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一護を忘れたルキア ネモフィラの花畑で

一護とルキアは、ネモフィラの花畑に来ていた。

始めて訪れてから、毎年同じ時期にきて、花畑を見てお弁当を食べて、写真をとったり、花冠を編んだりした。

「あ、動いた」

「え、まじか!」

ルキアと一護が結婚して、5年が経っていた。

今、ルキアは一護の子を妊娠していて、妊娠8カ月目だった。

大分大きくなったお腹を撫でながら、ルキアは幸せそうに一護と微笑みあう。

「今度、このネモフィラの花畑に来るときは、生まれてきた子も一緒だ」

「ああ、そうだな。名前、考えたんだけど女の子なら苺花、男のなら一勇ってのはどうだ?」

「私は女の子ならキャサリン、男の子ならジョナサンがいい」

「おい、それマジでいってんのか?」

「いや?冗談だ」

「朽木キャサリンとか無理ありすぎだろ。全く、冷や冷やさせないでくれ」

お弁当を食べ終わり、時間も随分経過して、夕暮れになってきた。

夕日に染まるネモフィラも美しかった。

「あ、荷物なら私も持つぞ」

「だーめ。ルキアはもう1人の体じゃないんだから」

「むう」

「帰ったら、白玉餡蜜作ってやるよ」

「お、本当だな?嘘をいったら、キスもハグも1週間禁止にするぞ!」

「うわ、それきついわ」

「ふふふ・・・・・・」

ルキアは、その2カ月後、苺花と名付けられた女児を出産し、その3年後に一勇と名付けられた男児を出産した。

男児のほうが、朽木家の跡取りになる予定であった。


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「ねぇ、浮竹、聞いてよ。ルキアちゃんと一護君が結婚してからもう8年だよ。2人の子供に恵まれて、幸せに生活しているよ」

京楽は、浮竹の墓参りにきていた。

「あ、京楽さん」

「おや、一護君じゃないか。どうしたの、こんな場所に」

「浮竹さんの墓参りです。京楽さんも、そうでしょう?」

「ああ、うん、そうだね。ボクは、浮竹に話を聞かせていたんだ」

京楽は、浮竹の墓に高級な酒を注いだ。

「なんの話っすか?」

「君とルキアちゃんのこと」

一護は、赤くなって照れた。

「俺も、浮竹さんに、2人目の子供ができたって報告にきたんです」

「ああ・・・ボクも、浮竹に想いを告げていたら、きっと君たちみたいに仲良くできていたかもしれないね」

「結婚してたってことっすか?」

「そうだよ。式も挙げれるし、籍もいれられる。現世と違って、そのあたりは緩いからね」

京楽は青空を見上げた。

「ボクは今でも、浮竹を愛してるんだ。浮竹以上に人を愛することはもうないだろうね」

「京楽さん・・・・・・」

「ふふ、おじさんの感傷に浸らせてしまってごめんね」

「いえ。浮竹さんが生きていたら、きっと京楽さんのことを好きだって言ってたと思います」

「そうかい?」

「だって、何百年も2人で過ごしてきたんすよね?」

「そうだよ」

「普通、好きじゃなきゃそんなに長いこと、一緒にいないと思います」

「そうかい。でも、浮竹はもういないけどね。ああ、時間を巻き戻すことができるなら、浮竹に想いを告げるのに・・・・・」

「京楽さん・・・・」

「ああ、おじさんのただの懺悔だよ。気にしないで」

「はい・・・・・・」

一護は、かける言葉が見当たらず、浮竹の墓に花束を添えた。

「浮竹さん、2番目の子ができたんだ。一勇っていう男の子で、いずれ朽木の跡取りになる予定なんだ」

「さて、ボクは帰るね」

「あ、そうですか。浮竹さんは、きっと見守っていてくれてますよ」

「そうだと、いいね」

京楽はそれだけ言い残して、一番隊隊舎に戻っていった。



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「こら、一勇、苺花を蹴って泣かせたな」

「父さん、僕は悪くないよ。先に姉さんが殴ってきたんだから」

「そうなのか、苺花?」

「あたし、なんのことだかわかんなーい」

「こう言ってるぞ?」

「姉さんは、父さんと母さんの前ではいい子ぶるけど、本当は暴れまくって・・・・」

必死に言う一勇に、一護は溜息をついた。

「とにかく、仲良くしろ。苺花が乱暴なのは知ってる」

「げ、ばれてた!?」

「一角さんとこに、修行に出したのが間違いだったかなぁ・・・・」

うなる一護に、ルキアが微笑みかける。

「喧嘩するほど仲がいいと言うだろう」

「でも、苺花は朽木家の姫だ。相応のしつけを、本来ならしないといけない」

「あたし、大きくなったら、お父さんのお嫁さんになる!」

「お、そうか」

「一護?私がいることを、忘れるなよ?」

冷たい空気を出すルキアに、参ったとばかりに一護は降参する。

「苺花、結婚は本当に好きになった人としなさい。俺のお嫁さんは、ルキア一人だから、苺花を嫁に迎えることはできない」

「父さんのばか!いーっだ」

走り去っていく、小さな背中を、一勇が追いかけていく。

なんだかんだいっても、兄弟仲はよかった。

「今日、浮竹さんの墓の前で京楽さんに会ったんだ」

「ああ。京楽隊長は、月に一度は浮竹隊長の墓参りにいくからな」

「いろいろ話を聞いた。浮竹さんのことが好きだったらしい」

「それは、私も気づいていた。総隊長は、浮竹隊長といるといつも幸せそうな顔をしていたからな」

「想いを告げなかったこと、後悔してるらしい」

「今となっては、もう告げるにも告げれないな」

「俺は、お前に想いを告げてこうして幸せでいられる。幸せをありがとう、ルキア」

「それは私の台詞だ、一護。幸せをありがとう、一護」

2人は、それから数百年と、朽木家の者として生きていくのであった。





                   fin

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一護を忘れたルキア 鮮やかに蘇れ

「今日は、花畑に行こう」

「なんの花畑だ?」

「ん?ネモフィラって青い花の広がった花畑がある大きな公園だ」

「ネモフィラ・・・・・なんだか、おいしそうな名前だな」

一護は笑った。

「おいしそうってお前な・・・どれだけ食い意地はってるんだよ」

「な、そういうつもりで言ったのではない!」

ルキアは真っ赤になって否定するが、一護は自分で作った弁当を包みにいれて、リュックサックの中にいれた。

「貴様の作る飯はうまいからな。今から楽しみだ」

「やっぱ、食い意地はってる」

「違うと申しているであろう!」

ネモフィラの花畑に行くと、ルキアはその美しい光景に言葉をなくしそうだった。

「空の青と交じりあって、境界線が分からなくなりそうだ」

「綺麗だろ?写真とるか」

「う、うむ・・・・・」

ネモフィラの花畑に囲まれて、シートを広げて一護特製のお弁当を食べた。

デザートには、きちんと密封された容器に白玉餡蜜が入っていた。

「貴様は、本当に私の恋人なのだな」

「そうだぜ?」

「貴様となら、結婚しても悪くない気がしてきた」

「まじか!?じゃあ、結婚しよう!」

「え、あ、ええ?」

「おーい白哉、ルキアが結婚していいって言ってるから、俺たち結婚式挙げちまってもいいよな?」

伝令神l機で、一護は白哉と連絡をとる。

白哉の方から、ルキアの伝令神機に電話があった。

「ルキア、一護と結婚するのに後悔はないか」

「兄様・・・不安がないといえば嘘になります。私は一護のことを忘れてしまった。でも、結婚式を挙げてみれば全てを思い出せそうな気がするのです」

「あいわかった。結婚式は来週の週末の予定にしておこう。一度結婚式前日で流れてしまったが、一度用意していたのだから、あまり時間はかからぬ」

「分かりました」

ルキアは、一護をずっと見つめていた。

青いネモフィラに囲まれたルキアは綺麗だと、一護は褒めてくれた。

ルキアは、記憶を失う前のように一護と一緒にいた。

今までの大切な記憶を失ってしまったのは哀しかったが、一護の言う通り、ルキアは再び一護を好きになっていた。

「もう、記憶など戻らなくてもよい。私は再び貴様が好きになった。好きだ、一護」

「俺も好きだぜ、ルキア。延期にしてた結婚式、本当に挙げてもいいよな?」

「う、うむ・・・・」

まだどこかに不安があったが、ルキアは一護という者を理解し、歩み寄り、知った。

一護と結婚すれば、失った記憶も戻るかもしれないと思った。

戻らなくても、それはそれでもう好きになっているのだがら、いいかとも思った。


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ペットショップで買ったネオンテトラは、今日も朽木家の広い玄関で元気に泳ぎ回っている。

「ウェディングドレスは水色がいい。ヴェールは青で・・・ネオンテトラのようになりたい」

「それ、ルキア、お前が記憶を失う前も言ってた台詞だ」

「む、そうなのか」

ルキアは不思議がる。

「やっぱ、完全に忘れてるわけじゃねーんだな。ちょっとずつ、戻ってきてる」

「そうか?」

「ああ」

やがて日にちが経ち、結婚式の日がやってきた。

「石田、チャド、井上、それに恋次に白哉。みんな、ありがとな」

結婚式にかけつけてくれた、友人たちを見渡す。

石田とチャドと井上も死んでおり、死神となって尸魂界で働いていた。

恋次と白哉は、ルキアの保護者と幼馴染として、姿を現した。

「てめぇ、ルキアを泣かせてみろ。とりあげるからな」

「んなことするかよ!」

「恋次、やめぬか。一護が困っているであろう」

水色のウェディングドレスを着て、青いヴェールを被ったルキアは美しかった。

「すっげー綺麗だ、ルキア」

「褒めても、何も出ないぞ!」

「いや、まじで。ネオンテトラか・・・悪くないな」

ブーケも、ネモフィtラの青と青薔薇でできていて、全体的に青で統一されていた。

「花嫁って純白が基本だけど、朽木さんの青で統一した姿、凄く綺麗」

井上が、ルキアを褒めた。

「ありがとう、井上」

「あ、あたしがあげた髪飾り、つけてくれてるんだ」

「ああ。ちょうど、青い宝石だったしな」

「嬉しいなぁ。黒崎君をとられるのはちょっと悲しいけど、二人が幸せならそれでいいや」

「ルキア、いくぞ。式場で、皆が待ってる」

「待て、一護!置いていくつもりか」

式は、淡々と行われた。

最初は洋風に結婚指輪を交換して、キスをした。

その瞬間、ルキアは倒れた。

ざわざわざとざわめく式場で、ルキアはすぐに立ち上がった。

「案ずるな。記憶が・・・・・戻ったのだ」

「本当か、ルキア!?」

「ああ。貴様との出会いも、死神代行の時代も、貴様が死神代行を引退した後も・・・・全て、思い出した」

一護は、ルキアを抱き上げて、くるくると回った。

「きゃあああ」

「はは、すげぇ嬉しい。結婚式の日に思い出してくれるなんて、まるで運命みたいだな?」

「貴様には、迷惑をかけた。これからは、貴様の妻として、貴様を支えていこう」

「ああ。好きだ、ルキア。愛している」

「私も好きだ、一護。愛している」

和風の結婚式も終わり、貴族へのあいさつ回りも終わって、結婚式は無事に終わった。

「子供が何人がいい?」

「き、貴様、まだ式を挙げたばかりであろうが」

「でも、結婚したら肉体関係もっていいんだろ?俺は3人ほしい」

「わ、私は2人でいい・・・・」

じゃあ、早速風呂一緒に入るぞ。

「ええええ!待て、心の準備が」

「んなもんいらねぇよ。風呂では何もしねーから」

「信じて、よいのだな?」

「お前がいやなら、夜も何もしない」

「嫌ではない・・・むしろ、愛し合いたい」

一護とルキアは一緒にお風呂に入り、一護はルキアの初めてをもらった。



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一護を忘れたルキア もう一度、始めから

「ルキア。俺の名前は黒崎一護。お前が好きだった男だ。ルキア、お前は俺の妻になる予定だった」

「黒崎一護・・・・・頭痛はしなくなったが、貴様のことが思い出せない。何故なのだ。何故、私は貴様のことだけを覚えていない?」

原因は不明だった。

「もう一度、一からはじめよう。はじめまして、俺は黒崎一護。13番隊副隊長だ」

「副隊長は、違う人物だったはずだ」

ルキアの言う名前は、前の副隊長だった。

「ルキア、愛してる」

一護は、ルキアを抱きしめてキスをする。

「何をする!」

パン!

平手打ちで頬を殴られたが、一護は嬉しそうにしていた。

「俺のこと、無視しないで見てくれるんだな。お前は、俺の妻になるべき人だ。愛してるぜ、ルキア。たとえ、お前が俺のことを忘れていたって、この想いは変わらない」

「うう、頭が、痛い・・・・・・・」

ルキアは、記憶にもやがかかったような気分を味わっていた。

「その声・・・どこでだろう。どこかで、聞き覚えが・・・せまい押し入れ・・・コン・・・」

「そうだ、ルキア。少しずつ、思い出そう?きっと、記憶は一時的に奪われただけだ。時間がたてば、元に戻るはずだ。それが無理なら、もう一度お前が俺を愛してくれたらいい」

一護は、自分に言い聞かせるようにルキアに話しかけた。

「貴様を愛する・・・・兄様や周囲の者が言うには、私は貴様のことを愛していたのだな」

「そうだぜ」

「また、愛せるだろうか?」

「ああ、できる。俺とお前は、魂のレベルで繋がっている」

「何故、そう言い切れる?」

「それくらい愛してるから」

一護は、警戒を解いたルキアを抱きしめた。優しく、優しく。

「この温度・・・・知っている、気がする」

「俺は今まで何度もこの腕でルキア、お前を抱いてきた。まぁ、結婚前提で付き合ってたけど、結婚するまでは清い交際でいようということで、肉体関係はなかったけど、キスやハグをよくしていたな」

「に、肉体関係だと!」

ルキアは真っ赤になって、一護から距離をとる。

「わ、私は朽木ルキア。13番隊隊長だぞ!」

「ああ、知ってるぜ。おれを13番隊の副隊長にしたのはお前だからな」

ルキアは、驚く。

「私が、貴様を副隊長に?」

「そうだ。俺はこう見えても尸魂界を2回に渡って救ってきた。んで、その功績のせいで死んで本当の死神になって、護廷13隊のどこもが俺をほしがるからって、ルキア、お前が俺をお前の副隊長にしてくれたんだ」

「前の副隊長はどうした」

「違う隊に配属したっていってたぞ」

「ううむ・・・・」

ルキアは、何故愛していた一護のことだけ思い出せないのか、苦悩し始めた。

「私は、もう一度、貴様を好きになれるのであろうか?」

「なれるんだろうかじゃなくって、するんだよ。俺が、お前を振り向かせてみせる」

「な!」

自信満々な一護に、ルキアは真っ赤になった。

「貴様の霊圧は凄い・・・・尸魂界を2回に渡って救ってきたというのも、兄様から聞いた。私には、恋次と兄様以上に好きな相手がいたなんて、今だに信じられぬのだ」

「だから、もう一度、恋をはじめようぜ。とりあえず、明日早いからもう寝ようぜ」

「な、なぜ私の寝所で寝ようとするのだ!」

「だって、昔からこうやって、ルキアを腕の中に抱いて、眠っていたから、今日もその体制で寝る」

「こんな、密着した・・・ぬああああ、恥ずかしい!」

ルキアは、一護の腕の中から逃げ出す。

「今日は、違う布団で寝よう。いきなりすぎて、私の心の準備ができていない」

「ああ、いいぜ。じゃあおやすみ、ルキア」

「おやすみ・・・」

ルキアは、寝れなくて深夜まで一護の顔を見ていた。

「かっこいことは、かっこいいのだよな」

一護は、見た目は悪くない。むしろ、女性の視線を集めそうなほどに整った顔立ちをしている。

「兄様のような美しさはないが、逞しさというのか、とても優しそうで・・・・」

ルキアは、自分が一護のことばかり考えているのに気づいて、とりあえず今は眠ろうと目を閉じた。


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「ルキア、起きろ。朝だぞ」

「んー。今日は非番であろう?もう少し寝る・・・・・」

「今日は、記憶を失う前のことをもう1回してみようと思うんだ」

「な、何をさせる気だ!」

身構えるルキアに、一護は笑ってその頭を撫でた。

「一緒に現世にいって、水族館でデートだ」

「で、でぇと!?」

ルキアは真っ赤になった。

デートなど、してきたことがない、はずだった。だが、一護が言うには、記憶を失う前はよく現世にデートに出かけていたらしい。

「き、貴様がそこまで言うなら、付き合ってやらんでもない」

「ぷくくく」

「な、何がおかしいのだ!」

「いや、記憶失ってても、ルキアはルキアだなぁと思って」

「どう意味だ、それは!」

「いや、ルキアは変わってねぇなって。ネオンテトラ、見に行こうぜ」

「ネオン?」

「行けば分かるから」

一護と手を繋いで、現世にくると、ルキアは繋いだままの手を離そうとするが、すぐに一護が握ってくるので、諦めてそのままにさせた。

「わあ、これが水族館か。魚が泳いでおる」

「ルキア、こっちだ」

「うむ」

一護に手をひっぱられて、ルキアはアマゾンの熱帯魚コーナーにきていた。

「これがネオンテトラ。お前が気に入ってた魚だ」

「美しい・・・・これは、本当に魚なのか?宝石ではないのか?」

「魚だよ。今の尸魂界なら、飼育も可能だろうな」

「本当か!」

ルキアは目を輝かせた。

伝令神機で白哉と連絡をとり、白哉の承諾を得て、水族館にいった帰り道にペットショップによって、水槽、ポンプ、ヒーター、水草、その他飼育に必要なものとネオンテトラを20匹買った。

「これで、朽木家に居てもいつでも見れるぞ」

「ありがとう、一護!」

まるで、ルキアは記憶を失っていないように見えた。

「なぁ、俺のこと、思い出せたか?」

「すまぬ。まだ、おぼろげだ。貴様の声は聞いたことがあるとは思う」

「一歩前進だな。この調子で、毎日を過ごしていこうぜ」

一護を忘れたルキアは、もう一度一護を好きになるのに、それほど時間はかからなかった。



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一護を忘れたルキア 結婚式前日

「ウェディングドレスは純白ではなく、水色のものにしようと思うのだ」

「いいんじゃね?」

「ヴェールは青で。全体的に青い色で統一しようと思っている」

「まぁ、純白ってのが当たり前だけど、青もいいな」

ルキアは、一護と同じ布団で、一護の胸に抱かれながら、数日後の結婚式のことについて話し合っていた。

「な、貴様も青い色もいいと思うであろう?」

「ああ。なんか新鮮だな」

「あの水族館で見た、ネオンテトラのようになりたいのだ」

「ネオンテトラか・・・ルキアがネオンテトラになったら、俺が捕まえにいく」

「ふふ・・・広大な水の中を泳いでいるのであろう?貴様に、それができるか?」

「できるさ」

一護は、胸に抱いたルキアを少し強く抱きしめた。

「貴様は、いつも暖かいな」

「そりゃ、生きてるからな」

「ふふ・・・ああ、早く結婚式の日にならぬかな。楽しみで仕方ない」

「貴族の結婚になるから、いろいろ準備がいるらしいぜ」

「私は、元々は流魂街の孤児であったのだがな。兄様に拾われて、貴族になった。今でも、自分が貴族であるのがおかしいような気がする時があるのだ」

「気にすんなよ」

一護がそう言うと、ルキアははっとなった。

「兄様の晴れ姿も見れる。ああ、着飾った兄様は美しいだろうなぁ」

「うわ、でたよこのブラコン」

「ええい、うるさいわ!兄様が好きで悪いか」

「いや、悪くねぇけど、ちゃんと夫となる俺のことも見てくれよ?」

「当たり前だ!正装した貴様は・・・かっこいいのだろうな」

ルキアは、想像して痺れそうになった。

一護は、かっこいい。正装した一護はかっこよすぎて、気を失わないだろうかとか、考えていた。


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「ねぇ、浮竹。ルキアちゃんが、一護君と結婚するんだよ。年月が経つのは早いねぇ。君が死んで70年と少し・・・本当に、月日が流れるのは早い」

京楽は、浮竹の墓の前に座っていた。

酒を、浮竹の墓にかける。

「君が生きてたら、きっと自分の身内のことのように泣くんだろうね。ああ、ボクも勇気を出して君に告白すればよかった。そしたら、今と少し違う結末があったのかもしれないね」

大戦の終了から70年と少し。

もう、尸魂界に大戦の傷跡はほとんど残っていなかった。

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結婚式の前日に、ルキアは虚討伐に赴いた。

一護は留守を任されていた。

そこで、意外と苦戦してしまい、新人が襲われそうなったのを、ルキアが庇った。

その虚は特殊で、人の記憶を喰らう。

ルキアの目の前に、虚の吸収器官が見えた。

「いやだ、忘れたくない。いやだ!一護、一護!!!」

ルキアは、虚に記憶を奪われた。

皆、ルキアをすぐに4番隊に見せたが、記憶を奪われてはいない、との診断であった。

あの虚は、全ての記憶を奪うとして、警戒されていた虚だった。

その虚は退治されて、もうこの世にいない。

奪われた記憶も、虚の退治と共に戻ったとされていた。

ルキアは、朽木家に戻った。

自分の寝室をあけて、そこにオレンジ頭の死神がいるのを見て、斬魄刀を抜く。

「貴様、誰だ!」

「は?何言ってるんだ、ルキア」

「貴様のような知らぬ者が、何故朽木家の、私の寝室にいる!」

「おい、ルキア、ふざけてんのかよ。俺だよ、一護だ」

一護は、ルキアが記憶を奪う虚に襲われたことを知っていた。

「う・・・・頭が、痛い・・・・」

ルキアは頭に手を当てて、そのまま頽れた。

一護が、顔色を変える。

「ルキア!?おい、ルキア!!!」


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「はっきり申し上げます。朽木ルキアさんは、黒崎一護さん、あなただけの記憶を失っておられます」

「は?冗談だろ?明日、結婚式なんだぜ」

「いろいろ検査した結果、虚に記憶を食われたせいだと思われます。記憶が回復するかどうかは、まだ分かりません」

一護は、きつく拳を握りしめた。

白哉もかけつけて、一護に休めといって、ルキアに会いにいった。

「兄様!あやつはなんなのですか!私と結婚するとか言うのです!知らない相手なのに」

「ルキア・・・・兄は、黒崎一護という、大切な人の記憶を失っているのだ」

「記憶を失う?でも、私は確かに記憶を奪う虚とやらにやられましたが、記憶はこの通りあります。兄様は兄様だと分かります」

「ルキア・・・・・」

一護は、涙をにじませて、ルキアの手を握った。

「思い出してくれ。俺のことを」

「うう、頭が・・・・・・」

ルキアは、一護を見ると頭痛を訴えた。耐えがたい痛みのようで、一護はルキアから引き離された。

「こんなのってありかよ・・・・・・・」

明日は結婚式。

人生でも最大の幸福の時間。

もう、式場の用意も済み、後は新郎新婦である一護とルキアがやってきて、皆に見守られながら式をあげるだけ、のはずだった。

「こんなのってありかよ!!!」

一護は、唇を噛み切った。

「ルキア、ルキア、ルキア。愛してる。俺を・・・・俺を、忘れないでくれ!!」

一護の願いは、届かなかった。

結婚式は、次の日こなかった。

ルキアは、一護のことを忘れたまま、不思議そうな顔をして、一護と共に朽木家で生活を始めるのだった。


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一護を忘れたルキア 京楽

ルキアと付き合いだして、1カ月が過ぎようとしていた。

その日は、かつて現世で仲間で友達であった、井上、石田、チャド、それに恋次をくわえて、居酒屋に飲みにきていた。

「黒崎君に告白した時ふられたのって、やっぱり朽木さんが好きだったのね」

井上は、すでにできあがっているようで、石田に酒のおかわりをもってこいと言って、ビールの大ジョッキの3つめをあけたところだった。

「おい、大丈夫かよ井上。飲みすぎじゃねぇか?」

「いいのよ、私のことはほっといて~。どうせ私は、魅力のない女ですよ~」

「いや、巨乳があるだろ」

恋次のつっこみに、ルキアがその頭に拳骨を入れる。

「いてぇ」

「女性の価値を胸で決めるな」

「ああ、ルキアは貧乳だもんな」

地雷を踏んだ恋次は、ルキアにひっぱっていかれて、ボコボコになって帰ってきた。

傷を、井上に治療してもらいながら、皆一護とルキアがうまくいっているのを、自分のことのように喜んでくれた。

「半年後に、式を挙げることになったんだ」

「おめでとう!」

「おめでとう、黒崎」

「ルキアを不幸にしたら、絶対に許さねーからな」

「黒崎君も朽木さんも、幸せになってね」

皆、いい仲間で友達だ。

井上は一護に、恋次はルキアに未練があったようだが、顔に出すまいとしていた。

「今日は俺のおごりだ。じゃんじゃん飲んでくれ」

13番隊の副隊長の給料はけっこうな額であった。

ルキアは、その数倍をもらっているが、朽木家に住んでいるので使っていない。

たまりにたまった金は、チャッピーグッズに消えていく。

「うい~私は酔ってないぞおおお」

「いや、完全に酔っ払てるだろ。飲みすぎだ。明日が二日酔いでつらいぞ」

「私には回道がある。ふははははは」

「俺、回道はからっきしなんだよなぁ。鬼道はそこそこ使えるようになったけど」

「教えたのが私だからな。私の生徒になっておきながら、使えないなど許せるものか」

鬼道を教えてくれるルキアは、それなりに厳しかった。

いつもが優しいだけに、その厳しさでルキアの意外な一面が見れて、一護は嬉しかった。

「明日も早いから、風呂入って寝るぞ」

「うぃーー。酔ってないのだーー」

「おい、一人で風呂入れるよな?風呂場でお湯に浸かったまま寝て、溺死したりしないよな?」

一護はルキアが心配になってきた。

「風呂くらい一人で入れるわ」

「そうか。ならいいんだ」

一緒に入りたいと言いたいところだが、清い関係でいたいために、一護はぐっと我慢した。

「じゃあ、俺は先に寝るからな」

「ういーー。おやすみぃいい」

ルキアは、酔っ払いながら風呂場で寝かけて、念のためにと見に来た一護が助けて、のぼせるだけですんだ。

「ルキアには、しばらく酒は飲ませない」

「何故だ!横暴だ!」

「酔っぱらって風呂場で寝落ちしかけてたんだぞ!」

「う・・・・・」

ルキアは、1カ月禁酒を白哉から言い渡されて、しょんぼりしていた。

「兄様が言うなら、仕方ない・・・・」

一護の言うことは聞かないが、義兄である白哉のいうことは、ルキアは素直に聞いた。

半年後の結婚式まで、清い交際をと言う白哉だが、ルキアと同じ部屋を宛がうあたり、試されているのではないかと思うようになった。

「はぁ・・・・毎日が幸せだけど辛い」

恋次に相談すると、恋次は笑って。

「食っちまえよ」

と言って、相談相手にならない。

悩んだ末に、総隊長である京楽に相談してみた。



「あー、それは白哉君、確かに君を試してるだろうね。手を出したら、多分結婚は延期になるんじゃないかなぁ」

「そうっすよね。白哉のやつ、俺のこと試してますよね」

「うん、ボクはそう思うよ」

「はぁ・・・ルキアと別の部屋で寝ようかな・・・でも、ルキアになんでだって言われそうだし」

一護は溜息をついた。

「我慢するしかないねぇ」

「京楽さんは、好きな人とかいたんすか?」

京楽に尋ねると、京楽は少し辛そうな顔をした。

「いたよ。学院からのなじみの子でね。大戦で、死んじゃったけど」

「まさか・・・浮竹さんっすか?」

「よくわかったね」

「だって、京楽さんの隣にはいつも浮竹さんがいたから。半分は感ですけど」

「ボクは、今も浮竹のことを愛しているよ」

「浮竹さん、神掛して・・・・・」

「そのことは、事前に聞いていたんだよ。でも、ボクは止めなかった。護廷13隊のために死なば本望。死神達は皆、浮竹と同じ思いだった。もちろん、ボクもね」

死んでもなお愛し続ける。

それだけの覚悟が、一護は自分にあるだろうかと考えてみるが、ルキアが死ぬことなんてありえないと思ってしまう。

「京楽さん、いきなりおしかけてすんませんでした」

「いや、いいよ。また悩み事があったらおいで。おじさんでよければ、相談相手になるから」

「はい」

それから数度、一護は京楽に相談事をして、いろいろ人生の経験をつんでいくのだった。


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一護を忘れたルキア 現世でのデート

ルキアと一護が、正式に付き合いだして半月が過ぎた。

休暇の日は、二人で現世に遊びに行ったりもした。

「その、貴様は私のことがいつから好きだったのだ?」

「んー。ルキアが処刑されそうになる前くらいからかな」

「けっこう、会ってすぐだな」

「だってルキア細いしかわいいし、守ってあげたくなるじゃねーか」

「な、また恥ずかしいことを・・・・・」

今は仕事中であった。

一護は、いつもルキアの傍にいた。ルキアも、いつも一護の傍にいた。

「貴様が死神代行だった頃が懐かしいな」

「そうだな。今はほんとの死神だしな」

「それで、兄様に式場は朽木家でいいかと聞かれたのだが、貴様兄様に何を吹き込んだ!」

「いや、周囲の気がはええだけだって。確かにルキアと結婚するとは言ったけど」

「兄様に、幸せになれと言われた」

「よかったじゃねーか」

「う、うむ・・・・・」

一護とルキアは、健全なお付き合いをしていた。

結婚するまで、肉体関係を持たないことにした。

ただ、キスやハグはする。

今は仕事中なので何もしていない一護だが、休憩時間になるとルキアの手を握ったり、頭を撫でたり、しまいにはハグやキスをしてくる。

執務室だと人目がないので、安心していちゃつくことができるからが、一護のお決まりの台詞であった。

「貴様が朽木家に婿入りするということは、朽木一護になるということだぞ?」

「ああ、もうそのへんはどうでもいい。苗字なんて、どっちでもいいさ」

昼の休憩時間になった。

一護は、ルキアお手製のお弁当をもってきていた。

ルキアは朽木家の料理人が作ったお弁当だった。

「卵焼きこげてる・・・魚が生焼け・・・・・」

「う、うるさい!嫌なら食わねばよかろう!」

ルキアの料理の腕は、なかなかに壊滅的だった。

朽木家の姫君なので、仕方ないかもしれないが。

「んー見た目はやばいけど、味はそこそこいいんだよな。不思議だ」

浦原から、なんでもおいしくかんじれる粉を買い、ふりかけているのは秘密中の秘密だった。

「さて、明日は休日だし、現世にでも遊びにいくか?」

「うむ、そうだな。新しい水族館がオープンする予定だと聞く。そこに行ってみたい」

「おし、決まりな。明日は現世で水族館でデートだ」

「ただ遊びにいくだけなのに、デートなのか?」

「ああ。2人きりで出かけるのは基本デートだ」

「そうか」

ルキアは赤くなった。

付き合い初めて半月になるが、まだまだ初々しい。

「あー、ルキア大好きだ」

「な、なんだ突然」

「なんつーか、爺さんになって死ぬまで、ずーっと我慢してた反動かな」

「好きだったならば、生きているうちに言えばよかったのだ」

「それができたら苦労しねーよ。ふられたら最悪じゃねーか」

「ま、まぁ私も一護のことが好きなのに、一護が死んで本当の死神になるまで想いを隠していたのは事実だ」

一護は、真剣な表情でルキアを見た。

「なぁ、ルキア。今、お前は幸せか?」

「何だ突然」

「俺と結婚すると、もう俺から逃げられねーぜ。不幸にしたくない」

「不幸になるわけがなかろう!幸せに決まっている!」

ルキアは怒って、一護の鳩尾に拳を入れた。

「おぐ・・・きくなぁ」

「ふん、貴様がばかなことを言うからだ」

「悪かったって」

一護は、ルキアを抱きしめる。

「帰りに、白玉餡蜜をおごってくれるなら、機嫌を直してもいい」

「お前、ほんとに白玉餡蜜好きだよな」

「放っておけ。私の自由だ」

「わーったよ。今回は、俺が作ってやるよ。厨房かりて」

「何、貴様が作ってくれるのか!?」

一護は、一人暮らしを長く続けていたせいもあって、料理の腕がとてもよかった。

死神代行時代から、一護の料理を口にしてきたが、まずいものなど一度もなかった。

「では、帰り道に材料を買いにいこう」

ルンルン気分で、ルキアは仕事を終わらせる。

「はぁ・・・・かわいすぎ」

「ん、何か言ったか?」

「なんでもねーよ」

一護は、ルキアが気を許したことで見せてくれる、今までに見たことのない表情が好きだった。

「俺、結婚式までもつのかな・・・・・」

今すぐにでも、ルキアを押し倒して自分のものにしたいという衝動にかられる。

「あーだめだだめだ。こういう時は、酒飲んで別のこと考えよ」

ちなみに、一護が白哉に与えられた部屋はルキアの寝室であった。

一護は、眠るときルキアを背後から抱きよせて、昔のように眠る。

その初めての夜は、二人とも緊張してなかなか眠れなかったのだが、今はぐっすりと眠れるようになっていた。

ルキアのあどけない寝顔を見るのも、一護の楽しみの一つだった。

「ふあ~よく寝た。ルキア起きろ。現世の水族館にデートしに行く日だぞ」

「んーーー、ふああああ」

ルキアは大きく伸びをして、目覚める。

「おはよう、一護」

「ああ、おはよう、ルキア」

「いい朝だな。食事はどうするのだ。お弁当を作ってもらうか?」

「いや、近くにけっこういいレストランができてて、そこで食べようと思う」

「貴様、金はあるのか?」

「すでに働いて10日目で、初給料もらってるぜ。ルキアと少し贅沢な食事をするくらいの金はある」

「そうか。足りないならいえ。100万でも200万でも出せるからな」

「だああああ!朽木家だからって、金の感覚がおかしいんだよルキアは!白哉の金銭感覚がうつってるとしか思えねぇ」

「す、すまぬ。長いこと、貴様のあの小さな家で住んでいたことで狂わされた金銭感覚が、朽木のものに変わってしまっていた。そうだな、節約であったな。無駄なことに金をかけない、であったな」

「そうそう」

一護とルキアは、義骸に入り、現世へと旅立つ。

1日限りの現世行きなので、ルキアと一護は、デートしにいくのは主に現世なのだが、新しくできた水族館は大きく見応えもあり、昼食に少しおしゃれで高めのレストランで食事をとった後も、水族館に戻った。

「この光り輝く魚は、なんというのだ?」

「ああ、これはネオンテトラだな」

「ふむ。美しいな」

ネオンテトラの青い光を、アメジストの瞳に映すルキアのほうが、何倍も美しく見えたのだが、一護はルキアの邪魔をしたくないので、黙ってるルキアが満足するまで、同じ場所に居続けるのであった。



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一護を忘れたルキア 再開の果て

「よぉ、ルキア。久しぶりだな」

「うむ。元気にしておったか?」

「まぁ、元気だな。じいさんになって死んで、魂魄は少年の姿してるけど。お前が魂葬してくれるのか?」

死にたてほやほやの一護は、彷徨う亡霊になるはずもなく、90歳という天寿を全うして迎えに来たルキアに魂魄の姿でその頭を撫でた。

「ふふ、懐かしいな。貴様と最後に会ったのは、10年前だったか。爺さんなのに、元気すぎて皆心配しておったが」

「まぁ、爺さんなっても俺は俺だしな。魂葬されても、俺は記憶を失わない。尸魂界で会おう、ルキア」



ルキアは一護のことが好きだった。

一護も、ルキアのことが好きだった。

お互い思いを告げることなく時間は去り、やがて天寿を全うした一護の魂魄が尸魂界にやってきた。

魂葬をしたのはルキアだった。

普通、人間は前世を忘れて尸魂界にやってくるのだが、死神であった一護には、生前の記憶が残っており、ルキアのことが好きだった。

その想いを、ルキアにぶつける。

「今更かもしんねぇが、お前のことが好きだ」

「は?」

ルキアは、首を傾げた。

「何をたわけたことを言っておる」

「冗談でもなんでもない。お前が、好きだ、ルキア」

「わ、私は・・・・」

ルキアは真っ赤になった。

そして、小さく呟く。

「私も、一護のことが、好き、だ・・・・・」

「じゃあ、俺たち両想いだったのか。なんだよ。死ぬまで待つ必要なんてなかったじゃねーか」

「一護・・・・これから、どうするのだ?」

「そうだなぁ。護廷13隊が俺を放置しておくはずないから、どっかの隊で隊長か副隊長でもしながら、まったり生きていくんじゃねーの?もちろん、隣にはルキア、お前がいて」

一護もルキアも、井上と恋次という存在があったが、結婚はせずに独り身を貫いてきた。

「で、では13番隊の副隊長になれ!」

「おいおい、いいのかよ。職権乱用じゃねーの?今の副隊長はどうするんだよ」

ルキアは、13番隊の隊長になっていた。

「今の副隊長には、違う隊へ移動してもらう。一護が副隊長になるなら、誰も文句は言うまい」

「京楽さんと、話つけるか」


一護は、総隊長である京楽と話し合い、13隊のどこもが一護を欲しがっている一護が、13番隊を希望していると聞いて、13番隊の副隊長になることを許してくれた。

「まさか、君が護廷13隊に入ってくれるなんてねぇ。君のことだから、死神は続けるけれどどこにも所属しないものだと思っていたよ」

「んな野良ネコみたいな真似できねーだろ。死神は全部護廷13隊だろ?」

「まぁそうなんだけどねぇ。護廷13隊に君が入ってくれて、凄くうれしいよ」

京楽は、酒を一護にすすめた。

一護は杯をとって、京楽の注いだ酒を飲む。

「くー、きついなぁ、この酒」

一護は、死んだ時はおじいさんだったが、魂魄が尸魂界にきた時点で、一番全盛期であった少年の頃の姿に戻っていた。

「君の見た目だと、未成年に酒をすすめるようであれだけど、まぁ死神は見た目より数倍年とってるからね。君も90歳で死んだから、今は90歳かな」

「俺、鬼道とか全然だめだけど、いいすか京楽さん」

「ああ、鬼道はルキアちゃんが教えてくれるよ。副隊長の仕事の内容もね」

「ルキアに世話になりっぱなしだなぁ」

「それより、ルキアちゃんに想いは伝えたのかい?」

「え、京楽さんなんで知ってるんだ!」

「君がルキアちゃんの話をするとき、いつも楽しそうにするから。ああ、恋してるんだなぁって思ってね。ルキアちゃんは硬く見えるけど、けっこう奥手だから、攻めるなら真正面からだよ」

「いや、もう告白しました」

「おおおお!それで、どうなったの!?」

「ルキアも、俺のことが好きだって・・・その、結婚を前提に付き合おうと思って」

「こりゃめでたい。式の日には絶対呼んでよ?護廷13隊全員の隊長副隊長に席官の者が、参加すると思うから」

「京楽さん、気が早いっす」

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「ということで、13番隊副隊長になった黒崎一護だ。今まで死神の力はもっていたが、尸魂界にくるのは久しぶりだし、その死神の学校とか卒業してないから、いろいろ知らないことがるかもしれねぇ。そん時は、教えてくれたり指摘してくれたらありがたい。あと、ルキアと正式にお付き合いすることになった!」

「い、一護、いらんことを言わんでいい!!」

ルキアは真っ赤になって、一護の頭をはたきまくった。

「いててててて。いいじゃねぇか、本当のことなんだから」

「隊長、おめでとうございます!」

「隊長も副隊長も、おめでとうございます」

「あ、ああすまんな」

ルキアは、一護の紹介のために13番隊隊舎で、皆を集めていた。

そこで、一護がいきなり正式に付き合うことをばらしたので、心臓がどきどきしていっこうにおさまってくれない。

「あたしの実家、花屋してるんです。ブーケとか注文してください!絶対いいの作りますから!」

「あ、お前ずるいぞ。俺の実家は呉服屋ですけど、現世の服も扱ってます。ウェディングドレスを作るなら、是非」

皆、気が早かった。

わいわいと、13番隊の面子に囲まれて、一護とルキアは赤面しながらも、幸せだなと思うのであった。


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「で、兄は何故、朽木家にいるのだ」

「いいだろ、白哉。ルキアと一緒にいたいんだよ。ルキアの奴、兄様と離れたくなってうるさいから、俺が朽木家にくることにした」

「ようは、婿入りか」

「まぁ、そうなるのか?」

「婿入りという名の、居候であろう。副隊長になってまだ、館を与えられていないのであったな。行き場所がなくて、我が家へきたのが、本当の理由だろう」

白哉は、相変わらず凛とした美貌だった。

居候になるのだが、断わられたら恋次の家にでも転がり込むしかないので、一護も必死だった。

「まぁ、よかろう。ルキアが望んだ相手だ。結婚式は、こちら側で手配しておく」

「おいおい、まだ付き合いはじめたばかりだぜ?みんな、気が早い」

「ルキアと結婚したくはないのか?」

「いや、もちろんしたいけど」

「では、貴族の結婚式になる故、少々手続きに時間がかかる」

「その、白哉もありがとな。あと、妹さんを俺にください」

「ルキアが自ら望んだ相手だ。私に許可を得ずともいい」

白哉は、目を閉じた。

「ルキアには、幸せになってもらいたい」

「絶対に幸せにする。俺が、ルキアを幸せにしてみせる」


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「ってことだから、一緒に住むことになった」

「はぁぁぁ!?兄様は、兄様はこのことをご存知なのか!」

「白哉の了解はとっくに得たぜ」

「兄様がよいというのなら、私が嫌という理由はない。これからも、その、よろしくな、一護」

「ああ。好きだぜ。よろしくな、ルキア」

二人は幸せだった。

だが、その幸せがルキアが一護を忘れてしまうことで崩壊してしまうのを、今は誰も知らなかった。




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奴隷竜とSランク冒険者42

「浮竹、起きて」

「んー、あと2時間・・・・・・」

「馬車が目的地にまでついたよ」

「ん?」

浮竹と京楽の二人は、護衛の任務に当たっていた。

護衛といっても、Cランクの仕事で、その目的地に用があったので、ついでに連れてってもらったかんじになる。

空は飛べるが、そう遠くもないので、馬車で目的地まで向かうことにして、ちょうどその目的地までの護衛の依頼があったので、引き受けたのだ。

「ここから先に進んだ場所が、ドラゴンの聖地・・・・・・」

浮竹は、珍しげにきょろきょろしている。一方京楽は、敵がいないか魔力探知で気配を探っていた。

「ドラゴンの聖地といっても、もうドラゴン族が住んでいるわけでもないし、ドラゴンの住処だった洞窟があって、古文書やらが残っているくらいだけど・・・・ここに、フルムーンキュアの、浮竹の月竜としての真骨頂の魔法が眠っているんだよね?」

「ああ。ハイエルフの俺から聞いた、フルムーンキュアはここにある。俺の本能も、そう言っている」

京楽が魔族に操られたりしたら、解呪呪文でも治らない可能性が見えてきたため、エリクサー以上の聖なるドラゴンの魔法、フルムーンキュアを覚える必要があった。

それを覚えると、浮竹は進化する。

周囲に敵がいないのを確認して、浮竹と京楽は森の奥へと進んでいった。

「ここが、聖地・・・・・」

大きな洞窟だった。

ドラゴンを祭る祭壇があり、その昔ここではドラゴン族と人間族が共存して暮らしていた。

壁にはたくさんのドラゴンの壁画があった。

洞窟の中には、ドラゴンの骨もあった。

「この骨、古いね。2千年以上前のものだね」

「2千年・・・・ここが繁栄していた時代だな」

「そうだよ。ドラゴン族と人間族が共存して暮らしていた。いつの間にかドラゴン族は人間に恐れられるようになり、狩りの対象となったことで、共存は終わってしまったけどね」

京楽は、書物で知りえた知識を語る。

「奥へ進もう。ムーンホワイトドラゴンにしか開けない扉があるはずだ」

浮竹の本能は、この奥にフルムーンキュアが眠っていると告げていた。

さらに奥に進むと、宝石で飾られた扉があった。

京楽が近寄ろうとするが、ばちっとバリアで弾かれてしまった。

「ここから先は、ムーンホワイトドラゴンの俺だけしか進めない。京楽は、ここで待っていてくれ」

「うん、分かったよ」

浮竹は、ドラゴン化すると扉をくぐり、羽ばたいて巨大な空間を飛んでいく。

天井近くに、古文書を壁に刻んだものがあった。

「あった・・・・・これが、フルムーンキュアの魔法・・・・・」

古代語と竜語で書かれていて、覚えることができるのはムーンホワイトドラゴンのみであった。

その昔、疫病が流行った時代、一匹のムーンホワイトドラゴンがフルムーンキュアを使って、病を全て癒した歴史があると書かれてあった。

「俺も、覚えるんだ。フルムーンキュアを。そして、京楽を守る」

壁に描かれた文字は複雑であったが、ムーンホワイトドラゴンの浮竹には理解できた。

「フルムーンキュア!」

覚えたので、ためしに自分に使ってみると、きらきらと虹色の光が瞬く。

ドクン、ドクン。

浮竹は、鼓動の音を聞いていた。

(よくぞここまできました、我が子よ。さぁ、3大王種に相応しいドラゴンに進化するのです)

マザードラゴンの声が聞こえた。

浮竹の15メートルほどの体は倍の30メートルほどになり、空気中の魔力で体を維持するエネルギーを取り込むことが可能になっていた。

もう、食事だけでエネルギー摂取しなくてもすむ。

真っ白な羽毛は白銀に輝き、浮竹のドラゴンの額には弓張り月の紋章が刻まれた。

「これが、進化・・・・・・・」

魔力が極限まで高まっていた。邪神でも倒せそうなほどに。

「京楽」

京楽のところに戻ってきた浮竹は、京楽に驚かれた。

「君、本当にボクの浮竹?」

「そうだぞ」

「魔力も気配も全然違う」

「進化したんだ。今の俺はフルムーンドラゴンだ。この巨体で行動するのはきついから、元のムーンホワイトドラゴンに戻るな」

そう言って、浮竹は15メートルほどのドラゴン姿になった。

「あ、元の浮竹だ」

「どうやら、体のサイズを変えることができるようだ。フルムーンドラゴンは、存在するだけで他の生物を怖がらせてしまうから、いつも通りムーンホワイトドラゴンの姿でいることにする。
緊急時にはフルムーンドラゴンになる」

「小さくなっても、羽毛の色は変わらないんだね。白銀に輝いている。あと、額に弓張り月の紋章が刻まれてるね」

「人型になったらどうなるんだろう。今、人型に戻る」

浮竹は、人型になった。

額には、弓張り月の紋章はそのまま残り、後は変わらなかった。

「フルムーンドラゴン・・・・古の、ムーンホワイトドラゴンの王種」

京楽は、浮竹を契約をしているので、浮竹の状態が分かった。

「魔力がすごい。契約してるボクまで魔力が高くなってる。浮竹、今ならなんだか魔王にも勝てそうな気分だよ」

「多分、勝てるかもしれないな。それほどに魔力は高くなっている」

浮竹が扉から完全に出ると、扉は崩壊し、もうフルムーンキュアを覚えるドラゴンはいないので、役目を果たして空間は閉ざされてしまった。

「帰ろうか」

「せっかくだから、フルムーンドラゴン姿で空を飛んで帰ろう」

「大丈夫なの?」

「魔力を制御すれば大丈夫だ。巨体だから、王都の近くの森で人型に戻るが」

「うん。帰ろうか。でも、意外とあっさりと手に入ったね?」

「マザードラゴンの導きだ。フルムーンドラゴンは、マザードラゴンの弟ドラゴンがそうだった。フルムーンドラゴンになった時、イメージが浮かんできた」

「マザードラゴンの弟・・・竜神だね」

「ああ。どうやら、俺の本当の種族はフルムーンドラゴンで、竜神らしい」

「ボクの浮竹がどんどん遠くにいっちゃう・・・」

「そんなことないぞ。これからも、Sランク冒険者としてやっていくし、京楽、お前の隣にずっといるぞ」

翡翠の瞳を輝かせて、浮竹は京楽を背に乗せて飛ぶ。

「満月の日は大変だね。フルムーンドラゴンになっちゃうんでしょ?」

「ああ、大丈夫だ。魔力制御でいつも通り普通のムーンホワイトドラゴンでいるから」

マザードラゴンの子、3王種は神でもある。

「進化をしていないのは、一護君だけだね」

「ああ。でも、サンシャインレイドラゴンは破壊と再生の象徴だから、覚醒しないほうがいい。覚醒すると、一度世界を滅ぼし、そこからまた再生をはじめる」

浮竹は、フルムーンドラゴンとなったことで、知った知識を京楽に教える。

「一護君には悪いけど、覚醒はしないでもらうしかないね」

「もともと、一護君は精霊族に擬態している。精霊族であろうとする限り、覚醒は訪れない」

その日のうちに、ハイエルフの浮竹とダークネスインフェルノドラゴンの京楽に、浮竹は自分の真実を話した。

「まさか、マザードラゴンの弟の竜神と同じ種だとは・・・・・』

「そっちの京楽も、王種の竜神だぞ?」

『え、そうなの?』

「今の時代ではきちんとした竜神ではないが、古代では竜神だった」

『マザードラゴンの子は、神の子ってことかい?』

「そうなるな」

ハイエルフの浮竹も、ダークネスインフェルノドラゴンの京楽も、ここまでムーンホワイトドラゴンの浮竹の存在が変わるとは思っていなかったらしく、少しぽかんとしていた。

「まぁ、フルムーンドラゴンには滅多にならないから、多分見せることはないと思う」

『うん、ええ、ああ、そう』

ハイエルフの浮竹は、マザードラゴンに育ててもらった存在だが、よく似た魔力に懐かしさを感じつつ、ダークネスインフェルノドラゴンの京楽と共に、ぽかんとしているのだった。




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空気

「はっくしょん。うー、寒い」

「海燕、大丈夫か?」

「あ、はい」

雨乾堂で、いつもは浮竹が伏せっているのだが、今は海燕が臥せっていた。

海燕は風邪をひいた。

妻である都は里帰りしていて、家に戻っても一人なので、それならと浮竹が雨乾堂で過ごすことを許可してくれたのだ。

「火鉢、もう少し近づけるか?」

「いえ、大丈夫です」

「寒いんだろう。毛布をもう1枚かぶるといい」

「ありがとうございます」

浮竹と海燕は、いつもと立場が逆になっていた。

いつもは海燕が浮竹を看病するのだが、今日は浮竹が海燕を看病していた。

額に、ぬれたタオルを置いて、それを浮竹は取り換える。

「俺の風邪薬しかないが、とりあえず何も飲まないよりいいだろう。飲め」

卯ノ花印の苦い薬を出されて、海燕は飲みたくないなぁと内心思いつつも、副官である自分をここまで心配して世話までしてくれる上官に感謝した。

「あのーーー」

「ああ、なんか空気が何か言っているな。気にするな。空気だから」

「そうですね。空気は空気。あ、今日の夕飯はお粥でいいです」

「ボクは空気じゃないよ!」

京楽は、一人会話に混ざれなくて、不貞腐れていた。

「おい空気、うるさい」

「はい・・・・・・・」

風邪なのに浮竹を抱いてうつして、微熱がある浮竹を抱いて、風邪を悪化させて、浮竹の風邪が治ったと思ったら海燕にうつってしまった。

全ての元凶は京楽である。

京楽は風邪をひいているのに、雨乾堂に遊びにきて、浮竹を抱いた。

浮竹は風邪をひいて、微熱を出したのに、京楽は抱いた。

元凶が京楽なので、浮竹と海燕は今日一日京楽のことを空気として扱うことに決めた。

「海燕、湯たんぽもってくるな?」

「ああ隊長、そこまでしなくても大丈夫です。それにさせるなら空気にさせたらいいと思います」

「空気は空気だからな。あんまり構うと調子に乗る」

「どうせ今日のボクは空気ですよ・・・・しくしく」

夕刻になり、夕餉の時間になった。

海燕はお粥で、浮竹は普通のごはん。京楽は猫まんまだった。

「猫まんま・・・・・」

「嫌なら食うな、この全ての元凶の空気が」

「食べますぅ」

京楽は猫まんまを食べた。たりないので、おかわりまでした。

「く、空気のくせにしぶといな。音を上げて自分の隊舎に帰ると思ってたのに」

浮竹は、空気こと京楽の頭をハリセンで叩く。

「痛い!なんで殴るの!」

「いつまで雨乾堂にいるんだ空気!8番隊の隊舎に戻ったらどうだ」

「だって、せっかく時間ができて遊びにきたんだもの」

溜まっていた仕事をやっとある程度片付けて、実に2週間ぶりに雨乾堂にきたのだった。そして風邪を引いているのに浮竹を抱いて浮竹にうつして、浮竹から空気感染で海燕も風邪になった。

浮竹の場合、睦み合ったせいで風邪になったのだが。

「見ての通り、海燕が風邪をひいて遊びどころじゃない。そもそも風邪をもってきたのは空気、お前だろうが」

「空気、空気って、ボクにはちゃんと京楽春水って名前があるよ!」

「この空気はうるさいな。つまみ出すか」

「いやあああ、それだけは勘弁してえええ。今8番隊の隊舎に戻ったら、七緒ちゃんに捕まってまだ残ってる書類の仕事させられるううう」

「空気が。やはり遊びにきたのは、仕事から逃れるための口実か」

浮竹は、京楽の頭をハリセンでばしばし殴った。

「空気の虐待反対!」

「空気だから、虐待にならない!」

「そうまでして、ボクが愛しいんだね、浮竹?」

「ぎゃあああああああ」

「隊長!!!」

京楽に押し倒される浮竹を見て、海燕が起き上がるが、すぐに布団に横になった。

「眩暈が・・・熱、けっこうあるかもしれません」

「どれどれ・・・・」

浮竹が体温計を渡すと、39度をさしていた。

「高熱じゃないか!ちゃんと寝てろ!解熱剤探してくる。それにしても、空気は使えないな。猫まんまにしたのに平気そうな顔してるし」

「ボクだってダメージ受けてるよ!?悪かったと思ってるよ!!」

「じゃあ、せめて解熱剤買ってこい」

「はい・・・・・」

京楽は、しょんぼりしながら雨乾堂を出て、薬局に行った。

「買ってきたよ」

浮竹が中身を確かめると、解熱剤の他にローションが入っていた。

「この空気は、違う意味でやる気満々だな、おい」

「だって、安売りしてたから!」

「海燕、解熱剤だ。飲んで、寝ろ。俺はこの空気を追い出してくる」

「びえええええん」

浮竹にしこたまハリセンで頭をはたかれて、結局京楽は雨乾堂を追い出されるのであった。

「空気がいないと、静かだな」

「でも、そんな空気が好きなんでしょ?」

「まぁ、空気だが・・・悪いやつではない。多分」

「風邪うつるの分かってて抱いてる時点で、悪いです」

「それもそうだな。禁欲2週間の刑にしてやろう」

その頃、空気こと京楽は七緒に捕まって、残った書類の仕事を片付けるまで眠らせないと言われて、空気扱いされてもいいから雨乾堂にいればよかったと、後悔するのであった。


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無題

「隊長!」

「んー、京楽、もうそこはだめぇえええ」

「ぶばーーー!隊長、起きてください!なんの夢見てるんですか!」

海燕は、朝になっても起きない浮竹を起こしにきたのだが、その浮竹は頬を赤くさせながら何やら淫らな夢を見ているらしかった。

「やああん」

浮竹の声は、腰にくる。

海燕には都という妻がおり、そっちの気は全くなかったはずなのだが、浮竹ならいけるかもしれないと思う時がたまにあった。

思うだけで、実行には絶対に移さない。

「隊長、変な夢見て喘いでないで、起きてください!朝ですよ!」

「んー・・・・海燕?俺は何か言っていたか?」

「いえ、何も・・・・・」

「おとつい京楽に加減なしで抱かれたから、その時の夢を見ていた。全く、酷い夢だった」

あんなに気持ちよさそうに声を出しておいて?とは口が裂けても言えなかった。

顔を洗って朝餉をとり、仕事時間になる。

いつものように、京楽が仕事をもって雨乾堂にやってきた。

「どうしたの、海燕君。変な顔して」

「隊長が、あんたに抱かれる夢見て喘いでた」

「ええ!」

京楽は、浮竹の様子を伺うが、何もなくて、京楽はほっとした。

「その声聞いたの、君だけだよね?」

「そうです」

「じゃあ、内緒にしておいてあげてね。浮竹、絶対真っ赤になって布団被って出てこなくなるから」

「そのつもりです」

京楽は、浮竹の隣で黒檀の机に書類を置いて、仕事を始めた。

「京楽、そこの数字間違ってる」

「ああ、ほんとだ。後で七緒ちゃんに修正してもらおう」

「ふあー。もう昼だな。休憩をとるか」

「おはぎ、お土産にもってきているよ。昼餉の後で、一緒に食べようか」

「おう」

浮竹は、普通に昼餉を食べる。

「なぁ、海燕の様子がちょっとおかしいんだが、何かあったのか?」

「さ、さぁなんでだろうね?ボクには分からないなぁ」

「さては、知っているな!禁欲にされたくなければ、吐け!」

京楽は、全てを浮竹に教えた。

浮竹は仕事を放棄して、布団に潜り込んで、布団の中で真っ赤になって出てこない

「浮竹、おはぎ全部食べちゃうよー」

「むう、おはぎは食う」

布団をかぶったまま、おはぎに手を伸ばす。

「ほら、布団から出て」

「いやだ。恥ずかしい」

「海燕君にはあられもない姿何度も見られてるじゃない。今更だよ」

「それでも、恥ずかしい」

浮竹は、器用に布団の中でおはぎを食べて、おかわりまで要求した。

「浮竹、大好きだよ」

おかわりをしようと手を伸ばしてきた浮竹の手をとって、布団からひっぱりだすと、京楽は浮竹に、海燕の目の前で口づけた。

「お、お前、海燕が!」

「今更でしょう?いろいろ見られてるんだがら、気にしないの」

「俺が気にする!」

浮竹は、はりせんで京楽の頭を殴る。

「海燕の前でするな!」

「ぶーーー」

「ふてくされても、だめなものはだめだ・・・・んあっ」

耳を甘噛みされて、浮竹は高い声を出す。

「このばか京楽!禁欲1週間だ!」

「えーーー!!!せめて3日にしてよ!」

「1週間と言ったら、1週間だ!」

そんな言い合いをする浮竹と京楽を見て、海燕はそれでも自分の上司なんだよなぁと天を仰ぐのであった。


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オメガバース恋白6

恋次は優しかった。

番である恋次が大切だった。

大切に思うあまりに、失うのが怖かった。白哉は憶病ではない。だが、いつ死ぬかもしれる戦場に立つときは、失う怖さを少しだけ感じていた。

ある日、大型の虚がでて、恋次が新人教育のためについてきていて、その虚に怪我をさせられた。

実際は、身体の傷はどうってことなかった。

それより大変だったのは、記憶を食われたのだ。

しかも、白哉やルキア、一護といった親しい面子の記憶のみを。

自分が6番隊の副隊長であるという記憶は残っていた。だが、その上司が白哉であるという記憶を失っていた。

「あ、朽木白哉さんですね。俺、阿散井恋次っていいます。あんたとの前のことは覚えてないですけど、仕事内容はちゃんと覚えてるんで」

「恋次・・・・私を、忘れたというのか」

「そうです。隊長の他にも、ルキアっていう幼馴染らしい女の子と一護という死神についても覚えてません」

「恋次、恋次、恋次」

愛しい相手が、記憶を失って目の前に現れた。

「あの・・・俺たち、番なんすよね?でも、4大貴族の当主である、白哉さんと番だなんて、・・・・番、解消できませんか?やっていける自信がないです」

「恋次・・・・・・」

白哉は、涙を流した。

「わわ、何処か痛いんすか?」

「しない。番の解消はしない。恋次、貴様は私のものだ。思い出せ、私に刻みこんだ愛を。今度は、私が貴様に刻みこんでやる」

白哉は、ソファーに恋次を押し倒して、キスをした。

「ん・・・・・・」

恋次が、舌を絡めてくる。

「恋次?」

「なんだろう・・・あんたと、こうするの当たり前の気がする。俺はアルファであんたはオメガ・・・・・で、番。ああ、俺はあんたのもので、あんたは俺のものなのか」

あやふやではあるが、恋次は記憶を取り戻しかけていた。

「ヒート期間じゃないけど・・・・あんたを抱いても、大丈夫っすか?」

「ああ」

「なんかおぼろげに記憶が戻りかけてるんです。あんたを抱いたら、思い出せそうな気がする」

「ならな、私を抱け、恋次」

「執務室だとやばいっすよね・・・・ああ、隊首室があったか。あそこ、ベッドありましたよね。隊首室にいきましょう」

恋次は、白哉の手を引いて、隊首室までやってくると、ベッドに白哉を押し倒した。

「貴様、記憶がないのではないのか?手慣れているぞ」

「隊長・・・・隊長にキスされて、記憶ほとんど戻ってます」

「なっ」

「泣かせてしまってすんません。今度から、記憶を食われるみたいなヘマはしないんで、許してください」

「怖かったのだ。恋次を、貴様を失ってしまうのかと思って」

白哉は、また涙を流していた。

恋次が、その涙を吸い上げる。

「隊長、愛してます。あんたを、この命が尽きるまで愛しつくします」

「恋次・・・・ううん」

舌が絡まるキスをして、隊長羽織を脱がされて、死覇装に手をかけられる。

「あ、アフターピルは・・・・」

「ちゃんと用意してます。ローションも用意してますんで」

「貴様は、本当に用意周到だな」

「隊長を抱けるのは限られてますんで」

ヒート期間以外に、抱ける時は少ない。

今はヒートでないが、白哉が望むので抱く。恋次は、毎日でも白哉を抱きたいが、性に淡泊な白哉はヒート期間以外ではたまにしか抱かせてくれない。

「あ、ああああ・・・・」

裸にされて、胸の先端を舐め転がされて、もう片方をつままれる。

「んっ」

緩く勃ちあがったものに手をはわされて、しごかれた。

「んあああ」

恋次は、なんのためらいもなく白哉のものを口に含むと、愛撫した。

「あ、恋次、恋次・・・・・・」

人肌に温めたローションを蕾に丹念に塗り込んでいく。

白哉のものを口で愛撫しながら、白哉の秘所を指でいじってやった。

「あああ!!!」

前立腺を抉られて、白哉は恋次の口の中に精液を放っていた。

「隊長の、濃いっすね。やっぱ、たまってたんでしょ。もっと、俺に抱かれてください」

「ばかな、ことを・・・・ひああああ!!」

蕾を指でぐちゃぐちゃになるまで解して、恋次は自分のものを白哉に挿入れた。

「あ、ああ、奥は、奥はだめだ・・・ああああ」

「奥、弱いっすよね?こことか、隊長のいいところ、俺知ってますから」

「ひああああ!!」

奥をごりごりされて、白哉は啼いた。

「やあああ、あ、あ、いやあああ」

「いやじゃないっすよね?ここ、こんなにに濡らしてる」

勃ちあがったままの白哉のものは、時折精液を零しながら、先走りの蜜をだらだらと流していた。

「隊長、俺にどうしてほしいっすか?」

恋次が動くのをやめて、白哉に問う。

白哉はヒート熱にうなされているような錯覚を覚えていた。

「あ、奥に。奥に、貴様の子種を注げ」

「妊娠しちゃっても、知らないっすよ?」

「子は孕まぬ」

「あんたオメガだ。俺がアフターピル与えなきゃ、孕んで俺の子うんじしまう。まぁ、赤子に隊長を独り占めされたくないんで、アフターピルは飲んでもらいますけどね」

「恋次、好きだ」

「それは俺の台詞ですよ、隊長」

「あ、あああ、んあっ!」

ゴリっと子宮の中にまで入ってきた恋次のものは、とぷとぷと白哉の胎の奥に子種をぶちまける。

「あ、熱い・・・ううん、んあ・・・・・」

熱いものを体の中で出されて、白哉の体温があがっていく。

ヒート期間までまだ少し早かったが、抱き合っていた結果、白哉は本当にヒートになってしまったのだ。

「あああ・・・・恋次、貴様のせいでヒートになった。責任をとれ」

「隊長を抱きまくりますよ」

「体が熱いのだ・・・・恋次の子種を注いで、鎮めてくれ」

「すっげー殺し文句・・・・・」

恋次は、白哉を突き上げて、揺すり、抉った。

「ああああ!!ひあああ!!」

白哉は精液を何度か放った後は、中いきばかりしていた。

「あああ、頭が、快感でおかしくなる・・・・」

「ヒートなんだから仕方ないっす。奥に出しますよ」

「いああああ!!!」

ぐりっと奥を抉られ、そのまま精液をぶちまけられる。

コンドームというものが最近はやり出していたが、ヒートの熱を鎮めるには生の精液を受け止めるのが効果的で、いつもコンドームはつけなかった。

ただし、アフターピルは飲む。

白哉がオメガだと分かった時、朽木家の者は白哉が当主に相応しくないと言い出すものが出てきたが、今まで当主として朽木家を治めてきた手腕と、6番隊の隊長であるということで、白哉はオメガであっても朽木家の当主で居続けられた。

いずれ、恋次の子を孕み、後継者を育てることになるだろう。

「恋次、愛している。もう、私のことを忘れたりするな」

「はい」

「そうだ、貴様に私のものだということを刻むのを忘れていた」

白哉は、恋次の首に噛みついた。

まるで、アルファがオメガに噛みつき、番にするように。

「いてててて」

血がにじむまでくっきりと歯型をつけられたが、恋次は満足そうだった。

「隊長、愛してます。骨の髄まで」

「ふ・・・・当たり前であろう。貴様は、4大貴族朽木家当主の朽木白哉が番に選んだ相手。私を愛せることを、私に愛されることを誇りに思え」

白哉と恋次は、その後風呂に入って情事の痕を洗い流すと、白哉はアフターピルを飲んだ。

「はい、水」

「うむ」

アフターピルは、甘い味がするものに変わっていた。

前は味はしなかったが、甘い味がするのはなんだかほっとした。

「恋次、ヒートが収まるまで、別館で過ごすぞ」

「はい!」

白哉は、一度ヒートがはじまると、身の回りの世話を恋次に任せて、1週間ほど仕事を休んで、恋次と共にヒート期間が過ぎるのを待つ。

今日、いつもより早くヒートがやってきたが、急ぎの仕事はないし、あったとしても恋次が手早く終わらせて、白哉のまつ別館にやってくる。

「オメガであったことが苦痛だと思っていたが、今ではオメガであるからアルファである貴様と番になれたのだ。そのことについては、感謝している」

「隊長、大好きです!」

「ええい、犬のようにすりよってくるな」

「ひどい!」

恋次は泣いたふりをするが、白哉は構わず別館に向けて歩き続ける。

「俺、実はウサギなんす。ウサギは構ってもらえないと寂しさでしんじゃうんすよ」

「そうか。では勝手に死ね」

「ひどい!隊長、隊長はほんとに俺のこと愛してくれてるんすよね?」

「くどいぞ。そうでなければ、体を許しはせぬ」

その言葉を聞いて、恋次は白哉を抱き上げて、瞬歩で別館まで走るのであった。


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オメガバース恋白5

「恋次・・・・・・・・」

白哉は、朦朧とした意識の下で、恋次の名を呟いていた。

白哉が攫われた。

それを聞いた恋次は、白哉の霊圧を探して走り出した。

「恋次!」

「おい、恋次!!」

ルキアと一護が恋次の名を呼ぶが、恋次は聞こえていなかった。

白哉を攫った犯人は分かっていた。

四楓院家の傍系にあたる血筋の、男だった。

白哉がオメガであることを知り、犯して子を産ませる算段なのだろう。だが、その男は知らなかった。白哉に番がいることを。

その番が恋次であり、6番隊の副隊長として、卍解も会得しているつわものであるということを。


「う・・・・・・」

「気づいたか?」

「兄は、誰だ」

「俺は四楓院影蔵。四楓院家の傍系にあたる血筋の、大貴族だ。同じ大貴族である朽木白哉はオメガ。オメガの当主など、いらぬだろう。犯して子を産んでもらう。俺の子が、時期朽木家の跡取りだ」

「何を馬鹿なことを・・・・」

「これ、何か分かるか?」

それは、ヒートを人工的に誘い出す薬だった。

「な!それを、私に盛ったのか!」

「そうだ。そして俺はアルファだ。直に男が欲しくなる」

「く、破道の8、白雷!」

鬼道を唱えたが、発動しなかった。

「ふふ、鬼道は使えないぜ。その首の枷が、鬼道を使えなくしている」

白哉は、手を後ろで戒められていた。千本桜は奪われて、平時であれば手を戒められた程度で身動きがとれなくなることはないが、今は強制的にヒートにさせられていた。

「く・・・・恋次、恋次!」

白哉は、圧し掛かってくる男を蹴り飛ばそうとして、足を掴まれて太ももの内側に手をはわされる。

「いやだ、恋次、恋次!」

「恋次?・・・・ちっ、番がいるのか。まぁいい。子さえ産めば、用なしだ。腹が大きくなるまで身籠るなんできないだろうから、受精卵を確認したらそれを摘出して、どこかの女の腹にいれる。朽木家の血をひく、跡取りのできあがりだ」

「兄は、最低だな」

「うるせぇ、オメガの分際で!今、とろとろになるように犯してやるよ」

「隊長!!!」

何十にも結界をはり、扉を閉めていてその場所へ、恋次は辿り着けた。

「恋次。早く、私を・・・・・・」

「てめぇ、俺の隊長になにしてやがる!」

白哉に圧し掛かり、死覇装を脱がせようとしていた男を、殴り倒す。

「恋次、その者は四楓院家の者だ。殺すな」

「だとさ。半殺しで許してやるよ!」

恋次は、男を本当に半殺しの目にあわせて、右腕と左足の骨を砕いた。

「ぎゃああああああ!!!俺が、四楓院家の者だと知っての狼藉か!処刑してやる!」

「その時は、兄が私を攫い犯そうとした事実を世間に公表する」

「は、それができるのか?あの朽木白哉に。オメガであることを誰より嫌っているお前に」

「できる。愛する者を失うことに比べれば、私とてプライドを捨てる」

「隊長、大丈夫っすか」

「恋次・・・・会いたかった。ヒートを強制的に起こされた。鎮めてくれ」

恋次は、白哉を横抱きにして、近くの宿に入った。

「早くこい、恋次」

「ちょ、待ってください。風呂とか・・・・」

「よい。このまま、犯せ」

「うっわ・・・・・隊長、言動がめっちゃエロい」

すでに死覇装を自分で脱ぎ捨てて、肌を露わにしていた白哉に、恋次が舌が絡まるキスをする。

「隊長・・・・変なこと、されてませんか」

「されていない。未遂で終わった」

「よかった・・・番がいるのに、隊長が朽木家の当主でオメガだからって、欲しがる者はいっぱいいるんです。でも、隊長は俺のものだ。俺の番だ」

「あ、恋次、恋次、早く来い」

「まだ、慣らしてません」

「構わぬ。少々痛くともいい。来い」

「じゃあ、挿入れますよ?」

「あああああ!!」

灼熱に引き裂かれて、白哉は生理的な涙を零す。

「恋次・・・もっと奥までこい。私に、貴様を刻み込め」

「えっろ・・・隊長、アフターピル用意してなんすけど、大丈夫っすか?」

「24時間以内に飲めば大丈夫であろう。もしも身籠れば、堕胎する」

その言葉に、少し寂しそうな表情をした恋次は、白哉を突き上げた。

「ああああ、あ!」

子宮の入り口まで入ると、子種を中に注ぎ込んだ。

「隊長、もっと?」

「あ、もっと・・・・・」

白哉は、ヒートの熱で意識がぐずぐずに溶けていく。

「もっと私を犯せ、恋次」

「言われなくても、そうします」

「ひああああ!!!」

どちゅんと奥を突きあげられて、前立腺も刺激されて、白哉は中いきと同時に射精していた。

「やああああ」

「隊長が悪いんすよ。そんなエロい体と声で誘うから・・・」

「ああ、恋次、恋次」

「隊長・・・・・」

「愛している、恋次」

「俺も愛してます、隊長」

恋次は白哉の真っ白な肌に吸い付き、赤い花を咲かせながら、白哉を抱いた。

「隊長?」

「んん・・・も、無理・・・・」

「俺はまだ満足してませんよ?」

「ひあ!」

まだ中で大きくなる恋次のものに、白哉が背をしならせる。

「あああああ!!!」

中いきをしながら、潮をふいていた。

「あ、ああ・・・・あ・・・・・・・」

「隊長、潮ですよ。おしっこじゃないから、そんなに落胆しないでください」

「潮?女のように、私が潮を?」

「そうです。隊長はオメガだから、仕方ないっす」

「そうか・・・恋次、眠い。終わったら、アフターピルを飲んで、寝る」

「アフターピル、薬局で買ってきますね。ああ、後始末とか俺がしとくんで」

「当たり前であろう。貴様が抱いたのだ。貴様が責任を持て」

「今は、こっちに集中してください」

ずっと音を立てて、恋次は自分のもので白哉の中を犯す。

「ひああああああ!!やああん」

「ああ。隊長の声聞いてるだけでいっちまいそう・・・・」

恋次は、白哉の子宮の奥に子種を弾けさせた。白哉は朦朧とした意識の中で、泥沼の沈んでいくように意識を手放した。



次に気づいた時には、朽木家の自分の寝所で眠っていた。

隣には、恋次がいた。

「私の番が、貴様でよかった、恋次」

白哉は、恋次の赤い髪を一房とり、口づける。

薬局で買ったらしきアフターピルが、置かれてあった。

多分、恋次が口移しで飲ませてくれただろうが、白哉は念のためにと、アフターピルを飲むのであった。

恋次との間に、子が欲しくないわけではない。

だが、子を産むともうオメガとしてしか生きていけない気がするのだ。

護廷13隊8番隊隊長としてやっていけなくなる。

そんな、気がした。





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君はアメジスト アメジスト

一護の、戴冠式がやってきた。

国中の貴族が集まり、他国からも王族貴族が集まった。

その中に、朽木白哉の姿もあった。

一護は気を遣ってくれて、白哉とルキアを二人きりにさせてやった。

「ああ、兄様、兄様!!!」

ルキアは涙を流して、兄である白哉に抱きしめられていた。

「ルキア、息災であったか。奴隷として送られると知った時は、貴族の身分などいらぬと思った。だが、そなたがその身を犠牲にしてくれたお陰で、領地も貴族としての地位も無事守ることができた。ルキア、辛くなったらいつでも帰ってきていいのだぞ」

「いえ、兄様。私はこのクロサキ王国の王、黒崎一護の正妃です。もう、ここが私の生きる国なのです」

「そうか。ならば、もう余計なことは言うまい。幸せになれ、ルキア」

「はい!」

ルキアは、涙をふいて前を見る。

そして、一護の元に戻っていった。

「白哉とは話せたか?」

「ああ。ありがとう、一護。お陰で、兄様が無事で息災であるということが分かった。一護には感謝している」

「白哉は、俺にとっての義兄になるからな。今後は、何かあったら俺を頼るようにしてくれと言っておいた」

「すまぬ、一護。恩に着る」

「お前は俺の正妃だろ?もっと堂々としてろ」

「う、うむ」

「さぁ、戴冠式の続きだ」

ルキアと一護は、戴冠式の続きに出た。

戴冠式は盛大に行われて、ルキアは正妃として近隣諸国の国に顔が知れ渡った。

「なんだか、恥ずかしいな」

「だから、堂々としてろ。俺の正妃なんだから。いずれ、この国の国母になる存在なんだから」

「国母・・・げふんげふん」

「そうだろ?元気な、俺の後継ぎ産んでくれよな。男の子でも女の子でも構わない。女王でも別に構わないさ」

「普通は、男子を産めと強制されるのだがな」

「俺はそんなことしねーよ。まぁ、一人だけ産ませるつもりはないしな?家族は多いほうがいいから、子供たくさん産んでくれ」

「何人産ませるつもりなのだ!」

「んー。10人くらい?」

「私の体がもたぬわ!」

戴冠式も終わり、無事一護はクロサキ王国の王となった。

その隣には、いつも正妃のルキアの姿があった。

ルキアは最初に女の子を産み、苺花と名付けられた。その次に男の子を産み、一勇と名付けられた。

子はその二人だけだったが、ルキアと一護はいつまでも幸せに暮らした。

ルキアの護衛騎士として、京楽と浮竹もクロサキ王国に居を構えて、孤児を二人引き取って、幸せに暮らした。

クロサキ王国の歴史の中で、一護とルキアが統治した時代が一番繁栄を極めるのであった。








「こら、苺花、帝王学をちゃんと学ばぬか!」

「いやだ!私も、一勇みたいに剣の稽古したい!」

「苺花、剣の稽古したいなら、真面目に勉強しろ。そうすれば、父さんが直々に相手してやる」

「本当、お父様!?」

苺花は目を輝かせた。

気づけば10年の月日が経ち、一護もルキアも、25歳になっていた。

子を産んだのが早かったため、まだまだ若く子を産めたが、権力争いになることを避けたいルキアの願いで、子供は二人だけどとなった。

一護の王の次は、苺花が女王としてこのクロサキ王国を継いでいく。

苺花は幼い頃から帝王学を学ばされて、本人は嫌がっていたが、優秀な生徒だった。

弟になる一勇は、剣の筋が認められて、将来王国騎士団騎士団長になる予定だった。

ちなみに、白哉はルキアによく似た緋真という女性と巡りあい結婚し、二人の子に恵まれて幸せに暮らすのだたった。


「ルキアの瞳って、アメジストみたいだな」

苺花と一勇が、中庭のハンモックで寝ているのを、一護とルキアは、のどかにお茶をしながら見ていた。

「私の瞳?」

「そうだ。そのアメジストの瞳に、俺は魅入られた。一目ぼれだった」

「恥ずかしいことを・・・・」

「ルキア、でもこの前あげたアメジストの髪飾り、つけてくれてるんだな。他にいろんな高価な髪飾りはいっぱいあるのに」

「これは、貴様がわざわざ採掘してきたものだからな。特別だ」

「そうか。愛してるぜ。俺に嫁いで良かっただろ?」

「そうだな。貴様に嫁いで、幸せになれた。これからも、幸せをくれるのだろう、旦那様?」

「ルキア、反則だぜ。旦那様は・・・・」

一護はルキアを抱き寄せる。

ルキアは目を閉じる。

二人はキスをして、そのまま空いていたハンモックに寝転がり、子供たちと一緒に午睡を楽しむであった。

その側で、浮竹と京楽は騎士として、4人を守りながら、自分たちもお茶の時間にするのだった。

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君はアメジスト 結婚式

ルキアが、クロサキ王国に奴隷の献上品として連れてこられてちょうど1カ月。

婚約者となって、これからお互いをもっと知っていくはずなのに、一護の一言で結婚式が行われることになった。

「姫、綺麗だぞ。よよよよよよ」

「姫、綺麗だね。よよよよよよ」

「こら、二人ともまるで実の娘が結婚するような悲しみ方はよせ」

浮竹と京楽は、喜びのあまり感動して泣いていた。

「ルキア、支度できたか?」

「わあ!」

いきなり一護が入ってくるものだから、ルキアは驚いてブーケを落としそうになった。

純白のウェディングドレスを着せられて、真珠をあしらった深いいくつもレースになったヴェールをかぶり、青い薔薇を中心としたブーケをもったルキアは、可憐で美しかった。

「すっげー綺麗」

「う、うむ。ありがとう」

「じゃあ、神父と王族や貴族が待っているから、行こうぜ」

「あれが例の奴隷姫・・・・・」

「奴隷姫のくせに、正妃なんて・・・・」

「正妃が元奴隷など、国の威信が・・・・」

ざわめく会場で、そんな声を聞いて、「ああ、私は歓迎されていないんだ」と分かって、それでもルキアは涙は見せまいと、前を向いた。

「あのさ、俺のことどうこういうのはいいけど、ルキアは悪くない。もしも、今後ルキアのことを悪くいうようであれば、どんな身分の者であれ、地下牢に1週間入ってもらうからな」

凛と澄んだ一護の声に、ピタリとその場に集った者たちの声が止んだ。

「一護陛下バンザーイ。ルキア正妃バンザーイ」

浮竹と京楽がそう声をあげると、皆同じように言い出して、花びらが頭上から舞い落ちてきた。

「ルキア、幸せになろうな?」

「う、うむ!」


神父の前にやってきて、大粒のイエローダイヤモンドの指輪を交換しあう。

「朽木ルキア、汝病める時も健やかなる時も、黒崎一護を伴侶して愛することを誓いますか?」

「誓います」

「黒崎一護、汝病める時も健やかなる時も、朽木ルキアを伴侶して愛することを誓いますか?」

「誓います」

「偉大なる愛の神、ラテルトの名の元にに、二人を正式な夫婦として認めます」

天井のない馬車に乗りこんで、二人は城下町をゆっくり走っていく。

「わああああああ」

「王太子、時期王様万歳!」

「ルキア正妃万歳!美しい后ですね、一護王太子!」

そんな民の喜びの声が聞こえて、ルキアも幸せな気分を味わう。

「ちなみに、今日、初夜だからな?」

「へ?」

「へ?じゃねぇよ。結婚したら、王族なんだから子供作らないといけないだろ。だから、初夜だからなるべく優しくするけど、痛かったら言ってくれ。なんとか痛くないようにするから」

ボン!

ルキアは真っ赤になった。

そうなのだ。

結婚したということは、もう夫婦なのだ。夫婦の営みをすることは当たり前で、もうすぐ王としての即位が決まっている一護の後継ぎを産まなければならないのだ。

「むむむ、無理だ。私には無理だーーーーー」

「ルキア、好きだぜ?」

「んう」

舌が絡みあうキスをされて、ルキアは押し黙った。

「一護・・・私も、貴様のことが、好きだ」

「そりゃそうだろ。俺が選んだんだぜ?」

「一護!」

ルキアは真っ赤になって、一護をポカポカと殴った。

ちなみに、そんなシーンもばっちり民衆が見ていた。

皆、仲がいい夫婦だと思うのだった。



式が終わり、初夜がやってきた。

浮竹と京楽は、別の部屋を宛がわれて、今日は護衛の任務はお休みだ。

「抱くぜ?いいか?」

「いちいち、そのようなこと聞くな・・・・ひゃん!」

「ここ、感じる?」

「し、知らぬ・・・・ひゃんん!」

「変な声出してるけど、感じるんだな?続けるぞ」

「ああああ!」

熱に翻弄されて、ルキアは処女を散らしていた。

「俺が初めての人だな。一生をかけて、愛しぬく」

「あ、一護・・・・もっと・・・・・・」

ルキアは、自ら足を開いて一護を求めた。

快感に支配されて、頭が真っ白になっていく。

「ひああん」

「あ、俺もいきそう。中で出すぞ?」

「あ、やああ、子供できちゃう」

「だから、子作りだっての」

「やああん」

「ルキア、かわいい。全部、俺のものだ」

一護は、ルキアを抱きしめた。

華奢で細い体だった。一護のどストライクの貧乳であった。

「貧乳最高・・・・」

「一護のアホ!」

ルキアに蹴飛ばされる。

その足首を掴んで、一護はキスをする。

「ひゃあああああんん」

「今日は、寝かせないぜ?」




「今頃、姫と一護君は無事初夜を迎えているだろうか?」

「そうじゃないの。浮竹、そんなことよりボクを見てよ」

「あ、あああ・・・・・・」

浮竹と京楽も、睦み合っていた。

「やあああん」

「もっとってこと?」

「あああ!」

「一護君なら、姫を幸せに、して、くれるよな?」

「だから、浮竹、今はボクを見て?」

「あ、京楽、京楽」

京楽は、浮竹を貪っていく。



夜は、ひっそりとふけていくのだった。





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君はアメジスト 京楽と浮竹

浮竹と京楽は、犬の獣人族である。

元々、冒険者だった。

だが、あらぬ嫌疑をかけられて、処刑されそうだったところを、ルキアの兄である朽木白哉に救われた。

その恩義から、朽木家に忠誠を誓い、朽木家の護衛騎士として働くようになった。

二人とも、剣の腕だけでなく、魔法の才能もあったので、白哉はよく二人を護衛につけて自分の領地の視察しにいったりしていた。

大貴族だというだけあって、白哉は命を狙われたことが何度かある。

白哉自身も、千本桜という魔剣を持った凄腕の剣士であるが、さすがに眠っている時や食事している時にまでは身を守れない。

浮竹と京楽は、白哉の護衛騎士であった。

白哉は、他の貴族からの罠でルキアをクロサキ王国への奴隷として献上しなければ、貴族の位を剥奪されるという窮地に立たされて、それでも愛する妹を奴隷として送るようなことはできなくて、ルキアが勝手に奴隷として出立してしまったのだ。

その後を追って、護衛騎士になってくれと白哉に懇願されて、浮竹と京楽はルキアの護衛騎士となった。

「ほーら、とってこい」

「わん!」

「わんわん!!!」

元が犬なので、時折犬姿になって、フリスビーを投げてもらい、それをキャッチしてルキアの元に戻ってくる。

「わん!」

「ん、もっとか?」

「わんわん!!」

浮竹は白い長毛種の犬で、京楽は黒い大型犬だった。

浮竹と京楽は、ルキアのほっぺを舐める。

「あははは、くすぐったい」

「わんわん!」

「わん!」

犬の姿をしている間は、人語はしゃべれなかった。

「くう~ん」

「兄様が恋しいのか?」

「く~ん」

「そうだな。兄様に会いたいなぁ・・・元気にしておられるだろうか」

「中庭で何してるんだ、ルキア?」

「こ、これは!」

浮竹と京楽は人化して、犬の姿で遊んでいたのを恥ずかしそうに赤面していた。

「浮竹と京楽の娯楽に付き合っていた」

「そうか。そんなに照れなくても、犬の獣人って理解してるから、平気だぜ?」

「それでも恥ずかしい・・・・・」

「ボクも・・・・」

浮竹と京楽は、ルキアの傍で手で顔を隠していた。

「ルキア、王都に出てみないか。城にばっかりいたから、息がつまるだろ。浮竹さんと京楽さんももちろん一緒に・・・・・」

「行く!絶対行く!クロサキ王国の城下町には興味があったのだ!」

ルキアは、るんるん気分で着替えた。

なるべく地味な服を着たが、見た目の可憐さを隠すことはできなくて、念のために黒いフードを被った。

一護も、王太子とばれないために、黒いフードをかぶった。

浮竹と京楽も、獣人は珍しいので黒いフードを被った。

「あれはなんだ?あの店は、何を売っているのだ?」

城下町に出て、質問攻めの一護は、ルキアに一つずつ教えていった。

「あれは、騎士の剣を作る工房だ。あっちで売ってるのは、鳥の串焼きだな」

「腹が減ったぞ。あの鳥の串焼きというの、買っていいか?」

「ああ、いいぜ」

「すみません、これ4本ください」

「はいよ、毎度」

ルキアは、持たされたお金で、自分の分だけでなく、一護、浮竹、京楽の分も買った。

「姫、ありがとう」

「姫、ありがとね」

「サンキュー、ルキア」

「うむ・・・うまい。城では味わえない、下町独特の味だな。安いが味はいい」

ルキアは、途中でペットショップをじーっと見つめていた。

「ん?なんか欲しいものでもあんのか?」

「あの青い鳥が綺麗だと思って・・・・・・・」

「買ってやるよ。鳥くらいなら、世話できるだろ?」

「いいのか!?」

きらきらと、ルキアの顔が輝いた。

青い小鳥は、大金貨40枚もした。

朽木家の姫君であるルキアにも、その値段の高さが分かり、買うのをやめようと言い出そうとして、一護に止められた。

「これは、俺からの贈り物だ。受け取ってほしい」

「でも、こんな高価な・・・・・」

「俺はこの国の次期王だぜ?これくらい、余裕だっつの」

「あ、ありがとう」

城に戻ると、青い小鳥にアオという名をつけて、王族特製らしい金の鳥かごにいれて、バルコニー側に鳥かごを置いた。

「ふふ・・・・綺麗だな」

「チチチチチ」

小鳥は、綺麗な声で鳴いた。

「一護の正妃か・・・・悪くない、かもな・・・・・・」

一護は、戴冠式を1カ月延ばした。

一護の戴冠式まで、あと半月を切っていた。



ある日、一護に手紙を出したいと申し出ると、許可された。

早速、兄である白哉に現況と変わりはないかと手紙を出した。3日後には返事が届いて、ルキアが幸せであるならそれでいいと書かれていて、白哉自身はなんとか貴族の地位を保ち領地を守れて、穏やかな日常を過ごしているとのことだった。

「兄様・・・・・」

ルキアは、ぽたぽたと涙を流した。

「会いたい。兄様・・・・・・」

ルキアは、一人になりたいと京楽と浮竹に外に出てもらい、ベッドの枕を抱きしめて、泣いた。

「兄様・・・会いたい」

「ルキア、入るぞ」

「一護、今は入ってくるな!」

「朽木白哉に会いたくて泣いてるんだろう?戴冠式の日に招待しておいた。クロサキ王国の客人として。ちゃんと二人きりで会える時間ももうけてやるから」

「一護・・・・貴様は、何故そうまでして私に優しいのだ」

「ルキアのことが、好きだから」

「一護、私は一護の正妃になる。誰よりも偉くなって、二度と兄様の地位が脅かされないようにする」

「じゃあ、明日結婚式な?」

「「「は?」」」

傍に来ていた浮竹と京楽も一緒に、間抜けな声を出すのであった。





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