魔王と勇者と13
「やあ、一護くんに白哉くんじゃないかい。何しに来たの?遊びにきたの?」
魔王京楽は、二人の勇者相手に軽口をたたく。
「聖女教から、兄を討伐せよと言われてやってきた」
「俺も。聖女教の命令で」
黒崎一護と朽木白哉は、浮竹と同じ勇者である、聖女教から勇者の認定を受けている。
「でも、ボクを倒す気はないんでしょ?」
「当り前だ。兄のような優しいよき魔王を倒して、次の魔王が藍染のような輩になったら困る」
「俺も白哉と同じ考えだ。京楽さんには魔王であり続けてほしい」
「は、はじめまして。勇者の浮竹十四郎という」
浮竹は一護と白哉と会うのは初めてで、緊張していた。
「兄が、3人目の勇者か。噂は聞いている」
「京楽さんと結婚しちまった勇者があんたか」
浮竹は、京楽のに影に隠れる。
「よ、よろしく」
「うむ」
「ああ」
白夜と一護は笑って、京楽のに影に隠れて少しおびえている浮竹と握手をする。
「おびえずとも、何もせぬ」
「そうだぜ。同じ勇者同士、仲良くしようぜ」
「せっかく勇者が3人もぞろったんだし。お茶会でも開こうか」
「好きにせよ」
「魔王城の飯うまいから、ちょっと楽しみだな」
浮竹は、テーブルと椅子のある中庭に一護と白哉を案内した。
「俺は聖女教の勇者の認定を受けていないんだ。でも、一応勇者だ」
「別に、聖女教が勇者をどうこうするのは少ないからな。まぁ、今回みたいに魔王を討伐せよとか命令されるけど、従わなくてもいいし。浮竹さんが認定受けてなくても、世界が勇者って認めてたら、もう勇者だ」
「俺は世界に、人々に勇者と認めてもらえているのか?」
「うむ。北の勇者浮竹十四郎と言われている」
「そ、そうか」
浮竹は少し赤くなって照れながら、京楽の執事が紅茶を入れてくれるのを手伝った。
「茶菓子はバームクーヘンだよ」
「お、うまそうだな」
「兄の城は、いつ見ても無駄に豪華だな」
白夜の言葉に、京楽は笑う。
「元魔王の藍染の城をそのまま使ってるからね。成金趣味はないけど、あったのは藍染だよ。まぁ、城の一部が金箔はられてぴかぴかしてたのはどうかと思ってはがしたけどね」
「藍染といえば、聖女アナスタシアの夫になっているな」
「まじ、ありねぇ。17代目聖女アナスタシアはどこかおかしいんじゃないのか。魔王排斥を掲げておきながら、元魔王を夫にして魔族との間に子をもうけるなんて」
一護が、バームクーヘンを頬張りながら、現聖女である17代目聖女アナスタシアへの愚痴を言う。
「確かに、おかしいね。藍染に洗脳されている可能性が高いけど、聖女で女神でもあるアナスタシアがそう簡単に洗脳されるとも思えない」
京楽は、執事にお茶のおかわりをいれてもらいながら、一護の言葉に同意する。
「この前の勇者の反魂といい、聖女の枠からずれた行動をしているな」
浮竹は、前回の勇者のことを思い出し、少し哀れに思った。
「あの元勇者、何代目の聖女か知らないけどアナスタシアの夫だったんだろ。聖女はクローンで生まれてきても、記憶は継承され続けるから、今のアナスタシアにとっても、夫であっただろうに、扱いが酷いな」
「確かに。17代目の聖女アナスタシアはどこかおかしいな」
白哉も頷いた。
「今の聖女アナスタシアは藍染を魔神にしようとしているらしいよ」
「え、本当なのか?」
「まことか?」
一護と白哉は知らないようだった。
「密偵を送り込んでいるからね。確かな情報だよ」
一護と白哉は、大きくため息をつく。
「今後、聖女の言葉には従わねぇ」
「私もだ」
「いいのか?聖女教に敵対されたら」
「大丈夫だよ、浮竹。聖女教は確かにこの世界で一番の宗教だけど、モンスターを退治してくれる勇者のおかげもあって普及しているんだよ。一護くんと白哉くんをどうにかまではできないよ」
「なら、いいんだが」
浮竹は、一護と白哉と友達になった。
「じゃあ、今度会いに来る時は、聖女教がどうこうじゃない時にくるから」
「私もだ。帰って、モンスター討伐をせねば」
「二人とも、俺と友達になってくれてありがとう」
「どういたしまして」
「勇者の友が増えるのはよいことだ」
去っていく二人の勇者を見送って、浮竹と京楽も魔王城に戻る。
「魔神か‥‥‥。そんな存在になれたのは、悪魔王ディアブロくらいなんだけどね」
「魔族と悪魔は違うんだろう?」
「うん。魔族は種族で、悪魔は悪魔っていう種族だよ。まぁ、魔族は悪魔に近いから、悪魔になる魔族もけっこういるけどね。基本は別ものだよ」
そんな会話をしている京楽と浮竹の元に、一通の手紙がフクロウの足に結ばれてやってくる。
「なんて書いてあるんだ?」:
「16代目聖女アナスタシアの生存を確認。聖女教で16代目と17代目をめぐって争いが起きているって」
「先代の聖女はまだ生きていたのか!」
「そうなると、聖女になるのは16代目だね。17代目は不正に生まれてきたことになるから」
「また、きな臭いことになりそうだな」
「そうだね」
浮竹と京楽は、聖女教が内部で瓦解すればいいのにと思うのであった。
魔王京楽は、二人の勇者相手に軽口をたたく。
「聖女教から、兄を討伐せよと言われてやってきた」
「俺も。聖女教の命令で」
黒崎一護と朽木白哉は、浮竹と同じ勇者である、聖女教から勇者の認定を受けている。
「でも、ボクを倒す気はないんでしょ?」
「当り前だ。兄のような優しいよき魔王を倒して、次の魔王が藍染のような輩になったら困る」
「俺も白哉と同じ考えだ。京楽さんには魔王であり続けてほしい」
「は、はじめまして。勇者の浮竹十四郎という」
浮竹は一護と白哉と会うのは初めてで、緊張していた。
「兄が、3人目の勇者か。噂は聞いている」
「京楽さんと結婚しちまった勇者があんたか」
浮竹は、京楽のに影に隠れる。
「よ、よろしく」
「うむ」
「ああ」
白夜と一護は笑って、京楽のに影に隠れて少しおびえている浮竹と握手をする。
「おびえずとも、何もせぬ」
「そうだぜ。同じ勇者同士、仲良くしようぜ」
「せっかく勇者が3人もぞろったんだし。お茶会でも開こうか」
「好きにせよ」
「魔王城の飯うまいから、ちょっと楽しみだな」
浮竹は、テーブルと椅子のある中庭に一護と白哉を案内した。
「俺は聖女教の勇者の認定を受けていないんだ。でも、一応勇者だ」
「別に、聖女教が勇者をどうこうするのは少ないからな。まぁ、今回みたいに魔王を討伐せよとか命令されるけど、従わなくてもいいし。浮竹さんが認定受けてなくても、世界が勇者って認めてたら、もう勇者だ」
「俺は世界に、人々に勇者と認めてもらえているのか?」
「うむ。北の勇者浮竹十四郎と言われている」
「そ、そうか」
浮竹は少し赤くなって照れながら、京楽の執事が紅茶を入れてくれるのを手伝った。
「茶菓子はバームクーヘンだよ」
「お、うまそうだな」
「兄の城は、いつ見ても無駄に豪華だな」
白夜の言葉に、京楽は笑う。
「元魔王の藍染の城をそのまま使ってるからね。成金趣味はないけど、あったのは藍染だよ。まぁ、城の一部が金箔はられてぴかぴかしてたのはどうかと思ってはがしたけどね」
「藍染といえば、聖女アナスタシアの夫になっているな」
「まじ、ありねぇ。17代目聖女アナスタシアはどこかおかしいんじゃないのか。魔王排斥を掲げておきながら、元魔王を夫にして魔族との間に子をもうけるなんて」
一護が、バームクーヘンを頬張りながら、現聖女である17代目聖女アナスタシアへの愚痴を言う。
「確かに、おかしいね。藍染に洗脳されている可能性が高いけど、聖女で女神でもあるアナスタシアがそう簡単に洗脳されるとも思えない」
京楽は、執事にお茶のおかわりをいれてもらいながら、一護の言葉に同意する。
「この前の勇者の反魂といい、聖女の枠からずれた行動をしているな」
浮竹は、前回の勇者のことを思い出し、少し哀れに思った。
「あの元勇者、何代目の聖女か知らないけどアナスタシアの夫だったんだろ。聖女はクローンで生まれてきても、記憶は継承され続けるから、今のアナスタシアにとっても、夫であっただろうに、扱いが酷いな」
「確かに。17代目の聖女アナスタシアはどこかおかしいな」
白哉も頷いた。
「今の聖女アナスタシアは藍染を魔神にしようとしているらしいよ」
「え、本当なのか?」
「まことか?」
一護と白哉は知らないようだった。
「密偵を送り込んでいるからね。確かな情報だよ」
一護と白哉は、大きくため息をつく。
「今後、聖女の言葉には従わねぇ」
「私もだ」
「いいのか?聖女教に敵対されたら」
「大丈夫だよ、浮竹。聖女教は確かにこの世界で一番の宗教だけど、モンスターを退治してくれる勇者のおかげもあって普及しているんだよ。一護くんと白哉くんをどうにかまではできないよ」
「なら、いいんだが」
浮竹は、一護と白哉と友達になった。
「じゃあ、今度会いに来る時は、聖女教がどうこうじゃない時にくるから」
「私もだ。帰って、モンスター討伐をせねば」
「二人とも、俺と友達になってくれてありがとう」
「どういたしまして」
「勇者の友が増えるのはよいことだ」
去っていく二人の勇者を見送って、浮竹と京楽も魔王城に戻る。
「魔神か‥‥‥。そんな存在になれたのは、悪魔王ディアブロくらいなんだけどね」
「魔族と悪魔は違うんだろう?」
「うん。魔族は種族で、悪魔は悪魔っていう種族だよ。まぁ、魔族は悪魔に近いから、悪魔になる魔族もけっこういるけどね。基本は別ものだよ」
そんな会話をしている京楽と浮竹の元に、一通の手紙がフクロウの足に結ばれてやってくる。
「なんて書いてあるんだ?」:
「16代目聖女アナスタシアの生存を確認。聖女教で16代目と17代目をめぐって争いが起きているって」
「先代の聖女はまだ生きていたのか!」
「そうなると、聖女になるのは16代目だね。17代目は不正に生まれてきたことになるから」
「また、きな臭いことになりそうだな」
「そうだね」
浮竹と京楽は、聖女教が内部で瓦解すればいいのにと思うのであった。
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ほっとけーきだけにほっとけ
「浮竹、ボクを食べて?」
京楽は、パンツ一枚でベッドの上に寝っ転がって、浮竹を誘う。
甘い香りがした。
京楽は、両乳首とへその上に、ホットケーキを乗せて浮竹が食べてくれるのを待っていた。
「誰が食うか、そんなものおおおお!!」
浮竹は、京楽に蜂蜜をぶっかけて、蹴り転がす。
「ああん、ボクのミルク入りの特製ホットケーキが!」
「なんちゅうものいれとるんじゃわれええええ!!!」
浮竹は、もしも食べていたらを想像すると、鳥肌が立った。
「おかわりあるよ!まだ焼いてないだけで!」
「お前が自分で食え!」
「え、浮竹のミルクもらえるの!?」
「誰がそんな変態なことするかああああ!!!」
ツッコミを入れすぎて、浮竹はせきをする。
ごほごほとせきこんでいると、ゴポリをと血を吐いた、
「浮竹!!!」
「いいから、服を着ろ。一人で4番隊のところに行ける」
「でも」
「そんな変態な恰好で外に出るつもりか」
「浮竹が望むなら」
「アホか。いいからシャワー浴びてきて着替えろ。ごほっごほっ」
「マッハで浴びてくるね」
5分後、マッハでシャワーを浴びて、院生の服に着替えた京楽を見て、浮竹は安堵する。
「ちょっと、自分だけじゃ4番隊のところに行けそうにない」
「薬は飲んだ?」
「飲んだが‥‥‥‥ごほっごほっ」
また吐血を繰り返す浮竹をお姫様抱っこして、京楽は4場隊のところまで瞬歩で移動する。
「あら、浮竹さんじゃありませんか」
ちょうど、隊長の卯ノ花がいて、浮竹を診てくれた。
「軽い発作です。一日安静にしていば、大丈夫でしょう」
「ありがとうございます」
「ありがとうございました」
浮竹は卯ノ花から直々に回道をかけてもらい、少し元気になった。
「何も入ってない、普通のホットケーキなら食ってやってもいい」
「ええ!ボクのミルクいれたほうが絶対おいしく・・・・・・・おぶ」
鳩尾を蹴られて、京楽は黙り込む。
「お前は、自分の精液が入ったホットケーキが食えるの か?」
「そんなもの、食べれるわけないじゃない。ばっちい」
「そんなものを俺に食べさせようとするなああああ!!!」
「もぎゃああああああああああ!!!」
「はぁはぁ」
浮竹は、荒い呼吸をする。
安静にしようと、ベッドに横になる。
「ボク、君のミルク入りなら、食べれるよ?」
「誰がやるかああああああああ!!」
安静にしなきゃいけないのに、同室の変態のせいで浮竹は発作が悪化し、2日間寝込むことになる。
それに、京楽は反省するのだった。
ほんの少しだけ。
京楽は、パンツ一枚でベッドの上に寝っ転がって、浮竹を誘う。
甘い香りがした。
京楽は、両乳首とへその上に、ホットケーキを乗せて浮竹が食べてくれるのを待っていた。
「誰が食うか、そんなものおおおお!!」
浮竹は、京楽に蜂蜜をぶっかけて、蹴り転がす。
「ああん、ボクのミルク入りの特製ホットケーキが!」
「なんちゅうものいれとるんじゃわれええええ!!!」
浮竹は、もしも食べていたらを想像すると、鳥肌が立った。
「おかわりあるよ!まだ焼いてないだけで!」
「お前が自分で食え!」
「え、浮竹のミルクもらえるの!?」
「誰がそんな変態なことするかああああ!!!」
ツッコミを入れすぎて、浮竹はせきをする。
ごほごほとせきこんでいると、ゴポリをと血を吐いた、
「浮竹!!!」
「いいから、服を着ろ。一人で4番隊のところに行ける」
「でも」
「そんな変態な恰好で外に出るつもりか」
「浮竹が望むなら」
「アホか。いいからシャワー浴びてきて着替えろ。ごほっごほっ」
「マッハで浴びてくるね」
5分後、マッハでシャワーを浴びて、院生の服に着替えた京楽を見て、浮竹は安堵する。
「ちょっと、自分だけじゃ4番隊のところに行けそうにない」
「薬は飲んだ?」
「飲んだが‥‥‥‥ごほっごほっ」
また吐血を繰り返す浮竹をお姫様抱っこして、京楽は4場隊のところまで瞬歩で移動する。
「あら、浮竹さんじゃありませんか」
ちょうど、隊長の卯ノ花がいて、浮竹を診てくれた。
「軽い発作です。一日安静にしていば、大丈夫でしょう」
「ありがとうございます」
「ありがとうございました」
浮竹は卯ノ花から直々に回道をかけてもらい、少し元気になった。
「何も入ってない、普通のホットケーキなら食ってやってもいい」
「ええ!ボクのミルクいれたほうが絶対おいしく・・・・・・・おぶ」
鳩尾を蹴られて、京楽は黙り込む。
「お前は、自分の精液が入ったホットケーキが食えるの か?」
「そんなもの、食べれるわけないじゃない。ばっちい」
「そんなものを俺に食べさせようとするなああああ!!!」
「もぎゃああああああああああ!!!」
「はぁはぁ」
浮竹は、荒い呼吸をする。
安静にしようと、ベッドに横になる。
「ボク、君のミルク入りなら、食べれるよ?」
「誰がやるかああああああああ!!」
安静にしなきゃいけないのに、同室の変態のせいで浮竹は発作が悪化し、2日間寝込むことになる。
それに、京楽は反省するのだった。
ほんの少しだけ。
魔王と勇者と12
かつて、白竜ゼイアスには友がいた。
契約者であり、主でもあった。
聖女教が認定した勇者であった。もう何百年も昔の話なのに、元勇者は目の前にいた。
「哀れだな、オリヴィエ。死してなお、聖女教の傀儡となるか」
「私は死んでなんていませんよ?」
「オリヴィエ、お前は死者だ。魂は一度冥界にいった。反魂で蘇ったにすぎん」
「反魂だろうとなんだろと、今を生きています。さぁ、ゼイアス、契約に従い私に従いなさい」
オリヴィエは、6代目勇者であった。現代の今の勇者は3人で、30代~33代目にあたる。
オリヴィエは、金の巻き毛に青い瞳をした、7代目聖女の婚姻相手でもあった。
「聖女アナスタシアのため、魔王は殺します」
「今の17代目聖女アナスタシアはお前が愛したアナスタシアではない」
「そうでししょうね。でも、アナスタシアは代々クローンで世襲している。記憶も前の聖女のものをもって生まれてくる。正確には私の愛したアナスタシアではないかもしれないけれど、同時に私が愛したアナスタシアでもある」
白竜ゼイアスは、契約のためにオリヴィエに逆らえない。
「く、契約とはこういう時う不便なものだ」
「ゼイアス、私とアナスタシアの子はどうなったか知りませんか」
「ロセアなら、ロセア王国の初代国王になった」
「ほう。私の子は、国を作ったのですね。さすが聖女アナスタシアと勇者であった私の子だ」
「ロセアも、もうこの世にはいないぞ。いるのは、お前が愛した記憶をもつ17代目の聖女アナスタシアと、元魔王である藍染の間に生まれた聖者ミネルだ」
白竜ゼイアスは、契約にしばられてオリヴィエを殺すことができない。
「こうなったら、我が古き友にして現魔王である京楽に全てを委ねるか‥‥‥」
ゼイアスの意識は次第ににごっていく。
魔王京楽の友、白竜ゼイアスではなく、6代目勇者の親友の聖竜ゼイアス・クラインになっていた。
「魔王京楽、覚悟!」
「あーあ。今日はついてないね。浮竹の前で紅茶股間に零して火傷するし、聖女教の刺客は次々とくるし」
もはや、聖女教は浮竹を勇者として認めず、魔王京楽の伴侶である敵として見ていた。
「京楽、愚痴ってないで手を動かせ。このアンデットたち、元勇者の兵士だろう。どこかに操っている元勇者がいるはずだ」
「浮竹には、怒られるし‥‥」
「真面目にしないと、離婚するぞ京楽!」
「元勇者目、どこにいる!」
とたんに反応を切りかえる京楽に、浮竹は苦笑するしかなかった。
「巨大な影‥‥‥‥ドラゴンか!ドラゴンの背に、元勇者がいるようだ」
「ばかな。あれは白竜ゼイアスだ。なぜ、彼が元勇者に従ってる。‥‥‥‥古の契約か。せめて、ゼイアスは正気になって生き延びてもらおう」
京楽は、空中にいくつもの複雑な魔法陣を描くと、1つの魔法を構築する。
「ハイ・エリクシア!」
神の薬エリクシアと同じ効果のある究極の癒しの術であった。傷を癒すだけでなく、どんな状態異常も元に戻す。
白竜ゼイアスは我に返り、契約者であった6代目勇者オリヴィエを背中から放り出す、
「ゼイアス、裏切る気ですか!」
「このゼイアスが契約し、友としたオリヴィエは死んでいる。反魂で蘇ったお前は、まがいものだ」
「私は正真正銘の勇者オリヴィエですよ!?」
「今の勇者は、3人いる。下に魔王京楽と一緒にいる浮竹十四郎、そしてここにはいない黒崎一護、朽木白哉だ」
「同じ時代に勇者が3人も?ばかな時代になったものだ。まぁいい、いけ、私の兵士たちよ!」
オリヴィエは、同じく反魂で大量に蘇った自分の兵士たちを京楽と浮竹にさしむける。
「ええい、らちがあかん。炎の精霊王よ、顕現せよ!」
浮竹は、炎お精霊王イフリールを呼び出して、アンデットたちを焼き尽くす。
「おのれ、精霊王と契約して‥‥幻のエレメンタルマスターですか。厄介な」
「もう、君を守る兵隊はいないよ?さぁ、覚悟するんだね、6代目勇者オリヴィエ・カイントス」
「おのれえええ。聖女アナスタシアのためにも、魔王は私が滅ぼします」
「無理だよ。ハイ・エリクシアの光を君も受けたはずだ。反魂も一種の状態異常。もうすぐ、君は消えてなくなる」
「ならば、道連れにするまでですよ!」
オリヴィエは、禁忌の魔法を発動させる。
「ワールドエンド」
「京楽!」
「大丈夫。ボクもだてに魔王やってないよ。ブラックホール」
京楽は、オリヴィエの放った終末の魔法をブラックホールの魔法で食らっていく。
「おのれえええ、魔王京楽!!!」
「ジ・エンドだよ?」
オリヴィエの背後から現れた浮竹が、魔王剣ディアブロで反魂の核である胸にある魔石を切り砕く。
「ああああああああ!愛しています、アナスタシア!聖女万歳!」
オリヴィエは、灰となって消えた。
「すまぬ、勇者浮竹、魔王京楽。古の契約により、反魂で蘇ったオリヴィエに服従を強いられていた。それすらも消すとは、ハイ・エリクシアの魔法はすごいな。聖女アナスタシアでも使えないのではないか?」
「そりゃそうでしょ、。ボクのオリジナル魔法だもん」
「京楽、お前ってっすごかったんだ」
「ちょ、浮竹!?今頃何言ってるの!」
「ただのスケベな優しいだけのアホ魔王だと思ってた」
「スケベは余計ですぅ」
京楽はすねる。
「はははは、京楽、お前の伴侶は面白いな。聖女見習いだった、カリーナを思いだす。カリーナとお前は恋人同士だったが、アナスタシアに殺されたのであったな」
「あ、カリーナのことは」
「話していないのか?」
「う、うん」
「京楽?俺は、お前に昔恋人がいても気にしないぞ?」
「浮竹、そう笑顔でいいながら足ぐりぐりするのやめてよお。今は浮竹一筋なんだから」
「ふん、どうだか」
騒ぎが終わり、魔王城に避難していた人が出てくる。
「あ、ドラゴンだ!」
「おっと、我は人は苦手なのだ。カララッカに戻る」
白竜ゼイアスは、巨大な体を翻して、羽ばたいて消えていく。
「もう大丈夫だ」
「本当、魔王様?」
「魔王様、お怪我は!?」
わらわらとよってくる民と適当に距離を置いて、京楽はふてくされている浮竹の手を引っ張って魔王城に入っていく。
「京楽?」
「ボクが、今愛しているのは浮竹だけだから。カリーナは300年ほど前のボクの恋人だった聖女見習いの少女だった。ボクは魔王候補に選ばれていて、聖女アナスタシアに殺されてしまったけれど」
「す、すまん。そんな事情があったなんて‥‥」
「ううん、いいんだよ。ただ、聖女アナスタシアと元魔王藍染だけは許せない。今回のことも、二人が原因だろう」
「こんなに反魂できるなんて、聖女か魔王か、あるいは両方だものな」
「あら。オリヴィエはまた死んでしまったの。せっかく、新しい命をあげたのに」
「アナスタシア。我らの子のカインが泣いているぞ」
「あら。ミルクはあげたし、おしめかしら。それとも、高濃度魔力が切れたのかしら」
聖女アナスタシアは、自らの子に高濃度魔力を与えて、その力を増大させていた。
「カインは、近いうちに私たちの手ごまとして使う。いいね、アナスタシア」
「ええ、愛しいあなた。子なんて、また産めばいいだけなんだから」
クスクスと聖女は笑う。
十代前半で肉体の年齢を止めた聖女は、あどけない顔で笑い続けるのであった。
契約者であり、主でもあった。
聖女教が認定した勇者であった。もう何百年も昔の話なのに、元勇者は目の前にいた。
「哀れだな、オリヴィエ。死してなお、聖女教の傀儡となるか」
「私は死んでなんていませんよ?」
「オリヴィエ、お前は死者だ。魂は一度冥界にいった。反魂で蘇ったにすぎん」
「反魂だろうとなんだろと、今を生きています。さぁ、ゼイアス、契約に従い私に従いなさい」
オリヴィエは、6代目勇者であった。現代の今の勇者は3人で、30代~33代目にあたる。
オリヴィエは、金の巻き毛に青い瞳をした、7代目聖女の婚姻相手でもあった。
「聖女アナスタシアのため、魔王は殺します」
「今の17代目聖女アナスタシアはお前が愛したアナスタシアではない」
「そうでししょうね。でも、アナスタシアは代々クローンで世襲している。記憶も前の聖女のものをもって生まれてくる。正確には私の愛したアナスタシアではないかもしれないけれど、同時に私が愛したアナスタシアでもある」
白竜ゼイアスは、契約のためにオリヴィエに逆らえない。
「く、契約とはこういう時う不便なものだ」
「ゼイアス、私とアナスタシアの子はどうなったか知りませんか」
「ロセアなら、ロセア王国の初代国王になった」
「ほう。私の子は、国を作ったのですね。さすが聖女アナスタシアと勇者であった私の子だ」
「ロセアも、もうこの世にはいないぞ。いるのは、お前が愛した記憶をもつ17代目の聖女アナスタシアと、元魔王である藍染の間に生まれた聖者ミネルだ」
白竜ゼイアスは、契約にしばられてオリヴィエを殺すことができない。
「こうなったら、我が古き友にして現魔王である京楽に全てを委ねるか‥‥‥」
ゼイアスの意識は次第ににごっていく。
魔王京楽の友、白竜ゼイアスではなく、6代目勇者の親友の聖竜ゼイアス・クラインになっていた。
「魔王京楽、覚悟!」
「あーあ。今日はついてないね。浮竹の前で紅茶股間に零して火傷するし、聖女教の刺客は次々とくるし」
もはや、聖女教は浮竹を勇者として認めず、魔王京楽の伴侶である敵として見ていた。
「京楽、愚痴ってないで手を動かせ。このアンデットたち、元勇者の兵士だろう。どこかに操っている元勇者がいるはずだ」
「浮竹には、怒られるし‥‥」
「真面目にしないと、離婚するぞ京楽!」
「元勇者目、どこにいる!」
とたんに反応を切りかえる京楽に、浮竹は苦笑するしかなかった。
「巨大な影‥‥‥‥ドラゴンか!ドラゴンの背に、元勇者がいるようだ」
「ばかな。あれは白竜ゼイアスだ。なぜ、彼が元勇者に従ってる。‥‥‥‥古の契約か。せめて、ゼイアスは正気になって生き延びてもらおう」
京楽は、空中にいくつもの複雑な魔法陣を描くと、1つの魔法を構築する。
「ハイ・エリクシア!」
神の薬エリクシアと同じ効果のある究極の癒しの術であった。傷を癒すだけでなく、どんな状態異常も元に戻す。
白竜ゼイアスは我に返り、契約者であった6代目勇者オリヴィエを背中から放り出す、
「ゼイアス、裏切る気ですか!」
「このゼイアスが契約し、友としたオリヴィエは死んでいる。反魂で蘇ったお前は、まがいものだ」
「私は正真正銘の勇者オリヴィエですよ!?」
「今の勇者は、3人いる。下に魔王京楽と一緒にいる浮竹十四郎、そしてここにはいない黒崎一護、朽木白哉だ」
「同じ時代に勇者が3人も?ばかな時代になったものだ。まぁいい、いけ、私の兵士たちよ!」
オリヴィエは、同じく反魂で大量に蘇った自分の兵士たちを京楽と浮竹にさしむける。
「ええい、らちがあかん。炎の精霊王よ、顕現せよ!」
浮竹は、炎お精霊王イフリールを呼び出して、アンデットたちを焼き尽くす。
「おのれ、精霊王と契約して‥‥幻のエレメンタルマスターですか。厄介な」
「もう、君を守る兵隊はいないよ?さぁ、覚悟するんだね、6代目勇者オリヴィエ・カイントス」
「おのれえええ。聖女アナスタシアのためにも、魔王は私が滅ぼします」
「無理だよ。ハイ・エリクシアの光を君も受けたはずだ。反魂も一種の状態異常。もうすぐ、君は消えてなくなる」
「ならば、道連れにするまでですよ!」
オリヴィエは、禁忌の魔法を発動させる。
「ワールドエンド」
「京楽!」
「大丈夫。ボクもだてに魔王やってないよ。ブラックホール」
京楽は、オリヴィエの放った終末の魔法をブラックホールの魔法で食らっていく。
「おのれえええ、魔王京楽!!!」
「ジ・エンドだよ?」
オリヴィエの背後から現れた浮竹が、魔王剣ディアブロで反魂の核である胸にある魔石を切り砕く。
「ああああああああ!愛しています、アナスタシア!聖女万歳!」
オリヴィエは、灰となって消えた。
「すまぬ、勇者浮竹、魔王京楽。古の契約により、反魂で蘇ったオリヴィエに服従を強いられていた。それすらも消すとは、ハイ・エリクシアの魔法はすごいな。聖女アナスタシアでも使えないのではないか?」
「そりゃそうでしょ、。ボクのオリジナル魔法だもん」
「京楽、お前ってっすごかったんだ」
「ちょ、浮竹!?今頃何言ってるの!」
「ただのスケベな優しいだけのアホ魔王だと思ってた」
「スケベは余計ですぅ」
京楽はすねる。
「はははは、京楽、お前の伴侶は面白いな。聖女見習いだった、カリーナを思いだす。カリーナとお前は恋人同士だったが、アナスタシアに殺されたのであったな」
「あ、カリーナのことは」
「話していないのか?」
「う、うん」
「京楽?俺は、お前に昔恋人がいても気にしないぞ?」
「浮竹、そう笑顔でいいながら足ぐりぐりするのやめてよお。今は浮竹一筋なんだから」
「ふん、どうだか」
騒ぎが終わり、魔王城に避難していた人が出てくる。
「あ、ドラゴンだ!」
「おっと、我は人は苦手なのだ。カララッカに戻る」
白竜ゼイアスは、巨大な体を翻して、羽ばたいて消えていく。
「もう大丈夫だ」
「本当、魔王様?」
「魔王様、お怪我は!?」
わらわらとよってくる民と適当に距離を置いて、京楽はふてくされている浮竹の手を引っ張って魔王城に入っていく。
「京楽?」
「ボクが、今愛しているのは浮竹だけだから。カリーナは300年ほど前のボクの恋人だった聖女見習いの少女だった。ボクは魔王候補に選ばれていて、聖女アナスタシアに殺されてしまったけれど」
「す、すまん。そんな事情があったなんて‥‥」
「ううん、いいんだよ。ただ、聖女アナスタシアと元魔王藍染だけは許せない。今回のことも、二人が原因だろう」
「こんなに反魂できるなんて、聖女か魔王か、あるいは両方だものな」
「あら。オリヴィエはまた死んでしまったの。せっかく、新しい命をあげたのに」
「アナスタシア。我らの子のカインが泣いているぞ」
「あら。ミルクはあげたし、おしめかしら。それとも、高濃度魔力が切れたのかしら」
聖女アナスタシアは、自らの子に高濃度魔力を与えて、その力を増大させていた。
「カインは、近いうちに私たちの手ごまとして使う。いいね、アナスタシア」
「ええ、愛しいあなた。子なんて、また産めばいいだけなんだから」
クスクスと聖女は笑う。
十代前半で肉体の年齢を止めた聖女は、あどけない顔で笑い続けるのであった。
魔王と勇者と11
「新婚旅行にいったトエイ帝国の近くで、邪竜のブラックドラゴンが出るらしいよ。冒険者ギルドの手にも負えなくて、ボクのところに依頼がまわってきた」
「ブラックドラゴンか。普通ドラゴンは人里離れたところに住んでいて、人など襲わないんだけどな?」
「そのブラックドラゴンはもう人を100人以上殺しているらしい。ボクだけでも討伐できると思うけど、念のためついてきてくれないかな、浮竹」
京楽は、浮竹をドラゴン退治に誘った。
浮竹は白竜を見たのがドラゴンを見たのは初めてで、ドラゴン退治の経験などなかった。
そもそもドラゴンの数は希少で、京楽が率先して保護している。白竜ゼイアスのように庇護を求めないドラゴンも多いが。
「分かった。じゃあ、準備するな?」
浮竹は、ポンコツになった聖剣エクスカリバーの代わりに使っている魔王剣ディアブロを腰に帯刀する。
アイテムボックスに、ポーションやらエリクサーを限界までつめこんだ。
「そんなにつめこまなくても」
「でも、相手はドラゴンなんだぞ。世界で一番強い種族じゃないか」
「まぁ、そうなんだけど。ボクもドラゴン退治は初めてだから、うまくいくといいね」
トエイ帝国の近くの巨大な洞窟に、ブラックドラゴンはいた。
「なんだ。我の眠りの邪魔をする虫けらは」
「ブラックドラゴン。人を殺した罪により、処分する」
「くははははは。面白い。たかが人間を殺しただけで処分されるのか」
「京楽、あまり刺激しないほいがいいんじゃ」
「こういうドラゴンはプライドの高いアホがおおいからね」
京楽は、わざと聞こえるように大声を出す。
「誰がアホだと。この人間風情が」
「あ、ボクは魔王だから。こっちは勇者の浮竹」
「魔王と勇者か。面白い、この漆黒のエルザにやられるがいい」
ブラックドラゴンは、炎のブレスを吐いた。
それを、京楽がマジックシールドで防ぐが、熱風が入ってきた。
「邪竜とはいえさすがドラゴン。ブレスだけでこの威力かい」
「京楽、俺もシールドを貼る」
「うん、お願いするよ」
浮竹がシールドを展開させると、シールドには花が咲いていた。意味はない。浮竹の魔法はいつもどこか変なのである。
「くはははは、防戦一方か。魔王と勇者を殺したとあれば、我が名も世界にとどろくであろう」
「勝手に、殺さないでよね。浮竹、剣を」
「ああ」
「ホーリーエンチャント!邪竜には聖属性の攻撃が効きやすいから」
「わかった!」
浮竹はブレスを避けて、ドラゴンに切りかかる。
「ぐおおおお」
強化された魔王剣ディアブロは、ドラゴンの鱗も切ってしまった。
「勇者とはいえ人間にごときに」
「俺はハーフエルフだ。人間じゃない」
「同じようなものだろう。羽虫のような存在だ」
「グラビディ・ゼロ」
そこへ、京楽の魔法が浮竹を避けて降りかかる。
「ぎいあああああ」
ブラックドラゴンは、重力の魔法で大地にめりこんだ。
「これでも死なないか。ヘルインフェルノ!」
「甘い、ダークブレス」
「浮竹!」
「ああ!」
浮竹は聖属性を付与された魔剣で、ドラゴンの心臓部をつきさすが、鱗が硬くて剣の長さも足りなくて、心臓に傷は到達しない。だが、京楽の狙いは心臓部の鱗を切り裂くことだった。
「怒れる大気よ、狂え!サンダーヴォルテックス!!!」
「うぎゃあああああ」
「顕現せよ、風の精霊王ジルフェ!」
浮竹は風の精霊王を呼び出して、京楽の放った雷に雷を重ねる形で、攻撃する。
「トリニティサンダー」
「我が、この我が、魔王や勇者ごときにいいいい」
そう呪詛のような言葉を残して、ブラックドラゴンは倒された。
「死体の状態はとてもいいな。これ、素材に売ったら大金が舞い込むぞ」
「え、売るのか?」
「売る。被害にあった人間の遺族に金を配らないといけないしな」
「お前、ほんとにいい魔王だな」
「惚れなおした?」
「ああ」
風の精霊王ジルフェの前でいちゃつくものだから、ジルフェは咳払いした。
「あ、風の精霊王もう戻っていいぞ」
「俺も、ドラゴンの血を少しわけてもらっていいか。素材が枯渇していたんだ」
「好きなだけもっていっていいぞ」
「ありがとう」
ジルフェは、3Lくらいの血を手に、精霊界に戻っていった。
「さて、冒険者ギルドに報告と素材の買取をしてもらおうかな。予備のアイテムポケットあったよね?」
「ああ」
京楽は、予備のアイテムポケットに巨大なドラゴンの体をいれて、ククル魔王国にある冒険者ギルドに浮竹と転移する。
「あら、魔王様これはこれは。何か御用でしょうか」
ギルドマスターが話しかけてきた。
「頼まれていたブラックドラゴンを退治した。死体の素材を買い取ってもらいたい」
「なんと!あのトエイ帝国の近くに出没するという邪r竜を魔王自ら討伐してくれたのですか!」
「そう、依頼がきていたからね。あと、勇者の浮竹と一緒に倒した」
「おお、こちらが魔王の伴侶であらせられる勇者浮竹様ですか」
「べ、別に伴侶って言われ嬉しいわけじゃないからな!」
浮竹は顔を赤くしていた。
「では、奥で素材を出してください。買い取ります」
ギルドの奥は、モンスター解体工房になっていて、ブラックドラゴンを出しても平気な大きさがあった。
京楽は、ブラックドラゴンの死体を出す。
「ふむ。心臓は雷で使い物になさそうですが、それ以外は状態がいいですね。星金貨2千枚でどうでしょうか。我がギルドで出せる金額のギリギリです」
「じゃあ、それでいいよ」
「心臓がだめなのが残念ですね。神薬エリクシリアの材料になるのですが」
「ああ、心臓を雷で攻撃したからね」
京楽は、残念がるギルドマスターに、ブラックドラゴンの心臓の一部が焦げていないことを告げると、ギルドマスターはとんで喜んだ。
「心臓だけで星金貨200枚になります」
浮竹が、「ドラゴンの心臓って、高いんだな」とポカーンとしていた。
「あの、討伐報酬金は次回ということで」
「報酬金などいらない。金には困ってないしね」
「それはありがたい!素材の星金貨2千枚は、額が額だけに分割払いになりますがよろしいでしょうか?」
「ああ、問題ないよ。あと、ドラゴンの肉を少し分けてほしい」
「京楽?ドラゴンの肉なんてもらってどうするんだ?」
浮竹は首を傾げていた。
「ステーキにして食う」
「え、ドラゴンの肉って食えるのか?」
「珍味中の珍味だよい。一生かかっても魔族でさえ一度食べれればいいほうだ」
浮竹は、ぐーとお腹をならせた。
「こ、これは違う」
「ふふ、魔王城に帰ってシェフに料理してもらおうか」
「す、すまん」
「浮竹が謝る必要はないよ」
その晩だされたドラゴンステーキの肉の味は、一生忘れられなほどの美味であった。
「ブラックドラゴンか。普通ドラゴンは人里離れたところに住んでいて、人など襲わないんだけどな?」
「そのブラックドラゴンはもう人を100人以上殺しているらしい。ボクだけでも討伐できると思うけど、念のためついてきてくれないかな、浮竹」
京楽は、浮竹をドラゴン退治に誘った。
浮竹は白竜を見たのがドラゴンを見たのは初めてで、ドラゴン退治の経験などなかった。
そもそもドラゴンの数は希少で、京楽が率先して保護している。白竜ゼイアスのように庇護を求めないドラゴンも多いが。
「分かった。じゃあ、準備するな?」
浮竹は、ポンコツになった聖剣エクスカリバーの代わりに使っている魔王剣ディアブロを腰に帯刀する。
アイテムボックスに、ポーションやらエリクサーを限界までつめこんだ。
「そんなにつめこまなくても」
「でも、相手はドラゴンなんだぞ。世界で一番強い種族じゃないか」
「まぁ、そうなんだけど。ボクもドラゴン退治は初めてだから、うまくいくといいね」
トエイ帝国の近くの巨大な洞窟に、ブラックドラゴンはいた。
「なんだ。我の眠りの邪魔をする虫けらは」
「ブラックドラゴン。人を殺した罪により、処分する」
「くははははは。面白い。たかが人間を殺しただけで処分されるのか」
「京楽、あまり刺激しないほいがいいんじゃ」
「こういうドラゴンはプライドの高いアホがおおいからね」
京楽は、わざと聞こえるように大声を出す。
「誰がアホだと。この人間風情が」
「あ、ボクは魔王だから。こっちは勇者の浮竹」
「魔王と勇者か。面白い、この漆黒のエルザにやられるがいい」
ブラックドラゴンは、炎のブレスを吐いた。
それを、京楽がマジックシールドで防ぐが、熱風が入ってきた。
「邪竜とはいえさすがドラゴン。ブレスだけでこの威力かい」
「京楽、俺もシールドを貼る」
「うん、お願いするよ」
浮竹がシールドを展開させると、シールドには花が咲いていた。意味はない。浮竹の魔法はいつもどこか変なのである。
「くはははは、防戦一方か。魔王と勇者を殺したとあれば、我が名も世界にとどろくであろう」
「勝手に、殺さないでよね。浮竹、剣を」
「ああ」
「ホーリーエンチャント!邪竜には聖属性の攻撃が効きやすいから」
「わかった!」
浮竹はブレスを避けて、ドラゴンに切りかかる。
「ぐおおおお」
強化された魔王剣ディアブロは、ドラゴンの鱗も切ってしまった。
「勇者とはいえ人間にごときに」
「俺はハーフエルフだ。人間じゃない」
「同じようなものだろう。羽虫のような存在だ」
「グラビディ・ゼロ」
そこへ、京楽の魔法が浮竹を避けて降りかかる。
「ぎいあああああ」
ブラックドラゴンは、重力の魔法で大地にめりこんだ。
「これでも死なないか。ヘルインフェルノ!」
「甘い、ダークブレス」
「浮竹!」
「ああ!」
浮竹は聖属性を付与された魔剣で、ドラゴンの心臓部をつきさすが、鱗が硬くて剣の長さも足りなくて、心臓に傷は到達しない。だが、京楽の狙いは心臓部の鱗を切り裂くことだった。
「怒れる大気よ、狂え!サンダーヴォルテックス!!!」
「うぎゃあああああ」
「顕現せよ、風の精霊王ジルフェ!」
浮竹は風の精霊王を呼び出して、京楽の放った雷に雷を重ねる形で、攻撃する。
「トリニティサンダー」
「我が、この我が、魔王や勇者ごときにいいいい」
そう呪詛のような言葉を残して、ブラックドラゴンは倒された。
「死体の状態はとてもいいな。これ、素材に売ったら大金が舞い込むぞ」
「え、売るのか?」
「売る。被害にあった人間の遺族に金を配らないといけないしな」
「お前、ほんとにいい魔王だな」
「惚れなおした?」
「ああ」
風の精霊王ジルフェの前でいちゃつくものだから、ジルフェは咳払いした。
「あ、風の精霊王もう戻っていいぞ」
「俺も、ドラゴンの血を少しわけてもらっていいか。素材が枯渇していたんだ」
「好きなだけもっていっていいぞ」
「ありがとう」
ジルフェは、3Lくらいの血を手に、精霊界に戻っていった。
「さて、冒険者ギルドに報告と素材の買取をしてもらおうかな。予備のアイテムポケットあったよね?」
「ああ」
京楽は、予備のアイテムポケットに巨大なドラゴンの体をいれて、ククル魔王国にある冒険者ギルドに浮竹と転移する。
「あら、魔王様これはこれは。何か御用でしょうか」
ギルドマスターが話しかけてきた。
「頼まれていたブラックドラゴンを退治した。死体の素材を買い取ってもらいたい」
「なんと!あのトエイ帝国の近くに出没するという邪r竜を魔王自ら討伐してくれたのですか!」
「そう、依頼がきていたからね。あと、勇者の浮竹と一緒に倒した」
「おお、こちらが魔王の伴侶であらせられる勇者浮竹様ですか」
「べ、別に伴侶って言われ嬉しいわけじゃないからな!」
浮竹は顔を赤くしていた。
「では、奥で素材を出してください。買い取ります」
ギルドの奥は、モンスター解体工房になっていて、ブラックドラゴンを出しても平気な大きさがあった。
京楽は、ブラックドラゴンの死体を出す。
「ふむ。心臓は雷で使い物になさそうですが、それ以外は状態がいいですね。星金貨2千枚でどうでしょうか。我がギルドで出せる金額のギリギリです」
「じゃあ、それでいいよ」
「心臓がだめなのが残念ですね。神薬エリクシリアの材料になるのですが」
「ああ、心臓を雷で攻撃したからね」
京楽は、残念がるギルドマスターに、ブラックドラゴンの心臓の一部が焦げていないことを告げると、ギルドマスターはとんで喜んだ。
「心臓だけで星金貨200枚になります」
浮竹が、「ドラゴンの心臓って、高いんだな」とポカーンとしていた。
「あの、討伐報酬金は次回ということで」
「報酬金などいらない。金には困ってないしね」
「それはありがたい!素材の星金貨2千枚は、額が額だけに分割払いになりますがよろしいでしょうか?」
「ああ、問題ないよ。あと、ドラゴンの肉を少し分けてほしい」
「京楽?ドラゴンの肉なんてもらってどうするんだ?」
浮竹は首を傾げていた。
「ステーキにして食う」
「え、ドラゴンの肉って食えるのか?」
「珍味中の珍味だよい。一生かかっても魔族でさえ一度食べれればいいほうだ」
浮竹は、ぐーとお腹をならせた。
「こ、これは違う」
「ふふ、魔王城に帰ってシェフに料理してもらおうか」
「す、すまん」
「浮竹が謝る必要はないよ」
その晩だされたドラゴンステーキの肉の味は、一生忘れられなほどの美味であった。
魔王と勇者と10
京楽の魔王城があるところは、ククル魔王国という。
はじめは王国だったのだが、京楽が魔王として君臨してから王国制度は廃止され、京楽が国で一番偉い人になり、魔王国と改名した。
「さて、南のガリア帝国が我が魔王軍に戦線布告したが、魔王京楽様が兵士を倒して僅か3日で停戦にもちこんだ。よって、慰謝料は星金貨1万枚ですまそうと思うのだが」
「低すぎる。我が魔王軍に矛先を向けたのだぞ。星金貨10万枚はいただかなくては」
「いや、別に慰謝料なんていらないから」
京楽がそう口にすると、軍師や執務大事たちがこぞって意見を述べ合い、結局慰謝料星金貨8千枚で落ち着いた。
10万にも及ぶ大軍を、京楽一人で倒したのだ。
ガリア帝国は前々から魔王領に侵攻していたが、今回は大軍を率いての挙兵であったが、兵士を集める時間がなく、魔王京楽自らの手で鎮圧させた。
「それにして京楽様はすばらしい。我がククル魔王国は安泰だ」
「そうだそうだ」
そんな意見を、京楽の伴侶として出席していた浮竹は、あくびを噛み殺しながらほとんど聞いていなかった。
「勇者浮竹様はどう思われますか?」
「え、あ、いいんじゃないか?」
「そうですか!やはり魔王軍の旗は黒で決まりですね!」
「浮竹、半分寝てたね?」
「だって、興味ないしつまらないから」
会議室を後にして、浮竹と京楽は寝室に戻る。
「暇だから寝る」
浮竹は、モンスター退治を朝に終わらせて、暇だった。
暇なら会議に参加するかと聞かれて参加したのはいいが、ちんぷんかんぷんで興味のない話ばかりでつまらなく、舟をこいでいた。
「ねぇ、結婚して1か月経ったよね?もう、君を抱いていいかな」
「まだだめ。あと半月待て」
それは、浮竹の心の準備ができていないからであった。
「ボクはいつでも待つよ。君を愛してるから、無理やりはしない」
「当り前だ。夫婦(?)間にも、愛があるからって無理やりだなんて離婚問題だ」
「離婚されたくないからね」
京楽は、浮竹とまだ新婚である。
結婚して1か月しか経っていない。
「そういえば知ってるかい。17代目の聖女であり女神であるアナスタシアが子を産んだらしい。父親は、なんと先代魔王の藍染だってさ」
「聖女教は魔王排斥なんじゃなかったのか?」
「曰く、魔王をやめたから排斥の対象じゃないんだそうだ」
「いい加減だな。藍染が魔王の時代は民も飢えていたんだろう?」
浮竹が聞くと、京楽は頷いた。
「うん、酷いものだったよ。復興するのに3年かかった」
「でも、僅か3年で魔王領をここまで広げるなんて、さすが京楽だな」
「ふふ、改めて言われると照れるね」
浮竹は京楽と一緒に昼食をとると、暇なので仮眠をする。
京楽は魔王としての執務の仕事があるので、今日は浮竹にあまりかまってやれない。
「愛してるよ、浮竹」
「俺も愛してる、京楽」
すれ違いの時間は多いが、仕方のないことだった。
やがて半月が過ぎた。
「ねえ、浮竹‥‥」
「分かっている。今日が、初夜だ。準備とか、出来てるんだろうな?」
「もちろんだよ」
「じゃあ、抱け。好きなようにしろ」
「抱くけど、浮竹にも気持ちよくなってもらうからね?ボクなしじゃ生きていけない体にしてあげる」
「ああああ、やああああ」
浮竹は、もう何度目になるかも分からない京楽の熱を、胎の奥で受け止めた。
「やだ、やあ、はじめてなのに」
「ボクはずっと我慢してたんだよ。少しくらいがっついても、いいでしょ?」
「ひああああ!」
奥をごりごりと抉られて、浮竹は大きく中いきをする。
「あ、もっとそこ。そこいい」
「ここかい?」
「もっとぐりぐりしてぇ」
言葉通りにすると、浮竹は精液を吐き出して、中いきもしながら2重でいっていた。
「あああ、もうだめぇ」
「今日はこの辺で終わっておこうか。また、明日抱くよ」
「やああ、毎日なんて壊れる」
「大丈夫だよ。加減するし、毎日抱くわけじゃないから。ただ、明日も抱きたい」
「ひあん、そこやぁ」
「奥、好きだね?」
最後に浮竹の奥を貫いて、京楽も果てた。
「はじめてだったのに」
次の日、浮竹はぷんぷん怒っていた。
「ごめんって。でも、1カ月半お預け食らってたんだよ?」
「う、それは‥‥‥」
「君の心の準備ができるまで、待ったんだから」
「す、すまん」
「だから、今日も抱くからね?」
「加減しろよ!」
「うん」
結局、浮竹は京楽が満足するすまで抱かれて、次の日口を利いてあげないのだった。
はじめは王国だったのだが、京楽が魔王として君臨してから王国制度は廃止され、京楽が国で一番偉い人になり、魔王国と改名した。
「さて、南のガリア帝国が我が魔王軍に戦線布告したが、魔王京楽様が兵士を倒して僅か3日で停戦にもちこんだ。よって、慰謝料は星金貨1万枚ですまそうと思うのだが」
「低すぎる。我が魔王軍に矛先を向けたのだぞ。星金貨10万枚はいただかなくては」
「いや、別に慰謝料なんていらないから」
京楽がそう口にすると、軍師や執務大事たちがこぞって意見を述べ合い、結局慰謝料星金貨8千枚で落ち着いた。
10万にも及ぶ大軍を、京楽一人で倒したのだ。
ガリア帝国は前々から魔王領に侵攻していたが、今回は大軍を率いての挙兵であったが、兵士を集める時間がなく、魔王京楽自らの手で鎮圧させた。
「それにして京楽様はすばらしい。我がククル魔王国は安泰だ」
「そうだそうだ」
そんな意見を、京楽の伴侶として出席していた浮竹は、あくびを噛み殺しながらほとんど聞いていなかった。
「勇者浮竹様はどう思われますか?」
「え、あ、いいんじゃないか?」
「そうですか!やはり魔王軍の旗は黒で決まりですね!」
「浮竹、半分寝てたね?」
「だって、興味ないしつまらないから」
会議室を後にして、浮竹と京楽は寝室に戻る。
「暇だから寝る」
浮竹は、モンスター退治を朝に終わらせて、暇だった。
暇なら会議に参加するかと聞かれて参加したのはいいが、ちんぷんかんぷんで興味のない話ばかりでつまらなく、舟をこいでいた。
「ねぇ、結婚して1か月経ったよね?もう、君を抱いていいかな」
「まだだめ。あと半月待て」
それは、浮竹の心の準備ができていないからであった。
「ボクはいつでも待つよ。君を愛してるから、無理やりはしない」
「当り前だ。夫婦(?)間にも、愛があるからって無理やりだなんて離婚問題だ」
「離婚されたくないからね」
京楽は、浮竹とまだ新婚である。
結婚して1か月しか経っていない。
「そういえば知ってるかい。17代目の聖女であり女神であるアナスタシアが子を産んだらしい。父親は、なんと先代魔王の藍染だってさ」
「聖女教は魔王排斥なんじゃなかったのか?」
「曰く、魔王をやめたから排斥の対象じゃないんだそうだ」
「いい加減だな。藍染が魔王の時代は民も飢えていたんだろう?」
浮竹が聞くと、京楽は頷いた。
「うん、酷いものだったよ。復興するのに3年かかった」
「でも、僅か3年で魔王領をここまで広げるなんて、さすが京楽だな」
「ふふ、改めて言われると照れるね」
浮竹は京楽と一緒に昼食をとると、暇なので仮眠をする。
京楽は魔王としての執務の仕事があるので、今日は浮竹にあまりかまってやれない。
「愛してるよ、浮竹」
「俺も愛してる、京楽」
すれ違いの時間は多いが、仕方のないことだった。
やがて半月が過ぎた。
「ねえ、浮竹‥‥」
「分かっている。今日が、初夜だ。準備とか、出来てるんだろうな?」
「もちろんだよ」
「じゃあ、抱け。好きなようにしろ」
「抱くけど、浮竹にも気持ちよくなってもらうからね?ボクなしじゃ生きていけない体にしてあげる」
「ああああ、やああああ」
浮竹は、もう何度目になるかも分からない京楽の熱を、胎の奥で受け止めた。
「やだ、やあ、はじめてなのに」
「ボクはずっと我慢してたんだよ。少しくらいがっついても、いいでしょ?」
「ひああああ!」
奥をごりごりと抉られて、浮竹は大きく中いきをする。
「あ、もっとそこ。そこいい」
「ここかい?」
「もっとぐりぐりしてぇ」
言葉通りにすると、浮竹は精液を吐き出して、中いきもしながら2重でいっていた。
「あああ、もうだめぇ」
「今日はこの辺で終わっておこうか。また、明日抱くよ」
「やああ、毎日なんて壊れる」
「大丈夫だよ。加減するし、毎日抱くわけじゃないから。ただ、明日も抱きたい」
「ひあん、そこやぁ」
「奥、好きだね?」
最後に浮竹の奥を貫いて、京楽も果てた。
「はじめてだったのに」
次の日、浮竹はぷんぷん怒っていた。
「ごめんって。でも、1カ月半お預け食らってたんだよ?」
「う、それは‥‥‥」
「君の心の準備ができるまで、待ったんだから」
「す、すまん」
「だから、今日も抱くからね?」
「加減しろよ!」
「うん」
結局、浮竹は京楽が満足するすまで抱かれて、次の日口を利いてあげないのだった。
魔王と勇者と9
浮竹と京楽は、新婚旅行にトエイ帝国まで出かけた。
トエイ帝国は魔王領の中でも、最も繁栄している国であった。魔王領の外に出ると、聖女教がやっかいなので、魔王領で新婚旅行をすることになり、浮竹の意見でトエイ帝国に決まった。
新婚旅行といっても、お忍びの旅行なので、京楽は黒いフードを目深に被り、魔王であることをばれないようにしていた。
魔王だとばれたら、人が寄ってくるからだ。
「あ、京楽と同じ顔した魔族がいる」
「あれは、先々代の魔王だね。隣にいるのはフェンリルかな?獣人のようにも見えるけど。浮竹そっくりだね」
「本当だ」
「話かけてみようか」
「ああ」
浮竹と京楽は、元魔王の京楽とフェンリルの浮竹に話しかける。
「あの」
『あ!同じ顔だ!』
フェンリルの浮竹が、しっぽを振って喜ぶのを、浮竹は不思議な気持ちで見ていた。
「君、先々代魔王だね?」
『そういう君は、魔王じゃないか。こんな場所で何をしているんだい』
「いやぁ、浮竹と結婚したものだから、お忍びで新婚旅行にね」
『いいなぁ、京楽。俺たちは結婚しないのか?』
『考えておくよ』
元魔王の京楽とフェンリルの浮竹は買い物の途中だったので、いったんその場で別れた。
後日、再会するように日にちを調整した。
「さて、ボクらも新婚旅行楽しもうか。天然温泉の出るホテルがあるんだ。今日はそこに泊まるよ」
「また、ばか高いホテルなんだろう?無駄に豪華な」
「まぁね。金をもっているだけじゃあ意味ないからね。使わないと。それに君はいつもモンスター退治をしてくれているから、そのお礼も含めてね」
一流ホテルのスィートルームに泊まることになった。
一泊一人金貨500枚。
浮竹がモンスター退治を毎日して、半年でやっと稼げる額だった。
それを、京楽はさりげなくぽんと払う。
さすがに空間ポケットでも大量の金貨を持ち運ぶのは危ないので、支払いはクレジットカードだった。
真っ黒の、王侯貴族にしか発行の許されぬクレジットカードだった。
「京楽、温泉に行こう!」
「うん。でも、時間ずらそ?」
「なんでた?」
「ボクの浮竹の裸を、他人に見せたくない」
浮竹は真っ赤になった。
「ちゃ、ちゃんとタオルくらい巻く!」
「うん。それでも、裸同線でしょ?」
「むう」
「深夜に入ろう。それまで寝ていていいよ」
浮竹と京楽は、部屋でルームサービスの豪華な食事をとって、浮竹は風呂に入ると決めた深夜の1時まで眠ってしまった。
京楽はずっと起きていた。
「ふふ、君と結婚できるなんて」
浮竹の手を握り締めて、キスをする。
「ああ、早く君の全てが欲しい」
京楽は、浮竹が寝ているのをいいことに、素肌に触り、キスをする。
「んー、もう1時か?って、何してるんだお前は!」
浴衣をぬがされかかっていた浮竹は、浴衣を着なおして、ハリセンで京楽を殴る。
「いやね、君が魅力的だからつい」
「今度したら、1日口きいてやんないからな」
「はい。反省します」
やがて深夜の1時になり、浮竹と京楽は24時間サービスの露天風呂に入った。
「星が綺麗だな。手で掴めそうだ」
「メテオストライクっていう、星の石を落とす魔法があるから、それでも掴む?」
「アホか。ただ、掴めそうに綺麗だと思っただけだ」
「確かに綺麗だね。トエイは都会のクセに空気が澄んでるから。自然も豊かだし」
京楽は、体を洗いだす。
「背中、流してやろう」
「お、頼むよ」
浮竹は、タオルで京楽の背中を洗い、ついでに黒い長めの髪も洗ってやった。
「今度は、ボクが洗ってあげる」
「いらん」
「なんで」
「すけべなことしそうだから」
「く、ばれていたか‥‥‥‥」
そんなやりとりをして、風呂からあがり自販機でフルーツ牛乳を2つ買うと、二人は一気に飲みほした。
「寝る前に、少しだけお酒飲もうか」
「お、いいな」
「浮竹はちょっとだけだよ。酒乱なんだから」
「分かってる」
トエイ帝国に1週間滞在した。
途中で魔王だとばれて、いろいろあったが、二人は無事に魔王城まで帰還するのであった。
「あー、伸び伸びとできたなぁ。なぁ京楽、またいつか二人で旅行に出かけような?」
「うん。再来月なんかどう?」
「魔王の仕事ほっぽりだして大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃないね。執務大臣たちが怒る」
「じゃあ、来年な」
「仕方ないね。こればっかりは。ボクは魔王としての責務を果たさないといけないから」
浮竹は、京楽と同じ部屋の同じベッドで寝る。
枕を抱え込んで、ぱたぱたと足を動かす浮竹がかわいくて、京楽は鼻血を出していた。
「う、浮竹かわいくて萌え」
「うぎゃあああああああああ」
飛び掛かって抱きついてくる京楽を、浮竹は火の精霊王を呼んで黒焦げにするのだった。
トエイ帝国は魔王領の中でも、最も繁栄している国であった。魔王領の外に出ると、聖女教がやっかいなので、魔王領で新婚旅行をすることになり、浮竹の意見でトエイ帝国に決まった。
新婚旅行といっても、お忍びの旅行なので、京楽は黒いフードを目深に被り、魔王であることをばれないようにしていた。
魔王だとばれたら、人が寄ってくるからだ。
「あ、京楽と同じ顔した魔族がいる」
「あれは、先々代の魔王だね。隣にいるのはフェンリルかな?獣人のようにも見えるけど。浮竹そっくりだね」
「本当だ」
「話かけてみようか」
「ああ」
浮竹と京楽は、元魔王の京楽とフェンリルの浮竹に話しかける。
「あの」
『あ!同じ顔だ!』
フェンリルの浮竹が、しっぽを振って喜ぶのを、浮竹は不思議な気持ちで見ていた。
「君、先々代魔王だね?」
『そういう君は、魔王じゃないか。こんな場所で何をしているんだい』
「いやぁ、浮竹と結婚したものだから、お忍びで新婚旅行にね」
『いいなぁ、京楽。俺たちは結婚しないのか?』
『考えておくよ』
元魔王の京楽とフェンリルの浮竹は買い物の途中だったので、いったんその場で別れた。
後日、再会するように日にちを調整した。
「さて、ボクらも新婚旅行楽しもうか。天然温泉の出るホテルがあるんだ。今日はそこに泊まるよ」
「また、ばか高いホテルなんだろう?無駄に豪華な」
「まぁね。金をもっているだけじゃあ意味ないからね。使わないと。それに君はいつもモンスター退治をしてくれているから、そのお礼も含めてね」
一流ホテルのスィートルームに泊まることになった。
一泊一人金貨500枚。
浮竹がモンスター退治を毎日して、半年でやっと稼げる額だった。
それを、京楽はさりげなくぽんと払う。
さすがに空間ポケットでも大量の金貨を持ち運ぶのは危ないので、支払いはクレジットカードだった。
真っ黒の、王侯貴族にしか発行の許されぬクレジットカードだった。
「京楽、温泉に行こう!」
「うん。でも、時間ずらそ?」
「なんでた?」
「ボクの浮竹の裸を、他人に見せたくない」
浮竹は真っ赤になった。
「ちゃ、ちゃんとタオルくらい巻く!」
「うん。それでも、裸同線でしょ?」
「むう」
「深夜に入ろう。それまで寝ていていいよ」
浮竹と京楽は、部屋でルームサービスの豪華な食事をとって、浮竹は風呂に入ると決めた深夜の1時まで眠ってしまった。
京楽はずっと起きていた。
「ふふ、君と結婚できるなんて」
浮竹の手を握り締めて、キスをする。
「ああ、早く君の全てが欲しい」
京楽は、浮竹が寝ているのをいいことに、素肌に触り、キスをする。
「んー、もう1時か?って、何してるんだお前は!」
浴衣をぬがされかかっていた浮竹は、浴衣を着なおして、ハリセンで京楽を殴る。
「いやね、君が魅力的だからつい」
「今度したら、1日口きいてやんないからな」
「はい。反省します」
やがて深夜の1時になり、浮竹と京楽は24時間サービスの露天風呂に入った。
「星が綺麗だな。手で掴めそうだ」
「メテオストライクっていう、星の石を落とす魔法があるから、それでも掴む?」
「アホか。ただ、掴めそうに綺麗だと思っただけだ」
「確かに綺麗だね。トエイは都会のクセに空気が澄んでるから。自然も豊かだし」
京楽は、体を洗いだす。
「背中、流してやろう」
「お、頼むよ」
浮竹は、タオルで京楽の背中を洗い、ついでに黒い長めの髪も洗ってやった。
「今度は、ボクが洗ってあげる」
「いらん」
「なんで」
「すけべなことしそうだから」
「く、ばれていたか‥‥‥‥」
そんなやりとりをして、風呂からあがり自販機でフルーツ牛乳を2つ買うと、二人は一気に飲みほした。
「寝る前に、少しだけお酒飲もうか」
「お、いいな」
「浮竹はちょっとだけだよ。酒乱なんだから」
「分かってる」
トエイ帝国に1週間滞在した。
途中で魔王だとばれて、いろいろあったが、二人は無事に魔王城まで帰還するのであった。
「あー、伸び伸びとできたなぁ。なぁ京楽、またいつか二人で旅行に出かけような?」
「うん。再来月なんかどう?」
「魔王の仕事ほっぽりだして大丈夫なのか?」
「大丈夫じゃないね。執務大臣たちが怒る」
「じゃあ、来年な」
「仕方ないね。こればっかりは。ボクは魔王としての責務を果たさないといけないから」
浮竹は、京楽と同じ部屋の同じベッドで寝る。
枕を抱え込んで、ぱたぱたと足を動かす浮竹がかわいくて、京楽は鼻血を出していた。
「う、浮竹かわいくて萌え」
「うぎゃあああああああああ」
飛び掛かって抱きついてくる京楽を、浮竹は火の精霊王を呼んで黒焦げにするのだった。
勇者と魔王シリーズ
「浮竹、かわいいよ」
「あ、京楽」
「じーーーーーーーー」
「うわぁ、新勇者、いつからいたんだ」
浮竹と京楽は睦み合いそうなところを、新勇者に見られていて、浮竹は真っ赤になり、京楽はあと一歩だったのにと、新勇者を睨む。
「私室まできて、覚悟はできているんだろうな?」
「子供ができちゃったんだ。どうしよう」
「「は?」」
浮竹も京楽も、新勇者の爆弾発言に目が点になる。
「お前が身籠ったのか?でも変態だからそれもあるかも‥‥‥‥」
「1年以上前から、時おり花街の遊女の元に通っていて、俺の子を産んだから責任とれって」
「最後にその遊女の元に行ったのは?」
「半年前だ。厚着していたので、腹の膨らみは分からなかった」
「それ、絶対騙されてるよ。高額な金を請求されたんでしょ?」
「金貨2千枚よこせって」
浮竹は、このままだといつまでも私室に入り込んできそうなので、新勇者と花街に行って、直談判することにした。
「ほ、本当よ!この子は新勇者の子なんだから!」
「証拠は?」
「そんなもの、ないに決まってるでしょう!私を最後に買ったのは新勇者よ!」
「じゃあ、その赤子のDNAを採取して、新勇者と比較しよう」
「や、やめてよ!」
「なぜだ?新勇者が父親なら、別に構わないだろう?」
遊女は舌打ちした。
「魔王連れてくるなんてありえない。せっかくいいカモになりそうだったのに」
「じゃあ、その赤子の父親は新勇者ではないんだな?」
「ええその通りよ。廓の主人との間にできた子よ」
「カラミティファイア」
浮竹は、にこにこ怒って、遊女の髪をアフロにした。
「きゃああああああ、あたしの髪がああああ」
「嘘をついた天罰だ」
魔王浮竹は、遊女に会うためにけっこうな金額を支払っていた。
騒ぎに聞きつけてやってきた用心棒の男たちは、相手が魔王であると知って怯む。
「手切れ金だ。もう新勇者に近づくな。新勇者もこの遊女に近づくな」
金貨5千枚の入った袋を遊女に投げつけて、浮竹と新勇者は魔王城に帰還した。
「惚れた。魔王なんかやめて、俺とにゃんにゃんしないか」
「何言ってるの、こいつ」
京楽が、顔をしかめる。
「女に酷い目にあわされて、錯乱しているだけだろう。ファイアボール」
「あれ、俺はどうしたんだ?あ、魔王今日はありがとう。お礼に、アガーペアダンスを踊ろう」
新勇者は衣服を脱ぎ捨て、股間に葉っぱ一枚の姿で怪しい踊りをしだした。
「汚物は消毒しなきゃ」
京楽が、魔法を唱える。
「キュアクリーン」
変態の新勇者は、綺麗にあとかたもなく消えて、京楽の背後から服をきた新勇者が姿を現す。
「あれ、俺何をしていたんだろう」
「ボクと浮竹の靴磨きを、遊女の件のお礼にしていたんだよ」
「そ、そうか。靴磨き、してくるな?終わったら、今日はもう帰るから」
「ふふ、浮竹、朝の続きを‥‥‥」
「あ、京楽、こんなところじゃだめだ」
「じゃあ、寝室に行こうか」
寝室では、新勇者が勝手に豪華な寝台の上で寝そべっていた。
「サンダーボルト」
「あぎゃぎゃぎゃ!お、俺はただ魔王浮竹にお礼に俺を抱いてもらおうと」
「誰が貴様なんぞ抱くかあああ!寝室に勝手に入ってくるな!ヘルインフェルノ」
「もぎゃああああああああああああ」
浮竹は、黒焦げになった新勇者を、窓から捨てた。
「その気がなくなった」
「ちっ、新勇者め!ギガヴォルックス!「
窓の外に消えて地面に伸びている新勇者に、京楽は怒ってとどめの魔法を繰り出す。
それでも新勇者は、死なないのであった。
「あ、京楽」
「じーーーーーーーー」
「うわぁ、新勇者、いつからいたんだ」
浮竹と京楽は睦み合いそうなところを、新勇者に見られていて、浮竹は真っ赤になり、京楽はあと一歩だったのにと、新勇者を睨む。
「私室まできて、覚悟はできているんだろうな?」
「子供ができちゃったんだ。どうしよう」
「「は?」」
浮竹も京楽も、新勇者の爆弾発言に目が点になる。
「お前が身籠ったのか?でも変態だからそれもあるかも‥‥‥‥」
「1年以上前から、時おり花街の遊女の元に通っていて、俺の子を産んだから責任とれって」
「最後にその遊女の元に行ったのは?」
「半年前だ。厚着していたので、腹の膨らみは分からなかった」
「それ、絶対騙されてるよ。高額な金を請求されたんでしょ?」
「金貨2千枚よこせって」
浮竹は、このままだといつまでも私室に入り込んできそうなので、新勇者と花街に行って、直談判することにした。
「ほ、本当よ!この子は新勇者の子なんだから!」
「証拠は?」
「そんなもの、ないに決まってるでしょう!私を最後に買ったのは新勇者よ!」
「じゃあ、その赤子のDNAを採取して、新勇者と比較しよう」
「や、やめてよ!」
「なぜだ?新勇者が父親なら、別に構わないだろう?」
遊女は舌打ちした。
「魔王連れてくるなんてありえない。せっかくいいカモになりそうだったのに」
「じゃあ、その赤子の父親は新勇者ではないんだな?」
「ええその通りよ。廓の主人との間にできた子よ」
「カラミティファイア」
浮竹は、にこにこ怒って、遊女の髪をアフロにした。
「きゃああああああ、あたしの髪がああああ」
「嘘をついた天罰だ」
魔王浮竹は、遊女に会うためにけっこうな金額を支払っていた。
騒ぎに聞きつけてやってきた用心棒の男たちは、相手が魔王であると知って怯む。
「手切れ金だ。もう新勇者に近づくな。新勇者もこの遊女に近づくな」
金貨5千枚の入った袋を遊女に投げつけて、浮竹と新勇者は魔王城に帰還した。
「惚れた。魔王なんかやめて、俺とにゃんにゃんしないか」
「何言ってるの、こいつ」
京楽が、顔をしかめる。
「女に酷い目にあわされて、錯乱しているだけだろう。ファイアボール」
「あれ、俺はどうしたんだ?あ、魔王今日はありがとう。お礼に、アガーペアダンスを踊ろう」
新勇者は衣服を脱ぎ捨て、股間に葉っぱ一枚の姿で怪しい踊りをしだした。
「汚物は消毒しなきゃ」
京楽が、魔法を唱える。
「キュアクリーン」
変態の新勇者は、綺麗にあとかたもなく消えて、京楽の背後から服をきた新勇者が姿を現す。
「あれ、俺何をしていたんだろう」
「ボクと浮竹の靴磨きを、遊女の件のお礼にしていたんだよ」
「そ、そうか。靴磨き、してくるな?終わったら、今日はもう帰るから」
「ふふ、浮竹、朝の続きを‥‥‥」
「あ、京楽、こんなところじゃだめだ」
「じゃあ、寝室に行こうか」
寝室では、新勇者が勝手に豪華な寝台の上で寝そべっていた。
「サンダーボルト」
「あぎゃぎゃぎゃ!お、俺はただ魔王浮竹にお礼に俺を抱いてもらおうと」
「誰が貴様なんぞ抱くかあああ!寝室に勝手に入ってくるな!ヘルインフェルノ」
「もぎゃああああああああああああ」
浮竹は、黒焦げになった新勇者を、窓から捨てた。
「その気がなくなった」
「ちっ、新勇者め!ギガヴォルックス!「
窓の外に消えて地面に伸びている新勇者に、京楽は怒ってとどめの魔法を繰り出す。
それでも新勇者は、死なないのであった。
魔王と勇者8
浮竹と京楽は、同じ元の世界の孤児院出身だった。
当時の京楽は浅黒い肌に青い瞳、金色の髪をしていた。今の白い肌、黒い髪、鳶色の瞳ではなかった。
一緒に孤児院にいた時間は僅か2か月であったが、幼いながらに二人はとても仲がよかった。
京楽が、異世界に魔王となるために召喚される前までは。
今から600年前、時空をこえて京楽は召喚された。魔族の器に、その精神は宿り、元の肉体は粉々になった。
孤児院にいた時代から、京楽春水と名乗っているが、浮竹は昔のことすぎて覚えていないようであった。
「君が、ボクの花嫁になってくれると言っていた、幼い頃の冗談を本当にする。君を第三夫人にする」
浮竹は、すうすうとよく眠っていた。
その頬に触れて、京楽は愛しそうに浮竹に口づける。
「ん‥‥‥京楽?」
「ああ、起こしてしまったんだね。なんでもないから、もう一度寝なさい」
「俺は、お前と何か大事なことを忘れているような気がする」
「ボクのこと、覚えてるの!?」
「へ、なんだそれは。俺はこの世界ではじめて京楽と会ったぞ?」
京楽の期待は粉々にされたが、京楽は少し悲しそうな顔をするだけだった。
「うん、そうだね。勇者としてボクを討伐しにきたのが初めての出会いだね」
それは、この世界での浮竹との初めての出会いであった。
京楽は、浮竹を見た時運命を感じた。同じ異世界召喚をされたからだ。
浮竹の場合、大人になっていたが、すぐに幼い頃一緒にいた浮竹だと分かった。幼い頃から、京楽は浮竹のことが好きだった。
だから、異世界なのをいいことに、第三夫人‥‥‥‥実質、第一夫人と第二夫人のスラ子さんと骨子さんは魔王になるために存在が必要だっただけで、意思の疎通もできないしいてもいなくても関係なかった。
それでも、一応夫人なので今のままの形でいた。
浮竹が望むなら、第一夫人も第二夫人も消してしまうだろう。
「ねぇ、君が第三夫人になってくれないのは、ボクに第一夫人と第二夫人がいるから?」
「それもあるが‥‥‥」
「じゃあ、第一夫人と第二夫人は消す」
「え?」
京楽は、第一夫人のスラ子さんと第二夫人の骨子さんを召喚して、魔法で灰にしてしまった。
「ほら、もう第一夫人と第二夫人はないないよ?」
「ばか!」
浮竹は怒った。
「浮竹?」
「モンスターでも生きていて、お前の夫人なんだぞ。もっと大切にしろ!」
「そうは言っても、意思の疎通もできないんだよ」
「え、そうなのか?」
「前にも説明したと思うんだけど」
「すまん、聞いてなかった」
「じゃあ、第一夫人になって?」
京楽は、改めて浮竹にプロポーズした。
「そんなに俺と結婚したいのか?」
「うん」
「俺は勇者だぞ」
「勇者だろうと関係ない。君がいいんだ。君は覚えてないだろうけど、元の世界の孤児院で、2カ月間だけど一緒に過ごしてたんだよ」
「え?」
浮竹派驚く。
「ボクは6歳の頃異世界召喚されて、こっちの世界にきて精神が魔族に宿った。見た目はこんなだけど、元は褐色の肌、金の髪、青い瞳をしていた。名前は京楽春水のままだけど」
「あ‥‥‥京ちゃんか?」
「ボクのこと覚えてるの!?」
「うっすらと」
「ボクは時空をこえて召喚されたからね。今から600年前に。君まで異世界召喚されたと知った時、運命を感じたよ。改めて、好きだよ、浮竹。ボクの伴侶になって」
「京楽‥‥‥‥」
浮竹は、真っ赤になっていた。
「返事は?やっぱり、だめかな?」
「俺を」
「うん?」
「俺だけを見て、俺だけを一生愛してくれるなら、伴侶になる」
「浮竹!」
京楽は、浮竹を思い切り抱きしめた。
「その、すぐに体を許すとかはないからな」
「君がいてくれるなら、体なんてどうでもいい。まぁ、結ばれたくはあるけどね。ボクも男だし」
「俺も男だぞ」
「ふふ、この世界では同性同士が結婚することは珍しくないんだよ?」
「ああ、道理で同じ同性のカップルが多いわけだ」
「そうと決まったら、結婚式を挙げよう。騒がしいのは嫌だろうから、二人だけの結婚式を」
「二人だけなら、結婚式挙げてもいいかな」
こうして、数日が経ち、浮竹と京楽は結婚式を挙げた。
神父だけを呼んで、二人で愛を誓いあう。
「汝、浮竹十四郎は京楽春水を、病める時も健やかなる時も愛すると誓いますか?」
「誓う」
「汝、京楽取水は浮竹十四郎を、病める時も健やかなる時も愛すると誓いますか?」
「絶対に誓うよ」
リンゴーンと鐘が鳴り花びらが降ってきた。
空はオーロラ色に輝いていた。
「綺麗だな」
正装をした浮竹を見て、京楽は微笑む。
「浮竹のほうが数倍綺麗だよ?」
「は、恥ずかしいことを口にするな!」
ハリセンではたかれたが、京楽のにまにまは止まらない。
「これで、君はボクのものだ。愛し、守りぬくから」
「俺は守られてばかりの弱い存在じゃないぞ。勇者だし、俺がお前を守ってやる」
「く~~~嬉しいねぇ。お互いを守りあおう」
「俺たち、ちょっとやそっとのことでは守る必要なんて思うのだが」
京楽が首を横に振る。
「ボクが魔王である限り、聖女教の刺客がくる」
「ああ、前の大神官イブラヒムのような相手か。あれくらい、楽勝だろう」
「でも、もっと強いやつがきたら」
「俺とお前でやっつけるといい。俺は聖女教に勇者として認められていないし、聖女教になるつもりもない」
「浮竹、愛してる!大好きだよ!」
「お、俺も愛してるし好きだ」
「これが夢落ちだったりして」
「京楽、京楽いい加減起きろ」
「ガーン。本当の夢落ちだった」
「何を言っているんだ。結婚しただろう?今日から新婚旅行に、トエイ帝国まで行く予定だろうが」
「夢落ちじゃなかった!」
京楽はがばりと起き上がると、浮竹を抱きしめてキスをする。
さらにその先をしようとして、浮竹にハリセンではたかれた。
「結婚はしたが、まだ体は許さない」
「え~けち~~」
「結婚が1カ月続いたら、抱いてもいい」
「まじで?」
浮竹は真っ赤になって、前言撤回をしようとする。
「浮竹が言ったんだからね。1カ月したら、君を抱くよ」
「はう」
浮竹は、己の軽はずみな言動を後悔するのであった。
当時の京楽は浅黒い肌に青い瞳、金色の髪をしていた。今の白い肌、黒い髪、鳶色の瞳ではなかった。
一緒に孤児院にいた時間は僅か2か月であったが、幼いながらに二人はとても仲がよかった。
京楽が、異世界に魔王となるために召喚される前までは。
今から600年前、時空をこえて京楽は召喚された。魔族の器に、その精神は宿り、元の肉体は粉々になった。
孤児院にいた時代から、京楽春水と名乗っているが、浮竹は昔のことすぎて覚えていないようであった。
「君が、ボクの花嫁になってくれると言っていた、幼い頃の冗談を本当にする。君を第三夫人にする」
浮竹は、すうすうとよく眠っていた。
その頬に触れて、京楽は愛しそうに浮竹に口づける。
「ん‥‥‥京楽?」
「ああ、起こしてしまったんだね。なんでもないから、もう一度寝なさい」
「俺は、お前と何か大事なことを忘れているような気がする」
「ボクのこと、覚えてるの!?」
「へ、なんだそれは。俺はこの世界ではじめて京楽と会ったぞ?」
京楽の期待は粉々にされたが、京楽は少し悲しそうな顔をするだけだった。
「うん、そうだね。勇者としてボクを討伐しにきたのが初めての出会いだね」
それは、この世界での浮竹との初めての出会いであった。
京楽は、浮竹を見た時運命を感じた。同じ異世界召喚をされたからだ。
浮竹の場合、大人になっていたが、すぐに幼い頃一緒にいた浮竹だと分かった。幼い頃から、京楽は浮竹のことが好きだった。
だから、異世界なのをいいことに、第三夫人‥‥‥‥実質、第一夫人と第二夫人のスラ子さんと骨子さんは魔王になるために存在が必要だっただけで、意思の疎通もできないしいてもいなくても関係なかった。
それでも、一応夫人なので今のままの形でいた。
浮竹が望むなら、第一夫人も第二夫人も消してしまうだろう。
「ねぇ、君が第三夫人になってくれないのは、ボクに第一夫人と第二夫人がいるから?」
「それもあるが‥‥‥」
「じゃあ、第一夫人と第二夫人は消す」
「え?」
京楽は、第一夫人のスラ子さんと第二夫人の骨子さんを召喚して、魔法で灰にしてしまった。
「ほら、もう第一夫人と第二夫人はないないよ?」
「ばか!」
浮竹は怒った。
「浮竹?」
「モンスターでも生きていて、お前の夫人なんだぞ。もっと大切にしろ!」
「そうは言っても、意思の疎通もできないんだよ」
「え、そうなのか?」
「前にも説明したと思うんだけど」
「すまん、聞いてなかった」
「じゃあ、第一夫人になって?」
京楽は、改めて浮竹にプロポーズした。
「そんなに俺と結婚したいのか?」
「うん」
「俺は勇者だぞ」
「勇者だろうと関係ない。君がいいんだ。君は覚えてないだろうけど、元の世界の孤児院で、2カ月間だけど一緒に過ごしてたんだよ」
「え?」
浮竹派驚く。
「ボクは6歳の頃異世界召喚されて、こっちの世界にきて精神が魔族に宿った。見た目はこんなだけど、元は褐色の肌、金の髪、青い瞳をしていた。名前は京楽春水のままだけど」
「あ‥‥‥京ちゃんか?」
「ボクのこと覚えてるの!?」
「うっすらと」
「ボクは時空をこえて召喚されたからね。今から600年前に。君まで異世界召喚されたと知った時、運命を感じたよ。改めて、好きだよ、浮竹。ボクの伴侶になって」
「京楽‥‥‥‥」
浮竹は、真っ赤になっていた。
「返事は?やっぱり、だめかな?」
「俺を」
「うん?」
「俺だけを見て、俺だけを一生愛してくれるなら、伴侶になる」
「浮竹!」
京楽は、浮竹を思い切り抱きしめた。
「その、すぐに体を許すとかはないからな」
「君がいてくれるなら、体なんてどうでもいい。まぁ、結ばれたくはあるけどね。ボクも男だし」
「俺も男だぞ」
「ふふ、この世界では同性同士が結婚することは珍しくないんだよ?」
「ああ、道理で同じ同性のカップルが多いわけだ」
「そうと決まったら、結婚式を挙げよう。騒がしいのは嫌だろうから、二人だけの結婚式を」
「二人だけなら、結婚式挙げてもいいかな」
こうして、数日が経ち、浮竹と京楽は結婚式を挙げた。
神父だけを呼んで、二人で愛を誓いあう。
「汝、浮竹十四郎は京楽春水を、病める時も健やかなる時も愛すると誓いますか?」
「誓う」
「汝、京楽取水は浮竹十四郎を、病める時も健やかなる時も愛すると誓いますか?」
「絶対に誓うよ」
リンゴーンと鐘が鳴り花びらが降ってきた。
空はオーロラ色に輝いていた。
「綺麗だな」
正装をした浮竹を見て、京楽は微笑む。
「浮竹のほうが数倍綺麗だよ?」
「は、恥ずかしいことを口にするな!」
ハリセンではたかれたが、京楽のにまにまは止まらない。
「これで、君はボクのものだ。愛し、守りぬくから」
「俺は守られてばかりの弱い存在じゃないぞ。勇者だし、俺がお前を守ってやる」
「く~~~嬉しいねぇ。お互いを守りあおう」
「俺たち、ちょっとやそっとのことでは守る必要なんて思うのだが」
京楽が首を横に振る。
「ボクが魔王である限り、聖女教の刺客がくる」
「ああ、前の大神官イブラヒムのような相手か。あれくらい、楽勝だろう」
「でも、もっと強いやつがきたら」
「俺とお前でやっつけるといい。俺は聖女教に勇者として認められていないし、聖女教になるつもりもない」
「浮竹、愛してる!大好きだよ!」
「お、俺も愛してるし好きだ」
「これが夢落ちだったりして」
「京楽、京楽いい加減起きろ」
「ガーン。本当の夢落ちだった」
「何を言っているんだ。結婚しただろう?今日から新婚旅行に、トエイ帝国まで行く予定だろうが」
「夢落ちじゃなかった!」
京楽はがばりと起き上がると、浮竹を抱きしめてキスをする。
さらにその先をしようとして、浮竹にハリセンではたかれた。
「結婚はしたが、まだ体は許さない」
「え~けち~~」
「結婚が1カ月続いたら、抱いてもいい」
「まじで?」
浮竹は真っ赤になって、前言撤回をしようとする。
「浮竹が言ったんだからね。1カ月したら、君を抱くよ」
「はう」
浮竹は、己の軽はずみな言動を後悔するのであった。
魔王と勇者と7
「君は魔力が高いのに、魔法が使えない。それは基礎の魔法構築が間違っているからだよ。今日は、君に魔法を覚えてもらう」
「一応、ファイアアローくらいなら使えるぞ」
「唱えてごらん」
「ファイアアロー」
浮竹が魔法で出した魔法の炎の矢は、のろのろと地面をのたくった後、「ぎええええ」と叫んで消えていった。
「ほら、使えただろう?」
京楽は、笑い死にしかけていた。
「失礼なやつだな。使えと言ったのはお前だぞ、京楽」
「矢がのろのろの上に、どこをどうしたら悲鳴をあげて消えるんだろう」
「いや、これが普通じゃないのか?アリーナ王国で魔法の練習もしたけど、これでいいって言われたぞ」
「それ、絶対これは手に負えないって、遠巻きに言われてるようなもんだよ」
「じゃあ、京楽のファイアアローを見せてくれ」
京楽と浮竹は、魔王城で魔法を使うわけにもいかないので、近くの森にきていた。
「ファイアアロー」
京楽が唱えたファイアアローは、幾本もの木を貫き燃やしていく。
「す、すごいな。こんな魔法だったのか」
「ボクの場合、魔王だから威力は高いけど、基本炎の矢の形となって対象物に飛んでいく魔法だよ」
「俺の魔法の腕は、自慢じゃないがへっぽこだからな」
「ほんと、自慢することじゃないね。でももったいないよ。せっかく勇者として高い魔力を持っているのに、魔法が使えないなんて。君の場合、初めに教えた師が悪かったんだろうね」
「ううむ」
「まずは魔法の構築からスタートだよ。瞑想から始めようか」
幾度も違うと否定されて、それでも浮竹は基礎の魔法構築を続ける。
その日は、一日中魔法構築のやり直しで終わった。
次の日も、瞑想から入る。京楽が細かに教える魔法構築の仕方を何とかマスターし、浮竹は魔法を唱えてみた。
「ファイアアロー」
相変わらず炎の矢はうねうねしていたが、木に向かって飛んでいき、その木を燃やした。
「すごい!俺でも魔法が使えたぞ!」
「素質はあるようだから、もっといっぱい練習しよう。きっと、その魔力の高さなら禁忌の魔法さえ唱えれる」
「え、そんな物騒な魔法は覚えないぞ」
「まぁ、基本属性の上位魔法を習得するまで、毎日特訓だよ」
浮竹は筋がよく、火土風水の上位魔法を習得するまで1か月もかからなかった。
「嘘みたいだ。俺が魔法使えるなんて」
「あいかわず、魔法はうねうねしているけど、まぁ合格かな」
「やった!」
「その、魔法がうねうねするのはなんでだい?」
「分からん。最初に契約した精霊が名もなき精霊だったせいかも」
「名もなき精霊‥‥‥ああ、悪戯好きのアルカンテスだね。それなら納得だ。アルカンテスは精霊だけど、悪戯好きで契約した相手の魔法をおかしくさせる。今すぐ契約破棄しよう」
「分かった」
浮竹は、アルカンテスを召喚した。
「なんぼのもんやねんわれ。一度契約したんだ、取り消しはきかへんで」
「へぇ。そんなに、死にたいの?」
京楽が、魔力をこめた手でアルカンテスの頭をわしづかむ。
「ひええええ、魔王京楽!う、浮竹との契約は破棄するから、命ばかりはお助けをおおおお」
こうして、浮竹はアルカンテスとの契約を白紙にして、もう一度ファイアアローを唱えた。
「ファイアアロー」
炎の矢は、くねくね踊ってから、対象であった木を燃やす。
「あれぇ、なんでだ?ましになったけど、やっぱり変だ」
「あちゃあ。異界から召喚されたときに、ゲートに脳の一部がやられたのかもね」
「俺の魔法は、一生こうなのか?」
「うん」
「くすん。勇者の魔法なのにださい」
浮竹は、涙を滲ませる。
「ま、まぁちょっと個性的だけどちゃんと魔法としては成り立っているから」
「本当か?」
「うん。ファイアアローも、ちゃんと木を燃やしたでしょ?」
「ああ」
「もっと魔力をこめたら、もっと大きな魔法になる。ただ、浮竹の場合は怖いから、必要な時以外は魔法を使わないでね」
「せっかく訓練したのに」
京楽は、浮竹の頭を撫でる。
「モンスター退治の時とかなら使っていいから」
「本当か?」
「うん」
「じゃあ、もうちょっと魔法の腕、磨くな?」
「アルカンテスと契約できたってことは、精霊魔法も素質ありそうだね。シルフ、ウンディーネ、サラマンダー、ノーム、顕現せよ」
4匹の精霊が京楽の召喚によって姿を現す。
「契約できるか、ためしてごらん」
「どうすればいいんだ?」
「精霊に触れながら、契約の呪文を唱えるんだよ」
見本を京楽から見せてもらい、浮竹は4匹の精霊との契約に成功した。
「わお。4属性の適正ありかい。さすが勇者」
「契約できたってことは、召喚もできるんだよな?」
「うん。召喚してみる?」
「ああ」
浮竹は、風の精霊シルフを召喚した。
すると、出てきたのは風の精霊王だった。
「え、なんで精霊王が。ボクだって契約できてないのに」
「汝は、4大精霊王との契約を完了させた。下位精霊との契約であったが、その力は精霊王と契約するにふさわしいと判断して、勝手に契約させてもらった」
「わあ、なんかすごいことになってる!」
「浮竹はエレメンタルマスターなんだね。勇者だけど」
「そうなのか?」
「ボクは、魔王だけど職は縁者だよ。魔王や勇者っていうのは、ただの役職だからね」
「風の精霊王、浮竹を今後も頼むよ」
「承知した」
そう言って、風の精霊王は消えていった。
「おなかすいた」
ぐ~と浮竹が腹をならす。
「精霊の使役は魔力だけでなく、生命エネルギーも使うから、お腹もすくよ。無意味に精霊王を呼び出しちゃだめだよ。彼らはプライドが高いから」
「分かった。飯にしよう。腹減った」
「浮竹は、マイペースでいいね」
精霊王と契約できたことを自慢しようともしない。
浮竹と京楽は、転移魔法で魔王城まで戻り、少し早めの夕食をとった。
浮竹は、よく食べた。
「ちょっと、食べすぎじゃない?」
「腹が減るんだ]
「うーん、一気に4大精霊王と契約しちゃったせいだろうね。しばらく空腹が続くけど、あんまり食べ過ぎてお腹壊さないようにね」
「ああ、分かっている」
こうして、浮竹の魔法の修行は終わった。
魔法は普通に使えるが、ちょっと変で、エレメンタルマスターとなった。
エレメンタルマスターが貴重な存在であると知るのは、また別の機会であった。
「一応、ファイアアローくらいなら使えるぞ」
「唱えてごらん」
「ファイアアロー」
浮竹が魔法で出した魔法の炎の矢は、のろのろと地面をのたくった後、「ぎええええ」と叫んで消えていった。
「ほら、使えただろう?」
京楽は、笑い死にしかけていた。
「失礼なやつだな。使えと言ったのはお前だぞ、京楽」
「矢がのろのろの上に、どこをどうしたら悲鳴をあげて消えるんだろう」
「いや、これが普通じゃないのか?アリーナ王国で魔法の練習もしたけど、これでいいって言われたぞ」
「それ、絶対これは手に負えないって、遠巻きに言われてるようなもんだよ」
「じゃあ、京楽のファイアアローを見せてくれ」
京楽と浮竹は、魔王城で魔法を使うわけにもいかないので、近くの森にきていた。
「ファイアアロー」
京楽が唱えたファイアアローは、幾本もの木を貫き燃やしていく。
「す、すごいな。こんな魔法だったのか」
「ボクの場合、魔王だから威力は高いけど、基本炎の矢の形となって対象物に飛んでいく魔法だよ」
「俺の魔法の腕は、自慢じゃないがへっぽこだからな」
「ほんと、自慢することじゃないね。でももったいないよ。せっかく勇者として高い魔力を持っているのに、魔法が使えないなんて。君の場合、初めに教えた師が悪かったんだろうね」
「ううむ」
「まずは魔法の構築からスタートだよ。瞑想から始めようか」
幾度も違うと否定されて、それでも浮竹は基礎の魔法構築を続ける。
その日は、一日中魔法構築のやり直しで終わった。
次の日も、瞑想から入る。京楽が細かに教える魔法構築の仕方を何とかマスターし、浮竹は魔法を唱えてみた。
「ファイアアロー」
相変わらず炎の矢はうねうねしていたが、木に向かって飛んでいき、その木を燃やした。
「すごい!俺でも魔法が使えたぞ!」
「素質はあるようだから、もっといっぱい練習しよう。きっと、その魔力の高さなら禁忌の魔法さえ唱えれる」
「え、そんな物騒な魔法は覚えないぞ」
「まぁ、基本属性の上位魔法を習得するまで、毎日特訓だよ」
浮竹は筋がよく、火土風水の上位魔法を習得するまで1か月もかからなかった。
「嘘みたいだ。俺が魔法使えるなんて」
「あいかわず、魔法はうねうねしているけど、まぁ合格かな」
「やった!」
「その、魔法がうねうねするのはなんでだい?」
「分からん。最初に契約した精霊が名もなき精霊だったせいかも」
「名もなき精霊‥‥‥ああ、悪戯好きのアルカンテスだね。それなら納得だ。アルカンテスは精霊だけど、悪戯好きで契約した相手の魔法をおかしくさせる。今すぐ契約破棄しよう」
「分かった」
浮竹は、アルカンテスを召喚した。
「なんぼのもんやねんわれ。一度契約したんだ、取り消しはきかへんで」
「へぇ。そんなに、死にたいの?」
京楽が、魔力をこめた手でアルカンテスの頭をわしづかむ。
「ひええええ、魔王京楽!う、浮竹との契約は破棄するから、命ばかりはお助けをおおおお」
こうして、浮竹はアルカンテスとの契約を白紙にして、もう一度ファイアアローを唱えた。
「ファイアアロー」
炎の矢は、くねくね踊ってから、対象であった木を燃やす。
「あれぇ、なんでだ?ましになったけど、やっぱり変だ」
「あちゃあ。異界から召喚されたときに、ゲートに脳の一部がやられたのかもね」
「俺の魔法は、一生こうなのか?」
「うん」
「くすん。勇者の魔法なのにださい」
浮竹は、涙を滲ませる。
「ま、まぁちょっと個性的だけどちゃんと魔法としては成り立っているから」
「本当か?」
「うん。ファイアアローも、ちゃんと木を燃やしたでしょ?」
「ああ」
「もっと魔力をこめたら、もっと大きな魔法になる。ただ、浮竹の場合は怖いから、必要な時以外は魔法を使わないでね」
「せっかく訓練したのに」
京楽は、浮竹の頭を撫でる。
「モンスター退治の時とかなら使っていいから」
「本当か?」
「うん」
「じゃあ、もうちょっと魔法の腕、磨くな?」
「アルカンテスと契約できたってことは、精霊魔法も素質ありそうだね。シルフ、ウンディーネ、サラマンダー、ノーム、顕現せよ」
4匹の精霊が京楽の召喚によって姿を現す。
「契約できるか、ためしてごらん」
「どうすればいいんだ?」
「精霊に触れながら、契約の呪文を唱えるんだよ」
見本を京楽から見せてもらい、浮竹は4匹の精霊との契約に成功した。
「わお。4属性の適正ありかい。さすが勇者」
「契約できたってことは、召喚もできるんだよな?」
「うん。召喚してみる?」
「ああ」
浮竹は、風の精霊シルフを召喚した。
すると、出てきたのは風の精霊王だった。
「え、なんで精霊王が。ボクだって契約できてないのに」
「汝は、4大精霊王との契約を完了させた。下位精霊との契約であったが、その力は精霊王と契約するにふさわしいと判断して、勝手に契約させてもらった」
「わあ、なんかすごいことになってる!」
「浮竹はエレメンタルマスターなんだね。勇者だけど」
「そうなのか?」
「ボクは、魔王だけど職は縁者だよ。魔王や勇者っていうのは、ただの役職だからね」
「風の精霊王、浮竹を今後も頼むよ」
「承知した」
そう言って、風の精霊王は消えていった。
「おなかすいた」
ぐ~と浮竹が腹をならす。
「精霊の使役は魔力だけでなく、生命エネルギーも使うから、お腹もすくよ。無意味に精霊王を呼び出しちゃだめだよ。彼らはプライドが高いから」
「分かった。飯にしよう。腹減った」
「浮竹は、マイペースでいいね」
精霊王と契約できたことを自慢しようともしない。
浮竹と京楽は、転移魔法で魔王城まで戻り、少し早めの夕食をとった。
浮竹は、よく食べた。
「ちょっと、食べすぎじゃない?」
「腹が減るんだ]
「うーん、一気に4大精霊王と契約しちゃったせいだろうね。しばらく空腹が続くけど、あんまり食べ過ぎてお腹壊さないようにね」
「ああ、分かっている」
こうして、浮竹の魔法の修行は終わった。
魔法は普通に使えるが、ちょっと変で、エレメンタルマスターとなった。
エレメンタルマスターが貴重な存在であると知るのは、また別の機会であった。
魔王と勇者と6
浮竹が京楽の元にきて3か月が経とうとしていた。
変わらず京楽は第三夫人にとプロポーズをして、浮竹が断る毎日だった。
「はぁ。ボクってそんなに魅力ないかな」
「か、かっこいいとは思うぞ。ただ、第三夫人になるってことは、京楽のものになるってことだろう?まだ、その気にはなれない」
「まだってことは、少しは考えてくれてるんだね?」
「す、少しだけだからな!」
ツンデレな浮竹をかわいく思い、京楽は抱きしめて口づけた。
「今の関係、親友以上恋人未満だね」
「そ、そうだな」
「少し脈ありと分かって元気でてきた」
「お前はいつでも元気だろう」
「それが、今日は朝から頭が痛くて。せきもでるし」
浮竹は、京楽のおでこにおでこをひっつけた。
「熱がある。多分風邪だな。おとつい、ずぶ濡れで帰ってきただろう」
「ああ、やっぱそのせいか。風邪だと思ったら悪寒がしてきた」
浮竹は、京楽の手をひっぱって寝室に連れてくる。
「今日は執務は放置して寝ていろ」
「でも」
「いいから、寝てろ。おかゆを作ってくるから、薬を持ってくるから飲むんだぞ」
「え、浮竹が作ってくれるの?」
「ああ。厨房を借りるぞ」
「君の手料理なんてはじめてだ」
「一人の頃は自炊してたからな。家事にはそれなりに自信がある。ただ、魔王城では人が雇われていて仕事を奪うわけにもいかないからな」
浮竹は、厨房をかりて卵粥を作った。
「ほら、作ってきたぞ」
「食べさせて?」
「一人で食べれるだろう?」
「ボクは病人なんだよ。優しくしてよ」
「仕方ないやつだなぁ」
浮竹は、卵粥をスプーンですくうと、ふうふうと冷まして、京楽の口元に持っていく。
「うん、思っていた以上においしい」
「そうか。口にあっているならよかった」
京楽は全部浮竹に食べさせてもらって、薬を飲んで横になる。
「眠気がこない」
「スリープの魔法をかけてやろう。魔法はだめだめだが、スリープの魔法くらいなら使える」
「うん、お願い」
浮竹は、京楽にスリープの魔法をかける。京楽の髪がアフロになった。
「あ、あれ?」
「浮竹‥‥‥魔法の構築激しく間違ってる。自分でスリープの魔法かけて寝るよ」
京楽は、アフロを癒しの魔法で治すと、自分にスリープの魔法をかけて眠ってしまった。
「はぁ。なんで俺の魔法の腕はこうなんだ」
一人、浮竹はため息をつくのであった。
そんなある日、魔王城に訪問客というか刺客がやってきた。
「私は聖女教の大神官イブラヒムである。この世界に巣くう悪の権化である魔王を倒しに来た。さぁ、魔王勝負だ!」
「まためんどくさい‥‥‥」
「魔王が出てこないなら、兵士から駆除してやる」
幾人かの兵士を殺して、イブラヒムは怒った京楽を相手にすることになる。
「アルティメットジャッジメント」
「ダークシールド」
聖なる魔法攻撃を、京楽は闇の盾で防ぐ。
「ホーリーライト」
「死んでしまえ。ヘルズゲート」
「うわああああああ」
地獄の扉が開く。
イブラヒムは吸い込まれていき、後には何も残らなかった。
「リザレクション」
復活の魔法を使い、イブラヒムにやられた兵士たちを蘇生させる。
浮竹は、見ているだけだった。
これは聖女教と魔王京楽の問題である。勇者である浮竹が出ていく場面ではない。
「聖女教、いよいよ本格的に動き出したみたいだね」
「そうだな」
「今の聖女は17代目のアナスタスシア。いずれ、決着をつける日がくるだろうね」
「聖女を殺すのか?」
『女神でもあるから、殺すことはできないよ。ただ、手を出してこないように痛めつける必要があるけどね」
「そうか‥‥‥」
浮竹は、聖女教は嫌いではなかった。
ただ魔王排斥を掲げているので、そこはどうかと思っていた。
京楽は税を安くとりたて、自分から民草の意見を聞き、月に一度無料でけがや病気を治癒する。魔王というより、聖者だ。
「京楽は、いい魔王なのにな」
「仕方ないよ。魔王は魔王。聖女教の敵だから」
「人と魔族も仲良く住んでいるんだ。聖女教も変わればいいのに」
「ボクの代だけだからね。世界征服しようとしない魔王は」
「そうだな。今ままでの魔王は残忍だったから」
「いつか、聖女アナスタシアに分かってもらいたいね。今の魔王は排斥するほど酷くないって」
浮竹派頷いた。
「いつか、分かりあえるいいな?」
「そうだね」
「あら。イブラヒムは死んでしまったの。やっぱり、大神官程度では物足りないようね。どう思うの、藍染」
「君の好きなように動いていい。この賢者の石と、魔王京楽のもつ世界樹の雫を手に入れれば、私は魔神となれる」
「魔王京楽は、本当に世界樹の雫をもっているの?世界樹は枯れて400年は経つのよ?」
「あの魔王は600年は生きている。世界樹の雫を必ずもっているはずだ」
「まぁいいわ。もう少し、様子を見ましょう。魔王京楽が世界にとって脅威である限り、排除はし続けなければ」
「愛しているよ、女神であり聖女であるアナスタシア」
「私も愛しているわ、藍染。お腹の子は無事生まれてきそうよ」
「それは何よりだ」
聖女アナスタシアが、藍染が元魔王だと知っていた。その上で交わり、子を妊娠したのであった。
聖女アナスタシアの子は、聖人と認定されるであろう。
たとえ、父親が魔族でも。
変わらず京楽は第三夫人にとプロポーズをして、浮竹が断る毎日だった。
「はぁ。ボクってそんなに魅力ないかな」
「か、かっこいいとは思うぞ。ただ、第三夫人になるってことは、京楽のものになるってことだろう?まだ、その気にはなれない」
「まだってことは、少しは考えてくれてるんだね?」
「す、少しだけだからな!」
ツンデレな浮竹をかわいく思い、京楽は抱きしめて口づけた。
「今の関係、親友以上恋人未満だね」
「そ、そうだな」
「少し脈ありと分かって元気でてきた」
「お前はいつでも元気だろう」
「それが、今日は朝から頭が痛くて。せきもでるし」
浮竹は、京楽のおでこにおでこをひっつけた。
「熱がある。多分風邪だな。おとつい、ずぶ濡れで帰ってきただろう」
「ああ、やっぱそのせいか。風邪だと思ったら悪寒がしてきた」
浮竹は、京楽の手をひっぱって寝室に連れてくる。
「今日は執務は放置して寝ていろ」
「でも」
「いいから、寝てろ。おかゆを作ってくるから、薬を持ってくるから飲むんだぞ」
「え、浮竹が作ってくれるの?」
「ああ。厨房を借りるぞ」
「君の手料理なんてはじめてだ」
「一人の頃は自炊してたからな。家事にはそれなりに自信がある。ただ、魔王城では人が雇われていて仕事を奪うわけにもいかないからな」
浮竹は、厨房をかりて卵粥を作った。
「ほら、作ってきたぞ」
「食べさせて?」
「一人で食べれるだろう?」
「ボクは病人なんだよ。優しくしてよ」
「仕方ないやつだなぁ」
浮竹は、卵粥をスプーンですくうと、ふうふうと冷まして、京楽の口元に持っていく。
「うん、思っていた以上においしい」
「そうか。口にあっているならよかった」
京楽は全部浮竹に食べさせてもらって、薬を飲んで横になる。
「眠気がこない」
「スリープの魔法をかけてやろう。魔法はだめだめだが、スリープの魔法くらいなら使える」
「うん、お願い」
浮竹は、京楽にスリープの魔法をかける。京楽の髪がアフロになった。
「あ、あれ?」
「浮竹‥‥‥魔法の構築激しく間違ってる。自分でスリープの魔法かけて寝るよ」
京楽は、アフロを癒しの魔法で治すと、自分にスリープの魔法をかけて眠ってしまった。
「はぁ。なんで俺の魔法の腕はこうなんだ」
一人、浮竹はため息をつくのであった。
そんなある日、魔王城に訪問客というか刺客がやってきた。
「私は聖女教の大神官イブラヒムである。この世界に巣くう悪の権化である魔王を倒しに来た。さぁ、魔王勝負だ!」
「まためんどくさい‥‥‥」
「魔王が出てこないなら、兵士から駆除してやる」
幾人かの兵士を殺して、イブラヒムは怒った京楽を相手にすることになる。
「アルティメットジャッジメント」
「ダークシールド」
聖なる魔法攻撃を、京楽は闇の盾で防ぐ。
「ホーリーライト」
「死んでしまえ。ヘルズゲート」
「うわああああああ」
地獄の扉が開く。
イブラヒムは吸い込まれていき、後には何も残らなかった。
「リザレクション」
復活の魔法を使い、イブラヒムにやられた兵士たちを蘇生させる。
浮竹は、見ているだけだった。
これは聖女教と魔王京楽の問題である。勇者である浮竹が出ていく場面ではない。
「聖女教、いよいよ本格的に動き出したみたいだね」
「そうだな」
「今の聖女は17代目のアナスタスシア。いずれ、決着をつける日がくるだろうね」
「聖女を殺すのか?」
『女神でもあるから、殺すことはできないよ。ただ、手を出してこないように痛めつける必要があるけどね」
「そうか‥‥‥」
浮竹は、聖女教は嫌いではなかった。
ただ魔王排斥を掲げているので、そこはどうかと思っていた。
京楽は税を安くとりたて、自分から民草の意見を聞き、月に一度無料でけがや病気を治癒する。魔王というより、聖者だ。
「京楽は、いい魔王なのにな」
「仕方ないよ。魔王は魔王。聖女教の敵だから」
「人と魔族も仲良く住んでいるんだ。聖女教も変わればいいのに」
「ボクの代だけだからね。世界征服しようとしない魔王は」
「そうだな。今ままでの魔王は残忍だったから」
「いつか、聖女アナスタシアに分かってもらいたいね。今の魔王は排斥するほど酷くないって」
浮竹派頷いた。
「いつか、分かりあえるいいな?」
「そうだね」
「あら。イブラヒムは死んでしまったの。やっぱり、大神官程度では物足りないようね。どう思うの、藍染」
「君の好きなように動いていい。この賢者の石と、魔王京楽のもつ世界樹の雫を手に入れれば、私は魔神となれる」
「魔王京楽は、本当に世界樹の雫をもっているの?世界樹は枯れて400年は経つのよ?」
「あの魔王は600年は生きている。世界樹の雫を必ずもっているはずだ」
「まぁいいわ。もう少し、様子を見ましょう。魔王京楽が世界にとって脅威である限り、排除はし続けなければ」
「愛しているよ、女神であり聖女であるアナスタシア」
「私も愛しているわ、藍染。お腹の子は無事生まれてきそうよ」
「それは何よりだ」
聖女アナスタシアが、藍染が元魔王だと知っていた。その上で交わり、子を妊娠したのであった。
聖女アナスタシアの子は、聖人と認定されるであろう。
たとえ、父親が魔族でも。
魔王と勇者と5
勇者浮竹は、魔王京楽の城で厄介になっている。
魔王の派閥に入り、勇者としては人々に認められてはいるが、愛用していた勇者の証でもある聖剣エクスカリバーには見棄てられて、エクスカリバーはポンコツになり、世界でも最大の宗教である聖女教には未だに勇者として認められていない。
他にも勇者は浮竹を入れて三人存在した。
北の勇者浮竹十四郎、南の勇者黒崎一護、東の勇者朽木白哉であった。
南の勇者黒崎一護と東の勇者朽木白哉は聖女教で正式な勇者として認められており、何度か京楽と会っているが、京楽が平和主義者の魔王であるため、討伐にまでは至っていない。
聖女教でも、魔王排斥は当たり前であったが、魔王が京楽になってから、表だって京楽を退治しようとする者はいなかった。
それでも、魔王であるために時折刺客がくるが、魔王京楽の力は本物で、勇者にも引けをとらないので返り討ちにしていた。
「浮竹、朝だよ起きて」
「うーん、あと10分」
「もう昼前だよ。いい加減に起きないと、襲っちゃうよ?」
「お、起きる!」
浮竹は、がばりと起きて時計を見た。
11時20分をさしていた。
「うーん、昨日夜遅くまでモンスター退治していたせいで、寝過ごしてしまった」
「浮竹には感謝してるよ。本来ならボクが兵を派遣しなきゃいけないし、兵たちも無事に帰ってくる保証はない。それを、浮竹が担ってくれてるおかげで、兵たちは未開の地の開墾をできる。基本自給自足がモットーだからね、魔王軍は」
「魔王城にも広い畑が広がっているからな。何も城で野菜を育てなくてもいいとは思うが」
「無駄に広い薔薇園なんかを作るよりは、有意義でしょ?」
「まぁな。おまけに魔王自らが収穫するときている」
浮竹の中にあった魔王像は、京楽の存在で粉々になっていた。
「さて、朝食を兼ねた昼食をとったら、浮竹も野菜の収穫だよ」
「分かった」
質素な生活を送っていた時には考えられないような、豪華な昼食を食べて、浮竹は京楽と一緒に魔王城の畑の野菜を収穫した。
「レタスとトマトときゅうりがよく育ってるね。浮竹の意見を聞いて、肥料を変えたおかげかな」
「質のいい土地のわりには、へぼい肥料を使っていたからな」
「さて、今日もしばらく執務は大臣たちに任せているから、何をしよう?」
「カララッカに行ってみたい。白竜が出るそうだ。背中に乗せてもらいたい」
「カララッカか。転移魔法を使えばすぐに行けるから、お茶をしてから行こうか?」
「ああ」
浮竹と京楽は、最高級茶葉のアッサムの紅茶を飲みながら、専属シェフのつくったラズベリータルトを食べた。
そして、京楽の転移魔法でカララッカにやってきた。
北の地域にある魔王領の中でもさらに北にあるので、雪が降っていた。
「ほら、防寒具」
京楽は、アイテムポケットからコートとマフラーと手袋を出して、浮竹に与えた。
「お前の分は?」
「ボクは体温を自由に調整できるから、寒くないの。魔族の中でも、ボクは変わっているからね」
「あ、白竜だ!」
空を飛んでいく白竜を見上げる。
「おおい、ゼイアス!」
「む、魔王京楽か」
白竜は、浮竹のすぐ目の前に降りてきた。
「は、白竜と知り合いなのか?」
「うん。これでも結構長い時を生きているからね。他にもドラゴンの知り合いはいるよ」
「すごいな」
「ゼイアス、こっちの子はボクの派閥に入った勇者浮竹。君の背中に乗りたいそうだよ。乗せてあげてくれないかな?」
「魔王の頼みなら、無碍にはできんな。乗れ、人間の勇者よ」
「うわぁ」
浮竹は、はじめてドラゴンを見た。その広い背中に乗って、空を翔ける白竜と一緒になって空を飛んだ。
「すごいぞ、京楽!」
「人の子よ、勇者でありながら魔王と共にいるのは、いろいろ問題もあるだろうが、我の古き友である京楽と仲良くしてやってほしい」
「ああ、分かった」
白竜ゼイアスは、京楽のことを心配していた。
聖女教がある限り、魔王である京楽は完全に人と打ち解けあえない。
「京楽は、俺の大切な友人だ」
「その言葉を聞いて安心した」
ゼイアスの背から降りた浮竹は、京楽に微笑みかける。
「俺たちは、友人だよな?」
「ボクは、君を第3夫人にしたいんだけどね。まぁ、今の関係は友人かな」
「このゼイアス、魔王によき人の友ができて安心した。また我の背に乗りたくなったら、遊びにくるといい。歓迎しよう」
白竜ゼイアスは、それだけ言い残すと住処である洞窟に戻っていった。
「楽しめた?」
「ああ、お陰様で。はじめて本物のドラゴンを見て、背に乗れた。満足だ」
「じゃあ、寒いし魔王城まで帰ろうか」
「ああ」
魔王城に戻ると、夕方になっていた。
浮竹と京樂は、外で食事をして、湯あみをして同じベッドで眠る。
「いつか、君をボクのものにする」
腕の中で眠ってしまった浮竹に口づけて、京楽もまた眠るのであった。
魔王の派閥に入り、勇者としては人々に認められてはいるが、愛用していた勇者の証でもある聖剣エクスカリバーには見棄てられて、エクスカリバーはポンコツになり、世界でも最大の宗教である聖女教には未だに勇者として認められていない。
他にも勇者は浮竹を入れて三人存在した。
北の勇者浮竹十四郎、南の勇者黒崎一護、東の勇者朽木白哉であった。
南の勇者黒崎一護と東の勇者朽木白哉は聖女教で正式な勇者として認められており、何度か京楽と会っているが、京楽が平和主義者の魔王であるため、討伐にまでは至っていない。
聖女教でも、魔王排斥は当たり前であったが、魔王が京楽になってから、表だって京楽を退治しようとする者はいなかった。
それでも、魔王であるために時折刺客がくるが、魔王京楽の力は本物で、勇者にも引けをとらないので返り討ちにしていた。
「浮竹、朝だよ起きて」
「うーん、あと10分」
「もう昼前だよ。いい加減に起きないと、襲っちゃうよ?」
「お、起きる!」
浮竹は、がばりと起きて時計を見た。
11時20分をさしていた。
「うーん、昨日夜遅くまでモンスター退治していたせいで、寝過ごしてしまった」
「浮竹には感謝してるよ。本来ならボクが兵を派遣しなきゃいけないし、兵たちも無事に帰ってくる保証はない。それを、浮竹が担ってくれてるおかげで、兵たちは未開の地の開墾をできる。基本自給自足がモットーだからね、魔王軍は」
「魔王城にも広い畑が広がっているからな。何も城で野菜を育てなくてもいいとは思うが」
「無駄に広い薔薇園なんかを作るよりは、有意義でしょ?」
「まぁな。おまけに魔王自らが収穫するときている」
浮竹の中にあった魔王像は、京楽の存在で粉々になっていた。
「さて、朝食を兼ねた昼食をとったら、浮竹も野菜の収穫だよ」
「分かった」
質素な生活を送っていた時には考えられないような、豪華な昼食を食べて、浮竹は京楽と一緒に魔王城の畑の野菜を収穫した。
「レタスとトマトときゅうりがよく育ってるね。浮竹の意見を聞いて、肥料を変えたおかげかな」
「質のいい土地のわりには、へぼい肥料を使っていたからな」
「さて、今日もしばらく執務は大臣たちに任せているから、何をしよう?」
「カララッカに行ってみたい。白竜が出るそうだ。背中に乗せてもらいたい」
「カララッカか。転移魔法を使えばすぐに行けるから、お茶をしてから行こうか?」
「ああ」
浮竹と京楽は、最高級茶葉のアッサムの紅茶を飲みながら、専属シェフのつくったラズベリータルトを食べた。
そして、京楽の転移魔法でカララッカにやってきた。
北の地域にある魔王領の中でもさらに北にあるので、雪が降っていた。
「ほら、防寒具」
京楽は、アイテムポケットからコートとマフラーと手袋を出して、浮竹に与えた。
「お前の分は?」
「ボクは体温を自由に調整できるから、寒くないの。魔族の中でも、ボクは変わっているからね」
「あ、白竜だ!」
空を飛んでいく白竜を見上げる。
「おおい、ゼイアス!」
「む、魔王京楽か」
白竜は、浮竹のすぐ目の前に降りてきた。
「は、白竜と知り合いなのか?」
「うん。これでも結構長い時を生きているからね。他にもドラゴンの知り合いはいるよ」
「すごいな」
「ゼイアス、こっちの子はボクの派閥に入った勇者浮竹。君の背中に乗りたいそうだよ。乗せてあげてくれないかな?」
「魔王の頼みなら、無碍にはできんな。乗れ、人間の勇者よ」
「うわぁ」
浮竹は、はじめてドラゴンを見た。その広い背中に乗って、空を翔ける白竜と一緒になって空を飛んだ。
「すごいぞ、京楽!」
「人の子よ、勇者でありながら魔王と共にいるのは、いろいろ問題もあるだろうが、我の古き友である京楽と仲良くしてやってほしい」
「ああ、分かった」
白竜ゼイアスは、京楽のことを心配していた。
聖女教がある限り、魔王である京楽は完全に人と打ち解けあえない。
「京楽は、俺の大切な友人だ」
「その言葉を聞いて安心した」
ゼイアスの背から降りた浮竹は、京楽に微笑みかける。
「俺たちは、友人だよな?」
「ボクは、君を第3夫人にしたいんだけどね。まぁ、今の関係は友人かな」
「このゼイアス、魔王によき人の友ができて安心した。また我の背に乗りたくなったら、遊びにくるといい。歓迎しよう」
白竜ゼイアスは、それだけ言い残すと住処である洞窟に戻っていった。
「楽しめた?」
「ああ、お陰様で。はじめて本物のドラゴンを見て、背に乗れた。満足だ」
「じゃあ、寒いし魔王城まで帰ろうか」
「ああ」
魔王城に戻ると、夕方になっていた。
浮竹と京樂は、外で食事をして、湯あみをして同じベッドで眠る。
「いつか、君をボクのものにする」
腕の中で眠ってしまった浮竹に口づけて、京楽もまた眠るのであった。
魔王と勇者と4
浮竹のもっていた、聖剣エクスカリバーが、京楽の仲間になったことで使えなくなった。
浮竹は大変困った。アリーナ王国の国宝で、勇者のみが使えるとされていた聖剣であったのだが、勇者の行いによって使えなくなることもあるそうで。
浮竹は、京楽を殺さず仲間になったことに後悔はない。
「京楽、話があるんだが」
「どうしたんだい」
「俺の聖剣エクスカリバーがポンコツになった。何か、他の代わりになる剣はないか」
「そうだねぇ、宝物庫にいってみようか」
浮竹は京楽と共に宝物庫に入った。
ありえない量の金銀財宝に、浮竹はぽかんとしていた。
「藍染が民草から搾取したものがほとんどだからね」
「そ、そうか」
「あ、これなんてどう?聖剣リヴァイアサン。海のドラゴンリヴァイアサンを呼べるよ」
「いや、陸地で使うから海のドラゴンなんて呼んでも‥‥‥」
京楽は、残念そうな顔をして、次の剣を紹介する。
「魔剣ソウルイーター。切った者の魂を食らう」
「いや、俺一応勇者だし、モンスター以外もきるときあるから、魂もっていかれるのはちょっと‥‥‥。あ、この剣はなんていうんだ?」
浮竹が、漆黒の禍々しいくも美しくもある魔剣を手に取る。
「魔王剣ディアブロ。ボクが昔、愛用していた剣だね。使う者の魔力を吸い取って、力に変える」
「これがいい。俺は、この剣にする」
「でも、魔力もっていかれるんだよ?」
京楽は、浮竹を心配そうに見る。
「ああ、大丈夫だ。俺は魔力は高いがろくに魔法が使えないんだ。魔力の高さで剣の切れ味が変わるなら、これがいい」
「魔剣の類になるけどいいの?」
「勇者が魔剣を手にしてはいけないとかないからな」
浮竹は、魔王剣ディアブロを抜いた。
刃も漆黒で、美しく輝いていた。さっそく魔力を吸われたが、浮竹にとっては微々たるもので、問題はなさそうだった。
「あと、これ気になったので、もらっていっていいか?」
浮竹が選んだのは、ハリセンだった。
「それは、はたいた者の魔力を生命力にかえるハリセンだね」
「うん、なんか使えそうだ。京楽につっこみを入れる時とかに使おう」
「えー、ボクにつっこみ?」
「ああ。たまにつっこみたくなる」
「まぁいいや。他に欲しいものはない?」
「この魔銀のブレスレットももらっていいか?」
浮竹は、魔力を帯びた品が分かる。
「ああ、それは装着者の命を一度だけ守ってくれる貴重な品だけど、あげる。宝物庫の中のものの所有権はボクにあるからね」
「すまない、恩にきる」
「それなら第三夫人に」
「ならない!」
浮竹は、早速ハリセンで京楽の頭をはたく。
浮竹は元気になった。京楽は魔力を吸われて、ちょっと元気じゃなくなった。
「これ、モンスター退治でも使えそうだな」
「モンスターに、ハリセンで立ち向かう勇者‥‥‥ぷくくく」
「笑うな!」
浮竹は、またハリセンを炸裂させる。
京楽は一度で慣れたようで、はたかれる時魔力を小さくした。
「や、やるな」
「ふふん、伊達に魔王じゃないよ」
宝物庫をあとにして、浮竹は日課のモンスター退治に出かけようとする。
「ボクもついていくよ」
「魔王の執務は?」
「今日はお休みの日だから」
「そうか。南の森の魔獣を、最近退治しているんだ」
「ああ、南の森はモンスターがわんさかいるからね。一人では大変でしょ?」
「まぁな」
浮竹は、勇者とはいえソロだ。倒せるモンスターの数にも限りがある。何より、魔法がうまく使えないので、広範囲に及ぶ攻撃手段が少なかった。
「じゃあ、南の森にいこうか。お昼用にサンドイッチ作ってもらおう」
「おい、遊びに行くんんじゃないんだぞ?」
「南の森は、モンスターを無限に生み出す魔法陣があってね。どうしても壊せないんだ。でも、勇者の力なら、壊せるかもね?」
南の森にきた。
人里から離れているし、魔獣の跋扈する森にくるアホはいない。
さて、そんま場所にピクニック気分できたアホが二人いた。
魔王京楽と勇者浮竹だった。
襲い掛かってくるモンスターを浮竹は魔王剣でばったばったと切っていく。
「フレアサークル!」
京楽は、広範囲の魔法でモンスターをやっつける。
浮竹も真似したくなって、同じ魔法を使ってみた。
「フレアサークル」
うねうね。
炎が踊っていた。
「浮竹の意外な弱点発見。魔法がへぼい」
「へぼいいうな!」
ハリセンではたく。ついにで魔獣の頭もはたいた。
「ぎえええええ」
魔獣は、ハリセンではたかれると死んでしまった。
「どうなってるんだ、このハリセンは」
「モンスターの一部は魔力でできているからね。この森の魔獣どもは、魔力でできている。魔法陣から召喚されるから」
「その魔法陣のところに行ってみよう」
「うん。敵がわんさかいるから、ボクの魔法で片付けるね」
やがて、魔法陣のある場所にやってきた。
その間も、モンスターが召喚されていた。
「この魔法陣、どこかで見たことがある。確か、勇者の血を注げば消えるはず」
浮竹は、手を剣で切ると、魔法陣に滴らせた。
すると、魔法陣が赤くなり、消滅してしまった。
「どこで見たの。この魔法陣を」
「アリーナ王国の地下で」
「ふむ‥‥今度、そこに行こうか。それよりも、傷見せて!」
「大したことないぞ」
「だめ!君はボクの未来の第三夫人なんだから。傷の一つでも残しちゃだめ」
「大げさだな。あと、第三夫人にはならないからな」
京楽に魔法でけがを癒してもらい、京楽の転移魔法で魔王城まで戻ってくる。
「ちょっと、待っててね。強制労働させてる元アリーナ国王に魔法陣のこと聞いてくる」
京楽は、まさかとは思いつつも、元国王の働く鉱山に行く。
「単刀直入に聞く。モンスターが発生する魔法陣を地下に作ったね?」
「ははははは、私をバカにする者どもに天罰をを与えるために作っただけだ」
「放置していたら、厄介なことになると知っていて?」
「あの魔法陣は、私の血でできている。消せる方法など」
「勇者の血を滴らせたら消えるらしいよ」
「なんだと!あの寝返ったいまいましい勇者の血で消えるだと!」
アリーナの元国王は、アリーナ王国で出没するモンスターを召喚し続ける、禁忌の魔法陣を作っていた咎で、処刑が決まった。
「浮竹、アリーナ王国の魔法陣消したいんだけど、血をもらえるかな」
「いいぞ」
浮竹は迷いもなく自分の手をきり、空き瓶に自分の血を滴らせた。
「ほら、もっていけ」
「ありがとう。アリーナ王国の地下の魔法陣、消してくるね」
「ああ」
京楽と浮竹は、魔王城で一度別れた。浮竹は自分を召喚した国を裏切っていることになっているので、今回は同行しなかった。
「あった。魔法陣だ。隣の魔法陣は、異世界から人を召喚する魔法陣か。どっちも壊しておこう」
勇者浮竹の血を使い、魔法陣を消し去ると、京楽は魔王城に帰還した。夜になっていて、浮竹は眠ってしまっていた。
「浮竹。おやすみ」
浮竹の寝室で、額に口づけてから、京楽も眠るのであった。
浮竹は大変困った。アリーナ王国の国宝で、勇者のみが使えるとされていた聖剣であったのだが、勇者の行いによって使えなくなることもあるそうで。
浮竹は、京楽を殺さず仲間になったことに後悔はない。
「京楽、話があるんだが」
「どうしたんだい」
「俺の聖剣エクスカリバーがポンコツになった。何か、他の代わりになる剣はないか」
「そうだねぇ、宝物庫にいってみようか」
浮竹は京楽と共に宝物庫に入った。
ありえない量の金銀財宝に、浮竹はぽかんとしていた。
「藍染が民草から搾取したものがほとんどだからね」
「そ、そうか」
「あ、これなんてどう?聖剣リヴァイアサン。海のドラゴンリヴァイアサンを呼べるよ」
「いや、陸地で使うから海のドラゴンなんて呼んでも‥‥‥」
京楽は、残念そうな顔をして、次の剣を紹介する。
「魔剣ソウルイーター。切った者の魂を食らう」
「いや、俺一応勇者だし、モンスター以外もきるときあるから、魂もっていかれるのはちょっと‥‥‥。あ、この剣はなんていうんだ?」
浮竹が、漆黒の禍々しいくも美しくもある魔剣を手に取る。
「魔王剣ディアブロ。ボクが昔、愛用していた剣だね。使う者の魔力を吸い取って、力に変える」
「これがいい。俺は、この剣にする」
「でも、魔力もっていかれるんだよ?」
京楽は、浮竹を心配そうに見る。
「ああ、大丈夫だ。俺は魔力は高いがろくに魔法が使えないんだ。魔力の高さで剣の切れ味が変わるなら、これがいい」
「魔剣の類になるけどいいの?」
「勇者が魔剣を手にしてはいけないとかないからな」
浮竹は、魔王剣ディアブロを抜いた。
刃も漆黒で、美しく輝いていた。さっそく魔力を吸われたが、浮竹にとっては微々たるもので、問題はなさそうだった。
「あと、これ気になったので、もらっていっていいか?」
浮竹が選んだのは、ハリセンだった。
「それは、はたいた者の魔力を生命力にかえるハリセンだね」
「うん、なんか使えそうだ。京楽につっこみを入れる時とかに使おう」
「えー、ボクにつっこみ?」
「ああ。たまにつっこみたくなる」
「まぁいいや。他に欲しいものはない?」
「この魔銀のブレスレットももらっていいか?」
浮竹は、魔力を帯びた品が分かる。
「ああ、それは装着者の命を一度だけ守ってくれる貴重な品だけど、あげる。宝物庫の中のものの所有権はボクにあるからね」
「すまない、恩にきる」
「それなら第三夫人に」
「ならない!」
浮竹は、早速ハリセンで京楽の頭をはたく。
浮竹は元気になった。京楽は魔力を吸われて、ちょっと元気じゃなくなった。
「これ、モンスター退治でも使えそうだな」
「モンスターに、ハリセンで立ち向かう勇者‥‥‥ぷくくく」
「笑うな!」
浮竹は、またハリセンを炸裂させる。
京楽は一度で慣れたようで、はたかれる時魔力を小さくした。
「や、やるな」
「ふふん、伊達に魔王じゃないよ」
宝物庫をあとにして、浮竹は日課のモンスター退治に出かけようとする。
「ボクもついていくよ」
「魔王の執務は?」
「今日はお休みの日だから」
「そうか。南の森の魔獣を、最近退治しているんだ」
「ああ、南の森はモンスターがわんさかいるからね。一人では大変でしょ?」
「まぁな」
浮竹は、勇者とはいえソロだ。倒せるモンスターの数にも限りがある。何より、魔法がうまく使えないので、広範囲に及ぶ攻撃手段が少なかった。
「じゃあ、南の森にいこうか。お昼用にサンドイッチ作ってもらおう」
「おい、遊びに行くんんじゃないんだぞ?」
「南の森は、モンスターを無限に生み出す魔法陣があってね。どうしても壊せないんだ。でも、勇者の力なら、壊せるかもね?」
南の森にきた。
人里から離れているし、魔獣の跋扈する森にくるアホはいない。
さて、そんま場所にピクニック気分できたアホが二人いた。
魔王京楽と勇者浮竹だった。
襲い掛かってくるモンスターを浮竹は魔王剣でばったばったと切っていく。
「フレアサークル!」
京楽は、広範囲の魔法でモンスターをやっつける。
浮竹も真似したくなって、同じ魔法を使ってみた。
「フレアサークル」
うねうね。
炎が踊っていた。
「浮竹の意外な弱点発見。魔法がへぼい」
「へぼいいうな!」
ハリセンではたく。ついにで魔獣の頭もはたいた。
「ぎえええええ」
魔獣は、ハリセンではたかれると死んでしまった。
「どうなってるんだ、このハリセンは」
「モンスターの一部は魔力でできているからね。この森の魔獣どもは、魔力でできている。魔法陣から召喚されるから」
「その魔法陣のところに行ってみよう」
「うん。敵がわんさかいるから、ボクの魔法で片付けるね」
やがて、魔法陣のある場所にやってきた。
その間も、モンスターが召喚されていた。
「この魔法陣、どこかで見たことがある。確か、勇者の血を注げば消えるはず」
浮竹は、手を剣で切ると、魔法陣に滴らせた。
すると、魔法陣が赤くなり、消滅してしまった。
「どこで見たの。この魔法陣を」
「アリーナ王国の地下で」
「ふむ‥‥今度、そこに行こうか。それよりも、傷見せて!」
「大したことないぞ」
「だめ!君はボクの未来の第三夫人なんだから。傷の一つでも残しちゃだめ」
「大げさだな。あと、第三夫人にはならないからな」
京楽に魔法でけがを癒してもらい、京楽の転移魔法で魔王城まで戻ってくる。
「ちょっと、待っててね。強制労働させてる元アリーナ国王に魔法陣のこと聞いてくる」
京楽は、まさかとは思いつつも、元国王の働く鉱山に行く。
「単刀直入に聞く。モンスターが発生する魔法陣を地下に作ったね?」
「ははははは、私をバカにする者どもに天罰をを与えるために作っただけだ」
「放置していたら、厄介なことになると知っていて?」
「あの魔法陣は、私の血でできている。消せる方法など」
「勇者の血を滴らせたら消えるらしいよ」
「なんだと!あの寝返ったいまいましい勇者の血で消えるだと!」
アリーナの元国王は、アリーナ王国で出没するモンスターを召喚し続ける、禁忌の魔法陣を作っていた咎で、処刑が決まった。
「浮竹、アリーナ王国の魔法陣消したいんだけど、血をもらえるかな」
「いいぞ」
浮竹は迷いもなく自分の手をきり、空き瓶に自分の血を滴らせた。
「ほら、もっていけ」
「ありがとう。アリーナ王国の地下の魔法陣、消してくるね」
「ああ」
京楽と浮竹は、魔王城で一度別れた。浮竹は自分を召喚した国を裏切っていることになっているので、今回は同行しなかった。
「あった。魔法陣だ。隣の魔法陣は、異世界から人を召喚する魔法陣か。どっちも壊しておこう」
勇者浮竹の血を使い、魔法陣を消し去ると、京楽は魔王城に帰還した。夜になっていて、浮竹は眠ってしまっていた。
「浮竹。おやすみ」
浮竹の寝室で、額に口づけてから、京楽も眠るのであった。
魔王と勇者と3
月に一度、魔王城は一般公開される。
京楽は黄金の玉座に座って、訪れてくる人々に加護を与えて、病気やけがを癒したり、悪運や呪いをといたりする。
中には魔王領以外の国から加護を求めてくる人間もいたが、京楽は気にしない。
「魔王京楽、覚悟!」
訪れていた人の中から、若い男が刃物を手に飛び出してきた。
京楽は、盲目の老人の目を癒していた途中で、心臓を刺されていた。
「聖女教の者だね。悪いけど、ボクは心臓を刺されたぐらいじゃ死なないから」
「京楽、止血を!」
浮竹が顔を蒼くして、流れ出る京楽の血を止めようとする。
「大丈夫だよ、浮竹。自己再生できるから」
「でも、失血死したら大変だ!この男はどうする?」
浮竹が捕まえた若い男性は、「聖女様万歳!」と叫んで、あらかじめ用意していた毒薬を飲んで自殺してしまった。
「聖女教‥‥‥魔王は忌むべき存在。存在自体が罪」
「お、知ってるの?召喚されてまだ1カ月くらいでしょ」
「アリーナ王国にいた頃、この世界の歴史を習っていたからな。世界でも一番大きな宗教の聖女教。女神であり聖女であるアナスタシアを信仰する、魔王排斥派の宗教だろう?」
「その通りだよ。17代目アナスタシアとは会ったことはあるけど、いくら善行をつんでも魔王は魔王だから死ぬべきだっていばってったね。髪の毛をアフロにしたら、殺されそうになったけど。まぁ、聖女ごときでは死なないけどね」
「聖女をアフロに‥‥‥やるな」
「聖女教は厄介だねぇ。前の魔王の藍染のような魔王が多かったから、魔王は忌むべき存在であり、人間の敵だったんだよ。ボクが魔王になって、少し変わったけど」
浮竹は、自己再生能力で京楽の傷が癒えたのを確認して、京楽の血が染みたハンカチを京楽に渡す。
「血は、魔王にとって特別なんだろう?」
「うん。いろんな儀式に使うし、悪用されたら大変だからね」
訪れていた人々は、突然の事態に今回の魔王城一般公開と魔王による無料治癒が強制中止されて、聖女教に不満をぶちまけていた。
「魔王様を殺そうとするなんて」
「聖女教がなんだ!聖女なんて信仰しても、何もしてくれない。魔王様は無償でけがや病気を癒してくださる!」
「魔王様、私たちは魔王様の味方です!」
「そうだそうだ!」
「うん、ありがとね」
京楽は、失った血は取り戻せないので、輸血することにした。
魔王城の寝室に横になり、血液型が同じということで名乗り出た浮竹の血を輸血してもらった。
「ごめんね、いきなりごたごたに巻き込んで」
「いや、不測の事態というやつだ。京楽、無償で人の治療をするのはいいが、もっと警護を増やせ」
「うん。来月からそうするよ」
「危なっかしいから、俺も守ってやる」
浮竹は、顔を僅かに赤くしながらそう言う。
「ふふふ、ありがと。でも、ボクは君を守りたいな」
「俺は勇者だぞ!守る立場だ!」
「うん、そうだね。ねぇ、時間がかかってもいいから、第3夫人のこと、真剣に考えてくれないかな」
「そ、そのうちな!」
浮竹は、京楽の背中をばんばん叩いて、照れ隠しをしていた。
「あいたたた、自己治癒能力があるとはい、痛みは消えてないのでやめて」
「す、すまん」
浮竹は赤くなったままだった。
「ゆ、夕飯ができてないかシェフに聞いてくる」
逃げるように、浮竹が京楽の寝室から出ていった。
「ふふふ、かわいいなぁ。近いうちに、君は絶対第三夫人になってボクのものになる。そうしなきゃ、この世界では生きていけないから。召喚された者は、召喚された者と結ばれなければ死んでしまうから」
京楽も、はるか昔に召喚され、当時は魔王ではなかった。賢者だった。
同じく召喚された賢者の少女と結ばれて、生きながらえた。
浮竹は、召喚の掟を知らない。
「君は、ボクが守る。絶対に」
「聖女であり女神であるアナスタシア様」
「なぁに?」
その美しすぎる少女は、オッドアイの瞳で信者を見る。
「魔王京楽の討伐に失敗しました」
「あら、またなの。魔王はこの世界の悪。滅んでもらわなくては」
アナスタシアは、うっとりと傍らにいる男に身を委ねる。
「ねぇ、あなたもそう思うでしょ、藍染」
「ああ」
生死不明の藍染は、5年前から聖女教のアナスタシアを虜にして、魔王という存在をこえて魔神になろうとしていた。
「愛しているよ、アナスタシア。私の、かわいいお人形」
「ふふふ。京楽春水‥‥‥魔王らしくあればいいのに、無駄に人間に人気があるからいやね」
「京楽は、結構狡猾な男だ」
「あら。そうね、いずれ大神官を派遣いたしましょう」
聖女であり女神であるアナスタシアは笑う。はたして、藍染に利用されているのか、それとも利用しているのか、それは誰にも分からなかった。
京楽は黄金の玉座に座って、訪れてくる人々に加護を与えて、病気やけがを癒したり、悪運や呪いをといたりする。
中には魔王領以外の国から加護を求めてくる人間もいたが、京楽は気にしない。
「魔王京楽、覚悟!」
訪れていた人の中から、若い男が刃物を手に飛び出してきた。
京楽は、盲目の老人の目を癒していた途中で、心臓を刺されていた。
「聖女教の者だね。悪いけど、ボクは心臓を刺されたぐらいじゃ死なないから」
「京楽、止血を!」
浮竹が顔を蒼くして、流れ出る京楽の血を止めようとする。
「大丈夫だよ、浮竹。自己再生できるから」
「でも、失血死したら大変だ!この男はどうする?」
浮竹が捕まえた若い男性は、「聖女様万歳!」と叫んで、あらかじめ用意していた毒薬を飲んで自殺してしまった。
「聖女教‥‥‥魔王は忌むべき存在。存在自体が罪」
「お、知ってるの?召喚されてまだ1カ月くらいでしょ」
「アリーナ王国にいた頃、この世界の歴史を習っていたからな。世界でも一番大きな宗教の聖女教。女神であり聖女であるアナスタシアを信仰する、魔王排斥派の宗教だろう?」
「その通りだよ。17代目アナスタシアとは会ったことはあるけど、いくら善行をつんでも魔王は魔王だから死ぬべきだっていばってったね。髪の毛をアフロにしたら、殺されそうになったけど。まぁ、聖女ごときでは死なないけどね」
「聖女をアフロに‥‥‥やるな」
「聖女教は厄介だねぇ。前の魔王の藍染のような魔王が多かったから、魔王は忌むべき存在であり、人間の敵だったんだよ。ボクが魔王になって、少し変わったけど」
浮竹は、自己再生能力で京楽の傷が癒えたのを確認して、京楽の血が染みたハンカチを京楽に渡す。
「血は、魔王にとって特別なんだろう?」
「うん。いろんな儀式に使うし、悪用されたら大変だからね」
訪れていた人々は、突然の事態に今回の魔王城一般公開と魔王による無料治癒が強制中止されて、聖女教に不満をぶちまけていた。
「魔王様を殺そうとするなんて」
「聖女教がなんだ!聖女なんて信仰しても、何もしてくれない。魔王様は無償でけがや病気を癒してくださる!」
「魔王様、私たちは魔王様の味方です!」
「そうだそうだ!」
「うん、ありがとね」
京楽は、失った血は取り戻せないので、輸血することにした。
魔王城の寝室に横になり、血液型が同じということで名乗り出た浮竹の血を輸血してもらった。
「ごめんね、いきなりごたごたに巻き込んで」
「いや、不測の事態というやつだ。京楽、無償で人の治療をするのはいいが、もっと警護を増やせ」
「うん。来月からそうするよ」
「危なっかしいから、俺も守ってやる」
浮竹は、顔を僅かに赤くしながらそう言う。
「ふふふ、ありがと。でも、ボクは君を守りたいな」
「俺は勇者だぞ!守る立場だ!」
「うん、そうだね。ねぇ、時間がかかってもいいから、第3夫人のこと、真剣に考えてくれないかな」
「そ、そのうちな!」
浮竹は、京楽の背中をばんばん叩いて、照れ隠しをしていた。
「あいたたた、自己治癒能力があるとはい、痛みは消えてないのでやめて」
「す、すまん」
浮竹は赤くなったままだった。
「ゆ、夕飯ができてないかシェフに聞いてくる」
逃げるように、浮竹が京楽の寝室から出ていった。
「ふふふ、かわいいなぁ。近いうちに、君は絶対第三夫人になってボクのものになる。そうしなきゃ、この世界では生きていけないから。召喚された者は、召喚された者と結ばれなければ死んでしまうから」
京楽も、はるか昔に召喚され、当時は魔王ではなかった。賢者だった。
同じく召喚された賢者の少女と結ばれて、生きながらえた。
浮竹は、召喚の掟を知らない。
「君は、ボクが守る。絶対に」
「聖女であり女神であるアナスタシア様」
「なぁに?」
その美しすぎる少女は、オッドアイの瞳で信者を見る。
「魔王京楽の討伐に失敗しました」
「あら、またなの。魔王はこの世界の悪。滅んでもらわなくては」
アナスタシアは、うっとりと傍らにいる男に身を委ねる。
「ねぇ、あなたもそう思うでしょ、藍染」
「ああ」
生死不明の藍染は、5年前から聖女教のアナスタシアを虜にして、魔王という存在をこえて魔神になろうとしていた。
「愛しているよ、アナスタシア。私の、かわいいお人形」
「ふふふ。京楽春水‥‥‥魔王らしくあればいいのに、無駄に人間に人気があるからいやね」
「京楽は、結構狡猾な男だ」
「あら。そうね、いずれ大神官を派遣いたしましょう」
聖女であり女神であるアナスタシアは笑う。はたして、藍染に利用されているのか、それとも利用しているのか、それは誰にも分からなかった。
魔王と勇者と2
魔王城は、無駄に広く豪華だった。
浮竹は、黄金の玉座を見てびっくりしていた。何せ、純金製なのである。
「魔王って、金持ちなんだな。質素な生活をしていた俺からすると、考えられない生活だ」
出された朝食、昼食、夕食と午後のお茶もどれもおいしく豪華なものばかりであった。
「全部、前の魔王の藍染が残したものだけどね。食事はまぁ、せっかく魔王になったんだから、おいしいもの食べたいじゃない」
「俺は食費は1日銀貨3枚までにしていた。ここの食事は金貨20枚は飛びそうだ」
「領地にして、自治を任せている王国とかからの献上金が無駄にあるからね。魔王の配下には十分な給料を支払ってるし、魔王が質素な生活してたら、配下の者も貧しい暮らしになるからね」
「ふむ」
「お風呂も天然温泉だからね。ご近所さんがお金払って入りにくる。お風呂は一般利用もできるようにしているから。食事もできるよ」
「そこそこの金をとるのか?」
「うーん、庶民に優しい金額にしてるけどね。天然温泉、食事つきで銀貨3枚」
「高くはないな。安くもない。まぁ、普通か」
浮竹は、納得したような顔をする。
「一緒に、魔王専用の風呂で湯あみしない?」
「へ、変なことしないだろうな?」
「しないよ。君がボクを受け入れてくれるまで、キスとハグまでしかしない」
魔王専用の風呂というのが気になって、浮竹はOKした。
「うわぁ、広いな。おまけにこっちの浴槽は純金製か」
「ああ、それは藍染が残したものだね」
「藍染って、趣味悪かったんだな」
浮竹が、先代の魔王藍染がいなくなったのは、今から5年前のことだと教えられたのを思い出す。アリーナ王国で、文字や歴史の勉強をしていた。
魔法や剣の練習もしていたが、異世界からきた浮竹はこの世界で生きていくために、知恵が必要だったので、読み書きを学んだりしていた。
「黄金の玉座もそうだけど、黄金の便器まであったんだよ。なんでも黄金にすればいいってもんじゃないけどね」
「前の魔王は、領地の国民から搾取していたそうだな」
「うん。ボクが魔王になってみんな喜んでたね。税を5分の1にしたから」
「お前が魔王になって、領地も広がったんだろう?」
「魔王の加護を受けたいと、領地になりたがる国が多くてね。魔王領になると、戦争をしかけられたら守るからね」
「ますます魔王らしくない」
浮竹は広い浴槽につかりながら、くすっと笑った。
「お前が魔王でよかった。無駄な血を流さずにすんだ。召喚されたアリーナ王国では、魔王軍は無慈悲で殺戮をしていると習ったからな。国民もそれを信じていたみたいだし」
「アリーナ国王は、鉱山で一生強制労働さ。命があるだけ、ましだよ」
「そうだな。重税を課して国民を貧困の生活をさせて自分だけ贅沢をしていたからな。まぁ俺のもてなしも国民の血税だっただろうが。この風呂はなんだ?いい匂いがする」
「ああ、それは薔薇風呂だね。気に入ったら、入るといいよ」
浮竹は、薔薇風呂に入った。
ほのかな甘い香りが浮竹を包み込む。
だんだん、眠くなってきた。
「眠いので、風呂からあがって仮眠する」
「うん。その薔薇風風呂は安眠効果があるからね。先に戻って寝ておいで」
浮竹は、風呂からあがってフルーツ牛乳を飲んでから、与えられたこれまた豪華な部屋の豪華な寝台で眠る。
「うーん、もう食べれないむにゃむにゃ」
浮竹を起こしに来た京楽は、浮竹のそんな寝言を聞いてクスリと笑った。
「浮竹、起きて。3時間は眠っていたよ?あんまり寝ると夜に眠れなくなるよ。夕飯の準備できてるから」
「ん、ああ、俺は3時間も仮眠してしまっていたのか」
「うん」
「確かに腹が減った。夕食にしよう」
その日の夕食も豪華だったが、いつも食べ残しがない量にされているので、浮竹も安心して食べた。もしも残すことになったら、もったいなさすぎるからだ。
「明日はアサインの町の視察にいくよ。よければくる?」
「いく。魔王城で厄介になってるが、モンスター退治以外暇だからな」
こうして、京楽と浮竹は、魔王領地の中でも港町として有名で繁栄しているアサインの町に視察にやってきた。
「魔王様だ!魔王様、新鮮な魚がありますよ!」
「魔王様、この葡萄酒飲んでいってください!」
「魔王様、泊まるんならぜひうちの宿に!」
京楽は、引っ張りだこだった。浮竹は、にこやかな京楽の笑顔に、こいつほんとに魔王なのかと思うほどだった。
民草にこれほど慕われる魔王も珍しい。
「食事にしようか。港町だから、海の幸がおいしいよ」
「ああ、分かった」
浮竹と京楽は、その日泊まると決めた宿で、食事をとった。魔王城で出される食事にはさすがに及ばないが、それでも美味だった。
京楽も浮竹も、葡萄酒を飲んだ。
しばらくすると、浮竹の様子がおかしくなった。
「うぃーーー。もっと酒もってこおおおい」
「ちょっと浮竹、酔ったの?」
「この魔王め!スラ子さんと骨子さんと結婚しておきながら、俺とも結婚しようだなんて、10000万年はやいわ!」
「浮竹、もうお酒飲むのはやめよね?」
「うるあああ、もっと飲む」
暴れ出す浮竹に、京楽は仕方なくスリープの魔法をかける。
「ふふ、酒に弱いんだね。新発見だ」
京楽は眠ってしまった浮竹をお姫様だっこして、泊まるスィートルームのベッドに寝かせた。
「ちょっとくらい、いいよね?」
京楽は、浮竹に口づける。
それから、長い白髪を手ですいて、それにも口づけた。
「やっと見つけた、浮竹。ボクのことは覚えていないだろうけど、ボクも君と同じく異世界から召喚されて魔族になったんだよ。君とボクは、きっと運命の糸でつながっている。世界を、時空をこえても、また会えたんだから」
浮竹は忘れてしまっていた。
京楽と浮竹が、元の世界で幼い頃、孤児院で一緒に生活していたことなど。
京楽が孤児院にいたのは2カ月ばかり。
浮竹とは仲が良かったが、子供の頃と今の見た目は違いすぎる。肌と髪と瞳の色も違う。名前は一緒だが、浮竹は幼かったので、きっと忘れてしまっているだろう。
「今度は、もう手放さない。ボクは、ずっと君の傍で君を守るから。おやすみ、浮竹」
京楽は、浮竹の額に口づけて、もう1つの寝台で眠るのであった。
浮竹は、黄金の玉座を見てびっくりしていた。何せ、純金製なのである。
「魔王って、金持ちなんだな。質素な生活をしていた俺からすると、考えられない生活だ」
出された朝食、昼食、夕食と午後のお茶もどれもおいしく豪華なものばかりであった。
「全部、前の魔王の藍染が残したものだけどね。食事はまぁ、せっかく魔王になったんだから、おいしいもの食べたいじゃない」
「俺は食費は1日銀貨3枚までにしていた。ここの食事は金貨20枚は飛びそうだ」
「領地にして、自治を任せている王国とかからの献上金が無駄にあるからね。魔王の配下には十分な給料を支払ってるし、魔王が質素な生活してたら、配下の者も貧しい暮らしになるからね」
「ふむ」
「お風呂も天然温泉だからね。ご近所さんがお金払って入りにくる。お風呂は一般利用もできるようにしているから。食事もできるよ」
「そこそこの金をとるのか?」
「うーん、庶民に優しい金額にしてるけどね。天然温泉、食事つきで銀貨3枚」
「高くはないな。安くもない。まぁ、普通か」
浮竹は、納得したような顔をする。
「一緒に、魔王専用の風呂で湯あみしない?」
「へ、変なことしないだろうな?」
「しないよ。君がボクを受け入れてくれるまで、キスとハグまでしかしない」
魔王専用の風呂というのが気になって、浮竹はOKした。
「うわぁ、広いな。おまけにこっちの浴槽は純金製か」
「ああ、それは藍染が残したものだね」
「藍染って、趣味悪かったんだな」
浮竹が、先代の魔王藍染がいなくなったのは、今から5年前のことだと教えられたのを思い出す。アリーナ王国で、文字や歴史の勉強をしていた。
魔法や剣の練習もしていたが、異世界からきた浮竹はこの世界で生きていくために、知恵が必要だったので、読み書きを学んだりしていた。
「黄金の玉座もそうだけど、黄金の便器まであったんだよ。なんでも黄金にすればいいってもんじゃないけどね」
「前の魔王は、領地の国民から搾取していたそうだな」
「うん。ボクが魔王になってみんな喜んでたね。税を5分の1にしたから」
「お前が魔王になって、領地も広がったんだろう?」
「魔王の加護を受けたいと、領地になりたがる国が多くてね。魔王領になると、戦争をしかけられたら守るからね」
「ますます魔王らしくない」
浮竹は広い浴槽につかりながら、くすっと笑った。
「お前が魔王でよかった。無駄な血を流さずにすんだ。召喚されたアリーナ王国では、魔王軍は無慈悲で殺戮をしていると習ったからな。国民もそれを信じていたみたいだし」
「アリーナ国王は、鉱山で一生強制労働さ。命があるだけ、ましだよ」
「そうだな。重税を課して国民を貧困の生活をさせて自分だけ贅沢をしていたからな。まぁ俺のもてなしも国民の血税だっただろうが。この風呂はなんだ?いい匂いがする」
「ああ、それは薔薇風呂だね。気に入ったら、入るといいよ」
浮竹は、薔薇風呂に入った。
ほのかな甘い香りが浮竹を包み込む。
だんだん、眠くなってきた。
「眠いので、風呂からあがって仮眠する」
「うん。その薔薇風風呂は安眠効果があるからね。先に戻って寝ておいで」
浮竹は、風呂からあがってフルーツ牛乳を飲んでから、与えられたこれまた豪華な部屋の豪華な寝台で眠る。
「うーん、もう食べれないむにゃむにゃ」
浮竹を起こしに来た京楽は、浮竹のそんな寝言を聞いてクスリと笑った。
「浮竹、起きて。3時間は眠っていたよ?あんまり寝ると夜に眠れなくなるよ。夕飯の準備できてるから」
「ん、ああ、俺は3時間も仮眠してしまっていたのか」
「うん」
「確かに腹が減った。夕食にしよう」
その日の夕食も豪華だったが、いつも食べ残しがない量にされているので、浮竹も安心して食べた。もしも残すことになったら、もったいなさすぎるからだ。
「明日はアサインの町の視察にいくよ。よければくる?」
「いく。魔王城で厄介になってるが、モンスター退治以外暇だからな」
こうして、京楽と浮竹は、魔王領地の中でも港町として有名で繁栄しているアサインの町に視察にやってきた。
「魔王様だ!魔王様、新鮮な魚がありますよ!」
「魔王様、この葡萄酒飲んでいってください!」
「魔王様、泊まるんならぜひうちの宿に!」
京楽は、引っ張りだこだった。浮竹は、にこやかな京楽の笑顔に、こいつほんとに魔王なのかと思うほどだった。
民草にこれほど慕われる魔王も珍しい。
「食事にしようか。港町だから、海の幸がおいしいよ」
「ああ、分かった」
浮竹と京楽は、その日泊まると決めた宿で、食事をとった。魔王城で出される食事にはさすがに及ばないが、それでも美味だった。
京楽も浮竹も、葡萄酒を飲んだ。
しばらくすると、浮竹の様子がおかしくなった。
「うぃーーー。もっと酒もってこおおおい」
「ちょっと浮竹、酔ったの?」
「この魔王め!スラ子さんと骨子さんと結婚しておきながら、俺とも結婚しようだなんて、10000万年はやいわ!」
「浮竹、もうお酒飲むのはやめよね?」
「うるあああ、もっと飲む」
暴れ出す浮竹に、京楽は仕方なくスリープの魔法をかける。
「ふふ、酒に弱いんだね。新発見だ」
京楽は眠ってしまった浮竹をお姫様だっこして、泊まるスィートルームのベッドに寝かせた。
「ちょっとくらい、いいよね?」
京楽は、浮竹に口づける。
それから、長い白髪を手ですいて、それにも口づけた。
「やっと見つけた、浮竹。ボクのことは覚えていないだろうけど、ボクも君と同じく異世界から召喚されて魔族になったんだよ。君とボクは、きっと運命の糸でつながっている。世界を、時空をこえても、また会えたんだから」
浮竹は忘れてしまっていた。
京楽と浮竹が、元の世界で幼い頃、孤児院で一緒に生活していたことなど。
京楽が孤児院にいたのは2カ月ばかり。
浮竹とは仲が良かったが、子供の頃と今の見た目は違いすぎる。肌と髪と瞳の色も違う。名前は一緒だが、浮竹は幼かったので、きっと忘れてしまっているだろう。
「今度は、もう手放さない。ボクは、ずっと君の傍で君を守るから。おやすみ、浮竹」
京楽は、浮竹の額に口づけて、もう1つの寝台で眠るのであった。
魔王と勇者と
この世界には、魔王がいた。
誰もが恐れる魔王のはずであった。だが、魔王は優しかった。しかし、魔王は魔王。
アリーナ国では、勇者が異世界から召喚されていた。
全ては、魔王を打ち倒すために。
魔王の名は京楽春水。そして、勇者の名は浮竹十四郎といった。
「魔王、京楽春水、覚悟!」
浮竹は、聖剣エクスカリバーで京楽に切りかかる。
それを適当に受け流して、京楽は浮竹を抱き寄せた。
「な、何を!」
「君、綺麗だね?」
「だからなんだ!」
「ねぇ、勇者なんてやめてボクとのんびりスローライフ送らない?」
「何を言っている!」
「プロポーズしてるんだけど」
浮竹は真っ赤になって、京楽を押しのける。
「お、俺は男だぞ」
「うん、見ればわかるよ。ボク、男も女も両方いけるから」
「このけだもの!」
浮竹は、京楽の意外に強い力に、抱きしめられたままになっていた。
「ふふ、否定はしないよ。ボクの第三夫人になってよ」
「重婚だと!」
「一番目の夫人はスライムのスラ子さん。2番目の夫人はスケルホーンの骨子さん。どっちも会話できないし、何もできないんだよね。魔王には夫人が必須だけど、人間っていろいろじゃまくさいじゃない。君なら、勇者だしボクの名声もあがると思うんだよね」
「名声のためだけに、俺を夫人にするというのか!」
浮竹は怒った。
「ううん。君に一目ぼれした。人間でも、こんな綺麗な子いるんだなって」
「俺はハーフエルフだ」
「そうなの。じゃあ、長い時間を生きれるから、ボクが寿命をいじる必要はないね」
「何を先走って話している!俺はお前を討伐に!」
「一人で?アリーナ国はから書状がきてるよ。勇者を生贄にするから、アリーナ国には手を出さないでくれって」
「なんだと!」
浮竹は、その書状を見せてもらった。
間違いなく、国王の字であった。
「あのたぬきじじい‥‥‥‥‥こうなったら、勇者やめてやる!京楽、夫人にはならないが、お前の仲間になってやる。あのたぬきじじいをぎゃふんと言わせてやる」
「いいねぇ、大歓迎だよ。いずれ夫人になってくれると嬉しいな」
こうして、浮竹十四郎は異世界に呼び出されて1カ月もしないうちに、魔王京楽側に寝返った。
魔王側に寝返って数日が経った。
たくさんの人間が、京楽を訪れていた。
「いやぁ、魔王様の加護をもらうと農作物がよく育つからなぁ」
「あたしなんて、長年の腰痛が嘘みたいに消えちまったよ」
人々は京楽を口々にほめたたえ、感謝の言葉を述べる。
「今時の魔王って‥‥」
アリーナ王国の国王から、魔王京楽は残忍で魔族を率いて人の世界を蹂躙せんとする人物だと聞かされていた。
それがどうだろう。
魔族を率いて、災害に見舞われた地域の復興をしていた。
「京楽、お前はいい魔王なんだな」
「魔王によしあしもないよ。本気で殺しにかかってくる人間は殺してるし」
魔王は、やっぱり魔王だった。
優しいし人望もあるが、残酷な部分もちゃんともっていた。
「勇者やめたからな」
「別に辞めなくていいんじゃない?勇者のままで」
「ふむ。その手もあるか。アリーナ王国のたぬきじじいに勇者の称号を剥奪されるだろうが、この世界では俺は勇者として名前が通っている。勇者のまま、魔王に寝返るか」
「ふふ、毎日一緒に過ごせるね」
「へ、変なことはするなよ」
「夫人になってくれるまで、キスとハグくらいしかしないよ」
浮竹は赤くなって、京楽を見つめる。
「勇者、浮竹十四郎の名をもって、魔王京楽春水の配下に加わることを誓う」
「別に、そんなのいらないよ。アリーナの国王をぎゃふんと言わせたいんでしょ。アリーナの城を攻め落としてしまおう。なるべく血は流さずに」
京楽は、魔王軍を率いてアリーナ王国の首都に攻め入った。
人々は逃げ回るどころか、京楽に挨拶して城へ案内してくれる。
「アリーナ国王の重税に、苦しんでいるんだ。助けてくれ、魔王様」
「アリーナ国王は、勇者浮竹様を見限った」
アリーナ国王は大分だめなやつのようで、京楽は魔王の名の元に、アリーナ王国jの城に攻め入り、国王を捕縛するとアリーナ王国を魔王の領地にした。
「ああ、ありがたい。これで、俺らも魔王様から加護が得られるし、隣国から戦争をしかけられることもない」
「魔王って‥‥…」
浮竹は、異世界から召喚された。元に戻る方法は魔王を倒せば戻れると言っていたが、もうなんだか異世界での暇な生活がどうでもよくなってきた。
浮竹は、地下牢に閉じ込められた国王を一発殴って、頭をバリカンではげにして、小さくではあるが復讐はした。
命をとるのは勇者のすることではない。
アリーナ国王は、魔王領地で強制労働させられるそうだ。
「京楽、ありがとう」
「どういたしまして。ボクの第三夫人になる気になった?」
「それはまだない。だが、勇者としてお前の存在を認め、共存することを世界に発表する」
「うん」
勇者浮竹が、魔王軍の配下に加わったと世界中が知り、魔王京楽の名前は浸透していく。
「お前は、何故魔王になったんだ?」
「うーん、先代魔王が残忍だったからね。人間がかわいそうに思えて倒したら、歓迎されて魔王になちゃった」
「そうか。俺は先代魔王を知らない」
「藍染っていってね。倒したけど、死んではいないようだよ。しぶといから」
「しぶといのか」
「うん。まぁ、ボクと互角くらいの強さだし、今は新しい魔王軍もいるし、攻め込まれる心配はないと思うよ。ボクにケンカを売ってきたのは、君くらいだよ、浮竹」
「お、俺は何も知らなかったから‥‥‥‥」
「ねぇ、第三夫人になってよ」
「第一夫人と第二夫人はどうするんだ」
「そのままだよ。意思の疎通もできないからね」
「なんでまた、スライムとスケルボーンなんだ。お前なら、美女美男よりどりみどりだろう」
「ボクの心を動かす相手がいなかったから。浮竹が初めてだよ。本気で恋に落ちた」
「は、恥ずかしいことを言うな」
浮竹は真っ赤になってそっぽをむく。
「ふふ、かわいいね」
「うるさい」
魔王歴233年。浮竹十四郎は、勇者の称号をもったまま、魔王軍に入るのであった。
誰もが恐れる魔王のはずであった。だが、魔王は優しかった。しかし、魔王は魔王。
アリーナ国では、勇者が異世界から召喚されていた。
全ては、魔王を打ち倒すために。
魔王の名は京楽春水。そして、勇者の名は浮竹十四郎といった。
「魔王、京楽春水、覚悟!」
浮竹は、聖剣エクスカリバーで京楽に切りかかる。
それを適当に受け流して、京楽は浮竹を抱き寄せた。
「な、何を!」
「君、綺麗だね?」
「だからなんだ!」
「ねぇ、勇者なんてやめてボクとのんびりスローライフ送らない?」
「何を言っている!」
「プロポーズしてるんだけど」
浮竹は真っ赤になって、京楽を押しのける。
「お、俺は男だぞ」
「うん、見ればわかるよ。ボク、男も女も両方いけるから」
「このけだもの!」
浮竹は、京楽の意外に強い力に、抱きしめられたままになっていた。
「ふふ、否定はしないよ。ボクの第三夫人になってよ」
「重婚だと!」
「一番目の夫人はスライムのスラ子さん。2番目の夫人はスケルホーンの骨子さん。どっちも会話できないし、何もできないんだよね。魔王には夫人が必須だけど、人間っていろいろじゃまくさいじゃない。君なら、勇者だしボクの名声もあがると思うんだよね」
「名声のためだけに、俺を夫人にするというのか!」
浮竹は怒った。
「ううん。君に一目ぼれした。人間でも、こんな綺麗な子いるんだなって」
「俺はハーフエルフだ」
「そうなの。じゃあ、長い時間を生きれるから、ボクが寿命をいじる必要はないね」
「何を先走って話している!俺はお前を討伐に!」
「一人で?アリーナ国はから書状がきてるよ。勇者を生贄にするから、アリーナ国には手を出さないでくれって」
「なんだと!」
浮竹は、その書状を見せてもらった。
間違いなく、国王の字であった。
「あのたぬきじじい‥‥‥‥‥こうなったら、勇者やめてやる!京楽、夫人にはならないが、お前の仲間になってやる。あのたぬきじじいをぎゃふんと言わせてやる」
「いいねぇ、大歓迎だよ。いずれ夫人になってくれると嬉しいな」
こうして、浮竹十四郎は異世界に呼び出されて1カ月もしないうちに、魔王京楽側に寝返った。
魔王側に寝返って数日が経った。
たくさんの人間が、京楽を訪れていた。
「いやぁ、魔王様の加護をもらうと農作物がよく育つからなぁ」
「あたしなんて、長年の腰痛が嘘みたいに消えちまったよ」
人々は京楽を口々にほめたたえ、感謝の言葉を述べる。
「今時の魔王って‥‥」
アリーナ王国の国王から、魔王京楽は残忍で魔族を率いて人の世界を蹂躙せんとする人物だと聞かされていた。
それがどうだろう。
魔族を率いて、災害に見舞われた地域の復興をしていた。
「京楽、お前はいい魔王なんだな」
「魔王によしあしもないよ。本気で殺しにかかってくる人間は殺してるし」
魔王は、やっぱり魔王だった。
優しいし人望もあるが、残酷な部分もちゃんともっていた。
「勇者やめたからな」
「別に辞めなくていいんじゃない?勇者のままで」
「ふむ。その手もあるか。アリーナ王国のたぬきじじいに勇者の称号を剥奪されるだろうが、この世界では俺は勇者として名前が通っている。勇者のまま、魔王に寝返るか」
「ふふ、毎日一緒に過ごせるね」
「へ、変なことはするなよ」
「夫人になってくれるまで、キスとハグくらいしかしないよ」
浮竹は赤くなって、京楽を見つめる。
「勇者、浮竹十四郎の名をもって、魔王京楽春水の配下に加わることを誓う」
「別に、そんなのいらないよ。アリーナの国王をぎゃふんと言わせたいんでしょ。アリーナの城を攻め落としてしまおう。なるべく血は流さずに」
京楽は、魔王軍を率いてアリーナ王国の首都に攻め入った。
人々は逃げ回るどころか、京楽に挨拶して城へ案内してくれる。
「アリーナ国王の重税に、苦しんでいるんだ。助けてくれ、魔王様」
「アリーナ国王は、勇者浮竹様を見限った」
アリーナ国王は大分だめなやつのようで、京楽は魔王の名の元に、アリーナ王国jの城に攻め入り、国王を捕縛するとアリーナ王国を魔王の領地にした。
「ああ、ありがたい。これで、俺らも魔王様から加護が得られるし、隣国から戦争をしかけられることもない」
「魔王って‥‥…」
浮竹は、異世界から召喚された。元に戻る方法は魔王を倒せば戻れると言っていたが、もうなんだか異世界での暇な生活がどうでもよくなってきた。
浮竹は、地下牢に閉じ込められた国王を一発殴って、頭をバリカンではげにして、小さくではあるが復讐はした。
命をとるのは勇者のすることではない。
アリーナ国王は、魔王領地で強制労働させられるそうだ。
「京楽、ありがとう」
「どういたしまして。ボクの第三夫人になる気になった?」
「それはまだない。だが、勇者としてお前の存在を認め、共存することを世界に発表する」
「うん」
勇者浮竹が、魔王軍の配下に加わったと世界中が知り、魔王京楽の名前は浸透していく。
「お前は、何故魔王になったんだ?」
「うーん、先代魔王が残忍だったからね。人間がかわいそうに思えて倒したら、歓迎されて魔王になちゃった」
「そうか。俺は先代魔王を知らない」
「藍染っていってね。倒したけど、死んではいないようだよ。しぶといから」
「しぶといのか」
「うん。まぁ、ボクと互角くらいの強さだし、今は新しい魔王軍もいるし、攻め込まれる心配はないと思うよ。ボクにケンカを売ってきたのは、君くらいだよ、浮竹」
「お、俺は何も知らなかったから‥‥‥‥」
「ねぇ、第三夫人になってよ」
「第一夫人と第二夫人はどうするんだ」
「そのままだよ。意思の疎通もできないからね」
「なんでまた、スライムとスケルボーンなんだ。お前なら、美女美男よりどりみどりだろう」
「ボクの心を動かす相手がいなかったから。浮竹が初めてだよ。本気で恋に落ちた」
「は、恥ずかしいことを言うな」
浮竹は真っ赤になってそっぽをむく。
「ふふ、かわいいね」
「うるさい」
魔王歴233年。浮竹十四郎は、勇者の称号をもったまま、魔王軍に入るのであった。