エンシェントエルフとダークエルフ33
北のロードア帝国で、イエティが異常繁殖してるので、駆除の依頼が回ってきた。
ロードア帝国は、領土の大部分が永久凍土に覆われている寒い地方だ。
そんな場所まで、冒険者は普通趣かないが、報酬金がいいので、北のロードア帝国までの便の蒸気船が出ていた。
浮竹と京楽も、イエティの退治依頼を受注して、1週間船で過ごすのであった。
「くるっくー」
「ブルン、我慢してくれよ。船上生活ではそうそうゴミは出ないんだから」
「くるるー」
ブルンは怒って、浮竹に体アタックをしたが、小さいので威力はなかった。
「そもそも、ブルンは食いだめできるんだろう?出発前に町中のゴミを処理していたじゃないか
「くるる」
「それとこれは別?仕方ない、厨房にいって生ごみでももらってくる」
「くるる♪」
「え、ついていくって?仕方ないなぁ」
「浮竹、よくそんなに元気でいられるね・・・・・」
京楽は船酔いしてしまっていた。
「シーサーペントが出たぞ!」
巨大な海蛇の化け物だった。
剣では届かず、矢と魔法で退治することになった。
「ファイアボール!」
「フレアアロー」
同乗した冒険者たちは、船に火が付くのを恐れて、初級魔法しか使わない。
「浮竹、支えてて」
「ああ、分かった」
「メテオストライク!ハイマジックシールド!」
京楽は、禁忌の炎属性の隕石が降り注ぐ魔法を使った。
「UGYAAAAAAAAA!!」
シーサーペントは悲鳴をあげて、息絶えてしまった。
魔法で結界を張っていたので、隕石が船に落ちることはなかったが、近くの海に落ちて衝撃と波がやってきた。
「浮竹、気をつけて」
「京楽こそ!」
「くくるーー?」
「あ、ブルン、空を飛べ!」
「くるー?」
そのまま、ブルンは波にさらわれてしまった。
「ブルン!」
「くーーくくる!!!」
ブルンが虹色に輝いた。
波がおさまり、船から落ちかけていた者もみんな助かった。
ブルンは波にさらわれたかと思うと、空を飛んでいた。
「一体何があったんだ?」
「あのエルフの魔法使いが禁忌を使ったようだぞ」
「マジックシールドも唱えていたぞ。やり手だな」
噂の的の京楽はというと。
「船が揺れて・・・・おえええ」
船の上から海にむかって、胃の内容物を出しているのだった。
「くくるー」
ブルンがヒールをかけてくれたので、大分ましになったが、船酔いは病気や怪我ではないので、完治することはない。
それでも常にヒールをもらって、通常の人と同じようにまで回復した。
「もう、ブルン、ヒールでこんなに楽になるなら、最初からかけてよ」
「くくるー」
「船酔いを見たのは初めて?まぁそうだろうな。京楽も、ブルンのお陰で船酔いがなくなったんだろう。そうせめてやるな」
「それもそうだね。ありがとうね、ブルン」
「くくるー」
「感謝の意思を示すならゴミをくれ?君、食事のことしか頭にないのかい?」
「くくる?」
「ちゃんとみんなのことも思っているよ・・・本当かなぁ」
蒸気船で、1週間かけてロードア帝国までやってきた。
雪が降っていた。
「うわー寒い寒い。上着着ても寒い」
「くくー」
ブルンが魔法をかける。すると、体がぽかぽかしてきた。
「ぶるん、お前回復以外でも魔法使えるんだな?地味な魔法だけど」
「くくる」
「でたぞーー、イエティだああ!!」
早速でてきたイエティは大量だった。
「クリエイトアストラルエンジェル。クリエイトアストラルデビル」
浮竹は、人工的な天使と悪魔を作り出す。
「「「テトラボックス」」」
無の破壊魔法を唱える。
3重詠唱で、あれだけいたイエティの群れは、魔法でぎゅっと押し込められて、消滅してしまった。
「すごいな、あんたら。Sランク冒険者だろう」
「いや、Aランクだ」
「Sじゃないのか。まぁ、再来年にはSランクだろうな」
用意されていた馬車に、それぞれパーティーごとに別れて、ロードア帝国の異常繁殖したイエティの群れの駆除をした。
イエティの駆除をしていると、ボスだと思われるキングイエティが現れた。
「HYURURURURU」
キングイエティは、強烈な氷のブレスを吐いてきた。
「くくーー!!」
ブルンも、炎のブレスを吐いて相殺する。
その間に、浮竹がミスリル銀の魔剣に炎をエンチャントしてキングイエティの足をきる。
「BURURURURU!!!」
キングイエティは咆哮した。
雪崩が襲ってきて、浮竹と京楽はシールドを張ってやり過ごす。
「雪崩を起こすなんて、すごいね。だてにボスじゃないってことかな」
「手傷は負わせておいた。血の跡をたどって、トドメをさそう」
二人はシールドを解除する。
雪まみれになったが、仕方のないことだった。
「くくる!」
空を飛んで逃げたブルンは無事だった。
キングイエティのものと思われる、青い血液の液体が雪の上を続いていた。
それをたどっていくと、巨大な洞窟があった。
「ライト」
京楽が光を作り出す。
奥にがイエティのメスと、子供たちがいた。ボスは、子作りに励んでいる最中だった。
「クリエイトカースドラゴン」
「きゃしゃあああああ!!」
浮竹が作り出した人工的な呪いのドラゴンは、イエティの子供とメスを喰らっていく。そして、大地に呪いを与えた。
生き物が繁殖できない呪いだった。
ボスのキングイエティは、カースドラゴンに立ち向かい、カースドラゴンを引き裂いた。
「ぎゃうううう!!」
悲鳴をあげて、カースドラゴンは消えた。
「京楽、用意はいいか?」
「浮竹こそ」
「「フレアフェニックス」」
キングイエティごと炎で洞窟を包み込む。
急いで洞窟からでると。
「「エクスプロージョン」」
爆発の魔法で、イエティたちを生き埋めにした。
繁殖のオスであったボスの討伐で、イエティの異常繁殖は終わるだろう。
イエティ退治に、1週間をかけた。
蒸気船の往復で2週間。実に3週間、家をあけていたことになる。
師匠である剣士の京楽には、連絡を入れておいた。
やがて、イアラ帝国から出発してちょうど23日して、やっと自宅に帰ってきた。
「くくるーー」
ぶるんが、留守にしていた間にたまったほこりなどを食べて綺麗にしてくれた。
「師匠のところに顔をだそう。長らく家を空けていたからな」
「そうだね」
旅の荷物を片付けて、お風呂に入って服を着て、簡単な食事をとり、身支度を整えて、京楽の転移魔法で師匠である剣士の京楽の家にきた。
チリンチリン。
ベルが鳴ると、剣士の京楽が対応に出てくれた。
『やっと帰ってきたの。長かったね』
「長期出張討伐は、Sランク試験に通るためにいるものだから」
『ブルン、プルンが最近会えないからって元気がないんだ。会って、元気づけてやってくれないか』
精霊の浮竹の言葉に、ブルンが奥にいるプルンのほうへ飛んでいった。
「くくーー!」
「ププウ!」
ブルンは、体を黄色に変えて喜んでいた。
「くっくるー」
「プププ」
『ふふ、喜んでる喜んでる』
ブルンは、光輝いた。
『なんか、ブルン、違う魔法覚えたの?』
「あ、なんか船酔い治したり、船で波にのまれそうな人助けたり・・・ちょっと、普通のヒール以外の魔法も覚えたかんじです」
『やっぱり。次の進化先はアークエンジェリングスライムでしょ。アークエンジェリングスライムは、普通の魔法も使う。きっと、進化の前触れかもね」
「ブルン、お前また進化するのか?」
「くくるー?」
なんのこと。僕わかんない。
「ププウ」
お兄ちゃん、また進化するの?
「くく」
そのうちするかもね。
「プププ」
すごいね!あと2つ進化あるんでしょ
「くっくるーー」
最後にはセラフィムスライムっていう天使みたいなスライムになるんだよ。
「ププウウ」
俺はゴッドスライムになるんだ。
「くくるー」
神様!すごいね!
「ププ」
お兄ちゃんのほうがすごいよ。
会話を続ける2匹のスライムを、4人はいつまでいつまでも見ているのだった。
ロードア帝国は、領土の大部分が永久凍土に覆われている寒い地方だ。
そんな場所まで、冒険者は普通趣かないが、報酬金がいいので、北のロードア帝国までの便の蒸気船が出ていた。
浮竹と京楽も、イエティの退治依頼を受注して、1週間船で過ごすのであった。
「くるっくー」
「ブルン、我慢してくれよ。船上生活ではそうそうゴミは出ないんだから」
「くるるー」
ブルンは怒って、浮竹に体アタックをしたが、小さいので威力はなかった。
「そもそも、ブルンは食いだめできるんだろう?出発前に町中のゴミを処理していたじゃないか
「くるる」
「それとこれは別?仕方ない、厨房にいって生ごみでももらってくる」
「くるる♪」
「え、ついていくって?仕方ないなぁ」
「浮竹、よくそんなに元気でいられるね・・・・・」
京楽は船酔いしてしまっていた。
「シーサーペントが出たぞ!」
巨大な海蛇の化け物だった。
剣では届かず、矢と魔法で退治することになった。
「ファイアボール!」
「フレアアロー」
同乗した冒険者たちは、船に火が付くのを恐れて、初級魔法しか使わない。
「浮竹、支えてて」
「ああ、分かった」
「メテオストライク!ハイマジックシールド!」
京楽は、禁忌の炎属性の隕石が降り注ぐ魔法を使った。
「UGYAAAAAAAAA!!」
シーサーペントは悲鳴をあげて、息絶えてしまった。
魔法で結界を張っていたので、隕石が船に落ちることはなかったが、近くの海に落ちて衝撃と波がやってきた。
「浮竹、気をつけて」
「京楽こそ!」
「くくるーー?」
「あ、ブルン、空を飛べ!」
「くるー?」
そのまま、ブルンは波にさらわれてしまった。
「ブルン!」
「くーーくくる!!!」
ブルンが虹色に輝いた。
波がおさまり、船から落ちかけていた者もみんな助かった。
ブルンは波にさらわれたかと思うと、空を飛んでいた。
「一体何があったんだ?」
「あのエルフの魔法使いが禁忌を使ったようだぞ」
「マジックシールドも唱えていたぞ。やり手だな」
噂の的の京楽はというと。
「船が揺れて・・・・おえええ」
船の上から海にむかって、胃の内容物を出しているのだった。
「くくるー」
ブルンがヒールをかけてくれたので、大分ましになったが、船酔いは病気や怪我ではないので、完治することはない。
それでも常にヒールをもらって、通常の人と同じようにまで回復した。
「もう、ブルン、ヒールでこんなに楽になるなら、最初からかけてよ」
「くくるー」
「船酔いを見たのは初めて?まぁそうだろうな。京楽も、ブルンのお陰で船酔いがなくなったんだろう。そうせめてやるな」
「それもそうだね。ありがとうね、ブルン」
「くくるー」
「感謝の意思を示すならゴミをくれ?君、食事のことしか頭にないのかい?」
「くくる?」
「ちゃんとみんなのことも思っているよ・・・本当かなぁ」
蒸気船で、1週間かけてロードア帝国までやってきた。
雪が降っていた。
「うわー寒い寒い。上着着ても寒い」
「くくー」
ブルンが魔法をかける。すると、体がぽかぽかしてきた。
「ぶるん、お前回復以外でも魔法使えるんだな?地味な魔法だけど」
「くくる」
「でたぞーー、イエティだああ!!」
早速でてきたイエティは大量だった。
「クリエイトアストラルエンジェル。クリエイトアストラルデビル」
浮竹は、人工的な天使と悪魔を作り出す。
「「「テトラボックス」」」
無の破壊魔法を唱える。
3重詠唱で、あれだけいたイエティの群れは、魔法でぎゅっと押し込められて、消滅してしまった。
「すごいな、あんたら。Sランク冒険者だろう」
「いや、Aランクだ」
「Sじゃないのか。まぁ、再来年にはSランクだろうな」
用意されていた馬車に、それぞれパーティーごとに別れて、ロードア帝国の異常繁殖したイエティの群れの駆除をした。
イエティの駆除をしていると、ボスだと思われるキングイエティが現れた。
「HYURURURURU」
キングイエティは、強烈な氷のブレスを吐いてきた。
「くくーー!!」
ブルンも、炎のブレスを吐いて相殺する。
その間に、浮竹がミスリル銀の魔剣に炎をエンチャントしてキングイエティの足をきる。
「BURURURURU!!!」
キングイエティは咆哮した。
雪崩が襲ってきて、浮竹と京楽はシールドを張ってやり過ごす。
「雪崩を起こすなんて、すごいね。だてにボスじゃないってことかな」
「手傷は負わせておいた。血の跡をたどって、トドメをさそう」
二人はシールドを解除する。
雪まみれになったが、仕方のないことだった。
「くくる!」
空を飛んで逃げたブルンは無事だった。
キングイエティのものと思われる、青い血液の液体が雪の上を続いていた。
それをたどっていくと、巨大な洞窟があった。
「ライト」
京楽が光を作り出す。
奥にがイエティのメスと、子供たちがいた。ボスは、子作りに励んでいる最中だった。
「クリエイトカースドラゴン」
「きゃしゃあああああ!!」
浮竹が作り出した人工的な呪いのドラゴンは、イエティの子供とメスを喰らっていく。そして、大地に呪いを与えた。
生き物が繁殖できない呪いだった。
ボスのキングイエティは、カースドラゴンに立ち向かい、カースドラゴンを引き裂いた。
「ぎゃうううう!!」
悲鳴をあげて、カースドラゴンは消えた。
「京楽、用意はいいか?」
「浮竹こそ」
「「フレアフェニックス」」
キングイエティごと炎で洞窟を包み込む。
急いで洞窟からでると。
「「エクスプロージョン」」
爆発の魔法で、イエティたちを生き埋めにした。
繁殖のオスであったボスの討伐で、イエティの異常繁殖は終わるだろう。
イエティ退治に、1週間をかけた。
蒸気船の往復で2週間。実に3週間、家をあけていたことになる。
師匠である剣士の京楽には、連絡を入れておいた。
やがて、イアラ帝国から出発してちょうど23日して、やっと自宅に帰ってきた。
「くくるーー」
ぶるんが、留守にしていた間にたまったほこりなどを食べて綺麗にしてくれた。
「師匠のところに顔をだそう。長らく家を空けていたからな」
「そうだね」
旅の荷物を片付けて、お風呂に入って服を着て、簡単な食事をとり、身支度を整えて、京楽の転移魔法で師匠である剣士の京楽の家にきた。
チリンチリン。
ベルが鳴ると、剣士の京楽が対応に出てくれた。
『やっと帰ってきたの。長かったね』
「長期出張討伐は、Sランク試験に通るためにいるものだから」
『ブルン、プルンが最近会えないからって元気がないんだ。会って、元気づけてやってくれないか』
精霊の浮竹の言葉に、ブルンが奥にいるプルンのほうへ飛んでいった。
「くくーー!」
「ププウ!」
ブルンは、体を黄色に変えて喜んでいた。
「くっくるー」
「プププ」
『ふふ、喜んでる喜んでる』
ブルンは、光輝いた。
『なんか、ブルン、違う魔法覚えたの?』
「あ、なんか船酔い治したり、船で波にのまれそうな人助けたり・・・ちょっと、普通のヒール以外の魔法も覚えたかんじです」
『やっぱり。次の進化先はアークエンジェリングスライムでしょ。アークエンジェリングスライムは、普通の魔法も使う。きっと、進化の前触れかもね」
「ブルン、お前また進化するのか?」
「くくるー?」
なんのこと。僕わかんない。
「ププウ」
お兄ちゃん、また進化するの?
「くく」
そのうちするかもね。
「プププ」
すごいね!あと2つ進化あるんでしょ
「くっくるーー」
最後にはセラフィムスライムっていう天使みたいなスライムになるんだよ。
「ププウウ」
俺はゴッドスライムになるんだ。
「くくるー」
神様!すごいね!
「ププ」
お兄ちゃんのほうがすごいよ。
会話を続ける2匹のスライムを、4人はいつまでいつまでも見ているのだった。
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エンシェントエルフとダークエルフ32
Sランクの依頼を受けた。
Sランク試験まであと2年を切った。できる限り実績を踏み、力をつけておきたかった。
今回は、漁場を荒らし回っているクラーケンの退治だった。
敵が巨大なので、剣は使わずに魔法で倒すことになった。
大きな船に乗って戦うことも考えたが、船がだめになる可能が高いので、京楽の魔法でフライウィングという空を飛ぶ魔法で海に出て、浮かんできた巨大なクラーケンに、二人は雷の魔法を放った。
浮竹は、師匠の修行のお陰か、火、水、氷の他に風と雷の魔法を使えるようになっていた。
「「サンダーボルテックス」」
二人は、雷の禁忌を使った。
クラーケンはこんがり焼けて、ぷかぁと浮かんできた。
それだけならまだ良かった。
周りの魚たちも感電死して、ぷかぁと浮かんでいた。
その数たるや大量。
「ちょっと、冒険者さん、クラーケンを退治してくれたことには感謝しますが、やり過ぎですよ!港に近い場所じゃ魚とれなくなったじゃないですか!」
漁業に携わる者たちは、とりあえず浮かんでいる魚の死体を全部回収して、近隣の住民に分けあたえたりして、なんとか無駄にならないようにしていた。
「クラーケンの死体は、あなたたちが責任をもってなんとかしてくださいね!」
報酬金は金貨600枚だったが、被害が多かったので半額の300枚にされた。
「浮竹ー今度からはオーバーキルになるのはよそうね」
「そうだな」
報酬金を半額にされたことに嘆きながら、とりあえずクラーケンの巨大な体を輪切りにしてアイテムポケットにいれた。
そして一言。
「イカ焼きが食いたい」
「クラーケンでイカ焼きできるかな?」
「文献では、クラーケンの肉というか身は食えるらしい」
京楽が空間転移の魔法を使い、冒険者ギルドで半額の報酬の金貨300枚と魔石の買取金25枚を受け取ると、キャサリンは解体工房にクラーケンを出せと言い出した。
「輪切りになってるよ」
まさか提出になるとは思わず、輪切りにされてこんがり焼かれたクラーケンが出された。
めっちゃイカ焼きの匂いがして、浮竹は齧ってみた。
「うん、うまい。イカ焼きになってる」
「ちょっと、解体工房に出したのに何食べてるの。でもおいしそう、僕も」
京楽はナイフを取り出して、一番おいしそうなゲソを一口食べた。
「おいしい」
「な?」
「ちょっとあなたたち!ギルドで買わなくていいのね、このクラーケン。随分こげちゃってるし、素材としてはだめだわ」
「今回はクラーケンの買取りはなしということで」
京楽は、クラーケンをアイテムポケットに直した。
ちなみにアイテムポケットには、海に浮かんでいた魚やエビといった、新鮮な魚介類がたまっていた。
責任をもてと、買いとらされたのだ。
金貨50枚分はふっとんでいった。
アイテムポケットには時間の流れはない。魚介類を置いていても、腐ることはなかった。
一度家に帰り、浮竹と京楽はクラーケンでイカ焼きを作った。
次に買いとった海老や魚を、クラーケンを小さく切った身をいれてパエリアを作った。
さらについで、海鮮丼もつくった。
全部、4人分である。
「よし、師匠たちにも食べてもらおう」
「くくるーー」
ブルンは、海老の皮やら、酒の骨などを大量に食べてもらった。
早速出来上がったあつあつのまま、アイテムポケットに夕飯となる飯をいれて、京楽は空間転移の魔法で剣士の京楽の家にきた。
チリンチリン。
べるを鳴らすと、剣士の京楽が出てきた。
『どうしたの』
「師匠、夕飯の差し入れです」
『ええっ!今作ってる途中なんだけど』
「それは明日にでもまわして、今夜はこれを食べてよ」
京楽と浮竹は、イカ焼き、パエリア、海鮮丼を出していった。
「お、うまそうな匂いがするな」
精霊の浮竹がつられて玄関に置かれた料理のイカ焼きを手に取って、食べる。
「なんだこのイカ焼き!人生で食べてきたイカの中で一番うまい!」
「それ、クラーケンのイカ焼きだよ」
『クラーケン!食べるのは初めてだ』
「それは僕もだったんだけど、普通のイカよりおいしくてびっくりしたよ」
京楽が、おみやげだと、魚やエビ、貝類をくれた。
『そうか、クラーケン退治して、雷の禁忌でも放って、やりすぎたんだね?』
「「ぎくっ」」
ブルンが、部屋に奥にいるプルンに会いに入って行ってしまった。
「ププウ!」
「くくる~~」
『まるで出前だね。まぁ、玄関でいるのもなんだし、料理もってリビングルームにでもおいでよ』
剣士の京楽の許可が出たので、家に上がらせてもらった。
精霊の浮竹は、クラーケンのイカ焼きが気に入ったようで、さっきからおかわりばかりしていた。
「くくる~~~」
「ププウ」
2匹にも、プルンには林檎を大量と、魚介類のゴミをブルンに与えた。
エルフ浮竹と京楽も、パエリアと海鮮丼を食べていく。イカ焼きはここに来るまでけっこう食べたからだ。
「もうだめ、食べれない」
「勿体ない。まだこんなに残っているぞ。俺が残りを食おう」
「浮竹の胃って、ブラックホール?」
『ふふ、精霊の浮竹と一緒だね。よく食べるよ』
『俺は普通だ!』
イカ焼きだけですにで3人前を食べての意見だったので、みんなそういうことにしておいた。
「ププウ!!」
「くくるうーー」
見ると、遊んでいた2匹のプルンの王冠に、ブルンがはまってしまっていた。
「また、厄介なことを」
京楽が力の限りブルンをひっぱると、ブルンはすぽっと抜けたが、王冠の形になっていた。
『あははは、変な形!』
精霊の浮竹に笑われて、ブルンは「くるるー」といって、浮竹の頭の上に乗った。
「変な形のエンジェリングスライムだね、ブルン」
「くくう」
この形からなかなか治らない。ブルンはそう言った。
「ヒールしてみればどうだ」
エルフの浮竹の言葉に、ブルンは自分にヒールを使った。
歪な姿になっていたブルンの体系が、元の丸いスライムのものに戻った。
「くくるーー!!」
ブルンは喜んで空を飛び回り、照明にぶつかって墜落してきた。
「ぷぷう!」
お兄ちゃん、危ない!
すぽっ。
また王冠の中にはまってしまい、最初に逆戻りするのであった。
『結局、そうなるのね』
『王冠の上に着地しなければいいんじゃないのか』
もっとも精霊の浮竹の言葉に、2匹はびっくりするのであった。
----------------------------------------------
「最近、モンスターの活動が活発化している気がするんだけど、気のせいじゃないよね」
『そうだね。藍染の件もあるし、人工モンスターが暴れたりしている』
「藍染って何者なんだ?」
『僕と同じ不老不死。ただし、条件つきだけど。神人の失敗作で、定期的に人間の生き血を必要としている。自分が神になると思っている』
「なんとも、物騒な話だ」
「そうだね」
『君たちも、見かけたら注意するんだよ』
『そうだぞ」
「肝に銘じておくよ」
「分かった」
「ププウ」
「くくるー」
プルンとブルンは、また離れ離れになるこを嘆いたが、またすぐ会えると4人が言ってくれたので、悲しまずにお別れをした。
「じゃあ、こっちで何か情報が入り次第届けるよ」
『うん、そうしてくれると助かるよ』
こうして、クラーケン退治は4人の胃におさまり、終わるのであった。
Sランク試験まであと2年を切った。できる限り実績を踏み、力をつけておきたかった。
今回は、漁場を荒らし回っているクラーケンの退治だった。
敵が巨大なので、剣は使わずに魔法で倒すことになった。
大きな船に乗って戦うことも考えたが、船がだめになる可能が高いので、京楽の魔法でフライウィングという空を飛ぶ魔法で海に出て、浮かんできた巨大なクラーケンに、二人は雷の魔法を放った。
浮竹は、師匠の修行のお陰か、火、水、氷の他に風と雷の魔法を使えるようになっていた。
「「サンダーボルテックス」」
二人は、雷の禁忌を使った。
クラーケンはこんがり焼けて、ぷかぁと浮かんできた。
それだけならまだ良かった。
周りの魚たちも感電死して、ぷかぁと浮かんでいた。
その数たるや大量。
「ちょっと、冒険者さん、クラーケンを退治してくれたことには感謝しますが、やり過ぎですよ!港に近い場所じゃ魚とれなくなったじゃないですか!」
漁業に携わる者たちは、とりあえず浮かんでいる魚の死体を全部回収して、近隣の住民に分けあたえたりして、なんとか無駄にならないようにしていた。
「クラーケンの死体は、あなたたちが責任をもってなんとかしてくださいね!」
報酬金は金貨600枚だったが、被害が多かったので半額の300枚にされた。
「浮竹ー今度からはオーバーキルになるのはよそうね」
「そうだな」
報酬金を半額にされたことに嘆きながら、とりあえずクラーケンの巨大な体を輪切りにしてアイテムポケットにいれた。
そして一言。
「イカ焼きが食いたい」
「クラーケンでイカ焼きできるかな?」
「文献では、クラーケンの肉というか身は食えるらしい」
京楽が空間転移の魔法を使い、冒険者ギルドで半額の報酬の金貨300枚と魔石の買取金25枚を受け取ると、キャサリンは解体工房にクラーケンを出せと言い出した。
「輪切りになってるよ」
まさか提出になるとは思わず、輪切りにされてこんがり焼かれたクラーケンが出された。
めっちゃイカ焼きの匂いがして、浮竹は齧ってみた。
「うん、うまい。イカ焼きになってる」
「ちょっと、解体工房に出したのに何食べてるの。でもおいしそう、僕も」
京楽はナイフを取り出して、一番おいしそうなゲソを一口食べた。
「おいしい」
「な?」
「ちょっとあなたたち!ギルドで買わなくていいのね、このクラーケン。随分こげちゃってるし、素材としてはだめだわ」
「今回はクラーケンの買取りはなしということで」
京楽は、クラーケンをアイテムポケットに直した。
ちなみにアイテムポケットには、海に浮かんでいた魚やエビといった、新鮮な魚介類がたまっていた。
責任をもてと、買いとらされたのだ。
金貨50枚分はふっとんでいった。
アイテムポケットには時間の流れはない。魚介類を置いていても、腐ることはなかった。
一度家に帰り、浮竹と京楽はクラーケンでイカ焼きを作った。
次に買いとった海老や魚を、クラーケンを小さく切った身をいれてパエリアを作った。
さらについで、海鮮丼もつくった。
全部、4人分である。
「よし、師匠たちにも食べてもらおう」
「くくるーー」
ブルンは、海老の皮やら、酒の骨などを大量に食べてもらった。
早速出来上がったあつあつのまま、アイテムポケットに夕飯となる飯をいれて、京楽は空間転移の魔法で剣士の京楽の家にきた。
チリンチリン。
べるを鳴らすと、剣士の京楽が出てきた。
『どうしたの』
「師匠、夕飯の差し入れです」
『ええっ!今作ってる途中なんだけど』
「それは明日にでもまわして、今夜はこれを食べてよ」
京楽と浮竹は、イカ焼き、パエリア、海鮮丼を出していった。
「お、うまそうな匂いがするな」
精霊の浮竹がつられて玄関に置かれた料理のイカ焼きを手に取って、食べる。
「なんだこのイカ焼き!人生で食べてきたイカの中で一番うまい!」
「それ、クラーケンのイカ焼きだよ」
『クラーケン!食べるのは初めてだ』
「それは僕もだったんだけど、普通のイカよりおいしくてびっくりしたよ」
京楽が、おみやげだと、魚やエビ、貝類をくれた。
『そうか、クラーケン退治して、雷の禁忌でも放って、やりすぎたんだね?』
「「ぎくっ」」
ブルンが、部屋に奥にいるプルンに会いに入って行ってしまった。
「ププウ!」
「くくる~~」
『まるで出前だね。まぁ、玄関でいるのもなんだし、料理もってリビングルームにでもおいでよ』
剣士の京楽の許可が出たので、家に上がらせてもらった。
精霊の浮竹は、クラーケンのイカ焼きが気に入ったようで、さっきからおかわりばかりしていた。
「くくる~~~」
「ププウ」
2匹にも、プルンには林檎を大量と、魚介類のゴミをブルンに与えた。
エルフ浮竹と京楽も、パエリアと海鮮丼を食べていく。イカ焼きはここに来るまでけっこう食べたからだ。
「もうだめ、食べれない」
「勿体ない。まだこんなに残っているぞ。俺が残りを食おう」
「浮竹の胃って、ブラックホール?」
『ふふ、精霊の浮竹と一緒だね。よく食べるよ』
『俺は普通だ!』
イカ焼きだけですにで3人前を食べての意見だったので、みんなそういうことにしておいた。
「ププウ!!」
「くくるうーー」
見ると、遊んでいた2匹のプルンの王冠に、ブルンがはまってしまっていた。
「また、厄介なことを」
京楽が力の限りブルンをひっぱると、ブルンはすぽっと抜けたが、王冠の形になっていた。
『あははは、変な形!』
精霊の浮竹に笑われて、ブルンは「くるるー」といって、浮竹の頭の上に乗った。
「変な形のエンジェリングスライムだね、ブルン」
「くくう」
この形からなかなか治らない。ブルンはそう言った。
「ヒールしてみればどうだ」
エルフの浮竹の言葉に、ブルンは自分にヒールを使った。
歪な姿になっていたブルンの体系が、元の丸いスライムのものに戻った。
「くくるーー!!」
ブルンは喜んで空を飛び回り、照明にぶつかって墜落してきた。
「ぷぷう!」
お兄ちゃん、危ない!
すぽっ。
また王冠の中にはまってしまい、最初に逆戻りするのであった。
『結局、そうなるのね』
『王冠の上に着地しなければいいんじゃないのか』
もっとも精霊の浮竹の言葉に、2匹はびっくりするのであった。
----------------------------------------------
「最近、モンスターの活動が活発化している気がするんだけど、気のせいじゃないよね」
『そうだね。藍染の件もあるし、人工モンスターが暴れたりしている』
「藍染って何者なんだ?」
『僕と同じ不老不死。ただし、条件つきだけど。神人の失敗作で、定期的に人間の生き血を必要としている。自分が神になると思っている』
「なんとも、物騒な話だ」
「そうだね」
『君たちも、見かけたら注意するんだよ』
『そうだぞ」
「肝に銘じておくよ」
「分かった」
「ププウ」
「くくるー」
プルンとブルンは、また離れ離れになるこを嘆いたが、またすぐ会えると4人が言ってくれたので、悲しまずにお別れをした。
「じゃあ、こっちで何か情報が入り次第届けるよ」
『うん、そうしてくれると助かるよ』
こうして、クラーケン退治は4人の胃におさまり、終わるのであった。
エンシェントエルフとダークエルフ31
その女性は、褐色の肌が美しいダークエルフだった。黒髪に黒目をしていた。
「母上が捨てた子か・・・面白い」
女性の名は、夜一と言った。
見た目は京楽より若いが、京楽より200歳は年上の実の姉だった。
夜一は、見た目を人間に見える魔法をかけて、空間転移魔法でイアラ帝国までくると、浮竹と京楽が住んでいるという家を訪ねた。
ピンポーンとチャイムが鳴り、浮竹が対応にでた。
「どちら様で?」
「よう。京楽の嫁じゃな?」
「はぁ?」
「儂は四楓院夜市。京楽春水の実の姉にして、ダークエルフじゃ」
夜一は、人間に見える魔法を解いた。
「京楽に何の用だ!」
いつでも剣を抜けるように、鞘に手を伸ばす。
「誤解じゃ誤解じゃ。捨てられたはずの弟が、人間社会でAランク冒険者をやっていると聞いてのう。ただ純粋に、好奇心から会いに来ただけじゃ。害意はない」
「くくるーーー」
ブルンが、この人ほんとに害意がないよと言うので、浮竹は夜一を家にあげた。
「京楽」
「んー?」
ソファーでゴロンと横になって、書物を読んでいた京楽は、ダークエルフの夜一を見て、闇の魔法を発動させようとした。
「いきなり初対面で闇の魔法はなじゃろ。儂は四楓院夜一。灼熱がシャイターンの長女にして、お主の実の姉じゃ!」
「はあああああ!?」
間の抜けた京楽の声が、家中に響き渡った。
とりあえず、お茶を出した。
「で、夜一さんはなんの用でこんなところにいるの?」
「夜一姉さんじゃ」
有無を言わさない強さで迫られて、咳払いしてから京楽は言い直した。
「で、夜一姉さんは何の用があってここにきたの?」
「儂か?儂は何の用もない。しいていれば、お主の様子を見に来たくらいじゃろうか」
「そんな理由で、わざわざ魔大陸から来たの!?」
「この国には昔きたことがあるからのお。転移魔法で一発じゃ。それにしてもやるのうお主。こんな綺麗なエンシェントエルフを嫁にするなぞ」
「浮竹は僕と同じ男だよ!」
「分かっておるわい。でも、ものにしたんじゃろう?お主の匂いがぷんぷんするわい」
その会話を聞いていた浮竹は、真っ赤になってブルンを抱きしめて、隣の部屋に逃げてしまった。
「ちょっと、浮竹逃げないで!頼むから、この夜一姉さんと2人きりにしないで~~」
情けない声を出す京楽に、仕方なく浮竹は部屋に戻ってきた。
「くくるーー」
「お、エンジェリングスライムか。実物を見るの始めてじゃのう。なんていうか・・・うまそうじゃ」
「くくるーーー!!」
ブルンは、空を飛びまくって、照明と激突して落っこちてきた。
「夜一姉さん、そんな本当か冗談なのか分からないことを言わないで!」
「む?本心じゃぞ」
浮竹が、気絶したブルンを抱きしめて、首を横に振った。
「ブルンは大切な家族だ。食べさせないぞ!」
「嘘じゃ嘘じゃ。ただの冗談じゃ」
「ダークエルフの普通の食生活がどんなのか分からないから、冗談に聞こえない」
「む?人やエルフのような同じような生活を送っておるぞ?ただ、モンスターの肉を食うのが多いくらいじゃの。違いは」
「ダークエルフって、もっと魔族に近くて野蛮なんじゃ」
「ダークエルフというだけで、そう決めつけないでくれぬか」
「ああ、すまなかった」
「よい。儂も悪ふざけが過ぎた」
夜一は謝ると、京楽の手を取った。
「人間社会の冒険者ギルドを見たいのじゃ。連れていってくれぬか?」
「でも、その見た目じゃ・・・・」
夜一は、人間の女性に見える魔法を使った。その魔法は完璧で、魔力障害を発生させても解けなかった。
「分かったよ。夜一姉さんの言う通りにするから、目立たないでね。あと、冒険者ギルドでは僕がダークエルフっていうのはばれてるから、姉だって言わないでね」
「分かった分かった。言う通りにするから、早く冒険者ギルドへ行こうぞ」
京楽と浮竹は、ブルンと人間にしか見えない夜一を連れて冒険者ギルドに来た。
「あら、春ちゃんうっきーちゃん、どうしたの?今日はもう帰るって言ってたのに」
「なんじゃ、この化け物は?」
キャサリンは、ぴきっと引きつった。
「何か言った、お嬢ちゃん?」
「お主のことを化け物と言ったのじゃ。冒険者ギルドのギルドマスターなのか。マスターが化け物と・・・・・・むーーー」
京楽は、夜一の口を塞いだ。
「むーむーーーー」
「夜一ちゃん、あっちに依頼の掲示板あるから、それを見に行こう」
「だめだ、夜一さん。あのオカマを化け物扱いしたら、後で凄い目にあうから、化け物って言っちゃだめだ」
「わかった。お主らの言う通りにする。依頼・・・・何々、ファイアドラゴンの退治。これが面白そうじゃ。受けて、退治にいくぞ!」
「いや、僕らにはまだ無理だから。ドラゴン退治はまだしたことがないよ」
「じゃあ、ますます受けねば!」
「だから、まだ早いって!ドラゴン退治はSランクになってから受けるって決めてあるんだよ」
「つまらんのう」
夜一は依頼書を隅から隅まで見た。
「よし、この薬草採取に行こう」
「ええ、本気なの!?」
「これなら、危なくないじゃろ?」
「でもそれ、Fランクの依頼だよ?報酬とか銀貨1枚だよ?」
「いいのじゃいいのじゃ。これを受ける。ついでに、儂も冒険者登録しておこうかの」
そうして、夜一はFランク冒険者になった。
草原にいき、ヒーリング草と、解毒ポーションの元になる毒消し草を探して、籠の中に入れていく。
指定の数をつみ終わる頃には、日が暮れていた。
「かけだし冒険者は大変じゃのう。こんなに苦労して、報酬は銀貨一枚だけとは」
冒険者ギルドに戻ると、夜一の顔を知らない同じAランク冒険者たちが声をかけてきた。
「なんだ、新米冒険者のお嬢ちゃんのお守か?」
「まぁ、似たようなもんだよ」
「ぬう、バカにされておるのか・・・・」
「夜一さんは、この籠をもって、受付嬢のところに行ってくれ」
「分かったぞ、浮竹」
夜一は、ヒーリング草と毒消し草をそれぞれ50個ずつ提出して、報酬の銀貨一枚をもらった。
「今夜は疲れたのじゃ。帰るぞ」
「ふーん。京楽さんが目にかける子だけあって、かわいいじゃん」
「ねえ、お嬢さんお名前は?」
「四楓院夜一じゃ。魔王が配下、灼熱のシャイターンの・・・むーーーー」
浮竹と京楽に口を塞がれて、夜一はずるずると浮竹と京楽の自宅に引っ張っていかれた。
「何をする!」
「それはこっちの台詞だよ!中立を保っているとはいえ、魔族は人間の敵なんだよ!しかも灼熱のシャイターンは四天王の一人!その長女とばれたら、どうなるか分からない!」
「むう、そうなのか。儂が悪かった・・・」
「まぁ京楽、悪気があったわけじゃないから」
「浮竹は甘いよ。さぁ、用は済んだでしょ。魔大陸に帰ってよ」
「むう、まだ人間社会の市場などを見て回りたいのじゃ」
「じゃあ、明日にしよう。今日は夕飯をとって、風呂に入って寝よう。着替えとかは持ってきているか?」
浮竹の言葉に、夜一は頷いた。
「勿論じゃ。お風呂セットももってきておるし、布団と毛布と枕ももってきておる」
アイテムポケットをごそごそして、夜一はお風呂セット手に、脱衣所に消えていった。
「あ、お風呂まだ水じゃない?」
「ファイアボール!」
夜一は、器用に炎の魔法でお湯にして適温にすると、鼻歌を歌いながら長湯をするのであった。
「ああ、いい風呂じゃった。お、おいしそうじゃの」
今夜のメニューは、タルタルソースつっきのエビフライ、コーンスープ、白パン、ビーフシチューであった。
「うむ、うまいのお」
「京楽が作ってくれたんだ。後で、お礼を言ったら、きっと恥ずかしがるぞ」
くすくすと、浮竹は笑った。
その京楽は、デザートを作るためにキッチンに居た。
「苺のシャーベットでいいか」
苺のシャーベットをもってくると、夜一はニヤニヤしていた。
「なんだい、夜一姉さん」
「この料理、全部お主が作ったのじゃろう?」
「そうだけど」
夜一は、背伸びをして京楽の頭を撫でた。
「偉いのう、京楽は。姉として、鼻がたかいぞ。冒険者ギルドでの評判を聞く限りでは、次のSランク試験にはほぼ通りそうというではないか」
「まだまだ、修行が足りないよ」
「謙虚なところも良いな」
その日はそのまま就寝して、次の日になって朝食をとって、三人で市場に出かけた。
「おお、人が多いのう」
「そりゃ、帝都だからね」
「あっちの店に売ってあるあれはなんじゃ?」
「ああ、クレープだな。食べたいのか?」
「うむ」
「じゃあ、買ってくる」
浮竹は、クレープ屋にいって、チョコ味とバナナ味とストロベリー味を注文して、持って帰ってきた。
「食べてもよいのか?」
「うん、いいよ」
「甘い・・・初めて食べる食べ物じゃ。人間社会は、いろんなものがあって楽しいのう」
市場でいろいろ見て、夜一の職業がアサシンであることが分かり、短剣がボロボロだったので新調することにした。
浮竹と京楽が馴染みにしている武器屋で、ミスリルのナイフを二つ白金貨七枚で購入した。
「いやあ、人間社会の鍛冶屋はすごいのう。ミスリルの武器を扱えるのか」
中古品だったので、今度は馴染みの鍛冶屋でミスリルのナイフを研いでもらった。
「ふふ、これでまたいい仕事ができそうじゃ」
「夜一姉さんは、そのナイフで人を殺すの?」
「人というか、魔族じゃがの。灼熱のシャイターンに逆らう連中をヤるのじゃ」
「そう・・・・・」
京楽は、沈んだ顔をしていた。
「心配せんでも、無駄な殺しはせぬよ。どうしても必要になった時、集団の頭を暗殺する。その程度じゃ」
「そう・・・・・」
京楽の表情が、少し晴れた。
「さて、人間社会の見学も終えたし、いろいろ食えたし、短剣も新調したし、儂は魔大陸に戻るよ」
自宅に戻ると、夜一がそう言いだした.。
「夜一姉さん・・・・灼熱のシャイターンは・・・・母さんは元気にしてる?」
「おう、元気じゃぞ。この前、一三番目の夫と結婚して、新婚生活を満喫中じゃ」
「一三番目の夫?今、母さんには夫は何人いるの!?」
『生きている数では、九人じゃな。あと、男妾を5人もっておる。母上は、エルフにしては性欲が旺盛じゃからのう。子は末子の子で12人目か。まだ30歳じゃ」
「はぁ・・・なんか眩暈がする」
「大丈夫か、京楽」
「うん。僕の家庭問題から。平気だよ、浮竹」
「じゃあ、儂は戻るな。また、遊びにきてもよいじゃろうか?」
「うん、別にいいよ。ただし、ダークエルフってばれないようにね」
「分かっておるよ」
「さよなら」
「うむ、浮竹、そなたは義理の弟になるのじゃな、そういえば。京楽と契りの儀式を交わした伴侶じゃろ」
浮竹は真っ赤になって、エンジェリングスライムのブルンで、顔を隠してしまった。
「ははは、照れ屋じゃのう」
「もう、夜一姉さん、浮竹は純粋なんだから、からかわないで」
「悪かった悪かった。では、今度こそ帰るよ」
夜一は、空間転移魔法で、魔大陸に戻ってしまった。
「なんか、嵐のような人だったな。そこだけは、シャイターンにそっくりだ」
「僕の一族って、みんな嵐のような人物だったりして」
冗談で言ったつもりであったのだが、事実、灼熱のシャイターンの一族は、ほとんどが嵐のような人物で構成されていると、まだ知らない京楽であった。
「母上が捨てた子か・・・面白い」
女性の名は、夜一と言った。
見た目は京楽より若いが、京楽より200歳は年上の実の姉だった。
夜一は、見た目を人間に見える魔法をかけて、空間転移魔法でイアラ帝国までくると、浮竹と京楽が住んでいるという家を訪ねた。
ピンポーンとチャイムが鳴り、浮竹が対応にでた。
「どちら様で?」
「よう。京楽の嫁じゃな?」
「はぁ?」
「儂は四楓院夜市。京楽春水の実の姉にして、ダークエルフじゃ」
夜一は、人間に見える魔法を解いた。
「京楽に何の用だ!」
いつでも剣を抜けるように、鞘に手を伸ばす。
「誤解じゃ誤解じゃ。捨てられたはずの弟が、人間社会でAランク冒険者をやっていると聞いてのう。ただ純粋に、好奇心から会いに来ただけじゃ。害意はない」
「くくるーーー」
ブルンが、この人ほんとに害意がないよと言うので、浮竹は夜一を家にあげた。
「京楽」
「んー?」
ソファーでゴロンと横になって、書物を読んでいた京楽は、ダークエルフの夜一を見て、闇の魔法を発動させようとした。
「いきなり初対面で闇の魔法はなじゃろ。儂は四楓院夜一。灼熱がシャイターンの長女にして、お主の実の姉じゃ!」
「はあああああ!?」
間の抜けた京楽の声が、家中に響き渡った。
とりあえず、お茶を出した。
「で、夜一さんはなんの用でこんなところにいるの?」
「夜一姉さんじゃ」
有無を言わさない強さで迫られて、咳払いしてから京楽は言い直した。
「で、夜一姉さんは何の用があってここにきたの?」
「儂か?儂は何の用もない。しいていれば、お主の様子を見に来たくらいじゃろうか」
「そんな理由で、わざわざ魔大陸から来たの!?」
「この国には昔きたことがあるからのお。転移魔法で一発じゃ。それにしてもやるのうお主。こんな綺麗なエンシェントエルフを嫁にするなぞ」
「浮竹は僕と同じ男だよ!」
「分かっておるわい。でも、ものにしたんじゃろう?お主の匂いがぷんぷんするわい」
その会話を聞いていた浮竹は、真っ赤になってブルンを抱きしめて、隣の部屋に逃げてしまった。
「ちょっと、浮竹逃げないで!頼むから、この夜一姉さんと2人きりにしないで~~」
情けない声を出す京楽に、仕方なく浮竹は部屋に戻ってきた。
「くくるーー」
「お、エンジェリングスライムか。実物を見るの始めてじゃのう。なんていうか・・・うまそうじゃ」
「くくるーーー!!」
ブルンは、空を飛びまくって、照明と激突して落っこちてきた。
「夜一姉さん、そんな本当か冗談なのか分からないことを言わないで!」
「む?本心じゃぞ」
浮竹が、気絶したブルンを抱きしめて、首を横に振った。
「ブルンは大切な家族だ。食べさせないぞ!」
「嘘じゃ嘘じゃ。ただの冗談じゃ」
「ダークエルフの普通の食生活がどんなのか分からないから、冗談に聞こえない」
「む?人やエルフのような同じような生活を送っておるぞ?ただ、モンスターの肉を食うのが多いくらいじゃの。違いは」
「ダークエルフって、もっと魔族に近くて野蛮なんじゃ」
「ダークエルフというだけで、そう決めつけないでくれぬか」
「ああ、すまなかった」
「よい。儂も悪ふざけが過ぎた」
夜一は謝ると、京楽の手を取った。
「人間社会の冒険者ギルドを見たいのじゃ。連れていってくれぬか?」
「でも、その見た目じゃ・・・・」
夜一は、人間の女性に見える魔法を使った。その魔法は完璧で、魔力障害を発生させても解けなかった。
「分かったよ。夜一姉さんの言う通りにするから、目立たないでね。あと、冒険者ギルドでは僕がダークエルフっていうのはばれてるから、姉だって言わないでね」
「分かった分かった。言う通りにするから、早く冒険者ギルドへ行こうぞ」
京楽と浮竹は、ブルンと人間にしか見えない夜一を連れて冒険者ギルドに来た。
「あら、春ちゃんうっきーちゃん、どうしたの?今日はもう帰るって言ってたのに」
「なんじゃ、この化け物は?」
キャサリンは、ぴきっと引きつった。
「何か言った、お嬢ちゃん?」
「お主のことを化け物と言ったのじゃ。冒険者ギルドのギルドマスターなのか。マスターが化け物と・・・・・・むーーー」
京楽は、夜一の口を塞いだ。
「むーむーーーー」
「夜一ちゃん、あっちに依頼の掲示板あるから、それを見に行こう」
「だめだ、夜一さん。あのオカマを化け物扱いしたら、後で凄い目にあうから、化け物って言っちゃだめだ」
「わかった。お主らの言う通りにする。依頼・・・・何々、ファイアドラゴンの退治。これが面白そうじゃ。受けて、退治にいくぞ!」
「いや、僕らにはまだ無理だから。ドラゴン退治はまだしたことがないよ」
「じゃあ、ますます受けねば!」
「だから、まだ早いって!ドラゴン退治はSランクになってから受けるって決めてあるんだよ」
「つまらんのう」
夜一は依頼書を隅から隅まで見た。
「よし、この薬草採取に行こう」
「ええ、本気なの!?」
「これなら、危なくないじゃろ?」
「でもそれ、Fランクの依頼だよ?報酬とか銀貨1枚だよ?」
「いいのじゃいいのじゃ。これを受ける。ついでに、儂も冒険者登録しておこうかの」
そうして、夜一はFランク冒険者になった。
草原にいき、ヒーリング草と、解毒ポーションの元になる毒消し草を探して、籠の中に入れていく。
指定の数をつみ終わる頃には、日が暮れていた。
「かけだし冒険者は大変じゃのう。こんなに苦労して、報酬は銀貨一枚だけとは」
冒険者ギルドに戻ると、夜一の顔を知らない同じAランク冒険者たちが声をかけてきた。
「なんだ、新米冒険者のお嬢ちゃんのお守か?」
「まぁ、似たようなもんだよ」
「ぬう、バカにされておるのか・・・・」
「夜一さんは、この籠をもって、受付嬢のところに行ってくれ」
「分かったぞ、浮竹」
夜一は、ヒーリング草と毒消し草をそれぞれ50個ずつ提出して、報酬の銀貨一枚をもらった。
「今夜は疲れたのじゃ。帰るぞ」
「ふーん。京楽さんが目にかける子だけあって、かわいいじゃん」
「ねえ、お嬢さんお名前は?」
「四楓院夜一じゃ。魔王が配下、灼熱のシャイターンの・・・むーーーー」
浮竹と京楽に口を塞がれて、夜一はずるずると浮竹と京楽の自宅に引っ張っていかれた。
「何をする!」
「それはこっちの台詞だよ!中立を保っているとはいえ、魔族は人間の敵なんだよ!しかも灼熱のシャイターンは四天王の一人!その長女とばれたら、どうなるか分からない!」
「むう、そうなのか。儂が悪かった・・・」
「まぁ京楽、悪気があったわけじゃないから」
「浮竹は甘いよ。さぁ、用は済んだでしょ。魔大陸に帰ってよ」
「むう、まだ人間社会の市場などを見て回りたいのじゃ」
「じゃあ、明日にしよう。今日は夕飯をとって、風呂に入って寝よう。着替えとかは持ってきているか?」
浮竹の言葉に、夜一は頷いた。
「勿論じゃ。お風呂セットももってきておるし、布団と毛布と枕ももってきておる」
アイテムポケットをごそごそして、夜一はお風呂セット手に、脱衣所に消えていった。
「あ、お風呂まだ水じゃない?」
「ファイアボール!」
夜一は、器用に炎の魔法でお湯にして適温にすると、鼻歌を歌いながら長湯をするのであった。
「ああ、いい風呂じゃった。お、おいしそうじゃの」
今夜のメニューは、タルタルソースつっきのエビフライ、コーンスープ、白パン、ビーフシチューであった。
「うむ、うまいのお」
「京楽が作ってくれたんだ。後で、お礼を言ったら、きっと恥ずかしがるぞ」
くすくすと、浮竹は笑った。
その京楽は、デザートを作るためにキッチンに居た。
「苺のシャーベットでいいか」
苺のシャーベットをもってくると、夜一はニヤニヤしていた。
「なんだい、夜一姉さん」
「この料理、全部お主が作ったのじゃろう?」
「そうだけど」
夜一は、背伸びをして京楽の頭を撫でた。
「偉いのう、京楽は。姉として、鼻がたかいぞ。冒険者ギルドでの評判を聞く限りでは、次のSランク試験にはほぼ通りそうというではないか」
「まだまだ、修行が足りないよ」
「謙虚なところも良いな」
その日はそのまま就寝して、次の日になって朝食をとって、三人で市場に出かけた。
「おお、人が多いのう」
「そりゃ、帝都だからね」
「あっちの店に売ってあるあれはなんじゃ?」
「ああ、クレープだな。食べたいのか?」
「うむ」
「じゃあ、買ってくる」
浮竹は、クレープ屋にいって、チョコ味とバナナ味とストロベリー味を注文して、持って帰ってきた。
「食べてもよいのか?」
「うん、いいよ」
「甘い・・・初めて食べる食べ物じゃ。人間社会は、いろんなものがあって楽しいのう」
市場でいろいろ見て、夜一の職業がアサシンであることが分かり、短剣がボロボロだったので新調することにした。
浮竹と京楽が馴染みにしている武器屋で、ミスリルのナイフを二つ白金貨七枚で購入した。
「いやあ、人間社会の鍛冶屋はすごいのう。ミスリルの武器を扱えるのか」
中古品だったので、今度は馴染みの鍛冶屋でミスリルのナイフを研いでもらった。
「ふふ、これでまたいい仕事ができそうじゃ」
「夜一姉さんは、そのナイフで人を殺すの?」
「人というか、魔族じゃがの。灼熱のシャイターンに逆らう連中をヤるのじゃ」
「そう・・・・・」
京楽は、沈んだ顔をしていた。
「心配せんでも、無駄な殺しはせぬよ。どうしても必要になった時、集団の頭を暗殺する。その程度じゃ」
「そう・・・・・」
京楽の表情が、少し晴れた。
「さて、人間社会の見学も終えたし、いろいろ食えたし、短剣も新調したし、儂は魔大陸に戻るよ」
自宅に戻ると、夜一がそう言いだした.。
「夜一姉さん・・・・灼熱のシャイターンは・・・・母さんは元気にしてる?」
「おう、元気じゃぞ。この前、一三番目の夫と結婚して、新婚生活を満喫中じゃ」
「一三番目の夫?今、母さんには夫は何人いるの!?」
『生きている数では、九人じゃな。あと、男妾を5人もっておる。母上は、エルフにしては性欲が旺盛じゃからのう。子は末子の子で12人目か。まだ30歳じゃ」
「はぁ・・・なんか眩暈がする」
「大丈夫か、京楽」
「うん。僕の家庭問題から。平気だよ、浮竹」
「じゃあ、儂は戻るな。また、遊びにきてもよいじゃろうか?」
「うん、別にいいよ。ただし、ダークエルフってばれないようにね」
「分かっておるよ」
「さよなら」
「うむ、浮竹、そなたは義理の弟になるのじゃな、そういえば。京楽と契りの儀式を交わした伴侶じゃろ」
浮竹は真っ赤になって、エンジェリングスライムのブルンで、顔を隠してしまった。
「ははは、照れ屋じゃのう」
「もう、夜一姉さん、浮竹は純粋なんだから、からかわないで」
「悪かった悪かった。では、今度こそ帰るよ」
夜一は、空間転移魔法で、魔大陸に戻ってしまった。
「なんか、嵐のような人だったな。そこだけは、シャイターンにそっくりだ」
「僕の一族って、みんな嵐のような人物だったりして」
冗談で言ったつもりであったのだが、事実、灼熱のシャイターンの一族は、ほとんどが嵐のような人物で構成されていると、まだ知らない京楽であった。
エンシェントエルフとダークエルフ30
浮竹とブルンが攫われた。
正確には行方不明になったのだが、事件が解決してから犯人から手紙があったのだ。
(ありがとう)
「はぁ?」
京楽は情けない声をあげていた。
ことの発端は、昨日にまで遡る。
草原で、浮竹と京楽とブルンは、ピクニックをしていた。
ブルンには大量のゴミを与えてやった。
そのブルンが、何か変な声がするといって、飛んでいった。
その後を浮竹が追ったのだが、そのまま一人と一匹は帰ってこなかった。
周囲を探したが、姿はなく、先に帰っていると思ったのだがいなかった。冒険者ギルドにもいなかった。このまま帰ってこないと心配なので、冒険者ギルドの者にも依頼して、行方を捜してもらおうかと思っていた矢先だった。
行方不明になった翌日に、浮竹とブルンは帰ってきた。
「浮竹にブルン、どうしたの!心配したんだよ!」
「助かった!よかったよう」
「くるるーーー」
一人と一匹は泣きだした。
なんでも、獣人に誘拐されたのだそうだ。
魔力が消えるお札を使われて、目隠しをされて、プルンと一緒にどこかへと運ばれた。
周囲をふっとばそうかと思ったが、犯人は明らかに子供だったのだ。
子供に誘拐されてついた先は、山奥の深い森の中だった。
「メアリ、どうしたの。探したのよ」
「かあさん!かあさんを治せる人を連れてきたよ!」
大きな白い狼と、獣人の子供たちがいた。
「えっと、これは?」
「誘拐しちゃってごめんなさい。報酬を払うお金がないの。どうか、かあさんの傷を癒してください!」
浮竹は、大きな白い狼が獣人たちの母親であると分かった。
「ちょっと、傷を見せてくれるか」
「はい。この右足です」
右足は腐って半分ちぎれかけていた。
「これは酷い。どうしたんだ?」
「人間の罠にはまって・・・・かあさんの毛皮が高く売れるからって、人間たちが」
「ブルン、頼めるか?」
「くるる~~~」
ブルンは体を光らせて、大きな白い狼の傷を治した。
「まぁ。怪我が嘘のよう」
「それより、この獣人たちはあなたの子なのだろう。人化はできないのか?」
「いえ、できます。ただ、足の傷が深すぎて人化できなかっただけで。私はダリア。この山の奥の森を縄張りにしている狼の獣人です」
ダリアは人化した。
純白の獣人が現れた。
髪も肌も目も衣服も、何もかもが白かった。
頭の上には狼の耳があり、白い尻尾もついていた。
「傷を治してくださり、ありがとうごいます・・・・ううう」
「どうした?」
「こ、子供が・・・生まれそう」
「ええ!」
「くくるー!」
「おかあさん、どうしたの、まだ苦しいの?」
「違うのよ。新しいあなたたちの妹か弟ができるの」
「すみません、いつもは亭主がいるのですが、大掛かりな狩りの最中で。お産の手伝い、してもらっていいですか?」
浮竹は真っ赤になった。
「いいが、俺は男だぞ?」
「ええ、分かっています。でも、子供たちは小さくてまだ頼めません」
それから、浮竹はお湯を分かし、綺麗な布を用意して、子供が生まれてくるのを待った。
「出てこないぞ?」
「逆子のようです。少しずつ、ひっぱりだしてください」
足がでてきたので、少し引っ張った。ピクリと足は動いたが、それきり動かなくなった。
「だめだ、息をしていないかもしれない。ちょっと荒くなるが、我慢してくれ!」
浮竹は、赤子の足を掴んで無理やり引っ張りだした。
やはり、息はしていなかった。
「死産ですか・・・・・うううう」
「まて、まだ可能性はある!」
浮竹は、習ったことのある方法で、心臓マッサージを繰り返し、息を吹き込んだ。
するとどうだろう。
赤子が息を吹き返したのだ。
「おぎゃあおぎゃあ」
「ブルン、頼む」
「くくうるーー」
ブルンが魔法をかけて、赤子の容態はすぐに安定した。
「よかったー。生まれたよう」
「くくる――」
浮竹とブルンは、わんわんと泣きだした。
そのまま、一晩を様子見のために親子の様子を見ながら眠った。
「イアラ帝国のどこにお住まいですか?」
「帝都アスランだが」
「そこなら、行った事があるので、空間転移の魔法で送りますね」
「あ、俺は浮竹という。こっちはブルンだ」
「ありがとございます、優しい浮竹さん、ブルンさん」
ダリアは、去り際に刃で作られたネックレスをくれた。
その刃は、牙狼一族の証であった。
牙狼一族は義理堅いという。
「何か、獣人のことで問題が起きたら、そのネックレスを見せてください。きっと、役に立ちますから」
そうして、浮竹とブルンは帰ってきた。
子供がちゃんと生まれた記憶が蘇り、京楽が目の前にいたので緊張の糸が解けて、浮竹とブルンはわんわん泣きだした。
それから、犯人らしき人物が残した手紙がポストの中に投函されていた。
内容は「ありがとう」
浮竹とブルンは泣くばかりで、京楽は訳が分からないのだが、浮竹とブルンが帰ってきてくれて、ほっとするのだった。
ことのあらましを聞いて、京楽は溜息をついた。
「で、その獣人の子供に攫われたというか連れていかれて、ブルンも浮竹も、犯人の母親の傷を無報酬で治しちゃったんだね?」
「無報酬じゃないぞ。ちゃんと、牙で作られたネックレスをもらった」
「牙狼族?聞いたこともないよ?」
「でも、いたんだ。真っ白な大きな狼が」
「それってフェンリルじゃないの?」
「フェンリルは、氷の精霊だろう?」
浮竹が首を傾げる。
「個体によっては、ただの大きな狼の場合がある。フェンリルなら、牙狼族と名乗っていたとしても頷ける」
「そういえば、人化した時何もかもが白かった」
「白亜種族のフェンリルだろうね」
京楽は、浮竹より獣人なんかには詳しかった。
「子供を産んだんだけど、死産で、俺が蘇生させて、ブルンが安定させてくれたんだ」
「蘇生できたのかい。おまけにフェンリルの傷を癒したとなると、牙は本物かもね」
京楽は、牙狼族と名乗ったフェンリルの牙のネックレスをみた。ほのかだが、氷の属性がエンチャントされていた。
「なんでも、毛皮目当ての人間の罠にかかってしまったらしい」
「フェンリルの毛皮は、毛皮の中でもダントツに高いからね」
「でも、なぜ?フェンリルは獣人でもあるのだろう?」
「正確には、人の姿になれる獣かな。本性は獣だよ」
「仲良く、なれないのかな」
「無理だろうね。本物の獣人ならいざ知らず、フェンリルの獣人だと、毛皮目当てで襲からわれる、人を見つけると襲うだろう。君は、エルフだったから無傷だったんだよ。あとブルンも連れていたから」
「そうか・・・・仲良くなれないのか」
しょんぼりする浮竹に、京楽が助け舟を出す。
「あ、でもそのネックレスをもらったってことは、友好の証じゃないの?」
「そうかな。そうだな。うん、きっとそうだ」
「くくるーーー」
「ブルンも、そう思うか?」
「くくる!」
浮竹とブルンは、前の日食事をあまりとっていなかったので、よく食べて眠りにつくのであった。
-----------------------------------------------------------------
「フェンリルの捕獲に失敗したか」
藍染は、ぽつりと呟いた。
「まぁいい。他の魔獣を探してみるか」
ワイングラスの赤い液体を飲み干す。
それは、ワインなどでなく人の生き血であった。不老不死を維持するために、時折藍染は人の生き血を飲むのだった。
ゴポリ。
藍染の背後では、変わらず水槽の中で何かの肉塊が蠢いていた。
正確には行方不明になったのだが、事件が解決してから犯人から手紙があったのだ。
(ありがとう)
「はぁ?」
京楽は情けない声をあげていた。
ことの発端は、昨日にまで遡る。
草原で、浮竹と京楽とブルンは、ピクニックをしていた。
ブルンには大量のゴミを与えてやった。
そのブルンが、何か変な声がするといって、飛んでいった。
その後を浮竹が追ったのだが、そのまま一人と一匹は帰ってこなかった。
周囲を探したが、姿はなく、先に帰っていると思ったのだがいなかった。冒険者ギルドにもいなかった。このまま帰ってこないと心配なので、冒険者ギルドの者にも依頼して、行方を捜してもらおうかと思っていた矢先だった。
行方不明になった翌日に、浮竹とブルンは帰ってきた。
「浮竹にブルン、どうしたの!心配したんだよ!」
「助かった!よかったよう」
「くるるーーー」
一人と一匹は泣きだした。
なんでも、獣人に誘拐されたのだそうだ。
魔力が消えるお札を使われて、目隠しをされて、プルンと一緒にどこかへと運ばれた。
周囲をふっとばそうかと思ったが、犯人は明らかに子供だったのだ。
子供に誘拐されてついた先は、山奥の深い森の中だった。
「メアリ、どうしたの。探したのよ」
「かあさん!かあさんを治せる人を連れてきたよ!」
大きな白い狼と、獣人の子供たちがいた。
「えっと、これは?」
「誘拐しちゃってごめんなさい。報酬を払うお金がないの。どうか、かあさんの傷を癒してください!」
浮竹は、大きな白い狼が獣人たちの母親であると分かった。
「ちょっと、傷を見せてくれるか」
「はい。この右足です」
右足は腐って半分ちぎれかけていた。
「これは酷い。どうしたんだ?」
「人間の罠にはまって・・・・かあさんの毛皮が高く売れるからって、人間たちが」
「ブルン、頼めるか?」
「くるる~~~」
ブルンは体を光らせて、大きな白い狼の傷を治した。
「まぁ。怪我が嘘のよう」
「それより、この獣人たちはあなたの子なのだろう。人化はできないのか?」
「いえ、できます。ただ、足の傷が深すぎて人化できなかっただけで。私はダリア。この山の奥の森を縄張りにしている狼の獣人です」
ダリアは人化した。
純白の獣人が現れた。
髪も肌も目も衣服も、何もかもが白かった。
頭の上には狼の耳があり、白い尻尾もついていた。
「傷を治してくださり、ありがとうごいます・・・・ううう」
「どうした?」
「こ、子供が・・・生まれそう」
「ええ!」
「くくるー!」
「おかあさん、どうしたの、まだ苦しいの?」
「違うのよ。新しいあなたたちの妹か弟ができるの」
「すみません、いつもは亭主がいるのですが、大掛かりな狩りの最中で。お産の手伝い、してもらっていいですか?」
浮竹は真っ赤になった。
「いいが、俺は男だぞ?」
「ええ、分かっています。でも、子供たちは小さくてまだ頼めません」
それから、浮竹はお湯を分かし、綺麗な布を用意して、子供が生まれてくるのを待った。
「出てこないぞ?」
「逆子のようです。少しずつ、ひっぱりだしてください」
足がでてきたので、少し引っ張った。ピクリと足は動いたが、それきり動かなくなった。
「だめだ、息をしていないかもしれない。ちょっと荒くなるが、我慢してくれ!」
浮竹は、赤子の足を掴んで無理やり引っ張りだした。
やはり、息はしていなかった。
「死産ですか・・・・・うううう」
「まて、まだ可能性はある!」
浮竹は、習ったことのある方法で、心臓マッサージを繰り返し、息を吹き込んだ。
するとどうだろう。
赤子が息を吹き返したのだ。
「おぎゃあおぎゃあ」
「ブルン、頼む」
「くくうるーー」
ブルンが魔法をかけて、赤子の容態はすぐに安定した。
「よかったー。生まれたよう」
「くくる――」
浮竹とブルンは、わんわんと泣きだした。
そのまま、一晩を様子見のために親子の様子を見ながら眠った。
「イアラ帝国のどこにお住まいですか?」
「帝都アスランだが」
「そこなら、行った事があるので、空間転移の魔法で送りますね」
「あ、俺は浮竹という。こっちはブルンだ」
「ありがとございます、優しい浮竹さん、ブルンさん」
ダリアは、去り際に刃で作られたネックレスをくれた。
その刃は、牙狼一族の証であった。
牙狼一族は義理堅いという。
「何か、獣人のことで問題が起きたら、そのネックレスを見せてください。きっと、役に立ちますから」
そうして、浮竹とブルンは帰ってきた。
子供がちゃんと生まれた記憶が蘇り、京楽が目の前にいたので緊張の糸が解けて、浮竹とブルンはわんわん泣きだした。
それから、犯人らしき人物が残した手紙がポストの中に投函されていた。
内容は「ありがとう」
浮竹とブルンは泣くばかりで、京楽は訳が分からないのだが、浮竹とブルンが帰ってきてくれて、ほっとするのだった。
ことのあらましを聞いて、京楽は溜息をついた。
「で、その獣人の子供に攫われたというか連れていかれて、ブルンも浮竹も、犯人の母親の傷を無報酬で治しちゃったんだね?」
「無報酬じゃないぞ。ちゃんと、牙で作られたネックレスをもらった」
「牙狼族?聞いたこともないよ?」
「でも、いたんだ。真っ白な大きな狼が」
「それってフェンリルじゃないの?」
「フェンリルは、氷の精霊だろう?」
浮竹が首を傾げる。
「個体によっては、ただの大きな狼の場合がある。フェンリルなら、牙狼族と名乗っていたとしても頷ける」
「そういえば、人化した時何もかもが白かった」
「白亜種族のフェンリルだろうね」
京楽は、浮竹より獣人なんかには詳しかった。
「子供を産んだんだけど、死産で、俺が蘇生させて、ブルンが安定させてくれたんだ」
「蘇生できたのかい。おまけにフェンリルの傷を癒したとなると、牙は本物かもね」
京楽は、牙狼族と名乗ったフェンリルの牙のネックレスをみた。ほのかだが、氷の属性がエンチャントされていた。
「なんでも、毛皮目当ての人間の罠にかかってしまったらしい」
「フェンリルの毛皮は、毛皮の中でもダントツに高いからね」
「でも、なぜ?フェンリルは獣人でもあるのだろう?」
「正確には、人の姿になれる獣かな。本性は獣だよ」
「仲良く、なれないのかな」
「無理だろうね。本物の獣人ならいざ知らず、フェンリルの獣人だと、毛皮目当てで襲からわれる、人を見つけると襲うだろう。君は、エルフだったから無傷だったんだよ。あとブルンも連れていたから」
「そうか・・・・仲良くなれないのか」
しょんぼりする浮竹に、京楽が助け舟を出す。
「あ、でもそのネックレスをもらったってことは、友好の証じゃないの?」
「そうかな。そうだな。うん、きっとそうだ」
「くくるーーー」
「ブルンも、そう思うか?」
「くくる!」
浮竹とブルンは、前の日食事をあまりとっていなかったので、よく食べて眠りにつくのであった。
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「フェンリルの捕獲に失敗したか」
藍染は、ぽつりと呟いた。
「まぁいい。他の魔獣を探してみるか」
ワイングラスの赤い液体を飲み干す。
それは、ワインなどでなく人の生き血であった。不老不死を維持するために、時折藍染は人の生き血を飲むのだった。
ゴポリ。
藍染の背後では、変わらず水槽の中で何かの肉塊が蠢いていた。
エンシェントエルフとダークエルフ29
浮竹と京楽は、またイアラ帝国の女帝卯ノ花に呼び出された。
前回のケルベロスと今回のヒュドラで、騎士団が壊滅的だというのだ。本来なら、聖騎士を派遣する内容に、浮竹と京楽を派遣したいのだという。
それはイアラ帝国のウララ高原にある、スキア帝国の遺跡での話だった。
重要なイアラ帝国の資金源でもあるミスリルが発掘できる遺跡で、変異キメラが出て、冒険者たちを食い殺していったのが今から2カ月ほど前の話だ。
その変異キメラを、京楽が禁忌の魔法ワールドエンドで葬った。
それまでの犠牲者の数は30人以上なのだという。地下のダークエルフのことも含めると、死者は50人以上になるだろう。
ダークエルフを使って変異キメラを作っていた男、藍染のことは女帝の耳にも入っていた。
「それで、お願いがあるのです。遺跡にでるリッチとレイスたちを何とかしてほしいのです。このままではあの遺跡でミスリルの鉱石がいつまで経っても掘り出せません。通常、聖騎士を派遣して駆除する予定だったのでが、モンスターの進撃で我が騎士団は聖騎士も含めてボロボロで。
リッチとレイスは聖属性と火属性が弱いとききます。
そこで帝都アスランの冒険者にどうかならないかと、ギルドマスターに聞いたら、あなたたちの名前があがったのです」
「はぁ・・・・・」
あのオカマのギルドマスターめ。
京楽心の中で罵っていた。
「しかし、それなら教会の人間が適任なのでは?」
「教会側にも要請したのですが、とてもリッチを浄化できる聖職者はいないとのことなので・・・・・」
「くくるー」
エンジェリングライムに進化した、ブルンを卯ノ花は見ていた。
「あなた方が連れているエンジェリングスライムは、浄化の魔法が得意なはず。レイス程度なら楽勝でしょう。リッチもどうにかなるはず。ですから、お願いします」
「まぁ僕ら自身の力でもどうにかなるけどね」
「陛下、今回の件はお引き受けいたします」
「ありがとございます。健闘をお祈り申してあげます」
謁見の間から去ると、京楽が文句を言った。
「そもそも、リッチを浄化できない教会ってどういうこと。上位アンデットくらい浄化できる神官もいないなんて、この国の教会腐ってない?」
「この国の教会は純粋にフレイア神を崇めるフレイア教だ。浄化の能力とか関係なく、一般信徒から上位の者が出て、教皇もフレイア神殿のTOPというだけで、浄化とかそういう能力は一切ない。教会の力は最初からあてにならない」
「教会はだめ、聖騎士もだめ、ついにお鉢がこっち回ってきたってわけかい」
「まぁ、ブルンもいるんだ。ささっと駆除してこよう」
「そうだね。お互い、兵士に武器を返してもらおう」
近衛騎士に預けていたミスリル銀の魔剣と、最近浮竹がミスリル銀の魔剣を買った時におまけでついてきた、闇属性の杖、通称アークデーモンスタッフを返してもらった。
「ふふふ・・・・リッチってことは闇属性だよね。禁忌使っても滅びないよね?」
「いや、普通に滅びると思うが・・・」
とりあえず、京楽にウララ高原にあるスキア帝国の遺跡の前まで転移魔法で運んでもらった。
「くるるーーー」
「お、さっそくいるようだね。ブルン、思いっきり浄化しちゃっていいよ!」
「くるるん!」
ブルンの体が光り、最初の部屋にいたレイスたちが穏やかな顔をして消えていく。
「これなら、楽勝だな」
「そうだね」
遺跡の全ての部屋を浄化していくが、リッチの姿がなかった。
念のため、地下にもぐるとそこにリッチがいた。しかもダークエルフだった。
「オノレ、ヨクモ私ヲ殺シテクレタナ」
リッチは浮竹のことを覚えているようで、いきなり攻撃してきた。
「マジックバリア!」
京楽が、結界を張ってくれた。
「アア憎イ。生キテイル者ガ憎イ」
「ブルン、なんとかなりそうか?」
「くくぅ」
僕じゃ無理かも。
「そうか。じゃあ、俺がなんとかしよう」
「え、でも浮竹は聖属性の魔法はエンチャントくらいしか・・・って、修行でレベルアップした後だしね」
「クリエイトアストラルエンジェル」
「おおおおおん」
人工的な天使が生み出された。
天使は、聖なる剣をもちレイスを串刺しにした。
「「テトラボックス」」
2重詠唱で、無属性の魔法の禁忌を使った。
レイスは、何も言う暇もなく滅びていった。
「な、楽勝だったろ?」
京楽は、ぽかんと口を開けていたが、すぐに正気に戻った。
「天使!?人工的に天使作ってるの!?これ、浮竹の魔法なの?」
「そうだぞ。何かおかしいか?」
「おかしいも何も・・・天使を人工的に作り出す魔法なんて聞いたことがないよ」
「それは、俺のオリジナルの魔法だからな。師匠には、創造は神の魔法だと言われた」
京楽は、天を仰いだ。
すっかり、自分だけが強くなった気でいたのだ。
それと同等か、場合によってはそれ以上の力を浮竹はもっていた。
「ブルン、この地下全体も、俺の人工天使と一緒に浄化してれるか」
「くるる!」
「あおおおん」
「はぁ!?作り出した天使が浄化の魔法使える・・・ああ、僕はもうつっこまないからね」
「ちなみに、人工悪魔を作りだせば闇魔法も使える。その時は人工悪魔を媒介に、俺も闇魔法の禁忌を使えるぞ」
「チートだ」
京楽は、そう言って嘆くのであった。
ブルンと人工天使と一緒に、地下の隅々まで浄化して結界を張ると、人工天使はすーっと消えていった。
「よし、依頼は達成だ。戻るか」
「はいはい。また女帝と謁見だね」
「報酬が楽しみだ。女帝からの依頼なら、白金貨が期待できる」
--------------------------------------------
「そうですか。無事、レイスとリッチを駆除してくれましたか」
「魔石あるんですが、一応鑑定してもらいますか?」
「いいえ、あなたたちの言葉を何より信じましょう。この近衛騎士団長から」
「はい」
「褒美を、ここへ」
近衛騎士は、報酬の金が入った袋を手にやってきた。
「報酬の白金貨10枚に値する、大金貨100万枚です」
「うわぁ、重そう」
「すみません、白金貨は流通量が少ないので大金貨での支払いとなってしまいます」
「いえ、問題ありません」
近衛騎士団長から大金貨の詰まった袋をもらい、それをアイテムポケットに収納していく。
大金貨100万枚なので、けっこうな袋の数になった。
「では、また何かあれば助力をこうかもしれませんが、その時はまたお願いします」
「はい、喜んで」
京楽は思った。金の力って怖いと。
浮竹と京楽がマイホームにつくと、プルンが一匹で遊びにきていた。
「プルププ」
「なんだ、プルン?進化したのか」
「プルプ」
エンペラースライムになった。
プルンにはひげがはえており、頭には小さな王冠があった。
「くくるーーー!!」
弟よ、すごいな!
「プルプウ!」
お兄ちゃん、こんな姿だけど俺はプルンだよ。
「プルン、お前俺たちとブルンの前では、態度が違わないか?」
「プルププ」
当たり前。俺はエンペラースライムだよ?
ブルンは、プルンの真上をばっさばっさと飛ぶと、ちょうど王冠のところ着地した。
「プルプウ」
「くくるーーー」
はまって出られない。
ブルンの声に、プルンが驚く。
その後浮竹と京楽に引っ張ってもらって、なんとかブルンはプルンの王冠の中から外にでられるのであった。
「そういえば、プルンは今林檎いくつ食べてるんだ?」
「プルプ」
「15個!?大食いなぁ」
京楽は、アイテムポケットからりんごを15個並べて、プルンにあげた。
「ブルンも負けてないぞ。近所中のゴミ消化してきらしい」
「くるっくー!」
りんご、おししいかい?
「ププウ」
おしいよ。お兄ちゃんもおいしかった?
「くるくる」
近所中のゴミを消化しといた。食いだめができる体で便利だ。
「プルプウウ」
食いだめできるんだ、すごいね!
『プルン、やっぱりここにきてたのか、探したんだぞ』
『音沙汰もなくいなくならないでね。浮竹がすごく心配してたんだから』
「プルプル」
現れた精霊の浮竹と剣士の京楽に、プルンは堂々と遊びいくとメモを書いたという。
でもそのメモは字がぐちゃぐちゃで読めなかった。
「師匠、少しだけお久しぶりです!」
『やあ、といっても、2週間くらい前に会ったばかりだけどね』
「浮竹の魔法が・・・・・・」
浮竹のオリジナルの魔法でショックを受けている京楽に一言。
『あれは神の魔法だよ。悪用されないように、君が気をつけてあげて』
そう言って、プルンを回収していく。
「プルプププ」
あ、りんごまだ全部食べてない。
「残りは家で帰ってお食べ」
エルフの京楽から、残っていたりんご3つを渡されて、それを体内に保存する。
『じゃあ、俺たちはこれで帰る。プルンを回収にきただけだから』
「師匠、また遊びにきてください」
『うん、またねぇ』
プルンの魔法で、精霊の浮竹と剣士の京楽は空間転移の魔法で帰っていくのであった。
前回のケルベロスと今回のヒュドラで、騎士団が壊滅的だというのだ。本来なら、聖騎士を派遣する内容に、浮竹と京楽を派遣したいのだという。
それはイアラ帝国のウララ高原にある、スキア帝国の遺跡での話だった。
重要なイアラ帝国の資金源でもあるミスリルが発掘できる遺跡で、変異キメラが出て、冒険者たちを食い殺していったのが今から2カ月ほど前の話だ。
その変異キメラを、京楽が禁忌の魔法ワールドエンドで葬った。
それまでの犠牲者の数は30人以上なのだという。地下のダークエルフのことも含めると、死者は50人以上になるだろう。
ダークエルフを使って変異キメラを作っていた男、藍染のことは女帝の耳にも入っていた。
「それで、お願いがあるのです。遺跡にでるリッチとレイスたちを何とかしてほしいのです。このままではあの遺跡でミスリルの鉱石がいつまで経っても掘り出せません。通常、聖騎士を派遣して駆除する予定だったのでが、モンスターの進撃で我が騎士団は聖騎士も含めてボロボロで。
リッチとレイスは聖属性と火属性が弱いとききます。
そこで帝都アスランの冒険者にどうかならないかと、ギルドマスターに聞いたら、あなたたちの名前があがったのです」
「はぁ・・・・・」
あのオカマのギルドマスターめ。
京楽心の中で罵っていた。
「しかし、それなら教会の人間が適任なのでは?」
「教会側にも要請したのですが、とてもリッチを浄化できる聖職者はいないとのことなので・・・・・」
「くくるー」
エンジェリングライムに進化した、ブルンを卯ノ花は見ていた。
「あなた方が連れているエンジェリングスライムは、浄化の魔法が得意なはず。レイス程度なら楽勝でしょう。リッチもどうにかなるはず。ですから、お願いします」
「まぁ僕ら自身の力でもどうにかなるけどね」
「陛下、今回の件はお引き受けいたします」
「ありがとございます。健闘をお祈り申してあげます」
謁見の間から去ると、京楽が文句を言った。
「そもそも、リッチを浄化できない教会ってどういうこと。上位アンデットくらい浄化できる神官もいないなんて、この国の教会腐ってない?」
「この国の教会は純粋にフレイア神を崇めるフレイア教だ。浄化の能力とか関係なく、一般信徒から上位の者が出て、教皇もフレイア神殿のTOPというだけで、浄化とかそういう能力は一切ない。教会の力は最初からあてにならない」
「教会はだめ、聖騎士もだめ、ついにお鉢がこっち回ってきたってわけかい」
「まぁ、ブルンもいるんだ。ささっと駆除してこよう」
「そうだね。お互い、兵士に武器を返してもらおう」
近衛騎士に預けていたミスリル銀の魔剣と、最近浮竹がミスリル銀の魔剣を買った時におまけでついてきた、闇属性の杖、通称アークデーモンスタッフを返してもらった。
「ふふふ・・・・リッチってことは闇属性だよね。禁忌使っても滅びないよね?」
「いや、普通に滅びると思うが・・・」
とりあえず、京楽にウララ高原にあるスキア帝国の遺跡の前まで転移魔法で運んでもらった。
「くるるーーー」
「お、さっそくいるようだね。ブルン、思いっきり浄化しちゃっていいよ!」
「くるるん!」
ブルンの体が光り、最初の部屋にいたレイスたちが穏やかな顔をして消えていく。
「これなら、楽勝だな」
「そうだね」
遺跡の全ての部屋を浄化していくが、リッチの姿がなかった。
念のため、地下にもぐるとそこにリッチがいた。しかもダークエルフだった。
「オノレ、ヨクモ私ヲ殺シテクレタナ」
リッチは浮竹のことを覚えているようで、いきなり攻撃してきた。
「マジックバリア!」
京楽が、結界を張ってくれた。
「アア憎イ。生キテイル者ガ憎イ」
「ブルン、なんとかなりそうか?」
「くくぅ」
僕じゃ無理かも。
「そうか。じゃあ、俺がなんとかしよう」
「え、でも浮竹は聖属性の魔法はエンチャントくらいしか・・・って、修行でレベルアップした後だしね」
「クリエイトアストラルエンジェル」
「おおおおおん」
人工的な天使が生み出された。
天使は、聖なる剣をもちレイスを串刺しにした。
「「テトラボックス」」
2重詠唱で、無属性の魔法の禁忌を使った。
レイスは、何も言う暇もなく滅びていった。
「な、楽勝だったろ?」
京楽は、ぽかんと口を開けていたが、すぐに正気に戻った。
「天使!?人工的に天使作ってるの!?これ、浮竹の魔法なの?」
「そうだぞ。何かおかしいか?」
「おかしいも何も・・・天使を人工的に作り出す魔法なんて聞いたことがないよ」
「それは、俺のオリジナルの魔法だからな。師匠には、創造は神の魔法だと言われた」
京楽は、天を仰いだ。
すっかり、自分だけが強くなった気でいたのだ。
それと同等か、場合によってはそれ以上の力を浮竹はもっていた。
「ブルン、この地下全体も、俺の人工天使と一緒に浄化してれるか」
「くるる!」
「あおおおん」
「はぁ!?作り出した天使が浄化の魔法使える・・・ああ、僕はもうつっこまないからね」
「ちなみに、人工悪魔を作りだせば闇魔法も使える。その時は人工悪魔を媒介に、俺も闇魔法の禁忌を使えるぞ」
「チートだ」
京楽は、そう言って嘆くのであった。
ブルンと人工天使と一緒に、地下の隅々まで浄化して結界を張ると、人工天使はすーっと消えていった。
「よし、依頼は達成だ。戻るか」
「はいはい。また女帝と謁見だね」
「報酬が楽しみだ。女帝からの依頼なら、白金貨が期待できる」
--------------------------------------------
「そうですか。無事、レイスとリッチを駆除してくれましたか」
「魔石あるんですが、一応鑑定してもらいますか?」
「いいえ、あなたたちの言葉を何より信じましょう。この近衛騎士団長から」
「はい」
「褒美を、ここへ」
近衛騎士は、報酬の金が入った袋を手にやってきた。
「報酬の白金貨10枚に値する、大金貨100万枚です」
「うわぁ、重そう」
「すみません、白金貨は流通量が少ないので大金貨での支払いとなってしまいます」
「いえ、問題ありません」
近衛騎士団長から大金貨の詰まった袋をもらい、それをアイテムポケットに収納していく。
大金貨100万枚なので、けっこうな袋の数になった。
「では、また何かあれば助力をこうかもしれませんが、その時はまたお願いします」
「はい、喜んで」
京楽は思った。金の力って怖いと。
浮竹と京楽がマイホームにつくと、プルンが一匹で遊びにきていた。
「プルププ」
「なんだ、プルン?進化したのか」
「プルプ」
エンペラースライムになった。
プルンにはひげがはえており、頭には小さな王冠があった。
「くくるーーー!!」
弟よ、すごいな!
「プルプウ!」
お兄ちゃん、こんな姿だけど俺はプルンだよ。
「プルン、お前俺たちとブルンの前では、態度が違わないか?」
「プルププ」
当たり前。俺はエンペラースライムだよ?
ブルンは、プルンの真上をばっさばっさと飛ぶと、ちょうど王冠のところ着地した。
「プルプウ」
「くくるーーー」
はまって出られない。
ブルンの声に、プルンが驚く。
その後浮竹と京楽に引っ張ってもらって、なんとかブルンはプルンの王冠の中から外にでられるのであった。
「そういえば、プルンは今林檎いくつ食べてるんだ?」
「プルプ」
「15個!?大食いなぁ」
京楽は、アイテムポケットからりんごを15個並べて、プルンにあげた。
「ブルンも負けてないぞ。近所中のゴミ消化してきらしい」
「くるっくー!」
りんご、おししいかい?
「ププウ」
おしいよ。お兄ちゃんもおいしかった?
「くるくる」
近所中のゴミを消化しといた。食いだめができる体で便利だ。
「プルプウウ」
食いだめできるんだ、すごいね!
『プルン、やっぱりここにきてたのか、探したんだぞ』
『音沙汰もなくいなくならないでね。浮竹がすごく心配してたんだから』
「プルプル」
現れた精霊の浮竹と剣士の京楽に、プルンは堂々と遊びいくとメモを書いたという。
でもそのメモは字がぐちゃぐちゃで読めなかった。
「師匠、少しだけお久しぶりです!」
『やあ、といっても、2週間くらい前に会ったばかりだけどね』
「浮竹の魔法が・・・・・・」
浮竹のオリジナルの魔法でショックを受けている京楽に一言。
『あれは神の魔法だよ。悪用されないように、君が気をつけてあげて』
そう言って、プルンを回収していく。
「プルプププ」
あ、りんごまだ全部食べてない。
「残りは家で帰ってお食べ」
エルフの京楽から、残っていたりんご3つを渡されて、それを体内に保存する。
『じゃあ、俺たちはこれで帰る。プルンを回収にきただけだから』
「師匠、また遊びにきてください」
『うん、またねぇ』
プルンの魔法で、精霊の浮竹と剣士の京楽は空間転移の魔法で帰っていくのであった。
エンシェントエルフとダークエルフ28
エルフの浮竹と京楽は、師匠である剣士の京楽の家を訪ねていた。
エルフの京楽は、ダークエルフとして覚醒したことで闇属性の魔法が使えるようになっているのだが、どうにもうまく制御ができないのだ。
エルフの浮竹もまた、エルフの京楽のもつ魔力が強大なものになったので、自分も修行したいと考えていた。
「たのも~~~」
『何それ。あがりなよ』
剣士の京楽が出てきて、中にいれてくれた。
「くくるーー」
「ププウ」
今回はブルンも一緒だったので、プルンが喜んだ。
「闇の魔法が使えるようになったのはいいけどね、すぐ暴走しそうになるんだ。こつとか教えてもらえないかな」
「おれは、京楽だけが強くなってずるいと思っている。俺にも修行をつけて欲しい」
『Sランクにでもなるの?』
「いや、まだSランクには到達していないと思う。限りなくSランクに近くなりたい」
『事情はわかったよ。じゃあ、隣の家でまた数日暮らしてね。家賃は銀貨2枚でいいから』
「相変わらず安い・・・・・」
銀貨2枚を支払うと、アイテムポケットから食用やらの荷物を置いて、こうして、エルフの京楽と浮竹の修行がまた始まるのであった。
プルンの魔法で、どこかの草原にまで、転移してもらった。
最初に、心を無にして瞑想した。
エルフの京楽は、剣士の京楽に闇魔法の使い方を教えてもらっていた。
『高圧縮したエネルギーを出すつもりで、魔法を唱えてごらん』
「ダークネスストリーム」
『そうそう、いい調子だよ。そのままの状態を維持して』
「くくるーーー!!」
ブルンも、修行に参加していた。
エンジェリングスライムになったことで、火と氷のブレスを吐けるようになっていたのだ。
「ププウ!」
それを、プルンが受け止めて魔法で相殺する。
プルンとブルンで、修行をしていた。
エルフの浮竹は、精霊の浮竹に修行をしてもらっていたのだが。
「こう、ぱっとだしてぎゅんってするかんじだ」
全くもって分からなかったので、剣士の京楽のとエルフの京楽の修行が一段落するまで瞑想し、魔法をバリバリ使っていった。
「クリエイトアストラルエンジェル!」
魔法で人工的な天使を作り出して、一緒に同じ攻撃魔法を唱える。
「「ファイアフェニックス」」
確実に魔力は上がっているようで、的にした岩が炎属性の魔法なのに勢いで吹っ飛んでいた。
『ちょっと待って。そのクリエイトなんとかって魔法は何?』
「なにって、オリジナルの魔法だが?」
『オ、オリジナルの、創造する魔法だって!?』
『へぇ、面白そうな魔法を使うね』
エルフの京楽は、今だに魔法を制御し続けているので、剣士の京楽が様子を見に来てくれたのだ。
『創造の魔法は、神々のものだよ。ほんとに、君といいエルフの僕といい、面白いね』
「俺の使う魔法は、そんなに珍しいものなのか?昔読んだ、古代エルフの神話で出てくる魔法を真似たものなんだが」
『だから、その神話の魔法が神々の魔法なんだ、きっと』
『他にも何が作りだせるの?』
「普通に、適性のある火とか水とか氷とか。あと酸とか毒とか、さっきの疑似天使とか疑似悪魔とか」
『疑似生命体を生み出す魔法・・・・確かに、神の領域だね』
そう言われたが、浮竹はなんのことか分からず、きょとんとしていた。
『ちょっと、大丈夫なのか京楽。神の魔法だぞ』
『悪用はしないようだし、いいんじゃない?』
こそこそとやり取りをする二人を不思議そうに見ながら、浮竹はまた魔法を唱えた。
「クリエイトアストラルデビル!」
今度は、人工的な悪魔が作り出された。
人工的な天使と並んで、3重詠唱を始める。
「「「テトラボックス」」」
草原の向こう側にある山が、消し飛んでいた。
『・・・・・・』
『あらまぁ・・・・』
「まぁまぁの威力だな」
『ねぇ、君本当にAランク冒険者?』
「そうだが?Aランクになって半年だが」
『ねぇ、これSクラスだと思うんだけど、どう思う?』
『どうって、Sランク試験に受かるまではAランク冒険者だからな。おまけにエルフの浮竹は剣の才能もある』
『ほんとにおもしろい子たちだね』
「おーい、そろそろ魔法の維持が限界なんだけど」
放置されていたエルフの京楽がそう言うと、剣士の京楽はすぐにその側に走っていった。
『僕を殺すつもりで、攻撃魔法放ってごらん』
「どうなっても知らないよ?ダークスフィア×10」
『多重詠唱!』
ダークスフィアの魔法を、剣士の京楽は手を突きだすだけで殺していく。
「ブラックホール」
『今度はブラックホール。禁忌だな』
「他重詠唱できるぞ。ブラックホール×5」
『範囲が小さいから、多重詠唱できるだけで、1つ1つの威力は少し小さめなんだね。それにしても・・・・君ら、本当にAランク冒険者?』
剣士の京楽が疑問を抱き始めた。
「え、あ、うん、そうだけど?」
『今時のSランク冒険者の壁って厚いのかな』
「そりゃそうじゃないの?ドラゴンを倒せないようじゃ、Sランク冒険者を名乗れないでしょ?」
『いや、何もドラゴンを倒せなくても・・・まぁいいか。ブラックホールの魔法を10個だした状態で、ひたすら維持してごらん』
「わかったよ」
剣士の京楽の言葉に、エルフの京楽はブラックホールの魔法を10個出して、維持し続けた。
そんなことを繰り返しているうちに、エルフの京楽は暴走させることなく、闇魔法を使えるようになっていた。
「師匠、剣の稽古も頼む!」
『ああ、君は魔法剣士だったね。僕を殺すつもりでかかってきてごらん』
精霊の浮竹の姿が消えて、剣士の京楽の手の中に妖刀が現れる。
「てやあああ!!」
『甘い甘い』
「せい!」
『右ががら空きだよ』
「うへー。無理です、師匠。師匠の本気には勝てません」
『じゃあ、目を閉じて相手するから、適当に打ち込んできて』
目を閉じて相手をしてもらっても、エルフの浮竹は剣士の京楽から一本もとれないでいた。
「魔法もいれていいですか?」
『いいよ:』
「クリエイトビースト」
人工的な狼を魔法で作りだして、それに乗ってエルフの浮竹は空を走り、京楽の首元にミスリル銀の魔剣を突きつけた。
『ハンデあったけど、さっきのは君の勝ち。やるね』
「師匠が目をつぶっていたからです」
こうして、修行の日々は終わっていった。
『君たち、十分Sランクでやっていけるよ?』
「師匠、からかわないでください」
「そうだよ。まだまだSランクは遠い」
『いや、マジなんだけどね・・・・・』
エルフの浮竹と京楽は、それを冗談と受け止めた。
『まぁ、Aランクの実績を積むのもいいことだよ。この調子でがんばって』
「ありうがとうございます、師匠」
「ありがとう」
『ブルンも、プルンと特訓していたもんな?』
「ププウ!」
「くるるーー」
ブルンは神クラスの回復魔法を使えるほかに、火と氷のかなりの威力のブレスが吐けるようになっていた。
今まで、攻撃といえば酸弾くらいだったので、攻撃力が大幅にアップした。
『次のSランク試験っていつ?』
「2年後の4月」
『じゃあ、まるまる2年あるのか』
『その間に力を磨いて、Sランク試験に挑んでごらん。多分、合格するから』
「はい、師匠。ドラゴンキラーを名乗れるようにがんばります!」
「僕も、闇魔法をはじめ、禁忌いろいろ教えてもらったし、受かりそうな気がするよ」
こうして、エルフの浮竹と京楽の修行は終わった。
二人とも魔力量が、Sランクの魔法使い並みになっているなど気づかずに、普通にBランク~Sランクの依頼を受けてこなしていくのであった。
エルフの京楽は、ダークエルフとして覚醒したことで闇属性の魔法が使えるようになっているのだが、どうにもうまく制御ができないのだ。
エルフの浮竹もまた、エルフの京楽のもつ魔力が強大なものになったので、自分も修行したいと考えていた。
「たのも~~~」
『何それ。あがりなよ』
剣士の京楽が出てきて、中にいれてくれた。
「くくるーー」
「ププウ」
今回はブルンも一緒だったので、プルンが喜んだ。
「闇の魔法が使えるようになったのはいいけどね、すぐ暴走しそうになるんだ。こつとか教えてもらえないかな」
「おれは、京楽だけが強くなってずるいと思っている。俺にも修行をつけて欲しい」
『Sランクにでもなるの?』
「いや、まだSランクには到達していないと思う。限りなくSランクに近くなりたい」
『事情はわかったよ。じゃあ、隣の家でまた数日暮らしてね。家賃は銀貨2枚でいいから』
「相変わらず安い・・・・・」
銀貨2枚を支払うと、アイテムポケットから食用やらの荷物を置いて、こうして、エルフの京楽と浮竹の修行がまた始まるのであった。
プルンの魔法で、どこかの草原にまで、転移してもらった。
最初に、心を無にして瞑想した。
エルフの京楽は、剣士の京楽に闇魔法の使い方を教えてもらっていた。
『高圧縮したエネルギーを出すつもりで、魔法を唱えてごらん』
「ダークネスストリーム」
『そうそう、いい調子だよ。そのままの状態を維持して』
「くくるーーー!!」
ブルンも、修行に参加していた。
エンジェリングスライムになったことで、火と氷のブレスを吐けるようになっていたのだ。
「ププウ!」
それを、プルンが受け止めて魔法で相殺する。
プルンとブルンで、修行をしていた。
エルフの浮竹は、精霊の浮竹に修行をしてもらっていたのだが。
「こう、ぱっとだしてぎゅんってするかんじだ」
全くもって分からなかったので、剣士の京楽のとエルフの京楽の修行が一段落するまで瞑想し、魔法をバリバリ使っていった。
「クリエイトアストラルエンジェル!」
魔法で人工的な天使を作り出して、一緒に同じ攻撃魔法を唱える。
「「ファイアフェニックス」」
確実に魔力は上がっているようで、的にした岩が炎属性の魔法なのに勢いで吹っ飛んでいた。
『ちょっと待って。そのクリエイトなんとかって魔法は何?』
「なにって、オリジナルの魔法だが?」
『オ、オリジナルの、創造する魔法だって!?』
『へぇ、面白そうな魔法を使うね』
エルフの京楽は、今だに魔法を制御し続けているので、剣士の京楽が様子を見に来てくれたのだ。
『創造の魔法は、神々のものだよ。ほんとに、君といいエルフの僕といい、面白いね』
「俺の使う魔法は、そんなに珍しいものなのか?昔読んだ、古代エルフの神話で出てくる魔法を真似たものなんだが」
『だから、その神話の魔法が神々の魔法なんだ、きっと』
『他にも何が作りだせるの?』
「普通に、適性のある火とか水とか氷とか。あと酸とか毒とか、さっきの疑似天使とか疑似悪魔とか」
『疑似生命体を生み出す魔法・・・・確かに、神の領域だね』
そう言われたが、浮竹はなんのことか分からず、きょとんとしていた。
『ちょっと、大丈夫なのか京楽。神の魔法だぞ』
『悪用はしないようだし、いいんじゃない?』
こそこそとやり取りをする二人を不思議そうに見ながら、浮竹はまた魔法を唱えた。
「クリエイトアストラルデビル!」
今度は、人工的な悪魔が作り出された。
人工的な天使と並んで、3重詠唱を始める。
「「「テトラボックス」」」
草原の向こう側にある山が、消し飛んでいた。
『・・・・・・』
『あらまぁ・・・・』
「まぁまぁの威力だな」
『ねぇ、君本当にAランク冒険者?』
「そうだが?Aランクになって半年だが」
『ねぇ、これSクラスだと思うんだけど、どう思う?』
『どうって、Sランク試験に受かるまではAランク冒険者だからな。おまけにエルフの浮竹は剣の才能もある』
『ほんとにおもしろい子たちだね』
「おーい、そろそろ魔法の維持が限界なんだけど」
放置されていたエルフの京楽がそう言うと、剣士の京楽はすぐにその側に走っていった。
『僕を殺すつもりで、攻撃魔法放ってごらん』
「どうなっても知らないよ?ダークスフィア×10」
『多重詠唱!』
ダークスフィアの魔法を、剣士の京楽は手を突きだすだけで殺していく。
「ブラックホール」
『今度はブラックホール。禁忌だな』
「他重詠唱できるぞ。ブラックホール×5」
『範囲が小さいから、多重詠唱できるだけで、1つ1つの威力は少し小さめなんだね。それにしても・・・・君ら、本当にAランク冒険者?』
剣士の京楽が疑問を抱き始めた。
「え、あ、うん、そうだけど?」
『今時のSランク冒険者の壁って厚いのかな』
「そりゃそうじゃないの?ドラゴンを倒せないようじゃ、Sランク冒険者を名乗れないでしょ?」
『いや、何もドラゴンを倒せなくても・・・まぁいいか。ブラックホールの魔法を10個だした状態で、ひたすら維持してごらん』
「わかったよ」
剣士の京楽の言葉に、エルフの京楽はブラックホールの魔法を10個出して、維持し続けた。
そんなことを繰り返しているうちに、エルフの京楽は暴走させることなく、闇魔法を使えるようになっていた。
「師匠、剣の稽古も頼む!」
『ああ、君は魔法剣士だったね。僕を殺すつもりでかかってきてごらん』
精霊の浮竹の姿が消えて、剣士の京楽の手の中に妖刀が現れる。
「てやあああ!!」
『甘い甘い』
「せい!」
『右ががら空きだよ』
「うへー。無理です、師匠。師匠の本気には勝てません」
『じゃあ、目を閉じて相手するから、適当に打ち込んできて』
目を閉じて相手をしてもらっても、エルフの浮竹は剣士の京楽から一本もとれないでいた。
「魔法もいれていいですか?」
『いいよ:』
「クリエイトビースト」
人工的な狼を魔法で作りだして、それに乗ってエルフの浮竹は空を走り、京楽の首元にミスリル銀の魔剣を突きつけた。
『ハンデあったけど、さっきのは君の勝ち。やるね』
「師匠が目をつぶっていたからです」
こうして、修行の日々は終わっていった。
『君たち、十分Sランクでやっていけるよ?』
「師匠、からかわないでください」
「そうだよ。まだまだSランクは遠い」
『いや、マジなんだけどね・・・・・』
エルフの浮竹と京楽は、それを冗談と受け止めた。
『まぁ、Aランクの実績を積むのもいいことだよ。この調子でがんばって』
「ありうがとうございます、師匠」
「ありがとう」
『ブルンも、プルンと特訓していたもんな?』
「ププウ!」
「くるるーー」
ブルンは神クラスの回復魔法を使えるほかに、火と氷のかなりの威力のブレスが吐けるようになっていた。
今まで、攻撃といえば酸弾くらいだったので、攻撃力が大幅にアップした。
『次のSランク試験っていつ?』
「2年後の4月」
『じゃあ、まるまる2年あるのか』
『その間に力を磨いて、Sランク試験に挑んでごらん。多分、合格するから』
「はい、師匠。ドラゴンキラーを名乗れるようにがんばります!」
「僕も、闇魔法をはじめ、禁忌いろいろ教えてもらったし、受かりそうな気がするよ」
こうして、エルフの浮竹と京楽の修行は終わった。
二人とも魔力量が、Sランクの魔法使い並みになっているなど気づかずに、普通にBランク~Sランクの依頼を受けてこなしていくのであった。
エンシェントエルフとダークエルフ27
浮竹は、武器屋をのぞいていた。
エルフの森を出る時にもらった、餞別代わりのミスリルの剣が折れてしまったのだ。
一通り見るが、ミスリル製のものはなく、代わりにミスリル銀の魔剣があった。
白金貨10枚。
その値段に、浮竹が唸る。
「うーん。高い。だが、ものはいい・・・」
「命を預ける武器なんだ。出し惜しみしなくていいよ。白金貨なら電撃のボルからもらった千枚の貯金に白金貨50枚が利子でついていたよ」
「よし、このミスリル銀の剣を買おう!」
「お、お目が高いですね。それはさる高名な魔族が使っていた剣で、流れ流れてうちみたいな武器屋にやってきたはいいが、値段が高すぎて誰も買わなかった品です。魔剣としては意識はありませんが、闇属性の魔法が使えて、水火土風の魔法を強化してくれる嬉しいおまけつきです」
「決めた!この魔剣を買う!」
「はい、白金貨10枚になります。分割払いですよね?」
「全額払いだ!」
どんと、白金貨を10枚出すと、店の主人はびびった。
白金貨の本物を見るのは初めてだったのだ。
白金貨1枚で大金貨10万枚に値する。つまりは大金貨100万枚だ。
それをポンと出す浮竹を、どこかの貴族か大金もちと勘違いしたのか、店主は店の奥にあるよくわからない武器を取り出してきた。
「これら、よくわからなくて売れてない品なんですけど、欲しいものありますか?おまけでおつけしますよ」
上客を逃す手はないと、店の主人はサービス精神を出す。
「この杖・・・・・。京楽、持ってみろ」
「ああ、闇の属性の杖だね」
「この杖をもらってもいいか?」
「いいですけど、それ、所持者がみんな死んでいく呪われているという杖ですよ。いろんな属性の魔力を高めてくれますが、正直その杖はやめておいたほうがいいかと」
店の主人は困惑していた。
「闇属性の適正がないと、持ち主の魂を喰う杖だ。幸い僕は、闇魔法を使えるからね」
「闇魔法なんて使えるんですか!」
この世界では珍しかった。
このウッドガルド大陸は人間や亜人種が住む大陸で魔族が少なく、普通闇魔法が使えるのは魔族だ。
「僕はダークエルフで魔族だからね」
「またご冗談を」
「冗談じゃないんだけどなぁ」
店の主人は、最後まで京楽がダークエルフであることを冗談と受け取っていた。
「前のミスリルの剣あったじゃない。鍛冶屋で引き取ってもらえば?」
「そうだな。打ちなおしてもらうことも考えたんだが、ミスリル銀の剣なんてミスリルより貴重だ」
ミスリルの剣でも、白金貨5枚はする。
市場を回って歩き、いつもミスリルの剣を研いでもらっている鍛冶屋までやってきた。
「すまない、このミスリルを買い取ってもらえないだろうか」
「お、浮竹さんじゃないか。あらら、大事なミスリルの剣が折れちまってらぁ。打ち直しはしないでいいんですか?」
「ああ、ミスリル銀の魔剣を買ったんだ」
「ミスリル銀!また、高価なもの買いましたねぇ。Sランク冒険者の装備ですよ、普通」
「金ならあったからな」
「折れた剣先もあるし、もう一度ミスリルの剣として命を吹き込んでやりまさぁ。白金貨2枚でどうですか?」
「ああ、それでいい。引き取ってくれるか?」
「もちろんでさぁ。ミスリルなんて、そうそう打つことができない神の金属だ。喜んで買い取りますよ」
あとは、食べ物の市場を回って、プルンが遊びに来た時用にりんごを50個かって、アイテムポケットにいれる。
その他、1週間分の食料を買った。水は、水魔法で新鮮な水が出せるし、水道も通っている。
「前の杖がちょっとボロボロだったからね。浮竹のお陰で、いい杖が手に入ったよ」
市場に外れにくると、空間転移してマイホームに戻った。
「さて。買い出しも終了したし、冒険者ギルドに行くか」
「そうだね」
「くくる~~」
ブルンは、市場で大量のゴミの処理もとい食事をして、元気いっぱいだった。
「ブルンもくるか?」
「くくーー」
当たり前だよ。
そう言っていた。
冒険者ギルドに二人がやってくると、浮竹宛に手紙がきていた。
「何だ・・・・エルフの森の族長から?」
中身を読んでいって、浮竹の顔色が変わった。
「どうしたの」
「次期族長になるはずだった兄が死んだ。それで、俺に戻ってきて見合いをしろと・・・」
「何それ!今まで散々放置しといて、いきなり!?」
「京楽すまない、きっと嫌な目に合うかもしれないが、俺と一緒にエルフの森までついてきてほしい」
「もちろん行くよ。君の伴侶は僕だからね」
浮竹と京楽は荷造りをして、冒険者ギルドにしばらく依頼を請け負えないことを通達してから、ブルンを師匠の元に預けて、京楽はエルフの森に住んでいたので、空間転移魔法でエルフの森の入り口まできた。
「誰だ!」
「エンシェントエルフの浮竹だ。族長ハオの次男だ。兄のマオが死んだ件で、帰ってきた」
「浮竹様でしたか・・こちらは、まさかダークエルフの・・・」
「そうだよ?僕はダークエルフの京楽。族長ハオが拾って幽閉して、最後に処刑しようとしていたダークエルフだよ」
京楽が一歩前に進み出て、そう言う。
「浮竹様、危険です。こんなダークエルフ、早速処分を」
「俺に命令するな!それに京楽は俺の伴侶だ。すでに儀式は済ませ、正式に伴侶になっている」
「なんてことだ・・・・早く族長のハオ様のところへ知らせを」
しばらくすると、族長のハオがやってきた。
浮竹や他のエルフと同じで、20代後半くらいの若々しい姿で成長が止まり、死を迎えるその時まで若い姿のままなのが、エルフの特徴であった。
ハオは、浮竹の頬を殴った。
浮竹は後ろに吹っ飛ばされて、口の中を切ってしまった。
「この恥さらしが!ダークエルフと契っただと!?」
「そうだよ、父さん。マオ兄さんが死んだからって、俺を次期族長になんてできないだろう?」
「このダークエルフを殺すか、契りの儀式を破棄させてやる!」
族長ハオは、頭に血が上っていて、京楽のことをまともに見ていなかった。
「この僕を殺すだって?できるものなら、やってみるといいよ」
「このダークエルフが!・・・・なんだ、その魔力は!」
京楽は笑った。
「ダークエルフとして覚醒したのさ。昔みたいに幽閉されてた幼い頃の僕はもういない。浮竹の見合いも、浮竹が次期族長になることも認めない」
「ダークエルフが!エルフの森に災いをふりかけにやってきたのか!」
族長のハオは、京楽のもつ強大な魔力を感じながらも、続ける。
「違うよ。僕は浮竹のれっきとした伴侶だ。契りの儀式を済ませて、伴侶になっている。僕を殺して上書きもできないし、浮竹は僕との契りの儀式の破棄をなんて、するはずがない」
「このダークエルフが!拾ってやった恩を仇で返す気か!」
「誰も拾ってなんて頼んでないし、幽閉して処刑しようとまでしたくせに」
ハオは、それ以上何も言えなかった。
「とりあえず、昔住んでいた小屋に数日泊まる。次期族長の件については、俺も案を出そう」
「恥さらしが!」
「その恥さらしを作り出して育てたのは、父さんだ」
「くっ・・・・・」
母親はすでに他界しており、子ができにくいのがエルフの特徴であるので、今から妾を迎えるとかそういう方法はなかった。
昔住んでいた小屋は掃除が行き届いており、兄のマオが使用していたらしかった。
「浮竹、ほんとに僕を連れてきてよかったの?」
「そうじゃないと、俺は捕らわれて今頃お前との契りの契約を破棄させられていたぞ」
「そんなの駄目!絶対駄目!」
京楽が浮竹を抱きしめる。
「ほらな?お前を連れてきて正解だったろう?」
「そうだね。憎しみは全部僕が浴びればいい。浮竹を奪ったのは僕だ」
「そんなことはない。お前を連れ出して逃げだのは、俺の意思だ」
「いつか、エルフの森の住民全てに、分かってもらえるといいね」
「ああ、そうだな」
その小屋で二人は数日を過ごした。
次期族長を誰にするかという会議に、ダークエルフである京楽と共に出席して、京楽は憎しみの視線を浴びせられていたが平気そうで、結局いとこが継ぐことに決まった。
「お前とは、勘当だ。二度と、エルフの森に帰ってくるな」
族長のハオは、浮竹と京楽を追いだして、去って行った。
「追い出されちゃった」
「勘当だってさ」
二人は、手を握り合いながら、エルフの森を後にする。そして、転移魔法でマイホームまで戻ってきた。
『あ、帰ってきた』
精霊の浮竹が、迎えにきてくれた。精霊の浮竹に、ブルンを預けていたのだ。
「師匠も、お元気そうで」
『なんでも、エルフの森の族長問題で呼び出されたそうだね』
「勘当された。京楽と契りの儀式を済ませた知った時の、父の顔といたったら、傑作で」
『大丈夫そうでよかったよ。エルフのボクも大丈夫だよね?』
「当たり前だよ。浮竹に浴びせられる憎しみも全て僕の方へ向いていた。計算通りさ」
「京楽・・・・お前には、本当にすまないと思っている。エルフの森は、閉鎖的だからな」
エルフの浮竹は、エルフの京楽に抱きしめられてキスをされた。
「僕は全然かまわないよ。君と契りの契約を交わしたことも後悔していない」
「くくるーーー!!!」
僕の存在を忘れないで!!
ブルンは、エルフの二人頭の上を飛んでいた。
「ごめんな、ブルン。今回ばかりは、お前を連れていけなかった」
「くるるー」
仕方ないなぁ。
ブルンは、飛び跳ねているプルンの頭の上に乗った。
「ププウ!」
あ、お兄ちゃんだ。
そう言いながら、プルンは体を黄色の喜びの色に変えていた。
穏やかな時間が過ぎていく。
もう、エルフの森には二度と帰れないだろう。
その道を、二人は選んだ。
京楽も、後悔していない。浮竹と出会って逃げ出したことも、契りの契約を交わしたことも。
『じゃあ、僕らは戻るから』
「じゃあ、師匠、また」
『またな』
最後に精霊の浮竹が手を振って、プルンの転移魔法でロスピア王国にある自分の家まで戻っていった。
「久しぶりに、明日冒険者ギルドに行こう。何かいい依頼があるかもしれない」
「そうだね」
エルフの森には、もう帰れない。
分かってはいたが、二人とも心の何処かで寂しいと思うのであった。
エルフの森を出る時にもらった、餞別代わりのミスリルの剣が折れてしまったのだ。
一通り見るが、ミスリル製のものはなく、代わりにミスリル銀の魔剣があった。
白金貨10枚。
その値段に、浮竹が唸る。
「うーん。高い。だが、ものはいい・・・」
「命を預ける武器なんだ。出し惜しみしなくていいよ。白金貨なら電撃のボルからもらった千枚の貯金に白金貨50枚が利子でついていたよ」
「よし、このミスリル銀の剣を買おう!」
「お、お目が高いですね。それはさる高名な魔族が使っていた剣で、流れ流れてうちみたいな武器屋にやってきたはいいが、値段が高すぎて誰も買わなかった品です。魔剣としては意識はありませんが、闇属性の魔法が使えて、水火土風の魔法を強化してくれる嬉しいおまけつきです」
「決めた!この魔剣を買う!」
「はい、白金貨10枚になります。分割払いですよね?」
「全額払いだ!」
どんと、白金貨を10枚出すと、店の主人はびびった。
白金貨の本物を見るのは初めてだったのだ。
白金貨1枚で大金貨10万枚に値する。つまりは大金貨100万枚だ。
それをポンと出す浮竹を、どこかの貴族か大金もちと勘違いしたのか、店主は店の奥にあるよくわからない武器を取り出してきた。
「これら、よくわからなくて売れてない品なんですけど、欲しいものありますか?おまけでおつけしますよ」
上客を逃す手はないと、店の主人はサービス精神を出す。
「この杖・・・・・。京楽、持ってみろ」
「ああ、闇の属性の杖だね」
「この杖をもらってもいいか?」
「いいですけど、それ、所持者がみんな死んでいく呪われているという杖ですよ。いろんな属性の魔力を高めてくれますが、正直その杖はやめておいたほうがいいかと」
店の主人は困惑していた。
「闇属性の適正がないと、持ち主の魂を喰う杖だ。幸い僕は、闇魔法を使えるからね」
「闇魔法なんて使えるんですか!」
この世界では珍しかった。
このウッドガルド大陸は人間や亜人種が住む大陸で魔族が少なく、普通闇魔法が使えるのは魔族だ。
「僕はダークエルフで魔族だからね」
「またご冗談を」
「冗談じゃないんだけどなぁ」
店の主人は、最後まで京楽がダークエルフであることを冗談と受け取っていた。
「前のミスリルの剣あったじゃない。鍛冶屋で引き取ってもらえば?」
「そうだな。打ちなおしてもらうことも考えたんだが、ミスリル銀の剣なんてミスリルより貴重だ」
ミスリルの剣でも、白金貨5枚はする。
市場を回って歩き、いつもミスリルの剣を研いでもらっている鍛冶屋までやってきた。
「すまない、このミスリルを買い取ってもらえないだろうか」
「お、浮竹さんじゃないか。あらら、大事なミスリルの剣が折れちまってらぁ。打ち直しはしないでいいんですか?」
「ああ、ミスリル銀の魔剣を買ったんだ」
「ミスリル銀!また、高価なもの買いましたねぇ。Sランク冒険者の装備ですよ、普通」
「金ならあったからな」
「折れた剣先もあるし、もう一度ミスリルの剣として命を吹き込んでやりまさぁ。白金貨2枚でどうですか?」
「ああ、それでいい。引き取ってくれるか?」
「もちろんでさぁ。ミスリルなんて、そうそう打つことができない神の金属だ。喜んで買い取りますよ」
あとは、食べ物の市場を回って、プルンが遊びに来た時用にりんごを50個かって、アイテムポケットにいれる。
その他、1週間分の食料を買った。水は、水魔法で新鮮な水が出せるし、水道も通っている。
「前の杖がちょっとボロボロだったからね。浮竹のお陰で、いい杖が手に入ったよ」
市場に外れにくると、空間転移してマイホームに戻った。
「さて。買い出しも終了したし、冒険者ギルドに行くか」
「そうだね」
「くくる~~」
ブルンは、市場で大量のゴミの処理もとい食事をして、元気いっぱいだった。
「ブルンもくるか?」
「くくーー」
当たり前だよ。
そう言っていた。
冒険者ギルドに二人がやってくると、浮竹宛に手紙がきていた。
「何だ・・・・エルフの森の族長から?」
中身を読んでいって、浮竹の顔色が変わった。
「どうしたの」
「次期族長になるはずだった兄が死んだ。それで、俺に戻ってきて見合いをしろと・・・」
「何それ!今まで散々放置しといて、いきなり!?」
「京楽すまない、きっと嫌な目に合うかもしれないが、俺と一緒にエルフの森までついてきてほしい」
「もちろん行くよ。君の伴侶は僕だからね」
浮竹と京楽は荷造りをして、冒険者ギルドにしばらく依頼を請け負えないことを通達してから、ブルンを師匠の元に預けて、京楽はエルフの森に住んでいたので、空間転移魔法でエルフの森の入り口まできた。
「誰だ!」
「エンシェントエルフの浮竹だ。族長ハオの次男だ。兄のマオが死んだ件で、帰ってきた」
「浮竹様でしたか・・こちらは、まさかダークエルフの・・・」
「そうだよ?僕はダークエルフの京楽。族長ハオが拾って幽閉して、最後に処刑しようとしていたダークエルフだよ」
京楽が一歩前に進み出て、そう言う。
「浮竹様、危険です。こんなダークエルフ、早速処分を」
「俺に命令するな!それに京楽は俺の伴侶だ。すでに儀式は済ませ、正式に伴侶になっている」
「なんてことだ・・・・早く族長のハオ様のところへ知らせを」
しばらくすると、族長のハオがやってきた。
浮竹や他のエルフと同じで、20代後半くらいの若々しい姿で成長が止まり、死を迎えるその時まで若い姿のままなのが、エルフの特徴であった。
ハオは、浮竹の頬を殴った。
浮竹は後ろに吹っ飛ばされて、口の中を切ってしまった。
「この恥さらしが!ダークエルフと契っただと!?」
「そうだよ、父さん。マオ兄さんが死んだからって、俺を次期族長になんてできないだろう?」
「このダークエルフを殺すか、契りの儀式を破棄させてやる!」
族長ハオは、頭に血が上っていて、京楽のことをまともに見ていなかった。
「この僕を殺すだって?できるものなら、やってみるといいよ」
「このダークエルフが!・・・・なんだ、その魔力は!」
京楽は笑った。
「ダークエルフとして覚醒したのさ。昔みたいに幽閉されてた幼い頃の僕はもういない。浮竹の見合いも、浮竹が次期族長になることも認めない」
「ダークエルフが!エルフの森に災いをふりかけにやってきたのか!」
族長のハオは、京楽のもつ強大な魔力を感じながらも、続ける。
「違うよ。僕は浮竹のれっきとした伴侶だ。契りの儀式を済ませて、伴侶になっている。僕を殺して上書きもできないし、浮竹は僕との契りの儀式の破棄をなんて、するはずがない」
「このダークエルフが!拾ってやった恩を仇で返す気か!」
「誰も拾ってなんて頼んでないし、幽閉して処刑しようとまでしたくせに」
ハオは、それ以上何も言えなかった。
「とりあえず、昔住んでいた小屋に数日泊まる。次期族長の件については、俺も案を出そう」
「恥さらしが!」
「その恥さらしを作り出して育てたのは、父さんだ」
「くっ・・・・・」
母親はすでに他界しており、子ができにくいのがエルフの特徴であるので、今から妾を迎えるとかそういう方法はなかった。
昔住んでいた小屋は掃除が行き届いており、兄のマオが使用していたらしかった。
「浮竹、ほんとに僕を連れてきてよかったの?」
「そうじゃないと、俺は捕らわれて今頃お前との契りの契約を破棄させられていたぞ」
「そんなの駄目!絶対駄目!」
京楽が浮竹を抱きしめる。
「ほらな?お前を連れてきて正解だったろう?」
「そうだね。憎しみは全部僕が浴びればいい。浮竹を奪ったのは僕だ」
「そんなことはない。お前を連れ出して逃げだのは、俺の意思だ」
「いつか、エルフの森の住民全てに、分かってもらえるといいね」
「ああ、そうだな」
その小屋で二人は数日を過ごした。
次期族長を誰にするかという会議に、ダークエルフである京楽と共に出席して、京楽は憎しみの視線を浴びせられていたが平気そうで、結局いとこが継ぐことに決まった。
「お前とは、勘当だ。二度と、エルフの森に帰ってくるな」
族長のハオは、浮竹と京楽を追いだして、去って行った。
「追い出されちゃった」
「勘当だってさ」
二人は、手を握り合いながら、エルフの森を後にする。そして、転移魔法でマイホームまで戻ってきた。
『あ、帰ってきた』
精霊の浮竹が、迎えにきてくれた。精霊の浮竹に、ブルンを預けていたのだ。
「師匠も、お元気そうで」
『なんでも、エルフの森の族長問題で呼び出されたそうだね』
「勘当された。京楽と契りの儀式を済ませた知った時の、父の顔といたったら、傑作で」
『大丈夫そうでよかったよ。エルフのボクも大丈夫だよね?』
「当たり前だよ。浮竹に浴びせられる憎しみも全て僕の方へ向いていた。計算通りさ」
「京楽・・・・お前には、本当にすまないと思っている。エルフの森は、閉鎖的だからな」
エルフの浮竹は、エルフの京楽に抱きしめられてキスをされた。
「僕は全然かまわないよ。君と契りの契約を交わしたことも後悔していない」
「くくるーーー!!!」
僕の存在を忘れないで!!
ブルンは、エルフの二人頭の上を飛んでいた。
「ごめんな、ブルン。今回ばかりは、お前を連れていけなかった」
「くるるー」
仕方ないなぁ。
ブルンは、飛び跳ねているプルンの頭の上に乗った。
「ププウ!」
あ、お兄ちゃんだ。
そう言いながら、プルンは体を黄色の喜びの色に変えていた。
穏やかな時間が過ぎていく。
もう、エルフの森には二度と帰れないだろう。
その道を、二人は選んだ。
京楽も、後悔していない。浮竹と出会って逃げ出したことも、契りの契約を交わしたことも。
『じゃあ、僕らは戻るから』
「じゃあ、師匠、また」
『またな』
最後に精霊の浮竹が手を振って、プルンの転移魔法でロスピア王国にある自分の家まで戻っていった。
「久しぶりに、明日冒険者ギルドに行こう。何かいい依頼があるかもしれない」
「そうだね」
エルフの森には、もう帰れない。
分かってはいたが、二人とも心の何処かで寂しいと思うのであった。
エンシェントエルフとダークエルフ26
「ふふ・・・・このキメラは、そこいらのキメラとは違う」
そのキメラは、足はケルピーの足でできており、尻尾はデッドリーポイズンスネーク、胴はドラゴン、翼はペガサス、頭はダークエルフだった。
「ああああああ!!」
人語を話すキメラは、ある遺跡で、やってくる冒険者たちを次々と殺していった。
Sランク指定の、変異キメラであった。
イアラ帝国のウララ高原にある、スキア帝国の遺跡に出た。
その遺跡は、中でミスリルの鉱石が取れることで有名で、いろんな冒険者たちがやってきては、変異キメラに殺されて、食われた。
地下にはモルモットにされているダークエルフの姿があるのだが、それを浮竹と京楽はまだ知らなかった。
----------------------------------------------------
Sランク指定の依頼であった。
もともとAランク指定で、Bランクの冒険者3人のパーティーが行ったが、いつまで経って帰ってこなくて、急遽Sランクに指定された。
魔の悪いことに、イアラ帝国のSランク冒険者たちは皆違う国の魔物討伐に赴いていた。
一番評価の高い、Aランクの浮竹と京楽が、その変異キメラを退治することになった。
「何か、悪い予感しかしないんだけど。その遺跡って、いろんな冒険者が訪れる遺跡でしょう?その冒険者たちを殺して食ったとなると、僕らの手だけでどうにかなるのかな」
「念のために、師匠を呼んでおいた」
浮竹と京楽は、そのスキア帝国の遺跡の前にいた。
「ここからでも、血の匂いが分かる。かなりの数の人間を食ったみたいだね」
「気を引き締めていこう」
「ライト」
京楽が、光の魔法で光源を出す。
それをずっと維持しながら、中を進んでいく。
中は荒れていて、ところどころに食いちぎられた人の手足が散乱しており、変異キメラの狂暴性が窺われた。
「ぐるるるるる」
「近くにいるよ、気をつけて!」
「しゃあああ!!!」
ダークエルフの顔をもつ変異キメラが、襲い掛かってきた。
「この!ファイアフェニックス!」
「ぎゃおう!」
咄嗟に浮竹が放った上級魔法を顔に受けて、ダークエルフの顔は醜く焼けただれたが、すぐに再生してしまった。
「再生能力が半端じゃないね。浮竹、剣でいける?」
「ああ、アシッドエンチャント!」
錆びないミスリルの剣に、金属まで溶かす酸を付与して、そのドラゴンの胴体らしき鱗に切りかかると、なんとミスリルの剣が折れてしまった。
「なんだと!?」
浮竹は動揺した。
その一瞬の隙を狙って、ダークエルフの頭部が浮竹の腕を噛みちぎる。
「ぐっ」
「セイントヒール!
「すまない、京楽!」
「いいって。それより、魔法で倒すしかないようだね」
「弱点の属性が分からないが、幸い京楽は闇以外の属性を使えるからな」
「助けて・・・・殺して」
ダークエルフの頭部は、そう言って血の涙を流した。
「ゴッドフェンリル!」
「ゴッドファイアフェニックス!!」
それぞれ、氷の魔狼と炎の不死鳥を出した。
まずはフェンリルが氷のブレスを吐いて、ケルピーでできた足を凍らせた。次にフェニックスが、翼を燃やす。
傷を負わせると、再生していく。
「これ、勝てるの?」
「なんとかするしかないだろう。ここで負けたら、俺たちのSランクになるという冒険者の夢も終わりだ!」
「トリプルフレア!」
「バーストロンド!」
じりじりと、獲物を追い詰めるように、変異キメラは二人を追い詰めていく。
「浮竹、地下に通じる小さな階段がある!一度撤退しよう!」
「分かった!サンシャイン!」
変異キメラの目を、光で一時的につぶして、二人は遺跡の地下におりた。
そこでは、目に見るもの無残な光景があった。
ダークエルフたちが、ある男に生きたまま解剖されていた。
「誰だお前は!」
「おや、もうきてしまったのかい。じゃあね」
男は、転移魔法で消えてしまった。
「あああ・・・殺してくれ」
「殺してくれ・・・・」
ダークエルフたちは、もう原型をとどめておらず、変異キメラになりかけていた。
「くっ」
京楽は、胸が疼いた。
「京楽は目を瞑っていろ。同胞たちだろう。俺が片付ける。ゴッドファイアフェニックス!」
浮竹は、炎の魔法で殺してくれと哀願してくるダークエルフのなれの果てを灰にしていった。
ドクン、ドクン、ドクン。
鼓動の音がした。
「どうしたんだ、京楽?」
「あああああ!!!」
京楽は、発狂したかのように叫んで自分の頭を抱え込んだ。
ドロリと、京楽纏う魔力が闇のものになる。
「しっかりしろ、京楽!」
「浮竹、僕は・・・・ああああ!!」
京楽は、遺跡の階段をあがり、変異キメラと対峙する。
「ワールドエンド」
京楽は、使えないはずの闇魔法を使っていた。
それに、変異キメラの体がぐちゃぐちゃになっていく。
「あはははは」
「京楽!」
「アハハハ・・・・浮竹、こっちに来ちゃだめだ」
ワールドエンドは、禁忌の魔法だ。
「僕の力じゃ、もうこの魔法をとめられない」
『ここはスキア帝国の遺跡。ボクの妖刀がいた遺跡とは別だねえ』
「あ、師匠!」
『やあ、エルフのボクに浮竹。エルフのボクは、禁忌を発動したはいいけど、力の使い方を迷っているようだね』
「師匠、京楽を助けてやってくれ」
剣士の京楽は頷くと、手を前に突き出した。
それだけで、ワールドエンドの魔法は終わった。
「ああああ、僕は、僕は!!」
「京楽、しっかりしろ。俺はここにいる」
エルフの京楽は、浮かべた涙を一筋流した。
「僕は、ダークエルフなのに、同胞たちを助けられなかった・・・・」
「それはお前のせいじゃない。手を下したのは俺だし、あんな風になるようにしたのは、影の暗躍者だ」
『それね、名前は藍染っていうの』
「その、藍染とかいうやつが全部悪んだ。京楽は、何も悪くない」
「ああ・・・・感じる。闇の鼓動だ」
『それは闇魔法を習得した証だな』
いつの間にか現れた精霊の浮竹が、エルフの浮竹の肩に手を置いた。
『このまま、彼を抱きしめて』
「分かった」
エルフの浮竹は、優しくエルフの京楽を抱きしめた。
精霊の浮竹のおかげか、エルフの京楽は安らかな顔になり、エルフの浮竹を抱きしめ返した。
「これはなんていうんだろう。魔力の底が見えない。闇の魔法を習得するのって、こんななの?」
『全属性習得なら、そうだろうね。今のキミなら、宮廷魔術師にもなれる』
「そんなものに、なりたくはないよ。僕は、浮竹、君の傍にいたい」
「京楽、落ち着いたか?」
エルフの浮竹がエルフの京楽の顔をのぞきこむ。
「うん。ごめんね。浮竹」
「なんか、京楽、お前の魔力の量、尋常じゃないほどにあがってないか?」
『覚醒したんだろう。ダークエルフとして』
剣士の京楽の言葉に、エルフの京楽が自分の手の平をみた。
「これが覚醒・・・・鼓動が高鳴ったのは感じた」
『覚醒の予兆だね。ワールドエンドは禁忌の中の禁忌。よほどのことがない限り、使わない方がいいよ』
「うん、あんな凄い魔法、まだしばらくの間制御できそうにないよ」
エルフの京楽は、憑き物がとれたようなすっきりした顔をしていた。
「僕はダークエルフだ。自分と向き合おうと思う」
「京楽、無理はしなくていいんだぞ」
「いや、ギルドでも言うよ。僕がダークエルフだってことを」
「でも、自分で魔族だって言うようなものだぞ?」
エルフの京楽は頷く。
「それでも、僕はもう自分を偽るのが嫌になった。いつまでも隠し続けてうじうじするより、告白して受け止めてもらいたい」
「分かった。でも、ギルドで告白する隣には、俺を置いてくれ」
「うん」
「師匠、ありがとうございました」
「ぷぷる~~」
「くくる~~」
『ああ、プルンとブルンを忘れていたね』
プルンは飛び跳ねながら、ブルンは空を飛びながらやってきて、二人の京楽の頭と肩に、それぞれ乗った。
「戻ろうか」
「ああ」
師匠である剣士の京楽と、精霊の浮竹と、エルフの浮竹と一緒に、イアラ帝国の冒険者ギルドにやってきた。精霊の浮竹は妖刀姿だった。
みんな、剣士の京楽を見て怖がっていた。
「Aランクの変異キメラの討伐は終わったよ。なんとか魔石だけは回収できたから」
エルフの京楽が受付嬢に変異キメラの魔石を渡すと、人工的に作られたものだとすぐに分かって、ギルドマスターのキャサリンがやってきた。
「あら、春ちゃんうっきーちゃん・・・・お尻さわりたいところだけど、剣士の春ちゃんに殺されるから我慢するわ」
「報酬金は金貨500枚と、人工魔石の買取り額が金貨100枚になります」
合計で金貨600枚を、エルフの京楽はもらってアイテムポケットにいれた。
「みんな、話があるんだ」
Aランクの京楽に視線が集まる。
「僕は、ウッドエルフで通していたけど、本当はダークエルフなんだ」
「がんばれ、京楽」
エルフの京楽の隣で、エルフの浮竹が心を支えてくれた。
「なんだ、そんなことか。知ってるやつ、けっこういるぞ」
「ダークエルフだらかってなにかあるのか?京楽は京楽じゃないか」
「みんな・・・・・・」
駆け出しの冒険者や京楽とあまり顔見しりでない冒険者は、ダークエルフと聞いて怯えていたけれど、多数の冒険者がそれをさも当たり前のことのように受け取るので、怯える者はいなくなった。
「みんな、僕が怖くないの?」
「浮竹に手を出した時の京楽は怖いが、それ以外の京楽なら怖くない」
京楽は、涙を流した。
「受け入れて、もらえた・・・・・」
「京楽、みんなダークエルフとか種族関係なしに、Aランク冒険者の京楽を見ているんだ」
「浮竹も、ありうがとうね?」
「どういたしまして」
「じゃあ、マイホームに帰ろうか」
「そうしよう」
剣士の京楽は、キャサリンを睨んでいたが、キャサリンが何もしなかったので、ただ黙してエルフの二人の後をついていった。
「ああ、今日は疲れたよ」
『ダークエルフとして覚醒した感想は?』
「いきなりレベルアップしたかんじ」
『そのままだな』
人型をとった精霊の浮竹が、苦笑していた。
「今日は遅いし、泊まっていく?」
『ああ、お言葉に甘えよう。いいな、京楽?』
『僕は別にどっちでもいいよ』
適当に夕食を済ませて、風呂に入り、それぞれゲストルームと寝室で眠った。
「ププルウ!」
ぽよんと、ブルンがはねて、剣士の京楽と精霊の浮竹を起こした。
「くくるーー」
寝室では、ブルンが空を飛んでから体当たりをして、エルフの二人を起こしていた。
「ププルウ」
「くくるー」
「え、何、お腹へった?はいはい、朝ごはんだね」
プルンには林檎を10個、ブルンにはアイテムポケットに入れていたゴミをあげた。
「くくるーー」
「ププウ」
プルンが残した林檎の芯を、ブルンが食べた。
『それにしても驚いたね。エンジェリングスライムとは。このままいくと、アークエンジェリングスライム、セラフィスライムに進化するだろうね』
「そうなのか、師匠」
『うん。天使に近くなるね』
「天使族みたいなものかな?」
この世界には、魔族の対になる、天使族がいる。
真っ白な純白の翼をもち、頭にわかったのある、本物の天使に似た種族であった。
「天使族に近いスライムだなんてすごいな、ブルン」
「くくる!」
そうでしょそうでしょ。
自慢するブルンに、プルンは。
「プププううう」
すごいすごいお兄ちゃん、天使になるんだ。
そう勘違いをおこしていた。
『じゃあ、俺らは戻るな。またなにかあったら、式を飛ばしてくれ:』
精霊の浮竹は、剣士の京楽とプルンと共に、プルンが使った転移魔法で消えてしまった。
「ねぇ、浮竹」
「なんだ?」
「僕、ダークエルフでよかったよ。いっぱい辛い目にもあったけど、君と出会えた」
「俺も、エンシェントエルフでよかった。族長がお前を拾い、幽閉したのは俺と出会うための運命だったんだ」
二人で手を繋ぎ合い、またベッドに横になった。
「愛してるよ、浮竹」
「俺も愛してる、京楽」
触れるだけの口づけをして、二人はまた眠るのであった。
----------------------------------------------------------------------------
「ダークエルフとしての覚醒か。まぁいい、次は・・・・・」
真っ暗な部屋で、藍染は血のような赤いワインを飲み干した。
藍染の後ろでは、水槽の中で奇妙な肉塊が動き続けるだった。
そのキメラは、足はケルピーの足でできており、尻尾はデッドリーポイズンスネーク、胴はドラゴン、翼はペガサス、頭はダークエルフだった。
「ああああああ!!」
人語を話すキメラは、ある遺跡で、やってくる冒険者たちを次々と殺していった。
Sランク指定の、変異キメラであった。
イアラ帝国のウララ高原にある、スキア帝国の遺跡に出た。
その遺跡は、中でミスリルの鉱石が取れることで有名で、いろんな冒険者たちがやってきては、変異キメラに殺されて、食われた。
地下にはモルモットにされているダークエルフの姿があるのだが、それを浮竹と京楽はまだ知らなかった。
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Sランク指定の依頼であった。
もともとAランク指定で、Bランクの冒険者3人のパーティーが行ったが、いつまで経って帰ってこなくて、急遽Sランクに指定された。
魔の悪いことに、イアラ帝国のSランク冒険者たちは皆違う国の魔物討伐に赴いていた。
一番評価の高い、Aランクの浮竹と京楽が、その変異キメラを退治することになった。
「何か、悪い予感しかしないんだけど。その遺跡って、いろんな冒険者が訪れる遺跡でしょう?その冒険者たちを殺して食ったとなると、僕らの手だけでどうにかなるのかな」
「念のために、師匠を呼んでおいた」
浮竹と京楽は、そのスキア帝国の遺跡の前にいた。
「ここからでも、血の匂いが分かる。かなりの数の人間を食ったみたいだね」
「気を引き締めていこう」
「ライト」
京楽が、光の魔法で光源を出す。
それをずっと維持しながら、中を進んでいく。
中は荒れていて、ところどころに食いちぎられた人の手足が散乱しており、変異キメラの狂暴性が窺われた。
「ぐるるるるる」
「近くにいるよ、気をつけて!」
「しゃあああ!!!」
ダークエルフの顔をもつ変異キメラが、襲い掛かってきた。
「この!ファイアフェニックス!」
「ぎゃおう!」
咄嗟に浮竹が放った上級魔法を顔に受けて、ダークエルフの顔は醜く焼けただれたが、すぐに再生してしまった。
「再生能力が半端じゃないね。浮竹、剣でいける?」
「ああ、アシッドエンチャント!」
錆びないミスリルの剣に、金属まで溶かす酸を付与して、そのドラゴンの胴体らしき鱗に切りかかると、なんとミスリルの剣が折れてしまった。
「なんだと!?」
浮竹は動揺した。
その一瞬の隙を狙って、ダークエルフの頭部が浮竹の腕を噛みちぎる。
「ぐっ」
「セイントヒール!
「すまない、京楽!」
「いいって。それより、魔法で倒すしかないようだね」
「弱点の属性が分からないが、幸い京楽は闇以外の属性を使えるからな」
「助けて・・・・殺して」
ダークエルフの頭部は、そう言って血の涙を流した。
「ゴッドフェンリル!」
「ゴッドファイアフェニックス!!」
それぞれ、氷の魔狼と炎の不死鳥を出した。
まずはフェンリルが氷のブレスを吐いて、ケルピーでできた足を凍らせた。次にフェニックスが、翼を燃やす。
傷を負わせると、再生していく。
「これ、勝てるの?」
「なんとかするしかないだろう。ここで負けたら、俺たちのSランクになるという冒険者の夢も終わりだ!」
「トリプルフレア!」
「バーストロンド!」
じりじりと、獲物を追い詰めるように、変異キメラは二人を追い詰めていく。
「浮竹、地下に通じる小さな階段がある!一度撤退しよう!」
「分かった!サンシャイン!」
変異キメラの目を、光で一時的につぶして、二人は遺跡の地下におりた。
そこでは、目に見るもの無残な光景があった。
ダークエルフたちが、ある男に生きたまま解剖されていた。
「誰だお前は!」
「おや、もうきてしまったのかい。じゃあね」
男は、転移魔法で消えてしまった。
「あああ・・・殺してくれ」
「殺してくれ・・・・」
ダークエルフたちは、もう原型をとどめておらず、変異キメラになりかけていた。
「くっ」
京楽は、胸が疼いた。
「京楽は目を瞑っていろ。同胞たちだろう。俺が片付ける。ゴッドファイアフェニックス!」
浮竹は、炎の魔法で殺してくれと哀願してくるダークエルフのなれの果てを灰にしていった。
ドクン、ドクン、ドクン。
鼓動の音がした。
「どうしたんだ、京楽?」
「あああああ!!!」
京楽は、発狂したかのように叫んで自分の頭を抱え込んだ。
ドロリと、京楽纏う魔力が闇のものになる。
「しっかりしろ、京楽!」
「浮竹、僕は・・・・ああああ!!」
京楽は、遺跡の階段をあがり、変異キメラと対峙する。
「ワールドエンド」
京楽は、使えないはずの闇魔法を使っていた。
それに、変異キメラの体がぐちゃぐちゃになっていく。
「あはははは」
「京楽!」
「アハハハ・・・・浮竹、こっちに来ちゃだめだ」
ワールドエンドは、禁忌の魔法だ。
「僕の力じゃ、もうこの魔法をとめられない」
『ここはスキア帝国の遺跡。ボクの妖刀がいた遺跡とは別だねえ』
「あ、師匠!」
『やあ、エルフのボクに浮竹。エルフのボクは、禁忌を発動したはいいけど、力の使い方を迷っているようだね』
「師匠、京楽を助けてやってくれ」
剣士の京楽は頷くと、手を前に突き出した。
それだけで、ワールドエンドの魔法は終わった。
「ああああ、僕は、僕は!!」
「京楽、しっかりしろ。俺はここにいる」
エルフの京楽は、浮かべた涙を一筋流した。
「僕は、ダークエルフなのに、同胞たちを助けられなかった・・・・」
「それはお前のせいじゃない。手を下したのは俺だし、あんな風になるようにしたのは、影の暗躍者だ」
『それね、名前は藍染っていうの』
「その、藍染とかいうやつが全部悪んだ。京楽は、何も悪くない」
「ああ・・・・感じる。闇の鼓動だ」
『それは闇魔法を習得した証だな』
いつの間にか現れた精霊の浮竹が、エルフの浮竹の肩に手を置いた。
『このまま、彼を抱きしめて』
「分かった」
エルフの浮竹は、優しくエルフの京楽を抱きしめた。
精霊の浮竹のおかげか、エルフの京楽は安らかな顔になり、エルフの浮竹を抱きしめ返した。
「これはなんていうんだろう。魔力の底が見えない。闇の魔法を習得するのって、こんななの?」
『全属性習得なら、そうだろうね。今のキミなら、宮廷魔術師にもなれる』
「そんなものに、なりたくはないよ。僕は、浮竹、君の傍にいたい」
「京楽、落ち着いたか?」
エルフの浮竹がエルフの京楽の顔をのぞきこむ。
「うん。ごめんね。浮竹」
「なんか、京楽、お前の魔力の量、尋常じゃないほどにあがってないか?」
『覚醒したんだろう。ダークエルフとして』
剣士の京楽の言葉に、エルフの京楽が自分の手の平をみた。
「これが覚醒・・・・鼓動が高鳴ったのは感じた」
『覚醒の予兆だね。ワールドエンドは禁忌の中の禁忌。よほどのことがない限り、使わない方がいいよ』
「うん、あんな凄い魔法、まだしばらくの間制御できそうにないよ」
エルフの京楽は、憑き物がとれたようなすっきりした顔をしていた。
「僕はダークエルフだ。自分と向き合おうと思う」
「京楽、無理はしなくていいんだぞ」
「いや、ギルドでも言うよ。僕がダークエルフだってことを」
「でも、自分で魔族だって言うようなものだぞ?」
エルフの京楽は頷く。
「それでも、僕はもう自分を偽るのが嫌になった。いつまでも隠し続けてうじうじするより、告白して受け止めてもらいたい」
「分かった。でも、ギルドで告白する隣には、俺を置いてくれ」
「うん」
「師匠、ありがとうございました」
「ぷぷる~~」
「くくる~~」
『ああ、プルンとブルンを忘れていたね』
プルンは飛び跳ねながら、ブルンは空を飛びながらやってきて、二人の京楽の頭と肩に、それぞれ乗った。
「戻ろうか」
「ああ」
師匠である剣士の京楽と、精霊の浮竹と、エルフの浮竹と一緒に、イアラ帝国の冒険者ギルドにやってきた。精霊の浮竹は妖刀姿だった。
みんな、剣士の京楽を見て怖がっていた。
「Aランクの変異キメラの討伐は終わったよ。なんとか魔石だけは回収できたから」
エルフの京楽が受付嬢に変異キメラの魔石を渡すと、人工的に作られたものだとすぐに分かって、ギルドマスターのキャサリンがやってきた。
「あら、春ちゃんうっきーちゃん・・・・お尻さわりたいところだけど、剣士の春ちゃんに殺されるから我慢するわ」
「報酬金は金貨500枚と、人工魔石の買取り額が金貨100枚になります」
合計で金貨600枚を、エルフの京楽はもらってアイテムポケットにいれた。
「みんな、話があるんだ」
Aランクの京楽に視線が集まる。
「僕は、ウッドエルフで通していたけど、本当はダークエルフなんだ」
「がんばれ、京楽」
エルフの京楽の隣で、エルフの浮竹が心を支えてくれた。
「なんだ、そんなことか。知ってるやつ、けっこういるぞ」
「ダークエルフだらかってなにかあるのか?京楽は京楽じゃないか」
「みんな・・・・・・」
駆け出しの冒険者や京楽とあまり顔見しりでない冒険者は、ダークエルフと聞いて怯えていたけれど、多数の冒険者がそれをさも当たり前のことのように受け取るので、怯える者はいなくなった。
「みんな、僕が怖くないの?」
「浮竹に手を出した時の京楽は怖いが、それ以外の京楽なら怖くない」
京楽は、涙を流した。
「受け入れて、もらえた・・・・・」
「京楽、みんなダークエルフとか種族関係なしに、Aランク冒険者の京楽を見ているんだ」
「浮竹も、ありうがとうね?」
「どういたしまして」
「じゃあ、マイホームに帰ろうか」
「そうしよう」
剣士の京楽は、キャサリンを睨んでいたが、キャサリンが何もしなかったので、ただ黙してエルフの二人の後をついていった。
「ああ、今日は疲れたよ」
『ダークエルフとして覚醒した感想は?』
「いきなりレベルアップしたかんじ」
『そのままだな』
人型をとった精霊の浮竹が、苦笑していた。
「今日は遅いし、泊まっていく?」
『ああ、お言葉に甘えよう。いいな、京楽?』
『僕は別にどっちでもいいよ』
適当に夕食を済ませて、風呂に入り、それぞれゲストルームと寝室で眠った。
「ププルウ!」
ぽよんと、ブルンがはねて、剣士の京楽と精霊の浮竹を起こした。
「くくるーー」
寝室では、ブルンが空を飛んでから体当たりをして、エルフの二人を起こしていた。
「ププルウ」
「くくるー」
「え、何、お腹へった?はいはい、朝ごはんだね」
プルンには林檎を10個、ブルンにはアイテムポケットに入れていたゴミをあげた。
「くくるーー」
「ププウ」
プルンが残した林檎の芯を、ブルンが食べた。
『それにしても驚いたね。エンジェリングスライムとは。このままいくと、アークエンジェリングスライム、セラフィスライムに進化するだろうね』
「そうなのか、師匠」
『うん。天使に近くなるね』
「天使族みたいなものかな?」
この世界には、魔族の対になる、天使族がいる。
真っ白な純白の翼をもち、頭にわかったのある、本物の天使に似た種族であった。
「天使族に近いスライムだなんてすごいな、ブルン」
「くくる!」
そうでしょそうでしょ。
自慢するブルンに、プルンは。
「プププううう」
すごいすごいお兄ちゃん、天使になるんだ。
そう勘違いをおこしていた。
『じゃあ、俺らは戻るな。またなにかあったら、式を飛ばしてくれ:』
精霊の浮竹は、剣士の京楽とプルンと共に、プルンが使った転移魔法で消えてしまった。
「ねぇ、浮竹」
「なんだ?」
「僕、ダークエルフでよかったよ。いっぱい辛い目にもあったけど、君と出会えた」
「俺も、エンシェントエルフでよかった。族長がお前を拾い、幽閉したのは俺と出会うための運命だったんだ」
二人で手を繋ぎ合い、またベッドに横になった。
「愛してるよ、浮竹」
「俺も愛してる、京楽」
触れるだけの口づけをして、二人はまた眠るのであった。
----------------------------------------------------------------------------
「ダークエルフとしての覚醒か。まぁいい、次は・・・・・」
真っ暗な部屋で、藍染は血のような赤いワインを飲み干した。
藍染の後ろでは、水槽の中で奇妙な肉塊が動き続けるだった。
エンシェントエルフとダークエルフ25
ケルピー。
水属性の馬のモンスターであった。水魔もしくは水霊の一種ともいわれていた。
そのケルピーが、馬の牧場を襲い、雌馬を妊娠させてしまうのだという。
牧場の主は、ケルピーに誘われて、川で溺死体として見つかった。
牧場が襲われている時点で対処すればよかったのだが、高ランクの冒険者がおらず、Cランクの冒険者が討伐に向かったのだが、ケルピーにやられて半死半生で戻ってきた。
Bランクの依頼であったが、他にぱっとする依頼もなく、Aランクの浮竹と京楽が引き受けることとなった。
「あらん、ケルピー退治?ケルピーはセイレーンみたいに人を惑わせて、食わないけど溺死させることがあるから、注意してねん?♡」
セイレーンの歌声に惑わされて、幸福な夢を見ながら昏睡状態に陥ったことのある浮竹は、顔を引き締めた。
「ケルピーの惑わしには、気をつけるぞ。お互い、注意していこう」
「そうだね」
ケルピーが出るのは、イアラ帝国から少し離れた、ウア王国だった。
ウア王国でも冒険者ギルドはあるが、ケルピーの退治を失敗して死人を出しており、急遽イアラ帝国にも依頼書が届いたのだ。
「ウア王国にはいったことないからね。帰りは転移魔法で帰れるけど、行きは辛抱してね」
「ああ、分かった」
「くくるーー!」
今回も、ブルンと一緒だった。
3日かけてウア王国まで馬車で到着すると、そこからまた場所を乗りついで、半日かけてそのケルピーが出僕するという馬の牧場までやってきた。
「ああ、冒険者の方ですか。私は今この牧場を管理している者です。兄がケルピーに殺されて、それからも雨の日になるとケルピーが牧場に現れて、雌馬を襲うんです」
「確か、天気予報では明日が雨だったね」
「はい。明日、ケルピーが出没すると思いますので、今夜は宿の代わりに我が家をご使用ください」
ケルピーに溺死させられた牧場主の弟だという人物に、一晩の宿を借りることになった。
「どう思う、浮竹?」
「ケルピーは、普通ケルピー同士で結ばれて仔馬を産む。メスが乱獲されて数が激減しているのかもしれないな」
「ケルピーは食用にもなるからね。雌馬のほうがうまいってされてあるから、乱獲されたのかもね」
実は、影の暗躍者がケルピーのメスを大量に乱獲して、研究素材にしているのだが、その事実を浮竹と京楽は知ることはなかった。
翌日は大雨だった。
近くの川が増水して、氾濫の恐れがあったが、浮竹と京楽は仮眠をとって、モンスターが出るであろう夜に備えた。
「HIHINNN」
「出た、ケルピーだ!」
馬の鳴き声が外から聞こえてきて、急いで浮竹と京楽は厩(うまや)のある方へ向かった。
厩では、雌馬が怯えていた。
ケルピーの数は全部で15匹。
思っていたよりも多かった。
3~4匹を想像していた。牧場主の話でも、現れたのは3匹程度と言っていたので、その数の多さに、まずは魔法で足止めをする。
「エターナルアイシクルワールド!」
地面を凍らせて、ケルピーの足も凍らせた。
ケルピーは水の玉を使って、こっちに射撃してくる。
もしくは、水の玉で顔を包み込んで、溺死させようとしてきた。
「HIHIHINN」
「ヒヒーン」
「なんだ?」
浮竹と京楽は、水の玉を火の魔法で相殺させながら、苦しみ出した普通の雌馬をみた。
その雌馬の腹から、仔馬のケルピーが腹を食い破って出てきた。
「この子を、迎えにきたんだろう」
仔馬は、すぐにケルピーの元にいき、水の散弾を飛ばしてきた。
「フレアサークル!フレイムロンド!ファイアフェニックス!」
「HIHIHINN!!」
ケルピーたちは、炎の魔法で焼かれて、身に纏っている水分を蒸発させられて、倒れていく。
「炎の魔法が有効だよ」
「そんなの、始めから知ってる。産まれてきたばかりで悪いが、あの世にいってもらおう。エターナルゴッドフェニックス!!」
炎の高位呪文を浮竹が放つ。
ケルピーたちは、浮竹と京楽を溺死させるために人を操る鳴き声を出した。
「HIHINN~~」
京楽が、ケルピーの元に行こうとするのを、浮竹が剣の鞘を頭に投げて、正気づかせた。
「はっ、僕は!?」
「ケルピーの誘いの鳴き声に惑わされていた」
「ありがとう、浮竹。お陰で正気に戻ったよ。たんこぶできたけど」
「溺死に比べれば、たんこぶの100や200、軽いもんだろ」
京楽が正気に戻る頃には、ケルピーたち浮竹の魔法で焼かれて倒れていた。生まれたばかりのケルピーの仔馬も死んでいた。
「かわいそうだが、こうするしかない。雌馬のほうは?」
「だめだよ。腹を食いう破られていて、即死だよ」
「そうか・・・・・」
他の雌馬たちは無事だった。牡馬ももちろんのこと、仔馬も元気だった。
「ヒヒーン」
「ブルルル」
この騒ぎで起き出した馬たちが、神経過敏になっていた。
牧場主を起こして、ケルピーの退治が済んだことを知らせると、一頭の白馬の牡馬を連れてきた。
「この子、馬車を引くのにいいんです。ただ、その馬車が事故にあちゃって、返品されちゃって。よければ、連れていってやってください」
「家で飼うことはできないから、冒険者ギルドの厩で暮らすことになるけど、いいの?」
「放牧すると、他の牡馬にいじめられるんです。雌馬もよりつかなくて。冒険者ギルドの厩ってことは、しっかりしたものなのでしょう?」
「ああ、まぁな。馬車の貸し出しも行っているから、専門の職の人もいる」
「じゃあ連れて行ってやってください」
「ケルピーの死体はどうするの?」
「馬肉して、近所に差し入れます」
「ケルピーは確かに食用にもなるしな。分かった、じゃあ死体はこのままにして・・・・」
「解体、手伝ってくださあああいい」
「冒険者ギルドの解体工房の人を呼んだほうがよさそうだね。ちょっと、呼んでくるよ」
京楽は空間転移の魔法でイアラ帝国の冒険者ギルドにいくと、解体工房にいた解体作業人を連れて戻ってきた。
「この15体のケルピーの解体を頼む」
「出張サービスなんて久しぶりですね。任せてください。食用にするんですね?」
「ああ、頼む」
「お願いします」
浮竹と京楽も手伝たが、浮竹と京楽はそれぞれ1匹ずつ解体している間に、解体作業人は13匹と仔馬のケルピーの解体を終えてしまった。
「食肉用なら、金貨40枚で買取りますが」
「どうする。ここは、牧場主であるあなたの判断にゆだねる」
「あ、じゃあ買いとってください。20枚をこちらに、残りの20枚を冒険者さんにあげてください」
「毎度あり!」
解体作業人は、アイテムポケットにケルピーの肉を入れて、金貨20枚をそれぞれ、牧場主と浮竹と京楽に渡した。
「くくるーー!」
ブルンが、解体して余った骨やいらない部位を、ごみとして溶かして食べていった。
「じゃあ、僕たちは帰るね?」
「あ、本当にありがとうございました。ケルピーの子を宿した雌馬には、流産してもらおうと思います」
「ああ、がんばってくれ」
ブルンを頭の上に乗せて、浮竹は京楽と手をつなぐ。京楽は白馬に手を置く。解体作業人も、白馬に手を置いた。
一人分の転移魔法で、手を繋いでいたり触れていたりすると、移動できるのだ。全員に空間移動の魔法を使うのは魔力がいる。
冒険者ギルドに戻ると、キャサリンが怒っていた。
「もう、勝手に解体工房の解体作業人を連れ出さないでちょうだい!」
「ああ、ごめんね。青髭オカマ」
「ブス」
「何か言ったかしら?」
浮竹の悪口に、ポキポキと関節を鳴らすオカマのギルドマスターは、ケルピーの新鮮が肉が手に入ったので酒場で馬刺しを食べようという声につられて、行ってしまった。
「浮竹、いくら本当のことだからって、ブスはまずいよ」
「ブスにブスと言って何が悪い」
浮竹はけっこう毒舌だった。
ギルドの厩に、白馬を連れて行き、餌や水やり、ブラッシングとか蹄の手入れとかもろもろを頼みこむ。特別にかまってやってくれと話をつけて、金貨5枚を厩の職人に払った。
冒険者ギルドに戻ると、ブルンの様子がおかしくなった。
「くくるー・・・・・・」
「ブルン?具合でも悪いの?」
「くくう・・・」
ぱっと、眩しい光が満ちた。
その中心には、ブルンがいた。
「存在の進化か!ケルピーの骨とかを食べたんで、LVUPしたんだ」
「エンジェリングスライムかい?」
「くくるーー!!」
ブルンは、以前と大きさが変わらないが、頭の上の輪っかが光っており、翼が背中にはえていた。
ぱたぱたと、飛んだ。
まだぎこちなく、天井にぶつかって落っこちてきた。
「ブルン、大丈夫?」
「くるるー!!」
「大丈夫みたいだな。魔石を買い取ってもらって、報酬金を受け取って帰ろう」
ケルピー15匹+ケルピーの仔馬の魔石で金貨25枚。報酬金はBランクの依頼であったので、金貨150枚だった。
「まぁまぁだね」
「うん、まぁまぁだ」
Bランクの依頼としては、普通なほうだった。
「僕らも、久しぶりに酒場で食事していかない?ケルピーの解体してたら、馬刺しが食べたくなちゃった」
「仕方ないな、京楽は」
二人は、酒場で新鮮な馬刺しを食べて、酒を飲むのだった。
----------------------------------------------------------
「ケルピーのメスを使った実験は終わりだ」
ワイングラスに真っ赤な血のようなワインを注ぎ込み、影の暗躍者はワインを飲み干した。
「さて、次は何を実験に使おうか?」
男の背後では、水槽の中に光る物体が蠢いていた。
地下に降りる。
ケルピーのメスが、黄金の試験官の中に並んでいた。
その黄金の液体を捨てると、試験官の中でケルピーのメスたちは声もなく液体化して崩れていくのだった。
水属性の馬のモンスターであった。水魔もしくは水霊の一種ともいわれていた。
そのケルピーが、馬の牧場を襲い、雌馬を妊娠させてしまうのだという。
牧場の主は、ケルピーに誘われて、川で溺死体として見つかった。
牧場が襲われている時点で対処すればよかったのだが、高ランクの冒険者がおらず、Cランクの冒険者が討伐に向かったのだが、ケルピーにやられて半死半生で戻ってきた。
Bランクの依頼であったが、他にぱっとする依頼もなく、Aランクの浮竹と京楽が引き受けることとなった。
「あらん、ケルピー退治?ケルピーはセイレーンみたいに人を惑わせて、食わないけど溺死させることがあるから、注意してねん?♡」
セイレーンの歌声に惑わされて、幸福な夢を見ながら昏睡状態に陥ったことのある浮竹は、顔を引き締めた。
「ケルピーの惑わしには、気をつけるぞ。お互い、注意していこう」
「そうだね」
ケルピーが出るのは、イアラ帝国から少し離れた、ウア王国だった。
ウア王国でも冒険者ギルドはあるが、ケルピーの退治を失敗して死人を出しており、急遽イアラ帝国にも依頼書が届いたのだ。
「ウア王国にはいったことないからね。帰りは転移魔法で帰れるけど、行きは辛抱してね」
「ああ、分かった」
「くくるーー!」
今回も、ブルンと一緒だった。
3日かけてウア王国まで馬車で到着すると、そこからまた場所を乗りついで、半日かけてそのケルピーが出僕するという馬の牧場までやってきた。
「ああ、冒険者の方ですか。私は今この牧場を管理している者です。兄がケルピーに殺されて、それからも雨の日になるとケルピーが牧場に現れて、雌馬を襲うんです」
「確か、天気予報では明日が雨だったね」
「はい。明日、ケルピーが出没すると思いますので、今夜は宿の代わりに我が家をご使用ください」
ケルピーに溺死させられた牧場主の弟だという人物に、一晩の宿を借りることになった。
「どう思う、浮竹?」
「ケルピーは、普通ケルピー同士で結ばれて仔馬を産む。メスが乱獲されて数が激減しているのかもしれないな」
「ケルピーは食用にもなるからね。雌馬のほうがうまいってされてあるから、乱獲されたのかもね」
実は、影の暗躍者がケルピーのメスを大量に乱獲して、研究素材にしているのだが、その事実を浮竹と京楽は知ることはなかった。
翌日は大雨だった。
近くの川が増水して、氾濫の恐れがあったが、浮竹と京楽は仮眠をとって、モンスターが出るであろう夜に備えた。
「HIHINNN」
「出た、ケルピーだ!」
馬の鳴き声が外から聞こえてきて、急いで浮竹と京楽は厩(うまや)のある方へ向かった。
厩では、雌馬が怯えていた。
ケルピーの数は全部で15匹。
思っていたよりも多かった。
3~4匹を想像していた。牧場主の話でも、現れたのは3匹程度と言っていたので、その数の多さに、まずは魔法で足止めをする。
「エターナルアイシクルワールド!」
地面を凍らせて、ケルピーの足も凍らせた。
ケルピーは水の玉を使って、こっちに射撃してくる。
もしくは、水の玉で顔を包み込んで、溺死させようとしてきた。
「HIHIHINN」
「ヒヒーン」
「なんだ?」
浮竹と京楽は、水の玉を火の魔法で相殺させながら、苦しみ出した普通の雌馬をみた。
その雌馬の腹から、仔馬のケルピーが腹を食い破って出てきた。
「この子を、迎えにきたんだろう」
仔馬は、すぐにケルピーの元にいき、水の散弾を飛ばしてきた。
「フレアサークル!フレイムロンド!ファイアフェニックス!」
「HIHIHINN!!」
ケルピーたちは、炎の魔法で焼かれて、身に纏っている水分を蒸発させられて、倒れていく。
「炎の魔法が有効だよ」
「そんなの、始めから知ってる。産まれてきたばかりで悪いが、あの世にいってもらおう。エターナルゴッドフェニックス!!」
炎の高位呪文を浮竹が放つ。
ケルピーたちは、浮竹と京楽を溺死させるために人を操る鳴き声を出した。
「HIHINN~~」
京楽が、ケルピーの元に行こうとするのを、浮竹が剣の鞘を頭に投げて、正気づかせた。
「はっ、僕は!?」
「ケルピーの誘いの鳴き声に惑わされていた」
「ありがとう、浮竹。お陰で正気に戻ったよ。たんこぶできたけど」
「溺死に比べれば、たんこぶの100や200、軽いもんだろ」
京楽が正気に戻る頃には、ケルピーたち浮竹の魔法で焼かれて倒れていた。生まれたばかりのケルピーの仔馬も死んでいた。
「かわいそうだが、こうするしかない。雌馬のほうは?」
「だめだよ。腹を食いう破られていて、即死だよ」
「そうか・・・・・」
他の雌馬たちは無事だった。牡馬ももちろんのこと、仔馬も元気だった。
「ヒヒーン」
「ブルルル」
この騒ぎで起き出した馬たちが、神経過敏になっていた。
牧場主を起こして、ケルピーの退治が済んだことを知らせると、一頭の白馬の牡馬を連れてきた。
「この子、馬車を引くのにいいんです。ただ、その馬車が事故にあちゃって、返品されちゃって。よければ、連れていってやってください」
「家で飼うことはできないから、冒険者ギルドの厩で暮らすことになるけど、いいの?」
「放牧すると、他の牡馬にいじめられるんです。雌馬もよりつかなくて。冒険者ギルドの厩ってことは、しっかりしたものなのでしょう?」
「ああ、まぁな。馬車の貸し出しも行っているから、専門の職の人もいる」
「じゃあ連れて行ってやってください」
「ケルピーの死体はどうするの?」
「馬肉して、近所に差し入れます」
「ケルピーは確かに食用にもなるしな。分かった、じゃあ死体はこのままにして・・・・」
「解体、手伝ってくださあああいい」
「冒険者ギルドの解体工房の人を呼んだほうがよさそうだね。ちょっと、呼んでくるよ」
京楽は空間転移の魔法でイアラ帝国の冒険者ギルドにいくと、解体工房にいた解体作業人を連れて戻ってきた。
「この15体のケルピーの解体を頼む」
「出張サービスなんて久しぶりですね。任せてください。食用にするんですね?」
「ああ、頼む」
「お願いします」
浮竹と京楽も手伝たが、浮竹と京楽はそれぞれ1匹ずつ解体している間に、解体作業人は13匹と仔馬のケルピーの解体を終えてしまった。
「食肉用なら、金貨40枚で買取りますが」
「どうする。ここは、牧場主であるあなたの判断にゆだねる」
「あ、じゃあ買いとってください。20枚をこちらに、残りの20枚を冒険者さんにあげてください」
「毎度あり!」
解体作業人は、アイテムポケットにケルピーの肉を入れて、金貨20枚をそれぞれ、牧場主と浮竹と京楽に渡した。
「くくるーー!」
ブルンが、解体して余った骨やいらない部位を、ごみとして溶かして食べていった。
「じゃあ、僕たちは帰るね?」
「あ、本当にありがとうございました。ケルピーの子を宿した雌馬には、流産してもらおうと思います」
「ああ、がんばってくれ」
ブルンを頭の上に乗せて、浮竹は京楽と手をつなぐ。京楽は白馬に手を置く。解体作業人も、白馬に手を置いた。
一人分の転移魔法で、手を繋いでいたり触れていたりすると、移動できるのだ。全員に空間移動の魔法を使うのは魔力がいる。
冒険者ギルドに戻ると、キャサリンが怒っていた。
「もう、勝手に解体工房の解体作業人を連れ出さないでちょうだい!」
「ああ、ごめんね。青髭オカマ」
「ブス」
「何か言ったかしら?」
浮竹の悪口に、ポキポキと関節を鳴らすオカマのギルドマスターは、ケルピーの新鮮が肉が手に入ったので酒場で馬刺しを食べようという声につられて、行ってしまった。
「浮竹、いくら本当のことだからって、ブスはまずいよ」
「ブスにブスと言って何が悪い」
浮竹はけっこう毒舌だった。
ギルドの厩に、白馬を連れて行き、餌や水やり、ブラッシングとか蹄の手入れとかもろもろを頼みこむ。特別にかまってやってくれと話をつけて、金貨5枚を厩の職人に払った。
冒険者ギルドに戻ると、ブルンの様子がおかしくなった。
「くくるー・・・・・・」
「ブルン?具合でも悪いの?」
「くくう・・・」
ぱっと、眩しい光が満ちた。
その中心には、ブルンがいた。
「存在の進化か!ケルピーの骨とかを食べたんで、LVUPしたんだ」
「エンジェリングスライムかい?」
「くくるーー!!」
ブルンは、以前と大きさが変わらないが、頭の上の輪っかが光っており、翼が背中にはえていた。
ぱたぱたと、飛んだ。
まだぎこちなく、天井にぶつかって落っこちてきた。
「ブルン、大丈夫?」
「くるるー!!」
「大丈夫みたいだな。魔石を買い取ってもらって、報酬金を受け取って帰ろう」
ケルピー15匹+ケルピーの仔馬の魔石で金貨25枚。報酬金はBランクの依頼であったので、金貨150枚だった。
「まぁまぁだね」
「うん、まぁまぁだ」
Bランクの依頼としては、普通なほうだった。
「僕らも、久しぶりに酒場で食事していかない?ケルピーの解体してたら、馬刺しが食べたくなちゃった」
「仕方ないな、京楽は」
二人は、酒場で新鮮な馬刺しを食べて、酒を飲むのだった。
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「ケルピーのメスを使った実験は終わりだ」
ワイングラスに真っ赤な血のようなワインを注ぎ込み、影の暗躍者はワインを飲み干した。
「さて、次は何を実験に使おうか?」
男の背後では、水槽の中に光る物体が蠢いていた。
地下に降りる。
ケルピーのメスが、黄金の試験官の中に並んでいた。
その黄金の液体を捨てると、試験官の中でケルピーのメスたちは声もなく液体化して崩れていくのだった。
エンシェントエルフとダークエルフ24
「水龍神の呪い?」
「ああ。なんでも、イリア帝国の片隅にある田舎村に、水龍神が住み着いているっていうんだ。その呪いを解いてほしいという、あやふやな依頼だ」
「ウォータードラゴンなら分かるけど、東洋の龍?」
「はっきりとは分からない」
「引き受けるの?」
京楽の言葉に、浮竹は首を傾げる。
「迷っている。本当に水龍神が出るなら、勝ち目はないかもしれない。でも、姿を見せないということは、人語をしゃべるモンスターが水龍神を偽っているのかもしれない。
水龍神の呪いは、ある日水龍神の住む湖の水を飲んだら、全身に発疹ができて少し熱が出る、それが村中に感染してしまって、今は封鎖されている。疫病の可能性があると検査されたんだが、どの病気でもないらしい。
ちなみに水龍神は月に女性を一人生贄によこせと言ってくるんだ。あと貢ぎものとして、毎週肉をたくさん供えるそうだ」
「ますますきな臭いね。それ、絶対違うモンスターの仕業だよ」
「引き受けたいんだが、いいか?」
「うん。生贄を欲するなんて、討伐に値する。引き受けよう」
Aランクの依頼だった。
ひっぺがして、受付嬢に依頼書を渡し、受理してもらう。
そのまま、行ったことのある一番近い町に空間転移して、そこから馬車で依頼の出ている田舎のボエナ村を目指した。
ブルンにも、念のためについてきてもらった。
「くくるーー」
ブルンは旅行だと思っているようで、はしゃいでいた。
「ブルン、今回は旅行じゃないぞ。多分だけど、水龍神になりすましているモンスターの討伐だ」
「くくるー!」
「え、任せろって?ブルンは頼むしいねぇ」
浮竹と京楽は、馬車の上でひと時の平和を楽しむのであった。
-------------------------------------------
村に到着すると、村の出入り口は封鎖されており、帝国の兵士が見張りをしていた。
「誰だ!」
「冒険者ギルドの者だよ」
「これは失礼した。村長の家まで案内しよう」
浮竹と京楽とブルンは、村の中央になるやや大きめの家に入った。
「おお、冒険者の方か。どうか、水龍神の呪いを解いて欲しい・・・・・・」
「くくるーー!!」
ヒーリングスライムのブルンは、全身に発疹のできていた少し熱のある村長に、ヒールの魔法をかけた。
「おお、体が元に・・・・」
ブルンの魔法は、神に匹敵するヒールだ。
病気でも癒してしまう。
ただ、全ての病気が癒せるわけではない。症状を緩和するくらいか回復方向にもっていくことはできた。
「ブルンで治るってことは、病気の可能性もあるけど、一番疑わしいのは毒だね。村長、見張りをしている兵士たちはどこで水を飲んでいる?」
「はぁ、湧き水のある裏山のほうの水を飲んでいます」
「ますます毒が疑わしい」
村長は、泣いて浮竹と京楽に縋りついてきた。
「水龍神の呪いを、どうか癒してください。そして、あさって生贄になる予定だった村の少女を助けてください!」
まずは、村人を全員集めて、ブルン魔法の効果範囲を広げてもらい、全員に一斉にヒールをかけた。
「ああ、発疹が・・」
「熱も下がったぞ!」
「湖の水は、飲まないようにしてください!」
浮竹がそういうと、人々は困惑した。
「でも、この村に井戸がないんです」
「浦山の湧き水を使ってください」
「わかりました。みんな、聞いたであろう。この方たちが、水龍神の呪いを解いてくださり、水龍神の討伐もおこなってくださるそうだ!」
わあああと、皆喜びあった。
「ねぇ、大丈夫、浮竹?」
「俺の感が当たっていたら、大丈夫だ」
そのまま、湖の水を調べると、微量だが毒が発見された。確かに呪いによるものだった。
少し飲むだけならいいが、ずっと飲んでいると発疹や発熱をする毒であった。毒自体は弱いが、村人たちが今後も湖の水を使えるように、ブルンにお願いして、ヒールの対象を湖に向けた。
湖全体が光り輝き、毒が消えた。
「おお、湖が、元の美しい輝きを・・・・・」
「ありがとうございます!あなたたちは村の恩人です。どうか、このまま水龍神を退治してください!」
その日は村長の家に泊まり、生贄になる少女の変わりに、浮竹が女の衣をいつもの冒険者の服の上からまとい、船に乗せられて、水龍神が住んでいるという、滝のところまでやってきた。
滾の裏側は洞窟になっており、そこに入るように促されて、浮竹だけでなく、空を飛んでついてきていた京楽も、洞窟の天井すれすれを飛んで、洞窟の中に入った。
「よくやってきた。我は水龍神である。さぁ、そのナイフで自分の首を切るのだ。汝の生命の雫はこの水龍神に宿り、村を守るであろう」
洞窟の中は、深い霧に覆われていた。
霧の奥で、うねる水龍神らしき影が見えた。
「さぁ、我が生贄となれ。汝の血肉は我のものとなり、この村を永遠に繁栄させるであろう」
「ウィンドトルネード!」
京楽が、風の魔法で霧を追い払うと、水龍神の形をした人間が作ったであろう木のはりぼてがあった。
「何をする!神の怒りが怖くないのか!」
また、霧が出てきた。
浮竹は、言われた通りに首をナイフで切ったふりをした。
モンスターは血の匂いに敏感なので、かわいそうだがかわりに息の根を止めていた鶏の血を浴びて、地面に滴らせた。
「うむ、それでよい」
霧の中から現れのは、なんとマンティコアであった。
「くくく、美味そうな女だ」
「そこまでだよ!」
「誰だ!」
洞窟の天井すれすれを飛んでいた京楽が、マンティコアを睨みつけて、浮竹の傍に降りてきて合図する。
浮竹は、隠しもっていたミスリルの剣でマンティコアのライオンの胴体を突き刺した。
「ぐおおおおお!!」
「マンティコア如きが水龍神の真似ねぇ。グラビティ・ゼロ!」
京楽は重力の魔法でマンティコアを押しつぶしにかかる。
「ぬおおおおおお!あの方に、力をもらったのだ!」
ぐぐぐぐっと、週十倍の重量が降っているのに、立ち上がる。
「ウォータースパイラル!クリエイトデッドリーボイズン!!」
水の槍に猛毒を付与して、浮竹はマンティコアを貫いた。
「があああ、毒だと!ぬああああ!!!」
ビクンビクンと痙攣して、マンティコアは動かなくなった。
「ブルン、この毒を浄化してくれ」
「くるるーー」
ブルンに、浮竹が作り出した猛毒中の猛毒を、ただの水に戻してもらった。
「湖にでも流れていくと、魚が死んで水を飲んだ人間も死ぬからな」
「うわ。浮竹また凄い毒を作ったんだね」
「エインの毒。一滴で死ぬ人間の数は数百万。もしも湖に流れたら、生態系が確実に狂う」
「うへー。エインの毒かい。またやっかいな毒を・・・」
かつて、賢者の中の賢者と呼ばれたエインの作った毒で、その毒で王国の民を死滅させてしまい、エインは自害した。
エインの毒と呼ばれ、原液はもうこの世界には存在しない。
薄めた毒が、とある王国の宝物庫に眠っているくらいだ。
「浮竹、これまた死体の毒も浄化するの?」
「もちろんだ。ブルン、頼む」
「くくう」
ブルンに浄化してもらい、マンティコアを解体して魔石だけを取り出した。
霧は、魔法を使って出していたらしい。
洞窟の奥に進むと、女性と子供のものらしい遺骨が3体分確認できて、きちんと埋葬するためにアイテムポケットに入れた。
マンティコアの体もアイテムポケットに入れる。素材にはならないが、村人たちに説明するためにもって帰ることにした。
「それにしてもこの水龍神の形をしたはりぼて、明らかに人の力によるものだね」
「そうだな。裏で暗躍しているという、あいつの仕業かもしれない」
全ギルドで指名手配されている、名も無き暗躍者のことであった。
「とりあえず、村に戻ろう」
「うん」
-------------------------------------------------------------------
「そうだったのですか・・・アンティコアが、水龍神のふりを・・・・」
「洞窟の奥で、3体分の遺骨を見つけた。ここに出す」
アイテムポケットから、遺骨と遺品らしきものとボロボロの服をだした。
「いやああ、ヨハン!」
「あああ、ミレーネ!」
「アリス・・・・・」
肉親であった者たちは、遺骨や遺品、ボロボロの服を手に泣きだすのであった。
「それにしても、何故王国軍の兵士は水龍神の退治をしてくれなかったんだ?」
「それが、上の者からそう命令されていると言われて・・・」
村人と一緒に集まった兵士たちは、ある男からそう言われたのだが、それが女帝の言葉であると信じ切っていた、今考えたらおかしいと、言い出した。
「これも、影の暗躍者のせいかな」
「多分な」
こうやって水龍神の呪いを解くクエストは終わった。
村人たちから、金はないが、たくさんの食品をもらった。
イアラ帝国の帝都アスランの冒険者ギルドで、マンティコアの魔石を鑑定してもらうと、マンティコアそのものが人工的に作られたモンスターだと発覚した。
オカマのキャサリンのギルドマスターに呼ばれて、今回のマンティコアの件は他言無用だと言われた。
「全く、ギルドもギルドで、どうして隠すのかな~?」
「無用な混乱を避けるためだろう。Bランク以上の冒険者は、一応陰で暗躍する者がいると教えているが、実際に暗躍した後にあたるの俺たちか、Sランク冒険者らしい」
「まぁ、今回報酬金ははずんでもらったから、いいけどね」
補習は金貨450枚と、マンティコアの人工的な魔石は高純度のエネルギーになるらしく、金貨100枚で買いとってもらえて、合計金貨550枚の収入になった、
「さて、エインの毒のことは他言無用だね?」
「当たり前だ。作り出せる者がいると分かると、暗殺に使われる。京楽、秘密だぞ?」
「ふふ、君と秘密を共有し合うのは、なんだか楽しいね」
「まぁ、共有する秘密はお前がダークエルフであることも含まれているが」
「それでも、秘密を共有するのは、お互いがかけがえのないパートナーってことで、安心できるよ」
「とりあえず、今日は帰って飯を食って風呂に吐いて寝よう。俺は枕が変わると眠れないタイプなんだ。さっさと寝たい」
ふあああと、大きな欠伸をして、浮竹と京楽は帰路につくのであった。
------------------------------------------------------------------
「ふ、しょせんはマンティコア。作り出しても、脅威にすらならぬ、か」
茶色の髪の、全ギルドで指名手配になっているその男は、地下に降りていく。
地下には、いっぱい試験官が並び、そこではいろんなモンスターの幼体が、黄金に輝く液体の中で浮遊していた。
「さて、次はどれにしようか・・・・・・」
「ああ。なんでも、イリア帝国の片隅にある田舎村に、水龍神が住み着いているっていうんだ。その呪いを解いてほしいという、あやふやな依頼だ」
「ウォータードラゴンなら分かるけど、東洋の龍?」
「はっきりとは分からない」
「引き受けるの?」
京楽の言葉に、浮竹は首を傾げる。
「迷っている。本当に水龍神が出るなら、勝ち目はないかもしれない。でも、姿を見せないということは、人語をしゃべるモンスターが水龍神を偽っているのかもしれない。
水龍神の呪いは、ある日水龍神の住む湖の水を飲んだら、全身に発疹ができて少し熱が出る、それが村中に感染してしまって、今は封鎖されている。疫病の可能性があると検査されたんだが、どの病気でもないらしい。
ちなみに水龍神は月に女性を一人生贄によこせと言ってくるんだ。あと貢ぎものとして、毎週肉をたくさん供えるそうだ」
「ますますきな臭いね。それ、絶対違うモンスターの仕業だよ」
「引き受けたいんだが、いいか?」
「うん。生贄を欲するなんて、討伐に値する。引き受けよう」
Aランクの依頼だった。
ひっぺがして、受付嬢に依頼書を渡し、受理してもらう。
そのまま、行ったことのある一番近い町に空間転移して、そこから馬車で依頼の出ている田舎のボエナ村を目指した。
ブルンにも、念のためについてきてもらった。
「くくるーー」
ブルンは旅行だと思っているようで、はしゃいでいた。
「ブルン、今回は旅行じゃないぞ。多分だけど、水龍神になりすましているモンスターの討伐だ」
「くくるー!」
「え、任せろって?ブルンは頼むしいねぇ」
浮竹と京楽は、馬車の上でひと時の平和を楽しむのであった。
-------------------------------------------
村に到着すると、村の出入り口は封鎖されており、帝国の兵士が見張りをしていた。
「誰だ!」
「冒険者ギルドの者だよ」
「これは失礼した。村長の家まで案内しよう」
浮竹と京楽とブルンは、村の中央になるやや大きめの家に入った。
「おお、冒険者の方か。どうか、水龍神の呪いを解いて欲しい・・・・・・」
「くくるーー!!」
ヒーリングスライムのブルンは、全身に発疹のできていた少し熱のある村長に、ヒールの魔法をかけた。
「おお、体が元に・・・・」
ブルンの魔法は、神に匹敵するヒールだ。
病気でも癒してしまう。
ただ、全ての病気が癒せるわけではない。症状を緩和するくらいか回復方向にもっていくことはできた。
「ブルンで治るってことは、病気の可能性もあるけど、一番疑わしいのは毒だね。村長、見張りをしている兵士たちはどこで水を飲んでいる?」
「はぁ、湧き水のある裏山のほうの水を飲んでいます」
「ますます毒が疑わしい」
村長は、泣いて浮竹と京楽に縋りついてきた。
「水龍神の呪いを、どうか癒してください。そして、あさって生贄になる予定だった村の少女を助けてください!」
まずは、村人を全員集めて、ブルン魔法の効果範囲を広げてもらい、全員に一斉にヒールをかけた。
「ああ、発疹が・・」
「熱も下がったぞ!」
「湖の水は、飲まないようにしてください!」
浮竹がそういうと、人々は困惑した。
「でも、この村に井戸がないんです」
「浦山の湧き水を使ってください」
「わかりました。みんな、聞いたであろう。この方たちが、水龍神の呪いを解いてくださり、水龍神の討伐もおこなってくださるそうだ!」
わあああと、皆喜びあった。
「ねぇ、大丈夫、浮竹?」
「俺の感が当たっていたら、大丈夫だ」
そのまま、湖の水を調べると、微量だが毒が発見された。確かに呪いによるものだった。
少し飲むだけならいいが、ずっと飲んでいると発疹や発熱をする毒であった。毒自体は弱いが、村人たちが今後も湖の水を使えるように、ブルンにお願いして、ヒールの対象を湖に向けた。
湖全体が光り輝き、毒が消えた。
「おお、湖が、元の美しい輝きを・・・・・」
「ありがとうございます!あなたたちは村の恩人です。どうか、このまま水龍神を退治してください!」
その日は村長の家に泊まり、生贄になる少女の変わりに、浮竹が女の衣をいつもの冒険者の服の上からまとい、船に乗せられて、水龍神が住んでいるという、滝のところまでやってきた。
滾の裏側は洞窟になっており、そこに入るように促されて、浮竹だけでなく、空を飛んでついてきていた京楽も、洞窟の天井すれすれを飛んで、洞窟の中に入った。
「よくやってきた。我は水龍神である。さぁ、そのナイフで自分の首を切るのだ。汝の生命の雫はこの水龍神に宿り、村を守るであろう」
洞窟の中は、深い霧に覆われていた。
霧の奥で、うねる水龍神らしき影が見えた。
「さぁ、我が生贄となれ。汝の血肉は我のものとなり、この村を永遠に繁栄させるであろう」
「ウィンドトルネード!」
京楽が、風の魔法で霧を追い払うと、水龍神の形をした人間が作ったであろう木のはりぼてがあった。
「何をする!神の怒りが怖くないのか!」
また、霧が出てきた。
浮竹は、言われた通りに首をナイフで切ったふりをした。
モンスターは血の匂いに敏感なので、かわいそうだがかわりに息の根を止めていた鶏の血を浴びて、地面に滴らせた。
「うむ、それでよい」
霧の中から現れのは、なんとマンティコアであった。
「くくく、美味そうな女だ」
「そこまでだよ!」
「誰だ!」
洞窟の天井すれすれを飛んでいた京楽が、マンティコアを睨みつけて、浮竹の傍に降りてきて合図する。
浮竹は、隠しもっていたミスリルの剣でマンティコアのライオンの胴体を突き刺した。
「ぐおおおおお!!」
「マンティコア如きが水龍神の真似ねぇ。グラビティ・ゼロ!」
京楽は重力の魔法でマンティコアを押しつぶしにかかる。
「ぬおおおおおお!あの方に、力をもらったのだ!」
ぐぐぐぐっと、週十倍の重量が降っているのに、立ち上がる。
「ウォータースパイラル!クリエイトデッドリーボイズン!!」
水の槍に猛毒を付与して、浮竹はマンティコアを貫いた。
「があああ、毒だと!ぬああああ!!!」
ビクンビクンと痙攣して、マンティコアは動かなくなった。
「ブルン、この毒を浄化してくれ」
「くるるーー」
ブルンに、浮竹が作り出した猛毒中の猛毒を、ただの水に戻してもらった。
「湖にでも流れていくと、魚が死んで水を飲んだ人間も死ぬからな」
「うわ。浮竹また凄い毒を作ったんだね」
「エインの毒。一滴で死ぬ人間の数は数百万。もしも湖に流れたら、生態系が確実に狂う」
「うへー。エインの毒かい。またやっかいな毒を・・・」
かつて、賢者の中の賢者と呼ばれたエインの作った毒で、その毒で王国の民を死滅させてしまい、エインは自害した。
エインの毒と呼ばれ、原液はもうこの世界には存在しない。
薄めた毒が、とある王国の宝物庫に眠っているくらいだ。
「浮竹、これまた死体の毒も浄化するの?」
「もちろんだ。ブルン、頼む」
「くくう」
ブルンに浄化してもらい、マンティコアを解体して魔石だけを取り出した。
霧は、魔法を使って出していたらしい。
洞窟の奥に進むと、女性と子供のものらしい遺骨が3体分確認できて、きちんと埋葬するためにアイテムポケットに入れた。
マンティコアの体もアイテムポケットに入れる。素材にはならないが、村人たちに説明するためにもって帰ることにした。
「それにしてもこの水龍神の形をしたはりぼて、明らかに人の力によるものだね」
「そうだな。裏で暗躍しているという、あいつの仕業かもしれない」
全ギルドで指名手配されている、名も無き暗躍者のことであった。
「とりあえず、村に戻ろう」
「うん」
-------------------------------------------------------------------
「そうだったのですか・・・アンティコアが、水龍神のふりを・・・・」
「洞窟の奥で、3体分の遺骨を見つけた。ここに出す」
アイテムポケットから、遺骨と遺品らしきものとボロボロの服をだした。
「いやああ、ヨハン!」
「あああ、ミレーネ!」
「アリス・・・・・」
肉親であった者たちは、遺骨や遺品、ボロボロの服を手に泣きだすのであった。
「それにしても、何故王国軍の兵士は水龍神の退治をしてくれなかったんだ?」
「それが、上の者からそう命令されていると言われて・・・」
村人と一緒に集まった兵士たちは、ある男からそう言われたのだが、それが女帝の言葉であると信じ切っていた、今考えたらおかしいと、言い出した。
「これも、影の暗躍者のせいかな」
「多分な」
こうやって水龍神の呪いを解くクエストは終わった。
村人たちから、金はないが、たくさんの食品をもらった。
イアラ帝国の帝都アスランの冒険者ギルドで、マンティコアの魔石を鑑定してもらうと、マンティコアそのものが人工的に作られたモンスターだと発覚した。
オカマのキャサリンのギルドマスターに呼ばれて、今回のマンティコアの件は他言無用だと言われた。
「全く、ギルドもギルドで、どうして隠すのかな~?」
「無用な混乱を避けるためだろう。Bランク以上の冒険者は、一応陰で暗躍する者がいると教えているが、実際に暗躍した後にあたるの俺たちか、Sランク冒険者らしい」
「まぁ、今回報酬金ははずんでもらったから、いいけどね」
補習は金貨450枚と、マンティコアの人工的な魔石は高純度のエネルギーになるらしく、金貨100枚で買いとってもらえて、合計金貨550枚の収入になった、
「さて、エインの毒のことは他言無用だね?」
「当たり前だ。作り出せる者がいると分かると、暗殺に使われる。京楽、秘密だぞ?」
「ふふ、君と秘密を共有し合うのは、なんだか楽しいね」
「まぁ、共有する秘密はお前がダークエルフであることも含まれているが」
「それでも、秘密を共有するのは、お互いがかけがえのないパートナーってことで、安心できるよ」
「とりあえず、今日は帰って飯を食って風呂に吐いて寝よう。俺は枕が変わると眠れないタイプなんだ。さっさと寝たい」
ふあああと、大きな欠伸をして、浮竹と京楽は帰路につくのであった。
------------------------------------------------------------------
「ふ、しょせんはマンティコア。作り出しても、脅威にすらならぬ、か」
茶色の髪の、全ギルドで指名手配になっているその男は、地下に降りていく。
地下には、いっぱい試験官が並び、そこではいろんなモンスターの幼体が、黄金に輝く液体の中で浮遊していた。
「さて、次はどれにしようか・・・・・・」
エンシェントエルフとダークエルフ23
セイレーン。
美しい、海の魔物。
歌声で男を惑わし、食う。
そんなセイレーンは、冒険者によって絶滅させられて、残ったのは無人島なんかに住むセイレーンだけだった。
だが、ある港町でセイレーンが大量に湧き出した。
ある人物の証言によると、茶色の髪に茶色の瞳の、冷たく整った顔立ちの男が何かを海に投げ入れて、そこからわさわさとセイレーンが湧き出てきたのだという。
その男は、ギルドで指名手配されている、名も分からない暗躍者であった。
その男が召還したセイレーンは、ただ相手を惑わすだけでなく、歌声を聞くと過去のトラウマを生み出すらしい。
早速ギルドから派遣された浮竹と京楽は、耳栓をしながら、セイレーンに小舟で近づき、炎の魔法で殺していった。
セイレーンが、大きな歌声をあげだした。
それは耳栓をしていても聞こえる、魂の歌だった。
京楽は、自分を捨て去っていく灼熱のシャイターンを見ていた。そして、同胞に拾われたが、石を投げられてまた捨てられて、エンシェントエルフの族長に拾われて、牢屋に閉じ込められて・・・・・。
そこで終わりだったら、京楽はセイレーンに殺されていただろう。浮竹の顔が、脳裏をよぎり、正気に戻った京楽は、近くにいたセイレーンに炎の魔法を放った。
「フレイムロンド!」
「GIYAAAAAAAA!!」
すご叫び声をあげて、セイレーンは死んでいった。
浮竹を探すと、浮竹は小舟の上で倒れていた。
セイレーンにやられたのか、耳から血を流していた。
「ファイアワールド!」
京楽は怒って、その一帯の海の水と共に全てを蒸発させた。
浮竹は、セイレーンを倒しても、起きなかった。
心配になって、マイホームまで戻って、冒険者ギルドに報告だけして魔石は蒸発させたことを報告すると、調査員が派遣されて、セイレーンは綺麗さっぱりいなくなったとのことで、報酬金の金貨180枚を手に、浮竹の元に戻った。
けれど、浮竹は目覚めなかった。
医者に見せると、何かの夢を見て昏睡状態であると言われた。
京楽は、打てる手がなくて、師匠である剣士京楽の家の前に空間転移した。
「浮竹が、起きないんだ」
『どうしたの?』
「浮竹が、起きてくれないんだ・・・・」
京楽は、ぽろぽろと泣きだした。
夢でシャイターンに捨てられて、同胞に石を投げられまた捨てられて、エンシェントエルフに拾われて幽閉されていた時の哀しさが、何故か今のになって襲ってきて、泣いていた。
『ほら、エルフの京楽。これで涙を拭け』
「うん、突然ごめんね。浮竹が起きないんだ・・・・・」
事情を説明すると、剣士の京楽はこう言った。
『トラウマのない人間は、昏睡状態に入って幸せな夢を見てそのまま食い殺されることがあるらしい。今のエルフの浮竹は、きっと幸せな夢を見ていて起きないんでしょ』
「どうすれば起きるの?」
『精神世界に入り込むしかないな。幸い、俺ができる』
「ううん、僕が精神世界に入る。だから、その手助けを頼むよ」
剣士の京楽と精霊の浮竹は、エルフの二人のマイホームに来て、眠り続けるエルフの浮竹を見た。
『こりゃ、完全にセイレーンの世界に取り込まれてるね。君が精神世界に行きたいの?』
「うん」
『浮竹、頼めるかい?』
『ああ。一緒に精神世界にもぐって、エルフの京楽だけ好きに行動できるようにしよう』
「ありがとう」
エルフの京楽は、精霊の浮竹と手を繋ぎ合いながら、エルフの浮竹とも手を繋ぎあった。
ゆっくりとスリープの呪文を剣士の京楽にかけられて、意識が落ちていく。剣士の京楽は、魔力を維持するために、精霊の浮竹と手を繋いだ。
気づくと、そこは浮竹の精神世界だった。
色がない、モノクロの世界だった。
幼い浮竹がいた。同じように、幼い京楽がいた。
笑って、外で遊んでいる。
そんな夢だった。
「これが、浮竹の幸せな夢・・・・」
幼い京楽が閉じ込められると、その度に幼い浮竹が隠し通路を使って迎えにきてくれて、また二人で遊ぶ、そんな夢だった。
『お前との出会いが、幸せだったんだろう。この夢を、エルフの浮竹は繰り返し見ている』
「浮竹、帰ろう?」
「おじちゃん、だあれ?」
「僕は京楽取水。そっちの幼い子成長した姿だよ」
「おじちゃん、京楽なの?」
「そうだよ」
そう言って、エルフの京楽は幼い浮竹の頭を撫でた。
すると、世界が一瞬で色づいた。
幼いエルフの浮竹は、今と同じ年齢にまで成長していた。
「京楽・・・・迎えにきて、くれたのか?」
「うん、そうだよ」
「ありがとう、京楽」
精神世界で、浮竹は京楽にキスをした。
『見せつけてないで、戻るぞ。しっかり、エルフの俺の手を握ってやれ」
「うん!」
目を開けると、そこには目をあけて、涙を浮かべるエルフの浮竹がいた。
『無事、二人とも戻ってこれたようだな』
『浮竹、お疲れさま』
精霊の浮竹は、他人の精神世界に入るのは少し疲れるようで、剣士の京楽から甘めのオレンジ水をもらって、それをコクコクと飲んでいった。
「俺は・・・幸せな夢を見ていた。同じ夢を繰り返し見ていた。変わらない日々を望んでいた。
俺にもトラウマはあった。京楽の処刑が決定した日だった。でも、そんなことは完全に忘れて、ただ幸せな夢を見ていた・・・・」
エルフの浮竹が、ぽろぽろと涙を零した。
「あの日、俺が京楽を連れ出さないと、京楽は処刑されていた。それがとてつもなく怖くて、ただ幸せな夢を見ようとしていた」
『うん、それは悪いことじゃないよ』
「でも、真実から目を背けて、ただ幸せを願って・・・・俺は、我儘だ」
「浮竹、そんな我儘は誰でも持っているんだよ」
エルフの浮竹をは顔を上げると、エルフの京楽の胸に顔を埋めて、静かに泣きだした。
『じゃあ、僕らはいったん戻るね。また何かあったら、知らせて』
『伴侶を、大切にしろよ』
剣士の京楽と精霊の浮竹は、プルンを連れていたので、プルンの転移の魔法でロスピア王国の自宅へと戻っていった。
「怖かったんだ。長い長い間、お前と過ごした幼い時間が、なくなるのがすごく怖かったんだ」
「うん・・・・・」
「成長は遅いのに、でも成長は止まらなくて、お前が処刑されることを知っていたのに、俺は隠していた。ずっとずっと、幼いままでいたかった」
「うん。でも、人はいずれ変わるものだよ」
「変わるのが、怖かったんだ。お前が外の世界をもっと知って、俺の傍からいなくなるのが、怖くて怖くて、俺は・・・・・」
京楽は、静かに浮竹の唇に唇を重ねていた。
「京楽?」
「あの日、僕を助けてくれてありがとう。ずっと言ってなかったね。僕に、外の世界を見せてくれてありがとう。僕を選んでくれて、ありがとう。僕には、君だけだよ。君だけが、僕の全てだ」
「京楽・・・・・・・」
浮竹は、また泣きだした。
「ああもう、何をすれば泣き止んでくれるの?」
「くくるーーー?」
「ほら、ブルンも心配してるよ」
「うん。ありがとう、京楽。俺と出会ってくれて、ありがとう。俺を選んでくれてありがとう。たくさんのありがとうを、お前に」
「うん」
二人は、また唇を重ねあった。
「一緒に歩んでいこう。これからの人生も」
「ああ」
セイレーンの事件は、これで全て終わったのだが、今だにセイレーンを港町に召還した者の影は、分からなかった。
------------------------------------------------------
「エルフの京楽と浮竹・・・・また、面白い存在だな」
茶色の髪のその人物は、セイレーンを召還した人そのものだった。
いや、人というのが正しいの分からない。
その存在は歪(いびつ)で歪んでいた。
神になるのだ。
その人物は、悲願のために世界を渾沌に導こうとしていた。
そして、世界はゆっくりとその男の存在を受けいれていく。
弾くとしたら、剣士の京楽か、あるいは精霊の浮竹。
男は、ワインを口にした。
真っ赤なワインは、人の血と同じ色だった。
美しい、海の魔物。
歌声で男を惑わし、食う。
そんなセイレーンは、冒険者によって絶滅させられて、残ったのは無人島なんかに住むセイレーンだけだった。
だが、ある港町でセイレーンが大量に湧き出した。
ある人物の証言によると、茶色の髪に茶色の瞳の、冷たく整った顔立ちの男が何かを海に投げ入れて、そこからわさわさとセイレーンが湧き出てきたのだという。
その男は、ギルドで指名手配されている、名も分からない暗躍者であった。
その男が召還したセイレーンは、ただ相手を惑わすだけでなく、歌声を聞くと過去のトラウマを生み出すらしい。
早速ギルドから派遣された浮竹と京楽は、耳栓をしながら、セイレーンに小舟で近づき、炎の魔法で殺していった。
セイレーンが、大きな歌声をあげだした。
それは耳栓をしていても聞こえる、魂の歌だった。
京楽は、自分を捨て去っていく灼熱のシャイターンを見ていた。そして、同胞に拾われたが、石を投げられてまた捨てられて、エンシェントエルフの族長に拾われて、牢屋に閉じ込められて・・・・・。
そこで終わりだったら、京楽はセイレーンに殺されていただろう。浮竹の顔が、脳裏をよぎり、正気に戻った京楽は、近くにいたセイレーンに炎の魔法を放った。
「フレイムロンド!」
「GIYAAAAAAAA!!」
すご叫び声をあげて、セイレーンは死んでいった。
浮竹を探すと、浮竹は小舟の上で倒れていた。
セイレーンにやられたのか、耳から血を流していた。
「ファイアワールド!」
京楽は怒って、その一帯の海の水と共に全てを蒸発させた。
浮竹は、セイレーンを倒しても、起きなかった。
心配になって、マイホームまで戻って、冒険者ギルドに報告だけして魔石は蒸発させたことを報告すると、調査員が派遣されて、セイレーンは綺麗さっぱりいなくなったとのことで、報酬金の金貨180枚を手に、浮竹の元に戻った。
けれど、浮竹は目覚めなかった。
医者に見せると、何かの夢を見て昏睡状態であると言われた。
京楽は、打てる手がなくて、師匠である剣士京楽の家の前に空間転移した。
「浮竹が、起きないんだ」
『どうしたの?』
「浮竹が、起きてくれないんだ・・・・」
京楽は、ぽろぽろと泣きだした。
夢でシャイターンに捨てられて、同胞に石を投げられまた捨てられて、エンシェントエルフに拾われて幽閉されていた時の哀しさが、何故か今のになって襲ってきて、泣いていた。
『ほら、エルフの京楽。これで涙を拭け』
「うん、突然ごめんね。浮竹が起きないんだ・・・・・」
事情を説明すると、剣士の京楽はこう言った。
『トラウマのない人間は、昏睡状態に入って幸せな夢を見てそのまま食い殺されることがあるらしい。今のエルフの浮竹は、きっと幸せな夢を見ていて起きないんでしょ』
「どうすれば起きるの?」
『精神世界に入り込むしかないな。幸い、俺ができる』
「ううん、僕が精神世界に入る。だから、その手助けを頼むよ」
剣士の京楽と精霊の浮竹は、エルフの二人のマイホームに来て、眠り続けるエルフの浮竹を見た。
『こりゃ、完全にセイレーンの世界に取り込まれてるね。君が精神世界に行きたいの?』
「うん」
『浮竹、頼めるかい?』
『ああ。一緒に精神世界にもぐって、エルフの京楽だけ好きに行動できるようにしよう』
「ありがとう」
エルフの京楽は、精霊の浮竹と手を繋ぎ合いながら、エルフの浮竹とも手を繋ぎあった。
ゆっくりとスリープの呪文を剣士の京楽にかけられて、意識が落ちていく。剣士の京楽は、魔力を維持するために、精霊の浮竹と手を繋いだ。
気づくと、そこは浮竹の精神世界だった。
色がない、モノクロの世界だった。
幼い浮竹がいた。同じように、幼い京楽がいた。
笑って、外で遊んでいる。
そんな夢だった。
「これが、浮竹の幸せな夢・・・・」
幼い京楽が閉じ込められると、その度に幼い浮竹が隠し通路を使って迎えにきてくれて、また二人で遊ぶ、そんな夢だった。
『お前との出会いが、幸せだったんだろう。この夢を、エルフの浮竹は繰り返し見ている』
「浮竹、帰ろう?」
「おじちゃん、だあれ?」
「僕は京楽取水。そっちの幼い子成長した姿だよ」
「おじちゃん、京楽なの?」
「そうだよ」
そう言って、エルフの京楽は幼い浮竹の頭を撫でた。
すると、世界が一瞬で色づいた。
幼いエルフの浮竹は、今と同じ年齢にまで成長していた。
「京楽・・・・迎えにきて、くれたのか?」
「うん、そうだよ」
「ありがとう、京楽」
精神世界で、浮竹は京楽にキスをした。
『見せつけてないで、戻るぞ。しっかり、エルフの俺の手を握ってやれ」
「うん!」
目を開けると、そこには目をあけて、涙を浮かべるエルフの浮竹がいた。
『無事、二人とも戻ってこれたようだな』
『浮竹、お疲れさま』
精霊の浮竹は、他人の精神世界に入るのは少し疲れるようで、剣士の京楽から甘めのオレンジ水をもらって、それをコクコクと飲んでいった。
「俺は・・・幸せな夢を見ていた。同じ夢を繰り返し見ていた。変わらない日々を望んでいた。
俺にもトラウマはあった。京楽の処刑が決定した日だった。でも、そんなことは完全に忘れて、ただ幸せな夢を見ていた・・・・」
エルフの浮竹が、ぽろぽろと涙を零した。
「あの日、俺が京楽を連れ出さないと、京楽は処刑されていた。それがとてつもなく怖くて、ただ幸せな夢を見ようとしていた」
『うん、それは悪いことじゃないよ』
「でも、真実から目を背けて、ただ幸せを願って・・・・俺は、我儘だ」
「浮竹、そんな我儘は誰でも持っているんだよ」
エルフの浮竹をは顔を上げると、エルフの京楽の胸に顔を埋めて、静かに泣きだした。
『じゃあ、僕らはいったん戻るね。また何かあったら、知らせて』
『伴侶を、大切にしろよ』
剣士の京楽と精霊の浮竹は、プルンを連れていたので、プルンの転移の魔法でロスピア王国の自宅へと戻っていった。
「怖かったんだ。長い長い間、お前と過ごした幼い時間が、なくなるのがすごく怖かったんだ」
「うん・・・・・」
「成長は遅いのに、でも成長は止まらなくて、お前が処刑されることを知っていたのに、俺は隠していた。ずっとずっと、幼いままでいたかった」
「うん。でも、人はいずれ変わるものだよ」
「変わるのが、怖かったんだ。お前が外の世界をもっと知って、俺の傍からいなくなるのが、怖くて怖くて、俺は・・・・・」
京楽は、静かに浮竹の唇に唇を重ねていた。
「京楽?」
「あの日、僕を助けてくれてありがとう。ずっと言ってなかったね。僕に、外の世界を見せてくれてありがとう。僕を選んでくれて、ありがとう。僕には、君だけだよ。君だけが、僕の全てだ」
「京楽・・・・・・・」
浮竹は、また泣きだした。
「ああもう、何をすれば泣き止んでくれるの?」
「くくるーーー?」
「ほら、ブルンも心配してるよ」
「うん。ありがとう、京楽。俺と出会ってくれて、ありがとう。俺を選んでくれてありがとう。たくさんのありがとうを、お前に」
「うん」
二人は、また唇を重ねあった。
「一緒に歩んでいこう。これからの人生も」
「ああ」
セイレーンの事件は、これで全て終わったのだが、今だにセイレーンを港町に召還した者の影は、分からなかった。
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「エルフの京楽と浮竹・・・・また、面白い存在だな」
茶色の髪のその人物は、セイレーンを召還した人そのものだった。
いや、人というのが正しいの分からない。
その存在は歪(いびつ)で歪んでいた。
神になるのだ。
その人物は、悲願のために世界を渾沌に導こうとしていた。
そして、世界はゆっくりとその男の存在を受けいれていく。
弾くとしたら、剣士の京楽か、あるいは精霊の浮竹。
男は、ワインを口にした。
真っ赤なワインは、人の血と同じ色だった。
エンシェントエルフとダークエルフ22
それは、Aランクの緊急クエストだった。
森にトレントが住み着き、男性を襲って殺しては、肉体の一部を盗むというものだった。
すでに犠牲者の数は10人を超えており、緊急を要した。
「俺が囮になろう」
「だめだよ、危険すぎる!」
浮竹の言葉に、京楽はだめだと言う。
「でも、トレントだろう?森の精霊が、そんなに乱暴になるわけがない」
「それでも僕は反対だ。君が囮になるのなら、僕も囮になる」
「じゃあ、二人仲良く囮になろうか」
「そうだね」
結局、言い争いになる前に、二人で囮になる道を選んだ。
トレントの出るという森に、二人は手を麻の縄で繋ぎ合わせて、1人になることを避けた。
しゅるるるるる。
やってきたのが男性と分かったせいか、森が騒がしくなり、しゅるるると、蔦が這いまわる音がした。
どこからか、優しい歌声が流れてくる。
それに、急速な眠気を感じたが、皮膚に爪を食いこませることで、京楽は我慢した。浮竹は抗えず、意識を失っていた。
「うふふふふ。今度はエルフが二人・・・・そうね、あの方の右腕と左足首になってもらいましょう」
トレントが、姿を現した。
肌も露わな、緑色の皮膚をした美しい女性であった。
そのトレントの隣には、つぎはぎだらけの男の体があった。足りないのは、頭と右腕と左足首と左手。
普通なら、つぎはきだらけの肉体は腐っているだろうに、どういう処置を施しているのか、うじの一匹もわいておらず、死臭もしなくて新鮮なままだった、
「浮竹、起きて、浮竹!」
繋いでいた右手の麻でできた紐を引っ張る。
「ん・・・・・」
浮竹は意識を取り戻した。
「あら、あなたの顔は綺麗ね?あの方ほどじゃないけれど、その生首をいただきましょうか」
しゅるしゅると、蔦が這い寄ってきて、のこぎり状になった。
「く、フレイムロンド!」
「きゃああ、火は、火はいやあああ!!」
なんとかトレントは雨の魔法でスコールを降らせて、浮竹の魔法の炎を鎮火してしまった。
スコールはひどく、このままでは弱点である炎の魔法は使えなさそうだった。
「あの方を復活させるのよ。体を繋ぎ合わせれば、きっとあの方は復活して、また私に愛を囁いてくれるわ」
「愛しい、男がいたのか」
「そうよ。愛しいあの方をつくるために、その右腕を頂戴!」
浮竹は、氷の魔法を使った。
「エターナルアイシクルワールド」
こっちには這い寄ってくるトレントの体が氷つく。
しかし、死んだわけでもない。
氷はトレント全体を包み込んで、スコールが止んだ。
「ファイアフェニックス!」
京楽が炎の不死鳥を放つと、トレントが命よりも大事にしていた、つぎはぎだらけの体に火がついた。
「いやあああああ!愛しいあなたあああ!!私を、置いていかないでえええ!!」
「今度は、お前も一緒さ。ファイアフェニックス!」
「ああ・・・・あたしも、あなたの元へ行けるのね?」
「ああ、行けるとも」
浮竹は、優しい表情でトレントを灰にしていった。
灰からは、2つの芽がでていた。
「夢を見ていたんだ。トレントには恋した男がいた。男もトレントを愛していた。でも、男には婚約者がいて、逆上して男を殺してしまった。
トレントは泣き叫んだ。すると、ある男が、男の体を繋ぎ合わせて、恋人によく似た人形を作ったら、それに愛しい男の魂を宿してやると言ったんだ。
トレントは、その言葉を信じて、森を歩く旅人の男を、歌声で眠らせて殺しては、体の一部分を奪い、繋ぎ合わせた。
繋ぎ合わせた肉体に、愛した男の命が再び宿ると信じて・・・・・・」
「かわいそうな、精霊だったんだね」
「ああ。でも、人を殺した。人を殺したり殺そうとするモンスターは倒される。トレントは元々森の精霊だ。悪い存在じゃない」
「トレントを騙したそのある男というのが鍵だね」
「ああ。トレントは始末してしまったからもう聞き出しようがないが、最近謎の男が暗躍していると聞く。その男なのかもしれない」
「とりあえず、トレントの魔石を持って帰ろう」
浮竹と京楽は、なんとも言えない気分で冒険者ギルドに戻ってくると、魔石を受付嬢に渡した。
「買取り額は金貨30枚になります。緊急クエスト達成として、報酬金金貨350枚に、即日の対応だったので、報酬金が金貨50枚上乗せされます」
合計で金貨430枚になったが、二人の心は晴れないままだった。
「いやん、何そんな辛気臭い顔してるのお?明るくいきましょうよ。ああん、あたしのあそこも明るくいっちゃう♡」
「冗談に付き合っている気分じゃないんだ」
「僕もだよ。消えてくれない?」
「ひどおおい!キャシー、泣いちゃう!」
「勝手に泣け」
「酷い顔だ。ああ、元からだったかい」
浮竹と京楽は、キャサリンに事情の全てを話して、裏で暗躍しているらしい男の影を、ギルド側も掴んでいると聞いて、真剣な表情になった。
「その男の正体は?」
「まだ、分からないわ。ただ、茶色の髪と瞳で、凄く冷徹だそうよ。なんでも、自分が神になるって言ってたらしいの」
「人間が神に・・・・そんなの、なれるわけないのに」
「あら、そうでもないわよ?魔神や邪神は、人間からでもなれるわよ?なりかたは教えてあげないけれどね?♡」
浮竹と京楽は、トレントが灰になった後にでてきた芽を、鉢植えに植え替えて、帰宅した。
太陽をいっぱい浴びれる、南向きのバルコニーに置くと、一夜で成長し、次の日は花を咲かせて、小さなトレントが生まれた。
「君の名は?」
「名前なんてない」
「じゃあ、レトと名乗るといい」
「トレントだから、レト?安直ね」
「森に帰りたいかい?」
「帰りたくないわ。ここで暮らすわ」
レトは、寂しそうに笑った。
じゃあ、同居人を紹介しなくちゃな。こっちはエンシェントエルフの浮竹十四郎。君のもう一人のマスターだ。それから、ヒーリングスライムのブルン」
「くるるる」
「かわいい」
「君も、十分かわいいよ。ねぇ、浮竹も、そう思うでしょ?」
「知るか」
「ふふっ。あのエンシェントエルフ、私にあなたを取られたと思って嫉妬してるわ」
「すごいね。君、人の心が読めるのかい?」
京楽は、レトと名付けたトレントの小さな頭を撫でた。
「ある程度はね。あなたはダークエルフ。皮膚の色が違うから、種族を偽っている」
「ほんとにすごいね」
「よしてよ。あたしは、ただのレトいう名の小さなトレント。それだけよ」
「そうだね。君はレト」
京楽は、レトを手の平に乗せた。そんな小さなサイズのトレントだった。
「哀しい記憶を持っているのね」
「なんだい?」
「あなたは灼熱のシャイターンに捨てられ、迫害されてきた。でも、浮竹十四郎と出会って、全てが変わった」
「うん、そうだよ」
「じゃあ、早くその浮竹って人のところに行ってあげて。凄く悲しんでる」
「分かったよ」
京楽は、レトを植木鉢に戻すと、浮竹の後を追う。
「浮竹」
「なんだ」
「僕が愛しているのは、浮竹だけだよ。あのトレントには同情しか抱いていない」
抱きしめられてキスされて、浮竹は真っ赤になった。
「な、何をする!」
「いや、君が小さなトレントなんかに嫉妬しちゃって、かわいいなぁと思って」
「嫉妬してなんか!」
浮竹は叫びかけてやめた。
「嫉妬、してた。少しだけ」
京楽は、浮竹の顎に手をかけて、ディープキスをしていた。
「んっ」
「ふふ、かわいいね。食べちゃいたい」
「まだ昼間だぞ」
「そうだね」
クスクスと、京楽が笑うものだから、浮竹も嫉妬心を忘れてクスクスと二人で笑いあった。
「ねぇ、今日いい?」
「ばか、そういうこといちいち聞くな。んっ」
またキスをされた。
エルフに欲が全くないわけではないのだ。
ただ、薄いだけで。
-----------------------------------------------------------------------------
「そうか、あのトレントは死んだか。呆気ないものだ」
その男は、背が高く茶色の紙に茶色の瞳をしていた。
その男は、世界を渾沌に陥れようと暗躍していた。
神になろうとしていた。
神になり、剣士の京楽を破壊神にしようともくろんでいた。
その男の名は、まだ分からなかった。
森にトレントが住み着き、男性を襲って殺しては、肉体の一部を盗むというものだった。
すでに犠牲者の数は10人を超えており、緊急を要した。
「俺が囮になろう」
「だめだよ、危険すぎる!」
浮竹の言葉に、京楽はだめだと言う。
「でも、トレントだろう?森の精霊が、そんなに乱暴になるわけがない」
「それでも僕は反対だ。君が囮になるのなら、僕も囮になる」
「じゃあ、二人仲良く囮になろうか」
「そうだね」
結局、言い争いになる前に、二人で囮になる道を選んだ。
トレントの出るという森に、二人は手を麻の縄で繋ぎ合わせて、1人になることを避けた。
しゅるるるるる。
やってきたのが男性と分かったせいか、森が騒がしくなり、しゅるるると、蔦が這いまわる音がした。
どこからか、優しい歌声が流れてくる。
それに、急速な眠気を感じたが、皮膚に爪を食いこませることで、京楽は我慢した。浮竹は抗えず、意識を失っていた。
「うふふふふ。今度はエルフが二人・・・・そうね、あの方の右腕と左足首になってもらいましょう」
トレントが、姿を現した。
肌も露わな、緑色の皮膚をした美しい女性であった。
そのトレントの隣には、つぎはぎだらけの男の体があった。足りないのは、頭と右腕と左足首と左手。
普通なら、つぎはきだらけの肉体は腐っているだろうに、どういう処置を施しているのか、うじの一匹もわいておらず、死臭もしなくて新鮮なままだった、
「浮竹、起きて、浮竹!」
繋いでいた右手の麻でできた紐を引っ張る。
「ん・・・・・」
浮竹は意識を取り戻した。
「あら、あなたの顔は綺麗ね?あの方ほどじゃないけれど、その生首をいただきましょうか」
しゅるしゅると、蔦が這い寄ってきて、のこぎり状になった。
「く、フレイムロンド!」
「きゃああ、火は、火はいやあああ!!」
なんとかトレントは雨の魔法でスコールを降らせて、浮竹の魔法の炎を鎮火してしまった。
スコールはひどく、このままでは弱点である炎の魔法は使えなさそうだった。
「あの方を復活させるのよ。体を繋ぎ合わせれば、きっとあの方は復活して、また私に愛を囁いてくれるわ」
「愛しい、男がいたのか」
「そうよ。愛しいあの方をつくるために、その右腕を頂戴!」
浮竹は、氷の魔法を使った。
「エターナルアイシクルワールド」
こっちには這い寄ってくるトレントの体が氷つく。
しかし、死んだわけでもない。
氷はトレント全体を包み込んで、スコールが止んだ。
「ファイアフェニックス!」
京楽が炎の不死鳥を放つと、トレントが命よりも大事にしていた、つぎはぎだらけの体に火がついた。
「いやあああああ!愛しいあなたあああ!!私を、置いていかないでえええ!!」
「今度は、お前も一緒さ。ファイアフェニックス!」
「ああ・・・・あたしも、あなたの元へ行けるのね?」
「ああ、行けるとも」
浮竹は、優しい表情でトレントを灰にしていった。
灰からは、2つの芽がでていた。
「夢を見ていたんだ。トレントには恋した男がいた。男もトレントを愛していた。でも、男には婚約者がいて、逆上して男を殺してしまった。
トレントは泣き叫んだ。すると、ある男が、男の体を繋ぎ合わせて、恋人によく似た人形を作ったら、それに愛しい男の魂を宿してやると言ったんだ。
トレントは、その言葉を信じて、森を歩く旅人の男を、歌声で眠らせて殺しては、体の一部分を奪い、繋ぎ合わせた。
繋ぎ合わせた肉体に、愛した男の命が再び宿ると信じて・・・・・・」
「かわいそうな、精霊だったんだね」
「ああ。でも、人を殺した。人を殺したり殺そうとするモンスターは倒される。トレントは元々森の精霊だ。悪い存在じゃない」
「トレントを騙したそのある男というのが鍵だね」
「ああ。トレントは始末してしまったからもう聞き出しようがないが、最近謎の男が暗躍していると聞く。その男なのかもしれない」
「とりあえず、トレントの魔石を持って帰ろう」
浮竹と京楽は、なんとも言えない気分で冒険者ギルドに戻ってくると、魔石を受付嬢に渡した。
「買取り額は金貨30枚になります。緊急クエスト達成として、報酬金金貨350枚に、即日の対応だったので、報酬金が金貨50枚上乗せされます」
合計で金貨430枚になったが、二人の心は晴れないままだった。
「いやん、何そんな辛気臭い顔してるのお?明るくいきましょうよ。ああん、あたしのあそこも明るくいっちゃう♡」
「冗談に付き合っている気分じゃないんだ」
「僕もだよ。消えてくれない?」
「ひどおおい!キャシー、泣いちゃう!」
「勝手に泣け」
「酷い顔だ。ああ、元からだったかい」
浮竹と京楽は、キャサリンに事情の全てを話して、裏で暗躍しているらしい男の影を、ギルド側も掴んでいると聞いて、真剣な表情になった。
「その男の正体は?」
「まだ、分からないわ。ただ、茶色の髪と瞳で、凄く冷徹だそうよ。なんでも、自分が神になるって言ってたらしいの」
「人間が神に・・・・そんなの、なれるわけないのに」
「あら、そうでもないわよ?魔神や邪神は、人間からでもなれるわよ?なりかたは教えてあげないけれどね?♡」
浮竹と京楽は、トレントが灰になった後にでてきた芽を、鉢植えに植え替えて、帰宅した。
太陽をいっぱい浴びれる、南向きのバルコニーに置くと、一夜で成長し、次の日は花を咲かせて、小さなトレントが生まれた。
「君の名は?」
「名前なんてない」
「じゃあ、レトと名乗るといい」
「トレントだから、レト?安直ね」
「森に帰りたいかい?」
「帰りたくないわ。ここで暮らすわ」
レトは、寂しそうに笑った。
じゃあ、同居人を紹介しなくちゃな。こっちはエンシェントエルフの浮竹十四郎。君のもう一人のマスターだ。それから、ヒーリングスライムのブルン」
「くるるる」
「かわいい」
「君も、十分かわいいよ。ねぇ、浮竹も、そう思うでしょ?」
「知るか」
「ふふっ。あのエンシェントエルフ、私にあなたを取られたと思って嫉妬してるわ」
「すごいね。君、人の心が読めるのかい?」
京楽は、レトと名付けたトレントの小さな頭を撫でた。
「ある程度はね。あなたはダークエルフ。皮膚の色が違うから、種族を偽っている」
「ほんとにすごいね」
「よしてよ。あたしは、ただのレトいう名の小さなトレント。それだけよ」
「そうだね。君はレト」
京楽は、レトを手の平に乗せた。そんな小さなサイズのトレントだった。
「哀しい記憶を持っているのね」
「なんだい?」
「あなたは灼熱のシャイターンに捨てられ、迫害されてきた。でも、浮竹十四郎と出会って、全てが変わった」
「うん、そうだよ」
「じゃあ、早くその浮竹って人のところに行ってあげて。凄く悲しんでる」
「分かったよ」
京楽は、レトを植木鉢に戻すと、浮竹の後を追う。
「浮竹」
「なんだ」
「僕が愛しているのは、浮竹だけだよ。あのトレントには同情しか抱いていない」
抱きしめられてキスされて、浮竹は真っ赤になった。
「な、何をする!」
「いや、君が小さなトレントなんかに嫉妬しちゃって、かわいいなぁと思って」
「嫉妬してなんか!」
浮竹は叫びかけてやめた。
「嫉妬、してた。少しだけ」
京楽は、浮竹の顎に手をかけて、ディープキスをしていた。
「んっ」
「ふふ、かわいいね。食べちゃいたい」
「まだ昼間だぞ」
「そうだね」
クスクスと、京楽が笑うものだから、浮竹も嫉妬心を忘れてクスクスと二人で笑いあった。
「ねぇ、今日いい?」
「ばか、そういうこといちいち聞くな。んっ」
またキスをされた。
エルフに欲が全くないわけではないのだ。
ただ、薄いだけで。
-----------------------------------------------------------------------------
「そうか、あのトレントは死んだか。呆気ないものだ」
その男は、背が高く茶色の紙に茶色の瞳をしていた。
その男は、世界を渾沌に陥れようと暗躍していた。
神になろうとしていた。
神になり、剣士の京楽を破壊神にしようともくろんでいた。
その男の名は、まだ分からなかった。
エンシェントエルフとダークエルフ外伝 ブルンとブルンの大冒険
「ププウ」
「くくるー?」
プルンとブルンは、お留守番を言い渡されていた。
ここは、イアラ帝国のエルフの浮竹と京楽が住むマイホームだ。
「ププウ~」
ねぇ、ちょっと散歩にいこうよ。
「くくーー」
でも、ご主人様たちがいつ帰ってくるか分からないよ。
「ププル」
大丈夫、いざとなったら転移魔法があるから。
「くくるーー!!」
じゃあ、森に行こう。いろんなモンスターがいて、楽しいんだよ。
「ププ!」」
行こう行こう。
こうして、2匹はイアラ帝国の外に広がる森まで、ぽよんぽよんとはねて、出かけるのだった。
森は鬱蒼としていて、いろんな動物やモンスターがいたけれど、みんな進化したスライムのプルンとブルンを怖がり、逃げてしまった。
「プププ」
みんな逃げちゃった。
「くくる」
前はもっとみんなフレンドリーだったのに。
「ぐるるるるる!!」
現れたのは、Bランクのモンスターブラックタイガーであった。
「ププー―」
何こいつ、やるつもり?
「くくーー」
やるつもりなら、やっつけちゃおう!
「ぐるる、ぐあああ!!」
プルンに襲いかかったブラックタイガーは、プルンのウォーターボールの魔法で、窒息死しそうになっていた。
「ププウ」
ご主人さまが、こうすれば素材を傷一つなく倒せるって教えてくれたよ。
「くくるーーー」
えーつまんない。僕も攻撃する!
ブルンは、散弾をブラックタイガーの首めがけて吐き出した。
窒息死しかかっていたブラックタイガーは、すぐにあの世へと旅立っていった。
「ププウ!」
そうだ、これを解体してお土産にして、ご主人様たちを喜ばせよう。
「くくるるるー」
それはいい考えだね。僕が解体するね。
ブルンは、体の一部を金属のようにとがらせて、ブラックタイガーの頭と首を切り離し、血抜きしてから、肉と骨と毛皮、牙と爪に解体してしまった。
「ププウ」
こいつ、肉はまずいらしいよ。骨も使えないって。
「くくう」
じゃあ、肉は弟の君には食べれないから、僕が食べちゃうね。骨も食べちゃう。
「ププルン」
じゃあ、素材は俺の体内にいれておくね。
「くくうるー」
じゃあ、転移魔法お願い。冒険者ギルドに転移して、買いとってもらおう。
「ププーー」
分かったよ。捕まっていてね、お兄ちゃん
「くくー」
うん、弟よ。
プルンとブルンは、冒険者ギルド前に転移すると、ぽよんぽよんと跳ねて、受付嬢のところまでカウンターに乗ると、プルンが中身を出した。
「え、あ、浮竹さんと京楽さんのところのスライム・・・・これは、ブラックタイガー!まさか、あなたたちが倒したの?」
「ププー」
「くくるー」
二匹ともそうだよと言って、飛び跳ねていた。
「確か、ブラックタイガーは討伐依頼にあったはず・・・あ、ありました。金貨120枚です」
「ププウ?」
「くくるー?」
「魔石の状態は非常に良いですね。毛皮の部分も損傷が少ない。牙と爪も傷一つない。これなら、魔石金貨8枚、素材を金貨20枚で買いとれます。しめて、金貨148枚ですね」
「ププウ!」
プルンは、にょきっとてを突き出して、金貨の入った袋を体の中にしまいこむ。
「くくうるー」
帰ろう。お金、奪ってくるいやなやついるかもしれないから、転移魔法お願い。
「ぷぷ」
わかったよ、お兄ちゃん。
プルンとブルンは、冒険者ギルドを出たところで転移して、イアラ帝国のエルフの浮竹と京楽のマイホームに戻ってきた。
「今探しに・・・・・って、ブルン?」
「わあ、プルンまで。どうしたの?」
エルフ浮竹と京楽は、突然目の前に現れたプルンとブルンに驚いていた。
「ぷぷう」
『なんだって?ブラックタイガーを倒したって?』
剣士の京楽が、聞き返す。
「くくるーーーー」
「素材やら報酬金やらお金でもってきた?」
「ププ」
プルンが口をあけると、金貨のつまった麻袋がでてきた。
中身をあけて、金貨の枚数を数えて、4人とも驚いた。
『金貨148枚って、一体どうしたんだ』
「くくるー」
「倒してお金もらっただけ・・・・って、はぁ。プルンもブルンも、偉いけど、今後は二人きりで冒険しちゃだめだよ。お金になるって、悪い連中に攫われたのかと思ったけど、何もなくてよかったよ」
エルフの京楽の言葉に、みんな頷いた。
『プルン、ブルン、今度からは、ちゃんと俺たちがついている時に冒険しような?』
「ププウ」
分かった、ご主人様。
「くくるーーー」
僕もわかったなのー。
こうして、プルンとブルンの小さな大冒険は終わるのであった。
「それにしても、ブラックタイガーってBランク+のモンスターでしょ。よくやっつけられたね」
『プルンは、いろんな攻撃魔法を使えるし、回復魔法も上級まで使えるからな』
「なんだそれは。すごいじゃないか」
エルフの浮竹が驚くと、エルフの京楽も負けてはいられないと、ブルンの長点を言う。
「うちのブルンだって負けてないよ。確かに攻撃魔法は使えないけど、散弾で金属まで溶かすし、神クラスのヒールを永遠と出し続けれるよ」
『なんか、飼っているスライム自慢話になってきたね』
『ああ、そうだな。とりあえず、プルンとブルンはすごい。そしてかわいい!!」
エルフの浮竹と、精霊の浮竹にそれぞれ頬ずりをされて、プルンとブルンは喜んでいた。
プルンは黄色に、ブルンは白くなっていた。
『あははは、感情が色で分かるスライムも珍しいね』
「とにかく、今後は二匹で散歩してもいいけど、モンスター退治なんて危ないことはしないこと。分かったね?」
エルフの京楽の言葉に、プルンとブルンは。
「ププウ」
分かった。りんごほしいな。お兄ちゃんだけ食事しちゃたから。
「くくるー」
分かったから、ごみちょうだい。お腹すいた。
分かったの分かっていないのか、2匹は食事のことばかり気にしていて、4人は溜息と共に、プルンにはりんごを10個、ブルンには近所から集めたゴミの山がプレゼントされるのであった。
「くくるー?」
プルンとブルンは、お留守番を言い渡されていた。
ここは、イアラ帝国のエルフの浮竹と京楽が住むマイホームだ。
「ププウ~」
ねぇ、ちょっと散歩にいこうよ。
「くくーー」
でも、ご主人様たちがいつ帰ってくるか分からないよ。
「ププル」
大丈夫、いざとなったら転移魔法があるから。
「くくるーー!!」
じゃあ、森に行こう。いろんなモンスターがいて、楽しいんだよ。
「ププ!」」
行こう行こう。
こうして、2匹はイアラ帝国の外に広がる森まで、ぽよんぽよんとはねて、出かけるのだった。
森は鬱蒼としていて、いろんな動物やモンスターがいたけれど、みんな進化したスライムのプルンとブルンを怖がり、逃げてしまった。
「プププ」
みんな逃げちゃった。
「くくる」
前はもっとみんなフレンドリーだったのに。
「ぐるるるるる!!」
現れたのは、Bランクのモンスターブラックタイガーであった。
「ププー―」
何こいつ、やるつもり?
「くくーー」
やるつもりなら、やっつけちゃおう!
「ぐるる、ぐあああ!!」
プルンに襲いかかったブラックタイガーは、プルンのウォーターボールの魔法で、窒息死しそうになっていた。
「ププウ」
ご主人さまが、こうすれば素材を傷一つなく倒せるって教えてくれたよ。
「くくるーーー」
えーつまんない。僕も攻撃する!
ブルンは、散弾をブラックタイガーの首めがけて吐き出した。
窒息死しかかっていたブラックタイガーは、すぐにあの世へと旅立っていった。
「ププウ!」
そうだ、これを解体してお土産にして、ご主人様たちを喜ばせよう。
「くくるるるー」
それはいい考えだね。僕が解体するね。
ブルンは、体の一部を金属のようにとがらせて、ブラックタイガーの頭と首を切り離し、血抜きしてから、肉と骨と毛皮、牙と爪に解体してしまった。
「ププウ」
こいつ、肉はまずいらしいよ。骨も使えないって。
「くくう」
じゃあ、肉は弟の君には食べれないから、僕が食べちゃうね。骨も食べちゃう。
「ププルン」
じゃあ、素材は俺の体内にいれておくね。
「くくうるー」
じゃあ、転移魔法お願い。冒険者ギルドに転移して、買いとってもらおう。
「ププーー」
分かったよ。捕まっていてね、お兄ちゃん
「くくー」
うん、弟よ。
プルンとブルンは、冒険者ギルド前に転移すると、ぽよんぽよんと跳ねて、受付嬢のところまでカウンターに乗ると、プルンが中身を出した。
「え、あ、浮竹さんと京楽さんのところのスライム・・・・これは、ブラックタイガー!まさか、あなたたちが倒したの?」
「ププー」
「くくるー」
二匹ともそうだよと言って、飛び跳ねていた。
「確か、ブラックタイガーは討伐依頼にあったはず・・・あ、ありました。金貨120枚です」
「ププウ?」
「くくるー?」
「魔石の状態は非常に良いですね。毛皮の部分も損傷が少ない。牙と爪も傷一つない。これなら、魔石金貨8枚、素材を金貨20枚で買いとれます。しめて、金貨148枚ですね」
「ププウ!」
プルンは、にょきっとてを突き出して、金貨の入った袋を体の中にしまいこむ。
「くくうるー」
帰ろう。お金、奪ってくるいやなやついるかもしれないから、転移魔法お願い。
「ぷぷ」
わかったよ、お兄ちゃん。
プルンとブルンは、冒険者ギルドを出たところで転移して、イアラ帝国のエルフの浮竹と京楽のマイホームに戻ってきた。
「今探しに・・・・・って、ブルン?」
「わあ、プルンまで。どうしたの?」
エルフ浮竹と京楽は、突然目の前に現れたプルンとブルンに驚いていた。
「ぷぷう」
『なんだって?ブラックタイガーを倒したって?』
剣士の京楽が、聞き返す。
「くくるーーーー」
「素材やら報酬金やらお金でもってきた?」
「ププ」
プルンが口をあけると、金貨のつまった麻袋がでてきた。
中身をあけて、金貨の枚数を数えて、4人とも驚いた。
『金貨148枚って、一体どうしたんだ』
「くくるー」
「倒してお金もらっただけ・・・・って、はぁ。プルンもブルンも、偉いけど、今後は二人きりで冒険しちゃだめだよ。お金になるって、悪い連中に攫われたのかと思ったけど、何もなくてよかったよ」
エルフの京楽の言葉に、みんな頷いた。
『プルン、ブルン、今度からは、ちゃんと俺たちがついている時に冒険しような?』
「ププウ」
分かった、ご主人様。
「くくるーーー」
僕もわかったなのー。
こうして、プルンとブルンの小さな大冒険は終わるのであった。
「それにしても、ブラックタイガーってBランク+のモンスターでしょ。よくやっつけられたね」
『プルンは、いろんな攻撃魔法を使えるし、回復魔法も上級まで使えるからな』
「なんだそれは。すごいじゃないか」
エルフの浮竹が驚くと、エルフの京楽も負けてはいられないと、ブルンの長点を言う。
「うちのブルンだって負けてないよ。確かに攻撃魔法は使えないけど、散弾で金属まで溶かすし、神クラスのヒールを永遠と出し続けれるよ」
『なんか、飼っているスライム自慢話になってきたね』
『ああ、そうだな。とりあえず、プルンとブルンはすごい。そしてかわいい!!」
エルフの浮竹と、精霊の浮竹にそれぞれ頬ずりをされて、プルンとブルンは喜んでいた。
プルンは黄色に、ブルンは白くなっていた。
『あははは、感情が色で分かるスライムも珍しいね』
「とにかく、今後は二匹で散歩してもいいけど、モンスター退治なんて危ないことはしないこと。分かったね?」
エルフの京楽の言葉に、プルンとブルンは。
「ププウ」
分かった。りんごほしいな。お兄ちゃんだけ食事しちゃたから。
「くくるー」
分かったから、ごみちょうだい。お腹すいた。
分かったの分かっていないのか、2匹は食事のことばかり気にしていて、4人は溜息と共に、プルンにはりんごを10個、ブルンには近所から集めたゴミの山がプレゼントされるのであった。
エンシェントエルフとダークエルフ21
それは、Bランクの退治依頼であった。
Dランクのダンジョンの15階層に、ミノタウロスが複数姿を現して、その先にいけないのだそうだ。
Dランクは駆け出しの冒険者から一皮むけて、冒険者らしくなってくる階級だ。
そのDランクダンジョンにミノタウロスとは。
浮竹と京楽は、昔一度来たことがあるので、京楽の空間転移魔法でDランクのダンジョンの前まで飛んだ。
空間転移魔法は、一度行ったことのある場所なら、結界を張られていない限り、行き来が可能だたが、消費魔力が大きいので、そう連打することはできない。
すでにブルンにヒールをしてもらい、魔力回復をしていた。
ダンジョンは階層ごとにフィールドがかわるタイプで、上級呪文も使えそうだった。
雑魚は適当に倒して放置しておこうとしたのだが、浮竹がわざわざ魔石を集めるので、仕方なく遭遇して倒した敵の魔石は拾って集めた。
15階層にくると、ミノタウロスがいたが、普通のミノタウロスより牛に近かった。
「MOOOOOOOO!!」
まるで牛のような雄叫びをあげて、襲い掛かってくるので、火の魔法を使う。
「フレイムロンド!」
「ファイアサークル!」
「MOOOO!!!」
こんがりと、焼かれたミノタウロスは、いい匂いをがした。
「まだいるぞ」
「ファイアフェニックス!」
火の魔法でこんがり焼かれたミノタウロスは、いい匂いがした。
駄目だと分かっているのだが、ミスリルの剣で肉を切り出すと、皿を取り出して炎で焼いた。
ミノタウロスのステーキだった。
「食べても大丈夫かな?」
「レストランでも、ミノタウロスのカルビってメニューがあるくらいだぞ。高級食材だ」
浮竹と京楽は、倒したミノタウロスの1体の肉を斬って焼いて食べてを繰り返した。
「ああ、おいしかった」
「ただだと思うと、余計おいしくかんじるね」
ブルンは、ミノタウロスの骨を消化してもらった。あと、食べれない部位とか。
残ったミノタウロスは、アイテムポケットに入れて持ち帰ることにした。すでに焼かれている状態ではあるが、ステーキとして需要があるので、別に構わないだろう。
空間転移して、冒険者ギルドまで戻ってくると、皆そのスピードの速さに驚いていた。
依頼を受注して、2時間とかかっていなかった。
魔石はちゃんと回収しておいた。
「あらん、春ちゃんいるの間に空間転移の魔法なんて覚えたの?このキャシーと、いけないことをするために、覚えたのね?」
「うるさい、青髭オカマ!近寄らないでよ」
「酷い、春ちゃん酷いわああああ!!!」
キャサリンは、浮竹に抱きついて尻を揉んできた。
「尻を揉むなこの変態オカマ!」
ミスリルの剣の鞘でオカマのギルドマスターを叩くと、キャサリンは涙を流してくねくねしていた。
「13体の討伐の確認をしました。魔石は金貨39枚で、依頼料の報酬は金貨180枚となります。あと、雑魚の魔石の買取り額は、金貨2枚と銀貨3枚になります。
「その、ミノタウロスの買取りを頼みたいんだけど」
「それなら、解体場へどうぞ」
解体工房で、ミノタウロスの遺体を12体分提出する。
「火で焼かれていますが、肉の需要としては問題ありません。1体金貨30枚、しめて金貨360枚になります。魔石とミノタウロスの数が足りませんが、1体食べましたね?」
「え、あ、うん、まぁね」
「ミノタウロスの肉は高級食材ですが、素人が料理すると食中毒が怒る確率はゼロではありません。なるべく、解体工房に提出してから、食べる分の肉を受け取ってください」
「うん、分かったよ」
「わかった」
浮竹と京楽は、匂いにつられてダンジョン内でステーキを食べたことを反省した。
「それより、味はどうでした?とれたてはやっぱりおいしかったですか?」
「うん、すごくおいしかった。できれば塩コショウで味付けしたかったね。そしたら、余計においしくなると思うよ」
「魔法の火で焼いたんだが、うまいことミディアムレアになってな。調味料はなかったが、最高にうまかった」
じゅるりと、受付嬢が涎を垂らしそうになっていた。
「決めました!今月の給料の3分の1になるけど、ミノタウロスのシャトーブリアンの部位を、4食分ほどください!」
「「おおーーー」」
大盤振る舞いにミノタウロスの最上位部位のシャトーブリアンを頼む受付嬢に、浮竹と京楽は感激した。
ギルドの受付嬢の給料は悪くないが、それでもBランク以上の冒険者の月に稼ぐ額には届かない。
それなのに、給料の3分の1も費やして、食べようとするその根性が気に入った。
「いいレストランを知っているんだ。そこで、焼いてもらおう」
ギルドの受付嬢マーサは、浮竹と京楽もついでにシャトーブリアンの部位を1食分買い取って、
一緒に高級レストランに入り、厨房でステーキを調理してもらうことにした。
ちなみに。調理するのにも金貨1枚が必要で、マーサも浮竹も京楽も、それぞれ金貨1枚ずつ払った。
「お待たせしました。ミノタウロスのシャトーブリアンミディアムレア焼きのポテト添えでございます」
焼かれてもってこられたステーキは、最高においしそうだった。
ナイフとフォークを入れて、切って食べていく。
3人とも、涙を流した。
「うまい」
「うまいわ」
「うますぎる」
一匹放置された、ブルンが抗議する。
「くくるーーー」
僕にも美味しいの食べさせて。
「ああ、すまないがゴミ箱にこのブルンというスライムを入れてやってくれないか。ゴミを食べるんだ」
「本当ですか。ゴミがいっぱいで、困ってたんです」
客の食べこぼしとかもゴミとして捨てられる。
それも消化したので、いつものゴミより美味しいと、ブルンは後で語ってくれた。
夕飯を食べて帰ってくると、ボルがいた。
「どうしたんだ、ボル」
「いやなぁ、こっちの大陸のコーラのほうがうまくて、買ってきてくれね?金なら渡すから。何処で売ってるのかしらねーんだよ」
「いつも僕たちがいるわけじゃあないからね。ついておいで。売ってる店紹介してあげる」
「あーもう、なんでわかんねーかなー。俺は、遊びにきたんだよ!」
「コーラは?」
「あ、やっぱコーラは買いに行く」
京楽と飲み物を専門に置いてある店で、2ダースコーラを買って、銀貨8枚払った。
ボルが、自分のアイテムポケットにコーラを入れた。
「こっちの物価って安いんだな」
「そうかい?魔大陸は高いの?」
「あの量のコーラなら、金貨2枚はする」
「ウッドガルド大陸の約3倍だね。値段にすると」
京楽とボルは、浮竹の待つマイホームに戻ってきた。
「なんだよ、今日は料理ねぇの?」
「特別だよ。明日にしようと思ってた海鮮シーフードピザ作ってあげる」
1時間経って、ボルは他の四天王の悪口をいいながら、コーラを飲みまくり、そして9時なると眠いといってゲストルームで寝てしまった。
「何しにきたんだろうね?」
「ただ、おしゃべりにきたんじゃないか?」
「そういうもんなの?」
「友達だと思われてるんじゃないか」
「魔族の四天王の友達ねぇ。悪くはないね」
「まぁな。きっと明日の6時には叩き起こされる。俺たちも、早めに就寝しよう」
結局ボルの来た意図は分からず、朝の8時になると空間転移の魔法で、魔王城まで帰ってしまうのであった。
Dランクのダンジョンの15階層に、ミノタウロスが複数姿を現して、その先にいけないのだそうだ。
Dランクは駆け出しの冒険者から一皮むけて、冒険者らしくなってくる階級だ。
そのDランクダンジョンにミノタウロスとは。
浮竹と京楽は、昔一度来たことがあるので、京楽の空間転移魔法でDランクのダンジョンの前まで飛んだ。
空間転移魔法は、一度行ったことのある場所なら、結界を張られていない限り、行き来が可能だたが、消費魔力が大きいので、そう連打することはできない。
すでにブルンにヒールをしてもらい、魔力回復をしていた。
ダンジョンは階層ごとにフィールドがかわるタイプで、上級呪文も使えそうだった。
雑魚は適当に倒して放置しておこうとしたのだが、浮竹がわざわざ魔石を集めるので、仕方なく遭遇して倒した敵の魔石は拾って集めた。
15階層にくると、ミノタウロスがいたが、普通のミノタウロスより牛に近かった。
「MOOOOOOOO!!」
まるで牛のような雄叫びをあげて、襲い掛かってくるので、火の魔法を使う。
「フレイムロンド!」
「ファイアサークル!」
「MOOOO!!!」
こんがりと、焼かれたミノタウロスは、いい匂いをがした。
「まだいるぞ」
「ファイアフェニックス!」
火の魔法でこんがり焼かれたミノタウロスは、いい匂いがした。
駄目だと分かっているのだが、ミスリルの剣で肉を切り出すと、皿を取り出して炎で焼いた。
ミノタウロスのステーキだった。
「食べても大丈夫かな?」
「レストランでも、ミノタウロスのカルビってメニューがあるくらいだぞ。高級食材だ」
浮竹と京楽は、倒したミノタウロスの1体の肉を斬って焼いて食べてを繰り返した。
「ああ、おいしかった」
「ただだと思うと、余計おいしくかんじるね」
ブルンは、ミノタウロスの骨を消化してもらった。あと、食べれない部位とか。
残ったミノタウロスは、アイテムポケットに入れて持ち帰ることにした。すでに焼かれている状態ではあるが、ステーキとして需要があるので、別に構わないだろう。
空間転移して、冒険者ギルドまで戻ってくると、皆そのスピードの速さに驚いていた。
依頼を受注して、2時間とかかっていなかった。
魔石はちゃんと回収しておいた。
「あらん、春ちゃんいるの間に空間転移の魔法なんて覚えたの?このキャシーと、いけないことをするために、覚えたのね?」
「うるさい、青髭オカマ!近寄らないでよ」
「酷い、春ちゃん酷いわああああ!!!」
キャサリンは、浮竹に抱きついて尻を揉んできた。
「尻を揉むなこの変態オカマ!」
ミスリルの剣の鞘でオカマのギルドマスターを叩くと、キャサリンは涙を流してくねくねしていた。
「13体の討伐の確認をしました。魔石は金貨39枚で、依頼料の報酬は金貨180枚となります。あと、雑魚の魔石の買取り額は、金貨2枚と銀貨3枚になります。
「その、ミノタウロスの買取りを頼みたいんだけど」
「それなら、解体場へどうぞ」
解体工房で、ミノタウロスの遺体を12体分提出する。
「火で焼かれていますが、肉の需要としては問題ありません。1体金貨30枚、しめて金貨360枚になります。魔石とミノタウロスの数が足りませんが、1体食べましたね?」
「え、あ、うん、まぁね」
「ミノタウロスの肉は高級食材ですが、素人が料理すると食中毒が怒る確率はゼロではありません。なるべく、解体工房に提出してから、食べる分の肉を受け取ってください」
「うん、分かったよ」
「わかった」
浮竹と京楽は、匂いにつられてダンジョン内でステーキを食べたことを反省した。
「それより、味はどうでした?とれたてはやっぱりおいしかったですか?」
「うん、すごくおいしかった。できれば塩コショウで味付けしたかったね。そしたら、余計においしくなると思うよ」
「魔法の火で焼いたんだが、うまいことミディアムレアになってな。調味料はなかったが、最高にうまかった」
じゅるりと、受付嬢が涎を垂らしそうになっていた。
「決めました!今月の給料の3分の1になるけど、ミノタウロスのシャトーブリアンの部位を、4食分ほどください!」
「「おおーーー」」
大盤振る舞いにミノタウロスの最上位部位のシャトーブリアンを頼む受付嬢に、浮竹と京楽は感激した。
ギルドの受付嬢の給料は悪くないが、それでもBランク以上の冒険者の月に稼ぐ額には届かない。
それなのに、給料の3分の1も費やして、食べようとするその根性が気に入った。
「いいレストランを知っているんだ。そこで、焼いてもらおう」
ギルドの受付嬢マーサは、浮竹と京楽もついでにシャトーブリアンの部位を1食分買い取って、
一緒に高級レストランに入り、厨房でステーキを調理してもらうことにした。
ちなみに。調理するのにも金貨1枚が必要で、マーサも浮竹も京楽も、それぞれ金貨1枚ずつ払った。
「お待たせしました。ミノタウロスのシャトーブリアンミディアムレア焼きのポテト添えでございます」
焼かれてもってこられたステーキは、最高においしそうだった。
ナイフとフォークを入れて、切って食べていく。
3人とも、涙を流した。
「うまい」
「うまいわ」
「うますぎる」
一匹放置された、ブルンが抗議する。
「くくるーーー」
僕にも美味しいの食べさせて。
「ああ、すまないがゴミ箱にこのブルンというスライムを入れてやってくれないか。ゴミを食べるんだ」
「本当ですか。ゴミがいっぱいで、困ってたんです」
客の食べこぼしとかもゴミとして捨てられる。
それも消化したので、いつものゴミより美味しいと、ブルンは後で語ってくれた。
夕飯を食べて帰ってくると、ボルがいた。
「どうしたんだ、ボル」
「いやなぁ、こっちの大陸のコーラのほうがうまくて、買ってきてくれね?金なら渡すから。何処で売ってるのかしらねーんだよ」
「いつも僕たちがいるわけじゃあないからね。ついておいで。売ってる店紹介してあげる」
「あーもう、なんでわかんねーかなー。俺は、遊びにきたんだよ!」
「コーラは?」
「あ、やっぱコーラは買いに行く」
京楽と飲み物を専門に置いてある店で、2ダースコーラを買って、銀貨8枚払った。
ボルが、自分のアイテムポケットにコーラを入れた。
「こっちの物価って安いんだな」
「そうかい?魔大陸は高いの?」
「あの量のコーラなら、金貨2枚はする」
「ウッドガルド大陸の約3倍だね。値段にすると」
京楽とボルは、浮竹の待つマイホームに戻ってきた。
「なんだよ、今日は料理ねぇの?」
「特別だよ。明日にしようと思ってた海鮮シーフードピザ作ってあげる」
1時間経って、ボルは他の四天王の悪口をいいながら、コーラを飲みまくり、そして9時なると眠いといってゲストルームで寝てしまった。
「何しにきたんだろうね?」
「ただ、おしゃべりにきたんじゃないか?」
「そういうもんなの?」
「友達だと思われてるんじゃないか」
「魔族の四天王の友達ねぇ。悪くはないね」
「まぁな。きっと明日の6時には叩き起こされる。俺たちも、早めに就寝しよう」
結局ボルの来た意図は分からず、朝の8時になると空間転移の魔法で、魔王城まで帰ってしまうのであった。
エンシェントエルフとダークエルフ20
京楽と浮竹の元に、奇妙な客人がきていた。
アークデーモンに捕らわれていた少女ユンと、その兄と名乗る、魔王ヴェルが四天王の一人、電撃のボルであった。
「よう、勝手にあらがせてもらってるぜ」
「お兄ちゃん、やはり勝手はびっくりさせちゃうんじゃないですか?」
「はぁ。まぁ、人生長く生きてたらこんなことも起こるね」
そう言いながら、京楽はバタンと倒れた。
「はははは、魔王の四天王、電撃のボル」
浮竹は、笑ってからバタンと倒れた。
「どうしよう、お兄ちゃん!」
「あー、ほっとけ。すぐ目をさまずだろうさ」
その通り、5分ほどで意識を取り戻した二人は、自分の家なのに窮屈そうにしていた。
「今、紅茶をいれてくる」
「コーラいれてくんねぇか」
「は?」
「俺はコーラがいいつってんだよ。なかったら、買いに行け」
「お兄ちゃん、お礼を言いに来たんでしょう?」
「あ、ああそうだったな」
「この前飲み会した時に、未成年用にコーラ買っておいたの残ってた。はい、どうぞ」
京楽からコーラをもらって、ボルはまるで命の水のように飲んでいった。
「オレは、このしゅわしゅわした感覚がたまらねーんだよな。飲み物は全部コーラ。好きな食べ物はなしでとにかくコーラだぜ!」
「それより、お兄ちゃん」
「あ、ああ、そうだな。前回は、俺の妹のユンを助けてくれて、すまねーな」
「いや、こちらも白金貨千枚ももらったし・・・・」
この前、式で大金貨100枚を宗教組織の人身売買で行方不明だったものが魔大陸で見つかったことを、イアラ帝国の騎士団に情報伝達する小遣いとしてつけられたのだが、ただ言伝するだけで大金貨100枚はありえないと、式に金をもたせて帰らせた。
とにかく、依頼以外で金が舞い込んでくることが多いのだ。
「なんなら、白金貨千枚をお返ししようか?」
「いらねぇよ。ユンを助けてくれた感謝の金だ。受け取っときな」
ボルはぶっきらぼうだったが、根は優しい青年だと分かった。
「その、ウッドガルド大陸では魔族は生きにくいからな。ユンは、魔大陸に連れていく。だが、その前に助けてもらったあんたらに会いたいっていうんで、わざわざ俺らから会いにきてやったってわけよ」
「そうか。ユンちゃん、魔大陸に帰るんだね」
「うん。おじいさんももう歳だし、一緒に魔大陸のお兄ちゃんの庇護下の元に居ることに決めたの」
「ユンちゃんとちゃんとした場面で会うのはじめてだったな」
浮竹が微笑むと、ユンはほのかに頬を赤くした。
「おいてめぇ、ユンに何しやがった!」
「な、何もしていない」
「違うの、お兄ちゃん!ただ、綺麗なエルフだなぁと思っただけだから」
「お、おう、そうか。すまねーな。オレ、こんな性格だからいつも先走っちまう」
「うん、別にいいけどね。君の性格にも慣れてきたよ。ほら、おかわりのコーラ」
「お、気が利くじゃねぇか」
ボルは、コーラを一気飲みして、げふーっとげっぷをした。
「やだあ、お兄ちゃんげっぷしないでよ」
「でるもんはでるんだから、仕方ねーだろうが」
「まぁまぁ。ああ、そうだ、ユンちゃんから預かってたこのペンダントだけど、返すよ」
「お、それは俺がユン誕生日にあげた、紋章入りのペンダントじゃねぇか!」
「ごめんなさい、お兄ちゃん。他に渡すものがなくって、魔族絡みならこれでどうにかなると思って渡してしまったの」
「返して、くれるのかよ?」
「うん、返すよ。僕らが魔族に関わることなんて、今回はあったけど、今後はないだろうし」
京楽の言葉に、ボルはペンダントを受け取って、ユンの首にかけてやった。
「まぁ、礼を言いに来ただけだ。泊まってやってもいいんだぜ」
「はいはい。じゃあ、夕食の用意するから、この部屋で寛いでて。浮竹はコーラとワインと今から書いていくメモの中身の買い出しを頼むよ」
「ああ、分かった京楽」
Aランク冒険者だ。
貧しい暮らしをしていると思われたら、また白金貨を渡されそうなので、今日は特に豪華にすることにした。
七面鳥を丸焼きにして、フォアグラやキャビア、トリュフなどを使った贅沢な料理を出してふるまった。
「お、すっげ―いいもん食ってんじゃんか。オレ、ここんちの子になろうかな」
浮竹と京楽は首を横に振った。
こんな大きな子供いりませんと。
「まぁ、冗談だ。今日は遅いし、泊まって行っていいか?」
「ああ、上の階に僕らの寝室の他にゲストルームが2つある。そこを使ってくれて構わないよ。ただ風呂場とトイレは一つだから、そこは気をつけてね」
ユンとボルは、先に風呂をかりて、寝間着に着替えてえボルはまたコーラを飲んでいた。
「そんなにコーラばっかり飲んでて、虫歯にならないのか?」
浮竹がふとした疑問を口にすると、ボルは笑った。
「今時、どこもゼロカロリーコーラだぜ。第一、虫歯になんて魔族はなんねーよ」
「そ、そうなのか。そういえばエルフの俺たちも、虫歯になったことはないな。ちゃんと歯を磨いてるせいだろうか」
「虫歯は、人間種族の病気だぜ。他種族がなるには、粘膜感染だ」
「つまり、人間とキスしない限り、他種族は虫歯にならないと?」
「そうだぜ。そんな当たり前のことも知らねーのかよ」
「すまない。何分、エルフなもので、人間世界にも魔族側にも事情が疎いからな」
「今から知っていきゃいいんだよ」
ボルは、魔王のことた四天王のことをいろいろ教えてくれた。
くそメガネと言われる四天王の時には、笑い合った。
「灼熱のシャイターンは、あんたを捨てたこと、くやんでるぜ」
「え」
「愛してなんかいないって、何度も否定しやがんだ。ほんとに捨てて興味なかったら、話題にのぼっただけで怒って出ていっちまう」
「そっか・・シャイターンが」
「よかったな、京楽」
「うん」
「おっし、眠くなってきたから寝る」
「まだ、9時だぞ?」
「魔族は早寝早起きが基本なんだよ。9時には寝て、6時に起きる」
「そ、それは健康的だな」
「お兄ちゃんは先に寝てて。浮竹さん、ちょっと話あるんだけどいいですか?」
「ああ、なんだろう?」
「す、好きなんです!」
京楽が後ろにいる場所で、ユンは浮竹に告白をした。
「もちろん、無理なのは分かってます。私は魔族で、あはたはエルフ」
「いや、そういう以前に俺にはすでに伴侶がいるんだ。後ろで固まってる、あいつだよ」
「あ、そうだったんですか」
ユンは、しゅんとなったが、すぐに顔をあげた。
「あー、告白して振られてすっきりした―。私も寝ますね」
「ああうん、おやすみ」
「台風みたいな兄妹だね」
「まぁ、そうだな。それより、この残った料理、俺らでは食べきれないな。冷蔵庫に入れておこうか」
「うん、そうしよう」
次の日の朝、6時に叩き起こされた。
「朝食まだかよ?」
「ああ、はいはい、今起きて作るよ」
寝ぼけ眼で、京楽はトーストを4枚焼いて、浮竹を起こして、スクランブルエッグを4人分用意して、ダイニングテーブルの椅子に座った。
「「いただきます」」
ユンとボルは・・・・ユンは分かるが、ボルは言葉遣いは乱暴だが、礼儀はわきまえてあるらしかった。
浮竹と京楽も、言葉に出さないがいただきますと心の中で言って、食べていく。
「「ごちそうさま」」
ユンが、朝ごはんの片付けを手伝ってくれた。
「ユンちゃん、いいお嫁さんになれるよ」
「本当?じゃあ京楽さんが夫になって」
「んだとこらぁ、ユンの夫になるだって?」
「違う違う、冗談だよ。ね、ユンちゃん?」
「半分本気なんだけどな。シャイターンの捨て子白いダークエルフだったって有名じゃない。京楽さんのことでしょ?」
「そうだけど、僕には浮竹がいるからね」
「なんだ、そうだったのか。水くせぇな。そうならそうと言ってくれりゃあいいのに」
「いや、ボル君に、いきなりできてますなんていう勇気はないよ」
「ボル君、いつ出発するんだ?」
「あー、8時くらいかな。空間転移で帰るから」
「じゃあ、ユンちゃもお別れだね。元気でね」
「はい。浮竹さんも京楽さんもお元気で」
「じいさんを、町の宿屋で待たせてあるから、ちょっくらとってくるぜ」
ボルは、凄まじいスピードで宿屋があるほうに走っていき、すぐ帰ってきた。
ボルの右手には、魔族のおじいさんがいた。
「やあ、はじめまして、エルフの方々。ユンとボルの祖父です」
「じいちゃん、そんな話はもういいから、魔大陸に戻るぞ」
「ユン、ちゃんと気持ちは伝えかい?」
「はい、おじいちゃん。でも、振られちゃいました」
「そうかそうか。人生は長い。そういうときもある」
「じいちゃん、それにユン、俺の手を離すなよ」
空間転移の魔法陣が起動しはじめる。
次の瞬間には、ボルもユンもその祖父もいなくなっていた。
「ああ、今日は濃い一日の始まりだねぇ。今日は休みにしようか。昨日は心配で夜もまともに眠れなかったし、6時に叩き起こされたせいで、寝不足気味だし」
「ああ、俺も眠い。二度寝をしよう」
「「あ」」
二人してハモる。
師匠である剣士京楽の家に、ブルンを遊びにいかせたままだった。
京楽は、つい最近空間転移の魔法を覚えた。
「寝る前に、僕が迎えにいってくるよ」
「ああ、頼んだ」
浮竹は、一足早く眠ってしまった。
京楽は、空間転移の魔法でロスピア王国の剣士京楽の家の前までくると、呼び鈴を鳴らした。
『はーい』
「ああごめん、ブルンを引き取りにきた」
『ああ、奥の部屋にいるから、とりあえずあがりなよ』
「おじゃまします」
『あ、エルフの京楽。ちょうど、ブルンが寂しがっていたとこなんだ』
「くくるーー!!」
ブルンは、プルンと遊んでいたがエルフの京楽の姿を見て、顔に体当たりしてきた。
「ブルン、痛いから」
「くくる!」
「え、浮竹?家で寝てるよ。電撃のボルが家におしかけてきてね」
『電撃のボルだと?何もされなかっただろうね?』
『大丈夫だろう。中立を守っているようだし』
「ああ、戦闘には至らなかったよ。妹のユンちゃんとおじいさんを魔大陸に送るついでに、礼をしに僕らの家に寄っただけみたい」
『それなら、いいんだけど』
「浮竹はまだ寝てるし、僕も正直凄く眠いんだ。ボルのせいでほとんど寝れなかったから」
『そうか。じゃあエルフの浮竹にもよろしくと言っておいてくれ』
「うん、じゃあ、僕も戻って寝るね」
部屋の中で、空間転移の魔法陣を描き、エルフの京楽とブルンは消えてしまった。
『今度は、エルフの京楽まで空間転移の魔法を覚えたのか。プルンといい、便利そうだな』
「ププゥ~~~」
プルンは、ブルンと別れたことを哀しんで青くなっていたが、りんご10個をさしだされて、黄色になるのであった。
アークデーモンに捕らわれていた少女ユンと、その兄と名乗る、魔王ヴェルが四天王の一人、電撃のボルであった。
「よう、勝手にあらがせてもらってるぜ」
「お兄ちゃん、やはり勝手はびっくりさせちゃうんじゃないですか?」
「はぁ。まぁ、人生長く生きてたらこんなことも起こるね」
そう言いながら、京楽はバタンと倒れた。
「はははは、魔王の四天王、電撃のボル」
浮竹は、笑ってからバタンと倒れた。
「どうしよう、お兄ちゃん!」
「あー、ほっとけ。すぐ目をさまずだろうさ」
その通り、5分ほどで意識を取り戻した二人は、自分の家なのに窮屈そうにしていた。
「今、紅茶をいれてくる」
「コーラいれてくんねぇか」
「は?」
「俺はコーラがいいつってんだよ。なかったら、買いに行け」
「お兄ちゃん、お礼を言いに来たんでしょう?」
「あ、ああそうだったな」
「この前飲み会した時に、未成年用にコーラ買っておいたの残ってた。はい、どうぞ」
京楽からコーラをもらって、ボルはまるで命の水のように飲んでいった。
「オレは、このしゅわしゅわした感覚がたまらねーんだよな。飲み物は全部コーラ。好きな食べ物はなしでとにかくコーラだぜ!」
「それより、お兄ちゃん」
「あ、ああ、そうだな。前回は、俺の妹のユンを助けてくれて、すまねーな」
「いや、こちらも白金貨千枚ももらったし・・・・」
この前、式で大金貨100枚を宗教組織の人身売買で行方不明だったものが魔大陸で見つかったことを、イアラ帝国の騎士団に情報伝達する小遣いとしてつけられたのだが、ただ言伝するだけで大金貨100枚はありえないと、式に金をもたせて帰らせた。
とにかく、依頼以外で金が舞い込んでくることが多いのだ。
「なんなら、白金貨千枚をお返ししようか?」
「いらねぇよ。ユンを助けてくれた感謝の金だ。受け取っときな」
ボルはぶっきらぼうだったが、根は優しい青年だと分かった。
「その、ウッドガルド大陸では魔族は生きにくいからな。ユンは、魔大陸に連れていく。だが、その前に助けてもらったあんたらに会いたいっていうんで、わざわざ俺らから会いにきてやったってわけよ」
「そうか。ユンちゃん、魔大陸に帰るんだね」
「うん。おじいさんももう歳だし、一緒に魔大陸のお兄ちゃんの庇護下の元に居ることに決めたの」
「ユンちゃんとちゃんとした場面で会うのはじめてだったな」
浮竹が微笑むと、ユンはほのかに頬を赤くした。
「おいてめぇ、ユンに何しやがった!」
「な、何もしていない」
「違うの、お兄ちゃん!ただ、綺麗なエルフだなぁと思っただけだから」
「お、おう、そうか。すまねーな。オレ、こんな性格だからいつも先走っちまう」
「うん、別にいいけどね。君の性格にも慣れてきたよ。ほら、おかわりのコーラ」
「お、気が利くじゃねぇか」
ボルは、コーラを一気飲みして、げふーっとげっぷをした。
「やだあ、お兄ちゃんげっぷしないでよ」
「でるもんはでるんだから、仕方ねーだろうが」
「まぁまぁ。ああ、そうだ、ユンちゃんから預かってたこのペンダントだけど、返すよ」
「お、それは俺がユン誕生日にあげた、紋章入りのペンダントじゃねぇか!」
「ごめんなさい、お兄ちゃん。他に渡すものがなくって、魔族絡みならこれでどうにかなると思って渡してしまったの」
「返して、くれるのかよ?」
「うん、返すよ。僕らが魔族に関わることなんて、今回はあったけど、今後はないだろうし」
京楽の言葉に、ボルはペンダントを受け取って、ユンの首にかけてやった。
「まぁ、礼を言いに来ただけだ。泊まってやってもいいんだぜ」
「はいはい。じゃあ、夕食の用意するから、この部屋で寛いでて。浮竹はコーラとワインと今から書いていくメモの中身の買い出しを頼むよ」
「ああ、分かった京楽」
Aランク冒険者だ。
貧しい暮らしをしていると思われたら、また白金貨を渡されそうなので、今日は特に豪華にすることにした。
七面鳥を丸焼きにして、フォアグラやキャビア、トリュフなどを使った贅沢な料理を出してふるまった。
「お、すっげ―いいもん食ってんじゃんか。オレ、ここんちの子になろうかな」
浮竹と京楽は首を横に振った。
こんな大きな子供いりませんと。
「まぁ、冗談だ。今日は遅いし、泊まって行っていいか?」
「ああ、上の階に僕らの寝室の他にゲストルームが2つある。そこを使ってくれて構わないよ。ただ風呂場とトイレは一つだから、そこは気をつけてね」
ユンとボルは、先に風呂をかりて、寝間着に着替えてえボルはまたコーラを飲んでいた。
「そんなにコーラばっかり飲んでて、虫歯にならないのか?」
浮竹がふとした疑問を口にすると、ボルは笑った。
「今時、どこもゼロカロリーコーラだぜ。第一、虫歯になんて魔族はなんねーよ」
「そ、そうなのか。そういえばエルフの俺たちも、虫歯になったことはないな。ちゃんと歯を磨いてるせいだろうか」
「虫歯は、人間種族の病気だぜ。他種族がなるには、粘膜感染だ」
「つまり、人間とキスしない限り、他種族は虫歯にならないと?」
「そうだぜ。そんな当たり前のことも知らねーのかよ」
「すまない。何分、エルフなもので、人間世界にも魔族側にも事情が疎いからな」
「今から知っていきゃいいんだよ」
ボルは、魔王のことた四天王のことをいろいろ教えてくれた。
くそメガネと言われる四天王の時には、笑い合った。
「灼熱のシャイターンは、あんたを捨てたこと、くやんでるぜ」
「え」
「愛してなんかいないって、何度も否定しやがんだ。ほんとに捨てて興味なかったら、話題にのぼっただけで怒って出ていっちまう」
「そっか・・シャイターンが」
「よかったな、京楽」
「うん」
「おっし、眠くなってきたから寝る」
「まだ、9時だぞ?」
「魔族は早寝早起きが基本なんだよ。9時には寝て、6時に起きる」
「そ、それは健康的だな」
「お兄ちゃんは先に寝てて。浮竹さん、ちょっと話あるんだけどいいですか?」
「ああ、なんだろう?」
「す、好きなんです!」
京楽が後ろにいる場所で、ユンは浮竹に告白をした。
「もちろん、無理なのは分かってます。私は魔族で、あはたはエルフ」
「いや、そういう以前に俺にはすでに伴侶がいるんだ。後ろで固まってる、あいつだよ」
「あ、そうだったんですか」
ユンは、しゅんとなったが、すぐに顔をあげた。
「あー、告白して振られてすっきりした―。私も寝ますね」
「ああうん、おやすみ」
「台風みたいな兄妹だね」
「まぁ、そうだな。それより、この残った料理、俺らでは食べきれないな。冷蔵庫に入れておこうか」
「うん、そうしよう」
次の日の朝、6時に叩き起こされた。
「朝食まだかよ?」
「ああ、はいはい、今起きて作るよ」
寝ぼけ眼で、京楽はトーストを4枚焼いて、浮竹を起こして、スクランブルエッグを4人分用意して、ダイニングテーブルの椅子に座った。
「「いただきます」」
ユンとボルは・・・・ユンは分かるが、ボルは言葉遣いは乱暴だが、礼儀はわきまえてあるらしかった。
浮竹と京楽も、言葉に出さないがいただきますと心の中で言って、食べていく。
「「ごちそうさま」」
ユンが、朝ごはんの片付けを手伝ってくれた。
「ユンちゃん、いいお嫁さんになれるよ」
「本当?じゃあ京楽さんが夫になって」
「んだとこらぁ、ユンの夫になるだって?」
「違う違う、冗談だよ。ね、ユンちゃん?」
「半分本気なんだけどな。シャイターンの捨て子白いダークエルフだったって有名じゃない。京楽さんのことでしょ?」
「そうだけど、僕には浮竹がいるからね」
「なんだ、そうだったのか。水くせぇな。そうならそうと言ってくれりゃあいいのに」
「いや、ボル君に、いきなりできてますなんていう勇気はないよ」
「ボル君、いつ出発するんだ?」
「あー、8時くらいかな。空間転移で帰るから」
「じゃあ、ユンちゃもお別れだね。元気でね」
「はい。浮竹さんも京楽さんもお元気で」
「じいさんを、町の宿屋で待たせてあるから、ちょっくらとってくるぜ」
ボルは、凄まじいスピードで宿屋があるほうに走っていき、すぐ帰ってきた。
ボルの右手には、魔族のおじいさんがいた。
「やあ、はじめまして、エルフの方々。ユンとボルの祖父です」
「じいちゃん、そんな話はもういいから、魔大陸に戻るぞ」
「ユン、ちゃんと気持ちは伝えかい?」
「はい、おじいちゃん。でも、振られちゃいました」
「そうかそうか。人生は長い。そういうときもある」
「じいちゃん、それにユン、俺の手を離すなよ」
空間転移の魔法陣が起動しはじめる。
次の瞬間には、ボルもユンもその祖父もいなくなっていた。
「ああ、今日は濃い一日の始まりだねぇ。今日は休みにしようか。昨日は心配で夜もまともに眠れなかったし、6時に叩き起こされたせいで、寝不足気味だし」
「ああ、俺も眠い。二度寝をしよう」
「「あ」」
二人してハモる。
師匠である剣士京楽の家に、ブルンを遊びにいかせたままだった。
京楽は、つい最近空間転移の魔法を覚えた。
「寝る前に、僕が迎えにいってくるよ」
「ああ、頼んだ」
浮竹は、一足早く眠ってしまった。
京楽は、空間転移の魔法でロスピア王国の剣士京楽の家の前までくると、呼び鈴を鳴らした。
『はーい』
「ああごめん、ブルンを引き取りにきた」
『ああ、奥の部屋にいるから、とりあえずあがりなよ』
「おじゃまします」
『あ、エルフの京楽。ちょうど、ブルンが寂しがっていたとこなんだ』
「くくるーー!!」
ブルンは、プルンと遊んでいたがエルフの京楽の姿を見て、顔に体当たりしてきた。
「ブルン、痛いから」
「くくる!」
「え、浮竹?家で寝てるよ。電撃のボルが家におしかけてきてね」
『電撃のボルだと?何もされなかっただろうね?』
『大丈夫だろう。中立を守っているようだし』
「ああ、戦闘には至らなかったよ。妹のユンちゃんとおじいさんを魔大陸に送るついでに、礼をしに僕らの家に寄っただけみたい」
『それなら、いいんだけど』
「浮竹はまだ寝てるし、僕も正直凄く眠いんだ。ボルのせいでほとんど寝れなかったから」
『そうか。じゃあエルフの浮竹にもよろしくと言っておいてくれ』
「うん、じゃあ、僕も戻って寝るね」
部屋の中で、空間転移の魔法陣を描き、エルフの京楽とブルンは消えてしまった。
『今度は、エルフの京楽まで空間転移の魔法を覚えたのか。プルンといい、便利そうだな』
「ププゥ~~~」
プルンは、ブルンと別れたことを哀しんで青くなっていたが、りんご10個をさしだされて、黄色になるのであった。