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堕天使と天使外伝

「金貨5枚」

『買った』

堕天使の京楽は、ヴァンパイアの京楽にフェンリルの浮竹と天使の浮竹が二人でデートした時に、隠しカメラで撮った写真を売りつけていた。

「こら、京楽!何を売ってるんだ!」

「浮竹がフェンリルの浮竹とデートという浮気をした証拠写真」

『浮気じゃないぞ!本気だ!』

フェンリルの浮竹の言葉に、堕天使の京楽は飛び上がった。

「本気だって!許せない!浮竹は僕のものだよ!」

『天使の浮竹はお前のものじゃない。誰のものでもない』

「いいえ、僕のものですぅ。浮竹はあげないからね!」

堕天使の京楽は、フェンリルの浮竹に舌を出して、天使の浮竹を抱きしめた。

『ぐぬぬぬぬ』

「おいこら、2人とも俺は俺のものだ」

『だ、そうだよ』

ヴァンパイアの京楽が、溜息まじりに威嚇しあう堕天使の京楽とフェンリルの浮竹の仲裁に入った。

『天使の俺、デートしよう!今回は山にピクニックに行こう』

「え、あ、まぁ構わないが」

「無論僕もついていくからね!」

『ボクもついていくけどねぇ』

『デートだから、距離はとってくれよ』

フェンリルの浮竹は、天使の浮竹の了解をもらい、嬉し気に準備をしだした。

「え、今から行くのか」

『今からだ!』

「分かった、軽装に着替えてくる」

『あ、俺の服を貸してやる』

「あ、ああ」

「きいいいいい」

嫉妬で燃える堕天使の京楽に、フェンリルの浮竹は。

『バーカ、バーカ』

とバカにして、尻尾をぶんぶん振っていた。

堕天使の京楽をこけにできるのが、よほど嬉しいのか、はたまた悪戯心がくすぐられるのか。

こうして、4人は浮竹のデートという名のピクニックに出かけた。


「ぐぬぬぬ、手を握り合ってる」

『それくらい、いいじゃない。かわいいもんだよ。かわいい子二人ではしゃいじゃって、見ているこっちは・・・・キミは悔しいんだろうけど、ボクは微笑ましいけどね』

「きいいいいいいい」

堕天使の京楽は、フェンリルの浮竹の行動に嫉妬心をあおられまくっていた。

『京楽、昼ごはんにしよう。堕天使の京楽の飯はちなみにない。めざしならあるから、それでもかじってろ』

フェンリルの浮竹は、ヴァンパイアの京楽が作ってくれたお弁当をシートの上に広げた。

フェンリルの浮竹と、天使の浮竹、ヴァンパイアの京楽でご飯を食べる。

ちなみに、堕天使の京楽は隣のシートで、弁当を用意していなかったので、めざしをかじっていた。

「めざし、案外うまい」

『バーカバーカ。3回周ってワンをしたら、お前の分の弁当を出してやる』

「きいいいいい!僕はめざしが好物なんですぅ!」

「フェンリルの俺。あんまり、京楽をいじめないでやってくれ」

『ん、ああ、そうだな。仕方ない、弁当をやる』

フェンリルの浮竹は、何気に用意してあった堕天使の京楽用のお弁当を渡した。

「なんだかんだいって、お前たち二人、そこそこ仲はいいよな」

「そんなことないよ!こんなツンデレ!」

『そうだ、こんなずっと洗ってないパンツの京楽なんて!』

フェンリルの浮竹の言葉に、堕天使の京楽が反論する。

「ちょっと、洗ってないパンツの匂いでしょ!まるで僕が洗ってないパンツそのものか、それをはいているような言い方はよしてよ!」

『ふん、似たようなものだろう。臭いお前が悪いんだ』

「かわいくない!」

堕天使の京楽は、フェンリルの浮竹の尻尾がぶんぶん振られていることに気付いていなかった。

フェンリルの浮竹は、堕天使の京楽とのやりとりを心の底では楽しんでいた。

「ツンデレめ!」

『ツーン』

そんな二人のやりとりを見て、ヴァンパイアの京楽は笑っていた。

『おもしろい二人だね』

「フェンリルの俺、尻尾ぶんぶん振ってる」

『指摘しないであげてね。きっと恥ずかしがるから』

フェンリルの浮竹は、天使の浮竹と手を繋いで、歩き出す。

『俺たち、前世は双子だったのかもな』

「ああ、そうかもな」

天使の浮竹は尻尾をぶんぶん振り続けているフェンリルの浮竹がかわいくて、握っていた手を握り直す。

「あああ、また距離が近い!」

堕天使の京楽は、また嫉妬でもやもやしていた。

それを、ヴァンパイアの京楽は和やかな視線で、全体を見つめる。

『まぁ、いいじゃない。浮竹二人は楽しそうだし』

確かに、フェンリルの浮竹も天使の浮竹も楽しそうにしていた。

嫉妬でパンクしそうな堕天使の京楽は、我慢しまくった。

結局、ピクニックは4時間ほどで終わり、帰路につく。

『いたたたた』

『どうしたの、浮竹』

『足をくじいた』

フェンリルの浮竹がうずくまる。

「シャインヒーリング」

堕天使の京楽が、自然と回復魔法をかけてくれた。

『こ、こんなことしても、点数稼ぎにはならないからな!でも、ありがとう』

「どういたしまして・・・・・普通に接してたら、かわいいのに」

堕天使の浮竹の「かわいいのに」という言葉に、フェンリルの浮竹は真っ赤になった。

『ばか、あほ、まぬけ!』

尻尾をピーンと立てながら、まくしたてる。

「はいはい。どうせ僕は洗ってないパンツの匂いの京楽ですよ」

『あり、が、とう』

ぶんぶん尻尾をふって、フェンリルの浮竹は、つたない言葉で再度ありがとうと言った。

その光景を、天使の浮竹とヴァンパイアの京楽が和やかな笑みを浮かべながら見ているのであった。



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堕天使と天使22

「人を襲う人狼が出るんだ。しかも、ミスリルゴーレムの護衛つきの」

冒険者ギルドのギルドマスターである男の娘は、浮竹と京楽に依頼を出した。

ミスリルゴーレムは、ミスリルでできており、硬くて普通の刃物や魔法は通じない。

人狼が出る場所は人里離れた村で、夜の月のない晩に決まって出没して、人をすでに10人は殺害しているらしい。

「場所も遠いし、君たちに行ってもらいたい」

「ああ、分かった」

「頼んだよ」

「人狼かぁ。普通は人は襲わないんだけどね。しかもミスリルゴーレムの護衛つきとか・・・・どんな人狼なんだろうねぇ」

「少女だそうだ」

ギルドマスターは、そう言って言葉を紡ぐのをやめた。

「少女か。いかに幼くても、人に害を成すのであれば駆除するしかないな」

浮竹はあまり気乗りしなかったが、依頼はこなすようだった。

「じゃあ、月のない晩は3日後だよ。移動に丸1日かかるから、もう今からでも出発して、襲撃に備えよう」

藍染は、いつ目覚めるかも分からぬ眠りについており、市丸ギンもこのところ出没していない。

力を奪われた、浮竹の父である大天使長ミカエルは力を取り戻し、今のところ問題はいつ藍染と市丸が襲撃してくるかの問題で、それ以外はなかった。

「じゃあ、もう今日の夜に出発しよう。移動に1日かかるらしいから、休憩を挟んで1日と少しだな」

「僕がずっと車を運転するよ。一週間くらい眠らなくても平気だからね」

「それはだめだ。俺が許さない。京楽には万全の体制でいてほしい」

「分かったよ。じゃあ、間を挟みながら、休憩しつつ移動で」


浮竹と京楽は、車ではなくアイテムポケットに、食料と水、毛布などを入れた。

何かあるか分からないので、回復用のポーションも準備していた。

「じゃあ、移動しよう」

「ああ」

眠くなるだろうに、ヒーリング系の音楽を鳴らしながら、京楽の運転する車は猛スピードで走り出す。

浮竹は、アイテムポケットから取り出した小説を読みながら、京楽の運転に身を任せていた。

休憩を挟んで仮眠して、1日と少しばかり。

人狼の出るという村についた。

「ああ、あなたが退治人の・・・・・・」

「はい、依頼を受けてきました」

「お願いします!もう10人も殺されているんです!お金はなんとかかき集めました!」

それでも、金貨40枚くらいだった。

貧しい村のようで、普通に冒険者ギルドに依頼するには倍以上の金貨500枚はいる。

そんな内容の、依頼だった。

冒険者ギルドのギルドマスターは、謝礼額が低い仕事で、人が死んだりするような案件を回してくる。

まぁ、浮竹と京楽は祓い屋というか退治屋として動いており、依頼の報酬金額が少ない依頼でも受けた。

「明日、月のない晩になります。村のどこかにいれば、襲われるんです。とにかく血の匂いに敏感で、この前の駆除に失敗した冒険者さんは、豚の血をまいておびき寄せていました」

「じゃあ、俺たちにも豚の血を工面してくれないか。おびき出して確実に、息の根を止める」

「はい、用意しますので、今日は村長の家で休んでください。明日の晩に備えて」

「分かったよ。村長の家はどっちかな?」

「あの丘の上にあります」

村人は、村長の家を指さした。

浮竹と京楽は、村長の家で1日厄介になった。



「さて、夜になったよ、浮竹。豚の血を、村の外れにまこうか」

「ああ、そうだな。念のため村人には村の外に避難してもらったし」

2人は、豚の血を村の外れにまいて、時を待った。

深夜の3時頃になり、かさかさと草むらが動いた。

人外の気配を察知して、浮竹が動く。

「カラミティファイア!」

「きゃあ!」

それは、本当に少女というにも幼い襲撃者だった。

8歳くらいの、女の子んお人狼だった。

「おのれ、冒険者か!この前みたいに、血祭にあげてやる!コウ、おいで!」

クルルルルーーーー。

機械音を出して、ミスリル製のゴーレムが現れた。コウという名前らしく、まずは京楽に襲いかかってきた。

「シャイニング!」

「きゃあ!」

人狼の少女の目を潰して、ミスリル製のゴーレムを、京楽は地獄の炎で溶かす。

「ヘルファイア!」

ドロドロと溶けていくコウを察知して、人狼の少女は叫んだ。

「おのれ、母様を辱めて殺し、父様を拷問して殺し・・・・この村の連中を庇うか!一緒に殺してくれる!」

「ちょっと待って!その、母様と父様というのは・・・・・・」

「死ね!」

人狼の少女は、浮竹の首をへし折った。

へし折ったように見えた。

実物を伴う幻影だった。

浮竹は、蔦の魔法で人狼の少女をぐるぐる巻きにして捕らえた。

「おのれ。こうなれば、共に死ね!ダークネスサンクチュアリ!」

「危ない、浮竹!」

京楽は、浮竹を庇って右手をなくした。

「京楽!」

「大丈夫、後で再生するから」

人狼の少女は、自分もダメージを被り、息も絶え絶えだった。

「君、名前は?」

「アスラン」

「この村の人に恨みがあるのか?」

「この村の若い連中が、母様を慰み者にして殺し、愉悦のために父様を拷問して、人狼の肉は不老だという伝説を信じて食べた。復讐をして、何が悪い!」

「そんな・・・・・・・」

浮竹は、京楽のなくなった右腕をとりあえず止血して、人狼の少女に回復の魔法をかけるが、効かなかった。

「これは闇の禁忌。そう簡単には治せない。私はもうすぐ死ぬ。でも、その前にお願いだ、母様と父様を殺した連中の罪を、贖うようにして」

「分かった。それが真実なら、罪を贖わせよう」

「ありがとう。これで、安心して私も母様と父様の元にいける」

「アスラン!」

知り合ったばかりのアスランは、安らかな顔で死んでいった。

「夜が明けたら、村の連中を魔法で尋問しよう。アスランが言っていたことが本当だったら、警察に引き渡そう」

「うん、そうだね」

浮竹は、京楽のなくなった右腕の傷にキスをして、命の炎を燃やして再生させた。

「ゴッドヒール」

「自分で再生できるのに」

「いや、酷い呪詛がかかっていた。命の火を燃やさなければ再生できないだろう」

「浮竹、僕のために寿命が短くなったの?」

「天使も堕天使も長い時を生きる。少しくらい短くなっても平気だろう」

「そんなのやだよ!」

京楽は叫んだ。

そして、浮竹を抱きしめた。

「君は僕のものだ。君の命の火も、僕のものだ・・・・・・」

「んっ」

貪るような激しいキスを受けて、浮竹は京楽の背に手を回した。

「こういうのは、全て終わってからにしてくれ」

「うん、分かった」


結局、村の若い連中を、嘘を見破る魔法で尋問すると、アスランの母親と父親を殺したのは事実であると分かり、警察を呼んで捕縛してもらい、殺しに関わった村人の大半が豚箱いきとなった。

報酬の金は払ってもらえなかったが、浮竹も京楽も、仕方ないとして受け入れた。

「アスラン、かわいそうだったね」

「でも、復讐でも人殺しはだめだ」

「そうだね」

報酬金の代わりに、村長のお宝の魔石を、京楽はしっかりともってきていた。

冒険者ギルドに売ると、金貨200枚になった。

「村長だけ贅沢してたっぽいからねぇ」

「まぁ、村長も事件に関わって豚箱いきだしな」

浮竹は、京楽のしでかしたことに目をつぶった。

「ねぇ、全部終わったよ。続き、してもいい?」

「あ、寝室で・・・・・」

「もう待てないよ」

京楽に押し倒されて、浮竹は目を閉じるのであった。





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堕天使と天使外伝

『貸し切りのプール?』

「そうだ。京楽がどこかのマダムから奪い取ってきた金で、レンジャー施設のプールを貸し切りにしたらしい」

フェンリルの浮竹は、尻尾をばっさばっさと振って、天使の浮竹は、堕天使の京楽に金を貢がされたマダムがかわいそうだと思っていた。

「奪い取ったなんて人聞きの悪い。ちゃんと依頼を達成してもらった報酬金だよ」

「額が多すぎる」

「それは依頼人が決めることで、浮竹たちは心配しなくていいよ。ということで、プールに行こう!いいよね、ヴァンパイアの僕!」

『構わないけど、フェンリルの浮竹には耳と尻尾があるから、尻尾の穴のあいた水着を作らないと』

「そんなこともあろうかと、ちゃんと準備しておきました!」

堕天使の京楽は、浮竹サイズの水着に尻尾用の穴があいたものを取り出した。

『なんでそんなの用意周到なのさ』

「だって、ないと行かないっていいだしそうだから」

「まぁ、せっかく貸し切りにしてもらったんだ。遊びにいこう、フェンリルの俺にヴァンパイアの京楽」

天使の浮竹は、フェンリルの浮竹の尻尾の振り具合に苦笑していた。

『施設のプールって、ウォータースライダーなるものがついているんだろう!?』

「ああ、ついてるぞ」

フェンリルの浮竹は、施設のプールのパンフレットに目を通していた。

『行こう!滑ってみたいし、泳ぎたい!』

「貸し切りだから、フェンリル姿で泳いでも大丈夫だぞ」

『それは助かる!』

黒猫になった堕天使の京楽と違って、フェンリルの浮竹はフェンリルの狼姿になって人型に戻っても、ちゃんと衣服は着ていた。

こうして、4人は施設のプールに出かけるのであった。


『ひゃっほおおおお』

もう何度目かになるか分からない、ウォータースライダーを滑り落りて、フェンリルの浮竹は次には狼姿になって犬かきで泳いでいた。

『僕は、泳ぐのはあまり得意じゃないから、ここでまったりしてるよ』

施設は外にあるので、さんさんと降り注ぐ太陽の光にやられそうで、ヴァンパイアの京楽はビーチパラソルの下で、冷たいオレンジジュースに氷をいっぱいいれて、魔法で自分のいる空間だけを冷やして涼んでいた。

『京楽も滑ればいいのに』

『僕はああいうの苦手』

『じゃあ、一緒に滑ろう、天使の俺!』

「ああ、いいぞ」

浮竹たちは、手を繋いで歩き出す。

それに、堕天使の京楽が何か言いたそうにしていたが、我慢していたが、何度も一緒に滑り落ちる姿に言葉を出す。

「ちょっと仲良すぎじゃない?もうちょっと離れてくれないかなぁ」

『なんだ、堕天使のラフレシアの臭い京楽。洗ってないパンツの分際で、文句があるのか!』

「洗ってないパンツの分際ってなにそれ!ちゃんとパンツは毎日洗濯してますぅ!僕の浮竹を取り上げないでよ」

『別に取り上げてなんか・・・・天使の俺、俺と一緒に居るのは嫌か?』

「全然そんなことないぞ。楽しい。京楽はほっといて、かき氷を作ろう!」

『あ、俺メロンシロップがいい!あといちごも!』

「楽しそうだねぇ」

ヴァンパイアの京楽が、かき氷を作り始めた天使の浮竹からかき氷を受け取って、悩んだ末にブルーハワイのシロップをかけた。

『この、なんとも健康に悪そうな色がいいね』

『あ、京楽、半分くれ。俺のも半分やるから』

『はいはい。じゃあ、半分こずつ食べようか』

そんな仲睦まじげな様子を見て、堕天使の京楽も自分が食べていた練乳のかき氷を見て、天使の浮竹のいちごのかき氷を見た。

「やらんぞ。半分個しなくても、また作ればいいだけだ」

「くすん」

いちゃつきたかっただけなので、京楽は練乳のかき氷を一気に食べてしまった。

堕天使の京楽は、何度もかき氷を食べた。

そして、案の定腹痛に襲われた。

「あんなにかき氷を食うからだ」

『ラフレシアの京楽は、腹を壊したのか。かき氷の食いすぎだ」

堕天使の京楽が苦しんでいる姿に、ふりふり振っていた尻尾はぺたんとなっていた。

ツンデレな言葉とは裏腹に、尻尾は正直で、心配しているようだった。

『腹をくだすラフレシアの京楽は、飯を作れないだろう。天使の俺、今日は俺と京楽の館に泊まらないか?』

「いいが、いいのか?」

『浮竹がそう言ってるんだよ。問題ないなら、泊まっていってよ』

「ぬおおおおおおおお、トイレえええぇぇぇぇ」

「アホは放置するか」

「アホじゃないトイレ・・・ぬおおお、掃除中!こうなったら、黒猫姿でしてやる!」

堕天使の京楽は黒猫姿になると、茂みの中に消えてしまった。

『黒猫姿だからいいけど、人型だったらノグソだね』

『うわ、エンガチョ』

「じゃあ、京楽はほうっておいて、館にいこうか」

『うん、おいで』

『歓迎するぞ!』

その日、天使の浮竹はヴァンパイアの京楽とフェンリルの浮竹が作ったサンドイッチとカルボナーラを食べた。

夜は、浮竹たちは二人で同じベッドで眠った。

『うーんラフレシア・・・・洗ってないパンツ・・・・・』

「どんな夢を見ているんだか」

天使の浮竹は苦笑して、同じように夢の中に滑り落ちていった。



「にゃあああああああ!!」

朝起きると、黒猫の京楽がかりかりとベッドをひっかいていた。

フェンリルの浮竹に抱き着かれて、天使の浮竹は起きるとフェンリルの浮竹を起こした。

「朝だぞ」

「にゃああああ!浮気にゃあああ!!!」

「どこぞのマダムに、手でも出したんだろう?」

「偽りの言葉だけだよ!」

フェンリルの浮竹は起きると、黒猫の京楽を見て、尻尾をばっさばっさと振った。

『追いかけっこするか!』

「しない!ただ浮竹を迎えにきただけだよ!」

『鬼は俺だ!天使の浮竹も、一緒に追いかけっこしよう』

「朝からハイテンションだな」

『昨日いっぱい遊んだけど、今日も遊びたい!』

フェンリルの浮竹はばっさばっさと尻尾をふって、寝ぼけ眼で黒猫の京楽をおいかけてくわえて戻ってきた。

『くさい。洗ってないパンツの味がする』

「じゃあくわえなきゃいいじゃない!」

『くわえないと、お前逃げそうだったから』

「ああもう、僕は逃げるよ!帰るよ、浮竹!」

「あ、ああ。フェンリルの俺、それにヴァンパイアの京楽、またな」

京楽は、浮竹をおいて先に逃げるように自分の世界に戻っていった。

『まぁ、うちの浮竹はこんなんだけど、そっちのボクのこと、それなりに気に入っているようだから』

「ああ、分かっている」

『またなぁ、天使の俺!また近いうちに遊ぼう!』

「ああ、またな」

フェンリルの浮竹は、尻尾をばっさばっさと振っていた。

尻尾の振り過ぎじゃないかってくらい振ってるので、天使の浮竹は苦笑しながら帰るのであった。

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堕天使と天使21

天使の浮竹は、フェンリルの浮竹と一緒に行動していた。

フェンリルの浮竹は狼の耳をぴこぴこさせて、尻尾をぶんぶん振っていて、喜んでいた。

2人は、いわゆるデートなるものをしていた。

ただし、すぐ近くに堕天使の京楽とヴァンパイアの京楽という保護者つきだが。

『次、あれを食おう。あれ、甘くて俺は好きだ』

天使の浮竹のいる世界でデートしているため、クレープ屋さんがあった。

「そんなに急がなくてもいいぞ。違う味を2つ買って、お互い半分に分け合おう」

『お、それはいいな。よし、俺はバナナ味で!』

「じゃあ、俺はチョコ味で頼もう」


仲睦まじく、デート(?)を楽しむ二人を、ヴァンパイアの京楽は二人ともかわいいなぁと思いながら、一方で堕天使の京楽はムキーーーと苛立っていた。

「ちょっと、ヴァンパイアの僕!あの二人、間接キスになるようなことしてるよ!」

『実際にキスしたことあるんだから、その程度で目くじらはたてないよ』

「ムキーーーー!!!ちょっと、僕、行ってくる!」

『だーめ。ボクの浮竹が心から楽しんでるんだから、邪魔はさせないよ』

「君はどっちの味方なんだい!」

『もちろん、ボクの浮竹の味方さ』

2人の浮竹は、ウィンドウショッピングを楽しみ、ゲームセンターで1時間ほどゲームをしてクレーンゲームからでかいぬいぐるみをゲットしていた。

最後に、夕飯にファミリーレストランに入り、夕食を食べていろんな話に花を咲かせていた。

「じゃあ、今日はここで。楽しかったぞ」

『お、俺も楽しかった!また、で、デートしてくれ!』

「デートっていうか、ただ遊んでるだけな気がするが・・・・まぁ、いいぞ」

『やったぁ!あ、京楽!』

同じファミリーレストランで夕食をとっていた京楽たちに気づいて、フェンリルの浮竹はヴァンパイアの京楽に、でかい熊のぬいぐるみを押し付けた。

『ゲームセンターなる場所のクレーンゲームでとれたんだ。やる』

『かわいいね。洋館の寝室にでも飾ろうか。今日は楽しかったかい?』

『うん、すごい楽しかった。臭い堕天使の京楽のパンツを洗っていない匂いがたまにしてたのだけが嫌だったけど、楽しめた』

2人の京楽が、こっそり後をつけていたことには2人の浮竹も気づいていた。

「ちょっと待ってよ。僕が臭いってなってしまうの分かるとして、なんでパンツを洗ってない匂い!?そんなのかいだことあるの!?」

『ない』

「じゃあ、そんなこと言わないでよ!」

『お前は絶対洗ってないパンツの匂いだ!ラフレシアでも可』

「まぁ、京楽、ついてくるなと言ってったのについてきていたお前も悪いんだぞ」

天使の浮竹が、堕天使の京楽に助け舟を出すどころか、一緒に非難した。

「酷い!僕はフローラルないい匂いしかしないよ!」

「まぁ、フェンリルの俺もヴァンアイアの京楽も、今日はこれでお開きにしよう。楽しかった。また、機会があれば遊ぼう」

『ああ、またデートしてくれ!』

『浮竹がすごく楽しそうだから、ボクからも頼むよ』

「僕の浮竹は僕のものですぅ。デートなんてもうさせない!」

『カラミティファイア』

怒ったフェンリルの浮竹に尻を燃やされて、堕天使の京楽は飛び上がった。

「あちちちちちち!」

急いで魔法で水を出すと、火を消したがけつの部分の服がこげて、尻が丸見えになっていた。

『う、汚いものを見てしまった・・・・・・』

『何かで隠しなよ。同じ顔してるだけあって、地味に恥ずかしい』

堕天使の京楽は、アイテムポケットからバスタオルをとりだして、それを腰にまいて一時的なしのぎとすることにした。

「まったく、狂暴なんだから・・・・・」

『何か言ったか?』

「なんでもありません」

フェンリルの浮竹とヴァンパイアの京楽は、自分の世界にクマのでかいぬいぐるみと一緒に帰ってしまった。


「悠長に遊んどる暇あるんかいな。自分が狙われてるって自覚、もったほうがええで」

現れたのは、市丸ギンだった。

ざっと臨戦態勢になる浮竹と京楽だったが、ギンは楽しそうに笑った。

「そないに構えなくても、今日はなんもせぇへん。藍染は大天使長ミカエルの力を取り込んだ反動か、眠りについているし、しばらくの間は平和や。でも警戒を怠るのは感心せんな」

「藍染が眠り・・・・・父様は無事だったが、大天使長の力を奪うからそうなるんだ」

「藍染・・・・昔から、力を求めてたからねぇ」

藍染もギンも、そして京楽も世界で始めの天使といわれる、神の12使徒であった。

長くを生き、堕天したのは京楽だけではない。

ギンと藍染も堕天使に堕ちていた。

「藍染は、しばらくしたら動きだすで。そん時は、ボクも敵にまわるさかい、気ぃつけや」

「市丸!なぜ君ほどの人物が藍染なんかに従う!」

「さぁ、なんでやろな。ボクにもよう分からんわ。ただ、守りたいものがあって、それを守ってくれた。その恩返しかもなぁ」

市丸ギンには、松本乱菊という守りたい存在の女性がいた。

同じ堕天使で、悪魔に堕ちそうになったところを、藍染が助けてくれた過去があった。

悪魔は、完全に天使や神の敵だ。

容赦なく殺される。

その分堕天使はあいまいで、天使も神も扱いに困っていた。

「守りたい者がいるなら、守り通しや。ボクから言えるのはそれだけや」

「市丸!」

京楽が名を呼ぶが、市丸ギンは空気に溶けるようにいなくなってしまった。



「神の12使徒・・・・なぜ、同胞だった者たちで争わないとけないんだろう」

「京楽・・・」

浮竹が、京楽の背をなでた。

京楽は、浮竹を抱きしめる。

「浮竹、僕は君を守る。守り通してみせる」

「俺は、守られてばかりいるほどやわじゃないぞ」

「知ってる。でも、藍染は神の12使徒の中でも一番の強者だった。神に堕天使にされたことに怒り狂い、神を殺そうとして逆に殺された。なのに、転生を繰り返して悪魔やら堕天使として生まれてくる。もしも戦うことになったら、もう転生しないように呪いをかけるしかないね」

「呪いか・・・・」

天使である浮竹には呪詛は専門外だったが、堕天使である京楽には使えるようだった。

「藍染・・・・居場所が分かれば、眠りについている間に叩きたいところだけど、市丸がついてるし、居場所も分からないから、とりあえず次の襲撃に備えよう」

「ああ、そうだな」

いつ、どこで襲ってくるかも分からない。

そんな存在は、今は眠りについている。

その眠りが長いのか短いのかは、誰にも分らなかった。

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堕天使と天使20

その日は、京楽の誕生日だった。

浮竹はヴァンパイアの京楽のところに行ってこいと、京楽を追いだして、キッチンで豪華な料理をつくり、ケーキを作った。

「味は大丈夫だと思うんだがな。なにせ相手は三ツ星レストランでコックもしていた経験のある京楽だ。さて、京楽を呼び戻すか」

スマホで、京楽に連絡を入れる。

電話ではなくて、メールにした。

「早く帰ってこいよ・・・・・・」

追い出しておいて、用意ができると帰ってこいというのは、ちょっとどうかと思ったがまぁいいかと思った。

帰ってきた京楽は、テーブルの上に並べられた京楽の好きなメニューのご馳走と誕生日ケーキに目を輝かせた。

「これ全部、浮竹が一人で作ったの?」

「ああ、そうだ。味はお前の作ったものには劣るかもしれないが・・・・・」

「そんなことないよ!愛情のこもった料理は何より美味しいんだから!」

京楽は、浮竹と一緒にご馳走を食べて、京楽のバースデーケーキを食べた。

「あと、これは誕生日プレゼントだ」

そう言って、浮竹が渡してきたのは、サファイアでできたカフスボタンだった。

「ありがとう!大事にしまっておくよ!」

「いや、ちゃんと使ってくれ。サファイアといってもそんなに高くない石を選んだから、日常的に使っても大丈夫だ」

京楽は、浮竹に抱き着いた。

「うわ!いきなりなんだ!」

「僕って、愛されてるなぁと思って」

「そりゃ、愛してるぞ。俺の伴侶なのだから」

「このまま、浮竹もいただいていい?」

「む・・・今日だけだぞ」

2人は、寝室に向かっていった。



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「加減を覚えろ」

情事の後、へろへろになった浮竹に、怒られてぶたれまくったので黒猫姿になって、にゃあにゃあいってそれ以上ぶたれないようにした。

「む、卑怯だぞ。黒猫になるなんて」

「むふふふふ。今日はいい日だなぁ。かわいかったなぁ、抱かれてる浮竹」

「それ以上言ったら殺すぞ」

浮竹は、拳を振り上げた。

「にゃあああ。簡便してよ」

「くそ、黒猫は京楽だってわかっているのに殴れない・・・・・・」

「ふふふ、僕のこの愛らしい姿の前には浮竹もメロメロだね」

「言ってろ」

「・・・・・・・だよ」

「?何か言ったか?」

「ううん。なんにも」

「ここだよ・・・・・・」

その声は次第に大きくなり、浮竹にだけ聞こえた。

「声がする。懐かしい・・・・・」

「浮竹?」

「ここだよ。私の復讐のためのかわいい天使」

浮竹は、声が聞こえるほうに歩き出す。

「どこへ行くの浮竹!」

「声がする・・・・俺を呼ぶ声が・・・・・」

「行っちゃだめだ、浮竹!くそ、なんで体が動かないんだ!」

京楽は、金縛りにあったように体が動かなかった。

浮竹は、窓を開けて6枚の翼を出すと、宙に羽ばたいた。

「ここだよ、私の復讐のためのかわいい浮竹」

宙に浮いていたのは、黒い6枚の翼をもつ堕天使だった。

手配書に描かれていた顔そっくりで、すぐに藍染だと分かった。

「藍染、僕の浮竹に何をするつもりだ!」

「なぁに、ちょっと借りるだけだよ。殺しはしないから安心したまえ」

「藍染・・・・・?ミカエル父様ではないのか?」

「ミカエルの血を少しいただいただけだ。ミカエルと同じ気配になるためにね」

浮竹には、藍染が実の父のミカエルに見えていた。

「父様・・・・・・」

「さぁ、行こうか浮竹。君のセラフの力を、貸してもらうよ」

「行かせるか!」

京楽はなんとか金縛りから脱出して、藍染と同じ6枚の黒い翼を出して人型の堕天使に戻ると、藍染に禁忌の魔法を放った。

「ファイナルフレア!」

「おや、動けるのか・・・・」

夢遊病のようにふらふらと、羽ばたいて藍染のところに行こうとしていた浮竹が正気に戻った。

「京楽!?俺は何を・・・・・」

「ちっ。まぁいい、今夜は挨拶代わりだ。またくるよ、浮竹。その時は、君は私の道具として働いてもらうよ」

「藍染!?ミカエル父様の匂いがする!父様に何をした!」

「少し血をもらっただけさ。生きてはいる。まぁ、一度力を一緒にとりこませてもらったから、ミカエルは用済みだ。もう手は出さないから、安心したまえ」

「藍染、浮竹に手を出すなんて許さないよ!エターナルアイシクルフィールド!」

「カウンターマジック」

京楽の出した氷の禁忌魔法は、藍染の手で跳ね返されて、京楽はそれをバリアで防いだ。

「く・・・・魔法が効きにくいのか」

「ふふふ。思い出すね、同じ12使徒だった時代を。私はギンにも手を貸してもらっている。ギンも、同じ12使徒だったね」

「市丸ギンか!」

同じ神の12使徒であり、京楽や藍染のように堕天使に堕ちた者、それが市丸ギンだった。

「なんや、争いごとは嫌いやで」

市丸ギンも、その場に何気なく存在していた。

「藍染、今回は失敗かいな。今度は成功するようにしいや」

「行くよ、ギン。じゃあ、また会おう、浮竹、それに12使徒であった京楽」

「二度と来るな!浮竹に手を出したら、生きていることを後悔させてやるからね!」

「だそうだよ、ギン」

「おおこわ。京楽も性格変わったなぁ。昔は色欲魔の無節操だったのに、この浮竹って子のことになると、そんなに怒るんかいな」

「ギン、藍染なんかに力を貸すな!」

ギンは、笑った。

「そんなこと言われても、命の鍵である核を握られとるからなぁ。まぁ、ほどほどに付き合って核解放してもろて、自由になるわ」

「ではね」

藍染とギンは、空気に溶けるようにいなくなってしまった。

京楽は、震える浮竹を黒い翼で包み込む。

「安心して。僕が、君の傍にいる。君に手を出させたりしないよ」

「京楽・・・・・・」

夜の風を受けながら、2人は藍染とギンが溶けていった空間をただ黙して見ているのだった。








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堕天使と天使外伝

天使の浮竹と堕天使の京楽は、ヴァンパイアの京楽とフェンリルの浮竹と一緒に海に行った。

泳いで遊ぶ中、ヴァンパイアの京楽は暑さに弱いらしく、ビーチパラソルの下で、暑い日光を遮って、飲み物を飲んでなんとか涼もうとしていた。

『みんなで競争だ!お城を作ろう!』

『ボクはパス。この暑さの下だと倒れそう』

「じゃあ、僕もパース」

堕天使の京楽がそういうと、フェンリルの浮竹が唸り声をあげた。

『参加しないと尻を噛むぞ』

「なんで僕だけそんな扱い!?」

「まぁまぁ、俺も参加するから」

天使の浮竹が、場を和ませようとする。

『じゃあ、競争だ。誰が一番立派な城を作るか!勝った者は、一番下だった者の言うことを1つ聞くこと!』

「なんだって!それは勝たないと!君の僕への態度を改めてもらうよ!」

『そう簡単にいくと思うなよ』

3人は、それぞれ制限時間を2時間として砂の城を作り始めた。

フェンリルの浮竹は、何処で覚えてきたのか、西洋の本当にありそうな立派な砂の城を作った。

天使の浮竹もそこそこ城に見れる形にものを作った。

しかし、堕天使の京楽が作った城は、城というよりただの砂の山だった。

『審査するのはヴァンパイアの京楽だ!』

『はい。何も言わなくても優勝はフェンリルの浮竹だね』

「それ、私情入ってない?」

『はいってないよ。見事なものでしょ、このお城。精緻過ぎて真似できる人いなさそう』

「確かに、すごいな。俺もそれなりのものを作ったつもりだが、なんだか恥ずかしい」

「ふん、僕の城はダイナミックだよ!」

みんな、ただの砂の山を城という堕天使の京楽をアホだと思った。

『じゃあ、ドベは堕天使の京楽だな。黒猫の姿で水かきして泳げ!』

「何その命令!なんで黒猫姿になって泳がないといけないの!海にさらわれちゃう!」

『なんなら、そのまま溺れ死んでもいいんだぞ』

堕天使の京楽は、溜息をついて黒猫姿になった。

海水パンツが地面に落ちる。

「僕の猫かきを甘く見ないでもらおうか!」

マッハで海に向かって駆け出す。

そして、波に乗って泳ぎ始めた。

「ふふん、人魚の子とデートした頃を思い出すなぁ」

『天使の俺を傷つける言葉だ!サンダーボルト!』

「ぎにゃあああああああああ!!でも僕はこれくらいで、猫かきをやめて溺れるわけにはいかない!」

半ば意味不明の使命感に燃えて、堕天使の京楽は波の間をひたすら猫かきして泳いだ。

「ああ、いい運動になった」

黒猫姿の京楽は、浜辺に戻るとぷるぷると体を震わせて水分を飛ばして、大好きな天使の浮竹の腕の中。

『いいなぁ。なぁ、京楽、お前もあれ俺にやってくれ』

『ええ!キミの場合、サイズがでかいから無理だよ。逆ならできるかもしれないけど』

『ん、逆ってことは、フェンリル姿の俺がお前を抱き上げるのか?』

『抱き上げることはできないだろうから、乗せてもらうかくわえられるかだね』

『むー』

「フェンリルの俺、そんな残念がるな。京楽は黒猫姿だから抱き上げられるだけで、まぁ見かけは綺麗な黒猫だけど中身は色魔の堕天使だからな」

『臭いしな』

フェンリルの浮竹の言葉に、天使の浮竹が黒猫姿の京楽を落っことす。

「臭くない!余計なこと言わないでよ!」

「ああ、言われたらなんか潮の香りが・・・帰ったら、猫用シャンプーで洗ってやるか」

『ずるいぞ、堕天使の京楽!天使の俺に洗ってもらうなんて!俺も洗ってほしい!』

「それは、まぁまた今度な」

天使の浮竹は笑って、フェンリルの浮竹の頭を撫でた。

フェンリルの浮竹は、尻尾をばっさばっさと振って、喜んでいた。

『んー、かわいいねぇ』

ヴァンパイアの京楽が、悦に浸る中、同じように黒猫の京楽も。

「かわいいなぁ。フェンリルの浮竹も黙っていればかわいい」

『あげないよ』

「いらない!絶対ほしくない!」

『だそうだよ、浮竹』

『俺もお前なんていらない!そこらの石より価値がない!』

「酷い!僕は天使の浮竹さえいればいいから、君なんていらない!」

フェンリルの浮竹は、狼の耳をぺたんとさせた。

『浮竹を傷つけないでね。サンダーボルト』

「ぎにゃああああああああああ」

ヴァンパイアの京楽は、堕天使の京楽に大分威力を落としたサンダーボルトの魔法をかけた。

「仕方ないやつだなぁ。ヒーリング」

天使の浮竹が、まだ黒猫姿の京楽(服がないので)に、回復魔法をかけてやった。

「浮竹は優しいねぇ。ああ、やっぱり僕には天使の君が一番大好きだよ」

黒猫姿で、ぴょんと天使の浮竹の肩に乗り、顔をこすりつける。

『ラブシーンなのかな、これ』

『さぁ。まぁどうでもいいから、帰ろうか』

『天使の俺、帰るぞ!そんなドブネズミみたいな黒猫は捨てていけ!』

「いや、これでも一応、伴侶だしな。一緒に帰るさ」

海での一日は、それなりに楽しい日であった。






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堕天使と天使19

フェンリルの浮竹に連れてこられて、服屋で天使の浮竹は背中があいている服を買われた。

その服にはマントがついていて、背中が隠れるようになっているので、外で着ても大丈夫だった。

『うん、やっぱりそれ似合ってるな』

フェンリルの浮竹は、天使の浮竹の買ってあげた服を着てくれてきたことに嬉しがっていた。

「はじめは背中がスースーして落ち着かなかったが、マントをすれば大丈夫だから、着ていても大丈夫になった」

『翼を出す時、服は破れないのか?』

フェンリルの浮竹の素朴な疑問に、天使の浮竹が答える。

「ああ。翼はアストラル体でできていて、霊的物質なんだ。衣服を着ていても、翼は透けて外に出る」

『じゃあ、その服じゃなくても良かったんだな』

がっかりするフェンリルの浮竹に、ヴァンパイアの京楽が助け舟を出す。

『彼に似合っているから、買ってあげたんでしょ。ほら、浮竹そんなしょげないの』

『むー。でも、似合ってるぞその服、天使の俺!』

「うん、ありがとう」

天使の浮竹は、真っ赤になった。

「ああ、僕の浮竹は何を着ても似合うからいいね」

『お前はボロ布でも着てろ』

「酷い!」

『べーっだっ』

フェンリルの浮竹は、堕天使の京楽に少々心を許していたが、元に戻っていた。

「フェンリルの俺、京楽とは仲良くしてやってくれ」

『お前がそう言うなら、少しだけ仲良くしてもいい。1ミリくらい』

「何それ!1ミリって仲の良い単位なの!?」

堕天使の京楽がわめく。

『まぁまぁ、ボクの浮竹はシャイだから』

「全然シャイどころかいじめてくるんですけど!」

フェンリルの浮竹は、狼の姿になって、黒猫姿になって逃げる京楽を追い駆けだした。

「浮竹~助けて~~~」

「京楽、ほどほどに遊んでもらえ」

「浮竹の白状者おおおお」

堕天使の京楽は、フェンリルの姿の浮竹に転がされて遊ばれるのであった。


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「でも、ほんとにその服似合ってるね」

京楽の言葉に、浮竹は赤くなった。

「マントなんてつけなくてもいいよ。君の綺麗な背中が見えていいね」

「翼で隠してやる」

浮竹は、セラフの光り輝く6枚の翼を出した。

「あ、反則!」

京楽も、漆黒の6枚の翼を出した。

「翼出してないと、自分が堕天使だってこと忘れそうだよ」

「お前の脳みそは軽いからな」

「酷い!ちょっと、フェンリルの君みたいなこと言わないでよ」

「いや、そんなつもりじゃなかったんだ。すまない」

しょげる浮竹の頭を、京楽が撫でた。

「依頼がきているな・・・・アークデーモン退治。悪魔か」

「ああ、思い出すなぁ。アークデーモンの女の子とちょめちょめした・・・」

「カラミティファイア」

「のぎゃあああああ」

自業自得な京楽を焦がして引きずって、依頼された場所まで車で移動した。

「いるいる・・・・アークデーモンが5体か」

「2体引き受けるから、残りの3体はお願いね」

「ああ、分かった」

大きな音を炸裂させて、建物の外に出てきたアークデーモンを、まずサンシャインの光で目を焼いて視界が効かないようにして、魔法で片付けていく。

「カラミティサンダー!」

「ファイナルフレア!」

京楽も浮竹も容赦はしなかった。

依頼だと、小さな子供を生贄として捧げており、まだ生きている子供がいるなら保護してほしいとのことだった。

魔法で灰をなり、魔石だけを残して消えていったアークデーモンのいた建物の中に入る。

5歳くらいの男の子と、3歳くらいの女の子がいた。

他にもいたが、皆生贄として捧げられて、息をしていなかった。

「もう大丈夫だ。俺たちが君らを責任もって保護するから」

「母さんに会えるの?」

「もう、痛いことしない?」

子供たちは、浮竹に縋りついた。

京楽は、そのうちの3歳くらいの女の子を抱き上げて、背中をさすった。

「うわああああああん」

「ああああん」

3歳の女の子が泣きだしたのをきっかけに、5歳の男の子も泣き出した。

「もう、怖いことも痛いこともないからな。安心してくれ」

「「うん」」

浮竹が5歳の男の子を抱き上げて、車に乗せて京楽も3歳の女の子を車に乗せて、冒険者ギルドまでいくと、魔石を提出し、依頼料をもらった。

子供を二人保護したことで、追加の謝礼金ももらった。

「それにしても、なぜアークデーモンが子供を生贄になんて・・・・」

「なんでだろうねぇ」

「悪魔がいってたの。藍染様のためだって」

保護された5歳の男の子が、保護者がくるまでの間、京楽と浮竹の傍にいた。

「藍染・・・・・その名前がここで出てくるのか」

藍染は、今回の事件の全ての黒幕であるようだった。

「藍染に懸賞金をかけました。見つけ次第、殺してほしい」

男の娘のギルドマスターは、他の冒険者にも藍染のことについて教えていた。

「藍染か・・・・なんでも、堕天使らしいな。京楽、お前は会ったことはあるのか?」

「うん・・・・あるよ。彼は、僕と同じ神の12使徒の一人だったから」

「じゃあ、2千年以上も生きているのか」

「さぁ・・・・転生を繰り返しているようだし。今は堕天使で、この前は悪魔だった気がする」

京楽は、藍染の顔をおぼろげながらにしか覚えていなかった。

常に認識阻害の魔法を使っていた藍染は、素顔が分からない。

「いつか、衝突する日がきそうだな」

「そうだね。きっと、神に復讐したがっているから、セラフを使って神を呼び出すだろう。浮竹、くれぐれも気をつけてね。君は大天使長ミカエルの子供だし、セラフとしての力は地上にいる天使の中で一番だよ」

「気をつける・・・・」

結局、何故藍染が子供を生贄にしていたかは分からずじまいなのであった。


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「ククク・・・・純粋な子供の魂は価値が高い。これで、大悪魔を召還できる」

藍染は、集まった子供たちの魂を封じ込めたガラス瓶を机の上に置くと、ゆっくりと目を閉じて、自分と同じ12使徒だったかつての仲間たちの顔を思い出す。

今活動しているのは、京楽とあと二人だ。

藍染は笑う。

「さて、この計画に賛同してくれる者は・・・・・・」

12使徒から、堕天したのは何も京楽や藍染だけではない。

藍染は、協力してくれそうな人物を思い出して、くつくつと笑うのであった。

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堕天使と天使18

『少しは、お前のこと認めてやる』

「ああ、明日は槍が降る」

フェンリルの浮竹の言葉に、堕天使の京楽は空を見上げた。

堕天使の京楽、天使の浮竹、ヴァンパイアの京楽、フェンリルの浮竹の4人で、ヴァンパイアの京楽の屋敷の庭の手入れをしていた。

季節は春をゆうに過ぎ去り、夏がこようとしていた。

綺麗に咲き乱れる朝鮮朝顔の鮮やかな紫と、薔薇園に咲いた白い薔薇が今日は見頃だった。

『すまないねぇ。何分広いものだから、2人だけで維持していくのは無理で、作り出した人形に管理を任せていたんだけど、薔薇を枯らしてしまってね』

ヴァンパイアの京楽は、天使の浮竹がもつ剪定鋏で、枯れた薔薇を切ってもらっていた。

『せっかくの薔薇園が、お前の臭さで汚くなるけど、許してやろう』

「何それ!僕は臭くなんでないですぅ!許すも許さないも、何もしてないじゃない!」

『存在が罪だ』

「はぁ!?君、僕を少しだけ見直してくれたんじゃなかったの!」

『見直したぞ。戦闘面では。プライベートでは、まだまだ』

「戦闘面でだけって、全然僕を見直してくれてないじゃない!」

『そんなことはないぞ。お前の存在を認めている。少しはな』

そう言って、フェンリルの浮竹は尻尾をばっさばっさと振った。

「京楽、フェンリルの俺と少し仲良くなったんだな」

「ええ、これが仲いいように見えるの!?」

「だって、お前をみて尻尾振ってるぞ、フェンリルの俺」

自分の尻尾がばっさばっさと振られているのに気づき、フェンリルの浮竹は真っ赤になって天使の浮竹の背後に隠れた。

『これは違う。その・・・お前が臭いからだ!』

「はぁ、ツンデレだね。まぁいいけど」

「薔薇園の手入れを終えてしまおう。茶菓子とかもってきているし」

4人で薔薇園の手入れをして、新しい苗を植えたり、肥料をやって水をやった。

「しかし、見事な薔薇園だなぁ」

『そうでしょ。僕の自慢の庭だよ』

『俺が育てた薔薇がこれだ!』

フェンリルの浮竹は、水色の薔薇をみんなに見せた。

薔薇が青い色素をもつことは今のところ、天使の浮竹のいる世界にはない。

水色の薔薇はすごく価値のあるものだった。

「水色の薔薇か。いいな」

『あ、天使の俺欲しいか?苗ならまだ余ってるぞ』

「もらえるのか?」

『もちろん、喜んで』

尻尾をばっさばっさと振って、フェンリルの浮竹は天使の浮竹の水色の薔薇の苗をくれた。

それを大事にアイテムポケットに入れて、4人は庭作業を切り上げて、お茶にすることにした。

『最近、こっちでも魔物の活動が活発化していてね。原始の聖女の件もあったりで、ちょっときな臭いことになってるよ』

「こっちの世界でも、魔物は活発化しているんだな。俺のいる世界でも、魔物の活動が活発化している。こちらと俺たちのいる世界は、合わせ鏡のようなものなのだろうか」

「そうだねぇ。なんか、暗躍する影があるとかないとか」

『こっちの世界でも、何か裏でありそうなんだよね』

『このパンケーキ、もっと食っていいか?』

フェンリルの浮竹は、目の前の美味しいパンケーキに夢中で、魔物のことなどどうでもよさそうであった。

「まぁ、俺たちの世界ではまだそっちの、原始の聖女がキメラになったような出来事はおきていないだけ、安心だけどな」

天使の浮竹は、苦笑いしながら、ヴァンパイアの京楽の分を食い尽し、さらに欲しそうにしているフェンリルの浮竹に自分の分のパンケーキをあげた。

『いいのか、天使の俺』

「家に帰れば、いつでも食えるからな」

ばっさばっさ。

フェンリルの浮竹の尻尾は揺れまくりだ。

「この食いしん坊狼め」

『うるさい。噛むぞ』

「噛んでから言わないでよ!痛い痛い!」

堕天使の京楽は、フェンリル姿になった浮竹に足を噛まれていた。

フェンリルの浮竹は、すぐに人型に戻る。

『パンケーキ・・・・これ、くせになりそうな美味しさだ』

「京楽が作ったんだぞ?」

『このパンケーキを、この臭い堕天使の京楽が?』

「そうだ」

『料理の面では一人前と認めてやろう』

「別に認めてくれなくていいですぅ」

「すねてる」

天使の浮竹は、堕天使の京楽の子供じみた仕草に、溜息を零した。

お茶会をして、それぞれの世界のことを話し合い、今後の方針を決める。

ヴァンパイアの京楽とフェンリルの浮竹は、引き続き世界の異変に敏感にいることに。

堕天使の京楽と天使の浮竹は、依頼を通して、世界の変化を見ることに。

そうして、4人はそれぞれ二人ずつ別れた。

元の世界に戻ると、堕天使の京楽と天使の浮竹のところに、依頼がきていた。

巨大なトロールが複数現れて、町を占拠しているとのことだった。

「出るぞ」

「うん」

車で町の近くまでいき、巨大なトロールの群れを発見して、殲滅に移る。

「アースクェイク!」

「フレアワールド!」

2人で、魔法を使って巨大トロールを退治していった。

「それにしてもでかいな。普通のトロールじゃない。何か、人為的なものを感じる」

「そうだね。普通は町まで来るようなモンスターじゃないし」

20体は倒して、魔石を入手した。

冒険者ギルドにもっていくと、報酬金金貨200枚と、魔石は粗悪品ということで全部で金貨3枚だった。

そして、男の娘のギルドマスターに呼ばれた。


「最近、モンスターを使って暗躍している者の名が分かった。名前は藍染惣右介。堕天使だ。天使から落とされたことに憤怒しているようで、世界を滅茶苦茶にして神を殺したいらしい」

「神を殺す?そんなこと、できるのか?」

「セラフの力があれば、神に会うことができる。その力を利用して、神を害することも完全に不可能とはいいきれない」

ギルドマスターの言葉に、京楽が心配げに浮竹を見た。

「俺は大丈夫だ」

浮竹は天使であるが、セラフだ。

セラフである浮竹を利用されることを、京楽は恐れていた。

「僕が、何があっても君を守るから」

「ああ、信じている」

「ごほん」

「「あ」」

ギルドマスターの前でいちゃついていた二人は、通常運転に戻って、家に帰宅した。

「でも、本当に気を付けてね、浮竹。怪しい人物に近付いちゃだめだよ」

「お前も随分怪しいがな」

「あはははは」


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「大天使長、ミカエルには、手が出ない・・・・手ごろなセラフは、やはり浮竹か」

藍染は、ワイングラスをあおりながら、いつか神に復讐するその時を夢見ていた。

「ただ、堕天使が邪魔だな・・・・・」

堕天使の京楽を、先に始末するべきか。

藍染は、迷うのだった。


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堕天使と天使17

今回の依頼。

フェンリルの上位種である浮竹を、一日だけ預かってくれ。

依頼者、ヴァンパイアの京楽。

「キーーー!彼は何を考えているんだ!よりにもよって、フェンリルの浮竹なんて!」

『それはこっちの台詞だ!ワフ!』

堕天使の京楽が、依頼を受けた天使の浮竹をなじろうとして、フェンリルの姿になった浮竹にけつを噛まれた。

「いたたたた!」

『臭い!』

「失礼だね!人型の時は毎日お風呂入ってるよ!」

京楽は、天使の浮竹の背後に隠れた。

「まぁ、2人とも落ち着け。お互いが好きじゃないのは分かるが、今日はフェンリルの俺は、俺の家に泊まるんだから」

「納得いかない!あの洋館で、一人でいればいいでしょ!」

「それが不安だから、ヴァンパイアの京楽はわざわざ依頼という形で、俺たちに頼んできたんだろう?報酬も前払いで金貨50枚ももらってしまったから、今さら拒否することもできない。京楽、1日の辛抱だ。フェンリルの俺も、1日だけだ。いいな?」

『天使の俺がいうなら、我慢してやらんこともない』

「何その上から目線!」

『ふん。お前が作った飯を、我慢して食べてやろう』

「キーーー!君なんてドッグフードで十分だ!」

『俺は犬じゃない!フェンリルの上位種だ!』

わふわふと吠えるフェンリルの浮竹は、存在が進化して前のフェンリル種からさらに上位の個体神をも喰らう大狼となり、ヴァンパイアの京楽と同じ原初の王になっていた。

血族にされ、更に共に長き時を生きるようにされて、上位種に進化した。

フェンリルの狼の姿に戻ると、今までの大型犬の大きさではなく、座った状態で京楽や浮竹の背丈を優に追い越してしまう。

「今日は、夕飯は俺が作るから、京楽は黒猫姿で、フェンリルの浮竹と遊んでやれ」

「ええ、やだよ!」

「命令。聞かなかったら、禁欲1カ月」

「ひどいーーー」

堕天使の京楽は、黒い6枚の翼を出して、しくしくと泣きだした。

『俺が遊んでやろう。黒猫になれ。人型でいられるより、匂いがましだ』

「もう、どうなっても知らないからね!」

京楽はやけくそになって、黒猫姿になると、大きなフェンリルの狼姿の浮竹の足を引っかいた。

『痛い!』

「みたか、秘技猫爪とぎとぎ」

『お返しだ!』

フェンリル姿の浮竹に、京楽は黒猫の姿のままごろりと転がされた。

「ぎゃあああああ」

『あ、けっこう面白い。ごろごろしてやる』

「あばばばばば、逃げるしかない!」

京楽はキッチンにいった天使の浮竹の場所に避難しようとすると、入り口のドアをその大きな体でふさがれた。

『ふっふっふ、逃がさないぞ』

「僕ってピンチ!?」

『お前でとことん遊んでやる』

「いーやーーー助けて浮竹ええええ」

黒猫の京楽は、フェンリルの浮竹にごろごろ転がされて、狭い室内で追いかけっこをしあっていた。

いや、黒猫の京楽は本気で逃げているのだが、フェンリルの浮竹はそれを面白がって追っかけていた。



「夕飯、できたぞ。何してるんだ、2人とも」

天使の浮竹がやってくると、真っ白な毛皮のフェンリルの浮竹の下で、伸びている黒猫姿の京楽がいた。

「仲良いんだな」

『俺が倒した!俺の勝ちだ!』

「そうか。フェンリルの俺は強いな。今日は肉多めにしておいたからな」

『わふ!』

黒猫姿の京楽は、すねて人型に戻らなかった。

なので、浮竹の手料理を食べれる日は珍しいので、いつもなら喜んで食べるのに、キャットフードを食っていた。

「ふんだ。どうせ僕なんて、おもちゃだよ」

「京楽、ちゃんと相手してやってたんだな。偉いぞ」

天使の浮竹に抱き上げられて、黒猫姿で京楽はゴロゴロと喉を鳴らした。

「もっと褒めて、褒めて」

「今日は最高級の猫缶をあけてやろう」

「おおおお」

黒猫の姿でいる時も長かったので、京楽はキャットフードは大好きだった。

『おいしそう。俺もちょっとだけ、食ってもいいか?』

「いいぞ」

「ああ、僕の最高級クラスの猫缶が!」

『猫の食事ってけっこうおいしいんだな』

少しだけ最高級の猫缶を口にして、後は天使の浮竹が作った肉団子や唐揚げを食べていた。

「唐揚げ、京楽も食え」

「うん、食べる」

意地でも人型に戻らないつもりなのか、鶏肉の唐揚げを天使の浮竹の手から受け取って食べていた。

『いいなぁ。ヴァンパイアの京楽、明日には帰ってくるかな?』

人型になったフェンリルの浮竹は、天使の浮竹の顔を見た。

「ああ、明日には戻ってくる。1日だけだから、今日はゲストルームで寝てくれ」

『天使の浮竹と、一緒に寝る』

「そうそう、大人しく天使の浮竹と寝て・・・・って、なんですと!?天使の浮竹は僕のものだよ!」

『一人でお泊りは初めてだし、天使の俺と寝てみたい!』

「いいぞ」

「ちょっと、浮竹そんなあっさりと!」

「京楽なら、毎日のように一緒に寝ているだろう」

「それとこれとは話が違うよ!」

京楽が黒猫姿で、天使の浮竹の肩に乗った。

「この子は僕の!僕のだからあげない!」

『一日くらいいいだろう!』

「そうだ、一日くらいいいだろ、別に」

「ひどいいいいい。白猫と浮気してやるううう」

「浮気、猫の姿でもしたら、もう一生お前とは口を聞かないからな」

天使の浮竹は、鋭い眼差しで肩に乗った京楽を睨んだ。

「あばばばばばば」

京楽はぴょーんと地面に降り立って、走って行ってベッドの下にもぐって出てこなくなった。

「僕も一緒に寝る。ベッドの下でだけど」

「好きなようにしろ。フェンリルの俺、先に風呂に入ってこい。着替えは置いてあるから」

『ああ、先に使わせてもらう』



次の日の朝、ヴァンパイアの京楽がフェンリルの浮竹を迎えにくると、少しやってしまったという顔の浮竹がいた。

一方、堕天使の京楽は機嫌がどん底に悪く、天使の浮竹は微妙な顔をしていた。

『一体、どうしたのさ』

「フェンリルの浮竹が、僕をいじめるんだよ!」

『ただ、天使の俺を、寝ぼけて京楽と間違えて、抱き着いてキスしちゃただけじゃないか』

フェンリルの浮竹が言うには、そうらしい。

「もう最悪だよ!浮気だ、浮気!」

『違う、浮気じゃない!ただ間違えただけだ』

『浮竹、自分にキスしたようなものだし、寝ぼけてたんでしょ。浮気には入れないから、大丈夫』

「ヴァンパイアの俺、甘い!」

『そうは言っても、一緒に寝てたってことだよね?』

ヴァンパイアの京楽の言葉に、天使の浮竹が頷いた。

「一緒に寝たいと甘えられたんでな。まぁ、ただの事故だ」

『京楽、怒ってないよな?』

『うん、怒ってないよ。ただ、堕天使のボクにはちゃんと謝ろうね?』

『う・・・・・京楽がそういうなら。堕天使の大アホ、天使の俺にキスしてごめん』

「謝罪が謝罪になってないいいいいいい」

堕天使の京楽は、そう叫びながら、フェンリルの浮竹をヴァンパイアの自分ともども追い出して、自分の伴侶である浮竹に抱き着いた。

「どうした?」

「君は僕のものだよ。他の者が、触れるなんて嫌だ」

「まぁ、フェンリルの俺は悪気があったわけじゃないから。許してやれ」

「浮竹がそう言うなら、許すよ」


なんだかんだで、一日のお泊り会は、終わるのだった。

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堕天使と天使外伝3

『お前、やっぱり臭いな』

「キーーー。黒猫の姿で風呂に入れてもらって、まだ1週間しか経ってないよ!」

フェンリルの浮竹は、ヴァンパイアの京楽の住む館で堕天使の京楽の黒猫姿の匂いをかいでいた。

『やっぱり臭い。しみついてるんじゃないか』

「ちょっとどう思う、ヴァンパイアの僕。僕って匂う?」

『いや・・・フローラルな花の香りがするけどね』

ヴァンパイアの京楽の言葉に、堕天使の京楽はそれみたことかと、フェンリルの浮竹を睨んだ。

天使の浮竹は、我感ぜずといった雰囲気で、ドーナツをかじりながらバナナ・オレを飲んでいた。

「このバナナ・オレうまいな。ドーナツもうまい」

『だろう!京楽が作ってくれたんだ!バナナ・オレは作るの俺も手伝った!』

「そうか。えらいな」

『えへへへ~~~』

フェンリルの浮竹は、天使の浮竹の頭を撫でられて、狼の耳をピコピコ動かして、尻尾をばっさばっさと振っていた。

喜んでいる証だった。

『臭い、近寄るな』

黒猫姿の京楽は、嫌がらせにフェンリルの浮竹の肩に飛び乗った。

『うわぁ、何をする!』

「ふふん、匂いをこすりつけてあげよう」

『やめろ、この変態!』

「まぁ、否定しない。京楽は黒猫からに人型に戻る時裸だからな」

天使の浮竹がそう言うと、フェンリルの浮竹は信じられないものを見るように、追い払った黒猫の京楽を見た。

『俺でも、フェンリル姿になって元に戻る時は服を着ているのに・・・・・・この変態!』

「いや、普通獣の姿になったら、裸でしょ」

『こっちくるな!ばっちいのがうつる!』

「ほお。そこまでいう。ばっちいの、うつしてやる。うれうれうれ」

『ぎゃあああああああああああ』

フェンリルの浮竹に、黒猫の京楽はすり寄って体を何度もこすりつけた。

『ちょっと、マーキングはやめてよ。浮竹はボクの血族なんだから。あげないよ』

「こんな性根のひん曲がった浮竹なんてやだ!僕には天使の浮竹がいるもんね!」

『誰の性根がひん曲がってるって?』

フェンリルの浮竹は、フェンリルの姿になり、うなり声をあげた。

『がるるるるる。お前なんて、噛んで・・・噛んだら、ばっちいのがうつるからだめか』

『浮竹、おいで。消毒してあげる』

ヴァンパイアの京楽に抱きしめられて、フェンリルの浮竹は嬉しそうにしていた。

仕方なく、天使の浮竹も黒猫の京楽を抱き上げた。

「僕、フローラルな香りだよね?臭くないよね?」

「フェンリルの俺は上位種だから、お前の精神に染みついている過去の情人とかの匂いが分かるんだろう」

「何それ。やばすぎ。臭いだろうなぁ・・・・何せ、5千人はこえてるからなぁ」

『うわ、そんなに関係をもっているのか。道理で臭いわけだ』

「あくまで、精神の匂いの話でしょ!まるで僕自身が臭いみたいに言わないでよ」

『お前の精神は、根強いラフレシアみたいな匂い。臭い』

「ラフレシア・・・・・・」

『もしくは、1カ月洗わずにはき続けたパンツの匂い』

フェンリルの浮竹の例えに、天使の浮竹が笑った。

「なんだ、その例えは。かいだこと、実際にあるのか?」

『ないけど、そんな匂いな気がする』

「精神にしみついた匂いばかりは、どうにもできないねぇ。浮竹を抱いてるから、それで匂いが変わっていくのを待つしかないね」

『わ!二人とも、やることやってるんだ!』

真っ赤になったフェンリルの浮竹に、釣られて天使の浮竹も赤くなって、どこからか取り出したハリセンで黒猫姿の京楽の頭をはたいた。

「痛い!動物虐待反対!」

「お前がデリカシーのないことを言うからだ!」

『天使の俺、この臭い堕天使の京楽の匂いが染みつかないようにしろよ』

「ああ、分かっている」

『さて、ボクは夕飯を作りにいくけど、君たちはどうする?』

ヴァンパイアの京楽の言葉に、黒猫の京楽がこう言う。

「どこかで人型に戻って服を着て、手伝うよ。これでも料理の腕には自信があるよ」

『知ってるよ。浮竹と天使の浮竹はどうするの?』

ヴァンパイアの京楽の言葉に、フェンリル姿の浮竹が人型に戻って、天使の浮竹の手をとった。

『薔薇園にいって、お土産の薔薇をとってくる!な、いいだろ、天使の俺。薔薇園に行こう』

「ああ、いいぞ」

『決まったね。夕飯ができる頃には、帰ってきなよ』

『分かってる!堕天使の京楽が一緒に作るとまずくなりそうだけど、我慢する!』

「失礼だね!僕は三ツ星レストランのシェフをしていたくらいに、腕は確かなんだよ!」

「フェンリルの俺、薔薇園に行こう。久しぶりにあの見事な薔薇を見たくなった」

『うん!行こう!』

2人の浮竹は、仲良さそうに手を握りあって、薔薇園に行ってしまった。

『ああは言ってるけど、キミのこと嫌いってわけじゃないからね、浮竹は』

「分かってる。でも、ケンカになるか漫才みたいなことになるんだよね」

『まぁ、おいしい夕飯を作って、見返してあげなよ』

「そうする」

その日の晩は、堕天使の京楽の作った豪華なメニューが並ぶのであった。

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天使と堕天使外伝2

「フェンリルの俺が言っていた。黒猫姿のお前は臭いって」

「ええ、それ、狼っていうか、犬の嗅覚での話じゃないの」

「実際、黒猫姿になったお前の匂いをかいでみた。少し臭かった」

「ガーン」

京楽は、黒猫姿になった。

「洗って」

「洗う。わしゃわしゃ洗うぞ。ちゃんと猫用シャンプーを使うし、ブラッシングもするから安心しろ。毛皮はドライヤーでかわかしてやる」

まだ、寒い時期なので、濡れたままの姿でいるのはきついだろうという、浮竹の判断だった。

黒猫姿になった京楽を抱き上げて、浮竹は衣服の袖をまくり、猫用シャンプーでわしゃわしゃと洗った。

3回洗った。

それからシャワーで泡を流して、ブラッシングもして、ドライヤーで乾かした。

ちょっとべたついていた毛皮が、ふわふわのもこもこになっていた。

「うん、フローラルないい匂いだ」

「そう?自分じゃわからないんだけど」

黒猫姿で、京楽はスンスンと自分の毛皮をかいでみる。



『遊びにきたぞー!』

ちょうど、フェンリルの浮竹とヴァンパイアの京楽が遊びにきた。

『あれ、お前黒猫姿なのにあんまり臭くない。どうしてだ?いい匂いがする』

「ふふん、浮竹に洗ってもらったからだよ。3回も洗ってくれた。愛だよ、愛」

『臭いから、3回洗われたんだろう?』

「ムキー、僕はもうそんなに臭くない!」

『彼、黒猫の姿のままだけどいいの?』

ヴァンパイアの京楽が天使の浮竹に話しかけると、天使の浮竹は堕天使の京楽の作ったマーブルクッキーを用意して、アッサムの紅茶を入れていた。

「今日はせっかくだから、1日あのままの姿でいるんだそうだ」

「そうだよ。僕はフローラルな黒猫。気高き黒猫」

『野良のアホ猫の間違いじゃないのか?』

フェンリルの浮竹は、天使の浮竹と同じ顔で堕天使の京楽をからかった。

『こらこら、浮竹。あんまり彼で遊ばないの』

『このマーブルクッキー美味しいな』

「僕が作ったんだよ」

自慢する堕天使の京楽に、フェンリルの浮竹は狼の耳をへなっと下げて、尻尾をたらした。

『まずい気がしてきた』

「キー!失礼な子だね!ちょっと、ヴァンパイアの僕、このフェンリルの浮竹のしつけ、なってないよ!」

『俺はペットじゃない!しつけなんてされてない!』

「京楽も、フェンリルの俺も、ほどほどにな」

『うん、ほどほどにね』

ヴァンパイアの京楽は、天使の浮竹とマーブルクッキーを食べて、アッサムの紅茶を飲んで、和んでいた。

『天使の俺の入れた紅茶はうまいな』

「何、その対応の違い!」

『近くに来るな。下品な匂いが移る!』

「フローラルな香りだよ!」

『お前の精神が臭い』

「精神が臭いって何それ!」

まるで漫才のようで、それを楽しそうにヴァンパイアの京楽と天使の浮竹が見守っていた。

「いいもんいいもん。僕は今日は猫缶の高級なの食べてやる」

『高級だと!お前にはメザシがお似合いだ!』

「何それ!どこの貧乏猫の話さ!」

『お前だ』

「僕はこれでも金はあるほうなんだからね!」

『嘘くさい』

「ムキーーー!!!」


フェンリルの浮竹は、大型犬くらいのフェンリルの姿になって、黒猫の京楽を追いかけだした。

「ここまでおいでー。ばーかばーか!」

『むう。高い狭いとこに昇るなんて、反則だぞ』

「あっかんべー」

『体当たりしてやる』

どしんとたんすが揺れて、黒猫の京楽がおっこちてきた。

「フェンリルの俺、家の中であんまり暴れないでくれ。一戸建てとはいえ、家が壊れる」

『むう、すまない』

「怒られてる。バーカバーカ」

『ばかはお前だ。バーカバーカ』

ヴァンパイアの京楽と、天使の浮竹は笑っていた。

「2人とも、ほどほどにな」

『うん、ほどほどにね』

『みろ、お前のせいで怒られた』

「僕だけのせいじゃないと思うんだけど!」

その日一日、京楽は黒猫姿のままで、フェンリルの浮竹もつられてかフェンリル姿のまま、黒猫の京楽を追いかけているのであった。





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堕天使と天使16

「なんでも、その鏡は呪いの鏡といって、化け物が気に入った者を吸いこんで、化け物が吸い込んだ者の偽物をになるというの。偽物は、愛しい者を取り込んでしまうの。とても恐ろしいことなのよ。まぁ、おとぎ話だけれどね。愛しい者が偽物を見破って、鏡の中に入り込み、本物にキスをすれば呪いは解けるのよ」

子供の頃、天使の浮竹の4大天使であり、母親代わりであったガブリエルから聞いた、おとぎ話の鏡の話をふと思い出した。


「この鏡・・・・・・」

それは、古い古い骨董品で、とあるコレクターのいる場所まで古い鏡を運んでくれという依頼だった。

「まさか、呪いの鏡だったりして」

「はははは、そんなばかな」

「そうだな。呪いの鏡なんてあるわけがない」

京楽は、笑って骨董日の鏡を包んでいる布をとってみた。

浮竹は、その鏡に触れてみた。

すると、京楽には見えないようで、化け物が出てきて、浮竹の手を鏡の中から掴んできた。

「京楽!」

叫んでも、京楽には見えていないようだった。

「天使の魂・・・・ふふふ、すごいわ。セラフじゃないの。私はセラフになって、あなたの愛しい者と永遠に幸せになるのよ」

浮竹は、鏡の中に吸い込まれた。

化け物はかろうじで女の姿をしていたが、浮竹が吸い込まれると、浮竹の姿になって、京楽に笑顔を見せた。

「助けてくれ、京楽!」

ドンドンと、鏡を叩く。

鏡の中に吸い込まれた浮竹は、鏡の中から偽物の自分が、愛しい京楽に愛を囁くのを見ていた。

「どうしたの、浮竹。今日は積極的だね」

「俺はお前を愛している。お前も俺を愛している。そうだな?」

偽物は、そう言って京楽を誘惑した。

「京楽!そいつは偽物だ!」

「浮竹・・・・愛してるよ」

「京楽!サンダーボルト!」

鏡の中で、魔法を使ってみたが、ばちっと音がして弾かれた。

叩いても蹴っても魔法を使っても、鏡の外には出れなかった。

鏡の中で、浮竹はふと、鏡の奥に小さい頃の子供の自分がいるのに気づいた。

「どうして、泣いている?お前は誰だ?」

子供の浮竹は、泣きながら座っていた。

「俺はお前だ。お前が愛しい者を疑うから、哀しいんだ」

「俺は・・・・京楽を・・・疑って・・・・・」

「ほら、疑っている。いつか昔の恋人にとられるんじゃないかと、心の何処かで恐怖してる」

「うるさい!ファイアフェニックス!」

浮竹は炎の禁忌を放つが、子供の浮竹は平然としていた。

「その疑いが、鏡の悪魔を呼んだ。さぁ、ここで大人しく鏡の悪魔に愛しい者にとられるのを見ているのか?」

「京楽!それは俺じゃない!」

鏡の向こう側では、鏡の悪魔の浮竹が、京楽にキスをしていた。

「京楽!」

鏡の外で、京楽は顔を顰めた。

「君・・・本物の浮竹じゃないね」

「違う。俺が本物の浮竹だ」

「じゃあ、セラフの証である翼を出してみて」

「それは・・・・・」

「できないんでしょ。偽物は、偽物。本物は・・・鏡の中か。厄介だね。君を殺すと、鏡の中の浮竹は二度と戻ってこない」

「俺と幸せになろう。俺でもいいだろう?」

「無理だね。僕は本物の浮竹だけを今は愛している」

鏡の中で、浮竹は涙を零した。

「京楽、疑ってすまない。俺も、お前だけを愛している」

「そう。それでいいんだ。それでいい」

子供の姿の浮竹は、すーっと本物の浮竹の中に溶け込んでいった。

鏡の中の子供の浮竹は、本物の浮竹の負の感情が表に現れたものだった。

「京楽!」

浮竹が鏡の向こう側に手を伸ばすと、京楽はその手を掴んで、鏡の中に入ってきた。

「ばかな!鏡の中にはいれるというの!」

鏡の悪魔は元の姿に戻って、醜い女の姿で京楽を取り戻そうと、鏡の中に入り込む京楽を引っ張る。

「わ、浮竹、そっちからひっぱって。外にひきずりだされる!」

「京楽は、俺のものだ!」

聖なる力を京楽ごしに叩き込むと、鏡の悪魔は悲鳴をあげた。

「うぎゃあああ!!」

鏡の中に京楽が入ってくる。

「一緒に、外に出よう」

「外に出る方法は・・・・」

「知ってる。僕も、呪いの鏡の話聞いたことあるから」

京楽は、浮竹にキスをした。

「ん・・・・・・んう」

偽物とキスをしたことを帳消しにするような、深い口づけに、浮竹は震えた。

「さぁ、出よう。呪いは解けたはずだ」

「うん・・・・・・」

真っ赤になって、浮竹は京楽に手を引かれて鏡の外に出た。

鏡の外には、もう鏡の悪魔はいなかった。

「くちおしや。セラフの魂なんて貴重なのに」

鏡の中に戻った、鏡の悪魔を浮竹と京楽は封印を施して、二度と外に出られないようにした。

「こんな曰くつきの鏡欲しがるなんて・・・・コレクターの人、呪いの鏡って知ってのことだろうかなぁ」

「いや、ただの古い骨董品と思っているだろう。金持ちの老人が取引相手だ。それにしても、よくあれが偽物の俺だと分かったな」

「んー。キスの味が違うし、昨日僕が君の首筋につけたキスマークがなかった」

「なっ」

浮竹は真っ赤になった。

キスマークが見える位置にある状態で、仕事を引き受けて古い鏡を受け取っていた。

「京楽のバカ!」

「キスマークくらいいいじゃない」

「よくない!」

ぎゃあぎゃあ言い合う。

「僕は君だけを愛しているから。これは、本当だよ」

「ああ。俺もお前だけを愛している。少しでも、お前を疑って悪かった」

「やっぱり、少し疑ってたんだ?」

「仕方ないだろう。お前の過去が過去だ。過去の恋人がでてきて、そっちになびくかもしれないって、少し不安になってたのは本当だ」

「まぁ、僕の過去はどうしようもないけど、未来は変えていける。現在から未来を。君だけを愛すると誓うよ」

京楽は、どこからか緑色の石をはめこんだ指輪を、浮竹の右手の薬指にはめた。

「これは・・・・・」

「いつか渡そうと思っていたものだよ。僕の分もあるんだ」

「京楽・・・・」

浮竹は、自分から京楽に口づけた。

それから、浮竹が京楽の指に対になっている指輪をはめた。

何度かキスを交わして、鏡を慎重に箱にしまいこんで、依頼人のところに車で到着すると、金もちのおじいさんが対応した。

「ありがとうございます。この鏡、昔祖父が買ったもので、なんでも鏡の悪魔が宿ってるとかいってたんですが、大丈夫でしたか?ただの祖父の作り話だとは思うのですが」

「ああ、大丈夫だった」

依頼人に心配をかけまいと、浮竹は鏡の入った箱を老人に手渡した。

封印を施したので、もう無害なただの古い鏡だ。

「では、報酬の金貨30枚を」

「うん、ありがとね」

京楽は、報酬金を受け取ると、車に乗り込んで浮竹を乗せて、猛スピードで家に帰宅した。

「京楽?」

「君を抱きたい。むらむらしてた。抱いてもいい?」

「あ、ああ・・・・・・」

京楽に抱き上げられて、キングサイズのベッドに運ばれた。

衣服を脱がされて、愛撫されて、浮竹は啼いた。

「ああああ!!!」

京楽に一気に貫かれて、浮竹はその快楽に酔いしれる。

「十四郎、愛してるよ」

「ひあああ!」

京楽は、浮竹の最奥を抉ると、浮竹の中に子種を注ぎ込む。

「んあ・・・・・」

最奥を抉られる行為に、浮竹は涙をにじませた。

「気持ちいい?」

「ん・・気持ちいい・・・・」

京楽は、浮竹を突き上げた。

何度か突き上げると、浮竹はシーツに精液を放った。

「んあああ」

「もっと、僕を求めて?」

「あ、春水、春水、もっと・・・・・ああああ」

京楽は、求められるままに浮竹を貪った。

「あ、いっちゃう、やだああああ」

女のように、オーガズムでいくこを覚えた体は、京楽の行為に快感を感じていってしまっていた。

「やああ、あ、あ、やっ」

「愛してるよ、十四郎」

「あ、春水、春水」

深い口づけを交わし合う。

京楽は、浮竹を抱きしめた。

浮竹も、京楽を抱きしめた。

「愛してる、春水。あああ!」

「愛の証を注ぎ込んであげる」

最奥を抉られ、貫かれて、もう何度目になるかも分からない熱を注ぎ込まれる。

「あ・・・・」

じんわりと胎の奥に広がっていく熱を感じながら、浮竹は目を閉じた。

「一緒に、お風呂入ろ」

「ああ」

少しして、体力が戻ったところで二人で湯浴みをした。

風呂でも京楽が盛って、浮竹に蹴られたのは言うまでもない。



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堕天使と天使16

「ん・・・・・・・」

起きると、すっぱだかの京楽がいた。

京楽は、黒猫の姿になれる。

久しぶりに黒猫に変化していて、浮竹が猫好きということもあって構いまくっていたら、そのまま疲れて一緒のベッドで眠ってしまったのだ。

元から一緒のベッドで寝ているが、さすがにいつもは服を着ている。

「京楽、起きろ。それから服を着ろ」

「んーもうちょっと」

ごそごそと浮竹を探してくる手をつねってやると、痛みで京楽が目を開いた。

「ぐっどもーにんぐ。まいはにー」

「バカやってないで服着て朝食の準備しろ。コーヒーをいれてくる。黒猫ならかわいいのに、なぜ堕天使のなった京楽はかわいくないのか・・・・・・」

そんなことを呟きながら、浮竹はキッチンに移動した。

京楽も服を着て、キッチンに移動して、浮竹にいれてもらったコーヒーを飲んで、簡単だが朝食を作り始めた。

いい匂いがしてきて、浮竹はテレビをつけた。

「エキドナの異常繁殖が見られます。アナウンサーの佐藤さん、現場状況をどうぞ」

「はい、佐藤です。こちらは、冒険者ギルドの前にきています。ギルドマスターにお話しを伺いましたところ、エキドナ退治は毎日のように行っているそうですが、母体がいるのか完全に駆除できないようです。これがエキドナです」

TVの向こう側では、死んだエキドナの死体が映っていた。

「緊急依頼。エキドナの母体を退治せよ。金貨200枚」

浮竹が、魔法で依頼書を分別していると、緊急依頼でエキドナの母体を叩けというものがあった。

エキドナは美しい女性の上半身に蛇の下半身をもつ、ラミアに少し似ているが、ラミアより存在は上位で、ヒュドラやケルベロスの母と言われていた。

「冒険者ギルドだけでは対応できなくなったみたいだね。母体を叩けだなんて、無茶を言ってくれるね、新しいギルドマスターは」

ハイエルフのギルドマスターは2カ月ほど前に、ドラゴンマニアなので、ドラゴンを探す旅にでるとかいって、新しいギルドマスターがやってきた。

エルフだったが、少女のような美貌を持つ少年で、男の娘だった。

浮竹と京楽は、エキドナの母体の情報を得るために冒険者ギルドに来ていた。

「やあ、浮竹に京楽。今日はいい天気だね」

「ああ、そうだな。エキドナの件について聞きたい」

京楽は、ゴスロリファッションな男の娘のギルドマスターのスカートをめくった。

「何するんだい!」

「いやぁ、下着は男の子のものなんだと思って」

「浮気か!おいこら、冒険者ギルドのしかもギルドマスターに浮気か!」

京楽は、浮竹に首を締め上げられて、酸素不足で顔が蒼くになっていた。

「ほら、浮竹、そんなことしてると京楽が死んじゃうよ」

「こいつはいっぺん殺さないと、性根が腐ってる!」

「ギブギブ、浮竹、僕が悪かったから。ほんのでき心なんだよ。男の娘のギルドマスターの下着は女物か男物か気になっただけだから」

「だからってスカートをめくるな!立派な犯罪だぞ!」

「まぁ、僕は平気だけどね。それより、エキドナの母体は西のアルンデ地方の森にいると推測されている。アルンデまでは車で4時間ってとこかな。アルンデからエキドナが沸きだしてるから、アルンデ地方は冒険者以外は立ち入り禁止になっている。住民の避難は完了しているよ」

「そうか。さっそく向かうことにする」

「母体はきっと大きい。気を付けて」

「じゃあ、エキドナの母体の魔石を提出するのを待っていてくれな」

そう言って、浮竹と京楽は車でアルンデ地方に向かい、瘴気の濃い森の近くに車を停めると、清めの呪符を手に森の中に入っていった。

「瘴気が濃いな」

「エキドナだよ」

まだ生まれて幼体のエキドナが数体いた。

「ヘルフレイム!」

「アイスクラッシャー!」

「きゃああああ!!」

「ぎゃああああああ!!」

幼体だからと手加減していては、いずれ成長して人に害を成す。

幼体がいるということは、母体が近いことを意味していた。

清めの札をもっているが、瘴気が濃くて、浮竹は京楽の分まで体の周りに結界を張り、瘴気で体がおかしくなることを防いだ。

森の奥から声がした。

「誰。わらわのかわいい子供たちを殺した。わらわの子はやがて世界を満たす。わらわは絶対。わらわは君臨者」

「母体から声をかけてくれるなんて、居場所を教えてくれているようなものだね」

「気をつけろ。母体はでかいぞ」

森の奥の開けた場所に、普通のエキドナの10倍はあろうかという巨大なエキドナがいた。

母体であった。

卵がそこかしこにあった。

「グラビディ・ゼロ!」

京楽が、重力の魔法でまずは卵を破壊する。

これ以上エキドナの孵化を防ぐためだった。

「おのれ、人間め、わらわの子供たちを殺すのか!」

「正確には天使と堕天使なんだけどね。子供っていうか、母体である君に死んでもらう」

「わらわは世界の王になるのだ。たかが天使や堕天使ごときに・・・・・」

「アイスコキュートス」

「ぎゃあああああああ!!!」

下半身の蛇の部分を浮竹に凍らされて、エキドナの母体は暴れ狂った。

自分で自分が産んだ卵を破壊しながら、身をくねらせる。

「いたい、いたい、寒いのは嫌いだ、寒いのはいやだ」

「氷が弱点か。蛇のモンスターでもあるしな。京楽、いくぞ」

「うん」

「「アイシクルフィールド」」

氷の禁忌で、エキドナの母体は大きな氷の彫像になった。

「ダイヤモンドダスト!」

それを、さらに硬い氷で割っていく。

エキドナの母体は、死しても氷は溶けず、魔石は京楽がナイフで取り出した。

「依頼達成だな。これで、エキドナの異常繁殖は終わるだろう」

「そうだと、いいんだけどね」

「どうした、京楽?」

「町に溢れかえるほどのエキドナを、この母体だけが産んだとは思えないんだ」

事実、探してみると他に3体の母体を発見し、駆除した。

「京楽、お手柄だな」

「チューして、チュー」

「はいはい」

京楽の唇にキスをする。

吸い付いて離れない京楽を殴り倒して、浮竹は魔石を4つ手に、車に乗り込んで冒険者ギルドに帰還した。

「エキドナの母体を4体確認した。どれも駆除した。証拠の魔石だ」

「わお、大きな魔石だね。これは高値がつくよ」

エキドナの母体は、ハイクラスのエキドナであった。

エキドナの女王だ.。

「1個金貨300枚で引き取ることにするよ」

「報酬が金貨200枚で、魔石が金貨300枚×4の1200枚か。なかなかの収入だな、京楽・・・・・・・」

京楽は、ギルドマスターの男の娘のスカートをまためくっていた。

「あ、今日は女の子ものの下着はいてる・・・・・・」

「京楽~~~~~~~?」

にこにこした顔で、手をボキボキならしながら、浮竹はスマイルを浮かべて京楽の鳩尾に右ストレートを決めた。

「ごふっ」

「ボクはランゼ。あいにく、京楽みたいなもじゃもじゃのおっさんに興味はないから。恋愛対象はあくまで女の子。男の娘の恰好してるけどね」

「ランゼ。京楽がすまない。スカートめくりをやめさせるよう、徹底的に指導しておく」

「ほどほどにね。さっきから、京楽嬉しそうにしてるし」

罰が罰になっていない。

そんな京楽だった。

浮竹にどんな形であれ、構ってもらえてうれしいのだ。

「京楽!おいこら!」

「にゃあああん」

「わ、黒猫の姿とるなんてずるいぞ!怒れないじゃないか!」

「にゃああん。ごろごろ」

黒猫の京楽は、浮竹の肩に乗って、甘え出した。

「仕方ない。元に戻るときは、ちゃんと服を用意しておけよ」

「にゃあああん」

その後、黒猫の京楽は、猫缶詰を食べてカリカリを食べてチュールを食べて、ベッドの下にもぐって寝るのだった。

朝になり、ベッドの下から苦悶の声が出てくる。

「ベッドの下から出れないよ~~~~」

「自業自得だ、ばかが。また黒猫になればいいだけだろう」

「あ、そうだった」

黒猫になり、ベッドの下から出てきた京楽は、すぐに人型に戻った。

「朝っぱらから、なんちゅーもんを見せつけるんだ!」

浮竹は、まっぱの京楽に怒って、股間を蹴り上げた。

「ぬおおおおおおおおおお」

悶絶する京楽に、着替えの服を投げつけて、浮竹は朝食を作るためにキッチンに移動するのであった。

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堕天使と天使13

今回の依頼者は、精霊サラマンダーであった。

暴走している炎の精霊イフリエルを鎮めることを希望していた。

提示された金額は白金貨500枚。

ただ、相手は精霊だけに冒険者ギルドでは手に負えなくて、浮竹と京楽のところに回ってきたパターンだった。

精霊使いや召喚士がその依頼に趣いたが、皆敗北して帰ってきて、提示金額が大きいけれど、それだけ危険度も高く、帰ってきた者たちは1年以上の療養生活を余儀なくされたという。

「炎の精霊イフリエルか。普通はイフリートなんだけどね。イフリエルは元々精霊使いの天使だった。それが精霊となり、炎の上位精霊に進化したんだよね」

「よく知ってるな。すごいじゃないか」

「だって、精霊になる前のイフリエルはかわいかったから、何度かちょっかいかけてたから」

「さっきの話は撤回しておこう」

褒めたところで、京楽は調子に乗ってすぐ昔のぼろを出す。

「とりあえず、イフリエルがいるという、炎の谷に向かおう」

精霊界に入る必要があった。

浮竹は天使なので、精霊と会話ができる。

最近仲良くなった水の精霊ウンディーネに頼んで、精霊界に入れてもらった。

天使の浮竹を入れるのは戸惑いはなかったが、堕天使の京楽も一緒だと知って、ウンディーネは自分が精霊界に入れたことを絶対にばらさないでくれと言って、京楽も入れてくれた。

精霊界は、天界と違ってまたファンタジー要素の溢れる不思議な世界だった。

最近の天界は人間界のようになってきている。

精霊界には機械はなく、完全に精霊の力で成り立っていた。

「よくきてくれた。炎の谷にイフリエルはいる。イフリートが何度か説得に向かったが、ボコボコにされて帰ってきたんだ」

人型をとっていた炎の精霊サラマンダーは、炎の谷に入るためのお札を渡してくれた。

その札がないと、高温で生き物が存在することができない。

前回と前々回にも、人間に冒険者たちにお札を渡して頼み込んだが、徒労に終わっている。

「元々が天使なら、なんとかなると思うんだ」

「天使ならば、解決してくれると信じている。そっちは堕天使のようだが、イフリエルと認識が昔あったんだろう?」

「何で分かるの」

「イフリエルが昔言っていたんだ。京楽という堕天使が関係を求めてきてしつこいと」

「京楽・・・・お前・・・・・」

「ちょっと、それは誇張すぎないかい!確かにイフリエルに少しはちょっかい出してたけど」

京楽は、首をぶんぶん横に振って、否定する。

京楽は昔のことは否定しないので、今回のことは誇張なのだろう。

「まぁ、昔のお前のことは俺がどうにかできることじゃないからな。とりあえず、イフリエルを鎮める方法を探そう」

「イフリエルは、召還者を求めている。鎮めるには、契約を交わすのが一番だろう。人間とは契約できなかった。だが、天使ならあるいは・・・」

サラマンダーは、浮竹を見て浮竹に望みを託した。

「これは、精霊香薬といって、精霊をおちつかせる薬だ。イフリエルに飲ませるといい。飲ませられるものなら」

なんだか、試練を受けている気分になってきた。

浮竹と京楽は、精霊香薬をとお札を手に、炎の谷を目指した。

徒歩で、3日かかる場所に炎の谷はあった。

徒歩の間は、精霊たちに食事を提供してもらい、宿も精霊に借りた。

「今のイフリエル、すごい怒ってるから、気をつけてね」

最後の宿を貸してくれた、土の精霊ノームに礼を言って、浮竹と京楽は炎の谷に入った。

「凄く暑いはずなのに、お札のお陰か暑さも熱さもかんじない」

「いた、イフリエルだ」

炎の中で、踊っている6枚の翼をもつ炎の精霊の娘がいた。

「イフリエル!」

「誰、私を呼ぶのは!私が精霊王の妻となるべきイフリエルと知ってのこと?」

「え、精霊王の妻になるのか?」

「いや、そんなこと何も聞いてないよ」

「炎の精霊王の妻になるために、修行していたのに、炎の精霊王はあろうことか風の精霊女王と結婚してしまった。許せるものか」

ごおおおと、浮竹と京楽を炎が襲う。

「あら、あなた天使なのね?私の心の痛さが分かるでしょう?」

「だからって、周囲に当たり散らすのはよくない。大人しく、元の精霊に戻って、現実を受け入れろ」

「やだ・・・あなた、京楽?千年前に天使だったあたしにまとわりついてたのに・・・あはは、そうなの。今は、この子があなたのいい人なのね」

「イフリエル!止めなさい!」

京楽の静止の台詞も聞かずに、イフリエルは6枚の翼で浮竹を包み込んだ。

「私のものになりなさい、ぼうや。いい夢を見させてあげる」

浮竹は、とっさに精霊香薬を口にすると、火傷をするのも構わずにイフリエルに口移しで飲ませた。

「浮竹!酷い火傷だ!」

「セイントヒール」

自分の火傷を治そうとするが、イフリエルから受けた火傷はなかなか治らなかった。

「私を・・・・火傷してまで、正気に戻そうと?」

「イフリエル、目を覚ましてくれ。暴走するのはやめてくれ」

「あたしのせいで、そんな火傷を負ったのに・・・・・あなたは、心が優しいのね。いいわ、決めた、あたし、あなたと契約するわ。そうすれば、その火傷も治るはず」

「え、ちょっと、だめだよ、浮竹には僕という存在が!」

「あら、京楽にはいい薬になるわね。どう、あたしと契約しない?精霊の力を手に入れられるわよ」

「契約しよう」

「そうこなくっちゃ。大丈夫、私生活を邪魔したりしないわ。いつもは精霊界にいるもの。呼ばれたら、出てくるだけよ」

イフリエルは、親指を噛みちぎって血を流した。

浮竹も親指を噛みちぎって血を流し、交じわせる。

「契約は完了よ。私はイフリエル。炎の上位精霊にして、イフリートの上をいく者」

「俺は浮竹十四郎。セラフの天使だ。イフリエル、お前を召還精霊にすると、今この瞬間に誓おう」

「京楽は、相変わらず浮気してばかりなのかしら?」

「こら、イフリエル!」

「ふふふ。いいじゃない、ちょっと過去をのぞいただけよ」

「イフリエル、正気に戻ったのなら、炎を収めてくれ」

「分かったわ」

炎の谷の炎は、イフリエルが出していたらしく、すぐに穏やかな気候に戻り、精霊の力のせいか、不毛だった大地に花が咲き乱れていく。

「私が行く道には花も灰となる。それでも、私と契約を続けてくれるのかしら」

「一度交わした契約だ。それに、サラマンダーも契約者をもつことを望んでいたしな」

「あら、サラマンダーの坊やには、苦労をかけたかしら。そういえば、何度か人間の冒険者パーティーが、力ずくで私と契約しようとしていたけど、こてんぱんにしてやったわね」

「それで、俺たちにお鉢が回ってきたんだ」

「あら、そうなの」

イフリエルは、精霊界にいる間、ずっと浮竹の隣にいた。

それが、京楽には面白くなくて、右側をイフリエルが、左側を京楽がそれぞれ浮竹の腕をとって歩いていた。

「君、離れてよ!」

「いやよ。あなたこと離れたらどうなの。どうせ、またかわいい精霊でも見つけて、つまい食いするんでしょ?」

「僕はね、今は浮竹一筋なの。だから、浮竹を独り占めしていいのは、僕だけなの」

「イフリエル、すまないが、少し離れてくれ」

「今回の召還者は天使・・・・しかも堕天使の印つき。面白いわね」

イフリエルは、妖艶に笑って、炎の塊となって精霊界を飛んでいった。

浮竹がイフリエルの炎で受けた火傷は、全てイフリエルと契約したことで治っていた。

「サラマンダー。無事、イフリエルの暴走をとめて、契約を交わした」

サラマンダーに事の顛末を話すと、白金貨500枚をもらった。

白金貨500枚は、正直報酬としては高すぎるのだが。

ドラゴン退治で大体白金貨3000枚を考えると、今回は実は命の危険もあったことを、後から感じれた。

「イフリエルは悪い子ではないのだ。仲良くしてやってくれ。きっと、人間界に召還されたら、もう暴走なんてしなくなる」

報酬を受け取り、人間界に戻ると、浮竹は京楽の静止の声も聞かずに、イフリエルを呼び出た。

「ああ、ここが人間界!すごい、すごいわ!」

イフリエルは人化して、浮竹と京楽と一緒に、服を買ったり、装飾品を買ったりした。

「ふふふ。あなたと契約してよかった。人間界で自由に動きまわれるなんて、夢のよう」

「その代わり、暴走はなしだぞ」

「勿論よ。呼ばれない限り、精霊界にいるから、安心して夜の営みをしなさい」

浮竹は顔を真っ赤にした。

「こら、イフリエル!」

「浮竹、京楽が嫌になったら言いなさい。私が京楽を怒ってあげるから」

「ああ、その時は頼む」

「ちょっと、僕のいないとこでそんな約束しないでよ!」

浮竹とイフリエルは笑った。イフリエルは、天使のセラフであった名残の6枚の翼を羽ばたかせて、精霊界に帰っていった。

「しばらく、夜は寝ないぞ」

「そんなぁ」

「イフリエルがのぞいていないか、確認ができたら、許可する」

「そんなぁ」

京楽の情けない声が、しばらくの間続くのであった。








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堕天使と天使14

ヴァンパイアの京楽からもらった、小粒のルビーがついたネックレスは、ヴァンパイアの京楽の呪いの血がついており、そのお陰で悪魔や堕天使から魂を狙われないようにしてくれるという、優れものだった。

堕天使の京楽からつけてもらい、浮竹はそのネックレスがお気に入りだった。

「また、そのネックレスいじってるのかい」

「ヴァンパイアのお前が、俺の為に作ってくれたからな。何より、お前の手で渡されたことの意味が大きい。お前からもらったプレゼントのように思える」

「浮竹」

「ん?」

「僕は、君を裏切らないから。君の傍にずっといる。誓うよ」

「どうした、改まって」

浮竹は首を傾げた。

「君が不安になってるんじゃないかと思って」

「ああ・・・でも、大丈夫だ。お前は今俺の隣にいてくれている。俺は信じている」

浮竹は、京楽に抱きしめられていた。

「絶対に、君を一人にはしない」

「ああ、約束だ」

2人は、深い口づけを交わし合った。


「今日の依頼は・・・・悪魔王サタンの退治・・・却下だ。強すぎる」

「誰だろう、そんな依頼出したの」

「大悪魔アスタロトと書かれている」

「アスタロト・・・あの子、ここを便利屋か何かと勘違してるのかな」

「知り合いなのか」

大悪魔アスタロトは、悪魔王サタンの配下ではなく、敵対関係にあった。

「ちょっと昔ね。何度か会って会話をしたくらいだよ」

「お前のことだから、ちょっかいかけようとしたんじゃないのか」

「ぎくっ」

京楽との性的関係者に、悪魔もけっこういる。

大悪魔ヴェルゼブブのように。

「この依頼は・・・悪魔シェリネの討伐。ネクロマンサーを作り、死者を蘇らせて自分だけの王国を築こうとしている。決まりだな」

「悪魔シェリネ。聞いたことのない名前だね」

「ネクロマンサーは脅威的だ。すぐに向かうぞ」

浮竹と京楽は、魔界にやってきた。

シェリネの話を他の悪魔から聞きながら、居場所を突き止めた。

悪魔はただでは教えてくれないのだが、京楽の顔の広さのお陰で、大悪魔ヴェルゼブブのお気に入りだということで、話を聞けた。

魔界の隅に、その屋敷はあった。

すでにネクロマンサーはおり、死者の悪魔を蘇生させていた。

「セイントフェザースラッシュ」

聖なる羽の攻撃で、ネクロマンサーと召還された死者の悪魔が怯む。

そこに、京楽がもう一つの弱点である炎の禁忌を放つ。

「ゴッドインフェルノ!」

「ぎゃああああああ!!」

「うわあああああああ!!」

死者の悪魔たちは、腐った体をなくして魂となって転がった。

その魂を、浮竹が回収していく。そして、浄化させた。

「なんだお前たちは!私のネクロマンサーを退治するなんて、許さないわよ!」

「お前はネクロマンサーがどれだけ危険な存在か分かっているのか。その気になれば古の悪魔も復活させれる。もっとも、お前の手で作り出されたネクロマンサーは、そこいらの死者の悪魔を蘇らせるのに手いっぱいのようだが」

「私は、ネクロマンサーを作りまくって、死者の国を作るのよ!誰にも邪魔はさせない!」

「ホーリーノヴァ!」

「うぎゃあああ!」

浮竹の聖なる魔法で、ネクロマンサーが息絶えた。

「邪魔をしないで!あなた天使ね!その魂、喰らってくれる!」

悪魔シェリルは、浮竹の魂を食おうとした。

「ぎゃっ!」

小粒のルビーのネックレスが輝き、襲ってきたシェリルは体を半ば崩壊させかけていた。

「なんて力・・・・そのネックレス・・・原初の王の血の呪いか・・・・」

「僕の浮竹を食べようだなんて、不届き者だね。永遠に地獄を味わうといいよ。カースワールド」

京楽が、悪魔シェリルを呪いの世界に沈める。

「いやだ、死にたくない!」

「死なないよ。永遠に、苦しみ続けるだけさ」

「もっといやあああ」

「ホーリーノヴァ!」

浮竹は、いくら悪魔とはいえ永遠に苦しみ続けるのはかわいそうだと、とどめをシェリルにさした。

「どうして?浮竹、君を食べようとしたんだよ」

「だからって、死ぬこともできずに永遠に苦しむのはかわいそうだ」

「浮竹は、悪魔にも甘いね。悪魔は狡猾だから。気をつけてね」

「分かっている」

シェリルの討伐に成功して、魔石を入手する。

ちなみに、シェリル討伐の依頼者は大悪魔ヴェルゼブブであった。

ヴェルゼブブに浮竹を会せるわけにもいかず、浮竹を先に人間界に返して、京楽はヴェルゼブブの元に向かった。

「やあ、シェリルの討伐はすんだか」

「どうして、君が依頼なんて。自分で処分すれすむことでしょう?」

「悪魔の派閥争いで、無益に悪魔を殺すことは相手に敵対していると思われるからな。シェリルは悪魔王サタン様の敵対者だ」

「じゃあ、僕たちはサタンの敵対者を殺したってことになるの?」

「そうなるな。だが、天使と堕天使だ。シェリルは悪魔の中でも孤立していたから、まぁ問題はなかろう」

「今度からは、君の名の依頼は受けないからね」

京楽は、ヴェルゼブブを睨んだ。

「けちだな」

「けちでも、悪魔の争いに浮竹を巻き込みたくない」

「報酬の大金貨千枚だ」

「金には惜しまないんだね」

「金で済むことなら、苦労はしない」

ヴェルゼブブと京楽の関係はけっこう長かったために、ヴェルゼブブは京楽を利用することに疑問を感じない悪魔だった。

「悪魔になる気は、相変わらずないのか」

「ないね。浮竹がいる限り、悪魔にはならない」

「お前のことだ。天使の浮竹に手を出したら、たとえ大悪魔の私でも、噛みついてくるんだろうな」

「当たり前だよ!浮竹に手を出したら、躊躇なく殺すからね。僕は、神の元12使徒だ。悪魔を滅ぼす役目をしていた。どんな大悪魔だろうが、殺せる手段をもっている」

京楽の鳶色の瞳が、殺気を帯びる。

「その、殺せる手段が欲しいんだがな」

「君には利用されたくない。諦めるんだね」

「今回は、そうさせてもらおう」

「今回だけじゃなくて、今後もね」

「さぁ、それはどうだろうな」

ヴェルゼブブは、愉快そうに笑って、京楽を人間界に戻した。

「けっこう、長かったな。何をしていたんだ」

「ヴェルゼブブと、ちょっとね」

「浮気か!」

「うわぁ、違うって!!」

京楽がヴェルゼブブと関係をもっていたことを知っている浮竹は、本気ではないが、京楽の浮気を疑う。

「僕が愛しているのは、今は君だけだよ。ねぇ、信じて?」

抱きしめられて、キスをされて、浮竹は大人しくなった。

「分かった。信じる」

「ありがとう」

後に、冒険者ギルドに魔石を提出したら、悪魔の魔石と分かってギルドマスターに呼ばれるのであった。


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