勇者と魔王
京楽は、作りすぎた魔王城の野菜を売り歩いていた。
人参とかキャベツも作りすぎて、あと鶏が卵を産みすぎて、それも売り歩いていた。
「人参が銅貨7枚、キャベツ銅貨10枚、卵1個銅貨2枚だぞー」
浮竹も、一緒になって売り歩く。
魔王城で野菜を作るのはいいが、作りすぎて、食べるのは主に二人なので、余った野菜は冷凍保存していたのだが、それでも次々と野菜が育っていくので、売りに出すことにしたのだ。
浮竹の魔王の加護に、育成×10というものがある。
野菜や果物の栽培、牛や豚や鶏、ヤギなどを飼育していると、その効果が現れる。
野菜や果物は普通の10倍の速さで実り、鶏は10倍の卵を産む。増えた家畜もまた、近くの二ニレムの街で売りさばいた。
自給自足から、変わって過剰すぎるようになってしまった。
京楽もまた、魔王の加護を受けながら野菜をつくるので、二人分の育成×10がこういう結果を生み出してしまった。
「あら魔王さん、大根と人参ちょうだいな」
「毎度あり」
浮竹は、魔王として二ニレムの街でけっこう有名だ。
京楽も勇者として有名になったが、勇者の特権である家探し・・・・他人の家に勝手にあがってたるやたんすの中に入っているものを漁って、勝手にもっていくやつということで、有名になった。
「ふう。兵士である野菜を売るのはかわいそうだが、売らないと実る一方だからな。だからって畑仕事をしないと暇だしなぁ」
浮竹は魔王である。
野菜を自家栽培しているが、一応魔王だ。
世界を恐怖に陥れる存在として一応いるのだが。
平和だった。
14代目魔王である、先々代の魔王は人間国家と戦争をして、魔王国の領土を広げていたが、先代の魔王になってから、人間種族とは休戦をして、国家は魔王城とその近辺のみとして、平和を愛した。
二ニレムの街も、一応は魔王の国の一部だ。
だが、魔王である浮竹は税金を一切とらず、二ニレムの街や他の魔王の国に住む住民たちは、今の魔王の浮竹をよい存在として認識していた。
敵対している勇者京楽のいた人間国家では、魔王は忌まわしき悪の象徴であり、人間国家を脅かす存在とされていた。
まぁ、大陸が違う。一度浮竹は、大陸を渡って魔王として平和条約を交わしに、人間国家に行ったのだが、魔王だと攻撃されまくって、仕方なく帰ってきた過去がある。
浮竹と京楽は、野菜と卵を売り歩いた。
値段は市場に並んでいるものより安く、そして野菜は大きいし卵も大きめなので、飛ぶように売れた。
「ふー、完売だな」
「そうだね。お疲れさま」
「しめて銀貨15枚か。けっこう売れたな」
京楽は魔法ポケットを持っているので、野菜や卵が売れると魔法ポケットから補充したりしていた。
「そうだ、京楽服を買わないか」
「え?」
浮竹は、売りあげの銀貨15枚と、魔法ポケットから出した金貨10枚で、カジュアルな洋服店に、京楽の手を握って連れていく。
「勇者としていつもマントをしているが、大分傷んできただろう。買い替えよう。俺の服ばかりサイズを調整して着るのも苦労するだろうし」
そう言って、浮竹は京楽に似合いそうな衣服をぽいぽいと籠にいれて、レジに行く。
「ちょっと浮竹!いいよ、自分で買うから」
「たまにはいいだろう。京楽の金でいつも世話になってるんだ。衣服くらい、俺が買ってやる。それに誕生日近いだろ?プレゼントの意味も兼ねてだ」
「もう、浮竹ってば」
京楽は、満更でもなさそうな顔をしていた。
「頼もう!」
そんな和やかな雰囲気の時に、新勇者パーティーがやってきた。
「なんだ、新勇者か。遊んでほしいのか?」
「そうなんだよ、遊んでくれ・・・じゃねぇえ!魔王浮竹、お前を討伐する!」
新勇者は、今日はアフロのかつらをしていた。
京楽に毛根を死滅されて以来、かつらが欠かせない。
「討伐されるような悪いことは何もしていないと思うんだがなぁ」
「何を言うか!魔王は存在するだけで悪!魔王討伐こそ、勇者の使命。それを放棄した元勇者京楽ともども、地獄へいけ!」
前回は浮竹の温情に惚れ込み、婚姻届けをもちだした新勇者であるが、すでに元に戻り、覚醒していた。
「うおおおお、吠えろ人造聖剣エクスカリバー!」
人造聖剣で、斬撃を浮竹に浴びせようとして、京楽が庇った。
本物のエクスカリバーと、人造聖剣のエクスカリバーがぶつかり合う。
衝撃に、新勇者パーティーの仲間は吹き飛ばされていった。
「のわああああああ」
「もきゃあああああああ」
ぴしぴしぴしっ。
人造聖剣エクスカリバーに亀裂が走る。
ポキン。
人造聖剣エクスカリバーは折れた。
ポキンと。
「ぎゃああああああああああ!?折れた!?聖剣が、勇者の象徴が折れた!?うわああああああああああん、ママーーー!元勇者に俺の聖剣折られたーー!!」
そういって、新勇者は泣きながら、吹き飛んで行った仲間のほうに逃げていった。
「悪いことしたかなぁ。さすがに折れるとは思わなかったよ」
「いや、先に斬りかかってきたのは向こうだし、正当防衛だ。新勇者でも、勇者は勇者なんだから、折れた聖剣くらいどうにでもできるんじゃないのか」
「なら、いいんだけど」
京楽は、浮竹に新しく買ってもらった漆黒のマントを風に翻して、聖剣エクスカリバーを鞘にしまった。
魔王城に帰ると、新勇者パーティーが入口で待っていた。
「なんだ、遊びにまたきたのか?」
「その、新勇者がママ、ママとうるさくて・・・・魔王にこんなこと頼むの間違ってると思うんですけど、この人造聖剣エクスカリバーを直していただけませんか。金は払いますので」
お金という言葉に、浮竹の耳が動く。
浮竹は折れた人造聖剣エクスカリバーを渡してもらい、魔力を込めた。
キイインンと音がして、人造聖剣エクスカリバーは見事にくっつき、蘇った。
「ありがとうございます。これ、お礼の白金貨200枚です」
浮竹は中身を数える。
「確かに、白金貨200枚いただいた」
「あ、明日からはまた敵ですからね!」
新勇者パーティーの紅一点の女僧侶は、そう早口でまくしたてた。
ツンデレというやつかもしれない。
「ばぶーママー」
「ほら、新勇者!いつまで赤ちゃん返りしてるのよ!エクスカリバーは元に戻ったから!」
「ぬおおおおおお。力が漲ってきた!」
そんな新勇者に、京楽は魔法をかけた。
「ドレイン」
しおしおしお。
新勇者はしおれていく。
「あああ、新勇者がしおしおに!?」
「今日、浮竹にいきなり斬りかかったお礼、してなかったからね」
「おのれ、勇者京楽め!覚えていろ!いつか魔王浮竹ともども、やっつけてやる!」
まだ少年の新勇者パーティーの魔法使いが、女僧侶に新勇者を魔法でHPを回復してもらいながら、浮竹と京楽にむかって、ぶっと屁をこき、おしりぺんぺんをして、真っ先に逃げ出した。
「逃げ足早いなぁ」
「また遊びに来いよー」
浮竹は、白金貨200枚をもらってほくほくした顔で、ひらひらと手を振った。
「ねぇ、浮竹、彼らは遊びにきてるんじゃなくって、僕らを討伐にきてるんだと思うんだけど」
「いや、気のせいだろ。いつも遊びにきてくれるから、からかいがいがある」
浮竹は抜けているようで、実は確信犯?とか京楽は思った。
「ねぇ、服かってもらったお礼、まだしてなかったね。今夜、いいかい?」
とたんに、浮竹は顔を真っ赤にした。
「いいも何も、今日は創造神の聖夜で、そういうことは世界中で禁止されてるはずじゃあ」
「魔王には、そんなこと関係ないでしょ」
京楽は、浮竹を抱き上げて、寝所に入ると、浮竹を押し倒した。
「んう・・・・・」
唇を塞がれる。
聖夜は、例え夫婦でも睦み合ってはいけない日。
でも、そんなことお構いなしに、浮竹と京楽は、魔王とその恋人らしく、甘い夜を過ごすのであった。
勇者と魔王
くじで魔王があたったが、元々体が弱く、冒険者になりたいので冒険アカデミーに入ろうとしたら、体の弱さのせいで断られた。
勇者京楽とは、冒険者アカデミーより前の、普通の学校で一緒に過ごした幼馴染であり、浮竹は京楽に恋心を抱いていた。
魔王の加護により、体が健康になった浮竹は、ある日魔王討伐にきた勇者京楽と出会う。
京楽は、浮竹が魔王であることに驚いて、すぐに勇者としての責務を放棄して、二人は恋人同士になった。
京楽を勇者に選んだ国王は怒って、京楽の首に多大な報奨金をかけた。
「我こそは、大陸一と謳われる賢者なり!」
今度は、冒険者Aランクの賢者パーティーがやってきた。
賢者とは、魔法使いと僧侶の両方の呪文を持つ者がなると思われがちだが、魔道を極めし者が賢者と名乗ることを許される。上位職だ。
「ほれっ!」
賢者は、手に白い薔薇をだして、それを青色に変えた。
「おお凄いな」
浮竹が、ぱちぱちと拍手を送る。京楽も拍手を送った。
「この青い奇跡の薔薇は、相手の魔力をすいとる。さぁ、ブルーローズストーム、受けてみよ!」
青い薔薇の花びらが、魔王の謁見の間に広がり、浮竹と京楽を包み込む。
確かに、魔力を吸い上げられた。
青い薔薇の花びらは、吸い上げすぎてしおしおに枯れてしまった。
「ふふふふ、これで貴様らの魔力は0のはず!とうっ!」
賢者は、杖で浮竹に殴り掛かった。
賢者のクセにムキムキで、魔法に耐性のある魔王と勇者を倒すには、物理攻撃が一番効く。
ガキン。
浮竹の頭を殴った杖は、ぽきんと折れた。
「のああああああああ!?世界樹の杖が!?なんという石頭!どうしてくれるんだ、魔王!白金貨500枚もするんだぞ!損害賠償を請求する!」
浮竹は、京楽としゃべっていた。
「今日の昼ごはんなぁに?」
「んー、カレーにしようと思ってる」
賢者パーティーの存在など、なかったようにスルーしていた。
「くそ、くらえブルーローズストーム!生きるための魔力も枯渇してしまえ!」
賢者は、また魔力吸引の魔法を使った。
「うるさいなぁ。ブルーローズストーム?さっきから、俺たちの魔力は2しか下がってないんだが」
HP999999、MP999997。
賢者の水晶に映し出された、浮竹と京楽のHPとMPは、確かにMPが減っていた。
2だけ。
もっている魔力の桁が違う。
賢者パーティーのメンバーは、それを見て逃げ出した。
賢者だけが、一人ぽつんと残された。
「ああああ、待てー!待たんかー!!このくそ〇◇✖チョメチョメ」
逃げていった仲間を罵倒しはじめる賢者。
「そこの手品師」
「へ?俺のことか?」
浮竹は、賢者を手品師と間違えていた。
「おなかすいただろう。カレー、食べていかないか」
ぐうううと、賢者の腹が鳴った。
「く、魔王め、毒を入れて俺を抹殺するつもりだな!ブルーローズストームが効かなかった今、俺にできることは、毒を食わせて暗殺することだ!」
「声に出しちゃってるよー」
京楽が、折れた世界樹の杖でパコンと賢者の頭を殴った。
「ぬぐおおおおお!」
賢者は痛がったが、京楽は力をこめていない。
「ぬおおお、ブルーローズストームを2回も使ったせいで腹が・・・ひもじい」
「カレー、食べてくか?」
浮竹が、にこやかに話しかけた。
魔王浮竹自らが、カレーを作ってくれた。ルーだけは近くの街の二ニレムで買って、あとの野菜は畑から収穫し、肉は干し肉を使った。
カレーを3人分だされて、賢者はふんぞりかえった。
「魔王のくせに貧乏だな!」
「食べないならあげないよ」
「ああん、食べますうううう」
賢者はスプーンを手にとって、カレーを食べだした。
「うまいいいい、おかわり!はっ!毒は!?」
「そんなのいれる訳ないでしょ」
京楽が、浮竹の手作りのカレーを美味しそうに食べながら、賢者の足を蹴った。
「痛い!骨折した!」
「大げさだねぇ」
賢者は、こそこそと毒を浮竹のカレーの中にいれた。
それを、浮竹は食べる。毒を入れられてるシーンは、浮竹も京楽も見ていた。
「俺に毒は一切無効だぞ。毒無効のスキルをもっているからな」
「なにいいい!卑怯だぞ、魔王!」
「毒殺しようとするほうが卑怯だと思うんだが。この毒うまいな」
毒をおいしがる魔王。ありえない。
「なんだお前は!本当に魔王なのか!畑で野菜を収穫して、カレーを作って、敵であるはずの俺に食べさせるなんて!はっ、もしかして俺の体が目当てなのか!」
その言葉に、浮竹も京楽もぶっとカレーを噴き出した。
気を取り直して、二人して茶を飲む。
「いつも二人だけだからな。たまには客人をもてなそうと思って」
浮竹は純粋だった。
その純真さに、賢者も涙を流した。
「毒殺しようとした俺を叱りもせず・・・・・ううう、こんな美味しいご飯たべるの久しぶりだ。世界樹の杖を買ったせいで、家も手放し嫁と息子にまで逃げられ・・・」
「かしてみろ」
浮竹は、折れた世界樹の杖を手に取ると、魔力をこめてひっつけた。
「魔力付与50%を追加しておいた。白金貨2千枚くらいで売れるだろう。それを売って新し普通の世界樹の杖を買って、逃げた嫁さんと息子さんと仲直りしてこい」
「神か!」
賢者は、魔王浮竹を崇め出した。
「この恩は忘れない!」
そういって、賢者は去っていった。
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「さて、買い出しに出かけるか」
浮竹は、二ニレムの街に買い出しに京楽と出かけていた。
野菜は自家栽培のもので間に合っている。デザートに果実をいくつか買い、ワインとパンを買った。
後は、適当に香辛料や塩を買う。
「ちょっと、たまには贅沢してみるか」
「どうしたの?」
「トリュフ、買った」
「ええええ!高いのに!」
京楽は、愕然とする。
この世界のトリュフは、とにかく高い。ドラゴンの魔石と同じ値段がする。
ただ味は抜群で、世界一美味しいとされていた。
「トリュフかー。でも、一生に一度は食べてみたいよね」
「そうだろ。今日はローストビーフとトリュフをいれたパスタを作ろう」
「僕も手を貸すよ」
魔王城に帰ると、新勇者のパーティーが来ていた。
「やあ、また遊びにきたのか」
「違う、魔王浮竹、お前を退治しにきたんだ!あと勇者京楽、お前もだ!」
「そうかそうか。元気がいいな」
浮竹は、新勇者パーティーを謁見の場に招き入れた。
「ふ、この前は落とし穴にひっかかったが、今回はそうはいかないぞ!」
新勇者は、新しいかつらをかぶっていた。
縦巻きロールの、いかにもヅラですってかんじのものを。京楽に毛根を死滅されて以来、かつらをかぶっていた。
「それ」
浮竹が玉座の後ろにある紐をひっぱった。
ボトボトボト。
音がして、犬の、正確にはタロー&ジローのうんこがおちてきた。
「いやああああああ!」
「ぬおおおおお!頭から!くさいいいい!!!」
新勇者パーティーは、怒って浮竹に切りかかろうとするが、ガコンと床が抜ける。
今度は、京楽が紐を引っ張っていた。
「ぬああああああ、またかああああああ」
「ぎょええええええええ」
新勇者パーティーが、水と一緒に流されていく。ただ一人、新勇者は人造聖剣エクスカリバーをっ壁につきたてて、穴から這い上がってきた。
「こんなことで、めげる俺じゃないぞ!」
「頭に犬のウンコついてるよ」
京楽がそう指摘すると、新勇者は奇声を発した。
「きええええ!」
縦巻きロールのカツラを投げ捨てる。
「いざ、勝負!」
人造でも聖剣は聖剣だ。人造聖剣エクスカリバーで、新勇者は浮竹を真っ二に切ろうとした。
「双魚理」
今までそこになかった空間に、2対の刀が出現して、エクスカリバーの刃を受け止めた。
「僕の浮竹に・・・・・」
京楽が怒っていた。
「ファイアボール!」
新勇者の股間を、念入りに燃やした。
「のぎゃああああああ!俺の息子がああああああ!!!」
ぼとり。
新勇者の息子さんは、黒こげになって地面に落ちた。
「ひどい、あんまりだああ!!お嫁にいくしかない!おい魔王浮竹、責任とって俺を嫁にしろ!」
「いいぞ」
浮竹の言葉に、新勇者も京楽も目が点になった。
「今日だけだ。トリュフを買ったんだ。まぁ、夕飯でも食べて回復魔法で一物はなんとかしてあげるから」
新勇者は、魔王の寛大さに涙を零した。
「おお、神よ・・・・・・」
その晩、新勇者はローストビーフとトリュフをいれたパスタを食べ、浮竹の魔法で息子さんを再生してもらい、翌日には城を去っていった。
次の日。
結婚届をもって、新勇者が浮竹の元にくるのだった。
そして京楽に黒こげにされて、泣いて逃げ出すのだった。
勇者と魔王
白金貨3千枚になった。
だが、売り払ったエクスカリバーは京楽の元に戻ってきた。
「えー。いらないのに」
お金だけもらって戻ってくる性質を利用して、詐欺しほうだいであったが、さすがに良心がいたんで金は返した。
魔王城から一番近い街ニニレムにきていた。
勇者なので、他人の家に勝手に入り、たるやたんすの中身を漁る。
(勇者京楽春水は、銀貨200枚とエロ本を手に入れた)
ピロリロリンと音がした。
その家の住人は、泣いていた。
へそくりと隠しておいたエロ本をとられて。でも勇者なので、文句は言えない。この世界の勇者はどんな場所でも無条件に入れて、ごそごそと他人のたんすを漁る。
ニニレムの街で、京楽の名は広まっていく。
勇者に、有り金をとられたとか。
魔王浮竹の元に、嘆願書が届けられた。
「勇者京楽の、家漁りを止めてほしい」
そういう内容のものだった。
「おい、京楽」
「なんだい、浮竹」
「お前、勇者なのをいいことに、ニニレムの街で民家のたんすとか漁ってるらしいな。苦情がきているから、即刻やめろ」
「えー。勇者の特権なのに」
「民が困っているんだ。やめないと、おはようのキスをしてやらないぞ」
「すぐやめるよ。今日からやめる。だから、ご褒美にキスしてよ」
ニンマリと笑みを刻む京楽に、浮竹は顔を赤くしながらもキスをした。
「んん・・・・・ふあっ」
啄むような優しいキスから、ディープキスへと変わっていく。
ぬるりと京楽の舌が入ってきた。
「ん・・・・」
舌を絡めあい、何度も深く口づけしていると、くたりと浮竹が京楽に体を預けた。
「京楽、ベッドにいこう」
京楽は喜んで、恋人である魔王を寝所のベッドに押し倒した。
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「ふふふふ。この時を待っていた」
新たなる勇者は、魔王と勇者がちちくりあっているのをいいことに、城に攻め込んできた。
「ははははは、崩れろ崩れろ」
新勇者パーティーは、魔王城で暴れて、せっかく修繕された城をめちゃくちゃにする。
「お前ら・・・・・・」
魔王浮竹は、けだるげな雰囲気をまとったまま、新勇者パーティーを奥の部屋まで追い詰めると、天井からぶら下がっている紐をひっぱった。
ガコンと、新勇者パーティーのいる床がぬける。
「のああああああああ」
「ぎゃああああああああ」
「ぬおおおおおおおお」
新勇者パーティーは落とし穴に落っこちた。落とし穴の底には、飼っている馬の馬糞があった。
「いやああああああ、うんこがあああああ」
「ぬおおおおおお、うんこまみれだあああ。エンガチョーーー」
「ふふふふ。こんなこともあろうかと、二ニレムにいるドワーフの大工に頼んで落とし穴を作っておいたんだ」
浮竹が魔王らしく笑う。
この世界には、人間以外ににもエルフ、ドワーフ、獣人、魔族、妖精族などが存在する。ドワーフは建築や刀鍛冶に優れている。
京楽と一緒に倒したモンスターの素材を売ったお金で、落とし穴をつくってもらった。ただの落とし穴ではつまらないからと、京楽が底に馬糞をいれることを提案して、そのほうが面白いと浮竹もそれを了承した。
「ファイアボルト!」
新勇者が浮竹に魔法の火の弾丸をうつが、浮竹はそれを手でつかんだ。
「なに!?」
「ほら、返すぞ」
ひょいっと炎を返されて、落とし穴の中にいた連中は「ぎょええええ」とか言っていた。
浮竹は、もう一度天井からぶら下がった紐をひっぱった。
「また遊びに来いよー」
ガコンと音がして、水が流れる。
そのまま、水と一緒に新勇者パーティーは魔王城の外にぺっと叩き出された。
「おのれ、魔王浮竹め!この悪行の数々、許せん」
新勇者は依然京楽にファイアボールを当てられて、毛根が死んでいるためにハゲだった。かつらをしていたのだが、かつらがなくなっていた。
「ああ、俺のかつらが!」
仲間にもハゲをクスリと笑われて、魔王浮竹への復讐心に燃えた。
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「我こそは、冒険者Sランクの英雄!いざ魔王浮竹よ、滅び去れ!」
浮竹は、パイプ椅子じゃなくって豪華になった玉座に座っていた。
やってきた冒険者パーティーを前に、あくびをしていた。
「いい度胸だ、魔王め!平和のため、死んでもらうぞ」
槍を手に突進してくる冒険者に、京楽が聖剣エクスカリバーを抜いた。
「いい度胸してるのは君でしょ。何、僕の浮竹を退治しようとしてるのさ」
ドワーフによってミスリル銀で作られた業物の槍は、すぱすぱとエクスカリバーに切られてしまった。
「あああ、ローンまだ残ってるのに!」
京楽は、勇者である。一応。
冒険者でもあるのだが。
自分を英雄と豪語した冒険者の服を切って、フルチンにしてやった。
「おのれ!なんとハレンチな!」
「おまけ。ファイアーボール」
京楽が炎の玉を生み出すと、それは冒険者の頭を包み込み、毛根を死滅させた。
「ぎゃああああああ!俺の髪があああああ!!」
「浮竹に武器を向けた報いだよ」
冒険者パーティーは、それでもみんなで力をあわせて魔王の前に打倒勇者京楽と、技や魔法を連携して出してくる。
だが、しょせんLV70前後の冒険者。
LV395の京楽に敵うはずもなく、女性だったメンバー以外はフルチンになり、毛根を死滅されて泣きながら魔王城を飛び出していった。
「また遊びに来いよー」
浮竹は、おはぎを食べていた。
京楽がいない時は、浮竹が相手をするが、その時は相手の毛根は死滅させずにアフロにするのが定番だった。
「ふー。最近、遊びに来る冒険者が多いなぁ」
「うーん。僕が魔王側に寝返ったって、ちょっと王国でも荒れてるらしいから」
「そういえば、エクスカリバー売りに出したんじゃなかったのか」
「うん。白金貨3千枚になったけど、何故か僕もとに戻ってくるから、仕方なく金を返したよ」
「お前のことだから、金だけ手に入れてるのかと思った」
「やだなぁ。確かに考えなくもなかったけど、金額が金額だし、余計にお尋ね者になっちゃうじゃない」
すでに京楽は、魔王側についたとして王国からその首に報奨金がかけられている。
国王とその後和解するのだが、それはまた未来の話。
ふと、浮竹は城で飼っている兵士のタロー&ジローの様子を見に行った。
「いない!タローとジローがいない!兵士が脱走した!」
生きてる兵士として一番の兵(つわもの)のタロー&ジローは、いなくなったのだ。
犬小屋に矢文が刺さっていて、読むと新勇者パーティーが誘拐したらしい。
「兵士を無事返してほしければ、魔王浮竹よ、サザンリアの丘の上にこい」
浮竹は、怒ってサザンリアの丘へ京楽を連れてやってきた。
「わんわんわん!」
「うわ、噛みつくな!ええい、うるさい!」
「わんわん、がるるるるるる!」
タロー&ジローは一応兵士だ。対人訓練を受けているので、新勇者パーティーを威嚇して、噛みつきまくった。
「ちょっと新勇者!どうにかならないの!」
「知るか!って魔王きたー!ほんとにきたー!!!どうしよう、まだ作戦会議たててない!」
新勇者はてんぱった。
「うちんちのかわいいタロー&ジローを誘拐するとはいい度胸だな」
浮竹は、微笑んだ。
すごく、悪っぽく。
「あ、いいかもこの表情・・・・・・・」
京楽は、珍しく悪者にみたいに笑う浮竹に、胸がときめいた。
「ファイアストーム!」
サザンリアの丘は、魔法を吸収する花が咲き乱れる丘だ。この場所で魔法を詠唱しても何もおきない、はずだった。
しかし、浮竹の膨大な魔力は、荒れ狂い炎の嵐となった。
「わきゃああああああああああ」
「わんわんわん!」
京楽がタロー&ジローを新勇者パーティーから離して、浮竹の魔法の範囲が及ばないように結界を張った。
新勇者パーティーは、全員黒焦げのアフロになり、女性の僧侶以外全員フルチンになった。
新勇者はカツラなので、ツルピカ状態だった。
「遊んでくれるのはいいが、兵士を拉致したり、ちょっと度がこえているぞ。ちゃんと魔王城に普通に遊びに気なさい」
新勇者パーティーが打倒魔王としてやってくるのを、浮竹は遊びにきているのだと勘違いしている。
アホの子ほどかわいいので、京楽は何も言わない。
「じゃあ帰るぞ。タロー&ジロー、帰るぞー」
「ワンワン!」
「ワフ!」
京楽の手で守られたタロー&ジローにじゃれつかれて、浮竹はぺろぺろと顔を舐められたりして、苦笑していた。
「今日は災難だったな、タロー&ジロー。夕飯は肉にしてやるからな!」
「ワン!」
「ウォン!」
タロー&ジローにリードをつけて、サザンリアの丘から途中まで京楽のテレポートの魔法で、二ニレムの街にくると、散歩がてらに歩いて帰った。
タロー&ジローは道端でうんこをしてしまい、ビニール袋をもっていなかった京楽と浮竹は、火で燃やした後、浄化の魔法をかけた。
「タロー&ジローはかわいいなぁ」
そんな風に笑う浮竹が一番かわいいと思う京楽であった。
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「なぁ、京楽」
「どうしたんだい、浮竹」
夕飯の時間だった。
コックはいないので、浮竹の手料理だ。
豚肉と野菜をいためたものと、じゃがいもをふかしてバターをのせたもの、ワイン、パン、川魚を焼いたものと、けっこう質素だった。
ワインやパンは、二ニレムの街で購入した。川魚は京楽がスキルに任せてとりまくったものを使っている。
「魔王って、そんなに悪いのか?最近討伐というか遊びにくる奴らが多いんだが」
「あーうん。まぁ、僕が浮竹の魔王側に寝返ったせいだね。世界を支配するとか恐れられてるんじゃないかなー」
「そんなつもりないのになぁ。そもそも魔王はくじで当たってなった職だから。今度、ダーマの神殿にいくか!」
ダーマの神殿とは、ジョブチェンジを行える神殿のことである。
そして、次の日になって浮竹は京楽を伴い、テレポートの魔法でダーマの神殿に本当にきてしまった。
ざわざわと、いろんな種類の人種がざわめく。ドワーフやエルフ、獣人の数もそこそこいた。
「魔王浮竹、希望する新しい職は賢者」
「勇者京楽、希望する新しい職は遊び人」
ダーマ神殿の神官が、紙を見ながら震えていた。
「汝、浮竹を賢者に・・・・・・汝、京楽を遊び人に・・・・・・」
ブブーーーーー。
でっかい音がなった。
「す、すみません!勇者と魔王は、ジョブチェンジできないようです!どうか命ばかりはご容赦を!」
転職できないと聞いて、浮竹はがっかりしたが、神官に兵士でもあるダイコーンこと大根を握らせた。
「やっぱ、転職できないよな。こんなチートな存在が、そうやすやすと転職できたら、苦労しないか」
「浮竹、何故ダイコーンを」
「いや、寄付はもうしたし、それ以外で金を渡すと賄賂になるから・・・・ダイコーンで」
「ダイコーン、便利だね。兵士だけど一応。食べられるけど」
浮竹は、他の神官にもダイコーンを渡していった。
「ダーマ神殿のみんな、迷惑をかけた。ダイコーンは魔王城の庭で俺が栽培したものだ。毒は入ってないし、それなりに美味いと思うので、よかったら食べてくれ」
浮竹は、魔法ポケットをもっていた。高価な品で、魔王だからこそもっている品だった。
京楽の聖剣エクスカリバーほどではないが、大変貴重なものだ。
京楽の武器は双魚理という、2本の刀だった。
魔法ポケットは、いろんなものを収納できる。そこからダイコーンを出して、ついでだからと、その場にいる冒険者たちにもダイコーンを握らせた。
この一件は後に「魔王、大根にて人間を寝返らせようとした」として、密やかなる噂になるのであった。
魔王浮竹と・・・・
「魔王か・・・・抽選であたったけど、どうすればいいもんか」
魔王城はぼろかった。広さはそこそこあるのだが、ぼろくて雨漏りが酷く、隙間風もふいてくる。
魔王の加護で健康な肉体を手に入れたはいいが、魔王としての仕事は、人間や冒険者や勇者を迫害したり倒したりすることではなく、ただ「魔王」として存在することを求められた。
玉座と書かれたパイプ椅子に座ると、ギィと嫌な音をたてた。
とりあえず、配下がどうなっているのか、人間関係表をもらったので、見た。
セーラちゃん95歳、侍女。種族、人間。よぼよぼなばあさんの侍女。
ダイコーン 大根。兵士。でもただの大根。
キンギョー 年齢10歳の金魚。でかいだけ。兵士。非常食。
タロー&ジロー 飼われてる犬。6歳と7歳。兵士。非常食。
サイッショ 宰相。魔族。年齢999歳。あと1年で寿命で他界。
他にもニンジンとかブロッコリーとかいろいろ兵士がいたが、全部野菜だった。
自家栽培している野菜だ。
兵士と書いてあるのだから、意思をもった存在かと思ったが、ただの野菜で、その晩ダイコーンが調理されて夕食としてでてきた。
「兵士を・・・兵士を食べてしまった!」
浮竹は、涙を流しながらダイコーンこと大根を食べた。
「おいしかった。ダイコーン、お前は兵士としての務めを果たして、食料となった。また大根の苗を新たに植えるから、復活を楽しみにしている!」
浮竹は、魔王らしく高笑いをした。
「ふははははは!・・・・だめだ、キャラじゃない」
そんなこんなで、魔王の加護により元気な肉体を得た浮竹は、近くの町で冒険者ギルドに登録して、モンスターを狩りまくったりして、報酬を得た。
名前はダイコーン。偽名だ。
浮竹が得た金で、鶏や牛や豚、ヤギを購入して、自給自足の生活を開始した。雨漏りも直したし、隙間風が入ってこないようにまではできた。
だが、玉座はいつもパイプ椅子だった。
浮竹の得る金は、宰相のサイッショによって管理されて、農業に金を大分あてていた。
完全なる自給自足ができあがった。
兵士の募集もした。人間魔族他種族関係なしで募集したら、98歳のおばあちゃん、名前はミルルちゃんが、兵士として名乗りをあげてくれた。
よぼよぼすぎて、兵士には無理だと、侍女になってもらった。
1日の3分の2を寝て過ごして、自給自足の魔王城で飯を食って、時折洗濯をしてくれるだけの侍女だった。
ある日、侍女のセーラちゃんがぽっくり逝ってしまった。
葬式をあげたが、神官を呼ぶ金などなく、お香典は銅貨3枚。
浮竹の、お小遣いだった。
1日銅貨3枚。
銅貨が10枚で、大根が買える。
タロー&ジローは、最近自給自足が普及したおかげで餌がよくなったせいか、こえてきた。
「食べごろですなぁ」
宰相のサイッショがそう言うが、さすがに浮竹は犬を食べることはできないので、このまま兵士として飼育することにした。
「はぁ・・・・誰か、遊びにでもきてくれないかなぁ」
魔王浮竹は、もっぱら畑仕事をしているが、家畜の世話とかも終わると暇になる。
宰相のサイッショは年齢のせいか、よく寝ていた。魔族の寿命は千年。きっちりと、そう定められていた。
浮竹は、魔王であることを隠してLVあげに夢中になった。
魔王の加護にLV制限突破というものがある。普通はLV99でカンストでそれ以上あがらないのだが、LV500まで、魔王の加護があればLVがあがるのである。
念願のドラゴン退治とかしてみたが、素材は損傷がひどく、何も売れなかった。LVだけがめきめきとあがっているせいで、オーバーキルになってしまうのだ。
退治依頼も出ていないので、銅貨1枚にもなりゃしねぇ。
でも、そんなモンスター討伐を続けていたせいで、LV415まであがってしまった。
「やば。LVあげすぎたかな」
いずれ勇者パーティーがくるだろうが、浮竹一人で対処するしかないだろう。
しかし、LVが415もあれば、たとえどんな勇者がきても大丈夫だろう。
やがて、勇者がやってきた。
なんと、幼馴染で大好きだった京楽だったのだ。
「京楽が勇者?本当なのか?」
京楽は、勇者の証である聖剣エクスカリバーを見せてくれた。
「売ったら金になるだろうなぁ」
じゅるり。
思考が、金へと結びつく。
勇者京楽は、魔王浮竹と敵対するどころか、恋人同士になってしまった。
その次の日、宰相のサイッショはショックで心臓発作をおこし、死んでしまった。
葬式はあげたが、お香典は白金貨3枚。
京楽がもってきた白金貨100枚の中から、使わせてもらった。お香典は遺族に渡る。
長年魔王の宰相をしてきたサイッショには、もっと払ってあげたかったが、基本貧乏なので京楽の金を使うことさえ躊躇われるし、白金貨3枚ということで落ち着いた。
ちなみに、宰相をしていた頃の賃金は、日給銅貨15枚だった。
なにせ、貧乏なもので。よく宰相をやめずに、続けてくれたものだ。
やがて、新しい勇者と名乗る少年と、そのパーティーが、打倒魔王、打倒裏切者の元勇者と旗を掲げてやってきた。
「浮竹、僕が相手するよ」
「いいのか?俺だとオーバーキルになるから、頼む」
勇者京楽は、LV395。魔王浮竹のLVにかなり近いので、オーバーキルになりそうだが、手をぬくことには長けていてた。
「ファイアボール」
勇者と名乗る少年が、新しい人造聖剣エクスカリバーできりかかってきたところに、魔法を放った。
少年は、頭も衣服も真っ黒焦げになって、はげのフルチンになっていた。
「ちなみに、毛根死滅したからね?僕の浮竹に手を出そうとするやつには、容赦しないよ?」
にこにことと、勇者京楽は魔王浮竹を庇護する。
「きええええ!これでもくらえ!ポイズンブレス!」
勇者パーティーの魔法使いが、毒の霧を生み出す魔法を使った。
「エアストーム」
それを、浮竹が風で押し流した。
自分たちで毒の霧に蝕まれて、勇者パーティーは瓦解した。
「また遊びにこいよ」
きえええと叫びながら撤退する勇者パーティーに、浮竹は手を振った。
「浮竹、いい魔王っぷりだねぇ」
「え、そうか?」
「うん、魔王だからってえばりもせずに、勇者パーティーにはちゃんと対処するし。一応は、魔王らしいところもあるじゃない」
「京楽が来るまでは、勇者や冒険者パーティーがきたことはなかったんだがな」
「え、じゃああの勇者パーティーがきたのは僕のせい?」
「まぁ、どうでもいいじゃないか。今日は兵士のダイコーンこと大根をつかったりしたおでんが夕食だ。さぁ、まずは大根を引き抜くところからはじめるぞ。その他の具材は京楽の金で買っておいたから」
京楽が王様から受け取った、準備金の白金貨100枚は、魔王浮竹と京楽の食費にたまに宛がわれたりした。
京楽も浮竹も、手を抜いてモンスターを倒し、素材を売ることを覚えた。
ドラゴン討伐なんかもして、けっこう有名なパーティーになっていた。
その名も「勇者と魔王」
そのまんまだが、二人を本物の勇者や魔王と知る者はいなかった。
認識阻害魔法を自分たちにかけており、その姿を見た者たちには、勇者と魔王の顔ではなく、別人に映るのだ。
勇者と魔王は、自給自足を続けながら、たまに狩りにってモンスター討伐をして素材を売って金にして、魔王城の修繕費用にあてたりしていた。
兵士はもういらない。
魔王浮竹の隣には、いつも勇者京楽がいた。
二人は恋人同士で、そしてパーティーメンバーだった。
新しい勇者はまた性懲りもなく、魔王浮竹討伐だとやってくる。毛根はもう死んでいるので、ハゲだった。
いつもフルチンにされて、新しい勇者はいつも泣いて帰っていた。
「また遊びにこいよー。今度は、かつら用意しといてやるからな。後、股間用にでっかいはっぱとか・・・・・」
浮竹は、にこにこと泣きながら逃げ出す勇者パーティーに手を振るのだった。
タイムカプセル
ある時、君とタイムカプセルを埋めたのだと思い出して、学院の桜の木の下にきていた。
この桜の木の下で、告白されると思いが成就されるといわれていて、僕もこの桜の下で君に告白をした。
君は真っ赤になって、「俺も好きだ」と言ってくれた。
もう、400年以上は昔のことだ。
タイムカプセルは、今から100年ほど前に埋めたものだ。
スコップを手に、ざくざくと深く穴を掘っていくと、固い金属で覆われたタイムカプセルを見つけた。
早速中をあけてみる。
入っていたのは、僕が入れた親指サイズの翡翠の石と、君が書いたと思われる手紙。
僕は、君の手紙を読んでいく。
涙が、溢れて零れ落ちていった。
ただ、僕を愛しているという内容の手紙だったけれど、隣に君がいるのが前提の手紙で、僕はまた涙を流した。
今、僕の隣に君はいない。
望んでも、もう声も聴けない。
(一緒に引退して、爺さん同士になっても仲良くやっていこう。その頃には、お前も盆栽をはじめるといい。何、俺が教えてやるさ)
「無理だよ・・・もう、君はいないのに」
(いつも傍にいる。置いていったりしない)
「嘘つき・・・・・」
鬼道で、その手紙を燃やした。
こんな思いをするくらいなら、手紙なんて読まなければよかった。
もう、君のことで泣くまいと思っていたのに。
ああ。
君を、僕はまだ愛している。
この想いは、死ぬまで僕と在り続けるだろう。
「浮竹、大好きだよ」
翡翠の石を握りしめて、僕は君の名を呼ぶ。
ふと、意識が遠くなった。
なんだろう。
眠くて、どうにもならない。
僕は、地面に倒れた。
ふわふわと、何処かを漂っている感触だった。
目を開けると、君がいた。
「浮竹!?」
「よお、京楽。言っとくが、これは夢だ。この世界にない、地獄の神に頼み込んでこうやって話をしている」
「浮竹、浮竹、浮竹!」
僕は、涙をいっぱい零しながら、細い君の体に抱き着いた。
感触が、ちゃんとあって、僕は驚いた。
「お前、俺が死んでから元気がないよな。俺の死を乗り越えてくれ。俺はもう、お前の隣にはいれない」
「浮竹、僕は君がいないと----------------」
「京楽、俺がいなくても、この3年間やっていけただろう?大丈夫、みんなが、仲間がいる。お前は一人じゃない」
「それでも僕は、君に生きていて欲しかった・・・・」
「神掛は、後悔していない。俺は自分の死を無駄だとは思っていない。この世界は、崩壊することなくこんなにも輝いている」
「浮竹大好きだよ。愛してる」
ふわりと。
君は笑った。
「俺も愛している、京楽。大好きだ」
「ねぇ、僕も連れて行って」
「だめだ。お前はあと千年は生きる予定なんだから」
「千年!?君がいない世界で、千年も?」
「お前なら、生きていける。俺のことは心の中だけに留めておけ。泣くなとは言わない。でも、強くなれ。俺がいなくても、この世界を生きていけるように」
触れるだけの口づけに、僕は夢中になった。
「もう時間がない。俺は去る。いいか、京楽、お前は一人じゃない。みんなついてる。みんなの総隊長だろう!じゃあな!」
「浮竹、待って!」
ふわふわと。
霞のように、君が消えていく。
「待って!!」
「京楽隊長!気が付いたんですか!」
「あれ、七緒ちゃん?ここは?」
「1番隊の隊首室です。学院の桜の木の下で倒れているところを発見されて、運び込まれたんです。4番隊に見てもらいましたが、ただ眠っているだけと・・・でも、いつ目覚めるか分からないと言われて-------------」
七緒は、泣いていた、
「七緒ちゃん、泣かないで」
「あなたがいないと、私は------------------」
ああ。
一人じゃないんだ。
本当に、僕を思って泣いてくれる人がいる。
「京楽隊長が目を覚ましました!」
起き上がると、執務室には護廷13隊の隊長副隊長が揃っていた。
ああ。
本当に、一人じゃないんだ。
僕には、仲間がいる。大切な友人もいる。
ここに、君はいないけれど。
「やあ、心配かけてごめんね。僕はこの通り、元気だからみんな隊舎に戻っていいよ」
死神達が去っていき、僕は七緒ちゃんと二人きりになった。
「浮竹がね・・・夢の中で、会いにきてくれたんだ。なんかふわふわした世界だった」
「京楽隊長・・・・・・」
「僕はもう大丈夫だから」
君に夢の中で出会い、言葉を交わせてよかった。
君を、僕はまだ愛してる。
きっと、死んでも愛し続ける。
でも、もう泣かない。
泣き言は言わない。
僕は京楽春水。
1番隊隊長にして、総隊長、京楽春水。
僕は君の瞳の色の名を知らない10
お互い忙しくて、休日も仕事があったりしてなかなか会えないでいた。
ある日、京楽が非番になり、浮竹が早番で終わって、時間ができたので二人で飲みにいった。
次の日は、二人とも休みだということもあり、飲んで騒いだ。
「いきなり3席とか、山じいほんとに何考えてんの!」
「先生を悪くいうのはよせ。でも、3席は正直つらいな」
お互い、とにかく忙しいのだ。
虚退治の遠征にいったり、書類仕事に振り回されたり。
現世でいうとブラック企業に勤めているような感覚だった。
「まぁ、研修期間も兼ねてるし、仕方ないか」
「研修期間なんてなくても、俺たちは学院時代から死神の一般隊士に交じって、仕事に参加してたけどな」
「今日は飲むぞ。たとえ二日酔いになろうとも飲むぞー」
日本酒をすでに何本も開けている京楽が、追加の酒を頼む。
浮竹は、二日酔いになるを覚悟のうえで、甘い果実酒ではなく、強めのお酒を飲んでいく。
「俺も飲むぞー」
そうして、浮竹は飲みつぶれた。京楽はうわばみなので酔うこともなかった。
すーすーと、静かな寝息をたてている浮竹を抱き上げて、席官に与えられる館の、浮竹の家に送り届ける。
お互い、一人暮らしだ。
二人で同じ家に住んでもいいと思ったが、しばらく仕事に慣れるまでは一人暮らしを続けようと、お互いに決め合った。
仕事に慣れてきたら、瀞霊廷にある京楽の持つ館に、浮竹が移る予定だった。
「ああもう・・・・・こんな日に限って君は酒に酔いつぶれちゃうし」
たまりにたまったものは、一人で処理した。
浮竹の寝顔を見ていると、安堵を覚える。
まだどこか少年くささの抜けない、あどけない顔をしていた。
寝込みを襲う趣味はないので、浮竹の額にキスを落として、同じ布団で横になって眠った。
「んーーーー、頭痛い・・・・」
「おはよう」
「京楽?ここは、俺の家か・・・酔いつぶれたのを送ってくれたのか。わざわざすまんな」
「二日酔いの薬、そこに出してるから飲んでおきなよ」
「ああ、ありがとう」
薬を飲むと、嘘のように頭痛が消えた。
「なんかすごい効き目だな。これ、まさか高い・・・?」
「たかが10万環だよ」
「10万・・・・・」
10万円だ。日本円に換算すると。
「朝食、作っておいたから、食べれる時に食べてね」
京楽は、上流貴族で、料理などしないイメージがあるが、寮暮らしの時などたまに自炊をしていた。浮竹も料理はできる。
なにせ、8人兄弟の長男として生まれたせいで、病気で臥せっていない元気な時は、妹や弟の食事の世話をよくしたものだ。
京楽が用意したものは、梅干しと塩昆布のおにぎりだった。それと、味噌汁。
「お、美味いなこれ」
「そう言ってもらえると作ったかいがあったよ」
味噌汁はちゃんと出汁までとっていて、とても美味しかった。
久しぶりにだらだらと、朝を過ごせた。
浮竹も京楽も、さすがにこのままでは体がもたないと、1週間ほどの休暇を申しこんで、それが受理されたばかりだった。
「今日から一週間は、僕の館においで。必要なものは書けば、使用人がもってくるから」
「お前・・・全然そうは見えないけど、一応やっぱ上流貴族なんだなぁ」
「全然そうは見えないは余計だと思うけどね」
ちゅっと、リップ音をたてて、京楽は浮竹の額に口づける。
「君の瞳の色・・・・ずっと、知らないと思っていたんだ。緑色だって分かっていたけど、それ以外の色にも見えて。緑より深い翠だったんだね。君の瞳は翡翠そのものだ。僕は、やっと君の瞳の色の名を知った」
「なんだ、ポエムか?」
そう浮竹がからかうと、珍しく京楽が赤くなった。
「君の瞳の色は翡翠ってだけだよ」
「ああ、昔からよくそう言われいるぞ」
「そうなの」
「ああ」
問答は、いったん終わりとなった。
着替えなどの荷物をもった浮竹を抱き上げて、瞬歩で京楽は自分の館まできた。
「ここが、今日から1週間過ごす君の部屋だよ」
18畳はあろうかという、広い部屋だった。
「こんなに広いと、寂しくなる」
「僕も、この部屋で一緒に過ごすから」
「そうか。ならいいんだ」
浮竹は、京楽に甘えるように抱き着いてきた。
「浮竹?」
「しよう。たまってるんだ。お前と体を重ねたい」
「一人で、処理しなかったの?」
「しようとしたさ。だけど、胎が疼いて、物足りなくて・・・・」
京楽は、その言葉で我慢の糸が切れた。
「んっ」
唇を唇でふさがれる。ぬるっと舌が入ってきて、浮竹の縮こまった舌を絡めとり、甘噛みして口内を京楽の舌が動いていく。
「ふあ・・・・っ、ん、ん・・・・・」
京楽は、布団をひっぱりだしてくると、浮竹の死覇装を脱がしていく。
京楽もまた、自分の死覇装を脱いだ。
「お前、せっぱつまってるのか?」
「どれだけ我慢してきたと思ってるの。1カ月は、抱いてないんだよ、君を。学生の頃は、最低でも1週間に一度は睦みあっていた。いきなり1カ月の禁欲はきつかったよ」
「あっ、ううん、うあっ」
下着の上から刺激を与えられて、浮竹のものは完全にたちあがり、先走りの蜜を零していた。
直に触ると、その熱さに眩暈を覚える。
「あ・・・・・」
胸の先端を手でいじられながら、花茎をもう片方の手でじゅぷじゅぷと扱われた。
「あああ!」
先端に爪をたてると、浮竹はあっけなくいってしまった。
その量の多さに、京楽が笑う。
「特濃ってかんじだね」
「う、うるさい!」
浮竹は顔を赤くした。
「も、早く・・・」
浮竹は、自分から足を開く。
京楽は指に潤滑油をまとわせながら、ゆっくりと浮竹の中を刺激して、体を拓かせていく。
やがて蕾がとろとろになると、京楽は熱を浮竹の中に埋め込んだ。
「ひああああ、あ、あ!」
「久しぶりだから・・・・きついね・・・・動いても、大丈夫?」
こくりと、言葉もなく浮竹は頷いた。
翡翠の瞳に、涙の膜がはっていた。
「ん・・・・んあ、あ、あ」
出し入れを繰り返すと、浮竹は啼いた。
「あ!」
前立腺のある場所を抉られて、浮竹が背を反らせる。
「あ、春水、春水!」
胎が疼く。
どしようもなく。
「俺の奥で・・・・・胎で、出せ」
女のように妖艶に。少年のように純粋に。
ただ、求めた。
「一緒にいこうね?」
「んあ・・・・・ふあ、あ、あ」
口づけを交わし合いながら、お互い高みへと昇っていく。
「あああ!」
「十四郎・・・・!」
熱が弾けたのは、ほぼ同時。
浮竹が、酸素を求めて喘ぐ。
「や、いってるから、いってるから、動くな・・ああああ!」
中と外でいっているのに、京楽のものはまた腹の奥へと突き上げてくる。
「んあああ!」
快感で真っ白になった思考が、さらにぐずぐずに溶けていく。
翡翠の瞳から、苦しさではない暖かな涙が零れ落ちた。
「あと、ちょっとだけ。胎に出すから、受け止めてね」
「んんう、あ、やっ」
京楽の動きが早くなる。
浮竹は酸素を求めて、また喘ぐ。
「んーーーー、やああ」
最奥までズルリと、京楽のものが入ってきた。
そのまま、熱を出されて、浮竹は女のように中でいっていた。
「あ、おかしくなる・・・・ああ・・・や・・・・」
「胎に出せっていったのは、君だよ、十四郎」
京楽が何を言っているのか、もはやあやふやとした意識では分からない。
「ん・・・・・・」
口づけを交わしあって、くたりと浮竹は意識を失った。
「ごめんね、十四郎」
額にキスを落として、後始末をしてから、京楽は浮竹に新しい着物を着せて新しくしいた布団で寝かせた。
浮竹が意識を取り戻したのは、1時間ほど経ってからだろうか。
「浮竹、大丈夫?久しぶりすぎて、ちょっとがっつちゃったみたい。体、痛くない?」
「腰が痛い・・・・・・」
ブスっと不貞腐れた顔で、浮竹は布団を頭までかぶった。
「回道がよく使える使用人いるから、呼んでこようか?」
「いい。このまま寝る。おやすみ」
「寝るって、まだ昼の2時だよ」
「寝るったら寝る」
浮竹は、怒っているのだろうか。
「じゃあ、僕も寝ようかな」
浮竹が布団をかぶったその中に、入りこんでくる京楽。
「お前はあっちで寝ろ!こんな広い部屋で、わざわざ同じ布団で寝る必要なんてないだろう!」
「浮竹成分補充しないとね」
「なんだそれは」
「浮竹に触れられなかった間、かつかつだったから」
ちゃりっと、チェーンがこすれる音がする。
浮竹も京楽も、ペアリングをチェーンにかけたネックレスをしたままだった。
「翡翠、ずっと君を守ってくれたんだね」
「それはお前もだろう」
浮竹の瞳の色は翡翠。
もう、君の瞳の色の名を知らない僕はいない。
翡翠。
美しい、深い翠。
翡翠の瞳を瞬かせる浮竹の瞳を、京楽は舐めた。
「ひゃっ」
「おいしそうだったから」
「変態か、お前は!目なんて舐めるな!」
「いや、おいしそうで、綺麗で・・・・翡翠だね、君の瞳は。僕は、ずっと君の瞳の色の名を知らないと思っていたんだ。でも翡翠だった。こんなにも身近にあったのにね」
京楽は、浮竹の長い白髪をなでる。
「君の綺麗な白い髪にぴったりの色だ」
「褒められているのか、俺は」
「そう、綺麗でかわいいって、褒めてるの」
二人は、顔を寄せ合って、クスクスと笑いあいながら、ごろごろと布団の上を転がった。
僕は、もう君の瞳の色の名を知らないといわない。
綺麗な翡翠だと、確信したから。
その二人の関係が、何百年も続くとは、その時の二人はまだ知る由もなかった。
僕は君の瞳の色の名を知らない
fin
僕は君の瞳の色の名を知らない8
浮竹はともかく、京楽は正座に足がしびれてもじもじしていた。
「春水、ちゃんと座らんか!」
「あー、無理!僕、正座苦手なんだよ」
足を崩す京楽に、山じいのげんこつが飛ぶ。
「十四郎を見よ。綺麗に正座の姿勢を保っておるじゃろうが」
「浮竹は浮竹、僕は僕だよ」
あぐらをかきはじめる京楽に、もう一度げんこつをするが、山じいも諦めているのか正座をしろとはそれ以上言ってこなかった。
浮竹は、綺麗な所作で茶を飲み、茶菓子を食べる。
本来なら、上流貴族である京楽のほうが、こういったことを嗜むはずなのだが、京楽は茶道や華道、書道などめんどくさいと、興味さえ見せない。
浮竹がよくお世話になっている、4番隊隊長の卯の花の姿もあった。
「卯の花隊長、お元気ですか?」
「そういう浮竹さんも、お元気そうで。最近は入院しなくなり、ほっとしています」
「最近は、暑さも大分和らいで、過ごしやすい季節になっているので。夏風邪も今年はひかなかったし、比較的体調がいい日が続いています」
「それが長続きするとよいですね」
卯の花は、ぺこりとお辞儀をして、去っていった。
京楽と浮竹も去ろうとすると、山じいに呼び止められた。
「お主ら、もう卍解を習得しておるな?」
「なんのことかなぁ、山じい」
「わしの目は欺けんぞ」
「先生・・・・」
「学院生徒でありながら、卍解をすでに習得しているとなると、死神になって欠員が出たらすぐに隊長じゃろうな。お主らには100年ほどは席官として地道に歩んでいってほしかったが、それも無理なようじゃ。お主らのもつ霊圧は、すでに隊長格じゃ」
「ほめすぎじゃないかなぁ」
「先生、俺たちはまだ4回生ですよ。隊長だなんて、そんな」
京楽と浮竹の笑顔が、引きつっていた。
死神となって、しばらくはのらりくらりと人生を歩みたかったが、備わっている器と霊圧がそれを許してくれそうになかった。
すでに、斬魄刀はある。
浮竹は双魚理を。京楽は花天狂骨を。
卍解は、確かにできた。まだ未完成ではあるが。
「山じい、隊長云々は死神になってからしようよ」
「そうです、先生。卒業まであと2年もあるんです。早すぎます」
「6年の学院じゃが、お主らのように才に恵まれた者をいつまでも生徒として燻らせるのも気が引ける。そのうち、スキップ制度をもうけて、才能があれば学生生活を短縮させることを考えておるのじゃ」
「それはいいね、山じい。正直、もう今の授業は受けてももう意味がない気がするんだ。早くに卒業できるようになるなら、それにこしたことはないよ」
「うむ」
山じいも、納得した。
「じゃあ、山じいまたね」
「先生、また稽古をつけてくださいね」
「分かっておる」
もうすでに、浮竹と京楽は自分たち以外で生徒の中で剣術に秀でた者はおらず、いつも京楽と浮竹が組まされていた。
山じいの特訓は、とても過酷だが、成長に必要なものだと二人とも分かっていた。
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「ねぇ、浮竹」
「なんだ?」
「学院を卒業して死神になったら、お互い忙しくなるだろうね」
「仕方ないことだろう」
「そうだね。こうやって、いちゃつく日々もなかなかとれないんだろうなぁ」
京楽は、浮竹を膝に座らせて、その長くなった白髪を手ですいていた。
「ねぇ。これ、もらってくれる?」
ふと京楽が取り出したものは、翡翠をあしらったペアリングだった。
「こんなの・・・恥ずかしくて、つけれない」
「そう言うと思って、チェーン用意しておいたんだ。これに通して、首にかけようよ。一緒に」
「また、高かったんじゃないのか」
「それは義業秘密v」
浮竹は、ちょっとしぶい顔をしながらも、喜んでくれた。
浮竹を抱きしめていると、京楽はその温かさに安堵を覚える。
「ねぇ。死神になっても、僕より先に逝かないでね」
「それはこっちの台詞だ」
浮竹をベッドに押し倒すと、浮竹は目を閉じた。
口づけの雨を降らしながら、衣服を脱がしていく。
「んんっ・・・・・・」
うなじと鎖骨に、キスマークを残した。
首筋は目立つので、だめだと言われている。
「あ・・・・」
胸の先端を指がかすめると、浮竹は切ない声を出した。
「ここ、きもちいい?」
ゆっくりと摘まみあげると、ぞくぞくとした感覚が浮竹を襲った。
「んっ・・・・きもちいい・・」
「浮竹は、随分と淫乱になちゃったね。胸で感じるなんて」
「そうさせたのは、お前だろうがっ」
浮竹が熱い吐息を吐くと、京楽はぺろりと自分の唇を舐めた。
潤滑油をとりだして、浮竹のものにも自分のものにも注ぎ、指も潤滑油で濡らし、蕾を解していく。
「ふふふ、君のここ、びしょぬれだね」
「お前のせいだろうがっ!」
潤滑油を零すからだと叫んでやりたかった。
「ぬるぬるして、気持ちいい?」
浮竹の花茎を手でしごき、勃起させるとにゅるにゅると潤滑油の滑りをかりて、いつもより動きが早くなる。
「んあっ!」
びゅるびゅると、精子が勢いよく浮竹の腹にはねた。
指を蕾の中に入れて、動かしていく。
「あ!」
びくんと、浮竹が痙攣する。そこが、浮竹のいい場所だと知っているので、執拗に攻めた。
「やっ、もう・・・・・・あ、早く、来い!」
「いれるよ」
ずるりと指が引き抜かれて、京楽のものが宛がわれる。
「あああああ!!!」
一気に引き裂かれて、浮竹は涙を零していた。
「ごめん、痛い?」
「大丈夫だ・・・・」
瞳は涙で濡れていたが、それは快感によるものだった。
「あ、あ・・・・んあっ」
ゆっくりと、強弱をつけて、京楽のものが出入りする。
中は潤滑油のせいで動くとぬるぬるしていたが、熱くて締め付けてくる。
「君の中・・・すごいね。うねってる」
胎が疼いた。
浮竹は、京楽を求める。
「あ、もっと・・・・春水、春水!」
「僕はちゃんとここにいるよ、十四郎」
水の膜をはった、緑の瞳と目が合う。
「あ・・・」
ぽろりと、大きな瞳から涙が零れ落ちた。
「快感で・・・・・あたまが、変に、なる・・・・・」
京楽は、浮竹の弱いところばかりをすりあげて、先に浮竹が達してしまった。
「あ、あ、お前も・・・・・俺の中でいけ」
「うん、僕ももう限界かも」
じゅぷじゅぷと音を立てて、浮竹を犯す。
「胎の奥が、疼くんだ。お前で、満たしてくれ」
「ん・・・・いくよ。受け取って、僕の熱を」
「あ・・・・・ああああ!!!」
京楽は、浮竹の最奥まで入り込むと、精子を浮竹の胎に注ぎこんだ。
「あ・・・・好きだ、春水」
「僕も大好きだよ、十四郎」
抱きしめ合い、口づけを交わす。
浮竹はぐったりとなった。いつも交わった後はこうなる。京楽が、濡れたタオルで浮竹の体を綺麗にふいて、バスタオルをひいて中にだしたものをかき出した。
「ほんとはもう1回したいけど、無理そうだね」
「今日は、1回きりにしてくれ」
「うん」
京楽はベッドのシーツをかえて、浮竹を抱きしめる。
「また明日、抱いていい?」
「体調がよければな」
最近の京楽は、がっつかない。穏やかだ。
僕はね。
君の瞳の色の名前を、本当は、知っているんだよ。
僕は君の瞳の色の名を知らない7
山じいの問いかけに、浮竹はこくりと頷いた。
「はい先生」
「昨日は、3回は浮竹の中でいったよ」
「誰もそこまで聞いておらんわ!」
京楽は余計なことを言って、山じいからげんこつをもらっていた。
「お主は肺の病もあるし、病弱じゃ。くれぐれも、無理をしないようにの」
「先生、お気遣いありがとうございます」
「これ春水!肉体関係をもつのをやめろとは言わぬが、くれぐれも十四郎に無理はさせるのではないぞ!」
「あ、うん大丈夫。ちゃんといろいろ気をつけてるから」
ただでさえ、受け身の浮竹に負担がかかるのだ。
「そういや山じい、僕が男役で浮竹が女役ってよくわかったね」
山じいは、嫌そうな顔をした。
「受けの春水なぞ、想像したくもないわ」
「酷い!」
顔をばっと手で覆って、泣き真似をするが、山じいにはそれが嘘であるとばれている。
「先生、京楽とはうまく付き合っています。心配には及びません」
「それなら、いいのじゃがな」
でも、京楽の旺盛な性欲にはついていけないので、京楽は浮竹にぶつけるだけぶつけるということをしない。
一度、全てをぶつけられた次の日、高熱を出した。
衰弱しやすい体を衰弱に追いやったせいだ。
その次の日から、京楽は浮竹にますます甘く優しくなった。
体を重ね合わせても、浮竹の快感を先にして、自分だけで果てたりしない。
「さすがに、1日5回の時は意識を失いましたが。性欲魔人でした」
「春水!1日5回じゃと!十四郎の体にそんなに無理をさせたのか!この性欲魔人め」
「いや、最初だけだよ。さすがに次からは限度ってものを知ってやってる」
「弟子の性生活に横やりをやる師匠・・・うう、わしのポジションが」
すっかりひしょげた山じいに、浮竹がお茶を出した。
「粗茶ですが」
茶の道は山じいの本領発揮の場所だ。
浮竹のいれたお茶を飲んで、山じいはほっこりとした。
「うむ、いい茶じゃ。心の温かさが染み出ておる」
「じゃあ、僕のいれた茶も飲んでよ」
京楽が、ドン、と山じいの前に茶をいれた湯のみを置いた。
それを、山じいはぐいっとあおった。
「まずい!心のけがれが出ておる!」
「酷い!」
京楽は、浮竹を抱きしめた。
「浮竹、山じいがいじめる」
「京楽、先生の前でイチャイチャするのはやめろ」
「そんなこといわないでよ浮竹~」
浮竹は、どこから取り出したのか、ハリセンで京楽の頭をはいたいた。
「あいた!」
「では、先生、そろそろ失礼します」
「うむ。また近況報告にきなさい。今度の茶会には十四郎と春水も出るように」
「はい」
「は~い」
京楽は、めんどくさそうに返事をした。
山じいは茶道の道を、趣味で嗜んでいる。
「ねぇ、浮竹、僕って性欲魔人かな?」
「そうだと思うぞ。毎日のように盛ってるじゃないか」
「毎日じゃないよ!確かに若いからムラムラするときはあるけど、基本週1~2でしょ?」
「1回につき何回もしてくるからだ。この性欲魔人が!」
京楽は、浮竹を見下ろして、ちゅっとリップ音を立てて浮竹の頬にキスをした。
「なんだ」
「いや、かわいいなぁと思って。性欲魔人な僕にもついてきてくれる浮竹が。ねぇ、帰ったらしようよ」
「おとついもしたばかりだろう!」
浮竹が、恥ずかしそうに頬を染めた。
「うん。でも、君の恥ずかしがる顔を見てたら、ムラムラしてきた」
「今日だけだからな」
「うわ、ほんとにいいの?」
「嫌なら別にしなくていいんだぞ」
浮竹が、足元の石を蹴り飛ばす。
「むしろしないほうが、俺としてはありがたい・・・・って聞いてるのか」
「聞いてません」
京楽は浮竹を抱き上げると、瞬歩で寮の部屋に戻った。
どさりと、ベッドに押し倒されて、浮竹はため息をもらす。
「はぁ・・・結局こうなるのか」
「ねぇ、僕とこういう関係になったこと、後悔してる?」
「後悔してたら、今ここにいない」
浮竹は、京楽の頬を両手ではさみこんで、噛みつくようなキスを何度も繰り返した。
京楽が、くつくつと喉の奥で笑う。
「一緒にお風呂入ろうか」
「風呂場で盛るなよ」
「分かってるって」
浮竹の瞳が潤んでいた。
その瞳の色の名を知ったら、きっと深く深く溺れるのだろう。
16話補完小説
シュテルンリッター、「I」のツァン・トゥは日番谷の卍解を使った。
それを倒れ伏したままの日番谷が見ていた。
「君の卍解だ。そちら側から姿を見るのは初めてだろう。浮くしい卍解だ。そしてこの卍解も「君と共に生きたもの」だ。この卍解だけを君から奪い去り、君が死んだ後も生き永らえさせてしまうことを、心から申し訳なく思うよ」
日番谷は黙していた。
浦原からの言葉が伝わり、出てきた黒い錠剤のものに触れる。
ドクン、ドクン。
鼓動の音が高鳴るのが分かった。
いきなり、ツァン・トゥの氷の翼に亀裂が入り、翼が大地に落ちる。
「なんだ、どうなっている?」
いける・・・。
卍解を取り戻せる。
よろよろと立ち上がった日番谷の背中に、氷の翼が生えていた。
「メダリオンに異常はない。それなのに何故、卍解が君の元へ戻り始めているんだ?一体何をした?」
ツァン・トゥに事情を説明する義理などない。
「氷輪丸が、戻りたいって言ってんじゃねぇか」
ツァン・トゥは飛び上がり、氷の刃を日番谷に向けて放つ。
「無茶させてんじゃねぇよ。自分で自分に攻撃できるわけねぇだろ」
氷輪丸を氷輪丸の手で壊すことはできない。
「さっきといい、今といい、卍解に心があるような物言いはやめてくれないか」
ツァン・トゥは小柄な日番谷の体を蹴り上げた。
上空まで飛んでいくその姿を追って、ツァン・トゥも飛び上がる。
「汎神論は肌に合わない」
「卍解に心が無いって、そんなこと本気で言ってんのか?」
日番谷は、己のうちに宿る力に話しかける。
(ああ、どうやらそのようだ)
ああ。
やっと聞けた。
「久しぶりに声を聴くな、よく帰ってきた」
日番谷は上空で踏みとどまる。
「氷輪丸」
その背には、氷の龍がいた。
「カオがジャマくせぇと思ったら、そういや卍解を一瞬虚化させるとか言ってたな」
浦原の言葉を思い出す。
日番谷の顔には、アランカルにある仮面があった。
「仕方ねぇ、このままいくか」
「くそ!」
ツァントゥは、拳をあわせて必殺技を使う。
しかし、それは大紅蓮氷輪丸の氷に飲み込まれた。
「十字の華は氷輪丸の紋章だ。五芒星にしてやれなくて、すまなかったな」
圧倒的な力の前で、ツァン・トゥは氷漬けになり、十字の中心で凍り付き、息絶えた。
ぜぇぜぇと、日番谷は血を吐きながら地上にいる、打ち捨てられた松本を見る。
「終わった・・・・・待ってろ、松本、今助ける・・・」
ガシャリと。
背中の翼が壊れ、日番谷は地面に倒れふした。
「松本・・・・」
息があるのかさえ、分からない。
今、意識を失うわけにはいかないのに。
自分の副官を助けなければいけないのに。
ダメージは大きく、日番谷は意識を失った。
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「すぐそこだってのに・・・・遠い・・・」
黒崎一護は、真っすぐな道を、ただ歩いていた。
全身に重圧が伸し掛かっているようで、足元がふらつく。
明るい先のほうへほうへと、歩いていく。
ふと、脳裏に映像がよぎった。
「今のはなんだ」
意味の分からない、カットされた画像が繋ぎ合わさって、できたイメージ。
「なんでもいい、進むしかねぇんだ」
一護は歩き続ける。
映像が、また一護の脳内で再生される。
「まただ」
なんだろう、この映像は。
どこか懐かしいような。怖いような。
ドクンドクンと鼓動が聞こえる。
「進まなきゃ・・・みんなを、守るんだ・・・」
少しでも早く、この道を抜けないと。
この道を抜けると、自分は絶対に強くなっている。
「ユーハバッハ・・・・・」
憎むべき、敵の名を口にする。
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「黒崎?」
ふと名前を呼ばれた気がして、石田雨竜は背後を見ていた。
いるわけがない。
敵対しているのだから。
ユーハバッハは、楽しそうに瀞霊廷を見下ろしていた。
「予想はついていた。卍解を奪われた死神たちが、何も手を打たない訳は無い。いずれ卍解を取り戻す手段を見つけるだろう。だが、予想のついていたこととはいえ・・・」
ユーハバッハは、玉座に深く座った。
「喜ばしいな、シュテルンリッターよ。ここからが、本当の絶望だ」
雨竜はユーハバッハの背後で、眉を顰めた。
ああ。
また、死神たちが死んでいくのだろう。
だが、今の雨竜は「A」の称号を与えられた滅却師の、ユーハバッハの後継者。
いずれ、一護と刃を交えるだろう。
ユーハバッハの言いなりのように。
黒崎・・・どうか、尸魂界を守ってくれ。
雨竜は、静かに目を閉じた。
うなじ2
暑いから髪を結い上げると、海燕にそういわれた。
「あのエロ魔人が・・・・!」
浮竹と京楽の仲を知っている海燕は、特別何かを注意するわけでもなかった。でも、その姿で外に出られてはたまらないと、浮竹の結った髪を元に戻す。
「外出るなら、髪は結わないでくださいね。普通に背中に流していたら見えないですから」
「海燕・・・あいつ、どうにかならないか?見えるかもしれない場所にキスマーク残すなって言ってるのに、残すんだ」
「隊長の手に余るのを、俺がどうにかできるわけないじゃないですか」
それもそうだなと、浮竹はため息をついた。
「浮竹、遊びにきたよ」
「京楽、お前はまたうなじにキスマーク残したな!うりゃ!」
浮竹からラリアットをくらって、京楽は畳の上に転がった。
「あははは、ばれちゃった?」
京楽は、反省のかけらもなく笑っていた。
「お前は、何度見えるかもしれない場所にキスマーク残すなといえば、分かるんだ」
「だって、うなじはいつも髪で隠れるじゃない」
「この暑い季節、この長い髪は結うんだ。いっそ切ってしまおうか」
その言葉に、京楽が浮竹の手を握る。
「だめだよ、浮竹。せっかくここまで伸ばして綺麗に保ってるのに、髪を切るなんて。伸びた分は僕が切ってあげるから、髪は他のやつにさらわせないで」
「京楽・・・・」
「はいはい、ラブシーンなら他所でやってくださいね」
海燕が、そう声をかけてくる。
「キスマークはね、僕の君への愛の証なの」
「愛の証・・・」
ああ、だめだ。
隊長、言いくるめられてる。
海燕は京楽の頭をハリセンで叩いた。
「愛の証でキスマークとか、俺も隊長のキスマークが他にばれないか冷や冷やするんだから、ほどほどにしておいてくださいね」
「海燕君、ひどいなぁ」
「自業自得ですよ」
「浮竹、海燕君がいじめる」
京楽は、浮竹の後ろに隠れた。
「海燕、だめだぞ仲良くしないと」
すっかりほだされた浮竹の頭を、海燕はハリセンでスパンと叩いた。
「あんた、キスマークのこと怒ってたでしょう!その怒りはどこにいったんですか!」
「はっ、そうだった!おい京楽!」
「うなじがだめなら、鎖骨ならいいよね」
「んあっ・・・・」
浮竹の死覇装を少し脱がして、浮竹の鎖骨にキスマークを残す京楽に、海燕がスパンとハリセンで叩いた。
「朝っぱらから盛るな!」
「えー。キスマークを残すくらいいいじゃない」
「あんたの場合、それだけじゃ終わらないから言ってるんです!」
「んっ」
海燕を無視して、京楽は浮竹に口づける。
「あんたねぇ」
海燕は、ハリセンを構えた。
「朝から、盛るなと、言ってるんです」
バシバシバシと、ハリセンで頭をはたかれて、京楽は降参した。
「もう、分かったよ。続きは今日の晩に・・・ね、浮竹、いいでしょ?」
浮竹は、キスの余韻でぼーっとしていたが、京楽の言葉に頷いた。
「あ、ああ。いいぞ」
「隊長も、いやならちゃんと断ってくださいよ」
「浮竹が嫌がるわけないじゃない。僕との愛を邪魔しないでよ」
「あんたはいっぺん、禁欲1カ月くらい経験すべきです」
「1カ月も禁欲してたら、しおしおになっちゃうよ!」
「しおしおになったらどうですか」
「海燕君酷い!こんなにも君を好きなのに!」
海燕はさぶいぼが立つのは自分でもわかった。
「新しい嫌がらせか・・・・」
「ふふふ」
「京楽、海燕はやらないぞ。海燕は俺の副官なんだからな!」
「あーはいはい。茶でもいれるので、飲んでください」
海燕は茶を3人分いれて、おはぎを出した。
浮竹は、おはぎの虜になっていて、もう先ほどのやりとりをすっかり忘れていた。
海燕も、おはぎが好きだ。もともと浮竹が好きで一緒に食べる機会が増えたせいで、好きになってしまった。
「隊長を泣かせないでくださいね」
海燕は、おはぎを食べている京楽に釘をさす。
「褥では泣かせるけどね」
「あんたは・・・・」
セクハラまがいの発言に、ハリセンで頭をスパンと叩いた。
「海燕君、上司をハリセンで叩くのはどうかと思うよ」
「あんたと隊長は、ハリセンで叩いていいって山本総隊長から許可もらってるんで」
「ええ山じいから!?山じい、酷い!」
許可証を見せると、京楽は海燕のハリセンを奪おうとしたので、海燕は逃げる。
「ハリセン奪っても、予備はたくさん家にありますから!」
「むきーーーー」
やけになた京楽と、雨乾堂で追いかけっこをする。
浮竹は茶をすすりながら。
「平和だな」
そう言って、京楽と海燕に。
「「どこが(ですか)」」
と突っ込まれるのであった。
うなじ
ほとんど熱におぼれきっていた浮竹は、そのことに気づいていなかった。
春水、春水と目に涙をためながら求められた。
そんな浮竹がかわいくて、つい自分のものだという証を残したくなった。
うなじならいいだろうと考えていただのだが、連日の暑さで浮竹は髪を結いだした。
「浮竹、だめだよ髪を結っちゃ!」
「どうしてだ?」
「君は髪を結わないほうが似合ってるから」
「暑いんだ」
再び髪を結い上げようとする浮竹を抱き寄せて、額に触れるだけのキスをする。
「なんなんだ」
「その・・・ね。昨日君のうなじにいっぱいキスマーク残しちゃったから。髪を結うとそれが見えて、いろいろ困ると思って」
京楽の言葉に、浮竹が真っ赤になる。
「な、見えるかもしれない場所に痕を残すなとあれほど!」
「だって君があまりにもかわいいから」
「かわいいっていうな!」
浮竹はぽかぽかと京楽を殴る。
じゃれあっているようで、京楽はキスマーク残してよかったかもと思った。
浮竹は怒っているが、本気では怒っていない。
「君がかわいいからいけないんだよ」
「俺はかわいいんじゃなくてかっこいいんだ」
そう言い張る浮竹は、頬を赤くしてかわいかった。
「今度うなじにキスマーク残したら、禁欲2週間だ」
「そんなぁ」
そう言いながらも、浮竹はまたうなじにキスマークを残されて、禁欲2週間といっておいたのに、1週間もしないうちに京楽に押し倒されて抱かれてしまうのであった。
君と過ごした最後の日
そう言って、君は僕を雨乾堂にあげてくれた。
明日には神掛を行う。
君はそう強く決めていた。
きっとではなく、100%死ぬだろう。
それでも、君は死神の矜持をもって、挑むだろう。
僕はその日1日中、ただ何もせずに君を抱きしめていた。
「今日の1日は、お前にくれてやる」
「じゃあ、抱かせて」
「いいぞ。先に風呂に入るか?」
「ううん、そっちの抱くじゃない。ただ、君をこうして抱きしめてたいんだ」
ぎゅっと力をこめて君を抱きしめると、君は困ったように微笑んだ。
君もまた、力強く僕を抱きしめてくれた。
君の体温は少し高くて、熱があるのではないかと思えば、案の定少し熱があるようだった。
でも、君の命は明日には果てるから。
僕は君を離さない。
時間が経ち、いつの間にか抱きしめ合ったまま寝てしまったようだった。
「お別れだ。長生きしろよ」
そういって、君のぬくもりが去っていく。
君は、とても綺麗な顔で微笑んだ。
「後追いなんてするなよ!」
分かってるよ。
僕は、総隊長なんだから。
君の最期を見届ける。
君は見事に本懐を成し遂げて果てた。
冷たくなっていく君の体を抱きしめる。
涙が零れた。
ねぇ。
君の墓は、雨乾堂を取り壊して作ろうと思うんだ。
あそこは、君の居場所だから。
「愛してるよ・・・・・」
唇に唇でふれると、血の味がした。
君を抱き上げる。
さぁ、まだ戦いは終わっていない。
君のためにも、僕も尸魂界を守らないと。
ねぇ。
本当は、君を失いたくなくて、神掛をさせたくなかった言ったら、君は笑うかな?それとも、悲しむかな?
君を失いたくなかった。
君に置いていかれたくなかった。
でも、もうどうしようもない。
ただ誓えるのは、君の分まで生きようという願い。
君の最後の微笑みを、僕は永遠に忘れないだろう。
君の名は、浮竹十四郎。
京楽春水、総隊長である僕が唯一愛した人。
永遠
双子の七五三が終わると、また月日は流れていく。
双子は7歳になり、死神学院初等科に通っていた。
父と母である京楽と浮竹は、異例のスピードで出世し、隊長になっていた。
「ああもう、兄さんこんなに汚して!母さんになんて言えばいいの!」
「うるさいなー春は。適当でいいじゃねぇか」
「よくない」
春は、隊長として多忙な両親の母である浮竹に甘やかされて育っていた。白は、少し春よりも厳しく育てられた。
ちなみに、白が兄で、春が妹だ。
父である京楽は、二人を溺愛していた。
京楽と浮竹は結婚していたが、名前は変えなかった。
二人も京楽隊長がいたら、ややこしくなるだろうとの、当時の未来を思い浮かべての策だった。
京楽と浮竹は、隊長として恙なく仕事をこなしている。
双子の子以外に、浮竹と京楽は子を作らなかった。
たくさんいてもそれはそれで幸せだが、隊長までなってしまって一緒に過ごす時間がなかなかとれないからである。
双子の育児を任せていた付き人に、双子は今も世話をされている。
夜になって帰ってくる京楽と浮竹のうち、特に浮竹に双子は本を読んでくれと強請った。
たくさんの本を、浮竹は読んで聞かせた。
春はΩで、白はαだった。
春は女の子なので、浮竹ほど苦しい人生を歩まずにすむだろう。
それでもΩであるのは変わりないので、いずれ年が思春期を迎えヒートを迎えた時のために、いつかΩのことについて話さねばならないだろう。
だが、まだ7歳だ。
まだまだ先の話。
浮竹は、またヒートになっていた。
京楽と館にこもり、双子は別の館で付き人に世話をされた。父と母に会いたいと最初は泣いていたが、段々慣れて、3カ月に1回のヒート期間を、双子は当たり前のように受け入れた。
-------------------------------------
「あ、あ、あ、春水!」
Ω特有のフェロモンにあてられて、興奮していた京楽は、久しぶりに味わう浮竹の肌を堪能していた。
いつもは隊長の仕事で忙しく、休みの日は体を休ませることが先決で、浮竹の病弱さもあって最近互いにセックスしていなかったのだ。
「んあ・・・・・・」
すでに熱い楔を打ち込まれている浮竹は、長い白い髪を畳の上に乱して、京楽の背中に爪をたてていた。
「君の中・・・すごいね」
「あ、もっと奥に・・・・・もっとくれ・・・お前の子種を、もっともっと・・・・」
アフターピルを飲むので、中出ししても問題はない。
ぱんぱんと肌がぶつかり合う音を立てて、二人は獣のように交じりあった。
「んう・・・」
深い口づけを受ける。
口内を舌で犯して、どちらの者かもわからぬ唾液が、糸を引いた。
「んあっ」
ドチュンと深くまで挿入されて、ビクンと浮竹の体が弓ぞりになる。
「あああ!!!」
ドライでいったのに追い打ちをかけるように、浮竹のものに手をそえて、しごきあげると、薄い精液を吐いて、浮竹は二重にいってしまい、息を乱した。
「やあああ、変になる・・・・やっ」
「十四郎、愛しているよ」
「俺も愛してる、春水・・・・ああ!」
京楽のものが出入りする。
もう何度目かも分からない精液を浮竹の最奥に出して、京楽は満足したのかズルリとひきぬいていった。
白濁した液体が、浮竹の太ももを伝い、溢れてくる。
ばかみたいに出した。溢れるほどに。
浮竹も満足したようで、その日はもう後は風呂に入って情事の後を流して、食事をして眠るだけだった。
ヒート期間はいつもこうだ。
飽きるほど交わりあって、食事をして風呂に入り、眠るだけ。
浮竹の眠る時間は長い。
ヒート期間は子を成そうとするために、熱にうなされるように求めてくる。
それに応えるのが、番としての京楽の役割だった。
隊長であっても、ヒート休暇は認められているので、二人はヒート期間になると館にこもった。
「なぁ、京楽」
「なんだい、浮竹」
「もう一人、子が欲しいって言ったら、どうする?」
「二人でも大変なのに、まだ欲しいの?」
「うーん。二人に弟か妹を与えてやりたいんだ」
「そう。じゃあ、明日はアフターピルなしだね」
浮竹の願いを京楽はほとんど叶えてくれる。
子供が10人欲しいと言ったら、きっと産んでもいいというだろう。
死神の生きる時間は長い。
浮竹は病弱であるが、京楽お抱えの薬師と4番隊のお陰で、最近は熱を出すこともなく、発作もおきていない。
いつか、浮竹は先に逝くだろう。
京楽は、残された子といつまでも幸せでいてほしいと思う。
今は、せいいっぱい生きよう。
愛しい京楽と、愛しい子たちと一緒に。
「我儘をいっていいか」
「なんだい」
「俺が死んでも、俺だけを愛してくれ。他に妻を娶らないでくれ」
縁起でもない。
そう京楽は言いたかったが、いつか浮竹が先に逝くのは病弱なことから分かっていた。4番隊の卯の花にも、普通の死神のように長くは生きられないと言われている。
「誓うよ。君だけを永遠に愛する。子供たちは別だけど、君だけが僕の大切な人だ」
「ありがとう・・・・・・」
浮竹は、涙を流して京楽を抱きしめた。
ああ。
罪深い。
でも、それを望む。
永遠に近い時間を生きるだろう京楽を、一人にしてしまう時がきても、子供たちがいる。
それが、せめてもの俺が贈れるお前への愛の証。
fin
結婚
今日は卒業式の日。
山じいが、涙ぐみながら、二人の卒業をお祝いしてくれた。
「春水も十四郎もよく6年間がんばったのう。これで休暇があけてから、晴れて死神の席官入りじゃ」
京楽と浮竹は、卒業とほぼ同時に結婚した。
資金は後払いということになった。
京楽の両親は渋い顔をしていたが、すでに浮竹のお腹には京楽の子が宿っている。
反対しようにも、京楽は浮竹と結婚すると頑として聞かなくて、結局京楽の両親が折れる形になった。
浮竹の両親と兄弟たちも来ていた。
「兄様、綺麗」
白い新郎の袴と衣をまとった浮竹は、かっこよくてかわいくて美人だった。
黒い袴と衣をまとった京楽は、浮竹の晴れ姿に惚れ惚れとしていた。
「おい、京楽。しっかりしないか」
「あ、ごめん。君があんまり美人だから、見とれてた」
「ばか」
浮竹が赤くなる。
京楽は8番隊の3席、浮竹は13番隊の3席になることが確定していた。
結婚式は滞りなく行われて、酒を飲みかわしあって、お互いを大切にすると誓いあった。
同じ死神になる元クラスメイトの友人が何人か祝いにきてくれたが、基本身内だけでの結婚式だった。
浮竹の髪は腰の位置まで伸びており、ゆるく編みこまれて、いつの日か京楽が結婚式の時につけてねと言っていた、翡翠の髪飾りをしていた。
式が終わり、静かになると、二人は寄り添いあって、酒を飲んだ。
「これを君に」
翡翠をあしらった、ペアリングだった。
「結婚指輪のつもりだったんだけど、なんか恥ずかしいからペアリングにしたよ」
「はめてくれるか?」
「うん」
京楽が浮竹の左手の薬指にはめると、サイズはちょうどだった。
浮竹が、同じデザインの指輪を京楽の左手の薬指にはめる。
日に透かして見れば、綺麗な緑色に輝いた。
「君の瞳の色だから、翡翠にしたんだよ。エメラルドでもいいかなって思ったけど、君の瞳の色はもっと濃い翡翠の色だから。ねぇ、君は今、幸せかい?」
「ああ、幸せだぞ。京楽、お前と結ばれて結婚までできた。いつか、子供も生まれる」
Ωの男性の出産は自力ではできないので、帝王切開が基本である。
「君のお腹が大きくなっていくのか。ちょっと不思議なかんじだね」
「子供は二人がいい」
男の子なら白、女の子なら春と、名前も決めていた。
浮竹は、流産する可能性があるので、戦闘には出産まで参加しないことになっていた。
やがて月日は巡り、浮竹が陣痛を訴えた。
浮竹のお腹は大きくなっていた。
子宮は直腸から分離して繋がっているが、女性と違い、男性のΩは普通に出産することができない。
なので、帝王切開だった。
「がんばって、浮竹」
「ああ。無事に生まれてくるように、祈っていてくれ」
京楽は、浮竹が手術室に運ばれていくまで傍にいた。
1時間ほどして、おぎゃあおぎゃあという赤子のなき声が聞こえて、京楽は安堵する。
しかし何故だろう。赤子が二人いるような?
「おめでとうございます。女の子と男の子の双子ですよ」
「ええっ、双子!?」
京楽は驚いた。
産婦人科では、性別の検査などは一切行っていなかったし、浮竹だけしか双子であることを知らなかった。
京楽は、泣きながら笑った。
「双子か・・・・・・」
浮竹は、帝王切開の傷が癒えるまで入院となり、保育室で無事うまれてきた双子-----------名前は、白と春と、初体面した。
双子はミルクを飲んで、健やかに日々を過ごしていく。
帝王切開の傷がまだ塞がっていない浮竹のところへ、京楽が双子を見せに連れていった。
「ああ、二人とも元気そうだ。双子だけど、別によかっただろう?」
「僕としては、事前に教えておいてほしかったけどね」
一人だけ除け者にされた気分を味わった京楽は、頬を膨らませていた。
「あいたたた、ひげ、ひげひっぱんないで」
白は好奇心が旺盛そうだ。
春はシャイでちょっと内気な子っぽい。
まだ赤子だから詳しくは分からないが。
1週間が経ち、浮竹は退院した。
双子の育児には、人を雇った。京楽の古くからの付き人で、信用がおける人物だった。
浮竹は京楽と同じように死神としての仕事をこなす。
帰宅すると、夜になるので育児は夜の間しかできない。
朝~夕方は、付き人に見てもらっていた。
粉ミルクで育っていく双子。
浮竹は母乳がでなかった。男性であっても、妊娠した場合母乳が出る場合があるが、必しもそうとは限らない。
粉ミルクは高いが、京楽が買ってくれて、育児に必要なものや絵本、おもちゃなんかも購入していた。
まだ赤子なのに。
気が早いと、浮竹は笑った。
京楽は、浮竹と始めの子になる双子にべた惚れで、休みの日は時折4人ででかけた。
「あーん」
泣きだした春を、浮竹があやす。
「おなかすいてるのかな」
今日は京楽に誘われて、花見にきていた。
赤子を連れての花見なので、酒はあまり飲まなかった。
水筒に入れていた粉ミルクを溶かしたものを哺乳瓶にいれかえて、春に飲ませる。
白も欲しがって、そっちは京楽が哺乳瓶で飲ませた。
「いやぁ、花見する暇もないかんじだけど、まぁたまにはこういうのもいいかな」
「赤子を連れて花見がそもそも無理がある」
浮竹は、ミルクを飲み終わった春にげっぷをさせるために背中をとんとんと叩いていた。
育児にもすっかり慣れてきた。
双子には霊圧があった。
いつか、この双子も学院に通うのだろう。
京楽と二人で見守っていこうと思った。
オメガバース京浮シリーズ「愛する」
もう何度目か分からぬヒートが、浮竹を襲った。
京楽は、最初浮竹が春を売らされていた記憶が戻るのではないかと、浮竹を抱かなかった。
浮竹は、巣作りを始めていた。
春を売らされていた頃は、ちゃんとアフターピルを飲まされていたのか、身籠っていなかった。
Ωは、ヒート期間中はほぼ100%妊娠するが、ヒート期間以外でも子ができる確率が高い。
「京楽・・・熱い。苦しいんだ。なんとかしてくれ」
ヒートで苦しがっている浮竹に、京楽は触れるのを躊躇った。
本当に、花街で春を売らされていた頃のことを思い出さないでいてくれるのだろうか。
「好きだ、京楽。俺を、京楽で満たして・・・?」
小首を傾げて、迫ってくる浮竹の魅力に抗えなくて、ベッドで巣作りを始めたその場所で押し倒して、唇を奪っていた。
「京楽・・・大好きだ」
「僕も君が好きだよ、浮竹」
「ん・・ふ、ふ・・・あ・・・・」
まともにキスをするのも、1カ月以上ぶりかもしれない。
浮竹は、依然と全く変わっていなかった。
白い肌に少し長い白い髪。綺麗な顔に、翡翠色の瞳。
どこも、汚れてなんかいない。
体中にキスマークを残した。
「やん・・・・あっ」
首筋から鎖骨、胸に至るまでをいつもキスマークを残すのだが、腕とか足にもキスマークを残し、太ももの内側にも吸い付いた。
「あ・・・・そんなにキスマークつけるな・・・・外に出れなくなる・・」
「浮竹に触れられなかった1カ月分を取り返したくてね」
「んあ・・・・あ、あ・・・・・・・」
浮竹は、京楽が与えてくる快感に夢中になっていた。
「や、は・・・・・・・」
胸の先端を引っかき、つまんだり舌で転がすと、浮竹は甘い声をあげた。
「あ、あ・・・あ・・・」
浮竹の花茎に手をやり、しごくとアッという間に勃起した。
先走りの蜜をたらたらと零しているそこが愛しくて、口に含んだ。
「あ、うあ、や!」
浮竹が甲高い声をあげた。
全体をなめあげて手でしごきあげて、舌で先端をなめていると、口の中に薄い精液が弾ける。
京楽が抱いてこない間、浮竹は自慰をしていたのだ。それ気づいて、京楽は謝った。
「ごめんね。君の記憶が戻るんじゃないかと心配で、君がヒートを起こすまで抱けなかった。自慰してたんだね」
「あ・・・」
舌と舌を絡み合わせる。
「ん・・・・・ん、ふあっ」
甘く舌を噛んでやると、浮竹は京楽の背中に手を回してきた。
ああ。
こうやって、浮竹と睦み合うのは1カ月以上ぶりだ。
傷つけないようにしなければ。
蕾に手をやると、そこはくちゅりと濡れていた。
入口に円を描いて、一本の指を入れる。
中は熱くてトロトロだった。
ごくりと、京楽は唾を飲み込んだ。
「あ、きてくれ、春水。俺の中に」
浮竹の訴えをうけながらも、指を増やしていく。
くちゅくちゅと音がした。
「ンア・・・・指じゃ、届かない・・・・」
とろとろに溶けているそこを指でさらに解してから、京楽はゆっくりと自身を埋め込んだ。
「今日は、久しぶりだからゆっくりしよう」
「あ、激しくてもいいのに・・・・」
「ヒートはあと6日も続くでしょ」
「意地悪」
浮竹は、京楽を締め付けてやった。
「んっ・・・・ああもう、一回出すよ?」
「出せ。お前ので、満たしてくれ」
京楽は、浮竹の子宮口で射精した。びゅるびゅると勢いよく精液が胎の奥にたたきつけられる。
「んーーー!あ”あ”!」
首を左右に振り、涙を浮かべる。
少し長い白髪が、さらさらと零れ落ちた。
「あ”!」
子宮に入り込むほど深く穿つと、浮竹は掠れた悲鳴をあげた。
「だめだ、あ、あ・・・」
ずるりと引き抜き、前立腺をすりあげて浅く犯してやると、吐息に似た息を吐いた。
「ううん・・・・あっ、あっ・・・・・・」
前立腺をすりあげるように浅く犯されるのが好きかと思えば、子宮にまで届くくらいまで深く穿たれるのも好きみたいで、リズムをつけて両方を攻めた。
「んんん・・・あ、いく・・・。いっちゃう」
「いいよ、いって。僕はここにいるから。いつでも、君の傍にいるから」
「あ、大好きだ、春水」
「僕も大好きだよ、十四郎」
ゆっくりと交わったが、疲労感は結構あった。
勢いよく交じったほうが、疲れは出ないのかもしれない。
京楽は、浮竹と 何度も睦み合った。
「あ、あ、あ・・・・・・・」
もう何もでなくなった花茎を口淫する。
トントンとリズムをつけて、前立腺をすりあげてやると、浮竹は熱い息を吐いて涙をこぼした。
「あ、あ、もうやぁ・・・・・」
「まだ、いけるでしょ?ねぇ、十四郎」
接合部がぐちゅりと音を立てた。
京楽は、体勢を変えて、後ろから浮竹を貫いた。
一度引き抜かれて、グプンと音をたてて突きいれられて、その衝撃に浮竹は涙を零して掠れた悲鳴をあげる。
「ひああああ!」
「愛してるよ、十四郎」
「うあ”・・・あ、あ、・・・・俺も愛してる、春水・・・・・あ”あ”」
最深部に侵入されて、こぽこぽと精液を直接注がれて、浮竹の胎は京楽のもので満たされていた。
一晩中睦みあって、気が付いた時には太陽が昇っていた。
浮竹は、消去した記憶が蘇ることはなかった。
京楽に抱かれても記憶は混濁することなく、二人は運命の番として、互いに互いを必要としあっていた。