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小説掲載プログ
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オメガバース恋白3

前のヒートから3カ月が経過した。

そろそろヒートが来る頃かと、白哉は自分の体調に気を使い、オメガ用のヒート抑制剤を飲み続けていた。

4カ月が経っても、5カ月が経っても、ヒートは訪れなかった。

白哉はほっとした。

このままずっとヒートがこなければいいのにと思った。

けれど、番となった恋次が気がかりだった。

恋次から求めてくることはあるが、ヒート期間出ない限り、それに応じることはなかった。

ハグやキスをすることはあるが、それ以上はしなかった。

「隊長、好きです。愛してます」

「恋次・・・・・んっ・・・・・」

深く口づけられて、舌と舌が絡み合った。

「ほんとなら、隊長をめちゃめちゃにしたい。番だし。でも、隊長がいやがるからしません」

嫌がる白哉を無理やり抱いたら、きっと番としても終わりになるだろう。

白哉はなんとしても番を取り消す方法を探しだして、実行するだろう。

番である相手が死ぬ以外にも、番を解消できる、高価すぎる薬がある。

きっと、白哉はそれに手を出す。

だから、恋次は白哉に無理強いはしなかった。

ヒートは突然だった。

「はっ・・・・」

護廷13隊が集まった隊首会で、白哉は突然倒れた。

白哉は、念のため総隊長である京楽にだけは、自分がオメガであり、ヒート期間があって仕事に支障が出ることがあるかもしれないことを伝えていた。

「朽木隊長!今、診ます!」

「いらぬ。触るな」

「でも」

4番隊長虎徹勇音の手を、白哉は追い払った。

「誰か、阿散井君を呼んでくれないか。大至急だ」

京楽が、部下を呼んで恋次を呼んでこさせるように手配する。

「いい、一人で歩ける・・・・ううっ」

「無理しなさんな、朽木隊長。阿散井君はすぐにくるから」

言葉通り、隊首会で近場で待っていた恋次が、京楽の部下に呼ばれて、やってきた。

「隊長!」

「恋次・・・・恋次、恋次」

様子のおかしい白哉の様子を見て、他の隊長たちがざわつく。

「何、朽木隊長はちょっとした病気でね。時折発作を起こすんだ」

京楽の言葉に、勇音は身を乗り出す。

「病気なら、やはりちゃんとした診察を受けたほうが・・・・・・」

「いらぬ、と言っている」

「でも・・・・」

「くどい」

「虎徹隊長。朽木隊長のことは、俺に任せてください」

よろよろと、恋次に支えられながら歩く白哉は、恋次に抱きかかえられて瞬歩で、隊首会の会場を後にした。



「恋次・・・・・・ヒートが始まったのだ。薬で抑えられていたのに、突然息ができなくなって、熱に支配されて・・・・・・」

「今、助けますから」

恋次は、白哉を抱いた。

1週間、ヒート期間を白哉と一緒に過ごして、白哉の熱は収まった。

そして、恐れていたことが起きた。

白哉が、オメガであることが、真ささやかに噂されていた。

そして、勇音の独自の診断で、それが事実であると分かった。

4大貴族であり、6番隊の隊長がオメガであることは、瀞霊廷を震撼させた。

他の3大貴族が動いた。

朽木家の当主がオメガであることを知った他の3大貴族たちは、我ぞとこぞって、血縁関係の者を、婚姻させるために朽木家にお目通りを願ってきた。

白哉は、ヒート期間が終わってから、朽木家にいても、見合いばかりさせられるので、辟易として恋次の家に居候していた。

「隊長、帰んなくていいんすか」

「帰ったら、他の貴族の男を宛がわれて、恋次、お前との番を解消させられて番にさせられて、婚姻させられて子を産む道具になり果てる」

4大貴族の当主、朽木白哉の子なら、朽木家の時期当主だ。

その夫となれる存在になりたくて、3大貴族は、直系は動いていないが、傍系などの血筋がお見合い話をもちかけてくる。

下手をすると、攫われて、番を解消する薬を無理やり飲まされて、そのまま強引に関係を強要されて、番にさせられる可能性もある。

「私は、恋次、お前がよいのだ。恋次となら、番でいても苦痛ではないし、子は産めぬが、この際だから婚姻しても構わぬ」

「隊長・・・・・」

結婚話をちらつかされて、恋次の心臓はどくどくと高鳴った。

「隊長・・・・・抱いて、いいですか。結婚、しましょう、俺たち」

「本気か、恋次。このような、できそこないの私と、結婚したいと・・・・・」

どっと背負っていたものがとれるような気分だった。

このまま、流されてしまっていいのだろうか。

「俺は本気です、隊長」

「恋次・・・・」

「愛してます、隊長。嫌じゃないなら、抱きますよ。抱く前にちゃんとアフターピル飲んでもらいますから、妊娠する可能性はありません」

「好きに、しろ・・・・・・」

恋次は、半ばやけを起こしている白哉を抱き寄せた。

アフターピルを口移しで飲ませてから、潤滑油やら褥やら、濡れたタオルやらを用意して、白哉を押し倒して、衣服をはぎとっていく。

恋次の家は一人暮らしの割には広かった。

「あっ」

薄い平らな胸の先端を甘噛みされて、声が漏れた。

ヒート期間ではないが、後ろは濡れていた。

でも、ヒート期間ではないので、滑りが足りずに、潤滑油を使うことになるだろう。

舌が絡み合う口づけを繰り返して、くくっていた赤髪を解いた恋次にキスされると、視界が赤で満たされた。

「んっ」

やわやわと、下肢を弄られた。

衣服を脱がされ、恋次も衣服を脱いだ。

「すげー綺麗。隊長、愛してます」

「恋次・・・私も、愛している」

番となったのだから、恋愛感情はあった。

「んやっ」

花茎に手をかけられて、そのまましごかれて、白哉はたまっていたのか、あっという間に精を弾けさせた。

「ああっ」

「隊長・・・指、いれますよ」

「ん・・・・・」

潤滑油で濡れた、恋次の指が体内に侵入してくる。

ばらばらに動かされて、そのうちの一本が前立腺をかすめて、白哉はびくりと体を跳ねさせた。

「隊長のいいとこ、もう知り尽くしてますから」

前立腺ばかりをいじられて、白哉は熱のこもった潤んだ瞳で恋次を見上げた。

「お前が欲しい。来い」

「はい、隊長」

恋次は、十分に解した白哉の蕾に己の怒張したものをあてがい、一気に貫いた。

「ああああ!!!」

刺激に、白哉が涙を流す。

「んんう」

唇を奪われて、悲鳴は音を失う。

「好きです、隊長」

ぐちゃぐちゃと、連結部が粟立つほどに、ピストン運動を繰り返した。

ずるりと入口付近まで引き抜かれて、子宮口まで貫かれた。

「ひあっ!」

一度ひきぬき、恋次が横になって、白哉に跨るように誘導される。

「んっ、んっ・・・・・・・」

ヒート中のように、熱に支配された体は、番のいうことをよく聞いた。

恋次の上に跨り、恋次のものをゆっくりと蕾が飲みこんでいく。

「あっ」

のけ反った白哉の白い喉を噛んで、所有の証を刻んだ。

騎乗位になり、そのまま深く交わった。

「あ、ああ・・・奥に、奥に当たってる」

「そりゃ、深く犯してますからね」

「やあぁっ」

「ほんとはいいんでしょ?」

「恋次・・・・・」

「隊長、いくから、子種、全部胎の奥で受け止めてくださいね」

「ああ!」

下から思い切り突き上げられて、白哉も恋次と同時に果てた。

濡れたタオルで、下肢を拭われて、中にだしたものをできる限りかき出された後、疲れで白哉はそのまま眠ってしまった。

その黒い絹のような髪を手ですきながら、このまま白哉を閉じ込めて自分のものにしたいと思った。

朝起きると、白哉の姿がなく、恋次は慌てた。

すると、浴衣を着た白哉が、濡れた髪のまま現れたので、ほっとした。

「隊長、ちゃんと髪乾かさないと、風邪ひきますよ」

「お前が乾かしてくれ」

「仕方ないっすね」

白哉は、自分の屋敷に戻る気はないようで、恋次の家から6番隊の隊舎に一緒に出勤した。

そして、結婚しろとおしかけてくる貴族たちに、自分には番がいて、その番と結婚すると、声高々に宣言した。

相手は、なんでも副官だそうだと、3大貴族の血縁関係たちが、ぶつぶつと文句を言っていた。

白哉は、金を使って、番を解消できる薬を買い占めて、破棄した。

これで、恋次を狙うしかない。

でも、恋次ほどの手練れを暗殺できるような暗部を、他の貴族たちはもっていない。

白哉は、決意した。

恋次と、生きていくと。番になったときは、まだそこまで決心していなかった。

恋次が純粋に愛しい。

恋次の子なら、産んでもいいかもしれない。

そう思うほどに、恋次への想いを募らせていた。




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チョコレイト。

2月がやってきた。

恒例のバレンタインの日には、男子も女子もそわそわする。

一護は、いつものように下駄箱をあけると、どさどさとチョコレートが入った箱が入れられていた。

「もてるな、黒崎」

生徒会長でもある石田が、たまたま通りかかっていてそう言ったが、石田は紙袋いっぱいにチョコレートの入った包みやら箱やらを手にしていた。

「お前ほどじゃねーよ」

「僕は将来医者になるって決めてるから、きっといい物件として見られているんだろうさ」

チョコレートをたくさんもらっているのに、少しも嬉しくなさそうだった。

「まぁ、俺は医者になる気はねーけど」

黒崎医院を継ぐつもりはなかった。

将来の夢は、翻訳家だ。

英語の成績はTOPクラスだ。

すでに、ドイツ語を習っている。いつか、ドイツ語の翻訳家になりたいと思っていた。

進学後の大学も国際系統を選び、第2学語にドイツ語を選択するつもりであった。

もうすにで、受験には受かっており、後は高校を卒業して、大学に進学するだけ。

でも、そこにぽっかりと穴ができる。

高校を卒業したら、ルキアは尸魂界に帰ってしまうのだ。

こちらから尸魂界に行くこともできるが、頻繁にいっては迷惑がかかってしまうだろう。おまけにルキアは13番隊の副官で、隊長代理である。

大戦の復旧で忙しいこの時期に、現世にいられるのは、尸魂界にとって大恩人である黒崎一護の我儘だった。

ルキアを、高校卒業まで現世で暮らしてほしいという。

それも、あと1カ月もすれば終わりだ。

まだ、一護はルキアに好きと言っていない。

いつか言おうと思っていたが、ついにバレンタインの日まできてしまった。

教室につき、席についてぼーっとしていると、いつの間にか授業が始まっていた。

もう大学には合格しているので、授業をちゃんと聞いていなくても問題はない。自主休校する生徒も目立つし、授業中にスマホをいじっている生徒も目立つが、教師はあえて何も言わない。

ブー。

一護のスマホが振動した。

教科書を一応盾代わりにして、メール画面を開く。

(貴様に渡したいものがある。放課後、保健室までこい)

(なんだよ、渡したいものって)

(たわけ。この季節になら決まっておろう)

ああ、なんだ。

義理チョコか。

ルキアからもらえるなら、義理チョコでも嬉しい。

気分が高揚して、ついついメールを何度も見てしまった。

やがて放課後になり、言われた通りに保健室にやってきた。

今日は保健室の先生は休みで、ベッドで眠っている生徒もいない。

ルキアは、ベッドに腰かけて、足をぶらぶらとさせていた。

「来たぜ」

「う、うむ」

ぶらぶら。

一護も、ルキアの隣に座って、ベッドが軋んだ。

ルキアは、まだ足をぶらぶらさせていた。

緊張しているようで、一護はルキアの頭を撫でた。

「な、何をするか!」

「何がじゃねーよ。そんなに緊張してどうした?」

「貴様に渡したいものが・・・・・」

「ああ、義理チョコだろ」

「違う!」

「え?」

「あ・・・・えっと・・・・・」

「まさか、本命?」

ドクンと、一護の心臓が高鳴る。

期待、していいのだろうか。

ルキアが好きだ。

ルキアも、自分のことが好きだと、期待していいのだろうか。

「やる。これを機様にやる」

ハート形にラッピングされたチョコレートを渡された。

「い、言っておくが、ほ、本命・・・・・義理じゃ、ない・・・・・・・」

顔を真っ赤にして、エンストしたルキアを抱きしめていた。

「すっげー嬉しい。俺のこと、好き?」

「貴様!す、す、すきやき・・・・・」

「好きだと思って、いいんだな?」

「う、うむ・・・貴様が、大学に進学したら、私は尸魂界に戻る。でも、週1程度なら、現世にいってよいと、総隊長と兄様が・・・・・」

「ルキア、好きだ。結婚を視野に、付き合ってくれ」

「けけけけ、こけっこー!」

真っ赤になったルキアは、またエンストを起こしていた。

「熱あるのか?」

「ち、違う。ただ、いきなりでビックリしただけだ」

「好きだ、ルキア。ルキアは?」

「あーもう!貴様のことが、ずっと好きだった!私を尸魂界に救いに来てくれた時くらいから、ずっと好きだった!」

「俺は出会った頃から好きだった」

「でも、私は死神で、貴様は人間で・・・住む世界が違うから、その・・・・好きだと言えなくて、今まで・・・・・」

「俺は、住む世界が違っても、ルキアが好きだ」

「それは私もだ!」

ルキアは、スマホの代わりに伝令神機を持っていた。それで、一護とメールのやりとりをしたり、ルキアが尸魂界に戻った時なんかに通話をしていたりした。

空白の17カ月。

ルキアも一護も、最大の試練だった。

霊圧を失った一護は、霊圧を取り戻し、大戦を経験してまた大人になった。

ルキアも、いろんなものを失ったが、生きて一護の傍にいれた。

ただそれだけで、十分なのに。

もっともっとと、欲張ってしまう。

だから、ルキアは正直に総隊長と義兄である白哉に想いを告げて、1週間に一度、休暇の日に現世にいくことを許してもらった。

「貴様のことが好きだ、一護。これからも、隣にいたい」

一護は、ルキアをベッドに押し倒していた。

そして、ルキアの唇を奪っていた。

「んっ・・・・・」

「すっげーかわいい」

「茶化すな」

ルキアは両手で顔を隠してしまった。

その手に口づける。

「貴様、経験があるのか?なんか手慣れていないか?」

「いや、京楽さんに連れられて、ちょっと花街にな。遊女は抱いてないぞ!ルキアが好きだから」

「花街・・・・私などより、よほど美人がいたのであろう」

「どんなに美人でも、ルキアじゃねーと意味ねぇんだよ」

「信じていいのか?」

「俺はルキアだけが好きだ」

ちゅっと、額にキスを落とすと、ルキアは顔を覆っていた手をのろのろと外した。

「私も、貴様だけが好きだ」

ルキアは、ぺろりと唇をなめて、一護を押し倒していた。

「ルキア?」

「結界を張った。しばらくは誰もこないし、音も漏れない」

ごくりと、妖艶になるルキアに、一護は唾を飲みこんだ。

「一護、貴様が欲しい。今すぐに」

「ルキア・・・初めてだろ?いいのか、こんな場所で」

「家に帰ったら、できないであろう!」

「確かにそうだな」

黒崎家に居候しているルキアは、一護の部屋に頻繁に訪れて、時折一緒に寝ることはあれど、そういった行為は一切してないなかった。

キスも、今日が始めてだというのに、なんだろうこのかわいくて妖艶な生き物は。

「貴様の、初めてを、もらう」

ルキアは、一護の制服を脱がしていく。

一護も、ルキアの制服に手をかけた。

どちらともなしに肌着になり、一護がルキアを押し倒していた。

「怖いか?」

「少し・・・・でも、貴様となら、大丈夫だ」

ルキアの薄い胸を、触る。

「あっ」

「声、もっと聞かせて?」

やわやわともみしだき、ショーツに手をかけた。ブラジャーはもう外されていた。

「濡れてる」

「や、言うな・・・・・」

ルキアの秘所に手をはわせると、濡れていた。

「指、入れるぞ?」

「ん・・・・」

ゆっくりと、解すように秘所に指をはわせて、かりかりと天井部分をひっかくと、びくんとルキアが反応した。

「ここ、いい?」

「や、なんか、なんか・・・」

くちゅりと音をたてて、一護はルキアを攻め立てた。

「あ!」

ルキアは、いってしまった。

ぜぇぜぇと息をして、そんなルキアにちゅっとリップ音をたててキスをして、一護はすでにたってしまっていた己を取り出して、ゆっくりと秘所にあてがった。

「痛いかもしんねーけど、優しくするから」

「痛くてもいいい。貴様と、一つになりたい」

ルキアの煽る言葉と、唇を舐める仕草に、我慢の限界にきた一護が、ルキアの中に侵入した。

ズッと、音をたてて中を裂いていくと、プチンと、処女膜が千切れる音がした。

秘所から、血が伝い、シーツに染みを作った。

「痛いか?」

「大丈夫だ。動いていいぞ」

ルキアは、一護を煽る。自ら足を開き、一護の唇に唇を重ねた。

「んう」

舌を絡ませあいながら、ゆっくりと交わった。

「そろそろ限界だ・・・・中に出すわけにもいかねーし、どうするかな・・・」

「や、中に出せ。子種を注げ。どうせただの義骸だ、孕むことはない」

「中に出すぞ」

「うむ」

一護の動きが早くなり、じゅぷじゅぷと水音を立てて、秘所を出入りしていたものは、ルキアの子宮口にズルリと侵入してきて、ドクドクと射精した。

「あ、あ、あ!私も、いく!」

「一緒に、いこう」

快感で真っ白になった世界で、息を整えた。

「ごめん、初めてなのに、ちょっと手荒かったか?俺も初めてだから、加減がわからなくて」

「いや、いい。私もきもちよかったし。それより、シーツの染み、どうしよう・・・・・」

「洗濯機に放り込んどけばいいんじゃね?」

保健室には、洗濯機もあった。

「うむ、そうだな」

「ちょっと待ってろ」

一護は服を着て、タオルをお湯で濡らして戻ってきた。

「中にだしたから、きっと垂れてくる。綺麗にしないと」

「あ・・・・そんなの、自分でできる」

「ルキアは休んでろ」

一護は、ルキアの中に出したものが、とろりとルキアの細い太ももを伝う姿に、また欲情を覚えたが、我慢した。

「お互い初めてだったから、うまくいったかわかんないけど、好きだぜ、ルキア」

「貴様に初めてを奪われるとは・・・・・ふふふ」

「なんだよ」

「嬉しいのだ。朽木家に養子になったからには、上流貴族と婚姻せねばなるまいと思っていたのだが、兄様が、一護が好きなら、一護と一緒になってもいいと・・・・・・・」

「あの白哉がか」

「そうだ。許可をもらったのだ」

「ルキア、俺と結婚してくれるよな?」

「ああ」

たとえ、寿命が違っても。

一護が先に死んでも、また死の果てに死神となり、未来はある。

永劫の時を、ルキアと過ごすことを、一護は誓った。

かりっと、指を噛んで、血をにじませると、ルキアも自分の指を噛んで、血をにじませた。

「血の誓いだ。未来永劫、私は貴様と共にある」

「血の誓いを。未来永劫、俺はルキアを愛する」

血の滲む親指を重ね合わあせて、唇を重ねあった。

服を着て、ルキアは結界を解いた。

体液でべとべとになってしまったシーツは、洗濯機にいれて洗濯した。

ルキアが、一護に手を差し出す。

「行こう、私たちの未来へ」

「ああ」

一護は、ルキアからもらったチョコを大切そうに鞄にしまって、他にもらったチョコは処分して、帰路についた。

「ふふ、なんだか不思議だな。結ばれたけれど、まだ付き合い始めたばかりだというのに、貴様の家に帰るのは、なんだがむず痒い」

「だからって、尸魂界に戻るなよ。現世にいてくれ」

「ああ、分かっている。できるだけ、現世にくるようにする」

ルキアと一護の物語は、まだ始まったばかり。

チョコレートから始まった、甘い関係は、甘いまま続いていくのであった。




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酒を飲んでも飲まれるな

「なんだこれは」

朝起きると、横に白哉が寝ていた。

「ん・・・・・・」

美し顔(かんばせ)が、ゆっくりと目を開こうとして、また閉じられた。

いやいやいや。

何この状況。

昨日は・・・・確か、ルキアと白哉と酒を飲みあって・・・・・。

後のことは、覚えていなかった。

いやいやいや。

白哉の衣服が乱れていたり、美しく整った顔は綺麗だが、まさかまさかと。

同じ布団で寝ていたのだ。

おまけに一護は上半身裸で、パンツ一丁という姿。

記憶もあやふやだし、まさかとは思うが、白哉に手を出したわけではないだろう、多分。

そう願いたい。

「兄様、朝ですよ!」

愛しい義兄が珍しく非番とはいえ、遅くまで寝ているのを心配したルキアは、わざわざ白哉を起こしに来た。そして、パンツ一丁の一護と、乱れた衣服のまま眠っている眠り姫こと、白哉を見て固まった。

まだ眠っているとはいえ、衣服の乱れた白哉と、なぜか上半身裸のでパンツ一丁の一護を見て、ルキアは涙をボロボロと零した。

「一護の浮気者!」

ルキアは、一護に強烈なビンタをかまして、走り去って行った。

「あいたたたた」

すごいビンタだった。

思いっきり頬に痕が残った。

とにかく、誤解を解かないといけないので、散らばっていた衣服を着て、ルキアの後を追おうとした時、白哉が起きた。

「おい白哉、なんだこれ!俺ら、なんでもなかったよな!?酒のせいでやちゃったってことないよな?」

「んー・・・・・覚えておらぬ」

「ぐわああああああ」

白哉は、首を傾げていた。ぱらぱらと、長い艶のある髪が頬に零れる。

「先ほど、ルキアの声が聞こえた気がしたが」

「この状況見て誤解したんだよ!浮気者って言われた!」

「ふむ。浮気者が」

「ぐああああああ。俺は何もしていないはずだああああ!」

一護は、衣服を着ると、猛烈な勢いで白哉の寝室を出て、ルキアの霊圧を探りながら、走り出す。

朽木家の本家はとにかく広い。

霊圧を探るのは苦手だが、なんとか感情の高ぶりのためか霊圧があがっているルキアのいる場所を突き止めて、一護はそこに向かった。

椿の花が咲いていた。

それを、ルキアは黙ってただ見ていた。

「ルキア」

「浮気者」

「俺と白哉はなんでもねーって。なんもしてないはずだ。俺にはルキアがいる。ルキアとしか、そういうことはしない」

「浮気者。兄様に手を出すなんて・・・・」

「だから、酒飲んで多分ひゃっはーって気分になってああなっただけで、誤解だ。俺と白哉はなんでもない。白哉はただの義兄だ」

「本当に、信じてよいのだな?」

ルキアは、潤んだ瞳で一護を見つめてきた。

う。

かわいい。

「ルキア、大好きだ」

ルキアを優しく抱きしめると、ルキアもおずおずと抱き返してくれた。

「一護の言葉を信じる」

「ああ」

椿が咲き狂う庭で、口づけを交わした。

「一護の匂いがする。兄様の匂いがない。信じる」

ルキアは、太陽のように笑った。

泣いたり笑ったり、忙しい。

一護は、ルキア成分をたっぷり補充した。

「なぁ、ルキア、今晩・・・・・・」

「兄様はとにかく、一護は当分、酒は禁止だな」

「まじか」

「オレンジジュースでも飲んでいろ」

「まぁ、仕方ねーか」

誤解はあっけなく解けた。

白哉も一護もルキアも、昨日はべろんべろんになるまで飲んだので、皆記憶があやふやだった。

一番素面に近かった一護が、酔いつぶれた白哉を介抱して、そのまま眠気に任せてずるずると寝てしまったのだ。

なんでパンツ一丁だったのかは、その時の一護に聞いてみないと分からない。

一護は飲みすぎると、パンツ一丁になるという噂が、13番隊で流れるようになったのは、後日の話。

その頃の白哉はというと、身なりを整えて、持ち帰っていた仕事をしていた。

休みなのだから、休めばいいと思うのだが、することが特にないそうなので、自由にしておいた。


「一護、ルキア、今日飲みに行かないか」

そう恋次に誘われて、ルキアは首を横に振った。

「つい先日、兄様と一護と飲んで羽目を外してしまい、泥酔した。しばらく酒は飲まない。一護は酒は当分禁止だ」

「なんだ、つまんねーな」

「兄様でも誘え」

「隊長、居酒屋なんかの酒飲むのか?」

「案外いける口だぞ。現世のビールとか、やっすい酒も好きみたいだし」

一護がそう言うと、恋次はうなりながら、白哉を誘うことにしたようだった。

夕飯の席で、白哉は果実酒を飲んでいた。

ルキアはココアを。

一護はオレンジジュースだ。

他のジュースも飲みたいといったのだが、なぜかオレンジジュースに固定されていて、我儘をいうなとどやされた。

「一護は、オレンジ色だからオレンジジュースしか飲んではいけないのだ」

「なんだよそれ」

ルキアを抱き寄せて、耳を甘噛みすると、ルキアが飛び跳ねた。

「ひゃん」

「オレンジジュース飽きたー。バナナオレが飲みたい」

「仕方ないな」

ルキアは、給仕の係に、バナナオレを作って持ってこさせるように言った。

「ふふっ、結局私は一護に甘いな」

「夫婦なんだから、いいだろ」

白哉が、いきなり大きな罅をいれてきた。

「泥酔したあの日、兄は私をルキアと間違えて押し倒して、衣服を脱がそうとした」

「ぶーーーーーー」

持ってこられたバナナオレを、一護はルキアの顔面に噴き出していた。

「一護・・・・私に飲み物を噴き出してかけるとは、いい度胸だな。兄様に迫ったのか・・・とんだ浮気者だな!」

解決したと思っていた案件に火が噴いた。

「おい、白哉!」

怒るルキアの頭をなでながら、白哉は一護にべーっと舌を出した。

「ぐぬぬぬ・・・・・・」

白哉の意地の悪さは変わらないようで。

義妹が一番かわいい白哉は、義弟になった一護をからかったり、怒らせたたり、とにかく嫌がらせをしてくる。

今日の風呂の湯を、白哉が入る前に全部抜いてやろうと、子供のような復讐を企む一護。

しかし、尸魂界も大分機械化が進み、朽木家にはシャワーもある。

白哉専用の、シャンプーとボディーソープの中身を入れ替えてやろうと、ついでに企んだ。

決行した次の日。

朝食の場で一護の席はなく、段ボールの上にめざしが置かれていた。

「ぐぬぬぬぬ・・・・・・」

「兄には、それがお似合いだ」

熱い茶をすすりながら、白哉は席を立って出勤する。

「一護、めざしだけでは腹が減るだろう。ほら、味噌汁ぶっかけご飯だ」

ようするに、猫まんま。

白哉に、一護は猫まんまが好きだと刷り込まされているルキアは、精一杯の優しさを出したつもりだった。

「ルキアがくれるなら、まぁ猫まんまでもいいか」

ルキアの紫紺の瞳が、嬉し気だった。

昼は、ちゃんとしたご飯をたべて、夕飯も普通だった。

風呂に入ろうとしたら、湯がなかった。

シャワーで体を洗おうとしたら、ボディーソープの中身がリンスになっていた。

「く、白哉め!」

やったらやり返される。

それを知っていながら、二人は争いを続けるのだった。




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アイスバーズ京浮

注意。

アイスバーズです。

設定は適当。

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世の中には、アイスとジュースというものが存在する。
アイスの特徴は、体温が冷たいこと、体が弱いこと、もう一つはジュースと結ばれると3分以内に体が溶けてしまうこと。

ジュースはアイスに好意を抱いてしまうことが多く、アイスとジュースが結ばれることはアイスの死を意味している。

ジュースは自分がジュースであるということを知らない場合がほとんどだ。

アイスもジュースも稀なので、検査などたまにしか行われなかった。


浮竹はアイスだ。

身体が生まれつき弱く、長く生きられないとされていたが、ミミハギ様を宿らせたお陰で生き延びることができた。

浮竹の統学院からの大親友である京楽は、実はジュースだった。

浮竹は、自分がアイスであることを知っている。

京楽がジュースであることにも気づいていた。

でも、京楽に激しく惹かれながらも、ただ京楽を悲しませないために、迷惑をかけないためにずっと秘密にしてきた。


「おはよう、浮竹」

「ああ、おはよう」

同じ寮の部屋で寝起きしている浮竹と京楽は、今日も何気ない1日を過ごそうとしていた。

浮竹は京楽が好きだった。

アイスは本能的にジュースに好意を抱く。

そのせいか、同じ男性なのに京楽のことが好きになってしまっていた。

京楽は自分がジュースであることを知らない。

「今日の授業は・・・・・・・」

他愛ない会話を続け、学院に登校して授業を受けた。

昼休みになって、食堂で二人で昼食をとっていた。

「なぁ・・・・アイスとジュースって、知ってるか?」

「んー?ああ、アイスがジュースと想いが通じ合うと、アイスが溶けるってやつでしょ。知ってるけど、それがどうかしたの?」

「いや、ただ興味があっただけで」

「うん。悲劇だよね。結ばれたら、アイスは死ぬんだから」

京楽も、アイスとジュースの関係は知っていた。

今度、アイスとジュースの検査が行われることになっていた。

自分がジュースで、親友のはずの浮竹がアイスで、アイスである浮竹がジュースである京楽に想いを抱いてると知ったら、京楽はどうするのだろうか。

多分、想いあっていても、死に繋がる「好き」という言葉は口にしないだろう。

両想いであっても、好きだと口にして想いを明確にしない限り、アイスは溶けない。

だから、安堵もあった。

京楽が、浮竹のことを想っていても、多分「好き」とは言わないだろう。

それが、アイスとジュースが付き合っていける唯一の選択肢だ。

でも、ジュースは好きという言葉を言ってしまう場合がほとんどだ。だから、恐怖も覚えた。

自分がアイスとして溶けることではなく、溶けてしまった後の残された京楽のことに、恐怖を覚えた。


2週間が経ち、いよいよアイスとジュースの検査の日がやってきた。

結果、浮竹はアイス、京楽はジュースだと判明した。

その日から、浮竹は京楽を避けるようになっていた。

「どうして無視するの」

京楽が、浮竹の肩を掴み、自分のほうを振り向かせる。

「俺はアイスだ。ジュースのお前に迷惑しかかけない」

「そんなの、わかんないでしょ。それに、僕は君のことは」

「好き」とは、京楽は言わなかった。

「僕は、君のことを親友として見ているから、安心して。恋愛感情なんて抱いてないから」

「そうか」

浮竹は、落胆すると同時にほっとした。

京楽が傷つくことがないなら、友人として今まで通り過ごしていけばいいのだ。

「アイスとジュースだが、うまく付き合っていこう。俺も、お前の親友でありたい」

「うん」

握手を交わし合いながら、互いに想いを隠した。

京楽も、浮竹のことが好きだったのだ。

想いを告げることは、浮竹の死を意味するかもしれないと知って、京楽は浮竹に自分の想いをいつか伝えようとしていたが、やめた。

そうやって、アイスとジュースでありながら、二人は親友同士として学院を卒業し、死神となった。

死神になっても、交流は続いた。

お互いの想いを隠して、京楽は花街に繰り出して、浮竹に似た遊女の元に通っていた。

それを、浮竹は傷つきながら、ただ黙って見ていた。

浮竹も気づいていた。

京楽が、自分のことを好きなのだろうと。

京楽は、浮竹が自分のことを好きだとは気づいていないようだが。



「京楽、飲みすぎだぞ。さすがにこの酒は飲みすぎるとやばい」

「いいのいいの。こんなの酒のうちに入らないよ」

居酒屋で、二人で飲み合っていると、京楽が羽目を外して飲んだくれてしまった。

京楽が酔う姿が珍しくて、浮竹は甘い果実酒を飲みながら、京楽の背中を撫でた。

「アイスの俺は、いつ死んでもおかしくない。アイスは元々体が弱いから」

「うん・・・・・・」

「いつか、俺が死んでしまったら、墓参りにはきてくれよ」

「そんな、悲しいこと言わないでよ。僕はジュースだけど、浮竹のことは親友としてしか見てないから、大丈夫だよ」

本当は、大好きだけど。

想いを告げることはできない。

浮竹は、京楽を隊舎に送り届けると、自分に宛がわれた席官の家で、眠れない夜を過ごした。

京楽が欲しい。

京楽に振り向いて欲しい。

想いをつげたい。

眠れなくて、布団でごろごろしながら、悶々と悩みを抱え込む。



やがて、時は流れ二人は死神の隊長になっていた。

それでも、交流は続いた。

一度、浮竹は誘われて京楽と共に花街にでかけたことがあったが、浮竹は楽しくなさそうだったので、京楽はその一度きりの花街以外、誘うことをしなかった。

好きな相手が、遊女に手を出すのを、あまりいい気持ちで見ていられなくて、浮竹は酒をこれでもかというほど飲んで、京楽を困らせた。

「京楽のあほー」

「君、酔うと性格、少し変わるよね」

「そんなことはない。それに俺は酔ってなんかいない。京楽がアホだから、悪いんだ」

「はいはい。僕はアホだよ。好きな相手に好きとも告げれずに・・・・・・」

小声だったので、酔いつぶれた浮竹の耳には届かなかった。

浮竹を介抱して、去ろうとすると、浮竹は京楽の女ものの打掛の端を掴んだ。

「いつか、俺はお前に・・・・・・」

「しー。それ以上はだめだよ」

アイスとジュースである。

二人の想いが通じ合うことは、アイスである浮竹の死を意味していた。

「ん・・・なんでもない」

言葉にせず、好き、と口を動かした。

京楽は、浮竹の世話をいろいろとやいてから、自分の館に戻ってしまった。


「ああ。想いを告げれたらなぁ」

浮竹は、ごろりと天井を見上げながら、涙を零した。

京楽が好きだ。

好きだと告げたい。絶対に、京楽も自分のことが好きだ。

でも、それは自分の死を意味する。

「いっそ、死んでもいいかな・・・・・・・」

そんな思いを抱いて、さらに数十年が経過した。



大戦の勃発。

滅却師が攻めてきて、ミミハギ様を解放することを決めた浮竹は、京楽を呼び出していた。

「俺はミミハギ様を解放する。死ぬだろう」

「浮竹!他に方法はないのかい!?」

「ない」

ならば、せめて。

「俺がミミハギ様を解放したら、俺の元にきてくれ。死ぬ前に、伝えたいことがある」

「浮竹・・・・・・・・」

京楽は、悲痛な顔で浮竹を抱きしめた。

「分かったよ。その時がきたら、君の傍にいく」

やがて、浮竹はミミハギ様を解放して、肺の病が悪化して重篤になった。

大戦は、黒崎一護のお陰で、勝利で終わった。

けれど、浮竹の死はもう確実なもので、もってあと1週間というところだった。

浮竹は、入院せず、ただ己の死を雨乾堂で待っていた。



「浮竹、起きてるかい?」

「寝てる」

「起きてるじゃないか」

「俺はもうすぐ死ぬ。でも、その前にお前に伝えたいことがあるんだ」

「うん。僕も、君に伝えたいことがあって、ここにきたよ」

浮竹の死は明確。

もう、迷うことはやめた。

「好きだよ、浮竹」

「ああ・・・・そう言われるのを、数百年待っていたんだ。俺も好きだ、京楽。愛している」

「愛してるよ、浮竹」

ほろほろと。

少しずつ、浮竹の輪郭があやふやになっていく。

浮竹を胸に抱きしめて、キスをした。

「3分って、意外と長いんだな」

「君がいなくなってしまう」

「どうせ、尽きる命だ。こうして、京楽の想いを受けて、想いを告げれて、死ねるなら本望だ」

京楽は、ぼろぼろと涙を零した。

「ねぇ、神様は残酷だね。なんで君をアイスにしたのかな。なんで僕はジュースなんだろ」

ぎゅっと、腕の中の浮竹を抱きしめて、ただ涙を流した。

「泣くな、京楽」

浮竹は、ほろほろと溶けていく。

「逝かないで」

「俺は満足だよ。お前の腕の中で死ねて」

「僕はどうすればいいの。君を失ったこの世界で、一人で生きろと?」

「お前は強い。俺の死なんて、克服できる」

「浮竹、愛してる」

「俺も愛してる、京楽」

触れるだけの口づけをして、浮竹は溶けてしまった。

「浮竹・・・・・・・」

残された衣類を、抱きしめて、京楽は涙を零し続けた。

浮竹も、最期は泣いていた。

アイスとジュース。

決して想いを告げまいと誓っていたが、浮竹の死が近すぎて、想いを伝えた。

両想いだった。

幸せだった。

浮竹と過ごした数百年、幸せだった。

お互いを好きとは言わなかったが、想いはひそかに通じていたのだ。

アイスの死は、「好き」と告げられて愛されること。

アイスである浮竹は、京楽の好きという言葉と愛されることによって、溶けて世界から消えてしまった。

「大好きだよ、浮竹。愛してる」

13番隊の羽織を抱きしめて、京楽は目を閉じた。



愛とは、時に残酷だ。

アイスとジュースであると分かっていたから、浮竹の死が確定しない間は想いは告げなかった。

ミミハギ様の解放。

それによる、浮竹の病気の進行。

もう、助かる術はないと分かって、想いを告げた。

「僕が・・・君を、殺した。君を溶かした」

でも、不思議と後悔はなかった。

いなくなってしまった浮竹のぬくもりが完全に消え去り、京楽は顔をあげた。

「君の分まで生きるよ、僕は。だから、天国で見守っていてね」

ああ、そうだな。

そんな言葉が聞こえた気がした。

アイスの浮竹は、表向きは病死とされたが、遺体がないことで、アイスとしての死を受け入れたのだと、皆に話した。

京楽は攻められなかった。

逆に、泣いていいんだよと、総隊長でも泣いていいんだよと言われた。

もう、涙は浮竹が溶けていく間に流し尽した。

空の棺桶には、白い百合の花が添えられて、燃やされていく。


「さよなら、浮竹」

どうか、安らかに。

君の想いをもらって、僕は強くなれた。

君の死を乗り越えて、生きていく。

いつか、僕が君の傍にいったら、今度こそ一緒になろう。

さようなら、愛した人よ。

さようなら。





















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好きなものは好き16

「ルキア、誕生日おめでとう」

「ありがとう、一護」

一護は、ルキアの誕生日のためにたくさんの御馳走を作り、ケーキを用意していた。

誕生日プレゼントは、お揃いの腕時計だった。

「チャッピーの腕時計ではないか!これ、なかなか売っていないのだぞ!よく手に入れられたな!」

浦原のつてを頼ったなどど、口が裂けても言えない。

灯されたろうそくの火を吹き消して、ルキアは、一護の手作りのケーキを頬張った。

「うむ、貴様の料理はいつ食してもうまいな!」

「たくさん食ってくれ。ルキアのために作ったんだから」

二人で食べきれる量ではないので、次の日にも食べることになるだろうが、誕生日だしいいだろうと思った。

「好きだぜ、ルキア」

「私も好きだぞ、一護」

食事が終わって、湯浴みをして二人でなぜか携帯ゲームをしていた。

「好きだから負けてくれぬか一護」

「いや、好きだからお前が負けろルキア」

「キーー!」

「なんだよ!」

負けて、ルキアはYES NO の枕で、一護を殴った。

ちなみに今日はNOだ。

「貴様など、生クリームの海に沈んでしまえ」

「すっげぇ胸やけしそう」

ルキアを抱きしめると、自然と唇が重なった。

「ん・・・・・・」

「ルキア、好きだ・・・・・」

「知っておる・・・・・」

互いの体温を共有し合いながら、ベッドに横になると、睡魔が襲ってきた。

一護はルキアを抱く気でいたのだが、ルキアがNOと出したので、手は出さなかった。

ただ、後ろから抱きしめて、何度も唇だけでなく、額やうなじ、首筋、鎖骨とかにキスをした。

鎖骨や首筋、うなじなどにはキスマークが残らないようにした。

今日は、大学がある日だった。

ルキアは非番で、一護の大学についてきた。

冬もののワンピースの上からダッフルコートを羽織り、一護と手を繋いでキャンパスの中を歩いた。

「よー、一護、ルキアちゃんとデートか?」

「デートじゃねぇけど。まぁ似たようなもんかな」

ルキアは黙っていれば、とても綺麗なお人形のようである。

珍しい紫紺色の瞳を瞬かせて、長いまつ毛が頬に影を作る。

「一護、次の授業は休講であろう。食堂へいかぬか。この大学のカレーがまた絶品なのだ」

「って言ってるから、行ってくるわ」

「へいへい。見てるだけでおなかいっぱいだぜ、こっちは」

他愛ない会話を友人とかわして、食堂にくるとルキアは席をとり、エビフライの乗った大盛カレーを注文した。

「お前、細いのにほんとよく食べるよな」

「死神たる者、食せる時に食さねばならぬ時もある」

「へいへい。そういうことにしておくよ」

ちなみに、福神漬けはお代わりしほうだいなので、ルキアは福神漬けもたくさん食べた。

満足したのか、寒いだろうにアイスを購入して食べていた。

「冬にアイスかよ」

「冬にアイスがまた絶品なのだ。風呂上がりが一番だが」

「授業終わったら、買い物いくか。好きなアイス、買ってやるよ」

「うむ」

ルキアは、ご機嫌だった。

「もう1時か。次の講義が始まるのではないのか」

「おっといけね。この授業、出席とるからな。単位落とすわけにもいかねーし、出ないと」

「私も授業を受けていいな?」

「ああ、いいぜ」

大学では、ルキアは一護の婚約者ということになっていた。

なので、ちょっかいをかけてくる輩も少ない。

ただ、一人で放置しておくと、知らない学生に口説かれていたりするので、極力大学にいる時は一緒に行動していた。

ゼミなどのクラスで別れた授業には、記憶置換の装置を使ってゼミの生徒であるということにしていたりする。

ちょっと問題ありそうだが、ルキアと少しでも一緒にいたいので、一護は何も言わない。

「今日はバイトは休みなのか?」

「ああ、そうだ」

「では、買い物して家でごろごろしよう!」

いつもはごろごろなんてできないので、ルキアは現世にくると休息をとる。

一護といちゃつきながら、他愛ない会話をするのが好きだった。

一護は、ハーゲンダッツの一番高いアイスを買わされた。

「たっけぇ・・・ただのアイスなのに・・・・」

「たまにはよいであろう。昨日は誕生日だったのだ。その続きだ」

「へいへい」

唇と唇が重なりあう。

アイスを二人で分け合って食べて、平穏な時間と幸せを共有しあった。

「一護は、私のどこが一番好きなのだ」

「全部」

「一番を聞いているのだ」

「・・・・・・その絶壁のむ」

バキ。

最後まで言わせずに、ルキアが額に血管マークを浮かべて、一護を拳で殴った。

「何か言ったか?」

「いえ、なんでもないです」

ちなみに一護が言おうとしたのは絶壁の胸、である。

胸が小さいことにコンプレックスをもっているルキアには分からないだろうが、一護はルキアを好きになった瞬間から巨乳派から貧乳派へと変わった。

ルキアの好きなところ。

たくさんありすぎて、言葉で表せない。

好きなものは好き、でいいじゃねぇか。

そう思う一護だった。






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満月

酒に酔うたびに、京楽は浮竹に「好きだよ」と囁いた。

京楽が酒に酔うほど弱くないことを、浮竹は知っていた。

だから、長いこと「好きだよ」と言われて、「そうか」としか答えなかった。


はぁあああ。

長い長い溜息を、浮竹はついた。

今日は満月。

月見の季節で、あと1時間ほどすると、京楽が酒をもって遊びにくる予定だった。

「隊長、いい加減、諦めて想いに答えてやったらどうですか」

副官の海燕が、重い溜息をつく上官を見る。

すでに酒盛りを始めていた。

団子を食いながら、浮竹と酒を飲みかわしあっていた。

京楽とは二人で月見をする予定だったので、海燕とはその前に少しだけ月見をした。

「でもなぁ。もう200年以上はただの親友だったんだぞ・・・・・・」

「隊長も好きなんでしょ、京楽隊長のこと」

「それが問題なんだ」

今更、好きと、言えるだろうか。

言った瞬間に、今まで築いていた友情が全て壊れそうで怖かった。


「あ、時間なんで俺下がりますね。あとは京楽隊長と月見楽しんでくださいね」

「あ、海燕!」

待ってくれ、お前もいてくれと言う前に、海燕は下がって去って行ってしまった。

「はぁ・・・・・」

「どうしたんですか、ため息なんかついて」

「海燕か?下がったんじゃないのか?それに声がおかしいぞ」

「いや、ちょっと風邪引いたみたいで」

やけに低い声に、海燕が本当に風邪でも引いたのかと思いつつ、相手は海燕だと思って口にした。

「風邪には気をつけろ。京楽のことが好きすぎて、どうにかなりそうなんだ」

「なんだ、そんなこと」

「へ?」

背後から、抱きしめられた。

ふわりと香る金木犀の香水の甘ったるい匂いに、浮竹の体が強張る。

「お前・・・・海燕の真似なんかして・・・・冗談だ、冗談」

京楽だった。

「君は海燕君の前では嘘は言わないの、知ってるよ」

「京楽・・・・・・」

「僕は、君が好きだよ、浮竹」

「俺は・・・・・・」

「君も、僕のこと好きでいてくれたんだね」

「いや、俺は」

京楽の腕から逃れて、浮竹と京楽は向かいあいながら、お互いの杯(さかずき)に酒を注ぎ合った。

「いい月夜だね」

「そうだな」

浮竹は顔を真っ赤にして、京楽はその様を見て酒を飲んで楽しんでいた。

「いいね、今の君の表情。ぐっとくる」

「京楽、あまり人をからかうな」

「どうして?前からしつこいほど言っているけど、僕は浮竹が大好きだよ。友達としてじゃなくって、恋心で。もちろん友達としても大好きだよ」

「俺は・・・・その・・・・」

「酒のせいにしちゃいなよ」

京楽の飲む強い日本酒をすすめられて、つい飲んでしまった。

くらりと、酔いが体中を回る。

「ああ、好きだ。大好きだばかやろーーー」

浮竹は、もうどうにでもなれと、叫んでいた。

「僕を?」

「ああそうだ。京楽、大好きだ。統学院の頃から好きだった」

「僕もだよ、奇遇だねぇ。お互い好きだったのに、200年経ってやっとお互いの想いが通じ合ったんだね」

けらけらと笑って、京楽は酒を飲みほした。

「さて」

お互い、正座になって、改めて向かい合った。

「僕は君が好きだよ、浮竹。恋人になってくれないかい」

「京楽・・・・俺でいいのか。俺は病弱だし、何より同じ男だ」

「統学院で一目ぼれして、はや200年。全部ひっくるめて、好きだよ」

「俺も、お前が好きだ、京楽・・・・・・」

触れ合うだけのキスを、一度。

次は、舌が絡み合うようなキスを二度。

「ま、待て!」

「どうしてだい?」

「そ、その好きだとは言ったが、こういう関係になるにはまだ心の準備が!」

「そんなの、酒の勢いに任せちゃいなよ」

「ちょ、ま、京楽!」

その日の晩、浮竹は京楽においしくいただかれたそうな。




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告白

「なんだこれは」

ルキアの下駄箱に、手紙が入っていた。

何気にチャッピーのシールをはられており、開けるのを少しルキアはためらった。

「チャッピーのシール・・・・はがすのはかわいそう・・・・でも、中身を見なければ」

中には、大きな文字で「好き」と書いてあった。

差出人は、3時に屋上にくると書いてあった。

「なんだこれは。果たし状ではないのか」

「あー、朽木さんラブレター?」

井上が、ルキアのもっているラブレターをそっとのぞき見る。

「わ、好きだって。でも屋上に呼び出して、その時相手がわかるって、なんか不思議だね」

「果たし状ではないのか、やはり」

「いや、こんな果たし状見たことないから!あ、黒崎君、大変なの!朽木さんが!」

「え?賞味期限3カ月過ぎたアイスでも食って腹壊したとかか?」

一護の言葉に、ルキアはその頭を拳で殴った。

「そんなわけあるか!」

「いってー!ただのジョークだろ!」

「貴様のジョークは面白くない!」

どこからか取り出したハリセンで、また一護の頭をはたいた。

「ポカポカ殴りやがって!俺の頭がアホになったらどうしてくれる!」

「貴様はもともとアホだから別にいいではないか」

「なんだと!一度成績は落ちたとはいえ、これでもまだ上位保ってんだぞ!」

ルキアが、現世にいれる時間は残されている。

尸魂界に、卒業したら帰るのだ。

滅却師たちの侵略を勝利してもう半月になる。

残された時間は短い。

一護は、ルキアのことが好きだったが、言い出せずにいた。

でも、こんな形のラブレターの相手を、好きになるのかもしれないと思って、気が気ではなかった。

ぎゃーぎゃーと言い合いを続け、教室で授業を受けて、昼飯を食べて午後の授業を受けて、結局3時になって、ルキアは屋上にいってしまった。

一護は、ルキアの後を追って、屋上に来ていた。

「なぜ貴様がここにいるのだ!」

「お前のおもり」

「なんだと!いらぬ!消えろ!」

「うっせ。ほら、ご登場だぜ」

さえない顔の、下級生だった。

ルキアは、その下級生から惚れたとか何とか言われて

「好きです、付き合ってください!」

と、手を差し出してきた。

ルキアは猫をかぶって、どう断ろうかと思っていると、一護が。

「ごめんな。こいつ、俺と付き合ってるんだわ」

「え・・・・黒崎先輩とですか・・・・・・ううう、お似合いです!分かりました、失礼します!」

「おい、一護、貴様何を勝手に!」

一護は、ルキアを抱き寄せた。

「いつか、言おうと思ってたのにな。こんな形になるなんてなんかいやだが、ルキア、お前のことが好きだ。付き合ってくれ」

「へ?」

ルキアは、間の抜けた顔をしていた。

それから、白哉専用の携帯を取り出して、一護に告白されたことを白哉に伝えた。

「おい、ルキア、なんで白哉に!」

「わわわわ、私も、貴様のことを、すすすすす、すきやき!」

「ルキア」

一護の腕の中で、固まったルキアに、一護が苦笑する。


「ほう。兄は、ルキアを好きだと。付き合いたくば、私を倒してみろ」

「ほらきたーーーーーー!!!」

一護はこうなるであろうことが分かっていたので、白哉に報告されるのを恐れていたのであった。

「散れ、千本桜」

「ぎゃああああああ!話し合いで解決させろおおおお」

「笑止」

「ルキアのアホおおおおおお」

「兄様・・・・いつ見ても麗しいです」

ルキアは、白哉が大好きだ。

一護も同じくらいに好きだけど。

白哉に、一護とのことを認めてもらいために呼び出したのだと、一護が知るのは後日のことだった。


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オメガバース読み切り

「俺たちは、ずっと親友でいよう。なぁ、京楽」

「そうだね。君がそういうのなら、いつでも、君が死ぬまで親友でいるよ」

そんなやりとりをしたのは、数か月前。

また浮竹がオメガだと分かっていなかった時のこと。




「あ・・・・」

体がかっと熱くなった。

ヒートが始まったのだ。抑制剤は飲んでいたにも関わらず、よりによって統学院でヒートになるなど最悪だった。

ぐらりと、体が傾ぐ。

よろけた浮竹を、同じ特進クラスの京楽が受け止めた。

ぶわりとオメガ特有のフェロモンを受けて、京楽の顔が歪む。

同じように、浮竹のヒート期間特有のフェロモンにあてられたアルファたちが、じりじりと、浮竹を囲んだ。

「なぁ、まわしちまおうぜ」

「いいな、それ」

「どうせ下級貴族だ。問題ねーだろ」

京楽の腕から浮竹を奪い取ったクラスメイトが、浮竹を押し倒す。

「やめろ、いやだ、触るな!」

「おい、京楽、お前も混ざるよな」

びりっと音がして、浮竹の学院服の上が破られた。

浮竹の顔が蒼くなる。

「ひっ」

クラスメイトの男に首筋から鎖骨を触られて、その気色悪さに息がつまった。

ゆらり、と。

殺気が、教室を満たした。

あまりの霊圧の高さに、その場にいた浮竹を犯そうとしていた男たちは、恐怖で顔を強張らせた。

「じょ、冗談だ、な、浮竹、京楽」

「触るな!」

浮竹は、涙をためながら、押し倒している男を押しのけた。

「寮に帰る!」

大声をだして、涙を流しながら起き上がるが、視界は狭くなっていて、がたがたと体が震えた。

犯されそうになった恐怖と、傷つけられたプライド。

よりによって、京楽の前でヒートになるなんて。

京楽とはずっと親友でいようと誓ったのだ。

よろり。

熱でうなされる体は、うまくいうことをきいてくれない。

ガタタンと、机にぶつかった。

くらりと頭が揺れる。

だめだ、意識が・・・・・。

ふわりと、温かいいつもの匂いに満たされた。

「京楽・・・?」

「抑制剤飲んだ?」

「まだだ」

「とりあえず寮に戻ろう。それから抑制剤のもう。ね?」

浮竹と京楽は同じ寮の部屋であった。

山本総隊長が、病弱な浮竹を京楽に任せる形で、今まで暮らしてきた。

それはこれからも変わらないと、普通に思っていた。

自分がオメガであり、京楽がアルファであると分かったその日までは。

浮竹がオメガだと判明したのはつい先々週。

ヒートがいつきてもおかしくない年齢で、抑制剤を欠かさず飲んでいた。

今日はあいにく朝飲むのを、時間がなくてできなかったせいで、ヒートが始まった時に分泌されるフェロモンの量が半端ではなかった。

「浮竹、しっかり捕まって。瞬歩で帰るよ」

「あ、ああ・・・・・・」

抱き上げられて、避難の声を出す暇もなく、寮の自室に戻った。


抑制剤と、水の入ったコップを渡された。

ごくりとそれを嚥下しても、熱は収まらない。


「あ・・・・京楽、すまない、一人にしてくれ」

「無理だよ。こんな状態の君を一人になんてできない。教室の誰かがこっそり部屋に忍び込んできて、浮竹を襲うかもしれないし」

「オメガなんて・・・・・」

「僕は、浮竹がオメガでもよかったよ。僕はアルファだし・・・・・ねぇ、まだ親友でいたいと思ってる?」

「それは・・・・・・」

「ほんとは欲しいんでしょ?」

欲しい。

京楽が。

狂おしいまでに、京楽が好きだった。

オメガであると分かる前から好きだった。親友というポジションと、病弱なのをいいことに、京楽の隣に常にいた。

京楽が花街に行くのを、ただ悲しく寂しい気持ちで見ていた。

オメガであり、ヒートの今なら、京楽を独占できる。

でも、相手は上流貴族。まだ婚約はしていないとはいえ、いずれ上流貴族の姫と結婚するだろう。

それでも。

それでも、京楽が欲しい。

京楽に、自分を見ていて欲しい。

「京楽が欲しいといえば、俺を抱いてくれるか」

にこりと、京楽は微笑んだ。

「君のこと、ずっと滅茶苦茶にしてやりたかったんだ。君のあられもない姿を、何度妄想したことか」

「なっ」

かっと、浮竹が赤くなる。

京楽は、そんな浮竹をベッドに押し倒して、キスをしていた。

「んう」

「僕の下で乱れる君を・・・こうやって、想像していたのが現実になるなんて、夢みたいだ」

「俺はオメガだ。お前はアルファ。俺はヒート期間だし、これはあくまで・・・・・・・」

「番になろう」

「え・・・・・・・・」

「浮竹が、僕以外のものになるなんて許せない。僕だけのものにする」

京楽は、ゆっくりと浮竹の服を脱がして、自分も脱いでいった。

「あ・・・・・・・」

鎖骨を甘噛みされて、声が漏れる。

「君は甘いね。砂糖菓子みたい」

「やめっ・・・・・・んっ・・・・・・」

京楽に触られても、気持ち悪くはなかった。逆にきもちよかった。

ずくりと、胎が疼いた。

京楽の雄が欲しいと。

「濡れてるね・・・・・」

「やっ」

ちゅっちゅとキスマークを残されながら、下肢に京楽の手と唇がいく。

「あっ」

花茎を口に含まれて、思考が真っ白になった。

「やめ、あ、あ、あ!」

「浮竹、かわいい」

浮竹は、京楽の口の中で薄い精液をはじけさせた。

それをごくりと嚥下してから、ぬるりと、浮竹の唇を奪い、舌をいれた。

「んう」

指は、蕾をくるくるといじりながら、ゆっくりと指が一本二本と入ってくる。

「んん!」

はっと、浮竹の息が荒くなるが、それが京楽も同じことだった。

「京楽、今ならまだ間に合う。俺を置いて、どこかへ去れ」

「こんな状態の君を放っておけって?素直になりなよ、浮竹。僕のこと、好きなんでしょう?」

「え・・・・・なんで知って・・・・・・」

「君の日ごろの態度で丸わかり。でも、君は知らなかったでしょう?僕も君が大好きだったんだよ。オメガだと知って、番にしたいと思っていた。やっと叶う」

「あ・・・・・」

優しい口づけを受けて、ポロリと熱のせいではない涙がこぼれた。

「京楽・・・・好きだ。春水」

「僕も大好きだよ、十四郎」

「んん!」

指が、前立腺を刺激した。

「見つけた。君のいい場所」

「や、やめ、あ、あ!」

こりこりと指で刺激していくと、一度萎えた浮竹の花茎が反応する。

「いれていい?」

「もう、どうにでも好きなようにしてくれ。熱でぐずぐずに溶けてる。思考も、理性も」

「いれるよ」

「いっ!」

ズッと、浮竹の中に侵入すると、きつく締めつけてきた。

「ごめん、痛いね?」

濡れて解したとはいえ、そんなことのためにあるのではない器官に、京楽の大きな一物を突き入れられて、浮竹は痛みを感じたが、ヒートの熱ですぐに思考はぐずぐずに溶けていく。

「あ・・・・・春水で、満たして」

「いいよ」

ズッズッと音を立てながら、京楽のものが出入りする。

ぐちゅりと音をたてて、子宮口まで侵入された。

「ひああああ!」

刺激に、びくんと浮竹の体が反応する。

「ここもいいんだ」

「や、変になるから・・・やあああ」

前立腺をすりあげながら、何度も浮竹の体を揺さぶった。

「あ、あ、あ!」

浮竹は白い少し長くなった髪を乱して、京楽を締め付けた。

「出すよ・・・・・いいかい」

「あ、あ・・・・・奥に、胎の奥にだしてくれ」

「番にするよ」

どくどくと、浮竹の子宮の中に精液をぶちまけながら、京楽は浮竹の首を噛んだ。

「あ!」

ぴりっとした刺激があり、番になったことがわかる。

「春水と、番になれた・・・・・・・」

浮竹は、弱弱しくではあったが、笑った。

「十四郎。もう、僕だけのものだ。まだ学生だから、後でアフターピル飲んでね。卒業したら、子を作ろう」

「気が早いな」

「だって、好きだった子とやっと想いが通じたんだもん。オメガとアルファは関係なしに、いずれこうなっていたよ、きっと」

「春水、好きだ」

「十四郎・・・・・・・」

何度も口づけを交わした。



ヒート期間であり、まだ一度しか京楽の精を受けていない浮竹は、もっとと京楽にせがんだ。

「んあっ」

もう何度目になるかわからない精液を、胎の奥で受け止めて、浮竹は意識を飛ばした。アフターピルはもう飲んだ後なのだが、それでもまだ交わりたいと、浮竹がせがむので、最近体の調子がいいのをいいことに、何回も抱いた。

ヒート期間は一週間ほどあるが、ずっと交わるではなく、浮竹と京楽の場合は、まどろみを繰り返しながら、時折交じり合い、食事をして風呂に入り、また眠ったりと、眠る時間が多かった。

アルファ用の抑制剤を、京楽は飲んだ。

体の弱い浮竹をずっと抱いていると、きっと熱を出すだろうと、少しでも抑えようとした。

互いの抑制剤は、ヒート期間中のためのものを飲んだので、眠剤成分が入っていた。

幸せなまどろみだった。


ヒート期間が終わると同時に、浮竹は熱を出した。

「ごめんね、熱ださせちゃって」

「いや、いい。俺も望んだことだから」

京楽は、浮竹の前髪をかきあげて、額にキスをした。

「好きだよ、十四郎」

浮竹は赤くなって、でも小声で「俺も」と言って、布団を頭までかぶってしまった。

やがて、浮竹も京楽も統学院を卒業し、死神になり、席官となり、隊長となり・・・・・・・。

京楽と浮竹は3人の子をもうけて、結婚し、長く幸せな時を過ごすのだった。


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オメガバース恋白2

恋次と番になって、3カ月が経過した。

それまではいつも通りの日常を送っていたが、白哉がヒートを起こした。

薬を飲んでいるはずなのに、ヒートは抑えられなかった。

白哉は自室に閉じこもり、ヒートにうなされながらただ時間が過ぎるのを待っていた。

普通のオメガなら、気が狂いそうになるヒートを、白哉はただ熱を孕んで耐えていた。

恋次は、そんな白哉を敏感に察知して、最初は部屋の外から声をかけて、白哉が部屋に入れてくれるのを待っていたが、我慢の限界がきて白哉の部屋に無断で入った。

「隊長。俺たち番でしょう?なんでヒート我慢するんですか。もっと俺を頼ってください」

「薬で抑えられるはずなのだ。お前に迷惑をかけたくない」

「だから言ってるでしょう、番なんです」

「それでも・・・・私は私がオメガであることを否定したい」

「否定しても何も変わらないじゃないですか。抱きますよ。こっちは隊長のフェロモンにあてられて我慢の限界っす」

恋次は、白哉が横になっている布団をはぎ取り、抑制剤を過剰摂取している、白哉の周りにあった抑制剤を白哉の手の届かない場所に置いた。

「恋次・・・・・・・」

白哉も限界のようで、熱を孕んだ瞳で恋次を見ていた。

「愛してます、隊長」

ゆっくりと、白哉の服を脱がせていく。

白哉は熱にうなされながら、他人事のようにかんじていたが、刺激を与えられると敏感に反応した。

「あ!」

口づけを交わしあい、白哉の衣服をはぎとった恋次は、白哉のたちあがっていた花茎に手をかけて、しごいた。

「や・・・・・・」

自虐すらしなかった白哉にとって、その快感は凄まじいもので、恋次の子種が欲しくなって胎が疼いた。

「すまぬ、恋次」

「なんで謝るんすか」

「私は確かにオメガだ。アルファと偽りの仮面をかぶり、オメガであることを否定し続けてきた。お前に出会うまでは」

「隊長・・・・・」

「んんっ・・・・・」

舌が絡み合う口づけを交わし合い、恋次は白哉の花茎をしごいて、精液を出させた。

「ああああ!」

ヒート期間中は普通物事を考えられないのだが、白哉は抑制剤を過剰摂取し、耐えていた。

しかしそれも薬に抗体ができてきて、抑制剤がきかなくなりつつあった。

いずれ、自分がオメガであることが世間にばれるだろう。

怖かった。

朽木家の当主であり、4大貴族の白哉がオメガだと知ったら、他の4大貴族がきっと、娶りにくるだろう。

子は産みたくない。

それは白哉の希望だった。

それに、番はもういる。番を解消する手がないわけではない。

恋次が死ねばいいのだ。

そんなこと、白哉が許すはずもない。

「あ・・・・お前の子種を、くれ」

白哉もアルファである恋次に狂わされていく。

「言わなくても、たっぷりあげますよ」

既に濡れいる蕾を指で解してから、突きいれた。

「ひああああ!」

白哉は挿入された瞬間に射精していた。

「やっぱヒート期間は休んでください。俺が隊長のヒートに付き合うから、仕事はちょっとたまってしまいますが、それしかヒートを乗り越える道がない」

「あ・・・・・」

胎の奥まできた恋次のものを締め付けて、白哉は美し白い顔(かんばせ)に涙を流した。

快感からくるもので、痛いとか苦しいとかはなかった。

「隊長、もうヒートがきても隠さないでください。番の俺がいるんだ。隠す必要なんてないです」

「あああ・・・うあ」

子宮までずるりと入ってきた恋次のものに、前立腺を刺激されて快感でまた涙が零れた。

「恋次・・・・・」

「隊長、愛してます」

「あ、もっとくれ。お前の子種を。恋次、愛している」

「孕むくらいあげますよ」

ずちゅずちゅ。

卑猥な音をたてて、恋次のものが白哉の中をすりあげて押し入っていく。

「んあっ」

何度も前立腺を刺激されて、白哉は啼くことしかできなくなっていた。

「あ、あ、あ・・・・・」

「中にぶちまけますよ。全部受け取ってくださいね」

ずるりと一度引き抜かれて、背後から貫かれ白哉は体を弛緩させた。

「あ、あ!」

中でいくことを覚えた体は、貪欲に恋次の子種を欲した。

胎が満たされてしまうほどに子種をだされて、白哉は意識を失った。

起きた時、体は綺麗に拭われており、中に出されたはずのものもかき出されたいた。

「隊長。アフターピルです」

「子は産まぬ」

アフターピルを冷水と一緒に受け取って、迷うことなく飲んだ。

もしも子を孕んだとしても、白哉は堕胎するつもりである。

たとえ番の恋次望みであろうと、子は産みたくない。

自分がオメガだと周囲に完全にばれてしまうから。

恋次との子が欲しくないわけではないが、たとえオメガであろうと男である白哉が、子を産むことを望むはずもなく。

結局、ヒート期間の1週間は、白哉と恋次は何度も交じりあいながら、互いが番であることを確認し合うのであった。

もしも白哉が、4大貴族などではなく、貴族でもなく平民であったなら、恋次に嫁ぎ子を産んだだろう。

だが、白哉は4大貴族朽木家当主。

オメガであることを隠し続け、これからも隠していく。

アルファであると、偽りの仮面をかぶって。

その偽りの仮面がはがれ落ちるのは、恋次と二人きりの時だけ。

番になったために、他のベータやアルファを誘うフェロモンはでない。番である恋次にだけフェロモンを出す。

白哉は、恋次を利用しているような関係に、罪悪感を抱いていた。

恋次はただ、白哉を愛しているので、たとえ利用されているだけでも構わない。

「恋次・・・すまぬ」

「いいですよ、隊長。俺は隊長の番になれて嬉しいんです。例え子供を産んでくれなくてもいい。隊長は、俺のものだ」

「私は恋次ものか・・・・ふふ」

白哉はまだヒート期間なので熱に潤んだ瞳をしていたが、思う存分交わった後なので、思考はまともに働いた。

「いつか、私がオメガだと世間に知られたら、私はきっと私でいられない」

「隊長・・・・別にいいじゃないですか。オメガでも」

「よくない。4大貴族でありながら、アルファでなくオメガなど・・・・・・」

「俺は流魂街出身なのに、アルファなんですよね」

「お前が羨ましい」

「隊長、しばらく横になっててください。その調子じゃ、ろくに何も食べてなかったんでしょう。今、何か作ってきてもらいます」

「ふ・・・・確かに空腹だ。ヒートでそれどころではなかったが、交わるとしばらくの間ヒートが収まるのが救いか」

番が恋次でよかった。

白哉はそう思うのであった。







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始めてを君と

「そういう」関係になったのは、京楽に好きだと告白されて、それを受け入れて10年経った頃だった。

いつも、お互いが一緒にいればそれでよかった。

キスやハグはしたけれど、それ以上の行為はなかった。

浮竹が、一度死ぬかもしれないと周囲に言われるほどに酷い発作を起こし、救護詰所の集中治療室に入って、やっとのことで退院できた頃から、京楽の態度が変わってきた。

いつもは、お互いを支え合う感じだったのだが、京楽から支配欲を感じるようになった。

浮竹は、そんな恋人を受け入れた。

「全てを僕のものにするよ」

そう言って、長くなった白い髪を一房手にとり、京楽は口づけた。

「春水・・・・・・・」

死神になって何年経っただろうか。

お互い、席官で忙しかったが、休暇の合間をぬっては小旅行に出かけたり、二人でふらりと総隊長の目をかいくぐって現世に行ったりもした。

「好きだよ、十四郎」

「俺も好きだ、春水」

いつもは、名を苗字で呼ぶ。

下の名で呼ぶ時は、想いを巡らせている時だけ。

「初めてだよね」

「当たり前だ。こんなことしたがるの、お前だけだ春水」

「そんなことはないと思うけどね。君に情欲を抱く者はけっこういるよ。陰でいろいろ始末してるけどね」

「怖いこというな」

「ふふっ。十四郎は、僕が怖い?」

「たまに。獣の目になるから、怖い」

「そっか。でも、初めてだから余計怖いかもしれないけど、逃げないでね」

「逃げるものか。半年悩んだんだ。もう覚悟は決めた」

浮竹の処女を、京楽が奪うと。

「あっ」

はじめて、額と頬と唇以外の場所にキスをされた。

首筋を吸い上げられる。

「んっ・・・・あとは、残すな・・・・・」

「二週間の休暇を揃ってもぎ取ったんだし、そのうち消えるよ」

「んあ・・・・・」

膨らみをもたぬ平らな胸を撫でられて、こりこりと先端を刺激されると、体が疼いた。

「あ・・・・・・」

「きもちいい?」

「分からない・・・・・」

浮竹は、混乱していた。

欲しい。

京楽が。そんな思いを抱くなんて、なんて劣悪な。

でも、京楽に求められて嬉しくて仕方ないのだ。

「足開いて・・・もう少し・・・・そう」

「あ!」

下肢にまとう衣を全てはぎとられて、花茎に手をかけられて、全身が震える。

やわやわと刺激を与えられて、それはゆっくりとたちあがった。

男として性欲は人並みにはあるし、自分で処理はしていたが、それでも普通の死神に比べたら淡泊すぎて性欲がないんじゃないかと言われるような有様だった。

自分のその場所が、他人の、しかも想い人である京楽がしごいていると思うだけで、いってしまいそうになった。

「あ、あ、あ!」

京楽は、浮竹の花茎をゆっくりと口に含んだ。

「あ、やめ!」

「十四郎、大丈夫だから。もっと力ぬいて」

頭を撫でられて、体中から力が抜けていく。

じゅぷじゅぷと水音をたてて、京楽が浮竹のものを口淫すると、浮竹はどろっとした濃い白い液体を、京楽の口の中にぶちまけていた。同時にすごい快楽に襲われて、悲鳴をあげる。

「ああああ!!!」

頭が真っ白になる。

そこから先も、京楽がずっとリードしてくれた。

「これは、体に毒のない潤滑油。濡れないそこを濡らすために、使うよ」

「あ・・・・・」

ぐちゃぐちゃと音をたてて、蕾に潤滑油が塗られて、指が出入りする。

「んあっ」

前立腺を刺激されて、内壁がきゅっとしまった。

「ここだね。君のいいところ」

「あ、変になるから、あんまり、さわるなっ」

指を二本から三本に増やされて、蕾はどろどろに溶けていった。

柔らかくなったことを確認してから、京楽はもうぱんぱんにはっていた前をくつろげて、欲望をとり出すと、浮竹の秘所にあてがった。

「ゆっくりがいい?それとも急がいい?」

「あ、ゆっくりで・・・・・・」

「分かったよ」

京楽は、浮竹を力のまま押し開くこともできたが、本人の希望通りにした。

ゆっくりと、浮竹の中に京楽が入ってくる。

「ん・・・ひあ、ああ、あ・・・んあ」

前立腺をすりあげながら挿入されて、浮竹はまた頭の中が真っ白になっていく。

「あ、春水・・・キスを、してくれ・・・・・」

「うん」

舌が絡み合う濃厚な口づけを交わし合いながら、ゆっくりと交じり合った。

「あ・・・・・」

「分かる?僕のが、全部君の中に入ってる」

「分かる・・・ドクドクしていて、熱い」

「君の中はすごいね。うねって、熱くて、締め付けてくる。最高だよ。やっと君の全てを手に入れた」

「んあ・・・・・・」

とろんと、快楽で溶け切った瞳で、浮竹は京楽を見上げた。

「そろそろ、動くよ」

「ん・・・・俺の中で、いってくれ。俺を孕ませて」

一度ひきぬいて、最奥までぱちゅんと音をたてて、侵入した。

「あ、奥に、奥にあたってる」

直腸を全て貫いて、結腸にまで入り込んだ京楽のオスは、淫らになっていく浮竹を楽しむように、何度も最奥にやってきた。

「あ、あ・・・・・いっちゃう、いってしまう」

「十四郎、いっちゃいなよ。僕もいくから。君の中で出すから」

「あ!!!」

「んっ・・・・」

二人して、浮竹は京楽の手の中に、京楽は浮竹の最奥に欲望をぶちまけていた。

「あ・・・・まだ足りない。春水、もっと、もっと出してくれ」

出ていこうとする京楽を、締め付ける。

「いけない子だね、十四郎は。いいよ、好きなだけ出してあげる」

この日のために、自虐もやめていた京楽にとって、元々一度で終わらす気などなかった。強壮剤までのんで、浮竹をとろとろに溶かすつもりだった。

ず、ず、ぐちゅぐちゅ。

結合部は泡立ち、体位を変えて何度も交わった。

「ああ・・・春水、もうらめぇっ」

したったらずな口調で、浮竹は熱に侵されていた。

「もうでない、春水、春水」

しおれてしまった花茎から一滴までをしぼりとるように、しつこくさすっていると、浮竹は涙を流した。

「もうやぁっ。でないのに、いってる。あ、またいく・・・・・」

中いきを憶えた身体は、淫乱に貪欲に、京楽を締め付けた。

「僕もそろそろ限界かな・・・・中で出すから、しっかり孕んでね」

「あ、あ、できちゃう、子供が・・・・あああ」

男なのだから、子供などできるはずがないのに、女になって種付けされるよりも快感が大きくて、本当に孕みそうな気がした。

ビュービューと、最後の一滴までを浮竹の最奥に流し込んで、京楽は満足した。

浮竹は、涙を流しながら掠れた声で。

「春水・・・好き」

と呟いた。

「僕も好きで愛してるよ、十四郎。初めてを僕にくれてありがとう。気持ちよかったでしょう?」

「うん・・・・・」

くったりと、疲れ気味に浮竹は頷いた。

告白されて十年経って、ようやく体の関係に至ったのだが、もう少し手加減したほうがよかったと思うのは、次の日浮竹がお約束のように熱をだしてしまってからだった。


初めてを君と。

女を抱いてきたことは何度かあるが、同性は浮竹だけだ。

浮竹は同性も異性もなかった。本当に初めてだった。

初めてを君と体験できて、よかったと京楽も浮竹も思うのだった。




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院生時代の部屋   書初めと

新年も開けて、書初めをすることになった。

総隊長であり、死神統学院の理事長である山本元柳斎重國の教えであった。

3回生の浮竹と京楽は、クラス代表として書初めに出ることになった。

書初めといっても、体ほどある大きな筆で書初めするので、体の弱い浮竹には補佐も必要だったので、自然といつも近くにいる京楽が選ばれた。

京楽の好きな言葉でいいと言ったら、大きな和紙に姫はじめと書いたので、殴って和紙を鬼道で燃やした。

「好きに書いていっていったのに。ぐすん」

涙ぐみながら、下からのぞきこんでくる京楽に、浮竹の心が乱れる。

「もっとましな文字にしろ。それならいい」

「そうかい。じゃあ・・・・・」

そうやってできあがった和紙には、豪快な文字で「浮竹十四郎」と書かれてあった。

「まったくお前は・・・・・」

京楽に拳骨をくれてやると、京楽は喜んで見えない尻尾を振っていた。

京楽は犬か猫に例えるなら、多分大型犬なんだろうなとか考えながら、抱きついてくる京楽をひっぺがして、できた書初めを提出した。

「ふむ。十四郎の名前か。まぁ、首席だからの。縁起もよかろうて」

「そうですか。先生にそう言っていただけるなら、書いたかいがありました」

「よい書初めであった。こりゃ、春水、十四郎をあまり困らせるでないぞ」

「はーい、山じい。分かってるよ」

そう言いながら、京楽は浮竹の肩を抱いて退出する。

それがごく自然に浮竹に受け入れていられるあたり、あの二人はそう遠くない未来、できてしまうのではないかと、山本元柳斎重國は少し苦悩した。



「あけましておめでとうセールやってるよ。ねぇ、行こうよ」

「仕方ないなぁ」

甘味屋で、新年初めの商いをする店が期間限定割引セールと、期間限定メニューを出しているので、いつも行く甘味屋とは違う甘味屋に出かけて、席をとった。

客の出入りはそこそこで、期間限定のメニューを中心に頼んだが、いつも行っている甘味屋のほうがおいしかった。

客の入りが多いのは、割引セールをして、新メニューを期間限定で配布しているせいだろう。

まずいわけではないが、特別美味しいとも感じれないメニューを浮竹はぺろりと平らげて、勘定を京楽に任せると、ふわりと風をはらませながら外に出た。

少し長くなった白い髪が、風で揺れる。

女でも通る整った顔立ちに、人の視線が集まる。

「あの、時間ありますか、よければ俺とお茶を・・・・・」

意を決して、そう言ってきた男を、勘定を払い終えて出てきた京楽が睨んだ。

「あ、あ、なんでもありません!すみません!」

「?なんだったんだ?」

浮竹は、首を傾げていた。

「なんでもない。浮竹は知らなくていいの」

ぐしゃぐしゃと浮竹の髪をなでて、京楽は笑った。

「うわ、お前髪の毛がぐしゃぐしゃになるだろ。そういう子供扱いはやめろ」

「浮竹はまだまだお子様だからね」

「なんだと」

「僕が今何を考えていると思う?」

「えろいこと」

「正解☆」

浮竹は、京楽をアッパーで殴った。

殴られた京楽はにこにこして、往来で浮竹の腰に手を回して、キスをする。

「きょうら・・・・・・んんっ・・・」

キスとハグは許しているとはいえ、人前ではしないようにと言い聞かせているのにと思いながら、浮竹は呼吸の苦しさに瞳に涙をためながら、目を閉じた。

そして、京楽の股間を思い切り蹴り飛ばした。

「あぎゃあああ!!!」

まさかそう反抗されると思っていなかった京楽は、今日こそ浮竹を落とせるかもとかちょろい考えでいた自分に反省するしかない。

「お前は!人前でこういうことをするなと何度言えば分かる!」

つっと、右目から涙が零れ落ちた。呼吸の苦しさでたまった涙なので、そこに感情も意味もなかったのだが、京楽は勘違いした。

「浮竹!」

京楽は、その涙にびっくりして、浮竹を抱きしめていた。

「京楽、人前だぞ!」

「ごめん、僕が悪かった。責任とるから!結婚しよう!」

「は?」

浮竹は頭の中が、真っ白になっていた。

何故この展開で、結婚に至るのだ。

「お前が白無垢なら、結婚してやらないこともない」

以前もこんなやりとりが、あった気がする。

あの時は京楽は白無垢を着ていたような着ていなかったような。あやふやな記憶を辿る。

「学院でも人前でもやってるじゃない。ハグとキス」

「見られない位置でだろ!」

「ああ、言いふらしたいなぁ。浮竹は僕の物だって」

「やめろ!」

京楽は、浮竹をひょいと肩に抱きかかえると、そのまますたすたと歩き出した。

「京楽、おろせ」

「だーめ。熱でてるよ」

「え?」

浮竹本人でも気づいていなかった。

少し暑い気はしていたのだが、それだけだったので。

浮竹の体調の変化に敏感な京楽は、浮竹が具合が悪くなるとすぐにわかった。

「雪が降ってきたね」

「どうりで寒いわけだ」

熱があることを認知した浮竹は、京楽の肩の上でため息を零しながらも、そういえば去年なくなったぱんつの枚数を思い出していた。

「去年、お前が奪っていった俺のパンツは何枚だ」

「225枚」

「・・・・・21枚おおい」

知らないところで、盗まれていたのか。

京楽の頭をぽかりと力のあまりない拳で殴ってから、浮竹は目を閉じた。

暖かい。

ちらちらと雪が降っているが、触れあっている場所はとても暖かかった。

今年も、京楽との腐れ縁は続きそうだ。

京楽の変態も。

書初めで「浮竹十四郎」と書いてしまうほどに、浮竹のことが大好きな京楽。

恋人になることを拒否しつつも、少しづつ受け入れている浮竹。

親友以上恋人未満の関係は、まだ続きそうだった。





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魔王と勇者 新勇者のごあいさつ

「あけましておめでとう!」

「ああ、あけましておめでとう」

京楽と浮竹は、新年が明けてからそう挨拶をして1日の始まりを祝った。

京楽は、お年玉を浮竹にあげた。

浮竹は、お年玉の代わりに手編みのマフラーを京楽にあげた。

「こんな年になってお年玉はちょっと恥ずかしいが、金はあると嬉しいな。ありがとう京楽」

「何、ちょっと暇な時に冒険者稼業で中級のドラゴン1体始末したのに出た報奨金だからさ。僕はそれより手編みのマフラーなんてもらえると思ってなかったから、嬉しすぎて鼻血でそうだよ」

「いや、すでに出してるぞ」

「やべ、止まらない」

「とりあえずティッシュつめろ」

「ティッシュどこだ・・・・ティッシュもあるしさぁ。ねぇ、今時間大丈夫だよね。新年は魔王会議もないし・・・ねえ、浮竹、愛してるよ」

「京楽、俺も愛して・・・・・あ、新勇者」

二人して、新年そうそういちゃいちゃして、そのまま姫はじめに流れてしまいそうなところを、訪問者によって阻止された。

「あのさ!俺未成年なんだけど!正月そうそうえっちなことしようとするなよ!」

「他人の城にきといて、それはないでしょ。君が悪い」

「そうだぞ。新勇者、正月くらい大人しくしておけ」

京楽と浮竹の言葉を聞きながら、新勇者は、パーティーメンバーを連れ立って、浮竹に剣を向けた。

「あけましておめでとう!おめでたいから退治されろ!」

「お前の頭がおめでたいんだろう」

浮竹は、やってくる新勇者の斬撃を綺麗に避けて、その首根っこをつまみあげた。

「何をする!俺は猫じゃないぞ!」

「猫のほうがよっぽどかわいい」

浮竹は、新勇者の鎧をはぎとり、ほぼフルチンに近い状態にしてから、何かの香水を投げつけた。

「なんだこれ・・・・いい匂い」

「セクシーモンキーのエテ吉君の好きな香水だ。エテ吉君は人間にも欲情する。さぁ、新境地にいってこい」

「ぎゃああああああああああ」

浮竹は、檻をあけると、新勇者の背中を蹴り飛ばした。

「ウキキキー!!!」

「ちょっと、浮竹いいの?エテ吉君の嫁のゴリ子ちゃんが怒るよ!」

「エテ吉君とゴリ子ちゃんは絶賛別居中だ」

「ならいいか」

「よくないわボケーーーー!まじで貞操の危機だあああ!おい、女僧侶このエテ吉君を眠らせろ!!」

「キッキーーウキーー」

「ああ、やめろ、あふん」

「スリープ」

女僧侶は、エテ吉君に眠りの魔法をかけた。

「チャーム」

女僧侶は、浮竹に魅了の呪文をかけてみたが、魔法抵抗値が高いのでレジストされた。

「チャーム」

浮竹に、今度は少年魔法使いが魅了の呪文をかける。

レジストした瞬間に隙ができて、浮竹はチャームの呪文にかかってしまった。

「ちょっと、浮竹、大丈夫!?」

「・・・・・」

目がハートマークになっていて、対象は新勇者になっていた。

「好きだああああああ!!」

「ぎゃああああああああ!!!」

浮竹は、新勇者をフルチンにした。

そして、すぐに我に返って、腕の中にいたフルチンの新勇者の股間を蹴り飛ばした。

「何をするんだ、この不埒者!」

「こっちの台詞じゃあああああ!!!!」

「エテ吉君、リカバリー!」

浮竹は、眠っていたエテ吉君に呪文をかける。

眠りから目覚めたエテ吉君は、大好きな香水の匂いをまとう新勇者に、求愛のダンスを踊りまくった。

「ぎゃああ、こわいから、股間もりあがってる、こわいからあああ!!!」

「番になって、結婚でもするといい。そうすれば魔王幹部になれるぞ」

「いやだああああああ!番なんていやだあああ!猿とできたくない!ぎゃああ!けつ!
けつさわってきた!」

「エテ吉君、伴侶にする気満々だね」

のんびりとお茶を飲みながら、京楽は浮竹からもらったマフラーを首に巻いていた。鼻血はとうの昔に止まっていた。

エテ吉君は、セクシーモンキー。ランクB。でも多種族に求愛するので全滅の恐れのある種族。

魔王城の近くで見つかったエテ吉君を、群れに返すために一時的に預かっている間に、魔王城の配下のモンスターのゴリ子さんとできてしまった。

だが、できちゃった結婚して、すぐに別れた。

現在ゴリ子さんとは別居中だ。

「うぎゃああああああ!」

「新勇者、反省してるか?」

「してる!めちゃしてる!だから助けてくれ!」

「スリープ」

浮竹は、エテ吉君を穏やかに眠らせると、魔法で新勇者のダッチワイフをつくりあげて、エテ吉君に与えた。

エテ吉君は、眠りながらダッチワイフを抱きしめる。

京楽が、新勇者のダッチワイフ作成魔法を見よう見まねで、ダッチワイフをつくりだして、女僧侶にあげた。

「いりませんわ、こんなもの!」

女僧侶はぷりぷり怒っていた。

「売ったら、金貨5枚にはなるぞ」

「ふん、仕方ないからもらってあげますわ!」

女僧侶はダッチワイフを受け取った。

「本物も持って帰ってね」

京楽は、新勇者のフルチンはかわいそうなので、アイテムボックスに入っていた、盗賊を倒してみぐるみはいだ時に入っていた、黄色いシミのついたくさいパンツを与えた。

魔法でぱっとぱんつをはかされた新勇者は臭かった。

「くさっ・・・・まぁ、ないよりましでしょ」

「くさいのだよ」

「くせー」

あまり登場する機会のない、獣人盗賊と男戦士が、臭いといいながら、どちらが新勇者を抱えて帰るかジャンケンをしていた。

新勇者パーティーには、そのまま城を去ってもらった。

エテ吉君は眠っているし、静かになった。

「ねぇ、浮竹」

「そんな気分じゃない」

「やっぱり・・・・・・」

新年最初は、エテ吉君と新勇者の乱交もどきを見ることになって、すっかりいろいろやる気力をなくした浮竹だった。

けしかけたのも浮竹なので、なんともいえない気分になるのであった。







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院生時代の部屋 あけましておめでとう

「あけましておめでとう」

「あけまして・・・・服を着ろ、服を!」

浮竹は、パンツ一丁で、頭に浮竹のパンツを被った京楽に、院生の服を放り投げた。

「いやん」

「きもい」

「このパンツは僕のもの。スーハースーハー」

昨日着ていた、洗濯済みの浮竹の黒いパンツを、京楽は宝物のように臭いをかいで、いそいそと自分のタンスにしまいこんだ。

洗濯前を持ち出さないだけ、まだましである。

今のところ、洗濯前を漁るほどの変態には至っていないので、浮竹もパンツを盗む京楽に、難儀はしているものの、変態度があがらないだけましかと、自分に言い聞かせていた。

「またパンツ通販で買わないと・・・・・・」

通販で買ったパンツのほとんどが、京楽のコレクションとしてもっていかれる。

でも代金は京楽もちなので、文句はいいつつも、許容してしまう。

「寒いよー。浮竹の胸で温めて!」

「だから、服を着ろ、服を!服を着ないと、今日はキスもハグもさせないぞ」

「京楽春水、今すぐ院生服を着ます!」

ぱぱっと、院生の服を身に着ける京楽。

浮竹は、大きなため息をついた。

年末年始の冬休みに入った。

年もあけたことだし、初詣に行くことにした。

院生服の上から、上着をはおり、マフラーと手袋、さらに浮竹は耳当てもして、完全防寒対策をして神社に京楽と一緒に出掛けた。

神社につくと、人がいっぱいだった。

100環の小銭を投げ入れて、今年の自分の無病息災を願う。あと、親友であり、恋人未満な京楽の変態が治るようにと、ほぼ諦めている願いを願う。

京楽はというと、上流貴族だけあって、札束を投げ入れていた。

よくそんな金を無造作に使うものだと、浮竹は呆れ返る。

「おみくじしていこうか」

「いらない」

「いいじゃない。僕が君の分も引いてあげる」

「勝手にしろ」

京楽は、浮竹の分までおみくじをひいた。

京楽の分は吉で、浮竹の分は大凶が出た。

「こ、こんなの所詮占いなんだから気にすることないよ!なんなら2回目ひこうか?」

「時間の無駄だ。寒いし、早く帰ろう。今日はお前の屋敷に泊まるんだろう?」

浮竹を、自分の屋敷に誘うことに見事に成功した京楽は、浮竹の手をとって、歩いていく。

「ここからだとちょっと遠いから、瞬歩でいこう」

浮竹は、まだ京楽ほど瞬歩が得意ではないので、京楽に手をとられて、瞬歩を共にする。

やがて、大きな屋敷が見えてきた。

これで別邸というのだから、大貴族というものは本当に金持ちばかりだ。

下級貴族の浮竹の場合、家は一軒だけで、広かったが家族が多かったせいで、一人部屋はなんとかもてたが、寮の入るのにすぐ慣れるくらいには、部屋の狭さには慣れていた。

上流貴族の京楽は、寮の部屋の狭さに初め文句を垂れ流していたが。

「今日はこの屋敷で泊まろう。姫はじめとか・・・・・おぶっ」

鳩尾に蹴りを入れられて、京楽は悶えた。

「じょ、冗談だから!去らないで!」

帰ろうとする浮竹を後ろから抱きしめる。

浮竹は身を固くした。

「寒い?こたつがあるんだ。出してるから、温まろう」

浮竹の肩を抱いて、京楽はこたつのある部屋に浮竹を案内した。

そのまま、二人でこたつに入って、他愛ない話をして、時間をつぶした。ついでのように、みかんを食べる。

緑茶を飲んで、せんべえをかじって、心はなんか老後ってかんじだった。

「いつか、こうやって老後も君と冬をずっと過ごしたいね」

「俺は、老後は実家に戻るんだ。京楽は結婚して子供や孫に囲まれているんだろう?」

「そんなことないよ!僕が愛して結婚したいのは浮竹だけだよ!」

「人生長いからな。分かったもんじゃない。そもそも男同士は結婚できないだろ」

「僕が、いつかすごく偉くなって、法律を変えてみせるよ」

「さいですか」

浮竹は、興味もなさそうに、新しいみかんの皮をむき始める。

「あんまり食べると、夕飯食べれなくなるよ」

「まぁ、お前の家の飯は美味いから残さないさ」

やがて夕方になり、こたつの上に夕飯が並んだ。

こちらでは珍しい、海の幸を使った鍋だった。カニやエビをふんだんに使った、海鮮鍋だった。

ほたてを食べながら、海のない尸魂界では海の幸は高いと思う。

上流貴族は食べるものも豪華だと、浮竹はため息を零す。

こんなものを毎日食べていたら、味覚が麻痺してしまいそうだ。今日と明日だけ、京楽の別邸に泊まって、後は寮で過ごすつもりだった。

「これ」

「何?」

京楽がさしだしてきたものを、浮竹は首を傾げながら受け取った。

「お年玉」

「ありがたくもらっておく」

金はあることに困ることはない。

肺の病で金欠になりがちな浮竹を、金銭面で支えてくれているのは京楽だ。

いつか、死神になって金が貯まったら、少しづつでいいから返済していこうと思っている。

「ああ。今年もまた新しい年がやってきたね。今年もよろしくね、浮竹」

「ああ、よろしく」

消灯時間になって、互いに布団を同じ部屋でしいて、寝ることになった。

「だから、姫はじめを・・・・・」

バキッ。

綺麗に顎にアッパーが決まって、京楽は布団の上で気絶したまま寝てしまった。

浮竹は、揃ってしかれていた布団を、京楽の近くから離して、念のため京楽を毛布で簀巻きにしてから就寝した。

「今年もよろしくな、京楽」

夢の世界に一足先に旅立ってしまった親友と自分自身の安息を祈りつつ、眠りにつくのであった。













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魔王と勇者 11

「呪いの手紙。出さないと呪われる。どんな呪いかというと、金欠になる呪い・・・何て恐ろしいんだ!」

浮竹は、その呪いの手紙をもらって、不安に押しつぶされそうになっていた。

何せ、今まで京楽と再び出会う前は、極貧だったのだ。

パイプ椅子(中古)が玉座であるくらいに。

「浮竹、そんなの迷信だよ。信じなくていいよ」

「いや、俺は出すぞ。呪いの手紙を100通、新勇者に!」

「新勇者ならいいか」

京楽は、けろりとした声で、新勇者にふりかかる災難を良しとした。

ちなみに、新勇者は宿をとっていたのだが、魔王である浮竹の討伐にずっと失敗ばかりして、魔王領土に一軒家を買って住んでいる。

パーティーメンバーと一緒に住んでいるらしいのだが、なんでもかなりこき使われれているそうで、魔王討伐と銘打って遊びにきては、愚痴を零していた。

そんなこんなで、今日は珍しく、新勇者一人で魔王城にまで新勇者は来ていた。

「どうしたんだ。噂ではまた一人だけ宿に戻ったらしいな。ローンはないと言ってただろう。一括で一軒家を買ったと言って喜んでたじゃないか」

浮竹がそう話すと、新勇者は地面を見つめながら口を開いた。

「・・・・・なんだよ」

「声が小さくて聞き取りにくいよ」

京楽が、もっと大きな声を出せと求める。

「あいつら、何もかも俺に押し付けるんだよ!家事全部!掃除に洗濯、料理に買い出し・・・もうやだ!宿に泊まっていても、引きずり戻されるし・・・・・もうやだ、魔王城に家出してやる!」

「いや、それはこっちが嫌なんだが。一応魔王だし。新勇者を泊めるとか・・・・まぁ、新勇者って名乗ってるだけで、実際新勇者扱いしてるのはお前のパーティーメンバーと王様くらいだから、大丈夫といえば大丈夫か」

浮竹は、ぽりぽりと頭をかいた。

「一括の支払いだって、俺の貯蓄から出したんだ。なのに、あいつら俺の家を自分の家のように・・・・あげくに俺を家政婦と思ってやがる!」

「ふむ。呪いの手紙をお前あてに100枚書いたんだが、いるか?」

「そんなものいらんわぼけ!」

「エアリアルエッジ」

大気の精霊に命令して、浮竹は真空の刃を新勇者に向けて放ち、フルチンにした。

「きゃあああああ!えっち!」

新勇者は、フルチンのまま人造聖剣エクスカリバーで局部を隠した。

「新勇者ぁ~~。家に帰りましょう~~~」

女僧侶が、どこからともなく現れて、フルチンの新勇者を見て、股間を蹴りあげた。

「きゃああああああ!なんて汚いもの見せるのよ!この変態!」

「ぬおおおおおおおおお!!!」

新勇者は転げまわった。

京楽が、せめてもと、局部を隠す葉っぱでできた腰のみをくれたので、新勇者はそれを着た。

「これでも、まだ魔王城に泊まりたいか?」

「泊まりたい!だって、家事全部魔王がしてくれるんだろ!魔王と勇者京楽が!」

「はぁ。何を言っても無駄みたいだよ、浮竹」

「ふむ・・・・・新勇者を辞めて、魔王の幹部になるなら、泊めてやる」

「それは・・・・それだけはだめだ!俺は新勇者なんだ!敵に寝返ることはない!」

「だったら、敵の本拠地に泊まるとかいいだすな」

浮竹がハリセンですっぱーんと、新勇者の頭を殴った。

今日は縦巻きロールでなく、アフロでもなく、ウェーブのかかった茶色のロングヘアだった。顔立ちは整っているので、遠くから見れば女の子に見えなくはない。

「ファイアー」

ウェーブのかつらを、浮竹はいつものように魔法で燃やした。

「ああ、女僧侶のかつらが!」

「自分のじゃなかったのかい」

京楽が突っ込みを入れるが、新勇者は切れた女僧侶にボコボコにされていた。

「く、こうなればいつものかつらを・・・・・・」

銀髪の縦巻きロールのかつらをかぶった、葉っぱの腰のみとエクスカリバーだけを持った、謎な姿の新勇者は、女僧侶を突き飛ばした。

「いいか、女僧侶!俺を奴隷のように、家政婦として扱うなら、俺もお前の恥ずかしい写真を市場で売ってやる!」

「な!」

女僧侶は、固まった。

「じゃ、じゃあこっちもお前のけつ穴にきゅうりつっこんだり、乳首にクリップつけたりして、もだえていた変態写真をばらまいてやる!」

「な、なんだと!いつの間に盗撮していたんだ!俺の隠された性癖がばれてしまう!」

すでに浮竹と京楽は引いていた。

「新勇者・・・・変態なんだ・・・・・・」

「うわー、一人で・・・変態だー・・・・・・」

「な、お前たちだってできてるだろう!」

「それとこれとは話が別だろう。俺と京楽は愛し合っているからいいんだ。お前はきゅうりとクリップを相手に、愛し合っているのか?」

「そうだ!きゅうりとクリップを愛している!」

「重傷だねぇ」

京楽は、紅茶をすすって、椅子に座った。

浮竹も、紅茶を淹れてから、クッキーを食べだした。

「そんなあなたに朗報です。どんな性癖も治る「ナオールクン」金貨100枚」

「買った!」

女僧侶が、浮竹から「ナオールクン」を買いあげて、その場で新勇者に馬乗りになって無理やり飲ませた。

「あれ。俺は何を愛していたんだ?」

「魔王よ。魔王を愛していたの」

冗談のつもりで言ったのだが、新勇者は真に受けた。

「魔王浮竹、結婚してくれ!むちゅーーー」

「ぎゃあああああああああ」

「僕の浮竹に何するの!ああもう、近づかないでよ!」

「勇者京楽も、あなたは愛していたのよ!」

「このナオールクン、自己暗示能力が高すぎるのが欠点だね。うわ、こっちこないでよ」

「魔王浮竹に勇者京楽、どっちも好きだあああ!結婚して俺と家庭をもってくれええええ」

「ウォーターボール!」

「アイスウィンド!」

水攻めに氷ついた風を受けて、新勇者は我に返った。

「あれ?なんか魔王と勇者が恋しい気が・・・・・・」

「俺には京楽がいる」

「僕にも、浮竹がいるから」

「あら新勇者、ふられちゃったわね」

「ふられた・・・・?よくわからないが・・・・・・」

ガコン。

浮竹は、いつものように白い紐をひっぱった。

「ぎゃああああああああ」

「のあああああああああ」

落とし穴に、二人は消えていった。

「ぷぎーーーーー!」

「いやああああああ!豚の糞尿まみれえええ!」

「くせええええ!!!」

ガコン。

また音がして、豚はその場に残り、新勇者と女僧侶だけが石の手につまみあげられて、魔王城から放り出された。

新勇者はそっち系の変態であると、知った浮竹と京楽だった。











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メリークリスマス

「ルキア、メリークリスマス」

「一護、メリークリスマス」

ルキアと一護は、朽木家でささやかなクリスマスパーティーを開いた。

呼んだのは、恋次、白哉、冬獅郎。

大きなクリスマスパーティーはすでに終わらせたので、ルキアと一護は恋次と白哉とだけでクリスマスパーティーをしようかと思ったのだが、誕生日が近かった冬獅郎のバースディパーティーも兼ねることにした。

「すまねぇな。こんなにしてもらって」

冬獅郎は、4人からのプレゼントを手に、困ったような笑顔を浮かべた。

「メリークリスマス、冬獅郎」

「ああ、メリークリスマス」

冬獅郎は、プレゼントをもらって、ささやかな祝いの言葉をもらって、早めに帰ってしまった。

「兄様、今年も麗しい!」

白哉は、私服だった。

屋敷が建ちそうな絹でできた着物を着ていた。

「あー、すっげぇ金持ちってかんじ」

「実際金をもっているから、そうであろう」

「あるとこにはあるんだよな、金って」

「兄の着ている服も、元をただせば朽木家が出している」

「へーへー。おありがてぇことでございますだ」

一護の着ている服は、現代のものだった。ルキアも、現世に一度買い出しに行ったので冬用のふわふわのワンピース姿だった。

「ルキア、かわいいなぁ。なぁ、今度ミニスカサンタの恰好してくれよ」

「な、なにを言っておるのだ!兄様がいる前で!」

「お、いいな。一護、俺にも見せろよ」

恋次が、一護の提案に賛同する。

「それもまたよいな」

「兄様まで!」

ルキアは、真っ赤になった。

「実は、すでに用意してあるんだ。ミニスカサンタ。後はプレゼント交換だけだしな」

「着替えてこいよ、ルキア」

「恋次、貴様人妻のミニスカサンタがよいのか!?」

「いや、人妻だからなおさらそそるんだよ!」

恋次は開き直った。

ルキアは、結局用意されたミニスカサンタ服を手に、寝室に行ってしまった。

「なぁ、白哉のプレゼントってなんだ?俺とルキアは、マフラーと手袋にしたんだけど」:

「げ、かぶった。俺もマフラーだ」

恋次の言葉を聞かずに、白哉は一言。

「現金だ」

「うわー」

恋次が、自分の上官の金持ち加減を改めて知った。

「きたよこれ。金持ちはやることが違う」

一護は、呆れた声を出した。

そんなこんなで、朽木家で用意された豪勢な食事を楽しみながら、ルキアがプレゼントを手にミニスカサンタの恰好で現れた。

「お、似合ってる。かわいいぜ、ルキア」

「おう。似合ってるな」

一護と恋次の言葉に、ルキアは顔を真っ赤にさせた。

「この服、スカートが短すぎぬか?下着が見えそうで・・・・・」

ニーソックスをはいていて、絶対領域がまぶしかった。

裾はふわふわした毛で覆われており、ルキアの白い肌に赤いサンタの服はよく似合っていた。

「うむ。似合っているぞ、ルキア」

「兄様にそう言っていただけるなら!」

白哉は、ルキアの首にいつの間にか用意してあったマフラーを巻いた。

「でたよ、このブラコンとシスコン・・・・・・・」

「隊長は最近、いつもああだからな・・・・・」

一護と恋次は、二人でぶつぶつと文句を言い合っていた。



「こら、そこの二人!プレゼントが欲しくないのか!」

「いや、いります」

「同じく」

一護と恋次は、ルキアからクリスマスプレゼント・・・・・といっても、プレゼント交換なのだが、それをもらった。

一護はルキアの手袋をもらい、ルキアは白哉の現金100万をもらい、白哉は恋次のマフラーをもらい、恋次は一護のマフラーをもらった。

「プレゼントに現金、しかも現世の金ってどうなんだよ」

「一億とかじゃないだけましじゃねぇか?」

「それもそうだな」

一護と恋次はまたこそこそとやりとりをした。

「実は一億を用意していた。ルキアに多すぎると止められた」

「うわー。一億とか、現代人が一生かけて稼ぐ額だぜ」

「金持ちは金に関する感情が違うからな。一億なんて隊長にとってははした金なんだろうぜ」

「こえー。白哉金持ちすぎてこえー」

「こら、一護、恋次、兄様に対して無礼であろう!口を慎め!兄様、100万ありがとうございます!尸魂界の金に換金して、欲しかったチャッピーのグッズでも買おうと思います」

「まだ集めるのかよ、チャッピーグッズ・・・・・」

ルキアと一護の寝室は、チャッピーグッズで覆われていた。

「来年のお年玉は一千万環だ」

「うわー」

「もらって嬉しいけど、額が額だけに何に使う迷いそうだな、一護」

「恋次はもらえるのか?」

「一護は去年もらってないのか?俺とルキアは500万環もらったぜ」

「俺だけなしかよ・・・・・・」

「来年も、兄だけなしだ」

「そもそも、お年玉をもらう年齢じゃねぇだろ俺ら!」

「ルキアにあげなければ、誰にやるというのだ、お年玉を。去年は情けで恋次にもやったが、今年はルキアだけにしておくか」

「そりゃないですよ、隊長!」

「俺だけなし・・・・・・・」

一護は、用意されていた日本酒をがぶ飲みした。

「いいよ、どうせ俺だけいつも仲間外れなんだし!」

「その通りだ」

白哉に呪いをこめた藁人形でプレゼントしてやろうと思った、一護であった。

ちなみに、ルキアへの100万は桁をこえて1千万環と、尸魂界の金となって、それがクリスマスプレゼントとなったのであった。

一護は、何気にルキアにいっぱいおごられたりした。








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