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桜のあやかしと共に12

「白哉、誕生日おめでとう」

「おめでとー」

「ふっ、兄らくらいだ。私の誕生日を祝うのは」

「今日は、白哉の好きな辛い料理ばかりにしてみたぞ」

「ふむ」

その日は、白哉の誕生日だった。

誕生日というか、あやかしとして意識をもった日を誕生日にしていた。

「浮竹、兄の誕生日祝いはいつも辛い料理ばかりだな」

「だって、俺には料理の腕くらいしかないだろう?」

「そうでもないよ、十四郎はいるだけで綺麗でかわいいから」

「だそうだぞ、浮竹?」

「ああもう、京楽いちゃついてくるな!今日は白哉が主人公なんだから」

「だそうだぞ、京楽?」

「ええーいいじゃない、減るもんじゃなし。白哉君の誕生日を祝って、ボクらはキスしよう!」

「なぜ、そうなる!」

浮竹は、どこからか取り出したはりせんで、京楽の頭をスパンと叩いた。

「あいたたたた」

でも、京楽はうれしそうにしていた。

「もしかして、京楽、兄はマゾか?」

「な、違うよ!」

「浮竹にビンタされたら、どう感じる?」

「それだけボクのこと思ってくれてて嬉しいなぁって」

「浮竹、手遅れだ」

白哉は、「ご臨終です」という医師のように言った。

「ああ、京楽の脳みそはきっと豆腐だからな」

「まぁ、今日は白哉君の誕生日!飲もう!」

一本百万するワインを、京楽はあけた。

「さぁさぁ、飲んで飲んで」

「白哉、あまり飲むよ。お前は酒に弱いんだから」

「そんなこと言わずに、誕生日の時くらい好きなだけ飲ませてあげなよ」

「・・・・・・・ZZZZZZZZZZ]

「ほら!白哉、起きろ!料理、まだ食べてないだろう!」

「んー・・・・わかめ大使が躍っている・・・・」

浮竹は、仕方ないとばかりに、桜の花びらをふっと吹いた。

白哉の酔いがなくなる。

「はっ!わかめ大使はどこへ!?」

「いや、知らないから」

「わかめ大使って何?」

「小豆とぎに私が個人で注文した、わかめをかたどったあんこ入りのまんじゅうのようなものだ」

「ああ、これのこと?」

わかめ大使とかかれた箱の中に、わかめ大使はいた。

動いた。

「わ、動いた!」

京楽が、驚く。

「そのわかめ大使は機械じかけだ」

「また、わけのわからないものに金を使って・・・・・」

白哉は、何気に金持ちだった。

兄にあたる浮竹も、桜の王として財はあるが,それ以上にもっていた。

それこそ、京楽の住む3億のマンションが買えるくらいには。

そのくせ、浮竹から離れようとはせずに、京楽に養われていた。

白哉は、好きなだけ辛い料理を堪能して、どうせ寝るのだからと、ワインを飲みほした。

「・・・・・・・」

「寝てる」

「寝顔だけなら、かわいいんだけどね。口を開けばいらないこというし、黒猫姿になったらボクの頭かじってチュールくれっていうし」

「「春」の件があってから、俺を守ろうと術の技を磨いている。白哉はなんでもできるが、隠れた努力家だ」

「へぇ、そうなんだ・・・・ねぇ、白哉君も寝ちゃったし、たまにはいいでしょ?」

京楽が、浮竹を抱きしめてキスをしてくる。

「ばか、白哉が目覚めたら・・・・・」

「大丈夫だって」

「いやだ。今日はそんな気分じゃない」

「そう言わずに・・・・かなりご無沙汰だよ」

「あ、春水・・・・あああっ」

乱れそうになる浮竹を、突然起き上がった白哉が、かばう。

「嫌がっている。やめろ」

「白哉君、どいて。いいとこなんだから」

白哉は、桜の花びらをふっと吹くと、京楽を燃やした。

「あちちちちち」

「京楽、無理強いは許さぬ」

「いや、浮竹もその気だったから」

浮竹は真っ赤になって、ハリセンで京楽の顔を殴った。

「おぶ」

「結界のないところでは、こういう真似はするな!禁欲1週間だ。キスもハグもなし!」

「ええええええええええ」

京楽が、悲しそうな声を出す。

「浮竹、たまには一緒に寝よう」

白哉がそう言い出すものだから、京楽がぎょっとする。

「ボク以外の男と、一緒に寝るのは許さないよ」

「何を考えている。私は、子猫姿でたまには一緒に寝ようといいたかっだけだ」

「げふん」

浮竹にハリセンで殴られて、京楽は床に転がった。

それだけ威力のあるハリセンだった。

「ああ、十四郎、こういうプレイも好きなの?」

「死ね!」

浮竹は真っ赤になって、京楽を蹴った。

一方、蹴られた京楽は平気そうな顔をして、浮竹を起き上がって抱きしめる。

「今日は、我慢してあげる。でも、明日抱くからね?」

「ちょ、春水!」

「じゃあ、お先におやすみ」

「さっさと寝ろ。浮竹、嫌ならはっきり言うのだぞ」

「いやじゃない・・・・・・・」

「はぁ・・・私は邪魔者のようだな。明日はルキアのところにでもいくか」

「ごめん、白哉」

「どうってことはない。結界をはって過ごすよりは、外に出たほうが二人きりになれて安心できるであろう」

「その、いつも結界をはらすような真似をして、すまない」

「愛を確かめあうことは、悪いことではない」

浮竹は、残っていたワインを全て飲んで、白い子猫姿になると、黒い子猫姿になった白哉と一緒に、ソファーの上で眠るのであった。









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桜のあやかしと共に11

秋を司る桔梗の王、卯ノ花列は、原因不明の病にかかり、臥せっていた。

もともと治癒能力が高い、癒しの王と呼ばれる女性だったが、自分には術の効果が出ない。

見舞いにやってきた桜の王こと、浮竹は卯ノ花の症状に、心当たりがあった。

夜刀神がおこした災厄に見まわれた後の、人間のようだったのだ。

「原因は穢れだな。卯ノ花、何か心当たりはあるか?」

「そう言われましても・・・そういえば、何かで憔悴しきった者たちがでた村で術を使いました。あの村で治癒行動をしてから、病にかかったような・・・・」

「その村は、穢れで汚染されていただんだろう。治癒術を使う者は、穢れに弱い。穢れを祓おう」

「どうやってですか?」

「俺の知り合いに、穢れを祓う浄化のプロフェッショナルがいる」

「術者の浮竹君のことかい?」

「ああ、そうだ」

京楽の問いに、浮竹が答える。

「でも、部外者を桔梗の王と会わせることになるけどいいの?」

「穢れを甘くみてはいけないぞ。このままでは、衰弱して死んでしまう」

「そうなんです。衰弱が激しいのです。自分に術をかけているのですが、私の術は自分にはききにくいもので・・・・・」

「桔梗の王、4大あやかしの長老だから、まだ生きていられるんだ。普通ならとっくの昔に死んでいる」

「あら・・・・」

とうの卯ノ花は、そこまで深刻に考えていなかったのだ。

はじめは風邪のような状態が続き、次に熱が出て、最後は血を吐いて死んでしまう。

今、風邪の症状が出て、熱がではじめたところであった。

「まだ間に合う。術者の浮竹に連絡して迎えにいこう」

「うん。ボクが迎えにいくよ。浮竹は、術者の浮竹からもらった浄化の札で、桔梗の王の穢れを少しでも祓って」

「やってみる」

京楽は、スマホで術者の浮竹と連絡をとると、桔梗の王が療養している場所を教えて、迎えに行くといった。

迎えにいくと、当たり前のように夜刀神も蝙蝠姿でまぎれていた。

「君もくるの?」

『浮竹が行くなら。ボクも行く』

「まぁ、悩んでも仕方ないね。夜刀神、くれぐれも災禍をふりまかないように」

『さぁ、どうだろうねぇ。ボクの意思と関係なしに、災禍はふりかかるから』

『桔梗の王か・・・・女性なんだよな?』

「うん、そうだよ。穢れのせいで少しやつれていたけど、すごい美人だったよ」

『治癒術の使い手か・・・・でも、自分には治癒の術がほとんど効かないなんて、やっぱり世の中うまくいかないことだらけだな』

術者の浮竹は、高級車に乗るのははじめてで、少しどきどきしていた。

『浮竹の行く場所には、ボクも行くって、分かってたでしょ?』

赤い蝙蝠姿の夜刀神が、浮竹の頭の上でしゃべる。

「うん。でも、浄化するために行くのに、穢れを与える君までくるのは、ちょっと問題があるんだけど、二人はいつも一緒でしょ」

『当たり前だよ』

『夜刀神の穢れは、俺が祓うから安心してくれ』

「任せたよ・・・・・」

京楽と、術者の浮竹と夜刀神を乗せた高級車は、山のほうにのぼっていく。

そして、ある一定の場所で空間が変わった。

桔梗の花が咲き乱れる丘が見えて、その向こう側に古い和風の家屋があった。

「ここはもう、桔梗の王のテリトリーだよ。桔梗を枯らしたりしないでね?」

京楽達は、車を降りて外に出た。

そこかしこで、桔梗の花が咲いていた。

「京楽!」

「十四郎!桔梗の王は?」

「大分札で穢れを取り除いて、今眠ってる」

『眠っている間に、穢れを取り除いでしまおう。夜刀神の存在を知ったら、何か言われそうだ』

術者の浮竹の言葉にみな頷いて、古い日本家屋に入る。

奥の真っ白な部屋で、人形のような女性が横たわっていた。

「これが桔梗の王、卯ノ花烈だ」

『綺麗な人だな。かわいそうに。今、穢れを祓ってあげる』

術者の浮竹は、卯ノ花の穢れを浄化した。

卯ノ花の白い顔の頬に、赤みがさして、健康体に戻っていた。

『じゃあ、俺たちはもう行くな?』

「ああ、ありがとう」

浮竹が礼を言うと、卯ノ花の声がした。

「お待ちなさい」

桔梗の王は目覚めていた。

「礼を、させてください」

『いや、俺たちはいいんで。帰ります』

『ボクも帰るよ』

「でも、命の恩人をただで帰すわけは・・・・そうだ、この秋の宝玉をあげましょう。私の術がつまっています。浄化できるなら、治癒術も使えるでしょう。普通では使えない、高位の治癒術の使い方が入っています」

『いいんですか』

術者の浮竹が、秋の宝玉を受け取る。

「かまいません。私の術は複雑なものが多いですから、使える人はあまりいませんが、あなたなら、使えるようになるでしょう」

『じゃあ、もらっておきますね』

「桔梗の王、体はもう大丈夫なのか?」

「ええ。おかげ様で、すっきりしました」

「よかった・・・」

京楽が、安堵する。

浮竹も、安堵した。

『じゃあ、ボクたちは帰るね・・って、車で送ってもらったんだった』

「ああ、今車を出すよ」

京楽は、術者の浮竹と夜刀神を家まで送っていった。

「卯ノ花、穢れの原因は長老神だと思う」

「ええ。そんな気がしました」

「長老神は災禍を呼ぶ。なぜ長老神でいられるのかもわからない」

「私にも、分かりません」

「とにかく、お互い長老神には気をつけよう」

「ええ」

桜の王と桔梗の王は、お互い体に気をつけてといいあいながら、別れるのであった。



「桜の王め。桔梗の王を助けたか」

その人物は、災禍をもたらした後の場所を見に行って、住民たちが何事もなかったかのように生きて、穢れも自然と祓われていることに激怒したのは、少し前のことだ。

「朝顔の王は私の手の中。あとは、椿の幼き王か・・・・・」

くくくと、その人物は笑う。

彼こそ、神のなりそこないの、長老神であった。







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桜のあやかしと共に10

季節は移ろい、夏も終わり秋になった。

だが、残暑の厳しさに浮竹だけでなく、白哉もだれていた。

ここは、京楽の住む3億もするマンションの一角。

冷房のエアコンが壊れてしまったのだ。

室温はぐんぐんあがり、35度をこしていた。

「暑い。水シャワー浴びてくる」

「浮竹、兄がいくなら私もいく」

「ちょっと、二人とも!もうすぐ修理の人が来てくれるから、それまで我慢してよ!」

「兄は平気そうで羨ましい」

白哉は、浮竹と違うバスルームに向かった。



やがて、エアコンは修理しきれない状態で、買い替えることになった。

「暑い・・・猫の姿でいよう」

「にゃああああ」

すでに、白哉は黒猫の子猫姿で冷たいフローリングで寝そべっている。

「浮竹、買いにいくの一緒についてきてよ」

「猫の姿でいいか?」

「いや、ペット同伴はだめだから」

「じゃあ、京楽一人で行ってこい」

「ぐすん」

結局、京楽は一人で家電屋にいき、百万をこえるクーラーを買ってきて、さっそく店の人にとりつけてもらった。

「極楽極楽・・・・・・」

「あれ、猫がしゃべったような?」

店の人が、うっかり子猫姿で人の言葉を話した浮竹を見てから、笑った。

「猫が、人の言葉話すわけありませんよねぇ」

「そうだね」

「でも、ここって便利屋っていう退治屋してる人の家って聞いたので、よければ話だけでも聞いてくれませんか」

「どうしたんだい?」

浮竹と白哉は、自分の部屋で人化して、京楽のところにやってくる。

「それが、季節外れの藤の花が咲いていて、枯れかけていたんで、水をやって肥料を植えたんです。その次の日から、藤の精霊だというあやかしがやってきて、お礼をさせてくれってうるさいんです。適当に今の上司が気に入らないって言ったら、その上司骨折しちゃって・・・・。他にも愚痴を言ってしまった相手に、次々と不幸が。どうにかなりませんか」

「こりゃ、ボクらの出番だね」

「そうだな」

「うむ」

店の人は、田原といった。

20代前半の若者で、見た目はよかったし、身なりもきちんとしていた。

「ここが、例の藤です」

「10月だぞ・・・5月の藤がこんなに咲いている。狂い咲きだな」

「狂い咲き?」

「季節を間違えて、咲き乱れることだ。確かに、藤のあやかしがいるようだ。人のにおいがするな・・・・あなたの上司やらに災禍をもたらしたのは、この藤の精霊・・・・・藤の花鬼だな]

「祓うかい?」

「狂い咲きの花は理性があまりない。話すだけ無駄だろうし、祓おう」

浮竹は、ふっと桜の花びらを吹くと、藤が枯れていく。

「ぎゃああああああ」

藤の花鬼が現れる。

「おのれ、人間め!」

「残念。こっちの子は桜の王だよ。それで、こっちは桜の王の弟」

「さ、桜の王・・・あやかし殺しの、桜の王・・ひいいいい」

「あやかし殺しとは失礼な。120年前にそれはやめてるぞ」

浮竹がそう言うと、藤の花鬼は震えた。

「他の花鬼が言っていた。人間と、あやかしを退治すると」

藤の花鬼は、綺麗な女性だったが、田原の好みではないらしい。

「もう、他の人に災いがおこるなんてまっぴらごめんだ」

「どうして。あなたのために、してあげたのに。愛しているわ」

「俺は、人間だ。あやかしなんて、好きになれるわけがない。この化け物が!」

「ひどい・・・・・・」

「まぁ、田原君そこまでにしておいて。ボクの十四郎が切れるから」

「あやかしは化け物かもしれないが・・・・・」

浮竹は静かに怒っていた。

「眠れ」

怒っている浮竹の代わりに、白哉が浮竹と同じように、桜の花びらをふっと吹いた。

甘い香りがして、藤の花鬼は、眠りにつく。

「さぁ、兄の出番だ」

「滅!」

眠ったまま、藤の花鬼は消滅した。

「ありがとうごいざいます。給料が出たら、料金をお支払いいたしますので・・・・」

「京楽、藤の花の種が落ちているだろう」

「あ、ほんとだね」

「花鬼の元だ。違う場所に埋めてやろう。新しい藤の花鬼として、成長するだろう」

田原は、浮竹の言葉に嫌そうな顔をする。

「やっつけたんでしょう。また、俺のところにきたらどう責任とってくれるんですか」

「兄の記憶を消す。厄介だ」

ふっと、白哉は桜の花びらをふいて、田原のあやかしに関係した記憶だけを切り取った。

「白哉、俺の技うまくなってきたな」

「浮竹、兄に毎日訓練を受けているからな」

藤の種を、億ションの庭に埋めて、3人は部屋に帰還する。

「藤の花は、自分を救ってくれた男を好いて、男の障害をとりのぞこうとしたが、人に手を出すのはあやかしの世界ではタブーだ」

「うん、そうだね。ボクや、術者の浮竹の元なんかに依頼がくるから」

「今年は、秋になったのに桔梗の王の卯の花烈の姿を見ない。何かあったのだろうか」

「噂では、病にかかったと聞いたぞ」

白哉は、独自のあやかしネットワークをもっていた。情報を集めるのが早い。

「今度、桔梗の王のところに、お見舞いにいくか。何か菓子を作って」

「もちろん、ボクもいくよ」

「浮竹と京楽、兄らが行くのであれば、私も行こう」

こうして、桔梗の王に会うことが決まったのであった。



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桜のあやかしと共に9

「春」の一件があって、半月が過ぎた。

「春」はあれから、一度だけ浮竹の前に現れて、京楽の腕からかすめとり、浮竹に口づけて消えてしまった。

「「春」、まだ存在してるんだね」

「魂を浄化させないとだめだ。術者の俺に頼んで、浄化の札を作ってもらった。術自体は壊してくれたそうだから、今度会った時ちゃんと成仏させる」

浮竹は、「春」の死をきちんと受けいれていた。

「春水、好きだ。ぎゅーーーっってして?」

「ボクも好きだよ、十四郎」:

抱きしめあう二人を、白哉は何も言わずに茶をすすっていた。

「あやかしまんじゅうのストックがつきた。浮竹、兄の名で注文していいか?」

「ああ、いいぞ白哉」

白哉は、浮竹と京楽がいちゃこらするのにも慣れているようで、自分のリズムで日常を過ごす。

「買い物にいってくる」

「十四郎、一人じゃ危ないから、ボクの車で行こう」

「すぐ、そこだぞ?」

「それでもだめ。今の十四郎を一人で行動させれない」

浮竹は、歩いて15分の距離にあるスーパーに、京楽のもつ高級車で出かけた。

「大根が安いな・・・・・。ああ、サンマがあれば。でも季節じゃないしな」

「浮竹、スーパーじゃなくて、今度から通販で買わない?」

「だめだ。材料は新鮮なものでないと。あと、安いほうがいい」

「ボク、君と白哉君を養うくらい平気だよ?」

「まぁ、すでに養ってもらっているから、家事をしている」

「うん。すごく助かるよ」

本当は1つしかなかったベッドを、浮竹と白哉の分も買って、空いていた部屋を浮竹と白哉のj部屋として与えた。

「キャベツが少し高いな・・・・。ガソリンがねあがってるせいで、ほとんどのものが高くなってる」

「桜の精霊なのに、十四郎は現代の買い物事情にくわしいね」

くすっと、京楽は笑った。

買い物を終えて、車に乗ろうとすると、車の中に「春」が座っていた。

「「春」!性懲りもなく、また現れたね!」

「春」が車の外に出て、浮竹に近づく。

「シロ、ボクと一緒にいこう?」

「「春」、俺は春水を愛している。お前を愛していた浮竹十四郎は120年前、お前が死んだ時に一緒に死んだんだ」

「何を言ってるの、シロ。シロはここにいるじゃない」

「「春」・・・・愛している」

「ちょっと、十四郎!?」

浮竹は、「春」を受け入れたように見えた。

「春」を抱きしめて、キスをする。昔のように微笑みかけると、「春」は涙を流した。

「しょせん、かりそめ命か・・・。器があっても、術を壊された。さぁ、シロ、ボクがあやかしになる前に、その浄化の札で成仏させておくれ」

「「春」・・・・愛している。今は春水を愛しているが、「春」も愛していた」

浮竹は、泣きながら笑って、浄化の札を数枚手に取り、「春」を抱きしめながら、その背中にはっていく。

「お別れだ、シロ。120年前、君を残して死んでごめん。それから京楽春水!」

「な、なにさ」

「シロを泣かせたら、許さないからね」

「泣かせないよ!十四郎を残して死なない」

「じゃあ、ボクは一人で黄泉に帰るよ。ボクの転生先はすでにあるからね。消えるだけさ」

すううと、浄化の白い焔がたちのぼり、「春」を包んでいく。

「「春」!!」

「シロ、泣かないで」

「「春」ーーーーー!!!」

車の外で、完全に消えてしまった。

「帰ろう、十四郎」

「ああ・・・・・」

浮竹は、また泣いていた。

「ぐすっ・・・・春水、今日一緒に寝てくれ。寂しい」

「いいよ。君の傍にずっといてあげる」



全てが終わった旨を夜刀神と術者の浮竹に連絡した。

『思うにね、春の季節のあやかしの管理をやめた桜の王に、あやかしの管理をしてほしくて、花鬼が仕組んだみたいだよ」

「俺はもう、過去の俺じゃない。管理といっても、間引きだ。あんな行為、もうしたくない。あやかしがあやかしを殺す。そんなの、おかしい」

『まぁ、確かにねえ』

夜刀神は、浮竹に同情する。

『え、あやかしの管理って、あやかしを殺すことなのか?』

「そうだ。悪さをしたなら分かるが、数の調整だ。そんなの、おかしいだろう?」

『確かにおかしいね。他の長老たちはどうしてるんだい』

「俺と同じで、秋の桔梗と冬の椿は管理をやめた。夏の朝顔は、自分の花鬼を作って間引きさせてる」

『ああ、だからあの時朝顔の花鬼が暴れていたのかい』

「ああ。夏の朝顔の王から、消される通告があったんだろう。俺は、朝顔の王は嫌いだ。名を、市丸ギンという」

『ああ、そんなのいたねぇ』

夜刀神は、懐かしそうに昔を思い出す。

「桔梗の王卯の花烈、椿の王日番谷冬獅郎・・・・ああ、懐かしいな。皆、市丸以外は元気にしているだろうか」

『元気そうだよ?椿の王なんて、小さいくせにかわいい恋人がいたね』

椿は冬の花だ。

見た目は幼い少年だが、齢3千年をこしている。

『とにかく「春」があやかしになったり、悪霊になったりしなくてよかったよ』:

「ぐすっ・・・・・・」

浮竹が、涙を滲ませる。

『あ、ああ、もうこの話は禁句にしようか』

『でも、誰が「春」君に蘇りの術を・・・ただの花鬼にはできないだろう』

「長老神か、先代の長老か・・・そんなところだろうな」

『長老神?』

術者の浮竹が、首を傾げる。

「俺たち4大精霊長老の上に君臨する、植物のあやかしの神だ」

『名前は?』

「藍染。下の名は知らない。俺が桜の王として、5千年前に長老についた時にはすでにいた」

「ボクにはまだあやかしの知識は少ないから、全然分からないよ」

京楽の言葉に、夜刀神が笑う。

『少しずつ覚えていけばいいのさ。桜の王と同じ時間を生き続けるなら』

『そうだぞ。焦っても、なんにもならないしな』

術者の浮竹と夜刀神の京楽は、京楽の億ションにきて、モンブランを食べていた。

この前、夜刀神が作ってほしいと言っていたからだ。

『ああ、やっぱり桜の王が作るお菓子はおいしいねぇ。ボクの浮竹の作るお菓子もおいしくなってきたけど、プロの味ってかんじがする』

「ああ、話してなかったか。40年前、暇だったので人間に化けて、料理の学校に通っていた」

『『はぁ!?』』

「え、まじなの」

「人生が暇だったからな・・・・・白哉は知っているよな?」

「浮竹が、人のまねをするのが好きなことは知っている。高校なる場所へ通っていたり、姿を変化させて小学生になったりもしていた」

『うわー。桜の王の、精霊の長老の小学生なんてひくわー』

「うるさい!俺が何になろうが、勝手だろうが。それに、料理の学校には2年通ったが、他の場所には一時だけだ」

『ま、まぁ、桜の王が誰かに迷惑をかけたわけじゃないからいいんじゃないのか?』

「そうだぞ。料理の腕はもとからあったが、料理の学校に通うようになって、料理がますます好きになったしな」

「いやぁ、毎日浮竹の料理食べてるから、外で食べるとまずいって感じちゃってねえ。困ったよ」

京楽ののろけ話に、浮竹が赤くなる。

「べ、別にお前のためだけに作ってるんじゃないからな!白哉の分もちゃんとあるからな!”」

「浮竹、兄の料理はまさに神」

『夕飯食べていきたいなぁ』

『俺も、夕飯食べていきたい』

「私は元から食べるつもりでいる」

3人から熱烈なコールをされて、浮竹は幸せそうなため息をつきながら、キッチンに消えていく。

「浮竹の手前、言えなかったが、長老神には気をつけろ。あれは、神の領域にいるが、そちらの夜刀神と同じようなまがつかみの一種だ」

『へぇ、ボクと同じ災いの神か・・・・面白い』

「これは、警告だ。長老神は、浮竹をよく思っていない。仲のいい兄らも同様の視線で見られるであろう」

『じゃあ、白哉君も?』

術者の浮竹が聞くと、白哉が答える。

「私もよい目では見られていないな」

「今日はロールキャベツが中心だが、いいだろう?」

キッチンから、浮竹の声がする。

皆、それでいいと答えて、長老神のことはとりあえず保留にした。

できあがった夕飯を食べて、術者の浮竹は涙をにじませる。

『う、うまい・・・』

「そっちの俺に、レシピを書いたメモをやろう」

『ありがとう!!』

術者の浮竹は、浮竹に抱き着いた。

「百合ですな」

『百合だねぇ』

「人は、おかしな名をつけるな」

白哉は、さっさと食べ終わると、黒猫の子猫姿になってチュールが欲しいとにゃあにゃあ京楽をひっかく。

「白哉君、食べすぎじゃないの?浮竹の手料理の後にチュールなんて」

「兄の知ったことではないであろう。さっさとチュールよこせ」

白哉の傍若無人ぶりには、その場にいた誰もかなうことができなかったのであった。















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桜のあやかしと共に8

浮竹は、キッチンで昼食を作っていた。

今、白哉はいない。妹のルキアのネモフィラの花畑に出かけてしまっていた。

ふと、気配を感じて振り返る。

「京楽?」

「ひどいなぁ、シロ。ボクを忘れちゃったの」

「「春」?そ、そんなばかな・・・「春」は死んだはずだ!」

浮竹は、顔面蒼白になった。

「こうやって、この世界に戻ってきたんだよ。シロ、君に会うために。京楽春水だっけ。ボクの生まれ変わり・・・・どこにいるの?その京楽春水の魂を吸えば、ボクは完全に生き返る」

「「春」そんなことしちゃだめだ!俺の「春」は死んだんだ」

「じゃあ、ここにいるボクは?」

「春」は、浮竹を抱きしめた。

「十四郎ただいまー。昼食できたかな?」

「お、さっそく帰ってきたようだね」

「春水、逃げろーーー!!」

京楽は、自分そっくりな「春」を見て、一瞬動きを止める。

「君は・・・「春」?なぜ、いるんだい」

夢の中で、いつも鏡で見る顔だった。

「シロ、さぁのこの京楽春水を贄に・・・・」

「「春」愛してる。でも、それはもう過去のことなんだ」

浮竹は、桜の花びらをふっと吹いて、「春」を燃やす。

泣きながら。

「シロ・・・・どうして?」

「俺は今この春水を愛している。たとえ「春」であっても、奪うことは許さない」

「シロ・・・・一緒にいこう?」

燃えながら、「春」は浮竹を抱きしめる。

浮竹は、やけど一つ負わずに、「春」を抱きしめ返した。

「ごめんなさい「春」。俺には春水が必要なんだ」

「シロ。一緒に眠ろう」

「「春」・・・・・・・・」

シロは、そのまま灰となった。

その場に残された浮竹は、意識を失っていた。

「十四郎!」

京楽がかけよって揺り動かすが、ぴくともしない。

『ああ・・・・間に合わなかったか』

「夜刀神!?」

『「春」は桜の王の魂に入り込んだ。もう、起きない。誰かが、その意識の中にもぐりこんで起こすまでは』

『ちょ、夜刀神、人の意識にもぐりこむのは帰ってこれない可能性が高いんだぞ!』

『でも、するよね?君は』

「うん」

京楽は力強く頷いた。

「ボクたちの危機に、かけつけてくれたんだね。ありがとう。浮竹の意識の中にもぐるよ。手伝ってくれないかな」

京楽は、浮竹をベッドに寝かすと、意識を集中させる。

『ボクが外からサポートするよ。どうか、無事に桜の王と一緒に戻ってきてね』

京楽は、浮竹の意識の中にもぐりこんでいく。

その世界は、いつも夢に見る120年以上前の「春」が生きていた時代だった。

浮竹は、着物姿で、「春」と楽しそうにお茶をしていた。

「おや、こっちにまできたのかい。しつこいね。シロは誰にも渡さない」

「それはボクのセリフだ。十四郎は、渡さない」

京楽は、呪符を「春」に向かって飛ばす。

「春」は、それをシールドで防ぐ。

「ボクも、力はあったんだよ。主に浄化力だけど・・・・シロ、少しまっててね。今、邪魔者を排除するから」

「「春」?そこに、誰かいるのか?」

浮竹には、京楽の姿は見えていないようであった。

「十四郎!」

京楽が叫ぶと、浮竹がピクリと反応する。

「誰だ?俺の名を呼ぶのは・・・どこか懐かしくて、愛しいかんじがする」

「シロ、ボクだけを見て」

「春」を、京楽は浮竹の力を勝手に使って、桜の花びらをふっと吹きかけて、氷漬けにした。

「「春」!?」

場面が変わる。

「春」が血まみれで横たわっていた。近くには「春」をはねた馬車があった。

「いやだああああああああ!「春」「春」!!!!!」

「浮竹、目を覚まして!これは「春」が君を自分のものにするために見せている夢だ!」

そこで、京楽の姿が浮竹にも見えた。

「春水!?俺は・・・「春」は・・・・・」

「「春」は今、君の精神の中にもぐりこんで、魂の状態だけでいる。追い出せるかい?」

「「春」・・・お前は、死んだんだ。そう、これは過去の夢」

「シロ・・・行かないで」

また場面が変わって、ネモフィラの花畑になった。

「一緒に眠ろう?」

「「春」・・・・・」

浮竹は、「春」を抱きしめて、それから桜の花びらをふっと吹いた。

「春」は、桜に包まれる。

「せめて、桜に包まれて、眠れ」

「シロ・・・・残念だよ。でも、またくるから」

「春」は、浮竹の中から消える。

でも、消滅したわけではなく、魂魄が逃げていったのだ。

「春水・・・俺を抱いていてくれ」

「うん」

「春水・・・つらい目に合わせてごめん」

「それは十四郎のほうでしょ?あんなに愛していた「春」が蘇った」

「俺は大丈夫だ」

浮竹は泣いていた。

『かたがついたようだね。便利屋のボクと桜の王の魂を、引き上げるよ』

「夜刀神か」

「ボク一人の力じゃ、浮竹の意識の中にもぐりこめなかったから」

「そうか。礼を、しないとな・・・・・」

まず、京楽が目覚めた。

浮竹は、まだ意識を取り戻さない。

「大丈夫かな、十四郎」

『うまくいったんでしょ?「春」の魂は逃げていったみたいだけど』

『桜の王、起きてくれ』

ゆっくりと、浮竹の瞳が開かれる。

「すまない・・・・・」

それだけ言って、浮竹は人の姿を保っていられずに、白猫のオッドアイの子猫になってしまった。

「にゃああんん」

ぺろぺろと、京楽をなめる。

「十四郎、つらいんでしょ。無理しないで寝て?」

「にゃあ」

浮竹は、ひと声鳴くと、京楽の腕の中ですうすうと眠りにつく。

『もう起きないとか、ないよな?』

『大丈夫。桜の王は「春」の死を受け入れているし、便利屋のボクを選んだ』

術者の浮竹は、眠る子猫の浮竹を心配そうに見つめた。

「ごめん、ボクも疲れたよ。浮竹と一緒に寝るから、ボクらの分の昼食が用意してあると思うんだけど、それでも食べて、起きるのまってて」

『ゆっくりおやすみ』

『護衛は任せろ』

「じゃあ・・・・・」

京楽も、ブレーカーが落ちたように眠ってしまった。

人の意識の中に潜り込むには、生命力と体力を使う。消耗が激しいようだった。

『「春」は結局、体を失っただけだ。また、来るだろうね』

『桜の王の幸せを、壊せたりさせないぞ』

二人は意気込んで、護衛の任についたが、結局「春」は現れなかった。




「京楽春水・・・ボクの、生まれ変わり」

泉の奥で、「春」は新しい器をもらい、それに宿った。

「シロ・・・・待ってて。必ず、迎えに行くから」

「春」は、自分が拒絶されたと分かっていなかった。

否、そういう風に蘇った。

「春」は、桜の花びらを泉に浮かべながら、愛しいシロのことを思うのであった。





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桜のあやかしと共に7

「「春」どこにも行かないでくれ」

「うん、ボクはずっとシロの傍にいるよ」

「抱きしめてくれ」

「お安い御用さ」

「「春」・・・大好きだ。夜刀神は俺とお前が契約したこと、何か思っているようだが関係ない。俺は、お前と契約して同じ時間を生きれる今が、一番幸せだ」

「春」は、京楽に姿形だけでなく、性格までよく似ていた。

「「春」、愛してる・・・・・」

そこで、浮竹は目覚めた。

泣いていた。

「あ・・・・・「春」の夢は見ないようにしていたのに・・・春水の影響か」

浮竹は、起きると朝食を作りにキッチンに行った。

京楽はまだ眠っていた。

昨日はあやかし退治が夜遅くまで長引いたので、そのまま寝かせておいた。

「京楽、そろそろ起きろ。昼だぞ」

「んー。十四郎も一緒にもっと寝ようよ」

「もう10時間以上は寝ているだろう。寝すぎだ」

「おはようのキスして」

「はいはい」

浮竹は、京楽の唇に唇を重ねる。

「そういえば、遊園地のペアチケットもらって遊びにいった礼を、術者の俺と夜刀神にしていなかったな。今日にでも、あの店に行こうか」

「お、夜刀神と仲直りする気にでもなったのかい?」

「そんなわけあるか。あいつは腐れ縁だが、まぁ・・・・仲がいいといえなくもないが」

「喧嘩はしてないの?」

「喧嘩というか、夜刀神がからかってくるんだ」

「観察とか言ってからね」

京楽は、浮竹の作ってくれた朝ごはんを食べる。

そして.閑古鳥のなく術者の浮竹の店にやってきた。

『いらっしゃいませ・・・って、お前たちか』

「遊園地ペアチケットもらった礼にきた。これ、俺の作ったレアチーズケーキとシフォンケーキだ」

浮竹が、自分と同じ顔の術者の浮竹に、お礼の品を渡す。

「夜刀神はいないのか?」

『いるよ。蝙蝠になって、お前たちを観察しているらしい』

「夜刀神!こっそりのぞくをやめろ!」

浮竹は、桜の花びらをふっと吹いて、蝙蝠になっていた夜刀神に水をぶつけた。

『うわー。よけそこねちゃった。まぁ、水も滴るいい男ってやつだよね。ね、浮竹』

術者の浮竹を見つめる。術者の浮竹は、タオルをとってくると夜刀神の濡れた髪をふいていやった。

「見ているこっちが恥ずかしくなるね」

京楽が、ラブラブパワー全開な二人に、ため息をこぼす。

『それより、桜の王の手作りなの、そのケーキ』

「そうだ」

『やったぁ!桜の王の作るお菓子はおいしいんだよねぇ。ほんと、めちゃくちゃおいしい。ちょうど3時だし、君たちも一緒に食べて帰ろうよ』

「いや、礼にあげた品を食べてどうする」

『固いこと言わないでよ。ボクと君の仲じゃない』

「気持ち悪いことをいうな!」

浮竹は、どこからかとりだしたハリセンで夜刀神の京楽の頭をはたいた。

『一緒に食べたい。だめか?』

術者の浮竹が、上目遣いでそう見てきて、浮竹も折れた。

「京楽、少し帰るのがおそくなるがいいか」

「ボクは構わないよ。ケーキ、実は食べたかったし」

『じゃあ、3時のお茶にしようよ』

夜刀神の一言でダイニングルームに入れてもらい、紅茶をいれられた。

『んーおいしい!やっぱり桜の王の料理の腕、プロだね』

「5千年修行してきたからな」

「ほんと、おいしいね」

京楽も、おいしそうに食べていた。

『ほっぺが落ちそうだ。そっちの便利屋の京楽は、毎日桜の王の手料理を食べているのか?』

「うん、そうだけど」

『うらやましすぎる・・・・』

「夜方神の料理の腕もそこそこだろう。何せ俺が鍛えてやったんだから」

『うん。夜刀神の料理もおいしいけど、桜の王ほどじゃないな』

『もう、舌がこえちゃって・・・・・・』

夜刀神は、今夜は浮竹のケーキに負けないようなごちそうを作ろうと思った。

『最近、花鬼が暴れたり、人に害をなしたりする件が多いんだ。何か知らない?』

夜刀神の言葉に、浮竹は首を傾げる。

「あやかしの管理は[春」を失ってやめたからな。眷属とはいえ、なぜなのかまでは分からない。ただ、活発化しているのは、俺と京楽が契約を交わしたことにあるかもしれない」

『やっぱり、契約しちゃったんだ。どうりで、桜の王からそっちのボクの匂いがするわけだ』

「同意の上だぞ」

『契約するのはいいけど、「春」の時のように取り残されないようにね』

「「春」の話は、京楽の前ではやめてくれ」

「うーん、十四郎の元彼の話聞いてるみたいで、気分がいいものじゃないね」

『ごめんごめん。元彼かぁ。あながち、間違っていないかも?』

浮竹は、ふっと桜の花びらを吹くと、夜刀神を燃やした。

でも、夜刀神は平然とした顔をして、服さえも焦げていなかった。

「いつか、ぎゃふんと言わせてやる」

『ぎゃふん』

夜刀神がそう言ってからかうものだから、浮竹はハリセンで夜刀神の頭をスパンと殴った。

『不思議だね。昔から、君のハリセン攻撃が読めない』

「いいことだ」

『喧嘩はほどほどにな?』

「そうだよ。ほどほどにね」

術者の浮竹と、京楽はそう言って、ケーキをおいしそうに食べていた。

「礼はちゃんとしたからな。後、お茶はごちそうさま」

「十四郎、家に帰ったらレアチーズケーキもう一回作って。気にいちゃった」

「春水がそういうなら、好きなだけ作ってやる」

「ありがと」

術者の浮竹と夜刀神の京楽が見ている前で、京楽は浮竹にキスをする。

『お熱いことで』

「そっちもあんまり変わらないでしょ?」

『それもそうだね』

夜刀神は、術者の浮竹にキスをした。

二人の浮竹は、真っ赤になるのであった。

「帰るぞ、春水」

「あ、うん。またねぇ」

『ま、またな・・・・』

『またねー。今度来る時はモンブラン作ってもってきてー』

『おい、夜刀神、二人が見ている前でキスとかやめろ』

『えーどうして?むこうだってしてたじゃない』

『それはそうだが・・・』

京楽は、夜刀神に見せつけるつもりで浮竹にキスをしたのだ。

これはもうボクのものだという見えないメッセージ。

浮竹と京楽が去って言った後で、夜刀神は京楽が「春」の生まれ変割りなだけあるなと、思うのであった。

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桜のあやかしと共に6

朝顔の花鬼が暴れているということで、4人は正式に名乗りあい、自己紹介した。

「それにしても、俺に人間のエナジーを渡そうとするなんて・・・花鬼は植物のあやかしだから、眷属になる。すまない、迷惑をかけた」

『ふーん、素直に謝れるんだ』

「うるさい」

浮竹は、夜刀神を睨んだ。

『おお、こわ』

「あんまり、十四郎を怒らせないでね」

京楽は、浮竹を抱き寄せた。

「京楽・・・帰ろう。花鬼はもういない」

「うん」

『「春」みたいに、ならないようにね?』

浮竹は、きつい眼差しを夜刀神によこして、桜の花びらをふっと吹いて、転移してしまった。

『京楽、あの桜の王とは古くからの知り合いなんだな』

『うん。それこそ、生まれてからすぐに、みたいなね?彼は昔はもっと長老としてあやかしの管理をしていた。「春」を失って、それもやめてしまったみたいだけど』

『桜の王か。なんかかっこいいな』

『だめだめ。桜の王はいろいろあるから、憧れないほうがいいよ』

『そうなのか』

『ボクたちも帰ろう』

『そうだな』



「夜刀神のやつ、今度あったら桜の花びらで切り裂いてやる」

「十四郎、荒れてるねぇ」

「京楽がいてくれるなら、気持ちも安定する」

そう言って、浮竹は京楽の座ったソファーの隣に座り、京楽のほうに頭を傾けた。

「腹が減った」

白哉がそう言うものだから、いちゃつくこともできずに、浮竹はキッチンに行ってしまった。

「白哉君、わざとでしょ」

「さぁ、何のことかわからぬな」

白哉は黒猫の子猫姿になると、京楽の足をひっかいた。

「ちょっと、ボクは爪とぎじゃないよ」

「兄が「春」の生まれ変わりが、いいことなのか悪いことなのか、私にもわからぬ」

「そんなこと言われてもね。ボクはボクだ。「春」じゃない」:

「わかっている。だが、兄に出会って浮竹は見違えるほど生き生きとしている。あのひどい自閉症からここまで回復できたことが、正直驚きだ」

京楽は「春」とはどんな人物であったのかを聞かない。

夢でいつも、自分は「春」であるからだ。

キッチンで、浮竹が声をあげる。

「パスタとスパゲッティ、どっちがいい?」

「スパゲッティ。パスタはこの前食べたしね」

「私はどちらでもよい」

白哉は何気に、京楽からチュールをもらっていたりしていた。

仲がいいか悪いのかわからない二人だった。



次の日、ひまわりの花鬼が訪れてきた。

「桜の王。ひまわり畑の花鬼たちを、食べてしまうあやかしがいるのです。どうか、お助けを・・・・」

「花鬼を食うのか。許せないな。分かった、でむこう」

「ありがとうございます。こちらの方とは、契約はまだで?」

「ああ。近いうちにしようと思っている」

「契約?」

京楽は首を傾げていた。

ひまわりの花鬼の案内で、ひまわり畑にくると、ひまわりの3分の1が枯れていた。

「吸鬼(きゅうき)の仕業です」

「吸鬼か。普通は自然のエナジーだけを吸うのに、花鬼を食って、舌がこえたか」

「ようは、その吸鬼を退治すればいいんだよね?今回は、ボクが退治したい」

「いいが、吸鬼は少し厄介だぞ」

「どんな風に?」

京楽が聞くと、浮竹が答える。

「物理攻撃がきかない」

「じゃあ、大丈夫。精神体を攻撃できる呪符、作ったから」

「それなら、級鬼も倒せるな」


ぐおおおおおおおおお。

吸鬼が、ひまわりの花鬼たちを食べようと姿を現す。

「縛!」

京楽は、呪符を飛ばしてまずは動きを封じた。

「ぬおお、動けぬ、こざかしい人間風情が・・・・そのエナジー、吸い尽くしてやる」

「禁!」

「ぎゃあああああああああ」

精神体に攻撃できる呪符を飛ばすと、吸鬼は悲鳴をあげる。

「俺の眷属を食ったこと、後悔するがいい」

浮竹は、桜の花びらを手のひらにのせて、ふっと息をふきかけた。

「ぬおおおおおおお!さ、桜の王だと・・・・なぜ、花鬼ごときのために」

「花鬼は植物のあやかしだ。俺の眷属にあたる」

「滅!」

京楽が、呪符を飛ばして吸鬼を白い炎で燃やしてしまった。

「ありがとうございます、京楽様。我らの王の、契約者となられるお方・・・・・」

「契約って、何?」

「帰ったら、話す」

そのまま、浮竹と京楽は億ションに帰宅した。

白哉はもう眠っていた。

「京楽、お前には俺と同じ時間を生きて欲しい。それが契約だ」

「つまり、年をとらないってこと?」

「そうなるな」

「いいよ。十四郎が望むなら、契約者になる」

京楽は嫌がるかと思ったが、案外あっけなく受け入れてくれた。

「いいのか?一度交わすと、もう人ではなくなる不老者になるぞ」

「でも、不死ではないんでしょ。そのせいで「春」は死んだ」

「春水・・・俺は、お前を「春」の代わりにしようと思っていない」

「うん、分かってる」

京楽は、頷いて自分から手のひらに傷をつけて血を滴らせる。

「契約の方法を知っているのか?」

「毎晩「春」である夢を見るからね」

「そうか・・・・俺の血とまじりあわせて、飲もう」

浮竹は、手首を桜の花びらで切ると、滴り落ちる血を宙に浮かせて、京楽の血と混ぜあわせた。

「永久(とこしえ)をお前と共に」

「愛しい十四郎と同じ時間を生きると、ここに誓うよ」

二人で血を飲みほす。

浮竹は自分の傷と京楽の傷を、ふっと桜の花びらをふいて治した。

「その・・・もう、俺を抱いてもいいぞ」

「え」

「契約はなった。パートナー契約も兼ねている」

「白哉君、起きないかな?」

「結界をはっておいた」

浮竹は、京楽に口づける。

そのまま、二人は京楽の寝室に入り、求めあうようにまじりあう。


「あ!」

いい場所を突かれて、浮竹が声を漏らす。

「君の中、すごく熱いね」

「あ、もっと奥にきてくれ・・・春水」

「十四郎・・・・・・・」

「ああああ!!!」

最奥をごりごりと抉られて、浮竹は中いきと同時に精液を出していた。

味わってみたが、まるで花の蜜のように甘かった。

「ばか、舐めるな・・・」

「でも、甘くておいしいよ?」

「ばか・・・・んあっ」

ズチュリと侵入されて、浮竹が喘ぐ。

「もっと愛していい?」

「あ、もっともっと、愛してくれ。俺の奥で、子種を注いでくれ」

ペロリと、浮竹は唇をなめる。

「えろ・・・・・」

「ああああ!!」

前立腺をこすりあげられて、浮竹は京楽に抱かれている幸福感を味わいながら、また精液を出していた。

それを、京楽が舐めとる。

「あ・・・んあっ」

もう、なめるなという余裕すら、浮竹は失っていた。

「春」を失って120年ぶりに、誰かと交わる夜であった。


翌日になって、白哉は黒猫姿で京楽の脛をひっかきまくっていた。

「結界まではって!兄は、けだものだ」

「いや、契約したらそんな流れに・・・・」

「浮竹、よいのか?「春」との契約の上書きになるであろう」

「いいんだ。「春」はもういない。俺は、京楽春水を愛しているから、契約して体を許した」

「むう、けだものと住むのは嫌だが、浮竹のことが気になるからまだここに住むことにしよう」

「ええ、出ていくんじゃないの?」

体の関係に発展すると、白哉はてっきり家を出ていくものだと思っていた。

「兄が本当に浮竹を幸せにできるか、見守る。ただし、交わるときは結界を忘れずに。私とて、浮竹の情事を聞きたいわけではない」

「ああ、うん」

白哉は、京楽の頭をかじる。

「白哉、だからかじるとアホになるぞ」

「チュールよこせ」

「育て方、間違ったかな・・・・・」

浮竹は、京楽の頭をかじると、白哉がチュールをもらえる形式になっているのを、ため息をついて見守る。

「白哉は、あやかしより人より、猫でいるほうが好きだもんな」

「浮竹、まぁ否定はせぬ」

「猫の桜のあやかし・・・・考えてみれば、なんで猫なの?」

「猫が好きだから」

そっけない浮竹の言葉に、京楽は苦笑して、白猫のオッドアイの子猫になった浮竹にも、チュールをあげるのだった。


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桜のあやかしと共に5

「ふん・・・・・」

「どうしたの。珍しく機嫌悪いね」

「夜刀神のやつ・・・・俺がお前を見つけたことをからかってきやがった」

「夜刀神って、ボクに似た青年のこと?」

一度、閑古鳥なく術者の浮竹の店で、式である夜刀神の京楽と出会っていた。その時は、浮竹と白哉もいたが、子猫姿だった。

「俺はあいつが苦手だ。嫌いというわけじゃんないんだが、観察するのが好きらしく、俺がお前を好きなことを観察するとか言ってた」

「はぁ。でも、人間じゃないんだよね」

「ああ。災厄を招く神だ。式の形をとってはいるが、神であることに変わりはない。だが、俺も桜の王といわれるだけあって、あいつと戦うことになったらそこそこいけると思う」

「もう、喧嘩はだめだよ」

京楽はそう言って、浮竹に紅茶を出した。

「私には緑茶を」

白哉の分も紅茶を出したのだが、白哉は嫌そうな顔をする。

「白哉君はいつでもマイペースだね。はいはい、緑茶ね」

「あやかしまんじゅうも頼む」

「はいはい・・・・・・・」

3時のおやつをとっていると、依頼人がきたベルの音がした。

「おや、依頼かな?」

「みたいだ。俺と白哉も同席する」

「うん、いいよ」

依頼人は、少年だった。

「河童に、金玉とられたああああ!!!!」

「え、まじで」

「河童・・・・・・」

「河童は悪戯好きだからね」

「お願いだよ、ぼくの金玉取り返して!」

「京楽、どいてろ」

浮竹は、手のひらに桜の花びらを出すと、ふっと息を吹きかけて、少年を包み込む。

「河童に金玉・・・・・あれ?金玉ついてる」

「河童は人を騙して遊ぶからな。金玉が本当に取られたなら、やばいが実際にそこまでする河童はいない。退治されると分かっているからな。でも、悪戯がすぎているな。一度会って、注意しよう」

「あ、依頼料千円しかないんだけど、千円でいい?ぼくまだ小学生だから」

「金はいらないよ。退治するわけじゃないからね。ちょっとその河童に会って、こらしめるよ」

「裏山の湖に出るんだ。地図、描くね」

少年は微妙な地図を描いた。まだ子供だから仕方ない。

「私はここに残る。河童は好きではない。下品だ」

「あーはいはい。じゃあ、白哉君はお留守番頼むね」:

「任せておけ」

「じゃあ、俺たちは出発しようか。河童の好物のキュウリを持っていこう」

そして、浮竹と京楽は、悪戯が好きな河童のいる湖まできた。

「きゅうりでつるの?」

「きゅうりは、反省した後に与える」

浮竹は、桜の花びらを手に乗せると、ふっと息をふきかけた。

湖が割れて、河童がいた。

「浮竹って、すごいね」

「なんじゅコラ、ぼけえええ!!俺を河童のいなずち様と知っての行動か」

「俺は桜の王の浮竹十四郎だ」

「げええええ、桜の王!す、すみません、さっきの子供はただ悪戯したかっただけで・・・命ばかりはお助けを・・・・」

「もう、人間に悪さをしないな?」

「は、はい」

河童は、きゅうりをもらって喜んだ。

「きゅうりもらった!」

「なんていうか・・・・浮竹と行動するよになってから、あやかしは浮竹のこと知ってて、退治する回数減ったね」

浮竹は、少しだけ笑った。

「長生きしてる分、名前は覚えられているからな。桜の王を怒らすな・・・そう、4大あやかしの長老の1人にからかわれたことがある」

「河童君、これにこりて、もう悪さしないようにね。今度したら、退治しなくちゃいけないから」

「ひいいい。肝に銘じておきますううう」

湖は元に戻り、河童は水の中にちゃぷんともぐっていった。

「君のさ・・・その、桜の花びらをふっと吹くと、いろんなことがおこるね」

「こんなこともできるぞ」

桜の花びらを吹いて、湖の周りに花畑ができあがった。

「わあ、すごいね」

「気に入ったか?」

「うん」

「じゃあ、今度もまた桜の花びらをふいていろんなものを見せてやろう」

京楽は、浮竹の頭をなでた。

「なんだ?」

「いや、なんかかわいいと思ってね」

『かわいいのは、見かけだけかもねぇ』

黒い鳥が飛んできて、浮竹の頭上で声を出した。

「夜刀神・・・焼き鳥にされたいか!」

『あははは、君たちっておもしろいねぇ。観察のしがいがあるよ』

「消えろ」

ふっと、浮竹が桜の花びらを吹くと、夜刀神に雷が落ちた。

夜刀神は平気そうな顔で、飛び続けていた。

「構うだけ、時間の無駄だ。帰ろう」

『じゃあ、ボクもついてく』

「お前は、主人の元に帰れ。寂しがっているんじゃないのか」

『ああ、それもそうだねぇ。ボクの浮竹はけっこう寂しがりやだから』

「じゃあ、とっとと消えろ」

ふっと、桜の花びらを浮竹が吹くと、竜巻がおきて夜刀神ははるか彼方におしやられてしまった。

「夜刀神かぁ。災いを司る神らしいけど、なんか性格は明るいね」

「自分の主人第一主義者。守るためなら、残酷になりまくる」

「ひえええ」

京楽は、夜刀神を怒らせないようにしようと思うのだった。


「帰ってきたか」

億ションに戻ると、白哉があやかしまんじゅうを食べながら、ルキアと話していた。

「やあ、ルキアちゃんこんにちわ」

「あ、京楽さん浮竹さんこんにちわ。兄様がお世話になっております。勝手にお邪魔させていただいております。兄様がどうしてもというので」

「ああ、いいよ。楽にしていて」

「はい・・・・でも、このあやかしまんじゅうおいしいですね」

「二十箱買ったからな。ルキアも、一箱もって帰るか?」

浮竹がそう言うと、ルキアは嬉しそうにあやかしまんじゅうを一箱受け取った。

「河童の件は、片付いたのか?」

「うん。浮竹のこと知ってたらしくって、すぐに終わったよ」

「浮竹の名を知らぬあやかしなど、そうそういないだろう」

白哉は、緑茶をすすりながらそう言った。

「え、そうなの?」

「まぁ、5千年も生きてるからな・・・四大あやかしの長老もやってるし、あやかしたちの管理を任されているが、放置してる」

「あやかしの管理・・・・・なんか、すごいね」

「俺は、京楽と一緒にいれる今のこの時がいいんだ」

「浮竹・・・・・」

「京楽・・・・・」

「ごほん」

「「あ」」

白哉に咳払いをされて、二人きりと錯覚するような甘い時間はすぐに終わるのだった。

ちなみに、その日はルキアは白哉の部屋で泊まることになり、ネモフィラの花冠を京楽と浮竹に作って、渡してくれた。

「今度、ルキアちゃんのいるネモフィラの花畑に遊びにいくよ」

「本当ですか!」

「ルキア、この男は「春」ではないぞ」

「あ、分かってます」

ルキアは、一瞬悲しそうに目を伏せた。

「でも、「春」の生まれ変わりなのですよね?京楽さんのこと、私は好きです」

「あはははは、浮竹の嫉妬が怖いから、あんまりそういうことは口にしないようにね」

浮竹は、京楽の足を踏んづけていた。

「今日は、海鮮パスタでも作ろうか」

浮竹は、気を取り直して、四人分の食事のことを考える。

京楽は金持ちなので、食事代をけちる必要などなかった。

「兄様は、いつも浮竹さんの手料理を食べられてうらやましいです」

「浮竹の料理の腕は、5千年生きた証のようなものだからな」

「確かに、料理うまいよね」

「兄は、浮竹の手料理を食べれることにもっと感謝をしろ」

「してるよ!」

「いや、まだ足りない」

白哉は黒猫の子猫姿になると、京楽の頭にかじりつく。

「白哉、バカがうつるぞ」

「浮竹って、時々ひどいよね」

そう言いながらも、京楽はからからと笑う。

その日ふるまわれた海鮮パスタは、一流レストランの味だった。

夜になり、浮竹と京楽は、二人で同じベッドで眠る。

まだキスとハグだけであるが、二人きりでいられる夜が、二人は好きだった。

「愛してるよ、浮竹」

「俺も愛してる、京楽」

お互いを抱きしめあいながら、眠りにつく。

そして京楽は自分が「春」である夢を見る。

夢はいつも鮮明で、なぜ自分は「春」ではないのだろうと、京楽は心の片隅で思うのだった。









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桜のあやかしと共に4

「このあやかしまんじゅう、うまいね」

「小豆とぎが作っているからな」

「え、小豆とぎが?」

京楽は、火車におみやげとしてもらったあやかしまんじゅうを、億ションの部屋で浮竹と一緒に食べていた。

当たり前のように、浮竹の隣には白哉がいた。

「白哉君さぁ、ちょっとは遠慮ってものないの。居候のくせに」

「兄に遠慮しても何もならぬ。居候ではなく、いてやっているのだ。なんだかんだで、子猫好きだろう」

「う・・・・・」

今の白哉は、人の姿をしていた。

あやかしまんじゅうを、3人で分けて食べると、あっという間になくなってしまった。

「これ、本当にうまいな。火車の朧(おぼろ)に聞いて、どこで売っているのか聞いてみよう」

「小豆とぎが作ってるんでしょ」

「ああ。小豆とぎに聞いたほうがはやいか?」

「さぁ?」

京楽は、今日は依頼もないので、ゆっくりしていた。

浮竹は、スマホをとりだすと、小豆とぎに電話をかけた。

「は?」

その光景を、京楽はびっくりして見ていた。

「ああ、小豆とぎか。あやかしまんじゅうって、お前たちが作っているんだろう?どこで売ってるんだ?え、三途の川?うーん、取り寄せは無理そうか・・・・え?送ってくれる?ありがとう。代金は、現金でいいか?え、クレジットカードがいい?」

電話の向こう側で、小豆とぎはあやかしまんじゅう20箱で2万円になるといっていた。

「じゃあ、妖怪配達で頼む。手数料もクレジットカードで払っておくから」

「あやかしが、スマホ・・・配達・・・・クレジットカード・・・・」

ちょっとしたカルチャーショックに見舞われて、京楽は頭を抱えた。

「知らなかったのか?退治屋の便利屋をしているわりには、無知だな」

「いや、ボクはどっちかっていうと幽霊のほうがおおいから。祓うの」

「ふむ。最近のあやかしは、現代文明に乗っているのも多いからな」

「そうなんだ」

浮竹は、小豆とぎにもう一度電話して、小豆バーも注文した。

「浮竹、たまには桜の精霊たちで宴を開かぬか。いやだが、この京楽とやらもきていいから」

「白哉が宴を開くなんて珍しいな。よし、桜の精霊たちに声をかけておこう」

その日の夜、異界への道が開いた。

宴は賑やかにおこなわれており、人間である京楽は珍しがられた。

「桜の精霊だらけだね・・・・・っていうか、ボク以外みんな桜の精霊?」

「そうだ。兄は、特別に桜の王である浮竹の寵愛を受けているから、この場にいられるのだ」

「浮竹って、やっぱりえらいんだ」

「当り前であろう。桜の王は、4大あやかしの長老の1人だぞ」

「いや、そんなこと言われても分からないし、知らないし」

「そこに座れ!桜の王がどうやってはじまったかを・・・・・」

白哉は、そこで突然スイッチが切れたように眠ってしまった。

「ああ、酔いつぶれたか。白哉は酒に弱いのに、宴好きだからな」

「そうなんだ」

「白哉とは、生まれてきて200年の付き合いだからな。弟のようなものだ。俺の本体の桜を株分けしたから、まぁ実際弟になるんだろうが」

でも、妹は契約したとはいえネモフィラの精霊のルキアである。

「うーん、ルキア・・・・・・」

「なんか、うなされてるよ。ルキアちゃんって、確か白哉君の妹だよね?」

「ああ。ネモフィラの精霊だ」

「花や木には、みんな精霊がいるの?」

「いや、年月を経た者や、力ある者が精霊になれる」

「じゃあ、桜の王って呼ばれてる浮竹はすごくえらいんだね」

「まぁ、否定はしない」

「桜の王、ルキアさんに迎えにくるように電話かけておきました」

「ああ、ありがとう」

浮竹は、白哉の体に自分が着ていた着物の羽織をかぶらせた。

「風邪、ひくなよ」



「兄様!」

1時間ほどして、桜の精霊の宴は他の花の精霊たちも混じるようになってきて、そこにルキアの姿があった。

「ああ、ルキア、元気か?」

「あ、はい。浮竹さんも、元気そうで何よりです」

「へぇ、この子がルキアちゃん・・・・・・」

ルキアは、浮竹の隣にいる京楽を見た。

白哉の話を聞いている限りでは、かなりいっているらしいが、普通の特異体質の青年に見えた。

「いつも兄様がお世話になっております」

「ああ、いいよいいよ。もう身内みたいなもんだからね」

京楽は、人懐っこい笑みを浮かべた。

「「春」さん?」

「え」

「あ、ごめんなさい!私ったら・・・兄様を連れて帰りますね。浮竹さんも京楽さんも、宴はほどほどに」

「ああ」

「うん」

京楽は、自分の姿までが「春」そっくりだとは知らなかった。

「ボクって、そんなに「春」に似てる?」

「ああ・・・生き写しのようだ」

浮竹は、懐かしそうに宴の中心で酒を他の桜の精霊たちに注がれて、それを飲んでいた。

「生き写しか・・・」

京楽は、複雑な気分だった。

「昔は、よくこうやって、桜の精霊たちで宴を開いて、そこに「春」も混じっていた」

「うん」

「春水。俺は、ちゃんと春水ってわかっているからな」

「うん」

絆を確かめるように、宴の最中であったが、キスをする。

桜の王に新しい恋人ができたと、大騒ぎになった。

「さぁ、皆宴はこのあたりでしまいにしよう。俺は京楽と人間界に戻る」:

「桜の王。やはり、異界にいてくれないのですか。あなたがいれば、異界の治安の悪さも・・・・」

「俺は人間界が好きだ。それに、俺がいたところで異界の治安の悪さは関係ないだろう。いた時もいなかった時も、あまり変わりなかったと聞いている」

「桜の王を惑わした人間・・・・・・」

「桜の王がいってしまう・・・・・」

「桜の王は・・・・・」

「ボクの浮竹は、桜の王じゃないよ。ただの、桜の精霊だ」

思いもよらなかった京楽の言葉に、浮竹の目が潤んだ。

ボクの。

自分のものだと、言ってくれた。

そんな扱いを京楽から受けたのは、初めてだった。

「京楽・・・・・・」

「浮竹、行こう。ボクたちのいるべき場所はここじゃない」

「ああ」

桜の精霊たちは、宴はおしまいだと悲しみだす。

「帰ろうか」

「うん、帰ろう」

白哉は、ルキアの手ですで人間界に戻っている。

浮竹と京楽も、それに続く。

「なぁ、春水」

「なに、十四郎」

名前を呼ばれて、浮竹は顔を赤くした。

「その、好きだぞ」

「うん。ボクも、好きだよ」

「「春」のことを重ねてしまう時があるかもしれないが、春水ってわかってるから」

「うん。信じてるから」

二人は、億ションに戻ると、お風呂に入って、同じベッドで眠った。

酒が入っていたせいか、眠りは浅く、京楽はまた自分が「春」である夢を見ていた。

「大好だ、「春」」

「ボクも大好きだよ、シロ」

「春」は、浮竹のことを十四郎からきているシロと呼んでいた。

「シロ、いつか別れることになっても、ボクは必ず君の元に戻ってくる」

「「春」そんな、縁起の悪いことを言わないでくれ」



「シロ・・・・・・」

京楽は起きた。

泣いていた。

シロと呼ばれた浮竹が、「春」を失って自閉症になったのを夢で見たのだ。

「十四郎・・・ボクは、「春」のようにはならない」

まだ眠る浮竹を抱きしめて、京楽は「春」がいかに浮竹にとって大切であったかを、再確認させられるのであった。




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桜のあやかしと共に3

桜の花が散り、葉桜になる季節。

浮竹と京楽と白哉は、億のするマンションで、いつもは浮竹と白哉は子猫姿で、京楽の仕事が入った時や食事の時、寝る前などに人化して過ごしていた。

「はぁ。浮竹と知り合って3か月。いまだにキスとハグだけなのが悲しい」

「私の目が届く間は、しばらくは浮竹には手を出させないぞ」

黒猫の白哉が、京楽の頭の上にのって、かじった。

「あいたたたたた」

「白哉、あまりかじるとバカがうつるぞ」

「ひどい!」

「む、バカがうつるのか。水でうがいしてこよう」

白哉は美しい青年姿になると、本当に水でうがいをはじめた。

「浮竹、君さぁ、ボクのことほんとに好きなの?」

「た、多分・・・・・・」

「ボクが「春」の生まれ変われりだから、好きなだけなんじゃない。ボクを見てくれていない」

「そんなつもりはない!俺は京楽のことだって好きだ!」

浮竹は、人化すると京楽に抱きついた。

「この愛しい気持ちを、どうしたらお前に伝えられる?」

浮竹は、涙をにじませていた。

「京楽、浮竹を泣かせたのか。ことと次第によっては・・・・・」

「白哉、すまないが二人で少し話がしたいんだ。外に・・・ルキアのところにでも、行っててくれないか」

「・・・・・分かった。兄がそういうなら、従おう」

白哉は、黒い子猫姿になると、35階のベランダから飛び降りた。

風を操るので、地面に激突などすることもなく、すたっと着地して、上を見上げる。

「「春」か・・・・・「春」なぜ、死んでしまったのだ」

白哉は、「春」のことを気に入っていた。浮竹と同じで兄のような存在だった。

浮竹の恋人で、家族だった。

まだ幼い白哉に、浮竹と一緒にいろんなことを教えてくれた。

人間であったが、浮竹と契約をしており、不老だったが不死というわけでなく、子供をかばって120年も前に交通事故で、浮竹と白哉の目の前で死んでしまった。

浮竹のショックは相当なもので、一時期自閉症になった。

白哉やルキア、他の花の精霊たちの甲斐甲斐しい看護のおかげで、3年かけてやっと立ち直った。

もう「春」のことなど、忘れてしまったかのように振る舞う浮竹の目の前に、京楽が現れた。

白哉でも分かった。

この青年は「春」であると。

「春」と同じ黒いうねる髪、鳶色の瞳、堀の深い顔立ち。

外見まで「春」とほとんど一緒だった。

「浮竹・・・兄は、どうしたいのだ。「春」を再び手に入れたいのか、「京楽春水」を手に入れたいのか・・・・あるいは、同時か」

白哉は、風を操って花びらになり、妹であるルキアの住むネモフィラの花畑の丘にきていた。

「兄様、こんな時間からどうしたのですか?」

「ルキア。恋とは、難しいものだな」

「兄様に、ついに好きな方が!?」

「違う。浮竹だ」

「ああ、浮竹さんですか」

ルキアは、少しがっかりしたようだった。

白哉には、かつて緋真という女性の妻がいた。ルキアの実の姉だった。緋真が不治の病にかかり、死に際に妹であるルキアを探し出して妹として家族に迎えてやってほしいという遺言に従い、当時生きていた花の精霊を記録している書簡庫に入り、ルキアを発見した。

ネモフィラの花の精霊で、緋真は梅の花の精霊であったので、ずっと梅か木の精霊を探していたのだ。草花とは思わなかった。

白哉はルキアと家族の契りを交わして、本当の家族になった。

白哉が心許せる存在は、ルキアと浮竹くらいだった。


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「確かに、俺はお前の中で「春」を見ている。でも、「京楽春水」も見ているんだ。二人とも、同じくらいに好きなんだ」

「ボクも好き、ねぇ・・・・・」

京楽は、納得がいかないようだった。

「ボクが君を抱きたいと言い出したら、君はどうするの?」

「今は、まだだめだ。それに、京楽春水はそんな男じゃない」

「君の中のボクって、ちょっと美化されすぎてない?」

「いや、ただの頭の中が豆腐のバカだと思っている」

「ムキーーーー」

「ふふふふ」

浮竹は、自然に笑っていた。

「その笑顔。その笑顔、忘れないで。ボクのことが好きなら、遠慮なくアタックっしてきなよ。ボクも歓迎するし、君をボク色に染め上げたい」

ベッドに押し倒されて、浮竹は逡巡する。

「あ、京楽・・・・・・」

「怖い?」

「怖い。今はまだ、無理だ」

「無理やりは好きじゃないから、君の心の準備ができるまで、待つよ」

「京楽、愛している」

浮竹は、自分から唇を重ねてきた。

舌をからめあいながら、もつれあう。

ハグをして、キスを繰り返した。

「京楽、俺がお前を愛していると、信じてくれるか?」

「信じるしかないでしょ。ここまで好きっていわれちゃ。まぁ、ボクの前世が「春」であるせいだろうけど」

「京楽・・・・・」

「大切にするよ。いつか、パートナーの契約をしよう」

「うん・・・・・」

パートナー契約とは、結婚に似ている。

「んっ」

耳を甘噛みされて、浮竹は甘い声をあげていた。

「落ち着けー俺の息子おおおお」

浮竹は、潤んだ瞳見上げてきた。

「抜いてやろうか?」

「え、いいの?」

「俺のせいで、こうなったんだろう。責任はとる」

浮竹は、京楽の衣服をくつろげて、昂ったものを手でしごき、おそるおそる口に含む。

「うわ~、えろい・・・・・・・」

「んん・・・・・」

ぴちゃりと舌をはわせて奉仕すると、京楽は我慢ができずに浮竹の顔めがけて射精していた。

「あああ、ごめん!」

「いい。気持ちよかったか?」

「天国でした」

「もう一回、するか?」

「え、いいの?」

京楽は、キスとハグまでじゃないのかと思いながらも、邪魔な白哉もいないので、続きをお願いした。

浮竹は、手と舌を使って、また京楽を桃源郷に導く。

「うまいね、君。こんなの、どこで覚えたの」

「あ・・・・・・・」

「春」に仕込まれたとは言えなくて、言葉を濁す。

「うん、なんとんなく察したから。ありがとう」

「すまない・・・・・」

浮竹は、顔を洗いに洗面所に消えてしまう。

「はぁ・・・抱きたい」

率直な感想であった。

でも、考えてみれば、まだ出会って3か月しか経っていないのだ。

躊躇するのも無理はない。

「夕飯つくる」

「うん。トマトが賞味期限切れそうだから、使って」

「ミートスパゲッティにする。トマトソースを作ろう」

浮竹と京楽は、何事もなかったかのように日常に戻る。

さっきまで、卑猥なことをしていた様子など全くなかった。

「白哉に、多分気づかれるから、怒られるのは覚悟しておけ」

「えええーーーー!」

トマトをつぶしながら、浮竹は笑った。

「春水」

「ん?」

「これから、たまに春水って呼んでもいいか?」

「いいよ」

浮竹と京楽の距離が、ぐっと縮まった一日だった。

翌日に帰ってきた白哉は、京楽から浮竹の匂いがするので、怒ったが、最後までしていないという浮竹の言葉を信じて、京楽のすねを子猫姿で思い切りかじるだけにしておいた。

「白哉君てさぁ。浮竹のなんなの?」

「はっきり言ってしまえば、弟だ。異界にある俺の桜から株分けされた、桜だからな」

「あやかしにも、兄弟とかあるんだ」

「普通にあるぞ。家族とか」

「浮竹、白哉君手放す気ないね?」

「当り前だ。あんなかわいい弟、俺が認めた相手以外と交際するのもだめだ」

浮竹の貞操観念が高いのは、どうやら地であるらしい

「兄らは、できているのかいないのか、どっちなのだ」

「ん。一応、できてるよ?肉体関係はないけど、恋人だと思ってるよ」

京楽にそう言われて、浮竹は真っ赤になった。

「そ、そういうことにしておいてやる!」

浮竹は真っ赤になって、35階の窓から子猫どころか、人の姿で飛び降りた。

「ここ35階なんですけどおおおおおお」

「ん?だからなんだ?」

ふわふわと、宙を浮く浮竹は、背中に桜の翼が生えていた。

「白哉のように風を操れないが、翼を作れる」

「はぁ・・・でも、ここ35階だからね。隣人とかに見られないようにね」

「京楽、俺はお前を愛しているぞ!」

そう言って、浮竹は一度自分の桜に戻り、エネルギーを供給して帰ってくるのであった。


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「火車?」

「ええ。火車がでるんです。丑の刻に」

「ふーむ。あやかしだな。何か悪さはする?」

京楽が、依頼人から話を聞く。

「いえ、ただ現れるだけなんですけど・・・・怖がって、近隣の住民がすっかりこの定食屋にきてくれなくなって・・・・生活がかかってますから」

「退治する必要はなさそうだな。火車はわりと温厚な性格のやつがおおい。その火車、俺の知り合いだったりしてな」

浮竹が冗談半分で言った言葉であったのだが、次の日の丑の刻に出た火車は、本当に浮竹の知り合いだった。

「朧(おぼろ)じゃないか。なんで、こんな時間に人間界に現れたりしてるんだ?」

「ああ、桜の王。それが、前輪をなくしてしまって・・・この時間帯なら、人に見られないかなと思って」

「ばっちり見られて怖がられてるからな?」

「ひええええ。前輪、ないなぁ」

「前輪ってこれかい?」

定食屋の隅に置かれてあったタイヤであった。あやかしの匂いがするので、依頼人の了承をとって、持ち出してきていたのだ。

「ああ、助かります。これで、安全に運転して霊魂を三途の川に運べる」

火車は、前輪をはめると、からからと音を出して異界に去っていった。

「浮竹、君ってあやかしの知り合い多いね。桜の王ってのと、関係あるの?」

「いずれ、話す。その時まで、桜の王のことは気にしないでくれ」

「そう言われても、気になるんだけどなぁ」

すると、消えたはずの火車が現れて、京楽はびっくりしてこけた。

「あ、これ、お礼のあやかしまんじゅうです。どうぞ、桜の王」

「ああ、ありがとう」

「ではこれで」

「京楽・・・・大丈夫か?」

「思いっきり膝打った。打撲した」

「みせてみろ」

浮竹は、桜が咲くイメージをして、京楽の傷を癒してしまった。

「すごいね。浮竹って、治療もできるんだ」

「伊達に5千年は生きていないぞ」

「5千歳の恋人・・・・ボクとの年の差が半端ない」

「気にするな」

浮竹はからからと笑って、火車がもってきたあやかしまんじゅうを食べる。

つられて、京楽も食べるのであった。









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桜のあやかしと共に2

朝起きたら、人の姿をした浮竹が隣で寝ていて、京楽はどぎまぎした。

「ああそうか・・・・子猫の姿のまま、一緒に寝たのか」

京楽は、すうすうとよく眠る浮竹の、長い白髪を手に取ると、口づけた。

夢を見ていた。

夢の中で、京楽は「春」という人物で、浮竹の恋人だった。

浮竹をとても愛していた。あふれそうな思いを、こぼれそうな思いのまま目覚めて、ああ、自分は桜のあやかしの浮竹の恋人が、前世であったのだと実感した。

ここ数日、いつも「春」であったころの夢を見る。

夢を見るたびに、浮竹が愛しく大切に思えてきて、大事にしたいと思った。

「ん・・・・・・・」

「やあ、起きた?」

「すまん。子猫の姿のまま寝ていたら、いつのまにか人型になっていた。ベッドは広いが、それでも邪魔だっただろう」

「いや、いいよ。それより、最近ボクは自分が「春」である夢を見るんだ。やっぱり、君の影響?」

「そうだな。俺にとって「春」はとても大切な人だったから・・・、生まれ変わりのお前を見つけれて、傍にいられるだけでいいから、一緒にいさせてくれ」

「でも、君はボクを「春」とは呼ばないんだね」

「京楽は京楽だろう。生まれ変わりでも、別の人間だってちゃんと理解している」:

浮竹は、簡単な朝食を作りにキッチンに行ってしまった。

「はぁ・・・キスとハグまで・・・いつまでもつかなぁ」

京楽の中で、鮮やかに蘇る「春」の記憶。

でも、もしも自分が「春」でなかったなら、出会いも何もかもなかったと思うと、少し寂しい気持ちになった。


「朝食できたぞ」

「ああ、うん。今いくよ」

浮竹は桜の精霊であやかしであるが、人の食事で栄養をとることができる。

普段は、桜の大木から光合成でエネルギーを得ているが。

子猫の姿の時は、猫の食事からも栄養をとれた。

その気になれば、何も口にせずとも生きていけるのだが、人の食事はおいしいし好きなので、浮竹は料理が下手そうに見えて、けっこういい腕をしていた。

「今日の仕事・・・・・狸の信楽焼のおきものが付喪神になって悪さするので、退治してくれっていう内容なんだけど、一緒にくる?」

「一緒に行く。こう見えても、いろいろ術が使える」

「心強いよ」

「私も行こう」

「って。白哉君?ここ、35階なんですけど」

にゃーんと、黒猫姿で鳴いて、白哉は浮竹の膝の上に飛び乗った。

「浮竹は、私にとって兄のような大切な存在だ。兄が、浮竹を泣かせることがないように見張る」

「ああもう、好きにして。白哉君、自衛はできるね?」

「無論だ」

白哉は、首に首輪をはめていた。浮竹の首輪とおそろいだった。

猫から人の姿になった時は、首輪はないが、衣服はちゃんと着ていた。

そこらへんの仕組みが気になったが、問うてもだから何だと言われそうなので、京楽は黙っていた。

「白哉君は、人のご飯食べる?それとも猫缶?」

「猫缶で。あとチュールも」

白哉は、人の食事より猫の時の食事のほうが好きだった。

やがて昼過ぎになり、京楽が依頼があった場所へ車で向かう。

人の姿の浮竹と、黒猫姿の白哉も一緒だった。



「ようきてくださった。これが、付喪神の狸の信楽焼です」

依頼人は、家の前に置かれている狸の信楽焼をなでた。

「大切にしていたんですけどなぁ。付喪神になるだけならいいが、悪さをするので」

「どういう悪さを?」

「子供を、川につき飛ばしたり、老人の背に乗って動けなくしたり・・・」

京楽は、狸の信楽焼をよく観察した。

「これ、付喪神じゃないね。浮遊霊の塊が中に入ってる」

「ひえええええ。なんとかなりませんか」

「除霊するよ。浮竹、手伝ってくれる?白哉君は、この呪符の上にいて結界を維持してくれるかな」

「わかった」

「ね、猫がしゃべった!」

依頼人はびっくりしていたが、とりあえず無視して祝詞を唱え、除霊を試みる。

「ぬおおおおおおおおおお」

狸の信楽焼から、叫び声がして、ガタガタと動きだした。

「我を排除しようとするは誰ぞ」

「悪いけど、あの世にいってもらうよ」

「おのれ。我を齢200年の霊と知っての・・・・桜の君?あなたは、桜のあやかしの長老様・・・・あやかしが、人間ごときと一緒に、退治屋をはじめたというのですか」

浮遊霊の塊は、浮竹に向かって飛んでいく。

ばちっと、音がして、浮竹の周囲には白哉と京楽の作った結界が施されていた。

「桜の君・・・・・・」

「人にあだなすのであれば、消えろ」

その言霊だけで、浮遊霊の塊は薄くなっていく。

「桜の君・・・・また、人と生きようというのか。災いしかないと知りながら」

「お前は・・・・不知火(しらぬい)か。ただの浮遊霊にしてはおかしいと思った」

「え、知り合いなの?」

「こいつは、もともと楓(かえで)のあやかしだ。あやかしをやめて霊体になったと、100年ほど前に聞いた」

不知火は、霊体で浮竹の周囲をぐるぐると回る。

「桜の君、我といこうぞ。そなたの力があれば、異界より災いを呼べる」

「ごめんだな。不知火、眠れ。踊れ、焔(ほむら)よ」

浮竹は、炎の術で不知火を燃やしてしまった。不知火というのは名前だけで、炎とは関係ないようだった。

「ボクの出番が・・・・・・・」

「浮竹、大丈夫か?桜の大樹より離れて久しいであろう。あまり力を使うと、異界で休眠することになるぞ」

「大丈夫だ、白哉。異界の桜の大樹から、ごっそりエネルギーをこっちにきた時とりこんでおいたからな」

「ならばいいのだが」

「あの、ボクの出番は?」

「終わりだ。これはもう、ただの狸の信楽焼だ」

遠巻きに見ていた依頼人は、人ならざる者達の存在に恐怖を覚えながらも、依頼料を払ってくれた。

「百鬼夜行ならぬ、百花夜行があってから、植物のあやかしが悪霊になったり、悪さをする者が多い」

浮竹の言葉に、京楽が首を傾げる。

「百花夜行?」

「その名の通り、100をこえる花や植物のあやかしたちの祭りというか、騒ぎというか」

浮竹が、説明しにくそうにしていた。

「浮竹は桜の長老だからな。百花夜行には必ず参加していたが「春」を失ってから、時折しか参加しなくなった」

「また、「春」・・・・・・ボクは、京楽春水だよ?」

「わかっている。京楽は京楽だ」

浮竹は、白い子猫姿になって、京楽の肩に飛び乗った。

「帰ろう」

「う、うん・・・なんかよくわからん間に除霊されちゃったし、帰ろっか」

「兄は、浮竹の力を知らぬのだ。浮竹はな、桜の王なのだぞ」

「白哉、いらないことは言わなくていい」

「浮竹・・・まぁよかろう。兄がまだ話したくないのであれば」

京楽は、車を運転しながら、2匹の猫を見る。

「まだ知り合ったばかりだからね・・・秘密は、おいおい聞いていくよ」

「別に、隠しているわけじゃないんだ。ただ、俺は白哉のようなただの桜の精霊ではなくて、桜の精霊の王と呼ばれている」

「うん・・・今は帰って休憩しよう。浮竹も、除霊に何気に力使って疲れたでしょ?」

「そうだな。あやかしの霊を除霊するのは、30年ぶりだな」

「30年・・・ボクがまだ小学生になったかどうかって年だね」

「前世の春としてではなく、京楽春水、お前を愛している」

高級車を駐車場に止めて、降りた京楽に、浮竹は一瞬だけ人の姿をとって、口づけた。

京楽がむさぼろうとすると、すぐに子猫の姿になった。

残念と思いながら、子猫の浮竹にキスをする。

「兄は、猫の浮竹にも興奮する変態なのか」

「愛に性別も人種も種族も関係ない、と言ってみる」

「苦しい言い訳だな・・・・・・」

白哉は、京楽の足をひっかいた。

「あいたたたた」

「浮竹がいやがっている。離してやれ」

「あ、ごめん」

「子猫姿でキスされると、息ができない」

浮竹はぷんぷん怒った。

自分からキスしてきたくせに。

「白哉君は、また桜の木に戻るのかい?」

「兄が、浮竹にいらぬちょっかいを出さないために、一緒に暮らすことにする」

「ええええ」

「兄らの関係が進めば、出ていくから安心しろ」

「ははは、子猫2匹を内緒で飼っているってばれたら、管理人に怒られそう」

京楽は、猫用の砂やらペットフード、おもちゃ、それにキャットタワーなどをすでに買っていた。

「今日は、ルキアが待っているから、外で泊まる」

「ルキア?」

「私の妹だ」

「じゃあ、その子も桜の精霊?」

「いや。ネモフィラの精霊だ」

「ネモフィラ。きっとかわいいんだろうなぁ」

「浮気か、京楽」

「いやいや、違うから」

つーんと機嫌を悪くした浮竹が、人の姿になってキッチンに入り、オムライスを作り出した。

ケチャっプで、器用に京楽の分に「ぶち殺す」と書かれていた。

「白哉も食べていけ」

「わかった」

白哉の分には、ハートマークが書かれていた。浮竹は自分の分には猫をかいた。

白哉が人化する。

やはり、とても綺麗な青年だった。性別を浮竹と一緒に間違われそうな。

「浮竹の手料理はうまいな」

白哉は残さず食べ終えてから、35階の窓のベランダから、猫の姿で飛び降りた。

「えああああああ!ここ35階!」

「俺たちあやかしには、高さはあまり関係ない」

「なら、いいんだけど」

浮竹は、京楽にキスをする。

「ん・・・・・・・」

「ねぇ・・・ボクと、その、してみない?」

「まだいい。まだ、京楽のことが理解しきれていない」

「ボクはおあずけか・・・・・・」

「ダッチワイフあるけど、あれでも相手にしとくか?」

「わああああ!あれはボクの黒歴史になるから、放置しておいて!」

「そうか。じゃあ捨ててもいいな?」

浮竹は、ダッチワイフをポイっと捨てた。

35階の窓から。

「わああああ、通行人が!!」

「異界とゲートを繋げておいた。すぐに閉じるが」

「もお、びっくりさせないでよ」

「ダッチワイフがある時点でこっちがびっくりだ。恋人とか、いなかったのか?」

「んー、いたときもあったけど、長続きしなかったなぁ。みーんな、金目当てでさ」

浮竹は、ソファに座った京楽の隣に座り、頭を京楽に傾けた。

「俺は、お前がいい」

「うん、ありがと」

「でも、まだキスとハグまで」

「う、うん・・・・・・」

浮竹は、そのままうとうとと眠ってしまった。

子供のようにあどけない表情で眠る浮竹の額にキスをして、京楽は毛布をかけてやるのであった。












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桜のあやかしと共に1

その人は、とても綺麗だった。

長い白髪に、翡翠の瞳をしていた。町を歩けば、皆振り返るくらいだろう整った顔立ちをしていた。

その人は、人間ではなかった。

樹齢5千年にもなる、桜の大木の精霊だった。あやかしというべきか。

かつて、その人には「春」という名の男性の恋人がいた。

その人の性別は桜のあやかしであるため、固定されていないが、いつも男性の姿をとっていた。

「春」は、その人が見ている目の前で、子供をかばって交通事故で死んだ。

その人は泣いた。

泣きすぎて、天候まで嵐にしてしまった。

今、その人は前世が「春」の男性を見つけて、どうすれば接触できるか、悩んでいた。

ここは、小さな公園には不釣り合いの少し古い桜の木。

その人の樹齢5千年になる桜の木は、異界にある。

なので、火事やなんやらで、公園の桜の木がなくなっても平気だった。

「にゃーーーん」

その人は、愛しい「春」をなくしてから、人の姿をあまりとらなくなった。

もっぱらオッドアイの白猫の子猫の姿をしていた。

「春」が好きだといってくれた姿だった。

「春・・・・・・いや、今は京楽春水か・・・・・・」

子猫は、公園から億ションの高い建物を見あげた。

「なー」

「にゃおーん」

物思いにふけるその人の名は浮竹十四郎。

浮竹は、同じ桜の精霊である朽木白哉の黒猫姿のあいさつに、鳴き声で返した。

「兄は、またあの男のことを思っているのか」

「ああ。あいつは、「春」の生まれ変わりだ。一目見ただけで分かった。

「兄は、まだ「春」を思っているのか。死してもう120年にもなるのだぞ」

「それでも、俺は待っていた。ずっとずっと、「春」の生まれ変わりを」

「私たちはあやかし。人とは相いれないもの。「春」は人間だったが、特異体質であやかしが見えた。今度の「春」の生まれ変わりは、あやかしの私たちの姿が見えるかどうかも分からないのだぞ」

白哉は、そう言って浮竹に黒い毛並みの体をこすりつけた。

「にゃあ」

「なおーん」

人々には、猫がぽかぽかした春の日差しの下で、日なたぼっこをしているように見えるだろう。

「ああ、言っていたらきたぞ」

「なぁ」

浮竹は、猫に完全になりきって、思い人にすり寄る。

「やあ、ジュリア。猫缶もってきたよ。お友達のスザンヌの分もあるし、チュールもあるから喧嘩せずに仲良くお食べ」

京楽春水。

父方がドイツ人とのハーフで、京楽はクォーターにあたる。

堀の深い顔立ちをしており、鳶色の瞳が印象的だった。

「にゃああああ」

浮竹は、猫缶をおいしそうに食べて、チュールももらって、京楽にすり寄った。

「ごめんね。ボクのマンション、犬はいいけど猫はだめなんだ。外でしか会えないけど・・・・」

「問題ない」

どうせ見えないだろうと、人の姿をとった。

満開の桜舞い散る場所に、白い長い髪に翡翠の瞳をもった、桜色の着物を着た人物が突然現れて、京楽はぎょっとなった。

「ジュリア?」

「俺の名は浮竹十四郎。ジュリアとは、お前が俺につけた名だな」

「え、何これ。子猫が青年に・・・・・?」

「正確には、桜のあやかしだ。桜の精霊さ。お前がスザンヌと呼ぶこの黒猫も桜の精霊で、朽木白哉という。俺の弟のようなものだ」

「えっと・・・ボク、昔から特異体質で幽霊とか妖怪とか見えるんだけど、これもそのせい?」

京楽は、鳶色の瞳を瞬かせた。

「そうだな。ただ、今は普通の人間にも見えるようにしている」

「ジュリアは桜のお化けなの?」

「浮竹と呼べ。ジュリアは女のようでいやだ」

「ああ、うん・・・・でも、すごく綺麗だね。えっと、浮竹だっけ・・・・」

「ああ」

「はじめまして。ボクは京楽春水。ちょっと特異体質の霊感があって、それにあうようななんというか、稼業?をしているよ」

「あやかしや幽霊を祓う、便利屋だろう。知っている」

「なんで、初めて会うのに、ボクのこと知ってるの?」

「お前をずっと見てきたからだ。俺はお前を愛している」

「え」

「にゃおーん」

浮竹は、子猫の姿になって、京楽の足元にすりよった。

「どういう意味?」

「にゃああ」

「人の言葉通じるかな」

「通じるぞ。スザンヌだとか、ふざけたような名前の改名を求める」

黒い毛皮をなめながら、白哉はそう言った。

「猫がしゃべった・・・・・・」

「だから、俺たちはあやかしだ」

「ねこのお化け?」

「桜のお化けだな。桜の季節は、人を惑わす者も多いが、俺たちはそういうことはしない」

「ああ、うん。駆除対象じゃないって、接してれば分かるけど・・・・でも、ボクを愛しているって?ボクは君とは猫の姿をしているときは会ってるけど、人間の姿をした君と会うのははじめてだよ。ボクをからかってる?」

「違う。お前は「春」の・・・・・俺の120年前の恋人の生まれ変わりだ」

「は?」

「信じてもらえなくてもいい。ただ、時折でいいからこの公園にきて、猫の姿でいるから餌でももってきてくれ。俺は、お前だけを、ずっとずっと・・・・120年間、愛し続けていた」

浮竹は、涙を零した。

「浮竹。兄のもつ妖力は強い。泣くと、雨になる」

「ああ、すまん、白哉」

浮竹が泣いていると、空からにわか雨が降ってきた。

「京楽春水。愛している」

「ボクは・・・・・」

ずきりと、京楽は頭痛を覚えた。

走馬灯のように、前世の記憶がぶわりとおおいかぶさってきて、京楽はどこかでこの浮竹という桜のあやかしとあったことがあると、愛していたと、確信していた。

「前世・・・・あんまり思いだせないけど、どうやらボクは君に恋をしてしまったらしい」

浮竹の美しい姿に、見惚れてしまっていた。

「では、今生でも俺の恋人になれ」

やや強引な浮竹に押し任されて、京楽は頷いてしまった。

それを、白哉はただ見守っていた。

「雨降ってきたし、人の姿ならはいれるから、ボクの家にくる?ジュリア・・・・じゃなかった、浮竹。あと、スザンヌも」

「スザンヌではない。朽木白哉だ」

白哉も人型をとった。浮竹とはまた違った美しさをもつ、若い青年だった。

「ボクの家、広いから3人になっても平気だよ」

白哉は、首をと横に振った。

「私は、桜の木の中で休眠する。浮竹、行ってこい。思い人と通じあえたのであろう」

「春の記憶は、あまり蘇っていないだろう。前世の記憶は、夢などでゆっくり思いだす。ということで、ちょっと京楽の家に寝込みを襲いに行ってくるぞ、白哉」

「ほどほどにしておけ」

「え、ボク、寝込み襲われるの!?」

「冗談だ。ただ、お前の傍にいたい」

「うーん。ほんとはダメなんだけど、子猫の姿でいいよ。今、人の姿をとり続けているのは辛いんでしょ?」

「なぜわかった?」

浮竹が首をかしげると、京楽は札をだして浮竹の背後に飛ばし、除霊した。

「寄生虫?みたいなの、くっついてたから」

「え・・・気づかなかった」

「この手の妖怪は、宿主を少し苦しめるけど、気づかない場合が多いからね」

「すまん・・・・恩に着る。では、子猫の姿になるので、運んでくれ」

「名前、猫の時はジュリアでいい?」

「だめだ。浮竹と呼べ」

浮竹は、子猫姿になると、京楽に抱かれて京楽の部屋に入る。あまりもののない、殺風景な部屋だった。

「ここが、京楽の家か・・・・」

「広いでしょ」

「ああ」

浮竹は、人の姿をとった。

「3億したからね。ボクの家柄は元華族で、大正時代くらいまで貴族だったよ」

「ふうん。金はあるところにはあるんだな」

「まぁ、寝るためだけに使ってるような部屋だから。よければ、浮竹も一緒に住まない?桜の木がいいっていうなら、断ってもいいけど」

「一緒に住む」

即答だった。

「俺はお前を愛している。その意味を、教えてやる」

浮竹は、京楽を押し倒してキスをした。

「ん・・・・・・」

キスをしかされて、これはやばいと、浮竹はいったんストップを入れる。

「まだ、体の関係にはなりたくない」

「どうして?君はボクのことが好きで、ボクも君のこと気に入ったよ」

「まずはプラトニックからだ。キスとハグまで」

「ええ、それ生殺しじゃない?」

「春は、いきなり体の関係なんて求めてこなかった」

「ボクは春水。春じゃないよ」

「分かっている」

浮竹は、また子猫の姿に戻り、京楽のベッドの上で京楽と一緒に、ただ眠った。

浮竹の願いは、ただ愛しい者の傍にいること。

傍にいれるなら、なんだってする。

京楽は知らない。

浮竹が、精霊としての頂点に君臨する桜の精霊で、4大精霊長の1人だということを。









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奴隷竜とSランク冒険者59

藍染が死んだ。

突然のことであった。

真竜であるサンシャインドラゴンの黒崎一護、フルムーンドラゴンの浮竹十四郎、そしてインフェルノドラゴンである京楽春水の三人で、ドラゴン化して空に浮かぶ島の結界をうちやぶった。

勇者として召喚された平子真子をはじめとして、黒崎一護、朽木ルキア、阿散井恋次、朽木白哉の5人パーティーと、二組の浮竹と京楽で戦いに挑み、勝った。

世界中で、祝いの祝賀会が開かれた。

空位となった魔王の座に、今度は勇者であった平子真子がつき、魔族を監視しながら人々との共存の道を歩き始めた。

浮竹も京楽も、ハイエルフの浮竹とインフェルノドラゴンの京楽も、平子真子が魔王になるのは反対したのだが、魔王に悪しき者がつくとまた藍染と同じ道をたどるということで、人間の国々と国交を魔大陸で開始しながら、新しい魔族と人間とドラゴンの共存の時代がやってきた。

「長いようで、短かったのかな」

「そうだな。長いようで短かったな」

浮竹と京楽は、せめてと、藍染の墓を作ってやった。

めちゃくちゃな魔王であったが、魔族による世界の統一を目指した魔王であった。

元は人間である。

魔王にどんな人物がつくかで、その後数十年数百年の魔族の生き方と世界の在り方が変わる。

先々代の、藍染に殺された魔王も、魔族による世界統一を目指していた。

藍染も、同じ道をたどった。

けれど、平子真子は違う。

人間との共存の道を選んだ。

「ボクたちは、それでもこれからもSランク冒険者としてやっていくけどね」

「俺もだ」

出会いは、奴隷と貴族。

奴隷だった浮竹は、京楽に買われて奴隷から解放され、京楽と生きる契りを交わした。

違う大陸にいる、ハイエルフの浮竹やインフェルノドラゴンの京楽という存在を知り、友好をたもちつつ、月日は流れる。

浮竹は、卵を産んだ。

京楽との間の子供だった。

ドラゴンは普通、孵化してすぐに独り立ちする者がほとんどだが、卵から生まれてきた子は人の姿をしていた。

赤ん坊だった。

卵から赤子がかえったと、皆で騒いだ。

人間とドラゴンのハーフであった。

浮竹は希少すぎるドラゴンのため、雄でも卵をうめたし、人間と異種交配もできた。

アフターピルをわざと1週間のまずに交わって、すぐに妊娠した。

男の子であった。

名前は、春雷(しゅんらい)と名付けられた。

ドラゴンと人間との、長い歴史も変わっていく。

隠れ住んでいたドラゴンたちは人化して、人の世界にまじっていく。

同じように、魔族も。


藍染が死んで、10年が経った。

春雷は、まだ幼子だった。

ドラゴンの血も引いているので、成長が遅いのだ。

50年が経った。

春雷は少年になっていた。

自分の父と母が、人間とドラゴンで、男同士であることとか、そういうことを気にしない子だった。

『やあ、春雷。一人で遊びに来たのかい?』

インフェルノドラゴンの京楽は、相変わらず人間嫌いだが、昔よりかなりましになった。

ハイエルフの浮竹は、今も魔法書を作り続けている。

『あ、春雷、竜化はできるようになったか?』

ハイエルフの浮竹が聞くと、春雷は笑って、「少しだけ」と言った。

「ああ、俺たちの息子がお邪魔してすまないな」

「春雷。ハイエルフの浮竹とインフェルノドラゴンのボクのところに行くなら、まず父さんたちに許可をもらいなさい」

「はい、父上」

京楽に外見は似ているが、よくできたしっかりした子だった。

「ねぇ、兄弟作らない?」

「ハーフドラゴンの生き血は永遠の命をもつとされている。守るのは一人で手一杯だ」

「そうかー。残念」

浮竹も京楽も、春雷を大切に育てた。

やがて、独り立ちの日が訪れたが、同じSランク冒険者なので、ギルドでちょくちょくあった。

京楽は人間だが、ドラゴンの浮竹と同じ時間を生きる契約をしているため、若い姿のまま数十年と生きていた。

魔族の冒険者も登場するようになり、魔族とパーティーを組む人間も増えてきた。

世界は、変わっていく。

浮竹と京楽は不変であるが。

廻れ廻れ。

世界は廻る。



さぁ、新しい冒険の旅を始めよう。

まず、君の名前を教えてくれるかな?


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パフェ

「あけましておめでとうだ、一護。お年玉をくれ」

ルキアは、とってもかわいい笑みを浮かべて、無理難題をひっかけてきた。

「親父からもらっただろう?あと、白哉からも」

「貴様の父上と兄様はあげる義理のようなものがあるから、くれる。一護なら、遠慮せずにもらえるからな」

「少しは俺の財布事情を察してくれよ」

「そうか。エロ本の買いすぎで・・・・・」

「違うわ!」

ルキアの頭にチョップをかますと、ルキアは涙目になりながら見上げてきた。

う。かわいい。

一護がそう思うと、ルキアはにやりと笑った。

「今、私のことをかわいいと思ったな、貴様」

「思ってない」

「いや、思った」

「だから、思ってねぇ」

「では、お年玉ももらえないような財布事情を察して、メロンクリームソーダパフェで手を打ってやろう」

「なんだよ、それ」

一護は苦笑して、ルキアの頭をなでた。

ルキアは、猫のように一護に頭を撫でられて気持ちよさげにしていた。

「じゃあ決まりだ。今から行くぞ!」

「おい、おかわりはだめだぞ。新しいパソコン買ってマジで金欠なんだからな!」

「ふふ、知っておるぞ。あさってはバイトしてる店の給料日であろう」

「何で知ってやがる!」

「さぁ、なぜであろうな?」

正解は、カレンダーに花丸がしてあったから、ルキアの感からきていた。

「あーもう、おかわりは1回だけだぞ」

「では、行くぞ・・・・寒い!」

ルキアは、暖房の効いた部屋から出て外に続く扉をあけてしめた。

「寒いから、温かいものにする・・・・・と思ったであろう?寒さを我慢して温かいレストランに入って食べるパフェが至福なのだ!」

「あー、さいでっか」

一護はもうどうでもよさげになっていた。

コートをきて、ルキアとおそろいのマフラーと手袋をする。ルキアは耳当てもしていた。

「では、パフェへ向けて出発!」

「あいよー」

長らく使っていたパソコンがついにお陀仏になって、15万の新しいノートパソコンを買った。

半分は、値段が値段だし、父親に出してもらった。

まだ高校生だ。

バイトをしているといっても、月に十数万も稼げるわけがない。

ルキアは白哉から札束もらって、いろいろ散財しているが。

「ほら、ルキア、行くぞ」

「ん?手をつなぐのか?」

「んだよ、わりぃかよ」

「いや、貴様もかわいいところがあるのだなと思ってな」

「彼氏彼女だろ。手繋いでも普通だろ」

「か、彼女な。慣れぬな。貴様と付き合っていると兄様にばれたら、兄様は怒るであろうか」

「いや、すでにばれてるからな」

「そうか。すでにばれて・・・・・えええええええええ」

ルキアは飛び上がった。

「何故だ!いつばれた!」

「この前、尸魂界に行った時、ルキアとキスしてるシーン見られて、呼び出しくらって、千本桜向けられて、幸せにしますって頭さげまくった」

「そうか・・・・兄様あああああああ」

ルキアは、今すぐ白哉を呼んで遊びではないと伝えたかった。

「大丈夫だ。白哉はちゃんと話したら分かってくれた」

「そうか。兄様は、私たちのことを知っているのか・・・・・・」

「んで、パフェ食うのはやめるのか?」

「あ、行くぞ!ほら、一護、もたもたせずに歩け!」

「さっむ・・・・今年は冷えるっていうしな」

マフラーを顔の半分まで巻き付けて、一護はルキアと手を繋いで歩きだす。

今日も、明日も、これからも。





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肩たたき

「新年あけましておめでとうございます、隊長!」

「ああ・・・・あけましておめでとう。お年玉のかわりに、これをやる」

白哉が取り出したのは、恋次が愛用している店の新しいゴーグルだった。

「ちょ、これ最近でたばっかの一番高いやつ・・・」

「そうなのか?安かったぞ」

そりゃ、4大貴族の目線から見れば、恋次の愛用の店など安いものばかり売っているような店に見えるだろう。

700万環(700万)はくだらないゴーグルを、恋次はつけるのではなしにそっと懐にしまった。

せっかくもらったのだが、金額が金額なのでつけて傷でもつけたらいやだ。

「つけぬのか?気に入らぬのであれば、別のものを取り寄せるが・・・・・」

「あ、気に入りました!つけます!」

懐にしまいこんだが、白哉がつけないことを訝しがるので、つけた。

内心ひやひやした。

700万のゴーグル。

高すぎる。

それを、お年玉のかわりだとほいほい与える白哉は、やっぱり金銭感覚がおかしい。

「じゃあ、隊長にもお年玉あげますね」

「は?」

白哉はびっくりしていた。

まさか、自分より貧乏で年下の副官からお年玉をもらうとは思っていなかったからだ。

「いや、あの現金じゃないし、ちゃちいですけどこれ」

肩たたき券。

そうわりと達筆で書かれた紙の束をもらって、白哉は声もなく笑った。

「・・・・・・・」

つぼにはまったらしく、さりとて笑い声を大きくあげるような人物ではないから、むせだした。

「大丈夫ですか、隊長!」

「はははは・・・・まさか、肩たたき券とは・・・・では、さっそく1枚使ってもよいか?」

そう聞かれて、恋次は頷いた。

「最近、書類仕事が多くてちょうど肩がこっているのだ。頼む」

「あー。これ、けっこうこってますねぇ」

白哉のさらりとした黒髪をわけて、肩を露わにさせると白いうなじが見えて、ドキンと心臓がはねあがった。

隊長羽織を脱ぎ、死覇装だけの姿になると、華奢さがわかる。

白哉の肩をもんでいく。

「ん・・・・・」

きもちよさに、白哉が声をあげる。

その声が、閨のものに似ているせいで、恋次は少し焦った。

「あ・・・・・・・」

この人は、自分をあおっているのだろうか。

そんな思考がよぎる。

「うむ、もうよい。すまぬ、恋次」

「いえ、お粗末様でした!ちょっと用ができたので、いってきますね!すぐ戻りますから!」

まさか、白哉の肩たたきというか、肩もみで反応された声で、息子さんがたってしまったなんて言えずに、トイレにかけこんで処理する。

戻ると、白哉は不思議そうな顔をしていた。

「私の声で勃ってしまったのであろう。なぜ、隠す?」

ばれてたーーー!!

恋次は、天井を仰いだ。

「抜いてやることくらいなら、してやるぞ?」

「まじっすか」

「貴様とこういう関係になって何年経つと思っている」

「すんません」

恋次は、その後白哉に抜いてもらったのだが、我慢がきかずに隊首室で白哉を押し倒してしまうのであった。

そして、禁欲半月を言い渡されるのであった。











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