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小説掲載プログ
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好きなものは好き

ルキアが好きだった。

でもルキアには恋次がいて。

でも、思いを告げぬまま終わらせる気はなかった。

大戦が終わって3年。一護は大学4年生になっていた。

ドイツ語の翻訳家を目指して、ドイツ語を身につけた。大きくはないが、出版社から翻訳の依頼を受けて就職も決まっていた。

「ルキア・・・・・・」

今はここにいない、彼女を思い出す。

ルキアは、月に2度くらいは一護の家に遊びに来た。

そのまま泊っていく日もある。

ある日、遊びにきたルキアに真剣な話があると切り出した。

「その、お前は恋次と付き合っていて、今更だと思うだろうけど・・・」

ルキアはきょとんとしていた。

「私は恋次と付き合ってなどいないぞ?」

「ええ!?だって、恋次のことが好きだって・・・・」

「ああ、家族としてな。兄様を好きな気持ちに似ている」

「なんだよそれ・・・」

ずっと遠慮していたのがばかみたいだった。

「あのな、俺はルキアのことずっと好きで」

「知っておる。私は、だから一護の家に泊まりにきているのだ」

一護は、顔を真っ赤にした。

「じゃあ、ルキアも俺のことを?」

「ああ、好きだ。男女の恋愛感情で。1年前に好きだと告げたであろう」

思い出す。確か、白哉も恋次も一護も好きだと言っていた記憶があった。





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合鍵

ルキア。

ルキア、ルキア、ルキア。

空白の1年と5カ月、ルキアのことを忘れたことはなかった。

ルキアをずっと求めていた。好きだった。

いざ霊圧が戻り、再会したルキアは1年と5カ月前とあまり変わらぬ姿をしていた。その内に秘める膨大な霊圧と、副官の証がある以外は。

「ルキア・・・」

ルキアは、懐かしい目で一護を見ていた。

「久しいな、一護」

「ルキア、俺は・・・・・」

「また、会いにくる。その時、つもる話をしよう。今は銀城を連れていくのが先だ」

魂葬を行い、尸魂界へと落ちていく魂たち。

守ることのできる力を、また手に入れた。

尸魂界を、ルキアを守る。

そう頑なに誓った意思は、ユーハバッハの侵攻によって遮られた。

大けがをおったルキアが、目を開いた。片目は負傷しており、片目だけで一護の姿を見ると、安堵したようだった。

「貴様が無事でよかった・・・・」

一護も大けがを負っていた。普通なら歩けないような重症である。

それでも、ルキアを見に来た。

「ルキア・・・守るから。きっと、お前を・・・・」

そのまま、一護、ルキア、恋次、百哉は零番隊の湯治で傷を回復させた。

一護は新たな斬月を手に入れ、ルキアは卍解を会得した。

たくさんの仲間に支えられて、一護は遂にユーハバッハを打ち倒した。

平穏が、やっと戻ってきた。

一護は高校を卒業し、大学へと進んだ。

将来翻訳家になるために、ドイツ語を選んだ。留学も3か月した。

一護は、大学生になってからずっとアパートで一人暮らしとしていた。学費は奨学金と、アパート代は将来返すという約束で父親の一心から出してもらっていた。

バイト代は生活費に消えていく。

ふとしたある日、授業を終えてバイトも終わり、家に帰ると鍵が開いていた。

泥棒かと思い、身構えると、中にルキアがいた。

「ルキア?」

「おお、帰ってきたか一護。部屋の前でぽつんと待っていると、大家さんが現れて、事情を説明すると中にいれてくれたのだ」

「そうか。くるなら事前に連絡くれよ」

「ああ、忘れておった。伝令神機でメールを使えたのだったな」

ルキアは天然ぽいところがある。

一人暮らしの男の家に転がり込んでくるなど、いくら見知った仲といっても、時刻も時刻だしと思うが、ルキアには関係ないようだった。

「これ、やるよ」

ルキアに向かって、チャリンと金属音をたてた合鍵を放り投げた。

高校を卒業して3年が経っていた。

ルキアは月に1、2回のペースで現世に遊びにくる。

留学時は、現世にはきていなかったようだ。

「合鍵か・・・・いつでもここにきてよいと、とってもいいのだな?」

「ああ。俺に会いたくなったら、その鍵で中で待っとくといい」

「一護・・・・私はな・・・・」

一護はルキアを抱き締めた。

「一護?」

「俺は・・・・どうしようもないくらいに、お前が好きだ。ルキア、ルキア、ルキア・・・空白の1年と5カ月、どれだけ苦しかったことか・・・・」

「一護・・・・私はな、現世にくるたびにいけないと分かりつつも、貴様の元に訪ねてしまうのだ。いけないと分かりながら、貴様の傍にいたくなるのだ」

「ルキア・・・・・・」

「私も、貴様のことが好きだ、一護」

「ルキア、俺も大好きだ」

抱き締めあい、そのままごろりとベッドに横になった。

「その・・・恋人という男女は・・・・」

「何もしねぇよ」

「私には魅力がないか?」

「そうじゃねぇ。大切にしたいんだ」

一護は、ルキアに触れるだけのキスをした。

「もう少し、現世にこれないか?」

「週末なら・・・・」

「じゃあ、約束。今週の週末、また俺の家に来てくれ」

ルキアは、その日一護の家に泊まった。

ルキアを腕の中で抱き締める形で、同じベッドで眠った。

ルキアは翌朝には尸魂界に帰ってしまったが、週末になったらまたきてくれると思うだけで、元気がわいてきた。

ルキアの好きな白玉餡蜜を買って、週末の土曜に家で待っていると、昼にルキアが合鍵を使って中に入ってきた。

白いワンピースに麦わら帽子と、まさに夏のスタイルだった。

「ふう、現世はクーラーがきいていて涼しいな。尸魂界の夏は暑くて好かん。扇風機なるものが最近出回っているが、それでも暑い」

「おかえり、ルキア」

「う、うむ。ただいま、一護」

クーラーのきいた一護の部屋は涼しかった。

「今日は土産があるのだ!スイカだ!」

「でかいな」

「兄様が、甘くて熟れたものを買ってきてくださったのだ!」

「そうか・・・・」

スイカを切り分けて、冷蔵庫で冷やしている間に、ルキアは白玉餡蜜を食べていた。

「なぁ、ルキア」

「なんだ」

「また、来週もきてくれるか」

「ああ、貴様がいやでなければ、毎週きてやる」

「そうか。俺たち、付き合わないか」

「えっと・・・・うむ。私のでいいのなら・・・・」

ルキアは真っ赤になって、俯いた。

ミーンミンミン。

蝉の声がうるさかった。

一護は、ルキアに口づけた。深い口づけだった。

「ん・・・・・ふあっ・・・・・」

ルキアの瞳がとろんとなる。

一護は、ルキアを抱き締めた。

「大切にしたいのに、めちゃめちゃにしたい。俺でもわけわかんねぇ。でも大切にする。ルキア・・・・」

「一護・・・私は、貴様になら何をされても構わない」

「そんな、煽るようなこと言うなよ・・・・・」

「これからは、会えない日は伝令神機でやり取りをしよう。私たちはもう、恋人同士なのであろう?」

「ああ、そうだな」

メールアドレスは交換していたが、メールのやりとりはしていなかった。

日曜はバイトがあったので、ルキアを待たせてしまう形になるが、こちらにも生活というものがある。ルキアはバイトしているラーメン店にきて、一護の手作りのラーメンを食べて家に戻ってしまった。

夕方になり、バイトを切り上げて、早めに自宅に戻った。

部屋に入ると、カレーのいい匂いがしてきた。

「ちょうどカレーできる野菜とルーがあったので、勝手に作ってしまったが構わぬであろう?」

「ああ。ありがとな。俺も夕飯カレーにしようと思ってたんだ。てかルキア、料理できたのか・・・・・」

「たわけ!これでも一応は花嫁修業と、料理くらいできるようには仕込まれている」

「ただいま、ルキア」

「お、お、お、おかえり・・・・・・」

ルキアが愛しくてたまらなかった。

合鍵をもたせたのは、パートナーの意味もあった。

エプロン姿のルキアを背後から抱きしめた。

カレーはすでに出来上がっていて、ルキアは真っ赤になりながら、目を閉じた。

キスをする。浅く深くを繰り返す。

ルキアのアメジストの瞳が見開かれた。

お互い、視線を絡み合わせながら、また抱き締めあった。

「恋人とは、妙に甘ったるいものなのだな」

「今度こそ、俺が守りぬく。だから、ルキア、傍にいてくれ・・・・」

「私は、ずっと傍にいるぞ。貴様とまた出会えたあの日から、貴様の隣にいることを考えていた。やっと、その願いが叶った・・・・」

死神と人間という大きな溝がある。

それでも、二人は惹かれ合う。

人生のパートナーとして、生きていこう。

ルキアと一護の新しいページが開こうとしていた。



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ルキアと恋次

ルキアと恋次は、尸魂界で子供の頃からの知り合いだ。幼馴染というか、一緒に孤児として流魂街で育った。

同じく一緒に育っていた仲間たちは、皆死んでしまった。

ルキアと恋次には霊力があった。最悪の生活から抜け出すために、真央霊術院に入り、死神となることをめざした。

恋次は特進クラスだった。ルキアは普通のクラスだが、学院に入り数年して、朽木家の養子として、真央霊術院を卒業せずに死神となった。

恋次の力は認められていた。

一方のルキアも、志波海燕という当時の13番隊副隊長に鍛えられて、実力をつけていった。

そんな年月が50年以上が過ぎた。

恋次は6番隊の副隊長として、ルキアは13番隊の隊長代理及び副隊長として、また強くなっていった。

大戦を生き延び、2年が経った。

「ルキア!俺のたい焼き返せ!

「ふふふ、とれるものならとってみろ」

ルキアは、恋次の大好物であるたい焼きを奪い、悪戯めいた瞳で走っていた。

障害物をひょいひょいと避けて、通っていくのはルキアの小柄な体のほうが有利だった。

でも、恋次のほうが走るスピードは速い。

がしっと掴まれて、ルキアが降参の声をあげた。

「降参だ、恋次。たい焼き、うまかった」

「ああ、2個少ねぇ!」

恋次は袋の中のたい焼きを数えて、5つあったのが3つになっていて、ルキアの頭をぽかりと殴った。

「上流貴族の姫君だろうが。他人のものを取るような真似すんな!」

「だって、相手が恋次だったから、つい」

悪戯した後のルキアは、きらきらしていてとても可愛かった。

「ぐ・・・・しっかりしろ、俺」

「恋次?」

「な、なんでもねぇ」

そう言って、恋次はルキアと歩きながらたい焼きを口にした。

「白あんも捨てがたいんだよなぁ・・・」

「恋次、あんこがついているぞ」

「え、どこだ」

「もっとこっちによれ」

ルキアの顔のほうまで顔を近づける。

ぺろりと、ルキアが恋次の頬についていたあんこを舐めとってしまった。

「な、な、な・・・・」

恋次は顔を真っ赤にして、ルキアを見る。

「どうした?」

「お前、何考えてんだ!」

「いや、普通に恋次が好きだなと思って。ああ、恋愛感情でだぞ」

「な、な、な・・・・・・」

更に真っ赤になる恋次。

「どうした恋次、顔が茹蛸のようだぞ」

「好きな相手に好きって言われて、照れてるだけだ」

「そうか、好きな相手に好きと・・・・・ええええ!!!」

今度はルキアが叫んだ。

「れ、恋次、貴様いつから私のことを・・・・」

「ガキの頃から」

「私も、子供の頃から好きだった。最初は家族愛、友人愛であった。大戦が起る以前あたりから、貴様が恋愛感情で好きなのだと自覚した。ただ、恋次は私のことなど興味ないだろうと、冗談で告白したのだが・・・・・・・」

「今更、冗談にするなよ?」

恋次に、ぐいっと抱きしめられた。

すでにたい焼きを食べ終えてしまった恋次は、ルキアに口づけた。

ほんのりとあんこの味がした。

「れ、れ、れ、恋次」

ルキアは真っ赤になって小さくなった。

元から小さいのに、縮こまってしまって、恋次が動揺する。

「き、キスいやだったか?」

「いや、そういうわけではないのだが・・・・ひたすらに恥ずかしい」

二人がキスをする現場を、偶然居合わせた日番谷が見ていた。

「ひ、日番谷隊長!」

恋次が、名を呼ぶ。

「なんだよ。なんもいわねーよ」

「日番谷隊長はキスとかしたことありますか」

「んなもん、子供の頃に経験済みだ」

「ぐふっ・・・・」

恋次とルキアはさっきのがファーストキスだった。

日番谷は興味ないとばかり去ってしまった。ここに松本がいたら、面白可笑しく騒ぎ、死神の間で恋次とルキアのことが噂で流れてしまうだろう。

「乱菊さんがいなくてよかったぜ・・・・・・」

「それは同意見だ・・・松本副隊長がいたら、今頃伝令神機で写真とられて、いろんな人にメールで写真を送られているところだ」

二人して、安堵した。

「というわけで、私は恋次のことが好きなのだが、貴様も私のことが好きだと理解してもいいのだな?」

「ああ。俺もルキアのことが好きだ」

「では、早速兄様に報告に参ろう」

朽木家に向けて、恋次の手をとると、恋次が叫んだ。

「えええええええええ」

「なんだ、何か後ろめたいことでもあるのか」

「なんで付き合うのに隊長の許可がいるんだ」

「兄様がおっしゃっていたのだ。誰でもいいから、好きになった相手は必ず連れてこいと」

義妹ラブな白哉のことだ。

いろいろ言われそうだが、ルキアと付き合えるならそれでもいいかと思った。

「よし、今から隊長のところにいくぞ」

「その意気だ、恋次!」

いざ、白哉のいる朽木邸にくると、恋次はドキドキしだした。それはルキアも同じだ。

「兄様、只今戻りました」

「恋次が一緒なのか」

「隊長、このたびは誠にお日柄もよろしく・・・」

「恋次、しっかりせぬか!」

脇腹を肘でつつくルキア。

「隊長、俺ルキアのことが好きです。愛してます。お付き合いすることを許可してください!」

緊張しすぎて、口調がおかしくなっていたが、誠意は届いたようだった。

「ルキアとか・・・・よかろう。そこらの死神より、恋次のほうがよほど信頼がおける」

流石上官と副官だけあって、お互いの性格とかいろいろ知っている。

白哉の許しを得て、二人してほっとする。

「恋次、今日は泊まっていけ」

「え、いいんすか隊長」

「たまには良いだろう。いずれ、義弟になるかもしれぬのだし」

「に、兄様、気が早すぎます」

ルキアの言葉に、恋次は真剣にルキアとの結婚を視野に入れ出した。

「ただこれだけは言っておく。幸せにできなければ、奪い返す」

「に、兄様・・・・・」

じんわりと涙をためるルキアを押しのけて、恋次は言う。

「絶対、幸せにしてみせます」

まだ、お互い先ほど告白したばかりなのだが。

そんなことも忘れて、ルキアと恋次は白哉の許しを得たと、心から喜ぶのであった。



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当たって砕けろ

「当たって砕けろ、だ!」

恋次に思い切りぶつかって、砕けないけどルキアは尻もちをついた。

「おいおい、ルキア何してんだよ」

「当たって砕けろを実践していたのだ」

「はぁ?」

「何事も、当たって砕けろというだろう。だから恋次に当たって、この身は砕けなかったが、砕けたつもりなのだ」

「また、何か変な本でも読んだか?」

ルキアが持っていた本をとりあげる。

彼氏ができる100の方法という本だった。

栞が挟まれていたページをみる。当たって砕けろ作戦。好きな相手とぶつかって、交流を深めましょう。

「ルキア、あのなぁ。こんなことしなくても、俺はお前のこと好きだし大切だぞ?」

「なななななな」

真っ赤になるルキア。

自分からしかけておいて、いざそういう態度をとられると極度に緊張した。

「このゴミ虫め!貴様など、茶わんにいれて蒸し殺してやる!」

もはや、自分でも何を言っているのかわかっていない。

「ゴミ虫・・・・どんな虫だ」

「ち、違うのだ!別に恋次がゴミ虫のようであるからとかそういうわけではなく!」

「ルキア、とりあず落ち着け」

そう言われて、ルキアは深呼吸をするが、ラマーズ法になっていた。

「いや、それ妊婦の呼吸だから。普通に息を深く吸ってはいてを何度か繰り返してみろ」

何度か深呼吸を繰り替えずと、ドクドクと打っていた心臓の鼓動が和らいだ。

恋次が、しゃがみこんで視線を合わせてくる。

「俺はな、ルキア、お前が好きだし大事だ」

「そ、そんなこと知っておる!」

「へぇ。じゃあ、この本はなんだろうな?」

「あ、返せ!現世で買ったのだ」

ルキアもかわいいところがあるなぁと、恋次は思った。そうでなくてもかわいいのに、余計にかわいく見えてくる。

ルキアを抱き上げた。

「恋次?」

「お前の口から、言ってくれよ。俺をどう思っているのか」

「このたわけが!・・・・・す、す、すきやき!」

ルキアの言葉に、そういえば久しくすき焼きなど食べていないなとい思い出す。

「今日すき焼き食いに行くか」

「す、す、隙がある!」

「がんばれ、ルキア」

「す、す、す・・・・・・好きだ」

か細い声でそうぽつりとつぶやいた。

「上出来」

ルキアを抱き上げたままくるくると回る。

「め、目が回る!」

ルキアは小さく細い。恋次の鍛え上げられた体の3分の2ほどしかないように見える。

くるくる回るのを止めると、恋次はルキアを抱き締めた。

「ずっとずっと好きだったぜ。それくらい、知ってるよな?」

いくら鈍感なルキアとはいえ、恋次の接してくる態度で自分に気があるのではないかとは、思っていたのだ。

でも、確かめようがなかった。

さっき、現世の本の変な方法であったが、確かめれてほっとした。

「恋次・・・私も、ずっと貴様が好きだった・・・」

流魂街の頃から。

朽木家に養子としてもらわれていき、一時は離別した。

でも、また線は交じわった。

ルキアの処刑が決まり、恋次は白哉に牙をむいた。結局は勝てなかったが、自分の上官である白哉にたてつくことほどに、ルキアの処刑を止めたがっていた。

藍染の反乱、ユーハバッハの侵攻。

たくさんのことに傷つき、血まみれになりながらも、二人は戦友として共に戦い、そして打ち勝ってきた。

瀞霊廷の復興も大分進み、もう穏やかな時間が流れるだけだった。

「ルキア。俺と、結婚前提で付き合ってくれ!」

差し出された恋次の手を、ルキアはとっていた。

「本当に、私でいいのか?」

「お前じゃないとだめなんだ。ガキの頃からずっと好きだった。お前を幸せにしたい」

恋次の言葉の一つ一つに赤くなる。

「れん・・・・・」

言葉は、唇で塞がれた。

「んう・・・」

浅く、深く。

そんな経験のないルキアは、目を白黒させていた。

やがて息が苦しくなり、恋次の胸を叩く。

「あ、すまねぇ。初めてだったよな」

恋次は、何度か廓で女を抱いたことがあるので、始めてではなかった。

女の喜ばし方というのを学んだ。

ルキアという好きな存在がいながら、他の女を抱くのは、なんともいえぬ背徳感があった。

「ルキア・・・俺は、今までに何度か廓の女を抱いてきた。それでも、俺を好きでいてくれるか?」

「恋次とて、男。欲求を解消するにはその手の店にいくことも仕方なかろう。それでも、私は恋次が好きだ」

「隊長に、結婚前提でお付き合いしていいですかって、聞かないと・・・・・・」

「兄様は厳しいぞ」

「知ってる」

白哉のことだ。その覚悟はあるのかと、剣を交えてくるかもしれない。

それでも、ルキアのことが好きだ。

ちょっとやそっとのことでは、引くつもりはない。

「ルキア、今日から正式に交際スタートだ」

「う、うむ」

手を握りあった。

普段でもよくあったが、こうして意識して握りあっていると、恥ずかしかった。

「白玉餡蜜が食べたい」

ぽつりとそう呟く。最近食べていない。

「おし、甘味屋までいくか。おごってやるよ」

「本当か!」

「これが俗にいうデートってやつだな」

「ででででデート!?」

ルキアが真っ赤になったりふらふらしらりしていた。

「しっかしろよ、ルキア。デートなんて今後何度でもするんだぞ」

「恋次とデート・・・恋次とデート・・・茶碗で蒸す・・・・・」

ルキアの頭の回路はショート寸前であった。

なんとか甘味屋にいき、白玉餡蜜を食べるとルキアも元気を出した。

「今度、現世にデートにいかぬか」

「現世か。ちょっと手続きがややこしいけど、いいかもな」

「一護の井上に茶虎と石田にも会いたい」

ここ4年ばかり、ほとんど会いにいっていない。

もう彼らは社会人となり、新しい人生を歩み出している。

ルキアも13番隊隊長になった。

やがてルキア恋次と婚礼をあげて、苺花という女児を授かるが、それはまた別のお話である。

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恋せよ乙女

「一護は変わったな」

「そうか?」

大戦が終わり、3年が経った。

久しぶりに現世を訪れたルキアは、一護のアパートに転がり込んでいた。

「心なしか、あの頃より表情が柔らかくなった。あとは、髪型を少し変えたせいであろうか」

「まあ、平和に大学通ってるしな。死神化することもほとんどないし、斬月を振り回すこともなくなった。あの大戦はきつかったし、犠牲もいっぱいでたけど、やってきた平和はもう穏やかすぎて、二度とあんなことが起こらないように祈るだけだ」

「尸魂界では、復興が大分進んでいる。焼野原だった大地に、新しい隊舎が建てられたりして」

一護は、ルキアの言葉を聞いて安心した。尸魂界に未曽有の被害を与えたユーハバッハ。民たちは未だ霊王が存在していると思い込んでいる。

「そうか。んで、今日は何しにきたんだ?」

「理由がないと、遊びにきてはいけぬのか?」

「いや、そうじゃないけど。でも、尸魂界での復興に忙しいんだろう?」

一護の言葉に、ルキアは頷く。

「そうだ。ろくに休みもとっていなかったせいで、休暇が1か月以上もたまっておったのだ。たまには、現世で貴様の顔でも見てやろうと思ってな」

「要するに、暇なんだな」

「う・・・それより、貴様は彼女とかはいなのか?」

「今はいねーよ。だって俺にはルキアがいるから」

変わらない。

一護は、ずっとルキアを思ってくれていた。

それに振り向かないまま、3年の月日が経ち、たまに一護のアパートに遊びにくるたびに、好きだと言われた。

ルキアはまとまった休みもとれたことだし、一護と真剣に向き合おうと決めた。

「一護。私も貴様のことが、すすすすすすすきやき!」

「落ち着けよ。俺のことが好きなんだな?」

こくりと、頷くルキアを抱きしめた。

「ああ、思いが通じるってすごいな。幸福感が半端ない」

「一護、だが私は死神だ。毎日一緒にはいれぬ。せいぜい週に2日これればいいほうだ。忙しい時は月に2回ほどしか現世にこれぬかもしれぬ」

「じゃあ、その時は俺が尸魂界に行けばいいだろ?」

「一護・・・・」

ルキアの目が潤んだ。

そうほいほいと、一護が尸魂界にくるわけにはいかないが、たまにならいいだろう。

「ルキア、好きだ」

だきしめて、耳元で囁くと。

「ひゃあ」

と変な声をルキアは出していた。

「ルキア、耳弱いのか?」

「し、しらぬ。んっ」

耳を甘噛みされると声が漏れた。

一護のほうを見ると、一護はにんまりしていた。

「ルキアの弱いところ、1つ発見」

「一護!」

真っ赤になってぽかぽかと叩いてくるルキアの頭を撫でた。

それから、抱き上げた。

「俺、3年前からもう少し身長伸びたんだ。でも、ルキアは小さいままだな」

「仕方なかろう!私はこれ以上は伸びないのだ!」

むきになってくるルキアが可愛かった。

「体重軽いし・・・はぁ、ルキアの匂いがする」

抱き上げられたまま、匂いをかがれてルキアが真っ赤になった。

「お、乙女をからかうでない!」

恋せよ乙女。

そんなタイトルのくだらない恋愛漫画を、高校時代に遊子の漫画から借りて読んだことがある。

ヒロインが、愛しい人に想いを告げぬまま3年が経ち、愛しい人に愛を告げられて、お互いに想いをつげあって、ハッピーエンドになる漫画だった。

今と、状況が似ていた。

「恋せよ乙女・・・・・」

「は?」

「い、いやなんでもないのだ!それより、夕飯の時間だろう、そろそろ」

「ああ、適当になんか作ってやるから、待ってろ」

一人暮らしするようになってから、高校時代もたまに家事をしていた一護は、特に料理の面で眠っていた才能を発揮していた。

「ほらよ」

天丼をだされた。

デザートには、いつでもルキアが遊びにきていいように、白玉餡蜜を作れるようにしていたので、それもつけた。

「む・・・・美味い」

一護特定の天丼は美味しかった。

一護も、同じメニューを食べる。

「明日から、どうせ暇なんだろ?」

「う、うむ・・・・・」

「じゃあ、一緒に大学の講義でも受けるか。記憶置換はあるよな?」

「ここに、あるぞ」

「人数制の教室では、それ使ってなんとかしようぜ」

「う、うむ・・・」

恋する乙女は一直線に進んでいく。

次の日から、まるで結婚したてのような生活が始まった。

一護は朝にルキアを起こし、ルキアが朝食を作ってくれて、それを食べて大学の講義に出る。

一護はラーメン店でバイトしていた。バイト時間は大人しくラーメン店の中で待っていて、8時に仕事が終わると手を繋いで家に帰った。

次の日も、大学に行った。

「おい、黒崎、その子新しい彼女か?」

時折、一護は彼女を作った。ルキアが振り向いてくれないので、それを忘れるように彼女をつくり、愛そうとした。

でも、無理だった。

井上ともそんな関係になりそうになったが、寸でのところで一護が思いとどまった。

「そうだな。貴様には昔は彼女もいたしな・・・・・」

「ああ。ルキアのこと忘れようと思って適当に付き合ってた。すぐに別れたけどな」

この3年の間に、何人の女と付き合っただろう。見かけのよい一護はよくもてた。

「ルキアと付き合う前は、4人と付き合ってた。どれも、1か月も経たずに破局した」

「私のせい、か?」

ルキアが、一護を見つめる。

「いや、俺がルキアを忘れられなかったからで。ルキアのせいじゃない」

ふわりと、包み込むように抱き締められた。

「一護・・・どうして私は、今までこの腕をとらなかったのであろうな?」

「死神と人間だから、だろ?」

一護が、ルキアに何度もプロポーズするたびに、断る原因であることを口にする。

「そうだ。私は死神で貴様は人間・・・・でも思ったのだ。貴様と一緒に過ごし、貴様が死ねば魂魄は尸魂界にやってくる。また、やり直せると・・・・」

「おい、俺はまだ死ぬ気はないぞ」

「当たり前だ!あくまで、一緒に過ごして死んでしまったらだ!」

「死んでもルキアと一緒か。悪くねぇな」

「だからといって、早死にはするなよ!」

「しねーよ。安心しろよ」

ルキアの頭をくしゃくしゃと撫でた。

「一護!貴様、髪がぐしゃぐしゃになるではないか!」

ルキアのそんな声に笑いながら、一護と次の授業の部屋まで移動した。

その日はバイトはなかった。夕焼けの中、二人で手を繋いで歩いた。

ふと、一護が立ち止まる。

「なぁ、ルキア」

「なんだ」

「俺と、一緒に生きてくれと言ったら、生きてくれるか」

夕焼けに照らされて、一護のオレンジの髪がますます色を濃くしていた。

「よいぞ。一緒に、生きてやる」

恋する乙女は一直線。

「そうか。はははは」

ルキアを少しだけ抱き上げて、一護はくるくると回った。

「い、一護、目が回る・・・・・」

「おっとすまねぇ。そっか。一緒に生きてくれるのか」

「責任はとれよ!貴様のために、私の貴重な若い時間を与えるのだ」

「結婚しよう。尸魂界でいいから。白哉に許しをもらって・・・・」

「け、結婚!?」

「まだ先の話だけどな」

一護の言葉に、ルキアは心臓をドキドキさせっぱなしだった。

愛する者と、人間という種族の違いはあるが、結婚などできるはずもないうと、思いこんでいた。

だが、一護のことだから、きっと本当に結婚してくれるだろう。

「恋せよ乙女、だ!」

ルキアは、そう言って、夕焼けに照らされて笑っていた。あの漫画も、ハッピーエンドが結婚だった。夕焼けの中でプロポーズをされて。

「私は恋する乙女なのだ」

「乙女って年なのか?」

一護のつっこみに、脛を蹴ってやった。

「あいて!」

「まだ、十代でも通る肉体をしている!」

ルキアは、そう言って一護に思い切り抱き着いた。

「恋する乙女は一直線なのだ!」

「なんだかよくわからねーけど、ルキアは告白してからは一直線だな」

「そうであろう」

えらそうなルキアをの頭をくしゃくしゃと撫でて、夕日の中また手を繋いで歩きだす。

明日も、明後日も。そうやって、生きていくのだ。





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それいけ一護君

恋次から、6番隊の隊花は椿だと聞いた。

朝から、一護の朝食はご飯と梅干しだけだった。

それをルキアが不憫に思い、おかずを分けてくれた。

「白哉義兄様は、相変わらずのようで」

「知らぬ」

白哉は、ルキアと同じメニューで少し辛口のものを食べていた。ルキアのものは普通の味付けで。一護のものに至っては、梅干しだけであった。

その日は休みだった。

庭では、6番隊の隊花であるという椿が咲き誇っていて、白哉はその一輪一輪を見て、淡い微笑みを浮かべていた。

一護がしたのは、咲いている椿の花をの全てを斬り落とすことだった。

「へっへっへ。これでどうだ」

まるで、どこぞの悪党のような台詞だった。

昼前になり、また椿を愛でにきた白哉は、椿が一輪もないのに驚いていた。

「く・・・やられた」

椿は、もったいないのでルキアにいって、氷の中に保管して、氷室に移動させた。

「貴様も、仕返しにしては少しやりすぎではないか」

「いーや、白哉にはこれくらいしないと、ききやしねぇ」

「しかし、この椿たちは兄様が丹精こめて咲かさせた由緒ある花・・・」

「高いのか?」

「貴様の給料ではきかぬくらいにな」

ぐっと、一護が詰まる。

いくら朽木一護になったとはいえ、家庭に金はいれてないのでまるで、居候のような存在だった。

「で、でも今日の朝飯は梅干しだけだぞ」

「厨房にいき、何か頼めばよかったのだ」

「それが、最近は白哉様ご命令で無理ですとか言わる始末だ」

「うーん。兄様にも困ったものだな」

ルキアは、白哉の一護に対しての嫌がらせを、まだ真剣に受け取っていなかった。

一護とて、できることなら穏便にすませたいのだ。義兄にあたる人なのだし。

一護と白哉の冷戦は、かなりの間続いている。

それなのに、お年玉に200万もする純金のコインをくれたり、ちょっと意味が分からない。

「一護、一緒に謝ってやるから、今回の椿の件は謝ろう。兄様にとっては特別なのだ。緋真姉様と一緒に育てた椿たちなのだ・・・・」

「え・・・・・」

一護は、驚いた。

緋真。白哉にとって、何にも代えがたいほどに大切な、亡き妻。

緋真と一緒に育てた椿という時点で、一護は謝る決意をした。

「俺、謝ってくる」

「待て、一護。私も行く!」

白哉の部屋に行き、一護は頭を下げた。

「あんたの大事な椿を、一輪残さず切り落としたのは俺だ。緋真さんと育てた、大事な椿とは知らなかったとはいえ、今回は俺がやり過ぎた」

「もうよい」

白哉の頬を涙が伝っていた。

「え、あの、ほんとにすんません!」

一護は土下座した。

「く・・・・くくく、ここまでうまくひっかかるとは」

「へ?」

白哉は、目薬をもっていた。

「あーーーー!!!」

「兄の土下座での謝罪、きちんと伝令神機で写しておいた。知り合いに一斉送信だ」

ぴっと音を立てて、メールが送られた。

「ふんがーーー!」

「ま、待て一護!とどまれ!」

一護は、ついに切れて、けれど暴力には訴えずに、白哉の部屋にあった花瓶の花ごと水を白哉にぶっかけた。

「兄は・・・この銀白風花紗が家10軒に相当するものと知っての行為か?」

「だからなんだ!洗う時くらいあるだろ。その手間が省けてよかったな」

「もうよい。頭の悪い兄といると、私の頭の中まで空っぽになりそうだ。下がれ」

「べーだっ」

あっかんべーをして、一護は去っていった。

とりあえず、ルキアは持ってきたタオルで白哉の髪をふき、休日でも着ている死覇装と隊長羽織を変えさせて、銀白風花紗をかわかすために天日に干した。

「兄様、少し一護にきつく当たり過ぎではありませんか?あれでは一護も怒ってしまいます」

「ルキア、これは戦争なのだ」

「せ、戦争ですか」

「そうだ。和平は遠いのだ」

「そうですか・・・兄様、では私もここで失礼します」

ルキアも、白哉の部屋を後にした。

一護は、ルキアと寝室でいちゃこらしていた。

「ルキア、好きだぜ・・・・」

「あ、一護・・・・・」

一護に押し倒されて、でもルキアも満更でもないようで。

「ルキア、かわいい」

「一護、好きだ・・・・・」

ルキアを膝の上に乗せて、抱き締めた。

睦み合うことこそしなかったが、抱擁したりキスをしたりしていた。

ルキアと背中合わせになって体温を共有しあい、本を読んでいた。

たまにお互いの髪をなでたり、どちらかの膝に寝転んだりしていた。

甘い時間だった。

大戦も終わり、平和だった。

ルキアの隣にいれることを、一護は心から感謝していた。

昼食の時間になって、食堂のいくと、一護の皿にめざし1匹が乗っていた。白飯もなしだ。

「ちょっと、厨房いってくる」

「あ、一護!」

「おらおらおら、白哉の命令だからって、めざし1匹はないだろ」

そう言われて、厨房の料理人は、普通の昼食を一護にくれた。

「え?白夜の命令は?」

「今回は、そのようなことは承っておりませんので」

「?なんか変な感じだな」

そのまま、昼食を食堂まで運んで椅子に座ると、栗のイガイガが置いてあって、一護はおもいっきり尻に突き刺さって、叫んだ。

「いってー!」

ルキアは、おろおろしていた。白哉はそしらぬ顔だ。

「白哉義兄様よ、言いたいことあるなら口で言ったらどうだ」

「知らぬ」

「いや、これ絶対お前のしわざだろ!」

「知らぬ」

「キーー!」

一護は、栗のイガイガを白夜の頭に向かって投げた。それをひょいっとかわす白哉。

とりあえず、昼食を食べて、またルキアと寝室に引きこもった。

「今日は天気が良いのだ。散歩にでも行かぬか?」

「おう、たまにはいいかもな」

そうして、梅の花を見ながら川沿いを歩いた。何故か、白哉も一緒だった。

「なんで白哉がいやがんだ」

「私がお誘いしたのだ。たまには夜ではなく、昼の散歩でもどうかと」

「余計なことを・・・・・」

白哉が、ルキアを奪うように、連れて歩き出す。

「あ、待て、ルキアの隣は俺のもんだ!」

そうやって、右側は一護が、左側は白哉が占領して、お互い一歩も引かなかった。

「その、歩きにくいのだが」

ばちばちと、見えない目線での火柱をあげる二人。

「そうだ、ルキア、今日飲みに行こうぜ」

「む・・・・」

白哉が眉を潜める。

白哉は、自分から飲みに行こうとか誘うタイプではない。

結局、その夜は白哉も加わって、普通の居酒屋に来ていた。

「なんでついてくんだよ」

「たまには、庶民の味を知りたいからだ」

「まぁまぁ、一護も兄様も。ここは焼き鳥が美味いのだ。酒もいろいろある。最近のものでは、辛いものでは日本酒がよいかもしれぬ」

すにで、ルキアは酒を飲んでいた。

「おい、ルキア、ここにあった瓶の中身・・・」

「ああ、全部飲んでしまった。ふわふわするなぁ・・・・」

「うわー、あれアルコール度高いのに・・・・」

ルキアは、焼き鳥のほかにホルモン焼きをいくつか食べて、酔っぱらった。

「ういー。おい、いちごおおお、すきだぞおおおおおおおお」

「酒癖わりぃなぁ」

「ルキア」

「はい、兄様」

「眠れ」

「ぐー・・・・ZZZZZZ・・・」

「え、おいまじか?」

「本当だ。私は、酔ったルキアを簡単に眠らせることができる」

どうやら、嘘ではないらしい。

仕方なく、白哉と一護で飲んだ。焼き鳥を中心に食事もした。会話という会話もあまりなかったが、ふと白哉が尋ねてきた。

「今、兄は幸せか?」

「どういう意味だ」

「そのままの意味だ。兄は、幸せか?」

「ああ、幸せだぜ。ルキアと結婚できて、愛して愛されて、ちょっと姑ちっくな義兄に困ってたりするけど、幸せだ」

「そうか。それならば、よいのだ」

酔っぱらったルキアを背中に背負って、一護は会計を支払うと、歩き出した。

「私は、夜の散歩に行ってくる。先に帰っていろ」

「へいへい」

一護は、ルキアを背負いなおして、朽木家にまで帰宅すると、爆睡しているルキアをパジャマに着替えさせて、布団に寝かせた。

そして、一護は風呂に入った。

このまま湯を抜いてやろうかと思ったが、今日の夕方は比較的平和だったのでやめた。

やがて、白哉が帰ってくる。

「みやげだ」

そういって、辛子明太子入りのおにぎりを渡された。

「おう、ありがとう」

「ルキアは寝たか?」

「ああ」

「そうか。私も湯あみをして寝る」

こうやって、一護の好物のものを渡してきたり、優しかったり、白哉は本当によく分からない。

でも、冷戦状態は続いているようで。

翌朝起きると、朝食は猫まんまだった。厨房にいくと、それしか出してはだめだと白哉に言われていると言われた。

「けっ!」

「ふん!」

「二人とも、仲よく!」

結局、ルキアの多めの朝食を分けてもらい、そのまま13番隊の執務室にまでやってきた。

「いつか、ぎゃふんと言わせてやる」

「一護、兄様は恥ずかしがっておいでなのだ」

「いーや、違うね。あれは、姑みたいなもんだ。義弟の俺が気に食わねーんだ」

「でも、本当に兄様に嫌われているのなら、一緒に住めぬぞ?」

「それは・・・・」

言葉に詰まる。

だから、よく分からないのだ。

白哉に、切り落とした椿の花は氷室に保管してあると知らせると、白哉は嬉しそうに微笑んだ。

切り落としたことを攻めてこない。

それどころか、礼を言ってきた。

本当に、よく分からない。

でも、何故だか分からない、今のままでもいいかと思うのだった。



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兎年だから

「・・・・何をそんなに見ている」

「な、なんでもありません!」

恋次がじっと見ていたのは、白哉の頭の上にある兎耳だった。

なんでも、ルキアが一護に飲ませようとしていた薬いりのお茶を、間違って飲んでしまったらしい。涅マユリの薬で、解毒剤はなく、3日もすれば自然と消えるとのことで。

でも、真面目な白哉は病欠でもないので、その程度のことで仕事は休まないと言って、出てきたのだ。

6番隊の皆が、白哉の兎耳を見ていた。

ああもう。

隊長は俺のなのに。

恋次は不満たらたらだった。確かに、兎耳を生やした隊長は愛らしい。でも、元から整った顔立ちで目立つのに、更に目立って、女死神でなく男死神からもくる視線が鬱陶しかった。

6番隊の隊士を集めての連絡は終わり、白哉が執務室に向かって歩きだす。それにつられて、たくさんの隊士たちが動いた。

「あの、朽木隊長その耳は本物ですか?」

「よかったら触らせて・・・・」

ギロリと、氷の眼差しで睨まれて、一般隊士たちは動けなくなっていた。

席官数名は、白哉の言動に慣れているので、3席の理吉などは平然と白哉を受け入れていた。

以前、猫耳を生やしてやってきたことがあった。あれは、一護がルキアに飲ませようとした茶を、間違えて飲んだせいだった。

一護とルキアは、思いあっているのはいいが、たまに互いに変な薬を飲ませようとする。それを間違って、とばっちりで白哉が薬を飲んでしまうことが多い。

一度、一護とルキアに文句を言おうと決めた。

「そんなにこの耳が気になるのか」

「はい」

兎耳は真っ白で、内側がピンク色だった。

「特別だ。触ってもよい」

「ほんとですか!」

恋次は喜んだ。

さっそくと、白哉の背後に回る。

「思ったより、冷たいですね」

兎耳の外側は、ふわふわの毛でおおわれていたが、思ったほど体温がなかった。もっと暖かいものだと勘違いしていたので、不思議に思った。

「うさぎは汗をかく機能が発達していない。細かな血管が行き渡った耳を外気にさらし、放熱して体温を調節している。だから、少し冷たくて当たり前なのだ。冷たすぎるのは体温が下がっている証だから、気をつけねばならぬが」

「隊長、物知りですね!」

「子供の頃・・・兎を飼っていた」

「隊長が!」

今からでは、想像もできない。

子供の頃の隊長もかわいかったんだろうなぁと、想像する恋次。

もふもふしていると、白哉が言う。

「もういいだろう、いい加減にしろ恋次」

「いや、もう少しだけ・・・骨ないし、なんかすべすべしてきもちいい・・・・」

「んっ・・・・・」

「え?隊長?」

恋次の聞き間違いかと思った。

「もういいであろう、耳をあまり触るな」

「もう少し・・」

「ん・・・あっ・・・・」

君間違いではなかった。白哉は、兎耳を触られて感じていたのだ。

「隊長、きもちいいですか?」

こりこりしている兎耳を、撫でまわすと、白哉は真っ赤になった。

「も、もうやめろ。恋次!」

怒られて、恋次はぱっと兎耳から手を離した。

その代わり、白哉を抱き締める。

「恋次、仕事中だ・・・・」

「少しくらい、いいじゃないっすか・・・」

白哉を抱き締めて、唇を重ねると、白哉の兎耳がぴこぴこと動いた。

深く口づけると、また動いた。

「隊長の兎耳、一緒に動くんですね。すっげーかわいい」

「あ、勝手に・・・・」

恋次は、兎耳をかじった。

「ひゃっ」

「隊長?感じた?」

「このたわけが!」

まるで、ルキアのような台詞だ。

白哉は真っ赤になって、恋次を払いのけた。

「兎耳がとれるまで、接触禁止だ!」

「ええ、まじですか」

けれど、その言葉もむなしく、白哉は結局次の日恋次おいしくいただかれてしまうのであった。






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愛の果ての

愛の果てには何があるのか。

そんなことを、ふいに思う。

「おい、ルキア、ルキア」

「え、なんだ恋次!?」

「てめぇーなぁ、せっかく花見に来ようって言ったのがてめぇじゃねえか」

「す、すまぬ。少し考えごとをしていた」

「また一護のことか?」

恋次の機嫌が急速に悪くなる。

一護とはけっこう仲がよくなって、告白されたのだ。

それを、恋次がいるからと断ったのはつい、先日の出来事だった。

「いや、そういうわけでは・・・」

「お前、嘘つくのへたくそだからな」

確かに、一護のことを考えていた。

愛の果てにあるのは幸せだ、俺と幸せにならないかと告白された。

「ええい、何もかも貴様が悪いのだ!」

ルキアは、恋次がいるせいだと、恋次を力のこもらぬ拳でぽかぽかと殴った。

「全然痛くねぇ」

恋次は、ルキアの尻を触った。

「ひゃあ!このばか恋次!」

ばきっ。

ストレートパンチが決まって、恋次は桜の花の海に沈みこんだ。

「へっ、やればできるじゃねぇか・・・・ガクッ」

「おい、恋次、恋次!?」

その頬をぺちぺちとしてやるが、恋次は意識を取り戻さない。

まさか頭でも打ったのかと、恋次の頭を膝の上にもってきた。

「へへっ・・・ルキアのバーカ」

「なっ」

真っ赤になるルキアに、恋次は起き上がって、チュ、と音がなるだけのキスをした。

「きききき貴様!私は初めてなのだぞ!」

「だから、俺がいただいんだよ。一護になんか渡してたまるか」

ちらちらと、桜の海が降っていく。

その下で、抱き締められた。

「ずっとずっと、子供の頃からお前が好きだった、ルキア」

「恋次・・・・」

「ガキの頃は、いつかでっかくなってお前を迎えにいくとか考えてた。でも、今じゃ俺もお前も副隊長だ。差はねぇ」

「うむ・・・・」

「でも、想いの深さなら負けねぇ。もう100年以上もお前を思ってるんだぜ?」

「私は・・・・」

何と言えばいいのか逡巡するルキア。

「お前は、俺を選べ」

「選べとか何様だ、貴様!で、でも、私も恋次、貴様のことが好きだ・・・・」

「やっぱりな。昔から、お前は俺をずっと目で追ってた」

「ぐ・・・・」

言い返せなくて、ルキアは真っ赤になった。

誰かに告白されるのは、これで2回目だった。

「一護のことは断ったんだろう?だったら、俺にしとけ」

「一護のことがなくとも、貴様を選んでいる、恋次。好きだ」

真っ直ぐ射貫いてくるアメジストの瞳に、恋次は紅蓮の髪と同じ色の瞳で見つめ返した。

それから、恋次も真っ赤になった。

「なんか、勢いで言っちまったけど、案外恥ずかしいな・・・・」

「たわけ。なら、初めから言わぬことだ」

「でも、俺が思いを伝えなけりゃ、お前は一護の方に行きそうで・・・」

「たわけ。どれだけの間貴様といると思っているのだ。確かに一護はとても大切だ。でも、恋愛観感情で好きかと言われると、恋次、貴様のほうが好きだ」

ルキアも、言ってから真っ赤になった。

「ほ、ほら、花見するんだろ?」

「そ、そうであったな!」

ギクシャクと、桜の花を見上げる。

桜の雨はちらちらと降り注いでくる。

朽木家お抱えの料理人が作ってくれた重箱のお弁当を食べ、酒を飲みながら、ルキアは言う。

「貴様とこういう二人きりで花見もいいものだな。また、できれば来年もこよう」

「ああ、そうだな」

ルキアは、そっと恋次の横に寄り添った。

「今日から、貴様は彼氏だ。彼女である私を大事にしろ」

「お、おう」

恋次は、顔を朱くしながらも、ルキアと手を繋いだ。

ずっと近くにいたけれど、こうやって改めて意識すると、ルキアも女の子なのだと思った。

いい匂いがして、柔らかい。

恋次は、ルキアを抱き締めていた。

「恋次?」

「もう、絶対に離さねぇ」

ルキアが処刑されそうになった時、もう少しで見捨ててしまう形になったのだ。

力が及ばずに。

「もっと強くなって、お前を守る」

「たわけ。私は守られてばかりではない。背中を任す」

「おう!」

恋次は、桜の花びらの下で、ルキアとキスをした。

「ん・・・・恋次・・」

愛の果ては幸せ。

この果てにあるものは幸せなら、それはそれでいいかもしれないと、ルキアは思うのだった。





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梅の花

「隊長見てください、梅の花が満開ですよ」

そんな恋次の言葉に、そうか、暦は2月かと思い出す白哉。

寒い日がまだ続くが、それでも正月の頃の寒波を考えると大分、寒さも和らいだ。

「梅の花か・・・・緋真が好きだったな・・・」

亡くした愛しい妻、緋真は梅の花が好きだった。桜の花もすきだが、冬の寒さ中でも凛として咲きほこる梅の花が好きだった。

「隊長・・・・・・」

恋次が、昔に想いを馳せる白哉に何かいいたげだった。

「案ずるな。緋真の元にいきたいなどとは思わぬ。今は、お前がいる」

恋次に思い切り抱きしめられた。

いつもより強い力に、白哉が眉を寄せる。

「恋次、痛い」

「痛いくらいに抱きしめてるから、そりゃ痛いでしょうね」

「恋次」

「緋真さんのことは俺が忘れさせてやるって言いたいところですが、隊長の思いの強さは知っています。でも、今は目の前にいる俺のことを考えてください」

そこは、睦み合うために密かに使われている館だった。

いつも、そこで恋次と白哉は同じ夜を過ごす。

なるべく次の日、白哉が非番の日にしていた。

白哉に思いの丈をぶつけるのはいいが、肝心の白哉はあまり行為になれておらず、恋次が完全に何もでなくなるまで抱いた日には、白哉は大抵意識を飛ばした。

「梅の花・・・確かに、綺麗ですね」

「私個人は桜の花の方が好きだがな」

「そりゃ、千本桜もってるくらいですからね」

自分の斬魄刀が桜なら、桜を好きになるのは当たり前だろう。

「だが、あれは梅の花がすきだった・・・少し、枝を手折ってくれぬか」

言われて、恋次は満開の梅の花の枝を一本手折った。

白百合の活けてある花瓶に、梅の枝をいれる。

「梅の花は、綺麗だがあまり匂いがしない」

「そういえばそうっすね」

花を間近でかいでも、あまり匂いがしなかった。

「そんなことろが謙虚でいいと、あれは・・・・」

「隊長、俺がいる前であの人の話はしないでください」

「恋次?」

「俺は自分の目の前にいる隊長が、たとえ死んでいても思っていた人のことを口にするのは嫌です」

死人にどれだけ嫉妬しても、無駄だからと、恋次は白哉の耳元で囁いた。

「すまぬ・・・だが、梅の花を見るために緋真のことを思い出すのだ」

「隊長、好きです・・・・・」

そんな言葉を受けながら、食事をして酒を飲み交わしあった。

やがて、夜が訪れる。

睦み合うために、わざわざ館を用意してあるのだが、その関係はルキアや一護にはばれているが、他の6番隊の者にあまりばれていなかった。

睦みあった次の日は非番の時が多いので、お互いの体から同じシャンプーと石鹸の匂いがするが、二人がただ同じ風呂を使ったのだろうと思うだけで、仲まで勘繰ってくる者などいなかった。

「恋次・・・・」

恋次は、梅の花を一輪手にとると、くしゃくしゃにして白哉の顔の前で花びらをひらひらと舞わせた。

「この梅の花と同じだ、緋真さんは。もう散ってしまった」

「あ・・・・」

恋次の心は、傷口をぱっくり開けていた。

いつまでたっても、愛してくれないと言っていたあの頃に戻ったように。

「恋次、すなぬ、私は今はお前を愛している・・・・」

「じゃあ、証明してみせてください」

「恋次・・・・・」

白哉は、おずおずと自分から恋次の体を抱き寄せて、その筋肉質の体を抱き締めて、口づけた。

「ふあ・・・・・・」

キスをしていると、恋次が白哉と舌を絡めだす。

「これでは、証明にならぬか?」

「いえ、十分です」

白哉は性的なことに疎い。恋次が覚えさせたことを、白哉はなぞっているにすぎないが、日頃決してそのような行為をせぬ白哉が、自分から口づけをしてくること自体とても珍しいのだ。

「抱きますよ。いいですか」

「構わぬ」

白哉の衣服を脱がせ、貴族の証であるものを全てはぎとると、さらりと黒髪が褥に広がった。

「隊長の髪・・・綺麗ですね」

「お前の髪も綺麗だ。紅蓮のようで」

白哉が、ぱさりと落ちてきた長い恋次の髪を一房とって、口づけた。

「んんっ・・・・・・」

ぴちゃりと、舌が絡まるキスを何度も繰り返す。

手の平全体で、体の輪郭を確かめるように愛撫した。

「んっ」

脇腹をなであげて、鎖骨から胸にかけてキスマークを残された。

「あ、恋次・・・・」

求められて、また浅く深く口づけする。

胸を弄っていた手が、先端をきゅっと摘みあげた。

「あ!」

びくんと、白哉が動く。

くりくりと転がしてやれば、硬くなったそこは快感となって白哉に襲いかかった。

「ん・・・・」

舌で甘噛みして、段々と位置をずらしていく。

反応しかけた花茎を口に含むと、白哉は喘いだ。

「ああああ!」

ねっとりとした咥内にいれられて、そのままちろちろと舌を這わされた。口に入りきらぬ部分は手でしごかれた。

自虐もしない白哉は、薄い精液を恋次の口の中に放った。

今度は、白哉が恋次のものを口に含んだ。

こんなこと、教え込んだのは自分だ。恋次は罪悪感を抱きながらも、白哉の奉仕を受ける。

「ん・・・・」

びゅるるると、勢いよく恋次が精液を吐きだした。

「ぐ・・・・」

飲み込むには無理があって、こほこほとせきこむ白哉にティッシュを渡す。だが、白哉はできる限りを飲み込んだ。

「隊長、無理しなくていいから!」

「よいのだ。私がこうしたいと思ったのだ」

白哉を組み敷いて、潤滑油を指にかけて体内に潜り込ませる。

何度か前立腺をいじり、解していくうちに、白哉は自分の手の甲を噛んでいた。

「隊長、声我慢でしないでください。聞かせて?」

白哉の歯型がついてしまった手に、口づける。指には、エンゲージリングが光っていた。

「ああ!」

ぐりっと、指で前立腺を刺激されて、白哉はたらたらを花茎から蜜を零していた。

「挿入れますよ」

「んん・・・ああああ!!」

指とは比較にならならいものに引き裂かれて、白哉は涙を零した。

いつも、行為は快感と痛みをまぜこぜのしたものだった。

「ん・・・・」

痛みで溢れた涙を吸い取ってやれば、あとはただ快楽に墜ちていくだけ。

ゆるりと中を突き上げてやれば、白哉は二度目になる熱を放っていた。

「・・・・・あああ!」

恋次もその締め付けにたまらず、白哉の中に放つ。

「んう・・・・」

何度も突き上げながら、浅く深くキスを繰り返した。

「ひあああ!」

最奥をこじあけて、中に侵入する。

「あ、あ、あ!」

最奥はひくついて、恋次を離さなかった。

「ひあ!」

最奥で精をぶちまける恋次の、熱い熱を感じた。

「んう・・・・」

前立腺を突き上げながら、いつの間にかいってしまったらしい白哉の萎えかけたものをしごく。

少しだけ精液を吐きだして、後は透明な蜜をたらたらと零すだけだった。

「んあ!」

ぐちゃりと音と立てて中を犯してやると、白哉はドライのオーガズムで達していた。

「・・・・・んああ!あ!あ・・・・・」

何度が中を抉って体位を変えて貪っていると、流石の恋次も果てて、それ以上でなくなてしまった。

「ん・・・・・」

少し意識を飛ばしていたらしい白哉の、黒髪を撫でた。

「・・・恋次?」

「ちょっと、無茶させてしまいましたか?すんません」

「別に構わぬ。お前ががっつくのはいつものことだ」

もう、白哉も慣れてしまっている。

白哉もまだ若いが、恋次はもっと若い。1回のセックスで3~4回出すことがおおい。

「湯浴みに・・・・」

ふらつく白哉を抱き上げて、湯殿にいくと、まずは白哉の体内に出したものをかきだした。

「腹の奥・・・まるで、孕むかと思った」

「ぶはっ」

恋次は、すごい殺し文句に、顔を真っ赤にさせた。お互いの裸など見慣れているが、白哉の白い肌はやはり恋次を煽ってきて、心臓に悪いと思った。

体を洗い、お互いの髪を洗いあって、湯船に浸かる。

湯殿から出て、下着をつけて浴衣に着替えて、その上から上着の着物を着た。

「まだ寒いから、湯冷めしないでくださいね」

ぽたぽたと雫を落とす、少し長くなった白夜の黒髪を、タオルで水分をとってやった。

恋次はすでに紅蓮の髪をふいた後だ。そのまま、タオルを首に巻いた。

浦原の手で大分電化製品が普及した。

この館にも、掃除機、洗濯機、炊飯器、冷蔵庫などがあった。

自家発電機は安くないが、これらの便利な電化製品を取り入れる家は多く、浦原が開発した自家発電機は飛ぶように売れていた。この館の自家発電機も、浦原のところから買ったものだった。

ドライヤーを手にして、まずは白哉の髪を乾かした。最後に自分の髪を乾かして、褥とは違う布団に横になる。

「忘れるな。私は、確かに緋真を愛している。だが、お前も愛している。緋真のことを愛するなと言われてでもそれはできぬ。だが、お前を愛せと言われればそれはできる」

「はい、隊長。今は、それで充分です。愛しています、隊長」

「私も愛している、恋次・・・・」

口づけを交わして、一組の布団で抱き締めあって寝た。

「ふあ~。あれ、隊長まだ寝てるんですか」

スースーと、白哉はまだ寝ていた。

「こうしてる人形みたいに綺麗だけど、かわいいなぁ・・・・」

白磁のような肌は、ほんのり色づいている。生きてるのだと、分かる。

「隊長、起きてください、朝ですよ」

「ん・・・恋次?今何時だ?」

「8時です」

「そうか。起きる。朝餉は用意されてあるはずだから、もってくる」

「いいですよ!俺がやりますから、隊長はそこにいてください!」

館であるが、少し広い。

朽木邸の屋敷ほどではないが。個人がもつ家にはしては広いほうだろう。

やはり迷子になったのか、恋次が声をあげた。

「隊長、どこですかー。俺はどこにいるんですかー」

白哉ははそれがおかしくて、笑った。

「私はここだ。そのまま前へと進んで左に曲がれ」

声の位置から大体の場所を察知して、白哉は叫んだ。朝餉を手に、恋次が現れた。

「やっぱ、この館も大分広いですね」

「この程度の広さで迷子になるなど、情けない」

「すみません」

犬のようにしゅんとしょげる恋次の紅蓮の髪を、くしゃくしゃと撫でまわして、白哉は笑んでいた。

「隊長?」

「お前の存在で、私はどれほど救われたことか・・・・」

愛しい者がいるということは、生きようとする意志になる。

思いの果てに愛があり、愛の果てに幸せがあると、ルキア言っていた。

「愛の果てだ」

「は?」

「私は幸せ、ということだ」

「隊長が幸せなら俺も幸せです」

少し冷めてしまっているが、朝餉を食べながら、今日はすることもないのでこのまま恋次と、戯れあうのもいいかもしれないと思った。

「隊長、見てくださいバナナですよ。現世では珍しくないですけど、こっちで食べるのは久しぶりです」

「そうか。これは、バナナというのか」

黄色い果物を口にする。

ほんのりと甘かった。

まるで、恋次と過ごす日常のようだと思った。











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猫がにゃあ

「知り合いから、猫を預かったのだ」

6番隊の執務室で、綺麗なその白猫は、にゃあと鳴いて白哉にすり寄っていた。

「ぐ・・・猫のくせに、俺の隊長を誘惑するとは・・・」

「お前、頭は大丈夫か?猫に嫉妬しておるのか?」

白猫は、オッドアイで、金色と青色の目をしていた。

「この種のオッドアイの猫は寿命が短かかったり、耳が聞こえなかったりと弱いのだ」

「く、かわいいけど、隊長は俺のものだ!」

恋次は白猫を抱き上げると、隊首室に連れて閉じ込めてしまった。

ちゃんと、トイレとエサと水は置いてきた。

恋次の行動に、白哉は目を丸くしていた。

「本当に、猫になど嫉妬していたのか」

「猫でも、隊長に甘えるのは俺の特権です!」

白哉は薄く笑った。

恋次の行動が、とても幼く見えたのだ。

「にゃあにゃあー」

「鳴いている。一匹では寂しいのだろう」

そう言って、白哉はせっかく恋次が閉じ込めた猫を、隊首室のドアを開けて、外にだしてしまった。

「隊長!」

「なんだ」

「猫になんて構わないで、俺に構ってください」

「お前など、いつでも構える。だが、この猫は今日しかいない」

「明日にはいなくなるんですか?」

「そうだ。ちなみに、名は「オレンジ」だそうだ。恋次と響きが似ているので気に入っている」

「今日だけですからね」

「何がだ」

「隊長が、俺以外と親密になるの」

「子供か、お前は」

苦笑されてしまった。

それでも、オレンジという名の白猫は、恋次にも懐いてすり寄ってきた。

「こうして俺にだけ懐いてば、いいんですけどね」

白哉が、猫に現世の猫にあげるのに流行っている、チュールをあげてみた。

面白いほどによく食べた。

「そうか。このえさが好きなのか」

もう1つチュールをあげた。

その姿を、恋次は悶々と見ていた。

チュールを食べ終わると、猫はうたた寝をはじめてしまった。

しかも、文机に向かった白哉の膝の上でだ。

我慢できなくて、猫を抱えて自分の膝に乗せた。

猫はにゃあと鳴いたが、すぐに恋次の膝の上で寝てしまった。

「かわいいけど・・・隊長の膝の上はアウト」

白猫に語って聞かせるが、肝心の白猫は夢の中だ。

その日、恋次は仕事をこなしたが、いつもの3割ほど遅かった。

「猫になど、現を抜かしておるからだ」

「違う。猫に構う隊長に現を抜かしていたんです」

「お前は・・・・んんっ」

噛みつくようなキスをされた。

「恋次・・・・・」

もう一度、キスをする。今度は、舌が絡まる深いキスだ。

「んっ・・・・はあっ・・・・」

恋次は、白哉を抱き締めた。

「猫にだって嫉妬します。俺の隊長に触れていいのは、俺だけだ」

「お前は、そんなに嫉妬深かったか?」

「そうですよ。同じ屋敷に住んでいる一護にだって、嫉妬しています」

ルキアと結婚して、死神になった一護は、黒崎という性を捨てて、朽木一護になった。

「一護は、ルキアと同じでただの家族だ・・・・」

「それでも、嫉妬してしまいます。俺も隊長の屋敷に住みたい」

「四六時中盛ったお前といるのはきつい」

白哉は、冗談なんか本気なのか分からない言葉を口にした。

「俺のこと、重荷ですか?」

「軽くはない。だが、重荷と感じたこともない」

「隊長、好きです。愛してる」

「ん・・・・恋次、私もだ」

「にゃあああ」

猫はもともと夜行性だ。活発になってきた猫を抱き抱えながら、恋次は白哉を家まで送り、夕飯を御馳走になった。

「おう、恋次元気か?」

食堂で、そう一護に聞かれて、恋次は一護にデコピンをした。

「いってぇ」

「元気に決まっているだろう」

「そうか。ならよかった」

「たわけ、貴様夕飯をただ飯で食っておきながら、態度がでかいぞ!」

ルキアが噛みついてくる。

恋次は、ルキアを適当にあしらって、白哉の部屋までくると、白哉を抱き締めた。

「恋次・・・」

「ああ、やっぱ俺一人暮らしが正解ですね。隊長が毎日傍にいたら、盛って身がもたねぇ」

触れるだけの口づけをして、恋次は自宅に帰ることにした。

白哉が、屋敷の玄関まで送ってくれた。

「今日は夕飯ごちそうさまでした。じゃあ、また明日、執務室で」

「ああ」

白哉の見送りに感謝して、そのまま恋次は自宅まで戻った。

一人で住むには大きな館だ。たまに手入れのために人を雇う。

食事をして、風呂に入って寝る以外に、使い道のない館だった。

朽木邸で過ごせればいろいろと面白いだろうが、白哉はすぐ隣にいるとつい盛ってしまいそうになる。

俺も若いなと、恋次は思った。

次の日、執務室は静かだった。

「おはようございます、隊長」

「おはよう」

猫がいない執務室は、こんなに静かだったのかと思うほど、静かだった。

「にゃあ」

「え、何処から!」

「すまぬ、恋次。知り合いが病気にかかり、しばらくの間預かってくれと頼まれたのだ」

「隊長の屋敷では、だめなんですか」

「ああ、そういえばそれでもいいのか・・・・・」

恋次は頭を抱えた。

わざとではないだろうが、猫を傍に置いておきたいのだろう。

名も気に入ったといっていた。オレンジ。恋次の名前の響きがある。

「俺も大人です。猫には嫉妬しないようにします」

「そうか。ならばよかった」

「しばらくって、どのくらいですか」

「半月ほどだなな」

「やっぱ前言撤回。猫にだって、嫉妬します」

半月も白夜に構われる猫に嫉妬する。

猫はそれを知らず、ただかわいい姿でにゃあと鳴くだけだった。










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京楽と浮竹と海燕と 実は起きてる

「起きろおおおおおおお」

「起きてる」

ずさーー。

海燕は、いざ布団をひっぺがそうと思って、気合をこめてやってきたのに、浮竹がもう起きていて、畳の上を滑った。

「遊んでいるのか?」

「まだ8時・・・・隊長がこんな時間起きるなんて、明日は雨か・・・」

「失礼なやつだな。昨日はすることもなく夜の8時に寝たんだ。そしたら、朝に目覚めてしまった」

「とりあえず、お湯をはったたらいを用意しますから、顔を洗って着替えてください」

海燕がたらいを用意している間に、浮竹はいつもの死覇装と隊長羽織に着替えた。やがて、お湯の入ったたらいが置かれる。

お湯で顔をあらって、タオルでふく。

まだ水が冷たい時期なので、お湯にされていた。冷たい水だと、熱を出す可能性があるからと。

まさに、副官の鏡とまでいえる気遣いだった。

「朝餉、準備します」

しばらくして、朝餉がやってくる。

焼き魚に味噌汁、たくあんにご飯。いつもより、大分しけていた。

「今日はやけに質素だな」

「13番隊の隊舎の一部で水漏れがおこって、畳のはりかえとか、屋根の修理とかに金がかかって、朝食だけしばらく質素になります」

「そうか。それなら、仕方ないな」

13番隊では、京楽が食事に金を出してくれているが、それは昼餉と夕餉に回された。

隊長だけ朝餉から豪華なものを食べていると知ったら、一部の隊士から差別だと声があがるだろうからだ。

隊士の食事も、京楽の金のお陰で大分いいものを食わせてやれるようになった。

昔は、夕飯も焼き魚に味噌汁、ご飯にデザートと漬物がつくくらいの質素さだった。

それが今や、カニ鍋だの、天丼だの、ちらし寿司だの・・・大分変わった。

「何これ、質素だねぇ」

いきなりやってきた京楽が、せっかくだから一緒に食べようと用意していた海燕の席に座り、勝手に質素だと言いながら、朝餉を食べだした。

「京楽隊長、何質素とかいいながら食べてるんですか。それにそれ、俺のですよ」

「ああ、悪かったねぇ。つい、用意されてたから僕の分かと思った」

かなり嘘だった。

「はぁ。自分の分の朝餉、運んできます」

「ねぇ、浮竹。こんな質素な食事平気なの?」

「ん?ああ、京楽に金を出してもらう前はこんなかんじだったから、慣れている」

「慣れって怖いね」

海燕が、自分の分の食事を運んできて、食べだした。

浮竹が、隙を見てたくあんを盗んでいく。

それに無言でいると、浮竹がつまらなさそうにしていた。

「海燕、それ俺のだ盗るなとか言わないのか」

「言ったところで、何になるっていうんですか。たくあんの一きれくらいで怒るほど、貧乏性じゃありません」

「じゃあ僕も」

京楽も、海燕の皿からたくあんを盗んだ。

「こらそこ、何人のたくあん盗んでるんだ!」

「え、ちょっと、浮竹の時と態度が全然違うんですけど!」

「おかえしです」

海燕は、焼き魚をもっていってしまった。

「ああ、メイン料理が!」

「隙を見せるからです」

「何おう?」

「なんですか、何か文句でもあるんですか」

ギャーギャー文句の言い合う二人を殴って、浮竹はまた食事をしだした。

「痛い」

「痛いです」

「食事中は騒ぐな」

二人揃って、「はい」と答えてしょげた。

京楽がやってきたのは、ただの気まぐれかと思ったら、ちゃっかり書類仕事を持ってきていた。

たまに、京楽は仕事をもってきて雨乾堂で過ごす。

浮竹の傍にいたいからだ。

浮竹も浮竹で、そんな京楽をごく当たり前のように受け止めていた。

「さて、今日もたまには仕事を頑張るぞー」

「頑張れ、京楽」

浮竹の応援に、京楽はばりばりと仕事をはじめるが、1時間もすればだらけてきた。

雨乾堂で一緒に仕事をしていた海燕は、だらけるのが早いなと思った。

すると、浮竹が京楽の耳打ちする。

「最後まで頑張ったら、俺を抱いていいぞ」

「おっしゃー!やる気充填!」

海燕は苦笑する。そんなことで、本気で仕事にとりかかる京楽がおかしかった。

恋人同士なので、睦み合うのは当たり前だが、1週間に一度と決めてあるのだ。それを覆す浮竹の言葉に、京楽は本気になって仕事に取り組んだ。、

やがて、昼餉の時間になり、いつも通りの質素ではないメニューの昼餉を食べた3人は、休憩した後また仕事にとりくんだ。

3時の休憩がくる前に、京楽はその日の仕事を終わらせた。

「終わったー!」

「俺ももうすぐ終わる。待っていてくれ」

やがて仕事が皆終わり、3時の休憩時間で今日の業務は終了となった。

「京楽隊長、くれぐれのうちの隊長に無理はさせないように!」

「分かってるって」

海燕は、雨乾堂から去っていった。

「さて、浮竹。言った言葉、忘れてないよね?」

「こんな日が高いうちからするのか?」

「正確には、君の気が変わらないうちかな。好きだよ、浮竹」

去る間際、海燕は布団をしいていった。

それを知って、浮竹は紅くなった。

「海燕のやつ・・・聞こえてたのか」

「いただきます」

「ん・・・ふあっ・・・」

いきなり舌が絡まるキスをされた。

「んん・・・・」

服の上から輪郭をなぞるように動かれて、隊長羽織と死覇装を脱がされた。

薄い筋肉しかついていない胸を撫でまわされる。

「あっ・・・・」

先端を口に含まれて、声が漏れた。

「声、ちゃんと聞かせて?」

「ああっ!」

すでに反応していた花茎を手でしごかれて、何も考えられくなる。

たらたらと先走りの蜜を零していたそこは、あっけなくいってしまった。

「あああ!」

京楽は、潤滑油を指につけて、蕾に指を入れる。

「んあ!」

前立腺がある部分を指でいじられた。

「んーーー!」

ぐりっと指を折り曲げられて、浮竹は生理的な涙を零した。

くちゃくちゃと音をたてて、後ろをいじられる。やがて指は引き抜かれて、怒張したものが宛がわれた。

「ああ!!」

引き裂かれていく。痛みはあるが、快感もある。

前立腺ばかりを突き上げられて、浮竹は二度目になる熱を放っていた。

「んあああ!・・・ひう!」

最奥をこじあけられて、京楽が熱を吐きだした。

じんわりと腹の奥深くで広がっていく熱をかんじて、浮竹はぼんやりとする。

「んっ!」

ズルリと一度引き抜かれて、また前立腺を突き上げられて最奥まで入ってくる。

「ひああああ!」

悲鳴に近い声が出た。

「春水・・愛してる・・・・キスを・・・・」

「十四郎、僕も愛してるよ・・・」

浮竹の望み通り、何度でも口づけを与えた。

こじあけた最奥が、締め付けてくる。

「ここ、いいの?」

「あ、わららない・・・」

「君は、ここが弱いものね」

前立腺ばかり刺激されて、浮竹は頭が真っ白になった、

「んーーー!あああ!」

三度目の熱を吐きだす頃には、京楽も二度目の熱を浮竹の中に放っていた。

まだ日は高かったので、二人で湯あみをした。

腹の奥に出されたものをかき出す。とろりと、白い精液が流れていった。

体と髪を洗い、湯船に浸かる。

「体、大丈夫?」

「んー。腰が痛い」

「いつも通りだね」

二人して、互いの水分をバスタオルでふきあって、髪をかわかす。

「今日は泊まっていくけど、いいかい?」

「ああ」

夕餉の時間まで、睦み合うような真似ごとを続けていた。

「入りますよ、いいですか?」

「ああ、海燕、いいぞ」

許可を得て、夕餉を海燕がもってきてくれた。今日のメニューは天ぷらだった。

大きな海老が2匹分ついていた。

「天ぷら、俺結構好きなんだよな」

「僕の分の海老も、1匹食べる?」

「いいのか?」

「うん」

「じゃあ、遠慮なく」

浮竹を甘やかす京楽を、海燕は一緒に夕餉をとりながら、ただ見ていた。

「海燕君、今日は泊まるから」

「そうですか」

「地獄蝶、七緒ちゃんに飛ばしておかないと・・・・」

「では、俺はここで。お疲れ様でした」

「海燕、お疲れ」

「お疲れ様」

夕餉を下げて、海燕の長い一日が終わる。

また明日、意地汚く寝る浮竹を起こしにこよう。そう決意する海燕だった。




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京楽と浮竹と海燕と 正月

「起きろおおおおおお!!!」

「嫌だあああああああ!!!」

寒い中、毛布と布団をひっぺがされそうになって、それしがみついて離れない浮竹に、海燕は業を煮やして、ぺっと、雨乾堂の廊下にしがみ付いた浮竹ごと転がした。

「寒い!海燕の人でなしーーー!!」

がたがたと震える。

正月休みが明けたとはいえ、まだまだ寒い。

この季節は椿が見頃だなと、ふと庭に植えていた椿が見頃なのを思い出す。

浮竹は起きた。

どのみち、廊下では寒すぎて、いくら毛布と布団があっても、寝れない。

庭においてあったサンダルをはいて、庭に植えた椿のところにいくと、それを眺めて和んでいた。

「廊下でも寝ているのか、いい加減に起きろーー!!ってあれ、いない・・・・」

庭に出ている浮竹をみて、海燕の顔色が変わる。

「あんた、そんな薄着でいつまでも外うろつかないでください!」

「なんだ。ただ椿を見ていただけだぞ」

「それなら何か羽織ってからにしてください!」

寝るときの着物の恰好のままだった。

海燕は、すぐに上着をもってきて、浮竹に着せた。

「海燕は、心配性だな」

「あんたは気が緩すぎるんです。風邪ひいて熱だしますよ」

「いつものことだろう。どうせ熱だすなら、好きなことしていたい」

「馬鹿ですか!」

海燕に引きずられて、雨乾堂の中に入る。

火鉢に当たらされて、がたがたと震えていた体がやっと収まった。

「海燕ー腹減ったーご飯」

間の抜けた声で、そう言うと、海燕が朝餉をもってきた。

時計を見ると、8時50分。

今から朝餉を食べ終わったら、死神の業務開始時刻の9時を過ぎるが、いつも10時とか11時まで寝ているのだから、まだましだろう。

「なぁ、海燕」

「なんですか、隊長」

「お年玉くれ」

冗談のつもりで、そう言った。

「仕方ありませんね」

お年玉をもらってしまった。

「え、うそ。まじで?」

「いらないなら、奪いますよ」

「いや、いる!」

きっと、肩たたき券でも入ってるのだろう。でも、海燕の肩たたきやマッサージは上手いので、それはそれで嬉しい。

朝餉を食べ終わり、死覇装と隊長羽織に着替えて、お年玉の中身をみると、5千環入っていた。

つまりは、5千円だ。

「ほんとにお年玉もらえた」

500年近く生きてきて、年下からお年玉をもらうのは初めてだった。

ちなみに、今年も山本総隊長からお年玉をもらっていたりする。3万環だった。つまりは3万。

山本総隊長にとっては、息子のような浮竹と京楽の存在は特別で、いくつになってもお年玉をあげたい存在なのだろう。

ちなみに、京楽は2万だった。

1万の差を、差別だと叫んでいたが、日頃の行いの違いだと言われて、京楽はその言葉に言葉を返せないでいた。

9時半になり、仕事をはじめる。

今日は比較的書類仕事が少なくて、昼前には全て終わってしまった。

「今日は終わりだ」

「早いですね。ああほんとだ。今日は仕事があまりありませんね」

「じゃ、そういうことで8番隊に遊びにいってくる!」

「あ、まて!」

海燕の制止の声を無視して、瞬歩で8番隊の前にくると、泣いている京楽を見てしまった。

「京楽・・・・?」

「ああ、浮竹かい!天の助けだ!そこにいる猫、外に出してくれないかな。七緒ちゃんが預かったっていう猫なんだけど、僕は猫アレルギーで。涙も鼻水も止まらない・・ふぇっくしょん」

「この子か?」

「にゃーお」

京楽にすり寄っていた猫は、浮竹のところにくると甘えてきた。

「外に出して戻ってこなかったら大変だ。隊首室に入れておく。それでいいか?」

「うん、執務室に入れないようにしてくれれば、それでいいよ」

京楽は、珍しく泣いていたので、何事かと思ったら、猫アレルギーの症状だったのだ。

「こんなにかわいいのにな?」

「にゃあ」

猫用のトイレと、餌と水を入れた入れ物を、隊首室に置いておいて、扉をしめた。

「にゃあにゃああ」

外に出たがっていたが、しばらく鳴いていると、大人しくなった。

多分、寝たんだろう。

「ああもう、お陰で仕事が全然進んでないよ・・・」

「どんだけ溜めこんだ?」

「まだ2週間分くらい」

この前、七緒が京楽の耳を引っ張って、雨乾堂から連れ去ってからちょうど半月くらいだ。

それに懲りて、始めの頃はまともに仕事をこなしてきたが、そろそろさぼりの癖が出てきて、七緒に怒られたところだった。

「伊勢、お前の猫アレルギーのこと知っているのか?」

「いや、知らないんじゃないかな。知ってたら、嫌がらせで僕の部屋に入れることはあっても、仕事のある執務室に置いていったりしないよ」

「猫はあんなにかわいいのに」

「かわいいけどね。僕もできれば抱きたいよ。でもね、体が拒否反応を起こすんだ」

「俺に猫耳や尻尾をはえさせる薬飲ませて、睦み合った時は平気なのに?」

「う、それは・・・・」

半年前ほどのことだ。

まだ浮竹は根に持っていた。

「あの時は悪かったよ。もうしばらくしないから」

「しばらくってどのくらいだ」

「1年くらいかな」

「お前は、1年もたてばあんな薬をまた俺に盛るというのか!」

浮竹が怒る。

「まぁまぁ。お年玉あげるから」

ぴくりと、浮竹が反応する。

お年玉をあげることはほとんどないが、なぜかもらうことが多い。

京楽からもらったお年玉は、ずしりとしていた。札束などではない。

「何が入っってるんだ?」

中をあけると、見事に研磨された翡翠の石が入っていた。しかも大粒だ。

「売れば、けっこうな額になると思うよ」

「こんな高価なもの・・・・ああでも、どうせ要らないといえば京楽はそこらへんに投げ捨ててしまうんだろうな」

「正解。そんなの、僕が持ってても意味ないからね。適当にタンスの中にでもしまうか、下手するとゴミと一緒に出しちゃうかもね」

勿体なさすぎて、もらう以外の選択肢が出てこなかった。

「じゃあ、俺がもらう」

「ちょっと息抜き。雨乾堂に行こう」

「ああ、いいぞ」

二人で、雨乾堂に帰ってきた。

「あ、隊長。伊勢副隊長から、猫を預かってほしいと言われていたんですけど・・・隊長がいなくなったので、京楽隊長に預かってもらうって・・・・」

「ああ、それで京楽のところに猫がいたわけか。その問題なら、解決した。8番隊の隊首室で預かっている」

「京楽隊長いいな。猫、かわいいでしょ」

「海燕君、僕、猫アレルギーなんだ」

「え、まじですか」

「まじだよ・・・・」

ニヤリ。海燕が笑ったのは、気のせいではなかっただろう。

「俺んちで、猫飼い始めたんです。隊長、今度雨乾堂に連れてきていいですか?」

「ああ、勿論いいぞ」

「海燕君、君ってやつは~~~」

京楽が、海燕を追い回す。

海燕は、楽しそうに京楽の腕から逃げていた。

結局、翡翠を売りにいくと、200万環という値段がついた。

そのお金で、しばらくの間浮竹は海燕や都をおごってやったりした。

「絶対、京楽隊長からお金もらったでしょう!」

海燕の指摘に、浮竹が問う。

「何故気づいた?」

「だって、浮竹隊長は基本貧乏人ですから」

「お年玉に翡翠をもらったんだ。200万環になった」

「200・・・・俺の給料の2か月分ですね」

くらりとした眩暈を覚える。

京楽は、浮竹を甘やかしすぎだ。今度、そこのところを注意しようと思う海燕であったが、おごりの食事はありがたくいだいておくのだった。







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浮竹死んだけど幽霊です憑いてます24 椿

朽木邸に来ていた。

寒椿が見頃で、少しだけ分けてくれと白哉に京楽が訴えると、好きなだけ持って行けと言われた。

珍しく、浮竹は実体化したまま、京楽と散歩に出た。

白哉のいる朽木邸にまできて、浮竹が驚く。

「ここは白哉の家だぞ」

「許可はもらってあるから。こっちだよ」

浮竹の手を引っ張って、歩いていく。

寒椿の見事な紅の花が、咲き狂うようにそこにはあった。

「綺麗だな・・・・・」

1つ手折って、浮竹の髪に飾る。

「やっぱり、君には紅色がよく似合う」

「ばか、椿がかわいそうだろう」

「そんなことないよ。散る前に氷室で補完させるから」

「京楽・・・・」

今日は、1日中実体化していられる日だったが、珍しく睦み合わずに外に出ていた。

そのまま、しばらく椿を鑑賞してから、貴族街の宝石店に行く。

「注文していたものはできているかい?」

「あ、京楽様。ちょうど先日、出来上がったばかりです」

「京楽、何を・・・・」

店員が出してきたのは、椿を象ったガーネットでできた髪留めだった。

「じゃあ、いつもの口座に振り込んでおくから」

「毎度、ありがとうごいます!またご贔屓にしてください」

「うん。君のところ、よい出来のつくってくれるから、また頼むよ」

「京楽・・・・」

浮竹は、京楽の思いに気づいて、潤んだ瞳で京楽を見ていた。

京楽は、浮竹の長い白い髪を一房手にとると、椿の形をした髪留めで留めた。

耳元には、本物の椿。反対側の髪には、ガーネットでできた椿を象った髪飾り。

「椿は、6番隊の隊花だからねぇ。朽木隊長とかにも似合いそうだけど、あの子はこういうの好まないでしょ」

「俺は、ただの椿だけでもよかった。またお前に散財させてしまった」

「まぁそう言わないでよ。去年は忙しくて、君の誕生日を祝えなかったから、その代わりだよ」

「でも、特注品だから高かっただろう?」

「うーん。石がガーネットだから、そこまで飛びぬけて高いわけでもないよ。まぁ、注文した品だからそこそこはしたけどね」

「今日は、君の誕生日を祝えなかった代わりの日だよ。君の好きな場所に行こう」

「じゃあ、壬生の甘味屋にいきたい」

「あそこ、カードでポイント制ができたんだよね。もう会員カード作ってあるから、行こうか」

少し足を伸ばして、壬生の甘味屋にまで出かけた。

「おはぎを10こ、ぜんざいを3人前、白玉餡蜜を3人前、あと団子4つと、羊羹5つ」

「僕は、抹茶アイスとぜんざいを1つ」

注文される量の多さに、給仕係は大変そうだった。

少ししてから、注文した品がやってくる。

浮竹は美味しそうにそれらを食べた。

「ねぇ、生身で食べている時は、実体化するエネルギーにはならないの?」

「いや、そうでもないぞ。ただの食事と一緒で、今ここにいるエネルギーに変わる」

「なるほど」

「次にどこに行きたい?」

「俺の墓参りにいきたい」

「雨乾堂にあった場所に行こうか」

「ああ」

甘味屋を出て、会計をすます。かなりのポイントがたまって、次回から割引ができるようだった。

雨乾堂にあった場所まで、花と酒を手にやってくる。

「俺は幽霊だけど、ここに眠っていることには変わりないからな」

菊の花を添えて、酒を墓石に注いだ。

「あとは?」

「元柳斎先生と、卯ノ花隊長の墓参りがしたい」

「分かったよ」

菊の花を追加で買って、お茶を買った。

山本元柳斎重國は、酒より茶を好んだ。

山本元柳斎重國の墓は立派だった。たくさんの供え物がされていて、墓の管理者が花が枯れたり、食べ物が腐ったりすると、処分してくれた。

「元柳斎先生・・・・俺だけ、生きているように近いかんじなってすみません。どうか、安らかに」

「山じい、まぁ気楽にやっててよ。そのうち、そっちいくから」

墓石に茶を注いだ。

近くに、卯ノ花隊長の墓もあった。

こちらも綺麗に手入れがされてあり、まだ枯れていない花が活けてあった。

「虎鉄隊長のものかな?」

「多分ね」

「卯ノ花隊長・・・・あなたに続くはずだったのに、俺だけこうして幽霊なのに実体化までできて、すまない。どうか、安らかに」

「卯ノ花隊長の死に顔はとても綺麗だったのを、今でも思い出すよ。血をぬぐうと、今にも微笑んででくれそうで。そういえば、君の死に顔も満足したかんじだったね」

「そうなのか?」

「うん。死神としての矜持を果たしたってかんじで。微笑んでくれそうな顔ではなかったけど、卯ノ花隊長と同じくらい綺麗な死に顔だったよ」

「なんか複雑だな。死に顔を見られているのに、今こうしてお前の傍にいれる」

京楽は、嬉し気だった。

「神様の悪戯か何か知らないけど、僕はとても嬉しいよ。君を失った世界は色がなくなった。色のない世界だ。君が幽霊として僕に憑いてくれてから、世界に色彩が戻った」

「その、すまない。お前を置いて逝ったりして」

「君の手紙を読んだよ。いつか引退して一緒に歩んでいこうってくだりには涙腺が決壊して、涙が止まらなかったんだよ」

「あれは・・・あの手紙は、まだ持っているのか?」

浮竹の問いかけに、京楽は首を横に振る。

「持っていても、とても悲しいものだから、読んだ後に鬼道で燃やしたよ」

「そうか。でも、そうしてもらったほうが俺も楽だ」

浮竹と京楽は、手を繋ぎあいながら、1番隊の寝室にやってきた。

そのまま、睦み合うことはせずに、ベッドに横になった。

髪に飾っていた椿は、京楽の氷室で保管するとのことで、帰り道の途中で京楽邸に一護立ち寄った。

「くすぐったい・・・」

背後から抱きしめられて、浮竹はなんともいえない感覚を味わう。

一言でいえば幸せの気持ちだ。

でも、一度死んだ身でありながらという、後悔に似たものもあった。

「今日は、君を抱かない。だけど、こうやって一緒に眠ろう」

「ああ、分かった」

夕飯をとり、湯浴みをすませて、椿の髪飾りを大切にタンスにしまいこんで、ベッドに横になる。

京楽と一緒に眠るので、ベッドはとても広いものだった。

始めはシングルサイズだったが、京楽がベッドをキングサイズに変えたのだ・

体温を共有し合う。

それだけで、安心できた。

「京楽・・・キスしていいか?」

「どうしたの。君からなんて珍しいね」

「なんとなくな・・・・・」

唇を重ねる。

触れるだけのキスは、いつしか貪りあうような深いものにかわっていた。

「好きだ、京楽・・・」

「僕も大好きだよ、浮竹」

抱き締める腕に力がこもる。

「もう、置いていったりしない。ずっと一緒だ」

「うん」

そのまま、眠った。

朝起きると、浮竹はまだ実体化したままだった。

「おはよう」

「おはよ」

京楽は、浮竹の髪を螺鈿細工の櫛で梳いて、椿の髪飾りをつけてやった。

「うん、今日もかわいいね」

「そろそろ、霊体に戻る。無駄に実体化し続けるよりはいいだろうから」

「あ、待って!」

「?」

キスをされた。

「ん・・・んんっ・・・・・」

舌が絡み合う。

「ふ・・・・」

朝から濃厚のなキスをした。

「もぅ、霊体に戻るぞ」

「うん」

すーっと、浮竹の体が透けていく。髪飾りも透けて、霊体の一部になってしまった。

取り外すと、実体化するが。

「君の実体化できる貴重な1日をありがとう」

「そういう俺こそ、俺の我儘に付き合ってくれてありがとう」

新しい朝が始まろうとしている。

不変の愛を奏でながら、二人は寄り添いあうのであった。

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浮竹死んだけど幽霊です憑いてます23 バニーヘアバンド

正月もそろそろ終わりだった。

「今年は兎年だねぇ」

「だからって、これはなんだ」

バニーヘアバンドがあった。

それを見て、京楽がにんまりと笑った。

「つけてくれるよね?つけてくれないと、手袋つけて悪戯するよ」

霊体を触れるという特殊な手袋を、12番隊で開発してもらい、それでよく実体化できない時とか髪を結われたりした。

「お前の場合、悪戯で済まないから性質が悪い」

浮竹は、実体化するとバニーヘアバンドをつけた。

「これでいいのか」

「ああ、浮竹かわいいねぇ」

思い切り抱き着かれた。

ベッドに腰かけて、京楽の膝の上に座らされる。

「言っとくが、10分くらいしか実体化できないぞ」

「十分だよ」

浮竹の柔らかな髪に手を伸ばす。

頭を撫でて、口づけられた。

「んん・・・ふあっ・・・」

最初は触れるだけ。次に舌が絡まるほど深く。

「ああっ・・・・」

衣服の上から体をまさぐられる。

「変なことするな!」

ぽかりと、京楽の頭を殴る浮竹。

「でゅふふふふふ」

気味の悪い笑い声を浮かべる京楽。

やがて10分が経って、浮竹は透けてしまった。

「さぁ、新年の挨拶に出かけるよ」

「え、この格好のままでか?」

「そうだよ。そのためにつけてもらったんだから」

「お前は~~~~」

殴ろうにも、霊体なので殴れなかった。

そのまま、1番隊の副官である七緒に挨拶する。

「新年あけましておめでとう。今年もよろしくね」

「あけましておめでとう。今年もよろしく」

七緒はぽかんとした顔をしていたが、新年の挨拶を返す、

「あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします・・・そのバニーヘアバンドは、京楽総隊長のせいですね?ご迷惑をおかけいたします」

「いやいや、伊勢のせいではないからいいんだ」

そのまま、次は6番隊の白哉のところにいく。

「新年あけましておめでとう。今年もよろしくね」

「あけましておめでとう。今年もよろしく」

「あけましておめでとう。浮竹、似合っているぞ」

「あ、白哉・・・なんか恥ずかしいな、こういうの」

浮竹は、照れていた。

「かわいいでしょー。でもあげないもんねー」

「浮竹はものではないのだ」

正論を言われて、京楽は舌を出した。

「実体化しても触っていいのは僕だけなんだからね」

「実体化できるのか?」

「ああ、あまり長いことは無理だが・・・」

「そうか。まぁ京楽総隊長もほどほどにな」

睦み事のことを言われて、浮竹は真っ赤になった。

次に訪れたのは10番隊の日番谷のところだった。

「新年あけましておめでとう。今年もよろしくね」

「あけましておめでとう。今年もよろしく」

「ああ、あけおめ。浮竹・・・お前は新年そうそう、京楽のおもちゃにされて大変だな」

「もっと言ってやってくれ、日番谷隊長」

「まぁ、ほどほどにな」

白哉と同じよなことを言われた。

最後に訪れたのは、13番隊。ルキアのところだった。

ルキアは、夫となった恋次と一緒にいた。

「新年あけましておめでとう。今年もよろしくね」

「あけましておめでとう。今年もよろしく」

「あ、隊長あけましておめでとうございます。今年もよろしくです」

「京楽総隊長・・・この浮竹隊長の耳のやつ、スペアないですか」

「あるよ」

浮竹とルキアが和やかに話し込んでいる裏で、恋次と京楽はこそこそとやりとりをする。

「君も、ルキアちゃんにつけさせたいんでしょ?」

「そうです。かわいいですね、あれ」

「ここにスペアがある。もっていくといいよ」

「ありがとございます、京楽総隊長」

恋次は、早速ルキアを呼んだ。

「おい、ルキア」

「なんだ、恋次」

「これ、つけてくれ」

「これは・・・浮竹隊長とお揃いか!つける!」

お揃いといつことに少しカチンときたが、バニーヘアバンドをつけたルキアは可愛かった。

「お、朽木似合ってるぞ。お揃いだな」

「浮竹隊長こそ似合ってます」

二人は、和やかに笑んでいた。

その二人を、京楽も恋次も、ほんわかとした態度で見守っていた。

「ルキア、今日1日その恰好でいてくれ」

「まぁいいが・・・」

「浮竹は、しばらくそのままね」

「おい、京楽・・・・・・」

「せっかく買ったのに、1日だけとか勿体ないでしょ。だから、つけておいてよ」

「仕方ないなぁ・・・」

今年は兎年。

バニーヘアバンドは少し恥ずかしいが、この程度のコスプレなら許容範囲だ。

さすがの京楽もバニーガールの恰好をしろとは言わないだろう。そんな恰好したら、ただの変態だ。

「いやねぇ、はじめはバニーガールの恰好してもらおうと用意しておいたんだけど、君のことだから絶対着てくれないと思って、バニーヘアバンドだけにしたんだよ」

「当たり前だ!誰がバニーガールの恰好なんかするか!ただの変態だろ、それは!」

「ちゃんと、半ズボンにしておいたし、それほど変態ちっくな格好じゃないんだけどなぁ」

「それでもいやだ!」

「やっぱりねぇ」

京楽は落ちこむが、断固として着ないと浮竹は口にする。

「絶対に着ない。着せようとしたら、1か月禁欲の刑だ」

「ああ、それは困る。仕方ない、処分するか」

鬼道でぼっと火をつけて、その場で京楽は燃やしてしまった。

「何も、鬼道で焼かなくとも・・・・」

「だって、こうでもしないと君が実体化した時着せちゃうよ」

「焼け!もっと派手に焼け!消し炭にしてしまえ!」

浮竹の切り替わりの速さに、苦笑しながらも、今年の正月も終わりを迎えようようといしていた。





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恋い焦がれ エピローグ

5月15日、待ちに待ったルキアとの結婚式の日が訪れた。

一護は、一護現世にいき、死神としてやっていると、石田と茶虎に知らせた。あと一心にも。

3人は、忙しいだろうにスケジュールを5月15日にあくようにしてくれて、結婚式を見届けにきてくれた。

和服で正装した一護と、一護の願いでウェディングドレスを着たルキアがやってくる。

和装で正装した白哉が、ルキアを連れてやってきた。

式の内容としては、和風形式で進めたが、結婚指輪をはめ合うことと、キスを取り入れた。

もう何度目かも分からぬ、ルキアとのキスをして、酒を飲み交わし合って、結婚は滞りなく行われた。

ルキアのウェディングドレス姿はとても綺麗で。

「ルキア・・綺麗だ」

「このようなヴェール、邪魔になるだけかと思ったが、案外よいものだな」

結婚式には、主だった隊長副隊長が出てくれた。

「朽木、幸せになんなさいよ」

「はい、松本副隊長!」

ブーケを持っていた。

それを投げると、砕蜂の手に落ちた。

「これは・・・・夜一様と式を挙げろということか!」

倒錯した思考にいきついた砕蜂に、並ぶように立っていた夜一が耳元で囁きかける。

「結婚などせずとも、儂とそなたは今のままでいいのじゃ」

「はい、夜一様!」

砕蜂は、ブーケを投げ捨てた。

それは、恋次の手に落ちた。

「俺がもらっても意味ねーんだけどな。ま、ありがたくもらっとくぜ」

白哉は、静かに義妹の結婚式を眺めていた。

「緋真、見ているか。そなたの妹は、今結婚式を挙げた」

緋真・・・そう、白哉は繰り返した。

美酒と御馳走が振る舞われた。

朽木家主催なので、豪華な食事と、高級酒が揃っていた。

「きゃー、飲むわよー!」

「おい松本!みっともないからやめろ!」

そういう冬獅郎も、酒を飲んでいた。

いつの日だったか、朽木家の庭で、恋次とルキア、一護と井上で梅の花を見ながら飲みあったことを思い出す。

もぅ、井上とは連絡をとる気もないし、一護を殺したのだ。その魂は、死後地獄へと落とされる。

ルキアと一護も、酔いつぶれない程度に飲んだ。

「ルキア。今、幸せか?」

「愚問だな。幸せ以外の何があるというのだ」

そのまま結婚式は終わり、初夜が訪れる。

二人は、結婚する前から体を重ね合っていたが、今日はとびきり甘くルキアを抱いてやった。

「ああ・・・・一護・・・・そこやっ・・」

本気で嫌がる様子のないルキアに口づける。

ずっと避妊具ありで体を重ねていたが、今日は避妊具なしだった。

次の日、ルキアも一護も疲れて眠ってしまった。

その翌日には、現世のヨーロッパへ6泊7日の旅に出た。

全てが終わり、尸魂界に帰還して仕事に復帰すると、山のように仕事が溜まっていた。

3席になった小椿が大分処分してくれたらしいが、それでも書類は1週間以上分溜まっていた。

「新婚旅行の後はこうなるのか・・・・・・」

「そうだな。まぁ楽しんだし、仕方ないとして諦めるがよかろう」

二人して、書類を片っ端から片付けた。

残業はしなかった。

4日目あたりに、やっと書類仕事の終わりが見えてきた。

やがて月日はめぐる。

結婚して、3年が経っていた。

最近、ルキアの調子が悪いのだ。食欲もなく、吐き気を訴える。

まさかと思い、かかりつけの医者に診てもらうと、懐妊が明らかになった。

2か月目だそうだった。

「4番隊の診察では、男児と言われているのだ」

「そっか。頑張って、元気な子を産んでくれよ」

一護にとって、生まれてくるの始めての子だ。

流産した子が二人いる。井上が勝手に懐妊し、流産した胎児だった。名など、つけていなかった。

「ルキア、くれぐれも流産に注意してくれよ」

「大丈夫だ、一護。私は井上ではないのだ。ちょっとやそっとで、流産などしない」

ルキアが重いものを運ぼうとすると、一護が運んだ。

月に2回は、4番隊の救護院で胎児の様子を診てもらった。

9か月目になる時、ルキアは初産であるが陣痛の痛みを訴え出した。早産である。

一護だけでなく、白哉も慌てた。

4番隊から、産婦人科を診ている死神を緊急で呼び出して、そのまま朽木邸で、産ませることになった。

無理に動いて何かあったら大変だ。

早産で、少し小さかったが、ルキアは待望の子を産んだ。

男児ではなく、女児であった。

産湯に浸かり、へその緒が切られ、乳児用の着物をきた我が子に、ルキアは涙を流しながら、前から考えていた名をつけた。

「一護の文字を入れて、苺花というのだ」

「苺花か・・・・いい名前だな」

赤子を抱き上げる一護。ルキアは一度母乳を与えると、産褥なので疲れて眠てしまった。

それから、ルキアは1年の産休をとることになった。

男児と言われていたので、着る物とか全部男用のものばかりで、気の早い白哉は袴とかまで用意していた。まぁ、袴は女児でも着れる。

女児と知って、気の早い白哉は振袖などを用意していた。

「兄様、早すぎます!」

ルキアの訴えで、それ以上振袖が作られることはなくなったが、代わりに子供用の高価な着物が溢れた。

ベビーベッドに寝かせた我が子を、ルキアは粉ミルクで育てた。普通の貴族は、乳母を雇うのだが、ルキアの希望により、乳母は雇わなかった。

自分の手で我が子を育てるルキアに、一護も率先して赤子の世話をした。

どうしても、隊長でなければ裁可のおりぬ仕事をもちこまれた時などは、一護がいない時は付き人であるちよに、苺花を任せた。

それから、また月日は弓矢の如く過ぎ去っていいく。

苺花は7歳になり、3つ下の4歳の一勇という男児ももうけた。

苺花は、何かあるたびに、弓親のことをちかさんと呼び、懐いていた。

剣のほどきを、一角から受けていた。

「なぁ、ルキア」

「なんだ、一護」

「もう一人子供が欲しいって言ったら、笑うか?」

「いや?子は多い方がよい。ただ、面倒が見切れるかわからぬが」

「そうか。なぁ、ルキア」

「なんだ?」

「愛してるぜ」

「私も、貴様を愛している」

二人は、子供が遊んでいる風景を見ながら、キスをした。

二人で、並んでサッカーという現世の遊びをしている子供二人を見ながら、微笑んだ。

愛の果てにあるもの。きっとそれは、幸せ。

恋い焦がれ合った季節は、とうの昔に過ぎ去ってしまった。

今はただ、傍に在れることが幸せだ。

この幸せは、千年近くも続いていくのだ。

いつか。死が訪れて霊子に還っていっても。きっとまた、結ばれる。

永遠の愛を誓いあいながら。

二人は歩き続ける。

明日へ、向かって。



綺麗な歯車がたくさん廻り出す。

幸せだと泣きながら。

二人の歯車は、永遠に廻り続ける。

ただ、未来に向かって--------------------------。




              恋い焦がれ

               fin

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