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桜のあやかしと共に53

山の王の京楽がいなくなった。あやかしたちの噂で、死んだと聞いた時、浮竹はまた友を失ってしまった喪失感に苛まれた。

山の王の京楽の手紙を読んで、藍染の手下にやられたが、生きているようなので安心した矢先の出来事だった。

彼岸花の精霊の浮竹も、洞窟にはもういない。

山にいかなくなって、1年が経った。

「彼岸花の精霊の俺の気配がする。あと、山の王は何かのあやかしに転生したな。あの山に行ってみよう」

「いいの?また、失うかもしれないよ」

京楽が、浮竹のためを思って口にするが、浮竹は首を横に振った。

「それでも、俺は何度でも友になる」

山にいくと、彼岸花の精霊の浮竹がいた。

『久しいな。1年ぶりというところか』

「お前は元気そうで安心した。そっちの京楽が、新しく転生した元山の王か?」

『ああ、そうだ。鴆(ちん)というあやかしだ』

「鴆の京楽、俺たちのことは‥‥」

『残念ながら、俺のことは記憶にあるらしいが、お前たちのことは忘れてしまったみたいなんだ』

浮竹と京楽は顔を見合わせる。

「はじめまして、鴆の京楽。俺は桜の王。お前の転生する前の友人だ」

『えっと、はじめまして。ごめんね、浮竹のことは覚えているけど、それ以外のことは覚えていないんだ』

「かまわない。友達に、なろう」

「ボクは桜鬼の京楽。桜の王と一緒で、君の友人だったよ」

『転生前のボクって、友達がいたんだね』

嬉しそうに微笑む鴆の京楽は、前と同じように洞窟に住むらしかった。

「麓の町がなくなっているな。強力な幻術だったわけか」

『ああ。全ては京楽を殺すための。それさえ、四季の王になりたがっている藍染とやらの手下の
せいだった』

雪女の言葉を思い出す。

友人が死ねば、悲嘆にくれて弱った桜の王を殺せるかもしれない。確か、そんなことを言っていた。

「お前が殺された最初の原因は俺にあるかもしれない。すまない」

『ううん。ボクはまたこうやって浮竹と出会えたし、何も不満はないよ』

「そうか。それならいいんだ。ちょっとまってろ、今コーラと酒と作り置きしておいたガトーショコラもってくる」

浮竹は一度京楽のマンションに戻ると、コーラと赤ワインとガトーショコラをもって帰ってきた。

『お、久しぶりのしゅわしゅわだ』

嬉しそうな彼岸花の精霊の浮竹は、コーラを受け取って、コップに注ぎ飲んでいく。

『ボクは主食は毒蛇なんだけど‥‥‥人の食べ物も食べれるかな?』

鴆の京楽は、おそるおそるガトーショコラを口にする。

『少し苦いけど、甘みもあっておいしいね?』

「だろう?酒ももってきたんだ。まぁ飲め」

「十四郎、ほどほどにね?」

京楽が、苦笑する。

『人間の酒はうまいからな』

彼岸花の精霊の浮竹も、赤ワインを口にした。

『じゃあ、ボクも』

鴆の京楽も、赤ワインを口にする。

『君たちは飲まないの?』

「じゃあ、ボクも飲もうかな」

「俺も飲む」

京楽が止めるより先に、浮竹がグラスに並々と注がれた赤ワインを飲み干す。

「うぃーーー。妖艶でけしからんぞおおお」

浮竹が、彼岸花の精霊の浮竹を押し倒す。

『ふふふ、俺を抱くのか?』

彼岸花の精霊の浮竹は、妖艶に微笑み、浮竹を抱きしめる。

「ZZZZZZZZZZZ]

『寝てる‥‥』

浮竹をべりっとはがして、京楽が謝る。

「ごめんね、浮竹酒に弱い上に酒乱なんだ。君たちにまた出会えて、よっぽど嬉しかったんだね」

『浮竹はボクのものだから、あげないよ』

鴆の京楽は、そう言って彼岸花の精霊の浮竹を抱きしめた。

「ぐへへへへへ。京楽、げへへへへ」

「どんな夢見てるんだか」

浮竹を抱きしめながら、京楽はため息をつく。

『久しぶりだし、お前たちも泊まっていったらどうだ?』

「うーん、浮竹はこんなだし、一晩だけ泊まっていこうかな」

京楽は、洞窟の奥にある藁のベッドに浮竹を寝かせた。

そして、この1年間をどう過ごしていたのか、お互いに話しあった。

藍染は以前姿を見せず、雲隠れしたままだった。

祓い屋稼業をしていて、彼岸花の精霊がたくさん術者を殺したという噂があったが、あえて触れないでおいた。

日も暮れて、鴆の京楽は毒蛇を調理したものを食べて、彼岸花の精霊の浮竹と、起きてきた浮竹と京楽は、ビーフシチューを食べた。

『人の世界の食べ物は、うまいな』

「だろう。特に俺の作る料理は世界一なんだ」

「十四郎の料理は、本当においしいからね」

そんな風に夕飯を食べて、晴れているので、寝袋をもってきて、浮竹と京楽は外で星を見ながら寝ることにした。

「ねぇ、十四郎」

「なんだ」

「死ぬ時は一緒だけど、もしそんなことがあったら、一緒に転生しようね」

「不吉なことを言うな。転生するのはいいとして、俺たちはそう簡単には死なない」

「うん、そうだね」

洞窟の奥では、藁のベッドで彼岸花の精霊の浮竹と鴆の京楽が、お互いを抱きしめあいながら寝ていた。

「四季の王の名の元に命ずる。命咲かせよ、花たち」

浮竹は、洞窟の前を春の花畑に変えてしまった。

「明日になったら、あの二人驚くかな」

「驚くよ。ボクも、君がこうやって花を咲かせるのあまりみたことないからね」

「ふふ、酔って押し倒してしまった詫びだ」

「もう寝よう。腕時計だけど、0時過ぎてるから」

「ああ、おやすみ」

「おやすみ」


朝起きると、洞窟の前が花畑に変わっていて、彼岸花の精霊の浮竹はそこに彼岸花も加えてみた。

「き、昨日の詫びだ。べ、別に酒に酔って押し倒してしまったのは、お前があまりにも綺麗だったからってわけじゃないからな!」

『ふうん』

クスクスと、彼岸花の精霊の浮竹は笑う。

鴆の京楽は、花畑で花冠を作ると、それを彼岸花の精霊の浮竹の頭にのせる。

『綺麗だよ、浮竹』

『ふふ。俺はお前のものだから、当たり前だ』

彼岸花の整理絵の浮竹は妖艶に微笑む、

京楽も花冠を編んで、浮竹の頭にのせる。

「十四郎、かわいい」

「べ、別に嬉しいなんて思ってないんだからな!」

一晩を山で過ごして、浮竹と京楽は朝食を作って食べてから、自分たちの家に戻っていくのであった。




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桜のあやかしと共に52

「おーい、いるか?」

スーパーで特売していたサイダーをたくさん買いこんだ浮竹は、2リットルサイダーを3つ鞄に入れて、山の王の京楽の洞窟に来ていた。

京楽も、少し遅れてやってくる予定だった。

洞窟の奥から、声がするので二人はいるようだったが、様子がおかしかった。

「山の王の京楽に彼岸花の精霊の俺?」

洞窟の中に踏み込むと、二人は睦みあっている最中だった。

『ひああああ、春水、もっと奥ううう』

『ボクの子種、たくさん注いであげるからね?』

『ああああ、もっと、もっと奥を抉ってえええ』

浮竹は、真っ赤になり動かなくなった。

ぷしゅーーー。

音をたてて、固まる。

キャパオーバーを起こした浮竹。それに気づいた二人が、睦みあうのを止めて服を着て浮竹に話しかける。

『桜の王?見ちゃったの?しっかりしてよ』

『ふふ、京楽、もっと見せつけてやるか?』

彼岸花の精霊の浮竹は、妖艶だった。乱れた着物と白い髪と翡翠色の瞳が、怪しく輝いているように見えた。

「なななななな、なにも見ていないし、聞いてない」

浮竹は、サイダーの入った鞄を山の王の京楽に押し付ける。

『お、新しいしゅわしゅわか?』

浮竹は茹蛸(ゆでだこ)のように真っ赤になったまま、ぷしゅーと音を立ててなかなか動かない。

そこに、遅れて京楽が現れる。

「十四郎、しっかりして、十四郎!」

「京楽、俺はもうだめだ」

「ちょっと、二人とも十四郎に何したのさ」

京楽が、腕の中に倒れてきた浮竹を支える。

『何もしていないぞ。しいていえば、桜の王が勝手に見てしまっただけだな』

そう言って、彼岸花の精霊の浮竹は怪しく微笑む。

「え、それって‥‥‥」

『ボクと浮竹が睦みあってるの、見ちゃったみたい』

山の王の京楽は、頭を抱えた。

「あちゃー。十四郎、しっかりして。傷は浅いよ!」

「俺はもうだめだ‥‥」

がくり。

でも、浮竹はちゃんと意識があった。冗談の芝居であった。

そんなやりとりをするものだから、彼岸花の精霊の浮竹と山の王の京楽は苦笑する。

『まさかやってる最中のに人がくるなんて思ってなかったからね』

『こんな山の中に普通、人はこないからな』

「そうだね。普通はそうだね。今回ばかりは、十四郎のタイミングが悪かったね」

「むう、こんな真昼間からやっているなんて、普通は思わないだろう」

浮竹がむくれる。

そんな浮竹に、彼岸花の精霊の浮竹が綺麗な顔でクスクスと笑う。

そして。

『あ。京楽の精液が、もれてきた‥‥‥』

そういって、足を伝う白い液体を見て、浮竹だけでなく京楽も赤くなる。

『浮竹の中に出したものかき出すために、天然温泉いってくるね。すぐに戻るから』

山の王の京楽は、そう言って彼岸花の精霊の浮竹をお姫様抱きにして、消えていった。

「浮竹、大丈夫?」

「白哉の気持ちが、少しだけ分かった気がする」

たまに結界を張り忘れて、やっている場面を同居人である白哉に見られたり聞かれたりしたことがあった。

白哉はその度に、気まずい思いをして少し赤くなる。

「あの二人には、今後結界を張ってもらうことにする」

「うん、そうだね」

待てども、二人は帰ってこない。

きっと、天然温泉でまた睦みあっているのだろうと思い、サイダーを置いて浮竹と京楽は帰ることにした。



『あ、桜の王が、待ってる、からぁ』

『わかってるけど、あおってきたのは君でしょ?』

『ああん、そこだめぇええ』

『ここ、ぐりぐりされるの好きだよね?』

『あ、いっちゃう!』

山の王の京楽に最奥を抉られて、彼岸花の精霊の浮竹はびくんと体を痙攣させる。

『ああああ、いくの、とまらないいい』

山の王の京楽は、子種を彼岸花の精霊の浮竹の胎の奥にぶちまけた。

『いあああ、いってるから、動いちゃダメえええ』

『孕むくらい、出してあげるからね?』

『だめええ、またいっちゃうううう』

浮竹と京楽が来ていたことなど、すっかり忘れて、二人は出すものがなくなるまで交じりあうのであった。



家に戻ると、浮竹は。

「彼岸花の精霊の俺が、山の王の京楽あおって、絶対やってる。そして、俺たちが来ていることを忘れているに違いない」

「まぁ、あれから1時間待ったけど帰ってこなかったもんね」

「置き手紙で、今度からは結界を張ってくれと書いておいたので、今後は多分大丈夫だろう」

「そうだと、いいんだけどね?」

「そうじゃなきゃ困る。彼岸花の精霊の俺は、乱れていると誰もが虜になりそうだ」

彼岸花の精霊の浮竹は妖艶で、見る者をぞくりとさせるミステリアスな雰囲気があったが、乱れているときはまた違った怪しさを出す。

浮竹はそれを見てしまったことに、ため息をつくのであった。









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ただのアホ

「好きだ、京楽」

「やっと思いが通じたんだね!ボクも好きだよ、浮竹」

「お前に抱かれたい。俺をめちゃくちゃにしてくれ」

「鼻血でちゃうじゃない!君を天国に連れてってあげる」

京楽は、本当に鼻血を出していた。

その光景を、浮竹は冷めた視線で見ていた。

「何しとるんだ、お前は」

「あ、浮竹!手人形つくってみたから、一人遊びしてたの」

「それで、俺がお前に抱かれたい?めちゃくちゃにしてくれだと?」

ハリセンを手に、浮竹が京楽との距離を縮める。

京楽は、手人形で謝った。

「ごめんなさい、調子にのってました」

「分かればいい」

あれ?

浮竹が怒ってこない。

京楽は不思議に思って、浮竹のほうを見た。

浮竹は、ごほごほと咳をしていた。まさか発作かと思って、浮竹の背を撫でる。

「あんまり近づくな。インフルエンザになった。京楽、お前はしばらく違う空き部屋で過ごしてくれ」

「嫌だよ。誰が君の看病をするの」

「一人でなんとかする‥‥」

浮竹は、ふらついて京楽の腕の中に倒れこむ。

「わぁ、すごい熱じゃない。今すぐ、氷枕作るから、浮竹は大人しくベッドで寝ていて?」

「すまん」

熱があるせいか、素直な浮竹に京楽はこう言ってみた。

「将来、ボクと結婚してくれるよね」

「何を言っている。あほか」

いつもと同じ反応に、京楽は少し残念に思った。

「熱がある時くらい、ボクにつきあってよ~」

「既成事実作るとか言って、襲ってきそうだから嫌だ」

「そんな、病気の時とか具合が悪い時はボクは何もしないでしょう?」

「そうだが、元気になったら襲ってくるだろうが」

「そうだけど」

いつでも元気な京楽は、具合がよくなって全快して元気になった浮竹を襲って、縄で縛られて布団ですまきにされてベランダによく放置されていた。

「でも、ボクは君が好きだよ?」

「俺は好きじゃない。友人としてなら好きだが、恋愛感情は抱いていない」

「もう、ここは素直に、ボクも好きだって言ってよ」

「そう言って、肉体関係に陥ったら、このシリーズが終わる」

「そ、それもそうだね」

京楽は、氷枕をつくり、浮竹をベッドに寝かせた。

「解熱剤飲むよね?」

「ああ。何か食べないといけないな。でも、食欲がない」

「みかんの缶詰あるから、それを少しでもいいから食べて?」

京楽はみかんの缶詰をあげて、スプーンで浮竹の口元に運ぶ。

少しだけ食べて、浮竹はもういらないと言った。

「じゃあ、解熱剤とってくるから、おとなしくしててね?」

「こんな熱じゃ、お前をしばくのもなかなかできなくて苦労する」

「ボクをしばかなくていいからね!?」

京楽は、キッチンに行って、浮竹の薬箱をあけると、解熱剤をとりだして、コップに水を入れてもってくる。

「ほら、解熱剤。飲める?」

「一人で飲める」

浮竹は、高熱を出すのに慣れているので、自力で解熱剤を飲んだ。

「病院には行った?」

「朝のうちに行った。熱があって、インフルエンザと診断された。京楽、もしもうつったなら、すまない」

「浮竹に看病してもらうからいいよ」

「俺のインフルエンザが完治しなくとも、熱が下がって身動きできる程度までにならないと、看病はできないぞ」

「ボクを看病するときはナース服を着てね?」

「アホ。誰がそんな変態のコスプレするか」

ごほごほと咳こんで、浮竹は苦しそうにしていたが、薬が効いてきたのか、次第にうつらうつらと眠りはじめる。

「早くよくなりますように」

浮竹の額にキスをして、京楽は浮竹のために薬局に行き、冷えピタシートを買った。

眠っている浮竹の額にはると、浮竹がぼんやりと目をあける。

「‥‥‥好きだ」

「え?まじで?」

やっと浮竹が自分のことを好きだと言ってくれた。そう思ったら。

「‥‥‥みかんの缶詰が好きだ。京楽、買ってきてくれ」

そう言うものだから、京楽はコレクションの浮竹のパンツをすーはすーはして、頭にかぶり、インフルエンザが早く治るように快癒の踊りを踊る。

はたから見れば、ただのアホだった。

いや、京楽の場合存在自体がただのアホである。

でも、京楽は素直にみかんの缶詰を買いに行ったり、変態だけど優しいところもきちんとあるのであった。


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桜のあやかしと共に51

「だから、濡れ衣やいうてるやん」

新しく夏の朝顔の王になった、平子真子は、春の桜の王で、四季の王でもある浮竹に訴える。

「俺はまだ朝顔の王になって半月も経ってないねんで。全部の夏の花をすぐに従えるなんて無理や。あんたを襲った朝顔の花鬼たちは、前の王の市丸ギンに忠誠を誓ったやつらや。それを永久追放処分にしたあんたを恨んでの犯行やないのかいな」

「確かに、俺は市丸ギンを永久追放にした。けれど、襲ってくる時期が遅い」

「だからって、俺のせいにしなや。俺のせいじゃあらへんで。俺は藍染なんか嫌いやし、まして手下になるなんて死んでもいやや」

平子は、夏の王の館でやってきていた浮竹と京楽と会っていた。

浮竹がたくさんの朝顔の花鬼に襲われた。何故襲ったのか、生き残った花鬼に聞くと、平子真子に命令されたといって自害した。

なので、浮竹は京楽を連れて、平子のいる夏の王の館まで来ていた。

「彼、嘘はついてないみたいだよ」

「そうだな」

「だから、最初から言うてるやん。俺のせいやないって」

「話は分かった。まだ藍染の下についている花鬼は、処分対象になるが、いいな?」

「仕方あらへんな。俺の力にも限界あるさかいに。好きに処分してええで」

平子は、王としてまだまだ未熟で、夏の花鬼たち全てを従わせることができず、今回のような騒動を起こしてしまった。

「平子、お前は夏の王として、力をつけろ。そうだな、冬の椿の王の日番谷冬獅郎の元で、しばらく修行しろ」

「修行?王になったのに、違う王の元で修行せなあかんのかいな」

「四季の王の言葉だよ、平子くん」

「はいはい、わかりましたよ。言う通りにすればええねんやろ」

こうして、平子真子は、冬の王の日番谷冬獅郎の元で修行することになった。


「藍染についている、花鬼の数はけっこう多いな。特にひまわりの花鬼は強い」

「そうだね。厄介だね」

「そうだ。彼岸花の精霊の俺と、山の王の京楽の実力を知りたいと思っていたんだ。あの二人に、頼んでみるか」

「いいの?彼らは藍染と関係ないのに」

京楽が、二人のことを思って口にする。

「俺たちが接触してるんだ。いつか、藍染とも接触するかもしれない。それに、あの二人なら藍染の手下になることもないからな」

「確かに、彼らならそれはあり得ないね」

浮竹と京楽は、夏の王の館から異界渡りをして、彼岸花の精霊の浮竹と山の王の京楽の住む山にやってくる。

『やぁ、遊びにきたの?』

山の王の京楽の洞窟にくると、彼岸花の精霊の浮竹もいた。

『こんな朝から、珍しいな』

「お前たちに頼みたいことがある‥‥」

浮竹の説明で、案外あっさりと、二人は花鬼退治を了承した。

『最近、穏やかなあやかしばかりで、力がありあまってたんだよね』

『ふふふ、夏の花鬼か。美しい彼岸花にしてやろう』

二人は、そう言った。

「今からでも大丈夫か?」

『うん、問題ないよ』

『俺も平気だ』

浮竹と京楽は、二人を連れて夏の王の館に行き、浮竹が最初に襲われた朝顔の群生地に移動した。

桜の術で、桜の王に敵意を持っている者の心を揺さぶり、襲い掛かるようにした。

「あぶない、十四郎」

京楽が、ひまわりの花鬼を倒す。

『後は任せて?』

山の王の京楽は、青龍刀を取り出して風をまとわせ、襲いかかってくる花鬼たちを切り倒していく。

『さぁ、綺麗な花を咲かせるといい:』

彼岸花の精霊の浮竹は、襲いかかってくる花鬼たちから、彼岸花を咲かせて養分として倒してしまう。

「強いな」

「そうだね」

浮竹と京楽は、襲いかかってこられてもいつでも対処できるようにしていた。

『これで、最後だよ!』

山の王の京楽は、一人で百体近いひまわりの花鬼を数分もかからずやっつけてしまう。

彼岸花の精霊の浮竹の周囲には、彼岸花が咲いていた。

どれも、元は藍染の手下である、花鬼たちであった。

『あれ、もうおしまい?』

『ものたりないな』

「君たちの強さは十分にわかったよ」

「ああ。これだけ強ければ、藍染も手を出せないだろう」

『藍染って?』

「俺をはじめとした季節の花の王たちの長で、長老神をしている。穢れをもたらす、神になれなかった男だ。四季の王でもある、俺の命を狙っている」

『わお。やっかいな相手と敵対してるんだね』

「慎重な上に神出鬼没でな。ある理由があって、四季の王である俺を直接殺せないんだ。だから、こうやって花鬼やあやかしを操って、俺を殺そうとしている」

『藍染か‥‥養分にしたら、きっと大輪の彼岸花が咲くんだろうな』

危ない橋を渡りそうな彼岸花の精霊の浮竹を、山の王の京楽に回収してもらう。

異界渡りをして、四人は山に戻る。

「二人とも、思っていた以上に強くて、俺は安心した。藍染が手を出してきても、撃退できるだろう」

「そうだね。ひまわりの花鬼は強いのに、数分もしないで百体くらいやっつけるとか、けっこうすごいね。彼岸花の精霊の浮竹も、相手を彼岸花の養分にしてしまうし」

『俺はただ、美しい彼岸花を咲かせただけだぞ?』

「うん、綺麗な彼岸花がたくさん咲いたね?」

京楽がそう言うと、彼岸花の精霊の浮竹は妖艶に微笑んだ。

『俺が咲かせる彼岸花は美しいだろう?』

「ああ、そうだな」

浮竹が頷く。養分にされた花鬼から咲いた彼岸花は、特別に美しかった。

『ボクたちの助力がいる時は、遠慮なく言ってね?』

頼もしい山の王の京楽の言葉に、浮竹も京楽も頷いた。

「じゃあ、俺たちは戻る。またな」

『しゅわしゅわが飲みたい』

彼岸花の精霊の浮竹が、ご褒美にくれと言いたげなので、買い置きしてあったコーラを一度京楽の自宅に戻りとってくると、渡した。

『しゅわしゅわだ!』

『よかったね、浮竹』

再度別れを告げて、四人は別れた。



「ギンは降格処分の上に永久追放。おまけに私を裏切った。さて、どうしたものか‥‥」

藍染は、かっこつけてはいるが、おまるに座っていた。

怒った浮竹が、藍染の侍女をしている桜の花鬼に命じて、この前の2,5倍のモレ草を盛ったのだ。

死んでもおかしくない量だったのだが、藍染はしぶとかった。

1週間以上トイレで過ごし、寝る時はいつもれてもいいように、おまるに跨ったまま眠った。

モレ草。

強烈な下剤の効果のある薬草であった。

藍染は、今日の料理にもモレ草が入っていたとも知らず、下痢を病気と思うのだった。


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桜のあやかしと共に50

夏になり、山の王の京楽のところに、浮竹と京楽は遊びに来た。

テントやバーベキュー用の野菜や器具を手に。

「彼岸花の精霊の俺は、まだ来てないんだな?」

『気まぐれだからね』

山の王の京楽が、そんなことを言っているうちに、彼岸花の精霊の浮竹がやってくる。

そして、それぞれ別れて、浮竹と山の王の京楽は魚を釣りに、京楽と彼岸花の精霊の浮竹はテントをはることになった。

それが終わり、山の王の京楽は、思い出したとばかりにこう言う。

『近くに、天然温泉があるんだよ』

「ほう、いいな」

『よければ、入っておいで』

「そうする」

「あ、十四郎待って!ボクも行く」

「お前はこなくていい」

「そんなこと言わずに」

昼間から、今夜の夜はどうだと京楽に聞かれていたので、エロいことをしそうで、浮竹は天然温泉に行くべきか迷ったが、せっかくだから行くことにした。

「わあ、けっこう広いな」

「ねぇ、十四郎」

「まだ昼間だぞ!」

「いいじゃない。減るものじゃなし」

京楽に言いくるめられて、結局浮竹は天然温泉で、京楽に抱かれた。

終わると、浮竹は京楽をハリセンでボコボコにした。


「帰ったぞー」

『おかえり』

「しくしく‥‥‥」

京楽は傷だらけで帰ってきた。浮竹は、少し赤くなっていた。

「べ、別に京楽にいかがわしいことんなんてされてないんだからな!」

『いや、そんなこと聞いてないよ?』

山の王の京楽は、苦笑する。

浮竹は、彼岸花の精霊の自分がいないので、どこにいるのだと聞くと、洞窟の奥で寝ているらしかった。

『ああ、浮竹は今寝てるから』

山の王の京楽が、洞窟に入ろうとする浮竹を引き止める。

「飯がいるかどうか、確認しなきゃいけないだろう」

『どうした?』

洞窟から出てきた彼岸花の精霊の浮竹は、いかにも事後ですという気だるげな表情で、着物を乱して妖艶に立っていた。

『ああもう、浮竹、そんな恰好で出歩かないで』

『なぜだ?』

浮竹は真っ赤になって、京楽はニマニマした表情で、浮竹を見る。彼岸花の精霊の浮竹の様子を見て、京楽はまた浮竹を抱きたくなっていた。

「あ、ちょっと用事を思い出したんで。十四郎、行くよ」

「ちょっと待て、京楽」

消えていく二人を、彼岸花の精霊の浮竹は妖艶に微笑んで、山の王の京楽は首を傾げるのであった。


「おい、京楽、どこに行くんだ」

「さっきの天然温泉」

「行ってどうする」

「エロいことする」

浮竹は、ハリセンで京楽を叩くが、京楽は彼岸花の精霊の浮竹の妖艶さを見て、自分の浮竹も交わっているときは妖艶だと思った。

「さぁ、十四郎、おいで?」

「仕方のないやつだな‥‥‥‥」

浮竹は、京楽は先に天然温泉に入ってしまったので、もう後にはひけないとばかりに、衣服を脱いで、天然温泉に入った。

「んっ」

深い口づけをされて、浮竹にもスイッチが入る。

「春水‥‥‥俺を孕ませるくらい、奥に出して?」

「十四郎、エロいね」

京楽は、妖艶に笑う浮竹を、抱き寄せると、口づけをかわしあう。

「んんっ」

「もう、こんなになってる。温泉の中じゃないと、濡れてるだろうね?」

「や、意地悪いうな。早く、お前をくれ」

先刻まで京楽のものをくわえこんでいたそこは、指で解さなくてもいいくらい、柔らかかった。

「指、いれるよ?」

「んあっ」

濡れた音がした。

「や、早くぅ」

「仕方のない子だねぇ」

京楽は、熱く昂ったもので、浮竹を貫く。

「いああああああ!!!」

びくんと浮竹の体が動き、お湯の中に精液を吐き出していた。

「もっと欲しい?」

「あ、もっと。もっと欲しい」

緩く突きあげると、浮竹は彼岸那波の精霊の浮竹のように、妖艶に微笑んだ。

「俺を、ぐちゃぐちゃにして?」

「ボクは、君の声だけでいっちゃいそうだよ。奥に、いっぱいあげるね?」

前立腺をすりあげてやると、浮竹は啼く。

「んああああ!そこもいいけど、もっと奥にきて?」

「こうかい?」

「ひあああああ!11」

ごりごりと音をたてて、最奥を抉られて、浮竹は体を弓なりにのけぞらせる。

「んあああ、いっちゃうう」

「君の欲しがってるもの、たくさん注いであげるね?」

「ああああ!熱いので、溢れる‥‥‥」

浮竹は恍惚となり、京楽は子種を浮竹の胎の奥に注ぎ込む。

「もっとお。もっとちょうだい?」

「仕方のない子だねぇ」

京楽は、浮竹の奥を抉り揺さぶりながら、浮竹のものをしごく。

「ひああああん!同時はだめええ」

「さぁ、また注いであげるから、いっぱい気持ちよくなってね?」

「んあああああ!」

浮竹は、大きく中いきをしながら、京楽の手でしごかれて、精液を出していた。

「ああああ、頭がおかしくなるう」

「気持ちいい?」

「あ、春水、きもちよすぎる」

「ふふ、十四郎はこんな時は素直でかわいいね。いつもかわいいけど、さらにかわいくなる」

「春水、春水」

浮竹は、京楽の名を呼びながら、びくんびくんと体を痙攣させる。

何度も中いきのオーガズムを繰り返していた。

「やらああ、いくの、止まらないいいい」

「好きなだけいくといいよ。ちゃんと、皆の元に戻れるようにしてあげるから」

「ああああ!!!」

浮竹は、大きくいって気を失った。

京楽は、子種を全て浮竹の中に注ぎ込んで、終わらせた。

「ん‥‥」

「ああ、気がtついた?」

「俺は、意識を失っていたのか」

「うん。でも、10分くらいだよ」

浮竹は、京楽の手で中に出したものをかきだされて、衣服を着ていた。

「戻るぞ」

「あーあ。十四郎が、普段もあんなにかわいかったらいいのになぁ」

「何を言っている!」

「なんでもありませーん」

山の王の京楽と彼岸花の精霊の浮竹のところに戻ると、山の王が苦笑いして、彼岸花の精霊の浮竹は、妖艶に微笑みながら聞いてくる。

『お楽しみは、終わったか?』

「べ、別に京楽となにかあったわけじゃないからな!」

クスクスと、彼岸花の精霊の浮竹が笑う。

『首にキスマーク、いっぱいついてるぞ?』

「な!京楽、お前!」

浮竹が、彼岸花の精霊の浮竹を軽くハリセンではたいた後、京楽をハリセンでたたきまくる。

『どんな風に楽しんだ?』

『はいはい、浮竹そこまでね』

山の王の京楽が、やんわりと止める。

『聞いちゃいけないことなのか?』

『二人が困ってるでしょう?』

『ふむ‥‥‥』

浮竹は、真っ赤になって動かない。

「十四郎とは、天然温泉でね‥‥」

彼岸花の精霊の浮竹の問いに、京楽が答えようとするので、浮竹は真っ赤になりながら追加で京楽をハリセンでしばく。

それを見て、彼岸花の精霊の浮竹はくすくすと笑い、山の王の京楽は、痛そうだなぁと思うのであった。








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桜のあやかしと共に49

浮竹と京楽と白哉が住む町で、人が血を吸われて殺されるという事件が起きた。

あやかしのしわざで、犯人は野衾(のぶすまき)であった。

一体ではなく、複数現れて、一人の人間を動けなくして襲い、体中の血を吸いつくしてしまうのだという。

正式な依頼はなかったが、町を守るために三人は動き出した。

「十四郎、そっちにはいなかったかい」

「ああ、こっちにはいなかった」

スマホで連絡をとりあい、三人別々に別れて、捜索しているのだが、野衾はなかなか尻尾を出さない。

「白哉のほうは?」

「私のほうにも、何も現れない」

野衾の妖力をたどってみるが、もっと強力が妖力を見つけた。そっちの方向に、野衾も集まっている気配を感じた。

「野衾たちが集まっている。あと、もっと強力なあやかしがいる。俺が一番近いから、次の被害者が出る前になんとかしてみせる。京楽と白哉も、急いで俺のところにきてくれ」

「気をつけて。すぐに行くけど、くれぐれも油断しないようにね」

「浮竹、兄なら大丈夫であろうが、念のために恋次にも連絡を入れておいた」

浮竹は、スマホを切って、野衾ともっと強力なあやかしがいるほうへ走る。

浮竹が見たものは、野衾が六匹と、それを操っている女だった。

「あら、桜の王から来てくれるなんて、手間が省けたわ。藍染様から、あなたの四季の王としての実力を測ってこいと言われているの」

「野衾もお前も、藍染の手下か」

「私は吸血鬼の王。王同士、仲良くしましょう?」

「いけ、桜の花びらよ!」

浮竹は、ふっと桜の花びらを刃にして、野衾たちを切り裂く。

けれど、切り裂いたところから再生してしまう。

「無駄よ。この子たちの王である私がいるんですもの」

「じゃあ、お前を退治するだけだ」

浮竹は、ふっと桜の花びらを吹いて、業火で吸血鬼の王を包み込む。

「うふふふ、私は不死なのよ」

業火でもやされても、吸血鬼の王の女は平然としていた。

浮竹は、雷を打ったり、風で切り裂いたり、水で窒息してみたりといろいろ攻撃をくわえるが、吸血鬼の王はにやにやと笑うだけだった。

「核の心臓を、どこかに隠しているな?」

「あら、ばれたの。でも、どこにあるのか分からないでしょう?」

「京楽、吸血鬼の王が出た。俺の桜の花びらが、その吸血鬼の王の核である心臓のところ導くから、破壊してくれ!」

「十四郎、くれぐれも無理はしないでね!」

京楽にスマホで連絡をいれて、浮竹は桜の花びらで体を包み込み、核の心臓が破壊されるまでの間、防御しながら攻撃することにした。

「うふふ、攻撃はもうおしまい?四季の王といっても、しょせんはただの桜の王ね。でも、その血はすごくおいしそう」

浮竹を包んでいた桜の花びらの結界が壊される。

「なに!?」

一瞬隙を見せてしまった浮竹に、吸血鬼の王は素早く近づいて、その細い首に牙をたてて、浮竹の血をすすった。

「ぐ‥‥‥」

野衾たちにまで血をすすられて、浮竹の意識が遠くなる。

「こんなところで‥‥‥」

浮竹は意識を失い、仮死状態になる。

「おいしいわ。こんなおいしい血、初めて飲むわ。野衾たち、吸った血をよこしなさい」

そこに、京楽が現れた。

「十四郎!?十四郎、しっかりして!」

「うふふふ、その桜の王の血はとてもおいしかったわ。残念ながら、体中の血を吸われて死んでしまったみたいだけど」

「よくも十四郎を!」

京楽は、桜鬼になって、吸血鬼の王の目の前に、浮竹の桜の花びらが導いてくれた、吸血鬼の王の核である、心臓を取り出す。

「な、おまえ、どこでそれを!」

「浮竹が教えてくれたんだよ」

「やめろ、それを返せ!」

吸血鬼の王は、血相を変えて、京楽に襲い掛かる。

京楽は、吸血鬼の王の心臓を握りつぶした。

「ぎゃあああああああ!私の、不死があああああああ!!!」

「業火に焼かれ朽ちるがいい!極滅破邪、天炎!」

「いやああああああああ!!」

吸血鬼の王も、野衾たちも、京楽の天の炎に焼かれて、灰になっていく。

不死である吸血鬼の王だが、核である心臓を別の場所に隠すことで、一時的な不死になっていたにすぎなかった。

「十四郎‥‥死なせないよ。死ぬ時は、一緒だからね?」

京楽は、仮死状態の浮竹に、治癒の術をかける。自分の生命力を燃やしてまで、浮竹に生きろと促した。



「ここは?」

浮竹は、気づくと彼岸花の花畑にいた。

『ここは、お前のくるべき場所じゃない。帰るんだ』

「彼岸花の精霊の俺?そうか、俺は仮死状態になって、冥界にきているんだな」

『そうだ。ここに長くいると、本当に死んでしまう。生きているのに冥界(に来るなんて、不思議だな?桜の王?

彼岸花の精霊の浮竹は、妖艶に微笑んだ。

『さぁ、戻るんだ。いるべき場所へ』

「どうやって‥‥‥」

『あちらの方角に光が見えるなら、お前はまだ生きる道がある。ないなら、三途の川を渡るしかない』

「光が見える。青白い光だ」

『それが、お前を待っている者の命の光だ。さぁ、ゆけ』

「春水‥‥今、戻る」


浮竹が目覚めると、そこは高級タワーマンションの京楽の家だった。

「よかった、やっと目覚めたんだね。呼吸も心臓の鼓動も止まっていたから、最大の治癒術を使うと呼吸も鼓動も戻ったんだよ。でも、目が覚めないから、心配したんだよ?」

「白哉は?」

「君を徹夜で看病して、今疲れて仮眠してる」

「そうか。心配をかけた」

「ほんとに、危なかったんだからね!」

京楽は、目尻に涙を浮かべていた。

ゆっくり抱擁される。

「君がいない世界に興味はないよ。君が死んだら、ボクも死ぬところだった」

「春水」

「十四郎、約束したでしょ。死ぬ時は一緒だって」

「ああ。眠っている間に、彼岸花の精霊の俺にあったんだ。俺は冥界に迷い込んでいたらしい。ここは来るべき場所じゃないから、戻れと言われた」

「うん」

「光が見えるなら生きる道があると言っていた。光っていたのは、春水、お前の命の色の青白い光だった」

「ボクの命の色は青白いの。でも、十四郎が無事に目覚めてよかったよ。白哉くんを起こして、知らせてくるね」

「ああ。白哉も俺の看病をしてくれていたんだったな。礼を言わないと」

浮竹はベッドから起き上がろうとして、ふらついた。

「だめだよ、まだ寝てなきゃ。仮死状態までいったんだから」

「すまない。迷惑をかける」

「ううん。十四郎が無事なら、それでいいよ」

その後、起きてきた白哉に思い切り抱き着かれて、そんなことはとても珍しいので、浮竹は戸惑う。

「浮竹、兄が無事でよかった。「春」の時のように、残されていくのはいやだ」

「白哉、俺はもう大丈夫だから」

「いや、まだ兄からほのかに死の香りがする。とれるまで、ずっと一緒にいる」

白哉は、ぞう言って浮竹と京楽を困らせた。

一時的な死を体験して、浮竹は力を増しているのに気づく。

「四季の王として、少しは強くなっただろうか」

「妖力が、今までの1.5倍くらいになってるね」

「そうか。俺を仮死状態にまでおいこんだ吸血鬼の王とやらは、藍染の手下だった」

「また、藍染‥‥‥」

「いずれ、決着をつけないといけないだろうな」

浮竹の言葉に、京楽も白哉も頷くのであった。

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桜のあやかしと共に48

浮竹は、ふと自分のスマホの待ち受け画面を見る。

そこには、転生する前の妖狐の浮竹と、夜刀神の京楽と、浮竹と京楽で映った4人の写真があった。それをフォルダに移動させる。

そして、新しい待ち受け画面に、彼岸花の精霊の浮竹と山の王の京楽と一緒に、4人で映った写真にした。

休眠から目覚めて、2か月が経とうとしていた。

転生をした二人を見つけられて、浮竹はよかったと思っていた。

「カスタードケーキを作ってみた。京楽、二人のところに行くんだが、くるか?」

「もちろんだよ。十四郎の行く場所にはついていく」

京楽は、2リットル入りのコーラをもっていた。

「しゅわしゅわ好きだって言ってたからね。2リットルあれば、2~3日はもつでしょ」

「ふふ、京楽もなんだかんだいって、あの二人が好きなんだな」

「そうだね。ボクの中の闇はそんなわけないって言ってるけど、ボク自身は結構好きだよ?」

浮竹は、京楽がうるさいので、玄関に異界へのゲートを開く。

異界渡りをすると、彼岸花の精霊の浮竹と山の王の京楽がいる山の麓にやってきた。

少し歩くと、山の王の京楽の住んでいる洞窟があった。

「おーい、いるか?」

『あれ、どうしたの』

「遊びに来た。これはおみやげのカスタードケーキ」

『浮竹、おいで。二人が遊びにきてくれたよ』

『お、その桜鬼の京楽がもっているものは、もしかしてしゅわしゅわか?』

彼岸花の精霊の浮竹は、ちょうど冥界から山の王の京楽の元にきていて、誰も欠けることなく会えた。

「この洞窟には、茶器はあるかな?」

『一応、あるよ。ちょっと古いけど』

山の王の京楽は、洞窟の奥から、古びた茶器をもってきた。

京楽は、それにコーラを注いで、彼岸花の精霊の浮竹に渡す。

『しゅわしゅわだ。おいしい』

『よかったね、浮竹』

「カスタードケーキをもってきたんだ。皆で食べよう」

カスタードケーキを食べながら、京楽が古い茶器に入れた紅茶を飲んで、浮竹が外の景色を見た。

「もうすぐ夏だな。テントをもってきて、キャンプしたり、川遊びができるな」

『そうだね。釣りなら今の時期でもできるけど』

「釣りか。いいな。してみたい」

『お、釣りにいくかい?」

カスタードケーキを食べ終えた4人は、川へ釣りにでかけた。

『ここらへんなら、鮎がとれるよ』

「景色が殺風景だな。桜を咲かせよう」

『え、今初夏だよ?』

「俺は四季の王でもあるが、桜の王だからな。季節なんて関係なしに、桜を咲かせれる」

浮竹は、雑草ばかりが生い茂る空間を、満開の桜でいっぱいにした。

『へぇ、綺麗だな。これが桜か』

『浮竹は現世に疎いからね。冥界の彼岸花くらいしか知らないから』

山の王の京楽が、桜の王と名がついているのに、桜を知らないといって怒られるんではないかと思い、助け舟を出す。

「ああ、これが俺の名前の由来になった桜という木だ。綺麗だろう?」

『綺麗だな。儚くて、幻想的だ』

「だろう」

自分の花だけに、浮竹は褒められてうれしそうだった。

『おっと、最初の目的を忘れそうだったよ。釣りをしよう』

「俺は大物をとるぞ」

「ボクも負けないよ」

浮竹と京楽は、どっちが大物を釣れるか勝負することにした。

負けたほうが、夕飯ぬきということにした。

『お、ボクのにさっそくかかったみたいだね』

山の王の京楽の竿に、大きな鮎が釣れた。

『大きいね。魚影が多い。なんでだろう?』

「俺が、桜の術で呼び寄せた。心配しなくても釣りすぎはしないし、術は時間が経てば消える」

『桜の王って、いろんな術が使えるんだね』

『俺の彼岸花の術とは違う系統なんだな』

「俺は桜の術で、いろんなことができるぞ」

『じゃあ、緑色のしゅわしゅわを出してくれ』

彼岸花の精霊の浮竹にそうお願いされるが、さすがの浮竹もそれは無理だった。

ちなみに、緑色のしゅわしゅわとは、メロンソーダのことだ。

「便利屋じゃないからな。それはさすがに無理だ」

『浮竹、竿に魚がかかってるよ』

『あ、ほんとだ‥‥小さいな。逃がしてやろう』

隣では、浮竹と京楽が釣竿を垂らしているが、全然釣れなかった。

3時間ほど釣りをして、京楽は5匹、浮竹は7匹釣った。

大きさは、どちらも変わらず、暇つぶしの勝負は引き分けとなった。

「鮎を塩焼きにするだけじゃ味気ない。このまま一度京楽の家に行って、調理して出すから、彼岸花の精霊の俺も、山の王の京楽も、京楽の家に移動しよう」

「ゲートはベランダはだめだよ!玄関にしてね!」

浮竹は分かっているので、素直に玄関に繋がるゲートを開く。

浮竹は、鮎の塩焼き以外に、鮎甘露煮の炊き込みご飯、鮎のポワレ、鮎の天ぷらなどを作った。

それを京楽と留守番をしていた白哉を含めた4人にふるまった。

『へぇ、鮎って塩焼き以外にも調理方法あるんだ』

「洞窟暮らしでは調理に限界があるだろうが、一応レシピを渡しておく」

『ありがとう。調理するときは、桜鬼の家のキッチン、かりていいかな?』

「いいぞ」

「浮竹がいいって言うなら、いいよ」

京楽の言葉に、彼岸花の精霊の浮竹は、クスクスと笑う。

『仲がいいんだな』

彼岸花の精霊の浮竹は、何もない空間から彼岸花を取り出す。

『イメージは悪いが、俺の花も綺麗だろう?』

「一株もらえる?ベランダに植えてみたい」

「京楽はこう見えて、園芸が得意だからな」

『道理で、ベランダにたくさんのプランターやら鉢植えがあって、花がよく咲いているわけだ』

山の王の京楽は、京楽の趣味を知ってこう言う。

『今度、綺麗な花があって、種が実っていたら、とっておくね』

「うん、ありがとう」

「もう夏か‥‥今度の朝顔の王は、無事夏の王としてやっていけるといいが」

市丸ギンは、永久追放されて、新しく夏の朝顔の王になったのは、平子真子という。

市丸のように、藍染に飲まれないように願う。

『君の作る料理は、多彩だしおいしいね』

「本当のことを言っても何も出ないんだからな」

浮竹の言葉に、京楽が苦笑いする。

「さて、日が暮れる前に山に戻る?」

『うん、そうするよ』

『俺も、京楽と一緒に帰る』

「彼岸花の精霊の俺、おみやげだ!」

浮竹は、そう言って、サイダーとメロンソーダの、2リットル入りのペットボトルを渡す。

『お、重い』

「この鞄をやろう。これに入れてもっていけ」

『全部、しゅわしゅわなのか?』

「味は違うが、しゅわしゅわだ」

『一気に飲まないようにする』

「あ、言い忘れてた。開封してちゃんと栓をしないと、炭酸がぬけてまずくなるから気をつけろ」

浮竹がそう言うと、彼岸花の精霊の浮竹は、きっちり線をして、一週間くらいかけて飲むと言って、山の王の京楽と共に、山に帰っていった。

「彼岸花の精霊の俺のために、また炭酸飲料買いにいかないとな。あと、いつ来てもいいようにお菓子を作っておこう」

浮竹は楽しそうであった。京楽は、そんな浮竹を優しい目で見る。

「今日は恋次が私を抱きたい言うので、恋次のところに行ってくる。帰りは、明日になる」

爆弾発言をして、異界に消えた白哉に、浮竹は「白哉ああああ」と、取り乱すのであった。

契約をしていたのは知っていたが、あの白哉がそう簡単に体を許さないだろうことも知っていた。

浮竹と京楽のような仲になるには時間がかかりそうだと思っていたが、休眠期間中はこの家には白哉しかいなかったので、その間に恋次との仲が深まり、肉体関係に陥ったらしい。

「俺の白哉があああ!!!」

浮竹は、京楽がリラックス効果のあるハーブティーを入れるまで、取り乱しているのであった。




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桜のあやかしと共に47

こんこん。

ベランダのガラス窓をたたく音がして、京楽はそちらへ行った。

「これは‥‥山の王のボクからの手紙?鷹をてなづけてるのかい」

「どうしたんだ、京楽」

「うん。山の王のボクから、手紙がきてね」

「見せてみろ」

浮竹は、鷹の足にくくられた手紙を読んで、渋い顔になった。

「彼岸花の精霊の俺が、祓い屋を殺してしまったらしい。理由は、山を開拓にしにきた人間が術者を雇って、山の王の京楽たちを殺そうとしたから」

「ボクの同業者を殺してしまったのかい?」

「そうみたいだな。どうする?」

「一応正当防衛だし、今回は見なかったふりをするよ。人を殺め続けるようであれば、祓わないといけないけど」

浮竹が、悲しい顔をする。

「せっかく転生したんだ。二人には幸せになってほしい」

「うん、そうだね。まぁ、きっと山の王がむやみに人を殺していけないって教えてるだろうから、問題はないと思うよ」

「そうだな。そうだよな」

浮竹は、顔を輝かせた。

「追伸。苺パフェが好きみたい‥‥今度こっちにきたとき、チョコレートパフェでも作ってやるか」

「うん。まずは、転生する前くらいにまで仲良くならないとね?」

「彼岸花の精霊の俺は、現世に疎いらしくて、あと山の王の京楽jにしか興味がなさそうだ」

「でも、食べ物で好感度UPは期待できるんでしょう?」

「そうだな。明日にでも、チョコレートパフェの材料、買ってくるか」

「チョコレートパフェなら、私も食べたい」

黙って話を聞きながら、本を読んでいた白哉が本を閉じた。

「白哉?甘いもの、あまり好きじゃないんじゃないのか?」

「浮竹、兄の作ったものなら食べれる」

「うわ、白哉くんシスコンの上にブラコンなの」

「京楽、兄はよほど千本桜の錆になりたいらしいな‥‥」

白夜が、何もない空間から、千本桜という名の日本刀を取り出す。

「ごめんなさい、なんでもありません。千本桜はまじで冗談にならないからやめて」

一度、京楽は白哉を怒らせて、千本桜で攻撃されたことがあった。

かなりの傷を負って、治癒術がなかったら大変だと思える鋭さをもつ、桜の花びらとなった刀身が、刃を億の数にして敵を葬る。

白夜の本気の千本桜の解放があれば、浮竹や京楽とて危ない。

「千本桜が、京楽、兄などまずくて切りたくないと言っている」

「ああ、その刀意思をもつんだったね」

「そうだ。それより、来週はあいているか?」

白夜の問いに、浮竹が答える。

「あやかし退治の依頼は片付けたから、時間はあるはずだ」

「ルキアと、黒崎一護が、伸ばしに伸ばしていた結婚式をおこなうのだ。兄ら二人には、仲人をつとめてもらいたい」

「うん、ボクはいいよ」

「俺もかまわない」

「うむ。恩にきる」


次の週になり、一応正装した二人は、ネモフィラの花畑にきていた。

ネモフィラの花鬼たちが、忙しく料理を作り、テーブルと椅子を用意していた。

一際でかいケーキをみて、浮竹が。

「あれ、入刀用のケーキだろうけど、本格的に作られてるな。後で皆で分けて食べるんだろう」

「あ、京楽さん、浮竹さん、来てくれたんすか」

一護も正装していた。

「仲人をするという、約束だったからな」

「うん、ボクも別に仲人じゃなくてもきたけどね」

そこにルキアが現れた。

ひらひらの水色のウェディングドレスを着ていて、同じく水色のヴェールを被っていた。

「綺麗だぞ、ルキアちゃん。まるでネモフィラの女王のようだ‥‥‥って、太陽の王の妻になるってことは、本当にネモフィラの女王になるんだな」

浮竹が、しみじみと言う。

「浮竹殿、京楽殿。今宵は、夜が明けるまで結婚式の宴となります。どうか、楽しんでいってください」

ルキアと一護の結婚式が始まる。

浮竹と京楽は、ちゃんと仲人の役をして、出されてきたご馳走を食べた。

上等な赤ワインもふるまわれたが、浮竹にはオレンジジュースだった。

若い二人の門出を、酒乱で台無しにする気はないようで、京楽は安心する。

「ルキア。幸せになるのだぞ」

「はい、兄様。実は、もう腹の中に子が‥‥‥」

白哉も浮竹も京楽も、ぎょっとなった。

「すんません。避妊忘れた日にできちゃって。どうせ結婚するのだから‥‥」

「散れ、千本桜」

「もぎゃああああああああ」

手加減はしているが、結婚前に子を作るのは白哉にはタブーのようであった。

「盾よ!」

京楽が、結界をはって、一護を守った。

「ほらほら、義弟になるんだから、もっと仲良くしないと」

「むう。浮竹、どう思う?」

「愛し合っているならいいんじゃないのか」

「そうか。兄がそう言うのであれば、許そう」

「こえええ。白哉こええええ」

一護は、乱れた正装を直してから、ルキアの元にいく。

結婚指輪をはめあって、キスをした。

神父役は、ネモフィラの花鬼の男性だった。

ネモフィラの花鬼のほとんどが女性なので、男性は珍しかった。

二人は愛を永遠に誓いあう。

ルキアが投げたブーケは、ネモフィラの花鬼たちが我先にとろうとしていたが、ちょうど浮竹の腕の中に落ちてきた。

「これ、ボクらも結婚式挙げろってことかな?」

「しないぞ」

「えーケチー」

「エンゲージリングなら、はめてやってもいい」

「まじで?今度買いに行ってくる」

ルキアと一護の結婚式には恋次もきていて、白哉のパートナーとして隣にいた。

「ルキア、一護、幸せにな」

恋次はそう言うと、白哉の指に指輪をはめる。

「れ、恋次。皆が見ているであろうが」

白哉は珍しく赤くなる。

「おー、あっちも春だねぇ」

「恋次くんを選んだのは白哉だ。俺の義弟になるんだな」

「あー、うん、そうなるねぇ」

その日は、太陽が昇るまで宴が開かれて、浮竹は中身を間違えてワインを口にしてしまい、白哉が問題行動を起こす前に桜の術で眠らせてくれた。

朝になり、京楽は浮竹をおんぶして、皆に別れを告げる。

「また、来るからね。その時は十四郎も一緒だけど」

「ありがとうございました、浮竹殿、京楽殿」

「ありがとさん、浮竹さん、京楽さん」

ネモフィラ畑は、家から近いので、遊びにこようと思えばすぐにこれるが、しばらくは新婚の二人きりにさせてあげようと思うのであった。





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桜のあやかしと共に46

浮竹は、四季の王になった。春の王で、桜の王であることには変わりない。

「そうか。市丸ギンを永久追放処分にしたのは、正解だったな。俺の椿の宝玉も奪われた。藍染が四季の王と神になるのに失敗して、粉々になったから、今は俺の右目が椿の宝玉だ」

ついこの間、四季の王になった浮竹は、元夏の朝顔の王である市丸ギンを、王を剥奪してただの朝顔の精霊に降格処分し、乱菊という愛しい者と永久追放処分にした。

市丸ギンが犯した罪を考えれば、処刑もありえたが、浮竹は永久追放処分に留めた。

「やっぱり、冬獅郎くんのところの宝玉も奪っていったか」

「ああ。桔梗の王の卯ノ花の宝玉も奪われたらしい」

「俺の場合、すでに右目が宝玉だったので、くりぬかれた」

「うわ、痛そうだな」

日番谷冬獅郎が、きていた。

新しい夏の王を決めるためにやってきて、新しい夏の王は朝顔の王のままに決まり、卯ノ花の推薦から平子真子という者に決まった。

「平子真子といえば、先代の夏の王の息子だな」

「そうなのか」

「ああ」

「俺は四季の王になったが、春の王で、桜の王でもある」

「ややこしいな。まぁ、単純に四季の王が追加されたと考えるだけいいか」

冬獅郎は、京楽が出してきた紅茶を飲む。

茶菓子は、あやかしまんじゅうであった。

「いよいよ、藍染が動き出したね」

京楽は、自分の分の紅茶を飲みながら、白あんのあやかしまんじゅうを食べる。

「普通、四季の王と長老神はセットだからな。藍染は、よほど四季の王になりたいらしい」

浮竹は、紅茶のおかわりを京楽に頼んだ。

「でも、四季の王だと余計に藍染に狙われないか?」

「いや、そうでもない。四季の王は、元々長老神がもっていたものだった。藍染は別だが。長老神が、四季の王を手にかけることは自殺に似ている。俺を殺せば、藍染も死ぬという仕組みになっている」

「うまいことできてるんだな」

冬獅郎は、あやかしまんじゅうを気に入ったようで、浮竹は帰りにおみやげとして買い置きしていた分をあげようと思った。

「四季の王になりたいが、四季の王を手にかけると自分が死ぬ。でも、藍染自身が直接手をくださなく殺せば、四季の王は空位になるな」

「気をつけろよ、浮竹」

「ああ、大丈夫だ。四季の王の力は藍染に匹敵する」

「十四郎ってば、どんどん強くなるから、ボクが守る意味がなくなちゃう」

「いや、京楽、お前の存在は助かっている。この前の市丸ギンの襲撃事件でも、お前の治癒術のおかげで一命をとりとめた」

「うん。あの時は君を失うと思って怖かったよ」

「もう、藍染に従う王はいない。側近はいるようだが‥‥‥そうだ、モレ草を藍染にもってやろう」

悪戯を思いついた子供のように、浮竹の目が輝く。

「モレ草って、下痢の止まらなくなる強力な薬草だろう?滅多に出回っていないんじゃないのか」

「俺が管理している畑で、栽培させてる」

「十四郎ってば、いつか役に立つとかいって、マンドラゴラとかも栽培してるんだよ」

京楽が、重いため息をつく。

「モレ草を藍染に盛るのか。面白そうだな」

冬獅郎も、興味をもったようだった。

「藍染の手下に、桜の花鬼がいる。命令して、藍染に盛らせることにしよう」

こうして、四季の王である浮竹は、その地位を利用して、藍染にモレ草を盛ることにするのであった。


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「実は、気になる人間がいるんだ」

冬獅郎は、言いにくそうに切り出す。

「恋か?」

「まぁ、似たようなもんだ。名前は雛森桃。氷の城に、何度も遊びにくるんだ」

「それは、桃ちゃんって子が冬獅郎くんに惚れてるんだろうね」

「やっぱりそうなのか?俺は誰かを愛したことがなかったから、この感情がなんであるのかはじめは理解できなかった」

「青春だねぇ」

「青春だな」

「でも、人間とあやかしは生きる時間が違うだろう?どうすればいいのか、分からない」

「契約すればいい。俺の京楽も、元はただの人間だ。俺と契約して、いろいろあって桜鬼になって、あやかしになった」

「契約?なんだそれ」

「桜の秘術の一つだからな。知らなくても無理はない。契約の仕方と方法を教えてやろう」

浮竹は、冬獅郎に人間と同じ時間を生きる桜の秘術を教えた。

「一度、思いを告げてから雛森に聞いてみる」

「ああ。それがいいだろう。互いを好きじゃないと、契約は成り立たないからな」

冬獅郎は、あやかしまんじゅうをお土産に、帰っていった。

「さて、藍染にモレ草を盛るか」

「ほんとにやるの?モレ草、下手したら死ぬかもしれないくらい下すよ」

「死ねば、平和的解決で万々歳だ」

京楽は、ほんの少しだけ藍染に同情する。

浮竹は、藍染の元に出入りしている桜の花鬼を召喚すると、モレ草を渡して、夕食に混ぜるように命令した。

桜の花鬼は、四季の王の命令には逆らえず、藍染にモレ草を盛った。


「ぬおおおおおおおお!!!」

藍染は、モレ草を盛られて、腹をくだした。

それが強力で、トイレから出れなかった。

藍染は、1週間トイレで過ごした。

「くううう、神となるべき私が、なぜこのような目に」

浮竹のせいでモレ草を盛られたとも知らず、今日もまた藍染はげりぴーぴーで、おまるに座って長老神の仕事をした。

一応、長老神であるから、仕事だけはしているようであった、

「ぬおおおおおお、ピーピーが止まらない」

桜の花鬼は、追加で飲み物にモレ草を混ぜて飲ませた。

「ふがあああああああ!!」

結果、藍染は5キロやせるほどに下痢を続けるのであった。

それを知った浮竹tと京楽は、ざまーみろと思うのであった。


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桜のあやかしと共に45

昔、桜の宝玉というものがあった。

桜の王の血族に代々受け継がれるものであるが、浮竹が桜の王になったのは今から5千年前。その前の前の桜の王から受け継がれてきたものだった。

本当は、大切にしないといけないものだった。

桜の秘術が入っており、浮竹はその秘術の全てを使えたし、内容は頭にしっかりと刻み込まれていた。

そして、はじめて愛した人間の「春」の死を塗り替えようと、桜の秘術でも禁忌の蘇りの術を浮竹は「春」にかけた。

だが、「春」は蘇らなかった。魂のレベルで、拒否されたのだ。

自暴自棄になった浮竹は、大切な大切な桜の宝玉を粉々に壊してしまった。

それが桜のただの一族であれば、極刑ものだった。

だが、王自らが壊した。

桜の宝玉は、こうして失われた‥‥はずであった。

だが、桜の宝玉はもう一つ存在する。

それは、桜の王の右目であった。

それを知る者は、浮竹だけのはずであった。だが、記憶を見られたのか、藍染にも伝わっていた。

「ほんと堪忍なぁ。桜の王。こないなことしたないねんけど、藍染様が桜の宝玉をどうしても欲しがっとるんや」

夏の朝顔の王、市丸ギンに、浮竹は右目をくりぬかれた。

「ああああ!!!!」

激しい出血と痛みで、何も考えられない。

「十四郎、今治癒するからしっかりして!」

「ほな、桜の宝玉はもろたで。さいなら」

「く、行かせるものか!」

白夜が、桜の術を使うが、桜の業火に包まれても、市丸は涼しい顔をして、去っていった。

「浮竹、兄がいなくなるなど、ないだろうな!私はいやだぞ!兄を失うのは、絶対にいやだ!」

京楽の卓越した治癒能力のおかげで、浮竹は一命を取り留めた。

右目は、再生して元の翡翠色に輝いていて、見ることもできた。

だが、もうそこには桜の宝玉は宿っていない。



---------------------------------------------------------


「ははははは!ついに手に入れたぞ!桜の宝玉を!」

藍染は、狂ったように笑っていた。

「朝顔の宝玉、桔梗の宝玉、椿の宝玉、それに桜の宝玉。これで、私はついに神となるのだ!」

4つの季節の花の宝玉を集めた者は、四季の王となり神となれる。

はずであった。

「何故だ!何故、何も起きない!」

宝玉たちは、かたかたと震えて、ピシリピシリと、罅が入っていく。

宝玉たちは、意思をもっている。四季の王にふさわしくない者の前で、粉々に砕け散った。

同時に、4つの季節の王の誰かを、四季の王にした。

神にはしなかったが、四季の王となれば、藍染と闘っても勝てる可能性がでてくる。

四季の王に選ばれたのは、桜の王、浮竹だった。


-----------------------------------------------------------------


その時、浮竹の体が黄金色に輝いた。

「十四郎、君‥‥‥」

「ああ。どうやら、四季の王になったらしい。宝玉を4つ集めて、神になるのにふさわしい者が掲げると、四季の王になり神となる。逆に、ふさわしくない者の場合、宝玉は砕け散り、季節の花の王の誰かが四季の王となる」

「じゃあ、藍染が宝玉を集めて神になろうとしたけど失敗して、十四郎が四季の王に選ばれたってことだね?」

「そうだな」

浮竹は、宝玉が砕け散ったことで、再び右目に宝玉を宿していた。

「四季の王というが、基本は何も変わらない。ただ、俺と俺の宝玉が敵とみなした者の前で、力を発揮する」

「へぇ。浮竹が神様になるんじゃないんだ。でも、神様の浮竹は遠いかんじがするから、四季の王までだね。ボクが許せる範囲は」

ふと、ベランダに敵の気配がした。

「またきたで~。もう一度、右目の宝玉もらうためにきてん。藍染様、一度失敗してるのに、もう一度試すって聞かなくてほんま、簡便やわ」

「俺は、四季の王として、藍染に加担する夏の朝顔の王、市丸ギンを敵とみなす」

「だからなんなん?この間みたいに、桜の術かけて敗北するん?」

「敗北するのはお前だ」

浮竹の体が金色に輝き、瞳も金色に輝いていた。

浮竹は、黄金の炎で市丸を焼いた。

「こんなもん通用するはず‥‥‥‥ぎゃあああ!!」

市丸は、黄金の炎に飲まれる。

「お前に愛しい者がいて、その者もお前を愛しいと思っているなら、一度だけ命を繋げるチャンスをやろう。代償は、愛しい者の命」

「あかん、あかんで。ボクが自分の命惜しさに、乱菊を差し出すとでも思うたんか?」

「乱菊‥‥‥召喚」

突然、召喚された乱菊は、目をぱちくりさせていたが、愛しい市丸の変わりはてた姿に、市丸にすがりつく。

「ギン、ギン、しっかりして!」

「あかん、ボクの傍から離れ、乱菊。今まで散々悪さしてきたつけがきたんや」

「市丸を愛する者よ。その命、捧げることはできるか?」

「できるわ。ギンを助けてくれるなら、あたしの命なんていくらでもあげる」

「十四郎‥‥‥‥」

京楽が、やめろと言いたげな顔をする。

浮竹は、四季の王としての裁きをくだす。

「市丸ギン、今日をもって、朝顔の王からただの朝顔の精霊に降格し、永久追放処分とする」

「ギン、聞いた?あたしの命も、あなたの命もどっちもとらないって」

「甘いわ、四季の王」

「愛する者を、犠牲にしてでも助けてくれと言っていたら、お前を殺していた」

「十四郎、立派だよ」

京楽は、浮竹の出した裁きは、甘くはあるが、誰の命もとらずにすんで、安心した。

市丸ギンの火傷を、京楽が癒す。

「さぁ、もうお前は夏の王でも朝顔の王でもない。どこへなりとも、その乱菊という愛しい者と消えるがいい」

「藍染様‥‥‥ボクは、あんたへの忠誠心より、乱菊のほうが大事や。乱菊、一緒にきてくれるかいな?」

「行くわ。どこまでも、あなたと一緒よ」

こうして、浮竹は四季の王となった。

市丸ギンは朝顔の王から外されて、藍染の部下であることもやめて、乱菊と共に、旅立っていった。

市丸ギンの夏の王がかけた穴を誰にすべきか、残された冬の椿の王日番谷冬獅郎と、秋の桔梗の王卯ノ花烈と会い、会議が開かれた。

結果、平子真子という朝顔の花鬼が夏の朝顔の王になることが決まるのであった。




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桜のあやかしと共に44

山の王の洞窟で、浮竹と京楽はもの珍しそうにきょろきょろしていた。

『ああ、洞窟は奥が深くて入り組んでるから、行かないようにね。過去に戻ってこなかったあやかしがいるから』

山の王の京楽の言葉に、浮竹はついつい探検しようと思っていて、びくっとなる。

「そ、そいうことを言うなら、おとなしくしてやらんでもない」

『ねぇ、桜鬼のボク。この子って‥‥』

「一種のツンデレだよ。ツンが多くてデレが少ないけど」

『やっぱり‥‥‥』

二人の京楽は、ため息をつく。

「それより、彼岸花の精霊の俺には、家はないのか?」

『ないぞ。冥界の彼岸花の花畑が家のようなものだ』

「じゃあ、今度は俺たちの家に来ないか?」

『いいが、遠いと行けないぞ』

『そうだね。遠いと無理だね』

二人の意見は一致している。

そこで、浮竹は異界へのゲートを開く。

「異界渡りをしよう。一度行った場所には、異界を通っていくことで、すぐにつく。ここに来るのも、異界渡りをした」

『じゃあ、行ってすぐ帰ることもできるの?』

「俺が道案内をしなきゃいけないが、可能だ」

『じゃあ、言葉に甘えてお邪魔しようかなぁ』

山の王の京楽は、楽しそうにはっしゃいでいた。

異界渡りをして、迷子にならないようにみんなで手をつないで、向こう岸のゲートを出ると、京楽のマンションの玄関だった。

『広いな』

彼岸花の精霊の浮竹は、きょとんとしていた。

それから、浮竹をじーっと見つめてくる。

「3億するらしいぞ。このマンション」

『高級タワーマンションかぁ。いいなぁ』

山の王の京楽は、一度住んでみたいという顔をしていた。

浮竹は、彼岸花の精霊の浮竹にじーっと見つめられて、ついつい目をそらすこともできずに、じーっと見返してきた。

「何してるの?見つめあって」

「彼岸花の精霊の俺が、俺を見てくるから視線合わせてた」

『浮竹、ほら、珍しいからってジーっと見ちゃだめだよ。変に思われちゃう』

「べ、別に、視線が合って嬉しいなんて、これぽっちも思っていないからな!」

浮竹は、ツンデレになっていた。

「こっちが寝室で、こっちがバスルーム。こっちがキッチンで、こっちがトイレ。リビングルームにゲスト部屋が5つ。うち1つは、浮竹の弟である白哉くんが使ってるよ」

『きみ、弟なんているんだ』

「ああ。血は繋がっていないが、弟だな。俺は桜の王で、異界に俺の本体の桜の大樹がある。そこから株分けされた桜が、朽木白哉という。俺の自慢の弟だ。今は恋次くんというパートナーとあやかし退治に出かけている」

『桜鬼のボク』

「なんだい?」

『依頼があったら、やっぱり祓うのかい?』

「時と場合によるね。話し合いで解決できるならそうするし、だめでも封印とかの場合もある。問答無用で祓うのは、人に害をなすあやかしくらいだね」

『そっか、よかったぁ。ボクと浮竹はあやかしでしょ?祓われたらどうしようと、思ってたんだよ』

京楽は、クスっと笑う。

「祓う相手を、自分の家に招くことなんてしないよ」

『それもそうだね』

「茶菓子はあやかしまんじゅうしかないが、これでも飲んでくれ」

浮竹が出してきたのは、コーラだった。紅茶の茶葉を切らしていたのだ、

『お、これはコーラだね。人の子からもらって飲んだことあるよ』

『しゅわしゅわしている。毒じゃないのか?』

「毒じゃないぞ。ほら、俺が飲んでる」

浮竹が、コップにコーラを注いで、飲んでみせた。

『じゃあ、俺も飲んでみる。なんだこれ!しゅわしゅわしてて甘くておいしい!』

「コーラ、見たことないのか?」

『ああ。初めてだ。飲むのも初めてだ』

「じゃあ、今度違う種類のドリンクを飲めるようにしておく」

『ああ、楽しみにしている』

山の王からもらった川と山の幸を鍋にして食べて、4人は満足した。

「今度来るときは、泊まっていってね?」

『考えておく』

『山のことがあるからね。調整しないと』

その3日後、再び彼岸花の精霊の浮竹と、山の王の京楽は京楽の家にきていた。

『ドリンク』

「ああ、待ってろ。今、メロンソーダとバナナ・オレをコップに入れるから」

2つの飲み物をもってこられて、しゅわしゅわしているメロンソーダを先に飲む。

『おいしい!』

「こっちもうまいぞ?炭酸じゃないから、しゅわしゅわしてないが」

バナナ・オレを飲んで、彼岸花の精霊の浮竹は、幸せそうな顔をする。

『飲み物がこんなにうまいなんて。人の世界は広いな』

京楽達は、今日の夕飯の準備をしていた。

今日のメニューは、簡単にカレーだった。京楽達は、サラダを作っていた。

「じゃあ、俺が世界一うまいカレーを作ってやるから、少し待ってろ」

『出た、世界一。でも、実際おいしいんだよねぇ』

『カレー、食べたことがない。楽しみだ』

「浮竹の作る料理は、どれもおいしいよ?」

『桜の精霊王の俺が作った料理を食べると、胸の奥がほっこりするけどうずくんだ。何か、大切なことを忘れている気がして』

「あー。転生した名残かなぁ」

『転生?』

「ううん、なんでもないよ。今のことは、忘れて?」

京楽は言葉を濁して、彼岸花の精霊の浮竹に、バナナ・オレのおかわりをついであげた。

「できたぞー」

『あ、なんかすごいい匂い。香辛料がきいてそう』

『‥‥‥泥?』

彼岸花の精霊の浮竹の言葉に、浮竹がずこーっとこける。

「泥はないだろ、泥は!」

『じゃあ、うんこ』

「食事の前なんだから!」

『す、すまん。でも、においはうまそうだ』

「実際、おいしいよ?食べてごらん」

京楽に渡されたスプーンで、彼岸花の精霊の浮竹は、カレーを一口食べて。

『う、うまい!なんだ、この異様なまでのうまさは!』

カレーを気に入ったようで、3回もおかわりをしていた。

「サラダも食べてね?」

京楽達が作ったサラダは、普通の味だった。

「デザートは、苺のミルフィーユだ」

『デザートもうまい!お前、料理が本当に上手だな!』

彼岸花の精霊の浮竹に褒められて、浮竹は嬉しそうにはにかみながら、涙ぐんだ。

『どうした?また、目にゴミでも入ったのか?』

「ああ、そうだ。京楽、ちょっと‥‥」

カレーとサラダとデザートを食べ終わった浮竹は、京楽と話していた。

「やっぱり、転生のことを話すのはよそう」

「君のことだから、てっきり話すと思ってたのに」

「今の彼らの存在を否定してしまう。それは嫌だ」

「そうだね。また、一から友情を育んでいくといいよ」

京楽に頭を撫でられて、額にキスをされる。

「もう、失いたくない」

「大丈夫。彼らとて、そう簡単に死んだりしないさ」

戻ってきた浮竹は少しだけ赤い目をしていた。

『また、泣いていたのか?』

「ああ。少しな」

『理由は?』

「秘密だ。俺と京楽だけの秘密」

『むう。ずるいぞ』

『浮竹、苺のミルフィーユ1つ余ってるんだけど、食べる?』

『ああ、食べる』

その細い体のどこにそんなに入るのか、彼岸花の精霊の浮竹はよく食べた。

『ああ、今日は泊まっていけるからね?』

「じゃあ、先にお風呂使って。バスルームは2つあるから」

『じゃあ、俺もお風呂にする』

彼岸花の精霊の浮竹はそう言って、違うバスルームに消えていく。山の王の京楽は、一緒に入りたそうな顔をしていたが、諦めたようだった。

「ゲストルーム、2つ使って寝る?それとも、そっちのボクと同じベッドで寝る?」

『俺は同じベッドでいい』

『わお。いいね』

山の王の京楽は、喜んだ。

やましいことはまだ何もできないけれど、一目惚れの相手と一緒に寝れるのだ。それなりの幸せだろう。

「じゃあ、俺も京楽と一緒に寝る。おやすみ」

みんな就寝している中、浮竹は気配を感じて起きてきた。

「いるんだろう、夏の王」

「おや、ばれはった?うまく気配隠せてたつもりなんやけどなぁ」

「何の用だ」

「新しい友人を失いたくなければ、桜の宝玉を渡せ、らしいで?」

「桜の宝玉は‥‥‥もう、ない」

「ええ、まじやの?」

「まじだ。「春」を失ったその日に壊した。もう、桜の秘術は全部俺が覚えているから、必要ない」

「あちゃー。君にきてもろうてもいいんやけど、京楽はんがうるさそうやな。また来るさかい、その時に藍染様の欲しいもの、言うわ」

「もう二度と来るな。もし、俺の友人や家族に手を出したら、生まれてこなければよかったという目に合わてやる」

怒りむき出しの浮竹を、夏の王の市丸ギンは、こわいこわいといって、去るのであった。









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桜のあやかしと共に43

半年間の休眠から目覚めた浮竹と京楽を待っていたのは、あやかし退治であった。

白哉や恋次にはできなかったあやかし退治を、半月かけて消化して、一息ついたところで、新しい依頼が舞い込んできた。

「人を食い殺す恐ろしい山の王がいるんです。退治してください」

「どうでもいいけど、君、天邪鬼だね」

「けっ、正体がばれちまったか」

京楽に依頼をしてきた老人の男性は、天邪鬼だった。

嘘をつく妖怪として知られており、天邪鬼が言ったことはあてにならない。 

「とにかく、山の王が恐ろしい妖怪なんだ。人を100人以上も食い殺している。依頼料はここに置いていく、とにかく退治を頼んだぜ!」:

そう言って、天邪鬼は去ってしまった。

依頼料としておかれていたのは、山の幸であった。

「どうしよう、十四郎」

「天邪鬼は嘘をつくからな。あてにできない。そもそも100人以上も食い殺していたら、ニュースになるだろ」

「それもそうだねぇ。放置でいいかな?」

「いや、念のために、山の王とやらを確かめにいこう。いいあやかしなら、退治を依頼しにきた者がいると教えよう」

「うん、分かったよ」

浮竹と京楽は、人里離れた山まで、高級車で向かう。

「はぁ‥‥‥‥なんだか、友人だったあいつらに似た妖力を、山から感じるんだが」

「うん。ボクも感じる」

「山の王とやらが、転生した妖狐の俺か、夜刀神の京楽だったりしてな?」

山の麓で聞き込みをすると、山の王というのは大変人気のある、いいあやかしであることがわかった。

「退治する必要はないみたいだな。念のため、山の王に会って、天邪鬼が退治してくれと言っていた件を知らせよう」

山の中のあやかしの中から、花鬼を選んで、山の王の住処の洞窟を知る。

そこに踏み入ると、懐かしい夜刀神の妖力を感じた。

「夜刀神?‥‥‥‥いや、今は山の王か」

その洞窟に住んでいる気配はあったが、今はいないようだった。

「気配が、あっち側からする」

「ほんとだね。人間もまじってるみたい」

山の王は、彼岸花の精霊となった浮竹と共に、山の開拓をしようという連中と睨み合っていた。

「もめごとかい?」

「あ、術者の方!依頼を受けてくれたんでしょう?」

人間の一人が、京楽に猫なで声で話しかける。

「確かに、依頼はあったけど、依頼してきたのは天邪鬼だった。正式な依頼としては引きうけていないね」

「そんな!じゃあ、ここで私が依頼します。山の王と、その連れを退治してください!」

『浮竹、争いになるかも』

『それはそれで面白い』

山の王と彼岸花の精霊を見て、浮竹は涙を滲ませた。

「お前たち‥‥…転生、していたんだな?」

『浮竹と同じ顔?でも、気をつけて。あの子、桜の王だ』

『桜の王?なんだそれ。あっちの術者はあやかしのようだが、京楽にそっくりだな?』

山の王の京楽と、彼岸花の精霊の浮竹は、自分たちにそっくりな存在を知ったが、威嚇していた。

「山の王、それにその連れの子。ボクたちに敵意はないよ。さっきの人間の依頼は引きうけない」

『ほう』

彼岸花の精霊の浮竹が、じーっと京楽を見つめる。

『懐かしい感じがする。どこかで会ったことがあるのか?』

浮竹が、京楽の耳元で。

「転生したけど、前世の記憶が残っていないんだ。初めて会ったということにしろ」

そう耳打ちをしていた。

「山の王、俺たちはお前たちに危害を加えるつもりはない」

『ほんとに、そうみたいだよ?』

山の王の京楽が、彼岸花の精霊の浮竹と何度か会話して、4人は和解ということで落ち着いた。

「人間たちよ。愚かな争いはやめて、去るといい」

浮竹は、桜の花びらをふっと吹いた。

すると、雷となった。人やあやかしにはあたらなかったが、人間を脅すには十分だった。

「化け物だあああ!逃げろおお!」

その場には、4人が残された。

「まず、初めましてかな。ボクは京楽春水。花鬼だよ」

「俺は浮竹十四郎‥‥‥桜の王で‥‥ぐすっ」

『なぜ、泣く?』

彼岸花の精霊の浮竹は、きょとんとしていた。

「こ、これは目にゴミが入ったからだ!」

『ボクたちと姿が同じで名前も同じ。何か縁(えにし)を感じるね。浮竹、とりあえず帰ろう?人間はいなくなったみたいだし』

『ああ、そうしようか』

「ま、また会えるか?」

浮竹が、やや緊張気味に声を出す。

『会いにきてくれるならね』

山の王の京楽は、そう返した。

「また、会いにくるから」

「ボクも」

「じゃあ、俺たちも帰るな。また、絶対遊びにくるから!」

浮竹は、手をぶんぶんふって、別れをした。



「ほんとに転生してた。また会えて、嬉しい」

「そうだね。休眠してたかいがあったね」

「また、会いにいこう。一度きたから、今度は異界渡りで行けるから」

「うん」

浮竹と京楽は、彼岸花の精霊の浮竹と、山の王の京楽と、こうして再び邂逅するのであった。



‥‥








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桜のあやかしと共に42

それは突然だった。

妖狐の浮竹と、夜刀神の京楽がいなくなり、その妖力が完全にこの世界から気えてしまった。

「世代交代が、近いかもしれないと言っていたな。きっと、夜刀神の寿命に限界がきて、妖狐の俺も一緒に連れていったんだろうな」

「そうなの?」

京楽が、不思議がる。

「あの二人、嫌いじゃなかったのに」

「ちょっと、二人の最期の確認に行ってくる」

「あ、ボクも行くよ」

浮竹と京楽は、天逆海(あまのざこ)と会う。かすかだが、妖狐の浮竹と夜刀神の京楽の妖力の名残りがあった。

「ああ、あの二人なら一緒に逝ったよ。あたしが手にかけた。退治でもするかい?」

「いや、それはあの二人は望んでいないだろう。新しいあやかしにしたんだろう?」

「桜の王は、何もかもお見通しかい。そうだよ。あの二人は、またあやかしとして新しい命を芽生えさせる」

「また、会えるということか」

「そうなるねぇ」

「十四郎、この子、穢れの神だよ。放置していいの?」

「俺たちでは、どうしようもできない存在だ。放置でいいんじゃないか」

「あら、つまんない」

「二人の最期を確認しにきただけだ。争いをするためにきたんじゃない」

そう言って、浮竹と京楽は異界渡りをして、元の京楽のマンションに戻る。

「春水」

浮竹は、泣いていた。

「十四郎、おいで」

京楽に優しく抱きしめられて、ぽろぽろと涙をこぼす。

「あの二人が、好きだった。いきなり二人していなくなるなんて、ずるい。また、俺を置いていく‥‥‥春水も、いつか俺を置いていくのか?」

「ううん、ボクは君の傍にいるよ。逝く時は、あの二人のように一緒だよ」

「悲しいし、寂しい。少し、休眠しようと思うんだ」

「どのくらい?」

「ん、半年はどかな。それだけあれば、あの二人は転生しているだろうから」

「じゃあ、ボクも眠りにつくね。あやかし退治はどうする?」

「白哉には悪いが、恋次くんや阿散井一門に任せようと思う」

「そう。眠る前に、白哉くんと話さないとね?」



浮竹と京楽は、半年間休眠することを、白哉に話すと、白哉は当たり前のように受け入れた。

「理由は分かった。浮竹は長いと10年ほど休眠することがあったからな。半年など、短いほうだ」

「すまない、白哉。恋次くんがいるから、寂しくはないな?」

「浮竹、兄がいないと寂しいが、恋次もいるし我慢はできよう」

白哉は、静かに浮竹達の休眠を受け入れる。

「じゃあ、また半年痕に」

「ボクも、浮竹と一緒に眠るから」

「京楽、兄も浮竹を大事にな。同じ異界の桜の大樹で眠るのであろう?」

「ああ、そうなるな。あやかし退治については、恋次くんと白哉に任せる形になる」

「ああ、分かっている。住民のいなくなった、妖狐の浮竹と夜刀神の京楽の屋敷には、こちらから誰かを住まわせよう。人がいいか」

「そうだな」

浮竹は、休眠モードに入りかけており、眠そうだった。

「じゃあ、俺と京楽は、半年ほど眠りにつく。後は任せた」

そう言って、浮竹と京楽は、異界にわたり、桜の大樹の元へいく。

その中に入り、二人は半年間の休眠をすることにした。

「まだ起きているか、春水」

「うん、まだ起きてるよ」

「今度も、仲睦まじいまま、会いにきてくれるといいな」

「ボクの闇の部分が、正直君を独り占めできるとか思ったけど、考えてみれば白哉くんもいるし、君を本当の意味で独り占めできるのは今くらいかな」

京楽は、クスリと笑う。

「生まれ変わってもまた一緒なんて、いいね。ボクらも、そんな風になりたいね」

「俺たちは消えない。いつまでも一緒だ」

「うん」

「眠くなってきた‥‥おやすみ。また、半年後に」

「うん、おやすみ」

時が鮮やかに過ぎていく。

妖狐の浮竹は、彼岸花の精霊の浮竹に、夜刀神の京楽は、山の王の京楽へと、転生していくのであった。










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僕はそうして君に落ちていく外伝5

浮竹が霊王になって200年。

一か月に一度の京楽との逢瀬を、半月に一度にしろと言って、霊王である浮竹は霊王宮から忽然と姿を消して、大騒ぎになった。

一週間、浮竹は下界の京楽の元にいた。

新しい零番隊は、きっと京楽の元にいるだろうと京楽の霊圧を探ったが、京楽も霊王である浮竹も完全に霊圧を消しており、結局一週間経って、京楽と月に2回会えるということで、話は落ち着いた。

「じゃあ、半年後は下界での祭事だ」

別れる前、浮竹はそう言って、半月後も会えるのだが、祭事をほどほどに切り上げて抜け出して、京楽と会うのを何よりもの楽しみにしていた。

やがて半年が経ち、浮竹は霊王として祭事のために霊王宮から下界に降りてきて、人々の前に姿を現す。

「きゃあああ、霊王様よ」

「ありがたや、ありがたや」

霊王となった浮竹は、霊王宮にいるのには飽きて、10年委一度、祭事として下界に降りてくる。ただ、祭事とは口実で、本当は京楽に会うために降りてくるのだ。

霊王としての正装である十二単を身にまとい、長い白髪を結い上げて、金銀細工の宝冠をかぶっていた。

霊王であるは浮竹は宝剣を抜き、護廷十三隊の隊長副隊長の肩に、宝剣を触れさせて、清浄なる力を流して、霊力の上昇を促した。

京楽は、霊王の宝剣を受け取り、声高々にいつものように宣言する。

「尸魂界に霊王はおわす!霊王いる限り、世界は続く!平和を、高い天上の霊王宮にて祈られている!それに我らは、答えねばならぬ!霊王万歳!」

「霊王様万歳”!」

「万歳”!」

「霊王様!!」

死神や人々は、美しい浮竹を霊王として受け入れる。

祭事が終わり、零番隊が霊王である浮竹に帰ることを促そうとすると、すでに霊王の姿はなかった。

「霊王様の悪い癖だ。あの京楽という総隊長を愛するのは、やめていただきたいのだが」

「だめだだめだ。京楽がいるから、霊王様は霊王として君臨されておられる。霊王様から、京楽をとりあげたら、自害しかねぬ」

零番隊の者たちは、重いため息をつくのであった。


「京楽」

「わあ、びっくりした!会いに来るのは分かってたけど、まさか一番隊の執務室にくるなんて思ってなかったよ」

「抜け出してきた」

「そうみたいだね」

十二単の衣装のまま、浮竹は京楽に抱き着いた。

「会いたかった」

「半月前に会ったばかりじゃない」

「それでも、会いたかった」

「隊首室いく?それとも、ボクの屋敷に‥‥‥」

京楽は、もちろん浮竹を抱くつもりだし、抱かれるために浮竹は京楽に会いにくる。

「待てない。隊首室でいい」

「仕方ない子だねぇ」

京楽は、少しずつ浮竹の着ている十二単を脱がしていく。

浮竹も、京楽の隊長羽織を脱がせて、死覇装も脱がせた。

「んっ」

薄い衣だけになった浮竹を、衣服の上から輪郭をなぞっていく。

「あ、春水、早く」

「愛してるよ、十四郎。ボクだけの霊王様」

京楽は、薄い衣も脱がせて、浮竹のものを手でしごく。

「ああああ!!!」

すぐに、あっけなく浮竹はいってしまった。

「たまってた?」

「ああ」

「いっぱい、気持ちよくさせてあげる」

「エロ総隊長め」

「じゃあ、君はエロ霊王だね」

額をくっつけあって、クスクスと笑い合う。

居楽は浮竹の体を愛撫して、胸の先端を甘噛みする。

「あ、春水‥‥」

「ゆっくり、ね?」

「ああ」

口で浮竹は京楽に奉仕されて、またすぐに精液を吐き出していた。

「俺もする」

「え」

「いつも俺ばかりだ。たまには、お前に奉仕してみたい」

そう言って、浮竹は硬く勃ちあげっていた京楽のものを手でつつみこんで、しごき、鈴口を舌で刺激すると、京楽は浮竹に奉仕されているという映像だけでいってしまっていた。

「むう、顔についた」

「ごめんごめん。ティッシュでふいてあげるから」

浮竹は、ぺろりと京楽の精液をなめとる。

「まずい」

「うわあああ、味あわなくていいから!」

「じゃあ、春水、早く来い」

「仕方ないねぇ」

早急に、ローションを手に、浮竹の蕾を指で解して、熱い灼熱を浮竹の蕾にあてがう。

「あんまりならしてないから、痛いかもしれないよ?」

「構わない。お前がくれるなら、痛みでもいい」

京楽は、一気に浮竹を貫いた。

「ああああ!!!」

「く、きつい‥‥十四郎、体の力抜いて」

「くああ、あ、あ」

なんとか呼吸を整える。

「君の仲、熱いね」

「春水のも、熱い。俺の仲でどくどくいってる」

「動くよ?」

「あああ!ひあああ!!」

京楽が律動を開始すると、浮竹は快感に涙を浮かべながら、京楽を求める。

「あ、もっと、春水」

「今、いっぱいあげるからね?」

浮竹の最奥を貫いてごりごりと抉ると、浮竹は背をしならせて大きく中いきをしていた。

「ああああ!!」

びゅるびゅると、京楽の精子が、胎の奥ではじけたのがわかる。

「ん‥‥もっと。もっと俺を犯して?」

「十四郎。めちゃくちゃになっても、知らないからね?」

「ひあ!」

京楽は、一度引きぬくと、最奥まで一気に貫いた。

「ああああ!!!」

精液を出していきそうな浮竹のものの根元を手で戒める。

「やあああ、いきたい!いかせてえええ」

「ボクと一緒に、ね?」

京楽は、ぱんぱんと肌と肌がぶつかりあう音をたてて、浮竹を攻める。浮竹の根本は、帯で戒めておいた。

「んああああ」

ズチュリと、水音が下半身から聞こえる。

浮竹は、蕾から京楽の精液を逆流させていた。ふとももをつたっていく京楽の子種をもったいないと感じた。

「ああ、お前の子種を全部体の中で留めておければいいのに」

「だーめ。おなか壊しちゃうよ?終わったら、全部かきだしてあげるから」

「ひああああ!!!」

ごりごりと最奥まで抉られる。途中で前立腺をすりあげられて、根元を戒められた浮竹は、己のものからたらたらと蜜をたらしていた。

「いやああ、もらしちゃううううう」

「潮でしょ?」

京楽は、浮竹の者を戒めていた帯をとく。

京楽は、浮竹の中に子種を注ぎこむ。浮竹は、精液と同時に潮をふいていた。

「ああああ‥‥」

浮竹は、潮とは理解できずに、恥ずかしそうに泣いていた。

「十四郎、潮だから。おもらしじゃないよ?」

「ほんとに?」

「うん」

浮竹は、また潮をふきながら、中いきしていた。

「あああ、頭が、おかしく、なるうう」

「ぐちゃぐちゃになっちゃいなよ。今の君は霊王じゃなくって、ただのエロい浮竹十四郎だね」

「ひあ---!!!!]

京楽に貫かれたまま揺さぶられて、浮竹はついには意識を飛ばしてしまった。

「十四郎?」

名を呼んでも、返事はない。

「ごめんね、十四郎。酷くしちゃって」

京楽は、浮竹から自身をひきぬくと、こぽりと精液が逆流してくる。

それをたおるでぬぐい、簡単に浮竹を清めて、中に出したものをかきだして、置いてあった京楽の死覇装を着せた。

「屋敷にいこうね?」

意識のない浮竹をお姫様抱っこして、京楽は一番近い屋敷にいくと、布団をしいて浮竹を寝かせる。

3時間ほどして、浮竹は起きた。

「ここは?」

「ボクのもってる屋敷の一つだよ。お風呂、一緒に入ろうか」

「ああ。あと、腹が減った」

「家人に頼んで、遅いけど夕食を作ってもらうよ」

「すまんな。せっかくの、10年に一度の祭事なのに」

「浮竹が、そう言いながら、ボクに抱かれに降りてくるの、ボクは好きだよ?」

「また,10年後だな。半月後に、霊王宮で会えるが」

「うん。また、会いにいくから。とりあえず、お風呂に入ろ」

「ああ」

二人は、200年の間に、こうして20回下界で逢瀬を重ねる。

これからも、ずっとずっと、同じ時が流れていくのだろう。







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桜のあやかしと共に 外伝8

冬の王である日番谷冬獅郎から冬を託されて、冬の終わりがきて春がきていた。

桜が咲く季節、太陽はぽかぽかしていて、妖狐の浮竹は、京楽のマンションで狐姿になって日向ぼっこをしていたら、眠ってしまっていた。

夜刀神は、その隣でこうもり姿で同じように日向ぼっこをして、寝ていた。

妖狐の浮竹の体に体を重ねるようにして、浮竹までオッドアイの白い子猫姿になって、昼寝していた。その隣には黒い子猫になった白哉も寝ていた。

「はぁ。ボクだけか‥‥たぬきだけど、ボクも変化して寝よう」

京楽は、桜鬼になったことで、桜の高位精霊と同じ地位にいるのだが、普通は変化すると猫になるのだが、なぜかたぬきだった。

最初に変化した時は、白哉につぶれたあんぱんと言われるほどに酷かった、

何度か変化を繰り返すうちに、たぬきでもかわいいたぬきになれたので、京楽は満足していた。

「さて、寝ようかな」

浮竹たちが寝ている窓辺のソファーの、あいているところで丸くなって、京楽も眠った。

ぴんぽーん。

チャイムが鳴って、まだ眠りの浅かった京楽は、人型に変化して対応する。

新聞の勧誘であった。

今時新聞をとる家なんて少ないので、適当にあしらって、もう一度寝ようとしたら、たぬきの尻尾が出たままになっているのに気づいた。

「見られたかな‥‥まぁ、見られても偽物の尻尾だって思うから、大丈夫でしょ」

京楽は、今度こそ日当たりのいいソファーの上で眠った。

起きると、夜になっていた。

妖狐の浮竹は、妖狐の姿で、猫じゃらしで、子猫姿の浮竹と遊んでいた。

夜刀神は、そんな妖狐の浮竹の傍で人の姿で緑茶を飲みながら、あやかしまんじゅうを食べていた。

白哉も、黒い子猫姿で妖狐の浮竹に猫じゃらしを目の前にちらつかされて、つい前足が出て、猫なので体が反応してしまう。

「もう、みんな起きてるなら、ボクも起こしてよ」

「すまん。あんまり気持ちよさそうに眠っていたものだから」

浮竹が、猫じゃらしに反応しながら言う。

「昼からこんな時間まで‥‥‥ボクってば、7時間も寝てたの?」

「そうだな。今日の夜は寝れんだろうな」

『精霊の俺、眠れない桜鬼の京楽とむふふするのか?』

「しない!」

猫パンチを決められても、子猫なので痛くなかった。

「今日は海鮮鍋にする予定なのだが」

白夜が、人の姿になって、キッチンに移動する。鍋とガスコンロを持ってきた。

京楽はまだたぬきのままで、浮竹の子猫のままだった。

「戻れない‥‥こんな時に、時の呪いか」

かつて、西洋の桜の女神の求婚を断って、変化すると時間がある程度たたないと元に戻れないという呪いを受けた。

数年に一度しか発動しないのだが、最近よく子猫姿になるので、時の呪いも発動しやすくなっていた。

「白哉、鍋は任す。俺と京楽は、猫缶でいい」

「え、ボクは人の姿に戻れるよ」

「相方を猫の姿のまま一人で過ごせと?」

「わかったよ。ボクもたぬきのままでいるから」

『おや、夜のむふふはできなくなったな』

『子猫とたぬきの姿でむふふするかもしれないよ?』

妖狐の浮竹と夜刀神が、からかってくる。

いつもなら、浮竹のハリセンがうなるのだが、今絶賛子猫の姿中なので、ハリセンはとんでこなかった。

『ツッコミ役がいないと、からかっても面白くないねぇ。むふふはいつだろう?』

『元に戻ったら、きっとむふふするんだろうな』

「お前たちは、一度むふふから離れろ」

浮竹が、高級猫缶を食べながら、呆れる。

京楽も、たぬきの姿のままで高級猫缶を食べる。

「お、おいしい‥‥」

「ドッグフードはまずいだろ。猫缶のほうが絶対美味しいに決まっている」

「浮竹、兄に後でチュールをやろう」

白哉は、妖狐の浮竹と夜刀神と、海鮮鍋を食べていた。

「ボクにもチュールを」

「兄は、自分で食え」

「差別だ!!!」

「当り前だ。兄である浮竹と比べれば劣るに決まっている」

『ねぇ、この海鮮鍋、苺入ってるんだけど‥‥』

『こっちにはバナナ入ってるぞ』

「ただの海鮮鍋では面白くないので、フルーツを入れて闇鍋にしてみた」

「白哉ああああ!鍋は任せると言ったが、闇鍋にしろとは言ってないいいい」

浮竹が、心の叫びをそのまま出す。

『あ、でもこのフルーツ闇鍋けっこうおいしいかも』

『俺も思った』

妖狐の浮竹と夜刀神は、平気な顔でフルーツ海鮮鍋を食べる。無論、白哉も。

「京楽、兄には特別にこれをやろう」

皮をむいていない鍋に入っていたバナナをもらって、京楽はどうすればいいのか途方にくれる。

『そうだ。精霊の俺、これはどうだ?』

妖狐の浮竹が取り出したものは、またたびだった。

「にゃおーん」

またたびによって、すっかりご機嫌になった浮竹は、妖狐の浮竹にもふられまくる。

「にゃーん」

『いつもこうなら、かわいいんだけどなぁ』

『いつもこんな桜の王はいやだよ‥‥浮竹をとられちゃう』

『ふふ、京楽、嫉妬か?』

『ボクもかまってよ』

夜刀神は、苺を食べながら、京楽にもまたたびをあげてみた。

「にゃーお」

『わお、桜鬼のボクまでまたたびによってる。しかもたぬきなのに、猫みたいになくし』

『たぬきもかわいいな』

妖狐の浮竹は、京楽ももふる。

もふられる二人を見て、白哉もうらやましくなったのか、黒い子猫になって、はじめてまたたびを体験して、へろへろになるのであった。

その日は、妖狐の浮竹と夜刀神は泊まっていった。

朝になり、すっかりもとに戻っている浮竹を見て、二人は残念がるのだった。

『つまんない』

『そうだねぇ。もうちょっともふればよかった』

「昨日のこと、ちゃんと覚えているからな。またたびは‥‥たまになら、いい」

『うわ、ツンツンしながら、少しだけでれたよ!』

「うっさい!」

余計なことを言う夜刀神をハリセンでしばいて、浮竹は赤くなるのであった。

ちなみに、7時間も仮眠した京楽は、夜も9時間寝て、頭痛を訴えるのであった。





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