽も切れた。
「責任者でてこい!」
「あらやだん、うっきーちゃん、春ちゃん、生きてたのね。死んだと思って、葬式の用意までしてあげたのに」
明らかな嫌がらせだった。
ギルドにゴーレムを壊したことが、よほど頭にきているらしい。
「依頼内容は失敗。だけど、賠償金は出ない依頼だよね?」
「そうねぇ」
「おっしゃああ!!」
浮竹は喜んだ。
「何をそんなに喜んで・・あああ、それはファイアドラゴンの幻の鱗!!」
鱗が5枚と、逃げる前にぱくっていった金銀財宝を取り出して、買取りしてもらった。
鱗は1枚金貨100枚でうれて、合計金貨500枚。財宝は
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エンシェントエルフとダークエルフ5
浮竹と京楽は、キメラ退治に赴いた。
ライオンの頭、山羊の身体、蛇の尻尾をもつのがキメラだった。
山奥の深くに、キメラはいた。
借りてきたワイバーンから降りて、二人は戦った。
適正ランクはB+。
浮竹と京楽は、B+と評価されていた。
ライオンの頭を炎で包み込み、山羊の胴体を斬り裂いて、蛇の尻尾を切り落とす。
「GARURURU!!!」
キメラは酸素を欲して口を開くが、入ってくるのは煙と一酸化炭素。
肺を火で焼かれ、一酸化炭素中毒になってキメラは倒れた。
倒した証である魔石を取り出して、死体を土に埋める。
放置しておくと、他の何かの生物に寄生されたり、アンデット化してわきだしてくる。
なので土に埋めて、ワイバーンに乗って帰還すると、冒険者ギルドのギルドマスターに呼ばれた。
「浮竹ちゃん、春ちゃん、強くなってみたいと思わない?」
「なりたい。もっともっと、もっと強くなって、いつかSランク冒険者になりたい!」
「僕も、強くなりたい。もっと威力の高い魔法を覚えて、魔力も高めたい」
「じゃあ、決定ね♡2名様、お案内~~~」
オカマのギルマスの熱い抱擁のせいで(物理的な)意識を失った二人が気づいた時には、目の前に自分を不老不死の妖刀使いで、魔法も使えるという、何度か共闘したことのある剣士の京楽の家にいた。
修行を引き受けてくれるらしい。
隣の部屋が空いているので、月銀貨5枚という破格の値段で部屋を借りれた。
強くなるため。
そう言い聞かせて、集中し瞑想した。
ひょんなことから、エルフの浮竹と京楽は、不老不死であるという剣士京楽のもとに弟子入りした。
剣士と言っても、妖刀を使うだけで魔法も使う。
古代人らしく、古代の禁呪を使ったりもした。
もっと強くなりたい。時間ならいっぱいあるが、短期間で強くなる方法として、剣士京楽の指導の元で、魔力を高める訓練を受けていた。
針の上で座禅を組み、瞑想した。
ある時は滝に打たれながら、瞑想した。
またある時は、蒸し暑い空間の中や薄い酸素の空間の中で瞑想した。
とにかく瞑想して瞑想しまくった。
心はからっぽである。
すると、胸の奥、心臓のほうから湧いてくる魔力を実感できた。その基礎の魔力を練り上げていく。
そして、魔力切れが起きる程に魔法を使い、魔力を酷使してまた瞑想をする。
そんな無茶なやり方だが、確実に魔力は高まっていった。
新月の日が来た。
剣士の京楽はそわそわしはじめて、隣の部屋を借りて住んでいるエルフの浮竹と京楽を、その日は修行を休みだといいだした。
様子がおかしいので、こっそり様子を伺っていると、なんと妖刀の精霊が具現化して現れていた。
「ずっと隠していたのはこれだったのか!なるほど、確かに俺に似ているな。というか、衣装を交換して角と耳を交換すれば、ほぼ同じ見た目になるんじゃないか?」
精霊の浮竹の姿の前に現れたエルフに浮竹に、精霊の浮竹は目を点にした。
『えっと。どなた?』
「ああ、申し遅れた。おれは浮竹十四郎。エンシェントエルフの魔法剣士だ」
「僕は京楽春水。見た目はこうだけど、ダークエルフの魔法使いだ」
精霊の浮竹は、にこにこして二人と握手を交わした。
ダークエルフがどういう存在なのか知っているようだが、あえて追及はしてこなかった。
『俺は浮竹十四郎。この妖刀の精霊だ。満月か新月の夜にしか、この姿をとれない。それにしても、よくあの京楽が俺に会わせるのを許可したな』
「いや、許可なんてもらってないから」
「勝手に入ってきた」
「プルルルルン!」
プルンが、いけないんだとジェスチャーする。
『ちょっとキミたち、今日は修行は中止だっていったでしょ。あーあ、僕だけの浮竹が見られてしまったよ』
「減るもんでもないし、別にいいんじゃないの?」
エルフの京楽の言葉に、剣士の京楽はエルフの京楽を指さした。
『エルフの浮竹ならともかく、キミには一番見せたくなかった』
「同じ顔をしているせいだろう?だが、お互い別々に愛しい相手はいる。そんなに警戒することないんじゃないのか?」
エルフの浮竹の言葉に、精霊の浮竹が微笑んだ。
『まぁ、みんな仲良くしよう』
『もう、見られちゃったもんは仕方ない。ボクの妖刀の精霊の浮竹だよ』
『俺は主(マスター)と呼んでいる』
「ふむ。妖刀の精霊か。剣や刀に意思が宿ることがあるのは知っているが、実体化できる例を見たのは初めてだな」
そう言って、エルフの浮竹は精霊の浮竹ヲペタペタと触った。
『ちょっと、ボクの浮竹にあんまり触れないで』
「別に取って食うわけではない。ふむ、実体化しているがアストラル体に近いな。神々の力の片鱗というべきか・・・・」
ぶつぶつ言いだしたエルフの浮竹は、考察の自分だけの世界に入ってしまった。
「まぁ、僕は君を毛嫌いしていたけど、君に僕の浮竹と似た愛しい相手がいると知って、少し態度を改めるよ」
『そこらへんは、好きにしてくれていいよ』
「ぷるるん!」
プルルが、僕の存在も忘れないでと言ってくる。
「ああ、忘れたわけじゃ・・・って、スライムと意思疎通ができている?」
「ああ、僕は前々から少しできてたよ。やたらと懐いてきたから、この子」
「京楽だけなんて、ずるいぞ!」
エルフの浮竹は、プルンを抱きしめると頬ずりした。
「ププゥ」
こそばゆい。
ぽよんぽよんはねていくスライムを見て、浮竹は京楽を見た。
「クロを召還してみろ」
「はいはい、分かったよ」
ぼふんと音をたてて、黒いリスのクロが、京楽の肩に乗って、チュチュっと鳴いた。
『わぁ、かわいいな』
『浮竹、危ない!』
黒リスに手を伸ばそうとした精霊の浮竹の手を、剣士の京楽が止めた。
「かんだりしないから、大丈夫だぞ?」
『京楽、俺が噛まれると思ったのか?』
『いや、なんていうか、初対面だし・・・』
「大丈夫だ。そっちのプルンのようにはいかないが、簡単な魔法やスキルなら使える」
『例えば、どんな?』
「隠密とか?おい、京楽、隠密をさせてみろ」
「はいはい。クロ、隠密だよ。頼むよ」
「チューー」
クロは鳴いて、透明になった。
『あ、消えた』
『消えたように、見せかけているだけだね。実物は変わらずキミの肩にいる』
「その通りだよ。隠密というスキルは、自分を透明にして周囲から見つかりにくくすること。ただし体温や魔力はそのままだから、そういうのを探知できる人間には効かないけどね?」
『僕は、魔力の流れを見れるからね』
「ププウ!」
『プルンも凄いって言ってるな』
隠密を解いたクロは、プルンに近寄って、ドングリを差し出した。
それを、プルンは嬉しそうに食べた。
今度はプルンが林檎を出してきて、クロは少しだけ齧った。
ライオンの頭、山羊の身体、蛇の尻尾をもつのがキメラだった。
山奥の深くに、キメラはいた。
借りてきたワイバーンから降りて、二人は戦った。
適正ランクはB+。
浮竹と京楽は、B+と評価されていた。
ライオンの頭を炎で包み込み、山羊の胴体を斬り裂いて、蛇の尻尾を切り落とす。
「GARURURU!!!」
キメラは酸素を欲して口を開くが、入ってくるのは煙と一酸化炭素。
肺を火で焼かれ、一酸化炭素中毒になってキメラは倒れた。
倒した証である魔石を取り出して、死体を土に埋める。
放置しておくと、他の何かの生物に寄生されたり、アンデット化してわきだしてくる。
なので土に埋めて、ワイバーンに乗って帰還すると、冒険者ギルドのギルドマスターに呼ばれた。
「浮竹ちゃん、春ちゃん、強くなってみたいと思わない?」
「なりたい。もっともっと、もっと強くなって、いつかSランク冒険者になりたい!」
「僕も、強くなりたい。もっと威力の高い魔法を覚えて、魔力も高めたい」
「じゃあ、決定ね♡2名様、お案内~~~」
オカマのギルマスの熱い抱擁のせいで(物理的な)意識を失った二人が気づいた時には、目の前に自分を不老不死の妖刀使いで、魔法も使えるという、何度か共闘したことのある剣士の京楽の家にいた。
修行を引き受けてくれるらしい。
隣の部屋が空いているので、月銀貨5枚という破格の値段で部屋を借りれた。
強くなるため。
そう言い聞かせて、集中し瞑想した。
ひょんなことから、エルフの浮竹と京楽は、不老不死であるという剣士京楽のもとに弟子入りした。
剣士と言っても、妖刀を使うだけで魔法も使う。
古代人らしく、古代の禁呪を使ったりもした。
もっと強くなりたい。時間ならいっぱいあるが、短期間で強くなる方法として、剣士京楽の指導の元で、魔力を高める訓練を受けていた。
針の上で座禅を組み、瞑想した。
ある時は滝に打たれながら、瞑想した。
またある時は、蒸し暑い空間の中や薄い酸素の空間の中で瞑想した。
とにかく瞑想して瞑想しまくった。
心はからっぽである。
すると、胸の奥、心臓のほうから湧いてくる魔力を実感できた。その基礎の魔力を練り上げていく。
そして、魔力切れが起きる程に魔法を使い、魔力を酷使してまた瞑想をする。
そんな無茶なやり方だが、確実に魔力は高まっていった。
新月の日が来た。
剣士の京楽はそわそわしはじめて、隣の部屋を借りて住んでいるエルフの浮竹と京楽を、その日は修行を休みだといいだした。
様子がおかしいので、こっそり様子を伺っていると、なんと妖刀の精霊が具現化して現れていた。
「ずっと隠していたのはこれだったのか!なるほど、確かに俺に似ているな。というか、衣装を交換して角と耳を交換すれば、ほぼ同じ見た目になるんじゃないか?」
精霊の浮竹の姿の前に現れたエルフに浮竹に、精霊の浮竹は目を点にした。
『えっと。どなた?』
「ああ、申し遅れた。おれは浮竹十四郎。エンシェントエルフの魔法剣士だ」
「僕は京楽春水。見た目はこうだけど、ダークエルフの魔法使いだ」
精霊の浮竹は、にこにこして二人と握手を交わした。
ダークエルフがどういう存在なのか知っているようだが、あえて追及はしてこなかった。
『俺は浮竹十四郎。この妖刀の精霊だ。満月か新月の夜にしか、この姿をとれない。それにしても、よくあの京楽が俺に会わせるのを許可したな』
「いや、許可なんてもらってないから」
「勝手に入ってきた」
「プルルルルン!」
プルンが、いけないんだとジェスチャーする。
『ちょっとキミたち、今日は修行は中止だっていったでしょ。あーあ、僕だけの浮竹が見られてしまったよ』
「減るもんでもないし、別にいいんじゃないの?」
エルフの京楽の言葉に、剣士の京楽はエルフの京楽を指さした。
『エルフの浮竹ならともかく、キミには一番見せたくなかった』
「同じ顔をしているせいだろう?だが、お互い別々に愛しい相手はいる。そんなに警戒することないんじゃないのか?」
エルフの浮竹の言葉に、精霊の浮竹が微笑んだ。
『まぁ、みんな仲良くしよう』
『もう、見られちゃったもんは仕方ない。ボクの妖刀の精霊の浮竹だよ』
『俺は主(マスター)と呼んでいる』
「ふむ。妖刀の精霊か。剣や刀に意思が宿ることがあるのは知っているが、実体化できる例を見たのは初めてだな」
そう言って、エルフの浮竹は精霊の浮竹ヲペタペタと触った。
『ちょっと、ボクの浮竹にあんまり触れないで』
「別に取って食うわけではない。ふむ、実体化しているがアストラル体に近いな。神々の力の片鱗というべきか・・・・」
ぶつぶつ言いだしたエルフの浮竹は、考察の自分だけの世界に入ってしまった。
「まぁ、僕は君を毛嫌いしていたけど、君に僕の浮竹と似た愛しい相手がいると知って、少し態度を改めるよ」
『そこらへんは、好きにしてくれていいよ』
「ぷるるん!」
プルルが、僕の存在も忘れないでと言ってくる。
「ああ、忘れたわけじゃ・・・って、スライムと意思疎通ができている?」
「ああ、僕は前々から少しできてたよ。やたらと懐いてきたから、この子」
「京楽だけなんて、ずるいぞ!」
エルフの浮竹は、プルンを抱きしめると頬ずりした。
「ププゥ」
こそばゆい。
ぽよんぽよんはねていくスライムを見て、浮竹は京楽を見た。
「クロを召還してみろ」
「はいはい、分かったよ」
ぼふんと音をたてて、黒いリスのクロが、京楽の肩に乗って、チュチュっと鳴いた。
『わぁ、かわいいな』
『浮竹、危ない!』
黒リスに手を伸ばそうとした精霊の浮竹の手を、剣士の京楽が止めた。
「かんだりしないから、大丈夫だぞ?」
『京楽、俺が噛まれると思ったのか?』
『いや、なんていうか、初対面だし・・・』
「大丈夫だ。そっちのプルンのようにはいかないが、簡単な魔法やスキルなら使える」
『例えば、どんな?』
「隠密とか?おい、京楽、隠密をさせてみろ」
「はいはい。クロ、隠密だよ。頼むよ」
「チューー」
クロは鳴いて、透明になった。
『あ、消えた』
『消えたように、見せかけているだけだね。実物は変わらずキミの肩にいる』
「その通りだよ。隠密というスキルは、自分を透明にして周囲から見つかりにくくすること。ただし体温や魔力はそのままだから、そういうのを探知できる人間には効かないけどね?」
『僕は、魔力の流れを見れるからね』
「ププウ!」
『プルンも凄いって言ってるな』
隠密を解いたクロは、プルンに近寄って、ドングリを差し出した。
それを、プルンは嬉しそうに食べた。
今度はプルンが林檎を出してきて、クロは少しだけ齧った。
「ぺットと使い魔が仲良くしてるんだし、僕たちも仲良くしようよ」
「そうだな。そっちの妖刀の精霊のことは、誰にも言わないと誓おう」
『わかったよ。じゃあ、今後もよろしくね』
『俺は新月か満月の夜にしかこんな姿をとれないが、普段は人型もとる。いつもは刀の恰好だが、よろしく頼む』
4人は、そうして絆を深め合った。
次の日からは、エルフの浮竹には剣士としての訓練も受けるようになった。
エルフで魔法剣士は珍しい。
大抵のエルフは魔法使いか弓手に育つ。剣を持っても、せいぜいレイピアで、急所を一突きという戦闘スタイルだ。
だが、エルフの浮竹はヒューマン、人間と同じように剣を振るう。
鞘を抜かないままの妖刀で相手をされているが、エルフの浮竹はすごい汗をかいていた。
動きが半端ではなく、ついていくのがやっとというところだった。
『少し、休憩にしようか』
「じゃあ、俺は時間が勿体ないので瞑想する」
深呼吸をすると、浮竹は周囲から隔絶された世界に落ちていき、魔力のある場所で心をたゆたわせる。
じんわりと体中に魔力が巡っていき、瞑想は魔力をより高めた。
そんな修行を半月ほど続けて、エルフの浮竹と京楽は、巣立っていった。
「今までありがとう。お陰で、Aランクを目指せそうだ」
『君の努力の結晶だよ』
『そっちの京楽も、いろんな属性の上位魔法を覚えれるようになったな』
「さすがに、禁呪を唱えるにはまだ魔力の絶対量が足りないけどね」
エルフの浮竹と京楽は、剣士の京楽と精霊の浮竹と別れを済ませて、元のイアラ帝国へと戻っていった。
といっても、隣国なので会おうと思えばすぐ会えるのだが。
さてはて。
エルフたちは修行をして強くなった。
その結果はいかに?
「そうだな。そっちの妖刀の精霊のことは、誰にも言わないと誓おう」
『わかったよ。じゃあ、今後もよろしくね』
『俺は新月か満月の夜にしかこんな姿をとれないが、普段は人型もとる。いつもは刀の恰好だが、よろしく頼む』
4人は、そうして絆を深め合った。
次の日からは、エルフの浮竹には剣士としての訓練も受けるようになった。
エルフで魔法剣士は珍しい。
大抵のエルフは魔法使いか弓手に育つ。剣を持っても、せいぜいレイピアで、急所を一突きという戦闘スタイルだ。
だが、エルフの浮竹はヒューマン、人間と同じように剣を振るう。
鞘を抜かないままの妖刀で相手をされているが、エルフの浮竹はすごい汗をかいていた。
動きが半端ではなく、ついていくのがやっとというところだった。
『少し、休憩にしようか』
「じゃあ、俺は時間が勿体ないので瞑想する」
深呼吸をすると、浮竹は周囲から隔絶された世界に落ちていき、魔力のある場所で心をたゆたわせる。
じんわりと体中に魔力が巡っていき、瞑想は魔力をより高めた。
そんな修行を半月ほど続けて、エルフの浮竹と京楽は、巣立っていった。
「今までありがとう。お陰で、Aランクを目指せそうだ」
『君の努力の結晶だよ』
『そっちの京楽も、いろんな属性の上位魔法を覚えれるようになったな』
「さすがに、禁呪を唱えるにはまだ魔力の絶対量が足りないけどね」
エルフの浮竹と京楽は、剣士の京楽と精霊の浮竹と別れを済ませて、元のイアラ帝国へと戻っていった。
といっても、隣国なので会おうと思えばすぐ会えるのだが。
さてはて。
エルフたちは修行をして強くなった。
その結果はいかに?
エンシェントエルフとダークエルフ4
ギルドマスターから、直々に依頼があった。
オークジェネラルの討伐らしい。
「それがねぇ、オークロードもいるんだけど、そっちのほうが違うギルドの山じいとかいうじじぃが、魔物討伐の専門家に任せたそうなのよぉ」
クネクネと動くオカマは気持ち悪かったが、言葉と態度には出さない。
「だからぁ、オークジェネラルと雑魚のオークをやっつけて欲しいの♡」
「じゃあ、その魔物討伐の専門家と鉢合わせになったら、共闘でいいんだね?」
「うふん、そうなの。よろしくねん♡」
飼いならされたワイバーンに乗って、3日の地点にオークの巣があった。
見ていると、一番上座のところにオークロードがいて、その隣にオークジェネラルがいた。
「とりあえず、オークジェネラルを魔法で倒してしまおう」
「そう簡単にいくかい?相手はただのオークじゃなくって、オークジェネラルだよ?」
「うーん、オーク共を倒すには、俺たちでは火力不足だ」
「だからぁ、ボクが派遣されたってわけ」
エルフの浮竹と京楽の隣には、いつぞやも助けてくれた剣士の京楽がいた。
「今度の共闘は、またキミたちか。まぁ、足を引っ張るような真似をしないだけ、ましかな」
ダークエルフの京楽は、剣士の京楽を威嚇していたが、共闘となるのでその感情は捨て去ることした。
「ボクがオークロードをたたく。後、雑魚もある程度片づけるから、キミたちは自分の討伐対象を頼むよ!」
「プルルン!」
剣士の京楽の肩には、ヒュージスライムになったプルンというスライムが乗っていた。
「プルンも魔法使えるから。念の為にそっちに残しておくよ」
「あ、剣士の人!」
すでに、剣士京楽の耳には届いていなかった。
「死にたいやつからかかってきなよ」
妖刀を手に、オークたちを豆腐を切っているかのように斬り裂いて、オークロードの首をはねた。
「俺たちも行こう!」
「うん!」
「フレイムロンド!」
「バーストロンド!」
炎と爆発の中級魔法を使ってオークたちをふっ飛ばしていくと、近くにいたプルンが体を震わせて、浮竹と同じフレイムロンドの魔法を使った。
「すごいな、お前。スライムなのに魔法が使えるのか」
「プルルン!」
プルンは自慢げそうに胸を張った。
「この調子でいくよ!アイシクルワールド!」
オークたち京楽が凍り付かせて、それを浮竹が片っ端から切って粉々に砕いていく。
「BURUUUUUUU!!」
オークジェネラルがこっちに突進してきた。
「BURUUUUU!!」
「フレイムフェニックス!」
京楽が、炎の上級魔法を放つと、オークジェネラルは体を燃え上がらせながら、剣を振り回しまくり、浮竹と京楽は傷を負った。
「セイントヒール!」
京楽が癒しの魔法を発動させると、プルンも同じように癒しの魔法を使って京楽の怪我を癒してくれた。
「おおおおお!」
浮竹が、雄叫びと共にミスリルの剣でオークジェネラルの首を切り落とそうとする。
首は脂でなかなか切り落とせなかったところを、京楽が氷のハンマーを作り出して、浮竹の剣をオークジェネラルの首に食い込んでいる剣めがけて打ちこんだ。
「アイスクラッシャー!」
「BURURURU!!」
オークジェネラルは、悲鳴の断末魔をあげて倒れた。
「ふう、とりあえずオークジェネラルとオークロードは片付いた。あとは雑魚のオークどもだな」
オークたちは、剣士の京楽から逃げるようにこっちに向かってやってくる。
「アイスフェンリル!」
最近使えるようになった、氷の上級魔法を使い、氷の精霊フェンリルを呼び出すと、そのブレスでオークたちを生きたまま凍てつかせていく。
浮竹は、その氷像を壊すために、水を圧縮して氷の彫像を砕いていく。
「ウォーターグラビティ!」
浮竹は京楽と違って、火、水、氷の魔法が使えて、エンチャントのみ聖属性を使えるが、京楽のようにほぼ全属性の適正はもっておらず、火、水、氷の魔法しか使えなかった。
ただ、剣士でもあるので、その腕は魔法剣士としてはAクラスの冒険者と戦っても引けをとらないかもしれないが、まだまだ修行中の身だ。
現に、オークジェネラル程度で傷を負っていては、いつまで経ってもSランク冒険者になんてなれない。
「エアグラビディ」
京楽は、残っていたオークと、剣士の京楽ともども、空気を圧縮させてつぶす魔法をかけた。
広範囲魔法だが、的をしぼってそこだけ防ぐとかができない魔法だった。
「ふん、どうせ剣士の人はこれくらい余裕でしょ」
「まぁね」
剣士の京楽は、エアグラビディに穴をあけて、そこからオークロードのいた上座に立っていた。
「オーク共は、もう残党もいないようだね」
「よし、依頼達成だ!」
エルフの京楽とハイタッチした浮竹は、剣士の京楽ともハイタッチをして、プルンともハイタッチをした。
「浮竹、そんな奴に関わることないよ」
「何不貞腐れてるんだ、京楽。この剣士の人がいなかったら、俺たちのほうがやられていたんだぞ」
「むー」
不貞腐れる京楽の頭を撫でて、浮竹は剣士の京楽に頭を下げた。
「オーク共を一掃するのを手伝ってくれて、ありがとう!」
「浮竹ぇ、そんな奴に頭を下げることないよ」
「こら、京楽!」
「ふん」
「すまない、うちの京楽が」
「いいよ。気にしてないから」
「ぷるるん!」
「プルンもそう言ってるしね」
「また、会えるだろうか」
浮竹は、剣士の京楽に興味を持ったようだった。
それに、ダークエルフの京楽が警戒心をむき出しにする。
「浮竹、帰るよ!依頼の報告もあるし!」
浮竹をずるずると引っ張って、ダークエルフの京楽はワイバーンを置いていった場所に進んでいく。
「またなぁ、剣士の京楽!」
「またね。どうしたの、プルン」
「プルルン」
「ああ、こっちの妖刀の精霊の浮竹に似ているって?当たり前かもしれないね。この世界では珍しい、二重の魂だ。ボクの魂の片割れはダークエルフに、浮竹の魂の片割れはエンシェントエルフに。本当は統合されるはずだった魂が、神の手から滑り落ちて、片割れを作った」
「プルルルン?」
プルンには難しいことのようで、器用に体ではてなマークを描いていた。
---------------------------------------------------------
「ということで、オークジェネラルの討伐は完了した。それの魔石と、雑魚オークどもの魔石だ」
剣士の京楽はオークロードの魔石だけをとっていったので、残りの雑魚オークの魔石はエルフの浮竹と京楽で全部回収しておいた。
「あらん、がんばったのねん♡こんなにオーク退治するなんてやるじゃない」
「いや、半分は退治屋専門の剣士が殺した分だ。魔石を抜いていかなかったから、勿体ないから回収していおいた」
「まぁ、どのみち今回も報酬は色をつけておくからん♡」
「まぁ、オークは素材にならないしな。肉が食べれないこともないが、二足歩行してしゃべったりするオークの肉を食おうという勇気ある人はなかなかいない」
浮竹は、まずは魔石の買取り金額で金貨40枚をもらった。
かなりの数のオークを屠ったので、相応の額であった。
それから、オークジェネラルの魔石が金貨3枚。報酬金が金貨50枚。
しめて金貨94枚。
今までの稼ぎの中で最高の収入だった。
「よし、今日は贅沢するよ!」
「ほどほどにな。住宅を買う金にもするから、金貨60枚は貯金に回すぞ」
金貨500枚もあれば、広くはないが町の外れくらいなら一戸建てを建てれる値段だった。
まだ貯金は始めたばかりで、金貨75枚くらいだった。
めざせ、まずは一戸建てのマイホーム。
浮竹と京楽、エンシェントエルフとダークエルフの戦いは、まだまだ続くのであった。
オークジェネラルの討伐らしい。
「それがねぇ、オークロードもいるんだけど、そっちのほうが違うギルドの山じいとかいうじじぃが、魔物討伐の専門家に任せたそうなのよぉ」
クネクネと動くオカマは気持ち悪かったが、言葉と態度には出さない。
「だからぁ、オークジェネラルと雑魚のオークをやっつけて欲しいの♡」
「じゃあ、その魔物討伐の専門家と鉢合わせになったら、共闘でいいんだね?」
「うふん、そうなの。よろしくねん♡」
飼いならされたワイバーンに乗って、3日の地点にオークの巣があった。
見ていると、一番上座のところにオークロードがいて、その隣にオークジェネラルがいた。
「とりあえず、オークジェネラルを魔法で倒してしまおう」
「そう簡単にいくかい?相手はただのオークじゃなくって、オークジェネラルだよ?」
「うーん、オーク共を倒すには、俺たちでは火力不足だ」
「だからぁ、ボクが派遣されたってわけ」
エルフの浮竹と京楽の隣には、いつぞやも助けてくれた剣士の京楽がいた。
「今度の共闘は、またキミたちか。まぁ、足を引っ張るような真似をしないだけ、ましかな」
ダークエルフの京楽は、剣士の京楽を威嚇していたが、共闘となるのでその感情は捨て去ることした。
「ボクがオークロードをたたく。後、雑魚もある程度片づけるから、キミたちは自分の討伐対象を頼むよ!」
「プルルン!」
剣士の京楽の肩には、ヒュージスライムになったプルンというスライムが乗っていた。
「プルンも魔法使えるから。念の為にそっちに残しておくよ」
「あ、剣士の人!」
すでに、剣士京楽の耳には届いていなかった。
「死にたいやつからかかってきなよ」
妖刀を手に、オークたちを豆腐を切っているかのように斬り裂いて、オークロードの首をはねた。
「俺たちも行こう!」
「うん!」
「フレイムロンド!」
「バーストロンド!」
炎と爆発の中級魔法を使ってオークたちをふっ飛ばしていくと、近くにいたプルンが体を震わせて、浮竹と同じフレイムロンドの魔法を使った。
「すごいな、お前。スライムなのに魔法が使えるのか」
「プルルン!」
プルンは自慢げそうに胸を張った。
「この調子でいくよ!アイシクルワールド!」
オークたち京楽が凍り付かせて、それを浮竹が片っ端から切って粉々に砕いていく。
「BURUUUUUUU!!」
オークジェネラルがこっちに突進してきた。
「BURUUUUU!!」
「フレイムフェニックス!」
京楽が、炎の上級魔法を放つと、オークジェネラルは体を燃え上がらせながら、剣を振り回しまくり、浮竹と京楽は傷を負った。
「セイントヒール!」
京楽が癒しの魔法を発動させると、プルンも同じように癒しの魔法を使って京楽の怪我を癒してくれた。
「おおおおお!」
浮竹が、雄叫びと共にミスリルの剣でオークジェネラルの首を切り落とそうとする。
首は脂でなかなか切り落とせなかったところを、京楽が氷のハンマーを作り出して、浮竹の剣をオークジェネラルの首に食い込んでいる剣めがけて打ちこんだ。
「アイスクラッシャー!」
「BURURURU!!」
オークジェネラルは、悲鳴の断末魔をあげて倒れた。
「ふう、とりあえずオークジェネラルとオークロードは片付いた。あとは雑魚のオークどもだな」
オークたちは、剣士の京楽から逃げるようにこっちに向かってやってくる。
「アイスフェンリル!」
最近使えるようになった、氷の上級魔法を使い、氷の精霊フェンリルを呼び出すと、そのブレスでオークたちを生きたまま凍てつかせていく。
浮竹は、その氷像を壊すために、水を圧縮して氷の彫像を砕いていく。
「ウォーターグラビティ!」
浮竹は京楽と違って、火、水、氷の魔法が使えて、エンチャントのみ聖属性を使えるが、京楽のようにほぼ全属性の適正はもっておらず、火、水、氷の魔法しか使えなかった。
ただ、剣士でもあるので、その腕は魔法剣士としてはAクラスの冒険者と戦っても引けをとらないかもしれないが、まだまだ修行中の身だ。
現に、オークジェネラル程度で傷を負っていては、いつまで経ってもSランク冒険者になんてなれない。
「エアグラビディ」
京楽は、残っていたオークと、剣士の京楽ともども、空気を圧縮させてつぶす魔法をかけた。
広範囲魔法だが、的をしぼってそこだけ防ぐとかができない魔法だった。
「ふん、どうせ剣士の人はこれくらい余裕でしょ」
「まぁね」
剣士の京楽は、エアグラビディに穴をあけて、そこからオークロードのいた上座に立っていた。
「オーク共は、もう残党もいないようだね」
「よし、依頼達成だ!」
エルフの京楽とハイタッチした浮竹は、剣士の京楽ともハイタッチをして、プルンともハイタッチをした。
「浮竹、そんな奴に関わることないよ」
「何不貞腐れてるんだ、京楽。この剣士の人がいなかったら、俺たちのほうがやられていたんだぞ」
「むー」
不貞腐れる京楽の頭を撫でて、浮竹は剣士の京楽に頭を下げた。
「オーク共を一掃するのを手伝ってくれて、ありがとう!」
「浮竹ぇ、そんな奴に頭を下げることないよ」
「こら、京楽!」
「ふん」
「すまない、うちの京楽が」
「いいよ。気にしてないから」
「ぷるるん!」
「プルンもそう言ってるしね」
「また、会えるだろうか」
浮竹は、剣士の京楽に興味を持ったようだった。
それに、ダークエルフの京楽が警戒心をむき出しにする。
「浮竹、帰るよ!依頼の報告もあるし!」
浮竹をずるずると引っ張って、ダークエルフの京楽はワイバーンを置いていった場所に進んでいく。
「またなぁ、剣士の京楽!」
「またね。どうしたの、プルン」
「プルルン」
「ああ、こっちの妖刀の精霊の浮竹に似ているって?当たり前かもしれないね。この世界では珍しい、二重の魂だ。ボクの魂の片割れはダークエルフに、浮竹の魂の片割れはエンシェントエルフに。本当は統合されるはずだった魂が、神の手から滑り落ちて、片割れを作った」
「プルルルン?」
プルンには難しいことのようで、器用に体ではてなマークを描いていた。
---------------------------------------------------------
「ということで、オークジェネラルの討伐は完了した。それの魔石と、雑魚オークどもの魔石だ」
剣士の京楽はオークロードの魔石だけをとっていったので、残りの雑魚オークの魔石はエルフの浮竹と京楽で全部回収しておいた。
「あらん、がんばったのねん♡こんなにオーク退治するなんてやるじゃない」
「いや、半分は退治屋専門の剣士が殺した分だ。魔石を抜いていかなかったから、勿体ないから回収していおいた」
「まぁ、どのみち今回も報酬は色をつけておくからん♡」
「まぁ、オークは素材にならないしな。肉が食べれないこともないが、二足歩行してしゃべったりするオークの肉を食おうという勇気ある人はなかなかいない」
浮竹は、まずは魔石の買取り金額で金貨40枚をもらった。
かなりの数のオークを屠ったので、相応の額であった。
それから、オークジェネラルの魔石が金貨3枚。報酬金が金貨50枚。
しめて金貨94枚。
今までの稼ぎの中で最高の収入だった。
「よし、今日は贅沢するよ!」
「ほどほどにな。住宅を買う金にもするから、金貨60枚は貯金に回すぞ」
金貨500枚もあれば、広くはないが町の外れくらいなら一戸建てを建てれる値段だった。
まだ貯金は始めたばかりで、金貨75枚くらいだった。
めざせ、まずは一戸建てのマイホーム。
浮竹と京楽、エンシェントエルフとダークエルフの戦いは、まだまだ続くのであった。
エンシェントエルフとダークエルフ3
冒険者たちは、皆Sランク冒険者を目指す。
Sランク冒険者は富と名声を得られて、幸せになれる。そう思われているが、実際のSランク冒険者はいつも死と隣り合わせの世界に住んでいる。
チートみたいに規格外に強くない限り、Sランク冒険者は努力と根性でできていた。
そのSランク冒険者もそうだった。
風の旅人という名の冒険者パーティーは、Aランクの仕事を請け負った。
それは、京楽たちも受けた同じ内容の依頼で、複数で可能な仕事であった。
内容は、ワイバーンの退治であった。しかも、複数の。
Bランクの浮竹と京楽だけでは、実際きつい内容だったので、Sランクの冒険者と一緒に旅ができると知って、浮竹と京楽は喜んだ。
「Bランクになってどれくらいになる?」
「半年だ」
「ふむ。二人で半年生きていれるってことは、相当な使い手だな」
「そうでもない。相棒がよかったせいだ」
「ウッドエルフの魔法使いか」
ぎくりと、京楽が体を強張らせる。
「ウッドエルフは弓手が多いのに、よく魔法使いになれたな」
「適性があったからだよ。基本4属性魔法と氷、雷と聖属性の回復魔法が使える」
「そりゃすごい。闇も使えれば、全属性に適正ありだったろうに。惜しいな。全属性に適正があれば、宮廷魔導師も夢じゃなかったろうに」
「あははは、そこまで魔法の腕はまだないよ。修行中の身だからね。使えるのは火の上級魔法とあとの属性は中級魔法までさ」
「それでも十分にすごいぞ。パーティーで引くてあまただろうに、何故二人でペアで組んでるんだ?」
「浮竹が好きだからだよ」
「ほ、そうきたか。エルフでも、そういうのあるんだな」
「エルフの人生は長いからな。伴侶は何も異性じゃなくてもいいんだ。どのみち出生率は落ちるばかりで、エンシェントエルフもウッドエルフもハイエルフもダークエルフも、みんな数が減ってる」
「おいおい、エルフの中にダークエルフを入れるなよ。あれは魔族だろう」
風の旅人のパーティーのリーダーが、ダークエルフは魔族と言った。
浮竹は京楽の方を伺うが、特別何かを思っているようでもないので、安心した。
「ダークエルフでも、いい奴はいる」
「まぁ、たまに旅人のダークエルフを見ることはあるが、みんな毛嫌いするから、旅をしにくそうだったがな」
ダークエルフから話を逸らそうと、浮竹はSランクの冒険者たちに質問をした。
「ドラゴンを退治したことはあるか?」
「いや、まだないな。ドラゴンを倒せるとは思うが、きっと死人が出る。だから、まだ挑戦しない」
「それも一種の手だね」
京楽も同意した。
ドラゴンは素材としても最高で、おまけに金銀財宝を集めるのが趣味で、倒せば一攫千金だ。
馬車で10日かけて出発して、目的地に辿りついた。
馬は狙われやすいので、ワイバーンの出る場所よりも遠くで降りた。
「馬はここに置いていこう」
「大丈夫か?他の魔物に襲われる危険はないか?」
浮竹の言葉に、風の旅人のパーティーリーダーは、魔道具を設置した。
「魔よけの札と香だ。これがある限り、どんな魔物にも襲われない」
「高いんだろうな」
「何、1つ金貨30枚程度だ」
「さ、30枚・・・金貨が30枚・・・・・」
京楽は、Sランク冒険者の金銭感覚についていけずに、眩暈を起こしそうになっていた。
「さて、ではワイバーンの討伐に出発だ」
Sランクのパーティーの重荷にならぬように、浮竹と京楽は魔法で攻撃することに決めた。
「GYARUUUUUU!!」
ワイバーンの群れが現れた。
頭上をバサバサと飛んでいくワイバーンに、まずは風の旅人の弓使いが弓を射て、目をつぶした。
「あんな遠くにまで矢を・・・すごいな」
浮竹は素直に関心していた。
「僕も魔法で援護するよ!フレイムロンド!」
「じゃあ俺も。ウォータースパイラル!」
京楽と浮竹は、それぞれ火と水の魔法で、ワイバーンの翼を攻撃して、地面に落とした。
地面に落ちてきたワイバーンにトドメをさすのは、風の旅人のリーダーである剣士と、斧使いだった。
風の旅人のパーティーは、リーダの剣士、サブリーダーの弓使いに、斧使い、魔法使い、僧侶でできた、均整のとれたパーティーだった。
一方の浮竹と京楽は、魔法剣士に、癒しの魔法も使える魔法使いの京楽だ。
火力に乏しいことはないが、癒し手が攻撃魔法も使うので、常に癒し手が守っているSランクのパーティーより危険度は増す。
「フレアスピア!」
「アイシクルロンド!」
ちなみに、浮竹は火と水と聖魔法を使えるが、聖魔法は剣にエンチャントするだけで、火と水は中級までなら使えた。
浮竹と京楽は、次々とワイバーンの翼を魔法で破り、地面に落としていく。
気づくと、空にワイバーンはいなくなっていた。
「すごい火力だな。魔法でワイバーンをここまで落とせるなんて、Aランク冒険者でもなかなかいないぞ」
褒められて、浮竹も京楽もはにかんだ笑みを零した。
「お前たちの腕がいいからだ。一度もこちら側に攻撃を許さなかった」
「うん。僕も、自由に魔法が使えたよ。詠唱してる間、ずっと弓使いの人がこっちを狙ってくるワイバーンの目をつぶしていたし」
こうして、一向は怪我することもなく、ワイバーンの討伐を終えた。
さすがにSランクの冒険者だけあって、ワイバーン程度では怪我をすることもなかった。
「ワイバーンの鱗や爪、牙は素材になる。ドラゴンよりも劣るが、そこそこの値段がするはずだ。ワイバーンはちょうど14匹いた。一人2匹ずつで分けるのどうだろう」
風の旅人のリーダーの言葉に、浮竹も京楽も頷いた。
「正直、倒したわけじゃないのでちょっと気が引けるけど」
「京楽、もらえるものはもらっておこう。資金をためて、一戸建てを買うんだろ」
「そうだったね。じゃあ、2匹のワイバーンをもらうね」
京楽は、アイテムポケットにワイバーンの死体を2匹分収納した。
浮竹も、アイテムポケットにワイバーンの死体を2匹入れた。
「お、そっちのアイテムポケットはBランクの割に収納量が多いんだな。俺も買い替えたが、ワイバーンだと10体が限界だ」
十分だろうと思う浮竹と京楽であるが、Sランク冒険者はダンジョンの最深部までもぐる。
ドラゴンはそうそういないが、素材になるモンスターをつめこんでいけばすぐに満杯になってしまう。だから、素材として必要な部分だけ斬り分けて、収納するのが普通だった。
「ワイバーンは肉も食えるし、魔石もある。解体費用はかかるが、それでも十分に黒字だろうさ」
風の旅人のリーダーの言葉に、浮竹も京楽もアイテムポケットの中にいれたワイバーンの肉は、少しだけ手元に置くことにした。
自分たちで食べる分を。
一行は、帰り道で闇夜の森で迷い、浮竹と京楽以外のパーティーはばらばらになった。
そこに、剣士らしい京楽が現れて、デュラハンとスケルトン退治に同行することになった。
剣士らしい京楽は、怪しげな妖刀を手に、何か妖刀に話しかけていた。
「じゃあ、スケルトンの退治はこの子たちに任せて、ボクはデュラハンをなるべく相手にしようか」
そんなことをぶつぶつ言いだすものだから、エルフの二人はびっくりした。
「あ、ごめんね。こっちの話。あんまり気にしないで。独り言をいう癖があるから」
妖刀に精霊が宿っているなて、知られたくなかった。
こちら側の京楽は、正体がダークエルフとばれて警戒して威嚇していたが、浮竹が害をもたらす存在ではないと諭すと、少し気を緩めてくれた。
スケルトンを魔法と剣で片づけていくと、剣士の京楽はデュラハンに向かって突っ込んでいった。
「助けなくていいのかい?」
「大丈夫だ。多分、Sランク冒険者よりも強い」
一撃でデュラハンを仕留めた剣士の京楽は、また何かを妖刀に向けて話しかけていた。それに、浮竹が待ったをかける。
「モンスターを倒したことだし、この森をぬけたんだが」
浮竹の問いに、剣士の京楽は笑ってばいばいと手を振った。その肩に乗っていたスライムまで、ばいばいと手をふって
結局、闇夜の森で転送魔法陣に乗せられて、気づくと冒険者ギルドの前にいた。
風の旅人のメンバーたちも無事で、馬も荷馬車も無事だった。
「何かわからなかったけど、助かったな、京楽」
「うん・・・でもあいつ、俺の種族を知ってた。できればもう会いたくない」
「そんなこと言うなよ。お前の種族を知っていても、差別的な言動はしなかっただろう?」
「まぁ、それはそうなんだけど」
冒険者ギルドに入ると1階は酒場になっているので、ちょうど夕刻の時間で、飯を食べにきた冒険者で溢れかえってきた。
「解体を頼みたい。ワイバーンを4匹」
「あいよ。1匹につき解体量銀貨5枚かがるが、いいかね?」
「ああ、構わない」
4匹分で金貨2枚だった。
「あ、肉は少し残しておいて。僕らで食べるから」
解体屋は、別に殊更驚きもせずに了承してくれた。
金のない初級者ランクの冒険者は、狩った獲物食べたりするのが普通だった。
Bランクより上になると、そうそうモンスターに肉を口にする者はいなくなるが、ワイバーンの肉はうまいので需要があった。
「じゃあ、2時間後にきてくれ。解体をすませておくから」
「分かった。行こう、京楽」
浮竹と京楽は、近くの喫茶店で時間をつぶした。
コーヒーだけを飲む京楽と違って、浮竹はジャンボアイスパフェを注文したりして、スイーツが大好きなので、さらに苺ショートケーキとか注文していた。
「よくそんな量が入るねぇ」
「スイーツは別腹だ」
「別腹すぎて、僕は会計が怖いよ」
結局スイーツは金持ちの食べ物なので、金貨1枚と銀貨5枚の出費となった。
約束の2時間がたち、解体工房へいくと、ワイバーン4匹の解体は終わっていた。
「爪と牙と鱗で、1匹金貨15枚。肉が1匹あたり金貨4枚。今回は1匹の半分の肉を残したので4匹あわせて、合計で金貨74枚だ」
「おお、けっこういったな」
「うん、嬉しいね。あと、ギルドで討伐達成の報酬金ももらわないと」
二人は置いておいてもらったワイバーンの肉をアイテムポケットに入れると、解体工房を後にして、冒険者ギルドにやってきた。
もう夜になっているので、夕刻ほ喧噪はなかったが、それでも冒険から帰ってきた者たちが食事をしたり酒を飲んだりしていた。
「Aランクのワイバーン退治の討伐の証の魔石が4つ。確認してほしい」
受付嬢は、すぐさま鑑定眼鏡をもちだして、それがワイバーンの魔石であることを確認して、報酬金金貨45枚をそれぞれくれた。
「さすがAランク。報酬金も高いね」
「ああ。BランクからAランクにあがるのに、積極的にAランクの依頼を受けていると早く昇級できるらしい」
「じゃあ、また今度もAランクの依頼、受けよっか」
「ペアで行くのはだめだぞ。まだ実力不足だ。相手の敵が群れじゃなかったらいいが、1匹だけだとユニークモンスターとかで強かったりするしな」
「ふむ。じゃあ、Aランクの仕事を請け負うときは、誰かと一緒のほうがいいのかな」
「そうなるな。まぁ二人でいけなくもない依頼を探そう」
その日はもう終わりにして、宿屋に帰った。
宿屋では朝食は出るが、夕食は出ない。
なので、宿屋の中庭で料理器具をかしてもらう、ワイバーンのバーベキューをした。
「うん、確かにおいしいね」
「だろう?一度食べてみたかったんだ」
浮竹はワイバーンの肉を食べてみたくてうずうずしていたらしい。
「このじゅわっと溢れる肉汁がたまらないな」
「このソースにつけると、余計においしいよ」
ソースをつけながら、浮竹はワイバーンの肉を口にした。
「うん、うまい」
「そうそう、あの僕にそっくりな剣士、スライムを持ってたでしょ」
「ああ、それがどうした?」
「僕も、何か使い魔をもってみようかと思って」
「お、いいな」
浮竹は、何を使い魔にするのか楽しそうだった。
「実は、すでに捕まえているんだ」
「なんの動物かモンスターを使い魔にするんだ?」
「黒リスさ」
「お、かわいいな」
籠の中に入っていたのは、黒い小型のリスだった。
その周囲に円陣を描き、京楽は従魔契約を行った後に、使い魔としての契約を行った。
従魔であれば、戦闘の時も役に立つかもしれない。
せいぜい、敵の気を引く程度かもしれないが、それでもないとあるとは大きな差があった。
「名前は?」
「黒いからクロ」
「そのまんまだな」
京楽はクロを森に逃がした。
「逃げないのか?」
「いざとなったら、転送魔法陣でこっちに戻ってくる。食事とかは自分ですませて欲しいから、いつもは森に放っておくよ」
「そうか」
こうして、ワイバーン討伐は終わり、その日の冒険も終了するのだった。
Sランク冒険者は富と名声を得られて、幸せになれる。そう思われているが、実際のSランク冒険者はいつも死と隣り合わせの世界に住んでいる。
チートみたいに規格外に強くない限り、Sランク冒険者は努力と根性でできていた。
そのSランク冒険者もそうだった。
風の旅人という名の冒険者パーティーは、Aランクの仕事を請け負った。
それは、京楽たちも受けた同じ内容の依頼で、複数で可能な仕事であった。
内容は、ワイバーンの退治であった。しかも、複数の。
Bランクの浮竹と京楽だけでは、実際きつい内容だったので、Sランクの冒険者と一緒に旅ができると知って、浮竹と京楽は喜んだ。
「Bランクになってどれくらいになる?」
「半年だ」
「ふむ。二人で半年生きていれるってことは、相当な使い手だな」
「そうでもない。相棒がよかったせいだ」
「ウッドエルフの魔法使いか」
ぎくりと、京楽が体を強張らせる。
「ウッドエルフは弓手が多いのに、よく魔法使いになれたな」
「適性があったからだよ。基本4属性魔法と氷、雷と聖属性の回復魔法が使える」
「そりゃすごい。闇も使えれば、全属性に適正ありだったろうに。惜しいな。全属性に適正があれば、宮廷魔導師も夢じゃなかったろうに」
「あははは、そこまで魔法の腕はまだないよ。修行中の身だからね。使えるのは火の上級魔法とあとの属性は中級魔法までさ」
「それでも十分にすごいぞ。パーティーで引くてあまただろうに、何故二人でペアで組んでるんだ?」
「浮竹が好きだからだよ」
「ほ、そうきたか。エルフでも、そういうのあるんだな」
「エルフの人生は長いからな。伴侶は何も異性じゃなくてもいいんだ。どのみち出生率は落ちるばかりで、エンシェントエルフもウッドエルフもハイエルフもダークエルフも、みんな数が減ってる」
「おいおい、エルフの中にダークエルフを入れるなよ。あれは魔族だろう」
風の旅人のパーティーのリーダーが、ダークエルフは魔族と言った。
浮竹は京楽の方を伺うが、特別何かを思っているようでもないので、安心した。
「ダークエルフでも、いい奴はいる」
「まぁ、たまに旅人のダークエルフを見ることはあるが、みんな毛嫌いするから、旅をしにくそうだったがな」
ダークエルフから話を逸らそうと、浮竹はSランクの冒険者たちに質問をした。
「ドラゴンを退治したことはあるか?」
「いや、まだないな。ドラゴンを倒せるとは思うが、きっと死人が出る。だから、まだ挑戦しない」
「それも一種の手だね」
京楽も同意した。
ドラゴンは素材としても最高で、おまけに金銀財宝を集めるのが趣味で、倒せば一攫千金だ。
馬車で10日かけて出発して、目的地に辿りついた。
馬は狙われやすいので、ワイバーンの出る場所よりも遠くで降りた。
「馬はここに置いていこう」
「大丈夫か?他の魔物に襲われる危険はないか?」
浮竹の言葉に、風の旅人のパーティーリーダーは、魔道具を設置した。
「魔よけの札と香だ。これがある限り、どんな魔物にも襲われない」
「高いんだろうな」
「何、1つ金貨30枚程度だ」
「さ、30枚・・・金貨が30枚・・・・・」
京楽は、Sランク冒険者の金銭感覚についていけずに、眩暈を起こしそうになっていた。
「さて、ではワイバーンの討伐に出発だ」
Sランクのパーティーの重荷にならぬように、浮竹と京楽は魔法で攻撃することに決めた。
「GYARUUUUUU!!」
ワイバーンの群れが現れた。
頭上をバサバサと飛んでいくワイバーンに、まずは風の旅人の弓使いが弓を射て、目をつぶした。
「あんな遠くにまで矢を・・・すごいな」
浮竹は素直に関心していた。
「僕も魔法で援護するよ!フレイムロンド!」
「じゃあ俺も。ウォータースパイラル!」
京楽と浮竹は、それぞれ火と水の魔法で、ワイバーンの翼を攻撃して、地面に落とした。
地面に落ちてきたワイバーンにトドメをさすのは、風の旅人のリーダーである剣士と、斧使いだった。
風の旅人のパーティーは、リーダの剣士、サブリーダーの弓使いに、斧使い、魔法使い、僧侶でできた、均整のとれたパーティーだった。
一方の浮竹と京楽は、魔法剣士に、癒しの魔法も使える魔法使いの京楽だ。
火力に乏しいことはないが、癒し手が攻撃魔法も使うので、常に癒し手が守っているSランクのパーティーより危険度は増す。
「フレアスピア!」
「アイシクルロンド!」
ちなみに、浮竹は火と水と聖魔法を使えるが、聖魔法は剣にエンチャントするだけで、火と水は中級までなら使えた。
浮竹と京楽は、次々とワイバーンの翼を魔法で破り、地面に落としていく。
気づくと、空にワイバーンはいなくなっていた。
「すごい火力だな。魔法でワイバーンをここまで落とせるなんて、Aランク冒険者でもなかなかいないぞ」
褒められて、浮竹も京楽もはにかんだ笑みを零した。
「お前たちの腕がいいからだ。一度もこちら側に攻撃を許さなかった」
「うん。僕も、自由に魔法が使えたよ。詠唱してる間、ずっと弓使いの人がこっちを狙ってくるワイバーンの目をつぶしていたし」
こうして、一向は怪我することもなく、ワイバーンの討伐を終えた。
さすがにSランクの冒険者だけあって、ワイバーン程度では怪我をすることもなかった。
「ワイバーンの鱗や爪、牙は素材になる。ドラゴンよりも劣るが、そこそこの値段がするはずだ。ワイバーンはちょうど14匹いた。一人2匹ずつで分けるのどうだろう」
風の旅人のリーダーの言葉に、浮竹も京楽も頷いた。
「正直、倒したわけじゃないのでちょっと気が引けるけど」
「京楽、もらえるものはもらっておこう。資金をためて、一戸建てを買うんだろ」
「そうだったね。じゃあ、2匹のワイバーンをもらうね」
京楽は、アイテムポケットにワイバーンの死体を2匹分収納した。
浮竹も、アイテムポケットにワイバーンの死体を2匹入れた。
「お、そっちのアイテムポケットはBランクの割に収納量が多いんだな。俺も買い替えたが、ワイバーンだと10体が限界だ」
十分だろうと思う浮竹と京楽であるが、Sランク冒険者はダンジョンの最深部までもぐる。
ドラゴンはそうそういないが、素材になるモンスターをつめこんでいけばすぐに満杯になってしまう。だから、素材として必要な部分だけ斬り分けて、収納するのが普通だった。
「ワイバーンは肉も食えるし、魔石もある。解体費用はかかるが、それでも十分に黒字だろうさ」
風の旅人のリーダーの言葉に、浮竹も京楽もアイテムポケットの中にいれたワイバーンの肉は、少しだけ手元に置くことにした。
自分たちで食べる分を。
一行は、帰り道で闇夜の森で迷い、浮竹と京楽以外のパーティーはばらばらになった。
そこに、剣士らしい京楽が現れて、デュラハンとスケルトン退治に同行することになった。
剣士らしい京楽は、怪しげな妖刀を手に、何か妖刀に話しかけていた。
「じゃあ、スケルトンの退治はこの子たちに任せて、ボクはデュラハンをなるべく相手にしようか」
そんなことをぶつぶつ言いだすものだから、エルフの二人はびっくりした。
「あ、ごめんね。こっちの話。あんまり気にしないで。独り言をいう癖があるから」
妖刀に精霊が宿っているなて、知られたくなかった。
こちら側の京楽は、正体がダークエルフとばれて警戒して威嚇していたが、浮竹が害をもたらす存在ではないと諭すと、少し気を緩めてくれた。
スケルトンを魔法と剣で片づけていくと、剣士の京楽はデュラハンに向かって突っ込んでいった。
「助けなくていいのかい?」
「大丈夫だ。多分、Sランク冒険者よりも強い」
一撃でデュラハンを仕留めた剣士の京楽は、また何かを妖刀に向けて話しかけていた。それに、浮竹が待ったをかける。
「モンスターを倒したことだし、この森をぬけたんだが」
浮竹の問いに、剣士の京楽は笑ってばいばいと手を振った。その肩に乗っていたスライムまで、ばいばいと手をふって
結局、闇夜の森で転送魔法陣に乗せられて、気づくと冒険者ギルドの前にいた。
風の旅人のメンバーたちも無事で、馬も荷馬車も無事だった。
「何かわからなかったけど、助かったな、京楽」
「うん・・・でもあいつ、俺の種族を知ってた。できればもう会いたくない」
「そんなこと言うなよ。お前の種族を知っていても、差別的な言動はしなかっただろう?」
「まぁ、それはそうなんだけど」
冒険者ギルドに入ると1階は酒場になっているので、ちょうど夕刻の時間で、飯を食べにきた冒険者で溢れかえってきた。
「解体を頼みたい。ワイバーンを4匹」
「あいよ。1匹につき解体量銀貨5枚かがるが、いいかね?」
「ああ、構わない」
4匹分で金貨2枚だった。
「あ、肉は少し残しておいて。僕らで食べるから」
解体屋は、別に殊更驚きもせずに了承してくれた。
金のない初級者ランクの冒険者は、狩った獲物食べたりするのが普通だった。
Bランクより上になると、そうそうモンスターに肉を口にする者はいなくなるが、ワイバーンの肉はうまいので需要があった。
「じゃあ、2時間後にきてくれ。解体をすませておくから」
「分かった。行こう、京楽」
浮竹と京楽は、近くの喫茶店で時間をつぶした。
コーヒーだけを飲む京楽と違って、浮竹はジャンボアイスパフェを注文したりして、スイーツが大好きなので、さらに苺ショートケーキとか注文していた。
「よくそんな量が入るねぇ」
「スイーツは別腹だ」
「別腹すぎて、僕は会計が怖いよ」
結局スイーツは金持ちの食べ物なので、金貨1枚と銀貨5枚の出費となった。
約束の2時間がたち、解体工房へいくと、ワイバーン4匹の解体は終わっていた。
「爪と牙と鱗で、1匹金貨15枚。肉が1匹あたり金貨4枚。今回は1匹の半分の肉を残したので4匹あわせて、合計で金貨74枚だ」
「おお、けっこういったな」
「うん、嬉しいね。あと、ギルドで討伐達成の報酬金ももらわないと」
二人は置いておいてもらったワイバーンの肉をアイテムポケットに入れると、解体工房を後にして、冒険者ギルドにやってきた。
もう夜になっているので、夕刻ほ喧噪はなかったが、それでも冒険から帰ってきた者たちが食事をしたり酒を飲んだりしていた。
「Aランクのワイバーン退治の討伐の証の魔石が4つ。確認してほしい」
受付嬢は、すぐさま鑑定眼鏡をもちだして、それがワイバーンの魔石であることを確認して、報酬金金貨45枚をそれぞれくれた。
「さすがAランク。報酬金も高いね」
「ああ。BランクからAランクにあがるのに、積極的にAランクの依頼を受けていると早く昇級できるらしい」
「じゃあ、また今度もAランクの依頼、受けよっか」
「ペアで行くのはだめだぞ。まだ実力不足だ。相手の敵が群れじゃなかったらいいが、1匹だけだとユニークモンスターとかで強かったりするしな」
「ふむ。じゃあ、Aランクの仕事を請け負うときは、誰かと一緒のほうがいいのかな」
「そうなるな。まぁ二人でいけなくもない依頼を探そう」
その日はもう終わりにして、宿屋に帰った。
宿屋では朝食は出るが、夕食は出ない。
なので、宿屋の中庭で料理器具をかしてもらう、ワイバーンのバーベキューをした。
「うん、確かにおいしいね」
「だろう?一度食べてみたかったんだ」
浮竹はワイバーンの肉を食べてみたくてうずうずしていたらしい。
「このじゅわっと溢れる肉汁がたまらないな」
「このソースにつけると、余計においしいよ」
ソースをつけながら、浮竹はワイバーンの肉を口にした。
「うん、うまい」
「そうそう、あの僕にそっくりな剣士、スライムを持ってたでしょ」
「ああ、それがどうした?」
「僕も、何か使い魔をもってみようかと思って」
「お、いいな」
浮竹は、何を使い魔にするのか楽しそうだった。
「実は、すでに捕まえているんだ」
「なんの動物かモンスターを使い魔にするんだ?」
「黒リスさ」
「お、かわいいな」
籠の中に入っていたのは、黒い小型のリスだった。
その周囲に円陣を描き、京楽は従魔契約を行った後に、使い魔としての契約を行った。
従魔であれば、戦闘の時も役に立つかもしれない。
せいぜい、敵の気を引く程度かもしれないが、それでもないとあるとは大きな差があった。
「名前は?」
「黒いからクロ」
「そのまんまだな」
京楽はクロを森に逃がした。
「逃げないのか?」
「いざとなったら、転送魔法陣でこっちに戻ってくる。食事とかは自分ですませて欲しいから、いつもは森に放っておくよ」
「そうか」
こうして、ワイバーン討伐は終わり、その日の冒険も終了するのだった。
エンシェントエルフとダークエルフ2
「大規模なゴブリンの拠点が発見された?」
「数が多すぎてBランクの冒険者にまで招集?」
浮竹と京楽は、冒険者ギルドでそんな話を耳に入れた。
普通、ゴブリンはF~Dの、初級冒険者が引き受ける内容のものだ。
だが、規模が大きすぎて、Bランクまでゴブリン退治に参加してくれとのことだった。
報酬金は、命を賭けにするには安すぎて、Cランクならともかく、Bランクで参加しそうな者はいなかった。
浮竹は、事態を重く見て、参加することに決めた。
「いいの、浮竹。報酬金低いよ」
「大規模な群れということは、繁殖のために人間やエルフの女性が大勢とらわれているということだ。放置しているわけにもいくまい」
あくまでモンスターの仕業なので、帝国軍は動いてくれないようだった。
だが、あまりにもCランクからBランクの冒険者の参加が少ないので、帝国から報酬金が付け足されることになった。
その報酬金目当てで、やっと他のBランクの冒険者も続々と参加を決めてくれた。
決行の日は、明後日。
馬車で、冒険者達はゴブリンの拠点がある地点よりある程度離れた距離で野営を行い、昼の時間に討伐することになった。
ゴブリンは、基本夜行性だ。
昼に活動することもあるが、夜目が効きやすい。
反対に、こちらは夜だと灯りがいる。弓手使い、アーチャーには厳しいだろう。
魔法使いも、両手で杖を持つか、自由な腕に盾をもつ。
浮竹と京楽は盾を持たずに、京楽が癒しの魔法まで使えるものだから、灯りは必要としなかったが、間違えて同士討ちになるのを避けたかったので、昼の決行には大賛成だった。
「GRUUUUUU!」
「GYAUUUUUU!!」
ゴブリンたちが大量に湧き出てきた。
それを、前衛たちが切り崩していく。
「良質な武具をもっているぞ!気をつけろ!」
前衛の声に、後衛の魔法使いや弓使いは魔法を放ったり、弓を射たりして、敵を叩いていく。
優勢だったのは最初のうちで、疲労感を覚え始めた前衛の一人が倒れ、また一人と倒れていく。
「何匹いるんだ!」
浮竹の言葉に、G~Fランクの冒険者たちは逃げ出していた。
「待て、逃げるな!」
「こんなところで命を失ってたまるか!」
武器を捨てて、続々と逃げ出していく。
「く、京楽さがれ!少し後退するぞ」
ゴブリンを統率しているホブゴブリンとゴブリンシャーマンが現れた。
「ホブゴブリンにゴブリンシャーマンか・・・Bランクが適正だな」
浮竹は、ミスリルの剣に聖属性を付与して、ゴブリンを斬り捨てていく。
だが、ゴブリンもやられっぱなしじゃない。武器を持って挑んでくるし、一番厄介なのは、ゴブリンの弓使いとゴブリンシャーマンの魔法だった。
「総崩れになる前に、ゴブリンシャーマンとホブゴブリンを倒すぞ!」
浮竹の言葉に、Cランク以上の冒険者が頷き、ホブゴブリンとゴブリンシャーマンをなんとか退治する。
統率のとれていたゴブリンの軍団が、統率者を失ったことで、ばらばらに動き出した。
「今だよ!魔法使いたちは弓手を先に倒して!ウォーターボールで窒息死させてしまえばいい!水の魔法が使えない子は火で焼いて!土属性の子は岩で押しつぶして!風属性の子は、かまいたちで首を切り落として!」
京楽が、いつの間にか指揮をとっていた。
弓手を失ったゴブリンたちは、次々に魔法で倒れていった、
「GURUUUU!」
「GYARUUUUUU!!!」
奥から、縄で繋がれた裸の女性たちが連れ出されてきた。
「人間ドモ、武器ヲ、捨テロ。ソウイシナイト女タチノ命ハナイ」
「人質作戦ときたか・・・・・」
「どうする、京楽」
「京楽さん」
「ここで引き下がっては意味がない、睡眠玉や煙玉があるから、どんどん投げて!」
ギルド側で、ある程度の物資は補給されていた。
人質を取られた時の作戦として、煙玉と睡眠玉をたくさんもってきてもらった。
それを人質のいるところ目がけて投げていくと、煙玉で目をやられたゴブリンたちは、次の睡眠玉でスリープの魔法がかけられたのと同じ状態になり、眠っていった。
人質の女性たちも眠るが、ゴブリンも眠っているので安全だった。
あらかたのゴブリンが動くのをやめたのを合図に、全軍で突撃していく。
人質の女性を解放すると、眠っているゴブリンたちにトドメをさしていく。
「京楽、よく指示を出してくれた。お陰で、脱走者はいたが、なんとかなった」
「任せてよ、浮竹。君を守るのも、僕の役目だよ」
救出された女性たちは皆裸だったので、毛布を与えられた。
「ああああ!殺して、お願い、私を殺してええ!ゴブリンの子供なんて産みたくないいい!!」
「いやあああああああ」
「きゃあああ、おなかにゴブリンの子が!」
浮竹が、透き通った声で女性たちに安静の魔法をかけた。
泣き叫んでいた女性たちが静かになっていく。
「君たちの身柄は、神殿が預かる。神殿で、ゴブリンを身籠ってしまった女性の子はおろされるから、安心してくれ。ゴブリンに汚された記憶も消される。だから、安心してくれ」
女性たちは泣き崩れた。
そんな女性たちを一人一人安心させるように、水と食料を与えていく。
浮竹は見た目が女性でも通るほどに華奢で、エンシェントエルフだけであって、顔立ちは優しく美しく整っていた。
皆、浮竹を見ていた。
京楽は、胸にちりっとする何かを感じた。それが嫉妬であると気づいたのは、冒険者ギルドに帰ってからだった。
逃走した冒険者は階級を1つ落とされた。
浮竹と京楽は、ギルドマスターに呼ばれた。
ギルドマスターは、オカマだった。
「あらやだん、浮竹ちゃん、春ちゃん、今回のゴブリン討伐では指揮をとってくれたり、騒ぎ出した女性を鎮めてくれたりしたでしょう?だ・か・ら、特別にギルドマスタ-の愛の抱擁をあ・げ・る♡」
「「謹んで辞退します」」
「あらん、ハモらなくてもいいじゃない。嘘よ、嘘。特別報酬金が出るわ。金貨10枚ね」
「ありがたい」
「うん、僕もありがたくもらうよ」
二人で合計で金貨20枚になる。今回のゴブリン討伐の報酬金が金貨8枚だったので、合計で一人18枚、二人で36枚になった。
「唐突なクエストの割には、いい収入になったな」
「うん。でも、君が女性たちに声をかけていって、縋りつかれたり抱き着かれているのを見ていいると、胸の中がもやもやした。はじめて、嫉妬という感情を知ったよ」
「俺は、お前以外にいらない」
真剣な表情で、浮竹は京楽の手を掴み、自分の胸に当てた。
「浮竹・・・・・」
「ダークエルフの京楽が好きなんだ。だから、お前以外に、親しい人はいらない」
「浮竹・・・・大好きだよ」
「俺も大好きだ、京楽」
浮竹は軽く体を伸ばしてから、京楽を誘う。
「公共浴場に行こう。今日はゴブリンの血とか脂とか浴びたから、風呂に入りたいし、服も洗濯しなくちゃ」
ちなみに、公共浴場には洗濯用のお湯があり、寒い時期でも温度が一定に保たれているため、銅貨2枚するが、よくそこを借りて服を洗った。
ある程度洗い物を溜めてかた使うのだが、今日は頭からゴブリンの血を浴びたりしたので、拭ったとはいえ、気持ち悪くてすぐに公共浴場を利用したかったのだが、念のために冒険者ギルドに顔を出したのだ。
報酬金は後日でもよかったが、宿代を払ったので、手持ちが心元なくなっていただけあって、助かった。
公共浴場で、股間は隠していれど、浮竹はエンシェントエルフであるせいか、見た目がよくて男性からのそういう意味な視線で見られるのが、京楽には耐えられなかった。
「ねぇ、君、何、僕の浮竹をじーっと見つめているのかな?」
「な、なんでもないです!」
男性は、慌てて風呂場から飛び出していった。
綺麗だなぁとただ純粋に見る視線もあったが、それを全てシャットアウトするように、京楽は視線を巡らせて、浮竹に注ぐ視線はなくなった。
「どうした、京楽。体を早く洗え」
「うん。浮竹は、いつまでも今のままでいてね」
「変な奴だな」
高めだった石鹸の泡立ちはよくシャンプーもいい匂いをさせていた。
同じ石鹸とシャンプーを使うのだが、京楽の髪は天然パーマでうねってしまう。浮竹のような長いストレートな髪に憧れた。
「浮竹はリンスも使ってね」
「そういうお前は使わないのか?」
「使ったところで、僕の髪はあんまり変わらないしね」
浮竹はリンスをしてから髪をシャワーで洗い流した。風呂に入り、伸びをする。
「はぁ、一日の疲れが癒される。ゴブリン退治はしばらくこりごりだ」
神殿に送った女性の数人から、傍に居て欲しいと泣きつかれて、別れるのにかなり時間が必要fだった。
「浮竹が、僕のものって印でもあればいいのに」
「お前からもらったブレスレット、しているだろ?」
「うん、そうだね。そんな安物じゃなくって、もっといいもの買えばいいのに」
「お前が、最初の稼ぎで買ってくれたこのブレスレットがいいんだ」
素材は銀でできており、値段銀貨3枚ほどだった。
1日の宿代になるくらいだから、そんなに安物というわけでもないが、Bランクになり金貨を稼げるようになった今から見ると、安物だろう。
翌日になって、冒険者ギルドに行こうとして、まだ道をよくわかっていない京楽とはぐれてしまった。
そして、大切なブレスレットを落としてしまい、京楽によく似た人物と会うことになる。
プルンという名のスライムにも出会った。
その日は、なんだか不思議な一日で、結局冒険者ギルドには行かず、宿屋に戻って、同じベッドで昼寝をした。
夜襲するときもあるので、寝れる時に寝れるように体がなっていた。
夕刻くらいに目覚めて、冒険者ギルドに顔を出すと、Sランク冒険者がドラゴンを退治したという話でもちきりだった。
「俺たちも、早くドラゴンを倒せるくらいにまで、なりたいな」
「まだまだ当分先の話だね。まだAランクへの昇格も見えない」
「そうだな。ドラゴンを退治したSランク冒険者のパーティーは5人か。俺たちもパーティーメンバーを増やすべきなのだろうが」
「そんなの、いらないよ!僕がサポートするから!」
「ああ、分かっている。お前の種族がばれてしまう可能性もあるしな」
京楽はダークエルフだ。
ダークエルフは血を好み、破壊活動ばかりする。ある時はモンスターを率いて町を滅ぼそうとしたり、ある時は邪教徒となって、生贄に人間を攫い、殺したりする。
全てのダークエルフがそうではないが、ダークエルフで冒険者稼業をやっていこうにも、仲間になってくれる者はいないので、相当難しいだろう。
京楽は、肌が白いのをいいことに、普通のエルフであるウッドエルフと種族を偽っていた。
種族を偽ることは罪ではないが、真実を知られたら、きっと冒険者ギルドの知り合いの仲間たちも京楽を見捨てるだろう。
なのに、浮竹はいつでも京楽の傍にいてくれた。
エンシェントエルフの者たちに発見され、同胞から見捨てられた京楽は、牢に入れられて暮らしていた。
しかし、外に抜け出せる道を浮竹が知っていて、よく遊びにきてくれた。
冒険者登録できる12歳・・・エルフでいう、100歳くらいになった時に、冒険者登録をした。
奇遇なことに、浮竹と京楽は生まれた年が同じだった。フレイア歴2050年。
今は2230年になる。
エルフは種族によって寿命が違うが、エンシェントエルフとダークエルフはほぼ同じで、千年以上を生きる。
まだ年若いエルフに入るので、浮竹には見合い話とかが何度か舞いこんできたが、全部浮竹が断った。
京楽がいるからとは、言えなかった。
言えば最後、京楽は処刑されるだろう。
長たちに気まぐれで、たまたま生きていることを許されている身分だった。
浮竹が捨て去ったエルフの森には、浮竹が京楽にかどわかされたということになっていた。
今更、帰りようがない。
身分保障の人間もいないので、一応何かあった場合はギルドマスターが身分証明者になることになっていたが、家を借りたりするのはもっと親族などがいないとだめだった。
「お金を溜めて、二人で暮らせる家を買おう」
「うん、いいね。庭付きの一戸建てがいいね」
「まずは、そのためにも依頼を受けまくって達成しまくって、Aランク冒険者にならなくてはな」
「そうだね」
いつもは二人は別々の部屋に宿屋で泊まっているが、時折同じ部屋で寝た。
荷物が多いので、一人部屋の部屋は狭すぎるし、二人部屋は高くて、一人部屋を2つ借りた方が安かった。
「明日は、Aランク向けの仕事を受注してみよう」
「そうだね。何があるかわくわくだね」
ランクは適正があり、BランクだとF~Cの依頼も受けれるし、Bランクはもちろん、一つ上のAランクの仕事も受けれた。
二人は夢を見た。
浮竹が妖刀の精霊になっていて、京楽が不老不死の主になっている夢だった。
朝起きると、そんな夢の内容は忘れてしまっていた。
「さぁ、冒険者ギルドに行くぞ」
「ちょっと待ってよ。まだ朝食の途中なんだけど!」
「きりきりさっさと食え!」
「無茶言わないでよ!」
彼らの冒険はまだ始まったばかり。
目指せ、Sランク冒険者!
「数が多すぎてBランクの冒険者にまで招集?」
浮竹と京楽は、冒険者ギルドでそんな話を耳に入れた。
普通、ゴブリンはF~Dの、初級冒険者が引き受ける内容のものだ。
だが、規模が大きすぎて、Bランクまでゴブリン退治に参加してくれとのことだった。
報酬金は、命を賭けにするには安すぎて、Cランクならともかく、Bランクで参加しそうな者はいなかった。
浮竹は、事態を重く見て、参加することに決めた。
「いいの、浮竹。報酬金低いよ」
「大規模な群れということは、繁殖のために人間やエルフの女性が大勢とらわれているということだ。放置しているわけにもいくまい」
あくまでモンスターの仕業なので、帝国軍は動いてくれないようだった。
だが、あまりにもCランクからBランクの冒険者の参加が少ないので、帝国から報酬金が付け足されることになった。
その報酬金目当てで、やっと他のBランクの冒険者も続々と参加を決めてくれた。
決行の日は、明後日。
馬車で、冒険者達はゴブリンの拠点がある地点よりある程度離れた距離で野営を行い、昼の時間に討伐することになった。
ゴブリンは、基本夜行性だ。
昼に活動することもあるが、夜目が効きやすい。
反対に、こちらは夜だと灯りがいる。弓手使い、アーチャーには厳しいだろう。
魔法使いも、両手で杖を持つか、自由な腕に盾をもつ。
浮竹と京楽は盾を持たずに、京楽が癒しの魔法まで使えるものだから、灯りは必要としなかったが、間違えて同士討ちになるのを避けたかったので、昼の決行には大賛成だった。
「GRUUUUUU!」
「GYAUUUUUU!!」
ゴブリンたちが大量に湧き出てきた。
それを、前衛たちが切り崩していく。
「良質な武具をもっているぞ!気をつけろ!」
前衛の声に、後衛の魔法使いや弓使いは魔法を放ったり、弓を射たりして、敵を叩いていく。
優勢だったのは最初のうちで、疲労感を覚え始めた前衛の一人が倒れ、また一人と倒れていく。
「何匹いるんだ!」
浮竹の言葉に、G~Fランクの冒険者たちは逃げ出していた。
「待て、逃げるな!」
「こんなところで命を失ってたまるか!」
武器を捨てて、続々と逃げ出していく。
「く、京楽さがれ!少し後退するぞ」
ゴブリンを統率しているホブゴブリンとゴブリンシャーマンが現れた。
「ホブゴブリンにゴブリンシャーマンか・・・Bランクが適正だな」
浮竹は、ミスリルの剣に聖属性を付与して、ゴブリンを斬り捨てていく。
だが、ゴブリンもやられっぱなしじゃない。武器を持って挑んでくるし、一番厄介なのは、ゴブリンの弓使いとゴブリンシャーマンの魔法だった。
「総崩れになる前に、ゴブリンシャーマンとホブゴブリンを倒すぞ!」
浮竹の言葉に、Cランク以上の冒険者が頷き、ホブゴブリンとゴブリンシャーマンをなんとか退治する。
統率のとれていたゴブリンの軍団が、統率者を失ったことで、ばらばらに動き出した。
「今だよ!魔法使いたちは弓手を先に倒して!ウォーターボールで窒息死させてしまえばいい!水の魔法が使えない子は火で焼いて!土属性の子は岩で押しつぶして!風属性の子は、かまいたちで首を切り落として!」
京楽が、いつの間にか指揮をとっていた。
弓手を失ったゴブリンたちは、次々に魔法で倒れていった、
「GURUUUU!」
「GYARUUUUUU!!!」
奥から、縄で繋がれた裸の女性たちが連れ出されてきた。
「人間ドモ、武器ヲ、捨テロ。ソウイシナイト女タチノ命ハナイ」
「人質作戦ときたか・・・・・」
「どうする、京楽」
「京楽さん」
「ここで引き下がっては意味がない、睡眠玉や煙玉があるから、どんどん投げて!」
ギルド側で、ある程度の物資は補給されていた。
人質を取られた時の作戦として、煙玉と睡眠玉をたくさんもってきてもらった。
それを人質のいるところ目がけて投げていくと、煙玉で目をやられたゴブリンたちは、次の睡眠玉でスリープの魔法がかけられたのと同じ状態になり、眠っていった。
人質の女性たちも眠るが、ゴブリンも眠っているので安全だった。
あらかたのゴブリンが動くのをやめたのを合図に、全軍で突撃していく。
人質の女性を解放すると、眠っているゴブリンたちにトドメをさしていく。
「京楽、よく指示を出してくれた。お陰で、脱走者はいたが、なんとかなった」
「任せてよ、浮竹。君を守るのも、僕の役目だよ」
救出された女性たちは皆裸だったので、毛布を与えられた。
「ああああ!殺して、お願い、私を殺してええ!ゴブリンの子供なんて産みたくないいい!!」
「いやあああああああ」
「きゃあああ、おなかにゴブリンの子が!」
浮竹が、透き通った声で女性たちに安静の魔法をかけた。
泣き叫んでいた女性たちが静かになっていく。
「君たちの身柄は、神殿が預かる。神殿で、ゴブリンを身籠ってしまった女性の子はおろされるから、安心してくれ。ゴブリンに汚された記憶も消される。だから、安心してくれ」
女性たちは泣き崩れた。
そんな女性たちを一人一人安心させるように、水と食料を与えていく。
浮竹は見た目が女性でも通るほどに華奢で、エンシェントエルフだけであって、顔立ちは優しく美しく整っていた。
皆、浮竹を見ていた。
京楽は、胸にちりっとする何かを感じた。それが嫉妬であると気づいたのは、冒険者ギルドに帰ってからだった。
逃走した冒険者は階級を1つ落とされた。
浮竹と京楽は、ギルドマスターに呼ばれた。
ギルドマスターは、オカマだった。
「あらやだん、浮竹ちゃん、春ちゃん、今回のゴブリン討伐では指揮をとってくれたり、騒ぎ出した女性を鎮めてくれたりしたでしょう?だ・か・ら、特別にギルドマスタ-の愛の抱擁をあ・げ・る♡」
「「謹んで辞退します」」
「あらん、ハモらなくてもいいじゃない。嘘よ、嘘。特別報酬金が出るわ。金貨10枚ね」
「ありがたい」
「うん、僕もありがたくもらうよ」
二人で合計で金貨20枚になる。今回のゴブリン討伐の報酬金が金貨8枚だったので、合計で一人18枚、二人で36枚になった。
「唐突なクエストの割には、いい収入になったな」
「うん。でも、君が女性たちに声をかけていって、縋りつかれたり抱き着かれているのを見ていいると、胸の中がもやもやした。はじめて、嫉妬という感情を知ったよ」
「俺は、お前以外にいらない」
真剣な表情で、浮竹は京楽の手を掴み、自分の胸に当てた。
「浮竹・・・・・」
「ダークエルフの京楽が好きなんだ。だから、お前以外に、親しい人はいらない」
「浮竹・・・・大好きだよ」
「俺も大好きだ、京楽」
浮竹は軽く体を伸ばしてから、京楽を誘う。
「公共浴場に行こう。今日はゴブリンの血とか脂とか浴びたから、風呂に入りたいし、服も洗濯しなくちゃ」
ちなみに、公共浴場には洗濯用のお湯があり、寒い時期でも温度が一定に保たれているため、銅貨2枚するが、よくそこを借りて服を洗った。
ある程度洗い物を溜めてかた使うのだが、今日は頭からゴブリンの血を浴びたりしたので、拭ったとはいえ、気持ち悪くてすぐに公共浴場を利用したかったのだが、念のために冒険者ギルドに顔を出したのだ。
報酬金は後日でもよかったが、宿代を払ったので、手持ちが心元なくなっていただけあって、助かった。
公共浴場で、股間は隠していれど、浮竹はエンシェントエルフであるせいか、見た目がよくて男性からのそういう意味な視線で見られるのが、京楽には耐えられなかった。
「ねぇ、君、何、僕の浮竹をじーっと見つめているのかな?」
「な、なんでもないです!」
男性は、慌てて風呂場から飛び出していった。
綺麗だなぁとただ純粋に見る視線もあったが、それを全てシャットアウトするように、京楽は視線を巡らせて、浮竹に注ぐ視線はなくなった。
「どうした、京楽。体を早く洗え」
「うん。浮竹は、いつまでも今のままでいてね」
「変な奴だな」
高めだった石鹸の泡立ちはよくシャンプーもいい匂いをさせていた。
同じ石鹸とシャンプーを使うのだが、京楽の髪は天然パーマでうねってしまう。浮竹のような長いストレートな髪に憧れた。
「浮竹はリンスも使ってね」
「そういうお前は使わないのか?」
「使ったところで、僕の髪はあんまり変わらないしね」
浮竹はリンスをしてから髪をシャワーで洗い流した。風呂に入り、伸びをする。
「はぁ、一日の疲れが癒される。ゴブリン退治はしばらくこりごりだ」
神殿に送った女性の数人から、傍に居て欲しいと泣きつかれて、別れるのにかなり時間が必要fだった。
「浮竹が、僕のものって印でもあればいいのに」
「お前からもらったブレスレット、しているだろ?」
「うん、そうだね。そんな安物じゃなくって、もっといいもの買えばいいのに」
「お前が、最初の稼ぎで買ってくれたこのブレスレットがいいんだ」
素材は銀でできており、値段銀貨3枚ほどだった。
1日の宿代になるくらいだから、そんなに安物というわけでもないが、Bランクになり金貨を稼げるようになった今から見ると、安物だろう。
翌日になって、冒険者ギルドに行こうとして、まだ道をよくわかっていない京楽とはぐれてしまった。
そして、大切なブレスレットを落としてしまい、京楽によく似た人物と会うことになる。
プルンという名のスライムにも出会った。
その日は、なんだか不思議な一日で、結局冒険者ギルドには行かず、宿屋に戻って、同じベッドで昼寝をした。
夜襲するときもあるので、寝れる時に寝れるように体がなっていた。
夕刻くらいに目覚めて、冒険者ギルドに顔を出すと、Sランク冒険者がドラゴンを退治したという話でもちきりだった。
「俺たちも、早くドラゴンを倒せるくらいにまで、なりたいな」
「まだまだ当分先の話だね。まだAランクへの昇格も見えない」
「そうだな。ドラゴンを退治したSランク冒険者のパーティーは5人か。俺たちもパーティーメンバーを増やすべきなのだろうが」
「そんなの、いらないよ!僕がサポートするから!」
「ああ、分かっている。お前の種族がばれてしまう可能性もあるしな」
京楽はダークエルフだ。
ダークエルフは血を好み、破壊活動ばかりする。ある時はモンスターを率いて町を滅ぼそうとしたり、ある時は邪教徒となって、生贄に人間を攫い、殺したりする。
全てのダークエルフがそうではないが、ダークエルフで冒険者稼業をやっていこうにも、仲間になってくれる者はいないので、相当難しいだろう。
京楽は、肌が白いのをいいことに、普通のエルフであるウッドエルフと種族を偽っていた。
種族を偽ることは罪ではないが、真実を知られたら、きっと冒険者ギルドの知り合いの仲間たちも京楽を見捨てるだろう。
なのに、浮竹はいつでも京楽の傍にいてくれた。
エンシェントエルフの者たちに発見され、同胞から見捨てられた京楽は、牢に入れられて暮らしていた。
しかし、外に抜け出せる道を浮竹が知っていて、よく遊びにきてくれた。
冒険者登録できる12歳・・・エルフでいう、100歳くらいになった時に、冒険者登録をした。
奇遇なことに、浮竹と京楽は生まれた年が同じだった。フレイア歴2050年。
今は2230年になる。
エルフは種族によって寿命が違うが、エンシェントエルフとダークエルフはほぼ同じで、千年以上を生きる。
まだ年若いエルフに入るので、浮竹には見合い話とかが何度か舞いこんできたが、全部浮竹が断った。
京楽がいるからとは、言えなかった。
言えば最後、京楽は処刑されるだろう。
長たちに気まぐれで、たまたま生きていることを許されている身分だった。
浮竹が捨て去ったエルフの森には、浮竹が京楽にかどわかされたということになっていた。
今更、帰りようがない。
身分保障の人間もいないので、一応何かあった場合はギルドマスターが身分証明者になることになっていたが、家を借りたりするのはもっと親族などがいないとだめだった。
「お金を溜めて、二人で暮らせる家を買おう」
「うん、いいね。庭付きの一戸建てがいいね」
「まずは、そのためにも依頼を受けまくって達成しまくって、Aランク冒険者にならなくてはな」
「そうだね」
いつもは二人は別々の部屋に宿屋で泊まっているが、時折同じ部屋で寝た。
荷物が多いので、一人部屋の部屋は狭すぎるし、二人部屋は高くて、一人部屋を2つ借りた方が安かった。
「明日は、Aランク向けの仕事を受注してみよう」
「そうだね。何があるかわくわくだね」
ランクは適正があり、BランクだとF~Cの依頼も受けれるし、Bランクはもちろん、一つ上のAランクの仕事も受けれた。
二人は夢を見た。
浮竹が妖刀の精霊になっていて、京楽が不老不死の主になっている夢だった。
朝起きると、そんな夢の内容は忘れてしまっていた。
「さぁ、冒険者ギルドに行くぞ」
「ちょっと待ってよ。まだ朝食の途中なんだけど!」
「きりきりさっさと食え!」
「無茶言わないでよ!」
彼らの冒険はまだ始まったばかり。
目指せ、Sランク冒険者!
エンシェントエルフとダークエルフ
その世界は、まだ出来立ての世界だった。
世界の名を、フレイアといった。
女神フレイアが治める、作られたばかりの世界では、全てが自由であった。
やがて時が経ち、女神フレイアはある二人の人物を、存在を変えてフレイアの世界へと召還した。
それは、アビスの世界のヴァンパイアマスターの浮竹と、ヴァンパイアロードであり、神喰らいの魔神である京楽だった。
今の浮竹はエンシェントエルフで、京楽はダークエルフだった。
エンシェントエルフは普通のエルフより耳が長かった。ダークエルフは褐色の肌をしているが、京楽の場合肌は普通の白さを保っていて、普通のエルフ、ウッドエルフに見えた。
浮竹と京楽は伴侶であり、このフレイアの世界にきてもそれは変わらなかった。
ただ、ヴァンパイアであった頃の記憶は失っていた。
力も圧倒的なまでにあったが、普通のエンシェントエルフの魔力とダークエルフの魔力を与えられていた。
ロスピア王国の隣にある、イアラ帝国の冒険者ギルドで、Bランクの冒険者として二人で活動していた。
「浮竹、魔力回復のポーションの元になる、マナの花の採取依頼が出ているよ」
「お、それはいいな。マナの花は、ちょうどBランクの依頼だ。オーガどもの住む村の近くに生えるんだよなぁ。オーガはあまり群れないが、たまに集落を築くとそこに生えてくる」
「いっそ、オーガに気づかれないように花だけ採取する?」
「いや、オーガの退治依頼も出ていただろう」
「うん。Bランクだね」
浮竹は入手したばかりの魔力を帯びたミスリルの剣を撫でた。
ミスリルの武器は高い。
Aランクの冒険者でやっと持てるといったかんじだ。
それを、浮竹はエンシェントエルフの村から出る時に、選別としてもらったのだ。
「浮竹は魔法剣士だから剣はいるけど、僕は魔法使いだから、杖を新調したいな」
「オーガの住処に行く前に、この前の報酬でもらった金で、杖を慎重しにいこう」
ダークエルフだと分かると、人間もエルフも他の種族も、いい顔をしない。なので、皮膚の色が普通の色で褐色でないのをいいことに、京楽は種族を普通のウッドエルフと偽っていた。
「あんた、ダークエルフだね?」
魔法の武器防具の店にやってくると、店の主人がそう言ってきた。
「うん・・・ウッドエルフって通してるけど、本当はダークエルフなんだ。ダークエルフに売る武器防具はないってかんじ?」
「いいや、種族が珍しいから声をかけてみただけじゃ。好きな武器防具を選べ。ダークエルフは
魔法の適性が高い。魔力を高めたいなら、その右隣にある杖たちがおすすめじゃ」
「あ、これいいね!」
杖の先端部に、青い魔石がはめ込まれいる、木製の杖だった。
「それは掘り出し物じゃぞ。といっても、中古品じゃがな。なんと、木製の部分は世界樹の木で作られているのじゃ」
「金貨4枚じゃな」
「うーん高い・・・・もう少しなんとかならない?」
「今の手持ちが金貨20枚・・・・そうだ、前の杖を下取りしてもらったらどうだ?」
「うん。愛用していたから、魔力の循環にはいい杖だと思うんだ」
京楽が前の杖を見せると、店の店主は身を乗り出してきた。
「おお、これはまた特殊は・・・・守りの魔法が付与されている杖じゃな。金貨2枚で引き取ってやってもよいぞ」
「じゃあ、これを引き取ってもらって、そっちの中古の杖をもらうとして、差額の金貨2枚を祓うよ」
「うむ。よい商いじゃった」
後日、京楽が売り払った杖が金貨10枚という値段で売られるを、知らぬ二人であった。
「じゃあ、オーガの拠点までいくか」
「一番近くの町まで、乗り合い馬車でいこう」
乗り合い馬車を乗り継いで、3日かけて移動し、一番近い村で一日だけ休息を入れると、その日は宿がないということで、村長の家に泊めてもらった。
オーガの被害にあったことがある村で、オーガを倒してくれる相手をずっと探していたそうで、やってきた浮竹と京楽を快く迎えてくれた。
「じゃあ、出発する」
「じゃあね。帰りも寄るから、よろしくね」
「どうが、女神フレイア様の加護があらんことを」
二人は、オーガの村に向かって歩きだした。
オーガは基本狩猟を行って生活しているが、モンスターだけでなく人間や家畜も食う。
ゴブリンのようにすぐに増える種族ではないし、そこそこ強いのでBランクが適正だった。
「先手必勝だ!」
浮竹がミスリル銀の剣を抜き放ち、門番をしていたオーガの首を斬り裂いて、悲鳴を与える暇もなく殺した。
「ファイアボール!」
集落の木の建物に次々と火の魔法で炎をつけていく。
「マナの花を燃やさないようにしろよ!」
「わかってるよ!周辺のフィールドには、結界を張ってあるから!」
浮竹は、襲い掛かってくるオーガを斬り捨てていく。
「ウォーターボール!!」
浮竹を背後から襲おうとしたオーガの頭部を水で包んで、窒息死させた。
「ウォーターボール!」
浮竹も京楽も、それが一番手っ取り早いと、ウォーターボールの魔法で、敵を窒息死させていった。
「GYAOOOOOOO!!」
「オーガキングだ!気をつけろ」
「ウォーターボール!」
オーガキングは身震いするだけで水の玉を弾けさせた、
「ウォータースピア!」
「GYOOOOO!!」
京楽の放った水の槍は、オーガキングの腹を貫いていた。
「いまだよ、浮竹!」
暴れまわるオーガキングに右肩を切られたが、致命傷ではないのでまず、剣で両目をつぶした。
「GAAAAAAAAA!!」
「エンチャントファイア!」
ミスリルの剣に火を付与して、硬いオーガの皮を斬り裂き、心臓を突き刺す。
それでもオーガキングは倒れなかった。
むちゃくちゃに振り回す剣で、浮竹は左足を切られた。
「ヒール!」
「助かる、京楽!」
「ライトニングボルト!」
先に目を潰して正解だった。
オーガキングは体全体を焦げさせながらも、浮竹を殺そうとする。
「いい加減、死ね!」
浮竹が放った剣は、オーガキングの首を刎ねていた。
それぞれ、倒したオーガから魔石を取り出し、討伐の証拠とする。
「あった、マナの花だよ」
「これだけあると、俺たちの分も確保できそうだな」
浮竹と京楽は、咲いている分だけマナの花を大量につみとって、アイテムポケットにしまいこむ。
オーガたちの魔石も、アイテムポケットの中だった。
アイテムポケットの中では時間が経たない。素材になりそうなモンスターを放り込んだり、料理を保存しておけた。
「さぁ、最寄りの村まで戻って、馬車で町まで戻ろう」
「うん、そうだね。あ、肩の傷、血は止まってるけど一応治しておくね。ヒール」
「ありがとう、京楽」
「ううん、僕のほうこそ。こんな、ダークエルフを拾ってくれるなんて、君くらいだよ」
ダークエルフと同じ褐色の肌をもたないからと、一族のつまはじき者として捨てられていた京楽を拾ったのは、エンシェントエルフの浮竹だった。
どっちも、まだ子供だった。
大人たちの都合で閉じ込められていた京楽を救ったのは、浮竹だった。エルフの森を抜け出して、人間の町で冒険者を始めた。
それでも、あくまで帰るのはエルフの森で。
大人になったダークエルフは、置いておけない、処刑すると言い出した他のエンシェントエルフから京楽を守るように、エルフの森を抜け出した。
村長に見つかり、罰せられると思ったが、選別だとミスリルの剣をもらった。
子供の頃から冒険者稼業を、牢屋からたびたび抜け出す京楽としていたので、ランクはB、そこそこのランクになっていた。
「オーガキングまでやっつけたし、金貨20枚は固いね」
「マナの花もあるからな。全部で35枚はいくんじゃないか」
「じゃあ、しばらく高い宿にでも泊まる?」
「いや、宿は今のままでいい。ただ、浴場に行きたいな」
「じゃあ、お風呂セット買おうか」
「そうだな」
浮竹と京楽は、冒険者ギルドでオーガ討伐の報告をして、魔石を買い取ってもらった。報酬金が金貨20枚、魔石が金貨3枚で売れた。
マナの花は金貨ちょうど15枚で買い取ってもらえた。
考えていたより3枚金貨が多かったので、ちょっと奮発して高めにお風呂セットを買ってみた。
公共浴場で、泡だらけになって、浮竹と京楽は笑いながら長い髪も洗った。
帰り際に、宿の部屋に別れる前に口づけをしあった。睦み合うことがないわけではなかったが、エルフはそういう欲求が薄いので、たまにだった。
公共浴場は安くもなく高くもない値段で、浮竹と京楽は最低週に2日は入っていた。着ている服を洗濯に出すこともできるが、金がかかるので自分たちで洗った。
今泊まっている宿は、中クラスで、夕食はついていないが、朝食はついていた。
そんな宿屋を数カ月借りているので、もはや我が家も同然のようになっていた。
「おはよう、浮竹さん京楽さん」
「ああ、おはよう、女将さん」
「おはようございます、女将さん」
「今日も冒険者ギルドで仕事かい?」
朝食を用意してくれる女将さんに感謝しつつ、今月分の宿代を払った。
それぞれ、1日銀貨2枚の宿なで、月に金貨6枚を払い、二人で12枚払った。
できれば自宅をもちたかったが、保証人もいないし、冒険者ということで危険と隣り合わせなので、家を借りることもできなかった。
「浮竹、抱きしてめていい?」
宿を出ると、京楽が甘えてきたので、浮竹は許可をした。
「大好きだよ、浮竹。ダークエルフの僕なんなの傍にいてくれて、ありがとう」
「俺も大好きだ、京楽。ダークエルフとか、そういうのは関係ない」
二人は触れるだけのキスをして、冒険者ギルドに今日の仕事を探しに出かけるのであった。
世界の名を、フレイアといった。
女神フレイアが治める、作られたばかりの世界では、全てが自由であった。
やがて時が経ち、女神フレイアはある二人の人物を、存在を変えてフレイアの世界へと召還した。
それは、アビスの世界のヴァンパイアマスターの浮竹と、ヴァンパイアロードであり、神喰らいの魔神である京楽だった。
今の浮竹はエンシェントエルフで、京楽はダークエルフだった。
エンシェントエルフは普通のエルフより耳が長かった。ダークエルフは褐色の肌をしているが、京楽の場合肌は普通の白さを保っていて、普通のエルフ、ウッドエルフに見えた。
浮竹と京楽は伴侶であり、このフレイアの世界にきてもそれは変わらなかった。
ただ、ヴァンパイアであった頃の記憶は失っていた。
力も圧倒的なまでにあったが、普通のエンシェントエルフの魔力とダークエルフの魔力を与えられていた。
ロスピア王国の隣にある、イアラ帝国の冒険者ギルドで、Bランクの冒険者として二人で活動していた。
「浮竹、魔力回復のポーションの元になる、マナの花の採取依頼が出ているよ」
「お、それはいいな。マナの花は、ちょうどBランクの依頼だ。オーガどもの住む村の近くに生えるんだよなぁ。オーガはあまり群れないが、たまに集落を築くとそこに生えてくる」
「いっそ、オーガに気づかれないように花だけ採取する?」
「いや、オーガの退治依頼も出ていただろう」
「うん。Bランクだね」
浮竹は入手したばかりの魔力を帯びたミスリルの剣を撫でた。
ミスリルの武器は高い。
Aランクの冒険者でやっと持てるといったかんじだ。
それを、浮竹はエンシェントエルフの村から出る時に、選別としてもらったのだ。
「浮竹は魔法剣士だから剣はいるけど、僕は魔法使いだから、杖を新調したいな」
「オーガの住処に行く前に、この前の報酬でもらった金で、杖を慎重しにいこう」
ダークエルフだと分かると、人間もエルフも他の種族も、いい顔をしない。なので、皮膚の色が普通の色で褐色でないのをいいことに、京楽は種族を普通のウッドエルフと偽っていた。
「あんた、ダークエルフだね?」
魔法の武器防具の店にやってくると、店の主人がそう言ってきた。
「うん・・・ウッドエルフって通してるけど、本当はダークエルフなんだ。ダークエルフに売る武器防具はないってかんじ?」
「いいや、種族が珍しいから声をかけてみただけじゃ。好きな武器防具を選べ。ダークエルフは
魔法の適性が高い。魔力を高めたいなら、その右隣にある杖たちがおすすめじゃ」
「あ、これいいね!」
杖の先端部に、青い魔石がはめ込まれいる、木製の杖だった。
「それは掘り出し物じゃぞ。といっても、中古品じゃがな。なんと、木製の部分は世界樹の木で作られているのじゃ」
「金貨4枚じゃな」
「うーん高い・・・・もう少しなんとかならない?」
「今の手持ちが金貨20枚・・・・そうだ、前の杖を下取りしてもらったらどうだ?」
「うん。愛用していたから、魔力の循環にはいい杖だと思うんだ」
京楽が前の杖を見せると、店の店主は身を乗り出してきた。
「おお、これはまた特殊は・・・・守りの魔法が付与されている杖じゃな。金貨2枚で引き取ってやってもよいぞ」
「じゃあ、これを引き取ってもらって、そっちの中古の杖をもらうとして、差額の金貨2枚を祓うよ」
「うむ。よい商いじゃった」
後日、京楽が売り払った杖が金貨10枚という値段で売られるを、知らぬ二人であった。
「じゃあ、オーガの拠点までいくか」
「一番近くの町まで、乗り合い馬車でいこう」
乗り合い馬車を乗り継いで、3日かけて移動し、一番近い村で一日だけ休息を入れると、その日は宿がないということで、村長の家に泊めてもらった。
オーガの被害にあったことがある村で、オーガを倒してくれる相手をずっと探していたそうで、やってきた浮竹と京楽を快く迎えてくれた。
「じゃあ、出発する」
「じゃあね。帰りも寄るから、よろしくね」
「どうが、女神フレイア様の加護があらんことを」
二人は、オーガの村に向かって歩きだした。
オーガは基本狩猟を行って生活しているが、モンスターだけでなく人間や家畜も食う。
ゴブリンのようにすぐに増える種族ではないし、そこそこ強いのでBランクが適正だった。
「先手必勝だ!」
浮竹がミスリル銀の剣を抜き放ち、門番をしていたオーガの首を斬り裂いて、悲鳴を与える暇もなく殺した。
「ファイアボール!」
集落の木の建物に次々と火の魔法で炎をつけていく。
「マナの花を燃やさないようにしろよ!」
「わかってるよ!周辺のフィールドには、結界を張ってあるから!」
浮竹は、襲い掛かってくるオーガを斬り捨てていく。
「ウォーターボール!!」
浮竹を背後から襲おうとしたオーガの頭部を水で包んで、窒息死させた。
「ウォーターボール!」
浮竹も京楽も、それが一番手っ取り早いと、ウォーターボールの魔法で、敵を窒息死させていった。
「GYAOOOOOOO!!」
「オーガキングだ!気をつけろ」
「ウォーターボール!」
オーガキングは身震いするだけで水の玉を弾けさせた、
「ウォータースピア!」
「GYOOOOO!!」
京楽の放った水の槍は、オーガキングの腹を貫いていた。
「いまだよ、浮竹!」
暴れまわるオーガキングに右肩を切られたが、致命傷ではないのでまず、剣で両目をつぶした。
「GAAAAAAAAA!!」
「エンチャントファイア!」
ミスリルの剣に火を付与して、硬いオーガの皮を斬り裂き、心臓を突き刺す。
それでもオーガキングは倒れなかった。
むちゃくちゃに振り回す剣で、浮竹は左足を切られた。
「ヒール!」
「助かる、京楽!」
「ライトニングボルト!」
先に目を潰して正解だった。
オーガキングは体全体を焦げさせながらも、浮竹を殺そうとする。
「いい加減、死ね!」
浮竹が放った剣は、オーガキングの首を刎ねていた。
それぞれ、倒したオーガから魔石を取り出し、討伐の証拠とする。
「あった、マナの花だよ」
「これだけあると、俺たちの分も確保できそうだな」
浮竹と京楽は、咲いている分だけマナの花を大量につみとって、アイテムポケットにしまいこむ。
オーガたちの魔石も、アイテムポケットの中だった。
アイテムポケットの中では時間が経たない。素材になりそうなモンスターを放り込んだり、料理を保存しておけた。
「さぁ、最寄りの村まで戻って、馬車で町まで戻ろう」
「うん、そうだね。あ、肩の傷、血は止まってるけど一応治しておくね。ヒール」
「ありがとう、京楽」
「ううん、僕のほうこそ。こんな、ダークエルフを拾ってくれるなんて、君くらいだよ」
ダークエルフと同じ褐色の肌をもたないからと、一族のつまはじき者として捨てられていた京楽を拾ったのは、エンシェントエルフの浮竹だった。
どっちも、まだ子供だった。
大人たちの都合で閉じ込められていた京楽を救ったのは、浮竹だった。エルフの森を抜け出して、人間の町で冒険者を始めた。
それでも、あくまで帰るのはエルフの森で。
大人になったダークエルフは、置いておけない、処刑すると言い出した他のエンシェントエルフから京楽を守るように、エルフの森を抜け出した。
村長に見つかり、罰せられると思ったが、選別だとミスリルの剣をもらった。
子供の頃から冒険者稼業を、牢屋からたびたび抜け出す京楽としていたので、ランクはB、そこそこのランクになっていた。
「オーガキングまでやっつけたし、金貨20枚は固いね」
「マナの花もあるからな。全部で35枚はいくんじゃないか」
「じゃあ、しばらく高い宿にでも泊まる?」
「いや、宿は今のままでいい。ただ、浴場に行きたいな」
「じゃあ、お風呂セット買おうか」
「そうだな」
浮竹と京楽は、冒険者ギルドでオーガ討伐の報告をして、魔石を買い取ってもらった。報酬金が金貨20枚、魔石が金貨3枚で売れた。
マナの花は金貨ちょうど15枚で買い取ってもらえた。
考えていたより3枚金貨が多かったので、ちょっと奮発して高めにお風呂セットを買ってみた。
公共浴場で、泡だらけになって、浮竹と京楽は笑いながら長い髪も洗った。
帰り際に、宿の部屋に別れる前に口づけをしあった。睦み合うことがないわけではなかったが、エルフはそういう欲求が薄いので、たまにだった。
公共浴場は安くもなく高くもない値段で、浮竹と京楽は最低週に2日は入っていた。着ている服を洗濯に出すこともできるが、金がかかるので自分たちで洗った。
今泊まっている宿は、中クラスで、夕食はついていないが、朝食はついていた。
そんな宿屋を数カ月借りているので、もはや我が家も同然のようになっていた。
「おはよう、浮竹さん京楽さん」
「ああ、おはよう、女将さん」
「おはようございます、女将さん」
「今日も冒険者ギルドで仕事かい?」
朝食を用意してくれる女将さんに感謝しつつ、今月分の宿代を払った。
それぞれ、1日銀貨2枚の宿なで、月に金貨6枚を払い、二人で12枚払った。
できれば自宅をもちたかったが、保証人もいないし、冒険者ということで危険と隣り合わせなので、家を借りることもできなかった。
「浮竹、抱きしてめていい?」
宿を出ると、京楽が甘えてきたので、浮竹は許可をした。
「大好きだよ、浮竹。ダークエルフの僕なんなの傍にいてくれて、ありがとう」
「俺も大好きだ、京楽。ダークエルフとか、そういうのは関係ない」
二人は触れるだけのキスをして、冒険者ギルドに今日の仕事を探しに出かけるのであった。
始祖なる者、ヴァンパイアマスター64
「シロ、ハル」
「「はい、藍染様」」
シロとハルと名付けられた、浮竹と京楽と女神アルテナの肉塊の子供たちは、藍染に従順に従った。
そうなるように教育された。
逆らえば鞭うたれた。殴られ、蹴られた。
「父親である、浮竹と京楽を屠っておいで」
「「はい、藍染様」」
二人は女神アルテナの血が濃いせいか、ヴァンパイアロードではなかった。
神でもない、中途半端な存在だった。
ただ保有する魔力が極めて高く、これなら浮竹と京楽を倒せられなくとも、手傷を負わせられるだろうと思った。
藍染は、浮竹と京楽が苦しめばそれだけでも満足なのだ。
--------------------------------------------------------
「ぎゃああああああああああ」
その日の朝は、浮竹の悲鳴から始まった。
最近、ポチとタマの様子が変で、特にタマは食事の時間になっても姿を現さず、ポチがタマの分のドラゴンステーキを住処である暖炉にまで運んでいた。
暖炉の中は藁がしきつめられており、使っていないクッションやら布やらで、なかなか居心地がよさそうな巣になっていた。
その暖炉は大きめで、ミミックが2匹入ってもまだ余裕があった。
タマの様子を見ていると、タマの口から何かがでてきて、浮竹の頭をかんだ。
「なんじゃこりゃああああああ」
浮竹をかんでいたのは、ミミックだった。それも手の平サイズの、小さいミミックだった。
「タ、タマ、お前産んだのか!」
「りんりんりん~~~」
そうだよ、お腹いたかった、やっと生まれたよ、4匹いるんだ、名前をつけて。
そう言われて、浮竹は京楽を呼んだ。
「京楽、来てくれ!」
「どうしたの、浮竹ってぎょえええええええええ」
4匹の小さなミミックにかまれていた浮竹を見て、京楽は悲鳴をあげていた。
「ぞ、増殖したの?」
「違う。タマが産んだんだ」
「ええ、タマってメスだったの?」
「意思疎通はできるが、俺も知らなかった。タマはメスだって言ってなかったからな。ポチも自分をオスだと言っていなかった。オスとメスが自然にいたら、まぁ子供はできるよな」
「そ、そうだね」
ポチは青いリボンをしていて、タマはピンクのリボンをしているせいで、啼き声を聞かなくてもどっちがどっちだか分かって、助かった。
「るんるん」
「りりりり」
「らんらん」
「らららら」
4匹の子供ミミックは、それぞれ鳴き方がまた違った。
「りんりんりん~」
タマが名前をつけてあげてというので、浮竹は。
「よし、イチロー、ジロー、サブロー、シローだ!」
「えええ、そんな適当にでいいの。メスだったらどするのさ」
「見た目でメスかオスかなんてわからないだろう!」
「でも、もっとリンとかララとか、啼き声にあわせた名前をつけてあげても」
浮竹をかみまくっているミニミミックの1匹にかまれて、京楽はほんわりとした。
「か、かわいい・・・・・・」
かじかじとかんでくるが、かむ力は弱く、小さいせいもあってかわいかった。
「るるるるる?」
ポチが、イチロー、ジロー、サブロー、シローでいいのかと尋ねてきたが、浮竹は親指でグッドとジェスチャーして、子供の名前は生まれた順は分からないが、それで決まってしまった。
どれがイチローでジロー、サブロー、シローかも浮竹にも分からなかった。
「るんるん」と鳴くのがイチロー。
「りりりり」と鳴くのがジロー。
「らんらん」と鳴くのがサブロー。
「らららら」と鳴くのがシロー。
ということにしたのだが、定着するまで時間がかかりそうだし、覚えるのにも時間がかかりそうだった。
「子供ってことは、ミルクは・・・いらないな」
ミミックはモンスターだ。哺乳類ではない。
「じゃあ、ドラゴンステーキを」
「りんりんりん」
「え、ドラゴンステーキを消化しやすいようにをしろだって?」
「りんりんりん」
「ドラゴンステーキを切り刻め?分かった」
浮竹は、魔道具のミキサーを取り出して、ドラゴンステーキをペースト状にして、4枚の小皿にわけて与えた。
「るんるんるん」
「りりりりり」
「らんらんらん」
「ららららら」
4匹のミニミミックたちは、ペースト状にされたドラゴンステーキを美味しそうに食べていた。
「うーん、見ていたら俺もドラゴンの肉が食いたくなった。アイテムポケットにまだ未加工のドラゴンの肉があるから、それで夕飯を作ってくれ」
「仕方ないねぇ」
今日の夕飯は和風きのこのパスタのつもりだったが、ドラゴンステーキは食い飽きているので、ドラゴン肉のビーフシチューと唐揚げにすることにした。
その日の夜、ダイニングルームには、浮竹と京楽以外にも、ポチとタマの姿もあった。
子供たちは眠っているらしい。
「るるるるる」
「りんりんりん」
子育てをするのに栄養をつけたいので、普通の夕食を食べたいらしかった。
「でも、今回はドラゴンの肉なんだよね」
ミミックたちの大好物はドラゴンステーキなので、ポチとタマは喜んで、ドラゴン肉でできたビーチシチューを唐揚げを食べて、唐揚げの一部は子供たちへのお土産に持って帰るようだった。
「るるるるるる」
「何、おいしかったって?それは俺に言わずに京楽に言ってくれ。京楽が作ったんだから」
「るるるる」
京楽の頭に、ポチはかみついた。
「これってお礼なの!?」
「俺が教え込んだからな。相手を喜ばす時はとりあえずかみつけと」
「何デンジャラスな方法を教えてるの!まぁ、ポチもタマもミミックだけど、傷ができるほどかまないし、歯もとがってないから痛くないからいいけど」
「イチロー、ジロー、サブロー、シローにもそのうち教え込まなきゃなぁ」
「まだ生まれたばかりでしょ。気が早すぎるよ」
「うーん、やっぱり離乳食あげたほうがいいのかな。ドラゴンステーキは幼体にはあまりよくない気もする」
次の日、浮竹は離乳食だと言って、生きたマンドレイクをぶちこんだ謎の物体を作り出して、ミミックの子供たちにあげた。
ミミックの子供たちは、マンドレイクをそのまま食べてしまった。
「え、意外といけるのか、マンドレイク」
「るんるんるん」
「りりりりり」
「らんらんらん」
「ららららら」
みんな、悪くないよと言ってくれた。
浮竹は涙を零して、ミニミミックたちを抱きしめた。
「京楽でさえ分かってくれない、俺のマンドレイク料理を食べてくれるなんて!天使か!」
浮竹には、ミニミミックたちに翼があり、輪っかがあるように見えた。
「癒される~」
それから、浮竹は毎日のように生きたマンドレイクをぶちこんだ、いろんな料理をミニミミックたちに食べさせた。
「るんるんるん」
ある日、イチローが鳴きながら炎のブレスを吐いた。
「イチロー!?お前、炎のブレスが吐けるのか!?」
「るんるん」
僕だけじゃなよ、ジローもサブローもシローも、いろんなブレス吐けるよ。
「聞いたか京楽」
「うん。君にみっちり古代の魔法文字教えられたせいで、異種族翻訳の魔法覚えれたから、ちゃんと聞こえるよ」
1カ月以上に渡り、毎日魔法文字の勉強を7時間くらいさせられた京楽は、ほとんどの魔法文字を読めるようになっていた。
お陰で、異種族翻訳の魔法も使えるようになっていた。
「イチローはオスみたいだね」
「るんるんるん」
僕とサブローとシローはオスだけど、ジローはメスだよ。
「ジローはメスか!名前は・・・・ジローのままでもいいな!」
「浮竹、女の子なのにジローはいかがなものかと」
「りりりり」
そこにジローがやってきた。
「りりりりりりり」
気にしなくていいよ、ジローって名前好きだよ。マスターがつけてくれた名前だから、好きだよ。
「ジロー!」
浮竹は涙を流しながらジローを抱きしめた。
ジローは浮竹の手にかみついていた。
まだ幼体なので、歯もあまりなく、甘噛みなので痛くもない。
浮竹は、暖炉のある部屋の家具を全部撤去して、暖炉のある部屋そのものをミミックのための部屋とした。
それをポチに伝えると、ポチは嬉しそうに部屋中に藁をしき、いらなくなったクッションやら枕、布団を置いて、さらには布をあげるとそれを藁の上にしいた。
「なかなかいい巣じゃないか」
「るるるる~~~~」
「りんりんりん~~~」
ポチとタマはその部屋の巣が気に入ったようで、子供たちと快適に過ごせると言っていた。
「そのな、子供たちなんだが、俺がマンドレイクを与えすぎたせいか、炎と氷と雷のブレスを吐けるようになっているんだ」
「るるるる?」
「りんりん?」
本当に?それが本当なら凄いことだ。存在の進化だ。
「存在の進化か・・・ハイミミックか」
4匹のミニミミックが散歩から帰ってきた。
ブレスを無駄に吐くことはなく、火事やら怪我の心配はないようだった。
「お前たちは存在が進化した!ハイミミックだ!その存在を誇りに思え!」
「るんるん」
「りりりり」
「らんらん」
「ららら」
4匹は分かっているか分かっていないのか、そうなのと返事してきた。
「よし、今日の昼もマンドレイクをぶち込んだ料理を作ってやるからな!夜はドラゴンステーキだ!」
普通1日1回の食事というか、ミミックは基本飲まず食わずで半年は生きていける。半年に一回、違うモンスターを食べたりして、生命活動を維持していた。
ここにきてから、ポチとタマは毎日ドラゴンステーキをもらい、LVがあがっていた。
その間にできた子も、特別であった。
おまけにマンドレイクの魔力たっぷりな味はなんともいえないが、料理を食べて、存在進化し、ただのミミックからハイミミックになっていた。
「浮竹~~~マンドレイクぶちこんだ料理は、せめてミミックの分だけにしてよ。なんで僕まで食べなきゃいけないわけ?」
「苦情を言うな!嫌なら食べなければいいだろう」
でも、実際京楽が食べなかったら、浮竹は沈み込む。
なので、まずいと分かっていても、京楽は毎日浮竹の生きたマンドレイクをぶちこまれた昼食を食べるのであった。
------------------------------------------------------------------
「ここが、僕らの本当の父様のいる場所」
「ハル、行くぞ」
「うん、シロ」
シロとハルは、見た目こそ浮竹と京楽の色素を持ってはいたが、母親であった女神アルテナの、失われてしまった美貌を受け継いでおり、京楽と浮竹にあまり似ていなかった。
ヴァンパイアでもなかったし、神でもなかった。
中途半端な存在であったが、保持している魔力は高かった。
ジリリリリリリ。
警報が鳴り響き、まずは戦闘人形たちが襲ってきた。
「ファイアロンド」
ハルの魔法で、戦闘人形の全てだけでなく、中庭の薔薇園が吹き飛んだ。
「また、藍染の手の者か」
「あーあ、端正こめてつくった薔薇園がむちゃくちゃだ」
現れた浮竹と京楽の魔力の高さを感じ取り、ハルもシロも震えた。
「「エターナルフェニックス!!」」
ハルとシロが2重で生み出した炎の不死鳥は、浮竹と京楽が張った結界でなんとか防がれているというかんじだった。二人分を足せば、浮竹か京楽のどちからを倒せる。
そう確信していたのだが、それが過ちなのだとすぐに気づいた。
「エターナルフェニックス」
浮竹が呼び出した不死鳥は、二人が生み出した不死鳥よりもさらに高温で魔力に満ち溢れていた。
「エターナルアイシクルフィールド!!」
「エターナルフェンリル!」
同じ属性の魔法をぶつけられて、それが禁呪であろうと、魔力の差を見せつけられる。
「ワールドエンド」
世界の終末の魔法を受けて、浮竹と京楽が丹精こめて育て上げた薔薇や花が散っていく。
それに触れると、塵になるはずであった。
浮竹は、わざとワールドエンドの魔法にふれ、その右手を失いながらただの魔力にかえて握りつぶした。
「浮竹、右手が!」
「大丈夫だ」
失われたはずの右腕にはすでに骨が形成されており、肉をつけて皮膚を生やし、すぐに浮竹の右腕を復活させた。
「マンドレイクを毎日食べているせいか、魔力が前より高い。この程度の傷、癒すなど造作もない」
「ブラックホール!!」
「りんりんりん~~」
「わ、ばか、タマ!!!」
たまたま散歩に出ていたタマは、ブラックホールに吸い込まれてしまった。
浮竹はなんの逡巡もなしに、ブラックホールの中に入るとタマを抱きしめた。
「あはははは、やったぞ、始祖浮竹を倒した」
「藍染様、やりました!」
二人はブラックホールの入り口を閉じた。
「そんな、浮竹、タマ・・・・・」
呆然としている京楽に、魔法を向ける。
「ファイナルフェニックス!!」
炎の最高位禁呪。
それは京楽を飲みこんだ。
「あああああ!!!」
京楽の魔神化が激しくなっていく。
「喰ってやる・・・・・・」
「「ブラックホール」」
「ぐ・・・・・」
魔力を吸われていく。
「京楽を、手を!」
異次元に消えたはずの、浮竹とタマはまだブラックホールの魔法の入り口の空間にいた。
「浮竹!!」
魔力が消滅したわけではないので、死んではいないと思っていたが、すぐに戻ってくるとは思っていなくて、京楽は顔を輝かせて、浮竹の手を握った。
「閉じろ、ブラックホール!」
相手の魔法を、無理やり閉じさせた。
「ハル、お前だけでも逃げろ」
「いやだ、シロ、君こそ逃げろ」
「こっちは、魔力を消耗過ぎた。だが、京楽ならばお前たちの魂を喰える。食われるのがいやなら、藍染の元へ帰れ」
「どうしよう、ハル」
「このままじゃ僕たちは勝てない。一度戻り、もっと魔力を高めて再戦しよう、シロ」
シロとハルは、ゆらりと空間を歪ませると、その中に入って逃げ出してしまった。
「僕と浮竹の子供なのかな」
「そうだろうな。向こうには肉便器アルテナ様がいる」
「肉便器に様をつけないで・・・・・・うぷぷぷぷ」
「おい、笑うと女神に失礼だろ・・・・はははは」
二人は、女神アルテナのみじめな最後を思い浮かべて笑っていた。
「その女神アルテナの魂は、僕が食べちゃったんだよねぇ。正確には、僕の体内の空間に収めたことになるけど。一度解放してみようか?」
「いや、やめておけ。あの女神はゴキブリ並みにしぶとい。お前の空間で永遠の無がお似合いだ」
「それより、タマは大丈夫?」
京楽がタマを心配すると、タマは京楽の頭にかじりついた。
「りんりんりん~~~」
「助けてくれてありがとうって言ってるね」
「お前もやっと異種族翻訳の魔法がさまになってきたな」
「君のスパルタのお陰だよ・・・。それにしても、タマもよくあの魔法に吸い込まれて無事でいれたね」
「昼にマンドレイクのスープを飲ませたからな。魔力の塊だ。タマもポチも、ミニミミックたちと一緒の昼食を取っているから、存在が進化してハイミミックになったようだ」
「ハイミミックかぁ。上位存在ってことは、やっぱり強いんだろうね」
浮竹は、うんうんと頷いた。
「炎、氷、雷のブレスが吐けて、その気になれば人間も食える」
「お願いだから、人食いミミックにはならないでね!」
「りんりんりん~~~~~~~」
心配しなくても、人間なんて食べないよ。だってまずいもの。ドラゴンステーキが一番好き。
「りんりんりん」
マスターの作ってくれるマンドレイクの料理もおいしい。
「お、タマは分かってくれるなぁ」
浮竹が、京楽の頭をかじり続けていたタマを腕の中に抱きしめた。
そこそこ大きさがあるので、持っていると言ってる方が近いか。
タマは、ぺこりとお辞儀をすると、巣のある部屋に戻っていった。
「ところで、これどうしよう」
庭は荒れ放題だった。
せっかく大切に咲かせていた青薔薇も、アーチを築いていたのにボロボロの灰となっていた。
場所によっては、凍ったりもしていた。
炎や氷の禁呪を使ったせいで、庭はすごいことになっていた。
古城の1階と2階も吹き飛んでいた。
「恋次君、捕まえてくるか」
最近は金に困らなくなった恋次は、前ほど気軽に時間回帰魔法を使ってくれなくなっていた。時間回帰の魔法は神の魔法だ。
ほいほいと使っていることは、神を愚弄していることになるらしい。
「よし、行くぞ京楽!」
「はいはい、分かったよ」
血の帝国で、嫌がる恋次に白哉の丸秘写真集を餌にして、古城にまできてもらった。
「もう、ほどほどにしてくださいよ。俺ももっと使いたいけど、この魔法制約がきつくてしばらく魔法使えなくなるんすから」
古城も庭も元通りになって、浮竹は恋次に白哉の丸秘写真集と白金貨2枚をあげた。
「金はいいっすけど・・・・・・何これ、白哉さんの子供時代の写真。激可愛い。こっちは着替えの・・・・・・ぬおおおおおおおおおお」
興奮しすぎて、恋次は竜化していた。
竜の中の始祖ドラゴン、竜帝であった。
燃え上がる真っ赤な鱗が特徴的な、15メートルはあろかという巨大なドラゴンであった。
庭での変身だったので、薔薇園が少し崩壊したくらいで済んだ。
「ちょっと、恋次クン、竜化する時は気をつけてよ!?古城で竜化されちゃうと、古城が崩れちゃう」
「はい、すんません。白哉さんの宮殿でも間違って竜化しちまって、白金貨3枚の罰金とられました」
今、恋次は、異世界の神々の遊戯に参加しており、1回の参加で白金貨10枚がもらえていた。
異世界の神々の遊戯は、世界を作ること。
それに恋次が参加していることは、秘密の中の秘密だった。
創造竜と呼ばれていた。
その世界で、ドラゴンを作り出すのが仕事だった。
アビス、サーラの世界と似た、フレイアの世界を作っていた。
フレイアの世界では、女神フレイアが全ての頂点であった。
そのフレイアの世界にいずれ渡ることになるのだが、それはまだ先のお話。
----------------------------------------------------
「それで、逃げ帰ってきたというんだね?」
「ごめんなさい、藍染様!でも、あいつらの魔力は尋常じゃあなくって!」
「言い訳は聞きたくない」
ハルとシロは、頬を殴られた。
「君たちの魔力をあげるために、私の血を与えよう」
「はい・・・・・」
ハルとシロは、それを受け入れた。
血を与えられて、ハルとシロの魔力は各段にあがった。
だが、それでも浮竹と京楽に勝てる気がしないのであった。
「「はい、藍染様」」
シロとハルと名付けられた、浮竹と京楽と女神アルテナの肉塊の子供たちは、藍染に従順に従った。
そうなるように教育された。
逆らえば鞭うたれた。殴られ、蹴られた。
「父親である、浮竹と京楽を屠っておいで」
「「はい、藍染様」」
二人は女神アルテナの血が濃いせいか、ヴァンパイアロードではなかった。
神でもない、中途半端な存在だった。
ただ保有する魔力が極めて高く、これなら浮竹と京楽を倒せられなくとも、手傷を負わせられるだろうと思った。
藍染は、浮竹と京楽が苦しめばそれだけでも満足なのだ。
--------------------------------------------------------
「ぎゃああああああああああ」
その日の朝は、浮竹の悲鳴から始まった。
最近、ポチとタマの様子が変で、特にタマは食事の時間になっても姿を現さず、ポチがタマの分のドラゴンステーキを住処である暖炉にまで運んでいた。
暖炉の中は藁がしきつめられており、使っていないクッションやら布やらで、なかなか居心地がよさそうな巣になっていた。
その暖炉は大きめで、ミミックが2匹入ってもまだ余裕があった。
タマの様子を見ていると、タマの口から何かがでてきて、浮竹の頭をかんだ。
「なんじゃこりゃああああああ」
浮竹をかんでいたのは、ミミックだった。それも手の平サイズの、小さいミミックだった。
「タ、タマ、お前産んだのか!」
「りんりんりん~~~」
そうだよ、お腹いたかった、やっと生まれたよ、4匹いるんだ、名前をつけて。
そう言われて、浮竹は京楽を呼んだ。
「京楽、来てくれ!」
「どうしたの、浮竹ってぎょえええええええええ」
4匹の小さなミミックにかまれていた浮竹を見て、京楽は悲鳴をあげていた。
「ぞ、増殖したの?」
「違う。タマが産んだんだ」
「ええ、タマってメスだったの?」
「意思疎通はできるが、俺も知らなかった。タマはメスだって言ってなかったからな。ポチも自分をオスだと言っていなかった。オスとメスが自然にいたら、まぁ子供はできるよな」
「そ、そうだね」
ポチは青いリボンをしていて、タマはピンクのリボンをしているせいで、啼き声を聞かなくてもどっちがどっちだか分かって、助かった。
「るんるん」
「りりりり」
「らんらん」
「らららら」
4匹の子供ミミックは、それぞれ鳴き方がまた違った。
「りんりんりん~」
タマが名前をつけてあげてというので、浮竹は。
「よし、イチロー、ジロー、サブロー、シローだ!」
「えええ、そんな適当にでいいの。メスだったらどするのさ」
「見た目でメスかオスかなんてわからないだろう!」
「でも、もっとリンとかララとか、啼き声にあわせた名前をつけてあげても」
浮竹をかみまくっているミニミミックの1匹にかまれて、京楽はほんわりとした。
「か、かわいい・・・・・・」
かじかじとかんでくるが、かむ力は弱く、小さいせいもあってかわいかった。
「るるるるる?」
ポチが、イチロー、ジロー、サブロー、シローでいいのかと尋ねてきたが、浮竹は親指でグッドとジェスチャーして、子供の名前は生まれた順は分からないが、それで決まってしまった。
どれがイチローでジロー、サブロー、シローかも浮竹にも分からなかった。
「るんるん」と鳴くのがイチロー。
「りりりり」と鳴くのがジロー。
「らんらん」と鳴くのがサブロー。
「らららら」と鳴くのがシロー。
ということにしたのだが、定着するまで時間がかかりそうだし、覚えるのにも時間がかかりそうだった。
「子供ってことは、ミルクは・・・いらないな」
ミミックはモンスターだ。哺乳類ではない。
「じゃあ、ドラゴンステーキを」
「りんりんりん」
「え、ドラゴンステーキを消化しやすいようにをしろだって?」
「りんりんりん」
「ドラゴンステーキを切り刻め?分かった」
浮竹は、魔道具のミキサーを取り出して、ドラゴンステーキをペースト状にして、4枚の小皿にわけて与えた。
「るんるんるん」
「りりりりり」
「らんらんらん」
「ららららら」
4匹のミニミミックたちは、ペースト状にされたドラゴンステーキを美味しそうに食べていた。
「うーん、見ていたら俺もドラゴンの肉が食いたくなった。アイテムポケットにまだ未加工のドラゴンの肉があるから、それで夕飯を作ってくれ」
「仕方ないねぇ」
今日の夕飯は和風きのこのパスタのつもりだったが、ドラゴンステーキは食い飽きているので、ドラゴン肉のビーフシチューと唐揚げにすることにした。
その日の夜、ダイニングルームには、浮竹と京楽以外にも、ポチとタマの姿もあった。
子供たちは眠っているらしい。
「るるるるる」
「りんりんりん」
子育てをするのに栄養をつけたいので、普通の夕食を食べたいらしかった。
「でも、今回はドラゴンの肉なんだよね」
ミミックたちの大好物はドラゴンステーキなので、ポチとタマは喜んで、ドラゴン肉でできたビーチシチューを唐揚げを食べて、唐揚げの一部は子供たちへのお土産に持って帰るようだった。
「るるるるるる」
「何、おいしかったって?それは俺に言わずに京楽に言ってくれ。京楽が作ったんだから」
「るるるる」
京楽の頭に、ポチはかみついた。
「これってお礼なの!?」
「俺が教え込んだからな。相手を喜ばす時はとりあえずかみつけと」
「何デンジャラスな方法を教えてるの!まぁ、ポチもタマもミミックだけど、傷ができるほどかまないし、歯もとがってないから痛くないからいいけど」
「イチロー、ジロー、サブロー、シローにもそのうち教え込まなきゃなぁ」
「まだ生まれたばかりでしょ。気が早すぎるよ」
「うーん、やっぱり離乳食あげたほうがいいのかな。ドラゴンステーキは幼体にはあまりよくない気もする」
次の日、浮竹は離乳食だと言って、生きたマンドレイクをぶちこんだ謎の物体を作り出して、ミミックの子供たちにあげた。
ミミックの子供たちは、マンドレイクをそのまま食べてしまった。
「え、意外といけるのか、マンドレイク」
「るんるんるん」
「りりりりり」
「らんらんらん」
「ららららら」
みんな、悪くないよと言ってくれた。
浮竹は涙を零して、ミニミミックたちを抱きしめた。
「京楽でさえ分かってくれない、俺のマンドレイク料理を食べてくれるなんて!天使か!」
浮竹には、ミニミミックたちに翼があり、輪っかがあるように見えた。
「癒される~」
それから、浮竹は毎日のように生きたマンドレイクをぶちこんだ、いろんな料理をミニミミックたちに食べさせた。
「るんるんるん」
ある日、イチローが鳴きながら炎のブレスを吐いた。
「イチロー!?お前、炎のブレスが吐けるのか!?」
「るんるん」
僕だけじゃなよ、ジローもサブローもシローも、いろんなブレス吐けるよ。
「聞いたか京楽」
「うん。君にみっちり古代の魔法文字教えられたせいで、異種族翻訳の魔法覚えれたから、ちゃんと聞こえるよ」
1カ月以上に渡り、毎日魔法文字の勉強を7時間くらいさせられた京楽は、ほとんどの魔法文字を読めるようになっていた。
お陰で、異種族翻訳の魔法も使えるようになっていた。
「イチローはオスみたいだね」
「るんるんるん」
僕とサブローとシローはオスだけど、ジローはメスだよ。
「ジローはメスか!名前は・・・・ジローのままでもいいな!」
「浮竹、女の子なのにジローはいかがなものかと」
「りりりり」
そこにジローがやってきた。
「りりりりりりり」
気にしなくていいよ、ジローって名前好きだよ。マスターがつけてくれた名前だから、好きだよ。
「ジロー!」
浮竹は涙を流しながらジローを抱きしめた。
ジローは浮竹の手にかみついていた。
まだ幼体なので、歯もあまりなく、甘噛みなので痛くもない。
浮竹は、暖炉のある部屋の家具を全部撤去して、暖炉のある部屋そのものをミミックのための部屋とした。
それをポチに伝えると、ポチは嬉しそうに部屋中に藁をしき、いらなくなったクッションやら枕、布団を置いて、さらには布をあげるとそれを藁の上にしいた。
「なかなかいい巣じゃないか」
「るるるる~~~~」
「りんりんりん~~~」
ポチとタマはその部屋の巣が気に入ったようで、子供たちと快適に過ごせると言っていた。
「そのな、子供たちなんだが、俺がマンドレイクを与えすぎたせいか、炎と氷と雷のブレスを吐けるようになっているんだ」
「るるるる?」
「りんりん?」
本当に?それが本当なら凄いことだ。存在の進化だ。
「存在の進化か・・・ハイミミックか」
4匹のミニミミックが散歩から帰ってきた。
ブレスを無駄に吐くことはなく、火事やら怪我の心配はないようだった。
「お前たちは存在が進化した!ハイミミックだ!その存在を誇りに思え!」
「るんるん」
「りりりり」
「らんらん」
「ららら」
4匹は分かっているか分かっていないのか、そうなのと返事してきた。
「よし、今日の昼もマンドレイクをぶち込んだ料理を作ってやるからな!夜はドラゴンステーキだ!」
普通1日1回の食事というか、ミミックは基本飲まず食わずで半年は生きていける。半年に一回、違うモンスターを食べたりして、生命活動を維持していた。
ここにきてから、ポチとタマは毎日ドラゴンステーキをもらい、LVがあがっていた。
その間にできた子も、特別であった。
おまけにマンドレイクの魔力たっぷりな味はなんともいえないが、料理を食べて、存在進化し、ただのミミックからハイミミックになっていた。
「浮竹~~~マンドレイクぶちこんだ料理は、せめてミミックの分だけにしてよ。なんで僕まで食べなきゃいけないわけ?」
「苦情を言うな!嫌なら食べなければいいだろう」
でも、実際京楽が食べなかったら、浮竹は沈み込む。
なので、まずいと分かっていても、京楽は毎日浮竹の生きたマンドレイクをぶちこまれた昼食を食べるのであった。
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「ここが、僕らの本当の父様のいる場所」
「ハル、行くぞ」
「うん、シロ」
シロとハルは、見た目こそ浮竹と京楽の色素を持ってはいたが、母親であった女神アルテナの、失われてしまった美貌を受け継いでおり、京楽と浮竹にあまり似ていなかった。
ヴァンパイアでもなかったし、神でもなかった。
中途半端な存在であったが、保持している魔力は高かった。
ジリリリリリリ。
警報が鳴り響き、まずは戦闘人形たちが襲ってきた。
「ファイアロンド」
ハルの魔法で、戦闘人形の全てだけでなく、中庭の薔薇園が吹き飛んだ。
「また、藍染の手の者か」
「あーあ、端正こめてつくった薔薇園がむちゃくちゃだ」
現れた浮竹と京楽の魔力の高さを感じ取り、ハルもシロも震えた。
「「エターナルフェニックス!!」」
ハルとシロが2重で生み出した炎の不死鳥は、浮竹と京楽が張った結界でなんとか防がれているというかんじだった。二人分を足せば、浮竹か京楽のどちからを倒せる。
そう確信していたのだが、それが過ちなのだとすぐに気づいた。
「エターナルフェニックス」
浮竹が呼び出した不死鳥は、二人が生み出した不死鳥よりもさらに高温で魔力に満ち溢れていた。
「エターナルアイシクルフィールド!!」
「エターナルフェンリル!」
同じ属性の魔法をぶつけられて、それが禁呪であろうと、魔力の差を見せつけられる。
「ワールドエンド」
世界の終末の魔法を受けて、浮竹と京楽が丹精こめて育て上げた薔薇や花が散っていく。
それに触れると、塵になるはずであった。
浮竹は、わざとワールドエンドの魔法にふれ、その右手を失いながらただの魔力にかえて握りつぶした。
「浮竹、右手が!」
「大丈夫だ」
失われたはずの右腕にはすでに骨が形成されており、肉をつけて皮膚を生やし、すぐに浮竹の右腕を復活させた。
「マンドレイクを毎日食べているせいか、魔力が前より高い。この程度の傷、癒すなど造作もない」
「ブラックホール!!」
「りんりんりん~~」
「わ、ばか、タマ!!!」
たまたま散歩に出ていたタマは、ブラックホールに吸い込まれてしまった。
浮竹はなんの逡巡もなしに、ブラックホールの中に入るとタマを抱きしめた。
「あはははは、やったぞ、始祖浮竹を倒した」
「藍染様、やりました!」
二人はブラックホールの入り口を閉じた。
「そんな、浮竹、タマ・・・・・」
呆然としている京楽に、魔法を向ける。
「ファイナルフェニックス!!」
炎の最高位禁呪。
それは京楽を飲みこんだ。
「あああああ!!!」
京楽の魔神化が激しくなっていく。
「喰ってやる・・・・・・」
「「ブラックホール」」
「ぐ・・・・・」
魔力を吸われていく。
「京楽を、手を!」
異次元に消えたはずの、浮竹とタマはまだブラックホールの魔法の入り口の空間にいた。
「浮竹!!」
魔力が消滅したわけではないので、死んではいないと思っていたが、すぐに戻ってくるとは思っていなくて、京楽は顔を輝かせて、浮竹の手を握った。
「閉じろ、ブラックホール!」
相手の魔法を、無理やり閉じさせた。
「ハル、お前だけでも逃げろ」
「いやだ、シロ、君こそ逃げろ」
「こっちは、魔力を消耗過ぎた。だが、京楽ならばお前たちの魂を喰える。食われるのがいやなら、藍染の元へ帰れ」
「どうしよう、ハル」
「このままじゃ僕たちは勝てない。一度戻り、もっと魔力を高めて再戦しよう、シロ」
シロとハルは、ゆらりと空間を歪ませると、その中に入って逃げ出してしまった。
「僕と浮竹の子供なのかな」
「そうだろうな。向こうには肉便器アルテナ様がいる」
「肉便器に様をつけないで・・・・・・うぷぷぷぷ」
「おい、笑うと女神に失礼だろ・・・・はははは」
二人は、女神アルテナのみじめな最後を思い浮かべて笑っていた。
「その女神アルテナの魂は、僕が食べちゃったんだよねぇ。正確には、僕の体内の空間に収めたことになるけど。一度解放してみようか?」
「いや、やめておけ。あの女神はゴキブリ並みにしぶとい。お前の空間で永遠の無がお似合いだ」
「それより、タマは大丈夫?」
京楽がタマを心配すると、タマは京楽の頭にかじりついた。
「りんりんりん~~~」
「助けてくれてありがとうって言ってるね」
「お前もやっと異種族翻訳の魔法がさまになってきたな」
「君のスパルタのお陰だよ・・・。それにしても、タマもよくあの魔法に吸い込まれて無事でいれたね」
「昼にマンドレイクのスープを飲ませたからな。魔力の塊だ。タマもポチも、ミニミミックたちと一緒の昼食を取っているから、存在が進化してハイミミックになったようだ」
「ハイミミックかぁ。上位存在ってことは、やっぱり強いんだろうね」
浮竹は、うんうんと頷いた。
「炎、氷、雷のブレスが吐けて、その気になれば人間も食える」
「お願いだから、人食いミミックにはならないでね!」
「りんりんりん~~~~~~~」
心配しなくても、人間なんて食べないよ。だってまずいもの。ドラゴンステーキが一番好き。
「りんりんりん」
マスターの作ってくれるマンドレイクの料理もおいしい。
「お、タマは分かってくれるなぁ」
浮竹が、京楽の頭をかじり続けていたタマを腕の中に抱きしめた。
そこそこ大きさがあるので、持っていると言ってる方が近いか。
タマは、ぺこりとお辞儀をすると、巣のある部屋に戻っていった。
「ところで、これどうしよう」
庭は荒れ放題だった。
せっかく大切に咲かせていた青薔薇も、アーチを築いていたのにボロボロの灰となっていた。
場所によっては、凍ったりもしていた。
炎や氷の禁呪を使ったせいで、庭はすごいことになっていた。
古城の1階と2階も吹き飛んでいた。
「恋次君、捕まえてくるか」
最近は金に困らなくなった恋次は、前ほど気軽に時間回帰魔法を使ってくれなくなっていた。時間回帰の魔法は神の魔法だ。
ほいほいと使っていることは、神を愚弄していることになるらしい。
「よし、行くぞ京楽!」
「はいはい、分かったよ」
血の帝国で、嫌がる恋次に白哉の丸秘写真集を餌にして、古城にまできてもらった。
「もう、ほどほどにしてくださいよ。俺ももっと使いたいけど、この魔法制約がきつくてしばらく魔法使えなくなるんすから」
古城も庭も元通りになって、浮竹は恋次に白哉の丸秘写真集と白金貨2枚をあげた。
「金はいいっすけど・・・・・・何これ、白哉さんの子供時代の写真。激可愛い。こっちは着替えの・・・・・・ぬおおおおおおおおおお」
興奮しすぎて、恋次は竜化していた。
竜の中の始祖ドラゴン、竜帝であった。
燃え上がる真っ赤な鱗が特徴的な、15メートルはあろかという巨大なドラゴンであった。
庭での変身だったので、薔薇園が少し崩壊したくらいで済んだ。
「ちょっと、恋次クン、竜化する時は気をつけてよ!?古城で竜化されちゃうと、古城が崩れちゃう」
「はい、すんません。白哉さんの宮殿でも間違って竜化しちまって、白金貨3枚の罰金とられました」
今、恋次は、異世界の神々の遊戯に参加しており、1回の参加で白金貨10枚がもらえていた。
異世界の神々の遊戯は、世界を作ること。
それに恋次が参加していることは、秘密の中の秘密だった。
創造竜と呼ばれていた。
その世界で、ドラゴンを作り出すのが仕事だった。
アビス、サーラの世界と似た、フレイアの世界を作っていた。
フレイアの世界では、女神フレイアが全ての頂点であった。
そのフレイアの世界にいずれ渡ることになるのだが、それはまだ先のお話。
----------------------------------------------------
「それで、逃げ帰ってきたというんだね?」
「ごめんなさい、藍染様!でも、あいつらの魔力は尋常じゃあなくって!」
「言い訳は聞きたくない」
ハルとシロは、頬を殴られた。
「君たちの魔力をあげるために、私の血を与えよう」
「はい・・・・・」
ハルとシロは、それを受け入れた。
血を与えられて、ハルとシロの魔力は各段にあがった。
だが、それでも浮竹と京楽に勝てる気がしないのであった。
始祖なる者、ヴァンパイアマスター63
肉便器に入れられた浮竹の子種で、肉便器は妊娠し、1週間後に子供を産み落とした。
白い髪に翡翠の瞳をした、浮竹によく似た子供だった。
1カ月をかけて13歳くらいまで成長した浮竹の子は、男の子で名をアランと名付けられた。
ヴァンパイアマスターと女神の子であったが、ヴァンパイアロードであった。
ヴァンパイアマスターはこの世界でただ一人。
浮竹だけが、ヴァンパイアマスターだった。
ただ、アランは浮竹の血が濃いのか、限りなくヴァンパイアマスターに近かった。
「キララ」
「はい、藍染様」
名を呼ばれて、死神のキララは藍染を見た。
「アランと一緒に、浮竹と京楽を葬っていおいで」
ああ、ついにこの日がやってきた。
キララは死を覚悟した。
いっそ逃げ出そうか。そう思ったが、藍染の手からは逃れられないと察知して、死を覚悟の上でアランと共に行動を開始する。
死神。だからといって、全ての魂を狩りとれるわけではない。
特に自分より強い存在の魂は狩りにくい。
きっと、浮竹と京楽の魂を狩りとることはできないだろう。分かっていたが、黙っていた。そうでもしないと、もう用なしとして処分されるかもしれないから。
「あなた、キララの宝石は美しいのよ?宝石を生み出す子がいなくなるなんて嫌よ」
「女神オリガ、こんな時のために神族を3人ほど確保しておいた。キララより上質の宝石を生み出す者ばかりを選んだ」
「そうなの。じゃあ、キララは用済みね」
母親である女神オリガにそう言われて、一縷の望みであった希望は粉々に砕かれた。
実の母でさえ、キララを愛してなかったのだ。
「いこう、キララ。愛しているよ」
「アラン・・・・・」
キララに愛を囁くアランを、キララは愛した。
藍染と女神オリガの目を盗んで、逢瀬を重ねた。
キララの腹には、アランの子が宿っていた。
それを知らずに、アランもキララも、浮竹と京楽がいる古城に向けて出発するのであった。
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「るるるるるるーーー」
「りんりんりんーーーー」
2匹の古城で飼われてるミミックは、今日も楽しそうに古城の中を散歩していた。
「るるるるる」
「え、なんだって。古城の外でスライムの友達ができた?」
「りんりんりん」
「え、林檎をもらった?」
京楽には、ミミックたちが何を言っているの分からなかった。
ただ、るるるるるとりんりんりんと鳴いているようにしか、聞こえなかった。
「よかったなぁ、ポチ、タマ」
頭を撫でられて、ポチとタマは嬉いそうに浮竹にかじりついた。
「あっはっは、甘噛みでも少し痛いぞ」
「るるるーーー」
「りんりんーーー」
「ほう、また友達に明日会いに行くのか。果物と野菜が好物・・・この季節じゃなかなか売っていない桃がちょうどある。それをもっていけばいい」
ポチは、体内に桃を5ついれた。
なんでも、スライムを飼っている主の分も含まれているらしい。
林檎が好物だそうなので、タマが林檎を3つ体内にいれた。
「ねぇ、浮竹、ポチとタマが何を言っているのか分かるの?」
「ああ、分かるぞ。この異種族翻訳の魔法を使えば、モンスターも何を言っているのか聞こえる」
「え、なにそれ。僕も覚えたい」
「いいが、覚えるには相当な知識が必要だぞ。まずは古代文明の魔法文字が読めるのが基本だ」
「僕、浮竹が翻訳してくれたやつでいいや」
古代文明の魔法文字など、何年かかっても習得できそうにない。
諦めの早い京楽に、浮竹がスパルタで教え込むことにしたようで、次の日から古代文明の魔法文字を覚える授業がはじまるのであった。
「るるるるるる」
「りんりんりん~~~~~~」
「おう、そうか。スライムのプルンとかいう友達のところに出かけるんだな。くれぐれも人間に見つからないように」
「いってらっしゃい、ポチ、タマ」
ポチは体内に5つの桃を、タマは3つの林檎をもって、古城を飛び出し、草原や森をぬけて、友達であるプルンのいるロスピア王国の裏路地を進み、ロスピア王奥の片隅にある家で、ポチはるるる―と鳴いて、プルンを呼んだ。
「プルルン!」
プルンは喜んで玄関から抜け出すと、ポチとタマとい一緒に、草原までくると遊びだした。
「るるるるるるーーーー」
ポチが、プルンの飼い主の分まで桃をもってきたというので、それを受け取ってプルンは飛び跳ねて喜んでいた。
自分たちの分の桃を食べていく。
甘くて甘くて、ぷるんはもう1つ食べたそうにポチを見ていた。
「るるるーー?」
半分食べるかいと言われて、プルンは飛び跳ねて喜んだ。
ポチの分を半分もらい、更にはタマが出してきた大好物の林檎を3個出してもらい、3匹はそれぞれ林檎を食べた。
「プルルン!!」
追いかけっこや鬼ごっこをしているうちに、日が傾いてきた。
「りんりんりん」
タマが、そろそろ帰らないと言い出す。
それにプルンが哀しそうな顔をする。
「るるる?」
どうするの?っとポチが聞くと、プルンは飛び跳ねて、こういった。
泊まっていけばいい。
ポチとタマは、少し逡巡したが、プルンの家に1日だけ厄介になることになたった。
「るるるるるーーー」
「りんりんりんーーー」
プルンの主に自己紹介をして、ポチとタマは10畳はあろうかという広い寝室を飛び跳ねて散歩した。
「プルルン!」
その日の夜は、プルンはポチとタマの傍で、リビングのソファーで眠った。
「るるるーーー」
「りんりんりん」
次の日の朝、ポチとタマは林檎をもらい、それを食べて草原でプルンと一緒にまた遊んだ。
かくれんぼをしたのだが、草原なので隠れる場所がなく、すぐに見つかってしまう。
「るるるる」
ポチが、人間の町を探索しようと言い出す。
「りんりんりん」
タマが人間に見つかったら危ないよと言った。
「プルルン!」
結局、小さな村にいって、そこで住人に出くわさないように今度こそかくれんぼをして遊んだ。
「プルルルルン!」
プルンが鬼だった。
プルンが少し迷ったが、匂いでポチが隠れている段ボールを見つけると、それを持ち上げた。
「るるるる」
見つかってしまったと、ポチが残念そうだった。
ただタマには匂いはついておらず、いくらプルンが探しても、見つからなかった。
「プルル!」
降参だとプルンがいうと、タマは屋根の上から降ってきた。
屋根の上で、宝箱に擬態していた。
勝者はタマだった。
3匹は元のプルンの家に戻ると、そろそろ帰らなきゃいけないからと、ロスピア王国の片隅にあるその家から飛び出して、ガイア王国の浮竹と京楽が住む古城へと戻っていった。
「るるるるる」
「りんりんりん」
「ポチ、タマ、昨日帰ってこないから心配したんだぞ」
「るるるーーー」
「りんりんーーーーー」
ポチとタマは、林檎をもらって帰ってきていた。
「そうか。友達の家に厄介になったのか。林檎までもらうとは、こちらも何かお返しをしないといけないな。また遊びに行く時は言ってくれ。何が手土産をよこすから」
「るるる」
「りんりんりん」
2匹は、友達のプルンについていろいろ語った。飼い主のことは言わなかったが、きっと優しい飼い主であるのだろうと思った。
プルンのことを語り終えた2匹のミミックは、嬉しそうに自分たちの巣である暖炉にこもり、眠り出した。
興奮しすぎて、昨日の夜なかなか眠れなかったのだ。
今頃プルンは何をしているかなぁと思いながら、ポチとタマは眠った。
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ポチとタマがお土産にもらった林檎は、京楽がアップルパイにしてくれた。
それを3時のおやつの茶菓子にして、ポチとタマの友達のことに話を咲かせた。
「ポチとタマの友達は、スライムのプルンというそうだ。仲がとてもよくて、林檎が大好物で、他にも果物や野菜もたべて、肉は嫌いだそうだ」
「ベジタリアンなんだね。うちのポチとタマとよく気があったね。あの子たちドラゴンステーキが大好物の、まぁ人間の食べ物の好き雑食性だけど、どちらかというと肉食性なのに」
「そうだな。よほど気があったんだろう」
「異種族で仲良くなるのも珍しいね。まぁ、ダンジョンでは違う群れ同士を混合させて襲ってくるモンスターもいるから、必ずしも仲良くなれないわけじゃないけど。ミミックって基本単体で動くから、ポチとタマが仲良くなっただけでも珍しいのに、スライムの友達ができるなんて、まるで奇跡だね」
浮竹は、京楽の髪を引っ張った。
「早くポチとタマの言っていることが分かるように、今日も魔法文章の勉強だ」
「ええーもういいよ。ポチとタマが何を思っててもいいし」
浮竹はハリセンを持ち出すと、弱気な京楽の頭をばしばしと何回も叩いた。
「主たる者、例え相手がミミックでもちゃんと言葉を理解してやれ」
「はーい」
今日もまた、スパルタな浮竹の勉強が始まるのであった。
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「ねぇ、ここが浮竹と京楽住んでいる城?」
「はい、そのはずです」
アランとキララは、上空から浮竹と京楽が住む古城に来ていた。
そのまま中庭に降り立つと、マンドレイクがいっぱい生えていて、気味が悪かった。
「悪趣味・・・・」
「はい、そうですね」
ジリリリリリン。
警報のようなベルが鳴って、にわかに騒がしくなった。
最初に襲ってきたのは、浮竹の血で作られた戦闘人形たちであった。
魂がないので狩りとれず、キララは魔法を唱えた。
「ファイアアロー」
初歩的な魔法であるが、威力は十分に高く、戦闘人形たちを蒸発させていく。
「どんな奴がきたかと思えば、浮竹にそっくり。浮竹の子種でも盗んで、女神アルテナにでも産ませたのかい」
出てきた京楽の言葉は、それが最初だった。
「ああ、その通りだ。僕の名はアラン。始祖浮竹と女神アルテナの子だ」
「京楽、いくら俺に似ているからって、油断するんじゃないぞ」
「すでに遅いんじゃないの」
アランは、そこら中に血の糸を張り巡らせていて、それで浮竹と京楽をがんじがらめにした。
「今だよ、キララ。こいつらの魂を狩って」
「はい」
キララは死神の鎌を取り出して、まずは京楽の魂を狩ろうとした。
けれど、力の差がありすぎて、魂は狩りとれなかった。
「だめです、アラン様。私にはできません」
「なんだと?使えない死神だな」
「だって、私は1つを無理やり2つにされた。元の力の半分しかありません。元の力があれば、こんな奴らの魂を狩りとれるのに」
「それは聞き捨てならないねぇ。力があったら魂が狩りとれる?本当に、そんなこと思ってるんだ」
京楽は、血の魔法で自分と浮竹を戒める血の糸を切った。
「何故だ!僕はヴァンパイアマスターに限りなく近い。僕の血の糸を切れるだなんて」
「単純に、力の差だよ」
京楽は血の鎌を作り出すと、まずはアランの背を切った。
「ああああ!これしきの傷!」
アランもまた血の鎌を作り出して、京楽の鎌と切り結び合う。
その間に、浮竹はキララの相手をしていた。
「無理やり藍染に従わされている。違うか?」
「それは・・・・・・」
「どうやら、お腹に子がいるようだし、死神の力を一切使わず、もう俺たちの目の前に現れないと誓えるなら、見逃してやろう」
「え・・・」
意外な言葉に、キララが浮竹を見つめる。
「アランという、あれはどのみち処分する。父親があれだとしても、子には関係のないことだ。どうする?約束するなら、白金貨10枚を渡そう」
白金貨1枚あれば、一生裕福に暮らしていける。
キララが迷った末に、浮竹と交渉した。
「お金を、ください。もう二度とあなたたちの前には現れません」
「交渉成立だ。死神の鎌をこちらへ」
「はい」
死神の鎌と引き換えに、白金貨10枚を受け取り、キララはその場から逃げ出した。
「おい、キララ!」
「さようなら!」
「あの裏切者めええええ」
憤怒にもえるアランの周囲に、ぽっ、ぽっ、ぽっと鬼火が灯る。
「京楽、シールドの結界魔法だ!」
「分かったよ」
「ゴッドフェニックス、カイザーフェニックス、エターナルフェニックス・・・・トリプルファイアフェニックス!!」
「「マジックシールド!!」」
炎の最高位魔法を、二人はシールドで防いでしまった。
「なんだと、僕の最高の魔法が!」
「いくらヴァンパイアマスターに近いからと言って、力までそうだとは限らない」
浮竹が作り出した血の刃で、アランは胸を貫かれていた。
「父様・・・慈悲を」
「お前のような子供をもった覚えはない!」
「ああああああああ!!」
アランは持てる魔力の全てを槍に変えて、浮竹に向かって放つ。それはシールドを容易く破壊して、浮竹の心臓を貫いた。
「はははは、やったぞ、俺の勝利だ!」
「浮竹!よくも・・・・・・・」
浮竹は、心臓を破壊されながらも、平気そうに動いた。
血の槍を作り出し、アランの心臓を貫く。
「何故・・・何故、心臓を破壊したのに生きている・・・・・」
「知らなかったのか?俺は始祖である神の愛の呪いによって、不老不死だ」
「不老不死・・・、ならば、俺も!」
「無理だよ。君は不老不死じゃない。さよなら、哀れな浮竹の息子」
京楽は、作り出した血の刃でアランの体中を刺していた。
「藍染様・・・・・・」
その言葉を残して、アランは事切れた。
京楽は魔神の咢を開いて、その魂を貪る。
「カラミティファイア!」
浮竹は、アランの遺体を燃やして、灰にした。
「藍染の奴・・・・俺の子種を入手したようだ。しばらく俺の血を引く刺客がくるかもしれない・・・・って、京楽?」
「君のとても若い時ってあんなに可愛いんだね。今度あの年齢で僕の相手をしてよ」
「アホか!ずっとそんなこと考えていたのか!?」
「うん」
浮竹はアイテムポケットからハリセンを取り出すと、思い切り京楽の頭をばしばしと殴った。
「浮竹がいじめる~」
「戦闘の最中に、よくそんなことが考えられるな!」
「そういう浮竹こそ、死神のキララに金を与えて見逃した」
ぎくりと、浮竹が固まった。
「あれは、哀れだから・・・・・」
「いつか、子を産んでその子が敵討ちだって来ても、知らないからね」
「それくらい、承知している!」
浮竹と京楽は、もつれあいながら倒れた。
「あの子、すごい魔力だった。シールドを張るのに力を抜いていたら、きっと黒こげになっていた。君の血の力ってすごいね」
「正確には血統だろう」
「うん。君がまるで僕以外の伴侶と睦みあってできた子みたいで、嫉妬した。だから、君を抱くよ?」
「どういう理屈だ」
「さぁ、ただのこじつけかもね」
------------------------------------------------------------
「あ、あ!」
浮竹は、背後から京楽に貫かれて、ぽたぽたと精液をシーツの上に零していた。
「んあっ!」
ぐちゅぐちゅと、リズミカルに突き上げてくる愛しい伴侶の動きに合わせて、声が漏れる。
「あ、やだ、そこやだあああ」
嫌がる浮竹のいい場所を突きあげてやると、浮竹は背を弓ぞりにしあならせて、オーガズムでいっていた。
「ひあああああ!!」
京楽は気に留めることもなく、浮竹の奥へ奥へと熱い楔を打ちこんでいく。
ごりっと、最奥に入ってこられて、浮竹はまたシーツの上に子種をまき散らしていた。
同時に、京楽も子種を浮竹の胎の奥へ注ぎこむ。
「あ、もっと・・・もっと深く」
もっととねだる浮竹の最奥にぐりぐりと侵入したら、浮竹はびくんびくんと体をけいれんさせていた。
「あああ、やああああああああ!!!」
「君がもっと深くって言ったんだよ?」
「やあああ、深すぎるううう、だめえええ」
「でも、そこがいいでしょ?」
ゴリゴリッと奥を抉られて、浮竹はまた射精していた。
「ああああ!!!」
「んっ、僕もいくよ。受け止めてね」
「んああああ!!」
京楽の子種を最奥で受け止めて、浮竹は妖艶に笑う。
「もっと・・もっとくれ、春水、お前の子種を」
「仕方のない子だねぇ」
浮竹をあおむけにさせて、正常位から浮竹の右の太ももを肩にもちあげて、ずちゅりと音を立てて侵入する。
「あ、もっと・・・・」
「もうすぐあげるから、少し待ってね」
ずちゅりずちゅりと音を鳴らして、浮竹の中を出入りする。結合部はローションと互いの液体が混ざり合ったもので泡立っていた。
「んっ、いくよ。全部、飲み干してね」
「あ、飲む干すから、全部、俺の中に全部注いでくれ」
すでに3回は出したのに、京楽のものまだ硬くて、浮竹の奥にびゅるびゅると精子を注いだ。
「あ、や、いっちゃう!!」
子種を注ぎ込まれながら、オーガズムでいっている浮竹の太ももに噛みつき、吸血してやると、浮竹は泣いて嫌がった。
「やあああ、いってる時に吸血しないでえええ。頭が変になるうう」
「大丈夫、ただ気持ちいいだけだよ」
「やあああ、んあああああ!!!」
浮竹は盛大にいった後で、ぷしゅわあああと潮を漏らした。
「やああ、頭変になって、おもらし、しちゃった・・・・・」
「それはいけない子だ。お仕置きがいるね。愛してるよ、十四郎」
「俺も愛してる、春水・・・・・・」
ぐちゅりと中で円を描かれて、浮竹はまたいっていた。
「やああ、いくの、いくの止まらない、どうしてええ」
「さぁ、どうしてだろうね?」
別に媚薬も盛ってないし、普通のセックスだった。
京楽は硬さを失い、何も出なくなるまで、浮竹を犯した。
浮竹はぐったりしていた。
「大丈夫、浮竹」
「あんなにやられて、大丈夫なわけがないだろう。早く風呂に入れろ」
「はい、調子に乗りすぎました、ごめんなさい」
浮竹をシーツごと抱き上げて、風呂場に向かう。
前の古城より狭いが、それでも10人以上は入れそうな湯船にはたっぷりとお湯が満たされており、その中に浮竹は入れられた。
「あ、また湯の中でかき出すのか」
「そのほうが、かき出しやすし」
「んあああ、お湯が、お湯が中に・・・・」
「出る時に、お湯もかき出してあげるから」
浮竹は、京楽の指の動きだけでいってしまっていた。
「どしたの、今日の浮竹。すごいよ?」
「あ・・・・・昼に飲んだジュースj、血の帝国産のものだけど、きっとブラッディ・ネイが何か媚薬のようのものをいれたのかもしれない」
実際、その通りだった。
何気にお中元のように受け取って飲んだジュースは、媚薬入りだった。
「今度から、血の帝国か送られてきたものは食べないし、飲まない」
「まぁ、それが無難かもね」
京楽は、浮竹の中からお湯をかき出して、髪と体を洗ってやった。
「ん・・・・きもちいい」
「変な意味で?」
「違う。純粋に心地よいだけだ」
浮竹を風呂からあがらせると、その長い白髪の水分を拭きとって、体もふいてやり、寝間着に着替えさせた。
「ん」
「はいはい」
甘えられて、お姫様抱っこして、京楽は浮竹を寝室に連れ戻すと、いったんソファーに身を預けさせて、真新しいシーツをかけてその上に寝かせた。
「おやすみ」
「おやすみ、いい夢を、浮竹」
―-----------------------------------------------
「そうか。アランは魔法ではそこそこいけたが、キララが魂を狩り損ねたか」
「あなた、キララを探して。お仕置きをしないと」
「キララの死神の能力は役に立ちそうもない。もう用済みだ」
藍染は、キララを放置することにきめた。
「ミライ。あなたは、キララのようになっては駄目よ?」
「はい、オリガ母様」
「いい子だ、ミライ。絶対者を滅ぼすには絶対者を宛がう。お前は、絶対者だ。いずれ、浮竹を滅ぼしてもらう」
「はい、藍染父様」
歪に歪んだ藍染の世界で、狂った愛を受けながら、ミライは成長を続ける。
「次の子も、アランほど魔力が高ければいいが」
藍染は、肉便器に浮竹の子種を注ぎ、ついでに入手した京楽の子種も注いだ。
「双子だ。浮竹と京楽の子を産んでくれよ、女神アルテナ」
魂を失い、ただの肉便器と化したアルテナであった肉塊は、その言葉に嬉しそうに震える。
やがて、浮竹と京楽の子が生まれた。
二人は仲が良く、何処にいくのも一緒だった。
「あの二人は、まるで幼い浮竹と京楽のようだね」
普通ならっ微笑ましい光景だろうが、藍染にしてみれば、反吐が出るというやつだった。
「適切な教育を施そう」
そうして育った肉便器と浮竹と京楽の子たちは、瞳に色がない少年へと成長した。
「藍染様は絶対!藍染様は世界の全て!」
浮竹の子はシロと名付けられ、京楽の子はハルと名付けられた。
実際の浮竹と京楽の名前からきていた。
「さぁ、逃げてきたふりをして、自分の父親たちを葬るんだ。いいね?」
「「はい、藍染様」」
二人の哀れな子羊は、浮竹と京楽の元に向かうのであった。
白い髪に翡翠の瞳をした、浮竹によく似た子供だった。
1カ月をかけて13歳くらいまで成長した浮竹の子は、男の子で名をアランと名付けられた。
ヴァンパイアマスターと女神の子であったが、ヴァンパイアロードであった。
ヴァンパイアマスターはこの世界でただ一人。
浮竹だけが、ヴァンパイアマスターだった。
ただ、アランは浮竹の血が濃いのか、限りなくヴァンパイアマスターに近かった。
「キララ」
「はい、藍染様」
名を呼ばれて、死神のキララは藍染を見た。
「アランと一緒に、浮竹と京楽を葬っていおいで」
ああ、ついにこの日がやってきた。
キララは死を覚悟した。
いっそ逃げ出そうか。そう思ったが、藍染の手からは逃れられないと察知して、死を覚悟の上でアランと共に行動を開始する。
死神。だからといって、全ての魂を狩りとれるわけではない。
特に自分より強い存在の魂は狩りにくい。
きっと、浮竹と京楽の魂を狩りとることはできないだろう。分かっていたが、黙っていた。そうでもしないと、もう用なしとして処分されるかもしれないから。
「あなた、キララの宝石は美しいのよ?宝石を生み出す子がいなくなるなんて嫌よ」
「女神オリガ、こんな時のために神族を3人ほど確保しておいた。キララより上質の宝石を生み出す者ばかりを選んだ」
「そうなの。じゃあ、キララは用済みね」
母親である女神オリガにそう言われて、一縷の望みであった希望は粉々に砕かれた。
実の母でさえ、キララを愛してなかったのだ。
「いこう、キララ。愛しているよ」
「アラン・・・・・」
キララに愛を囁くアランを、キララは愛した。
藍染と女神オリガの目を盗んで、逢瀬を重ねた。
キララの腹には、アランの子が宿っていた。
それを知らずに、アランもキララも、浮竹と京楽がいる古城に向けて出発するのであった。
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「るるるるるるーーー」
「りんりんりんーーーー」
2匹の古城で飼われてるミミックは、今日も楽しそうに古城の中を散歩していた。
「るるるるる」
「え、なんだって。古城の外でスライムの友達ができた?」
「りんりんりん」
「え、林檎をもらった?」
京楽には、ミミックたちが何を言っているの分からなかった。
ただ、るるるるるとりんりんりんと鳴いているようにしか、聞こえなかった。
「よかったなぁ、ポチ、タマ」
頭を撫でられて、ポチとタマは嬉いそうに浮竹にかじりついた。
「あっはっは、甘噛みでも少し痛いぞ」
「るるるーーー」
「りんりんーーー」
「ほう、また友達に明日会いに行くのか。果物と野菜が好物・・・この季節じゃなかなか売っていない桃がちょうどある。それをもっていけばいい」
ポチは、体内に桃を5ついれた。
なんでも、スライムを飼っている主の分も含まれているらしい。
林檎が好物だそうなので、タマが林檎を3つ体内にいれた。
「ねぇ、浮竹、ポチとタマが何を言っているのか分かるの?」
「ああ、分かるぞ。この異種族翻訳の魔法を使えば、モンスターも何を言っているのか聞こえる」
「え、なにそれ。僕も覚えたい」
「いいが、覚えるには相当な知識が必要だぞ。まずは古代文明の魔法文字が読めるのが基本だ」
「僕、浮竹が翻訳してくれたやつでいいや」
古代文明の魔法文字など、何年かかっても習得できそうにない。
諦めの早い京楽に、浮竹がスパルタで教え込むことにしたようで、次の日から古代文明の魔法文字を覚える授業がはじまるのであった。
「るるるるるる」
「りんりんりん~~~~~~」
「おう、そうか。スライムのプルンとかいう友達のところに出かけるんだな。くれぐれも人間に見つからないように」
「いってらっしゃい、ポチ、タマ」
ポチは体内に5つの桃を、タマは3つの林檎をもって、古城を飛び出し、草原や森をぬけて、友達であるプルンのいるロスピア王国の裏路地を進み、ロスピア王奥の片隅にある家で、ポチはるるる―と鳴いて、プルンを呼んだ。
「プルルン!」
プルンは喜んで玄関から抜け出すと、ポチとタマとい一緒に、草原までくると遊びだした。
「るるるるるるーーーー」
ポチが、プルンの飼い主の分まで桃をもってきたというので、それを受け取ってプルンは飛び跳ねて喜んでいた。
自分たちの分の桃を食べていく。
甘くて甘くて、ぷるんはもう1つ食べたそうにポチを見ていた。
「るるるーー?」
半分食べるかいと言われて、プルンは飛び跳ねて喜んだ。
ポチの分を半分もらい、更にはタマが出してきた大好物の林檎を3個出してもらい、3匹はそれぞれ林檎を食べた。
「プルルン!!」
追いかけっこや鬼ごっこをしているうちに、日が傾いてきた。
「りんりんりん」
タマが、そろそろ帰らないと言い出す。
それにプルンが哀しそうな顔をする。
「るるる?」
どうするの?っとポチが聞くと、プルンは飛び跳ねて、こういった。
泊まっていけばいい。
ポチとタマは、少し逡巡したが、プルンの家に1日だけ厄介になることになたった。
「るるるるるーーー」
「りんりんりんーーー」
プルンの主に自己紹介をして、ポチとタマは10畳はあろうかという広い寝室を飛び跳ねて散歩した。
「プルルン!」
その日の夜は、プルンはポチとタマの傍で、リビングのソファーで眠った。
「るるるーーー」
「りんりんりん」
次の日の朝、ポチとタマは林檎をもらい、それを食べて草原でプルンと一緒にまた遊んだ。
かくれんぼをしたのだが、草原なので隠れる場所がなく、すぐに見つかってしまう。
「るるるる」
ポチが、人間の町を探索しようと言い出す。
「りんりんりん」
タマが人間に見つかったら危ないよと言った。
「プルルン!」
結局、小さな村にいって、そこで住人に出くわさないように今度こそかくれんぼをして遊んだ。
「プルルルルン!」
プルンが鬼だった。
プルンが少し迷ったが、匂いでポチが隠れている段ボールを見つけると、それを持ち上げた。
「るるるる」
見つかってしまったと、ポチが残念そうだった。
ただタマには匂いはついておらず、いくらプルンが探しても、見つからなかった。
「プルル!」
降参だとプルンがいうと、タマは屋根の上から降ってきた。
屋根の上で、宝箱に擬態していた。
勝者はタマだった。
3匹は元のプルンの家に戻ると、そろそろ帰らなきゃいけないからと、ロスピア王国の片隅にあるその家から飛び出して、ガイア王国の浮竹と京楽が住む古城へと戻っていった。
「るるるるる」
「りんりんりん」
「ポチ、タマ、昨日帰ってこないから心配したんだぞ」
「るるるーーー」
「りんりんーーーーー」
ポチとタマは、林檎をもらって帰ってきていた。
「そうか。友達の家に厄介になったのか。林檎までもらうとは、こちらも何かお返しをしないといけないな。また遊びに行く時は言ってくれ。何が手土産をよこすから」
「るるる」
「りんりんりん」
2匹は、友達のプルンについていろいろ語った。飼い主のことは言わなかったが、きっと優しい飼い主であるのだろうと思った。
プルンのことを語り終えた2匹のミミックは、嬉しそうに自分たちの巣である暖炉にこもり、眠り出した。
興奮しすぎて、昨日の夜なかなか眠れなかったのだ。
今頃プルンは何をしているかなぁと思いながら、ポチとタマは眠った。
----------------------------------------------
ポチとタマがお土産にもらった林檎は、京楽がアップルパイにしてくれた。
それを3時のおやつの茶菓子にして、ポチとタマの友達のことに話を咲かせた。
「ポチとタマの友達は、スライムのプルンというそうだ。仲がとてもよくて、林檎が大好物で、他にも果物や野菜もたべて、肉は嫌いだそうだ」
「ベジタリアンなんだね。うちのポチとタマとよく気があったね。あの子たちドラゴンステーキが大好物の、まぁ人間の食べ物の好き雑食性だけど、どちらかというと肉食性なのに」
「そうだな。よほど気があったんだろう」
「異種族で仲良くなるのも珍しいね。まぁ、ダンジョンでは違う群れ同士を混合させて襲ってくるモンスターもいるから、必ずしも仲良くなれないわけじゃないけど。ミミックって基本単体で動くから、ポチとタマが仲良くなっただけでも珍しいのに、スライムの友達ができるなんて、まるで奇跡だね」
浮竹は、京楽の髪を引っ張った。
「早くポチとタマの言っていることが分かるように、今日も魔法文章の勉強だ」
「ええーもういいよ。ポチとタマが何を思っててもいいし」
浮竹はハリセンを持ち出すと、弱気な京楽の頭をばしばしと何回も叩いた。
「主たる者、例え相手がミミックでもちゃんと言葉を理解してやれ」
「はーい」
今日もまた、スパルタな浮竹の勉強が始まるのであった。
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「ねぇ、ここが浮竹と京楽住んでいる城?」
「はい、そのはずです」
アランとキララは、上空から浮竹と京楽が住む古城に来ていた。
そのまま中庭に降り立つと、マンドレイクがいっぱい生えていて、気味が悪かった。
「悪趣味・・・・」
「はい、そうですね」
ジリリリリリン。
警報のようなベルが鳴って、にわかに騒がしくなった。
最初に襲ってきたのは、浮竹の血で作られた戦闘人形たちであった。
魂がないので狩りとれず、キララは魔法を唱えた。
「ファイアアロー」
初歩的な魔法であるが、威力は十分に高く、戦闘人形たちを蒸発させていく。
「どんな奴がきたかと思えば、浮竹にそっくり。浮竹の子種でも盗んで、女神アルテナにでも産ませたのかい」
出てきた京楽の言葉は、それが最初だった。
「ああ、その通りだ。僕の名はアラン。始祖浮竹と女神アルテナの子だ」
「京楽、いくら俺に似ているからって、油断するんじゃないぞ」
「すでに遅いんじゃないの」
アランは、そこら中に血の糸を張り巡らせていて、それで浮竹と京楽をがんじがらめにした。
「今だよ、キララ。こいつらの魂を狩って」
「はい」
キララは死神の鎌を取り出して、まずは京楽の魂を狩ろうとした。
けれど、力の差がありすぎて、魂は狩りとれなかった。
「だめです、アラン様。私にはできません」
「なんだと?使えない死神だな」
「だって、私は1つを無理やり2つにされた。元の力の半分しかありません。元の力があれば、こんな奴らの魂を狩りとれるのに」
「それは聞き捨てならないねぇ。力があったら魂が狩りとれる?本当に、そんなこと思ってるんだ」
京楽は、血の魔法で自分と浮竹を戒める血の糸を切った。
「何故だ!僕はヴァンパイアマスターに限りなく近い。僕の血の糸を切れるだなんて」
「単純に、力の差だよ」
京楽は血の鎌を作り出すと、まずはアランの背を切った。
「ああああ!これしきの傷!」
アランもまた血の鎌を作り出して、京楽の鎌と切り結び合う。
その間に、浮竹はキララの相手をしていた。
「無理やり藍染に従わされている。違うか?」
「それは・・・・・・」
「どうやら、お腹に子がいるようだし、死神の力を一切使わず、もう俺たちの目の前に現れないと誓えるなら、見逃してやろう」
「え・・・」
意外な言葉に、キララが浮竹を見つめる。
「アランという、あれはどのみち処分する。父親があれだとしても、子には関係のないことだ。どうする?約束するなら、白金貨10枚を渡そう」
白金貨1枚あれば、一生裕福に暮らしていける。
キララが迷った末に、浮竹と交渉した。
「お金を、ください。もう二度とあなたたちの前には現れません」
「交渉成立だ。死神の鎌をこちらへ」
「はい」
死神の鎌と引き換えに、白金貨10枚を受け取り、キララはその場から逃げ出した。
「おい、キララ!」
「さようなら!」
「あの裏切者めええええ」
憤怒にもえるアランの周囲に、ぽっ、ぽっ、ぽっと鬼火が灯る。
「京楽、シールドの結界魔法だ!」
「分かったよ」
「ゴッドフェニックス、カイザーフェニックス、エターナルフェニックス・・・・トリプルファイアフェニックス!!」
「「マジックシールド!!」」
炎の最高位魔法を、二人はシールドで防いでしまった。
「なんだと、僕の最高の魔法が!」
「いくらヴァンパイアマスターに近いからと言って、力までそうだとは限らない」
浮竹が作り出した血の刃で、アランは胸を貫かれていた。
「父様・・・慈悲を」
「お前のような子供をもった覚えはない!」
「ああああああああ!!」
アランは持てる魔力の全てを槍に変えて、浮竹に向かって放つ。それはシールドを容易く破壊して、浮竹の心臓を貫いた。
「はははは、やったぞ、俺の勝利だ!」
「浮竹!よくも・・・・・・・」
浮竹は、心臓を破壊されながらも、平気そうに動いた。
血の槍を作り出し、アランの心臓を貫く。
「何故・・・何故、心臓を破壊したのに生きている・・・・・」
「知らなかったのか?俺は始祖である神の愛の呪いによって、不老不死だ」
「不老不死・・・、ならば、俺も!」
「無理だよ。君は不老不死じゃない。さよなら、哀れな浮竹の息子」
京楽は、作り出した血の刃でアランの体中を刺していた。
「藍染様・・・・・・」
その言葉を残して、アランは事切れた。
京楽は魔神の咢を開いて、その魂を貪る。
「カラミティファイア!」
浮竹は、アランの遺体を燃やして、灰にした。
「藍染の奴・・・・俺の子種を入手したようだ。しばらく俺の血を引く刺客がくるかもしれない・・・・って、京楽?」
「君のとても若い時ってあんなに可愛いんだね。今度あの年齢で僕の相手をしてよ」
「アホか!ずっとそんなこと考えていたのか!?」
「うん」
浮竹はアイテムポケットからハリセンを取り出すと、思い切り京楽の頭をばしばしと殴った。
「浮竹がいじめる~」
「戦闘の最中に、よくそんなことが考えられるな!」
「そういう浮竹こそ、死神のキララに金を与えて見逃した」
ぎくりと、浮竹が固まった。
「あれは、哀れだから・・・・・」
「いつか、子を産んでその子が敵討ちだって来ても、知らないからね」
「それくらい、承知している!」
浮竹と京楽は、もつれあいながら倒れた。
「あの子、すごい魔力だった。シールドを張るのに力を抜いていたら、きっと黒こげになっていた。君の血の力ってすごいね」
「正確には血統だろう」
「うん。君がまるで僕以外の伴侶と睦みあってできた子みたいで、嫉妬した。だから、君を抱くよ?」
「どういう理屈だ」
「さぁ、ただのこじつけかもね」
------------------------------------------------------------
「あ、あ!」
浮竹は、背後から京楽に貫かれて、ぽたぽたと精液をシーツの上に零していた。
「んあっ!」
ぐちゅぐちゅと、リズミカルに突き上げてくる愛しい伴侶の動きに合わせて、声が漏れる。
「あ、やだ、そこやだあああ」
嫌がる浮竹のいい場所を突きあげてやると、浮竹は背を弓ぞりにしあならせて、オーガズムでいっていた。
「ひあああああ!!」
京楽は気に留めることもなく、浮竹の奥へ奥へと熱い楔を打ちこんでいく。
ごりっと、最奥に入ってこられて、浮竹はまたシーツの上に子種をまき散らしていた。
同時に、京楽も子種を浮竹の胎の奥へ注ぎこむ。
「あ、もっと・・・もっと深く」
もっととねだる浮竹の最奥にぐりぐりと侵入したら、浮竹はびくんびくんと体をけいれんさせていた。
「あああ、やああああああああ!!!」
「君がもっと深くって言ったんだよ?」
「やあああ、深すぎるううう、だめえええ」
「でも、そこがいいでしょ?」
ゴリゴリッと奥を抉られて、浮竹はまた射精していた。
「ああああ!!!」
「んっ、僕もいくよ。受け止めてね」
「んああああ!!」
京楽の子種を最奥で受け止めて、浮竹は妖艶に笑う。
「もっと・・もっとくれ、春水、お前の子種を」
「仕方のない子だねぇ」
浮竹をあおむけにさせて、正常位から浮竹の右の太ももを肩にもちあげて、ずちゅりと音を立てて侵入する。
「あ、もっと・・・・」
「もうすぐあげるから、少し待ってね」
ずちゅりずちゅりと音を鳴らして、浮竹の中を出入りする。結合部はローションと互いの液体が混ざり合ったもので泡立っていた。
「んっ、いくよ。全部、飲み干してね」
「あ、飲む干すから、全部、俺の中に全部注いでくれ」
すでに3回は出したのに、京楽のものまだ硬くて、浮竹の奥にびゅるびゅると精子を注いだ。
「あ、や、いっちゃう!!」
子種を注ぎ込まれながら、オーガズムでいっている浮竹の太ももに噛みつき、吸血してやると、浮竹は泣いて嫌がった。
「やあああ、いってる時に吸血しないでえええ。頭が変になるうう」
「大丈夫、ただ気持ちいいだけだよ」
「やあああ、んあああああ!!!」
浮竹は盛大にいった後で、ぷしゅわあああと潮を漏らした。
「やああ、頭変になって、おもらし、しちゃった・・・・・」
「それはいけない子だ。お仕置きがいるね。愛してるよ、十四郎」
「俺も愛してる、春水・・・・・・」
ぐちゅりと中で円を描かれて、浮竹はまたいっていた。
「やああ、いくの、いくの止まらない、どうしてええ」
「さぁ、どうしてだろうね?」
別に媚薬も盛ってないし、普通のセックスだった。
京楽は硬さを失い、何も出なくなるまで、浮竹を犯した。
浮竹はぐったりしていた。
「大丈夫、浮竹」
「あんなにやられて、大丈夫なわけがないだろう。早く風呂に入れろ」
「はい、調子に乗りすぎました、ごめんなさい」
浮竹をシーツごと抱き上げて、風呂場に向かう。
前の古城より狭いが、それでも10人以上は入れそうな湯船にはたっぷりとお湯が満たされており、その中に浮竹は入れられた。
「あ、また湯の中でかき出すのか」
「そのほうが、かき出しやすし」
「んあああ、お湯が、お湯が中に・・・・」
「出る時に、お湯もかき出してあげるから」
浮竹は、京楽の指の動きだけでいってしまっていた。
「どしたの、今日の浮竹。すごいよ?」
「あ・・・・・昼に飲んだジュースj、血の帝国産のものだけど、きっとブラッディ・ネイが何か媚薬のようのものをいれたのかもしれない」
実際、その通りだった。
何気にお中元のように受け取って飲んだジュースは、媚薬入りだった。
「今度から、血の帝国か送られてきたものは食べないし、飲まない」
「まぁ、それが無難かもね」
京楽は、浮竹の中からお湯をかき出して、髪と体を洗ってやった。
「ん・・・・きもちいい」
「変な意味で?」
「違う。純粋に心地よいだけだ」
浮竹を風呂からあがらせると、その長い白髪の水分を拭きとって、体もふいてやり、寝間着に着替えさせた。
「ん」
「はいはい」
甘えられて、お姫様抱っこして、京楽は浮竹を寝室に連れ戻すと、いったんソファーに身を預けさせて、真新しいシーツをかけてその上に寝かせた。
「おやすみ」
「おやすみ、いい夢を、浮竹」
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「そうか。アランは魔法ではそこそこいけたが、キララが魂を狩り損ねたか」
「あなた、キララを探して。お仕置きをしないと」
「キララの死神の能力は役に立ちそうもない。もう用済みだ」
藍染は、キララを放置することにきめた。
「ミライ。あなたは、キララのようになっては駄目よ?」
「はい、オリガ母様」
「いい子だ、ミライ。絶対者を滅ぼすには絶対者を宛がう。お前は、絶対者だ。いずれ、浮竹を滅ぼしてもらう」
「はい、藍染父様」
歪に歪んだ藍染の世界で、狂った愛を受けながら、ミライは成長を続ける。
「次の子も、アランほど魔力が高ければいいが」
藍染は、肉便器に浮竹の子種を注ぎ、ついでに入手した京楽の子種も注いだ。
「双子だ。浮竹と京楽の子を産んでくれよ、女神アルテナ」
魂を失い、ただの肉便器と化したアルテナであった肉塊は、その言葉に嬉しそうに震える。
やがて、浮竹と京楽の子が生まれた。
二人は仲が良く、何処にいくのも一緒だった。
「あの二人は、まるで幼い浮竹と京楽のようだね」
普通ならっ微笑ましい光景だろうが、藍染にしてみれば、反吐が出るというやつだった。
「適切な教育を施そう」
そうして育った肉便器と浮竹と京楽の子たちは、瞳に色がない少年へと成長した。
「藍染様は絶対!藍染様は世界の全て!」
浮竹の子はシロと名付けられ、京楽の子はハルと名付けられた。
実際の浮竹と京楽の名前からきていた。
「さぁ、逃げてきたふりをして、自分の父親たちを葬るんだ。いいね?」
「「はい、藍染様」」
二人の哀れな子羊は、浮竹と京楽の元に向かうのであった。
執事京楽、主浮竹
浮竹には幼い頃から執事がいた。
黒い燕尾服を着て、穏やかに微笑むその姿がすきだった。
名は京楽春水。
浮竹は名前を浮竹十四郎という。浮竹家は伯爵の家柄で、両親は浮竹が幼い頃に病死してしまい、僅か8歳で浮竹は当主になった。
他に兄弟姉妹もいなくて、友人もおらず、家庭教師をつけられたが、周りに居る者たちはみんな浮竹のもつ金目当てだった。
僅か8歳で結婚されられそうになった。
浮竹は当主の座を放棄して逃げ出そうとしたが、周りの大人がそれを許してくれなくて、友達もおらず、心を許せる相手は気づけばだ誰もいなかった。
浮竹は、事故で両親を失い、友達もいない寂しさを紛らわすために、だめ元で黒魔術で両親を作り出そうとした。けれどそれは、悪魔召還の儀式だった。
勝手も分からず、黒い本の通りに自分の血で描いた円陣には、中心に人が立っていた。
「父上?」
「残念。僕は悪魔。悪魔の中の上位悪魔。いわゆる魔王ってやつだね。名は京楽春水」
「魔王・・・・・俺を、食うのか?」
目の前の白い髪の少女・・・いや、少年は、魔王と名乗った京楽に一切の恐れを抱かずに、ただ見つめていた。
「んー。君の魂は極上においしそうだ。願いをなんでも叶えてあげよう。ただし、その魂をくれるなら、ね」
「じゃあ、俺と友達になってくれ!」
「は?」
京楽は目を点にしていた。
てっきり、地位や名誉、財産などが欲しい、国が欲しいと言い出すと思っていたのだ。
「あはははは。魔王の僕を呼び出しておいて、友達になってくれ?おおいに結構じゃない。君の友達に、なってあげるよ。期限は君が成人するまで」
「成人するまで・・・・・・」
浮竹にはこうして執事ができた。正体は魔王という、執事が。
京楽は、家庭教師や住み込みの者たちを追い出して、屋敷を京楽だけで切り盛りし始めた。
魔王として配下を生み出し、メイドやコックを、雇う事なく京楽の血から作り出された人形で屋敷の管理を任せていた。
「さぁ、十四郎坊ちゃん、お勉強の時間だよ」
家庭教師には、京楽本人がついてくれた。
座学からテーブルマナー、社交界のダンスの踊り方やら、身のふるまい方。全てを教えてくれた。
浮竹が12歳になる頃には、浮竹はますます美しく成長して、その魂は輝かんばかりで、とてもも美味しそうで、とても愛しく感じた。
12歳で社交界デビューを果たした浮竹は、その財力を狙う貴族の子女に囲まれて、気分が悪いと言ってきた少女を介抱していると、いきなり既成事実を作られそうになった。
京楽が、すんでのところで助けてくれた。
「君は、身の丈にあった相手を選ぶことだ。十四郎坊ちゃんにはつりあわないよ」
「いやああ、浮竹様の執事に襲われたあああ!!!」
少女はドレスを破り、騒ぎ出した。
すぐに京楽は逮捕されて、貴族への暴行未遂ということで死罪となった。
「京楽・・・いなくなってしまうのか?俺を置いていくな!」
「うん。もちろんだよ」
京楽を取り囲んでいた警備の者たちも、社交界にきていた貴族や従者たちも、みな昏倒させた。
その日の記憶を、京楽は全ての人間から奪った。
「君の魂も心も体も、僕のものだ。誰にもあげない」
「京楽・・・・・」
浮竹は、背伸びをして京楽の唇に唇で触れていた。
「十四郎坊ちゃん!?」
「俺はお前が好きだ。友人としても、家族としても。そして、1人の人間としても」
「そうは言われても、僕は悪魔の魔王だよ?」
「それでも、好きなんだ」
浮竹の周囲には、浮竹の金を目当てに集まる者しかいなかった。
そんな心寂しい状態で、唯一の温もりを与えてくれる相手を、どうして好きにならないでいられようか。
「面白い子だ。少し遊ぶのもいいか」
京楽の中で悪戯心が芽生えた。
浮竹が16になる頃、縁談の話が降り積もるようにわいてきた。
それを、京楽が全てつっぱねて、断った。
社交界に出ることはあったが、縁談の話が舞い込む度に、京楽が邪魔をしてきた。
「浮竹様、悪いことはいわないわ。あの京楽という執事、辞めさせたほうがいいわ。あなたの縁談の話の邪魔ばかりするのですよ」
叔母にあたる人の言葉に、浮竹は首を横に振る。
「あれは俺のものだ。俺がどうしようが、俺の勝手だ」
浮竹は、翡翠色の瞳で京楽の鳶色の瞳をいつも見ていた。
その底に浮かぶ欲を知りながら、京楽の傍にいた。
そのまま時は流れ、いつしか18の成人の時を迎えていた。
「今日でお別れだな」
「え、どうして?」
「だって、友人としていてくれるのは、成人の時までだろう?俺は18歳。成人した」
いつもの黒い燕尾服で、京楽はくつくつと笑い出した。
「俺の魂をくれてやる。この世に未練があるとしたら、お前ともっと時を過ごしたかった。それだけだ」
「十四郎坊ちゃん、悪魔の花嫁って知っているかい?」
「悪魔の花嫁?」
浮竹は首を傾げる。
「そう。悪魔やヴァンパイアは、気に入った相手を同族にして迎え入れる。それが悪魔の花嫁だよ」
「まさか・・・」
「そう、そのまさか。僕は君が気に入った。悪魔の花嫁として迎え入れたい。魂をいただくだけじゃ、気がすまない。その心も体も何もかも、僕のものにしたい」
浮竹は、真っ赤になった。
「その、心と体というのは・・・・」
「君が想像している通りだよ」
ふっと耳に息を吹きかけられて、浮竹はぞくりとなった。
「あ、京楽・・・・」
「十四郎坊ちゃん。いや、十四郎。僕を春水って呼んで」
「春水・・・・」
「ああ、いいね。ぞくぞくするよ」
京楽は、浮竹の魂を手中に収めて、それを浮竹に返した。
「あ、どうなったんだ?」
「君は悪魔になった。僕の同族で、僕の花嫁だ」
そのまま、京楽は浮竹の執事であり続けた。
浮竹は、夜になると京楽の部屋を訪れる。
「おや、また来たのかい」
「欲しい・・・お前が、欲しい」
魂まで手中に収められて、浮竹は完全に執事であった京楽のものになっていた。
「んっ」
舌が絡むキスをされて、浮竹は京楽の肩に噛みつく。
「この前つけたキスマーク、まだ残っているね」
浮竹は京楽を欲した。それも頻繁に。
悪魔の花嫁となり、悪魔としてなってしまったせいかは分からないが、魔王の子種を受けて、正気でいられる者などいない。
浮竹は昼は正気を保っているが、夜になると京楽を求めた。
そうなるように、京楽がしむけた。
「今夜は、寝かさないよ」
「ああ・・・春水、愛してる」
「僕も愛してるよ」
くつくつと、京楽は笑う。
愛なんて陳腐な台詞はいらないけれど、それで浮竹が安心するなら、いくらでも愛を囁いてあげよう。
そう思った。
「ああ、ああああ」
京楽に貫かれながら、浮竹は京楽の全部が欲しくて、その背中に手を回す。
「十四郎坊ちゃん、淫乱になっちゃったねぇ」
「ひあああ!」
ごりっと奥を貫かれて、浮竹は自分の腹の上で射精していた。
「もっと・・・もっと、お前をくれ」
浮竹の背中には、肩甲骨のあたりに悪魔の花嫁を意味する翼の文様があった。
「あああ!もっと!」
「十四郎、愛してるよ」
浮竹の胎の奥に子種を注ぎ込んでやり、そのまま京楽は浮竹の体の一部をいじり、孕ませた。
「あああ、やあああ、孕んじゃう!」
「僕たちの子だよ。元気な子を産んでね」
京楽は何度も浮竹の体内に子種を注いだ。
浮竹はオーガズムでいきながら、京楽のことを思う。
伴侶はいれど、子がいないとこの伯爵家を継ぐ者がいなくなる。
だから、京楽は浮竹に子を産ませるような体にした。それは一時的なもので、帝王切開で男児を出産した後は、元の普通の男性に戻っていた。
「んああああ!」
今日もまた、京楽の部屋で浮竹は啼いている。
生まれ落ちた赤子は、二人で慈しみながら育てた。いずれ、社交界でお披露目をするときもあるだろうし、母親は誰だと聞かれることもあるだろうが、息子に母親はもう他界してしまったと言って聞かせてある。
「んっ、もっと・・・・・」
まだまだだと求める浮竹抱き寄せ、銀の糸がひくようになるまで、口づけをかわしあう。
「春水、愛してる」
「僕も愛してるよ、十四郎」
浮竹は、18歳の頃から見た目が変わらなくなった。
それは悪魔の花嫁になったせいであり、悪魔となったせいでもあった。
訝しがる親戚たちの記憶を操作して、京楽は浮竹には結婚した女性がいて、すでに他界して子だけが残されたという設定にした。
「ふふふ。よく寝ているね」
2歳になったばかりの我がを抱きあげて、京楽は人間として生きる生活を送っていた。
「そろそろ、昼寝の時間だ」
「そうだね。よく食べて寝て、大きくおなり。時期浮竹伯爵家の当主で、魔王候補だ」
「魔王になんて、俺がさせないぞ」
「まぁ、そこらはこの子は大きくなってから、家族会議かな」
浮竹十四郎。
伯爵家の当主であり、悪魔の花嫁であり、悪魔でもある。
京楽春水。
浮竹伯爵家の執事であり、召還された悪魔で魔王であり、京楽と浮竹の間にできた子の父であった。
二人は、子がある程度の年齢に達しても、若い姿のままで居続けた。
京楽が国中の人間の記憶を操作して、見た目が変わらないことに関して疑問を抱かないようにしていた。
「京楽父様、浮竹父様、いってきます」
我が子は、家庭教師をつけたりせず、平民と交じって学校で授業を受けさせて、育てていた。
テーブルマナーは社交界のダンス、身の振り方は執事である京楽が教えてくれた。
結ばれても、京楽はあくまで執事であった。
それは京楽のポリシーであり、この世の召還されてはじめてついた職業が執事であり、浮竹の身の回りの世話をするのが好きなせいでもあった。
悪魔京楽。
そっちに世界では魔王として名が売れている京楽だったが、今はただ、この幸せな安寧に浸っているのだった。
黒い燕尾服を着て、穏やかに微笑むその姿がすきだった。
名は京楽春水。
浮竹は名前を浮竹十四郎という。浮竹家は伯爵の家柄で、両親は浮竹が幼い頃に病死してしまい、僅か8歳で浮竹は当主になった。
他に兄弟姉妹もいなくて、友人もおらず、家庭教師をつけられたが、周りに居る者たちはみんな浮竹のもつ金目当てだった。
僅か8歳で結婚されられそうになった。
浮竹は当主の座を放棄して逃げ出そうとしたが、周りの大人がそれを許してくれなくて、友達もおらず、心を許せる相手は気づけばだ誰もいなかった。
浮竹は、事故で両親を失い、友達もいない寂しさを紛らわすために、だめ元で黒魔術で両親を作り出そうとした。けれどそれは、悪魔召還の儀式だった。
勝手も分からず、黒い本の通りに自分の血で描いた円陣には、中心に人が立っていた。
「父上?」
「残念。僕は悪魔。悪魔の中の上位悪魔。いわゆる魔王ってやつだね。名は京楽春水」
「魔王・・・・・俺を、食うのか?」
目の前の白い髪の少女・・・いや、少年は、魔王と名乗った京楽に一切の恐れを抱かずに、ただ見つめていた。
「んー。君の魂は極上においしそうだ。願いをなんでも叶えてあげよう。ただし、その魂をくれるなら、ね」
「じゃあ、俺と友達になってくれ!」
「は?」
京楽は目を点にしていた。
てっきり、地位や名誉、財産などが欲しい、国が欲しいと言い出すと思っていたのだ。
「あはははは。魔王の僕を呼び出しておいて、友達になってくれ?おおいに結構じゃない。君の友達に、なってあげるよ。期限は君が成人するまで」
「成人するまで・・・・・・」
浮竹にはこうして執事ができた。正体は魔王という、執事が。
京楽は、家庭教師や住み込みの者たちを追い出して、屋敷を京楽だけで切り盛りし始めた。
魔王として配下を生み出し、メイドやコックを、雇う事なく京楽の血から作り出された人形で屋敷の管理を任せていた。
「さぁ、十四郎坊ちゃん、お勉強の時間だよ」
家庭教師には、京楽本人がついてくれた。
座学からテーブルマナー、社交界のダンスの踊り方やら、身のふるまい方。全てを教えてくれた。
浮竹が12歳になる頃には、浮竹はますます美しく成長して、その魂は輝かんばかりで、とてもも美味しそうで、とても愛しく感じた。
12歳で社交界デビューを果たした浮竹は、その財力を狙う貴族の子女に囲まれて、気分が悪いと言ってきた少女を介抱していると、いきなり既成事実を作られそうになった。
京楽が、すんでのところで助けてくれた。
「君は、身の丈にあった相手を選ぶことだ。十四郎坊ちゃんにはつりあわないよ」
「いやああ、浮竹様の執事に襲われたあああ!!!」
少女はドレスを破り、騒ぎ出した。
すぐに京楽は逮捕されて、貴族への暴行未遂ということで死罪となった。
「京楽・・・いなくなってしまうのか?俺を置いていくな!」
「うん。もちろんだよ」
京楽を取り囲んでいた警備の者たちも、社交界にきていた貴族や従者たちも、みな昏倒させた。
その日の記憶を、京楽は全ての人間から奪った。
「君の魂も心も体も、僕のものだ。誰にもあげない」
「京楽・・・・・」
浮竹は、背伸びをして京楽の唇に唇で触れていた。
「十四郎坊ちゃん!?」
「俺はお前が好きだ。友人としても、家族としても。そして、1人の人間としても」
「そうは言われても、僕は悪魔の魔王だよ?」
「それでも、好きなんだ」
浮竹の周囲には、浮竹の金を目当てに集まる者しかいなかった。
そんな心寂しい状態で、唯一の温もりを与えてくれる相手を、どうして好きにならないでいられようか。
「面白い子だ。少し遊ぶのもいいか」
京楽の中で悪戯心が芽生えた。
浮竹が16になる頃、縁談の話が降り積もるようにわいてきた。
それを、京楽が全てつっぱねて、断った。
社交界に出ることはあったが、縁談の話が舞い込む度に、京楽が邪魔をしてきた。
「浮竹様、悪いことはいわないわ。あの京楽という執事、辞めさせたほうがいいわ。あなたの縁談の話の邪魔ばかりするのですよ」
叔母にあたる人の言葉に、浮竹は首を横に振る。
「あれは俺のものだ。俺がどうしようが、俺の勝手だ」
浮竹は、翡翠色の瞳で京楽の鳶色の瞳をいつも見ていた。
その底に浮かぶ欲を知りながら、京楽の傍にいた。
そのまま時は流れ、いつしか18の成人の時を迎えていた。
「今日でお別れだな」
「え、どうして?」
「だって、友人としていてくれるのは、成人の時までだろう?俺は18歳。成人した」
いつもの黒い燕尾服で、京楽はくつくつと笑い出した。
「俺の魂をくれてやる。この世に未練があるとしたら、お前ともっと時を過ごしたかった。それだけだ」
「十四郎坊ちゃん、悪魔の花嫁って知っているかい?」
「悪魔の花嫁?」
浮竹は首を傾げる。
「そう。悪魔やヴァンパイアは、気に入った相手を同族にして迎え入れる。それが悪魔の花嫁だよ」
「まさか・・・」
「そう、そのまさか。僕は君が気に入った。悪魔の花嫁として迎え入れたい。魂をいただくだけじゃ、気がすまない。その心も体も何もかも、僕のものにしたい」
浮竹は、真っ赤になった。
「その、心と体というのは・・・・」
「君が想像している通りだよ」
ふっと耳に息を吹きかけられて、浮竹はぞくりとなった。
「あ、京楽・・・・」
「十四郎坊ちゃん。いや、十四郎。僕を春水って呼んで」
「春水・・・・」
「ああ、いいね。ぞくぞくするよ」
京楽は、浮竹の魂を手中に収めて、それを浮竹に返した。
「あ、どうなったんだ?」
「君は悪魔になった。僕の同族で、僕の花嫁だ」
そのまま、京楽は浮竹の執事であり続けた。
浮竹は、夜になると京楽の部屋を訪れる。
「おや、また来たのかい」
「欲しい・・・お前が、欲しい」
魂まで手中に収められて、浮竹は完全に執事であった京楽のものになっていた。
「んっ」
舌が絡むキスをされて、浮竹は京楽の肩に噛みつく。
「この前つけたキスマーク、まだ残っているね」
浮竹は京楽を欲した。それも頻繁に。
悪魔の花嫁となり、悪魔としてなってしまったせいかは分からないが、魔王の子種を受けて、正気でいられる者などいない。
浮竹は昼は正気を保っているが、夜になると京楽を求めた。
そうなるように、京楽がしむけた。
「今夜は、寝かさないよ」
「ああ・・・春水、愛してる」
「僕も愛してるよ」
くつくつと、京楽は笑う。
愛なんて陳腐な台詞はいらないけれど、それで浮竹が安心するなら、いくらでも愛を囁いてあげよう。
そう思った。
「ああ、ああああ」
京楽に貫かれながら、浮竹は京楽の全部が欲しくて、その背中に手を回す。
「十四郎坊ちゃん、淫乱になっちゃったねぇ」
「ひあああ!」
ごりっと奥を貫かれて、浮竹は自分の腹の上で射精していた。
「もっと・・・もっと、お前をくれ」
浮竹の背中には、肩甲骨のあたりに悪魔の花嫁を意味する翼の文様があった。
「あああ!もっと!」
「十四郎、愛してるよ」
浮竹の胎の奥に子種を注ぎ込んでやり、そのまま京楽は浮竹の体の一部をいじり、孕ませた。
「あああ、やあああ、孕んじゃう!」
「僕たちの子だよ。元気な子を産んでね」
京楽は何度も浮竹の体内に子種を注いだ。
浮竹はオーガズムでいきながら、京楽のことを思う。
伴侶はいれど、子がいないとこの伯爵家を継ぐ者がいなくなる。
だから、京楽は浮竹に子を産ませるような体にした。それは一時的なもので、帝王切開で男児を出産した後は、元の普通の男性に戻っていた。
「んああああ!」
今日もまた、京楽の部屋で浮竹は啼いている。
生まれ落ちた赤子は、二人で慈しみながら育てた。いずれ、社交界でお披露目をするときもあるだろうし、母親は誰だと聞かれることもあるだろうが、息子に母親はもう他界してしまったと言って聞かせてある。
「んっ、もっと・・・・・」
まだまだだと求める浮竹抱き寄せ、銀の糸がひくようになるまで、口づけをかわしあう。
「春水、愛してる」
「僕も愛してるよ、十四郎」
浮竹は、18歳の頃から見た目が変わらなくなった。
それは悪魔の花嫁になったせいであり、悪魔となったせいでもあった。
訝しがる親戚たちの記憶を操作して、京楽は浮竹には結婚した女性がいて、すでに他界して子だけが残されたという設定にした。
「ふふふ。よく寝ているね」
2歳になったばかりの我がを抱きあげて、京楽は人間として生きる生活を送っていた。
「そろそろ、昼寝の時間だ」
「そうだね。よく食べて寝て、大きくおなり。時期浮竹伯爵家の当主で、魔王候補だ」
「魔王になんて、俺がさせないぞ」
「まぁ、そこらはこの子は大きくなってから、家族会議かな」
浮竹十四郎。
伯爵家の当主であり、悪魔の花嫁であり、悪魔でもある。
京楽春水。
浮竹伯爵家の執事であり、召還された悪魔で魔王であり、京楽と浮竹の間にできた子の父であった。
二人は、子がある程度の年齢に達しても、若い姿のままで居続けた。
京楽が国中の人間の記憶を操作して、見た目が変わらないことに関して疑問を抱かないようにしていた。
「京楽父様、浮竹父様、いってきます」
我が子は、家庭教師をつけたりせず、平民と交じって学校で授業を受けさせて、育てていた。
テーブルマナーは社交界のダンス、身の振り方は執事である京楽が教えてくれた。
結ばれても、京楽はあくまで執事であった。
それは京楽のポリシーであり、この世の召還されてはじめてついた職業が執事であり、浮竹の身の回りの世話をするのが好きなせいでもあった。
悪魔京楽。
そっちに世界では魔王として名が売れている京楽だったが、今はただ、この幸せな安寧に浸っているのだった。
お花見
桜の花が満開だった。
京楽は浮竹を誘って、花見に出かけた。
花見の場所は、京楽の屋敷の一つだった。
「何で花見で、お前の屋敷にこなきゃいけないんだ」
「いいじゃない。おいしい食べ物と君の好きな果実酒を用意するから」
「仕方ない・・・・・・」
浮竹は、京楽にほだされて京楽の屋敷の一つに来ていた。
縁側で、満開の桜の花が見れるようになっていた。
「さぁ、僕らも解放的に!」
院生の服を脱ぎ出す京楽にアッパーをかまして、運ばれてきた食事を食べる。
今は短いが、春休みだった。
浮竹は実家に帰ることもなく、寮で過ごす予定だったが、京楽に外に連れ出されて今に至る。
「はっくしょん」
4月とはいえ、まだ寒い日もある。
京楽はにょきっと起き出して、上着をもってくると、ふわりと浮竹にかぶらせた。
「すまんな」
「君が風邪をひいたら、なかなか治らないからね」
「確かに、お前の言う通りだな」
「ほら、お酒飲もう」
お互いの杯に、酒を満たしていく。
京楽のものには高級な日本酒を、浮竹のものには甘い果実酒を。
桜の花が風に揺れて、杯の中にひらひらと落ちてきた。
「綺麗だね」
「ああ、綺麗だ」
「僕は、桜を背にしている君が綺麗だって言ってるの」
「はいはい」
「だから、ここは裸になって互いの温度を!」
また院生の服を脱ぎ出す京楽の股間を蹴って、浮竹は果実酒をあおり、食事を楽しんだ。
「お前の変態度には呆れるが、いい花見になった」
「そう良かった」
寮の部屋に戻ると、京楽は何かごそごそしだした。
「なんだ、また俺のパンツでも盗んでいるのか」
「え、盗んでいいの?」
「いいわけないだろ!」
綺麗な右ストレートが京楽の鳩尾に決まり、京楽はゴロゴロと痛みを味わいながらも、にんまりと笑んでいた。
「何だお前は」
「んー。押し花してたの」
「何の花を?」
「そりゃもちろん、桜の花を。君と花見をした記念に」
「完成したら、俺にもくれ。栞にしたい」
桜の押し花とは、京楽にしては風流だと思ったが、下心ありありのようだった。
「この押し花が完成した時、君と僕は・・・むふふふふ」
「何不穏なこと考えてるか知らんが、俺は押し花を受け取るだけだからな」
「その俺にあんなことやそんなことを」
そんな京楽に、浮竹は噛みつくようなキスをした。
一瞬のことだったので、京楽には実感がなく。
「もう一回!今度はもっと濃厚なやつを」
「誰がするか。さっきのは、花見の礼だ。ありがたく思え」
「ありがたいありがたい。だからもう一回!」
何度もそう言ってくる京楽に、呆れて浮竹は京楽を抱きしめた。
「今はこれで満足しろ」
「うん・・・・」
京楽は、浮竹を抱きしめ返していた。
キスとハグはするが、それ以上はしない。
それが二人の暗黙のルールだった。いつも京楽が破りそうになるけれど、その都度に浮竹の拳がうなりをあげた。
「そうだ。今から、ちょっと散歩に出てみない?」
「もうすぐ消灯時間だぞ」
「大丈夫。すぐに終わりるから」
京楽に手を繋がれて、二人は寮の部屋を後にする。
京楽が浮竹の手を繋いでやってきた場所は、川の橋の上だった。
風がふいて、満月の中、夜桜がきらきちと散っていた。
「これは・・・また、いい場所を知っているものだな」
「君と、いつかこの夜桜をみたいと思っていた」
「その願いが叶ったら?」
「君を僕だけのものにする」
抱きしめられて、キスをされた。
いつアッパーがきてもいいように身構える京楽は、浮竹の笑い声にぽかんとした。
「はははは、こんなに綺麗なものを見せてもらったんだ。殴らないさ」
「じゃあ、パンツ盗んだけど、それも殴らない?」
「それとこれとは話は別だ」
京楽の耳をつねりながら、あの頭に拳をうならせる。
「ぱんつの1枚や2枚いいじゃない」
「そう言って、去年お前が盗んだパンツの数が200を超えたよな」
びくっと、京楽がまた怒られると身構える。
「お前が盗んだから、お前の金で新しいのを買うだけだ」
「じゃあ、紐パンとかはいて・・・・おぶっ」
頬をビンタされて、それでも京楽は嬉し気だった。
「お前、本当に変態だな」
「うん。僕は変態だよ」
「そこは否定しろよな」
「否定したって、変態なことは変わらないから」
そんな京楽に、浮竹は頭を抱えるのだった。
京楽は浮竹を誘って、花見に出かけた。
花見の場所は、京楽の屋敷の一つだった。
「何で花見で、お前の屋敷にこなきゃいけないんだ」
「いいじゃない。おいしい食べ物と君の好きな果実酒を用意するから」
「仕方ない・・・・・・」
浮竹は、京楽にほだされて京楽の屋敷の一つに来ていた。
縁側で、満開の桜の花が見れるようになっていた。
「さぁ、僕らも解放的に!」
院生の服を脱ぎ出す京楽にアッパーをかまして、運ばれてきた食事を食べる。
今は短いが、春休みだった。
浮竹は実家に帰ることもなく、寮で過ごす予定だったが、京楽に外に連れ出されて今に至る。
「はっくしょん」
4月とはいえ、まだ寒い日もある。
京楽はにょきっと起き出して、上着をもってくると、ふわりと浮竹にかぶらせた。
「すまんな」
「君が風邪をひいたら、なかなか治らないからね」
「確かに、お前の言う通りだな」
「ほら、お酒飲もう」
お互いの杯に、酒を満たしていく。
京楽のものには高級な日本酒を、浮竹のものには甘い果実酒を。
桜の花が風に揺れて、杯の中にひらひらと落ちてきた。
「綺麗だね」
「ああ、綺麗だ」
「僕は、桜を背にしている君が綺麗だって言ってるの」
「はいはい」
「だから、ここは裸になって互いの温度を!」
また院生の服を脱ぎ出す京楽の股間を蹴って、浮竹は果実酒をあおり、食事を楽しんだ。
「お前の変態度には呆れるが、いい花見になった」
「そう良かった」
寮の部屋に戻ると、京楽は何かごそごそしだした。
「なんだ、また俺のパンツでも盗んでいるのか」
「え、盗んでいいの?」
「いいわけないだろ!」
綺麗な右ストレートが京楽の鳩尾に決まり、京楽はゴロゴロと痛みを味わいながらも、にんまりと笑んでいた。
「何だお前は」
「んー。押し花してたの」
「何の花を?」
「そりゃもちろん、桜の花を。君と花見をした記念に」
「完成したら、俺にもくれ。栞にしたい」
桜の押し花とは、京楽にしては風流だと思ったが、下心ありありのようだった。
「この押し花が完成した時、君と僕は・・・むふふふふ」
「何不穏なこと考えてるか知らんが、俺は押し花を受け取るだけだからな」
「その俺にあんなことやそんなことを」
そんな京楽に、浮竹は噛みつくようなキスをした。
一瞬のことだったので、京楽には実感がなく。
「もう一回!今度はもっと濃厚なやつを」
「誰がするか。さっきのは、花見の礼だ。ありがたく思え」
「ありがたいありがたい。だからもう一回!」
何度もそう言ってくる京楽に、呆れて浮竹は京楽を抱きしめた。
「今はこれで満足しろ」
「うん・・・・」
京楽は、浮竹を抱きしめ返していた。
キスとハグはするが、それ以上はしない。
それが二人の暗黙のルールだった。いつも京楽が破りそうになるけれど、その都度に浮竹の拳がうなりをあげた。
「そうだ。今から、ちょっと散歩に出てみない?」
「もうすぐ消灯時間だぞ」
「大丈夫。すぐに終わりるから」
京楽に手を繋がれて、二人は寮の部屋を後にする。
京楽が浮竹の手を繋いでやってきた場所は、川の橋の上だった。
風がふいて、満月の中、夜桜がきらきちと散っていた。
「これは・・・また、いい場所を知っているものだな」
「君と、いつかこの夜桜をみたいと思っていた」
「その願いが叶ったら?」
「君を僕だけのものにする」
抱きしめられて、キスをされた。
いつアッパーがきてもいいように身構える京楽は、浮竹の笑い声にぽかんとした。
「はははは、こんなに綺麗なものを見せてもらったんだ。殴らないさ」
「じゃあ、パンツ盗んだけど、それも殴らない?」
「それとこれとは話は別だ」
京楽の耳をつねりながら、あの頭に拳をうならせる。
「ぱんつの1枚や2枚いいじゃない」
「そう言って、去年お前が盗んだパンツの数が200を超えたよな」
びくっと、京楽がまた怒られると身構える。
「お前が盗んだから、お前の金で新しいのを買うだけだ」
「じゃあ、紐パンとかはいて・・・・おぶっ」
頬をビンタされて、それでも京楽は嬉し気だった。
「お前、本当に変態だな」
「うん。僕は変態だよ」
「そこは否定しろよな」
「否定したって、変態なことは変わらないから」
そんな京楽に、浮竹は頭を抱えるのだった。
魔王と勇者
桜の花が満開だった。
魔王浮竹は、前に言った通り、無礼講の花見パーティーを開催した。
町からコックを雇って、その日のために豪華な食事が用意された。
魔王浮竹と勇者京楽と、後は下働きの者や摂政の魔族なんかが参加していた。身内でのささやかパーティーのはずだった。
「なかなかうまいな、これ」
新勇者は、堂々と魔王城に乗り込んで、無礼講の花見パーティーに交じっていた。
「サンダー・・・・」
「浮竹、今日は無礼講でしょ?いいじゃない、新勇者パーティーがいたって」
新勇者は、タッパをもってきて、料理を詰めるだけ詰め込んでいく。
新勇者だけでなく、女僧侶、少年魔法使い、獣人盗賊、青年戦士まで、タッパーに料理をつめこんでいた。
「浮竹様、どうしましょう!料理の数が足りません!」
「急いで町に買い出しいにってくれ」
「浮竹、我慢だよ、我慢」
「京楽、俺はどうしてもあのモヒカンをやめて辮髪(べんぱつ)になっている、新勇者の頭を燃やしたい」
タッパがいっぱいになたら、限界まで料理を貪る新勇者パーティーに、他の魔族たちがざわざわとしていた。
「ええい、ヘルインフェルノ!」
「あちゃあ!あーちゃちゃちゃちゃちゃあちゃーー!!」
すっかり満州人になりきった新勇者は、拳法を披露しうようとするが、大切な自分の髪の毛が燃えていると知って、わめきだした。
「誰だ、俺の優雅な辮髪を燃やす奴は!」
「どうせアデランスだろ?」
浮竹はにこにこしていた。
その笑顔が怖いと思ったのは、何も京楽だけではないだろう。
「何故ばれている!」
「前のモヒカンもアデランスだったろう」
「べ、別に銀の食器を全部盗んで売ったりしてないからな!」
「へぇ、銀の食器がなくなったの、何故知ってるのかな?」
にこにこ笑う勇者の京楽に、新勇者は指をつきつけた。
「魔王なんかとできている元勇者のお前には分かるまい!俺は世界を救うために冒険をして、この魔王城まできたんだ!魔王浮竹の首をとらない限り、近くに住み着くからな!そして冒険をしていない間金がないから、魔王城のものを盗んで売る!これは正義だ!」
「ほう、正義か。じゃあ、魔王が新勇者を滅ぼすのも正義だよな?」
「え、あ、あれ?」
京楽は、すでに遠く離れていた。
他の魔族たちも、浮竹から離れていた。
「サンダーボルテックス!」
しびびびびび。
「なぜだああああ」
新勇者は、黒焦げになりながらも、魔王である浮竹に魔法を放った。
「カラミティファイア!」
それは、浮竹の白い髪の一部を焦がした。
「新勇者。僕の浮竹を傷つけるとは、いい度胸だね」
「へ、あ、勇者京楽、目を覚ませ!お前はこの魔王に操られているんだろう!」
「へぇ、僕が操られているって?LV限界を突破した僕が?」
「何、レベル限界突破だと!聞いていないぞ!お前たち、チートだな!ずるをしているんだろう!」
「魔王の加護に、レベル限界の突破がある。それがあれば、レベル500まであげられる」
「なにぃ!レベル500だと!お前たち、レベル99をこえているのか」
「こえてるとも。500に近いよ」
「このチート勇者とチート魔王め!正義の剣をくらえ!」
人造聖剣エクスカリバーで斬りかかってきた新勇者を、浮竹はその顔面をハリセンで叩いた。
「おぶ!」
「新勇者を一番ボコボコにした者に、金貨100枚をあげよう」
「まじか」
「やるしかないっしょ」
「俺、やる」
「はらへった」
魔族からの声はなく、代わりに新勇者パーティーが名乗りでた。
少年魔法使いは火の魔法で新勇者をあぶり、女僧侶が杖で新勇者の頭を勝ち割った。
獣人盗賊はナイフで新勇者の服を切り刻み、青年戦士は巨大な岩をもちあげて、それを新勇者に投げつけた。
「きゃあああ、裸にされたあああ!痛いし熱い!!酷い!!」
少年魔法使いは、トドメの魔法をさす。
「ダークエッジ」
黒い闇の刃は、新勇者の少しだけ残っていた辮髪を丸ハゲにした。
「勝者、少年魔法使い!」
わーわー。
魔族たちは喜んだ。
新勇者は、フルチンにされたあげく、辮髪を失い、泣いていた。
「酷い!俺はただ銀の食器を盗んで売って、パーティーの魔物討伐の上前をはねていただけなのに!」
「上前をはねていたですってええ!!」
新勇者は、さらに女僧侶にボコボコにされた。
少年魔法使いは、本当に金貨100枚を渡された。
「よし、今日は焼肉食い放題だ。新勇者はくるなよ」
「酷いいいいいい」
「酷いのはどっちだ!パーティーで退治したモンスターの報奨金はきっちり5分割すると決めていただろう。その上前をはねていたなんて、お前が悪い!」
「うわあああああん!魔王浮竹、あの新勇者パーティーを退治してくれ」
鼻水を垂らしながら全裸で近づいてくるものだから、浮竹は新勇者の足をひっかけてこかした。
「うわあああん。みんな俺をいじめるうううう!!」
「まぁ、とりあえず星になっておいで」
京楽が、新勇者の首を掴むと、そのまま魔王城の彼方の空へ投げ飛ばした。
キラーン。
新勇者は星になった。
花見パーティーは、気にせず続けられ、新勇者のいない新勇者パーティーは、食べて飲んで騒ぎあうのだった。
「新勇者、復活できるのか?」
「さぁ、それはパーティーメンバー次第じゃないかな。まぁ、一応パーティーのリーダーだから、追放はないと思うよ」
「ならいいんだが」
魔王は魔王なりに、新勇者のことを気にかけていた。
それは本当の勇者である京楽もだった。
馬鹿にして吹っ飛ばすが、また復活してきてくれないと楽しくない。
そう思うのであった。
魔王浮竹は、前に言った通り、無礼講の花見パーティーを開催した。
町からコックを雇って、その日のために豪華な食事が用意された。
魔王浮竹と勇者京楽と、後は下働きの者や摂政の魔族なんかが参加していた。身内でのささやかパーティーのはずだった。
「なかなかうまいな、これ」
新勇者は、堂々と魔王城に乗り込んで、無礼講の花見パーティーに交じっていた。
「サンダー・・・・」
「浮竹、今日は無礼講でしょ?いいじゃない、新勇者パーティーがいたって」
新勇者は、タッパをもってきて、料理を詰めるだけ詰め込んでいく。
新勇者だけでなく、女僧侶、少年魔法使い、獣人盗賊、青年戦士まで、タッパーに料理をつめこんでいた。
「浮竹様、どうしましょう!料理の数が足りません!」
「急いで町に買い出しいにってくれ」
「浮竹、我慢だよ、我慢」
「京楽、俺はどうしてもあのモヒカンをやめて辮髪(べんぱつ)になっている、新勇者の頭を燃やしたい」
タッパがいっぱいになたら、限界まで料理を貪る新勇者パーティーに、他の魔族たちがざわざわとしていた。
「ええい、ヘルインフェルノ!」
「あちゃあ!あーちゃちゃちゃちゃちゃあちゃーー!!」
すっかり満州人になりきった新勇者は、拳法を披露しうようとするが、大切な自分の髪の毛が燃えていると知って、わめきだした。
「誰だ、俺の優雅な辮髪を燃やす奴は!」
「どうせアデランスだろ?」
浮竹はにこにこしていた。
その笑顔が怖いと思ったのは、何も京楽だけではないだろう。
「何故ばれている!」
「前のモヒカンもアデランスだったろう」
「べ、別に銀の食器を全部盗んで売ったりしてないからな!」
「へぇ、銀の食器がなくなったの、何故知ってるのかな?」
にこにこ笑う勇者の京楽に、新勇者は指をつきつけた。
「魔王なんかとできている元勇者のお前には分かるまい!俺は世界を救うために冒険をして、この魔王城まできたんだ!魔王浮竹の首をとらない限り、近くに住み着くからな!そして冒険をしていない間金がないから、魔王城のものを盗んで売る!これは正義だ!」
「ほう、正義か。じゃあ、魔王が新勇者を滅ぼすのも正義だよな?」
「え、あ、あれ?」
京楽は、すでに遠く離れていた。
他の魔族たちも、浮竹から離れていた。
「サンダーボルテックス!」
しびびびびび。
「なぜだああああ」
新勇者は、黒焦げになりながらも、魔王である浮竹に魔法を放った。
「カラミティファイア!」
それは、浮竹の白い髪の一部を焦がした。
「新勇者。僕の浮竹を傷つけるとは、いい度胸だね」
「へ、あ、勇者京楽、目を覚ませ!お前はこの魔王に操られているんだろう!」
「へぇ、僕が操られているって?LV限界を突破した僕が?」
「何、レベル限界突破だと!聞いていないぞ!お前たち、チートだな!ずるをしているんだろう!」
「魔王の加護に、レベル限界の突破がある。それがあれば、レベル500まであげられる」
「なにぃ!レベル500だと!お前たち、レベル99をこえているのか」
「こえてるとも。500に近いよ」
「このチート勇者とチート魔王め!正義の剣をくらえ!」
人造聖剣エクスカリバーで斬りかかってきた新勇者を、浮竹はその顔面をハリセンで叩いた。
「おぶ!」
「新勇者を一番ボコボコにした者に、金貨100枚をあげよう」
「まじか」
「やるしかないっしょ」
「俺、やる」
「はらへった」
魔族からの声はなく、代わりに新勇者パーティーが名乗りでた。
少年魔法使いは火の魔法で新勇者をあぶり、女僧侶が杖で新勇者の頭を勝ち割った。
獣人盗賊はナイフで新勇者の服を切り刻み、青年戦士は巨大な岩をもちあげて、それを新勇者に投げつけた。
「きゃあああ、裸にされたあああ!痛いし熱い!!酷い!!」
少年魔法使いは、トドメの魔法をさす。
「ダークエッジ」
黒い闇の刃は、新勇者の少しだけ残っていた辮髪を丸ハゲにした。
「勝者、少年魔法使い!」
わーわー。
魔族たちは喜んだ。
新勇者は、フルチンにされたあげく、辮髪を失い、泣いていた。
「酷い!俺はただ銀の食器を盗んで売って、パーティーの魔物討伐の上前をはねていただけなのに!」
「上前をはねていたですってええ!!」
新勇者は、さらに女僧侶にボコボコにされた。
少年魔法使いは、本当に金貨100枚を渡された。
「よし、今日は焼肉食い放題だ。新勇者はくるなよ」
「酷いいいいいい」
「酷いのはどっちだ!パーティーで退治したモンスターの報奨金はきっちり5分割すると決めていただろう。その上前をはねていたなんて、お前が悪い!」
「うわあああああん!魔王浮竹、あの新勇者パーティーを退治してくれ」
鼻水を垂らしながら全裸で近づいてくるものだから、浮竹は新勇者の足をひっかけてこかした。
「うわあああん。みんな俺をいじめるうううう!!」
「まぁ、とりあえず星になっておいで」
京楽が、新勇者の首を掴むと、そのまま魔王城の彼方の空へ投げ飛ばした。
キラーン。
新勇者は星になった。
花見パーティーは、気にせず続けられ、新勇者のいない新勇者パーティーは、食べて飲んで騒ぎあうのだった。
「新勇者、復活できるのか?」
「さぁ、それはパーティーメンバー次第じゃないかな。まぁ、一応パーティーのリーダーだから、追放はないと思うよ」
「ならいいんだが」
魔王は魔王なりに、新勇者のことを気にかけていた。
それは本当の勇者である京楽もだった。
馬鹿にして吹っ飛ばすが、また復活してきてくれないと楽しくない。
そう思うのであった。
始祖なる者、ヴァンパイアマスター62
ウツクは、見た目こそ邪神ザナドゥにそっくりだし、記憶を継承していたが、浮竹を友人として愛しいと思う気持ちはなかった。
ただその血を与えられて血族となり、富と地位と名誉と力が欲しかった。
浮竹を服従させれば、血族になれると思っていた。
それが大きな誤りであると気づいた時には、遅かった。
-----------------------------------------------------
「兄様!今度の古城もいいかんじだね」
「げ、ブラッディ・ネイ。何しにきた」
「やっぱり、兄様覚えてない。明日はボクの誕生日だよ」
「え、そうだったか?」
浮竹が首を傾げる。
そういえば、ここ数年妹の誕生日を祝っていなかったことを思い出す。京楽の誕生日を祝い、自分の誕生日を、毎年ではないが祝ってもらったことはあるが、実の妹の誕生日なんて、日にちすら覚えていなかった。
「ああ、そうだったか、明日だったな」
じとーっと、ブラッディ・ネイは浮竹を見つめた。
「兄様、ボクの誕生日の存在自体、忘れてるね?」
「そ、そ、そんなことないぞ。ちゃんとプレゼントも用意してある」
「ほんと、兄様!明日を楽しみにしてるね!」
ブラッディ・ネイは目をきらきら輝かせて、血の帝国に戻っていった。
「ねぇ、浮竹・・・・・」
「やばい、忘れてた。妹の誕生日など、存在自体を忘れてた・・・くしょん」
「風邪でも引いたの?」
「いや、東洋の俺と浮竹が噂でもしているんだろう」
「ああ、それはありそうだね・・・・・って、現実逃避してる場合じゃないでしょ。プレゼント、何にするの」
「そうだな、生きたマンドレイクを20本くらい・・・・・」
浮竹はかなり本気だった。
「絶対、性別転換の薬飲ませて襲ってくるよ」
「ぐはぁっ!あいつならやりかねん。何か装飾品でも買ってくるか」
「もう夜だよ。どこの店も、きっとしまってるよ」
「ぐはぁっ!どうする俺!操の危機だ!」
「別に、装飾品ならなんでもいいんでしょ。そこらのS級ダンジョンの財宝にあった何かの装飾品でも贈ればいいんじゃないの」
京楽は、ブラッディ・ネイの生誕祭には興味はなかったが、浮竹が行くならついていくつもりだった。
「京楽、お前実は頭が良かったのか」
「何それ!まるで僕をバカだと思ってるみたいじゃない」
「いや、バカだと思ってた」
「酷い!」
泣き真似をする京楽を放置して、アイテムポケットからこのまえS級ダンジョンで拾ったお宝を床に並べる。
金と銀、ミスリル、ミスリル銀のインゴット、金貨、宝石・・・・。
「なんかぱっとしないなぁ」
金貨や宝石を贈ったところで、喜びはしそうだが、金銀財宝を見慣れているブラッディ・ネイが心から喜んでもらえそうなものもない。
浮竹は、さらに財宝をだした。
すると、その中に大きなスターサファイアをあしらったネックレスがあった。
浮竹は、何を思ったのかそのネックレスを錬金術の釜に投げ入れて、生きたマンドレイク、ドラゴンの血、後何かの液体を注ぎこんで煮た。
煮ること30分。
スターサファイアのネックレスは、輝きを増して、持ち主の魔力を高める能力が付与されていた。
「恐るべし浮竹・・・錬金術でそんなものに加工できるだなんて」
「ふっ、俺もミスリルランクの最高位錬金術士だ。こんな加工、朝飯前だ」
「でも、エリクサーの調合に失敗して、錬金術の館爆発させるもんねぇ」
京楽がしみじみと言う。
「エリクサーは成功率が低いんだ!それに調合に失敗したら爆発するのは当たり前だ!」
「そうなの?1週間前、乱菊ちゃんちに遊びにいったけど、爆発なんてしてなかったよ」
「まだ彼女はプラチナランクだろう。エリクサーを調合できないはずだ」
「でも、浮竹ってエリクサー以外でもたまに失敗して館、爆発させてるよね」
「誰にでもミスはある!」
浮竹は、顔を真っ赤にしながら否定した。
「まぁ、別になんでもいいんだけど」
浮竹はアイテムポケットからハリセンを取り出して、京楽の頭を殴る。
スパーン。
いい音がした。
「痛いよ、酷い、浮竹!何するの!」
「俺のほうが傷ついた!プライドを傷つけられた!だから、今日は抱かせてやらない!」
「えー。今日は前から約束してたじゃない」
「抱かせてやらないって言ったら、抱かせてやらない」
「十四郎、愛してるよ」
耳元で低音ボイスで囁かれて、耳を甘噛みされて浮竹はビクンと反応した。
「このばかっ!」
真っ赤になった浮竹は、すでにスイッチが入ってしまったかのようで、浮竹の背に手を回して、何度も口づけを繰り返すのであった。
-----------------------------------------------------------------
「ああああああ!!寝坊した!!!」
昨日遅くまで睦み合ったので、起きたら昼を過ぎていた。
「京楽、すぐ着替えろ!血の帝国にいくぞ!」
「あれ、結局生誕祭には行くの?」
「行くに決まっているだろう。行かなきゃ、ブラッディ・ネイがこっちの世界で半月はずっと居座りそうだ」
「うわあああ、それは急がないと!」
浮竹と京楽は、皇族の正式な格好をして、顔を洗って歯を磨いて、食事はしないまま血の帝国へと繋がる地下の空間転移の魔法陣に乗る。
気づくと、血の帝国が広がっていた。
「急ぐぞ」
宮殿より少し離れた位置に設置されているので、ヴァンパイアに翼を広げてブラッディ・ネイの宮殿にまでやってくると、寵姫たちに囲まれながらも、不貞腐れているブラッディ・ネイと視線があった。
「兄様!ちゃんと来てくれたんだ!ボクは信じてたよ兄様がちゃんと来てくれるって!」
すぐそばでは、ルキアと一護、冬獅郎がこそこそとやりとりをしていた。
「浮竹殿と京楽殿が来ないほうに賭けていたのに」
「お前は皇女で聖女だろうが。賭け事はすんな」
「俺も浮竹と京楽がこない方に賭けてた・・・・負けだな」
「何が負けなんだ?」
額に血管マークを浮かべる浮竹に、3人は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「全く、人を賭け事の対象にするな」
白哉と恋次もきていた。
皇族王である白哉は、ブラッディ・ネイの次に血の帝国において身分が高い。
白哉の寵愛を得ようと、ブラッディ・ネイの寵姫たちが迫ってくるが、それを恋次が防いでいた。
「だから、白哉さんは俺のものだって言ってるだろうが!」
「勝手にお前のものにするな。私は誰のものでもない」
白哉の冷たい視線と態度に、恋次は見えない犬の尻尾を振っているように見えた。
「もう、白哉さんは照れ屋なんだから」
「散れ、千本桜・・・・」
「うわあああ、冗談です、すみません、すみません」
ぺこぺこと詫びる恋次を、浮竹も京楽もなんともいえない目で見つめていた。
たまに、自分たちもああなるのだ。
浮竹が怒って、それに対して京楽が謝りまくる。その構図が、白哉と恋次あてはまって、なんともえない気持ちになった。
「ブラッディ・ネイ。8045歳おめでとう」
「ありがとう、兄様。年齢はちゃんと覚えてくれてたんだ」
「ああ。俺が8050歳だからな」
神代の頃に生まれてから8千年と少しを超えていた。
ブラッディ・ネイは不老不死の限りなく近い、転生という状態を維持して、血の帝国をずっとまとめあげてきた。
8千年の間、浮竹のように5千年も休眠することなく、ずっと休眠しないで活動してきた。
そのせいか、性格はやや歪み、性愛の対象が十代前半の少女になっていた。
浮竹が眠る前、生まれた頃はちゃんとした異性愛者で、結婚し子を成していた。その血筋が、今の皇族の基本になるのだが。
「ほら、ブラッディ・ネイ。誕生日プレゼントだ」
「ぎいやああああ」
「ぎぃえええええ」
「ぎょわえええええええええ」
そう叫びまくる生きたマンドレイクを出されて、ブラッディ・ネイは寵姫たちに何か命令しだす。
「こ、これはただの手土産だ!本物はこっちだ!」
浮竹は、性別転換の薬を盛られる前に、本命のスターサファイアのネックレスをブラッディ・ネイに与えた。
「わぁ、綺麗。それに、身に着けると魔力が上がるんだね。素敵な贈り物をありがとう、兄様。寵姫たち、さっき命じたことはしなくていいよ」
「お前、俺がマンドレイクだけだったら、俺を女にして襲うつもりだったな?」
「やだなぁ、そんな当たり前のこと」
「当たり前にするな!全く、お前はすぐに俺とどうこうなりたがるから、この宮殿に住まう気がしないんだ」
「別に、ボクがどうこうしなくても、兄様はそのひげもじゃと一緒にいるために、古城に住んでたでしょう?」
「そ、それは・・・・・」
浮竹は赤くなった。
「照れてる兄様かわいい!」
ブラッディ・ネイは浮竹に抱き着いていた。今の体は9代目にあたり、16くらいの皇族の少女の体だった。
もとの皇族の少女の意識はもうない。
ブラッディ・ネイの転生先に選ばれた皇族や貴族は、その身内に莫大な富を与えて、自分の娘を人未御供にしたわけではなく、選ばれた神の子であると信じさせた。
今までそうやって生きてきた。
そういう生き方しか知らなかった。
寵姫たちを愛し、男の子種なしで妊娠させれるようになった。
寵姫の数はいつも40人前後だった。
「お前、そういえば去年に競り落とした魂のルビーはどうした?」
「ああ、あれ。飽きちゃったから、宝物庫にしまってあるよ」
「飽きるのが、相変わらず早いな」
「でも兄様には飽きてないよ!何度転生しても、兄様を愛している」
「俺は、お前を妹としては愛しているのだと思う。だが、お前の求める愛には答えられない」
ぶすーっと、美しい顔でブラッディ・ネイは不貞腐れた。
「全く、あんなひげもじゃの元人間のどこがいいんだか」
「元人間だが、今はヴァンパイアロードであり、魔神だ」
「魔神ってのが気にくわない」
「いざとなったら、君の魂だって食べれるんだよ。魂を喰われてしまえば、君も終わりだ。せいぜい、浮竹にあまり迷惑をかけないことだね」
京楽の余裕ぶった態度が気に食わなくて、ブラッディ・ネイは京楽に向かって、寵姫の誰かがあげた宝石を頭に向かって投げた。
それを後ろを見ないままキャッチする京楽に、寵姫たちの数人が惚れ惚れしていた。
「ほらほら、ボクの寵姫たち。お戯れの時間は終わりだ。後宮に戻りなさい」
「ブラッディ・ネイ様ずるいわ。わたくしも、白哉様や浮竹様や京楽様と話したい」
「だーめ。そんなこと言う子には、お仕置きだよ?」
「きゃっ、ブラッディ・ネイ様のエッチ!」
きゃっきゃと女の子同士で会話しているのは、見ていて和むが、会話の内容が内容だけになんとも言えない気持ちになった。
「浮竹」
「どうした、白哉」
「兄に、何か悪い影が近づいている。せいぜい、気をつけることだ」
「悪い影だって。藍染の手の者だったりしてね」
「そうだねぇ。僕は、確かに藍染の手の者。悪い影かもねぇ」
「誰だ!」
浮竹は、皆に結界を張った。
「ザナドゥ?」
「それは父の名だよ。僕の名はウツク。美しいから、ウツク。この前君が殺したミニクの兄弟さ」
「ザナドゥではないのか・・・そうだな、確かにザナドゥは死んだはずだ」
「浮竹、宮殿を出よう。ここでバトルしたら、被害が出過ぎる」
「僕はここでもいいんだよ?ヘルインフェルノ」
「きゃあああ!!」
「いやあああ!!」
ブラッディ・ネイの寵姫が火に包まれ、ブラッディ・ネイは得意の薔薇魔法で炎を鎮火させると、火傷をの痕が残らないように、自分の血をかけて、寵姫たちを守った。
「お前、関係のない者を巻き込むな!」
「巻き込んで欲しくなければ、君の血族にしてよ」
「な!」
「浮竹、いいから宮殿の外に出よう!」
「僕はここから動かないよ。ここにいる者全員を殺す。それがいやなら、僕を血族にしてよ」
ブラッディ・ネイの薔薇の魔法で束縛されても、ウツクは何事もなかったかのように空に浮かんでいた。
「この、よくもボクの寵姫を!」
「うるさいなぁ。部外者は黙っていてよ。ボルケーノトライアングル」
「くっ」
炎に巻き込まれて、ブラッディ・ネイは薔薇魔法で炎を喰った。
「ブラッディ・ネイ様!」
「兄は、愚かだ。なんの関係もない者を手にかけて、浮竹が兄を血族にするとでも?」
白哉の言葉にいらついて、ウツクは白哉を風の魔法でスタズタにした。
「白哉さん!」
「恋次、やめろ。お前のかなう相手ではない!」
「でも、白哉さん、怪我を!」
「この程度、自分で再生できる」
「さぁ、我が友浮竹。血族にしないと、ここにいる者を全員皆殺しにするよ?血を頂戴」
浮竹は、ワイングラスをとると、それに血を滴らせた。
「これを飲め。血族になれるはずだ」
「やったね。藍染はバカだ。最初からこうすればよかったのに」
浮竹の血を飲んでいき、ウツクはヴァンパイアロードに進化したように見えた。
「あはははは、力が漲ってくる」
「浮竹!」
「京楽、ここは黙って俺の言葉を聞いてくれないか」
「何か策があるんだね。いいよ」
「ちゃんと血族にした。城の外に出ろ」
「はいはい。主の言うことは絶対だからね」
宮殿の外に出ると、太陽の光を通さないための血の幕の結界が血の帝国中を覆っていた。
浮竹は、頭上にある血の結界の一部を壊した。
「なんだ、太陽の光なんて・・・・・・ぎゃあああああああ!!!」
「お前に与えた血は、確かに俺のものだ。だが、俺が望まない限り、血族となってもただのヴァンパイアかそれ以下になる。それに、京楽以外に血族はいらない」
「浮竹・・・・」
京楽は感動して、涙ぐんでいた。
「おのれええ、騙したな!」
「騙されるお前が、間抜けなんだ」
「太陽が、太陽が眩しい・・・・・うぎゃあああああ」
ウツクは、太陽の光を浴びて灰となった。
頭上の結界を元に戻して、浮竹は京楽と一緒に宮殿の中に戻ってくる。
「終わったぞ」
「浮竹かっこいい。痺れる。今すぐ抱いて」
京楽は、浮竹の右腕をぎゅーっと掴んでいた。
「俺はお前に抱かれることはできるが、お前を抱きたくはない」
「振られちゃった。でも浮竹、愛しているよ。血族を一度作ったのも、許してあげる」
「許すも許さないも、血族を誰にするかは俺の自由だ」
京楽の瞳に、狂気に満ちた色が宿っていることを知らずに、ブラッディ・ネイの生誕祭を引き続き行い、夜まで騒ぎ会うのだった。
------------------------------------------------------------------------------
「だからさぁ、君の血族は僕だけでいいって、教えてあげなきゃね?」
「やああん」
浮竹は、静かに怒る京楽に、目隠しをされて前を戒められて、手を後ろで拘束されていた。
「やあああ、とって、とってえええ」
「だーめ。君の血族は僕だけだよ。僕の許可なしに血族にしたりして・・・・・・許せない」
京楽は、狂気じみた笑顔を浮かべていた。
浮竹の蕾を指でぐちゃぐちゃにしてやる。
「やああ、あれは、あれは、ただ血族しただけで、愛するとかそういうのじゃなくて」
「それでも、君が僕以外を血族にしたことを許せない」
「ああああ、ごめんなさい」
ぐちゅりと中を突きあげると、浮竹はオーガズムでいっていた。
「これは、お仕置きだからね?」
「やあああ、いきたい、いきたい、とってええ」
「そう簡単にとっちゃったら、お仕置きにならないでしょ?」
「やああああ、いきたい」
「だーめ」
浮竹の中を味わうように、わざとゆっくり挿入する。
そして、ゆっくり引き抜き、またゆっくり突き入れた。
「あ、あ、もっと激しくして、春水」
「欲張りな子だねぇ」
京楽は、言われた通り、ぐちゅぐちゅと音がするほどに貫き、犯した。
浮竹は見えない視線で、京楽を探す。
「目隠しだけは、とってあげる」
涙を吸い取って重くなった目隠しを外してやると、泣きすぎて目を真っ赤にさせた浮竹がいた。
「ごめんね。こんな怒りのぶつけかた、だめなのは分かってる」
「春水、キスして」
「十四郎・・・僕だけのものだよ」
浮竹は、京楽のキスにうっとりしていた。
「あああ!」
京楽がごりごりっと奥を突きあげると、浮竹はオーガズムでいっていた。
「やああ、とってええ、いきたい」
「仕方ないねぇ。あんまりお仕置きになってないけど、とってあげる」
まず手の戒めをといて、最後に京楽が最奥をぐりっとえぐった瞬間に、前を戒めていた紐をとってやった。
「やああああ、いく、いく、いっちゃう♡」
「エロい子だね」
「やあああん」
びゅるびゅると飛んだ精子は、勢いよくはじけて、浮竹と京楽の腹だけでなく、胸や顔にもかかった。
「たくさんだしたね?きもちよかった?」
「あああ、きもちいい、いくの、止まらない♡」
「僕もいくからね。全部うけとってね」
「ああ、春水の子種、ちょうだい」
浮竹は足を開いて、京楽を離すまいと腰を足で挟み、背中に手を回した。
びゅーびゅーと、勢いよく京楽の精液が浮竹の中に注がれる。
「あ、あ、もっといっぱいちょうだい、春水」
「十四郎・・・ほんとにエロくていけない子だ」
京楽は、ぱんぱんと肉がぶつかり合う音をさせながら、浮竹を攻めた。
「ああああ!!」
また、奥で精液を注いでやると、浮竹はオーガズムでいきながら、射精していた。
「ぐずぐずになっちゃいなよ」
浮竹の肩に噛みついて、吸血してやると、浮竹は精液の代わりに潮をふいていた。
「あ、ああ”!いくの、とまらない♡」
「いつまでもいっていていいよ。僕と君との時間は無限にあるのだから」
「やあああ、いきすぎて、変になるうう」
「そしたら、僕が責任をもって、抱いてあげる」
「ああああ!」
ガツンと奥までえぐってくる熱に、浮竹はオーガズムでいきながら、緩やかに気を失うのであった。
「はぁ・・やりすぎちゃったかな。ごめんね」
意識のない浮竹に口づける。
シーツはすごいことになっていた。
洗うだけ無駄だろうからと、捨てることにした。
「愛しているよ、十四郎」
長い白い髪を、すいてから、京楽は後始末をするために、一度寝室を後にするのであった。
------------------------------------------------------------------------
「やっと手に入れた」
藍染は、浮竹の子種が少量だけ入った小瓶を手にしていた。
京楽が後始末のために離れている間に、シーツについていた精液を、式に命令して採取しておいたのだ。
「さぁ、これで親子同士で対決だ。ウツクは見事に京楽を怒らせることに成功した。お陰で、浮竹の精液を入手できた」
肉便器に、薄めた液体を注ぎ込む。
「一匹だけじゃあ、物足りない。ヴァンパイアマスターと女神の子だ。何匹か産んでもらうぞ」
肉便器には、もう女神アルテナの魂はない。
ただ、孕まされて、子を産む落とすだけの肉塊だ。
「なぁ、ミライ」
「はい、父さま」
ミライは、成長促進の禁呪をかけられて、今5歳くらいになっていた。美しい幼子だった。
「いずれ、お前の力が必要だ。始祖ヴァンパイアと同じ絶対存在となった、お前の力が」
「はい、父さま。私は喜んで、父さまの力になりましょう」
「いい子だ。キララ、キララはいるか」
「こ、ここにいます」
キララは、名を呼ばれて急いで藍染の元に向かった。
「お前には、今度生まれてくる子供と一緒に、浮竹と京楽の元へ行ってもらう。今度こそ、魂を狩りとれ。これは命令だ。わかるな?」
「はい・・・全ては藍染様の御心のままに」
キララは、死を覚悟するのであった。
ただその血を与えられて血族となり、富と地位と名誉と力が欲しかった。
浮竹を服従させれば、血族になれると思っていた。
それが大きな誤りであると気づいた時には、遅かった。
-----------------------------------------------------
「兄様!今度の古城もいいかんじだね」
「げ、ブラッディ・ネイ。何しにきた」
「やっぱり、兄様覚えてない。明日はボクの誕生日だよ」
「え、そうだったか?」
浮竹が首を傾げる。
そういえば、ここ数年妹の誕生日を祝っていなかったことを思い出す。京楽の誕生日を祝い、自分の誕生日を、毎年ではないが祝ってもらったことはあるが、実の妹の誕生日なんて、日にちすら覚えていなかった。
「ああ、そうだったか、明日だったな」
じとーっと、ブラッディ・ネイは浮竹を見つめた。
「兄様、ボクの誕生日の存在自体、忘れてるね?」
「そ、そ、そんなことないぞ。ちゃんとプレゼントも用意してある」
「ほんと、兄様!明日を楽しみにしてるね!」
ブラッディ・ネイは目をきらきら輝かせて、血の帝国に戻っていった。
「ねぇ、浮竹・・・・・」
「やばい、忘れてた。妹の誕生日など、存在自体を忘れてた・・・くしょん」
「風邪でも引いたの?」
「いや、東洋の俺と浮竹が噂でもしているんだろう」
「ああ、それはありそうだね・・・・・って、現実逃避してる場合じゃないでしょ。プレゼント、何にするの」
「そうだな、生きたマンドレイクを20本くらい・・・・・」
浮竹はかなり本気だった。
「絶対、性別転換の薬飲ませて襲ってくるよ」
「ぐはぁっ!あいつならやりかねん。何か装飾品でも買ってくるか」
「もう夜だよ。どこの店も、きっとしまってるよ」
「ぐはぁっ!どうする俺!操の危機だ!」
「別に、装飾品ならなんでもいいんでしょ。そこらのS級ダンジョンの財宝にあった何かの装飾品でも贈ればいいんじゃないの」
京楽は、ブラッディ・ネイの生誕祭には興味はなかったが、浮竹が行くならついていくつもりだった。
「京楽、お前実は頭が良かったのか」
「何それ!まるで僕をバカだと思ってるみたいじゃない」
「いや、バカだと思ってた」
「酷い!」
泣き真似をする京楽を放置して、アイテムポケットからこのまえS級ダンジョンで拾ったお宝を床に並べる。
金と銀、ミスリル、ミスリル銀のインゴット、金貨、宝石・・・・。
「なんかぱっとしないなぁ」
金貨や宝石を贈ったところで、喜びはしそうだが、金銀財宝を見慣れているブラッディ・ネイが心から喜んでもらえそうなものもない。
浮竹は、さらに財宝をだした。
すると、その中に大きなスターサファイアをあしらったネックレスがあった。
浮竹は、何を思ったのかそのネックレスを錬金術の釜に投げ入れて、生きたマンドレイク、ドラゴンの血、後何かの液体を注ぎこんで煮た。
煮ること30分。
スターサファイアのネックレスは、輝きを増して、持ち主の魔力を高める能力が付与されていた。
「恐るべし浮竹・・・錬金術でそんなものに加工できるだなんて」
「ふっ、俺もミスリルランクの最高位錬金術士だ。こんな加工、朝飯前だ」
「でも、エリクサーの調合に失敗して、錬金術の館爆発させるもんねぇ」
京楽がしみじみと言う。
「エリクサーは成功率が低いんだ!それに調合に失敗したら爆発するのは当たり前だ!」
「そうなの?1週間前、乱菊ちゃんちに遊びにいったけど、爆発なんてしてなかったよ」
「まだ彼女はプラチナランクだろう。エリクサーを調合できないはずだ」
「でも、浮竹ってエリクサー以外でもたまに失敗して館、爆発させてるよね」
「誰にでもミスはある!」
浮竹は、顔を真っ赤にしながら否定した。
「まぁ、別になんでもいいんだけど」
浮竹はアイテムポケットからハリセンを取り出して、京楽の頭を殴る。
スパーン。
いい音がした。
「痛いよ、酷い、浮竹!何するの!」
「俺のほうが傷ついた!プライドを傷つけられた!だから、今日は抱かせてやらない!」
「えー。今日は前から約束してたじゃない」
「抱かせてやらないって言ったら、抱かせてやらない」
「十四郎、愛してるよ」
耳元で低音ボイスで囁かれて、耳を甘噛みされて浮竹はビクンと反応した。
「このばかっ!」
真っ赤になった浮竹は、すでにスイッチが入ってしまったかのようで、浮竹の背に手を回して、何度も口づけを繰り返すのであった。
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「ああああああ!!寝坊した!!!」
昨日遅くまで睦み合ったので、起きたら昼を過ぎていた。
「京楽、すぐ着替えろ!血の帝国にいくぞ!」
「あれ、結局生誕祭には行くの?」
「行くに決まっているだろう。行かなきゃ、ブラッディ・ネイがこっちの世界で半月はずっと居座りそうだ」
「うわあああ、それは急がないと!」
浮竹と京楽は、皇族の正式な格好をして、顔を洗って歯を磨いて、食事はしないまま血の帝国へと繋がる地下の空間転移の魔法陣に乗る。
気づくと、血の帝国が広がっていた。
「急ぐぞ」
宮殿より少し離れた位置に設置されているので、ヴァンパイアに翼を広げてブラッディ・ネイの宮殿にまでやってくると、寵姫たちに囲まれながらも、不貞腐れているブラッディ・ネイと視線があった。
「兄様!ちゃんと来てくれたんだ!ボクは信じてたよ兄様がちゃんと来てくれるって!」
すぐそばでは、ルキアと一護、冬獅郎がこそこそとやりとりをしていた。
「浮竹殿と京楽殿が来ないほうに賭けていたのに」
「お前は皇女で聖女だろうが。賭け事はすんな」
「俺も浮竹と京楽がこない方に賭けてた・・・・負けだな」
「何が負けなんだ?」
額に血管マークを浮かべる浮竹に、3人は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。
「全く、人を賭け事の対象にするな」
白哉と恋次もきていた。
皇族王である白哉は、ブラッディ・ネイの次に血の帝国において身分が高い。
白哉の寵愛を得ようと、ブラッディ・ネイの寵姫たちが迫ってくるが、それを恋次が防いでいた。
「だから、白哉さんは俺のものだって言ってるだろうが!」
「勝手にお前のものにするな。私は誰のものでもない」
白哉の冷たい視線と態度に、恋次は見えない犬の尻尾を振っているように見えた。
「もう、白哉さんは照れ屋なんだから」
「散れ、千本桜・・・・」
「うわあああ、冗談です、すみません、すみません」
ぺこぺこと詫びる恋次を、浮竹も京楽もなんともいえない目で見つめていた。
たまに、自分たちもああなるのだ。
浮竹が怒って、それに対して京楽が謝りまくる。その構図が、白哉と恋次あてはまって、なんともえない気持ちになった。
「ブラッディ・ネイ。8045歳おめでとう」
「ありがとう、兄様。年齢はちゃんと覚えてくれてたんだ」
「ああ。俺が8050歳だからな」
神代の頃に生まれてから8千年と少しを超えていた。
ブラッディ・ネイは不老不死の限りなく近い、転生という状態を維持して、血の帝国をずっとまとめあげてきた。
8千年の間、浮竹のように5千年も休眠することなく、ずっと休眠しないで活動してきた。
そのせいか、性格はやや歪み、性愛の対象が十代前半の少女になっていた。
浮竹が眠る前、生まれた頃はちゃんとした異性愛者で、結婚し子を成していた。その血筋が、今の皇族の基本になるのだが。
「ほら、ブラッディ・ネイ。誕生日プレゼントだ」
「ぎいやああああ」
「ぎぃえええええ」
「ぎょわえええええええええ」
そう叫びまくる生きたマンドレイクを出されて、ブラッディ・ネイは寵姫たちに何か命令しだす。
「こ、これはただの手土産だ!本物はこっちだ!」
浮竹は、性別転換の薬を盛られる前に、本命のスターサファイアのネックレスをブラッディ・ネイに与えた。
「わぁ、綺麗。それに、身に着けると魔力が上がるんだね。素敵な贈り物をありがとう、兄様。寵姫たち、さっき命じたことはしなくていいよ」
「お前、俺がマンドレイクだけだったら、俺を女にして襲うつもりだったな?」
「やだなぁ、そんな当たり前のこと」
「当たり前にするな!全く、お前はすぐに俺とどうこうなりたがるから、この宮殿に住まう気がしないんだ」
「別に、ボクがどうこうしなくても、兄様はそのひげもじゃと一緒にいるために、古城に住んでたでしょう?」
「そ、それは・・・・・」
浮竹は赤くなった。
「照れてる兄様かわいい!」
ブラッディ・ネイは浮竹に抱き着いていた。今の体は9代目にあたり、16くらいの皇族の少女の体だった。
もとの皇族の少女の意識はもうない。
ブラッディ・ネイの転生先に選ばれた皇族や貴族は、その身内に莫大な富を与えて、自分の娘を人未御供にしたわけではなく、選ばれた神の子であると信じさせた。
今までそうやって生きてきた。
そういう生き方しか知らなかった。
寵姫たちを愛し、男の子種なしで妊娠させれるようになった。
寵姫の数はいつも40人前後だった。
「お前、そういえば去年に競り落とした魂のルビーはどうした?」
「ああ、あれ。飽きちゃったから、宝物庫にしまってあるよ」
「飽きるのが、相変わらず早いな」
「でも兄様には飽きてないよ!何度転生しても、兄様を愛している」
「俺は、お前を妹としては愛しているのだと思う。だが、お前の求める愛には答えられない」
ぶすーっと、美しい顔でブラッディ・ネイは不貞腐れた。
「全く、あんなひげもじゃの元人間のどこがいいんだか」
「元人間だが、今はヴァンパイアロードであり、魔神だ」
「魔神ってのが気にくわない」
「いざとなったら、君の魂だって食べれるんだよ。魂を喰われてしまえば、君も終わりだ。せいぜい、浮竹にあまり迷惑をかけないことだね」
京楽の余裕ぶった態度が気に食わなくて、ブラッディ・ネイは京楽に向かって、寵姫の誰かがあげた宝石を頭に向かって投げた。
それを後ろを見ないままキャッチする京楽に、寵姫たちの数人が惚れ惚れしていた。
「ほらほら、ボクの寵姫たち。お戯れの時間は終わりだ。後宮に戻りなさい」
「ブラッディ・ネイ様ずるいわ。わたくしも、白哉様や浮竹様や京楽様と話したい」
「だーめ。そんなこと言う子には、お仕置きだよ?」
「きゃっ、ブラッディ・ネイ様のエッチ!」
きゃっきゃと女の子同士で会話しているのは、見ていて和むが、会話の内容が内容だけになんとも言えない気持ちになった。
「浮竹」
「どうした、白哉」
「兄に、何か悪い影が近づいている。せいぜい、気をつけることだ」
「悪い影だって。藍染の手の者だったりしてね」
「そうだねぇ。僕は、確かに藍染の手の者。悪い影かもねぇ」
「誰だ!」
浮竹は、皆に結界を張った。
「ザナドゥ?」
「それは父の名だよ。僕の名はウツク。美しいから、ウツク。この前君が殺したミニクの兄弟さ」
「ザナドゥではないのか・・・そうだな、確かにザナドゥは死んだはずだ」
「浮竹、宮殿を出よう。ここでバトルしたら、被害が出過ぎる」
「僕はここでもいいんだよ?ヘルインフェルノ」
「きゃあああ!!」
「いやあああ!!」
ブラッディ・ネイの寵姫が火に包まれ、ブラッディ・ネイは得意の薔薇魔法で炎を鎮火させると、火傷をの痕が残らないように、自分の血をかけて、寵姫たちを守った。
「お前、関係のない者を巻き込むな!」
「巻き込んで欲しくなければ、君の血族にしてよ」
「な!」
「浮竹、いいから宮殿の外に出よう!」
「僕はここから動かないよ。ここにいる者全員を殺す。それがいやなら、僕を血族にしてよ」
ブラッディ・ネイの薔薇の魔法で束縛されても、ウツクは何事もなかったかのように空に浮かんでいた。
「この、よくもボクの寵姫を!」
「うるさいなぁ。部外者は黙っていてよ。ボルケーノトライアングル」
「くっ」
炎に巻き込まれて、ブラッディ・ネイは薔薇魔法で炎を喰った。
「ブラッディ・ネイ様!」
「兄は、愚かだ。なんの関係もない者を手にかけて、浮竹が兄を血族にするとでも?」
白哉の言葉にいらついて、ウツクは白哉を風の魔法でスタズタにした。
「白哉さん!」
「恋次、やめろ。お前のかなう相手ではない!」
「でも、白哉さん、怪我を!」
「この程度、自分で再生できる」
「さぁ、我が友浮竹。血族にしないと、ここにいる者を全員皆殺しにするよ?血を頂戴」
浮竹は、ワイングラスをとると、それに血を滴らせた。
「これを飲め。血族になれるはずだ」
「やったね。藍染はバカだ。最初からこうすればよかったのに」
浮竹の血を飲んでいき、ウツクはヴァンパイアロードに進化したように見えた。
「あはははは、力が漲ってくる」
「浮竹!」
「京楽、ここは黙って俺の言葉を聞いてくれないか」
「何か策があるんだね。いいよ」
「ちゃんと血族にした。城の外に出ろ」
「はいはい。主の言うことは絶対だからね」
宮殿の外に出ると、太陽の光を通さないための血の幕の結界が血の帝国中を覆っていた。
浮竹は、頭上にある血の結界の一部を壊した。
「なんだ、太陽の光なんて・・・・・・ぎゃあああああああ!!!」
「お前に与えた血は、確かに俺のものだ。だが、俺が望まない限り、血族となってもただのヴァンパイアかそれ以下になる。それに、京楽以外に血族はいらない」
「浮竹・・・・」
京楽は感動して、涙ぐんでいた。
「おのれええ、騙したな!」
「騙されるお前が、間抜けなんだ」
「太陽が、太陽が眩しい・・・・・うぎゃあああああ」
ウツクは、太陽の光を浴びて灰となった。
頭上の結界を元に戻して、浮竹は京楽と一緒に宮殿の中に戻ってくる。
「終わったぞ」
「浮竹かっこいい。痺れる。今すぐ抱いて」
京楽は、浮竹の右腕をぎゅーっと掴んでいた。
「俺はお前に抱かれることはできるが、お前を抱きたくはない」
「振られちゃった。でも浮竹、愛しているよ。血族を一度作ったのも、許してあげる」
「許すも許さないも、血族を誰にするかは俺の自由だ」
京楽の瞳に、狂気に満ちた色が宿っていることを知らずに、ブラッディ・ネイの生誕祭を引き続き行い、夜まで騒ぎ会うのだった。
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「だからさぁ、君の血族は僕だけでいいって、教えてあげなきゃね?」
「やああん」
浮竹は、静かに怒る京楽に、目隠しをされて前を戒められて、手を後ろで拘束されていた。
「やあああ、とって、とってえええ」
「だーめ。君の血族は僕だけだよ。僕の許可なしに血族にしたりして・・・・・・許せない」
京楽は、狂気じみた笑顔を浮かべていた。
浮竹の蕾を指でぐちゃぐちゃにしてやる。
「やああ、あれは、あれは、ただ血族しただけで、愛するとかそういうのじゃなくて」
「それでも、君が僕以外を血族にしたことを許せない」
「ああああ、ごめんなさい」
ぐちゅりと中を突きあげると、浮竹はオーガズムでいっていた。
「これは、お仕置きだからね?」
「やあああ、いきたい、いきたい、とってええ」
「そう簡単にとっちゃったら、お仕置きにならないでしょ?」
「やああああ、いきたい」
「だーめ」
浮竹の中を味わうように、わざとゆっくり挿入する。
そして、ゆっくり引き抜き、またゆっくり突き入れた。
「あ、あ、もっと激しくして、春水」
「欲張りな子だねぇ」
京楽は、言われた通り、ぐちゅぐちゅと音がするほどに貫き、犯した。
浮竹は見えない視線で、京楽を探す。
「目隠しだけは、とってあげる」
涙を吸い取って重くなった目隠しを外してやると、泣きすぎて目を真っ赤にさせた浮竹がいた。
「ごめんね。こんな怒りのぶつけかた、だめなのは分かってる」
「春水、キスして」
「十四郎・・・僕だけのものだよ」
浮竹は、京楽のキスにうっとりしていた。
「あああ!」
京楽がごりごりっと奥を突きあげると、浮竹はオーガズムでいっていた。
「やああ、とってええ、いきたい」
「仕方ないねぇ。あんまりお仕置きになってないけど、とってあげる」
まず手の戒めをといて、最後に京楽が最奥をぐりっとえぐった瞬間に、前を戒めていた紐をとってやった。
「やああああ、いく、いく、いっちゃう♡」
「エロい子だね」
「やあああん」
びゅるびゅると飛んだ精子は、勢いよくはじけて、浮竹と京楽の腹だけでなく、胸や顔にもかかった。
「たくさんだしたね?きもちよかった?」
「あああ、きもちいい、いくの、止まらない♡」
「僕もいくからね。全部うけとってね」
「ああ、春水の子種、ちょうだい」
浮竹は足を開いて、京楽を離すまいと腰を足で挟み、背中に手を回した。
びゅーびゅーと、勢いよく京楽の精液が浮竹の中に注がれる。
「あ、あ、もっといっぱいちょうだい、春水」
「十四郎・・・ほんとにエロくていけない子だ」
京楽は、ぱんぱんと肉がぶつかり合う音をさせながら、浮竹を攻めた。
「ああああ!!」
また、奥で精液を注いでやると、浮竹はオーガズムでいきながら、射精していた。
「ぐずぐずになっちゃいなよ」
浮竹の肩に噛みついて、吸血してやると、浮竹は精液の代わりに潮をふいていた。
「あ、ああ”!いくの、とまらない♡」
「いつまでもいっていていいよ。僕と君との時間は無限にあるのだから」
「やあああ、いきすぎて、変になるうう」
「そしたら、僕が責任をもって、抱いてあげる」
「ああああ!」
ガツンと奥までえぐってくる熱に、浮竹はオーガズムでいきながら、緩やかに気を失うのであった。
「はぁ・・やりすぎちゃったかな。ごめんね」
意識のない浮竹に口づける。
シーツはすごいことになっていた。
洗うだけ無駄だろうからと、捨てることにした。
「愛しているよ、十四郎」
長い白い髪を、すいてから、京楽は後始末をするために、一度寝室を後にするのであった。
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「やっと手に入れた」
藍染は、浮竹の子種が少量だけ入った小瓶を手にしていた。
京楽が後始末のために離れている間に、シーツについていた精液を、式に命令して採取しておいたのだ。
「さぁ、これで親子同士で対決だ。ウツクは見事に京楽を怒らせることに成功した。お陰で、浮竹の精液を入手できた」
肉便器に、薄めた液体を注ぎ込む。
「一匹だけじゃあ、物足りない。ヴァンパイアマスターと女神の子だ。何匹か産んでもらうぞ」
肉便器には、もう女神アルテナの魂はない。
ただ、孕まされて、子を産む落とすだけの肉塊だ。
「なぁ、ミライ」
「はい、父さま」
ミライは、成長促進の禁呪をかけられて、今5歳くらいになっていた。美しい幼子だった。
「いずれ、お前の力が必要だ。始祖ヴァンパイアと同じ絶対存在となった、お前の力が」
「はい、父さま。私は喜んで、父さまの力になりましょう」
「いい子だ。キララ、キララはいるか」
「こ、ここにいます」
キララは、名を呼ばれて急いで藍染の元に向かった。
「お前には、今度生まれてくる子供と一緒に、浮竹と京楽の元へ行ってもらう。今度こそ、魂を狩りとれ。これは命令だ。わかるな?」
「はい・・・全ては藍染様の御心のままに」
キララは、死を覚悟するのであった。
君ヲ想ウ
浮竹十四郎。
護廷13隊の13番隊隊長にして、ミミハギ様を肺に宿す者。
浮竹は、ユーハバッハが霊王を屠ったことにより、神掛けをしてそのまま世界の安定を保ち、そして死んでいった。
京楽春水。
浮竹十四郎の院生時代からの親友であり、共に2対1本の斬魄刀をもち、よく酒を飲みかわしたりした。
山本元柳斎重國が死んだ、次の総隊長だった。
京楽は、浮竹のことが好きだった。
院生時代から、好きだった。
それは浮竹も同じことで、けれど告白はなく、隊長になってやっと告白しあい、結ばれて200年が経過しようとしていた。
たくさんの思い出ができた。
浮竹は肺の病の他にも病弱で、時折入院したりした。
雨乾堂で臥せっていることも多く、よく見舞いにいった。
体を重ね合わせて、どす黒い感情に苛まれることはあれど、二人の愛は不変だった。
「俺は先に逝く」
「そうかい・・・・・・」
浮竹のその言葉を、京楽はどこか遠くで聞いていた。
「じゃあ、いってらっしゃい」
「ああ、またどこかで会おう」
まるで、明日また会おうと言っているようだった。
護廷13隊のために死なば本望。
浮竹はそれを実現させた。
遺体の保存状態はよかった。
「お別れだね」
冷たくなってしまった唇に口づける。
ポタリ、ポタリ、ポタリ。
隻眼の瞳から、涙がとどめとなく滴り落ちた。
「もっと・・・・もっと、君とこの世界を生きたかった。最後まで一緒にいて、引退して、いつか君がへたくそな盆栽をいじっている、その隣にいたかった」
涙はふけどもふけども溢れてくる。
「君を愛していた!」
棺の中で静かに眠る浮竹の体を抱き寄せた。
「君を今でも愛しているんだ・・・・この感情を、どうすればいいの」
あふれ出す想い。
君を想う。
ただ、恋しくいて恋しくて。
純粋に愛しくて。
浮竹の遺体は、百合の花に包まれて荼毘に付された。
浮竹を失い、京楽の世界から色が消えた。
何もかもが、モノクロに見えた。
雨乾堂を取り壊して、そこに墓を建てた。
けれど世界はモノクロで。
「やぁ、京楽。元気にしているか」
「浮竹・・・?」
「俺のことでいつまでもくよくよするなよ。お前の周りの世界はこんなにも色づいている」
浮竹に、唇を奪われた。
「浮竹!!」
掴もうとするが、それは届かなくて。
白昼夢だったのだろうか。
気が付くと、浮竹の遺品としてもっていた翡翠の髪飾りが落ちていた。
世界が、また色づいて見えた。
「君は・・・・・僕に、会いに来てくれたの?」
また、涙がぽたぽたと落ちていく。
きっと、そうに違いない。
君を想うあまりに、世界の色を失ってしまった僕を、戒めにきたのだろう。
京楽は、隻眼の鳶色の瞳で、涙を流しながら微笑んだ。
「浮竹、僕は元気でやっているよ。確かに君を失って辛い。でも、みんなが支えてくれる。君との思い出がたくさんある・・・・・だから、前を向いて歩いていくよ」
立ち止まるな。
きっと、そう言いにいきてくれたんだろう。
「さて、今日もほどほどに仕事しますか」
総隊長の地位は楽ではない。けれど、支えてくれる仲間たちがいる。
君の魂を、僕は背負っている。
君の魂は、きっと僕の中にある。
この想いがある限り。
君を想う。
どんなことがあろうとも。
君を想う。
どんなにつらくことも。
君を想う。
どんなに離れていても。
君を想う。
どんなに思って、会えなくとも。
ただひたすらに君を想い、愛する。
君ヲ想ウ。
護廷13隊の13番隊隊長にして、ミミハギ様を肺に宿す者。
浮竹は、ユーハバッハが霊王を屠ったことにより、神掛けをしてそのまま世界の安定を保ち、そして死んでいった。
京楽春水。
浮竹十四郎の院生時代からの親友であり、共に2対1本の斬魄刀をもち、よく酒を飲みかわしたりした。
山本元柳斎重國が死んだ、次の総隊長だった。
京楽は、浮竹のことが好きだった。
院生時代から、好きだった。
それは浮竹も同じことで、けれど告白はなく、隊長になってやっと告白しあい、結ばれて200年が経過しようとしていた。
たくさんの思い出ができた。
浮竹は肺の病の他にも病弱で、時折入院したりした。
雨乾堂で臥せっていることも多く、よく見舞いにいった。
体を重ね合わせて、どす黒い感情に苛まれることはあれど、二人の愛は不変だった。
「俺は先に逝く」
「そうかい・・・・・・」
浮竹のその言葉を、京楽はどこか遠くで聞いていた。
「じゃあ、いってらっしゃい」
「ああ、またどこかで会おう」
まるで、明日また会おうと言っているようだった。
護廷13隊のために死なば本望。
浮竹はそれを実現させた。
遺体の保存状態はよかった。
「お別れだね」
冷たくなってしまった唇に口づける。
ポタリ、ポタリ、ポタリ。
隻眼の瞳から、涙がとどめとなく滴り落ちた。
「もっと・・・・もっと、君とこの世界を生きたかった。最後まで一緒にいて、引退して、いつか君がへたくそな盆栽をいじっている、その隣にいたかった」
涙はふけどもふけども溢れてくる。
「君を愛していた!」
棺の中で静かに眠る浮竹の体を抱き寄せた。
「君を今でも愛しているんだ・・・・この感情を、どうすればいいの」
あふれ出す想い。
君を想う。
ただ、恋しくいて恋しくて。
純粋に愛しくて。
浮竹の遺体は、百合の花に包まれて荼毘に付された。
浮竹を失い、京楽の世界から色が消えた。
何もかもが、モノクロに見えた。
雨乾堂を取り壊して、そこに墓を建てた。
けれど世界はモノクロで。
「やぁ、京楽。元気にしているか」
「浮竹・・・?」
「俺のことでいつまでもくよくよするなよ。お前の周りの世界はこんなにも色づいている」
浮竹に、唇を奪われた。
「浮竹!!」
掴もうとするが、それは届かなくて。
白昼夢だったのだろうか。
気が付くと、浮竹の遺品としてもっていた翡翠の髪飾りが落ちていた。
世界が、また色づいて見えた。
「君は・・・・・僕に、会いに来てくれたの?」
また、涙がぽたぽたと落ちていく。
きっと、そうに違いない。
君を想うあまりに、世界の色を失ってしまった僕を、戒めにきたのだろう。
京楽は、隻眼の鳶色の瞳で、涙を流しながら微笑んだ。
「浮竹、僕は元気でやっているよ。確かに君を失って辛い。でも、みんなが支えてくれる。君との思い出がたくさんある・・・・・だから、前を向いて歩いていくよ」
立ち止まるな。
きっと、そう言いにいきてくれたんだろう。
「さて、今日もほどほどに仕事しますか」
総隊長の地位は楽ではない。けれど、支えてくれる仲間たちがいる。
君の魂を、僕は背負っている。
君の魂は、きっと僕の中にある。
この想いがある限り。
君を想う。
どんなことがあろうとも。
君を想う。
どんなにつらくことも。
君を想う。
どんなに離れていても。
君を想う。
どんなに思って、会えなくとも。
ただひたすらに君を想い、愛する。
君ヲ想ウ。
始祖なる者、ヴァンパイアマスター61
邪神ザナドゥは、邪神ディアブロと同じように、数十万の人間の魂を喰らって、魔神から邪神へとなった。
ディアブロの場合は、伴侶であった浮竹の迫害を止めようとして、一つの王国を滅ぼした。
一方、邪神ザナドゥは欲のままに町をいくつも滅ぼして、邪神となった。
ディアブロが滅んだのが今から5千年前。
ザナドゥが滅んだのは、今から4千年前。ザナドゥは、当時の人間の勇者に滅ぼされた。
邪神でありながら、魔王を名乗っていた。
幾人もの勇者を殺し、血を浴びた。
その血肉を口にして、人喰らいの邪神ザナドゥと恐れられた。
ただ、邪神ザナドゥにも友人がいた。それは今から自分が殺そうとしている、始祖ヴァンパイアの浮竹であった。
浮竹は邪神であろうがなかろうが、人間が嫌いで、ザナドゥを友人として認め、共に過ごしてくれた。ザナドゥが勇者と対峙する度に、どこかへ出かけてしまい、帰ってきては勇者パーティーの血肉を喰らいザナドゥを窘めた。
「こんなことをしていると、本当にいつか勇者か上位神に滅ぼされるぞ」
「ならば、打ち倒すのみ」
浮竹は、人食いの邪神と恐れられるザナドゥの、かけがえない友人であった。
その記憶を、ずっと忘れていた。
浮竹と再び巡り会い、ザナドゥは涙を零す。
かけがえのない友人を葬らねば、自分の呪いが解けぬことに。
--------------------------------------------------------
「こら、京楽、何をしている!」
錬金術の館で、錬金術士でもないのに、京楽が釜の中でマンドレイクを生でぶちこみ、ドラゴンの血をぶちこんで、更にいろんなものをぶちこんで、でろでろの青い薬を作りあげた。
「完成したよ!精強剤だ!これで今夜の浮竹を啼かしまくる!」
「待て、錬金術士でもないのに、同じレシピで作っても!」
ぼふん。
音を立てて、京楽は7歳くらいの子供になっていた。
「なんだこれはあああ!!!」
「それはこっちの台詞だああああ!!」
浮竹が、天を仰いだ。
「はぁ。薬の効果が切れるまでまぁ3日程度だろうが、エリクサーをやるには惜しい。そのままの姿で3日暮らすことだ」
「そんなぁ。浮竹をベッドの上であはんあはん言われるつもりだったのに!」
「動機が不純すぎるこのバカ!」
浮竹は、アイテムポケットに入っていたハリセンを取り出して、京楽の頭を殴っていた。
「ぶった。うわああああんん」
「なんだ!?何が起こっている!?」
浮竹は慌てた。まさか、精神年齢まで若がっているとか?いや、それにしても浮竹をベッドの上であはんあはん言わせるとか、大人にしか思いつかないことを言っていた。
「泣き真似しても、謝らないからな。お前が悪い」
「べーっだ。浮竹のバーカバーカ」
ぴしっ。
浮竹は怒り出して、京楽を追いかけるのであった。
「どこへ行った・・・・・・」
京楽は小さくて素早く、浮竹は見失ってしまった。
その頃、中庭ではまだ収穫前のマンドレイクをひっこぬく京楽の姿があった。
若返ったといっても、魔神で浮竹の血族であることには変わりないが、精神年齢がどんどん7歳になっていた。
「ぎゃあああああ」
「ひいいいい」
マンドレイクは、収穫前のものなので、悲鳴の威力も小さかった。
本来ならあと1カ月は植えておかなければならない。
新しい古城の中庭は、前の古城の中庭の2倍ほどの広さがあった。
戦闘人形のメイドたちに命令して、せっかく植えたマンドレイクの苗は、実ることなく京楽の手で引っこ抜かれた。
その悲鳴に気づいた浮竹がやってきた頃には、まだ収穫前のマンドレイク畑の3分の2がひっこぬかれていた。
「京楽ぅぅぅ。いい度胸だな」
「浮竹が僕に構ってくれないのがいけないんだからね」
「知ったことか!ヘルインフェルノ!」
怒った浮竹は、京楽とマンドレイクごと魔法をぶっぱなしていた。
真っ黒に焦げて、頭をアフロにした京楽は、浮竹の前で泣きだした。
「浮竹がいじめる~~」
「京楽、本当にどうしたんだ。お前らしくないぞ。精神年齢まで7歳になったのか」
「そうだとしたら?」
「縄でぐるぐる巻きにして監視下に置く」
「そんなのお断りだね!」
京楽は、素早く風のように逃げた。
そして、浮竹の部屋に入って、浮竹のパンツを古城の窓から降らせた。
「京楽!!」
浮竹の堪忍袋の緒が切れるのは、時間の問題だろう。
「こら、京楽!」
浮竹が京楽が悪戯しているのを見つける度に、浮竹は怒るが、京楽は凄まじいスピードで逃げていた。
玄関の黄金のハニワに油性ペンで落書きしたり、貴重な名画にペンキを塗ったり、しまいにはトイレを詰まらせた。
「京楽ぅぅぅぅ」
堪忍袋の緒が切れた浮竹は、罠をしかけた。
おやつにとっておいたドーナツを、ダイニングテーブルの上において、それを取ると上から網がかぶさるようにしておいた。
お腹をすかせた京楽は、すぐにその罠にひっかかった。
「京楽、覚悟はできているな?」
ポキポキと指の関節の音を鳴り響かせる浮竹に、京楽は泣きだした。
「うわああああん!浮竹がいじめるーーー!」
「あのなぁ、京楽。いい子にしてるなら、俺だって怒らない」
「本当に?」
「ああ。だが、今まで悪戯した分のお仕置きは覚悟してもらおうか」
「浮竹の嘘つきいいいい!!」
京楽は、浮竹にハリセンでボコボコにされて、縄でぐるぐる巻きにされて、しくしくと泣いていた。
「お腹すいた」
「よし、俺がマンドレイクのスープを作ってやろう」
「ひいいい!嫌だ、浮竹の料理は食べたくない!」
「ふふふふ。待っていろ、今特別に作ってやる」
京楽は縛られたまま、尺取虫のようにもぞもぞと動きだすので、浮竹は縄を柱につないだ。
「子供虐待だああ!」
「ふははははは。虐待してやる」
浮竹はブラックモードになっていた。
錬金術用の釜を取りだして、生きたマンドレイクをぶちこみ、ドラゴンの血をぶちこんで、人参、じゃがいも、玉ねぎを切ってぶちこんで、コトコト煮ること20分。
マンドレイクとドラゴンの血入り野菜スープのできあがりだった。
「ほら、食え」
ずいっと、スプーンでスープを口の前にもっていかれて、京楽は死を覚悟した。
「骨は拾ってね」
「縁起の悪いことを」
スープを口にして、京楽は目を輝かせた。
「そんな、浮竹の手料理なのに美味しい!?」
「ちゃんと味見した。戦闘人形にも手伝ってもらった」
「浮竹の手料理が食べれるものなんて奇跡だ」
「もっぺん殴られたいか」
ハリセンを取り出した浮竹に、京楽は首を横に振る。
「ごめんなさい」
「最初からそう言え。もう悪戯はしないな?」
「しない。だから遊ぼう、浮竹」
野菜スープを全部食べて、おなかがいっぱいになった京楽は、遊びたくてうずうずしていた。
「何がしたい」
「かくれんぼ」
「かくれんぼか・・・仕方ないな」
浮竹が鬼になった。
そして、京楽の魔力を探知しようとするが、魔力が小さすぎて分からかった。
この広い古城を探し回るのは骨が折れるので、戦闘人形たちにも探させた。
結果、キッチンの籠に中に隠れて、そのまま眠っている京楽を発見する。
浮竹は幼い京楽を抱いて、寝室のベッドまでくると、京楽を寝かせた。
そして、仕方なくエリクサーを口にして、口移しで京楽に飲ませる。
ぼふん。
音を立てて、京楽は元に戻った。
でも、すやすやと寝ていた。
浮竹は起こすのもなんだしと、戦闘人形に命じて、京楽の悪戯の処理をする。
庭に散っていった浮竹のパンツを拾い集め、黄金のハニワの油性ペンの落書きをシンナーで落として、名画のペンキを修復魔法で元にする。
中庭のマンドレイクは、新しい苗を植えておいた。
「エリクサーの残りがもうないな。材料も切れているようだし・・・・」
市場でも、エリクサーの材料は切れていた。
さっき、京楽に使ったエリクサーが最後の1本だった。
翌日、京楽は7歳になって行った悪戯の数々をちゃんと覚えていた。
「ごめんね、浮竹」
「謝るなら最初からするな。錬金術士でもないのに、薬を作ろうとするな。欲しいなら、俺か乱菊にでも依頼しろ」
「そうだね。今度から、浮竹に言ったら作ってくれないだろうから、乱菊ちゃんに頼もうかな」
リンリンリン。
鈴のような音が鳴った。
「来客か・・・・珍しいな」
新しい古城に引っ越しからというもの、まだ来客は訪れていなかった。
「ザナドゥ?生きて、いたのか」
「誰だい、浮竹」
古城の来客は、邪神ザナドゥであった。長い黒髪に黒い瞳の、美青年だった。
「邪神ザナドゥ。4千年前に人間の勇者に滅ぼされた魔王であり邪神だ」
京楽が威嚇する。
「そんな邪神が、浮竹になんのようだい?」
「藍染の手で蘇った。俺は呪いを受けている。浮竹、おまえとその血族の京楽の血を浴びねば、解けることのない死の呪いだ」
「じゃあ、そのまま死んでよ」
魔神の咢で、ザナドゥの魂を噛み砕こうとする京楽を、浮竹が止めた。
「どうして止めるの?」
「ザナドゥは、俺の友人だ。友を見殺しになどできない。俺と京楽の血を浴びれば、その呪いは解けるんだな?」
「藍染の話によれば、だ」
浮竹は、手首を切り、ザナドゥに自分の血を浴びせた。京楽も黙ってそれに従い、自分の血をザナドゥに浴びせる。
「どうだ、呪いは消えたか?」
「がああああ!!呪いが、侵食を・・・・藍染の言葉は、嘘のようだ。あああ、苦しい。殺す、殺す・・・・」
「ザナドゥ、しっかりしろ!」
「浮竹、危ない!」
浮竹がいた空間の地面にクレーターができていた。
「ザナドゥ!正気に戻れ!」
「だめだよ、呪いに侵食されてる。エリクサーは?」
「それが、在庫を切らしていて・・・・材料も市場に売っていない」
「じゃあ、どうするの」
ザナドゥは暴れ始めた。
中庭に出て、古城が破壊されないようにした。古城に結界を張る。
「うおおおおお、俺を、俺を殺せ、浮竹。どうせ仮初で蘇った命だ。友を殺してまで、生きていたくはない」
「ザナドゥ!」
ザナドゥは、休眠から目覚めたばかりの浮竹が、その時初めてできた友人であった。愛してはいなかったので、血族にはしなかったが、浮竹のお気に入りの友人であった。
「おのれ藍染・・・・俺がザナドゥと友人であることを知った上での行為か」
「いや、藍染はそこまでは知らぬようだ。だが、お前とその血族の血を浴びれば呪いは解けるといわれたが、嘘だったようだ」
「ザナドゥ。封印か死か、どちからを選んでくれ。このまま放置しておけばお前は、京楽に魂を喰われるだろう。封印されてくれないか」
「封印など・・・・また、藍染に利用されるだけだ」
「ザナドゥ!!」
「我が友よ。100年に渡るそなたとの友情は、かけがえのない時間だった。安寧なる死を、俺に・・・・・・・」
浮竹は、涙を零しながら、魔法を詠唱する。
「ゴッドフェニックス、カイザーフェニックス、エターナルフェニックス・・・・トリプルファイアフェニックス!!」
「ああああ!!!」
ザナドゥは魔法をレジストした。
耐えきった。
「これで死なないとは・・・・・」
涙をふいて、浮竹はザナドゥの攻撃を受け止めた。
ザナドゥは巨大な爪で、浮竹を袈裟懸けに斬っていた。
「浮竹!」
「セイントヒール」
浮竹は、苦手な聖魔法の癒しの魔法を使い、深すぎる傷をすぐに癒した。
血の魔法で癒している時間などなかった。
流れ出た血を、ザナドゥは美味しそうにペロリと舐める。
「もっと、もっとお前の血をよこせ。お前の血を」
「もう、正気じゃないね」
「もう一度試させてくれ。エターナルアイシクルフィールド!!」
炎の禁呪が効かなかったので、今度は氷の禁呪を出した。
ザナドゥの体が凍っていく。けれど、凍るはしから溶けていく。
「封印の魔法でもダメか・・・・京楽、せめて苦しめずに屠ってくれ」
浮竹は、また泣いていた。
「さよならだ、ザナドゥ。お前と一緒に過ごした100年は楽しかった・・・・・」
京楽は魔神の咢で、ザナドゥの魂を喰らっていく。
「邪神の魂は、あまりおいしくないんだよね」
そう文句をたれながら、京楽はザナドゥの魂を噛み砕いた。
ぐらりと、ザナドゥの体が倒れる。
もう悪用されないように、浮竹はフェニックスを呼び出す。
ザナドゥの灰から、青い薔薇が狂い咲いた。
「さよなら。俺の友よ・・・・・・」
京楽は、涙を流す浮竹の涙を舐めとった。
「甘い。君は涙さえも甘い・・・・・・」
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「まだ、泣いてるの?」
「残酷なやつだったが、親友だった」
京楽は、浮竹の涙を吸い取って、ベッドに押し倒した。
「でも、血族にはしなかったんだ」
「友人で、愛してはいなかったからな」
「僕は、それでも憎い。僕の知らない君の存在を知っている者が憎い」
「あっ」
浮竹は京楽に口づけられていた。
「そんなこと言っても、お前が生まれてきたのは140年くらい前だろう。8千年の俺の人生は、5千年は休眠だったが、3千年は活動していた。その頃には血族も他にいたし、友人だっていろいろといた」
「その全てが憎い」
京楽は、浮竹の衣服を脱がしていくと、自分のものだといいう所有のキスマークヲ咲かせていく。
「んあっ」
胸の先端をいじられて、浮竹は甘い声を出していた。
「もう終わりがいい?」
「あ、春水・・・・お前をくれ。全てを忘れさせるくらいに、お前をくれ」
京楽は、勃ちあがりかけている浮竹ものを手でしごいた。
「ああああ!!」
浮竹は簡単にいってしまった。
欲情にスイッチが入ったのか、浮竹は自分から足を開いて京楽を受け入れる。
「君が僕のことしか考えられないようにしてあげる」
ローションで後ろを解して、京楽は一気に貫いた。
「ひああああ!!」
びくんと、浮竹はオーガズムでいっていた。
「こっちもいけるでしょ?」
浮竹のものをしごきあげて、オーガズムの途中なのに精液を出して二重にいかせてやった。
「やああああああああ!!」
「君のここは、全然嫌なんていってないよ?僕のものに絡みついてくる」
「ああああ!」
浮竹は、啼いていた。
「んあああ」
京楽は、浮竹を味わうかのように、ゆっくりと犯していく。
「あ、もっと、もっと激しく!お前を、俺の中に刻みこんでくれ」
「分かったよ」
「ああああ!!」
ぱちゅぱちゅんと、激しく浮竹の中を出入りする。
京楽は、浮竹の胎の奥で精液を弾けさせた。
「んああああ」
同時に、京楽に手首を噛まれた。
動脈から直接血を吸われて、その得も言われぬ快感に虜になる。
「あ、もっと、もっと吸ってくれ」
京楽は、次に浮竹の太ももに牙を立てた。
「ああああ!!」
吸血による快楽と、体に与えられる快楽が二重になって浮竹を襲う。
「んあああ、ああ、あ」
京楽に貫かれて抉られ、揺すぶられて、浮竹は涙を流した。
「春水、お前で、満たされていく・・・・・・」
「十四郎。僕のものだ。例え他に血族がいたとしても、僕のものだ」
「ああ、春水・・・・・」
京楽は、ごりごりと奥をけずりながら結腸にまで侵入し、そこで精を放った。
「ああ、熱い・・・・・」
「君は僕のものだっていう、証を、注ぎ込んであげたよ」
「あ、春水。キスを・・・・・」
口づけをねだる浮竹に、舌が絡まるディープキスを繰り返す。
「んっ」
咥内を犯していく京楽の舌が去ってくとつっと銀の糸が垂れた。
「愛している」
「僕も、愛してるよ」
お互いに愛を囁きながら、まどろんでいく。
京楽は浮竹の中から去ると、逢瀬の名残を拭い去って浮竹を清めると、シーツを変えたベッドで、浮竹を抱きしめながら眠るのであった。
-----------------------------------------------------------------
「これは、邪神ザナドゥの子種だ」
藍染は、女神アルテナの肉体のなれの果ての肉便器に、ザナドゥから回収しておいた子種を注いだ。
「前のミニクのような存在でもいい。あの邪神の子は、特別な力をもっているようだしな」
肉便器は、数週間かけて子を産んだ。
今度は、美しい黒神黒目の邪神、ザナドゥそのものが生まれてきたような子供だった。
「名前は何がいいだろう。美しいから、ウツクでいいか」
もう、名付けるのも適当になっていた、
ウツクは、父であるザナドゥの記憶を継承していた。
藍染の首をはねて、肉体をぐちゃぐちゃにして、浮竹と京楽の元へ走り出す。
今度こそ、友人である浮竹の生き血をすすり、血族となって永遠を生きるのだ。
そう決めたウツクは、ばらばらになった藍染が再生するのを阻害するために、聖水をまき散らしていた。
「く、ウツクめ・・・・・やってくれるな」
1週間かけて、やっと再生した藍染は、壊れた女神オリガに泣きつかれた。
「あなた、死んでしまったかと思ったわ」
「オリガ、私は不老不死だ。何があっても、死なない」
「でも、魂を狩られたり、食われたら・・・・・・」
「それは心配ない。浮竹と同じように、この魂は肉体と結びついている。魔神に魂を喰われることはないし、死神に魂を狩りとられることもない」
その言葉に安心した女神オリガは、むずがる自分と藍染の子をあやした。
「ミライ、そんなに泣かないでちょうだい」
女神と邪神の子、ミライと名付けられた女の赤子は、真紅の瞳をしていた。
まるで、始祖ヴァンパイアのような魔力をもっているのであった。
ディアブロの場合は、伴侶であった浮竹の迫害を止めようとして、一つの王国を滅ぼした。
一方、邪神ザナドゥは欲のままに町をいくつも滅ぼして、邪神となった。
ディアブロが滅んだのが今から5千年前。
ザナドゥが滅んだのは、今から4千年前。ザナドゥは、当時の人間の勇者に滅ぼされた。
邪神でありながら、魔王を名乗っていた。
幾人もの勇者を殺し、血を浴びた。
その血肉を口にして、人喰らいの邪神ザナドゥと恐れられた。
ただ、邪神ザナドゥにも友人がいた。それは今から自分が殺そうとしている、始祖ヴァンパイアの浮竹であった。
浮竹は邪神であろうがなかろうが、人間が嫌いで、ザナドゥを友人として認め、共に過ごしてくれた。ザナドゥが勇者と対峙する度に、どこかへ出かけてしまい、帰ってきては勇者パーティーの血肉を喰らいザナドゥを窘めた。
「こんなことをしていると、本当にいつか勇者か上位神に滅ぼされるぞ」
「ならば、打ち倒すのみ」
浮竹は、人食いの邪神と恐れられるザナドゥの、かけがえない友人であった。
その記憶を、ずっと忘れていた。
浮竹と再び巡り会い、ザナドゥは涙を零す。
かけがえのない友人を葬らねば、自分の呪いが解けぬことに。
--------------------------------------------------------
「こら、京楽、何をしている!」
錬金術の館で、錬金術士でもないのに、京楽が釜の中でマンドレイクを生でぶちこみ、ドラゴンの血をぶちこんで、更にいろんなものをぶちこんで、でろでろの青い薬を作りあげた。
「完成したよ!精強剤だ!これで今夜の浮竹を啼かしまくる!」
「待て、錬金術士でもないのに、同じレシピで作っても!」
ぼふん。
音を立てて、京楽は7歳くらいの子供になっていた。
「なんだこれはあああ!!!」
「それはこっちの台詞だああああ!!」
浮竹が、天を仰いだ。
「はぁ。薬の効果が切れるまでまぁ3日程度だろうが、エリクサーをやるには惜しい。そのままの姿で3日暮らすことだ」
「そんなぁ。浮竹をベッドの上であはんあはん言われるつもりだったのに!」
「動機が不純すぎるこのバカ!」
浮竹は、アイテムポケットに入っていたハリセンを取り出して、京楽の頭を殴っていた。
「ぶった。うわああああんん」
「なんだ!?何が起こっている!?」
浮竹は慌てた。まさか、精神年齢まで若がっているとか?いや、それにしても浮竹をベッドの上であはんあはん言わせるとか、大人にしか思いつかないことを言っていた。
「泣き真似しても、謝らないからな。お前が悪い」
「べーっだ。浮竹のバーカバーカ」
ぴしっ。
浮竹は怒り出して、京楽を追いかけるのであった。
「どこへ行った・・・・・・」
京楽は小さくて素早く、浮竹は見失ってしまった。
その頃、中庭ではまだ収穫前のマンドレイクをひっこぬく京楽の姿があった。
若返ったといっても、魔神で浮竹の血族であることには変わりないが、精神年齢がどんどん7歳になっていた。
「ぎゃあああああ」
「ひいいいい」
マンドレイクは、収穫前のものなので、悲鳴の威力も小さかった。
本来ならあと1カ月は植えておかなければならない。
新しい古城の中庭は、前の古城の中庭の2倍ほどの広さがあった。
戦闘人形のメイドたちに命令して、せっかく植えたマンドレイクの苗は、実ることなく京楽の手で引っこ抜かれた。
その悲鳴に気づいた浮竹がやってきた頃には、まだ収穫前のマンドレイク畑の3分の2がひっこぬかれていた。
「京楽ぅぅぅ。いい度胸だな」
「浮竹が僕に構ってくれないのがいけないんだからね」
「知ったことか!ヘルインフェルノ!」
怒った浮竹は、京楽とマンドレイクごと魔法をぶっぱなしていた。
真っ黒に焦げて、頭をアフロにした京楽は、浮竹の前で泣きだした。
「浮竹がいじめる~~」
「京楽、本当にどうしたんだ。お前らしくないぞ。精神年齢まで7歳になったのか」
「そうだとしたら?」
「縄でぐるぐる巻きにして監視下に置く」
「そんなのお断りだね!」
京楽は、素早く風のように逃げた。
そして、浮竹の部屋に入って、浮竹のパンツを古城の窓から降らせた。
「京楽!!」
浮竹の堪忍袋の緒が切れるのは、時間の問題だろう。
「こら、京楽!」
浮竹が京楽が悪戯しているのを見つける度に、浮竹は怒るが、京楽は凄まじいスピードで逃げていた。
玄関の黄金のハニワに油性ペンで落書きしたり、貴重な名画にペンキを塗ったり、しまいにはトイレを詰まらせた。
「京楽ぅぅぅぅ」
堪忍袋の緒が切れた浮竹は、罠をしかけた。
おやつにとっておいたドーナツを、ダイニングテーブルの上において、それを取ると上から網がかぶさるようにしておいた。
お腹をすかせた京楽は、すぐにその罠にひっかかった。
「京楽、覚悟はできているな?」
ポキポキと指の関節の音を鳴り響かせる浮竹に、京楽は泣きだした。
「うわああああん!浮竹がいじめるーーー!」
「あのなぁ、京楽。いい子にしてるなら、俺だって怒らない」
「本当に?」
「ああ。だが、今まで悪戯した分のお仕置きは覚悟してもらおうか」
「浮竹の嘘つきいいいい!!」
京楽は、浮竹にハリセンでボコボコにされて、縄でぐるぐる巻きにされて、しくしくと泣いていた。
「お腹すいた」
「よし、俺がマンドレイクのスープを作ってやろう」
「ひいいい!嫌だ、浮竹の料理は食べたくない!」
「ふふふふ。待っていろ、今特別に作ってやる」
京楽は縛られたまま、尺取虫のようにもぞもぞと動きだすので、浮竹は縄を柱につないだ。
「子供虐待だああ!」
「ふははははは。虐待してやる」
浮竹はブラックモードになっていた。
錬金術用の釜を取りだして、生きたマンドレイクをぶちこみ、ドラゴンの血をぶちこんで、人参、じゃがいも、玉ねぎを切ってぶちこんで、コトコト煮ること20分。
マンドレイクとドラゴンの血入り野菜スープのできあがりだった。
「ほら、食え」
ずいっと、スプーンでスープを口の前にもっていかれて、京楽は死を覚悟した。
「骨は拾ってね」
「縁起の悪いことを」
スープを口にして、京楽は目を輝かせた。
「そんな、浮竹の手料理なのに美味しい!?」
「ちゃんと味見した。戦闘人形にも手伝ってもらった」
「浮竹の手料理が食べれるものなんて奇跡だ」
「もっぺん殴られたいか」
ハリセンを取り出した浮竹に、京楽は首を横に振る。
「ごめんなさい」
「最初からそう言え。もう悪戯はしないな?」
「しない。だから遊ぼう、浮竹」
野菜スープを全部食べて、おなかがいっぱいになった京楽は、遊びたくてうずうずしていた。
「何がしたい」
「かくれんぼ」
「かくれんぼか・・・仕方ないな」
浮竹が鬼になった。
そして、京楽の魔力を探知しようとするが、魔力が小さすぎて分からかった。
この広い古城を探し回るのは骨が折れるので、戦闘人形たちにも探させた。
結果、キッチンの籠に中に隠れて、そのまま眠っている京楽を発見する。
浮竹は幼い京楽を抱いて、寝室のベッドまでくると、京楽を寝かせた。
そして、仕方なくエリクサーを口にして、口移しで京楽に飲ませる。
ぼふん。
音を立てて、京楽は元に戻った。
でも、すやすやと寝ていた。
浮竹は起こすのもなんだしと、戦闘人形に命じて、京楽の悪戯の処理をする。
庭に散っていった浮竹のパンツを拾い集め、黄金のハニワの油性ペンの落書きをシンナーで落として、名画のペンキを修復魔法で元にする。
中庭のマンドレイクは、新しい苗を植えておいた。
「エリクサーの残りがもうないな。材料も切れているようだし・・・・」
市場でも、エリクサーの材料は切れていた。
さっき、京楽に使ったエリクサーが最後の1本だった。
翌日、京楽は7歳になって行った悪戯の数々をちゃんと覚えていた。
「ごめんね、浮竹」
「謝るなら最初からするな。錬金術士でもないのに、薬を作ろうとするな。欲しいなら、俺か乱菊にでも依頼しろ」
「そうだね。今度から、浮竹に言ったら作ってくれないだろうから、乱菊ちゃんに頼もうかな」
リンリンリン。
鈴のような音が鳴った。
「来客か・・・・珍しいな」
新しい古城に引っ越しからというもの、まだ来客は訪れていなかった。
「ザナドゥ?生きて、いたのか」
「誰だい、浮竹」
古城の来客は、邪神ザナドゥであった。長い黒髪に黒い瞳の、美青年だった。
「邪神ザナドゥ。4千年前に人間の勇者に滅ぼされた魔王であり邪神だ」
京楽が威嚇する。
「そんな邪神が、浮竹になんのようだい?」
「藍染の手で蘇った。俺は呪いを受けている。浮竹、おまえとその血族の京楽の血を浴びねば、解けることのない死の呪いだ」
「じゃあ、そのまま死んでよ」
魔神の咢で、ザナドゥの魂を噛み砕こうとする京楽を、浮竹が止めた。
「どうして止めるの?」
「ザナドゥは、俺の友人だ。友を見殺しになどできない。俺と京楽の血を浴びれば、その呪いは解けるんだな?」
「藍染の話によれば、だ」
浮竹は、手首を切り、ザナドゥに自分の血を浴びせた。京楽も黙ってそれに従い、自分の血をザナドゥに浴びせる。
「どうだ、呪いは消えたか?」
「がああああ!!呪いが、侵食を・・・・藍染の言葉は、嘘のようだ。あああ、苦しい。殺す、殺す・・・・」
「ザナドゥ、しっかりしろ!」
「浮竹、危ない!」
浮竹がいた空間の地面にクレーターができていた。
「ザナドゥ!正気に戻れ!」
「だめだよ、呪いに侵食されてる。エリクサーは?」
「それが、在庫を切らしていて・・・・材料も市場に売っていない」
「じゃあ、どうするの」
ザナドゥは暴れ始めた。
中庭に出て、古城が破壊されないようにした。古城に結界を張る。
「うおおおおお、俺を、俺を殺せ、浮竹。どうせ仮初で蘇った命だ。友を殺してまで、生きていたくはない」
「ザナドゥ!」
ザナドゥは、休眠から目覚めたばかりの浮竹が、その時初めてできた友人であった。愛してはいなかったので、血族にはしなかったが、浮竹のお気に入りの友人であった。
「おのれ藍染・・・・俺がザナドゥと友人であることを知った上での行為か」
「いや、藍染はそこまでは知らぬようだ。だが、お前とその血族の血を浴びれば呪いは解けるといわれたが、嘘だったようだ」
「ザナドゥ。封印か死か、どちからを選んでくれ。このまま放置しておけばお前は、京楽に魂を喰われるだろう。封印されてくれないか」
「封印など・・・・また、藍染に利用されるだけだ」
「ザナドゥ!!」
「我が友よ。100年に渡るそなたとの友情は、かけがえのない時間だった。安寧なる死を、俺に・・・・・・・」
浮竹は、涙を零しながら、魔法を詠唱する。
「ゴッドフェニックス、カイザーフェニックス、エターナルフェニックス・・・・トリプルファイアフェニックス!!」
「ああああ!!!」
ザナドゥは魔法をレジストした。
耐えきった。
「これで死なないとは・・・・・」
涙をふいて、浮竹はザナドゥの攻撃を受け止めた。
ザナドゥは巨大な爪で、浮竹を袈裟懸けに斬っていた。
「浮竹!」
「セイントヒール」
浮竹は、苦手な聖魔法の癒しの魔法を使い、深すぎる傷をすぐに癒した。
血の魔法で癒している時間などなかった。
流れ出た血を、ザナドゥは美味しそうにペロリと舐める。
「もっと、もっとお前の血をよこせ。お前の血を」
「もう、正気じゃないね」
「もう一度試させてくれ。エターナルアイシクルフィールド!!」
炎の禁呪が効かなかったので、今度は氷の禁呪を出した。
ザナドゥの体が凍っていく。けれど、凍るはしから溶けていく。
「封印の魔法でもダメか・・・・京楽、せめて苦しめずに屠ってくれ」
浮竹は、また泣いていた。
「さよならだ、ザナドゥ。お前と一緒に過ごした100年は楽しかった・・・・・」
京楽は魔神の咢で、ザナドゥの魂を喰らっていく。
「邪神の魂は、あまりおいしくないんだよね」
そう文句をたれながら、京楽はザナドゥの魂を噛み砕いた。
ぐらりと、ザナドゥの体が倒れる。
もう悪用されないように、浮竹はフェニックスを呼び出す。
ザナドゥの灰から、青い薔薇が狂い咲いた。
「さよなら。俺の友よ・・・・・・」
京楽は、涙を流す浮竹の涙を舐めとった。
「甘い。君は涙さえも甘い・・・・・・」
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「まだ、泣いてるの?」
「残酷なやつだったが、親友だった」
京楽は、浮竹の涙を吸い取って、ベッドに押し倒した。
「でも、血族にはしなかったんだ」
「友人で、愛してはいなかったからな」
「僕は、それでも憎い。僕の知らない君の存在を知っている者が憎い」
「あっ」
浮竹は京楽に口づけられていた。
「そんなこと言っても、お前が生まれてきたのは140年くらい前だろう。8千年の俺の人生は、5千年は休眠だったが、3千年は活動していた。その頃には血族も他にいたし、友人だっていろいろといた」
「その全てが憎い」
京楽は、浮竹の衣服を脱がしていくと、自分のものだといいう所有のキスマークヲ咲かせていく。
「んあっ」
胸の先端をいじられて、浮竹は甘い声を出していた。
「もう終わりがいい?」
「あ、春水・・・・お前をくれ。全てを忘れさせるくらいに、お前をくれ」
京楽は、勃ちあがりかけている浮竹ものを手でしごいた。
「ああああ!!」
浮竹は簡単にいってしまった。
欲情にスイッチが入ったのか、浮竹は自分から足を開いて京楽を受け入れる。
「君が僕のことしか考えられないようにしてあげる」
ローションで後ろを解して、京楽は一気に貫いた。
「ひああああ!!」
びくんと、浮竹はオーガズムでいっていた。
「こっちもいけるでしょ?」
浮竹のものをしごきあげて、オーガズムの途中なのに精液を出して二重にいかせてやった。
「やああああああああ!!」
「君のここは、全然嫌なんていってないよ?僕のものに絡みついてくる」
「ああああ!」
浮竹は、啼いていた。
「んあああ」
京楽は、浮竹を味わうかのように、ゆっくりと犯していく。
「あ、もっと、もっと激しく!お前を、俺の中に刻みこんでくれ」
「分かったよ」
「ああああ!!」
ぱちゅぱちゅんと、激しく浮竹の中を出入りする。
京楽は、浮竹の胎の奥で精液を弾けさせた。
「んああああ」
同時に、京楽に手首を噛まれた。
動脈から直接血を吸われて、その得も言われぬ快感に虜になる。
「あ、もっと、もっと吸ってくれ」
京楽は、次に浮竹の太ももに牙を立てた。
「ああああ!!」
吸血による快楽と、体に与えられる快楽が二重になって浮竹を襲う。
「んあああ、ああ、あ」
京楽に貫かれて抉られ、揺すぶられて、浮竹は涙を流した。
「春水、お前で、満たされていく・・・・・・」
「十四郎。僕のものだ。例え他に血族がいたとしても、僕のものだ」
「ああ、春水・・・・・」
京楽は、ごりごりと奥をけずりながら結腸にまで侵入し、そこで精を放った。
「ああ、熱い・・・・・」
「君は僕のものだっていう、証を、注ぎ込んであげたよ」
「あ、春水。キスを・・・・・」
口づけをねだる浮竹に、舌が絡まるディープキスを繰り返す。
「んっ」
咥内を犯していく京楽の舌が去ってくとつっと銀の糸が垂れた。
「愛している」
「僕も、愛してるよ」
お互いに愛を囁きながら、まどろんでいく。
京楽は浮竹の中から去ると、逢瀬の名残を拭い去って浮竹を清めると、シーツを変えたベッドで、浮竹を抱きしめながら眠るのであった。
-----------------------------------------------------------------
「これは、邪神ザナドゥの子種だ」
藍染は、女神アルテナの肉体のなれの果ての肉便器に、ザナドゥから回収しておいた子種を注いだ。
「前のミニクのような存在でもいい。あの邪神の子は、特別な力をもっているようだしな」
肉便器は、数週間かけて子を産んだ。
今度は、美しい黒神黒目の邪神、ザナドゥそのものが生まれてきたような子供だった。
「名前は何がいいだろう。美しいから、ウツクでいいか」
もう、名付けるのも適当になっていた、
ウツクは、父であるザナドゥの記憶を継承していた。
藍染の首をはねて、肉体をぐちゃぐちゃにして、浮竹と京楽の元へ走り出す。
今度こそ、友人である浮竹の生き血をすすり、血族となって永遠を生きるのだ。
そう決めたウツクは、ばらばらになった藍染が再生するのを阻害するために、聖水をまき散らしていた。
「く、ウツクめ・・・・・やってくれるな」
1週間かけて、やっと再生した藍染は、壊れた女神オリガに泣きつかれた。
「あなた、死んでしまったかと思ったわ」
「オリガ、私は不老不死だ。何があっても、死なない」
「でも、魂を狩られたり、食われたら・・・・・・」
「それは心配ない。浮竹と同じように、この魂は肉体と結びついている。魔神に魂を喰われることはないし、死神に魂を狩りとられることもない」
その言葉に安心した女神オリガは、むずがる自分と藍染の子をあやした。
「ミライ、そんなに泣かないでちょうだい」
女神と邪神の子、ミライと名付けられた女の赤子は、真紅の瞳をしていた。
まるで、始祖ヴァンパイアのような魔力をもっているのであった。
始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝
ヨーロッパの、その城に観光で西洋の浮竹と京楽は訪れていた。
東洋の浮竹と京楽も一緒だった。
エリザベート・バートリー。
中世でも有名な、肌が白く見えるからと、少女たちを拷問にかけて、生き血を浴びた、まさに魔女のような存在いたこのとある城だった。
(いるね。確かに、エリザベート・バートリーの生贄にされた少女の霊だ)
すでに、浮竹の顔は青く、今にも倒れそうだった。
「東洋の俺。西洋の霊は、やはり東洋のやり方では、成仏させれないのか?」
(うーん、どうだろう。こればかりは、やってみないと分からないな)
「浮竹、これはそもそも僕らに依頼された内容なんだよ」
「幽霊はいやだああああ!!!」
西洋の浮竹は、東洋の浮竹の背後に隠れた。
西洋の歴史にある魔女が存在する世界で、彷徨う少女の霊が哀れだと、血の帝国を介して西洋の浮竹と京楽の元に、どうか少女の霊を成仏させてほしいという依頼があった。
東洋に、退治屋の知り合いがいるとのことで、西洋の浮竹と京楽も、退治屋をしていると勘違いされたのだ。
断ろうにも、相手はすでに事故で死去していた。
ならば無視すればいいだろうに、浮竹はいやだいやだといいながら、西洋の京楽と東洋の浮竹と京楽と共に、生贄になった少女の霊が現れる城にやってきていた。
(これは夜を待つしかないかなぁ。人目もあるし)
「よ、夜まで幽霊と・・・・」
(ああ、しっかり、西洋の俺!)
西洋の浮竹は、眩暈を起こした。
「浮竹、しっかりして。今日の一晩で終わるから」
「う、うむ・・・・・・」
こうして、4人は夜を待った。
夜になると、その少女の幽霊は、よりはっきりと見えた。
「ようこそ、お越しくださいました、お客様」
少女は、自分がまだ生きているのだと思っていた。
「今、主を呼んで参ります」
(待って)
「はい?」
(キミ、気づいてないの。キミはもう死んでるんだよ。エリザベート・バートリーの手にかかり、拷問を受けて血を抜き取られて死んじゃったんだよ)
「私はちゃんと生きていますよ?」
少女はにこにこしていた。
(だめだ。負の感情がない。成仏させられるかどうか・・・・)
「えいえいえいえい!!」
西洋の浮竹は、やけになって聖女ルキアの聖水を少女の霊に向かって投げまくった。
「ぎゃあああ!!」
霊ではあるので、聖水はきいた。
「あああ、殺してやる。殺してやる!私を笑いながら殺したあの女のように!」
一気に負の感情が爆発して、4人は怯んだ。
「どうせいくなら、あなたも道連れにしてやる・・・・」
西洋の浮竹は、足を幽霊に触られて、泣きかけていた。
「ひあああ!霊が、霊に、足を、足をおおお」
(しっかりしてくれ、西洋の俺!今除霊するから!)
「おーい浮竹、お札で成仏させてみたら?」
「あ、東洋の俺からもらった浄化のお札があったんだ。えい」
お札を霊に向かって掲げると、明るい光に満ちた。
「ああ・・。お父さん、お母さん、お兄ちゃん・・・私もそこへ行くわ!」
光が消える頃には、少女の幽霊の姿は消えていた。
(あ、お札でも除霊できたんだ)
(そうみたいだね。わざわざボクらが出向く必要はなかったってことかな?)
「それが・・・少女の霊があと15体・・・ばらばらの場所に・・・・」
浮竹は、思い出したとばかりに口にする。
「次は、東棟にいる少女の霊だよ」
西洋の京楽に引きずられながら、西洋の浮竹は浄化のお札で有無を言わせず霊たちを成仏させていった。
(はぁ。足が痛い)
(ちょっと、何も一晩で終わらせることなかたんじゃない?もう夜明けだよ)
「あと、最後の一体が残ってるよ」
洋館の中にいた少女は、年端もいかないようで、ゴーストと化していた。
「ははは、たかがゴーストの一匹!ホーリーランス!!」
聖属性の攻撃をされて、少女のゴーストは倒されてしまった。
「浮竹・・・ゴーストだと、平気なんだね」
「ゴーストと幽霊は違うんだぞ!幽霊には魔法は効かないが、ゴーストには効く!」
「はいはい。とりあえず、帰って仮眠とってそれから昼食にでもしようか」
4人は、引っ越したばかりの古城にきていた。
4人はそれぞれペアに別れて、寝室とゲストルームで5時間ほど仮眠をとった。
最初に起きだしたのは、東洋の浮竹だった。
時計が昼の2時をさしていたので、急いで西洋の浮竹と京楽を起こす。東洋の京楽は、東洋の浮竹が起きた時点で起きていた。
(うわぁ、ダイニングルーム広い。おまけにホワイトタイガーの毛皮まである。ソファもふかふかだし、テーブルや椅子も高そうだ)
「一級品ばかりかったからな」
「浮竹、こういうことには金かけるんだよね」
(玄関の黄金のハニワは相変わらずだけどね)
東洋の京楽の指摘に、西洋の浮竹が自慢する。
「いい丁度品だろう。骨董屋で見つけた、純金のハニワとそれを複製して作った黄金のハニワの群れだ」
(感想は、あえて言わないでおくよ)
「あ、浮竹、背後霊が・・・・」
「ぎにゃあ!!」
変な声を出して、西洋の浮竹は固まった。それから真っ赤になって東洋の浮竹の背後に隠れる。
「お前とは、今日一日口きいてやんない」
「えー、ただのジョークだよ」
「知るか」
「浮竹~」
そんな二人を見ながら、苦笑して東洋の京楽は昼食を4人分作り、東洋の浮竹は配膳係をするのであった。
東洋の浮竹と京楽も一緒だった。
エリザベート・バートリー。
中世でも有名な、肌が白く見えるからと、少女たちを拷問にかけて、生き血を浴びた、まさに魔女のような存在いたこのとある城だった。
(いるね。確かに、エリザベート・バートリーの生贄にされた少女の霊だ)
すでに、浮竹の顔は青く、今にも倒れそうだった。
「東洋の俺。西洋の霊は、やはり東洋のやり方では、成仏させれないのか?」
(うーん、どうだろう。こればかりは、やってみないと分からないな)
「浮竹、これはそもそも僕らに依頼された内容なんだよ」
「幽霊はいやだああああ!!!」
西洋の浮竹は、東洋の浮竹の背後に隠れた。
西洋の歴史にある魔女が存在する世界で、彷徨う少女の霊が哀れだと、血の帝国を介して西洋の浮竹と京楽の元に、どうか少女の霊を成仏させてほしいという依頼があった。
東洋に、退治屋の知り合いがいるとのことで、西洋の浮竹と京楽も、退治屋をしていると勘違いされたのだ。
断ろうにも、相手はすでに事故で死去していた。
ならば無視すればいいだろうに、浮竹はいやだいやだといいながら、西洋の京楽と東洋の浮竹と京楽と共に、生贄になった少女の霊が現れる城にやってきていた。
(これは夜を待つしかないかなぁ。人目もあるし)
「よ、夜まで幽霊と・・・・」
(ああ、しっかり、西洋の俺!)
西洋の浮竹は、眩暈を起こした。
「浮竹、しっかりして。今日の一晩で終わるから」
「う、うむ・・・・・・」
こうして、4人は夜を待った。
夜になると、その少女の幽霊は、よりはっきりと見えた。
「ようこそ、お越しくださいました、お客様」
少女は、自分がまだ生きているのだと思っていた。
「今、主を呼んで参ります」
(待って)
「はい?」
(キミ、気づいてないの。キミはもう死んでるんだよ。エリザベート・バートリーの手にかかり、拷問を受けて血を抜き取られて死んじゃったんだよ)
「私はちゃんと生きていますよ?」
少女はにこにこしていた。
(だめだ。負の感情がない。成仏させられるかどうか・・・・)
「えいえいえいえい!!」
西洋の浮竹は、やけになって聖女ルキアの聖水を少女の霊に向かって投げまくった。
「ぎゃあああ!!」
霊ではあるので、聖水はきいた。
「あああ、殺してやる。殺してやる!私を笑いながら殺したあの女のように!」
一気に負の感情が爆発して、4人は怯んだ。
「どうせいくなら、あなたも道連れにしてやる・・・・」
西洋の浮竹は、足を幽霊に触られて、泣きかけていた。
「ひあああ!霊が、霊に、足を、足をおおお」
(しっかりしてくれ、西洋の俺!今除霊するから!)
「おーい浮竹、お札で成仏させてみたら?」
「あ、東洋の俺からもらった浄化のお札があったんだ。えい」
お札を霊に向かって掲げると、明るい光に満ちた。
「ああ・・。お父さん、お母さん、お兄ちゃん・・・私もそこへ行くわ!」
光が消える頃には、少女の幽霊の姿は消えていた。
(あ、お札でも除霊できたんだ)
(そうみたいだね。わざわざボクらが出向く必要はなかったってことかな?)
「それが・・・少女の霊があと15体・・・ばらばらの場所に・・・・」
浮竹は、思い出したとばかりに口にする。
「次は、東棟にいる少女の霊だよ」
西洋の京楽に引きずられながら、西洋の浮竹は浄化のお札で有無を言わせず霊たちを成仏させていった。
(はぁ。足が痛い)
(ちょっと、何も一晩で終わらせることなかたんじゃない?もう夜明けだよ)
「あと、最後の一体が残ってるよ」
洋館の中にいた少女は、年端もいかないようで、ゴーストと化していた。
「ははは、たかがゴーストの一匹!ホーリーランス!!」
聖属性の攻撃をされて、少女のゴーストは倒されてしまった。
「浮竹・・・ゴーストだと、平気なんだね」
「ゴーストと幽霊は違うんだぞ!幽霊には魔法は効かないが、ゴーストには効く!」
「はいはい。とりあえず、帰って仮眠とってそれから昼食にでもしようか」
4人は、引っ越したばかりの古城にきていた。
4人はそれぞれペアに別れて、寝室とゲストルームで5時間ほど仮眠をとった。
最初に起きだしたのは、東洋の浮竹だった。
時計が昼の2時をさしていたので、急いで西洋の浮竹と京楽を起こす。東洋の京楽は、東洋の浮竹が起きた時点で起きていた。
(うわぁ、ダイニングルーム広い。おまけにホワイトタイガーの毛皮まである。ソファもふかふかだし、テーブルや椅子も高そうだ)
「一級品ばかりかったからな」
「浮竹、こういうことには金かけるんだよね」
(玄関の黄金のハニワは相変わらずだけどね)
東洋の京楽の指摘に、西洋の浮竹が自慢する。
「いい丁度品だろう。骨董屋で見つけた、純金のハニワとそれを複製して作った黄金のハニワの群れだ」
(感想は、あえて言わないでおくよ)
「あ、浮竹、背後霊が・・・・」
「ぎにゃあ!!」
変な声を出して、西洋の浮竹は固まった。それから真っ赤になって東洋の浮竹の背後に隠れる。
「お前とは、今日一日口きいてやんない」
「えー、ただのジョークだよ」
「知るか」
「浮竹~」
そんな二人を見ながら、苦笑して東洋の京楽は昼食を4人分作り、東洋の浮竹は配膳係をするのであった。