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小説掲載プログ
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朽木白哉と浮竹3

「京楽、今日は白哉のところに行ってくる!」

「あ、ちょっと待って浮竹!」

京楽の制止をの声も聞かずに、浮竹は朽木邸に向かってしまった。

「はあもう、浮竹ったら・・・・・」

その頃、朽木邸では当主である白哉が、書道をしていた。

「白哉、遊びにきたぞ」

「浮竹・・・・半紙の上に立つな。文字が書けぬ」

「何かいてるんだ?」

「新しいわかめ大使の服を描いている」

わかめ大使と書道で美しく文字がかかれているが、肝心のわかめ大使の服はただの黒一色で、どこからどこまでが服なのか分からないし、絵が下手なのか、わかめ大使自体もかなりシュールなものだった。

「何も、書道でもなくても、鉛筆に紙で書けばいいのに・・・・」

その言葉にはっとなる白哉。

「兄は天才か」

「え、それすら思いつかなかったのか」

「なるほど。書道では、道理でうまくかけないわけだ」

書いた半紙を丸めて、書道の道具を片付けていく。

「遊びにきたといっても、何もないぞ。兄をもてなすことはわかめ大使を与えるくらいしかできぬ」

「ああ、あまり気にしないでくれ。正直に言うと、わかめ大使を食べにきた」

「そうか」

奥の部屋に一度さがしにいき、大量のわかめ大使を手に、白哉が戻ってきた。

「白哉は、自分で作っておきながら食べないんだな」

「甘いものはあまり好きでないゆえ」

「めちゃくちゃ甘いわけではないんだけどなぁ。辛いわかめ大使はないのか?」

「一度作ったが、評判が悪くてな。私も食してみたが、不味かった」

「そうか・・・・・」

浮竹は、わかめ大使を15個ほど食べると、広い朽木邸でごろりと横になった。

「白哉の家は広くていいなぁ」

「浮竹には、広い家は向いていまい。雨乾堂くらいの広さがちょうどいいのであろう?」

「あ、うん、そうだな」

最近、ルキアが一護のことを好きだと自覚して、一護と付き合っていることを相談された。

「一護君は・・・・強いし優しいし頼りがいがあるし、大穴といえな大穴なんだけどな」

「ルキアは恋次と結ばれるものだとばかり思っていた故、このまま人間である黒崎一護と付き合わせ続けていいのか迷っている」

「でも、二人の仲を引き裂こうとはしないんだろう?」

「ルキアが選んだ道だ。ルキアと黒崎一護の仲を引き裂けば、ルキアが泣く」

義妹の涙など見たくないのだと、白哉はいう。

「朽木も愛されてるなぁ・・・・・」

「ルキアのことを、私は一度見殺しにしようとした。貴族の掟ばかりが頭にあった。今はただ、誰と付き合ってもいいから幸せになってほしいと思う」

ルキアがこの場に居れば、涙を流しそうな慈愛深い言葉だった。

「俺は思うんだ・・・・きっと、京楽を置いていく」

「浮竹?」

「きっといつか、愛する京楽を置いて先に死ぬだろう」

「浮竹、そう思うだけで辛くはないのか?」

「辛いさ。でも、きっと俺は死神のとしての矜持を選んで、京楽を置いていく・・・」


----------------------------------



浮竹の墓の前に、珍し影を見つけた。

「やあ、朽木隊長じゃない。どうしたの」

「兄は・・・・兄は、浮竹に愛されていたか?」

浮竹の墓参りに来ていた白哉は、同じく墓参りに来ていた京楽のほうを向いた。

「うん?愛されていたし、愛しているよ」

「そうか。浮竹は、生前私に兄を残して先に死ぬと告げていたのだ。ただの世迷言だとばかり思っていたのだが、まさか護廷13隊のために散るとは・・・・思っていなかった。浮竹が死んだことで、私の心の中に何処かで穴があいた。血がじくじくと滲み出てくる。私も、浮竹のことをよき友人として、あるいは兄として慕っていたのだなと・・・・・」

「うん。浮竹はみんなに愛されていたから。朽木隊長にそこまで言わせたら、浮竹も本望じゃないかな」

「浮竹・・・・どうか、安らかに」

白哉は、浮竹の墓に白い百合の大輪の花束を添えた。

あと、おはぎを。

「山じいに卯ノ花隊長に浮竹。きっと、3人で今頃あの世で酒でも飲んでいるよ」

死神が死ねば、ただの霊子に還る。

その霊子から、やがて新しい命が芽吹くのだ。

「その、猫は?」

猫アレルギーらしい京楽が、猫を連れていて少し驚く。

「にゃああ」

「ああ、シロっていうんだ。白猫のオッドアイの綺麗な子でね。不思議なことに僕の猫アレルギーが出ないんだ。浮竹の生まれ変わりかな?甘い花の香がするんだ」

白哉が、その白猫を抱き上げると、ゴロゴロと猫は甘えてきた。

「確かに、浮竹と同じ香がするな」

まぁ、生まれ変わりにしては早すぎる。

京楽も白哉も知らない。

自分に何かあった時に、白猫に浮竹の記憶を刻んだ義魂丸を入れてくれと、浦原に頼んでいたことなど。浦原はそれを実行して、白猫を京楽に託した。

始めは猫などと、敬遠していた京楽であったが、猫アレルぎーが出ないことと、浮竹と同じ香がすることが気に入って、浮竹の名前の一部である「シロ」と名付けた。

死後も、共に在ろうとする浮竹。

記憶があるだけで、ただの猫であることに変わりないし、何かを猫が思うわけでもない。

ただ、傍に在れればいい。

それがその白猫の願い。

「にゃあああ」

「お腹でもすいたの?」

「にゃあ」

白猫は鳴いて、浮竹の墓石をちょんと触った。

まるで、自分の死を受け入れるように。

白猫に浮竹の自我はない。記憶はあるが、それは京楽が飼い主であるという認識になっていた。

「にゃあ」

白猫は、京楽に抱き上げられて、その肩に乗った。

「帰ろうか。朽木隊長も一緒に・・・・そうだ、今夜一緒に飲むなんてどうだい。浮竹の話でもしながら」

「たまには、それもよかろう」

「にゃああ」

「さすがにシロはお留守番だよー」

「にゃあ!」

不満そうな声をあげる白猫を撫でて、二人は浮竹の墓を後にするのだった。







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腐女子の鏡

「好きだよ浮竹!」

「俺も好きだ京楽!」

再生されていく動画に、浮竹も京楽も赤くなった。

交わっているわけではなかったが、ハグやキスを繰り返す動画だった。

「と、このような動画が尸魂界チャンネルに拡散していまして・・・・」

清音の、ため息交じりの言葉に、浮竹も京楽もどうしようと顔を合わせる。

「まぁ、どうせ一時的なもので、すぐに消えるとは思いますが・・・・外でいちゃつくのは、しばらく禁止でお願いします」

「清音ちゃん」

「はい」

「僕と浮竹はこれくらいで動じる玉じゃないよ」

「同じく。盗撮するならどんとこい」

二人は、赤くはなったが、この程度痛くもかゆくもなかった。

そして、1週間もすぎればその拡散していた動画も消えてしまった。

「誰の悪戯か知らないけど、陳腐だったね」

「そうだな」

ここは甘味屋である。

京楽は、浮竹にあーんをさせて、白玉餡蜜を食べさせていた。

女性からは黄色悲鳴があがっているが、いつものことなので無視する。

「残りは京楽が食え」

「え、どうしたの。食欲でもないの?」

「白玉餡蜜、考えれば昨日の昼餉にも食った。すみません、ぜんざい3人前お願いします」

「はぁ。まぁいいけどね」

浮竹の残した白玉餡蜜を食べていく。

甘かった。

その写真をかしゃかしゃと撮っている人物を見つけて、京楽が立ち上がった。

「どうした、京楽」

「君はいいから、ぜんざいでも食べてて」

「ああ、分かった」

写真を撮っていた人物を摘みあげて、甘味屋の外に出た。

「で、なんなの、君。僕と浮竹のこと、ずっとつけてたみたいだけど」

10代の少女だった。

流石に乱暴にするわけもいかず、写真からとったネガを押収して、だめにする。

「ああ!収入源が!!」

「収入源?」

「あ、違うんです京楽隊長!二人のむふふなシーンをとると賞金が出されるなんてそんなこと、決してないんですから!」

「細かい説明をありがとう。で、そのサイトの管理人は?」

「松本乱菊・・・・・・・」

「乱菊ちゃんか・・・はぁ・・・・」

その少女に今度盗撮したら警邏隊に引き渡すと脅しておいて、浮竹を伴って10番隊の執務室までやってくる。

「なんだ、京楽と浮竹じゃねーか」

茶をすすっていた日番谷に、松本はいないかと聞いた。

「松本なら、奥の隊首室で仕事もしないで、冬コミの原稿とやらを書いてるが」

「ちょっとうるさくなるかもしれないから、先に謝っとくよ」

「は?おい、京楽!」

「乱菊ちゃん!僕らの写真や動画を拡散したり、とらせて賞金だすのやめてくれないかな!」

「やーん、京楽隊長!ごめんなさい、萌えが足りなくって!もうサイト閉じますから、勘弁してくださいーーー」

「京楽?あの動画の犯人は松本だったのか?」

「そうだよ。甘味屋で盗撮してた子が白状した」

「甘味屋で・・・・・?」

浮竹は、最後まで気づいていないようだった。

「乱菊ちゃんは、閉じますとかいって、それで終わらい子だからね」

松本は、京楽の見ている前でサイトのデータやら写真、動画を全部削除させられた。

「うわあああああん、あたしの萌えがああああ」

「今度こんな真似したら・・・・乱菊ちゃんの同人誌に僕らを登場させるのも禁止にするよ」

「いやああああああ!大事な収入源が!!ごめなさい、もう二度としません!」

さすがに、同人誌で登場を禁止というのがこりたのだろう。

松本は、大泣きしながら京楽と浮竹に謝った。

「は?どういうことだ、京楽、浮竹」

「乱菊ちゃんが、僕らの動画や写真を勝手に撮らせて、賞金を出していたんだよ。その動画の一部がネットに拡散してね・・・個人で楽しむならいいけど、流石に賞金を出してまで募集やネットに拡散は許せない」

「松本おおおおおお!お前というやつは!!」

「ひーーーん、ごめんなさいいいいいいい!」

「ごめんですむか!蒼天に座せ氷輪丸!」

「うきゃああああああああ!」

天高く昇っていく松本を、自業自得だと、浮竹も京楽も止めなかった。

「すまねぇ、京楽、浮竹。松本が迷惑をかけた。今後このようなことが起きないように指導していく」

「指導するだけでな直るなら、苦労はしないんだけどね」

京楽の言葉に、浮竹も頷く。

「松本は腐女子の鏡だからなぁ」

どんな鏡なんだ。

その場にいた誰もが思うのであった。









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夏残火

「あちぃ」

恋次は、夏の暑さにダウンしかけていた。

死覇装をはだけさせて、入れ墨のある肌を晒していた。

そのくせ、白哉は黒い死覇装の上に隊長羽織を羽織っているのに、涼しい顔をしていた。

「暑くないんですか、隊長」

「暑い」

「全然暑そうに見えないんですけど」

ミーンミンミン。

蝉の鳴く声がうるさい、8月の終わり。

「朽木家にくるか?」

「え、なんでです」

「氷室を開く」

「行く行く、行きます!」

つまりは、氷を食べれるのだ。現世の進化とは別に、尸魂界でも冷蔵庫はあるが、氷をたくさん作れるほどには進化していない。

仕事が早めに終わったので、2時くらい切り上げて朽木家に行った。

ルキアがいた。

氷室からとってきた氷とおぼしきもので、かき氷を作って一人で食べていた。

「かき氷を作らせる。シロップは好きなものを選べ」

シャリシャリと、清家がかき氷を作ってくれた。

「じゃあ、メロンで」

いろんな味のシロップがあった。

メロンのシロップをかけたかき氷とスプーンを手渡される。

キーンとした冷たさだった。

「あー、生き返る」

「ルキア、私には宇治金時を」

「はい、兄様」

ルキアは、白哉のために宇治金時のかき氷を用意した。

メロン味のかき氷を食べながら、恋次はふとした疑問を抱いた。

「隊長って、甘いもの好きじゃないんじゃ」

「こんな暑い時くらい、甘くてもかまわぬ」

ルキアが、斬魄刀の袖の白雪で氷を作り出し、それを冷えた麦茶にいれた。

「今年は暑い・・・・氷室の氷もつきかけておる。ルキアに頼んで、補充してもらっておるのだ」

「ルキアの斬魄刀は氷雪系っすからね」

恋次は、冷えた麦茶を飲んで、その日は自分の屋敷に帰っていった。


「あちぃ・・・・」

次の日、また暑さにダウンしている恋次がいた。

「甘味屋で、かき氷でも食べに行くか?」

「行く行く!行きます!」

白哉も、夏の暑さにいい加減嫌気をさしているのだ。

仕事を途中で切り上げて、甘味屋にいくと浮竹と京楽がいた。

「おや珍しい、朽木隊長が甘味屋だなんで」

「白哉、甘いもの嫌いじゃなかったのか?」

「かき氷を食べにきただけだ。この暑さだ・・・流石に、参る」

恋次は、かき氷を宇治金時にして白哉の分を渡した。恋次のかき氷は、昨日と同じメロン味だった。

「相変わらず、仲がいいんだな」

浮竹の言葉に、白哉が少し微笑んだ。

「兄らほどではない」

尸魂界では有名だった。京楽と浮竹はもはや夫婦、と。

去っていく二人を見ながら、恋次はいう。

「俺と隊長も、あんな風になりたいですね」

「四六時中、恋次といろということか?」

「え、嫌なんすか」

「一人の時間は大切だ」

「えー。嘘でもいいから、こういう時は「私も恋次の傍にいたい」って言ってくださいよ」

「私も恋次の傍にいたい」

めっちゃ棒読みだった。

かき氷を食べながら、ふと白哉に口づけた。

「ん・・甘い。メロンの味がする。それより、こういった往来で口づけるのはよせ」

「見せつけちまえばいいんすよ」

「私は、貴様と違ってそういう行動は好まぬ」

かき氷を食べて、幾分が涼んだ調子の白哉がいう。

「執務室でならばよい」

「かき氷、食べ終わったし、早く執務室に戻りましょう!」

切り替わり早い恋次に苦笑を零す白哉。

あまりの暑さに、その年は扇風機を出した。

だが、生ぬるい風を送ってくるだけで、一度現世にいきエアコンを体験してしまった恋次には、その年の夏は厳しいものだった。

「あー現世にいきたい。夏は現世のほうが過ごしやすい」

暑いのに、白哉を膝の上に乗せながら、恋次は生ぬるい風邪を送ってくる扇風機を占領していた。

「鍛錬を積めば、少々の暑さなどどうということはない」

「隊長、そう言いながら、最近かき氷や冷たい麦茶ばかりですね」

「今年は暑すぎる・・・・・」

恋次に口づけて、うだる暑さの中その背中に手を回すと、恋次もそれに応えてくる。

「隊長・・・好きだ、愛してる」

「私もだ、恋次。だから、この暑さをなんとかしろ」

めちゃくちゃ無理難題を押し付けられた。

「そうだ、井戸水で水浴びしませんか」

「井戸水で?」

「そう。水道水はぬるいから」

「ふむ・・・・・・」

その後、死覇装の姿のまま、お互い井戸水の冷えた水で水浴びをした。

白哉は死覇装を脱ぐと言い出したのだが、その白い肌を見ていいのは恋次だけなので、却下した。

ちゃんと、着換え用の死覇装も隊長羽織も下着も用意しておいた。

「はぁ・・・冷たいな」

体が冷えていくのが分かる。

「私はもう十分だ。着替える」

周囲に誰もいないことを確認して、建物の影で着換えさせた。

「なんなのだ」

「隊長の裸見ていいのは俺だけだから!」

「ふ・・・・・」

薄く笑って、白哉は着替えた。

髪は、濡れたままにしておいた。風が吹くと気持ちよかった。

「恋次、井戸水をたらいに入れてくれ」

「はい、隊長」

水浴びを終えたけれど、またすぐに暑くなってきたので、朽木邸の影で縁側に座りながら、足をたらいで組んだ井戸水で冷やした。

それだけでも、かなり違う。

「俺も、もう水浴びやめます」

恋次も、着替えて白哉の隣にやってきた。

「なんだ」

「あんたの足も綺麗だなぁと思って」

「世迷言を・・・・・」

井戸水で冷えた体で抱き着くと、白哉はきもちよさそうな顔をした。

「俺にも、ルキアみたいな氷雪系の斬魄刀があればいいんですけどね」

「貴様の斬魄刀は、あれでいいのだ。あれを、私は好んでいる」

「隊長の斬魄刀も綺麗だし・・・兄妹そろって、綺麗な斬魄刀ですね」

「褒め言葉として、受け取っておく」

「あんたは、千本桜の所有者にふさわしい。それくらい美しい」

「何を言っておる」

「あんたのことが、斬魄刀のも含めて好きだなと思って」

「褒めたところで、何も出ぬぞ」

「じゃあ、俺が奪っていきます」

そう言って、唇を奪ってきた。

ぱちゃんと、白哉が足に浸していた井戸水が音をたてた。

「ふあ・・・・・んんん・・・・・・」

キスに夢中になった。

「今日、あの館へ・・・・・・」

暑かったせいで、8月になって交わっていなかった。

体の芯に火をともされて、それは井戸水程度では消えなかった。

「好きです、隊長・・・・愛してる」

「恋次・・・・・私も、愛している」

ぱちゃりと、白哉の足元で井戸水がまた音を立てるのだった。







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愛のあるスケベ

「今日いいっすか?」
執務室での恋次の誘いに、白哉は眉を顰めた。
「先週もしたばかりであろう」
「いや、俺たちまだまだ若いから」
「そのような問題ではない。却下だ」
「えー。隊長はたまったりしないんですか」
「な、何を言い出す!」
恋次の言葉に、真っ赤になる白哉。
「俺は、あんたを抱く回数が月に3回くらいしかないから、自分でも抜いてますけどね。あんたのあられもない姿を想像しながら」
「・・・・・・・」
「あんたも、ほんともっと俺に抱かれたいんでしょう?俺を思ってくれて、抜いたりしてるんすか?」
「貴様、よほど千本桜の塵になりたいと見える」
かちゃっと、斬魄刀を抜こうとした白哉の動きに、恋次は慌てて白哉をその胸にかき抱いた。
「何を・・・・・」
口づけされた。
はじめは触れる程度の。次に舌が入ってくる。
「んあ・・・・・・」
濡れた白哉の声に、恋次が耳元で呟く。
「あんたの声、たまんねぇ。今すぐ抱きたいくらいだ」
「この痴れ者が!」
怒った白哉が、恋次の赤銅色の髪を思い切り引っ張った。
「あいたたた! 抜ける、抜けるから!」
「貴様など、一度はげになってしまえばいい」
「ええ、はげの俺が好きなんですか、隊長」
「そんなわけなかろう。はげの恋次になど、抱かせぬ」
「じゃあ、抜けるから髪ひっぱるのやめてください・・・・あいたた」
ぶちぶちと、数本髪が抜ける音がした。
そのままぱっと手を放すと、反動で恋次は白哉を押し倒してしまった。
その手が、いけない場所を触っていて、白哉の頬が朱くなる。
「貴様・・・執務室でこのような・・・・」
いわゆるラッキースケベ、たまたまだった。
でもそれを知らない白哉は、恋次がわざと触ってきたと勘違いした。
「破道の4、白雷!」
プスプスと恋次が焦げた。
無論、すごく手加減はされてあったが、それでも鬼道だ。
「俺を愛してくれてるんじゃないんですか。愛して相手にこの仕打ちはないと思うんですけど」
「ただのスケベを愛したつもりはない」
「ただのスケベ・・・じゃあ、愛のあるスケベならいいんですね」
「何を!」
白哉を執務室のテーブルの上に押し倒して、口づけし、衣服の上から体を触っていく。
「ああ!」
「ほら・・・・俺はスケベだけど愛はありますよ・・・俺の手でこんなになって・・・・かわいい、隊長」
「あっ」
袴の上からなぞられて、びくんと体が痙攣した。
「あれ、いっちゃいました?」
「この痴れ者が!」
がっと、脳天に一撃を加えられた。
「くーきいたーーー」
「一度、朽木邸に戻る!」
「ええ、なんで」
「濡れた下着のままでいろというのか」
「じゃあ、もっと濡れてくださいよ」
「くどい!」
迫ってくる恋次を伸してから、白哉は執務室を後にして、一度朽木邸に戻ると湯浴みをした。
確かに、月の3回の交わりは少ないかもしれないが、白哉はもともと淡泊で、性欲などほんとんどないのだ。
それでも、恋次に慣らされてしまったこの体は、恋次に求めらると疼いた。
執務室に戻ってきた白哉は、すねている恋次に声をかける。
「明日・・・・・明日ならば、抱かせてやる」
「ほんとですか、隊長!」
ああ、この男はやっぱりただのスケベに見えてきた。
「貴様、本当に私を愛しているのか?」
「当たり前でしょう。愛してなきゃ、同性のあんたになんて、興味も示さない」
その言葉を信じよう。
「・・・・・私も、貴様を愛している」
小さい声での呟きであったが、恋次の耳には届いていた。
「すっげー嬉しい。ああ、早く明日がこないかな」
抱きついてキスをしてくる恋次を受け入れながら、白哉は思う。
ああ。
愛してしまった故の苦労が絶えない。
でも、それもまた愛の形であろうと思うのであった。                     

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恋し恋され

恋次のことが好きだった。

緋真以外を愛さないと誓いながら、いつの間にか恋次に恋慕を抱いていた。

気づかないふりをしていた。例えそれで恋次を傷つけることになっても、恋次のことを愛していると認めたくなかった。

怖いのだ。

緋真のように、失ってしまうのが。

大戦中、白哉も恋次も、もう助からないと言われるような怪我を負った。あの時は、せめて恋次だけでも生かそうと思った。

でも、いま思えばそれは恋次に-------------緋真を失った、白哉のような思いをしろということだった。

「恋次、愛している」

そう答えれば、恋次はまるで犬が尻尾をふるようにこっちにやってきて、すり寄っって来る。

「隊長、俺も愛してます」

恋次の愛しているという言葉は、軽い気がしてしまう。

いつも------------毎日のように愛を囁いてくる恋次。

「貴様の、「愛している」は軽いな」

そう言うと、恋次は酷く傷ついた顔をした。

「軽くなんてありません。全身全霊であんたが好きで愛してます。俺の全ては、あんただけのものだ」

「そうか」

「そして隊長、あんたは----------------全部、俺のものだ。心も、身体も」

ここ最近、身体を重ねていなかった。

恋次の言葉に、かっと全身が熱くなるのがわかった。

「今宵、あの館へ・・・・・・」

「はい!」


それは、恋次と睦みあうためだけに建てられた館。

広くも狭くもない。管理は清家にさせてあり、きちんと掃除は行き届いていた。

月に数回、この館を使う。

恋次からしてみれば、御馳走が並んでいた。

白哉からしてみれば、いつもの食事だ。ただ、今日は少し豪華にしていた。焼いた伊勢海老がいて、茹でたカニのお吸い物が足されていた。

クリスマスが近い。

たまには、豪華な食事を食べさせてやるのもいいだろうと思った。

「隊長。メリークリスマス。これ、ちょっと早いけどクリスマスプレゼントです」

現世の赤ワインを渡された。

「すまぬ。私は何も用意をしていない・・・・「私」を与えよう」

その言葉に、恋次の赤銅色の瞳が見開かれた。

「このワイン、今飲んでもよいか?」

「え、ああ、どうぞ」

それなりの高額だったのだろう。いい味だった。

ワインを飲み干して、食事を続ける。

先ほどから、恋次はそわそわしていた。

「何をそわそわしておるのだ」

「いや、だって隊長、クリスマスプレンゼントに「私」って、つまりは・・・・・」

「今は、何も言うな」

食事がまだ済んでいない。残すという行為は、あまりしたくないのだ。いくら4大貴族とはいえ、飽食でであることは白哉は嫌いだった。

だから、豪華であるとはいえ二人分の食事だけで、食べ終えることのできる量しかでてこなかった。

「いいだろう。来い、恋次」

許可を与えると、恋次は壊れものを扱うかのように白哉を抱き上げて、褥に寝かせた。

「あ・・・・・・」

服の上から、次々に刺激を与えられる。抱きしめられて、口づけを交わした。

飲んでいたワインの味がした。

「ん・・・・」

ぴちゃりと舌が絡まるキスをする。体が熱くなってくるのが分かった。

死覇装を脱がされていく。

白い白い肌が、露わになる。

傷一つない。反対に、赤銅色の髪をした恋次は、自己鍛錬から敵に負わせられたものまで、戦士としての勲章がたくさんあった。

左胸の傷跡に、白哉が手を当てた。

「まだこの傷、残しておるのだな」

「そりゃ、あんたがくれたものだから」

義妹であるルキアを助けようと、裏切った恋次を倒した。その時につけた傷だった。

「あの時------------しかと、刃は私の首に届いていた」

大戦を経験し、さらに恋次は強くなった。けれど、それは白哉も同じで。

二人の差は、大きくなることはあれど、縮まることはなかった。

「ん・・・・・・」

鎖骨の上にキスマークを残された。そのまま、死覇装を着ていれば見えない位置にたくさんキスマークを残された。

「ふ・・・・」

くすぐったくって、そんな声がもれた。

「あーもう、あんたかわいすぎ」

恋次が、平な胸を撫でてくる。脇腹をなでられ、無駄な筋肉などついていない体を愛撫してくる。

胸の先端をひっかかれると、甘い痺れを感じた。

「あんたのここ・・・・こんなに濡れてる」

下着を脱がされて、先走りの蜜を流す花茎を、あろうことが恋次は口に含んだ。

「ひあ!」

いきなりの刺激に、何も考えられなくなる。

恋次は白哉の花茎を手でしごきながら、じゅぷじゅぷと口淫した。鈴口を舌で刺激されているうちに、白哉は恋次の口の中に放ってしまった。

「あああ!」

白哉が放ったものを、恋次は当たり前のように飲み込む。

「少し濃いですね。最近してなかったから・・・」

「あ、言うな・・・・・・」

潤滑油で濡れた指が体内に入ってきた。

「んん・・・・・・」

異物感は否めない。

でも、コリコリと前立腺を刺激されて、白哉は体をはねさせた。

「ひあああああ!」

「ああ、2回目いっちゃった?」

「あ、いうな・・・・ああっ!」

指を体内で曲げられて、前立腺にそれが当たる。きもちよすぎて、どうかになってしまいそうだった。

「もうよい。早く、来い・・・・」

「隊長・・・・好きです。愛してます」

「あああああああ!」

恋次の熱に引き裂かれて、白哉は唇をかんだ。

「ん!んんんん!!」

自分の手をかんで、なるべく声を押し殺そうとすると、恋次がその手に口づけ太。

「声、きかせてください。あんたの声、すごく腰にくる・・・・・」

「んっ!」

自然と、白哉の腕は恋次の背中に回された。

ズッズッと中を犯していく熱は、半端な質量ではない。

ぐちゅぐちゅと水音をたてて、浅い部分を犯された。

「あああ!」

前立腺を熱でいじられて、また何も考えられなくなる。

キュウッっと中が締まって、恋次は欲望を白哉の中に注ぎ込んだ。

「まだ、してもいいですよね?」

「あ、恋次・・・・・愛している」

その言葉に満足そうになりながらも、白哉を犯した。

「あああああああ!」

白哉を無理やり立たせた。

ズルリと引き抜けば、結合部からが恋次が出したものが溢れて、太ももを伝っていた。

「ひああああ!」

壁によりかかってなんとか立っていられる状態の白哉を、穿つ。

何度もそうしていると、白哉は何度目かも分からない精液を吐き出した。それでもしつこく犯してやると、もう出るものがないのか、先走りの蜜だけを零した。

「ああっ!恋次、もういけ・・・・つらい」

最奥にたたきつけると、びくんと白夜の体がはねた。

もう出るものもないのに、いってしまったのだ。

ドライのオーガムズを経験して、白哉は戸惑っていた。

「隊長、ドライでいくことは何も悪いことじゃありません。好きなだけいってください」

「あああ!!!」

立ったまま、前立腺をすりあげられて、また白哉はいってしまった。

「隊長の中やべぇ・・・・・吸い付いて、離れない。よすぎる」

恋次も、3回目になろうかという熱を、白哉の最奥にたたきつけた。


「ん・・・・」

性行が終わり、ずるりと引き抜くと、たらたらと恋次の放ったものが溢れてきた。

「湯殿いきましょう・・・・肩貸しますから」

「うむ・・・・・・」

交わった直後の湯浴みを少しきついが、後始末をしても完璧にぬぐいきれず、かぴかぴした体でいることのほうが、白哉には嫌だった。

湯殿に行き、髪も体も洗い、恋次が中に出したものをかきだした。

「んあ・・・・・・」

その声に、恋次の息子は反応しそうになったが、我慢だ。

これ以上白哉を抱くと、白哉は行為を嫌がって抱かせてくれない。

二人が入っても広い浴槽は、白桃の湯だった。

「愛してます、隊長」

そう言って抱き締めると、白哉もおずおずと抱き締め返してくれた。

「私も、貴様を愛している・・・・・・」

まるで、夢のようだった。

白哉に愛を囁かれるなんて。

椿の花を手折って誕生日プレゼントにした頃から、もう1年近くが過ぎようとしていた。

あの時の椿の花は、まだ氷室で凍りづいたまま花を咲かせているという。

6番隊を象徴するのは椿。

清廉潔白。

まさに、白哉そのものであった。

恋し、恋され。

この1年で、互いの在りようが大きく変わった。

恋次は白哉を必要とし、白哉もまた恋次を必要としてくれた。

愛されることが、これほど幸せなことだとは思いもしなかった。



恋し、恋され。

永劫の時を、生きていく。

傍らに、寄り添いあいながら。






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浮竹死んだけど幽霊です憑いてます18 映画鑑賞会とレモン

年末がやってきた。

年末年始は、総隊長である京楽の仕事も休みだ。

でも、休みが少し長いせいですることもなく、暇だった。

暇なので、幽霊に触れる手袋で浮竹の頭を撫でたり、脇腹から胸にかけてを触っていると、浮竹に怒られた。

「これは、こんなセクハラまがいのことをするために、作られたわけじゃあないんだぞ!」

「ごめん」

浮竹に怒られて、京楽はしょんぼりとなった。

進化した伝令神機を使い、音楽とホログラムで映画を再生させて時間を潰した。

リングと、リング2を見た。

「貞子が・・・・・・」

「貞子おおおおお」

二人とも、作り物と分かっているのに、恐怖にかられて、浮竹は無理に実体化してまで京楽と抱きあった。

「怖かった・・・・」

「現世で一時期流行った映画らしいけど・・・洋風の映画はもっと怖いけど、和風のものはじっとりとした怖さがあるね」

「俺も幽霊だぞ?俺は恐くないのか?」

「浮竹は幽霊っていっても悪霊でもないしね。僕の恋人だ。怖いわけがない」

ふと、伝令神機で涅チャンネルをセットした。

「なんなのだネ!年末年始くらい、休みをくれないのかネ!」

「いやぁ、リングとリング2のお化けみたいな義骸、作れないかい?」

「そんなもの、作ってどうするというんだネ!」

「年末に映画鑑賞会を開くことに決めたんだ。最後に義魂丸を入れた義骸で、みんなを驚かせようと思って」

「ふむ・・・・君が思いつくわりには、面白そうじゃないか。いいネ、用意しておこう」

こうして、年末の最後に、護廷13隊の隊長副隊長全員を収集した隊首会が開かれ、それからそのまま映画鑑賞へと流れていった。

「ひいいいいいいいいい」

松本が、白目をむいて気絶した。

「おい、松本!」

日番谷も恐そうな顔をしていた。

ホラームービーが苦手な白哉に至っては、失神していた。

ずるり、ずるり。

「祟ってやる・・・・・・」

「きゃあああああ!」

ルキアが悲鳴をあげた。

長い黒髪の貞子が、画面から這い出してきたのだ。

阿鼻叫喚地獄となった。

「破道の4、白雷!」

ボン!

DVDプレイヤーと、テレビが、音を立てて壊れた。

貞子の義骸に、とどめをさしたのは日番谷だった。

「ふう・・・虚じゃないみてぇだけど、なられたら困るからな」

「いや、これみんなを驚かせようとして・・・・」

説明すると、京楽に批難ゴーゴーだった。

「こわかったんですからぁ!」

松本が、京楽の首を締め上げた。

「兄の行動は、褒めれたものではない」

「あれー朽木隊長、失神しておいてそういうこというの?」

「ぐ・・兄など、もう知らん!」

「まぁそういわずに、白哉」

幽霊の浮竹が、気分を害していたメンバーに謝ったり、ものでつったりして、機嫌をとる。

「こんなつもりじゃなかったんだけどなぁ。ただ、みんなで怖がってきゃあきゃあ言おうと思ってただけなんだけど」

「君はそういうところが浅はかというんだヨ」

「涅隊長だって、喜んで貞子の義骸作ってたじゃないか」

視線が涅マユリに集中する。

「なんのことだかわからないネ。私は忙しいのでこで失礼するヨ!」

結局、みんなそれなりの恐怖を味わえたと、納得してくれた。

「あーもう、映画鑑賞会っていうから、きっとお涙ありのラブストーリーだと思ってたのに、
ホラームービーとか最悪だわ」

松本は、楽しめなかったようだった。

「あー腹立ってきた。今度の京楽×浮竹は略奪愛にしましょ。朽木隊長に美味しくもっていかれる最後に・・・・・・」

「兄は、まだ同人誌を続けているのか」

びくりとなった。

もう去ったと思っていた白哉が、まだいたのだ。

「兄の同人誌に、私を出すことは許さぬ。出した暁には、千本桜の塵になると思え」

「うわーーーーん」

松本は、泣きだした。

「松本、みっともねぇから泣くな!」

「だって隊長、朽木隊長がいじめるーーーー!」

「元はお前が悪いんだろうが!同人誌を続けるのはいいが、朽木は出すな!俺のところにまで被害が及ぶ!」

以前、恋白で同人誌を出したことがばれて、松本が普段使っている隊首室から執務室に至るまで、半壊にされたのだ。

「じゃあ、解散ってことで」

みんな、思い思いに一番隊執務室を後にする。

「あーあ、テレビとDVDプレイヤー壊れちゃったな」

「何、買いかえればいいだけだよ。お金なら腐るほどあるからね」

「全く、京楽は・・・・・」

浮竹は、日番谷に氷漬けにされた貞子の義骸から、手だけを実体化して義魂丸を出した。

恐怖用に作られており、たまに祭りで開催される「お化け屋敷」なんかに配置された義骸から取り出したもので、借り物だったのだ。

「義魂丸が無事でよかった」

「そうだね」

「壊れていたら弁償ものだぞ。義魂丸を弁償だなんて、ばかげてる」

「ねぇ、浮竹」

ふと、寂しそうな顔で京楽が切り出す。

「なんだ?」

「浮竹は、貞子みたいに悪霊にはならないでね」

「なるなら、とっくにそうなって虚になってるだろうさ」

「そうだね。浮竹が虚にもなれない幽霊でよかった」

少しだけ実体化して、京楽を抱き締めた。

「虚になるかもしれない幽霊と、抱きあえるはずないだろう?」

「うん、うん、そうだね」

キスをした。

浮竹は霊体のまま、レモンのキャンディを舐めていた。

キスは、レモンの味がした。」



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お年玉

「あけましておめでとう、浮竹。ほら、お年玉だよ」

「ありがとう京楽」

「まてまてまてまて。隊長にお年玉?普通に隊長が自分の親戚とかにあげるはずでしょう!何ちゃっかり、京楽隊長からお年玉なんてもらってるんですか!」

海燕のもっともな言葉であるが、浮竹はかわいらしく首を傾げた。

「俺は、毎年京楽からお年玉をもらっているぞ」

「100万ほどね」

「いやいやいや。隊長にあげる京楽隊長もおかしいけど、そもそも金額がやばい!1万ならまだわかるけど、100万ってなんですか!俺の給料より上じゃないですか!」

「なんだ、海燕君もお年玉欲しいの?」

「いりません!」

本音を言えば欲しいけど、そんなお金で左右される関係になりたくない。

「じゃあ、飴あげる」

飴玉は素直にもらった。

お年玉と飴玉なんて雲泥の差があるが、これでいいのだ。海燕が京楽からお年玉をもたうことなどない。

浮竹は、さっそくもらったお年玉で京楽と共に甘味屋まで出かけてしまった。

「ぜんざいを4人前」

甘味屋で、京楽の分もいれてぜんざいを4人前頼んだ。3人前は浮竹が食べるのだ。

やってきたぜんざいを、浮竹は幸せそうに食べた。

「おはぎを3人前。あと白玉餡蜜を3人前」

次々に注文していく。

京楽は、ぜんざい一人分で満足したらしかった。

食べに食べて、お会計は4万をこした。

京楽からもらったお年玉で、京楽の分まで勘定を払う。

「なんか俺がおごってるんだが、元はお前の金だから、あんまりおごった気にならないな」

「まぁ、いいじゃないの」

そのまま、一度雨乾堂まで帰還する。

「おごってあげたんですか」

「なんでわかった」

海燕に言うと、彼はこう言う。

「あんたのことだから、飲食代以外に使うことがない」

「そうでもないぞ!ガチャガチャしたり、駄菓子を買ったり・・・って、駄菓子は飲食代か」

「はぁ?ガチャガチャ?あんた、自分の年齢知ってますか?」

「500歳くらいだ。多分」

「はぁ・・・・・」

死神の寿命は千年。年を数えることなど、とうに止めてしまった。

「そうだ!新しいフィギュアのガチャガチャが今日入荷なんだ!行くぞ、京楽!」

「勘弁してくださいよ・・・・・・どこの子供ですか」

長い溜息をつくが、すでに浮竹の姿はなかった。

「ええい、最後の元柳斎先生がでない!京楽は10個もだぶっているのに!」

「だぶる僕って、ちょっと多すぎじゃない?」

300円のがちゃがちゃだった。

1万円札を崩して、またガチャガチャに手をかける。

「おっしゃああ!元柳斎先生ゲット!」

だぶった京楽は、おもちゃはリサイクルにという入れ物に捨てる浮竹。

「ちょっと、僕をそんなに簡単に捨てないんでよ!」

「別にいいだろう。10体もだぶってたんだ。9個はいらない」

「僕がかわいそう!」

「なんだ、そんなに気に食わないのか?」

「うん」

すねた京楽に抱き着いて、キスをすると、京楽はにまーっと情けない顔になった。

「ん・・・」

舌を入れてきたので、舌を絡めとり、膝を膝でわり、敏感な部分を袴の上からなぞると、浮竹はびくんと体をはねさせた。

「きょうら・・・・こんな場所・・・ああ!」

いってしまったらしい浮竹は真っ赤になっていた。

子供たちがいるような場所で、こんなこと。

「雨乾堂に帰ろうか」

体に力の入らない浮竹を抱き上げて、瞬歩で雨乾堂まで戻ると、海燕に3時間は入ってこないよにいうと、浮竹の衣服を脱がしていく。

「ああ、下着をこんなに濡らして・・・・・」

「いうな」

先走りの蜜と、白濁した液で汚れた下着をぽいっと投げ捨てて、浮竹の体に自分のものだという証を刻んでいく。

「ああっ!」

胸の先端を何度もかりかりとひっかいてやると、また浮竹の花茎から蜜が零れ落ちた。

「随分、淫乱な身体になったね」

「誰のせいだと、思っている!」

「僕のせいだね」

潤滑油に濡れた指が入ってくる。前立腺がある場所をこりこりされた。ぐっと中で指を曲げて、それが前立腺にあたって、浮竹は京楽の体の下で、痙攣した。

「ああああ!!」

白濁した液を出す。

「十四郎・・・・愛してるよ・・・・・」

ズッと、音を立てて京楽が入ってくる。

「ううん!」

衝撃に、息ができなくなる。

だが、すぐに律動を開始されて、浮竹は白い髪を宙に乱した。

「ひあああああ!」

「もっと啼いて、十四郎」

「春水・・・ああ!」

前立腺ばかりすりあげてくる動きに、快感で涙が零れ落ちる。

「あ、いい・・・もっとそこ・・・・ああああ・・・・」

何度も前立腺を刺激されて、奥の奥まで入ってきた。

京楽を締め付ける内部に、京楽も浮竹の中に熱を放っていた。

「ああ!」

それでも、まだ終わらない。

京楽は、2時間以上時間をかけて浮竹をゆっくり犯した。

最後には、浮竹もぐったりしていた。

濡れたタオルで後始末をするが、どうせこの後は湯あみだからと、意識を失った浮竹に死覇装を羽織らせて、京楽も袴ははいたが、死覇装を羽織っただけの恰好だった。

約束の3時間がすぎて、海燕がやってくる。

「なんて恰好してるんだあんたら!情事の後ですって俺に見せつけたいんですか!」

「いや、そんなわけじゃあないよ」

「ん・・・・海燕?」

「隊長、大丈夫ですか?狼に食べられたんでしょう。操は無事じゃなくていいから、中身のほうはまともですか?」

「ん・・・中に、京楽のが残ってる・・・湯浴み、してくる」

そう言って、浮竹は湯殿に消えていった。

「僕も湯浴みしてくるよ」

京楽と浮竹は、よく一緒に湯浴みをするので、それ自体は何も思わなかった。

白濁した液のついたシーツやら、死覇装を洗うのは海燕だ。

普通なら洗濯女が他の隊にはいるのだが、いくら隠していないとはいえ、隊長の男同士で逢瀬をした後の洗濯物なんて洗濯させられない。

「はぁ・・・・また、汚してくれちゃって・・・・・」

思い切り抱き合ったのだろう。白濁した液は、死覇装だけでなく、隊長羽織まで汚していた。

なんともいえないもやもやした感情を抱きながら、二人が汚したものを回収して、新しシーツ、死覇装、隊長羽織、下着を用意してやった。

「年のくせに、盛んなんだから」

海燕は、大きなため息をつくのであった。




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それいけ一護君 年明け

年が明けた。

貴族への挨拶回りを終わらせた白哉とルキアはともかく、無理やり連れていかれた一護はくたくだになっていた。

4大貴族の集まる会場で、一護は嫌気があったせいでこれでもかというほど飲んで、潰れた。

「全く、世話のかかる!」

「うへへへ、ルキアかわいいなぁ」

「しっかりせぬか一護!」

会場から朽木家へ、仕方なしに瞬歩で帰った。

「ルキアかわいいーーー」

ルキアのべったりと張り付いて、どうあっても離れなかったので、そのままルキアと一緒に一護は与えられていた寝室に放り込まれた。

「ルキア、かわいい」

そればかりを繰り返す、酔っぱらった夫を抱き締めて、布団の中に入ると、互いの体温がきもちよかったのか、一護はルキアから離れて寝てしまった。

「全く・・・そのような台詞は、素面の時に言ってくれ」

ルキアは、夕食をとるために食堂に向かった。

一護は、結局次の朝までずっと眠っていた。

朝になり、少し痛む頭に顔をしかめる。

「俺、どうしたんだ?」

「貴様、会場で浴びるほど酒をのんで、酔っぱらって潰れたのだ。覚えていないのか」

「なんも覚えてねぇ」

「私のことをかわいいかわいいと連呼していたぞ」

「ああ、なんかふわふわしてて・・・ルキアが俺を誘ってきてた」

「たわけ!誘ってなぞおらぬわ!」

頭をはたかれた。

「ルキア、かわいい」

「う」

「なぁ、こっちを見てくれよ」

「なんだ」

「ルキア、すっげーかわいい」

ルキアを抱き締めて、キスをする。

真っ赤になるルキアが余計に愛らしく見えた。

「ルキア・・・・・・」

「一護・・・・・・」

見つめ合う二人を、じーっと見ている視線があった。

「おう、邪魔してるぞ」

「恋次!お前、いつからいた!」

「一護、てめぇがルキアのことかわいいとか言い出した場面から」

「ほとんど見てたんじゃねーか!夫婦の時間を邪魔するな!」

一護が本気で怒りだす。

「って言われてもなぁ。俺は隊長に呼び出しくらっちまって」

「白哉が?」

「毎年恒例だよ。お年玉ってやつ」

「はぁ!?」

一護は、父親からお年玉をもたっていたのは中学までだ。高校に進む、バイトができるだろうともらえなくなった。

「白哉が恋次にお年玉・・・・?」

「言っとくが、ルキアもだぞ。毎年お年玉をもらっていた。今年は一護、てめぇの分もあるんじゃねーか?」

絶対、俺の分はないに決まっている。

そう思っていると、恋次もルキアも一護も、白哉に呼ばれた。

「あけましておめでとうございます、兄様」

「あけましておめでとうございます、隊長」

「あけおめことよろ、白哉」

最後の略した、一護のどうでもよさそうな言葉に、白哉は柳眉を顰めた。

「あけましておめでとう、ルキア、恋次、ゴミ」

「おい、今ゴミつったな?」

「気のせいだ」

はっきりと聞こえた。ゴミか・・・空気とどっちがましなんだろう。

「おい、空気」

「なんだよ」

「空気にも、ちゃんとお年玉を用意してある」

「まじかよ!」

4大貴族の朽木家のお年玉。

小切手とかだったらどうしよう。

いや、白哉に限って一護にそんなに渡すわけがない。ルキアとの手切れ金としてなら渡しそうだけど。

まず、恋次にお年玉を渡した。

10万入っていた。

次にルキア。

分厚い札束で、100万入っていた。

最後に一護。

チャリン。

10円玉が2枚入っていた。

「ふ、こんなことだろうと思ったぜ」

最初から期待していなかったので、ショックも何もなかった。

「これもやろう」

手書きの、何かの券だった。

「何々・・・・・卍解、千本桜景厳にめっためたにされる券・・・・こんなのいるかああああ!」

「これもやろう」

「何々・・・・肩を揉んであげる券!?俺が白哉の肩を揉むのかよ!」

「そうだ。嬉しいであろう。名誉と思え」

「こんなもんいるかああああ!」

びりびりに破り捨てた。

「仕方ない。これをやろう」

美味い棒を10本渡された。

それをもぐもぐと食べながら、100万ももらってもルキアには使い道がないだろうなと思った。ルキアの欲しがるものはどんな高価なものでも、大抵白哉が買い与えている。

「隊長、ありがとうございます!近所のガキ共に、お年玉あげてからけっこう金とんでいっちまって・・・・・京楽総隊長に言って、給料前借りするところでした」

恋次は心の底から喜んでいたし、ルキアもこれでチャッピーの超レアの等身大人形が買えると喜んでいた。

「20円、ありがたくいただいていく」

「おい、ちょっと待て、一護!」

「なんだよ」

「その十円玉・・・・・純金じゃねーか!」

「へ?」

「尸魂界で、護廷13隊発足500年記念に作られた、純金でできた10円玉の形をしたコインだ。間違いねぇ・・・1枚100万のプレミア価値がある。それが2枚ってことは、200万か!?」

「おい、どういうことだ白哉・・・・・って、いねぇ」

「隊長は、隊長なりに一護のこと気に入ってるんだぜ。今頃照れて顔を洗ってるぜ」

「そういうもんなのか?まぁいい、記念ものなら売るわけにいかねーし、金に困ってるわけでもないし、大事にとっとくか」

白哉は、恋次が言った通り冷たい水で顔を洗っていた。

自分のいる場所では、気づかれないと思っていたのだ。

白哉は、別に一護のことを嫌いなわけではない。ルキアの夫、義弟としてそれなりに思っている。

「はぁ・・・あのような場でばれるとは。どのような顔をして一護と接すればよいのだ」

「兄様、普通でいいのです!」

白哉を心配して、やってきたルキアが、顔を洗ったばっかりの白哉にタオルを差し出した。

「一護は、何か言っていたか」

「記念品なので売ることもできないから、大事にとっておくと申しておりました」

「そうか・・・・・」

それから数日の間は、一護と白哉はぎこちなかったが、すぐにいつもの日常に戻っていった。


「ルキア、かわいい・・・・」

「ふふ、くすぐったい」

ルキアの膝枕の上で、一護はルキアと戯れていた。

「かわいい」

「貴様は、かっこいいぞ」

「お前のかわいさには負ける」

ルキアを抱き締めて、唇に触れるだけのキスを繰り返す。

「随分甘えん坊なのだな、一護」

「この正月、ルキアとあまり触れあえなかった」

「仕方なかろう。年始は忙しいのだ」

「ルキア成分が不足してる・・・・補充していいか?」

耳を甘噛みしてやると、ルキアの体がはねた。

「ひゃう!」

「耳、敏感なのか?」

「こ、こらやめぬか一護」

耳朶をやわやわと触られて、耳に舌が入ってきた。

「きゃう!」

「ルキア、かわいい・・・・・」

閉じ込めて、もう誰にも見せたくない。そう思った。

「あ、兄様からメールだ」

伝令神機がなり、ルキアは一護に膝枕をしてそれを読んだ。

「7日から、通常通り仕事が始まるそうだ。今年は去年に比べて1日休みがおおいな」

「そうか。7日までなら、あと4日あるな。もっといちゃいちゃしようぜ」

「仕方ないな・・・・・・」

一護に、ルキアも甘い。

砂糖菓子のように甘い時間を二人で過ごした。

夕刻になり、実に3日ぶりの朽木家での夕食だった。それまで、挨拶回りで外で食べていたのだ。

伊勢海老がこれでもかというほどいた。

「うわ、豪華だな・・・・・・」

茹でたカニの足もあった。

「本来なら、年始から祝うべきであったのだが、貴族への挨拶回りで遅れた。ルキア、一護、よくぞ朽木家の者として立ち振る舞った。見事であった」

一護の場合、ルキアの影に隠れて、ただ立って飲食をしていただけだったのだが、それでも朽木一護という名はでかかった。

尸魂界を二度の救った英雄を、朽木家に迎え入ることに最初は反対の声もあったのだが、今ではこちら側が婿に欲しい、と言ってくる始末だった。

「一護、貴様は次期当主だ。貴族であることに、早く慣れろ」

「いやいやいや。俺に当主とか絶対無理!それよか、俺とルキアの間の子を当主にしてくれよ」

「貴様の願い、しかと聞き届けた」

白哉は、薄く微笑んだ。

「え?俺なんか変なこと言ったか?」

「たわけ!まだ子などできておらぬであろうが!」

ルキアに頭を思い切りはたかれた。ルキアは真っ赤になっていた。

でも、そんなところも本当にかわいくて。

「ルキア、かわいい・・・」

そう言うと。

「兄様の前だぞ!」

そう言われてお尻をつねられた。

「よい。ルキアと一護は新婚だ。甘い雰囲気を出すこともあるだろう。私がいても、構うことない」

「だってよ、ルキア。これからはもっと堂々といちゃつけるな」

「恥ずかしいであろう!兄様、一護などめっためたのぎったぎったにしてくれてよいのです」

「そうか・・・散れ、千本桜・・・・」

「おい、ルキア何言ってるんだよ!白哉も真に受けるな!」

危うく千本桜に襲いかかられそうになって、やっぱ白哉って俺のこと嫌いじゃないのかと思う一護がいた。


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それいけ一護君 年末年始

12月の終わり。

今年もあと数日で終わりだ。

今年もいろんなことがあった。

13番隊の副隊長になってから、一護はお盆の日以来のまとまった休みをもらった。

それはルキアも同じで、いちゃいちゃできると思っていたのに、白哉も同じく休みだった。

「ルキア、好きだぜ」

「貴様はそれしか言えんのか!邪魔だどけ、大掃除をするぞ」

「えー」

「えー、じゃない!」

その日、朽木家では大掃除が行われた。主に雇っている女中がしてくれるのだが、寝室はルキアと一護が、白哉の部屋は白哉本人が掃除するらしかった。

「白哉が掃除?掃除なんかできるのか、あいつ」

「大半は清家がやってくれる」

「やっぱ一人じゃできねーんじゃねーか」

そういうルキアも、ちよが大掃除を手伝ってくれていた。

「あ、ちよさんすまねぇな」

「いえ、私はルキア様のお世話をするためにいるので」

きっと、白哉もこんな調子で清家に面倒を見てもらっているのだろう。

大掃除が終わり、ピカピカになった寝室で横になった。

「なぁ。年末年始って、することねーんだけど。店とか閉まってし」

「たわけ!朽木家は4大貴族だぞ!貴族同士の挨拶に・・・・・」

「あ、俺パスな。そういうの向いてないから」

「ずるいぞ一護!私とて、好き好んで貴族の交流をしたいわけではないのだぞ!」

そんなルキアを抱き締めて、口づけをしていくと、段々とルキアが大人しくなってくる。

「するのか?」

「していいのか?」

「しないのなら、知らん!」

「するする!」

ルキアをしいた布団に押し倒して、二人は体を重ねた。


年末も終わろうとしていた。

白哉は、現世のテレビでDVDをかりて見ていた。

「貞子が・・・・・・」

またか。

白哉はホラーものが嫌いなくせに、よくホラームービーを見た。

「エクソシストが・・・・あああああ」

ぶんぶんと頭を振って、怖いことを考えないようにしている白夜の前にきて、ハンニバルのDVDを渡した。

「怖くないから」

大嘘だ。レクター博士のカニバリズムのホラームービーだ。

ハンニバルを見た後、白哉は10分ほど意識を飛ばしていた。

「人間が人間を食う・・・・・なんとおぞましい・・・・」

そりゃ、レクター博士だからな。

「一護、貴様私に怖くないなどといって、このような恐怖の映画を見せるとは、私の当主の座を狙っているということだな!?」

え、なんで!?

「いや、飛躍させすぎだろ!」

「私が恐怖のあまり心臓が止まるのを狙っているのであろう!?私は、まだ当主の座を渡すつもりはないからな!」

「いや、頼まれてもいらねーよ!」

4大貴族、朽木家の当主。響きからして重圧しか感じない。

その日は、焼肉だった。

「う、肉は・・・・・・」

ハンニバルで、カニバリズム、つまりは人間が人間を食べるシーンを見てしまった白哉は、食欲をなくして狐うどんを食べていた。

唐辛子がいっぱいかかっていた。

その日、白哉はルキアと一護の寝室にやってきた。

「どうしたんだよ、白哉」

「貞子が・・・・エクソシストが・・・レクター博士が・・・・」

「怖くて一人で寝れないなら、はっきりそう言えよ」

「怖くなどない!ただ・・・・夢に出てきそうで・・・」

そんなことをいう白哉を、かわいいと思ってしまった。

「幸いなことに部屋は広いし、予備の布団もある」

「ルキア、一緒に眠るぞ」

「はい、兄様!」

ルキアの隣の布団は一護のものなのだが、そこを白哉が占領してしまった。

「おい、お前の布団はこっち・・・・・・」

よほど怖かったのか、白哉は安堵してそのまま眠りについてしまった。

「あーもう。ルキア?」

見ると、ルキアも眠ってしまっていた。

「俺、全然眠くないんだけど・・・・昼間寝すぎた」

仕方なしに、食堂にきてテレビをつけて、DVDプレイヤーにエクソシストを入れてみた。

「エクソシストが・・・・・」

次の日、そんなことを口にしてカタカタ震えている一護の姿があった。

それ見たことかと、白哉がハンニバルの映画を見せた一護に、塩をふりかけた。

「悪魔を体内からださねば」

ばっさばっさと塩をかけられて、寺から高層が呼ばれてやってきた。

「黒崎一護に悪魔が乗り移っている。お祓いを」

本当なら神父を呼ぶべきだろうなのが、尸魂界に教会はほとんどなく、神父もいない。

「はぁ~なむなむなむ」

ぼっさばっさと神聖だという木の枝で、一護は叩かれた。

「いい加減にしやがれ!」

「悪魔だ!悪魔が入っている!」

高僧はそういって、一護にお清めの聖水をぶっかけた。

ピキピキピキ。

一護の額にいくつもの血管マークが浮く。

「白哉にも悪魔が乗り移っているんだ。俺が呪った」

「お祓いじゃあああああ」

白哉にも塩がまかれ、聖水をぶっかけられた。

「一護、貴様・・・・」

「一緒にお祓いされようぜ~白哉義兄様~~~~」

二人は、仲良く高僧のお祓いを受けた。効果なんてなにもなかったのだが、白哉は安堵していた。

「これでもう、エクソシストの悪魔も去っただろう」

その日の夜、白哉の部屋を訪ねて、一護はエクソシストの悪魔がとりついたようにカサカサと動いてやった。

白哉は、悲鳴もあげずに気絶した。

「まだまだだな、白哉義兄様」

次の日の朝、一護は木の枝にくくりつけられていた。

「なんだこれ!?」

「清めねば・・・・・・」

ぱちぱちと火の爆ぜる音がする。

「ま、まさか火あぶりか!?」

「たわけ、兄様はそのようなことはせぬ」

「ルキア、助けてくれ!」

「悪魔にとり憑かれておる」

煙で、これでもかというほどいぶされて、流石の一護も謝った。

「悪魔がとり憑いたとか全部嘘だから!」

「何、嘘だと?では、あの高僧の言った言葉は・・・・・」

「全部、口からの出まかせだろ」

「むう、許せぬ」

一護は、ルキアに木の枝から解放してもらった。

「お清めの聖水と塩をこんなに買ってしまった」

白哉は、勿体ないと一護にお清めの聖水をばっしゃばっしゃとかけて、塩をまいた。

「白哉義兄様・・・・・お前もくらえ!」

お清めの聖水を手に、白哉にもかけていく。塩もかけあって、二人ともびしゃびしゃになった。

「兄様、一護、こんな寒い時期に楽しそうに水浴びしても、風邪をひいてしまいます!」

二人して、別々の湯殿に追い立てられて、暖かいお湯に浸かって冷えた体を温めた。

「なあ白哉。年末年始くらい、一時休戦といこうぜ」

「よかろう。年があけると、貴族への挨拶回りで忙しくなる。一護、貴様もくるのだぞ」

「やだ!」

「やだではない。朽木家に名を列ねるからには、出席しもらう」

こうして、年始明けには嫌がる一護をずるずると引きずって、貴族への挨拶回りにでかける白哉とルキアの姿があった。

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院生時代の部屋 雪だるま

12月の終わり。

「浮竹、雪が積もったよ!」

「え、本当か!?」

浮竹は南方の生まれなので、瀞霊廷に来て雪を見るのも始めてだった。1回生の時、空から冷たいものが降ってきて、ずっと凍った雨だと思っていた。

京楽が教えてくれた。

「これは雪っていうんだよ」

積もるのも初めてだった。

ガラリとベランダに続く窓を開ければ、身を切るような寒さと共に、一面が白銀の世界だった。

「雪ダルマを作ろう」

「いいよ」

京楽と二人で、院生の服の上から防寒具を着こんで、耐水性の手袋をして、雪をかき集めて雪だるまの原型を作った。

スコップで、雪をかけかたりして、丸めていく。

「完成だーーー!」

バケツを頭にかぶらせて、木の葉で目と口をつくり、枝をぶっさして手を作った。

浮竹は、京楽が雪だるまの隣に作っていたものを見る。

「かわいいなぁ」

雪兎だった。

「君のほうがかわいいよ。こんなことで夢中になる君がかわいい」

「な、何もでないぞ」

「うん」

変態京楽は、たまに変態でなくなる。今みたいに。

京楽は、雪兎を2つ作った。

「これ、僕と浮竹ね」

「じゃあこの雪玉ルマは?」

「山じいかな」

「先生にしては、太ってるな」

くすくす笑いあっていたが、肺が痛んできた。

「すまない、発作が起きそうだ・・・部屋に帰らないと」

京楽は、浮竹を抱き上げて瞬歩で部屋まで戻った。

肺の発作用の薬を飲んで、なんとか咳込むことも血を吐くこともなかった。

だが、長時間寒い外で雪遊びをしていたせいか、熱が出てきた。

「はぁ・・・・自分の体の弱さがいやになる」

「解熱剤飲んで横になっていれば、熱も下がるよ」

「今日のお前は優しいし、変態じゃないな・・・・珍しい」

「僕はいつでも紳士だよ!」

すたっと立って、懐から浮竹のパンツを取り出すと、それを頭に被った。

「ああ・・・・・お前は、そのほうが安心する」

変態京楽であることに安心するあたり、浮竹もかなり毒されていた。

「ん・・・・眠くなってきた。少し寝る」

睡魔に襲われながらも、雪遊びは楽しくて、熱にを出したことも気にならないほどだった。

次に起きると、夕方だった。

粥を、京楽はもってきてくれた。

まだ、熱は完全に下がっていない。食欲はなかったが、薬を飲むために半分は残してしまったがなんとか食べた。

もう一度、肺の薬と共に解熱剤を飲んだ。

「次に起きる時は、熱が下がっていたらいいな・・・・・」

次に起きると、朝だった。早朝だ。

日差しは冬のわりにはぽかぽかしていて、ベランダに出るといつもと同じ景色が広がっていた。

「ああ・・・・雪だるまもみんな、溶けてしまったのか」

少し残念に思った。

でも、京楽は雪兎を冷凍庫に入れて、保存していた。

「雪うさぎならあるから」

「ああ、本当だ。かわいいな」

「かわいいのは浮竹だよ。今日もかわいい・・・・・・(*´Д`)ハァハァ」

一人くんくんと臭いをかいでくる変態京楽を放置して、学院に登校する準備をする。雪だるまを作った日は土曜の休みだった。日曜は熱を出して寝ていた。

「今日は、斬り合いの授業があるのか」

切り合いといっても、刃をつぶした剣だ。

打撲くらいの怪我は負ってしまうことはあるだろうが、血を流すようなことはない。

念のためにと、4番隊の隊長がくるらしかった。

浮竹もたまにお世話になる、卯ノ花隊長だった。

卯ノ花隊長には謎が多い。護廷13隊ができた頃からのメンバーだという。だが、山じいのように老けてはおらず、若い姿を保っていた。

「今日の切り合い斬り合いは、本気でいくからな」

「僕だって負けないよ」

切り合いの授業になった。浮竹と京楽はペアだった。二人は、己たち二人以外では力の差がありすぎて、試合にさえならないのだ。

15分ほど切り合いを続けていて、ふと汗で道場の板が滑った。

キンキンカキン。刃をつぶした刀で戦っていたが、滑った調子で受け損ねて、肩から切られる形になった。

「そこまで!勝者京楽!」

「くそ・・・・」

全身に汗をかいていた。12月だというのに。

本気の切り合いは、死神になったときの命をかける戦いの代わりになる。

京楽のつぶれた刃が肩にくいこんで、酷い痣になっていた。

「なかなかの腕でした。いずれ、護廷13隊の隊長になるかもしれませんね」

そう言って、卯ノ花はが痣を回道で癒してくれた。

完全ではないので、湿布をはられた。

切り合いの時はあんなに嬉しそうな顔をしていたのに、試合が終わったとたん、京楽の表情が変わる。

「大丈夫?痛くない?」

「ああ、大分回道で癒してもらったから。痣も薄くなってる。数日のうちには消えるさ」

「ああ、もう僕のバカバカバカ。浮竹の柔らかですべすべのお肌に傷を負わせるなんて」

「本気で斬り合ったんだ。それくらい、平気だろう?」

「でも・・・・・」

「ええい、男がめそめそするな」

授業が終わり、寮の自室まできた。

京楽を抱き締めて、キスをしてやると、京楽は浮竹をベッドに押し倒して、院生の服を少しだけはだけさせて、湿布のはっている場所に口づけてきた。

「早く治るといいね」

「ああ」

女ではないのだから、例え傷跡が残ってもどうってことはないのだが、京楽は心配性だ。念のため、京楽の名で4番隊の席官を呼んで、再び回道をかけてもらうと、薄くなりつつあった痣は綺麗に消えてしまった。

「よかった・・・・・」

京楽は、心底ほっとしていた。

「その、京楽の我儘ですみません」

浮竹は、4番隊の席官に謝った。

すると、4番隊の席官は、こういう。

「4番隊は、他の隊と違って危険手当が出ないから、給料が少ないんだ。今回のこの回道で、1年分の金をもらった。ありがたいことだよ」

「京楽のやつ・・・・・」

金をかけすぎだ。

まぁ、みんなハッピーエンドのようなのでいいかと思う、浮竹であった。





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海燕の死

ふと、雨乾堂で荷物を整理していると、古いアルバムが出てきた。

「懐かしいなぁ・・・・・うわぁ、俺が院生時代の写真まである。一番最近のは・・・海燕のか・・・・」

もう、写真など撮らなくなって久しい。

あの優秀だった副官、海燕は死んだ。浮竹が、死神として死ぬ道を選んだ海燕を思う通りに行動させた。あれは、優秀な副官を死なせたのだ。

誰でもない、浮竹自身が。

ふと感傷に浸ってしまい、このままではいけないと頭を振って、アルバムを閉じた。

持っているだけ、悲しくなるだけだ。

海燕には悪いが、海燕の持ち物は全部処分したのだ。めぼしいものは志波家に託した。アルバムの中から海燕が映っている写真だけを抜き取って、鬼道で燃やしていく。

もう、副隊長はいらない。

その浮竹の思いは硬く、数十年経っても、副隊長を置かなかった。

代わりに、3席が2名できた。清音と仙太郎だ。

二人とも、甲斐甲斐しく、浮竹の身の周りの世話から仕事までしてくれた。

数日が経った。

「そういえば、今日は海燕さんの命日ですね」

「ああ、そうか・・・・・」

海燕が死んでから、何年経っただろう?

20年くらいまでは数えたが、数えるだけ虚しくなるだけで止めてしまった。

「今日は、墓参りにいってくる」

京楽を誘った。

京楽は、浮竹が誘うところなら例え火の中水の中、喜んでついてきてくれる。

「京楽、海燕の墓参りに行こうと思うんだ。お前も一緒にきてくれ」

「うん。海燕君には世話になったからねぇ」

思い出の品を処分しても、やはり情は残る。

海燕の墓は、元5大貴族である志波家の廟堂の中にあった。

墓は立派なものだった。

今は落ちぶれてしまったが、かつて志波家は上流貴族の中の上流貴族だった。

「俺は元気でやっている。いつか、俺がそっちにいくまで、待っててくれよ」

「ちょっと、そんな不吉なこと言わないでよ。海燕君、悪いけど浮竹はそう簡単に渡さないからね」

「死人に、渡すも渡さないもないだろう」

「それでもだよ。君、海燕君が死んだ時、茫然となって3日は眠りもせず食べもせず・・・虚空ばかりを見ていて、このまま海燕君が連れていくのかと心配したんだよ」

あの時は、茫然自失としていた。

何故、自分は副官の死を許し、部下を見捨てたのかと。

自分を責めているうちに、生きているのがいやになって、魂魄を滲ませていた。

結局4番隊に運ばれて、卯ノ花に診てもらい、点滴を受けて鎮静剤を投与されて、深く眠った。

あんなに深く眠ったのは、初めてかもしれない。

1週間は起きなかった。

病気というわけでもないのに、起きない浮竹がおかしいと、また卯ノ花診てもらい、心を閉ざして起きることを拒否していると言われた。

「強く訴えかければ目を覚ますかもしれません」

そう言われて、浮竹の耳元で何度も帰ってこいと囁いた。

思いが通じたのか、昏睡状態から10日後には、浮竹は意識を取り戻した。

「あれ、俺は何をしていたんだ?京楽、どうしたんだ?」

「どうしたって君、海燕君が死んだせいでこうなって・・・・・」

「海燕?誰だ、それ」

「え」

本当だった。

浮竹は、生きるために「海燕」の全てを忘れていた。

卯ノ花には記憶は徐々に戻るでしょうと言われ、退院を許可された。

「海燕・・・・言われれば、そんな者がいたかもしれない」

最初の一週間は、そんな存在ほんとにいたのかと疑心暗鬼になりながら。

1か月後には、海燕はいたことを思いだしていた。

そして、2カ月目には自分が見殺しにしたことを思いだして、取り乱した。

「しっかりして、浮竹!もう海燕君は安らかにいったんだから!君にお礼を言っていたんでしょう?」

はっきりと、記憶が蘇り、浮竹は海燕を失ってはじめて涙を見せた。

海燕が死んで、3か月が経とうとていた。


「こいつは、素直じゃないからこんなこと言ってるが、海燕、お前のことを京楽も好いていたんだぞ」

「不思議だね・・・・いないのがこんなに寂しくなるなんて」

「ああ、寂しいな」

隊長!そう言って、寝込んでいたのに熱が下がって甘味屋にいった浮竹を叱る者がいなくなった。

「おはぎ・・・・お前も好きだったよな。ここに供えておくから」

墓の前に、菊の花とおはぎを供えた。

「俺は、これからも歩いていく。京楽と一緒に・・・・・・」

「浮竹・・・・・」

京楽とキスをする。

「ふふ・・・海燕はいつも、俺たちがキスをしても、平然な顔をしていたな。今度副官になる予定の男がいるのだが・・・断るよ、海燕。しばらくの間はお前がずっと副隊長だ」

「でも浮竹、副隊長がいないといろいろ不便でしょ?」

「何、清音と仙太郎がいる。ここ20年以上もなんとかなってきたんだ。大丈夫だ」

でも、雨乾堂は、本当に静かになった。

海燕と3人でぎゃあぎゃあ言い合っていたのが、昨日のことのように思い出される。

「海燕君・・・浮竹は、僕が攫っていくから。君には、あげない」

そう言って、踵を返す。

先に歩き出した浮竹の後を追う。

隊長、ありがとうございます!

ふと、そんな言葉が聞こえた気がして振り返る。

何もなかった。

浮竹は、迷いをふっきって、歩き出す。

明日へ向かって。

京楽と共に。

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エンゲージリング

大戦の傷跡は濃かった。

実に半分以上の死神が死んだ。

そんな中、護廷13隊の被害は少ないと言われれば、そうだろう。

山本元柳斎重國、卯ノ花烈、そして浮竹十四郎。

隊長クラスでは、13人中3人だけだ。

そのうち卯ノ花烈と浮竹十四郎は、道を選び死んだ。

滅却師たちにやられたわけではない。



君が死んで、1日が経ち、1週間が経ち、1か月が経ち、1年が経った。

相変わらず君を想ったまま、毎日を過ごす。

総隊長として、復興に尽力を尽くしたせいもあり、焦土と化してしまった一番隊の執務室も新しく作られた。

「はぁ・・・・君に会いたいなぁ」

1年はあったとう間だった。それからまた時間だけが過ぎていく。

2年、3年・・・・・。

ふと、君の遺品を整理していて、僕あての手紙を見つけた。

死の直前にも手紙を渡された。

その時は、先にいく俺を許してくれ、愛している、迎えにいくまで達者で生きろとか、そんな言葉が書かれてあった。

僕は、勇気をだして僕宛の手紙の封を切り、中身を読んでいく。

引退するまで、一緒に仲良くやっていこう。そんなことがつらつらと書き綴られていた。

君が死んだ時ですら、零さなかった涙があふれて、手紙の上に雫を滴らせた。

「ずるいね君は・・・・・こんな幸せそうな未来図を僕に与えておいて、肝心の君がいない」

あと500年ほど死神を続けたら、一緒に引退して、屋敷で悠々自適な生活を送り、残りの人生を謳歌しよう。

そう書かれてあった。

もう乾いていたと思っていた涙が、溢れるように流れ落ちる。

「浮竹!浮竹、浮竹、浮竹ええええええ!!!」

泣いて叫ぶと、すっきりして涙はとまった。

代わりに、無理やり傷口を塞いだ心臓からドクドクと血が流れ出ていた。

「ふふ・・・・これ、僕がはじめて君にあげたものだ・・・・・」

高いものはいらないとつっぱる浮竹のために、柘榴の色硝子でできた髪飾りをあげた。

他にもいっぱい思い出の品がでできた。

螺鈿策の櫛、翡翠の髪飾り、翡翠のペンダント、お守り石。

僕は、浮竹の瞳の色が好きだった。

翡翠だと思った。

だから、高価なものでももらうようになってくれた君に、たくさんの翡翠の装飾品をプレゼントした。

死の間際まで、君の指に光っていたエンゲージリングが出てくると、また涙が零れそうになった。

墓の下までもっていってほしいと思っていたが、浮竹は死の間際に外して、僕に言ったのだ。

「約束を守れなくてすまない。せめて、このエンゲージリングを俺と思ってくれ」

そんなこと言われても。

僕は、記憶に蓋をするように、そのエンゲージリングも浮竹の遺品の中にいれていたのだ。

道理で、探しても見つからないはずだ。

エンゲージリングを手に取り、外に出て太陽に透かせてみせた。

裏側に、UKITAKEと名前が彫られていた。

小さな翡翠の飾られたエンゲージリングだった。

自分の分の、KYORAKUと名が彫られたエンゲージリングは今も指に光っている。

僕、君のエンゲージリングを小指にはめた。

「おかえり、浮竹・・・・」

エンゲージリングにキスをした。

ああ。

今日から、またしばらくの間不眠で悩まされそうだ。

4番隊にいって、眠り薬をもらってこないと。

君が大切にしたこの世界を、僕は一人で生きる。

見えない君の影を纏いながら。

浮竹。

僕は、君を失ったけど、それでも幸せだよ。

この世界には、笑顔が溢れている。

君が守りたかったものが、守られて息づいている。


「浮竹・・・・・・・・」

その日の夜、眠り薬を飲んで寝たのに、夢を見た。

浮竹が出てきた。

院生姿で、桜の木の下で僕が告白すると真っ赤になって殴りかかってきた。

ああ、懐かしいな。

もっと見ていた・・・・・。

ちゅんちゅんと、雀の鳴き声がして目が覚めた。

「ああ、夢か・・・・おはよう、浮竹」

浮竹のエンゲージリングにキスをした。

また、総隊長としての忙しい毎日がやってくる。

せめて、朝だけはゆっくりしたい。

「また、君の夢を見たいな・・・・・」

そんなことを思いながら、一番隊の執務室にやってくる。仕事の量は多い。

君を忘れることなく、生きていく。

僕が引退するその日まで。

そして、いつか迎えにきてね。

ずっと、ずっと待ってるから------------------。


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卯ノ花と浮竹と京楽2

「卯ノ花隊長、これはないんじゃないか」

「何を言うのです。高熱で倒れて入院したというのに、熱が下がればすぐ甘味屋にいくような患者を、自由にさせるほど甘くはありません」

浮竹は、ベッドの上で簀巻きにされていた。

「これだと、食事もできないのだが」

「その時だけ解いてあげましょう」

「卯ノ花隊長、俺が悪かったーーーーー」

「すでに、一度きつく言いきかせたのに、それを守らない人に人権はありません」

散々ないわれようだった。

その後、夕餉の7時まで放置された。

「卯ノ花隊長、厠にいきたいんだが」

「仕方ありませんね」

簀巻きを解かれた。

ここぞとばかりに逃げだそうとした浮竹の背後にまわり、その腕を捻じ曲げた。

「痛い痛い、いたたた、腕がもげる!」

「あら。腕が折れたら、ちゃんと治療してあげますよ」

にこにこにこ。

微笑む菩薩は、けれど修羅だ。

「夕餉を置いておきますので、食べてくださいね。くれぐれも逃げようとしないように。今度逃げ出したら・・・・細切れにして料理の中にいれますからね」

にーっこり。

そう言われて、浮竹は大人しくなった。

肺の病の入院ではないので、卯ノ花も本当にきつくは怒らない。

肺の発作は生死に関わるので、療養しろと言われたらちゃんとしていた。

ただ熱がある場合は、熱が下がれば病室だろうと抜け出していた。今までばれていなかったが、運悪く瞬歩で病室に戻った時、卯ノ花と出くわしてしまった。

「ああ・・・・俺の人生終わった」

鬼の角をはやした卯ノ花に、1時間ほどこってりとしぼられて、何度も謝ったのに反省していないと布団で簀巻きにされてしまった。

夕飯を食べて湯浴みをして、あとは寝るだけとなったのだが、また浮竹は簀巻きにされた。

仕方ないので、簀巻きのまま寝た。

「ふあ~~」

簀巻きで寝たのは初めてだったが、寝れないわけじゃなかった。

起きた浮竹の簀巻きをとってやり、体温計で熱を測る卯ノ花。

「おめでとうございます。今日も熱がないようなので、退院ですね」

「本当か、卯ノ花隊長!」

顔を輝かせる浮竹の耳元に、囁く。

「今度、肺の病であろうと、癒えて念のための入院になった時は簀巻きですからね」

ひーーーーー。

まだ怒ってるーーーーー。

浮竹は、退院のために自分の私物をまとめた。

卯ノ花烈。下の烈という名の通りの性格だった。

「浮竹、迎えにきたよ。今日退院でしょ」

「ああ、京楽・・・・俺、しばらく入院したくない・・・」

げっそりとした浮竹に、さては病室を抜け出したのが卯ノ花にばれたのだなと、すぐに分かった。

「卯ノ花隊長のいうことをちゃんと聞かないから」

「でも、一日中簀巻きだぞ!飯とか風呂とかの時は解いてくれたが、寝る時まで簀巻きだった」

「どうせ、病室抜け出して甘味屋にでもいったんでしょ?」

「うぐ・・・・・・」

「しかも、きっと僕のツケってことで飲み食いしたんだよね」

「ぐああああああ」

浮竹は、頭をかきむしった。

「4番隊の飯は不味いんだ!病院食ということで質素すぎるし味がしない!甘味屋に行きたくなる!」

「まぁ、僕も一度だけ虚退治の遠征で怪我をして入院したことあるけど、確かに食事は不味いね」

「あら・・・そんなに不味いというなら、あなたが肉になってみますか?」

ひいいいいいい。

でたあああああああ。

卯ノ花は、浮竹の病室でにこにこ微笑んでいた。

「患者には、胃に優しいものを食べさせます。自然と素味になるし、質素になるのは仕方ありません。でも、食事が出るだけましだと思ってくださいね?」

緊急時の入院や、入院費用を払えないものからはとりたてないのだ。

そのせいで、食事が豪華になることは余計にない。

「浮竹隊長も、仕送りなどで入院費が払えないものとして、無料で入院しているのですよ?ただなのに、食事に文句をつけないでください」

「う、すまない・・・・・」

「そういえば、京楽隊長は今日も元気そうですね。そうですが、そんなに献血をしたいのですか・・・・」

「僕、何も言ってないし何もしてないよ!?」

「あなたの血は新鮮なのです。この前たっぷりとった後も元気でしたし・・・さぁ、献血に参りましょう」

「浮竹た~す~け~て~」

連れていかれる京楽に向かって、浮竹は手を合わせて念仏を唱えだした。

「京楽、骨は拾ってやるからな!」

「浮竹、お~ぼ~て~な~よ~」

京楽はたっぷり献血されて、少し干からび帰ってきた。

献血をしたお礼にともらった野菜ジュースをちゅるるるると飲みほした。

「はぁ・・・・どうも、卯ノ花隊長は僕を血液の塊だと思ってるみたいだね。もうしばらく病院にはいたくない・・・・・帰ろう、浮竹」

浮竹は私物を手に、京楽と手を繋いで歩き出す。

浮竹が助けてくれなかったことは、根にもっていなかった。誰であろうと、卯ノ花を言い負かすことなどできない。

雨乾堂について、お互いを抱き締めあって、キスをした。

ここ1週間触れあっていなかった。

何度もキスを繰り返した。

病み上がりなので、京楽も浮竹もそれ以上はしなかった。

もしも病院で盛ったりした場面を見られたら、卯ノ花に闇に葬られる気がした。卯ノ花烈。

本当の名を卯ノ花八千流。

尸魂界きっての隊罪人であり、初代剣八だということを、二人はまだ知らないのであった。









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椿2

「好きです、愛してます隊長!」

しっぽをぶんぶん振る犬のようだと、白哉は思った。

恋次に愛していると告げた日から、何かが急に変わるわけでもなく、平穏な毎日だった。

ただ、恋次が愛しているだの、好きだなどと言ってくる回数が極端に増えた。

いちいち言葉を返すわけにもいかないので、聞き流していると、執務室で恋次が文机に向かっていた白哉をそっと抱き締めた。

「隊長、隊長はどうなんですか。俺の事どう思っていますか」

「しつこい駄犬だと思っている」

「ひでぇ!」

クスリと、小さな笑みを白哉は零した。

「冗談だ」

「ほんとに?半分本気だったでしょう」

「ああ」

そう言えば、恋次は白哉の肩を揉んできた。

「なんだ」

「いえ、また凝ってるなぁと思って」

気持ちよかったので、そのまま肩揉みを続けさせた。

「ああ、もう少し左を・・・・・」

恋次のことを、まるでマッサージ機扱いだったが、恋次にはそれでもよかった。

愛しい白哉に触れれるなら。

15分ほど肩を揉んでもらって、白哉も満足した。

「愛してます隊長」

「-----------私も愛している、恋次」

また聞くことができたその言葉に、恋次は眩しいばかりの笑みを零す。

「お前は、表情がすぐ顔にでるのだな」

「そういう隊長が、顔に出さなすぎなだけです。まぁ、昔の鉄面皮に比べれば、大分感情らしきものが浮かぶようになりましたが」

昔は、薄い微笑みを浮かべることさえなかった。

その頃はまだ白哉のことをただの上官として慕っていた。

もう、10年以上前のことだ。

もう、この関係になって10年ばかりが経つのかと、ふと思った。

いつか、あんたから全てを奪って、俺のものにしてみせる。そう豪語していたが、白哉は緋真のことだけを愛して、恋次のことを愛しているとは言ってくれなかった。

それが、この間誕生日プレゼントを用意できず、椿をあげた頃から変わっていった。あの椿を氷室で保存しているという白哉の言葉に、正気かと思った。

ただの椿だ。

でも、白哉にとっては大切な椿だったのだ。

愛した者からもらった、何気にないものではあるが、椿は6番隊の隊花でもある。

花言葉は、高潔な理性。

いつもの白哉にぴったりの花言葉だった。

「隊長・・・椿の花は好きですか」

「ああ、好きだ。冬の寒さをものともせず、凛と咲き誇る様は美しい」

まだ、椿は咲いている。

次の日、恋次は椿の花を散らした湯を用意していた。

「これは?」

「足のマッサージに使うんです」

「このようなことに椿を散らすなど・・・・」

「そこらへんにいくらでも咲いてますよ」

ちゃぷんと湯の中に、裸足になった白哉の足がひたされる。

綺麗に整った爪を見ながら、足の裏をほぐしていく」

「あ・・・・・」

「隊長?」

「なんでもない。続けよ」

ぐっぐっと、足のツボを刺激していくと、痛いのか気持ちいいのかどちか分からなくなってきた。

「もうよい」

「はい」

足をふいて、足袋をはいた。

「うつ伏せになって寝てください。腰をマッサージします」

うつ伏せになり、いつかの時のようにマッサージしてもらった。ここ最近睡眠は十分にとっているので、あの時のように眠くなりはしなかった。

「最後にこれを」

椿を、髪に飾られた。

「私は、おなごではない」

「それでも、似合っています」

「恋次・・・愛している」

恋次に、口づけた。

白哉からキスをしてくるのは本当に珍しいので、恋次は真っ赤になった。

「隊長、今夜いいですか」

「ああ」

「うっしゃ!」

逢瀬を重ねることを許可した。

爛れた関係だと思った。愛しているといえば、それで終わりになるのだと思った。

でも、違うのだ。

愛しているからこそ、大切にし大切にされるのだ。

気づくのが、少し遅かったが、別れることにならなくてよかったと白哉は思うのだった。

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最後の時まで

俺を許してくれるか、京楽-------------------

ミミハギ様を解き放ち、神掛を行った浮竹には、もうあまり時間は残されていなかった。

この命が費えるのももうすぐだ。

こうなる前に、書をしたためた。

京楽宛に。

中身は、ただ許してくれと。

ただ、愛していると。

そんなことをたくさん書いた。

書きなぐったに近い文だから、誤字脱字もあるかもしれないし、矛盾も大きくあるだろう。

愛しているのに、置いていく。

そのことに、浮竹はいつしか罪悪感を感じないようになっていた。

護廷13隊の死神は、尸魂界のために死なば本望。

それは京楽も一緒だ。

「ああ・・・・先生、卯ノ花隊長、今そちら側にいきます・・・・・」


霊王は亡くなったままだが、世界の崩壊は止まった。

「浮竹!」

浮竹がミミハギ様を手放したのだと知って、京楽は辛い顔をした。



たくさんの犠牲の果てに、ユーハバッハは打ち取られた。

ぱちぱちぱち。

浮竹の遺体を収めた棺は、白い百合の花で満たされていた。

安らかな顔をしていた。

呼吸を確かめなければ、今も生きているようだった。

「君は・・・ひどいね。僕を残していくなんて」

でも、それは浮竹が望んだこと。

護廷13隊の死神は、尸魂界のために死なば本望。

それは京楽も同じだった。

棺に蓋がされて、火葬されていく。

山じいや卯ノ花隊長が死んで、その棺を焼いた時と同じ青天で、その嫌味なまでに雲一つない空を見上げた。

パチパチパチ。

煙が、天高く昇っていく。

棺が完全に灰になるまで、ずっと見守っていた。

残された遺骨を、骨壺におさめる。

つっと、一筋だけ涙が零れ落ちた。

「愛してるよ、浮竹・・・・」

墓は、取り壊した雨乾堂の跡に建ててやった。骨と一緒に、双魚理も埋めた。

それから、月に一度は絶対に墓参りにきた。

命日の時は、遅くまで墓の前で過ごした。

そんな時を千年ばかり繰り返しただろうか。


京楽も老い、命の終わりを迎えようとしていた。

この千年、平和だった。

確かに反乱もあったし、尸魂界を揺るがす事件が何度も起きたが、藍染やユーハバッハのような強大な悪は現れなかった。

もうぼろぼろになった、浮竹からの手紙を手にとる。

「ふふ・・・もう、何が書いてあるのかも分からない」

でも、その文の言葉は心の中に染みている。

いつか迎えにくるから、それまで元気でいろよ。そう、最後に書かれていたのを思いだす。

「僕もこれまでかなぁ・・・・・」

ふっと、眠りが深くなった。

「京楽・・・・・」

「浮竹?ああ、これは夢か・・・・」

何千回も、浮竹の夢を見てきたけれど、これほど鮮明なのは始めてだった。

「-----------迎えにきた」

「ああ・・・・僕の命も、やっと終わりか」

浮竹は若い頃の姿のままだった。

年老いていた京楽の体が、若返っていく。

気づくと、二人とも院生時代の恰好になっていた。

「一緒にいこう。今度こそ、永遠に一緒だ」

「浮竹・・・君と一緒にいけば、君の傍に永遠に居れるかい?」

「ああ。一緒にいってくれるか、京楽」

「喜んで」

二人はもつれあいながら、死を享受した。

京楽春水は、総隊長として千年を生きた末に、老衰で身罷った。

とても穏やかな顔をしていた。

「京楽総隊長・・・・・」

もう決して若いといえぬルキアが、その死を看取った。

棺の中は遺言により百合の花で満たされて、墓は雨乾堂の浮竹の墓の隣に建てられた。

「そうですか。総隊長は、やっと浮竹隊長の元へ、いけたのですね」

ルキアは泣いた。

もうずっと昔に亡くなった浮竹隊長と、京楽総隊長のことを思って。

もう、浮竹隊長という元13番隊隊長がいたということさえ、皆知らない。

二人は、永遠を誓い合って、落ちていく。

そこは色のない世界ではなく、始まりの場所。

霊子の渦となり、新しい命にいきつくのだ。

浮竹は、ずっと待っていた。京楽を。

新しく何かになることを拒絶していた。

そして京楽と共に霊子になり、何かを形作った。

それは、二羽の小さな白い小鳥。

寄り添いあいながら、羽ばたいていく。

(何があっても、もう永遠に一緒だよ)

(ああ、そうだな)

羽ばたいていく。

雲一つない青空を。

まるで、棺を焼いた日に似ていた。







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