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始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝

「ポチとタマ~。ご飯だぞ~~」

「るるるるるる」

「りんりんりん」

2匹のミミックは、使われていない暖炉から出てきた。

「ほら、ドラゴンステーキだぞ。それぞれの分があるから、仲良く食べるんだぞ」

「るるるるる♪」

「りんりんりん♪」

2匹のミミックは、ドラゴンステーキを食べ終えて、浮竹と戯れだした。

上半身をポチにかまれ、下半身をタマにかじらていれる場面を、ちょうどやってきた東洋の友たちに見られて、西洋の浮竹は固まった。

「いや、これは、その!」

(まぁ、人の趣味っていろいろだし、まぁ自由にしたらいいんじゃないかなぁ」

「ミミックが増えてる・・・・・」

東洋の京楽と浮竹は、引き気味に西洋の浮竹を見ていた。

(じゃあ、ゆっくりしてて。ボクたちはお茶しに、ダイニングルームへいくから」

(じゃあ、ゆっくり自分の欲望を消化させてくれ、西洋の俺)

「だから、誤解だあああああああ」

浮竹は真っ赤になって叫ぶのであった。


-------------------------------------------


「おっほん。情けない姿を見られた」

「それは、浮竹がミミックを好きすぎるからでしょ?」

「うっ」

図星を刺されて、西洋の浮竹は、ジト目で西洋の京楽を睨んだ。

「俺の友がきているなら、何故先に教えなかった」

「だって、君がミミックと戯れるのを邪魔すると、君が怒るじゃない」

「うっ」

(あ~このアッサムの紅茶うまいな)

(本当においしいね)

「東洋の俺たち、あれはただ遊んでいただけなんだ」

(そうなんだ)

(何か欲望を消化しているように見えたけど)

「だから、誤解だ!ミミックと遊んでみれば、その可愛さが分かるぞ?おーい、ポチとタマ~~」

「るるるるる」

「りんりんりん」

呼ばれて、2匹のミミックはダイニングルームにやってきた。

ポチは、まず西洋の浮竹にかみついて挨拶すると、次に東洋の浮竹にかみつこうとして、すごい睨んでくる東洋の京楽に恐怖して、西洋の浮竹の後ろに隠れてしまった。

「そんなに殺気をふりむかなくても、かまれてもどうってことないぞ」

(俺、ちょっとかまれてみたいかも)

「るるるるるる」

東洋の浮竹に、ポチはかみついた。

(十四郎!)

(大丈夫。甘噛みだな。暗くて狭いけど、あったかい)

ポチは、かみつくのを止めて、東洋の浮竹のほっぺを舐めた。

(あははは、くすぐったい)

(このミミックめ!)

東洋の京楽が妖刀を持ち出すものだから、ポチとタマは鳴きながら寝床の暖炉にもどってしまった。

「西洋の京楽、落ち着け」

(ボクの十四郎に触れていいのは、ボクだけだよ)

「ふふふ、愛されてるな、東洋の俺」

東洋の浮竹は真っ赤になった。

「これ、僕がこの前もらったレシピで作ったシュークリームの中身をアイスにしたものだよ」

お茶菓子にと、西洋の京楽は皆に振舞った。

(冷たくておいしい。アイスシュークリームってやつだな)

(確かにおいしいね。口の中で溶けていくバニラがなんともいえないよ)

「うまいぞこれ、京楽。おかわり」

「はいはい。たくさんあるから、好きなだけ食べていいよ」

その言葉に、東洋の浮竹もおかわりを所望した。

「口にあって、何よりだよ」

西洋の京楽も、椅子に座って紅茶を飲みながら、自分で作ったアイスシュークリームを食べた。

「ああ、そういえば新しい鎮痛剤を作ってみたんだ。バナナの味にしておいたから、良ければ何か痛みがあるときにでも飲んでくれ」

西洋の浮竹が取り出した鎮痛剤は、真っ赤でボコボコと泡を吹いていた。

(なんか、服用したら別に傷みがありそう)

「そんなことないぞ」

西洋の浮竹は、スプーンで鎮痛剤をすくうと、紅茶を飲んでいた東洋の浮竹の口にそれを突っ込んだ。

(うわあ、ほんとにバナナの味がする。おいしいし、すーっとする)

「ミントも入ってるからな。ただ、ミントの味はでないように調整をしておいた」

「浮竹ってば、最近錬金術で薬作って、味を改良するのにはまってるの」

(へぇ。傷を治す薬とかはないの?)

「あるぞ。このダメージ回復ポーションだ」

見た目はメタリックブルーだった。

「チョコレート味だ。持って帰るか?」

(そうだね。何かあった時にでも、使わせてもらおうかな・・・十四郎?)

(俺が癒してやるのに・・・・)

しょんぼりする伴侶を抱き寄せて、東洋の京楽は東洋の浮竹を抱きしめた。

(そうだね、こんな得体の知れない薬を飲むより、キミに治してもらえるもんね)

「得体の知れない薬とはなんだ。これでも、ミスリルランクだぞ。王国宮廷錬金術士にも、勝ったのに・・・・・・」

「浮竹、向こうの世界には魔法がない。薬を飲んだら、いきなり傷が治る薬なんてあったら、やばいでしょ」

「それもそうか。じゃあ、この花粉症が治る薬でも持って帰れ」

にこにこ笑う西洋の浮竹に断り辛くて、結局二人は花粉症にきく薬をおみやげだともたされるのであった。

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「そっちにいったぞ!」

(蛇影!)

西洋の京楽は、影から蛇を出すと、目的の大ねずみを退治してしまった。

「食べるなよ?今、このねずみからウィルスが感染して疫病が流行っている。薬をつくる」

そう言って、古城に大ねずみの遺体を持ち帰ると、血を抽出して、そこに何かの液体を注ぎ、生きたマンドレイクをぶちこんで、ドラゴンの血もぶちこんで釜で煮込むこと20分。

透明な薬が完成した。

「量産するから、手伝ってくれ」

(わかった)

ある程度の数を作ると、あとはレシピを王国宮廷錬金術士に渡して、西洋の浮竹は薬を安価で市場に流した。

どんどん売れて、在庫はあっという間になくなってしまった。

猫の魔女乱菊にもレシピを渡したので、すぐにでも追加品がやってくるだろう。

「やっぱり、君、人間が嫌いじゃないんじゃない?」

「そんなことないぞ。嫌いだ」

「じゃあ、なんで疫病の病の薬なんて作るの。対して儲からないのに」

「ほら、血の帝国で流行ったらやばいだろう」

適当に口を濁す。

「やっぱり、君は人間が好きなんだね」

(そうなのか?)

(そうにしか見えないね、確かに)

「お、俺は人間は嫌いだ」

真っ赤になって否定する西洋の浮竹に、素直じゃないなぁと、皆思うのであった。

「東洋の俺。疫病の薬作りなんかに巻き込んで、すまなかった」

(ううん、この国の人のためだろ。俺に力になれることがあったら、どんどん頼ってくれ)

「いや、今回はこれで終わりだ。魔女たちにも薬のレシピは渡したから、疫病は直に治まるだろう」

(そうか。俺たちは、そろそろ戻らないと)

(うん。長時間留守にするのもなんだから)

「選別だ。もっていけ」

西洋の京楽は、大金貨を一枚投げてよこした。

「じゃあな!」

西洋の浮竹は走り去ってしまった。

(金貨もらっちゃった)

(記念に残しておく?)

(そうだな。残しておくか)

こうして、二人は元の世界に戻っていくのであった。ポケットには、花粉症にきく薬をちゃっかり入れていた。




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始祖なる者、ヴァンパイアマスター50

浮竹には、かつて5人の血族がいた。

1番目は志波海燕、2番目はニィ・ペルル・シュトレウス、5番目ブラディカ・オルタナティブ。

まだ3番目と4番目が不明であった。

その3番目は、かつて人間であり、京楽と同じように魔神となり、その存在を進化させて邪神となったディアブロであった。

ディアブロは、邪神として神々に滅ぼされた。

当時の浮竹は絶望し、休眠に入った。

休眠から起こした相手が、4番目の血族で、今はまだ不明であった。

「愛しい浮竹。わたしは、あなたのために邪神となった。待っていてくれ。愛しいあなたの血族に、もう一度なってみせる」

ディアブロは空を飛ぶ。その凄まじい瘴気に、森の木々が枯れていった。

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それは、浮竹が一人で古城のプランターの、桔梗に水をやっている時だった。

「浮竹。私の愛しい人・・・・」

「誰だ!?」

浮竹は、振り返った。

「ディア・・・ブロ?」

そこにいたのは、5千年前に血族として愛し、魔神になりやがて邪神になり、浮竹の目の前で女神ククルに滅ぼされ、封印されたはずの男だった。

「ディアブロ!」

京楽は驚きのあまり、愛していたディアブロを抱きしめていた。

「本当にお前なのか!生きていたんだな!?」

「そう、生きていた。封印を、藍染が解いてくれた」

「藍染・・・」

その言葉を聞いて、浮竹は身構えた。

「何をそんなに威嚇する?私は今でもあなたを愛している。あの頃と、何も変わっていない」

「ディアブロ・・・・俺には、今愛する血族がいるんだ。ディアブロをもう一度血族にすることはできない」

「知っているよ、浮竹。神喰らいの魔神京楽があなたの血族でしょう。彼を殺して、私が、私だけが愛するあなたの血族になるよ」

「ディアブロ!」

ディアブロは、匂いのない布で浮竹の鼻と口を覆った。

すぐに眩暈がして、猛烈な眠気を感じて、浮竹は意識を失った。

「京楽よ!」

大声をあげると、京楽がでてきた。

「誰だい・・・って浮竹!浮竹に何をした!」

敵の手に落ちたであろう浮竹を取り戻そうと、魔剣ラグナロクを引き抜いた。

「この場で、争う気はないよ。私の名はディアブロ。浮竹の3番目の血族。リンデルの花園ある、古い館においで。そこで待っているから」

そう言って、浮竹を抱き上げて、ディアブロは大きな黒い翼を広げると、飛び去ってしまった。

桔梗の花が枯れていた。

「瘴気・・・あれは、邪神か」

リンデルの花園は、古城からそう遠くはない場所にある。

京楽は、戦闘の準備を進めて、リンデルの花園に向かった。

そこにある古い館は、手入れがきちんとされていて、人が住んでいる痕跡があった。

「ディアブロ、言いつけ通りに来たぞ!浮竹を返してもらう!」

「よく、逃げずにきたね」

リンデルの花園は、花が咲き乱れる綺麗な場所のはずだった。ディアブロの瘴気にやられて、花は全部枯れていた。

「僕が逃げるわけないでしょ。浮竹を返してもらうよ」

「ディアブロ。誰かきたのか?」

「ああ、愛しい浮竹。なんでもないよ、ただの賊だよ」

「浮竹!!」

古い館の扉から出てきた愛しい主は、ディアブロに抱きしめられながら、うっとりとしていた。

「浮竹、僕が分からないの!僕が助けにきたよ!!」

「ディアブロの知り合いか?俺には心当たりがないんだが」

「浮竹の記憶をいじったの?」

「少しだけ。記憶を5千年前のものにすり替えた」

「君って人は・・・・・」

ゆらりと、魔神としての魔力が蠢きだす。

「さぁ、決着をつけようか。浮竹はどの時代でも、血族は一人しか作らない。私か君のどちからだ」

「浮竹の血族は僕だ!この地位は、どうあっても手放すわけにはいかない!」

京楽は血のでできた鎌を作り出す。

「私も、もう一度浮竹の血族になりたいのだよ。愛しい存在が、5千年の時を経て色あせることなく生きていると知った時の私の感動は言葉では言い表せない・・・・・」

「浮竹が愛しいなら、見守ることを選ぶことだってできたでしょ!」

血の鎌は、まだ攻撃しない。

「私は嫌なんだ。愛しい存在が、他の男に抱かれて乱れるなんて。私は浮竹さえいればそれでいい」

「それは僕も同じだよ!浮竹さえいれば、後は何もいらない」

「さぁ、愛しい浮竹。君は私とこの魔神、どっちを愛している?」

「ディアブロを愛している」

浮竹はなんと戸惑いもなしに、ディアブロだと即答した。

京楽は、アイテムポケットの中にエリクサーを忍ばせていた。

「戦う前に、浮竹に別れをいいたい。それくらい、いいでしょ?」

「ああ、いいとも。思う存分、別れを惜しんでくれ」

京楽は、浮竹の傍にいくと、エリクサーを口に含み、口移しで中身を飲ませた。

「・・・・あ。京楽?」

「何をした!」

ディアブロが、怒り出す。

「エリクサーを飲ませたのさ。浮竹を正気に戻しただけだよ」

「ディアブロ!退いてくれないか!俺は、お前と戦いたくない!愛していたんだ、ディアブロ!」

浮竹は記憶を戻して、ディアブロをただ見つめていた。

「愛していた・・過去形か。あなたは酷い。こんなにも私はあなたを愛しているのに、あなたは私を拒絶する」

「ディアブロ!!」

「さがっていて、浮竹。彼には言葉は通じない」

「京楽も、ディアブロも止めてくれ!こんな不毛な争いなんて見たくない!」

浮竹は涙を零していた。

その涙を、ディアブロが受け取る。

「君の体液は甘い。蜜のようだ」

「ディアブロ、お前は俺の目の前で5千年前に女神ククルに滅ぼされた。俺にとって、お前は亡霊なんだ」

「亡霊でもいいよ。すぐに君の血族になって、僕を愛しく思えるように、またしてあげるから」

京楽は、血の鎌でディアブロを切り裂こうとした。

ディアブロはそれを避けて、ディアブロもまた血の鎌で攻撃してきた。

邪神ではあるが、浮竹の血族だったこともあって、本来はヴァンパイアロードだった。

お互い、血の鎌や刃で切り結びあう。

「京楽!」

「ごめん、今は君の言葉でも聞いてあげれそうにない!」

ディアブロの血の鎌が、京楽の肩を切った。

「京楽!」

「これくらい、大丈夫」

京楽の血の鎌が、今度はディアブロの肩を切った。

それぞれ血を武器に、対峙する。

「エターナルフェニックス!」

京楽は、炎の禁呪を発動させた。

「エターナルアイシクルワールド!」

それを、ディアブロは氷の禁呪で迎え撃つ。

二人は睨み合いを続けた。

先に動いたのは、京楽のほうだった。

魔剣ラグナロクを手に、ディアブロに切りかかる。

ディアブロアはその刃を腕でわざと受けると、右腕が吹き飛んだ。

それをすぐに血で再生させて、京楽を血の槍で貫いていた。

「がはっ・・・・・・」

肺をやられたのか、京楽はゴホゴホと咳き込み、地面に膝をつく。

「ゴッドウォータープレッシャー」

水圧で潰しにかかったディアブロの魔法を、炎の魔法で水を蒸発させた。

「エターナルアイシクルフィールド!」

京楽は、自分ごとディアブロを巻き込んで、凍結させていく。

ざぁぁあと、天から雨が降り出した。

「うおおおおおお!」

ありったけの魔力をこめて、血の槍を作り出すと、それでディアブロの心臓を貫ぬいた。

「おおおおお!!」

ディアブロは、傷を再生させようとする。

けれど、渦巻く京楽の血が、それを邪魔する。

その瞬間を狙って、京楽は炎の不死鳥を呼んだ。

「エターナルフェニックス!」

ごおおおおと、心臓を焼かれて、ディアブロが前のめりに垂れる。

「ディアブロ!」

浮竹がかけつけると、ディアブロは牙を伸ばして浮竹の肩に噛みつき、血を啜った。

「何を・・・・ディアブロ・・・・」

浮竹は、その場に倒れた。

「ふう。君の血をもらったよ。こうでもしないと、愛しい君を前に死んでいたからね」

「浮竹が大事なのに、浮竹を傷つけるのか」

「違うよ、これは愛だよ」

「そんな愛、僕は認めない」

京楽は、血の弾丸を作り出すと、ものすごいスピードでそれを打ちこんだ。

「うわあああ!!」

ディアブロは何か所か血の弾丸を浴びて、血まみれになっていた。

「くそ、魔神程度が・・・・」

「魔神と邪神の差は、そんなにないものだよ」

すでに一度、邪神を喰らっているから分かることだった。

「君は愛という言葉で浮竹を傷つけた。許せない」

京楽は、ざあぁぁと激しく降ってくる雨の中、佇みその時を待った。

天から、神の怒りのような稲妻が、京楽に落ちる。

「あああああ!サンダーボルテックス!!!」

自然の落雷を利用した雷の禁呪に、ディアブロの体が焦げていく。

「私は、浮竹を愛して・・・・・」

ざっと、その場に頽れる。

「浮竹・・・浮竹、愛している・・・・」

倒れていた浮竹は、京楽の手で置き上がっていた。京楽の血を口にしていた。

「嫌だ、嫌だ、浮竹、私を捨てないでくれ・・・」

「ディアブロ・・・・・」

浮竹は、ディアブロの傍にやってくると、ディアブロに口づけた。

「愛していた。きっと、今も愛している」

「なら、せめて君の手で・・・・・」

浮竹は頷いて、京楽から魔剣ラグナロクを借りると、その首をはねた。

「愛しい浮竹。これで、私の命はあなたの記憶の中で生き続ける・・・」

浮竹は、ディアブロの首を抱きしめると、泣きだした。

「ディアブロ、ディアブロ、愛していたんだ。うわああああ!!!」

雨はさらにひどくなり、浮竹の涙は雨なのか涙なのか分からなくなった。

「浮竹」

びくりと、体を震わせる。

「俺は最低だ・・・・愛していた人を、その手にかけた」

「浮竹・・・・」

ディアブロは完全に生命活動を停止させて、冷たくなっていく。

「せめて、新しい命になれ・・・・・来たれ、フェニックス!」

浮竹は、炎の最高位精霊フェニックスを呼び出すと、ディアブロの遺体を焼かせた。

灰の中から、瑠璃色の小鳥が生まれて、ちちちちと鳴いて、浮竹の肩に止まった。

「ほら、抑えているとはいえ、京楽の瘴気にやられるから、森へお帰り」

瑠璃色の小鳥は、再度チチチと鳴いて、浮竹の肩に糞をして、去ってしまった。

「糞された」

浮竹は笑っていた。

「浮竹・・・もう大丈夫?」

「ああ。取り乱したりしてしまって、すまない」

「いいんだよ。君の愛した人だったんでしょ?」

「そうだ。5千年前、血族にして愛した。魔神になり、俺を迫害する王国を滅ぼして邪神になり、女神ククルに、俺の目の前で殺された」

浮竹は、笑いながら泣いていた。

「あれ、おかしいな。涙が止まらない・・・・」

「もういいんだよ。もっと思い切り泣いても」

「京楽・・・うわあああああ!!」

浮竹は、京楽の膝の上で泣きまくった。

「京楽・・・・何があっても、邪神にはなるな」

「ならないよ。そんなに人間を殺したくもないし。そう言えば、今回はディアブロの魂を食べ損ねたね。まぁ、君の愛しかった人の魂を食うほど、落ちてはいないけどね」

浮竹は、残ったディアブロの灰を花園にまいた。

瘴気はもう残っていなくて、浮竹の魔力もあり、リンデルの花園はいろんな花で満開になった。

雨はいつの間にか止み、虹が出ていた。

「綺麗だな」

「うん、綺麗だね」

「ディアブロは、邪神だが天国にいけただろうか」

「きっといけたよ。瑠璃色の小鳥もディアブロでしょ?」

「少し違う。ディアブロの魂の一部を宿らせただけだ。魂の全ては、天に還った。

「そう・・・・・」

京楽は浮竹を抱きしめて、くちづけた。

「あ、瑠璃色の小鳥の糞のこと、忘れてた」

抱きしめ合ったので、互いの服が汚れていた。

「上の服は脱いで帰ろう」

「ああ・・・」

ディアブロは、きっと幸せだ。

愛している人の手にかかり、死ねたのだから。

「ねぇ、浮竹・・・」

「嫌だ」

「僕、まだ何も言ってないよ?」

「それでも嫌だ。どうせ、邪神になったら君の手で殺してくれというつもりなんだろう。そんな哀しいことをいうな。そんなことにはさせない」

「あらら・・・・・・」

ジワリと涙を滲ませる浮竹を、胸にかき抱く。

「安心して。僕は絶対に邪神になったりしない」

「約束だぞ?約束を破ったら、死んでお前の傍にいくからな」

不老不死の呪いがあるが。

矛盾した言葉に、けれど愛しさがつもり、二人は古城に帰るとそのまま睦み合った。


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「ああああ!」

京楽のものを迎え入れたそこは、限界にまで広げられていた。

「ねぇ、指いれてもいい?」

「ひあ!」

広がったそこに指を一本入れてみると、やすやすと飲みこんだ。

「あーあ。浮竹の体、エロくなちゃって・・・・・・」

「お前のせいだろうが!あああ!」

浮竹を再度貫き、京楽は揺すぶった。

「あ、あ!」

浮竹は啼いて、その行為を受け入れた。

「君を本当に愛しているのは僕だけって、思い知らせないとね?」

「やああああ」

京楽は一度引き抜くと、浮竹をうつぶせにした。

そのまま四つん這いにして、背後から貫いた。

「やあああ!!」

ぱんぱんと肉と肉がぶつかりあう音はして、結合部はお互いの体液とローションが混じったもので泡立っていた。

「ひあああ!」

京楽は一度入口付近にまでくると、一気に最奥まで貫いた。

「いああああ!」

浮竹は背を弓なりにしならせて、精液をシーツに零しながら、オーガズムでもいっていた。

「今、血を吸ってあげるからね?」

「やあああ、だめえええ!今はいってるから、だめえええええ!!」

京楽はそんなことお構いなしに、浮竹の太ももに噛みつき、血を啜った。

「あ”あ”あ”!」

ごりっと奥の結腸にまで侵入されて、浮竹の中がきつく締まる。

「君に注ぐから、全部受け取ってね?」

「ひあああ」

浮竹は意識を朦朧とさせながらも、京楽の熱が自分の中で弾けるのを感じていた。

「あ、もっと・・・」

限界を感じながら、貪欲に求める。

「君の胎がちゃぷちゃぷになるまで、注いであげる」

間に休憩を挟み、お互い疲労回復のポーションを飲んで、交じりあった。

「や、もう限界・・・・・やああああ」

「ふふ、僕も限界だよ。胎はちゃぷんちゃぷんになった?」

「とっくの昔に、なっている」

外側から見ても分かるくらい、浮竹の胎はぽっこりしていた。

「抜くね?」

「あああ・・・・・・・」

ぶわっと、京楽が放ったものが逆流してきた。タオルで受け取めるが、量が多すぎてシーツにも染みを作っていく。

それはマットレスまで染みこんだ。

「新しいマットレス、買わなくちゃ・・・・」

「お前がこんなに出すからだ、ばか!」

殴られながら、自分は浮竹の血族であることを噛みしめて、京楽は幸せそうだった。

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「ポチ~~~」

「るるるる」

「ほら、とってこい」

浮竹がボールを投げると、ポチは嬉しそうにボールを追いかけて、くわえて浮竹のところにもってきた。

「えらいぞ。ほら、ドラゴンステーキだ」

「るる♪」

ポチは美味しそうにドラゴンステーキを齧る。

「るるるるるる」

浮竹の上半身にもかみつくが、甘噛みであった。

「ポチにな、友達を連れてきたんだ」

そう言って、浮竹は新しいミミックをポチに紹介した。

「タマだ。仲良くしてくれよ?」

「るるるるるーーー」

「りんりんりんりん」

ミミック2匹は、仲良く古城を散歩した。

ポチが、いろんな場所を紹介しているようで、タマは「りんりんりん」と鳴きまがら、ポチ仲良く遊ぶのだった。

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「そう。邪神ディアボロスは死んだの」

「はい。式で確かめました」

「死神ナウセル。あなたに頼みがあるの」

「始祖浮竹と、神喰らいの魔神、京楽の暗殺ですね?」

「堂々と戦うから、だめなのよ」

死神ナウセルと呼ばれた青年は、神ではあるが、死神でどちらかといと、存在は魔神や邪神に似ていた。

「僕は自分の命が惜しい、やるなら一人でやりな、この厚化粧ババァ」

「なんですって!!!」

女神アルテナは怒り、雷をナウセルに浴びせた。

ナウセルはぴんぴんしていた。

「この青二才が!」

「うふふふふ。次は、この子がいくわぁ」

壊れた女神オリガは、また子を孕まされていた。

今度は、死神ナウセルの子だった。

「早く生まれておいで、死神キララ」

性別は女の子だった。

「女神オリガ。僕の子は僕のものでもある。一緒に、この狂った世界を抜け出そう」

「ええ、どこにいくのぉ?」

「創造神イクシードの元へ」

「いやよ!」

女神オリガは、嫌がった。

「イクシードは私を助けてくれなかった。私は、ここで神々の子を産み続けるの」

「そうよ、女神オリガ。あなたの体は、私のものだもの」

「ちっ、狂ってる。僕は行かないからな。邪神ディアブロのようになりたくない」

死神ナウセルは、狂った藍染の居城から姿を消すのであった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター49

ココルは、目覚めた。

女神であり、邪神であった。

生まれる前から、世界を知っていた。

すりこまれた、始祖浮竹と血族の神喰らいの魔神京楽を、殺さなければならないと思った。

「わたくしは神。女神であり邪神でもある」

ココルは生まれてまだ4カ月なのに、大人になっていた。

邪神として、覚醒していた。

このまま生きていれば、神々に滅ぼされることは分かっていた。

だから、目的を果たしたら眠りにつこうと思っていた。

目覚めることのない永遠の眠り。

それはまどろみの幸せであり、永遠の安楽であった。

ココルは動きだす。

邪神として周囲に瘴気を満たしながら、歩き出す。

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魔剣ラグナロク。

それは、神代の時代に作られし、呪われた魔剣。

浮竹が手に入れた頃には、力をなくしてただのミスリル銀の魔剣になっていた。

それが、京楽の手に渡り、魔神としての魔力と血を吸ったことで、元の呪われた魔剣に戻った。

魔剣の呪いは、使用者の魂を吸うというもの。

もともとの魔剣ラグナロクも使用者の魂を吸う。

なので、いつも魔剣を持ち歩いている京楽が心配になって、浮竹は一時的に魔剣を預かった。

「うーーーん」

魔剣は、鞘から抜こうとしてもびくともしなかった。

せめて、魔剣の呪いをどうにかしようと思い、錬金術の釜に放り込み、生きたマンドレイク、ドラゴンの血にけちってはいられないとエリクサーもぶちこんで、煮込むこと5時間。

「やった!呪いが解けた!」

魔剣ラグナロクの、魂を吸うという呪いは消えていた。

魔剣を釜で煮込むなんて思っていなかった京楽は、呪いのなくなった魔剣を手に、微妙な顔をしていた。

「どうした。あの禍々しい呪いは解けたぞ」

「いや、僕はあの禍々しい呪いを気に入っていたんだよ。魔剣らしくて。魂を吸う呪いなんて、僕は神喰らいって名がついてるけど、モンスターの魂だってくう。この魔剣はグルメで神の魂が好きみたいだけどね」

「呪いを解いたのは、余計な世話だったということか・・・・・」

しゅんと項垂れる浮竹に、京楽は慌てた。

「でも、魔剣の呪いが解けたお陰で神の魂を頻繁に食わなくていいから、助かったよ」

「そうか。やっぱり、呪いがないほうがいいよな?」

「うん。呪いのない魔剣ラグナロクもいいんじゃないかな。呪いのせいで、切れ味おちてたし」

「ここにミスリル銀のインゴットがある。世界でも一番固い金属だ。試しに、切ってみろ」

「ええ!魔剣ラグナロクももともとはミスリル銀だよ!」

「いいから、切ってみろ」

「もう、どうなっても知らないからね」

スパッ。

音をたてて、ミスリル銀のインゴットは切れた。豆腐のように柔らかく感じた。

「凄い・・・今までよりも更に、切れる!」

「そうだろう、そうだろう。魔剣の呪いは魔剣自体の力を弱めるからな。これで、いつでも神をスパスパ切れるぞ」

「そんなに神が頻繁にやってきたら困るよ」

京楽は、ここ最近女神やら神がやってくることに、不安を感じていた。

「エリクサーの材料が切れた。町に買い出しにいくぞ」

「ちょっと、待ってよ!!」

先に行こうとする浮竹の後を、京楽は追いかけるのであった。


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「これだけあれば、エリクサー5個はできそうだ」

白金貨3枚・・・・大金貨30万枚をはらい、浮竹はいつもより安かったエリクサーの材料を買い占めた。

その後で、王国お抱えのミスリルランクの錬金術士が、エリクサーの材料を買い求めるのだが、Sランク冒険者の浮竹が買っていったと聞いて、憤慨した。

「どなりこんでやる!」

その錬金術士は、ギルドマスターから浮竹の住んでいる場所を聞いて、本当にどなりこんできた。

「頼もう!」

「なんだ、来客か」

侵入者を知らせるピリリリという警戒音ではなく、リンリンと鈴のような音を出したので、来客だと分かった。

「私は王国宮廷錬金術士のアバタール。そなた、錬金術士でもないのに、エリクサーの材料を買い占めたそうだな。金は払うから、エリクサーの材料を全て渡してもらおうか」

「何言ってるの、こいつ」

「人間か。記憶を奪って、森の外にでも放り出すか」

「まて!そなたら、人間ではないな!?」

アバタールは慌てた。

「そうだけど、それが何?」

「人外の分際で、錬金術士の真似事をするのか!錬金術を愚弄しているのか!」

「俺は、ミスラリランクの錬金術士だ。わけあって錬金術士ギルドには入っていないが、お前と同じミスリルランクだ。ばかにするな」

アバタールは憤慨した。

「どちらがより腕の高い錬金術士が勝負だ!」

浮竹は、にやりと笑った。

「じゃあ、素材はお前が金を出してくれるな?今俺の手元にあるエリクサーの材料は全部で大金貨30万枚した。それを出してくれると、思っていいんだな?」

「だ、大金貨30万枚程度、俺にはどうということはない!」

「いいの、浮竹。人間だよ?」

「適当に扱って、記憶消して森に転がす」

「ああああ、僕の浮竹が悪徳商人みたいになってる」

「余計なお世話だ」

とりあえず、ハリセンで京楽の頭を殴っておいた。


錬金術の館で、浮竹はアバタールと並んで、エリクサーを調合していく。

何度か爆発を起こしたが、気にもせずエリクサーを調合した。

「1つできたぞ」

「うぬぬぬ・・・・・・」

勝負は、お互いのエリクサーの材料がなくなるまで。

けっこうな材料を買い占めたので、調合には時間がかかった。

何度も爆発を繰り返して、結果できたのは浮竹が4つ、アバタールが2つだった。

「俺の勝ちのようだな」

「ぐぬぬぬ、こんな勝負、インチキだ!この釜が悪い!何か余計な仕掛けでしてるんだろう!ミスリルランクの王国宮廷錬金術士の俺を愚弄した!王に知らせて、無許可で錬金術をしているそたなをとらえてやる!」

「浮竹、こいつ殺していい?」

「だめだ。王国宮廷は厄介だ。記憶を全て奪って、森に転がそう」

「何をする、離せ!」

暴れるアバタールに、浮竹は魔法をかける。

この古城での一件を全て忘れさせて、古城の外の森に放り出した。

「はて・・・・俺は何をしていたのか?」

歩き去って行くアバタールを確認して、浮竹も京楽も古城に戻った。

錬金術の館は、爆発のせいで屋根がが吹き飛び、酷い有様になっていた。

「この錬金術の館はしばらく使えんな。戦闘人形たちに、命令して、作り直してもらう」

「君の血は便利だねぇ。戦闘人形なんて、普通そうそう作りだせないよ。あのブラッディ・ネイにだって作り出せない」

「まぁ、俺は始祖だからな」

胸を張る浮竹に、京楽はかわいいと思って頭を撫でた。

「そうそう、浮竹は始祖だもんね」

「全てのヴァンパイアの源だ」

持ち上げる京楽に気分をよくしたのか、浮竹はご機嫌だった、

「今日の夕飯のデザートに、苺パフェがあればいいな」

「はいはい。作ってあげるから」

浮竹は、その日、幸せを噛みしめて平穏を楽しみ、眠りにつくのであった。


------------------------------------------------------------------------


「ここが、始祖浮竹と神喰らいの魔神京楽のいる場所・・・・」

早朝に、ココルは浮竹たちの住む古城にやってきた。

ビリリリリリ。

警告音が鳴り響き、まだ眠っていた浮竹と京楽は慌てて起き出した。

「こんな時間に侵入者とは。眠りを妨げるやつには、死んでもらおう」

「わたくし女神ココル。そして邪神でもある」

現れた銀の神に青い瞳をもつ女性は、確かに女神ではあるが、邪神であるということも本当なようで、瘴気を発生させていた。

「庭に出ろ。ここでは戦いたくない」

「どこを選んでも自由よ?あなたたちが死ぬことには変わらないのかだから」

庭に出ると、ココルは自分の右手手首をナイフで切って、血を滴らせた。

ボコボコと、地面が腐っていく。

そこから、大量のアンデットが出てきた。

浮竹は、東洋の自分からもらった浄化の護符で、そのアンデットたちを浄化してしまった。

浄化の護符はココルにも効いているようで、纏っている瘴気が薄らいでいく。

「わたくしのかわいいアンデットを殺した罪。その命で、贖ってもらうわ!」

ココルは、手のひらを浮竹に向けた。

ごぽり。

浮竹の周囲を水がつつむ。

だが、浮竹は水中でも呼吸できる民家魔法を覚えている。

水に包まれたまま平気な顔をしている浮竹が癇に障ったのか、ココルは水を硫酸に変えた。

全身を焼かれて、浮竹は硫酸を蒸発して、傷をすぐに再生させた。

「ああ、僕の美しい浮竹の髪が・・・・」

全身の細胞を再生するのが先なので、髪は後回しだった。

短くなってしまった浮竹の髪を哀しそうに見つめながら、京楽は魔剣ラグナロクをココルに向けた。

「浮竹を傷つけた。死んで?」

ココルは、硫酸で京楽を包み込んだ。

けれど、京楽の周りには水のバリアがあって、京楽が硫酸に焼かれることはなかった。

「嘘、なんで!」

ココルが操るのは硫酸と、水だ。

グサリと魔剣ラグナロクに胸を貫かれて、ココルは血を吐いた。

「わたくしは女神。わたくしは邪神」

どろどろと、ココルの体は崩れ落ちて、硫酸になった。

硫酸が、ココルの本体であった。

「死ね!」

ドロドロの硫酸は、浮竹を襲った。

浮竹は全身に水のバリアを発生させて、硫酸で焼かれることを防いだ。

もう、髪も元の長さにまで再生していた。

「ゴッドフェニックス、カイザーフェニックス、エターナルフェニックス・・・トリプルファイアフェニックス!」

炎の禁呪を喰らって、ココルの本体の硫酸が蒸発していく。

「いやあああ!!」

ココルは硫酸を足して回復させると、今度は京楽に刃となった硫酸を向けた。

「こんなの、当たらなきゃどうってことないよ!」

「京楽、後ろだ!」

人型に戻ったココルが、背後から京楽の胸を素手で貫いていた。

「京楽!」

「ふふ・・・僕の血は、猛毒だよ?硫酸を体の中に流そうとしたって、そうはいかない」

京楽を貫いていたココルの手が、腐り落ちた。

「何故!邪神であるわたくしが、ここまで苦戦するの!」

「力の差と、戦いの慣れの差だね」

藍染の手の者たちと散々バトルを繰り広げてきた。

浮竹と京楽が、強くなっていて当たり前だった。

「さぁ、焼け死ぬか、雷で焦げ死ぬか、氷で粉々になって死ぬか・・・・どれがいい?浮竹を傷つけたんだから、命乞いしても殺すよ?」

「わたくしの!わたくしの力を授けましょう!邪神になれるわ。魔神なら、喉から手が出るほどに欲しいはず!」

「残念だけど、ちっとも魅力を感じないねぇ。邪神になったら、神々に滅ぼされるんでしょう?僕は、そんなのごめんだね」

「わたくしの血を!血を飲めば、不老不死が手に入るわ!」

ココルは、諦めていなかった。

「へぇ・・・」

興味のある振りをして、ココルに近寄ると、ココルは硫酸で槍を作り出して、京楽の心臓を貫いていた。

「ふふふ・・・僕が、これくらいで死ぬとでも?」

ニタリと笑む京楽に、ココルは生れて始めての恐怖を感じて、後ずさった。

「ゴッドフェニックス、カイザーフェニックス、エターナルフェニックス・・・トリプルファイアフェニックス!」

浮竹が使った同じ禁呪を、京楽は使っていた。

「ぎゃあああああ!!!」

悲鳴をあげて蒸発していくココルを、魔神の咢(あぎと)でその魂を喰らっていく。

「うわ、不味いね。邪神の魂って、こんなに不味いんだ」

魂を食われて、力尽きたかに見えたココルは、最後の力を振り絞って、浮竹を硫酸の槍で貫いた。

「ぐっ・・・・」

「浮竹、大丈夫!?」

「ああ、なんとか。油断していた」

「邪神ココル・・・・」

京楽は、その魂を解放して、仮初の肉体を与えた。

「わたくしは、魂を食われて死んだはずでは・・・・」

「君はね、最後に浮竹を傷つけたんだ。そんな奴の魂を食うだけじゃあ、意味がないからさぁ
・・・ゴッドフェニックス、カイザーフェニックス、エターナルフェニックス・・・トリプルファイアフェニックス!」

「いやああああ!!

ココルは火だるまになった。

でも与えられた仮初の肉体は京楽の一部なので、滅びることはなかった。

「サンダーボルテックス!!」

「ぎゃああああああ!!」

与えられる魔法の傷みに、徐々にココルの魂に罅が入ってく。

「エターナルアイシクルワールド!」」

「いやあ、もう死なせてええええ」

「ゴッドフェンリル!」

「あああ・・・・・・」

ぱきん。

ついに、ココル魂に亀裂が走り、魂は粉々になっ弾け飛んだ。

「ふふ・・・いい気味だよ」

「京楽、やり過ぎだぞ」

浮竹が、仕方ないとばかりに、邪神ココルに貫かれた傷を再生しながら、京楽を窘めた。

「だって、君を傷つけた」

「だからって、一度食った魂に肉体まで与えて。逃げられたら、どうするんだ」

「肉体は僕の体の一部でできているから、大丈夫」

魂は粉々になっても、傷一つ負っていない、ココルの体を自分の中に吸収すると、京楽は頬笑んだ。

「僕は、浮竹、君を傷つけられるのが一番いやなんだ。だから、思い知らせてやったのさ。それに邪神の魂はまずい。まずすぎて魔力に変換しにくい」

「魂にうまい、まずいがあるのか」

「女神の魂はおいしいよ。今のところ、TOPかな」

「俺の血と、どっちがうまい?」

「それはもちろん、君の血かな」

京楽は、浮竹を抱きしめて、その首筋に噛みついて、血を啜った。

「んっ・・・」

「ああ、甘くて最高だよ。君の血は」

「あっ・・・・」

「ふふ、その気になちゃった?」

「ばか・・・・こんな朝っぱらから・・・・・」

「いいじゃない。僕たちは本能に忠実に生きている。血族と睦み合うのも、血を吸われて欲しいと思うのも、本能だよ」

「ここじゃだめだ。ベッドに行こう」

そう呟く浮竹に満足気に、京楽は浮竹と手を繋いで、寝室に戻っていくのであった。

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「ああ!」

京楽の口に含まれて、浮竹は甘い声を漏らしていた。

「んんっ!」

京楽の与えてくる刺激に耐えかねて、熱を京楽の口に放つ。

「俺もする」

浮竹は、珍しく自分から京楽のものを口にした。

「んっ、いいよ、そのかんじ」

ペロリと舐めあげながら、全体を指でしごく。

ちろちろと先端を舐めていると、京楽のものが弾けた。

「ああ、勿体ない。お前の精液が」

顔についたものを指で拭って舐めとる浮竹に、我慢できずに押し倒していた。

蕾はすでに、ローションで京楽に解されていて、後は侵入してくるだけだ。

「いくよ」

「あ、こい春水」

ずずずっと、音を立てて、京楽のものが浮竹の内部に入ってくる。

「あ、いい、いい、そこ、もっと」

いい場所をすりあげられて、浮竹はおねだりしていた。

「ここだね?」

「あああん!」

浮竹は甘く啼いて、精液を弾けさせていた。

「もっと奥に、お前をくれ、春水・・・・・・」

「分かってるよ」

最奥まで侵入して、ゴリゴリと押し付けてやると、浮竹はオーガズムでいいっていた。

「ひああああ!!!」

「もっと?」

「あ、もっと。もっとぐちゃぐちゃになるまで、俺を犯して」

浮竹は、京楽の肩に噛みついて、一口血を飲んだ。

「甘い・・・ああああ!」

浮竹は、ペロリと京楽の血が付いた唇を舐める。

「誘っているとしか、見れないな、君の行為は」

「そうだとしたら?」

「うん、君をぐちゃぐちゃになるまで、犯してあげる」

「ああ!」

京楽は、一度抜くと、浮竹の足を肩に担いで、貫いた。

「ひああああ!奥に、奥に当たってる、やあああ」

「ここが好きなんでしょ?」

「やああああ」

最奥をゴリゴリと刺激して、京楽は浮竹の胎の奥に欲望を放っていた。

「さぁ、まだまだいくよ」

「あ、加減は、してくれ・・・・」

「君をぐちゃぐちゃになるまで、犯すって言ったでしょ?」

「やあああん」


浮竹は、もう吐き出すものはなかった。

オーガズムでいくばかりだ。

「あああ!」

互いの体液が混ざり合い、ぐちゃぐちゃになっていた。

「あ、もう・・・春水、春水」

「どうしたの」

「もうやぁっ」

「じゃあ、これで終わりにするね?」

「それもやぁっ」

「どうすればいいの」

「このまま、繋がっていたい」

「でも、それじゃあ浮竹の中に注いだものがかき出せない。お腹壊しちゃうよ?」

「それでもいい。このまま眠る・・・・・」

次に起きた時、京楽のものは硬さを取り戻していた。

「あっ」

「起きた、浮竹?」

「ばか、盛るな」

「愛しい人に包まれて眠る幸せを味わったけど、お陰で僕の息子は復活した。責任、とってね?」

「あああああああ!!」

そえから更に3回は交わり、浮竹は精液でなくて潮をふいていた。

「いやああああ、潮はいやあああ」

「君が感じまくってる証拠で、僕は嬉しいよ?」

「や、やだあああああ」

「んっ、最後の一滴まで、君に注いであげるからね」

京楽は、息子が使い物にならなくなるまで、浮竹に注いだ。

「んああああ!」

背を弓なりにしならせていく浮竹の首筋に噛みついて、吸血してやる。

「ひあああああ!!」

吸血の快感まで与えられて、浮竹はぐったりとなった。

「お風呂、行こうか」

「ん・・・・・」

ずるりと浮竹の中から引き抜くと、尋常じゃない量の精液が溢れてきた。

「はは、注ぎすぎちゃったね?お腹は大丈夫?」

「大丈夫だ。腰が痛くて立てない。疲労開封のポーションをくれ」

事後のけだるさは腰にきてきいて、疲労回復のポーションを飲むことで自力で立てるまでに回復した。

「ん」

「はいはい、抱っこね?」

京楽は、シーツごと浮竹をお姫様抱っこすると、風呂場に向かった。

古城の風呂は、24時間入れるように、魔法で管理されてあった。

京楽に体の奥に残ったものをかき出されて、浮竹は京楽の肩に牙をたてたが、吸血はしなかった。

髪と体を洗われて、水分をバスタオルでふかれた。

「ほら、服をきて」

まあ昼過ぎだったので、普通の衣服を着た。

「少し遅いけど、中止にしようか」

「バナナパフェが食べたい」

「ええっ、バナナの在庫なんてあったかな」

「戦闘人形に買いにいかせる」

浮竹は血を操って戦闘人形ののメイドを出すと、町に買い出しにいかせた。

しばらくして、バナナやら他の食材を手に、戦闘人形のメイドが帰ってきた。

「浮竹を抱きまくったことですっきりしたし、バナナパフェ作りますか」

浮竹はすでにできていたカルボナーラと野菜スープを口にしていた。

「さぁできたよ、浮竹。ジャンボバナナパフェだよ」

「食う」

「はい、どうぞ」

スプーンを渡すと、浮竹はパクパク食べていった。

「僕の分は?」

「ない。全部、俺のだ」

「ありゃあ。僕も自分の分作ってこよ」

京楽が自分の分を作って食べる頃には、浮竹は午睡していた。

バナナパフェを食べ終わり、戦闘人形に後片付けを任せて、京楽は浮竹を抱き上げると、一番近いゲストルームのベッドに寝かせた。

「京楽も、寝ろ」

眠っていたはずの浮竹はゆっくり目を開けると、それだけ言って、また眠ってしまった。

「僕も、昼寝といきますか」

浮竹の隣にもぐりこむと、眠気はすぐにやってきた。

血族の主が近くにいると、とても心が落ち着いてリラックスできる。

浮竹と京楽はそのまま夕方に寝てしまい、その日の夜はなかなか眠れないのであった。

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「ココルの魂を食わずに、魂の自己崩壊を起こすほどに痛めつけるなんて」

女神アルテナは、ココルの命の終わりを敏感に感じ取っていた。

「邪神ディアブロ。あなたはかつて人間であった。そして、浮竹の3番目の血族であった。そうでしょう?」

「そうだ。始祖浮竹はとても愛しい。愛しくてかわいい人だ」

「じゃあ、今の血族を殺して、もとの血族に戻してもらわないとね?」

「今の血族は・・・・神喰らいの魔神京楽か。面白い。どちらがより浮竹に相応しいか、力比べといこうではないか」

邪神ディアブロは、5千年前の浮竹の、3番目の血族であった。

今の京楽のように魔神となり、人間の国を浮竹のために滅ぼして、その人間たちの魂を喰らい、存在を進化させて邪神となり、神々に滅ぼされてアビスの世界の地中深くに封印されていた。

「待っていろ、愛しの浮竹よ。私はあなたのために国を滅ぼし邪神となった。それでもあなたは私を愛してくれた・・・」

遠き昔を思い出す。

邪神となり、神々に滅ぼされていくディアブロを、浮竹は泣いて止めようとしてくれた。

「愛しい、浮竹・・・私は三番目とはいえ、元は血族。血族同士、邪神と魔神で争いあおうではないか!」

緩やかに、京楽に魔の手が忍び寄ろうとしていた。



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始祖なる者、ヴァンパイアマスター48

リン・フォン・ハルザードは、邪神の血を与えられて覚醒した。

一度は邪神ディアブロの意識に飲みこまれかけたが、女神アルテナの力で意識を取り戻した。

「ふふふ。この力なら、あの始祖と血族の神喰らいの魔神を倒せる」

そう過信していた。

邪神ディアブロ。

今から5千年前に、魔神から邪神になり、当時の上位神であった女神ククルに滅ぼされた邪神であった。

その身は、地中深くに埋められて、このアビスの世界で眠っていた。

滅んだはずの邪神が蘇る。

それは過去に何度かあった。その度に上位神が動き、邪神をまた滅ぼした。

中には、人間の勇者に滅ぼされた邪神もいた。

魔王であり邪神であるという場合も多かった。

「たかが邪神の血をとりこんだところで、勝てると思うな」

「誰だ!?」

それは、幻聴だった。

それは幻影だった。

「エターナルフェニックス」

「ぎゃああああ!!」

炎で体の内側から焼かれていく、あの身を引き裂くような痛みを思い出す。

「あああああ!俺は神だ!魔神ごときに、やられるものか!」

脳内で再生される絶望を切り取るために、リンは一時記憶を封印した。

「僕は・・・女神アルテな母様に、始祖の浮竹と神喰らいの魔神京楽を倒せと、命令されたんだっけ・・・・・」

ふらふらと、古城に向かって歩き出す。

その姿を見た者は、禍々しい何かに憑りつかれているのだとすぐに分かって、逃げ出すのだった。


---------------------------------------------------

「浮竹、甘いよ!」

「そういう京楽こそ、つめが甘い!」

お互い、血の魔法で刃を作り出して、攻撃していた。

手加減なんてしていなかったので、京楽も浮竹も怪我をしていた。

再生する傷は放置して、浮竹は京楽の懐めがけて、ミスリル銀のナイフをさして、魔法を唱えた。

「サンダーボルト!」

「く・・・これくらい、どうってことないよ!」

京楽は魔剣ラグナロクを取り出して、それで浮竹の心臓を突き刺した。

「幻影だ。エターナルフェニックス!」

「く、エターナルアイシクルワールド!」

お互い、禁呪を用いた。

今度こそ、京楽の魔剣ラグナロクは、浮竹の体を貫いていた。

「ぐふっ・・・・くくく」

「浮竹?」

「この程度で、始祖が負けると思ったか!ゴッドフェニックス、カイザーフェニックス、エターナルフェニックス・・・トリプルファイアフェニックス!!」

3つの不死鳥が交じりあい、1つの不死鳥になり、京楽を燃やしていく。

京楽は燃やされながら、浮竹の心臓を魔剣ラグナロクで貫いていた。

「はいはい、そこまで!」

試合の審判を任された一護は、待ったをかけた。

「はい、引き分け!これ以上暴れると、この草原に生き物が住めなくなっちまう!」

辺りは焼け野原で、ところどころにクレーターができて、魔神である京楽の血が滴り落ちた地面は腐っていた。

「あー、おしかったなぁ。あのまま、浮竹の心臓を貫いて破壊すれば、一応倒したことになるわけないかな」

「俺は不老不死だぞ。心臓を貫かれたくらいで死ぬか。それより、禁呪の炎で焼いたのに、火傷どころか服の一部しか燃えていないのはどういうことだ」

「ちょっと、水のバリアをきつめにね。浮竹が得意の炎で来ることは予知していたから」

「予知夢か」

「そうなるね」

「ずるいぞ京楽だけ予知夢を見るなんて。俺にもよこせ」

「ええ!僕の血で、我慢してくれないかなぁ」

浮竹は、すでに心臓の傷を再生していた。

京楽も、浮竹にやられた腹の傷を再生していた。

「いきなり稽古の試合するから、審判しろって言われて引き受けたらこれだ。命がいくつあっても足りないっすよ」

「いやあ、ごめんね、一護クン。浮竹ってば本気でくるものだから、本気を少し出しちゃったよ」

「ふん、俺も本気を少しだしただけだ。まだまだいくらでも手はあったし、魔力にも余裕あるし、血の魔法で背後から刺そうとしてたら、待ったがかかった」

「ええ!浮竹、あんあ禁呪の魔法唱えながら、さらに血の魔法を使おうとしてたのかい!?」

「そうだが?」

「まいったねぇ。水のバリアが消えるところだったよ。水のバリアが消えたら、さすがの僕もあの火力には少しは焦げたかもね」

「少しだろう。消し炭にするつもりで放ったんだがな」

「浮竹酷い!」

わっと泣き真似をするけど、浮竹は知ったことじゃないと、一護に審判をしてくれたお小遣いをあげていた。

「うわ、大金貨10枚!ありがとうごいます!これで、ルキアに甘いものでも買ってやろう」

「一護クンと、ルキアちゃんはどこまでできてるのかな?」

「え、あ、いや、そんな仲じゃないっすから!」

一護は真っ赤になって、宮殿のある方に去って行った。

二人は、血の帝国に来ていたのだ。

「お互い、本気でぶつかり合うと、地形が変わったり、建物壊したりで、大変だね」

「まあ、俺と京楽が本気で争いあうことなんて起きないだろうから、杞憂だ」

「そうだね。ねえ、もしも僕が魔神として暴走したら、僕の命を・・・」

「助ける。何があっても、助け出してみせるし、暴走なんて起こさせない」

浮竹の瞳は真剣だった。

「お前を失ったら、俺は今度こそ目覚めない休眠に入るからな」

「すごい口説き文句。胸がきゅんきゅんしたよ」

浮竹は、やや乱暴に京楽に口づけた。

「んっ・・・ちょっと待て。首元が熱いぞ、どうした」

「ああ、これは東洋の君がくれた、瘴気を浄化するお守りだよ。ちょっと本気だしちゃったから、魔人の血が騒いで、瘴気が発生したみたいだよ」

「ああ、地面が腐っていたからな。あれも瘴気のせいか」

「そうみたい。魔人の血って厄介なんだよね。元から毒だったのに、そこに瘴気まで交じって、小さな動物なら殺してしまうし、草木を枯らしうしまうから、この護符はほんとにありがたいよ」

「魔神・・・神喰らいの魔神・・・・・」

浮竹が、手を組んで真剣な表情で悩みだした。

「どしたの、浮竹?」

「いや、神の魂の価値はいくらだろうと思ってな。もしも人間数万人分の魂に値するなら、今度神の魂を食うのはまずいかと思って」

「大丈夫だよ。神の魂も、人間と似たようなものさ。生物としての1つだけの魂だ」

「そうか。ならいいんだ」

そのまま、浮竹と京楽は、ブラッディ・ネイの待つ宮殿に戻った。

「兄様から会いにきてくれるなんて嬉しいなぁ」

「僕もいるんだけど」

「ひげもじゃはいらないから、どっかいけ」

しっしと追い払うブラッディ・ネイに、京楽はスマイルを浮かべたまま。

「その魂、食ってあげようか?」

本気でそう脅してくるものだから、ブラッディ・ネイは後宮に寵姫に癒されにいくとか言って、逃げてしまった。

「たかがブラッディ・ネイ相手に本気を出すな」

「だって、僕の浮竹がとられちゃう」

「あのな。実の妹だぞ」

浮竹は溜息を零していた。

「この血の帝国では、親子同士、兄弟同士、同性同士・・・・どんな相手とも結婚できるから、警戒しちゃうんだよ」

「まぁ、その法案を提示したのは俺自身だから、なんとも言えない」

「ええ、こんなでたらめな法律、浮竹の案だったの!」

京楽が驚いていた。

「とりあえず、古城に戻ろう。あんまりポチを放置しておくと、また噛みついて暴れ出しそうだ」

今回は、お互いの実力を知るために、あえてお互いでぶつかった。

審判がいないと泥沼になりそうなので、暇な一護をお小遣いで誘って審判をさせたが、やはり本気を出すことなく終わった。

古城に戻ると、城が破壊されていた。

「ポチ、ポチ―ーー!!!!」

「るるるるーーー!!」

ミミックのポチは、瓦礫の間から顔を出して、浮竹の顔をべろりと舐めた。

「よかった、ポチ、無事だったんだな」

「やっと見つけたぁ。死んでよ」

現れたのは、この前ボロボロに負けたはずのリンという名の少年だった。

一応、神らしい。

「何かに憑りつかれいるな。まぁいい、このまま葬り去ろう」

「僕のために、死んでぇ?」

「ゴッドフェニックス、カイザーフェニックス、エターナルフェニックス・・・トリプルファイアフェニックス!」

炎の禁呪を受けて、リンは転げまわった。

「熱い、熱い、熱い・・なんちゃって!」

「ごふっ」

浮竹の心臓を、リンがくり抜いていた。

「エターナルアイシクルワールド!」

そのまま、浮竹を氷のクリスタルの中に封じこめる。

「あははは!始祖浮竹の最期だ!」

「よくも、浮竹を・・・」

ゆらりと、京楽の禍々し魔力がにじみ出る。

「え、嘘・・・・僕は、そう、邪神ディアブロの血を飲んで各段にパワーアップしたんだ!だから、始祖の浮竹を倒せた!」

「誰を、倒せただって?」

氷を割って、浮竹が出てくる。

「嘘、嘘、こんなの嘘だああああ!!」

「死ンデシマエ。魂ヲ食ッテヤル」

京楽は、浮竹が封印されたと思いこんで、魔神として暴走を始めていた。

「君ヲ殺ス」

巨大な咢(あぎと)で、リンを喰らう。

「あああ、僕の魂が!!!」

リンはなんとか魂の一部だけを食われた状態で咢から脱出した。

「おおおお!エターナルアイシクルフィールド!!!」

氷の禁呪を京楽にかけるが、京楽は瞳を真紅にさせて、その禁呪を粉砕した。

「そんな・・・僕の最高の魔法が・・・・・こんなの嘘だあああ!!!」

「死ネ」

京楽は、リンの魂の全てを食べてしまった。

「コレハ残リカス」

炎の呪文で、リンの肉体を灰に変えていく。

「君モ、食ウ」

「京楽!?京楽、俺が分からないのか!」

「僕ハ魔神。神ノ魂ハゴチソウ」

巨大な咢に捕らわれて、浮竹は魂を食われそうになった。

「京楽、やめろ!」

その言葉で、魔神となって暴走していた京楽の動きが止まった。

「なんだ・・・・動きが止まった。このブレスレットのせいか?」

浮竹の右腕には、蛇の骨でできたブレスレットがされてあった。それが、東洋の京楽からのプレゼントだと分かっていたが、効果までは分からなかった。

’(早く止めないと不老不死でも魂を喰われれば死ぬ。今止まってる間に!)

幻の東洋の京楽がブレスレットから現れて、そう言ってくれた。

浮竹は覚悟を決める。血族を傷つける覚悟を。

「ゴッドフェニックス、カイザーフェニックス、エターナルフェニックス・・・トリプルファイアフェニックス!」

浮竹は、魔力の全てを込めてその魔法を使った。

一方、京楽は魔剣ラグナロクで、浮竹の胸を貫いていた。

「ぐっ・・・・・」

「あああああああ!!!」

京楽は、凄まじい炎に焼かれて、黒焦げになっていた。

そこに、浮竹が魔剣ラグナロクで傷つけられた、心臓の血を注いだ。

「あ・・・・僕は?浮竹、その傷は・・・あああ、全部僕のせいだ」

京楽は、意識の奥底で暴走している自分を見ていた。

「君を守るといいながら、君の魂を食おうとした!君を傷つけた。僕はもう、駄目だ。こんな駄目な血族、破棄してよ」

その頬を、浮竹が叩いた。

「浮竹?」

浮竹は泣いていた。

「そんな簡単に、血族を破棄するとか言うな!」

ボロボロと、浮竹は子供のように泣きじゃくった。

「京楽が暴走したら、止めるのは俺の役目だ。俺もお前を傷つけた。おあいこだ」

「でも、僕は!」

「もぅいいんだ。全部すんだことだ」

浮竹は、アイテムポケットから予備の服を取り出すと、服を炭化してしまった京楽に渡した。

「とりえあず、服を着ろ」

裸同然の恰好だったので、京楽は急いで服を着た。

「魔神の暴走は、俺が死んだと思ったからだろう」

「そうだけど・・・・・」

「なら、俺が今後、死んだような姿を晒さないだけでいい。お前が魔神であり続けることに、俺は一ミリの不安も抱いていない」

「浮竹・・・・ごめんね。君の気持も考えず、血族を放棄してなんていったりして」

「そうだぞ。俺はたとえ魂を食われても、魂を再生させる。不老不死の呪いは、魂を食われたくらいじゃ、きっと解放してくれない」

その確証はなかったが、そんな気がした。

「ああ、古城がボロボロだ。恋次君に頼んで、時間回帰の魔法をかけてもらわないと」

「本当だね。ポチが無事でよかったね」

「ああ。ポチ~~」

「るるるる~~~」

瓦礫の下に隠れて、避難していたポチは、お腹をすかせているようだった。

「ほら、ドラゴンステーキだぞ」

「るるるる♪」

ポチはドラゴンステーキを食べると、まだ形を残していた暖炉の中に隠れた。

「さて、帰ってきて早々に、血の帝国に逆戻りだ。俺はまだ無事な錬金術の館から、魔力回復のポーションをとってくるから、待っていてくれ」

浮竹は、大量の魔力回復のポーションを服用した。

「そんなに飲んで、大丈夫?」

「血の帝国への空間転移には、そこそこの魔力を消費するからな。往復分だけ補った。血の帝国に行こう」

浮竹と京楽は、何とか無事な地下の空間にある血の帝国への魔法陣で空間転移した。

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「というわけだ、恋次君。小遣いは弾むから、時間回帰の魔法をかけてくれ」

「はぁ、別いいいっすけど・・・喧嘩でもしたんすか?」

「何故そう思う?」

「だって、浮竹さん目が赤い。泣いてたんじゃないっすか?」

浮竹は真っ赤になって、言い訳する。

「京楽が悪いんだ。京楽が俺の血族を止めると言い出すから!」

「だって、あの時はそれが最良だと思ったんだよ!」

「また、泣くぞ」

浮竹がじわりと涙を滲ませたので、京楽は浮竹を抱きしめていた。

「全部、僕が悪かったよ。だから、機嫌なおして?ね?」

「マンドレイク・・・」

「え?」

「マンドレイク生で10本まるかじりの刑だ!それで許してやる」

「簡便してよ~~~」

京楽の間抜けな声は、平和なブラッディ・ネイの宮殿中に響き渡るのだった。


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「あ!」

浮竹は、京楽に媚薬を飲まされて、目隠しさせられていた。

「んあ!」

目が見えない分、余計に感じた。

「あああ!」

胸の先端ばかりいじる京楽の手に、浮竹は声をあげていた。

「胸ばかりじゃいやだ。ちゃんと、触ってくれ」

「分かったよ」

京楽の手が、浮竹のものを触る。

少し撫でて、先端に爪を立ててやると、浮竹はびゅるびゅると精子を吐き出していた。

「やっぱり、媚薬のせいかな。君の体、熱いよ」

「あ、春水、早く来い。お前が欲しい」

急かす浮竹を宥めて、後ろローションで解すと、京楽は一気に貫いた。

「ひあああああああ!!」

媚薬のせいか、また精液を吐いていた。

「そんなにいってばかりじゃ、後がもたないよ?」

「そんな風に媚薬を盛ったのは誰だ!」

「はいはい、僕だね」

「年中盛りやがって・・・ああああ!」

京楽に突き上げられて、浮竹は悪態をついたが、途中で止まった。

「目が見えないの、不安じゃない?」

「少し不安だ。ただ、媚薬のせいもあって感じやすくはなっている」

「僕も媚薬飲めばよかったかな?」

「お前が飲むと絶倫になるから、簡便してくれ」

「そんなこと言って、絶倫になった僕を、しつこく求めてくるくせに」

「マンドレイク、またまるかじりしたいのか?」

「ごめんごめん」

「あ、あああ!!見えない、春水。どこだ?」

京楽が離れてしまって、浮竹は見えない目で京楽を探す。

「こっちだよ」

「ああああ!!!」

背後から抱きしめられて、貫かれていた。

「ひあ!」

ゴリゴリと音を立てて、最奥まで入ってくる京楽の熱を締め付けると、京楽は浮竹の中で弾けた。

「あ、見えない・・・・もっと、もっとお前をくれ。春水」

「分かったよ」

「ん・・・・・」

深い口づけを受けながら、また最奥まえ侵入してきたものを締め付けていた。

「んああああ!」

京楽は、浮竹の首筋に噛みついて、血を飲む。

「ひあああ!」

京楽は、また浮竹の中に精を放っていた。

じんわり広がる熱を感じながら、もっととねだってくる。

「あ、見えない・・・・春水、春水、顔がみたい」

そう言って、浮竹は泣き始めた。

「十四郎、愛してるよ」

優しく抱きしめられて、浮竹は泣きじゃくった。

「春水。もう二度と、俺の血族を止めるとか、言うな」

「うん。もう言わない」

「ひあ!」

ごりっと結腸にまで入りこんできた熱を感じながら、もう何度めになるかも分からない精を放っていた。

「あ、あ、感じすぎて、変になるうう」

「十四郎、もっと乱れて?もっと僕を感じて?」

「あ、春水・・・・ああああ!」

最後になる精を弾けて、あとはオーガズムでいっていた。

「ひああああ・・・・・」

「もっと?」

「あ、もっと・・・・・」

「僕のお姫様は、見た目は清楚なのに、睦み合うとエロくなるね?」

「もっと・・・・・・」

浮竹は、感じすぎて背を弓なりにしならせた。

「ああああ!!」

吸血されていた。

今まで一番大きなオーガズムの波に襲われて、浮竹はそのまま意識を手放した。

「浮竹・・・・意識、失ってしまったか」

浮竹の目隠しをとってやると、布は涙を吸って重くなっていた。

「愛しているよ、十四郎。もう、君の血族を止めるなんて、言わないからね」

浮竹に口づけて、京楽は浮竹を清めて、中に出したものをかき出してから、シーツを変えて眠った。

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「リンでも、だめだったのね」

女神アルテナは、他人事のように言う。

自分がお腹を痛めて産んだ子なのに、どうでもよさそうだった。

「女神オリガ」

女神オリガは、名を呼ばれてびくっとした。

「お腹の子は、平気?」

「あああ・・・・ついに、イクシードに知られてしまった。私はもうだめよお」

「そんなこと、どうでもいいのよ。あなたの中に宿る子は、邪神。邪神ディアブロの子ですもの」

「いやあああ、もういやああああ!!!」

女神オリガは、人格を崩壊させていた。

その方が、女神アルテナには使い勝手がよかった。

「お腹の子は・・・そうね。女の子だから、女神であり邪神である。ココルとでも、名付けましょう」

臨月間近の膨らんだ女神オリガの腹を、女神アルテナは愛おしそうに撫でた。

「さぁ、早く生まれてらっしゃい。邪神ココル」

「あはははは」

女神オリガが壊れて笑っていた。そんな末の妹を見て、女神アルテナも笑う。

「上位神イクシードになんて愛されるからよ。ざまぁないわね。あはははは」

狂った女神たちによって、また世界に新しい邪神が生まれようとしていた。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター47

「けほっけほっ」

「大丈夫か、浮竹?」

「ああ、大丈夫だ・・・・・」

浮竹は風邪を引いた。

ヴァンパイアとて、病になるものはなる。

京楽は、浮竹の額に額を当てた。

「熱があるね。食欲はあるかい?」

「ないな・・・・」

「お粥を作るから、それだけでも食べてよ。風邪薬は、確か錬金術で君が作ったやつが、館のほうにあったよね」

「ああ、そういえばあったかもしれんな」

「エリクサー使いたいところだけど、浮竹は嫌でしょ?」

「当たり前だ。エリクサー1つで大金貨3万枚にはなるんだぞ。勿体ないとは言わないが、成功の確率を考えると使いたくない。風邪くらい、風邪薬で治せる」

京楽は、お粥を作りにキッチンに行ってしまった。

「熱を出すなんて、何十年ぶりだろう」

そもそも、ヴァンパイアは病にかかりにくい。そういう種族だ。

「俺が風邪になるなんて、なんだか悪い予感がする・・・・」

「浮竹、できたよ。熱いから気をつけてね」

「ああ」

京楽は、白粥に鮭をいれたものをもってきてくれた。

正直、食欲はほとんどなかったが、少しだけ口にした。

「うまいな・・・・鮭の味がきいていて、ほどよい味だ」

結局、浮竹は食欲がないと言いつつ、全てを平らげてしまった。、

「これ、風邪薬」

青緑に輝く液体を出される。

「自分で作っておいてなんだが、飲みたくない色をしているな」

小瓶の蓋をあけると、なんともいえない匂いが漂った。

「ええい、一気に飲めば大丈夫だ!」

浮竹は中身を飲み干して、リバースしそうになっていた。

「激まず・・・でもこれを作ったのは俺だ」

水を受け取り、ごくごくと飲んでいく。

口の中はまだじゃりじゃりしていた。

風邪薬はよく売れるので、時折作りだめしては市場に流していた。

そう高くもないだけあって、人気は高いが、味をなんとかしてほしいという苦情がけっこう殺到していた。

無視していたが、いざ自分が服用することになると、味の改善をと思った。

「少し眠る」

「うん。ここにいてもいい?」

「どうした、京楽」

「君が熱を出すなんて、何十年ぶりだろう」

「多分、30年くらいじゃないか」

「ヴァンパイアは病気になりにくいけど、一度かかるとなかなか治らないから、心配だよ」

「薬も飲んだ。自分で作った薬だ。効果もよく分かっている。そんな、心配そうな顔をするな」

「うん・・・・・」

魔神であるのに、京楽は浮竹が心配のあまり、不安そうな顔をしていた。

「お前は神喰らいの魔神だろう。もっと堂々といていろ。俺は眠るぞ」

「おやすみ・・・」

浮竹の長く白い髪を、京楽は飽きもせずに撫でていた。

浮竹は夢を見ていた。

京楽が神々や精霊や人々を殺して、数十万の命を奪い、邪神になる夢だった。

邪神になった京楽は、浮竹を手にかけた。

「どうして・・・京楽何故だ」

「僕は邪神だよ。あはははは」

邪神の浮竹は、創造神ルシエードの手で殺されて、封印された。

「京楽、京楽!」

浮竹は涙を零しながら、封印された京楽をただ抱きしめていた。氷の呪文で封じ込められて、クリスタルの中に閉じ込められた京楽の生命活動は、完全に停止していた。

「京楽!」

がばりと起きると、古城のいつもの寝室のベッドの上だった。

「夢か・・・目覚めの悪い夢だ」

「どうしたの、浮竹」

隣でさも当たり前のように寝ている京楽に、浮竹がどなった。

「京楽、風邪がうつるかもしれないから、ゲストルームで寝ろと、俺は言っただろう!」

「大丈夫だよ。浮竹の薬は変な匂いがして味は悪いけど、効能は素晴らしいから。ほら、もう熱も下がったし、咳も出ないでしょう?」

「言われてぬればそうだな。一晩で治るのか。流石は俺だ」

自画自賛する浮竹に、京楽は毛布をかける。

「夜は冷え込むから。朝までまだ時間はあるから、もう一回寝よう」

「お前は、もっとこっちにこい」

浮竹は京楽の体を抱き寄せて、重なり合うようにぴったりくっついて寝た。

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朝起きると、本当に熱が出たことが嘘のように体が軽かった。

覚えている間に、風邪薬の味をもっといいものにしようと、ドラゴンの血に生きたマンドレイクをぶちこみ、他にもいろいろぶちこんで、薔薇水と砂糖、苺ジャム、バニラエッセンスをいれて、釜の中のものをかき混ぜた。

「なんだろう。何か、凄い甘い匂いがする」

錬金術の館に様子を見に来た京楽は、甘い匂いに釣られて釜の中をみるが、生きた生のマンドレイクが「ぎやああああああ」と悲鳴をあげながら煮られていた。

「マンドレイクが悲鳴あげてるんだけど」

「それがいいんだ。生きたまま放りこんで、エキスだけ抽出する」

「そういうものなの。ところで、何を作っているの?」

「風邪薬だ。効果はあると人気は高いのだが、味が悪すぎた。昨日飲んで、味を改善しようとしている。京楽、少し味見してくれ」

「え、でも薬でしょう?」

「風邪薬なんて、少量飲んだところで毒になるわけでもない」

京楽は、釜からお玉で薬をすくいあげて、恐る恐る一口飲んでみた。

「甘い!かすかに苺の味がするよ。これなら、子供でも飲めるんじゃない?」

「そうか。薬の味の改良には成功だな。あとは色だが・・・・・・」

液体の色は、やっぱり青緑色をしていた。

「まぁ、見た目はいいか。効能よし、味よし、これで前より更に売れるようになるだろう」

「そういえばさ、浮竹はどうして錬金術で薬を作って、人間の市場になんて流すの?人間のこと、大嫌いなんでしょ?」

「ああ、大嫌いだ。でも、人間の全てが嫌な存在ではない。冒険者ギルドに所属していると、他の冒険者やギルドマスター、受付嬢なんかと会話する時がある。そういう時、人間が嫌いでも心を開いてしまう」

「そうかい。君が傷つかないなら、僕は別に君の行動を制限する権限はないからね」

京楽は、人間が嫌いなのに人間の世界に薬を流す浮竹の心が、いまいち分からなかった。

「一応、血の帝国にも流している。子供のヴァンパイアは免疫力が低くて風邪にもなりやすいし、ヴァンピールに至っては、人間並みに弱い」

「血の帝国で薬買った人から、まずいって苦情はあったの?」

「ない。ブラッディ・ネイがそこらへんは気を遣ってくれているんだろう」

あの妹は、兄である浮竹の薬に苦情なんかきても握りつぶしそうだ。

「他にも流している薬がある。この機会に、味の改善を試みよう」

浮竹は、中庭から生きたマンドレイクをひっこぬいて、水で綺麗に洗ったあと、釜にぶちこんだ。

それにドラゴンの血を入れる。

どの薬にも、ドラゴンの血と生きたマンドレイクは必須だった。

「次は花粉症を治す薬だ。といっても、完全に治してしまうと売り上げが伸びないので、症状を緩和する薬だな。かなり効能があって、これも人気の商品だ」

ぬるぬると蠢く小瓶の中の薬は、黒かった。

「これ、飲むには勇気いるね」

「だろう。俺は味見したことないから知らんが、服用した薬屋の店主から涙ながらに、薬はもっといい味にしてくれれば3倍くらい売れると言われた。味の改良だ」

生きたマンドレイクをぶちこみ、ドラゴンの血をぶちこんで、これまたいろいろぶち込んで、薔薇水、砂糖、ブルーベリージャムをぶち込んで煮ること数分。

「完成だ。味見してくれ」

「うん、これも美味しいよ。まるでブルーベリー味のジュース飲んでるみたい。後は色かなぁ」

液体は真っ黒だった。

「色はどうしようもない。次は胃薬、その次は鎮痛剤、その次は下剤だ」

「浮竹の作る胃薬、まずいから僕は乱菊ちゃん特製の胃薬飲んでるんだよね」

「今日から、俺の胃薬を飲め。味はりんご味にしといてやる」

できあがった胃薬は、りんごジュースのような味だった。

ただ、紫色でボコボコと沸騰していた。

「お次は鎮痛剤・・・・」

今度はオレンジジュースの味の薬ができあがった。

色はショッキングピンクだった。

最後に下剤を作った。

下剤はさすがに飲むわけにはいかず、バナナ・オレの味がするということにしておいた。

バナナ・オレを大量にぶちこんだからだ。

「ふう、これであらかたの薬の味の改良は終わった。あとは錠剤ものの薬だが、これは作るのに日数がかるので、後回しというか、錠剤の薬なんて味はどうでもいいだろうし、今度にするか・・・・・・」

浮竹はよろめいた。

「危ない!」

がつん。

音を立てて、何かの瓶が割れて、中身が二人に降りかかった。

「わ、まじか!」

「え、どうしたの。って、ええ、僕がもう一人!?」

「違う。中身が入れ替わったんだ」

「何それ!なんて危険な薬を・・・・・」

浮竹は京楽の姿をしていて、京楽は浮竹の姿をしていた。

「この渦巻く魔力・・・・これが、魔神か・・・・・」

「これが、魂に神格のある者の魔力」

お互い、波長の違う魔力に戸惑いがちだった。

「でも、なんか面白い。解毒薬はここにあるから、今日一日、お互い入れ替わったままで過ごそう」

「ええ!」

「だめか?」

「いや、別にいいけど・・・・・・」

そんな日に限って、ブラッディ・ネイがやってきた。

「愛してるよ兄様!!」

「もぎゃあああああ!!」

押し倒され、弄られて京楽は浮竹の姿で、カエルが踏みつぶされるかのような悲鳴をあげていた。

「兄様?」

「ブラッディ・ネイ。その中身は京楽だ」

「ええ!じゃあ、こっちのひげもじゃが兄様!?いやだあああ、こんなひげもじゃの兄様なんていやだあああ!ボクの美しい兄様を返せ!」

浮竹の姿の京楽の髪を、ブラッディ・ネイは引っ張った。

「浮竹、解毒剤!」

「分かった」

浮竹は、オレンジ色に輝く解毒剤を飲み、残りを京楽に与えた。

「こら、いつまで俺の髪を引っ張っているつもりだ!」

「あれ?兄様、元に戻ったの?」

「そうだ。だから、どけ」

「兄様はやっぱりそうじゃないと!ああ、ツンデレが愛しい」

浮竹に思い切り抱き着いてきたので、浮竹はハリセンでブラッディ・ネイの頭を叩いた。

「痛い」

「お前、魂のルビーはどうした?もう身に着けていないのか?」

「ううん、ここに」

胸には、魂のルビーの結晶を半分にした首飾りをつけていた。

「あの結晶を砕いたのか」

「そうだよ。大きすぎたから、3つに分けて、首飾り、ブレスレット、髪飾りにしてみたんだ」

「まぁ、競り落としたのはお前だし、好きなようにするといい」

「兄様、ほらこの首飾り、ボクに似合ってるでしょ!?」

胸元を開いて、見せつけてくるブラッディ・ネイを押しやる。

「はいはい、そうだな。用がないなら帰れ」

「酷い!でもそんな兄様が大好き!」

ブラッディ・ネイは結局その日は朝がくるまで居座った。

ゲストルームで寝ることになったブラッディ・ネイは文句を言っていたが、帰ってもいいんだぞと言われて、しぶしぶ、ゲストルームで寝た。

次の朝になると、ブラッディ・ネイは浮竹に抱きつきまくり、頭をハリセンではたかれながらもスキンシップを楽しむと、血の帝国に帰っていった。

「台風みたいな奴だな」

「それ言うなら、嵐じゃないかな」

「どのみち、周囲を巻き込む」

「そうだね」

「今日は冒険者ギルドに行こう。式で、ギルドマスターが依頼したいクエストがあると知らせてきた」

「ギルドマスターからねぇ。なんかきな臭いな・・・・」

---------------------------------------------

二人は、冒険者ギルドにやってきた。

ギルドマスターが現れて、すぐに二人を二階のゲストルームへ通した。

「これを」

渡されたものは、手紙だった。

「次の月が欠ける時、神の貴族はガイア王国を滅ぼすだろう。始祖浮竹と、神喰らいの魔神京楽を引き渡せ・・・・・場所はデリアの花園にて」

「君たちがヴァンパイアなのも知っているし、魔族の藍染と敵対しているのも知っている。この手紙を渡してきた自称神の少年は、Aランクの冒険者五人をいきなり殺した。敵に仲間を売り渡すようで悪いが、この自称神の少年をなんとかできないだろうか」

「神の貴族・・・神に貴族なんていないぞ。まぁいい、その依頼引き受けた」

「報酬は大金貨30万枚。殺された冒険者たちの遺産だ」

「名前は名乗っていなかったのかい?」

「名乗っていた。リン・フォン・ハルザード。神の貴族というが、あれは確かに人外の者だ」

「リン・フォン・ハルザード。浮竹、聞いたことある?」

「確か、俺の父である創造神ルシエードが、ルシエード・フォン・ハルザートというのが正式名称だった記憶がある。フォン・ハルザートは上位神の一部の血族しか名乗らない名前だ。俺たちを呼び出す限り、神である可能性は高いだろうな」

「じゃあ、そのデリアの花園に行けばいいんだね。日時は書いてないの?」

「デリアの花園で待つとだけで、日時の指定はなかった」

ギルドマスターはがっくりと項垂れた。

「あんな存在、そこらのSランクの冒険者じゃだめだ。君たちが頼りなんだ、行ってくれるか?」

「じゃあ、今からいってぶっ倒してくる」

「僕も」

「ええ、今から!?もっと準備とか・・・・・」

「次の月が欠けるまであと三日もない。早いほうがいいだろう」

「そうだね。じゃあ、ギルドマスターは報酬の大金貨30万枚用意して、待っていてね」

「自信満々だな」

「そりゃね。僕は神喰らいの魔神だから」

「君たちの存在がなんでもいい。このガイア王国と敵対しない限り、手を出すことはない」

「それを聞いて安心したよ。じゃあ浮竹、神様討伐でもしますか」

「ああ、そうだな。あと、死んだ冒険者の遺族に、一枚ずつこれをやってくれ」

「これは白金貨!こんな大金、いいのか!?」

白金貨は、一枚で大金貨10万枚に匹敵した。

「報酬は大金貨30万枚。つまりは白金貨3枚だ。5枚だと、大金貨20万枚の赤字になるぞ?」

「俺たちの問題に巻き込まれてしまった。遺族に、せめてものお詫びだ」

「分かった。そうなるように、手配しておこう」

「遺族がいない場合は、育った孤児院にでも寄付してくれ」

冒険者の中には、孤児だった者も多い。手に職をつけれなくて、食うために仕方なく冒険者になる者も多かった。

デリアの花園に向かう途中で、京楽がこう言った。

「僕は驚いたね。嫌いな人間のために白金貨5枚も出すなんて」

「俺たちの戦いに巻き込まれたんだ。仕方ないだろう」

「気をつけてね、浮竹。尋常じゃない気配がする」

デリアの花園は、美しい花を満開に咲かせていた。

そこを歩く京楽の傍から、花が枯れていく。

魔人としての魔力に宿る瘴気にやられて、花は次々と枯れていった。

ふと、京楽は東洋の浮竹からもらった瘴気を消すお札を身に着けた。

すると、それまで渦巻いていた瘴気が消えた。

「出てこい、自称神の貴族とらやらのリン」

「自称じゃないよ。僕は本当に神で、貴族なんだから!」

枯れていた花を満開にさせて、リンは神喰らいの京楽を見た。

京楽は、魔剣ラグナロクを構えた。

「ふん、魔神なんて所詮は低級神。それに、そっちはただ神格が魂にあるだけ。僕の敵じゃあないね」

「それはどうだろうね?」

京楽は、禍々しい魔力を放つ。

浮竹も、神々しいまでの魔力を放った。

「ふん、魔力なんてあげる方法はいくらでもある!」

リンは、まず浮竹を亡き者にしようと、聖剣エクスカリバーで斬りかかった。

「その剣は女神アルテナのもの!やはりお前は、女神アルテナと藍染の子か!」

「正確には、母様は二人だけどね。僕は、二人の赤子をくっつた存在だ」

(オイシソウ)

京楽の本能がそう答えた。

「く、神喰らいが!まずは始祖の浮竹からだ!ゴッドフェニックス!」

「カイザーフェニックス!!」

出された不死鳥は、同じ不死鳥とぶつかり合う。

浮竹の唱えた魔法のほうが威力があり、リンをカイザーフェニックスが包み込んだ。

「ああああああ!!」

体を燃やされながらも、凄まじい再生スピードで体を再生させていく。

「く、エターナルアイシクルワールド!」

「エターナルアイシクルワールド!」

あえて、同じ呪文をぶつけた。

お互い凍り付きながら、けれど浮竹は氷が自然に溶けていき、リンは凍り付いたままだった。

「僕より魔力があるというのか!ふざけるな!!」

神のプライドを刺激されて、リンは凍った足を捨てて、新たに足を再生しながら、浮竹に聖剣エクスカリバーで斬りかかった。

「僕を忘れてもらっちゃ、困るね?」

「うわあああ!!なんだその魔剣は!なんて禍々しい!」

「魔剣ラグナロク。魂を吸い取る魔剣だそうだよ」

聖剣エクスカリバーは、魔剣ラグナロクと切り結び、火花を散らした。

「うわあああ!!!」

半ば半狂乱んなって、リンは聖剣エクスカリバーで京楽の体を貫いた。

「・・・くすっ」

「なんなんだ、お前は!何故、聖剣エスカリバーで貫かれて滅びない!魔神だろうが!」

「魔神でも、ヴァンパイアロードだからね。浮竹の血族である限り、邪悪な存在にはならないし、聖剣エクスカリバーとやらも、おいしそうだ」

京楽は、魔神の咢(あぎと)を開いた。

ぼりぼりと、聖剣エクスカリバーを食べていく。

「やっぱり、魂が宿っている剣だったね」

「僕の聖剣が!!」

「僕の魔剣ならあげるよ」

魔剣ラグナロクで、リンの体を貫いていた。

「ぎゃあああああ!」

「エターナルフェニックス!」

貫かれた体の内側から、炎の不死鳥がリンの体を焼いていく。

普通の再生では間に合わず、リンは空間を歪めて転移し、逃げようとした。

「おっと、君の魂は僕がもらうよ」

魔神として、リンの魂を食べていく。

でも、二人を一つにしたというだけあって、魂はもう一個あった。

「覚えてろ!」

そう言い残して、魂の半分を食われたリンは、逃げていった。

「倒せなかったか・・・・でも、あれだけダメージを与えたら、そうそう現れないだろう。神喰らいのお前に、魂の半分を食われたしな」

デリアの枯れ果てた花園を、浮竹がその魔力で花を開花させていく。

「俺の血を飲め、京楽」

「うん」

浮竹の血を吸うと、魔神独特の禍々しさが消えていたし、浄化のお札のおかげで花は満開のままだった。

京楽は器用に花冠を作ると、それを浮竹の頭に乗せた。

「僕の姫君。帰ろうか」

「誰が姫だ!うん、帰ろうか」

冒険者ギルドに、倒せなかったが危険は排除しておいたと式を送った。

報酬金は、いらないと言ったのだが、けじめだと、ギルドマスターから大金貨30万枚をもらった。

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「ああああ!!」

浮竹は、京楽に血を吸われながらいっていた。

「やああ、奥はやあああ」

最奥をごりっと削り上げて、京楽のものが入ってくる。

「あああ!」

京楽は、熱を浮竹の最奥に弾けさせていた。

「んああああっ」

ドライのオーガズムでいくことを覚えた体は、女のように刺激だけでいってしまうようになっていた。

「ひあっ」

京楽のものが、一度外に出て、浮竹は不安そうな瞳で京楽を見た。

「自分で入れてごらん?」

「あ・・・・・・」

騎乗位になれということだった。

浮竹は、とろとろと太ももを逆流してくる京楽の精液に気づきながら、京楽の上に跨り、京楽のものを飲みこんでいく。

「あああん」

啼くことしかできない浮竹を下から突き上げて、京楽は意地悪そうに笑った。

「ねぇ、自分でいじってみて?」

「あ、や・・・・・・・」

京楽の手が、先走りの蜜を零す浮竹のものに、浮竹の手を誘導する。

「はあああ、ああ!」

浮竹は、自分で自分のものをいじりだした。

「ああ、気持ちいい、でも春水のが欲しい」

唇を舐める浮竹に、京楽は突き上げながら、浮竹の首に噛みついて、血をすすった。

「やあああん」

最奥をごりっと抉られて、浮竹は自分自身を自分でいじりながら、精液を放っていた。

「あああ!」

浮竹は京楽の方に体を傾けて、京楽の肩に噛みつき、血を啜る。

「ン・・・・甘い・・・・・」

「はぁ、気持ちいいよ浮竹。もっと吸って?」

「ん・・・・」

京楽の血を飲み下していく。

血に染まった唇を舐めて、浮竹は京楽の耳元で囁く。

「もっと、もっと、お前の子種が欲しい」

妖艶でエロティックな浮竹に、視覚と聴覚でやられてしまう。

「本当に、君って子は」

京楽は、最後の一滴までを浮竹に注ぎ込む。

浮竹は妖艶に微笑み、満足そうにまた唇をペロリと舐めるのだった。


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「それで逃げてきたというの、リン」

女神アルテナは怒っていた。

自分を貴族であると言い出して、我がままに振舞う我が子でもあるリンを、自由にさせていた。

結果、聖剣は食われるし、リンは2つある魂のうちの半分の魂を食われて、体を焦げさせがら逃げてきたというのだ。

「もう一度だけチャンスをあげるわ。始祖浮竹と、神喰らいの魔神京楽を屠るのよ!」

「でもアルテナ母様、敵があんなに強いなんて聞いてない!」

女神アルテナは、リンの頬を叩いた。

「あんな風になりたいの?」

女神アルテナが指さした方向には、ぶよぶよとした肉塊があり、それは生きていた。

女神アルテナが、他の寵姫たちに生ませた赤子の、実験の失敗作だった。

「いやだ!あんな風にはなりたくない、アルテナ母様!」

「じゃあ、これを飲みなさい」

「これは何、アルテナ母様」

「邪神ディアブロの血よ」

「ひっ!」

リンは、差し出されたコップに並々と注がれている、どす黒い液体を見た。

「邪神ディアブロは、封印されたはずじゃあ・・・・・・」

「その封印を、藍染様が解いたの。あの方は、本当に素晴らしい・・・・」

「この血を飲むとどうなるの?」

「精神的にも肉体的にも強くなるだけよ。さぁ、生きていたいなら飲みなさい!」

強制的に飲ませられて、リンはぐるんと白目をむいて倒れた。

「おでの肉体。新しいの、手に入れた。おで、藍染様のいうことなら、なんでも聞く」

「邪神ディアブロになんて用はないわ!」

「ぎゃあああああああああ」

邪神ディアブロの意識は、女神の怒りで散っていた。

「さぁ、起きなさいリン」

「アルテナ母様・・・・凄いよ!凄い魔力が漲ってくる!」

「それなら、始祖浮竹も神喰らい京楽も、怖くないでしょう?」

「怖くない。もう一度、あいつらを殺しにいく!」

リンの言葉に、女神アルテナは笑った

「ほほほほほ!魔人ユーハバッハのものより凄まじい、邪神の血よ。今に見てなさい、浮竹、京楽・・・・血の海に沈むお前たちの姿が塑像できるわ。ほほほほ!」

藍染は、そんな風に笑い自分の妻を、つまらなそうに見ていた。

「私こそが、神にふさわしい」

邪神ディアブロの血を取り込んでいく。

藍染は、それでも神になれずに、自分の頭をかきむしるのだった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝

西洋の京楽は、猫の魔女乱菊にお願いして、こっそり猫耳と猫の尻尾がはえるという薬を作ってもらった。

それを、西洋の浮竹の紅茶にまぜて、飲ませた。

ポット自体に薬を入れていた。

(元気にしてるか、西洋の俺)

(遊びにきたよ)

「いいところにきたな。紅茶、飲むだろう?」

(うん、たただく)

「あ・・・・・」

西洋の京楽の狼狽ぶりに、東洋の京楽は瞳を金色にして西洋の自分を睨んだ。

小声でやりとりする。

(何か入ってるの?)

「猫耳と猫尻尾がはえる薬が入っている。君は飲まないでね」

(十四郎に猫耳と猫の尻尾!)

想像しただけでかわいくて、東洋の京楽はけしからんという顔をしていた。

「ん、体が熱い・・・」

(俺もだ・・・)

ぼふん。

音たてて、西洋と東洋の浮竹には猫耳と猫の尻尾が生えていた。

「なんだこれは!おい京楽、どういうことだ」

西洋の京楽はにへらと笑って、西洋の浮竹の頭を撫でた。

猫耳をさわると、西洋の浮竹は声を漏らす。

「あっ」

「浮竹、もしかして猫耳性感帯になってるの?じゃあ尻尾は?」

猫の尻尾を握られて、浮竹は身を捩った。

「やあああ」

(西洋の俺!)

「やあ、京楽のバカ!」

東洋の自分の前で少し乱れてしまって、西洋の浮竹は真っ赤になっていた。

「んっ」

ディープキスをされている西洋の浮竹を真っ赤になりながら見つめていると、背後から熱のこもった声をかけられた。

(十四郎・・・)

(くるな、春水!)

西洋の浮竹の二の舞になりたくなくて拒絶するが、東洋の京楽は腕に東洋の浮竹を抱きしめていた。

(やあっ)

猫耳と猫の尻尾を触る、東洋の浮竹も甘い声を出した。

(これは・・・食べるしかないね)

「そうだね。食べるしかないね」

どういう意味での食べるかが分かって、西洋と東洋の浮竹は逃げようとする。

「よいしょっと」

「こら、京楽!」

西洋の浮竹を捕まえた西洋の京楽は、その体を抱き上げて、じゃあと言って、西洋の浮竹を連れていこうとする。

「東洋の俺、お前だけでも逃げ切ってくれ!」

(無理だ。春水が本気になってる)

(十四郎、大人しくボクに食べられて?ゲストルーム使わせてもらうけど、いいよね?

「ああ、好きなだけ使うといい。ローションはいるか?」

露骨なやりとりに、西洋と東洋の浮竹の顔が真っ赤になる。

「これ、新しいの。あげるよ」

(もらっておくよ)

こうして、西洋の浮竹は西洋の京楽に寝室に連れて行かれて、性感帯だという猫耳と猫のしっぽを散々いじくられて、抱かれた。

東洋の浮竹も、東洋の京楽に猫耳と猫の尻尾をいじくられまくって、抱かれてしまった。

------------------------------------------------------


「はぁ。散々な目にあった」

(俺もだ)

猫耳と猫の尻尾は消えていた。効果時間は3時間くらいだった。

西洋の京楽が、西洋の浮竹を抱くために盛った薬だった。

体にいっぱいキスマークをつけられた二人は、ため息を零しながらも、悪くはなかったと思っていた。

伴侶と体を重ねなうのは当たり前な西洋の浮竹と違って、東洋の浮竹はそういう行為をすること自体頻繁ではない。

(春水ってば、かわいいかわいいってうるさかった)

「俺のところもだ。かわいいとかいって、抜かずの四発だ」

(よ、四発・・・・君のところの春水って、性欲すごくない?)

「ヴァパイアロードで魔神だからな。体力は凄まじい。付き合わされるこっちの身にもなってほしい」

二人は、それぞれの伴侶に風呂にいれてもらって、身を清めていた。

「夕飯できたよ。あれ浮竹どうしたの。もしかして、抱いたの不満だった?」

西洋の浮竹は、ハリセンで西洋の京楽の頭をはたいた。

「そういうことを口にするな!」

(十四郎、無理させすぎちゃった?)

東洋の浮竹は、真っ赤になって東洋の京楽に抱かれていた。

(いや、ちょっと疲れただけだ)

(ならいいんだけど)

「疲労回復のポーションあるけど、飲む?」

「よこせ。ほら、東洋の俺も飲め。腰の痛みとかがなくなる」

西洋の浮竹は疲労回復のポーションを飲んだ。

恐る恐る、東洋の浮竹も中身を口にする。

「あ、意外とおいしい。フルーツの味がする」

「林檎をベースに作っているからな。しょっちゅう使うポーションだから、味が悪いと飲みたくなくなるだろう?」

(そうだな)

二人は疲労回復のポーションを飲んで、一息ついた。

「さぁ、今夜のメニューは海鮮パスタとボロネーゼ、肉団子のスープに野菜サラダだよ。東洋の僕と一緒に作ったんだ」

(さぁ、めしあがれ)

体力を使ったせいか、両方の浮竹はお腹がぺこぺこだった。

(あ、この海鮮パスタおいしい)

「こっちのボロネーゼもうまいぞ」

食べていく二人を見ながら、西洋と東洋の京楽も食べて、にまにましていた。

「猫耳と猫の尻尾の浮竹は、悪くなかったでしょ」

(うん。すごくかわいかった)

小声でやりとりする。

「そこ、聞こえているからな」

西洋の浮竹は、ハリセンで二人の京楽の頭をはたいた。

(なんでボクまで・・・・)

「東洋の俺を抱いたんだ。成敗されて当たり前だろう。まぁ、今日のところはこの美味しい夕飯を作ったということで許してやるが、京楽!」

「なんだい?」

「今度同じ薬を盛ったら、お前の息子がしばらく立ち直れないようにするからな」

「ひえええ」

西洋の浮竹なら本当にやりそうで、西洋の京楽は萎縮した。

「今後は、変な薬を飲ませるなよ」

「それはどうかなぁ」

スパーン。

西洋の京楽は、西洋の浮竹にハリセンではたかれながらも嬉しそうにしていた。

(あれで、魔神なんだよな・・・・)

(そうだね。ただのエロい変態に見えてきた・・・)

そんなことを言われていると知らずに、今度は兎の耳でもはえる薬でも盛ろうとか考えてている、西洋の京楽であった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター46

女神オリガは、藍染の子を孕まされた。
オリガは暴れて子を流そうとするので、女神アルテナが子を藍染の寵姫に移して、1カ月で臨月を迎え、出産した寵姫は神の子である赤子の存在に耐え切れず、死んでしまった。
「オリガは、上位神イクシードとの間に子をもうけたことがあって、神の力が濃いの。その神の子なら、あの憎い神喰らいの魔神京楽と、始祖の浮竹をどうにかできるはず」
「酷い、酷いわ姉様。こんな始祖魔族との間に子供を産ませるなんて!」
「オリガ。このことを、イクシードが知ったら、なんていうでしょうね?」
「やめて姉様!イクシードにだけは、イクシードにだけは教えないで!!」
女神オリガはさめざめと泣いた。
まさか、自分の姉がこんなに醜いことをするとは思っていなかったのだ。自分には創造神イクシードの愛がある。手出しなんてできないはずと、傲慢だった。
それが仇となった。
「いい、オリガ。イクシードにこの子供のことをばらさえれたくなければ、大人言うことを聞くのよ?」
「・・・・・分かったわ、姉様」
生まれ落ちた子は、成長促進の禁断の秘術を施されて、9歳くらいになった。
女の子で、女神アリアと名付けられた。
女神アルテナが藍染との間に設けた子は魂に神格はなかったが、アリアには神格があった。
「女神アリア。何をすればいいか、分かっているわね?」
女神アルテナの言葉に、女神アリアは頷いた。
「神喰らいの魔神京楽と、その始祖浮竹を、苦しめる」
「そうよ。いってらっしゃい、かわいい私の姪」
------------------------------------------------------------------------------
「また失敗だあああ!!」
古城で、浮竹はエリクサーを作っていた。
ボンと音がして、館で爆発が起きる。京楽が念のためシールドの結界を張ってくれたおかげで、浮竹は無事だったが、京楽は自分を守ることを忘れて、髪がアフロになっていた。
「はははは、京楽、その頭!!」
手鏡を渡されて、アフロになった髪を見て。
「なんじゃこりゃああああ」
と叫ぶ京楽であった。
「もう一度チャレンジだ」
「浮竹、いい加減諦めたら?もう20回も失敗してるよ」
「確率でいうと、そろそろ成功するはずなんだ」
大金貨20万枚を費やして買ってきたエリクサーの材料は、ストックが底を尽きそうだった。
「最後は神頼みだ!」
エリクサーを調合して、見事に成功した。
「やった、成功だ!」
虹色に光輝く液体を小瓶に詰めて、浮竹は満足そうだった。
「ほら、いつまでもアフロでいるつもりか?俺の血を飲め」
「うん。いただきます」
かぷりと、首筋に噛みついて、血を飲んでいく。
「んあっ」
「浮竹、誘ってる?」
「バカ、飲みすぎだ。後で人工血液口にしないと・・・・」
今度は、浮竹は錬金術の釜に生きたマンドレイクをぶちこんで、そこにドラゴンの血、レッドスライムの粉、黄金の林檎をぶちこんで、ぐつぐつ煮ていく。
すごい匂いが漂ってきて、京楽は換気のために窓を開けた。
「ああ、この匂い長く吸っていると、髪が中毒になってモヒカンになるから気をつけろ」

浮竹は、常に自分の周りの空気を浄化する魔法を使っていた。

「それを早くいってよ・・・・」

京楽の髪は、モヒカンになっていた。

「あははははは!!!!!」

釜の中身を木の棒でかき混ぜながら、浮竹はツボにはまったのか、涙を流しながら笑っていた。

「浮竹、そこまで笑わなくても・・・・」

「あーっはっはっはっは」

「もう!」

京楽は、モヒカンになった頭のまま、釜をかき混ぜる浮竹のうなじに後ろから噛みつき、血を飲んでいく。

「あっ」

浮竹は、木の棒を手から離した。

「んっ」

京楽に血を飲まれすぎて、軽い貧血を起こす。

「お前の血を、よこせ・・・・」

今度は逆に、浮竹が京楽の血を啜った。

「甘い・・・癖になるな」

「もっと吸っていいよ。僕の血液は、全部浮竹のためにあるんだから」

「お前がしおしおになる。このくらいで止めておく」

気づけば、釜の中のものは沸騰しすぎていた。

それでも失敗ではないのが、浮竹の凄いところだった。

さすがにミスリルランクの錬金術士だった。

「浮竹、なんの薬作ってるの」

「媚薬だ」

できた液体をとろとろと小瓶にいれて、浮竹は少し恥ずかしそうにしていた。

「ブラッディ・ネイから注文された」

「へぇ・・・・」

京楽は、その小瓶を浮竹から取り上げた。

「あ、何をする!」

「君の想像通りのこと」

京楽はその小瓶の中身を口にすると、自分も少し飲み、残りを口移しで浮竹に飲ませた。

「このばかっ!」

すぐに体が熱く火照ってきて、浮竹はもじもじしだす。

「京楽・・・・・・」

唇を舐める浮竹に、京楽のほうが限界になって、その場で浮竹を押し倒していた。

「あ、や、だめ・・・」

「待てない。君を、今すぐ僕のものにする」

衣服の上からいじられて、それだけで浮竹は精を弾けさせていた。

「やああああああ!!」

「ん、敏感だね。こっちはどうかな?」

服の上から胸の先端をつまみあげられて、浮竹はびくんと体を反応させた。

「やっ」

「君の体は正直だよ?」

すにでまた勃ちあがっていたものに、衣服の下に入ってきた手で直接愛撫された。

「やあああ」

「ああ、もうこんなに濡らして」

「京楽のアホ・・・・・」

「はいはい。かわいいよ、十四郎」

浮竹の小さな抵抗を抱きとめて、京楽はローションの代わりに、ぬるついた液体の入った小瓶の中身を、手にした。

「あ、それは!!」

「どうしたの?」

「それも、媚薬だ、バカ・・・・・・」

「へえ。じゃあ、2重に乱れてくれる?」

「やあああ」

衣服を脱がしていき、完全に勃ちあがった浮竹のものに舌をはわせた。

「あ、や!」

「君のここは、嫌なんていってないけどね?」

浮竹のものを舐めあげて、先端を口に含んで亀裂に念入りに舌を這わすと、浮竹は京楽の口の中に精液を放っていた。

「あ・・・・」

それを舌で味わってから、嚥下した。

「あ・・・・」

浮竹の蕾に、ぬるついた媚薬が塗り込められていく。

「ひあっ」

その媚薬の効果なのか、浮竹はまだ指を入れたばかりなのに、オーガズムでいっていた。

「ん、いくのいつもより早くない?」

「やあああ、京楽が、それを塗り込むから・・・・あああ、京楽が欲しい。もっともっと、刺激をちょうだい」

浮竹にねだられるままに、京楽は蕾を指で解していく。

「あ、や、早く、早く春水をちょうだい!」

「今、あげるね」

貫くと、中はうねって絡みついてきた。

「あああああ!!!」

引き裂かれることに、生理的な涙を零しながら、浮竹は精を吐き出していた。

「やああ、いったのに、またいってる、やだあああ」

「十四郎、かわいいよ」

右足を肩まで担がれて、京楽は律動を開始する。

「あ、あ、あ、や!」

そのリズムに合わせて、浮竹は啼いていた。

「あ、あ、ひ、ひ、あ」

強弱をつけて、浮竹の中をぐちゃぐちゃにかき混ぜていく。

「やああ、いきたくない、いきたくない」

さっきから、ずっと浮竹はいきっぱなしだった。

少しの刺激で、精液を零しながら、オーガズムでもいっていた。

「あ、春水、もっと、もっとちょうだい」

「君の奥にあげるからね・・・・んっ」

京楽は、浮竹の胎の奥で熱を弾けさせていた。

「ああん、もっと、もっと」

淫らに足を京楽の腰に絡ませてくる浮竹に、京楽は唾をごくりと飲みこんだ。

「あ、キスして・・・・」

「僕の大切なお姫様・・・・・」

濃厚な口づけを交わしあう。

「やあ!いくの、いくのとまんない、やだあっ」

京楽が動く度に、浮竹はいっていた。

「あ、もっと・・・・・」

それでも、貪欲に京楽を求める。

「いっぱい注いであげるからね?」

「ひあう!」

ごりっと結腸の中に入ってきた京楽のものを締め付けながら、浮竹はいきまくっていた。

「やああ、ああ、頭、変になる・・・あああああ」

「僕がいるから、大丈夫だよ。愛してるよ、浮竹」

「あ、もっと、もっとお前をくれ・・・ひああああ!!」

浮竹の中に子種を注いでやる。

その瞬間も、浮竹はいっていた。

「あ、あ、やあああ、もう、いきたくない、やだ、やだあああ」

オーガズムの波に襲われて、浮竹は意識を飛ばしそうになるが、京楽の刻んでくる律動で我に返る。

「あ、あ・・・・・・」

壊れた人形のように、啼くことしかできない。

「ああ・・・んあっ」

京楽は、何度目になるかも分からない熱を、浮竹の中に注いでいた。

「あああ、もっと・・・」

もっとと欲しがる浮竹のために、疲労回復のポーションを口にした。

「もっともっと、いっぱい愛してあげるからね?」

「ん・・・・」

京楽は、休むことなく浮竹を犯した。

気づけば、太陽は沈んでいた。

「ひあう・・・・・あああ・・・・」

媚薬のせいか、まだ体の火照りが治らず、浮竹は自分の体を抱きしめた。

「さすがの僕も、もうこれ以上は相手できないよ」

10回以上は浮竹の中に精液を注ぎこんだだろうか。

床には、白い精液の水たまりができていた。

「あ、春水・・・・青い小瓶を、取ってくれ・・・・」

「はい」

青い小瓶を渡すと、かたかたと手を震わせながら、浮竹は中見を飲んだ。

「お前も飲んでおけ。媚薬が収まる・・・」

「ああ、君に吸血してあげてなかったね」

「いや!いまは、だめええええ」

浮竹の肩に噛みついて吸血した。

そのものすごい快感に支配されて、浮竹は意識を失った。

「浮竹、浮竹?」

「あ、ばかぁ!」

キスマークだらけの体を隠すように、浮竹は身を捩り、衣服を手にする。

トロトロと太ももを流れ落ちてくる京楽の精液を、衣服で拭った。

「風呂に入りたい。ベトベトだ」

「分かったよ」

京楽は浮竹を抱き上げて、館に設置されてあった小さめの風呂に入った。

「ん・・・・・」

奥に出されたものをかき出されて、浮竹はまたいきかけていた。

「や・・・この媚薬、しつこいな・・・・・」

「君が作ったんでしょ?」

「ここまでしつこいとは、思わなかった・・・・・」

京楽に髪と体を洗われて、疲労感からか、浮竹は風呂からあがると寝てしまった。

その体に寝間着を着せて、ベッドにまで運んでやり、その日は京楽も夕飯をとることもなく、就寝した。

------------------------------------------------------
次の日も、浮竹は何やら怪しげな薬を作っていた。

生きたマンドレイクをぶちこみ、ドラゴンの血に、とかげ、毒蜘蛛、蝙蝠の羽をいれて、更にいくつかのものを混ぜて煮込んでいく。

「今日は、何を作っているの?」

「飲んだ者を、子猫にする薬」

「へぇ。持続時間は?」

「3日だ」

「僕が飲んでみてもいい?」

「かわいくないと思うからやめとけ」

「じゃあ、一緒に飲もう!」

「あ、こら、京楽!」

京楽は、薬の入った小瓶を口にすると、浮竹にも飲ませた。

「にゃああ」

「ふしゃああああああ!!」

浮竹は子猫になって、怒って毛を逆立てていた。

「にゃああん(元に戻る方法は?)」

「にゃあ(あの赤い小瓶の中だ」

「にゃああ(この体じゃ、届きそうにないね」

浮竹と京楽は、館を飛び出して古城を抜け出すと、アラルの町の隅にある、猫の魔女乱菊のところにきていた。

「にゃああああああ」

「にゃあああああん」

「あら、可愛い子たちって・・・・・浮竹さんに京楽さん?」

「にゃああ」

「にゃおん」

「そう、元に戻りたいのね。少し待っていて、薬とってくるから」

浮竹と京楽は、しばしの間子猫の体で遊びあった。乱菊は猫の魔女なので、庭に猫用の遊びグッズが追いてあり、二人は子猫姿のまま、はしゃいだ。

「ほら、これが薬の効果を中和する薬よ。それにしても・・・・かわいい~~~~~」

もっふもふにされて、浮竹と京楽は、浅い更に入れられた中和剤を飲んだ。

「これで元に戻って・・・・・って、猫耳と尻尾がそのままだな」

「しばらくしたら、消えるわよ?」

「乱菊ちゃん、カメラない、カメラ!」

「あるわよ」

京楽はなぜか普通に戻っていた。

「写真とろう、浮竹」

「いやだ」

「そう言わずに」

「仕方ない。1枚だけだぞ?」

「愛してるよ、浮竹!」

乱菊も一緒になって、3人でカメラに映った。

「ああ、これ僕の宝物にする」

「大袈裟なやつだな」

「昨日が昨日だからね。その君の姿を抱けない僕の心を察してやって」

「あら、昨日お盛んだったの。道理で、キスマークがいっぱいつてるわけね」

「わあああ!!!」

浮竹は慌てて首元を隠すが、後の祭りだった。

「京楽、後で覚えてろ・・・・・・・」

------------------------------------------------

「ここが、始祖浮竹と神喰らいの魔神京楽の古城・・・・・・」

侵入者である女神アリアは、古城の中に誰もいないので、古城に火をつけた。

「アハハハハ、全て燃えてしまえ!」

「何をしている!」

そこに戻ってきた浮竹と京楽が、つけられて燃え盛る部屋に水の魔法で鎮火させていく。

「お前が、神喰らいの魔神京楽・・・・・私は女神アリア。私が生きるために、傷ついてボロボロになって?」

「まだ子供じゃないか!女神アリアだと!女神アルテナの子供か!」

「違う。私の母様は、女神オリガ」

「どのみち、藍染の子供だろうが!」

「そう。父様に認められるために、あなたたちを、苦しめるの」

アリアは女神だけあって、膨大な魔力を有していたが、そんなこと京楽の知ったことじゃなかった。

「そっちが始祖浮竹ね・・・猫耳と猫尻尾はやせて、油断を誘うつもりでしょうが、そうはいかないわ!」

「いや、これはただの薬の副作用・・・・ええい、どうでもいい。ゴッドフェニックス!」

「ゴッドフェンリル!」

浮竹が放った炎の不死鳥は、氷の魔狼に相殺されてしまった。

「カイザーフェニックス!」

「ゴッドフェンリル!」

「エターナルフェニックス!」

「ゴッドフェンリル・・・・きゃああああああ!!」

火力を増していく浮竹の炎を相殺できなくなって、女神アリアは悲鳴をあげた。

「雷の精霊王アレキサンダーよ。来たれ、サンダータイガー、ライデン、ボルト、ステラ!交じりあいて神の裁きとせよ!エターナルサンダーフォース!!」

京楽は、この前契約した雷の精霊王の名を呼び、外に4種の雷の精霊を呼び出して、合体させた魔法を放った。

「きゃああああああああ!!!」

女神アリアを、凄まじい雷の力が引き裂いていく。

「いやあああ、カウンターマジックシールド!!」

雷を反射されて、それは京楽の体を貫いた。

「はぁはぁ。どうよ、見たかしら、これぞ神の力よ!」

「この程度が、神の力だって?」

京楽の傍には、雷の精霊王がいて、反射された魔法は全て雷の精霊王が吸収してしまった。

「返すよ、君に。エターナルサンダーフォース!」

「いやあああああ!!!!」

女神アリアは黒こげになった。

それでもなお動こうとする。

「私は女神・・・・女神アリアよ!キュアサークル!」

回復の魔法をかけようとして、その胸を貫く魔剣ラグナロクを見ていた。

「キュア…サークル・・・・」

ぽっ、ぽっ、ぽっ。

灯っていく命の火を、京楽の魔法が上書きしていく。

「フレアサークル」

ぽっ、ぽっ、ぽっ。

青白い炎を生み出しながら、キュアサークルの邪魔をした。

それでも体をなんとか動かせるようになった女神アリアは、ざっと京楽と距離をとった。

「俺を忘れてもらっては、困るな?エターナルアイシクルワールド!!」

氷の禁呪の魔法を受けて、女神アリアは封印されていく。

「その魂、もらうよ?」

「いやあああああああ!!!この神喰らいの魔神めええええ!!」

魔神の能力で、女神アリアの魂に食らいつき、残滓が残らないほどに食った。

「あああ・・・・・・」

「浮竹、それは魂のないただの肉の器だよ。もやしてしまおう」

「「エターナルフェニックス」」

それは氷の禁呪も溶かして、女神アリアの体を灰と変えていく。

「京楽、ぶっそうなあだ名がついたな。神喰らいの魔神だとさ」

「そんなにしょっちゅう、神の魂を食っているわけじゃあ、ないんだけどね」

「ふふ。神喰らいか。俺は気に入ったぞ?」

「じゃあ、僕も今度から敵にはそう名乗るようにするよ」

二人は、破壊してしまった古城を見た。

「恋次クンを呼んで、時間回帰の魔法、また使ってもらおうか」

「恋次君には、報酬をはずめば、喜んできてくれるだろう」

よくドラゴンブレスで白哉の着ている服をだめにする恋次には、棚から牡丹餅の話であるだろう。

こうして、女神アリアは滅んだ。

--------------------------------------------------------------

「女神アリアが滅んだようね?」

「あああ、私の子が・・・・」

女神オリガは、孕まされたとはいえ自分の子の死を嘆いた。

「女神オリガ。こうなったら、次の藍染様との子を合体させるわよ」

「いやあああ、私はもう藍染の子なんて孕みたくない!」

「言うことを聞かないと、創造神イクシードに全てをばらすわよ?」

「それもいやあああ」

そうして、藍染の子種を子宮に注がれて、女神オリガは妊娠した。同時に女神アルテナも妊娠した。

1カ月で臨月となり、二人は子を産んだ。

神格のある男の神と、神格のない男の子が生まれた。

女神アルテナは、二人の赤子を1つの試験官に入れて、合体させた。

上位神ではないが、そこそこのクラスの神が生まれ落ちた。試験官の中で、子供はすくすくと猛スピードで育っていく。

生まれ落ちて3カ月経つ頃には、15歳まで成長していた。

「あなたの名前は・・・何がいいかしら?」

「僕の名前はリン。リン・フォン・ハルザード。貴族だ」

「神の貴族。面白いわね」

「ああああ・・・許して、イクシード・・・・」

我が子のなれの葉てに、女神オリガは涙を零した。

「泣かないで、オリガ母様」

「リン・・・・・・」

「アルテナ母様。僕は神の貴族。希少なる存在」

「ええ、そうね。神の貴族は希少だもの」

藍染は、リンを忌々しそうに見ていた。

「神は、私だ・・・・・・・」

その言葉は、リンの笑い声にかき消された。

「父様。父様は始祖魔族だけど、神じゃないよ。あははははは!」

ぐしゃり。

リンの頭を、藍染は怒りのあまり潰していた。

「酷いなぁ、父様。僕は神だから、この程度じゃ死なないよ」

「素晴らしいわ、リン。始祖ヴァンパイア浮竹と、神喰らいの魔神京楽を滅ぼすのよ。ほほほほほほほほ!!」

女神アルテナの高笑いが、ずっと木霊すのであった。




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始祖なる者、ヴァンパイアマスター45-2

そのまま、30階層の財宝の間で、パーティーは夜を迎えた。

浮竹と京楽はテントの中に布団と毛布を敷いて寝て、もう1つのテントには恋次が白哉の抱き枕を手に寝ていた。

白哉は、天蓋つきのべッドを取り出した。

流石にそんなもの入れいると知らなかった浮竹と京楽はびびった。

恋次は、やっぱりかと、うなっていた。

枕どころか、ベッドが変わると眠れないらしい。

すーすー眠る白哉に、忍び寄る影があった。

「私は女神オリガ。さぁ、朽木白哉、あの忌まわしい魔神を倒しなさい。これは宿命です。今倒さなければ、いずれあの魔神はあなたの大切な妹、ルキアを殺し、その魂を食うことでしょう」

「ん・・・・」

目覚めた白哉は、完全に洗脳されていた。

女神オリガは、女神アルテナの末の妹であった。

念のため、女神オリガは白哉の体に憑依した。

次の日の朝、白哉の様子がおかしいと、恋次が浮竹と京楽に訴えた。

「大丈夫か、白哉」

「問題ない」

「大丈夫だろう」

60階層にいき、エンシェントドラゴンを退治した時、白哉が京楽に刀を向けた。

「白哉クン!?」

「兄は、このまま生きると私の妹ルキアの魂を喰らう。ここで、死んでもらう。散れ、千本桜」

千本桜は、億の刃となって京楽に襲い掛かった。

いきなりのことだったので、シールドを張ることもできず、腹をやられた。

「何を言ってるんだい、白哉クン!」

「白哉さん、しっかりしてください!」

「白哉に・・・何かついているな。姿を現せ!」

「うふふふ」

白哉の体からじわりと現れてきたのは、女神だった。

「女神か!女神アルテナの手下か!」

「私は女神オリガ。アルテナ姉さまの末の妹。さぁ白哉、憎きこの魔神を殺すのよ!」

「散れ、千本桜・・・・」

「白哉さん!」

白哉はまず、恋次の心臓を貫いていた。

「ぐふっ」

恋次は倒れ、血の海に沈む。

「やめろ、白哉!」

浮竹が京楽を庇う。

桜の血の花びらは、器用に浮竹を避けて、京楽のみを攻撃した。

「ぐっ」

「京楽!」

「こうなったら、少し荒っぽい方法になるけど、いいかな、浮竹」

「仕方ない。白哉には後で俺から謝っておく」

「ただの魔王だの勇者だの女神なんかより、君の方が厄介だよ、白哉クン」

「死ね!」

血の花びらを、同じように血の花びらで返した。

「ルキアを死なせるわけには、いかぬ」

「そんな未来は、起こりえないから!」

白哉の体を、サンダースピアで貫く。

体をわずかに焦げさせただけで、白哉はまだ意識をもって、京楽を殺そうとしていた。

(殺シテシマエ。オマエノ敵ダ)

「うるさいよ!」

魔神としての京楽の本能が、目の前の白哉を殺せと訴えてくる。

「僕は、心まで魔神になったつもりはない!」

魔剣ラグナロクを手に、白哉と向き合う。

「散れ、千本桜・・・・」

「白哉クン、ごめんね!サンダーボルテックス!!!」

「あああああ!!!」

大量の雷を浴びせられて、白哉は気絶していた。それでも主を守ろうと、千本桜は刃を京楽に向ける。

それを、魔剣ラグナロクで叩き折った。

「ち、使えない皇族王だ」

「僕に僕の友達を傷つけさせたこと、後悔させてあげる・・・・」

京楽は、魔神の咢(あぎと)で、女神オリガに食いついた。

「いやああ、私の体が!」

魂の一部を食われて、女神オリガは逃げていった。

「白哉クンは大丈夫!?」

「ああ、幸い命に別状はない。それより恋次君が・・・・」

恋次は心臓を貫かれて、息絶えていた。

けれど、時間が逆流するかのように血の海は心臓に戻っていき、元のままの、タトゥーを1つ増やした恋次がいた。

「あっぶね。不老不死じゃなかったら、死んでた」

「いや、君一度死んでたんだけどね?」

「まぁ、始祖だから不老不死の呪いがある」

「俺より白哉さんは!」

全身を焦げさせた白哉は、けれどすでに浮竹が血を与えたので、再生を始めていた。

「ん・・・私は?」

「目覚めたか、白哉」

「白哉さん!」

恋次に泣きながら抱きつかれて、白哉は戸惑っていた。

「恋次。私はお前を手にかけて・・・・」

「そんなことどうってことないっす!白哉さんが無事でよかった」

「京楽、すまぬ。私は兄を殺そうとした。女神であろうが、体を乗っ取られて操られたのも、私の鍛錬が足らぬからだ。すまぬ、京楽」

「いいよ、もう。白哉クンが無事なら、それでいいんだよ」

「そうだぞ、白哉。次の70階層まで降りよう。そこがラスボスがいる場所だ」

60階層の財宝の間の財宝を全てアイテムポケットに入れて、70階層の深層にまで降りてきた。

そこにいたのは、雷の精霊王だった。

金の髪に金色の瞳の、10歳くらいの少年だった。

「これは・・・僕と浮竹の出番だね」

「気をつけろ。相手は精霊王だ。神に匹敵する」

白哉は、恋次に支えられながら歩いていた。

浮竹の血をもらったが、京楽の雷は絶大で、ダメージが残っていた。

もっと血を与えようとする浮竹を拒み、後は自然治癒に任せた。白哉とて皇族王。濃いヴァンパイアロードの血をもっている。少しずつではあるが、自力で走れるくらいには回復していた。

「やんのかコラ。上等じゃねぇかコラ。いてまうぞーー」

雷の精霊王は、ビリビリと雷を発生させて、浮竹と京楽を睨んだ。

「サンダージャベリン!」

「「ゴッドフェニックス!!」」

「なんやコラ。そんな炎の魔法なんてか効くわけねーだろーコラ!あちゃちゃ!!何すんねん!」

「「カイザーフェニックス」」

「ぴぎゃーーー」

「「エターナルフェニックス」」

「ぎゃああああ。うわああああああああん」

「あ、浮竹さんと京楽さんが、雷の精霊王泣かせた!」

「え」

「わ、泣かないでよ!」

「うわああああああん!俺と契約してくれなきゃ、お前らの頭上にいつも雷落としてやるーー」

「契約すればいいんだろう」

「契約するよ」

浮竹と京楽は、仕方なく雷の精霊王と契約し、サンダータイガー、ライデン、ボルト、ステラといった、雷系の精霊とも契約させられた。

「へへーん。これで俺も召還者もちや。いつまでも、炎と氷の精霊王にでかい顔させへんで~」

雷の精霊王は、精霊界に帰ってしまった。

「これ、絶対雷の精霊王が仕組んだことと思うんだけど」

「そうなるだろうな。精霊王は、戦闘に勝った相手に契約をすすめるからな」

財宝の間が開く。

財宝は、1つの赤く輝く大きなルビーだった。

「魂のルビー。聖帝国にいる、神族の皇族の心臓をくり抜いてできる、世界三大秘宝の一つか」

「世界三大秘宝!?うえっ、値段高そう」

「大金貨500万枚はいくだろうな」

「ひえー。流石に値段が値段すぎて、俺いらないっす」

恋次は、あまりの値段にぶんぶんと顔を横に振った。

「大金貨500万枚程度、屋敷の家財を売ればすぐにできる。いらん」

「じゃあ、これは俺がもらっておこう。血の帝国でオークションにかける」

「うわー。きっと、ブラッディ・ネイあたりが高額で競り落としそうだね」

「かもな。それにしても女神オリガか。今度から気をつけよう。白哉も気をつけてくれ」

「気をつけたところで、焼け石に水かもしれぬが、ルキアに他者に憑依されぬよう護符でも作ってもらおう」

「そうしてくれ。恋次君の分も頼む」

「分かった」

こうして一行は、70階層の未踏破Sダンジョンをクリアした。


後日、オークションに例の魂のルビーが出された。

出品者は浮竹ということで、ブラッディ・ネイが大金貨600万枚で競り落としていった。

「やっぱりな。ブラッディ・ネイが競り落とすと思ったんだ」

翌日には、魂のルビーを加工した髪飾りをつけて、ブラッディ・ネイは古城を訪れた。

「見て見て兄様。ボクにぴったりでしょう!」

「はいはい、似合ってる」

「嬉しい兄様、ボクとバカンスの旅に出ない?」

「出ない」

「なんでさー。こんなひげもじゃなんて放置して、ボクの後宮で寵姫たちと遊ぼうよ」

「100万年後にな」

「兄様のけち!でもそこがまたいい・・・ツンデレな兄様、ボクは大好きだよ」

ちゅっと、ほっぺにキスされて、浮竹はハリセンで実の妹の頭をはたいた。

「酷い、兄様!」

「ブラッディ・ネイ?僕の浮竹に手を出すなら、その魂、食っても・・・・」

「ボク、用事を思い出したので帰るね!」

魔神の京楽が本気を出す前に、ブラッディ・ネイは逃げていった。

「京楽、ほっぺにキスくらいで」

「嫌なものは嫌なの。僕の浮竹には誰も触れて欲しくない」

「お前の俺への執着心も、相当なものだな」

「そうだよ。だから、僕は魂を喰らいまくって邪神にならない。君への執着だけで、魔神であり続けれる」

魔神の上位存在は邪神だ。数十万という魂を喰らった魔神が、辿り着く先の道。それが邪神。

邪神は、神々の敵である。

滅ぼされたり、封印された邪神の数は意外と多い。

「女神オリガか・・・・」

女神アルテナの末妹。はたして、またくるのだろうか。

浮竹と京楽の悩みはつきないが、少なくとも暇を持て余して休眠することはないだろう。

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「姉さま」

「なあに、オリガ」

「あの魔神に、無理やり数十万の魂を食わせて、いっそ邪神にしてしまえば?そうすれば、あの魔神は他の神々に滅ぼされる」

「そんなことが簡単にできるのなら、すでにやっているわ」

女神アルテナは、新しく藍染の寵姫の中から選んだ美女の魂を抜き去って、器として使ってる美女の胸を抑えた。

「あの魔神は、魂を喰らうでしょう。しかも、あろうことか神々の魂を!普通の魔神は、神の魂など喰えないというのに!」

忌々しそうに、女神アルテナは美しい美貌を歪めて、頭を掻きむしった。

「あの魔神のせいで、あの始祖に手を出せない。ええい、口惜しい」

「あの魔神は怖いわ」

ぶるぶると、女神オリガが震えた。

「大丈夫よ、オリガ。あなたには上位神である創造神イクシードがいるじゃない」

「イクシードは、この世界に手を出すなら、私を愛することを止めると言っていたわ」

「そんなの、ただの口約束よ。ようは、ばれなければいいのよ。あなた・・・・」

「なんだい、女神アルテナ」

藍染は、ゆっくりと視線をアルテナに向けた。

「このオリガとの間に子をもうけて」

「何を言うの、姉さま!私にはイクシードがいるのよ!嫌よ、嫌よ!始祖魔族如きに汚されるなんて!いやあああああああああ!!!!!!」

オリガの悲鳴は、魔国アルカンシェルにある、藍染の城中に響き渡るのだった。




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始祖なる者、ヴァンパイアマスター45

東洋の浮竹と京楽が去って、1か月が経とうとしていた。

「東洋の俺たち、元気でやってるかな」

「大丈夫じゃない?」

「帰りにマンドレイクもたせておきたかった」

浮竹は、マンドレイクが大好きだ。

中庭で栽培して、猫の魔女乱菊に売るくらいに。この前は、その収穫を東洋の浮竹と京楽にも手伝ってもらった。

「さて、今日は何をしよう?」

毎日が暇で暇で仕方ない。

悠久を生きる長命種族にとって、何もない毎日はとてもつまらないものだ。

「血の帝国に行ってみない?」

「そうだな。たまには愚妹の顔でも見に行くか」

こうして、浮竹と京楽は血の帝国に向かった。


「あ、兄様いいところに!」

ブラッディ・ネイが浮竹に近寄る。

「ひげもじゃは魔神になったんだっけ」

式で京楽の存在は魔神となったと前々から知らせていたお陰で、ブラッディ・ネイを初めとして、白夜、恋次、ルキア、一護、冬獅郎も、京楽に普通に接してくれた。

「兄様、ところで何しにきたの」

「お前の顔を見に来たとでもいえば、喜ぶか?」

「兄様がボクに会いに!愛を感じるね!」

ブラッディ・ネイはその場で浮竹を押し倒していた。

「ブラッディ・ネイ。それ以上するなら、僕が黙っていないよ?」

にーっこり笑う魔神に、ブラッディ・ネイは薄ら寒いものを感じて、浮竹から離れた。

「ちぇっ、ひげもじゃめ。ちょっと力が強くなったからっていい気になって。そのうち、兄様を奪い返してやるんだから!」

「噂で、血の帝国にもS級ダンジョンができたと聞いたんだが」

「ああ、確かにできたね。人間に開放していないから、まだほとんど踏破されてないよ」

それに浮竹が喜んだ。

「つまりは、宝は手付かずか」

「そうなるね」

京楽の言葉に、浮竹は顔を輝かせた。

「京楽、今すぐいこう。今すぐ!」

「ちょっと待ってよ、浮竹」

手を引っ張って、今すぐ出発しそうな浮竹に、京楽が待てと言う。

「白哉クン、恋次クン。良ければ、一緒にいかない?」

「何故だ。兄は、S級ダンジョンが好きなのであろう。わざわざ私を呼ぶ必要があるのか?」

「白哉さんが行くなら俺も行くっすよ!」

恋次はのりのりだった。

「いやぁ、僕と浮竹だけじゃあっという間にS級ダンジョン攻略しちゃうからね。たまには知人も誘って、賑やかにいこうと」

「つまり、足手まといが必要ということか」

「いや、全然そうじゃないんだよ。本当に、賑やかにいきたくてだね」

「よかろう。私とて皇族王のヴァンパイアロード。力ならそれなりにある」

白哉は、腰に下げた千本桜を撫でる。

「そうですよ!白哉さんは、始祖の竜帝である俺を倒すくらい強いんすから!」

「それ、誇れるところなのか、恋次君」

「あはははは・・・・・」

「そういえば恋次クン、南の帝国の皇帝はどうしたの?」

「ああ、ずっと毒殺とか暗殺ばっかされるんでやめました。今の俺は、白哉さんの守護騎士とダンジョンでたまにバイトしてるくらいっすかね」

恋次の爆弾発言に、浮竹も京楽も驚いていた。

「皇帝って、そんな簡単にやめれるものなの?」

「いや、俺の場合皇帝とは名ばかりで、実質政治を行ってるのは大臣たちだし、皇帝の座を狙っても毒殺や暗殺が後を絶たないし、やめちゃいました」

「まぁ、恋次君がそれでいいなら、いいんじゃないか。京楽、あまりつっこむな。恋次君がまいってしまうだろう」

「うーん。まぁ、好きな相手の傍にいたいのは分かるけど」

恋次は、白哉が好きだった。

何度好きといっても振り向いてもらえないが、守護騎士の座をゲットして、常に白哉の傍にいた。

「まぁ、4人分の食料と水を用意していこうか」

京楽の言葉に、白哉がアイテムポケットの中に枕を入れた。

「白哉さん、枕が変わると眠れないタイプなんすよ」

「そうなのか。始めて知ったぞ」

影でこそこそと、浮竹と恋次はやりとりをする。

「あ、俺もこれ入れとこう」

いつの日だったか、確か薔薇祭りで景品であたったブラッディ・ネイの抱き枕が嫌なので、隣の白哉のものに変えてくれと言って変えてもらい、それを浮竹が恋次に与えたのだ。

「その抱き枕、まだ愛用してるのか」

「これがないと、俺なかなか寝れないすよ」

「恋次・・・・」

白哉の声が冷たい。

「わああああ、白哉さん、昔許可もらったでしょう!それがこれっす」

「仕方ない。持っていくなら持っていけ」

白哉は知ったことじゃないとばかりに、恋次に背を向けた。

「わあ、白哉さんまってください!」

「なんか、初々しいね」

「そうだな。とりあえず準備はできたし、S級ダンジョンに出発するか」

竜化した恋次の背に乗って、1日かけてそのまだ踏破されていないS級ダンジョンにやってきた。

「これまたでかいな」

ぽっかりとあいた地下迷宮の入り口に、浮竹がこんなダンジョンを見るのは久しぶりだと、笑っていた。

大抵人の手が入り、ダンジョンの入り口は簡単に入れるようになっていた。

「恋次君、このままドラゴンの体で奥までいってくれないか」

「分かりました」

恋次はドラゴンの体でダンジョン第一階層に辿り着いた。

「人の手が入ってないってだけあって、自然のままっすね」

「恋次、後ろだ。数はおよそ20。前の敵は、私が迎え撃つ!」

ケルベロスの群れがでてきた。恋次は竜化を解いて人型になると、ドラゴンブレスを吐いた。ケルベロスは炎属性なので、氷のブレスを吐いた。

「散れ、千本桜・・・」

白哉は、もっていた刀を地面に突き刺した。

千本桜という名のその刀は、桜色の血の花びらを数億と生み出して、ケルベロスを屠っていった。

「白哉の技は、いつ見ても美しいな」

「ブラッディ・ネイの薔薇魔法には及ばぬが、血の帝国の中で3本の指に入るほど美しい技だと思っている」

何気に自信満々だった。

「じゃあ、この調子で最下層目指して進もう」

10階層にいくと、ボスとしてゴーレムがいた。ミスリル製で、魔法や武器が効きにくい。

「散れ、千本桜」

「白哉、ミスリル製だぞ!」

そんなことはどうでもよいのだとばかりに、白哉は千本桜の刃でゴーレムを切り刻んでいく。ミスリル製のはずなのに、千本桜の刃は効いていた。

「俺も負けないっす」

炎のドラゴンブレスを吐いて、恋次はミスリルの足を溶かして、地面と張り付かせた。

「なんか、今回は俺らの出番がなさそうだな」

「うーん。僕もちょっと攻撃してくる」

「あ、京楽!」

京楽は、ミスリル製のゴーレムを、魔剣ラグナロクで一刀両断していた。

「さすがは魔神。その力には恐れ入る」

白哉は素直に褒め称えた。

「いやぁ、それほどでもないよ」

「ドラゴンブレス!」

恋次は、わざと京楽に炎のブレスを浴びせた。無論、京楽はケロリとしていたが。

「もっと、白哉さんのかっこいいシーン見たかったのに!」

恋次は、怒るポイントがずれていた。

「分かったよ。今回は僕らはあくまでサポートに回るから。二人で敵をどんどんやっつけちゃって」

「いや、下層では私と恋次だけの力では足りぬ。その時は助力を頼む」

「分かったぞ、白哉。任せておけ」

ちなみに倒したゴーレムは、ミスリル製であるのでアイテムポケットに入れて持ち帰ることにした。

財宝の間が開く。

手つかずのせいか、金銀財宝の量がおおかった。

「たったこれだけか」

大金貨3万枚はくだらないであろう財宝に、白哉は不満気であった。

皇族王として、皇族の中でもブラッディ・ネイに次ぐ力を持っている白哉は、大金持ちだった。

「お、宝箱!」

「ああ、浮竹、白哉クンと恋次クンの前だよ!」

「それでも俺はいく!暗いよ~怖いよ~狭いよ~息苦しいよ~~~」

「京楽、あれは何をしているのだ」

上半身をミミック食われて、下半身でジタバタしている浮竹を、白哉は冷めた瞳で見ていた。

「ああ、白哉クンは見るの初めてだったね。浮竹はミミックに噛まれるのが好きでね。ああやって、毎度ミミックに食われるんだ」

「そうか。人の趣味にどうこう言えたものでもないが、バカだな」

「ばかいうな~白哉のあほーーー」

ミミックに食われたまま、声は届いていたので、浮竹が悪態をつく。

「散れ、千本桜・・・・」

ミミックから助けられることなく、ミミックごと浮竹は数億の血の花びらに包まれた。

「ちょっと、白哉クン!」

「心配ない。あれは始祖だ。この程度の攻撃、かすり傷にもならぬだろう」

浮竹は、血をだらだら流していた。

「どこが、かすり傷にもならんだ。本気で攻撃したな!?」

傷をすぐに再生していきながら、浮竹はぷんぷん怒りだした。

「もう、今日は白哉と口きいてやんない!」

「そんな子供みたいな拗ね方するんじゃないの、浮竹」

「ふーんだ」

「浮竹、ほら、魔法書が2冊もドロップされてるよ」

「ほんとか!」

怒っていた浮竹はどこにいったのか、2冊も魔法書がドロップされて、浮竹は素直に喜んだ。

「兄が欲しいならば、今度我が屋敷で収納されている魔法書を、やらんでもない」

「本当か、白哉!」

キラキラ目を輝かせる浮竹に、恋次も京楽も、始祖ってちょろいなって思っていた。

「やった、白哉のコレクションがもらえるなんて、俺はついている!」

「白哉クンって、魔法書に興味あったの?」

「祖父が集めていたものだ。私も一度は目を通して覚えた魔法だ。もう魔法書は必要ないからな」

こそこそと、京楽が白哉に耳打ちした。

「ちなみに攻撃魔法?民間魔法?」

「どれも民間魔法だ。洗い物が自動的に綺麗になる魔法やら、髪を整えてくれる魔法やら、そこそこ使えるものばかりだ」

「そうか。ならよかった」

「何がだ?」

「いや、浮竹が攻撃魔法覚えたら、実験台に僕を使うからね」

「なるほど」

「おおい、次の階層にいくぞ?」

「白哉さんも京楽さんも早く!」

11階層から20階層までは海だった。20階層のボスはクラーケンで、巨大なイカのモンスターだった。

「散れ、千本桜、雷」

「サンダーブレス!」

白哉と恋次攻撃で、クラーケンが水面に顔を出す。

「サンダージャベリン」

京楽が、魔神の力を解いて雷の槍を放つ。

その一撃でクラーケンはこんがりと焼けて、いい匂いがしてきた。

「そういえば、昼食まだだったな。このクラーケンという魔物は食えるそうだぞ」

適当な大きさに斬り分けて、炎であぶったものを皆口にした。

「うん、ちゃんとイカ焼きの味がする」

「うまいね、これ」

「意外と美味だな」

「うまいっすよこれ」

4人はそれぞれの感想を口ににして、クラーケンを食べていく。特に元が竜なだけあって、恋次の食いっぷりは半端なく、一人でクラーケンの3分の1を平らげてしまった。

「こんなに食べたの、久しぶりっす。いつも人間の食事の作法に合わせてたから」

「じゃあ、この残りのクラーケンを持って帰って、食べるといいよ」

「え、いいんすか?もらえるならもらいますよ」

「浮竹も白哉クンもいいよね?」

「いいんじゃないか」

「好きなようにするといい」

そうやって、クラーケンを倒したことで海の波が引いていき、財宝の間が現れる。

「お、魔法書がいっぱいだ!」

キラキラした目で、魔法書や魔道具、古代の遺物なんかを浮竹はアイテムポケットに入れていった。

金銀財宝は無視である。

「この金銀財宝、いただいでもいいっすかね?」

恋次はドラゴンであるだけに、金銀財宝に弱かった。

「好きなだけもっていくといい」

「私はいらぬ。恋次の好きなようにせよ」

「ひゃほーーーーい!!」

恋次は、金銀財宝にダイブして、アイテムポケットに金銀財宝を直していった。

次の階層も海だった。

「ららら~~~ららら~~~~~~」

「セイレーンと人魚だ!気をつけろ、歌声を聞いた男を惑わせて食うんだ!」

セイレーンと人魚の歌声に反応してしまったのは、白哉だけであった。

「そういえば、最近魔物研究学会で発表されてたけど、同性愛者の男には魅了の歌声は通じないそうだよ」

「なるほど、だから・・・・・って、嬉しくないぞ」

「俺は白哉さんなんだから好きなんだ。他の同性はどうでもいい」

ふらふらとセイレーンと人魚の元に歩いて行った白哉に、浮竹がその耳元で爆竹を鳴らす音という民間魔法を使い、白哉を正気に戻した。

「白哉!」

「問題ない。散れ、千本桜」

「ぎゅいいいいいい」

「いやあああああああ」

セイレーンと人魚の群れは、白哉の手で駆逐された。

21階層~30階層も海だった。

30階層のボスがリヴァイアサン。海のドラゴンだった。

竜族であるが、正気ではないようで、恋次の呼びかけにも答えない。

浮竹は炎の精霊王を呼び出し、海水ごとリヴァイアサンを干からびさせた。

「ぎいいいいい」

「リヴァイアサンか。海の気高きドラゴンがダンジョンのボスなど。哀れな」

魔神である京楽に魂を食われる前に、炎の精霊王はリヴァイアサンの魂を手に、精霊界に戻っていった。

「ああ、おいしそうだったのに、あの魂」

「京楽、ゲテモノ食いになるからやめとけ」

「でも、クラーケンの魂は食べちゃったよ」

「もう手遅れだったか・・・・・」

「京楽さんて、魔神なんすよね?人間とかの魂食うんですね?」

「うん、そうだよ」

「俺と白哉さんは食わないでくださいね!」

「いやだなぁ、仲間を食うほど飢えていないよ。別に、魂なんて食わなくても、普通の食事でも生きていけるしね」

恋次はほっとして、水のなくなった海の砂の上に座りこんだ。

「俺、疲れました」

財宝の間が開き、ドラゴン素材の武器防具とアダマンタイト、ミスリル、ミスリル銀のインゴットがあった。

「皆、必要なものはもらっていけ」

「じゃあ、俺はこのミスリル銀のインゴットを。知り合いの古代ドワーフに、剣を作ってもらおう」

「他に欲しい者はいないか?いないなら、換金目的で俺がもらっていくが、いいな」

「兄の好きなようにするといい」

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター44

「東洋の俺と京楽は、何しにきたんだ?」

(ん、ちょっと用事があってね)

(うん、そうなんだ)

「詳しくは話せないのか?」

(キミたちを巻き込みたくないからね)

古城のダイニングルームで、東洋の浮竹と京楽は、西洋の京楽が入れてくれた紅茶を飲んでいた。

ちなみに、存在が魔神になってしまった西洋の京楽に、東洋の浮竹は本能的に怯えて、東洋の京楽の服の裾をずっと握っていた。

「そっちの浮竹を、随分怖がらせてしまっているようだね。でも僕は魔神。この存在はもう変えれないんだ、ごめんね」

(いや、ただ本能的に怖いだけだから・・・・)

話しかけられて、びくっとするものの、嫌われてはいないようなので、西洋の京楽は安堵する。

「京楽、その禍々しい魔力を少し抑えたらどうだ」

どうやら、西洋の京楽は、魔神としての力をダダ漏らしにしていたようで、西洋の浮竹の言葉を受けて、魔力を小さくした。

「うん、いい感じだ。どうだ、東洋の俺?」

(ああ、うん。大分ましになった)

東洋の京楽の服の袖を離して、東洋の浮竹はまだ西洋の京楽が怖いようだが、笑顔を見せるようになってくれた。

「お茶会をしようか」

(そんな気分じゃないんだけどね)

「何事にもリラックスは必要だ」

(うん、春水、こっちの俺の言葉に甘えよう)

「京楽、紅茶のお替わりを。ついでに焼いたクッキーが残っていただろう。あれを茶菓子にもってきてくれ」

「ああ、わかったよ」

東洋の浮竹は、魔神となっても、あの禍々しさを持っていても、あくまで西洋の京楽を、血族でありただ一人の伴侶して扱う西洋の浮竹に、ある意味驚いていた。

紅茶のお替わりを飲んで、クッキーを口にして、東洋の浮竹と京楽はすっかりその場の空気に馴染んでいた。

「それで、お前たちの敵は・・・まぁいい。せっかくきたんだ。魔物討伐の依頼が舞い込んでいてな。古代種のヒドラなんだそうだ。一緒に、討伐してみないか?」

(いいのか、東洋の俺)

「ああ、構わない。ストレスの発散くらいには、なるだろう」

(十四郎、いいの?)

(敵はそうそう逃げたりしない。別にいいだろう)

「じゃあ、話は決まったから、出発だね」

西洋の京楽は、何か巨大な絨毯を床に広げた。

「これには、永続的な魔法がかかっていてね。魔力がない人間でも、空を飛べるんだよ」

(うわぁ、本当だ。見ろ春水、絨毯が宙を浮かんでいる)

(変わった魔道具だね。いくらしたの)

「大金貨100枚」

(よくわからないけど、すごい大金なんだろうね)

「はした金だ」

西洋の浮竹のいう、はした金の相場が分からいので、東洋の二人はつっこみは入れなかった。

空飛ぶ絨毯に乗って、一向は依頼のあったモンスターを退治しに、山奥の寂れた廃村にやってきた。

廃村の奥には、ダンジョンがあって、そのダンジョンの入り口に、依頼書のモンスターはいた。

「古代種のヒドラ。弱手は光か炎だ」

(闇や影は効くのかい?)

「ああ、効くと思うぞ。弱点ではないが。ゴッドフェニックス!」

西洋の浮竹は、炎の最高位精霊フェニックスを呼び出すと、ヒドラに向かって放った。

「ぎゃおおおおお!」

ヒドラの首の一つが消滅する。

((燐光晦冥蛇毒!!))

東洋の二人は、それぞれ白蛇と黒蛇を出すと、毒で攻撃した。

「あ、だめだ、毒は!」

((へ?))

「あーあ。回復しちゃったよ」

西洋の京楽が、やらかしたとばかりに言う。

(毒を吸収するのか!)

(毒が効かないんだね!)

ヒドラのもげていた首が、再生していた。

「エターナルフェニックス!!!」

西洋の浮竹は、永遠の業火を纏う不死鳥を呼び出し、それをヒドラに向かって放つ。

「ぎゃおおおおお!!」

ヒドラの8つあった首のうち、3つが消しとんだ・

(西洋の俺、かっこいい・・・・)

東洋の浮竹は、声高々に高威力の魔法を連発する西洋の自分を見ていた。

「カイザーフェニックス!!」

またしても不死鳥が現れる。

(こ、これだ!!俺が見たかった始祖って言うのは!!)

目をキラキラさせる東洋の浮竹に、西洋の浮竹はもっとかっこいい姿を見せつけてやろうと、炎の精霊王を召還した。

「我が友。何用だ」

「あのヒドラを退治してくれ」

「あのような下等な魔物に我が手を下すまでもない」

そう言い残して、炎の精霊王は精霊界に帰ってしまった。

「ああああ!炎の精霊王め!」

西洋と東洋の京楽は、かっこつけようとした西洋の浮竹に呆れていた。

(ああ、もっとかっこいい姿が見れると思ったのに・・・・・)

東洋の浮竹は、しょんぼりしていた。

「東洋の俺と京楽も、攻撃していいぞ!」

(分かったよ)

(分かった)

(影流転蛇飛)

(光流転蛇飛)

それぞれ、影と水を模った巨大な蛇が現れて、ヒドラに巻き付いた。

((とどめを))

「「エターナルアイシクルワールド!!」」

西洋の浮竹と京楽は、それぞれ抑えていた魔力を解放して、力を合わせて氷の禁呪を使った。

パキパキと、ヒドラの体が凍てついて粉々に崩れていく。

(やった、倒せた!)

「クエスト達成だな。冒険者ギルドに報告して・・・・」

「なんだい!?まだ何かいるよ!」

(新しい敵かい?)

できたのは、真っ赤に燃え盛る鱗をもつ、巨大な竜族であった。

(わあ、ドラゴンだ!)

「なーにしてるのかな、恋次クン」

「その声は・・・・京楽さん?」

「恋次君、こんな廃村のダンジョンの入り口を守ったりして、何をしているんだ」

「浮竹さんもいるのか・・・・って、浮竹さんと京楽さんが二人!?」

「それはまぁ置いといて。この二人は俺たちの分身体みたいなものだ。それより、また、バイトか!」

浮竹がつっこみを入れた。

「あ、そうっす。この前のダンジョンで、浮竹さんと京楽さんを行かせてしまったから、ダンジョンマスターの古代エルフに、報酬の前借り大金貨3万枚のうち1万枚を返せっていわれて返して、足りない分をここの守護のバイトで賄ってたんす」

(こっちの世界の恋次くんはドラゴンなんだね?)

(俺たちの世界だと烏天狗だからな!)

「え、あ、そうっすか?なんかよくわからないけどどうも」

「いっそ、南の帝国に帰ったらどうだ?」

「それだけは嫌です。白哉さんの傍を離れたくない」

「愛しい者の傍を離れたくない・・・・その気持ち、分かるよ、恋次クン」

「京楽さん!」

感動している二人を放置して、西洋の浮竹と、東洋の浮竹と京楽は、開いてしまったダンジョンの入り口をみた。

「まだ作りかけのダンジョンか」

(すごい、なんか空間がうねってる)

「ダンジョンマスターの力だな。古代エルフか」

(うわ、風がすごい)

ダンジョンの入り口は、ぽっかり穴をあけた状態だった。

「まだ、そのダンジョンは完成してないんすよ。中に入ったら最後、どの空間に迷いこむのか分かないっすよ」

恋次の言葉に、東洋の浮竹と京楽はダンジョンの入り口から引き返してきた。

「面白い・・・・」

そう言って、なんと浮竹はダンジョンの入り口の穴に入ってしまった。

「浮竹!!!」

西洋の京楽の真上から、西洋の浮竹は降ってきた。

「重いんだけど」

「ここのダンジョンマスター、いい性格してるな。神に近い者はいらないって、俺を掴んで放り投げた」

「だから、重いって・・・・・・」

「京楽、このダンジョンが完成したら、一番乗りで攻略するぞ!」

「はぁ。分かったよ」

西洋の京楽は、東洋の浮竹を怖がらせないようにと、禍々しい魔力を潜めた。

(とりあえず、依頼は達成したでいいのか?)

(そうだね。恋次くんが敵じゃないとしたら、依頼は達成なんじゃない?)

「恋次君。俺たちと戦う意思はあるか?」

「神格を持った浮竹さんに、魔神の京楽さん相手じゃ、さすがの俺も負けると思うから、降参っす。ああ、またバイト料引かれる・・・・・」

(え?ドラゴンってバイトするのか?)

東洋の浮竹が、興味深々というようにドラゴン姿の恋次を見た。

「ドラゴンでも、バイトできますよ、この世界。ダンジョンのボスとか、けっこう時給がよくて俺はよくバイトして、白哉さんに貢いで、でも振り向いてもらえない・・・」

「恋次君、当たって砕けろだ!」

「いや、浮竹、砕けちゃだめでしょ!」

「とりあず、依頼はヒドラの駆除だったから、今度こそ冒険者ギルドに報告に行こう。東洋の俺たちは、目立つとまずいので、その空飛ぶ絨毯で先に古城に戻ってくれ」

(分かった)

(分かったよ)

東洋の浮竹と京楽は、一足先に古城に戻り、戦闘人形のメイドたちの許可を得て、夕食を作り始めた。

西洋の浮竹と京楽は、冒険者ギルドに行き、報告と報酬をもらって帰ってきた。

時間は夕方になっており、いい匂いがしてきて、西洋の浮竹と京楽はダイニングルームに来ていた。

(今日の夕食は、ボクらが作ったよ。ナポリタンだ)

(俺も手伝った。みんなで食べよう)

「うまいな。戦闘メイドが作るよりうまい」

(そりゃ、俺の春水の腕にかかれば、たとえマンドレイクでもうまい料理に早替わりだ)

「そういえば、またマンドレイクを収穫しなきゃいけないんだ。明日の朝、手伝ってくれるか?」

(いいけど、別に)

(俺は大丈夫だぞ)

「マンドレイクを抜くのって、腰が痛くなるよ?」

「この前は、腰痛を治す民間魔法をかけてやっただろう。あれで我慢しろ」

「はいはい」

ナポリタンをみんなで食べて、風呂に入り、それぞれ寝室とゲストルームに別れて寝た。

--------------------------------------------


「いい天気だな。絶賛のマンドレイク収穫日和だ!」

(ふあ~)

「東洋の俺、眠れなかったのか?」

(ううん。ちょっと、朝に弱いだけ)

「あ、それ分かるぞ。もっと寝たいのに、京楽のやつが起こしてくるんだ」

(そっちのボクも、十四郎の寝起きには苦労してるんだね)

「うん。僕の浮竹は、放置すると昼まで寝るから」

(昼まで!いくらなんでも寝すぎだよ!ボクなら、布団と毛布を引っぺがすね)

「浮竹は寝るの大好きだから。たまに昼まで寝かせることはあるけど、基本は9時起きだよ」

(9時。それならいいんだけど)

西洋の京楽は、ため息を漏らした。

「じゃあ、収穫するぞーー!」

(はーい)

(分かったよ)

「東洋の俺は右列から。東洋の京楽は左列から。俺と京楽は、中央からだ」

「ぎゃあああああ」

「ひいいいいい」

「人でなしいい」

「人殺しいいい」

叫びわめくマンドレイクを無視して、ひたすら収穫した。

「これが最後の一本だ」

「ふぎゃあああああ」

泣き叫ぶマンドレイクをひっこぬいて、その日の午前は終わった。

「ああ、これ報酬の金貨だ。4当分にしておいたから、受け取ってくれ。しばらくこっちにいるんだろう?」

(ああ、うん。ありがたくもらっておく。この世界の通貨もってきてなかったから)

(ボクも、もらっておくよ)

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ネヴァンはロッキングチェアに腰かけながら、血の帝国のことを思った。

クスクスと、ネヴァンは笑う。

京楽と浮竹。

その特異な性質をもつ二人のことを考えながら。



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始祖なる者、ヴァンパイアマスター43

魔神となった京楽は、以前の京楽とあまり変化はなかった。

ただ、身にまとう膨大な魔力と、魔神であるせいで、最初は浮竹を驚かせてしまったが、京楽が以前と変わらいと知って、浮竹の態度も依然と同じで変わっていなかった。

「それにしても、勇者の称号をもらったと思ったら、次に魔神になるなんてな」

「魔神だからといって、特別何かをしなければいけないわけじゃないからね」

「お前は忙しいやつだな」

「だって、魔神になったのも、君を守りたい一心でなったものだから」

「普通、伴侶を守りたいといって、魔神になるなど、聞いたことがない」

「僕は後悔してないよ。君を守る力を手に入れた。魔神となったことで、更に魔力もあがった。だから、後悔はしていない」

京楽は、まるで自ら望んで魔神になった気がした。

「昔は俺がお前を守っていたのにな。お前は再覚醒するわ、魔神になるわでややこしい。今じゃ、俺がお前に守られている」

「元々、血族は主を守るために存在する。僕は、君を守れるなら魔神だろうと邪神だろうと、なんにでもなってやる」

浮竹は、京楽に抱きしめられていた。

「新しいS級ダンジョンが見つかったんだ。魔神であるお前の力を確認するついで、踏破するのはどうだ?」

「いいね。さっそく行こうか」

京楽は乗り気だった。

浮竹と京楽は、二人分の水と食料を用意して、その新しいS級ダンジョンに向かった。

一番近い町まで空間転移で移動し、そこから馬車で3日もかかる僻地にあった。

新発見されたばかりなので、他のSランク冒険者がちらほら見えた。

ざわざわと、他のSランク冒険者に騒がれた。未踏破のS級ダンジョンを何度も攻略した、ダンジョン荒らしのSランク冒険者だと言われた。

何度同じダンジョンを踏破するのも勝手だし、そもそもダンジョンは攻略するためにあるのだ。

冒険者が寄り付かなくなったダンジョンでは、間引きする者が現れず、モンスターの異常繁殖があってスタンピードという、ダンジョンからモンスターが溢れかえり、近くの村や町を襲うことがある。

なので、ダンジョンには定期的に冒険者が入るように、異常繁殖したモンスターの討伐依頼が出て、報酬金をはずんでもらえたりするので、冒険者が全く立ち入らないダンジョンはなかった。

「あれ、Sランク冒険者の浮竹と京楽じゃないか」

「ああ、ガイア王国一のSランク冒険者で、ドラゴンダンジョンも突破したという噂のやつらか」

他の冒険者から見ると、浮竹はエルフ魔法使い、京楽はハーフエルフの魔剣士に見えた。

元は剣士の見た目だったのだが、再覚醒してから魔法を使えるようになったので、魔剣士に変えておいたのだ。

「まるで、僕たち見せ物だね」

「気にするな。行くぞ」

浮竹は、S級ダンジョンに入ろうとする。

それを、他の5人のSランク冒険者が阻んだ。

「おっと、先に俺らが踏破する。お前らは、大人しく帰りな」

「ダンジョンは自由に攻略できる。お前たちにその権限はない」

先に行こうとする浮竹の肩を、人間の弓戦士が掴んだ。

「おや、動いてもいいのかい?エルフの魔法使いといっても、しょせん魔法使い。こちらの風のヒューイにかかれば・・・・・」

京楽は、瞳を真紅にして、ちゃきっと魔剣を抜いて、すぐに元に戻した。

「ぎゃああああ、服がああああ!!」

「うわああ、なんだ!?」

「一体どうなってるんだ!」

5人のSランク冒険者は、武器防具を破壊されて、パンツ一丁になっていた。一人、女性が混じっていたので、女性の衣服には手を出さなかったが、武器と防具は破壊した。

「お前たちのしわざか!」

5人パーティーのリーダーが、パンツ一丁のまま、浮竹に殴りにかかる。

「ファイア」

「あちーーー!!あちあち、俺の自慢の赤い髪が!」

「毛根が死滅するまで焼いておいたから」

京楽ににーっこりと微笑まれて、Sランク冒険者のパーティーはへなへなと力尽きた。

「なんだよ・・・あいつ、魔神じゃねーか!」

分かる者は分かるようで、聖職者の青年は、パンツ一丁だが、神に祈った。

「ああ、神よ、あの忌まわき魔神に罰を!」

「へぇ、僕に罰を。じゃあ、僕が君に罰を与えても平気だね?」

「へ?」

「ファアイサークル」

「あちちちち、あちゃーーーー!!」

聖職者の青年は、頭を燃やされて毛根が死滅していた。

「毛根まで死なせておいたから、今度からはハゲのままでいるか、かつらでもかぶりなよ」

Sランク冒険者の5人は、「ギルドに訴えてやる」と言って逃げていった。

それを、他のSランク冒険者が見ていたが、浮竹と京楽は気にせずダンジョンに入っていった。

1階層。

見るからに怪しい宝箱があった。

「宝箱だ!」

「はいはい、ミミックだね」

「暗いよ怖いよ狭いよ息苦しいよ~~~」

上半身をばたばたさせて、浮竹はもがいていた。

「よいしょっと」

京楽は浮竹を助け出すと、ミミックにとどめをさす。

「ぎゅいいいい」

魔神の魔力吸って、銀色から刀身を真紅に染め上げた、元ミスリル銀の魔剣は、完全なる魔剣になっていた。

「お、魔法書。らっきー」

浮竹は魔法書をアイテムポケットに入れた。

「それにしても、その魔剣随分禍々しくなったな」

「そうだね。僕が使っているせいだろうね」

「魔剣ラグナロク。元々その魔剣は、そう呼ばれていたが、力をなくしていた。魔剣ラグナロクが名前だ。京楽、その魔剣の名を呼べば、離れていても召還できるだろう」

「へえ、そんな魔剣なんだ。魔剣ラグナロクだね。覚えておくよ」

二人は、敵を倒しながら宝箱を見つけては、浮竹がかじられていた。

2階層にくると、ミミックに齧られている他のSランク冒険者と鉢合わせた。

「助けてくれ!ミミックに仲間が!このままじゃあ、ミミックごと破壊するしかない!仲間も危険だ!」

助けを求めてくる冒険者に、浮竹はそのミミックにかまれていた冒険者のけつを蹴った。

「うわああああ!?」

驚いた冒険者は顔を更にミミックに近づけさせて、ミミックはおえっとなって冒険者を吐き出した。

「ミミックにかじられた時は、体をミミックの奥までくいこませると、ミミックはおえっとなって吐き出すから、吐き出した後のミミックを退治して、ドロップしたアイテムを回収するといい」

そう言って、浮竹はミミックを倒してしまった。

後に出てきた宝者は、ミスリルのインゴットだった。

「これは、俺たちのものだぞ!」

「そうだそうだ!後からやってきたくせに、俺たちの宝をとろうとするな!」

ミスリルのインゴットを前にした醜い人間の争いに、浮竹も京楽も辟易しながら何も言わずに去って行った。

「なぁ、京楽」

「なんだい?」

「人間って醜いな。特に金が絡むと」

「まぁ、さっきの奴らも命がけで冒険者やってるんだろうし、仕方ないよ。僕らみたいに踏破はできないだろうし」

10階層にいくと、ボスは倒れたばかりで、財宝の間が開いていた。

ボスの近くに死体が二つ。

相打ちしたのだろう。

財宝の間にも、死体が二つ転がっていた。

財宝に埋もれるように死んでいた男女の遺体を見て、浮竹はせめて安らかに眠れるようにと、苦手な聖属性の魔法を使って、死体を弔うと、その魂は京楽に吸い込まれていった。

「お前が魔神なの、忘れてた。魔神は死者の魂を食う」

「僕はそんなの食べたくないよ」

すると、吸い込まれていった魂がぽぅっと浮き出て、天に昇っていった。

「どうやら、お前の意思でどうにかできるようだな」

「ならありがたいね」

10階層の宝は放置して、20階層までやってきた。

出てきたのは、炎の精霊サラマンダー。

精霊がボスなのは珍しく、浮竹と京楽は協力しあい、氷の魔法を使って仕留めた。

「我、汝の精霊とならん」

倒したことで、強制契約が成立し、浮竹と京楽がサラマンダーを使役できるようになっていた。

浮竹はともかく、京楽は精霊を使役するのは初めてのようで、用もないのに何度もサラマンダーを呼び出して、怒られていた。

財宝の間にいくと、金銀財宝の他に古代の魔導書が10冊、後ミミックの宝箱があった。

「宝箱!」

キラキラ目を輝かせて、浮竹は宝箱をあける。

やっぱりミミックで、浮竹はかじられていた。

「怖いよ暗いよ狭いよ息苦しいよ~~~」

「はいはい」

京楽が助け出すと、浮竹は京楽の魔剣を手に、ミミックを倒してしまった。

「ふむ。切れ味がすごいことになってるな」

浮竹は、魔剣ラグナロクを京楽に返した。

ミミックを倒した後には、古代の魔道具が出現した。

「何々・・・・ドラゴン化する魔道具。ふむ、いらないな」

そうは言いつつも、魔道具屋で高く売れるので、アイテムポケットにしまいこむ。

30階層、40階層と進み、1日で50階層にまできていた。

ボスがレッドドラゴンの群れだった。

「京楽、お前ひとりで倒してみろ」

「お安いごようだよ」

京楽は、魔剣ラグナロクを手に、ドラゴンの炎のブレスを弾き、首を一刀両断してしまった。

「ぎゃおおおおおお!!」

「ぐるるるるる!」

襲いかかってくるレッドドラゴンを、すぱすぱと切っていく。

魔神になっただけあって、強すぎた。

もはや、ドラゴンさえも雑魚だ。

それは浮竹にも同じことだったが、京楽の実力がちょっと知れて、浮竹は嬉しそうだった。

「お前を血族にした頃は、こんな対等の力関係になれるとは思っていなかった」

「僕も、君を守れるくらいの存在になれるとは思ってなかったよ」

「強くなったな、京楽」

「うん」

「魔神であるが、今後も俺の血族として縛られてくれ。俺の血族である限り、お前が魔神から邪神になることはない。邪神になったら、神々に滅ぼされるからな」

「魔神のままでいいよ。邪神になんてなりたくない」

「ああ、お前はそのままでいい」

その日は、50階層の財宝の間で眠った。テントを出して、布団をしいて毛布をかぶって寝た。
ちなみに夕飯は、ドラゴンステーキだった。

ポチには、ドラゴンステーキを、劣化防止の魔法をかけて、1週間分出しておいたので安心だった。

次の日は、最後の90階層までやってきた。

ボスは真竜の、竜族であった。というか、恋次だった。

「またお前か!またバイトか!」

浮竹がつっこんでいた。

「いやあ、すみません。またドラゴンブレス吐いて、白哉さんの服ぼろぼろにしちまって・・・
金が緊急で必要になって、ダンジョンマスターの古代エルフから、前借りで大金貨3万枚かりちまって」

カイザードラゴンであり、竜族の始祖である恋次は強い。

でも、仲間うちに争うのは嫌なので、浮竹は恋次に声をかける。

「降参か、京楽と一対一の対決か。どっちかを選べ」

「降参っす。なんなんですか、京楽さん、魔神になっちゃってるじゃないっすか」

「まぁ、深い事情があってねぇ」

「ただ、俺を守りたいと病んでいって、残酷になっていったら、魔神になっていただけだ」

「魔神ってそんな簡単になれるものでしたっけ」

「カルマを相当積んでいるらしいぞ、京楽は。そのせいで魔神になった」

「なるほど。まぁ、降参っすけど、流石に戦ってもいない相手に財宝はあげれないので、今回は諦めちゃくれないすかね」

「まぁ、京楽の力をためすためのダンジョン攻略だから、財宝は諦めよう」

「じゃあ、お礼にダンジョンマスターからもらった古代の魔導書10冊あげます」

「何、古代の魔法書だと!?」

浮竹は目を輝かせて、恋次から魔法書を10冊受け取ると、大事そうにアイテムポケットの中にしまいこんだ。

「じゃあ、一応踏破ということで」

「すんませんね、俺がラスボスで」

「まぁ、このダンジョンのお陰で、僕は自分の力がどれくらいか分かって満足だけどね」

「こいつ、レッドドラゴンをスパスパ包丁で切るかのように、魔剣で殺してた」

「ええ、あのレッドドラゴンの群れを・・・って、その魔剣めちゃくちゃ呪われてるじゃないっすか!」

恋次が、竜化を解いて人になると、京楽の腰にあった剣を見て驚いていた。

「ええ、これ呪われてるの?」

今度は、京楽が驚いた。

「禍々しいの、半端じゃいっすよ。多分、普通の人間が扱ったら、魂を徐々に食われていきますね」

浮竹は、朗らかに笑った。

「俺も使ってみたが、どうってことなかった。他の人間が使うはずもないし、京楽のための魔剣なんだから、それくらいの曰くつじゃないとな。借りにも魔神なんだし」

「はぁ・・・」

恋次は納得したのか分からないが、帰還用の空間転移の魔法陣を起動してくれた。

「じゃ、俺はまだバイトの期間が残ってるんでこれで」

「ああ。白哉にもう、ドラゴンブレス吐くんじゃないぞ」

「肝に命じておきます」

そのまま、浮竹と京楽は、S級ダンジョンから戻ると、3日かけて馬車で移動して最寄りの空間転移の魔法陣のある町までやってきた。

空間転移して、古城に近いアラルの町までくると、早速冒険者ギルドにいって、ドラゴンの素材やら、財宝の間で手に入れたミスリル銀の武器防具、魔道具、古代の遺物などを売り払う。

財宝だけで、大金貨9万枚になった。

素材の方は、レッドドラゴンの群れがあったので、大金貨3万5千枚だった。

最後の財宝を手に入れていれば、大金貨13万枚は固かっただろうが、残念ながら恋次を倒すわけにもいかないので、最後の財宝の間には行っていない。

それでも大金貨9万枚は、Sランク冒険者でもなかなか手に入れられない額だった。

浮竹は錬金術と古代の魔法書などに湯水の如く金を使うので、金はいくらあってもいい状態になっていた。

増える一方のように見えて、時折S級ダンジョンで金を稼がなけばやっていけないくらい、浮竹の金の使い方は荒かった。

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古城に戻ると、14歳くらいの少女がいた。

「あは、やっと帰ってきた」

「誰だ?」

「あたし、魔王グレス!ほんとに魔神なんだーーー嬉しい!」

魔王グレスは、銀色の瞳で食い入るように京楽を見ていた。

「浮竹、気をつけて。藍染の匂いがする」

「つまりは、敵か!」

ざっと身構える浮竹と京楽に、魔王グレスは笑って二人の間を通り抜けた。

「な!」

「く!」

ぶしゅわああと、二人は胸から血を噴き出していた。

それを再生させると、今度は背中を切られていた。

「京楽、目を閉じろ!目の前の魔王グレスは幻影だ。本体は別にある!」

京楽は目を閉じた。

禍々しい気配を察知して、そちらに向かって炎の魔法を放つ。

「ゴッドフェニックス!」

「きゃああ!くそ、魔神が!仲間にしようと思っていたけど、止めだ!」

炎で体の一部を燃やされて、魔王グレスは分身体を何体も作り出した。

「ワールドエンド」

世界の終末の魔法は、真っ暗な闇となって、浮竹と京楽以外の存在を無にしていく。

「なにさ!あたしの分身体じゃあ、相手にならないっていうの!」

「その通りだよ。おまけに君は浮竹を傷つけた。ねぇ、死んで?」

魔神である京楽は、その禍々しい魔力を一気に解き放つ。

「な、この魔力・・・女神の魂を食ったな!?」

「ええ、そうなの?ああ、そういえば前回の敵は女神リンデルとか言っていたね。知らずに、その魂を食べちゃったのかもね。だって僕、魔神だし」

「なんて悪食な魔神だ・・・うわああああ」

炎の魔法でいたぶられて、魔王グレスは姿を消した。

「浮竹、後ろだ!」

「分かっている!エターナルフェニックス!」

炎の不死鳥が姿を現して、魔王グレスを包み込む。

魔王グレスは体を焼かれながらも、逃げ出していた。

その場に分身体をいくつも作り出して。

「数が多いが、雑魚だ。任せていいか、京楽」

「うん、任せて!」

「エターナルアイシクルワールド!」

氷の禁呪で、魔王グレスの分身体全滅した。

「もう近くにはいないようだよ」

「打ちもらしたか。まぁいい。あの程度の魔王なら、次に攻めてきても大丈夫だろう」

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(邪毒蟒蛇!)

(廻流蟒蛇!)

二人の東洋の浮竹と京楽は、いきなり襲い掛かてきた、怪我をした少女に向かって技を放っていた。

「ばかな・・・もう一組の、浮竹と京楽だと。ふざげるな、あたしは魔王グレスだ!」

魔王グレスは、二人の技を受けて体にたくさんの罅をいれる。

((燐光晦冥蛇毒!!))

二人の東洋の浮竹と京楽の技を喰らい、魔王グレスは体を粉々にして滅びていく。

(どうやら、西洋のボクらの敵のようだね)

(勝手に倒してしまったけれど、大丈夫だっただろうか)

「ああ、君たちか」

念のために、魔王グレスを追いかけ来た西洋の京楽と出会った。

(君・・・また、力があがってるね?禍々しい気配がする)

「うん。僕、魔神になっちゃたんだ」

一方、東洋の浮竹は、東洋の京楽の背中に隠れてしまった。

(魔神・・・いきつくとこまで、いってしまったみたいだね)

「それより、魔王グレスがここにいたはずなんだけど」

(ああ、あの魔王とか名乗ってた少女は、俺たちが倒してしまった。まずかっただろうか?)

「ううん、そんなことないよ?」

「京楽、どうなって・・・・東洋の俺と京楽じゃないか!」

(ごめん、キミたちの敵、ボクらで倒しちゃた)

「いや、手間が省けて助かった。古城に来い。もてなしてやろう」

こうして、東洋の浮竹と京楽は、西洋の浮竹と京楽の敵を倒して、古城を訪れるのであった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター42

「どうして!どうして、血の帝国に入れないの!」

女神アルテナは叫んでいた。

分身体を血の帝国に向けた。

だが、結界が張られているように、女神アルテナの体は血の帝国に入ることができず、その存在を弾かれた。

「まさか、この前ブラッディ・ネイと会った時に、始祖浮竹かその血族の京楽が何かをしたというの?」

まさに、その通りであった。

浮竹が、二度と女神アルテナを血の帝国に入れないように、大金貨2万枚という大金を払って、猫の魔女乱菊に女神アルテナの存在が血の帝国に入れないようにする、小さな水晶玉の魔道具を作ってもらったのだ。

「く、こうなれば、私が直接、浮竹と京楽を叩いてやる!」

女神アルテナは、学習能力がなかった。

一度オリジナルに極めて近い分身体で、浮竹と京楽に敗れていた。

ただ自分には絶対の自信があるので、あの時はまぐれなのだと思い込んでいた。

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「浮竹、起きて。朝だよ?」

「んー。あと4時間・・・・」

「もう昼の12時だよ?あと4時間だと、夕方の4時になっちゃう」

京楽の揺り起こされて、浮竹は大きな欠伸をしてやっと起きた。

「朝食が昼食になっちゃたけど、食べるよね?」

「朝食と昼食、両方食う」

その細い体のどこに入るのか、浮竹は本当に朝食と昼食をペロリと平らげてしまった。

デザートの苺を口にしながら、京楽を見る。

「なぁ。お前、自分が魔神になりかけてるの、知っているか」

「は?」

京楽は頭にはてなマークを浮かべた。

浮竹は炎の精霊王を呼び出した。

「なん用だ、我が友よ」

「お前は、この京楽という存在を見て、どう思う?」

「ふむ。魔神だな。カルマを積みすぎて、存在が歪み魔神と化している」

炎の精霊王は、ごく当たり前のように出されてあった紅茶を飲んだ。

「魔人は人間がなるもの。それに比べて、魔神は上位存在がなるもの。魔神となって、我を忘れて暴走する前に、これを授けよう」

炎の精霊王は、金色の首飾りを出してきた。

「これを身に着けている限り、魔神となっても、我を忘れて暴走し、周囲を傷つけることはないだろう」

浮竹はその金色の首飾りを受け取って、京楽に付けさせた。

「では、我は帰る」

紅茶を飲みほして、炎の精霊王は精霊界に戻ってしまった。

「最近のお前は敵に残酷だ。おまけに神に匹敵する魔力を有している。俺の血族であるには変わりないが、その存在がヴァンパイアロードから魔神になりかけている。俺は、お前が魔神になってしまった後、どうなるのかが不安だ」

魔神。

それは神の中でも邪悪な存在がなるもの。もしくはカオスな存在か、カルマを背負いすぎた存在がなるもの。

今の京楽はカルマを背負いすぎて、魔神になりかけていた。

「僕が魔神に・・・でも、僕は今までの僕と基本は変わってないよ?」

「俺は魂に神格があって神になれるらしいが、お前は魔神になれる。二人して、怪物だな」

「僕は、浮竹を守れるなら、魔神にだってなんだってなってやる」

京楽は、金の首飾りを引きちぎった。

「京楽!」

「浮竹、本気で僕が魔神になったとして、君を傷つけると思ってるの!?」

京楽は怒っていた。

浮竹に怒りを抱くのは、数十年ぶりだった。

「違う、俺は!」

「こんな首飾りをつけさせて、僕が暴走するのが前提になってるじゃない!」

「京楽、話を聞け!」

「僕は間違ってない。浮竹、君を傷つけないし、暴走もしない!」

そう言って、京楽は古城から走り去ってしまった。

「京楽・・・・・・」

一人残された浮竹は、じわりと涙を浮かべながら、魔神になっていく京楽のいきつく先を心配していた。

京楽はすぐに戻ってくるものだと思っていた浮竹は、翌日になっても戻ってこない京楽を心配していた。

血の帝国にいき、京楽が来ていないか聞いてみたが、答えはNOだった。

それから3日経っても、京楽は戻ってこなかった。

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「そう。あなたは、魔神なのね。でも大丈夫。あなたの存在は、間違っていない」

女神アルテナの分身体に抱かれながら、怒りに支配されていた京楽は、目を閉じる。

「僕を取り込もうとしても無駄だよ、女神アルテナ。僕は浮竹のものだし、浮竹を傷つけるようなことはしない」

「あら、それは分からないじゃない。ほら、段々浮竹が憎くなってきたでしょう?」

憎悪を抱かせるお香を焚いていたが、京楽にはきいていなかった。

「さぁ、あなたは浮竹が憎くてたまらない」

「浮竹が憎い・・・・」

京楽は、そう装った。

そのほうが、この女神アルテナを絶望させられる。

「僕は、行くよ。浮竹を滅ぼしに」

「流石、魔神ね。さぁ、いってらっしゃい!あなたの雄姿を、私が見守っていてあげる」

女神アルテナの空間から解放された京楽は、古城にきていた。

古城に顔を出すと、浮竹が顔を輝かせて出てきた。

「どうしたんだ、京楽!3日も連絡をよこさず、勝手に消えたりして・・・」

京楽は、完全に魔神になっていた。

「お前、本当に京楽か?俺の血族の、京楽か?」

「ほほほほほ!その子は、もう私の言いなりよ。さぁ、京楽、憎き主である浮竹を屠るのよ!」

京楽は、血の鎌を作り出して、浮竹の胸を貫いた。

「ほほほほ!!」

貫いたふりをして、女神アルテナの胸を貫いていた。

「ほほほほ・・・・な、なぜ・・・・」

「僕が、浮竹を裏切るわけがないでしょ?魔神になっても、僕は僕だ。浮竹のことが大好きで、浮竹を愛している。僕は永遠に浮竹のもので、同時に永遠に浮竹は僕のものだ」

「おのれえええ」

女神アルテナは、貫かれた胸を再生させながら、血反吐を吐きながら、京楽を亡き者にしようと女神だけに許された聖剣エクスカリバーを手に、京楽を貫く。

「ぐふっ・・・・それだけかい?」

「何故!魔神なら、聖剣の力で滅ぶはず!」

「だから、僕は魔神であると同時に、浮竹の血族だって言ってるでしょ。君、バカなの?」

「ふざけるなあああ!!!魔神となった存在が、邪悪でないだと!聖剣で滅ぼせないだと!ふざけるなあああ!」

「ふざけてるのは、君の存在でしょ」

そう言って、京楽は血の剣を作り出して、女神アルテナの胸からへそにかけて、斬り裂いた。

「ああああああ!私の体が!」

女神アルテナは、血しぶきあげながら、京楽を呪う。

「女神の怒りを、思い知れ!」

けれど、自分より上位存在であった京楽には、通じなかった。

「何故!」

「それは、純粋に僕が君よりも強いから」

京楽は、血の刃で女神アルテナを袈裟懸に斬り裂いた。

女神アルテナは、分身体を保っていられなくなり、アストラル体になって逃げようとした。

「動くな」

その魔神の言葉だけで、女神アルテナのアストラル体は、動けなくなった。

「バカな!魔神如きの言葉で、拘束されるはずが!」

上位神なら分かるが、魔神になったばかりの京楽如きの言葉に束縛されるはずはないと、女神アルテナは叫んだ。

「やれ、お前たち!」

女神アルテナは、自分が流した血から使徒を召還すると、京楽ではなく浮竹を狙った。

浮竹はすぐに血のシールドを作りだして、それを防いだ。

「おのれえええ!どいつもこいつも、女神である私をこけにしやがって!!」

「もういいよ。滅んで?」

「いやあああああああああ」

京楽は、いつもの魔剣を手にしていた。

ミスリル銀でできたそれは、京楽の魔神としての血を吸収して、真っ赤な刃になっていた。

最初は右手の指を。次に左手の指を。

指の次は手を。

手の次は腕を。

細切れにされながら、女神アルテナは泣きわめいた。

「私が、私が悪かったわ!許してええええ」

「まだ、足が残っているよ?」

「京楽、魔神になったのはいいが、俺の言葉はちゃんと届いているか?」

「うん、大丈夫だよ、浮竹。僕は魔神になっちゃったけど、基本は以前の僕と、同じだよ」

「そうか。ならいいんだ」

浮竹は、安堵した。

「女神アルテナ。分身体であるとはいえ、そこまでダメージを受ければ、本体までダメージはいくだろう。京楽」

「うん、分かってる」

京楽は、浮竹の傍に寄り添って、お互いの手を握り合わせながら、魔力を練っていく。

「「エターナルフェニックス」」

神の寵児と、魔神はの魔力は、一体となって一つの不死鳥を呼び出す。

「シャオオオオオオ」

それは唸り声をあげて、女神アルテナのアストラル体を焼き尽くしいく。

「この私が、この私が、魔神と始祖ヴァンパイア如きにぃぃ!!」

それだけ言い残して、女神アルテナの分身体は、灰となって崩れ落ちた。

「僕は魔神だけど君の血族(モノ)だよ?」

その言葉に頷いて、浮竹に抱きしめられていた。

京楽も、浮竹を抱きしめ返す。

「僕、魔神になっちゃった」

「でも、以前の京楽のままだ」

「うん」

京楽は、浮竹に口づけていた。

「んっ」

「魔神となった僕の血、飲んでみる?」

「そうだな」

京楽の首に噛みついて血を啜る。魔神になった証のように、その血液は魔力を帯びていた。

「前より、甘くなった」

「僕の血を飲めるのは、世界で君一人だけだからね」

「お前の血は、いつでもうまい。お前が魔神になることに恐れを抱いていたが、杞憂だったようだ。それよりこの3日間何をしていた。まさか、女神アルテナを油断させるために、ずっと傍にいたとかいうんじゃないだろうな?」

「ぎくっ」

強張る京楽に、浮竹はにーっこりと笑った。

「この浮気者ーーー!!」

「違うから!確かに傍にはいたけど、手を出したわけじゃないし、出されていないから!」

浮竹の手からハリセンを奪い取り、抱きしめる。

じっと鳶色の瞳で見つめられて、浮竹は赤くなった。

「まぁ、お前がそう言うなら信じる」

3日の間にたまった洗濯ものや浮竹の食事の世話は、いつも通り戦闘人形のメイドがしていてくれたようで、京楽は安心する。

「3日間も君を放置していたけど、気が気でなかったよ。君が悲しんでいるんじゃないかと、思っていた。実質、喧嘩別れみたいなものだったしね」

「俺は、あのくらいじゃ・・・・」

「泣かせて、ごめんね?」

京楽が、浮竹を抱きしめる腕に力をこめる。

「何故、俺が泣いたと分かる」

「ん、予知夢かな。夢の中で、君が波を滲ませているシーンを見た」

「だったら、なんでさっさと戻ってこなかった。ああ、女神アルテナのせいか」

「ごめんね?」

「いや、いい。女神アルテナにも相当ダメージがいったはずだ。今頃、苦しみまくっているだろう」

京楽は、苦しんでいる女神アルテナを想像して、邪悪そうな笑みを浮かべる。

「こら、京楽、何を考えている」

「ん。ちょっと、女神アルテナのことをね?」

それに、浮竹が頬を膨らませる。

「今は俺がいるんだ。俺だけのことを考えろ」

「はいはい。僕のお姫様は、本当にツンデレなんだから」

「誰がツンデレだ!」

ぽかりと殴ってくる浮竹を再度抱きしめて、耳元で囁く。

「君が欲しい」

浮竹は真っ赤になったが、頷いた。

「先に風呂に入り、夕食をとってからだ」

「うん」

---------------------------------------------------------

「あ・・・・」

京楽に胸の先端を甘噛みされて、浮竹は声を漏らしていた。

「んんっ」

京楽が、今度は指でつまみあげながら、浮竹にディープキスをしてくる。

「んっ」

舌と舌を絡ませあいながら、浮竹はもぞもぞしていた。

すでに勃ちあがったものは、触れたくてうずうずしていた。

「あ!」

京楽に勃ちあがったものを舐められて、その快感と恥ずかしさに唇を噛んだ。

「んっ」

京楽の指が、口内に侵入してきた。

「噛むなら、僕の指を噛んで?」

その指に舌を這わせると、京楽はくすぐったそうにしていた。

「愛しているよ、十四郎」

「俺も愛している、春水」

お互い、体液でぐちゃぐちゃになるほど交じりあった。

「あああああ!!」

京楽の熱に引き裂かれて、浮竹は精液を自分の腹にぶちまけていた。

「ひあう!」

ごりっと、京楽のものが最奥を抉って、浮竹は射精しながら、オーガズムでいっていた。

「君の中にいっぱいあげるからね?ちゃんと、受け取ってね?」

「ああああ!!」

熱い飛沫を体の奥で感じて、浮竹は快感と満足感を味わっていた。

「もっとだ、もっと、春水、お前をくれ」

「淫乱な子だね?もっと僕が欲しいの?」

コクコクと、浮竹は頷いた。

「じゃあ、いっぱいあげる。君が嫌がっても、止めてあげない」

「ひああああ!!」

またゴリゴリと奥を侵入してきた熱が弾ける。

「んあっ」

浮竹は、京楽に吸血されていた。

「あああ・・・・・・」

オーガズムの海に巻き込まれて、浮竹は意識を飛ばしそうになるが、京楽の律動で我に返った。

「僕が満足するまでだよ。もっと注いであげるから、頑張って」

「いやあああ」

「嫌がっても、止めてあげないって言ったでしょ?」

「やあああ」

何度も京楽の子種を注がれて、浮竹は意識を失った。

「ごめんね、浮竹。今の僕は、愛しい相手に手加減できないみたいだよ」

すーすーと眠る浮竹の白い前髪をかきあげて、額に口づける。

ずっと音をたてて引き抜くと、京楽が浮竹の中に放った大量の精液が逆流してきた。

それをタオルで受け止めて、濡れたタオルで浮竹の体を拭ってあげて、京楽は浮竹の体内に出したものをかき出す。

「愛してるよ、十四郎。魔神になった僕を変わらず愛してくれて、ありがとう」

京楽の精液にも、魔力が宿っていた。

それを受け止めた浮竹も、また魔力の最大値があがるだろう。

交じりあうのは、愛を確かめあうだけではなく、お互いの力を均等にする役割も果たしていた。

―----------------------------------------------------


「あああああああ!!」

魔国アルカンシェルで、女神アルテナは 見えない消えることのない業火を身に浴びて、転げまわっていた。

「熱い、熱い、熱い!!」

「女神アルテナ!この薬を!」

藍染は、女神アルテナにエクリサーを与えた。

「ありがとう、愛しい人。あの京楽、魔神になったわ」

「魔神だと?」

「そう。カルマを積みすぎて、魔神になったの。利用しようとしたけど、返り討ちにあったわ」

「そうか。魔神か・・・・」

藍染は思案する。

「少し様子を見る必要があるな。誰か、魔王グレスを呼んで来い!」

呼ばれてやってきた魔王グレスは、藍染に不満そうな顔をした。

「もーなんなの。あたし、忙しいんですけどーー」

「魔神と、戦ってみたくはないかい?」

「魔神!?戦ってみたい!」

「そうか。じゃあ、今から教えるから、その場所に魔神がいる・・・・・・」

「魔神かー。楽しみだなぁ。魔王であるあたしより、強いのかしら」

目をキラキラさせて、魔王グレスは、魔神京楽の姿を水鏡に映されて、さらに興味をもつのであった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝

「東洋の俺、強くなったな?」

古城に遊びにきた東洋の二人を迎え入れて早々、西洋の浮竹がそんなことを言った。

(え、そうか?)

「ああ。魔力ではないが・・・・妖力というのか?人外の力が強くなっている」

(ああ、川姫の一件があったからかな)

水神の白蛇として覚醒した東洋の浮竹は、その一件以来、確実に力を増していた。

(ああ、これ俺が作ったチーズケーキ。よかったら、食べてくれ)

「東洋の浮竹って、どんどん料理が上手になるね」

(そりゃ、ボクの愛の指導によるものだからね)

「僕のところの浮竹も少しはましになたったけど、砂糖とタバスコを間違えるわで、まだ一人で調理させれないよ」

(砂糖とタバスコ・・・どうやったら、そんなの間違えるの?)

「僕に言われても分からないよ。まぁ、マンドレイクを生で料理にぶちこまなくなっただけ、ましかな」

「おい京楽たち、何をぶつぶつ言ってるんだ。お茶にするぞ」

「はいはい」

(君のところの十四郎も、ちゃんと君が指導すればまともなものが作れるようになるさ)

お茶は、ダージリンとアールグレイだった。

皇室御用達の茶葉で、最高級の一品だった。

(やっぱり、西洋の俺のところの紅茶はうまいな。本格的だし、茶葉をいいの使ってるからか、俺たちの世界の紅茶より美味い)

「よかったら、茶葉を持って帰るか?」

(え、いいのか!?)

「紅茶の茶葉くらい、いくらでもくれてやる」

(やったぁ。春水、これで向こうの世界に戻っても、美味しい紅茶が飲めるぞ)

(そうだね。良かったね、十四郎)

東洋の京楽に頭を撫でられて、東洋の浮竹は嬉しそうにしていた。

「ん、このチーズケーキというのうまいな」

(そうだろ!レシピをやるから、西洋の俺も作ってみたらいい)

チーズケーキを頬張りながら、二人の浮竹はそれぞれダージリンとアールグレイの紅茶を飲んで、和んでいた。

(それより、西洋の俺、心配があって相談事をしたいじゃないのか?)

「なんで分かるんだ?」

(そりゃ、西洋の俺は大親友だし、兄弟みたいなものだから)

言いながら、東洋の浮竹はかーっと赤くなった。

釣られて、西洋の浮竹も赤くななる。

「京楽には聞かれたくない。どうしうよう」

(お使いとか頼むのはどうだ?」

「お、それいいな。おい、そこの京楽たち、実が折り入って相談が・・・・」



こうして、西洋と東洋の京楽は、古城からほど近いアラルの町に住んでいる、猫の魔女乱菊に大量のマンドレイクを納めにいくことになった。

(なんでボクまで・・・・・)

東洋の京楽は不満そうだが、西洋と東洋の浮竹だけを残していくのは心配なので、大量の黒い蛇をその陰にしこんだ。

「じゃあいこうか」

(分かったよ)

こうして、西洋と東洋の京楽は、古城を出た。



「俺のところの京楽が、再覚醒して魔力が俺と同じくらいになるまで強くなったんだが、敵に対して今までに見たこともないくらい、残酷になって、それが心配なんだ」

(あー。そういえば、西洋の春水って、俺の春水と同じくらいに力をあげてたからなぁ)

「俺に対しては優しいだ。でも敵には残酷で。その二面性が少し、怖い」

自分の体を抱きしめるようにした西洋の浮竹は、けれど東洋の浮竹に抱きしめられていた。

「東洋の俺?」

(きっと、お前の京楽は今まで力が足りなかった分、お前を守りたいと躍起になっているんだ。残酷なの面も出てしまうかもしれないが、壊れたりはしない。大丈夫だ)

「お前にそう言われると、そうなりそうで安心する」

西洋の浮竹は、東洋の浮竹に抱きしめてもらいながら、安堵の声を出した。

(そうだ、京楽たちがお使いにいっている間に、チーズケーキを二人で作ろう)

「え、俺でも作れるのか?」

(大丈夫、レシピはあるし、俺が作り方を教えてやる)

「そうか。悩みごとを聞いてもらってすっきりしたし、一緒にチーズケーキ作るか」



その頃、西洋と東洋の京楽は、猫の魔女乱菊に大量のマンドレイクを届けるついでに、二人の京楽をじろじろ見ていた。

「ふーん。世界が違うところからきた京楽さん・・・・面白いわねぇ。解剖してみたいわ」

二人の京楽は、マッハで逃げ出した。

古城への帰り際に、Aランクのヴァンパイアハンターと名乗る男に出会った。

「始祖の浮竹を葬るつもりだったが、先に血族の京楽、お前から仕留めてやる!」

「へぇ。僕の浮竹に、危害を加えるつもりだったんだ。たかが、Aランクのヴァンパイアハンターのくせに」

西洋の京楽は、ニタリと笑って、そのヴァンパイアハンターの体に猛毒である自分の血を注ぎ込んだ。

「うぐっ・・・・うわあああ」

「そう簡単に死なないでよ。ほら、ほら」

西洋の京楽は、血の刃を作り出して、息も絶え絶えなヴァンパイアハンターの体を切り刻んだ。

「あれ、もう死んじゃったの?つまんないな」

その姿に、東洋の京楽がやや引いていた。

(おい、西洋のボク。やりすぎだよ)

「だって、僕の浮竹に手を出そうとしていたんだよ。これくらいのバチは当たっても、別にいでしょ?」

(はぁ…ボク、言ったでしょ?“やりすぎ”だって)

「だって、僕の浮竹を傷つけようとしてるんだよ?だから、死んでもらわないと…」

西洋の京楽は東洋の京楽ににっこりと微笑む。

笑みは狂ったような狂気を含んでいる。

対して、東洋の京楽は金色にした目を冷たく澱ませて、西洋の京楽を見て呆れている。

(…勝手にすればいい。それで、キミの身が滅んでもボクは嘲笑うことしかできないね)

「僕は、そんなことしないよ?だって、僕には浮竹がいるしね」

そう言う西洋の京楽に興味をなくしたように、東洋の京楽は何も言わずに二人の浮竹が待つ古城へ先に向かう。

それを首を傾げて、西洋の京楽は東洋の京楽の後を追う。



「帰ってきたか、二人とも」

(割と早かったね)

「うん、ただいま」

’(ただいま)

「ん?なんかいい匂いするね」

(そういえばそうだね)

いい匂いがしてきて、それに二人の京楽は興味をもったようだった。

「実は、俺と東洋の俺で、チーズケーキを作ったんだ」

(そうそう。もう一回、お茶にしよう)

「えええ。浮竹がチーズケーキ!やばいよ、東洋の浮竹。ちゃんと作ってるシーン目撃した?」

(いいや、レシピを渡して作り方を教えて、それぞれで作った)

「あああああ」

(どうしたんだい、西洋のボクって、ああ・・・・やっぱりね)

東洋の浮竹がもってきたチーズケーキは白っぽかった、西洋の浮竹がもってきたチーズケーキは赤かった。

「浮竹、味見した?」

「するわけないだろう」

さも当然のように、西洋の浮竹は答える。

「いいから、食え!」

問答無用だとばかりに、西洋の浮竹は西洋の京楽の口の中に、一口分のチーズケーキを入れた。

「ぎゃああああ!!チーズケーキなのに辛い!君、また砂糖とタバスコ間違えたね!?」

「あれ、また間違えてしまったのか。まぁいいだろう。全部食え」

次々に口の中にチーズケーキ(激辛)を放り込まれるが、西洋の京楽は結局全部食べてしまった。

(うわお。君の西洋の十四郎への愛は本物だって、少なくとも分かったよ)

「見てないで止めてくれ、東洋の僕・・・・・」

東洋の浮竹は、赤いチーズケーキを自分で食べていく。

「辛いが、これはこれでうまいと俺は思う」

(いいね。ボクにも食べさせてよ)

東洋の京楽の分はなかったので、西洋の浮竹は、自分が食べていたチーズケーキを東洋の京楽の口に放り込んだ。

(んー。辛いけど、それがいいね。タバスコだけじゃなく、他にも香辛料いれた?)

「少しだけ」

(東洋の俺、砂糖とタバスコを間違えたのか。今度から、気をつけろよ?)

東洋の浮竹は、あわあわしていた。

「ああ、そうする」

西洋の京楽は、胃薬を飲んでいた。

「京楽。胃薬なんてなくても、俺の料理を食えるだろうが」

「簡便してよ。君ってば、料理できるようになったと見せかけて、すごい代物作ってくるんだから!この乱菊ちゃん印の胃薬がないと、僕の胃に穴があいちゃう」

「ほう。じゃあ、今晩の夕食は、俺が作ってやろうか」

額に血管マークを浮かべた西洋の浮竹の笑みに、西洋の京楽が飛び上がった。

「今夜の夕食は僕が作るから!いいね!?」

「仕方ないな・・・・」

しぶしぶ納得する西洋の浮竹に、東洋の浮竹と京楽は苦笑いするのであった。

その日の晩は、西洋の京楽と戦闘人形が作った夕食を口にして、4人は就寝した。

次の日の朝、首筋にキスマークのいっぱいついた西洋の浮竹を見て、東洋の浮竹は全てを察知して、真っ赤になった。

(その、西洋の俺。キスマークが・・・・)

それに自分がキスマークをいっぱいつけられたのだと思い出して、西洋の浮竹も赤くなる。

「あの駄犬が!」

「わああああああ」

西洋の京楽は、西洋の浮竹にハリセンを手に追いかけられていた。

(じゃあ、俺たちはこのへんで・・・・・)

(二人ととも、ほどほどにね)

「ああ、またな。待て、京楽」

「またねええええ。ぎいやあああ」

東洋の浮竹と京楽は、西洋のこんな二人の姿に、心配しすぎるのも杞憂かと思うのだった。






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始祖なる者、ヴァンパイアマスター41

「本当に、大丈夫だろうね?」

「しつこいな、俺を信じろ!」

「だって君、不器用そうだから」

京楽は浮竹に小突かれて、そのまま口を閉ざした。

京楽の髪が大分伸びてきたので、浮竹がカットすることになったのだ。

浮竹は、いつも京楽に髪を切ってもらっていた。その京楽はというと、いつも近くの町の美容院で切ってもらっていた。

それが気に食わなくて、浮竹が自分で切ると言い出したのだ。

あえて、鏡のない部屋に通されて、ブラシでやや癖のある長い黒髪をすいていく。

「お前の髪、硬そうにみえて柔らかいんだとな」

京楽の髪を一房手に取り、ひっぱった。

「あいたた、ひっぱらないでよ」

「す、すまん。じゃあ、切るぞ?」

「もうさっぱり、短くしちゃって」

人間の頃の京楽は、髪が短かった。

あの頃の髪型を思い出して、はさみでばっさりといった。

「あ”」

「え、何?何か起こったの!?」

「な、なんでもない!」

どうしよう。

浮竹はいきなり京楽の頭に10円ハゲをこさえてしまった。

「ええい、なるようになれ!」

そのまま、勢いで髪を短くしていると、10円ハゲが4つできた。

「ああああ~~~~~~」

「ちょっと、鏡見せて!」

京楽は、浮竹の手から手鏡を奪うと、自分の顔を見た。

「なんじゃこりゃああああああ!!」

京楽の悲鳴が、古城中に響き渡るのだった。


結局、浮竹の血を口にして、元の長さと同じくらいまで京楽は髪を伸ばした。

「美容院いってくる」

「俺もいく」

「どうして。君の髪は、この間僕が切ったでしょう?それ以上短くしたいの?」

明らかに髪を短くするのに不満気な京楽に、浮竹は小声で。

「お前と、離れていたくない」

そう口にして、カーッと真っ赤になった。

「浮竹、かわいい!」

抱きしめてついでに口づけてくる京楽に、浮竹は脅し入れる。

「また、10円はげこさえたいのか?」

「いえ、ごめんなさい。調子に乗りすぎました」

「分かればいい」

そうして、古城から一番近くの町、アラルの町にやってきた。

冒険者ギルドにもついでに顔を出した。

今急ぎの依頼はないようで、これといったクエストもなかったので、浮竹も京楽も、冒険者ギルドを後にする。

風の噂で、アリス・マキナというSランク冒険者が、4人パーティーで40階層あるS級ダンジョンを踏破したと聞いて、頑張っているのだなと思った。


「ここが、僕の行きつけの美容院」

「あ~らいらっしゃ~い。春水ちゃん、今日は髪のカットだけ?髪も洗いましょうか?ひげもそる?」

店長はオカマだった。

時折ひげのない京楽がいるのは、この美容院のせいだと分かって、浮竹は面白くなさそうに、そソファーに腰かけた。

「あら~。こっちのかわいい子は、春水ちゃんのいい子?」

じろじろと見られて、浮竹はたじたじになった。

「もう、店長、そういうのはやめてって言ってるでしょ!」

「あら、この前の金髪のかわいい子と違うのね。どっちが本命?」

店長の言葉に、浮竹がゴゴゴゴと怒る。

「やん、怒っちゃや!」

「京楽、金髪の子とは・・・・・・」

「わあああ!乱菊ちゃんだよ!いい美容院教えてって言われて、一度だけ一緒にきたんだ」

浮竹はほっとした。

まさか、京楽が浮気なんて、そんなことするわけはないとは分かっていたが、それでも肝が冷えた。

「ファッション雑誌か・・・・」

今を時めくモデルやらが、表紙を飾っていた。

「あら、そっちの白い髪のかわいこちゃん・・・・」

「浮竹だ。浮竹でいい」

「浮竹ちゃん、良ければこの美容院の専属モデルにならない?あなたくらいの綺麗な子を探していたのよね~~~」

「悪いが、断る。顔をあまり知られたくない」

「あら残念だわぁ」

店長はくねくねと動いた。

見た目がいいオカマならいいが、けつ顎で、マッチョな姿に圧化粧をして、ふりふりのゴシックロリータの服を着たオカマを見続けては、気分も悪くなるというもので、浮竹は一生懸命雑誌を見るふりをした。

「あら、それ、逆さまよ?」

「ああ、気が動転していた」

見ていた雑誌を反対にもって、浮竹は心を無にした。

オカマの店長の存在を、なかったことにした。

「いや~~ん。京楽ちゃん、魔力がすごーい!どうしたの、この魔力!

「ああ、ちょっとわけがあってね」

店長は京楽の髪を洗い、魔法で熱風をだして乾かすと、ブラシで癖のある京楽の髪をまっすぐにして、髪を切っていった。

リズミカルに、チョキチョキと切っていく。

その技が欲しくて、気づけば浮竹はオカマの店長の傍にきて、その手をじっと見ていた。

「いやん、浮竹ちゃん。求愛なら、後でね?うふん」

浮竹は精神に1000のダメージを受けた。

「求愛・・・」

ズーンと沈みこんで、ソファーにまた腰をかけて、ファッション雑誌に適当に目を通した。

いつも、京楽が買ってくる適当な服を着ているつもりだったが、それがファッション世界ではやっている衣服だと知って、浮竹は京楽に後で礼を言おうと思った。

「あっは~~~ん。じゃあ、ひげ剃るわね?」

「ああ、頼むよ」

髭をそられてしまい、髪を切られた京楽は、いつもと違った風に見えて、浮竹はドキドキしていた。

「どうだい、浮竹。似合うかい?」

「け、け、け」

「け?毛?」

「けしからん!!!」

京楽を抱きしめて、つるつるしたほっぺに頬ずりをして、口づけていた。

「ちょっと、浮竹、店長が見てる!」

じーっと穴があくほど、店長の熱い視線を感じた。

「春水ちゃん、あたし、ずっと春水ちゃんのことが好きだったの」

「京楽は渡さないぞ!」

「浮竹ちゃんも素敵だし、よかったら3Pで、あたしと(以下放送禁止用語)とか、しない?」

浮竹と京楽は、金を払ってその場から逃げ出した。


「ま、まさか店長はオカマなだけでなく、そっちの趣味もあったとは・・・・・」

「僕、好きだとか告白されちゃった。今度から、あの美容院いけないね。代わりの美容院探さないと」

二人して、手を繋いで歩きだした。

このアビスの世界は同性愛者が多いので、不思議がる者はいなかった。

人類の3分の2が男性で、残りの3分の1が女性である。当然、あぶれた者の中には、浮竹と京楽のような関係になる者も多かった。

「猫の魔女乱菊のところに行こう。この前依頼していた魔道具が、そろそろ出来上がっているはずだ」

アラルの町の外れにある、屋敷を訪れた。

チャイムを鳴らすと、神々の谷間も露わな乱菊が出てきた。

「乱菊、ちゃんと衣服を着ろ!」

「あら、シャワー浴びてたのよ。気配であなたたちだって分かったから、出てきただけよ。ちゃんと自己防衛はできるし、心配しなくてもいいわよ?」

「と、とにかく乱菊ちゃん、服を着て!」

浮竹も京楽も真っ赤になっていた。

「そうそう、頼まれていた魔道具、できたわよ?」

それは、小さな水晶玉だった。

「こんなに小さいのか?」

「女神アルテナとやらの、侵入を防ぐ効果があるわ。血の帝国全てを覆いつくすほどに範囲を広げておいたから」

「約束の大金貨2万枚だ。小切手で払う」

「毎度あり~~~♪」

乱菊は、らんらんと鼻歌を歌いながら、その神々の谷間に小切手を入れた。

乱菊への用も終わり、二人は古城に帰還した。

それから、急いで血の帝国にいき、ブラッディ・ネイに水晶玉を渡して、それはブラッディ・ネイが首飾りにして自分に身に着けた。

「ボクが血の帝国の中心だからね。これでいいでしょ、兄様?」

「古城に遊びに来るときは、それを寵姫にでも身に付けさせておけ」

「分かってるよ、兄様」

そのまま、浮竹と京楽はブラッディ・ネイの宮殿に一晩泊まり、翌日古城に戻っていった。

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「あー。とえあえず女神アルテナについては、血の帝国に関しては一安心だ」

「そうだね。でも、気をつけないといけないよ。また、女神アルテナと藍染の子供がくるかもしれない。あのレキとサニアって子も、二人の子供だったようだし。よくもまぁ、こんな短期間で4人も子供を作って、ある程度の年齢まで仕上げたものだよ」

「禁呪だな。人体に使用してはいけない、成長促進の秘術を使っているんだろう」

そんなことを言っていると、来客の知らせがきた。

リンリンリン。

誰かと思い、姿を見ると、オカマの店長がフードを深く被った子供を連れてきていた。

「なぜ、オカマの店長がこの古城を知っている」

「前に、つけられたことがあったんだ。その時に知ったんじゃないかな?迷惑きわまりないことだけど」

とりあえず、浮竹と京楽は、客人として迎え入れるつもりで扉を開いた。

「死ね!」

いきなりの攻撃に、浮竹は対処しきれずに、胸を血の刃で貫かれていた。

「子供!?浮竹にそっくりだ!」

「いやあああああ!!浮竹ちゃんになにするの!」

オカマの店長は、迷子になった浮竹の弟を連れてきたのだと説明しながら、浮竹の傷を見てくれた。

「幸い、致命傷じゃないわ」

浮竹が傷を癒していく姿を見ても、驚かない。

何故かと思っていると、店長は人間とヴァッパイアの間に生まれたハーフのヴァンピールだった。

「この子、敵なのね!?」

「ああ、そうだ。わざわざ連れてきて、ありがた迷惑だ」

「どのみち、あなたたちを襲っていたわ。私は力になれそうにないから、奥に引っ込んでいるわね?」

「そうしてくれ」

京楽は、魔力をどす黒く染め上げていた。

「よくも僕の浮竹を・・・・・」

「何故、俺と同じ姿をしている!」

「そうなるように、あんたの血から作られたからだよ、始祖の浮竹。僕はイザベル。お前たちを殺せないまでも、痛めつけて僕は自由になるんだ!」

ニタリと、京楽が笑った。

「僕の愛しい浮竹と同じ姿をしていたら、攻撃を加減されるとでも思ったのかい?」

猛毒の京楽の血を注がれて、イザベルは苦しんだ。

「なぜ、血族の血に毒が・・・!」

「東洋のお札を吸収したからね。僕の血は、浮竹以外には猛毒だよ」

「化け物が!」

「嬉しいね。最高の褒め言葉だよ」

ニターっと、京楽は不気味に笑った。

それを、浮竹が不安そうに、心配そうに見ていた。

「死ね!!」

血の刃を作り出して、攻撃してくるも、魔力は浮竹の半分以下で、京楽は獲物を弄ぶようにじわりじわりとイザベルを追い詰めた。

「さぁ、君の番だよ」

イザベルは血の鎌を作り出すと、京楽を無視して、浮竹に向かっていた。

「フレイムウィンド!」

炎をまとった風に追いやられて、血の鎌は浮竹には届かず、イザベルは舌打ちした。

「僕と同じはずの存在なのに!」

「全然違うよ。僕の浮竹は、君みたいに醜くない」

京楽は血の刃をいくつも作ってイザベルを更に追い詰める。

イザベルは、再生が追い付かない体を捨てた。

「な、アストラル体!神だというのか!」

「正確には、神の魂をもっているだけさ。僕は、イザベル。でも、女神リンデルでもある!」

アストラル体となったイザベルは、浮竹を魔力で締め上げようとして、愕然とする。

「始祖浮竹、何故お前の魂に神格がある!お前も、神だというのか!」

「なんのことだかわらかんな!ゴットフェニックス!」

アストラル体には通常攻撃は効きにくい。

不死鳥をまとった炎が、イザベルのアストラル体を襲った。

「熱い、熱い、熱い!」

転げまわるが、神であるために易々と死ねない。

「あははは。神の魂を宿したことに後悔するんだね。君が死ぬまで、業火で燃やしてやろう」

「京楽?」

浮竹が、また不安そうに京楽を見た。

「僕は大丈夫。さぁ、続きといこうか、イザベルとやら?」

「もう、いっそ一思いに殺してくれ」

「そんなわけにはいかないねぇ。浮竹を傷つけた代償は高いよ?」

「ああああああああ」

自我が崩壊しそうになるまで、炎でじっくりいたぶり、京楽は満足した。

「もう、死んでもいいよ」

「僕は神なのに、なんで・・・・・ああああ、父さま母さま」

そう言い残して、イザベルは完全な灰となって滅んでいった。

「京楽?」

「どうしたの、浮竹?」

そこには、いつも通りの京楽がいた。

「戦闘だと、お前が別人のように感じる」

「そう。でも、僕は僕だよ?」

「ああ、分かっている。俺が心配すぎなだけなんだろう」

「ごめん。君を不安にさせてしまったね?ごめんね?」

頭を撫でらて、キスをされた。

それを、オカマの店長は全部見ていた。

「いや~~ん、愛しい姫の為に魔王になる京楽ちゃん!萌えだわ~~」

「お前はさっさと出ていけ!」

浮竹はヴァンピールであるために、記憶は奪わず、古城に続く森へのゲートをあけて、そこに店長を放り込んだ。

「また、私の美容院、利用してね?」

うっふんとウィンクされて、浮竹と京楽は顔を青くした。

「もう、二度と利用しない」

「そうしろ。あいつは、別な意味でやばい」

------------------------------------------------------------

「あれが、始祖浮竹。創造神ルシエードのただ一人の神の寵児か・・・・・・」

オカマの店長・・・・いや、創造神イクシードは、始祖の浮竹を見て、納得した。

「ルシエードの子らしい。血族に甘すぎるところとか、昔のルシエードにそっくりだ」

創造神イクシードは、魂に神格のある浮竹を神にするかしないかの調査にやってきたのだ。

「少なくとも、神にするには未熟すぎる。血族の暴走も止められないのでは、話にならない」

「あら、きていたの」

古城の外の森で、妖艶な美女と創造神イクシードは巡り合った。

「女神アルテナ。お前は極刑になったはず!」

「うふふふ。魂だけの存在になって、このサーラに逃げてきたの」

「お前の存在は、神々の怒りを買っている!滅べ!」

その絶対の力は、働かなかった。

「やはり、ヴァンピールの依代には限界があるか。女神アルテナ、この世界から去れ。さもなくば、神々の怒りでお前の魂は永遠の氷獄へ閉じ込められるであろう」

「ふん、創造神イクシード。神になるのは、私の夫藍染よ」

「あれは神になれぬ。魂に神格がないし、その資格もない」

「いずれ、彼は神になるわ。その側には、私がいるの」

ゆらりと、女神アルテナは消えてしまった。

「女神アルテナを敵に回しているのか・・・一応、ルシエードの耳にいれておくか」

創造神イクシードは、依代であったヴァンピールの体から離れて、サーラの世界へ帰還する。

「あらやだ私、どうしちゃたっのかしら。浮竹ちゃんの弟を古城にまで連れていったのは覚えているけど・・・・・・」

店長には、創造神イクシードに憑依されていた間の記憶はなかった。

---------------------------------------------------------------

「まただめだったか・・・・・」

「あなた・・・・・・」

「魂が神でもだめだと?ふざけるな!」

藍染は、ものに当たり散らしていた。

「今度は、私の分身体がいくわ。血の帝国であいつらの大切やつらの命を奪って、あの始祖浮竹と血族京楽を、あっと言わせてみせるわ」

「女神アルテナ・・・・それは面白い策だ」

女神アルテナは知らなかった。

自分の存在が、分身体であろうとも、血の帝国に入れないようにされていることを。


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始祖なる者、ヴァンパイアマスター40

浮竹と京楽は、血の帝国にいた。

女帝ブラッディ・ネイが懐妊したというのだ。しかも、実の兄である浮竹の子を。

「兄様、ボクはついに兄様の子ができたよ」

愛おしそうに、平らな腹を撫でる実の妹に、浮竹はため息をはきながらも、神の涙といわれるエリクサーを飲ませた。

エリクサーはどんな状態異常や呪いも回復してくれる、奇跡の薬だ。

最高ランクのミスリルランクの錬金術士だけが調合できて、それでも成功率は5%くらいだった。

この前、錬金術用の館を何度も爆破させて、破壊してやっとできた1つだった。

「あれ・・・ボクはどうしていたの?」

「俺の子供を妊娠していたとか言い出してた」

「え、ボクが兄様の子を!?産みたい!」

ブラッディ・ネイは、浮竹にハリセンで頭を殴られていた。

「酷い、兄様」

「ばかな騒ぎを起こすからだ。そう思いこんだ元凶はなんだ?」

「誰かに洗脳されていたみたいだね。ブラッディ・ネイを洗脳するなんて・・・どんなやつだろうね?」

京楽の問いに、ブラッディ・ネイが答える。

「確か、女神アルテナとか言っていたかな。すごい美人だったけど、年をとっていたのでボクの好みには入らなかったけど、少しだけ会話をしたよ」

「女神アルテナだと!?他に何もされていないな、ブラッディ・ネイ!」

「兄様痛い、痛いってば」

「ああ、すまない」

まさか。女神アルテナがこの血の帝国にまで来るとは思っていなかった浮竹は、実の妹の体を隅から隅まで見渡した。

「どこも異常はないようだな」

「ボクをまるで珍獣のように見ないでくれないかな、ひげもじゃ」

「せっかく人が心配してあげてるのに・・・・」

「女神アルテナって、やばい存在なの?」

「目下、俺たちの敵だ」

「ええ!そんな存在なら、ボクもただじゃ返さなかったのに!」

ブラッディ・ネイが悔しそうな声をあげた。

「女神アルテナは、このアビスの世界を去ったはすだ。なのにまだこの世界にいるということは、サーラの世界で死んだか追放されて、このアビスの世界にやってきたってところか?」

「そういえば、真剣に女神アルテナについて、話し合ってなかったね」

「相手は女神。仮にも神だ。もしも魂を滅ぼさないと倒せないなら、今のところ封印するしか策はないな」

神という存在は、不確かな存在であるように見えるが、この世界には存在した。

ちゃんと肉体をもった生物として生きていた。

ただ、その持つ力は次元を超えており、生きる時間も不老不死に近い。

「そうだね。僕が女神アルテナを倒したのは、オリジナルに極めて近い、分身体だったからね」

「ああ。何処までダメージが本体にいったか分からないが、サーラの世界からこのアビスの世界にきたということは、深いダメージを負ったんだろう」

事実その通り、女神アルテナは創造神ルシエードの「滅びよ」というその言葉だけで肉体を灰にされて、この世界に魂だけとなってやってきた。

「ブラッディ・ネイ。今度から、女神アルテナという存在には気をつけろ」

「分かったよ、兄様。匂いを覚えたから、大丈夫。魂に神格があるから、独特の匂いがする。魂に神格があると言えば、兄様もなんだけどね」

「え、俺か?」

「そう。兄様、いつの頃からか魂に神格をもってる。その気になれば、神になれるよ」

「神なんかにはならない。そんな存在になりなくもないし、なりたいとも思わない。今の始祖というだけでも俺には重い」

神の愛の呪いの不老不死。

死ねない時を、浮竹は生きている。もう、8千年も生きている。

うち5千年を休眠して過ごした。孤独に耐えきれずに。

今は血族の京楽もいるし、幸せだった。

藍染がいなければ、もっと幸せな人生を送れていただろうが。

「じゃあ、俺たちは古城に戻る。何かあったら、式を飛ばしてくれ」

「分かったよ、兄様」

----------------------------------------------------------------

古城に戻ると、浮竹は錬金術をやりはじめた。

大量に金をつぎ込んで買ってきた、エリクサーの材料を手に、錬金術で使っている館で調合をして失敗し、館を爆発させていた。

同じ館で、4回爆発を起こし、焦げ気味になって、浮竹は京楽の傍にやってきた。

「どうしたの、浮竹!ボロボロじゃない!まさか敵襲!?」

「落ち着け。錬金術でエリクサーを作っていただけだ」

「エリクサーの調合って、そういうえば難しいって言ってたね。成功したの?」

覗き込んでくる京楽を押しのけて、ソファーに静かに座る。

「25回分チャレンジして、2本やっとできた。赤字だな」

「まぁ、念のために使う分でしょ?ストックはないの?」

「ストックの最後の一個を、ブラッディ・ネイに使ったからな。だから新しく調合していたんだ」

「浮竹、君の綺麗な白い髪が焦げちゃってるよ」

「京楽、血をよこせ」

京楽は、手を差し出した。

それに噛みついて、京楽の血を啜ると、焦げた髪は元に戻った。

「着替えてくる。今着ている服は処分しておいてくれ」

「この服、高かったのに」

一着で金貨200枚もする、高級な絹をつかった金糸の刺繍が至る所にされている、衣服だった。

上下セットで金貨250枚だ。

金は腐るほどあるので、浮竹は気にしなかったが、京楽は処分が決まった服が好きで、その服を着ている浮竹は、本物の皇族のように気品があって、かっこよいと思っていた。

もっとも、今では浮竹だけでなく京楽も、勇者王として皇族に叙されているが。

浮竹は、着替えてきた。

今度は黒いラフな格好だったが、灰色のマントを背中から左肩、それに胸にかけて、垂らせていた。

マントを背中から左肩、それに胸にかけて垂らすのは、血の帝国の皇族の証である姿だった。

「少し、猫の魔女乱菊のところに行ってくる」

「ああ、僕もいくよ」

「じゃあ、お前も正装しろ。俺のようにマントを羽織れ」

「どうして?」

京楽が首を傾げる。

「猫の魔女乱菊に、血の帝国の皇族として、正式に依頼がある」

「分かった。じゃあ、僕も着替えてくるよ」

京楽が、皇族の姿をするのはこれで二度目であった。一度目は、勇者王として、ブラッディ・ネイに皇族に叙された時、正装をしていた。

「やっぱり、お前には似合っているな、そのかっこ」

「浮竹ほどじゃないよ。浮竹ってば、僕と違ってラフな格好してるのに、マントを羽織るだけで気品が溢れてるよ」

「まぁ、生まれつき皇族で、昔は白哉の地位の皇族王もしていたからな」

やがて乱菊のところまでくると、乱菊は快く迎えてくれた。

「乱菊、今回は血の帝国の皇族として依頼しにきた」

「あら、どうしたの、改まって」

「今戦っている相手が、俺の妹に接触してきた。今後、その存在が血の帝国に立ち入れられない魔道具が欲しい。錬金術で作ってくれ」

「いいけど、相手の何かが必要よ?」

乱菊は、やや険しい顔をした。

「ここに、このアビスの世界にいた、女神アルテナの分身体の血がある。これで足りるか?」

「女神!また厄介な相手と戦っているのね。分かったわ、その依頼引き受けるわ。女神アルテナが、血の帝国にこなけばいいのね?」

「ああ」

「頼むよ、乱菊ちゃん。血の帝国には、浮竹の妹のブラッディ・ネイを始めとして、白哉クン、恋次クン、ルキアちゃん、一護クン、冬獅郎クンといった友達がいっぱいいるんだ。利用されでもしたら、大変なんだよ」

京楽の言葉に、乱菊は頷いた。

「あたしの力の限りを注いで、成功してみせるわ」

「頼む。俺は薬系統の錬金術は得意なんだが、魔道具に関してはいまいちなんだ」

「あら、浮竹さんはミスリルランクなのに、魔道具の錬金が苦手なのね?うふふ、意外な弱点みつけちゃって、ちょっと嬉しいわ」

「報酬は、大金貨2万枚」

「わお。さっそく、とりかからなくちゃ」

忙しく動き出す乱菊の邪魔をしないように、二人は古城に戻っていった。

マントを外して、浮竹はソファーにごりとだらしなく横になる。

「皇族として振る舞うのは嫌いだ。肩がこる」

「僕も、嫌だねえ。慣れないよ」

京楽もマントを外して、浮竹の白い髪を撫でた。

その日は早めに夕食をとり、浮竹は前回京楽とアリスと一緒に踏破したS級ダンジョンで手に入れた、賢者メイエドの遺産の本を読んでいた。

「賢者メイエドはすごいな。67歳までしか生きなかったのに、精霊王を3人も若い頃から従ええいたそうだ」

「浮竹だって、炎と氷の精霊王を従えているでしょ?それに、きっとその気になれば、今の魔力なら、8人の精霊王を従えられると思う」

「賢者メイエドの凄いところは、人間であったところだ。俺は始祖ヴァンパイアでここまで魔力が高くなるのに8千年もかかった。だが、賢者メイエドは、僅か13歳にして王都の賢者となり、3人の精霊王を従えていた」

浮竹は、賢者メイエドの手記を読んでいた。

「それに、知らない魔法をお陰でいくつか習得できた」

「良かったね」

「ああ。ミミックに齧られなかったのは寂しいが」

「問題はそこなの!?」

京楽が、ベッドの上で寝転がりながら賢者メイエドの手記を読んでいる浮竹に、つっこんでいた。

「ああ、そういえば今日はポチにドラゴンステーキをやるのを忘れていた。あげてくる」

「僕も行くよ、浮竹。魔王の元から帰ってきた時のポチの怒りはすごかったからね。半月も古城を留守にしていたから」

「ポチーーー」

「るるるる!るるるるーーー!!」

ポチは浮竹のところにやってくると、浮竹にかみついた。

「狭いよ暗いよ怖いよ息苦しよーー」

「もー、何やってんの、浮竹」

京楽に救出してもらいながら、浮竹はアイテムポケットからドラゴンステーキをだした。

「るるる♪」

ポチはそれを丸かじりすると、ねぐらとして決めている暖炉に中に戻ってしまった。

その日は、そのまま就寝した。

次の日の朝、ピリリリリと警戒音がなった。

「侵入者だ。庭にいこう」

庭は、何度か侵入者を迎え入れたので、クレーターができたりして荒れていた。ただ、古城に面したプランターには、東洋の浮竹と京楽からもらった桔梗の花が綺麗に咲いていた。

「おとうさまのために、きました。僕はレキ」

「私はサニア」

「「死んで?」」

二人は、はもりながら、浮竹を攻撃してきた。

それは、銃というにはあまりにも巨大で、あまりにも弾が早かった。

ガトリングガン。

サーラの世界で、戦争に使われる兵器だった。

「浮竹!!」

いきなり攻撃に、もろに弾丸を浴びた浮竹は、浅い呼吸を繰り返しながら傷を癒していく。

「こっちだよ!」

京楽は、わざと的になるために、レキとサニアの前に立った。

「死んで?」

レキがガトリングガンを放つ。そのガトリングガンは、レキの右腕についていた。

ドガガガガ。

鋭い弾丸を血の炎で燃やし、京楽は伸ばすた血の刃でレキの右腕を切り離した。

「無駄無駄無駄!」

レキの手には、またガトリングガンが生えてくる。

「こいつ!」

京楽は瞳を真紅に変えて、レキの首をはねた。

「あれ、ぼくの首が・・・・・」

「まだ死なないのかい!」

「京楽、気をつけろ。そいつら、俺の血を持っている。ヴァンパイアロード並みの再生力があるぞ!」

浮竹の言葉に、京楽は本気モードになった。

「「死んで?」」

「君たちが、死ぬといいよ。浮竹を傷つけた報いを、受けてもらうよ!」

京楽は、ニタァと笑った。

京楽は、見よう見まねで、血でガトリングガンを作り出すと、一気に射撃した。

「うわああああ!!」

「きゃあああああ!!」

着弾した弾は、血の炎となって、二人を燃やしていく。

「浮竹、お札を!」

浄化のお札を使うと、二人が身にまとっていた再生能力の元である、浮竹の血が浄化されて、レキとサニアは火だるまなって転げまわった。

「最後の手よ!」

「危ない、浮竹!」

サニアは、火だるまのまま素早く動いて、浮竹の元で自爆した。

「浮竹ーーーー!!」

「げほっ、げほっ。俺は大丈夫だ」

煙の中から、浮竹が現れた。

大丈夫だと言いながら、血を吐いていた。

上半身の一部が吹き飛ばされていた。

「まさか、自爆してくるなんて」

ただの肉塊になったサニアを見る。

「今、僕の血で癒すから!」

京楽は、自分の血の刃で手首を切ると、あふれ出す血を浮竹に注いだ。

「今回は、苦戦したな」

「まさか、あんか火器や自爆するとは思わなかったよ」

浮竹は吹き飛んだ上半身の再生を完了した。

「お前の血が、勿体ない」

まだ流れ続けている京楽の血を、浮竹は口にした。

「甘い・・・・・」

京楽は、切った手首の傷を癒した。

「京楽、もっと血をくれ」

「人工血液飲んでからね」

浮竹と京楽は、人工血液を口にして、それを己の血に変換した。前までは浮竹しかできなかったが、再覚醒後の京楽もできるようになっていた。

京楽の血液を、浮竹は飲んでいく。

やがて満足したのか、瞳を真紅にした浮竹が、京楽に白い喉を差し出してきた。

「お前も吸え。おまえは人工血液だけではだめだろう。俺の血を吸え」

京楽は、ごくりと唾を飲んだ。

浮竹の日に焼けていない肌が、日に照らされて白く輝いてみてた。

「じゃあ、もらうよ」

プツリと音をたてて、浮竹の白い喉に噛みついて、吸血した。

「んっ・・・・・」

浮竹は、さっき口にした京楽の血の色をした唇をぺろりと舐めた。

その仕草は妖艶で、京楽はそれが好きだった。

「京楽・・・」

浮竹は、濡れた瞳で京楽を見下ろした。

首に噛みついていたので、京楽のほうが今は頭が低かった。

「お前が欲しい・・・・・・」

耳元でそう囁かれ、京楽は浮竹を抱きあげて、寝室にまで運んでいく。

「んっ」

移動中の間に、京楽が浮竹の耳元を甘噛みした。

「あ、意地悪しないでくれ」

クスクスと、浮竹は笑う。

つられて、クスクスを京楽も笑った。

戦闘の後で血を見たというのに、浮竹は京楽を誘う。それに乗って、京楽も浮竹を自分のものにしようとしていた。

ベッドに降ろされると、浮竹の長い白髪がシーツの上に乱れた。

衣服を脱がされ、全裸にされると京楽も服を抜いだ。

良く鍛え抜かれた筋肉が見える。浮竹も薄いが筋肉はついていたが、どちらかというと華奢だった。

「あ、や・・・・・」

京楽が浮竹のものを口に含んで、奉仕してくる。

「やああああ」

浮竹は、京楽のテクニックの前で、吐精していた。

「お前は、こんなことばかりうまくなって・・・・」

「君に感じてもらいたいからね?」

ローションを手に取り、肌に馴染ませて浮竹の蕾に丹念に塗り込んでいく。

「あっ」

侵入してきた指を、気づけば締め付けていた。

「浮竹、もっと力を抜いて。リラックスして」

言われるままに、浮竹は力を抜く。

ずるりと指を引き抜いて、京楽は自分のもので浮竹を引き裂いていた。

「ああああ!!」

生理的な涙を滲ませる浮竹の涙を吸いあげて、京楽は動いた。

「ひああああ!!」

最奥と前立腺を的確にすりあげてくる京楽の熱に、浮竹はオーガズムでいきながら、自分の腹に欲望をぶちまけていた。

「あう!」

ごりっと最奥まで入ってきた京楽の熱を締め付けると、京楽は我慢できずに浮竹の胎の奥で熱を弾けさせていた。

何度も最奥を抉られて、浮竹はもう出すものがなくて、オーガズムでいきまくるばかりだった。

「あ、あああ・・・・・・・」

何度目のものかも分からぬ京楽の子種を体の奥で受け入れて、浮竹は意識を手放した。

----------------------------------------------

「浮竹・・・・・・僕は、君しかいらない。君さえいれば、他の全てを捨ててもいい」

まるで病んでいる京楽の言葉を、浮竹は微睡みの中で聞いていた。

「君が必要だというなら、この世界さえも手に入れよう」

まるで、藍染みたいなことを言う。

そのまま、浮竹の意識は闇に落ちていった。

ふと起きると、隣に京楽の姿がなかった。

ガウンを羽織り、逢瀬の名残を綺麗に拭われた体で、毛布を手に京楽の姿を探す。

京楽はベランダにいた。

珍しいことに、煙草を吸っていた。

「京楽」

「わ、びっくりした、浮竹。どうしたの」

「お前は、俺のためなら世界を手に入れてもいいと言っていたな」

「聞いてたの?」

京楽が困った顔をする。

「お前は、ああはなるな。藍染のようには」

「大丈夫。君が傍に居る限り、あんなふうに堕ちたりないよ」

「本当だな?」

持っていた毛布を、京楽の被らせた。

「浮竹!」

京楽が、浮竹を抱きしめていた。

「どうしたんだ、京楽」

「僕がどんなに醜くなっても、捨てないで」

「ばかか。血族のお前を捨てたりするものか!」

浮竹は、抱きついてくるく京楽の背中をなでて、頭を撫でた。

「お前が嫌だといっても、血族は解いてやらない」

「浮竹・・・・愛してるよ」

「ん、俺もだ」

京楽は煙草をもみ消して、被せられた毛布を浮竹に被せて、手を握りあって寝室に戻り、静かに眠りにつくのだった。

--------------------------------------------------------------------------

「さぁ、出ておいで、イザベル」

イザベルは、体を震わせていた。

12歳くらいの浮竹の姿をした少年が、試験官の中で震えていた。

「どうしたんだい、イザベル?」

「始祖が・・・その血族が、僕を殺そうとしている」

それは、未来を見る力だった。

「大丈夫だ。君は始祖とほぼ同じだ。年齢差はあるが、始祖と同じようになるように作った」

藍染の言葉は、矛盾していた。

始祖と同じように。

イザベルには神のような魔力もないし、神の愛の呪いの不老不死もなかった。

「僕は、行きたくない」

藍染は顔を歪めて、イザベルを折檻した。

「やめて、あなた!せっかくの最高傑作が、壊れてしまうわ」

女神アルテナに止められて、真っ赤な鮮血にまみれても、傷を再生していくイザベルに、藍染はこう囁く。

「始祖の浮竹か、血族の京楽か。どちらかを苦しめたら、君を自由にしてあげよう」

「本当に?本当に、父様」

イザベルは顔を輝かせた。

自由になれる。この仮初の命から、自由に羽ばたける。

「死した女神リンデルの魂を入れたのが間違いだったかしら」

女神アルテナは、ため息を零す。

「リンデルは、僕だよ」

「いいえ、あなたはイザベル。リンデルの魂を、神格を魂に宿させた、ヴァンパイア」

「神格?よくわからない」

「いいこと。自由になるには、その魂が神であることを利用なさい。いざとなればアストラル体になれるはず」

女神アルテナがアストラル体、神の肉体になったように。

イザベルは、劣化版の浮竹のコピーだった。

けれど、その魂は神のもの。

神を滅ぼせる存在など、一握りだ。

その一握りの中に、始祖浮竹と血族京楽が入っているこを知らずに、女神アルテナは笑い続けた。

「神の怒りを買って、苦しむといいわ、浮竹、京楽。ほほほほほ!!」

女神アルテナの声が耳障りなので、イザベルは血の鎌を作って、女神アルテナの首をはねた。

「イザベル・・・ふふふ、それでいいのよ。さぁ、始祖浮竹とその血族京楽に、目に物をみせてやりなさい」

「自由になるために・・・・・・・僕は、始祖浮竹と血族京楽を、苦しめる」

血の波となって、魔国アルカンシェルを後にする。その血の波に飲み込また者は、血液を全て吸い取られて、ミイラのようなるのだった。





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