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小説掲載プログ
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エンシェントエルフとダークエルフ24

「水龍神の呪い?」

「ああ。なんでも、イリア帝国の片隅にある田舎村に、水龍神が住み着いているっていうんだ。その呪いを解いてほしいという、あやふやな依頼だ」

「ウォータードラゴンなら分かるけど、東洋の龍?」

「はっきりとは分からない」

「引き受けるの?」

京楽の言葉に、浮竹は首を傾げる。

「迷っている。本当に水龍神が出るなら、勝ち目はないかもしれない。でも、姿を見せないということは、人語をしゃべるモンスターが水龍神を偽っているのかもしれない。
水龍神の呪いは、ある日水龍神の住む湖の水を飲んだら、全身に発疹ができて少し熱が出る、それが村中に感染してしまって、今は封鎖されている。疫病の可能性があると検査されたんだが、どの病気でもないらしい。
ちなみに水龍神は月に女性を一人生贄によこせと言ってくるんだ。あと貢ぎものとして、毎週肉をたくさん供えるそうだ」

「ますますきな臭いね。それ、絶対違うモンスターの仕業だよ」

「引き受けたいんだが、いいか?」

「うん。生贄を欲するなんて、討伐に値する。引き受けよう」

Aランクの依頼だった。

ひっぺがして、受付嬢に依頼書を渡し、受理してもらう。

そのまま、行ったことのある一番近い町に空間転移して、そこから馬車で依頼の出ている田舎のボエナ村を目指した。

ブルンにも、念のためについてきてもらった。

「くくるーー」

ブルンは旅行だと思っているようで、はしゃいでいた。

「ブルン、今回は旅行じゃないぞ。多分だけど、水龍神になりすましているモンスターの討伐だ」

「くくるー!」

「え、任せろって?ブルンは頼むしいねぇ」

浮竹と京楽は、馬車の上でひと時の平和を楽しむのであった。


-------------------------------------------


村に到着すると、村の出入り口は封鎖されており、帝国の兵士が見張りをしていた。

「誰だ!」

「冒険者ギルドの者だよ」

「これは失礼した。村長の家まで案内しよう」

浮竹と京楽とブルンは、村の中央になるやや大きめの家に入った。

「おお、冒険者の方か。どうか、水龍神の呪いを解いて欲しい・・・・・・」

「くくるーー!!」

ヒーリングスライムのブルンは、全身に発疹のできていた少し熱のある村長に、ヒールの魔法をかけた。

「おお、体が元に・・・・」

ブルンの魔法は、神に匹敵するヒールだ。

病気でも癒してしまう。

ただ、全ての病気が癒せるわけではない。症状を緩和するくらいか回復方向にもっていくことはできた。

「ブルンで治るってことは、病気の可能性もあるけど、一番疑わしいのは毒だね。村長、見張りをしている兵士たちはどこで水を飲んでいる?」

「はぁ、湧き水のある裏山のほうの水を飲んでいます」

「ますます毒が疑わしい」

村長は、泣いて浮竹と京楽に縋りついてきた。

「水龍神の呪いを、どうか癒してください。そして、あさって生贄になる予定だった村の少女を助けてください!」

まずは、村人を全員集めて、ブルン魔法の効果範囲を広げてもらい、全員に一斉にヒールをかけた。

「ああ、発疹が・・」

「熱も下がったぞ!」

「湖の水は、飲まないようにしてください!」

浮竹がそういうと、人々は困惑した。

「でも、この村に井戸がないんです」

「浦山の湧き水を使ってください」

「わかりました。みんな、聞いたであろう。この方たちが、水龍神の呪いを解いてくださり、水龍神の討伐もおこなってくださるそうだ!」

わあああと、皆喜びあった。

「ねぇ、大丈夫、浮竹?」

「俺の感が当たっていたら、大丈夫だ」

そのまま、湖の水を調べると、微量だが毒が発見された。確かに呪いによるものだった。

少し飲むだけならいいが、ずっと飲んでいると発疹や発熱をする毒であった。毒自体は弱いが、村人たちが今後も湖の水を使えるように、ブルンにお願いして、ヒールの対象を湖に向けた。

湖全体が光り輝き、毒が消えた。

「おお、湖が、元の美しい輝きを・・・・・」

「ありがとうございます!あなたたちは村の恩人です。どうか、このまま水龍神を退治してください!」

その日は村長の家に泊まり、生贄になる少女の変わりに、浮竹が女の衣をいつもの冒険者の服の上からまとい、船に乗せられて、水龍神が住んでいるという、滝のところまでやってきた。

滾の裏側は洞窟になっており、そこに入るように促されて、浮竹だけでなく、空を飛んでついてきていた京楽も、洞窟の天井すれすれを飛んで、洞窟の中に入った。

「よくやってきた。我は水龍神である。さぁ、そのナイフで自分の首を切るのだ。汝の生命の雫はこの水龍神に宿り、村を守るであろう」

洞窟の中は、深い霧に覆われていた。

霧の奥で、うねる水龍神らしき影が見えた。

「さぁ、我が生贄となれ。汝の血肉は我のものとなり、この村を永遠に繁栄させるであろう」

「ウィンドトルネード!」

京楽が、風の魔法で霧を追い払うと、水龍神の形をした人間が作ったであろう木のはりぼてがあった。

「何をする!神の怒りが怖くないのか!」

また、霧が出てきた。

浮竹は、言われた通りに首をナイフで切ったふりをした。

モンスターは血の匂いに敏感なので、かわいそうだがかわりに息の根を止めていた鶏の血を浴びて、地面に滴らせた。

「うむ、それでよい」

霧の中から現れのは、なんとマンティコアであった。

「くくく、美味そうな女だ」

「そこまでだよ!」

「誰だ!」

洞窟の天井すれすれを飛んでいた京楽が、マンティコアを睨みつけて、浮竹の傍に降りてきて合図する。

浮竹は、隠しもっていたミスリルの剣でマンティコアのライオンの胴体を突き刺した。

「ぐおおおおお!!」

「マンティコア如きが水龍神の真似ねぇ。グラビティ・ゼロ!」

京楽は重力の魔法でマンティコアを押しつぶしにかかる。

「ぬおおおおおお!あの方に、力をもらったのだ!」

ぐぐぐぐっと、週十倍の重量が降っているのに、立ち上がる。

「ウォータースパイラル!クリエイトデッドリーボイズン!!」

水の槍に猛毒を付与して、浮竹はマンティコアを貫いた。

「があああ、毒だと!ぬああああ!!!」

ビクンビクンと痙攣して、マンティコアは動かなくなった。

「ブルン、この毒を浄化してくれ」

「くるるーー」

ブルンに、浮竹が作り出した猛毒中の猛毒を、ただの水に戻してもらった。

「湖にでも流れていくと、魚が死んで水を飲んだ人間も死ぬからな」

「うわ。浮竹また凄い毒を作ったんだね」

「エインの毒。一滴で死ぬ人間の数は数百万。もしも湖に流れたら、生態系が確実に狂う」

「うへー。エインの毒かい。またやっかいな毒を・・・」

かつて、賢者の中の賢者と呼ばれたエインの作った毒で、その毒で王国の民を死滅させてしまい、エインは自害した。

エインの毒と呼ばれ、原液はもうこの世界には存在しない。

薄めた毒が、とある王国の宝物庫に眠っているくらいだ。

「浮竹、これまた死体の毒も浄化するの?」

「もちろんだ。ブルン、頼む」

「くくう」

ブルンに浄化してもらい、マンティコアを解体して魔石だけを取り出した。

霧は、魔法を使って出していたらしい。

洞窟の奥に進むと、女性と子供のものらしい遺骨が3体分確認できて、きちんと埋葬するためにアイテムポケットに入れた。

マンティコアの体もアイテムポケットに入れる。素材にはならないが、村人たちに説明するためにもって帰ることにした。

「それにしてもこの水龍神の形をしたはりぼて、明らかに人の力によるものだね」

「そうだな。裏で暗躍しているという、あいつの仕業かもしれない」

全ギルドで指名手配されている、名も無き暗躍者のことであった。

「とりあえず、村に戻ろう」

「うん」

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「そうだったのですか・・・アンティコアが、水龍神のふりを・・・・」

「洞窟の奥で、3体分の遺骨を見つけた。ここに出す」

アイテムポケットから、遺骨と遺品らしきものとボロボロの服をだした。

「いやああ、ヨハン!」

「あああ、ミレーネ!」

「アリス・・・・・」

肉親であった者たちは、遺骨や遺品、ボロボロの服を手に泣きだすのであった。

「それにしても、何故王国軍の兵士は水龍神の退治をしてくれなかったんだ?」

「それが、上の者からそう命令されていると言われて・・・」

村人と一緒に集まった兵士たちは、ある男からそう言われたのだが、それが女帝の言葉であると信じ切っていた、今考えたらおかしいと、言い出した。

「これも、影の暗躍者のせいかな」

「多分な」


こうやって水龍神の呪いを解くクエストは終わった。

村人たちから、金はないが、たくさんの食品をもらった。

イアラ帝国の帝都アスランの冒険者ギルドで、マンティコアの魔石を鑑定してもらうと、マンティコアそのものが人工的に作られたモンスターだと発覚した。

オカマのキャサリンのギルドマスターに呼ばれて、今回のマンティコアの件は他言無用だと言われた。

「全く、ギルドもギルドで、どうして隠すのかな~?」

「無用な混乱を避けるためだろう。Bランク以上の冒険者は、一応陰で暗躍する者がいると教えているが、実際に暗躍した後にあたるの俺たちか、Sランク冒険者らしい」

「まぁ、今回報酬金ははずんでもらったから、いいけどね」

補習は金貨450枚と、マンティコアの人工的な魔石は高純度のエネルギーになるらしく、金貨100枚で買いとってもらえて、合計金貨550枚の収入になった、

「さて、エインの毒のことは他言無用だね?」

「当たり前だ。作り出せる者がいると分かると、暗殺に使われる。京楽、秘密だぞ?」

「ふふ、君と秘密を共有し合うのは、なんだか楽しいね」

「まぁ、共有する秘密はお前がダークエルフであることも含まれているが」

「それでも、秘密を共有するのは、お互いがかけがえのないパートナーってことで、安心できるよ」

「とりあえず、今日は帰って飯を食って風呂に吐いて寝よう。俺は枕が変わると眠れないタイプなんだ。さっさと寝たい」

ふあああと、大きな欠伸をして、浮竹と京楽は帰路につくのであった。


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「ふ、しょせんはマンティコア。作り出しても、脅威にすらならぬ、か」

茶色の髪の、全ギルドで指名手配になっているその男は、地下に降りていく。

地下には、いっぱい試験官が並び、そこではいろんなモンスターの幼体が、黄金に輝く液体の中で浮遊していた。

「さて、次はどれにしようか・・・・・・」




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エンシェントエルフとダークエルフ23

セイレーン。

美しい、海の魔物。

歌声で男を惑わし、食う。

そんなセイレーンは、冒険者によって絶滅させられて、残ったのは無人島なんかに住むセイレーンだけだった。

だが、ある港町でセイレーンが大量に湧き出した。

ある人物の証言によると、茶色の髪に茶色の瞳の、冷たく整った顔立ちの男が何かを海に投げ入れて、そこからわさわさとセイレーンが湧き出てきたのだという。

その男は、ギルドで指名手配されている、名も分からない暗躍者であった。

その男が召還したセイレーンは、ただ相手を惑わすだけでなく、歌声を聞くと過去のトラウマを生み出すらしい。

早速ギルドから派遣された浮竹と京楽は、耳栓をしながら、セイレーンに小舟で近づき、炎の魔法で殺していった。

セイレーンが、大きな歌声をあげだした。

それは耳栓をしていても聞こえる、魂の歌だった。

京楽は、自分を捨て去っていく灼熱のシャイターンを見ていた。そして、同胞に拾われたが、石を投げられてまた捨てられて、エンシェントエルフの族長に拾われて、牢屋に閉じ込められて・・・・・。

そこで終わりだったら、京楽はセイレーンに殺されていただろう。浮竹の顔が、脳裏をよぎり、正気に戻った京楽は、近くにいたセイレーンに炎の魔法を放った。

「フレイムロンド!」

「GIYAAAAAAAA!!」

すご叫び声をあげて、セイレーンは死んでいった。

浮竹を探すと、浮竹は小舟の上で倒れていた。

セイレーンにやられたのか、耳から血を流していた。

「ファイアワールド!」

京楽は怒って、その一帯の海の水と共に全てを蒸発させた。

浮竹は、セイレーンを倒しても、起きなかった。

心配になって、マイホームまで戻って、冒険者ギルドに報告だけして魔石は蒸発させたことを報告すると、調査員が派遣されて、セイレーンは綺麗さっぱりいなくなったとのことで、報酬金の金貨180枚を手に、浮竹の元に戻った。

けれど、浮竹は目覚めなかった。

医者に見せると、何かの夢を見て昏睡状態であると言われた。

京楽は、打てる手がなくて、師匠である剣士京楽の家の前に空間転移した。

「浮竹が、起きないんだ」

『どうしたの?』

「浮竹が、起きてくれないんだ・・・・」

京楽は、ぽろぽろと泣きだした。

夢でシャイターンに捨てられて、同胞に石を投げられまた捨てられて、エンシェントエルフに拾われて幽閉されていた時の哀しさが、何故か今のになって襲ってきて、泣いていた。

『ほら、エルフの京楽。これで涙を拭け』

「うん、突然ごめんね。浮竹が起きないんだ・・・・・」

事情を説明すると、剣士の京楽はこう言った。

『トラウマのない人間は、昏睡状態に入って幸せな夢を見てそのまま食い殺されることがあるらしい。今のエルフの浮竹は、きっと幸せな夢を見ていて起きないんでしょ』

「どうすれば起きるの?」

『精神世界に入り込むしかないな。幸い、俺ができる』

「ううん、僕が精神世界に入る。だから、その手助けを頼むよ」

剣士の京楽と精霊の浮竹は、エルフの二人のマイホームに来て、眠り続けるエルフの浮竹を見た。

『こりゃ、完全にセイレーンの世界に取り込まれてるね。君が精神世界に行きたいの?』

「うん」

『浮竹、頼めるかい?』

『ああ。一緒に精神世界にもぐって、エルフの京楽だけ好きに行動できるようにしよう』

「ありがとう」

エルフの京楽は、精霊の浮竹と手を繋ぎ合いながら、エルフの浮竹とも手を繋ぎあった。

ゆっくりとスリープの呪文を剣士の京楽にかけられて、意識が落ちていく。剣士の京楽は、魔力を維持するために、精霊の浮竹と手を繋いだ。

気づくと、そこは浮竹の精神世界だった。

色がない、モノクロの世界だった。

幼い浮竹がいた。同じように、幼い京楽がいた。

笑って、外で遊んでいる。

そんな夢だった。

「これが、浮竹の幸せな夢・・・・」

幼い京楽が閉じ込められると、その度に幼い浮竹が隠し通路を使って迎えにきてくれて、また二人で遊ぶ、そんな夢だった。

『お前との出会いが、幸せだったんだろう。この夢を、エルフの浮竹は繰り返し見ている』

「浮竹、帰ろう?」

「おじちゃん、だあれ?」

「僕は京楽取水。そっちの幼い子成長した姿だよ」

「おじちゃん、京楽なの?」

「そうだよ」

そう言って、エルフの京楽は幼い浮竹の頭を撫でた。

すると、世界が一瞬で色づいた。

幼いエルフの浮竹は、今と同じ年齢にまで成長していた。

「京楽・・・・迎えにきて、くれたのか?」

「うん、そうだよ」

「ありがとう、京楽」

精神世界で、浮竹は京楽にキスをした。

『見せつけてないで、戻るぞ。しっかり、エルフの俺の手を握ってやれ」

「うん!」

目を開けると、そこには目をあけて、涙を浮かべるエルフの浮竹がいた。

『無事、二人とも戻ってこれたようだな』

『浮竹、お疲れさま』

精霊の浮竹は、他人の精神世界に入るのは少し疲れるようで、剣士の京楽から甘めのオレンジ水をもらって、それをコクコクと飲んでいった。

「俺は・・・幸せな夢を見ていた。同じ夢を繰り返し見ていた。変わらない日々を望んでいた。
俺にもトラウマはあった。京楽の処刑が決定した日だった。でも、そんなことは完全に忘れて、ただ幸せな夢を見ていた・・・・」

エルフの浮竹が、ぽろぽろと涙を零した。

「あの日、俺が京楽を連れ出さないと、京楽は処刑されていた。それがとてつもなく怖くて、ただ幸せな夢を見ようとしていた」

『うん、それは悪いことじゃないよ』

「でも、真実から目を背けて、ただ幸せを願って・・・・俺は、我儘だ」

「浮竹、そんな我儘は誰でも持っているんだよ」

エルフの浮竹をは顔を上げると、エルフの京楽の胸に顔を埋めて、静かに泣きだした。

『じゃあ、僕らはいったん戻るね。また何かあったら、知らせて』

『伴侶を、大切にしろよ』

剣士の京楽と精霊の浮竹は、プルンを連れていたので、プルンの転移の魔法でロスピア王国の自宅へと戻っていった。

「怖かったんだ。長い長い間、お前と過ごした幼い時間が、なくなるのがすごく怖かったんだ」

「うん・・・・・」

「成長は遅いのに、でも成長は止まらなくて、お前が処刑されることを知っていたのに、俺は隠していた。ずっとずっと、幼いままでいたかった」

「うん。でも、人はいずれ変わるものだよ」

「変わるのが、怖かったんだ。お前が外の世界をもっと知って、俺の傍からいなくなるのが、怖くて怖くて、俺は・・・・・」

京楽は、静かに浮竹の唇に唇を重ねていた。

「京楽?」

「あの日、僕を助けてくれてありがとう。ずっと言ってなかったね。僕に、外の世界を見せてくれてありがとう。僕を選んでくれて、ありがとう。僕には、君だけだよ。君だけが、僕の全てだ」

「京楽・・・・・・・」

浮竹は、また泣きだした。

「ああもう、何をすれば泣き止んでくれるの?」

「くくるーーー?」

「ほら、ブルンも心配してるよ」

「うん。ありがとう、京楽。俺と出会ってくれて、ありがとう。俺を選んでくれてありがとう。たくさんのありがとうを、お前に」

「うん」

二人は、また唇を重ねあった。

「一緒に歩んでいこう。これからの人生も」

「ああ」

セイレーンの事件は、これで全て終わったのだが、今だにセイレーンを港町に召還した者の影は、分からなかった。


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「エルフの京楽と浮竹・・・・また、面白い存在だな」

茶色の髪のその人物は、セイレーンを召還した人そのものだった。

いや、人というのが正しいの分からない。

その存在は歪(いびつ)で歪んでいた。

神になるのだ。

その人物は、悲願のために世界を渾沌に導こうとしていた。

そして、世界はゆっくりとその男の存在を受けいれていく。

弾くとしたら、剣士の京楽か、あるいは精霊の浮竹。

男は、ワインを口にした。

真っ赤なワインは、人の血と同じ色だった。

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エンシェントエルフとダークエルフ22

それは、Aランクの緊急クエストだった。

森にトレントが住み着き、男性を襲って殺しては、肉体の一部を盗むというものだった。

すでに犠牲者の数は10人を超えており、緊急を要した。

「俺が囮になろう」

「だめだよ、危険すぎる!」

浮竹の言葉に、京楽はだめだと言う。

「でも、トレントだろう?森の精霊が、そんなに乱暴になるわけがない」

「それでも僕は反対だ。君が囮になるのなら、僕も囮になる」

「じゃあ、二人仲良く囮になろうか」

「そうだね」

結局、言い争いになる前に、二人で囮になる道を選んだ。

トレントの出るという森に、二人は手を麻の縄で繋ぎ合わせて、1人になることを避けた。

しゅるるるるる。

やってきたのが男性と分かったせいか、森が騒がしくなり、しゅるるると、蔦が這いまわる音がした。

どこからか、優しい歌声が流れてくる。

それに、急速な眠気を感じたが、皮膚に爪を食いこませることで、京楽は我慢した。浮竹は抗えず、意識を失っていた。

「うふふふふ。今度はエルフが二人・・・・そうね、あの方の右腕と左足首になってもらいましょう」

トレントが、姿を現した。

肌も露わな、緑色の皮膚をした美しい女性であった。

そのトレントの隣には、つぎはぎだらけの男の体があった。足りないのは、頭と右腕と左足首と左手。

普通なら、つぎはきだらけの肉体は腐っているだろうに、どういう処置を施しているのか、うじの一匹もわいておらず、死臭もしなくて新鮮なままだった、

「浮竹、起きて、浮竹!」

繋いでいた右手の麻でできた紐を引っ張る。

「ん・・・・・」

浮竹は意識を取り戻した。

「あら、あなたの顔は綺麗ね?あの方ほどじゃないけれど、その生首をいただきましょうか」

しゅるしゅると、蔦が這い寄ってきて、のこぎり状になった。

「く、フレイムロンド!」

「きゃああ、火は、火はいやあああ!!」

なんとかトレントは雨の魔法でスコールを降らせて、浮竹の魔法の炎を鎮火してしまった。

スコールはひどく、このままでは弱点である炎の魔法は使えなさそうだった。

「あの方を復活させるのよ。体を繋ぎ合わせれば、きっとあの方は復活して、また私に愛を囁いてくれるわ」

「愛しい、男がいたのか」

「そうよ。愛しいあの方をつくるために、その右腕を頂戴!」

浮竹は、氷の魔法を使った。

「エターナルアイシクルワールド」

こっちには這い寄ってくるトレントの体が氷つく。

しかし、死んだわけでもない。

氷はトレント全体を包み込んで、スコールが止んだ。

「ファイアフェニックス!」

京楽が炎の不死鳥を放つと、トレントが命よりも大事にしていた、つぎはぎだらけの体に火がついた。

「いやあああああ!愛しいあなたあああ!!私を、置いていかないでえええ!!」

「今度は、お前も一緒さ。ファイアフェニックス!」

「ああ・・・・あたしも、あなたの元へ行けるのね?」

「ああ、行けるとも」

浮竹は、優しい表情でトレントを灰にしていった。

灰からは、2つの芽がでていた。

「夢を見ていたんだ。トレントには恋した男がいた。男もトレントを愛していた。でも、男には婚約者がいて、逆上して男を殺してしまった。
トレントは泣き叫んだ。すると、ある男が、男の体を繋ぎ合わせて、恋人によく似た人形を作ったら、それに愛しい男の魂を宿してやると言ったんだ。
トレントは、その言葉を信じて、森を歩く旅人の男を、歌声で眠らせて殺しては、体の一部分を奪い、繋ぎ合わせた。
繋ぎ合わせた肉体に、愛した男の命が再び宿ると信じて・・・・・・」

「かわいそうな、精霊だったんだね」

「ああ。でも、人を殺した。人を殺したり殺そうとするモンスターは倒される。トレントは元々森の精霊だ。悪い存在じゃない」

「トレントを騙したそのある男というのが鍵だね」

「ああ。トレントは始末してしまったからもう聞き出しようがないが、最近謎の男が暗躍していると聞く。その男なのかもしれない」

「とりあえず、トレントの魔石を持って帰ろう」

浮竹と京楽は、なんとも言えない気分で冒険者ギルドに戻ってくると、魔石を受付嬢に渡した。

「買取り額は金貨30枚になります。緊急クエスト達成として、報酬金金貨350枚に、即日の対応だったので、報酬金が金貨50枚上乗せされます」

合計で金貨430枚になったが、二人の心は晴れないままだった。

「いやん、何そんな辛気臭い顔してるのお?明るくいきましょうよ。ああん、あたしのあそこも明るくいっちゃう♡」

「冗談に付き合っている気分じゃないんだ」

「僕もだよ。消えてくれない?」

「ひどおおい!キャシー、泣いちゃう!」

「勝手に泣け」

「酷い顔だ。ああ、元からだったかい」

浮竹と京楽は、キャサリンに事情の全てを話して、裏で暗躍しているらしい男の影を、ギルド側も掴んでいると聞いて、真剣な表情になった。

「その男の正体は?」

「まだ、分からないわ。ただ、茶色の髪と瞳で、凄く冷徹だそうよ。なんでも、自分が神になるって言ってたらしいの」

「人間が神に・・・・そんなの、なれるわけないのに」

「あら、そうでもないわよ?魔神や邪神は、人間からでもなれるわよ?なりかたは教えてあげないけれどね?♡」

浮竹と京楽は、トレントが灰になった後にでてきた芽を、鉢植えに植え替えて、帰宅した。

太陽をいっぱい浴びれる、南向きのバルコニーに置くと、一夜で成長し、次の日は花を咲かせて、小さなトレントが生まれた。

「君の名は?」

「名前なんてない」

「じゃあ、レトと名乗るといい」

「トレントだから、レト?安直ね」

「森に帰りたいかい?」

「帰りたくないわ。ここで暮らすわ」

レトは、寂しそうに笑った。

じゃあ、同居人を紹介しなくちゃな。こっちはエンシェントエルフの浮竹十四郎。君のもう一人のマスターだ。それから、ヒーリングスライムのブルン」

「くるるる」

「かわいい」

「君も、十分かわいいよ。ねぇ、浮竹も、そう思うでしょ?」

「知るか」

「ふふっ。あのエンシェントエルフ、私にあなたを取られたと思って嫉妬してるわ」

「すごいね。君、人の心が読めるのかい?」

京楽は、レトと名付けたトレントの小さな頭を撫でた。

「ある程度はね。あなたはダークエルフ。皮膚の色が違うから、種族を偽っている」

「ほんとにすごいね」

「よしてよ。あたしは、ただのレトいう名の小さなトレント。それだけよ」

「そうだね。君はレト」

京楽は、レトを手の平に乗せた。そんな小さなサイズのトレントだった。

「哀しい記憶を持っているのね」

「なんだい?」

「あなたは灼熱のシャイターンに捨てられ、迫害されてきた。でも、浮竹十四郎と出会って、全てが変わった」

「うん、そうだよ」

「じゃあ、早くその浮竹って人のところに行ってあげて。凄く悲しんでる」

「分かったよ」

京楽は、レトを植木鉢に戻すと、浮竹の後を追う。

「浮竹」

「なんだ」

「僕が愛しているのは、浮竹だけだよ。あのトレントには同情しか抱いていない」

抱きしめられてキスされて、浮竹は真っ赤になった。

「な、何をする!」

「いや、君が小さなトレントなんかに嫉妬しちゃって、かわいいなぁと思って」

「嫉妬してなんか!」

浮竹は叫びかけてやめた。

「嫉妬、してた。少しだけ」

京楽は、浮竹の顎に手をかけて、ディープキスをしていた。

「んっ」

「ふふ、かわいいね。食べちゃいたい」

「まだ昼間だぞ」

「そうだね」

クスクスと、京楽が笑うものだから、浮竹も嫉妬心を忘れてクスクスと二人で笑いあった。

「ねぇ、今日いい?」

「ばか、そういうこといちいち聞くな。んっ」

またキスをされた。

エルフに欲が全くないわけではないのだ。

ただ、薄いだけで。


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「そうか、あのトレントは死んだか。呆気ないものだ」

その男は、背が高く茶色の紙に茶色の瞳をしていた。

その男は、世界を渾沌に陥れようと暗躍していた。

神になろうとしていた。

神になり、剣士の京楽を破壊神にしようともくろんでいた。

その男の名は、まだ分からなかった。





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エンシェントエルフとダークエルフ外伝 ブルンとブルンの大冒険

「ププウ」

「くくるー?」

プルンとブルンは、お留守番を言い渡されていた。

ここは、イアラ帝国のエルフの浮竹と京楽が住むマイホームだ。

「ププウ~」

ねぇ、ちょっと散歩にいこうよ。

「くくーー」

でも、ご主人様たちがいつ帰ってくるか分からないよ。

「ププル」

大丈夫、いざとなったら転移魔法があるから。

「くくるーー!!」

じゃあ、森に行こう。いろんなモンスターがいて、楽しいんだよ。

「ププ!」」

行こう行こう。

こうして、2匹はイアラ帝国の外に広がる森まで、ぽよんぽよんとはねて、出かけるのだった。

森は鬱蒼としていて、いろんな動物やモンスターがいたけれど、みんな進化したスライムのプルンとブルンを怖がり、逃げてしまった。

「プププ」

みんな逃げちゃった。

「くくる」

前はもっとみんなフレンドリーだったのに。

「ぐるるるるる!!」

現れたのは、Bランクのモンスターブラックタイガーであった。

「ププー―」

何こいつ、やるつもり?

「くくーー」

やるつもりなら、やっつけちゃおう!

「ぐるる、ぐあああ!!」

プルンに襲いかかったブラックタイガーは、プルンのウォーターボールの魔法で、窒息死しそうになっていた。

「ププウ」

ご主人さまが、こうすれば素材を傷一つなく倒せるって教えてくれたよ。

「くくるーーー」

えーつまんない。僕も攻撃する!

ブルンは、散弾をブラックタイガーの首めがけて吐き出した。

窒息死しかかっていたブラックタイガーは、すぐにあの世へと旅立っていった。

「ププウ!」

そうだ、これを解体してお土産にして、ご主人様たちを喜ばせよう。

「くくるるるー」

それはいい考えだね。僕が解体するね。

ブルンは、体の一部を金属のようにとがらせて、ブラックタイガーの頭と首を切り離し、血抜きしてから、肉と骨と毛皮、牙と爪に解体してしまった。

「ププウ」

こいつ、肉はまずいらしいよ。骨も使えないって。

「くくう」

じゃあ、肉は弟の君には食べれないから、僕が食べちゃうね。骨も食べちゃう。

「ププルン」

じゃあ、素材は俺の体内にいれておくね。

「くくうるー」

じゃあ、転移魔法お願い。冒険者ギルドに転移して、買いとってもらおう。

「ププーー」

分かったよ。捕まっていてね、お兄ちゃん

「くくー」

うん、弟よ。

プルンとブルンは、冒険者ギルド前に転移すると、ぽよんぽよんと跳ねて、受付嬢のところまでカウンターに乗ると、プルンが中身を出した。

「え、あ、浮竹さんと京楽さんのところのスライム・・・・これは、ブラックタイガー!まさか、あなたたちが倒したの?」

「ププー」

「くくるー」

二匹ともそうだよと言って、飛び跳ねていた。

「確か、ブラックタイガーは討伐依頼にあったはず・・・あ、ありました。金貨120枚です」

「ププウ?」

「くくるー?」

「魔石の状態は非常に良いですね。毛皮の部分も損傷が少ない。牙と爪も傷一つない。これなら、魔石金貨8枚、素材を金貨20枚で買いとれます。しめて、金貨148枚ですね」

「ププウ!」

プルンは、にょきっとてを突き出して、金貨の入った袋を体の中にしまいこむ。

「くくうるー」

帰ろう。お金、奪ってくるいやなやついるかもしれないから、転移魔法お願い。

「ぷぷ」

わかったよ、お兄ちゃん。

プルンとブルンは、冒険者ギルドを出たところで転移して、イアラ帝国のエルフの浮竹と京楽のマイホームに戻ってきた。

「今探しに・・・・・って、ブルン?」

「わあ、プルンまで。どうしたの?」

エルフ浮竹と京楽は、突然目の前に現れたプルンとブルンに驚いていた。

「ぷぷう」

『なんだって?ブラックタイガーを倒したって?』

剣士の京楽が、聞き返す。

「くくるーーーー」

「素材やら報酬金やらお金でもってきた?」

「ププ」

プルンが口をあけると、金貨のつまった麻袋がでてきた。

中身をあけて、金貨の枚数を数えて、4人とも驚いた。

『金貨148枚って、一体どうしたんだ』

「くくるー」

「倒してお金もらっただけ・・・・って、はぁ。プルンもブルンも、偉いけど、今後は二人きりで冒険しちゃだめだよ。お金になるって、悪い連中に攫われたのかと思ったけど、何もなくてよかったよ」

エルフの京楽の言葉に、みんな頷いた。

『プルン、ブルン、今度からは、ちゃんと俺たちがついている時に冒険しような?』

「ププウ」

分かった、ご主人様。

「くくるーーー」

僕もわかったなのー。

こうして、プルンとブルンの小さな大冒険は終わるのであった。

「それにしても、ブラックタイガーってBランク+のモンスターでしょ。よくやっつけられたね」

『プルンは、いろんな攻撃魔法を使えるし、回復魔法も上級まで使えるからな』

「なんだそれは。すごいじゃないか」

エルフの浮竹が驚くと、エルフの京楽も負けてはいられないと、ブルンの長点を言う。

「うちのブルンだって負けてないよ。確かに攻撃魔法は使えないけど、散弾で金属まで溶かすし、神クラスのヒールを永遠と出し続けれるよ」

『なんか、飼っているスライム自慢話になってきたね』

『ああ、そうだな。とりあえず、プルンとブルンはすごい。そしてかわいい!!」

エルフの浮竹と、精霊の浮竹にそれぞれ頬ずりをされて、プルンとブルンは喜んでいた。

プルンは黄色に、ブルンは白くなっていた。

『あははは、感情が色で分かるスライムも珍しいね』

「とにかく、今後は二匹で散歩してもいいけど、モンスター退治なんて危ないことはしないこと。分かったね?」

エルフの京楽の言葉に、プルンとブルンは。

「ププウ」

分かった。りんごほしいな。お兄ちゃんだけ食事しちゃたから。

「くくるー」

分かったから、ごみちょうだい。お腹すいた。

分かったの分かっていないのか、2匹は食事のことばかり気にしていて、4人は溜息と共に、プルンにはりんごを10個、ブルンには近所から集めたゴミの山がプレゼントされるのであった。



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エンシェントエルフとダークエルフ21

それは、Bランクの退治依頼であった。

Dランクのダンジョンの15階層に、ミノタウロスが複数姿を現して、その先にいけないのだそうだ。

Dランクは駆け出しの冒険者から一皮むけて、冒険者らしくなってくる階級だ。

そのDランクダンジョンにミノタウロスとは。

浮竹と京楽は、昔一度来たことがあるので、京楽の空間転移魔法でDランクのダンジョンの前まで飛んだ。

空間転移魔法は、一度行ったことのある場所なら、結界を張られていない限り、行き来が可能だたが、消費魔力が大きいので、そう連打することはできない。

すでにブルンにヒールをしてもらい、魔力回復をしていた。

ダンジョンは階層ごとにフィールドがかわるタイプで、上級呪文も使えそうだった。

雑魚は適当に倒して放置しておこうとしたのだが、浮竹がわざわざ魔石を集めるので、仕方なく遭遇して倒した敵の魔石は拾って集めた。

15階層にくると、ミノタウロスがいたが、普通のミノタウロスより牛に近かった。

「MOOOOOOOO!!」

まるで牛のような雄叫びをあげて、襲い掛かってくるので、火の魔法を使う。

「フレイムロンド!」

「ファイアサークル!」

「MOOOO!!!」

こんがりと、焼かれたミノタウロスは、いい匂いをがした。

「まだいるぞ」

「ファイアフェニックス!」

火の魔法でこんがり焼かれたミノタウロスは、いい匂いがした。

駄目だと分かっているのだが、ミスリルの剣で肉を切り出すと、皿を取り出して炎で焼いた。

ミノタウロスのステーキだった。

「食べても大丈夫かな?」

「レストランでも、ミノタウロスのカルビってメニューがあるくらいだぞ。高級食材だ」

浮竹と京楽は、倒したミノタウロスの1体の肉を斬って焼いて食べてを繰り返した。

「ああ、おいしかった」

「ただだと思うと、余計おいしくかんじるね」

ブルンは、ミノタウロスの骨を消化してもらった。あと、食べれない部位とか。

残ったミノタウロスは、アイテムポケットに入れて持ち帰ることにした。すでに焼かれている状態ではあるが、ステーキとして需要があるので、別に構わないだろう。

空間転移して、冒険者ギルドまで戻ってくると、皆そのスピードの速さに驚いていた。

依頼を受注して、2時間とかかっていなかった。

魔石はちゃんと回収しておいた。

「あらん、春ちゃんいるの間に空間転移の魔法なんて覚えたの?このキャシーと、いけないことをするために、覚えたのね?」

「うるさい、青髭オカマ!近寄らないでよ」

「酷い、春ちゃん酷いわああああ!!!」

キャサリンは、浮竹に抱きついて尻を揉んできた。

「尻を揉むなこの変態オカマ!」

ミスリルの剣の鞘でオカマのギルドマスターを叩くと、キャサリンは涙を流してくねくねしていた。

「13体の討伐の確認をしました。魔石は金貨39枚で、依頼料の報酬は金貨180枚となります。あと、雑魚の魔石の買取り額は、金貨2枚と銀貨3枚になります。

「その、ミノタウロスの買取りを頼みたいんだけど」

「それなら、解体場へどうぞ」

解体工房で、ミノタウロスの遺体を12体分提出する。

「火で焼かれていますが、肉の需要としては問題ありません。1体金貨30枚、しめて金貨360枚になります。魔石とミノタウロスの数が足りませんが、1体食べましたね?」

「え、あ、うん、まぁね」

「ミノタウロスの肉は高級食材ですが、素人が料理すると食中毒が怒る確率はゼロではありません。なるべく、解体工房に提出してから、食べる分の肉を受け取ってください」

「うん、分かったよ」

「わかった」

浮竹と京楽は、匂いにつられてダンジョン内でステーキを食べたことを反省した。

「それより、味はどうでした?とれたてはやっぱりおいしかったですか?」

「うん、すごくおいしかった。できれば塩コショウで味付けしたかったね。そしたら、余計においしくなると思うよ」

「魔法の火で焼いたんだが、うまいことミディアムレアになってな。調味料はなかったが、最高にうまかった」

じゅるりと、受付嬢が涎を垂らしそうになっていた。

「決めました!今月の給料の3分の1になるけど、ミノタウロスのシャトーブリアンの部位を、4食分ほどください!」

「「おおーーー」」

大盤振る舞いにミノタウロスの最上位部位のシャトーブリアンを頼む受付嬢に、浮竹と京楽は感激した。

ギルドの受付嬢の給料は悪くないが、それでもBランク以上の冒険者の月に稼ぐ額には届かない。

それなのに、給料の3分の1も費やして、食べようとするその根性が気に入った。

「いいレストランを知っているんだ。そこで、焼いてもらおう」

ギルドの受付嬢マーサは、浮竹と京楽もついでにシャトーブリアンの部位を1食分買い取って、
一緒に高級レストランに入り、厨房でステーキを調理してもらうことにした。

ちなみに。調理するのにも金貨1枚が必要で、マーサも浮竹も京楽も、それぞれ金貨1枚ずつ払った。

「お待たせしました。ミノタウロスのシャトーブリアンミディアムレア焼きのポテト添えでございます」

焼かれてもってこられたステーキは、最高においしそうだった。

ナイフとフォークを入れて、切って食べていく。

3人とも、涙を流した。

「うまい」

「うまいわ」

「うますぎる」

一匹放置された、ブルンが抗議する。

「くくるーーー」

僕にも美味しいの食べさせて。

「ああ、すまないがゴミ箱にこのブルンというスライムを入れてやってくれないか。ゴミを食べるんだ」

「本当ですか。ゴミがいっぱいで、困ってたんです」

客の食べこぼしとかもゴミとして捨てられる。

それも消化したので、いつものゴミより美味しいと、ブルンは後で語ってくれた。

夕飯を食べて帰ってくると、ボルがいた。

「どうしたんだ、ボル」

「いやなぁ、こっちの大陸のコーラのほうがうまくて、買ってきてくれね?金なら渡すから。何処で売ってるのかしらねーんだよ」

「いつも僕たちがいるわけじゃあないからね。ついておいで。売ってる店紹介してあげる」

「あーもう、なんでわかんねーかなー。俺は、遊びにきたんだよ!」

「コーラは?」

「あ、やっぱコーラは買いに行く」

京楽と飲み物を専門に置いてある店で、2ダースコーラを買って、銀貨8枚払った。

ボルが、自分のアイテムポケットにコーラを入れた。

「こっちの物価って安いんだな」

「そうかい?魔大陸は高いの?」

「あの量のコーラなら、金貨2枚はする」

「ウッドガルド大陸の約3倍だね。値段にすると」

京楽とボルは、浮竹の待つマイホームに戻ってきた。

「なんだよ、今日は料理ねぇの?」

「特別だよ。明日にしようと思ってた海鮮シーフードピザ作ってあげる」

1時間経って、ボルは他の四天王の悪口をいいながら、コーラを飲みまくり、そして9時なると眠いといってゲストルームで寝てしまった。

「何しにきたんだろうね?」

「ただ、おしゃべりにきたんじゃないか?」

「そういうもんなの?」

「友達だと思われてるんじゃないか」

「魔族の四天王の友達ねぇ。悪くはないね」

「まぁな。きっと明日の6時には叩き起こされる。俺たちも、早めに就寝しよう」

結局ボルの来た意図は分からず、朝の8時になると空間転移の魔法で、魔王城まで帰ってしまうのであった。

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エンシェントエルフとダークエルフ20

京楽と浮竹の元に、奇妙な客人がきていた。

アークデーモンに捕らわれていた少女ユンと、その兄と名乗る、魔王ヴェルが四天王の一人、電撃のボルであった。

「よう、勝手にあらがせてもらってるぜ」

「お兄ちゃん、やはり勝手はびっくりさせちゃうんじゃないですか?」

「はぁ。まぁ、人生長く生きてたらこんなことも起こるね」

そう言いながら、京楽はバタンと倒れた。

「はははは、魔王の四天王、電撃のボル」

浮竹は、笑ってからバタンと倒れた。

「どうしよう、お兄ちゃん!」

「あー、ほっとけ。すぐ目をさまずだろうさ」

その通り、5分ほどで意識を取り戻した二人は、自分の家なのに窮屈そうにしていた。

「今、紅茶をいれてくる」

「コーラいれてくんねぇか」

「は?」

「俺はコーラがいいつってんだよ。なかったら、買いに行け」

「お兄ちゃん、お礼を言いに来たんでしょう?」

「あ、ああそうだったな」

「この前飲み会した時に、未成年用にコーラ買っておいたの残ってた。はい、どうぞ」

京楽からコーラをもらって、ボルはまるで命の水のように飲んでいった。

「オレは、このしゅわしゅわした感覚がたまらねーんだよな。飲み物は全部コーラ。好きな食べ物はなしでとにかくコーラだぜ!」

「それより、お兄ちゃん」

「あ、ああ、そうだな。前回は、俺の妹のユンを助けてくれて、すまねーな」

「いや、こちらも白金貨千枚ももらったし・・・・」

この前、式で大金貨100枚を宗教組織の人身売買で行方不明だったものが魔大陸で見つかったことを、イアラ帝国の騎士団に情報伝達する小遣いとしてつけられたのだが、ただ言伝するだけで大金貨100枚はありえないと、式に金をもたせて帰らせた。

とにかく、依頼以外で金が舞い込んでくることが多いのだ。

「なんなら、白金貨千枚をお返ししようか?」

「いらねぇよ。ユンを助けてくれた感謝の金だ。受け取っときな」

ボルはぶっきらぼうだったが、根は優しい青年だと分かった。

「その、ウッドガルド大陸では魔族は生きにくいからな。ユンは、魔大陸に連れていく。だが、その前に助けてもらったあんたらに会いたいっていうんで、わざわざ俺らから会いにきてやったってわけよ」

「そうか。ユンちゃん、魔大陸に帰るんだね」

「うん。おじいさんももう歳だし、一緒に魔大陸のお兄ちゃんの庇護下の元に居ることに決めたの」

「ユンちゃんとちゃんとした場面で会うのはじめてだったな」

浮竹が微笑むと、ユンはほのかに頬を赤くした。

「おいてめぇ、ユンに何しやがった!」

「な、何もしていない」

「違うの、お兄ちゃん!ただ、綺麗なエルフだなぁと思っただけだから」

「お、おう、そうか。すまねーな。オレ、こんな性格だからいつも先走っちまう」

「うん、別にいいけどね。君の性格にも慣れてきたよ。ほら、おかわりのコーラ」

「お、気が利くじゃねぇか」

ボルは、コーラを一気飲みして、げふーっとげっぷをした。

「やだあ、お兄ちゃんげっぷしないでよ」

「でるもんはでるんだから、仕方ねーだろうが」

「まぁまぁ。ああ、そうだ、ユンちゃんから預かってたこのペンダントだけど、返すよ」

「お、それは俺がユン誕生日にあげた、紋章入りのペンダントじゃねぇか!」

「ごめんなさい、お兄ちゃん。他に渡すものがなくって、魔族絡みならこれでどうにかなると思って渡してしまったの」

「返して、くれるのかよ?」

「うん、返すよ。僕らが魔族に関わることなんて、今回はあったけど、今後はないだろうし」

京楽の言葉に、ボルはペンダントを受け取って、ユンの首にかけてやった。

「まぁ、礼を言いに来ただけだ。泊まってやってもいいんだぜ」

「はいはい。じゃあ、夕食の用意するから、この部屋で寛いでて。浮竹はコーラとワインと今から書いていくメモの中身の買い出しを頼むよ」

「ああ、分かった京楽」

Aランク冒険者だ。

貧しい暮らしをしていると思われたら、また白金貨を渡されそうなので、今日は特に豪華にすることにした。

七面鳥を丸焼きにして、フォアグラやキャビア、トリュフなどを使った贅沢な料理を出してふるまった。

「お、すっげ―いいもん食ってんじゃんか。オレ、ここんちの子になろうかな」

浮竹と京楽は首を横に振った。

こんな大きな子供いりませんと。

「まぁ、冗談だ。今日は遅いし、泊まって行っていいか?」

「ああ、上の階に僕らの寝室の他にゲストルームが2つある。そこを使ってくれて構わないよ。ただ風呂場とトイレは一つだから、そこは気をつけてね」

ユンとボルは、先に風呂をかりて、寝間着に着替えてえボルはまたコーラを飲んでいた。

「そんなにコーラばっかり飲んでて、虫歯にならないのか?」

浮竹がふとした疑問を口にすると、ボルは笑った。

「今時、どこもゼロカロリーコーラだぜ。第一、虫歯になんて魔族はなんねーよ」

「そ、そうなのか。そういえばエルフの俺たちも、虫歯になったことはないな。ちゃんと歯を磨いてるせいだろうか」

「虫歯は、人間種族の病気だぜ。他種族がなるには、粘膜感染だ」

「つまり、人間とキスしない限り、他種族は虫歯にならないと?」

「そうだぜ。そんな当たり前のことも知らねーのかよ」

「すまない。何分、エルフなもので、人間世界にも魔族側にも事情が疎いからな」

「今から知っていきゃいいんだよ」

ボルは、魔王のことた四天王のことをいろいろ教えてくれた。

くそメガネと言われる四天王の時には、笑い合った。

「灼熱のシャイターンは、あんたを捨てたこと、くやんでるぜ」

「え」

「愛してなんかいないって、何度も否定しやがんだ。ほんとに捨てて興味なかったら、話題にのぼっただけで怒って出ていっちまう」

「そっか・・シャイターンが」

「よかったな、京楽」

「うん」

「おっし、眠くなってきたから寝る」

「まだ、9時だぞ?」

「魔族は早寝早起きが基本なんだよ。9時には寝て、6時に起きる」

「そ、それは健康的だな」

「お兄ちゃんは先に寝てて。浮竹さん、ちょっと話あるんだけどいいですか?」

「ああ、なんだろう?」

「す、好きなんです!」

京楽が後ろにいる場所で、ユンは浮竹に告白をした。

「もちろん、無理なのは分かってます。私は魔族で、あはたはエルフ」

「いや、そういう以前に俺にはすでに伴侶がいるんだ。後ろで固まってる、あいつだよ」

「あ、そうだったんですか」

ユンは、しゅんとなったが、すぐに顔をあげた。

「あー、告白して振られてすっきりした―。私も寝ますね」

「ああうん、おやすみ」

「台風みたいな兄妹だね」

「まぁ、そうだな。それより、この残った料理、俺らでは食べきれないな。冷蔵庫に入れておこうか」

「うん、そうしよう」

次の日の朝、6時に叩き起こされた。

「朝食まだかよ?」

「ああ、はいはい、今起きて作るよ」

寝ぼけ眼で、京楽はトーストを4枚焼いて、浮竹を起こして、スクランブルエッグを4人分用意して、ダイニングテーブルの椅子に座った。

「「いただきます」」

ユンとボルは・・・・ユンは分かるが、ボルは言葉遣いは乱暴だが、礼儀はわきまえてあるらしかった。

浮竹と京楽も、言葉に出さないがいただきますと心の中で言って、食べていく。

「「ごちそうさま」」

ユンが、朝ごはんの片付けを手伝ってくれた。

「ユンちゃん、いいお嫁さんになれるよ」

「本当?じゃあ京楽さんが夫になって」

「んだとこらぁ、ユンの夫になるだって?」

「違う違う、冗談だよ。ね、ユンちゃん?」

「半分本気なんだけどな。シャイターンの捨て子白いダークエルフだったって有名じゃない。京楽さんのことでしょ?」

「そうだけど、僕には浮竹がいるからね」

「なんだ、そうだったのか。水くせぇな。そうならそうと言ってくれりゃあいいのに」

「いや、ボル君に、いきなりできてますなんていう勇気はないよ」

「ボル君、いつ出発するんだ?」

「あー、8時くらいかな。空間転移で帰るから」

「じゃあ、ユンちゃもお別れだね。元気でね」

「はい。浮竹さんも京楽さんもお元気で」

「じいさんを、町の宿屋で待たせてあるから、ちょっくらとってくるぜ」

ボルは、凄まじいスピードで宿屋があるほうに走っていき、すぐ帰ってきた。

ボルの右手には、魔族のおじいさんがいた。

「やあ、はじめまして、エルフの方々。ユンとボルの祖父です」

「じいちゃん、そんな話はもういいから、魔大陸に戻るぞ」

「ユン、ちゃんと気持ちは伝えかい?」

「はい、おじいちゃん。でも、振られちゃいました」

「そうかそうか。人生は長い。そういうときもある」

「じいちゃん、それにユン、俺の手を離すなよ」

空間転移の魔法陣が起動しはじめる。

次の瞬間には、ボルもユンもその祖父もいなくなっていた。

「ああ、今日は濃い一日の始まりだねぇ。今日は休みにしようか。昨日は心配で夜もまともに眠れなかったし、6時に叩き起こされたせいで、寝不足気味だし」

「ああ、俺も眠い。二度寝をしよう」

「「あ」」

二人してハモる。

師匠である剣士京楽の家に、ブルンを遊びにいかせたままだった。

京楽は、つい最近空間転移の魔法を覚えた。

「寝る前に、僕が迎えにいってくるよ」

「ああ、頼んだ」

浮竹は、一足早く眠ってしまった。

京楽は、空間転移の魔法でロスピア王国の剣士京楽の家の前までくると、呼び鈴を鳴らした。

『はーい』

「ああごめん、ブルンを引き取りにきた」

『ああ、奥の部屋にいるから、とりあえずあがりなよ』

「おじゃまします」

『あ、エルフの京楽。ちょうど、ブルンが寂しがっていたとこなんだ』

「くくるーー!!」

ブルンは、プルンと遊んでいたがエルフの京楽の姿を見て、顔に体当たりしてきた。

「ブルン、痛いから」

「くくる!」

「え、浮竹?家で寝てるよ。電撃のボルが家におしかけてきてね」

『電撃のボルだと?何もされなかっただろうね?』

『大丈夫だろう。中立を守っているようだし』

「ああ、戦闘には至らなかったよ。妹のユンちゃんとおじいさんを魔大陸に送るついでに、礼をしに僕らの家に寄っただけみたい」

『それなら、いいんだけど』

「浮竹はまだ寝てるし、僕も正直凄く眠いんだ。ボルのせいでほとんど寝れなかったから」

『そうか。じゃあエルフの浮竹にもよろしくと言っておいてくれ』

「うん、じゃあ、僕も戻って寝るね」

部屋の中で、空間転移の魔法陣を描き、エルフの京楽とブルンは消えてしまった。

『今度は、エルフの京楽まで空間転移の魔法を覚えたのか。プルンといい、便利そうだな』

「ププゥ~~~」

プルンは、ブルンと別れたことを哀しんで青くなっていたが、りんご10個をさしだされて、黄色になるのであった。















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エンシェントエルフとダークエルフ19

今回の依頼は、Aランクの依頼だった。

コカトリスが大量にわいて、村一つが石像になった。その村人の救出と、コカトリスの退治であった。

事前に、神殿で絶対に石化しないお守りを2つ買った。金貨40枚になったが、コカトリスの石化は強烈だ。経費に申請すれば、金は戻ってくるだろう。

さっそく石像にされた村にいくと、大量のコカトリスに囲まれた。

「KOKEEEEEEEE!」

コカトリスは、石化の視線を送った。

しかし、お守りの効果で何時まで経っても石化しない浮竹と京楽を見て、少し後退する。

「もう、遅いんだよねぇ!バーストロンド!」

「フレアサークル!」

爆炎と灼熱の範囲魔法を放つ。

村にいたコカトリスの3分の1が吹っ飛んで焼かれて死んでいった。

コカトリスたちは、逃げ出す。

村の外に出すわけにいかないので、京楽が網をかける魔法を唱える。

「スパイダーウェーブ!」

白い蜘蛛の糸のようなものでコカトリスは、コケーコケーと鶏の声で鳴きながら、慈悲をこうた。

そんなの関係なしに、浮竹はミスリルの剣で、京楽は魔法でコカトリスを葬っていく。

「はぁ、疲れた。もう、コカトリスはいないかな?」

「ああ、全部片づけたようだ。あっちに巣があったから、卵を全部破壊してきた」

京楽は、魔力回復のポーションを大量にもってきていた。

「くくるーーー」

ブルンにも回復魔法をかけてもらい、魔力を回復する。

これから、200人以上はいる村人の石化を解かなければいけないのだ。

「キュアストーン」

「ああ、コカトリスが!」

「キュアストーン」

「俺はどうなっていたんだ」

「キュアストーン」

「あはん、あなた・・・・あら?」

「キュアストーン」

「くけけけーーーあれ?」

「キュアストーン」

ひたすら、キュアストーンの魔法を使い続ける。状態異常回復の魔法はけっこう魔力を使うので、ブルンに常にヒールをかけてもらいながら、魔力回復ポーションを口にする。

村人200人全員の石化解除が終わった頃には、魔力回復ポーションでおなかはたぷたぷだし、精神的にも肉体的にも、疲れ果てていた。

「ほんとうに、村を救っていただき、ありがとうございます。これはほんのお礼のつもりです」

金貨の入った袋を受け取って、アイテムポケットにしまいこむ。

冒険者は、救った相手から金銭にからむものをもらうのは自由だった。

「それより、今晩は泊まっていいかな。魔力を使いすぎて、動くのもだるいんだよ」

「宿屋へ案内しますね」

宿屋のスィートルームに通されて、そのふかふかのベッドの上で京楽は横になるとすぐに眠り始めた。

夕飯まではまだ時間があるので、浮竹は村に異常がないかどうかの探索に出た。

村の少し遠くの森までいくと、コカトリスが出てきた。

巣があった。

「そうか、ここでコカトリスは増えたのか」

コカトリスたちは石化の視線を浮竹に送る。

一向に石化しない浮竹に、コカトリスたちは本能的に敵わないと分かって、逃げ出そうとするのを、炎の魔法でしとめていく。

「ファイアオブファイア!」

「くええええええ」

最後の一羽を葬り去って、巣の中にたヒナのコカトリスにとどめをさして、卵を破壊していった。

それから、森をぐるりと回ってみたが、ブラックベアと出会ったくらいで、異常はなかった。

「これでもう、コカトリスに石化されることはなくなったな」

村に戻ると、日も傾き、夕方になっていた。

「京楽、起きろ京楽。夕飯の時間だぞ」

「うーん。まだお腹がちゃぷちゃぷいってるから、少しだけ食べるよ」

「ああ、少しでも食っておいたほうが、体力の回復が早い」

ブルンに大分ヒールをかけてもらったので、魔力は半分ほどにまで回復していた。

恐るべきは、ブルンの魔力量だった。

ヒールといっても、ほぼ万能な神のヒールだ。それを何百回連発しても、魔力が尽きることなく永遠と魔法を使い続けられるのだ。

浮竹が推理するには、空気中のマナを吸っているのではないかということだった。

「ブルンもお疲れ。そとに町中のゴミを用意してもらったから、全部食べていいぞ」

「くくるーーー」

ブルンは喜んで、宿屋の裏に置かれたごみの山を全て消化してしまった。

「すいません、ゴミの処理までしてもらって」

「いや、この子はゴミが主食なんだ」

「変わった形をしていますが、色と特徴からブラックスライムですか?」

「ああ、そうだ。今はヒーリングスライムになっているが、元々はブラックスライムだ」

「そうですか・・・・・・」

宿屋の主人の目が、ぎらついた気がした。

「回復魔法も唱えられるんですよね。神クラスのヒールを」

「それはそうだが、けが人以外には滅多に使わないぞ。それと、灼熱のシャイターン一族の紋章が刻まれている。誘拐とかされたら、灼熱のシャイターンを敵に回すととってもらってかまわない」

宿屋の主人は、小さな声で舌打ちしていた。

シャイターンの紋章がなければ、攫って売り飛ばす算段でも考えていたのだろう。

ブルンは、売れば大金になる。

何せ神のヒールを無制限に使えるのだ。売れないほうがおかしい。おまけに食事はゴミでいいし。

その日は、宿屋のスイートルームに泊まって、朝早くに出発し、昼には冒険者ギルドに戻って、コカトリス65羽分の魔石を鑑定してもらい買取りをしてもらった。

村にいた50羽以外にも、森で倒した15羽分の魔石も含めれていた。

「こちら・・・金貨130枚になります」

報酬金は、金貨320枚。

まぁまぁの収入になった。

「あらん、うっきーちゃん春ちゃん、何を悩んでいるの?」

背後から尻を触られて、浮竹は蹴りを食らわせようとしたが、しっかりとガードされてしまった。

「このオカマギルドマスターが!」

「いやん、オカマじゃなくってオ・ト・メよ♡」

「おえー」

京楽が、気持ち悪そうにしていた。

「ひどい、春ちゃん!ベッドではあんなに優しくしてくれたじゃない!」

「誤解を招くような冗談はよしてくれないかな?焼くよ?」

「いやーん、こわーい」

キャサリンは、他のSランク冒険者のほうにちょっかいをかけにいった。

でも、尻はさわらない。

かわりに胸板を触っていた。

十分にセクハラの変態であったが、有能なので、セクハラだと訴えてもそれがどうしたと、上から言われるだけだった。

「浮竹、貯金も十分に貯まってきたし、別荘飼わない?」

「いいな。海辺の見える、そんなに遠くない場所にしよう」

二人は、不動産屋にいって、別荘の物件を見て回った。

「これなんてどう?ロスピア王国のアカシ海岸に近い別荘。剣士の僕の家から徒歩で1時間くらいの場所」

「お、いいな。師匠の家と近いのはいい」

「じゃあ、これに決めようか」

「ああ」

2階建ての洋館で、中古物件であったが、一度実物を見に行ってリフォーム済みだったので、すぐにでも暮らせそうだった。

さっそく家具を手配して、配置してもらった。

金貨2700枚が飛んでいったが、お気に入りの別荘になった。

剣士の京楽の家にいき、剣士の京楽と精霊の浮竹を誘い、海辺の別荘に案内した。

精霊の浮竹は、別荘の中で他に人がいないことを確認すると、人型をとった。

『いい別荘じゃないか。すごいな』

精霊の京楽は、目をキラキラさせていた。

「金貨2200枚の物件だったんだよ」

『へぇ、リフォーム済みにしては安いね。別荘まで買ちゃって、金持ちになったね』

「冒険者稼業でためた金だからな。白金貨は貯金したままだ」

『ぱーっと使っちゃえばいいのに』

「もったいなさすぎて、使えないよ」

Sランク冒険者なら、白金貨を報酬にもらうときはあるかもしれないが、Aランク冒険者ではまず白金貨を拝む機会がない。

かなり前、イアラ帝国の女帝卯ノ花の夫、更木の失った右腕をブルンで癒した時に白金貨をもたったのが最初だった。

次にはアークデーモンの討伐の時、魔王の四天王が一人、電撃のボルの妹ユンを救った時の謝礼だと、白金貨千枚をもらった。

あれには、二人はびびりまくった。

家に置いておくと危険な気がして、そのまま貯金した。

今現在、利子で少しずつ金額が増えていた。

「今日は海鮮バーベキューをしたいと思うんだ。バルコニーで焼くから、精霊の浮竹も人型のままで大丈夫だよ」

『海鮮バーベキューか。いいな。人がいると人型はとれんからな。バルコニーなら、人に見られることもないから、この姿でも大丈夫だろう』

「じゃあ、そうと決まれば市場で買い物をしてくるよ。はい、これ」

『え、なんだいこれは』

「買い物から戻ってくるまでしばらくかかるから、魚でも釣ってて」

自分の師匠を、顎で使うように、エルフの京楽は釣竿と餌を渡した。

『釣りか。いいな、俺もしてみたい』

「この時期は人がほとんどいないとはいえ、外で人型をとるのは危険だ。プルンとブルンの相手でもしてやってくれ」

こうして、エルフの浮竹と京楽は、海鮮バーベキューをするために、市場に行ってしまった。

『この僕に釣りをしろってさ』

『行って来たらどうだ?』

『じゃあ、妖刀になって。一緒に居たい』

『分かった』

精霊の浮竹は、妖刀に戻ると、京楽に連れられて海で釣りをはじめた。

これがまた、面白いようにかかった。

『お、今度はタイだ。縁起がいいね』

市場から帰ってきた浮竹と京楽は、剣士の京楽が釣りあげた獲物の数々を見て、口をあんぐりとあけたままだった。

『だてに、1500年も生きちゃいないよ』

エルフの浮竹と京楽の師匠である、剣士の京楽は、ヒウ帝国という、1500年前に滅びた帝国の生き残りであった。

女神のフレイアの子で、神人であり、不老不死であった。

どんな傷でも、たちどころに癒えてしまうのだという。

妖刀の浮竹のことも、少し知った。

いろんなことを、この前剣士の京楽、もとい師匠の家に行った時に、告白してもらったが、二人はそんなこと関係なく普通に接してくれた。

今もそうだ。

「テラスに行こう。おーい、バーベキューの用意するよー」

『ああ、分かった』

『ちょっと釣りすぎたかなぁ』

「バーベキューを焼くやつは借りものだ。師匠が釣った魚は俺が捌こう」

エルフの浮竹は、器用に魚を3枚卸にしていく。

それに塩をまぶして、串を通して火であぶり、4人は海鮮バーベキューを楽しんだ。

海老やホタテ、カニなんかも買ってあった。

カニは甲羅に切れ目をいれて、ある程度冷ましてから食べた。

『ふふ、こういうのもいいね』

『そうだな。家族が増えたみたいだ』

「師匠は、もう家族同然だ」

「まぁ、浮竹の言う通りだね」

剣士の京楽は、じんわりと胸が暖かくなっていくのであった。それは精霊の浮竹も同じだった。

「ププルウ!」

「くくるーー」

「ああ、お前たちにもごはんあげないとな」

プルンにはりんご10個を、ブルンはバーベキューで出たゴミを食べてもらった。

楽しい時間は、長くはなかったが、記憶の一ページになるくらいには続くのだった。



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エンシェントエルフとダークエルフ18

アリアラス=ヒウは、宗教組織を作った。

自分はヒウ帝国の皇族であり、神はヒウ帝国の第二皇子であるとした。ヒウ帝国の第二皇子の名は秘密だが、今も生きているという。実際は、名前は知らないのだが。

巨額の金が動き、その宗教組織は見る見るうちに信者を増やして、大きくなっていった。

裏では、人身売買や、人工生命体の誕生など、黒いことを行って金を稼いでいた。

信者なると、無条件で金貨10枚を与えられるので、宗教の興味のない若者なども宗教に入団した。

宗教組織の名は、神の王国であった。

緊急クエストが冒険者ギルドで持ち上がった。

宗教組織、神の王国の壊滅であった。

人身売買で得た金で、モンスターを作り出し、操ってもいたので、ロスピア王国の退治屋にも援助を要請した。

Cランク以上の冒険者で、一斉に宗教組織の裏の分まで摘発が始まった。

退治屋の剣士の京楽は、人工的に作り出されたモンスターたちを屠っていく。

『ここはボクに任せて、逃げようとしている組織の人間の捕縛を!』

今度は、剣士の京楽は冷静だったので、宗教団体の上の者たちや、人身売買に関わった者たちを殺すことはなかった。

冒険者たちに捕縛されていく宗教組織の上位の者や、人身売買に関わった者は、何かに呪われているかのように、突然苦しみだして、死んでいく。

「これも、秘密を守るためだよ。あーっはっはっは」

アリアラス=ヒウは、そう言い残して自害した。

結局、宗教組織の上にいた者たち、人身売買に携わった者たちは全て死んでしまい、普通の一般信徒が一時的に捕縛された。

こうして、神の王国は、大きな謎を残したまま壊滅した。

証拠書類などが残っていたので、犯した犯罪は明確にされた。

売られていった者たちを買っていった、貴族たちが逮捕された。大半が女性と子供で、性的な奴隷にされていた。

「ふう。とりあえず、捕縛した奴らは何かの呪いかで死んでしまって、TOPのアリアラス=ヒウも自害してしまった。今回の件は、犯人のいないまま、迷宮入りしそうだね。ヒウ帝国の第二皇子が生きているって件も、信用していいのか分からないね」

「そうだな」

売られていった女性や子供が次々と保護されていった。

中には、奴隷を買っていった者の中に、イアラ帝国の女帝の直臣もいて、イアラ帝国の内部でも、被害者がいるということで、国をあげての行方不明者の捜索がされた。

半月をかけて捜査が行われて、行方不明者は160人から15人まで減っていた。

奴隷として売られていった人間の数は約300人。そのうち助けられた数が260人。残りの40人は、殺害されたか、自害したかのどちからかだった。

行方不明の15人は、引き続き捜索が行われるが、半年を期限として、それ以上探しても見つからない場合は、哀しいが死亡したということにされた。

緊急クエストだったが、報酬はそこそこで、一人あたり金貨200枚が配られた。Cランク冒険者からの参加だったので、金貨200枚をもらったCランク冒険者たちは、喜んでいた。

Bランク冒険者も喜ぶ額であった。

ただ、Aランク、Sランクの冒険者には物足りなかったが、帝国側からの報酬金であるので、文句は言えなかった。

ランクに関係なく、今回の件で捜査をしてくれた者には金貨200枚を配るという約束だった。

冒険者ギルドのほうでも、一人あたり金貨50枚の報酬金が出ることになった。

ただ、参加した人数が多かったので、50枚が出せる額の精一杯であるらしかった。

浮竹のポケットの中に、「僕は冒険者じゃないからあげるよ」と、金貨50枚の入った袋が入っていた。

「師匠が、冒険者ギルドの者と間違われたんだな」


「うふん、うっきーちゃんも春ちゃんも、逮捕に尽力を尽くしてくれてありがとうね?♡」

通称青髭オカマ、自称キャシーのキャサリンギルドマスターは、くねくねしながら、浮竹と京楽の尻を揉んだ。

「セクハラだ!」

「そうだよ、セクハラだよ!」

「あらん、あたしがギルドマスターだから、ただの挨拶よん?」

「この青髭オカマが!」

「あらん、何か言った春ちゃん?」

京楽の首をしめあげながら、キャサリンはにこにこしていた。

「な、なんでもない、ギルドマスター!」

「やだ、キャシーって呼んで♡」

「今回は、後味が悪い事件だったね」

「ああ。真実を知る者はみんな死んでしまった」

「まぁ、そんな時もあるわ。今夜は、神の王国壊滅を祝して、酒場で飲み放題食い放題のパーティーがあるから、是非参加してね♡」

Fランクからの冒険者からも参加ができるらしく、酒場はその日、人が入りきらないほどに賑わった。

二人は、ある程度飲んで食べてから、S、A、Bランクのそれぞれの知り合いと会話をした。

皆、不完全燃焼であることが気に入らないようだった。

どのみち、生きていても処刑だったろうなので、処刑する手間が省けたとして考えることにした。

「じゃあ、僕たちは帰るね」

「くるるー」

ブルンは、生ごみをいっぱい食べて、お腹いっぱいであるらしかった。

「じゃあ、また明日」

浮竹も、知り合いたちに手を振って別れた。

マイホームにつくと、浮竹と京楽は手を握りあい、昔話をしだした。

「君が、僕に会いに来てくれたのが、全ての始まりだったね」

「ああ。ダークエルフが捕まったって、大騒ぎだったんだぞ」

当時を振り返る。

ダークエルフの子供が捕まった。すぐに牢屋に入れられて、幼い浮竹は、門番にスリープの魔法をかけて、ダークエルフの京楽と出会った。

「誰。誰か、そこにいるの?」

「君、ダークエルフなの?肌が白いよ」

「でも、ダークエルフなんだよ」

「ちょっと待ってて。お腹すいたでしょ?今、パンもってきてあげる」

浮竹は、自分の昼食用のパンとスープを、牢屋の中にいる浮竹に差し出した。

「ありがとう・・・。こんな暖かい食事をするのは久しぶりだよ。昨日まで、雑草を口にして飢えを凌いでいたからね」

「おかわりいるか?」

「欲しいけど・・・・これ、君の分の食事じゃないの?」

「俺は族長の次男だから。ある程度は融通が利くんだ」

「そう。じゃあ、おかわりほしいな」

「分かった」

浮竹は頷いて、自分の自宅の厨房からパンとスープを持ってくると、京楽の牢屋の中に入れた。

それから、浮竹は、見張りの目をかいくぐり、毎日のように京楽の元に通った。

やがて80年が経ち、12歳の見た目になった二人は、浮竹が抜け道を作ってくれた牢屋から抜け出して、冒険者登録をした。

エルフ種族は、80歳にならないと冒険者登録できないようになっていた。

度々牢獄を抜け出して、浮竹と京楽はFランク冒険者として、依頼をこなしていくが、あまり長く牢屋をあけていられないので、冒険者稼業は月に2回くらいだった。

もう、その頃には京楽は浮竹に惚れていた。浮竹も京楽を必要としていた。

120歳になり、成人した二人に待っていた運命は、京楽の処刑と、族長の長の補助をしろというがんじがらめの人生のレールだった。

二人は、手を取り合って逃げ出した。

逃げ出す直前、浮竹の父親であり、族長であったエルフから、ミスリルの剣をもらった。

餞別代りだった。

こうして、エルフの森を捨てた二人は、人間社会で暮らすようになった。

Cランク冒険者になっていたが、収入はそれほどなく、最初の頃は宿屋の厩(うまや)で、夜を過ごした。寝床は藁だった。寒かったが、文句は言っていられなかった。

やがてCランクも板につき、毎日金貨5枚程度を稼げるようになると、1日銀貨2枚の宿を利用するようになった。

宿はいろいろに荷物があったので、二部屋借りた。

浮竹と京楽は、そういう欲はあまりなかったが、Bランク昇格試験に受かった日、契りあった。

お互い、居なくてはいけない存在になっており、伴侶であった。

エルフでそういう関係に陥るのは珍しいことなので、それを知ったギルドマスターは、不幸になるかもしれないと、二人に諭したが、二人はいつも一緒だった。

今は180歳になるが、かれこれ150年は一緒にいた。

エルフの寿命は長い。

人生の5分の1を一緒に過ごしてきた。

もう、お互いに居なくてはいけない存在だった。

「懐かしいねぇ。君がパンとスープを差し出してきた姿が、今でも鮮明に蘇る」

「それなら、俺も覚えているぞ。薄汚れた格好で、暗い目をしていた。でもとても孤独な目をしていた。お腹がいっぱいになったら、少しは違う表情を浮かべるんじゃないかって、自分の分の昼食をあげたんだ」

「ああ、あの食事、やっぱり君の昼食だったの」

「おかわりは、屋敷の厨房から盗んだ」

二人して、クスクスと笑い合った。

もう、遠い日の記憶である。欲は薄いが、二人は時折契り合う。

それは子孫を残すためのものではなく、お互いの存在を確かめ合うためだった。

「今日はもう遅い。寝ようか」

「ああ、そうしよう」

すでに風呂には入った。

同じキングサイズのベッドに横になり、互いを抱きしめ合うよな恰好で眠りにつく。

ダークエルフに生まれてよかった-------------。

いつからか、京楽はそう思うようになっていた。未だに種族は偽っているが、浮竹と出会えたのは、京楽がダークエルフだったからだ。

いつか、皆にもダークエルフだと、告げれる日がくればいい。そう思いながら、眠りの底に引きずられていくのだった。




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エンシェントエルフとダークエルフ17

その依頼は、神隠しにあった子供たちの調査というものだった。

ハーメルンの笛吹と名乗る人物が通って行った後には、12歳以下の子供がいなくなるのだという。

進路からして、次に狙われるのはイアラ帝国の隣のアスピラ王国のロトスという村だった。

緊急クエストだったので、浮竹と京楽の他にも、Bランク6名、Aランク3名が、派遣された。

やがて、笛の音がしてきた。

ハーメルンの笛吹だった。

青年は、一見するとただの人間に見えた。

でも、エルフの浮竹と京楽には分かった。

「正体は、魔女だ!このまま、後をつけるぞ」

魔女を倒す適正はSランクだ。

Bランク冒険者は援軍を呼ぶために冒険者ギルドに戻ってもらい、Aランク冒険者3人と一緒に行動を開始した。

「さぁ、いい子だからこの洞窟の中にお入り」

そこは、暗くて深い洞窟だった。

気づかれないように、音を立てずに後をついていく。

洞窟の奥は牢になっており、これまで行方不明になっていた子供たちもみんな揃っていた。

「さて、次の町は・・・・・」

「そこまでだ!」

京楽がライトの光で洞窟を照らし、浮竹が剣でハーメルンの笛吹の喉もとに剣を突きつける。

「なんですか、あなたたちは!」

「それはこっちの台詞だ!」

「私はただ、迷子の子供たちを保護しただけで」

「正体はばればれなんだよ、この魔女が!」

Aランクの剣士の一人が、ハーメルンの笛吹に剣を向けるて切りかかると、浮竹の剣を振り払い、Aランクの剣士の剣を叩き折った。

「ふん、人間風情が。用があるのは、子供だけだ。他は、皆殺しにしてくれる」

「エアプレッシャー」

「ファイアランス!」

「てやあああ!!」

他の3人のAランク冒険者は攻撃をしかけるが、魔法を易々と弾いて、切りかかっていた剣士のサブの剣を身に受けるが、少し切られただけだった。

「エアプリズン」

魔女は、空気の檻を作り、そこから空気をぬいてAランク冒険者たちを酸欠にさせる。

「僕の存在を忘れないでほしいね!ウォータープリズン!」

「ちっ、エルフか!」

エルフは、人間の魔法よりも魔法に優れている。特にダークエルフの京楽は上級魔法を軽々と使いこなす。

「こっちもだぞ!」

浮竹が、正体を現した魔女の右足を剣で貫いた。

「ブルン、Aランク冒険者たちに回復魔法を!」

「くくるーー!!」

ブルンは白く光ると、酸欠で倒れていた3人のAランク冒険者にヒールの魔法を使った。

「ありがとうございます!」

「私たちも、まだまだ戦えるわ!」

「俺も魔法で援護します!」

「ええい、まとめて死ね!ゴッドエクスプロージョン!!!」

洞窟に穴があくほどの威力だった。

幸いにも、牢屋の中の子供たちには落石は起きなかったようで、無事だった。

浮竹と京楽は、マジックバリアを4重に起動させて、3人のAランク冒険者を守った。

「すみません」

「アイシクルランス」

「ウォータースラッシャー!」

浮竹と京楽も、魔法を唱える。

「エアリアルエッジ」

「フレイムランス!」

洞窟の中だったので、大規模な魔法は使えなかった。

魔女は最初はシールドを出して防いでいたが、4人も魔法を使える者がいて、次々に魔法を唱えるものだから、シールドをはるだけで精一杯で、浮竹がミスリルの剣をAランクの剣士に貸したことなど、知らなかた。

「もらった!」

剣士は、魔女の体を袈裟懸けに斬り裂いた。

「ぎゃあああああ!!!」

「サイレンス!」

魔法を唱えられないように、すかざす京楽が沈黙の魔法をかける。
「魔法が使えない!おのれえええ」
魔女は衣服をやぶいて、巨大な獣になった。
「全員、食ってやる!」

「フレアフィールド」

「あ、熱い!」

足を火傷した魔女であった獣は、見せかけだけで、ただの魔女に戻った。

「おのれええ。呪い殺してくれる・・・・ガハッ」

剣士からミスリルの剣を返してもらった浮竹が、魔女の心臓を貫いた。

「こんなところで、私が死ぬはずが・・・・」

心臓を貫いてもまだ生きていたので、浮竹は首を刎ねた。

魔女は、そのまま動かなくなり、魔石を残して灰となった。

Aランクの冒険者3人と、浮竹と京楽はハイタッチを交わした。

「子供たちを解放しよう」

「鍵がないようね」

「俺に任せてくれ」

浮竹は、アイテムポケットから針金を取り出して、カチャカチャと何度かいじって、鍵を開けた。

「うわああああん!!」

「わああああん!!」

子供たちは、洗脳が解けて泣きだした。

応援のSランク冒険者もかけつけてくれて、神隠しにあった子供は、一人残らず保護された。


「さて、今回の報酬金の話だが」

浮竹が、報酬金金貨300枚を手に、Aランク冒険者に金貨70枚ずつを3人に、残りの金貨90枚を、わざわざ援護として駆けつけてくれたSランク冒険者3人に、30枚ずつ分けた。

「これじゃあ、浮竹さんと京楽さんの取り分がないじゃないか」

「いや、とある筋からかなりの金をもらったことがあるので、今回は魔石の代金だけをいただくよ」

「俺達は大丈夫だから、遠慮しないでくれ」

「じゃあ・・・・」

Aランクもランクの冒険者たちも、ありがとうといって、金貨を振り分けた通りに受け取っていった。

「さて、魔女の魔石だけど。いくらになるかな?銀貨5枚だとかだと笑えるね」

受付嬢に魔石を鑑定してもらい、買取り金額をきくと、銀貨3枚と銅貨6枚だった。

「その、魔女の魔石は大変な粗悪品が多いものでして・・・すみません」

「よし、今日はこの銀貨3枚と銅貨6枚分の食事をレストランでとろう」

あまり高級なレストランには入れなかったので、ちょっと廃れたレストランで、ちょうど銀貨3枚と銅貨6枚になるように注文して、食べて飲んだ。

「たまには、質素なのもいいよね」

「そうだな。節約するのもいい」

白金貨千枚をまるまる貯金している。

生活にかかるお金は、休日に決めた土日以外の毎日で依頼を受けて、その分で賄っていた。

1日の依頼で金貨300枚がたまることがある。

少し贅沢をしているので、二人で月にかかるお金は金貨200枚だった。

銀貨3枚銅貨6枚なんて、駆け出しの冒険者をやっていた頃を思い出す。

「僕らも、立派になったものだよね。はじめはFランク冒険者だったのに」

「そうだな。時間はかかったが、今ではAランクだ」

そもそも、エルフは成人するのに100年くらいかかる。

12歳の容姿になるまで、80年かかった。

それまでは、冒険者登録はできずに、成人するまでの間に依頼をスローペースでこなしていき、今に至る。

成人した時にCランクの冒険者となり、エルフの森を飛び出した。

今や、マイホームをもち、豪邸を買えるようなお金持ちだ。

「貯金、楽しいよね」

「ああ、そうだな」

銀行に白金貨千枚はまるまる預けていた。

利子だけで、年間に白金貨50枚はいきそうだった。

「まぁ、これからも貯金していこう」

「そうだね。次は別荘でも買おうか」

「お、いいな。ただし、稼いだ金でだぞ」

「うん、当たり前だよ」

そうこう言ってるうちに、すぐに別荘がもてるようになるまで、金が貯まるのであった。


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エンシェントエルフとダークエルフ16

その組織は、1500年前の大昔に滅んだヒウ帝国の末裔と、科学者たちでできていた。

人間や亜人種が住む、ウッドガルド大陸の一番端にある、レイサ共和国に研究所はあった。

モンスターを捕まえて、人工的に手を加えたり、人工的にモンスターを生み出す研究所であった。

その研究所のことを知っているのはごく一部であったが、中にはおしゃべりな者もいて、研究所があることは、近くの農村では知られていた。

だが、自分たちに害になるわけでもないので、共和国の上の者に直訴する者はいなかった。

ヒウ帝国の末裔も、科学者たちも、自分たちが世界を革命へと導いていると信じていた。

組織の名は、ヒウの翼。

今はまだ影の存在で、培養されたモンスターが野に放たれることはあったが、それが冒険者ギルドの者に倒されて、魔石が鑑定されて、人の手で生み出されたモンスターであることがばれるなど、夢にも思わないのであった。

緊急収集には、浮竹と京楽も出た。

人がモンスターに手を加えたか、人工的に作り出した可能性が高いということで、その組織を見つけるためにも、討伐したモンスターの魔石は、必ず鑑定してもらうことになった。

各地で情報収集をしてると、レイサ共和国でモンスターを捕まえては培養している謎の組織があることが分かった。

ロスピア王国の退治屋に今回の研究所のことは任せられた。

「なんか、モンスターの培養とか、きな臭くなってきたね」

「そうだな」

「剣士の僕と精霊の浮竹の出番だね」

「師匠もいることだし、あの二人なら組織を壊滅に追い込んでくれるだろう」

浮竹と京楽は、施設の完全なる壊滅を祈るのだった。


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レイサ共和国の研究所では、京楽が狂ったように、すでに死体となった人間を何度も妖刀でさしていた。

まだ、研究員は生きている者もいた。

『あはは、はは』

剣士の京楽は、狂った笑い声をだしながら、逮捕するための研究員を斬ってしまった。

他のSランク冒険者たちのうちの一人が、殺戮をしていく剣士の京楽に向かって叫んだ。

「化け物!!」

すると、剣士の京楽は、狂ったように笑った。

『そうだとも、僕は「化け物」さ』

全てが終わった。

モンスターも人も、剣士の京楽一人で殺してしまった。

「師匠・・・・・」

エルフの浮竹が、剣士の京楽を心配して、青白い顔の京楽に声をかける。

「大丈夫か、師匠」

『大丈夫だよ・・・・・』

とてもそうは見えなくて、せめて返り血をどうにかしてやりたくて、魔力消費は多いが、身が綺麗になるリフレッシュの魔法を使って、返り血や人の脂などをとってあげた。

京楽と妖刀の浮竹を、エルフの浮竹と京楽はロスピア王国の家まで送り、一時的に冒険者ギルドに戻った。

「施設は当たりだったようだわ。ロスピア王国の退治屋に依頼したら、壊滅してくれわ。ただ、科学者の一人が研究資料をもって逃げたみたいで、みんな血眼になって探しているの。アリアラス=ヒウっていう名前の男よ」

「組織名はヒウの翼だったな。やはり、滅んだヒウ帝国と関係ある人物なのか?」

「そうよ。帝国の皇族の端にいた人物みたい。代々ヒウの名を継がせて、いつかヒウ帝国の復活のために組織を立ち上げたみたいね」

「厄介だな」

京楽の頭の上で、ブルンがぽよぽよとはねた。

「そうだね、心配だね。ロスピア王国のもう一人の僕の家に、もう一度向かってみようか」

ブルンがあの二人とプルンが心配だという言葉もあって、浮竹と京楽は、ロスピア王国に向かうことにした。

馬車に揺られること3時間。

ロスピア王国の端にある、魔物退治の専門の店に、剣士の京楽と精霊の浮竹はいた。

ただ、とても顔色が悪かった。

「大丈夫かい?」

エルフの京楽が、精霊の浮竹に話しかけると、青い顔をしていた。

『少し、気分が悪い』

「師匠、大丈夫か?」

『ああ、大丈夫だよ・・・・・』

「ププルー」

プルンが心配して、飛び跳ねていた。

「ブルン、一応ヒールを。精神的なものでも、少しは楽になると思う」

「くくるーー」

ブルンは、二人に回復魔法をかけた。

まだ顔色は悪かったが、少しだけましになった気がした。

「今日は、俺たちで飯を作ろう。師匠もそんな気分じゃないようだし」

「僕も手伝うよ」

エルフの二人は、簡単にエビピラフと中華スープを作った。

「ほら、食欲はないかもしれないが、少しは食べてくれ」

『うん・・・・・』

精霊の浮竹は、のろのろとスプーンを動かして、食べていく。

「ほら、師匠も」

『ボクはいらない』

「そんなこと言ってると、精霊の浮竹にキスしちゃうよ?」

エルフの京楽の言葉に、剣士の京楽はギロリと睨んできた。

『食べる。あと、そんなことしたら、消し炭だからね』

「おお、怖い怖い」

エルフの浮竹と京楽は、ご飯を食べてすぐに横になった二人に毛布をかけてやりながら、疑問を口にした。

「師匠は、何かを隠しているんだろうな」

「そうだね。でも、まだ教えてもらえる段階じゃないと思う」

「うん、俺もそう思う。いつか、師匠が自分から話してくれるのを待とう」

「プルルゥ」

「くくるーー」

プルンとブルンは、飼い主たちの心配や体調を少しは気にしているようだったが、久しぶりに会ったので、プルンがブルンを頭の上にのせて、そこら中をはねていた。

「プルン、ブルン、二人が寝ているから、静かにな?」

「ププル~~」

「くるる~」

二匹のスライムは、分かっているのか分かっていないのか、鳴き声のボリュームを落としながら、ぽよんぽよんと跳ねていた。

「プルンもブルンも、こっちへおいで」

「ププウ?」

「くくるー?」

エルフの浮竹と京楽は、修行中にも借りていた隣の空き家に入り、食事や風呂をすませると、置きっぱなしにされたったべッドで横になって眠った。

プルンにはリンゴ10個、ブルンには生ごみを大量に与えてやった。

プルンとブルンも、満足して寝てしまった。


『やぁ』

次の日、剣士の京楽の家にいくと、朝食の用意をしていた剣士の京楽と鉢合わせた。

「精霊の浮竹は?」

『まだ眠ってる。起こさないであげてね』

「ああ、分かった、師匠」

「昨日の塞ぎこみようが嘘のようだね」

『こっちにも、いろいろ事情があってね。まぁ、気持ちの区切りはついたよ』

「式から知らせがあって、逃げた研究員の一人は、結局見つからなかったそうだ」

『そうかい・・・・・』

剣士の京楽は、もう興味はないのだと、朝食にトーストを4枚焼いて、バターを塗っていく。

『朝ごはん、食べていくでしょ?』

「ああ、師匠気を遣わせてしまったか。ありがとう。ほら、京楽も礼を言え」

京楽はぶすっとなって、剣士の京楽に礼をを言った。

「ありがとう」

『プルンは?』

「ああ、昨日うるさいと眠れないだろうと思って、一夜だけ預かった。隣の家、使わせてもらったけど、平気だよね?」

『ああ、それは問題ない』

「プルン、ブルン、お互いに離れたくないって我儘をいってな。引きはがすのに時間がかかった・・・」

「ププルーーー!!」

剣士の京楽の足元で、プルンは跳ねた。

ブルンは、エルフの浮竹の頭の上で跳ねていた。

「くくるーー」

「また引き離してしまうが、また会えるから。なぁ、ブルン」

「くくるう」

「プルル」

またねぇ、お兄ちゃん。

またね、弟よ。

そう挨拶をしてから、朝食だけ食べて、エルフの二人はイアラ帝国に帰ってった。

ブルンがいなくなり、プルンは吸恋寂しそうにしていたが、りんごを10個食べてもいいと並べられて、食欲のことでブルンの存在を一時忘れてしまうのであった。


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「はぁはぁ。ここまで逃げてくれば、安全だろう」

アリアラス=ヒウは、研究資料と巨額の金をもっていた。

そして、こともあろうか、イアラ帝国で自分はヒウ帝国の皇族であり、神はヒウ帝国の第二皇子であるとして、宗教組織として発展していき、裏では人身売買や人工生命体の存在などに手を出すのだった。

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エンシェントエルフとダークエルフ15

今回の依頼は、サイクロプスの群れの退治だった。

サイクロプスとは、一つ目の巨人だった。

巨人は力が強いので、普通の剣士では倒しにくいが、弱点である目をつぶしてしまえば、戦えないこともない。

Bランクの依頼だった。

至急に、ということで、Aランクの依頼ではなかったが受けた。

出たのは、ミスリル鉱山の奥だった。

イアラ帝国の大切なミスリル鉱山で、イアラ帝国の財政を担う鉱山の一つだった。

なので、至急の依頼だった。

報酬金もBランクにしては高くて、好条件なので浮竹と京楽が受理した。

馬車ではなく、現地には空間転移の魔法陣で行き来できるようになっていた。

発掘したミスリルを、すぐにでも帝都のアスランで加工するためであった。

転移魔法陣に乗って、サイクロプスの群れが出るという鉱山に辿り着いた。

「くくるーー」

鉱山の入り口で、すでにサイクロプスが陣取っており、その一つ目にめがけてブルンが酸弾をかけた。

「ぐぎゃあああああああ!!」

「いきなりやるね、ブルン」

「くくるーー」

そうでしょ、そうでしょ、もっと褒めて。

そう言う小さなスライムの頭を撫でてやる。

ブルンは、京楽の頭の上に乗って、遅いかかってくるサイクロプスの一つ目だけを的確に狙って、酸弾を飛ばした。

「鉱山だから、大きな魔法は使えないね。浮竹、任せてもいいかい?」

「ああ、大丈夫だ。皮膚が少し硬いが、ミスリルの剣で切れないわけじゃない!」

浮竹が、目を失って暴れまくるサイクロプスの攻撃をかいくぐり、その首を刎ねていく。

気づけば、サイクロプスの死体だらけになっていた。

魔石をとりだして、体は素材になりそうにないので、京楽の火の魔法で灰になるまで焼いてもらった。

「緊急性を要する割には、簡単な依頼だったな」

「危ない!」

そこまで、浮竹がいた空間が棍棒が襲ってきた。

ギガントサイクロプスが出てきた。

「京楽、大丈夫か!?」

「あいたたた」

「くくる~~~」

ブルンは、すぐに京楽に回復魔法をかけた。

「ありがとう、ブルン。ギガントサイクロプスか・・・でかいね」

「GYUUUUUUU!」

「この坑道では、爆発の魔法は厳禁だな。火の魔法も高威力のものは厳禁だ。氷か水か、その他の属性の魔法で倒そう!」

浮竹は、ミスリルの剣に酸の魔法をエンチャントして、ギガントサイクロプスの右足に剣を突き立てた。

「GUUUUUUUUU!!!」

ギガントサイクロプスは、怪我をいとも簡単に再生してしまった。

「こいつ、再生能力が高いな」

「じゃあ、氷漬けにしちゃおう」

「ああ!」

「「エターナルアイシクルワールド!!」」

二人が一緒に唱えた氷の上級魔法で、ギガントサイクロプスは氷漬けになったが、なんと氷を割って生きて出てきた。

「凍結魔法が効かないのか?」

「いや、ダメージは受けてるみたいだよ」

体の節々に氷が残り、動きは鈍くなっていた。

浮竹は、酸が付与されているミスリルの剣で、まず特徴的な目をつぶした。

「GUAAAAAAAA!!」

雄叫びをあげるギガントサイクロプスの肩に乗って、その首に剣を通す。

「GIIYAAAA!!!」

硬い皮膚を酸で焼いていくが、首を刎ねることはできず、再生していくものだから、浮竹はまだ傷が塞がっていない場所から、体内に向かって魔法を唱えた。

「レッドクリムゾン!!!」

「GIYAAAAAAAA!!]

体の内側から焼かれて、さすがのギガントサイクロプスも倒れた。

まだ痙攣して息のあるギガントサイクロプスの生命力には、感嘆するものがあった。

「ウォーターボール」

倒れてもう手足を動かせず、虫の息なので、水の魔法で顔を包み込んで、水死させる京楽であった。

「ウォーターボールは、簡単だけど、溺死するまでに暴れまくるからね。動きが封じられている相手に効果が高いよ」

「窒息死が一番苦しいからなぁ。ウォーターボールの餌食になるモンスターにはお悔やみを申し上げたい」

そんな軽口をたたきながら、ギガントサイクロプスから魔石を回収する。

「これまた、巨大な魔石だな」

「そうだね。さすがは上位種族なだけあるよ」

「くくるーーーー」

鉱山の奥から、まだ小さいサイクロプスが数匹出てきた。

「幼体か・・・かわいそうだけど。ウォーターボール」

「ウォーターボール」

死体を運ぶ手間を省くために、ウォーターボールで窒息死させた後、灰になるまで焼いた。鉱山なので空気が薄いため、一酸化炭素中毒にならないために、ウィンドの基本の風魔法で、新鮮な空気を送ってもらった。

「とりあえず、鉱山を一通り回ってみよう。まだサイクロプスの生き残りがいるかもしれない」

広い鉱山なので、マップを頼りに二手に別れてしらみつぶしに探したが、もうサイクロプスはいないようだった。

ちなみに、ブルンは回復魔法が使えない浮竹のもしものために、浮竹についていってもらっていた。

ミスリル鉱山の一番深くに、サイクロプスの卵を発見して、浮竹は次々と壊していった。

鉱山の奥深くは、サイクロプスの巣と繋がっているようで、サイクロプスの巣を見て回ると、活動していたサイクロプスは倒したのが全部で、幼体もいないし、卵も他になかった。

「サイクロプスの巣と繋がっていた・・・・・一応、教えておく必要があるな」

「くくるーーー」

「え、お腹すいた?そこらへんのゴミを食べていいぞ」

「くくる」

サイクロプスの巣があった場所には、ごみがいっぱい散乱していた。

そのゴミを綺麗さっぱり食べて、ブルンは満足したようだった。

「くっくるー」

「そうか、満足か。じゃあ、帰ろうか」

「くくる!」

京楽と鉱山の入り口で合流して、空間転移の魔法陣で帰ってくると、ギルドマスターのキャサリン、通称キャシーの口づけが、頬に待っていた。

「「ぎゃあああああああああ」」

「うふん、いやん、二人ともそんなに喜んでくれなくてもいいのよ?」

「誰が喜ぶか!ウォーターボール」

京楽は水を出すと、アイテムポケットからタオルを出して水に浸すと、頬をごしごしぬぐった。その後は、浮竹の頬もぬぐってあげた。

「緊急クエストだから、報酬金は高いわよ~?Bランクだけど、報酬金は金貨500枚よ!」

すでに、アークデーモンの件で助けた魔王配下の四天王、電撃のボルの妹を救ったことで、ボルからと、白金貨千枚を渡されていた。

金銭感覚がおかしくなりそうで、金貨500枚と言われたら、昔は飛び跳ねて喜んだが、今はああ、ありがとうと受け取るだけだった。

「魔石の鑑定と買取りを頼むよ」

「この巨大な魔石は?」

「ああ、それはギガントサイクロプスのものだよ。上位種族だから、魔石も大きいんだろうね」

「この魔石には、人の魔力の反応があります。多分、人工的に作り出されたた個体かと」

「Aランク以上の冒険者を緊急収集してちょうだい!」

キャサリンは、真面目な顔でギルドマスターとして、動き出す。

人の手によって、モンスターが生み出された可能性がある。

それは、冒険者ギルドにとっても、世界にとっても、衝撃的な内容であった。








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黒魔法使いと白魔法使い4

14階層は、ゴーレムばかりでた。

ストーンゴーレム、アイアインゴーレム、ファイアゴーレム、アイスゴーレム、グリーンゴーレムだった。

ファイアゴーレムとアイスゴーレムは反対の属性の魔法で京楽が倒していった。

グリーンゴーレムに火の魔法で、ストーンゴーレムとアイアンゴーレムは火の魔法を付与せたパーティーリーダーの剣できっていったが、アイアンゴーレムは硬かった。

新しい剣を手に入れたので、付与しても錆びない酸を付与して、アイアンゴーレムに切りかかると、酸にふれたところがじゅわっとと溶けていき、心臓部分にあったコアを破壊すること倒していった。

盾使いは、ストーンゴーレムとアイアンゴーレムの攻撃を全部引き受けて、新米斧使いと獣人盗賊は、グリーンゴーレムを倒していった。

新米斧使いは、力が強いのでストーンゴーレムもアイアンゴーレムも斬り裂いてしまった。

魔石だけ取り出して、アイテムポケットにしまい込む。

15階層はブラックベアとブラックサーペントが出た。

ブラックベアもブラックサーペントも、肉が食えた。

ブラックベアは毛皮を、ブラックサーペントは皮が素材となった。浮竹と京楽とパーティーメンバーたちは次々に倒していく。毛皮と皮と肉を京楽のアイテムポケットに入れて、16階層、17階層と進んで、16階層で出会った強敵コカトリスの卵をゲットして、その体もアイテムポケとに入れていた。
17階層にはセーブゾーンがあって、そこで遅めの昼食をとることになった。

ブラックベアとブラックサーペントとコカトリスの肉を適当に斬り分けて、野菜やキノコを入れて鍋にした。

コカトリスの卵は、〆の雑炊につかった。

「ふう、うまかった」

「おいしかった」

「うんうん、作った僕もいうのもなんだけど、適当な肉を鍋にしたわりにはおいしかったね」

「コカトリスがボスでもいいくらいの強さだからな。石化を解く魔法を覚えているが、誰も石化しなくよかった」

浮竹は、鍋を食べ終えて、一安心といったところだった。

コカトリスと遭遇したとき、強い毒をもっている尾の蛇を、まずはリーダーの剣士に切り落としてもらった。それから、鶏の両目を石化するので浮竹がサンシャインの光の魔法で潰し、京楽がエクスプロージョンの魔法を放って、トドメをさした。

肉は食えるので、エクスプロージョンの魔法は頭部あたりにしてもらった。

コカトリスの肉と卵はまだ残っているので、次の18階層に進む。

それまで草原地帯であったが、がらりと外観がかわって、砂漠地帯になった。

サンドワームの群れが出てきた。

倒していくと、魔石の他に、京楽が食べるので体液を採取しろという。

みんな嫌そうな顔をしていた。

でも、京楽が食べれるということはおいしいのだろう。緑色のグロテスクな体液を集めて、大きめのガラスの瓶に入れた。

それをアイテムポケットに入れて、19階層に進む。

19階層も砂漠で、サンドコヨーテとサンドスコーピオンが出た。どちらも食用には値しないと思われたのだが、京楽が倒したサンドスコーピオンの尾を切り離した胴体をアイテムポケットにいれた。
それかから、サンドコヨーテは毛皮だけをアイテムポケットにいれる。

20階層はいよいよボスで、サイクロプスだった。

一つ目の巨人は、斬りかかってきたパーティーリーダーの剣を弾き飛ばした。

「くそ、めちゃ硬い」

「まずは目をつぶそう」

浮竹の言葉に、盾使いがヘイトを稼いで挑発のスキルを発動させて、攻撃のターゲットを引き受けた。

その間に、獣人盗賊が投げたボウガンの弓がサイクロプスの一つ目をつぶした。

「ぐあああああああ!!」

サイクロプスは手をぶんぶん振り回し、暴れまくる。

盾使いは一度下がり、新米斧使いがサイクロプスの右腕を切り飛ばした。

「よし、じゃあ倒しちゃいますか」

「そうだな」

京楽と浮竹は魔法を唱え出す。

京楽と浮竹はLVカンストの99で、倒してもこれ以上レベルが上がらない。なるべく仲間たちに戦闘をさせて、LVがあがりやすいようにして、自分たちにふりわけられるはずだった経験値は、自然と仲間たちに振り分けられた。

それでも、浮竹と京楽が倒しただけでは、LVだけあがって技術がついていかないので、よほど危険なボスとかモンスター以外は、他のパーティーメンバーにも攻撃してもらった。

攻撃すればする分、経験値がたまる。

「アイシクルスピア!」

「ホーリーランス!」

それぞれ氷と聖属性の槍で体を貫かれて、サイクロプスは倒れた。肉は人間に近い体をした亜人の一種に近いので、食べないことにした。

20階層を踏破して、財宝の間が開いた。

金貨300枚とミスリルのインゴットが10個あった。

全部、浮竹と京楽以外の4人で分ける予定だった。

とりあえず、京楽のアイテムポケットに入れた。

そのまま21階層、22階層と進んで、22階層で夜を過ごすことしにた。

草原のフィールドなので、敵が近づいてきても分かりやすいからだ。

21階層も砂漠で、アイアンスコーピオン、デッドスコーピオンなどがでた。

体が硬いうえに猛毒なので、京楽の氷の魔法で屠ってもらった。

22階層では、キラーラビットが出たが、弱かったのですぐに倒せた。みんな、この新ダンジョンにきてLVも上がり、強くなっていた。

キラーラビットを20匹くらい屠って、毛皮と肉に解体する。

毛皮は京楽がアイテムポケットにしまい込んだ。

まず、キラーラビットの肉を適当な大きさに斬り分けて、コカトリスの卵をとかしたものにつけて、サンドワームの体液につけた。

「うわ、サンドワームの体液つけるのかよ」

「ピリ辛くておいしいんだよ?」

サンドワームは、食べれないかもしれないと思いつつも、昔京楽は焼いたものを口にしたことがあった。肉は口にできたものではなかったが、体液はピリッと辛くておいしかった。

それを高熱の油であげていく。

キラーラビットのサンドワームフライの完成だった。

バジリスクの残りの肉も同じようにサンドワームのフライにした。

サンドスコーピオンは茹でて、塩をまぶして、切り身をいれて中身の身を食べることになった。

今回のメニューは、食べるのに少し勇気が必要だったけれど、京楽がまずいものを作るはずがないと、皆信用して口にした。

「あ、辛くておいしい」

「ほんとだ、辛さと肉のうまみがマッチしてる」

「もっと辛くしたかったら、熱を通しておいたサンドワームの体液があるから、それをつけて食べてね」

例えるなら、エビフライのタルタルソースのようなかんじだった。

「サンドスコーピオンの肉は、カニの味に近いな」

浮竹が、サンドスコーピオンの切れ目から真っ赤になった身を口にした。

「でしょ。ほんとはアイアインスコーピオンもデッドスコーピオンも食べたかったんだけど、硬くてナイフが通らないから、辛抱したよ。ミスリル製のナイフが欲しいなぁ。今度の冒険に出るときは、ミスリルのナイフを用意しよう」

今のナイフは、普通の鋼鉄製だった。

少し欠けていた。

予備のナイフは5本はあるので、この旅の間でナイフが使い物にならなくなるということは、ないだろう。

「今日はここで野営しよう」

浮竹と京楽がパーティーに入る条件として、金銭の分配はいらないが、魔物食を食べること、あとは深夜の警戒への不参加であった。

浮竹と京楽は見張りに参加せず、他のパーティーメンバーのリーダーの剣士、盾使い、獣人盗賊、新米斧使いの順に、見張りの当番をした。

朝起きると、もう京楽は起き出して、朝食の準備をしていた。

余ったキラーラビットの肉を串焼きにしていた。野菜なんかも串に通して、朝飯はキラーラビットの串焼きだった。

「辛い味付けが欲しい人は、サンドワームの体液をかけてね」

浮竹をはじめとして、みんなもうサンドワームの体液が不味いとは思っておらず、辛いソースのような感じで、串焼きにかけて食べていた。

「さて、3日目の夜が明けた。あと4日、できるところまで探検しよう!」

もうすぐ、未踏破の26階層が見えてくる。

そんな階層であった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター65

藍染は、我が子ミライの絶対者の証を得るために、ミライを吸収した。

「あなた、どうしてミライを!」

「私が完全なる神になるためだ」

藍染は邪神から滅神になっていた。浮竹と同じ絶対存在になり、神格のある神になっていた。

「さぁ、シロ、ハル共にいこう。始祖浮竹と神喰らいの魔神京楽を倒しに」

シロとハルはただ頷いた。

純粋に藍染に恐怖するのだった。


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古城では、浮竹と京楽がポチとタマとその子供たちと遊んでいた。

ジリリリリリ。ピリリリリ。

深刻な警報音がなり、浮竹と京楽はポチとタマとその子供たちを巣の部屋に戻して、強力な結界を張った。

「やあ、ご機嫌いかがかな」

「藍染!ついにお前からやってきたか!」

浮竹と京楽は威嚇した。

背後には、シロとハルもいた。

「私は浮竹、君と同じ絶対存在になり神になった。もう、誰にも私の邪魔はできない」

「ゴッドフェニックス、カイザーフェニックス、エターナルフェニックス・・・・トリプルファイアフェニックス!」

藍染は、炎の禁呪を受けてもびくともしなかった。

「「エターナルアイシクルフィールド」」

氷の禁呪を受けて、体を凍らせるも、すぐに溶かしてしまう。

「浮竹、ちょっとやばいよこいつ」

「分かってる。隙をみたら、藍染の魂を喰え!来たれ、炎、氷、雷の精霊王!」

浮竹は、自分が召還できる精霊王を3人呼び出した。

「あの藍染をなんとかしてほしい」

「わかった我が友」

「契約者の願いを聞き届けてやろう」

「俺の出番じゃーーー」

炎と氷と雷の精霊王は、それぞれの属性を纏わせて藍染を攻撃した。

さすがの藍染も、神の力をもつ精霊王たちの魔法は効いたようで、傷を負っていた。

けれど、不老不死の呪いがあるせいで、傷は回復していく。

「始祖だけに厄介だな。京楽、今だ、魂を」

京楽は、魔神の咢で藍染の魂を喰おうとした。

しかし、魂は体と一体化して、食えなかった。

「だめだよ、浮竹。こいつ、魂を肉体と一体化している」

「じゃあ、倒せる方法がないのか」

「エターナルフェニックス」

3人の精霊王を精霊界に追い返した藍染が、魔法を放ってきた。

シロとハルは、ただ離れた位置から、その戦闘を見ていた。

割って入ったところで邪魔者にしかならず、傍観者と化していた。

藍染の放った不死鳥は、浮竹と京楽に火傷を負わせた。

浮竹はすぐに再生するが、京楽は血の魔法を使って回復するので少し遅くて、浮竹が京楽の傷に自分の血を浴びせた。

「はははは!エターナルフェニックスでこの威力!絶対者となった私には、もう怖いものなどない!」

藍染は滅神になっているのは分かったが、ここまで力が強くなるとは思っていなかった。

「どうする、浮竹」

「こうなったら、俺が魂をかけて封印するしか・・・・」

「だめだよ!そんなこと、僕が許さない」

「でも、このまま藍染を放置しておくと・・・・・」


「邪神や滅神には、神の罰が与えられる」

ゆらりと空間をまたぎ、姿を現したのは、浮竹の父である創造神ルシエードだった。

「ルシエード!」

「息災が、我が息子よ」

「お前の神の愛の呪いのせいで不老不死だが、何とか元気にやってるよ」

「ならば、いい」

「なんだぁ?神か?今の私は最高神にも匹敵する!創造神如きに、どうこうできると・・・」

藍染の動きが止まった。

「グギギギ・・・何故だ、何故絶対存在である私が!」

「吸収して得た絶対存在など、はりぼても同然。創造神であり、最高神である私の前では、児戯にも等しい」

「創造神ルシエードおおお!!!」

藍染は、全ての魔力を炎の不死鳥に注ぎこんだ。

「ワールドフェニックス!!」

禁呪中の禁呪の炎の魔法がルシエードを取り囲む。

けれど、魔力は分解されて、ルシエードに吸収されていった。

「なんだと!」

「息子らよ。今だ」

「「ワールドフェニックス×5」」

二人は、藍染の見せたワールドフェニックスという魔法をすぐに習得し、5回重ねの魔法で立ち向かった。

「ぎゃああああああ!私の体があああ!!」

炎に包まれて、のたうち回る藍染であるが、炎は一向に消えようとしない。不老不死であるため、死ぬこともできないでいた。

「今から、汝を滅ぼす。邪神も滅神も、等しく神の裁きを受ける」

「いやだ、私は世界を手にするのだ!」

黒こげになりながら、藍染はシロとハルに命令を下す。

今この隙に京楽だけでも滅ぼせと。

シロとハルは、魔法をで京楽に攻撃すると、魔神の咢で魂を喰われてしまった。

「ぐぐ・・・何故だ。私は最高神の力を手に入れたはずだ!」

「たかが滅神になったところで、最高神の力を手に入れたと思っていたのか・・・・哀れだな、藍染」

「うるさい!たかがヴァンパイの始祖如き存在で!」

体を燃やしながら再生を繰り返す藍染に対して、ルシエードが手をかざした。

「滅びよ」

「ああああ、嘘だああああ!この、この私があああああああ!!」

長い断末魔を残して、藍染は滅ぼされた。藍染は灰になっていった。

「ルシエード、何故前からこうしなかった」

「邪神から滅神になったからだ。そうでもしないと、このアビスの世界に降臨できない」

「そうか・・・藍染は、滅びたんだな?」

「ああ。もう復活することは・・・とりあえず、千年の間はあるまいて」

「ルシエ―ド、あとどれくらいこのアビスに降臨できる?」

「あと1週間といったとこころだな」

「それだけあれば、十分だ」


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浮竹と京楽は、結婚式を挙げることを決めた。

父であるルシエードを招いて。

血の帝国からはブラッディ・ネイの他に寵姫3名。

白哉、恋次、ルキア、一護、冬獅郎、平子が参加した。

人間社会からは、ギルドマスターと猫の魔女乱菊が参加してくれた。

京楽は黒のスーツを、浮竹は白のスーツを着て、浮竹だけ白いヴェールを被り、ブーケを手にしていた。

「汝、京楽春水。病める時も健やかな時も、浮竹十四郎を伴侶として愛することを誓いますか?」

「はい、誓います」

「汝、浮竹十四郎。病める時も健やかな時も、浮竹十四郎を伴侶として愛することを誓いますか?」

「はい、誓います」

今はペアリングはネックレスにしていた。

大きなブルーダイヤの指輪をそれぞれはめ合って、キスをした。

みんなから、ヒューヒューともてはやされた。

「ルシエード。俺は、あなたが俺を捨てていったのだと恨んだ時期もあった。だが、あなたは俺を愛してくれていた。俺の伴侶の京楽だ。京楽を最後の血族にする」

「兄様は、名実共に京楽ものになってしまった。チェッ、面白くない」

「ブラッディ・ネイ・・・・・・」

浮竹が哀しそうな顔をするので、ブラッディ・ネイも態度を改める。

「兄様はボクの者でもあるけど・・・・・結婚、おめでとう」

「ありがとね」

「ふん、ひげもじゃに言ったんじゃないからね」

創造神ルシエードは式に参加した後、浮竹に祝福をかけた。

「汝の愛が永遠であるように」

「ありがとう、ルシエード」

浮竹は、ブーケを投げた。

それは猫の魔女乱菊の手に落ちて、乱菊は最近ギンという青年と付き合いだしたと告白した。

「おっと、次の結婚は乱菊か?」

浮竹がそう言うと、乱菊は顔を赤くして、浮竹の背中をばしばしと叩くのあった。


ルシエードは、この世界に在り続けれる最後の時まで、浮竹と同じ古城で過ごした。

「これは?」

「神でなくとも、神界に入ることのできる特殊な指輪だ。汝と、汝の伴侶の分を用意している。何かあれば、それで神界に入り、私のところにくるといい」

「例えば、クッキーを焼けたからもっていくとか、そんなのでもいいのか?」

「ああ、構わぬ」

「そっか・・・・・」

浮竹はその場で伸びをして、過去を振り返る。

藍染の駒のいろんな相手と戦った。

京楽はただのヴァンパイアロードであったが、魔神となり浮竹に並ぶほどの力を手に入れた。

もう藍染はいない。平和な時代の到来であった。

「では、明日の昼に私はこの世界を去る」

「うん、分かった」


次の日の昼になり、昼食を食べ終えたルシエ―ドは、浮竹に別れの言葉を投げた。

「次に会う時は、神界へおいで」

「義父さん」

「なんだ、魔神京楽」

「あなたの息子さんは、僕が責任を持って幸せにします」

「こら、京楽」

「いいじゃない。結婚式もあげたんだし」

「分かった。我が息子を頼む」

「はい!」


ゆらりと、ルシエードは姿を消して神界に戻っていった。

ちなみに、昼食は生きたマンドレイクをぶち込んだシチューであった。ルシエードは平気な顔をして、おかわりまでした。

マンドレイクは、創造神には効かないようだった。


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「ああ!」

「初夜になるからね。たっぷりと可愛がってあげる」

「やああ、結婚してもう5日になるだろう!それを初夜だなんて!」

「だって、君のお父さんがいたんだよ?同じ古城にいるのに、こんな行為を実の息子に働いていましたとばれたら、何か罰を受けそうだよ」

「んあああ!!」

京楽に突き上げられて、浮竹は啼いた。

左手の薬指には、スタールビーの指輪をはめて、首からは結婚指輪を通したチェーンのネックレスをしていた。

「あ、あ!」

動かれるたびに、首からぶら下げた結婚指輪が光った。

「んあああ!」

「愛しているよ、十四郎。結婚もしたし、もう永遠に僕のものだ」

「あああ、春水、春水」

背中に手を回して、爪を立てた。

「お前も、俺のものだ・・・・ああ、もっとお前の子種をくれ」

すでに何度か胎の奥にだされていたが、物足りなくてもっととせがむ。

「君が満足するまで、出してあげる」

「ひああああ!」

奥をゴリゴリと削られて、浮竹はオーガズムでいっていた。

「あ、やあああ!!」

浮竹のものをしごきあげて、射精させる。

「んああああ!!」

同時に首に噛みついて吸血してやると、連続でいきまくって、浮竹は背を弓なりに反らせた。

「あああ、変になる!」

「大丈夫、僕がいるよ」

「あ、春水、愛してる」

「うん、知ってる」

前立腺をすりあげながら、入ってきたものを締め付ける。

「んっ、僕も出すよ」

「あ、あ、孕むくらい奥に出してくれ」

濃い精液を奥に流し込むと、浮竹はまたせがんだ。

「まだいけるだろう。もっともっと、お前をくれ」

「精強剤飲んで正解だったね。いいよ、君が満足して嫌がるまで出し続けてあげる」

「ひう!」

ごりっと奥を抉られて、浮竹はもう出すものがないのか、トロトロと先走りの蜜だけを出して、オーガズムでいっていた。

「ひあああ!

京楽は、それから3回ほど浮竹を犯して、中に精液を注ぎ込んで満足した。

「んあ・・・もう、いらない」

「うん。僕ももう出ないから」

浮竹の意識がまだはっきりしているので、シーツごと抱き抱えて、風呂に入って中に出したものをかき出した。

京楽は、自分でも恥ずかしくなるくらいの量を、浮竹の中に注ぎこんでいた。

「んあっ」

指でかきだされる行為にも、快感を覚える浮竹。

京楽はもう出すものがないで、元気であればこの場で浮竹を犯すところだが、我慢した。

お互いの体と髪を洗って、風呂からあがると水分をふきとり、髪を温風を出してかわかしてから、シーツそ変えたベッドで微睡むのだった。


藍染が滅んだことで、イデア王国で反乱がおこった。

それまで虐げられ、洗脳されていた民が正気に戻ったのだ。

女神オリガは捕まえられて、断頭台の露ととなった。

女神アルテナの肉便器は何をしても破壊できないので、地中深くに産められた。

真の意味で、平和の時代が訪れようとしているのであった。



                  fine











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エンシェントエルフとダークエルフ14

浮竹と京楽のブラックスライム(クラスはヒュージスライム)が、ヒーリングスライムになった話は、瞬く間に冒険者ギルド内で噂になった。

依然として、需要があるために、ブルンにはゴールデンポーションを作ってもらい、冒険者ギルドと市場には流していた。

ゴールデンポーションは高いが、効能がすごいので、高ランク冒険者の死亡率も急激に下がった。

今、世界中で活躍するSランク冒険者の数は122人。

この前のSランク昇格試験に、45人が合格して、世界に散っていった。

イアラ帝国では、7人のSランク冒険者がいた。

Sランク5人でできているパーティーと、Sランク二人、Aランク二人でできているパーティーだった。

浮竹も京楽もる強いので、よくパーティーに誘われて、一時的に仲間になることはあったが、そのままパーティーに残ってくれと言われても、残ることはなかった。

基本、浮竹と京楽はペアで、そこにヒーリングスライムのブルンがついてくる。

3人パーティーというほうが正しいだろうか。

ヒーリングスライムになってからも、ブルンは酸弾を飛ばせるので、攻撃力はあった。

ヒーリングスライムに魔法をかけてもらうと、欠損していた部位が復活する。

そう騒ぎになって、一度王宮まで行ったことがあった。イアラ帝国のTOPは、女帝の卯ノ花烈であった。

夫である更木剣八の失った右手を治してくれということで、浮竹と京楽はその言葉に従って、ブルンに癒しの魔法をかけさせた。

「まぁ、本当に右腕が」

「うお、まじで元に戻りやがった」

女帝卯ノ花も更木も喜んで、白金貨100枚をもらった。

白金貨は1枚で大金貨10万枚である。大金貨を1000万枚もらったことになる。

大金すぎて、頭がおかしくなりそうだった。

とりあえず貯金しておいた。

まとまった金が手に入ったからといって引退する気はなく、Sランク冒険者を目指し、




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エンシェントエルフとダークエルフ13

浮竹にとって師匠である、剣士の京楽の家の隣を借りて、ブルンとプルンは数日連続して一緒に過ごせて、とても幸せそうであった。

「くくるーーー」

「仕方ないだろう。今日でお別れだ。またすぐに会いにこれるから」

「くくー」

「プルルン?」

どうしてお兄ちゃんいなくなっちゃうの?

プルンには分からないことだらけだった。

エルフの浮竹と京楽は、けっこうが額を貯金しているが、仕事をしなければいけない。Sランクが世界で77人しかいない現在、Aランクが実質的な冒険者ギルドのTOPであった。

そんな二人がいつまでも仕事の依頼を受けないと、溜まっていく依頼もある。

人が受けたがらないような依頼まで受けるので、余計だった。

さて、イアラ帝国の帝都アスランに帰ってきた二人は、さっそく冒険者ギルドに出かけた。B~Sランクの依頼書がたくさん掲示されてあった。

「どれどれ・・・Sランクはエンシェントドラゴン退治、ファイアドラゴン退治、ブラックドラゴン退治・・・どれもこれもドラゴン退治ばかりじゃないか!僕たちが倒せるはずもない」

「普通にAランクの依頼を受けよう。これが一番古いな。サンドワーム退治・・・あああ」

サンドワームは、砂漠のミミズのモンスターだ。肉食で、地上にいるモンスターや人間を襲って地中に引き込み、食べてしまう。

見た目のグロテスクさと、全く素材にならないから人気がなく、何時まで経っても放置されている依頼であった。

「あらん、ちょっとだけお久しぶりね、あなたたち♡」

「キャサリンギルドマスター・・・・・」

「いやーん、キャサリンじゃなくって、キャシーって呼んでっていってるじゃない~」

ギルドマスターはオカマで、ふりふりのゴスロリの衣装をしていた。

クネクネしているので、いつもは視界に入っても、見ないふりをしているのだが、顔は顎が割れているし、ヒゲがこくて剃っても青いので、影で青髭オカマと呼ばれていた。

「サンドワームの仕事、引き受けてくれるのかしらん。誰も引き受けてくれないから、困っていたのよね♡」

「引き受けるから、顔を近づけさせないでくれないか」

「あらん、うっきーちゃん今日も男前♡」

言葉と一緒に軽く尻を触られて、浮竹はキャサリンの足を思いっきり踏んづけていた。

「いやん、乙女に乱暴はだ・め・よ♡」

「この依頼、行ってくるから馬車かりるよ。3日はかかるだろうから、金貨6枚置いていくね」

冒険者ギルドは馬車の貸し出しもしている。御者のいない馬車なら1日金貨2枚。御者がいると金貨3枚だ。

ちなみに馬を浮竹も京楽も操れるので、お互い睡眠をとって交代で馬車を走らせた。

馬がつぶれるといけないので、途中途中で休憩をとり、1日10時間ほど走ってもらった。

葦毛のよい馬で、よく訓練されていて人なつっこかった。

「くくるー」

ブルンが、馬のだしたあれを食べる。

街道でされたら、処分に困るので、正直助かった。

砂漠地方について、その熱さに服を薄くしようとして、浮竹に怒られた。

「暑くても、フードとマントをかぶっておけ。熱射病になるぞ。水分は十分にとれ」

ダークエルフはもともと密林に住んでいたので、砂漠の経験はほとんどなく、浮竹の指示に従った。

水分をいらないとかんじても飲むようにした。

水は魔法でいくらでも作り出せる。

「氷水を袋に詰めたものだ。これで熱い体を冷やしておけ。念のために、涼しい気温になれる魔法をかけておく」

涼しくなる魔法は民間魔法で、使える者は少なく、重宝された。

「あ、涼しい~。それにこの氷水の袋きもちいいよ」

「俺たちエンシェントエルフは、ダークエルフよりも気温の変化に敏感だからな。砂漠地帯に入る前に、涼しくなる魔法を使っていたが、お前にもかけてやればよかったな」

「ううん、僕はもともと密林に住んでいたから、暑さには強いよ。ただ、こんな乾燥した暑さの直射日光ははじめてだけど」

「砂漠は死の世界だ。気をつけろ」

「SHYASYASYA!」

馬車を砂漠の入り口付近において、サンドワームが出そうな砂場にきたのだが、早速反応があった。

「GYAOOOOOO!!」

涎を垂らした巨大な口をもつ、サンドワームが現れた。それも一遍に6匹も。

「エターナルアイシクルワールド!」

「ウォータープリズン!」

5匹を仕留めたが、1匹を仕留めそこねた。

「危ない、ブルン!」

「くくるーーー!!!!」

ブルンは、酸の液体を吐いて、サンドワームをあっけなく倒してしまった。

「ブルン・・・・お前、これ一応Aランクモンスターだぞ。よく倒せたな」

「くっくるーー!!」

ブルンの真っ黒な体が光り出した。

「なに、どうしたの?」

「多分、存在の進化だ。ブルンはブラックスライムだけど、種族は精密にはヒュージスライムになっている。元々会った時からヒュージスライムでLVも高かった。さっき、サンドワームを倒したことで、獲得経験値が一定数に満ちて、進化を始めたのだろう」

「なんのスライムになるんだろう」

「ヒュージスライムはビッグスライムの亜種だから、スライムロードかキングスライムか・・・・」

ブルンの光が終わった。

そこには、黒いが頭の上に薄い輪っかのあるスライムになっていた。

「ヒーリングスライムだ!このまま進化していけば、エンジェリングスライムになれるぞ!」

浮竹は興奮していた。

エンジェリングスライムは文献でしか見たことがない。

世界でも数例の目撃例がなくて、とても珍しいスライムだった。

レアメタルスライム並みに珍しい。

ブラックスライムの色を保ったまま、エンジェリングスライムに進化できるとしたら、相変わらずゴミは処理してくれるのだろう。

「くくるーーー」

ブルンは、暑さで奪われた体力を、ヒーリングで癒してくれた。

「ヒーリングスライムは、ヒーリングをするからな。京楽、お前の回復魔法より効くぞ」

「わー、僕の存在意義が1つ奪われた。まぁいいや。ブルン、君凄いね。ヒーリングスライムだなんて、冒険者ギルドに連れていっても大丈夫かな?」

「京楽のシャイターン一族の紋章が刻まれてある。盗まれても、自力で戻ってこれる知恵と手段はあるし、シャイターン一族の紋章があれば、売りものにはならないから、売られようとしても捨てられるだろう」

灼熱のシャイターン。魔王ヴェルの配下の四天王の一人であり、京楽の実の母親であった。

その一族のハヤブサの紋章を、テイムした時に刻んだのだ。

黒い体の一部に、うっすらとだが輝くハヤブサの紋章が光っていた。

「じゃあ、連れて行っても大丈夫か」

「誰でもかわまずヒーリングするから、ちゃんと癒す相手は味方とこっちが許した相手だけと覚えさせる必要があるな」

「くるるーー」

ブルンの知能は、15歳くらいになっていた。

任せろといっているらしかった。

体はヒュージスライムの頃より一回り小さくなって、両手ですくえるような重さだった。

「軽いから、持ち運びが楽になったね」

「くくるー」

どんどんけがしてくれ。癒すから。

「おいおい、そうほいほいと怪我をしていちゃ、Aランク冒険者なんてやっていけないよ」

「くくるーーー」

ヒーリングスライムになったブルンが、急いで馬車のあるほうへ向かっていった。

「どうしたの!」

「くくる!!!」

「馬が襲われてるって!」

「サンドワームの生き残りかい!」

その通り、サンドワームの生き残りが馬を襲って、今すぐにでも食べようとしている瞬間だった。

そのサンドワームの口の中に、酸の液体を注ぎ込むブルン。

「でかした!エアリアルエッジ!」

「GROROREORO!!」

サンドワームは酸で焼かれて、体を斬り裂かれて大地に横たわる。

まだかろうじで生きていた。

「馬は!?」

「だめだ、複雑骨折してる。これじゃとても、走れない」

「くくるーーーー」

ブルンは癒しの魔法を馬に使った。馬は何事もなかったかのように立ち上がり、蹄で地面を蹴って、元気さをアピールしていた。

「これ、ゴールデンポーション並みの効き目じゃない?」

「ヒールの範囲や加減の仕方も教えておかないとな」

さっきのヒールは範囲魔法だったのか、死にかけていたサンドワームが復活していた。

「アイシクルクラッシャー!」

「アイスチャクラム!」

氷の輪っかで体を斬り裂かれ、とどめに氷の巨大な塊が天から降ってくる。

「GYOAAAAAAAAAAA!!」

断末魔をあげて、最後のサンドワームは潰れて息絶えた。

「くくるーー」

「こら、ブルン。敵まで癒してどうするの」

「くくる?」

「いいか、ちゃんとヒールを使う相手とヒールの威力を選べ。できるだけ単体に魔法をかけること。敵には指示がないまでヒールは一切使わないこと。味方単体のヒールの魔法は最上級で構わない。癒してくれと頼んだ相手は、まずは中級の回復魔法を頼む」

「くくるーーーー!!」

わかったよと、ブルンはぽよんぽよんと飛び跳ねて、浮竹の頭の上に乗った。

「小さくなったなぁ。プルンにあった時、びっくりされるんじゃないのかい?」

「くくう?」

どうして?僕は僕だよ?」

「いや、君小さくなった上に頭に薄い輪っかもあって、前と見た目かなり違うから」

「くくーー」

「ブルンなら弟だから大丈夫?それもそうかもね」

ヒーリングスライムに進化したブルンを連れて、馬車に乗って冒険者ギルドに帰った。

サンドワームの魔石は、ブルンにとってもらった。なぞの液体にまみれたサンドワームに触りたくなかったからだ。

7個の魔石を提出すると、受付嬢は早速鑑定を行い、サンドワームの魔石であることが確認された。

今まで放置していただけあって、魔石の魔力濃度が高くて、魔石は7匹分で金貨50枚になった。

ただ、報酬金が金貨100枚と、Aランクの依頼では一番最低だった。

他に素材もなかったので、収入は金貨150枚。出費が金貨6枚なので、利益は金貨144枚だった。

Bランクの収入より少ない。

「サンドワーム退治はもうこりごりだ」

「あの気持ち悪い液体、触れたくないしね」

「いやん、二人ともお疲れさま♪」

キャサリンは、二人の尻を撫でた。

「セクハラするな、この青髭オカマ!」

「そうだよ、セクハラ反対!」

「酷い!ただの愛情表現なのに!あ~ら?この子、なんか変わったわね。一回り小さくなってるし、薄いけど輪っかもついてる・・・・このままいけば、エンジェリグスライムに・・・」

「わ~~!!いくぞ、京楽」

「待ってよ、浮竹」

ブルンを懐にしまいこんで、浮竹と京楽は、ギルドマスターのキャサリンの魔の手から、ブルンを守るべくマイホームに帰っていくのであった。


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