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エンシェントエルフとダークエルフ38

ドラゴンは、大ざっぱに分けて2種類いる。

人語を解し、人型をとる真竜の竜族と、普通のドラゴンだ。

依頼は、そんな竜族からの依頼であった。

冒険者の中にも獣人やエルフ、ドワーフなどの亜人種もいるが、竜族は人とあまり関わりをもたないので、竜族が依頼を出すなど、とても珍しいことであった。

依頼内容は、死に至る毒の治癒であった。

その竜族は、まだ子供だった。

その母親のドラゴンが、魔族から毒を受けて魔大陸から戻ってきたのだという。しかも厄介なことに、どんな治癒術士でも治せない毒であった。

「俺たちが引き受けるしかないな」

「うん、ブルンがいるからね」

「あななたちが、引き受けてくださるのですか」

依頼を受注したと聞いて、真っ赤に泣きはらした目をした竜族の子供が、宿屋から冒険者ギルドにきていた。

「僕の名前はアレク。アレク・サンダーゾン。どうか、母のエルミナ・サンダーソンを助けてください!報酬は、僕の体の一部を売ってお支払います。だからどうか、どうか母を」

「顔をあげて。ちゃんと依頼は引き受ける限り、必ず治癒するから」

アレクは、ぱぁぁと顔を輝かせた。

「早速、母のところまで案内します」

「ん、馬車か?それともワイバーン?」

浮竹の疑問に、アレクを首を横に振る。

「僕の上に乗って下さい」

アレクは、町の広場に出ると、竜化した。

子供といっても、6メートルはあるだろうブラックドラゴンだった。

「きゃあああ、ドラゴンよおおお!!」

「うわああ、殺されるううう」

人々は逃げていく。

「さぁ、今のうちに背中に乗ってください」

「竜化するなら、帝都を出たほうがよかったね」

「すみません。でも、早く母を楽にしてあげたくて」

アレクのブラックドラゴンの背中に乗って、二人と1匹は、空を飛んだ。

「世界広しといえど、ドラゴンの背に乗って飛んだ冒険者なんて、いないだろうな」

「あ、それ僕も思った」

アレクは、休憩することなく10時間飛び続けた。

浮竹と京楽は、ドラゴンの背中で眠ってしまっていた。

ブルンだけが、ドラゴンと会話をしていた。

「そうですか。あなたが、毒の治癒を」

「くくるー」

任せろ、どんな毒でも治してみせるよ。

そうアークエンジェリングスライムから言葉をもらい、アレクは険しい崖が続く山脈に降り立った。

「ここが、竜族の里の入り口です」

巨大な洞窟があり、そこにアレクは人化して入っていく。

中に入ると、エルフなど見たことがない竜族たちの、好奇の的にされた。

「竜族っていっても、人化したら角があるだけで、ほとんど人間と変わらないんだね」

「アレク、このエルフたちは?」

竜族の里の、族長だという者が現れた。

「母さんの毒を治癒してくれる方々です」

「アレク・・・悪いことは言わない。母さんのことは、諦めなさい。あの毒は、禁忌の毒だ」

アゾムの毒といって、猛毒でどんな治癒魔法も解毒剤も効かぬとされている毒だった。

「でも、この方たちは治してくれます。見て下さい、アークエンジェリングスライムです。この神の魔法をもつスライムなら、きっと母さんを」

「エルフのそこの二人。怪しい真似をしたら、すぐに放り出すからな」

「おお、怖」

「俺たちは、この子の依頼を引き受けてやってきたSランク冒険者だ。ちゃんと、依頼を遂行して何もせずに戻る」

浮竹と京楽は、ドラゴンの背にいる間にそれぞれ自己紹介をしていた。

「こっちです、浮竹さん、京楽さん、ブルンさん」

「くくるーー」

ブルンは、4枚の翼で空をパタパタ飛んでいく。

アレクが辿り着いた先は、大きな館が立っていた。

「人間でいうところの、貴族ですか。僕の父が先代の族長の子でした。魔族に殺されてしまいましたが」

「お前の母親は、必ず助けて見せる。なぁ、ブルン」

「くくる!!」

屋敷の中の一番奥の部屋に、その女性はいた。

とても子持ちとは思えない、十代後半の姿をした少女だった。

「母は、エンシェントドラゴンの血を引いていて、実年齢より見た目が若いんです」

綺麗な少女だった。

「ブルン、いいか?」

「くくるーー」

ブルンは、神ヒールをエルミナにかけた。

青白い顔で、今にも死にそうに横たわっていたエルミナの頬に、赤みがさしてくる。

「うん・・・アレク?私は・・・・毒が、消えてる!?」

「母さん!」

アレクはエルミナに抱き着いて、泣きだした。

「よかった、本当によかった。母さんまで失ったら、僕は独りぼっちになってしまう。こちらのエルフの浮竹さんと京楽さんが、母さんの治癒の依頼を引き受けてくれたんです。それから、こちらのアークエンジェリングスライムのブルンさんが、母さんの毒を中和してくれたんです」

「ああ、アレク!よかった、私は死を覚悟していたけれど、生きられて本当によかった」

浮竹と京楽とブルンは、その後竜の里中でもてなされて、数日滞在した。

「そろそろ、帰らないと」

「ええ、もうですか?まだ1週間しか経ってませんよ」

「僕たちもエルフだから、時間の流れはあっという間に思えるけど、1週間もいないと、ギルドマスターが僕たちがドラゴンに食べられたじゃないかとかいって、葬式の準備してそう」

「あのブスのしそうなことだな」

「あ、じゃあ報酬金はギルドに預けていますが、これをもっていってください」

それは、竜の魂のオーブという秘宝だった。

竜族の心臓から作り出される代物だった。

「こんな大層なもの、もらえないよ」

「父の形見ですが、あるだけ無駄なので。どうか、金銭に変えて、冒険の役に立たせてやってください。あ、帰りも僕の背に乗って帰りますか?」

「いや、京楽が転移魔法を使えるから、そのまま魔法で帰るよ」

「転移魔法!すごいですね!」

「ドラゴンの知り合いができたって、あのオカマのギルドマスターに知られたら、なんかいろいろありそうだから、ここのことは秘密にしておこう、浮竹」

「ああ」

アレクは、竜化すると、浮竹のほっぺを舐めた。

それに、京楽がむっとする。

京楽を舐めることはなく、浮竹とブルンばかりを舐めるアレクに、京楽が冷たい声を出す。

「浮竹は僕の伴侶なんだ。あんまり、馴れ馴れしくないで」

「あ、そうだったんですか。ごめんなさい」

しゅんとして、人の姿にもどったアレクは、京楽にぺこりと謝った。

「京楽、らしくないぞ。もしかして、嫉妬か~?」

「もう、浮竹のばか!とにかく、帰るよ」

京楽は頬を赤くしながら、転移魔法を唱える。

着いた先は、冒険者ギルドだった。

中に入ると、すでに線香がたかれて、遺影を飾られた空の棺が2つあった。

「キャサリン、君ってやつは」

「このブス!」

「あらぁ、春ちゃんにうっきーちゃん、てっきりドラゴンに食べられてあの世にいったものだと・・・・」

「ドブス!!」

「うっきーちゃん、もっぺんいってごらんなさい?」

「このド・・・ムーーー」
京楽に口を塞がれて、冒険者ギルドで行われていた浮竹と京楽の葬式は、中止で終わった。

「何故止める。あのドブスに本当のことを言っただけだぞ」

「あのドブスはね、後が怖いんだよ。あれでもドラゴンキラーの称号をもつ、元Sランク冒険者のTOPだからね」

「まぁいい。報酬金を受け取ってくる」

報酬金は、大金貨千枚だった。

竜族もドラゴンなので、金銀財宝をためこむのが好きだ。

「このドラゴンの魂の秘宝は・・・・家に飾っておくか」

「うん、そうしよう。お金には困ってないし、ギルドに売ったら、竜族との関係を知られそうだしね」

「ブラックドラゴンかぁ。アレクは子供だが、かっこよかったな」

「浮竹、浮気は許さないよ?」

「ばか、違う。ドラゴンはかっこいいと言ってるんだ」

「竜族はね。普通のドラゴンは食うことと金銀財宝をためこむことくらいしかおつむがないから」

「あのファイアドラゴンも、竜族なんだろうな」

「そうだね。人語をしゃべっていたから、きっとその気になれば人化できるんじゃない。人化する必要のないドラゴンは、人化することを嫌うからね」

以前、討伐任務を受けて失敗した、災害クラスのファイアドラゴンのことを思った。

「ドラゴンキラーになるが夢だったが、竜族とこんなに親しくなると、竜族は退治できそうにないない」

「それでも、人に害なす場合は駆除しないと」

京楽は、アレクがまだ子供でよかったと思うのだ。

アレクの行為は、求婚に近かった。

異種族だが、人化した竜族と亜人が契れないことはない。

本当に子供でよかった。心から、そう思うのであった。



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エンシェントエルフとダークエルフ37

それは、Aランクの依頼であった。

金の採掘場に、アクラネが住み着いたというのだ。

このままでは金の採掘ができないので、早めのを駆除をということで、Sランクの浮竹と京楽に回ってきた。

アクラネは上半身が人間の女性の、下半身が蜘蛛のモンスターだ。

これも人の知能を有していて、闇の渾沌の眷属でもあった。

闇の渾沌の眷属のTOPは、藍染である。

金の採掘場に住み着いたアクラネは、すでに採掘者を5人ほど食い殺していた。

イアラ帝国からみれば隣国の隣国になる、サウアー王国にそのアクラネは出た。

隣国までは転移魔法で、そこからは馬車で金の採掘場の近くまで運んでもらい、徒歩で採掘場に向かう。

いつもは人であふれかえっているのだが、今はしんとしていた。

「どうする?」

「坑道だからな。火と爆発の呪文はなしで」

ブルンもついてきていた。

坑道の中に入っていく。

段々、空気が濁ってきた。

「瘴気だ・・・・ブルン、なんとかできるか?」

「くくるー!」

ブルンは光ると、大気に向かってヒールを唱えて、瘴気を浄化してしまった。

「本当に、ブルンは偉いなぁ。食べ物はゴミだし、回復魔法は神クラスだし、状態異常の心配もないし、火と氷のブレスは吐けるし、酸弾もとばせるし、初歩なら魔法も使える」

「くくるーー」

ブルンは、照れて真っ白な体を輝かせていた。

まるで電球だ。

ブルンが明るいお陰で、照明はいらなかった。

かさかさかさ。

何か大きなものが動いた気配がして、振り返ると、一面蜘蛛の巣だらけになっていた。

「なんだこの蜘蛛の巣・・・粘着性があってとれない」

「アクラネの糸だな。仕方ない、炎で燃やす。フレイムロンド」

ぱちぱちと、アクラネの糸が燃えていき、浮竹と京楽は、蜘蛛の巣から無事脱出した。

「ちっ、エルフか。人間のほうがうまいのに」

現れたアクラネは巨大で、縦に2メートル横に3メートルはあった。

金の採掘場は広めにできており、大きなアクラネが住むにはちょうどいいサイズであった。

「ここで、獲物を待ち、食べていたのに、何故邪魔をする」

「お前も渾沌の闇の眷属か!」

「だから、どうしたというのだ」

「人間を食べると、冒険者が派遣されて殺されるのは、分かるだろう!」

アクラネは笑った。

「はっ、人間如きに何ができる。私は闇の渾沌の眷属。エルフ如きにも、遅れはとらぬ」

「エターナルアイシクルワールド」

「グラビティ・ゼロ」

氷の上位呪文で、アクラネの足から体が凍っていく。

そこに重力の魔法をかけた。

「ぐぐぐぐ、これしき!」

アクラネは、二人の魔法を耐えきった。

それには、浮竹も京楽も驚いた。

「私には、藍染様からいただいた血がある。この程度の攻撃で、倒れるわけにはいかぬ」

「ふーん。藍染の手下なんだ。じゃあ、禁忌放ってもいいよね?」

「京楽、坑道が崩壊しない程度にしろよ」

「わかってるよ。ブラックホール」

闇の禁忌の魔法に、アクラネが驚愕する。

「闇の禁忌だと。何故、ダークエルフであるお前が藍染様に逆らう!」

「僕はダークエルフといっても、闇の渾沌の眷属でもない。人間社会に溶け込んだ、ダークエルフのSランク冒険者だ」

ダークホールの魔法は、じわりじわりとアクラネを吸い込んでいく。

「く、糸を!」

糸を伸ばして、なんとか吸い込まれないようにしているその命綱である糸を、浮竹はミスリル銀の魔剣で切ってしまった。

「ばいばい。せいぜい、成仏することだ。あの世でな」

「おのれええ!藍染様あああああ!!」

ブラックホールの魔法は、アクラネを完全に吸い込み、閉じてしまった。

「じゃあ、戻ろうか?」

「待て。アクラネの巣が他にあるかもしれない。全部燃やしてしまおう」

「火の魔法はだめじゃなかったの?」

「一酸化炭素中毒を起こすかもしれないと考えたが、俺たちにはブルンがいるからな」

「くくーー」

空気の清浄化なら任せろと、ブルンは言っていた。

2時間ほど坑道を見て回り、蜘蛛の糸がはってある部分は焼いていった。

最後の巣で、大量の卵を見つけた。

「よかった、発見できて。発見しないまま帰っていたら、ミニアクラネが大量に生まれて、また依頼書がくるところだった」

卵を1つずつ完全に破壊しながら、浮竹と京楽は炎の魔法を放つ。

「フレイムロンド」

「ダークファイア」

こうして、アクラネは退治して、器用に京楽はブラックホールの小さい魔法を使い、アクラネの魔石だけを取り出した。

「器用だな。アクラネの体はどうなった?」

「ブラックホールに中で、消化されてしまったよ」

「京楽、ブラックホールの魔法は、なるべく人には向けるなよ」

「いや、今まで散々使ってきたしね。剣士の僕とかに」

「師匠は別格だ。それ以外で人に向けては使うなよ」

「分かってるよ」

二人は、空間転移の魔法で帝都アスランの冒険者ギルドに行き、アクラネの魔石を提出して、報酬金金貨350枚と、魔石は金貨50枚の買取りだった。

「ここ最近師匠のところに顔をだしてないな。ブルンもプルンに会えなくて寂しがっている。京楽、師匠の家まで頼めるか」

「仕方ないねぇ」

「手土産に、お稲荷さんを買ったので、それをもっていこう」

「お稲荷さんって」

京楽が苦笑しながら、転移魔法を使う。

師匠である剣士の京楽の家にきていた。

ジリリリリリン。

ベルを鳴らすと、剣士の京楽が出てきた。

『やぁ、君たちか。あがりなよ』

「ありがとうございます、師匠。これ、お土産のお稲荷さんです」

『丁寧に、どうも』

まるで近所の主婦のような会話だった。

『ああ、エルフの俺に京楽か。プルンは奥だぞ」

「くくるー」

ブルンが飛んでいくと、ゴッドスライムになったプルンが、体を黄色にさせて喜んでいた。

「ププウ!」

いつもは偉ぶっているのに、兄であるブルンの前ではかわいくなるのを、精霊の浮竹と剣士の京楽はなんとも言えない気持ちで見ていた。

「プルンにも、土産があるぞ。りんご20個だ」

「プププ」

もらってやらなくもない。

「くくるー?」

弟よ、どうしたんだい?

「ププウウウ」

あ、なんでもないよお兄ちゃん。

「最近、メデューサやアクラネといった、闇の渾沌の眷属の活動が激しくなってるんだが」

『ああ、うん、まぁねぇ。藍染の居場所が分かればいいんだけど』

「藍染か・・・。魔王とはまた違う、人間社会の脅威だな」

『藍染は魔族や魔王と繋がっていないからな』

「だから、余計に分かりくいんだね」

エルフの浮竹と京楽は、結局お土産にと持ってきたお稲荷さんを自分たちで食べてしまい、その上昼も食べさせてもらうのだった。


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藍染は、笑っていた。

ワイングラスの中の血に、さらに血を注いでいく。

神人になれなかった、不老不死の偽物なので、命の火を灯していくには人間の血が不可欠だった。

ちなみに、邪教徒に崇められている邪神オルテガとは、藍染のことであった。

ワイングラスの血を全部飲み干して、狂気じみた笑みをまた浮かべるのであった。



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エンシェントエルフとダークエルフ36

緊急クエストだった。

イアラ帝国の北部にある、イエクとう町にメデューサが3匹現れ、町の住民はみんな石化されて滅ぼされてしまったというのだ。

イエクの町から帝都アスランはそう遠くなく、このままいけば帝都アスランまでくるということで、緊急クエストになった。

Sランクの依頼で、浮竹と京楽が引き受けた。

大金貨をつみあげて、錬金術士から絶対に石化しないお守りを手に、馬車でイエクの町にむかった。

2時間ほど馬車で走ったところに、イエクの町はあった。

みんな、住民は石像と化していた。

「あらぁ、まだ石化していない人間がいたの」

「おねえさま、こいつエルフよ。おいしそうだわ」

「おねえさま、こっちはダークエルフよ?食べればきっと肌艶がよくなるわ」

闇の種族には、京楽がダークエルフだと分かるようだった。

メデューサはモンスターだが、知性があるために闇の渾沌の眷属でもあった。

メデューサ達は、散々好き勝手なことをしゃべって、浮竹と京楽を石化させようとした。

「どうして!?石化の呪いが効かない!」

「石化すると分かっていて、対策もなしに乗り込んでくるよなあほは、いないよ」

「なら、その石化の対策とやらを壊さすだけよ!」

メデューサの髪の蛇が伸びて、攻撃してきた。

それを、浮竹はミスリル銀の魔剣で切り落とす。

「おのれええ、エルフがあああ」

「おねえさま、魔法を使いましょう」

「そうよ、おねえさま」

「「「三重詠唱〈トリプルフレア〉」」」

すごい灼熱の炎が襲ってきたが、京楽が魔法を唱える。

「カウンターマジックシールド」

「魔法が反射されて・・・きゃああああ!!」

「いやああ、あたくしの美しい顔が」

「おねえさま、このエルフたちの魔力、恐ろしいわ!」

メデューサ達は、石化光線を何度も浴びせるが、一向に石化しない浮竹と京楽をぐるりと取り囲んだ。

「よくも、わたくしたちの魔法を反射してくれたわね。生きたまま食ってやるわ!」

メデューサは蛇の下半身で、浮竹と京楽を締め上げた。

「さぁ、最後に言い残すことはあるかしら?」

「ブス」

浮竹は、そう言ってミスリル銀の魔剣で蛇の下半身を切り裂いた。

「ぎゃああああ!!!」

出血がおびただしく、治癒魔法も再生も使えないメデューサは、そのまま死んでしまった。

「おのれ!よくもおねえさまを!こいつがどうなってもいいの!」

残っていた2匹のメデューサは、蛇の尾で捕らえられている京楽の首に、頭の蛇をけしかけて噛んでしまった。

「ふふふ、もう終わりよ。猛毒で、こいつの命ももってあと半日・・・・・・」

「だそうだぞ、京楽」

「普通なら、美女に囲まれて嬉しいところなんだけど、こんな蛇の頭をもった美女なんていらないね。ソニックブーム!」

スパスパっと、京楽が放った音速を超える刃で、メデューサ2体の首は、胴と離れていた。

「なぜ、エルフ如きが上位悪魔にも匹敵する、わたくしたちを、こんなに簡単に・・・」

「それは、僕たちがSランク冒険者だからだよ」

京楽の言葉に、メデューサ達は戦慄した。

「Sランク・・・世界に150人もいないと言われる、伝説の冒険者・・・・」

「頭と胴を切り離したのにしぶといな。灰となれ、フレイムロンド!」

「ぎゃあああああ!」

「いやああああ!!」

残っていたメデューサ2匹も死んでいった。

「さて、ここからが大変だよ。ブルン、大仕事だ。町の住民全員の石化を解かないと」

「これだけ規模の数になると、1日では無理か・・・・ブルン、とりあえず京楽の毒を中和してやってくれ」

「くくるーー」

ブルンは光って、京楽に神ヒールをかけた。

「お、体が楽になった。ありがとうね、ブルン」

「くくるーーー」

アークエンジェリングスライムになったブルンは、魔法の範囲も広くなっていた。10メートル範囲にいる者全ての石化した住民を、神ヒールで解いていく。

ブルンのもつ神ヒールは特殊で、呪いや毒も消せた。

「あれ、俺たちは確かメデューサに・・・・・」

「あああ、助かった。あんたたちが助けてくれたのか」

「ありがとう、ありがとう」

10メートル範囲といっても、広い町だ。

全員の石化を解く頃には次の日の昼頃になっていた。

ブルンは、浮竹と京楽が仮眠をとっている間も、ひたすら神ヒールを唱え続けていた。

「このスライム・・・へへへ」

「くくるーーー!!」

町の住民の一人が、ブルンを布で包みこみ、攫って売り飛ばそうと考えていた。

「ぎゃああああああ!!」

ブルンは炎のブレスを吐いていた。

「どうしたんだ、ブルン!」

「くくるーくるー」

「何、こいつが攫って売り飛ばそうとしていた?けしからんな、火傷の治療はしなくていいぞ。町長はいるか」

浮竹は、町長を呼び出し、男が犯罪行為に走ったことを告げて、男は捕まった。

「なんてやつだ!町を助けてくれた英雄のスライムさんを、攫おうだなんて!」

ちなみに、浮竹と京楽は適度に感謝された。

ブルンがゴミを食べると言い出すと、住民たちは喜んでゴミをもってきて、ブルンに食べてもらた。

「くくるーー」

町中のゴミを食べて、ブルンは満足したようだった。

「ありがたい。町の中心に、ブルン様の銅像を建てよう!」

「くくるーーー!!」

ブルンは、アークエンジェリングスライムになったことで、七色から白い色になっていた。

翼も2枚から4枚に増えていた。

頭の輪っかは光り輝き、まさにスライムでなければ天使で通る。

「ブルン、お疲れさま。休憩、とってもよかったんだぞ?俺たちが仮眠してる間もヒール唱えてただろう」

「くくるーーー」

「1日や2日くらい寝なくても平気だって?まぁそうかもしれないが、今は休んでくれ」

「くくるう」

ブルンは、浮竹の頭の上に乗り、早速眠りはじめるのだった。

「あの、これ少ないですが、受け取ってください」

町の町長が、かき集めた金貨をさしだしてきた。

冒険先で報酬をもらうのは違法ではないため、ありがたくいただいておいた。

金貨400枚ほどが入っていた。

メデューサの石化を防ぐお守りを錬金術士に作ってもらうために、大金貨300枚を出したのだ。それを2個で、大金貨600枚になった。

メデューサの魔石もちゃんと採取しておいて、死体は火葬にしておいた。

「もうないと思うが、何かあったら冒険者ギルドまで依頼を出してくれ」

「ありがとうございました、ブルン様!!」

みんな、浮竹と京楽ではなくブルンにばかり礼を言う。

まぁ、命の恩人であるのだから仕方ない。

冒険者ギルドに戻り、報酬の大金貨500枚をもらい、魔石を鑑定してもらって、魔石の買取り額は大金貨50枚だった。

何気に赤字だった。

錬金術士の知り合いは少なく、コネもないことで代金をふっかけられた。

ずっと使えるならいいが、有効期間は1年。

それで大金貨300枚は、高いのか安いのかわからないが、命の無事を保証してくれるなら安いほうだろう。

「ブルン、今日は特別だぞ。帝都アスランのゴミ処理施設に連れてってやる」

「くくるううう!!!」

ゴミ処理施設と聞いて、ブルンは涎を垂らしそうになっていた。

「くくる!」

「はいはい、今から連れてってあげるから。そんなに急かさないの」

ブルンは、結局食いだめができるため、帝都アスランのゴミ処理施設にあったゴミを、綺麗なまでに食べてしまうのだった。




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エンシェントエルフとダークエルフ35

Sランクになり、はじめて引きう受けた依頼の内容は、数十年前からずっと残っている、ファイアドラゴンの退治であった。

イアラ帝国の更に南にある、ウズール王国のアサーニャ火山にファイアドラゴンはいた。

アサーニャ火山が噴火する時は、ファイアドラゴンの怒りだとされていた。

浮竹と京楽とブルンは、アサーニャ火山に空間転移でやってきた。

ドラゴンの住まいに忍び込み、まずは眠っているファイアドラゴンにスリープの魔法をかけて更に眠らせる。

その間に金銀財宝をありったけアイテムポケットに詰め込んで、ファイアドラゴンが目覚める頃には、自慢の金銀財宝がなくなっていた。

「GURURURURU!」

「お、お目ざめのようだな」

ファイアドラゴンは怒っていた。

自慢の金銀財宝が奪われたのだ。怒らないほうがおかしい。

その日、アサーニャ火山は噴火した。

「クリエイトアークエンジェル、クリエエイトロードオブサタン、三重詠唱「エターナルアイシクルフィールド」」

氷の禁忌の魔法を、3重でかけた。

ファイアドラゴンは凍り付いた。

しかし、数百年も誰も倒せなかったファイアドラゴンなだけあって、強かった。

氷の禁忌の魔法を打ち破り、凍り付いた体を炎のブレスで溶かしていく。

「ああ、やっぱ強いねぇ、ファイアドラゴンは。ワールドエンド」

終末の魔法の禁忌に、ファイアドラゴンの纏っている炎が吸い込まれていく。

「GYAOOOOOOO」

ファイアドラゴンは咆哮し、炎のブレスを浮竹と京楽に向かって吐いた。

「マジックシールド!」

炎のブレスは、京楽のはった魔法の盾で防がれた。

「GURURURU!」

ファイアドラゴンに、氷の属性をエンチャントしたミスリル銀の魔剣で切りかかった。

さっくりと、ドラゴンの尾がきれた。

「わお、尻尾がきれたぞ!」

「浮竹、後ろ後ろ!!」

浮竹の背後では、ファイアドラゴンが怒りを募らせて、ファイアブレスを上回る神の吐息ゴッドブレスを吐いてきた。

「ゴッドシールド×3」

それを、同じ神の盾で防ぐ。

1枚には完全に貫通し、2枚目にも罅が入っていたが、浮竹は無事だった。

ファイアドラゴンの尾をぶった切ってから、今度はファイアドラゴンの弱点である逆鱗を狙うが、ぶんと振ってきたファイアドラゴンの爪で浮竹は壁に吹っ飛ばされていた。

「いたたたた、きっつー」

「くるるるーーー」

すぐにブルンがヒールを賭けてくれたおかげで、本当なら骨折していただろうダメージもすぐに回復した。

「何用だ、人間どもよ。我の金銀財宝を奪った挙句、我の命まで欲するのか」

ファイアドラゴンは、流暢に言葉を発してきた。

さすがにそれには浮竹も京楽も驚いた。

「ファイアドラゴン、お前を退治しにきた!」

「その程度の力で・・・・・方腹が痛いわ!これが真のワールドエンドの魔法だ」

ファイアドラゴンは、ワールドエンドの魔法を使った。

噴火していた火山が静かになり、溶岩を飲みこんでいく。

「こっちも・・・・・京楽、お前も一緒に」

「「ワールドエンド」」

2重のワールドエンドの魔法が、ファイアドラゴンのワールドエンドの魔法を食った。

「ぐ、人間風情がやるではないか。おや、エルフであったか」

浮竹と京楽は、ありったけの魔力を注ぎこみ、巨大な氷の槍を作り出した。

「「スパイラルアイシクルスピア!!」」

「ぐおおおおおおお!!!」

ファイアドラゴンは、氷に翼を貫かれた。

「おのれ、エルフが。灰となれ!ゴッドブレス!」

なんとか残りの魔力でシールドを張ると、二人とブルンは空間転移の魔法で逃げ出した。

「さすがは災害クラスのドラゴン。まだ僕たちの腕じゃあ、倒せないね」

「でも、尻尾をもらったぞ」

何気に、浮竹は切り取った尻尾をアイテムポケットにいれていた。

「おまけに財宝もくすねた。ってなんか僕ら、盗賊みたいだね」

「ドラゴンはまた金銀財宝をためこむ。ドラゴンに挑んで金銀財宝だけを手に帰るSランク冒険者はいくらでもいる。この方法を教えてくれたのも、Sランク冒険者だった」

「うーん、金が増えて嬉しいけど、ファイアドラゴンにはちょっと悪いことをしたかなぁ。寝ているところを襲ったわけだし」

「ドラゴンに情けは無用だ!」

「そうだけど・・・・」

「まぁ、今回は火山も噴火させちゃったし、師匠にすごく怒られそうだ」

「ああ、剣士の僕なら怒りまくるだろうね。説教を、覚悟しておこう」


二人はいったん冒険者ギルドに立ち寄って、クエスト失敗と尻尾と金銀財宝をもってきたと話と、ギルドマスターのオカマのキャサリンがやってきた。

「いやん、うっきーちゃん、春ちゃん、Sランクになったからって、早速ファイアドラゴンの退治に行くだなんて、葬式の準備してたわ」

「ブス」

「ああん?」

キャサリンの額に血管が浮かぶ。

「ブ・・・・むーーー」

「ドラゴンの尻尾があるんだ。買いとってもらえるかな」

「ドラゴンの尻尾ですって!ちょっと先だけとかじゃないでしょうね?」

「けっこう尻尾の部分は尻に近い」

「すごいわ!これでドラゴンの鱗と骨と血と肉がとれるわ!ギルドで買いとりたいから、解体工房に出してちょうだい」

浮竹はまだ何かを言いたそうだったが、京楽が首を横に振る。

浮竹は気持ちを切り替えて、解体工房で5メートルはあるであろうドラゴンの尻尾をだした。

「わお、すごいね。ドラゴンの素材を扱うのは20年ぶりくらいだ」

解体工房の解体作業員の頭が、血と肉と鱗と骨に解体してくれた。

「合計白金貨5枚だ」

「すっご」

「うひゃあ、ドラゴン素材ってだけでそんなにいくんだねぇ」

「おまけで、金銀財宝をくすねてきたんだが」

「なんですって!出しなさい!」

金銀財宝も、冒険者ギルドのほうで買いとってもらった。

白金貨3枚になった。

イアラ帝国の冒険者ギルドでは、白金貨を流通させてあるので、支払いは白金貨であった。

「白金貨8枚か・・ファイアドラゴン討伐の報酬金が白金貨2千枚。それに比べたら少ないけど、はじめてのSランクの冒険にしては稼いだね」

「師匠のところに行こう。多分、火山を噴火させたことで怒ってそうだ」

「ああ、それはあるかも」

こうして、白金貨8枚を手に入れた二人とブルンは、空間転移で師匠である剣士の京楽の元へとやってきた。

にこにこにこ。

笑っている静かな剣士の京楽の笑みが、怖かった。

『君たちねぇ、ファイアドラゴンに挑むなんて早すぎだし、おまけに火山まで噴火させて!』

師匠は、大変お怒りであった。

「なんで、ファイアドラゴンが噴火までするほど怒ったの」

「それは、ファイアドラゴンが眠っている間に、金銀財宝を全てくすねたせいであります!」

エルフの京楽のキャラがちょっと変わっていた。

『ああ。そりゃ怒るよ。どこのドラゴンでも怒る。君たちは全くもう!』

正座させられて、3時間ほどお説教を延々とうらう羽目になり、エルフの二人はドラゴン討伐はしばらくの間引き受けないと心に誓うのであった。


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「あー疲れた」

「僕は足がしびれたよ」

『ホットミルクでも飲んで』

精霊の浮竹にホットミルクをもらい、エルフの二人は痺れた足をマッサージしていた。

『幸い今回の噴火は小規模で人的被害が出なかったからいいけど、最悪Sランク冒険者の資格剥奪もありえるから、注意してよ』

「はい、師匠」

「分かったよ」

『あと、寝ているドラゴンの巣に勝手に入ってきて、金銀財宝を盗まないこと!自分たちがSランク冒険者だというのを自覚して、お手本になるように行動すること!』

「はい、師匠」

「分かったよ」

師匠である剣士の京楽は、この二人、本当に分かっているのだろうかと、ちょっと心配になってくるのであった。

「くくるー」

ブルンが、お説教されている間中、プルンと遊んでいた。

「ププウ」

プルンの進化も近いようで、その日はお説教を受けて終わるのであった。

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エンシェントエルフとダークエルフ34

いろんな出来事があった。

気づけば2年が経ち、Sランク昇格試験の日が目の前に迫っていた。

浮竹と京楽は、この日のためにSランクの依頼ばかり受けて、切磋琢磨していた。

浮竹と京楽にとって、念願のSランク昇格試験の日がやってきた。

「荷物よし、武器よし、体調よし、魔力よし、京楽よし」

「ねぇ、なんでそこで京楽よしなの」

「いや、京楽とぺアで挑む試験だからな」

「くくるー」

ブルンは、エンジェリングスライムから進化して、アークエンジェリングスライムになっていた。

「くくる」

「がんばれって?ああ、がっばってくるぞ」

こうして、浮竹と京楽は、Sランク昇格試験の第一次試験である、魔法使いの試練を受けることになった。

ブルンは、試験会場で試験官たちに預けることになった。

「では、この的ををまずはたくさん破壊してください」

「おいおい、ミスリル銀だぞ。破壊なんて、できるわけが」

「クリエイトアークエンジェル、クリエイトロードオブサタン。3重詠唱【テトラボックス】」

浮竹は、無の圧縮呪文でミスリル銀の大きな的を、全て豆粒大の大きさにしてしまった。

「浮竹選手クリア!次、京楽選手!」

「ブラックホール×5」

京楽は、ブラックホールの禁忌で的をまとめて吸い込んでしまった。

「ああ。破壊するんだっけ。今だすから」

ブラックホールから出されらミスリル銀の的は、砂粒になっていた。

「京楽選手クリア!」

「ふふ、今年は粒ぞろいね。それにしても、ダークエルフと組むエンシェントエルフ・・・気に食わない。個人的には不合格にしたいんだけど」

「ちょっと、試験管さん、僕がダークエルフだからって不合格はないでしょ」

「ふん、ただ不合格にしたいっていっただけよ。実際にするわけじゃないからいいんだもん」

こうして、一次試験を、浮竹と京楽はクリアしたのだった。

二次試験は、疑似ダンジョン攻略であった。

中は迷宮で入り組んでいたが、魔力感知で道をたどっていくと、ボスがいる扉の前にきた。

疑似ドラゴンのカイザードラゴンが用意してあった。

「クリエイトアークエンジェル、クリエイトロードオブサタン!三重詠唱![テトラボックス]!」

「シャドウストライク!」

カイザードラゴンのブレスを相殺さらに過剰な力がカイザードラゴンにふりかかる。

もっと苦戦するものだと思っていたのだが、それであっさりと倒してしまった。

「え、終わりか?はっ、真のボスがまだどこかに!?」

「浮竹、油断しちゃだめだよ」

疑似カイザードラゴンは、消滅した。

いつまで経っても他にモンスターがわかないので、財宝の間にやってきた。

今回のSランク試験官の古代エルフのエマ、古代ドワーフのドゥニ、そして剣士の京楽がいた。

『合格だよ。よかったね』

「やったな、京楽!」

「うん、2次試験もクリアだよ!」

二人はハイタッチした。

3次試験は明日ということになった。

その日は宿で十分な休息をとり、魔力を回復させた。

やがて次の日がきて、浮竹と京楽は3次試験、最終試験に挑んだ。

75人が残っていたが、浮竹と京楽は最終試験の番号は一番最後だった。

その内容は過酷なものだった。

二人にとって師匠である、剣士の京楽を倒せというものだった。

最初は試験官は誰だろうとか気楽な気持ちでいたのだが、気を引き締めないと殺されると分かった。

剣士の京楽は、妖刀と抜くと自らの魔力を解放した。

「なんて魔力だ。まるで竜巻だ」

「本気でかからないと殺されるよ!」

「ブラックホール!」

「ライトニングダート!」

エルフの京楽は闇の禁忌を、浮竹は風の魔法を放つが、剣士の京楽は手を掲げただけで魔法を打ち消してしまった。

『もっといけるでしょ?それとも、もう限界?』

「まだまだ!「クリエイトアークエンジェル!」二十詠唱『テトラボックス!!』」

浮竹はさらに次の魔法を唱える。

「フェンリル!エターナルアイシクルワールド!」

氷の魔狼フェンリルを生み出し、氷の魔法で師匠である京楽に魔法を放つ。

エルフの京楽も魔法を使った。

雷に禁忌であった。

「サンダーボルテックス!」

しかし、剣士の京楽はぴんぴんしていた。

「手傷も負わせれてないね!」

「さすが、師匠。めちゃ強い」

エルフの浮竹は、ミスリル銀の魔剣を抜き放ち、京楽と斬り合った。だが、力の差がありすぎて、まともな斬り合いにならない。

「エターナルフェニックス!」

剣に不死鳥をのせて、剣士の京楽を焼いていくが、剣士の京楽は無傷であった。

「ダークネスサンシャイン!」

エルフの京楽が、黒い太陽を作り出す。

じゅわっとその場の水分が干からび出す。剣士の京楽に向けて放ったが、剣士の京楽は何か言葉をつぶやいて、黒い太陽を握りつぶしてしまった。

「くそ、強いな」

「そうだね。でもまだまだ!」

「クリエトドラゴン!カイザーブレス!」

浮竹は人工竜を作り出して、炎のブレスで攻撃する。

京楽のその炎に乗せて、闇と炎の禁忌を放つ。

「ダークネスフレア!」

炎は、剣士の京楽を飲みこんだかに見えた。

だが、剣士の京楽は結界をはり、禁忌を防いでしまった。

そして、エルフの二人は剣士の京楽に手傷を負わせられた。

「セイントヒール」

京楽が負った怪我を回復魔法で癒す。

「ここまで来たんだ!諦めてたまるか!」

「ああ、そうだな!京楽とSランクになるって決めたんだ!」

二人は、諦めない。

『さぁ、かかっておいで。実力を見せてごらん。こんなんじゃ、藍染めも僕も倒せないよ』

「クリエイトロードオブサタン。クリエイトアークエンジェル。三重詠唱「ワールドエンド!!」」

エルフの浮竹は人工悪魔と人工天使を作り出し、禁忌の中の禁忌を放っていた。

『く、3重の禁忌かい。やるねぇ。でも僕も負けてないよ』

剣士の京楽は、妖刀を解放して、右半身が精霊の浮竹になっていた。

「この尋常じゃない魔力・・・」

「僕に案がある」

「分かった、それに乗ろう」

「メテオスォーム!」

エルフの京楽は、エルフの浮竹より前に魔法を放った。

エルフの京楽が放つ魔法の合間をぬってエルフの浮竹は京楽との距離を詰め一撃を撃ち込む。ただではやられないため鍔迫り合いになった

「エターナルフェニックス!」

浮竹は、自分ごと魔法を放ち、剣士の京楽めがけて不死鳥は炎を燃やした。

「俺たちはあなたに勝つんだ!」

ドゴーンと爆発音がした。

「浮竹!」

エルフの京楽が言葉をかける。

煙が晴れると、そこには京楽の腹部に剣を刺したエルフの浮竹がいた。

『君たちの勝ちだね』

「師匠、大丈夫ですか!」

エルフの浮竹は、青白い顔をしながら剣を抜き取る。

それと同時に京楽は後ろに倒れるが、いつの間にか現れた精霊の浮竹が受け止めて地面に横にする。

『ボクに勝ったんだ。堂々とてなさいな』

そうして、エマとドゥニがやってきて、二人はSランク試験合格と認められて、称号をもらうためについていくのであった。

「師匠は大丈夫だろうか」

「不老不死の神人でしょ。大丈夫に決まってるよ」

「うん、そうだな」

エルフの二人は、1次試験と2次試験の監督から、Sランク昇格の言葉を承り、称号であり証であるミスリル銀の冒険者カードをもらった。

『それにして、あそこまで強くなっているとは思わなかったよ』

『そうだな。でも、愛弟子たちがSランクになって嬉しいだろう?』

「そうだね。修行をさせたかいがあるってものだね』

剣士の京楽と精霊の浮竹は、静かに寄り添い合うのだった。


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「Sランクおめでとう!」

「ありがとう!」

「ありがとね」

「いやん、うっきーちゃんも春ちゃんも、ついにSランクになっちゃったのね!」

その日は、Sランクに昇格た祝いを祝して、酒場を貸し切って飲み放題食い放題にした。

ここぞとばかりに、F~Dクラスの下級冒険者が食事に群がっているが、祝いなので気にしない。

「後で、師匠の家にいってみる?」

「そうだな」

祝いの夜も過ぎていき、翌日の朝に剣士の京楽の家にエルフの京楽の空間転移魔法でやってきた。

『あ、やっぱきたきた。Sランク昇格を祝して、飲もう!』

「ええ、昨日飲み会したばっかりなのに」

『師匠の酒が飲めんのか~~』

気楽な剣士の京楽に、精霊の浮竹がワインの入ったグラスをエルフの二人にもたせて、4人で乾杯した。

朝食がまだだったので、少し朝食には豪華な料理を食べた。

『昨日はきっとそっちで祝ってるだろうと思って』

「ああ、うん、冒険者ギルドの酒場貸し切って祝いしてました」

「けっこうな金額が飛んでいったけど、Sランクの依頼を1件こなすだけで元は取り戻せるからね」

『とにかく、おめでとう』

『おめでとう』

「ああ、師匠に改まってそう言われると照れますね」

「僕の夢が叶ったからね。幸せだよ」

『うん、良かった』

剣士の京楽は、新たなるSランク冒険者を心から祝うのであった。

結局、エルフの二人は師匠の家で朝っぱらから飲み明かして、深夜近くまで騒ぐのであった。








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始祖なる者、ヴァンパイアマスター

藍染が滅びて5年が過ぎようとしていた。

古城は相変わらず平和で、血の帝国からはブラッディ・ネイをはじめ、白哉、恋次、ルキア、一護、冬獅郎がよく遊びに来た。

人間社会からは、乱菊とその子供が。乱菊はギンという青年と結婚し、女の子を一人もうけていた。

「浮竹さん、マイカにミルクやっといて!」

「こら、乱菊どこに行くんだ!」

「近所のスーパーで今大セールやってるのよ!行かなきゃ損よ!さぁ、京楽さんもいくわよ!」

「なんや、乱菊、京楽さんもさそいはったんか」

「ギン、さぁ行くわよ!主婦たちとの格闘よ!」

「なんで僕まで・・・・・」

京楽は文句を言いつつも、乱菊とギンと一緒にスーパーに行き、お一人様1品のものを購入するのであった。

その頃、浮竹は乱菊の子であるマイカに哺乳瓶でミルクをあげて、おしめを変えてやった。

「あ、そろそろマンドレイク収穫しないと」

浮竹は、背中にマイカを背負い、マンドレイクの収穫を始めた。

「ぎゃああああ」

「ひいいいいい」

「うげろおおおお」

いろんな悲鳴をあげる、中庭のマンドレイクを収穫していく。

「あ、やばい、マイカの存在忘れてた!!」

マイカを見ると、キャッキャと喜んでいた。

それもそうだ。魔女と魔族の間の子供なのだから。

人間ではないので、マンドレイクの死の悲鳴を聞いてもケロリとしていた。

「よし、今日の昼はマンドレイク入りのポトフだ」

新鮮なマンドレイクが収穫できたので、マンドレイクを刻み、野菜を切って、コトコト煮込み、切ったソーセージをいれて、味付けをして出来上がった。

「一人で食べるのは寂しいな。神界へ行こう」」

マイカは眠っているので、ベビーベッドに寝かせた。

鍋をもって、神々が集う神界に、立ち入る許可をもらった指輪で訪れていた。

「なんだ、お前か」

「ルシエ―ド、マンドレイク入りのポトフを作ってみたんだ。食べてみないか」

「分かった。もらおう」

周囲の神々は冷や冷やしていた。創造神ルシエードは、最高神に値する。無礼を働くと、抹消される可能性があった。

ルシエ―ドは、マンドレイク入りのポトフを食べた。

「ふむ。悪くはない。マンドレイクが味をより一層引き立てている」

「お、やっぱりそう思うか。ありがとう、ルシエード。じゃあ、俺は戻るな」

浮竹は、自分の父である創造神ルシエードによく会いにきた。

神界に出入り自由な指輪をもらい、焼いたお菓子だとか、夕飯だとかを運んだ。

通常、神々は食事を必要としない。

けれど、ルシエードは食べた。愛しい我が子の作ってくれたものだからと、マンドレイクの味が好きになっていた。


「うわぁ、何このポトフ。マンドレイクの顔が浮いてる・・・」

帰ってきた京楽の一言に、浮竹がむっとなる。

「ルシエードは悪くはない、マンドレイクの味がいいって言ってたぞ」

「気のせいでしょ」

「とにかく食え!」

スーパーの戦利品をアイテムポケットから出していく京楽の口に、無理やりマンドレイク入りのポトフを入れる。

「ぎょええええええ」

京楽は、叫んですぐにキッチンにいってしまった。

「浮竹、塩とタバスコ間違えたね!?めっちゃ辛いよ!」

「え、そうか?ちょうどいい辛さだと思うんだが。ルシエードも悪くないと言っていたし」

「それ、絶対世辞だから」

「いいから、もっと食え!最後まで食え!」

浮竹に無理やり食べ去られて、京楽は灰になりそうだった。

「おぎゃあおぎゃああ」

「ああ、マイカが泣いてる」

「あら、いいわよ。ちょうど連れて帰るところだったの。またね、浮竹さん」

「ああ、またな乱菊」

「僕がおぎゃおぎゃあと泣きたいよ」

浮竹は、奇妙な物体を見る視線で京楽を見た。

「なんだ、赤ちゃんプレイがしたいのか?」

「違う!君のポトフで、僕は泣きたいってこと」

「そうか、泣くほどうまいか。また作ってやるからな」

「ああもう、君は!」

京楽は大きなため息を吐いた。

次の日は、ブラッディ・ネイが遊びにきた。

「兄様、女体化ごっこしない?」

「するか、この阿呆が!」

ブラッディ・ネイに生きたマンドレイクを投げた。

「ぎゃああああ、マンドレイク!」

マンドレイクは、ブラッディ・ネイと視線を合わせて叫んだ。

「もぎゃあああああああ」

「あぎゃあああああ」

ブラッディ・ネイも負けずに叫ぶ。

ブラッディ・ネイは、昔浮竹のマンドレイク入りの料理を食べて、マンドレイク恐怖症になっていた。

「ボク、帰る!」

「ああ、帰れ!」

「酷い、兄様のバカ!」

「たかが生きたマンドレイクで恐怖するなんて、まだまだお前も青いな」

「悪かったね!べーだ」

そうして、ブラッディ・ネイは帰っていった。

次の日になって気づく。

その日は、ブラッディ・ネイの生誕祭だった。

「ああ、ブラッディ・ネイのやつ、肝心なことを言い忘れたのか」

仕方なく、京楽と二人で血の帝国にやってきた。

「兄様、きてくれたんだ。この3年間、放置されてたけど、ちゃんと覚えててくれたんだ」

「3年間はすっかり忘れていた。ほら、3年分と今年の分のプレゼントだ」

浮竹がアイテムポケットから出して放り投げたのは、生きたマンドレイクのつまった袋だった。

「ぎゃああああああ!!」

ブラッディ・ネイは叫んで、マンドレイクを京楽に無理やり押し付けた。

「のああああああ!!」

京楽も生きたマンドレイクが苦手なので、なぜか白哉の手に渡っていった。

「なんだ、これは」

「ぎゃあああああ!!」

悲鳴をあげるマンドレイクを、不思議そうに白哉は見ていた。

「食べ物なのか?それとも、呪術に使う媒介か何か・・・」

「あ、白哉さんそれこっちで処理しときますんで」

恋次が、白哉から生きたマンドレイクを渡してもらい、生きたマンドレイクはそのまま女帝の厨房に行くこととなり、調理されてその日の晩のフルコースのスープに出てくるのだった。

「まぁ、マンドレイクは冗談だ。これをやる」

それは、大きなサファイアでできたネックレスだった。

「俺の錬金術で、氷の魔法が付与されている。暑い時とかにつけると涼しくなる」

「これから、夏だもんね!ありがとう兄様、大好きだよ!」

抱きついてきて、尻を触ろうとしていたブラッディ・ネイを手だけで押しやって、浮竹はその日の晩は、京楽と共にブラッディ・ネイの宮殿に泊まった。

夕食のフルコースメニューのスープには、マンドレイクの顔が浮かんでいた。

「マンドレイクをスープにしたのか」

「誰だ、こんなのスープに入れた奴は!」

ブラッディ・ネイは、怒った。

「料理長です。しかし、マンドレイクは美容にもいいとのことで、味は悪くないはずと料理長がおっしゃっていました」

「ふーん、美容にいいのか」

ブラッディ・ネイは、マンドレイクのスープを一口飲むと。

「おいしい!」

そう言って、残さず飲んでしまった。

「おかわりある?」

「料理長がさぞ喜ぶでしょう。おかわりを今、お持ちしますね」

男性は、オウカ・ザンペルという名で、5年前に採用されて、ブラッディ・ネイの執事のような存在で、周囲の世話をよくしてくれていた。

「ブラッディ・ネイをよく世話してやってくれているようで、兄である俺からも礼を言わせてくれ」

「そんな!浮竹様からそのような言葉をかけていただけるだけで、幸せ者でございます」

とても礼儀よく、恐らく貴族出身であろう。

「オウカの妹はボクの寵姫なんだよ」

「愚昧が迷惑をかける」

「えー。何それ兄様」

「本当のことだろうか。愚妹で何か困ったことがあれば、俺に相談してくれ。できるだけの対処はする」

「いえ、没落寸前の我がザンペル家を救っていただき、妹は寵姫にまでなれました。ブラッディ・ネイ様には感謝の心が絶えません」

「ほら、こう言ってるじゃない。それに寵姫としてオウカの妹は愛しているし、大丈夫だよ?」

夕飯に出たマンドレイクのスープは本当においしく、一流のシェフが作った味なのだが、京楽の作ったマンドレイクのスープの味に似ていた。


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その日、京楽はこそこそしていた。

「じゃあ、毎度、京楽さん」

マイカをおぶった乱菊から何かの薬品を買って、京楽は周囲を見渡した。

そして、キッチンで浮竹のグラスに買った液体を注ぎ、その上から高級ワインを注いで、氷をいえれて、浮竹に渡す。

「ん・・・・今日のワインは、やたら甘ったるいな」

そのまま夕食を続けていると、浮竹が体調の変化を訴えた。

「体が熱い・・・まさか、また媚薬を盛ったのか?」

京楽は凝りもせず、浮竹に時折媚薬を盛った。

「違うよ。今回はウサギ耳と尻尾ができる薬を盛ったの」

「はぁ!?ウサギ耳に尻尾!?」

ぼふんと音をたてて、浮竹の頭にはうさぎの耳が、尻にはうさぎの尻尾が生えていた。

「や・・・」

京楽にうさぎ耳を触られて、浮竹はピクンと体を反応させた。

「やっぱり、性感帯になってるね」

「京楽のアホ!」

「はいはい。苦情は後でいくらでも受け付けるから、ベッドに行こう?」

そのまま京楽に横抱きにされて、寝室のベッドにまで連れてこられた。

とさりとベッドにゆっくりと下ろされて、久しぶりになるので、浮竹から京楽に口づけていた。

「好きだ、春水」

「僕も大好きだよ、十四郎」

互いの衣服を脱がしていく。

「あっ」

すでに先走りの蜜を零している浮竹にものを手で包みこみ、しごいてやると、久しぶりなので浮竹は濃い精液を吐き出していた。

「もったいない」

京楽は、手についた精液を舐めとる。

甘い味がした。

「ああ!」

うさぎの耳を噛まれて、浮竹は啼いた。

「んあっ」

平らな胸をなでられ、先端をつままれると、電流が走ったような衝撃を感じた。

「んんっ」

京楽とキスをしながら、お互いの体を弄る。

京楽の硬いものに手をはわせると、それだけで京楽はいってしまっていた。

「ん、早いな」

「たまってたからね。ここ、気持ちいい?」

うさぎの尻尾をクニクニと触られて、浮竹はくすぐったいと訴えた。

「性感帯はウサギの耳だけか・・・・」

「ばか」

ローションを手にとると、浮竹の後ろを指で解していく。

わざといい場所に触れずに解すと、情欲に濡れた瞳で、浮竹が京楽を見上げた。

「はやく、お前をくれ」

「もう、君って子は・・・・」

京楽は、また硬くなった己のものを浮竹の蕾に宛がい、一気に貫いた。

「あああああ!!!」

ウサギ耳を触ってやると、浮竹は余計に啼いた。

「ああん、だめぇええ」

「ここをこんなにしてるのに?」

ぐちゅぐちゅと音を立てる結合部を、わざと見せつけるように、京楽は動いた。

「やああああ」

「君のここは、もっとって言ってるよ?」

「ああああ!」

京楽は、浮竹の奥をごりごりと削りあげながら抉った。

「あああ!!」

浮竹はシーツに精液を飛び散らせていっていた。

「んああああ!」

ウサギの耳に噛みつかれて、僅かだが吸血されると、浮竹は涙を零した。

「あああ!もっと、もっとお前をくれ、春水」

「いっぱいあげるから、受け止めてね?」

京楽は、浮竹の胎の奥に濃い子種を出していた。

びゅるびゅると注ぎ込まれる精子に、浮竹はオーガズムでいっていた。

「あ、あ、もっと」

「愛してるよ、十四郎」

「あ、俺も愛してる・・・・ああああ!」

うさぎ耳をぐりぐり撫でられながら、突き上げられた。

「耳はだめえええ」

「いいの、間違いでしょ?」

「あああ!」

最奥に侵入しながら、浮竹のうさぎ耳をいじった。

「あ、いっちゃう!」

「何度でもいっていいよ。ぐずぐずになるまで、溶けちゃって」

「ああああ!!」

浮竹はオーガズムでいって、精液も出していた。

「んああ」

京楽が、2度目になる熱を浮竹の中に放つ。

「あああ、お前で、満たされていく・・・・・」

「うん。もっといっぱいあげるから、全部飲んでね?」

「あああ、うあああ!」

ウサギ耳を散々いじられた。

浮竹はもう出すものがなくなって、オーガズムでいきっぱなしだった。

「ああ・・・・・・」

京楽のものはまだ硬く、浮竹はうさぎ耳をいじられながら、京楽が最後の一滴まで自分の中に注ぎ込んだことを確認すると、意識を失った。

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起きると、体は綺麗に清められており、中に出されたものもかき出されたいた。

「京楽」

「はい、反省してます」

「全く、お前はまた変な薬を俺に盛りやがって」

「でも、いい思いはしたでしょう?」

京楽が、まだついたままの浮竹のうさぎ耳を指でつまみあげる。

「バーストロンド!」

「もぎゃああああああ」

爆発の魔法で、京楽は吹っ飛んでいくのであった。


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エンシェントエルフとダークエルフ33

北のロードア帝国で、イエティが異常繁殖してるので、駆除の依頼が回ってきた。

ロードア帝国は、領土の大部分が永久凍土に覆われている寒い地方だ。

そんな場所まで、冒険者は普通趣かないが、報酬金がいいので、北のロードア帝国までの便の蒸気船が出ていた。

浮竹と京楽も、イエティの退治依頼を受注して、1週間船で過ごすのであった。

「くるっくー」

「ブルン、我慢してくれよ。船上生活ではそうそうゴミは出ないんだから」

「くるるー」

ブルンは怒って、浮竹に体アタックをしたが、小さいので威力はなかった。

「そもそも、ブルンは食いだめできるんだろう?出発前に町中のゴミを処理していたじゃないか

「くるる」

「それとこれは別?仕方ない、厨房にいって生ごみでももらってくる」

「くるる♪」

「え、ついていくって?仕方ないなぁ」

「浮竹、よくそんなに元気でいられるね・・・・・」

京楽は船酔いしてしまっていた。

「シーサーペントが出たぞ!」

巨大な海蛇の化け物だった。

剣では届かず、矢と魔法で退治することになった。

「ファイアボール!」

「フレアアロー」

同乗した冒険者たちは、船に火が付くのを恐れて、初級魔法しか使わない。

「浮竹、支えてて」

「ああ、分かった」

「メテオストライク!ハイマジックシールド!」

京楽は、禁忌の炎属性の隕石が降り注ぐ魔法を使った。

「UGYAAAAAAAAA!!」

シーサーペントは悲鳴をあげて、息絶えてしまった。

魔法で結界を張っていたので、隕石が船に落ちることはなかったが、近くの海に落ちて衝撃と波がやってきた。

「浮竹、気をつけて」

「京楽こそ!」

「くくるーー?」

「あ、ブルン、空を飛べ!」

「くるー?」

そのまま、ブルンは波にさらわれてしまった。

「ブルン!」

「くーーくくる!!!」

ブルンが虹色に輝いた。

波がおさまり、船から落ちかけていた者もみんな助かった。

ブルンは波にさらわれたかと思うと、空を飛んでいた。

「一体何があったんだ?」

「あのエルフの魔法使いが禁忌を使ったようだぞ」

「マジックシールドも唱えていたぞ。やり手だな」

噂の的の京楽はというと。

「船が揺れて・・・・おえええ」

船の上から海にむかって、胃の内容物を出しているのだった。

「くくるー」

ブルンがヒールをかけてくれたので、大分ましになったが、船酔いは病気や怪我ではないので、完治することはない。

それでも常にヒールをもらって、通常の人と同じようにまで回復した。

「もう、ブルン、ヒールでこんなに楽になるなら、最初からかけてよ」

「くくるー」

「船酔いを見たのは初めて?まぁそうだろうな。京楽も、ブルンのお陰で船酔いがなくなったんだろう。そうせめてやるな」

「それもそうだね。ありがとうね、ブルン」

「くくるー」

「感謝の意思を示すならゴミをくれ?君、食事のことしか頭にないのかい?」

「くくる?」

「ちゃんとみんなのことも思っているよ・・・本当かなぁ」

蒸気船で、1週間かけてロードア帝国までやってきた。

雪が降っていた。

「うわー寒い寒い。上着着ても寒い」

「くくー」

ブルンが魔法をかける。すると、体がぽかぽかしてきた。

「ぶるん、お前回復以外でも魔法使えるんだな?地味な魔法だけど」

「くくる」

「でたぞーー、イエティだああ!!」

早速でてきたイエティは大量だった。

「クリエイトアストラルエンジェル。クリエイトアストラルデビル」

浮竹は、人工的な天使と悪魔を作り出す。

「「「テトラボックス」」」

無の破壊魔法を唱える。

3重詠唱で、あれだけいたイエティの群れは、魔法でぎゅっと押し込められて、消滅してしまった。

「すごいな、あんたら。Sランク冒険者だろう」

「いや、Aランクだ」

「Sじゃないのか。まぁ、再来年にはSランクだろうな」

用意されていた馬車に、それぞれパーティーごとに別れて、ロードア帝国の異常繁殖したイエティの群れの駆除をした。

イエティの駆除をしていると、ボスだと思われるキングイエティが現れた。

「HYURURURURU」

キングイエティは、強烈な氷のブレスを吐いてきた。

「くくーー!!」

ブルンも、炎のブレスを吐いて相殺する。

その間に、浮竹がミスリル銀の魔剣に炎をエンチャントしてキングイエティの足をきる。

「BURURURURU!!!」

キングイエティは咆哮した。

雪崩が襲ってきて、浮竹と京楽はシールドを張ってやり過ごす。

「雪崩を起こすなんて、すごいね。だてにボスじゃないってことかな」

「手傷は負わせておいた。血の跡をたどって、トドメをさそう」

二人はシールドを解除する。

雪まみれになったが、仕方のないことだった。

「くくる!」

空を飛んで逃げたブルンは無事だった。

キングイエティのものと思われる、青い血液の液体が雪の上を続いていた。

それをたどっていくと、巨大な洞窟があった。

「ライト」

京楽が光を作り出す。

奥にがイエティのメスと、子供たちがいた。ボスは、子作りに励んでいる最中だった。

「クリエイトカースドラゴン」

「きゃしゃあああああ!!」

浮竹が作り出した人工的な呪いのドラゴンは、イエティの子供とメスを喰らっていく。そして、大地に呪いを与えた。

生き物が繁殖できない呪いだった。

ボスのキングイエティは、カースドラゴンに立ち向かい、カースドラゴンを引き裂いた。

「ぎゃうううう!!」

悲鳴をあげて、カースドラゴンは消えた。

「京楽、用意はいいか?」

「浮竹こそ」

「「フレアフェニックス」」

キングイエティごと炎で洞窟を包み込む。

急いで洞窟からでると。

「「エクスプロージョン」」

爆発の魔法で、イエティたちを生き埋めにした。

繁殖のオスであったボスの討伐で、イエティの異常繁殖は終わるだろう。

イエティ退治に、1週間をかけた。

蒸気船の往復で2週間。実に3週間、家をあけていたことになる。

師匠である剣士の京楽には、連絡を入れておいた。

やがて、イアラ帝国から出発してちょうど23日して、やっと自宅に帰ってきた。

「くくるーー」

ぶるんが、留守にしていた間にたまったほこりなどを食べて綺麗にしてくれた。

「師匠のところに顔をだそう。長らく家を空けていたからな」

「そうだね」

旅の荷物を片付けて、お風呂に入って服を着て、簡単な食事をとり、身支度を整えて、京楽の転移魔法で師匠である剣士の京楽の家にきた。

チリンチリン。

ベルが鳴ると、剣士の京楽が対応に出てくれた。

『やっと帰ってきたの。長かったね』

「長期出張討伐は、Sランク試験に通るためにいるものだから」

『ブルン、プルンが最近会えないからって元気がないんだ。会って、元気づけてやってくれないか』

精霊の浮竹の言葉に、ブルンが奥にいるプルンのほうへ飛んでいった。

「くくーー!」

「ププウ!」

ブルンは、体を黄色に変えて喜んでいた。

「くっくるー」

「プププ」

『ふふ、喜んでる喜んでる』

ブルンは、光輝いた。

『なんか、ブルン、違う魔法覚えたの?』

「あ、なんか船酔い治したり、船で波にのまれそうな人助けたり・・・ちょっと、普通のヒール以外の魔法も覚えたかんじです」

『やっぱり。次の進化先はアークエンジェリングスライムでしょ。アークエンジェリングスライムは、普通の魔法も使う。きっと、進化の前触れかもね」

「ブルン、お前また進化するのか?」

「くくるー?」

なんのこと。僕わかんない。

「ププウ」

お兄ちゃん、また進化するの?

「くく」

そのうちするかもね。

「プププ」

すごいね!あと2つ進化あるんでしょ

「くっくるーー」

最後にはセラフィムスライムっていう天使みたいなスライムになるんだよ。

「ププウウ」

俺はゴッドスライムになるんだ。

「くくるー」

神様!すごいね!

「ププ」

お兄ちゃんのほうがすごいよ。


会話を続ける2匹のスライムを、4人はいつまでいつまでも見ているのだった。







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エンシェントエルフとダークエルフ32

Sランクの依頼を受けた。

Sランク試験まであと2年を切った。できる限り実績を踏み、力をつけておきたかった。

今回は、漁場を荒らし回っているクラーケンの退治だった。

敵が巨大なので、剣は使わずに魔法で倒すことになった。

大きな船に乗って戦うことも考えたが、船がだめになる可能が高いので、京楽の魔法でフライウィングという空を飛ぶ魔法で海に出て、浮かんできた巨大なクラーケンに、二人は雷の魔法を放った。

浮竹は、師匠の修行のお陰か、火、水、氷の他に風と雷の魔法を使えるようになっていた。

「「サンダーボルテックス」」

二人は、雷の禁忌を使った。

クラーケンはこんがり焼けて、ぷかぁと浮かんできた。

それだけならまだ良かった。

周りの魚たちも感電死して、ぷかぁと浮かんでいた。

その数たるや大量。

「ちょっと、冒険者さん、クラーケンを退治してくれたことには感謝しますが、やり過ぎですよ!港に近い場所じゃ魚とれなくなったじゃないですか!」

漁業に携わる者たちは、とりあえず浮かんでいる魚の死体を全部回収して、近隣の住民に分けあたえたりして、なんとか無駄にならないようにしていた。

「クラーケンの死体は、あなたたちが責任をもってなんとかしてくださいね!」

報酬金は金貨600枚だったが、被害が多かったので半額の300枚にされた。

「浮竹ー今度からはオーバーキルになるのはよそうね」

「そうだな」

報酬金を半額にされたことに嘆きながら、とりあえずクラーケンの巨大な体を輪切りにしてアイテムポケットにいれた。

そして一言。

「イカ焼きが食いたい」

「クラーケンでイカ焼きできるかな?」

「文献では、クラーケンの肉というか身は食えるらしい」

京楽が空間転移の魔法を使い、冒険者ギルドで半額の報酬の金貨300枚と魔石の買取金25枚を受け取ると、キャサリンは解体工房にクラーケンを出せと言い出した。

「輪切りになってるよ」

まさか提出になるとは思わず、輪切りにされてこんがり焼かれたクラーケンが出された。

めっちゃイカ焼きの匂いがして、浮竹は齧ってみた。

「うん、うまい。イカ焼きになってる」

「ちょっと、解体工房に出したのに何食べてるの。でもおいしそう、僕も」

京楽はナイフを取り出して、一番おいしそうなゲソを一口食べた。

「おいしい」

「な?」

「ちょっとあなたたち!ギルドで買わなくていいのね、このクラーケン。随分こげちゃってるし、素材としてはだめだわ」

「今回はクラーケンの買取りはなしということで」

京楽は、クラーケンをアイテムポケットに直した。

ちなみにアイテムポケットには、海に浮かんでいた魚やエビといった、新鮮な魚介類がたまっていた。

責任をもてと、買いとらされたのだ。

金貨50枚分はふっとんでいった。

アイテムポケットには時間の流れはない。魚介類を置いていても、腐ることはなかった。

一度家に帰り、浮竹と京楽はクラーケンでイカ焼きを作った。

次に買いとった海老や魚を、クラーケンを小さく切った身をいれてパエリアを作った。

さらについで、海鮮丼もつくった。

全部、4人分である。

「よし、師匠たちにも食べてもらおう」

「くくるーー」

ブルンは、海老の皮やら、酒の骨などを大量に食べてもらった。

早速出来上がったあつあつのまま、アイテムポケットに夕飯となる飯をいれて、京楽は空間転移の魔法で剣士の京楽の家にきた。

チリンチリン。

べるを鳴らすと、剣士の京楽が出てきた。

『どうしたの』

「師匠、夕飯の差し入れです」

『ええっ!今作ってる途中なんだけど』

「それは明日にでもまわして、今夜はこれを食べてよ」

京楽と浮竹は、イカ焼き、パエリア、海鮮丼を出していった。

「お、うまそうな匂いがするな」

精霊の浮竹がつられて玄関に置かれた料理のイカ焼きを手に取って、食べる。

「なんだこのイカ焼き!人生で食べてきたイカの中で一番うまい!」

「それ、クラーケンのイカ焼きだよ」

『クラーケン!食べるのは初めてだ』

「それは僕もだったんだけど、普通のイカよりおいしくてびっくりしたよ」

京楽が、おみやげだと、魚やエビ、貝類をくれた。

『そうか、クラーケン退治して、雷の禁忌でも放って、やりすぎたんだね?』

「「ぎくっ」」

ブルンが、部屋に奥にいるプルンに会いに入って行ってしまった。

「ププウ!」

「くくる~~」

『まるで出前だね。まぁ、玄関でいるのもなんだし、料理もってリビングルームにでもおいでよ』

剣士の京楽の許可が出たので、家に上がらせてもらった。

精霊の浮竹は、クラーケンのイカ焼きが気に入ったようで、さっきからおかわりばかりしていた。

「くくる~~~」

「ププウ」

2匹にも、プルンには林檎を大量と、魚介類のゴミをブルンに与えた。

エルフ浮竹と京楽も、パエリアと海鮮丼を食べていく。イカ焼きはここに来るまでけっこう食べたからだ。

「もうだめ、食べれない」

「勿体ない。まだこんなに残っているぞ。俺が残りを食おう」

「浮竹の胃って、ブラックホール?」

『ふふ、精霊の浮竹と一緒だね。よく食べるよ』

『俺は普通だ!』

イカ焼きだけですにで3人前を食べての意見だったので、みんなそういうことにしておいた。

「ププウ!!」

「くくるうーー」

見ると、遊んでいた2匹のプルンの王冠に、ブルンがはまってしまっていた。

「また、厄介なことを」

京楽が力の限りブルンをひっぱると、ブルンはすぽっと抜けたが、王冠の形になっていた。

『あははは、変な形!』

精霊の浮竹に笑われて、ブルンは「くるるー」といって、浮竹の頭の上に乗った。

「変な形のエンジェリングスライムだね、ブルン」

「くくう」

この形からなかなか治らない。ブルンはそう言った。

「ヒールしてみればどうだ」

エルフの浮竹の言葉に、ブルンは自分にヒールを使った。

歪な姿になっていたブルンの体系が、元の丸いスライムのものに戻った。

「くくるーー!!」

ブルンは喜んで空を飛び回り、照明にぶつかって墜落してきた。

「ぷぷう!」

お兄ちゃん、危ない!

すぽっ。

また王冠の中にはまってしまい、最初に逆戻りするのであった。

『結局、そうなるのね』

『王冠の上に着地しなければいいんじゃないのか』

もっとも精霊の浮竹の言葉に、2匹はびっくりするのであった。


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「最近、モンスターの活動が活発化している気がするんだけど、気のせいじゃないよね」

『そうだね。藍染の件もあるし、人工モンスターが暴れたりしている』

「藍染って何者なんだ?」

『僕と同じ不老不死。ただし、条件つきだけど。神人の失敗作で、定期的に人間の生き血を必要としている。自分が神になると思っている』

「なんとも、物騒な話だ」

「そうだね」

『君たちも、見かけたら注意するんだよ』

『そうだぞ」

「肝に銘じておくよ」

「分かった」

「ププウ」

「くくるー」

プルンとブルンは、また離れ離れになるこを嘆いたが、またすぐ会えると4人が言ってくれたので、悲しまずにお別れをした。

「じゃあ、こっちで何か情報が入り次第届けるよ」

『うん、そうしてくれると助かるよ』


こうして、クラーケン退治は4人の胃におさまり、終わるのであった。

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エンシェントエルフとダークエルフ31

その女性は、褐色の肌が美しいダークエルフだった。黒髪に黒目をしていた。

「母上が捨てた子か・・・面白い」

女性の名は、夜一と言った。

見た目は京楽より若いが、京楽より200歳は年上の実の姉だった。

夜一は、見た目を人間に見える魔法をかけて、空間転移魔法でイアラ帝国までくると、浮竹と京楽が住んでいるという家を訪ねた。

ピンポーンとチャイムが鳴り、浮竹が対応にでた。

「どちら様で?」

「よう。京楽の嫁じゃな?」

「はぁ?」

「儂は四楓院夜市。京楽春水の実の姉にして、ダークエルフじゃ」

夜一は、人間に見える魔法を解いた。

「京楽に何の用だ!」

いつでも剣を抜けるように、鞘に手を伸ばす。

「誤解じゃ誤解じゃ。捨てられたはずの弟が、人間社会でAランク冒険者をやっていると聞いてのう。ただ純粋に、好奇心から会いに来ただけじゃ。害意はない」

「くくるーーー」

ブルンが、この人ほんとに害意がないよと言うので、浮竹は夜一を家にあげた。

「京楽」

「んー?」

ソファーでゴロンと横になって、書物を読んでいた京楽は、ダークエルフの夜一を見て、闇の魔法を発動させようとした。

「いきなり初対面で闇の魔法はなじゃろ。儂は四楓院夜一。灼熱がシャイターンの長女にして、お主の実の姉じゃ!」

「はあああああ!?」

間の抜けた京楽の声が、家中に響き渡った。


とりあえず、お茶を出した。

「で、夜一さんはなんの用でこんなところにいるの?」

「夜一姉さんじゃ」

有無を言わさない強さで迫られて、咳払いしてから京楽は言い直した。

「で、夜一姉さんは何の用があってここにきたの?」

「儂か?儂は何の用もない。しいていれば、お主の様子を見に来たくらいじゃろうか」

「そんな理由で、わざわざ魔大陸から来たの!?」

「この国には昔きたことがあるからのお。転移魔法で一発じゃ。それにしてもやるのうお主。こんな綺麗なエンシェントエルフを嫁にするなぞ」

「浮竹は僕と同じ男だよ!」

「分かっておるわい。でも、ものにしたんじゃろう?お主の匂いがぷんぷんするわい」

その会話を聞いていた浮竹は、真っ赤になってブルンを抱きしめて、隣の部屋に逃げてしまった。

「ちょっと、浮竹逃げないで!頼むから、この夜一姉さんと2人きりにしないで~~」

情けない声を出す京楽に、仕方なく浮竹は部屋に戻ってきた。

「くくるーー」

「お、エンジェリングスライムか。実物を見るの始めてじゃのう。なんていうか・・・うまそうじゃ」

「くくるーーー!!」

ブルンは、空を飛びまくって、照明と激突して落っこちてきた。

「夜一姉さん、そんな本当か冗談なのか分からないことを言わないで!」

「む?本心じゃぞ」

浮竹が、気絶したブルンを抱きしめて、首を横に振った。

「ブルンは大切な家族だ。食べさせないぞ!」

「嘘じゃ嘘じゃ。ただの冗談じゃ」

「ダークエルフの普通の食生活がどんなのか分からないから、冗談に聞こえない」

「む?人やエルフのような同じような生活を送っておるぞ?ただ、モンスターの肉を食うのが多いくらいじゃの。違いは」

「ダークエルフって、もっと魔族に近くて野蛮なんじゃ」

「ダークエルフというだけで、そう決めつけないでくれぬか」

「ああ、すまなかった」

「よい。儂も悪ふざけが過ぎた」

夜一は謝ると、京楽の手を取った。

「人間社会の冒険者ギルドを見たいのじゃ。連れていってくれぬか?」

「でも、その見た目じゃ・・・・」

夜一は、人間の女性に見える魔法を使った。その魔法は完璧で、魔力障害を発生させても解けなかった。

「分かったよ。夜一姉さんの言う通りにするから、目立たないでね。あと、冒険者ギルドでは僕がダークエルフっていうのはばれてるから、姉だって言わないでね」

「分かった分かった。言う通りにするから、早く冒険者ギルドへ行こうぞ」

京楽と浮竹は、ブルンと人間にしか見えない夜一を連れて冒険者ギルドに来た。

「あら、春ちゃんうっきーちゃん、どうしたの?今日はもう帰るって言ってたのに」

「なんじゃ、この化け物は?」

キャサリンは、ぴきっと引きつった。

「何か言った、お嬢ちゃん?」

「お主のことを化け物と言ったのじゃ。冒険者ギルドのギルドマスターなのか。マスターが化け物と・・・・・・むーーー」

京楽は、夜一の口を塞いだ。

「むーむーーーー」

「夜一ちゃん、あっちに依頼の掲示板あるから、それを見に行こう」

「だめだ、夜一さん。あのオカマを化け物扱いしたら、後で凄い目にあうから、化け物って言っちゃだめだ」

「わかった。お主らの言う通りにする。依頼・・・・何々、ファイアドラゴンの退治。これが面白そうじゃ。受けて、退治にいくぞ!」

「いや、僕らにはまだ無理だから。ドラゴン退治はまだしたことがないよ」

「じゃあ、ますます受けねば!」

「だから、まだ早いって!ドラゴン退治はSランクになってから受けるって決めてあるんだよ」

「つまらんのう」

夜一は依頼書を隅から隅まで見た。

「よし、この薬草採取に行こう」

「ええ、本気なの!?」

「これなら、危なくないじゃろ?」

「でもそれ、Fランクの依頼だよ?報酬とか銀貨1枚だよ?」

「いいのじゃいいのじゃ。これを受ける。ついでに、儂も冒険者登録しておこうかの」

そうして、夜一はFランク冒険者になった。

草原にいき、ヒーリング草と、解毒ポーションの元になる毒消し草を探して、籠の中に入れていく。

指定の数をつみ終わる頃には、日が暮れていた。

「かけだし冒険者は大変じゃのう。こんなに苦労して、報酬は銀貨一枚だけとは」

冒険者ギルドに戻ると、夜一の顔を知らない同じAランク冒険者たちが声をかけてきた。

「なんだ、新米冒険者のお嬢ちゃんのお守か?」

「まぁ、似たようなもんだよ」

「ぬう、バカにされておるのか・・・・」

「夜一さんは、この籠をもって、受付嬢のところに行ってくれ」

「分かったぞ、浮竹」

夜一は、ヒーリング草と毒消し草をそれぞれ50個ずつ提出して、報酬の銀貨一枚をもらった。

「今夜は疲れたのじゃ。帰るぞ」

「ふーん。京楽さんが目にかける子だけあって、かわいいじゃん」

「ねえ、お嬢さんお名前は?」

「四楓院夜一じゃ。魔王が配下、灼熱のシャイターンの・・・むーーーー」

浮竹と京楽に口を塞がれて、夜一はずるずると浮竹と京楽の自宅に引っ張っていかれた。

「何をする!」

「それはこっちの台詞だよ!中立を保っているとはいえ、魔族は人間の敵なんだよ!しかも灼熱のシャイターンは四天王の一人!その長女とばれたら、どうなるか分からない!」

「むう、そうなのか。儂が悪かった・・・」

「まぁ京楽、悪気があったわけじゃないから」

「浮竹は甘いよ。さぁ、用は済んだでしょ。魔大陸に帰ってよ」

「むう、まだ人間社会の市場などを見て回りたいのじゃ」

「じゃあ、明日にしよう。今日は夕飯をとって、風呂に入って寝よう。着替えとかは持ってきているか?」

浮竹の言葉に、夜一は頷いた。

「勿論じゃ。お風呂セットももってきておるし、布団と毛布と枕ももってきておる」

アイテムポケットをごそごそして、夜一はお風呂セット手に、脱衣所に消えていった。

「あ、お風呂まだ水じゃない?」

「ファイアボール!」

夜一は、器用に炎の魔法でお湯にして適温にすると、鼻歌を歌いながら長湯をするのであった。

「ああ、いい風呂じゃった。お、おいしそうじゃの」

今夜のメニューは、タルタルソースつっきのエビフライ、コーンスープ、白パン、ビーフシチューであった。

「うむ、うまいのお」

「京楽が作ってくれたんだ。後で、お礼を言ったら、きっと恥ずかしがるぞ」

くすくすと、浮竹は笑った。

その京楽は、デザートを作るためにキッチンに居た。

「苺のシャーベットでいいか」

苺のシャーベットをもってくると、夜一はニヤニヤしていた。

「なんだい、夜一姉さん」

「この料理、全部お主が作ったのじゃろう?」

「そうだけど」

夜一は、背伸びをして京楽の頭を撫でた。

「偉いのう、京楽は。姉として、鼻がたかいぞ。冒険者ギルドでの評判を聞く限りでは、次のSランク試験にはほぼ通りそうというではないか」

「まだまだ、修行が足りないよ」

「謙虚なところも良いな」

その日はそのまま就寝して、次の日になって朝食をとって、三人で市場に出かけた。

「おお、人が多いのう」

「そりゃ、帝都だからね」

「あっちの店に売ってあるあれはなんじゃ?」

「ああ、クレープだな。食べたいのか?」

「うむ」

「じゃあ、買ってくる」

浮竹は、クレープ屋にいって、チョコ味とバナナ味とストロベリー味を注文して、持って帰ってきた。

「食べてもよいのか?」

「うん、いいよ」

「甘い・・・初めて食べる食べ物じゃ。人間社会は、いろんなものがあって楽しいのう」

市場でいろいろ見て、夜一の職業がアサシンであることが分かり、短剣がボロボロだったので新調することにした。

浮竹と京楽が馴染みにしている武器屋で、ミスリルのナイフを二つ白金貨七枚で購入した。

「いやあ、人間社会の鍛冶屋はすごいのう。ミスリルの武器を扱えるのか」

中古品だったので、今度は馴染みの鍛冶屋でミスリルのナイフを研いでもらった。

「ふふ、これでまたいい仕事ができそうじゃ」

「夜一姉さんは、そのナイフで人を殺すの?」

「人というか、魔族じゃがの。灼熱のシャイターンに逆らう連中をヤるのじゃ」

「そう・・・・・」

京楽は、沈んだ顔をしていた。

「心配せんでも、無駄な殺しはせぬよ。どうしても必要になった時、集団の頭を暗殺する。その程度じゃ」

「そう・・・・・」

京楽の表情が、少し晴れた。

「さて、人間社会の見学も終えたし、いろいろ食えたし、短剣も新調したし、儂は魔大陸に戻るよ」

自宅に戻ると、夜一がそう言いだした.。

「夜一姉さん・・・・灼熱のシャイターンは・・・・母さんは元気にしてる?」

「おう、元気じゃぞ。この前、一三番目の夫と結婚して、新婚生活を満喫中じゃ」

「一三番目の夫?今、母さんには夫は何人いるの!?」

『生きている数では、九人じゃな。あと、男妾を5人もっておる。母上は、エルフにしては性欲が旺盛じゃからのう。子は末子の子で12人目か。まだ30歳じゃ」

「はぁ・・・なんか眩暈がする」

「大丈夫か、京楽」

「うん。僕の家庭問題から。平気だよ、浮竹」

「じゃあ、儂は戻るな。また、遊びにきてもよいじゃろうか?」

「うん、別にいいよ。ただし、ダークエルフってばれないようにね」

「分かっておるよ」

「さよなら」

「うむ、浮竹、そなたは義理の弟になるのじゃな、そういえば。京楽と契りの儀式を交わした伴侶じゃろ」

浮竹は真っ赤になって、エンジェリングスライムのブルンで、顔を隠してしまった。

「ははは、照れ屋じゃのう」

「もう、夜一姉さん、浮竹は純粋なんだから、からかわないで」

「悪かった悪かった。では、今度こそ帰るよ」

夜一は、空間転移魔法で、魔大陸に戻ってしまった。

「なんか、嵐のような人だったな。そこだけは、シャイターンにそっくりだ」

「僕の一族って、みんな嵐のような人物だったりして」

冗談で言ったつもりであったのだが、事実、灼熱のシャイターンの一族は、ほとんどが嵐のような人物で構成されていると、まだ知らない京楽であった。

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エンシェントエルフとダークエルフ30

浮竹とブルンが攫われた。

正確には行方不明になったのだが、事件が解決してから犯人から手紙があったのだ。

(ありがとう)

「はぁ?」

京楽は情けない声をあげていた。

ことの発端は、昨日にまで遡る。

草原で、浮竹と京楽とブルンは、ピクニックをしていた。

ブルンには大量のゴミを与えてやった。

そのブルンが、何か変な声がするといって、飛んでいった。

その後を浮竹が追ったのだが、そのまま一人と一匹は帰ってこなかった。

周囲を探したが、姿はなく、先に帰っていると思ったのだがいなかった。冒険者ギルドにもいなかった。このまま帰ってこないと心配なので、冒険者ギルドの者にも依頼して、行方を捜してもらおうかと思っていた矢先だった。

行方不明になった翌日に、浮竹とブルンは帰ってきた。

「浮竹にブルン、どうしたの!心配したんだよ!」

「助かった!よかったよう」

「くるるーーー」

一人と一匹は泣きだした。

なんでも、獣人に誘拐されたのだそうだ。

魔力が消えるお札を使われて、目隠しをされて、プルンと一緒にどこかへと運ばれた。

周囲をふっとばそうかと思ったが、犯人は明らかに子供だったのだ。

子供に誘拐されてついた先は、山奥の深い森の中だった。

「メアリ、どうしたの。探したのよ」

「かあさん!かあさんを治せる人を連れてきたよ!」

大きな白い狼と、獣人の子供たちがいた。

「えっと、これは?」

「誘拐しちゃってごめんなさい。報酬を払うお金がないの。どうか、かあさんの傷を癒してください!」

浮竹は、大きな白い狼が獣人たちの母親であると分かった。

「ちょっと、傷を見せてくれるか」

「はい。この右足です」

右足は腐って半分ちぎれかけていた。

「これは酷い。どうしたんだ?」

「人間の罠にはまって・・・・かあさんの毛皮が高く売れるからって、人間たちが」

「ブルン、頼めるか?」

「くるる~~~」

ブルンは体を光らせて、大きな白い狼の傷を治した。

「まぁ。怪我が嘘のよう」

「それより、この獣人たちはあなたの子なのだろう。人化はできないのか?」

「いえ、できます。ただ、足の傷が深すぎて人化できなかっただけで。私はダリア。この山の奥の森を縄張りにしている狼の獣人です」

ダリアは人化した。

純白の獣人が現れた。

髪も肌も目も衣服も、何もかもが白かった。

頭の上には狼の耳があり、白い尻尾もついていた。

「傷を治してくださり、ありがとうごいます・・・・ううう」

「どうした?」

「こ、子供が・・・生まれそう」

「ええ!」

「くくるー!」

「おかあさん、どうしたの、まだ苦しいの?」

「違うのよ。新しいあなたたちの妹か弟ができるの」

「すみません、いつもは亭主がいるのですが、大掛かりな狩りの最中で。お産の手伝い、してもらっていいですか?」

浮竹は真っ赤になった。

「いいが、俺は男だぞ?」

「ええ、分かっています。でも、子供たちは小さくてまだ頼めません」

それから、浮竹はお湯を分かし、綺麗な布を用意して、子供が生まれてくるのを待った。

「出てこないぞ?」

「逆子のようです。少しずつ、ひっぱりだしてください」

足がでてきたので、少し引っ張った。ピクリと足は動いたが、それきり動かなくなった。

「だめだ、息をしていないかもしれない。ちょっと荒くなるが、我慢してくれ!」

浮竹は、赤子の足を掴んで無理やり引っ張りだした。

やはり、息はしていなかった。

「死産ですか・・・・・うううう」

「まて、まだ可能性はある!」

浮竹は、習ったことのある方法で、心臓マッサージを繰り返し、息を吹き込んだ。

するとどうだろう。

赤子が息を吹き返したのだ。

「おぎゃあおぎゃあ」

「ブルン、頼む」

「くくうるーー」

ブルンが魔法をかけて、赤子の容態はすぐに安定した。

「よかったー。生まれたよう」

「くくる――」

浮竹とブルンは、わんわんと泣きだした。

そのまま、一晩を様子見のために親子の様子を見ながら眠った。

「イアラ帝国のどこにお住まいですか?」

「帝都アスランだが」

「そこなら、行った事があるので、空間転移の魔法で送りますね」

「あ、俺は浮竹という。こっちはブルンだ」

「ありがとございます、優しい浮竹さん、ブルンさん」

ダリアは、去り際に刃で作られたネックレスをくれた。

その刃は、牙狼一族の証であった。

牙狼一族は義理堅いという。

「何か、獣人のことで問題が起きたら、そのネックレスを見せてください。きっと、役に立ちますから」

そうして、浮竹とブルンは帰ってきた。

子供がちゃんと生まれた記憶が蘇り、京楽が目の前にいたので緊張の糸が解けて、浮竹とブルンはわんわん泣きだした。

それから、犯人らしき人物が残した手紙がポストの中に投函されていた。

内容は「ありがとう」

浮竹とブルンは泣くばかりで、京楽は訳が分からないのだが、浮竹とブルンが帰ってきてくれて、ほっとするのだった。

ことのあらましを聞いて、京楽は溜息をついた。

「で、その獣人の子供に攫われたというか連れていかれて、ブルンも浮竹も、犯人の母親の傷を無報酬で治しちゃったんだね?」

「無報酬じゃないぞ。ちゃんと、牙で作られたネックレスをもらった」

「牙狼族?聞いたこともないよ?」

「でも、いたんだ。真っ白な大きな狼が」

「それってフェンリルじゃないの?」

「フェンリルは、氷の精霊だろう?」

浮竹が首を傾げる。

「個体によっては、ただの大きな狼の場合がある。フェンリルなら、牙狼族と名乗っていたとしても頷ける」

「そういえば、人化した時何もかもが白かった」

「白亜種族のフェンリルだろうね」

京楽は、浮竹より獣人なんかには詳しかった。

「子供を産んだんだけど、死産で、俺が蘇生させて、ブルンが安定させてくれたんだ」

「蘇生できたのかい。おまけにフェンリルの傷を癒したとなると、牙は本物かもね」

京楽は、牙狼族と名乗ったフェンリルの牙のネックレスをみた。ほのかだが、氷の属性がエンチャントされていた。

「なんでも、毛皮目当ての人間の罠にかかってしまったらしい」

「フェンリルの毛皮は、毛皮の中でもダントツに高いからね」

「でも、なぜ?フェンリルは獣人でもあるのだろう?」

「正確には、人の姿になれる獣かな。本性は獣だよ」

「仲良く、なれないのかな」

「無理だろうね。本物の獣人ならいざ知らず、フェンリルの獣人だと、毛皮目当てで襲からわれる、人を見つけると襲うだろう。君は、エルフだったから無傷だったんだよ。あとブルンも連れていたから」

「そうか・・・・仲良くなれないのか」

しょんぼりする浮竹に、京楽が助け舟を出す。

「あ、でもそのネックレスをもらったってことは、友好の証じゃないの?」

「そうかな。そうだな。うん、きっとそうだ」

「くくるーーー」

「ブルンも、そう思うか?」

「くくる!」

浮竹とブルンは、前の日食事をあまりとっていなかったので、よく食べて眠りにつくのであった。


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「フェンリルの捕獲に失敗したか」

藍染は、ぽつりと呟いた。

「まぁいい。他の魔獣を探してみるか」

ワイングラスの赤い液体を飲み干す。

それは、ワインなどでなく人の生き血であった。不老不死を維持するために、時折藍染は人の生き血を飲むのだった。

ゴポリ。

藍染の背後では、変わらず水槽の中で何かの肉塊が蠢いていた。




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エンシェントエルフとダークエルフ29

浮竹と京楽は、またイアラ帝国の女帝卯ノ花に呼び出された。

前回のケルベロスと今回のヒュドラで、騎士団が壊滅的だというのだ。本来なら、聖騎士を派遣する内容に、浮竹と京楽を派遣したいのだという。

それはイアラ帝国のウララ高原にある、スキア帝国の遺跡での話だった。

重要なイアラ帝国の資金源でもあるミスリルが発掘できる遺跡で、変異キメラが出て、冒険者たちを食い殺していったのが今から2カ月ほど前の話だ。

その変異キメラを、京楽が禁忌の魔法ワールドエンドで葬った。

それまでの犠牲者の数は30人以上なのだという。地下のダークエルフのことも含めると、死者は50人以上になるだろう。

ダークエルフを使って変異キメラを作っていた男、藍染のことは女帝の耳にも入っていた。

「それで、お願いがあるのです。遺跡にでるリッチとレイスたちを何とかしてほしいのです。このままではあの遺跡でミスリルの鉱石がいつまで経っても掘り出せません。通常、聖騎士を派遣して駆除する予定だったのでが、モンスターの進撃で我が騎士団は聖騎士も含めてボロボロで。
リッチとレイスは聖属性と火属性が弱いとききます。
そこで帝都アスランの冒険者にどうかならないかと、ギルドマスターに聞いたら、あなたたちの名前があがったのです」

「はぁ・・・・・」

あのオカマのギルドマスターめ。

京楽心の中で罵っていた。

「しかし、それなら教会の人間が適任なのでは?」

「教会側にも要請したのですが、とてもリッチを浄化できる聖職者はいないとのことなので・・・・・」

「くくるー」

エンジェリングライムに進化した、ブルンを卯ノ花は見ていた。

「あなた方が連れているエンジェリングスライムは、浄化の魔法が得意なはず。レイス程度なら楽勝でしょう。リッチもどうにかなるはず。ですから、お願いします」

「まぁ僕ら自身の力でもどうにかなるけどね」

「陛下、今回の件はお引き受けいたします」

「ありがとございます。健闘をお祈り申してあげます」

謁見の間から去ると、京楽が文句を言った。

「そもそも、リッチを浄化できない教会ってどういうこと。上位アンデットくらい浄化できる神官もいないなんて、この国の教会腐ってない?」

「この国の教会は純粋にフレイア神を崇めるフレイア教だ。浄化の能力とか関係なく、一般信徒から上位の者が出て、教皇もフレイア神殿のTOPというだけで、浄化とかそういう能力は一切ない。教会の力は最初からあてにならない」

「教会はだめ、聖騎士もだめ、ついにお鉢がこっち回ってきたってわけかい」

「まぁ、ブルンもいるんだ。ささっと駆除してこよう」

「そうだね。お互い、兵士に武器を返してもらおう」

近衛騎士に預けていたミスリル銀の魔剣と、最近浮竹がミスリル銀の魔剣を買った時におまけでついてきた、闇属性の杖、通称アークデーモンスタッフを返してもらった。

「ふふふ・・・・リッチってことは闇属性だよね。禁忌使っても滅びないよね?」

「いや、普通に滅びると思うが・・・」

とりあえず、京楽にウララ高原にあるスキア帝国の遺跡の前まで転移魔法で運んでもらった。

「くるるーーー」

「お、さっそくいるようだね。ブルン、思いっきり浄化しちゃっていいよ!」

「くるるん!」

ブルンの体が光り、最初の部屋にいたレイスたちが穏やかな顔をして消えていく。

「これなら、楽勝だな」

「そうだね」

遺跡の全ての部屋を浄化していくが、リッチの姿がなかった。

念のため、地下にもぐるとそこにリッチがいた。しかもダークエルフだった。

「オノレ、ヨクモ私ヲ殺シテクレタナ」

リッチは浮竹のことを覚えているようで、いきなり攻撃してきた。

「マジックバリア!」

京楽が、結界を張ってくれた。

「アア憎イ。生キテイル者ガ憎イ」

「ブルン、なんとかなりそうか?」

「くくぅ」

僕じゃ無理かも。

「そうか。じゃあ、俺がなんとかしよう」

「え、でも浮竹は聖属性の魔法はエンチャントくらいしか・・・って、修行でレベルアップした後だしね」

「クリエイトアストラルエンジェル」

「おおおおおん」

人工的な天使が生み出された。

天使は、聖なる剣をもちレイスを串刺しにした。

「「テトラボックス」」

2重詠唱で、無属性の魔法の禁忌を使った。

レイスは、何も言う暇もなく滅びていった。

「な、楽勝だったろ?」

京楽は、ぽかんと口を開けていたが、すぐに正気に戻った。

「天使!?人工的に天使作ってるの!?これ、浮竹の魔法なの?」

「そうだぞ。何かおかしいか?」

「おかしいも何も・・・天使を人工的に作り出す魔法なんて聞いたことがないよ」

「それは、俺のオリジナルの魔法だからな。師匠には、創造は神の魔法だと言われた」

京楽は、天を仰いだ。

すっかり、自分だけが強くなった気でいたのだ。

それと同等か、場合によってはそれ以上の力を浮竹はもっていた。

「ブルン、この地下全体も、俺の人工天使と一緒に浄化してれるか」

「くるる!」

「あおおおん」

「はぁ!?作り出した天使が浄化の魔法使える・・・ああ、僕はもうつっこまないからね」

「ちなみに、人工悪魔を作りだせば闇魔法も使える。その時は人工悪魔を媒介に、俺も闇魔法の禁忌を使えるぞ」

「チートだ」

京楽は、そう言って嘆くのであった。

ブルンと人工天使と一緒に、地下の隅々まで浄化して結界を張ると、人工天使はすーっと消えていった。

「よし、依頼は達成だ。戻るか」

「はいはい。また女帝と謁見だね」

「報酬が楽しみだ。女帝からの依頼なら、白金貨が期待できる」


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「そうですか。無事、レイスとリッチを駆除してくれましたか」

「魔石あるんですが、一応鑑定してもらいますか?」

「いいえ、あなたたちの言葉を何より信じましょう。この近衛騎士団長から」

「はい」

「褒美を、ここへ」

近衛騎士は、報酬の金が入った袋を手にやってきた。

「報酬の白金貨10枚に値する、大金貨100万枚です」

「うわぁ、重そう」

「すみません、白金貨は流通量が少ないので大金貨での支払いとなってしまいます」

「いえ、問題ありません」

近衛騎士団長から大金貨の詰まった袋をもらい、それをアイテムポケットに収納していく。

大金貨100万枚なので、けっこうな袋の数になった。

「では、また何かあれば助力をこうかもしれませんが、その時はまたお願いします」

「はい、喜んで」

京楽は思った。金の力って怖いと。

浮竹と京楽がマイホームにつくと、プルンが一匹で遊びにきていた。

「プルププ」

「なんだ、プルン?進化したのか」

「プルプ」

エンペラースライムになった。

プルンにはひげがはえており、頭には小さな王冠があった。

「くくるーーー!!」

弟よ、すごいな!

「プルプウ!」

お兄ちゃん、こんな姿だけど俺はプルンだよ。

「プルン、お前俺たちとブルンの前では、態度が違わないか?」

「プルププ」

当たり前。俺はエンペラースライムだよ?

ブルンは、プルンの真上をばっさばっさと飛ぶと、ちょうど王冠のところ着地した。

「プルプウ」

「くくるーーー」

はまって出られない。

ブルンの声に、プルンが驚く。

その後浮竹と京楽に引っ張ってもらって、なんとかブルンはプルンの王冠の中から外にでられるのであった。

「そういえば、プルンは今林檎いくつ食べてるんだ?」

「プルプ」

「15個!?大食いなぁ」

京楽は、アイテムポケットからりんごを15個並べて、プルンにあげた。

「ブルンも負けてないぞ。近所中のゴミ消化してきらしい」

「くるっくー!」

りんご、おししいかい?

「ププウ」

おしいよ。お兄ちゃんもおいしかった?

「くるくる」

近所中のゴミを消化しといた。食いだめができる体で便利だ。

「プルプウウ」

食いだめできるんだ、すごいね!

『プルン、やっぱりここにきてたのか、探したんだぞ』

『音沙汰もなくいなくならないでね。浮竹がすごく心配してたんだから』

「プルプル」

現れた精霊の浮竹と剣士の京楽に、プルンは堂々と遊びいくとメモを書いたという。

でもそのメモは字がぐちゃぐちゃで読めなかった。

「師匠、少しだけお久しぶりです!」

『やあ、といっても、2週間くらい前に会ったばかりだけどね』

「浮竹の魔法が・・・・・・」

浮竹のオリジナルの魔法でショックを受けている京楽に一言。

『あれは神の魔法だよ。悪用されないように、君が気をつけてあげて』

そう言って、プルンを回収していく。

「プルプププ」

あ、りんごまだ全部食べてない。

「残りは家で帰ってお食べ」

エルフの京楽から、残っていたりんご3つを渡されて、それを体内に保存する。

『じゃあ、俺たちはこれで帰る。プルンを回収にきただけだから』

「師匠、また遊びにきてください」

『うん、またねぇ』

プルンの魔法で、精霊の浮竹と剣士の京楽は空間転移の魔法で帰っていくのであった。




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エンシェントエルフとダークエルフ28

エルフの浮竹と京楽は、師匠である剣士の京楽の家を訪ねていた。

エルフの京楽は、ダークエルフとして覚醒したことで闇属性の魔法が使えるようになっているのだが、どうにもうまく制御ができないのだ。

エルフの浮竹もまた、エルフの京楽のもつ魔力が強大なものになったので、自分も修行したいと考えていた。

「たのも~~~」

『何それ。あがりなよ』

剣士の京楽が出てきて、中にいれてくれた。

「くくるーー」

「ププウ」

今回はブルンも一緒だったので、プルンが喜んだ。

「闇の魔法が使えるようになったのはいいけどね、すぐ暴走しそうになるんだ。こつとか教えてもらえないかな」

「おれは、京楽だけが強くなってずるいと思っている。俺にも修行をつけて欲しい」

『Sランクにでもなるの?』

「いや、まだSランクには到達していないと思う。限りなくSランクに近くなりたい」

『事情はわかったよ。じゃあ、隣の家でまた数日暮らしてね。家賃は銀貨2枚でいいから』

「相変わらず安い・・・・・」

銀貨2枚を支払うと、アイテムポケットから食用やらの荷物を置いて、こうして、エルフの京楽と浮竹の修行がまた始まるのであった。

プルンの魔法で、どこかの草原にまで、転移してもらった。

最初に、心を無にして瞑想した。

エルフの京楽は、剣士の京楽に闇魔法の使い方を教えてもらっていた。

『高圧縮したエネルギーを出すつもりで、魔法を唱えてごらん』

「ダークネスストリーム」

『そうそう、いい調子だよ。そのままの状態を維持して』

「くくるーーー!!」

ブルンも、修行に参加していた。

エンジェリングスライムになったことで、火と氷のブレスを吐けるようになっていたのだ。

「ププウ!」

それを、プルンが受け止めて魔法で相殺する。

プルンとブルンで、修行をしていた。

エルフの浮竹は、精霊の浮竹に修行をしてもらっていたのだが。

「こう、ぱっとだしてぎゅんってするかんじだ」

全くもって分からなかったので、剣士の京楽のとエルフの京楽の修行が一段落するまで瞑想し、魔法をバリバリ使っていった。

「クリエイトアストラルエンジェル!」

魔法で人工的な天使を作り出して、一緒に同じ攻撃魔法を唱える。

「「ファイアフェニックス」」

確実に魔力は上がっているようで、的にした岩が炎属性の魔法なのに勢いで吹っ飛んでいた。

『ちょっと待って。そのクリエイトなんとかって魔法は何?』

「なにって、オリジナルの魔法だが?」

『オ、オリジナルの、創造する魔法だって!?』

『へぇ、面白そうな魔法を使うね』

エルフの京楽は、今だに魔法を制御し続けているので、剣士の京楽が様子を見に来てくれたのだ。

『創造の魔法は、神々のものだよ。ほんとに、君といいエルフの僕といい、面白いね』

「俺の使う魔法は、そんなに珍しいものなのか?昔読んだ、古代エルフの神話で出てくる魔法を真似たものなんだが」

『だから、その神話の魔法が神々の魔法なんだ、きっと』

『他にも何が作りだせるの?』

「普通に、適性のある火とか水とか氷とか。あと酸とか毒とか、さっきの疑似天使とか疑似悪魔とか」

『疑似生命体を生み出す魔法・・・・確かに、神の領域だね』

そう言われたが、浮竹はなんのことか分からず、きょとんとしていた。

『ちょっと、大丈夫なのか京楽。神の魔法だぞ』

『悪用はしないようだし、いいんじゃない?』

こそこそとやり取りをする二人を不思議そうに見ながら、浮竹はまた魔法を唱えた。

「クリエイトアストラルデビル!」

今度は、人工的な悪魔が作り出された。

人工的な天使と並んで、3重詠唱を始める。

「「「テトラボックス」」」

草原の向こう側にある山が、消し飛んでいた。

『・・・・・・』

『あらまぁ・・・・』

「まぁまぁの威力だな」

『ねぇ、君本当にAランク冒険者?』

「そうだが?Aランクになって半年だが」

『ねぇ、これSクラスだと思うんだけど、どう思う?』

『どうって、Sランク試験に受かるまではAランク冒険者だからな。おまけにエルフの浮竹は剣の才能もある』

『ほんとにおもしろい子たちだね』

「おーい、そろそろ魔法の維持が限界なんだけど」

放置されていたエルフの京楽がそう言うと、剣士の京楽はすぐにその側に走っていった。

『僕を殺すつもりで、攻撃魔法放ってごらん』

「どうなっても知らないよ?ダークスフィア×10」

『多重詠唱!』

ダークスフィアの魔法を、剣士の京楽は手を突きだすだけで殺していく。

「ブラックホール」

『今度はブラックホール。禁忌だな』

「他重詠唱できるぞ。ブラックホール×5」

『範囲が小さいから、多重詠唱できるだけで、1つ1つの威力は少し小さめなんだね。それにしても・・・・君ら、本当にAランク冒険者?』

剣士の京楽が疑問を抱き始めた。

「え、あ、うん、そうだけど?」

『今時のSランク冒険者の壁って厚いのかな』

「そりゃそうじゃないの?ドラゴンを倒せないようじゃ、Sランク冒険者を名乗れないでしょ?」

『いや、何もドラゴンを倒せなくても・・・まぁいいか。ブラックホールの魔法を10個だした状態で、ひたすら維持してごらん』

「わかったよ」

剣士の京楽の言葉に、エルフの京楽はブラックホールの魔法を10個出して、維持し続けた。

そんなことを繰り返しているうちに、エルフの京楽は暴走させることなく、闇魔法を使えるようになっていた。

「師匠、剣の稽古も頼む!」

『ああ、君は魔法剣士だったね。僕を殺すつもりでかかってきてごらん』

精霊の浮竹の姿が消えて、剣士の京楽の手の中に妖刀が現れる。

「てやあああ!!」

『甘い甘い』

「せい!」

『右ががら空きだよ』

「うへー。無理です、師匠。師匠の本気には勝てません」

『じゃあ、目を閉じて相手するから、適当に打ち込んできて』

目を閉じて相手をしてもらっても、エルフの浮竹は剣士の京楽から一本もとれないでいた。

「魔法もいれていいですか?」

『いいよ:』

「クリエイトビースト」

人工的な狼を魔法で作りだして、それに乗ってエルフの浮竹は空を走り、京楽の首元にミスリル銀の魔剣を突きつけた。

『ハンデあったけど、さっきのは君の勝ち。やるね』

「師匠が目をつぶっていたからです」

こうして、修行の日々は終わっていった。


『君たち、十分Sランクでやっていけるよ?』

「師匠、からかわないでください」

「そうだよ。まだまだSランクは遠い」

『いや、マジなんだけどね・・・・・』

エルフの浮竹と京楽は、それを冗談と受け止めた。

『まぁ、Aランクの実績を積むのもいいことだよ。この調子でがんばって』

「ありうがとうございます、師匠」

「ありがとう」

『ブルンも、プルンと特訓していたもんな?』

「ププウ!」

「くるるーー」

ブルンは神クラスの回復魔法を使えるほかに、火と氷のかなりの威力のブレスが吐けるようになっていた。

今まで、攻撃といえば酸弾くらいだったので、攻撃力が大幅にアップした。

『次のSランク試験っていつ?』

「2年後の4月」

『じゃあ、まるまる2年あるのか』

『その間に力を磨いて、Sランク試験に挑んでごらん。多分、合格するから』

「はい、師匠。ドラゴンキラーを名乗れるようにがんばります!」

「僕も、闇魔法をはじめ、禁忌いろいろ教えてもらったし、受かりそうな気がするよ」

こうして、エルフの浮竹と京楽の修行は終わった。

二人とも魔力量が、Sランクの魔法使い並みになっているなど気づかずに、普通にBランク~Sランクの依頼を受けてこなしていくのであった。




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エンシェントエルフとダークエルフ27

浮竹は、武器屋をのぞいていた。

エルフの森を出る時にもらった、餞別代わりのミスリルの剣が折れてしまったのだ。

一通り見るが、ミスリル製のものはなく、代わりにミスリル銀の魔剣があった。

白金貨10枚。

その値段に、浮竹が唸る。

「うーん。高い。だが、ものはいい・・・」

「命を預ける武器なんだ。出し惜しみしなくていいよ。白金貨なら電撃のボルからもらった千枚の貯金に白金貨50枚が利子でついていたよ」

「よし、このミスリル銀の剣を買おう!」

「お、お目が高いですね。それはさる高名な魔族が使っていた剣で、流れ流れてうちみたいな武器屋にやってきたはいいが、値段が高すぎて誰も買わなかった品です。魔剣としては意識はありませんが、闇属性の魔法が使えて、水火土風の魔法を強化してくれる嬉しいおまけつきです」

「決めた!この魔剣を買う!」

「はい、白金貨10枚になります。分割払いですよね?」

「全額払いだ!」

どんと、白金貨を10枚出すと、店の主人はびびった。

白金貨の本物を見るのは初めてだったのだ。

白金貨1枚で大金貨10万枚に値する。つまりは大金貨100万枚だ。

それをポンと出す浮竹を、どこかの貴族か大金もちと勘違いしたのか、店主は店の奥にあるよくわからない武器を取り出してきた。

「これら、よくわからなくて売れてない品なんですけど、欲しいものありますか?おまけでおつけしますよ」

上客を逃す手はないと、店の主人はサービス精神を出す。

「この杖・・・・・。京楽、持ってみろ」

「ああ、闇の属性の杖だね」

「この杖をもらってもいいか?」

「いいですけど、それ、所持者がみんな死んでいく呪われているという杖ですよ。いろんな属性の魔力を高めてくれますが、正直その杖はやめておいたほうがいいかと」

店の主人は困惑していた。

「闇属性の適正がないと、持ち主の魂を喰う杖だ。幸い僕は、闇魔法を使えるからね」

「闇魔法なんて使えるんですか!」

この世界では珍しかった。

このウッドガルド大陸は人間や亜人種が住む大陸で魔族が少なく、普通闇魔法が使えるのは魔族だ。

「僕はダークエルフで魔族だからね」

「またご冗談を」

「冗談じゃないんだけどなぁ」

店の主人は、最後まで京楽がダークエルフであることを冗談と受け取っていた。

「前のミスリルの剣あったじゃない。鍛冶屋で引き取ってもらえば?」

「そうだな。打ちなおしてもらうことも考えたんだが、ミスリル銀の剣なんてミスリルより貴重だ」

ミスリルの剣でも、白金貨5枚はする。

市場を回って歩き、いつもミスリルの剣を研いでもらっている鍛冶屋までやってきた。

「すまない、このミスリルを買い取ってもらえないだろうか」

「お、浮竹さんじゃないか。あらら、大事なミスリルの剣が折れちまってらぁ。打ち直しはしないでいいんですか?」

「ああ、ミスリル銀の魔剣を買ったんだ」

「ミスリル銀!また、高価なもの買いましたねぇ。Sランク冒険者の装備ですよ、普通」

「金ならあったからな」

「折れた剣先もあるし、もう一度ミスリルの剣として命を吹き込んでやりまさぁ。白金貨2枚でどうですか?」

「ああ、それでいい。引き取ってくれるか?」

「もちろんでさぁ。ミスリルなんて、そうそう打つことができない神の金属だ。喜んで買い取りますよ」

あとは、食べ物の市場を回って、プルンが遊びに来た時用にりんごを50個かって、アイテムポケットにいれる。

その他、1週間分の食料を買った。水は、水魔法で新鮮な水が出せるし、水道も通っている。

「前の杖がちょっとボロボロだったからね。浮竹のお陰で、いい杖が手に入ったよ」

市場に外れにくると、空間転移してマイホームに戻った。

「さて。買い出しも終了したし、冒険者ギルドに行くか」

「そうだね」

「くくる~~」

ブルンは、市場で大量のゴミの処理もとい食事をして、元気いっぱいだった。

「ブルンもくるか?」

「くくーー」

当たり前だよ。

そう言っていた。

冒険者ギルドに二人がやってくると、浮竹宛に手紙がきていた。

「何だ・・・・エルフの森の族長から?」

中身を読んでいって、浮竹の顔色が変わった。

「どうしたの」

「次期族長になるはずだった兄が死んだ。それで、俺に戻ってきて見合いをしろと・・・」

「何それ!今まで散々放置しといて、いきなり!?」

「京楽すまない、きっと嫌な目に合うかもしれないが、俺と一緒にエルフの森までついてきてほしい」

「もちろん行くよ。君の伴侶は僕だからね」

浮竹と京楽は荷造りをして、冒険者ギルドにしばらく依頼を請け負えないことを通達してから、ブルンを師匠の元に預けて、京楽はエルフの森に住んでいたので、空間転移魔法でエルフの森の入り口まできた。

「誰だ!」

「エンシェントエルフの浮竹だ。族長ハオの次男だ。兄のマオが死んだ件で、帰ってきた」

「浮竹様でしたか・・こちらは、まさかダークエルフの・・・」

「そうだよ?僕はダークエルフの京楽。族長ハオが拾って幽閉して、最後に処刑しようとしていたダークエルフだよ」

京楽が一歩前に進み出て、そう言う。

「浮竹様、危険です。こんなダークエルフ、早速処分を」

「俺に命令するな!それに京楽は俺の伴侶だ。すでに儀式は済ませ、正式に伴侶になっている」

「なんてことだ・・・・早く族長のハオ様のところへ知らせを」

しばらくすると、族長のハオがやってきた。

浮竹や他のエルフと同じで、20代後半くらいの若々しい姿で成長が止まり、死を迎えるその時まで若い姿のままなのが、エルフの特徴であった。

ハオは、浮竹の頬を殴った。

浮竹は後ろに吹っ飛ばされて、口の中を切ってしまった。

「この恥さらしが!ダークエルフと契っただと!?」

「そうだよ、父さん。マオ兄さんが死んだからって、俺を次期族長になんてできないだろう?」

「このダークエルフを殺すか、契りの儀式を破棄させてやる!」

族長ハオは、頭に血が上っていて、京楽のことをまともに見ていなかった。

「この僕を殺すだって?できるものなら、やってみるといいよ」

「このダークエルフが!・・・・なんだ、その魔力は!」

京楽は笑った。

「ダークエルフとして覚醒したのさ。昔みたいに幽閉されてた幼い頃の僕はもういない。浮竹の見合いも、浮竹が次期族長になることも認めない」

「ダークエルフが!エルフの森に災いをふりかけにやってきたのか!」

族長のハオは、京楽のもつ強大な魔力を感じながらも、続ける。

「違うよ。僕は浮竹のれっきとした伴侶だ。契りの儀式を済ませて、伴侶になっている。僕を殺して上書きもできないし、浮竹は僕との契りの儀式の破棄をなんて、するはずがない」

「このダークエルフが!拾ってやった恩を仇で返す気か!」

「誰も拾ってなんて頼んでないし、幽閉して処刑しようとまでしたくせに」

ハオは、それ以上何も言えなかった。

「とりあえず、昔住んでいた小屋に数日泊まる。次期族長の件については、俺も案を出そう」

「恥さらしが!」

「その恥さらしを作り出して育てたのは、父さんだ」

「くっ・・・・・」

母親はすでに他界しており、子ができにくいのがエルフの特徴であるので、今から妾を迎えるとかそういう方法はなかった。

昔住んでいた小屋は掃除が行き届いており、兄のマオが使用していたらしかった。

「浮竹、ほんとに僕を連れてきてよかったの?」

「そうじゃないと、俺は捕らわれて今頃お前との契りの契約を破棄させられていたぞ」

「そんなの駄目!絶対駄目!」

京楽が浮竹を抱きしめる。

「ほらな?お前を連れてきて正解だったろう?」

「そうだね。憎しみは全部僕が浴びればいい。浮竹を奪ったのは僕だ」

「そんなことはない。お前を連れ出して逃げだのは、俺の意思だ」

「いつか、エルフの森の住民全てに、分かってもらえるといいね」

「ああ、そうだな」

その小屋で二人は数日を過ごした。

次期族長を誰にするかという会議に、ダークエルフである京楽と共に出席して、京楽は憎しみの視線を浴びせられていたが平気そうで、結局いとこが継ぐことに決まった。

「お前とは、勘当だ。二度と、エルフの森に帰ってくるな」

族長のハオは、浮竹と京楽を追いだして、去って行った。

「追い出されちゃった」

「勘当だってさ」

二人は、手を握り合いながら、エルフの森を後にする。そして、転移魔法でマイホームまで戻ってきた。

『あ、帰ってきた』

精霊の浮竹が、迎えにきてくれた。精霊の浮竹に、ブルンを預けていたのだ。

「師匠も、お元気そうで」

『なんでも、エルフの森の族長問題で呼び出されたそうだね』

「勘当された。京楽と契りの儀式を済ませた知った時の、父の顔といたったら、傑作で」

『大丈夫そうでよかったよ。エルフのボクも大丈夫だよね?』

「当たり前だよ。浮竹に浴びせられる憎しみも全て僕の方へ向いていた。計算通りさ」

「京楽・・・・お前には、本当にすまないと思っている。エルフの森は、閉鎖的だからな」

エルフの浮竹は、エルフの京楽に抱きしめられてキスをされた。

「僕は全然かまわないよ。君と契りの契約を交わしたことも後悔していない」

「くくるーーー!!!」

僕の存在を忘れないで!!

ブルンは、エルフの二人頭の上を飛んでいた。

「ごめんな、ブルン。今回ばかりは、お前を連れていけなかった」

「くるるー」

仕方ないなぁ。

ブルンは、飛び跳ねているプルンの頭の上に乗った。

「ププウ!」

あ、お兄ちゃんだ。

そう言いながら、プルンは体を黄色の喜びの色に変えていた。

穏やかな時間が過ぎていく。

もう、エルフの森には二度と帰れないだろう。

その道を、二人は選んだ。

京楽も、後悔していない。浮竹と出会って逃げ出したことも、契りの契約を交わしたことも。

『じゃあ、僕らは戻るから』

「じゃあ、師匠、また」

『またな』

最後に精霊の浮竹が手を振って、プルンの転移魔法でロスピア王国にある自分の家まで戻っていった。

「久しぶりに、明日冒険者ギルドに行こう。何かいい依頼があるかもしれない」

「そうだね」

エルフの森には、もう帰れない。

分かってはいたが、二人とも心の何処かで寂しいと思うのであった。



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エンシェントエルフとダークエルフ26

「ふふ・・・・このキメラは、そこいらのキメラとは違う」

そのキメラは、足はケルピーの足でできており、尻尾はデッドリーポイズンスネーク、胴はドラゴン、翼はペガサス、頭はダークエルフだった。

「ああああああ!!」

人語を話すキメラは、ある遺跡で、やってくる冒険者たちを次々と殺していった。

Sランク指定の、変異キメラであった。

イアラ帝国のウララ高原にある、スキア帝国の遺跡に出た。

その遺跡は、中でミスリルの鉱石が取れることで有名で、いろんな冒険者たちがやってきては、変異キメラに殺されて、食われた。

地下にはモルモットにされているダークエルフの姿があるのだが、それを浮竹と京楽はまだ知らなかった。

----------------------------------------------------

Sランク指定の依頼であった。

もともとAランク指定で、Bランクの冒険者3人のパーティーが行ったが、いつまで経って帰ってこなくて、急遽Sランクに指定された。

魔の悪いことに、イアラ帝国のSランク冒険者たちは皆違う国の魔物討伐に赴いていた。

一番評価の高い、Aランクの浮竹と京楽が、その変異キメラを退治することになった。

「何か、悪い予感しかしないんだけど。その遺跡って、いろんな冒険者が訪れる遺跡でしょう?その冒険者たちを殺して食ったとなると、僕らの手だけでどうにかなるのかな」

「念のために、師匠を呼んでおいた」

浮竹と京楽は、そのスキア帝国の遺跡の前にいた。

「ここからでも、血の匂いが分かる。かなりの数の人間を食ったみたいだね」

「気を引き締めていこう」

「ライト」

京楽が、光の魔法で光源を出す。

それをずっと維持しながら、中を進んでいく。

中は荒れていて、ところどころに食いちぎられた人の手足が散乱しており、変異キメラの狂暴性が窺われた。

「ぐるるるるる」

「近くにいるよ、気をつけて!」

「しゃあああ!!!」

ダークエルフの顔をもつ変異キメラが、襲い掛かってきた。

「この!ファイアフェニックス!」

「ぎゃおう!」

咄嗟に浮竹が放った上級魔法を顔に受けて、ダークエルフの顔は醜く焼けただれたが、すぐに再生してしまった。

「再生能力が半端じゃないね。浮竹、剣でいける?」

「ああ、アシッドエンチャント!」

錆びないミスリルの剣に、金属まで溶かす酸を付与して、そのドラゴンの胴体らしき鱗に切りかかると、なんとミスリルの剣が折れてしまった。

「なんだと!?」

浮竹は動揺した。

その一瞬の隙を狙って、ダークエルフの頭部が浮竹の腕を噛みちぎる。

「ぐっ」

「セイントヒール!

「すまない、京楽!」

「いいって。それより、魔法で倒すしかないようだね」

「弱点の属性が分からないが、幸い京楽は闇以外の属性を使えるからな」

「助けて・・・・殺して」

ダークエルフの頭部は、そう言って血の涙を流した。

「ゴッドフェンリル!」

「ゴッドファイアフェニックス!!」

それぞれ、氷の魔狼と炎の不死鳥を出した。

まずはフェンリルが氷のブレスを吐いて、ケルピーでできた足を凍らせた。次にフェニックスが、翼を燃やす。

傷を負わせると、再生していく。

「これ、勝てるの?」

「なんとかするしかないだろう。ここで負けたら、俺たちのSランクになるという冒険者の夢も終わりだ!」

「トリプルフレア!」

「バーストロンド!」

じりじりと、獲物を追い詰めるように、変異キメラは二人を追い詰めていく。

「浮竹、地下に通じる小さな階段がある!一度撤退しよう!」

「分かった!サンシャイン!」

変異キメラの目を、光で一時的につぶして、二人は遺跡の地下におりた。

そこでは、目に見るもの無残な光景があった。

ダークエルフたちが、ある男に生きたまま解剖されていた。

「誰だお前は!」

「おや、もうきてしまったのかい。じゃあね」

男は、転移魔法で消えてしまった。

「あああ・・・殺してくれ」

「殺してくれ・・・・」

ダークエルフたちは、もう原型をとどめておらず、変異キメラになりかけていた。

「くっ」

京楽は、胸が疼いた。

「京楽は目を瞑っていろ。同胞たちだろう。俺が片付ける。ゴッドファイアフェニックス!」

浮竹は、炎の魔法で殺してくれと哀願してくるダークエルフのなれの果てを灰にしていった。

ドクン、ドクン、ドクン。

鼓動の音がした。

「どうしたんだ、京楽?」

「あああああ!!!」

京楽は、発狂したかのように叫んで自分の頭を抱え込んだ。

ドロリと、京楽纏う魔力が闇のものになる。

「しっかりしろ、京楽!」

「浮竹、僕は・・・・ああああ!!」

京楽は、遺跡の階段をあがり、変異キメラと対峙する。

「ワールドエンド」

京楽は、使えないはずの闇魔法を使っていた。

それに、変異キメラの体がぐちゃぐちゃになっていく。

「あはははは」

「京楽!」

「アハハハ・・・・浮竹、こっちに来ちゃだめだ」

ワールドエンドは、禁忌の魔法だ。

「僕の力じゃ、もうこの魔法をとめられない」

『ここはスキア帝国の遺跡。ボクの妖刀がいた遺跡とは別だねえ』

「あ、師匠!」

『やあ、エルフのボクに浮竹。エルフのボクは、禁忌を発動したはいいけど、力の使い方を迷っているようだね』

「師匠、京楽を助けてやってくれ」

剣士の京楽は頷くと、手を前に突き出した。

それだけで、ワールドエンドの魔法は終わった。

「ああああ、僕は、僕は!!」

「京楽、しっかりしろ。俺はここにいる」

エルフの京楽は、浮かべた涙を一筋流した。

「僕は、ダークエルフなのに、同胞たちを助けられなかった・・・・」

「それはお前のせいじゃない。手を下したのは俺だし、あんな風になるようにしたのは、影の暗躍者だ」

『それね、名前は藍染っていうの』

「その、藍染とかいうやつが全部悪んだ。京楽は、何も悪くない」

「ああ・・・・感じる。闇の鼓動だ」

『それは闇魔法を習得した証だな』

いつの間にか現れた精霊の浮竹が、エルフの浮竹の肩に手を置いた。

『このまま、彼を抱きしめて』

「分かった」

エルフの浮竹は、優しくエルフの京楽を抱きしめた。

精霊の浮竹のおかげか、エルフの京楽は安らかな顔になり、エルフの浮竹を抱きしめ返した。

「これはなんていうんだろう。魔力の底が見えない。闇の魔法を習得するのって、こんななの?」

『全属性習得なら、そうだろうね。今のキミなら、宮廷魔術師にもなれる』

「そんなものに、なりたくはないよ。僕は、浮竹、君の傍にいたい」

「京楽、落ち着いたか?」

エルフの浮竹がエルフの京楽の顔をのぞきこむ。

「うん。ごめんね。浮竹」

「なんか、京楽、お前の魔力の量、尋常じゃないほどにあがってないか?」

『覚醒したんだろう。ダークエルフとして』

剣士の京楽の言葉に、エルフの京楽が自分の手の平をみた。

「これが覚醒・・・・鼓動が高鳴ったのは感じた」

『覚醒の予兆だね。ワールドエンドは禁忌の中の禁忌。よほどのことがない限り、使わない方がいいよ』

「うん、あんな凄い魔法、まだしばらくの間制御できそうにないよ」

エルフの京楽は、憑き物がとれたようなすっきりした顔をしていた。

「僕はダークエルフだ。自分と向き合おうと思う」

「京楽、無理はしなくていいんだぞ」

「いや、ギルドでも言うよ。僕がダークエルフだってことを」

「でも、自分で魔族だって言うようなものだぞ?」

エルフの京楽は頷く。

「それでも、僕はもう自分を偽るのが嫌になった。いつまでも隠し続けてうじうじするより、告白して受け止めてもらいたい」

「分かった。でも、ギルドで告白する隣には、俺を置いてくれ」

「うん」

「師匠、ありがとうございました」

「ぷぷる~~」

「くくる~~」

『ああ、プルンとブルンを忘れていたね』

プルンは飛び跳ねながら、ブルンは空を飛びながらやってきて、二人の京楽の頭と肩に、それぞれ乗った。

「戻ろうか」

「ああ」

師匠である剣士の京楽と、精霊の浮竹と、エルフの浮竹と一緒に、イアラ帝国の冒険者ギルドにやってきた。精霊の浮竹は妖刀姿だった。

みんな、剣士の京楽を見て怖がっていた。

「Aランクの変異キメラの討伐は終わったよ。なんとか魔石だけは回収できたから」

エルフの京楽が受付嬢に変異キメラの魔石を渡すと、人工的に作られたものだとすぐに分かって、ギルドマスターのキャサリンがやってきた。

「あら、春ちゃんうっきーちゃん・・・・お尻さわりたいところだけど、剣士の春ちゃんに殺されるから我慢するわ」

「報酬金は金貨500枚と、人工魔石の買取り額が金貨100枚になります」

合計で金貨600枚を、エルフの京楽はもらってアイテムポケットにいれた。

「みんな、話があるんだ」

Aランクの京楽に視線が集まる。

「僕は、ウッドエルフで通していたけど、本当はダークエルフなんだ」

「がんばれ、京楽」

エルフの京楽の隣で、エルフの浮竹が心を支えてくれた。

「なんだ、そんなことか。知ってるやつ、けっこういるぞ」

「ダークエルフだらかってなにかあるのか?京楽は京楽じゃないか」

「みんな・・・・・・」

駆け出しの冒険者や京楽とあまり顔見しりでない冒険者は、ダークエルフと聞いて怯えていたけれど、多数の冒険者がそれをさも当たり前のことのように受け取るので、怯える者はいなくなった。

「みんな、僕が怖くないの?」

「浮竹に手を出した時の京楽は怖いが、それ以外の京楽なら怖くない」

京楽は、涙を流した。

「受け入れて、もらえた・・・・・」

「京楽、みんなダークエルフとか種族関係なしに、Aランク冒険者の京楽を見ているんだ」

「浮竹も、ありうがとうね?」

「どういたしまして」

「じゃあ、マイホームに帰ろうか」

「そうしよう」

剣士の京楽は、キャサリンを睨んでいたが、キャサリンが何もしなかったので、ただ黙してエルフの二人の後をついていった。

「ああ、今日は疲れたよ」

『ダークエルフとして覚醒した感想は?』

「いきなりレベルアップしたかんじ」

『そのままだな』

人型をとった精霊の浮竹が、苦笑していた。

「今日は遅いし、泊まっていく?」

『ああ、お言葉に甘えよう。いいな、京楽?』

『僕は別にどっちでもいいよ』

適当に夕食を済ませて、風呂に入り、それぞれゲストルームと寝室で眠った。

「ププルウ!」

ぽよんと、ブルンがはねて、剣士の京楽と精霊の浮竹を起こした。

「くくるーー」

寝室では、ブルンが空を飛んでから体当たりをして、エルフの二人を起こしていた。

「ププルウ」

「くくるー」

「え、何、お腹へった?はいはい、朝ごはんだね」

プルンには林檎を10個、ブルンにはアイテムポケットに入れていたゴミをあげた。

「くくるーー」

「ププウ」

プルンが残した林檎の芯を、ブルンが食べた。

『それにしても驚いたね。エンジェリングスライムとは。このままいくと、アークエンジェリングスライム、セラフィスライムに進化するだろうね』

「そうなのか、師匠」

『うん。天使に近くなるね』

「天使族みたいなものかな?」

この世界には、魔族の対になる、天使族がいる。

真っ白な純白の翼をもち、頭にわかったのある、本物の天使に似た種族であった。

「天使族に近いスライムだなんてすごいな、ブルン」

「くくる!」

そうでしょそうでしょ。

自慢するブルンに、プルンは。

「プププううう」

すごいすごいお兄ちゃん、天使になるんだ。

そう勘違いをおこしていた。

『じゃあ、俺らは戻るな。またなにかあったら、式を飛ばしてくれ:』

精霊の浮竹は、剣士の京楽とプルンと共に、プルンが使った転移魔法で消えてしまった。

「ねぇ、浮竹」

「なんだ?」

「僕、ダークエルフでよかったよ。いっぱい辛い目にもあったけど、君と出会えた」

「俺も、エンシェントエルフでよかった。族長がお前を拾い、幽閉したのは俺と出会うための運命だったんだ」

二人で手を繋ぎ合い、またベッドに横になった。

「愛してるよ、浮竹」

「俺も愛してる、京楽」

触れるだけの口づけをして、二人はまた眠るのであった。


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「ダークエルフとしての覚醒か。まぁいい、次は・・・・・」

真っ暗な部屋で、藍染は血のような赤いワインを飲み干した。

藍染の後ろでは、水槽の中で奇妙な肉塊が動き続けるだった。

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エンシェントエルフとダークエルフ25

ケルピー。

水属性の馬のモンスターであった。水魔もしくは水霊の一種ともいわれていた。

そのケルピーが、馬の牧場を襲い、雌馬を妊娠させてしまうのだという。

牧場の主は、ケルピーに誘われて、川で溺死体として見つかった。

牧場が襲われている時点で対処すればよかったのだが、高ランクの冒険者がおらず、Cランクの冒険者が討伐に向かったのだが、ケルピーにやられて半死半生で戻ってきた。

Bランクの依頼であったが、他にぱっとする依頼もなく、Aランクの浮竹と京楽が引き受けることとなった。

「あらん、ケルピー退治?ケルピーはセイレーンみたいに人を惑わせて、食わないけど溺死させることがあるから、注意してねん?♡」

セイレーンの歌声に惑わされて、幸福な夢を見ながら昏睡状態に陥ったことのある浮竹は、顔を引き締めた。

「ケルピーの惑わしには、気をつけるぞ。お互い、注意していこう」

「そうだね」

ケルピーが出るのは、イアラ帝国から少し離れた、ウア王国だった。

ウア王国でも冒険者ギルドはあるが、ケルピーの退治を失敗して死人を出しており、急遽イアラ帝国にも依頼書が届いたのだ。

「ウア王国にはいったことないからね。帰りは転移魔法で帰れるけど、行きは辛抱してね」

「ああ、分かった」

「くくるーー!」

今回も、ブルンと一緒だった。

3日かけてウア王国まで馬車で到着すると、そこからまた場所を乗りついで、半日かけてそのケルピーが出僕するという馬の牧場までやってきた。

「ああ、冒険者の方ですか。私は今この牧場を管理している者です。兄がケルピーに殺されて、それからも雨の日になるとケルピーが牧場に現れて、雌馬を襲うんです」

「確か、天気予報では明日が雨だったね」

「はい。明日、ケルピーが出没すると思いますので、今夜は宿の代わりに我が家をご使用ください」

ケルピーに溺死させられた牧場主の弟だという人物に、一晩の宿を借りることになった。

「どう思う、浮竹?」

「ケルピーは、普通ケルピー同士で結ばれて仔馬を産む。メスが乱獲されて数が激減しているのかもしれないな」

「ケルピーは食用にもなるからね。雌馬のほうがうまいってされてあるから、乱獲されたのかもね」

実は、影の暗躍者がケルピーのメスを大量に乱獲して、研究素材にしているのだが、その事実を浮竹と京楽は知ることはなかった。

翌日は大雨だった。

近くの川が増水して、氾濫の恐れがあったが、浮竹と京楽は仮眠をとって、モンスターが出るであろう夜に備えた。

「HIHINNN」

「出た、ケルピーだ!」

馬の鳴き声が外から聞こえてきて、急いで浮竹と京楽は厩(うまや)のある方へ向かった。

厩では、雌馬が怯えていた。

ケルピーの数は全部で15匹。

思っていたよりも多かった。

3~4匹を想像していた。牧場主の話でも、現れたのは3匹程度と言っていたので、その数の多さに、まずは魔法で足止めをする。

「エターナルアイシクルワールド!」

地面を凍らせて、ケルピーの足も凍らせた。

ケルピーは水の玉を使って、こっちに射撃してくる。

もしくは、水の玉で顔を包み込んで、溺死させようとしてきた。

「HIHIHINN」

「ヒヒーン」

「なんだ?」

浮竹と京楽は、水の玉を火の魔法で相殺させながら、苦しみ出した普通の雌馬をみた。

その雌馬の腹から、仔馬のケルピーが腹を食い破って出てきた。

「この子を、迎えにきたんだろう」

仔馬は、すぐにケルピーの元にいき、水の散弾を飛ばしてきた。

「フレアサークル!フレイムロンド!ファイアフェニックス!」

「HIHIHINN!!」

ケルピーたちは、炎の魔法で焼かれて、身に纏っている水分を蒸発させられて、倒れていく。

「炎の魔法が有効だよ」

「そんなの、始めから知ってる。産まれてきたばかりで悪いが、あの世にいってもらおう。エターナルゴッドフェニックス!!」

炎の高位呪文を浮竹が放つ。

ケルピーたちは、浮竹と京楽を溺死させるために人を操る鳴き声を出した。

「HIHINN~~」

京楽が、ケルピーの元に行こうとするのを、浮竹が剣の鞘を頭に投げて、正気づかせた。

「はっ、僕は!?」

「ケルピーの誘いの鳴き声に惑わされていた」

「ありがとう、浮竹。お陰で正気に戻ったよ。たんこぶできたけど」

「溺死に比べれば、たんこぶの100や200、軽いもんだろ」

京楽が正気に戻る頃には、ケルピーたち浮竹の魔法で焼かれて倒れていた。生まれたばかりのケルピーの仔馬も死んでいた。

「かわいそうだが、こうするしかない。雌馬のほうは?」

「だめだよ。腹を食いう破られていて、即死だよ」

「そうか・・・・・」

他の雌馬たちは無事だった。牡馬ももちろんのこと、仔馬も元気だった。

「ヒヒーン」

「ブルルル」

この騒ぎで起き出した馬たちが、神経過敏になっていた。

牧場主を起こして、ケルピーの退治が済んだことを知らせると、一頭の白馬の牡馬を連れてきた。

「この子、馬車を引くのにいいんです。ただ、その馬車が事故にあちゃって、返品されちゃって。よければ、連れていってやってください」

「家で飼うことはできないから、冒険者ギルドの厩で暮らすことになるけど、いいの?」

「放牧すると、他の牡馬にいじめられるんです。雌馬もよりつかなくて。冒険者ギルドの厩ってことは、しっかりしたものなのでしょう?」

「ああ、まぁな。馬車の貸し出しも行っているから、専門の職の人もいる」

「じゃあ連れて行ってやってください」

「ケルピーの死体はどうするの?」

「馬肉して、近所に差し入れます」

「ケルピーは確かに食用にもなるしな。分かった、じゃあ死体はこのままにして・・・・」

「解体、手伝ってくださあああいい」

「冒険者ギルドの解体工房の人を呼んだほうがよさそうだね。ちょっと、呼んでくるよ」

京楽は空間転移の魔法でイアラ帝国の冒険者ギルドにいくと、解体工房にいた解体作業人を連れて戻ってきた。

「この15体のケルピーの解体を頼む」

「出張サービスなんて久しぶりですね。任せてください。食用にするんですね?」

「ああ、頼む」

「お願いします」

浮竹と京楽も手伝たが、浮竹と京楽はそれぞれ1匹ずつ解体している間に、解体作業人は13匹と仔馬のケルピーの解体を終えてしまった。

「食肉用なら、金貨40枚で買取りますが」

「どうする。ここは、牧場主であるあなたの判断にゆだねる」

「あ、じゃあ買いとってください。20枚をこちらに、残りの20枚を冒険者さんにあげてください」

「毎度あり!」

解体作業人は、アイテムポケットにケルピーの肉を入れて、金貨20枚をそれぞれ、牧場主と浮竹と京楽に渡した。

「くくるーー!」

ブルンが、解体して余った骨やいらない部位を、ごみとして溶かして食べていった。

「じゃあ、僕たちは帰るね?」

「あ、本当にありがとうございました。ケルピーの子を宿した雌馬には、流産してもらおうと思います」

「ああ、がんばってくれ」

ブルンを頭の上に乗せて、浮竹は京楽と手をつなぐ。京楽は白馬に手を置く。解体作業人も、白馬に手を置いた。

一人分の転移魔法で、手を繋いでいたり触れていたりすると、移動できるのだ。全員に空間移動の魔法を使うのは魔力がいる。

冒険者ギルドに戻ると、キャサリンが怒っていた。

「もう、勝手に解体工房の解体作業人を連れ出さないでちょうだい!」

「ああ、ごめんね。青髭オカマ」

「ブス」

「何か言ったかしら?」

浮竹の悪口に、ポキポキと関節を鳴らすオカマのギルドマスターは、ケルピーの新鮮が肉が手に入ったので酒場で馬刺しを食べようという声につられて、行ってしまった。

「浮竹、いくら本当のことだからって、ブスはまずいよ」

「ブスにブスと言って何が悪い」

浮竹はけっこう毒舌だった。

ギルドの厩に、白馬を連れて行き、餌や水やり、ブラッシングとか蹄の手入れとかもろもろを頼みこむ。特別にかまってやってくれと話をつけて、金貨5枚を厩の職人に払った。

冒険者ギルドに戻ると、ブルンの様子がおかしくなった。

「くくるー・・・・・・」

「ブルン?具合でも悪いの?」

「くくう・・・」

ぱっと、眩しい光が満ちた。

その中心には、ブルンがいた。

「存在の進化か!ケルピーの骨とかを食べたんで、LVUPしたんだ」

「エンジェリングスライムかい?」

「くくるーー!!」

ブルンは、以前と大きさが変わらないが、頭の上の輪っかが光っており、翼が背中にはえていた。

ぱたぱたと、飛んだ。

まだぎこちなく、天井にぶつかって落っこちてきた。

「ブルン、大丈夫?」

「くるるー!!」

「大丈夫みたいだな。魔石を買い取ってもらって、報酬金を受け取って帰ろう」

ケルピー15匹+ケルピーの仔馬の魔石で金貨25枚。報酬金はBランクの依頼であったので、金貨150枚だった。

「まぁまぁだね」

「うん、まぁまぁだ」

Bランクの依頼としては、普通なほうだった。

「僕らも、久しぶりに酒場で食事していかない?ケルピーの解体してたら、馬刺しが食べたくなちゃった」

「仕方ないな、京楽は」

二人は、酒場で新鮮な馬刺しを食べて、酒を飲むのだった。


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「ケルピーのメスを使った実験は終わりだ」

ワイングラスに真っ赤な血のようなワインを注ぎ込み、影の暗躍者はワインを飲み干した。

「さて、次は何を実験に使おうか?」

男の背後では、水槽の中に光る物体が蠢いていた。

地下に降りる。

ケルピーのメスが、黄金の試験官の中に並んでいた。

その黄金の液体を捨てると、試験官の中でケルピーのメスたちは声もなく液体化して崩れていくのだった。


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