勇者と魔王シリーズ
「浮竹、かわいいよ」
「あ、京楽」
「じーーーーーーーー」
「うわぁ、新勇者、いつからいたんだ」
浮竹と京楽は睦み合いそうなところを、新勇者に見られていて、浮竹は真っ赤になり、京楽はあと一歩だったのにと、新勇者を睨む。
「私室まできて、覚悟はできているんだろうな?」
「子供ができちゃったんだ。どうしよう」
「「は?」」
浮竹も京楽も、新勇者の爆弾発言に目が点になる。
「お前が身籠ったのか?でも変態だからそれもあるかも‥‥‥‥」
「1年以上前から、時おり花街の遊女の元に通っていて、俺の子を産んだから責任とれって」
「最後にその遊女の元に行ったのは?」
「半年前だ。厚着していたので、腹の膨らみは分からなかった」
「それ、絶対騙されてるよ。高額な金を請求されたんでしょ?」
「金貨2千枚よこせって」
浮竹は、このままだといつまでも私室に入り込んできそうなので、新勇者と花街に行って、直談判することにした。
「ほ、本当よ!この子は新勇者の子なんだから!」
「証拠は?」
「そんなもの、ないに決まってるでしょう!私を最後に買ったのは新勇者よ!」
「じゃあ、その赤子のDNAを採取して、新勇者と比較しよう」
「や、やめてよ!」
「なぜだ?新勇者が父親なら、別に構わないだろう?」
遊女は舌打ちした。
「魔王連れてくるなんてありえない。せっかくいいカモになりそうだったのに」
「じゃあ、その赤子の父親は新勇者ではないんだな?」
「ええその通りよ。廓の主人との間にできた子よ」
「カラミティファイア」
浮竹は、にこにこ怒って、遊女の髪をアフロにした。
「きゃああああああ、あたしの髪がああああ」
「嘘をついた天罰だ」
魔王浮竹は、遊女に会うためにけっこうな金額を支払っていた。
騒ぎに聞きつけてやってきた用心棒の男たちは、相手が魔王であると知って怯む。
「手切れ金だ。もう新勇者に近づくな。新勇者もこの遊女に近づくな」
金貨5千枚の入った袋を遊女に投げつけて、浮竹と新勇者は魔王城に帰還した。
「惚れた。魔王なんかやめて、俺とにゃんにゃんしないか」
「何言ってるの、こいつ」
京楽が、顔をしかめる。
「女に酷い目にあわされて、錯乱しているだけだろう。ファイアボール」
「あれ、俺はどうしたんだ?あ、魔王今日はありがとう。お礼に、アガーペアダンスを踊ろう」
新勇者は衣服を脱ぎ捨て、股間に葉っぱ一枚の姿で怪しい踊りをしだした。
「汚物は消毒しなきゃ」
京楽が、魔法を唱える。
「キュアクリーン」
変態の新勇者は、綺麗にあとかたもなく消えて、京楽の背後から服をきた新勇者が姿を現す。
「あれ、俺何をしていたんだろう」
「ボクと浮竹の靴磨きを、遊女の件のお礼にしていたんだよ」
「そ、そうか。靴磨き、してくるな?終わったら、今日はもう帰るから」
「ふふ、浮竹、朝の続きを‥‥‥」
「あ、京楽、こんなところじゃだめだ」
「じゃあ、寝室に行こうか」
寝室では、新勇者が勝手に豪華な寝台の上で寝そべっていた。
「サンダーボルト」
「あぎゃぎゃぎゃ!お、俺はただ魔王浮竹にお礼に俺を抱いてもらおうと」
「誰が貴様なんぞ抱くかあああ!寝室に勝手に入ってくるな!ヘルインフェルノ」
「もぎゃああああああああああああ」
浮竹は、黒焦げになった新勇者を、窓から捨てた。
「その気がなくなった」
「ちっ、新勇者め!ギガヴォルックス!「
窓の外に消えて地面に伸びている新勇者に、京楽は怒ってとどめの魔法を繰り出す。
それでも新勇者は、死なないのであった。
「あ、京楽」
「じーーーーーーーー」
「うわぁ、新勇者、いつからいたんだ」
浮竹と京楽は睦み合いそうなところを、新勇者に見られていて、浮竹は真っ赤になり、京楽はあと一歩だったのにと、新勇者を睨む。
「私室まできて、覚悟はできているんだろうな?」
「子供ができちゃったんだ。どうしよう」
「「は?」」
浮竹も京楽も、新勇者の爆弾発言に目が点になる。
「お前が身籠ったのか?でも変態だからそれもあるかも‥‥‥‥」
「1年以上前から、時おり花街の遊女の元に通っていて、俺の子を産んだから責任とれって」
「最後にその遊女の元に行ったのは?」
「半年前だ。厚着していたので、腹の膨らみは分からなかった」
「それ、絶対騙されてるよ。高額な金を請求されたんでしょ?」
「金貨2千枚よこせって」
浮竹は、このままだといつまでも私室に入り込んできそうなので、新勇者と花街に行って、直談判することにした。
「ほ、本当よ!この子は新勇者の子なんだから!」
「証拠は?」
「そんなもの、ないに決まってるでしょう!私を最後に買ったのは新勇者よ!」
「じゃあ、その赤子のDNAを採取して、新勇者と比較しよう」
「や、やめてよ!」
「なぜだ?新勇者が父親なら、別に構わないだろう?」
遊女は舌打ちした。
「魔王連れてくるなんてありえない。せっかくいいカモになりそうだったのに」
「じゃあ、その赤子の父親は新勇者ではないんだな?」
「ええその通りよ。廓の主人との間にできた子よ」
「カラミティファイア」
浮竹は、にこにこ怒って、遊女の髪をアフロにした。
「きゃああああああ、あたしの髪がああああ」
「嘘をついた天罰だ」
魔王浮竹は、遊女に会うためにけっこうな金額を支払っていた。
騒ぎに聞きつけてやってきた用心棒の男たちは、相手が魔王であると知って怯む。
「手切れ金だ。もう新勇者に近づくな。新勇者もこの遊女に近づくな」
金貨5千枚の入った袋を遊女に投げつけて、浮竹と新勇者は魔王城に帰還した。
「惚れた。魔王なんかやめて、俺とにゃんにゃんしないか」
「何言ってるの、こいつ」
京楽が、顔をしかめる。
「女に酷い目にあわされて、錯乱しているだけだろう。ファイアボール」
「あれ、俺はどうしたんだ?あ、魔王今日はありがとう。お礼に、アガーペアダンスを踊ろう」
新勇者は衣服を脱ぎ捨て、股間に葉っぱ一枚の姿で怪しい踊りをしだした。
「汚物は消毒しなきゃ」
京楽が、魔法を唱える。
「キュアクリーン」
変態の新勇者は、綺麗にあとかたもなく消えて、京楽の背後から服をきた新勇者が姿を現す。
「あれ、俺何をしていたんだろう」
「ボクと浮竹の靴磨きを、遊女の件のお礼にしていたんだよ」
「そ、そうか。靴磨き、してくるな?終わったら、今日はもう帰るから」
「ふふ、浮竹、朝の続きを‥‥‥」
「あ、京楽、こんなところじゃだめだ」
「じゃあ、寝室に行こうか」
寝室では、新勇者が勝手に豪華な寝台の上で寝そべっていた。
「サンダーボルト」
「あぎゃぎゃぎゃ!お、俺はただ魔王浮竹にお礼に俺を抱いてもらおうと」
「誰が貴様なんぞ抱くかあああ!寝室に勝手に入ってくるな!ヘルインフェルノ」
「もぎゃああああああああああああ」
浮竹は、黒焦げになった新勇者を、窓から捨てた。
「その気がなくなった」
「ちっ、新勇者め!ギガヴォルックス!「
窓の外に消えて地面に伸びている新勇者に、京楽は怒ってとどめの魔法を繰り出す。
それでも新勇者は、死なないのであった。
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魔王と勇者8
浮竹と京楽は、同じ元の世界の孤児院出身だった。
当時の京楽は浅黒い肌に青い瞳、金色の髪をしていた。今の白い肌、黒い髪、鳶色の瞳ではなかった。
一緒に孤児院にいた時間は僅か2か月であったが、幼いながらに二人はとても仲がよかった。
京楽が、異世界に魔王となるために召喚される前までは。
今から600年前、時空をこえて京楽は召喚された。魔族の器に、その精神は宿り、元の肉体は粉々になった。
孤児院にいた時代から、京楽春水と名乗っているが、浮竹は昔のことすぎて覚えていないようであった。
「君が、ボクの花嫁になってくれると言っていた、幼い頃の冗談を本当にする。君を第三夫人にする」
浮竹は、すうすうとよく眠っていた。
その頬に触れて、京楽は愛しそうに浮竹に口づける。
「ん‥‥‥京楽?」
「ああ、起こしてしまったんだね。なんでもないから、もう一度寝なさい」
「俺は、お前と何か大事なことを忘れているような気がする」
「ボクのこと、覚えてるの!?」
「へ、なんだそれは。俺はこの世界ではじめて京楽と会ったぞ?」
京楽の期待は粉々にされたが、京楽は少し悲しそうな顔をするだけだった。
「うん、そうだね。勇者としてボクを討伐しにきたのが初めての出会いだね」
それは、この世界での浮竹との初めての出会いであった。
京楽は、浮竹を見た時運命を感じた。同じ異世界召喚をされたからだ。
浮竹の場合、大人になっていたが、すぐに幼い頃一緒にいた浮竹だと分かった。幼い頃から、京楽は浮竹のことが好きだった。
だから、異世界なのをいいことに、第三夫人‥‥‥‥実質、第一夫人と第二夫人のスラ子さんと骨子さんは魔王になるために存在が必要だっただけで、意思の疎通もできないしいてもいなくても関係なかった。
それでも、一応夫人なので今のままの形でいた。
浮竹が望むなら、第一夫人も第二夫人も消してしまうだろう。
「ねぇ、君が第三夫人になってくれないのは、ボクに第一夫人と第二夫人がいるから?」
「それもあるが‥‥‥」
「じゃあ、第一夫人と第二夫人は消す」
「え?」
京楽は、第一夫人のスラ子さんと第二夫人の骨子さんを召喚して、魔法で灰にしてしまった。
「ほら、もう第一夫人と第二夫人はないないよ?」
「ばか!」
浮竹は怒った。
「浮竹?」
「モンスターでも生きていて、お前の夫人なんだぞ。もっと大切にしろ!」
「そうは言っても、意思の疎通もできないんだよ」
「え、そうなのか?」
「前にも説明したと思うんだけど」
「すまん、聞いてなかった」
「じゃあ、第一夫人になって?」
京楽は、改めて浮竹にプロポーズした。
「そんなに俺と結婚したいのか?」
「うん」
「俺は勇者だぞ」
「勇者だろうと関係ない。君がいいんだ。君は覚えてないだろうけど、元の世界の孤児院で、2カ月間だけど一緒に過ごしてたんだよ」
「え?」
浮竹派驚く。
「ボクは6歳の頃異世界召喚されて、こっちの世界にきて精神が魔族に宿った。見た目はこんなだけど、元は褐色の肌、金の髪、青い瞳をしていた。名前は京楽春水のままだけど」
「あ‥‥‥京ちゃんか?」
「ボクのこと覚えてるの!?」
「うっすらと」
「ボクは時空をこえて召喚されたからね。今から600年前に。君まで異世界召喚されたと知った時、運命を感じたよ。改めて、好きだよ、浮竹。ボクの伴侶になって」
「京楽‥‥‥‥」
浮竹は、真っ赤になっていた。
「返事は?やっぱり、だめかな?」
「俺を」
「うん?」
「俺だけを見て、俺だけを一生愛してくれるなら、伴侶になる」
「浮竹!」
京楽は、浮竹を思い切り抱きしめた。
「その、すぐに体を許すとかはないからな」
「君がいてくれるなら、体なんてどうでもいい。まぁ、結ばれたくはあるけどね。ボクも男だし」
「俺も男だぞ」
「ふふ、この世界では同性同士が結婚することは珍しくないんだよ?」
「ああ、道理で同じ同性のカップルが多いわけだ」
「そうと決まったら、結婚式を挙げよう。騒がしいのは嫌だろうから、二人だけの結婚式を」
「二人だけなら、結婚式挙げてもいいかな」
こうして、数日が経ち、浮竹と京楽は結婚式を挙げた。
神父だけを呼んで、二人で愛を誓いあう。
「汝、浮竹十四郎は京楽春水を、病める時も健やかなる時も愛すると誓いますか?」
「誓う」
「汝、京楽取水は浮竹十四郎を、病める時も健やかなる時も愛すると誓いますか?」
「絶対に誓うよ」
リンゴーンと鐘が鳴り花びらが降ってきた。
空はオーロラ色に輝いていた。
「綺麗だな」
正装をした浮竹を見て、京楽は微笑む。
「浮竹のほうが数倍綺麗だよ?」
「は、恥ずかしいことを口にするな!」
ハリセンではたかれたが、京楽のにまにまは止まらない。
「これで、君はボクのものだ。愛し、守りぬくから」
「俺は守られてばかりの弱い存在じゃないぞ。勇者だし、俺がお前を守ってやる」
「く~~~嬉しいねぇ。お互いを守りあおう」
「俺たち、ちょっとやそっとのことでは守る必要なんて思うのだが」
京楽が首を横に振る。
「ボクが魔王である限り、聖女教の刺客がくる」
「ああ、前の大神官イブラヒムのような相手か。あれくらい、楽勝だろう」
「でも、もっと強いやつがきたら」
「俺とお前でやっつけるといい。俺は聖女教に勇者として認められていないし、聖女教になるつもりもない」
「浮竹、愛してる!大好きだよ!」
「お、俺も愛してるし好きだ」
「これが夢落ちだったりして」
「京楽、京楽いい加減起きろ」
「ガーン。本当の夢落ちだった」
「何を言っているんだ。結婚しただろう?今日から新婚旅行に、トエイ帝国まで行く予定だろうが」
「夢落ちじゃなかった!」
京楽はがばりと起き上がると、浮竹を抱きしめてキスをする。
さらにその先をしようとして、浮竹にハリセンではたかれた。
「結婚はしたが、まだ体は許さない」
「え~けち~~」
「結婚が1カ月続いたら、抱いてもいい」
「まじで?」
浮竹は真っ赤になって、前言撤回をしようとする。
「浮竹が言ったんだからね。1カ月したら、君を抱くよ」
「はう」
浮竹は、己の軽はずみな言動を後悔するのであった。
当時の京楽は浅黒い肌に青い瞳、金色の髪をしていた。今の白い肌、黒い髪、鳶色の瞳ではなかった。
一緒に孤児院にいた時間は僅か2か月であったが、幼いながらに二人はとても仲がよかった。
京楽が、異世界に魔王となるために召喚される前までは。
今から600年前、時空をこえて京楽は召喚された。魔族の器に、その精神は宿り、元の肉体は粉々になった。
孤児院にいた時代から、京楽春水と名乗っているが、浮竹は昔のことすぎて覚えていないようであった。
「君が、ボクの花嫁になってくれると言っていた、幼い頃の冗談を本当にする。君を第三夫人にする」
浮竹は、すうすうとよく眠っていた。
その頬に触れて、京楽は愛しそうに浮竹に口づける。
「ん‥‥‥京楽?」
「ああ、起こしてしまったんだね。なんでもないから、もう一度寝なさい」
「俺は、お前と何か大事なことを忘れているような気がする」
「ボクのこと、覚えてるの!?」
「へ、なんだそれは。俺はこの世界ではじめて京楽と会ったぞ?」
京楽の期待は粉々にされたが、京楽は少し悲しそうな顔をするだけだった。
「うん、そうだね。勇者としてボクを討伐しにきたのが初めての出会いだね」
それは、この世界での浮竹との初めての出会いであった。
京楽は、浮竹を見た時運命を感じた。同じ異世界召喚をされたからだ。
浮竹の場合、大人になっていたが、すぐに幼い頃一緒にいた浮竹だと分かった。幼い頃から、京楽は浮竹のことが好きだった。
だから、異世界なのをいいことに、第三夫人‥‥‥‥実質、第一夫人と第二夫人のスラ子さんと骨子さんは魔王になるために存在が必要だっただけで、意思の疎通もできないしいてもいなくても関係なかった。
それでも、一応夫人なので今のままの形でいた。
浮竹が望むなら、第一夫人も第二夫人も消してしまうだろう。
「ねぇ、君が第三夫人になってくれないのは、ボクに第一夫人と第二夫人がいるから?」
「それもあるが‥‥‥」
「じゃあ、第一夫人と第二夫人は消す」
「え?」
京楽は、第一夫人のスラ子さんと第二夫人の骨子さんを召喚して、魔法で灰にしてしまった。
「ほら、もう第一夫人と第二夫人はないないよ?」
「ばか!」
浮竹は怒った。
「浮竹?」
「モンスターでも生きていて、お前の夫人なんだぞ。もっと大切にしろ!」
「そうは言っても、意思の疎通もできないんだよ」
「え、そうなのか?」
「前にも説明したと思うんだけど」
「すまん、聞いてなかった」
「じゃあ、第一夫人になって?」
京楽は、改めて浮竹にプロポーズした。
「そんなに俺と結婚したいのか?」
「うん」
「俺は勇者だぞ」
「勇者だろうと関係ない。君がいいんだ。君は覚えてないだろうけど、元の世界の孤児院で、2カ月間だけど一緒に過ごしてたんだよ」
「え?」
浮竹派驚く。
「ボクは6歳の頃異世界召喚されて、こっちの世界にきて精神が魔族に宿った。見た目はこんなだけど、元は褐色の肌、金の髪、青い瞳をしていた。名前は京楽春水のままだけど」
「あ‥‥‥京ちゃんか?」
「ボクのこと覚えてるの!?」
「うっすらと」
「ボクは時空をこえて召喚されたからね。今から600年前に。君まで異世界召喚されたと知った時、運命を感じたよ。改めて、好きだよ、浮竹。ボクの伴侶になって」
「京楽‥‥‥‥」
浮竹は、真っ赤になっていた。
「返事は?やっぱり、だめかな?」
「俺を」
「うん?」
「俺だけを見て、俺だけを一生愛してくれるなら、伴侶になる」
「浮竹!」
京楽は、浮竹を思い切り抱きしめた。
「その、すぐに体を許すとかはないからな」
「君がいてくれるなら、体なんてどうでもいい。まぁ、結ばれたくはあるけどね。ボクも男だし」
「俺も男だぞ」
「ふふ、この世界では同性同士が結婚することは珍しくないんだよ?」
「ああ、道理で同じ同性のカップルが多いわけだ」
「そうと決まったら、結婚式を挙げよう。騒がしいのは嫌だろうから、二人だけの結婚式を」
「二人だけなら、結婚式挙げてもいいかな」
こうして、数日が経ち、浮竹と京楽は結婚式を挙げた。
神父だけを呼んで、二人で愛を誓いあう。
「汝、浮竹十四郎は京楽春水を、病める時も健やかなる時も愛すると誓いますか?」
「誓う」
「汝、京楽取水は浮竹十四郎を、病める時も健やかなる時も愛すると誓いますか?」
「絶対に誓うよ」
リンゴーンと鐘が鳴り花びらが降ってきた。
空はオーロラ色に輝いていた。
「綺麗だな」
正装をした浮竹を見て、京楽は微笑む。
「浮竹のほうが数倍綺麗だよ?」
「は、恥ずかしいことを口にするな!」
ハリセンではたかれたが、京楽のにまにまは止まらない。
「これで、君はボクのものだ。愛し、守りぬくから」
「俺は守られてばかりの弱い存在じゃないぞ。勇者だし、俺がお前を守ってやる」
「く~~~嬉しいねぇ。お互いを守りあおう」
「俺たち、ちょっとやそっとのことでは守る必要なんて思うのだが」
京楽が首を横に振る。
「ボクが魔王である限り、聖女教の刺客がくる」
「ああ、前の大神官イブラヒムのような相手か。あれくらい、楽勝だろう」
「でも、もっと強いやつがきたら」
「俺とお前でやっつけるといい。俺は聖女教に勇者として認められていないし、聖女教になるつもりもない」
「浮竹、愛してる!大好きだよ!」
「お、俺も愛してるし好きだ」
「これが夢落ちだったりして」
「京楽、京楽いい加減起きろ」
「ガーン。本当の夢落ちだった」
「何を言っているんだ。結婚しただろう?今日から新婚旅行に、トエイ帝国まで行く予定だろうが」
「夢落ちじゃなかった!」
京楽はがばりと起き上がると、浮竹を抱きしめてキスをする。
さらにその先をしようとして、浮竹にハリセンではたかれた。
「結婚はしたが、まだ体は許さない」
「え~けち~~」
「結婚が1カ月続いたら、抱いてもいい」
「まじで?」
浮竹は真っ赤になって、前言撤回をしようとする。
「浮竹が言ったんだからね。1カ月したら、君を抱くよ」
「はう」
浮竹は、己の軽はずみな言動を後悔するのであった。
魔王と勇者と7
「君は魔力が高いのに、魔法が使えない。それは基礎の魔法構築が間違っているからだよ。今日は、君に魔法を覚えてもらう」
「一応、ファイアアローくらいなら使えるぞ」
「唱えてごらん」
「ファイアアロー」
浮竹が魔法で出した魔法の炎の矢は、のろのろと地面をのたくった後、「ぎええええ」と叫んで消えていった。
「ほら、使えただろう?」
京楽は、笑い死にしかけていた。
「失礼なやつだな。使えと言ったのはお前だぞ、京楽」
「矢がのろのろの上に、どこをどうしたら悲鳴をあげて消えるんだろう」
「いや、これが普通じゃないのか?アリーナ王国で魔法の練習もしたけど、これでいいって言われたぞ」
「それ、絶対これは手に負えないって、遠巻きに言われてるようなもんだよ」
「じゃあ、京楽のファイアアローを見せてくれ」
京楽と浮竹は、魔王城で魔法を使うわけにもいかないので、近くの森にきていた。
「ファイアアロー」
京楽が唱えたファイアアローは、幾本もの木を貫き燃やしていく。
「す、すごいな。こんな魔法だったのか」
「ボクの場合、魔王だから威力は高いけど、基本炎の矢の形となって対象物に飛んでいく魔法だよ」
「俺の魔法の腕は、自慢じゃないがへっぽこだからな」
「ほんと、自慢することじゃないね。でももったいないよ。せっかく勇者として高い魔力を持っているのに、魔法が使えないなんて。君の場合、初めに教えた師が悪かったんだろうね」
「ううむ」
「まずは魔法の構築からスタートだよ。瞑想から始めようか」
幾度も違うと否定されて、それでも浮竹は基礎の魔法構築を続ける。
その日は、一日中魔法構築のやり直しで終わった。
次の日も、瞑想から入る。京楽が細かに教える魔法構築の仕方を何とかマスターし、浮竹は魔法を唱えてみた。
「ファイアアロー」
相変わらず炎の矢はうねうねしていたが、木に向かって飛んでいき、その木を燃やした。
「すごい!俺でも魔法が使えたぞ!」
「素質はあるようだから、もっといっぱい練習しよう。きっと、その魔力の高さなら禁忌の魔法さえ唱えれる」
「え、そんな物騒な魔法は覚えないぞ」
「まぁ、基本属性の上位魔法を習得するまで、毎日特訓だよ」
浮竹は筋がよく、火土風水の上位魔法を習得するまで1か月もかからなかった。
「嘘みたいだ。俺が魔法使えるなんて」
「あいかわず、魔法はうねうねしているけど、まぁ合格かな」
「やった!」
「その、魔法がうねうねするのはなんでだい?」
「分からん。最初に契約した精霊が名もなき精霊だったせいかも」
「名もなき精霊‥‥‥ああ、悪戯好きのアルカンテスだね。それなら納得だ。アルカンテスは精霊だけど、悪戯好きで契約した相手の魔法をおかしくさせる。今すぐ契約破棄しよう」
「分かった」
浮竹は、アルカンテスを召喚した。
「なんぼのもんやねんわれ。一度契約したんだ、取り消しはきかへんで」
「へぇ。そんなに、死にたいの?」
京楽が、魔力をこめた手でアルカンテスの頭をわしづかむ。
「ひええええ、魔王京楽!う、浮竹との契約は破棄するから、命ばかりはお助けをおおおお」
こうして、浮竹はアルカンテスとの契約を白紙にして、もう一度ファイアアローを唱えた。
「ファイアアロー」
炎の矢は、くねくね踊ってから、対象であった木を燃やす。
「あれぇ、なんでだ?ましになったけど、やっぱり変だ」
「あちゃあ。異界から召喚されたときに、ゲートに脳の一部がやられたのかもね」
「俺の魔法は、一生こうなのか?」
「うん」
「くすん。勇者の魔法なのにださい」
浮竹は、涙を滲ませる。
「ま、まぁちょっと個性的だけどちゃんと魔法としては成り立っているから」
「本当か?」
「うん。ファイアアローも、ちゃんと木を燃やしたでしょ?」
「ああ」
「もっと魔力をこめたら、もっと大きな魔法になる。ただ、浮竹の場合は怖いから、必要な時以外は魔法を使わないでね」
「せっかく訓練したのに」
京楽は、浮竹の頭を撫でる。
「モンスター退治の時とかなら使っていいから」
「本当か?」
「うん」
「じゃあ、もうちょっと魔法の腕、磨くな?」
「アルカンテスと契約できたってことは、精霊魔法も素質ありそうだね。シルフ、ウンディーネ、サラマンダー、ノーム、顕現せよ」
4匹の精霊が京楽の召喚によって姿を現す。
「契約できるか、ためしてごらん」
「どうすればいいんだ?」
「精霊に触れながら、契約の呪文を唱えるんだよ」
見本を京楽から見せてもらい、浮竹は4匹の精霊との契約に成功した。
「わお。4属性の適正ありかい。さすが勇者」
「契約できたってことは、召喚もできるんだよな?」
「うん。召喚してみる?」
「ああ」
浮竹は、風の精霊シルフを召喚した。
すると、出てきたのは風の精霊王だった。
「え、なんで精霊王が。ボクだって契約できてないのに」
「汝は、4大精霊王との契約を完了させた。下位精霊との契約であったが、その力は精霊王と契約するにふさわしいと判断して、勝手に契約させてもらった」
「わあ、なんかすごいことになってる!」
「浮竹はエレメンタルマスターなんだね。勇者だけど」
「そうなのか?」
「ボクは、魔王だけど職は縁者だよ。魔王や勇者っていうのは、ただの役職だからね」
「風の精霊王、浮竹を今後も頼むよ」
「承知した」
そう言って、風の精霊王は消えていった。
「おなかすいた」
ぐ~と浮竹が腹をならす。
「精霊の使役は魔力だけでなく、生命エネルギーも使うから、お腹もすくよ。無意味に精霊王を呼び出しちゃだめだよ。彼らはプライドが高いから」
「分かった。飯にしよう。腹減った」
「浮竹は、マイペースでいいね」
精霊王と契約できたことを自慢しようともしない。
浮竹と京楽は、転移魔法で魔王城まで戻り、少し早めの夕食をとった。
浮竹は、よく食べた。
「ちょっと、食べすぎじゃない?」
「腹が減るんだ]
「うーん、一気に4大精霊王と契約しちゃったせいだろうね。しばらく空腹が続くけど、あんまり食べ過ぎてお腹壊さないようにね」
「ああ、分かっている」
こうして、浮竹の魔法の修行は終わった。
魔法は普通に使えるが、ちょっと変で、エレメンタルマスターとなった。
エレメンタルマスターが貴重な存在であると知るのは、また別の機会であった。
「一応、ファイアアローくらいなら使えるぞ」
「唱えてごらん」
「ファイアアロー」
浮竹が魔法で出した魔法の炎の矢は、のろのろと地面をのたくった後、「ぎええええ」と叫んで消えていった。
「ほら、使えただろう?」
京楽は、笑い死にしかけていた。
「失礼なやつだな。使えと言ったのはお前だぞ、京楽」
「矢がのろのろの上に、どこをどうしたら悲鳴をあげて消えるんだろう」
「いや、これが普通じゃないのか?アリーナ王国で魔法の練習もしたけど、これでいいって言われたぞ」
「それ、絶対これは手に負えないって、遠巻きに言われてるようなもんだよ」
「じゃあ、京楽のファイアアローを見せてくれ」
京楽と浮竹は、魔王城で魔法を使うわけにもいかないので、近くの森にきていた。
「ファイアアロー」
京楽が唱えたファイアアローは、幾本もの木を貫き燃やしていく。
「す、すごいな。こんな魔法だったのか」
「ボクの場合、魔王だから威力は高いけど、基本炎の矢の形となって対象物に飛んでいく魔法だよ」
「俺の魔法の腕は、自慢じゃないがへっぽこだからな」
「ほんと、自慢することじゃないね。でももったいないよ。せっかく勇者として高い魔力を持っているのに、魔法が使えないなんて。君の場合、初めに教えた師が悪かったんだろうね」
「ううむ」
「まずは魔法の構築からスタートだよ。瞑想から始めようか」
幾度も違うと否定されて、それでも浮竹は基礎の魔法構築を続ける。
その日は、一日中魔法構築のやり直しで終わった。
次の日も、瞑想から入る。京楽が細かに教える魔法構築の仕方を何とかマスターし、浮竹は魔法を唱えてみた。
「ファイアアロー」
相変わらず炎の矢はうねうねしていたが、木に向かって飛んでいき、その木を燃やした。
「すごい!俺でも魔法が使えたぞ!」
「素質はあるようだから、もっといっぱい練習しよう。きっと、その魔力の高さなら禁忌の魔法さえ唱えれる」
「え、そんな物騒な魔法は覚えないぞ」
「まぁ、基本属性の上位魔法を習得するまで、毎日特訓だよ」
浮竹は筋がよく、火土風水の上位魔法を習得するまで1か月もかからなかった。
「嘘みたいだ。俺が魔法使えるなんて」
「あいかわず、魔法はうねうねしているけど、まぁ合格かな」
「やった!」
「その、魔法がうねうねするのはなんでだい?」
「分からん。最初に契約した精霊が名もなき精霊だったせいかも」
「名もなき精霊‥‥‥ああ、悪戯好きのアルカンテスだね。それなら納得だ。アルカンテスは精霊だけど、悪戯好きで契約した相手の魔法をおかしくさせる。今すぐ契約破棄しよう」
「分かった」
浮竹は、アルカンテスを召喚した。
「なんぼのもんやねんわれ。一度契約したんだ、取り消しはきかへんで」
「へぇ。そんなに、死にたいの?」
京楽が、魔力をこめた手でアルカンテスの頭をわしづかむ。
「ひええええ、魔王京楽!う、浮竹との契約は破棄するから、命ばかりはお助けをおおおお」
こうして、浮竹はアルカンテスとの契約を白紙にして、もう一度ファイアアローを唱えた。
「ファイアアロー」
炎の矢は、くねくね踊ってから、対象であった木を燃やす。
「あれぇ、なんでだ?ましになったけど、やっぱり変だ」
「あちゃあ。異界から召喚されたときに、ゲートに脳の一部がやられたのかもね」
「俺の魔法は、一生こうなのか?」
「うん」
「くすん。勇者の魔法なのにださい」
浮竹は、涙を滲ませる。
「ま、まぁちょっと個性的だけどちゃんと魔法としては成り立っているから」
「本当か?」
「うん。ファイアアローも、ちゃんと木を燃やしたでしょ?」
「ああ」
「もっと魔力をこめたら、もっと大きな魔法になる。ただ、浮竹の場合は怖いから、必要な時以外は魔法を使わないでね」
「せっかく訓練したのに」
京楽は、浮竹の頭を撫でる。
「モンスター退治の時とかなら使っていいから」
「本当か?」
「うん」
「じゃあ、もうちょっと魔法の腕、磨くな?」
「アルカンテスと契約できたってことは、精霊魔法も素質ありそうだね。シルフ、ウンディーネ、サラマンダー、ノーム、顕現せよ」
4匹の精霊が京楽の召喚によって姿を現す。
「契約できるか、ためしてごらん」
「どうすればいいんだ?」
「精霊に触れながら、契約の呪文を唱えるんだよ」
見本を京楽から見せてもらい、浮竹は4匹の精霊との契約に成功した。
「わお。4属性の適正ありかい。さすが勇者」
「契約できたってことは、召喚もできるんだよな?」
「うん。召喚してみる?」
「ああ」
浮竹は、風の精霊シルフを召喚した。
すると、出てきたのは風の精霊王だった。
「え、なんで精霊王が。ボクだって契約できてないのに」
「汝は、4大精霊王との契約を完了させた。下位精霊との契約であったが、その力は精霊王と契約するにふさわしいと判断して、勝手に契約させてもらった」
「わあ、なんかすごいことになってる!」
「浮竹はエレメンタルマスターなんだね。勇者だけど」
「そうなのか?」
「ボクは、魔王だけど職は縁者だよ。魔王や勇者っていうのは、ただの役職だからね」
「風の精霊王、浮竹を今後も頼むよ」
「承知した」
そう言って、風の精霊王は消えていった。
「おなかすいた」
ぐ~と浮竹が腹をならす。
「精霊の使役は魔力だけでなく、生命エネルギーも使うから、お腹もすくよ。無意味に精霊王を呼び出しちゃだめだよ。彼らはプライドが高いから」
「分かった。飯にしよう。腹減った」
「浮竹は、マイペースでいいね」
精霊王と契約できたことを自慢しようともしない。
浮竹と京楽は、転移魔法で魔王城まで戻り、少し早めの夕食をとった。
浮竹は、よく食べた。
「ちょっと、食べすぎじゃない?」
「腹が減るんだ]
「うーん、一気に4大精霊王と契約しちゃったせいだろうね。しばらく空腹が続くけど、あんまり食べ過ぎてお腹壊さないようにね」
「ああ、分かっている」
こうして、浮竹の魔法の修行は終わった。
魔法は普通に使えるが、ちょっと変で、エレメンタルマスターとなった。
エレメンタルマスターが貴重な存在であると知るのは、また別の機会であった。
魔王と勇者と6
浮竹が京楽の元にきて3か月が経とうとしていた。
変わらず京楽は第三夫人にとプロポーズをして、浮竹が断る毎日だった。
「はぁ。ボクってそんなに魅力ないかな」
「か、かっこいいとは思うぞ。ただ、第三夫人になるってことは、京楽のものになるってことだろう?まだ、その気にはなれない」
「まだってことは、少しは考えてくれてるんだね?」
「す、少しだけだからな!」
ツンデレな浮竹をかわいく思い、京楽は抱きしめて口づけた。
「今の関係、親友以上恋人未満だね」
「そ、そうだな」
「少し脈ありと分かって元気でてきた」
「お前はいつでも元気だろう」
「それが、今日は朝から頭が痛くて。せきもでるし」
浮竹は、京楽のおでこにおでこをひっつけた。
「熱がある。多分風邪だな。おとつい、ずぶ濡れで帰ってきただろう」
「ああ、やっぱそのせいか。風邪だと思ったら悪寒がしてきた」
浮竹は、京楽の手をひっぱって寝室に連れてくる。
「今日は執務は放置して寝ていろ」
「でも」
「いいから、寝てろ。おかゆを作ってくるから、薬を持ってくるから飲むんだぞ」
「え、浮竹が作ってくれるの?」
「ああ。厨房を借りるぞ」
「君の手料理なんてはじめてだ」
「一人の頃は自炊してたからな。家事にはそれなりに自信がある。ただ、魔王城では人が雇われていて仕事を奪うわけにもいかないからな」
浮竹は、厨房をかりて卵粥を作った。
「ほら、作ってきたぞ」
「食べさせて?」
「一人で食べれるだろう?」
「ボクは病人なんだよ。優しくしてよ」
「仕方ないやつだなぁ」
浮竹は、卵粥をスプーンですくうと、ふうふうと冷まして、京楽の口元に持っていく。
「うん、思っていた以上においしい」
「そうか。口にあっているならよかった」
京楽は全部浮竹に食べさせてもらって、薬を飲んで横になる。
「眠気がこない」
「スリープの魔法をかけてやろう。魔法はだめだめだが、スリープの魔法くらいなら使える」
「うん、お願い」
浮竹は、京楽にスリープの魔法をかける。京楽の髪がアフロになった。
「あ、あれ?」
「浮竹‥‥‥魔法の構築激しく間違ってる。自分でスリープの魔法かけて寝るよ」
京楽は、アフロを癒しの魔法で治すと、自分にスリープの魔法をかけて眠ってしまった。
「はぁ。なんで俺の魔法の腕はこうなんだ」
一人、浮竹はため息をつくのであった。
そんなある日、魔王城に訪問客というか刺客がやってきた。
「私は聖女教の大神官イブラヒムである。この世界に巣くう悪の権化である魔王を倒しに来た。さぁ、魔王勝負だ!」
「まためんどくさい‥‥‥」
「魔王が出てこないなら、兵士から駆除してやる」
幾人かの兵士を殺して、イブラヒムは怒った京楽を相手にすることになる。
「アルティメットジャッジメント」
「ダークシールド」
聖なる魔法攻撃を、京楽は闇の盾で防ぐ。
「ホーリーライト」
「死んでしまえ。ヘルズゲート」
「うわああああああ」
地獄の扉が開く。
イブラヒムは吸い込まれていき、後には何も残らなかった。
「リザレクション」
復活の魔法を使い、イブラヒムにやられた兵士たちを蘇生させる。
浮竹は、見ているだけだった。
これは聖女教と魔王京楽の問題である。勇者である浮竹が出ていく場面ではない。
「聖女教、いよいよ本格的に動き出したみたいだね」
「そうだな」
「今の聖女は17代目のアナスタスシア。いずれ、決着をつける日がくるだろうね」
「聖女を殺すのか?」
『女神でもあるから、殺すことはできないよ。ただ、手を出してこないように痛めつける必要があるけどね」
「そうか‥‥‥」
浮竹は、聖女教は嫌いではなかった。
ただ魔王排斥を掲げているので、そこはどうかと思っていた。
京楽は税を安くとりたて、自分から民草の意見を聞き、月に一度無料でけがや病気を治癒する。魔王というより、聖者だ。
「京楽は、いい魔王なのにな」
「仕方ないよ。魔王は魔王。聖女教の敵だから」
「人と魔族も仲良く住んでいるんだ。聖女教も変わればいいのに」
「ボクの代だけだからね。世界征服しようとしない魔王は」
「そうだな。今ままでの魔王は残忍だったから」
「いつか、聖女アナスタシアに分かってもらいたいね。今の魔王は排斥するほど酷くないって」
浮竹派頷いた。
「いつか、分かりあえるいいな?」
「そうだね」
「あら。イブラヒムは死んでしまったの。やっぱり、大神官程度では物足りないようね。どう思うの、藍染」
「君の好きなように動いていい。この賢者の石と、魔王京楽のもつ世界樹の雫を手に入れれば、私は魔神となれる」
「魔王京楽は、本当に世界樹の雫をもっているの?世界樹は枯れて400年は経つのよ?」
「あの魔王は600年は生きている。世界樹の雫を必ずもっているはずだ」
「まぁいいわ。もう少し、様子を見ましょう。魔王京楽が世界にとって脅威である限り、排除はし続けなければ」
「愛しているよ、女神であり聖女であるアナスタシア」
「私も愛しているわ、藍染。お腹の子は無事生まれてきそうよ」
「それは何よりだ」
聖女アナスタシアが、藍染が元魔王だと知っていた。その上で交わり、子を妊娠したのであった。
聖女アナスタシアの子は、聖人と認定されるであろう。
たとえ、父親が魔族でも。
変わらず京楽は第三夫人にとプロポーズをして、浮竹が断る毎日だった。
「はぁ。ボクってそんなに魅力ないかな」
「か、かっこいいとは思うぞ。ただ、第三夫人になるってことは、京楽のものになるってことだろう?まだ、その気にはなれない」
「まだってことは、少しは考えてくれてるんだね?」
「す、少しだけだからな!」
ツンデレな浮竹をかわいく思い、京楽は抱きしめて口づけた。
「今の関係、親友以上恋人未満だね」
「そ、そうだな」
「少し脈ありと分かって元気でてきた」
「お前はいつでも元気だろう」
「それが、今日は朝から頭が痛くて。せきもでるし」
浮竹は、京楽のおでこにおでこをひっつけた。
「熱がある。多分風邪だな。おとつい、ずぶ濡れで帰ってきただろう」
「ああ、やっぱそのせいか。風邪だと思ったら悪寒がしてきた」
浮竹は、京楽の手をひっぱって寝室に連れてくる。
「今日は執務は放置して寝ていろ」
「でも」
「いいから、寝てろ。おかゆを作ってくるから、薬を持ってくるから飲むんだぞ」
「え、浮竹が作ってくれるの?」
「ああ。厨房を借りるぞ」
「君の手料理なんてはじめてだ」
「一人の頃は自炊してたからな。家事にはそれなりに自信がある。ただ、魔王城では人が雇われていて仕事を奪うわけにもいかないからな」
浮竹は、厨房をかりて卵粥を作った。
「ほら、作ってきたぞ」
「食べさせて?」
「一人で食べれるだろう?」
「ボクは病人なんだよ。優しくしてよ」
「仕方ないやつだなぁ」
浮竹は、卵粥をスプーンですくうと、ふうふうと冷まして、京楽の口元に持っていく。
「うん、思っていた以上においしい」
「そうか。口にあっているならよかった」
京楽は全部浮竹に食べさせてもらって、薬を飲んで横になる。
「眠気がこない」
「スリープの魔法をかけてやろう。魔法はだめだめだが、スリープの魔法くらいなら使える」
「うん、お願い」
浮竹は、京楽にスリープの魔法をかける。京楽の髪がアフロになった。
「あ、あれ?」
「浮竹‥‥‥魔法の構築激しく間違ってる。自分でスリープの魔法かけて寝るよ」
京楽は、アフロを癒しの魔法で治すと、自分にスリープの魔法をかけて眠ってしまった。
「はぁ。なんで俺の魔法の腕はこうなんだ」
一人、浮竹はため息をつくのであった。
そんなある日、魔王城に訪問客というか刺客がやってきた。
「私は聖女教の大神官イブラヒムである。この世界に巣くう悪の権化である魔王を倒しに来た。さぁ、魔王勝負だ!」
「まためんどくさい‥‥‥」
「魔王が出てこないなら、兵士から駆除してやる」
幾人かの兵士を殺して、イブラヒムは怒った京楽を相手にすることになる。
「アルティメットジャッジメント」
「ダークシールド」
聖なる魔法攻撃を、京楽は闇の盾で防ぐ。
「ホーリーライト」
「死んでしまえ。ヘルズゲート」
「うわああああああ」
地獄の扉が開く。
イブラヒムは吸い込まれていき、後には何も残らなかった。
「リザレクション」
復活の魔法を使い、イブラヒムにやられた兵士たちを蘇生させる。
浮竹は、見ているだけだった。
これは聖女教と魔王京楽の問題である。勇者である浮竹が出ていく場面ではない。
「聖女教、いよいよ本格的に動き出したみたいだね」
「そうだな」
「今の聖女は17代目のアナスタスシア。いずれ、決着をつける日がくるだろうね」
「聖女を殺すのか?」
『女神でもあるから、殺すことはできないよ。ただ、手を出してこないように痛めつける必要があるけどね」
「そうか‥‥‥」
浮竹は、聖女教は嫌いではなかった。
ただ魔王排斥を掲げているので、そこはどうかと思っていた。
京楽は税を安くとりたて、自分から民草の意見を聞き、月に一度無料でけがや病気を治癒する。魔王というより、聖者だ。
「京楽は、いい魔王なのにな」
「仕方ないよ。魔王は魔王。聖女教の敵だから」
「人と魔族も仲良く住んでいるんだ。聖女教も変わればいいのに」
「ボクの代だけだからね。世界征服しようとしない魔王は」
「そうだな。今ままでの魔王は残忍だったから」
「いつか、聖女アナスタシアに分かってもらいたいね。今の魔王は排斥するほど酷くないって」
浮竹派頷いた。
「いつか、分かりあえるいいな?」
「そうだね」
「あら。イブラヒムは死んでしまったの。やっぱり、大神官程度では物足りないようね。どう思うの、藍染」
「君の好きなように動いていい。この賢者の石と、魔王京楽のもつ世界樹の雫を手に入れれば、私は魔神となれる」
「魔王京楽は、本当に世界樹の雫をもっているの?世界樹は枯れて400年は経つのよ?」
「あの魔王は600年は生きている。世界樹の雫を必ずもっているはずだ」
「まぁいいわ。もう少し、様子を見ましょう。魔王京楽が世界にとって脅威である限り、排除はし続けなければ」
「愛しているよ、女神であり聖女であるアナスタシア」
「私も愛しているわ、藍染。お腹の子は無事生まれてきそうよ」
「それは何よりだ」
聖女アナスタシアが、藍染が元魔王だと知っていた。その上で交わり、子を妊娠したのであった。
聖女アナスタシアの子は、聖人と認定されるであろう。
たとえ、父親が魔族でも。
魔王と勇者と5
勇者浮竹は、魔王京楽の城で厄介になっている。
魔王の派閥に入り、勇者としては人々に認められてはいるが、愛用していた勇者の証でもある聖剣エクスカリバーには見棄てられて、エクスカリバーはポンコツになり、世界でも最大の宗教である聖女教には未だに勇者として認められていない。
他にも勇者は浮竹を入れて三人存在した。
北の勇者浮竹十四郎、南の勇者黒崎一護、東の勇者朽木白哉であった。
南の勇者黒崎一護と東の勇者朽木白哉は聖女教で正式な勇者として認められており、何度か京楽と会っているが、京楽が平和主義者の魔王であるため、討伐にまでは至っていない。
聖女教でも、魔王排斥は当たり前であったが、魔王が京楽になってから、表だって京楽を退治しようとする者はいなかった。
それでも、魔王であるために時折刺客がくるが、魔王京楽の力は本物で、勇者にも引けをとらないので返り討ちにしていた。
「浮竹、朝だよ起きて」
「うーん、あと10分」
「もう昼前だよ。いい加減に起きないと、襲っちゃうよ?」
「お、起きる!」
浮竹は、がばりと起きて時計を見た。
11時20分をさしていた。
「うーん、昨日夜遅くまでモンスター退治していたせいで、寝過ごしてしまった」
「浮竹には感謝してるよ。本来ならボクが兵を派遣しなきゃいけないし、兵たちも無事に帰ってくる保証はない。それを、浮竹が担ってくれてるおかげで、兵たちは未開の地の開墾をできる。基本自給自足がモットーだからね、魔王軍は」
「魔王城にも広い畑が広がっているからな。何も城で野菜を育てなくてもいいとは思うが」
「無駄に広い薔薇園なんかを作るよりは、有意義でしょ?」
「まぁな。おまけに魔王自らが収穫するときている」
浮竹の中にあった魔王像は、京楽の存在で粉々になっていた。
「さて、朝食を兼ねた昼食をとったら、浮竹も野菜の収穫だよ」
「分かった」
質素な生活を送っていた時には考えられないような、豪華な昼食を食べて、浮竹は京楽と一緒に魔王城の畑の野菜を収穫した。
「レタスとトマトときゅうりがよく育ってるね。浮竹の意見を聞いて、肥料を変えたおかげかな」
「質のいい土地のわりには、へぼい肥料を使っていたからな」
「さて、今日もしばらく執務は大臣たちに任せているから、何をしよう?」
「カララッカに行ってみたい。白竜が出るそうだ。背中に乗せてもらいたい」
「カララッカか。転移魔法を使えばすぐに行けるから、お茶をしてから行こうか?」
「ああ」
浮竹と京楽は、最高級茶葉のアッサムの紅茶を飲みながら、専属シェフのつくったラズベリータルトを食べた。
そして、京楽の転移魔法でカララッカにやってきた。
北の地域にある魔王領の中でもさらに北にあるので、雪が降っていた。
「ほら、防寒具」
京楽は、アイテムポケットからコートとマフラーと手袋を出して、浮竹に与えた。
「お前の分は?」
「ボクは体温を自由に調整できるから、寒くないの。魔族の中でも、ボクは変わっているからね」
「あ、白竜だ!」
空を飛んでいく白竜を見上げる。
「おおい、ゼイアス!」
「む、魔王京楽か」
白竜は、浮竹のすぐ目の前に降りてきた。
「は、白竜と知り合いなのか?」
「うん。これでも結構長い時を生きているからね。他にもドラゴンの知り合いはいるよ」
「すごいな」
「ゼイアス、こっちの子はボクの派閥に入った勇者浮竹。君の背中に乗りたいそうだよ。乗せてあげてくれないかな?」
「魔王の頼みなら、無碍にはできんな。乗れ、人間の勇者よ」
「うわぁ」
浮竹は、はじめてドラゴンを見た。その広い背中に乗って、空を翔ける白竜と一緒になって空を飛んだ。
「すごいぞ、京楽!」
「人の子よ、勇者でありながら魔王と共にいるのは、いろいろ問題もあるだろうが、我の古き友である京楽と仲良くしてやってほしい」
「ああ、分かった」
白竜ゼイアスは、京楽のことを心配していた。
聖女教がある限り、魔王である京楽は完全に人と打ち解けあえない。
「京楽は、俺の大切な友人だ」
「その言葉を聞いて安心した」
ゼイアスの背から降りた浮竹は、京楽に微笑みかける。
「俺たちは、友人だよな?」
「ボクは、君を第3夫人にしたいんだけどね。まぁ、今の関係は友人かな」
「このゼイアス、魔王によき人の友ができて安心した。また我の背に乗りたくなったら、遊びにくるといい。歓迎しよう」
白竜ゼイアスは、それだけ言い残すと住処である洞窟に戻っていった。
「楽しめた?」
「ああ、お陰様で。はじめて本物のドラゴンを見て、背に乗れた。満足だ」
「じゃあ、寒いし魔王城まで帰ろうか」
「ああ」
魔王城に戻ると、夕方になっていた。
浮竹と京樂は、外で食事をして、湯あみをして同じベッドで眠る。
「いつか、君をボクのものにする」
腕の中で眠ってしまった浮竹に口づけて、京楽もまた眠るのであった。
魔王の派閥に入り、勇者としては人々に認められてはいるが、愛用していた勇者の証でもある聖剣エクスカリバーには見棄てられて、エクスカリバーはポンコツになり、世界でも最大の宗教である聖女教には未だに勇者として認められていない。
他にも勇者は浮竹を入れて三人存在した。
北の勇者浮竹十四郎、南の勇者黒崎一護、東の勇者朽木白哉であった。
南の勇者黒崎一護と東の勇者朽木白哉は聖女教で正式な勇者として認められており、何度か京楽と会っているが、京楽が平和主義者の魔王であるため、討伐にまでは至っていない。
聖女教でも、魔王排斥は当たり前であったが、魔王が京楽になってから、表だって京楽を退治しようとする者はいなかった。
それでも、魔王であるために時折刺客がくるが、魔王京楽の力は本物で、勇者にも引けをとらないので返り討ちにしていた。
「浮竹、朝だよ起きて」
「うーん、あと10分」
「もう昼前だよ。いい加減に起きないと、襲っちゃうよ?」
「お、起きる!」
浮竹は、がばりと起きて時計を見た。
11時20分をさしていた。
「うーん、昨日夜遅くまでモンスター退治していたせいで、寝過ごしてしまった」
「浮竹には感謝してるよ。本来ならボクが兵を派遣しなきゃいけないし、兵たちも無事に帰ってくる保証はない。それを、浮竹が担ってくれてるおかげで、兵たちは未開の地の開墾をできる。基本自給自足がモットーだからね、魔王軍は」
「魔王城にも広い畑が広がっているからな。何も城で野菜を育てなくてもいいとは思うが」
「無駄に広い薔薇園なんかを作るよりは、有意義でしょ?」
「まぁな。おまけに魔王自らが収穫するときている」
浮竹の中にあった魔王像は、京楽の存在で粉々になっていた。
「さて、朝食を兼ねた昼食をとったら、浮竹も野菜の収穫だよ」
「分かった」
質素な生活を送っていた時には考えられないような、豪華な昼食を食べて、浮竹は京楽と一緒に魔王城の畑の野菜を収穫した。
「レタスとトマトときゅうりがよく育ってるね。浮竹の意見を聞いて、肥料を変えたおかげかな」
「質のいい土地のわりには、へぼい肥料を使っていたからな」
「さて、今日もしばらく執務は大臣たちに任せているから、何をしよう?」
「カララッカに行ってみたい。白竜が出るそうだ。背中に乗せてもらいたい」
「カララッカか。転移魔法を使えばすぐに行けるから、お茶をしてから行こうか?」
「ああ」
浮竹と京楽は、最高級茶葉のアッサムの紅茶を飲みながら、専属シェフのつくったラズベリータルトを食べた。
そして、京楽の転移魔法でカララッカにやってきた。
北の地域にある魔王領の中でもさらに北にあるので、雪が降っていた。
「ほら、防寒具」
京楽は、アイテムポケットからコートとマフラーと手袋を出して、浮竹に与えた。
「お前の分は?」
「ボクは体温を自由に調整できるから、寒くないの。魔族の中でも、ボクは変わっているからね」
「あ、白竜だ!」
空を飛んでいく白竜を見上げる。
「おおい、ゼイアス!」
「む、魔王京楽か」
白竜は、浮竹のすぐ目の前に降りてきた。
「は、白竜と知り合いなのか?」
「うん。これでも結構長い時を生きているからね。他にもドラゴンの知り合いはいるよ」
「すごいな」
「ゼイアス、こっちの子はボクの派閥に入った勇者浮竹。君の背中に乗りたいそうだよ。乗せてあげてくれないかな?」
「魔王の頼みなら、無碍にはできんな。乗れ、人間の勇者よ」
「うわぁ」
浮竹は、はじめてドラゴンを見た。その広い背中に乗って、空を翔ける白竜と一緒になって空を飛んだ。
「すごいぞ、京楽!」
「人の子よ、勇者でありながら魔王と共にいるのは、いろいろ問題もあるだろうが、我の古き友である京楽と仲良くしてやってほしい」
「ああ、分かった」
白竜ゼイアスは、京楽のことを心配していた。
聖女教がある限り、魔王である京楽は完全に人と打ち解けあえない。
「京楽は、俺の大切な友人だ」
「その言葉を聞いて安心した」
ゼイアスの背から降りた浮竹は、京楽に微笑みかける。
「俺たちは、友人だよな?」
「ボクは、君を第3夫人にしたいんだけどね。まぁ、今の関係は友人かな」
「このゼイアス、魔王によき人の友ができて安心した。また我の背に乗りたくなったら、遊びにくるといい。歓迎しよう」
白竜ゼイアスは、それだけ言い残すと住処である洞窟に戻っていった。
「楽しめた?」
「ああ、お陰様で。はじめて本物のドラゴンを見て、背に乗れた。満足だ」
「じゃあ、寒いし魔王城まで帰ろうか」
「ああ」
魔王城に戻ると、夕方になっていた。
浮竹と京樂は、外で食事をして、湯あみをして同じベッドで眠る。
「いつか、君をボクのものにする」
腕の中で眠ってしまった浮竹に口づけて、京楽もまた眠るのであった。
魔王と勇者と4
浮竹のもっていた、聖剣エクスカリバーが、京楽の仲間になったことで使えなくなった。
浮竹は大変困った。アリーナ王国の国宝で、勇者のみが使えるとされていた聖剣であったのだが、勇者の行いによって使えなくなることもあるそうで。
浮竹は、京楽を殺さず仲間になったことに後悔はない。
「京楽、話があるんだが」
「どうしたんだい」
「俺の聖剣エクスカリバーがポンコツになった。何か、他の代わりになる剣はないか」
「そうだねぇ、宝物庫にいってみようか」
浮竹は京楽と共に宝物庫に入った。
ありえない量の金銀財宝に、浮竹はぽかんとしていた。
「藍染が民草から搾取したものがほとんどだからね」
「そ、そうか」
「あ、これなんてどう?聖剣リヴァイアサン。海のドラゴンリヴァイアサンを呼べるよ」
「いや、陸地で使うから海のドラゴンなんて呼んでも‥‥‥」
京楽は、残念そうな顔をして、次の剣を紹介する。
「魔剣ソウルイーター。切った者の魂を食らう」
「いや、俺一応勇者だし、モンスター以外もきるときあるから、魂もっていかれるのはちょっと‥‥‥。あ、この剣はなんていうんだ?」
浮竹が、漆黒の禍々しいくも美しくもある魔剣を手に取る。
「魔王剣ディアブロ。ボクが昔、愛用していた剣だね。使う者の魔力を吸い取って、力に変える」
「これがいい。俺は、この剣にする」
「でも、魔力もっていかれるんだよ?」
京楽は、浮竹を心配そうに見る。
「ああ、大丈夫だ。俺は魔力は高いがろくに魔法が使えないんだ。魔力の高さで剣の切れ味が変わるなら、これがいい」
「魔剣の類になるけどいいの?」
「勇者が魔剣を手にしてはいけないとかないからな」
浮竹は、魔王剣ディアブロを抜いた。
刃も漆黒で、美しく輝いていた。さっそく魔力を吸われたが、浮竹にとっては微々たるもので、問題はなさそうだった。
「あと、これ気になったので、もらっていっていいか?」
浮竹が選んだのは、ハリセンだった。
「それは、はたいた者の魔力を生命力にかえるハリセンだね」
「うん、なんか使えそうだ。京楽につっこみを入れる時とかに使おう」
「えー、ボクにつっこみ?」
「ああ。たまにつっこみたくなる」
「まぁいいや。他に欲しいものはない?」
「この魔銀のブレスレットももらっていいか?」
浮竹は、魔力を帯びた品が分かる。
「ああ、それは装着者の命を一度だけ守ってくれる貴重な品だけど、あげる。宝物庫の中のものの所有権はボクにあるからね」
「すまない、恩にきる」
「それなら第三夫人に」
「ならない!」
浮竹は、早速ハリセンで京楽の頭をはたく。
浮竹は元気になった。京楽は魔力を吸われて、ちょっと元気じゃなくなった。
「これ、モンスター退治でも使えそうだな」
「モンスターに、ハリセンで立ち向かう勇者‥‥‥ぷくくく」
「笑うな!」
浮竹は、またハリセンを炸裂させる。
京楽は一度で慣れたようで、はたかれる時魔力を小さくした。
「や、やるな」
「ふふん、伊達に魔王じゃないよ」
宝物庫をあとにして、浮竹は日課のモンスター退治に出かけようとする。
「ボクもついていくよ」
「魔王の執務は?」
「今日はお休みの日だから」
「そうか。南の森の魔獣を、最近退治しているんだ」
「ああ、南の森はモンスターがわんさかいるからね。一人では大変でしょ?」
「まぁな」
浮竹は、勇者とはいえソロだ。倒せるモンスターの数にも限りがある。何より、魔法がうまく使えないので、広範囲に及ぶ攻撃手段が少なかった。
「じゃあ、南の森にいこうか。お昼用にサンドイッチ作ってもらおう」
「おい、遊びに行くんんじゃないんだぞ?」
「南の森は、モンスターを無限に生み出す魔法陣があってね。どうしても壊せないんだ。でも、勇者の力なら、壊せるかもね?」
南の森にきた。
人里から離れているし、魔獣の跋扈する森にくるアホはいない。
さて、そんま場所にピクニック気分できたアホが二人いた。
魔王京楽と勇者浮竹だった。
襲い掛かってくるモンスターを浮竹は魔王剣でばったばったと切っていく。
「フレアサークル!」
京楽は、広範囲の魔法でモンスターをやっつける。
浮竹も真似したくなって、同じ魔法を使ってみた。
「フレアサークル」
うねうね。
炎が踊っていた。
「浮竹の意外な弱点発見。魔法がへぼい」
「へぼいいうな!」
ハリセンではたく。ついにで魔獣の頭もはたいた。
「ぎえええええ」
魔獣は、ハリセンではたかれると死んでしまった。
「どうなってるんだ、このハリセンは」
「モンスターの一部は魔力でできているからね。この森の魔獣どもは、魔力でできている。魔法陣から召喚されるから」
「その魔法陣のところに行ってみよう」
「うん。敵がわんさかいるから、ボクの魔法で片付けるね」
やがて、魔法陣のある場所にやってきた。
その間も、モンスターが召喚されていた。
「この魔法陣、どこかで見たことがある。確か、勇者の血を注げば消えるはず」
浮竹は、手を剣で切ると、魔法陣に滴らせた。
すると、魔法陣が赤くなり、消滅してしまった。
「どこで見たの。この魔法陣を」
「アリーナ王国の地下で」
「ふむ‥‥今度、そこに行こうか。それよりも、傷見せて!」
「大したことないぞ」
「だめ!君はボクの未来の第三夫人なんだから。傷の一つでも残しちゃだめ」
「大げさだな。あと、第三夫人にはならないからな」
京楽に魔法でけがを癒してもらい、京楽の転移魔法で魔王城まで戻ってくる。
「ちょっと、待っててね。強制労働させてる元アリーナ国王に魔法陣のこと聞いてくる」
京楽は、まさかとは思いつつも、元国王の働く鉱山に行く。
「単刀直入に聞く。モンスターが発生する魔法陣を地下に作ったね?」
「ははははは、私をバカにする者どもに天罰をを与えるために作っただけだ」
「放置していたら、厄介なことになると知っていて?」
「あの魔法陣は、私の血でできている。消せる方法など」
「勇者の血を滴らせたら消えるらしいよ」
「なんだと!あの寝返ったいまいましい勇者の血で消えるだと!」
アリーナの元国王は、アリーナ王国で出没するモンスターを召喚し続ける、禁忌の魔法陣を作っていた咎で、処刑が決まった。
「浮竹、アリーナ王国の魔法陣消したいんだけど、血をもらえるかな」
「いいぞ」
浮竹は迷いもなく自分の手をきり、空き瓶に自分の血を滴らせた。
「ほら、もっていけ」
「ありがとう。アリーナ王国の地下の魔法陣、消してくるね」
「ああ」
京楽と浮竹は、魔王城で一度別れた。浮竹は自分を召喚した国を裏切っていることになっているので、今回は同行しなかった。
「あった。魔法陣だ。隣の魔法陣は、異世界から人を召喚する魔法陣か。どっちも壊しておこう」
勇者浮竹の血を使い、魔法陣を消し去ると、京楽は魔王城に帰還した。夜になっていて、浮竹は眠ってしまっていた。
「浮竹。おやすみ」
浮竹の寝室で、額に口づけてから、京楽も眠るのであった。
浮竹は大変困った。アリーナ王国の国宝で、勇者のみが使えるとされていた聖剣であったのだが、勇者の行いによって使えなくなることもあるそうで。
浮竹は、京楽を殺さず仲間になったことに後悔はない。
「京楽、話があるんだが」
「どうしたんだい」
「俺の聖剣エクスカリバーがポンコツになった。何か、他の代わりになる剣はないか」
「そうだねぇ、宝物庫にいってみようか」
浮竹は京楽と共に宝物庫に入った。
ありえない量の金銀財宝に、浮竹はぽかんとしていた。
「藍染が民草から搾取したものがほとんどだからね」
「そ、そうか」
「あ、これなんてどう?聖剣リヴァイアサン。海のドラゴンリヴァイアサンを呼べるよ」
「いや、陸地で使うから海のドラゴンなんて呼んでも‥‥‥」
京楽は、残念そうな顔をして、次の剣を紹介する。
「魔剣ソウルイーター。切った者の魂を食らう」
「いや、俺一応勇者だし、モンスター以外もきるときあるから、魂もっていかれるのはちょっと‥‥‥。あ、この剣はなんていうんだ?」
浮竹が、漆黒の禍々しいくも美しくもある魔剣を手に取る。
「魔王剣ディアブロ。ボクが昔、愛用していた剣だね。使う者の魔力を吸い取って、力に変える」
「これがいい。俺は、この剣にする」
「でも、魔力もっていかれるんだよ?」
京楽は、浮竹を心配そうに見る。
「ああ、大丈夫だ。俺は魔力は高いがろくに魔法が使えないんだ。魔力の高さで剣の切れ味が変わるなら、これがいい」
「魔剣の類になるけどいいの?」
「勇者が魔剣を手にしてはいけないとかないからな」
浮竹は、魔王剣ディアブロを抜いた。
刃も漆黒で、美しく輝いていた。さっそく魔力を吸われたが、浮竹にとっては微々たるもので、問題はなさそうだった。
「あと、これ気になったので、もらっていっていいか?」
浮竹が選んだのは、ハリセンだった。
「それは、はたいた者の魔力を生命力にかえるハリセンだね」
「うん、なんか使えそうだ。京楽につっこみを入れる時とかに使おう」
「えー、ボクにつっこみ?」
「ああ。たまにつっこみたくなる」
「まぁいいや。他に欲しいものはない?」
「この魔銀のブレスレットももらっていいか?」
浮竹は、魔力を帯びた品が分かる。
「ああ、それは装着者の命を一度だけ守ってくれる貴重な品だけど、あげる。宝物庫の中のものの所有権はボクにあるからね」
「すまない、恩にきる」
「それなら第三夫人に」
「ならない!」
浮竹は、早速ハリセンで京楽の頭をはたく。
浮竹は元気になった。京楽は魔力を吸われて、ちょっと元気じゃなくなった。
「これ、モンスター退治でも使えそうだな」
「モンスターに、ハリセンで立ち向かう勇者‥‥‥ぷくくく」
「笑うな!」
浮竹は、またハリセンを炸裂させる。
京楽は一度で慣れたようで、はたかれる時魔力を小さくした。
「や、やるな」
「ふふん、伊達に魔王じゃないよ」
宝物庫をあとにして、浮竹は日課のモンスター退治に出かけようとする。
「ボクもついていくよ」
「魔王の執務は?」
「今日はお休みの日だから」
「そうか。南の森の魔獣を、最近退治しているんだ」
「ああ、南の森はモンスターがわんさかいるからね。一人では大変でしょ?」
「まぁな」
浮竹は、勇者とはいえソロだ。倒せるモンスターの数にも限りがある。何より、魔法がうまく使えないので、広範囲に及ぶ攻撃手段が少なかった。
「じゃあ、南の森にいこうか。お昼用にサンドイッチ作ってもらおう」
「おい、遊びに行くんんじゃないんだぞ?」
「南の森は、モンスターを無限に生み出す魔法陣があってね。どうしても壊せないんだ。でも、勇者の力なら、壊せるかもね?」
南の森にきた。
人里から離れているし、魔獣の跋扈する森にくるアホはいない。
さて、そんま場所にピクニック気分できたアホが二人いた。
魔王京楽と勇者浮竹だった。
襲い掛かってくるモンスターを浮竹は魔王剣でばったばったと切っていく。
「フレアサークル!」
京楽は、広範囲の魔法でモンスターをやっつける。
浮竹も真似したくなって、同じ魔法を使ってみた。
「フレアサークル」
うねうね。
炎が踊っていた。
「浮竹の意外な弱点発見。魔法がへぼい」
「へぼいいうな!」
ハリセンではたく。ついにで魔獣の頭もはたいた。
「ぎえええええ」
魔獣は、ハリセンではたかれると死んでしまった。
「どうなってるんだ、このハリセンは」
「モンスターの一部は魔力でできているからね。この森の魔獣どもは、魔力でできている。魔法陣から召喚されるから」
「その魔法陣のところに行ってみよう」
「うん。敵がわんさかいるから、ボクの魔法で片付けるね」
やがて、魔法陣のある場所にやってきた。
その間も、モンスターが召喚されていた。
「この魔法陣、どこかで見たことがある。確か、勇者の血を注げば消えるはず」
浮竹は、手を剣で切ると、魔法陣に滴らせた。
すると、魔法陣が赤くなり、消滅してしまった。
「どこで見たの。この魔法陣を」
「アリーナ王国の地下で」
「ふむ‥‥今度、そこに行こうか。それよりも、傷見せて!」
「大したことないぞ」
「だめ!君はボクの未来の第三夫人なんだから。傷の一つでも残しちゃだめ」
「大げさだな。あと、第三夫人にはならないからな」
京楽に魔法でけがを癒してもらい、京楽の転移魔法で魔王城まで戻ってくる。
「ちょっと、待っててね。強制労働させてる元アリーナ国王に魔法陣のこと聞いてくる」
京楽は、まさかとは思いつつも、元国王の働く鉱山に行く。
「単刀直入に聞く。モンスターが発生する魔法陣を地下に作ったね?」
「ははははは、私をバカにする者どもに天罰をを与えるために作っただけだ」
「放置していたら、厄介なことになると知っていて?」
「あの魔法陣は、私の血でできている。消せる方法など」
「勇者の血を滴らせたら消えるらしいよ」
「なんだと!あの寝返ったいまいましい勇者の血で消えるだと!」
アリーナの元国王は、アリーナ王国で出没するモンスターを召喚し続ける、禁忌の魔法陣を作っていた咎で、処刑が決まった。
「浮竹、アリーナ王国の魔法陣消したいんだけど、血をもらえるかな」
「いいぞ」
浮竹は迷いもなく自分の手をきり、空き瓶に自分の血を滴らせた。
「ほら、もっていけ」
「ありがとう。アリーナ王国の地下の魔法陣、消してくるね」
「ああ」
京楽と浮竹は、魔王城で一度別れた。浮竹は自分を召喚した国を裏切っていることになっているので、今回は同行しなかった。
「あった。魔法陣だ。隣の魔法陣は、異世界から人を召喚する魔法陣か。どっちも壊しておこう」
勇者浮竹の血を使い、魔法陣を消し去ると、京楽は魔王城に帰還した。夜になっていて、浮竹は眠ってしまっていた。
「浮竹。おやすみ」
浮竹の寝室で、額に口づけてから、京楽も眠るのであった。
魔王と勇者と3
月に一度、魔王城は一般公開される。
京楽は黄金の玉座に座って、訪れてくる人々に加護を与えて、病気やけがを癒したり、悪運や呪いをといたりする。
中には魔王領以外の国から加護を求めてくる人間もいたが、京楽は気にしない。
「魔王京楽、覚悟!」
訪れていた人の中から、若い男が刃物を手に飛び出してきた。
京楽は、盲目の老人の目を癒していた途中で、心臓を刺されていた。
「聖女教の者だね。悪いけど、ボクは心臓を刺されたぐらいじゃ死なないから」
「京楽、止血を!」
浮竹が顔を蒼くして、流れ出る京楽の血を止めようとする。
「大丈夫だよ、浮竹。自己再生できるから」
「でも、失血死したら大変だ!この男はどうする?」
浮竹が捕まえた若い男性は、「聖女様万歳!」と叫んで、あらかじめ用意していた毒薬を飲んで自殺してしまった。
「聖女教‥‥‥魔王は忌むべき存在。存在自体が罪」
「お、知ってるの?召喚されてまだ1カ月くらいでしょ」
「アリーナ王国にいた頃、この世界の歴史を習っていたからな。世界でも一番大きな宗教の聖女教。女神であり聖女であるアナスタシアを信仰する、魔王排斥派の宗教だろう?」
「その通りだよ。17代目アナスタシアとは会ったことはあるけど、いくら善行をつんでも魔王は魔王だから死ぬべきだっていばってったね。髪の毛をアフロにしたら、殺されそうになったけど。まぁ、聖女ごときでは死なないけどね」
「聖女をアフロに‥‥‥やるな」
「聖女教は厄介だねぇ。前の魔王の藍染のような魔王が多かったから、魔王は忌むべき存在であり、人間の敵だったんだよ。ボクが魔王になって、少し変わったけど」
浮竹は、自己再生能力で京楽の傷が癒えたのを確認して、京楽の血が染みたハンカチを京楽に渡す。
「血は、魔王にとって特別なんだろう?」
「うん。いろんな儀式に使うし、悪用されたら大変だからね」
訪れていた人々は、突然の事態に今回の魔王城一般公開と魔王による無料治癒が強制中止されて、聖女教に不満をぶちまけていた。
「魔王様を殺そうとするなんて」
「聖女教がなんだ!聖女なんて信仰しても、何もしてくれない。魔王様は無償でけがや病気を癒してくださる!」
「魔王様、私たちは魔王様の味方です!」
「そうだそうだ!」
「うん、ありがとね」
京楽は、失った血は取り戻せないので、輸血することにした。
魔王城の寝室に横になり、血液型が同じということで名乗り出た浮竹の血を輸血してもらった。
「ごめんね、いきなりごたごたに巻き込んで」
「いや、不測の事態というやつだ。京楽、無償で人の治療をするのはいいが、もっと警護を増やせ」
「うん。来月からそうするよ」
「危なっかしいから、俺も守ってやる」
浮竹は、顔を僅かに赤くしながらそう言う。
「ふふふ、ありがと。でも、ボクは君を守りたいな」
「俺は勇者だぞ!守る立場だ!」
「うん、そうだね。ねぇ、時間がかかってもいいから、第3夫人のこと、真剣に考えてくれないかな」
「そ、そのうちな!」
浮竹は、京楽の背中をばんばん叩いて、照れ隠しをしていた。
「あいたたた、自己治癒能力があるとはい、痛みは消えてないのでやめて」
「す、すまん」
浮竹は赤くなったままだった。
「ゆ、夕飯ができてないかシェフに聞いてくる」
逃げるように、浮竹が京楽の寝室から出ていった。
「ふふふ、かわいいなぁ。近いうちに、君は絶対第三夫人になってボクのものになる。そうしなきゃ、この世界では生きていけないから。召喚された者は、召喚された者と結ばれなければ死んでしまうから」
京楽も、はるか昔に召喚され、当時は魔王ではなかった。賢者だった。
同じく召喚された賢者の少女と結ばれて、生きながらえた。
浮竹は、召喚の掟を知らない。
「君は、ボクが守る。絶対に」
「聖女であり女神であるアナスタシア様」
「なぁに?」
その美しすぎる少女は、オッドアイの瞳で信者を見る。
「魔王京楽の討伐に失敗しました」
「あら、またなの。魔王はこの世界の悪。滅んでもらわなくては」
アナスタシアは、うっとりと傍らにいる男に身を委ねる。
「ねぇ、あなたもそう思うでしょ、藍染」
「ああ」
生死不明の藍染は、5年前から聖女教のアナスタシアを虜にして、魔王という存在をこえて魔神になろうとしていた。
「愛しているよ、アナスタシア。私の、かわいいお人形」
「ふふふ。京楽春水‥‥‥魔王らしくあればいいのに、無駄に人間に人気があるからいやね」
「京楽は、結構狡猾な男だ」
「あら。そうね、いずれ大神官を派遣いたしましょう」
聖女であり女神であるアナスタシアは笑う。はたして、藍染に利用されているのか、それとも利用しているのか、それは誰にも分からなかった。
京楽は黄金の玉座に座って、訪れてくる人々に加護を与えて、病気やけがを癒したり、悪運や呪いをといたりする。
中には魔王領以外の国から加護を求めてくる人間もいたが、京楽は気にしない。
「魔王京楽、覚悟!」
訪れていた人の中から、若い男が刃物を手に飛び出してきた。
京楽は、盲目の老人の目を癒していた途中で、心臓を刺されていた。
「聖女教の者だね。悪いけど、ボクは心臓を刺されたぐらいじゃ死なないから」
「京楽、止血を!」
浮竹が顔を蒼くして、流れ出る京楽の血を止めようとする。
「大丈夫だよ、浮竹。自己再生できるから」
「でも、失血死したら大変だ!この男はどうする?」
浮竹が捕まえた若い男性は、「聖女様万歳!」と叫んで、あらかじめ用意していた毒薬を飲んで自殺してしまった。
「聖女教‥‥‥魔王は忌むべき存在。存在自体が罪」
「お、知ってるの?召喚されてまだ1カ月くらいでしょ」
「アリーナ王国にいた頃、この世界の歴史を習っていたからな。世界でも一番大きな宗教の聖女教。女神であり聖女であるアナスタシアを信仰する、魔王排斥派の宗教だろう?」
「その通りだよ。17代目アナスタシアとは会ったことはあるけど、いくら善行をつんでも魔王は魔王だから死ぬべきだっていばってったね。髪の毛をアフロにしたら、殺されそうになったけど。まぁ、聖女ごときでは死なないけどね」
「聖女をアフロに‥‥‥やるな」
「聖女教は厄介だねぇ。前の魔王の藍染のような魔王が多かったから、魔王は忌むべき存在であり、人間の敵だったんだよ。ボクが魔王になって、少し変わったけど」
浮竹は、自己再生能力で京楽の傷が癒えたのを確認して、京楽の血が染みたハンカチを京楽に渡す。
「血は、魔王にとって特別なんだろう?」
「うん。いろんな儀式に使うし、悪用されたら大変だからね」
訪れていた人々は、突然の事態に今回の魔王城一般公開と魔王による無料治癒が強制中止されて、聖女教に不満をぶちまけていた。
「魔王様を殺そうとするなんて」
「聖女教がなんだ!聖女なんて信仰しても、何もしてくれない。魔王様は無償でけがや病気を癒してくださる!」
「魔王様、私たちは魔王様の味方です!」
「そうだそうだ!」
「うん、ありがとね」
京楽は、失った血は取り戻せないので、輸血することにした。
魔王城の寝室に横になり、血液型が同じということで名乗り出た浮竹の血を輸血してもらった。
「ごめんね、いきなりごたごたに巻き込んで」
「いや、不測の事態というやつだ。京楽、無償で人の治療をするのはいいが、もっと警護を増やせ」
「うん。来月からそうするよ」
「危なっかしいから、俺も守ってやる」
浮竹は、顔を僅かに赤くしながらそう言う。
「ふふふ、ありがと。でも、ボクは君を守りたいな」
「俺は勇者だぞ!守る立場だ!」
「うん、そうだね。ねぇ、時間がかかってもいいから、第3夫人のこと、真剣に考えてくれないかな」
「そ、そのうちな!」
浮竹は、京楽の背中をばんばん叩いて、照れ隠しをしていた。
「あいたたた、自己治癒能力があるとはい、痛みは消えてないのでやめて」
「す、すまん」
浮竹は赤くなったままだった。
「ゆ、夕飯ができてないかシェフに聞いてくる」
逃げるように、浮竹が京楽の寝室から出ていった。
「ふふふ、かわいいなぁ。近いうちに、君は絶対第三夫人になってボクのものになる。そうしなきゃ、この世界では生きていけないから。召喚された者は、召喚された者と結ばれなければ死んでしまうから」
京楽も、はるか昔に召喚され、当時は魔王ではなかった。賢者だった。
同じく召喚された賢者の少女と結ばれて、生きながらえた。
浮竹は、召喚の掟を知らない。
「君は、ボクが守る。絶対に」
「聖女であり女神であるアナスタシア様」
「なぁに?」
その美しすぎる少女は、オッドアイの瞳で信者を見る。
「魔王京楽の討伐に失敗しました」
「あら、またなの。魔王はこの世界の悪。滅んでもらわなくては」
アナスタシアは、うっとりと傍らにいる男に身を委ねる。
「ねぇ、あなたもそう思うでしょ、藍染」
「ああ」
生死不明の藍染は、5年前から聖女教のアナスタシアを虜にして、魔王という存在をこえて魔神になろうとしていた。
「愛しているよ、アナスタシア。私の、かわいいお人形」
「ふふふ。京楽春水‥‥‥魔王らしくあればいいのに、無駄に人間に人気があるからいやね」
「京楽は、結構狡猾な男だ」
「あら。そうね、いずれ大神官を派遣いたしましょう」
聖女であり女神であるアナスタシアは笑う。はたして、藍染に利用されているのか、それとも利用しているのか、それは誰にも分からなかった。
魔王と勇者と2
魔王城は、無駄に広く豪華だった。
浮竹は、黄金の玉座を見てびっくりしていた。何せ、純金製なのである。
「魔王って、金持ちなんだな。質素な生活をしていた俺からすると、考えられない生活だ」
出された朝食、昼食、夕食と午後のお茶もどれもおいしく豪華なものばかりであった。
「全部、前の魔王の藍染が残したものだけどね。食事はまぁ、せっかく魔王になったんだから、おいしいもの食べたいじゃない」
「俺は食費は1日銀貨3枚までにしていた。ここの食事は金貨20枚は飛びそうだ」
「領地にして、自治を任せている王国とかからの献上金が無駄にあるからね。魔王の配下には十分な給料を支払ってるし、魔王が質素な生活してたら、配下の者も貧しい暮らしになるからね」
「ふむ」
「お風呂も天然温泉だからね。ご近所さんがお金払って入りにくる。お風呂は一般利用もできるようにしているから。食事もできるよ」
「そこそこの金をとるのか?」
「うーん、庶民に優しい金額にしてるけどね。天然温泉、食事つきで銀貨3枚」
「高くはないな。安くもない。まぁ、普通か」
浮竹は、納得したような顔をする。
「一緒に、魔王専用の風呂で湯あみしない?」
「へ、変なことしないだろうな?」
「しないよ。君がボクを受け入れてくれるまで、キスとハグまでしかしない」
魔王専用の風呂というのが気になって、浮竹はOKした。
「うわぁ、広いな。おまけにこっちの浴槽は純金製か」
「ああ、それは藍染が残したものだね」
「藍染って、趣味悪かったんだな」
浮竹が、先代の魔王藍染がいなくなったのは、今から5年前のことだと教えられたのを思い出す。アリーナ王国で、文字や歴史の勉強をしていた。
魔法や剣の練習もしていたが、異世界からきた浮竹はこの世界で生きていくために、知恵が必要だったので、読み書きを学んだりしていた。
「黄金の玉座もそうだけど、黄金の便器まであったんだよ。なんでも黄金にすればいいってもんじゃないけどね」
「前の魔王は、領地の国民から搾取していたそうだな」
「うん。ボクが魔王になってみんな喜んでたね。税を5分の1にしたから」
「お前が魔王になって、領地も広がったんだろう?」
「魔王の加護を受けたいと、領地になりたがる国が多くてね。魔王領になると、戦争をしかけられたら守るからね」
「ますます魔王らしくない」
浮竹は広い浴槽につかりながら、くすっと笑った。
「お前が魔王でよかった。無駄な血を流さずにすんだ。召喚されたアリーナ王国では、魔王軍は無慈悲で殺戮をしていると習ったからな。国民もそれを信じていたみたいだし」
「アリーナ国王は、鉱山で一生強制労働さ。命があるだけ、ましだよ」
「そうだな。重税を課して国民を貧困の生活をさせて自分だけ贅沢をしていたからな。まぁ俺のもてなしも国民の血税だっただろうが。この風呂はなんだ?いい匂いがする」
「ああ、それは薔薇風呂だね。気に入ったら、入るといいよ」
浮竹は、薔薇風呂に入った。
ほのかな甘い香りが浮竹を包み込む。
だんだん、眠くなってきた。
「眠いので、風呂からあがって仮眠する」
「うん。その薔薇風風呂は安眠効果があるからね。先に戻って寝ておいで」
浮竹は、風呂からあがってフルーツ牛乳を飲んでから、与えられたこれまた豪華な部屋の豪華な寝台で眠る。
「うーん、もう食べれないむにゃむにゃ」
浮竹を起こしに来た京楽は、浮竹のそんな寝言を聞いてクスリと笑った。
「浮竹、起きて。3時間は眠っていたよ?あんまり寝ると夜に眠れなくなるよ。夕飯の準備できてるから」
「ん、ああ、俺は3時間も仮眠してしまっていたのか」
「うん」
「確かに腹が減った。夕食にしよう」
その日の夕食も豪華だったが、いつも食べ残しがない量にされているので、浮竹も安心して食べた。もしも残すことになったら、もったいなさすぎるからだ。
「明日はアサインの町の視察にいくよ。よければくる?」
「いく。魔王城で厄介になってるが、モンスター退治以外暇だからな」
こうして、京楽と浮竹は、魔王領地の中でも港町として有名で繁栄しているアサインの町に視察にやってきた。
「魔王様だ!魔王様、新鮮な魚がありますよ!」
「魔王様、この葡萄酒飲んでいってください!」
「魔王様、泊まるんならぜひうちの宿に!」
京楽は、引っ張りだこだった。浮竹は、にこやかな京楽の笑顔に、こいつほんとに魔王なのかと思うほどだった。
民草にこれほど慕われる魔王も珍しい。
「食事にしようか。港町だから、海の幸がおいしいよ」
「ああ、分かった」
浮竹と京楽は、その日泊まると決めた宿で、食事をとった。魔王城で出される食事にはさすがに及ばないが、それでも美味だった。
京楽も浮竹も、葡萄酒を飲んだ。
しばらくすると、浮竹の様子がおかしくなった。
「うぃーーー。もっと酒もってこおおおい」
「ちょっと浮竹、酔ったの?」
「この魔王め!スラ子さんと骨子さんと結婚しておきながら、俺とも結婚しようだなんて、10000万年はやいわ!」
「浮竹、もうお酒飲むのはやめよね?」
「うるあああ、もっと飲む」
暴れ出す浮竹に、京楽は仕方なくスリープの魔法をかける。
「ふふ、酒に弱いんだね。新発見だ」
京楽は眠ってしまった浮竹をお姫様だっこして、泊まるスィートルームのベッドに寝かせた。
「ちょっとくらい、いいよね?」
京楽は、浮竹に口づける。
それから、長い白髪を手ですいて、それにも口づけた。
「やっと見つけた、浮竹。ボクのことは覚えていないだろうけど、ボクも君と同じく異世界から召喚されて魔族になったんだよ。君とボクは、きっと運命の糸でつながっている。世界を、時空をこえても、また会えたんだから」
浮竹は忘れてしまっていた。
京楽と浮竹が、元の世界で幼い頃、孤児院で一緒に生活していたことなど。
京楽が孤児院にいたのは2カ月ばかり。
浮竹とは仲が良かったが、子供の頃と今の見た目は違いすぎる。肌と髪と瞳の色も違う。名前は一緒だが、浮竹は幼かったので、きっと忘れてしまっているだろう。
「今度は、もう手放さない。ボクは、ずっと君の傍で君を守るから。おやすみ、浮竹」
京楽は、浮竹の額に口づけて、もう1つの寝台で眠るのであった。
浮竹は、黄金の玉座を見てびっくりしていた。何せ、純金製なのである。
「魔王って、金持ちなんだな。質素な生活をしていた俺からすると、考えられない生活だ」
出された朝食、昼食、夕食と午後のお茶もどれもおいしく豪華なものばかりであった。
「全部、前の魔王の藍染が残したものだけどね。食事はまぁ、せっかく魔王になったんだから、おいしいもの食べたいじゃない」
「俺は食費は1日銀貨3枚までにしていた。ここの食事は金貨20枚は飛びそうだ」
「領地にして、自治を任せている王国とかからの献上金が無駄にあるからね。魔王の配下には十分な給料を支払ってるし、魔王が質素な生活してたら、配下の者も貧しい暮らしになるからね」
「ふむ」
「お風呂も天然温泉だからね。ご近所さんがお金払って入りにくる。お風呂は一般利用もできるようにしているから。食事もできるよ」
「そこそこの金をとるのか?」
「うーん、庶民に優しい金額にしてるけどね。天然温泉、食事つきで銀貨3枚」
「高くはないな。安くもない。まぁ、普通か」
浮竹は、納得したような顔をする。
「一緒に、魔王専用の風呂で湯あみしない?」
「へ、変なことしないだろうな?」
「しないよ。君がボクを受け入れてくれるまで、キスとハグまでしかしない」
魔王専用の風呂というのが気になって、浮竹はOKした。
「うわぁ、広いな。おまけにこっちの浴槽は純金製か」
「ああ、それは藍染が残したものだね」
「藍染って、趣味悪かったんだな」
浮竹が、先代の魔王藍染がいなくなったのは、今から5年前のことだと教えられたのを思い出す。アリーナ王国で、文字や歴史の勉強をしていた。
魔法や剣の練習もしていたが、異世界からきた浮竹はこの世界で生きていくために、知恵が必要だったので、読み書きを学んだりしていた。
「黄金の玉座もそうだけど、黄金の便器まであったんだよ。なんでも黄金にすればいいってもんじゃないけどね」
「前の魔王は、領地の国民から搾取していたそうだな」
「うん。ボクが魔王になってみんな喜んでたね。税を5分の1にしたから」
「お前が魔王になって、領地も広がったんだろう?」
「魔王の加護を受けたいと、領地になりたがる国が多くてね。魔王領になると、戦争をしかけられたら守るからね」
「ますます魔王らしくない」
浮竹は広い浴槽につかりながら、くすっと笑った。
「お前が魔王でよかった。無駄な血を流さずにすんだ。召喚されたアリーナ王国では、魔王軍は無慈悲で殺戮をしていると習ったからな。国民もそれを信じていたみたいだし」
「アリーナ国王は、鉱山で一生強制労働さ。命があるだけ、ましだよ」
「そうだな。重税を課して国民を貧困の生活をさせて自分だけ贅沢をしていたからな。まぁ俺のもてなしも国民の血税だっただろうが。この風呂はなんだ?いい匂いがする」
「ああ、それは薔薇風呂だね。気に入ったら、入るといいよ」
浮竹は、薔薇風呂に入った。
ほのかな甘い香りが浮竹を包み込む。
だんだん、眠くなってきた。
「眠いので、風呂からあがって仮眠する」
「うん。その薔薇風風呂は安眠効果があるからね。先に戻って寝ておいで」
浮竹は、風呂からあがってフルーツ牛乳を飲んでから、与えられたこれまた豪華な部屋の豪華な寝台で眠る。
「うーん、もう食べれないむにゃむにゃ」
浮竹を起こしに来た京楽は、浮竹のそんな寝言を聞いてクスリと笑った。
「浮竹、起きて。3時間は眠っていたよ?あんまり寝ると夜に眠れなくなるよ。夕飯の準備できてるから」
「ん、ああ、俺は3時間も仮眠してしまっていたのか」
「うん」
「確かに腹が減った。夕食にしよう」
その日の夕食も豪華だったが、いつも食べ残しがない量にされているので、浮竹も安心して食べた。もしも残すことになったら、もったいなさすぎるからだ。
「明日はアサインの町の視察にいくよ。よければくる?」
「いく。魔王城で厄介になってるが、モンスター退治以外暇だからな」
こうして、京楽と浮竹は、魔王領地の中でも港町として有名で繁栄しているアサインの町に視察にやってきた。
「魔王様だ!魔王様、新鮮な魚がありますよ!」
「魔王様、この葡萄酒飲んでいってください!」
「魔王様、泊まるんならぜひうちの宿に!」
京楽は、引っ張りだこだった。浮竹は、にこやかな京楽の笑顔に、こいつほんとに魔王なのかと思うほどだった。
民草にこれほど慕われる魔王も珍しい。
「食事にしようか。港町だから、海の幸がおいしいよ」
「ああ、分かった」
浮竹と京楽は、その日泊まると決めた宿で、食事をとった。魔王城で出される食事にはさすがに及ばないが、それでも美味だった。
京楽も浮竹も、葡萄酒を飲んだ。
しばらくすると、浮竹の様子がおかしくなった。
「うぃーーー。もっと酒もってこおおおい」
「ちょっと浮竹、酔ったの?」
「この魔王め!スラ子さんと骨子さんと結婚しておきながら、俺とも結婚しようだなんて、10000万年はやいわ!」
「浮竹、もうお酒飲むのはやめよね?」
「うるあああ、もっと飲む」
暴れ出す浮竹に、京楽は仕方なくスリープの魔法をかける。
「ふふ、酒に弱いんだね。新発見だ」
京楽は眠ってしまった浮竹をお姫様だっこして、泊まるスィートルームのベッドに寝かせた。
「ちょっとくらい、いいよね?」
京楽は、浮竹に口づける。
それから、長い白髪を手ですいて、それにも口づけた。
「やっと見つけた、浮竹。ボクのことは覚えていないだろうけど、ボクも君と同じく異世界から召喚されて魔族になったんだよ。君とボクは、きっと運命の糸でつながっている。世界を、時空をこえても、また会えたんだから」
浮竹は忘れてしまっていた。
京楽と浮竹が、元の世界で幼い頃、孤児院で一緒に生活していたことなど。
京楽が孤児院にいたのは2カ月ばかり。
浮竹とは仲が良かったが、子供の頃と今の見た目は違いすぎる。肌と髪と瞳の色も違う。名前は一緒だが、浮竹は幼かったので、きっと忘れてしまっているだろう。
「今度は、もう手放さない。ボクは、ずっと君の傍で君を守るから。おやすみ、浮竹」
京楽は、浮竹の額に口づけて、もう1つの寝台で眠るのであった。
魔王と勇者と
この世界には、魔王がいた。
誰もが恐れる魔王のはずであった。だが、魔王は優しかった。しかし、魔王は魔王。
アリーナ国では、勇者が異世界から召喚されていた。
全ては、魔王を打ち倒すために。
魔王の名は京楽春水。そして、勇者の名は浮竹十四郎といった。
「魔王、京楽春水、覚悟!」
浮竹は、聖剣エクスカリバーで京楽に切りかかる。
それを適当に受け流して、京楽は浮竹を抱き寄せた。
「な、何を!」
「君、綺麗だね?」
「だからなんだ!」
「ねぇ、勇者なんてやめてボクとのんびりスローライフ送らない?」
「何を言っている!」
「プロポーズしてるんだけど」
浮竹は真っ赤になって、京楽を押しのける。
「お、俺は男だぞ」
「うん、見ればわかるよ。ボク、男も女も両方いけるから」
「このけだもの!」
浮竹は、京楽の意外に強い力に、抱きしめられたままになっていた。
「ふふ、否定はしないよ。ボクの第三夫人になってよ」
「重婚だと!」
「一番目の夫人はスライムのスラ子さん。2番目の夫人はスケルホーンの骨子さん。どっちも会話できないし、何もできないんだよね。魔王には夫人が必須だけど、人間っていろいろじゃまくさいじゃない。君なら、勇者だしボクの名声もあがると思うんだよね」
「名声のためだけに、俺を夫人にするというのか!」
浮竹は怒った。
「ううん。君に一目ぼれした。人間でも、こんな綺麗な子いるんだなって」
「俺はハーフエルフだ」
「そうなの。じゃあ、長い時間を生きれるから、ボクが寿命をいじる必要はないね」
「何を先走って話している!俺はお前を討伐に!」
「一人で?アリーナ国はから書状がきてるよ。勇者を生贄にするから、アリーナ国には手を出さないでくれって」
「なんだと!」
浮竹は、その書状を見せてもらった。
間違いなく、国王の字であった。
「あのたぬきじじい‥‥‥‥‥こうなったら、勇者やめてやる!京楽、夫人にはならないが、お前の仲間になってやる。あのたぬきじじいをぎゃふんと言わせてやる」
「いいねぇ、大歓迎だよ。いずれ夫人になってくれると嬉しいな」
こうして、浮竹十四郎は異世界に呼び出されて1カ月もしないうちに、魔王京楽側に寝返った。
魔王側に寝返って数日が経った。
たくさんの人間が、京楽を訪れていた。
「いやぁ、魔王様の加護をもらうと農作物がよく育つからなぁ」
「あたしなんて、長年の腰痛が嘘みたいに消えちまったよ」
人々は京楽を口々にほめたたえ、感謝の言葉を述べる。
「今時の魔王って‥‥」
アリーナ王国の国王から、魔王京楽は残忍で魔族を率いて人の世界を蹂躙せんとする人物だと聞かされていた。
それがどうだろう。
魔族を率いて、災害に見舞われた地域の復興をしていた。
「京楽、お前はいい魔王なんだな」
「魔王によしあしもないよ。本気で殺しにかかってくる人間は殺してるし」
魔王は、やっぱり魔王だった。
優しいし人望もあるが、残酷な部分もちゃんともっていた。
「勇者やめたからな」
「別に辞めなくていいんじゃない?勇者のままで」
「ふむ。その手もあるか。アリーナ王国のたぬきじじいに勇者の称号を剥奪されるだろうが、この世界では俺は勇者として名前が通っている。勇者のまま、魔王に寝返るか」
「ふふ、毎日一緒に過ごせるね」
「へ、変なことはするなよ」
「夫人になってくれるまで、キスとハグくらいしかしないよ」
浮竹は赤くなって、京楽を見つめる。
「勇者、浮竹十四郎の名をもって、魔王京楽春水の配下に加わることを誓う」
「別に、そんなのいらないよ。アリーナの国王をぎゃふんと言わせたいんでしょ。アリーナの城を攻め落としてしまおう。なるべく血は流さずに」
京楽は、魔王軍を率いてアリーナ王国の首都に攻め入った。
人々は逃げ回るどころか、京楽に挨拶して城へ案内してくれる。
「アリーナ国王の重税に、苦しんでいるんだ。助けてくれ、魔王様」
「アリーナ国王は、勇者浮竹様を見限った」
アリーナ国王は大分だめなやつのようで、京楽は魔王の名の元に、アリーナ王国jの城に攻め入り、国王を捕縛するとアリーナ王国を魔王の領地にした。
「ああ、ありがたい。これで、俺らも魔王様から加護が得られるし、隣国から戦争をしかけられることもない」
「魔王って‥‥…」
浮竹は、異世界から召喚された。元に戻る方法は魔王を倒せば戻れると言っていたが、もうなんだか異世界での暇な生活がどうでもよくなってきた。
浮竹は、地下牢に閉じ込められた国王を一発殴って、頭をバリカンではげにして、小さくではあるが復讐はした。
命をとるのは勇者のすることではない。
アリーナ国王は、魔王領地で強制労働させられるそうだ。
「京楽、ありがとう」
「どういたしまして。ボクの第三夫人になる気になった?」
「それはまだない。だが、勇者としてお前の存在を認め、共存することを世界に発表する」
「うん」
勇者浮竹が、魔王軍の配下に加わったと世界中が知り、魔王京楽の名前は浸透していく。
「お前は、何故魔王になったんだ?」
「うーん、先代魔王が残忍だったからね。人間がかわいそうに思えて倒したら、歓迎されて魔王になちゃった」
「そうか。俺は先代魔王を知らない」
「藍染っていってね。倒したけど、死んではいないようだよ。しぶといから」
「しぶといのか」
「うん。まぁ、ボクと互角くらいの強さだし、今は新しい魔王軍もいるし、攻め込まれる心配はないと思うよ。ボクにケンカを売ってきたのは、君くらいだよ、浮竹」
「お、俺は何も知らなかったから‥‥‥‥」
「ねぇ、第三夫人になってよ」
「第一夫人と第二夫人はどうするんだ」
「そのままだよ。意思の疎通もできないからね」
「なんでまた、スライムとスケルボーンなんだ。お前なら、美女美男よりどりみどりだろう」
「ボクの心を動かす相手がいなかったから。浮竹が初めてだよ。本気で恋に落ちた」
「は、恥ずかしいことを言うな」
浮竹は真っ赤になってそっぽをむく。
「ふふ、かわいいね」
「うるさい」
魔王歴233年。浮竹十四郎は、勇者の称号をもったまま、魔王軍に入るのであった。
誰もが恐れる魔王のはずであった。だが、魔王は優しかった。しかし、魔王は魔王。
アリーナ国では、勇者が異世界から召喚されていた。
全ては、魔王を打ち倒すために。
魔王の名は京楽春水。そして、勇者の名は浮竹十四郎といった。
「魔王、京楽春水、覚悟!」
浮竹は、聖剣エクスカリバーで京楽に切りかかる。
それを適当に受け流して、京楽は浮竹を抱き寄せた。
「な、何を!」
「君、綺麗だね?」
「だからなんだ!」
「ねぇ、勇者なんてやめてボクとのんびりスローライフ送らない?」
「何を言っている!」
「プロポーズしてるんだけど」
浮竹は真っ赤になって、京楽を押しのける。
「お、俺は男だぞ」
「うん、見ればわかるよ。ボク、男も女も両方いけるから」
「このけだもの!」
浮竹は、京楽の意外に強い力に、抱きしめられたままになっていた。
「ふふ、否定はしないよ。ボクの第三夫人になってよ」
「重婚だと!」
「一番目の夫人はスライムのスラ子さん。2番目の夫人はスケルホーンの骨子さん。どっちも会話できないし、何もできないんだよね。魔王には夫人が必須だけど、人間っていろいろじゃまくさいじゃない。君なら、勇者だしボクの名声もあがると思うんだよね」
「名声のためだけに、俺を夫人にするというのか!」
浮竹は怒った。
「ううん。君に一目ぼれした。人間でも、こんな綺麗な子いるんだなって」
「俺はハーフエルフだ」
「そうなの。じゃあ、長い時間を生きれるから、ボクが寿命をいじる必要はないね」
「何を先走って話している!俺はお前を討伐に!」
「一人で?アリーナ国はから書状がきてるよ。勇者を生贄にするから、アリーナ国には手を出さないでくれって」
「なんだと!」
浮竹は、その書状を見せてもらった。
間違いなく、国王の字であった。
「あのたぬきじじい‥‥‥‥‥こうなったら、勇者やめてやる!京楽、夫人にはならないが、お前の仲間になってやる。あのたぬきじじいをぎゃふんと言わせてやる」
「いいねぇ、大歓迎だよ。いずれ夫人になってくれると嬉しいな」
こうして、浮竹十四郎は異世界に呼び出されて1カ月もしないうちに、魔王京楽側に寝返った。
魔王側に寝返って数日が経った。
たくさんの人間が、京楽を訪れていた。
「いやぁ、魔王様の加護をもらうと農作物がよく育つからなぁ」
「あたしなんて、長年の腰痛が嘘みたいに消えちまったよ」
人々は京楽を口々にほめたたえ、感謝の言葉を述べる。
「今時の魔王って‥‥」
アリーナ王国の国王から、魔王京楽は残忍で魔族を率いて人の世界を蹂躙せんとする人物だと聞かされていた。
それがどうだろう。
魔族を率いて、災害に見舞われた地域の復興をしていた。
「京楽、お前はいい魔王なんだな」
「魔王によしあしもないよ。本気で殺しにかかってくる人間は殺してるし」
魔王は、やっぱり魔王だった。
優しいし人望もあるが、残酷な部分もちゃんともっていた。
「勇者やめたからな」
「別に辞めなくていいんじゃない?勇者のままで」
「ふむ。その手もあるか。アリーナ王国のたぬきじじいに勇者の称号を剥奪されるだろうが、この世界では俺は勇者として名前が通っている。勇者のまま、魔王に寝返るか」
「ふふ、毎日一緒に過ごせるね」
「へ、変なことはするなよ」
「夫人になってくれるまで、キスとハグくらいしかしないよ」
浮竹は赤くなって、京楽を見つめる。
「勇者、浮竹十四郎の名をもって、魔王京楽春水の配下に加わることを誓う」
「別に、そんなのいらないよ。アリーナの国王をぎゃふんと言わせたいんでしょ。アリーナの城を攻め落としてしまおう。なるべく血は流さずに」
京楽は、魔王軍を率いてアリーナ王国の首都に攻め入った。
人々は逃げ回るどころか、京楽に挨拶して城へ案内してくれる。
「アリーナ国王の重税に、苦しんでいるんだ。助けてくれ、魔王様」
「アリーナ国王は、勇者浮竹様を見限った」
アリーナ国王は大分だめなやつのようで、京楽は魔王の名の元に、アリーナ王国jの城に攻め入り、国王を捕縛するとアリーナ王国を魔王の領地にした。
「ああ、ありがたい。これで、俺らも魔王様から加護が得られるし、隣国から戦争をしかけられることもない」
「魔王って‥‥…」
浮竹は、異世界から召喚された。元に戻る方法は魔王を倒せば戻れると言っていたが、もうなんだか異世界での暇な生活がどうでもよくなってきた。
浮竹は、地下牢に閉じ込められた国王を一発殴って、頭をバリカンではげにして、小さくではあるが復讐はした。
命をとるのは勇者のすることではない。
アリーナ国王は、魔王領地で強制労働させられるそうだ。
「京楽、ありがとう」
「どういたしまして。ボクの第三夫人になる気になった?」
「それはまだない。だが、勇者としてお前の存在を認め、共存することを世界に発表する」
「うん」
勇者浮竹が、魔王軍の配下に加わったと世界中が知り、魔王京楽の名前は浸透していく。
「お前は、何故魔王になったんだ?」
「うーん、先代魔王が残忍だったからね。人間がかわいそうに思えて倒したら、歓迎されて魔王になちゃった」
「そうか。俺は先代魔王を知らない」
「藍染っていってね。倒したけど、死んではいないようだよ。しぶといから」
「しぶといのか」
「うん。まぁ、ボクと互角くらいの強さだし、今は新しい魔王軍もいるし、攻め込まれる心配はないと思うよ。ボクにケンカを売ってきたのは、君くらいだよ、浮竹」
「お、俺は何も知らなかったから‥‥‥‥」
「ねぇ、第三夫人になってよ」
「第一夫人と第二夫人はどうするんだ」
「そのままだよ。意思の疎通もできないからね」
「なんでまた、スライムとスケルボーンなんだ。お前なら、美女美男よりどりみどりだろう」
「ボクの心を動かす相手がいなかったから。浮竹が初めてだよ。本気で恋に落ちた」
「は、恥ずかしいことを言うな」
浮竹は真っ赤になってそっぽをむく。
「ふふ、かわいいね」
「うるさい」
魔王歴233年。浮竹十四郎は、勇者の称号をもったまま、魔王軍に入るのであった。
血と聖水の名において 最終章
京楽が浮竹の花嫁になって、50年が経った。
いろいろあった。
父のレイモンドが皇帝の座を狙う藍染を殺し、レイモンドは黒崎一護に皇帝の座を譲り、妻であるブリュンヒルデと仲良く隠居生活を送っている。
京楽の変態が、ある日ぱったりとなくなった。
最初は大騒ぎだったが、次第に慣れて、京楽は紳士となっていた。
「浮竹、おはよう」
「ああ、おはよう京楽」
今日も、何気ない一日が始まる。
ドラゴンサモナーの浮竹は、パートナードラゴンの京楽と共に、一緒に静かに暮らせる場所を精霊界で見つけて、今は精霊界に住んでいる。
時おり、浮竹と京楽の元にやってきては、泊まってまた帰っていく。
『それにしても不思議だねぇ。神父のボクがある日まともになるなんて』
『まともになっても、俺は嫌いだがな』
『わお、十四郎毒舌』
『春水だって、まともになった神父の京楽を散々からかっただろう』
『まぁねぇ』
ドラゴンサモナーの浮竹は、京楽のいれた紅茶を飲む。
隣では、浮竹が京楽と穏やかに話をして笑っていた。
「京楽が、まともになって40年くらいになるな」
「そう?ボクはずっとまともだった気がする」
「いいや、お前はすぐ全裸になってしっぽりしようと襲いかかってきたり、盗んだ俺のパンツをを‥‥‥」
「やめてよ。人生の汚点は聞きたくない」
「ほんと、なんでこんなにまともになったんだろうな?」
「花嫁になってヴァンパイアになってちょっとしてからまともになったみたいだよね、ボク。ヴァンパイア化が影響してるのかも」
「魔女の薬でもだめだったのにな?」
浮竹が、京楽から紅茶のおかわりをもらう。
「今のボクじゃ不満かい?」
「いいや。まぁ、確かに騒がしくなくなったのは寂しいが、京楽がまともなほうがいい」
浮竹は、ドラゴンサモナーの浮竹が手をわしゃわしゃしているのを見た。
『ああ、昔のように燃やしたい‥‥‥』
「なんで!ボク、なんにもしてないよ!」
『いや、昔の癖でな』
『ほら、十四郎もそんな物騒なこと言ってないで、仲良くしよう?』
『昔の名残で、まだ苦手なんだ』
「昔はごめんね、浮竹と間違って襲ったりして」
『こんな風に謝られるから、調子が狂う。ああ、焼き焦がしたい』
『我慢だよ、我慢』
『ああ‥‥‥‥』
「血の帝国ブラッディアは、皇帝が黒崎一護になって藍染が死んで、大分変わった。平和な国になった。人間の奴隷化も禁止されて、人を襲うヴァンパイアの数は減ったが、まだ根絶はできないな。まぁ、いなくなったら俺たちヴァンパイアハンターがやっていけなくなるからな」
浮竹は、ハンターギルドから依頼のあったヴァンパイアを倒して、灰を提出して報酬金をもらったばかりであった。
今では錬金術師としてのほうが有名で、ハンター稼業は主に京楽に任せていた。
たまに、浮竹もヴァンパイアハンターとして働く。
ランクはS級になっていたが、S級も分類化されて、浮竹はSSS、京楽はSSになっていた。
「二人は、今日も泊まりかい?」
京楽が、夕飯を作るためにドラゴンサモナーの浮竹とパートナードラゴンの京楽を見る。
『3日ほど、泊まっていい?』
「ああ、いいぞ」
「3日か‥‥‥‥食料、買い出しに行かなきゃ」
「京楽、ついでにフェンリル用のキャットフード買ってきてくれ」
「フェンリルって、狼のクセにキャットフード食べるんだよねぇ」
「悪いかにゃ!」
浮竹に召喚されっぱなしのフェンリルが、文句を言う。
「ボクはグルメなんだにゃ。ドッグフードはまずいんだにゃ」
「はいはい。買ってきてあげるから、大人しく待っててね」
「にゃーん」
浮竹たちは、京楽を見送る。
「ああ、平和だなぁ」
浮竹は、変態だった京楽を少しだけ懐かしみつつ、紅茶を飲む。
ドラゴンサモナーの浮竹とパートナードラゴンの京楽は、探し求めていた安住の地を手に入れた。
浮竹も京楽も、静かな日々を手に入れた。
それがずっとずっと長く続けばいいのにと思うのであった。
血と聖水の名において THE END
いろいろあった。
父のレイモンドが皇帝の座を狙う藍染を殺し、レイモンドは黒崎一護に皇帝の座を譲り、妻であるブリュンヒルデと仲良く隠居生活を送っている。
京楽の変態が、ある日ぱったりとなくなった。
最初は大騒ぎだったが、次第に慣れて、京楽は紳士となっていた。
「浮竹、おはよう」
「ああ、おはよう京楽」
今日も、何気ない一日が始まる。
ドラゴンサモナーの浮竹は、パートナードラゴンの京楽と共に、一緒に静かに暮らせる場所を精霊界で見つけて、今は精霊界に住んでいる。
時おり、浮竹と京楽の元にやってきては、泊まってまた帰っていく。
『それにしても不思議だねぇ。神父のボクがある日まともになるなんて』
『まともになっても、俺は嫌いだがな』
『わお、十四郎毒舌』
『春水だって、まともになった神父の京楽を散々からかっただろう』
『まぁねぇ』
ドラゴンサモナーの浮竹は、京楽のいれた紅茶を飲む。
隣では、浮竹が京楽と穏やかに話をして笑っていた。
「京楽が、まともになって40年くらいになるな」
「そう?ボクはずっとまともだった気がする」
「いいや、お前はすぐ全裸になってしっぽりしようと襲いかかってきたり、盗んだ俺のパンツをを‥‥‥」
「やめてよ。人生の汚点は聞きたくない」
「ほんと、なんでこんなにまともになったんだろうな?」
「花嫁になってヴァンパイアになってちょっとしてからまともになったみたいだよね、ボク。ヴァンパイア化が影響してるのかも」
「魔女の薬でもだめだったのにな?」
浮竹が、京楽から紅茶のおかわりをもらう。
「今のボクじゃ不満かい?」
「いいや。まぁ、確かに騒がしくなくなったのは寂しいが、京楽がまともなほうがいい」
浮竹は、ドラゴンサモナーの浮竹が手をわしゃわしゃしているのを見た。
『ああ、昔のように燃やしたい‥‥‥』
「なんで!ボク、なんにもしてないよ!」
『いや、昔の癖でな』
『ほら、十四郎もそんな物騒なこと言ってないで、仲良くしよう?』
『昔の名残で、まだ苦手なんだ』
「昔はごめんね、浮竹と間違って襲ったりして」
『こんな風に謝られるから、調子が狂う。ああ、焼き焦がしたい』
『我慢だよ、我慢』
『ああ‥‥‥‥』
「血の帝国ブラッディアは、皇帝が黒崎一護になって藍染が死んで、大分変わった。平和な国になった。人間の奴隷化も禁止されて、人を襲うヴァンパイアの数は減ったが、まだ根絶はできないな。まぁ、いなくなったら俺たちヴァンパイアハンターがやっていけなくなるからな」
浮竹は、ハンターギルドから依頼のあったヴァンパイアを倒して、灰を提出して報酬金をもらったばかりであった。
今では錬金術師としてのほうが有名で、ハンター稼業は主に京楽に任せていた。
たまに、浮竹もヴァンパイアハンターとして働く。
ランクはS級になっていたが、S級も分類化されて、浮竹はSSS、京楽はSSになっていた。
「二人は、今日も泊まりかい?」
京楽が、夕飯を作るためにドラゴンサモナーの浮竹とパートナードラゴンの京楽を見る。
『3日ほど、泊まっていい?』
「ああ、いいぞ」
「3日か‥‥‥‥食料、買い出しに行かなきゃ」
「京楽、ついでにフェンリル用のキャットフード買ってきてくれ」
「フェンリルって、狼のクセにキャットフード食べるんだよねぇ」
「悪いかにゃ!」
浮竹に召喚されっぱなしのフェンリルが、文句を言う。
「ボクはグルメなんだにゃ。ドッグフードはまずいんだにゃ」
「はいはい。買ってきてあげるから、大人しく待っててね」
「にゃーん」
浮竹たちは、京楽を見送る。
「ああ、平和だなぁ」
浮竹は、変態だった京楽を少しだけ懐かしみつつ、紅茶を飲む。
ドラゴンサモナーの浮竹とパートナードラゴンの京楽は、探し求めていた安住の地を手に入れた。
浮竹も京楽も、静かな日々を手に入れた。
それがずっとずっと長く続けばいいのにと思うのであった。
血と聖水の名において THE END
無題
「‥‥‥‥俺は誰だ?」
「君は浮竹十四郎。ボクの恋人だよ」
総隊長、京楽春水には秘密があった。
それは、失ってしまった恋人と同じ者を愛しているということ。
上流貴族の金を使って、京楽は死んでしまった浮竹のクローンを、涅マユリに作らせて、大金を支払って口止めしていた。
「俺は浮竹十四郎というのか。お前は?」
「ボクは京楽春水。君は、長い間昏睡状態にあって、記憶が欠落してしまっているんだよ」
「そうなのか。恋人のお前の名前も顔も思い出せないなんて、重症だな」
「ゆっくり歩いていこう」
「ああ」
浮竹は、許可なく外に出るのを許されず、いつも日当たりのいい部屋で眠っていた。
起きている時間は1日に4時間程度。
京楽が1日に浮竹に接していられる程度の時間だった。
「眠い。寝ていいか?」
「いいよ。ボクが子守唄歌ってあげる」
優しい旋律を聞きながら、浮竹は長い眠りにつく。
次に起きるのは、明日の夕方。今から約20時間後だ。
「浮竹、愛しているよ」
京楽は、愛おしそうに浮竹の長い白髪を撫でる。
浮竹は幸せそうに眠っている。
「君がいるから、ボクは狂わないでいられる。いや、君を作り出させて愛している時点で、狂っているのかな?」
しとしとと、雨が降る。
6月になった。
少し暑くなってきた。浮竹はあじさいを見ながら、臥せっていた。
クローンの元も病弱で、そのクローンも病弱だった。
ただ、肺の病はなく、血を吐いて生死の堺をさまようことはなかったが、季節の変わり目はよく風邪をひいた。
浮竹の存在が存在なので、4番隊に診てもらえない。
京楽が偽って、薬を手に入れて浮竹に飲ませた。
「ん‥‥‥京楽?」
「浮竹、眠いなら寝ていていいよ。起きたら、上のほうにおいてある食事をとって、薬を飲んでね?」
「今日は、俺を抱かないのか」
「君は今風邪をひいているから、抱かないよ」
「そうか」
京楽は、たまに浮竹を抱く。
浮竹の体調のいい日に。月に2~3回程度だった。
「京楽」
「なぁに?」
「俺は、どれだけ時間が経ってもお前のことを思い出せない。でも、お前は俺を愛してくれている。俺も、お前を愛している」
翡翠の瞳から、ポロリと涙が流れる。
「与えらえれた時間は少しだけだ。京楽、俺の死を受け入れられなかったのか?」
「浮竹?」
「そうだ。本物の浮竹だ。地獄から少し舞い戻った」
「浮竹!!」
京楽は、浮竹を抱きしめる。
「京楽、こんなものを作るくらい、お前は壊れてしまったんだな」
「君がいないから‥‥‥‥」
「確かにこの世界に俺はもういない。でも、こんな俺を作って愛してどうする?」
「死んでしまった君には分からないよ。残された者の気持ちなんて」
「確かにな。俺が悪かった。俺のクローンを愛するのはやめろとは言わない。ただ、もっと世界を見て生きていけ。俺のクローンにも、世界を見せてやれ」
「うん‥‥‥」
京楽は、涙をぽろぽろ流しながら、クローンの体に一時的に宿った本物の浮竹を抱きしめる。
「ああ、この瞬間が永遠であればいいのに」
「おっと、もう無理なようだ。戻る。いいか、クローンの俺に俺を重ねるなら、もっと自由にしてやれ。ずっと閉じ込めたままじゃ、いつか壊れる」
「うん‥‥‥‥」
「じゃあな」
ふっと、浮竹の霊圧が消えた。
「あれ、俺は‥‥?」
「十四郎。今日から、君を十四郎と呼ぶよ。薬を処方してもらって、長い時間起きていられるようにしよう。君を外に出す」
「俺は、外に出てもいいのか?」
「うん。この庭以外の外も出ていいようにするから」
京楽は、浮竹のクローンを作ったことを責められたが、殺すわけにもいかないので、浮竹は結局京楽の手に委ねられた。
「今日は暑いね。冷えたスイカをもらってきたんだ。二人で食べよう」
「春水、愛してる」
浮竹のクローンは、事実を知ってもすりこみ現象のように京楽のあとをついてまわる。
「ボクも愛してるよ、十四郎」
「いつか、本物の俺の話をもっとしてくれ」
「うん。今度、時間があいたらね」
クローンの浮竹は、自分がクローンであるということを受け入れていた。
ただ、愛しかった。
京楽が。
クローンの浮竹は、自由を与えられた。だが、ずっと京楽の傍にいた。
番のように、二人は寄り添いあいながら、生きる。
もう、二度と失わないように。
「君は浮竹十四郎。ボクの恋人だよ」
総隊長、京楽春水には秘密があった。
それは、失ってしまった恋人と同じ者を愛しているということ。
上流貴族の金を使って、京楽は死んでしまった浮竹のクローンを、涅マユリに作らせて、大金を支払って口止めしていた。
「俺は浮竹十四郎というのか。お前は?」
「ボクは京楽春水。君は、長い間昏睡状態にあって、記憶が欠落してしまっているんだよ」
「そうなのか。恋人のお前の名前も顔も思い出せないなんて、重症だな」
「ゆっくり歩いていこう」
「ああ」
浮竹は、許可なく外に出るのを許されず、いつも日当たりのいい部屋で眠っていた。
起きている時間は1日に4時間程度。
京楽が1日に浮竹に接していられる程度の時間だった。
「眠い。寝ていいか?」
「いいよ。ボクが子守唄歌ってあげる」
優しい旋律を聞きながら、浮竹は長い眠りにつく。
次に起きるのは、明日の夕方。今から約20時間後だ。
「浮竹、愛しているよ」
京楽は、愛おしそうに浮竹の長い白髪を撫でる。
浮竹は幸せそうに眠っている。
「君がいるから、ボクは狂わないでいられる。いや、君を作り出させて愛している時点で、狂っているのかな?」
しとしとと、雨が降る。
6月になった。
少し暑くなってきた。浮竹はあじさいを見ながら、臥せっていた。
クローンの元も病弱で、そのクローンも病弱だった。
ただ、肺の病はなく、血を吐いて生死の堺をさまようことはなかったが、季節の変わり目はよく風邪をひいた。
浮竹の存在が存在なので、4番隊に診てもらえない。
京楽が偽って、薬を手に入れて浮竹に飲ませた。
「ん‥‥‥京楽?」
「浮竹、眠いなら寝ていていいよ。起きたら、上のほうにおいてある食事をとって、薬を飲んでね?」
「今日は、俺を抱かないのか」
「君は今風邪をひいているから、抱かないよ」
「そうか」
京楽は、たまに浮竹を抱く。
浮竹の体調のいい日に。月に2~3回程度だった。
「京楽」
「なぁに?」
「俺は、どれだけ時間が経ってもお前のことを思い出せない。でも、お前は俺を愛してくれている。俺も、お前を愛している」
翡翠の瞳から、ポロリと涙が流れる。
「与えらえれた時間は少しだけだ。京楽、俺の死を受け入れられなかったのか?」
「浮竹?」
「そうだ。本物の浮竹だ。地獄から少し舞い戻った」
「浮竹!!」
京楽は、浮竹を抱きしめる。
「京楽、こんなものを作るくらい、お前は壊れてしまったんだな」
「君がいないから‥‥‥‥」
「確かにこの世界に俺はもういない。でも、こんな俺を作って愛してどうする?」
「死んでしまった君には分からないよ。残された者の気持ちなんて」
「確かにな。俺が悪かった。俺のクローンを愛するのはやめろとは言わない。ただ、もっと世界を見て生きていけ。俺のクローンにも、世界を見せてやれ」
「うん‥‥‥」
京楽は、涙をぽろぽろ流しながら、クローンの体に一時的に宿った本物の浮竹を抱きしめる。
「ああ、この瞬間が永遠であればいいのに」
「おっと、もう無理なようだ。戻る。いいか、クローンの俺に俺を重ねるなら、もっと自由にしてやれ。ずっと閉じ込めたままじゃ、いつか壊れる」
「うん‥‥‥‥」
「じゃあな」
ふっと、浮竹の霊圧が消えた。
「あれ、俺は‥‥?」
「十四郎。今日から、君を十四郎と呼ぶよ。薬を処方してもらって、長い時間起きていられるようにしよう。君を外に出す」
「俺は、外に出てもいいのか?」
「うん。この庭以外の外も出ていいようにするから」
京楽は、浮竹のクローンを作ったことを責められたが、殺すわけにもいかないので、浮竹は結局京楽の手に委ねられた。
「今日は暑いね。冷えたスイカをもらってきたんだ。二人で食べよう」
「春水、愛してる」
浮竹のクローンは、事実を知ってもすりこみ現象のように京楽のあとをついてまわる。
「ボクも愛してるよ、十四郎」
「いつか、本物の俺の話をもっとしてくれ」
「うん。今度、時間があいたらね」
クローンの浮竹は、自分がクローンであるということを受け入れていた。
ただ、愛しかった。
京楽が。
クローンの浮竹は、自由を与えられた。だが、ずっと京楽の傍にいた。
番のように、二人は寄り添いあいながら、生きる。
もう、二度と失わないように。
血と聖水の名において32
浮竹の知り合いの、魔女がやってきた。
名前は松本乱菊。豊満なナイスバディの魔女だが、実はヴァンパイアで、実年齢は300歳を超えていた。
「はぁい、浮竹さん。頼まれていた薬、もってきたわよ?」
「きぃぃぃぃ、それ以上浮竹に近づくなああああ」
京楽は、魔女の乱菊が浮竹と仲良さげに会話しているのを見て、嫉妬でメラメラ燃えていた。
「京楽さんだっけ?」
乱菊は豊満な胸に、京楽の顔を押し付ける。
普通の男なら喜ぶところであるが、京楽は鳥肌をたてていた。
「痴女だ!浮竹、助けて!」
「うーむ。京楽は女性に反応なしか。ふむ」
「浮竹、こんな痴女魔女はほっといて、ボクとしっぽりしよう!」
朝から襲いかかってきた京楽を、浮竹はハリセンで床に沈める。
「これが約束の薬よ。どんな変態でも、ころりと真面目になる薬よ」
乱菊から薬を受け取って、浮竹は京楽に無理やり飲ませた。
「ぐおおおおおおおおおお」
京楽が苦しむ。
「あら変ね、苦しむようには作っていないのだけれど」
「ぬおおおおおおおおおお。ボクは京楽春水。浮竹の花嫁で、変態紳士だよ!」
「‥‥‥なぁ、乱菊、悪化してないか?」
「ほほほほほ。あたしはしーらないっと。一応、解毒薬あげる。言っとくけど、本当jに飲めばころりと真面目になる薬を作ったのよ。実験したけど、成功だったし。ただ、薬でも変われないほどの変態には効かないのかもしれないわね」
乱菊はそれだけ言うと、去って行ってしまった。
「ふふふ、浮竹。昼食を作ったんだよ」
皿の上には、豪華そうな料理が並べられていたが、手をふく布が浮竹のパンツだった。
「変態紳士‥‥‥」
浮竹は、残念そうに京楽を見る。
その日、京楽は紳士だった。ただ、変態紳士であった。
変に紳士で変態なので、いつものほうがまだましなので解毒薬を飲ませた。
「酷い!浮竹、ボクを真面目にする薬って何さ!」
「お前が変態すぎるからだ!」
「ボクはこんなにも浮竹を愛しているのに!」
「俺のパンツの匂いをかぎながら言うな!」
「はぁはぁ。スーハースーハー」
「フェニックス!」
「きゅおおおおんん」
フェニックスで燃やされても、京楽は浮竹の焦げたパンツを手にスーハースーハーしていた。
「変態紳士とド変態。どっちもどっちだな」
浮竹は、頭を抱え込む。
「ボクはいつだって紳士だよ!」
「焦げたまま俺のパンツを手にしていう言葉か!」
「これは緊急用の浮竹のパンツ。浮竹のパンツが摂取できない状態に陥ったら、空間魔法で浮竹のパンツを出すの」
「くだらんことで制御の難しい魔法を使うな」
浮竹は、ハリセンをかまえる。
京楽は、はたかれるのを嬉しそうに待っている。
「やめだやめだ。俺は寝る」
「えーーーー。どうせ寝るならしっぽりしようよ」
「お前はそこらの俺のパンツとでもしっぽりしとけ」
「うん、そうするよ」
いそいそと、浮竹のぱんつをもってズボンを脱ぐので、浮竹は叫んだ。
「フェンリル!」
「うわぁ、京楽がポロリなのにゃ!アイスブレス!」
「あガガガが。冷たい。しっぽりできないじゃない!」
「ほんとにパンツとしっぽりしようとするな!」
「だってそう言ったのは浮竹だよ!?」
「言っただけだ。まさか実行に移すとは」
「うえーん。ボクのマグナムがこおってるうううう」
「フェニックス!」
「もぎゃああああああああああああああああ」
浮竹は、フェニックスの炎でぽろりしたままの浮竹をこんがりと焼くのであった。
ちなみに、変態紳士の時はパンツをはいていたが、ネクタイと靴下だけはいて、後は裸だった。
普通の変態の時は、服は一応着ていた。
すぐ脱ぎだすが。
その後、町の不良に乱菊の作った真面目になる薬を試しに飲ませたら、真人間になった。その不良は変態ではなかったが。
乱菊の薬の効果は本物だった。
ただ、京楽が変態すぎて、効かなかったのだ。
「はぁ‥‥‥‥京楽の変態をなんとかできる薬はないか」
「浮竹がしっぽりしてくれたら、変態じゃなくなるかも?」
「ただ、しっぽりしたいだけだろ!」
「げふふふふふふ」
浮竹は、浮竹のパンツに頬ずりする京楽を見てから、大きなため息をつく。
「はぁ。これでも、伴侶なんだよなぁ」
ド変態であるが。
浮竹の、花嫁なのであった。
血と聖水の名において31
池があった。
その池に斧を落とした木こりは、水の精霊に尋ねられた。
「あなたが落としたのはこの古い斧ですか、それとも金でできた斧ですか、銀でできた斧ですか?」
木こりは正直に古い斧だと答えた。
水の精霊は、正直だったと褒美に金と銀の斧両方を与えて、古い斧を返した。
さて、そこに池があった。
浮竹は、京楽と暑い時期なので涼みにきていた。ドラゴンサモナーの浮竹とパートナードラゴンの京楽も一緒だった。
浮竹は、そういえば木こりの伝説があったなと、京楽を池に突き飛ばした。
「酷い!でもこれも愛!?」
そう言って、京楽は沈んでしまった。
水の精霊が現れた
「あなたが落としたのは、このアホで変態な京楽ですか、かっこよく強い京楽ですか、優しくてもてもての京楽ですか?」
京楽が三人いた。
浮竹は、どの京楽とか選ばなかった。水の精霊からは、かすかに血の匂いがした。
浮竹は、水の精霊にフェニックスを向ける。
「な、なにするんじゃわれえええ」
「この前、金と銀の斧をもらった木こりは、代償に命をもっていかれた。お前、水の精霊じゃなく、悪魔だろう?しかも、ヴァンパイアとハーフの」
「ぎくり」
「京楽、遊んで溺れてないで、この悪魔とヴァンパイアのハーフを退治するぞ」
京楽は一人だけ溺れているのがいた。
それが本物の京楽だった。
他の京楽は影がなく、幻影であった。
「もがもが、ボクはほんとに、泳げない‥‥‥」
「仕方ない。ウンディーネ!」
浮竹は本物の水の精霊を呼ぶと、水の乙女に京楽を助け出してもらう。
「地と聖水の名において、アーメン!」
浮竹と京楽は、銀の弾丸が入った銃と短剣で、偽の水の精霊を攻撃する。
「このフェルシ、その程度の攻撃では死なん」
ドラゴンサモナーの浮竹とパートナードラゴンの京楽は、様子を見とどけている。
『がんばれ、ヴァンピールの俺!』
『悪魔とヴァンパイアのハーフってやだね。不老の上に力が強い』
「くくくく、悪魔の力とヴァンパイアの不老をもつこのフェルシに勝てるものなど。ただのヴァンピールとヴァンパイア風情が」
「俺は、悪魔王ディアブロの二つ名をもつヴァンパイアマスターの息子だが?」
「な、悪魔王ディアブロ様の二つ名をもつ‥‥レイモンドか!ひいいいい、レイモンドの息子だと!?」
悪魔王ディアブロの二つ名は伊達ではないらしい。レイモンドは、悪魔にさえ畏怖される。
「ひいいいい、命だけは!」
「木こりの話を聞いてやってきた旅人を血を吸って食っただろう。処分する」
「ええい、逃げてやる」
魔界に帰ろうとするフェルシを、京楽が魔法で捕縛する。
「顕現せよ、炎の精霊王イフリール」
「よばれてじゃじゃじゃーん。灰にすればいいんだよね?」
「ああ、頼む」
「ひいいいい。精霊王!?」
フェルシは、地面に額をこすりつけて謝罪する。
「食った魂は元に戻す!もう人は食わない!」
「どうするの?」
京楽が聞いてくる。
「うーん」
隙を見せた浮竹に、フェルシは襲いかかる。
「バカめ、いかにレイモンドの子とはいえ、しょせんヴァンピール。悪魔の力をくらうがいい!」
フェルシの爪が、浮竹の届く前に、京楽の魔法でフェルシは灰になっていた。
『変態のくせに、やるね』
『本当だな。変態のくせに、かっこいいな』
ドラゴンサモナーの浮竹とパートナードラゴンの京楽は、「変態のくせに」と何度も強調する。
「失礼だね!ボクだって、変態じゃない時くらいあるよ!」
頭に浮竹のパンツをかぶりながらの言葉に、これだから変態はと、三人は京楽を無視して歩きだす。
「ああ、一応灰をカプセルにつめるか」
悪魔とのハーフであるが、ヴァンピールであり、討伐依頼のでていた者であった。
「金貨千枚ゲットだね」
「まぁ、金銭的にはまぁまぁか」
「ふふふ、ボクは父の遺産を半分受け継いだから‥‥‥」
「働かない者には飯は食わせない」
「くすん」
ついこの間、京楽の父が死んだのだ。京楽は貴族で、伯爵家の次男だった。
ドラゴンサモナーの浮竹とパートナードラゴンの京楽は、京楽が貴族であるということを未だに信じられずにいた。
『まぁ、討伐依頼達成したみたいだし、帰る?』
『金の斧と銀の斧‥‥‥木こりの話は本当で、いつの間にか、水の精霊は悪魔とヴァンパイアのハーフと入れ違っていたんだな。まぁ、帰るか』
京楽は、浮竹のパンツを池に捨てた。
「あなたが落としたのは、この浮竹の普通のパンツですか、それとも金のパンツですか、銀のパンツですか」
水の精霊は復活していた。
[あ、浮竹の使用済のパンツです」
「嘘つきには、何もあげません。投げ入れられたパンツは未使用です」
「ああ!ボクの浮竹のパンツ返してよ!」
「嘘つきは没収です」
「酷い!浮竹、この水の精霊やっつけても‥‥‥」
「フェニックス」
「もぎゃあああああああああああああ」
京楽は、浮竹に燃やされて、ドラゴンサモナーの浮竹とパートナードラゴンの京楽にばかにされながら、ずるずると浮竹に引きずられて池から去り、帰宅するのであった。
「ああ、ボクのコレクションが。また浮竹のパンツ盗まなきゃ」
「盗むな、このどあほ!」
『変態は治らないからね』
『変態には特効薬なんてないだろ』
そんな会話をしながら、日は暮れていくのであった。
その池に斧を落とした木こりは、水の精霊に尋ねられた。
「あなたが落としたのはこの古い斧ですか、それとも金でできた斧ですか、銀でできた斧ですか?」
木こりは正直に古い斧だと答えた。
水の精霊は、正直だったと褒美に金と銀の斧両方を与えて、古い斧を返した。
さて、そこに池があった。
浮竹は、京楽と暑い時期なので涼みにきていた。ドラゴンサモナーの浮竹とパートナードラゴンの京楽も一緒だった。
浮竹は、そういえば木こりの伝説があったなと、京楽を池に突き飛ばした。
「酷い!でもこれも愛!?」
そう言って、京楽は沈んでしまった。
水の精霊が現れた
「あなたが落としたのは、このアホで変態な京楽ですか、かっこよく強い京楽ですか、優しくてもてもての京楽ですか?」
京楽が三人いた。
浮竹は、どの京楽とか選ばなかった。水の精霊からは、かすかに血の匂いがした。
浮竹は、水の精霊にフェニックスを向ける。
「な、なにするんじゃわれえええ」
「この前、金と銀の斧をもらった木こりは、代償に命をもっていかれた。お前、水の精霊じゃなく、悪魔だろう?しかも、ヴァンパイアとハーフの」
「ぎくり」
「京楽、遊んで溺れてないで、この悪魔とヴァンパイアのハーフを退治するぞ」
京楽は一人だけ溺れているのがいた。
それが本物の京楽だった。
他の京楽は影がなく、幻影であった。
「もがもが、ボクはほんとに、泳げない‥‥‥」
「仕方ない。ウンディーネ!」
浮竹は本物の水の精霊を呼ぶと、水の乙女に京楽を助け出してもらう。
「地と聖水の名において、アーメン!」
浮竹と京楽は、銀の弾丸が入った銃と短剣で、偽の水の精霊を攻撃する。
「このフェルシ、その程度の攻撃では死なん」
ドラゴンサモナーの浮竹とパートナードラゴンの京楽は、様子を見とどけている。
『がんばれ、ヴァンピールの俺!』
『悪魔とヴァンパイアのハーフってやだね。不老の上に力が強い』
「くくくく、悪魔の力とヴァンパイアの不老をもつこのフェルシに勝てるものなど。ただのヴァンピールとヴァンパイア風情が」
「俺は、悪魔王ディアブロの二つ名をもつヴァンパイアマスターの息子だが?」
「な、悪魔王ディアブロ様の二つ名をもつ‥‥レイモンドか!ひいいいい、レイモンドの息子だと!?」
悪魔王ディアブロの二つ名は伊達ではないらしい。レイモンドは、悪魔にさえ畏怖される。
「ひいいいい、命だけは!」
「木こりの話を聞いてやってきた旅人を血を吸って食っただろう。処分する」
「ええい、逃げてやる」
魔界に帰ろうとするフェルシを、京楽が魔法で捕縛する。
「顕現せよ、炎の精霊王イフリール」
「よばれてじゃじゃじゃーん。灰にすればいいんだよね?」
「ああ、頼む」
「ひいいいい。精霊王!?」
フェルシは、地面に額をこすりつけて謝罪する。
「食った魂は元に戻す!もう人は食わない!」
「どうするの?」
京楽が聞いてくる。
「うーん」
隙を見せた浮竹に、フェルシは襲いかかる。
「バカめ、いかにレイモンドの子とはいえ、しょせんヴァンピール。悪魔の力をくらうがいい!」
フェルシの爪が、浮竹の届く前に、京楽の魔法でフェルシは灰になっていた。
『変態のくせに、やるね』
『本当だな。変態のくせに、かっこいいな』
ドラゴンサモナーの浮竹とパートナードラゴンの京楽は、「変態のくせに」と何度も強調する。
「失礼だね!ボクだって、変態じゃない時くらいあるよ!」
頭に浮竹のパンツをかぶりながらの言葉に、これだから変態はと、三人は京楽を無視して歩きだす。
「ああ、一応灰をカプセルにつめるか」
悪魔とのハーフであるが、ヴァンピールであり、討伐依頼のでていた者であった。
「金貨千枚ゲットだね」
「まぁ、金銭的にはまぁまぁか」
「ふふふ、ボクは父の遺産を半分受け継いだから‥‥‥」
「働かない者には飯は食わせない」
「くすん」
ついこの間、京楽の父が死んだのだ。京楽は貴族で、伯爵家の次男だった。
ドラゴンサモナーの浮竹とパートナードラゴンの京楽は、京楽が貴族であるということを未だに信じられずにいた。
『まぁ、討伐依頼達成したみたいだし、帰る?』
『金の斧と銀の斧‥‥‥木こりの話は本当で、いつの間にか、水の精霊は悪魔とヴァンパイアのハーフと入れ違っていたんだな。まぁ、帰るか』
京楽は、浮竹のパンツを池に捨てた。
「あなたが落としたのは、この浮竹の普通のパンツですか、それとも金のパンツですか、銀のパンツですか」
水の精霊は復活していた。
[あ、浮竹の使用済のパンツです」
「嘘つきには、何もあげません。投げ入れられたパンツは未使用です」
「ああ!ボクの浮竹のパンツ返してよ!」
「嘘つきは没収です」
「酷い!浮竹、この水の精霊やっつけても‥‥‥」
「フェニックス」
「もぎゃあああああああああああああ」
京楽は、浮竹に燃やされて、ドラゴンサモナーの浮竹とパートナードラゴンの京楽にばかにされながら、ずるずると浮竹に引きずられて池から去り、帰宅するのであった。
「ああ、ボクのコレクションが。また浮竹のパンツ盗まなきゃ」
「盗むな、このどあほ!」
『変態は治らないからね』
『変態には特効薬なんてないだろ』
そんな会話をしながら、日は暮れていくのであった。
オメガバース恋白読み切り短編その7
「隊長‥‥‥‥隊長が、オメガって本当ですか。四大貴族のどこかに嫁ぐ話が出ているってほんとですか」
「恋次、どこでそれを」
「ルキアからです」
「ルキア‥‥‥あれほど言うなと口止めしておいたのに」
白哉は、困ったような顔をする。
「四楓院家に嫁ぐことが決まっている。当主の座をもちながら」
「いやです。隊長が、他の男のものになるなんて、俺はいやです」
「恋次?」
白哉は、恋次が自分のことを好きだと知らなかった。
「あんたが誰かの番になるくらいなら、犯して無理やり番にしてやる」
「恋次!?」
押し倒されてキスをされて、けれど白哉はそれがいやではなかった。
「恋次、おちつけ。そんなことしたら、お前は罪人として処刑されるかもしれないのだぞ」
「ばれなきゃいいんすよ。隊長が番になりたがったことにすればいい」
「このアホウめ。何故、素直に好きと言えぬ」
「え。隊長、俺が隊長好きなこと知らなかったんですか」
「初耳だ」
「今まで、散々好きだっていってきたんすけど」
白哉は、また困った顔をした。
「主語がぬけていたので、ルキアのことが好きなのだと思っていた」
「あちゃーーー。俺のアピール不足か」
「少しは頭が冷えたか、恋次」
「あ、はい‥‥‥‥でも、四楓院家に嫁ぐのは」
「やめる。思い人ができたら、嫁ががなくてもいいという約束になっている」
「隊長!」
恋次は、白哉を抱きしめた。
「力の加減をしろ、恋次。痛い」
「あ、すんません」
「私はお前のことが嫌いではない。どちらかというと好きだ。だが、今すぐ番になれと言われても困るのも事実。まずは、番になるという前提で付き合ってみぬか?」
「はい!」
それから、恋次と白哉は付き合い始めた。
キスをするのに1か月かかった。
だが、あとはとんとん拍子でことがすすみ、白哉にヒートが訪れた。
「あ、恋次。体が熱い‥‥お前が欲しくて、どうにかなりそうだ」
「隊長、今までヒートはどうしてたんすか」
「闇市場の強い抑制剤を飲んで我慢していた。副作用で頭痛がするが、発情しまくるよりましだ」
「今回は、抑制剤飲んでないんすね」
「今は、恋次がいるであろうが。私を番にしたいのであろう?」
「隊長‥‥いいんすか。抱きますよ?」
「好きにせよ。もう四楓院家に嫁ぐ話は消えた。番になる予定の好きな者がいると言っておいた」
白哉は、はじめてまともに味わうヒートの熱で思考がぐちゃぐちゃになりそうだった。
「抱け、恋次」
「隊長‥‥番にして、いいんすね?」
「ああ」
「ひあう!」
元々男を受けれる場所でないそこは、けれど自然に濡れて、恋次のものを締め付ける。
「隊長、もうちょっと力ぬいてください。俺、すぐにいっちまいそうだ。もっと隊長を味わいたい」
「無理を言うな」
「息大きくすって、はいてください。それ繰り返して」
言われた通りにしていると、だんだんと体から力がぬけてきた。
「ひあ!」
奥を貫かれて、白哉は涙を零す。
それを吸い取って、恋次は白哉を味わうようにゆっくり抱いた。
「ん‥‥‥もうよい。お前の好きなように抱け。我慢はせずともよい」
「めっちゃがっつきますよ。それでもいいですか?」
「かまわぬ」
「ひあああ、もうやああああ」
「がっついてもいいっていったのは、隊長っすよ」
「もう、4回もだしたであろう。もうやぁ」
恋次は、白哉の奥を貫いて揺さぶる。
「あああ、いくうう」
「隊長、すっごいえろい」
「ひあああ!」
何度もオーがズムでいかされた。
精液はとうに出しつくてしまった。
「うなじ、噛みますよ?番にします」
「あ、恋次」
「隊長、愛してます」
恋次は、白哉のうなじをかんだ。
お互い電流が走り、番になったことが分かる。
「あ、もうだめだ。あああああ」
白夜の意識は、そこで落ちた。
「隊長、大丈夫っすか?」
「大丈夫ではない。好きにせよとは言ったが、限度をわきまえよ」
「すんません」
しゅんとうなだれた恋次の手をとる。
「番になった。人生、一緒に生きていくのだぞ。よろしく頼む」
「は、はい!隊長、ヒート期間が辛かったらいつでも言ってください」
「明日はせぬぞ。あさってならいいが」
「はい!」
恋次は、憧れるだけだった白哉を手に入れた。
白哉は、恋次を愛してしまった。
お互い、上官と副官であるが、番として一緒に住み、一緒に生きていくのだった。
「恋次、どこでそれを」
「ルキアからです」
「ルキア‥‥‥あれほど言うなと口止めしておいたのに」
白哉は、困ったような顔をする。
「四楓院家に嫁ぐことが決まっている。当主の座をもちながら」
「いやです。隊長が、他の男のものになるなんて、俺はいやです」
「恋次?」
白哉は、恋次が自分のことを好きだと知らなかった。
「あんたが誰かの番になるくらいなら、犯して無理やり番にしてやる」
「恋次!?」
押し倒されてキスをされて、けれど白哉はそれがいやではなかった。
「恋次、おちつけ。そんなことしたら、お前は罪人として処刑されるかもしれないのだぞ」
「ばれなきゃいいんすよ。隊長が番になりたがったことにすればいい」
「このアホウめ。何故、素直に好きと言えぬ」
「え。隊長、俺が隊長好きなこと知らなかったんですか」
「初耳だ」
「今まで、散々好きだっていってきたんすけど」
白哉は、また困った顔をした。
「主語がぬけていたので、ルキアのことが好きなのだと思っていた」
「あちゃーーー。俺のアピール不足か」
「少しは頭が冷えたか、恋次」
「あ、はい‥‥‥‥でも、四楓院家に嫁ぐのは」
「やめる。思い人ができたら、嫁ががなくてもいいという約束になっている」
「隊長!」
恋次は、白哉を抱きしめた。
「力の加減をしろ、恋次。痛い」
「あ、すんません」
「私はお前のことが嫌いではない。どちらかというと好きだ。だが、今すぐ番になれと言われても困るのも事実。まずは、番になるという前提で付き合ってみぬか?」
「はい!」
それから、恋次と白哉は付き合い始めた。
キスをするのに1か月かかった。
だが、あとはとんとん拍子でことがすすみ、白哉にヒートが訪れた。
「あ、恋次。体が熱い‥‥お前が欲しくて、どうにかなりそうだ」
「隊長、今までヒートはどうしてたんすか」
「闇市場の強い抑制剤を飲んで我慢していた。副作用で頭痛がするが、発情しまくるよりましだ」
「今回は、抑制剤飲んでないんすね」
「今は、恋次がいるであろうが。私を番にしたいのであろう?」
「隊長‥‥いいんすか。抱きますよ?」
「好きにせよ。もう四楓院家に嫁ぐ話は消えた。番になる予定の好きな者がいると言っておいた」
白哉は、はじめてまともに味わうヒートの熱で思考がぐちゃぐちゃになりそうだった。
「抱け、恋次」
「隊長‥‥番にして、いいんすね?」
「ああ」
「ひあう!」
元々男を受けれる場所でないそこは、けれど自然に濡れて、恋次のものを締め付ける。
「隊長、もうちょっと力ぬいてください。俺、すぐにいっちまいそうだ。もっと隊長を味わいたい」
「無理を言うな」
「息大きくすって、はいてください。それ繰り返して」
言われた通りにしていると、だんだんと体から力がぬけてきた。
「ひあ!」
奥を貫かれて、白哉は涙を零す。
それを吸い取って、恋次は白哉を味わうようにゆっくり抱いた。
「ん‥‥‥もうよい。お前の好きなように抱け。我慢はせずともよい」
「めっちゃがっつきますよ。それでもいいですか?」
「かまわぬ」
「ひあああ、もうやああああ」
「がっついてもいいっていったのは、隊長っすよ」
「もう、4回もだしたであろう。もうやぁ」
恋次は、白哉の奥を貫いて揺さぶる。
「あああ、いくうう」
「隊長、すっごいえろい」
「ひあああ!」
何度もオーがズムでいかされた。
精液はとうに出しつくてしまった。
「うなじ、噛みますよ?番にします」
「あ、恋次」
「隊長、愛してます」
恋次は、白哉のうなじをかんだ。
お互い電流が走り、番になったことが分かる。
「あ、もうだめだ。あああああ」
白夜の意識は、そこで落ちた。
「隊長、大丈夫っすか?」
「大丈夫ではない。好きにせよとは言ったが、限度をわきまえよ」
「すんません」
しゅんとうなだれた恋次の手をとる。
「番になった。人生、一緒に生きていくのだぞ。よろしく頼む」
「は、はい!隊長、ヒート期間が辛かったらいつでも言ってください」
「明日はせぬぞ。あさってならいいが」
「はい!」
恋次は、憧れるだけだった白哉を手に入れた。
白哉は、恋次を愛してしまった。
お互い、上官と副官であるが、番として一緒に住み、一緒に生きていくのだった。
オメガバース京浮読み切り短編
学院で、1年に1回検査がある。
それは、オメガかアルファかベータであるかという検査だ。
先天的なものが多いが、まれに後天的にオメガになったり、アルファになったり、ベータになったりすることがあるので、検査はかかせなかった。
浮竹は、ずっとベータだった。
検査の結果、オメガと分かり、特進クラスの者はほぼアルファなので、オメガの浮竹は抑制剤を飲んで、首に番にされないように首輪をつけることが義務づけられた。
「なんで、俺はオメガなんだ‥‥」
浮竹は、自分を責めた。
「ボクは、君がオメガだろうとアルファだろうとベータだろうと好きだよ?」
「京楽‥‥‥」
ベータ時代から、浮竹はアルファである京楽と付き合っていた。
付き合うといっても、友達の延長線みたいなかんじで、いつも一緒にいて、キスやハグをするくらいだった。
「君がオメガってことは、君を正式に娶れる。ボクと結婚しよう、浮竹」
「京楽、俺は‥‥」
「オメガであることが苦しいんでしょう?ボクと番になろう」
「京楽、いいのか?俺は下級貴族で、病弱で肺の病を患っている」
浮竹は、自分の首につけられた首輪に触れた。
「大丈夫。薬代もほとんどボクが出してるし、体調のかんばしくない時は無理強いしないし、番になろう。オメガで貴族で死神だと、君はきっと上級貴族の子を産むために番にさせられる。そうなる前に、ボクと番になろう」
「京楽も上流貴族だろうが」
浮竹が、クスリと笑った。
「君が他の男の番になるなんて、ボクは嫌だよ」
「俺も嫌だ。京楽がいい」
「じゃあ、ヒート期間がきたら、番になろう」
「分かった」
オメガと分かって半年経っても、浮竹にヒート期間は訪れなかった。
ある日、放課後にアルファの男たちに取り囲まれて、浮竹は恐怖していた。
性欲の対象として見られていたからだ。
「浮竹、抑制剤飲んでるんだろうけど、フェロモンが出てるんだよ。アルファをおかしくさせる」
「すまない、すぐに帰る」
「まぁまぁ、オメガなんだし、アルファの俺らと楽しもうぜ?」
首の首輪に触れられて、浮竹は心の中で京楽を呼んだ。
「俺は、オメガだが番になる予定の相手がいる。お前たちと遊ぶつもりはない」
「まぁ、そう固いこと言わずにさ」
院生の衣服に手をかけられて押し倒されて、浮竹は京楽の名を呼んでいた。
「京楽!!!」
「大丈夫、今きたよ。君たち、上流貴族であるボクの未来の伴侶に、何するつもりだったの。こととしだいによっちゃ、許さないよ?」
「げ、番の予定って京楽かよ」
「逃げろ、退学にさせられるぞ!」
「もう遅いんだけどね?顔覚えちゃたから」
男たちが去り、浮竹は地面に蹲る。
「浮竹、大丈夫かい?」
「怖かった。性欲の対象として見られてた」
「うん。でも、ボクも浮竹を性欲の対象として見てるよ?」
「何故か、京楽なら平気なんだ」
浮竹は、京楽の顔を見た。
「そう。性欲剤飲んだ?フェロモンがすごいよ」
「熱で、くらくらする」
「きっと、ヒートがきたんだね。部屋に戻ろう」
浮竹は、その日はなんとか寝れたが、次の日から人生で初めてのヒート期間がきて、熱にうなされる。
「浮竹、番になろう。抱くよ?」
「あ、京楽‥‥‥」
京楽は、浮竹を抱きしめて、キスをした。
「いやじゃ、ない?」
「ああ。お前なら、平気だ」
「もう、後戻りはできないからね」
京楽は、よく鍛えられた体を見せる。浮竹の衣服も脱がされたが、あまり筋肉がついていなくて浮竹は京楽の体が羨ましいと思った。
「京楽は、いい体をしているな。俺なんて、痩せっぽっちで‥‥‥」
「君はそのままでいいよ。白いきめ細かい肌が綺麗だね。少し長くななった白髪も、翡翠の瞳も大好きだよ」
「あっ」
胸の先端をつままれて、浮竹は声を出してしまい、手で口を塞ぐ。
「声、聞かせて?興奮するから」
「あ、春水‥‥あああ!」
初めて、浮竹は他人の手でいかされた。
「指、いれるよ?」
「んあう」
ぐちゅぐちゅと、潤滑油をまとった指が、浮竹の蕾を解していく。
「あ、なんか変だ。そこ、やだ」
「ああ、ここは前立腺がある部分なんだろうね。オーガズムでいってみる?」
京楽は、浮竹の弱いところを指で攻める。
「あああああ!!」
浮竹は、女のようにオーガズムでいくことを覚えた。
「あ、来い、春水」
浮竹は、自分から足を開く。
「はじめてだから、優しくしたいけど、ボクはずっと君にこんなことをしたいと思っていたからね。ちょっと激しくなるかも」
「あ、あ、あ、春水」
「もっと名前呼んで、十四郎」
浮竹と京楽は、ゆっくり交わった。
「あ、そこやぁ。変になるうう」
「奥、好きなの?」
「あ、分からない」
京楽は、ゆっくりと浮竹の奥に侵入する。
「あ、もっと激しくして平気だ」
「分かったよ」
京楽は、勢いつけて浮竹の奥を抉る。
「ひあああああ!」
「気持ちいい?」
「あ、気持ちいい。もっとおお」
「素直な十四郎はかわいいね」
「あ、春水」
京楽は、何度も浮竹の中を行き来して、浮竹の子宮の奥で精液を出した。
「ああああ!熱い」
「番にするよ?」
浮竹の首輪を外して、うなじを思い切り噛む。
お互い電流が走ったようなかんじがして、番になったのだと分かった。
「ボクは、君を正式な伴侶にする。親や山じいが何を言っても」
「春水、愛してる」
「ボクも愛してるよ、十四郎」
番になった二人は、ヒート期間学院を休み、睦み合った。
「アフターピルはどこ?」
浮竹は、まだ子どもを生みたくないので、あらかじめ用意されてあったアフターピルを探す。
「飲ませてあげる」
「ん‥‥‥‥」
京楽は、アフターピルと水を口に含むと、口移しで浮竹に飲ませた。
「ボクと番になったこと、後悔してない?」
「してない。するくらいなら、はじめから拒否する」
浮竹の頭を撫でて、京楽は浮竹が眠りにつくのを見ていた。
「君はボクのものだ。誰にも、渡さない」
番となった二人は、やがて卒業し死神になり、周囲の反対を押し切って籍を入れた。
浮竹は、京楽の子を二人産んだ。
兄がなくなり、京楽家の跡を継ぐ気のない京楽は、子を後継者とした。
「十四郎、ボクとこうなったこと、後悔してない?」
「してない。してたら番を解消するし、お前の子を産んだりしていない「
「そう。よかった」
二人は寄り添いあいながら、乳母を雇って子の面倒を見てもらいながら死神を続け、やがて隊長になるのであった。
それは、オメガかアルファかベータであるかという検査だ。
先天的なものが多いが、まれに後天的にオメガになったり、アルファになったり、ベータになったりすることがあるので、検査はかかせなかった。
浮竹は、ずっとベータだった。
検査の結果、オメガと分かり、特進クラスの者はほぼアルファなので、オメガの浮竹は抑制剤を飲んで、首に番にされないように首輪をつけることが義務づけられた。
「なんで、俺はオメガなんだ‥‥」
浮竹は、自分を責めた。
「ボクは、君がオメガだろうとアルファだろうとベータだろうと好きだよ?」
「京楽‥‥‥」
ベータ時代から、浮竹はアルファである京楽と付き合っていた。
付き合うといっても、友達の延長線みたいなかんじで、いつも一緒にいて、キスやハグをするくらいだった。
「君がオメガってことは、君を正式に娶れる。ボクと結婚しよう、浮竹」
「京楽、俺は‥‥」
「オメガであることが苦しいんでしょう?ボクと番になろう」
「京楽、いいのか?俺は下級貴族で、病弱で肺の病を患っている」
浮竹は、自分の首につけられた首輪に触れた。
「大丈夫。薬代もほとんどボクが出してるし、体調のかんばしくない時は無理強いしないし、番になろう。オメガで貴族で死神だと、君はきっと上級貴族の子を産むために番にさせられる。そうなる前に、ボクと番になろう」
「京楽も上流貴族だろうが」
浮竹が、クスリと笑った。
「君が他の男の番になるなんて、ボクは嫌だよ」
「俺も嫌だ。京楽がいい」
「じゃあ、ヒート期間がきたら、番になろう」
「分かった」
オメガと分かって半年経っても、浮竹にヒート期間は訪れなかった。
ある日、放課後にアルファの男たちに取り囲まれて、浮竹は恐怖していた。
性欲の対象として見られていたからだ。
「浮竹、抑制剤飲んでるんだろうけど、フェロモンが出てるんだよ。アルファをおかしくさせる」
「すまない、すぐに帰る」
「まぁまぁ、オメガなんだし、アルファの俺らと楽しもうぜ?」
首の首輪に触れられて、浮竹は心の中で京楽を呼んだ。
「俺は、オメガだが番になる予定の相手がいる。お前たちと遊ぶつもりはない」
「まぁ、そう固いこと言わずにさ」
院生の衣服に手をかけられて押し倒されて、浮竹は京楽の名を呼んでいた。
「京楽!!!」
「大丈夫、今きたよ。君たち、上流貴族であるボクの未来の伴侶に、何するつもりだったの。こととしだいによっちゃ、許さないよ?」
「げ、番の予定って京楽かよ」
「逃げろ、退学にさせられるぞ!」
「もう遅いんだけどね?顔覚えちゃたから」
男たちが去り、浮竹は地面に蹲る。
「浮竹、大丈夫かい?」
「怖かった。性欲の対象として見られてた」
「うん。でも、ボクも浮竹を性欲の対象として見てるよ?」
「何故か、京楽なら平気なんだ」
浮竹は、京楽の顔を見た。
「そう。性欲剤飲んだ?フェロモンがすごいよ」
「熱で、くらくらする」
「きっと、ヒートがきたんだね。部屋に戻ろう」
浮竹は、その日はなんとか寝れたが、次の日から人生で初めてのヒート期間がきて、熱にうなされる。
「浮竹、番になろう。抱くよ?」
「あ、京楽‥‥‥」
京楽は、浮竹を抱きしめて、キスをした。
「いやじゃ、ない?」
「ああ。お前なら、平気だ」
「もう、後戻りはできないからね」
京楽は、よく鍛えられた体を見せる。浮竹の衣服も脱がされたが、あまり筋肉がついていなくて浮竹は京楽の体が羨ましいと思った。
「京楽は、いい体をしているな。俺なんて、痩せっぽっちで‥‥‥」
「君はそのままでいいよ。白いきめ細かい肌が綺麗だね。少し長くななった白髪も、翡翠の瞳も大好きだよ」
「あっ」
胸の先端をつままれて、浮竹は声を出してしまい、手で口を塞ぐ。
「声、聞かせて?興奮するから」
「あ、春水‥‥あああ!」
初めて、浮竹は他人の手でいかされた。
「指、いれるよ?」
「んあう」
ぐちゅぐちゅと、潤滑油をまとった指が、浮竹の蕾を解していく。
「あ、なんか変だ。そこ、やだ」
「ああ、ここは前立腺がある部分なんだろうね。オーガズムでいってみる?」
京楽は、浮竹の弱いところを指で攻める。
「あああああ!!」
浮竹は、女のようにオーガズムでいくことを覚えた。
「あ、来い、春水」
浮竹は、自分から足を開く。
「はじめてだから、優しくしたいけど、ボクはずっと君にこんなことをしたいと思っていたからね。ちょっと激しくなるかも」
「あ、あ、あ、春水」
「もっと名前呼んで、十四郎」
浮竹と京楽は、ゆっくり交わった。
「あ、そこやぁ。変になるうう」
「奥、好きなの?」
「あ、分からない」
京楽は、ゆっくりと浮竹の奥に侵入する。
「あ、もっと激しくして平気だ」
「分かったよ」
京楽は、勢いつけて浮竹の奥を抉る。
「ひあああああ!」
「気持ちいい?」
「あ、気持ちいい。もっとおお」
「素直な十四郎はかわいいね」
「あ、春水」
京楽は、何度も浮竹の中を行き来して、浮竹の子宮の奥で精液を出した。
「ああああ!熱い」
「番にするよ?」
浮竹の首輪を外して、うなじを思い切り噛む。
お互い電流が走ったようなかんじがして、番になったのだと分かった。
「ボクは、君を正式な伴侶にする。親や山じいが何を言っても」
「春水、愛してる」
「ボクも愛してるよ、十四郎」
番になった二人は、ヒート期間学院を休み、睦み合った。
「アフターピルはどこ?」
浮竹は、まだ子どもを生みたくないので、あらかじめ用意されてあったアフターピルを探す。
「飲ませてあげる」
「ん‥‥‥‥」
京楽は、アフターピルと水を口に含むと、口移しで浮竹に飲ませた。
「ボクと番になったこと、後悔してない?」
「してない。するくらいなら、はじめから拒否する」
浮竹の頭を撫でて、京楽は浮竹が眠りにつくのを見ていた。
「君はボクのものだ。誰にも、渡さない」
番となった二人は、やがて卒業し死神になり、周囲の反対を押し切って籍を入れた。
浮竹は、京楽の子を二人産んだ。
兄がなくなり、京楽家の跡を継ぐ気のない京楽は、子を後継者とした。
「十四郎、ボクとこうなったこと、後悔してない?」
「してない。してたら番を解消するし、お前の子を産んだりしていない「
「そう。よかった」
二人は寄り添いあいながら、乳母を雇って子の面倒を見てもらいながら死神を続け、やがて隊長になるのであった。