黒猫と白猫の亜人35
白哉の言葉で、通りで工事が長い間続いてるのだと京楽と浮竹は思った。
「ただで解放するわけじゃないんでしょ?」
「うむ。1回銀貨1枚ほどとろうと思っている」
一般の公式浴場が1回銅貨8枚くらいなので、妥当な値段とは思われた。
「やっほー。冬でも泳げる」
恋次が、猫の姿になり、温水プールに浮き輪を使って入る。
「恋次の浮き輪、いつ見ても不気味だ」
「白哉さん、かっこいいでしょ?俺の顔の柄の浮き輪」
赤い髪の恋次の顔が柄になっている浮き輪は、見た目からしてださかった。
「かっこ悪いね」
「かっこ悪いな」
「でも、浮竹も猫用の浮き輪してるけど、肉球柄でかわいいね?」
なぜか、浮竹と京楽も泳いでいるが、猫の姿でだった。
浮竹は、可愛いと言われて照れて、浮き輪に爪をたててしまうが、その程度では破れない素材でできており、浮竹は京楽っと一緒にスイスイ泳いでいた。
「がはははは!泳ぎとは我のためにあるようなもの!」
サタンが、プールに飛び込んで、溺れて白哉に救出されていた。
「サタン君、泳げないならプールの水場には近づかないほがいいよ?」
「うぬう。悪魔であった頃の我は泳ぎが得意だったのだ!」
「でも、今は猫だし、悪魔とは違うよ?」
「うぬう。でも、泳ぎたい」
「サタン、猫用の浮き輪があるのだ。使ってみるか?」
「うむ、苦しゅうないぞ」
白哉に猫用の浮き輪をすすめられて、着用してプールに飛び込むと、溺れることなく浮けた。
「うむ、これはよい」
「サタン、よかったな?」
浮竹が、同じように浮き輪をつけているので、サタンは競泳したいと言い出す。
「浮竹、京楽、それに恋次とやら。誰が一番速く泳げるか競争しようではないか」
「いいよ?」
京楽は、あっさりと許可した。
白哉の許可ももらって、25メートルを一番誰が早く泳げるかを競うことになった。
1位は、京楽だった。2位サタン、3位浮竹、4位は恋次ですごく遅かった。
「びゃ、白哉さん見てくれましたか、俺の華麗なる泳ぎを!」
「兄のは、溺れていたのではなかったのか」
その言葉に、恋次はがっくりと項垂れる。
「京楽さん、泳ぎを教えてください!」
「はえ?べ、別にいいけど」
その日から、恋次は泳ぎの特訓をして、浮き輪なしでも泳げるようになっていた。
再び、浮竹、京楽、サタンと泳ぎを競いあうことにして、恋次が1位になった。
「やったぁ!白哉さん、1位になりました!」
「うむ。よかったな」
「え、それだけですか。熱い抱擁と口づけは!?」
「そんなもの、ないに決まっているであろう」
白哉はやや赤くなって、違う方角を見る。
そんな白哉を、猫から人の姿になった恋次が、水の中から手を伸ばして白哉を水の中に入れる。
「恋次!衣服のままで入るものではない」
「細かいこと、いいじゃないですか」
恋次の着ていた神官服も濡れて肌に張り付いていた。
白哉は、体のラインが浮き彫りになるが嫌で、早々に水からあがった。
「ああ、白哉さんがいろっぽい」
恋次は、白哉の後をついていく。
「浮竹、サタン君、もっと泳ごうよ」
「俺は昼寝したい」
「我も我が子たちと時間を共にしたい」
そう言って、温水プールには京楽が一人というか一匹だけ取り残された。
「せっかく泳げるのに」
浮竹が、人の姿で水着姿になってまたやってきた。
「京楽、人の姿で泳ごう」
「あ、うん。ボクも、水着に着替えてくるね?」
浮竹と京楽は、ビーチボールを使ったりして遊んだ。
その日の夜、浮竹と京楽は温水プールができたと、魔王城まで遊びがてらに報告にくる。
『それなら、俺が経営しているプールがあるぞ』
魔王の浮竹が、プールを経営していると言って、浮竹と京楽は驚いた。
『白哉君とこと同じ、温水プールだったよね、浮竹』
『ああ、そうだ。どんな身分の者も使えるプールだぞ?』
「白哉君も、一般市民に開放するとは言っていたけど、多分貴族の客が多くなりそうだよね」
「そうだな。今度からもしも貴族とかに占領されている時は、魔王の俺の運営する温水プールで泳ぐか」
『お、それなら俺たちも泳ぎに行くぞ?』
『みんなでプールも、悪くないかもね?』
「俺は浮き輪がいるけど」
「泳ぎ、ボクが教えてあげるから」
『泳げるようになる、マジックアイテムならあるぞ?指輪状のやつ。お風呂場でも泳ぎ出そうとする、呪いかかってるけど』
「使えない」
『確かに、使えないマジックアイテムだよね。でも、ボクたちは呪いとかにはかからないから。まぁ、なんかの遺跡で出土して、献上された品だけど、呪いがあるせいで手元にあるかんじかな』
「じゃあ、今度そのプールで泳ごう。俺と京楽は猫の姿でだけど」
浮竹がそう言うと、魔王の浮竹が首を傾げる。
『何故に猫の姿で』
「猫の姿のほうが、泳ぎが得意なんだ。だから」
『分かった。その時は、プールは貸し切りにするな?』
「ありがとう、魔王の俺!」
浮竹は、魔王の自分に抱きつく。
魔王の浮竹は、和んだ瞳でそれを受け入れて、京楽がべりっとはがして、浮竹の頭を撫でる。
「あんまり、ボク以外に抱きつかないでね?」
「え、あ、うん」
京楽の嫉妬などかわいいものなので、魔王の浮竹も幽鬼の京楽も気に留めないのであった。
絶望の世界から
その色子は、目に光がなかった。
最下級の廓で、色子にさせられた。始めは抵抗していたが、いろんな客の相手をさせられるうちに感情が死に、目に光がなくなっていった。
それでも、その色子はそれなりに売れた。見目がいいからだ。
しかし、抱かれても何の反応もしなくなったその色子は、もう客がつかないので捨てられようとしていた。
「捨てるなら、ちょうだい?」
それは、上流貴族であった。
名を、京楽春水という。
「この子は浮竹十四郎。見ての通り、壊れている。それでもほしいというなら、あげよう。どうせ、あとは野垂れ死ぬだけだしな」
廓の主人は、浮竹を京楽にあげた。
京楽は、その日から浮竹の主になったが、性的なことは一切せず、広い部屋を与えてやった。
浮竹の目は死んでいた。
部屋を与えられたが、一日中ぼーっとして、ほとんど動かない。
食事もおいしいものを与えたが、それでも反応がなかった。
京楽は、浮竹を風呂に入れてあげた。薔薇風呂にいれると、浮竹の目が少しだけ光を灯す。
「いい匂い‥‥‥」
「あ、はじめてしゃべってくれた。ボクは京楽春水。君の今の主だよ。君には何もしないから、どうか安心して。少しずつでいいから、世界を知っていこう?」
それから、京楽の努力が始まった。
相変わらずぼーっとしている浮竹に、ある日薔薇の花束をあげる、浮竹は翡翠色の瞳で花束と京楽を見る。
「薔薇、好きなんだ。ありがとう、京楽」
浮竹の心は、死んではいなかった。
その日から、浮竹は少しずつ話すようになり、京楽と一緒に外の世界に出るようになった。
「これは、桜。綺麗でしょ?」
「うん。俺は、見たことがある。桜の満開の世界を」
「あいにく、ボクの屋敷は桜の木はこの一本しかないから、今度裏山まで桜を見に行こうか」:
「分かった」
その日、浮竹は夢を見た。
京楽に捨てられる夢を。
起きて京楽に会い、浮竹は言う。
「俺なんて、ただのごく潰しだ。俺を手元に置いていても、何もいいことなんてないぞ」
「どこか具合でも悪いの?」
京楽が、鳶色の瞳で覗きこんでくる。
「あ‥‥」
ふわりと。京楽から薔薇の匂いがして、浮竹は僅かに微笑んだ。
「今、笑った!?」
「あ、俺は。その、薔薇の匂いがしたから」
「君、薔薇が好きなの?」
「生まれ故郷が、薔薇の栽培が盛んな地域だった。それだけだ」
「じゃあ、この屋敷を薔薇でいっぱいにしよう」
そう言って、京楽は世界中のいろんな薔薇を買って、屋敷の中も外も、薔薇で満たしてしまった。
屋敷の中では、活けた薔薇を。屋敷の外では、庭に咲いている薔薇を植えた。
「あ‥‥‥」
浮竹が、その光景に目を見開く。
「俺なんかのために、どうして、ここまでしてくれるんだ?」
「君が好きになったから。ただ君をもらって、暇つぶしにしようと思っていたんだ。でも、君は目が死んでいた。その目に輝きを取り戻してあげたいと思った。輝きを少しずつ取り戻す君のことを見ていると、君を好きになってしまったよ」
「俺は、つまらない人間だ。最下層で色子をしていた、汚い人間だ」
「君の価値は、ボクが決める。君は、翡翠の原石さ」
「京楽」
浮竹は、京楽になら抱かれてもいいと思ったが、京楽はその気はないようで、浮竹と同じ部屋で、浮竹を抱きしめて、ただ一緒に眠った。
「さぁ、今日は裏山まで桜を見に行こう」
「ああ」
京楽は、浮竹の手を握って歩いていく。
1時間ほど歩いて、桜が満開の場所にたどりつく。
「お弁当食べよう?今日のために、特別に作ってもらったから」
京楽は、浮竹にお弁当をすすめる。浮竹は、瞳に光をまだ完全ではないが取り戻していて、味も分かるようになっていた。
「おいしい‥‥」
「でしょ?ボクの屋敷の者が作ったものだけど、料亭なんかで出されるものと同じくらいのものが作れるよ?」
「京楽は」
「うん?」
「京楽は、何故俺にこうまでしてくれるんだ。俺が好きだから?」
「うん、そうだね。君が好きだから、君にいろんな世界を見せてあげようと思った。それだけだよ」
にこりと微笑まれて、浮竹は僅かに赤くなって俯く。
「桜が、綺麗だよ。見てごらん」
京楽は、酒を取り出した。
浮竹にもすすめる。
浮竹は、一口だけ飲んだ。
「酒は、あまり得意ではない」
「ボクはお酒大好きだけどね?」
「桜、確かに綺麗だ。ここまでの桜の満開な場所は、初めて見る」
「そう。じゃあ、お弁当食べたら、帰って昼寝でもしようか。明日は朝から祭りがあるんだよ。君をその祭りに連れていきたい」
「俺で、いいのか?」
「何がだい?」
「お前の傍にいるのが、俺なんかでいいのか?」
「ボクは浮竹、君が気に入ったんだよ。君が好きだから、一緒にいろんな世界を見せてあげたい」
その日は、昼過ぎまで桜を見てから帰り、昼寝をして過ごした。
祭りの日になって、浴衣を着せられて長い白髪を結われた浮竹は綺麗だった。
「おや、いつも綺麗だと思ってたけど、こんな風にお洒落させると輝くねぇ。やっぱり、君は翡翠の原石だった。さぁ、どこから回ろう?」
「あの、金魚すくいというのを、してみたい」
浮竹が興味をもった金魚すくいは、浮竹はうまかった。
「幼い頃、こうして母に金魚すくいをさせてもらった」
「そう。金魚たくさんすくえたね。持って帰れるのは2匹までだから、どの子がいいか選んで?」
「この子と、この子がいい」
赤色と白と赤の金魚を浮竹は選んだ。
「おなかすいたね。何か屋台で食べようか」
「焼きそばが、食べたい」
「分かったよ。一緒に買いに行こ?」
京楽は、浮竹と一緒に行動した。
もう、浮竹を一人にはさせないためだった。
「京楽、もうお腹いっぱいだし、もう祭りも楽しんだ。帰ろう?」
「うん、帰ろうか。あの屋敷へ。ボクらの家へ」
「お前になら、俺の全てを話していいかもしれない」
浮竹は、その夜、一緒に眠ってくれる京楽に自分の出自を語る。
「俺は、エスパニア帝国の、先代皇帝の末子だった。帝国は戦争に負けて、皇族は一人残らず首をはねられた。ただ、俺は見た目がいいからと、攻めてきたカウア王国の王太子の玩具にされた。俺は逃げた。逃げ出した罰として、色子として廓に売られた」
「うん」
「俺は、廓から何度も逃げ出した。あまりに逃げるものだからと、折檻されて最下層の廓に落とされて、そこで客を取らされた。客はたくさんきた。性的に異常な者が多く、俺の心は死んでいった。そして、最後には捨てられた。それを拾ってくれたのは、京楽、お前だった」
「うん。つらかったね?」
「京楽‥‥‥俺を拾ってくれて、ありがとう。俺に世界を見せてくれて、ありがとう」
そのまま京楽と浮竹は眠りについた。
「浮竹、おはよう」
「おはよう、京楽」
浮竹は、まだたまにぼーっとするが、人としての感覚を取り戻して、その瞳には光は宿っていた。
「今日は、海を見に行こう」
「海?」
「知らない?」
「知らない」
「じゃあ、ついてからのお楽しみで」
京楽は、浮竹に世界を見せてあげるためにいろんな場所へ行った。
浮竹は、ぼーっと過ごすことがなくなり、年相応の笑顔を見せる綺麗な青年になっていた。
「京楽、大好きだ」
そう言って、浮竹は微笑む。
その微笑みを見て、「ボクもだよ」と京楽は言うのであった。
オメガバース恋白15
あーんあーんと泣き出す恋夜(れんや)と名付けた女の赤子は、元気に恋次の腕の中で泣く。
「かしてみろ」
白哉が揺り動かすと、恋夜は静かに眠り出す。
いつもは乳母を雇っているので、休みの日と家に帰ってからだけ、白哉は恋夜の世話をした。恋次も白哉と一緒に、朽木邸に住んでいるので、赤子の世話を一緒にした。
ミルクのやり方、おむつを替える方法とか、いろいろ乳母に教えてもらい、慣れない手つきで恋次が恋夜の世話をするのを、白哉は愛しい気持ちで見ていた。
やがてヒート期間がきて、白哉は恋夜を乳母に託して、別邸で恋次と過ごす。
「もう一人くらい、子ができてもいいんじゃないっすか?」
「何を言う。恋夜の世話だけで手一杯だ」
白哉は、ピルを飲む。
「でも、俺には抱かれるんですね」
「ん、ヒート期間なのだ。私の熱を抑えるのは、兄の仕事だ」
白哉と恋次は番である。
アルファの恋次と、オメガの白哉。
はじめは、うまくいくとは思っていなかった。白哉と恋次は、この前静かに二人だけで式をあげて婚姻した。恋次は朽木家の者となり、婿入りをした形になる。
「朽木恋次か‥‥なんだか、いまいちぱっとしませんね。自分の名前とは思えない」
「ならば、阿散井と名乗るか?別に苗字は変えなくてもよい」
恋次は、白哉に口づけながら、白哉の服を脱がしていく。
「ほんとは、新婚旅行とか行きたいんすけど、恋夜もいるし仕事もあるしで、ちょっと無理っすよね」
「1日だけなら、尸魂界にある温泉宿に泊まってもいい」
「まじっすか。今度、予約しとこ」
「今は、私の熱を沈めよ」
「はい」
恋次は、白哉の蕾に舌を入れる。
「やああ」
潤滑油で濡れた指を一本ずつ埋め込んで、ぐちゅぐちゅと中をほぐしていく。
「んあっ」
白哉のものを口に含んで、奉仕していると白哉は恋次の口の中に精液を吐き出す。
「ああっ」
「もう、十分にならしたから大丈夫ですよね?」
「あ、恋次。来い」
白哉の言葉と一緒に、恋次は白哉を貫く。
「ひあああ!」
ずりゅっと音をたてて、恋次のものが白哉のいい場所を刺激する。
「んああ」
白哉は、オーガズムでいっていた。
「隊長、いくの早いです。まだ、いれただけっすよ」
「久しぶりなのだ。前のヒートから交わっておらぬ。1カ月ぶりか」
「隊長、俺としてくれないから、俺のこと嫌いになったのかと思っちゃいますよ」
「恋夜の世話があったかなら」
「隊長、愛してます」
「私も、愛して‥‥ああっ!」
恋次が、白哉の奥まではいってくる。
「んあ、あ、あ」
くちゅりと、結合部が音を立てる。
「あ、あ、恋次、兄の子種を私の中に」
「隊長‥‥‥すっげぇいい。久しぶりだから、沢山出しますよ?」
「ああああ」
恋次は、白哉の胎の奥に大量の精子をぶちまける。
じんわりと広がっていく熱を受け止めながら、白哉は涙を零した。
「隊長?痛いんですか?」
「違う。兄と一つになれて、嬉しいのだ」
白哉の涙を吸い上げて、恋次はゆっくりと動く。
「あ、あ‥‥‥」
「今日は久しぶりなので、たくさんしましょうね?」
「あ、加減は、せよ」
「加減、できるといいんすけど」
「んあっ。中で大きくなった」
「隊長の中、すげぇいいから」
白哉は、気づかない間に恋次のものを締め付ける。
恋次は、なるべく我慢しながらゆっくりと白哉を突き上げる。
「あ、もっと激しくしてもよい。快感でとろけそうだ」
「とろけてくださいね?」
ぐちゅりと音をたてて、一度入口まで引き抜き、奥まで貫く。
「あああ!!!」
「く、きつ‥‥」
白哉は、背を弓なりにしならせていっていた。
「こっちでも、いけますよね?」
白哉のものを手でしごく恋次に、白哉はびくんと体を反応させる。
「あ、あ、いってるのに、またいっちゃううう」
「構いませんよ?俺も、隊長の中でいきますから」
恋次は、白哉の中でまた精液を弾けさせた。
そのまま、またゆっくりと交わりだす。
二人は、互いにいきながら、ゆっくりとセックスをする。
まるで、愛を確かめ合うかのように。
「あ、もう、むりぃ」
「俺も限界です。隊長、一緒にいきましょう」
「ひあああ!」
恋次は、白哉の奥を抉りながら、子種を中に吐き出す。
白哉は潮をふきながら、びくっと何度か中いきを繰り返していた。
二人は、交わった後の気だるい時間を過ごしてから、恋次が白哉を連れて湯あみした。
中にだしたものをかき出して、白哉は念のためにアフターピルを飲んだ。
「また、明日も交わりましょうね?」
「ヒートが終わるまで、この熱が続くのは、正直少し辛い」
「でも、気持ちいいでしょう?」
「それはそうだが‥‥‥」
白哉は、白皙の美貌を赤く染める。
「隊長は、やっぱ俺のものだなぁって、抱いてて分かるから、俺はヒート期間嫌いじゃないっすよ?」
「私は、ヒート期間が少し長いと思う。もう少し短くてもいいのに」
ヒート期間は、大体一週間くらいだ。
その間、白哉と恋次はひたすら交わり続け、食事をして寝る。睡眠が大半の時間だった。
仕事は放棄だ。
「隊長とヒート期間を終えた後の仕事の量には、苦労しますけどね」
「私を抱けて満足できるのあれば、それくらい耐えろ」
「はい、耐えれます。俺には、隊長がいますから!愛してます」
愛を囁く恋次に、白哉は口づけで答えるのであった。
命日
「え」
「墓参りに行こうと思っている。恋次、兄もついてくるか?」
「一緒に行きます」
白哉は、恋次を伴って、朽木家の墓にくる。
大きな墓石があり、緋真はそこで眠っていた。
「ルキアは、年々緋真に似てくる。愛おしいと思う。どうか、緋真の分まで幸せになってほしいと思う」
「‥‥‥‥ですよ」
恋次の声が聞こえなくて、白哉が聞き返す。
「今、なんと?よく聞き取れなかった」
「それは、隊長もですよって言ったんです。隊長も、緋真さんの分まで幸せになってくれないと、俺が困ります」
「ふふ、私は兄がいるので、もう十分に幸せだがな?」
「え、あ、はい」
白哉に穏やかに微笑まれて、白皙の美貌がまぶしくて、恋次は白哉から目をそらす。
「恋次」
「はい」
「愛している。兄と、出会えてよかった」
「はい」
白哉のまっすぐな視線を受け止めて、恋次は華奢な白哉の体を抱きしめる。
「絶対に、幸せにしてみますから」
「もう、十分に幸せだ」
「もっともっと、幸せになりましょう」
恋次に手を引かれて、白哉は緋真の眠る墓地を後にする。
「もう、早咲きの梅の花が咲いているな」
「緋真さんが好きだったっていう、梅の花ですか?」
「ああ。目を閉じれば、今でも鮮明に思い出す。緋真を愛せて、巡り会えてよかった。そして兄と出会った」
「隊長‥‥‥」
白哉は背伸びして、恋次に触れるだけの口づけをする。
「隊長!」
歩いていく白哉の手を握る。
「ん?」
「俺、絶対隊長のこと今より幸せにしてみせますから!」
「ふふ。楽しみにしている」
白哉は、美しい顔で微笑む。
恋次はそれに見惚れて、そして先を歩んでいく白哉の後を追って、走りだすのだった。
熱あった。
浮竹は、いつ変態が出るのだろうとみていたが、そのまま学院に登校した。
「浮竹、今日は天気がいいねぇ」
「あ、ああ、そうだな」
朝食を食堂で一緒にとり、座学の授業もさぼらずに真剣に京楽は受けていた。
昼休みになって、あまりにも京楽らしくないので、どうしたのかと思った。
「京楽、お前熱でもあるんじゃないか。変態じゃないお前なんておかしい」
「やだなぁ、ボクはいつでもこうだよ。浮竹、君が嫌がることはしない。愛してるよ」
真剣な表情の愛の告白に、浮竹が赤くなる。
「お前、やっぱりおかしい」
「そんなことないよ?」
「熱でもあるんじゃ‥‥‥‥ってほんとにあったあああああ」
京楽は、高熱を出していた。
なので、行動が普通だったのだ。
保健室に連れていき、体温計で測ると42度をこえそうになっていた。
「これはやばい」
「え、ボクどこも悪くないよ?」
そう言う京楽をベッドに寝かしつけて、氷枕を作り、氷嚢もつくって京楽の熱を少しでも下げようとする。
「ねぇ、浮竹はボクのこと好き?」
「黙って寝てろ」
「好きなのかどうかだけ言ってよ」
「ああ、好きだ」
「恋愛感情で?」
「ああ」
浮竹は、京楽に回道をかけて、少しでも熱が下がるように努力していると、やっと熱は下がっていき、京楽は眠ってしまった。
「はぁ‥‥今日のことは、覚えていないよな?」
眠る京楽に、浮竹は自分から触れるだけのキスをする。
そのまま数時間が経ち、下校時間になった。
京楽は回復していて、浮竹が気づくと頭に浮竹のパンツを被っていた。
「浮竹、ボクいい夢みたんだ。君と相思相愛でズキューンバキューンする夢。さぁ、夢を現実にしよう!」
襲いかかってくる京楽にアッパーを綺麗にかます浮竹。
「ぬうう、頭が痛い」
「京楽、まだ熱が?」
浮竹が京楽の額に手をあてると、熱は引いていた。
「ふふ、浮竹捕まえた」
「ひ、卑怯だぞ」
「ボクのズキューンでバキューンしよ?」
「誰がするかああああ!!!」
京楽を蹴り倒す。
京楽はすぐに復活する。
「ああ、もうこんな時間だ。夕飯食べに行こ」
変態の京楽は、通常モードになっていた。
ただ、頭に浮竹のパンツを被ったままだが。
頭のパンツを没収すると、京楽はごそごそして、懐から予備の浮竹のパンツを出して頭に被った。
その姿のまま、食堂に行く。
もうみんな、変態京楽に慣れてしまっているので、京楽の頭に浮竹のパンツがあっても何も言わない。
「ああ、京楽と浮竹。病欠だったそうだな。課題、出てたから渡しておくな?」
特進クラスの、友人の一人に、課題のプリントをもらい、浮竹は礼を言う。
「すまん、助かった」
「京楽が病欠とは珍しいな?すごい熱があったそうだけど、大丈夫なのか‥‥‥って、聞くだけ野暮だな。浮竹と仲良くしろよ?」
「仲良くしろだって」
「くっつくな!暑苦しい」
「まぁまぁ、そう言わずに」
浮竹の腰を抱いたところで、浮竹が京楽のけつを蹴る。
「あいたたた。まぁいいか。夕飯食べて、バキューンズキューンしに、寮の部屋に戻ろう?」
今日は、天ぷら定食だった。
京楽は、自分の分のエビの天ぷらを浮竹にあげる。
「今日の、看病してくれたお礼、ね?」
「あ、ありがとう‥‥‥」
浮竹は、僅かに赤くなる。
「お前が熱出してた時、普通すぎて対応に困った。お前はいつも通りでいろ」
「つ、つまりはボクのフルチンが見たいと!?」
「誰もそんなこと言っとらんわああああ」
今日も、浮竹と京楽は仲がいい。
寮の部屋に戻ると、京楽は院生の服を脱いでベッドに横になり、ぽんぽんと自分の隣を叩く。
「おいで?」
「誰がいくか」
「まぁそう言わずに。ボクにダイブしておいで」
「風呂入ってくる」
「あ、ボクも一緒に入る!」
「お前は後から入れ!」
脱衣所には鍵がかけれるようにしてあるので、浮竹は鍵をかけて京楽の覗きを防ぐ。
「はぁ‥‥」
今日はなんだかおかしい。
浮竹も、自分が熱でもあるんじゃないかと思ったら、本当に熱があった。
風呂からあがると、京楽もまた熱を出してダウンしていた。
「風邪、だな」
熱だけでなく、頭痛と喉も痛みだしてきた。
京楽からうつったのだろう。
それから3日、浮竹と京楽は風邪でダウンして、友人に食事を作ってもらったり、授業のノートを見せてもらったりして過ごすのだった。
やがて、全回復すると。
「愛しのマイハニーー!」
そう叫んで、浮竹のパンツを頭に被り、パンツ一丁の恰好の京楽がいた。
「誰がマイハニーだ!」
それにつっこむように、京楽に蹴りを決める浮竹の姿があった。
マッチョな新勇者
魔王城でそう声高に宣言している新勇者を、パーティーメンバーはしらーっとした空気で見ていた。
「新勇者なのは知っている。なぜ、フルチンなんだ」
股間を葉っぱ一枚で隠して、新勇者は笑った。
「俺の魅惑のボディで魔王を悩殺だ!」
新勇者はマッチョになっていた。くねくねと動き、胸の筋肉をぴくぴくさせる。
「おえええ」
魔王である浮竹は、気持ち悪いものを見てしまって、勇者である京楽に背中をさすられていた。
「失礼な奴だな、魔王の分際で!この鍛え上げられた筋肉美を見よ!」
確かに、16、17歳の割には新勇者はムッキムキだった。
「この1か月、体を鍛え続けたのだ!1か月でマッチョになれるジムに通ってな!」
「ちょっと聞いてよ魔王!こいつ、パーティーのお金またちょろまかして、変なジムに入って入会金に金貨500枚も使ったのよ!」
女僧侶が、怒る。
浮竹は、新勇者をとりあえず燃やした。
「フレアロンド」
「ふはははは、効かんわぁ!このマッスルボディは多少の魔法を弾く!」
「あ、そう」
京楽がため息をついて、右手に魔力を収束して、魔法を唱える。
「カイザーフェニックス」
不死鳥の形をした凄まじい炎の魔法を、新勇者にぶつける。
「あちゃああああ!!!」
新勇者は、股間の葉っぱを焦げさせて、アフロのウィッグも燃えてしまい、黒焦げになって京楽にやられたが、すぐに復活した。
「はははは、マッチョは不死身なり!」
「どうでもいいから、股間隠せ」
「うふん、エッチ」
「アルティメットノヴァ」
「もぎゃあああああああ」
また勇者は倒れる。だが復活する。
「どうなってるんだ?」
「どうやら、マジックアイテムを使っているようだね。何度でも身代わりになってくれる‥‥あの、指輪かな」
浮竹は、マッチョの新勇者を拳で床にめりこませて、その指輪をとる。
「呪いがかかっているな。1カ月でマッチョになれるのは、この指輪のお陰だろうな」
指輪をとると、マッチョだった新勇者の体が縮んでいく。
普通の、少し筋肉はあるが少年の体だった。
「ああああ、俺のマッチョがあああ!!!」
「この指輪は危険だから、灰にする」
浮竹は、指輪を灰に変えてしまった。
「あああ、金貨2000枚もしたのにいぃ」
「ちょっと、あんたそんな金どこから出したのよ!」
「俺とパーティーメンバーを担保に」
「最低だにゃん。ただ働きでモンスター討伐とかさせられるにゃん」
獣人盗賊が、フルチンの新勇者の股間を蹴り上げる。
「げふう、きもちいいいいいい」
「こいつだけ担保にしましょ。お金借りたところには、こいつを担保にするからと説明して」
「いや、すでにきているようだぞ。借金の取り立てに」
きたのは、悪魔だった。
「あ、あんた悪魔にお金借りたの!?」
「うん」
「うんじゃないでしょ!悪魔は人の臓物を悪魔王に捧げるのよ!」
「俺がなんとかしよう」
さすがに、見知った勇者パーティーが悪魔に連れていかれるのは後味が悪いので、浮竹は悪魔と話し合い、金貨2000枚を代わりに支払って、悪魔を退けてくれた。
「ああ、魔王!いっそ、うちのパーティーのリーダーになってちょうだい」
「おい、さすがにそれはまずいだろう。魔王には魔王の事情があるんだろうし」
少年魔法使いが、女僧侶を止める。
「俺は魔王だからな。勇者になる気はない。それに、本物の勇者は俺の傍にいるしな」
本物の勇者、京楽は勇者を廃業したかんじになるが、まだ勇者として聖剣エクスカリバーにも認められていた。
「フルチンのこの物体、引き取ってね」
「あはん」
京楽に蹴られて、新勇者は身をくねらせる。
「もっとおお」
「きもい。カイザーフェニックス×5」
「もぎゃあああああああああああああ」
黒焦げになった新勇者は、パーティーメンバーに引き取られ、ずるずると引きずっていかれるのであった。
何かの障害にぶつかるたびに、あはんだのうふんだの言っているのだった。
黒猫と白猫の亜人34
京楽と毎日のようにセックスをしていたが、あまりに頻度が高いので京楽がねをあげた。
白猫の発情期は稀で、医者に診せたほうがいいとのことで、放置すると1カ月以上続くらしい。
「浮竹、お医者さんに診てもらおう」
「なんでだ?俺は健康だぞ。お前の子種が欲しい」
「ああもう、毎日注いであげてるじゃない。それでも満足しきれないから、ボクの身がもたないんだよ」
「医者に診せれば、この体の熱は消えるのか?」
「うん、多分ね」
白哉に頼んで、獣人専用の医者を用意してもらった。
「白猫の亜人は、発情期が長いですからね。珍しいので、子を必ず作るために、あえてそうなってるんです。このポーションを毎日飲んでください。発情期の熱も収まるでしょう」
「俺の発情期、京楽に迷惑をかけていたんだな。すまない」
「うーん、極楽だったけど、ちょっと求めすぎかな」
しょんぼりと浮竹の尻尾と耳が垂れる。
その頭を、京楽が撫でる。
「もらったポーション、飲んでごらん」
ポーションを飲むと、浮竹の中の発情期による熱が下がっていく。
「うわ、すごい。体が凄く楽になった。これなら、普通に過ごせるかも」
「浮竹が求めてくれないのは寂しいけど、やり過ぎも問題だしね」
獣人専用の医者は、ポーションを1カ月分用意してくれた。
診察代とかは白哉が出してくれた。
「眠くなってきた‥‥‥白哉と一緒に寝たい。いいか?」
「え、浮竹ぇ?」
「私はかまわぬが」
「じゃあ、寝る」
そう言って、浮竹は白猫になると白哉の腕の中で眠りだした。
「睡眠のほうだったか‥‥」
「京楽、兄は浮竹の発情期にかまいすぎているのであろう。浮竹の身は、しばしの間私が預かろうと思う」
京楽も休憩を少ししたかったし、白哉の屋敷と自分たちの一軒家は近いので、いつでも浮竹に会おうと思えば会えるので、京楽はそれを了承した。
それが、いけなかった。
白哉の傍にいるとき、白哉は他の貴族とも会う。その時も、浮竹は白哉の傍にいた。
「あれは幻の白猫の亜人‥‥飼いたいわぁ。わたくしのコレクションにしてあげましょう」
レオノーラという貴族の令嬢が、浮竹に目をつけた。
浮竹はポーションの効果のせいか、眠っている時が多かった。
そんな浮竹を、白哉は傍に置いていたのだが、貴族たちが白哉の家に集まり白哉の当主となって6年目になる式典があった。
レオノーラは、その式典に紛れ込み、寝ている浮竹を拉致した。
「ん‥‥‥‥白哉?」
「ふふ、おはよう。あなたは、今日から私のものよ」
「お前は誰だ」
浮竹は、警戒して毛を逆立てる。
「亜人だから、人の姿になれるのでしょう?さぁ、そんな純金の首輪ではなく、このオリハルコンの首輪をあげる。私のものになりなさい」
「俺は、白哉と京楽のものだ」
「私の名はレオノーラ・フォン・パルカル。パルカル侯爵家の人間よ?さぁ私のものになり、私に服従しなさい!」
「いやだ!」
浮竹は、猫の姿のまま逃げ出そうとしたが、結界がはられていて逃げられなかった。
「白哉、京楽!」
「ふふ、助けを求めても無駄よ?」
浮竹は、力ずくで人の姿にされて、純金の首輪を外されてオリハルコンの首輪をされた。
「こんなことをして、白哉が黙っていないぞ」
「ほほほほ。朽木白哉は四大貴族。とはいえ、私は王族の血をもつ侯爵家の人間。私のほうが、身分は上でしてよ?」
浮竹は、レオノーラに噛みついた。
「ぎゃっ!このっ!おとなしく服従なさい!」
鞭で、浮竹を打つ。浮竹は傷口から血を流すが、レオノーラは浮竹の美貌さえあればいいみたいで、浮竹を傷つけた。
浮竹がいる部屋は、扉しか入口がなかった。
「京楽、白哉!」
「ボクはここにいるよぉ?」
ゆらりと、浮竹の影から京楽が出てくる。
「何かあった時のために、保険に君の影から出れる魔法をかけておいたんだよね。さぁ、浮竹をさらった女。覚悟はできているかい?」
「ひいいい」
「ああ、浮竹、鞭で打たれたんだね。まずは怪我を治そう」
京楽は、浮竹の怪我を治癒魔法で治す。
「京楽?本物か?」
「ボクの偽物がいるとでも?」
京楽は、鞭でレオノーラを数回叩いた後、風の魔法でその顔をずたずたにする。
「ひいいい、私の美貌がああああ」
そんなレオノーラを放置して、浮竹が京楽を見る。
「白哉は?」
「今、向かってるよ。この女の父親がこの国の王の弟で、ちょっとてこずってるけど、必ずくるよ」
「私は王家の人間でもあるのよ!四大貴族ごときが!」
「白哉君は、世界の中の四大貴族だからね?君ごときの身分でどうこうできる相手じゃないよ?」
「ひっ、世界の四大貴族!?」
「ああ、知らなかったの。まぁ、この国の人間のほとんどが知らないことだから仕方ないだろうけど」
「京楽、もう大丈夫だ」
ケガを治してもらい、浮竹が京楽に抱きつく。
「浮竹、無事か?」
そこへ、騎士団を連れた白哉がやってくる。
「レオノーラ嬢。浮竹を誘拐した罪で、兄を捕縛する」
「わ、私は王家の人間でもあるのよ!?それに、この黒猫の亜人は、私を傷つけたのよ!?」
レオノーラの傷は、彼女が分からないうちに京楽が治しておいた。
王族の血を引いている人間を傷つけたとなると、白哉が不利になりそうだからだった。
「傷は、どこにもないようだが?」
「え、あ、あら!?」
「さぁ、兄を捕縛する。国王も王弟も、承知の上だそうだ。希少なる白猫の亜人を、私欲のためにさらった兄には、100回の鞭打ちの後、少なくとも3年は実刑を受けてもらう」
「いやあああああ!」
泣き叫ぶレオノーラを、騎士団が縄で縛りあげて連れていく。
「浮竹、無事でよかった。京楽までいなくなるので、魔法探知に時間がかかった。許せ」
「白哉は必ずきてくれると思っていた」
「純金の首輪は、魔法探知ができるようになっているからね。外されても、効果は残るから」
「そうなのか。白哉、このオリハルコンの首輪を、いつもの純金の首輪にはめ直してくれ」
白哉は、言われた通りにした。
「さぁ、帰ろう」
「うん、帰ろうか」
「分かった。でも、白哉は俺が思っていた以上に偉かったんだな。世界の四大貴族ってことは、世界でも4つしか存在しないんだろう?」
「ああ。私の父と母は、もういないが王家の出身だ」
「そんな白哉君の猫である浮竹を攫うなんて、バカな女もいたもんだね」
「身分が高い故、鞭打ちと3年の実刑しか無理そうであるが。すまぬ」
「十分だ、白哉」
浮竹は、猫の姿になって白哉にすり寄る。京楽も、真似して黒猫になって、白哉は猫の姿になった浮竹と京楽を抱き上げて、朽木家に戻るのであった。
ちなみに、レオノーラ嬢は、事情を聞いた魔王の浮竹の怒りを買い、処刑されるのであった。
黒猫と白猫の亜人32
黒い小さな翼があるが、飛ぶことはできず、サタンのように人の言葉をしゃべることもなかったが、子猫たちはかわいくてルキアもめろめろだった。
「3匹、サタンの子を欲しいと言う貴族の令嬢がいるのだが」
白哉がそう切り出すと、サタンは神妙な顔つきになった。
「我が子を、大切にしてくれそうな人間の娘か?」
「それは保証する」
「では、上からカーナ、リリカ、オスカルをその貴族の娘とやらに任せよう。ジョセフィーヌちゃんが産んだ3匹だ」
「分かった。私から話をつけておく」
その日、サタンだけではなく、ジョセフィーヌちゃんもだが、浮竹と京楽ももらわれていく子猫をかわいがって、さよならをした。
次の週の朝には、カーナ、リリカ、オスカルと名付けられた雌猫2匹と雄猫1匹がもらわれていった。
「この調子でもらわれていくのであれば、今度のジョセフィーヌちゃんとしっぽりするとき、避妊せずともよいな?」
「ジョセフィーヌちゃんだけだぞ」
白哉が、サタンが他のリリムちゃんやバニーちゃんとは、しっぽりする時避妊する約束をとりつける。
その日の夜、浮竹と京楽は、コンドームを初めて使うことにした。
いつもは胎の奥に出されたあと、かき出してもらうのだが、コンドームをすればその必要がないと知って、浮竹が望んだのだ。
「んあっ」
くちゅりと音をたてて、浮竹の蕾を京楽の指が広げていく。
3本の指が入る頃にはトロトロに溶けて、浮竹のものは甘い蜜を出していた。
「浮竹のにも、コンドームつける?」
「あ、そうしてくれ。精液が飛び散っては、掃除がめんどくさい」
京楽は、浮竹のものにもコンドームをつけた。
それから、指でしごく。コンドームをつけているが熱は伝わってくる。
「あああ、いくうう」
浮竹は、京楽の手の中でなく、コンドームの中に精液を吐き出した。少しだけ精液がたまる。
「さて、ボクもいれるからね?」
「んああああ」
ずずっと中を犯されて、浮竹は足を開いて京楽のものを受け入れ、その腰を足で挟み込む。
「はやく、奥にぃ」
「うん。でも、奥に子種はあげれないよ?」
「んああ、ちょっと物足りないけど、今日は我慢するからぁ。奥に、京楽のちょうだい?」
濡れた瞳で、浮竹が京楽を見つめる。
「その目に、弱いんだよね、ボク」
ぱちゅんと音をたてて、一度引き抜いて奥まで挿入する。
「あああ、いい」
「もっと奥がいい?」
「あ、もっと奥にぃ」
浮竹は、京楽に足を肩にかつがれて、深く挿入される。
「んあああ、いっちゃうううう」
浮竹はドライのオーガズムでいきながら、精液をコンドームの中に出す。
「ん、ボクも限界かも。一度出すね?」
「ひあああ」
京楽が、浮竹の最奥をえぐって、コンドームの中に熱を弾けさせる。
「あ、いつもの熱がないから、ものたりないいい」
浮竹は、熱があった。
「もしかして、発情期きてる?」
「んあ、そうかも。もう、コンドームはいいから、俺の中に直接だしてぇ」
「仕方ないねぇ」
京楽は、子種がたくさん入ったコンドームを外すと、入り口をしばってゴミ箱にすてて、浮竹のコンドームも同じように処分した。
「あ、あ、体が熱い。もっと、もっとお前をちょうだい、京楽?」
トロトロと、溶けている秘所をくぱぁと、浮竹が自分の指で広げて誘ってくる。
「ほんと、君はサキュバスみたい。淫乱で、でもかわいくて綺麗だね」
「んあ、きたぁ。京楽の大きくて硬いのお。奥まできたああああ」
浮竹は、生のよさに酔う。
「あ、あ、もっとそこ抉ってえええ」
言われた通りに抉ると、びくんびくんと体をはねさせて、浮竹は潮をふいていた。
「んあ、奥に子種ちょうだい」
京楽は、直接浮竹の中に子種を注ぎ込む。
子種がじんわりと浮竹の中で広がっていく。
発情期のせいか、浮竹はもっととねだってくる。
「もっとおお」
「はいはい。ボクはいったから、次は浮竹がいってね?」
「やああ、さっきいったああ」
「潮ふいてたもんね?そんなに気持ちよかった?」
「んあ、いいからぁ。もっとちょうだい?」
京楽は、浮竹のものをしごいた後で、浮竹から抜いて口で浮竹のものをしゃぶってやった。
「やああああん、きもちよすぎるうう。いくううう」
浮竹は、甘い白濁する液体を京楽の口の中に出す。
男娼時代に味が甘くなるようにされていたので、浮竹の精液は甘い。
「おいしい‥‥‥もう一度、味わいたい」
「やあああん」
直接浮竹のものを愛撫されて、浮竹は身をくねらせながらもまた京楽の口の中でいっていた。
「ひあああ」
「今度は、中いきしてね?」
「んあああ」
ぐちゅっと音を立てて、蕾を貫く。
角度をかえて貫いていると、浮竹が背をしならせて大きく中いきする。
「んあああ、もうだめえええ」
「何度でもいけるでしょ?発情期なんだから」
「いやぁぁぁ、いきすぎて変になるうう」
「大丈夫だから」
京楽は浮竹の中を堪能し、精液を結腸に注ぎ込む。
「んあう、いってるうう」
浮竹はオーガズムの中いきを繰り返す。
もう、子種はでないで透明な蜜をたらたらと零していた。
「やあああ」
「ボクもいくよ。これが最後だから、たっぷり受け取ってね?」
「ああん」
京楽は、浮竹の奥に精液を全て注ぎ込んだ。
終わる頃には、浮竹は意識を手放していた。
「ふう、満足した。浮竹が発情期ってことは、明日もまたできるかも」
淡い期待をもって、京楽は濡れたタオルで浮竹の体を清めて、中に出したものをかき出す。
「我ながら、いっぱいだしたねぇ」
精液の海に、京楽は我ながらと呆れる。
「おやすみ、ボクだけの浮竹」
京楽は、深い眠りについてしまった浮竹の額にキスをして、自分も眠るのだった。
黒猫と白猫の亜人31
「第56夫人のジョセフィーヌちゃんが産気づいた」
「ええっ」
京楽が驚いて、浮竹と白哉に知らせる。
「ジョセフィーヌちゃんは猫だけど、サタンの子供だけに悪魔が生まれるのであろうか」
白哉が、その場で誰もが思っていた疑問を口にする。
「我にも分からぬ。猫との子ははじめてゆえ」
産気づいたジョセフィーヌちゃんのお腹は、ぱんぱんだった。
「悪魔なら、母親の腹を食い破って出てくるはずだ」
浮竹が、念のために悪魔の子が生まれても暴れないように、聖水を用意してくれた。
「にゃあああん(あああ、うまれるううう)」
「ジョセフィーヌちゃん、しっかりするのだ!」
サタンが、ジョセフィーヌちゃんの猫の前足を前足で握って、励ます。
「にゃあああん(ああ、頭がでてきたわ)」
「おお、我の子‥‥‥‥」
生まれてきたのは、子猫だった。
でも、黒い小さな翼があったが、あとは普通の見た目の子猫だった。
「みぃみぃ」
「みぃみぃみぃ」
ジョセフィーヌちゃんは、サタンの子を4匹産んだ。
みんな背中に小さな黒い翼があったが、悪魔ではないようであった。
「うむ、ジョセフィーヌちゃん、我が子をよく産んでくれた。また今度の発情期にしっぽりして、子を作ろう」
「サタン、何気に次回もしっぽりするとか言ってるよ」
「まぁ、いいんじゃないか。人の姿で悪魔の子を作られるより。猫なら、魔法も使えないし、何よりかわいい」
「そうだね」
白哉は、生まれたばかりの子猫に純金の首輪はできないので、魔法で編み出した金色の紐をつけた。
「私の猫でもあるという証だ。サタン、それでもよいな?」
「うむ。我は今は白哉の猫だしな。子が迫害されるのが一番いやだ」
サタンは、ジョセフィーヌちゃん以外にも、リリムちゃんとバリーちゃんを第57夫人、第58夫人にしていた。
「むむむ、リリムちゃんとバリーちゃんも産気づいたらしい」
「サタン、君、しっぽりすぎでしょ!」
京楽の呆れ声に、サタンが文句を言う。
「それはお前もだろう」
浮竹が、毎夜のごとく盛る浮竹に言う。
「我は悪魔王サタンぞ。欲のままに生きる」
「とりあえず、タオルと毛布を」
浮竹が、てきぱきと用意してくれた。
白哉は、生まれてきた子猫たちに黒い小さな翼があるが、悪魔でないことを確かめてから、金色の紐を魔法でつける。
「合計15匹かい。一気に大所帯になったねぇ」
「サタン、次からはしっぽりするのはよいが、子を作らぬように避妊してくれぬか」
白哉が、このままのペースで増え続けたら、サタンの猫で白哉の家があふれかえってしまうので、そう提案すると、サタンもしかたなく頷いた。
「分かった。しっぽりはするが、避妊する」
「猫って、去勢以外でも避妊できるんだ」
「初めて知ったよ」
「何、人と同じでコンドームをだな」
サタンが説明をはじめる。
「猫用のってあるの?」
「白哉が猫用の、作ったらしいぞ」
「まぁ、サタンが私の猫になってから、このようなことが起きるのではないかと、準備しておいたのだ。魔法で作っているから、安全面は信用できるであろう」
「まぁ、サタンは猫でもしっぽりできるみたいだからねぇ」
「我だけでなく、京楽、そなたも前は雌猫としっぽりしてたと聞いたぞ」
「あ、うん。浮竹に浮気って言われて、やめたからね」
「まぁ、結婚したのなら、浮気はするべではないな。我は悪魔王なので、重婚が許されるのだ」
「すごい理屈だな」
サタンはにゃはははははと豪快に笑った。
生まれたばかりの子猫はあまりにもかわいくて、浮竹も京楽も白哉も、サタンの子供たちに夢中になる。
よちよち歩きができる頃はもうかわいすぎて、京楽なんて鼻血を出していた。
『賑やかになったな』
「む、魔王の浮竹か」
サタンが、魔王の浮竹に猫じゃらしをふられて、それに無我夢中になる。
「にゃんにゃん‥‥‥むうう、猫じゃらしとは卑怯なり」
『これがサタンの子供たちか。悪魔ではないんだな。‥‥‥かわいいな』
『かわいいね』
幽鬼の京楽は、サタンの子供の子猫たちを抱き上げて、もふる。魔王の浮竹は、子猫たちを撫でる。
「ああ、魔王の俺。悪魔の羽は小さく生えてるみたいだが、悪魔ではないらしい」
「悪魔が生まれるかもしれないって、心配したんだけど、サタンは魂のレベルまで猫になっていて、悪魔の子は生まれなかったみたいだよ」
『悪魔王サタンも、今やただの猫か』
「うるさい。我は転生先を間違えたのだ。本当なら、悪魔として転生してこの地上にサタン帝国を築くはずが‥‥‥‥」
『ほーらほら』
魔王の浮竹は、サタンを猫じゃらしで誘ってから、チュールをあげる。
「うむ、苦しゅうないぞ。チュールをもっとよこせ」
「あ、俺も」
「ボクも」
いつの間にか白猫と黒猫の姿になった浮竹と京楽は、魔王の浮竹の手からチュールをもらう。
「うまいな」
「うん。白哉君とこのチュールといい勝負だね」
魔王の浮竹は、浮竹と京楽が猫の姿になった時もご飯をあげれるように、キャットフードとチュールの新開発を人間のシェフにさせていた。
人が食べてもおいしいと感じれるものなので、味はいい。
『今日は、こっちに泊まる』
『浮竹は、いつも突然だから。ごめんね?』
「いや、白哉が大変なだけだから。白哉、魔王の俺と幽鬼の京楽の分のごはんも頼んでいいか。あと、俺と京楽の一軒屋で泊まってもらうから、客室はいらない」
「いた仕方あるまい」
白哉は、その日は魔王の浮竹と幽鬼の京楽の分の夕飯をシェフに頼んでおいた。魔王の浮竹と幽鬼の京楽は、当たり前のように白哉の家に馴染み、1泊の予定が2泊になるのであった。
黒猫と白猫の亜人30
「800年ってすごいなぁ。俺の人生の7回分くらい生きてるんだな」
『猫の亜人の寿命は120歳くらいだったな。まぁ、確かに俺は白猫のお前の7回分以上生きてるな』
「800年とか、退屈じゃない?」
『退屈だ。でも、今は幽鬼の京楽がいるから』
魔王の浮竹は、少しだけ頬を染める。
「ラブラブだね」
『そっちこそ、この前結婚したばかりの新婚さんじゃない』
幽鬼の京楽に言われて、浮竹が頬を染める。
「あ、そうだこれ。新婚旅行のお土産だ」
アイテムポケットから、浮竹はサファイアを取り出した。
『綺麗だな。サファイアか?』
「ああ。本当は結晶のままの原石をあげようかと思ったんだが、いい腕の職人がいたんで、加工してもらった」
『宝物庫にサファイアを使った王冠やら指輪、ペンダントとかいろいろあるが‥‥‥まぁ、たいていマジックアイテムだしな。普通のサファイアなら、いろんな形にできそうだ』
「マジックアイテムか‥‥‥ただのサファイアなんていらないか?」
『そんなこないぞ。ありがたくもらう。綺麗だしな。それに、白猫のお前がくれるものだから嬉しいんだ』
「幽鬼のボクの分もあるよ」
京楽が、幽鬼の自分に大きめのサファイアをあげる。加工済みで、ネックレスになっており、2つあった。
『いい石だね。じゃあ、ボクはこの片方を、浮竹とペアということで、浮竹にあげるね?』
『きょ、京楽』
『どうしたの?』
「魔王の俺、かわいい」
若干頬を染めて、俯く魔王の浮竹の頭を浮竹が撫でる。
「君も、かわいいよ?」
そんな浮竹の頭を、京楽が撫でる。
その京楽の頭を、幽鬼の京楽が撫でて、なんだか行列のようになってしまった。
『今日は泊まっていくんだろう?』
「ああ、そのつもりだ」
『新婚旅行のこととか、話してくれ』
浮竹は、新婚旅行でおきたこととか、魔王の浮竹に話す。
『薔薇風呂が気に入ったのか。俺のところでも入れるように手配しよう』
「え、薔薇風呂入れるのか?」
『庭園で薔薇を栽培しているからな。庭師に頼んで、花をもらおう』
魔王の浮竹は、庭師に頼んで薔薇をつみとってもらい、魔王の浮竹だと薔薇を枯らしてしまうので、幽鬼の京楽が風呂に薔薇の花びらを浮かべて薔薇風呂を作ってくれた。
「魔王の俺、一緒に入ろう」
『でも、俺が入ると薔薇の花びらが‥‥‥』
「気にすることない。枯れても薔薇は薔薇だ」
『じゃあ、一緒に入るか』
「うん」
浮竹との魔王の浮竹は、まだ夜になっていないのに薔薇風呂に入った。
風呂からあがると、薔薇のいい匂いをさせていた。
「フルーツ牛乳あるか?」
『ラムネなら、あるぞ?』
ラムネという飲み物がはじめてなので、その炭酸飲料に浮竹は驚いたが、おいしいといって、おかわりに2本目も飲んでしまった。
『京楽、お前も入ってこい』
「ボクは、その後に入るね?それにしても浮竹、いい匂い」
浮竹を抱きしめる京楽に、魔王の浮竹も浮竹の匂いをかいでいい匂いだと抱きしめる。
「魔王の俺、お前も俺と同じ匂いしてるんだぞ?」
『んー、自分の匂いはいまいち分からない』
「もうすぐ、幽鬼の京楽があがってくる。そっちに抱きついてはどうだ?」
幽鬼の京楽が薔薇風呂からあがり、いい匂いをさせてやってくる。
『ああ、いい匂いだ』
魔王の浮竹は、幽鬼の京楽の匂いをかいで安心する。
『浮竹も、いい匂いするね。ずっとこうしていたい』
幽鬼の京楽は、魔王の浮竹を抱きしめる。
「じゃあ、最後はボクが入ってくるね」
京楽が、薔薇風呂に消えていく。
京楽は、風呂からあがると黒猫になっていた。
「どうしたんだ、京楽?」
「薔薇風呂で寝落ちしそうになって、溺れそうになったよ」
「まさか、猫の恰好で入ったのか?」
「なんかだめだった?」
「浴槽が深いだろう。溺れる」
『魔王城で、黒猫の亜人が溺死とかやめてよ?』
『そうだな。客人が溺死とか、嫌だぞ』
「今度から気をつけるよ」
そのまま豪華な夕飯を食べて、浮竹と京楽は、猫の姿になり、魔王の浮竹のベッドの上で丸くなって眠っていた。
『ああ、やっぱいい匂いがする‥‥‥』
猫の姿になった浮竹を抱きしめて、もふりながら匂いを嗅ぐ魔王の浮竹。
しばらくの間、魔王城では薔薇風呂がはやるのであった。
「白哉、風呂を薔薇風呂にしていいか?」
「別に構わないが。薔薇なら、中庭に咲いている」
「魔王城から薔薇もらってきてるから、大丈夫だ」
白哉の許しをもらって、浮竹と京楽は、自分たちの住む一軒家に備え付けられた少しだけ広めの風呂を薔薇風呂にした。
「京楽、一緒に入ろう」
「うん」
一緒に入っていると、京楽が浮竹の肌を手で洗う。
「んあっ」
「あ、スイッチ入ちゃった?」
「お前が、エロい手つきで洗ってくるから。そもそも、タオルがあるだろうが」
「ふふ、君を薔薇風呂で抱きたいなぁと思って」
「んっ」
薔薇風呂に浸かりながら、二人はディープキスを繰り返す。
「あっ」
蕾を指でまさぐられると、体内にお湯が入ってきた。
「お湯が‥‥」
「君のここ、柔らかい。潤滑油、一応たらしとくね?」
くちゅりと音をたてて、蕾を指でほぐされた後、京楽は硬くたった反り返ったそれで浮竹を貫いた。
「ああああ!!」
ぱちゃんと、湯が音を立てる。
「やああん、お湯が、お湯が入ってくるううう」
「ふふ、君のここはもっとっていってるよ?」
「んあ、もっとおお」
浮竹は、下半身だけ風呂に浸かりながら、京楽を受け入れる。
くちゅくちゅと音をたてて、京楽のものが浮竹の蕾を出入りする。
「んあっ」
ずるっと引き抜かれたそこは、ひくひくと蠢き、京楽を誘う。
「いっぱいに、満たしてあげるからね?」
「ひああああん!」
奥までずずっと音をたてて挿入され、抉られて、浮竹はオーガズムでいく。
「こっちもいきたいよね?」
「ああ、同時はだめぇええ」
浮竹のものを手でしごくと、あっけなく浮竹は湯の中に精液を吐き出す。
「ああっ」
「く、ボクも限界。中に注ぐよ?」
「んあああ」
浮竹は、オーガズムでいきながら、京楽の子種を胎の奥で受け止める。
「もっかいする?」
「風呂から、あがってからで。湯あたりしそうだ」
「それもそうだね」
湯が精液で汚れたので、薔薇風呂に散っている花びらを回収して、湯を抜く。
二人は、その後も3回は交わるのだった。
黒猫と白猫の亜人29
「いいけど、あんまり遠くは嫌だぞ」
「隣の隣の国のイルパ共和国なんてどう?天然温泉のある、一流ホテルがあるよ」
「イルパ共和国か。温泉はいいかもな」
浮竹と京楽は、パンフレットを見て、他に行きたい場所はないだろうかと探す。
「温泉街のタスタニアのちょい北に、サファイアのとれる鉱山があるみたい。お金出せば、自由に発掘可能だって」
「へぇ、面白そうだな」
浮竹は、興味を示したようで、白哉とも話してイルパ共和国のタスタニア温泉街に、1週間滞在することが決まった。
「じゃあ、白哉、行ってくるな?」
「留守は任せたよ」
「のんびり楽しんでこい。土産とかは気にしなくていい」
浮竹と京楽は、猫の亜人であることを隠す帽子をして、尻尾を茶色に染めて出かける。
タスタニア温泉街につくと、泊まるホテルにチェックインする。
一流の三ツ星のホテルだった。
お金は京楽が出してくれた。京楽は栽培したマンドラゴラを流通の少ない市場に売って、けっこうなお金をもっていた。
「それにしても、立派なホテルだな」
「ほんとはスウィートルームにしたかったんだけどね。高すぎて無理だったよ。白哉君から資金援助の話も出てたんだけど断った。ボクたちの新婚旅行だからね」
「ホテルのグレード落としてもよかったんだぞ?もっと普通の民宿とか」
「だめだめ。もしも黒猫と白猫の亜人だって知られたら、何かあるかもしれないじゃない。安全方面で信用のおけるこのホテルにしたんだよ」
「それにして、ツインじゃなしにダブルベッドの部屋選んだんだな」
浮竹が、ベッドにダイブする。
「ふかふかだ」
「ふふ、ボクたち新婚だからね?」
「とりあえず、温泉に入ってこよう。耳とか尻尾出るけど、いいよな?」
「そこは大丈夫。ここのホテルは警備がきちんとしてるし」
浮竹も京楽も、安心してホテルの温泉に入る。
温泉は広く、滝のように湯が流れているところもあれば、水風呂にサウナもあり、薔薇風呂や柚子風呂といったものもあった。
「肩こりに効くらしいよ、ここの温泉」
「俺はあんまり肩なんてこらないけどな」
「あと、美肌の効果があるらしいよ」
「それはちょっと興味あるな」
浮竹は毎日のお肌の手入れとかはしてないけど、魔王の浮竹から化粧水をもらったりしていて、たまーに手入れする。
「滝の湯にあたろうか」
「ああ」
二人して、ドドドドドと滝のように流れている湯の下にくる。
普通の遊より温度が少し高めで、ずっと浴びていると体が火照って、水風呂に入った。
「ああ、湯あたりしそうだね。そろそろあがろうか」
「この薔薇風呂ってのに最後入りたい」
「あ、いい匂いするねぇ。ボクも入ろうっと」
二人して、薔薇風呂に入って華やかないい香りをさせる。
浴衣を着て、自販機からフルーツ牛乳を買って、二人は腰に手をあてて飲んでいく。
「ぷはぁ、おいしい」
「うまいな」
「キンキンに冷えてるとこがいいよね。大都市じゃないと、自販機なんてないからね」
「俺たちの国の王都でも、数えるくらいしかないからな」
浮竹と京楽は、その後マッサージ機にコインを入れて1時間ほどゆったりして、中庭を散歩する。
桜が咲いていた。
「ここの国は、今が春なんだな」
「そうみたいだね。王都はまだ冬だけど」
桜を見上げてから、夕食をレストランでとって、チェックインしている部屋に泊まる。
「明日は、サファイアのとれる鉱山に行ってみようか」
「荷物はホテルに置きっぱなしでもいいんだろう?」
「うん。発掘に必要な品は向こうで借りれるから」
その日、二人はお互いを抱きしめあって寝た。
次の日になり、北にあるトトの町につくと、鉱山に続く山道を馬車でのぼっていった。
「さぁ、ついたよ」
鉱山の番人に、金貨を数枚払い、ピッケルやツルハシを借りた。
浮竹と京楽は、鉱山の奥に潜っていく。
サファイアの結晶を見つけて、とってみてみる。
「けっこういい品質だね。向こうのサファイアはランクが低かったけど」
「ランクとかいいじゃないか。綺麗なんだし」
「でも、アクセサリーに加工したいから、ランクの高いサファイアがほしいよ?」
「あっちの結晶はどうだ?」
「お、いいねぇ。このグレードならいいアクセサリーになりそう」
浮竹と京楽は、金貨をさらに数枚はらって、とったサファイアをホテルに持ち帰る。
「この結晶ままのやつ、白哉にあげよう」
「こっちの結晶は、お揃いでペンダントにしようか。余ったので、君の髪飾りも作りたい」
浮竹が赤くなる。
「お揃いか。結婚指輪もそうだけど、なんか照れるな」
「ふふ、こっちの結晶は、魔王の浮竹と幽鬼のボクにあげよう。宝石とかいっぱいもってるだろうけど、加工してない結晶とか持ってなさそうだし」
二人は、その日も温泉を楽しんで、近くの町やら村を探索して、1週間の新婚旅行を終えるのであった。
黒猫と白猫の亜人28
白哉は、緋真という女性が好きだったという百合の花束とカスミソウを混ぜた花束をもって、浮竹と京楽、それに恋次とルキアを伴って、緋真の墓参りにきていた。
「姉様。どうか安らかに」
「緋真さん、白哉さんは俺が幸せにしてみせます」
白哉は、線香の火を灯し、花を供えて冥福を祈る。
「白哉君、悲しそうだね」
「白哉が愛した女性‥‥‥一度、会ってみたかったな」
「見た目は、ルキアちゃんそっくりらしいよ」
「確か、ルキアちゃんの実姉なんだよな?」
白哉に聞くと、白哉は愛しい者をみる目で、ルキアを見る。
「姉妹だが、双子かと思うほどに似ている」
「兄様‥‥‥‥お労しい」
「ルキア、そなたを妹にできて、私は嬉しいのだ。亡き緋真の分まで、幸せになれ。私も全力でそなたを守る」
「白哉さんは、俺が守るんで」
白哉を抱き上げる恋次を、ルキアがその赤い髪をひっぱった。
「恋次、不敬であるぞ。兄様を離せ」
「やだ」
「恋次、降ろせ」
白哉がやや頬を赤くして、恋次をたしなめると、恋次は仕方なく白哉を降ろす。
「白哉さんを愛してます」
「恋次。分かっている」
白哉は、恋次と手を重ねる。
「浮竹、ボクらも墓参りしとこうか」
「誰の?」
「猫神様。猫神様は、この墓地で眠っているらしいよ」
「え、この墓地にか?神殿じゃないのか?」
「神殿は、猫神様が亡くなってから建てられたものだから」
浮竹と京楽は、墓地の中でも一番広くて大きくて、花やらキャットフードが供えられている猫神様の墓を見つけて、冥福を祈る。
「猫神様。これからも、京楽を守ってやって下さい」
「猫神様。浮竹を守ってやって下さい」
二人は、顔を見合わせ合ってから、猫神様に祈る。
いつの間にか、恋次もきていて、墓にチュールを供えていた。
「俺は猫神様の大神官だから。猫神様の声が少しだけ聞こえる。分かったって言ってる」
「浮竹は猫神様の神子だった時があるからね。どうだい、悲しい?」
「んー。神子になった時は、猫神様は父親みたいだと思った。一般的な、模範の父親像。俺の父親は俺を犯して性欲の対象にしてたから」
「浮竹さん、けっこう壮絶な人生歩んでますよね。京楽さんはどうなんだろう」
「恋次、兄様が呼んでおられる」
「ああ、ルキア分かった。少し待ってくれって言っておいてくれ」
「兄様を待たすとは何事だ!」
恋次は、京楽と浮竹にこっそり告げる、
「新しい猫神様の神子になったのは、アンナっていう、13歳の貧民街出身の少女です。よく神猫様を降臨されて、神殿でも大切にされてます。浮竹さんも、たまには猫神様の神殿にきてください。初代の神子様として崇められますよ?」
「いや、そんなの求めてないから」
恋次は、白哉の元に行ってしまう。
「浮竹、君には言っておいたほうがいいかな」
京楽は、浮竹に自部が赤子の頃にサタンの贄にされたこと、サタナシア・オルタナティブを宿したことで生き返ってこと、殺戮を繰り返す実の父を自分で殺したこと、自分を捨てた母親を頼りに暮らしていたことなど、話してくれた。
「京楽も、幸せとは遠い生き方をしていたんだな」
「まぁ、ボクの場合は里のみんながボクを愛してくれたけどね」
京楽は、浮竹を抱きしめる。
「君を大切にする」
「うん」
白哉たちと合流して、家に帰ることになった。
その日の食堂には、緋真の写真が飾ってあって、メイン料理が供えられた。この後、厨房の者が食べるらしい。
一軒家の家に戻ると、京楽が改めて浮竹にプロポーズした。
「君を愛している。結婚して、ほしい」
「京楽‥‥‥俺も愛してる。結婚しよう」
京楽は、式の日取りが決まるまでと、浮竹に婚約指輪をはめてくれた。浮竹の瞳の色と同じ翡翠がはめこまれた指輪だった。
京楽の分は、琥珀だった。
京楽の瞳の色は鳶色なので、琥珀が一番近いのかもしれない。
その日は一緒にただ眠った。
数日が経ち、浮竹と京楽の式の日が決まった。
今から一週間後であった。
式場も予約し、猫たちもこれるようにしていた。
式の当日、京楽も浮竹も正装していたが、浮竹だけウェディングベールを被っていた。手には、ウエディングブーケも持っていた。
待っている京楽のところへ、白哉を付き添った浮竹がやってくる。
たくさんの猫も来ていた。京楽の生まれた里の猫の亜人の姿もあった。魔王の浮竹と、幽鬼の京楽の姿もあった。
「京楽春水。汝は、病める時も健やかなる時も、浮竹十四郎を愛すると誓いますか?」
「誓います」
「浮竹十四郎。汝は、病める時も健やかなる時も、っ京楽春水を愛すると誓いますか?」
「誓います」
二人は結婚指輪を交換しあい、キスをする。
リーンゴーン。
鐘が鳴って、空から虹色の花びらが降ってくる。
京楽の里の者たちが使った魔法であった。虹も出ていた。
「綺麗だな」
「綺麗だね」
二人は、寄り添いあい、今後の人生も一緒に生きていくことを誓いあうのだった。
「今日は、初夜だね」
「今さらだな」
「そうだね。今日は、ゆっくり交わろう」
京楽は、浮竹の肝心な部分に触れずに愛撫を繰り返す。
「あ、京楽。意地悪しないで、触ってぇ」
「ああ、優しく抱きたいのに。君はサキュバスになっちゃうから、無理かぁ」
京楽は、浮竹のものを口にふくんで鈴口をちろちろと舐めて、全体をしごくと浮竹は京楽の口の中に欲を吐き出す。
「ふふ、おいしい」
京楽は、浮竹のものを味わって飲み込んだ。
男娼にされていた時代、精液が甘くなる薬を投与されていたので、浮竹の精液は甘かった。
「ボクのを、君の中にあげるね?」
「早くぅ」
浮竹は、潤滑油を手にとって、自分で自分の蕾をほぐしていた。
「京楽のものじゃないと、いいところに届かない」
「ああ、清楚で美人なのに、君は淫乱なんだから。でも、そんなところも好きだよ?」
ずずっと音をたてて、京楽のものが浮竹の中にはいってくる。
それを、浮竹は待ちわびていた。
「あああ、いい。もっと奥までぇ」
京楽は、浮竹の足を肩にかついで、深くまで侵入してくる。
「あ、あ、きもちいい」
「いっていいよ?」
京楽の手が、浮竹のものをしごく。
「いっちゃううう」
シーツに精液をシミを作りながら、浮竹はドライでもいっていた。
「んあああ、いいよお。もっと、もっと深くまで俺を犯してぇ」
京楽は、浮竹の中から一度出て.背後から最奥まで貫く。
「ひあああああ!!!」
ビクンビクンと体を痙攣させて、浮竹はいきまくっている。
京楽も、浮竹の奥で子種を出した。
「ふふ、初夜なのに激しいね、浮竹」
「ん、もっとお」
ねだってくる浮竹を抱きしめて、京楽は浮竹が満足するまで抱いた。
初夜は、結局いつものように激しいセックスで終わるのであった。
黒猫と白猫の亜人27
「あ、それはサタン殿」
「サタン?あの悪魔王の?」
一護が人の姿で、ぶらーんと白銀の毛並みの猫を鷲掴んでいた。
「離せ、氷の精霊風情が。我はサタンぞ」
「まじでサタンなのか?」
「そうらしいぞ」
ルキアも、まだ半信半疑であった。
「おのれ、黒崎一護といったな。その臓物食らってやる‥‥‥ゴロゴロ」
一護はサタンを抱いて、喉の下をくすぐってやると、サタンは喉を鳴らす。
「ゴロゴロ‥‥‥ええい、いつまでしておるのだ。我はサタンなのだぞ!恐怖せよ!」
「ほーれほれ」
一護が、サタンの前で猫じゃらしをふると、サタンがうにゃっとかいって、じゃれついていた。
「ちょろいな」
「確かに、ちょろい」
一護はサタンを気に入ったみたいで、サタンもまんざらではなさそうで。一護の頭の上に乗った。
「やあ、一護君」
「久しぶりだね、一護君」
「浮竹さんに京楽さん。どうも」
浮竹と京楽が、フェンリルの一護が来ているというので、顔を見せにきた。
「あ、サタン、いなくなったと思ったらこんなところに」
一応サタンなので、白哉がつけた純金の首輪には、魔法探知用の魔石がつけられていた。
「浮竹と京楽、苦しゅうないぞ。チュールをよこせ」
「はいはい」
「仕方ないねぇ」
サタンは一護の頭の上から降りると、浮竹がチュールをあげようとすると、ルキアがあげたそうな顔をしていたので、ルキアにチュールを渡す。
「やってみるか?」
「浮竹殿、いいのですか?」
「俺はいつでもやれるし、チュールの匂いかぐと俺も食べたくなっちゃうからな」
浮竹は猫にもなれるので、時折白哉の手からチュールをもらったりしていた。
「サタン殿、チュールだぞ」
「うむ、うまい。ルキアといったか。第56夫人にしてやってもよいぞ」
「ばーか。ルキアは俺のだ」
一護が、ルキアを抱き寄せるので、ルキアは真っ赤になった。サタンは気にせず、チュールの続きをくれとせがむ。
「だいいち、第56夫人ってなんだよ。55人も妻がいるのか?」
「そうだが?最近の最新の妻は、猫のシャルロッテちゃんだ」
猫に適応するのが早いなぁと、浮竹と京楽は思う。
「サタン君、市場に散歩にいかない?56番目の夫人でも探しに」
「よいぞ。ではルキアと一護、またなのである」
サタンは、猫の姿になった浮竹と京楽と一緒に市場に行く。市場につくと、たむろしている猫のうち雌猫だけを吟味して、気になった子だけにアタックをしかける。
「我はサタンぞ!」
「にゃーん(何言ってるのこの人)」
「うにゃん(相手にしないほうがいいわよ」
「にゃあ(夫人になれですって。面白そう)」
よい反応を見せた猫に、アプローチする。
「我はサタン。汝を第56番目の夫人にしてやろう。我と共に、サタン帝国を築こうではないか」
「にゃーん(あら、面白いわね)」
「浮竹、止めなくていいの?」
「京楽こそ」
にゃんにゃん言ってる猫の中に、人語をしゃべる猫が3匹。うち2匹は猫の亜人なのだが、サタンはただの猫だ。
ただの猫なので、魔法も使えない。
その猫な人生を、サタンは謳歌していた。
「ジョセフィーヌか。浮竹、京楽、新しい夫人ができた。ジョセフィーヌだ」
「にゃーん(よろしくね)」
「ああ、よろしく」
「サタン君の猫になるってことは、白哉君の猫になるってことだけど、いいんだね?」
「にゃーん(かまわないわ。人に前に飼われていたから)」
ジョセフィーヌとサタンは、にゃんにゃんラブラブしだす。
そこへ、魔王の浮竹が現れた。
『この気配‥‥悪魔王サタンか?』
魔王の浮竹はびっくりしていた。魔族でない悪魔は、魔族と共存関係にあるが、悪魔王サタンは自分の帝国を築くと言って、魔族とがあまり仲がよろしくない。
「む、貴様は魔族の魔王の浮竹か」
『サタン君、猫に転生しちゃったんだ。笑えるかも』
幽鬼の京楽は、クスクスと笑いだす。
「我はサタンぞ!」
しゃあああと毛を逆立てるが、魔王の浮竹に喉をくすぐられて、腹を見せる。
「うにゃん、喉は弱いのだああ」
『面白いな。悪魔王だったサタンが猫に転生したとなると、空いた悪魔王の座は順当にいくとヴェルゼブブか」
「む、あのハエ男が、我の代わりに悪魔王だと?」
サタンは悩む。
「ううむ、今すぐ悪魔王に返り咲きたいが、何分今は猫。仕方あるまい」
『悪魔王がヴェルゼブブになるということは、敵対関係はなくなるに近いな。助かる』
魔王の浮竹の言葉に、幽鬼の京楽がクスっと笑う。
『もともと、悪魔たちのことはどうでもいいくせに』
『まあ、敵対関係でいられるよりも、共存関係でいられるならそれにこしたことはない』
「あ、魔王の俺だ。串焼き、食うか?」
浮竹は、猫の姿でくわえていた串焼きを魔王の浮竹にさしだす。
『ああ、もらおう』
「ボクの予備の分を、幽鬼のボクにあげるよ」
『ありがとう、黒猫のボク』
市場でわいわい騒いでいると、人が寄ってきたので邪魔だと白哉の家に行くことになった。
「サタン殿、おかえりなさい」
「うむ、ルキアか。苦しゅうないぞ」
「何言ってやがんだ。サタンのくせに」
「ううむ、氷のフェンリルの黒崎一護。先の大戦で精霊界に負け、精霊には手を出さないと契約しているせいで、汝に猫パンチ以外できぬ」
弱弱しいサタンの猫パンチを、一護が受け止める。
「本当に、ただの猫なんだな」
「一護君、今日はルキアちゃんに会いに?」
京楽が尋ねると、一護は頷く。
「一応、婚約者だからな。いずれ、精霊界に連れていくけど」
「一護君、精霊界ってどんなのだ?」
浮竹が興味をもって、精霊界のことを聞くと、一護でなく魔王の浮竹が説明を始める。
長いので、浮竹も京楽も途中で欠伸していた。
「と、いう場所だ」
「そうか」
「そうかい」
魔王の浮竹の話のほとんどを聞いていなかった二人であった。
夕飯の時刻になり、魔王の浮竹と幽鬼の京楽は、魔王城に帰還することにした。
『じゃあ、また会おう、黒猫の京楽に白猫の俺。あとついでにサタンとかいう猫も』
「しゃあああ!悪魔王である我に失礼であるぞ!」
『サタン君、猫に転生したんだから、もう悪魔王ではないでしょ?』
「む、しかしだな。いや、我は永遠に悪魔王なのだ。今決めた」
『まぁ、帰るね。じゃあ、またね』
魔王の浮竹と幽鬼の京楽は去ってしまった。
うなるサタンを、ルキアと一護と浮竹と京楽でなだめる。
ちなみに、サタンは夜はジョセフィーヌちゃんとしっぽりするのだった。
黒猫と白猫の亜人26
今日は、1年に1回の狐祭りだった。
いろいろな屋台が並んでいた。
「浮竹、一緒に行こうか」
「ああ」
屋台を見て歩いて、浮竹は立ち止まる。
チョコバナナ。看板にはそう書いてあった。
「食べたい?」
「え、あ」
「すみません、2本ください」
「毎度あり」
京楽は、チョコバナナを自分の分も購入して、一本を浮竹に渡す。
「ありがとう」
やや頬を染めて、浮竹はチョコバナナを食べていく。
「そういえば、君チョコレート好きだったね。まぁ、チョコに限らず甘いものが好きみたいだけど」
「りんご飴も、買っていいか?」
京楽は苦笑する。京楽が買ってあげた。
りんご飴にかじりつく浮竹の頬に、飴がついたので舌で舐めとると、浮竹は真っ赤になった。
「こ、こんな人がいっぱいいる場所では、やめろ」
「いいじゃない。減るものじゃなし」
「俺が、恥ずかしいんだ」
浮竹は、食べかけのりんご飴を京楽の口の中につっこむ。
「りんご飴、もういっこ買ってくる!」
「かわいい‥‥」
京楽は、しゃりっとりんご飴をかじりながら、浮竹が帰ってくるのを待った。
「ねえ、金魚すくいあるよ。やってみる?あれ、そのりんご飴は?」
袋にいれてもらっているりんご飴をみて、浮竹が答える。
「サタンへのお土産だ。金魚すくい、1回だけする」
「君がする?」
「いや、京楽がしてくれ。あの白い子がいい」
金魚にしては珍しい、白い金魚が泳いでいた。
「ふふふふ、ボクの腕にかかれば」
京楽は、白い金魚をすくってみせた。
他にもすくおうとしたが、ポイが破れてしまった。
「もう一度する?」
「いや、いい。あ、風船売ってる。あれ、買ってくれ」
浮竹は、白い金魚の入った小さな袋を手首にぶら下げて、次々と興味を祭りのものにうつしていく。
焼きそばやらたこ焼きやらを食べていると、花火があがりだした。
「丘に登ろう。もっと綺麗に見えるはずだ」
京楽と一緒に、けっこう高い位置にある丘に風の魔法で身を浮かせてたどり着くと、そこに座った。他に客はいなくて、よく晴れた夜空の下で花火が咲いて消えていくのを見る。
「綺麗だな」
「綺麗だね」
「京楽、お前花火見ないで俺の顔見ていってないか?」
「うん。君の緑の瞳に映る花火みてたの。綺麗だなと思って。君が」
「恥ずかしいやつ」
浮竹は、京楽と手を繋ぐ。
「本当に、恥ずかしいやつなのだ」
にゃあと、白銀の猫が背後にいた。
「サ、サタン!?」
「我に内緒でこのような。そのりんご飴を渡すがよい」
「ああ、これはお前のために買ったやつだ」
「うむ。苦しゅうない」
サタンにりんご飴をあげて、京楽はテレポートの魔法をサタンにかけて、白哉の屋敷に戻してしまう。
「京楽?」
「せっかくのデートなんだからさ。サタンの相手なんていつでもできるし。お祭りは、今日だけだからね」
「サタン、怒ってるだろうな。焼きトウモロコシでも、土産に買って帰るか」
二人は、手を繋ぎ合いながら、花火を見終えると、また屋台で射的をしたりヨーヨー釣りをしたりして遊ぶ。
ひとりしき遊んで、浮竹と京楽は家に戻る。
サタンのために、焼きトウモロコシとタコ焼きをお土産にした。
「うぬう、我を追いやるとは。やるな」
「お土産あるから、怒るなよ?」
「うむ、苦しゅうない」
京楽は、サタンを無視して、同じくお土産に買ったりんご飴とイカ焼きを、白哉に渡す。
「これは?」
「白哉君、仕事で忙しくてこれなかったでしょ?だから、お土産」
「ありがとう」
白哉は柔らかい表情になる。
お土産を食べ終わったサタンを抱き上げる。
「ああ、サタン!そこは俺の特等席!」
恋次が、赤い猫になって、白哉にすり寄る。
白哉はため息をついて、サタンを地面に下ろすと、恋次を抱き上げた。
「ふふん」
得意げな顔になる恋次を無視して、サタンは他の猫たちに挨拶をされていた。
「うむうむ、よきにはからえ」
「サタン、なんかなじんじゃってるね」
「はじめはどうなることかと思ったんだが、みんなと仲良くやれているようでよかった」
「浮竹、京楽。兄らがいない時は少し寂しい顔をするのだ。ああ見えて、寂しがり屋かもしれぬ」
白哉は、お土産にと買ってもらったりんご飴とイカ焼きを食べるため、恋次を連れて自室に戻る。
「白哉さん、来年は俺たちも祭りに参加しましょうね」
「時間があったらな」
浮竹と京楽は、自分たちの一軒家に戻る。
小さな水槽を用意して、その中に白い金魚を入れた。金魚はすいすい泳ぎ、元気にしていた。
白哉のつてで金魚のえさをもらい、あげてみると、口をぱくぱくさせて餌を食べる。
「ふふ、かわいいな」
「かわいいね?」
「お前、今俺の顔見て言っただろう」
「うん」
「恥ずかしいやつ。今日で言うの二度目か」
「他の猫は、この白い金魚おいしいそうって顔で見てたね」
「サタンもな」
悪魔王サタンは、白銀の毛並みの猫に転生してしまい、今猫人生まっしぐらだった。
猫な人生も悪くないと、しばらく平和に暮らすようであった。
浮竹と京楽は、一つのベッドで互いを抱きしめあいながら眠る。
サタンの存在に、サタナシア・オルタナティブは大人しくしている。
「我は、この世界を‥‥‥‥」
サタンは、星空を見上げてから、二人で仲良く眠っている浮竹と京楽のベッドに忍び込み、一緒に眠るのであった。
黒猫と白猫の亜人25
満月だった。
「鎮まれ、サタナシア・オルタナティブ」
いつものように、京楽の中のサタナシア・オルタナティブ、通称サタン、別名ナニカが動き出す。
「今日は、満月、か」
金色の瞳のまま、浮竹を抱きしめる。
「ん、京楽?」
浮竹は眠っていたのだが、気づいて起き出す。
「まだ、深夜だから。寝ていていいよ?」
「京楽、目が金色だ。サタナシア・オルタナティブ。お前も京楽の一部だ。愛してる」
浮竹が金色の瞳の京楽に口づけると、京楽の中のサタナシア・オルタナティブは泣いた。
誰かに、ずっと愛してもらいたかった。京楽でないのに、愛された。それは嬉しかった。
「ウレシイ‥‥‥‥ウキタケ、アイシテル」
サタナシア・オルタナティブが、手を伸ばす。
その手を、もう片方の手で京楽が止めた。
「お眠り、サタン。浮竹は、ボクのものだ」
「ソレデモウレシイ‥‥‥」
最近のサタナシア・オルタナティブは、京楽を介してしゃべることができた。
京楽の中で、遺物でしかなかったサタナシア・オルタナティブは京楽の意識に同調し、浮竹を愛していた。
その愛は、純粋なものでなく歪(いびつ)であったが。
「サタン様!」
「サタン様、どうか我らに救済を!」
「永遠の命を!」
それは、サタナシア・オルタナティブを介してみる、サタンそのもの。サタンから見た、世界。
場は血であふれていた。たくさんの人間の肉と臓物があった。
「我はサタン。黒猫の亜人の臓物を捧げよ!もっと、もっとだ!」
「ああ、サタン様!」
「我は、いつか我の一部を誰かに与える。時が経ち、熟成すれば我が宿る。さぁ、贄の黒猫の亜人の臓物をよこせ!」
「生まれたばかりですが・・・・・・」
捧げられたのは、京楽であった。
「赤子か。我が宿るにはちょうどいい。サタナシア・オルタナティブを、我の一部として宿らせよう。いつか、我が芽吹くように」
サタナシア・オルタナティブが現れる。美しい少女だった。サタンから生まれ落ちた存在だった。贄にされて命を失った赤子の京楽の中に宿る。
「おぎゃあおぎゃああ」
赤子は、息を吹き返した。
そこで、サタンの意識が途切れる。
京楽は、はっと目を覚ました。
「サタナシア・オルタナティブ‥‥‥‥君は、サタンの‥‥愛娘、なのかい?」
それに答える者は、誰もいなかった。
「ボクは、いずれサタンになるのだろうか」
ふとした疑問に、京楽の中のサタナシア・オルタナティブが答える。
(それはない。我の力で、サタンを拒絶している。サタンが宿る時は、我が死んだ時)
「つまり、ボクが死んだ時、か」
死は怖くない。でも、死んだらサタンになってしまうと思うと、怖かった。
(我らが死した時、浄化の炎が宿る。神子によって。今は、神子ではなくなったが、猫神を降ろした白猫の亜人、我らの愛しい浮竹の手によって)
「ボクは、浮竹と一緒に死ぬから、無理じゃない?」
(でも、浄化の炎は宿る)
「じゃあ、サタンのことは心配する必要はないんだね?」
’(我はサタナシア・オルタナティブ。サタンを継ぐ者)
「あれ?」
京楽は、おかしそうに笑う。
「君は、サタンの愛娘。サタンを継いでも、サタンにはなりえないよ」
(我はいつかサタンになりたい)
「なんか、矛盾してるよ。サタンを拒絶してるのに、サタンになりたいなんて」
「京楽?起きたのか?」
いつの間にか、朝になっていた。
「ああ、眠りそこねた。まぁ、昼寝で補おう。おはよう、浮竹」
「おはよう、京楽」
二人は、朝食を食べると市場に猫の姿で散歩に出かけた。
「我はサタン!」
そんなことを言っている、白銀の猫を見かけた。
「あ、お前は我が愛娘のサタナシア・オルタナティブを宿した、あの時の赤子か」
「え?」
「へ?」
「我はサタンなり!」
人の言葉をしゃべる猫であったが、猫の亜人ではないようだった。
ぎゅるるるる。
腹をすかせているようで、浮竹が人の姿になり、肩に猫の姿の京楽を乗せて、自称サタンという猫を白哉の家に連れ帰る。
自称サタンは、本当にサタンらしかった。
悪魔の証である小さな黒い翼があり、サタンの紋章を額に宿していた。
「うぬう、腹が減った」
「キャットフードだよ。食べなよ」
京楽がすすめると、サタンはがつがつと食った。
「人の臓物よりうまい。おかわり」
「はいはい‥‥‥」
「なぁ、サタン」
「なんだ、ひ弱な白猫の亜人が」
サタンは、人の姿をした浮竹に猫パンチをかます。
「サタンなのに、猫なのか?」
「うむ。転生先を間違えたのだ」
「じゃあ、白哉の猫になれ!悪さはするなよ!」
「我はサタン!誰のものにもならぬ」
えっへんと威張るサタンに、京楽が甘い誘惑をする。
「白哉君ちの猫になると、さっきのおいしいキャットフードが食べ放題だよ。あとチュールっていうおいしいのもくれるし。何より、雨風がしのげるし、衣食住は保証してくれるよ。半野良で外に出るのも許されるし」
「う、そこまで言うなら、その白哉とやらの猫になってやろう」
京楽は、白哉を呼んできた。白哉は事情を聞いてびっくりするが、純金の首輪をサタンにした。
「うむ。我ほどjの大物になると、純金でも安い」
こうして、白哉の家にはサタンが居つくようになるのであった。
