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エンシェントエルフとダークエルフ12

イアラ帝国の帝都アスランで、第15回テイムモンスターお披露目会があった。

冒険者ギルドに登録している者は参加必須で、使い魔もテイムモンスターにあたるらしい。

テイマーの職業についている者たちは、思い思いのままに、複数のテイムモンスターを連れていた。

京楽が参加することになり、京楽はげんなりしていた。

できればふけたいが、すでに参加提出書を出しているために、クロ、クロ吉、ブルンを連れてお披露目会にでた。

「おお、すごいぞあいつ、グリフォンつれてやがる」

「あっちはシルバーウルフだ」

「あっちが一番すげぇんじゃねえ?ベビードラゴン連れてるぜ。幼生体のまま過ごすけど、一応ドラゴンだぜ」

「おい、あいつ見ろよ。リスに黒猫にスライムだぜ。だっせえええ」

そう言われているが、京楽は堂々と歩き、その後ろをクロとクロ吉とブルンがついていく。

「では、自己紹介と特技をお願いします」

藁人形の的が用意された。

グリフォンは、空を飛んで的めがけて奇襲をかけた。

シルバーウルフは吠えて、的めがけて噛みつき、牙で攻撃した。

ベビードラゴンは炎のブレスを吐いた。

クロはマッピングと隠密を見せて、クロ吉は人間と意思疎通できると会話して、簡単な魔法を唱えて的にあてた。

ブルンは、会場に設置されてあったゴミ箱までいき、ゴミを全部消化して、その後にヒーリング草を大量に食べて、桶の中に回復のポーションを流していく。一応、的には酸弾を投げておいた。

「おい、この黄金色のポーションって」

「ああ、確か傷が全回復して、欠損してしまった四肢まで戻って、おまけに疲労がとれて、魔力も回復するという、あの伝説のポーションじゃねぇか!」

ざわざわと、周囲が騒がしくなった。

「あの、これって伝説とまで言われたゴールデンポーションですよね」

「うん、そうだけど」

京楽が困った顔でいうと、冒険者たちが騒ぎ出した。

「俺に売ってくれ!小瓶1個で金貨2枚でどうだ!」

「いや、俺にうってくれ!小瓶1つで大金貨1枚だす」

「僕にも売ってくれ」

「その桶にある分は好きにしてくれて構わないよ。でも、もしもブルンをポーションを作らせるために攫おうとしたら・・・・・」

「俺と京楽が許さない。Aランク冒険者だ。知り合いにはSランク冒険者もいるし、ギルドマスターのキャサリン・ヒィル・ロベン・アーチもこちら側についているからな」

浮竹は、不審な動きをしていたCランク冒険者を睨んだ。

ブルンを誘拐しようとしていたCランクの冒険者は、震えあがった。

Aランク冒険者だけでも厄介なのに、Sランク冒険者に知り合いがいて、ギルドマスターとも親しいという。あのオカマのギルドマスターは、キャサリン・ヒィル・ロベン・アーチとうフルネームで、オカマだが元Sランク冒険者のTOPと言われていた人材である。ちなみに、貴族出身であった。お金持ちのオカマのギルドマスターだった。

「今回のお披露目会の優勝者は、京楽選手です!」

「ええ、お披露会なのに優勝とかあるの!?」

「ふざけるな!どう見ても俺のグリフォンのほうが強いじゃねぇか!」

グリフォンをテイムしていたテイマーが苦情をいうと、いつもは冒険者ギルドの受付嬢をしている女性は、静かにこう言う。

「グリフォンは確かにテイムするには希少かもしれません。でも、それならあのブラックスライムのほうが余計に希少です。それにあなたのグリフォンはただ空を飛んで的を攻撃しただけです。
それにくわえて、京楽選手のクロは、自動でマッピングスキルをもって、隠密で先にいってくれるとても役に立つ使い魔です。クロ吉は魔法を唱えれるだけでなく、人語を理解する知恵をもっておます。
何よりブルンというブラックスライムは、希少性の他に酸弾を的に浴びせてドロドロにしました。地面まで溶けてました。
実際に戦闘になったら、よほど強いモンスターでもない限り、やられるでしょう。何より、効果の高いゴールデンポーションを生み出します。ヒーリング草を食べただけで、ゴールデンポーションを作れる存在など聞いたことがないです。高位の錬金術士にも作るのが難しいのに」

「ちっ、もういいよ。優勝は京楽でいい」

ベビードラゴンやグレイウルフ、その他のモンスターをテイムしていた今回参加していた30人ほどのテイマーも、優勝は京楽であると認めた。

「それより、ゴールデンポーションを予約していいか」

ゴールデンポーションの購入予約が殺到した。

そこらは、受付嬢が対応してくれた。

「くくるーーー」

「ブルン、大変だぞ。これから、定期的にゴールデンポーションを作ることになった」

「くくる」

「え、どうってことないって?それより腹減った?」

浮竹がそれを聞くと、京楽と顔を合わせて、会場の他のゴミをブルンに食べさせてやった。

「くっくるー」

「満足だって」

「じゃあ、帰ろうか」

「うん」

優勝賞品のお米券金貨5枚分を手に、マイホームに帰還した。

『やぁ、ダークエルフの魔法使いのボク』

「なんだ、来ていたのか。式でも飛ばしてくれればよかったのに」

『プルンが、どうしてもブルンと会いたいって聞かなくてな』

精霊の浮竹が、プルンを帰ってきたブルンと引き合わせた。

「プルルン!!」

「くるくるー」

お兄さん。弟よ!

そう会話をしながら、2匹はにゅっと手を出すと握手した。

それからけっこう広い部屋中をぽよんぽよんとはねて、追いかけっこをしだした。

『今度プルンかブルンがどっちかに会いたくなったら、そっちから来てね』

「ああ、分かった。どうせ隣国だ。馬車で数時間でつく距離だしな」

イアラ帝国のエルフの二人が住んでいる帝都アスランと、ロスピア王国で退治屋を営んでいる家とはそう遠くはなかった。

「お米券を金貨5枚分もらったんだ。二人じゃ食べきれないだろうから、3枚分もらってよ。そちのプルンは、お米も食べるでしょ?」

『分かった、もらっておく』

精霊の浮竹は、エルフの京楽から金貨3枚分のお米券をもらった。

「ププルーー」

「くるっくるー」

プルンとブルンは、りんごとゴミを与えられて、美味しそうに食べていく。

ゴミはどう見てもそこらへんの雑草とか枯葉を集めたもので、土がついていたがブルンは関係ないように食べていった。

部屋の掃除もブルンに任せてある。

いつも綺麗ピカピカだ。

『いいねぇ、そっちのブルンの特技。プルンの兄としてもらっていきたい気分だよ』

「いくら師匠の頼みでも、ブルンはやれんぞ」

『分かってるって。ただの冗談だよ』

「くくるーーー」

ブルンが、我がままをいいだした。

「ええ、泊まりにいきたい?」

『お、いいね。今夜はこっちに泊まるから、明日おいでよ』

「でも仕事はどうするの?」

『こっちは今のところ依頼はないから。緊急で依頼があった場合、出かけるけどね。留守番は任せれるでしょ?』

「仕方ない。今日は泊まってもらって、明日師匠の家にいこう」

「プルルン!」

「くくるー」

プルンとブルンは喜んだ。

ずっと一緒にいたいから。

でも、飼い主が互いに違うので、我がままを言わなきゃ会えない。

それがもどかしい。

特にプルンは幼いので、何故兄に会えないのか分かっていない。

兄のブルンは10歳程度の知能をもっているので、何故会えないかとかは全て知っていた。

「くくるー」

「え、プルンと一緒にソファーで寝る?もう好きにしてよ」

「プルルン」

「くくー」

プルンとブルンは、くっついて寝るのだった。

ブルンは白く、プルンはピンク色なって喜んでくっつきあって、しばらくおしくらまんじゅうのようなことをしていたが、疲れが出たのか寝てしまった。

大人たちはまだ寝ない。

夜の9時を過ぎた頃だった。

年代もののワインを取り出してきて、4人で飲んだ。

4人とも、しっかり貯金しているので、数日仕事を休んでも平気なので、その日は久しぶりに少しだけ夜更かしをした。

次の日に、少し遅くおきたのは仕方のないことだった。



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エンシェントエルフとダークエルフ11

今回は、隣国であるロスピア王国の冒険者ギルドにして、ダンジョン探索がメインになったギルドに、浮竹と京楽はきていた。

イアラ帝国の依頼で、ロスピラ王国にある、あるダンジョンのモンスターからとれる血液を、採取するという依頼だった。

ロスピア王国の冒険者ギルドに立ち寄ると、クエストは全部ダンジョン関係のものになっていた。

「あの、紹介状をもってきた」

ギルドの受付嬢は、奥に通るように案内してくれた。

「ほう、これまた浮竹と京楽によく似ておるのお」

「あの、それは剣士の京楽と妖刀の精霊の浮竹のことですか」

「そうじゃ。あやつらはこの冒険者ギルドには出禁になっておるからの。入ってくることはないが、外で何度も姿を見ておるよ」

今回は、クロとブラックスライムのブルンも連れてきていた。

「この依頼内容を達成したいんだ。冒険者の証と、ダンジョンに立ち入る許可が欲しい」

「よかろう。これが冒険者の証でこれが立ち入り許可証だ」

「ありがとうごいます」

京楽が丁寧な口調でそういうと、山じいと呼ばれるギルドマスターは。

「あやつに礼を言われてるようでこそばゆいわい」

と言って、二人を自由にした。

ちなみに、血液の採取相手はゴールデンバジリスク。

Bランクダンジョンの40階層にいるらしい。

さっそく、馬車でそのBランクダンジョンがある場所にくると、見回りをしていた兵士にダンジョンへの立ち入り許可証と冒険者の証を見せると、簡単に通してくれた。

入口で、剣士の京楽と精霊の浮竹の姿は人がいるため見えなかったが、妖刀がかたかたと剣士の京楽の手で震えていた。

『プルンがどうしても一緒行くといって聞かなくてね。一緒に連れて行ってやってくれないかい』

「わかった。一時的に預かる」

浮竹はプルンを受け取った。

プルンは、エルフの京楽の肩にいるブルンを見て、お兄ちゃんとポンポンはねた。

ブルンもまた、弟だとポンポンはねた。

剣士の京楽は、そんなプルンを少し困った顔で、エルフの浮竹に渡した。

剣士の京楽と精霊の浮竹はダンジョンに入れないので、外で待つことになった。

Bランクダンジョンでは、蛇を中心としたモンスターがよく出現した。

バジリスクも尾は蛇で、顔と体は鶏だ。睨まれると石化する可能性があるので、なるべく素早く息の根を止める戦法でいくことにした。

ブラックサーペント、巨大な黒蛇が30階層のボスだった。

Aランクダンジョンで見かけるモンスターで、その皮はよい鞄や革製品の材料として、肉は高級食材としてもてはやされているので、倒すと体ごとアイテムポケットに収納する。

30階層の財宝の間が開く。

金貨が200枚と、ミスリルのインゴットが5本ほどあった。

「今日は、ここで野営しよう」

「モンスターが出てこないから、財宝の間が一番安全だしね」

クロは、モンスターに見つからないように今までの道を、先にいって自動でマッピングしてくれて、プルンとブルンは、モンスターをみたらそれぞれ攻撃魔法と酸弾で倒していた。

浮竹と京楽も、主に火の魔法でモンスターを討伐していく。

蛇系が多いので、毒には注意した。

蛇が多いので、ドロップ品も蛇の皮だったりした。

アイテムポケットは、すでに100体近い蛇の皮でいっぱいだった。

まだまだ入るが、とりえず30階層に着た頃には日は沈んでいたので、財宝の間で寝ることとなった。

「ププルン」

「くくるーー」

プルンとブルンは、ぽんぽんはねながら、追いかけっこをしていた。

そこに黒リスのクロも混ざった。

「おーい、夕飯できたぞー」

「プルルン!」

「くくるーーーー」

夕食は、ポトフだった。

プルンの食事は林檎2つで、ブルンの食事は雑草の束だった。

「プルルン?」

それ、おいしいの?」

プルンが兄のブルンにきくと、ブルンはおいしいよと答える。

「くくるーーー」

「プルルン」

じゃあちょっとちょうだい。

「くるるー」

いいよ。

そうして、ブルンは雑草を少し食べてしまい、その苦さに緑色になって、顔もうげぇという顔になった。

「くるるー?」

無理しないでね。僕の食事は雑草とかゴミだから。

「プルルン」

無理言ってごめんね。雑草、もっとおいしければいいのに。

「くくるーー」

僕には十分おいしいよ。

そんな会話をするスライム2匹をほんわりと見ながら、浮竹と京楽も作っていれておいたポトフを食べていくのだった。

ちなみに、クロの餌はどんぐりだった。

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「SYAAAAAAAA!!」

40階層のボスは、普通のバジリスク5体とゴールデンバジリスクだった。

「エアスラッシャー!」

まずは先手必勝とばかりに、バジリスク5体の尻尾の蛇を切り落とす。ゴールデンバジリスクの尻尾の蛇も切り落とした。

これで石化の心配はなくなった。

「サンダーボルテックス!」

バジリスクたちに雷の呪文を浴びせると、バジリスクたちは体を硬直させた。

そこを、ミスリルの剣で火を付与した浮竹が、鶏の頭をはねていく。

鶏の頭は、はねられて血を流してもしばらく生きていたが、直に死んでいった。

「残ったのはゴールデンバジリスクのみだね」

「そうだな。血をなるべく零さないよう、凍結の魔法をかけよう」

「分かったよ」

「「エターナルアイシクルワールド!!」」

二人で放った氷の上位魔法で、ゴールデンバジリスクは見事にかちこちに凍って、息の根を止めた。

「このままアイテムポケットに収納してしまおう」

「そうだね。これなら、解凍すれば血がいつでもとれる」

「お、巣があったぞ。ゴールデンバジリスクは金の卵を産むからな・・・どれどれ、お、2つも金の卵がある!」

中身は金ではないが、殻は金なので、お金になるので二人はアイテムポケットにゴールデンバジリスクの金の卵を放り込んだ。

「ププウ」

「どうした、腹がすいたのか?」

「ププー」

「ほら、りんごだよ。僕らも昼食にしよう。財宝の間にとりあえず行こう」

プルンは器用にりんごにかじりつきながら、ぽよんぽよんとはねた。

財宝の間には、金貨250枚と黄金の食器が置いてあった。

全部、アイテムポケットにしまいこむ。

「よし、昼ごはんにしよう」

「そういえば、剣士の京楽と精霊の浮竹は大丈夫かな?1日を丸々ダンジョンで過ごしてしまったけれど」

「大丈夫じゃないかい?兵士の詰所もあるだろうし、冒険者が寝泊まりする施設もある」

浮竹と京楽は、プルンを託されたので、きちんと面倒を見る必要があった。

プルンにもう一度りんごをあげた。

「プルー」

プルンは、嬉しそうにりんごを食べていく。

「卵も手に入ったし、簡単に卵スープにでもするか」

「バジリスクの卵って、黄身あるの?」

「あるぞ。新鮮だぞ」

浮竹は、黄金の卵の中身を割って、鍋にいれた。

その殻をブルンが食べたそうにしてるが、純金なのでとっておくことになった。

かわりに、39階層で生えていたヒーリング草をあげた。

「くくるーーー」

おいしい、おいしい。

「くくる」

回復液だしそう。

「うわああ、まて、ブルン、もったない、器!」

なんとか卵スープを入れる前の器に回復液を満たしてもらい、その薬をためしに一口飲むと、戦闘でいつの間に負っていた小さな傷が癒えた。

あと、疲労回復の効果もあった。

消費した魔力も少し戻った気がする。

「プルルウ」

お兄ちゃんすごい!

プルンは飛び跳ねて喜んだ。

「くるるー」

そんなに凄いかな?

ブルンは体の色を真っ白にして、ぽんぽんとはねた。

ダンジョンの転移魔法陣で、入り口に戻った。

「プルンを返すよ」

『ああ、うん。楽しかったか、プルン?』

「ププルー!!」

とっても楽しかったよ。お兄ちゃんとモンスターいっぱいやっつけた。

「くくるー」

弟よ、またね。

剣士の京楽は、人がいないので精霊の浮竹を連れて、プルンを肩に乗せて自分の家に帰っていった。


そんなこんなで、ゴールデンバジリスクの血液入手は、凍ったゴールデンバジリスクごと解体所に出されたので、受取人である錬金術士は顔色を真っ青にしていた。

「魔法の氷を溶くから、好きな場所に傷をつけて血を採取してくれ」

「わ、わかったわ」

「マジックキャンセル」

氷続けているゴールデンバジリスクの魔法を解くと、大量の水と死んだばかりの新鮮さを保ったゴールデンバジリスクの遺体があった。

錬金術士の女性は、えいやっと、鶏の首に傷をつけて、血を回収していく。

結局、大きな樽一個分の血がとれた。

「こんなに採取できるとは思っていなかったわ。今度の錬金術の会合の時に使う材料としているんだけど、こんなにあればみんなの分も補填できるわ。依頼の報酬金には上乗せをしておくわ」

「まいどおおきに」

何故か、勝手に現れたクロ吉が、そう言って、報酬金を受け取って、中身の金貨を数枚、口でくわえて消えてしまった。

「クロ吉、まらどっかの高級レストランの魚料理食べるつもりだな」

「まぁいいじゃない。報酬金は金貨300枚。おまけに、ダンジョンで得た金貨は600枚だし、ミスリルのインゴットや黄金の食器も手に入った。ダンジョン攻略って儲かるね」

「そうだな。また今度、暇な時にでもダンジョンにもぐるか」

「うん」

「それより、ダンジョンでとれたヒーリング草をブルンに食べさせよう。あの回復液のポーションは効果が凄いぞ。魔法で癒す余裕がない時に使おう」

ダンジョンでいっぱいとれたヒーリング草をブルンに食べさせて、ポーションを作ってもらい、それも樽1個分になった。

「量が多いから、少し市場に流してみるか」

「それがいいね」

市場に流したポーションは、値段もそう高くないからと売れた。一度使った客が、これはすごいと言い出して、バカ売れした。

自分たちが使う分を残して全部うると、金貨50枚分にはなった。

「これってさ。ブルンにヒーリング草を買ってきて与えて、ポーションにするだけで、余裕で暮らしていけるよね」

「そうだが、ブルンはあくまでスライムだ。過度な期待はしないほうがいい。それに、俺たちはSランク冒険者になるんだろう?」

「そうだね。がんばらなくっちゃね」

二人の旅は、まだまだ続くのであった。






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エンシェントエルフとダークエルフ10

森に放っていた、使い魔である黒リスのクロを呼ぶと、その背後からぽよんぽよんと黒いスライムがついてきていた。

「どうしたの、クロ」

「ちちっ」

「仲間になった?え、まじで。その子、貴重なブラックスライムでしょ」

ブラックスライムは、ごみを食べてくれるので、よく清掃の会社などで飼育されていた。

「野良のブラックスライムってこと?」

「ちちちっちー」

京楽は、クロの他にもこの前黒猫のクロ吉という猫を使い魔にした。

「ええ、仲間にしたから連れて帰る?大丈夫かなぁ」

クロは京楽の肩に乗り、反対側にブラックスライムが乗った。

「僕がテイムしたことになってるみたいだね。名前、考えてあげなくちゃね」

森からマイホームに帰宅すると、浮竹が黒猫に高級猫缶詰を与えていた。

「京楽、遅かったな。クロ吉がきてるぞ」

「遅かったやんけわれ。わいを使役するからには、高級猫缶詰とチュール用意しとけやわれ」

「まったく、クロ吉はグルメだねぇ」

いつもは気まぐれな野良ネコ人生を歩んでいるので、お腹がすきすぎた時に定期的に浮竹と京楽のマイホームに現れた。

黒猫であるが、ちゃんと人語を理解ししゃべれた。ちょっと態度はでかいが。

「ほれほれ、チュールをよこさんか」

「チチッ」

「うっせ。先輩だと?しるかわれ」

クロとクロ吉は、基本捕食者と天敵であるので、仲はあまりよろしくない。

クロ吉は数日前に使い魔、つまりは使役魔になった黒い猫だ。

クロは基本Bランク時代から使っている使い魔で、クロのほうが先輩で偉いのに、クロ吉はそれが気に入らなくて、いつも喧嘩腰だった。

「チチチ」

「なんや、やるんかわれ。食うぞこら」

「こら、クロもクロ吉も仲良くしなさい」

「チチ―」

「ふん」

「京楽、それよりその肩に乗っているのは、ブラックスライムのようだが、どうしたんだ?」

「いやねぇ、クロが連れてきたんだよ。珍しく野良のブラックスライムのようでね。僕がテイムしたってことになってるらしい」

「そうか。じゃあ、名前を考えてあげないとな?クロ助とかはどうだ?」

「どう思う、クロ助」

「ププル~~~」

そこに、剣士京楽のと精霊のところで飼われている、ビッグスライムのプルンが現れた。

「なんだ、プルン。今日もこの国にあの二人はきているのか?」

「ププルン!」

プルンは、ブラックスライム見て、嬉しそうにはねていた。

「え、兄ができた?こいつの、お前よりも年上なのか?」

「ププルー」

ブラックスライムは、京楽の肩からぽよんと音を立てて降りて、クロ吉が食べた猫缶詰の空き缶を食べてしまった。

「ププ!」

「凄いって言ってるな。あのな、ブラックスライムはゴミを食べてくれるんだ。人間の料理とかも食うけど、基本ゴミを食べる。野生では雑草なんかを食べてるな」

「ププルン」

プルンは、自分の好物の林檎をさしだした。

ブラックスライムは林檎よりも、奥にあった生ごみの入ったゴミ箱入り、ゴミをおいしそうに食べだした。

「ププ」

哀しくて青くなっているプルンを見て、浮竹はゴミを食べ終わたブラックススライムとプルンを引き合わせた。

「プルルン」

「くくるー」

ブラックスライムが初めて鳴いた。

ブラックスライムは基本鳴かないことで有名だった。

「すごいよこの子。鳴いたよ」

「くくるーくるくる」

もっとゴミ食べたい。

そういうブラックスライムに、プルンは食べた林檎の芯をあげると、ブラックスライムはそれを喜んで消化した。

「名前、はクロ助でいいのか?」

「ププルウン!」

「え、何、ブルンがいい?兄だからブルン?」

「プルンとブルンじゃ、ちょっとに過ぎていやしない?」

「まぁ、見た目は全然違うし、いいんじゃないか」

こうして、ブラックスライムの名前はブルンになり、プルンの兄的存在となった。

好物はゴミなので、ゴミをわざわざ捨てることがなくなり、かなり助かった。


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「今日はブルンとクロ吉を連れて、簡単な狩りをしよう。レベルアップさせるために」

森で、ブルンは雑草を食べながら、襲ってきたホワイトベアを、酸弾で倒してしまった。

「すごいな、酸を吐けるのか」

「くくるーーー」

クロ吉は、ホワイトラビットを爪と牙で仕留めてしまった。

「わいより強い魔物倒したってか?調子のんなやこら」

「くるくるー」

調子には乗っていないよ、僕はただホワイトベアを倒しただけだよ。

「それが調子に乗ってるいうねん!」

「ほらほら、クロ吉、いい子だから喧嘩しない。チュールあげるから」

「お、浮竹なかなか分かってるやんけ」

ちゅーるをおいしそうに食べながら、クロ吉は更なる獲物を求めて、森の中に入っていく。

この森は、そんなに強いモンスターはいないので、比較的安全で、よく初心者から抜け出したばかりの冒険者が依頼退治で受けるような場所だった。

「ホワイトバード×5、ホワイトスネイク、ホワイトラット×2。これでどうや」

「おお、クロ吉すごいな。LVも6つもあがってるじゃないか」

「くるるるーーー」

ブルンも、もう1匹ホワイトベアを退治した。

「お、ブルンもLVが2あがったな」

元からある程度LVが高かったので、クロ吉のようにLVが大きくあがることはなかった。

「よし、今日はお前たちの仕留めた魔物の肉で、鍋をしよう」

「浮竹、本気かい?ホワイトスネイクもホワイトラットも、食べれないことはないけど、別に食べなくてもいいんだよ」

「せっかくお前の使い魔がとってくれたんだ。ホワイトベアは毛皮も売れるから、あとはここで解体してしまおう」

浮竹と京楽は、器用にさばいて肉と皮をはがし、肉とホワイトベアの毛皮だけをアイテムポケットにいれた。

ホワイトバードの羽とか、ホワイトスネイクの皮、ホワイトラットの毛皮は素材にならないので捨てることにする。

それを、ブルンが消化してしまった。

「本当に便利だな、ブルンは」

「くくるー」

「ああ、クロ吉の食べたチュールに入れ物も食べてくれ」

「くくーー」

ブルンは、素直に食べてくれた。

今夜は、いろんなモンスターの肉を使った鍋料理であった。野菜やきのこの他に、魚介類も少しいれた。

クロは野菜を、クロ吉は魚介類を、ブルンは骨とか野菜の芯を食べていた。

「魔物肉を使った鍋だから、どうなることかと思ったけど、けっこうおいしいね」

「ホワイトベアの肉はわりと高価だからな。うまいって評判なんだ」

「そうなんだ。知らなかったよ」

「京楽は、飯を作る割には魔物の肉は使わないからな」

「食べれればいいけど、わざわざ魔物の肉を使う必要はにないでしょ?この世界にはちゃんと家畜もいて、その肉が食える」

「まぁそうなんだが・・・・・かけだしの冒険者だった頃は、よくこうやって魔物肉を焼いて食べたりしたな」

「ああ、懐かしいねぇ。もう何十年前のことだろ」

浮竹と京楽はエルフだ。人の10倍以上を生きる。

依頼を受ける回数も、駆け出しの頃は少なく、自由になってからやっと本当の冒険者になれたので、Cランクから本格的に冒険者を始めた。

今から5年前のことだ。

CランクからAランクにあがるには10年はかかると言われている。

それを半分の時間で成してしまったということは、冒険者としての適性があったのだろう。

幼い頃、戯れに森で遊び、モンスターを倒していたのだが、その経験が今を支えているのだ。

「ブルン、今度はプルンに会いにいこうか。お前のこと、兄だと慕っているようだし、ちょうど昨日引き受けたクエストの内容が、ロスピア王国のものなんだ」

「くくるーー」

ブルンは嬉しそうに浮竹の肩に乗った。

その時の色は真っ白で、ブラックスライムは喜ぶと正反対の色になると言われていたので、喜んでいることが分かった。

「兄弟か。なんかいいな」

「僕には兄弟姉妹はけっこういたらしいけど、捨てられたからね」

「俺は一人っ子だから。エルフ種族は普通一人しか産まない。おまけに婚姻もほとんど行われない。人口は減るばかりで、緩やかに絶滅に向かっている」

「人間種族が羨ましいね。性欲も旺盛なようだし」

「その言い方だと、ゴブリンのようだぞ」

クスリと浮竹は笑って、鍋の〆の雑炊を作った。

「くるるるーー」

「お、普通の雑炊も食べたいのか?」

「くるる」

「ほら、召し上がれ」

クロとクロ吉は、飯を食べるとさっさとそれぞれ森と町に帰ってしまった。

召還すれば、何処にいても何をしてても召還されるので、問題はなかったが。

「くるるーーー」

ブルンは、おかわりをした。

そして、器も食べてしまった。

「こらブルン、お皿は餌じゃないぞ”!」

「くるるーーー」

反省しているのか、黒と白の色になって明滅する。

それをちゃんと覚えたのか、今度からは皿は食べず、皿の汚れだけを食べてくれて、浄化もしてくれるので、皿洗いの必要もなくなるのであった。

ブラックスライムは、どんなゴミでも食べてくれるので、わりと高価なモンスターだ。ちゃんと飼われていると分かるように、契約の儀式をして、ブルンの体には灼熱のシャイターン一族がもつ、ハヤブサの紋章が刻まれるのであった。






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エンシェントエルフとダークエルフ9

魔王ヴェルの配下の四天王の一角である灼熱のシャイターンは唯一の女性で、見た目は20代前半だが、実年齢は600を上回っていた。

ダークエルフで、ダークエルフの寿命は千年程度だが、魔王ヴェルに忠誠を誓う形で千年以上を生きるだろう。

「最近、あたしの子供だっていうダークエルフが、Aランクの冒険者になったって聞いてね。ちょっと会いにいこうと思ってさ」

灼熱のシャイターンは、つい数週間前にSランクの冒険者5人に挑まれて、返り討ちにして殺した。

基本人間と魔族は中立であるが、やはり人間世界にとって魔王や魔族は忌み嫌う存在であり、灼熱のシャイターンもダークエルフのいわゆる魔族に分類される種族で、子を成したはいいが、なんと皮膚の色が白かったのだ。

子の名前は京楽春水。

人間たちの住むウッドガルド大陸のイアラ帝国で、Aランクの冒険者をしていた。

Sランクになりそうな上位ランキングに、産んで捨てた実の息子の名前があって驚いた。

影からの調査で、シャイターンが捨てた後、かわいそうだとダークエルフの住民に拾ってはもたっが、幼い頃にダークエルフたちが魔大陸に移住するついでに、また捨てられた。

今度京楽を拾ったのは、なんとエンシェントエルフの族長だった。

牢屋に幽閉されて生き延びたが、その牢屋には秘密の外に続く道があり、浮竹十四郎というエンシェントエルフの少年と巡り会い、互いに冒険者ギルドに登録して、その浮竹は京楽のパートなーだという。

ダークエルフが冒険者ギルドに登録など普通はできなくて、肌が白いのをいいことに、ウッドエルフと種族を偽っているらしかった。

「はん、あたしの血を引いているくせに、白い肌のできそこないのくせに、Aランク冒険者だって?しかもSランク冒険者になりそうな上位ランキングに入ってるのが余計に気に食わない。ちょっと身の程を弁えてもらうために、顔でもだそうかね」

灼熱のシャイターンは、その名の通り炎を操る。

「フレイムウィング!」

風の魔法とかけあわせた炎の翼を背中にはやせて、魔大陸から僅か2日でウッドアルド大陸のイアラ帝国にまできていた。

移動速度が半端ではなかった。

通常、ワイバーンにのっても半月近くかかる。

それほどに、魔大陸の魔都セズゴリスと距離が離れていた。

灼熱のシャイターンの名は、伊達ではなかった。

炎を纏いながら、町に飛び降りと、住民や冒険者たちは悲鳴をあげて逃げていく。

「魔族だああ!!ダークエルフが攻めてきたぞお!」

「ちっ、うっさいね。この見た目はあれか・・・」

シャイターンは、浅黒い肌の色を白く見せる魔法をかけた。

「あれ、ダークエルフはどこに行った?」

騒ぎを聞きつけてやってきたBランク以上の冒険者たちは、怯えているふりをしているシャイターンに騙されていた。

「あの、あのダークエルフなら、西のほうに向かいました!」

顔も声も変えて、人間に嘘の情報を流す。

「そうか、ありがとう!」

「西だ!西に魔族のダークエルフが現れたはずだ、迎え!」

「ふんっ、人間たちはいつも愚かだ」

シャイターンは、南に向かって歩きだした。

時刻は夕暮れ。

冒険に出ていても、そろそろ戻ってくる頃合いだろう。

浮竹と京楽のマイホームでは、浮竹と京楽が今日の依頼を終わらせて、夕食を一緒にとっていた。

「誰だい、そこにいるのは」

「ああ、おまえがあたしの息子か。まぁ、見てくれは悪くないが、やはり肌の色があれだな。産んだが、捨てて正解だった」

「まかさ、あなたは・・・・灼熱のシャイターン!?」

「そのまさかさ!」

シャイターンは変装の魔法を解いた。

真っ赤な髪に、浅黒い肌の20代前半のダークエルフだった。

ただ、伝わってくる魔力はSランク冒険者の比ではなく、京楽はまずは浮竹を庇った。

「あなたは、僕を捨てたはずだ。今更何をしにきた!」

「いやねぇ、SランクになりそうなAランク冒険者にお前の名前があって、身の程を弁えらせるつもりのできたのさ」

いつの間に移動したのか、京楽の首には短剣が突きつけられていた。

「この子かい。パートナーの浮竹十四郎というのは」

「浮竹、逃げて!」

浮竹は恐れることもなく、堂々としていた。

「京楽の母上とお見かけする。灼熱のシャイターンであるのは分かった。だが、今の京楽は俺のものでもある。まだまだSランク冒険者になるには力不足だし、Sランク冒険者になったとしても、魔王軍に手出しするつもりはない」

「はっ、言うねぇ。京楽、できそこないのお前には勿体ないパートナーだねぇ」

「京楽は出来損ないなんかじゃない。一度捨てた子だろ。魔大陸に帰れ」

「おお怖い怖い。いずれ、この子がダークエルフであることは、ばれるよ。それでも、一緒にいたいというんだね?」

「ああ。ダークエルフであるのがばれて冒険者ギルドを追われるようになったら、違う拠点を探す。どうしても見つからなければ、魔大陸で冒険者するかもな」

「ちょっと、浮竹、本気なの?」

「本気だが?魔大陸にも冒険者ギルドはあるだろう?」

「あはははは!大した大物だよ、気に入ったよ、お前。京楽がダークエルフだというのがばれて人間国家で冒険者稼業できなくなったら、魔大陸においで。あたしの名前で推薦してやるよ」

「じゃあ、今はまだこの国で京楽がダークエルフであるということは」

「ああ、秘密にしといてやるよ」

それだけ言い残すと、シャイターンは炎の翼を生やしてすぐに見えなくなってしまった・

「はあ。心臓が口から飛び出すくらいに緊張した」

「やっぱり、浮竹も無理してたの?」

「当たり前だろう。相手は魔王の四天王が一人、灼熱のシャイターンだぞ。そんなのが母親だなんて、お前の人生は苦労の連続だな」

「僕が、シャイターンの息子だからって、幻滅したりしないの」

「何を言っている。京楽は京楽だ。親なんて関係ない」

そう言い切られて、京楽は浮竹に抱き着いた。

「愛してるよ、浮竹」

「ああ、俺もお前を愛してる」

口づけを交わし合い、いつしか息が乱れるほどにお互いの唇を貪っていた。

「今日はもう、寝よう。灼熱のシャイターンが出たと、明日からきっと大忙しだ。まぁ、クエストに参加するだけで金がもらえるから、ラッキーだがな」

「そうだね。シャイターン・・・僕の母親は魔大陸に戻ったことだろし」

「それにしても、京楽がシャイターンの子か。シャイターンには確か、他にも数人子がいたはずだが。お前だけが捨てられたのか」

「うん。肌の色が白いからね。ダークエルフたちに育ててもらったけど、赤子~幼少期までで、後は君んとこのエンシェントエルフの村で、幽閉されて育った」

「よく百年もの間、そんな生活を我慢できたものだな」

「だって、君が頻繁に来てくれたし、牢屋から外にでる秘密の抜け道も教えてくれた。人間の年齢で12歳になって冒険者登録して、僕の人生は楽しいし嬉しいことの方が多いよ」

「明日からも大変だが、また頑張ろう。Sランク冒険者を目指すために」

「うん、そうだね」

しばらくの間、灼熱のシャイターン探しのクエストがあったが、一向に見つからないので、捜索は切り上げられて、参加者にはランクに応じた報酬金が出るのであった。



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エンシェントエルフとダークエルフ8

Aランク冒険者になって1カ月が経った。

10回以上は依頼を受けたが、依頼の失敗も3回くらいあり、まぁそれでも好スタートであった。

依頼退治がほとんどなので、罰金を受けるような依頼はあまり受けなかった。

護衛などの任務は達成失敗の場合、罰金が生じる。

その代わり、魔物や盗賊が現れなければ、ただ一緒に行動するだけでお金が入るので、護衛任務ばかりを引き受ける冒険者もいるくらいだ。

1日3度の食事が約束されて、困るのは夜の見張りがあるくらいだろうか。

今度の依頼は、魔獣、モンスターの討伐依頼であった。

ケルベロスとオルトロスのペアを退治してくれというものだった。

Cランクダンジョンに、ケルベロスとオルトロスが住み着き、それ以上奥に行けないのだという。

CランクダンジョンはD~Bランク冒険者が適正である。

Bランクでも倒せないということは、それなりの強敵であった。

Cランクダンジョンにつくと、35階層でケルベロスとオルトロスのペアが出てきた。

オルトロスは頭を2つもった狼の、ケルベロスは頭を3つもった狼のモンスターであった。

属性は火。弱点は氷と水。

浮竹も京楽も、水と氷の魔法を唱え出した。

「エターナルアイシクルワールド!」

「ウォータープリズン!!」

地面を凍結させてモンスターの足を京楽が凍らせる、浮竹が水の牢獄を作り出し、オルトロスとケルベロスを閉じ込める。

「GARURURURU!」

「GYAUUU!!」

オルトロスとケルベロスは、叫び声をあげながら炎のブレスを吐いた。

それは水の牢獄を蒸発させたが、凍らせられた足は溶けなかった。

浮竹が唱えた氷の魔法は上級魔法だ。

「エターナルフェンリル!」

「アイスエンチャント!」

氷の魔狼フェンリルを召還して、氷のブレスを吐いてもらい、オルトロスとケルベロスも炎のブレスで対抗するが、氷のブレスのほうが優位だった。

少しずつ炎のブレスが弱まっていく。

そこに、氷を付与したミスリルの剣で、浮竹がケルベロスの前足を、オルトロスの胴体を斬り裂いた。

「GYAUUUU!」

「GYANN!」

犬のような声を出して、オルトロスとケルベロスは、炎をブレスを足元にはいて地面の氷をなんとか溶かすと、京楽めがけて襲い掛かる。

それを、氷の魔狼フェンリルが行く手を阻んだ。

「うおおおおおおぉぉぉん!」

フェンリルが遠吠えをあげると、異界より眷属たちが召還されて、オルトロスとケルベロスは逃げ出そうとするが、大小様々なフェンリルに囲まれて、逃亡できなくなる。

「いけ、フェンリル!アイスアタック!」

体を凍結させたフェンリルたちが、オルトロスとケルベロスに体当たりを食らわせる。

弱ってきたオルトロスとケルベロスに向けて、浮竹が魔法を放つ。

「アイスクラッシャー!」

氷の巨大な塊ができて、それはぐしゃりとオルトロスとケルベロスの体を潰して、粉々になった。

「ああ、よかった。魔石は無事だな。さっきの衝撃で砕けていたらどうしようかと思ったんだ」

「魔石は禁呪でもない限り、砕けないよ」

「でも、禁呪を唱える奴を知っているからな」

剣士の京楽のことであった。

他にもSランクの冒険者の中には禁呪を唱える魔法使いたちもいる。

今この世界で存在が確認されているSランク冒険者の数は77人。

去年は82人だった。

5人パーティーのSランク冒険者が、魔族の魔王四天王が一人、灼熱のシャイターンに敗れて死んでいる。

魔王討伐に挑むSランク冒険者はいなかった。

皆、命は惜しい。

勇者でも誕生しない限り、魔王は倒されないだろう。

そもそも、魔王は存在しているが、全ての魔族を束ねてるというわけでもなく、明確な「悪」であるかあやふやな部分もある。

人間の国が戦争をしかけてきたら、その国は滅亡するが、反対に戦争をしかけなければなんの害もないのだ。

四天王も同じで、戦いを挑めば容赦なく倒されるが、戦いを挑まなければ何もしてこない。

死んだ5人のSランクのパーティーのリーダーは、自分が勇者であると明言していて、その証拠に灼熱のシャイターンに挑み、戦死した。

Sランク冒険者の間では、死んだその自称勇者を愚か者だという声が高かった。

「ねぇ、浮竹。もしも、魔王討伐に向けて国が動きだしたらどうするの?」

「そんなことは起きないと思うだろうが、マイホームを捨てることになるが、違う国の冒険者ギルドに登録しなおして、その国で活動する」

「やっぱり、そうだよね」

京楽は癒えなかった。

その灼熱のシャイターンはダークエルフで、実の母親であるなんて。

浮竹に打ち明けれないもどかしさをもちながら、それでも隠しておきたかった。

魔族ともいわれるダークエルフであるが、ただのダークエルフではなく、魔王の四天王の一人の息子などとは、とても言えなかった。

そもそも、母であるシャイターンは肌の色を見て、捨てることを決めた女性だ。

育てられた記憶もない。

ただ、シャイターンの息子ではあると、言い聞かされて幼い頃は育てられた。

そのダークエルフの村も、魔族と合流するということで、一族の汚点でもある京楽を捨てて、魔大陸に移住してしまった。

「どうした、京楽。顔色が悪いぞ?」

「ううん、なんでもないんだ」

自分だけ、秘密を抱えている罪悪感に時折苛まれる。

シャイターンにとっては、ただのゴミだろうが、こちら側からしたら、魔王の四天王の一人が親なのだという、リスクの高い位置にいるのだ。

「とりあえず、冒険者ギルドに報告に戻ろう」

「うん、そうだね」

オルトロスとケルベロスの死体は、ダンジョンが消化するだろう。

ダンジョンは生きている。

ダンジョンマスターをもち、大抵が古代のエルフか古代のドワーフであった。

ダンジョンで死んだモンスターや冒険者は、荷物以外は自然に溶けてダンジョンの苗床となり、ダンジョンは新しいモンスターや宝箱を生み出す。

それを管理するのがダンジョンマスターだ。

ダンジョンマスターが代わると、ダンジョンも大きく様変わりする。

まぁ、よほどのことがない限り、ダンジョンマスターが代わることはない。

「これで、Cランクのこのダンジョンも、最下層まで潜れるだろう」

「ねぇ、ちょっと最下層まで行ってみない?」

「いいが、俺たちにとっては雑魚だぞ」

「昔、Cランクだった頃、このダンジョンにも何度か潜って、結局踏破できずにいたじゃない」

「そういえば、そうだったな」

雑魚のスケルトンやスケルトンアーチャー、スケルトスンソルジャーなどの雑魚のモンスターを倒しながら、魔石だけ回収した。

大した金にはならないだろうが、昔はそれでも満足したものだ。

最下層は50階層だった。

ボス部屋を開くと、スケルトンキングがいた。

「フレイムボルト」

「セイントヒール!」

不死の属性には火と聖が効きやすい。

一部、剣士の京楽のような例外はあるが、大抵は火と回復魔法でダメージを受けた。

魔力がCランクの頃の数十倍にもなった今では、スケルトンキングも雑魚だ。

倒すと、財宝の間が開いた。

あったのは、金貨が50枚と銀製の武器くらいだった。

「昔は、これでも喜んでたんだよねぇ。始めてCランクのダンジョン踏破したこと、覚えてる?」

「覚えてる。グレイウルフベアがボスだった。苦戦して怪我をいっぱいして倒して、金貨45枚と、金の短剣を手に入れた」

「金の短剣は、窮地になるまで手元に置いていたよね」

「そうだな。俺が風邪を引いて、依頼を受けれなかった時期に、売り払ってしまったんだったな」

「とりあえず、地上に戻る転移魔法陣に乗ろう」

「ああ」

ダンジョンの入り口まで転移して、待っていた馬車に乗りこんだ。

馬車は冒険者ギルドで、1日金貨2枚でかりれた。

御者付きの場合は金貨3枚だ。

京楽が御者をしていた。

1日だけのレンタルなので、出費は金貨2枚と1日の食事の分の銀貨3枚くらいだろうか。

冒険者ギルドに戻り、馬車を返して、受付嬢に魔石を鑑定してもらい、報酬金金貨160枚を手に入れて、魔石の買取り額金貨20枚を手に入れた。

今日の稼ぎは、金貨180枚とダンジョンで手に入れた金貨50枚と、雑魚の魔石の買取り額の金貨3枚と、銀の武器だ。

Cランク以下の頃は、金貨を見るだけでも興奮したものだ。

今では、大金貨を見てもあまり何も感じない。

流石に白金貨を見るとびびるが。

今日の夕飯の買い物をせず、久しぶりに冒険者ギルドの酒場で食べて飲んだ。

「景気はどうだ、浮竹、京楽」

「ぼちぼちかな?」

「まぁまぁだな。12件依頼を受けて未達成が3件。Aランクになって、調子づいてSランクの依頼を受けたら、失敗続きだった。今はAランクかBランクの依頼を受けている」

「そうだね。Sランクの依頼は僕たちには早すぎたね」

京楽も浮竹も苦笑いした。

「あらぁ、うっきーちゃんに春ちゃんが、マイホームを持ったのに、ギルドの酒場で食べてるなんて珍しいわね。私も混ぜてぇ!」

「今日はこの辺りで帰る!」

「じゃあね、みんな」

「ああん、いけずう♡」

くねくねして迫ってきたオカマのギルドマスターを置いて、二人はマイホームに帰るのであった。




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エンシェントエルフとダークエルフ7

Aランクに昇格し、2週間ほどが過ぎた。

今回の依頼は、商人の旅の警護だった。

盗賊や魔獣がよく出没する森の街道を抜けるので、浮竹と京楽の他にも、Bランクの冒険者が4人護衛についていた。

野営の見張りは、基本6人で交代制で行われた。

「浮竹、先寝ていいよ。夜明けくらいに起こすから」

「すまん、先に眠る。じゃあ、夜明け前に起きる」

目覚まし時計を設置して、浮竹は先に眠りについた。

京楽は、火を絶やさないように牧を入れながら、周辺を見張る。

「GUGYAGYA!」

「敵襲だーーー!起きろおおおお!!」

京楽が声をあげた。

浮竹は起きてすぐに剣を抜く。

護衛するべき商人は、テントの中だ。

その周囲を、4人のBランク冒険者と守るように配置についた。

「敵はグリフォン!3匹いたが、巣があるのかもしれない。とにかく、最低二人はテントの周囲で守りに回ってほしい!」

京楽の適格な指示に、Bランク冒険者も従う。

「GYAGYAGYA!」

「GURURURU!」

「GUGYAGYA!」

グリフォンは普通昼に活動するのだが、夜なのに襲ってきた。

鷲の顔をしているため、夜目が効きにくいと思われがちだが、魔物なのでそうでもないようだった。

「グラビティ・ゼロ!」

京楽が飛び回るグリフォンに重力の魔法をかけて、押しつぶしにかかる。

グリフォンは地面に落ちた。

すぐに立ち上がり、羽ばたこうとするところで、浮竹が氷の魔法を使う。

「アイスフロア!」

地面と足が凍り付いて、グリフォンたちはBランク冒険者に威嚇しつつも、トドメをさされていった。

「わあああああ!」

「うおおおお!」

「更に敵襲!盗賊だ!数は20以上!」

Bランク冒険者の弓使いが、盗賊の剣でやられて大地に倒れる。

「テントを死守しろ!馬もだ!」

馬車と馬を守る配置について、襲い掛かってくる盗賊たちの首を、京楽は魔法で、浮竹は剣で刎ねていた。

他のBランク冒険者は対人経験がないのか、斬り捨てるだけで、トドメをさせないでいた。

「情などかけるな!」

浮竹が、片手を切られてもなお襲い掛かってくる盗賊の首を刎ねる。

「フレイムロンド!」

浮竹が放った魔法は、まだ動ける盗賊たちを火で包みこみ。盗賊たちは地面に転がって火を消そうともがきだした。

「ダイヤモンドダスト!!」

ある程度火傷した盗賊を助けるように、京楽が氷の魔法を使うが、あくまでも捕獲するためだった。

「グリフォンの奇襲の後にすぐに盗賊だなんて、普通ありえない。グリフォンを飼いならしていたな?」

浮竹が血にまみれたミスリルの剣で、盗賊の頭らしき人物の首に剣を突きつける。

「ひいい、命だけは、助けてくれ!そうだ、グリフォンを飼いならしてここら一帯を縄張りにしていた!」

京楽は、生き残った盗賊を集めると、自力で歩ける程度まで回復魔法をかけた。

しっかり手を縄でしばって、順番に並ぶように繋いだ。

「しっかりしろ!」

「うううう・・・・・・」

Bランクの最初にやられた弓手は、傷が浅いのに苦しんでいた。

「毒だな。どいてくれ」

浮竹は傷口を更に傷つけると、毒の入った血を吸い取り、ぺっと地面に吐いていく。

「京楽、後は任せれるか」

「うん。キュアポイズン。セイントヒール」

毒の血をある程度抜いたことで、毒消しの魔法はちゃんと効いて、癒しの魔法で傷口が塞がってく。

「ああ、大分楽になった。ありがとう、京楽さん」

「癒し手があるとやはり違うな。俺たちも、この護衛の任務が終わったら、聖職者か癒しの魔法を使える魔法使いを雇おう」

Bランクの冒険者は、うんうんと頷いた。

その日は結局、殺さなかった盗賊たちを縄に繋ぎ、他の盗賊の夜襲に備えていたので、護衛の商人を除いた冒険者たちはあまり眠れなかった。

朝になり、出立となった。

馬車の後ろに捕まえた盗賊たちの縄をつけて、強制的に歩かせる。

幸いにも町が見えてきたので、盗賊たちはその町で捕らえられた。

「死刑か、一番罪が軽くても奴隷落ちは確実だね」

「そうだな」

盗賊たちの末路を、浮竹も京楽もなんともいえない感情で見守った。

人を殺したのは始めてではない。

邪教徒たちの巣をたたき、その際に狂ったように遅いかかってくる邪教徒たちを皆殺しにしたことがあった。

人質の5人を無事解放したが、返り血に真っ赤になった二人は、人質に怯えられた。

「人殺し!!」

何度かそう叫ばれたが、人質たちも次第に精神状態が安定して、最後は謝ってきた。


「ねぇ、浮竹」

「うん?」

「僕が人殺しでも、君は僕を愛してくれるかい?」

「愚問だな。愛するに決まっている。それに京楽が人殺しなら、俺も人殺しだ。盗賊のうち5人は俺が殺した」

「僕も4人殺したよ。いい気分ではなかったけどね」

京楽の言葉に、浮竹は頷いて、1日だけ町に滞在が決まったので、公共浴場に入り、血と人の脂まみれになった髪と体を洗い、衣服を洗濯した。

洗濯は安くて銅貨1枚だったが、風呂のほうはマッサージなどもついていたので、銀貨2枚だった。せっかくなのでマッサージも受けて、血流がよくなったところでサウナにも入り、その後は水風呂に浸かった。

始めて使う公共浴場の男湯は、やはり浮竹は視線を集めてしまう。エルフというだけでも視線を集めるのに、姿形が可憐に整っているせいで、みんな一度は見てしまう。

それを警戒するように京楽が睨み返すと、視線を送っていた者たちはさっと視線を逸らす。

浮竹曰く、人を殺しそうな視線で見ている、だそうだった。

「ああ、さっぱりした。やっぱり一度風呂を知ってしまうと、石鹸やらシャンプーやらあるし、魔法でも汚れはとれなくもないが、風呂が一番だな」

京楽は、リフレッシュという、体を清潔に保てる魔法を使えた。

だが、消費魔力が多いので、普段冒険稼業をしている時は、1週間に2回くらいしか使わない。

帝都にマイホームもち住み始めて、その日帰りの時は毎日風呂に入ったが、長時間かかる依頼の時はたまにこうやって町に寄った時に公共浴場に入り、それが無理なら水浴びか、最低でも体をふいたりして清潔を保った。

他の冒険者も似たようなものだ。

長旅になるときは、最低でも体をふいて、時折水浴びをして清潔を保った。女性ならなおさら清潔に気を遣う。

浮竹と京楽も、女性なみに気を遣っていた。

依頼者と面会するとき、身なりが小汚い恰好では、いくらAランク冒険者といえども引かれてしまう。

今回の商人の護衛は、次の町までだった。

盗賊の討伐報酬金が出て、それはBランクの冒険者と均等に分けた。

「さぁ、次の町までだよ。がんばっていこう」

「そうだな。あと3日もあれば次の町につく」

こうして、二人は護衛任務を果たして、馬車で帰路についた。

商人の護衛中は、アイテムポケットから調理して作り置いておいた食事を食べたのだが、普通は干し肉に硬い黒パンなので、依頼主の商人に頼まれて、同じ食事をふるまった。

さすがに一緒にいたBランクの冒険者の分まではなかったが。

「さて、冒険者ギルドで報酬金を受け取って、風呂にでも入ろうよ」

「そうだな」

冒険には、時には盗賊や野盗、邪教徒などの人間を殺すこともある。

それを始めて経験したのは、Bランクになってからだった。

Bランクになり、初めて人を殺めた日は眠れなかったが、今では何の躊躇いもなく人を殺せる。

そういう職業についてしまったのだから、仕方ない。

「明日は休日にしよう。商人の護衛の依頼で、合計金貨70枚手に入ったし、少しくらい休憩してもいいだろう。ああ、魔法協会にも行って、ランクがあがったことを報告しなければな」

家に帰って風呂に二人で入っていると、スライムのプルンが訪ねてきて、同じ風呂に入ってきた。

「のぼせなないか?」

「プルルン!」

プルンは泡だらけになり、体を洗っていた。

浮竹と京楽が使っている石鹸は高価なもので、いい匂いがして泡立ちもよかった。

「プルルル!」

どぼんと湯船の中入ってきたプルンは、京楽と浮竹の肩に交互に乗ったりして、遊んでいた。

「クロ、相手をしてやれ」

「チチッ!」

風呂場に召還されたクロという黒リスの使い魔は、水分をとばして外にぽよんぽよんとはねていプルンの後を追って、走り出す。

「仲良くするんだぞーー!!」

「プル!」

「チチッチチ!」

二人が風呂からあがり、夕食を食べる頃には、プルンもクロも遊び疲れたのか、ソファーの上で寝ていた。

「プルンがいるということは、あの二人も近くにきているんじゃないか?」

実際、剣士の京楽と妖刀の精霊である浮竹は、魔法協会にきていた。浮竹と京楽も、明日にしようと思っていたが、魔法協会に赴いた。

『やあ、元気そうだね』

妖刀の精霊のほうは、人がいるために姿を現さないようだった。

「夕飯を食べるんだけど、良かったら一緒にどうだ?」

「うん、人数が多い方が楽しいしね」

「プルルン!」

『プルン、どこにいっていたのかと思ったら、エルフの僕と浮竹のところにいたのかい』

「ププ~」

魔法協会の会長はエマ・ベセラという。

少し腹黒い会長だった。

『用はすんだし、キミたちの家に行こうか』

こうやって、剣士の京楽とプルンと妖刀は、エルフの浮竹と京楽のマイホームにやってきた。

『ああ、やっと姿を現せれる』

ずっと人前では姿を現れなくて、妖刀のままだった精霊の浮竹が人型をとって、夕食が並んでいるテーブルをじーっと見ていた。

特に、デザートにと置かれてあった苺パフェに熱烈な視線を送っていた。

「まだ作れるから、夕飯の前に食べてもいいぞ?」

エルフの浮竹の許可をもらい、精霊の浮竹は苺パフェをおいしそうに食べていく。

『ごめんね、うちの浮竹が』

「いや、俺もスイーツは好きだし。意外なところで共通点があるな?」

「浮竹、僕らも食事にしよう」

こうして4人は夕食を食べて、その日は剣士の京楽と精霊の浮竹はゲストルームに泊まっていった。

朝になると、剣士の京楽と精霊の浮竹の姿はなく、プルンもいなかった。

置き手紙が残されていた。

「宿屋に泊まる手間が省けた・・・・って、白金貨?それも2枚も!?」

白金貨は1枚で大金貨10万枚になる。

つまりは、大金貨20万枚という大金を置いていったのだ。金貨いでうと200万枚だ。

「金もちすぎるのも、問題だね」

さすがに額が額なので、貯金という形にした。

「さて、今日は一日休みだ。浮竹といちゃいちゃしよっと」

その浮竹は、昼まで眠るのだった。




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エンシェントエルフとダークエルフ6

今回は、Aランクの依頼を二人で受けた。

剣士である京楽の元で半月修行した成果を見るためだった。

依頼の内容は、ある洋館に出る、ガーゴイルの退治だった。

ガーゴイルは普段はただの石像だ。それが、人が近づいたりすると、石の体で襲ってくる。

本来ならBランクでもいい内容なのだが、すでに死人が出ており、Aランクの依頼になっていた。

「ガーゴイルか・・・・魔法の上達ぶりを見るのは、コボルトやオークやゴブリンの群れのほうが圧倒的に分かりやすいんだが、かけだし冒険者の依頼を食いつぶすのもなんだしな」

浮竹は、あまり乗り気ではなかったが、その洋館に京楽と共にやってきた。

ガーゴイルの石像が12個あった。

近づくと、12体のガーゴイルがいきなり襲い掛かってきた。

「エターナルアイシクルワールド!」

京楽が、氷の上級魔法を発動させると、全てのガーゴイルが凍り付いた。

しかし、まだ生きている。

ガーゴイルを倒すには、粉々にするしかない。

「アシッドエンチャント!」

水魔法から派生した酸をミスリルの剣に付与して、ガーゴイルを切断しながら溶かしていく。

切断面を溶かされたガーゴイルは、翼を全部切られていた。

これで、もう飛ぶことはできない。

「グラビティ・ゼロ!」

重力で京楽はガーゴイルたちを粉々にして壊していった。

「なぁ、京楽、俺たち・・・・・」

「うん、これなら絶対いけるよ!」

「じゃあ受けるか!Aランク昇格試験!」

「うん!」

ガーゴイルの魔石を回収し、報酬金の金貨40枚と魔石の買取り額の金貨10枚をアイテムポケットに入れると、オカマのギルドマスターを呼び出した。

「あらなぁに、うっきーちゃんに春ちゃん」

「Aランクへの昇格試験を受けたい」

「本気なの?」

くねくねしていたギルドマスターは、真剣な表情で浮竹と京楽を見た。

「あなたたち、Bランクに昇格してまだ1年も経っていないでしょう?普通、BランクからAランクへ昇格するには3年はかかるわ」

「俺たちは強くなった」

「僕も強くなったよ。ギルドマスターが紹介してくれた場所で、半月修行をした。Aランクの依頼も難なくこなせたよ」

「命あってのものだと思うけど、いいでしょう。Aランクの昇格試験、ギルドのほこるゴーレムの討伐よ!」

「ギルドのゴーレム?」

「そうよ。このギルドでは、昔の古代文明の遺跡から発掘されたゴーレムをAランク昇格試験にしているの。ちなみにミスリル製よ。そんじょそこらの武器や魔法で倒せるとは思わないことね」

「受けてたってやる」

浮竹は、ミスリルの剣に酸をエンチャントする。

「アシッドエンチャント」

「アイシクルランス!」

二人は、酸の攻撃と氷の魔法で攻撃した。

普通なら、傷一つつかないはずであった。

だが、浮竹が切った部分には解けており、浮竹が放った氷の魔法があたった部分には、罅が入っていた。

「いけるよ、浮竹!」

「ああ、全力でいこう!」

「うん!」

「「エターナルファイアフェニックス」」

ごおおおおおおお。

高温で羽ばたく不死鳥は、ミスリルのゴーレムを溶かしていく。

「ちょ、ちょっと待って!中止よ、中止!あなたたちの勝ちよ!」

「ギルドマスター、手加減はいらないんだろう?なら、俺たちが手加減する必要はないよな?」

「うん、そうだよね。ミスリル製とか、最初から殺しにかかってるようなもんだし」

「「ゴッドエターナルフェニックス」」

さっきの魔法より更に高温の魔法で、ミスリル製のゴーレムはドロドロに解けてしまった。

「きゃあああああ!あたしたちのギルドのゴーレムが!!」

「確か、お抱えの鍛冶師がいただろう?それに直してもらうのはどうだ?」

「ああん、こんなに溶けちゃったら、なかなか元の姿に戻せないんじゃないの。まぁいいわ。おめでとう、Aランク昇格試験合格よ!!」

「やったぞ、京楽!」

「やったね、浮竹!」

二人は、ギルドに正式にAランク冒険者と認められた。

普通は、昇格と共に金貨が支給されるのだが、ゴーレムをだめにした罰として、昇格への報奨金はなしとなった。

「これで、Sランクの依頼が受けれる。いってみるか?」

「うん、いってみよう。どこまで僕らの力が通じるのか」

依頼内容は、ファイアドラゴンの退治。

浮竹と京楽は、転移魔法陣を使って、ファイアドラゴンの出るアサーニャ火山にきていた。

イアラ帝国の更に南にある、ウズール王国にアサーニャ火山はあった。

アサーニャ火山には、ファイアドラゴンが住み着いている。

浮竹と京楽は、ファイアドラゴンの巣に忍び込んだ。

「アイスエンチャント!」

「エターナルアイシクルワールド!!」

浮竹が氷を付与した剣で尻尾を切り、京楽がさらに切られた尻尾から内側を凍らせていく。

「GYAOOOOOO!!」

ファイアドラゴンの尾が、わずかだが切れた。うろこが5枚はげ落ちてそれを素早くアイテムポケットに収納した。

「GYAAAAAA!!!」

尾の中身を氷漬けにされて、ファイアドラゴンは痛がって暴れまくった。

「うわ!」

大地が裂ける。

「京楽、飛べ!」

「フライウィング!」

京楽は浮竹を抱き抱えて、宙を風の魔法で飛ぶ。

「SHAYOOOOOOO!!!」

ドラゴンブレスがやってきた。

そのあまりの灼熱地獄に、シールドを3重に二人ではって、合計6重ではったのに、火傷を全身に負った。

「セイントヒール」

傷はすぐ癒えたが、次のドラゴンブレスがくる前に、二人はファイアドラゴンのためこんだお宝の上に着地して、ファイアドラゴンがドラゴンブレスを吐くのをやめるようにした。

そして、浮竹と京楽は、ものすごいスピードでお宝の山をアイテムポケットにいれていく。

「GYARUUUUUUUU」

爪の攻撃を風で何とか押し流して、浮竹と京楽はファイアドラゴンの巣から逃げ出した。

逃げ出したが、転んでもただでは起きない。

まんまと財宝の一部を奪い、逃げていった。

冒険者ギルドに戻ってくると、みんな生きていることを不思議がった。

すでにお葬式の用意もされてあって、遺影まであった。

さすがにそれには、浮竹も京楽も切れた。

「責任者でてこい!」

「あらやだん、うっきーちゃん、春ちゃん、生きてたのね。死んだと思って、葬式の用意までしてあげたのに」

明らかな嫌がらせだった。

ギルドにゴーレムを壊したことが、よほど頭にきているらしい。

「依頼内容は失敗。だけど、賠償金は出ない依頼だよね?」

「そうねぇ」

「おっしゃああ!!」

浮竹は喜んだ。

「何をそんなに喜んで・・あああ、それはファイアドラゴンの幻の鱗!!」

鱗が5枚と、逃げる前にぱくっていった金銀財宝を取り出して、買取りしてもらった。

鱗は1枚金貨100枚でうれて、合計金貨500枚。財宝は



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エンシェントエルフとダークエルフ5

浮竹と京楽は、キメラ退治に赴いた。

ライオンの頭、山羊の身体、蛇の尻尾をもつのがキメラだった。

山奥の深くに、キメラはいた。

借りてきたワイバーンから降りて、二人は戦った。

適正ランクはB+。

浮竹と京楽は、B+と評価されていた。

ライオンの頭を炎で包み込み、山羊の胴体を斬り裂いて、蛇の尻尾を切り落とす。

「GARURURU!!!」

キメラは酸素を欲して口を開くが、入ってくるのは煙と一酸化炭素。

肺を火で焼かれ、一酸化炭素中毒になってキメラは倒れた。

倒した証である魔石を取り出して、死体を土に埋める。

放置しておくと、他の何かの生物に寄生されたり、アンデット化してわきだしてくる。

なので土に埋めて、ワイバーンに乗って帰還すると、冒険者ギルドのギルドマスターに呼ばれた。

「浮竹ちゃん、春ちゃん、強くなってみたいと思わない?」

「なりたい。もっともっと、もっと強くなって、いつかSランク冒険者になりたい!」

「僕も、強くなりたい。もっと威力の高い魔法を覚えて、魔力も高めたい」

「じゃあ、決定ね♡2名様、お案内~~~」

オカマのギルマスの熱い抱擁のせいで(物理的な)意識を失った二人が気づいた時には、目の前に自分を不老不死の妖刀使いで、魔法も使えるという、何度か共闘したことのある剣士の京楽の家にいた。

修行を引き受けてくれるらしい。

隣の部屋が空いているので、月銀貨5枚という破格の値段で部屋を借りれた。

強くなるため。

そう言い聞かせて、集中し瞑想した。

ひょんなことから、エルフの浮竹と京楽は、不老不死であるという剣士京楽のもとに弟子入りした。

剣士と言っても、妖刀を使うだけで魔法も使う。

古代人らしく、古代の禁呪を使ったりもした。

もっと強くなりたい。時間ならいっぱいあるが、短期間で強くなる方法として、剣士京楽の指導の元で、魔力を高める訓練を受けていた。

針の上で座禅を組み、瞑想した。

ある時は滝に打たれながら、瞑想した。

またある時は、蒸し暑い空間の中や薄い酸素の空間の中で瞑想した。

とにかく瞑想して瞑想しまくった。

心はからっぽである。

すると、胸の奥、心臓のほうから湧いてくる魔力を実感できた。その基礎の魔力を練り上げていく。

そして、魔力切れが起きる程に魔法を使い、魔力を酷使してまた瞑想をする。

そんな無茶なやり方だが、確実に魔力は高まっていった。

新月の日が来た。

剣士の京楽はそわそわしはじめて、隣の部屋を借りて住んでいるエルフの浮竹と京楽を、その日は修行を休みだといいだした。

様子がおかしいので、こっそり様子を伺っていると、なんと妖刀の精霊が具現化して現れていた。

「ずっと隠していたのはこれだったのか!なるほど、確かに俺に似ているな。というか、衣装を交換して角と耳を交換すれば、ほぼ同じ見た目になるんじゃないか?」

精霊の浮竹の姿の前に現れたエルフに浮竹に、精霊の浮竹は目を点にした。

『えっと。どなた?』

「ああ、申し遅れた。おれは浮竹十四郎。エンシェントエルフの魔法剣士だ」

「僕は京楽春水。見た目はこうだけど、ダークエルフの魔法使いだ」

精霊の浮竹は、にこにこして二人と握手を交わした。

ダークエルフがどういう存在なのか知っているようだが、あえて追及はしてこなかった。

『俺は浮竹十四郎。この妖刀の精霊だ。満月か新月の夜にしか、この姿をとれない。それにしても、よくあの京楽が俺に会わせるのを許可したな』

「いや、許可なんてもらってないから」

「勝手に入ってきた」

「プルルルルン!」

プルンが、いけないんだとジェスチャーする。

『ちょっとキミたち、今日は修行は中止だっていったでしょ。あーあ、僕だけの浮竹が見られてしまったよ』

「減るもんでもないし、別にいいんじゃないの?」

エルフの京楽の言葉に、剣士の京楽はエルフの京楽を指さした。

『エルフの浮竹ならともかく、キミには一番見せたくなかった』

「同じ顔をしているせいだろう?だが、お互い別々に愛しい相手はいる。そんなに警戒することないんじゃないのか?」

エルフの浮竹の言葉に、精霊の浮竹が微笑んだ。

『まぁ、みんな仲良くしよう』

『もう、見られちゃったもんは仕方ない。ボクの妖刀の精霊の浮竹だよ』

『俺は主(マスター)と呼んでいる』

「ふむ。妖刀の精霊か。剣や刀に意思が宿ることがあるのは知っているが、実体化できる例を見たのは初めてだな」

そう言って、エルフの浮竹は精霊の浮竹ヲペタペタと触った。

『ちょっと、ボクの浮竹にあんまり触れないで』

「別に取って食うわけではない。ふむ、実体化しているがアストラル体に近いな。神々の力の片鱗というべきか・・・・」

ぶつぶつ言いだしたエルフの浮竹は、考察の自分だけの世界に入ってしまった。

「まぁ、僕は君を毛嫌いしていたけど、君に僕の浮竹と似た愛しい相手がいると知って、少し態度を改めるよ」

『そこらへんは、好きにしてくれていいよ』

「ぷるるん!」

プルルが、僕の存在も忘れないでと言ってくる。

「ああ、忘れたわけじゃ・・・って、スライムと意思疎通ができている?」

「ああ、僕は前々から少しできてたよ。やたらと懐いてきたから、この子」

「京楽だけなんて、ずるいぞ!」

エルフの浮竹は、プルンを抱きしめると頬ずりした。

「ププゥ」

こそばゆい。

ぽよんぽよんはねていくスライムを見て、浮竹は京楽を見た。

「クロを召還してみろ」

「はいはい、分かったよ」

ぼふんと音をたてて、黒いリスのクロが、京楽の肩に乗って、チュチュっと鳴いた。

『わぁ、かわいいな』

『浮竹、危ない!』

黒リスに手を伸ばそうとした精霊の浮竹の手を、剣士の京楽が止めた。

「かんだりしないから、大丈夫だぞ?」

『京楽、俺が噛まれると思ったのか?』

『いや、なんていうか、初対面だし・・・』

「大丈夫だ。そっちのプルンのようにはいかないが、簡単な魔法やスキルなら使える」

『例えば、どんな?』

「隠密とか?おい、京楽、隠密をさせてみろ」

「はいはい。クロ、隠密だよ。頼むよ」

「チューー」

クロは鳴いて、透明になった。

『あ、消えた』

『消えたように、見せかけているだけだね。実物は変わらずキミの肩にいる』

「その通りだよ。隠密というスキルは、自分を透明にして周囲から見つかりにくくすること。ただし体温や魔力はそのままだから、そういうのを探知できる人間には効かないけどね?」

『僕は、魔力の流れを見れるからね』

「ププウ!」

『プルンも凄いって言ってるな』

隠密を解いたクロは、プルンに近寄って、ドングリを差し出した。

それを、プルンは嬉しそうに食べた。

今度はプルンが林檎を出してきて、クロは少しだけ齧った。
「ぺットと使い魔が仲良くしてるんだし、僕たちも仲良くしようよ」

「そうだな。そっちの妖刀の精霊のことは、誰にも言わないと誓おう」

『わかったよ。じゃあ、今後もよろしくね』

『俺は新月か満月の夜にしかこんな姿をとれないが、普段は人型もとる。いつもは刀の恰好だが、よろしく頼む』

4人は、そうして絆を深め合った。

次の日からは、エルフの浮竹には剣士としての訓練も受けるようになった。

エルフで魔法剣士は珍しい。

大抵のエルフは魔法使いか弓手に育つ。剣を持っても、せいぜいレイピアで、急所を一突きという戦闘スタイルだ。

だが、エルフの浮竹はヒューマン、人間と同じように剣を振るう。

鞘を抜かないままの妖刀で相手をされているが、エルフの浮竹はすごい汗をかいていた。

動きが半端ではなく、ついていくのがやっとというところだった。

『少し、休憩にしようか』

「じゃあ、俺は時間が勿体ないので瞑想する」

深呼吸をすると、浮竹は周囲から隔絶された世界に落ちていき、魔力のある場所で心をたゆたわせる。

じんわりと体中に魔力が巡っていき、瞑想は魔力をより高めた。

そんな修行を半月ほど続けて、エルフの浮竹と京楽は、巣立っていった。

「今までありがとう。お陰で、Aランクを目指せそうだ」

『君の努力の結晶だよ』

『そっちの京楽も、いろんな属性の上位魔法を覚えれるようになったな』

「さすがに、禁呪を唱えるにはまだ魔力の絶対量が足りないけどね」

エルフの浮竹と京楽は、剣士の京楽と精霊の浮竹と別れを済ませて、元のイアラ帝国へと戻っていった。

といっても、隣国なので会おうと思えばすぐ会えるのだが。

さてはて。

エルフたちは修行をして強くなった。

その結果はいかに?


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エンシェントエルフとダークエルフ4

ギルドマスターから、直々に依頼があった。

オークジェネラルの討伐らしい。

「それがねぇ、オークロードもいるんだけど、そっちのほうが違うギルドの山じいとかいうじじぃが、魔物討伐の専門家に任せたそうなのよぉ」

クネクネと動くオカマは気持ち悪かったが、言葉と態度には出さない。

「だからぁ、オークジェネラルと雑魚のオークをやっつけて欲しいの♡」

「じゃあ、その魔物討伐の専門家と鉢合わせになったら、共闘でいいんだね?」

「うふん、そうなの。よろしくねん♡」

飼いならされたワイバーンに乗って、3日の地点にオークの巣があった。

見ていると、一番上座のところにオークロードがいて、その隣にオークジェネラルがいた。

「とりあえず、オークジェネラルを魔法で倒してしまおう」

「そう簡単にいくかい?相手はただのオークじゃなくって、オークジェネラルだよ?」

「うーん、オーク共を倒すには、俺たちでは火力不足だ」

「だからぁ、ボクが派遣されたってわけ」

エルフの浮竹と京楽の隣には、いつぞやも助けてくれた剣士の京楽がいた。

「今度の共闘は、またキミたちか。まぁ、足を引っ張るような真似をしないだけ、ましかな」

ダークエルフの京楽は、剣士の京楽を威嚇していたが、共闘となるのでその感情は捨て去ることした。

「ボクがオークロードをたたく。後、雑魚もある程度片づけるから、キミたちは自分の討伐対象を頼むよ!」

「プルルン!」

剣士の京楽の肩には、ヒュージスライムになったプルンというスライムが乗っていた。

「プルンも魔法使えるから。念の為にそっちに残しておくよ」

「あ、剣士の人!」

すでに、剣士京楽の耳には届いていなかった。

「死にたいやつからかかってきなよ」

妖刀を手に、オークたちを豆腐を切っているかのように斬り裂いて、オークロードの首をはねた。

「俺たちも行こう!」

「うん!」

「フレイムロンド!」

「バーストロンド!」

炎と爆発の中級魔法を使ってオークたちをふっ飛ばしていくと、近くにいたプルンが体を震わせて、浮竹と同じフレイムロンドの魔法を使った。

「すごいな、お前。スライムなのに魔法が使えるのか」

「プルルン!」

プルンは自慢げそうに胸を張った。

「この調子でいくよ!アイシクルワールド!」

オークたち京楽が凍り付かせて、それを浮竹が片っ端から切って粉々に砕いていく。

「BURUUUUUUU!!」

オークジェネラルがこっちに突進してきた。

「BURUUUUU!!」

「フレイムフェニックス!」

京楽が、炎の上級魔法を放つと、オークジェネラルは体を燃え上がらせながら、剣を振り回しまくり、浮竹と京楽は傷を負った。

「セイントヒール!」

京楽が癒しの魔法を発動させると、プルンも同じように癒しの魔法を使って京楽の怪我を癒してくれた。

「おおおおお!」

浮竹が、雄叫びと共にミスリルの剣でオークジェネラルの首を切り落とそうとする。

首は脂でなかなか切り落とせなかったところを、京楽が氷のハンマーを作り出して、浮竹の剣をオークジェネラルの首に食い込んでいる剣めがけて打ちこんだ。

「アイスクラッシャー!」

「BURURURU!!」

オークジェネラルは、悲鳴の断末魔をあげて倒れた。

「ふう、とりあえずオークジェネラルとオークロードは片付いた。あとは雑魚のオークどもだな」

オークたちは、剣士の京楽から逃げるようにこっちに向かってやってくる。

「アイスフェンリル!」

最近使えるようになった、氷の上級魔法を使い、氷の精霊フェンリルを呼び出すと、そのブレスでオークたちを生きたまま凍てつかせていく。

浮竹は、その氷像を壊すために、水を圧縮して氷の彫像を砕いていく。

「ウォーターグラビティ!」

浮竹は京楽と違って、火、水、氷の魔法が使えて、エンチャントのみ聖属性を使えるが、京楽のようにほぼ全属性の適正はもっておらず、火、水、氷の魔法しか使えなかった。

ただ、剣士でもあるので、その腕は魔法剣士としてはAクラスの冒険者と戦っても引けをとらないかもしれないが、まだまだ修行中の身だ。

現に、オークジェネラル程度で傷を負っていては、いつまで経ってもSランク冒険者になんてなれない。

「エアグラビディ」

京楽は、残っていたオークと、剣士の京楽ともども、空気を圧縮させてつぶす魔法をかけた。

広範囲魔法だが、的をしぼってそこだけ防ぐとかができない魔法だった。

「ふん、どうせ剣士の人はこれくらい余裕でしょ」

「まぁね」

剣士の京楽は、エアグラビディに穴をあけて、そこからオークロードのいた上座に立っていた。

「オーク共は、もう残党もいないようだね」

「よし、依頼達成だ!」

エルフの京楽とハイタッチした浮竹は、剣士の京楽ともハイタッチをして、プルンともハイタッチをした。

「浮竹、そんな奴に関わることないよ」

「何不貞腐れてるんだ、京楽。この剣士の人がいなかったら、俺たちのほうがやられていたんだぞ」

「むー」

不貞腐れる京楽の頭を撫でて、浮竹は剣士の京楽に頭を下げた。

「オーク共を一掃するのを手伝ってくれて、ありがとう!」

「浮竹ぇ、そんな奴に頭を下げることないよ」

「こら、京楽!」

「ふん」

「すまない、うちの京楽が」

「いいよ。気にしてないから」

「ぷるるん!」

「プルンもそう言ってるしね」

「また、会えるだろうか」

浮竹は、剣士の京楽に興味を持ったようだった。

それに、ダークエルフの京楽が警戒心をむき出しにする。

「浮竹、帰るよ!依頼の報告もあるし!」

浮竹をずるずると引っ張って、ダークエルフの京楽はワイバーンを置いていった場所に進んでいく。

「またなぁ、剣士の京楽!」

「またね。どうしたの、プルン」

「プルルン」

「ああ、こっちの妖刀の精霊の浮竹に似ているって?当たり前かもしれないね。この世界では珍しい、二重の魂だ。ボクの魂の片割れはダークエルフに、浮竹の魂の片割れはエンシェントエルフに。本当は統合されるはずだった魂が、神の手から滑り落ちて、片割れを作った」

「プルルルン?」

プルンには難しいことのようで、器用に体ではてなマークを描いていた。


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「ということで、オークジェネラルの討伐は完了した。それの魔石と、雑魚オークどもの魔石だ」

剣士の京楽はオークロードの魔石だけをとっていったので、残りの雑魚オークの魔石はエルフの浮竹と京楽で全部回収しておいた。

「あらん、がんばったのねん♡こんなにオーク退治するなんてやるじゃない」

「いや、半分は退治屋専門の剣士が殺した分だ。魔石を抜いていかなかったから、勿体ないから回収していおいた」

「まぁ、どのみち今回も報酬は色をつけておくからん♡」

「まぁ、オークは素材にならないしな。肉が食べれないこともないが、二足歩行してしゃべったりするオークの肉を食おうという勇気ある人はなかなかいない」

浮竹は、まずは魔石の買取り金額で金貨40枚をもらった。

かなりの数のオークを屠ったので、相応の額であった。

それから、オークジェネラルの魔石が金貨3枚。報酬金が金貨50枚。

しめて金貨94枚。

今までの稼ぎの中で最高の収入だった。

「よし、今日は贅沢するよ!」

「ほどほどにな。住宅を買う金にもするから、金貨60枚は貯金に回すぞ」

金貨500枚もあれば、広くはないが町の外れくらいなら一戸建てを建てれる値段だった。

まだ貯金は始めたばかりで、金貨75枚くらいだった。

めざせ、まずは一戸建てのマイホーム。

浮竹と京楽、エンシェントエルフとダークエルフの戦いは、まだまだ続くのであった。



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エンシェントエルフとダークエルフ3

冒険者たちは、皆Sランク冒険者を目指す。

Sランク冒険者は富と名声を得られて、幸せになれる。そう思われているが、実際のSランク冒険者はいつも死と隣り合わせの世界に住んでいる。

チートみたいに規格外に強くない限り、Sランク冒険者は努力と根性でできていた。

そのSランク冒険者もそうだった。

風の旅人という名の冒険者パーティーは、Aランクの仕事を請け負った。

それは、京楽たちも受けた同じ内容の依頼で、複数で可能な仕事であった。

内容は、ワイバーンの退治であった。しかも、複数の。

Bランクの浮竹と京楽だけでは、実際きつい内容だったので、Sランクの冒険者と一緒に旅ができると知って、浮竹と京楽は喜んだ。

「Bランクになってどれくらいになる?」

「半年だ」

「ふむ。二人で半年生きていれるってことは、相当な使い手だな」

「そうでもない。相棒がよかったせいだ」

「ウッドエルフの魔法使いか」

ぎくりと、京楽が体を強張らせる。

「ウッドエルフは弓手が多いのに、よく魔法使いになれたな」

「適性があったからだよ。基本4属性魔法と氷、雷と聖属性の回復魔法が使える」

「そりゃすごい。闇も使えれば、全属性に適正ありだったろうに。惜しいな。全属性に適正があれば、宮廷魔導師も夢じゃなかったろうに」

「あははは、そこまで魔法の腕はまだないよ。修行中の身だからね。使えるのは火の上級魔法とあとの属性は中級魔法までさ」

「それでも十分にすごいぞ。パーティーで引くてあまただろうに、何故二人でペアで組んでるんだ?」

「浮竹が好きだからだよ」

「ほ、そうきたか。エルフでも、そういうのあるんだな」

「エルフの人生は長いからな。伴侶は何も異性じゃなくてもいいんだ。どのみち出生率は落ちるばかりで、エンシェントエルフもウッドエルフもハイエルフもダークエルフも、みんな数が減ってる」

「おいおい、エルフの中にダークエルフを入れるなよ。あれは魔族だろう」

風の旅人のパーティーのリーダーが、ダークエルフは魔族と言った。

浮竹は京楽の方を伺うが、特別何かを思っているようでもないので、安心した。

「ダークエルフでも、いい奴はいる」

「まぁ、たまに旅人のダークエルフを見ることはあるが、みんな毛嫌いするから、旅をしにくそうだったがな」

ダークエルフから話を逸らそうと、浮竹はSランクの冒険者たちに質問をした。

「ドラゴンを退治したことはあるか?」

「いや、まだないな。ドラゴンを倒せるとは思うが、きっと死人が出る。だから、まだ挑戦しない」

「それも一種の手だね」

京楽も同意した。

ドラゴンは素材としても最高で、おまけに金銀財宝を集めるのが趣味で、倒せば一攫千金だ。

馬車で10日かけて出発して、目的地に辿りついた。

馬は狙われやすいので、ワイバーンの出る場所よりも遠くで降りた。

「馬はここに置いていこう」

「大丈夫か?他の魔物に襲われる危険はないか?」

浮竹の言葉に、風の旅人のパーティーリーダーは、魔道具を設置した。

「魔よけの札と香だ。これがある限り、どんな魔物にも襲われない」

「高いんだろうな」

「何、1つ金貨30枚程度だ」

「さ、30枚・・・金貨が30枚・・・・・」

京楽は、Sランク冒険者の金銭感覚についていけずに、眩暈を起こしそうになっていた。

「さて、ではワイバーンの討伐に出発だ」

Sランクのパーティーの重荷にならぬように、浮竹と京楽は魔法で攻撃することに決めた。

「GYARUUUUUU!!」

ワイバーンの群れが現れた。

頭上をバサバサと飛んでいくワイバーンに、まずは風の旅人の弓使いが弓を射て、目をつぶした。

「あんな遠くにまで矢を・・・すごいな」

浮竹は素直に関心していた。

「僕も魔法で援護するよ!フレイムロンド!」

「じゃあ俺も。ウォータースパイラル!」

京楽と浮竹は、それぞれ火と水の魔法で、ワイバーンの翼を攻撃して、地面に落とした。

地面に落ちてきたワイバーンにトドメをさすのは、風の旅人のリーダーである剣士と、斧使いだった。

風の旅人のパーティーは、リーダの剣士、サブリーダーの弓使いに、斧使い、魔法使い、僧侶でできた、均整のとれたパーティーだった。

一方の浮竹と京楽は、魔法剣士に、癒しの魔法も使える魔法使いの京楽だ。

火力に乏しいことはないが、癒し手が攻撃魔法も使うので、常に癒し手が守っているSランクのパーティーより危険度は増す。

「フレアスピア!」

「アイシクルロンド!」

ちなみに、浮竹は火と水と聖魔法を使えるが、聖魔法は剣にエンチャントするだけで、火と水は中級までなら使えた。

浮竹と京楽は、次々とワイバーンの翼を魔法で破り、地面に落としていく。

気づくと、空にワイバーンはいなくなっていた。

「すごい火力だな。魔法でワイバーンをここまで落とせるなんて、Aランク冒険者でもなかなかいないぞ」

褒められて、浮竹も京楽もはにかんだ笑みを零した。

「お前たちの腕がいいからだ。一度もこちら側に攻撃を許さなかった」

「うん。僕も、自由に魔法が使えたよ。詠唱してる間、ずっと弓使いの人がこっちを狙ってくるワイバーンの目をつぶしていたし」

こうして、一向は怪我することもなく、ワイバーンの討伐を終えた。

さすがにSランクの冒険者だけあって、ワイバーン程度では怪我をすることもなかった。

「ワイバーンの鱗や爪、牙は素材になる。ドラゴンよりも劣るが、そこそこの値段がするはずだ。ワイバーンはちょうど14匹いた。一人2匹ずつで分けるのどうだろう」

風の旅人のリーダーの言葉に、浮竹も京楽も頷いた。

「正直、倒したわけじゃないのでちょっと気が引けるけど」

「京楽、もらえるものはもらっておこう。資金をためて、一戸建てを買うんだろ」

「そうだったね。じゃあ、2匹のワイバーンをもらうね」

京楽は、アイテムポケットにワイバーンの死体を2匹分収納した。

浮竹も、アイテムポケットにワイバーンの死体を2匹入れた。

「お、そっちのアイテムポケットはBランクの割に収納量が多いんだな。俺も買い替えたが、ワイバーンだと10体が限界だ」

十分だろうと思う浮竹と京楽であるが、Sランク冒険者はダンジョンの最深部までもぐる。

ドラゴンはそうそういないが、素材になるモンスターをつめこんでいけばすぐに満杯になってしまう。だから、素材として必要な部分だけ斬り分けて、収納するのが普通だった。

「ワイバーンは肉も食えるし、魔石もある。解体費用はかかるが、それでも十分に黒字だろうさ」

風の旅人のリーダーの言葉に、浮竹も京楽もアイテムポケットの中にいれたワイバーンの肉は、少しだけ手元に置くことにした。

自分たちで食べる分を。

一行は、帰り道で闇夜の森で迷い、浮竹と京楽以外のパーティーはばらばらになった。

そこに、剣士らしい京楽が現れて、デュラハンとスケルトン退治に同行することになった。

剣士らしい京楽は、怪しげな妖刀を手に、何か妖刀に話しかけていた。

「じゃあ、スケルトンの退治はこの子たちに任せて、ボクはデュラハンをなるべく相手にしようか」

そんなことをぶつぶつ言いだすものだから、エルフの二人はびっくりした。

「あ、ごめんね。こっちの話。あんまり気にしないで。独り言をいう癖があるから」

妖刀に精霊が宿っているなて、知られたくなかった。

こちら側の京楽は、正体がダークエルフとばれて警戒して威嚇していたが、浮竹が害をもたらす存在ではないと諭すと、少し気を緩めてくれた。

スケルトンを魔法と剣で片づけていくと、剣士の京楽はデュラハンに向かって突っ込んでいった。

「助けなくていいのかい?」

「大丈夫だ。多分、Sランク冒険者よりも強い」

一撃でデュラハンを仕留めた剣士の京楽は、また何かを妖刀に向けて話しかけていた。それに、浮竹が待ったをかける。

「モンスターを倒したことだし、この森をぬけたんだが」

浮竹の問いに、剣士の京楽は笑ってばいばいと手を振った。その肩に乗っていたスライムまで、ばいばいと手をふって

結局、闇夜の森で転送魔法陣に乗せられて、気づくと冒険者ギルドの前にいた。

風の旅人のメンバーたちも無事で、馬も荷馬車も無事だった。

「何かわからなかったけど、助かったな、京楽」

「うん・・・でもあいつ、俺の種族を知ってた。できればもう会いたくない」

「そんなこと言うなよ。お前の種族を知っていても、差別的な言動はしなかっただろう?」

「まぁ、それはそうなんだけど」

冒険者ギルドに入ると1階は酒場になっているので、ちょうど夕刻の時間で、飯を食べにきた冒険者で溢れかえってきた。

「解体を頼みたい。ワイバーンを4匹」

「あいよ。1匹につき解体量銀貨5枚かがるが、いいかね?」

「ああ、構わない」

4匹分で金貨2枚だった。

「あ、肉は少し残しておいて。僕らで食べるから」

解体屋は、別に殊更驚きもせずに了承してくれた。

金のない初級者ランクの冒険者は、狩った獲物食べたりするのが普通だった。

Bランクより上になると、そうそうモンスターに肉を口にする者はいなくなるが、ワイバーンの肉はうまいので需要があった。

「じゃあ、2時間後にきてくれ。解体をすませておくから」

「分かった。行こう、京楽」

浮竹と京楽は、近くの喫茶店で時間をつぶした。

コーヒーだけを飲む京楽と違って、浮竹はジャンボアイスパフェを注文したりして、スイーツが大好きなので、さらに苺ショートケーキとか注文していた。

「よくそんな量が入るねぇ」

「スイーツは別腹だ」

「別腹すぎて、僕は会計が怖いよ」

結局スイーツは金持ちの食べ物なので、金貨1枚と銀貨5枚の出費となった。

約束の2時間がたち、解体工房へいくと、ワイバーン4匹の解体は終わっていた。

「爪と牙と鱗で、1匹金貨15枚。肉が1匹あたり金貨4枚。今回は1匹の半分の肉を残したので4匹あわせて、合計で金貨74枚だ」

「おお、けっこういったな」

「うん、嬉しいね。あと、ギルドで討伐達成の報酬金ももらわないと」

二人は置いておいてもらったワイバーンの肉をアイテムポケットに入れると、解体工房を後にして、冒険者ギルドにやってきた。

もう夜になっているので、夕刻ほ喧噪はなかったが、それでも冒険から帰ってきた者たちが食事をしたり酒を飲んだりしていた。

「Aランクのワイバーン退治の討伐の証の魔石が4つ。確認してほしい」

受付嬢は、すぐさま鑑定眼鏡をもちだして、それがワイバーンの魔石であることを確認して、報酬金金貨45枚をそれぞれくれた。

「さすがAランク。報酬金も高いね」

「ああ。BランクからAランクにあがるのに、積極的にAランクの依頼を受けていると早く昇級できるらしい」

「じゃあ、また今度もAランクの依頼、受けよっか」

「ペアで行くのはだめだぞ。まだ実力不足だ。相手の敵が群れじゃなかったらいいが、1匹だけだとユニークモンスターとかで強かったりするしな」

「ふむ。じゃあ、Aランクの仕事を請け負うときは、誰かと一緒のほうがいいのかな」

「そうなるな。まぁ二人でいけなくもない依頼を探そう」

その日はもう終わりにして、宿屋に帰った。

宿屋では朝食は出るが、夕食は出ない。

なので、宿屋の中庭で料理器具をかしてもらう、ワイバーンのバーベキューをした。

「うん、確かにおいしいね」

「だろう?一度食べてみたかったんだ」

浮竹はワイバーンの肉を食べてみたくてうずうずしていたらしい。

「このじゅわっと溢れる肉汁がたまらないな」

「このソースにつけると、余計においしいよ」

ソースをつけながら、浮竹はワイバーンの肉を口にした。

「うん、うまい」

「そうそう、あの僕にそっくりな剣士、スライムを持ってたでしょ」

「ああ、それがどうした?」

「僕も、何か使い魔をもってみようかと思って」

「お、いいな」

浮竹は、何を使い魔にするのか楽しそうだった。

「実は、すでに捕まえているんだ」

「なんの動物かモンスターを使い魔にするんだ?」

「黒リスさ」

「お、かわいいな」

籠の中に入っていたのは、黒い小型のリスだった。

その周囲に円陣を描き、京楽は従魔契約を行った後に、使い魔としての契約を行った。

従魔であれば、戦闘の時も役に立つかもしれない。

せいぜい、敵の気を引く程度かもしれないが、それでもないとあるとは大きな差があった。

「名前は?」

「黒いからクロ」

「そのまんまだな」

京楽はクロを森に逃がした。

「逃げないのか?」

「いざとなったら、転送魔法陣でこっちに戻ってくる。食事とかは自分ですませて欲しいから、いつもは森に放っておくよ」

「そうか」

こうして、ワイバーン討伐は終わり、その日の冒険も終了するのだった。







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エンシェントエルフとダークエルフ2

「大規模なゴブリンの拠点が発見された?」

「数が多すぎてBランクの冒険者にまで招集?」

浮竹と京楽は、冒険者ギルドでそんな話を耳に入れた。

普通、ゴブリンはF~Dの、初級冒険者が引き受ける内容のものだ。

だが、規模が大きすぎて、Bランクまでゴブリン退治に参加してくれとのことだった。

報酬金は、命を賭けにするには安すぎて、Cランクならともかく、Bランクで参加しそうな者はいなかった。

浮竹は、事態を重く見て、参加することに決めた。

「いいの、浮竹。報酬金低いよ」

「大規模な群れということは、繁殖のために人間やエルフの女性が大勢とらわれているということだ。放置しているわけにもいくまい」

あくまでモンスターの仕業なので、帝国軍は動いてくれないようだった。

だが、あまりにもCランクからBランクの冒険者の参加が少ないので、帝国から報酬金が付け足されることになった。

その報酬金目当てで、やっと他のBランクの冒険者も続々と参加を決めてくれた。

決行の日は、明後日。

馬車で、冒険者達はゴブリンの拠点がある地点よりある程度離れた距離で野営を行い、昼の時間に討伐することになった。

ゴブリンは、基本夜行性だ。

昼に活動することもあるが、夜目が効きやすい。

反対に、こちらは夜だと灯りがいる。弓手使い、アーチャーには厳しいだろう。

魔法使いも、両手で杖を持つか、自由な腕に盾をもつ。

浮竹と京楽は盾を持たずに、京楽が癒しの魔法まで使えるものだから、灯りは必要としなかったが、間違えて同士討ちになるのを避けたかったので、昼の決行には大賛成だった。

「GRUUUUUU!」

「GYAUUUUUU!!」

ゴブリンたちが大量に湧き出てきた。

それを、前衛たちが切り崩していく。

「良質な武具をもっているぞ!気をつけろ!」

前衛の声に、後衛の魔法使いや弓使いは魔法を放ったり、弓を射たりして、敵を叩いていく。

優勢だったのは最初のうちで、疲労感を覚え始めた前衛の一人が倒れ、また一人と倒れていく。

「何匹いるんだ!」

浮竹の言葉に、G~Fランクの冒険者たちは逃げ出していた。

「待て、逃げるな!」

「こんなところで命を失ってたまるか!」

武器を捨てて、続々と逃げ出していく。

「く、京楽さがれ!少し後退するぞ」

ゴブリンを統率しているホブゴブリンとゴブリンシャーマンが現れた。

「ホブゴブリンにゴブリンシャーマンか・・・Bランクが適正だな」

浮竹は、ミスリルの剣に聖属性を付与して、ゴブリンを斬り捨てていく。

だが、ゴブリンもやられっぱなしじゃない。武器を持って挑んでくるし、一番厄介なのは、ゴブリンの弓使いとゴブリンシャーマンの魔法だった。

「総崩れになる前に、ゴブリンシャーマンとホブゴブリンを倒すぞ!」

浮竹の言葉に、Cランク以上の冒険者が頷き、ホブゴブリンとゴブリンシャーマンをなんとか退治する。

統率のとれていたゴブリンの軍団が、統率者を失ったことで、ばらばらに動き出した。

「今だよ!魔法使いたちは弓手を先に倒して!ウォーターボールで窒息死させてしまえばいい!水の魔法が使えない子は火で焼いて!土属性の子は岩で押しつぶして!風属性の子は、かまいたちで首を切り落として!」

京楽が、いつの間にか指揮をとっていた。

弓手を失ったゴブリンたちは、次々に魔法で倒れていった、

「GURUUUU!」

「GYARUUUUUU!!!」

奥から、縄で繋がれた裸の女性たちが連れ出されてきた。

「人間ドモ、武器ヲ、捨テロ。ソウイシナイト女タチノ命ハナイ」

「人質作戦ときたか・・・・・」

「どうする、京楽」

「京楽さん」

「ここで引き下がっては意味がない、睡眠玉や煙玉があるから、どんどん投げて!」

ギルド側で、ある程度の物資は補給されていた。

人質を取られた時の作戦として、煙玉と睡眠玉をたくさんもってきてもらった。

それを人質のいるところ目がけて投げていくと、煙玉で目をやられたゴブリンたちは、次の睡眠玉でスリープの魔法がかけられたのと同じ状態になり、眠っていった。

人質の女性たちも眠るが、ゴブリンも眠っているので安全だった。

あらかたのゴブリンが動くのをやめたのを合図に、全軍で突撃していく。

人質の女性を解放すると、眠っているゴブリンたちにトドメをさしていく。

「京楽、よく指示を出してくれた。お陰で、脱走者はいたが、なんとかなった」

「任せてよ、浮竹。君を守るのも、僕の役目だよ」

救出された女性たちは皆裸だったので、毛布を与えられた。

「ああああ!殺して、お願い、私を殺してええ!ゴブリンの子供なんて産みたくないいい!!」

「いやあああああああ」

「きゃあああ、おなかにゴブリンの子が!」

浮竹が、透き通った声で女性たちに安静の魔法をかけた。

泣き叫んでいた女性たちが静かになっていく。

「君たちの身柄は、神殿が預かる。神殿で、ゴブリンを身籠ってしまった女性の子はおろされるから、安心してくれ。ゴブリンに汚された記憶も消される。だから、安心してくれ」

女性たちは泣き崩れた。

そんな女性たちを一人一人安心させるように、水と食料を与えていく。

浮竹は見た目が女性でも通るほどに華奢で、エンシェントエルフだけであって、顔立ちは優しく美しく整っていた。

皆、浮竹を見ていた。

京楽は、胸にちりっとする何かを感じた。それが嫉妬であると気づいたのは、冒険者ギルドに帰ってからだった。

逃走した冒険者は階級を1つ落とされた。

浮竹と京楽は、ギルドマスターに呼ばれた。

ギルドマスターは、オカマだった。

「あらやだん、浮竹ちゃん、春ちゃん、今回のゴブリン討伐では指揮をとってくれたり、騒ぎ出した女性を鎮めてくれたりしたでしょう?だ・か・ら、特別にギルドマスタ-の愛の抱擁をあ・げ・る♡」

「「謹んで辞退します」」

「あらん、ハモらなくてもいいじゃない。嘘よ、嘘。特別報酬金が出るわ。金貨10枚ね」

「ありがたい」

「うん、僕もありがたくもらうよ」

二人で合計で金貨20枚になる。今回のゴブリン討伐の報酬金が金貨8枚だったので、合計で一人18枚、二人で36枚になった。

「唐突なクエストの割には、いい収入になったな」

「うん。でも、君が女性たちに声をかけていって、縋りつかれたり抱き着かれているのを見ていいると、胸の中がもやもやした。はじめて、嫉妬という感情を知ったよ」

「俺は、お前以外にいらない」

真剣な表情で、浮竹は京楽の手を掴み、自分の胸に当てた。

「浮竹・・・・・」

「ダークエルフの京楽が好きなんだ。だから、お前以外に、親しい人はいらない」

「浮竹・・・・大好きだよ」

「俺も大好きだ、京楽」

浮竹は軽く体を伸ばしてから、京楽を誘う。

「公共浴場に行こう。今日はゴブリンの血とか脂とか浴びたから、風呂に入りたいし、服も洗濯しなくちゃ」

ちなみに、公共浴場には洗濯用のお湯があり、寒い時期でも温度が一定に保たれているため、銅貨2枚するが、よくそこを借りて服を洗った。

ある程度洗い物を溜めてかた使うのだが、今日は頭からゴブリンの血を浴びたりしたので、拭ったとはいえ、気持ち悪くてすぐに公共浴場を利用したかったのだが、念のために冒険者ギルドに顔を出したのだ。

報酬金は後日でもよかったが、宿代を払ったので、手持ちが心元なくなっていただけあって、助かった。

公共浴場で、股間は隠していれど、浮竹はエンシェントエルフであるせいか、見た目がよくて男性からのそういう意味な視線で見られるのが、京楽には耐えられなかった。

「ねぇ、君、何、僕の浮竹をじーっと見つめているのかな?」

「な、なんでもないです!」

男性は、慌てて風呂場から飛び出していった。

綺麗だなぁとただ純粋に見る視線もあったが、それを全てシャットアウトするように、京楽は視線を巡らせて、浮竹に注ぐ視線はなくなった。

「どうした、京楽。体を早く洗え」

「うん。浮竹は、いつまでも今のままでいてね」

「変な奴だな」

高めだった石鹸の泡立ちはよくシャンプーもいい匂いをさせていた。

同じ石鹸とシャンプーを使うのだが、京楽の髪は天然パーマでうねってしまう。浮竹のような長いストレートな髪に憧れた。

「浮竹はリンスも使ってね」

「そういうお前は使わないのか?」

「使ったところで、僕の髪はあんまり変わらないしね」

浮竹はリンスをしてから髪をシャワーで洗い流した。風呂に入り、伸びをする。

「はぁ、一日の疲れが癒される。ゴブリン退治はしばらくこりごりだ」

神殿に送った女性の数人から、傍に居て欲しいと泣きつかれて、別れるのにかなり時間が必要fだった。

「浮竹が、僕のものって印でもあればいいのに」

「お前からもらったブレスレット、しているだろ?」

「うん、そうだね。そんな安物じゃなくって、もっといいもの買えばいいのに」

「お前が、最初の稼ぎで買ってくれたこのブレスレットがいいんだ」

素材は銀でできており、値段銀貨3枚ほどだった。

1日の宿代になるくらいだから、そんなに安物というわけでもないが、Bランクになり金貨を稼げるようになった今から見ると、安物だろう。

翌日になって、冒険者ギルドに行こうとして、まだ道をよくわかっていない京楽とはぐれてしまった。

そして、大切なブレスレットを落としてしまい、京楽によく似た人物と会うことになる。

プルンという名のスライムにも出会った。

その日は、なんだか不思議な一日で、結局冒険者ギルドには行かず、宿屋に戻って、同じベッドで昼寝をした。

夜襲するときもあるので、寝れる時に寝れるように体がなっていた。

夕刻くらいに目覚めて、冒険者ギルドに顔を出すと、Sランク冒険者がドラゴンを退治したという話でもちきりだった。

「俺たちも、早くドラゴンを倒せるくらいにまで、なりたいな」

「まだまだ当分先の話だね。まだAランクへの昇格も見えない」

「そうだな。ドラゴンを退治したSランク冒険者のパーティーは5人か。俺たちもパーティーメンバーを増やすべきなのだろうが」

「そんなの、いらないよ!僕がサポートするから!」

「ああ、分かっている。お前の種族がばれてしまう可能性もあるしな」

京楽はダークエルフだ。

ダークエルフは血を好み、破壊活動ばかりする。ある時はモンスターを率いて町を滅ぼそうとしたり、ある時は邪教徒となって、生贄に人間を攫い、殺したりする。

全てのダークエルフがそうではないが、ダークエルフで冒険者稼業をやっていこうにも、仲間になってくれる者はいないので、相当難しいだろう。

京楽は、肌が白いのをいいことに、普通のエルフであるウッドエルフと種族を偽っていた。

種族を偽ることは罪ではないが、真実を知られたら、きっと冒険者ギルドの知り合いの仲間たちも京楽を見捨てるだろう。

なのに、浮竹はいつでも京楽の傍にいてくれた。

エンシェントエルフの者たちに発見され、同胞から見捨てられた京楽は、牢に入れられて暮らしていた。

しかし、外に抜け出せる道を浮竹が知っていて、よく遊びにきてくれた。

冒険者登録できる12歳・・・エルフでいう、100歳くらいになった時に、冒険者登録をした。

奇遇なことに、浮竹と京楽は生まれた年が同じだった。フレイア歴2050年。

今は2230年になる。

エルフは種族によって寿命が違うが、エンシェントエルフとダークエルフはほぼ同じで、千年以上を生きる。

まだ年若いエルフに入るので、浮竹には見合い話とかが何度か舞いこんできたが、全部浮竹が断った。

京楽がいるからとは、言えなかった。

言えば最後、京楽は処刑されるだろう。

長たちに気まぐれで、たまたま生きていることを許されている身分だった。

浮竹が捨て去ったエルフの森には、浮竹が京楽にかどわかされたということになっていた。

今更、帰りようがない。

身分保障の人間もいないので、一応何かあった場合はギルドマスターが身分証明者になることになっていたが、家を借りたりするのはもっと親族などがいないとだめだった。

「お金を溜めて、二人で暮らせる家を買おう」

「うん、いいね。庭付きの一戸建てがいいね」

「まずは、そのためにも依頼を受けまくって達成しまくって、Aランク冒険者にならなくてはな」

「そうだね」

いつもは二人は別々の部屋に宿屋で泊まっているが、時折同じ部屋で寝た。

荷物が多いので、一人部屋の部屋は狭すぎるし、二人部屋は高くて、一人部屋を2つ借りた方が安かった。

「明日は、Aランク向けの仕事を受注してみよう」

「そうだね。何があるかわくわくだね」

ランクは適正があり、BランクだとF~Cの依頼も受けれるし、Bランクはもちろん、一つ上のAランクの仕事も受けれた。

二人は夢を見た。

浮竹が妖刀の精霊になっていて、京楽が不老不死の主になっている夢だった。

朝起きると、そんな夢の内容は忘れてしまっていた。

「さぁ、冒険者ギルドに行くぞ」

「ちょっと待ってよ。まだ朝食の途中なんだけど!」

「きりきりさっさと食え!」

「無茶言わないでよ!」

彼らの冒険はまだ始まったばかり。

目指せ、Sランク冒険者!



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エンシェントエルフとダークエルフ

その世界は、まだ出来立ての世界だった。

世界の名を、フレイアといった。

女神フレイアが治める、作られたばかりの世界では、全てが自由であった。

やがて時が経ち、女神フレイアはある二人の人物を、存在を変えてフレイアの世界へと召還した。

それは、アビスの世界のヴァンパイアマスターの浮竹と、ヴァンパイアロードであり、神喰らいの魔神である京楽だった。

今の浮竹はエンシェントエルフで、京楽はダークエルフだった。

エンシェントエルフは普通のエルフより耳が長かった。ダークエルフは褐色の肌をしているが、京楽の場合肌は普通の白さを保っていて、普通のエルフ、ウッドエルフに見えた。

浮竹と京楽は伴侶であり、このフレイアの世界にきてもそれは変わらなかった。

ただ、ヴァンパイアであった頃の記憶は失っていた。

力も圧倒的なまでにあったが、普通のエンシェントエルフの魔力とダークエルフの魔力を与えられていた。

ロスピア王国の隣にある、イアラ帝国の冒険者ギルドで、Bランクの冒険者として二人で活動していた。

「浮竹、魔力回復のポーションの元になる、マナの花の採取依頼が出ているよ」

「お、それはいいな。マナの花は、ちょうどBランクの依頼だ。オーガどもの住む村の近くに生えるんだよなぁ。オーガはあまり群れないが、たまに集落を築くとそこに生えてくる」

「いっそ、オーガに気づかれないように花だけ採取する?」

「いや、オーガの退治依頼も出ていただろう」

「うん。Bランクだね」

浮竹は入手したばかりの魔力を帯びたミスリルの剣を撫でた。

ミスリルの武器は高い。

Aランクの冒険者でやっと持てるといったかんじだ。

それを、浮竹はエンシェントエルフの村から出る時に、選別としてもらったのだ。

「浮竹は魔法剣士だから剣はいるけど、僕は魔法使いだから、杖を新調したいな」

「オーガの住処に行く前に、この前の報酬でもらった金で、杖を慎重しにいこう」

ダークエルフだと分かると、人間もエルフも他の種族も、いい顔をしない。なので、皮膚の色が普通の色で褐色でないのをいいことに、京楽は種族を普通のウッドエルフと偽っていた。

「あんた、ダークエルフだね?」

魔法の武器防具の店にやってくると、店の主人がそう言ってきた。

「うん・・・ウッドエルフって通してるけど、本当はダークエルフなんだ。ダークエルフに売る武器防具はないってかんじ?」

「いいや、種族が珍しいから声をかけてみただけじゃ。好きな武器防具を選べ。ダークエルフは
魔法の適性が高い。魔力を高めたいなら、その右隣にある杖たちがおすすめじゃ」

「あ、これいいね!」

杖の先端部に、青い魔石がはめ込まれいる、木製の杖だった。

「それは掘り出し物じゃぞ。といっても、中古品じゃがな。なんと、木製の部分は世界樹の木で作られているのじゃ」

「金貨4枚じゃな」

「うーん高い・・・・もう少しなんとかならない?」

「今の手持ちが金貨20枚・・・・そうだ、前の杖を下取りしてもらったらどうだ?」

「うん。愛用していたから、魔力の循環にはいい杖だと思うんだ」

京楽が前の杖を見せると、店の店主は身を乗り出してきた。

「おお、これはまた特殊は・・・・守りの魔法が付与されている杖じゃな。金貨2枚で引き取ってやってもよいぞ」

「じゃあ、これを引き取ってもらって、そっちの中古の杖をもらうとして、差額の金貨2枚を祓うよ」

「うむ。よい商いじゃった」

後日、京楽が売り払った杖が金貨10枚という値段で売られるを、知らぬ二人であった。


「じゃあ、オーガの拠点までいくか」

「一番近くの町まで、乗り合い馬車でいこう」

乗り合い馬車を乗り継いで、3日かけて移動し、一番近い村で一日だけ休息を入れると、その日は宿がないということで、村長の家に泊めてもらった。

オーガの被害にあったことがある村で、オーガを倒してくれる相手をずっと探していたそうで、やってきた浮竹と京楽を快く迎えてくれた。

「じゃあ、出発する」

「じゃあね。帰りも寄るから、よろしくね」

「どうが、女神フレイア様の加護があらんことを」

二人は、オーガの村に向かって歩きだした。

オーガは基本狩猟を行って生活しているが、モンスターだけでなく人間や家畜も食う。

ゴブリンのようにすぐに増える種族ではないし、そこそこ強いのでBランクが適正だった。

「先手必勝だ!」

浮竹がミスリル銀の剣を抜き放ち、門番をしていたオーガの首を斬り裂いて、悲鳴を与える暇もなく殺した。

「ファイアボール!」

集落の木の建物に次々と火の魔法で炎をつけていく。

「マナの花を燃やさないようにしろよ!」

「わかってるよ!周辺のフィールドには、結界を張ってあるから!」

浮竹は、襲い掛かってくるオーガを斬り捨てていく。

「ウォーターボール!!」

浮竹を背後から襲おうとしたオーガの頭部を水で包んで、窒息死させた。

「ウォーターボール!」

浮竹も京楽も、それが一番手っ取り早いと、ウォーターボールの魔法で、敵を窒息死させていった。

「GYAOOOOOOO!!」

「オーガキングだ!気をつけろ」

「ウォーターボール!」

オーガキングは身震いするだけで水の玉を弾けさせた、

「ウォータースピア!」

「GYOOOOO!!」

京楽の放った水の槍は、オーガキングの腹を貫いていた。

「いまだよ、浮竹!」

暴れまわるオーガキングに右肩を切られたが、致命傷ではないのでまず、剣で両目をつぶした。

「GAAAAAAAAA!!」

「エンチャントファイア!」

ミスリルの剣に火を付与して、硬いオーガの皮を斬り裂き、心臓を突き刺す。

それでもオーガキングは倒れなかった。

むちゃくちゃに振り回す剣で、浮竹は左足を切られた。

「ヒール!」

「助かる、京楽!」

「ライトニングボルト!」

先に目を潰して正解だった。

オーガキングは体全体を焦げさせながらも、浮竹を殺そうとする。

「いい加減、死ね!」

浮竹が放った剣は、オーガキングの首を刎ねていた。

それぞれ、倒したオーガから魔石を取り出し、討伐の証拠とする。

「あった、マナの花だよ」

「これだけあると、俺たちの分も確保できそうだな」

浮竹と京楽は、咲いている分だけマナの花を大量につみとって、アイテムポケットにしまいこむ。

オーガたちの魔石も、アイテムポケットの中だった。

アイテムポケットの中では時間が経たない。素材になりそうなモンスターを放り込んだり、料理を保存しておけた。

「さぁ、最寄りの村まで戻って、馬車で町まで戻ろう」

「うん、そうだね。あ、肩の傷、血は止まってるけど一応治しておくね。ヒール」

「ありがとう、京楽」

「ううん、僕のほうこそ。こんな、ダークエルフを拾ってくれるなんて、君くらいだよ」

ダークエルフと同じ褐色の肌をもたないからと、一族のつまはじき者として捨てられていた京楽を拾ったのは、エンシェントエルフの浮竹だった。

どっちも、まだ子供だった。

大人たちの都合で閉じ込められていた京楽を救ったのは、浮竹だった。エルフの森を抜け出して、人間の町で冒険者を始めた。

それでも、あくまで帰るのはエルフの森で。

大人になったダークエルフは、置いておけない、処刑すると言い出した他のエンシェントエルフから京楽を守るように、エルフの森を抜け出した。

村長に見つかり、罰せられると思ったが、選別だとミスリルの剣をもらった。

子供の頃から冒険者稼業を、牢屋からたびたび抜け出す京楽としていたので、ランクはB、そこそこのランクになっていた。

「オーガキングまでやっつけたし、金貨20枚は固いね」

「マナの花もあるからな。全部で35枚はいくんじゃないか」

「じゃあ、しばらく高い宿にでも泊まる?」

「いや、宿は今のままでいい。ただ、浴場に行きたいな」

「じゃあ、お風呂セット買おうか」

「そうだな」

浮竹と京楽は、冒険者ギルドでオーガ討伐の報告をして、魔石を買い取ってもらった。報酬金が金貨20枚、魔石が金貨3枚で売れた。

マナの花は金貨ちょうど15枚で買い取ってもらえた。

考えていたより3枚金貨が多かったので、ちょっと奮発して高めにお風呂セットを買ってみた。

公共浴場で、泡だらけになって、浮竹と京楽は笑いながら長い髪も洗った。

帰り際に、宿の部屋に別れる前に口づけをしあった。睦み合うことがないわけではなかったが、エルフはそういう欲求が薄いので、たまにだった。

公共浴場は安くもなく高くもない値段で、浮竹と京楽は最低週に2日は入っていた。着ている服を洗濯に出すこともできるが、金がかかるので自分たちで洗った。

今泊まっている宿は、中クラスで、夕食はついていないが、朝食はついていた。

そんな宿屋を数カ月借りているので、もはや我が家も同然のようになっていた。

「おはよう、浮竹さん京楽さん」

「ああ、おはよう、女将さん」

「おはようございます、女将さん」

「今日も冒険者ギルドで仕事かい?」

朝食を用意してくれる女将さんに感謝しつつ、今月分の宿代を払った。

それぞれ、1日銀貨2枚の宿なで、月に金貨6枚を払い、二人で12枚払った。

できれば自宅をもちたかったが、保証人もいないし、冒険者ということで危険と隣り合わせなので、家を借りることもできなかった。

「浮竹、抱きしてめていい?」

宿を出ると、京楽が甘えてきたので、浮竹は許可をした。

「大好きだよ、浮竹。ダークエルフの僕なんなの傍にいてくれて、ありがとう」

「俺も大好きだ、京楽。ダークエルフとか、そういうのは関係ない」

二人は触れるだけのキスをして、冒険者ギルドに今日の仕事を探しに出かけるのであった。


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始祖なる者、ヴァンパイアマスター64

「シロ、ハル」

「「はい、藍染様」」

シロとハルと名付けられた、浮竹と京楽と女神アルテナの肉塊の子供たちは、藍染に従順に従った。

そうなるように教育された。

逆らえば鞭うたれた。殴られ、蹴られた。

「父親である、浮竹と京楽を屠っておいで」

「「はい、藍染様」」

二人は女神アルテナの血が濃いせいか、ヴァンパイアロードではなかった。

神でもない、中途半端な存在だった。

ただ保有する魔力が極めて高く、これなら浮竹と京楽を倒せられなくとも、手傷を負わせられるだろうと思った。

藍染は、浮竹と京楽が苦しめばそれだけでも満足なのだ。

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「ぎゃああああああああああ」

その日の朝は、浮竹の悲鳴から始まった。

最近、ポチとタマの様子が変で、特にタマは食事の時間になっても姿を現さず、ポチがタマの分のドラゴンステーキを住処である暖炉にまで運んでいた。

暖炉の中は藁がしきつめられており、使っていないクッションやら布やらで、なかなか居心地がよさそうな巣になっていた。

その暖炉は大きめで、ミミックが2匹入ってもまだ余裕があった。

タマの様子を見ていると、タマの口から何かがでてきて、浮竹の頭をかんだ。

「なんじゃこりゃああああああ」

浮竹をかんでいたのは、ミミックだった。それも手の平サイズの、小さいミミックだった。

「タ、タマ、お前産んだのか!」

「りんりんりん~~~」

そうだよ、お腹いたかった、やっと生まれたよ、4匹いるんだ、名前をつけて。

そう言われて、浮竹は京楽を呼んだ。

「京楽、来てくれ!」

「どうしたの、浮竹ってぎょえええええええええ」

4匹の小さなミミックにかまれていた浮竹を見て、京楽は悲鳴をあげていた。

「ぞ、増殖したの?」

「違う。タマが産んだんだ」

「ええ、タマってメスだったの?」

「意思疎通はできるが、俺も知らなかった。タマはメスだって言ってなかったからな。ポチも自分をオスだと言っていなかった。オスとメスが自然にいたら、まぁ子供はできるよな」

「そ、そうだね」

ポチは青いリボンをしていて、タマはピンクのリボンをしているせいで、啼き声を聞かなくてもどっちがどっちだか分かって、助かった。

「るんるん」

「りりりり」

「らんらん」

「らららら」

4匹の子供ミミックは、それぞれ鳴き方がまた違った。

「りんりんりん~」

タマが名前をつけてあげてというので、浮竹は。

「よし、イチロー、ジロー、サブロー、シローだ!」

「えええ、そんな適当にでいいの。メスだったらどするのさ」

「見た目でメスかオスかなんてわからないだろう!」

「でも、もっとリンとかララとか、啼き声にあわせた名前をつけてあげても」

浮竹をかみまくっているミニミミックの1匹にかまれて、京楽はほんわりとした。

「か、かわいい・・・・・・」

かじかじとかんでくるが、かむ力は弱く、小さいせいもあってかわいかった。

「るるるるる?」

ポチが、イチロー、ジロー、サブロー、シローでいいのかと尋ねてきたが、浮竹は親指でグッドとジェスチャーして、子供の名前は生まれた順は分からないが、それで決まってしまった。

どれがイチローでジロー、サブロー、シローかも浮竹にも分からなかった。

「るんるん」と鳴くのがイチロー。

「りりりり」と鳴くのがジロー。

「らんらん」と鳴くのがサブロー。

「らららら」と鳴くのがシロー。

ということにしたのだが、定着するまで時間がかかりそうだし、覚えるのにも時間がかかりそうだった。

「子供ってことは、ミルクは・・・いらないな」

ミミックはモンスターだ。哺乳類ではない。

「じゃあ、ドラゴンステーキを」

「りんりんりん」

「え、ドラゴンステーキを消化しやすいようにをしろだって?」

「りんりんりん」

「ドラゴンステーキを切り刻め?分かった」

浮竹は、魔道具のミキサーを取り出して、ドラゴンステーキをペースト状にして、4枚の小皿にわけて与えた。

「るんるんるん」

「りりりりり」

「らんらんらん」

「ららららら」

4匹のミニミミックたちは、ペースト状にされたドラゴンステーキを美味しそうに食べていた。

「うーん、見ていたら俺もドラゴンの肉が食いたくなった。アイテムポケットにまだ未加工のドラゴンの肉があるから、それで夕飯を作ってくれ」

「仕方ないねぇ」

今日の夕飯は和風きのこのパスタのつもりだったが、ドラゴンステーキは食い飽きているので、ドラゴン肉のビーフシチューと唐揚げにすることにした。

その日の夜、ダイニングルームには、浮竹と京楽以外にも、ポチとタマの姿もあった。

子供たちは眠っているらしい。

「るるるるる」

「りんりんりん」

子育てをするのに栄養をつけたいので、普通の夕食を食べたいらしかった。

「でも、今回はドラゴンの肉なんだよね」

ミミックたちの大好物はドラゴンステーキなので、ポチとタマは喜んで、ドラゴン肉でできたビーチシチューを唐揚げを食べて、唐揚げの一部は子供たちへのお土産に持って帰るようだった。

「るるるるるる」

「何、おいしかったって?それは俺に言わずに京楽に言ってくれ。京楽が作ったんだから」

「るるるる」

京楽の頭に、ポチはかみついた。

「これってお礼なの!?」

「俺が教え込んだからな。相手を喜ばす時はとりあえずかみつけと」

「何デンジャラスな方法を教えてるの!まぁ、ポチもタマもミミックだけど、傷ができるほどかまないし、歯もとがってないから痛くないからいいけど」

「イチロー、ジロー、サブロー、シローにもそのうち教え込まなきゃなぁ」

「まだ生まれたばかりでしょ。気が早すぎるよ」

「うーん、やっぱり離乳食あげたほうがいいのかな。ドラゴンステーキは幼体にはあまりよくない気もする」

次の日、浮竹は離乳食だと言って、生きたマンドレイクをぶちこんだ謎の物体を作り出して、ミミックの子供たちにあげた。

ミミックの子供たちは、マンドレイクをそのまま食べてしまった。

「え、意外といけるのか、マンドレイク」

「るんるんるん」

「りりりりり」

「らんらんらん」

「ららららら」

みんな、悪くないよと言ってくれた。

浮竹は涙を零して、ミニミミックたちを抱きしめた。

「京楽でさえ分かってくれない、俺のマンドレイク料理を食べてくれるなんて!天使か!」

浮竹には、ミニミミックたちに翼があり、輪っかがあるように見えた。

「癒される~」

それから、浮竹は毎日のように生きたマンドレイクをぶちこんだ、いろんな料理をミニミミックたちに食べさせた。

「るんるんるん」

ある日、イチローが鳴きながら炎のブレスを吐いた。

「イチロー!?お前、炎のブレスが吐けるのか!?」

「るんるん」

僕だけじゃなよ、ジローもサブローもシローも、いろんなブレス吐けるよ。

「聞いたか京楽」

「うん。君にみっちり古代の魔法文字教えられたせいで、異種族翻訳の魔法覚えれたから、ちゃんと聞こえるよ」

1カ月以上に渡り、毎日魔法文字の勉強を7時間くらいさせられた京楽は、ほとんどの魔法文字を読めるようになっていた。

お陰で、異種族翻訳の魔法も使えるようになっていた。

「イチローはオスみたいだね」

「るんるんるん」

僕とサブローとシローはオスだけど、ジローはメスだよ。

「ジローはメスか!名前は・・・・ジローのままでもいいな!」

「浮竹、女の子なのにジローはいかがなものかと」

「りりりり」

そこにジローがやってきた。

「りりりりりりり」

気にしなくていいよ、ジローって名前好きだよ。マスターがつけてくれた名前だから、好きだよ。

「ジロー!」

浮竹は涙を流しながらジローを抱きしめた。

ジローは浮竹の手にかみついていた。

まだ幼体なので、歯もあまりなく、甘噛みなので痛くもない。

浮竹は、暖炉のある部屋の家具を全部撤去して、暖炉のある部屋そのものをミミックのための部屋とした。

それをポチに伝えると、ポチは嬉しそうに部屋中に藁をしき、いらなくなったクッションやら枕、布団を置いて、さらには布をあげるとそれを藁の上にしいた。

「なかなかいい巣じゃないか」

「るるるる~~~~」

「りんりんりん~~~」

ポチとタマはその部屋の巣が気に入ったようで、子供たちと快適に過ごせると言っていた。

「そのな、子供たちなんだが、俺がマンドレイクを与えすぎたせいか、炎と氷と雷のブレスを吐けるようになっているんだ」

「るるるる?」

「りんりん?」

本当に?それが本当なら凄いことだ。存在の進化だ。

「存在の進化か・・・ハイミミックか」

4匹のミニミミックが散歩から帰ってきた。

ブレスを無駄に吐くことはなく、火事やら怪我の心配はないようだった。

「お前たちは存在が進化した!ハイミミックだ!その存在を誇りに思え!」

「るんるん」

「りりりり」

「らんらん」

「ららら」

4匹は分かっているか分かっていないのか、そうなのと返事してきた。

「よし、今日の昼もマンドレイクをぶち込んだ料理を作ってやるからな!夜はドラゴンステーキだ!」

普通1日1回の食事というか、ミミックは基本飲まず食わずで半年は生きていける。半年に一回、違うモンスターを食べたりして、生命活動を維持していた。

ここにきてから、ポチとタマは毎日ドラゴンステーキをもらい、LVがあがっていた。

その間にできた子も、特別であった。

おまけにマンドレイクの魔力たっぷりな味はなんともいえないが、料理を食べて、存在進化し、ただのミミックからハイミミックになっていた。

「浮竹~~~マンドレイクぶちこんだ料理は、せめてミミックの分だけにしてよ。なんで僕まで食べなきゃいけないわけ?」

「苦情を言うな!嫌なら食べなければいいだろう」

でも、実際京楽が食べなかったら、浮竹は沈み込む。

なので、まずいと分かっていても、京楽は毎日浮竹の生きたマンドレイクをぶちこまれた昼食を食べるのであった。

------------------------------------------------------------------


「ここが、僕らの本当の父様のいる場所」

「ハル、行くぞ」

「うん、シロ」

シロとハルは、見た目こそ浮竹と京楽の色素を持ってはいたが、母親であった女神アルテナの、失われてしまった美貌を受け継いでおり、京楽と浮竹にあまり似ていなかった。

ヴァンパイアでもなかったし、神でもなかった。

中途半端な存在であったが、保持している魔力は高かった。

ジリリリリリリ。

警報が鳴り響き、まずは戦闘人形たちが襲ってきた。

「ファイアロンド」

ハルの魔法で、戦闘人形の全てだけでなく、中庭の薔薇園が吹き飛んだ。

「また、藍染の手の者か」

「あーあ、端正こめてつくった薔薇園がむちゃくちゃだ」

現れた浮竹と京楽の魔力の高さを感じ取り、ハルもシロも震えた。

「「エターナルフェニックス!!」」

ハルとシロが2重で生み出した炎の不死鳥は、浮竹と京楽が張った結界でなんとか防がれているというかんじだった。二人分を足せば、浮竹か京楽のどちからを倒せる。

そう確信していたのだが、それが過ちなのだとすぐに気づいた。

「エターナルフェニックス」

浮竹が呼び出した不死鳥は、二人が生み出した不死鳥よりもさらに高温で魔力に満ち溢れていた。

「エターナルアイシクルフィールド!!」

「エターナルフェンリル!」

同じ属性の魔法をぶつけられて、それが禁呪であろうと、魔力の差を見せつけられる。

「ワールドエンド」

世界の終末の魔法を受けて、浮竹と京楽が丹精こめて育て上げた薔薇や花が散っていく。

それに触れると、塵になるはずであった。

浮竹は、わざとワールドエンドの魔法にふれ、その右手を失いながらただの魔力にかえて握りつぶした。

「浮竹、右手が!」

「大丈夫だ」

失われたはずの右腕にはすでに骨が形成されており、肉をつけて皮膚を生やし、すぐに浮竹の右腕を復活させた。

「マンドレイクを毎日食べているせいか、魔力が前より高い。この程度の傷、癒すなど造作もない」

「ブラックホール!!」

「りんりんりん~~」

「わ、ばか、タマ!!!」

たまたま散歩に出ていたタマは、ブラックホールに吸い込まれてしまった。

浮竹はなんの逡巡もなしに、ブラックホールの中に入るとタマを抱きしめた。

「あはははは、やったぞ、始祖浮竹を倒した」

「藍染様、やりました!」

二人はブラックホールの入り口を閉じた。

「そんな、浮竹、タマ・・・・・」

呆然としている京楽に、魔法を向ける。

「ファイナルフェニックス!!」

炎の最高位禁呪。

それは京楽を飲みこんだ。

「あああああ!!!」

京楽の魔神化が激しくなっていく。

「喰ってやる・・・・・・」

「「ブラックホール」」

「ぐ・・・・・」

魔力を吸われていく。

「京楽を、手を!」

異次元に消えたはずの、浮竹とタマはまだブラックホールの魔法の入り口の空間にいた。

「浮竹!!」

魔力が消滅したわけではないので、死んではいないと思っていたが、すぐに戻ってくるとは思っていなくて、京楽は顔を輝かせて、浮竹の手を握った。

「閉じろ、ブラックホール!」

相手の魔法を、無理やり閉じさせた。

「ハル、お前だけでも逃げろ」

「いやだ、シロ、君こそ逃げろ」

「こっちは、魔力を消耗過ぎた。だが、京楽ならばお前たちの魂を喰える。食われるのがいやなら、藍染の元へ帰れ」

「どうしよう、ハル」

「このままじゃ僕たちは勝てない。一度戻り、もっと魔力を高めて再戦しよう、シロ」

シロとハルは、ゆらりと空間を歪ませると、その中に入って逃げ出してしまった。

「僕と浮竹の子供なのかな」

「そうだろうな。向こうには肉便器アルテナ様がいる」

「肉便器に様をつけないで・・・・・・うぷぷぷぷ」

「おい、笑うと女神に失礼だろ・・・・はははは」

二人は、女神アルテナのみじめな最後を思い浮かべて笑っていた。

「その女神アルテナの魂は、僕が食べちゃったんだよねぇ。正確には、僕の体内の空間に収めたことになるけど。一度解放してみようか?」

「いや、やめておけ。あの女神はゴキブリ並みにしぶとい。お前の空間で永遠の無がお似合いだ」

「それより、タマは大丈夫?」

京楽がタマを心配すると、タマは京楽の頭にかじりついた。

「りんりんりん~~~」

「助けてくれてありがとうって言ってるね」

「お前もやっと異種族翻訳の魔法がさまになってきたな」

「君のスパルタのお陰だよ・・・。それにしても、タマもよくあの魔法に吸い込まれて無事でいれたね」

「昼にマンドレイクのスープを飲ませたからな。魔力の塊だ。タマもポチも、ミニミミックたちと一緒の昼食を取っているから、存在が進化してハイミミックになったようだ」

「ハイミミックかぁ。上位存在ってことは、やっぱり強いんだろうね」

浮竹は、うんうんと頷いた。

「炎、氷、雷のブレスが吐けて、その気になれば人間も食える」

「お願いだから、人食いミミックにはならないでね!」

「りんりんりん~~~~~~~」

心配しなくても、人間なんて食べないよ。だってまずいもの。ドラゴンステーキが一番好き。

「りんりんりん」

マスターの作ってくれるマンドレイクの料理もおいしい。

「お、タマは分かってくれるなぁ」

浮竹が、京楽の頭をかじり続けていたタマを腕の中に抱きしめた。

そこそこ大きさがあるので、持っていると言ってる方が近いか。

タマは、ぺこりとお辞儀をすると、巣のある部屋に戻っていった。

「ところで、これどうしよう」

庭は荒れ放題だった。

せっかく大切に咲かせていた青薔薇も、アーチを築いていたのにボロボロの灰となっていた。

場所によっては、凍ったりもしていた。

炎や氷の禁呪を使ったせいで、庭はすごいことになっていた。

古城の1階と2階も吹き飛んでいた。

「恋次君、捕まえてくるか」

最近は金に困らなくなった恋次は、前ほど気軽に時間回帰魔法を使ってくれなくなっていた。時間回帰の魔法は神の魔法だ。

ほいほいと使っていることは、神を愚弄していることになるらしい。

「よし、行くぞ京楽!」

「はいはい、分かったよ」


血の帝国で、嫌がる恋次に白哉の丸秘写真集を餌にして、古城にまできてもらった。

「もう、ほどほどにしてくださいよ。俺ももっと使いたいけど、この魔法制約がきつくてしばらく魔法使えなくなるんすから」

古城も庭も元通りになって、浮竹は恋次に白哉の丸秘写真集と白金貨2枚をあげた。

「金はいいっすけど・・・・・・何これ、白哉さんの子供時代の写真。激可愛い。こっちは着替えの・・・・・・ぬおおおおおおおおおお」

興奮しすぎて、恋次は竜化していた。

竜の中の始祖ドラゴン、竜帝であった。

燃え上がる真っ赤な鱗が特徴的な、15メートルはあろかという巨大なドラゴンであった。

庭での変身だったので、薔薇園が少し崩壊したくらいで済んだ。

「ちょっと、恋次クン、竜化する時は気をつけてよ!?古城で竜化されちゃうと、古城が崩れちゃう」

「はい、すんません。白哉さんの宮殿でも間違って竜化しちまって、白金貨3枚の罰金とられました」

今、恋次は、異世界の神々の遊戯に参加しており、1回の参加で白金貨10枚がもらえていた。

異世界の神々の遊戯は、世界を作ること。

それに恋次が参加していることは、秘密の中の秘密だった。

創造竜と呼ばれていた。

その世界で、ドラゴンを作り出すのが仕事だった。

アビス、サーラの世界と似た、フレイアの世界を作っていた。

フレイアの世界では、女神フレイアが全ての頂点であった。

そのフレイアの世界にいずれ渡ることになるのだが、それはまだ先のお話。


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「それで、逃げ帰ってきたというんだね?」

「ごめんなさい、藍染様!でも、あいつらの魔力は尋常じゃあなくって!」

「言い訳は聞きたくない」

ハルとシロは、頬を殴られた。

「君たちの魔力をあげるために、私の血を与えよう」

「はい・・・・・」

ハルとシロは、それを受け入れた。

血を与えられて、ハルとシロの魔力は各段にあがった。

だが、それでも浮竹と京楽に勝てる気がしないのであった。





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始祖なる者、ヴァンパイアマスター63

肉便器に入れられた浮竹の子種で、肉便器は妊娠し、1週間後に子供を産み落とした。

白い髪に翡翠の瞳をした、浮竹によく似た子供だった。

1カ月をかけて13歳くらいまで成長した浮竹の子は、男の子で名をアランと名付けられた。

ヴァンパイアマスターと女神の子であったが、ヴァンパイアロードであった。

ヴァンパイアマスターはこの世界でただ一人。

浮竹だけが、ヴァンパイアマスターだった。

ただ、アランは浮竹の血が濃いのか、限りなくヴァンパイアマスターに近かった。

「キララ」

「はい、藍染様」

名を呼ばれて、死神のキララは藍染を見た。

「アランと一緒に、浮竹と京楽を葬っていおいで」

ああ、ついにこの日がやってきた。

キララは死を覚悟した。

いっそ逃げ出そうか。そう思ったが、藍染の手からは逃れられないと察知して、死を覚悟の上でアランと共に行動を開始する。

死神。だからといって、全ての魂を狩りとれるわけではない。

特に自分より強い存在の魂は狩りにくい。

きっと、浮竹と京楽の魂を狩りとることはできないだろう。分かっていたが、黙っていた。そうでもしないと、もう用なしとして処分されるかもしれないから。

「あなた、キララの宝石は美しいのよ?宝石を生み出す子がいなくなるなんて嫌よ」

「女神オリガ、こんな時のために神族を3人ほど確保しておいた。キララより上質の宝石を生み出す者ばかりを選んだ」

「そうなの。じゃあ、キララは用済みね」

母親である女神オリガにそう言われて、一縷の望みであった希望は粉々に砕かれた。

実の母でさえ、キララを愛してなかったのだ。

「いこう、キララ。愛しているよ」

「アラン・・・・・」

キララに愛を囁くアランを、キララは愛した。

藍染と女神オリガの目を盗んで、逢瀬を重ねた。

キララの腹には、アランの子が宿っていた。

それを知らずに、アランもキララも、浮竹と京楽がいる古城に向けて出発するのであった。

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「るるるるるるーーー」

「りんりんりんーーーー」

2匹の古城で飼われてるミミックは、今日も楽しそうに古城の中を散歩していた。

「るるるるる」

「え、なんだって。古城の外でスライムの友達ができた?」

「りんりんりん」

「え、林檎をもらった?」

京楽には、ミミックたちが何を言っているの分からなかった。

ただ、るるるるるとりんりんりんと鳴いているようにしか、聞こえなかった。

「よかったなぁ、ポチ、タマ」

頭を撫でられて、ポチとタマは嬉いそうに浮竹にかじりついた。

「あっはっは、甘噛みでも少し痛いぞ」

「るるるーーー」

「りんりんーーー」

「ほう、また友達に明日会いに行くのか。果物と野菜が好物・・・この季節じゃなかなか売っていない桃がちょうどある。それをもっていけばいい」

ポチは、体内に桃を5ついれた。

なんでも、スライムを飼っている主の分も含まれているらしい。

林檎が好物だそうなので、タマが林檎を3つ体内にいれた。

「ねぇ、浮竹、ポチとタマが何を言っているのか分かるの?」

「ああ、分かるぞ。この異種族翻訳の魔法を使えば、モンスターも何を言っているのか聞こえる」

「え、なにそれ。僕も覚えたい」

「いいが、覚えるには相当な知識が必要だぞ。まずは古代文明の魔法文字が読めるのが基本だ」

「僕、浮竹が翻訳してくれたやつでいいや」

古代文明の魔法文字など、何年かかっても習得できそうにない。

諦めの早い京楽に、浮竹がスパルタで教え込むことにしたようで、次の日から古代文明の魔法文字を覚える授業がはじまるのであった。


「るるるるるる」

「りんりんりん~~~~~~」

「おう、そうか。スライムのプルンとかいう友達のところに出かけるんだな。くれぐれも人間に見つからないように」

「いってらっしゃい、ポチ、タマ」

ポチは体内に5つの桃を、タマは3つの林檎をもって、古城を飛び出し、草原や森をぬけて、友達であるプルンのいるロスピア王国の裏路地を進み、ロスピア王奥の片隅にある家で、ポチはるるる―と鳴いて、プルンを呼んだ。

「プルルン!」

プルンは喜んで玄関から抜け出すと、ポチとタマとい一緒に、草原までくると遊びだした。

「るるるるるるーーーー」

ポチが、プルンの飼い主の分まで桃をもってきたというので、それを受け取ってプルンは飛び跳ねて喜んでいた。

自分たちの分の桃を食べていく。

甘くて甘くて、ぷるんはもう1つ食べたそうにポチを見ていた。

「るるるーー?」

半分食べるかいと言われて、プルンは飛び跳ねて喜んだ。

ポチの分を半分もらい、更にはタマが出してきた大好物の林檎を3個出してもらい、3匹はそれぞれ林檎を食べた。

「プルルン!!」

追いかけっこや鬼ごっこをしているうちに、日が傾いてきた。

「りんりんりん」

タマが、そろそろ帰らないと言い出す。

それにプルンが哀しそうな顔をする。

「るるる?」

どうするの?っとポチが聞くと、プルンは飛び跳ねて、こういった。

泊まっていけばいい。

ポチとタマは、少し逡巡したが、プルンの家に1日だけ厄介になることになたった。

「るるるるるーーー」

「りんりんりんーーー」

プルンの主に自己紹介をして、ポチとタマは10畳はあろうかという広い寝室を飛び跳ねて散歩した。

「プルルン!」

その日の夜は、プルンはポチとタマの傍で、リビングのソファーで眠った。

「るるるーーー」

「りんりんりん」

次の日の朝、ポチとタマは林檎をもらい、それを食べて草原でプルンと一緒にまた遊んだ。

かくれんぼをしたのだが、草原なので隠れる場所がなく、すぐに見つかってしまう。

「るるるる」

ポチが、人間の町を探索しようと言い出す。

「りんりんりん」

タマが人間に見つかったら危ないよと言った。

「プルルン!」

結局、小さな村にいって、そこで住人に出くわさないように今度こそかくれんぼをして遊んだ。

「プルルルルン!」

プルンが鬼だった。

プルンが少し迷ったが、匂いでポチが隠れている段ボールを見つけると、それを持ち上げた。

「るるるる」

見つかってしまったと、ポチが残念そうだった。

ただタマには匂いはついておらず、いくらプルンが探しても、見つからなかった。

「プルル!」

降参だとプルンがいうと、タマは屋根の上から降ってきた。

屋根の上で、宝箱に擬態していた。

勝者はタマだった。

3匹は元のプルンの家に戻ると、そろそろ帰らなきゃいけないからと、ロスピア王国の片隅にあるその家から飛び出して、ガイア王国の浮竹と京楽が住む古城へと戻っていった。

「るるるるる」

「りんりんりん」

「ポチ、タマ、昨日帰ってこないから心配したんだぞ」

「るるるーーー」

「りんりんーーーーー」

ポチとタマは、林檎をもらって帰ってきていた。

「そうか。友達の家に厄介になったのか。林檎までもらうとは、こちらも何かお返しをしないといけないな。また遊びに行く時は言ってくれ。何が手土産をよこすから」

「るるる」

「りんりんりん」

2匹は、友達のプルンについていろいろ語った。飼い主のことは言わなかったが、きっと優しい飼い主であるのだろうと思った。

プルンのことを語り終えた2匹のミミックは、嬉しそうに自分たちの巣である暖炉にこもり、眠り出した。

興奮しすぎて、昨日の夜なかなか眠れなかったのだ。

今頃プルンは何をしているかなぁと思いながら、ポチとタマは眠った。


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ポチとタマがお土産にもらった林檎は、京楽がアップルパイにしてくれた。

それを3時のおやつの茶菓子にして、ポチとタマの友達のことに話を咲かせた。

「ポチとタマの友達は、スライムのプルンというそうだ。仲がとてもよくて、林檎が大好物で、他にも果物や野菜もたべて、肉は嫌いだそうだ」

「ベジタリアンなんだね。うちのポチとタマとよく気があったね。あの子たちドラゴンステーキが大好物の、まぁ人間の食べ物の好き雑食性だけど、どちらかというと肉食性なのに」

「そうだな。よほど気があったんだろう」

「異種族で仲良くなるのも珍しいね。まぁ、ダンジョンでは違う群れ同士を混合させて襲ってくるモンスターもいるから、必ずしも仲良くなれないわけじゃないけど。ミミックって基本単体で動くから、ポチとタマが仲良くなっただけでも珍しいのに、スライムの友達ができるなんて、まるで奇跡だね」

浮竹は、京楽の髪を引っ張った。

「早くポチとタマの言っていることが分かるように、今日も魔法文章の勉強だ」

「ええーもういいよ。ポチとタマが何を思っててもいいし」

浮竹はハリセンを持ち出すと、弱気な京楽の頭をばしばしと何回も叩いた。

「主たる者、例え相手がミミックでもちゃんと言葉を理解してやれ」

「はーい」

今日もまた、スパルタな浮竹の勉強が始まるのであった。


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「ねぇ、ここが浮竹と京楽住んでいる城?」

「はい、そのはずです」

アランとキララは、上空から浮竹と京楽が住む古城に来ていた。

そのまま中庭に降り立つと、マンドレイクがいっぱい生えていて、気味が悪かった。

「悪趣味・・・・」

「はい、そうですね」

ジリリリリリン。

警報のようなベルが鳴って、にわかに騒がしくなった。

最初に襲ってきたのは、浮竹の血で作られた戦闘人形たちであった。

魂がないので狩りとれず、キララは魔法を唱えた。

「ファイアアロー」

初歩的な魔法であるが、威力は十分に高く、戦闘人形たちを蒸発させていく。

「どんな奴がきたかと思えば、浮竹にそっくり。浮竹の子種でも盗んで、女神アルテナにでも産ませたのかい」

出てきた京楽の言葉は、それが最初だった。

「ああ、その通りだ。僕の名はアラン。始祖浮竹と女神アルテナの子だ」

「京楽、いくら俺に似ているからって、油断するんじゃないぞ」

「すでに遅いんじゃないの」

アランは、そこら中に血の糸を張り巡らせていて、それで浮竹と京楽をがんじがらめにした。

「今だよ、キララ。こいつらの魂を狩って」

「はい」

キララは死神の鎌を取り出して、まずは京楽の魂を狩ろうとした。

けれど、力の差がありすぎて、魂は狩りとれなかった。

「だめです、アラン様。私にはできません」

「なんだと?使えない死神だな」

「だって、私は1つを無理やり2つにされた。元の力の半分しかありません。元の力があれば、こんな奴らの魂を狩りとれるのに」

「それは聞き捨てならないねぇ。力があったら魂が狩りとれる?本当に、そんなこと思ってるんだ」

京楽は、血の魔法で自分と浮竹を戒める血の糸を切った。

「何故だ!僕はヴァンパイアマスターに限りなく近い。僕の血の糸を切れるだなんて」

「単純に、力の差だよ」

京楽は血の鎌を作り出すと、まずはアランの背を切った。

「ああああ!これしきの傷!」

アランもまた血の鎌を作り出して、京楽の鎌と切り結び合う。

その間に、浮竹はキララの相手をしていた。

「無理やり藍染に従わされている。違うか?」

「それは・・・・・・」

「どうやら、お腹に子がいるようだし、死神の力を一切使わず、もう俺たちの目の前に現れないと誓えるなら、見逃してやろう」

「え・・・」

意外な言葉に、キララが浮竹を見つめる。

「アランという、あれはどのみち処分する。父親があれだとしても、子には関係のないことだ。どうする?約束するなら、白金貨10枚を渡そう」

白金貨1枚あれば、一生裕福に暮らしていける。

キララが迷った末に、浮竹と交渉した。

「お金を、ください。もう二度とあなたたちの前には現れません」

「交渉成立だ。死神の鎌をこちらへ」

「はい」

死神の鎌と引き換えに、白金貨10枚を受け取り、キララはその場から逃げ出した。

「おい、キララ!」

「さようなら!」

「あの裏切者めええええ」

憤怒にもえるアランの周囲に、ぽっ、ぽっ、ぽっと鬼火が灯る。

「京楽、シールドの結界魔法だ!」

「分かったよ」

「ゴッドフェニックス、カイザーフェニックス、エターナルフェニックス・・・・トリプルファイアフェニックス!!」

「「マジックシールド!!」」

炎の最高位魔法を、二人はシールドで防いでしまった。

「なんだと、僕の最高の魔法が!」

「いくらヴァンパイアマスターに近いからと言って、力までそうだとは限らない」

浮竹が作り出した血の刃で、アランは胸を貫かれていた。

「父様・・・慈悲を」

「お前のような子供をもった覚えはない!」

「ああああああああ!!」

アランは持てる魔力の全てを槍に変えて、浮竹に向かって放つ。それはシールドを容易く破壊して、浮竹の心臓を貫いた。

「はははは、やったぞ、俺の勝利だ!」

「浮竹!よくも・・・・・・・」

浮竹は、心臓を破壊されながらも、平気そうに動いた。

血の槍を作り出し、アランの心臓を貫く。

「何故・・・何故、心臓を破壊したのに生きている・・・・・」

「知らなかったのか?俺は始祖である神の愛の呪いによって、不老不死だ」

「不老不死・・・、ならば、俺も!」

「無理だよ。君は不老不死じゃない。さよなら、哀れな浮竹の息子」

京楽は、作り出した血の刃でアランの体中を刺していた。

「藍染様・・・・・・」

その言葉を残して、アランは事切れた。

京楽は魔神の咢を開いて、その魂を貪る。

「カラミティファイア!」

浮竹は、アランの遺体を燃やして、灰にした。

「藍染の奴・・・・俺の子種を入手したようだ。しばらく俺の血を引く刺客がくるかもしれない・・・・って、京楽?」

「君のとても若い時ってあんなに可愛いんだね。今度あの年齢で僕の相手をしてよ」

「アホか!ずっとそんなこと考えていたのか!?」

「うん」

浮竹はアイテムポケットからハリセンを取り出すと、思い切り京楽の頭をばしばしと殴った。

「浮竹がいじめる~」

「戦闘の最中に、よくそんなことが考えられるな!」

「そういう浮竹こそ、死神のキララに金を与えて見逃した」

ぎくりと、浮竹が固まった。

「あれは、哀れだから・・・・・」

「いつか、子を産んでその子が敵討ちだって来ても、知らないからね」

「それくらい、承知している!」

浮竹と京楽は、もつれあいながら倒れた。

「あの子、すごい魔力だった。シールドを張るのに力を抜いていたら、きっと黒こげになっていた。君の血の力ってすごいね」

「正確には血統だろう」

「うん。君がまるで僕以外の伴侶と睦みあってできた子みたいで、嫉妬した。だから、君を抱くよ?」

「どういう理屈だ」

「さぁ、ただのこじつけかもね」


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「あ、あ!」

浮竹は、背後から京楽に貫かれて、ぽたぽたと精液をシーツの上に零していた。

「んあっ!」

ぐちゅぐちゅと、リズミカルに突き上げてくる愛しい伴侶の動きに合わせて、声が漏れる。

「あ、やだ、そこやだあああ」

嫌がる浮竹のいい場所を突きあげてやると、浮竹は背を弓ぞりにしあならせて、オーガズムでいっていた。

「ひあああああ!!」

京楽は気に留めることもなく、浮竹の奥へ奥へと熱い楔を打ちこんでいく。

ごりっと、最奥に入ってこられて、浮竹はまたシーツの上に子種をまき散らしていた。

同時に、京楽も子種を浮竹の胎の奥へ注ぎこむ。

「あ、もっと・・・もっと深く」

もっととねだる浮竹の最奥にぐりぐりと侵入したら、浮竹はびくんびくんと体をけいれんさせていた。

「あああ、やああああああああ!!!」

「君がもっと深くって言ったんだよ?」

「やあああ、深すぎるううう、だめえええ」

「でも、そこがいいでしょ?」

ゴリゴリッと奥を抉られて、浮竹はまた射精していた。

「ああああ!!!」

「んっ、僕もいくよ。受け止めてね」

「んああああ!!」

京楽の子種を最奥で受け止めて、浮竹は妖艶に笑う。

「もっと・・もっとくれ、春水、お前の子種を」

「仕方のない子だねぇ」

浮竹をあおむけにさせて、正常位から浮竹の右の太ももを肩にもちあげて、ずちゅりと音を立てて侵入する。

「あ、もっと・・・・」

「もうすぐあげるから、少し待ってね」

ずちゅりずちゅりと音を鳴らして、浮竹の中を出入りする。結合部はローションと互いの液体が混ざり合ったもので泡立っていた。

「んっ、いくよ。全部、飲み干してね」

「あ、飲む干すから、全部、俺の中に全部注いでくれ」

すでに3回は出したのに、京楽のものまだ硬くて、浮竹の奥にびゅるびゅると精子を注いだ。

「あ、や、いっちゃう!!」

子種を注ぎ込まれながら、オーガズムでいっている浮竹の太ももに噛みつき、吸血してやると、浮竹は泣いて嫌がった。

「やあああ、いってる時に吸血しないでえええ。頭が変になるうう」

「大丈夫、ただ気持ちいいだけだよ」

「やあああ、んあああああ!!!」

浮竹は盛大にいった後で、ぷしゅわあああと潮を漏らした。

「やああ、頭変になって、おもらし、しちゃった・・・・・」

「それはいけない子だ。お仕置きがいるね。愛してるよ、十四郎」

「俺も愛してる、春水・・・・・・」

ぐちゅりと中で円を描かれて、浮竹はまたいっていた。

「やああ、いくの、いくの止まらない、どうしてええ」

「さぁ、どうしてだろうね?」

別に媚薬も盛ってないし、普通のセックスだった。

京楽は硬さを失い、何も出なくなるまで、浮竹を犯した。

浮竹はぐったりしていた。

「大丈夫、浮竹」

「あんなにやられて、大丈夫なわけがないだろう。早く風呂に入れろ」

「はい、調子に乗りすぎました、ごめんなさい」

浮竹をシーツごと抱き上げて、風呂場に向かう。

前の古城より狭いが、それでも10人以上は入れそうな湯船にはたっぷりとお湯が満たされており、その中に浮竹は入れられた。

「あ、また湯の中でかき出すのか」

「そのほうが、かき出しやすし」

「んあああ、お湯が、お湯が中に・・・・」

「出る時に、お湯もかき出してあげるから」

浮竹は、京楽の指の動きだけでいってしまっていた。

「どしたの、今日の浮竹。すごいよ?」

「あ・・・・・昼に飲んだジュースj、血の帝国産のものだけど、きっとブラッディ・ネイが何か媚薬のようのものをいれたのかもしれない」

実際、その通りだった。

何気にお中元のように受け取って飲んだジュースは、媚薬入りだった。

「今度から、血の帝国か送られてきたものは食べないし、飲まない」

「まぁ、それが無難かもね」

京楽は、浮竹の中からお湯をかき出して、髪と体を洗ってやった。

「ん・・・・きもちいい」

「変な意味で?」

「違う。純粋に心地よいだけだ」

浮竹を風呂からあがらせると、その長い白髪の水分を拭きとって、体もふいてやり、寝間着に着替えさせた。

「ん」

「はいはい」

甘えられて、お姫様抱っこして、京楽は浮竹を寝室に連れ戻すと、いったんソファーに身を預けさせて、真新しいシーツをかけてその上に寝かせた。

「おやすみ」

「おやすみ、いい夢を、浮竹」

―-----------------------------------------------

「そうか。アランは魔法ではそこそこいけたが、キララが魂を狩り損ねたか」

「あなた、キララを探して。お仕置きをしないと」

「キララの死神の能力は役に立ちそうもない。もう用済みだ」

藍染は、キララを放置することにきめた。

「ミライ。あなたは、キララのようになっては駄目よ?」

「はい、オリガ母様」

「いい子だ、ミライ。絶対者を滅ぼすには絶対者を宛がう。お前は、絶対者だ。いずれ、浮竹を滅ぼしてもらう」

「はい、藍染父様」

歪に歪んだ藍染の世界で、狂った愛を受けながら、ミライは成長を続ける。

「次の子も、アランほど魔力が高ければいいが」

藍染は、肉便器に浮竹の子種を注ぎ、ついでに入手した京楽の子種も注いだ。

「双子だ。浮竹と京楽の子を産んでくれよ、女神アルテナ」

魂を失い、ただの肉便器と化したアルテナであった肉塊は、その言葉に嬉しそうに震える。

やがて、浮竹と京楽の子が生まれた。

二人は仲が良く、何処にいくのも一緒だった。

「あの二人は、まるで幼い浮竹と京楽のようだね」

普通ならっ微笑ましい光景だろうが、藍染にしてみれば、反吐が出るというやつだった。

「適切な教育を施そう」

そうして育った肉便器と浮竹と京楽の子たちは、瞳に色がない少年へと成長した。

「藍染様は絶対!藍染様は世界の全て!」

浮竹の子はシロと名付けられ、京楽の子はハルと名付けられた。

実際の浮竹と京楽の名前からきていた。

「さぁ、逃げてきたふりをして、自分の父親たちを葬るんだ。いいね?」

「「はい、藍染様」」

二人の哀れな子羊は、浮竹と京楽の元に向かうのであった。



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執事京楽、主浮竹

浮竹には幼い頃から執事がいた。

黒い燕尾服を着て、穏やかに微笑むその姿がすきだった。

名は京楽春水。

浮竹は名前を浮竹十四郎という。浮竹家は伯爵の家柄で、両親は浮竹が幼い頃に病死してしまい、僅か8歳で浮竹は当主になった。

他に兄弟姉妹もいなくて、友人もおらず、家庭教師をつけられたが、周りに居る者たちはみんな浮竹のもつ金目当てだった。

僅か8歳で結婚されられそうになった。

浮竹は当主の座を放棄して逃げ出そうとしたが、周りの大人がそれを許してくれなくて、友達もおらず、心を許せる相手は気づけばだ誰もいなかった。

浮竹は、事故で両親を失い、友達もいない寂しさを紛らわすために、だめ元で黒魔術で両親を作り出そうとした。けれどそれは、悪魔召還の儀式だった。

勝手も分からず、黒い本の通りに自分の血で描いた円陣には、中心に人が立っていた。

「父上?」

「残念。僕は悪魔。悪魔の中の上位悪魔。いわゆる魔王ってやつだね。名は京楽春水」

「魔王・・・・・俺を、食うのか?」

目の前の白い髪の少女・・・いや、少年は、魔王と名乗った京楽に一切の恐れを抱かずに、ただ見つめていた。

「んー。君の魂は極上においしそうだ。願いをなんでも叶えてあげよう。ただし、その魂をくれるなら、ね」

「じゃあ、俺と友達になってくれ!」

「は?」

京楽は目を点にしていた。

てっきり、地位や名誉、財産などが欲しい、国が欲しいと言い出すと思っていたのだ。

「あはははは。魔王の僕を呼び出しておいて、友達になってくれ?おおいに結構じゃない。君の友達に、なってあげるよ。期限は君が成人するまで」

「成人するまで・・・・・・」

浮竹にはこうして執事ができた。正体は魔王という、執事が。

京楽は、家庭教師や住み込みの者たちを追い出して、屋敷を京楽だけで切り盛りし始めた。

魔王として配下を生み出し、メイドやコックを、雇う事なく京楽の血から作り出された人形で屋敷の管理を任せていた。

「さぁ、十四郎坊ちゃん、お勉強の時間だよ」

家庭教師には、京楽本人がついてくれた。

座学からテーブルマナー、社交界のダンスの踊り方やら、身のふるまい方。全てを教えてくれた。

浮竹が12歳になる頃には、浮竹はますます美しく成長して、その魂は輝かんばかりで、とてもも美味しそうで、とても愛しく感じた。

12歳で社交界デビューを果たした浮竹は、その財力を狙う貴族の子女に囲まれて、気分が悪いと言ってきた少女を介抱していると、いきなり既成事実を作られそうになった。

京楽が、すんでのところで助けてくれた。

「君は、身の丈にあった相手を選ぶことだ。十四郎坊ちゃんにはつりあわないよ」

「いやああ、浮竹様の執事に襲われたあああ!!!」

少女はドレスを破り、騒ぎ出した。

すぐに京楽は逮捕されて、貴族への暴行未遂ということで死罪となった。

「京楽・・・いなくなってしまうのか?俺を置いていくな!」

「うん。もちろんだよ」

京楽を取り囲んでいた警備の者たちも、社交界にきていた貴族や従者たちも、みな昏倒させた。

その日の記憶を、京楽は全ての人間から奪った。

「君の魂も心も体も、僕のものだ。誰にもあげない」

「京楽・・・・・」

浮竹は、背伸びをして京楽の唇に唇で触れていた。

「十四郎坊ちゃん!?」

「俺はお前が好きだ。友人としても、家族としても。そして、1人の人間としても」

「そうは言われても、僕は悪魔の魔王だよ?」

「それでも、好きなんだ」

浮竹の周囲には、浮竹の金を目当てに集まる者しかいなかった。

そんな心寂しい状態で、唯一の温もりを与えてくれる相手を、どうして好きにならないでいられようか。

「面白い子だ。少し遊ぶのもいいか」

京楽の中で悪戯心が芽生えた。

浮竹が16になる頃、縁談の話が降り積もるようにわいてきた。

それを、京楽が全てつっぱねて、断った。

社交界に出ることはあったが、縁談の話が舞い込む度に、京楽が邪魔をしてきた。

「浮竹様、悪いことはいわないわ。あの京楽という執事、辞めさせたほうがいいわ。あなたの縁談の話の邪魔ばかりするのですよ」

叔母にあたる人の言葉に、浮竹は首を横に振る。

「あれは俺のものだ。俺がどうしようが、俺の勝手だ」

浮竹は、翡翠色の瞳で京楽の鳶色の瞳をいつも見ていた。

その底に浮かぶ欲を知りながら、京楽の傍にいた。

そのまま時は流れ、いつしか18の成人の時を迎えていた。

「今日でお別れだな」

「え、どうして?」

「だって、友人としていてくれるのは、成人の時までだろう?俺は18歳。成人した」

いつもの黒い燕尾服で、京楽はくつくつと笑い出した。

「俺の魂をくれてやる。この世に未練があるとしたら、お前ともっと時を過ごしたかった。それだけだ」

「十四郎坊ちゃん、悪魔の花嫁って知っているかい?」

「悪魔の花嫁?」

浮竹は首を傾げる。

「そう。悪魔やヴァンパイアは、気に入った相手を同族にして迎え入れる。それが悪魔の花嫁だよ」

「まさか・・・」

「そう、そのまさか。僕は君が気に入った。悪魔の花嫁として迎え入れたい。魂をいただくだけじゃ、気がすまない。その心も体も何もかも、僕のものにしたい」

浮竹は、真っ赤になった。

「その、心と体というのは・・・・」

「君が想像している通りだよ」

ふっと耳に息を吹きかけられて、浮竹はぞくりとなった。

「あ、京楽・・・・」

「十四郎坊ちゃん。いや、十四郎。僕を春水って呼んで」

「春水・・・・」

「ああ、いいね。ぞくぞくするよ」

京楽は、浮竹の魂を手中に収めて、それを浮竹に返した。

「あ、どうなったんだ?」

「君は悪魔になった。僕の同族で、僕の花嫁だ」

そのまま、京楽は浮竹の執事であり続けた。

浮竹は、夜になると京楽の部屋を訪れる。

「おや、また来たのかい」

「欲しい・・・お前が、欲しい」

魂まで手中に収められて、浮竹は完全に執事であった京楽のものになっていた。

「んっ」

舌が絡むキスをされて、浮竹は京楽の肩に噛みつく。

「この前つけたキスマーク、まだ残っているね」

浮竹は京楽を欲した。それも頻繁に。

悪魔の花嫁となり、悪魔としてなってしまったせいかは分からないが、魔王の子種を受けて、正気でいられる者などいない。

浮竹は昼は正気を保っているが、夜になると京楽を求めた。

そうなるように、京楽がしむけた。

「今夜は、寝かさないよ」

「ああ・・・春水、愛してる」

「僕も愛してるよ」

くつくつと、京楽は笑う。

愛なんて陳腐な台詞はいらないけれど、それで浮竹が安心するなら、いくらでも愛を囁いてあげよう。

そう思った。

「ああ、ああああ」

京楽に貫かれながら、浮竹は京楽の全部が欲しくて、その背中に手を回す。

「十四郎坊ちゃん、淫乱になっちゃったねぇ」

「ひあああ!」

ごりっと奥を貫かれて、浮竹は自分の腹の上で射精していた。

「もっと・・・もっと、お前をくれ」

浮竹の背中には、肩甲骨のあたりに悪魔の花嫁を意味する翼の文様があった。

「あああ!もっと!」

「十四郎、愛してるよ」

浮竹の胎の奥に子種を注ぎ込んでやり、そのまま京楽は浮竹の体の一部をいじり、孕ませた。

「あああ、やあああ、孕んじゃう!」

「僕たちの子だよ。元気な子を産んでね」

京楽は何度も浮竹の体内に子種を注いだ。

浮竹はオーガズムでいきながら、京楽のことを思う。

伴侶はいれど、子がいないとこの伯爵家を継ぐ者がいなくなる。

だから、京楽は浮竹に子を産ませるような体にした。それは一時的なもので、帝王切開で男児を出産した後は、元の普通の男性に戻っていた。

「んああああ!」

今日もまた、京楽の部屋で浮竹は啼いている。

生まれ落ちた赤子は、二人で慈しみながら育てた。いずれ、社交界でお披露目をするときもあるだろうし、母親は誰だと聞かれることもあるだろうが、息子に母親はもう他界してしまったと言って聞かせてある。

「んっ、もっと・・・・・」

まだまだだと求める浮竹抱き寄せ、銀の糸がひくようになるまで、口づけをかわしあう。

「春水、愛してる」

「僕も愛してるよ、十四郎」

浮竹は、18歳の頃から見た目が変わらなくなった。

それは悪魔の花嫁になったせいであり、悪魔となったせいでもあった。

訝しがる親戚たちの記憶を操作して、京楽は浮竹には結婚した女性がいて、すでに他界して子だけが残されたという設定にした。

「ふふふ。よく寝ているね」

2歳になったばかりの我がを抱きあげて、京楽は人間として生きる生活を送っていた。

「そろそろ、昼寝の時間だ」

「そうだね。よく食べて寝て、大きくおなり。時期浮竹伯爵家の当主で、魔王候補だ」

「魔王になんて、俺がさせないぞ」

「まぁ、そこらはこの子は大きくなってから、家族会議かな」


浮竹十四郎。

伯爵家の当主であり、悪魔の花嫁であり、悪魔でもある。

京楽春水。

浮竹伯爵家の執事であり、召還された悪魔で魔王であり、京楽と浮竹の間にできた子の父であった。

二人は、子がある程度の年齢に達しても、若い姿のままで居続けた。

京楽が国中の人間の記憶を操作して、見た目が変わらないことに関して疑問を抱かないようにしていた。

「京楽父様、浮竹父様、いってきます」

我が子は、家庭教師をつけたりせず、平民と交じって学校で授業を受けさせて、育てていた。

テーブルマナーは社交界のダンス、身の振り方は執事である京楽が教えてくれた。

結ばれても、京楽はあくまで執事であった。

それは京楽のポリシーであり、この世の召還されてはじめてついた職業が執事であり、浮竹の身の回りの世話をするのが好きなせいでもあった。

悪魔京楽。

そっちに世界では魔王として名が売れている京楽だったが、今はただ、この幸せな安寧に浸っているのだった。

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