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始祖なる者、ヴァンパイアマスター22

ニィが最後に残した、桔梗の花を摘み取って、それ死体の灰代わりにして、古城の娘であったエメラルドが眠る墓の隣に、ニィの墓を建てた。

本当のニィの墓は、血の帝国にあったが、藍染に暴かれて酷い有様になっていたので、取り壊した。

「ニィ、安らかに眠ってくれ」

浮竹は、ニィの安楽を願った。

それは、京楽も同じだった。

血族であり、浮竹を愛する者であった存在だ。存在した時間が違えと、同じ血族であった存在だ。

「ニィ・・・」

「浮竹?まだ、彼のことが?」

「ああ。藍染が、許せない。俺は確かにニィを愛していた。過去形だが、失ってその痛みがじわじわくる。藍染が、俺を殺せないからと、わざと京楽を狙う手も気に食わない」

「藍染のところに、攻めにいくかい?」

「いや、やめておこう。いろいろ罠があるはずだ。京楽も、無事ですまないかもしれない」

「僕って、そんなに頼りないかな?今回も、守られてばかりだったし」

「俺には神の愛の、不死の呪いがあるからな。でも、京楽はそうじゃない。京楽はヴァンパイアロードだが、藍染と対峙したら、きっと藍染に勝てない。あいつは、俺と同じ不死の呪いをもつ始祖魔族だ」

「そうなんだよね。僕も不老不死なら、よかったのに」

その言葉に、浮竹が首を横に振った。

「お前が人間だったからこそ、俺はお前を血族に迎え入れれたんだ。お前が始祖だったら、きっと出会ってもこんな仲にはなっていなかっただろう」

「浮竹・・・・愛してるよ。僕が、ニィの分まで君を愛するから」

「京楽・・・」

二人は手を繋ぎあい、ニィの墓に青い薔薇を添えた。

エメラルドの墓にも、青い薔薇を添える。

「愛しい者は、皆俺を残して死んでいく。京楽、俺を残して、死んでいくなよ」

「当たり前でしょ。君の傍で、ずっと愛を囁き続けるよ」

浮竹は、自分から京楽に口づけた。

「んっ」

ぬるりとした舌が入ってくる。

「んんっ」

腰が砕けるようなキスを受けて、浮竹は京楽に支えられながら、立っているのがやっとだった。

「ベッドに行こうか。続きをしてあげる」

風呂には入った後だった。



「んっ」

ベッドで、浮竹は乱れた。

長い白髪を宙に舞わせて、京楽の上に跨り、突き上げられていた。

「ああああ!!」

何度も、何度も突き上げられる。

「んあっ」

どさりと押し倒されて、京楽の熱が奥を抉る。

「あああ!!ひああ!!」

最奥の結腸をごりごりと削られて、浮竹は精液を放っていた。

京楽は、それをもったいなさそうに手ですくいあげて、舐めとっていく。

「や、何をしている、春水」

「甘いよ。君の体液は、なんでも甘い」

「春水・・・キスを、してくれ」

「お望みのままに」

京楽は、浮竹に口づけた。

「愛してるよ・・・」

いつもより、深く何度も愛を囁いた。

浮竹は、ニィのことで傷ついていた。その心を癒すように、何度も愛していると囁く。

「んあっ」

浮竹の前立腺をこするように、何度も動いた。

「あああ・・・・・・」

浮竹は、自分の腹に熱をぶちまけていた。

「勿体ない・・・・・」

そう言って、また京楽が浮竹の体液を舐めとっていく。

「甘いね。君のものば、とても甘い。まるで、薔薇の蜜のようだ」

「あっ」

舌に浮竹のものを残したまま、浮竹に口づける。

浮竹は、自分で出したものを自分で味わっていた。

「確かに、甘い・・・・・」

「でしょ?ああ、甘い浮竹は妖艶でエロいね」

「やっ。そんなこと、言うな・・・・」

自分の顔を腕で隠す、浮竹の手をどかす。

「感じてる、君の顔が見たい。顔隠さないで」

「ああっ!」

一度引き抜くと、ぐちゅりと音をたてて貫いてやった。

「やああああ!!」

浮竹は、ドライのオーガズムでいっていた。

びくびくと暴れる体を押さえつけて、浮竹の最奥に熱をねじ込んで、京楽も浮竹の中に精液を注ぎ込んだ。

「あ、もっと・・・もっとくれ、春水」

「十四郎、かわいいね。おねだりする十四郎、好きだよ」

そう言って、京楽はリズムを刻みながら、浮竹を突き上げる。

「あ、あ、あ、あ!」

そのリズムのたびに、浮竹は声を出していた。

快感に恍惚となる浮竹は、酷く妖艶でエロかった。

ペロリと自分の唇を舐める浮竹に、京楽はそろそろかと、浮竹の首筋に噛みついて吸血した。

「あああ!もっと、もっと!」

吸血による快感に酔いしれながら、浮竹はもっととせがんでくる。

「今日の十四郎は、血を吸われるのが好きだね?」

「ああああ!後で、人工血液剤噛み砕くから、俺の血を一滴残らず飲み干してもいい」

「さすがにそれは、無理かな」

京楽は、セックスの間に休憩をはさみ、浮竹に口移しで人口血液を与えた。

「ああ、喉が渇いたから美味いな」

「もっと飲む?」

「お前の血が、飲みたい」

浮竹は、瞳を真紅に輝かせていた。

「いいよ。好きなだけ、飲んで?乾いたら、君から血をもらうから。愛してるよ、十四郎」

浮竹は、京楽の首筋に噛みつき、ごくりごくりと血を啜って、嚥下した。

その白い喉が食べたくなって、今度は京楽が浮竹の白い喉に噛みつき、ごくりと一口、血を飲みこんだ。

「ああ、春水のが欲しい。俺の中を、春水ので満たして?」

「分かってるよ」

休憩を中断して、また睦み合った。

乱れ合う。

「あ、あ、孕みたいのに、いっぱい、いっぱい、春水のザーメンもらってるのに、孕めない」

「そりゃ、君は女の子じゃないからねぇ。女の子みたいに潮は吹くけど」

「やあぁああ」

最奥に愛の液体を注ぎ込まれながら、浮竹は何度もいった。

「愛してる、春水」

「僕も愛してるよ、十四郎」

ごりごりと、結腸の入り口をかき混ぜて、京楽は浮竹を味わった。

「あ、あ、そこゴリゴリされるの好き」

「ここかい?」

「やああん」

浮竹は、背をしならせる。

「もう何十回目だい?いってるの」

「やっ、分からない」

「僕も限界だ。休憩を挟みながらだけど、もう出すものがないよ」

浮竹の中に、最後の一滴を注ぎ込んで、京楽は浮竹の中から去っていった。

「あ、ああ、孕めない!孕みたいのに、孕めない!春水のザーメンが、外にでちゃう!」

「お風呂、いこっか」

「うん」

素直な浮竹を抱き上げて、シーツで包み込みながら、風呂場に移動して、京楽は浮竹の中に出したものをかき出そうとした。

「やあああ、出さないでぇ!春水のザーメン、出さないでぇ!」

「だめだよ。お腹壊しちゃう。かき出さないと」

「やあああ。孕めない・・・孕みたいのに・・」

シャワーの熱い熱で、浮竹の内部を入念に洗った。

「ああん」

「感じちゃってるの?かわいいね」

「やあああ」

「でも、僕はさすがに今日はもう出ない。君だけでも、いかせてあげる。指と舌があれば、何度だっていかせてあげられる」

浮竹は、風呂場で京楽から注がれた体液をかき出されながら、何度かいく羽目になるのであった。

----------------------------------------------------------

「反魂は成功したのに、自我を与えたのが間違いだったようだね」

藍染が、魔国アルカンシェルで、ニィの死を悟り、ため息を零していた。

「他の手札は・・・・」

ニィと同じような、浮竹の血族だったものはあと二人。

墓を暴き、灰は入手していた。

「同じ手はつまらないし・・・・仕方ない、しばし休戦といこうか」


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ブラッディ・ネイは楽しんでいた。

実の兄を後宮に入れた際に、その姿形を保った人形を手に入れていた。

「愛してるよ、兄様」

でも、相手は人形なので、何も言ってくれない。

それでも、ブラッディ・ネイは浮竹の姿をした人形に愛を囁き、口づけた。

今度、浮竹がやってきたら、また女体化する魔法をかけてやろう。

そう静かに、決意するのであった。









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始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝

西洋の浮竹と京楽は、東洋の浮竹と京楽とお茶をしていた。

ここは古城。

西洋の浮竹と京楽が暮らす世界。そこに、友人である東洋の浮竹と京楽がきていた。

夢渡りを利用して、こちらの世界にきてくれたのだ。

「茶葉はアッサムの皇室御用達のものを。お菓子はドーナツとチーズケーキで」

西洋の京楽は、同じ西洋の浮竹に一番にお茶を出してやった。

次に、東洋の浮竹に、その次に自分用に、最後に東洋の京楽に。

「この茶を入れる順番に、お前の好感度が反映されてるみたいで、見ていて楽しい」

西洋の浮竹は、そう言ってアッサムの紅茶を飲み、ドーナツを食べた。

東洋の浮竹は、もくもくとお菓子を食べていた。

その瞳が嬉しそうに輝いていた。

(俺の春水と同じくらい、おいしいな。お茶もおいしいし)

(ええ、ボクが作ったほうが、きっともっとおいしいよ)

にこにこと、東洋の浮竹を見ながら、同じ東洋の京楽はそんなことを言う。

「いや、僕の方が美味しいよ」

ここは譲れないのだと、西洋と東洋の京楽はばちばちと火花を散らせた。

お互い、本来の仲は悪くはないのだが、愛する伴侶のことになると、自慢大会をしそうなくらいに、火花を散らせた。

それに、西洋の浮竹は呆れていた。東洋の浮竹はというと、もっと仲良くできないのだろうかと、心配そうな表情をするのであった。


(十四郎、ほっぺにドーナツの砂糖がついてるよ)

東洋の京楽は、同じ東洋の浮竹のほっぺについた砂糖を、ぺろりと舌でとってしまった。

それに、東洋の浮竹が真っ赤になった。

(こら、春水、西洋の俺たちが見ているだろう!)

「いや、こっちの京楽も似たようなことしてくるから、別に隠さなくていいぞ」

「ふふふ、浮竹かわいい。愛してるよ」

西洋の浮竹は、西洋の京楽に抱き着かれて、赤くなりながら、次にそのほっぺをつねった。

「あいたたたた」

「東洋の俺たちが見ているだろうが!」

東洋の浮竹と同じようなこと口にするのであった。

(そうそう、この前S級ダンジョンとやらに潜っただろう。今度は、普通にみんなで攻略したいんだが)

(十四郎が、そう言ってきかなくてね。どうだい、もう一度そのS級ダンジョンとやらに、連れていってもらえないかい?)

「お前たちの頼みなら、叶えてやるしかないな」

「そうだね。あの時は一護君がいたから、戦闘には参加できなかっただろうし」

そうして、西洋と東洋の浮竹と京楽は、S級ダンジョンに潜るために、準備をするのであった。

4人分の水と食料を1週間分。あとはテントを2つに寝袋を4つ。

西洋の浮竹は、念の為に錬金術でエリクサーを作り、疲労回復、魔力回復のポーションを作った。

錬金術を見るのは初めてで、東洋の浮竹はきらきらした目で、西洋の浮竹の錬金術を見ていた。

(俺にもできるかな?)

「うーん、無理だろうな。こうなるまでに、休眠期間を除けば3千年かかった」

(3千年・・・・・そういえば、西洋のお前は何歳だっけ?)

「8千歳だが?」

(は、8千・・・・・・)

東洋の浮竹は、あんぐりと口を開けた。

(まぁ、始祖ヴァンパイアっていうくらいだから、年をとってても仕方ないよ)

「まるで、僕の浮竹がじいさんみたいな言い方だね?」

(いや、そういうつもりじゃなかっただんよ。気に障ったのなら謝る)

(初めに年齢を聞いて驚いた俺が悪い。春水、謝らなくていいぞ)

「別に怒ってなんていない。8千年も生きいる存在なんて、この世界でもほとんど存在しないからな」

(そ、そうだよな!でも、俺もあと2百年くらいしたら漸く千年生きたことになるな!)

(あ、うん・・・そうだね)

東洋の浮竹と京楽は、輪廻転生を繰り返していた。

(俺も、そうしたら錬金術が使えるかも!)

本気で錬金術士になりそうな勢いの東洋の浮竹に、東洋の京楽が本気で止めた。

(だめだよ、十四郎。そんな変なのになっちゃ)

「変ではないぞ。錬金術士は、ちゃんとした職業だ。ちなみに、俺は最高位クラスのミスリルランクの錬金術士だ」

(最高位・・・ミスリルランク・・・かっこいい)

まるで、自分で自分に惚れるかのように、輝く瞳で東洋の浮竹は、西洋の浮竹を見ていた。

(十四郎、絶対にだめだからね。錬金術なんて、ボクの十四郎には必要ない)

「そうだぞ。ここに、俺という錬金術士がいる。錬金術士なんて、一人いれば十分だ」

「浮竹の作る薬は、とてもよくきくよ?試しに、何かポーションでも飲んでみる?」

「こら、京楽、健康な体でポーションを飲むのは意味がない」

「ああ、それもそうか」

「とりあえず、必要になりそうな薬は全て作ってもっていく」

西洋の浮竹は、そう言って錬金術で、必要になるであろう薬を調合していくのだった。

ちなみに、東洋の京楽は千里眼をもっていた。自分の浮竹が錬金術を覚えたら、住んでいる雑居ビルを吹き飛ばす。

そんな未来が見えて、東洋の京楽はお菓子をだしたりして、東洋の浮竹から錬金術への興味削いでいくのだった。

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「ヘルインフェルノ!」

出てきたモンスターを西洋の浮竹が魔法で屠る。

(やっぱいいなぁ、魔法。かっこいい。俺も使ってみたい)

キラキラした瞳で、東洋の浮竹は西洋の浮竹を見ていた。

「魔法は、流石にこちらの世界の存在じゃないと使えないな」

(むう、残念だ)

(僕らは蛇神、蛇がいるでしょ?)

(いるが・・・火とか吐いたらカッコいいと思う)

(ごめん、周り燃やしそうだから却下で・・・・・)

そう東洋の京楽に言われて、東洋の浮竹はしょんぼりするのだった。

「そっちにいったぞ」

(うん、任せて)

向かってきたマンティコアを、東洋の京楽が影の蛇をけしかけて、戒めるとその毒牙でとどめをさしてしまった。

「蛇でそんなことができるのか。さすがは蛇神。東洋の京楽だな」

(あ、そっちにもいったよ)

西洋の浮竹に向かっていったマンティコアは、西洋の京楽の剣で斬り裂かれて、息絶えた。

「僕の浮竹に襲い掛かるなんて、一億年早い」

「なんだそれは」

西洋の浮竹が笑う。釣られて、西洋の京楽も笑った。

同じように、東洋の浮竹も京楽も笑うのだった。


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宝箱があった。

西洋の浮竹は、素早い動きで動いた。

「ちょっと、浮竹、絶対ミミックだって!」

「ミミックだからいいんだ」

そう言って、西洋の浮竹は宝箱をあけた。ミミックだった。

「狭いよ暗いよ怖いよ息苦しいよ~~~」

ミミックに上半身をかじられて、西洋の浮竹はじたばたしていた。

それに、西洋の京楽がため息をつく。一方、東洋の浮竹と京楽は。

(またやってる。すごいな)

(真似できないね。というか、学習能力がない)

そう言って、ドン引きされるのであった。


ミミックから救出された、西洋の浮竹は、炎の魔法でミミックを倒した。

ミミックは、魔法書をドロップして消えてしまった。

「やった、魔法書だ。民間魔法か・・・・どれどれ」

「また、変な魔法じゃないだろうね」

「毒の効き目を遅くさせる魔法だそうだ」

「へぇ、珍しく使えそうなやつじゃない」

(いつもはどんな魔法を覚えているんだ?)

「頭がアフロになったり、水虫ができたり、10円ハゲができたりする魔法だよ」

「おい、京楽、片寄りしすぎだろう。もっといい魔法もあるんだぞ」

「まぁね。でも、浮竹が覚える魔法のほとんどが、役に立たないのは事実だよね」

本当のことを言われて、西洋の浮竹は落ち込む。

「ああ、そんなつもりじゃなかったんだよ。ごめんね、浮竹。愛してるよ?」

西洋の京楽は、西洋の浮竹の顎に手をかけて、口づけた。

「んっ」

それを見ていた東洋の浮竹は真っ赤になって、京楽のほうはというとだたじっと、自分と同じ姿をした西洋の京楽を見ていた。

「ばか、東洋の俺たちが見てるだろうが!」

そう言いつつも、まんざらでもなさそうだった。

(こっちの十四郎も、僕の十四郎ほどじゃないけど、綺麗だね)

(え、ああ、まぁそうだな)

自分のことも褒められて、真っ赤になりながら、東洋の浮竹はペロリと唇を舐めている、妖艶な西洋の自分を見ていた。

「喉が渇いた」

(あ、お茶でものむか?)

「そういう渇きじゃない。京楽、血を吸わせろ」

そう言って、西洋の浮竹は、自分の血族である西洋の京楽に噛みつき、血を啜った。

(わぁ、本当に吸血するんだ。さすがヴァンパイア)

驚く東洋の京楽と違って、東洋の浮竹は心配そうにしていた。

(痛くないのか?貧血になったりはしないのか?)

西洋の浮竹は、血の付いた唇を舐めた。

「吸血行為は快感を伴うから、痛くない。飲みすぎると貧血には確かになるが、命に別状はない」

そう言って、西洋の浮竹は同じ西洋の京楽に、人工血液を与えた。

「君の血のほうがいいんだけどね」

「文句を言うな。どうせ夜に俺を抱いて、渇きを訴えるまで血を飲むんだろうが」

ベッドで吸血しあいながらもつれる二人を想像して、東洋の浮竹は更に真っ赤になった。

「どうした、東洋の俺」

(いや、なんていうか、本当にヴァンパイアなんだなと思って)

「心配しなくても、お前たちの血をくれなんて言わないぞ」

(当たり前じゃない!ボクの十四郎の血は、一滴たりとも与えないよ!)

警戒して、東洋の浮竹を抱きしめる東洋の京楽に、西洋の浮竹が笑う。

「本当に、お前は同じ東洋の俺が大事なんだな」

(当たり前でしょ。ボクの一番大切なものは十四郎だよ。十四郎はボクのものだ。例え西洋の君にだって、あげないよ)

「いや、別にいらん。同じ顔をの相手の血を吸いたいとも思わないし」

いらんと言われたことに少し寂しさを感じながらも、東洋の浮竹も自分の京楽が西洋の浮竹に血をい吸われることを想像して、きゅっと東洋の京楽の服の裾を掴んだ。

(春水も、血をやってはだめだぞ。お前は、俺のものでもあるんだから)

(当たり前でしょ)

「おいおい、だからお前たちの血は吸わんといってるだろう。蛇神だ。血に毒をもっているだろう?」

「うわぁ、毒の血なんて飲みたくないね。それにしても、東洋の浮竹は反応がかわいいね」

「どうせ、俺は可愛くない。ふん」

「そんなことないよ!浮竹が一番かわいくて綺麗だから!エロいし!」

いらんこと言う西洋の京楽に、西洋の浮竹はアイテムポケットから取り出したハリセンで、その頭をスパンと殴るのであった。

そんな様子を、これまた東洋の京楽と浮竹は、呆れながら見ていた。

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64階層の深層まできていた。

このS級ダンジョンは、65層で終わりだった。

「いよいよボスだ。覚悟はできているな?」

「うん。僕はいつでもいけるよ」

(俺も、いつでも大丈夫だ)

(十四郎、無茶はしないでね?)

扉をあけると、ヒドラがいた。

「ヒドラか。少しだけ、八岐大蛇のお前に、似ているかもしれないな」

(ボクは、こんな醜いモンスターじゃないよ)

「だた、首が複数あるところが似ていると言ってるだけだ。蛇神であるお前のほうが存在が上位だし、こんなモンスター楽勝だろ?」

(そうだね。見ていてごらん)

そう言って、東洋の京楽は、影からたくさんの蛇をだして、ヒドラに噛みついた。

ヒドラは苦しそうに暴れまわっている。

それを西洋の浮竹と京楽が、シールドを張ってヒドラの動きを封じた。

「東洋の俺。トドメをさしてやれ」

(分かった)

東洋の浮竹は、白い巨大な蛇を召還すると、ヒドラの体に巻き付き、その牙でヒドラをかみ殺してしまった。

「すでに、東洋の京楽の蛇の毒で弱くなっていたとはいえ、流石だな。蛇神の名を語るだけはある」

「本当だね。蛇を使役するところも新鮮でいいね」

「さて、財宝の間だ」

そう言って、西洋の浮竹は最後の扉をあけた。

ヒドラもドラゴンの一種である。宝をため込む性質があった。

いろんな金銀財宝で溢れていた。

「お前たちも、好きなだけもっていっていいぞ」

(いや、俺たちは遠慮しておく)

「じゃあ、せめてこれをもって帰れ。エリクサー。別名神の涙。どんな状態異常も傷もなおしてくれる。何かあった時に、役立つだろう」

(いいのか?確か、高いんだろう?)

「お前たちに何かあったほうが、俺にとってショックだ」

エリクサーは、1つで屋敷を建てられる値段がする。

東洋の浮竹と京楽は、金銀財宝には興味がないようだった。節約生活を送っているので、莫大な富など必要ないのだ。今の生活で、十分満足していた。

反対に、西洋の浮竹は金銀財宝に執着はしていないが、貴重な魔法書やらエリクサーの材料に金をかけたりするので、しっかりとアイテムポケットにしまいこんだ。

金銀財宝をアイテムポケットに突っ込む西洋の浮竹に、東洋の浮竹が頭を抱えていた。

(カッコいいと思っていた、そっちの俺のイメージが・・・・)

錬金術やら魔法でかっこよく見えた西洋の浮竹は、東洋の浮竹に呆れられているも気づかず、ひひたすら金銀財宝をアイテムポケットにしまいこむのであった。


「あ、宝箱!」

奥の方に、宝箱があった。

見るからに怪しい。

(西洋の俺、気をつけろ。それ、多分ミミックだ!)

「ミミックだからいいんだ」

そう言って、西洋の浮竹はミミックにかじられていた。

「狭いよ暗いよ怖いよ息苦しいよ~~~」

じたばたともがくその姿を見るのは、もう20回目をこえている。

「仕方ないねぇ」

(あ、俺も手伝う)

西洋の京楽と東洋の浮竹に手伝われて、西洋の浮竹はミミックから解放された。

「フレイムランス」

ズドンと、炎の槍が、ミミックを貫く。

ミミックは断末魔をあげて、消えていった。

後には、1冊の魔法書が残されていた。

「雷系の禁呪、ゴッドブレスサンダー・・・すでに習得済みだ」

西洋の浮竹は、興味なさそうにその魔法書を放り投げた。

それを、西洋の京楽がキャッチする。

「まだ、人間界で習得されていない魔法書でしょ?めちゃ高く売れるよ。そしたら、そのお金でまた古代の魔法書の覚えていない民間魔法を覚えられるよ?」

ぴくりと、西洋の浮竹の耳が動く。

「大切にして、高く魔法屋に売ろう」

本当に、現金なものである。

(・・・・やっぱり、なんか違う。おれが思ってた始祖のヴァンパイアはもっと、こう、気高く誇り高くて・・・・・・)

(だから、十四郎?考えたら負けだよ?)

東洋の京楽は西洋の浮竹の反応を見て既に呆れ、頭を抱えている。対して、東洋の浮竹は西洋の浮竹の反応を見てなんだかしょんぼりしている。

そんなこと気にしない、西洋の浮竹であった。

そうやって、西洋と東洋の京楽と浮竹は、3日かけて全65層のS級ダンジョンをクリアしてしまうのであった。

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古城に戻り、しばしのお別れとなるので、戦闘人形にフルコースの料理を作らせた。

そんな御馳走、めったなことでは食べれないので、東洋の浮竹はおいしいおいしいと言いながら、たくさん食べてしまった。

西洋の浮竹と京楽はほどほどに、東洋の京楽も食べてはいるが、幸せそうに食べる東洋の浮竹ばかりを見ていた。

「東洋の京楽も、東洋の俺ばかり見ていないでもっと食え。あと、このワイン年代ものでうまいんだ。飲んでみろ」

ワイングラスに注がれたワインを飲みほして、東洋の京楽は、東洋の浮竹にも美味しいからと、ワインを飲ませた。

(俺は果実酒ほうが好きなんだが)

そう言いつつも、ワインを飲んだ。

(ああ、おなかいっぱいだ)

「口にあったか?」

(すごくおいしかった)

(うん、まぁまぁだったよ)

「それならいい」

「僕がいなくても、戦闘人形が料理してくれるからね。まぁ、最近は僕が作ることもおおいけど、流石に複数の数のフルコースは作れないよ」

「何か、お土産に持って帰るか?」

(じゃあ、果実酒を)

「ああ、一番いいものを選んでやる」

(いや、普通のでいいから!高すぎるのはお前に悪い!)

「面白いことを言う。東洋の俺にあげるなら、最高級のものを与えたくなって当たり前だろう」

(そうなのか?)

一方、西洋の京楽と東洋の京楽は、レシピについて話し合っていた。

(新しいレシピ、渡しておくよ。中華料理がメインだ。こっちの世界にはない料理だと思う)

「ないわけじゃないけど、珍しいから戦闘人形でも作れない。ありがとう、ありがたくもらっておくよ」

そんなやりとりをしていうちに、眠気を催した東洋の浮竹が、東洋の京楽の傍にやってきた。

「どうしたの」

(いつものことだよ。酒に酔ったんだよ)

もたれかかってきた東洋の浮竹を、東洋の京楽はその肩をかした。

(うん・・春水、大好きだ・・・・・・)

寝言でそんなことを言う東洋の浮竹を、自慢するかのように東洋の京楽が西洋の京楽の顔を見る。

(かわいいでしょ、ボクの十四郎)

どや顔を見せる東洋の京楽に、負けてはいられないのだと。

「僕だって!」

「なんだ、京楽」

「愛してるよ、浮竹」

「知っている。だから何だ?」

どうやら、うまく甘いことにはならないようであった。

東洋の京楽はそれを見て、やっぱり自分の浮竹が一番かわいいと思った。

「君の血が欲しい。飲ませて」

「仕方のない・・・・ああっ!」

牙を立てられて、少し乱れる浮竹を、今度は西洋の京楽が東洋の京楽に見せつけた。

「僕の浮竹は、妖艶でエロいんだから」

「待て、なんの話だ」

「なんでもない」

「なんでもないは、ないだろう。こら、京楽!」

西洋の浮竹にハリセンでしばかれる西洋の京楽は、それでもどや顔で東洋の京楽を見るのであった。

東洋の京楽は、ワインを飲みながら。

(お熱いねえ〜)

そんなことを言うのであった。

-----------------------------------------------------------------------

東洋の浮竹と京楽は、古城に一夜泊まると、元の世界へと帰っていった。

「ねぇ、昨日の続きしようよ」

「なんのことだ」

「昨日、吸血したじゃない。その続き。あの二人に見せつけてやりかったけど、片方は眠ってる、もう片方はそんな相手ばっかり見ていて。西洋の僕の浮竹がどんなにかわいくて綺麗で美人でエロいのか見せつけてやりたかったよ」

「そんなこと、考えていたのか」

「ねぇ、続きしようよ・・・・・・・」

「待て、せめて風呂に入ってから・・・・・」

「じゃあ、一緒に入ろう」

一緒に風呂に入り、髪を乾かしてから、京楽はベッドの上に浮竹を押し倒した。

「待て、春水、がっつきすぎだ」

衣服を脱がしてくる京楽に、浮竹が待ったをかける。

「全然そんなことないよ。愛してるよ、十四郎。ああ、悔しいなぁ。東洋の僕に見せつけてあげたい、今の色っぽい浮竹を」

「また、ばかなことを・・・・ああ!」

胸の先端をきつくつまみあげられて、びくんと浮竹は体を反応させた。

「かわいい。十四郎、かわいい」

「あああ!」

体全体の輪郭を確かめるように撫でて、キスマークを残していく。

浮竹のものを口に含むと、浮竹は乱れた。

「やぁああ!!」

じゅるじゅると音を立てて吸い上げてやると、浮竹が甘い体液を弾けさせた。それを味わって飲み干してから、ローションを手にとって人肌までに温めると、指にからめて蕾を解してく。

「あ、あ、あ!」

じゅぷじゅぷと音を立てて、浮竹は京楽の指を受け入れた。

「あああ!」

前立腺をかすめる程度で、わざと触らない。

「あ、もう、春水・・・・・・早く来て」

「十四郎、愛してるよ」

ずちゅりと音を立てて、京楽が侵入してくる。

「ああ!」

そのままごりごりと最奥まで入られて、浮竹は背をしならせてオーガズムでいっていた。

「あああ、ああ!」

「僕のものだ。誰にも、渡さない」

「あ、春水、春水」

背中に手を回してくる浮竹の肩に噛みついて、血を啜ってやると、浮竹は涙を流して喜んだ。

「きもいい・・・・もっと、吸って?」

「いくらでも」

京楽は、抱え上げた浮竹の白い太ももに牙をたてて、吸血した。

「んああああ!!」

同時に、奥をぐりぐりと刺激してやる。

「あああ!」

浮竹は熱を自分の腹にぶちまけていた。

同時に、京楽もまた熱を浮竹の胎の奥深くへ注ぐのであった。

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「浮竹十四郎。私が愛したヴァンパイアマスター。私の主」

「・・・・・・ニィ?」

浮竹は、信じられない顔で、ニィを見つめてみた。

「ニィ、お前は死んだはずだ。何故、生きている」

「藍染という男に、反魂で蘇らせてもらいました。さぁ、愛しい浮竹。私と一緒に行きましょう」

浮竹の背後では、京楽が凄まじい顔で威嚇していた。

「ああ、今のあなたには、血族がいるんでしたね。排除すればあなたは私だけのものです」

「たとえニィでも、京楽を傷つけることは許さい!」

浮竹は瞳を真紅にして、ニィを睨みつける。

「ああ、怒らないで愛しい人。あなたは、私だけのもの・・・・・」

「違う。浮竹は、僕のものだ」

京楽は、瞳を真紅にしながら、ニィとという名の青年に、血の刃を向けるのだった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター22

ニィ・ペルル・シュトレウス。

それは、浮竹が6千年前、2番目の血族として愛した青年の名であった。

反魂するには古すぎる命であったが、魔族の始祖である藍染には可能だった。

墓を暴き、灰を入手して、反魂を行った。

失敗したら、ただのアンデットができあがる。だが、藍染の反魂は完璧であった。

ニィは、この世界に再び命を吹き込まれた。

藍染に血を与えられて、かつて浮竹のただの血族であった頃より、ずっと強くなった。

藍染に洗脳させるような形で、今の浮竹の血族である、京楽を殺すことを最優先としていた。

けれど、ニィにも自我があった。

浮竹を、200年間であったが、愛していた。

一番目の血族は、志波海燕。同じように呪術の力で反魂されて蘇り、そして死んでいった。

ニィもまた、自分もそんな運命をたどるのだろうと分かっていても、愛しい浮竹に会い、愛を囁きたくて、浮竹の住む古城を訪れるのであった。

----------------------------------------

「ニィ、お前は死んだはずだ」

目の前にいる、愛しかった血族を、浮竹は信じられない表情でみていた。

「浮竹十四郎。私が愛したヴァンパイアマスター。私の主」

「違う、ニィ。お前は反魂だろう?もうすでに、一度死んでいるはずだ」

「死んで蘇りました。でも、あなたを愛していることに、変わりはありません」

ニィは、浮竹に向かって一歩足を踏み出す。

「そこまでだよ。僕は京楽春水。6番目の浮竹の血族にして、今浮竹が愛している者」

京楽が、浮竹とニィの間に割って入った。

「・・・・ニィ。お前を蘇らせたのは誰だ」

「魔族の始祖、藍染惣右介」

その言葉に、浮竹は険しい顔をした。

「どうしたのですか、愛しい人」

「俺はもう、お前を愛していない。今俺が愛しているのは、京楽だけだ」

その言葉に、ニィが瞳を真紅にして、京楽を睨んだ。

「この血族を殺せば、あなたは私を愛してくるはずです。あなたに血族は二人もいらない」

ニィは、血の刃で京楽を攻撃した。

「止めろ、ニィ!」

「たとえ愛しいあなたの言葉でも、これだけは譲れません。藍染惣右介から血をもらいました。今の私は、この京楽という血族より強いはずです」

京楽は、自分も同じように血の刃を作り出すと、ニィの作った血の刃を相殺した。

「反魂の身で、浮竹に愛を囁くのは、許さないよ」

「たとえニィでも、京楽を傷るけることは許さない!」

京楽に向かってやってきた、ニィの血の鎌は、浮竹が身につけていた、東洋の妖からもった水晶のペンダントの効果で、黒い蛇を召還して、黒蛇がはじき返してくれた。

「黒蛇・・・・俺たちを、守ってくれるのか?」

黒蛇は頷いて、ニィに巻き付いた。

「なんですかこれは!」

「ニィ、その魂、奪いたくはないが・・・・」

ニィは、血となって巻き付いた蛇から抜け出す。

ニィは、黒蛇に血の刃を向けるが、黒蛇はそれを吸収した。

「黒蛇!」

黒蛇は、少しだけ苦しそうにのたうち回った後、しゅるるると音をたてて、浮竹の影に潜り込む。

浮竹を守護するために。

「退け、ニィ」

「分かりました。今日は、私が蘇ったことを、あなたに知らせておきたかっただけです。時間はいくらでもあるのです。私の今の使命は、血族の京楽春水を殺すこと。それが私を蘇らせた藍染惣右介の願いであり、私の願いであるのですから」

「ニィ、せっかく授かった命だ。俺のことは忘れて、血の帝国で誰か血族をつくり、違う誰かを愛して生きてみないか?」

「浮竹。あなたは酷いことを言いますね。最初の最初にこの命に愛を与えてくれたのはあなたです。私は、あなたがいいのです。浮竹。あなたを、愛しています。狂おしいほどに」

「ニィ・・・・」

浮竹は、ニィに歩み寄ると、唇に唇を重ねた。

「浮竹!?」

「血族を解いた。盟約を、ここに破棄する」

ニィは、悲しそうに泣いた。

「私を血族から、外すというのですか・・・」

「俺は、その時に生きている時代に一人しか血族をもたない。ニィ、お前は6千年前に死んでいる。ここにいるニィ、お前は俺にとって、過去の亡霊なんだ」

ニィは、青い瞳を瞬かせて、血の渦を作り、消えていく。

「次に会った時は、京楽春水を殺して、あなたを私のものにしてみせます。愛しています、浮竹・・・・・」

そう言って、ニィは浮竹と京楽の目の前から、忽然と姿を消してしまった。

「ニィ・・・・・」

浮竹は、唇に手で触れた。

そんな浮竹を、背後から京楽が強く抱きしめる。

「君は、僕のものだ・・・・」

「ああ、お前のものだ」

「僕以外にキスするなんて、だめじゃない」

「血族を破棄するためだ。他意があって、やったわけじゃない」

「それでも、僕は嫉妬の嵐でどうにかなりそうだよ」

瞳を真紅にする京楽に、浮竹は口づける。

「んっ」

舌を絡め合わせながら、貪りあった。

「血の帝国へ行こう。いつ、ニィが現れてもいいように。ニィは藍染の血をもらっている。ブラッディ・ネイの宮殿で、しばらくの間過ごそう。ブラッディ・ネイの庇護下にいたほうが安全だ。白哉や恋次君、ルキア君、一護君、冬獅郎君の力もかりたい」

「藍染の反魂は、そんなに厄介なの?」

「ああ。ただの反魂じゃない。京楽が一人になる時が一番危険だ。血の帝国で、常に誰かに傍にいてくれるように頼もう」

「君だけじゃ、だめなの?」

「俺は、ニィを愛していた。その想いが、ニィを殺すことを躊躇ってしまう気がする。俺の力だけではだめだ。俺たちには、仲間がいる。窮地の時は、お互い頼ってもいいだろう?」

「そうだね。血の帝国にいこうか・・・・・」

京楽は、乗り気ではないようであったが、それで浮竹が安心してくれるならと、仲間たちと一緒に過ごすのもいいと思うのであった。

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「ということで、しばらく世話になる」

「OKOK兄様。僕の宮殿に、好きなだけ居ていいよ。血族の京楽も、一緒に守護してあげよう」

ブラッディ・ネイは相変わらず玉座に腰かけながら、ロゼといった寵姫を数人侍らせていた。

「白哉に恋次君、ルキア君、一護君、冬獅郎君の力も借りたい」

皆、頷いた。

「兄にはいろいろと借りがある。返せる、好機だ」

「俺で役に立つなら、白哉さんもこう言ってるし、力を貸すっす」

白哉と恋次は、そう言って浮竹を見た。

「浮竹殿とその血族である京楽殿のピンチなら、私も黙っているわけにはいきません」

「6千年前の恋人が敵とか・・・・どんだけ長生きしてるんだ、浮竹さん」

「ふん、仕方ない。俺も、力を貸してやろう」

ルキアは乗り気で、一護は浮竹の年齢が気になるようで、冬獅郎はいやいや力をかしてくれるようだった。

「ああ、ちなみに一護クン、浮竹は8千歳だよ」

「は、8千・・・・・」

あんぐりと口をあけたまま、一護は固まった。

「兄様と京楽には、ボクの後宮に住んでもらうよ。あそこが一番強い結界を張ってある。不審者の侵入も、すぐに分かるはずだ」

浮竹も京楽も、嫌そうな顔をしていた。

「仕方ない、京楽を守るためだ」

「ああ、夢みたい。兄様を後宮に入れれるなんて・・・」

「ブラッディ・ネイ、君の欲望を満たすために、浮竹は後宮に入るんじゃないからね。あくまで、僕を守るためなんだから!」

「うるさいね、分かってるよひげもじゃ。ひげもじゃなんて後宮に入れたくないけど、仕方ないから入れてあげる」

そうして、浮竹と京楽は、夜は後宮に泊まり、昼は宮殿で過ごすのであった。

浮竹は、暇を持て余して白哉とチェスをしていた。

白哉は皇族王であり、この血の帝国の摂政ではあるが、しばらく休暇をとったらしい。

全ては、始祖の浮竹とその血族京楽のためであった。

「チェックメイト」

「ちょっとたんま、白哉」

「往生際が悪いぞ、浮竹」

そこへ、京楽がやってきた。

「浮竹、助けてえええ」

京楽は、あろうことか女体化していた。身長は180センチはあろうかという、黒髪に鳶色の瞳をした美女であった。

「ぶばっ」

浮竹は、飲みかけの茶を白哉の顔面に吹きかけていた。

「・・・・」

「あ、すまない白哉。その姿はどうしたんだ、京楽」

「ブラッディ・ネイに、せめてひげもじゃも見れる姿になれとか言われて、変な魔法かけられた。1時間で元に戻るらしいけど・・・ブラッディ・ネイの寵姫たちにいろいろ服を着せられたりして、逃げてきた」

「ブラッディ・ネイめ。俺に使うつもりで、京楽を実験台にしたな・・・・・」

怒った浮竹が、ブラッディ・ネイに抗議すると、浮竹も女体化させられた。

「うわあああ!?」

「わあ、兄様美人。今すぐ、ボクとベッドで熱く抱擁しあおう」

浮竹は、逃げ出した。他の仲間にそんな姿を見られたくないので、後宮に戻る。

浮竹も、京楽と一緒に後宮の寵姫たちに、いろんなドレスを着せらて、着せ替え人形にさせられるのであった。

やがて1時間が経ち、元の姿に戻ると、用意されていた衣服を着た。浮竹は中世的な衣服を着せられていて、美貌によく似合っていた。京楽は、守護騎士の制服を着せられていた。

「あ、なんかいいかも。姫である浮竹を守る守護騎士、京楽参上なんちゃって」

「少し、動きにくい」

「着替える?」

「いや、ブラッディ・ネイがうるさそうだ。もっと女性的な服を着せられてしまう。このままでいい」

血の帝国に来たはいいが、着替えとかもってくるのを忘れていた。

いつまでも同じ服というわけにもいかず、ブラッディ・ネイが用意した服を着る羽目になった。

最初はドレスを出されて、浮竹は切れた。仕方なく、中性的な服をもってきてくれた。

中性的な服は、浮竹によく似合っていた。

後宮の寵姫たちが、浮竹を取り囲んで、化粧を施す。

なんでも、秘伝の魔法書をあげるから、代わりに化粧させろと言われて、しぶしぶ引き受けたらしい。

「本当に、君は魔法書が好きだね」

「似合わないだろう。化粧なんて」

「いいや、凄い似合ってる。君と今すぐ結婚式を挙げたいくらいだ」

「結婚式は、血の帝国では存在しないからな」

「そうなの」

浮竹は、白い髪を結い上げられ、薄く化粧を施されて、中性的な衣服を着せられているせいで、寵姫の一人に見えた。年はいっているが。

「兄様、写真、写真とらせて」

「ブラッディ・ネイ。あまり俺で遊ぶなよ」

「兄様に怒られたから、もう女体化の魔法は使わないから。だから、写真とらせて」

「一枚だけだぞ」

「兄様、愛してる!」

写真をとって、それを大事そうにブラッディ・ネイはしまう。

「ああ、兄様がボクの後宮にいて、ボクの愛に応えてくれるなんて」

「いつ、俺がお前の愛に応えた」

「いやだなぁ、兄様。後宮入りをしたことは、つまりは兄様はボクのもの・・・・」

守護騎士の姿をした京楽が、額に血管マークを浮かべて、ブラッディ・ネイに血の刃を向ける。

「浮竹は、僕のものだよ。ただ、今は僕が狙われているから後宮にいるだけで、ブラッディ・ネイのものになったわけじゃないからね!」

「ちぇっ、知ってるよひげもじゃ。本当に、守護騎士の制服きてももじゃもじゃだね。いっそ剃ったら?」

「だめだぞ、京楽。俺は、体毛の濃いお前が好きなんだから」

「浮竹、僕は君の守護騎士になりたい」

「俺がお前の守護騎士になりたい」

そんな言い合いする二人を放置して、ブラッディ・ネイは、最近お気に入りの寵姫の元へ向かうのであった。

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ピリリリリ。

警報が鳴り響く。

後宮に、侵入者が出たのだ。

それは、ニィだった。

ブラッディ・ネイの結界を破り、後宮に侵入すると、眠っていた浮竹と京楽を発見して、京楽をその手にかけようとした。

けれど、東洋の妖にもらった水晶のペンダントが反応して、黒い蛇が現れて、ニィに巻き付き、浮竹と京楽を起こした。

「黒蛇、助かった!京楽、この場所では寵姫たちに被害が出るかもしれない。宮殿に急ごう。ブラッディ・ネイたちがみんなを集めていてくれるはずだ」

浮竹は、京楽の手を握って、後宮の庭を通り過ぎる。

背後から、血の刃が襲い掛かってきた。

それは、浮竹を傷つけず、京楽だけを斬り裂いた。

「京楽!」

「大丈夫、掠っただけだよ。みんなの元に急ごう」

ニィは、ゆっくりと獲物を追い詰めていく。

それに追い立てられるように、浮竹と京楽は逃げた。

宮殿では、皆が揃っていた。

「愛しい僕の浮竹。そんなに、この血族の京楽のことを愛しているんですか?」

「そうだ。ニィ、悪いがお前は死んでもらう」

逡巡していたのだが、ずっと後宮にいるわけにもないかない。

災いの種を摘む必要があった。

「できるのですか、あなたに。私を愛したことのあるあなたに、私を殺すことが可能ですか?」

「ニィ・・・・」

白哉が、ニィ向かって式を放った。

それは、ニィが操る炎の魔法で燃やされてしまった。

「ニィは、炎を操る。元々、俺の炎の魔法はニィに教えてもらったものなんだ。気をつけろ!」

「ドラゴンブレス!」

恋次が、氷のブレスを吐くとニィはそれを血のシールドで防いだ。

「ええい、いけ、一護、冬獅郎!」

ルキアは二人に補助の魔法をかける。

一護は得意の雷の魔法を唱えながら、魔剣でニィを斬り裂いた。

ニィは、すぐに傷を再生させた。

「ちっ、すぐ再生しやがる」

「今度は俺が行く!」

冬獅郎が、氷の精霊、魔狼フェンリルを召還すると、その爪と牙で引き裂いた。

致命傷は負わせれなかったが、傷の再生速度は鈍くなっていた。

「京楽を・・・京楽を殺しさえすれば、私はまた浮竹に愛してもらえるんです」

ニィは、血の槍を複数作りだして、京楽に向けて放った。

浮竹の影から踊りでた黒蛇が、京楽の盾になる。

他の血の槍は、浮竹が受け止めていた。

「ニィ・・・・確かに、愛していた。だが、今は!」

ザシュリと、ニィの体を、浮竹が自分の血で作り出した剣で、斬り裂いた。

「ファイアロンド!」

浮竹が、炎の魔法をニィに向かって放つ。

その瞬間を狙って、みんなが一斉に攻撃を開始する。

もう、ニィには反射することもシールドを張ることもできなかった。

「俺には、仲間がいる。京楽を守るための仲間が」

「愛しい人・・・・・どうか、僕のものになってください」

体を穴だらけにしたニィは、傷を再生させることもなく、浮竹に歩み寄っていく。

「危ない、浮竹!」

それは、一瞬だった。

ニィが、浮竹の心臓めがけて、血の槍を突きだしたのだ。

京楽がかばって、腹に血の槍が刺さる。

「ぐっ」

「京楽!」

「今、回復を!」

ルキアが、すぐに近寄って、浮竹の傷の回復をしてくれた。

「ニィ・・・君、さっき浮竹を殺そうとしたね?」

「ニィ・・・許さない。俺の血族を傷つける者は、許さない」

浮竹は、血を暴走させた。

「兄様!なんて魔力だ」

仲間たちは、やや遠巻きに浮竹とニィを取り囲む。

「ニィ・・・・・愛していたよ。せめて、俺の手で、おやすみ」

ニィのコア・・・・心臓の位置にある、ニィの灰がつまった小瓶を、浮竹は血の刃で壊した。

「あああ・・・・・浮竹、愛しています。あなたに、永遠の愛を・・・・・」

ニィは、完璧は反魂ではあるが、コアを破壊されたら死んでしまう。

浮竹は、更に魔法を叩き込んだ。

「フェニックス・ファイア!」

不死鳥フェニックスの炎。

それは、死と再生を司る。

ニィがいた場所は、黒焦げになった灰が残された。

灰から芽が出て、成長して花を咲かせる。

その植物は、もうニィの灰が利用されないように、ニィの灰を全て吸収して、その場一面に花を咲かせた。

桔梗の花であった。

花言葉は「永遠の愛」

「さよなら、ニィ。愛していた・・・・・」

浮竹は、涙を流しながら、空を見上げた。

ニィ・ペルル・シュトレウス。

それは、浮竹が6千年前、2番目の血族として愛した青年の名である。


「京楽、大丈夫か!?」

「うん、ルキアちゃんお陰で傷は癒えたよ」

予想していた通り、ニィの血には藍染の血が混じっていた。普通の再生だと、間に合わない。

「ルキア君を、みんなを呼んでおいて正解だった。みんな、ありがとう」

「うん、ありがとね。特にルキアちゃん」

「そんな、京楽殿!」

京楽と浮竹に頭を撫でられて、ルキアは真っ赤になって、一護の背後に隠れてしまった。

「恥ずかしいです」

「白哉、恋次君、それに一護君と冬獅郎君もありがとう」

「兄の危機を救えたなら、それでいい」

「俺、あんまり役に立たなかったっすけど」

「俺も、活躍はできなかったけど、京楽さんが無事でよかった」

「ふん、もうこんな問題で、俺や一護、それにルキアを呼ぶな」

冬獅郎は、一人辛口だった。

「じゃあ、俺たちは古城に戻る。また、会おう」

「僕も、浮竹と一緒に戻るね」

「兄様、また遊びにきてね!いつでも待ってるから!」

ブラッディ・ネイの言葉を聞いて、浮竹と京楽は、桔梗の花が咲き乱れる宮殿の庭を見渡してから、手を繋いで歩きだした。

「ニィか。悲しい子だったね」

「ああ。俺の血族だったせいで、藍染なんか利用されてしまった」

藍染は許せない。

そう思う、二人であった。













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始祖なる者、ヴァンパイアマスター21-2


3日目の夕方。

ようやく、70階層のラスボスの扉の前にやってきた。

流石に疲れたので、魔女乱菊から買った、疲労回復や魔力回復のポーションを飲む。

「ポーションでお腹がちゃぷんちゃぷんだ」

「僕も」

「オレはなんもしとらんから、平気やけど」

平子は、モンスター退治には一切手を出していない。

せいぜい、珍しい古代の遺物や魔道具がドロップされたとき、それをもらっていいかと浮竹に尋ねて、了解をもらって自分のアイテムポケットに入れていた。

アイテムポケットの存在を知った平子は、自分も欲しいといいだして、浮竹が古城のものおきに使っている部屋にあったアイテムポケットを、平子にあげたのだ。

「オレが倒そか?」

「いや、俺と京楽で倒す。どうしても危なさそうなら、加勢してくれ」

「了解やで」

70階層のボスはドラゴンで、ドラゴンはドラゴンでも、龍の、東洋の神龍だった。

状態異常の憤怒にかかっていて、話し合いでの解決は無理そうだった。

「メテオストライク!」

浮竹が、平子の魔法を覚えたので、隕石を降らせた。

神龍は、鱗を焼かれ、血が出ても構わず攻撃してきた。

「龍だと、ドラゴンのように弱点の逆鱗がないな。どうやって倒す?」

「僕に聞かないでよ。浮竹の魔法で倒したらいいんじゃないの?」

「じゃあ・・・・ヘルインフェルノ!」

神龍は、炎の魔法を反射してきた。

業火をなんとか浮竹と京楽がシールドを張って防ぐ。

「京楽、これをやる!」

浮竹は、アイテムポケットから、一振りの輝く聖剣を取り出した。

「ドラゴンキラー。竜族と龍やドラゴンに大ダメージを与える、特化の剣だ」

「そんなものがあるなら、初めから出してよ!」

「いや、正直ここまで苦戦するとは思わなかった」

浮竹も京楽も、もう2時間以上は戦闘していた。

神龍は傷つき、ボロボロになりながらも倒れない。傷が再生することはないが、浮竹に巻きついて絞め殺そうとしたり、京楽を氷のブレスで攻撃したりしてきた。

普通のドラゴンとは違い、タフではないが、呪術に近い魔法をかけたきた。

それは、浮竹のもつ、東洋の妖からもらったお守りの効果で、相手に反射した。

呪いの反射のせいで、随分と動きは鈍くなったが、それでも強敵だった。

ある意味、竜族より厄介だ。

京楽は、ドラゴンキラーに闇属性を付与して、神龍を切った。

面白いようによく切れた。

スパスパと鱗ごと肉を切っていく。

「とどめだよ!」

京楽は、ドラゴンキラーで神龍の頭部を刺し貫いた。

そこに、浮竹が魔法を与える。

「ゴッドブレスサンダー!」

神の息吹の雷。

禁呪であった。

全身を焦げさせて、神龍はズドオオオンと音を立てて倒れた。

「やぁやぁ、どうなることかと思ったんやけど、倒せたな。お疲れやで、二人とも」

浮竹と京楽は、荒い息を吐いていた。

神龍だけあって、普通の竜族よりも強いかもしれない。

体力と魔力を限界にまで使い込み、浮竹は魔力回復のポーションを出すと、京楽にも与えた。

「ふう。素材にはなりそうだが、素材としては大分傷んでしまったな」

とりあえず、覚えたばかりの、おいしくドラゴンの肉を加工する魔法を使ってみた。

神龍の肉は綺麗に捌かれて、つやつやと輝いていた。

鱗は、焦げた部分を残して、アイテムポケットに入れる。頭部と爪はそのままアイテムポケットに入れた。

血は、自分の血を操る魔法の応用で、神龍の血を特大のポーションの瓶に入れて蓋をして、それもアイテムポケットに入れた。

「さぁ、踏破だ!最後の財宝の間へいこう!」

「お、お宝か。ええな」

「何があるんだろうね?」

財宝の間をあけると、そこには特大のミミックがいた。

「ミミックだ!ミミックキングだ!」

「ちょっと、浮竹、危ないよ!」

京楽の制止を振り切り、浮竹はミミックキングに近寄って、ペロリと飲みこまれてしまった。

「浮竹!」

「ちょ、食われれてどないするんや!」

「暗いよ怖いよ生暖かいよでも広いよ~~~。あ、普通に呼吸できる。なんだ、ミミックキングの体内はこうなっているのか」

ミミックキングの体の中は、財宝で溢れていた。

「アイシクルランス」

浮竹は、ミミックキングを内側から、氷の槍の魔法で刺し貫くと、ミミックキングは悲鳴をあげて、お宝を残して消えていった。

「凄い財宝やなぁ。ちょっと欲しいわ」

平子は、ドラゴンでもあるので、金銀財宝が好きだった。

「金銀財宝は好きなだけもっていっていいぞ」

「ほんまに?じゃあ、遠慮なく」

平子は、アイテムポケットに欲しいと思った宝石や金細工の品を入れていく。

20冊はあろうかという、魔法書を、浮竹は目を輝かせてみていた。

「古城でじっくり読もう。今は、回収しておこう」

数もあるので、浮竹はその場で魔法書を読まなかった。

平子が、この世界で活動できる時間のタイムリミットがこようとしていた。

「古城に戻ろか。空間移動の魔法は得意やねん。ただし、一度行ったところにしか行かれへんけど」

ダンジョンの財宝の間の財宝を、全てアイテムポケットに入れて、3人は古城に帰還した。

「送別会をしよう」

「いや、気を使ってくれなくていいんやで?十分楽しかったし」

「もう、会えないんだろう?せめて、送別会くらい、させてくれ」

浮竹は戦闘人形に命令して、フルコースの料理を作らせた。

京楽は、デザートを作りに、キッチンへと行ってしまった。


「ほんまはな、ルシエードが子を放置して世界を渡ってきたって知って、残された子はどんなにひねくれてるんやろと思うたんや。でも、素直でいい子に成長してたようで、オレも安心やわ」

「父は、俺のことを誰かに話すのか?」

「時折やな。愛しい我が子を、違う世界にわざと置いてきたって、たまに寂しそうな顔すんねん」

「わざと置いてきた・・・捨てられたんじゃなかったのか?」

「ちゃうちゃう。その世界の者は、その世界から出られへんねん。あくまでやけどな。何かで繋がっていないと、世界を渡り歩くことなんてできへん。神々は、自由に世界を渡り歩くけど、浮竹はこの世界に存在しとるやろ?神にでもならな、移動できへんねん」

浮竹と京楽は、夢渡りを利用して、時折東洋の浮竹と京楽と会うが、それはあくまでお互の魂が繋がっているからできることであって、普通世界を行ったり来たりなどできないのだ。

それこそ、神にでもならない限り。

「そうか・・・俺は、捨てられたんじゃなかったのか」

浮竹は、8千年前を思い出す。

父として慕った、創造神の姿はうろ覚えであったが、まだ愛されているのだ。

「浮竹のこと、たまに自慢しとったよ。よくできた子やて」

「そうか」

それ以上、浮竹は聞いてこなかった。

もう、会うこともできないし、8千年前、離別したことで心の区切りはついている。

「そうだ、これを、創造神ルシエードに渡してくれ」

「これは?」

「桔梗の花を、永久に解けない氷で封じこめたものだ。花言葉は永遠の愛」

ホロリと。

平子が、涙を流した。

「ほんま、ええ子に育ったんやな」

「泣くなよ、照れくさいだろうが」

「ちゃんと渡しておくわ」

「ああ」

やがて、夕食ができて、送別会が行われた。

3人は食べて飲んで騒いだ。

フルコースの料理の後で、京楽が作ったという苺のシャーベットと、チョコレートアイスクリームを食べた。

「京楽って料理できるねんな」

「昔は、からっきしだめだったけどね。浮竹が喜んで食べてくれるから、それが嬉しくて僕もいろいろ作るようになったんだよ」

デザートを食べ終えて、バルコニーで紅茶を飲みながら、平子のいるサーラという世界について聞いた。

精霊ドラゴンを信仰する宗教があり、浮竹と京楽が存在するこのアビスの世界と同じように、魔法と剣の世界だった。ただ、精霊科学なるものが進歩していて、文明度はサーラの世界のほうが進んでいるようであった。

「じゃあ、オレはそろそろ元のサーラの世界へ戻るわ。御馳走になったし、いろんなもん見せてもろたし、財宝までもろたし・・・・ほんま、世話になったわ」

「帰るのか・・・・名残惜しいな。もう会えないなら、余計に」

「まぁ。なんらかの方法見つけたら、またこの世界にくるかもしれんから。そん時は、また構ってやってや」

「じゃあ、またね」

京楽が手を振った。

平子の体は少しずつ、透けていった。

「ルシエードに!」

「なんや?」

「父に、元気でいてくれと、伝えてくれ」

「分かった、伝えとくわ」

そう言って、平子はすーっと、この世界、アビスの世界から消えてしまった。

----------------------------------------------------------


「めっちゃええ子に、育ってたで?」

創造神ルシエードは、平子の言葉に無言で耳を傾けていた。

「これ、渡すように頼まれてん」

氷に封じられた、桔梗の花を手渡した。

「花言葉は、永遠の愛やって」

「私が、魂に刻んだ愛の呪いを、あの子は克服しているだろうか」

「してるんとちゃう?血族作って、楽しそうに暮らしてたで。S級ダンジョンとかいうとこに連れていかれて、冒険もしたんや」

「そうか・・・・・・」

それきり、創造神は黙り込んだ。


「藍染というたか。あいつには要注意や。神になろうとしとる。最悪なことに、神になる資格をもってたんや」

平子が、嫌そうに藍染の姿を水鏡に映し出す。

「あれが神になったら、アビスの、浮竹のいる世界が危ないねん。このサーラの世界もあやうい」

始祖魔族。

神になれる最低条件は、神に作り出された始祖であること。

「まぁ、同じ意味でも浮竹も神になろう思えば、なれるねんけどな。存在を、物質からアストラルに変えなあかんけど。まぁ、血族の京楽がいれば、大丈夫やろ。神なんて存在にならんわ」

星の精霊ドラゴンである平子は、神と呼ばれているが、実際は神とは少し性質を異なっている。

神々は、体がアストラル体、星幽体でできている。物質世界の存在ではない。

平子は物質世界の存在で、アストラル体ではなかった。

「あと、元気でいてくれって、言うとったで」

話は聞いてはいるが、何も答えようとしないルシエードは、相変わらずであった。

何を考えているのか分からない神であった。

サーラの世界は、神で溢れえている。

でも、直にまた違う世界を作るために、一度神界に戻るかもしれない。

平子は、世界を渡ることは召還があれば可能だが、神界にはいけなかった。

あそこは、アストラル体でないと存在できない。

「魔人ユーハバッハ・・・。アビスの世界で、唯一アストラル体となり、神界へ侵攻してきたような奴にならんかったら、いいねんけどな・・・・」

--------------------------------------------------------------

平子が元の世界へ帰り、1カ月が経過した。

何事もなく、また平和な毎日がやってくる。

藍染が動く様子もなく、血の帝国もブラッディ・ネイと白哉の統治で安定している。


「あああ!」

真昼から、京楽は浮竹を貪っていた。

「んあああ!」

浮竹の体を抉って揺さぶった。

浮竹は、水晶のペンダントを窓から入ってきた光にきらめかせると、一度ガクリと意識を失った。

「十四郎、十四郎?まだまだ睦み合ったばかりだよ。意識を失うには、早すぎるよ?」

ぺちぺちと浮竹の頬を叩いて意識を取り戻させる、京楽はまた突き上げた。

「ああ!」

浮竹は、与えられる快感に恍惚とした表情をしながらも、涙を流していた。

「そうだ、せっかくだし、作り置きしておいたチョコレートアイスクリーム使おうか?」

「え、春水?」

浮竹は、不安そうな顔で京楽を見上げた。

戦闘人形に命令して、冷凍庫からチョコレートアイスクリームをもってこさせる。

それを、浮竹の体に塗っていく。

「冷たい!」

「美味しくなって?」

体温で溶けていくアイスクリームを舐めとっていく。

胸の先端と股間に特にアイスクリームを塗られて、体温で溶けたアイスはシーツに染みを作った。

「ああん」

アイスを味わうように、胸の先端にしゃぶりついて、舐め転がした。

「ああ、甘いね。君の体はいつも甘いけど、更に甘い」

「やあああ!」

今度は、京楽はアイスでまみれた浮竹のものを舐めとっていく。

「んあああ!」

刺激に敏感に反応して、浮竹は喘いだ。

硬く勃ちあがった浮竹のものに舌をはわす。

「ああ、全部溶けちゃったね。でも、甘いからいいや」

浮竹の体液は甘い。

血族には、そう感じれるのだ。

実際、神の愛の呪いを受けているその体液、他の生物には甘くかんじれた。

「君の血の一滴ですら、他の者にあげたくないよ」

鈴口を刺激して、爪をたててやると、浮竹は我慢できずに精液を出していた。

それを、当たり前のように口にで受け止めて嚥下する。

「ああ、甘いね。アイスのせいもあるけど、それがなくても、君の体液は甘い」

「あ”あ”」

京楽は、あろうことか浮竹のものに噛みついて、血を啜った。

血を吸われる快感に、精液が噴き出る。

それも飲み干しながら、うっとりとなった。

「甘い・・・・ほら」

口移しで浮竹に、体液と血が混じったものを口に含ませた。

「甘い・・・・」

「ね?」

「やあ、甘いからって、そんなとこに、牙をつきたてないでぇ」

浮竹は、京楽の髪を掴んだ。

でも、その掌には力はこもっていなくて、ただ京楽の黒い髪を掴むだけだった。

京楽は、再生していく傷口を舐めながら、浮竹に再度口づけた。

「んん・・・・ふあっ」

口の中はまだ甘かった。

舌と舌を絡み合わせて、銀の糸を引いて舌が去って行く。

「ああ!」

ごりごりっと、最奥まで挿入されて、浮竹はオーガズムでいっていた。

「やあああ!」

いってる最中に、今度は鎖骨に牙を立てられた。

「あああ、やああ、吸血と一緒はやあっ!」

いっている最中の吸血行為は、大きな快感となって浮竹を襲う。

「やあああ!」

精液を出しつくして、だらだらと先走りの蜜を零していた浮竹は、ぷしゅわっと、音をたてて潮をふいていた。

「やだ、やだ、やだ、見ないでぇ」

「どうして?十四郎が気持ちよくなっている証拠じゃない」

「やあああ、女じゃないのに、こんなのやぁっ」

「君が女の子なら、何度も孕ませてるだろうね。でも、男の子でよかったね?僕の子を孕まないですむ」

「ああ、や、お前の子種が欲しい・・・・」

「欲張りだね?孕めないのに、僕の精液欲しいんだ」

「あ、あ、孕むから、だから、ちょうだい、春水のザーメン」

「たくさんあげるよ。君を犯しつくしてあげる」

京楽はそう言うと、浮竹の中を抉り、最奥に精液を注ぎ込んでいた。

「あ、くる、お前の、熱いのが・・・ひあ!」

浮竹は、胎の奥で京楽のものを受け止めながら、唇を舐めた。

ああ、本当にこの子は。

この生き物はなんて、美しく、エロいんだろうと、京楽は思った。

サキュバスやインキュバスも目じゃない。

「エロいね、君は」

「あああ!!」

再度奥に熱を放ってやると、浮竹は満足そうに胎をなでた。

「春水ので、胎がみたされて、こんなに膨らんでる」

外からでも、浮竹の腹部が膨らんでいるのが分かった。

「全部、お前のだ。ああ、このまま孕めたらいいのにな」

少しぽっこりとしてしまった腹部を大事そうに撫でて、浮竹はうっとりしていた。

「出し過ぎだな、春水」

「そうだね。もう出ないよ」

漏れ出さないように栓をしていたが、硬さがなくなった京楽のものと蕾の間から、京楽が出した精液が大量に逆流してきた。

「あああ、もったいない、流れてしまう」

浮竹は、まるで子を流産してしまったような気もちになっていた。

「また、今度いっぱいあげるから。ね?」

京楽が、浮竹の頬を手で撫でる。

その手に手を重ねて、浮竹は微笑んだ。

「愛してる、春水」

「僕も愛しているよ、十四郎」

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魔国アルカンシェルで、藍染は反魂を完成させた。

「お前の名は?」

「ニィ・ペルル・シュトレウス。浮竹十四郎の、2番目の血族です」

「浮竹十四郎を、愛しているかい?」

「愛しています。私の、最愛のひと」

「今、浮竹十四郎は、6人目の血族を作り、その者を寵愛している。嫌だとは思わないか?」

「思います」

完全なる反魂で蘇ったニィは、瞳を真紅にした。

「私は、十四郎を取り戻します。力をください。その血族を殺す力を」

藍染は、ニィに自分の血を与えた。

「さぁ、行っておいで。愛しい浮竹の血族を殺しに」

浮竹を屠れないなら、その血族である京楽を屠り、嘆き悲しんで休眠させればいいのだ。

浮竹が泣き叫ぶ様を想像して、満足げに藍染は瞳を閉じた。












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始祖なる者、ヴァンパイアマスター21

星の精霊ドラゴン。

それはサーラという異界に存在する、星の精霊とドラゴンの間に生まれたハーフ。

通称、星の精霊ドラゴンと呼ばれ、その世界で神として崇められていた。

「創造神ルシエード」

星の精霊ドラゴンは、親しき友人の名を呼んだ。

創造神ルシエードは、自分を召還しようとしている、他の神によって生み出された魔族を、冷めた瞳で見下ろしていた。

「召還には、応じひんのか?」

「私が作った世界は、もう私の手を離れている。あの世界に戻ることはない」

「子を・・・寵児がいるんやろ。始祖のヴァンパイアの。お前さんが魂に愛を刻んだせいで、死ねない、かわいそうな子が」

「あれは私と同じ絶対存在。絶対者。世界を導く者。世界の中心」

「では、オレがお前さんの代わりにその召還に応じるわ。お前さんの作った世界を、見てみたいんや」

星の精霊ドラゴンは、そう言って、世界を渡った。

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「醜い国やなぁ」

星の精霊ドラゴンは、魔族の国にあった。

藍染の言葉など無視して、ただそこに在った。

「星の精霊ドラゴンよ!始祖ヴァンパイアを滅ぼせ!」

藍染は、自分を魔族の神だと思っていた。星の精霊ドラゴンを、自分の召還に応じたのだから、言うことをきくのは当たり前だと思っていた。

「醜いわ。オレは、お前さんの召還に応じたんやない。我が友の子を、その世界を見たいから異界よりきただけで、ただの冒険者や」

「星の精霊ドラゴン、神であるならば、神の子を殺せるはず」

藍染は、狂った瞳で星の精霊ドラゴンを見つめていた。

「そういうお前さんも・・・いや、神に作られただけで、神と同じように作られた神の子ではないんか。絶対存在がある限り、お前さんは永遠に神になれんな」

「何を言う。私は神だ!」

「神の子に一度封印されておきながら、神を名乗るんかい。笑止」

「星の精霊ドラゴンよ。始祖の浮竹を殺せ」

「何度も同じことを言わせるなや。オレにその気はないねん」

星の精霊ドラゴンは怒り、天空を狂わせて星を落とした。

メテオストライク。

この世界では、そう呼ばれている禁呪。

星の精霊ドラゴンは、翼を広げた。

優に5メートルあるだろかという、白い純白の羽毛の翼だった。

藍染は、星落としをくらい、体をぐしゃりとつぶされていた。

でも、不死なので死なない。

始祖は不老不死。

厄介であるなどと、藍染は思ったことはない。神なのだから、当たり前だと思っている。

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星の精霊ドラゴンは、友人の子がいる古城にやってきて、扉を開けた。

そこは、煌びやかな世界だった。

黄金のハニワが並んでいたのが気になったが、調度品やシャンデリアが美しい、中世の佇まいを模倣した城だった。

「誰だ、お前は」

古城の主が、真紅の瞳で睨んできた。

「ちょと浮竹、やっぱ黄金のハニワなんて並べるから、変な人が・・・」

クスリと、星の精霊ドラゴンは笑った。

「オレは星の精霊ドラゴンの平子真子いうねん。お前さんの父、創造神ルシエードの友や」

その言葉に、浮竹は驚くのと同時に威嚇した。

「そんな高次元な存在が、俺になんの用だ」

「いや、ただ遊びにきただけやねん。害意はないで?その水晶のペンダントで、分かるんやろ?」

浮竹は、水晶のペンダントか一向に濁らないので、敵対心を解いた。

「平子真子といったな。我が父の友人であるならば、客人だ。心から、もてなそう」

そう言って、浮竹は京楽を連れて、古城の奥にきえてしまった。

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平子は、浮竹と京楽と酒盛りをはじめていた。

「君、飲めるほうだね」

「オレは酒に強いほうなんや」

「俺は、酒はあまり強くない。だからいつも、果実酒かワインだが、二日酔いするまでは飲まいはずなんだが、今日はなんだかたくさん飲めそうだ」

「オレには星の加護があるんや。お前さんたちにも与えとるで?」

「どんな効果だい?」

「うぃ~。まだまだ飲めるぞー」

酔っ払った浮竹を介抱しながら聞くと、平子は真面目な顔で。

「頭上に隕石が落ちひん加護や。オレが怒ると、何故か隕石が落ちてくるんや」

京楽は、ややびびりながら、聞いた。

「僕たちに、怒ったりはしないよね?隕石なんて、流石の僕や浮竹でも防ぎきれるかどうか」

「いや、浮竹には防げるやろ。我が友の子、絶対存在。それは果てしなく神に近い証や」

「浮竹って、やっぱり創造神ルシエードの子とか言われてるし、神様に近いの?」

「近いが、あくまでヴァンパイアや。神にはなれへん」

それを聞いて、京楽は安堵のため息を出した。

「浮竹が神様になったりしたら、僕のものじゃなくなっちゃう」

論点はそこかい。

平子は、つっこみたいのを我慢していた。

「星の精霊ドラゴンって何だい?」

京楽が、自分の膝枕で眠ってしまった浮竹の白い髪を撫でながら、平子に聞いた。

「星の精霊と、ドラゴンの間に生まれたハーフやから、星の精霊ドラゴンと呼ばれとるだけで、ドラゴンの能力を有した精霊やと思えばいい」

「ふーん」

「むにゃ・・・京楽、愛してるぞ」

「おーおー、お熱いこって」

「僕も愛してるよ、浮竹。ちょっと、浮竹を寝室に寝かしつけてくるよ」

「オレも行くで」

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「あ?ええと、なんだ?」

浮竹は、目をあけると裸だった。

隣に裸の京楽がいた。そこまではよかった。

なぜか、平子まで裸だったのだ。

「ま、まさかの3P?」

浮竹は、自分の体をチェックした。どこも痛いところはないし、腰も普通だし、キスマークもない。

「浮竹、愛してるよ」

そんなことを言いながら、平子を抱き寄せるものだから、浮竹は怒って京楽の頭をハリセンで叩いていた。

「わ、何!?何が起こったの!」

「んー、もう朝かいな?」

「わぁ、平子、君なんで裸・・・って、僕も浮竹も裸!まさかの3P?」

「違う!」

浮竹はハリセンで京楽の頭を殴ってから、服を着た。

「いや、ベッドに入るなり服を脱ぎ出すから、この世界では服を脱いで寝るのが常識やと思ってなぁ。ほんと堪忍やわ」

平子も服を着た。

「京楽、いい加減お前も服を着ろ」

浮竹に指摘されて、京楽も服をきた。

「なんだ、何もなかったんだね。よかたった」

本当に心からそう思っているようで、京楽に浮竹も頷いた。

「異界の神と3Pなんて、笑い種にもならん」

「ほんとだよ」

「オレはそれでも別にかまへんねんけどな?」

浮竹と京楽は、それはないと、首を横にぶんぶん振った。

「平子、いつまでこの世界にいるんだ?」

「んー、特に決めてへんけど、あと1週間くらいやな」

「じゃあ、その1週間でこの世界を観光する?」

「それでもええなぁ」

平子は、召還されてから来た国といえば、魔国アルカンシェルくらいで、血の帝国にも行っていなかった。

「よし、じゃあミミックを探しにS級ダンジョンにもぐろう」

「浮竹、またミミックかい?平子クンに呆れられるよ」

「ダンジョンもこの世界の特徴だ。立派な観光だろ?」

「いいなぁ、面白そうやん。そのS級ダンジョンとや、いこか?」

こうして、異界の星の精霊ドラゴン、平子真子を巻き込んで、S級ダンジョンにもぐることになったのであった。

今回選んだS級ダンジョンは、全部で70階層だった。

念のためにと、1週間分の食料と水を3人分用意して、テントなどはアイテムポケットに入っているので、食料と水だけを確保して、S級ダンジョンに向かった。

少し遠かったので、竜化した平子の背にのり、空を飛びながらそのS級ダンジョンに向かった。

途中休息を挟んで宿に泊まり、3日かけてようやくS級ダンジョンに到達した。

辺境にあるせいで、あまり人気のないS級ダンジョンだった。だが、人気がないつまりはあまり人の手が入っていないので、宝箱も多そうだと、浮竹は上機嫌であった。

「さぁ、行こうか」

「へぇ、これがS級ダンジョンなんや。なんか、もっと暗いのイメージしとったわ」

「ダンジョンは、そのダンジョンによるけど、ほとんどが1階層ごとに地形が変わるからね」

1階層は荒れ地だった。

出てきたシルバーウルフの群れを、浮竹が炎の魔法で屠っていく。

「やっぱ強いんやなぁ。ルシエードの子だけあるわ」

「父は、元気だろうか?」

「ああ、すごい元気やで。今、新しい世界を違う神々と作っとる」

「元気なら、それでいい」

異界にいるという創造神と、会いたいとは思わなかった。

ただ、懐かしい気持ちだけが溢れた。


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「ほんま強いなぁ。オレの出番があれへんわ」

「というより、君は戦う意思がないじゃない」

「だって、観光にきてるんやで。見てるだけでええやん」

「まあ、いいんだけどね」

京楽はそう言って、襲い掛かってくるモンスターを、火の魔法をエンチャントしたミスリル銀の魔剣で切り裂いた。

「なんや、酸をだすカエルか。でも、うまそうやな?」

「え、まさかこのモンスターを食べるつもりか?」

浮竹は、信じられないような表情で平子を見る。

敵は、酸を巻きちらすアシッドビッグフロッグだった。

「この世界では、モンスターの肉を食べる習慣はあらへんのか?」

「ドラゴンの肉なら分かるが・・・普通のモンスターの肉は食わないな」

「なんやて!ドラゴンの肉食うんかい!オレは星の精霊ドラゴンやで。ドラゴンでもあるけど、頼むから食わんといて!」

自分の体を抱きしめる平子に、浮竹も京楽も苦笑する。

「友人がドラゴンであるからって、そんなこと浮竹はしないよ」

「京楽の言う通りだ。俺は始祖ドラゴンと友人だが、その始祖ドラゴンを食べたいなどと考えたことはない」

「はぁ、ならええねん」

カイザードラゴンである恋次もドラゴンだが、それを食べたいなどと思ったことはない。

「ちょっと休憩や。このカエル、食べてええか?」

「え、調理するのか?調理器具はもっているが、アシッドビッグフロッグは体に酸をもつ。あまり食用には向いてるとは・・・・・」

平子は、竜化するとアシッドビッグフロッグの死体を、そのまま丸のみしてしまった。

「ぴりぴりするわ。酸の刺激がええかんじや。酸って聞いて、食いたなったんや。オレには酸は効かへんからな」

「だからって、丸のみ・・・腹壊しても、知らないぞ?」

「平気やて。元いた世界でもようポイズンスネークとかアシッドビートルとか丸のみにしとったわ」

想像して、浮竹も京楽顔を青くした。

「げてもの食いだな」

「そうだね」

「おい、聞こえとるで。半分ドラゴンやねんもん。モンスターはただの餌や」

「ヴァンパイアも、そちらの世界ではモンスターになるのか?」

「そうやで。モンスターの一種や」

「頼むから、俺たちを食べないでくれよ」

「食べてもおいしくないからね!」

くつくつと、平子は笑った。

「食べたいなら、最初におうた瞬間から食っとるわ」

人の姿に、平子は戻る。

ドラゴンの時の姿が、鱗の代わりに羽毛をもつ、白い翼が特徴的なドラゴンだった。

そんなドラゴンを見たことはなくて、浮竹と京楽は、平子が異界の存在なんだなと、改めて納得するのであった。


「あ、宝箱!」

「浮竹、それはミミック!」

「ミミックでも大歓迎だ!」

浮竹は、宝箱をあけた。宝箱はミミックだった。

「暗いよ~狭いよ~怖いよ~息苦しいよ~~」

「何やっとんの、あれ」

平子が、笑いながら浮竹を指さす。

「浮竹は、宝物があるとああやってあけるんだ。ほとんどがミミックで、かじられてあんな姿になるんだけど・・・・・」

「京楽、助けてくれ。平子でもいい」

「よし、オレが助けやろやないか」

平子は、浮竹をひっぱった。

その力は強くて、浮竹はミミックにかじられながらも脱出したかに見えて、頭をまだかじられていた。

「このミミック、殺してええんか?」

「いいけど、頼むから浮竹は傷つけないでよ」

「ほれ」

隕石が降ってきた。

京楽は驚いて、シールドを張る。

「ちょっと、僕たちを殺す気かい!?」

「あれ、難しいな」

「僕が助けるから、平子クン、君はモンスターも倒さなくていいから!見てるだけでいいから!余計なことはしないでね!?」

神の名を冠するだけあって、その力は絶大であった。

加減ができないようで、星の名ををつけられただけあって、隕石を降らしてくる。

京楽は、しつこく浮竹の頭をかじっているミミックにとどめを刺した。

「助かった、京楽。平子、お前は強すぎて力加減ができないんだな」

「いや、そうでもないで?小さい隕石落としたりもできるで?」

「どっちみち星の精霊ドラゴンというだけあって、隕石を降らすんだろう。隕石なんて小さくてもクレーターができる。大きいと、国ごと亡ぶ」

「オレ、そない強ないで?」

「それより、浮竹いいのかい?ミミックが、魔法書ドロップしたけど」

浮竹は、京楽の手から魔法書を受け取った。

「何々・・・ドラゴン退治の書3巻。おいしくドラゴンの肉を加工する魔法・・・・」

浮竹も京楽も、平子を見た。

平子は、顔を青くして数歩下がる。

「俺はドラゴンやないで!精霊ドラゴンやで!精霊でもあるんやで!」

「でも、竜化できるんだよな?」

「加工されるうううう」

平子の救いを求める姿に、浮竹と京楽は腹を抱えて笑った。

「いや、冗談だから。さすがに仲間のドラゴンを加工しようとなんて思わん」

「そうそう。浮竹はドラゴン倒すの好きだし、魔法も覚えるだろうけど、平子クンには使わないさ」

平子は、ほっと胸を撫で下ろした。

「ならええんやけど」

ダンジョンの40階層は、ミミックオンリーのフロアだった。

100体はいるであろうミミックに、浮竹が順番に齧られていく。

45体目までは我慢したが、流石に数が多すぎて、平子がメテオストライクを放って、ミミックを全滅させてしまった。

「ああ、まだミミック全部にかじられてないのに!」

浮竹の非難の声に、京楽も平子も、疲れ切った表情をしていた。

「君、ミミックに今日で45回もかじられて、どうってことないのかい?」

「俺はまだまだいけるぞ。今夜ここで寝て、またミミックが復活するのを待とう」

「えー。オレは嫌やで。ミミックから浮竹助けんのにどんだけ苦労することか」

「僕も、平子クンの意見に賛成だよ」

「いや、今日はここで寝る!」

浮竹の意思は固く、結局2日目は40階層のフロアで夜を明かすことになった。

朝になり、20体ミミックが復活していた。

待てばもっと復活するだろうが、時間が惜しい。平子がこの世界にいられるまで、あと4日だ。

仕方なく、浮竹はきっちり20体のミミックに齧られて、魔法書やら財宝をゲットして、41階層を攻略していくのであった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター20-2

浮竹と京楽は、気づいたら夢渡りで世界を渡り、東洋の極東の島にきていた。

「ここは・・・なんだ、すごいボロい建物だな」

「でも、ここに僕らと同じ気配を感じるよ」

雑居ビルが建っていた。

見た目はボロかったが、確かにそこに、東洋の妖(あやかし)である浮竹と京楽の存在を感じた。

(・・・・・ボロで悪かったな?)

東洋の浮竹は、自分たちの住処がボロいと言われて、少し怒っていた。

(・・・・十四郎?どうしたの?)

東洋の京楽は、警戒心をむき出しで、西洋の浮竹と京楽をみた。

「ああ、本当にこんな場所に住んでいるのか。まぁいい、お茶しにきたんだ。いい茶葉が手に入ったんだ」

「ヴァンパイアの皇族御用達の品らしいよ」

「あと、こっちの京楽がラズベリーパイとアップルパイを焼いてくれたから、それを持ってきた」

(わあ、いい匂いがするなぁ。あがってくれ)

(十四郎、急がなくてもスイーツは逃げないよ?)

西洋の浮竹と京楽は、靴を脱いで部屋にあがった。

そして、いろいろ部屋を見て回って、寝室の一角にある畳のスペースを見て、嬉しそうにそこに座った。

「畳、一度味わってみたかったんだ」

「浮竹ってば、ミミックの次に最近和風のものにはまりだしてね。古城にも、和室作ろうかとか言い出したんだよ」

(別に、いいんじゃないのか。あ、お茶いれてくるな?)

東洋の浮竹は、西洋の京楽から茶葉をもらうと、お茶を入れにキッチンに行ってしまった。

(あ、ボクが行くよ!キミはちょっと色々とマズいから・・・!)


お茶を入れに行った東洋の浮竹の後を、東洋の京楽が追う。

なんでも、電子レンジなるものに卵を入れて壊して、それ以来基本的にキッチンに立ち入り禁止らしかった。

寝室でお茶するのもなんだしと、西洋の浮竹と京楽もキッチンにやってきた。

ダイニングルームのテーブルの上に広げられた、ラズベリーパイとアップルパイを見る。

紅茶は最高級の茶葉のアッサムだった。

(おいしそうだな)

(そうだね。でも、ボクが作ったものの方がおいしいかもね?)

「おいおい、せっかく焼いたんだから、そんなこと言わないでよ」

「俺の京楽もそうだが、東洋の京楽も、料理好きなんだな」

(ボクは、十四郎が幸せそうに食べている顔を見るのが好きなの)

(みんな、食べないのか?)

切り分けたパイを、早速東洋の浮竹が美味しそうに頬張るのを、東洋の京楽はにこにこと楽しそうに見ていた。

「そっちの京楽も、食べたらどうだ。けっこういけるぞ」

西洋の浮竹は、東洋の浮竹ほどではないが、それでも美味しそうに食べていた。

(じゃあ、ボクは一つだけでいいや。あとは十四郎にあげるよ)

(ん?いいのか?じゃあ、遠慮なく!)

東洋の京楽はパイをそれぞれ一つずつ取ると、他を東洋の浮竹に勧める。東洋の浮竹は目をキラキラさせてパイを頬張っている。

東洋の京楽は、パイを一口、口にして、西洋の自分をほめた。

(キミ、腕あがってるね)

「君がくれたレシピの通り、作ってみたんだよ。おいしいなら、よかった」

西洋の浮竹も、美味しそうにパイを食べている。

西洋の京楽はというと、東洋の京楽のように、幸せそうにパイを頬張る、愛しい主であるヴァンパイアマスターを見て、にこにこしていた。

「また、今度何か差し入れにもってくる。また、お茶をしよう」

「うん。今度は、こっちの古城においで?」

(ああ、今度はボクらがそっちにお茶をしにいこうか)

(そうだな、お菓子は春水に任せた)

(あ、そうそう。お二人さんにお土産)

帰ろうとする西洋の浮竹と京楽を、東洋の京楽が呼び止め袋を渡す。

「なんだ?これは?」

(シフォンケーキ、作りすぎちゃってよかったら食べて?)

(お、俺の分はあるよな!)

(あるってば・・・後で冷蔵庫みといで)

そんな二人を見守ってから、西洋の浮竹と京楽は、元の世界へと戻っていった。


「ああ、畳って取り寄せられるかな?」

「できるんじゃない?少し高くなるかもしれないけど」

「この前、玄関に飾っておいた金のハニワを撤去したな、京楽」

「だって、ださいんだもの。おまけの純金だし、危ないよ?」

「金細工なんて、別にけちけちするようなもんじゃないだろ。その気になれば、錬金術で金を生み出せる。ちょびっとだけど」

浮竹の錬金術士の腕は、ミスリルランク。

ミスリルランクをもつ者は、ガイア王国に5人しかいないと言われている。浮竹は、隠れた6人目であった。

錬金術士は、本当に金を生み出せた。でも、その量があまりにも少しなので、他のミスリルといった金属を生み出すほうが儲かった。

「ミスリルでできたハニワを置こう」

「ハニワ、好きだね」

「あの独特の感じがいい」

「ミミックと、どっちが好き?」

浮竹はうなった。

「ミミックかな、やっぱ。そういえば、今日はまたポチにエサをやっていなかったな。おーいポチ」

「るるるる~~~~」

放し飼いにされているミミックのポチは、ドラゴンステーキを手にした浮竹ごと、かじりついていた。

「あいたたたた、ポチ、ちょっと痛い」

「るるるるう~~~~~~」

ポチは、浮竹をぺっと吐き出すと、ドラゴンステーキをもぐもぐと食べた。

「ポチはドラゴンステーキが好きだなぁ。肉がなくなったら、またドラゴン退治にでもいくか」

聖帝国と魔国が戦争した時、略奪を受けた村に、エンシェントドラゴンの肉を置いていった。

残っているドラゴンステーキは少しになっていた。

その後、東洋の京楽と浮竹と一緒に、ドラゴンを倒しにいくのだが、それはまた別のお話。

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「君は、僕のせいで一度、本当に死んでしまったんだね」

京楽は、寝室で哀しそうにしていた。

「お前のためだ。それくらい、どうってことない」

「確かに、君は神の愛の呪いを受けて不老不死だ。でも、目の前で灰になられた時、世界が色を失った」

「大袈裟だな」

「そんなことないよ!約束して。もう、あんな真似しないって」

「お前の命がかかっていたら、俺は何度でも死を選ぶ。だから、約束はできない」

「君って、時に残酷だよね」

哀しそうな表情の京楽に、浮竹はその見た目よりも柔らかな黒髪を撫でた。

「俺はお前を愛している。俺の命でお前が助かるなら、例え不老不死じゃなくても死を選ぶ」

「本当に君は・・・・・」

京楽は、浮竹を押し倒していた。

「なんだ、するのか?」

「君に刻み込んであげる。僕の愛を。その魂にある神の愛の呪いより、濃いんだって」

京楽は、浮竹に口づけていた。

浮竹は自分から口を開けて、京楽の舌を迎え入れる。

ピチャリと音を立てて二人は舌を絡ませあった。ベッドの上で、もつれるように動きあう。

「んあ・・・」

京楽は、浮竹の服を脱がせていく。

露わになった鎖骨に吸い付いてキスマークを残すと、平らな胸を撫ででから、先端をつまみあげた。

「やあっ」

ぴくんと、浮竹が反応する。

それが可愛くて、何度も舌で舐め転がし、つまみあげた。

「やあ、触って・・・」

浮竹のものは勃ちあがって、先走りの蜜をだらだら零していた。

「んあ!」

京楽のねっとりとした舌に包みこまれる。

数分舐めあげられて、浮竹は京楽の口の中に欲望を吐き出していた。

「ああああ!」

「美味しい。浮竹も、味わって?」

京楽は、嚥下する前に、浮竹に自分のものを味合わせた。

「ん・・・何これ、甘い・・・・」

「君にかけられた神の愛の呪いだね。君の体液は、いつも甘い」

京楽はそう言って、ローションを手にとった。

手の平で温度をなじませて、浮竹の蕾にぬりたくり、指にもぬって、蕾を解していく。

「ああ!」

前立腺を触られて、浮竹瞳を真紅にさせて、京楽に噛みつき、血を啜っていた。

「ん・・・どうしたの。積極的じゃない」

「喉が渇く。お前の血が、飲みたい」

ぺろりと唇を舐めるその妖艶な仕草に、京楽は手首を差し出した。

「少し、血をもらう・・・・」

「ん・・気持ちいいよ。もっと吸っていいよ?」

「もういい。渇きが癒えた」

「じゃあ、僕の渇きも癒してね?」

そう言って、京楽は浮竹のうなじに噛みついて、吸血すると同時に、浮竹を熱で引き裂いていた。

「あああ!!!」

じゅるじゅると血を啜り続ける。

「あ”あ”!」

最奥を突きあげてやった。

浮竹は、精液を出しながらオーガズムでもいっていた。

「あああーー!!」

はぁはぁと息を乱す浮竹を追い上げるように、ごりごりと最奥を抉ると、浮竹は泣いた。

「春水、春水」

「どうしたの」

「俺を、一人にしないでくれ・・・・」

ぎゅっと抱き着かれて、浮竹の中に欲望を注ぎ込みながら、京楽はその白い髪を撫で、キスを落とすのであった。

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「そうか。ウルキオラは死んだか。使えない・・・・」

魔国アルカンシェルで、藍染はため息をついていた。

十刃はまだ9人いるが、4位でこの有様だ。

複数向けることもいいかもしれない。

でも、と、藍染は思う。

「召還には一向に成功しない」

創造神ルシエードの召還の儀式を、ここ半年ずっと続けているが、神は用意に召還などに応じてくれない。

世界を渡った神々は、もうこの世界には戻ってこない。

藍染の傍で、唯一召還に応えた、その神に等しき存在は、異界の者。

星の精霊ドラゴンと呼ばれる、精霊とドラゴンの間に生まれた、ハーフであった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター20

浮竹は、悪夢を見ていた。

京楽が病気にかかり、治療のかいなく、死んでしまう夢だった。

「京楽!」

「どうしたの、浮竹」

がばりと起き上がると、いつもの京楽が、そこにいた。

「凄い汗。悪夢でも見たの?」

「ああ・・・・・」

「シャワーでも浴びておいで。その間に戦闘人形と一緒に、朝食作っておくから」

「ああ、すまない」

冷たい冷水で、シャワーを浴びて悪夢の残滓を洗い流した後、熱いシャワーを浴びて、体と髪を洗った。

昨日睦みあったので、キスマークがいたるところにあった。

「京楽の奴、誰も来ないからって、こんな服を着ても見えるとろにまで、キスマーク残しやがって・・・・・・」

浮竹はぷりぷりと怒りながら、食堂に移動した。

「ああだめだよ浮竹、ちゃんと髪乾かさないと」

まだ完全に乾いていない髪の水分を、京楽がタオルでふいてやる。

「俺には民間魔法がある。この前覚えたあったかい空気を出す魔法だ」

ごおおおと、その魔法を自分の髪にかけた。

「ああもう、ぼさぼさじゃない!ちゃんとくしを通さないと!」

「お前は俺の母親か」

まるで、おかんのような京楽に、浮竹はけれどされるがままになっていた。

「ほら、今日は寒いからこの上着を羽織って。髪は結んでしまおう」

普通の結びのならわかるが、京楽は両サイドを三つ編みにして、後ろも三つ編みにした。

「ほら、かわいい」

「おい、俺の髪で遊ぶな」

「別にいいじゃない」

ふと、首にぶら下げていた東洋の浮竹と京楽からもらった水晶のペンダントが輝きだし、白く濁った。

「なんだ、誰かいるのか!」

「俺はウルキオラ。藍染様の配下、十刃の一人」

ゆらりと建物の影から現れた、白い肌に黒い髪、緑の瞳をした美しい青年は、魔族であった。

「魔族が俺たちになんの用だ!」

「気をつけて、浮竹。その子、強いよ」

浮竹は血の刃で攻撃する。すると、ウルキオラは浮竹を無視して、京楽の近くにきて、至近距離で小瓶を割った。

「うわ、なんだい!?」

「ウィルスだ。ヴァンパイアにしか感染しない。ヴァンパイアマスターには感染しない。せいぜい、愛する男が病気で死んでいくのを、見て苦しむがいい」

そう言って、ウルキオラは影の中に溶けていった。

「大丈夫か、京楽!」

「え、全然なんでも・・・・・ぐ、ごほっごほっ」

京楽は、咳き込んだかと思うといきなり血を吐いた。

ヴァンパイアの血では、傷は再生できるが病気はどうしようもない。

「今、ルキア君を呼ぶ!」

京楽は意識を失い、浮竹にベッドまで運ばれた。

浮竹は急いで式を飛ばした。帰ってきた式の言葉はNO。

今、血の帝国全土で謎の奇病が流行っているというのだ。感染源は不明。もって1週間で死に至る、肺を蝕むウィルスらしい。

ルキアはその治療にかりだされていて、こちらから出向いても対応が遅れるだろう。

「聖女は・・・シスター・ノヴァは封印したし、そうだ、井上織姫!」

人間の国の聖神殿にいる、井上織姫に会って、なんとしても京楽を治してもらおう。

浮竹は、初めて直面する血族の死の匂いに、震えながら、最近やっと契約した、冬獅郎も契約している氷の精霊、魔狼フェンリルの背に京楽を乗せ、大地を走るのであった。

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井上織姫に面会を頼みたい。

急病の患者がいるのだ。

そう訴えても、ヴァンパイアであるせいで、拒絶された。

すでに、京楽が謎の奇病にかかって3日が過ぎていた。京楽は水しか受けつけず、高熱をだしては血を吐いた。

「もういい、人間どもよ。どけ」

真紅の瞳を輝かせて、ヴァンパイアの証であり真紅の翼を広げて、浮竹は京楽をフェンリルの背に預けながら、聖神殿の中に足を踏み入れた。

「賊だ!賊が侵入したぞ!」

切りかかってくる兵士たちを、本当は殺したいが、聖女井上織姫が殺戮を繰り返したヴァンパイアの連れを治すとも考えにくく、浮竹は蔦の魔法でとらえて身動きを封じる。

「シズアイビー」

しゅるるると、蔦の魔法は聖神殿全体を覆ってしまった。

「どうたんですが、皆さん」

「聖女よ!出てきてはなりません、凶悪なヴァンパイアが、聖女を狙っています」

「誤解だ!聖女井上織姫、どうか俺の血族を助けてくれ!」

浮竹は、聖女井上織姫の前にくると、傅いた。

「顔をあげてください。浮竹さん!」

織姫は、優しい眼差しで浮竹を見つめた。

そして、京楽の病気のことを知ると、京楽を自分の部屋に運ぶように周りの者に指示して、去らせた。

「これは・・・ヴァンパイアだけがかかる病気ですね。ウィルス性急性エパトリンという病です。これは、ヴァンパイアの灰がないと、治りません」

血の帝国では、ルキアがヴァンパイアの墓を暴いて灰を集めてくるように命じて、患者たちを癒していた。

浮竹は、自分の右手を切り落とし燃やし、灰を作りだした。

「この灰で、なんとかならないか」

「やってみます!」

ぱぁあと、光が満ちた。けれど、京楽の病気は癒えず、少し改善しただけだった。

「氷の魔法で仮死状態にしても無理か!?」

「無理です。この病気の怖いところは、仮死状態でも病気が進行するところなんです」

「僕は・・・死なないよ。大丈夫だよ、浮竹・・・僕を、信じて?ゴホッ、ゴホッ」

顔に少し赤みが戻っていたが、治癒できたわけではなく、血を吐いた。

浮竹は泣いた。

「お前のいない世界なんていらないんだ。京楽、愛している」

浮竹は、炎の精霊王を呼び出した。

フェニックスで一度屠り、命を与えても、この病気は治らない。

そうと知った浮竹は、炎の精霊王に命令した。

「俺を焼き殺せ」

「我が友よ。汝は、神の愛で守られている。死しても死なぬ」

「だから、一度死ぬんだ。炎の精霊王、俺を灰にしろ。これは盟約にのっとった命令だ。拒否は許さない」

「地獄の業火で自ら焼かれるというのか」

「そうだ」

「仕方ない、分かった」

「え、ちょと、浮竹さん!?」

織姫の静止をふりきって、浮竹は炎の精霊王の滅びの炎の焼かれて、灰となった。

その灰を、織姫は泣きながら京楽に与えて、癒しの魔法を唱えた。

「僕は・・・浮竹は!?」

「浮竹さんは、死んでしまいました」

「冗談でしょ?」

「冗談ではない。我が灰にした」

京楽は、浮竹の血族だ。

今その場に、浮竹の気配なかった。ただ、浮竹が残した灰だけがあった。

「我は精霊界に戻る。我が友は不死。信じるといい」

「君のいない世界なんて、僕はいらないんだ!」

京楽は、浮竹の灰を掴んで泣いた。

滴り落ちた雫から、芽がでた。

それはみるみるうちに巨大な花を咲かせて、実をつけた。

実の中には、裸の浮竹がいた。

「あ、何か着るもの持ってきます!」

織姫は赤くなって、部屋を飛び出していた。

「浮竹?」

「誰だ、お前は」

実から生まれ出で、再生した浮竹は真紅の瞳で京楽を見た。

「冗談はやめてよ。僕は君の血族で、君は僕の主」

「俺は、創造神ルシエードの子、始祖ヴァンパイア浮竹十四郎。我が父、ルシエードはどこだ?」

真紅の瞳で、京楽を睨みにつけてくる。

京楽は構わず、裸の浮竹にシーツを巻きつけて、腕の中に抱きしめていた。

「僕を思い出て」

「お前など、知らぬ。うう、頭が・・・・・」

浮竹は、その場に蹲った。

京楽は、浮竹を抱き上げて、口づけしていた。

真紅だった瞳は、元の翡翠色に戻っていた。そして、混濁していた記憶が、はっきりしてくる。

今、浮竹を抱きしめてる存在に、安堵を覚えた。

「お前は俺の血族。血族の、京楽春水」

浮竹が、おずおずと、京楽の背に手を伸ばす

「そうだよ、浮竹。僕は君の血族の京楽春水にして、君だけを愛する君だけのもの」

「京楽・・・病気は、もういいのか」

「うん。浮竹と織姫ちゃんのお陰で治ったよ」

開いたままの扉の入り口で、織姫が顔を真っ赤にして服を手に立っていた。

「すみません、その、のぞいていたとかそうではなく・・・・・」

「気にしないでくれ、織姫君。君の助けがいる。今、血の帝国中に、そのウィルス性急性エパトリンと病気が広がっているんだ。普通の方法では治せない。聖女の力が必要だ。俺たちと一緒に血の帝国にきてくれ!」

「はい、分かりました!」

織姫は、ささっと旅の準備をしてしまった。

「手慣れているな」

「聖地巡礼とかしていますし、聖神殿にやってこれない患者さんのところに行くこともあるので」

「浮竹、本当にもう大丈夫なのかい?」

「京楽こそ、大丈夫なのか?」

「僕はぴんぴんしてるよ。でも、いくら不死とはいっても、君が死ぬ姿なんてもう見たくない」

「すまない。多分、あれが最初で最後だ」

浮竹と京楽は、織姫を連れて古城に戻ると、血の帝国に向かって出発した。


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「ルキア、無茶だ!もう3日も寝てないんだぞ!少し眠れ!」

「しかし、私の聖女の魔法がないと、病気が癒えぬ!このままでは、死者は増すばかりだ!」

すでに、数千人が死んでいた。

「俺の氷の魔法で仮死状態にしても、病気は進行する。厄介だな」

一度、冬獅郎が患者を氷漬けにして、病気の進行をどうにかしようとしたが、無駄に終わった。

「感染源は特定できたのか?」

ルキアの言葉に、一護も冬獅郎も首を横に振った。

「今、3か所の街で発病が確認されている。空気感染でもないし、飛沫感染でもなさそうで、感染源の特定に至っていない」

ルキアは皇族であるため、ウィルス性急性エパトリン病にはかからかった。

ヴァンピールである一護と冬獅郎もだ。


「ルキア君、一護君、冬獅郎君!援軍を連れてきたぞ!」

浮竹は、治った京楽と共に、聖女井上織姫を連れてきていた。

「井上織姫っていいます!よろしくお願いします!」

「織姫殿!聖女であられるのだな!すまぬ、私は限界だ。少し休ませてもらう。患者を頼んだ」

「はい!」

他にも、聖帝国からも聖女がかけつけてきてくれて、病魔の勢いは静まりつつあった。

「あのウルキオラという青年が、ウィルスをもっていたんだろう。多分、いろんな場所で感染させていたんだろうが、幸いなことにウィルスそのものは空気感染も飛沫感染もしない。なんとかなりそうだが、ウルキオラを見つけるまでは、油断できないぞ」

「うん、分かってる」

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浮竹と京楽は、手を握りあって、新しい患者が出たという町にきていた。

「魔族の・・・あの、ウルキオラって奴の魔力を感じる。この町にいるみたいだね」

「ああ。影に潜んでいるかもしれない。注意しよう」

町をしらみつぶしに探し、やっとウルキオラを追いつめた。

「ちっ、死ななかったのか京楽」

「浮竹の愛のお陰で、僕はぴんぴんしているよ」

「ちっ、もっと毒性のあるウィルスにすれば良かった」

「十分に、毒性は強いと思うけどね?君のせいで、死者は5千人をこした」

「たった5千人か。500万人を殺したかったが・・・・・」

ウルキオラは、悔しそうであった。

「何の罪もない5千人の命を奪ったこと、その命で償わせてやる!」

「できるものなら、やってみろ!俺は藍染様から特別に愛され、力を分け与えていただいた魔族だ!」

「その藍染そのものが、一度俺に封印されたことを忘れるなよ?」

浮竹は、炎の精霊王を呼び出していた。

「呼んだか、我が友」

「この男を燃やし尽くせ。周囲にある、病のウィスルごと」

「分かった」

炎の精霊王は、地獄の業火を呼び出し、ウルキオラに向けた。

それを、ウルキオラは、肉体を焦げさせながらも吸収した。

「ほう、我がを吸収するか。しかし、我の炎は無限。くらえ、ファイアオブファイア!」

ウルキオラは、氷の魔法でシールドを張った。

しかし、相手は精霊王。

「くううう、藍染様ーーーーーー!!」

炎の侵食され、ウルキオラは敵の手にかかるのではなく、自害を選んだ。

「愛しております、藍染様」

ぱぁんと、爆発音がして、ウルキオラの体は粉々に吹っ飛んだ。

「気をつけろ、血肉にも何かのウィルスをもっている!」

「我に任せよ」

炎の精霊王は、満ちた瘴気ごと、ウルキオラの血も肉も蒸発させた。

「これで、その病気はこれ以上広がることはあるまい」

そう言って、炎の精霊王は精霊界に戻っていった。

「終わったね」

「ああ」

「思ったより死者が出ちゃったっけど、全面戦争になるのかな?」

「分からない。証拠は自害してしまったしな。ブラッディ・ネイに任せる。血の帝国は、基本戦争は行わない。多分、報復行動はすると思うが・・・・・」


その言葉通り、このウィルスばら撒き事件が収まった頃、ブラッディ・ネイは分身体を飛ばし魔国アルカンシェルの中にある川に、飲めば死ぬ毒を投げ入れ、それによる魔族の死者は4万人をこえるのであった。









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始祖なる者、ヴァンパイアマスター19

炎の精霊王は、全ての精霊の頂点に君臨する存在であった。

始祖精霊と呼ばれていた。

精霊王は、炎の精霊王の他に、大地の精霊王、風の精霊王、水の精霊王、光の精霊王、闇の精霊王、雷の精霊王、氷の精霊王の、合計8人がいた。

でも一番偉いのは、炎の精霊王だった。

何せ始祖精霊である。

全ての精霊王、精霊たちは、炎の精霊王から生まれた。

それは、始祖ヴァンパイアである浮竹と、その妹であるブラッディ・ネイがヴァンパイアという存在を、作っていったのに似ていた。

炎の精霊王は、氷の精霊王と水の精霊王と仲が悪かった。

ただ単に、反属性であるからという理由もあった。

この世界が、創造神ルシエードによって作られて8千年。

ヴァンパイアの国、血の帝国は当時弱小国であった。それが、始祖浮竹とブラッディ・ネイの手によって繁栄を謳歌し、今日(こんにち)まで続いた。

氷の精霊王は、代替わりしたばかりで、齢100年にも満たぬ若輩者であった。

炎の精霊王は、新しい氷の精霊王と交流を深め、属性による相性の悪さを克服していた。

「我には、新しい契約者ができた。実に140年ぶりのことだ」

「いいなぁ。我にはまだいない。いいなぁ」

氷の精霊王は、12歳くらいの少年の姿を形どっていた。水色の髪に、水色の瞳をした美少年だた。

炎の精霊王は、20代前半の、燃えるような長い赤い髪に、赤い瞳の美青年だった。

二人は、酒盛りをしていた。

精霊に未成年という定義はない。

生まれ落ちた瞬間から、酒も飲めるし、他の精霊と睦み合って、子を成すこともできた。

炎の精霊王は、樽ごとワインを飲みほしていた。

「いいなぁ、炎の精霊王は。我も契約者が、主が欲しい」

精霊王は、その属性の一番上に立つ存在であった。

その精霊王たちは、主を、契約者を欲しがった。そうでなければ、人間界に、制約つきでないと遊びにいけないのだ。

人間界は、精霊界にないもので満ち溢れている。

精霊たちは、通称精霊族と呼ばれた。

他の精霊たちは、自由に人間界を行き来しているのに、精霊王たちがその有する魔力のため、制約つきでしか人間界に行くことができなかった。

力の大半を封印した形で、居れて3日が限度であった。

炎の精霊王は、浮竹の元を訪れて追い返された後、一度精霊界に帰った。

そしてS級ダンジョンに挑むと聞いて、炎の精霊王はそれだと思い至り、50階層のボスを勝手に倒して、自分がボスになった。

やってきた浮竹、京楽、一護にやられて、最後は浮竹の、契約者になってほしい者に屠られるほどのダメージを与えられて、それを契約とした。

普通の方法で契約してくれない者には、少々強引な手を使う。それが炎の精霊王のやり方であった。

「この料理、辛いな!」

炎の精霊王は、氷の精霊王に向けて、炎のブレスを吐いていた。

「ちょっと、炎の精霊王!我のキューティクルな髪が、アフロになったではないか!」

「てへ」

「てへじゃない、表でろやこらぁ」

「まあまあ、氷の精霊王。ほら、苺のシャーベットだぞ」

「何!我の大好物ではないか!」

苺のシャーベットに夢中になる氷の精霊王を、まるで孫を見るような眼で、炎の精霊王は見ていた。

「時に、汝の契約者の名はなんであった?」

「浮竹十四郎。始祖ヴァンパイアにして、我が友創造神ルシエードの子にして、我の新しい友だ」

「浮竹、十四郎・・・・・・・」

「こら、氷の精霊王。我の友に、契約者になってもらおうなどと、思っているのではないだろうな?」

「別にいいではないか、炎の精霊王。世界には、かの魔人ユーハバッハのように、複数の精霊王を使役する者もいた」

「ユーハバッハは、神に刃を向けた罰として、千年の眠りについているであろう」

「ユーハバッハが目覚めるまで待てない。我は、契約者を探しに人間界へ行くぞ」

「待て、氷の精霊王!」

「バーカバーカ。アフロにしてくれた礼だ」

氷の精霊王は、覚えたばかりの禁呪を使った。

「何をする、氷の精霊王」

「ふふふ。酒を持ってこいー。酒が足りぬぞー」

水の精霊ウンディーネが、ワインを持ってきた。

「我はワインは好かぬ。アニモニアの実の果実酒を所望する」

「あいにく、在庫を切らしていてな」

「なんだと!炎の精霊王、我がアニモニアの実の果実酒がなければ、氷のブレスがはけないことを知ったうえでのことか!」

「いや、ただの偶然で・・・・・」

「許せぬ、炎の精霊王。我を蔑ろにするつもりだな?」

「誤解だ、氷の精霊王」

「汝など、凍てついてしまえ」

ほんの冗談のつもりであった。戯れのつもりであった。

氷の精霊王が炎の精霊王に向けた氷の刃は、あろうことか炎の精霊王のコアを貫いた。

「あ、やべ、炎の!」

「ちょ、なにしてくれる、氷の!」

二人して、顔を見合わせた。

「きゃあああああ!氷の精霊王様のご乱心だわ!氷の精霊王様が、炎の精霊王様を封印しようとしている!早く、このことを契約者に伝えなければ!」

「ちょっと待て、ウンディーネ!」

「今、契約者を呼んでまいります!」

「だから、ちょっと待って!これは・・・・・」

「行ってしまったぞ?」

ウンディーネは、すでに精霊界を出ていた。

「氷の精霊王。汝に、我が契約者と契約するのを、許そう」

「本当か、氷の精霊王!」

「その代わり、このコアの修復代金は、そちらもちで」

「う!汚いぞ、炎の」

「元を正せば、氷の、汝が氷の刃など向けてくるから!」

炎の精霊王は、コアを破壊されかけたせいで、活動を停止してしまうので、炎の精霊イフリートに憑依した。

「我はコアが再生するまでの間、イフリートでいる」

「炎の精霊王、すまない。我のミスだ」

「氷の精霊王。我を召還できぬことで、契約者が本当に精霊界にくるかもしれない。その時に頼んでみるといい。契約を」

「すまない、炎の精霊王」

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「こちらです、浮竹様!」

浮竹は、京楽を伴って、精霊界にきていた。

水の精霊ウンディーネに導かれるまま、炎の精霊王のいる神殿を目指す。神殿では、炎の精霊王が活動を停止していた。

「遅かったか!」

「いや、我は無事だぞ、我が友よ」

「イフリート?いや、中身は炎の精霊王か」

「そうだ、我が友よ」

「ねぇ、浮竹。ちょっとウンディーネの言ってたことと、現実が違うようなんだけど」

京楽は、浮竹を見た。

浮竹は、イフリートを見ていた。

「我と酒を飲みかわしいて、好物の果実酒がないと知った氷の精霊王が怒って、戯れに我に氷の刃を向けて、我は油断しまくりで、コアを、つまりは心臓を少し。修復すれば、我は元の姿に戻れる」

「コアの再生方法は?」

「魔力」

「京楽、出番だ!」

「ええ、なんで!浮竹の従えてる精霊王でしょ!?」

京楽が、浮竹に抗議した。

「なんか、嫌な気がする。複数の精霊王から、契約者にならないかって言われそうな気がして」

「ああ、氷の精霊王には、契約者として、汝を紹介しておいた」

「ああ、いらないことを・・・・」

浮竹は、頭を抱えた。

そこに、12歳くらいの、水色の髪に水色の瞳の少年が現れた。

「汝が、浮竹十四郎か。我は氷の精霊王である。我の契約者になれ」

「いやだ」

「そうかそうか。ってなんで!?」

氷の精霊王は、泣いて喜んでもらえるものだとばかり思っていたので、拒絶の言葉に自分で自分をつっこでいた。

「我ら精霊王を複数従えるのは、名誉あることなのだぞ!」

「そんなもの、いらない」

「浮竹、氷の精霊王泣いちゃったよ」

うわんうわんと、氷の精霊王は盛大に泣きだした。

「ああもう、精霊王って変なのばっかだな!分かった、契約してやる」

「本当だな?」

「別にしなくてもいいんだぞ」

また、うわんうわんと、氷の精霊王は泣きだした。

「分かった、分かったから泣くな。どうやって契約するんだ?」

「普通は、相手を打ち破る。しかし、炎の精霊王を打ち破るほどであるから、この契約書に署名でいい」

氷の精霊王が出してきた契約書は、古代語で書かれていた。

浮竹は、それにサインせず破り捨てた。

「依代になるなんて、聞いていない」

「ぐ、古代語だから読めないと思っていたのに・・・・・」

「浮竹、この子、意地が悪いみたいだよ」

「そうだな。帰るか」

「ちょ、ま!嘘だ、さっきの契約書は嘘!本物はこっちだ」

氷の精霊王は、本物の契約書を出してきた。

現代語で書かれた、ちゃんとした内容の契約書で、浮竹は何度か読み返した後、サインをした。

「これで、汝は我が友である。ばりばり呼べ」

「呼ばん」

「なんですと!?」

「そう頻繁に、戦闘をしているわけじゃない。それに、精霊王の召還は、魔力がごっそりもっていかれるから、きっとめったにしない」

「仕方ない。魔人ユーハバッハのようにはいかぬか」

「魔人ユーハバッハ?」

浮竹が首を傾げた。

「古代人だ。古代魔法文明を築いた、魔人ユーハバッハ。8種族の全ての精霊王を使役した、伝説の存在」

「そんな者が存在したのか・・・・」

「神になろうと、神を殺そうとして怒りを買い、千年の封印を施された」

「死んで、いないのか」

「そんな存在がいるの?」

ごくりと、京楽が唾を飲みこむ。

「魔人と呼ばれ、4千年を生きていた。今も、海に沈んだ古代遺跡で眠っている。封印が解かれるまで、あと400年はある」

「封印されたのは、今から600年前・・・・俺が、ちょうど休眠していた間だな。知らなくて当たり前か。元々、俺は他の種族に、特に人間には興味なかったからな」

「僕は人間だったけどね。浮竹の熱い愛で、血族になったんだ」

「汝ら、できているのか」

「そうだよ。僕と浮竹は愛し合っている」

「京楽、いらんことを教えなくていい」

「あはは、ごめん、浮竹」

氷の精霊王は、浮竹の手を取って、魔力を流し込んだ。

「何をしているんだ?」

「この世界は、存在するのに魔力を消費する。2人も精霊王と契約していると、魔力の消耗も激しくなる。それを防いだだけだ」

「気を使ってくれたのか。ありがとう」

「魔力を流しこんで今分かった。汝、とんでもない魔力を有しているな?魔人ユーハバッハに引けをとらぬ・・・・」

「そうか?」

「そうだ」

「さすが僕の浮竹」

京楽は、浮竹に抱きついてキスをした。

「こら、子供が見ているだろう!」

「我は、齢80歳なのだが・・・・・」

「80歳だなんて、ヴァンパイアでも子供の年齢だ!」

「そうか。汝はヴァンパイアであったな。長くを生きるでのあれば、我も嬉しい」

「浮竹、古城に帰ろうよ」

京楽が、除け者にされてつまんないのだとばかりに、意思表示した。

「炎の精霊王の傷ついたコアに魔力を流してから帰る。京楽、お前も手伝ってくれ」

「分かったよ」

神殿のベッドの上で、昏々と眠る炎の精霊王のコアに、魔力を注ぎ込む。ぎゅんと、凄まじい魔力をもっていかれた。それは、京楽も同じだった。

二人して、魔力切れを起こしかけていた。

「すまぬ、我が友と。汝と、汝の血族の魔力が美味すぎて、ほとんど吸ってしまった」

炎の精霊王は、復活していた。

「魔力がないと、この精霊界にはいられないんだろう。俺と京楽は、戻る」

「少し待て。今、魔力の実をもってくる。失われた魔力を回復させる薬だ」

少しして、ウンディーネが魔力の実でできた飲み物をもってきてくれた。

「あ、意外とおいしい。なんだろう、胸のあたりがぽかぽかする」

「本当だ美味いな。体全体がぽかぽかする」

「我が友の魔力は膨大だ。体全体がぽかぽかするは、神クラスの魔力を持っている証」

「俺は神クラスなのか?」

「そうでなければ、我が望んで契約を無理やりにさせたりはせぬ」

浮竹は、まだ納得がいかなかったようだが、まぁいいかと、難しい事柄の思考を放棄した。

「まだ、精霊界にいていいのか?」

「ああ。精霊界は、汝と汝の血族を、快く迎え入れよう。よくぞ、我の危機を救ってくれた。宴だ!飲め、食え、騒げ!」

炎の精霊王の様子に、浮竹も京楽も、祝いごとが好きなんだなと思った。

たくさんの料理が出され、ワインか果実酒といった酒もあった。

S級ダンジョンで、50階層を突破した後にも精霊界にきたが、友人が古城で待っていたので、思う存分飲み食いできなかった。

今回は、思う存分食べて、飲んで、そして笑った。

「次は、ウンディーネによるストリップ!」

「浮竹は見ちゃダメ!」

京楽は、大胆に動くウンディーネの裸を見ながら、浮竹の目を塞いでいた。

「ああ、あれが浮竹なら・・・・」

浮竹の大胆なストリップを想像して、京楽は鼻血を出していた。

「どうした、京楽。そんなにウンディーネのストリップに興奮したのか。この浮気者!」

「違う・・・脳内で、浮竹に変換してた」

「なっ!」

浮竹は真っ赤になり、京楽の頭をはたいた。

「いたたたた。でも、いいもの想像できた。おなかいっぱい」

「この変態が!」

「我が友には、少ないが、財宝を与えよう」

「宝箱!」

「ミミックだ。ミミック好きだと、聞いたのでな」

「ミミックの宝箱!」

浮竹は、目をキラキラ輝かせて、宝箱をあけた。

「暗いよ狭いよ怖いよ息苦しいよーーー」

「またやってる」

京楽は、苦笑しながら、浮竹をミミックから救出した。

「ウィンドカッター」

風の魔法で斬り裂くと、ミミックは金塊の他に5冊も魔法書を落としてくれた。

「我が、精霊族に伝わる魔法だ」

「禁呪ばかりだな。ありがたくもらっておく」

目を通して、もう覚えてしまったが、他の誰かにも教えることがあるかもしれないと、アイテムポケットに直した。

「浮竹、肝心の金塊忘れてる」

「ああ、魔法書にばかり目がいって、忘れていた」

金塊も、アイテムポケットに入れた。

「じゃあ、元の世界に戻る。世話になった」

「こちらこそ、騒ぎに巻き込んですまぬ、我が友よ」

「炎の精霊王だけでなく、我も呼んでくれよ?」

氷の精霊王が、手を振っていた。

「ああ、分かった」

「浮竹、いくよ」

「まってくれ、京楽!」

水の精霊ウンディーネに案内されて、来た道を戻る。

「我ら精霊族は、他種族の侵略から身を護るため、世界を閉ざしいます。許可のある者しか出入入りができません。これを」

黒水晶の結晶を渡された。

「その黒水晶があれば、精霊界への道は開けます。では、また・・・・」

「ああ、ありがとう」

「ああ、あの子ストリップしてたウンディーネだ。浮竹に頭の中で変換してたから・・・ああ、思い出すだけで鼻血が!」

「この変態が!」

京楽は、浮竹に蹴られながら、浮竹と一緒に古城の庭にもどってきていた。

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桔梗の花が綺麗に咲いていた。

前に、東洋の浮竹と京楽からもらった花の種を、プランターで育ていた。

四季を通して咲くようにと、民間魔法の乱れ咲きの魔法をかけていた。

「ああ、まだ脳内で、浮竹がストリップしてる」

「いい加減、忘れろ」

「無理。むらむらしてきた」

「盛るな!せめて、風呂に入ってからにしろ!」

夕飯を食べて、風呂に入った後で、京楽が寝間着を一枚一枚浮竹からはぎとって、その美しい体に魅入っていた。

「ああ、ウンディーネのストリップなんて目じゃないね。なんて白くて滑らかな肌だろう」

「んんっ」

京楽が、味わうように、肌をついばみ、舐めていく。

「変なかんじだ」

「そうだ、今日は最後まではしないでおこう」

「お前がそれで満足するなら、俺はそれでいいが」

京楽は、殊更ゆっくりと、浮竹の衣服を脱がせていった。下着をとりさり、裸の浮竹を舐めるように見た。

「や、なんか恥ずかしい・・・・・」

「綺麗だよ浮竹」

京楽は、自分も裸になって、浮竹に覆いかぶさった。

「ああ、白い肌。なめらかで気持ちいい」

浮竹のものを口に含み、舐め挙げて、全体を指でしごいた。

「ああああ!!!」

浮竹は、京楽の攻めに耐え切れず、京楽の口の中に精液を吐き出していた。

「今日は、素股をしよう」

「素股か。まぁ、俺はそっちの方が負担がなくて楽だな」

「太もも、閉じて?」

言われるまま、浮竹は太ももを閉じた。

背後から、京楽の立派な一物が、閉じた太ももの間を出入りする。

「ああ、いいよ。すごくきもいい」

「俺は何も感じないんだが」

「後で、またいかせてあげるから、今は僕を気持ちよくさせて?」

そのまま、何度か太ももを出入りして、京楽はシーツに染みを作った。

それを、京楽は4回ほど繰り返した。


「あ、ああああ!」

京楽にしゃぶりつかれて、浮竹はいっていた。

「ああああ!」

「まだ、出せるでしょ?美味しい君のミルク、僕にもっとっちょうだい?」

「やああ、もう出ない・・・・・・」

それでも、しつこく京楽は浮竹のものを舐め続けた。

「きもちよくしてもらった、ご褒美だよ」

白い太もももにかじりついて、京楽は吸血した。

「ひあああああ!!」

ぷしゅあああああああ。

浮竹は、潮をふいていた。

「ああ、エロいね。君の中に出してないのに、君の体は吸血されるだけで、女の子みたいになっちゃうんだね」

「あああ、ああ・・・」

浮竹は、何度も吸血してくるその快感を感じながら、瞳を閉じるのであった。

-----------------------------------------------

「ウルキオラ」

「はい、藍染様」

「血の帝国にいき、このウィルスをまき散らすのだ」

「御意」

ウルキオラは、藍染が集めた十刃の一人だった。

他の十刃がどうしているのかは、知らない。

ただ、主である藍染の命令に従うだけ。

「必ず、藍染様の役にたってみせます」

「いい子だね、ウルキオラ」

藍染は、ウルキオラの顎に手をかけて、上を見させると、口づけた。

「あ、藍染様・・・・・・」

「さぁ、行っておいで。そして、血の帝国を滅茶苦茶にしておいで」

「はい、藍染様・・・」

魔族であるウルキオラは、闇にその身を紛れさすと、魔国アルカンシェルを出て、血の帝国に向かうのであった。














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始祖なる者、ヴァンパイアマスター18-2

そこは、精霊界であった。

精霊たちで満ちた世界。

浮竹や京楽のいる世界と、完全に異なる異界であった。

西洋の浮竹と京楽の影に潜んでいた、東洋の浮竹と京楽も異界の存在であるため、必要なしと飛ばされしまった。

「あ、東洋の僕らがいない」

「本当だ」

浮竹は、きょろきょろと辺りを見回すが、浮竹と京楽、一護の他には精霊しかいなかった。


「よくきたな、我が友よ。今宵は我を使役することができた者が現れたことの祝いの宴だ。参加していけ」

炎の精霊王は、元に戻った長い赤い髪を翻して、精霊たちに客人をもてなすように命令した。

いろんな精霊がいた。

フェニックスやイフリートの姿もあったし、冬獅郎が使役している氷の精霊フェンリルや、S級ダンジョンで倒したウンディーネ、シルフィードといった、炎の属性以外の精霊の姿もあった。

祭りが、行われた。

「さぁさぁ、飲め、食え、そして騒げ!」

精霊王は、樽ごと酒を飲んでいた。

浮竹と京楽はそれぞれワインを飲んでいた。

一護は未成年なので、フルーツジュースを飲んでいた。

「我を使役できる者は、実に140年ぶりだ」

「精霊王も、けっこう暇人なんだな」

「我は忙しいぞ。精霊界を統治しなければいけないし、いろんな精霊を生み出し、管理している」

「そうか。悪かった、暇人などと言って」

「構わぬ。我も、長い時間を生き過ぎた。我を使役し、我と対等の会話できる者が現れることを、この140年間ずっと待っていた」

「それが俺か」

「そうだ。我が友、創造神ルシエードの子よ。まさか、我の友の子が、我の主となるとはな。運命とは、かくも奇妙なものよ」

きっと、古城に飛ばされたであろう東洋の浮竹と京楽は、ご飯を作って待っていてくれているだろうと思い、料理にはあまり手を出さなかった。

「む、精霊界の食べ物は口に合わぬか?」

「いや、夕飯を作って待ってくれているだろう友人たちがいるので」

「そうか。酒だけでも、飲んでいけ」

高級なワインやら甘い果実酒やらが出された。

それを口にしていると、精霊王は満足したのか、浮竹と京楽と一護を、元のダンジョンではなく、古城にまで飛ばしてくれた。

「また会おう、我が主。我が友の子にして、新たなる友よ」

「ああ、またいつか力を貸してもらう」

「汝の召還に、我はいつでも答えよう」

古城は、夕焼けに染まっていた。

「ただいま」

「ただいまー」

「お邪魔します」

帰ってきた3人を、東洋の浮竹と京楽が出迎えてくれた。

(おかえり)

(おかえりなさい。僕たちで夕飯を作ったんだ。食材を勝手に使わせてもらったけれど、大丈夫だよね?)

「ああ、ありがとう。いい匂いだ」

「ほんと、いい匂い」

「俺、帰りますね」

「え、一護君、食べていかないのかい?」

「なんか、俺だけ邪魔っぽいから」

「そんなことないのに」

しゅんとなる浮竹に、京楽が頭を撫でた。

「ルキアちゃんの顔を見て、強くなったことを教えたいんだよね?」

「別に、そんなんじゃ・・・・」

一護は、赤くなっていた。

「そうか。一護君は、ルキア君を。ふーん。へー」

「ちょ、浮竹さん!」

真っ赤になった一護は、礼を言って、古城の地下に安置された空間転移魔法陣で、血の帝国に戻ってしまった。

(カルボナーラとペペロンチーノを作ったんだ。春水が)

(デザートは羊羹だよ)

「ありがたい。皆で食べよう」

足りない分は戦闘人形に調理させて、最高級のワインを出して、夕飯を皆で食べた。

お茶会を何度かしたが、夕飯を一緒に食べるのは初めてだった。

「ふう、おなかいっぱいだ。もう食べれない」

浮竹は、そう言いながら羊羹を食べていた。

「ねぇ、東洋の僕。このご飯、君が作ったんだよね?」

(そうだよ?)

「レシピを!レシピを頂戴!僕も、浮竹に手料理を食べてもらいたい。レパートリーが少なくて、困ってたんだ」

東洋の京楽は、いろんな料理のレシピを西洋の京楽に、書いて与えた。

「ありがとう!」

(料理の腕、あげるんだよ?)

「うん」

(さて、僕らは、そろそろおいとまするよ。とても有意義な時間を過ごせて、楽しかったよ)

(俺も、もういく。本当に世話になった。また、遊びにくる)

「え、もう行ってしまうのか?」

(こっちの世界で、数日を過ごしてしまったからな。俺たちにも、帰る場所があるから)

(うん。本当にありがとう、西洋の僕ら。じゃあ、僕たちは自分の世界に戻るよ)


突然やってきた時のように、彼らは風のように去っていった。

「まるで、嵐みたいだったね」

「そうだな。また、会えるといいな」

「会えるさ。必ず」

京楽は、もらったレシピを手に、胸に光る水晶をぎゅっと握った。

浮竹も、同じように水晶のペンダントを握りしめるのであった。


---------------------------------------------------------

風呂に入り、ベッドに横になると、お腹はいっぱいだろうに、飢えた目で見つめてくる京楽がいた。

「どうしたんだ?」

「君が、東洋の僕についていきそうな気がして」

「ばかだな、京楽。俺には、お前だけだ」

「うん、そうだね。ねぇ、一度してみたかったことがあるんだよ。してもいい?」

「ああ、いいぞ」

「言質、もらったからね」


「あ、やぁ!」

浮竹は、目隠しをされていた。

おまけに、包帯で手首を戒められていた。

「やあ、とって、とって春水!」

「だめ。今日はそのまま、乱れて僕の下で喘いで?」

「やぁん」

ズチュリと、浮竹の中を犯してる熱は、熱を放っても放っても、硬度を失わなかった。

「ああああ!」

浮竹の奥に向かって、突き上げる。

「あああ・・・見えないから、余計に感じる」

「そうでしょ。ほら」

「あああ!!!」

ちゅどんと、最奥の結腸をこじ開けられて、浮竹は乱れた。

「ああああ!!!」

「もっと僕を求めて、十四郎」

「あ、春水春水!」

見えない目で、浮竹は京楽を探す。

「ここにいるよ」

頬に手を当てると、涙が京楽の手に触れた。

「泣いてるの?」

「お前が見えないから、怖い」

「ごめん」

京楽は、浮竹の目隠しと戒めを解いてやった。

「これで、大丈夫?」

「あ、春水・・・・愛してる」

浮竹は、うっとりと微笑んだ。

本当に、サキュバスのようだ。いや、男なのでインキュバスか。

「君は、本当にかわいいね」

「ああん!」

胸の先端をつまみあげると、甘い声を出した。

「あ、あ、あ!」

リズムをつけて、浮竹を貫き、揺さぶった。

「あああ!」

浮竹は、精液を弾けさせていた。

「やっ、血を、血を吸ってくれ」

「君からそんなこと言うなんて、珍しいね?」

「あああああ!」

首筋を噛まれて、大量に血を飲まれた。

「数日ぶりだから、僕も乾いてる」

「あああ・・・・」

再生していく傷口をぺろりと舐めると、浮竹も自分の唇を舐めた。

「もっと、精液、ちょうだい?」

「君は本当に・・・娼婦のようだね。僕専用の」

ずちゅっと、中をすりあげて、最奥にまた熱を流しこむと、浮竹は満足したように眠りに落ちていった。


------------------------------------------------------------------


「ん・・・・」

「どうしたの、浮竹」

「頭が痛い。飲みすぎた」

「ああ、僕の精液を・・・いた!」

浮竹は、思い切り京楽の頭を殴っていた。

二日酔いだった。

症状が重いので、ポーションを飲んだ。

猫の魔女、松本乱菊の作ったポーションだった。


リィィン。

鈴の音がする。

訪問者だ。

浮竹も京楽も、着替えてから、対応した。


「助けてください!」

いたのは、精霊のウンディーネだった。

「炎の精霊王が、炎の精霊王が!」

浮竹と京楽は、顔を見合わせた。

「どうしたの?」

「何があった!」

「精霊王が、新しく生まれた氷の精霊王に、封印されかかって!」

もう一度、浮竹と京楽は、顔を見合わあうのだった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター18

古城に、訪問者がいた。

自分を、始祖精霊にして、炎の精霊王クルル・ルデール・ファイアオブファイアと言い出した。

燃えるような赤い髪に、赤い瞳の若い美青年だった。

「単刀直入に聞く。精霊王の力を、欲しくはないか」

「あ、別にいらん」

ズコー。

炎の精霊王は、ずっこけた。

今まで、魔法を極めた者は皆、精霊王を使役することを望んだ。

それを、この浮竹という始祖ヴァンパイアは、いらないのだという。

浮竹は、身に着けている、邪気を感じとることのできる水晶を見た。

濁ってはいなかった。少なくとも、敵意はないようであった。

「我を使役できれば、もっと力が増すぞ」

「いや、俺は十分に今のままでもやっていけるからな。どうせ、試練だとかいって、我を倒してみよとか言い出すんだろう?」

「ぎくっ」

「無益な争いは好まない。炎の最高位精霊フェックスを使役だけるだけでも、十分だ」

「我の誘いを断った者は、貴殿が初めてだ」

「浮竹、この子本当に精霊王なの?」

「そうみたいだぞ。宿している魔力が半端じゃない」

「うーん、僕にはわからないけどなぁ」

炎の精霊王は、自分の魔力を隠蔽していた。それを感じ取ることができるのは、精霊王を使役できる力を有している証でもあった。

「本当に、いらぬのか」

「いらん。帰れ」

「ぐ・・・・今日は帰るが、またくる」

「もうこなくていいぞ」

「うん、こなくていいよ。ばいばい」

京楽は、浮竹に近づく怪しい青年だと、警戒しているようだった。

精霊王が帰った後の訪問者に、浮竹と京楽が驚いた。

東洋の浮竹と京楽だった。

(久しぶりだな)

(元気にしてた?)

「ああ、元気にしている。水晶のペンダントありがとう。いつでも身に着けている。おかげで、邪気があるかないかが分かって便利でいい」

「うん、ありがとね東洋の僕と浮竹」

(役に立っているようならよかった)

(うん、プレゼントした甲斐があるってもんだね)

東洋の浮竹と京楽は、仲睦まじく寄り添い合っていた。

「ねぇ、浮竹・・・・」

「却下!」

「クスン」

東洋の浮竹と京楽は、お茶をしてから、西洋の浮竹と京楽の影に潜ってしまった。

蛇神であるので、影に潜むことができるのだ。

「S級ダンジョンに行こうと思っていたんだが、一護君という少年を鍛えるために、連れていこうと思っていた。一緒に行動すればややこしくなるんだが、影に潜んでいられるなら、問題ないな」

(危なくなったら、いつでも加勢するぞ?)

(うん、ボクも)

「いや、一護君の手前もあるから、なるべく姿を潜めてほしい」

(分かったよ)

(なるべく、静かにしとく)

--------------------------------------------------

「一護君、俺たちと一緒に、S級ダンジョンにもぐらないか」

浮竹の突然の訪問に驚いたのと同時に、自分を指名する浮竹に、一護は首を傾げた。

「はあ、別にいいっすけど」

「ルキア君を守りたいんだろう?もっと強くなりたいと、思わないか?」

「そうだよ。今回は、一護君を鍛える意味も兼ねているから」

「俺だけっすか?ルキアや冬獅郎は?」

「ルキアちゃんは聖女だ。別に強くなくてもいい。冬獅郎君は、ちょっと今回炎の精霊王なる者が訪ねてきたので、氷の精霊をもつ冬獅郎君とは相性が悪いだろうから、一護君だけにすることにした」

「はぁ。なんか良く分からないけど、強くなれるんなら、そのS級ダンジョンとやらに同行するっす」

こうして、浮竹と京楽と一護は、影に東洋の浮竹と京楽を潜ませながら、S級ダンジョンに行くことになった。

50階層まである、S級ダンジョンを選んだ。

攻略に3日ほどはかかるので、3人分+2人分の食料と水をアイテムポケットに入れて、テントやら布団やら寝泊まりするのに必要なものを用意した。

「東洋の君らの食事も、一応用意するからな」

「うんうん」

(ありがとう。気を使ってくれなくても、いいんだぞ?)

「でも、影に潜んでいても腹はすくし、喉は乾くだろう」

(それはまぁ・・・・)

「5人分の食料と水を、3日分ほど用意しておいた」

(ありがとう)

(感謝するよ。S級ダンジョンなるもの、見ておきたいって、十四郎が言うものだから)

(こら、春水、それは秘密だろう)

(ああ、ごめんよ十四郎。まぁもう言ちゃったものは仕方ない)

「何ごちゃごちゃ言ってるんすか?」

「ああ、一護君、なんでもないんだ。出発しようか」

「あの、なんか準備した荷物、明らかに二人分多いんですけど」

「浮竹、隠し通すのは無理だよ」

「はぁ、仕方ないなぁ。なぁ、出てきてくれ。一護君に紹介する」

「え?」

一護は、目が点になった。

「東洋の僕らだ」

「そうそう、東洋の。蛇神で、神様でもあり妖でもあるよ」

(はじめまして、こちらの世界の一護君)

(いやぁ、ボクらの世界の一護クンにそっくりだね)

「はえ?浮竹さんと京楽さんが二人?ええええ!?」

「話せば長くなるが、東洋の、極東の島国に僕らと同じ存在がある世界があるんだ。いつもは夢渡りで俺たちもいくんだが、今回はわざわざ遊びにきてくれたんだ。まぁ、陰に潜んでいてもらうし、ダンジョン攻略は基本俺と京楽と一護君で行う。いいな?」

「え、あ、なんだか分かりませんが、違う世界の浮竹さんと京楽さんでいいんすね?」

「そうだ。飲みこみが早くて助かる」

影から姿を現していた東洋の浮竹と京楽は、蛇の形になって、それぞれ自分を同じ西洋の浮竹と京楽の影に潜った。

「なんかすげぇ。影渡り・・・。影があれば移動できる。すごいっすね」

「まぁ、神様でもあるからね」

「そういう浮竹さんも、始祖だしある意味神様に近いっすよ」

「浮竹はまぁ、神々が生きてまだこの世界にいた頃から、生きているからね」

「とりあえず、出発しましょう!」

一護は、混乱することをすっかりなかったことにして、S級ダンジョンへと足を伸ばしていった。

-------------------------------------------

S級ダンジョン、第一階層。

草原が、広がっていた。

「うわぁ、ダンジョンの中に草原がある!」

「宝箱だ!」

草原のど真ん中に置いてあった、宝箱は見るからに怪しかった。

浮竹は、早速宝箱を開けた。

ミミックだった。

「暗いよ、怖いよ、狭いよ、息苦しいよ~~~」

「何してんすか、あれ」

「いや、浮竹はダンジョンで宝箱を見たら、ミミックにかじられるのが好きなんだよ」

(何してるのあれ)

(ミミックに齧られるんじゃないの?)

「浮竹、ほら、東洋の僕らも呆れているよ!君のミミック好きにも、困ったものだね」

「京楽さん、助けなくていいんすか」

「一護君が助けてごらん」

「ていや!えい!」

一護は、ミミックを蹴ったり殴ったりしていた。

「うわあああ、ミミックが更に噛んでくる!」

「俺じゃ無理みたいっす」

(ねぇ、西洋の十四郎は、本当にヴァンパイアの始祖なんだよね?全然そうは見えないんだけど)

(う、それは俺も思った)

「ほらほら、東洋の僕らが、呆れているよ」

「京楽、助けてくれー」

「仕方ないねぇ」

京楽は、浮竹の体を引っ張り出すのではなく、押し込んだ。

ミミックがおえっとなって、浮竹を離す。

「ファイアボール!」

浮竹は、ミミックを退治した。

後には、魔法書が残されていた。

「やった、魔法書だ。何々、雨の色を変える魔法。へぇ、面白そうだ」

早速、浮竹は習得する。

すると、都合のいいことに、空の天気が崩れて小ぶりの雨が降ってきた。

「ブルーレイン!」

浮竹が呪文を唱えると、雨粒が青くなった。

「レッドレイン」

今度は、赤くなった。

「なんだこれ、けっこうおもしろい。それに綺麗だ」

「いい魔法書でよかったね、浮竹」

「ああ」

浮竹はにこにこしていた。

雨は、すぐにやんでしまった。

一階層は、色違いのスライムが出た。スライムといっても、巨大な個体で、一護がジャンプしてコアのある部分に、魔剣で電撃を浴びせた。

スライムを、そんな風に倒して、2階層にまできた。

ゴースト系のモンスターが出た。

浮竹が、炎の魔法で屠っていく。

そんな調子で、5階層まで進み、ボスのワイバーン3体をやっつけると、宝物個への扉が開いた。

「金銀財宝だ!金だ!」

「うわぁ、浮竹さん世俗にまみれてる」

一護がそう言った。

うきうきと浮竹は宝物個の宝箱を開けた。

中には、金銀財宝がつまっていたが、浮竹はあからさま残念そうだった。

「どうしたの、浮竹」

「宝箱が、普通だった。ミミックじゃなかった・・・・・」

「そこ、残念がるとこなんすか!?」

(あっはははは)

(ちょっと、十四郎、笑っちゃかわいそうだよ。ぷくくく)

「俺はミミック教を布教している。信者は俺一人!だけど東洋の俺たち、ぜひミミック教に」

うわぁ、西洋の俺少しやばいと言うかイカれているな

(ミミック教。いくところまで、いっちゃってるね。ミミック教ってネーミングセンスもばいね)

影の中で、東洋の京楽は肩すくめていた。

「ほらほら浮竹、東洋の僕らが引いてるよ。ミミック教は君一人で楽しんでなさいな」

「残念。ミミックのかじられるあの快感が、分からないとは」

「いや、普通痛いっすよ!」

「一護君、ミミックに関したら浮竹はただのアホだから、放置してていいよ」

「アホっていうな!聞こえてるぞ」

浮竹は、炎の矢で京楽の尻を燃やした。

「あちちちち」

(仲いいのか悪いのか、分からないな)

(仲はいいでしょ。じゃなきゃ、一緒にいないさ)

「じゃあ、6階層に行こう」

浮竹は、文句を垂れながらも、財宝をアイテムポケットにしまいこんだ。

一護を中心として、敵を倒していく。

「俺、強くなってるんすかね?」

「初めの頃より、動きが綺麗だし、魔法も使えるようになってる」

そう、一護はこのS級ダンジョンにきて、初めて魔法が使えるようになっていた。

今まで、魔剣を通してしか、魔法は使えなかったし、雷系の魔法のみだった。

10階層で、水の精霊の乙女、ウンディーネを倒したことで、一護は魔剣の媒介なしに、雷と水の魔法を使えるようになっていた。

「このダンジョンに来てよかったっす。まさか、俺が魔法を使えるようになるなんて。ルキアのやつ、驚くだろうな。冬獅郎も、驚くな、きっと」

「俺も驚いている。ここまで一気に成長するとは思わなかった。一護君は、精霊を使役していなかったから、今まで使えなかっただけで、魔法の素質はあったんだろうな。10階層のウンディーネを倒した時、強制契約になったんだろう。それがきっかけで、魔法が使えるようになったんだと思うぞ」

「確かに、一護クンがもってる魔力は高いからね。魔法が、魔剣を媒介にしないと使えないと聞いて、少し不思議におもっていたんだよ。素質はあったんだね、やっぱり」

京楽と浮竹に褒められて、一護は照れ臭そうにしていた。

10階層の財宝をもっていたのは、ミミックだった。

「ミミックだ!やった!」

浮竹が、ミミックだと分かっているのに突っ込んでいく。

「いつもより痛い~。暗いよ狭いよ怖いよ痛いよ~」

「はいはい」

京楽が、浮竹を救出する。

ミミックは、ハイミミックだった。

エンシェントミミックの次に強いミミックだった。

「ウォーターボール!」

一護が、ハイミミックにトドメを刺した。

ばさりと、古代の魔法書が3冊と、金銀財宝が出てきた。

浮竹は、金銀財宝よりも、古代の魔法書に興奮していた。

「何々、髪がアフロになる魔法、どこでも耳かき棒が出る魔法、しもやけが治る魔法・・・・民間魔法ばかりか」

浮竹が、何故か熱のこもった視線で京楽を見つめていた。

「嫌だからね!僕を実験台にしないでよ!アフロになんて、なりたくないからね!」

「一護君・・・・」

「俺も嫌っす」

しゅんと、浮竹は項垂れた。

(・・・・ボクもパス)

(・・・・おれも遠慮しとく)

京楽と浮竹の影から、そんな声が聞こえてくる。

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(ボクの十四郎は、いっちゃたりしてないし、やっぱりボクの十四郎が一番だね)

「そんなことないよ!確かに今の浮竹はいっちゃってるけど、いつもはかわいいし、美人だし、気品があるし、強いし、頼りがいがあるし、それからそれから」

(ボクの十四郎は、更にその上をいくからね)

「僕の浮竹だって、もっともっと、いいところいっぱいあるんだから!エロいし!」

東洋と西洋の京楽の言い合いに、東洋と西洋の浮竹は真っ赤になっていた。

真っ赤になった西洋の浮竹に、同じ西洋の京楽さんは殴られた。

そして、影の中で、東洋の浮竹は同じ東洋の京楽の着物の裾を引っ張るのだった。


15階層のボス、風の精霊シルフィードを倒して、今日はその宝物庫で寝ることにした。

テントを、3つはった。

それぞれ、一護、西洋の浮竹と京楽、東洋の京楽といった感じで別れた。

一護は、西洋の浮竹と京楽にまたびっくりしながらも、ごく普通に接してくれた。

「このダンジョン・・・・少しおかしい」

「何が?」

「ボスが精霊なんて、普通はありえない。このままいけば、最下層は多分・・・・炎の精霊王だ」

「なんだって!引き返すかい?」

「いや、ここまできたんだ。精霊王が相手でも、負ける気はしない」

「浮竹さん、京楽さん、最下層が精霊王ってほんとっすか。俺じゃあ足手まといになるんじゃないっすか」

「いや、このダンジョンの潜る理由は元々一護君を成長させるためだ。一護君にも、参戦してもらう。水の魔法が弱点だろうし」

「はい!」

一護は、顔を輝かせた。

そうやって三日かけて、やがて最深部の50階層に到達した。

合計、115回浮竹はミミックにかまれていた。

「きたな」

「やっぱりいたな、炎の精霊王」

「我が名は炎の精霊王クルル・ルデール・ファイアオブファイア。さぁ、我が試練に・・・・・・」

「アイシクルランス!」

「ウォーターボール!」

浮竹と一護が、最後まで言わせず氷と水の魔法を放つ。

「ちょっと待て、話を聞け、我は・・・・・・・」

「ブリザードオブデス!」

「アクアエレメンタルストーム!」

京楽も、剣に氷の魔法をエンチャントして、精霊王に切りかかった。

「だああああ、ファイアオブファイア!」

炎の精霊王が放った魔法に、三人は飲みこまれた。

浮竹が、炎のシールドを展開して、魔法を吸収して、放つ。

「ファイアオブファイア!」

「我に、炎の魔法など効かぬ・・・・うおおおおおおおおお」

その威力に、炎の精霊王は、長い見事な赤い髪を焦がしていた。

「我の魔法より、上だというのか。創造神ルシエードの子、始祖のヴァンパイアよ」

「創造神ルシエードは俺の父。俺は始祖のヴァンパイアマスター、浮竹十四郎。喰らうがいい、エターナルアイシクルワールド!」

氷の禁呪の魔法で、炎の精霊王は体を凍てつかせていた。

「見事だ、浮竹十四郎。我は汝、汝は我。我、炎の精霊王クルル・ルデール・ファイアオブファイアは、汝を主と認めよう」

「あれ?終わったの?」

京楽が、てっきり死闘になると思っていたがのだが、割とあっけなく精霊の使役としての契約が終わったことに、驚いていた。

「京楽も一護君もお疲れ!これで、S級ダンジョンは踏破だ!」

「やったあ!」

「本当っすか!?ルキアに、自慢できる」

「我は、これより汝の力となるであろう。だが、我の召還には膨大な魔力を伴う。そのリスクを、念頭に置いておけ」

そう言って、炎の精霊王は、浮竹の中に消えていった。

(炎の精霊王を使役する始祖ヴァンパイア・・・・・くやしいけど、かっこいいな)

(確かに精霊の王を従えるなんて、凄いね)

「そうだろう、そうだろう、東洋の僕。僕の浮竹は、精霊王、神に近い存在も操れる、大陸でも類を見ない魔法の使い手なんだよ」

ここぞとばかりに、いばりちらしてくる西洋の京楽に、東洋の京楽は頷いた。

(確かに、すごいね。でも、ボクの十四郎も負けていないよ?)

(あれは俺でもできないぞ?)

(知ってるけど?・・・・行け、影蛇)

突如、東洋の浮竹の影から蛇を出す東洋の京楽に、西洋の京楽も浮竹も驚く。

(・・・・・はい、どうぞ)

(え?ああ・・・・そう言うことか)

東洋の京楽は、東洋の浮竹にそれだけ言う。すると、東洋の浮竹は全てを察し、自身の指を切り血を滴らせ蛇に与える。

すると、ぼんやりとした影であった蛇が、黒い立派な蛇へと変わり西洋の浮竹と京楽を見て首を傾げている。

「おお、凄いな。そんなこともできるのか」

「これはまた、違った意味で凄いね」

そんな西洋と東洋の浮竹と京楽のやり取りを、一護は不思議な気持ちで見ていた。


そうして、S級ダンジョンを踏破した3人と2人は、ダンジョンの外に出た。


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好きなものは好き17

「一護、たのもう!」

いきなり玄関前で、ルキアの大声がして、びっくりして一護は扉をあけた。

「なんだよルキア。いつもみたいに、堂々と入ってくればいいだろう?」

「そのだな、今日は、ホワイトバレンタインなるものの日と聞いて・・・・」

「ああ、ちゃんと用意してあるぜ。とりあえず、あがれよ」

大学生である一護は、アパートを借りて、そこで一人暮らしをしていた。

そこに、土日になると、現世にくるルキアが転がり込んでくる。

金曜の夜にやってきて、土日を一緒に過ごして、月曜の朝に尸魂界に戻った。

ルキアは、がちがちに固まっていた。

そんなルキアが可愛くて、一護はルキアを抱きしめていた。

「ああ、もう、お前まじで可愛すぎ」

「一護?」

「夕食作るから、ちょっと待ってろ」

「あ、私も手伝う!」

夕食は、親子丼だった。

ルキアは電子レンジに卵をいれて、爆発させていたが。

「電子レンジ、買い直さないと」

「すまぬ・・・弁償はする」

「ルキア、卵を入れたら電子レンジが爆発するって、知らなかったのか?」

「初耳だ。すまぬ、その、余計な手間をかけてしまって」

「いいぜ、別に。知らなかったなら、仕方ないだろ?誰にだって失敗はある」

「貴様はなぜ、そんなに私に甘いのだ?」

「そんなの、好きで愛してるからに、決まってるだろ?」

「一護・・・・・」

一護は、ルキアにキスをした。

「親子丼、冷める前に食っちまおうぜ」

「う、うむ・・・・・」

次の日の朝に、一護はルキアにホワイトバレンタインのプレゼントをあげた。

新しい、麦わら帽子だった。

いつもの白いワンピースに似合い、ルキアはすぐに気に入った。

高いものではないだろうか、気を使わせてしまっていないだろうかと、悶々とした一夜を過ごしたのだ。

「嬉しいぞ、一護!」

ルキアは、ワンピース姿に麦わら帽子をかぶって、クスクスと笑っていた。

「似合ってる、ルキア。写真、とろうぜ」

スマホで、並んで写真を撮った。

麦わら帽子には、ルキアの瞳の色と同じ、紫のリボンがついていた。

「この紫のリボンが、愛らしいな」

「店でこれ見かけて、もう暑くなってきたし、これだと思ってそっこう買った」

昼からは、ルキアが壊した電子レンジを買いにいくことになっていた。

「一護、私は幸せだ。貴様の隣にいれて」

「それは、俺もだぜ」

外を並んで歩く。

手を繋いだまま、家電製品の店にやってくると、これでもないあれでもないと、電子レンジを吟味した。

「これがいい!」

ルキアが選んだのは、壊れた電子レンジと同じものだった。

値段も比較的安いので、一護もそれに決めた。

配達を日曜に頼んで、家電製品の店を出て、町をあてもなくぶらついた。

一護は、コンビニに入って、パピコを買った。

「なんだそれは?」

「パピコっていうアイス。2つで1つなんだ。今の俺たちみたいだろ?」

ぱきっとパピコを割って、片方をルキアに渡した。

「マスカットの味がする・・・おいしい」

「レストランで、軽く昼食でも食うか。パフェ、たのんでもいいぜ。白玉餡蜜は、夜に作ってやるから」

「すまぬ、一護。私は与えられてばかりだ。どうすればいい?」

「いいんだよ、ルキア。ルキアがいるだけで、俺は満たされるから」

「だが」

「じゃあ、キスしてくれ」

「わ、私からか?」

「ああ」

「し、仕方のない奴め!」

外だったので、ちゅっとリップ音を立てて、ルキアは真っ赤になりながら一護の唇にキスをした。

以前なら、照れて頬にキスをするのが手一杯か、殴られた。

にまにまする一護の脛を、ルキアが蹴った。

「いつまでにやけておるのだ!」

「いやぁ、俺、愛されてるなぁと思って」

「たわけ!」

ぽかりと殴ってくるその腕にには、あまり力は入っていなかった。

「じゃあ、レストランにでも行くか」

「あ、ああ・・・」

ルキアは、一護からもらった麦わら帽子を、現世にいれない間尸魂界にも持って帰って、一護のようにニマニマして眺めるのであった。


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始祖なる者、ヴァンパイアマスター17

女帝ブラッディ・ネイが消えた。

それは血の帝国を震撼させた。

「全く、どこへいったんだあの妹は!」

浮竹は、ブラッディ・ネイの宮殿にきていた。京楽も一緒だ。

「ブラッディ・ネイが消える前、何かおかしなことはなかったかな?」

家臣や寵姫たちに、そう聞いて回る京楽。

浮竹は、ブラッディ・ネイが自ら望んで消えたわけではないと考えていた。

「後宮を封鎖しろ。寵姫たちを外に出すな」

「浮竹、まさか寵姫が?」

「その可能性が一番高い。俺はブラッディ・ネイと血を分かち合っているので分かるんだ。ブラッディ・ネイの気配は、まだ宮殿の中だ」

「君たち、後宮を封鎖して!寵姫の誰一人も、外に出れないようにして!」

京楽が、ブラッディ・ネイの家臣たちにそう命令すると、家臣たちは後宮を閉鎖するために動いてくれた。

「ブラッディ・ネイが寵姫の誰かに連れ去られたと思うの?」

「その可能性が一番高い。あの愚昧は、俺をおいて血の帝国から消えるような存在じゃない」

浮竹には、絶対の自信があるらしかった。

ロゼと中身を交換してまで、抱こうとするほど、ブラッディ・ネイは浮竹に固執しているし、浮竹のことを伴侶のように愛していた。

ブラッディ・ネイが浮竹に抱く愛は、家族愛ではない。

浮竹を愛し、自分のものにしたいという欲からくる愛だ。それは、京楽が浮竹に抱いている愛に似ていた。

一番の寵愛を受けている、ロゼ・オプスキュリテと話をした。

「最近のブラッディ・ネイに変わったことはなかったか」

「そういえば、最近一番若い、8歳の少女を後宮入りさせました。それくらいでしょうか」

「8歳!完全に犯罪だろ」

ブラッディ・ネイは年端もいかぬ10くらいの少女から、15才くらいまでの少女を愛した。

後宮に住まう寵姫の数は35人。

それぞれ、血を少しだけ与えられて、疑似血族にされていた。

ブラドツェペシュの件があり、ブラッディ・ネイは本物の血族をもつことを辞めた。

それまで血族にしていた寵姫を、血の盟約を破棄して血族ではなくし、その後に新たに疑似血族とした。

疑似血族は、血族によく似ているが、血族とは違う。

縛るようなものがないし、主として守らなければという意思もわかない。

「その8歳の子には会えるか?」

8歳というが、実年齢ではない。あくまで見かけの年齢であった。実際は30歳ほどだ。

他の寵姫たちは100歳を超えている。

ブラッディ・ネイの血を与えられた者は、成長が止まり、若い姿のまま死んでいく。

「その、自閉症で・・・会うのは、難しいかと」

「ふむ。ますます怪しい」

浮竹と京楽は、後宮にきていた。

京楽にも、後宮にブラッディ・ネイの存在があるのが分かった。

「俺と京楽は、宮殿でしばし留まる。何かあれば、式を飛ばしてくれ」

「はい、始祖様」

「あの子、式使えるの?」

「疑似血族とはいえ、一番の寵姫だ。限りなく血族に近い。血族は主の能力を模倣できるからな。京楽、お前が魔法は本当は使えないのに、俺が主のせいで、俺が使う魔法を使えるように」

「そうか。ロゼって可能性はないの?」

「ロゼは寵愛を欲しいままにしている。今回の犯人は、寵愛を欲している寵姫とみて、間違いはない」

「うわぁ、肉欲の泥沼。僕には、ブラッディ・ネイの寵愛を欲しがることが理解できない」

「それは俺にも理解できない。同じ女の女帝に体を玩具にされて、それでもなお愛されようとするなど」

1週間ほどが過ぎた。

ロゼから、式が届いた。

ブラッディ・ネイが深夜にロゼの元を訪問して、抱いていったのだという。

「復活したのなら、何故戻らない。戻れない理由でもあるのか・・・・」

「一時的に復活しただけかもしれないよ。肉欲を満たすために、ロゼを抱いて、また拉致られたとか」

「多分、拉致られたんだろうな。ブラッディ・ネイが命をかけてまで寵愛する寵姫は存在しない」

「でも、浮竹のためなら、ブラッディ・ネイは命を投げ出すんじゃない?」

「それはありそうだが。まあ、限りなく不老不死に近い。死んでも、皇族の少女に転生する」

「それもそうだね。ほんと、人騒がせな。どこにいったんだろう?」

さらに3日ほど経った。

危惧していた血の帝国での内乱や、内輪もめなどなく、時はただ静かに過ぎていく。

女帝ブラッディ・ネイの代わりに皇族王である白哉が、統治に当たっていた。

「白哉がいて助かった。女帝排斥派はすでに淘汰済みだし、しばらくは白哉が政治をしてくれるだろう」

「白哉クン、肩の荷が重そう。かわいそう」

「仕方ない。ブラッディ・ネイを見つけるまでは、代わりに血の帝国を統治してもらわないと」

一度、浮竹と京楽は、忙しい白哉と面会が叶った。

「忙しそうだな、白哉」

「兄か。早く、ブラッディ・ネイを見つけてくれ。忙しくて目が回りそうだ」

「ブラッディ・ネイって肉欲の海に沈んでいるだけに見えるけど、ちゃんと血の帝国を統治しているんだねぇ」

「そうでなければ、女帝を8千年も続けられぬだろう」

もっともな白哉の意見に、浮竹も京楽も頷くのだった。

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「8歳の、少女に会う」

「でも、始祖様。あの子は自閉症で、他人に会うのを酷く嫌います」

ロゼの言葉に、けれどと、浮竹は続ける。

「8歳の少女が、犯人だと思う。幼いヴァンパイアは、その身を護るために魅了の魔法を使う。きっと、それが強すぎたんだろう」

「自閉症で魅了の魔法が使える。なんかややこしい子だね」

「では、通してもらう」

浮竹と京楽は、後宮の奥にある、ブラッディ・ネイがお気に入りの子を集めた館に足を運んでいた。

水晶の鍵で扉を開ける。

館は寵姫たちは出入り自由であるが、閑散としていた。

3階の奥の部屋で、件(くだん)の寵姫はいた。

濃い、血の匂いがした。

「君が・・・・名前は、確かメフィストフェレス。大悪魔の名をもつ、自閉症の8才の子」

「気安くあたしに話かけないで」

「自閉症というのは、嘘みたいだな」

「自閉症は、ブラッディ・ネイ様に治したもらった。誰にも渡さない。あの方は、あたしのもの」

東洋の京楽と浮竹からもらった、水晶のペンダントが輝いて、次に白く濁った。邪な力を感じると、煌めく水晶は白く濁るのだ。

今、真っ白に濁っていた。

「俺達に、敵意があるようだ」

「仕方ないね。子供とはいえ、容赦はできない」

「助けて、ブラッディ・ネイ様!」

じわりと、少女を中心に、血の海が滲む。

それは薔薇の花となり、咲き乱れた。

「く、ブラッディ・ネイオリジナルの薔薇の魔法か!厄介な!」

「ブラッディ・ネイ様はあたしのもの。あたしの中で、あたしだけを愛して永遠を生きるのだわ」

薔薇の匂いが部屋中に満ちた。

薔薇の花びらが、刃となって浮竹と京楽を襲う。

それを血のシールドで防いだ。

「ブラッディ・ネイの血族になっているのか!道理で強いわけだ!」

「あたしからブラッディ・ネイ様を取り出すのは、許さない!」

「内部に、取り込まれてるみたいだよ。どうする?」

水晶の濁りが、消えた。

「それまでだよ、メフィストフェレス。どんな存在であろうと、兄様を傷つけるのは許さない」

ゆらりと、メフィストフェレスから血の女帝がにじみ出た。

「だめ、ブラッディ・ネイ様、出てこないで!」

「もう十分だろう。君を癒して、君を愛した。ボクは、ボクを支配しようとするような子より、ロゼのほうが好きだ」

「いやよ!あたしのものよ!ロゼなんか、あたしが殺してやる」

メフィストフェレスの言葉に、ブラッディ・ネイは瞳を真紅にさせて怒った。

「ボクを魅了にかけた腕は認めよう。でも、ロゼを害するなら、ボクは本気で君を捨てるよ。ボクは、君をあまり愛していない。ロゼや他の愛しい寵姫、それに兄様に危害を加えるなら、黙っていないよ」

メフィストフェレスは、目に涙をためて泣きだした。

「うわあああああああん」

血の薔薇は、いつの間にかブラッディ・ネイの体に戻っていた。

「やれやれ・・・泣かれるのは、一番困る。君をあまり愛していないと言ったのは嘘だ。そうじゃなきゃ、自閉症を治すなんて無理難題、しているわけがない」

「ほんと?ほんとに、ブラッディ・ネイ様はあたしを愛してる?」

「ああ、本当だとも。兄様への愛には負けるけど」

また、水晶が濁った。

「始祖浮竹・・・ブラッディ・ネイ様の最愛の者。死んで?」

ブラッディ・ネイが何かを言う前に、メフィストフェレスは血でできた薔薇の花で、浮竹の胸を貫いていた。

「ぐっ・・・」

「浮竹!」

「兄様!」

「ふふふふ。浮竹十四郎、死んで?」

藍染の匂いがした。

「藍染の手に、一度落ちたな、メフィストフェレス!」

浮竹が、傷を再生しながら、メフィストフェレスを睨んだ。

「この魔力、藍染のものだ」

「なんだって!」

「キミは・・・・どこまで、愚かな・・・・・」

ブラッディ・ネイはメフィストフェレスを薔薇の魔法で包み込む。

「邪魔しないでブラッディ・ネイ様!」

水晶の濁りが頂点に達して、淡く輝いた。

「だめだ、浮竹。処分しよう」

「ああ」

「待って、兄様!」

「だめだ。藍染に洗脳されている。どこまでも攻撃してくる」

「メフィストフェレス!ボクはキミを愛している!だから、こんなことは止めるんだ!」

「藍染が、あたしに力をくれたの。始祖を屠る力を!」

メフィストフェレスは、その体そのものを血の渦と化して、浮竹と京楽に襲いかかった。

それを、京楽が血のシールドで押し返す。

「くそう、どうして?力が足りない!始祖の血族にすら、歯が立たないの!?」

京楽は、血の刃を作り出して、メフィストフェレスを攻撃した。

「きゃあああああ!痛い、痛い!」

「今なら、まだ間に合う。引け、メフィストフェレス」

浮竹は、瞳を真紅にしながら、メフィストフェレスを自分の血で包み込み、攻撃できなくした。

「嫌よ!ブラッディ・ネイ様が一番に愛しているのはお前だもの!お前を屠って、あたしが一番になるの!」

「俺は神の呪いを、神の愛を受けている。不老不死だ。殺しても、死なない」

「そんなことないわ!藍染が言っていたもの!創造神の力があれば、例えその寵児であろうと殺せるって!」

「創造神ルシエードは、もうこの世界にいない」

「だから、召還するのよ!藍染は言っていたわ。創造神を召還するって!」

「そんなこと、不可能だ」

「この世界を去った創造神は、もうこの世界には戻ってこないよ。一度作った世界に興味をもつ神々はいないからね。諦めなよ」

京楽の言葉に、メフィストフェレスは歯ぎしりした。

攻撃できないはずの血の結界を通りぬけて、メフィストフェレスは血でできた槍を浮竹に放った。

「死ね、始祖浮竹ーーー!!!」

「メフィストフェレス!ローズコキュートス!」

「どう・・・して?」

浮竹に攻撃をしかけようとしたメフィストフェレスを、ブラッディ・ネイが薔薇の魔法で凍らせていく。

「誰であろうと、兄様を害そうとする存在は、許さない。それが寵姫であっても」

「ああ。ああ、愛してる、ブラッディ・ネイ様。あなたの手で殺されるなら、あたしも本望よ」

「メフィストフェレス!」

「どけ、ブラッディ・ネイ!」

「兄様!?」

「浄化の炎よ、踊れ踊れ!一度灰になりてそこから生まれ出でよ!フェニックス・ファイア!」

浮竹は、炎の最高位精霊、フェニックスを召還させると、その炎でメフィストフェレスを焼いた。

「兄様、何を!」

「炎の最高位精霊、フェニックスは死と再生を司る精霊だ。死を与え、そこから新しい命を与える。反魂なんかじゃなく、完全な復活だ」

灰になっていくメフィストフェレスは、けれど新しい命として、この世界に再び芽吹いた。

「あたし・・・生きてる。殺されたはずなのに」

「メフィストフェレス!」

ブラッディ・ネイが、泣きながら幼い愛しい寵姫を抱きしめた。

「もういいんだ、メフィストフェレス。君は、藍染に操られていただけなんだ。そうだね、兄様?」

「ああ。藍染の魔力が感じれない。精霊での蘇生は、魔力をごっそり消費しる。俺にはもう、魔法を使う力もない」

倒れる浮竹を、京楽がそっと受け止めて、抱き上げた。

「ブラッディ・ネイ。メフィストフェレスを大切にしてやれ。ちゃんと愛すれば、分かってくれるだろう」

それは、最大限の浮竹の情であった。

妹ブラッディ・ネイが愛する者を、殺したくなかった。

「全く、浮竹も無茶をする。魔力が足りなかったら、その身はフェニックスに焼かれていたよ」

「でも、神の愛の、魂に刻まれた呪いによって、俺は死なない。フェニックスに焼かれてもまた再生して元に戻る」

「まぁ、そうだから、好きなようにさせたんだけどね。ブラッディ・ネイが、自分を取り込んで、浮竹に攻撃したメフィストフェレスを許すとは思わなかったよ」

「ああ、俺もだ。俺を傷つけたから、殺すのだとばかり思っていた」

ブラッディ・ネイも、しょせん一人のヴァンパイアなのだ。

たくさんの愛しい寵姫たちを、差はあれどほぼ等しく愛していた。

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こうして、ブラッディ・ネイの失踪事件は解決した。

ロゼは、泣いてブラッディ・ネイの帰還を喜んだ。

「浮竹様・・・・・・」

メフィストフェレスが、ブラッディ・ネイの玉座のある広間にきて、浮竹を熱い視線で見つめていた。

「始祖の浮竹様、この度は愚行を働いたあたしを許してくれてありがとうございます。愛してます、浮竹様!」

幼い8歳の少女に抱き着かれて、浮竹は目を点にしていた。

「メフィストフェレス?また、変なことになっているのか?」

「いいえ、精霊フェニックスで焼かれ芽生えたこの命。浮竹様のものです。ブラッディ・ネイ様も愛していますが、浮竹様も愛しています!」

「ちょっと、メフィストフェレス!兄様をボクのものだよ!」

ごごごごご。

背後を振り向けば、凄い嫉妬の炎を燃やす、京楽の姿があった。

「浮竹は、僕のものだから。誰にも、あげないよ。浮竹、浮気は許さないよ?」

「違う、これは不可抗力だ!ちょっと、聞いてるのか京楽!」

「はいはい、言い訳は古城のベッドの上で、ね?」

その京楽の言葉に、ブラッディ・ネイもメフィストフェレスも、いいなぁと、羨望の眼差しを送るのであった。

もう、メフィストフェレスを前にしても、水晶は濁ることはなかった。

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風呂に入って、夕食をとると、静かにしていた京楽が、突然立ち上がり、浮竹を横抱きにして有無を言わせない力で、押し倒してきた。

「ねぇ、十四郎。君が誰のものであるか、きっちり体に教え込む必要があるよね?」

「待て、春水!昼のは、あれは不可抗力だと言っている」

「たくさんの者に愛されて。でも、君を一番愛しているのは、僕だから」

浮竹の衣服を脱がしていく。

浮竹も抗うのを諦めて、京楽の服を脱がせていった。

「そういえば、ホワイトデーだね?君からチョコレートもらったお礼、してなかったね?」

「そんなの、どうでもいい」

「どうでもよくないよ。ああ、ホワイトチョコ用意していたんだ。ちょっと待ってて?」

京楽はそういうと、一度寝室から抜け出した。

熱く火照る体をもてあまして、浮竹は目を閉じた。


浮竹のものは、ホワイトチョコまみれになっていた。

「あ!」

浮竹は、自分のものをしゃぶる京楽を見ていた。

瞳は真紅に輝いていた。

今宵は満月だ。満月はヴァンパイアの力を高めてくれる。

「満月だぞ、春水」

「そんなもの、月に一度見れる。それよりこっちに集中して、十四郎」

「あああああ!!!」

京楽は、普通にホワイトチョコあげずに、浮竹の肌にホワイトチョコを溶かしたものを塗りたくった。

シーツも、ホワイトチョコで汚れてしまっている。

体についたホワイトチョコを舐めとっては、愛撫された。

京楽の舌は、しつこく浮竹のものを舐めあげてくる。鈴口を刺激して、射精しそうな瞬間を、京楽の手が戒めた。

「いやああ、出させて、やあああ!!」

「少し、我慢してね?」

京楽の瞳も、真紅になっていた。

浮竹の首に噛みつき、吸血する。同時に、戒めていた手をどかした。

「あ”あ”!」

吸血による快楽と、射精による快楽がごちゃ混ぜになって、浮竹を襲う。

「やああああああ!!」

京楽の下で乱れる浮竹は、妖艶だった。美しかった。

「あああ、あ・・・・・・・」

ローションをたっぷり、下の口で飲みこまれさせた。ホワイトチョコも混ぜられていた。

蕾を、京楽の舌がはう。

「ああ、甘いね。ホワイトチョコの味がする」

「こんなことに、使う、お菓子じゃない、からぁ」

ぴちゃりと、蕾に舌をいれられて、ビクンと浮竹の体がはねた。

そのまま舌は蕾をぐりぐりと刺激すると、去っていた。

「甘いね」

舌の次に、指でぐちゅぐちゅと解される。

「や、そこやぁっ」

前立腺をかすめる指先に、浮竹が快感の涙を零す。

「ここ、好きだよね、十四郎」

「やあああ!!」

こりこりと前立腺を触られて、浮竹は射精せず、いっていた。

「ひああああああ!」

ごりごりと音を立てて、京楽のものが入ってくる。

「あああ!」

一気に奥の結腸にまで入られて、浮竹は背をしならせた。

「いやあ!」

精液を噴き出していた。

「ここも、好きだよね?」

ぐりぐりと、結腸に京楽は熱を押し当てる。

「ああ!好き、春水、好き、もっと・・・・・」

「ここ、ぐりぐりされるの好き?」

「あ、好き」

京楽は、愛らしく答える浮竹に満足して、律動を開始した。

「やん、や、や、あ」

京楽が動くリズムに合わせて、浮竹が啼く。

「あ、あ、あ・・・・」

浮竹は、腰を自然と自ら振っていた。

「ああ、今夜の君は、満月のせいかいつもよりエロいね」

「それは、お前もだろ・・・・・・・」

京楽の腰を足で挟み込む浮竹に、京楽は眉を寄せて、締め上げてくる浮竹の内部に熱を放っていた。

「まだまだ、愛してあげる」

「俺もまだまだ、愛されてやる」

ズチュリと、また入り込んでくる京楽に、浮竹は喘ぐ。

「ああん!」

ぱんぱんと、肉と肉がぶつかる音がした。

ホワイトチョコで体はベタベタするけれど、そんなことどうでもよかった。

「んあ!」

また、最奥にズルリと入ってくる熱に、浮竹が軽くいってしまう。

それに合わせるように、京楽もいっていた。

「あ、熱い!体の奥が、熱い!」

「僕のホワイトチョコだよ。おいしく、いただいてね?」

「ああああ!!」

京楽は、牙を伸ばして浮竹の肩に噛みつくと、吸血した。

浮竹も、牙を伸ばして、京楽の肩にかみつき、吸血する。

お互いに吸血しあっていた。

めぐる快感の虜になりなながら、更に睦み合うのであった。


「ああ、もう最悪だ!体がホワイトチョコでべたべただ!」

「浮竹も楽しんでいたじゃない!」

「そうだが、シーツなんてもう使えないぞ」

「捨てればいいよ」

「それはそうだが。ベッドのマットレスにもこびりついている。あと、枕も」

「予備があるでしょ?全部、捨てちゃいなよ」

「仕方ない・・・・・・」

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「始祖のヴァンパイアマスター、浮竹十四郎。最高位の炎精霊、フェニックスを操る者」

水鏡の中には、ミミックにかじられている浮竹の姿が映しだされていた。

「我が力をもらうにふさわしいか、ためさせてもらうか」

炎の精霊王クルル・ルデール・ファイアオブファイアは、そっと目を閉じた。

「精霊王様、謁見の時間です」

「今、行く・・・・・」

精霊族の始祖でもある、炎の精霊王は、浮竹の姿を思い出す。

ミミック如きにかじられていたが、もつ魔力は、精霊や神に近かった。

「そうか、創造神ルシエードの、寵児か」

ふと、旧友の言葉を思い出す。

精霊王も、神代の時代から生きる存在だった。

「神の子、絶対存在。面白い」

「精霊王、お早く・・・・・」

「分かっている」

炎の精霊王が、精霊界から姿を消した。そんな騒ぎと、浮竹と京楽の元を、赤い髪に赤い瞳をした、炎を操る青年が訪ねてくるのが、ほぼ同時であった。

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黒魔法い使いと白魔法使い

目指せ、未踏破の26階層!

浮竹と京楽は、剣士と盾使いと獣人盗賊と新米斧使いのパーティーに入っていた。

京楽は優秀な黒魔法使いだが、魔物食が好きで、倒したモンスターを調理して食べた。

今回の旅は、1週間の予定だった。

まだまだ、食材はあった。魔物食は、完全に魔物を食べるのではなく、普通の食材と組み合わせて食べた。

朝食は、この前食べたハーピーの親子丼だった。

「うーん、食べるの2回目になるけど、この味飽きないな」

「どんどん食べて。おかわりもあるよ!」

京楽は、うきうきしていた。

次の階層は、8階層だった。

朝食を食べ終えたパーティーメンバーは、8階層へと足を伸ばした。

8階層は、草原だった。

草原には、一角兎がいた。

美味しそうなので、生きたまま捕まえた。

可愛かったが、これも食のためと、京楽は目を閉じて一角兎にトドメをさした。

毛皮をはいで、アイテムポケットにしまう。一角兎の毛皮は、そこそこの値段で取引される。

浮竹とパーティーリーダーの剣士が、5羽一角兎を捕まえてきてくれた。

すでにトドメはさしてあり、調理していく京楽のために、浮竹が毛皮をはいで解体していった。

始めは、京楽の魔物食に慣れていなかった浮竹であったが、結婚してからほぼ毎日のように魔物食を作る京楽に慣れてしまっていた。

パーティーメンバーも、慣れてしまっていた。

「今日の昼食は、定番メニューっぽい、一角兎のクリームシチューだよ!」

一口サイズに切って、香草をまぶして肉から臭みをなくした一角兎の肉を、まずはバターをひいた鍋で軽く炒める。

手頃な大きさに切り刻んだじゃがいも、人参を入れて、一角兎の肉と一緒に水を入れて茹でる。

灰汁をとり、食べ頃になったら、クリームシチューの元であるルーを入れて、混ぜる。コトコトと数分煮込んで、完成だ。

「うまい。一角兎の肉が、臭みがないし、柔らかい。クリームシチューによく合うな」

浮竹は、おかわりをした。

「うん、これは確かに美味い。定食屋のクリームシチューより、美味いな」

「おいしい」

「俺もおかわり!」

「俺も!」

剣士、盾使い、獣人盗賊、新米斧使いにも好評だった。

「もっと、捕まえれる?肉を確保しておきたい。この下の階層に肉になるモンスターがいない時のために、解体してアイテムポケットに入れておきたい」

京楽と浮竹も、他のパーティーメンバーも、一角兎を狩りまくった。

結果、40羽という数になった。

「これだけいると、毛皮だけでもまぁまぁな値がつくな」

「みんなの倒し方がうまいからね。毛皮を損なうような倒し方を、あまりしてないでしょ」

「まぁ、毛皮は売るにはもってこいだからな。毛皮をダメにするような倒し方は、新米のやり方だ」

剣士の言葉に、新米斧使いがズーンと沈みこんだ。

一撃では仕留められなくて、ズタズタに切り殺したせいで、毛皮は素材として売り物にならなかった。

肉はなんとか食えそうだったが。

最近は、京楽の影響なのか、冒険者ギルドでもモンスターの肉の買取りが始まっていた。

貴族の好事家などが、魔物食にはまっているらしい。

一度、講義に招かれた貴族の子弟たちが集う館で、魔物食を振る舞った。

その美味しさに、その館の持ち主であった貴族をはじめ、貴族の子弟たちにも好評で、そんな知り合いの貴族が冒険者ギルドに、魔物の肉の買取りを依頼しているらしかった。

「肉はアイテムポケットに入れている限り腐らないけど、必ずしも調理できる場所があわるわけじゃないからね。夕食の分も、用意しておこうか」

一角兎の肉を焼いて、たれをかけて、ご飯の上に乗せた。牛丼ならぬ、兎丼であった。

出来立てをアイテムポケットに収納する。アイテムポケットの中は時間が経たないので、出した時はアツアツのままだ。

草原には、一角兎の他に、いろんな色のスライムが出た。

京楽は、氷の魔法でスライムの核を貫き、どろりとなったその体を風の魔法で急激に乾燥させて、まな板の上に置くと、適当な間隔で切っていく。

「スライムの麺のできあがりだよ!」

浮竹をはじめとして、みんなちょと食べたくなさそうな顔をしていた。

スライムである。あのスライムだ。

ぶよぶよしていて、固形じゃなくって、時にはドロドロしているスライム。その麺とは、果たしてどんな味なのか。

「スライム好きだな、京楽。始めて、ダンジョンにこのパーティーで潜った時も、ゴールデンメタルスライムを食べていたな。ゴールデンメタルスライムは固形だからまだ分かるが、不定形なスライムも食えるのか?」

「ちゃんと乾燥させたら、食べれるよ。ほのかに甘みがあっておいしいんだ。そうだね、茹でて果物を混ぜてデザートにしよう。みんな、まだ食べれるよね?」

皆、頷いた。

「じゃあ、強火でさっと茹でちゃおう」

本当に、強火でさっと茹でると、スライム麺はぷるぷるしていた。そこに苺、パイナップル、桃を入れた皿の中に、ぷるぷるのスライム麺を入れた。

「スライム麺のフルーツ盛り合わせの完成だよ!」

皆、恐る恐る口にする。

そして、目を見開く。

「ほんのり甘い!フルーツの甘酸っぱさとマッチしてる!」

浮竹が、おかわりを所望した。

他のメンバーも、おかわりをしていた。

「ね、スライム美味しいでしょ?」

みんな頷いた。

「じゃあ、腹ごしらえも済んだことだし、次の階層に行こう!」

9階層は、森だった。

ポイズンスネーク、マンティコア、キメラがいた。

「このダンジョンは、階層によって出てくる敵の強さが違うみたいだな。8階層は雑魚ばかりだったが、マンティコアとキメラは強敵だ!」

浮竹は、防御を高める魔法を皆にかけた。

「シャアアア!!」

襲ってくるマンティコアを、京楽が火の魔法で黒こげにする。

「ファイアランス!」

キメラも襲ってきた。

剣士が、切り倒した。

「この森は、素材になるモンスターはポイズンスネークくらいだな。マンティコアとキメラは食べれそうにないし、強いし、討伐の証の結晶だけをとろう」

浮竹は、京楽が黒こげにしたマンティコアから、結晶をぬきとって、京楽に渡した。

たくさん収納できるアイテムポケットを持っているのは、京楽だけであった。

他のメンバーのアイテムポケットは、すでに、一角兎の毛皮と肉でぱんぱんだった。

あと、金銭問題で公爵家の出身で、貴族でもある京楽が一番安心できるのだ。金をもっているので、持ち逃げの可能性が零に等しい。

というか、零だ。

9階層の森を歩き、ポイズンスネークを捕まえて、毒の牙を採取する。皮は防具の材料になるし、肉も食えたが、森の中での調理は危険なので、アイテムポケットにしまっておいた。

10階層は、ボス部屋だった。

出てきたのは、ドラゴンゾンビ。

「くさい!」

京楽の一言に、みんなズコーとこけた。

「匂いより、存在がやばい。ゾンビでも、ドラゴンだぞ!」

「このダンジョンは、初心者向けじゃあないようだね」

流石に、まだ25階層までしか踏破されていないことがあった。

ドラゴンゾンビが出るなんて、Aランククラスのダンジョンだ。

「ファイアオブファイア!」

「ホーリーブレス!」

京楽と浮竹の手にかかれば、ボスも倒せる。でも、京楽も浮竹も、自分たちだけが活躍しないように、他の仲間のメンバーにも、ドラゴンゾンビの相手をさせた。

アタッカーには京楽が武器に炎のエンチャントをして、タンクである盾使いには、浮竹が聖闘士ブレスで、盾を聖なる物に変えて、攻撃を受けたらダメージが入るようにした。

皆で力を合わせ合って、ドラゴンゾンビを倒した。

「ドラゴンゾンビ・・・・骨だけなら・・・」

食べたいと言い出しそうな京楽を引きずって、ボスを倒した後に開く宝物庫へと入った。

中にあったのは、ひとふりの剣だった。

「魔剣だね。かなりの魔力がある」

「俺に、使いこなせるだろうか?」

剣士のレベルは2レベルあがって、67だった。

「使えるのはレベル65から。ぎりぎりセーフだね」

ちなみに、京楽と浮竹はレベル99だった。

レベルカンストしているので、モンスターを倒した経験値は、自動的に仲間に与えられる。

盾使いがレベル60、獣人盗賊がレベル62、新米斧使いはレベル27だったが、冒険してきてレベル39まであがっていた。

「やっぱり、斧使いはレベルが低いだけあって、ガンガンあがるね」

「京楽と浮竹のお陰だ。レベルカンストの、自分たちよりかなり弱い冒険者のパーティーに入ってくれる者など、ほとんどいないからな」

皆、ソロで活動するか、高レベル冒険者の仲間になる、そんな冒険者ばかりだった。

ソロでの活動は、分け前が自分だけな分楽だが、危険と隣り合わせだ。

Sランク冒険者として、レベル80以上のパーティーに入るのが普通だった。

「京楽と浮竹には、本当に感謝している」

「まだ、冒険は終わってないよ。次の階層へ行こう。昨日はよく休んだから、今日は行けるところまでいこう!」

京楽の言葉に、皆頷いた。

11階層、12階層ときて、13階層にセーブゾーンがあった。

13階層は荒地で、シルバーウルフ、ホワイトファングウルフの群れが出現した。

京楽の炎の最高位魔法で、モンスターは一掃されて、セーブポイントで夕飯をとり、今日の冒険は終了となった。

11階層では、カエルのモンスターが、12階層では人食い植物が出た。

それぞれ、魔物食の為に、解体しないままアイテムポケットに入れていた。

京楽は、まずカエルのモンスターを解体した。皮をはぎ、肉に香草をまぶしてしばらく置き、適当な大きなに切って、溶き卵に浸し、パン粉をまぶしてフライにした。

食人植物は、細かく刻んで、トマトときゅうりを入れて、サラダにした。

「大ガエルのフライ、食人植物のサラダ、それ昼に作っておいた一角兎の兎丼ので今日の夕飯のメニューは完成だよ!」

大カエルのフライはさくさくでおいしかった。

食人植物の葉はほのかに甘みがあった。

兎丼は、ほかほかで美味しく、兎の肉とは思えない味だった。

「京楽がいるお陰で、うまい飯は食えるし、モンスターも討伐し放題で、本当に助かる」

夕飯を食べながら、剣士はそんなことを言っていた。

「僕のほうこそ、魔物食を食べる仲間がいることは嬉しいし、こうやってダンジョンを探索するのは何より面白いからね。どんなモンスターが出るのがわくわくするし、どうやって調理しようかと悩んでしまう」

「京楽のやつ、家でも魔物食食べるからな。ダンジョンの中だと、さらに生き生きしている」

浮竹を抱きしめて、京楽は浮竹に口づけた。

「僕たち、新婚だから。ダンジョンに潜るの、新婚旅行さ」

「なんちゅー新婚旅行だ」

浮竹が、皆の前でいちゃつくので、京楽の頭に聖典の角をめりこませながら、真っ赤になった。

「はははは。お前たち、新婚だものな。忘れていたよ」

この世界では、同性婚を認められていて、そう珍しいことでもなかった。特に男性に多い傾向にあった。

この世界は、一時女性のみに流行り病が広がり、女性の人口は激減し、男性7割に対して女性は3割だった。

「さぁ、食べたら片づけをして寝よう。明日の朝も早いし、たくさん寝て元気をつけよう!」

京楽は、水を生み出して食器や調理器具を洗った。

テントを張り、今日は13階層で休憩を入れることになった。

冒険を初めて2日で13階層。このままいけば、未踏破の26階層までいけそうであった。





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始祖なる者、ヴァンパイアマスター16-2

皇帝シェルキアの傷を、合流したルキアが癒してくれた。

浮竹の血でも癒せるが、京楽が血を与えるのにいい顔をしないので、ルキアもいることだし、幸いにも命に関わるような傷でなかったので、皇帝シェルキアは傷を癒されて、改めて浮竹たちに礼をいった。

「この子は、皇女マリアだった。かわいそうに。シスター・ノヴァの転生先に選ばれてしまった」

皇帝シェルキアは、封印された元聖女シスター・ノヴァの氷の封印に、手で触れた。

「この封印は、神族が代々皇族に伝えていく。地下に厳重に管理して、封印は解けないようにしよう」

「そうしてくれ。もう、シスター・ノヴァなんかにうろちょろされるのはご免だ。後、シスター・ノヴァが所属していた黒魔術の組織があるようだ。取り潰してくれ」

「浮竹殿が、そういうなら、そうなるよう取り計らいましょうぞ」

浮竹と京楽たちは、今度の戦争で聖帝国を救ってくれた恩人であると、国民たちに紹介をして、数日聖帝国に滞在した。

シスター・ノヴァを封印した氷は、宮殿の地下深くに置かれ、シェルキアの手により再度封印され、二重の封印を受けた。

黒魔術の組織はすぐに見つかり、シスター・ノヴァに手を貸していた者は全て極刑となった。

「では、俺たちはこれで」

「ありがとうございました、浮竹殿、京楽殿、それに仲間のお方がた」

「俺たちは仲間のお方がたかよ」

冬獅郎が文句を言うが、浮竹がその頭を撫でた。

「冬獅郎君には、感謝している。フェンリルがいないと、いろいろ不便だっただろし。力を貸してくれてありがとう」

「お、おう」

改めて褒められて、冬獅郎はぷいっと横を向いた。照れているのは丸わかりだった。

「では、浮竹、別れはもういいか?」

「ああ、白哉。恋次君、帰りも頼むよ」

「任せてくださいっす!」

一護とルキアと冬獅郎は、まだいる神族の負傷者を診るために、半月ほど聖帝国に滞在することが決まっていた。

「後のことは頼む、ルキア君、一護君、冬獅郎君!」

「任せてください」

「任せとけ」

「では、浮竹殿、京楽殿、兄様、恋次、しばしの別れだ!」

「ルキア、くれぐれも魔力切れを起こさないように」

ルキアは、重症の患者を治療しすぎて、1日だけ魔力切れを起こして癒しの魔法が使えなくなったことがあった。

「わかっています、兄様!」

浮竹、京楽、白哉を乗せた、竜化した恋次が羽ばたく。

空を渡り、聖都アルカディアを後にした。


一方、魔族の国アルカンシェルでは、藍染が悔しがっていた。

「くそ、あのシスター・ノヴァの誘惑に乗ったら、私の部隊が壊滅だと!始祖浮竹め!」

なんのために、浮竹の血を抜いて、魔族の戦士たちに与えたのかその意味が、全てなくなったのだ。

魔力が増大するが、時間の経過と共に、その魔力が消えていくことは分かった。

筋力はそのままであるが。

「始祖浮竹に、洗脳はほとんど通じない。どうしたものか」

「藍染様!」

「なんだ!」

「その、ブラッディ・ネイ様が来られております!」

「なんだと!通せ!」

「はい!」

ブラッディ・ネイは、分身体で魔国アルカンシェルを訪れていた。

「今回の件もあり、ボクは君たちの国と、正式に敵対することを決めた。兄様を拉致監禁した件もあるしね。もう、国交は断絶する。この国いるヴァンパイアは、皆血の帝国が引き受ける」

「ブラッディ・ネイ。始祖の浮竹を、自分のものにしたくないか?」

ピクリと、ブラッディ・ネイは動きを止めた。

「それはどういう意味?」

「そのままの意味だ。自分だけのものにしたくはないか?お前の血の力があれば・・・」

「断るよ。どうせ失敗するに決まってる。それに、最近の兄様はボクにも優しい。今の関係を、壊したくない」

「ちっ、どいつもこいつも!使えない!」

「自分だけの力で、どうにかしてみたら?ちなみに、今度兄様を拉致したら、血の帝国は総力を挙げて、魔国アルカンシェルを攻め滅ぼす」

ヴァンパイアと魔族では、再生能力の高い、ヴァンパイアの方が強かった。

このまま戦争になれば、血の帝国に勝てないだろう。

血の帝国は広い。多種族を、血族という形でヴァンパイアにできるので、魔族だったヴァンパイアも多い。

人口は、魔国アルカンシェルの4倍はいる。

「死ね!」

藍染は、ブラッディ・ネイの首をはねた。

「あはははは!ボクの分身体を殺しても、呪っても、意味ないからね。この分身体は式の応用だ」

ブラッディ・ネイは首だけになって、笑った。

「お前なんて、死んでしまえ、藍染」

ブラッディ・ネイの言葉は、毒のように、藍染を数日苦しめるのだった。

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「兄様、お帰りなさい」

「ただいま」

ブラッディ・ネイは大好きな兄を出迎えて、抱きしめた。

以前なら警戒されて、触らせてもくれなかったが、兄妹の仲は大分良好な方へと進んでいた。

「これ、土産のサボテン」

「あはははは!兄様から土産もらうなんて、はじめて!」

「ブラッディ・ネイ?いくら実の妹だからって、それ以上浮竹にくっついているのは、僕が許さないよ?」

「何さ、もじゃひげの京楽。兄様を抱いているんだから、少しくらいボクが触ってもいいじゃない」

ブラッディ・ネイの言葉に浮竹は真っ赤になった。

その場には、ブラッディ・ネイの寵姫や家臣、白哉に恋次もいたからだ。

皆、聞かなかったふりをした。

「あっかんべー」

「きいいい、浮竹、ブラッディ・ネイやっつけていい?」

「やめとけ。バカにされるだけだぞ」

「やーいもじゃひげー。バーカバーカ」

「ムキーーー!」

「京楽、その、今夜・・・・」

暴走する京楽を止めるために、そう言ってみたのだが、浮竹は墓穴を掘った。

「よし、今すぐ古城に帰って、お風呂に入って睦み合おう。この2週間、君に触れるだけで、抱けなかったからね」

「おい、ちょ、京楽!」

その場で、誰もが目を閉じた。

「んんん!」

濃厚なキスをされて、浮竹は腰が砕けた。

「バカ、血の帝国内ではするなと!」

「君が欲しい」

真剣な表情で、京楽は浮竹に求愛した。

「古城に、戻ろう」

「うん。いっぱい、愛してあげるからね」

「またね、兄様」

「ああ、皆またな」

京楽は、立てないでいる浮竹をお姫様抱っこして、翼を広げて宮殿を抜けると、空間転移の魔法陣までやってきて、魔力を流しこみ、古城の地下に戻った。

「京楽、落ち着け。まだ、食事も・・・ううん」

「うん。先に、お風呂入って、君を抱きたい。いいよね?」

「好きにしろ」


浮竹は、京楽の下で乱れるのは久しぶりだった。

聖帝国では、キスやハグはしていたけど、京楽に抱かれていなかった。

「ああ!」

京楽の逞しいもので突き上げられて、浮竹は宙にその白い髪を舞わせた。

「んあああ!!」

騎乗位だった。

久しぶりの睦み合いは、濃厚なものだった。

もう、三度も京楽の熱を体内で受け止めていた。

一向に、京楽のものが硬さを失うことはなかった。

「あああ!」

前立腺をすりあげられて、浮竹は白濁した液体を、京楽の腹に滴らせていた。

「ひあ!」

ちゅどんと、音をたてて、結腸にまで入り込んできた熱に、浮竹は背をしならせる。

ドライのオーガズムでいきながら、浮竹は京楽の手で追い詰められて、また精液を出していた。

睦み合う前に、せめて何か飲もうと言われて、甘い液体を、浮竹は飲ませられた。

浮竹は、それが媚薬だと知っていた。

知っていながら、服用した。

「ああああ!!」

体の熱は、治まることを知らず、何度も精液を吐き出した。

「やああああああ!もう、やぁっ!」

与えらる快感に泣きながら、それでも京楽にこたえた。

「んああああ!」

「血を、吸ってもいいかい?」

「あ、やあ!」

「吸うよ?」

「や、だめ、今、いってるから・・・・いやあああああああ!!」

ゴリゴリと結腸を抉られて、オーガズムでいっている最中に首に噛みつかれて、吸血された。

「やあああ!!」

ぷしゅわああ。

浮竹は、潮をふいていた。

「ああ、十四郎はエロい体になっちゃったね?男の僕に犯されて、女の子みたいに潮ふいちゃって」

「あ、あ、言うな、あああ!!」

ごりっと、奥の奥を抉られた。

騎乗位から、浮竹は押し倒されていた。

中に入ったままの、京楽のものに抉られて、啼いていた。

「あああ!ひあ、もうやぁ!許して、春水・・・・・」

「僕はまだまだいけるよ?浮竹も、まだまだいけるでしょ?」

耳を甘噛みされながら、耳元で囁かれた。

「やぁん」

「十四郎、かわいい」

「やぁ」

「また、女の子みたいに潮ふいて、きもちよくなって?十四郎の潮、すごく甘い」

「春水・・・・バカ。でも、愛してる」

浮竹は、自分から京楽に口づけた。

「ふあっ」

舌を絡み合わせていると、京楽の牙が舌を噛んだ。

「んあっ」

キスをしながら、吸血されてイっていた。

「あああ・・・・」

長く睦み合った。

夕方くらいに体を重ね合わせたのに、時計は11時を指していた。

時折休憩を混ぜて、京楽は浮竹を貪った。

浮竹も、休憩の間に人工血液を口にして、京楽に血を吸われた。

また、少し休憩を入れる。

トロトロと、浮竹の太ももを、京楽が出したものが伝い落ちていく。

「あ、や・・・・・・・・」

京楽は、濡れたタオルでそれをふいた。

「もういいよね?」

「あ、やっ」

唇を奪われていた。

「んんっ」

舌を絡めあい、京楽の下が歯茎をくすぐってくる。

それに、浮竹がさっきのお返しだとばかりに噛みついて、少しだけ吸血した。

「ああ、きもちういいよ、十四郎」

「ん・・・」

京楽は、浮竹の胸を撫で下ろし、先端を口に含んで舐め転がした。

「んあ」

ぴくりと、浮竹が反応する。

もう片方をつまみあげると、浮竹は可愛くお願いをしてきた。

「もっと、もっと、春水が欲しい。春水の色に、俺を染め上げて?」

「ああ、君は僕を煽るのが上手だね。ご褒美をあげなくちゃね?」

「あああああ!!」

熱い熱に貫かれて、浮竹は乱れる。

純粋に妖艶で、美しかった。

「ああ、あ!」

最奥までつきあげてくる熱を、浮竹は締め上げた。

「いって!俺の奥で、春水」

「うん。たくさん出すから、受け止めてね?」

「ああああ!」

びゅるびゅると、まだ濃い精子を胎の奥で受け止めて、浮竹は唇を舐めた。

ゾクリとした。

この愛する者は、サキュバスなのかと思った。

「愛してる、春水」

「僕も愛してるよ、十四郎」

「あああ!」

また、もう何十回目になるかも分からないオーガズムの波にさらわれながら、浮竹は眠りに落ちていった。


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「ん・・・・」

目覚めると、東洋だった。

「ああ、また夢渡りで世界を渡ったのか」

「気が付いた、浮竹?」

「ああ」

「東洋の僕らが、エメラルドのブローチをくれたお礼がしたいって」

(目覚めたのか。大丈夫か?)

「ああ、大丈夫だ」

(その、睦み合っていたんだな。タイミングが悪かっただろか)

「問題ない」

(これは、俺と春水で用意した、花の種だ)

東洋の浮竹は、花の種が入ったラッピングされた小さな包みをくれた。

(そうそう、この花の花言葉は「永遠の愛」。まさに、君たちにぴったりだと思ってね)

「永遠の愛か。俺と京楽の愛みたいで、本当にいいな。ありがとう。綺麗に咲かせてみせる」

(じゃあ、時間もないようだし、またね)

(ああ、また会おう)

「うん」

「また、夢渡りをして世界を渡ってくるから、その時はお茶でもしよう。この前、豆大福をもらった時みたいに。緑茶、取り寄せておく」

そうして、浮竹も京楽も、その夢渡りの先にある世界を去って行った。

(桔梗の花、綺麗に咲くといいな)

(ボクらみたいに、特殊な力をもっているから、花を咲かせるなんて容易いことじゃないかな)

(そうだな。大好きだ、春水)

(ふふふ、あっちの十四郎もかわいいけど、ボクの十四郎は世界一かわいいね)

東洋の浮竹は、真っ赤になって、同じ東洋の京楽から口づけをもらうのだった。

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「花の種か。自然に咲かせるのもいいが、早く見たいから、咲かせてしまおう」

「もったいなくない?」

「咲かせたら、すぐに種ができるようにしよう。後、全部は植えないで、自然に咲くのを待とうか」

「それがいいかもね」

浮竹と京楽は、古城の庭に出て、プランターに種を植え、そこに浮竹が数滴血を滴らせた。

みるみる芽が出て、成長していき、美しい花が咲いた。

「桔梗か。綺麗だな」

「うん。浮竹?」

浮竹は、2つほど摘み取って、溶けることのない氷の魔法で、桔梗の花を包み込んだ。

「これで、いつでも見れる」

「どこに置くの?」

「もちろん、寝室に」

二人は、手を繋ぎ合って、昇ってくる太陽を見ていた。

黄金色に輝く朝日は、美しかった。

「永遠だ。俺とお前の愛は。この花言葉のように」

「うん。永遠の愛を君に」

普通のヴァンパイアは太陽の光が苦手だ。すぐに灰になることはないが、やけどを負う。

浮竹と京楽は、始祖のヴァンパイアマスターで、京楽はその血族のヴァンパイアロード。

太陽の、特にヴァンパイアたちを灰にする朝日は、効かなかった。

美しい黄金の朝焼けを見れるヴァンパイアは限られている。

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聖帝国から帰還して、半年が経っていた。

「兄様?」

眠っていたブラッディ・ネイは、愛しい存在がすぐ近くにあるのに気づいて、実の兄の抱き着いた。

「愛している、ブラッディ・ネイ」

「兄様、ボクもだよ!兄様、兄様!」


ブラッディ・ネイが消えた。

血の帝国を震撼させた、女帝行方不明事件は、すぐに浮竹と京楽の耳に入り、平和な日々を壊していくのだった。


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始祖なる者、ヴァンパイアマスター16

一行は、竜化した恋次の背に乗って、聖帝国を目指した。

浮竹の住む古城があり、血の帝国があるアステア大陸と反対側にある、カドワキ大陸に聖帝国はあった。

砂漠化が進む、不毛の大地が広がっていた。

「こんなところに、神族は住んでいるのですか」

ルキアが、熱い日光を遮断させる、特殊が外套を羽織ながら、太陽を仰ぎ見た。

みんな、ルキアと同じ外套を羽織っていた。

浮竹が錬金術で成功させた、光を遮断し、空気を冷やす効果のある外套であった。

錬金術といってもいろいろある。液体のもの以外の道具や武器防具、衣服まで錬金術で作ることができた。

急いでいたので、錬金術に使う館で急ごしらえした割には、完璧にできていた。

「とりあえず、聖帝国に入ろうぜ」

一護が、先を進んでいく。

「おい一護、先さき進むな!まだ恋次が竜化したままであろうが!」

「恋次なら、竜化してそのまま聖帝国に入って、敵を驚かせればいいじゃねぇか」

一護の言葉に、浮竹はその手があったかと思った。

「恋次君、そのまま聖帝国の聖都アルカディアへ向かってくれるか?白哉も一緒に」

「え、いいっすけど」

「浮竹、何か考えでもあるのか」

「まだ、味方がきたことを知らせていない。式では、気味悪がられてまともに取り合ってもらえないだろう。白哉には、皇族を保護しておいてほしい」

「分かった。兄は、ルキアたちと共に敵を叩くのだな?」

「ああ。思う存分暴れてやる」

「じゃあ、魔族の戦士とやらは殺していいんだな?」

冬獅郎が、愛剣の氷の魔法を操れる氷輪丸を手に、暴れたくて仕方ないという顔をしていた。

「一護君も冬獅郎君も、好きなだけ暴れていいぞ。今回の魔族に温情を与える必要はない。藍染の手の者だ。おまけに他国を蹂躙して当たり前と思っている者ばかりだろう」

魔族は、多種族を差別する。自分たちが一番優れていると思っているのだ。

ヴァンパイアも分類されれば魔族になるが、魔族とはその存在が異なっていた。

人間国家は、魔族と敵対している。

浮竹拉致監禁の件で、ブラッディ・ネイが藍染と結んだ、不可侵条約も無駄に終わってしまっている。

一行は、恋次と白哉を先に行かせて、冬獅郎のもつ氷の精霊フェンリルの、巨大が狼の背に跨って、移動した。

聖帝国に入り、オアシスのいくつかを通ったが、神族は惨殺されていた。

「ひでぇ」

「うむ」

「魔族め」

浮竹と京楽は、無言だった。

やがて、次のオアシスが見えてきて、悲鳴が聞こえてきた。

「いやああああ!」

「うわああああ!」

「ほらほら、どんどん殺せ、犯せ、奪え!」

叫んでいたのは、魔族の将軍であった。

100人の強化魔族ごとに将軍を一人置いていた。

「ヘルインフェルノ!」

浮竹は、加減もない炎の高位魔法を、魔族に叩き込んだ。

数人が蒸発した。

「誰だ!貴様ら、神族ではないな!何者だ!!」

「そういうお前は、魔族の将軍であっているな?」

「俺の名は・・・・」

「名前なんてどうでもいいよ。死んで?」

京楽が、氷をまといつかせたミスリル銀の魔剣で、魔族の将軍の心臓を刺し貫いていた。

「ごふっ!」

ぱきぱきと、傷口から氷の彫像になっていく。

「ま、待て、俺を殺したら、藍染様が!」

「ああ、藍染はいないでしょ。魔都で、封印されていたことで失った膨大な魔力と傷を癒しているはずだよ」

浮竹が放った式が、もちこんできた情報であった。

魔族の将軍に、興味を失った京楽は、氷の彫像となったそれを砕き壊した。

魔族の将軍がやられて、散々好き勝手暴れまわっていた魔族が、こちらを取り囲んでくる。

「神族を巻き込まなくてすむから楽だ」

「ああ、一護の言う通りだ。ルキア、暴れてもいいな?」

「間違っても、神族に攻撃するなよ!」

一護と冬獅郎は、思う存分に暴れた。

一護は雷の使える魔剣でサンダーストームを使い、たくさんの魔族を黒こげにして死なせた。

冬獅郎は、氷の精霊フェンリルを操って、魔族を精霊で噛み殺し、牙でその肉体を裂いた。

「浮竹の血を取り込んでいるって言っても、あっけないね」

「俺の血は、確かに一時的に能力をあげる。だが、俺の意思なしで投与されれば、ただの戦闘人形のなりそこねになる」

事実、魔族たちはその身に宿らせていた浮竹の血による魔力を、失いつつあった。

筋力は、まだあるようだったが。

「ヘルインフェルノ!」

魔族の副将軍が、浮竹の前を遮って、いきなり魔法を使って攻撃してきた。それを、浮竹が血のシールドで防ぐ。

「始祖のヴァンパイア、浮竹十四郎殿とお見受けする。魔族とヴァンパイアは不可侵条約を結んでいるはず!何故、我らの邪魔をする!」

「不可侵条約?そんなもの、君らのところの一番のお偉いさん、藍染の浮竹拉致監禁事件で、とっくに無効になってるよ?」

「そんなばかな!そうだとしても、神族を庇う理由などないはず!」

浮竹は、ゆらりと瞳を真紅にして、魔族の副将軍を睨みつけた。

「俺から無理やり奪いとった血で、肉体を強化しても、俺の意思がないと魔力は一時的に膨れ上がっても、直に消える」

「く、ヴァンパイアの始祖が!黒こげになれ!」

魔族の副将軍は、剣を浮竹に向けた。

それに、京楽が浮竹を庇う形で、魔剣を向ける。

「ヘルインフェルノ!」

敵は、さっきと同じ魔法を放ってきた。どうやら、魔力をあげたまま失っていない個体らしかった。

「ヘルインフェルノ!」

使おうと思えば使える、浮竹の魔法を京楽が使っていた。

同じヘルインフェルノとはいっても、使い手によって威力の違いがある。

敵のヘルインフェルノを、京楽が放ったヘルインフェルノが飲みこんで、魔族を焼き殺した。

「ぎゃあああああ!藍染様万歳!」

魔族はそう言って死んでいった。

「一護君、冬獅郎君、そっちは片付いたか?」

「ああ。今ルキアが負傷者の手当てをしてる」

ルキアの傍には、たくさんの神族の負傷者が集まっていた。

軽傷なものは、一護と冬獅郎が傷の手当てをして、重傷者を中心にルキアは患者を助けていった。

「おお、聖女よ。これは少ないですが・・・・・」

そのオアシスの村にいる村長が、涙で作った上質の宝石をルキアに渡そうとして、ルキアは拒否するのだが、冬獅郎が受け取ってしまった。

「労働に対価を払ってくれるなら、受け取るべきだ。どうせ、こんなオアシスしかない、あとは不毛の大地だ。食料と交換してくれる相手なんていないだろう」

「その通りです、少年よ。我ら神族の涙は宝石になる。いつもはその宝石を皇族の方が受け取って、食料と、水のない地域では水もくださるのだが、こんな戦争がおこってしまっては、当分のの間食料の配布はないでしょう。このままでは、我らは飢えてしまう」

浮竹は、思案した結果、アイテムポケットにいれたままの、ドラゴンの肉の塊を、冷凍保存した状態で出した。

「これで、しばらくはもつか?」

「おお、肉がこんなに!これは竜族の肉!少量を口にしただけでも、十分生きていけます!ありがとうございます!」

村長は涙を零した。周囲の、ルキアに治療されている者たちも涙を零した。

それは宝石となった。

上質のオパールだった。

村長は村の者に言って、今宝石になったものを集めて、浮竹に渡した。

「少ないですが、これをお礼に」

「ありがたく、いただいておく」

浮竹も、何も慈善事業で魔族を殺しているわけではない。

ただ、自分の血で強力なった魔族を放置できないので駆除しているのであって、神族を命をかけてまで、助けるつもりはなかった。

それは、聖帝国に向かう前に、浮竹が出した条件であった。

ルキアの治癒の魔法で重傷者は助け、軽症者は、包帯や薬を渡して去る。

あまり長居ができないだろうから、浮竹は猫の魔女乱菊に依頼して、傷を治すポーションを大量に発注して、その一部を村に残して移動した。

次のオアシスは無事だった。

どうやら、オアシスを転々として奪略と殺戮を繰り返していた魔族はあの100人だけで、あとは聖都アルカディアに向かったらしい。

浮竹たちは、また氷の精霊フェンリルの背に乗ると、聖都アルカディアを目指した。

聖帝国は、小さな国であった。

血の帝国の10分の1もない。

聖都アルカディアには、氷の精霊である、巨大な魔狼フェンリルの背に乗って5時間ほど移動した場所にあった。

死体が、魔族と神族両方あった。

「神族は軍隊を持たないが、流石に皇族は守られるために騎士団を有している」

「白哉クンと恋次クン、皇族の保護に間に合ったかな?」

「あの二人のことだ。心配ないだろう」

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「恋次、皇族はそれで最後か!」

「あ、はい。この子供で最後っす!」

白哉は、身体能力を高めた魔族を千本桜を解放して、血の刃で斬り捨てていく。300人はいるので、斬っても斬ってもわいてきた。

宮殿に押しかけてきた魔族を、白哉が倒しながら、恋次が皇族を集めて、守りながら屋上まで移動した。

「恋次、竜化して皇族たちを乗せて移動しろ!私もすぐに後を追う!」

「だめです!あんたも乗ってください!」

「だが、敵を引き付ける者が・・・・」

竜化した恋次は、ドラゴンブレスを吐いた。

いきなりドラゴン、それも竜族が現れて、さすがの強化魔族たちも逃げ出す。

「今です!さぁ、皇族の方たち、俺の背に乗って下さい。白哉さんも!」

「すまぬ、恋次!」

「お安い御用です」

白哉は、皇族が全員いるか確認してから、恋次の背に乗った。

「とりあえず、遠く離れたオアシスへ向かえ!」

「はい!」

ばさりと、巨大な翼で恋次は羽ばたいた。

神族の皇族は全部で14人。

全員、無事だった。

「ありがとうございます。私は皇帝のシェルキアと申す者。この度は、危ないとこを助けていただき、感謝の気持ちでいっぱいです」

「感謝するなら、始祖ヴァンパイアの浮竹にすることだ。神族の皇族を助けると言い出したのは、あの者なのでな」

白哉も恋次も気づいていなかった。

かつて聖女であった、シスター・ノヴァが皇族に交じっていたなど。姿形をかえて、美しい少女の皇族に転生していた。

聖女ではなくなったが、始祖の神族であった。

オアシスに到着して、皆を降ろした恋次は、人型になると急に倒れた。

「恋次!?」

「白哉さ・・・・その皇族の少女、シスター・ノヴァだ!」

「シスター・ノヴァだと!?」

「何!?そんなばかな!この子は私の第5子の皇女マリア。シスター・ノヴァであるはずが」

ぐさりと、深くはないが短剣で腹を刺されて、皇帝シェルキアはその場で倒れた。

「あなたたちには、始祖浮竹十四郎をおびき寄せる餌になってもらうわよ。わたくしは元聖女のシスター・ノヴァ。今は黒魔術の司祭をしているわ」

「我が子が、シスター・ノヴァだなんて!」

聖女は堕ちた。

シスター・ノヴァは今や始祖の聖女ではなく、ただの始祖の神族になっていた。

浮竹と京楽に、深い恨みをもっていた。ブラッディ・ネイにもだ。

「あなたたちの方から、聖帝国に来てくれるように、始祖魔族の藍染を篭絡してみせたんだけど、見事に成功したようね」

「なっ!シスター・ノヴァ。兄は、自らの故郷を売ったというのか!」

「そうよ。あたくしに、この聖帝国はふさわしくない。魔族の国、アルカンシェルに行くわ」

黒魔術の司祭をになったというのは本当のようで、白哉と恋次は、呪われた。

「ただの、動きを封じる呪いよ。命まではとらないわ」

「兄は、愚かなことをしているという自覚はあるのか」

「うるさい!皇族王だが知らないけど、知ったような口を利かないでちょうだい!」

パンと、シスター・ノヴァは白哉の美しい顔を平手打ちした。

白哉は口の中を切って、血を流した。

「うふふふ。でも、あなた綺麗ね?あたくしのものになる?」

「死んでもごめんこうむる」

「ふん!ヴァンパイアときたら、高飛車なやつばかり。わたくしにふさわしいのは、そう、あなたのような・・・・・」

「俺に触るな。白哉さんに怪我させたこと、いつか絶対に後悔させてやる」

動けないでいる恋次は、竜化することもできず、金色の瞳の瞳孔を縦に収縮させて、シスター・ノヴァを睨んだ。

「ふん。どいもこいつも、わたくしをバカにして!」

シスター・ノヴァは、白哉のふりをして、式を浮竹の元に飛ばすのだった。

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「白哉から式がきた。皇族は無事全員保護したらしい。俺たちは、聖都アルカディアに残った魔族を駆逐して、白哉と恋次君と合流しよう」

聖都、アルカディアは散々たる様子だった。

建物のあちこちが壊れて、神族が死んでいた。

中には騎士らしき姿のものもいて、魔族の死体もあった。

「おお、獲物が向こうからやってきたぞ」

「藍染様を封印した罰を受けてもらうぞ!」

わらわらと押し寄せてくる魔族を、浮竹はもう神族は周囲にいないと判断して、禁呪の魔法を発動させた。

「ブラックホール」

それは、全てを吸い込む魔法。

浮竹たちを除いた、全ての魔族が飲みこまれていく。

「うわあああ、吸い込まれる!」

「なんだ、この魔法は!」

「ぎゃああああああ!!」

吸い込まれていく先から、悲鳴が聞こえた。

「なんだ、吸い込まれた先に何があるんだ!」

「モンスターが!モンスターの群れが!ぎゃあああ!!!」

5分ほどして、全ての魔族はブラックホールに飲みこまれ、浮竹が血で飼いならしている食肉のモンスターの群れのいる場所に放り込まれて、生きながら食われていった。

「浮竹・・・怒ってる?」

「この式、念蜜に装っているが、白哉のものじゃない。シスター・ノヴァの匂いがする」

「まさか、兄様の身に何か!?」

式が、再びやってきた。

それは、本当に白哉がよこしたものだった。

中身は、シスター・ノヴァの手紙だった。

「白哉と恋次君の身柄を返してほしければ、俺と京楽の二人で、聖帝国のあるオアシスまで来い、だそうだ」

「罠だ、浮竹!」

冬獅郎の言葉に、浮竹は冬獅郎の頭を撫でた。

「罠と分かっていても、白哉と恋次君をそのままにはしておけない」

「浮竹殿、どうか兄様を!」

「分かっている」

「ルキアちゃん、僕らを信じて?」

浮竹と京楽は、ヴァンパイアの翼を広げて、指定されたオアシスに向かった。

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「よくもまぁ、のこのことやってこれたものね?」

「お前が、白哉と恋次君を人質にとっているせいだろうが」

「ふん、その美しい顔を、焼いてあげる」

「浮竹!」

「大丈夫だ。俺には、東洋の妖からもらったお守りがある」

シスター・ノヴァは、浮竹に酸で顔を焼くという、オリジナルの呪いをかけた。

「ぎゃああああああ!何故、何故反射されるの!?わたくしの美しい顔が!」

「シスター・ノヴァ。その顔のほうが、お似合だよ」

京楽は、醜く焼けただれたシスター・ノヴァの顔を見て、笑っていた。

「人質がどうなってもいいの!」

「なんのことだ?」

「俺ら、浮竹さんが近くにきた時点で、呪いから解放されたっすよ」

白哉と恋次は、何事もなかったかのように立っていた。

浮竹と京楽の元にいく。

東洋の妖からもらったお守りは、自分以下の相手の呪いを反射するものであった。血族や親しい者にも、その効果はあった。

金運UPの効果もあったが。

東洋の妖を気に入っている浮竹は、もらったお守りを肌身離さず身につけていた。

「く、こうなったら、血族を呪ってやる!」

シスター・ノヴァは京楽を呪おうとした。

「ぎゃっ!」

また呪いを反射されて、シスター・ノヴァは老婆になっていた。

「ああああ!あたくしの美しい姿が!」

「もう、永遠に、その姿のまま、いるといい」

浮竹は、冷酷に真紅に瞳を輝かせた。

自分だけでなく、京楽に呪いをかけたのだから、浮竹が怒って当然であった。

シスター・ノヴァには、お守りの反射の効果で、浮竹と京楽が、白と黒の蛇に見えていた。

東洋の妖は、元々白と黒の蛇を形どっている。その効果が出ていた。

「白哉、恋次君、俺の傍を離れるなよ。お守りの効果で、血族やそれに親しい者も、呪いを反射してくれる」

「浮竹、すまぬ。世話をかけた」

「浮竹さん、すんません。捕まってしまって・・・・・」

「相手は呪詛の元聖女。今は呪いの黒魔術の司祭らしいけど、黒魔術の司祭なんて、なろうと思ったら金があったら、誰でもなれる。しかも元聖女で呪詛を嗜むときたら、組織が喉から手が出るほど欲しがったんだろう。ちやほやされて、それだけで終わってればよかったのにな?」

浮竹は、呪いが効かないことで、ガクガクと震え出したシスター・ノヴァを、真紅にした瞳のまま見た。

「どうやら、私たちの出番はないようだ」

「浮竹さん、やちゃってください。こいつ、白哉さんに怪我を負わせた。許せないっす」

「浮竹、二人もこう言ってることだし、封印しっちゃいなよ」

「ああ。でも、俺でなく京楽も呪おうとした報いも受けてもらう」

浮竹もまた、呪術が使えた。

「永遠に冷めぬ、悪夢を見ながら、眠りにつくといい」

「いやあああああ!!あたくしの美貌を、汚さないでえええ!わたくしは聖なる存在!わたくしを、汚さないでえええ!!」

悪夢を見ながら、醜い老婆になり果てたシスター・ノヴァに向かって、浮竹は手をつきだした。

「そえれは永久(とこしえ)の眠りにして封印。燃え盛る業火さえも凍てつかせる世界の終わり。深淵の闇に落ちていく汝に、永遠の眠りあれ。永久凍土をその身に宿し、凍り付け!エターナルアイシクルワールド!」

浮竹は、呪文を詠唱した。

完全なる詠唱は、封印の効果を高めてくれる。

「いやああ白と黒の蛇が・・・・・・」

そう言って、シスター・ノヴァは凍り付いて、封印された。

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