桜のあやかしと共に6
朝顔の花鬼が暴れているということで、4人は正式に名乗りあい、自己紹介した。
「それにしても、俺に人間のエナジーを渡そうとするなんて・・・花鬼は植物のあやかしだから、眷属になる。すまない、迷惑をかけた」
『ふーん、素直に謝れるんだ』
「うるさい」
浮竹は、夜刀神を睨んだ。
『おお、こわ』
「あんまり、十四郎を怒らせないでね」
京楽は、浮竹を抱き寄せた。
「京楽・・・帰ろう。花鬼はもういない」
「うん」
『「春」みたいに、ならないようにね?』
浮竹は、きつい眼差しを夜刀神によこして、桜の花びらをふっと吹いて、転移してしまった。
『京楽、あの桜の王とは古くからの知り合いなんだな』
『うん。それこそ、生まれてからすぐに、みたいなね?彼は昔はもっと長老としてあやかしの管理をしていた。「春」を失って、それもやめてしまったみたいだけど』
『桜の王か。なんかかっこいいな』
『だめだめ。桜の王はいろいろあるから、憧れないほうがいいよ』
『そうなのか』
『ボクたちも帰ろう』
『そうだな』
「夜刀神のやつ、今度あったら桜の花びらで切り裂いてやる」
「十四郎、荒れてるねぇ」
「京楽がいてくれるなら、気持ちも安定する」
そう言って、浮竹は京楽の座ったソファーの隣に座り、京楽のほうに頭を傾けた。
「腹が減った」
白哉がそう言うものだから、いちゃつくこともできずに、浮竹はキッチンに行ってしまった。
「白哉君、わざとでしょ」
「さぁ、何のことかわからぬな」
白哉は黒猫の子猫姿になると、京楽の足をひっかいた。
「ちょっと、ボクは爪とぎじゃないよ」
「兄が「春」の生まれ変わりが、いいことなのか悪いことなのか、私にもわからぬ」
「そんなこと言われてもね。ボクはボクだ。「春」じゃない」:
「わかっている。だが、兄に出会って浮竹は見違えるほど生き生きとしている。あのひどい自閉症からここまで回復できたことが、正直驚きだ」
京楽は「春」とはどんな人物であったのかを聞かない。
夢でいつも、自分は「春」であるからだ。
キッチンで、浮竹が声をあげる。
「パスタとスパゲッティ、どっちがいい?」
「スパゲッティ。パスタはこの前食べたしね」
「私はどちらでもよい」
白哉は何気に、京楽からチュールをもらっていたりしていた。
仲がいいか悪いのかわからない二人だった。
次の日、ひまわりの花鬼が訪れてきた。
「桜の王。ひまわり畑の花鬼たちを、食べてしまうあやかしがいるのです。どうか、お助けを・・・・」
「花鬼を食うのか。許せないな。分かった、でむこう」
「ありがとうございます。こちらの方とは、契約はまだで?」
「ああ。近いうちにしようと思っている」
「契約?」
京楽は首を傾げていた。
ひまわりの花鬼の案内で、ひまわり畑にくると、ひまわりの3分の1が枯れていた。
「吸鬼(きゅうき)の仕業です」
「吸鬼か。普通は自然のエナジーだけを吸うのに、花鬼を食って、舌がこえたか」
「ようは、その吸鬼を退治すればいいんだよね?今回は、ボクが退治したい」
「いいが、吸鬼は少し厄介だぞ」
「どんな風に?」
京楽が聞くと、浮竹が答える。
「物理攻撃がきかない」
「じゃあ、大丈夫。精神体を攻撃できる呪符、作ったから」
「それなら、級鬼も倒せるな」
ぐおおおおおおおおお。
吸鬼が、ひまわりの花鬼たちを食べようと姿を現す。
「縛!」
京楽は、呪符を飛ばしてまずは動きを封じた。
「ぬおお、動けぬ、こざかしい人間風情が・・・・そのエナジー、吸い尽くしてやる」
「禁!」
「ぎゃあああああああああ」
精神体に攻撃できる呪符を飛ばすと、吸鬼は悲鳴をあげる。
「俺の眷属を食ったこと、後悔するがいい」
浮竹は、桜の花びらを手のひらにのせて、ふっと息をふきかけた。
「ぬおおおおおおお!さ、桜の王だと・・・・なぜ、花鬼ごときのために」
「花鬼は植物のあやかしだ。俺の眷属にあたる」
「滅!」
京楽が、呪符を飛ばして吸鬼を白い炎で燃やしてしまった。
「ありがとうございます、京楽様。我らの王の、契約者となられるお方・・・・・」
「契約って、何?」
「帰ったら、話す」
そのまま、浮竹と京楽は億ションに帰宅した。
白哉はもう眠っていた。
「京楽、お前には俺と同じ時間を生きて欲しい。それが契約だ」
「つまり、年をとらないってこと?」
「そうなるな」
「いいよ。十四郎が望むなら、契約者になる」
京楽は嫌がるかと思ったが、案外あっけなく受け入れてくれた。
「いいのか?一度交わすと、もう人ではなくなる不老者になるぞ」
「でも、不死ではないんでしょ。そのせいで「春」は死んだ」
「春水・・・俺は、お前を「春」の代わりにしようと思っていない」
「うん、分かってる」
京楽は、頷いて自分から手のひらに傷をつけて血を滴らせる。
「契約の方法を知っているのか?」
「毎晩「春」である夢を見るからね」
「そうか・・・・俺の血とまじりあわせて、飲もう」
浮竹は、手首を桜の花びらで切ると、滴り落ちる血を宙に浮かせて、京楽の血と混ぜあわせた。
「永久(とこしえ)をお前と共に」
「愛しい十四郎と同じ時間を生きると、ここに誓うよ」
二人で血を飲みほす。
浮竹は自分の傷と京楽の傷を、ふっと桜の花びらをふいて治した。
「その・・・もう、俺を抱いてもいいぞ」
「え」
「契約はなった。パートナー契約も兼ねている」
「白哉君、起きないかな?」
「結界をはっておいた」
浮竹は、京楽に口づける。
そのまま、二人は京楽の寝室に入り、求めあうようにまじりあう。
「あ!」
いい場所を突かれて、浮竹が声を漏らす。
「君の中、すごく熱いね」
「あ、もっと奥にきてくれ・・・春水」
「十四郎・・・・・・・」
「ああああ!!!」
最奥をごりごりと抉られて、浮竹は中いきと同時に精液を出していた。
味わってみたが、まるで花の蜜のように甘かった。
「ばか、舐めるな・・・」
「でも、甘くておいしいよ?」
「ばか・・・・んあっ」
ズチュリと侵入されて、浮竹が喘ぐ。
「もっと愛していい?」
「あ、もっともっと、愛してくれ。俺の奥で、子種を注いでくれ」
ペロリと、浮竹は唇をなめる。
「えろ・・・・・」
「ああああ!!」
前立腺をこすりあげられて、浮竹は京楽に抱かれている幸福感を味わいながら、また精液を出していた。
それを、京楽が舐めとる。
「あ・・・んあっ」
もう、なめるなという余裕すら、浮竹は失っていた。
「春」を失って120年ぶりに、誰かと交わる夜であった。
翌日になって、白哉は黒猫姿で京楽の脛をひっかきまくっていた。
「結界まではって!兄は、けだものだ」
「いや、契約したらそんな流れに・・・・」
「浮竹、よいのか?「春」との契約の上書きになるであろう」
「いいんだ。「春」はもういない。俺は、京楽春水を愛しているから、契約して体を許した」
「むう、けだものと住むのは嫌だが、浮竹のことが気になるからまだここに住むことにしよう」
「ええ、出ていくんじゃないの?」
体の関係に発展すると、白哉はてっきり家を出ていくものだと思っていた。
「兄が本当に浮竹を幸せにできるか、見守る。ただし、交わるときは結界を忘れずに。私とて、浮竹の情事を聞きたいわけではない」
「ああ、うん」
白哉は、京楽の頭をかじる。
「白哉、だからかじるとアホになるぞ」
「チュールよこせ」
「育て方、間違ったかな・・・・・」
浮竹は、京楽の頭をかじると、白哉がチュールをもらえる形式になっているのを、ため息をついて見守る。
「白哉は、あやかしより人より、猫でいるほうが好きだもんな」
「浮竹、まぁ否定はせぬ」
「猫の桜のあやかし・・・・考えてみれば、なんで猫なの?」
「猫が好きだから」
そっけない浮竹の言葉に、京楽は苦笑して、白猫のオッドアイの子猫になった浮竹にも、チュールをあげるのだった。
「それにしても、俺に人間のエナジーを渡そうとするなんて・・・花鬼は植物のあやかしだから、眷属になる。すまない、迷惑をかけた」
『ふーん、素直に謝れるんだ』
「うるさい」
浮竹は、夜刀神を睨んだ。
『おお、こわ』
「あんまり、十四郎を怒らせないでね」
京楽は、浮竹を抱き寄せた。
「京楽・・・帰ろう。花鬼はもういない」
「うん」
『「春」みたいに、ならないようにね?』
浮竹は、きつい眼差しを夜刀神によこして、桜の花びらをふっと吹いて、転移してしまった。
『京楽、あの桜の王とは古くからの知り合いなんだな』
『うん。それこそ、生まれてからすぐに、みたいなね?彼は昔はもっと長老としてあやかしの管理をしていた。「春」を失って、それもやめてしまったみたいだけど』
『桜の王か。なんかかっこいいな』
『だめだめ。桜の王はいろいろあるから、憧れないほうがいいよ』
『そうなのか』
『ボクたちも帰ろう』
『そうだな』
「夜刀神のやつ、今度あったら桜の花びらで切り裂いてやる」
「十四郎、荒れてるねぇ」
「京楽がいてくれるなら、気持ちも安定する」
そう言って、浮竹は京楽の座ったソファーの隣に座り、京楽のほうに頭を傾けた。
「腹が減った」
白哉がそう言うものだから、いちゃつくこともできずに、浮竹はキッチンに行ってしまった。
「白哉君、わざとでしょ」
「さぁ、何のことかわからぬな」
白哉は黒猫の子猫姿になると、京楽の足をひっかいた。
「ちょっと、ボクは爪とぎじゃないよ」
「兄が「春」の生まれ変わりが、いいことなのか悪いことなのか、私にもわからぬ」
「そんなこと言われてもね。ボクはボクだ。「春」じゃない」:
「わかっている。だが、兄に出会って浮竹は見違えるほど生き生きとしている。あのひどい自閉症からここまで回復できたことが、正直驚きだ」
京楽は「春」とはどんな人物であったのかを聞かない。
夢でいつも、自分は「春」であるからだ。
キッチンで、浮竹が声をあげる。
「パスタとスパゲッティ、どっちがいい?」
「スパゲッティ。パスタはこの前食べたしね」
「私はどちらでもよい」
白哉は何気に、京楽からチュールをもらっていたりしていた。
仲がいいか悪いのかわからない二人だった。
次の日、ひまわりの花鬼が訪れてきた。
「桜の王。ひまわり畑の花鬼たちを、食べてしまうあやかしがいるのです。どうか、お助けを・・・・」
「花鬼を食うのか。許せないな。分かった、でむこう」
「ありがとうございます。こちらの方とは、契約はまだで?」
「ああ。近いうちにしようと思っている」
「契約?」
京楽は首を傾げていた。
ひまわりの花鬼の案内で、ひまわり畑にくると、ひまわりの3分の1が枯れていた。
「吸鬼(きゅうき)の仕業です」
「吸鬼か。普通は自然のエナジーだけを吸うのに、花鬼を食って、舌がこえたか」
「ようは、その吸鬼を退治すればいいんだよね?今回は、ボクが退治したい」
「いいが、吸鬼は少し厄介だぞ」
「どんな風に?」
京楽が聞くと、浮竹が答える。
「物理攻撃がきかない」
「じゃあ、大丈夫。精神体を攻撃できる呪符、作ったから」
「それなら、級鬼も倒せるな」
ぐおおおおおおおおお。
吸鬼が、ひまわりの花鬼たちを食べようと姿を現す。
「縛!」
京楽は、呪符を飛ばしてまずは動きを封じた。
「ぬおお、動けぬ、こざかしい人間風情が・・・・そのエナジー、吸い尽くしてやる」
「禁!」
「ぎゃあああああああああ」
精神体に攻撃できる呪符を飛ばすと、吸鬼は悲鳴をあげる。
「俺の眷属を食ったこと、後悔するがいい」
浮竹は、桜の花びらを手のひらにのせて、ふっと息をふきかけた。
「ぬおおおおおおお!さ、桜の王だと・・・・なぜ、花鬼ごときのために」
「花鬼は植物のあやかしだ。俺の眷属にあたる」
「滅!」
京楽が、呪符を飛ばして吸鬼を白い炎で燃やしてしまった。
「ありがとうございます、京楽様。我らの王の、契約者となられるお方・・・・・」
「契約って、何?」
「帰ったら、話す」
そのまま、浮竹と京楽は億ションに帰宅した。
白哉はもう眠っていた。
「京楽、お前には俺と同じ時間を生きて欲しい。それが契約だ」
「つまり、年をとらないってこと?」
「そうなるな」
「いいよ。十四郎が望むなら、契約者になる」
京楽は嫌がるかと思ったが、案外あっけなく受け入れてくれた。
「いいのか?一度交わすと、もう人ではなくなる不老者になるぞ」
「でも、不死ではないんでしょ。そのせいで「春」は死んだ」
「春水・・・俺は、お前を「春」の代わりにしようと思っていない」
「うん、分かってる」
京楽は、頷いて自分から手のひらに傷をつけて血を滴らせる。
「契約の方法を知っているのか?」
「毎晩「春」である夢を見るからね」
「そうか・・・・俺の血とまじりあわせて、飲もう」
浮竹は、手首を桜の花びらで切ると、滴り落ちる血を宙に浮かせて、京楽の血と混ぜあわせた。
「永久(とこしえ)をお前と共に」
「愛しい十四郎と同じ時間を生きると、ここに誓うよ」
二人で血を飲みほす。
浮竹は自分の傷と京楽の傷を、ふっと桜の花びらをふいて治した。
「その・・・もう、俺を抱いてもいいぞ」
「え」
「契約はなった。パートナー契約も兼ねている」
「白哉君、起きないかな?」
「結界をはっておいた」
浮竹は、京楽に口づける。
そのまま、二人は京楽の寝室に入り、求めあうようにまじりあう。
「あ!」
いい場所を突かれて、浮竹が声を漏らす。
「君の中、すごく熱いね」
「あ、もっと奥にきてくれ・・・春水」
「十四郎・・・・・・・」
「ああああ!!!」
最奥をごりごりと抉られて、浮竹は中いきと同時に精液を出していた。
味わってみたが、まるで花の蜜のように甘かった。
「ばか、舐めるな・・・」
「でも、甘くておいしいよ?」
「ばか・・・・んあっ」
ズチュリと侵入されて、浮竹が喘ぐ。
「もっと愛していい?」
「あ、もっともっと、愛してくれ。俺の奥で、子種を注いでくれ」
ペロリと、浮竹は唇をなめる。
「えろ・・・・・」
「ああああ!!」
前立腺をこすりあげられて、浮竹は京楽に抱かれている幸福感を味わいながら、また精液を出していた。
それを、京楽が舐めとる。
「あ・・・んあっ」
もう、なめるなという余裕すら、浮竹は失っていた。
「春」を失って120年ぶりに、誰かと交わる夜であった。
翌日になって、白哉は黒猫姿で京楽の脛をひっかきまくっていた。
「結界まではって!兄は、けだものだ」
「いや、契約したらそんな流れに・・・・」
「浮竹、よいのか?「春」との契約の上書きになるであろう」
「いいんだ。「春」はもういない。俺は、京楽春水を愛しているから、契約して体を許した」
「むう、けだものと住むのは嫌だが、浮竹のことが気になるからまだここに住むことにしよう」
「ええ、出ていくんじゃないの?」
体の関係に発展すると、白哉はてっきり家を出ていくものだと思っていた。
「兄が本当に浮竹を幸せにできるか、見守る。ただし、交わるときは結界を忘れずに。私とて、浮竹の情事を聞きたいわけではない」
「ああ、うん」
白哉は、京楽の頭をかじる。
「白哉、だからかじるとアホになるぞ」
「チュールよこせ」
「育て方、間違ったかな・・・・・」
浮竹は、京楽の頭をかじると、白哉がチュールをもらえる形式になっているのを、ため息をついて見守る。
「白哉は、あやかしより人より、猫でいるほうが好きだもんな」
「浮竹、まぁ否定はせぬ」
「猫の桜のあやかし・・・・考えてみれば、なんで猫なの?」
「猫が好きだから」
そっけない浮竹の言葉に、京楽は苦笑して、白猫のオッドアイの子猫になった浮竹にも、チュールをあげるのだった。
PR
桜のあやかしと共に5
「ふん・・・・・」
「どうしたの。珍しく機嫌悪いね」
「夜刀神のやつ・・・・俺がお前を見つけたことをからかってきやがった」
「夜刀神って、ボクに似た青年のこと?」
一度、閑古鳥なく術者の浮竹の店で、式である夜刀神の京楽と出会っていた。その時は、浮竹と白哉もいたが、子猫姿だった。
「俺はあいつが苦手だ。嫌いというわけじゃんないんだが、観察するのが好きらしく、俺がお前を好きなことを観察するとか言ってた」
「はぁ。でも、人間じゃないんだよね」
「ああ。災厄を招く神だ。式の形をとってはいるが、神であることに変わりはない。だが、俺も桜の王といわれるだけあって、あいつと戦うことになったらそこそこいけると思う」
「もう、喧嘩はだめだよ」
京楽はそう言って、浮竹に紅茶を出した。
「私には緑茶を」
白哉の分も紅茶を出したのだが、白哉は嫌そうな顔をする。
「白哉君はいつでもマイペースだね。はいはい、緑茶ね」
「あやかしまんじゅうも頼む」
「はいはい・・・・・・・」
3時のおやつをとっていると、依頼人がきたベルの音がした。
「おや、依頼かな?」
「みたいだ。俺と白哉も同席する」
「うん、いいよ」
依頼人は、少年だった。
「河童に、金玉とられたああああ!!!!」
「え、まじで」
「河童・・・・・・」
「河童は悪戯好きだからね」
「お願いだよ、ぼくの金玉取り返して!」
「京楽、どいてろ」
浮竹は、手のひらに桜の花びらを出すと、ふっと息を吹きかけて、少年を包み込む。
「河童に金玉・・・・・あれ?金玉ついてる」
「河童は人を騙して遊ぶからな。金玉が本当に取られたなら、やばいが実際にそこまでする河童はいない。退治されると分かっているからな。でも、悪戯がすぎているな。一度会って、注意しよう」
「あ、依頼料千円しかないんだけど、千円でいい?ぼくまだ小学生だから」
「金はいらないよ。退治するわけじゃないからね。ちょっとその河童に会って、こらしめるよ」
「裏山の湖に出るんだ。地図、描くね」
少年は微妙な地図を描いた。まだ子供だから仕方ない。
「私はここに残る。河童は好きではない。下品だ」
「あーはいはい。じゃあ、白哉君はお留守番頼むね」:
「任せておけ」
「じゃあ、俺たちは出発しようか。河童の好物のキュウリを持っていこう」
そして、浮竹と京楽は、悪戯が好きな河童のいる湖まできた。
「きゅうりでつるの?」
「きゅうりは、反省した後に与える」
浮竹は、桜の花びらを手に乗せると、ふっと息をふきかけた。
湖が割れて、河童がいた。
「浮竹って、すごいね」
「なんじゅコラ、ぼけえええ!!俺を河童のいなずち様と知っての行動か」
「俺は桜の王の浮竹十四郎だ」
「げええええ、桜の王!す、すみません、さっきの子供はただ悪戯したかっただけで・・・命ばかりはお助けを・・・・」
「もう、人間に悪さをしないな?」
「は、はい」
河童は、きゅうりをもらって喜んだ。
「きゅうりもらった!」
「なんていうか・・・・浮竹と行動するよになってから、あやかしは浮竹のこと知ってて、退治する回数減ったね」
浮竹は、少しだけ笑った。
「長生きしてる分、名前は覚えられているからな。桜の王を怒らすな・・・そう、4大あやかしの長老の1人にからかわれたことがある」
「河童君、これにこりて、もう悪さしないようにね。今度したら、退治しなくちゃいけないから」
「ひいいい。肝に銘じておきますううう」
湖は元に戻り、河童は水の中にちゃぷんともぐっていった。
「君のさ・・・その、桜の花びらをふっと吹くと、いろんなことがおこるね」
「こんなこともできるぞ」
桜の花びらを吹いて、湖の周りに花畑ができあがった。
「わあ、すごいね」
「気に入ったか?」
「うん」
「じゃあ、今度もまた桜の花びらをふいていろんなものを見せてやろう」
京楽は、浮竹の頭をなでた。
「なんだ?」
「いや、なんかかわいいと思ってね」
『かわいいのは、見かけだけかもねぇ』
黒い鳥が飛んできて、浮竹の頭上で声を出した。
「夜刀神・・・焼き鳥にされたいか!」
『あははは、君たちっておもしろいねぇ。観察のしがいがあるよ』
「消えろ」
ふっと、浮竹が桜の花びらを吹くと、夜刀神に雷が落ちた。
夜刀神は平気そうな顔で、飛び続けていた。
「構うだけ、時間の無駄だ。帰ろう」
『じゃあ、ボクもついてく』
「お前は、主人の元に帰れ。寂しがっているんじゃないのか」
『ああ、それもそうだねぇ。ボクの浮竹はけっこう寂しがりやだから』
「じゃあ、とっとと消えろ」
ふっと、桜の花びらを浮竹が吹くと、竜巻がおきて夜刀神ははるか彼方におしやられてしまった。
「夜刀神かぁ。災いを司る神らしいけど、なんか性格は明るいね」
「自分の主人第一主義者。守るためなら、残酷になりまくる」
「ひえええ」
京楽は、夜刀神を怒らせないようにしようと思うのだった。
「帰ってきたか」
億ションに戻ると、白哉があやかしまんじゅうを食べながら、ルキアと話していた。
「やあ、ルキアちゃんこんにちわ」
「あ、京楽さん浮竹さんこんにちわ。兄様がお世話になっております。勝手にお邪魔させていただいております。兄様がどうしてもというので」
「ああ、いいよ。楽にしていて」
「はい・・・・でも、このあやかしまんじゅうおいしいですね」
「二十箱買ったからな。ルキアも、一箱もって帰るか?」
浮竹がそう言うと、ルキアは嬉しそうにあやかしまんじゅうを一箱受け取った。
「河童の件は、片付いたのか?」
「うん。浮竹のこと知ってたらしくって、すぐに終わったよ」
「浮竹の名を知らぬあやかしなど、そうそういないだろう」
白哉は、緑茶をすすりながらそう言った。
「え、そうなの?」
「まぁ、5千年も生きてるからな・・・四大あやかしの長老もやってるし、あやかしたちの管理を任されているが、放置してる」
「あやかしの管理・・・・・なんか、すごいね」
「俺は、京楽と一緒にいれる今のこの時がいいんだ」
「浮竹・・・・・」
「京楽・・・・・」
「ごほん」
「「あ」」
白哉に咳払いをされて、二人きりと錯覚するような甘い時間はすぐに終わるのだった。
ちなみに、その日はルキアは白哉の部屋で泊まることになり、ネモフィラの花冠を京楽と浮竹に作って、渡してくれた。
「今度、ルキアちゃんのいるネモフィラの花畑に遊びにいくよ」
「本当ですか!」
「ルキア、この男は「春」ではないぞ」
「あ、分かってます」
ルキアは、一瞬悲しそうに目を伏せた。
「でも、「春」の生まれ変わりなのですよね?京楽さんのこと、私は好きです」
「あはははは、浮竹の嫉妬が怖いから、あんまりそういうことは口にしないようにね」
浮竹は、京楽の足を踏んづけていた。
「今日は、海鮮パスタでも作ろうか」
浮竹は、気を取り直して、四人分の食事のことを考える。
京楽は金持ちなので、食事代をけちる必要などなかった。
「兄様は、いつも浮竹さんの手料理を食べられてうらやましいです」
「浮竹の料理の腕は、5千年生きた証のようなものだからな」
「確かに、料理うまいよね」
「兄は、浮竹の手料理を食べれることにもっと感謝をしろ」
「してるよ!」
「いや、まだ足りない」
白哉は黒猫の子猫姿になると、京楽の頭にかじりつく。
「白哉、バカがうつるぞ」
「浮竹って、時々ひどいよね」
そう言いながらも、京楽はからからと笑う。
その日ふるまわれた海鮮パスタは、一流レストランの味だった。
夜になり、浮竹と京楽は、二人で同じベッドで眠る。
まだキスとハグだけであるが、二人きりでいられる夜が、二人は好きだった。
「愛してるよ、浮竹」
「俺も愛してる、京楽」
お互いを抱きしめあいながら、眠りにつく。
そして京楽は自分が「春」である夢を見る。
夢はいつも鮮明で、なぜ自分は「春」ではないのだろうと、京楽は心の片隅で思うのだった。
「
「どうしたの。珍しく機嫌悪いね」
「夜刀神のやつ・・・・俺がお前を見つけたことをからかってきやがった」
「夜刀神って、ボクに似た青年のこと?」
一度、閑古鳥なく術者の浮竹の店で、式である夜刀神の京楽と出会っていた。その時は、浮竹と白哉もいたが、子猫姿だった。
「俺はあいつが苦手だ。嫌いというわけじゃんないんだが、観察するのが好きらしく、俺がお前を好きなことを観察するとか言ってた」
「はぁ。でも、人間じゃないんだよね」
「ああ。災厄を招く神だ。式の形をとってはいるが、神であることに変わりはない。だが、俺も桜の王といわれるだけあって、あいつと戦うことになったらそこそこいけると思う」
「もう、喧嘩はだめだよ」
京楽はそう言って、浮竹に紅茶を出した。
「私には緑茶を」
白哉の分も紅茶を出したのだが、白哉は嫌そうな顔をする。
「白哉君はいつでもマイペースだね。はいはい、緑茶ね」
「あやかしまんじゅうも頼む」
「はいはい・・・・・・・」
3時のおやつをとっていると、依頼人がきたベルの音がした。
「おや、依頼かな?」
「みたいだ。俺と白哉も同席する」
「うん、いいよ」
依頼人は、少年だった。
「河童に、金玉とられたああああ!!!!」
「え、まじで」
「河童・・・・・・」
「河童は悪戯好きだからね」
「お願いだよ、ぼくの金玉取り返して!」
「京楽、どいてろ」
浮竹は、手のひらに桜の花びらを出すと、ふっと息を吹きかけて、少年を包み込む。
「河童に金玉・・・・・あれ?金玉ついてる」
「河童は人を騙して遊ぶからな。金玉が本当に取られたなら、やばいが実際にそこまでする河童はいない。退治されると分かっているからな。でも、悪戯がすぎているな。一度会って、注意しよう」
「あ、依頼料千円しかないんだけど、千円でいい?ぼくまだ小学生だから」
「金はいらないよ。退治するわけじゃないからね。ちょっとその河童に会って、こらしめるよ」
「裏山の湖に出るんだ。地図、描くね」
少年は微妙な地図を描いた。まだ子供だから仕方ない。
「私はここに残る。河童は好きではない。下品だ」
「あーはいはい。じゃあ、白哉君はお留守番頼むね」:
「任せておけ」
「じゃあ、俺たちは出発しようか。河童の好物のキュウリを持っていこう」
そして、浮竹と京楽は、悪戯が好きな河童のいる湖まできた。
「きゅうりでつるの?」
「きゅうりは、反省した後に与える」
浮竹は、桜の花びらを手に乗せると、ふっと息をふきかけた。
湖が割れて、河童がいた。
「浮竹って、すごいね」
「なんじゅコラ、ぼけえええ!!俺を河童のいなずち様と知っての行動か」
「俺は桜の王の浮竹十四郎だ」
「げええええ、桜の王!す、すみません、さっきの子供はただ悪戯したかっただけで・・・命ばかりはお助けを・・・・」
「もう、人間に悪さをしないな?」
「は、はい」
河童は、きゅうりをもらって喜んだ。
「きゅうりもらった!」
「なんていうか・・・・浮竹と行動するよになってから、あやかしは浮竹のこと知ってて、退治する回数減ったね」
浮竹は、少しだけ笑った。
「長生きしてる分、名前は覚えられているからな。桜の王を怒らすな・・・そう、4大あやかしの長老の1人にからかわれたことがある」
「河童君、これにこりて、もう悪さしないようにね。今度したら、退治しなくちゃいけないから」
「ひいいい。肝に銘じておきますううう」
湖は元に戻り、河童は水の中にちゃぷんともぐっていった。
「君のさ・・・その、桜の花びらをふっと吹くと、いろんなことがおこるね」
「こんなこともできるぞ」
桜の花びらを吹いて、湖の周りに花畑ができあがった。
「わあ、すごいね」
「気に入ったか?」
「うん」
「じゃあ、今度もまた桜の花びらをふいていろんなものを見せてやろう」
京楽は、浮竹の頭をなでた。
「なんだ?」
「いや、なんかかわいいと思ってね」
『かわいいのは、見かけだけかもねぇ』
黒い鳥が飛んできて、浮竹の頭上で声を出した。
「夜刀神・・・焼き鳥にされたいか!」
『あははは、君たちっておもしろいねぇ。観察のしがいがあるよ』
「消えろ」
ふっと、浮竹が桜の花びらを吹くと、夜刀神に雷が落ちた。
夜刀神は平気そうな顔で、飛び続けていた。
「構うだけ、時間の無駄だ。帰ろう」
『じゃあ、ボクもついてく』
「お前は、主人の元に帰れ。寂しがっているんじゃないのか」
『ああ、それもそうだねぇ。ボクの浮竹はけっこう寂しがりやだから』
「じゃあ、とっとと消えろ」
ふっと、桜の花びらを浮竹が吹くと、竜巻がおきて夜刀神ははるか彼方におしやられてしまった。
「夜刀神かぁ。災いを司る神らしいけど、なんか性格は明るいね」
「自分の主人第一主義者。守るためなら、残酷になりまくる」
「ひえええ」
京楽は、夜刀神を怒らせないようにしようと思うのだった。
「帰ってきたか」
億ションに戻ると、白哉があやかしまんじゅうを食べながら、ルキアと話していた。
「やあ、ルキアちゃんこんにちわ」
「あ、京楽さん浮竹さんこんにちわ。兄様がお世話になっております。勝手にお邪魔させていただいております。兄様がどうしてもというので」
「ああ、いいよ。楽にしていて」
「はい・・・・でも、このあやかしまんじゅうおいしいですね」
「二十箱買ったからな。ルキアも、一箱もって帰るか?」
浮竹がそう言うと、ルキアは嬉しそうにあやかしまんじゅうを一箱受け取った。
「河童の件は、片付いたのか?」
「うん。浮竹のこと知ってたらしくって、すぐに終わったよ」
「浮竹の名を知らぬあやかしなど、そうそういないだろう」
白哉は、緑茶をすすりながらそう言った。
「え、そうなの?」
「まぁ、5千年も生きてるからな・・・四大あやかしの長老もやってるし、あやかしたちの管理を任されているが、放置してる」
「あやかしの管理・・・・・なんか、すごいね」
「俺は、京楽と一緒にいれる今のこの時がいいんだ」
「浮竹・・・・・」
「京楽・・・・・」
「ごほん」
「「あ」」
白哉に咳払いをされて、二人きりと錯覚するような甘い時間はすぐに終わるのだった。
ちなみに、その日はルキアは白哉の部屋で泊まることになり、ネモフィラの花冠を京楽と浮竹に作って、渡してくれた。
「今度、ルキアちゃんのいるネモフィラの花畑に遊びにいくよ」
「本当ですか!」
「ルキア、この男は「春」ではないぞ」
「あ、分かってます」
ルキアは、一瞬悲しそうに目を伏せた。
「でも、「春」の生まれ変わりなのですよね?京楽さんのこと、私は好きです」
「あはははは、浮竹の嫉妬が怖いから、あんまりそういうことは口にしないようにね」
浮竹は、京楽の足を踏んづけていた。
「今日は、海鮮パスタでも作ろうか」
浮竹は、気を取り直して、四人分の食事のことを考える。
京楽は金持ちなので、食事代をけちる必要などなかった。
「兄様は、いつも浮竹さんの手料理を食べられてうらやましいです」
「浮竹の料理の腕は、5千年生きた証のようなものだからな」
「確かに、料理うまいよね」
「兄は、浮竹の手料理を食べれることにもっと感謝をしろ」
「してるよ!」
「いや、まだ足りない」
白哉は黒猫の子猫姿になると、京楽の頭にかじりつく。
「白哉、バカがうつるぞ」
「浮竹って、時々ひどいよね」
そう言いながらも、京楽はからからと笑う。
その日ふるまわれた海鮮パスタは、一流レストランの味だった。
夜になり、浮竹と京楽は、二人で同じベッドで眠る。
まだキスとハグだけであるが、二人きりでいられる夜が、二人は好きだった。
「愛してるよ、浮竹」
「俺も愛してる、京楽」
お互いを抱きしめあいながら、眠りにつく。
そして京楽は自分が「春」である夢を見る。
夢はいつも鮮明で、なぜ自分は「春」ではないのだろうと、京楽は心の片隅で思うのだった。
「
桜のあやかしと共に4
「このあやかしまんじゅう、うまいね」
「小豆とぎが作っているからな」
「え、小豆とぎが?」
京楽は、火車におみやげとしてもらったあやかしまんじゅうを、億ションの部屋で浮竹と一緒に食べていた。
当たり前のように、浮竹の隣には白哉がいた。
「白哉君さぁ、ちょっとは遠慮ってものないの。居候のくせに」
「兄に遠慮しても何もならぬ。居候ではなく、いてやっているのだ。なんだかんだで、子猫好きだろう」
「う・・・・・」
今の白哉は、人の姿をしていた。
あやかしまんじゅうを、3人で分けて食べると、あっという間になくなってしまった。
「これ、本当にうまいな。火車の朧(おぼろ)に聞いて、どこで売っているのか聞いてみよう」
「小豆とぎが作ってるんでしょ」
「ああ。小豆とぎに聞いたほうがはやいか?」
「さぁ?」
京楽は、今日は依頼もないので、ゆっくりしていた。
浮竹は、スマホをとりだすと、小豆とぎに電話をかけた。
「は?」
その光景を、京楽はびっくりして見ていた。
「ああ、小豆とぎか。あやかしまんじゅうって、お前たちが作っているんだろう?どこで売ってるんだ?え、三途の川?うーん、取り寄せは無理そうか・・・・え?送ってくれる?ありがとう。代金は、現金でいいか?え、クレジットカードがいい?」
電話の向こう側で、小豆とぎはあやかしまんじゅう20箱で2万円になるといっていた。
「じゃあ、妖怪配達で頼む。手数料もクレジットカードで払っておくから」
「あやかしが、スマホ・・・配達・・・・クレジットカード・・・・」
ちょっとしたカルチャーショックに見舞われて、京楽は頭を抱えた。
「知らなかったのか?退治屋の便利屋をしているわりには、無知だな」
「いや、ボクはどっちかっていうと幽霊のほうがおおいから。祓うの」
「ふむ。最近のあやかしは、現代文明に乗っているのも多いからな」
「そうなんだ」
浮竹は、小豆とぎにもう一度電話して、小豆バーも注文した。
「浮竹、たまには桜の精霊たちで宴を開かぬか。いやだが、この京楽とやらもきていいから」
「白哉が宴を開くなんて珍しいな。よし、桜の精霊たちに声をかけておこう」
その日の夜、異界への道が開いた。
宴は賑やかにおこなわれており、人間である京楽は珍しがられた。
「桜の精霊だらけだね・・・・・っていうか、ボク以外みんな桜の精霊?」
「そうだ。兄は、特別に桜の王である浮竹の寵愛を受けているから、この場にいられるのだ」
「浮竹って、やっぱりえらいんだ」
「当り前であろう。桜の王は、4大あやかしの長老の1人だぞ」
「いや、そんなこと言われても分からないし、知らないし」
「そこに座れ!桜の王がどうやってはじまったかを・・・・・」
白哉は、そこで突然スイッチが切れたように眠ってしまった。
「ああ、酔いつぶれたか。白哉は酒に弱いのに、宴好きだからな」
「そうなんだ」
「白哉とは、生まれてきて200年の付き合いだからな。弟のようなものだ。俺の本体の桜を株分けしたから、まぁ実際弟になるんだろうが」
でも、妹は契約したとはいえネモフィラの精霊のルキアである。
「うーん、ルキア・・・・・・」
「なんか、うなされてるよ。ルキアちゃんって、確か白哉君の妹だよね?」
「ああ。ネモフィラの精霊だ」
「花や木には、みんな精霊がいるの?」
「いや、年月を経た者や、力ある者が精霊になれる」
「じゃあ、桜の王って呼ばれてる浮竹はすごくえらいんだね」
「まぁ、否定はしない」
「桜の王、ルキアさんに迎えにくるように電話かけておきました」
「ああ、ありがとう」
浮竹は、白哉の体に自分が着ていた着物の羽織をかぶらせた。
「風邪、ひくなよ」
「兄様!」
1時間ほどして、桜の精霊の宴は他の花の精霊たちも混じるようになってきて、そこにルキアの姿があった。
「ああ、ルキア、元気か?」
「あ、はい。浮竹さんも、元気そうで何よりです」
「へぇ、この子がルキアちゃん・・・・・・」
ルキアは、浮竹の隣にいる京楽を見た。
白哉の話を聞いている限りでは、かなりいっているらしいが、普通の特異体質の青年に見えた。
「いつも兄様がお世話になっております」
「ああ、いいよいいよ。もう身内みたいなもんだからね」
京楽は、人懐っこい笑みを浮かべた。
「「春」さん?」
「え」
「あ、ごめんなさい!私ったら・・・兄様を連れて帰りますね。浮竹さんも京楽さんも、宴はほどほどに」
「ああ」
「うん」
京楽は、自分の姿までが「春」そっくりだとは知らなかった。
「ボクって、そんなに「春」に似てる?」
「ああ・・・生き写しのようだ」
浮竹は、懐かしそうに宴の中心で酒を他の桜の精霊たちに注がれて、それを飲んでいた。
「生き写しか・・・」
京楽は、複雑な気分だった。
「昔は、よくこうやって、桜の精霊たちで宴を開いて、そこに「春」も混じっていた」
「うん」
「春水。俺は、ちゃんと春水ってわかっているからな」
「うん」
絆を確かめるように、宴の最中であったが、キスをする。
桜の王に新しい恋人ができたと、大騒ぎになった。
「さぁ、皆宴はこのあたりでしまいにしよう。俺は京楽と人間界に戻る」:
「桜の王。やはり、異界にいてくれないのですか。あなたがいれば、異界の治安の悪さも・・・・」
「俺は人間界が好きだ。それに、俺がいたところで異界の治安の悪さは関係ないだろう。いた時もいなかった時も、あまり変わりなかったと聞いている」
「桜の王を惑わした人間・・・・・・」
「桜の王がいってしまう・・・・・」
「桜の王は・・・・・」
「ボクの浮竹は、桜の王じゃないよ。ただの、桜の精霊だ」
思いもよらなかった京楽の言葉に、浮竹の目が潤んだ。
ボクの。
自分のものだと、言ってくれた。
そんな扱いを京楽から受けたのは、初めてだった。
「京楽・・・・・・」
「浮竹、行こう。ボクたちのいるべき場所はここじゃない」
「ああ」
桜の精霊たちは、宴はおしまいだと悲しみだす。
「帰ろうか」
「うん、帰ろう」
白哉は、ルキアの手ですで人間界に戻っている。
浮竹と京楽も、それに続く。
「なぁ、春水」
「なに、十四郎」
名前を呼ばれて、浮竹は顔を赤くした。
「その、好きだぞ」
「うん。ボクも、好きだよ」
「「春」のことを重ねてしまう時があるかもしれないが、春水ってわかってるから」
「うん。信じてるから」
二人は、億ションに戻ると、お風呂に入って、同じベッドで眠った。
酒が入っていたせいか、眠りは浅く、京楽はまた自分が「春」である夢を見ていた。
「大好だ、「春」」
「ボクも大好きだよ、シロ」
「春」は、浮竹のことを十四郎からきているシロと呼んでいた。
「シロ、いつか別れることになっても、ボクは必ず君の元に戻ってくる」
「「春」そんな、縁起の悪いことを言わないでくれ」
「シロ・・・・・・」
京楽は起きた。
泣いていた。
シロと呼ばれた浮竹が、「春」を失って自閉症になったのを夢で見たのだ。
「十四郎・・・ボクは、「春」のようにはならない」
まだ眠る浮竹を抱きしめて、京楽は「春」がいかに浮竹にとって大切であったかを、再確認させられるのであった。
「小豆とぎが作っているからな」
「え、小豆とぎが?」
京楽は、火車におみやげとしてもらったあやかしまんじゅうを、億ションの部屋で浮竹と一緒に食べていた。
当たり前のように、浮竹の隣には白哉がいた。
「白哉君さぁ、ちょっとは遠慮ってものないの。居候のくせに」
「兄に遠慮しても何もならぬ。居候ではなく、いてやっているのだ。なんだかんだで、子猫好きだろう」
「う・・・・・」
今の白哉は、人の姿をしていた。
あやかしまんじゅうを、3人で分けて食べると、あっという間になくなってしまった。
「これ、本当にうまいな。火車の朧(おぼろ)に聞いて、どこで売っているのか聞いてみよう」
「小豆とぎが作ってるんでしょ」
「ああ。小豆とぎに聞いたほうがはやいか?」
「さぁ?」
京楽は、今日は依頼もないので、ゆっくりしていた。
浮竹は、スマホをとりだすと、小豆とぎに電話をかけた。
「は?」
その光景を、京楽はびっくりして見ていた。
「ああ、小豆とぎか。あやかしまんじゅうって、お前たちが作っているんだろう?どこで売ってるんだ?え、三途の川?うーん、取り寄せは無理そうか・・・・え?送ってくれる?ありがとう。代金は、現金でいいか?え、クレジットカードがいい?」
電話の向こう側で、小豆とぎはあやかしまんじゅう20箱で2万円になるといっていた。
「じゃあ、妖怪配達で頼む。手数料もクレジットカードで払っておくから」
「あやかしが、スマホ・・・配達・・・・クレジットカード・・・・」
ちょっとしたカルチャーショックに見舞われて、京楽は頭を抱えた。
「知らなかったのか?退治屋の便利屋をしているわりには、無知だな」
「いや、ボクはどっちかっていうと幽霊のほうがおおいから。祓うの」
「ふむ。最近のあやかしは、現代文明に乗っているのも多いからな」
「そうなんだ」
浮竹は、小豆とぎにもう一度電話して、小豆バーも注文した。
「浮竹、たまには桜の精霊たちで宴を開かぬか。いやだが、この京楽とやらもきていいから」
「白哉が宴を開くなんて珍しいな。よし、桜の精霊たちに声をかけておこう」
その日の夜、異界への道が開いた。
宴は賑やかにおこなわれており、人間である京楽は珍しがられた。
「桜の精霊だらけだね・・・・・っていうか、ボク以外みんな桜の精霊?」
「そうだ。兄は、特別に桜の王である浮竹の寵愛を受けているから、この場にいられるのだ」
「浮竹って、やっぱりえらいんだ」
「当り前であろう。桜の王は、4大あやかしの長老の1人だぞ」
「いや、そんなこと言われても分からないし、知らないし」
「そこに座れ!桜の王がどうやってはじまったかを・・・・・」
白哉は、そこで突然スイッチが切れたように眠ってしまった。
「ああ、酔いつぶれたか。白哉は酒に弱いのに、宴好きだからな」
「そうなんだ」
「白哉とは、生まれてきて200年の付き合いだからな。弟のようなものだ。俺の本体の桜を株分けしたから、まぁ実際弟になるんだろうが」
でも、妹は契約したとはいえネモフィラの精霊のルキアである。
「うーん、ルキア・・・・・・」
「なんか、うなされてるよ。ルキアちゃんって、確か白哉君の妹だよね?」
「ああ。ネモフィラの精霊だ」
「花や木には、みんな精霊がいるの?」
「いや、年月を経た者や、力ある者が精霊になれる」
「じゃあ、桜の王って呼ばれてる浮竹はすごくえらいんだね」
「まぁ、否定はしない」
「桜の王、ルキアさんに迎えにくるように電話かけておきました」
「ああ、ありがとう」
浮竹は、白哉の体に自分が着ていた着物の羽織をかぶらせた。
「風邪、ひくなよ」
「兄様!」
1時間ほどして、桜の精霊の宴は他の花の精霊たちも混じるようになってきて、そこにルキアの姿があった。
「ああ、ルキア、元気か?」
「あ、はい。浮竹さんも、元気そうで何よりです」
「へぇ、この子がルキアちゃん・・・・・・」
ルキアは、浮竹の隣にいる京楽を見た。
白哉の話を聞いている限りでは、かなりいっているらしいが、普通の特異体質の青年に見えた。
「いつも兄様がお世話になっております」
「ああ、いいよいいよ。もう身内みたいなもんだからね」
京楽は、人懐っこい笑みを浮かべた。
「「春」さん?」
「え」
「あ、ごめんなさい!私ったら・・・兄様を連れて帰りますね。浮竹さんも京楽さんも、宴はほどほどに」
「ああ」
「うん」
京楽は、自分の姿までが「春」そっくりだとは知らなかった。
「ボクって、そんなに「春」に似てる?」
「ああ・・・生き写しのようだ」
浮竹は、懐かしそうに宴の中心で酒を他の桜の精霊たちに注がれて、それを飲んでいた。
「生き写しか・・・」
京楽は、複雑な気分だった。
「昔は、よくこうやって、桜の精霊たちで宴を開いて、そこに「春」も混じっていた」
「うん」
「春水。俺は、ちゃんと春水ってわかっているからな」
「うん」
絆を確かめるように、宴の最中であったが、キスをする。
桜の王に新しい恋人ができたと、大騒ぎになった。
「さぁ、皆宴はこのあたりでしまいにしよう。俺は京楽と人間界に戻る」:
「桜の王。やはり、異界にいてくれないのですか。あなたがいれば、異界の治安の悪さも・・・・」
「俺は人間界が好きだ。それに、俺がいたところで異界の治安の悪さは関係ないだろう。いた時もいなかった時も、あまり変わりなかったと聞いている」
「桜の王を惑わした人間・・・・・・」
「桜の王がいってしまう・・・・・」
「桜の王は・・・・・」
「ボクの浮竹は、桜の王じゃないよ。ただの、桜の精霊だ」
思いもよらなかった京楽の言葉に、浮竹の目が潤んだ。
ボクの。
自分のものだと、言ってくれた。
そんな扱いを京楽から受けたのは、初めてだった。
「京楽・・・・・・」
「浮竹、行こう。ボクたちのいるべき場所はここじゃない」
「ああ」
桜の精霊たちは、宴はおしまいだと悲しみだす。
「帰ろうか」
「うん、帰ろう」
白哉は、ルキアの手ですで人間界に戻っている。
浮竹と京楽も、それに続く。
「なぁ、春水」
「なに、十四郎」
名前を呼ばれて、浮竹は顔を赤くした。
「その、好きだぞ」
「うん。ボクも、好きだよ」
「「春」のことを重ねてしまう時があるかもしれないが、春水ってわかってるから」
「うん。信じてるから」
二人は、億ションに戻ると、お風呂に入って、同じベッドで眠った。
酒が入っていたせいか、眠りは浅く、京楽はまた自分が「春」である夢を見ていた。
「大好だ、「春」」
「ボクも大好きだよ、シロ」
「春」は、浮竹のことを十四郎からきているシロと呼んでいた。
「シロ、いつか別れることになっても、ボクは必ず君の元に戻ってくる」
「「春」そんな、縁起の悪いことを言わないでくれ」
「シロ・・・・・・」
京楽は起きた。
泣いていた。
シロと呼ばれた浮竹が、「春」を失って自閉症になったのを夢で見たのだ。
「十四郎・・・ボクは、「春」のようにはならない」
まだ眠る浮竹を抱きしめて、京楽は「春」がいかに浮竹にとって大切であったかを、再確認させられるのであった。
桜のあやかしと共に3
桜の花が散り、葉桜になる季節。
浮竹と京楽と白哉は、億のするマンションで、いつもは浮竹と白哉は子猫姿で、京楽の仕事が入った時や食事の時、寝る前などに人化して過ごしていた。
「はぁ。浮竹と知り合って3か月。いまだにキスとハグだけなのが悲しい」
「私の目が届く間は、しばらくは浮竹には手を出させないぞ」
黒猫の白哉が、京楽の頭の上にのって、かじった。
「あいたたたたた」
「白哉、あまりかじるとバカがうつるぞ」
「ひどい!」
「む、バカがうつるのか。水でうがいしてこよう」
白哉は美しい青年姿になると、本当に水でうがいをはじめた。
「浮竹、君さぁ、ボクのことほんとに好きなの?」
「た、多分・・・・・・」
「ボクが「春」の生まれ変われりだから、好きなだけなんじゃない。ボクを見てくれていない」
「そんなつもりはない!俺は京楽のことだって好きだ!」
浮竹は、人化すると京楽に抱きついた。
「この愛しい気持ちを、どうしたらお前に伝えられる?」
浮竹は、涙をにじませていた。
「京楽、浮竹を泣かせたのか。ことと次第によっては・・・・・」
「白哉、すまないが二人で少し話がしたいんだ。外に・・・ルキアのところにでも、行っててくれないか」
「・・・・・分かった。兄がそういうなら、従おう」
白哉は、黒い子猫姿になると、35階のベランダから飛び降りた。
風を操るので、地面に激突などすることもなく、すたっと着地して、上を見上げる。
「「春」か・・・・・「春」なぜ、死んでしまったのだ」
白哉は、「春」のことを気に入っていた。浮竹と同じで兄のような存在だった。
浮竹の恋人で、家族だった。
まだ幼い白哉に、浮竹と一緒にいろんなことを教えてくれた。
人間であったが、浮竹と契約をしており、不老だったが不死というわけでなく、子供をかばって120年も前に交通事故で、浮竹と白哉の目の前で死んでしまった。
浮竹のショックは相当なもので、一時期自閉症になった。
白哉やルキア、他の花の精霊たちの甲斐甲斐しい看護のおかげで、3年かけてやっと立ち直った。
もう「春」のことなど、忘れてしまったかのように振る舞う浮竹の目の前に、京楽が現れた。
白哉でも分かった。
この青年は「春」であると。
「春」と同じ黒いうねる髪、鳶色の瞳、堀の深い顔立ち。
外見まで「春」とほとんど一緒だった。
「浮竹・・・兄は、どうしたいのだ。「春」を再び手に入れたいのか、「京楽春水」を手に入れたいのか・・・・あるいは、同時か」
白哉は、風を操って花びらになり、妹であるルキアの住むネモフィラの花畑の丘にきていた。
「兄様、こんな時間からどうしたのですか?」
「ルキア。恋とは、難しいものだな」
「兄様に、ついに好きな方が!?」
「違う。浮竹だ」
「ああ、浮竹さんですか」
ルキアは、少しがっかりしたようだった。
白哉には、かつて緋真という女性の妻がいた。ルキアの実の姉だった。緋真が不治の病にかかり、死に際に妹であるルキアを探し出して妹として家族に迎えてやってほしいという遺言に従い、当時生きていた花の精霊を記録している書簡庫に入り、ルキアを発見した。
ネモフィラの花の精霊で、緋真は梅の花の精霊であったので、ずっと梅か木の精霊を探していたのだ。草花とは思わなかった。
白哉はルキアと家族の契りを交わして、本当の家族になった。
白哉が心許せる存在は、ルキアと浮竹くらいだった。
-------------------------------------
「確かに、俺はお前の中で「春」を見ている。でも、「京楽春水」も見ているんだ。二人とも、同じくらいに好きなんだ」
「ボクも好き、ねぇ・・・・・」
京楽は、納得がいかないようだった。
「ボクが君を抱きたいと言い出したら、君はどうするの?」
「今は、まだだめだ。それに、京楽春水はそんな男じゃない」
「君の中のボクって、ちょっと美化されすぎてない?」
「いや、ただの頭の中が豆腐のバカだと思っている」
「ムキーーーー」
「ふふふふ」
浮竹は、自然に笑っていた。
「その笑顔。その笑顔、忘れないで。ボクのことが好きなら、遠慮なくアタックっしてきなよ。ボクも歓迎するし、君をボク色に染め上げたい」
ベッドに押し倒されて、浮竹は逡巡する。
「あ、京楽・・・・・・」
「怖い?」
「怖い。今はまだ、無理だ」
「無理やりは好きじゃないから、君の心の準備ができるまで、待つよ」
「京楽、愛している」
浮竹は、自分から唇を重ねてきた。
舌をからめあいながら、もつれあう。
ハグをして、キスを繰り返した。
「京楽、俺がお前を愛していると、信じてくれるか?」
「信じるしかないでしょ。ここまで好きっていわれちゃ。まぁ、ボクの前世が「春」であるせいだろうけど」
「京楽・・・・・」
「大切にするよ。いつか、パートナーの契約をしよう」
「うん・・・・・」
パートナー契約とは、結婚に似ている。
「んっ」
耳を甘噛みされて、浮竹は甘い声をあげていた。
「落ち着けー俺の息子おおおお」
浮竹は、潤んだ瞳見上げてきた。
「抜いてやろうか?」
「え、いいの?」
「俺のせいで、こうなったんだろう。責任はとる」
浮竹は、京楽の衣服をくつろげて、昂ったものを手でしごき、おそるおそる口に含む。
「うわ~、えろい・・・・・・・」
「んん・・・・・」
ぴちゃりと舌をはわせて奉仕すると、京楽は我慢ができずに浮竹の顔めがけて射精していた。
「あああ、ごめん!」
「いい。気持ちよかったか?」
「天国でした」
「もう一回、するか?」
「え、いいの?」
京楽は、キスとハグまでじゃないのかと思いながらも、邪魔な白哉もいないので、続きをお願いした。
浮竹は、手と舌を使って、また京楽を桃源郷に導く。
「うまいね、君。こんなの、どこで覚えたの」
「あ・・・・・・・」
「春」に仕込まれたとは言えなくて、言葉を濁す。
「うん、なんとんなく察したから。ありがとう」
「すまない・・・・・」
浮竹は、顔を洗いに洗面所に消えてしまう。
「はぁ・・・抱きたい」
率直な感想であった。
でも、考えてみれば、まだ出会って3か月しか経っていないのだ。
躊躇するのも無理はない。
「夕飯つくる」
「うん。トマトが賞味期限切れそうだから、使って」
「ミートスパゲッティにする。トマトソースを作ろう」
浮竹と京楽は、何事もなかったかのように日常に戻る。
さっきまで、卑猥なことをしていた様子など全くなかった。
「白哉に、多分気づかれるから、怒られるのは覚悟しておけ」
「えええーーーー!」
トマトをつぶしながら、浮竹は笑った。
「春水」
「ん?」
「これから、たまに春水って呼んでもいいか?」
「いいよ」
浮竹と京楽の距離が、ぐっと縮まった一日だった。
翌日に帰ってきた白哉は、京楽から浮竹の匂いがするので、怒ったが、最後までしていないという浮竹の言葉を信じて、京楽のすねを子猫姿で思い切りかじるだけにしておいた。
「白哉君てさぁ。浮竹のなんなの?」
「はっきり言ってしまえば、弟だ。異界にある俺の桜から株分けされた、桜だからな」
「あやかしにも、兄弟とかあるんだ」
「普通にあるぞ。家族とか」
「浮竹、白哉君手放す気ないね?」
「当り前だ。あんなかわいい弟、俺が認めた相手以外と交際するのもだめだ」
浮竹の貞操観念が高いのは、どうやら地であるらしい
「兄らは、できているのかいないのか、どっちなのだ」
「ん。一応、できてるよ?肉体関係はないけど、恋人だと思ってるよ」
京楽にそう言われて、浮竹は真っ赤になった。
「そ、そういうことにしておいてやる!」
浮竹は真っ赤になって、35階の窓から子猫どころか、人の姿で飛び降りた。
「ここ35階なんですけどおおおおおお」
「ん?だからなんだ?」
ふわふわと、宙を浮く浮竹は、背中に桜の翼が生えていた。
「白哉のように風を操れないが、翼を作れる」
「はぁ・・・でも、ここ35階だからね。隣人とかに見られないようにね」
「京楽、俺はお前を愛しているぞ!」
そう言って、浮竹は一度自分の桜に戻り、エネルギーを供給して帰ってくるのであった。
--------------------------------
「火車?」
「ええ。火車がでるんです。丑の刻に」
「ふーむ。あやかしだな。何か悪さはする?」
京楽が、依頼人から話を聞く。
「いえ、ただ現れるだけなんですけど・・・・怖がって、近隣の住民がすっかりこの定食屋にきてくれなくなって・・・・生活がかかってますから」
「退治する必要はなさそうだな。火車はわりと温厚な性格のやつがおおい。その火車、俺の知り合いだったりしてな」
浮竹が冗談半分で言った言葉であったのだが、次の日の丑の刻に出た火車は、本当に浮竹の知り合いだった。
「朧(おぼろ)じゃないか。なんで、こんな時間に人間界に現れたりしてるんだ?」
「ああ、桜の王。それが、前輪をなくしてしまって・・・この時間帯なら、人に見られないかなと思って」
「ばっちり見られて怖がられてるからな?」
「ひええええ。前輪、ないなぁ」
「前輪ってこれかい?」
定食屋の隅に置かれてあったタイヤであった。あやかしの匂いがするので、依頼人の了承をとって、持ち出してきていたのだ。
「ああ、助かります。これで、安全に運転して霊魂を三途の川に運べる」
火車は、前輪をはめると、からからと音を出して異界に去っていった。
「浮竹、君ってあやかしの知り合い多いね。桜の王ってのと、関係あるの?」
「いずれ、話す。その時まで、桜の王のことは気にしないでくれ」
「そう言われても、気になるんだけどなぁ」
すると、消えたはずの火車が現れて、京楽はびっくりしてこけた。
「あ、これ、お礼のあやかしまんじゅうです。どうぞ、桜の王」
「ああ、ありがとう」
「ではこれで」
「京楽・・・・大丈夫か?」
「思いっきり膝打った。打撲した」
「みせてみろ」
浮竹は、桜が咲くイメージをして、京楽の傷を癒してしまった。
「すごいね。浮竹って、治療もできるんだ」
「伊達に5千年は生きていないぞ」
「5千歳の恋人・・・・ボクとの年の差が半端ない」
「気にするな」
浮竹はからからと笑って、火車がもってきたあやかしまんじゅうを食べる。
つられて、京楽も食べるのであった。
浮竹と京楽と白哉は、億のするマンションで、いつもは浮竹と白哉は子猫姿で、京楽の仕事が入った時や食事の時、寝る前などに人化して過ごしていた。
「はぁ。浮竹と知り合って3か月。いまだにキスとハグだけなのが悲しい」
「私の目が届く間は、しばらくは浮竹には手を出させないぞ」
黒猫の白哉が、京楽の頭の上にのって、かじった。
「あいたたたたた」
「白哉、あまりかじるとバカがうつるぞ」
「ひどい!」
「む、バカがうつるのか。水でうがいしてこよう」
白哉は美しい青年姿になると、本当に水でうがいをはじめた。
「浮竹、君さぁ、ボクのことほんとに好きなの?」
「た、多分・・・・・・」
「ボクが「春」の生まれ変われりだから、好きなだけなんじゃない。ボクを見てくれていない」
「そんなつもりはない!俺は京楽のことだって好きだ!」
浮竹は、人化すると京楽に抱きついた。
「この愛しい気持ちを、どうしたらお前に伝えられる?」
浮竹は、涙をにじませていた。
「京楽、浮竹を泣かせたのか。ことと次第によっては・・・・・」
「白哉、すまないが二人で少し話がしたいんだ。外に・・・ルキアのところにでも、行っててくれないか」
「・・・・・分かった。兄がそういうなら、従おう」
白哉は、黒い子猫姿になると、35階のベランダから飛び降りた。
風を操るので、地面に激突などすることもなく、すたっと着地して、上を見上げる。
「「春」か・・・・・「春」なぜ、死んでしまったのだ」
白哉は、「春」のことを気に入っていた。浮竹と同じで兄のような存在だった。
浮竹の恋人で、家族だった。
まだ幼い白哉に、浮竹と一緒にいろんなことを教えてくれた。
人間であったが、浮竹と契約をしており、不老だったが不死というわけでなく、子供をかばって120年も前に交通事故で、浮竹と白哉の目の前で死んでしまった。
浮竹のショックは相当なもので、一時期自閉症になった。
白哉やルキア、他の花の精霊たちの甲斐甲斐しい看護のおかげで、3年かけてやっと立ち直った。
もう「春」のことなど、忘れてしまったかのように振る舞う浮竹の目の前に、京楽が現れた。
白哉でも分かった。
この青年は「春」であると。
「春」と同じ黒いうねる髪、鳶色の瞳、堀の深い顔立ち。
外見まで「春」とほとんど一緒だった。
「浮竹・・・兄は、どうしたいのだ。「春」を再び手に入れたいのか、「京楽春水」を手に入れたいのか・・・・あるいは、同時か」
白哉は、風を操って花びらになり、妹であるルキアの住むネモフィラの花畑の丘にきていた。
「兄様、こんな時間からどうしたのですか?」
「ルキア。恋とは、難しいものだな」
「兄様に、ついに好きな方が!?」
「違う。浮竹だ」
「ああ、浮竹さんですか」
ルキアは、少しがっかりしたようだった。
白哉には、かつて緋真という女性の妻がいた。ルキアの実の姉だった。緋真が不治の病にかかり、死に際に妹であるルキアを探し出して妹として家族に迎えてやってほしいという遺言に従い、当時生きていた花の精霊を記録している書簡庫に入り、ルキアを発見した。
ネモフィラの花の精霊で、緋真は梅の花の精霊であったので、ずっと梅か木の精霊を探していたのだ。草花とは思わなかった。
白哉はルキアと家族の契りを交わして、本当の家族になった。
白哉が心許せる存在は、ルキアと浮竹くらいだった。
-------------------------------------
「確かに、俺はお前の中で「春」を見ている。でも、「京楽春水」も見ているんだ。二人とも、同じくらいに好きなんだ」
「ボクも好き、ねぇ・・・・・」
京楽は、納得がいかないようだった。
「ボクが君を抱きたいと言い出したら、君はどうするの?」
「今は、まだだめだ。それに、京楽春水はそんな男じゃない」
「君の中のボクって、ちょっと美化されすぎてない?」
「いや、ただの頭の中が豆腐のバカだと思っている」
「ムキーーーー」
「ふふふふ」
浮竹は、自然に笑っていた。
「その笑顔。その笑顔、忘れないで。ボクのことが好きなら、遠慮なくアタックっしてきなよ。ボクも歓迎するし、君をボク色に染め上げたい」
ベッドに押し倒されて、浮竹は逡巡する。
「あ、京楽・・・・・・」
「怖い?」
「怖い。今はまだ、無理だ」
「無理やりは好きじゃないから、君の心の準備ができるまで、待つよ」
「京楽、愛している」
浮竹は、自分から唇を重ねてきた。
舌をからめあいながら、もつれあう。
ハグをして、キスを繰り返した。
「京楽、俺がお前を愛していると、信じてくれるか?」
「信じるしかないでしょ。ここまで好きっていわれちゃ。まぁ、ボクの前世が「春」であるせいだろうけど」
「京楽・・・・・」
「大切にするよ。いつか、パートナーの契約をしよう」
「うん・・・・・」
パートナー契約とは、結婚に似ている。
「んっ」
耳を甘噛みされて、浮竹は甘い声をあげていた。
「落ち着けー俺の息子おおおお」
浮竹は、潤んだ瞳見上げてきた。
「抜いてやろうか?」
「え、いいの?」
「俺のせいで、こうなったんだろう。責任はとる」
浮竹は、京楽の衣服をくつろげて、昂ったものを手でしごき、おそるおそる口に含む。
「うわ~、えろい・・・・・・・」
「んん・・・・・」
ぴちゃりと舌をはわせて奉仕すると、京楽は我慢ができずに浮竹の顔めがけて射精していた。
「あああ、ごめん!」
「いい。気持ちよかったか?」
「天国でした」
「もう一回、するか?」
「え、いいの?」
京楽は、キスとハグまでじゃないのかと思いながらも、邪魔な白哉もいないので、続きをお願いした。
浮竹は、手と舌を使って、また京楽を桃源郷に導く。
「うまいね、君。こんなの、どこで覚えたの」
「あ・・・・・・・」
「春」に仕込まれたとは言えなくて、言葉を濁す。
「うん、なんとんなく察したから。ありがとう」
「すまない・・・・・」
浮竹は、顔を洗いに洗面所に消えてしまう。
「はぁ・・・抱きたい」
率直な感想であった。
でも、考えてみれば、まだ出会って3か月しか経っていないのだ。
躊躇するのも無理はない。
「夕飯つくる」
「うん。トマトが賞味期限切れそうだから、使って」
「ミートスパゲッティにする。トマトソースを作ろう」
浮竹と京楽は、何事もなかったかのように日常に戻る。
さっきまで、卑猥なことをしていた様子など全くなかった。
「白哉に、多分気づかれるから、怒られるのは覚悟しておけ」
「えええーーーー!」
トマトをつぶしながら、浮竹は笑った。
「春水」
「ん?」
「これから、たまに春水って呼んでもいいか?」
「いいよ」
浮竹と京楽の距離が、ぐっと縮まった一日だった。
翌日に帰ってきた白哉は、京楽から浮竹の匂いがするので、怒ったが、最後までしていないという浮竹の言葉を信じて、京楽のすねを子猫姿で思い切りかじるだけにしておいた。
「白哉君てさぁ。浮竹のなんなの?」
「はっきり言ってしまえば、弟だ。異界にある俺の桜から株分けされた、桜だからな」
「あやかしにも、兄弟とかあるんだ」
「普通にあるぞ。家族とか」
「浮竹、白哉君手放す気ないね?」
「当り前だ。あんなかわいい弟、俺が認めた相手以外と交際するのもだめだ」
浮竹の貞操観念が高いのは、どうやら地であるらしい
「兄らは、できているのかいないのか、どっちなのだ」
「ん。一応、できてるよ?肉体関係はないけど、恋人だと思ってるよ」
京楽にそう言われて、浮竹は真っ赤になった。
「そ、そういうことにしておいてやる!」
浮竹は真っ赤になって、35階の窓から子猫どころか、人の姿で飛び降りた。
「ここ35階なんですけどおおおおおお」
「ん?だからなんだ?」
ふわふわと、宙を浮く浮竹は、背中に桜の翼が生えていた。
「白哉のように風を操れないが、翼を作れる」
「はぁ・・・でも、ここ35階だからね。隣人とかに見られないようにね」
「京楽、俺はお前を愛しているぞ!」
そう言って、浮竹は一度自分の桜に戻り、エネルギーを供給して帰ってくるのであった。
--------------------------------
「火車?」
「ええ。火車がでるんです。丑の刻に」
「ふーむ。あやかしだな。何か悪さはする?」
京楽が、依頼人から話を聞く。
「いえ、ただ現れるだけなんですけど・・・・怖がって、近隣の住民がすっかりこの定食屋にきてくれなくなって・・・・生活がかかってますから」
「退治する必要はなさそうだな。火車はわりと温厚な性格のやつがおおい。その火車、俺の知り合いだったりしてな」
浮竹が冗談半分で言った言葉であったのだが、次の日の丑の刻に出た火車は、本当に浮竹の知り合いだった。
「朧(おぼろ)じゃないか。なんで、こんな時間に人間界に現れたりしてるんだ?」
「ああ、桜の王。それが、前輪をなくしてしまって・・・この時間帯なら、人に見られないかなと思って」
「ばっちり見られて怖がられてるからな?」
「ひええええ。前輪、ないなぁ」
「前輪ってこれかい?」
定食屋の隅に置かれてあったタイヤであった。あやかしの匂いがするので、依頼人の了承をとって、持ち出してきていたのだ。
「ああ、助かります。これで、安全に運転して霊魂を三途の川に運べる」
火車は、前輪をはめると、からからと音を出して異界に去っていった。
「浮竹、君ってあやかしの知り合い多いね。桜の王ってのと、関係あるの?」
「いずれ、話す。その時まで、桜の王のことは気にしないでくれ」
「そう言われても、気になるんだけどなぁ」
すると、消えたはずの火車が現れて、京楽はびっくりしてこけた。
「あ、これ、お礼のあやかしまんじゅうです。どうぞ、桜の王」
「ああ、ありがとう」
「ではこれで」
「京楽・・・・大丈夫か?」
「思いっきり膝打った。打撲した」
「みせてみろ」
浮竹は、桜が咲くイメージをして、京楽の傷を癒してしまった。
「すごいね。浮竹って、治療もできるんだ」
「伊達に5千年は生きていないぞ」
「5千歳の恋人・・・・ボクとの年の差が半端ない」
「気にするな」
浮竹はからからと笑って、火車がもってきたあやかしまんじゅうを食べる。
つられて、京楽も食べるのであった。
桜のあやかしと共に2
朝起きたら、人の姿をした浮竹が隣で寝ていて、京楽はどぎまぎした。
「ああそうか・・・・子猫の姿のまま、一緒に寝たのか」
京楽は、すうすうとよく眠る浮竹の、長い白髪を手に取ると、口づけた。
夢を見ていた。
夢の中で、京楽は「春」という人物で、浮竹の恋人だった。
浮竹をとても愛していた。あふれそうな思いを、こぼれそうな思いのまま目覚めて、ああ、自分は桜のあやかしの浮竹の恋人が、前世であったのだと実感した。
ここ数日、いつも「春」であったころの夢を見る。
夢を見るたびに、浮竹が愛しく大切に思えてきて、大事にしたいと思った。
「ん・・・・・・・」
「やあ、起きた?」
「すまん。子猫の姿のまま寝ていたら、いつのまにか人型になっていた。ベッドは広いが、それでも邪魔だっただろう」
「いや、いいよ。それより、最近ボクは自分が「春」である夢を見るんだ。やっぱり、君の影響?」
「そうだな。俺にとって「春」はとても大切な人だったから・・・、生まれ変わりのお前を見つけれて、傍にいられるだけでいいから、一緒にいさせてくれ」
「でも、君はボクを「春」とは呼ばないんだね」
「京楽は京楽だろう。生まれ変わりでも、別の人間だってちゃんと理解している」:
浮竹は、簡単な朝食を作りにキッチンに行ってしまった。
「はぁ・・・キスとハグまで・・・いつまでもつかなぁ」
京楽の中で、鮮やかに蘇る「春」の記憶。
でも、もしも自分が「春」でなかったなら、出会いも何もかもなかったと思うと、少し寂しい気持ちになった。
「朝食できたぞ」
「ああ、うん。今いくよ」
浮竹は桜の精霊であやかしであるが、人の食事で栄養をとることができる。
普段は、桜の大木から光合成でエネルギーを得ているが。
子猫の姿の時は、猫の食事からも栄養をとれた。
その気になれば、何も口にせずとも生きていけるのだが、人の食事はおいしいし好きなので、浮竹は料理が下手そうに見えて、けっこういい腕をしていた。
「今日の仕事・・・・・狸の信楽焼のおきものが付喪神になって悪さするので、退治してくれっていう内容なんだけど、一緒にくる?」
「一緒に行く。こう見えても、いろいろ術が使える」
「心強いよ」
「私も行こう」
「って。白哉君?ここ、35階なんですけど」
にゃーんと、黒猫姿で鳴いて、白哉は浮竹の膝の上に飛び乗った。
「浮竹は、私にとって兄のような大切な存在だ。兄が、浮竹を泣かせることがないように見張る」
「ああもう、好きにして。白哉君、自衛はできるね?」
「無論だ」
白哉は、首に首輪をはめていた。浮竹の首輪とおそろいだった。
猫から人の姿になった時は、首輪はないが、衣服はちゃんと着ていた。
そこらへんの仕組みが気になったが、問うてもだから何だと言われそうなので、京楽は黙っていた。
「白哉君は、人のご飯食べる?それとも猫缶?」
「猫缶で。あとチュールも」
白哉は、人の食事より猫の時の食事のほうが好きだった。
やがて昼過ぎになり、京楽が依頼があった場所へ車で向かう。
人の姿の浮竹と、黒猫姿の白哉も一緒だった。
「ようきてくださった。これが、付喪神の狸の信楽焼です」
依頼人は、家の前に置かれている狸の信楽焼をなでた。
「大切にしていたんですけどなぁ。付喪神になるだけならいいが、悪さをするので」
「どういう悪さを?」
「子供を、川につき飛ばしたり、老人の背に乗って動けなくしたり・・・」
京楽は、狸の信楽焼をよく観察した。
「これ、付喪神じゃないね。浮遊霊の塊が中に入ってる」
「ひえええええ。なんとかなりませんか」
「除霊するよ。浮竹、手伝ってくれる?白哉君は、この呪符の上にいて結界を維持してくれるかな」
「わかった」
「ね、猫がしゃべった!」
依頼人はびっくりしていたが、とりあえず無視して祝詞を唱え、除霊を試みる。
「ぬおおおおおおおおおお」
狸の信楽焼から、叫び声がして、ガタガタと動きだした。
「我を排除しようとするは誰ぞ」
「悪いけど、あの世にいってもらうよ」
「おのれ。我を齢200年の霊と知っての・・・・桜の君?あなたは、桜のあやかしの長老様・・・・あやかしが、人間ごときと一緒に、退治屋をはじめたというのですか」
浮遊霊の塊は、浮竹に向かって飛んでいく。
ばちっと、音がして、浮竹の周囲には白哉と京楽の作った結界が施されていた。
「桜の君・・・・・・」
「人にあだなすのであれば、消えろ」
その言霊だけで、浮遊霊の塊は薄くなっていく。
「桜の君・・・・また、人と生きようというのか。災いしかないと知りながら」
「お前は・・・・不知火(しらぬい)か。ただの浮遊霊にしてはおかしいと思った」
「え、知り合いなの?」
「こいつは、もともと楓(かえで)のあやかしだ。あやかしをやめて霊体になったと、100年ほど前に聞いた」
不知火は、霊体で浮竹の周囲をぐるぐると回る。
「桜の君、我といこうぞ。そなたの力があれば、異界より災いを呼べる」
「ごめんだな。不知火、眠れ。踊れ、焔(ほむら)よ」
浮竹は、炎の術で不知火を燃やしてしまった。不知火というのは名前だけで、炎とは関係ないようだった。
「ボクの出番が・・・・・・・」
「浮竹、大丈夫か?桜の大樹より離れて久しいであろう。あまり力を使うと、異界で休眠することになるぞ」
「大丈夫だ、白哉。異界の桜の大樹から、ごっそりエネルギーをこっちにきた時とりこんでおいたからな」
「ならばいいのだが」
「あの、ボクの出番は?」
「終わりだ。これはもう、ただの狸の信楽焼だ」
遠巻きに見ていた依頼人は、人ならざる者達の存在に恐怖を覚えながらも、依頼料を払ってくれた。
「百鬼夜行ならぬ、百花夜行があってから、植物のあやかしが悪霊になったり、悪さをする者が多い」
浮竹の言葉に、京楽が首を傾げる。
「百花夜行?」
「その名の通り、100をこえる花や植物のあやかしたちの祭りというか、騒ぎというか」
浮竹が、説明しにくそうにしていた。
「浮竹は桜の長老だからな。百花夜行には必ず参加していたが「春」を失ってから、時折しか参加しなくなった」
「また、「春」・・・・・・ボクは、京楽春水だよ?」
「わかっている。京楽は京楽だ」
浮竹は、白い子猫姿になって、京楽の肩に飛び乗った。
「帰ろう」
「う、うん・・・なんかよくわからん間に除霊されちゃったし、帰ろっか」
「兄は、浮竹の力を知らぬのだ。浮竹はな、桜の王なのだぞ」
「白哉、いらないことは言わなくていい」
「浮竹・・・まぁよかろう。兄がまだ話したくないのであれば」
京楽は、車を運転しながら、2匹の猫を見る。
「まだ知り合ったばかりだからね・・・秘密は、おいおい聞いていくよ」
「別に、隠しているわけじゃないんだ。ただ、俺は白哉のようなただの桜の精霊ではなくて、桜の精霊の王と呼ばれている」
「うん・・・今は帰って休憩しよう。浮竹も、除霊に何気に力使って疲れたでしょ?」
「そうだな。あやかしの霊を除霊するのは、30年ぶりだな」
「30年・・・ボクがまだ小学生になったかどうかって年だね」
「前世の春としてではなく、京楽春水、お前を愛している」
高級車を駐車場に止めて、降りた京楽に、浮竹は一瞬だけ人の姿をとって、口づけた。
京楽がむさぼろうとすると、すぐに子猫の姿になった。
残念と思いながら、子猫の浮竹にキスをする。
「兄は、猫の浮竹にも興奮する変態なのか」
「愛に性別も人種も種族も関係ない、と言ってみる」
「苦しい言い訳だな・・・・・・」
白哉は、京楽の足をひっかいた。
「あいたたたた」
「浮竹がいやがっている。離してやれ」
「あ、ごめん」
「子猫姿でキスされると、息ができない」
浮竹はぷんぷん怒った。
自分からキスしてきたくせに。
「白哉君は、また桜の木に戻るのかい?」
「兄が、浮竹にいらぬちょっかいを出さないために、一緒に暮らすことにする」
「ええええ」
「兄らの関係が進めば、出ていくから安心しろ」
「ははは、子猫2匹を内緒で飼っているってばれたら、管理人に怒られそう」
京楽は、猫用の砂やらペットフード、おもちゃ、それにキャットタワーなどをすでに買っていた。
「今日は、ルキアが待っているから、外で泊まる」
「ルキア?」
「私の妹だ」
「じゃあ、その子も桜の精霊?」
「いや。ネモフィラの精霊だ」
「ネモフィラ。きっとかわいいんだろうなぁ」
「浮気か、京楽」
「いやいや、違うから」
つーんと機嫌を悪くした浮竹が、人の姿になってキッチンに入り、オムライスを作り出した。
ケチャっプで、器用に京楽の分に「ぶち殺す」と書かれていた。
「白哉も食べていけ」
「わかった」
白哉の分には、ハートマークが書かれていた。浮竹は自分の分には猫をかいた。
白哉が人化する。
やはり、とても綺麗な青年だった。性別を浮竹と一緒に間違われそうな。
「浮竹の手料理はうまいな」
白哉は残さず食べ終えてから、35階の窓のベランダから、猫の姿で飛び降りた。
「えああああああ!ここ35階!」
「俺たちあやかしには、高さはあまり関係ない」
「なら、いいんだけど」
浮竹は、京楽にキスをする。
「ん・・・・・・・」
「ねぇ・・・ボクと、その、してみない?」
「まだいい。まだ、京楽のことが理解しきれていない」
「ボクはおあずけか・・・・・・」
「ダッチワイフあるけど、あれでも相手にしとくか?」
「わああああ!あれはボクの黒歴史になるから、放置しておいて!」
「そうか。じゃあ捨ててもいいな?」
浮竹は、ダッチワイフをポイっと捨てた。
35階の窓から。
「わああああ、通行人が!!」
「異界とゲートを繋げておいた。すぐに閉じるが」
「もお、びっくりさせないでよ」
「ダッチワイフがある時点でこっちがびっくりだ。恋人とか、いなかったのか?」
「んー、いたときもあったけど、長続きしなかったなぁ。みーんな、金目当てでさ」
浮竹は、ソファに座った京楽の隣に座り、頭を京楽に傾けた。
「俺は、お前がいい」
「うん、ありがと」
「でも、まだキスとハグまで」
「う、うん・・・・・・」
浮竹は、そのままうとうとと眠ってしまった。
子供のようにあどけない表情で眠る浮竹の額にキスをして、京楽は毛布をかけてやるのであった。
「ああそうか・・・・子猫の姿のまま、一緒に寝たのか」
京楽は、すうすうとよく眠る浮竹の、長い白髪を手に取ると、口づけた。
夢を見ていた。
夢の中で、京楽は「春」という人物で、浮竹の恋人だった。
浮竹をとても愛していた。あふれそうな思いを、こぼれそうな思いのまま目覚めて、ああ、自分は桜のあやかしの浮竹の恋人が、前世であったのだと実感した。
ここ数日、いつも「春」であったころの夢を見る。
夢を見るたびに、浮竹が愛しく大切に思えてきて、大事にしたいと思った。
「ん・・・・・・・」
「やあ、起きた?」
「すまん。子猫の姿のまま寝ていたら、いつのまにか人型になっていた。ベッドは広いが、それでも邪魔だっただろう」
「いや、いいよ。それより、最近ボクは自分が「春」である夢を見るんだ。やっぱり、君の影響?」
「そうだな。俺にとって「春」はとても大切な人だったから・・・、生まれ変わりのお前を見つけれて、傍にいられるだけでいいから、一緒にいさせてくれ」
「でも、君はボクを「春」とは呼ばないんだね」
「京楽は京楽だろう。生まれ変わりでも、別の人間だってちゃんと理解している」:
浮竹は、簡単な朝食を作りにキッチンに行ってしまった。
「はぁ・・・キスとハグまで・・・いつまでもつかなぁ」
京楽の中で、鮮やかに蘇る「春」の記憶。
でも、もしも自分が「春」でなかったなら、出会いも何もかもなかったと思うと、少し寂しい気持ちになった。
「朝食できたぞ」
「ああ、うん。今いくよ」
浮竹は桜の精霊であやかしであるが、人の食事で栄養をとることができる。
普段は、桜の大木から光合成でエネルギーを得ているが。
子猫の姿の時は、猫の食事からも栄養をとれた。
その気になれば、何も口にせずとも生きていけるのだが、人の食事はおいしいし好きなので、浮竹は料理が下手そうに見えて、けっこういい腕をしていた。
「今日の仕事・・・・・狸の信楽焼のおきものが付喪神になって悪さするので、退治してくれっていう内容なんだけど、一緒にくる?」
「一緒に行く。こう見えても、いろいろ術が使える」
「心強いよ」
「私も行こう」
「って。白哉君?ここ、35階なんですけど」
にゃーんと、黒猫姿で鳴いて、白哉は浮竹の膝の上に飛び乗った。
「浮竹は、私にとって兄のような大切な存在だ。兄が、浮竹を泣かせることがないように見張る」
「ああもう、好きにして。白哉君、自衛はできるね?」
「無論だ」
白哉は、首に首輪をはめていた。浮竹の首輪とおそろいだった。
猫から人の姿になった時は、首輪はないが、衣服はちゃんと着ていた。
そこらへんの仕組みが気になったが、問うてもだから何だと言われそうなので、京楽は黙っていた。
「白哉君は、人のご飯食べる?それとも猫缶?」
「猫缶で。あとチュールも」
白哉は、人の食事より猫の時の食事のほうが好きだった。
やがて昼過ぎになり、京楽が依頼があった場所へ車で向かう。
人の姿の浮竹と、黒猫姿の白哉も一緒だった。
「ようきてくださった。これが、付喪神の狸の信楽焼です」
依頼人は、家の前に置かれている狸の信楽焼をなでた。
「大切にしていたんですけどなぁ。付喪神になるだけならいいが、悪さをするので」
「どういう悪さを?」
「子供を、川につき飛ばしたり、老人の背に乗って動けなくしたり・・・」
京楽は、狸の信楽焼をよく観察した。
「これ、付喪神じゃないね。浮遊霊の塊が中に入ってる」
「ひえええええ。なんとかなりませんか」
「除霊するよ。浮竹、手伝ってくれる?白哉君は、この呪符の上にいて結界を維持してくれるかな」
「わかった」
「ね、猫がしゃべった!」
依頼人はびっくりしていたが、とりあえず無視して祝詞を唱え、除霊を試みる。
「ぬおおおおおおおおおお」
狸の信楽焼から、叫び声がして、ガタガタと動きだした。
「我を排除しようとするは誰ぞ」
「悪いけど、あの世にいってもらうよ」
「おのれ。我を齢200年の霊と知っての・・・・桜の君?あなたは、桜のあやかしの長老様・・・・あやかしが、人間ごときと一緒に、退治屋をはじめたというのですか」
浮遊霊の塊は、浮竹に向かって飛んでいく。
ばちっと、音がして、浮竹の周囲には白哉と京楽の作った結界が施されていた。
「桜の君・・・・・・」
「人にあだなすのであれば、消えろ」
その言霊だけで、浮遊霊の塊は薄くなっていく。
「桜の君・・・・また、人と生きようというのか。災いしかないと知りながら」
「お前は・・・・不知火(しらぬい)か。ただの浮遊霊にしてはおかしいと思った」
「え、知り合いなの?」
「こいつは、もともと楓(かえで)のあやかしだ。あやかしをやめて霊体になったと、100年ほど前に聞いた」
不知火は、霊体で浮竹の周囲をぐるぐると回る。
「桜の君、我といこうぞ。そなたの力があれば、異界より災いを呼べる」
「ごめんだな。不知火、眠れ。踊れ、焔(ほむら)よ」
浮竹は、炎の術で不知火を燃やしてしまった。不知火というのは名前だけで、炎とは関係ないようだった。
「ボクの出番が・・・・・・・」
「浮竹、大丈夫か?桜の大樹より離れて久しいであろう。あまり力を使うと、異界で休眠することになるぞ」
「大丈夫だ、白哉。異界の桜の大樹から、ごっそりエネルギーをこっちにきた時とりこんでおいたからな」
「ならばいいのだが」
「あの、ボクの出番は?」
「終わりだ。これはもう、ただの狸の信楽焼だ」
遠巻きに見ていた依頼人は、人ならざる者達の存在に恐怖を覚えながらも、依頼料を払ってくれた。
「百鬼夜行ならぬ、百花夜行があってから、植物のあやかしが悪霊になったり、悪さをする者が多い」
浮竹の言葉に、京楽が首を傾げる。
「百花夜行?」
「その名の通り、100をこえる花や植物のあやかしたちの祭りというか、騒ぎというか」
浮竹が、説明しにくそうにしていた。
「浮竹は桜の長老だからな。百花夜行には必ず参加していたが「春」を失ってから、時折しか参加しなくなった」
「また、「春」・・・・・・ボクは、京楽春水だよ?」
「わかっている。京楽は京楽だ」
浮竹は、白い子猫姿になって、京楽の肩に飛び乗った。
「帰ろう」
「う、うん・・・なんかよくわからん間に除霊されちゃったし、帰ろっか」
「兄は、浮竹の力を知らぬのだ。浮竹はな、桜の王なのだぞ」
「白哉、いらないことは言わなくていい」
「浮竹・・・まぁよかろう。兄がまだ話したくないのであれば」
京楽は、車を運転しながら、2匹の猫を見る。
「まだ知り合ったばかりだからね・・・秘密は、おいおい聞いていくよ」
「別に、隠しているわけじゃないんだ。ただ、俺は白哉のようなただの桜の精霊ではなくて、桜の精霊の王と呼ばれている」
「うん・・・今は帰って休憩しよう。浮竹も、除霊に何気に力使って疲れたでしょ?」
「そうだな。あやかしの霊を除霊するのは、30年ぶりだな」
「30年・・・ボクがまだ小学生になったかどうかって年だね」
「前世の春としてではなく、京楽春水、お前を愛している」
高級車を駐車場に止めて、降りた京楽に、浮竹は一瞬だけ人の姿をとって、口づけた。
京楽がむさぼろうとすると、すぐに子猫の姿になった。
残念と思いながら、子猫の浮竹にキスをする。
「兄は、猫の浮竹にも興奮する変態なのか」
「愛に性別も人種も種族も関係ない、と言ってみる」
「苦しい言い訳だな・・・・・・」
白哉は、京楽の足をひっかいた。
「あいたたたた」
「浮竹がいやがっている。離してやれ」
「あ、ごめん」
「子猫姿でキスされると、息ができない」
浮竹はぷんぷん怒った。
自分からキスしてきたくせに。
「白哉君は、また桜の木に戻るのかい?」
「兄が、浮竹にいらぬちょっかいを出さないために、一緒に暮らすことにする」
「ええええ」
「兄らの関係が進めば、出ていくから安心しろ」
「ははは、子猫2匹を内緒で飼っているってばれたら、管理人に怒られそう」
京楽は、猫用の砂やらペットフード、おもちゃ、それにキャットタワーなどをすでに買っていた。
「今日は、ルキアが待っているから、外で泊まる」
「ルキア?」
「私の妹だ」
「じゃあ、その子も桜の精霊?」
「いや。ネモフィラの精霊だ」
「ネモフィラ。きっとかわいいんだろうなぁ」
「浮気か、京楽」
「いやいや、違うから」
つーんと機嫌を悪くした浮竹が、人の姿になってキッチンに入り、オムライスを作り出した。
ケチャっプで、器用に京楽の分に「ぶち殺す」と書かれていた。
「白哉も食べていけ」
「わかった」
白哉の分には、ハートマークが書かれていた。浮竹は自分の分には猫をかいた。
白哉が人化する。
やはり、とても綺麗な青年だった。性別を浮竹と一緒に間違われそうな。
「浮竹の手料理はうまいな」
白哉は残さず食べ終えてから、35階の窓のベランダから、猫の姿で飛び降りた。
「えああああああ!ここ35階!」
「俺たちあやかしには、高さはあまり関係ない」
「なら、いいんだけど」
浮竹は、京楽にキスをする。
「ん・・・・・・・」
「ねぇ・・・ボクと、その、してみない?」
「まだいい。まだ、京楽のことが理解しきれていない」
「ボクはおあずけか・・・・・・」
「ダッチワイフあるけど、あれでも相手にしとくか?」
「わああああ!あれはボクの黒歴史になるから、放置しておいて!」
「そうか。じゃあ捨ててもいいな?」
浮竹は、ダッチワイフをポイっと捨てた。
35階の窓から。
「わああああ、通行人が!!」
「異界とゲートを繋げておいた。すぐに閉じるが」
「もお、びっくりさせないでよ」
「ダッチワイフがある時点でこっちがびっくりだ。恋人とか、いなかったのか?」
「んー、いたときもあったけど、長続きしなかったなぁ。みーんな、金目当てでさ」
浮竹は、ソファに座った京楽の隣に座り、頭を京楽に傾けた。
「俺は、お前がいい」
「うん、ありがと」
「でも、まだキスとハグまで」
「う、うん・・・・・・」
浮竹は、そのままうとうとと眠ってしまった。
子供のようにあどけない表情で眠る浮竹の額にキスをして、京楽は毛布をかけてやるのであった。
桜のあやかしと共に1
その人は、とても綺麗だった。
長い白髪に、翡翠の瞳をしていた。町を歩けば、皆振り返るくらいだろう整った顔立ちをしていた。
その人は、人間ではなかった。
樹齢5千年にもなる、桜の大木の精霊だった。あやかしというべきか。
かつて、その人には「春」という名の男性の恋人がいた。
その人の性別は桜のあやかしであるため、固定されていないが、いつも男性の姿をとっていた。
「春」は、その人が見ている目の前で、子供をかばって交通事故で死んだ。
その人は泣いた。
泣きすぎて、天候まで嵐にしてしまった。
今、その人は前世が「春」の男性を見つけて、どうすれば接触できるか、悩んでいた。
ここは、小さな公園には不釣り合いの少し古い桜の木。
その人の樹齢5千年になる桜の木は、異界にある。
なので、火事やなんやらで、公園の桜の木がなくなっても平気だった。
「にゃーーーん」
その人は、愛しい「春」をなくしてから、人の姿をあまりとらなくなった。
もっぱらオッドアイの白猫の子猫の姿をしていた。
「春」が好きだといってくれた姿だった。
「春・・・・・・いや、今は京楽春水か・・・・・・」
子猫は、公園から億ションの高い建物を見あげた。
「なー」
「にゃおーん」
物思いにふけるその人の名は浮竹十四郎。
浮竹は、同じ桜の精霊である朽木白哉の黒猫姿のあいさつに、鳴き声で返した。
「兄は、またあの男のことを思っているのか」
「ああ。あいつは、「春」の生まれ変わりだ。一目見ただけで分かった。
「兄は、まだ「春」を思っているのか。死してもう120年にもなるのだぞ」
「それでも、俺は待っていた。ずっとずっと、「春」の生まれ変わりを」
「私たちはあやかし。人とは相いれないもの。「春」は人間だったが、特異体質であやかしが見えた。今度の「春」の生まれ変わりは、あやかしの私たちの姿が見えるかどうかも分からないのだぞ」
白哉は、そう言って浮竹に黒い毛並みの体をこすりつけた。
「にゃあ」
「なおーん」
人々には、猫がぽかぽかした春の日差しの下で、日なたぼっこをしているように見えるだろう。
「ああ、言っていたらきたぞ」
「なぁ」
浮竹は、猫に完全になりきって、思い人にすり寄る。
「やあ、ジュリア。猫缶もってきたよ。お友達のスザンヌの分もあるし、チュールもあるから喧嘩せずに仲良くお食べ」
京楽春水。
父方がドイツ人とのハーフで、京楽はクォーターにあたる。
堀の深い顔立ちをしており、鳶色の瞳が印象的だった。
「にゃああああ」
浮竹は、猫缶をおいしそうに食べて、チュールももらって、京楽にすり寄った。
「ごめんね。ボクのマンション、犬はいいけど猫はだめなんだ。外でしか会えないけど・・・・」
「問題ない」
どうせ見えないだろうと、人の姿をとった。
満開の桜舞い散る場所に、白い長い髪に翡翠の瞳をもった、桜色の着物を着た人物が突然現れて、京楽はぎょっとなった。
「ジュリア?」
「俺の名は浮竹十四郎。ジュリアとは、お前が俺につけた名だな」
「え、何これ。子猫が青年に・・・・・?」
「正確には、桜のあやかしだ。桜の精霊さ。お前がスザンヌと呼ぶこの黒猫も桜の精霊で、朽木白哉という。俺の弟のようなものだ」
「えっと・・・ボク、昔から特異体質で幽霊とか妖怪とか見えるんだけど、これもそのせい?」
京楽は、鳶色の瞳を瞬かせた。
「そうだな。ただ、今は普通の人間にも見えるようにしている」
「ジュリアは桜のお化けなの?」
「浮竹と呼べ。ジュリアは女のようでいやだ」
「ああ、うん・・・・でも、すごく綺麗だね。えっと、浮竹だっけ・・・・」
「ああ」
「はじめまして。ボクは京楽春水。ちょっと特異体質の霊感があって、それにあうようななんというか、稼業?をしているよ」
「あやかしや幽霊を祓う、便利屋だろう。知っている」
「なんで、初めて会うのに、ボクのこと知ってるの?」
「お前をずっと見てきたからだ。俺はお前を愛している」
「え」
「にゃおーん」
浮竹は、子猫の姿になって、京楽の足元にすりよった。
「どういう意味?」
「にゃああ」
「人の言葉通じるかな」
「通じるぞ。スザンヌだとか、ふざけたような名前の改名を求める」
黒い毛皮をなめながら、白哉はそう言った。
「猫がしゃべった・・・・・・」
「だから、俺たちはあやかしだ」
「ねこのお化け?」
「桜のお化けだな。桜の季節は、人を惑わす者も多いが、俺たちはそういうことはしない」
「ああ、うん。駆除対象じゃないって、接してれば分かるけど・・・・でも、ボクを愛しているって?ボクは君とは猫の姿をしているときは会ってるけど、人間の姿をした君と会うのははじめてだよ。ボクをからかってる?」
「違う。お前は「春」の・・・・・俺の120年前の恋人の生まれ変わりだ」
「は?」
「信じてもらえなくてもいい。ただ、時折でいいからこの公園にきて、猫の姿でいるから餌でももってきてくれ。俺は、お前だけを、ずっとずっと・・・・120年間、愛し続けていた」
浮竹は、涙を零した。
「浮竹。兄のもつ妖力は強い。泣くと、雨になる」
「ああ、すまん、白哉」
浮竹が泣いていると、空からにわか雨が降ってきた。
「京楽春水。愛している」
「ボクは・・・・・」
ずきりと、京楽は頭痛を覚えた。
走馬灯のように、前世の記憶がぶわりとおおいかぶさってきて、京楽はどこかでこの浮竹という桜のあやかしとあったことがあると、愛していたと、確信していた。
「前世・・・・あんまり思いだせないけど、どうやらボクは君に恋をしてしまったらしい」
浮竹の美しい姿に、見惚れてしまっていた。
「では、今生でも俺の恋人になれ」
やや強引な浮竹に押し任されて、京楽は頷いてしまった。
それを、白哉はただ見守っていた。
「雨降ってきたし、人の姿ならはいれるから、ボクの家にくる?ジュリア・・・・じゃなかった、浮竹。あと、スザンヌも」
「スザンヌではない。朽木白哉だ」
白哉も人型をとった。浮竹とはまた違った美しさをもつ、若い青年だった。
「ボクの家、広いから3人になっても平気だよ」
白哉は、首をと横に振った。
「私は、桜の木の中で休眠する。浮竹、行ってこい。思い人と通じあえたのであろう」
「春の記憶は、あまり蘇っていないだろう。前世の記憶は、夢などでゆっくり思いだす。ということで、ちょっと京楽の家に寝込みを襲いに行ってくるぞ、白哉」
「ほどほどにしておけ」
「え、ボク、寝込み襲われるの!?」
「冗談だ。ただ、お前の傍にいたい」
「うーん。ほんとはダメなんだけど、子猫の姿でいいよ。今、人の姿をとり続けているのは辛いんでしょ?」
「なぜわかった?」
浮竹が首をかしげると、京楽は札をだして浮竹の背後に飛ばし、除霊した。
「寄生虫?みたいなの、くっついてたから」
「え・・・気づかなかった」
「この手の妖怪は、宿主を少し苦しめるけど、気づかない場合が多いからね」
「すまん・・・・恩に着る。では、子猫の姿になるので、運んでくれ」
「名前、猫の時はジュリアでいい?」
「だめだ。浮竹と呼べ」
浮竹は、子猫姿になると、京楽に抱かれて京楽の部屋に入る。あまりもののない、殺風景な部屋だった。
「ここが、京楽の家か・・・・」
「広いでしょ」
「ああ」
浮竹は、人の姿をとった。
「3億したからね。ボクの家柄は元華族で、大正時代くらいまで貴族だったよ」
「ふうん。金はあるところにはあるんだな」
「まぁ、寝るためだけに使ってるような部屋だから。よければ、浮竹も一緒に住まない?桜の木がいいっていうなら、断ってもいいけど」
「一緒に住む」
即答だった。
「俺はお前を愛している。その意味を、教えてやる」
浮竹は、京楽を押し倒してキスをした。
「ん・・・・・・」
キスをしかされて、これはやばいと、浮竹はいったんストップを入れる。
「まだ、体の関係にはなりたくない」
「どうして?君はボクのことが好きで、ボクも君のこと気に入ったよ」
「まずはプラトニックからだ。キスとハグまで」
「ええ、それ生殺しじゃない?」
「春は、いきなり体の関係なんて求めてこなかった」
「ボクは春水。春じゃないよ」
「分かっている」
浮竹は、また子猫の姿に戻り、京楽のベッドの上で京楽と一緒に、ただ眠った。
浮竹の願いは、ただ愛しい者の傍にいること。
傍にいれるなら、なんだってする。
京楽は知らない。
浮竹が、精霊としての頂点に君臨する桜の精霊で、4大精霊長の1人だということを。
長い白髪に、翡翠の瞳をしていた。町を歩けば、皆振り返るくらいだろう整った顔立ちをしていた。
その人は、人間ではなかった。
樹齢5千年にもなる、桜の大木の精霊だった。あやかしというべきか。
かつて、その人には「春」という名の男性の恋人がいた。
その人の性別は桜のあやかしであるため、固定されていないが、いつも男性の姿をとっていた。
「春」は、その人が見ている目の前で、子供をかばって交通事故で死んだ。
その人は泣いた。
泣きすぎて、天候まで嵐にしてしまった。
今、その人は前世が「春」の男性を見つけて、どうすれば接触できるか、悩んでいた。
ここは、小さな公園には不釣り合いの少し古い桜の木。
その人の樹齢5千年になる桜の木は、異界にある。
なので、火事やなんやらで、公園の桜の木がなくなっても平気だった。
「にゃーーーん」
その人は、愛しい「春」をなくしてから、人の姿をあまりとらなくなった。
もっぱらオッドアイの白猫の子猫の姿をしていた。
「春」が好きだといってくれた姿だった。
「春・・・・・・いや、今は京楽春水か・・・・・・」
子猫は、公園から億ションの高い建物を見あげた。
「なー」
「にゃおーん」
物思いにふけるその人の名は浮竹十四郎。
浮竹は、同じ桜の精霊である朽木白哉の黒猫姿のあいさつに、鳴き声で返した。
「兄は、またあの男のことを思っているのか」
「ああ。あいつは、「春」の生まれ変わりだ。一目見ただけで分かった。
「兄は、まだ「春」を思っているのか。死してもう120年にもなるのだぞ」
「それでも、俺は待っていた。ずっとずっと、「春」の生まれ変わりを」
「私たちはあやかし。人とは相いれないもの。「春」は人間だったが、特異体質であやかしが見えた。今度の「春」の生まれ変わりは、あやかしの私たちの姿が見えるかどうかも分からないのだぞ」
白哉は、そう言って浮竹に黒い毛並みの体をこすりつけた。
「にゃあ」
「なおーん」
人々には、猫がぽかぽかした春の日差しの下で、日なたぼっこをしているように見えるだろう。
「ああ、言っていたらきたぞ」
「なぁ」
浮竹は、猫に完全になりきって、思い人にすり寄る。
「やあ、ジュリア。猫缶もってきたよ。お友達のスザンヌの分もあるし、チュールもあるから喧嘩せずに仲良くお食べ」
京楽春水。
父方がドイツ人とのハーフで、京楽はクォーターにあたる。
堀の深い顔立ちをしており、鳶色の瞳が印象的だった。
「にゃああああ」
浮竹は、猫缶をおいしそうに食べて、チュールももらって、京楽にすり寄った。
「ごめんね。ボクのマンション、犬はいいけど猫はだめなんだ。外でしか会えないけど・・・・」
「問題ない」
どうせ見えないだろうと、人の姿をとった。
満開の桜舞い散る場所に、白い長い髪に翡翠の瞳をもった、桜色の着物を着た人物が突然現れて、京楽はぎょっとなった。
「ジュリア?」
「俺の名は浮竹十四郎。ジュリアとは、お前が俺につけた名だな」
「え、何これ。子猫が青年に・・・・・?」
「正確には、桜のあやかしだ。桜の精霊さ。お前がスザンヌと呼ぶこの黒猫も桜の精霊で、朽木白哉という。俺の弟のようなものだ」
「えっと・・・ボク、昔から特異体質で幽霊とか妖怪とか見えるんだけど、これもそのせい?」
京楽は、鳶色の瞳を瞬かせた。
「そうだな。ただ、今は普通の人間にも見えるようにしている」
「ジュリアは桜のお化けなの?」
「浮竹と呼べ。ジュリアは女のようでいやだ」
「ああ、うん・・・・でも、すごく綺麗だね。えっと、浮竹だっけ・・・・」
「ああ」
「はじめまして。ボクは京楽春水。ちょっと特異体質の霊感があって、それにあうようななんというか、稼業?をしているよ」
「あやかしや幽霊を祓う、便利屋だろう。知っている」
「なんで、初めて会うのに、ボクのこと知ってるの?」
「お前をずっと見てきたからだ。俺はお前を愛している」
「え」
「にゃおーん」
浮竹は、子猫の姿になって、京楽の足元にすりよった。
「どういう意味?」
「にゃああ」
「人の言葉通じるかな」
「通じるぞ。スザンヌだとか、ふざけたような名前の改名を求める」
黒い毛皮をなめながら、白哉はそう言った。
「猫がしゃべった・・・・・・」
「だから、俺たちはあやかしだ」
「ねこのお化け?」
「桜のお化けだな。桜の季節は、人を惑わす者も多いが、俺たちはそういうことはしない」
「ああ、うん。駆除対象じゃないって、接してれば分かるけど・・・・でも、ボクを愛しているって?ボクは君とは猫の姿をしているときは会ってるけど、人間の姿をした君と会うのははじめてだよ。ボクをからかってる?」
「違う。お前は「春」の・・・・・俺の120年前の恋人の生まれ変わりだ」
「は?」
「信じてもらえなくてもいい。ただ、時折でいいからこの公園にきて、猫の姿でいるから餌でももってきてくれ。俺は、お前だけを、ずっとずっと・・・・120年間、愛し続けていた」
浮竹は、涙を零した。
「浮竹。兄のもつ妖力は強い。泣くと、雨になる」
「ああ、すまん、白哉」
浮竹が泣いていると、空からにわか雨が降ってきた。
「京楽春水。愛している」
「ボクは・・・・・」
ずきりと、京楽は頭痛を覚えた。
走馬灯のように、前世の記憶がぶわりとおおいかぶさってきて、京楽はどこかでこの浮竹という桜のあやかしとあったことがあると、愛していたと、確信していた。
「前世・・・・あんまり思いだせないけど、どうやらボクは君に恋をしてしまったらしい」
浮竹の美しい姿に、見惚れてしまっていた。
「では、今生でも俺の恋人になれ」
やや強引な浮竹に押し任されて、京楽は頷いてしまった。
それを、白哉はただ見守っていた。
「雨降ってきたし、人の姿ならはいれるから、ボクの家にくる?ジュリア・・・・じゃなかった、浮竹。あと、スザンヌも」
「スザンヌではない。朽木白哉だ」
白哉も人型をとった。浮竹とはまた違った美しさをもつ、若い青年だった。
「ボクの家、広いから3人になっても平気だよ」
白哉は、首をと横に振った。
「私は、桜の木の中で休眠する。浮竹、行ってこい。思い人と通じあえたのであろう」
「春の記憶は、あまり蘇っていないだろう。前世の記憶は、夢などでゆっくり思いだす。ということで、ちょっと京楽の家に寝込みを襲いに行ってくるぞ、白哉」
「ほどほどにしておけ」
「え、ボク、寝込み襲われるの!?」
「冗談だ。ただ、お前の傍にいたい」
「うーん。ほんとはダメなんだけど、子猫の姿でいいよ。今、人の姿をとり続けているのは辛いんでしょ?」
「なぜわかった?」
浮竹が首をかしげると、京楽は札をだして浮竹の背後に飛ばし、除霊した。
「寄生虫?みたいなの、くっついてたから」
「え・・・気づかなかった」
「この手の妖怪は、宿主を少し苦しめるけど、気づかない場合が多いからね」
「すまん・・・・恩に着る。では、子猫の姿になるので、運んでくれ」
「名前、猫の時はジュリアでいい?」
「だめだ。浮竹と呼べ」
浮竹は、子猫姿になると、京楽に抱かれて京楽の部屋に入る。あまりもののない、殺風景な部屋だった。
「ここが、京楽の家か・・・・」
「広いでしょ」
「ああ」
浮竹は、人の姿をとった。
「3億したからね。ボクの家柄は元華族で、大正時代くらいまで貴族だったよ」
「ふうん。金はあるところにはあるんだな」
「まぁ、寝るためだけに使ってるような部屋だから。よければ、浮竹も一緒に住まない?桜の木がいいっていうなら、断ってもいいけど」
「一緒に住む」
即答だった。
「俺はお前を愛している。その意味を、教えてやる」
浮竹は、京楽を押し倒してキスをした。
「ん・・・・・・」
キスをしかされて、これはやばいと、浮竹はいったんストップを入れる。
「まだ、体の関係にはなりたくない」
「どうして?君はボクのことが好きで、ボクも君のこと気に入ったよ」
「まずはプラトニックからだ。キスとハグまで」
「ええ、それ生殺しじゃない?」
「春は、いきなり体の関係なんて求めてこなかった」
「ボクは春水。春じゃないよ」
「分かっている」
浮竹は、また子猫の姿に戻り、京楽のベッドの上で京楽と一緒に、ただ眠った。
浮竹の願いは、ただ愛しい者の傍にいること。
傍にいれるなら、なんだってする。
京楽は知らない。
浮竹が、精霊としての頂点に君臨する桜の精霊で、4大精霊長の1人だということを。
奴隷竜とSランク冒険者59
藍染が死んだ。
突然のことであった。
真竜であるサンシャインドラゴンの黒崎一護、フルムーンドラゴンの浮竹十四郎、そしてインフェルノドラゴンである京楽春水の三人で、ドラゴン化して空に浮かぶ島の結界をうちやぶった。
勇者として召喚された平子真子をはじめとして、黒崎一護、朽木ルキア、阿散井恋次、朽木白哉の5人パーティーと、二組の浮竹と京楽で戦いに挑み、勝った。
世界中で、祝いの祝賀会が開かれた。
空位となった魔王の座に、今度は勇者であった平子真子がつき、魔族を監視しながら人々との共存の道を歩き始めた。
浮竹も京楽も、ハイエルフの浮竹とインフェルノドラゴンの京楽も、平子真子が魔王になるのは反対したのだが、魔王に悪しき者がつくとまた藍染と同じ道をたどるということで、人間の国々と国交を魔大陸で開始しながら、新しい魔族と人間とドラゴンの共存の時代がやってきた。
「長いようで、短かったのかな」
「そうだな。長いようで短かったな」
浮竹と京楽は、せめてと、藍染の墓を作ってやった。
めちゃくちゃな魔王であったが、魔族による世界の統一を目指した魔王であった。
元は人間である。
魔王にどんな人物がつくかで、その後数十年数百年の魔族の生き方と世界の在り方が変わる。
先々代の、藍染に殺された魔王も、魔族による世界統一を目指していた。
藍染も、同じ道をたどった。
けれど、平子真子は違う。
人間との共存の道を選んだ。
「ボクたちは、それでもこれからもSランク冒険者としてやっていくけどね」
「俺もだ」
出会いは、奴隷と貴族。
奴隷だった浮竹は、京楽に買われて奴隷から解放され、京楽と生きる契りを交わした。
違う大陸にいる、ハイエルフの浮竹やインフェルノドラゴンの京楽という存在を知り、友好をたもちつつ、月日は流れる。
浮竹は、卵を産んだ。
京楽との間の子供だった。
ドラゴンは普通、孵化してすぐに独り立ちする者がほとんどだが、卵から生まれてきた子は人の姿をしていた。
赤ん坊だった。
卵から赤子がかえったと、皆で騒いだ。
人間とドラゴンのハーフであった。
浮竹は希少すぎるドラゴンのため、雄でも卵をうめたし、人間と異種交配もできた。
アフターピルをわざと1週間のまずに交わって、すぐに妊娠した。
男の子であった。
名前は、春雷(しゅんらい)と名付けられた。
ドラゴンと人間との、長い歴史も変わっていく。
隠れ住んでいたドラゴンたちは人化して、人の世界にまじっていく。
同じように、魔族も。
藍染が死んで、10年が経った。
春雷は、まだ幼子だった。
ドラゴンの血も引いているので、成長が遅いのだ。
50年が経った。
春雷は少年になっていた。
自分の父と母が、人間とドラゴンで、男同士であることとか、そういうことを気にしない子だった。
『やあ、春雷。一人で遊びに来たのかい?』
インフェルノドラゴンの京楽は、相変わらず人間嫌いだが、昔よりかなりましになった。
ハイエルフの浮竹は、今も魔法書を作り続けている。
『あ、春雷、竜化はできるようになったか?』
ハイエルフの浮竹が聞くと、春雷は笑って、「少しだけ」と言った。
「ああ、俺たちの息子がお邪魔してすまないな」
「春雷。ハイエルフの浮竹とインフェルノドラゴンのボクのところに行くなら、まず父さんたちに許可をもらいなさい」
「はい、父上」
京楽に外見は似ているが、よくできたしっかりした子だった。
「ねぇ、兄弟作らない?」
「ハーフドラゴンの生き血は永遠の命をもつとされている。守るのは一人で手一杯だ」
「そうかー。残念」
浮竹も京楽も、春雷を大切に育てた。
やがて、独り立ちの日が訪れたが、同じSランク冒険者なので、ギルドでちょくちょくあった。
京楽は人間だが、ドラゴンの浮竹と同じ時間を生きる契約をしているため、若い姿のまま数十年と生きていた。
魔族の冒険者も登場するようになり、魔族とパーティーを組む人間も増えてきた。
世界は、変わっていく。
浮竹と京楽は不変であるが。
廻れ廻れ。
世界は廻る。
さぁ、新しい冒険の旅を始めよう。
まず、君の名前を教えてくれるかな?
突然のことであった。
真竜であるサンシャインドラゴンの黒崎一護、フルムーンドラゴンの浮竹十四郎、そしてインフェルノドラゴンである京楽春水の三人で、ドラゴン化して空に浮かぶ島の結界をうちやぶった。
勇者として召喚された平子真子をはじめとして、黒崎一護、朽木ルキア、阿散井恋次、朽木白哉の5人パーティーと、二組の浮竹と京楽で戦いに挑み、勝った。
世界中で、祝いの祝賀会が開かれた。
空位となった魔王の座に、今度は勇者であった平子真子がつき、魔族を監視しながら人々との共存の道を歩き始めた。
浮竹も京楽も、ハイエルフの浮竹とインフェルノドラゴンの京楽も、平子真子が魔王になるのは反対したのだが、魔王に悪しき者がつくとまた藍染と同じ道をたどるということで、人間の国々と国交を魔大陸で開始しながら、新しい魔族と人間とドラゴンの共存の時代がやってきた。
「長いようで、短かったのかな」
「そうだな。長いようで短かったな」
浮竹と京楽は、せめてと、藍染の墓を作ってやった。
めちゃくちゃな魔王であったが、魔族による世界の統一を目指した魔王であった。
元は人間である。
魔王にどんな人物がつくかで、その後数十年数百年の魔族の生き方と世界の在り方が変わる。
先々代の、藍染に殺された魔王も、魔族による世界統一を目指していた。
藍染も、同じ道をたどった。
けれど、平子真子は違う。
人間との共存の道を選んだ。
「ボクたちは、それでもこれからもSランク冒険者としてやっていくけどね」
「俺もだ」
出会いは、奴隷と貴族。
奴隷だった浮竹は、京楽に買われて奴隷から解放され、京楽と生きる契りを交わした。
違う大陸にいる、ハイエルフの浮竹やインフェルノドラゴンの京楽という存在を知り、友好をたもちつつ、月日は流れる。
浮竹は、卵を産んだ。
京楽との間の子供だった。
ドラゴンは普通、孵化してすぐに独り立ちする者がほとんどだが、卵から生まれてきた子は人の姿をしていた。
赤ん坊だった。
卵から赤子がかえったと、皆で騒いだ。
人間とドラゴンのハーフであった。
浮竹は希少すぎるドラゴンのため、雄でも卵をうめたし、人間と異種交配もできた。
アフターピルをわざと1週間のまずに交わって、すぐに妊娠した。
男の子であった。
名前は、春雷(しゅんらい)と名付けられた。
ドラゴンと人間との、長い歴史も変わっていく。
隠れ住んでいたドラゴンたちは人化して、人の世界にまじっていく。
同じように、魔族も。
藍染が死んで、10年が経った。
春雷は、まだ幼子だった。
ドラゴンの血も引いているので、成長が遅いのだ。
50年が経った。
春雷は少年になっていた。
自分の父と母が、人間とドラゴンで、男同士であることとか、そういうことを気にしない子だった。
『やあ、春雷。一人で遊びに来たのかい?』
インフェルノドラゴンの京楽は、相変わらず人間嫌いだが、昔よりかなりましになった。
ハイエルフの浮竹は、今も魔法書を作り続けている。
『あ、春雷、竜化はできるようになったか?』
ハイエルフの浮竹が聞くと、春雷は笑って、「少しだけ」と言った。
「ああ、俺たちの息子がお邪魔してすまないな」
「春雷。ハイエルフの浮竹とインフェルノドラゴンのボクのところに行くなら、まず父さんたちに許可をもらいなさい」
「はい、父上」
京楽に外見は似ているが、よくできたしっかりした子だった。
「ねぇ、兄弟作らない?」
「ハーフドラゴンの生き血は永遠の命をもつとされている。守るのは一人で手一杯だ」
「そうかー。残念」
浮竹も京楽も、春雷を大切に育てた。
やがて、独り立ちの日が訪れたが、同じSランク冒険者なので、ギルドでちょくちょくあった。
京楽は人間だが、ドラゴンの浮竹と同じ時間を生きる契約をしているため、若い姿のまま数十年と生きていた。
魔族の冒険者も登場するようになり、魔族とパーティーを組む人間も増えてきた。
世界は、変わっていく。
浮竹と京楽は不変であるが。
廻れ廻れ。
世界は廻る。
さぁ、新しい冒険の旅を始めよう。
まず、君の名前を教えてくれるかな?
パフェ
「あけましておめでとうだ、一護。お年玉をくれ」
ルキアは、とってもかわいい笑みを浮かべて、無理難題をひっかけてきた。
「親父からもらっただろう?あと、白哉からも」
「貴様の父上と兄様はあげる義理のようなものがあるから、くれる。一護なら、遠慮せずにもらえるからな」
「少しは俺の財布事情を察してくれよ」
「そうか。エロ本の買いすぎで・・・・・」
「違うわ!」
ルキアの頭にチョップをかますと、ルキアは涙目になりながら見上げてきた。
う。かわいい。
一護がそう思うと、ルキアはにやりと笑った。
「今、私のことをかわいいと思ったな、貴様」
「思ってない」
「いや、思った」
「だから、思ってねぇ」
「では、お年玉ももらえないような財布事情を察して、メロンクリームソーダパフェで手を打ってやろう」
「なんだよ、それ」
一護は苦笑して、ルキアの頭をなでた。
ルキアは、猫のように一護に頭を撫でられて気持ちよさげにしていた。
「じゃあ決まりだ。今から行くぞ!」
「おい、おかわりはだめだぞ。新しいパソコン買ってマジで金欠なんだからな!」
「ふふ、知っておるぞ。あさってはバイトしてる店の給料日であろう」
「何で知ってやがる!」
「さぁ、なぜであろうな?」
正解は、カレンダーに花丸がしてあったから、ルキアの感からきていた。
「あーもう、おかわりは1回だけだぞ」
「では、行くぞ・・・・寒い!」
ルキアは、暖房の効いた部屋から出て外に続く扉をあけてしめた。
「寒いから、温かいものにする・・・・・と思ったであろう?寒さを我慢して温かいレストランに入って食べるパフェが至福なのだ!」
「あー、さいでっか」
一護はもうどうでもよさげになっていた。
コートをきて、ルキアとおそろいのマフラーと手袋をする。ルキアは耳当てもしていた。
「では、パフェへ向けて出発!」
「あいよー」
長らく使っていたパソコンがついにお陀仏になって、15万の新しいノートパソコンを買った。
半分は、値段が値段だし、父親に出してもらった。
まだ高校生だ。
バイトをしているといっても、月に十数万も稼げるわけがない。
ルキアは白哉から札束もらって、いろいろ散財しているが。
「ほら、ルキア、行くぞ」
「ん?手をつなぐのか?」
「んだよ、わりぃかよ」
「いや、貴様もかわいいところがあるのだなと思ってな」
「彼氏彼女だろ。手繋いでも普通だろ」
「か、彼女な。慣れぬな。貴様と付き合っていると兄様にばれたら、兄様は怒るであろうか」
「いや、すでにばれてるからな」
「そうか。すでにばれて・・・・・えええええええええ」
ルキアは飛び上がった。
「何故だ!いつばれた!」
「この前、尸魂界に行った時、ルキアとキスしてるシーン見られて、呼び出しくらって、千本桜向けられて、幸せにしますって頭さげまくった」
「そうか・・・・兄様あああああああ」
ルキアは、今すぐ白哉を呼んで遊びではないと伝えたかった。
「大丈夫だ。白哉はちゃんと話したら分かってくれた」
「そうか。兄様は、私たちのことを知っているのか・・・・・・」
「んで、パフェ食うのはやめるのか?」
「あ、行くぞ!ほら、一護、もたもたせずに歩け!」
「さっむ・・・・今年は冷えるっていうしな」
マフラーを顔の半分まで巻き付けて、一護はルキアと手を繋いで歩きだす。
今日も、明日も、これからも。
ルキアは、とってもかわいい笑みを浮かべて、無理難題をひっかけてきた。
「親父からもらっただろう?あと、白哉からも」
「貴様の父上と兄様はあげる義理のようなものがあるから、くれる。一護なら、遠慮せずにもらえるからな」
「少しは俺の財布事情を察してくれよ」
「そうか。エロ本の買いすぎで・・・・・」
「違うわ!」
ルキアの頭にチョップをかますと、ルキアは涙目になりながら見上げてきた。
う。かわいい。
一護がそう思うと、ルキアはにやりと笑った。
「今、私のことをかわいいと思ったな、貴様」
「思ってない」
「いや、思った」
「だから、思ってねぇ」
「では、お年玉ももらえないような財布事情を察して、メロンクリームソーダパフェで手を打ってやろう」
「なんだよ、それ」
一護は苦笑して、ルキアの頭をなでた。
ルキアは、猫のように一護に頭を撫でられて気持ちよさげにしていた。
「じゃあ決まりだ。今から行くぞ!」
「おい、おかわりはだめだぞ。新しいパソコン買ってマジで金欠なんだからな!」
「ふふ、知っておるぞ。あさってはバイトしてる店の給料日であろう」
「何で知ってやがる!」
「さぁ、なぜであろうな?」
正解は、カレンダーに花丸がしてあったから、ルキアの感からきていた。
「あーもう、おかわりは1回だけだぞ」
「では、行くぞ・・・・寒い!」
ルキアは、暖房の効いた部屋から出て外に続く扉をあけてしめた。
「寒いから、温かいものにする・・・・・と思ったであろう?寒さを我慢して温かいレストランに入って食べるパフェが至福なのだ!」
「あー、さいでっか」
一護はもうどうでもよさげになっていた。
コートをきて、ルキアとおそろいのマフラーと手袋をする。ルキアは耳当てもしていた。
「では、パフェへ向けて出発!」
「あいよー」
長らく使っていたパソコンがついにお陀仏になって、15万の新しいノートパソコンを買った。
半分は、値段が値段だし、父親に出してもらった。
まだ高校生だ。
バイトをしているといっても、月に十数万も稼げるわけがない。
ルキアは白哉から札束もらって、いろいろ散財しているが。
「ほら、ルキア、行くぞ」
「ん?手をつなぐのか?」
「んだよ、わりぃかよ」
「いや、貴様もかわいいところがあるのだなと思ってな」
「彼氏彼女だろ。手繋いでも普通だろ」
「か、彼女な。慣れぬな。貴様と付き合っていると兄様にばれたら、兄様は怒るであろうか」
「いや、すでにばれてるからな」
「そうか。すでにばれて・・・・・えええええええええ」
ルキアは飛び上がった。
「何故だ!いつばれた!」
「この前、尸魂界に行った時、ルキアとキスしてるシーン見られて、呼び出しくらって、千本桜向けられて、幸せにしますって頭さげまくった」
「そうか・・・・兄様あああああああ」
ルキアは、今すぐ白哉を呼んで遊びではないと伝えたかった。
「大丈夫だ。白哉はちゃんと話したら分かってくれた」
「そうか。兄様は、私たちのことを知っているのか・・・・・・」
「んで、パフェ食うのはやめるのか?」
「あ、行くぞ!ほら、一護、もたもたせずに歩け!」
「さっむ・・・・今年は冷えるっていうしな」
マフラーを顔の半分まで巻き付けて、一護はルキアと手を繋いで歩きだす。
今日も、明日も、これからも。
肩たたき
「新年あけましておめでとうございます、隊長!」
「ああ・・・・あけましておめでとう。お年玉のかわりに、これをやる」
白哉が取り出したのは、恋次が愛用している店の新しいゴーグルだった。
「ちょ、これ最近でたばっかの一番高いやつ・・・」
「そうなのか?安かったぞ」
そりゃ、4大貴族の目線から見れば、恋次の愛用の店など安いものばかり売っているような店に見えるだろう。
700万環(700万)はくだらないゴーグルを、恋次はつけるのではなしにそっと懐にしまった。
せっかくもらったのだが、金額が金額なのでつけて傷でもつけたらいやだ。
「つけぬのか?気に入らぬのであれば、別のものを取り寄せるが・・・・・」
「あ、気に入りました!つけます!」
懐にしまいこんだが、白哉がつけないことを訝しがるので、つけた。
内心ひやひやした。
700万のゴーグル。
高すぎる。
それを、お年玉のかわりだとほいほい与える白哉は、やっぱり金銭感覚がおかしい。
「じゃあ、隊長にもお年玉あげますね」
「は?」
白哉はびっくりしていた。
まさか、自分より貧乏で年下の副官からお年玉をもらうとは思っていなかったからだ。
「いや、あの現金じゃないし、ちゃちいですけどこれ」
肩たたき券。
そうわりと達筆で書かれた紙の束をもらって、白哉は声もなく笑った。
「・・・・・・・」
つぼにはまったらしく、さりとて笑い声を大きくあげるような人物ではないから、むせだした。
「大丈夫ですか、隊長!」
「はははは・・・・まさか、肩たたき券とは・・・・では、さっそく1枚使ってもよいか?」
そう聞かれて、恋次は頷いた。
「最近、書類仕事が多くてちょうど肩がこっているのだ。頼む」
「あー。これ、けっこうこってますねぇ」
白哉のさらりとした黒髪をわけて、肩を露わにさせると白いうなじが見えて、ドキンと心臓がはねあがった。
隊長羽織を脱ぎ、死覇装だけの姿になると、華奢さがわかる。
白哉の肩をもんでいく。
「ん・・・・・」
きもちよさに、白哉が声をあげる。
その声が、閨のものに似ているせいで、恋次は少し焦った。
「あ・・・・・・・」
この人は、自分をあおっているのだろうか。
そんな思考がよぎる。
「うむ、もうよい。すまぬ、恋次」
「いえ、お粗末様でした!ちょっと用ができたので、いってきますね!すぐ戻りますから!」
まさか、白哉の肩たたきというか、肩もみで反応された声で、息子さんがたってしまったなんて言えずに、トイレにかけこんで処理する。
戻ると、白哉は不思議そうな顔をしていた。
「私の声で勃ってしまったのであろう。なぜ、隠す?」
ばれてたーーー!!
恋次は、天井を仰いだ。
「抜いてやることくらいなら、してやるぞ?」
「まじっすか」
「貴様とこういう関係になって何年経つと思っている」
「すんません」
恋次は、その後白哉に抜いてもらったのだが、我慢がきかずに隊首室で白哉を押し倒してしまうのであった。
そして、禁欲半月を言い渡されるのであった。
「ああ・・・・あけましておめでとう。お年玉のかわりに、これをやる」
白哉が取り出したのは、恋次が愛用している店の新しいゴーグルだった。
「ちょ、これ最近でたばっかの一番高いやつ・・・」
「そうなのか?安かったぞ」
そりゃ、4大貴族の目線から見れば、恋次の愛用の店など安いものばかり売っているような店に見えるだろう。
700万環(700万)はくだらないゴーグルを、恋次はつけるのではなしにそっと懐にしまった。
せっかくもらったのだが、金額が金額なのでつけて傷でもつけたらいやだ。
「つけぬのか?気に入らぬのであれば、別のものを取り寄せるが・・・・・」
「あ、気に入りました!つけます!」
懐にしまいこんだが、白哉がつけないことを訝しがるので、つけた。
内心ひやひやした。
700万のゴーグル。
高すぎる。
それを、お年玉のかわりだとほいほい与える白哉は、やっぱり金銭感覚がおかしい。
「じゃあ、隊長にもお年玉あげますね」
「は?」
白哉はびっくりしていた。
まさか、自分より貧乏で年下の副官からお年玉をもらうとは思っていなかったからだ。
「いや、あの現金じゃないし、ちゃちいですけどこれ」
肩たたき券。
そうわりと達筆で書かれた紙の束をもらって、白哉は声もなく笑った。
「・・・・・・・」
つぼにはまったらしく、さりとて笑い声を大きくあげるような人物ではないから、むせだした。
「大丈夫ですか、隊長!」
「はははは・・・・まさか、肩たたき券とは・・・・では、さっそく1枚使ってもよいか?」
そう聞かれて、恋次は頷いた。
「最近、書類仕事が多くてちょうど肩がこっているのだ。頼む」
「あー。これ、けっこうこってますねぇ」
白哉のさらりとした黒髪をわけて、肩を露わにさせると白いうなじが見えて、ドキンと心臓がはねあがった。
隊長羽織を脱ぎ、死覇装だけの姿になると、華奢さがわかる。
白哉の肩をもんでいく。
「ん・・・・・」
きもちよさに、白哉が声をあげる。
その声が、閨のものに似ているせいで、恋次は少し焦った。
「あ・・・・・・・」
この人は、自分をあおっているのだろうか。
そんな思考がよぎる。
「うむ、もうよい。すまぬ、恋次」
「いえ、お粗末様でした!ちょっと用ができたので、いってきますね!すぐ戻りますから!」
まさか、白哉の肩たたきというか、肩もみで反応された声で、息子さんがたってしまったなんて言えずに、トイレにかけこんで処理する。
戻ると、白哉は不思議そうな顔をしていた。
「私の声で勃ってしまったのであろう。なぜ、隠す?」
ばれてたーーー!!
恋次は、天井を仰いだ。
「抜いてやることくらいなら、してやるぞ?」
「まじっすか」
「貴様とこういう関係になって何年経つと思っている」
「すんません」
恋次は、その後白哉に抜いてもらったのだが、我慢がきかずに隊首室で白哉を押し倒してしまうのであった。
そして、禁欲半月を言い渡されるのであった。
不幸なる大吉
浮竹と京楽は、なぜか新勇者パーティーと一緒に初詣にいった。
「お、大吉だ」
浮竹がおみくじをひくと、大吉が出た。
「ボクは吉だね」
京楽がひくと、吉がでた。
「あー、ついてねぇ。俺、凶だわ」
少年魔法使いが、凶とでたおみくじをやぶりすてた。
「おおおおおおおおおおお」
1人、寒い季節の中腰みの姿でサンバを踊って、賽銭箱に投げられる金貨をさっと盗んでいた新勇者もおみくじをひいた。
「大吉だあああああ」
「え、うそ」
「まじか?」
京楽も浮竹も、疑ったが、新勇者の手の中には大吉と書かれたおみくじがあった。
「しかし、なぜに新年から腰みの姿でサンバを・・・・・」
浮竹がつっこむが、全員首を横に振る。
関わるな、放置しておけということだった。
びちゃ。
「うわぁ!はとの糞が頭に直撃した!なんでだ!俺は大吉をひいたんだぞ!」
「思うにさぁ、貧乏神のスキルもマックスまでもってる君が、大吉って明らかにおかしいんだよ。それ、不幸な意味での大吉じゃない?」
京楽がそう言って、新勇者の手から大吉のおみくじをよくみると、小さな文字で「不幸の」と書かれてあった。
「やっぱり。こんな展開だと思ってたよ」
「きいいいいい!!!」
新勇者はサンバを踊りまくり、金貨をくすねる。
「おい、そこの君。ちょっと、署まできてもらおうか」
警察に通報されて、新勇者はお縄となり、ひったてられていった。
それから1週間は新勇者の姿を見なかった。
新勇者パーティーに聞いても、どこにいるのかわからないそうで、留置所から出たのは確かなのだが、それからの足取りが不明であった。
いないなら平和だが、いじめれないのでつまらない。
浮竹と京楽がそう思う頃、新勇者は姿を魔王城に現した。
「財布おとしてなくした。家のかぎなくした。家そのものが賃貸のお金払ってなかったからなくなった。段ボールで家を建ててたら、たちのきを要求されて、魔法で妨害したら火をつけられた。毎日、頭にハトの糞が落ちる」
しくしくと泣き出した新勇者は、まともな食事をとれていなかったのか、痩せていた。
さすがに哀れと思った浮竹が、新勇者に昼食を食べさせてやった。
「うう、ありがとう魔王。お礼は、俺の体で・・・・」
裸になっておそいかかってきた新勇者に、浮竹は驚いて固まる。
京楽が、すんでのところで新勇者を投げ飛ばす。
「君は何をしにきたんだい!浮竹は君が哀れだから昼食をあげたのに、お礼が体とかふざけてるのかい?」
「だって、人工聖剣エクスカリバーもなくしてしまった。今の俺は新勇者という名の浮浪者だ」
「だからって・・・・・」
「勇者京楽も、俺の体でお礼をしてあげよう」
「ぎゃああああああああ!!!」
浮竹と京楽の間に、新勇者パーティーが新勇者と浮竹と京楽の間に割り込んだ。
「何ばかなことしてるんだよ新勇者」
と、少年魔法使いが。
「せっかく3時のおやつまでもらえるような、親密な関係になれたのがおじゃんになるじゃないの!」
と、女僧侶が。
「お前は永遠に帰ってこなくてよかったにゃん」
と獣人盗賊が。
「うす」
と、青年戦士が。
「うわあああああああん!大吉でたのにひどいめにしかあわないよおおお」
さすがに哀れになって、浮竹は新勇者についていたド貧乏神MAXのスキルを消してやった。
「スキルの貧乏神をけした。少しはましになるだろう」
「おおお、魔王、さては俺の美貌のとりこだな!?」
「きもい」
浮竹ははきすてた。
「うわあああん。きもくないもん!アフロのかつら被ったイケメン美少年だもん!」
「あんなこと言ってるよ?」
「そっとしておいてやれ。頭の中が豆腐なんだ」
京楽と浮竹はこそこそと会話をする。
「ということで、俺は今日からこの魔王城で働くことになりました。1日三食昼寝つきということで」
「おい、誰だあんなやつ雇ったの」
浮竹が聞くと、人材派遣会社が派遣してきたらしい。
勇者教の人材派遣会社だった。
魔王の寝首をかけといいたいのだろう。
「今すぐくび」
「うわあああああああん!!!」
「あーもう、泣くな。1週間だけ雇ってやる」
「ほんとに!?」
「金がないんだろう。人工聖剣の行方はこっちで探しておくから、浮浪者になるのはやめろ。かりにも勇者だろうが」
「うん」
浮竹は、サービスだと裸エプロンをしてきた新勇者を蹴り飛ばした。
「ひどい!!サービスなのに!!」
「そんなサービスはいらん!寝所は寮を使え。賃金は大目に出すから、1週間経ったら出て行けよ」
「1か月にしてええええ」
「浮竹、大丈夫?新勇者、一応君の敵だよ」
「こんな変態新勇者にやられるようなら、俺もそこまでの魔王ということだ」
「かっこいい」
京楽は、浮竹の手を握った。
それから、新勇者は最初は皿洗いだったのだが、皿を割りすぎて掃除係になったが、ほうきを折りすぎて家畜係になり、家畜をかってに食べているのがばれて、さすがにそれには怒った浮竹が、新勇者の追放を宣言した。
「きてまだ5日目だが・・・・あまりに使えない。さらに大事に飼育していたヤギを勝手にジンギスカンにして食べやがって・・・・追放だ!!!」
「ええええええ!!明日から、俺はどうやって暮らしていけばいんだ!」
「勇者教に養ってもらうなり、モンスターを倒して冒険者稼業するなり、好きにしろ」
「でも、俺には剣が・・・・・」
「これでしょ。人工聖剣エクスカリバー。食い逃げした質にとられてたの、金貨150枚払って取り返しておいたよ」
「おおお、勇者京楽、神か!」
新勇者は、京楽のほっぺたにキスをした。
「おえええええええ!!!浮竹、アルコールとって!」
「京楽に何をする!」
「うふん。だって、魔王とできてるんだろう?俺のほうが若いし美しいし・・・・・」
京楽は、本気で怒った。
「それ以上いったら、首と胴がさよならするからね」
「ひいいいい」
京楽の本気の殺気を浴びて、新勇者は失禁していた。
「ああん、おもらしプレイ!(*´Д`)ハァハァ」
「きもい!消えろおおおおお!!!!」
浮竹は、持てるだけの力と魔力を使って、新勇者を魔王城の窓から投げ捨てた。
キラン。
お星様になった新勇者は、隣の大陸にまでふきとばされていくのだった。
「はぁ。きもかった・・・・」
「浮竹、消毒してええ。新勇者にほっぺキスされたああ」
浮竹は、京楽の頬をペロリと舐めた。
「ねぇ、寝室いこ?」
「京楽・・・・・」
実は、新勇者パーティーはその場にいた。
「はい、解散。今日は解散ねー」
京楽がそう言い出すと、承知しているのか新勇者パーティーは引き上げていく。
「二人きりになるのも久しぶりだもんね」
「ああ、そうだな」
二人は、手を握り合って寝室に向かうのであった。
「お、大吉だ」
浮竹がおみくじをひくと、大吉が出た。
「ボクは吉だね」
京楽がひくと、吉がでた。
「あー、ついてねぇ。俺、凶だわ」
少年魔法使いが、凶とでたおみくじをやぶりすてた。
「おおおおおおおおおおお」
1人、寒い季節の中腰みの姿でサンバを踊って、賽銭箱に投げられる金貨をさっと盗んでいた新勇者もおみくじをひいた。
「大吉だあああああ」
「え、うそ」
「まじか?」
京楽も浮竹も、疑ったが、新勇者の手の中には大吉と書かれたおみくじがあった。
「しかし、なぜに新年から腰みの姿でサンバを・・・・・」
浮竹がつっこむが、全員首を横に振る。
関わるな、放置しておけということだった。
びちゃ。
「うわぁ!はとの糞が頭に直撃した!なんでだ!俺は大吉をひいたんだぞ!」
「思うにさぁ、貧乏神のスキルもマックスまでもってる君が、大吉って明らかにおかしいんだよ。それ、不幸な意味での大吉じゃない?」
京楽がそう言って、新勇者の手から大吉のおみくじをよくみると、小さな文字で「不幸の」と書かれてあった。
「やっぱり。こんな展開だと思ってたよ」
「きいいいいい!!!」
新勇者はサンバを踊りまくり、金貨をくすねる。
「おい、そこの君。ちょっと、署まできてもらおうか」
警察に通報されて、新勇者はお縄となり、ひったてられていった。
それから1週間は新勇者の姿を見なかった。
新勇者パーティーに聞いても、どこにいるのかわからないそうで、留置所から出たのは確かなのだが、それからの足取りが不明であった。
いないなら平和だが、いじめれないのでつまらない。
浮竹と京楽がそう思う頃、新勇者は姿を魔王城に現した。
「財布おとしてなくした。家のかぎなくした。家そのものが賃貸のお金払ってなかったからなくなった。段ボールで家を建ててたら、たちのきを要求されて、魔法で妨害したら火をつけられた。毎日、頭にハトの糞が落ちる」
しくしくと泣き出した新勇者は、まともな食事をとれていなかったのか、痩せていた。
さすがに哀れと思った浮竹が、新勇者に昼食を食べさせてやった。
「うう、ありがとう魔王。お礼は、俺の体で・・・・」
裸になっておそいかかってきた新勇者に、浮竹は驚いて固まる。
京楽が、すんでのところで新勇者を投げ飛ばす。
「君は何をしにきたんだい!浮竹は君が哀れだから昼食をあげたのに、お礼が体とかふざけてるのかい?」
「だって、人工聖剣エクスカリバーもなくしてしまった。今の俺は新勇者という名の浮浪者だ」
「だからって・・・・・」
「勇者京楽も、俺の体でお礼をしてあげよう」
「ぎゃああああああああ!!!」
浮竹と京楽の間に、新勇者パーティーが新勇者と浮竹と京楽の間に割り込んだ。
「何ばかなことしてるんだよ新勇者」
と、少年魔法使いが。
「せっかく3時のおやつまでもらえるような、親密な関係になれたのがおじゃんになるじゃないの!」
と、女僧侶が。
「お前は永遠に帰ってこなくてよかったにゃん」
と獣人盗賊が。
「うす」
と、青年戦士が。
「うわあああああああん!大吉でたのにひどいめにしかあわないよおおお」
さすがに哀れになって、浮竹は新勇者についていたド貧乏神MAXのスキルを消してやった。
「スキルの貧乏神をけした。少しはましになるだろう」
「おおお、魔王、さては俺の美貌のとりこだな!?」
「きもい」
浮竹ははきすてた。
「うわあああん。きもくないもん!アフロのかつら被ったイケメン美少年だもん!」
「あんなこと言ってるよ?」
「そっとしておいてやれ。頭の中が豆腐なんだ」
京楽と浮竹はこそこそと会話をする。
「ということで、俺は今日からこの魔王城で働くことになりました。1日三食昼寝つきということで」
「おい、誰だあんなやつ雇ったの」
浮竹が聞くと、人材派遣会社が派遣してきたらしい。
勇者教の人材派遣会社だった。
魔王の寝首をかけといいたいのだろう。
「今すぐくび」
「うわあああああああん!!!」
「あーもう、泣くな。1週間だけ雇ってやる」
「ほんとに!?」
「金がないんだろう。人工聖剣の行方はこっちで探しておくから、浮浪者になるのはやめろ。かりにも勇者だろうが」
「うん」
浮竹は、サービスだと裸エプロンをしてきた新勇者を蹴り飛ばした。
「ひどい!!サービスなのに!!」
「そんなサービスはいらん!寝所は寮を使え。賃金は大目に出すから、1週間経ったら出て行けよ」
「1か月にしてええええ」
「浮竹、大丈夫?新勇者、一応君の敵だよ」
「こんな変態新勇者にやられるようなら、俺もそこまでの魔王ということだ」
「かっこいい」
京楽は、浮竹の手を握った。
それから、新勇者は最初は皿洗いだったのだが、皿を割りすぎて掃除係になったが、ほうきを折りすぎて家畜係になり、家畜をかってに食べているのがばれて、さすがにそれには怒った浮竹が、新勇者の追放を宣言した。
「きてまだ5日目だが・・・・あまりに使えない。さらに大事に飼育していたヤギを勝手にジンギスカンにして食べやがって・・・・追放だ!!!」
「ええええええ!!明日から、俺はどうやって暮らしていけばいんだ!」
「勇者教に養ってもらうなり、モンスターを倒して冒険者稼業するなり、好きにしろ」
「でも、俺には剣が・・・・・」
「これでしょ。人工聖剣エクスカリバー。食い逃げした質にとられてたの、金貨150枚払って取り返しておいたよ」
「おおお、勇者京楽、神か!」
新勇者は、京楽のほっぺたにキスをした。
「おえええええええ!!!浮竹、アルコールとって!」
「京楽に何をする!」
「うふん。だって、魔王とできてるんだろう?俺のほうが若いし美しいし・・・・・」
京楽は、本気で怒った。
「それ以上いったら、首と胴がさよならするからね」
「ひいいいい」
京楽の本気の殺気を浴びて、新勇者は失禁していた。
「ああん、おもらしプレイ!(*´Д`)ハァハァ」
「きもい!消えろおおおおお!!!!」
浮竹は、持てるだけの力と魔力を使って、新勇者を魔王城の窓から投げ捨てた。
キラン。
お星様になった新勇者は、隣の大陸にまでふきとばされていくのだった。
「はぁ。きもかった・・・・」
「浮竹、消毒してええ。新勇者にほっぺキスされたああ」
浮竹は、京楽の頬をペロリと舐めた。
「ねぇ、寝室いこ?」
「京楽・・・・・」
実は、新勇者パーティーはその場にいた。
「はい、解散。今日は解散ねー」
京楽がそう言い出すと、承知しているのか新勇者パーティーは引き上げていく。
「二人きりになるのも久しぶりだもんね」
「ああ、そうだな」
二人は、手を握り合って寝室に向かうのであった。
浮竹死んだけど幽霊です憑いてます25 蛇年
「今年もあけましておめでとう」
「ああ、おめでとう」
今年は、蛇年であった。
京楽が兎年のバニーヘアバンドを出してきた時のように、変なものを出してくることはなく、普通にお茶とお菓子が用意された。
昨日、浮竹はお留守番をさせられて、憑いているのだけど、京楽から離れていた。
「蛇年ということで、焼き物をつくってみたんだ。巳の焼き物だよ」
色までつけられていたが、とぐろをまいたそれはただのうんこにしか見えなかった。
「な・・・・・なんというか、奇妙な形だな」
「蛇はとぐろを巻くじゃない。その姿に粘土をいじって、焼き物にして色をつけたんだよ」
色は、茶色だった。
ますます、うんこの置物に見えてきた。
目は一応あるのだが、全体的に黒ずんでいるせいで目立たない。
「ほう、これはうんこの置物か?珍しいものを作るアホがいたものじゃな!」
「ちょ、夜一ちゃん!うんこの置物はないでしょ!」
突然、音もなく1番隊の執務室に現れた夜一は、肌も露わないつもの隠密起動の恰好で、2つある焼き物をみる。
「片方は、浮竹にやるつもりだったのか?浮竹も、うんこの焼き物なんてもらっても嬉しくもなかろう」
「いや、俺はたとえ本当にうんこの焼き物であっても、そこそこうれしいぞ。京楽が、俺のために自分の時間を犠牲にして、作ってくれた手作りのものだからな」
「浮竹ええええ」
浮竹に抱き着きたいが、浮竹は霊体なため透けてしまっていて、抱きしめることはできなかった。
たまに食べ物でエネルギーをとって、実体化できることはできるし、霊体を触れる手袋を使うと、浮竹を触ることはできた。
京楽は、霊体を触れる手袋をはめて、浮竹の頭を撫でまくった。
「ちょ、しつこいぞ、京楽」
浮竹が、何度も撫でる手がうっとうしくなって、京楽から距離をとる。
「ごめんごめん、でもつい嬉しくて」
京楽は、黒猫姿になって伸びをしている夜一にチュールをあげてから、浮竹を見る。
「実は、他の隊長たちの分もあるんだ」
「ほお。他の隊長にもうんこの焼き物を配るのか」
夜一は、黒猫姿のまま、笑った。
「他の隊長たちには、こっちの焼き物さ」
白い、蛇の焼き物があった。
どっからどう見ても蛇で、なぜに京楽は自分の分と浮竹の分をうんこのような焼き物になったのか、意味が分からなかった。
「京楽、お前まともに蛇の焼き物作れるのに、なぜ自分たちの分だけうんこみたいなんだ?」
「いやぁ、愛をこめたからねぇ。愛をこめすぎて、ほんとは白かったんだけど、焼きあがると真っ黒になってて、白い色を塗ってみたんだけど、茶色になちゃった」
てへっと舌を出すが、みかけは40前後のおっさんなので、あまりかわいくはない。
「俺も蛇の焼き物作る」
「え、でも実体化しないと作れないよ?」
「手だけ実体化する。手だけなら、2時間くらい実体化できそうだし」
浮竹はそう言って、京楽からあまっていた粘土をもらい、きちんとした蛇の形にしたものを作った。自分の分と、京楽の分の2個を作った。
「あとは、焼き上げて色を塗るだけだ」
「じゃあ、さっそく焼きにいこうか」
「わしの存在をないものとして扱うとは・・・・京楽も浮竹も、やるのお」
夜一は、一番隊の隊舎を飛び出して、きっと今頃夢中で自分を探しているであろう砕蜂をからかいに走り出す。
「おっと、隊長ではないが、砕蜂の分とわしの分、2つ焼き物をいただいていくぞ」
すでに無人となった一番隊執務室でそう言って、京楽が作った白い蛇の焼き物を2つもらっていく夜一であった。
一方の浮竹と京楽は、焼き物をする場所にきていた。
「お、京楽隊長、また焼き物ですか?」
「うん。今回は浮竹が作ったんだ。焼いてくれるかな?」
「はい、喜んで。明日には焼きあがっていると思うんで、明日の朝に取りにきてください」
「あー、明日の朝が待ち遠しいねぇ」
「別に、急ぎじゃなかったのに」
浮竹が苦笑すると、京楽も苦笑する。
「だって、浮竹の手作りってもう機会がないともらえないじゃい」
「それはそうだが」
「浮竹の手作りのものなんて、大切すぎて一生の宝物にするよ」
「大げさだな・・・・・・・」
浮竹は気分をよくしたのか、少しだけ実体化して京楽と唇を重ねる。
「ん・・・・・」
京楽は、貪るように浮竹に口づけた。
「んあっ・・・・もう限界だ。元に戻るぞ」
浮竹を抱いていた京楽の手は、虚空をつかんだ。
「ああ、こういう時実体化するのに時間制限があるのが悔しいねぇ」
「実体化できるだけ、まだましだろう。俺も、幽霊だったからまさか実体化できると最初思ってなかったし」
ある日、京楽が起きたら隣に浮竹が透き通った幽霊の体で、京楽に憑いていたのだ。
今では月に数時間実体化できたり、憑いてるといっても最初は離れられなかったが、今では浮竹は自由に外を行き来できるようにまでなっていた。
それでも、基本京楽に憑いて、その霊圧を吸い上げて存在しているので、どこかへ出かけても必ず京楽の元に帰ってくる。
浮竹が死んだものとして、世界に絶望していた京楽は、幽霊であってもまた浮竹に会うことができて、どれほど喜んだことか。
結婚式まで挙げてしまい、新婚旅行にまで出かけた。
もう、浮竹の存在は尸魂界中に知れ渡っていた。
次の日になり、焼き物を朝から浮竹と京楽はとりにきた。
綺麗に焼きあがっており、浮竹が手だけ実体化させて、白い体の色を塗って、目をつけて舌を赤くぬって、できあがりであった。
「これは、俺の分。こっちがお前の分だ」
京楽に、できたての焼き物を与えると、京楽は泣き出した。
「浮竹の手作りだああああ!」
「おい、泣くことはいだろう!」
「だって嬉しくて・・・・・」
「はぁ。一緒にいる今後も、また機会があったら何か手作りもの、作ってやるよ。料理はできないから、服とか?」
「楽しみにしてるね」
素人がいきなり服とかちょっと上級すぎて、無理っぽい気もしたが、誰かに手伝ってもらえばできそうなので、そうしようと思う浮竹だった。
今年の蛇年を飾る一番隊の執務室の机には、浮竹の作った綺麗な蛇の焼き物と、京楽の作ったうんこな焼き物が並ぶのであった。
「ああ、おめでとう」
今年は、蛇年であった。
京楽が兎年のバニーヘアバンドを出してきた時のように、変なものを出してくることはなく、普通にお茶とお菓子が用意された。
昨日、浮竹はお留守番をさせられて、憑いているのだけど、京楽から離れていた。
「蛇年ということで、焼き物をつくってみたんだ。巳の焼き物だよ」
色までつけられていたが、とぐろをまいたそれはただのうんこにしか見えなかった。
「な・・・・・なんというか、奇妙な形だな」
「蛇はとぐろを巻くじゃない。その姿に粘土をいじって、焼き物にして色をつけたんだよ」
色は、茶色だった。
ますます、うんこの置物に見えてきた。
目は一応あるのだが、全体的に黒ずんでいるせいで目立たない。
「ほう、これはうんこの置物か?珍しいものを作るアホがいたものじゃな!」
「ちょ、夜一ちゃん!うんこの置物はないでしょ!」
突然、音もなく1番隊の執務室に現れた夜一は、肌も露わないつもの隠密起動の恰好で、2つある焼き物をみる。
「片方は、浮竹にやるつもりだったのか?浮竹も、うんこの焼き物なんてもらっても嬉しくもなかろう」
「いや、俺はたとえ本当にうんこの焼き物であっても、そこそこうれしいぞ。京楽が、俺のために自分の時間を犠牲にして、作ってくれた手作りのものだからな」
「浮竹ええええ」
浮竹に抱き着きたいが、浮竹は霊体なため透けてしまっていて、抱きしめることはできなかった。
たまに食べ物でエネルギーをとって、実体化できることはできるし、霊体を触れる手袋を使うと、浮竹を触ることはできた。
京楽は、霊体を触れる手袋をはめて、浮竹の頭を撫でまくった。
「ちょ、しつこいぞ、京楽」
浮竹が、何度も撫でる手がうっとうしくなって、京楽から距離をとる。
「ごめんごめん、でもつい嬉しくて」
京楽は、黒猫姿になって伸びをしている夜一にチュールをあげてから、浮竹を見る。
「実は、他の隊長たちの分もあるんだ」
「ほお。他の隊長にもうんこの焼き物を配るのか」
夜一は、黒猫姿のまま、笑った。
「他の隊長たちには、こっちの焼き物さ」
白い、蛇の焼き物があった。
どっからどう見ても蛇で、なぜに京楽は自分の分と浮竹の分をうんこのような焼き物になったのか、意味が分からなかった。
「京楽、お前まともに蛇の焼き物作れるのに、なぜ自分たちの分だけうんこみたいなんだ?」
「いやぁ、愛をこめたからねぇ。愛をこめすぎて、ほんとは白かったんだけど、焼きあがると真っ黒になってて、白い色を塗ってみたんだけど、茶色になちゃった」
てへっと舌を出すが、みかけは40前後のおっさんなので、あまりかわいくはない。
「俺も蛇の焼き物作る」
「え、でも実体化しないと作れないよ?」
「手だけ実体化する。手だけなら、2時間くらい実体化できそうだし」
浮竹はそう言って、京楽からあまっていた粘土をもらい、きちんとした蛇の形にしたものを作った。自分の分と、京楽の分の2個を作った。
「あとは、焼き上げて色を塗るだけだ」
「じゃあ、さっそく焼きにいこうか」
「わしの存在をないものとして扱うとは・・・・京楽も浮竹も、やるのお」
夜一は、一番隊の隊舎を飛び出して、きっと今頃夢中で自分を探しているであろう砕蜂をからかいに走り出す。
「おっと、隊長ではないが、砕蜂の分とわしの分、2つ焼き物をいただいていくぞ」
すでに無人となった一番隊執務室でそう言って、京楽が作った白い蛇の焼き物を2つもらっていく夜一であった。
一方の浮竹と京楽は、焼き物をする場所にきていた。
「お、京楽隊長、また焼き物ですか?」
「うん。今回は浮竹が作ったんだ。焼いてくれるかな?」
「はい、喜んで。明日には焼きあがっていると思うんで、明日の朝に取りにきてください」
「あー、明日の朝が待ち遠しいねぇ」
「別に、急ぎじゃなかったのに」
浮竹が苦笑すると、京楽も苦笑する。
「だって、浮竹の手作りってもう機会がないともらえないじゃい」
「それはそうだが」
「浮竹の手作りのものなんて、大切すぎて一生の宝物にするよ」
「大げさだな・・・・・・・」
浮竹は気分をよくしたのか、少しだけ実体化して京楽と唇を重ねる。
「ん・・・・・」
京楽は、貪るように浮竹に口づけた。
「んあっ・・・・もう限界だ。元に戻るぞ」
浮竹を抱いていた京楽の手は、虚空をつかんだ。
「ああ、こういう時実体化するのに時間制限があるのが悔しいねぇ」
「実体化できるだけ、まだましだろう。俺も、幽霊だったからまさか実体化できると最初思ってなかったし」
ある日、京楽が起きたら隣に浮竹が透き通った幽霊の体で、京楽に憑いていたのだ。
今では月に数時間実体化できたり、憑いてるといっても最初は離れられなかったが、今では浮竹は自由に外を行き来できるようにまでなっていた。
それでも、基本京楽に憑いて、その霊圧を吸い上げて存在しているので、どこかへ出かけても必ず京楽の元に帰ってくる。
浮竹が死んだものとして、世界に絶望していた京楽は、幽霊であってもまた浮竹に会うことができて、どれほど喜んだことか。
結婚式まで挙げてしまい、新婚旅行にまで出かけた。
もう、浮竹の存在は尸魂界中に知れ渡っていた。
次の日になり、焼き物を朝から浮竹と京楽はとりにきた。
綺麗に焼きあがっており、浮竹が手だけ実体化させて、白い体の色を塗って、目をつけて舌を赤くぬって、できあがりであった。
「これは、俺の分。こっちがお前の分だ」
京楽に、できたての焼き物を与えると、京楽は泣き出した。
「浮竹の手作りだああああ!」
「おい、泣くことはいだろう!」
「だって嬉しくて・・・・・」
「はぁ。一緒にいる今後も、また機会があったら何か手作りもの、作ってやるよ。料理はできないから、服とか?」
「楽しみにしてるね」
素人がいきなり服とかちょっと上級すぎて、無理っぽい気もしたが、誰かに手伝ってもらえばできそうなので、そうしようと思う浮竹だった。
今年の蛇年を飾る一番隊の執務室の机には、浮竹の作った綺麗な蛇の焼き物と、京楽の作ったうんこな焼き物が並ぶのであった。
奴隷竜とSランク冒険者58
ちびドラゴンになった浮竹は、いろんなストレスでちびドラゴン化したインフェルノドラゴンの京楽にもたれかかり、ぱたぱたと白い翼で空を飛んでインフェルノドラゴンの京楽をもちあげたりして、遊んでいた。
『あのね、見かけはこうだけど、ボクは中身は大人だから・・・・・・』
「ぴぎゃああ?」
浮竹は分からないと首をかしげる。
「ぬおおおおおおおお、嫉妬おおおお」
京楽は仲のいい二人を見て、嫉妬していた。
『冒険者の京楽、おちついてくれ』
「ぬおおお、嫉妬の炎で火事がおきそう」
『おーい、フルムーンドラゴンの俺。京楽で遊ぶのはほどほどにしてやってくれよ。まだ病み上がりなんだから』
「ぴぎゃああ!!!」
インフェルノドラゴンの京楽をぶんぶん振り回して、浮竹は遊んでいた。
インフェルノドラゴンの京楽の中身は大人のままだが、ドラゴンの姿になった浮竹は中身まで子供に戻ってしまう。
子供にきつく言っても分からないので、インフェルノドラゴンの京楽は浮竹の遊びにつきあってやった。
「嫉妬おおおおお」
「ぴぎゃああ」
「ぴーーー」
二人して、京楽に向かってブレスを吐いた。
まずは浮竹のアイシクルブレスを受けて京楽は凍り付き、次にインフェルノドラゴンの京楽の炎で溶かされて黒焦げになった。
「のあああ、髪がアフロにいいいいい!!!」
「ぴぎゃぴぎゃ」
それを見て、浮竹は笑っていた。
インフェルノドラゴンの京楽は、やりすぎたかなと思った。
『仕方ないなぁ。ヒール』
「あ、元に戻った。アフロもダメージ扱いなのね」
ハイエルフの浮竹がヒールを唱えると、京楽のアフロは元に戻っていた。
「ぴぎゃあああ」
「え、もっかいアフロになれって?いやだよ!いくら浮竹の頼みでもいやなものはいやだよ」
「ぴえええええん」
泣き出した浮竹を、ハイエルフの浮竹が抱っこしてあやす。
「嫉妬おおおおお」
京楽は、なんにでも嫉妬するようになっていた。
「浮竹おいで」
「ぴぎゃああ」
いやだと首をふり、浮竹はハイエルフの浮竹にしがみつく。
「なんでええええ」
「ぴぎゃ」
「それより腹減ったから飯作れって?はいはい、分かりましたよ・・・・」
この4人の中で、料理できるのは京楽だけだった。
いつもはインフェルノドラゴンの京楽も料理をするが、ストレスでちびドラゴン姿なので調理は不可能に近い。
頑張ればできそうだけど。
「かなり前に渡したブラックサーペントの肉、残ってるよね?」
『ああ。食べきれなくて、アイテムポケットの中に収納したままだ』
「じゃあ、ブラックサーペントの餃子と、牛丼ならぬブラックサーペント丼でも作りますか」
「ぴぎゃ!」
ご飯を作ってくれると分かって、浮竹は京楽の頭の上にのっかる。
「つまみぐいはだめだよ」
「ぴぎゃああああ!!!」
つまみ食いする気満々だった浮竹は、京楽の言葉を聞かずに、まだ完成していないブラックサーペントの餃子をつまみ食いして、まだ完成していない生肉であったが、ドラゴンはもともと肉食であるから、気にしたそぶりも見せずに、浮竹はつまみ食いをする。
「ああもう、浮竹がいると料理がいっこうにできあがらない。ハイエルフの浮竹、浮竹を頼むよ」
ぽいっと渡されて、浮竹はハイエルフの浮竹に思いっきりもふもふされて、「ぴぎゃぴぎゃ」と喜ぶのであった。
ちなみに、もふられるのは気持ちがいいらしい。
「はい、完成」
京楽は、ブラックサーペントの餃子とブラックサーペント丼を出してきた。
飲み物は果実酒を。
果実酒を、浮竹は飲もうとして、中身が自分だけオレンジジュースであることに気づいて、文句をいう。
「ぴぎゃああ」
「え?酒をよこせ・・・ってそんなこといってないか。コーラのほうがよかったの?」
「ぴぎゃああ」
「仕方ないなぁ。コーラ入れてあげるから、コップもっておいで」
「ぴぎゃ」
『『なんだかんだいって、仲がいい』』
見事にはもる、ハイエルフの浮竹とインフェルノドラゴンの京楽であった。
『あのね、見かけはこうだけど、ボクは中身は大人だから・・・・・・』
「ぴぎゃああ?」
浮竹は分からないと首をかしげる。
「ぬおおおおおおおお、嫉妬おおおお」
京楽は仲のいい二人を見て、嫉妬していた。
『冒険者の京楽、おちついてくれ』
「ぬおおお、嫉妬の炎で火事がおきそう」
『おーい、フルムーンドラゴンの俺。京楽で遊ぶのはほどほどにしてやってくれよ。まだ病み上がりなんだから』
「ぴぎゃああ!!!」
インフェルノドラゴンの京楽をぶんぶん振り回して、浮竹は遊んでいた。
インフェルノドラゴンの京楽の中身は大人のままだが、ドラゴンの姿になった浮竹は中身まで子供に戻ってしまう。
子供にきつく言っても分からないので、インフェルノドラゴンの京楽は浮竹の遊びにつきあってやった。
「嫉妬おおおおお」
「ぴぎゃああ」
「ぴーーー」
二人して、京楽に向かってブレスを吐いた。
まずは浮竹のアイシクルブレスを受けて京楽は凍り付き、次にインフェルノドラゴンの京楽の炎で溶かされて黒焦げになった。
「のあああ、髪がアフロにいいいいい!!!」
「ぴぎゃぴぎゃ」
それを見て、浮竹は笑っていた。
インフェルノドラゴンの京楽は、やりすぎたかなと思った。
『仕方ないなぁ。ヒール』
「あ、元に戻った。アフロもダメージ扱いなのね」
ハイエルフの浮竹がヒールを唱えると、京楽のアフロは元に戻っていた。
「ぴぎゃあああ」
「え、もっかいアフロになれって?いやだよ!いくら浮竹の頼みでもいやなものはいやだよ」
「ぴえええええん」
泣き出した浮竹を、ハイエルフの浮竹が抱っこしてあやす。
「嫉妬おおおおお」
京楽は、なんにでも嫉妬するようになっていた。
「浮竹おいで」
「ぴぎゃああ」
いやだと首をふり、浮竹はハイエルフの浮竹にしがみつく。
「なんでええええ」
「ぴぎゃ」
「それより腹減ったから飯作れって?はいはい、分かりましたよ・・・・」
この4人の中で、料理できるのは京楽だけだった。
いつもはインフェルノドラゴンの京楽も料理をするが、ストレスでちびドラゴン姿なので調理は不可能に近い。
頑張ればできそうだけど。
「かなり前に渡したブラックサーペントの肉、残ってるよね?」
『ああ。食べきれなくて、アイテムポケットの中に収納したままだ』
「じゃあ、ブラックサーペントの餃子と、牛丼ならぬブラックサーペント丼でも作りますか」
「ぴぎゃ!」
ご飯を作ってくれると分かって、浮竹は京楽の頭の上にのっかる。
「つまみぐいはだめだよ」
「ぴぎゃああああ!!!」
つまみ食いする気満々だった浮竹は、京楽の言葉を聞かずに、まだ完成していないブラックサーペントの餃子をつまみ食いして、まだ完成していない生肉であったが、ドラゴンはもともと肉食であるから、気にしたそぶりも見せずに、浮竹はつまみ食いをする。
「ああもう、浮竹がいると料理がいっこうにできあがらない。ハイエルフの浮竹、浮竹を頼むよ」
ぽいっと渡されて、浮竹はハイエルフの浮竹に思いっきりもふもふされて、「ぴぎゃぴぎゃ」と喜ぶのであった。
ちなみに、もふられるのは気持ちがいいらしい。
「はい、完成」
京楽は、ブラックサーペントの餃子とブラックサーペント丼を出してきた。
飲み物は果実酒を。
果実酒を、浮竹は飲もうとして、中身が自分だけオレンジジュースであることに気づいて、文句をいう。
「ぴぎゃああ」
「え?酒をよこせ・・・ってそんなこといってないか。コーラのほうがよかったの?」
「ぴぎゃああ」
「仕方ないなぁ。コーラ入れてあげるから、コップもっておいで」
「ぴぎゃ」
『『なんだかんだいって、仲がいい』』
見事にはもる、ハイエルフの浮竹とインフェルノドラゴンの京楽であった。
奴隷竜とSランク冒険者57
「あけましておめでとう」
「あけましておめでとうだよ~」
浮竹と京楽は、ハイエルフ浮竹とインフェルノドラゴンの京楽のいる神殿(家)に来ていた。
ハイエルフの浮竹は元気そうだったが、インフェルノドラゴンの京楽はつい数日前にさらわれて、血をぬきとられたりしていたので、おとなしくベッドで横になっていた。
インフェルノドラゴンの京楽が寂しくないように、ハイエルフの浮竹はインフェルノドラゴンの京楽の寝室で寝泊まりをして、食事は作り置きしておいたものを食べたりしていた。
「インフェルノドラゴンのボクが臥せってると聞いて、冷凍した料理を数日分もってきたよ?」
『ありがとう。助かる。そろそろ作りおきの食事が尽きかけていたんだ。京楽に無理はさせられないし、俺は料理できないし、どこかの店で買ってくるしかないと思っていたところなんだ』
ハイエルフの浮竹は、冷凍された食事を受け取って、アイテムポケットの中に収納していく。
アイテムポケットの中では時間の流れが止まっており、入れられた食品などが溶けることも腐ることもなく、いれた状態のままを永遠と持続させる。
素材になるモンスターを入れたりできるので、容量も大きい。
浮竹など、京楽に隠れてフレイムバードのヒナやらケルベロスの子犬などを、アイテムポケットに入れて、飼っていた。
「ポチは元気かなぁ」
数日前、魔大陸に返したケルベロスのポチを思い出して、浮竹は思いをはせる。
『ポチって?』
インフェルノドラゴンの京楽が聞いてくると、京楽が答えた。
「浮竹ってば、ボクに内緒でケルベロスの子犬を拾って、アイテムポケットの中で飼ってたんだよ。テイムした状態になっていたけど、ボクには噛みついてくるし、炎のブレスを吐いてくるし・・・・・・・」
『テイムされた状態でそれは、ケルベロスの子犬になめられてたんだろね。自分より格下の相手だと思われてるよ、それって』
「ぬううう、ポチめ、エサをあげていたのに全然なつかないし!」
『ケルベロスをテイムか。なかなかやるな、フルムーンドラゴンの俺』
「ポチは迷子だったんだ。親とはぐれたみたいで、干し肉をちらつかせたら尻尾ふってやってきたから、テイムできた」
地獄の番犬と呼ばれるケルベロスは、魔大陸以外では、ダンジョンのボスとして存在している。
脅威度はAランク。
Sランク冒険者でも、舐めてかかると手傷を負わせられる相手だった。
『どこで迷子になってたんだ?』
「Sランクダンジョンの最下層の宝物庫にいた」
「ええ、そんな場所にいたの?」
「京楽に気づかれないように、ささっとアイテムポケットに入れたからな」
「それ、迷子になってたっていうより、成長して次のフロアボスになるのを待ってたんじゃ・・・・」
『でも、Sランクダンジョンの最下層ボスでしょ?それが脅威度Aランクのケルベロスってことはないんじゃないかな』
もっともなインフェルノドラゴンの京楽の言葉に、浮竹も頷く。
「多分、試練なんだと思う。どう扱うかによって、宝物庫から出られなくなったりしてたかもしれない。退治していれば、きっと宝物庫に閉じ込められていた」
「宝物庫は転移スクロールがきかないからね。もしも閉じ込められていたら、扉をぶち破るしかなかっただろうね。そうすると、ダンジョンを破壊したということでダンジョンマスターが出てきて、出禁を食らっただろうね」
そのポチは、今魔大陸で元気にやっていた。
『ポチの所持品はあるか?』
「ああ、テイムした証の首輪をまだ持っている」
『かして。今何しているか、映像をうつしだす魔法をかけてみよう』
浮竹が、ハイエルフの自分にポチのテイムした証の首輪を渡すと、映像が浮かんできた。
ノイズがまじっているが、どうやらモンスターに囲まれた人間を助けているようで、人間は冒険者のようで、見ているとポチをテイムしていた。
「ポチ、新しい主人ができたんだな。野生だとやっていけないと思って心配していたけど、テイムされたのなら安心だ」
「ワイバーンの群れに襲われていたみたいだね。見たところ、Aランク冒険者のようだし、ポチを使って戦力がアップするなら、うれしいね」
浮竹は、かわいいポチを思い出す。
「ああ、ポチ・・・できれば、もっと飼っていたかったかなぁ」
「簡便してよ。体長1メートル超えてたんだよ?もう立派な大人だよ」
『まぁ、宿屋で飼うために出すには、大きすぎるね』
「そういえば、インフェルノドラゴンの京楽は、具合は大丈夫なのか?」
『ああ、うん。安静にしてるから、数日で復帰できると思うよ』
京楽が空気を読んで、この前二人きりにしたことも理解できていない浮竹は、またハイエルフの浮竹を見る。
「どうして、二人きりになりたいんだ?」
「ちょ、浮竹!」
『いや、この前は二人きりになりたかったんだ。フルムーンドラゴンの俺でもあるだろう?京楽と二人きりになりたいことが」
「ああ、スケベなことされるから?」
『冒険者の京楽、まだこっちの俺はドラゴンでは子供であるということを・・・・』
「その辺は、ボクも理解してるよ!浮竹が嫌がるならしないけど、求められるからね」
『ふむ・・・・』
浮竹と京楽は、肉体関係がある。
京楽が、浮竹がドラゴンの年齢でいうと子供であると知ったのは、何十回も抱いた後のことだった。
『フルムーンドラゴンの俺、冒険者の京楽に抱かれたくなくなったら、俺に言うといい」
「どうしてだ?セックスはきもちいいから、好きだぞ?」
ハイエルフの浮竹は、頭を抱え込んだ。
『まぁ、それはそっちのボクとフルムーンドラゴンの浮竹の話なんだから、ボクたちが口だしする権利はないでしょ』
『でも、京楽・・・・こいつはまだ子供で・・・・・』
『ドラゴンとしてはね。人間の姿をすれば大人なんだから、別にいいんじゃないの』
『うぐっ』
浮竹のためを思っての言動だったが、とうの浮竹は自分が子供であると分かっていないようであった。
「俺は、ドラゴンでは子供かもしれないが、人間としてなら成人している。だから、大人として扱ってほしい」
『ほら、フルムーンドラゴンの彼もそう言ってることだし』
『冒険者の京楽!』
「はいいい」
『フルムーンドラゴンの俺を、エロで泣かせるのはいいが、それ以外で浮気したりして泣かせたりしないようにな!』
「大丈夫だよ。ボクは浮竹一筋だから」
「俺も、京楽一筋だぞ?」
何気にのろけあう二人を、ハイエルフの浮竹もインフェルノドラゴンの京楽も、おなかいっぱいですという表情で見るのであった。
「あけましておめでとうだよ~」
浮竹と京楽は、ハイエルフ浮竹とインフェルノドラゴンの京楽のいる神殿(家)に来ていた。
ハイエルフの浮竹は元気そうだったが、インフェルノドラゴンの京楽はつい数日前にさらわれて、血をぬきとられたりしていたので、おとなしくベッドで横になっていた。
インフェルノドラゴンの京楽が寂しくないように、ハイエルフの浮竹はインフェルノドラゴンの京楽の寝室で寝泊まりをして、食事は作り置きしておいたものを食べたりしていた。
「インフェルノドラゴンのボクが臥せってると聞いて、冷凍した料理を数日分もってきたよ?」
『ありがとう。助かる。そろそろ作りおきの食事が尽きかけていたんだ。京楽に無理はさせられないし、俺は料理できないし、どこかの店で買ってくるしかないと思っていたところなんだ』
ハイエルフの浮竹は、冷凍された食事を受け取って、アイテムポケットの中に収納していく。
アイテムポケットの中では時間の流れが止まっており、入れられた食品などが溶けることも腐ることもなく、いれた状態のままを永遠と持続させる。
素材になるモンスターを入れたりできるので、容量も大きい。
浮竹など、京楽に隠れてフレイムバードのヒナやらケルベロスの子犬などを、アイテムポケットに入れて、飼っていた。
「ポチは元気かなぁ」
数日前、魔大陸に返したケルベロスのポチを思い出して、浮竹は思いをはせる。
『ポチって?』
インフェルノドラゴンの京楽が聞いてくると、京楽が答えた。
「浮竹ってば、ボクに内緒でケルベロスの子犬を拾って、アイテムポケットの中で飼ってたんだよ。テイムした状態になっていたけど、ボクには噛みついてくるし、炎のブレスを吐いてくるし・・・・・・・」
『テイムされた状態でそれは、ケルベロスの子犬になめられてたんだろね。自分より格下の相手だと思われてるよ、それって』
「ぬううう、ポチめ、エサをあげていたのに全然なつかないし!」
『ケルベロスをテイムか。なかなかやるな、フルムーンドラゴンの俺』
「ポチは迷子だったんだ。親とはぐれたみたいで、干し肉をちらつかせたら尻尾ふってやってきたから、テイムできた」
地獄の番犬と呼ばれるケルベロスは、魔大陸以外では、ダンジョンのボスとして存在している。
脅威度はAランク。
Sランク冒険者でも、舐めてかかると手傷を負わせられる相手だった。
『どこで迷子になってたんだ?』
「Sランクダンジョンの最下層の宝物庫にいた」
「ええ、そんな場所にいたの?」
「京楽に気づかれないように、ささっとアイテムポケットに入れたからな」
「それ、迷子になってたっていうより、成長して次のフロアボスになるのを待ってたんじゃ・・・・」
『でも、Sランクダンジョンの最下層ボスでしょ?それが脅威度Aランクのケルベロスってことはないんじゃないかな』
もっともなインフェルノドラゴンの京楽の言葉に、浮竹も頷く。
「多分、試練なんだと思う。どう扱うかによって、宝物庫から出られなくなったりしてたかもしれない。退治していれば、きっと宝物庫に閉じ込められていた」
「宝物庫は転移スクロールがきかないからね。もしも閉じ込められていたら、扉をぶち破るしかなかっただろうね。そうすると、ダンジョンを破壊したということでダンジョンマスターが出てきて、出禁を食らっただろうね」
そのポチは、今魔大陸で元気にやっていた。
『ポチの所持品はあるか?』
「ああ、テイムした証の首輪をまだ持っている」
『かして。今何しているか、映像をうつしだす魔法をかけてみよう』
浮竹が、ハイエルフの自分にポチのテイムした証の首輪を渡すと、映像が浮かんできた。
ノイズがまじっているが、どうやらモンスターに囲まれた人間を助けているようで、人間は冒険者のようで、見ているとポチをテイムしていた。
「ポチ、新しい主人ができたんだな。野生だとやっていけないと思って心配していたけど、テイムされたのなら安心だ」
「ワイバーンの群れに襲われていたみたいだね。見たところ、Aランク冒険者のようだし、ポチを使って戦力がアップするなら、うれしいね」
浮竹は、かわいいポチを思い出す。
「ああ、ポチ・・・できれば、もっと飼っていたかったかなぁ」
「簡便してよ。体長1メートル超えてたんだよ?もう立派な大人だよ」
『まぁ、宿屋で飼うために出すには、大きすぎるね』
「そういえば、インフェルノドラゴンの京楽は、具合は大丈夫なのか?」
『ああ、うん。安静にしてるから、数日で復帰できると思うよ』
京楽が空気を読んで、この前二人きりにしたことも理解できていない浮竹は、またハイエルフの浮竹を見る。
「どうして、二人きりになりたいんだ?」
「ちょ、浮竹!」
『いや、この前は二人きりになりたかったんだ。フルムーンドラゴンの俺でもあるだろう?京楽と二人きりになりたいことが」
「ああ、スケベなことされるから?」
『冒険者の京楽、まだこっちの俺はドラゴンでは子供であるということを・・・・』
「その辺は、ボクも理解してるよ!浮竹が嫌がるならしないけど、求められるからね」
『ふむ・・・・』
浮竹と京楽は、肉体関係がある。
京楽が、浮竹がドラゴンの年齢でいうと子供であると知ったのは、何十回も抱いた後のことだった。
『フルムーンドラゴンの俺、冒険者の京楽に抱かれたくなくなったら、俺に言うといい」
「どうしてだ?セックスはきもちいいから、好きだぞ?」
ハイエルフの浮竹は、頭を抱え込んだ。
『まぁ、それはそっちのボクとフルムーンドラゴンの浮竹の話なんだから、ボクたちが口だしする権利はないでしょ』
『でも、京楽・・・・こいつはまだ子供で・・・・・』
『ドラゴンとしてはね。人間の姿をすれば大人なんだから、別にいいんじゃないの』
『うぐっ』
浮竹のためを思っての言動だったが、とうの浮竹は自分が子供であると分かっていないようであった。
「俺は、ドラゴンでは子供かもしれないが、人間としてなら成人している。だから、大人として扱ってほしい」
『ほら、フルムーンドラゴンの彼もそう言ってることだし』
『冒険者の京楽!』
「はいいい」
『フルムーンドラゴンの俺を、エロで泣かせるのはいいが、それ以外で浮気したりして泣かせたりしないようにな!』
「大丈夫だよ。ボクは浮竹一筋だから」
「俺も、京楽一筋だぞ?」
何気にのろけあう二人を、ハイエルフの浮竹もインフェルノドラゴンの京楽も、おなかいっぱいですという表情で見るのであった。
姫はじめ
「新年あけましておめでとう!さぁ、ボクと姫はじめしよう、浮竹!」
パンツ一丁でスタンバイしている京楽に、浮竹は大きなため息をついた。
「そんなこと、お前とするわけないだろう!ダッチワイフ相手にでもしてろ!」
京楽は、浮竹に似せて作ったダッチワイフを持っていた。
何度捨ててもまた拾ってきたり、作らせたりするので、浮竹もそれで京楽の欲望が解消されるならと、見て見ぬふりをしていた。
「ダッチワイフもいいけど、本物の浮竹と姫はじめしたい!」
「だから、するわけないと言っている!お前とはキスとハグまでだ」
「ええ~( ゚Д゚)」
文句たらたらな京楽の頭を、ハリセンでしばく。
「いやん、気持ちいい!」
「この変態があああ!!!」
京楽は、さらにうなろうとするうハリセンをもつ浮竹の腕を右手で止める。
「京楽?」
「じゃあ、キスとハグだけで・・・・・」
「んんっ」
京楽は、突然浮竹の唇を奪った。
「んーーー」
浮竹が息継ぎを忘れるほどに、深く口づける。
「んあ・・・・・」
浮竹は、京楽のキスのテクニックの前で、腰砕けになった。
「どう、続きしたくない?」
「だめだ。キスまでだ・・・・・」
「じゃあ、ハグする」
浮竹を、京楽は抱きしめる。
浮竹は、びくんと体を強張らせたが、優しい温度にすぐに体の力を抜いた。
「もう一度、キスするよ」
「んっ」
舌を絡めあいながら、お互いの唾液を飲みこむ。
舌が去ってくと、つっと銀の糸がたれた。
「大好きだよ、浮竹」
「あ、京楽・・・・・・」
久しぶりに、変態ではない京楽に迫られて、浮竹は内心たじたじになった。
変態でない京楽など、いつぶり以来だろか。
「ねぇ、ボクと姫はじめしてみない?」
「だめだ。キスとハグまでと決めている」
「けちーーー」
そう言いながら、京楽は浮竹を押し倒す。
院生の服に手をかけられて、浮竹は京楽の頭に頭突きをした。
「おぶ!」
「はぁはぁ・・・危なかった」
京楽は、白目をむいて気絶していた。
「まったく、京楽のやつ・・・・」
気絶したままの京楽を床に放置して、浮竹は昼食をとるために食堂に行った。
いつもは浮竹と京楽はセットで行動しているため、一人の浮竹は珍しくて周囲の友人が京楽はどうしたのだと聞いてくるので、気絶していると伝えておいた。
「その、大変だな。気をつけろよ。京楽のやつ、まじで浮竹の貞操狙っているからな」
「何かあったら、助けを呼ぶのもありだぞ?」
友人達からそんなアドバイスをもらって、正月なのでおせちを食べて寮の部屋に戻ると、はぁはぁと荒い息をはいて、フルチンで浮竹のダッチワイフを相手にスコスコしている京楽を見てしまい、浮竹は悲鳴をあげた。
「ぎゃあああああああああ!!!」
「うわああああ、見つかったあああああ!ぎゃあああああ、浮竹、落ち着いて!浮竹を相手にしてないじゃない!」
「俺のダッチワイフでそんなことするなあああ!!破道の4、白雷!」
「もぎゃああああああ!!!!」
貫通する光をいじって、雷のようにして打つと、京楽は黒焦げになった。
黒焦げになった京楽に衣服を着させて、簀巻きにしてベランダに投げ捨てる。
「お前は、一生ここで一人でスコスコしてろ!」
意識の戻った京楽に、そう吐き捨てた。
「ああん、浮竹、君がいないところでしかしてないから許してよおお」
「俺の目が届く範囲でするな!」
「だって、浮竹がいない時って限られてるから・・・・夜にしてもいいんだけど、(*´Д`)ハァハァ言うから気づかれそうで・・・・」
「夜にやってたら、殴って蹴ってる」
ベランダに浮竹のダッチワイフも投げ捨てて、浮竹は冷たく言う。
「ベランダでなら、好きなだけしていいぞ。寒いけど、今のお前にはちょうどいい気温だろう?」
「したいけど、この簀巻きといてええええ」
「簀巻きは解かん」
「スコスコできないいいい」
「するな!好きなだけしていいといったが、冗談だ!何もするな!ダッチワイフが俺ってところも気に食わん」
「だって、本物の浮竹はさせてくれないじゃない」
「当り前だ!俺たちは親友以上かもしれないが、恋人同士ではないんだぞ!」
「もう、いっそ認めちゃいなよ。君もボクを欲しがってることに」
浮竹は、簀巻きにした京楽の顔に水をかける。
「アホなこと言うな!俺は、お前と違ってお前に抱かれたいわけじゃない」
「そんなあああ。キスとかハグすると、その先をしてくれってって顔するじゃない」
「そうお前には見えているだけだ。俺はそんなこと、思っていない」
「ボクの思い過ごし!?もぎゃああ、うわああああああん!!!!」
泣き始めた京楽が泣き止むまで、2時間かかった。
一緒に風呂に入ってやるという約束をするまで、泣きまくった京楽の、作戦勝ちであった。
「まったく、お前は世話のかかる・・・」
ベランダで簀巻きにして泣きわめかれて、近所迷惑なので部屋の中にいれて簀巻きを解いてやる。
「(;゚∀゚)=3ハァハァ 今日、ボクと一緒に風呂に入ってね?」
「仕方ない。約束だ。何かしたら、しばくからな」
「ああ、夜が待ち遠しいなぁ」
夜がきて風呂に入る時間になり、フルチンの京楽とは反対に胸の位置までしっかりバスタオルを巻いて風呂に入る浮竹であった。
パンツ一丁でスタンバイしている京楽に、浮竹は大きなため息をついた。
「そんなこと、お前とするわけないだろう!ダッチワイフ相手にでもしてろ!」
京楽は、浮竹に似せて作ったダッチワイフを持っていた。
何度捨ててもまた拾ってきたり、作らせたりするので、浮竹もそれで京楽の欲望が解消されるならと、見て見ぬふりをしていた。
「ダッチワイフもいいけど、本物の浮竹と姫はじめしたい!」
「だから、するわけないと言っている!お前とはキスとハグまでだ」
「ええ~( ゚Д゚)」
文句たらたらな京楽の頭を、ハリセンでしばく。
「いやん、気持ちいい!」
「この変態があああ!!!」
京楽は、さらにうなろうとするうハリセンをもつ浮竹の腕を右手で止める。
「京楽?」
「じゃあ、キスとハグだけで・・・・・」
「んんっ」
京楽は、突然浮竹の唇を奪った。
「んーーー」
浮竹が息継ぎを忘れるほどに、深く口づける。
「んあ・・・・・」
浮竹は、京楽のキスのテクニックの前で、腰砕けになった。
「どう、続きしたくない?」
「だめだ。キスまでだ・・・・・」
「じゃあ、ハグする」
浮竹を、京楽は抱きしめる。
浮竹は、びくんと体を強張らせたが、優しい温度にすぐに体の力を抜いた。
「もう一度、キスするよ」
「んっ」
舌を絡めあいながら、お互いの唾液を飲みこむ。
舌が去ってくと、つっと銀の糸がたれた。
「大好きだよ、浮竹」
「あ、京楽・・・・・・」
久しぶりに、変態ではない京楽に迫られて、浮竹は内心たじたじになった。
変態でない京楽など、いつぶり以来だろか。
「ねぇ、ボクと姫はじめしてみない?」
「だめだ。キスとハグまでと決めている」
「けちーーー」
そう言いながら、京楽は浮竹を押し倒す。
院生の服に手をかけられて、浮竹は京楽の頭に頭突きをした。
「おぶ!」
「はぁはぁ・・・危なかった」
京楽は、白目をむいて気絶していた。
「まったく、京楽のやつ・・・・」
気絶したままの京楽を床に放置して、浮竹は昼食をとるために食堂に行った。
いつもは浮竹と京楽はセットで行動しているため、一人の浮竹は珍しくて周囲の友人が京楽はどうしたのだと聞いてくるので、気絶していると伝えておいた。
「その、大変だな。気をつけろよ。京楽のやつ、まじで浮竹の貞操狙っているからな」
「何かあったら、助けを呼ぶのもありだぞ?」
友人達からそんなアドバイスをもらって、正月なのでおせちを食べて寮の部屋に戻ると、はぁはぁと荒い息をはいて、フルチンで浮竹のダッチワイフを相手にスコスコしている京楽を見てしまい、浮竹は悲鳴をあげた。
「ぎゃあああああああああ!!!」
「うわああああ、見つかったあああああ!ぎゃあああああ、浮竹、落ち着いて!浮竹を相手にしてないじゃない!」
「俺のダッチワイフでそんなことするなあああ!!破道の4、白雷!」
「もぎゃああああああ!!!!」
貫通する光をいじって、雷のようにして打つと、京楽は黒焦げになった。
黒焦げになった京楽に衣服を着させて、簀巻きにしてベランダに投げ捨てる。
「お前は、一生ここで一人でスコスコしてろ!」
意識の戻った京楽に、そう吐き捨てた。
「ああん、浮竹、君がいないところでしかしてないから許してよおお」
「俺の目が届く範囲でするな!」
「だって、浮竹がいない時って限られてるから・・・・夜にしてもいいんだけど、(*´Д`)ハァハァ言うから気づかれそうで・・・・」
「夜にやってたら、殴って蹴ってる」
ベランダに浮竹のダッチワイフも投げ捨てて、浮竹は冷たく言う。
「ベランダでなら、好きなだけしていいぞ。寒いけど、今のお前にはちょうどいい気温だろう?」
「したいけど、この簀巻きといてええええ」
「簀巻きは解かん」
「スコスコできないいいい」
「するな!好きなだけしていいといったが、冗談だ!何もするな!ダッチワイフが俺ってところも気に食わん」
「だって、本物の浮竹はさせてくれないじゃない」
「当り前だ!俺たちは親友以上かもしれないが、恋人同士ではないんだぞ!」
「もう、いっそ認めちゃいなよ。君もボクを欲しがってることに」
浮竹は、簀巻きにした京楽の顔に水をかける。
「アホなこと言うな!俺は、お前と違ってお前に抱かれたいわけじゃない」
「そんなあああ。キスとかハグすると、その先をしてくれってって顔するじゃない」
「そうお前には見えているだけだ。俺はそんなこと、思っていない」
「ボクの思い過ごし!?もぎゃああ、うわああああああん!!!!」
泣き始めた京楽が泣き止むまで、2時間かかった。
一緒に風呂に入ってやるという約束をするまで、泣きまくった京楽の、作戦勝ちであった。
「まったく、お前は世話のかかる・・・」
ベランダで簀巻きにして泣きわめかれて、近所迷惑なので部屋の中にいれて簀巻きを解いてやる。
「(;゚∀゚)=3ハァハァ 今日、ボクと一緒に風呂に入ってね?」
「仕方ない。約束だ。何かしたら、しばくからな」
「ああ、夜が待ち遠しいなぁ」
夜がきて風呂に入る時間になり、フルチンの京楽とは反対に胸の位置までしっかりバスタオルを巻いて風呂に入る浮竹であった。
お正月
新勇者は、いつものように魔王城にきて昼飯をたかっていた。
パーティーメンバーも当たり前のように昼飯を食べていた。
魔王である浮竹も、勇者京楽も、もう慣れてしまったので文句も言わない。ただ、昼食とお茶の時間まではいいが、夕食までたかりにきたらさすがに止めるが。
「ふはははは!自然であるのが一番だ!」
新勇者は、毛根が死滅しているのでハゲだった。
自然が一番といいながら、アフロのかつらをかぶっていた。
「カラミティファイア」
浮竹がアフロのかつらを燃やすと、新勇者は涙を流しながら金色のアフロのかつらをアイテムポケットから取り出してかぶった。
「カラミティファイア」
それも燃やすと、新勇者は浮竹に向かって叫ぶ。
「なぜ、俺のアフロを燃やす!」
「お前が新勇者だからだ」
「あふん!魔王さえも虜にする俺・・・・なんて罪深い。この美しい外見のせいで、俺は魔王さえも惑わしてしまっている」
「きもいこと、言わないでくれる?」
本当の勇者である京楽が、新勇者のピンクのアフロのかつらを切った。
「もぎゃあああ、頭皮もちょっとかすめた!」
頭からちょっと血を流して、新勇者は「ヒール、ヒール」と回復魔法をかけまくる。
「そういえば、もう正月だね。お年玉あげるから、新勇者パーティー、こっちにおいで。新勇者にはお年玉はなしね」
「差別だあああああ!!!」
新勇者も、何気にお年玉をもらう列の最後に並んだ。
「お、金貨100枚もあるにゃん。勇者は気前がいいにゃん」
獣人盗賊が、もらったお年玉の袋をあけて、喜んでいた。
女僧侶、少年魔法使い、青年戦士もそれぞれ金貨100枚をもらった。
最後に並んだ新勇者に、京楽は仕方ないとばかりにお年玉をあげた。
「銅貨10枚!?他のメンバーと差がありすぎるだろ!」
新勇者は文句を言うが、浮竹がこう言った。
「折れたお前の人工聖剣エクスカリバーを元に戻してやるのに金貨200枚がかかった。それを全部払えるなら、金貨100枚をやろう」
「うおおおお、金貨200枚なんてもってない!財布には銀貨3枚しか入ってない!」
「じゃあ、銅貨10枚で我慢することだ。フルチンになってフラダンスを踊ったら、金貨200枚やろう」
「まじか!約束だぞ!」
新勇者は恥というものがないので、すぐにフルチンになるとフラダンスを踊りだした。
「カラミティファイア!」
浮竹は、新勇者の股間に向かって魔法を放つ。
「もぎゃああああああ!俺のいちもつが、灰に!」
「くくく・・・・ユニークスキル不幸なる者がある限り、お前は不幸な目にあい続けるのだ。なくても、あい続けるけどな」
ヒールヒールと、なんとか股間のいちもつを復活させる。
「く、俺のユニークスキル不幸なる者をお前にくれてやる!」
前も一度そうしたように、新勇者は自分のスキルを浮竹に与えた。
すると、不幸なる者は幸福なる者になってしまうのであった。
それをはぎとって再び自分のものにすると、前はすぐに不幸なる者に戻ったスキルが幸福なる者のままだった。
その効果か、浮竹が金貨200枚をくれた。
「フルチンでフラダンスした褒美の金だ。あと、お年玉として金貨150枚をやろう」
「ちょっと、浮竹、しっかりして!幸福なる者のスキルで、洗脳されてるよ!」
「え、あ、俺はなぜ新勇者にお年玉を・・・・・・」
「ふははははは!もらったからな!金貨350枚は俺のものだ!」
パンツ一丁で、高笑いをする新勇者は、幸福なる者のスキルの偉大さに感激して、パーティーメンバーからそれぞれ一人につき金貨30枚をお年玉としてもらった。
「幸福なる者・・・俺にふさわしい」
「やっかいなスキルだね。剥奪させてもらうからね!」
京楽は、聖剣エクスカリバーでスキルをはぎ取った。
「うわあああ!俺の偉大なスキルがあああ!!!」
「君にはこれがお似合いだよ」
スキル「ただの石」を与えられた。
ただの石のような存在感になってしまうスキルであった。
「哀れだから、あげた金貨はそのままにしておこう」
「浮竹、いいの?」
「ああ。どうせ、仲間うちで争う」
その通りで、新勇者パーティーはお年玉30枚を返せと新勇者をもみくちゃにして、ぼこぼこにして、浮竹があげた金貨350枚も奪われていった。
「うわあああん、文無しだああああ」
銅貨10枚だけが、かろうじで残された。
自分の股間に向けて、またヒールヒールと連打する。
パールホワイト色のアフロをかぶり、パンツ一丁の新勇者に、新年のあいさつだと浮竹はアルティメットジャッジメントの魔法を放った。
「アルティメットジャッジメント!」
正義の鉄槌が、新勇者をもみくちゃにして、新勇者は魔法の勢いでふきとんで、お星さまになった。
「さぁ、新勇者パーティーも、新勇者と同じ道をたどるか?」
浮竹がアルティメットジャッジメントの魔法を新勇者パーティーに向けるので、新勇者パーティはこそこそと逃げていく。
「はぁ、やっと京楽と二人きりになれた」
「浮竹、そんなにボクと二人きりになりたかったの?」
「だって、新年なのに新勇者パーティーはくるし、新勇者もくるし・・・・」
「姫はじめ、しよっか」
京楽の言葉に、浮竹は真っ赤になる。
「な、京楽・・・・・・」
「いやかい?」
「いやじゃ、ない・・・・・・」
二人は、手を握りあいながら、寝室へと向かうのであった。
パーティーメンバーも当たり前のように昼飯を食べていた。
魔王である浮竹も、勇者京楽も、もう慣れてしまったので文句も言わない。ただ、昼食とお茶の時間まではいいが、夕食までたかりにきたらさすがに止めるが。
「ふはははは!自然であるのが一番だ!」
新勇者は、毛根が死滅しているのでハゲだった。
自然が一番といいながら、アフロのかつらをかぶっていた。
「カラミティファイア」
浮竹がアフロのかつらを燃やすと、新勇者は涙を流しながら金色のアフロのかつらをアイテムポケットから取り出してかぶった。
「カラミティファイア」
それも燃やすと、新勇者は浮竹に向かって叫ぶ。
「なぜ、俺のアフロを燃やす!」
「お前が新勇者だからだ」
「あふん!魔王さえも虜にする俺・・・・なんて罪深い。この美しい外見のせいで、俺は魔王さえも惑わしてしまっている」
「きもいこと、言わないでくれる?」
本当の勇者である京楽が、新勇者のピンクのアフロのかつらを切った。
「もぎゃあああ、頭皮もちょっとかすめた!」
頭からちょっと血を流して、新勇者は「ヒール、ヒール」と回復魔法をかけまくる。
「そういえば、もう正月だね。お年玉あげるから、新勇者パーティー、こっちにおいで。新勇者にはお年玉はなしね」
「差別だあああああ!!!」
新勇者も、何気にお年玉をもらう列の最後に並んだ。
「お、金貨100枚もあるにゃん。勇者は気前がいいにゃん」
獣人盗賊が、もらったお年玉の袋をあけて、喜んでいた。
女僧侶、少年魔法使い、青年戦士もそれぞれ金貨100枚をもらった。
最後に並んだ新勇者に、京楽は仕方ないとばかりにお年玉をあげた。
「銅貨10枚!?他のメンバーと差がありすぎるだろ!」
新勇者は文句を言うが、浮竹がこう言った。
「折れたお前の人工聖剣エクスカリバーを元に戻してやるのに金貨200枚がかかった。それを全部払えるなら、金貨100枚をやろう」
「うおおおお、金貨200枚なんてもってない!財布には銀貨3枚しか入ってない!」
「じゃあ、銅貨10枚で我慢することだ。フルチンになってフラダンスを踊ったら、金貨200枚やろう」
「まじか!約束だぞ!」
新勇者は恥というものがないので、すぐにフルチンになるとフラダンスを踊りだした。
「カラミティファイア!」
浮竹は、新勇者の股間に向かって魔法を放つ。
「もぎゃああああああ!俺のいちもつが、灰に!」
「くくく・・・・ユニークスキル不幸なる者がある限り、お前は不幸な目にあい続けるのだ。なくても、あい続けるけどな」
ヒールヒールと、なんとか股間のいちもつを復活させる。
「く、俺のユニークスキル不幸なる者をお前にくれてやる!」
前も一度そうしたように、新勇者は自分のスキルを浮竹に与えた。
すると、不幸なる者は幸福なる者になってしまうのであった。
それをはぎとって再び自分のものにすると、前はすぐに不幸なる者に戻ったスキルが幸福なる者のままだった。
その効果か、浮竹が金貨200枚をくれた。
「フルチンでフラダンスした褒美の金だ。あと、お年玉として金貨150枚をやろう」
「ちょっと、浮竹、しっかりして!幸福なる者のスキルで、洗脳されてるよ!」
「え、あ、俺はなぜ新勇者にお年玉を・・・・・・」
「ふははははは!もらったからな!金貨350枚は俺のものだ!」
パンツ一丁で、高笑いをする新勇者は、幸福なる者のスキルの偉大さに感激して、パーティーメンバーからそれぞれ一人につき金貨30枚をお年玉としてもらった。
「幸福なる者・・・俺にふさわしい」
「やっかいなスキルだね。剥奪させてもらうからね!」
京楽は、聖剣エクスカリバーでスキルをはぎ取った。
「うわあああ!俺の偉大なスキルがあああ!!!」
「君にはこれがお似合いだよ」
スキル「ただの石」を与えられた。
ただの石のような存在感になってしまうスキルであった。
「哀れだから、あげた金貨はそのままにしておこう」
「浮竹、いいの?」
「ああ。どうせ、仲間うちで争う」
その通りで、新勇者パーティーはお年玉30枚を返せと新勇者をもみくちゃにして、ぼこぼこにして、浮竹があげた金貨350枚も奪われていった。
「うわあああん、文無しだああああ」
銅貨10枚だけが、かろうじで残された。
自分の股間に向けて、またヒールヒールと連打する。
パールホワイト色のアフロをかぶり、パンツ一丁の新勇者に、新年のあいさつだと浮竹はアルティメットジャッジメントの魔法を放った。
「アルティメットジャッジメント!」
正義の鉄槌が、新勇者をもみくちゃにして、新勇者は魔法の勢いでふきとんで、お星さまになった。
「さぁ、新勇者パーティーも、新勇者と同じ道をたどるか?」
浮竹がアルティメットジャッジメントの魔法を新勇者パーティーに向けるので、新勇者パーティはこそこそと逃げていく。
「はぁ、やっと京楽と二人きりになれた」
「浮竹、そんなにボクと二人きりになりたかったの?」
「だって、新年なのに新勇者パーティーはくるし、新勇者もくるし・・・・」
「姫はじめ、しよっか」
京楽の言葉に、浮竹は真っ赤になる。
「な、京楽・・・・・・」
「いやかい?」
「いやじゃ、ない・・・・・・」
二人は、手を握りあいながら、寝室へと向かうのであった。