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小説掲載プログ
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語尾がニャン

京楽と、酒を飲み交わしあっていた。

京楽は、アルコール度の高い、強い日本酒を好んで飲む。

一方の浮竹は、アルコール度の低い、甘い果実酒を好んだ。

京楽が浮竹の杯の注ぐのは果実酒で、苺の味がするやつだった。時折、京楽もそれを飲んだ。浮竹が京楽にの杯に日本酒を注ぐ。

でも、浮竹は自分で口ににしない。酔いつぶれることを知っているからだ。

ふと、杯の酒に苦みが混じっているのに気づいて、浮竹が眉を潜める。

「京楽・・・・この酒に、もしかして何か入れたか?味が苦い」

「あれ、もう気づかれちゃったの?」

「正直に言え。媚薬か?」

「語尾がニャンになる薬」

「はぁ?」

浮竹は素っ頓狂な声を漏らしていた。

「だから、語尾がニャンになる薬・・・・」

「そんなもの飲ましてどうするつもりだニャン」

浮竹が驚く。

「なに!?何故語尾にニャンがつくのだニャン」

「いいねぇ。かわいいねぇ。あー涅マユリにぼったくられたけど、たまにはこういうのもいいねぇ」

「またお前は、涅マユリの薬を俺にのましたのかニャン。あーニャンニャンうるさいんだニャン」

「浮竹かわいい」

「やめろニャン。逃げてやるニャン」

瞬歩で、十番隊の日番谷のところにやってくると、叫びそうになった日番谷の口を塞いだ。

「涅マユリの薬を飲まされたニャン。語尾にニャンがつくんだニャン。すきでやっているわけではないんだニャン」

日番谷は、笑い出した。

「えらいかわいいな、浮竹」

「京楽もこりないやつだニャン。何度色んな薬をのまされてきたことかニャン」

「浮竹、出ておいでー。解毒薬あるからーーー」

「ああ言ってるぞ」

「絶対に嘘だニャン。解毒薬とかいいながら、美味しく食べられるに決まっているニャン」

「みーつーけーたー」

10番隊の執務室に入ってきて、日番谷に抱き着いている浮竹を発見する。

「日番谷隊長にも同じ薬を飲ませろニャン。そしたら、許してやるニャン。好きにしてもいいニャン」

「おい、浮竹!」

「ふふふふ・・・たまには日番谷隊長も、俺の気持ちを味わえニャン」

京楽は、粉薬を混ぜた水を、無理やり日番谷に飲ませた。

「何しやがるニャン。なんだと、まじで語尾がニャンになってやがるニャン」

「これで仲間だニャン」

「浮竹のあほーーーーーーニャン」

「隊長、さっきからニャンニャンうるさいですよ・・・・」

「松本、京楽から解毒薬を早くうばえニャン」

「はぁ?」

松本は、首を傾げた。巨乳がぷるんと揺れた。

「~~というわけだニャン」

日番谷の説明に、松本の目が光る。

「グッジョブです、京楽隊長」

「でしょ」

京楽と松本は、ハイタッチを決める。

「効果は2日。黙っていればばれないさ」

「松本に知られてすでに終わってるニャン」

「隊長、かわいい~~~~~」

「苦しいニャン!胸で窒息させる気かニャン!」

その神々の谷間に、また松本は日番谷の顔を埋めた。

「かわいい~~~」

「やめろニャン!窒息死とか苦しいんだぞニャン」

「ほら浮竹も、こっちおいで」

「いやだニャン。何か変なことする気だろニャン」

「でゅふふふふ。おいしく食べちゃうだけだよーーー」

「いやだーーーーニャン。あ、やめろニャン」

「まぁまぁ、そういわずに」

「場所を弁えろニャン」

「京楽、解毒薬をわたせニャン」

日番谷の言葉に、京楽は解毒薬を渡す。

「一人分しかないよ」

「日番谷隊長、すまないがその薬は俺がもらうニャン」

「渡すものかニャン!」

解毒薬は、松本の手に渡った。

「あらどうましょう、こんのいらなからこうしましょう」

開いていた窓の外に、解毒薬をぽいっと投げ捨てた松本に、浮竹も日番谷も怒った。

「何をするんだニャン!」

「てめぇら、まとめて蒼天に座せ、氷輪丸ニャン!」

ひゅるるるるどっかーーーん。

京楽も浮竹も松本も、みんな巻き込んで氷の龍があばれまわる。

「2日もこのままとか・・・他の面子と会話ができねぇ・・・ニャン・・・」

結局、二人は語尾がニャンとついたまま2日を過ごした。

その間に、浮竹が京楽に美味しくいただかれてしまうのだった。


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白哉と中身が入れ替わった件

「やあ、白哉」

「浮竹か」

白哉が、ふと足元を見た。草履の紐が切れてしまったのだ。

「おい、大丈夫か?」

「大したことは・・・・」

ゴチンと、互いの頭をぶつけあった。

「ああ・・・・またか」

浮竹は、過去に京楽に海燕に日番谷と中身が入れ変わったことがある。

今回も同じだった。

頭をぶつけると、人格が交代するのだ。

「私がいる・・・・」

白哉が、目の前に自分の体があることに驚いていた。

「白哉、その体でいるのはきついだろうが2時間ほどしたら元に戻ると思うから。ということで、やっほう、若い健康な体で金持ちだー。金使うぞーー」

「浮竹!!」

去ってしまった自分の体を、見送る羽目になった。

「どうすればいいのであろう・・・・・」

浮竹の体で悩んでいた白哉は、とにかく6番隊に執務室にいき、恋次に事情を説明すると、京楽隊長にも話すべきだと言われて、8番隊の執務室にいった。

「浮竹ー、僕が恋しくなって会いにきてくれたの!」

いきなり抱き着いてきて、キスをされそうになって、咄嗟に避けた。

「私は朽木白哉だ!浮竹と、中身が入れ替わったのだ!」

「ええ、今度は朽木隊長!?この前は日番谷隊長だったね・・・・」

「京楽、兄は楽観視しすぎではないのか。恋人の中身がいれかわったのだぞ」

「まあ、何度も経験して慣れたよ。まずは、朽木隊長の体、つまりは浮竹を探そうか。何か言ってなかったかい、浮竹のやつ」

思い出す。

「若い健康な体で金持ちだ。金使うぞと言っていた」

「ふーむ。若い体で金を使う・・・・最近の浮竹で行く場所としたら、貴族街のレストランかなぁ。あの子、一度上流貴族になってレストランに入ってみたいって言ってたから」

「ではそこにいくぞ」

「入るだけで金かかるんだよねぇ、あのレストラン。味は一流だけど」

「金など、後でいくらでも払ってやる。急ぐぞ」

貴族街のレストランにやってきた。VIP扱いでないと入れないので、浮竹の体の白哉は外で待つことになった。

やがて、白哉の体の浮竹がずるずると引きずられてやってくる。

「浮竹、兄はそんなにこのレストランの料理が食べたいのか」

「あああ!デザートがまだだったのに!」

「浮竹、他人と入れ替わったら、大人しくしときなさいって言ったでしょう」

「だって、朽木だぞ!4大貴族なんだぞ!せっかくなんだから、楽しまなきゃ損だろう!」

「ああ、またこの子は・・・・・」

白哉が、浮竹の体で咳をした。

「ごほっごほっ」

ぽたぽたと、血が手の隙間から滴った。

「ああ、すぐ雨乾堂へ。薬飲ませなきゃ!」

京楽と白哉の体の浮竹は、浮竹の体の白哉にお互いに肩をかしあって、瞬歩で雨乾堂まできた。

「ごほっごほっ・・・・浮竹は、このような体で・・・・平気なのか・・・なんという苦しさだ・・・」

血を吐きながら、白哉は布団に横になる。

鎮痛剤を注射して、薬を飲ませる。

「ちょっと我慢しててくれ。すぐに治まるから」

薬がきいてきたのか、咳が止まった。

「眠くなってきた・・・・・」

「うん、鎮痛剤が効いたみたい。寝ていいよ。起きたころには、元に戻ってるだろうから」

京楽の言葉を耳にしながら、白哉の意識は、闇に滑り落ちていった。



「ここは?」

ふと気づくと、雨乾堂の天井が見えた。

自分の体を見る。

自分の、朽木白哉の体だった。

「ああ、起きた?浮竹も寝るっていって、自分に鎮痛剤打ってたから、ちょっとふらふらするかもしれないけど」

薬の効果か、まだ眠かった。

「眠い・・・・・」

「無理することないぞ、寝ればいい」

元に戻った浮竹が、隣の布団で横になりながら、こっちを見てきた。

「兄は・・・・・あのような辛い発作を、いつでも起こすのか?」

「いや、毎度じゃないぞ。月に軽いのも含めて2~3回だ」

「あのような痛み・・・・経験したことがない」

「まぁ、俺は肺の痛みと付き合いながら生きているから、慣れかな。苦しいことは苦しいし、痛いことは痛いけど、我慢できないほどじゃない」

「兄には、脱帽させられる。あのような苦しみと痛み、もう味わいたくもない」

「まぁ、そうだろうねぇ。普通そうだよ。朽木隊長、もう少し休んでいきなさい。薬が抜けきっていないでしょ」

京楽に言われて、白哉は足元がふらつくので、もう少し休憩しようと目をつぶると、また意識は闇に滑り落ちていった。

「よく眠ってるな・・・・・」

もう起き上がっても平気になった浮竹が、白哉の顔を覗きこむ。

「こうしてると、人形のように綺麗なんだけどなぁ」

美しく整った顔は中性的で、睫毛が長かった。

「まぁ、何はともあれ元に戻ってよかったよ」

「デザート・・・・」

「はいはい。今度のあのレストランのデザート持って帰ってきてあげるから、すねないの」

「約束だぞ」

「うん」

軽くキスをする。いつ白哉が起きるか分からなかったので、それだけにしておいた。

やがて、夜になって京楽は8番隊に帰っていき、浮竹は夕餉をとり湯浴みをして、白哉の隣にひきっぱなしの布団に横になった。

白哉の意識が戻ったのは、翌日の早朝だった。

「浮竹、浮竹・・・・・」

「んー。今何時?」

「5時だ」

「凄く眠い。白哉、もう帰っても大丈夫だぞ。ちゃんと体は元に戻ったから・・・ZZZZZZZ」

「浮竹・・・・・」

白哉は、少し逡巡したが、屋敷に戻ることにした。無断外泊だ。今頃、ルキアが不安がっているに違いない。

ふと、ルキア専用の伝令神機に着信がいっぱいあることに気づく。

ルキアと恋次からだった。恋次にも、ルキア専用の伝令神機のメルアドを教えていた。

今どこでどうしているのかという内容のメールばかりだった。

それに、今帰宅すると返した。

「浮竹・・・兄は、辛い病を抱えておるのだな。ここまで酷いとは思っていなかった」

眠りについたまま、長い白髪が畳の上に散らばっていた。

白哉は帰還した。

浮竹は、副官のルキアに起こされるまで、10時過ぎまで寝過ごすのであった。






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京浮と朽木家

「京楽、白哉のところにいってくる」

「あ、待って、僕も行くから」

「お前がいても、楽しいことなんて何もないぞ」

「それでも心配だからついていくよ」

二人で、白哉のいる朽木邸に向かった。

「何用だ?」

白哉は、書道をしていた。

「健康第一」と書かれていた。

「う、その書かれた文字いいな。くれないか」

「これか?欲しいなら、浮竹、兄が勝手にもっていけ」

「うん」

白哉から、達筆の「健康第一」という書をもらって、浮竹は雨乾堂に飾ろうと思った。

「白哉、この前いってた盆栽がこれなんだが」

浮竹は、わざわざ盆栽を持ってきていた。

浮竹の趣味で、腕自体は相当に悪い。さっぱりなのだ。

「俺としてはここの枝とか全部切りたいんだが」

「それは・・・なかなか値段のしそうな代物だ。今のままがいい。むだに剪定しないほうがよい」

「そうか!白哉がそう言うなら、間違いないな。この盆栽は、今度の瀞霊廷盆栽祭りに出すことにしよう」

なんの祭りそれ・・・・京楽は思った。

「ねぇ、浮竹、それだけのために来たの?」

「え、ああそうだぞ。だから、きても楽しいことなんて何もないと言っただろう」

「あ、隊長!」

「お、朽木じゃないか。現世から帰ってきたのか?」

「はい。一護のところに行っておりましたが、本日帰還しました」

ルキアは、今は13番隊の副隊長で、浮竹の副官である。

長いこと、海燕以外に副官を置かなかった浮竹であったが、実力をどんどんとつけていくレルキアなら副官にしてもいいと思っていた。

そのことを何度か白哉に話したが、白哉も「あれにその実力があるというなら、何もいうまい」といって、ルキアが副官になることを黙認してくれた。

昔は、席官にするなと、強くプレッシャーをかけてきていたが、白哉も変わった。

ルキアの実力を認め、そしてルキアとの冷めきっていた仲も、雪解け水のように少しづつ歩みよっていった。

結果、ルキアに対して少し甘すぎる義兄となった。シスコンというやつだ。ルキアはルキアで、兄様ラブのブラコンになってしまった。

お互い、専用の伝令神機をもっている。

「わかめ大使、食べていっていいか?」

「食堂においてある。好きなだけ食べて、好きなだけ持って帰るとよかろう」

「朽木家は広いからなぁ。食堂はどっちだっけ」

「私が案内します。こちらへ」

ルキアが、浮竹の手をとって案内してくれた。

「ルキアちゃんは、一護君と何処まで進んでるの?」

京楽の言葉に、ルキアが真っ赤になって否定する。

「ま、まだ好きと伝えあったばかりで、その、進展といえばキスをしたくらいで・・・・」

「へぇ、あの奥手のルキアちゃんが一護君とキスまで!朽木隊長が知ったら、卒倒するかもね」

「あ、兄様は私と一護が付き合っているのを知っています」

「へぇ。黙認してるのかい」

ルキアが首を横に振る。

「結婚前提で付き合うなら、構わないと・・・・・」

「一護君が死神化するの?それともルキアちゃんが人間に?」

「多分、一護が死神化するかと・・・・・」

食堂についた。

「私と一護は、これからなのです!」

「うん、そうみたいだね」

「おい京楽、あまり朽木をからかうなよ」

「それでは、失礼します」

「朽木、京楽の言うことはあまり気にしないように」

「はい、隊長!また明日、職場で!」

今日は日曜だった。

週末の土日になると、ルキアは一護に会いに、現世へと赴いた。

「わかめ大使、けっこうあるな」

10個くらい食べて、後は持って帰ろうということになった。

浮竹は盆栽を手にしていたので、袋につめて背中に背負う。京楽も、もてるだけもって、朽木家を後にする。

「朽木隊長といい、ルキアちゃんといい、慕われてるねぇ」

「何、長年の付き合いだからな。白哉とは100年近い付き合いだし、朽木も隊に入って30年以上は経過している」

「僕の周囲には、慕ってくれる子なんていないから、ちょっと羨ましいな」

「伊勢がいるじゃないか」

「七緒ちゃんは、慕っているっていうかいつも怒ってるよ」

「お前が仕事しないからだ。ちゃんと仕事をして上司らしいふるまいをしていれば、そのうち慕ってくれるんじゃないか」

「いやー、あの七緒ちゃんが・・・・それないと思うなぁ」

どさりと、荷物を雨乾堂に降ろす。

けっこうな量のわかめ大使が、畳の上に広がった。

「まずは盆栽を置いてこよう」

白哉に剪定する必要がないと言われたので、そのままの形を維持することにした。

「それより、瀞霊廷盆栽祭りって何?」

「え、ああ。その名の通り、盆栽を出品しあって、いろんな層から票をもらって、1位になったたら、金一封。3位まで、賞金がでる。なにも賞金目当てじゃないが、せっかく手塩にかけて育ている盆栽だ・・・・上位に入ってほしい」

「浮竹って、盆栽そんなに腕よかったっけ」

「自慢だが、からっきしだ!」

朗らかに笑う浮竹。

その笑顔が眩しくて、京楽は気づくと浮竹を抱き締めていた。

「京楽?」

キスをされた。触れるだけのキスだ。

「どうしたんだ、京楽?盛ってるのか?」

「いやいや。ただ、君の笑顔が眩しくてね」

「変な奴だな」

浮竹は笑う。

その笑顔が、京楽は好きだった。




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海燕も味わえ

「ほらほら起きろおおおおおお」

休日の海燕の家に、浮竹は来ていた。

「のああああああ!?まだ7時だぞ!おい、都!」

寝ていた海燕の布団をひっぺがす。途端に訪れた寒気に、はっくしょんとくしゃみを一つ。

「はい、俺は誰でしょう」

「浮竹隊長・・・・・ってええええ!なんで隊長が俺の家に!」

海燕は驚くが、浮竹は淡々としていた。

「毎日毎日布団をはぎとられる俺の気持ち、少しは理解したか?」

「まさか、それだけのために俺の家にきて、俺の布団ひっぺかしたんですか?」

「そうだ」

「あんた、あほだろ」

「むきーーー」

アホといわれて、事実アホな行動をとりにきた浮竹は、怒った。

「おい都!海燕の財布で買い物にいこう!」

「ええ、あ、はい」

「ちょっと!何人んちの妻を持って行こうとしてるんですか!しかも俺の財布って」

浮竹は、海燕の財布を取り出すと、中に金が入っているのを確認して都とと一緒に瞬歩で消えてしまった。

「なんだったんだ・・・・」

10分後、瞬歩で帰宅してきた二人がもつおはぎやらの甘味の量に、海燕は使われた金を思って、叫んだ。

「これ、ほとんどあんたの好物でしょう!こんな無駄遣いして!金返せ!」

「残念ながら、今月はもう0円だ。貯蓄もないしな!」

けらけらと笑う浮竹が、悪魔に見えてきた。

「んで、自分の部下にたかりにきたんですか」

「ただの、嫌がらせだ」

勝手に、買ってきたおはぎを食べだす浮竹。

「全くこの人は・・・・・」

「いやぁ、壬生の甘味屋のおはぎがやっぱり一番だな」

「どいてください。俺も食べる」

もう買ってしまったものを、しかも食品だ。戻して金に変換するのは無理なので、海燕も食べたが、量が量なのでほとんど浮竹が一人で食べてしまった。

「最悪な嫌がらせだ」

「そうだろう。今度から起こした方変えないと、またこうやって海燕の財布を直撃するぞ」

「はあ・・・分かりましたよ。もっと優しく起こします。それで起きなかったら、外に追い出しますけどね」

「それはないだろう!」

「あんまし嫌がらせしてると、山本総隊長にちくりますよ」

「う・・・・・・・」

痛いところをつかれて、浮竹は逃げ出した。

伝令神機で、京楽のところに連絡をいれる。

雨乾堂にきたところで、京楽に捕まった。

「京楽、海燕とグルか!」

「いやね、お仕置きをしてくれと言われて・・むふふふふ」

嫌な予感がして、一歩後ろに下がる。

瞬歩で逃げ出そうとした時は、もう京楽に捕まっていた。

「俺は無実だーーー!離せーーー」

「こんなこと言ってるけど?」

「いいえ、有罪です。勝手に俺の財布使って飲食に使いました」

伝令神機から、海燕の声がした。

「海燕の卑怯者ーー!」

「悪いのはあんただろうが!このアホ!」

「あほっていうほうはあほなんだーーーーー!」

「あほが!」

「お前があほだ!」

「いいや、あんたがあほだ!」

伝令神機ごしにアホだアホだと言い続ける二人を、京楽は他人事なので、どうでもよさそうだった。

「京楽隊長、後は頼みました」

「任せなさい。浮竹、覚悟はいいかい?」

「海燕の卑怯者!ぎゃああああああああああああ!!!」

京楽に押し倒せされて、美味しく京楽が満足するまで食べられて、浮竹は流石に懲りた。

だけど、朝起きる時はやっぱり意地汚く布団にしがみついたままで、ひっぺがされなくなったけど、布団と一緒に外の廊下に放置されて、そして外の寒さに起きるのだった。

「今に覚えてろよ、海燕め・・・・・」

呪いの言葉を吐いて、今日も起き出す。

朝の8時半には毎日起きる癖がついて、しまいには朝起こされなくても起きるようになったが、結局それは一時的なものだった。











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BLについて悩む白哉

「ああ、隊長またこんなもの見て!」

白哉が読んでいた、BL特集とかかれた漫画雑誌を、恋次は取り上げた。

「なぁ、恋次」

「なんですか」

「私たちも関係もボーイズラブというのだろう」

「そうですよ。何か悪いですか」

「訳せば少年愛。もうとっくの昔に、少年という時代は過ぎてしまったのに、何故にボーイズラブというのであろうな?」

恋次は頭を抱えた。

「そんなこと知りませんよ。現世の人間にでも聞いてください」

「この関係をやおいともいうのだろう。やおいとはなんだ?」

「だから、知りませんって。確か語源はやまなし・意味なし・おちなしからきてるそうですが・・・・」

「何故、それを知っている?」

「松本が、そう言ってたんですよ!」

「ふむ・・・松本か。その雑誌を渡してきたのも、松本だ」

「あのアバズレ・・・・・」

瀞霊廷屈指の腐女子は、とにかく恋次と白夜の関係に興味があるらしい。

裏では同人誌の小説を書いていて、最近のマイブームは恋白とかいっていた。王道は京浮ともいっていた。

「俺たちのこと、小説にしてるみたいですよ」

「許さぬ」

「そう言われても」

「斬り捨ててくれる」

「わーー、ちょっとたんま!」

斬魄刀を手に、本当に斬り捨てそうなので、とりあえず止めた。

「何故止める」

「いや、小説にされたくらいで殺してたら、読んでる死神も殺さなきゃいけないでしょう」

「全員の記憶から抹消するか?」

記憶置換を持ち出してきた。

「松本の記憶をこれで・・・・」

「いやもう、すでに同人誌にされて売り出された後ですから」

「何故、それを知っている?」

持っているからとか言えなくて、適当に誤魔化す。

「松本に読めってわれて、読んだんです」

「その時点で何故抗議せぬ。さては、裏で繋がっているな?」

実はそうだった。

白哉を抱いた感想とかを聞かれて、おしげもなく情報を与えていた。

「散れ、千本桜・・・・」

「わああああ、ちょっとたんま!すんません、俺が悪かったから!」

白哉は、千本桜を止めた。

「当分、私を抱かせぬ」

「ええ、そんな!」

「当たり前であろう」

白哉の怒る顔を見るのも久しぶりだなぁとか思いながら、見ていた。

「聞いているのか、恋次」

「え、ああ、聞いてます」

「恋次は、ボーイズラブについて何と思う?」

「いや別に。いいんじゃないですか。恋愛なんて性別も年も種族も関係ないし」

「ふむ・・・いわゆる衆道であろう」

「そんな言葉よりは俺はボーイズラブを選びますね。なんか響きがいい」

恋次は、今の白哉との関係を、別に普通だと思っていた。男性同士であるから、ということを失念するほどに自然体であった。

「ふむ・・・・リバーシブルは・・・」

「リバは認めません!」

専門用語をもちだしてきた白哉に即答する。

「略せるのか。お前も相当知識をもっているようだな」

ぎくりとなった。白哉の体を喜ばせるために、その手の雑誌やら漫画を読み漁っていたことは誰にも内緒だった。

「とにかく、この話は終わりです。いいですか、松本にくだらない雑誌をもらわないこと!あと、目にあるところにあっても読まないこと!」

「ルキアに聞いた。お前の家には、この手の雑誌がおおいと」

「ルキアのやつ~~~~」

「恋次、他に思う相手でもいるのか?」

「はぁ!?なんでそう思うんですか」

恋次は、素っ頓狂な声を出していた。

「ならばなぜ、この手の雑誌を所有している」

「そりゃ、相手はあんただからですよ。俺も男は初めてだったし。女も抱いたことないけど。男は女と体の仕組みも違うから、どうすれば気持ちよくれるのか勉強してたんすよ」

「私のため・・・だと・・・・」

白哉は紅くなった。

「隊長、かわいい。もしかして、嫉妬してた?」

「知らぬ!」

抱きついてくる恋次を適当に交わしつつ、白哉は黒檀の文机に向かって座り、仕事をはじめる。

「とにかく、1か月は禁欲生活とする」

「そんなぁ」

がくりと項垂れる恋次を見て、白哉は思う。

厄介な相手を好きになってしまったものだと。

まあ、それも愛してしまったものは仕方ない。

白哉は、仕事をしながら考え事をしてしまい、いつの間にか手が止まっていた。

もやもやがいっぱいで、白哉は恋次に言った。

「今から、お前の家にいく」

「ええ、まじっすか。散らかっているから今度にしてください!」

「行くと言ったら行くのだ。鍵をかけていても扉をぶち壊す」

白哉に見られるとまずい、写真やら雑誌やら、松本の同人誌やら。

「ちょっと瞬歩で帰って片付けてきます!」

そう言って瞬歩で移動する恋次についていく。

「うわあああ、ほんとに勘弁してくださいいいいい」

結局、見られていけない写真集やら雑誌やら同人誌を発見されて、3か月の禁欲生活を強いられるのだった。









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遠征の傷跡

「恋次・・・・・・」

名を呼ぶと、恋次は頬に手を当てて、キスをしてきた。

「どうしたんですか、隊長」

「なんでも、ない」

嘘だ。

恋次が去っていきそうな気がして、名を呼んだ。

緋真のように、手の届かない場所にいってしまいそうで。

「次の遠征、必ず帰ってきますから」

恋次は、虚退治の遠征に出発することが決まっていた。

白哉には待機命令が出されていた。

ユーハバッハの一味を、互いに倒した。初めはやられてばかりだったが、零番隊で湯治して、修行した。

今の力量なら、ただの虚退治の遠征くらい、なんてことはないだろう。

だが、恋次は5席を庇い、怪我をして戻ってきた。

酷い怪我だった。

ただちに4番隊の救護院に入院が決定した。

ちぎれかけた右手の先は腐っていて、本人の細胞から生み出した右手を移植手術した。背中にも大きな傷を負っていて、回道をかけたが傷はまだ完全に塞がりそうになかった。

移植手術はなんの問題もなく終わり、恋次は普通の病室に移された。

「愚か者・・・このような怪我を負って・・・・・」

「隊長?」

起き上がろうとした恋次は、背中に走った痛みと、右手の違和感に眉を顰めた。

「背に大きな傷がある。あと、右手は腐っていたので新しいものが培養されて作られて、接続手術は問題なく終わった」

「ああ・・・・右手、やっぱりだめだったんすか」

「うじがわいておった」

「そりゃ、使い物にならないわけだ」

「今の技術に感謝することだ。四肢を欠損しても、培養技術で作りだし、接続手術が成功すれば元の通りになる」

「隊長」

「なんだ」

「新しい右手で、触れてもいいですか」

何故急に恋次がそんなことを言いだしたのか、分からなかったが、いいだろうと言うと、恋次は白哉の白い頬に触れてきた。

「ああ・・・前と同じ感触がする。よかった、何も変わってない・・・・・」

「愚か者・・・・仲間を庇うなら、もっとダメージを最小限にして庇え」

「すみません・・・・」

「お前が担ぎ込まれた時の姿を見た時、心臓が止まるかと思った」

白哉の白く美しい、とても武人はとは思えない手が、恋次の赤い髪をすいた。

「今日は、随分と優しいんですね」

「怪我を負った愚か者を、叱りに来た」

「そのわりには、優しい」

「優しくされては、不安か?」

「いいえ。居心地がいい・・・しばらく傍にいてくれと言ったら、怒りますか」

「構わぬ」

「なら、もっと傍にきてください」

言われる通りに傍にいくと、唇を奪われた。

「ん・・・・・」

ピチャリと、舌が絡み合った。

その続きをしようとする恋次を、ベッドに押さえつけた。

「隊長?」

「ここは救護院だ。そのような場所ではない」

「なら、退院したらあんたを抱いてもいいですか」

「よかろう」

半分冗談のつもりだった。

こんな怪我人が、そうそうの退院することはないだろうと思っていたが、恋次は1週間で退院してしまった。

卯ノ花の後を継いだ勇音も、舌を巻くほどの回復ぶりであった。

背の傷後は残っているが、右手はもう違和感もなく動かせた。剣を握っても、それは関係なかった。

「隊長、退院しました。約束通り、抱かせてください」

「このように早く退院など・・・・・仕方ない、今宵あの館にこい」

夜になって、いつも逢瀬に使う館に案内された。

遠征の保存食に、救護院の病院食で物足りなかった恋次にとっては、久方ぶりのまともな食事だった。

珍しくおかわりを所望する恋次に、仕方ないと、料理人に違うメニューを作らぜて、食べさせた。

酒も飲んだ。

実に、1か月ぶりだ。

3週間の遠征と、1週間の入院。

白哉を抱くのも、1カ月ぶりだった。

「ん・・・・」

褥に横たえて、キスを繰り返した。

「ずっと、あんたに触りたかった・・・遠征とか、抜くこともなかなかできないから、溜まりまくってる」

「加減は、しろ」

「分かってます」

「んん・・・・」

潤滑油で濡れた指が入ってきた。

久し振りの異物感に、体が拒否反応を起こす。

「あんたのここ・・・・すごい熱い」

「言うな、愚か者・・・ああ!」

指でぐっと前立腺がある場所を押されて、体が反応する。

「ひああああ!」

コリコリと前立腺ばかり刺激されて、前もいじられて、白哉は精を放っていた。

「入れますよ」

「ああああああああ!!」

指とは比較にならないものに引き裂かれて、白哉は生理的な涙を零した。

背中に爪をたてようとして、まだ傷口にガーゼが当てられ包帯が巻かれていたので、包帯の上から爪を立てた。

「隊長、ずっとあんたに触れたかった。ずっと一つになりたかった・・・・」

1か月間の空白は、白哉にとっても溜めこむことになった。

「ひあああ!」

前立腺をすり上げられて、白哉は二度目の熱を放つが、その量がいつもより多かった。

「隊長、あんたぬいてなかったのか」

「そのような行為、好まぬ」

「俺が存在しなかったとき、どうしてたんですか」

「覚えておらぬ」

それは本当だった。

「隊長、愛してます」

「私も、愛している」

ぐちゃりと奥を犯されて、白哉の中が締まり、恋次はやっと思いのたけを白哉にぶつけた。

「ああ、めちゃくちゃきもいい・・・」

射精は長かった。

よほど溜めこんでいたのだろう。

「ん・・・・」

やっと律動を再開した恋次の動きに、白哉もおいつめられいく。

「ああああ!」

恋次が二度目になる熱を白哉の腹の奥に出す頃には、白哉は三度目の熱を放っていた。

「加減をしろと言っておいた。まだするつもりか?」

「あと1回だけ」

「早く、いってしまえ」

くちゅくちゅと内部を犯されて、前立腺ばかりを刺激してくる動きに、白哉は何も考えられなくなった。

「いあああああ・・・・ああ・・・うああ」

下肢に力を籠めると、その締め付けで、恋次は3度目をあっという間に放っていた。

「もっとあんたを味わいたかったのに・・・・・」

「もう十分であろう」

「まだいけますが、さすがにだめですよね」

「加減をしろと言っておいたであろう」

「はい・・湯殿、いきますか」

睦みあった情事の後を流すために、いつも行為の後は湯殿で体を清めた。時折意識を飛ばした時は、起きたら湯殿に行った。

「あ・・・・・・」

とろとろと、恋次の放ったものが大量に、太ももを伝っていく。

「かき出しますね」

「んん・・・・・」

指をいれられてかき出す動きに、いってしまいそうになって、かき出されると、白哉は湯船に浸かった。

もう出すものがないので、オーガズムでいきそうになってしまった。

「すみません、ちょっと隊長の声聞いてると、たっちゃったんで抜きます」

風呂場で一人で抜く恋次を、白哉は黙って見ていた。

「あの、恥ずかしいからあんま見ないでもらえます?」

「何を今さら。互いの裸なぞ、見飽きた」

ぬいてスッキリした恋次は、湯船の中で白哉に抱きついた。

「ああもう、そのつんけんした態度がたまらない」

「お前は、マゾか?」

「違いますよ!隊長の性格のせいでこうなったんです!」

「ふむ・・・背の傷、後でガーゼを交換して包帯を巻いてやろう」

「ありがとうございます」

やがて湯からあがり、恋次の背中の傷に化膿を防ぎ、傷口の治りを早くするお値段の高い4番隊で売っている軟膏をつけてから、ガーゼをあてて、その逞しい胸と背中に、包帯を巻いていく。

「お前の背中は広いな。逞しい」

「あ、隊長、こんな風になりたいと思っても無駄ですからね。隊長の体は、鍛えても今以上の筋肉はつきそうもないし」

「知っている」

何度鍛錬しても、この体は筋肉があまりつかないのだ。体質のせいでだろう。

「右手は、もう違和感はどこにもないのか?」

「ありません。接続手術をしたのが嘘みたいだ」

「そうか。ならばよい。明日も仕事がある。寝る」

褥ではなく、普通に出した1組の布団で、寄り添いあいながら寝た。

「もう、そのような傷を作るな・・・・・」

眠りに落ちる前、白哉は確かにそう言った。

「はい・・・・・って隊長?寝ちまったか・・・・・・」

恋次も、大人しく眠るのだった。





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一護とルキア番外編 一護の誕生日

「一護!誕生日おめでとう!」

ルキアが、一護に抱き着いた。

「え、ああ、もうそんな季節か。道理で暑くなってきたわけだ」

「一勇と苺花は?」

「兄様と家人に面倒を見てもっておる。今日は久しぶりに二人きりだ」

「ああ、俺何歳になったんだろう?」

「さぁ・・・確か、30か31あたりではなかろうか」

「俺も年食ったなぁ・・・見た目は十代のまま変わらねーけど」

ルキアを抱き上げた。

「ひゃあ」

ルキアは、一言に抱き上げられて、くるくると回されて、変な声をあげていた。

「こ、こら一護!」

「今日は俺の誕生日なんだろ。贈り物にルキアをくれよ」

その言葉に、ルキアは真っ赤になった。

「ちゃんと、贈り物は用意しておる!」

「また、チャッピーのなんかか?」

「そうだ。チャッピー抱き枕だ!限定生産品で予約までしたのだぞ!」

ルキアは一護から離れると、寝室の隅に置いてあったラッピングされた抱き枕をもってきた。

それを、一護は包装紙をはがして中身を見る。

ふわふわの羽毛の鳥がはいっていて、触り心地もよかった。

「お、けっこういい品じゃねーか」

「だから言ったであろう。限定生産品だと」

「柄があれだけど、ありがとな、ルキア」

ルキアに触れるだけのキスをする。

「私が欲しいのか、一護?」

ルキアが、潤んだアメジストの瞳で見つめてくる。

「ああ、ルキアが欲しい」

「仕方のないやつだ・・・・・・」

一護に抱き着いて、キスをする。

その先が続けられずにいると、一護のほうから触ってきた。

「あールキアの匂いがする」

ルキアを抱きよせて、しいた布団の上に寝転んだ。

「ひゃう」

耳を甘噛みされて、変な声が出た。

「相変わらず、耳弱いのな」

「ば、ばか者!このたわけが!」

お返しとばかりに、一護の肩に噛みついた。

死覇装を互いに脱がしていこうとして、苺花がじっとこちらを見てきているのに気づき、一護とルキアは動きを止めた。

「何してるの、母様、父様」

「い、いやこれはだな、暑いから互いの服を脱がしあってたんだ」

「じゃあ私も混ざる~」

苺花が寝室に入ってきたせいで、睦みあうのはなしになった。

残念だが、苺花が寝入った頃にしようと、一護が耳打ちをルキアにした。

「苺花、おいで」

「父様、今日誕生日なんでしょう?」

「そうだぞ」

「これ、私が描いたの!父様の顔!」

お世辞にもうまいとはいえないが、その絵をもらって一護は微笑んだ。

「これ・・・・俺だよな?こっちのは・・・弓親さんか?」

「そうだよー。私、父様と同じくらいいチカさんが好きだから、描いたの!」

「そうか。ありがとな」

頭を撫でてやると、えへへと笑った。

「一勇は?」

「一勇なら、もう寝ちゃったよ。明日学校で遠足があるからって、早めに寝ちゃった」

「おお、そういえばそうであったな。まぁ、私の弁当より朽木家の料理人の弁当のほうがうまいから、弁当は料理人に任すか」

「ねぇ、父様」

「なんだ?」

「今日は私も一緒に寝ていい?」

ルキアと顔を合わせあう。

「一護、またの機会にしよう。私たちは夫婦なのだから、いつでも時間は作れる」

「ああ、そうだな」

こうして、苺花を挟んで川の字で寝た。

「ん・・・・・」

触れてくる一護に、ルキアが目を覚ます。

「どうした?」

「ちょっと、ルキア成分を補充したくなって」

「たわけが・・・・」

ルキアの布団の中に、一護は入った。

そのまま、ルキアを抱き締めて、腕の中に閉じこめる。

「ふふ・・・・現世にいた頃を思い出すな、この寝方」

よく、一護のベッドで、ルキアを抱き寄せて一護は眠った。そんな時の体勢にそっくりだった。

「好きだ、ルキア」

「私もだ、一護」

互いを抱き締めあい、何度かキスをしてから、二人は眠いについた。

次の日、遠足だという一勇を早めに送り出して、苺花も初等部送り出して、やっと一息つく。

今日は、仕事は午後からだった。

半休をもらっていた。

「なぁ、時間あるからいいか?」

腰を抱き寄せられて、こんな朝からと思いつつ、昨日体を重ねるものだと思ってドキドキしていたのだ。

「仕方ない、今日だけだぞ」

「よっしゃ!」

一護は、小さくて細いルキアを抱き上げた。

白哉も、仕事に出かけていない。

家人に、寝室に近寄らないように言いつけて、二人は体を重ねた。

「ん・・・」

「ああ、起きたか?」

避妊はきちんとしていたが、久しぶりでルキアは意識を飛ばしていた。

「もうすぐ1時だ。俺たちも、仕事に出かけないと」

「たわけ。朝から盛りおってからに」

「でも、ルキアも満更じゃなかっただろ?何度もいってたじゃないか」

「恥ずかしいから、そのようなこと口にするな」

ぽかりと叩かれて、一護は笑った。

「ああ、幸せだなぁ。ルキアと出会ってよかった・・・・」

「それはこちらの台詞だ、一護」

互いに服をきて、時間がきたので瞬歩で13隊の執務室に移動した。副隊長である仙太郎が、先に仕事をしていた。

「おはようございます、朽木隊長。それに朽木3席も」

「ああ、おはよう」

「よお、先に仕事しててくれたのか。ありがとな」

この前行われた隊首会で、一護を副隊長にするという動きがあったが、肝心の一護が断った。

仙太郎の能力は十分だし、副隊長なんて任されても、ルキアのサポートを完全にできないし、慣れていない副隊長になるよりは、今のままでいいと判断したのだ。

「ルキア、昼飯忘れてただろう。3時の休憩に飯にしようぜ。朽木の料理人から、弁当二人前もらってきてるから」

「すまぬ。昼ぬきでもいいだが、夕刻になる前に腹がすくからな」

二人は、職場でいちゃついてるつもりはないのだが、周囲から見るといちゃついているにしか見えないらしい。

高いところの荷物をとろうとして、一護の身長でも届かないので、ルキアを肩車して荷物をとった。

ふと見えたルキアの鎖骨に、いっぱいキスマークが残っていて、仙太郎はルキアに耳打ちした。

「隊長、鎖骨のキスマーク見えてます!襟をもっと絞めてください!」

「こら、一護!見えるような場所には、あれほど痕を残すなと言ったであろう!」

「鎖骨のとこなんて、普段見えないだろ」

「見えないようで、時折見えるのだ!」

「わーったよ。今度から気をつけるから!」

「全く・・・・・・」

「仲が良いようで、何よりです」

仙太郎の言葉に、ルキアは朱くなりながらも頷いた。

「あれは、私の自慢の夫なのだ」

「隊長、うなじにもキスマークが・・・・・」

「こらぁ一護!うなじにもキスマークをつけたのか!」

ぽかぽかと、一護を叩くルキア。

それに、苦笑して反抗らしき反抗もせず、好きにさせている一護。

ああ、この夫婦は何年何十年たっても変わらないのだなと、思うのであった。









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よっぱらった浮竹

「うい~~日番谷隊長~」

「なんだ浮竹・・・・うわ、酒くせぇ!」

「うい~~!」

浮竹は相当酔っぱらっている様子だった。

日番谷に抱き着いて、離れない。

「おい、浮竹大丈夫か?」

「うい~~~酒もっとよこせーーー」

「なんつー悪酔いの仕方だ・・・・・」

「日番谷隊長好きだああああああ」

「ぎゃああああああああ」

浮竹に押し倒されて、日番谷が悲鳴をあげる。

その悲鳴でとび起きた松本がやったきた。

「おい、松本見てないで助けろ!」

「これは禁断の浮竹×日番谷!シャッターチャンス!」

ぱしゃぱしゃと、伝令神機で写真をとっていく松本に切れた。

「蒼天に座せ氷輪丸!」

浮竹も松本も、ひゅるるるるると吹き飛んでいく。

松本はしっかり着地した。

浮竹も、酔ってるくせにちゃんと着地した。

「くそ・・・・・・」

最近こいつらを氷輪丸で吹き飛ばし過ぎているせいか、なかなか倒れない。

「日番谷隊長、好きだああああああ」

「ぎゃああああああああ!俺じゃなくて、松本にしろおおお」

「松本?」

ゆらりと、酔っぱらいの浮竹がたちあがる。

「けしからん乳ーーーーー!」

「ぎゃああああああああああ」

乳を手でわしづかみにされて、松本が悲鳴をあげた。

「ちょっと、浮竹隊長どこさわってるんですか!」

「乳ーーーーーー」

ゴス。

その頭を、氷輪丸の柄で殴った。

「隊長、助かりました」

「お前がどうなろと知ったこっちゃないが、浮竹をじーっと見ているあいつがいたんでな」

破壊した窓の外から、へばりついている京楽がいた。

やがて、中にやってくる。

「浮竹、酔っぱらってても浮気は許さないよ」

「京楽~お前が飲めというからこうなった~。日番谷隊長、松本、全死神の諸君好きだあああああああああああ!!!」

「節操ねぇのかよ!」

日番谷がつっこむと、浮竹はゆらりと立ち上がった。

「日番谷隊長、俺と京楽の息子になってくれ!」

そういって抱き締められた。

「無茶いうなあああ!!」

「うーん、日番谷隊長が息子かぁ」

「そこ、真剣に悩むなあああ!!!」

「うーい。好きだあああああ!!」

「ぎゃあああああああああ」

日番谷を押し倒す浮竹を見て、京楽がにっこり笑う。

「日番谷隊長には、この世から去ってもらおうかな」

「お前らが去れええええ!!卍解、大紅蓮氷輪丸!!」

ドカーンガシャーン。

凄い音を立てて、氷と氷がぶつかりあい、京楽も浮竹も松本も、はるか遠くへふっ飛ばされていった。

全壊した建物を見て、やってしまったと思ったが、どうせ、京楽がまた建て直してくれるだろうからいいかと思う、日番谷だった。


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日番谷とチョコレート

「日番谷隊長、チョコレート食べないか?」

10番隊の執務室にやってきた浮竹の手には、透明なビニール袋に入った大量のチョコレートが入っていた。

「どうしたんだよ、それ」

「いやぁ、ブリーチキャラのシールが入っていてな。おまけのチョコレートなんだが、肝心の欲しいシールがだぶってばっかりで・・・・・ちなみに白哉と朽木のシールなんだが・・・中々でないから、店にある商品大人買いした。肝心のシールは出たが、そしたらおまけのチョコレートが食べきれない量になってな」

「おっさん、年考えろ。子供じゃあるまいし・・・・・・」

「まぁまぁ。いつでも子供心を持つのは大切だぞ」

「そうかぁ?」

渡されたチョコレートを食べていくが、とても一人では食べきれない量だった。

「おい、松本おおおおおお!!!」

「なんですか、隊長、今原稿で忙しんだがら・・って、浮竹隊長!萌えをください!」

「萌え?」

「放っておけ。こいつは頭が腐ってやがるから」

「あーん、今日は京楽隊長と一緒じゃないんですかぁ?」

松本の言葉に、京楽が後から追いかけると言っていたのを思い出す。

「ああ、そのうちくる」

「やったー。それよりなんなんですが隊長」

「チョコレートだ。黙ってくえ」

「私ダイエット中だから・・・・」

そう言いながらもひょいひょいと、食べていく。

「大分減ったなぁ・・・・・」

ビニール袋の中のチョコレートを見る。

「日番谷隊長は、もういいのか?」

「あほか。チョコなんてカロリーが高すぎて、そんなにたくさん食えるもんじゃない」

「はっ!そうだった、ダイエット中だったんだ」

時すでに遅し。

松本は、かなり量のチョコレートを食べてしまっていた。

「ああん、リバウンドしちゃう!」

と、そこで京楽が現れた。

「う~き~た~け~」

現れた京楽は、シールをもっていた。

「なんで僕に僕のだぶったシールくれるかな?浮竹のシールちょうだいよ!」

「だめだ、俺のシールはレア度が高いんだ。星5つ中4だぞ。京楽は星1だから、一番でやすいんだ。どうだ、日番谷隊長も京楽のシールこんなにあるんだが」

どさぁと、シールの山を作られた。

「こんなものんいらねぇ!」

「じゃああたしがもらいまーす。1種類ずつだけど・・・ふむふむ、全部で5種類か」

まだ、シールはどっさり残っていた。

「一体どんだけ買ったんだよ、浮竹」

「いや、駄菓子屋3件のシール菓子を全部大人買いした」

「金は京楽もちだろう」

「当たり前だ」

「浮竹のシールくらいあげたらどうだ」

「うーん仕方ないなぁ」

浮竹は、懐から自分のシールを出す。キラキラで星が4つだった。

「やったぁ!日番谷隊長、これあげる」

日番谷のシールだった。星が1つだった。

「なんで俺が星1つなんだ!京楽なんかと同じなんてありえない!」

「日番谷隊のシールは全部で5枚。うち2枚が卍解状態で、星5つだ」

「ふむ」

日番谷は納得したようだった。

京楽の口に、浮竹は残りのチョコレートを突っ込んでいく。

しまいには鼻血をだして、その鼻血は日番谷の頭に降り注いだ。

「お前ら・・・・覚悟はできてるんだろうな?」

「やばいぞ、逃げろ」

「鼻血を止まらないんだけど!」

「蒼天に座せ、氷輪丸!」

ひゅるるるるー。京楽のは鼻血を一緒に、浮竹そのまま、おまけでまきこまれた松本も一緒に天高く昇っていった。

どさり。

降ってきたのは目を回した松本だけで、京楽と浮竹は瞬歩で逃げられたらしい。

「くそっ、隊長羽織まで血まみれだ。京楽のあほめ。浮竹も無理やり食べさせ過ぎだ」

悪態をつきながら、髪についた血をとるために風呂に入る日番谷の姿があった。







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軟禁されてもこりない

「海燕の鬼---!」

「何ともで行ってください」

浮竹の手は仕事をするためにそのままにしておいた。ただ、足枷が右足にされていて、その少し長い鎖の先は、海燕がもっていた。

「上司を軟禁するとはいい度胸だ」

「こうでもしないと、あんた逃げ出すでしょう。この仕事は、今日中に片付けてもらわないと困るんです!」

「ちょっと甘味屋にいこうとしただけじゃないか」

「それがだめなんです!あんた、甘味屋行ったらしばらく帰ってこないじゃないですか。おまけに帰ってきたと思ったら、眠りだすし!」

「けちーーー」

浮竹は、そう言いながらも、次々と書類の束を片付けていった。

「終わったーーー!」

「えらく早いですね」

「いいから、足枷外してくれ」

「まだだめです。ちゃんと終わったか、チェックしないと」

海燕が書類に目を通す。

完璧だった。

「やればできるじゃないですか。なのに、なんで後回しにしようと思うんですか」

「だって、甘味物を食べないと頭の回転が鈍くなる」

「これで鈍ってるんですか?」

「いつもの4分の1、時間がかかってる」

「じゃあ、あんたに仕事を本気でさせるには、甘味物を与えればいいのか」

「どうでもいいから、足枷を外してくれー」

「3時のおやつに昼休憩の時に甘味物を許可します」

「わーい」

海燕は、浮竹の足枷を外してやった。

「自由だ!よくもやってくれたな!」

瞬歩で移動し、海燕の足元を蹴り、海燕を転がした。

「あいたたたた」

その間に海燕の右足に足枷をして、少し遠い柱に鎖をを巻き付けてやった。

「あ、そうきますか!」

「鍵なんてこうしてやる」

雨乾堂の傍にある池に向けて、ぽちゃんと投げてしまった。

「甘い!スペアキーがあるんですから」

それを手に、自分の足枷を外す海燕。

「くそ、何かぎゃふんと言わす手は・・・・・」

「ぎゃふん」

棒読みで、海燕がそう言った。

「きーーーーーー」

浮竹は怒った。

怒って、出て行ってしまった。

「今頃、8番隊のところかな・・・・・・」

浮竹が最初に行く場所といったら、そこくらいしか思いつかない。

案の定、浮竹は京楽のところにいた。

「お前もか」

「何がだい」

「足枷」

京楽の右足にされてある足枷をみる。

その先は、柱に固定されていた。

「これ、山じいが素直に言うことを聞かない僕らのためにって、七緒ちゃんと海燕君に渡した、特別な足枷だよ。鬼道でも斬魄刀でも切れない」

「先生も、時折えげつないことするな」

「まあ、怒って流刃若火で尻に火をつけられるよりましだけどね」

「それは確かに・・・・それにしても溜めこんだな。何か月分だ?」

「1カ月半」

京楽は、仕事をしながら泣きそうになっていた。

「俺も寝込んでため込むことはあるが、京楽はなぜこうなるまでため込むんだ」

「種類仕事、嫌いなんだよ」

「手伝ってやるから、さっさと終わらせて甘味屋に行くぞ」

浮竹が、すごいスピードで書類を片付けていく。

幸いにも、4分の1くらいしか残っていなかったので、その日の夕暮れ前には書類の仕事は片付けおわった。

七緒に事情を説明して、京楽の足枷をとってもらった。

「甘味屋へ行くぞ!」

「もう夕飯の時刻だよ」

「お前と甘味屋にいくために仕事を手伝ったんだ。今日のうちに一度行く!」

そう言って、瞬歩で浮竹と京楽はいつもやってくる壬生の甘味屋のまえにいた。

「遅くなると怒られるから、持ち帰りにしようか」

「ああ、分かった」

おはぎを、団子、羊羹、桜餅をそれぞれ浮竹は3人分、京楽はおはぎだけを買った。

勘定は、やっぱり京楽もちだった。

「俺はいいとして、お前はあんまり仕事を溜めこむなよ。処理するのに時間かかるんだから」

「うん・・・・流石にこりた」

雨乾堂にくると、海燕が怒っていた。

「こんな遅くになにやってたんですか」

「ちょっと、甘味屋まで」

「夕飯いらないんですか」

「いや、食うよ」

「京楽隊長もですか?」

「ああ、うん」

「隊長、京楽隊長の仕事を手伝ったそうですね。あまり他の隊の仕事をしないでください」

「なんでだ?」

「京楽隊長が懲りないじゃないですか。京楽隊長も、うちの隊長が手伝うっていってきた時は、断ってください」

「ええ、ああ、うん、多分無理」

はぁぁぁあと、長いため息をついて、海燕は夕飯の用意をしてくれた。

元々、今日は泊まる予定だったのだ。

京楽がやってこないので、浮竹は様子見を兼ねて京楽のところに行ってきたのだが、その溜めこまれた書類の量と、七緒の般若の顔に、書類整理の仕事をつい手伝ってしまった。

「京楽も懲りたようだし、これからは極力仕事を片付けるだろ?」

「うん、多分」

二人は夕飯を食べながら、久し振りに一緒に雨乾堂で食事とっている海燕に言う。

「まぁ、二人三脚でやってきたんだ。今後も、お互いを助け合っていく」

「仕方ありまんね・・・京楽隊長、あまり仕事は溜めこまないように。どうせうちの隊長がすることなってしまいますから」

味噌汁を飲みながら、海燕は小言をいう。

それをうるさそうに聞いていたら一言。

「あまりにも酷いようだったら、山本総隊長に知らせますから」

流刃若火で尻に火がつけられたことを思い出し、浮竹と京楽は互いに尻に手をあてるのだった。






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甘味物中毒

「ぐ・・・・犯人は海燕だ」

ばたりと、浮竹は倒れた。

「しっかりして、浮竹!」

浮竹を抱き起こす。

8番隊の執務室にいきなり入ってきて、倒れたのだ。

最近、仕事に忙しくてここ2週間ばかり、雨乾堂を訪れていなかった。こんな場合は、よく浮竹が8番隊の執務室にくるのだが、それもなかった。

「海燕君のなにされたの!」

「2週間の甘味物断食・・・・・ガクッ」

「浮竹から甘味を奪うなんて!なんて酷い!」

「京楽隊長、本人を目の前に何言ってるんですか」

心配して、海燕がついてきていたのだ。

「海燕君、なんで浮竹に甘味の断食を?」

「ちゃんと朝に起きないからです。11時に最近おきてるんですよ?」

「それは浮竹が悪いね」

「京楽、俺の味方じゃなかったのか!」

浮竹が起き上がり、抗議する。

「でも、死神の業務開始時間は9時だよ。11時はいくらなんでも寝坊しすぎだよ」

「ちゃんと、その日の仕事はその日のうちにかたづけている!」

「それでも、浮竹、君は隊長だよ?人の上に立つ者として、しっかりしばきゃ」

「う・・・・・・」

後退るが、後ろには海燕が控えていた。

「せめて、8時半には起きなさい」

京楽が、じりじりと距離をつめてくる。

「そこだ!」

海燕が浮竹を捕まえようとすると、浮竹はひらりとそれを交わした。

代わりに、京楽に捕まった。

「離せー!11時まで寝るんだ、俺は!」

「8時半に起きるなら、3日に1回は甘味屋に連れてってあげる」

「よーし、俺は明日から8時半に起きるぞおおおお!」

切り替えの早さに、海燕ががくっときた。

「ほら、戻りますよ、隊長。今日はまだ仕事が残ってるんですから」

「鬼海燕!この姑め!」

「はいはい、好きなようにいってください」

「甘味物を補給しないと、動けないー」

駄々をこねだす浮竹に、京楽が明日にもで浮竹のところに持って行こうと思っていた、おはぎをだしてきた。

「おはぎ!甘味物!」

浮竹は、目の色をかえておはぎを食べだした。

「ああ、京楽隊長!勝手に餌付けしないでください!」

「でも、浮竹から甘味物をとりあげるのは、浮竹にとっていつも熱があるようなものなんだよ」

「そこまで甘味物に毒されてるんですか」

「うん」

浮竹を、海燕は哀れな目で見だした。

「なんだ、俺は普通だからな!ちょっと糖分が不足すると動きが鈍くなるだけだ!」

「遠征の時とかってどうしてたんでしょう」

「砂糖もっていって、それ舐めてたらしいよ」

「うわー、重症じゃないですか」

海燕の言葉に抗議する。

「重症じゃない!普通だ!甘い物が好きで飯とかで補給できないから、遠征には砂糖もっていっただけだ!」

「それがすでに重症なんです」

「普通だよな、京楽?」

「いやぁ、重症だと思うねぇ」

「でも、よく虫歯とかになりませんね」

海燕が不思議に思う。

「代々、浮竹家の血筋は虫歯になりにくいんだ。ちゃんと歯磨きもしてるしな」

「そういうものなんですか」

「虫歯だと、京楽とディープキスができないだろう」

「ああ、確かにそうですね」

「浮竹は、肺と病弱で熱を出したり倒れたりすることはあるけど、虫歯とかにはなったことがないよ」

京楽が、浮竹の頭を撫でた。

「早く、仕事片付けておいで。終わったら、甘味屋に連れてってあげるから」

「海燕、帰るぞ!ばりばり仕事するぞ!」

「本当に、えめちゃくちゃな人だな・・・・・・」

海燕は、呆れた声を出しながら、雨乾堂に戻っていく上官の後を追うのであった。

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ラッキーカラー

「あ、鯛焼きだ!1個もらいますね!」

恋次が、白哉が口にしていた鯛焼きに手を伸ばす。恋次の好物は鯛焼きだった。

「あ、それは・・・・・」

白哉が口にするのも遅かった。

中には、辛いキムチが入っていた。

「何入ってるですかこれ!辛い!辛過ぎる!ひー水、水!」

隊首室にいって、備え付けの小さな冷蔵庫から、冷やした天然水を取り出して飲んだ。

「あ、それは唐辛子を溶かした水・・・・・」

「ぎょわあああああ!なんつーもん、隊首室の冷蔵庫に入れてやがるんだ!」

恋次は、井戸までいくと、冷えた井戸水を口にした。

「あー。きっついなーーー」

今日は厄日だ。

そういえば、今日伝令神機の占いを見ていて、ラッキーカラーは黒、アンラッキーカラーは赤だといっいた。

赤は自分の髪の色でもあるが、そんな占い当たるはずがないと高を括っていた。

キムチも唐辛子も赤い。

ああ、占いの通りだ。

でも、ラッキーカラーの黒ってなんだろう?

執務室に戻ると、白哉がすまさそうな顔で謝ってきた。

「すまない。お前が口にするとは考えてもいなかった。今日の詫びだ」

そう言って、抱き締められて舌が絡まるキスをされた。

辛い味はしなかかった。

白哉の黒髪を撫でた。

ああ、ラッキーカラーは確かに黒だ。

目の前にある、臥せられた瞳も黒。

「隊長、もっとしてください・・・・・」

「んう・・・・」

ぴちゃりと、舌が再び絡み合った。

熱で潤んだ瞳で見つめられて、恋次も止まらなくなった。

死覇装の上から体をなぞっていく。

「やめよ、恋次」

「あんたに欲情しちまった。責任とってください」

際どいラインをなぞられて、カチャリと千本桜が喉元にきた。

「やめよと、言っている」

「すんません・・・・・・」

しょんばりする恋次に、白哉がいう。

「今宵、あの館へ・・・・・」

それは抱いてもいいというOKサインだった。

「よっしゃああ!」

恋次は叫んだ。

今日のラッキーカラーは黒。

黒神黒目の、恋次の愛しい人と同じ色、だった。


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恋次、吹き出す

「何故・・・・私は、受なのだ?恋次お前は受にならぬのか?」

ある日そう言わて、恋次は口にしていたお茶を吹き出していた。

ブーーーーーーー。

全部、白哉にぶっかけてしまった。

銀白風花紗は何とか濡れずにすんで、首に巻いていたタオルで、白哉の顔をふいた。怒られはしなかったが、そんな言葉が口から出ると思わず、狼狽する。

「あんた、俺を抱きたいんすか?」

お茶を一口、口に含む。

「私も男だ。抱きたいとは思う」

ブーーーーーーー。

またお茶を吹き出していた。

今度は、白哉にふきかけなかった。

「はぁ!?あんた、そのビジュアルで俺を抱きたいとかいうんすか」

「見た目など、関係ないではないか」

「いや、おおありでしょ!俺は、あんたとその見た目にまず惚れて、中身に惚れた。あんたがごつい男だったら、きっとこんな関係にはならなかった」

「ふむ・・・・」

白哉は、お茶を飲んだ。

「つまりは、私の容姿のせいで、私は恋次に抱かれているのだな?」

「いや、なんつうか・・・・あんたが好きだから、俺はあんたを抱きたい」

「私がお前を抱きたいと言ったら、抱かせてくれるのか?」

恋次が悩む。

「いや、無理ですね。隊長は俺を抱けないでしょう」

「何故、断言できる?」

「裸の俺見て、たちますか?」

「たたんな」

「ほら、やっぱり無理だ」

「ふむ・・・・・」

また、白哉はお茶を飲んだ。

「またなんでそんなこと言い出すんですか」

「この雑誌に・・・・・」

女性向けの、BL特集と書いてある雑誌だった。

「隊長、なんてもの見てるんですか!」

恋次が雑誌をとりあげる。

「松本が、恋次のためになると、渡してきた。これで勉強しろと」

「あんにゃろ・・・・・」

松本は、瀞霊廷屈指の腐女子だった。

「こんなくだらない本、読んじゃだめです」

「受けが攻めになることを、リバーシブルというのだな」

すでに、いけない知識が白哉の中にあった。

「ああもう、そんな専門用語口にしないでください!これでも食べててください!」

現世にいったとき買い溜めておいた、カラムーチョを渡す。

ちょうど3時だった。

おやつとして、カラムーチョを食べだす白哉。

そうして見ているだけなら、女にも負けないくらいの美貌だし、中性的な容姿をしている。

恋次は自分の体を見る。

白哉のような細い体ではなく、きっちりと筋肉がついている。

「あんたが本気で俺を抱きたいなら、俺は構いませんけど」

「よく考えれば、無理だな。恋次の喘ぎ声など聞きたくもない」

「だったら、最初から口にしないでください!」

「男であるならば、抱かれる側に疑問をもつものだろう」

白哉がそう言ってくるので、恋次は少し不安になった。

「まぁそれはそうですが・・・・・今の関係が、嫌なんですか?」

「いや、そんなことはないが・・・・・・」

「じゃあ、もうこの話はおしまいにしましょう!」

「オメガバースとやらでは、男も孕むと書いてあった。どうなのだ恋次」

「ああもう、そういう俺にも分からない専門知識出すのやめてください!ほら、さっさと仕事に戻る!」

カラムーチョと食べ終えた白哉を、文机に追い立てる。

今度松本に会ったら、こっぴどくしかってやろうと思った。

そもそも、内密にしているのだが、松本には関係はばれているようで。どこかの8番隊と13番隊の隊長のように、隠すことなくなら分かるが、何故ばれたのだろうと思った。

それが、いつも白哉に見えるか見ないかの位置で、キスマークを残しいる自分のせいだとは、恋次は松本に聞くまで思いもつかないのであった。




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翡翠に溶ける 終章 翡翠に溶ける

「色のない世界」と世界設定が、一部リンクしております。

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尸魂界は、危機に瀕していた。

存続の危機だ。

ユーハバッハの侵略により、たくさんの死神が死んだ。

その中には、京楽が愛してやまない浮竹の姿もあった。

自分の肺に宿らせていたミミハギ様を解き放ったことで、崩壊しかけていた世界は止まったが、その代償はあまりにも大きすぎた。

「浮竹、しっかりして!」

腕の中で、浮竹は今にも力尽きようとしていた。

「あの・・・桜の下に・・・・・」

瞬歩で、季節外れの夜桜を咲かせる、学院の桜の木の下にきていた。

「お前と出会えたこと・・・嬉しかった・・・ずっと、こんなに人を好きになることはないんだと、思っていた・・・・・」

「浮竹!僕を置いていかないで!」

ボロボロと、片目になってしまった黒曜石の瞳から、涙が零れ落ちた。

「神様・・・・浮竹の命が助かるなら、なんでもします。だから、僕から浮竹を奪わないで・・・・・」

「その言葉、本当だな?」

ぶわりと、季節外れの桜の花びらが散っていく。

「私は、花の神。別名、椿の狂い咲きの王」

「俺が赤子の頃に捧げたれたという、神様?」

浮竹の言葉に、花の神は頷いた。

「そうだ、愛児。愛児を愛する者、京楽春水。私は、いろんな世界でお前たちの愛を見てきた。この世界で、浮竹を求めるなら、代償として器になってもらう」

「器?」

「そうだ。私を宿せ。意識はお前のままだ。ただ、時折器としての体をかりる。それでもいいなら、愛児を助けてやろう」

なんでもよかった。浮竹が助かるなら、悪魔に魂を売り渡してもいいと思った。

「器にだってなんだってなるよ!

「おい、京楽!」

「お願いだ、浮竹を助けてくれ!」

「その願い、しかと聞き届けた」

京楽の中に、花の神は舞い降りた。

京楽の隻眼は、薄い紅色になっていた。

「京楽・・・・?」

「今、助けるから・・・・・」

唇を重ねた。何か甘い液体を、浮竹はこくりと飲みほした。

するとどうだろうか。今にも死にそうになっていた体が、軽くなった。

「体が・・・・」

「もう大丈夫だよ、浮竹」

「京楽・・・・・?いや、花の神・・・・?」

「今の僕は京楽さ。花の神は眠っている」

狂い咲くような桜の木の下で、二人はお互いを抱き締めあっていた。

「俺は、まだお前と一緒にいれるのか?」

「ああ、そうだよ」

「京楽・・・花の神を宿して、平気なのか?」

「半神かな。半分は神様だけど、半分は死神のままだ」

京楽の瞳も髪の色も、薄紅色になっていた。

「愛してるよ、十四郎」

「俺も愛してる、春水」

いつか、誓い合った桜の木の下で、永遠の別れを言うはずだった。

気まぐれな神様のお陰で、浮竹は一命を取り留めた。

だが、まだ完全ではなく、浮竹は雨乾堂で療養していた。

やがて、一護の手でユーハバッハは倒され、尸魂界は救われた。

みんな、浮竹が死んだものと思っていたので、生きていて吃驚していた。

ただ、依然のような霊圧はなかった。僅か霊圧しかもっていない。それは、浮竹のもつ霊圧を生命力に変換したせいであった。

薄紅色になってしまった京楽について、京楽自身から説明がされた。

にわかには信じがたいので、花の神に器である京楽の中からでてきてもらった。

薄紅色の長い髪に、瞳、花を思わせる紅色のふわふわした衣服を着ていた。とても美しかった、
まさに、人外の美しさだった。

何もない空間に桜の花を散らせて、こう言う。

「私は、椿の狂い咲きの王という。京楽という器を借りている。神である私の名の元で、浮竹の命を救う代わりに、京楽に器になってもらった。何か文句を言いたい者でもいるか?」

「神様とか、ほんとにいるのか・・・・」

日番谷の言葉に、涅マユリが続ける。

「実に面白いネ。実験体なってもらいたいヨ」

「それはごめんこうむる」

それだけ言って、黒神黒目に戻っていた京楽に降臨し、眠りにつく。京楽の色彩は、花の神と同じ薄紅色になっていた。

そのまま隊首会が開かれて、浮竹は霊圧を失ったことで、13番隊の隊長を辞任することが決定した。

そのまま、ルキアが次の13番隊隊長として任命された。

「ええ、私ですか!?」

ルキアが、浮竹を見る。浮竹は頷いた。

「卍解も習得している。性格も力量も、問題ない」

こうして、朽木ルキアは13番隊隊長となった。

隊首会が終わり、解散になっても生きていた浮竹と、花の神を宿して半神になった京楽の周りには、人だかりができていた。

「ああ、もう解散だから。僕らはここで失礼するよ!」

浮竹を抱き上げて、京楽は1番隊の寝室にひっこんでしまった。


「なぁ、京楽」

「何、浮竹」

「もしもやるとしたら、花の神に筒抜けなのだろうか」

「あ、それは大丈夫。完全に眠りにつくから、感覚は共有しない」

「ならよかった・・・・」

浮竹は京楽と睦みあった。


そして、春が来た。

あの桜の木の下に、もう一度来ていた。

「俺は、死神を隠居して、もう戦力にならない。それでも、傍にいてくれるか?」

「何千回、何万回だって繰り返すよ。君の存在が、僕には必要なんだ」

「桜の花の下で、また誓う。残りの命が燃え尽きるまで、お前の傍にいることを」

浮竹は、もう肺の病を克服していた。熱を出す虚弱体質であることには変わりないが、肺の病は花の神が癒してくれたらしい。

ちらちら散っていく桜の下で、桜色のなってしまった髪と瞳で、京楽も誓う。

「僕が生きている限り、君の傍にいることを誓う。これを君に」

花びらの形にカットされたローズクォーツを繋げた、ブレスレットだった。

「僕と、お揃いだよ。指輪はもうしているから、ブレスットにしたんだ。君への、二度目のプロポーズだよ」

「京楽・・・・ずっと、一緒だ」

「うん、これからもずっと一緒だよ・・・・・」


その翡翠は極上。

その翡翠が溶けていく。

まさに、翡翠に溶ける。

翡翠の中に、桜が溶けていく。

それは、もう一度この世界で産声をあげた浮竹の瞳の色。



                 翡翠に溶ける

                                                     fin


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翡翠に溶ける ユーハバッハの侵攻

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尸魂界は未曾有の大被害を被った。

山本元柳斎重國が、ユーハバッハの手により、死亡した。

「そんな・・・・先生!」

「山じいーーーー!!」

消えてしまった霊圧に、それぞれ敵と対峙しながら、叫んでいた。

蹂躙されつくされる。

そう思った時に、やっと一護がかけてつけてくれた。

しかし、結果は惨敗。

一護は斬魄刀を折られていた。

ユーハバッハは、時間切れだと他の滅却師たちと一緒に、一時退却していった。

一護は、卍解を吸収さえされなかったが、その大けがせいで、零番隊のところで、ルキア、恋次、白哉と一緒になって、湯治がされた。

「京楽・・・その右目は、もうだめなのか?」

「ああ・・・移植手術すればなんとかなるかもしれないけど、時間がないからね」

山本元柳斎重國の葬儀が行われた。

遺体はなかった。

ただ、空の棺の中に、折れた流刃若火が置かれて、棺の中は白い百合で満たされた。

「なぁ。俺がもしも、自分の死を・・・・卯ノ花隊長のように選択するとしたら、どうする?」

卯ノ花烈も、更木と斬りあい、死んだ。

棺の中は同じく百合の花で満たされていたが、戦いに満足したのか、安らかな顔だった。呼吸音を確かめたくなるような死に顔だった。

「君が、尸魂界のために散るなら、僕は止めないよ」

「薄情者だな」

「だって、そんなことおこりっこないもの」

「どうしてそう言い切れる?」

「今回の戦いでも生き残った。僕も君も。今は一護君や阿散井君が修行してるだろう。ルキアちゃんや朽木隊長もだ。大丈夫、次にユーハバッハがせめてきても、なんとかなるさ」

「そうだと、いいんだが・・・・もしも霊王が殺されたら・・・・」

「いやだな、浮竹。今は、山じいと卯ノ花隊長を見送ろう」

動ける者たちのうち、隊長副隊長クラスの者は、全員葬儀に参加していた。

棺に火がつけられる。

二人の棺が荼毘に付されるのを、みんなただ涙を流しながら見守っていた。

浮竹は、もうこの時心に決めていた。

尸魂界のために、霊王に何かあった時は潔く散ろうと。

それを知らない京楽は、新しい総隊長となった。

最後の夜になるだろうからと、浮竹から誘ってきた。

「今はそんな時じゃないだろうに・・・どうしたんだい?」

誘われて、満更でもないかんじの京楽は、浮竹の白い肌にキスマークを残していった。

「最後になるかもしれないから・・・・・・」

「そんな不吉なこと、言わないでよ」

「ああ、すまない」

でも、本当に最後だ。

ありがとう、京楽。

この500年、悪くなかった。

お前がいてくれたお陰で、今の俺がいる。

「あああ!」

京楽の熱に引き裂かれて、痛みでも快感でもない涙が流れた。

もう、別れのための手紙は書いておいた。

お前を残して逝くこと、どうか許してほしい。

「ひああああ!」

ぐちゃぐちゃと、中をえぐってくる京楽は、いつもより切羽詰まっていた。

こんな緊急時に、恋人と睦みあっていると知られたら、京楽の総隊長としての始まりに汚点を残すが、幸いこんな時に睦みあうなどど考える者はいなかった。

「んう」

舌が絡まるキスをされた。

「ああ!」

前立腺を刺激する京楽の熱の動きに、いつの間にか浮竹は精を放っていた。

相変わらず、涙は止まらない。

最後の夜だ。

「春水・・・もっとお前がほしい・・・」

そう言って口づけると、普段そんなことを言わないので、京楽の目が見開かれた。

「本当にどうしたの、浮竹・・・」

「あああああ!」

中のいいところを突かれて、浮竹はまたいっていた。

内部の締め付けがきつくなって、京楽も浮竹の中に熱を放っていた。

そのまま、出すものがなくなるまで攻めたてられた。

「あああ・・・・ああ、春水もっと・・・・・」

いつもより激しく乱れる浮竹に、京楽がごくりと唾を飲み込んだ。

「今日の君はすごいね。色っぽいし、反応も敏感だし、中もすごい」

「春水、愛してる。キスを・・・・・」

浮竹はキスが好きだ。

行為の最中、何度もキスを強請られた。

「十四郎愛してるよ・・・・」

ああ。

どうか、時が止まってしまえばいいのに。

永遠があるなら、この瞬間の永遠が欲しかった。


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別の世界で、色のない世界で眠っていた、花の神はゆらりと水底で揺らめいた。

「別の世界での、愛児の最後か・・・・」

ぶわりと、桜の花びらになって、世界を渡る。

愛児の最後を見届けるために。

椿の狂い咲きの王は、世界を渡る。

ある世界では、愛児となるための義魂丸を京楽に授け、それを京楽は浮竹のクローンに与えた。

まだ、その世界の愛児は散っていない。

助けてやろうと、花の神は気まぐれに時を渡る。

死を覚悟している愛児である、浮竹の元へと世界線をこえて、世界を渡っていった。

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