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血と聖水と名において3

浮竹と京楽は、ウィキティの町の外れにある、大きな洋館に住んでいた。

必要最低限の部屋しか使わず、月に一度メイドさんを雇って大掃除をしてもらっていた。

「にゃんにゃん」

フェンリルが、猫の声を出してチュールをねだる。

浮竹は仕方ないので、チュールをあげた。

「もっとくれにゃん」

フェンリルの知能は高い。人の言葉を解すなど、造作もないことであった。

浮竹が、初めに契約した使役魔であった。

同じヴァンパイアハンターは、使役魔といってもせいぜい烏、鷹とかフクロウ、ネズミといった鳥か小型動物しか使役魔にできない。

精霊を使役できるのは、浮竹だけだった。

冒険者としてのほうが向いているのだろうが、ヴァンパイアハンターを続けていた。京楽の存在もあるし、ヴァンパイアが人に害をなすのは嫌いだった。

偉大なるヴァンパイアたちの父でもあるヴァンパイアマスターと、当時聖女であった女性との間に生まれたのが浮竹であった。

一方、京楽は孤児で、生きていくためにヴァンパイアハンターの道を選び、神父はついでだからなった。こんな色欲魔人の神父がいてたまるか、が浮竹の口癖でもあった。

「はぁ。腰が痛い。京楽のやつ、手加減せず抱きやがって」

痛む腰をおさえつつ、フェンリルを中庭に出して遊ばせる。

ボールを放り投げると、しっぽをぶんぶんふってとってくる。いつもは子犬サイズだが、本当は
3メートルがあるであろう体躯をもつ。

たまに移動手段としても使われた。

「京楽はどうしたにゃ?」

「買い物に行かせた。俺はしっぽりのせいであまり動けないからな」

「しっぽりかにゃん。京楽は年中発情期何だにゃん」

「ああ、その通りだな」

「ただいまー」

「ちっ、戻ってきた]

[ちょ、酷くない?」

「お前がしっぽりしすぎるから、今日は仕事は休みだ」

京楽は、悪びれもせずに、浮竹に口づける。

「回復魔法かけたでしょ?」

「それでも痛いんだ!」

「ありゃ」

京楽は昨日のことを重い出して、ふにゃふにゃした顔になっていた。

「次の仕事の目星をつけたい。ハンターギルドに行って、何か退治依頼を引き受けてきてくれ。今回は、俺のA級にランクが上がるのがかかっているんだ。倒せそうだけど、強すぎないやつを見つけてこい」

「わがままだねぇ」

「俺だって、自分でギルドに行って選びたい。だが、誰かのせいで腰が痛いし、治癒魔法は効かないし、最悪だ」

「まぁまぁ。今、お茶入れるから。お茶したら、ギルドでめぼしい退治依頼引き受けてくるよ」

京楽の入れるお茶と、作る菓子は絶品だった。

今日の茶菓子はアップルパイだった。

「早く、行って来い」

「でも、この間の浮竹にそっくりなドラゴンサモナーの存在も気になるねぇ」

「どうでもいい。似ているからたまに間違われるのが嫌だ」

浮竹は、ペロリとアップルパイを京楽の分まで食べてしまった。

「後のことは任せたぞ」

「うん」

浮竹は、具合も悪かったので寝室のベッドで横になって眠る。

「マスター、ねちゃったかにゃん?」

「ああ、フェンリルか。もう、おかわりのチュールはないぞ。ああ、京楽に買いに行かせたものの中にあったかな」

「ちゅーる食べるにゃん!もってくるから、あけてほしいにゃん」

フェンリルは、京楽が買い物してきた荷物の中から器用にチュールを出すと、浮竹の元に走る。

「ちゅーる、あけてにゃん」

「すまん、ちょっと血をくれ」

「仕方ないにゃんね?マスターは精霊の血を摂取しないと、精霊を扱えないからにゃん」

ごく少量だけ、フェンリルから血を分けてもらい、浮竹はフェンリルに、いつもは1日1個だけの約束のチュールをお礼に2個あげた。


「おや、モンスターが暴れているみたいだね。まぁ、放置しても冒険者もいっぱいいる町だし、悪目立ちするのは避けたいしね」

京楽は、魔法で翼を出して空を飛んでギルドまでやってくる。

「浮竹はどうした?A級昇格のテストになるんだぞ」

ギルドマスターが、京楽を見る。

「ちょっといろいろあってね。ボクが代役で、仕留めるヴァンパイアを選びにきたの」

「夜叉の京楽が選ぶのか。この前はヴァンピール退治で、ハンターとして復活したというのは本当だったんだな」

「まぁ、ぼちぼちね。今は浮竹のサポート役さ」

ギルドマスターは、うんうんと首を縦に振る。

「浮竹は、精霊を使役できる貴重なハンターだからな。慎重に選べよ」

「この、鮮血のカスタトロフというのにするよ」

「鮮血のか。もうハンターを4人も殺している」

「ボクもサポートするから大丈夫。じゃあ、これ退治するってことで、クエスト引き受けるね」

「ああ、ピンチになったら逃げろよ・・・・おっと、夜叉の京楽も一緒にいくんだな。それなら安心か」

「ボクは、あくまでもサポート役だからね。倒すのは、浮竹さ」

京楽は、鮮血のカスタトロフを選んで帰ってきた。

「鮮血か。まあ、倒せなくもないだろう」

数日が経ち、浮竹は京楽と巨大化したフェンリルの背に乗って、鮮血のカスタトロフのいる古城にやってきた。

「くくくく、今宵も愚かなヴァンパイアハンターが二人も。血をすすって、殺してやろう」

浮竹は、マントの下から銀の短剣を引き抜くと、カスタトロフに投げる。

「くくく、私に銀はそうそう効かない」

「く、特異体質か。ならば・・・・出でよ、ジルフェ!」

「あーなんだー。かったりぃ」

「いいから、あいつを攻撃しろ」

「後で、フルーツジュース10人前な」

ジルフェは風の上位精霊だ。

「ウィドカッター」

「ぐおおおおお」

ジルフェに前足を風の魔法で切り飛ばされて、鮮血のカスタトロフは地面に膝をつく。

「この俺が、ヴァンパイアハンターごときに!」

「その調子だよ、浮竹」

京楽は、離れたところで見守っていた。

「ダークフェニックス!あのヴァンパイアを、闇の炎で燃やし尽くせ!」

ただのフェニックスだと、周りの建物にも被害が及ぶので、ダークフェニックスを召喚して使役する。

「ぎいやあああああああ」

鮮血のカスタトロフは、悲鳴を残して灰となった。

その灰をカプセルに入れて、帰り路もフェンリルにのって、ウィキティの町にあるヴァンパイアハンターギルドに行き、灰の入ったカプセルを提出する。

「京楽の手助けは?」

「受けていない」

「うむ、嘘は言っていないようだな。水銀の浮竹、お前をA級ヴァンパイアハンターとする!」

「やった!!」

「よかったね、浮竹。お祝いに、帰ったらしっぽりしようね?」

「アホか。誰がするか。A級になったら、報酬金もあがるし、Aランクのクエストの退治依頼を引き受けれる。ばりばりやっつけるぞ」

「くすん。しっぽりしたいよう」

そんな京楽を足で蹴って、浮竹は京楽を放置して自宅に帰る。

「お前、尻にしかれまくりだな。何で、浮竹の花嫁になったんだ?」

ギルドマスターに声をかけられる。

「だって、10年前になるけど、一目ぼれだったんだよ。ボクがヴァンパイアだったら、浮竹を花嫁にしてたけど、ボクは人間だったから。浮竹に頼んで、花嫁にしてもらって契りあい、契約を交わしたのさ」

「まぁ、最近ヴァンパイアどもの活動が活発になってきているからな。S級の京楽、お前が復帰してくれたことは、大きなプラスになる」

「まぁ、半分隠居だけどね」

「そう言わず、どんどん倒してくれ。まだ、あの洋館の金、払いきれていないんだろう?」

浮竹と京楽の住む大きな洋館は、元々浮竹の父のもので、いなくなって競売にかけられて、浮竹が競り落としたのだ。

その頃はすでに母は他界していたし、父もいなくなったが、成人していたので屋敷を競り落とすことができた。

思い出のいっぱいつまった洋館を手放すことはしたくなかった。

値段が値段だけに、今でもちまちまと返済をしていた。

「A級になったし、稼ぎまくって、負債を取り消しにするぞー」

「そうだのだにゃー」

「あれ、京楽は?」

「置いて毛ぼりくらって、ギルドで隅っこでいじけいたにゃ」

「まぁ、腹がすいたらそのうち帰ってくるだろう。フェンリル、今後もよろしくな」

「任せてなのにゃ。マスターの初めての使役精霊として、ビシバシ働くから、チュールは1日2本にしてほしいにゃ「

「仕方ないやつだなぁ」

浮竹は、フェンリルをもふりまくるのであった。

ちなみに、京楽は帰ってきていたが、存在に気付いてもらえなかったそうな。



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血と聖水と名において2

東のバラムまで、馬車で3日はかかる。

そこで、氷の精霊フェンリルを呼び出し、元の巨大な大きさになってもらい、その背に浮竹と京楽は乗って、バラムまで向かった。

半日もしないうちにつくと、バラムの町はゴーストタウンと化していた。

人が一人もいないのだ。」

いるのはグールに下級ヴァンパイアのみ。

それらの群れは、浮竹と京楽を見つけると、襲いかかってくる。

「いちいち相手にしていたらきりがない。フェニックス、イフリート、出でよ!」

「きゅあああああ」

「何ぞ用だ」

「この町のグールと下級ヴァンパイアたちを焼き尽くしてくれ」

「きゅあああ」

「承知」

フェニックスとイフリートは、灼熱の炎でグールや下級ヴァンパイアを焼き尽くし、後に残るのは灰ばかりであった。

「そこにいるんだろう、出てこい!」

「お兄ちゃん、強いんだね」

「君は?」

京楽が、住民の生き残りかと保護しようと近づくと、浮竹に止められた。

「ヴァンピールだ。三人のハンターの命を奪っている」

「あは、ヴァンパイアハンターなんだ。道理で銀のにおいがするわけね。このミネアに倒せないハンターなんていないんだから!」

ミネアと名乗ったヴァンピールは、まだ年端も行かぬ10歳くらいの女の子だった。

「両親はどうした!」

「あははは、ミネアの邪魔するから、殺してあげたの。お父様はお母さまを最後まで庇っていたけど、ミネアの攻撃に耐えきれずに灰になちゃった♪」

「このヴァンビール、感情が欠落しているな。処分しなくちゃ危険だ」

「あはははは、ミネアを処分?笑わせないで。たかがB級のハンターごときが」

浮竹はB級を意味するペンダントをしていた。

だが、浮竹もペンダントをしている。

「な、そっちはS級ですって!たかが人間ごときが!」

「まだ、休業していたいんだけどねぇ。仕方ない、一緒に駆除するよ、浮竹!」

「ああ!」

ミネアは、自分の血から戦闘人形を作りだしてけしかけてくる。

「こんなの、何の役にもたたないよ」

京楽が剣をとりだすと、一掃してしまった。

「血を飲んで、ヴァンパイアにしてあげる。そっちの白い髪のお兄ちゃん綺麗ね。血を吸って、ずっとミネアに尽くす奴隷ヴァンパイアになって?」

なぜか、浮竹を見るヴァンパイアは皆、浮竹の血を欲しがる。それはヴァンピールでも同じことだった。

浮竹は銀の短剣をミネアに投げていたが、素早い動きにあたらず、銀の弾丸の入った銃でもとらえることができなかった。

「いただきまーす」

ミネアは、浮竹の隙をついて、肩に噛みつき血をすする。

「うぎゃああああああ!!!喉が、喉が焼けるうううう」

「ふふ、残念だったな。俺は水銀の浮竹。俺の血には、猛毒の水銀が含まれている」

「おのれえええ」

ミネアが可憐な少女の姿から、醜い肉の塊になる。

「あはははは、この姿は誰にも消せない。銀もきかないし、物理攻撃も魔法攻撃も効かないんだから!」

「いっそ、その姿のほうが殺しやすくて助かるよ。本気でいっていい、浮竹?」

「ああ。夜叉の京楽の力、見せてやれ」

夜叉。それが、京楽の二つ名だった。

京楽は、軽くミネアに触れる。そこから、大量の血液が噴き出す。

「な、ミネアに今何をした!」

「死ねと思って触れただけだよ」

「そんなことで、ミネアは死なないわよ!」

「浮竹、銀の銃を」

「銃くらい、自分のをもっておけ」

浮竹は、京楽に銃を渡すと、下がった。

「血と聖水の名において、アーメン」

そう言って、京楽は銀の弾丸をミネアに向かって打つ。

それは大きな銀の刃となって、ミネアを引き裂いた。

「きゃあああああ!!!」

ミネアは、元の少女の姿に戻っていたが、右手と左足がなかった。

「嘘!ミネアのあの体を傷つけれるハンターがいるなんて、嘘!」

「いや、一応ボクはこれでもS級ヴァンパイアハンターだからね。その気になれば、ヴァンパイアマスターだって殺せるよ」

「ひいいい、くるな!ミネアは、このミネアだけの楽園の町で生きるのよ!」

「あいにくだが、住民のグールや下級ヴァンパイアたちは燃やし尽くした」

「あんなの、ミネアの血があればいくらでも作れるわ」

「ますます、君を殺さないといけなくなったね」

京楽は、銀の剣を抜いた。

S級ハンターにだけ所持を許される、聖剣であった。

「せめて、楽にいかせてあげよう」

「ミネアはこんなところで死なないわ!この町と同じように、隣の都市のリハイムも手に入れるのよ!」

叫ぶミネアを、京楽は顔色一つ変えずに、その心臓を貫く。

「あはははは、ミネアの心臓は・・・・・」

「これだろう?」

浮竹の手には、どくどくと脈打つ心臓があった。

「ぎゃああ、それに触るな!かくしておいたのに、なぜ見つけた!」

「そりゃ、あんだけ結界はってれば、ここに何かありますっていっているようなものだしな。そら、京楽、トドメを」

「いやああああああ!ごめんなさい、もう何もしませんから、どうか命だけは!」

「自分勝手がすぎるよ。おとなしく、死んで?」

京楽は、聖剣でミネアの心臓を貫いた。

「ぎゃあああああああああ」

叫び声を残して、ミネアは灰となる。その灰を、浮竹はカプセルに入れる。

「さすがだな、京楽」

「しっぽり!」

「前言撤回。お前の頭には、しっぽりすることしかないのか!」

「うん」

「だめだこりゃ」

ハンターギルドに行き、灰を提出して金貨千枚を手に入れた。

「けっこうば儲けになったな」

「早く!早く家に帰ってしっぽりしよう!」

「はぁ・・・・・まあ、約束だから仕方ない。しっぽりするか」

「やっほう!二週間ぶりに浮竹を抱ける!」

「まぁ、二週間禁欲言いつけてたからな。よく守れたな」

京楽は、浮竹を抱きしめる。

「君に嫌われたくないからね。ボクの花婿」

「お前が花嫁なんだよなぁ。変だが」

「変でもなんでもいいから、家に帰ってしっぽりしようね」

「ああ、分かっている」

京楽は性欲が強いが二週間も禁欲を言いつけられた反動か、浮竹が意識を失うまで抱くのであった。



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血と聖水と名において1

むせ返るような血の匂い。錆びた鉄の匂いが空気に四散している。

浮竹は、無残にもヴァンパイアに血を吸われた死体を検分していた。

「まだ生暖かい」

死体は、まだ先ほどまで生きていたのだろう。

「血と聖水の名において・・・アーメン」

浮竹にに信じる神はない。何せ、彼はヴァンパイアと人の子の間に生まれたヴァンピールであり、ヴァンパイア退治をするヴァンパイアハンターであった。

浮竹は、もっていた銃で、死体の頭部を撃ち抜いた。

そうしないと、グールとなって、生ける屍となるか、ヴァンパイアの下等な、本能で血を求めるだけのヴァンパイアとして蘇ってしまう可能性もあるからだ。

死者がヴァンパイア化すると、知能はゼロだが、並外れた身体能力を有する場合が多い。本当なら、心臓に杭をさして聖水をかけ、墓地に埋葬しなければいけなかったが、そんなことをしている時間はない。

銃の銀の弾丸が、聖水のかわりになってくれる。頭部を銀の弾丸でうちぬけば、ヴァンパイアは死ぬ。

「美しい方・・・・このような荒れ果てた町へようこそ」

背後から声がした。

浮竹の体は、とんでいた。

地面から体が離れ、ほんの一瞬浮遊感を味わったかと思うと、家のレンガに叩きつけられていた。

「がはっ]

「匂いがする・・・・銀の匂いが。ヴァンパイアハンターか」

現れたのは、ごく普通のヴァンパイアではなく、ヴァンパイアロードだった。

ぎりっと、長く細い手が伸びて、浮竹の首を絞めた。

「くっ」

目の前にいたのは、美しい容姿をした20代後半のヴァンパイアロードの男だった。黒一色の服をまとい、血の色のマントをしていた。一般的なヴァンパイアの服装だ。

「それにしても美しいな・・・・」

浮竹は容姿を褒められることが多かった。長い白い髪に翡翠の瞳、整った顔、白い肌。ヴァンピールは美しい者がおおい。

ヴァンパイアロードの手が首から外されると、浮竹は呼吸を求めて息をつくと、いっきに駆け出した。

「血と聖水の名において・・・アーメン!」

長い真紅のコートの下から銀の短剣を取り出し、ヴァンパイアロードに向かって投げる。ヴァンパイアロードは余裕でそれをかわし、一度無数のこうもりの姿になる。それにむかって、また銀の短剣を投げる。

「100人目の生贄になってもらおうか」

そのヴァンパイアロードはが跳躍し、浮竹と距離をとる。

ヴァンパイアロードは、浮竹の影に潜んだ。

「な!」

いきなり背後から現れて、浮竹が体勢を立て直す前に、その首筋に、ヴァンパイアロードが牙をたてる。

「やめろ!」

抗うが、凄まじい力にはなすすべもない。

浮竹は、血を吸われ、そしてゆっくりと微笑んだ。

「俺の血には水銀がまじっている。猛毒だぞ」

「なにいいい」

「血と聖水の名において・・・・いでよ、フェンリル!」

「うぐああああ、喉が、喉がやけるうう!」

もがくヴァンパイアロードに向かって、銀の短剣を投げて描いた陣で、使役魔を呼び出した。フェンリルと名づけた狼は、氷を司る精霊だ。

凍てつく氷のブレスを受けて、ヴァンパイアロードは凍結した。

氷の彫像と化したヴァンパイアロードに、浮竹は銀の弾丸を撃ち込んだ。

ガラガラと、氷の彫像が崩れ、そして灰になっていく。

「血と聖水の名において」

灰を小さなカプセルの中に入れ、そのヴァンパイアのを個体を倒した証とする。灰と引き換えに、ヴァンパイアハンターは報酬金をもらっていた。

「あ、すまん。精霊界に戻ってくれ」

呼び出したフェンリルを元の世界に戻そうするが。フェンリルは戻ってくれない。

フェンリルは尻尾をふって、浮竹にじゃれてくる。

「すまない。戻ってくれないだろうか」

「わん」

「狼なので、わんと咆えないでくれないか」

「にゃあ」

「いや、もっと違うから・・・」

浮竹は、銃をホルダーに直し、カプセルを直すと、ため息をついた。

いつもこんなかんじで、いつまでたっても一流のヴァンパイアハンターになれない。使役魔の数は他のヴァンパイアハンターと比べてもひけをとらないが、使役魔は服従絶対であるのに、浮竹の使役魔は時々いうことを聞いてくれない。

他のヴァンパイアハンターにバカにされることもしばしばだ。もう十年もヴァンパイアハンターを続けているのに、未だに字(あざな)をもらえない。

「はぁ・・・・京楽の元に帰るか」

フェンリルを抱き上げて、浮竹は住処の洋館へと帰還した。

「お帰り。無事、退治できたようだね」

「普通、神父であるお前の仕事だろうが」

「ポクも一応ヴァンパイアハンターだけど、あんまり向いてないから」

「にゃあ」

「フェンリル、外で遊んでおいで」

「にゃあ」

浮竹の使役魔であるフェンリルは、中庭で遊びだした。

「浮竹、血を吸われたね?他にけがはない?」

京楽が、癒しの力で浮竹のヴァンパイアロードに噛まれた傷を癒す。

「他にけがはない」

「そう。ならよかった。昼食の準備はできてるよ」

浮竹と暮らす神父の名は、京楽春水。

神父であり、ヴァンパイアハンターであるが、滅ぼすべきヴァンピールである浮竹と一緒に暮らして10年になる。

浮竹の、いわばヴァンパイアの花嫁として浮竹と契約しており、ただの人間ではなった。不老であった。

浮竹はヴァンピールであるが、父親がヴァンパイアマスター、全てのヴァンパイアの頂点に立つ者で、力はあった。

ただ、今はまだ能力は眠りについていて、本来の力をあまり発揮できずにいた。

「京楽、ヴァンパイアハンターギルドに灰を納品に行くから、ついてきてくれ。お前がいると、俺に敵意を向けるヴァンパイアハンターが少ない」

ヴァンピールも、人の血を吸って生きる。

浮竹の場合、人工血液か、もしくは京楽の血であった。

「へぇ、今回はヴァンパイアロードだったんだ。強くなったね、浮竹」

「まだまだだ。それより、京楽、お前はいつになったらヴァンパイアハンターの稼業を再開するんだ?」

「ん-。気が向いたらかなぁ」

京楽は、浮竹と契っている。

その気になれば、京楽は浮竹を殺せる力をもつ。いや、ヴァンパイアマスターでさえ滅ぼせるかもしれない。

出会いは、父親であるヴァンパイアマスターを退治しにきた京楽が、ヴァンパイアマスターの一粒種であった浮竹に一目ぼれをして、浮竹の父は京楽を殺せたが、面白いといって、浮竹と一緒に自由にさせた。

結果、浮竹は京楽と契って契約を交わし、京楽は不老になった。

でも、ヴァンパイアハンターである。

ヴァンピールである浮竹は、自分たちを守るため、わざとヴァンパイアハンターになって、同胞を殺していた。

昼食を食べ終えて、浮竹と京楽はヴァンパイアハンターギルドに出かける。

「おい、見ろよ、ヴァンピールの浮竹だぞ」

「あっちは神父でありながら、契約者になった京楽だ」

ひそひそ噂話をされるが、気にしない。

「マスター、手配書のあったヴァンパイアロードの灰だ」

「どれどれ・・・・おお、本物だな。ヴァンパイアロードを倒せるなんて、成長したじゃないか浮竹」

「フェンリルのおかげだ」

「にゃああ」

「そのフェンリル、本当に氷の魔狼か?どう見てもにゃあと鳴く子犬に見えるが」

「フェンリル、ブレスを」

「にゃあ」

ハンターギルドのマスターの髪を氷漬けにして、フェンリルは精霊界に戻っていった。

「報酬の、金貨200枚だ。京楽、あんたは浮竹にばかりヴァンパイア退治させて、自分もヴァンパイアハンターなのに浮竹のひもになっているのか?」

「あはははは。まぁ、家事全般やってるから、浮竹の家政婦みたいなもんだよ」

「あんたほどの腕があるなら、ヴァンパイアの駆除も楽になるんだがな」

「マスター、あまり無理を言わないでくれ。京楽には、今その気はないし、ヴァンパイア退治をはじめると、父であるヴァンパイアマスターが出てきそうだから」

浮竹の言葉に、ギルドマスターは顔を青くする。

「ヴァンパイアマスターなんて出た日には、ヴァンパイアハンターなんてみんな殺される」

「父は、平和主義者だ。ハンターをさしむけない限り、害をなすことがない」

「浮竹、お前がヴァンパイアマスターの子でよかったよ。ヴァンパイアハンターとして同族を殺しているが、父親がマスターだから、このギルドまでは報復にこない。どのヴァンパイアも」

「ああ。報復にきたら、俺が退治する」

「ふふ、もう10年か。早いものだな。水銀の浮竹という、二つ名をやろう」

浮竹は嬉しそうに顔をあげる。

「二つ名か!俺も、一人前と認められるんだな?」

「ああ。ロードを倒すくらいだからな」

「よかったね、浮竹。帰ったら、しっぽりしようね?」

「ええい、京楽は一人でしっぽりしてろ!」

「そんなー」

「それがいやなら、そろそろヴァンパイアハンターとして活動しろ」

浮竹は、次のターゲットの情報をもらう。

「次は、東のバラムにいるヴァンピールを退治してほしい。ただのヴァンピールでなく、特異体質で、すでに3人のハンターがやられている」

「分かった。出でよ、フェニックス!」

「きゅああああ!!!」

「ちょ、ギルド内で使役魔を呼ばないでくれ!」

「大丈夫だ。小さくしている」

「そうか」

「浮竹は、使役魔の数は多いからねえ」

「うるさい。どうせ、まだB級のハンターだ。悪かったな」

「いや、攻めてはいないんだけど」

「フェニックス。東のバラムを偵察してきてくれ。ヴァンパイア化した人間がいたなら、炎で焼き殺してくれ」

「きゅああああ」

分かったと、フェニックスは東のバラムに飛んでいく。

「さて、たまには本当に働いてもらうぞ、京楽」

「えー。めんどくさいーーー」

「一緒にバラムに行くんだ」

「それ終わったら、しっぽりしていい?」

「ああ、いいから行くぞ」

浮竹と京楽は、ヴァンパイアハンターとして、再始動するのであった。


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桜のあやかしと共に98

藍染は、7つある命のうち、3つを失った。

魔神であることが終わったのだ。

「何故だ!何故、私は神のままでいられない!」

「それは、君が神にふさわしくないからだよ」

「ええい、うるさい!死ね!」

藍染は、憐れむような京楽に向けて、破壊の力を発動させる。

京楽は、それを桜鬼神の力で受け止める。

「何故、私だけ神になれないのだ!こんなにも神になりたいのに」

「動機が不純だからだろう。お前は神の力を利用してこの世界を自分のものにしようとしている」

桜の花神になった浮竹は、ふっと桜の花びらを吹いた。

それは炎となって藍染を包み込む。

「この程度の攻撃・・・・・」

藍染は、火をすぐに消し去った。

「やはり、しぶといな。魔神になりそこなっても神もどきであることには変わりない。京楽!」

「うん、分かってるよ!」

浮竹と京楽は、神の力を合体させる。

「われは桜の神。四季の神。桜の鬼の神。死するに値する者よ、滅びるがいい」

「うぎゃああああああ」

藍染は、4つの命のうち1つをまた失った。

「こ、こうなれば魔神ユーハバッハの核を取り込んでやる!」

藍染は、取り出した魔神ユーハバッハの核を飲み込んだ。

「くくくく、力があふれてくる」

「愚かな。相応の力もないのに、そんなものを取り込めば・・・・・・」

「ぐが、ぐぎゃああああああああ!!」

藍染は、血を全身から出しながら倒れる。

「愚かな者に死の慈悲を」

浮竹と京楽は、神として合体して一柱の神になっていた。元々、桜の花神も桜鬼神も1つの神であった。

「さぁ、残りの命はあと3つ。いつまで耐えれるかな?」

「ま、待て!わ、私と手を組もう!」

「そんなことするわけないと、分かっているだろに。我は桜の神。桜があれば、それでよいのだ」

異界にある、桜の大樹が輝いた。

「滅びよ、藍染」

「ぎゃああああああああ」

一気に残り3つの命を奪われて、藍染は塵となってこの世から消え失せた。

「ふう、終わったね」

「ああ、終わったな」

桜の神であった二人は、一人から二人に戻っていた。

「さて、これからどうするの?」

「藍染の手下を全て殺す」

「容赦ないねぇ」

「第二の藍染が出てこないとも限らないからな」

「そうだね。一掃したら、平和になるね」

それから、1か月かけて藍染の手下を全て処分した。

「結局、太陽の王の出番はなかったね」

「一護くんには、争いと無縁でいてほしいからな」

「うん、そうだね」

「俺は長く生きすぎた。少し・・・・・そうだな、1年くらい休眠しようと思う」

「じゃあ、ボクも付き合うよ」

「祓い屋の仕事はいいのか?」

浮竹が首を傾げる。

「恋次くんになすりつける」

「ふふ、わがままな神もあったものだな」


「じゃあ、眠ろうか」

「うん」

異界の桜の大樹は、いつものように咲き狂っていた。

「いつか、人とあやかしが仲良く生きられる時代がくるといいな」

「そうだね」

二人は、1年の休眠に入るのだった。

藍染はいなくなり、脅威は去った。

二人は、不要となった神の力を放棄するために休眠に入ったのだ。

それから1年後、休眠から目覚めると、白哉が迎えにいてくれた。恋次も一緒だった。

「この赤ハエがあああああああ」

「うわあああ、だから、一緒に迎えに行くの反対だったんです!」

浮竹は、どこからか殺虫スプレーを取り出して恋次にふきかける。

「うう、体がしびれる」

「ふふふ。人間にも効くように作ったからな」

「浮竹、やめないと、弟であることをやめるぞ?」

「白哉、すまなかった」

浮竹はしょんぼりした。

「さぁ、現世に返ろう。鴆の京楽と彼岸花の整理絵の浮竹が、首を長くして待っているぞ」

「帰ろうか、京楽」

「うん」

こうして、二人は京楽のマンションに戻る。

『やっと目覚めたな。神であることをやめたのか。もったいない』

『藍染が死んで、不要になったからじゃない?』

「その通りだ。不相応の力は、己を滅ぼす」

「ボクは神のままでもよかったんだけどね?」

京楽は、浮竹にハリセンではたかれる。

「さぁ、藍染もその手下もいない平和な世界を満喫しよう。まずは世界旅行だ!」

「うわあ、スケールがでかいねぇ」

『またいなくなるのか?』

彼岸花の精霊の浮竹が不機嫌そうに言う。

「何、異界渡りをすれば、いつでも会える」

『それならいい。桜の王とはもっと遊びたいからな』

鴆の京楽は、薬をいっぱいくれた。

『1年も眠っていたんでしょ。力が弱まっているはずだよ。これはそれを治す薬ね?』

「ああ、ありがとう」

「ありがとね」

浮竹と京楽は、白哉も連れて世界一周旅行に出かけることになった。

平和なさりげない日常が戻ってくる。

船での旅であったが、浮竹はよく異界を通って、彼岸花の精霊の浮竹と鴆の京楽に、京楽と一緒に会いにいった。

「世界は広いぞ」

『うん、そうだね。ボクもいつか、外の世界を旅してみたいよ』

「まずは、人になれることからだな」

『うん』

『今日のお土産は?』

急かす彼岸花の精霊の浮竹に、浮竹はドーナツをあげた。

『始めてた食べるが、うまいな』

「ふふ。さぁ、始めようか、俺たちの新しい物語を」

浮竹は、桜の花びらを散らせて、微笑んだ。

みんな、その顔があまりにも綺麗なので、見つめていた。



さぁ、はじめよう。

新しい、物語を。




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桜のあやかしと共に97

彼岸花の精霊の浮竹と鴆の京楽の力をかりて、浮竹は京楽のさらわれた商店街にきていた。

ちょうど昼頃で、活気があってにぎわっていたが、鴆の京楽は人がだめなので、人のいない場所で待機してもらっていた。

「このへんに、京楽がいるはずなんだが」

『窮鼠と藍染のにおいがする』

「あ、十四郎!」

現れたのは、元に戻っていた京楽だった。

誘拐から6時間が経過していた。商店街につくまでに、走ったが4時間もかかってしまった。

幼子になった京楽に、何かあるかと心配していたが、杞憂に終わった。

「お前、窮鼠は?」

「3歳の体で術を使ったら暴走して、ズタボロになって死んだよ」

『それはちょっと気の毒だな』

彼岸花の精霊の浮竹は、クスクスと笑う。

「お前が無事でよかった」

「もう、これにこりたら縮む薬なんて飲ませないでね!」

「あ、ああ」

3歳の京楽を愛でたかった浮竹であるが、敵に誘拐されるとは思っていなかったので、もう飲ませないと誓う。

『藍染は出たのか?ブーンカサカサろ』

「それゴキじゃ・・・・・」

『あんなやつ、ゴキブリでいいだろ』

「そうだそうだ。ゴキだ。藍ゴキだ]

二人の浮竹は、藍染をゴキブリ扱いする。

「殺虫スプレー今度買ってこよう」

『藍染ホイホイはないのか?』

「ひっかかるエサが何かわからないからな」

「藍染はこなかったけど、そのうち来るとは言っていたね。魔王の種とかいうものを窮鼠は藍染からもらっていたみたいだけど、確かにただの窮鼠にしてはやたらとタフだったけど、しょせんは窮鼠。ぎったんぎったんにしてやったよ」

「3歳の体でか?」

「うん、そう。いつもより術が扱いにくかったけど、暴走してくれたおかげでいつもの2倍の威力が出たし、藍染が来る前に脱出できたから問題はないよ」

『窮鼠は、お前を贄にすると言っていたんだろう?』

彼岸花の精霊の浮竹は、京楽の心配をする。

『本当に、大丈夫なのか?』

「大丈夫。何もされてないはず・・・・・浮竹、一応チェックしてみて」

京楽は、浮竹に頼む。

「あ、魔王の種!お前の背中についていたぞ。発芽していたら、ちょっとややこしいことになったかもな」

「魔王の種ごときで、死んだり傷ついたりはしないだろうけど、一応藍染の手下もどきにされてしまう可能性もあるからね」

『窮鼠もばかだな。魔神か知らないが、藍染なんかにくみするから、死ぬ羽目になった』

彼岸花の精霊の浮竹は、さまよい出てきた窮鼠の魂を、冥界に送ってやる。

「そういえば、何か忘れているような気がするんだが」

「なんだろうね?」

『さぁ、なんだろろう』

三人は、首を傾げる。



『ちょっと、どうなってるの~。人無理だから隔離されたのに、迎えにもきてくれないなんて薄情だーーーーー』

鴆の京楽の存在を、三人はすっかり忘れていた。

彼岸花の精霊の浮竹が思い出して、商店街から帰還した後で気づいた。

『そういえば、京楽を知らないか』

「ああ、そういえば人が無理っていうから、空き店舗にいてくれってお願いして忘れてた」

『異界渡りをして、迎えに行ってくる』

「ああ。すまないと、伝えておいてくれ」

「ボクを助けに人は無理なのに、きてくれてたんだね。今度、改めてお礼をしなきゃね?」

『じゃあ、京楽を迎えにいってくる』

「ああ、行ってこい」



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「窮鼠?ばらばらじゃないか。魔王の種を植えこんだんだぞ?それをこうもたやすく殺すとは・・・・・・桜鬼神は、私の魔神と同等かそれ以上の力でもあるというのか?」

窮鼠の死体を踏みつぶして、藍染は歯ぎしりする。

窮鼠が、魔王の種を欲しがっていたので、かわりに桜鬼神をさらって生贄にしろと言っておいたのだ。

まぁ、最初から生贄にするのは無理だろうとは思っていたが、3歳の姿でここまでされると、さすがに桜鬼神の力の巨大さを見せつけられるようで、面白くなかった。

「魔王の種を改良するか。もっと、力がつくように・・・・・」

藍染は、自分がゴキブリ呼ばわりされていることなど、全く知る由もなかった。

浮竹と京楽は、きっと待っていたら藍染と会えたかもしれないが、決選の準備が整っていないし、穏やかに暮らしたいので、藍染を放置プレイしておくのだった。




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夜に恋して

浮竹十四郎。年齢、14歳。

肺の病を患っており、体が弱いが見た目がとても綺麗なので、色子ばかりを集めた桜王茶屋の陰間茶屋で、一番の売れっ子だった。

源氏名は、翡翠。夜に恋をする色子。

翡翠のように綺麗な緑色の目をしているからが、名前の由来だった。

浮竹は、体を売っても心は売らない。

どんな上客が愛を囁いても適度に受け流し、まして身請け話が出ると、自分から断った。

全ては、今から3年前に起因していた。

京楽春水という、花街に浸る上流貴族がいた。年齢は20歳。年若く、まだ妻帯していないこともあって、玉の輿を狙う遊女は多かった。

適度に遊びなれしていた京楽は、遊女ばかり相手にしていたのに、その日は珍しく陰間茶屋にきていて、色子を買っていた。

雪と呼ばれる、当時のナンバー1の色子であった。

浮竹はそれを見ながら、いつかこんな上客が自分にもつけばいいなぁと思っていた。当時、浮竹はまだ色子として売られてきたばかりで、体の弱さのせいもあって、主に簡単な雑用を任されていた。

「雪」

浮竹が、京楽を見送った雪の名を呼ぶ。

「ああ、翡翠。京楽の旦那、翡翠のこと気になるみたいだよ。あの色子を指名したいって言って、茶屋の主の旦那様が悩んでた」

「俺を、指名?」

「そう。でも、翡翠まだ茶屋に慣れていないからね。まだ11だしね。客を取るんは少し早いんじゃないかってのが、旦那様の考えだよ」

確かに、浮竹は当時11歳で幼かった。

精通さえまだ迎えていない。

色子の春を売る期間は短く、20をいくつか過ぎたころには、皆年季があけたり身請けされたりで、茶屋から去っていく。

本当なら、10から客をとることもできるのだが、浮竹は体が弱いので、茶屋の主も苦悩しているようだった。もし、体を売って、取返しがつかなくなるほど、肺の病が悪化しないかが心配だった。

浮竹の肺の病はうつらないが、なかなか治ることもなかった。売られる前よりは、少しよくなっていたが。

売られた頃は、両親にろくに食事も与えてもらえなかったうえに、医者にも診せてもらえずに、知り合いだった茶屋の主が、浮竹を買い取った。

茶屋の主の名は朽木白哉。

元色子で、貴族であったが、没落してしまい今は陰間茶屋の主をしていた。

「白哉、俺は来年で12になる。そろそろ、客をとりたい。白哉に借金をしたままなのは、いやだ」

「だが、翡翠、兄は体が弱い。もし、病が.悪化したら・・・」

「その時はその時だ。どのみち、両親に捨てられかけていたのを救ってくれたのは白哉だ。白哉が俺を買ってくれなかったら、俺は病と飢えで死んでいた。恩返しがしたい。俺に、色子をやらせてくれ」

「わかった。兄がそこまでいうなら、明日から色子として店に出てもらう」

「ああ」

そして、雪を買いに来た京楽と出会う。

「君は?新しい子?」

「翡翠という。しばらく前に茶屋の主人に買われて、その借金を返すために色子になった」

「本名は?」

「浮竹十四郎。下級貴族だが、一応は貴族だ」

「へぇ・・・・君みたいな綺麗な子がいたなんて、驚きだね。君を指名してもいいかい?」

「雪を買いにきたんじゃ?」

「今日は違う子を選ぼうを思ってたんだよ。君がいい。翡翠、今日はボクのものになって」

話はとんとん拍子でまとまって、京楽はすぐに浮竹の上客になった。

まだ精通も迎えていない浮竹は、女のようにオーガズムでいき、その体は幼いが故の中性に似ていて、京楽を喜ばせた。

雪から、客の喜ばせ方を教えてもらっていて、それが役に立った。

京楽は、週末がくると必ず浮竹を買いにきた。1年経つ頃には、京楽は浮竹を好きになっていたし、浮竹も京楽を好きになっていた。

上流貴族だけに、いつか自分を身請けしてくれるのではと思っていた。

京楽が、ぱったりこなくなったのは、浮竹が13になった誕生日の日だった。京楽から、身請け話が出ていたが、すっかりこなくなってしまったので、それも消えてしまった。

「京楽・・・・俺に飽きたのか?」

浮竹は、涙を流すが、主である白哉に慰められ、他の客もとるように勧められた。

他の客をとると、皆、浮竹の虜になった。

「翡翠、桜花屋の花魁が遊びにきているぞ」

「ああ、今いく」

色子の相手は、何も男性ばかりではない。たまに女性客もとったし、同じ花街の遊女に買われることもあった。

「元気にしてた?」

「ああ。ただ、少し昔の常連を思い出していただけだ。恋愛感情があった。花街での色恋沙汰はご法度なのにな」

「あら、そういえば、最近また京楽の旦那が花街に来てるって知ってた?」

「え、そうなのか」

浮竹を買った花魁は、浮竹に抱かれながら、話をする。

「なんでも、兄が死んで、とても花街に通えるような状態じゃなかったらしいわよ。当主には結局ならずに、いとこに家督を譲ったみたい。大金と引き換えに」

「そうか・・・・・・・・」

それから数日後、京楽は実に2年ぶりに浮竹を買いにきた。

「翡翠。ボクにまだ思いが残っているなら、身請けされて」

「え?」

「家督を譲る代わりに、君を買うだけの金をもらった。当主になったら絶対に翡翠を身請けなんてできないだろうし、ボクは当主なんてむいてないからね。君を買ってもまだまだ裕福に暮らせるだけの金はある」

「京楽・・・・・会いたかった。好き、なんだ」

「うん。ボクもずっと会いたかった。でも、屋敷から出ることを禁じられていてね。抜け出しても、君を買う金ももたせてもらえなかった」

「身請けの話を出しておきながら、いきなりいなくなるから、飽きられたのかと思った」

「そんなことあるわけないよ!ボクは翡翠、君がいればそれだけでいい」

「十四郎と、呼んでくれ。俺の本当の名だ」

「十四郎・・・・・抱いて、いいかい?」

「ああ。俺を買ったのはお前だ。好きにするといい」


「必ず、身請けをするから」

「ああああ!!」

浮竹を激しく突き上げながら、熱にうなされたかのように、京楽は身請けすると浮竹の耳元で囁いた。

「んあああ、奥はだめえええ」

「奥、相変わらず弱いんだね?」

京楽は、浮竹の奥に入り込み、抉って中をかきまぜる。

「ひああああん!!!」

「思い出すねぇ。君が精通を迎えたの、ボクと寝ている時だったね」

「やああああん」

「こっちも、もう出せるでしょ。ほら、一緒にいこう」

「ああああ、京楽」

「春水って呼んで?十四郎」

「あ、春水!」

浮竹は、大きく中いきをしながら、京楽に前をいじられて、京楽と一緒にいっていた。

京楽は浮竹の胎の奥に、浮竹は京楽の手の中に、精液を吐き出していた。

「んあああ。今、いったばかりだから・・・・ひゃん」

耳を甘噛みされて、胸の先端を舐め転がされる。

「やぁ、くすぐったい」

「ふふ、君は変わらないね。確かに伸長も伸びたし、外見はまだ女の子みたいだけど、だいぶ男性らしくなってきた」

「あ、幼いままの俺が好きなのか?」

「ううん。ただ、成長したなぁと思っただけだよ」

「ひああああ!奥はらめえええ」

浮竹を、時間をたっぷりかけて愛して、浮竹は軽くまどろみながら、京楽の黒い癖のある黒髪を撫でた。

「俺は、お前に身請けされたい・・・・・」

「うん。明日には、もう自由だからね。茶屋の主人の白哉くんには金を払っているし、了承もとってあるから」



次の日になって、浮竹は起きると着替えせられていて、馬車の中だった。

「あれ、ここは!?」

「君が眠ったままだったから、勝手に荷物全部まとめたよ。ここは馬車の中。僕の屋敷に行くところだよ。君はボクに身請けされたの」

「まだ、白哉や雪にさよならを言っていない」

「それは、ひとまず君の肺を医者に診てもらって、手術終わった後でね。君の病は、大金さえだせば治るそうだよ」

「治る・・・・・俺の病が?」

「うん。ただ、身請けの額よりも高いから、誰も治せなかっただけで」

「春水、俺はそこまで価値があるのか?」

「価値はあるよ。ボクが、人生で唯一愛した人だから」

「春水・・・・・・」

「十四郎、愛しているよ」

「俺も、愛してる」


それから、浮竹は入院して肺の手術を受け、無事完治した。

健康になったその足で、桜王茶屋に行き、白哉に久しぶりに会って話をした。雪とも会い、みやげだと、西洋のアイスクリームをあげると、大層喜ばれた。

「浮竹、兄は今幸せか?」

「ああ。白哉、幸せだ」

「なら、よいのだ。京楽春水。浮竹を泣かせるなよ」

「うん、分かってるから。女と結婚はしないし、身内だけになるけど、浮竹と・・・・翡翠と、結婚する」

「京楽、本気か!」

「ああ、まだ教えてなかったね。この国は同性婚も認められているからね。浮竹を、名実ともにボクだけのものにするよ」

「春水・・・・・・・」

「十四郎、帰ったら褥に行こうか」

浮竹は、白哉たちの前で京楽がそういうものだから、赤くなってしまった。

「幸せにな、浮竹」

「ああ。白哉も、無理はしないように」

夜に恋する色子は、夜ではなく京楽春水という男に恋するのだった。




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桜のあやかしと共に97

彼岸花の精霊の浮竹と鴆の京楽は、いつものように京楽のマンションに遊びに来ていた。

『うまいきのこがあってな。味噌汁にしてもってきたんだ。食べてくれ』

『ちょっと、浮竹、それって』

『しーーー』

彼岸花の精霊の浮竹は、森でとれた媚薬と精力剤の効果のあるきのこを、そのままの形では食べてくれないだろうと、刻んで味噌汁にいれて、他の具もいれてわからないようにしてもってきた。

彼岸花の精霊の浮竹と鴆の京楽は、そのきのこのせいで、彼岸花の精霊の浮竹が根を上げるくらい、しっぽりしまくった。

そのしっぽりしまくりを、桜の王である浮竹と桜鬼の京楽にも味わわせてやろうという、悪戯心からきていた。

「ん・・・・なんか変なきのこだな?色がすごい」

そう言いながらも、浮竹は味噌汁を食べた。

もちろん、京楽も食べた。

「ん・・・・・体が熱い」

浮竹は不調を訴える。

「大丈夫、十四郎・・・・って、ボクも体が熱い。彼岸花の精霊の浮竹、味噌汁に何か入れた?浮竹みたいに」

よく、浮竹は変な薬を作っては周囲に飲ませていた。

『ふふふふふ。俺たちは帰るから、好きなだけしっぽりしてくれ』

『浮竹、やりすぎだよ。一応解毒剤、ここにおいていくね?ただし、飲んで2時間以上しないときかないから注意ね』

二人は、住処の裏山の洞窟に戻ってしまった。

「どうする」

「どうするって、しっぽりするしかないんじゃない?」

「はぁはぁ・・・・春水、お前が今すぐほしい」

きのこの効果がきいてきて、浮竹の頭にはやること、しっぽりすることしかなかった。

対して、京楽はやや余裕をもっていた。

「ここリビングだよ。寝室に行こう」

「待てない。ここでいい。結界をはる」

家には白哉が自室でいたので、結界をはった。

「春水、はやく俺の奥で子種を注げ」

浮竹は、京楽の衣服を脱がしていく。

京楽は、浮竹の衣服を上の服は着たままにさせた。

「んあっ」

いきなり口淫されて、浮竹が床の上で乱れる。

「十四郎、熱いね。ボクも熱いけど、なんか少し余裕がある。少量しか口にしなかったせいかな」

「ああああ、待てない。早く、春水、早くううう」

身をくねらせる浮竹は、淫靡で妖艶だった。

「ローションもってこないと」

「早くもってこい」

「はいはい」

京楽がローションをとりにいっている間に、浮竹は我慢できずに自分のものをしごいて、口淫でまだいっていなかったので、精液を吐き出していた。

「あん、足りない。春水、はやくうう」

「待たせたね十四郎・・・・自分でいじちゃったの?」

「だって、春水がこないから」

「淫乱な子だねぇ」

後ろ向きにされて、尻を叩かれれる。

「ひゃん!」

それすら快感となって、浮竹は京楽にねだった。

「早く、春水ので俺を貫いて、奥を抉ってえええ」

「仕方ない子だね。指入れるよ?」

「あん、指なんていいから今すぐほしい」

「だーめ。ちゃんと解さないと、ローション使っても痛いからね。ボクは十四郎には痛い思いはしてほしくないんだよ。うわぁ、もう3本も飲み込んでる」

「んあああ、そこ、いい。もっとおおお」

「ここかい?」

前立腺がある部分を指で押すと、浮竹はびくんと体をはねさせていっていた。

「ひあああん、いくううう」

「まだ、挿入れてもいないし、奥に子種だしてないよ?何回いくつもり?」

「んんん、知らない。体が熱くなくなるまで?」

浮竹が答えると、京楽は指を引きぬいて、後ろから浮竹を貫いた。

「ひゃあああん!!大きいの、入ってきたああ!!奥にザーメンたっぷり注いで?」

「はしたない子だね」

また、軽く尻をはたくと、浮竹はいっていた。

「やあああん、痛いけど気持ちいいいい」

「淫乱な上に、お尻叩かれていくなんて、変態だね」

「やあああん、そんなこと言わないでえええ」

京楽は、浮竹の奥を抉る。

「ひゃああああん!いくうううう」

京楽は、またぴしゃりと浮竹の尻を叩く。

「いくうう!!!」

「くっ、締め付けがすごいね。お望み通り、精液を奥に注いであげる」

「ああああん、春水のザーメンびゅるびゅる奥に出てるううう。とまんないいい。俺もいくのとまんないいい」

京楽は、一度引き抜くと、正常位になって浮竹を犯す。

「んんん、キスして、春水」

「はいはい」

舌が絡まるキスをして、浮竹はうっとりと恍惚になる。

京楽はぞくぞくした。

この美しい生き物は、自分の下でしか乱れない、

前は彼岸花の精霊の浮竹と指でいじりあっていたりもしたが、浮気だとおしおきしてからしなくなった。

「愛してるよ、十四郎」

「あ、俺も愛してる、春水。だから、もっと子種ちょうだい」

浮竹は、京楽の腰を足ではさみこむ。

「ふふふ・・・・」

「あー、これはボクが反対に絞りつくされるね」

「ああん、奥、かきまぜてええぇぇ」

言われた通りにすると、浮竹は弓なりに背をしならせて、大きくいきながら潮をふく。

「ああああ、おもらししちゃうううう!とまんないいいいい!!」

潮はしばらくふいていたが、直に止まった。

かわりに白濁した、精液が溢れてくる。

「ああん、いったばかりなのに、また出るううう。春水、奥にザーメン出してええ」

浮竹の望み通り、京楽は浮竹の胎の奥の奥で子種をはじけさせる。

それを何度か繰り返すと、さすがの京楽ももう出なかった。

「ああ、まだ足りない。ザーメンもっとほしいいい」

「簡便してよ。もう出ないよ」

「いやあああ、じゃあ指でいじっってええ」

言われたとおりに、浮竹の敏感な場所を指でいりじまくって、京楽の精液が尽きて1時間以上してから、浮竹は満足して、精液の滴る床を京楽にふかせた。

「今日の君はすごいね。淫乱もいいとこだよ」

「むう、きのこのせいだ。今日のことは忘れろ」

浮竹は、全て終わって数時間してから、顔を赤くしながら、京楽の入れてくれたアールグレイの紅茶を飲む。

「京楽、お前も飲むか?」

「うん、いただくよ」

浮竹が入れた紅茶を京楽が飲むと、京楽は3歳くらいに縮んでいた。

「ちょっと、また縮ませて、何がしたいの!」

「京楽を思いっきり愛でる!」

「きききき、これは好都合なり。京楽春水、桜鬼神よ、藍染様の大いなる魔神としての誕生の贄になってもらおうか!」

「うわぁ!」

「窮鼠か!京楽を返せ!」

「きききき、返してほしくば藍染様にひれ伏すがいい。生贄として、もらっていくぞ!」

窮鼠が現れて、3歳の京楽をさらっていく。

「京楽!!!」

「十四郎!!!」

3歳の京楽は、窮鼠に連れ去られるのであった。

「まってろ、京楽。すぐに救い出してやるからな」

浮竹は静かに怒っていた。窮鼠に、どこにいるのか分かるように、京楽をさらわれる前に、桜の花びらをつけておいた。

「念のため、彼岸花の精霊の俺と鴆の京楽の力も借りるか」

しばらくは3歳児だが、5時間もすればもとに戻る。

きっと、敵側はずっと小さいままだと油断しているであろう。魔神になった藍染と、桜の花神の力は互角。

浮竹は、彼岸花の精霊の浮竹と鴆の京楽の力も借りて、桜の花びらの位置で、商店街に京楽がいることを知る。

「助けに行こう。藍染と戦闘もありえるが、大丈夫か?」

『もちろんだ』

『早く、助け出してあげよう』

鴆の京楽は、念のために縮んだ薬の解毒剤をもってきていた。





「さぁ,偉大なる藍染様の贄になれるのだ。きききき、嬉しがれ」

「あのさぁ。アホじゃないの?窮鼠ごときが、たとえ3歳でも、桜鬼神と互角に渡り合えるとでも?」

「ききき、俺は藍染様から魔神ユーハバッハの核の一部から作り出した魔王の種をもらっている。そっちこそ、ただの窮鼠だと侮るなよ。ききききき」




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オメガバース恋白読み切り短編シリーズ

白哉は、ずっと自分がアルファであると思っていた。

ある日、熱にうなされて、周囲がヒート熱だと騒ぐので、幼少期はアルファと診断されたのだが、再検査を受けることになった。

その結果、白哉は後天的なオメガであることが発覚した。

幼少期はアルファで、大人になってからオメガになったのだ。

オメガが朽木家の当主にふさわしくないと言われ、6番隊の隊長の座も危うかったが、なんとか6番隊の隊長は勤めれそうだし、他に当主にふさわしい人材はいないので、朽木家の当主としても、健在であった。

ただし、条件があった。

四楓院夜一の弟である、四楓院家の現当主四楓院夕四郎と結婚して子を作ること。

白哉は無論反対した。夕四郎はまだ幼く、結婚するには早いし、オメガと婚姻するのは早すぎると、四楓院家からも反対が出たし、夕四郎自体、姉が大好きで、白哉との婚姻は考えていなかったのだが、周囲が勝手に婚姻を行うように進めていた。

知らない間に、白哉と夕四郎は結婚してしまっていた。

「夕四郎殿、この婚姻は策略だ。どうか、破断にしてほしい」

「はい、白哉殿。僕もこの結婚はありえないと思います」

初夜にと与えられた館で、白哉はヒート熱をだし、アルファを誘うフェロモンを出す。

夕四郎にその気はないのだが、アルファであるため、抗うこともできずに、白哉を押し倒していた。

「夕四郎殿!気を確かに!」

「あああ、頭がおかしくなりそうです。オメガのフェロモンが」

2人だけしか入れない寝所に、侵入者が現れた。

「れ、恋次!?」

「隊長、四楓院家と結婚して子を作るって本当だったんすね。でも、まだ番になってませんよね。四楓院の当主様、隊長はいただいていきます」

「あ、はい!白哉殿も人が悪い。好いた方がおられるなら、最初からそう言ってください」

「恋次、お前は何を考えている!このようなこと、発覚すれば処刑ものだぞ!」

「隊長を奪われるくらいなら、処刑されたほうがましだ」

「何を言って・・・・・・」

「俺、アルファなんす。この意味、分かりますよね」

「よせ、恋次」

白哉は、四楓院家から白哉をお姫様抱きにして連れ去っていこうとする恋次を止めようとする。

「あのまま、抱かれたかったんですか。あんな子供に」

「夕四郎殿ははまだ幼い。性的なことなど、できようはずもない」

「わかりませんよ?最近の子供は発育がいいですからね。現に、隊長を押し倒してた」

「恋次・・・・・・」

恋次は、警備の穴を縫って四楓院家から抜け出し、朽木家の所有する別邸にきていた。

「恋次、お前は何がしたいのだ」

「決まってるじゃないっすか。寝取りですよ。他の男のものになるくらいなら、俺が隊長を手に入れる」

「恋次、やめ・・・・んう」

恋次は、白哉に口づけする。

ぶわっとオメガのフェロモンが広がり、薬を飲んだはずなのに、ヒート期間なだけあって、アルファである恋次を誘っているかのようだった。

「隊長、番になりましょう。もう、誰とも婚姻できないように」

「・・・・・番?私が、恋次と?」

白哉は、想像したこともなかった。

自分の大切な副官が、自分に劣情を抱いていることすら知らなかった。

「恋次、やめよ。今ならまだ引き返せる」

「いやですね。隊長を番にして、俺のものにする」

恋次は、白哉が着ていた薄い絹の着物を脱がせる。

「あ、恋次・・・・」

すでにぎんぎんに勃ちあがったものを、腰におしつけられて、白哉もオメガのフェロモンにあてられる。

「もう、どうなってもよい。恋次、私を抱いて番にせよ」

白哉は、恥も外聞も捨てた。

「さぁ、こい、恋次」




「あ、あ、あ」

リズミカルに、ぱんぱんと肌と肌とがぶつかりあう音がした。

恋次のものは大きく、挿入には痛みを伴ったが、濡れているので慣れてしまえば挿入も簡単にできた。

「ああ、隊長と一つになってる。隊長、気持ちいいですか?」

「やあああ、恋次、激し・・・・・・」

「もう少しゆっくり動きますね」

白哉の快感を引き出すたあめに、わざと白哉の弱いところばかりを攻めたてる。

「ひああああ、いくうううう」

その日、白哉は初めて女のようにオーガズムでいくことを覚えた。

「やあああん、もっと奥に、もっと奥に子種ちょうだい」

「隊長、自分で何言ってるのか分かってないでしょ。すげーエロい」

白哉の望む通り、奥まで突き入れて、恋次は子種を子宮に注ぎこむ。

「ああああ!!!」

びくんびくんと体をはねさせながら、白哉は何度もいった。

「こっちも、いきたがってますよ?」

恋次が、勃ちあがったままの白哉のものをしごく。

「ひああああんん!!!」

白哉は、中いきをしながら、精液をこぼしていた。

「隊長の中、熱いっすね」

「ああああ」

「うなじ、噛みつきますよ?番になりましょう」

「ひああああああ!!!!」

白哉はいきながら、うなじに噛みつかれて、恋次を主とする番が完了する。

「私は、もう恋次のものなのか」

「そうです。四楓院家でも、もう手出しできません」

「体がドロドロだし、力が出ないが湯あみしたい。手伝え」

「はい!」

恋次が引き抜くと、大量の恋次の精子が逆流して、白哉の内ももを伝い落ちる。

「これでは、子を孕んだとしても仕方ないな」

「もしも子ができたら、産んでくれますよね?」

「当たり前だ。次期朽木家の当主となる」

白哉を軽そうに抱き上げて、恋次は湯殿に入り、白哉の体や髪を丁寧に洗った。

「私の身を四楓院家から連れ去り、番にしたことは普通なら許されないだろう。私がそう望んで、恋次を意のままに操ったということにしておく」

「隊長・・・・すんません。俺なんかのために」

「顔をあげろ!私の番なのであろう?もっと堂々と振るまえ!」

「は、はい!」

夕四郎は、白哉と恋次を庇ってくれて、結局罪にはならなかったが、副官とできるなんてとか、いろいろ噂されたが、恋次も白哉も気にしなかった。

番となった夜に子供ができて、朽木恋夜(れんや)と名付けられた。男の子だった。

「隊長、次は女の子、作りませんか」

「恋夜だけで十分だ。避妊しないと、やらせないからな」

「そんな~~~~」

朽木白哉と阿散井恋次は、上官と副官であると同時に番であった。恋次が婿入りする形となり、朽木恋次となった。

「隊長、避妊しますからやらせてください」

「昨日、睦みあったばかりであろうが!」

白哉に頭をはたかれて、恋次はしょげる。それが大きい犬のようで、白哉はくすくすと静かに笑うのであった。








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桜のあやかしと共に96

「京楽、しっぽりしよう。激しくしっぽりしまくろう」

浮竹がそう言ってきたので、しかも真昼から。これは夢なのではないうかと頬をつねるが、現実だった。

「よし、十四郎、結界はってしっぽりしまくろうね」

「ああ、しっぽりだ」

手をひいて歩いて行く途中で、浮竹の手が少し熱を持っているのに気づく。

「十四郎、おでこ触るよ」

京楽は、浮竹の額に手をあてると、ひどい熱だった。

40度はこえているであろうと思われる熱に、京楽が慌てだす。

「十四郎、しっぽりどころじゃないから!今すぐ寝て!」

「え、ここでしっぽりするのか?床は背中が痛くなる」

「だから、しっぽりはお預け!」

「むう。じゃあ白哉としっぽりする」

「何気に近親相姦!?その前に、十四郎も白哉くんも受けでしょうに!いや、そんなことはどうでもいいんだった。今、鴆のボクのところにいって、解熱剤とかもらってくるね。君はおとなしく寝てて」

京楽に、ベッドに寝かしつけられて、浮竹は頭がふらふらするので、適当に返事する。

「ふにゃあ」

「大分重症だねぇ。あやかしインフルかもね」

あやかしインフルとは、その名の通りあやかしだけがかかるインフルエンザだ。

今猛威をふるっていて、昨日遊びにきた浮竹の知り合いもあやかしインフルにかかっていたのだと、その日の午後に発覚するのだが。

京楽は、鴆の京楽からあやかしインフル用の薬をもらった。

解熱剤と、あとは風邪薬のようなものである。あやかしインフルに特効薬は今のところなく、薬草を煎じて症状を和らげる程度だった。

「ああ、鴆のボク。ボクも十四郎からうつってるかもしれないから、薬念のために飲んでおいてね。ボクから感染して、薬師が病気になったら大変だから」

『わざわざありがとうね。ボクも、あともう少しで浮竹も帰ってくるから、念のために薬を飲ませておくよ』

京楽は、あやかしインフルにかかった浮竹のためにおかゆを作り、薬を出した。

「いやだ、苦い」

「そう言わないで。薬のまないと、もっとひどくなるよ?」

「むう。しっぽり・・・・」

「なぜに、そこでしっぽり!?」

「彼岸花の精霊の俺が、しっぽりって言えば京楽が喜ぶって・・・・・」

「浮竹、しっぽりの意味わかってて言ってる?」

「ん?キスしたり、ハグしたりのことだろ?」

実は、浮竹はしっぽりの正確な意味を分かっていなかった。

「はあ。しっぽりはね、セックスって意味だよ」

「ななななな!!!!」

浮竹は、真っ赤になった。体温計で熱をはかると、40度から41度にまであがっていた。

「だめだ、世界が回る・・・・薬飲んで、寝る」

「うん、そうしなさいな。ボクと白哉くんも一応かかってる可能性あるから、薬飲んでおくから」

京楽は、浮竹の額のぬるくなった冷えピタシートをはりかえてやって、浮竹が寝たのを確認すると、白哉を呼んで、浮竹があやかしインフルにかかったことを話して、薬を飲ませた。

基本、浮竹をゲストルームに隔離する形をとる。

『様子はどうだ?』

「彼岸花の精霊の浮竹!」

「兄が、どうしてここに?」

『いや、京楽が桜の王があやかしインフルにかかったといっていたので、お見舞いにきた』

「ごめんね、わざわざ。でもうつるから、会わせられないけど」

『そうか。しっぽりすれば、全てよくなると言っておいたんだが、しっぽりは未遂か』

「あ、君ねぇ、十四郎に変な意味でしっぽりを教えるのはよしてね」

『なんだ、もうばれてしまったのか。つまらない』

彼岸花の精霊の浮竹は、白哉と格闘ゲームをしだす。

「はぁ。反省する気なさそう」

白哉が苦笑する。

『ここで、俺の勝ちだ』

「むう。私の負けだ。もう一度」

『ちょっと、浮竹、いつまで居候してるの。見舞いすんだら、早く帰ってくるって約束だったでしょ』

そこへ。鴆の京楽が現れる。

『ああ、忘れてた。あやかしインフルの客ばかりくるから、いっそこっちのほうが安全な気がする』

『でも、ボクは薬師だし、君はその手伝いをしてくれるでしょう?住処に戻ろう』

『白哉、ゲームの続きは次回だ』

「むう、勝ち逃げか」

『ふふふふ・・・・・』


住処の裏山の洞窟に戻ると、客がきていた。

あやかしまんじゅうを作る工場で、あやかしインフルのクラスターがおこり、しばらくの間あやかしまんじゅうは売りに出されないとのことだった。

何気にあやかしまんじゅうを気に入っていた、彼岸花の精霊の浮竹は、それにショックを受けて洞窟の奥でふて寝をし始める。

『もう、全然手伝ってくれないんだから・・・・・・』

『手伝ったら、しっぽりするか?』

『いいけど、夜に、ね』

彼岸花の精霊の浮竹は、鴆の京楽が作った薬を整理して、やってきた客に渡していく。

代金はきっちりもらう。

人間社会のお金だったり、黄金だったり、食べ物だったり、支払いはいろいろだった。

一番多いのは、あやかしの通貨とされている小判だったが。

『はぁ。桜の王、早くあやかしインフル治らないかな。暇だ』

『まぁ、ボクの処方した薬は治りやすいから、普通は1週間以上かかるけど、3日くらいで治るんじゃないかな』

『その3日間が暇だ』

彼岸花の精霊の浮竹は、溜息をついた。

『ボクがいるじゃない』

『京楽は恋人で、遊び相手じゃない』

『まぁそうなんだけど。3日くらいすぐだよ』

『じゃあ、しっぽりしよう』

『ええ、まだ夜になってないよ。客がきたらどうするの』

『無視すればいい。結界をはって、しっぽりするぞ』

こうして、二人はしっぽりするのだった。

浮竹は本当に3日であやかしインフルが治り、白哉にも京楽にもうつらずで、安堵するのだった。

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桜のあやかしと共に95

「顔を奪われる?」

「そう。ちまたを騒がせてるあやかしでね。狙われた人間はのっぺらぼうみたいなになっちゃうらしいんだ。祓い屋の会合で、ボクが退治することになってねぇ」

「ふむ。じゃあ、俺も行くぞ」

「うん。神出鬼没らしいから、十四郎の妖力を敏感に察知でききる能力がいるよ」

「あやかしは襲わないのか?」

「それがねぇ、あやかしも襲うんだよ。何人かの椿の花鬼が顔を奪われたらしい。冬獅郎君にも、協力を求めようと思ってね。あやかしで狙われるのは、椿の花鬼だけなんだよ。人間も、何かしらの形で椿と関わってる。植木職人だったり、花屋だったり、椿のアクセサリーをつけてた者だったり」

京楽は、まずは冬獅郎の元に行こうというと、浮竹は召喚すると言い出した。

「四季の王の名において命ずる。いでよ、冬の椿の王!」

「だから雛森、俺は大丈夫だからっ・・・うああああ、また勝手に召喚したな!」

冬獅郎とだけでなく、その契約者である雛森桃という人間の少女も一緒だった。

「しっぽりしてたのか?」

「するわけねぇだろ、この色ボケ四季の王が!」

すっかり彼岸花の精霊の浮竹のペースに飲み込まれていた浮竹は、カップルを見るとしっぽりしているんだろうかとか考えるようになっていた。

ちょっとあぶない。

「あの、こちらの方々は?」

雛森が、浮竹と享楽を見る。

「ああ、話にだけはだしてただろう。こっちの長い白髪のが浮竹、春の桜の王で四季の王でもある。こっちが桜鬼の京楽。浮竹の契約者だな」

「契約者・・・つまり、できてるってことですよね」

雛森は頬を染める。

「俺は確かに京楽とはしっぽりしているが・・・・・・・」

「おい、雛森はまだ子供なんだ、下ネタはやめろ」

「しっぽりって、下ネタになるのか?」

浮竹が京楽を見ると、京楽はうなずいた。

それに浮竹が赤くなって、話題を切り替える。

「椿の花鬼ばかり、顔を奪われるらしいな。人間にも被害者が出ているが、なんらかの形で椿とゆかりがある者たちばかりだ」

「ああ、ちょうどその顔を奪うやつの住処を見つけたから、今から退治にいくとこだった」

「お、いいタイミングだねぇ。ボクも顔を奪うやつの退治を祓い屋の会合で命じられてね。まぁ、あやかしになったボクの存在に、他の祓い屋は気づいてないみたいなんだけど」

「祓い屋って案外まぬけなんだな」

「京楽が、それほど体を人間に近くさせて、妖力を出してないだけだぞ」

「ふーん。京楽、あんたもやるな」

「いやぁ、それほどでも・・・・・・」

「そんなことはどうでもいいから、住処とやらに行くか。倒せば、多分顔を奪われた者たちの顔も戻るはずだ」

「十四郎どうでもいいってひどい」

「どうでもいいことはどうでもいいことだろう。今は顔を奪うやつを倒すのが先だ」

こうして、浮竹、京楽、冬獅郎、それに一人にすると藍染の手が伸びる恐れがあるので、雛森も連れていくことにした。

雛森には、冬獅郎と京楽が強力な結界で守っているので、藍染でもそうやすやすと手は出せないはすであった。

顔を奪うあやかしは、季節外れの椿が咲き狂う、洋館に住んでいるらしかった。

「背後をつうくか?それとも正面突破か?」

冬獅郎の服の袖を、雛森がぎゅっと握る。

「シロちゃん、危ない真似はしないでね」

「わーってるって」

「めんどくさいから、正面突破で。桜の花神になる。京楽も、桜鬼神になっておけ」

「おいおい、二人そろって神様になっちまったのかよ」

「そうだ。いろいろあってな」

浮竹は、玄関を桜の術でこじあけ、洋館の中に入る。

洋館野中はマネキンだらけで、そのマネキン一体一体が、奪われれ顔をしていた。

「悪趣味な奴だな。おい、出てこい。出てこなきゃ、このマネキン全部ぶっ壊しちまうぞ」

「ふふふふ・・・・・藍染様の言っていた通りだ。椿ばかりを襲っていれば、冬の王が出てくる。その冬の王をエサに、四季の王をおびき寄せて・・・・・・」

「四季の王ならここにいるぞ。とりあえず、桜の花びらよ、動を奪え」

「げ、まじかよ!まだ四季の王を迎え撃つ準備できてない・・・・ここは、一旦退かせてもらうことにしよう」

異界に逃げ込もうとするので、浮竹が桜の花神の力で異界へのゲートを遮断する。

「なんだと!」

「おいおまえ、名前はわからんからインキンタムシでいいか。インキンタムシ、大人しく奪った顔を返せ!」

浮竹がインキンタムシよばわりすると、あやかしは怒った。

「誰がインキンタムシだーーー!!俺には、顔奪いという名がある!」

「えーと、インキンタムシくん、藍染の手下なんだよね?」

「そうだ。魔神となられた偉大なる藍染様の部下だ!って、誰がインキンタムシだあああ」

「じゃあ、死んで?」

京楽は、桜鬼神の力を開放させて、桜の文様のある刀で、顔奪いの右手と左手を切り落とす。

「な、いきなりピンチだ!こんなに強いなんてきいてないぞ。かくなる上は、その人間の女の顔を奪って人質にしてやる!」

「きゃあああああああ!!!」

雛森に遅いかかった顔奪いは、強い結界にはじかれて、数歩たたらを踏む。

「浮竹、京楽、悪いがこの獲物は俺がもらう。雛森を傷つけようとした。許せん」

冬獅郎は、愛刀の氷輪丸を出すと、氷の龍を召喚して、顔奪いを氷つかせた。

「いやだ、死にたくない」

「じゃあ、藍染の居場所を言え」

浮竹が、なんとかしゃべることはできる氷像となった顔奪いに、桜の花びらで居場所を吐かせようとしたら、顔奪いは、なんと体を四散させた。

「藍染様、ばんざあああういいいい」

それだけを言い残して。

「ちっ、どうやら藍染の居場所を言おうとすると、自爆装置みたいになるようになっていたみたいだぞ」

「冬獅郎くん、このマネキン壊せる?ボクらの強い妖力だと、過剰に破壊する恐れがあるから」

「ああ、わかった。いけ、氷輪丸!」

「シロちゃん、壊していったマネキンから、顔が消えてる!」

「どうやら、奪われた顔は無事元の持ち主の元に返ったみたいだな」

「そうだね」

浮竹と京楽は、神の力を封印した。

「冬獅郎くん、雛森ちゃん、せっかくこっちにきたんだし、ちょっと泊まっていかない?」

「いいのか?」

「え、いいんですか?」

「藍染のせいで迷惑をかけたからな。俺の手料理をごちそうしよう」

「え、浮竹、お前料理なんてできんのか?」

「失礼な。これでも、一流シェフ並みには腕はいいぞ。人間の社会で習ったからな」

冬獅郎は、浮竹が人間に化けて、人間の料理学校に通っていたことなど知らないし、言う必要もなかった。

「あたしも手伝いますね。シロちゃんの好物、知ってますから」

京楽に材料を買いに行かせて、浮竹は白哉と仲良さげに話をする。

「日番谷冬獅郎。冬の椿の王だ」

「ほう。椿は私も好きな花だ」

「3千歳以上なんだけど、見た目は子供なんだ」

「あやかしに年齢などあまり関係ないしな」

「おいこらそこ、俺を子供扱いするなよ」

京楽が帰ってくると、スーパーの袋に甘納豆が入っていたので、冬獅郎は雛森と一緒に食べるのだった。

その日の夕飯は、冬獅郎の好きなものばかりがでてきた。

冬獅郎と雛森の仲睦まじげな様子を白哉は好奇心から、浮竹と京楽は初々しいなと、みるのであった。





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オメガバース恋白読み切り短編シリーズ

「隊長?」

「む。なんでもない」

「なんでもないってことはないでしょう。顔、赤いですよ。熱あるんじゃないっすか」

「熱などない。それに、薬を飲んだので、直に元気になる」

白哉は、自分がオメガであるということを隠して生きてきた。

ヒート期間は酷いときは休暇をとり、裏マーケットで手に入れた強い抑制剤を飲んで、ヒート期間も普通のように過ごしているが、身を燃やすような情欲の炎は消えず、つらかった。

「隊長、実はオメガでしょう?」

「何を馬鹿なことを。アルファではないが、ただのベータだ」

「じゃあ、このヒート抑制剤の薬なんて、なんでもってるんすか?」

「それは!返せ!」

白哉は、恋次から抑制剤をとりあげようとするが、恋次が背伸びをして高い位置にまでもってきて、白哉の身長が届かずに、白哉はいらだって、恋次を蹴った。

「あいた!何するんすか!」

「こっちのセリフだ。ああ、お前の言う通り私はオメガだ。それがなんだというのだ。浮竹もオメガであろう。オメガであっても、隊長はできる。だから、返せ」

「浮竹隊長は、京楽隊長と番っすからね。ねぇ、隊長。ずっと薬飲まなきゃいけないの苦しいでしょうし、つらいでしょう?俺と、番になりませんか」

「ふざけたことを」

「俺は本気っすよ。隊長が、前々からずっと欲しかった。俺がアルファで隊長がオメガなのは運命っすね」

白哉は、恋次にビンタをお見舞いする。

「確かに私はオメガだし、ヒート期間は辛い。だからといって、そうほいほいと体を開くような安いようにはできていない」

「大切にしますよ?別に体目的じゃないっすし」

「アルファがオメガを欲しがるなど、子供かオメガの体目的かのどっちかだ」

「そう、教えられてきたんすね?」

「う・・・・・」

実際、その通りなので、白哉は言葉に詰まる。

「体が、熱い・・・・・」

「俺のアルファのフェロモンにやられたんでしょうね。ヒート期間なのに、外に出てくるから」

恋次は、ふらつく白哉を軽々とお姫様だっこして、隊首室にある仮眠用のベッドに寝かせる。

「恋次!」

「止まりませんよ。あんたが嫌がっても、抱きます」

「よせ」

「俺のものにしてやる」

恋次は、白哉の手をしばり、逃げれないようにした。

そんなことをしなくても、ヒートの熱のせいでろくに身動きがとれないのだが。

「んう」

口づけられて、白哉はアルファのフェロモンにやられて、口を開いて恋次の舌を受け入れる。

「隊長、ああ、俺のものだ」

「れ、恋次」

「怖いっすか?」

「当たり前だ!お前は、私をレイプしようとしているんだぞ!」

「隊長は、それでもかまわないんでしょう?番になるには、セックス中にうなじ嚙まないといけませんから」

「れ、恋次、やめよ。今なら、まだ元に戻れる」

「オメガの隊長とアルファの副官っすか?番にならなきゃ、ずっとこんな裏マーケットで売ってるような危険な抑制剤飲まないといけないんすよ?この抑制剤、少量だけど毒を含んでます。ずっと飲んでたら、病気になってしまう」

「それは・・・しかし、それがないと私はヒート期間を乗り越えれない」

「乗り越えなくてういいんすよ。俺と番になれば、ヒート期間もだいぶ収まります」

「本当なのか?」

「嘘はいいません」

「浮気しないと誓えるか?」

「もとから、隊長しか目に映ってないっす」

白哉は、重い溜息をついた。

「手の戒めをとけ。恋次、お前に抱かれてやる。責任をもって、番にしろ」

「まじっすか!」

「ああ」

恋次は、白哉の手を戒めていた布を外す。

「口づけから、やり直しだ]

「はい!」

恋次は、白哉に口づけて、それは深いものに変わっていき、舌を引き抜くと、つっと銀の糸が垂れる。

白哉は隊長羽織も死覇装も脱がされていた。

胸の先端ばかりいじっていると、白哉が言いにくそうに体をねじらせる。

「どうしてほしいのか、言ってください」

「恋次・・・・・後で、覚えていろ。下も、触ってほしい」

「下って、こっちですよね?」

すでに硬い白哉のものを手でしごくと、白哉はあっけなくいってしまった。

「ああああ!!!」

「誰かの手でいくのって初めてっすか?」

「当たり前だ。キスさえ、したことがない」

「じゃあ、俺が隊長のなにもかもの初めての人っすね」

恋次は、濡れている白哉の蕾に指を入れて、ぐちゃぐちゃと音を立てる。

「も、いいから、こい」

「挿入れますよ?」

「ひああああああああ!!!」

ズチュリと、白哉を貫いた恋次のものは、白哉の奥まで入りこんだ。

「や、だめえええ、奥は、だめえええ」

「感じるんすね?」

何度も奥をこすりあげると、白哉は精液を出しながら、中いきをしていた。

「やあああん、いくの、とまらないいいい」

恋次は白夜の奥に入ったまま、抉り、揺さぶる。

ぐちゅぐちゅと奥をかきまぜて、子種をはじけさせる。

「やあああ、避妊してないいいい。孕んじゃうううう」

「番になるんだから、孕んでも平気っすよ?」

「ひああああん」

恋次は、白哉を背後から貫いて、少し長い絹のような手触りの黒髪をかきわけて、うなじを露出させると、かみついた。

「あああ、番にさせられたあああ。子種が奥でドクンドクンいってるうう」

「ふふ、子供ができたら、いいっすね?」

「やあん、まだ、子作りの心構えができてないいいい」

「そんなの、産んじゃえばできるっすよ。念のため、もっかい噛みますね?」

「ひゃああああん、いくううう」

突き上げられながら嚙みつかれて、白哉は背を弓なりにしならせて、いっていた。

「は、隊長の中すげぇ。俺の子種、全部もっていかれちまう」

「子種びゅるびゅる出てるううう。いくのとまらないいいい」

白哉は、何度もいって、最後は潮をふいていた。

「隊長、えっろ・・・・・」

「はぁん、もぅやぁあああ」

「これで終わりにしますから」

恋次は若いだけあって、性欲もおおせいだった。白哉も若いが、性欲はヒート期間なためあるだけで、いつもは淡泊だ。

「いくのとまんないいいい。ああああ」

「隊長、元気な子を産んでくださいね?」

「あああ、孕まされるううう」

それっきり、白哉は意識を失った。

「隊長?」

返事のない白哉に、恋次は白哉の体を抱きしめる。

「隊長。もう、俺だけのものだ。番になれた。愛してます」

ヒート期間中なので、白哉は次の日から2週間ほど休暇をとり、その隣には恋次の姿があるのだった。

初めての交わりで、白哉は懐妊してしまい、朽木家の跡取りを産むのであった。




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桜のあやかしと共に94

浮竹は、どうしても小さい京楽の姿が見たかった。

鴆の京楽と彼岸花の精霊の浮竹と一緒にお茶会を開くことになった。お茶には、子供になる謎の薬が混ぜられていた。

京楽はというと、浮竹がお茶なんて珍しくいれるものだから、絶対何か変なものが入っているに違いないと、警戒して飲まなかった。

『にゃんだこれはーーー』

彼岸花の精霊の浮竹がお茶を飲んでしまい、3歳児になってしまう。だが、中身は元のままのようだが、言葉がうまくしゃべれない。

『よくもまたやってくれたな。おまえも同じ刑ら」

彼岸花の精霊の浮竹は、浮竹に無理やり紅茶を飲ませる。

ぼふんと音をたてて、浮竹も3歳児になっていた。

「か・・・・かわいいいいい」

京楽は、浮竹を抱き上げて頬ずりをする。

「いたい!おじさん、ちくちくひげいたいから、や!」

浮竹は精神も3歳児なっていて、京楽が自分の恋人であるということが抜けていた。

「おじさん・・・・・・・」

大切な恋人におじさん扱いされた挙句、いやと言われて京楽はちょっとしょげるが、浮竹を抱き上げて、お菓子用に携帯していたキャンディーをあげる。

「おいちい」

「十四郎、ボクは京楽春水。いえる?」

「きょーらく、しゅすい」

「あああ、かわいい」

『独り占めはじゅるい。俺も、桜の王と遊ぶ』

『そういえば、異界にあやかし専用の遊園地ができたんだってね?そこに、行ってみない?』

鴆の京楽は、人間がだめなので、人間世界の遊園地にはいけない。

なので、あやかしが管理する遊園地に前々からひそかに行きたかったのだ。もちろん、彼岸花の精霊の浮竹と一緒に。

『ゆーえんち!おもしりょそう』

「ゆーえんち?なにそれ」

浮竹の反応はそれぞれで、浮竹は遊園地が何であるかわからず、彼岸花の精霊の浮竹は情報のみ知っていた。

「いいねぇ、今から行こうか」

『そうだね。解毒薬つくったらすぐに元に戻っちゃいそうだし』

『こら、きょーらく、俺は元の姿でいきちゃい』

『だめだめ。かわいい今の姿だから行きたいんだよ。大人の浮竹とは、いつでも行けるからね』

こうして、異界にある遊園地に4人は行くことになった。

「あれに乗りたい!」

「ああ、あれはジェットコースターだね。身長制限があるから無理だね」

「のーりーたーいー」

「はい、苺のキャンディ」

「むーーー」

キャンディをなめなながら、浮竹は京楽にだっこされて、メリーゴーランドに乗った。

「おうま、うごいてる」

「そうだねぇ。十四郎、かわいいねぇ」

『よし、きょーらく。俺たちも、あれに、のるじょ』

『メリーゴーランドでいいの?お化け屋敷もあるよ?』

『あんなの、作り物とあやかしでできているだけじゃにゃいか。あやかし同士でばけあって、何がたにょしいんだ』

『まぁ、それもそうだねぇ。ああ、桜鬼のボクじゃないけど、浮竹かわいいね。抱き上げていい?』

『好きにしゅるといい』

4人は、メリーゴーランド、観覧車、コーヒーカップに乗った。

あやかしが管理しているので、人間社会の遊園地よりは劣るが、鴆の京楽は、彼岸花の精霊の浮竹と一緒にこれて、すごくうれしそうだった。

「たまには、童心にかえるのもいいかもねぇ」

『うん、そうだね』

お昼は、レストランで4人そろってお子様ランチを食べた。

午後は、鏡の迷路、全然怖くないお化け屋敷などに行った。

アイスを食べたりもした。浮竹は苺味のアイスを気に入り、おかわりをもらっていた。

彼岸花の精霊の浮竹は、普通にバニラとチョコ味を食べていた。

『全部食べれにゃい。きょーらく、のこりくえ』

『はいはい』

『ねむくにゃってきた』

「ねむい」

2人の浮竹は、アイスを食べ終えると、京楽たちに抱かれながら、眠ってしまった。

「最後は映画館行こうと思ったんだけど、ボクの十四郎は精神も3歳児だから、見せても意味わからないだろうね」

『そうだね。でも、二人とも寝顔かわいいね』

「写真とろう。スマホで」

『うん』

鴆の京楽はスマホをもっていないので、京楽のスマホで写真をとった。

『いい思い出になったよ』

「二人とも起きそうにないし、帰ろうか」

『そうだね』

浮竹たちは、寄り添いあって、眠りについていた。寝顔が天使みたいで、二人の京楽は離れさせられずにいた。

京楽たちは、桜鬼の京楽のマンションに帰還する。

「むにゃあ・・・・」

『んー、もうたべれにゃい・・・・』

『いったい、どんな夢見てるんだか』

「浮竹、ひたすらかわいい。(*´Д`)ハァハァ」

京楽は、ちょっとやばい人になっていた。鴆の京楽は、浮竹たちが風邪をひかないように、ブランケットをかけてやった。

夕方になって、腹をすかせた浮竹たちは目を覚ます。

京楽は、さっそく浮竹をだっこしようとする。

「おひげのおじちゃん、や!」

『うう、ねむってしまった』

浮竹は、彼岸花の精霊の浮竹の服の裾をつかんで離さない。

「いっしょが、いい」

『桜の王・・・・・・』

浮竹は、甘えん坊の寂しがりやだった。

「きょーらく、寂しい?」

「うん、寂しい。十四郎がかまってくれないから」

「俺と、しっぽり、したい?」

「ぶーーーーー」

京楽は、飲みかけの緑茶を噴き出していた。

「しっぽりって、十四郎。あ、彼岸花の精霊の浮竹のせいだね」

『ばれてちまっては、しかたにゃい。俺はしっぽりしたい。早く解毒剤よこしぇ』

『はいはい、今夕飯と一緒に出すから』

鴆の京楽が、大人4人分の食事と解毒剤をいれたオレンジジュースをもってきた。

彼岸花の精霊の浮竹は、一気に飲み干してもとに戻る。

『ふふふふ、桜の王は、俺をまきこんだ罰として、明日の朝までその姿でいろ』

「おじちゃん、だあれ?」

浮竹におじさん呼ばわりされて、それがかなりショックで、彼岸花の精霊の浮竹は浮竹に解毒剤入りのオレンジジュースを飲ませた。

『どうだ、3歳児を体験した気分は』

「あんまり、覚えてない。お前をおじちゃん呼ばわりしたのは覚えてる」

『せめて、お兄さんと言え』

「そう言われても、中身も3歳児だったんだぞ。無茶を言うな」

『これにこりて、縮む薬はもう作らないことだな』

「ああ、そうする」

本当に信用して良いのかうさんくさいにおいがしたが。とリあえず元に戻ったので、夕食を食べて、彼岸花の精霊の浮竹と、鴆の京楽は泊まるが、しっぽりするので結界をはっていた。

「ねぇ、十四郎、ボクらも・・・・・・」

「しない」

「がびーん。かびんががびーん」

「おやじくさい」

しっしと、いつも一緒に眠る寝室ではなく、浮竹は自分の部屋で寝た。

しっぽりしないときは、たまに一人で寝ることもあった。

「くすん。今日は白夜くんの部屋におじゃまして寝るかな。誰かと一緒じゃないと、眠れなくなってきちゃった」

「なにーーーーー!白夜と一緒に寝るだと!3億5千万7421年早いわ!」

スパ-ンと、浮竹にハリセンで殴られて、結局しっぽりはしないが、京楽と一緒に眠ることになるのであった。





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俺も咲く。

「あーいい景色だねぇ」

「そうだな」

「一部をのぞいてね」

「ああ。あれは燃やしていいか?」

勇者京楽と魔王浮竹は、花見をしていた。

魔王城から少し離れた、桜が見事に咲き狂っている場所で。

他にも花見に来ている人間や亜人種もいたが、新勇者パーティーが騒いでいるのが、少しうっとうしかった。

新勇者パーティーのお弁当は、魔王城のコックが作ったものだった。

まぁ、いろいろ語らったりするので、浮竹もOKを出した。

まさか、同じ日の同じ時間に同じ場所で花見をするとは、思ってもいなかった。

まぁ、それは獣人盗賊が斥候として仕入れた情報からのものであったが。

「ああ、燃やしたい」

浮竹が燃やしたがっているのは、新勇者だった。

今日の新勇者は、ふんどし一丁に、金髪のおさけのヅラをかぶっていた。

「桜だけ見ずに、俺を見てくれえええええ」

新勇者は、桜という桜に立ちションをしまくって、どこかの桜の王を怒らせて、乳首とあそこが桜になっていた。

「今日の俺は一味違う。乳首が桜なんだYO!俺の乳首の桜で花見してくれ~(*´Д`)ハァハァ」

「見苦しい!」

浮竹が、ファイアーボールで新勇者の乳首の桜を燃やすと、桜はまた咲いてきた。

「魔王浮竹、俺の乳首の桜を浮かべて、酒でものまないか」

「誰がそんな汚らわしい、桜の花びらを浮かばせた酒なぞ飲むか!」

「あはん、実はあそこも桜が咲いているんだ。ふんどし脱いでいい?」

「ふんどしはつけておいたほうがいいよ。全裸だと捕まるよ?」

京楽は、まともなことを言う。

新勇者の存在などないものとして、桜を見上げては酒を飲み、弁当を食べた。

「弁当よこせ!」

新勇者は、京楽の弁当を奪う。

「あ、浮竹が作ってくれたお弁当なのに!」

「ふふふん、もう全部食ったぞ。まぁまぁな味だな」

「カラミティサンダー」

「おぎょぎょぎょ」

雷が天から落ちて、新勇者は感電する。

「あは~ん、刺激がいいわぁ。乳首の桜もビンビンだぜ。あそこの桜もびんびんだぜ」

「やっぱり、持やす‥‥‥」

浮竹が燃やそうとするのを、京楽が止める。

「何故、止める」

「君の魔法の炎だと、せっかく咲いている桜まで燃えてしまうでしょう?」

「それもそうだな。俺も雷にしよう。サンダーヴォルテックス」

「あぎゃぎゃぎゃぎゃ、ひあーん、びんびんだあああ」

新勇者の変態さに、花見にきていた客たちが去っていく。

「花見の人ごみが減るのは嬉しいけど、君がいるのがいやだねぇ」

「いやよいやよも好きのうち♡」

投げキッスをする新勇者に、浮竹はもう一度魔法を放つ。

「ゴッドブレスサンダー」

「ぎょえええええええええええええええ」

新勇者は、黒焦げになった。

でも、乳首の桜は咲いていた。ふんどしも、こげて大事なところがぽろりになっていた。

本当に、大事なところまで桜が咲いていた。

「ウィンドエッジ」

「あはん!!!いたい!!!!」

乳首とあそこの桜を、魔法で切り落とす。

すると、どこぞの桜の王を怒らせただけあって、全身が桜まみれになった。

「俺で、お花見してくれええええ」

「うぎゃああああああ、くるなあああ」

「こっちくるんじゃにゃい!」

「きもいわああ!こっちこないでええええ」

「パーティーメンバーだろう!」

新勇者は、逃げ出したパーティーメンバーを追いかけていたが、まだ花見している浮竹と京楽を見つめる。

「酒くれたら、おとなしく去る」

「本当だね?未成年の飲酒はだめだけど、特別だよ」

京楽が、高い酒をコップに注ぐ。

新勇者は、それを一気飲みして、桜の花びらをはいた。

「う、きもちわるい」

「ボクたちは、君の存在が気持ち悪い」

「ひどい!俺とのことは遊びだったのね、勇者京楽!]

「桜を咲かせた人間の剥製‥‥‥ふふふふ」

「ちょ、浮竹、目がまじになってるよ」

「サンダーブレスからの、カラミティアイシクル!」

黒焦げになって、でも全身に桜を咲かせて、氷に閉じ込められた新勇者は沈黙した。

「死んだの?」

「仮死状態にした。もう、花見はこりごりだ」

「この子、置いていくの?」

「もって帰りたいのか?」

「まさか」

けらけらと、京楽は笑って、浮竹にキスをする。

「来年の花見は、魔王城でしよう。ね?」

「ああ」

「じゃあ、桜の木植えないとね?」

「何本かあるが、花見というほどの量じゃないからな」

浮竹と京楽は、誰もいなくなった花見の広場で、いちゃこらしながら、氷像と化した新勇者を放置プレイして、帰っていくのであった。








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桜のあやかしと共に93

「魔神ユーハバッハ。私はその力を得て、さらに強くなるのだ。ふはははは」

かつて、遠い昔魔神として君臨していたユーハバッハは、人とあやかしの手によって滅ぼされたが、核は封印されていた。

核をどうやっても、壊すことができなかったからだ。

藍染は、深い深い深海の果てに封印されていた魔神ユーハバッハの核の封印を、無理やり壊して核をもちだす。

そこからエネルギーを抽出して、自分の体内に取り込んだ。

「ぐああああああああ」

すさまじいエネルギーに、9つある命のうち、2つを失い、残りの命は7つになったが、藍染は仮初ではあるが、魔神となった。

「やった、やったぞ!ついに私は神になったのだ!」

藍染は喜ぶ。

その力が一時的なものとは知らずに。

「牛鬼」

「はっ」

「神の血を与えよう。四季の王を葬り、私をさらなる神の高みへと至らしめるために」

「この牛鬼、必ずや藍染様のお力となりましょうぞ」



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「桜の王、助けてくださいな。雨が降らんのです。このままでは、あやかしまんじゅうに入れるあずきが収穫できなくなっちまうだ」

小豆とぎが訪れてきたかと思うと、浮竹を頼りにくる。

「雨なら、水龍神に頼んだほうがいいんじゃないか?」

「それが、藍染に女の水龍神様がさらわれて、それから行方不明なんだな」

「ああ‥‥」

千早という水龍神と藍染の子と、その母親である水龍神を藍染の呪縛から解き放ち、どこへでもいくといいと言った記憶があった。

「俺のせいでもあるのか‥‥‥」

「桜の王のせい?なにかしただか?」

「いや、こっちの話だ。京楽、一緒にきてくれるか。お前の式の力をかりたい」

「うん。ボクはどこにで十四郎についていくよ。たとえ行き先が地獄でも」

京楽は、雨を降らせれる式神の呪符を取り出す。

「この子なら、雨を降らせそう」

「ああ。俺の桜の術でも雨は降らせれるが、範囲はあまり広くないからな」

「桜の王とそのおつきの者、あずき畑に案内するだ」

小豆とぎは、異界へと入っていく。

異界に入ると、一面にあずき畑が広がっていたが、皆枯れかけていた。

「ごらんの有様なんだな。雨が降らないせいで、枯れるのも時間の問題なんだな」

京楽は、式神の呪符を取り出す。

それは一羽の小鳥となって、空を羽ばたいていく。

「天空破邪!天雨!」

ざぁぁぁと、ばけつをひっくりかえしたような雨が降ってきた。

「よし、俺も。桜よ、このあずき畑に命をふきこめ」

桜の花びらが雨と一緒になって、散っていく。

桜の花びらに触れたあずきの株は、みるみる緑色に戻り、元気になっていく。

「桜の王もすごいけど、おつきの者もすごいのだ」

「ボクは桜鬼の京楽春水。おつきの者じゃないからね。桜の王のパートナーだよ」

「桜の王は、春を司るだけに春がきてるのかなんだな」

このままいけば、あずきは無事収穫できそうで、あやかしまんじゅうが作れなくなる日は、当分の間訪れないと思えた。

あずき畑を出て、久しぶりに桜の花鬼の里にきていた。

「ふははははは、待っていたぞ、四季の王それに桜鬼」

「は?お前誰。京楽、知ってるか?」

「いや、知らないよ。頭がわいたあやかしなんじゃない」

桜の里で、頭がレインボーアフロ姿のあやかしと出会う。

「きーーーーー。藍染様の部下の俺様が、頭がわいているだと?この人の姿は仮のもの。俺様は人間の誰もが恐れる人食いの牛鬼様だ!」

「あっそ。じゃあ、俺たちは帰るから」

「待て待て待てーーーーーーー!無視しようよするなああああ!!」

「めんどくさいねぇ。天空破邪、天雷」

「うぎゃああああああああ。しびれるうううううう」

京楽の術を食らっても、牛鬼はぴんぴんしていた。

「思ったより、たふそうだな」

「牛鬼だからな。力はそれなりにあるんだろう」

「ふははははは!俺様は、魔神ユーハバッハの力を受け継ぎ、魔神となられた藍染様の血をもらっているのだ!」

「魔神ユーハバッハだと!?」

牛鬼の言葉を聞いて、浮竹が驚く。

「どうしたの、十四郎」

「はるか昔、人とあやかしの手によって滅ぼされ封印された魔神の名だ。そして、全ての花鬼の父でもある」

「花鬼の父?」

「ああ。ユーハバッハが、花鬼というあやかしを誕生させた」

「そんなすごいやつの力を?藍染ごときが?」

「きいいいい、藍染様といえ!」

「壊せなかった核が、深海に封印されていたはずだ。封印を無理やり解いたのか」

「そ、そんなことまではしらん!」

「核だけではユーハバッハの復活はありえない。人を一億人は生贄に捧げないと、復活はありえないから、大丈夫だとは思うが、核からエネルギーを抽出したら、一時的に魔神と同じ存在になれる」

「やばいじゃない。どうするの?」

「放置だな。放っておけば、魔神じゃなくなる。あのアホは、しぶといだけでそれに気づいていないようだが」

「藍染様は偉大なのだ!アホなどではない!多分!」

牛鬼は、体中に鋭い刃をつけて襲い掛かってくる。

「桜の花びらよ!」

「天空破邪、天地!」

浮竹が桜の花びらで牛鬼の体を燃やして、京楽が大地を割って牛鬼を落とす。

「ぬがあああああ、これしきのことでええええ」

魔神藍染の血というのは本物なのか、本来のあやかしであればくたばるだけの威力があった。

「桜の花びらよ、生気を吸ってしまえ!」

「うぎゃあああああ」

「天空破邪、天嵐!」

生気をごっそりもっていかれた牛鬼は、大分弱った。そこに、京楽が嵐を叩きこむ。

「あああああ、藍染様、万歳!!!」

牛鬼は、ぼろぼろになって、最後は京楽の桜鬼神の力で、桜の文様の刀で首を落とされて、死んだ。

「まさか、ユーハバッハにまで手を出すなんて。命がいくつもないと、できない芸当だな」

「あいつ、確か命が10個あるんだっけ。この前1個なくなったから、今回のことでさらに命をなくして、残りの命は8個以下だろうね」

「命に個数があるのが、そもそもおかしい」

「まぁ、そうなんだけど。まぁ、今は藍染がどこにいるかも分からないし、刺客と言ってもたいしたことないから、放っておこうか」

「そうだな。藍染はゴキブリみたいにしぶといから、まぁ魔神になったって喜んでいられるのも今のうちだな。そのうち、また元の神もどきに戻る」

「うん」

浮竹は、牛鬼の死体を養分に、桜を育てた。

花びらが真っ赤な桜咲いた。

「真っ赤な桜‥‥‥不吉だね」

「まぁ、美しくはあるがな」


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「いちいち、血を与えるのではこの私は痛い思いをしなければならない。魔神の種を作ろう」

藍染は、また動き出す。

ユーハバッハの核は、エネルギーをいくら吸い取られても、壊れることはなかった。

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桜のあやかしと共に92

「かわいいぞ、彼岸花の精霊の俺」

『むすーーー』

彼岸花の精霊の浮竹は、京楽のマンションでしゅわしゅわ、コーラを飲んで女の子の子供になってしまった。

浮竹が、また変な薬を入れたのだ。

今回のターゲットは彼岸花の精霊の浮竹のようで、女の子の子供になったのだが、なぜか衣装が用意されてあって、鴆の京楽に着替えさせられた。

『浮竹、かわいいねぇ。でも、この姿じゃあしっぽりできないねぇ』

『早く、元に戻す薬を作れ、京楽』

『えー、どうしようかなぁ』

あまりにも彼岸花の精霊の浮竹がかわいいので、鴆の京楽もすぐに戻すのを渋っていた。

『桜の王は、薬を飲まないのか』

「今回はお前を子供の女の子にしたかったので、俺は飲まない。かわいいなぁ、彼岸花の精霊の俺。その姿なら、鴆の京楽じゃなくてもたらしこめるぞ」

『京楽、お前も楽しんでるな?』

『まぁねぇ。事前に許可あげたから』

『むすーーーーー』

京楽は、スマホで彼岸花の精霊の浮竹の写真をとる。

『写真とるな。彼岸花を咲かせるぞ』

「その姿で脅されても、かわいいだけだねぇ」

『むすーーーーーー』

彼岸花の精霊の浮竹は、怒って鴆の京楽に耳打ちする。

『おやすいご用だよ』

鴆の京楽は、住処の洞窟に戻って、何かの薬をとってきた。

『これを飲め。そしたら、しばらくこの恰好でいてやる』

「なんか分からんが、飲んでやろう」

「ボクも飲むよ。君だけってわけにはいかないしね」

浮竹と京楽は、薬を飲んだ。

ぼふんと音をたてて、浮竹はオッドアイの白猫の子猫に、京楽はたぬきになった。

『ふふふ、これでお前たちもしっぽりできない』

「大変だよ十四郎!しっぽりできない!」

「別にできなくてもいいだろうが」

「そんな!しっぽりがない生活なんて考えられない」

京楽は、たぬきの姿で浮竹の子猫の首をくわえた。

「お、おろせ京楽!」

「十四郎と、しっぽりできないなんて、しっぽりできないなんて」

京楽は、薬の効果なのかパニック状態になっていた.

「鴆の京楽、解毒剤はあるか?」

『あるけど、浮竹が元の恰好に戻るまで、その姿でいろだってさ』

『ふふふふ、子猫の桜の王はかわいいな?たぬきな桜鬼もかわいいが」

彼岸花の精霊の浮竹は、京楽から浮竹の体をとりあげて、頬ずりした。

「毛皮がもふもふだ」

「うにゃあああああああ」

浮竹は、頬ずりふが激しいので、変な声をだしていた.

「お、俺が悪かった、彼岸花の俺。もとに戻る薬やるから、俺たちも元に戻してくれ」

『いやだ。こうなったら、嫌がらせをしてやる。今日1日はこの恰好のままでいる』

鴆の京楽に抱き上げられて、かわいい姿の彼岸花の精霊の浮竹は、チュールを取り出す。

「チュール!くれくれ」

『いいぞ。好きなだけ食え』

チュールに惑わされて、浮竹はすっかり彼岸花の精霊の浮竹のものになっていた。

「十四郎、こっちに戻っておいで」

「いやだ。チュール食べる。お前も食べてみろ」

「えー。どれどれ‥‥‥」

たぬき姿の京楽も、チュールを食べる。

「何これ!激うま!」

鴆の京楽は、彼岸花の精霊の浮竹の頭を撫でる。

『今日しっぽりできないよ?それでもいいの?』

『いやだ、しっぽりする!』

『じゃあ、元に戻らないとね』

『分かった。‥‥‥桜の王の俺と、桜鬼の京楽は、責任取って今日は1日その姿でいろよ』

「しっぽりできないいいいい」

「うるさいわあああ。チュール食って、しっぽりを忘れろおおお」

浮竹は、ハリセンがないので、京楽に猫パンチをかましていた。

「うげふ、猫パンチいいいい。きもちいいいい」

浮竹は、何度も猫パンチをお見舞いするが、おとなのたぬき姿の京楽にはきいていなかった。

『かわいい』

『確かにかわいいね。心が和むよ』

結局、彼岸花の精霊の浮竹は解毒剤を飲んで1日も経たずに元に戻り、浮竹と京楽は丸1日、獣姿なのであった。

『ほらほら、高級猫缶詰だぞ』

彼岸花の精霊の浮竹は、子猫になった浮竹とたぬきになった京楽で遊ぶ。

鴆の京楽は、それを見て和やかに笑う。

「なにゆえ、浮竹と京楽は子猫とたぬきなのだ?」

帰ってきた白哉が、獣姿の二人を見て首を傾げる。

『お、白哉か。二人は悪いことをしたから、今日1日獣姿なんだ』

「ふむ‥‥‥」

白哉も黒猫の子猫姿に自分からなって、京楽家のマンションは、にぎやかになる。

「チュールがほしい」

「白哉も、チュール好きだな?」

「そういう浮竹、兄も好きであろうが」

「ああ。京楽も好きになったようだ」

「しっぽりしたい‥‥」

京楽は、たぬき姿でしっぽりしたいと仲睦まじくいちゃつく、鴆の京楽と彼岸花の精霊の浮竹を見ているのであった。

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