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堕天使と天使9

浮竹と京楽は、ヴァンパイア退治を依頼されて、結局遂行できなくて、違う世界の自分たちと邂逅した。

京楽は原始の王の始祖ヴァンパイアで、浮竹がフェンリルだった。

お互いに会話をして、ガトーショコラを御馳走になった。

さて、それから月日は数日流れた。


浮竹の実は母親は生きている。

人間だった。アンヌ・マリーという名の女性だそうだ。

浮竹は、かつて実の父である大天使長ミカエルから、母親の住所がかかれたメモをもらっていた。いつか会いに行こうと思って、伸ばしに伸ばしてしまった。

「なぁ、京楽」

「なんだい?」

「実の母に会いに行こうと思うんだ。お前も、ついてきてくれるか?」

「え、何それ。君をお嫁さんにくださいって言いにいくってこと?」

「ばか、違う!そもそも俺はお婿さんだ。嫁にくるならお前が来い。じゃなくてだな、純粋に母親に会ってみたい」

浮竹の思いは募り、母親に会いたくなった。

アンヌ・マリーという女性は、隣国であるエスパニア王国にいるらしい。

意外と近いので、浮竹もびっくりしていた。

車に乗り込み、エスパニア王国の首都マイセルを目指して3時間。

エスパニア王国に入った。

肌の色が褐色の人種がおおくて、浮竹と京楽はちょっと毛色の変わった者に見えるかもしれなかった。

住所のメモを頼りに、小さな煉瓦作りのアパートに辿りついた。

「ここか・・・・俺の母の家は」

「会っても、大丈夫?拒否されたりしない?」

「いや、母は俺を愛してくれていた。神に幼い頃にガブリエルのところに連れて行かれるまでは、父と母と過ごしていた」

「そう。後悔しないでね」

「とりあえず、チャイムを鳴らすか」

ピンポーン。

チャイムが鳴ると、やや小柄な褐色の肌の女性が出てきた。

「どちら様ですか?」

「あなたが、アンヌ・マリー?」

「あなた・・・もしかして、十四郎?十四郎なのね!?」

見た目年齢にすると、35歳前後だろうか。

実質の年は50を超えているはずだ。

「アンヌ・マリー。僕の、母さん・・・・・・」

「ああ。またあなたを見れる日がくるなんて。私からの接触は禁じられているの。あがってちょうだい。狭いところだけど」

アパートは、3部屋とキッチンがついており、一人暮らしするにも十分な広さがあった。

「あなたの父のミカエルが、毎月お金をくれるの。私は右足が悪くてね。ろくに働けないのよ」

そういうえば、右足を引きずっていた。

「あなたの父のミカエルに会ったのは、まだ大学生の頃だったわ。一目見て恋に落ちたの。でも、相手は人間だと思っていたわ。思いが通じた時、大天使長ミカエルと聞いて、それでも離れられなかった。愛していたの」

アンヌの遺伝子は、浮竹の中にあるが、色は大天使長ミカエルの方が強く、褐色の肌は遺伝していなかった。

アンヌは、褐色の肌に金の髪、青い瞳の小柄な美しい人だった。

「その・・・母さんと、呼んでも?」

「ええ、十四郎。それで、こちらのお方は?」

アンヌが、京楽を見る。

「京楽春水。俺の伴侶だ」

「きええええええええ!!!京楽春水ですってええええええ!!あの、たらしの京楽春水!十四郎、悪いことは言わないから今すぐ別れなさい!絶対浮気するわ!!」

京楽の名は悪い意味で広がっており、京楽を知っている人物に会うと、皆別れたほうがいいというのだ。

「いや、大丈夫だから、母さん。京楽は浮気しないし、させない。俺のものだ」

「十四郎・・・・京楽春水」

「は、はい」

「この子を裏切ったりしたら、めっためたぎったんぎったんにして、あそこをもぎとってやるからね!」

「ひええええ」

京楽は、股間をおさえて数歩後ずさった。

「まぁ、とりあえずお昼だし、何が食べましょう。そうだわ、あなたの好きだったオムライスを作ってあげる。京楽春水の分も、仕方ないから作ってあげましょう」

そう言って、アンヌは3人分のオムライスを作った。

「懐かしいなぁ。うろ覚えだけど、母さんの作ったオムライスはおいしいの、覚えている」

アンヌの作り立てのオムライスは、おいしかった。

味でいえば京楽のシェフ並みの腕をもつオムライスのほうがおいしいかもしれないが、特別な愛情と懐かしさで、アンヌの作ったオムライスの方が美味しいと感じれた。

「いや、悪いね。僕まで御馳走になっちゃって」

「あなた、本当に十四郎の他には浮気していないのね?浮気したら、あそこをもいで干からびるまで十字架に張り付けよ!」

「怖い、怖いから!」

京楽は、浮竹の背後に隠れた。

「母さん、京楽は俺だけを愛してくれているから、大丈夫だ。浮気なんてしたら、別れるし俺がめったんめったんのぎったぎたにして股間をもぐ」

「あら、十四郎は頼もしいわね」

「この親子・・・・」

京楽は、自分の身を護るためにも、浮竹だけを愛していると、アンヌを言いくるめた。

「じゃあ、俺はこのあたりで帰るよ。また、遊びにきてもいいかな、母さん」

「ええ、いつでもいらっしゃい。京楽春水を連れてきてもいいけれど、浮気しないように契約の首輪でもする?」

契約の首輪とは、相手を縛り付ける魔道具の一種だ。

意に背いた行動をとると、動けなくなるようにできていた。

「いや、俺は京楽を信じているから。過去はとんでもないたらしの色欲魔だったらしいが、今は俺一筋と信じている」

「浮竹・・・・・」

京楽は感動した。

そのまま、車に乗りこんで自宅に帰る。

すると、フェンリルの浮竹が自宅前で座りこんでいた。

「どうしたの。そっちの京楽は?」

『ちょっとこの世界は珍しいものがあるから買い物にいってくるって。ついていきたかったけど、こっちの世界のフェンリルは精霊の一種らしくて、危険な存在として認識されているから、お留守番・・・・・』

「とりあえず、家にあがれ。外で待つのは退屈だったろう」

『ありさん数えてた』

「あ、そう・・・・・」

天使の浮竹は、京楽に行って紅茶と茶菓子にと作っておいたマーブルクッキーをフェンリルの浮竹に出した。

『おいしいな、これ』

「京楽が作ったんだ。そっちの京楽も、料理は上手なんだろう?」

『うん』

『浮竹、待ったかい。すまないね、すっかり世話になっているようで』

扉から入ってきたのは、ヴァンパイアの京楽だった。

戸は施錠していたのに、まるで空気のように室内に入ってきて、体を作り出す。

多分、蝙蝠になるのを応用しているのだろう。何せ原初の王にして始祖ヴァンパイアだ。

『京楽!買い物が済んだのか?』

『うん。この世界の懐中電灯なるものと缶詰と缶切りを買ったよ』

『この世界は、珍しいもので溢れているな。馬車の代わりに、車なるものが走っている』

「まぁ、君たちの世界よりは科学というものが進歩してるからねぇ」

京楽の言葉に、マーブルクッキーを全部食べ終えたフェンリルの浮竹が、ヴァンパイアの京楽の傍に寄り添った。

『じゃあ、僕らは戻るよ』

「ああ、またな」

「またねぇ」

『また、遊びにくる。その時はこちら側もお土産を用意しておくよ』


「さて、今度の依頼はなんだろうな?」

「ヴァンパイア退治はごめんだよ。情がうつる」

依頼内容は、どれも金貨10枚以下のモンスター処理の依頼だった。

そのうち、一番重要度の高そうなものを選び、二人は祓い屋もしくは退治屋としての活動を再開するのであった。

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堕天使と天使8

今回の依頼は、悪魔退治だった。

悪魔と魔族は似ているようだが違う。悪魔は契約で人の魂を食う。また、誰かに召還されて使役されたりもする。

対価は主に人の魂だが、それは使った本人でなくてもよかった。また、必ずしも人でなくてもいい。

黒魔術の中には悪魔を使役して、対価としてモンスターの魂を払う魔法がある。

人は背徳的な者でもなければ、黒魔術の中の悪魔召還の魔法は使わない。

また、魔族は神族と対になる闇の種族だが、人と同じ知能と高い魔力、生命力をもち、分類的には亜人に入った。

悪魔は完全なモンスターだ。

依頼は、アークデーモン退治だった。

ある貴族の後継ぎが攫われて、アークデーモンに生贄にされたのだという。

救出はもう無理だが、せめて仇をとってくれとのことだった。

アークデーモンを召還した黒魔術師はもう捕まっており、その裏で暗躍していた貴族の次男もすでに逮捕されていた。

「さて、悪魔退治はちょっと面倒だけど、魔王討伐なんかを考えると遥かに楽勝だね」

「お前の思考が理解できない。魔王は魔族の王だろう。何も悪いことはしていない。魔王討伐などありはしない」

浮竹は、車の運転をしていた。

「いやぁ、おとぎ話や昔話では、魔王が悪として出てくる本があるじゃない」

「あれは創作物だ。確かにかつて魔王は世界を我が物にせんとして、人間や神族と争った時代もあったが、もう数千年も昔のことだ」

「あーあ。あの頃は楽しかったのに」

100年足らずしか生きていないと思っていた京楽は、実は創造神の作った12人の使徒と呼ばれる天使の一人だった。

千年を天使として生きて、その性欲の強さと天使とも悪魔とも人間とも寝る問題児だとして、堕天使に落とされた。

堕天使に落とされてから、さらに数千年が経った。

関係をもった相手の数は、数えきれない。

今は浮竹一筋だか、過去が過去だけに、浮竹は京楽の愛を信じてはいるが、心の何処かで疑問を抱えていた。

「とにかくついたぞ」

貴族の屋敷の駐車場に車を止めると、浮竹と京楽は車を降りた。

当主と謁見する。

「ああ、祓い屋の人か。どうか頼む、長男の仇を討ってほしい」

「アークデーモンを操っていた黒魔術師と次男はもう捕まったのでは?」

「そうなんだが、実際に手をくだしたアークデーモンが、まだこの世界で我が物顔でうろついている。許せない。報酬は金貨5000枚。やってくれるか」

「謹んでお受けいたします」

京楽の身の切り替わりの速さに、浮竹が驚いた。

貴族だけあって、金はあるようだった。

いつもの金貨30枚だとかそんな依頼の100倍はする報酬に、浮竹もまたいい収入になりそうだと、心の中で喜んだ。

「それで、そのアークデーモンはどのあたりに?」

「この町の外れにある、魔窟で儀式をしている。長男を生贄にした後、更に上位のグレーターデーモンを召還したようだ」

「グレーターデーモン!Sクラスだね」

「そうだ。だから、君たちにお願いした。Sクラスなみの腕をもつと、冒険者ギルドのギルドマスターから紹介されて。今冒険者ギルドでは、Sランク冒険者はダンジョン攻略にあたっていて、Aランクの冒険者はいるが、君たちの方が確実だと言われた」

「じゃあ、その魔窟に向かうので、地図をもらえないかな」

「分かった。用意しよう」

浮竹と京楽は、地図を手に車で魔窟の近くまで移動して、徒歩で魔窟の中に入っていく。

「きゃはははは」

「くふふふ」

中は、インキュバスやサキュバスもいる、悪魔の巣窟になっていた。

浮竹が天使のセラフであることに恐れを抱き、すぐに逃げ出していく。逃げる間際に仲間ともいえる堕天使の京楽に、一緒にこないかと囁きかけるが、そんな輩は浮竹が魔法で退治してしまった。

「この奥にアークデーモンとグレーターデーモンがいる。用意はいいか、京楽」

「任せて」

「サンシャイン!」

まずは、奥に続く扉を開けると、疑似太陽を作り出してデーモンたちの目を焼いた。

視界が真っ白になって、目が見えなくなっている間に、浮竹と京楽は禁忌の魔法を使う。

「エターナルフェニックス!」

「ヘルコキュートス!」

氷と炎の魔法を放つ。

アークデーモンは倒れていったが、グレーターデーモンは生きていた。

「この程度の光と魔法で死ぬと思ったか」

「死ぬんだよ、君は、これから僕らの魔法で」

「ふん、天使と堕天使如きが・・・・・」

浮竹は、6枚の翼を広げた。

「フェザースラッシュ」

「く、ちょこまかと、こざかしい!」

グレーターデーモンの手が、浮竹の首にかかる。

「セラフか。食せば我の力はもっとます。魔王になれるかもしれない」

「僕を忘れないでよね。セイントホーリーノヴァ!」

「ぐぎゃああああああ!聖属性の禁忌だと!堕天使が何故使える!」

浮竹は、グレーターデーモンが魔法でやられている間に、手をしりぞけて、魔法陣を描いた。

「きたれ、大天使長ミカエル!」

自分の父を呼んだ。

グレーターデーモンが出た場合、セラフの直轄になる。

「元気にしていたか、我が息子よ」

「はい」

「グレーターデーモンか。消え去れ」

「うぎゃあああああああ!!」

グレーターデーモンは、世界で一番強い天使とされる大天使長ミカエルの手で、無に返された。

「堕天使の京楽とは、うまくいっているのか?」

「多分」

「堕天使京楽」

「は、はい」

名を呼ばれて、京楽はびくりとなった。まさか、浮竹が大天使長ミカエルを呼び出すとは思っていなかったのだ。

普通のセラフでも呼び出せない。だが、浮竹はミカエルと人間との間のハーフだ。ミカエルの血を引いていることで、ミカエルを呼び出すことができた。

洞窟の中だし、禁忌ばかり放っていては、崩れる可能性もあるので、手っ取り早く父親に退治してもらったことになる。

「私の息子を悲しませたら、容赦しないからな」

「はいーーー」

京楽は、ぺこりとお辞儀して、ミカエルが天界に帰っていくのを見ていた。

「京楽、戻るぞ」

「ちょっと浮竹、いきなり大天使長ミカエルを呼ばないでよ。寿命が縮まったよ」

「お前は何千年と生きているのだろう?少しくらい縮んでも平気だろう」

「酷い!」

泣き真似をする京楽を放置して、アークデーモンとグレーターデーモンの魔石を手に、貴族の館に報告に行った。

「約束の金貨5000枚だ。その魔石は、こちらで預かろう。砕いて、魔法水をつくり、息子の墓に注いで、少しでも冥福を祈りたい」

「ああ、分かった」

魔石の冒険者ギルドでの買取り額は金貨500枚はいくだろうが、報酬が金貨5000枚のため、魔石は貴族に譲った。

「ああ。せめて安らかに・・・・・・」

貴族の当主は、魔石を手に、泣いていた。

報酬の金貨5000枚をアイテムポケットにいれて、浮竹はこう言った。

「セラフの力でよいなら、祈りを捧げよう」

「本当か!是非に頼む!金貨500枚を払う!」

セラフの祈りは、死者を天国に運んでくれるとされていた。

セラフが人前に現れることが滅多にないのだが、たまに召還に応じてくれたセラフが、死者に祈りを捧げて、その魂を天国まで導く。

浮竹は貴族の長男の墓に、セラフの祈りをささげると、ぱぁあと虹がでて、死者の魂が浮かび上がる。

「父様。先に逝くことをお許しください。天国にいきます」

「ああ、息子よ・・・・どうか、安らかに」

親子は、一時的な対面を果たしたが、死者の魂が地上にとどまっていられる時間は少なく、浮竹の祈りに合わせて、魂は天に昇っていた。

「ありがとうございます。追加報酬の金貨500枚です」

その報酬もアイテムポケットに入れて、浮竹と京楽は車で自宅に帰った。

次の依頼が届いていた。

ヴァンパイア退治だった。浮竹と京楽は、そのヴァンパイアを退治しようとして、不思議な出会いをするのであった。

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はい堕天使と天使7

「ふ~ん。向こうの世界では、僕はヴァンパイアの原始の王なのか」

京楽のぽそっとした呟きに、浮竹が首を傾げる。

「何の話だ?」

「いやね、僕たちを生み出した創造神様が作った別の世界にいる僕らのこと」

「?よく分からない」

「まぁ、あっちの世界が君は神に近いフェンリルで・・・・・・まぁ、セラフの天使のほうが神に近いけどね」

京楽は自己完結させて、浮竹はただ首を傾げるだけだった。

「さて、今日も低い料金の依頼がきてるねー。わお、これなんてすごい。銀貨30枚で、畑にでるブラックボアを退治してくれだって。わー、これ最低金額の更新じゃないかな」

「いいな、それ。最低金額でいってみよう」

浮竹が興味をもったみたいで、銀貨30枚たらずでCランクモンスターのブラックボアを退治することになった。

現地は寂れた村で、車で7時間もかかった。

ガソリン代だけですでに銀貨40枚をこえていた。

完全に赤字だ。

そんなこと、浮竹も京楽も関係ないようだった。

浮竹は翻訳家の仕事を抱えているし、京楽は京楽で金になる職につてがある。

神様に言われたから祓い屋稼業をしているので、金額にはあまりこだわらなかったが、命をかけるような仕事の場合、流石に報酬は少し高めにもらうことにしていた。

「ついたぞ、京楽」

浮竹は、車を駐車場に停止させた。

畑と田んぼが広がる、のどかな村だった。

「村長はいるかなぁ?」

京楽が車から降りて、まずは村の入り口あたりを見た。

何人か、見張りの村人がいた。

ブラックボアを退治しとうとしてできなくて、でも冒険者ギルドに依頼するような金もなく、仕方なく浮竹と京楽のところに依頼を出したが、銀貨30枚で引き受けてくれるはずもなく、若い村人で自衛に当たっていた。

「僕たち、祓い屋なの。村長はいるかな?ブラックボア討伐の件で・・・・・」

「奇跡だ!銀貨30枚で引き受けてくれるんですか!」

「ああ、うん、まあね」

「とりあえず、村長のところに案内してくれないだろうか」

浮竹が改めて言葉にすると、村人の青年は急いで村長の家に二人を招き入れた。

「私が村長をしております、上村と申します」

「ああ、名前とかそういうのどうでもいいから」

「はぁ」

「ブラックボアが出る畑はこの近く?」

「はい。1匹でなしに群れでくるので、村人の力では倒し切れずに追い返すのが精いっぱいで。
かといって冒険者ギルドに依頼するような金もなく・・・・出せるのは銀貨30枚と野菜か米ですかな」

野菜や米と聞いて、これは赤字でなくなるかもと、浮竹も京楽も思った。

「俺たちがやっつける。ブラックボアが出るのは昼か、夜か?」

「昼にもたまに出没しますが、主には夜ですな」

「じゃあ、この村長の家で夜まで過ごしても構わないかな」

「ええ、ええ、退治してくれるでしたら好きなだけいてください」

村長の話で、最近襲われている畑をつき止めて、夜を待った。

「ぶるるるるう!!!」

「ぶるーーーー!!」

天使族は、闇でも目が見える。

灯りもないままに、ブラックボアが10匹出没しているのを魔力探知で探し出して、駆けだした。

ブラックボアのランクはC。

Sクラスともわたりあえる浮竹と京楽には、少しものたりないが、素材として肉が少し高めで売れるため、銀貨30枚でも大丈夫だった。

「エアリアルエッジ!」

「ウォータースラッシャー!!」

「ぶひいいいいいい!!」

「ぶひいい!!」

ブラックボアの肉を焼くのは素材としてだめなので、風と水の魔法で殺した。

ブラックボア10頭を、アイテムポケットにいれる。

「こんだけいれば、しばらくブラックボアの肉食べれるね。解体してもらって、3食分くらい残してもらおう」

「そうだな。毎度ブラックボアの肉だと飽きるからな。うまいんだけど」

村長のところに、退治が終わったと報告すると、村長は涙を流して浮竹と京楽を拝みだした。

「いや、もういいから。報酬をもらいにきた」

「なんとか、村でかき集めました。銀貨30枚の他に、銀貨7枚と鉄貸8枚です。何分自給自足で回っている村なので、あとは野菜と米を・・・・・」

「ありがたい。もらっていく」

車の後ろ座席には、たくさんの野菜と米俵を乗せた。

アイテムポケットに収納するにも、アイテムポケットはかなりの高級品である。村人たちの目の前であまり見せないほうがいいだろうという、京楽の判断だった。

浮竹も荷物を持ったが、京楽が米俵なんかをもち、荷車を借りて、車まで運んだ。

そのまま、帰宅する。

一度風呂にはいって、夕飯を食べてから、寝て次の日になってから冒険者ギルドにやってきた。

「あら、いらっしゃい」

ギルドマスターが出迎えてくれた。

ギルドマスターはハイエルフの青年で、穏やかだがドラゴンマニアというなんともいえない人物だった。

「ブラックボアの解体と買取りを頼む。こっちがブラックボアの魔石だ」

浮竹が魔石を提出すると、受付嬢がにこやかに査定してくれた。

「金貨4枚になります」

「うん、ありがとね」

京楽は、受付嬢の手を握りしめて、受付嬢は顔を赤くしていた。

「京楽、浮気は殺すぞ?」

「はっ、違うよ違うよ!だから殺さないで!君なら本気でやりかねない」

「ブラックボアか。最近魔物が活発化しているな。なぜか分からんが、今まで魔物が出たことのない村や町、それに都市にまで魔物が出現するようになった」

ギルドマスターが、溜息を零した。

「ダンジョン資源は必須だし、普通の討伐を引き受けてくれる手合いが少なくてね。できれば、君たちには冒険者ギルドのギルドメンバーになってほしいんだが。Sクラス並みの腕があるあろうし。天使と堕天使だ、神の力も期待できる」

「ああ、僕らは冒険者にはならないよ。その柿様から祓い屋やれっていわれてるし」

「ううむ、残念だ」

「じゃあ、俺は解体工房にいってくる」

浮竹は解体工房でブラックボアを10体アイテムポケットから出した。

「あんたのアイテムポケットは時間が流れないのか。貴重なタイプだな。鮮度もいいし、金貨6枚で買うよ」

「ああ、2人分で3食分肉を残しておいてくれ」

「あいよ」

切り分けてもらったブラックボアの肉をアイテムポケットに入れて、浮竹は京楽と合流した。

「今日は、ボアだしボタン鍋にしよう」

「いいな、それ」

ブラックボアはカテゴライズするなら、猪のモンスターだった。

食用になり、そこそこおいしいが、狂暴なためにCランクに指定されていた。

Sランクの仕事依頼もこなしそうな二人には、楽勝な相手だった。

「報酬のお金はへぼかったが、野菜や米は嬉しいな。後魔石と素材はそこそこの値段になったし。黒字で終わりでよかったな」

「そりゃ、赤字で終わりたくないからね。まぁ、僕はちょっとお金もちのマダムに貢がせてそれなりの財産あるから、お金の心配はないんだけど」

「それ、褒められたことじゃないぞ。俺はちゃんと仕事でお金を貯蓄している」

浮竹と京楽が住んでいるのは、一軒家だった。

浮竹が、就職してその給料のよさから、思い切って買った一戸建ての新築の家だった。

ローンは30年くんでいたが、いつの間にか京楽の金でローンは返済し終わっていた。

「ぼたん鍋にはビールだ。買いにいってくる」

「じゃあ、僕は調理しとくね」

浮竹は、近所のコンビニでビールの缶を4つ買った。

「京楽のやつ、よく飲むけど今日は2本で我慢してもらおう」

京楽はうわばみというやつで、飲んでも飲んでも酔わない。酒好きで、よくワインやら焼酎、日本酒、ビールなどを飲んだ。

帰る途中で、酒屋により、京楽の好きなワインを1本買った。

「たまには、いいかな」

いつもはあまり飲ませてないので、たまには豪快に飲ませてやってもいいだろうと思った。

実は、京楽は浮竹に隠れて、仕事をすると言って姿を消しては、飲み屋で飲んでいたりしていたのだが。それを浮竹は知ることはなかった。

「そこのあなた・・・・・」

「俺のことか?」

「そう、あなたです」

商店街の隅にいた占い師が、声をかけてきた。

「他の堕天使との出会いに、注意してください」

「え?」

そう言って、占い師はスーッと消えていった。

「わ!」

浮竹は驚いた。

霊的なものを見るのは、初めてだったのだ。

「なんだったんだ・・・・・・」


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「そうか。これがミカエルの子か。その力を取り入れれば、私は大天使長ミカエルもこえるだろう」

億のするマンションの最上階で、その人物は水鏡で浮竹を見ていた。

サキュバスに、あのお方と呼ばれた存在だった。

堕天使だった。

茶色の髪に瞳をした、柔和そうでどこか鋭そうな青年だった。

「見ていろ、神め。私を堕天使に落としたこと、後悔させてやる。ははははは」

青年の笑い声は、いつまでも木霊するのだった。


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浮竹の生きている世界線

「さよなら・・・浮竹」

京楽は、愛する者の死に涙を零して、浮竹の死体が荼毘に付されていくのを見ていた。

棺の中の浮竹は、白百合の花に囲まれて、今すぐに起きてきそうなほど綺麗で、体に損傷もなかった。

遠く、火葬場で煙が上がっていくのを見る。

「僕はだめだね。君がいなくなっただけで、世界が色あせて見える。総隊長なんだ、しっかりしなくちゃね」

浮竹の墓は、雨乾堂の跡地に作られた。

立派な墓標だった。


浮竹が死んで、10年が経った。

「さて、明日もがんばりますか」

浮竹の墓標に酒を注いで、久しぶりの非番だったので、墓参りにきていたのだ。

京楽は、浮竹の墓を愛しそうに撫でて、そして空を見上げた。

浮竹の遺体を焼いた日のように、空は雲一つなく蒼かった。

「とりあえず、また来るよ。またね、浮竹」

京楽は、多忙で寝不足気味だったので、非番の日であるが、寝る事にした。

夢の中で、浮竹が出てきた。

17歳くらいの、院生時代の1回生くらいの容姿の浮竹だった。

院生時代の懐かしい夢を見ていた。

「俺は、お前を一人にはしない。必ず、会いにいくから」

「僕は、でも君に残される。君は一人でいってしまう」

「そんなことはない。俺は、いつもお前の傍にいる。見えないだけで」

「見えるようにしてよ。じゃなきゃ、泣くよ?」

「お前に泣かれるのは困るな。分かった、見えるようにしてもらおう」

誰に?とは聞かなかった。

懐かしい夢を見ていた。

ふと気づくと、5時間も眠ってしまっていたらしい。日は傾いて夕日になりかけていた。

「ん・・・・暖かい?」

肌寒い季節になっていた。

布団だけで寝ていたが、寒かった。自分が寝ていた隣に、暖かな温もりがあって、京楽は不思議に思い、布団をめくった。

「えええええええええええ」

院生時代の17歳くらいの浮竹が、寝ていたのだ。

「ん・・・うるさい」

「うるさいじゃないよ君!浮竹なの!?」

「はぁ?俺以外に誰がいるんだ・・・・って、なんで俺ここにいるんだ。生きてる。死んだのに」

「ええええええええ。そうだ、これは夢だ。もう一回寝よう」

「寝るなあああああああああ!!!」

「もぎゃああああああ!!」

浮竹に布団をはぎとられて、股間を蹴り上げられて京楽は悶えた。

「どうなってるんだこれは!地獄にいたはずなのに、何故尸魂界にいる!まさか、生き返った・・・・?でも、なんで院生時代の姿なんだ。おまけに服も院生時代のままだ」

「いやあ、すごい夢だなぁ」

京楽は、頭を壁にゴンゴン打ち付けていた。

「痛い。夢じゃない・・・・浮竹えええええ!!」

「ぎゃああああああああ!!!いきなり盛るなあああ!!」

「だって、君を失って10年だよ!10年間もずっと、君を想い続けてた。生きてる君が傍にいてくれるなんて、奇跡だ」

浮竹は驚く。

「俺が死んで10年後の世界・・・・・なんで俺は、しかも院生姿で蘇った?」

謎だらけだ。

でも、考えれば考えるだけ無駄なので、思考を放棄した。

「なんだかよく分からいけど、ただいま、京楽」

「浮竹ぇええええ」

京楽は鼻水を垂らしながら泣きだした。

「ほら、ティッシュで鼻をかめ」

「うん・・・・・」

「今の13番隊はどうなっている?」

「ルキアちゃんが隊長になったよ。あと阿散井君と結婚して、子供ができた」

「隊長は朽木か。俺の思っていた通りになったな。しかも恋次君と結婚して子供ができたなんて、なんていうのか俺が死んでる間にいろいろなことが起こってるな」

浮竹は、感慨深く頷いた。

「そうだよ、なんで死んじゃったの。神掛けをしなきゃ世界が滅ぶって分かっていたど、僕には君の喪失が耐え難かった」

「今、ここにいるじゃないか」

「そうだけど、君がいないこの10年、僕の世界は色あせていて、ずっと、ずっと、君を想っていた・・・・・・・」

抱きしめられた。

まだ少年の幼さを残した姿の浮竹は、背もあまり高くなく、髪も短いが、衣服を女性のものにすれば少女で通ったかもしれない。

「その・・・・ごめん。お前を置いていったりして」

「ううん。今、君がここにいる。それだけで十分だよ」

「明日、12番隊のところにいって検査してもらおう」

「だめだよ!浮竹がいきなり生き返ったなんて知れたら、パニックだよ」

「いや、もう遅いから。地獄蝶飛ばしてしまった」

「ええ、なんだって!」

情報が広がるのは早い。

京楽は1番隊の隊首室で寝ていたのだが、浮竹もそこで寝ていたのだ。

まずは、どこから忍び込んできたのか、12番隊隊長の涅マユリが現れて、サンプルをとりないので時間が空いた時にでも12番隊に来るようにと言って、去って行った。

1番隊の執務室に場所を移すと、ルキアが恋次と一緒に赤子を抱いてやってきて、涙を零して浮竹に抱きついた。

「浮竹隊長ー!お姿が若いですが、隊長が生きてるなんて凄いです!」

「こらルキア、もっと丁寧に苺花を扱え」

「恋次のアホ!浮竹隊長が蘇ったのだぞ!ああでも、今は私が13番隊隊長をしているせいで、浮竹隊長の行く場所がない・・・・」

浮竹は、ルキアに抱き着かれて、困った顔をしていた。

「ルキアちゃん、浮竹は僕のものだから、返してね?」

「あ、すみません京楽総隊長!」

浮竹と京楽ができていたことは、尸魂界でも有名なことだった。

「霊圧は高いけど、院生時代のものだし、斬魄刀もないし、しばらくは僕の元で書類仕事を手伝ってもらおうと思ってる」

「おい、勝手に決めるな」

「だって、自由にしてもいいけど、暇でしょ?雨乾堂はもうないし」

「え、ないのか」

浮竹がびっくりしていた。

「君が死んで、壊して墓建てた」

「ううむ・・・行く当てもないか」

「だから、君は僕の傍にいてね。常に手の届くところに」

京楽の執着心は半端ではないようで、一度失った大切なものが戻ってきて、もう二度と手放すものかと、浮竹を見えない糸でがんじがらめにする。

「お前の傍か。不安なんだよな」

「とりあえず、後がつまってるから、ルキアちゃんも恋次君もまた今度で」

その後、日番谷や白哉、他の隊長副隊長と会って、話をした。


「はあ、疲れた。話を少しするだけのつもりが、もう夜だ」

「お腹すいたでしょ?」

「そうだな」

「僕の屋敷においで。今日はそこで泊まろう」

「分かった」

京楽は、浮竹を連れて今一番よく使っている屋敷に帰った。

地獄蝶を飛ばしておいたお陰で、二人分の食事の用意はされてあった。

「うわ、久しぶり食べる現代の食事・・・・・うまいな。地獄では、食べるという習慣自体なかったからな」

「山じいや卯ノ花隊長は元気にしてる?」

「ああ。よく稽古だといって斬り合っている。先生も卯ノ花隊長も元気だぞ」

「地獄に行ってまで、剣の稽古か。戦闘狂だな。流石は先代剣八」

京楽と浮竹はカニを食べた。

寒い季節になってきたから、温かい鍋は嬉しかった。

〆の雑炊までいただいて、浮竹と京楽は一緒に風呂に入った。

「その、あまりじろじろ見るな」

「どうして」

「俺の体はまだ訓練する前で、筋肉がほとんどない。お前の鍛え上げられた体をみていると、虚しくなる」

「君は、かわいいし綺麗だよ。いつもの君の姿もいいけれど、こうやって幼い君をまた見れるのはなにか、いけないことをしているようで、興奮するね」

「その、いけないことをしようとしているんだろう?」

「あ、ばれた?」

京楽のものは、腰にタオルを巻いているが、かちかちに勃っていた。

「院生時代の体だ。お前のものに慣れていない。あまり、無茶をさせるなよ」

「分かってるよ・・・・さっきのうちに、ネットでローション買ったんだよね」

ローションを用意していた京楽に、浮竹は開いた口が塞がらない。

「お前は・・・はぁ、もういい。抱くなら、抱け」

「抱くよ。君は僕のものだ。その体にはまだ触れたことがないから、大事にはするけど」

ゆっくりと味わうように、口づけを交わしていく。だんだん激しいものに変わり、つっと銀の糸が垂れた。

「あっ」

「かんじるところは、同じなんだ」

風呂場で、声が響く。

「やっ」

京楽の手で、翻弄される。

「ああああ!!」

京楽が、勃ちあがった浮竹のものを口に含み、舐めあげてしごいていると、浮竹は京楽の口の中に精液を放っていた。

「ひあああ!!」

ローションまみれの指が、体内に入ってくる。

「あ、春水・・・・・」

「大好きだよ、十四郎。君をまたこの手で抱けるなんて、夢みたいだ」

「あ!」

こりっと刺激の弱い部分を指で何度かいじり、京楽の指は去って行った。

「いれるけど、大丈夫かな?君の体、幼いし・・・・・・」

「別にいい。こい」

「ん、いくよ」

「ひあああああああ!!!」

浮竹は十年ぶり以上に引き裂かれる熱と、その痛みに涙を零す。

その涙を吸い取りながら、京楽はゆっくり解した浮竹の蕾へと、自分のものを収めていく。

「んん・・・・」

しばらく動かず、大きさに慣れるまで口づけあった。

「あ、もう、動いていいぞ」

「うん」

ずちゅりと、中を京楽が犯していく。

その体は処女らしく、浮竹今までの体との違いに戸惑いながらも、京楽を受け入れた。

「ひあああああ!!」

最奥を突きあげられて、オーガズムで達した。

まるで、昔に戻った気分になる。

若い分、体は正直だし性欲も旺盛なようで、浮竹は熱を放った。

「君からみたら、僕はおじさんだね」

「そうかもな。でも、俺も中身はおじさんだからな」

クスリと笑い合う。

「ああああ!!」

最奥を貫かれて、揺さぶられ、抉られて、浮竹はオーガズムでいきながら、生きているという喜びを噛みしめた。

「んあ・・・・」

ぱちゅんぱちゅんと音をたてて、京楽のものが出入りする。

何度か、京楽は浮竹の胎の奥で熱をはじけさせる。

「あ、もっと、もっとぐずぐずになるまで、俺を犯せ」

湯船の中に入りながら、交わった。

「あ、溶ける・・・・・」

お湯が体内に入ってくる。

京楽はあくまで浮竹の欲を満たすように動く。

「あ、いっちゃう、いっちゃう」

「何度でもいっていいよ。君がとろとろになるその顔をが好きだよ」

「ああああ!!」

浮竹は精液を湯船の中で放っていた。

「やああああああ!!」

京楽の熱が、体内の奥深くで弾けるのが分かった。

「あああ・・・・・」

浮竹は、ぐずぐずに溶けていく。

京楽と一緒に。

後始末と言われて湯船の中で、中に出したものをかき出されている時も。オーガズムでいってしまっていた。

「もう、煽らないでよ。もう、出せないよ」

「仕方ないだろう。体は処女なのに、俺という精神を宿しているせいで我ながら淫乱なんだから」

「ねえ、十四郎」

「なんだ、春水」

「いなく、ならないでね。これが今日だけのできごとだたってことに、しないでね?」

「俺も、それは分からない。いつこの体がこの時代から消えるのかも消えないのかも、何も分からない」

浮竹と京楽は口づけた。

「消えないって、約束して」

「ああ、約束しよう」

指切りをして、風呂で体を髪を洗い、出てから互いに水分を拭き取りあって、その日は眠った。

朝起きると、浮竹の姿はまだあった。

それに安心して、京楽は浮竹の額にキスをする。

「君を、もう一f度手に入れた・・・・・・」

もう、離さない。

そう京楽は思うのだった。

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堕天使と天使6

天使たちの羽は、物質ではなく霊的なものでできていて、衣服の穴があいていなくても出し入れ自由だった。

なので、翼を出した時に服が破れるだとか、そんな心配はいらないし、肩甲骨あたりが開いた衣服を着なければならないということもなかった。

浮竹は、意識を集中して背にある6枚の翼から、ダガーのように羽を的に突き刺していく。

「フェザースラッシュ」

魔法ではなく、天使としての物理攻撃だった。

今度は京楽が、堕天使としての真っ黒な翼を一対出して、浮竹と同じように的に羽を突き刺す。

「フェザースラッシュ」

浮竹の放ったものは、3分の2が的にあたったが、3分の1は外れた。

一方、京楽の放ったものは的を完全に破壊してしまった。一番のヒット部分ばかりに集中して。

「むう、俺のほうが翼が多いのに、なぜ負ける」

「こればかりは、生きていた時間の差かな。この攻撃は咄嗟の時に役に立つから、僕は昔から練習してたしね。サキュバスの女の子を的にして、フェザースラッシュで女の子の周囲に羽をつきたてて、インキュバスの連中と酒を飲みかわしあって、他のサキュバスの子から夜のお誘を・・・・・」

見る見る浮竹が不機嫌になっていくのがわかる。


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堕天使と天使5

祓い屋を開いて、口コミで噂が広がり、依頼がくるようになっていた。

この世界は車や電化製品があって限りなく現代に近いが、魔法があって、冒険者ギルドもあり、ダンジョンもある。

出てくるのは西洋のモンスターだけでなく、和風の妖怪、霊などもでる。

種族の人だけでなく、亜人種から精霊、悪魔や天使、神族や魔族などがいた。

今回の依頼は、化けた狐の妖狐がでて、人をかどわかわして、最終的には骨となって発見されるという、人食いの妖狐退治の依頼だった。

祓い屋とはいうが、基本的に冒険者ギルドと役割は同じで、冒険者ギルドで溢れた依頼やら、こちらのほうが報酬金が低くて済むのでといった理由で、依頼はやってくる。

浮竹と京楽は、いくつか受注した依頼のうち、妖狐事件が一番深刻だったために、それに集中することにした。

まずは、被害のあった村に車で向かう。

妖狐といった類の妖(あやかし)には、銃といった武器がきかない。

特別に力のこもった武器ならきく。一番ききやすいのは聖なる力の宿った武器か、魔法だった。

浮竹も京楽も、魔法が使えた。

浮竹は最近になって天使の大上位クラスセラフに覚醒したので、京楽に魔法の初歩から教えてもらい、すでに上級魔法まで唱えれるようになっていた。

適正は全属性。

特に聖属性と炎の魔法が強かった。

京楽もほぼ全属性だが、堕天使のせいか聖属性は使えなかった。

「ここが、依頼のあった村か・・・・・」

浮竹と京楽がやってきたのは、浮竹と京楽の住むアラン王国の隣にある、リンガル帝国の隅にある村だった。

寂れていて、人口自体も200人はいないだろう。

「すまない、依頼を受けてやってきたんだが、村長はいるだろうか」

畑仕事をしていた男性に話かけると、顔を輝かせて村長を呼びに行った。

「妖狐を退治してくれる人ですな。まっててくだしい、今村長よんできますんで」

村長は、間もなく浮竹と京楽の前に現れた。

立ちっぱなしもなんだからということで、村長の家に招かれる。

「それでですな、山の方に妖狐が住み着いて、村人をかどかわして食ってしまうんです。皆で探すんですが、数日後には骨になっていて・・・・・」

村長は涙をにじませた。

「姪っ子もやられてしまったんです。どうか、この村を助けるために、妖狐を退治してください。お金はあまりありませんが・・・金貨40枚が、出せる精一杯の額です」

「金貨40枚で十分だ。その山の方へ途中まででいいから、誰か案内役を」

浮竹の言葉に、村長は頷いて2階から娘を呼び出して、浮竹と京楽を山の妖狐のいる方角へ、案内してくれることになった。

「私からもお願いします。どうか、妖狐を退治してください」

村長の娘は、器量よしで、京楽がちょっと興味ありそうな顔をしていたので、浮竹は思い切り京楽の足を踏んづけてやった。

「痛いよ、浮竹」

「自業自得だ」

「僕は浮竹一筋だってば。ちょっと興味がわいただけで、ただそれだけだよ」

「普通、一筋なら他に興味などわかないはずだ」

浮竹の冷たい言葉に、京楽は頭をかいた。

「いや、昔千人切りの京楽って言われてたくらい、節操なかったもんだから、つい」

「千人と寝たのか!」

浮竹がびっくりする。

「うーん。700人までは数えてけど、そこからは数えてない。なので、千人をこしているのかこしていないのか、分からないね」

「最低だ」

「ああ、だから過去の話だってば。浮竹も、今の僕を見てくれるでしょ?」

「それは・・・・・」

浮竹は顔を赤くした。

「私が案内できるのはここまでです。この奥に、神社があります。妖狐はそこを塒(ねぐら)にしているらしいと・・・・」

「分かった。気をつけて、帰ってくれ」

「はい・・どうが、ご武運を」

浮竹と京楽は、まだ昼であるが、周囲を警戒しながら神社があるという道を進んでいく。

しばらくすると、その神社が見えた。

傾国の美の美しい女性が、神社の奥に入っていくのを見つけた。

「浮竹、見た?さっきの凄い美人」

「ああ。まさに人ならざる者といった風体だな」

「ああ、昔の僕なら口説いてズキューンバキューン」

台詞の途中で、浮竹がアイテムポケットから取り出したハリセンで頭を殴られた。

「ふざけてないで、行くぞ、京楽」

「うん」

絶世の美女には尻尾があり、その尻尾は9つに分かれていた。

「妖狐でも、九尾の狐か!また厄介な!」

浮竹が、まずは結界をはった。

式を飛ばして、円陣を魔法で描き、外に逃げられないようにする。

「あら、新しい獲物?村長に退治してくれとお願いされたのでしょう?そうやって、強い者をとって食うようにしているの。ちゃんと村人を襲わないって約束はしていたけど、全然獲物がこないから、村人を襲ってしまったの」

「なんだい、話を聞く限りでは、僕らは人未御供よろしく、村長に騙されたってことかな」

「ええ、そうよ」

「あの村長、戻ったらぎったんぎったんにしてやる」

珍しく本気で怒る浮竹を前に、京楽は魔法を唱える。

「ダークフレア」

「ホーリーランス」

「あははは!魔法なんて私には効かないわ!この九尾の尻尾で吸収できるのよ!だから、冒険者ギルドから派遣されてきたやつらも、返り討ちにして食ってやったの。きゃははは!」

浮竹は、式を呼び出す。

それは戦乙女のヴァルキリーだった。

「いけ!」

式のヴァルキリーは、物理攻撃をしかける。持っている聖なる槍で、九尾の妖狐の足を貫いた。

「あああ!人間ごときが!いいえ、この匂い・・天使と堕天使か!」

京楽も、式を呼び出す。

それは、3つの頭をもつケルベロスだった。

九尾の妖狐に火のブレスを浴びせる。

「なんなの、お前たち!私には魔法は効かないのに、式如きで・・・・・・」

「そう。その式如きに祓われてよ」

ケルベロスは、九尾の妖狐を文字通り爪で引き裂いた。

「いやあああああ!!!」

浮竹の式のヴァルキリーが、トドメの槍を繰り出す。

「後で、村長に謝ってもらわないとな」

「ぎゃあああ」

九尾の妖狐は断末魔をあげて、体を灰に変えていく。そして最後は小さな魔石になってしまった。

「この魔石、小さいけど魔力純度高いね。冒険者ギルドで買いとってもらえば、金貨100枚はいくと思うよ」

「命を狙われたにしては、安い値段だな」

「まぁ、そう言わないでよ。村長も必死だったんでしょ。あの村を守るために」

神社の奥には、冒険者や旅の者と思わしき荷物や衣服と一緒に、骸骨が散乱していた。

「それにしても、こいつ一体何人食ったんだろう」

「10人は食ってるんじゃないのか」

「普通、妖怪は人を食えば食うほど力があがるのに、式だけで片付けれるなんてラッキーというかなんというか」

「どのみち、魔法が効いていれば魔法で倒せただろう。九尾の妖狐というが、かつ東の極東で暴れまわって、国を崩壊させた九尾の大妖狐とはクラスが違いすぎる」

「そうだね。とりあえず、村に戻って報告して、警察呼ぼう。村人を守るためだからと、冒険者や旅人をだまして食わせた罪で逮捕されるだろうね」

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「そんな、なぜ生きて・・・・本当に、妖狐をやっつけてくれたのですか!」

「そういうそっちは、僕らを妖狐の生贄にしようとしていたね。警察呼んどいたから、大人しく捕縛されてね」

村長は、項垂れた。

「これは私の罪です。お約束通り、代金の金貨40枚はお支払いします」

「えらいものわかりがいいね?」

京楽が訝しがるが、村長も腹をくくったのだろう。

金貨40枚を報酬として手に入れて、呼んだ警察に村長を引き渡し、九尾の妖狐に冒険者をえさとして与えていたことを話して、捕縛してもらった。

「さて、この村はどうなるのかな?」

「きっと、娘が村長の後を継ぐだろう。こういう閉鎖的な村は、血統を重んじる」

「じゃあ、戻るとしますか」

浮竹と京楽は、車で冒険者ギルドにまでやってくると、九尾の妖狐が残した魔石を買い取ってもらった。

「これは、小さいですが魔力の密度が純粋に高いですね。これなら、金貨140枚の買取りになりますが、いかがいたします?」

「ああ、その値段で頼む」

「やったね。思ったより高く売れた」

「ああ、そうだな」

京楽と浮竹は、思ったよりも収入があったので、焼き肉食べ放題の店にやってくると、一人金貨5枚はらって、席につくと、高級肉を注文しまくった。

浮竹も京楽もたくさん食べたので、金貨5枚以上の分は食べただろう。

「たまには、店で食べるのもいいね。いつもは僕が調理するけど」

「お前の料理はチートだ。なぜ、あの食材でこんなものができるのかってかんじで」

「僕は100歳を超えているからね。趣味は料理。腕を磨いてたら、そこらへんのシェフ並みになっちゃった」

「まぁ、うまい飯にありつけて、俺は嬉しいが」

「よーし。明日の夕食、楽しみにしててね。ちょっとこまったものを出してあげる。帰る前に、スーパーで買い物していこっか」

「ああ」

こうして、妖狐退治は終わり、浮竹と京楽は次の退治依頼を受けるのだった。





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堕天使と天使4

初めての依頼は、サキュバスの退治だった。

祓い屋といっても、対象は基本討伐か浄化になる。

「ああ、ココアちゃん思い出すねぇ」

京楽は、サキュバスといわれて、1年と少し前に関係のあったサキュバスを思い出していた。

「今回のサキュバスは、対象者を死ぬまで生気を吸い取るらしい」

「わー、それは大変だ。討伐だね」

この世界は、現代によく似ているが、魔法が使えて魔族や天使族もいる、異世界だ。車が通っていたりするが、転移魔法もある。

妖怪もいればモンスターもいるし、霊もいる。

冒険者ギルドもあった。

祓い屋や退治屋は、ギルドに依頼するよりもかかる金額が好きなく、迅速に対応してくれるので、浮竹と京楽が始めた祓い屋は、今注目を浴びていた。

「とりあえず、事件の多発しているマンションに行こう。そこで俺が囮になって寝るから、お前が退治してくれ」

「ええ、危ないよ!」

「だからって、関係のない人間を巻き込むわけにもいかないだろう。それにセラフである俺の生気は、サキュバスにとって極上のえさになるだろう」

「仕方ないねぇ。囮は僕がなりたいところだけど、サキュバスには顔見知りも多いからね」

京楽の、昔の爛れた性関係の中には、サキュバスは多かった。

浮竹と京楽は、サキュバスによる被害で死者が相次いで出ているというマンションに車で向かった。

すでに事件がはじまってから、男性たちは避難するように引っ越したり、ホテルに泊まったりしているので、浮竹が囮になってサキュバスが憑りつく可能性は限りなく高かった。

浮竹と京楽は、飽き部屋を借りてべッドの周囲に魔法陣を描き、サキュバスが一度きたら逃げられないようにした。

「さて、寝るか。スリープの魔法をかけてくれ」

「分かったよ。くれぐれも無茶はしないでね」

サキュバスは夢の中に現れる。満足して去っていくくらいしか、捕まえる方法がない。

「スリープ」

京楽は、眠りの呪文をかけた。

浮竹は、すぐに深い眠りに入っていった。

浮竹は、父親である大天使長ミカエルと、母であるおぼろげな姿のアンヌがいたのだが、すぐに場面が変わった。

褐色の肌をくねらせて、体に巻き付いてくるサキュバスを、浮竹はその虜になるのではなく、魅了(チャーム)の呪文の効果をはじき返して、サキュバスを見た。

「お前は、なんのために人が死ぬまで生気をとる。サキュバスなら、人が死ぬまで生気をとらなくても、相手を変えればやっていけるだろう!」

「きゃははは!あたしは殺したいから生気を全部とってるの。あなたの生気もいただくわ」

サキュバスは、浮竹の生気を吸い取った。

「な、何この聖なる生気は!あなた、天使ね!おいしいわ、もっとちょうだい!」

体をくねらせて、吸い付いてくるサキュバスを、浮竹はホーリーインフェルノの魔法を唱えて、精神世界から叩きだした。

「きゃあああああ!!」

サキュバスは、浮竹の体から出てきた。

「なんなの!夢の中で魔法が使えるなんて信じられない。ここは、一度逃げるしか・・・ああああ!?これ以上外に出れない!」

サキュバスは、外に出ようとして、自分を封じこめている結界に呆然とした。

「それは、そういう結界を施してあるからだよ、マリンちゃん」

「京楽!?京楽なのね!お願い、あたしを助けて!あなたとは3回も関係をもったわ。ねぇ、助けてちょうだい」

「残念ながら、君は生気を食いすぎて人を殺し過ぎたせいで、駆除対象になっている」

「嫌よ!あたしは、自由に生きるのよ!もっともっと生気を吸って、あの方から力をもらうのよ!」

京楽は、あの方という人物が気になったが、とりあえずマリンという名のサキュバスを捕縛する。

「それは残念だったな」

浮竹がいつの間からか、眠りから覚めていた。

「お前は駆除対象だ。悪魔の一種だから、消滅させないといけない」

「嫌よ!もう、人の生気は食べないから、許して!」

「それは無理な相談だな」

マリンは、京楽の手で捕縛されていたが、風の魔法で浮竹を切り刻んだ。

「こうしてくれる!」

「僕の浮竹に傷を・・・・ダークフレア」

「ぎゃあああああああ」

マリンは、跡形もなく消滅した。

手元に残ったのは、魔石だけだった。

「浮竹、怪我は大丈夫!?」

けっこう深い傷もあったが、浮竹は魔法を唱える。

「セイントヒール」

全ての傷が嘘のように癒えて、血の跡も服の汚れや破けた部分まで元に戻っていた。

「君の癒しの魔法って、時間回帰じゃないかな」

「なんだそれは」

「だって、普通の回復魔法は傷を癒すだけで、服の汚れや破れた部分まで治せない。この壊れた机に、ヒールかけてみて」

置かれてあった、足が一本折れている机に、ヒールをかけると、その机は新品のようになってしまった。

「やっぱり、時間回帰だ・・・・このことは、絶対に内緒だよ。神の魔法だから」

「よくわからんが、他言無用ということだな?」

「そうそう」


サキュバス退治の依頼者であった人間の、マンションに住んでいた男性に討伐が終わったことと、その証の魔石を見せると、金貨100枚を支払ってくれた。

魔石は、冒険者ギルドに登録して、金貨5枚で買い取ってもらった。

「今日は、寝かさないよ」

「眠いんだが」

「君がサキュバスに憑りつかれている間、もやもやしてたんだから!マリンちゃんとあはんうふんしたんでしょ?」

「いや、体をくねらせて抱き着かれて生気を奪われただけだが」

「そんなの信じられない」

「んんっ」

深い口づけを受けて、浮竹はキングサイズのベッドに押し倒されていた。

「僕を欲しがって。ねぇ、十四郎・・・・」

「あ、お前が欲しい、春水」

ローションを手に、浮竹の後ろを解していく。

「もっと欲しがって」

「あ、お前をくれ、春水、春水」

「いい子だね。たくさんあげるからね」

「ああああああ!!」

熱に引き裂かれた。

「ひあう!」

最奥まで入ってきた熱に、意識がもっていかれそうになる。

京楽は、浮竹の中をじっくりと味わってから、浮竹の胎の奥に子種を注いだ。

同時に、浮竹も自分の腹に白濁した液体を出していた。

「ひあああ!!」

オーガズムでいくことを覚えた体は、女のようにいく。

浮竹は、オーガズムでもいっていた。

「あああ!春水、もっと、もっとお前をくれ。んっ」

激しい口づけを交わしあいながら、浮竹は京楽を求める。

それに応えるように、京楽は浮竹の中に精液を流し込む。

「あ、もっと・・・・もっと、めちゃくちゃにして?」

「十四郎・・・・少しの間で、こんなにエロくなちゃって」

「誰のせいだと、思っている」

「あっはー。僕のせいだね」

ズクリと奥を抉ると、浮竹は背を弓なりにしならせて、オーガズムでいっていた。

「もっといっぱいあげるからね。ぐちゃぐちゃになるまで、犯してあげる」


「あ、あもうやぁっ」

浮竹は愛されすぎて、思考も何もトロトロになっていた。

「まだ、いけるでしょ?めちゃくちゃにしてって言ったのは、君のほうだよ」

「あ、やあああ」

京楽の硬いものは、入り口付近まで出ていき、ズンと奥を貫かれた。

「やあああ、あああ!!」

「君のここ、すごいことになってる」

結合部は互いの体液とローションで泡立っていた。

「いやあああ」

「これが最後だから。しっかり受け止めてね」

「ひあああ!!」

6回目になる精液を浮竹の中に注ぎ込んで、京楽は満足した。

浮竹は最後のほうは意識も虚ろになっていた。

一緒にお風呂に入った。ぼーっとしている浮竹の髪と体を洗ってやり、中に出したものをかきだす。

「んあっ」

「もう、僕をあおらないでよ」

「京楽の手の動きがエロいせいだ」

「普通に後処理してるだけですぅ」

二人は、お互いを抱きしめ合いながら、同じベッドで眠るのだった。

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堕天使と天使3

母役であったガブリエルが、降臨した。

正確には、浮竹の家にやってきた。

「あああ、本当に京楽がいる!私のかわいい浮竹に手を出して!」

「ああ、ガブリエルちゃん、今日もかわいいね。昔なら、どう、一発?って言ってたところだけど、今の僕は浮竹一筋だから、ガブリエルちゃんがいても君には手を出さないよ」

「かわりに、私のかわいい浮竹に手を出すんでしょう!」

ガブリエルが威嚇していたが、浮竹があまりにも穏やかで幸せそうなので、伝言を伝えにきたのだと言い出した。

「浮竹。あなたの父は、天使の中でも最高位に位置する、大天使長ミカエルよ」

「ミカエルだって!?あんな高貴な者が、人間と愛を交わし合ったの?」

その結果にできた子供が、浮竹なのだ。

「一度、ミカエルに会いにいって。あなたが、京楽を人生のパートナーに選んだことを、すごく心配しているから。さぁ、一緒に天界に行きましょう」

「分かった。京楽は、適当に留守番しておいてくれ」

「あーあ。僕が堕天使じゃなかったら、一緒にいくのになぁ」

京楽のつぶやきに、浮竹は京楽の頭を撫でた。

「すぐに、帰ってくる」

「うん。夕飯の準備して、待ってるね」

天界にいくと、最高位の天使セラフの中でもTOPにいる大天使長ミカエルが迎えにきてくれた。

「私の愛しい浮竹。私とアンヌの子よ」

「・・・・父さん?」

「ああ、君から父さんと呼ばれる日がこようとは・・・・」

ミカエルは、細面の少年だった。

「なんだか、俺のほうが親といったほうが、しっくりくるんだが」

「愛しい浮竹。我ら天使族はある程度の年齢で老化が止まる。今の浮竹も、その姿のまま時を止めているだろう」

「え、そうなのか。そういえば、年齢のわりに全然若いですねっていわれるわけだ」

「これは父からの忠告と警告だ。京楽を人生のパートナーにするのはやめなさい。きっと、いつか捨てられて哀しい思いをする。いつ浮気されるかも分からない」

「京楽は、俺に愛を捧げ、誓ってくれた。パートナーにすると」

「それが、不幸でしかないとしても?」

ミカエルの言葉に、京楽は首を横に振る。

「京楽と一緒に過ごしてまだ半年だが、幸せだ。不幸なんかじゃない。京楽と別れるつもりはない」

「そうか。セラフとして、天界に来る気はないのだろう」

「ないな」

「では、一度お別れだ。元の世界に戻った、このメモの場所にお前の母親のアンヌ・マリーが住んでいる。いつか、アンヌが生きているうちに、会いに行ってやってほしい。私たちは、本気で君を愛していた。神の都合で子を略奪されて、ガブリエルに育てられて人間界に捨てられると知った時、止めたかったが、止めたら罰がくだる。私はアンヌを失いたくなかった。今まで君の存在に触れてことなかったことを、どうか許してほしい」

「許すも何も、父さんがいたから俺は生まれた。ガブリエル母さんに育てられて幸せだったし、人間界に捨てられたといっても、施設での暮らしに不自由はなかったし、なりたい職にもつけた。父さん、俺は今は幸せだ」

「そうか」

ほろりと、ミカエルは涙を零して、自分より年上に見えて、背も高い浮竹を抱きしめた。

「どうか、これからも幸せであってくれ」

「うん」

浮竹は、ミカエルとの話を終えて、天界から人間界に戻ってきた。

「おや、意外と早かったね。今、夕食を作っているところだよ」

「父に会ってきた」

「大天使長ミカエルか。僕のこと、何か言ってた?」

「不幸になるから、すぐ別れろと言われた。あと、すぐ浮気するかもしれないって」

「ははははは。散々な言われようだね」

浮竹を顔を上げた。

「でも、嫌だっていった。今の京楽と暮らしていて、幸せだと俺は感じている。だから、別れないと言ってきた」

「浮竹・・・・十四郎、愛してるよ」

「俺も愛している、春水」

二人は、触れるだけの口づけを交わした。

「君がいない間、天使の子がやってきてね。最高神である山じいからの手紙がきてた。セラフとしての力と、僕の堕天使としての力を生かして、この世界でいわゆる祓い屋をしろだってさ」

「祓い屋?」

「そう。モンスターや魔族、妖怪、霊・・・そんな存在を駆除しろだってさ」

「そんなこと、できるのか?」

「今の君は魔法を使えるはずだ」

「そうなのか?」

京楽は、ごそごそと本棚を調べ始めた。

「あったあった。魔法入門編~上級編まで。これに目を通しておけば、魔法が使えるようになるから・・・・」

「フレアバースト?」

ごおおお。

魔法の入門書に書かれていた、中級呪文を、浮竹は無詠唱で使っていた。

火は燃え盛り、今にも飛び火して家が焼けそうだったので、京楽が魔法を唱える。

「ウォーターボール」

浮竹の炎の魔法は、京楽の水の魔法で相殺された。

「ねぇ、君って魔法使うの初めてだよね?」

「そうだが?」

「魔法の才は、大天使長ミカエル並みってところかな」

「祓い屋をするのはいいが、何をすればいいんだ」

「まずは、祓い屋の業界に参加することを証明しないとね。知り合いを使って、すでに出しておいたから、もうすぐ許可証が届くよ」

黒い猫が、翼を生やして窓から入ってきた。

「おつかれ。はい、これ約束のチュール3日分」

チュール3日分と引き換えに、祓い屋の許可証を渡してくれた。

「また、何か頼み事があれば、儂をよぶといい。力になってやろう」

「またねえ、夜一ちゃん」

「あの黒猫は?」

「ん?夜一ちゃんっていって、人化できる猫又だよ。翼もあるけど。まぁ、3回くらい寝たことあるけど、褐色肌の美人さんだったよ」

浮竹はむっとなった。

「ちょっと、昔の話だから。今は、浮竹一筋だから」

「分かってる」

「そうだねぇ、家の前に祓い屋の看板を建てようか」

「好きにしてくれ。俺は今日はもう寝る」

「ちょっと、夕飯ちゃんと作るし、夜一ちゃんとはもう何もないから、怒らないでよ」

結局、京楽が作ってくれたおいしい夕飯を食べて、浮竹は風呂に入り、眠りにつく。

祓い屋をする天使など、この世に二人と存在しないだろう。

そんな祓い屋の誕生だった。


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堕天使と天使2

「ねぇ、僕のパートナーになってくれない?」

京楽は、ある日そんなことを言い出した。

京楽とは、何度か体を重ね合った。同じ部屋で暮らしてる友人というには、この関係は不適切だ。恋人同士といったほうがいいのだろう。京楽は、浮竹に恋人になってくれといっているのだった。

つまりは、人生のパートナーになってほしいということだった。

「僕の人生のパートナーになってよ。名実共に君が欲しい、浮竹」

「俺は・・・・その、どっちでもいい」

体を重ねたし、相性も悪くないし、一緒に暮らしたこの半年で京楽のことが好きになっていた。ただ、浮竹は感情を外に出すのがあまり上手ではないのか、「どっちでもいい」とぶっきらぼうに言ってしまったが、本当は京楽とパートナーになりたかった。

「じゃあ、決まりね。君は今日から僕のもので、僕は今日から君のもの」

「そんな、もの扱いはやめろ」

「どうして?」

「どうしてもだ」

浮竹は、一度言い出したら聞かないことがある。

「ガブリエル母さんに会いたい。天使として覚醒した今なら、天界にも行けるだろうか?」

「行けるよ。なんなら、門を開こうか?」

京楽は、そう言って天界に通じる門を出した。

「僕は堕天使だけど、まだ悪魔にまでは落ちてないからね。門を出すことはできるんだ。ただし、僕自身は堕天使だから入れないけど」

「ちょっと、行ってくる」

「行ってらっしゃい」


天界の門をくぐると、そこは聖なる力で満ち溢れていた。

浮竹は普段着のまま、背の6枚の翼を生やせて、天界を彷徨い歩いた。

「こっちよ。こちらに、来なさい」

優しい懐かしい声がした。

そっちの方へ行くと、まだ年若い幼い天使たちが遊びまわっていた。

その中心に、ガブリエルはいた。

「久しぶりね、京楽。天使として覚醒したのね。でも、こっちの世界には戻ってこないのね?」

浮竹の育ての親である大天使ガブリエルは、少し悲しそうな顔をしていた。

「母さん、俺はあなたに感謝を、ありがとうを言いにきたんだ」

「よして。ハーフの子たちを8歳まで育てた後は、人間界に追放するようにしてきたわ。浮竹、あなたはセラフと人間のハーフだった。それでも8歳になった時、私はあなたを人間界に置き去りにした」

「それでも、ガブリエル母さんがいなかったら、俺は、いや俺を含めた天使のハーフたちは生き延びれなかっただろう」

浮竹は、可憐な少女のまま時を止めた、ガブリエルの前に座って、手を握った。

「俺を育ててくれてありがとう。俺に人の愛し方を教えてくれてありがとう」

「浮竹・・・・あら、あなた、ちょっと堕天使の匂いがするわね?これは・・・うそ、京楽のものじゃない!あなた、あの食いちからすで有名な、京楽の手にかかったの!?」

「京楽は、そんなに有名なのか?」

「京楽は、あろうことか女神にまで手を出した堕天使よ。天使はおろか、堕天使や悪魔とさえ寝る、色欲魔よ!」

「その・・・・いま、俺の家で一緒に住んでるんだが」

「悪いことは言わないから、すぐに追い出しなさい。あなたも、いずれあの堕天使の爛れた欲の騒動に巻き込まれてしまうわ」

「でも、京楽は俺に人生のパートナーになってほしいって」

ガブリエルは、ふっと意識を失った。

「母さん、母さん?」

「ああ、ごめんなさい。浮竹、あなたはセラフとしては生きないのね。そう、人間として生きるなら、京楽と一緒にいても・・・・・やっぱりだめ。別れなさい」

「それはできないんだ。もう、俺は京楽のものだから」

今度こそ、ガブリエルはショックで意識を失い、子供の天使たちに囲まれるのだった。

天界での天使の成り立ちは、世界樹の実から天使が生まれる。

天使同士の間でも子は産まれるが、出生率が低くて、普通の天使は世界樹の実から生まれた。

浮竹の場合、父がセラフで母が人間であった。

ハーフの子が生まれると、時期の遅い早いはあるが、神々は子供を没収する。

今でも、天界のどこかに父親はいて、人間世界のどこかに本当の母親もいるのだろう。

ちなみに、堕天使京楽は、元々は天使の生まれなので世界樹の実から生まれた。

素行がよくなくて、ある程度の年齢に達すると、同じ天使の少女を誘惑して、抱いた。

それは果てしなく続き、しまいには人間界に降りて、人間もそして悪魔とも寝た。

堕天する原因となったのは、女神に手を出したからだった。

浮竹は失神してしまったガブリエルに傍にあった毛布をかけると、天使と人間のハーフの幼い子供たちに、起こさないように言い聞かせて、天界を去り、元の人間界の自分の自宅に戻った。

「どうだった?」

「お前のことを言うと、即刻別れろと言われた」

「そりゃそうだろうね。僕は色欲魔だから。女神にまで手を出したって言われてたでしょ」

「ああ」

「あれが原因で、堕天使になっちゃったんだよねぇ」

京楽は、夕飯を作ってくれていた。

これまた、どこのレストランの料理ですか的なものが作られていて、デザートは苺のシャーベットだった。

「あ、俺苺は好きなんだ」

「よかった。特売日だったんだよ」

お金は、浮竹のものであったが、貯金はけっこうあったので、クレジットカードを京楽に持たせて、買い物を自由にできるようにさせた。

あと、パソコンとスマホも買い与えてやった。

「ここ数日で、もしもサキュバスが来たら、教えてね。別れをちゃんと言わずに別れた子だから、今の僕が愛している君にちょっかいをかけてくるかもしれない」

「ああ、分かった」

その日の夢の中で、ガブリエルとよく似た女性に誘惑された。

反抗しようとしたが抗えず、けれど交わることも断固拒否していると、生気だけを吸われて、目覚めた。

「ココア!何してるんだい!」

「だって、京楽が悪いのよ!あたしに愛を囁いておきながら、こんなセラフもどきと愛を交わし、おまけに人生のパートナーになるなんて!」

「ココア、君との関係は遊びだ。それを君も知っていて、関係をもったでしょ」

「それでも、あたしは京楽がいいの!京楽の生気はすごくおいしいんだから!この子の生気もおいしいけど・・・・・」

ココアと呼ばれたサキュバスは、スレンダーな体をしていたが、露出度の高い衣装を着ていた。

水着と言っても過言ではない出で立ちだった。

「京楽、この子は?」

「僕の1年前まで、よく関係をもっていたサキュバスだよ」

京楽の性生活は爛れていたと聞いていたので、そんな存在が現れても、特別浮竹は驚きはしなかった。

「京楽は、俺のものだ。帰れ」

「何よ!ちょっと顔がいいからって調子のらないでよ!」

「ココア、怒るよ!」

「何よ何よ!みんなして、まるであたしが悪いみたいじゃない。もういいわ、あたし帰る!」

ココアという名のサキュバスは、悪魔の翼を広げて魔界に戻ってしまった。

「・・・・・おいしそうな名前だった」

浮竹の言葉に、京楽が笑いだす。

「あはははは、サキュバスに生気を抜き取られたっていうのに、平気な顔してるあげくにおいしそうって・・・・・」

「何か変か?」

「ううん、君は今のままでいてね」

口づけられて、浮竹はその身を京楽に任せた。

「愛しているよ、十四郎」

「あっ」

京楽は、睦言になると下の名前で呼んできた。

「んんっ」

平らな胸をなでられて、首筋から鎖骨、胸にかけてキスマークを花のように散らしていく。

「んあっ」

唇を重ねられて、浮竹は自分から口を開いて、京楽の舌を受け入れた。

「んんっ」

京楽の手にはローションがあり、ああ、そういう行為に及ぶのだと、今更ながらに他人事のように感じていた。

「んっ」

指が入ってきて、いい場所をかすめて中を解していく。

「あああああああ!!!」

京楽は、いれる前に浮竹のものをしごいて、精液をださせた。

その快感に、頭が真っ白になる。

その間に、熱に引き裂かれた。

「んああああ!!」

ぐちゅりと音をたてて、京楽の巨大なものが入ってくる。

そんなものを受け入れる器官ではないそこは、うねって京楽を排除しようとした。

「ああ、いいね。一度中で出すよ」

「ああ、春水、春水」

「うん、僕はここにいるよ」

浮竹は、京楽の背中に爪痕を立てた。

ずぐっと音がして、最奥にまで入り込んできた京楽のものは、浮竹の中に精液を放っていた。

コンドームがあるのだが、京楽はつけたがらない。

後処理とかめんどそうだし、つけてみればいいとすすめたのだが、断固拒否された。

「ああ、やっぱり生がいい。君の中を、生で味わって精液をぶちまけている男の名前、分かるかい?」

「あ、春水・・・・・・」

「そう、正解」

京楽は、また熱を浮竹の中に放っていた。

「ひあああああ!!!」

オーガズムで、浮竹はいっていた。

「あ、あ、ああああ」

京楽は、何度も浮竹を犯し、貪った。

「もうやああああ」

浮竹がもう出すものがなくなっても、いじってきた。

「やあああ!」

最後の一滴まで、浮竹の中に注ぎ込む。

浮竹の熱が弾けるのを感じながら、浮竹は意識を失った。

気づくと、ベッドの上だった。

普通のべッドから、キングサイズのベッドに買い替えたので、京楽と2人で寝てもまだ広さが少しだけあった。

後始末はちゃんとしてくれたみたいで、シーツを変えられた布団の中で、身じろぐ。

「ん、起きたの?」

「ああ」

「まだ夜明け前だよ。もう一度、寝て」

「分かった」

「愛してるよ、十四郎。僕の人生のパートナー」

「俺も愛してる、春水」

浮竹は、また微睡みの中に沈んでいく。

夢を見ていた。

名前も知らぬ父親が出てくる夢だった。噂では、セラフの中でもかなりの高位の身分だそうで、大天使であるガブリエルにも匹敵するとかしないとか。

しょせん夢は夢。

それでも、夢の中では父と本当の母と過ごす夢だった。

幸せだった。

だが、神に邪魔された。

ハーフの子として、ガブリエルに託された。

顔もあまり知らぬ本当の父と母より、育ての親であったガブリエルのほうが、数倍愛しいと感じるのだった。


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始祖なる者、ヴァンパイアマスター

今日も、浮竹は神界を訪れていた。

創造神であり、最高神であるルシエードに会いにきていた。

「今日はチーズケーキを作ってみたんだ。甘さは控えめにしている。よかったら、食べてくれ」

「ああ、いただこう」

ルシエードは、愛児である浮竹に甘かった。

神界に行ける指輪を渡してからというのもの、浮竹はよく神界にやってきた。

もう、他の神々も慣れてしまって、最初は顔を青くして、ルシエードと浮竹のやりとりを聞いていたり眺めていたりしていたが、今日も平和に終わりそうだった。

「なかなかうまかった。よければ、また作ってくれ」

「ああ!じゃあ、またな」

「京楽に、魔神として魂を喰うのはほどほどにしておけと伝えてくれ」

「どうしてだ?」

「邪神になる可能性が高くなる。まぁ、今程度の魂の食事なら、あと千年は余裕だろうが、念のためだ」

「ああ、伝えておく」

浮竹は、自分の古城に戻ると、京楽を呼び出した。

「京楽、お前陰で隠れて魂を喰っているな?」

「ええ、なんでばれてるの」

「ルシエードが教えてくれた。なんの魂を食べているんだ」

「モンスターに決まってるでしょ」

「モンスターでも、数が貯まれば人の魂と同価値になる。今のままでは千年は余裕だろうが、念のためと言われた。モンスターの魂を喰うのも、ほどほどにしておけよ」

「はーい」

京楽は、その日の夜は、用事があると出かけてしまった。

「るるるる?」

「りんりんりん~」

一人の夜は長く感じて、ミミック部屋になっているミミックの巣にやってくると、ポチとタマが出迎えてくれた。

子供たちだったイチロー、ジロー、サブロー、シローはそれぞれダンジョンに旅立ち、伴侶を見つけてたまに古城にやってくる。

ポチとタマは、おじいちゃんとおばあちゃんになってしまっていた。

子供たちが、さらに子供産んだせいだ。

もっとも、ミミックは不老種族であるので、年など関係ないが。

ある一定の大きさまで成長すると、そこで成長が途絶える。老いることがなくなるのだ。

ミミックが老いないことに関した研究論が最近発表され、人類の中でも不老を求める者が多くなってきた。

平和な時代は、時に争いの火種を投げかける。

不老の象徴であるヴァンパイアを、麻酔もなしに解剖実験したという事件が起こったことがある。

その時は、浮竹は怒り、加害者とその仲間もろとも皆殺しにした。

そういえば、あの魂は京楽が喰ったのだ。

京楽がいうには、人間の魂はまぁまぁおいしいらしい。

邪神の魂はくそまずく、女神の魂が極上であるらしい。

藍染が死んだことで、残された女神オリガが処刑されたが、その魂は世界を彷徨い、やがてある少女の中に宿った。

浮竹に接触してきたその少女は、浮竹が昔血族にしようとしていたブラドツェペシュによく似ていた。

京楽が、その魂が女神のものであると気づき、京楽は女神オリガの魂だけを喰って、片隅においやられていた少女の魂を救った。

女神の魂は極上の味と満足感を生み出し、あれから数カ月は京楽は魂を口にしなかった。

いつ頃からだろうか。

倒したモンスターの魂を喰うようになったのは。

魔神は、普通の食事でも生きていけるが、魂の飢えもかんじるのだそうだ。

我慢できなくはないが、満たしたい欲求が生まれるらしい。なので、モンスタ―を倒してその魂を喰っていた。

人の魂を、意味なく口にすることは硬く禁止させているので、最近では、懲りずにやってくるヴァンパイアハンターの魂くらいしか、口にしていなかった。

「ポチ、タマ、今日はここで寝てもいいか。京楽がいないんだ。寂しくて一人で眠れそうにない

「るるるる~~」

「りんりんりん」

ポチとタマは、いいよと言ってくれた。とりあえずまだ原型をとどめているソファーの上に寝そべって、もってきた毛布をかぶると、ポチとタマがいるせいか、安心してすぐに眠ってしまった。

「浮竹、浮竹」

「んー。後2時間・・・・・」

「2時間も経つと、昼の3時になってしまうよ」

「ん、京楽?」

「こんなミミックの巣なんかで寝て。どうしたの?」

「お前が!」

浮竹は、京楽の鳩尾にパンチをかました。

「おぐっ」

「お前がいなかったせいなんかじゃないからな!」

「ちょ、もっかいいって。すごいかわいい、浮竹」

「知るか!」

昼過ぎで、腹も減っていたので昼食を食べた。

それから夕食の時間になり、京楽はオレンジ色の果実酒を浮竹にすすめた。

「甘いな。おいしい」

「そう、ならよかった」

「京楽は飲まないのか?」

「僕はいいよ。こっちのワインを飲んどく」

「あ、それ年代物のやつだぞ。勝手に飲むな。俺も飲む」

浮竹は、結局果実酒を丸々1本と、ワインを半分飲んでしまい、眠そうにしていた。

あれだけ眠ったというのに、まだ寝れるなんてある意味凄いと浮竹は思った。

「浮竹、夜はこれからだよ?」

「へ?」

果実酒に混ぜた薬の効果が効いてきた。

「何・・・・体が熱い。お前、また媚薬か、それともこの前みたいな、うさぎ耳か」

「残念。今回猫耳でした」

「お前は!」

浮竹が振り上げた拳は、力なく京楽の肩をたたく。

「媚薬も入ってるな」

「うん」

「うんじゃない、この変態が!」

「乱菊ちゃんの特製猫耳薬。猫耳と猫の尻尾が生えて、発情期と同じ状態になる」

「だから、こんなに体が熱く・・・・・・」

京楽は、浮竹を抱き上げて、一緒にお風呂に入った。

風呂場では一切性的なことはなかったが、風呂からあがり、髪を水分をふいていると、京楽に抱き上げられて、寝室のべッドまでやってきた。

「やっ」

ほとんど裸同然の、バスローブだけを羽織った姿だったので、すぐに白い肌が露わになった。

「んっ」

猫耳を撫でられ、いじくられると、そこだけ電気が通ったようなしびれを感じた。

猫の尻尾を触られても、同じようなかんじた。

「やああ、にゃああん」

発情しているのが、自分でもわかった。

浮竹のものは勃ちあがり、京楽に触られるのを待っていた。

「ふふ、かわいいね、十四郎」

「や、猫耳と尻尾ばかり触ってないで・・・・・」

「触ってないで?」

「言わせるな」

浮竹の胸に顔を埋めて、浮竹は京楽の首に噛みついて、血を啜った。

「ん・・・分かったよ。触ってあげる」

京楽の手が、浮竹のものをいじりだす。

最初は包み込むように、次にしごきだして、その快感に浮竹はうっとりとなった。

「気持ちいい・・・・」

「いっていいよ」

「やあ、にゃああんん」

浮竹は、京楽の手に射精していた。それを、浮竹が舐めとる。

「ふふ、猫みたいな鳴き声も出るのが、今回の薬の特徴なんだよね」

「ばか・・・・・」

全身を撫でられる。

平らな胸を何度も触られて、先端をつままれると、猫耳と猫の尻尾を触った時と同じような快感が生まれた。

「や、もう・・・早く、来い」

「ちゃんと慣らしておかないと」

ローションを垂らされて、浮竹は震えた。

「冷たい!」

「ああ、ごめん。いつも、人肌まで温めていたからね。僕も余裕なくなってるから」

「一度、抜いてやろうか?」

「じゃあ、お願いしようかな」

浮竹は、硬くなっている京楽のものに、ちろちろと舌をはわせながら、根本から扱きあげた。

「あ、いいね。気持ちいいよ」

京楽は、お礼だと浮竹の猫耳ばかりといじっていた。

「にゃあん。あっ」

京楽の精液が、浮竹の顔にかかった。

「ああ、ごめんね。今ふくから」

ティッシュで顔を拭われて、浮竹は早くとせがむ。

人肌の温度にしたローションを、京楽が浮竹の中に塗りこんでいく。

「あああ、あ」

こりこりといいところを指でえぐってやると、浮竹は啼いた。

「にゃああんん」

「もう我慢できない?」

こくりと、浮竹は頷く。

「いれるから、力ぬいていてね」

熱い京楽のものが宛がわれて、一気に貫かれた。

「ひあああああああ!にゃあああ!!!」

浮竹は、生理的な涙を零して、京楽の肩に伸びた爪を立てた。

「手、背中に回していいよ」

浮竹は、手を背中にまわして、京楽の背に引っかき傷をつくる。

でも、すぐに癒えてしまう。

「あああ、あああ」

前後に動く京楽のものに、浮竹の内部はねっとりと絡みついた。

「あ、あ、あ、にゃあああ」

猫の尻尾を同時に触られて、オーガズムでいっていた。

「にゃあああ!!」

「ほら、まだまだいけるでしょ?」

「やああああ」

浮竹は、自分の腹に精液を出していた。

それを、京楽が舐めとる。

「甘いね」

「ばかぁ」

ジュプジュプと、結合部が水音を立てる。

「はあっ!」

最奥をごりっと抉られて、浮竹はオーガズムでいっていた。

猫の尻尾をいじられていた。

「あああ、にゃあああ!!!」

ごりごりっと奥を削るように入って、京楽の熱を自然と締め付ける。

「ん、出すよ。全部、受け止めてね」

「にゃあああ!!!」

びゅるびゅると、濃い精子を浮竹の最奥に注ぎながら、京楽は浮竹の猫耳を噛んでいた。

「にゃあああん」

「ふふ、かわいい。十四郎、交わったら発情期なのは終わって、ただの猫耳と猫の尻尾が生えてる時間が3日あるから、その間に写真とろうね?」

「にゃああ」

浮竹は、最初はただ啼くことしかできなかった。

猫の尻尾を揺らして、京楽の腰を足で挟みこむ。

「ふふふ・・・・俺のものだ、春水。お前は、俺だけのものだ」

「十四郎・・・・・」

「にゃあああ」

京楽は、また熱を浮竹の胎の奥で出していた。

「もっと、もっと、俺が壊れるくらい愛してくれ」

「君が壊れるとだめだから、加減はするよ」

ぐちゅりと奥を突きあげられて、目がちかちかしら。

「にゃあああ!!」

びくんと浮竹の尻尾がぴんと伸びて、背が弓ななりになる。

オーガズムでいったことを確認してから、京楽は浮竹の肩に噛みつき、血を啜った。

「ああああ、あああ!!!」

オーガズムでいきながらの吸血の快楽は、頭を真っ白にする。

「にゃああん」

京楽は、結局5回も浮竹の中に出して、その頃には浮竹も発情期が収まり、元に戻っているのだった。

相変わらず、猫耳と猫の尻尾はあった。



「ねぇ、浮竹~」

「知らん」

「浮竹、写真とらせて」

「やだ」

「そう言わずに」

「知らない」

つーんとなる浮竹に、またたびをあげると、面白いほどに素直になった。

「写真、とろうね?」

「にゃあん」

京楽にごろごろとすりよりながらの浮竹の可愛さは、京楽もびっくりするくらいで、猫耳の薬にはまただび用意と、メモをするのであった。

そして、後日京楽は浮竹にしばかれるのであった。


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エンシェントエルフとダークエルフ41

ブルンが進化した。

ある日突然体が光り、オパール色の色彩を放つ、背中に6枚の翼をもつセラフィムスライムになっていた。

「ブルン、それは最終進化だな?」

「くるるるーー」

「ええ、プルンに会いたい?そうだな、魔族との戦争も一段落したことだし、師匠の家に行くか」

「くるる」

「おい、京楽、師匠の家まで送ってくれ」

「あ、待って!僕も行くから!」

京楽の空間転移魔法で、浮竹と京楽とブルンは、師匠の剣士の京楽の家にやってきた。

ジリリリリン。

ベルを鳴らすと、眠たそうな顔の京楽が出迎えてくれた。

「師匠、寝不足か?」

『んー。戦後の報告とか、まぁ雑務』

『俺が書こうとすると怒るんだ』

『浮竹は、ぱぱっとやってしゅっとしたって書くから、意味不明で却下』

剣士の京楽の言葉に、精霊の浮竹がしょぼんとなる。

「師匠、俺が手伝いましょうか?」

『ああ、うん。手伝ってくれる?』

「僕も手伝うよ」

「くくるーーー」

「ぷぷううう」

奥の部屋では、セラフィムスライムに進化したブルンと、それを見て嬉しがっているプルンの姿があった。

「藍染は、やっつけたの?」

『ああ。妖刀で魂を喰ってやった』

「藍染も、邪神のくせに神になりたいとか思って戦争を起こすから、師匠に葬られるんだ」

『ほんとにね。魔王ヴェルはちょっとかわいそうだったね』

魔王ヴェルのこと、生き残った四天王のことなどを教えてもらった。

今は、一時的ではあるが、魔族と人間は休戦協定を結んだ。

いずれ、本格的なものになるだろう。

「師匠に、見てもらいたものがあるんだ」

エルフの浮竹が取り出したものは、巨大なドラゴンの牙であった。

「ブラックドラゴンを、討伐したんだ」

『おお、やるじゃない』

「討伐報酬が白金貨500枚、ドラゴンの素材が白金貨200枚になたった。ドラゴンキラーの称号を得た」

冒険者カードに、Sランク、ドラゴンキラーの称号が書かれてあった。

「これで、俺と京楽の夢が叶った。これからも、ドラゴンを倒しまくって・・・まぁ、ほどほどに。Bランク以上の依頼を引き受けて、冒険者活動をしていこうと思っている」

『うん、いいね。君たちをSランク試験に合格させたボクの目に、狂いはなかったってことだよ』

「で、サーモアにある120階層に出るヒドラなんだが、80階層のエンシェントドラゴンはなんとか倒せたんだが、ヒドラが回復力が強すぎて倒せないんだ」

『ああ、ヒドラは回復魔法を反転するかんじでかけると、回復しなくなるよ』

「そうだったのか。京楽、師匠の家を出たら、すぐ120階層に向かうぞ。今までクリアした階層はスキップして」

ダンジョンでは、一度攻略したマップをスキップできる機能があった。

空間転移魔法で、今攻略中の階層までいける仕組みになっていた。

師匠である剣士の京楽の雑務を片付けて、浮竹と京楽は、離れたがらないブルンをプルンと引き離して、ヒドラ退治に行くことにした。

『じゃあ、健闘を祈ってる』

『怪我しないようにな』

最後に、精霊の浮竹がそう言ってくれた。

「じゃあ、いってきます」

「くくるるうう」

うるうると涙ぐむブルンを連れて、京楽は空間転移魔法を使う。

「テレポート!」

ざっと場面は120階層の、ボスの扉の前だった。

「いくぞ、京楽」

「分かってるよ、浮竹」

「ぶるん、神ヒールをかけるのを、反対の形でかけてくれ」

「くくうる?」

試しに、浮竹に魔法をかけてみる。

「あいたたた、そ、それでOKだ」

ダメージもろにくっらたので、ブルンに神ヒールをかけてもらった。

「行くぞ!」

「うん!」

「くくる!」

「GYAOOOOOOOOO!!」

ヒドラだった。

8つの首があり、それぞれ別属性のブレスを吐いてくる。

「エターナルアイシクルフィールド!」

まずは氷の禁忌で、ヒドラの足から体までを凍り付かせる。

「今だ、ブルン!」

「くくるーーー!!」

ぱぁぁぁぁ。

ブルンの神魔法の反対の魔法は、ヒドラに大ダメージを与えて、再生ができなくなっていた。

「ダークフレア×5、ブラックホール×5!」

「クリエイトアークエンジェル、クリエイトロードオブサタン、三重詠唱【ワールドエンド】」

「GYAOOOOOOOOOOO!!」

ヒドラの首が5つ消し飛んだ。

何とか再生を試みるが、ヒドラは再生できず、暴れまわった。

「ホーリーエンチャント」

浮竹がミスリル銀の魔剣に、聖属性をエンチャントする。

「エアウィング!」

京楽が、浮竹の体に風の魔法で加速をかけた。

「グラビティ・ゼロ×5!」

「GUGYAAAA!!!」

重量の嵐でぺちゃんこになっているヒドラの中央にある、心臓に値する核を、浮竹は剣で粉々にした。

「GUAAAAAAAAAAA!」

ずどおおおおん。

巨大な音を立てて、ヒドラは倒れた。

「グッジョブ、浮竹」

「グッジョブ、京楽」

「くくるー」

「ブルンもお疲れさま」

ヒドラの魔石は、今までのどの魔石よりも巨大で、魔力密度が高かった。

ヒドラはドラゴンの素材になるようなものを含んでいるので、死体はアイテムポケットにいれる。ちなみに、80階層に出るエンシェントドラゴンもまだアイテムポケットの中だ。

財宝の間にいくと、金銀財宝、魔力付与されたミスリル銀、ミスリル製の武器防具、ドラゴン素材の武器防具、古代の遺物、魔道具、魔導書などがあった。

浮竹が一番に気になったのは、記載されている魔法が全て禁忌という魔本だった。

とりあえず、全部アイテムポケットに収納した。

冒険者ギルドの解体工房にヒドラの体を出すと、公式記録ではここ20年出回っていないそうだった。

損傷が激しかったため、白金貨50枚の買取額だった。

ちなみに、魔石は白金貨10枚で売れた。

討伐報酬はないが、サーモアSランクダンジョンの踏破者として、名前がギルドで刻まれることとなった。

「あはん、うっきーちゃん、春ちゃん、あたしはいずれあなたたちがこうなることを予想していたのよん。ああん、体のあそこが熱いわ!熱くて仕方ないの!」

「エターナルアイシクルワールド」

浮竹は、オカマのギルドマスターを氷像にした。

「ぐふふふふ。あたしがこの程度で」

「エターナルフェニックス」

「ぐふ、あたしがこの」

「エターナルフェンリル」

「ぐふ、あたし」

「ゴッドブレスサンダー」

「もぎゃあああああああ!!!」

「やったぞ。あいつ、ついにやった。あのオカマのギルドマスターを倒しやがった!」

冒険者たちには、サーモアのSランクダンジョン踏破よりも、キャサリンというセクハラを同性にしてくるオカマのマスターを倒したことのほうが意味が大きいようであった。

「今日は僕と浮竹のおごりだよ!好きなだけ飲んで食べてって!」

「そうこなくちゃ!よっ、Sランク冒険者の鏡!」

はじめは、12歳に外見年齢が届いた80歳の頃、冒険者登録をした。

Fランクから始まった。

幽閉されている京楽を誘い、一緒にエルフの森を飛び出して、冒険者ギルドで依頼を受けて、すごいスローペースだったが、月に2回ほどしかできなかったが、依頼を引き受けて、成人してエルフの森を本当に飛び出した時は、Bランク冒険者になっていた。

ブルンを拾い、他にも使い魔やらもできて、楽しかった。

ドラゴン討伐を夢見て、ファイアドラゴンに挑戦して破れた。

全ての始まりは、エンシェントエルフの族長である、浮竹の父親がダークエルフの京楽を拾ったことから始まった。

京楽は、殺されさえしなかったが、牢屋に入れられた。

その牢屋から抜け出す道を、浮竹は知っており、よく二人で抜け出した。

そのことを、牢屋の見張り番は内緒にしてくれていた。

世界はこんなにも美しく、こんなにも広く、そしてとても強いモンスターで満ち溢れていた。

BランクからAランクへ昇格し、2年後に迎えていたSランク昇格試験では、師匠である剣士の京楽との闘いもあった。

なんとかSランクに昇格はしたが、まだまだ力不足で、災害ドラゴンと言われる、ファイアドラゴンの討伐はできなかった。

だが、今ではドラゴンスレイヤーとなり、ドラゴンキラーの称号を手に入れて、ファイアドラゴンでも倒せそうだった。

長い長い旅は、これからも続いていく。

Sランクになり、ドラゴンを退治できたからといって、それで終わりではないのだ。世界はまだ広い。

見知らぬ世界を見て、ダンジョンを踏破していくためにも、浮竹と京楽とブルンの旅は続くのであった。



                  fin

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堕天使と天使

「にゃあ」

ある日浮竹は、道端で黒い猫を見つけた。

その黒猫は、浮竹の足元にすりついて、離れない。

「こら、早く行け」

「にゃあああん」

右足を怪我しているようで、獣医に連れて行こうと思ったのだが、あいにく日曜でどこの獣医も休診だった。

深い傷ではなかったので、とりあえず家に連れて帰り、前の飼っていた猫用のケージいれて、ペットショップへいって、猫缶詰とカリカリとチュール、ペットシーツ、砂などを購入して帰宅した。

「にゃあにゃあああ」

ケージに閉じ込めっぱなしだったので、黒猫は外に出してくれと訴える。

前の愛猫が死んで、まだ3カ月だ。

ペットロスにも悩んでいたことだし、浮竹はその黒猫を飼うことにした。

猫缶詰をあげると、ぺろりと平らげてしまった。カリカリもあげたが、興味はチュールのほうにむいていて、仕方なくチュールをあげると、黒猫はにゃあにゃあと喜んで食べた。

「お前の名前は黒いからクロだ」

「にゃああああ」

その日から一人と一匹の生活がはじまるはずであった。

浮竹は独身で、現在一人暮らしをしている。

職業は翻訳家で、ドイツ語を翻訳していた。出版社から仕事内容がパソコンで入ってくるので、出社するというサラリーマン人生とは無縁だった。

愛猫を15年間飼っていたのだが、老衰で死んでしまい、ペットショップに寄っては、次の子を迎えるか悩み、保護猫も見てみたが、いまいちぴんとくる子がいなかった。

前に飼っていた猫も、黒猫だった。

まとわりついてきた時、前の猫を思い出して、怪我もしているしついつい連れ帰ってしまった。

「とりあえず、明日獣医に連れて行こう」

浮竹は、その日の夜普通に寝た。クロがにゃあにゃあいうものだから、自分のべッドの隣を譲ると、そこでクロは眠ってしまった。

朝起きると、ベッドが狭かった。

「んー、なんだ?」

クロのせいかとも思ったが、何やらもっとでっかい物体に抱きしめられているらしい。

「ぎゃああああああああああああ」

浮竹は悲鳴をあげていた。

べッドの隣では、布団をかぶっているとはいえ、明らかに裸の男性が、眠っていて、自分を抱きしめていたのだ。

「ふあー。もう朝?おはよう」

「ぎゃあああああ、お前は誰だああああああああ!!警察、警察を!!」

「ちょっとよしてよ。僕を拾ったのは君でしょ?」

男性の言葉に、浮竹はとりあず距離をとる。

「そんなに威嚇しないでよ。僕だよ。君が名付けたクロさ。本名は別にあるけどね」

ちょうど、右足の怪我をしているところに、昨日浮竹はハンカチを巻いて応急手当をした。

ちょうと右手首に、そのハンカチがあった。

「はぁ!?クロが人間!?そんな馬鹿な・・・変な夢だ。寝直そう」

現実逃避する浮竹に、クロはクスりと笑って、背中の翼を広げた。

「僕の名前は京楽春水。黒猫は一時的な姿で、本当は天使だよ。おっと、元天使というべきか」

「はぁ!?」

浮竹は、壁でゴンゴン頭を殴っていた。

「僕は堕天使さ。人間と悪魔と天使の女性や男性と遊びまくっていたら、神様に怒られて天界から追放されちゃったんだ」

「よくできてる翼だな」

浮竹は、京楽の翼を触ってみた。

暖かく、ばさりと動いた。

「本物・・・・・」

「ということで、今日から君が僕のご主人様だから、よろしくね」

「よろしくね・・・・・じゃない!警察、警察!!」

京楽は、その辺にあった浮竹の服を着て、とりあえず裸でいることを止めて、浮竹を背後から翼で抱きしめた。

「ああ。俺の人生、これからどうなるんだろう。とりあえず、自己紹介だけはしとく。浮竹十四郎だ」

こうして、二人の生活が始まった。

京楽は気ままにふらりといなくなる。とりあえず、浮竹は仕方なく京楽の服を下着から靴下、靴に至るまで、買いそろえてやった。

そうでもないと、勝手に浮竹の服や靴で消えてしまうのだ。

黒猫でいる時間も長く、基本は猫なのだが、食事の時間になると、家事がへたくそな浮竹の代わり、京楽が家事をしてくれた。

たまっていた洗濯物とか洗い物をしてくれて、何故か一緒に買い物に出かけて、その日の食べるものを購入する。

京楽は人間の食事をした。

料理の腕は、お前そこらへんのレストランのコックかよってくらい、おいしい物を作ってくれた。

シャワーも浴びるし、服も着替えるし、寝る時はベッドが狭いので、猫になってもらった。

浮竹は収入はいい方なので、京楽一人くらいを養える収入はある。

でも、京楽は無職のまま、だらだらと過ごして1カ月が経った。

「なぁ、京楽」

「なんだい、浮竹」

もう見慣れてしまったので、浮竹は京楽が堕天使であることを受け止めていた。

「お前、昼の時間とかいないのに、何をしてるんだ?」

「やだ、僕に興味もちゃった?」

「違う、ただ純粋に」

「人間の女の子と遊んでる」

そう聞いて、浮竹はむっとなった。

「・・・・家賃を払え」

「ええっ、急にどうして」

「昼間からぶらついてナンパしているなんて・・・・」

浮竹は、心の何処かで寂しいと感じた。

「ごめん、余計な心配をかけたね?これからは、ちゃんと昼もいるから、泣き止んで」

その時、初めて自分が涙を流しているのだと分かった。

「これは、目にゴミが!」

「うん、そうだね」

京楽はどこまで優しかった。

浮竹は孤児であった。高校まで施設で過ごし、大学生になると同時にドイツ語の語学を習得して、ドイツに留学もした。

大学を卒業する頃には、英語もドイツ語もペラペラになっていた。

奨学金で学校に通っていたので、生活費だけをなんとかバイトで賄って、無事ドイツ語翻訳家として、小さいながらも立派な出版業界に入った。

仕事は自宅でOKだったので、浮竹は愛猫と一緒に、気が向いた問に締め切りまでに翻訳して、猫みたいな気ままな人生を送っていた。

「泣かないで」

抱きしめられて、浮竹の中で何かが弾けた。

「ああ、やっぱり、君はそうだったの。匂いで分かったんだよね。君は、天使だ。しかも上位の」

「はぁ!?俺が天使!?冗談も休み休み言え」

「じゃあ、その背中の翼は何?」

気づくと、背中には6枚の翼があった。

「それは最上位天使、セラフの証。君には、セラフと人間の匂いが混じっている。片親のどちからがセラフで、どちらかが人間だったんだろうね。人間とのハーフの天使は、幼少期まで育てられると、天界から追放されるから」

「俺が、セラフ・・・・・・」

京楽と接触したことで、これまで封印されていた浮竹の記憶が蘇る。

母であった大天使ガブリエルの元で、育った。たくさんの人間と天使のハーフたちと共に。

年齢が8歳になると、大天使ガブリエルは上からの命令で、子供たちを人間界に置き去りにした。

記憶の全てを奪って。

そうして、保護されて人間の施設で育ち、人間と天使のハーフは人間として生きていく。

ただ、天使と接触すると、記憶が戻る。

その時は天使として生きるのも自由とされた。

「ガブリエル母さん・・・・・・」

「おや、君の母役はあのガブリエルかい。あの乙女は優しいからね。それにすごくうまそうだった。あの子に育てられた君も、僕好みですごくおいしそうだ」

「俺を、食べるのか?」

「食べたいね。でも、別の意味で」

浮竹は顔を赤くして、京楽をクッションで殴った。

「俺はセラフと人間とのハーフだが、人間として生きる」

「ええ!セラフになれば、永遠を約束されるよ。平和な魂の番人として」

「俺は、今の生活が気に入っているんだ。今更、天使に戻る気なんてない」

浮竹は、そう言って翼をしまうと、寝てしまった。

「僕が君を食べたい言った意味、本当に分かってるの?」

眠っている浮竹の唇に唇を重ねた。

京楽は、今まで何十人の女性や男性と、種族を問わず交じりあった。

京楽の今のお気に入りは、浮竹だった。

だが、無理やり手に入れはしない。

こちらへゆっくり落ちてくるように仕向けるのだ。

京楽と浮竹の二人暮らしが始まって、3カ月が経とうとしていた。

京楽は昼にナンパにいくのをやめた。

昼は黒猫姿でひなたぼっこをしていた。

「にゃああ」

「なんだ。言いたい事あるなら、人型になれ」

「一度僕と交わってみない?きっと、天国にいけるから」

浮竹は、顔を真っ赤にして、京楽の鳩尾に拳を入れる。

「そういう会話は、女性にしろ」

「僕は男の子でもいけるんだよ?ただし、攻めだけど。浮竹が受けかな」

浮竹は更に真っ赤になって、京楽の顎に右ストレートを決めた。

「俺は、初めてだから、その」

「僕が優しく教えてあげるよ」

「お前は、今まで爛れた生活を送ってきたんだろう。その時だけの関係になるなんて、嫌だ」

「僕は、今君に恋をしているよ?君しか、今は欲しくない」

「俺は・・・・・・」

浮竹は、とさりと京楽の横に座った。

「どうすればいいのか、分からない」

「ただ、僕に身を委ねていればいいよ」

その日、浮竹は京楽に抱かれた。

「あ・・・・」

反応を示す浮竹のものをすりあげて、京楽は浮竹に吐精させる。

「ああああ!!」

何処で買ってきたのか、京楽はローションを用意していた。

とろとろになるまで解されて、前立腺ばかりをいじられて、浮竹はまた精液を放っていた。

「んあああ!!」

「君の中に入っていい?」

「バカ、聞くな」

ズッと、京楽のものが入ってくる。

痛かったが、浮竹は我慢した。

「ごめん、初めてだもんね?でも、これからメロメロにしてあげる」

「ああああ!!」

後は、もう快楽しかなかった。

何度も奥をこすりあげられて、抉られて、人生ではじめて女のようないきかたを知った。

「ひあああ!!」

「君の中に放つよ?」

「やああ、やあ!」

「ちゃんと後始末はしてあげるから。僕、基本ナマじゃないとだめなんだよね。でも、子種はないから、女性と関係をもっても、子ができる可能性もないし」

「んあああああ」

ぐちゅぐちゅと京楽の硬いものが出入りしていく。

京楽は、浮竹の胎の奥で精を放っていた。

「やああああ」

京楽のものは、まだ硬さを失っていなかった。

最後までつき合わされて、浮竹はぐったりとなった。

「ごめんね?久しぶりだし、君が恋しいから激しくなっちゃた」

「そういうことは、言うな、バカ!」

真っ赤になりながら、浮竹はクッションを京楽の顔面に投げつけた。

すでに後処理は終えてあり、二人は狭いベッドでお互いを抱きしめ合うように寝た。

次の日、起きると朝食の用意がしてあった。

「んー。今何時だ」

「9時だけど?」

「うわ、やばい!今日は出版社に行く予定だったんだ」

「時間ないの?」

「そんなことはないが」

出社するのは10時半だ。車で迎えば30分でつく。

「じゃあ、朝食食べていって。自信作なんだ」

朝食から、どこぞのコックの料理かというものを食べて、浮竹は車に乗り込む。

「じゃあ、すまないが留守を頼む」

「腰、平気?」

「殴るぞ。平気だ!」

「じゃあ、いってらっしゃ」

「ああ、いってきます・・・・」

こんな会話をしたのは、久方ぶりだと思いつき、浮竹は昨日のことを思い出して、真っ赤になりながら安全運転で車で出版社に向かうのだった。

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エンシェントエルフとダークエルフ40

人間社会と、魔王率いる魔族との戦争がいよいよ始まった。

だが、こんな日でもあくまで冒険者は冒険者で、傭兵ではないので戦争には出兵しない。

するのは王国や帝国の騎士や、兵士たちだ。

そんなこんなで、壊滅的ダメージを受けつつ、回復しつつあったイアラ帝国の騎士団も、またきな臭いことに巻き込まれようとしていた。

今回は、出兵する騎士たちに変わって、ダンジョンでスタンピード、いわゆる異常繁殖によるダンジョン外へのモンスターが溢れるを駆除する、定期的なモンスター駆除の仕事が回ってきた。

本来なら騎士団の仕事なのだが、魔族との戦争のせいでそれどころではないのだ。

浮竹と京楽は、Aランクダンジョンの異常繁殖したモンスターの群れを一掃していた。

「エターナルフェニックス!」

「カラミティファイア」

主に火属性の魔法で、出てくるモンスターを駆除していく。

魔石は念のため回収しておいた。

そのダンジョンは氷属性のモンスターが中心に出没するダンジョンで、氷女、アイスタイタン、アイスウルフなどが過剰繁殖していた。

倒しても倒しても、後から湧いてくる。

「寒いね」

「炎の魔法を出しているのに、敵が突っ込んでくる。こりゃ、今回駆除しておかなきゃ絶対スタンピード起こしてたな」

「そうだね。おっと、ダークフレア」

京楽は闇魔法の禁忌を放つ。

アイスウルフの群れに、闇の炎を投げると、それは巨大な炎となってアイスウルフの群れを消滅させた。

「京楽、魔石はちゃんと回収しておけ」

「ええ、こんな大量にいるんだし、めんどくさいよ。ダークフレア」

今度は氷女の群れを消滅させた。

「エターナルフェニックス!」

浮竹は、かろうじで魔石を回収できる程度の威力で殺していく。

普通のエターナルフェニックスでは、魔石ごと消滅しているが、大分威力を加減していた。

「ああ、もうめんどうだ。ダークフレア、ダークフレア、ダークフレア」

結局、京楽の魔法のせいで異常繁殖していたモンスターだけでなく、通常のモンスターも消し炭に変えられて、そのAランクダンジョンはしばらく深層までモンスターが沸かなくなるのであった。

浮竹が回収した魔石は、倒したモンスターの4割といったところだろうか。

それでも、冒険者ギルドで買いとってもらうと、大金貨400枚にはなった。

かなりの数を倒したので、しばらくの間あのAランクダンジョンではモンスターの沸きが甘く、深層まで行ってしまい、ラスボスにやられる冒険者がでてくるのだが、それはまぁ冒険者自身の責任となった。

「ええと・・・次はSランクダンジョンのモンスター駆除か。これは本腰を入れないとね」

「そうだな。行くぞ」

すでに何度かチャレンジしたことのあるダンジョンなので、空間転移でいけた。

キマイラ、コカトリス、バジリスクといった強力なモンスターが異常繁殖していた。

「ワールドエンド!」

京楽は魔法を放つ。

「クリエイトアークエンジェル、クリエイトロードオブサタン、3重詠唱【グラビティ・ゼロ】

ワールドエンドの禁忌でほとんどのモンスターの魔力を吸い込んで、3重詠唱の呪力魔法で異常繁殖したモンスターたちが、中身を大破させてひしゃげていく。

モンスターは、死ねば放置しておけばダンジョンが吸収してくれる。

冒険者の死体もまた然りであった。

「グラビティ・ゼロ」

また、3重詠唱の重力の魔法で、異常繁殖したモンスターたちを駆除して、ついでに魔石を抜き取った。

これといって素材になるモンスターではないので、死体は放置だ。

まだ、このダンジョンの深層には入っていない。

120階層まであるだが、80階層までしか到達していなかった。

80階層のボスが倒せずにいた。

80階層のボスは、エンシェントドラゴンであった。

いつか、ドラゴンを倒す、ドラゴンキラーを夢見て、二人は冒険を続けている。

「今度、エンシェントドラゴンに、挑むか」

「そうだね。80階層まではこれるけど、80階層を突破できずにいるからね」

ちなみに、最深部のボスはヒドラだった。

今はスタンピード対策で、ブルンを連れてきてはいない。

ちゃんと勝負を挑むなら、ブルンの神ヒールはどうしてもいる。

「なぁ、魔族と人間の戦争・・・お前の母親は、どうなるんだろうな?」

「さぁ?人間種族は弱いから、きっと大丈夫なんじゃないの」

「でも、師匠がいるだろう」

「そうだね。剣士の僕が、きっとなんとかしてくれるさ」

頼られないのは哀しいが、Sランク冒険者程度が首を突っ込んでいい戦争ではないのだ、今回は。

小さな小競り合いなら、依頼が回ってくることがあるが、全面戦争だ。

人間社会も魔族側も、どちらも大きな犠牲を払うだろう。

「とりあえず、Sランクダンジョンのモンスタ―駆除もおわった。一度、戻ろうか」

「うん。転移魔法かけるよ」

浮竹と京楽は、転移魔法でイアラ帝国の帝都アスランの冒険者前まできていた。

61~79階層ででた、ブラックサーペントやレッドサーペントを、大量にアイテムボックスに収納していた。

サーペント種族は肉が美味しい上に、皮は高級材料だ。

解体工房で100匹ほどのサーペントを出すと、解体工房の長が泣いていた。

「多すぎる・・・・解体には、2日ほど時間をくれ」

「うん、急いでないから」

「肉は少しだけ残しておいてくれ。料理に使いたい」

「あいよ。何人分を何食分だ?」

「2人分を3食分でいい」

魔石の買取り額は、大金貨1700枚だった。

2日後、ギルドの解体工房を訪れると、100匹分のサーペントの皮と肉を買い取ってもらい、2人分を3食分だけ残してもらった。

「100匹で、ちょうど大金貨1万枚だ」

「うわお、金になるねぇ」

「サーペントを定期的に狩る冒険者はいないからな。それができる奴は、ドラゴンを定期的に狙う。お前さんら、ドラゴンは倒せるんだろう?」

「さぁ?まだ、本気で挑んだことは2回くらいしかないから」

それには、災害ドラゴンのファイアドラゴンも含まれていた。

「いつか、ファイアドラゴンを退治してみたい」

「おお、叶うといいな。あれの討伐報酬金は白金貨2000枚だ。千年生きるエルフでも、3回以上は人生遊んで暮らせる」

「まぁ、今はこつこつ依頼をこなして実力をつけつつ、まずは普通のドラゴン退治だな」

「お前さんらなら、きっと近いうちにドラゴンも倒せるさ」

「そう言ってくれると嬉しいね」

こうしてスタンピード対策は終わり、騎士団の仕事は終わるのであった。

師匠である京楽の家には、魔族との戦争が起こってから、行っていない。行ってはいけないのだと、おぼろげながらに分かった。

藍染との決着をつけるのが、待っている。

師匠である剣士の京楽とその妖刀の精霊である浮竹と最後に会ったのは、半月前だ。

魔族関係で忙しくなると言っていた。

きっと、この戦争でもどこかで活躍しているのだろう。

「全てが終わったら、ぱーっと騒ぎたいな」

「あ、僕もそれに賛成」

「とりあえず、ブラックサーペントの肉で料理でも作るか」

「そうだね。高級肉だから、おしいくなるよ」

二人はマイホームに帰り、ブラックサーペントの肉でから揚げを作ったりするのだった。

本当なら、師匠のところに差し入れしたいのだが、今は叶わない。

早く、平和な時代がくればいいのにと、二人は思うのだった。

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エンシェントエルフとダークエルフ39

依頼はSランクだった。

帝都アスランで夜な夜な出没するヴァンパイアロードを退治せよ。

最近、ヴァンパイアロードに血を吸われて死ぬ人間や亜人が後を絶たないのだという。

緊急クエストだった。

浮竹と京楽は、早速調査に乗り出した。

帝都アスランは、主要都市であるのでかなり広い。

が、被害者は南の位置に固まっていて、浮竹と京楽は、夜になるとヴァンパイアロードが現れるという地域を巡回した。

「ほお、エンシェントエルフか。珍しい。見た目も悪くない」

浮竹と京楽は、お互いソロで警戒に当たっていた。

そのヴァンパイアロードは魅了(チャーム)の力をもっており、それに浮竹が罠にはまってしまい、ヴァンパイアロードに血を吸われてしまった。

血を吸われた者は、死ぬかヴァンパイアロードのものになるかの2択だ。

浮竹は、後者だった。

「あ・・・マスター」

京楽の目の前に、ヴァンパイアロードに抱かれる浮竹の姿があった。

「浮竹を離せ!」

「この子は私のものだ。私の血族になってもらう」

「そんなの、許さない!」

京楽は、ワールドエンドの魔法を放った。

すると、浮竹がヴァンパイアロードを庇い、自らもワールドエンドの魔法を使う。

「ごめんね、浮竹」

京楽は、まず手刀で浮竹を気絶させると、ヴァンパイアロードから奪い取り、距離をとった。

「私のものを奪うというのか」

「この子は、僕のものだよ」

「貴様、ダークエルフであろう。闇の眷属同士、仲良くしようではないか」

「まっぴらごめんだね」

京楽は、手加減なしの闇の火を放つ。

「ダークフレア!」

「この程度・・・・」

ヴァンパイアロードは、結界を張った。

しかし、京楽のダークフレアの魔法の方が強くて、ヴァンパイアロードの結界の中に闇の炎が侵入してくる。

「ばかな、私の結界が破れるだと!?」

「目覚めろ、エンシェントエルフ!そのダークエルフを殺してしまえ」

意識を失っていた浮竹は、ふらりと立ちあがった。

操られているのは、見てすぐに分かった。

「マスターを傷つける者は、許さない・・・・」

「浮竹、しっかりして!僕だよ、京楽だよ」

「マスターを・・・マスター?」

「マスターは私だ。さぁ、そのダークエルフを殺してしまえ」

「ダークエルフ・・・」

浮竹は、ふらふらと京楽の元に向かって歩き出す。

「・・・・京楽?」

「そうだよ。よく、ヴァンパイアロードの支配下から脱出できたね」

京楽は、浮竹の頭を撫でて、セイントヒールで浮竹の傷を癒し、ヴァンパイアの出す絶対命令に背く浮竹の精神力に感嘆した。

「何故だ!何故、私が支配できない!私はヴァンパイアロードだぞ!?」

「浮竹のほうが力が強かった証だね。上位のものを支配下にはできない」

「くそ、こうなれば二人とも殺してくれる。出でよ蝙蝠ども!こいつらの血を一滴残さず吸い取るのだ!」

吸血蝙蝠が、湧き出してきた。

「クリエイトアークエンジェル、クリエイトロードオブサタン、3重詠唱【テトラボックス】」

「ぎゃあああああああ!!」

浮竹の放った魔法で、吸血蝙蝠たちは全て屠られて、ヴァンパイアロードの右手も吹き飛んでいた。

「浮竹、とどめは僕にさせて。一時でも、君を自分のものにしたあのヴァンパイアロードガ憎い」

「京楽・・・・・」

「ブラックホール!」

「私はヴァンパイアロードだぞ!たかが冒険者如きにやられるはずが・・・・・」

「残念。僕ら、Sランク冒険者なんだ」

「Sランク・・・・・くそおお」

断末魔の悲鳴を残して、ヴァンパイアロードはブラックホールの中に吸収されてしまった。

器用に魔石だけを取り出す。

「浮竹、念のために一度家に戻ろう。ブルンに、神ヒールかけてもらわなくちゃ」

「ああ・・・まだ、洗脳が解け切っていないようだ。お前を殺したいという欲求がある」

「君になら喜んで殺されるけど、君の意思じゃないなら嫌だね」

帝都アスランの中央に近い家に、空間転移魔法で戻ると、置いてきたいたブルンに頼みこんで、浮竹に神ヒールをかけてもらった。

「ああ、もう大丈夫だ。すまん、京楽。お前に刃を向けてしまった」

「操られていたんだから、仕方ないよ」

「それでも、自分が許せない」

「僕が許すから。だから、この件はもうおしまい」

「分かった」

冒険者ギルドに魔石を提出して、魔石だけで金貨200枚になった。

緊急クエストだったため、報酬金は大金貨千枚であった。

「うっきーちゃん、ヴァンパイアロードに噛まれたって本当?」

「ああ。魅了の罠にはまってしまってな」

「あたしが、メロメロにしてあげるわ~~」

「くるな、このドブス!」

「ああん?」

「青髭けつ顎オカマ!どブサイク!」

「うっきーちゃん、いい根性してるわね」

「師匠の剣士の京楽が、黙っていないぞ」

「ぐ・・・・・・」

剣士の京楽の名を出されて、キャサリンはそれ以上何もできなかった。

「うっは、浮竹すごい毒舌だね。よくもあのオカマにケンカを売れるね」

「あいつの弱点は師匠だ!」

かつて、キャサリンがSランク冒険者昇格試験で、剣士の京楽にボコボコにされながらも、かろうじて一本とってSランクになれたのだが、キャサリンにとって剣士の京楽は恐怖の象徴であった。

「報酬金ももらったし、帰るか」

「そうだね。最近の魔王の存在も気にかかるけど、僕らの出番はないしね」

Sランク冒険者の中で、魔王に勝てるものは多分いない。

「師匠、大丈夫だろうか」

「浮竹、僕らの師匠だろう。大丈夫さ」

「そうだな」

自宅に戻り、ブルンに大量のゴミをお礼に食べさせて、しかし京楽は行方不明と言われている母親である灼熱のシャイターンのことを思うのだった。

実際は生きて無事だったのだが、それを京楽が知るにはまた後にことである。


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勇者と魔王

新勇者はイメチェンした。

鼻毛を伸ばして、三つ編みにしていた。

どこをどうすれば、鼻毛が三つ編みになるほど伸びるのかというと、最近贔屓にしている魔女の作った毛生え薬を頭に塗ったのだが、なぜか鼻毛がもさもさ生えてきたのだ。

苦情をいうと、「あなたの毛根は死滅しているから、代わりに鼻毛が伸びた」と言われて、鼻毛がなぜか愛おしくかんじて、伸ばしていた。

三つ編みにできるくらい伸びたので、毎日ケアを欠かさず、風呂に入る時はトリートメントまでした。

ちなみに、一部の鼻毛がちぢれてアフロになっていた。

そんな恰好で、魔王浮竹のと勇者京楽の元を、新勇者はパーティーで訪れた。

「ふ、このふさふさした鼻毛のように、大物になった俺を見ろ!」

頭は、はげていた。

かつらを被ることを止めた新勇者は、ありのままの姿だった。

パンツを頭にかぶり、女物のブラジャーとパンツをはいていた。

「なぜこんな変態な恰好をしているかだと!?それは、驚く相手の顔が面白いからだ!」

「ちょっと、魔王さん、こいつどうにかしてくれよ」

「そうよ、魔王さん、こいつのおつむを元に戻す魔法はないの?」

新勇者のパーティーは、魔王魔王と浮竹を頼ってきた。

4月に花見パーティーをして以来、浮竹は新勇者のパーティーメンバーと少しだけ仲が良くなったのだ。

「そうは言われてもなぁ。ここまで変態が重症だとなぁ」

「いっそ、全部燃やしちゃえば?」

「そうだな。バーストロンド!」

「ふっ、甘いな!」

「何!?」

新勇者は、魔法のバリアを作って、浮竹の魔法を防いでしまった。

「この俺が・・・・・新勇者に魔法を防がれた?」

レベル500に近い浮竹は、特別魔法を弱くしたつもりはなかった。

普通なら、一発で全身が焦げて、着ているものは燃えていただろうに。

「ほれほれほれほれ」

なぜか長い乳毛を見せてくる勇者に、浮竹は悪寒を感じて、京楽の後ろに隠れた。

「ちょっと、新勇者くん。君が変態すぎて、うちの浮竹が怖がってるじゃない」

「ふはははは!俺のこのいかした姿に、全世界が感動した!」

「勘当の間違いじゃないの?バーストロンド!」

ぼっ。

今度こそ、新勇者のかぶっていたパンツに火がついた。

「あちゃーーー!!」

新勇者は、パンツを投げ捨てて、股間に吐いていたパンツを頭に被った。

「頭は防御しなければいけない」

あまりの変態な姿に、新勇者のパーティーはかける言葉もない。

「ふっ。この俺がそんなにセクシーだなんて、今更だろう?」

「きもいんだよ、この新勇者!」

「乳毛ひっこぬいてやる!!」

「あああん、やめてええ!乳毛はだめえええ」

くねくねする新勇者に、みんな悪寒を感じて、一斉に攻撃を始める。

「フレアウィンド!」

「エアリアルエッジ!」

浮竹と京楽が魔法を使うと、女僧侶は祈りをこめた。

「ホーリーブレス!」

祈りは天に届き、罰を新勇者に与える。

「ああん、股間がふるおっきするううう」

おっきした股間めがけて、天の雷がくだる。

「ぐぎゃああああああ!!」

少年魔法使いが、最後の一枚であったブラジャーを、魔法で焼いた。

「ファイアブレス!」

新勇者は、素っ裸になった。

「ああ、この開放感、これぞまさに勇者!」

「どう思う、京楽」

「いや、どう思うって聞かれても」

「お前があんな勇者になったら、俺はお前と別れるからな」

「いや、まずあんな風にはならないよ」

京楽は、フルチンでくねくねしている新勇者を指さす。

「このかんじ・・・・呪いか」

浮竹の魔力探知に、新勇者の魔力が少し歪であるのが分かった。

「全く、面倒くさい・・・キュアカース!」

浮竹は、フルチンの新勇者のために、呪いを解除する魔法を使ってやった。

「いやあああああ!!裸だああああああ!俺の服はどこだあああ!!」

正気に戻り、裸であることに恥を感じる、元の新勇者がいた。

「ああ、元にもどった」

「戻りやがった」

青年戦士と獣人盗賊は、ポテチをポリポリと食べながら、二人で新勇者の変態ぶりに呆れて、会話にも参加しないでいた。

「あの魔女か。おい新勇者、お前あの魔女の作った薬を使ったな?あの魔女は露出度高いしぼんきゅっぼんで、ここにいる女僧侶のような寸胴な体ではなく、魅惑的だが、あの魔女は魅了(チャーム)の魔法をかけて、変な薬を服用させて、その様を水鏡で見ながら笑っているぞ」

少年魔法使いの言葉に、寸胴呼ばわりされた女僧侶が怒る。

「ちょっと、あたしはそんなに寸胴じゃないわよ!」

「そんなこと、どうでもいい」

「どうでもよくないわ!」

「黙ってろ。新勇者、鼻毛を三つ編みにしだしたのも、あの魔女のせいだろう。いい加減、目を覚ませ」

少年魔法使いにビンタされて、新勇者は。

「ぶった!親父にもぶたれたことないのに!」

とかほざいていた。

とりあえず、まだおっきしたままの股間を隠すために、少年魔法使いはマントを貸してやった。

「あの魔女のせいなのか。あの魔女、俺に気があるそぶりしてたのに」

「お前みたいな変態に気がある女なんていない」

「酷い!」

「本当のことだ」

浮竹と京楽は、新勇者も、新勇者のパーティーも無視して、午後のティータイムを過ごしていた。

「どうでもいいから、帰れ」

「そうそう、帰って」

「魔王、お前が俺の呪いを解除してくれたんだろう!俺の面倒を見る義務がある!金貨10枚くれ!!」

「バーストロンド!!!」

新勇者は、浮竹の魔法吹き飛ばされて、窓の外からはるかお星さまになるのであった。

新勇者のパーティーは、そしてまた何の収穫もないまま帰るのであった。

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