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始祖なる者、ヴァンパイアマスター63

肉便器に入れられた浮竹の子種で、肉便器は妊娠し、1週間後に子供を産み落とした。

白い髪に翡翠の瞳をした、浮竹によく似た子供だった。

1カ月をかけて13歳くらいまで成長した浮竹の子は、男の子で名をアランと名付けられた。

ヴァンパイアマスターと女神の子であったが、ヴァンパイアロードであった。

ヴァンパイアマスターはこの世界でただ一人。

浮竹だけが、ヴァンパイアマスターだった。

ただ、アランは浮竹の血が濃いのか、限りなくヴァンパイアマスターに近かった。

「キララ」

「はい、藍染様」

名を呼ばれて、死神のキララは藍染を見た。

「アランと一緒に、浮竹と京楽を葬っていおいで」

ああ、ついにこの日がやってきた。

キララは死を覚悟した。

いっそ逃げ出そうか。そう思ったが、藍染の手からは逃れられないと察知して、死を覚悟の上でアランと共に行動を開始する。

死神。だからといって、全ての魂を狩りとれるわけではない。

特に自分より強い存在の魂は狩りにくい。

きっと、浮竹と京楽の魂を狩りとることはできないだろう。分かっていたが、黙っていた。そうでもしないと、もう用なしとして処分されるかもしれないから。

「あなた、キララの宝石は美しいのよ?宝石を生み出す子がいなくなるなんて嫌よ」

「女神オリガ、こんな時のために神族を3人ほど確保しておいた。キララより上質の宝石を生み出す者ばかりを選んだ」

「そうなの。じゃあ、キララは用済みね」

母親である女神オリガにそう言われて、一縷の望みであった希望は粉々に砕かれた。

実の母でさえ、キララを愛してなかったのだ。

「いこう、キララ。愛しているよ」

「アラン・・・・・」

キララに愛を囁くアランを、キララは愛した。

藍染と女神オリガの目を盗んで、逢瀬を重ねた。

キララの腹には、アランの子が宿っていた。

それを知らずに、アランもキララも、浮竹と京楽がいる古城に向けて出発するのであった。

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「るるるるるるーーー」

「りんりんりんーーーー」

2匹の古城で飼われてるミミックは、今日も楽しそうに古城の中を散歩していた。

「るるるるる」

「え、なんだって。古城の外でスライムの友達ができた?」

「りんりんりん」

「え、林檎をもらった?」

京楽には、ミミックたちが何を言っているの分からなかった。

ただ、るるるるるとりんりんりんと鳴いているようにしか、聞こえなかった。

「よかったなぁ、ポチ、タマ」

頭を撫でられて、ポチとタマは嬉いそうに浮竹にかじりついた。

「あっはっは、甘噛みでも少し痛いぞ」

「るるるーーー」

「りんりんーーー」

「ほう、また友達に明日会いに行くのか。果物と野菜が好物・・・この季節じゃなかなか売っていない桃がちょうどある。それをもっていけばいい」

ポチは、体内に桃を5ついれた。

なんでも、スライムを飼っている主の分も含まれているらしい。

林檎が好物だそうなので、タマが林檎を3つ体内にいれた。

「ねぇ、浮竹、ポチとタマが何を言っているのか分かるの?」

「ああ、分かるぞ。この異種族翻訳の魔法を使えば、モンスターも何を言っているのか聞こえる」

「え、なにそれ。僕も覚えたい」

「いいが、覚えるには相当な知識が必要だぞ。まずは古代文明の魔法文字が読めるのが基本だ」

「僕、浮竹が翻訳してくれたやつでいいや」

古代文明の魔法文字など、何年かかっても習得できそうにない。

諦めの早い京楽に、浮竹がスパルタで教え込むことにしたようで、次の日から古代文明の魔法文字を覚える授業がはじまるのであった。


「るるるるるる」

「りんりんりん~~~~~~」

「おう、そうか。スライムのプルンとかいう友達のところに出かけるんだな。くれぐれも人間に見つからないように」

「いってらっしゃい、ポチ、タマ」

ポチは体内に5つの桃を、タマは3つの林檎をもって、古城を飛び出し、草原や森をぬけて、友達であるプルンのいるロスピア王国の裏路地を進み、ロスピア王奥の片隅にある家で、ポチはるるる―と鳴いて、プルンを呼んだ。

「プルルン!」

プルンは喜んで玄関から抜け出すと、ポチとタマとい一緒に、草原までくると遊びだした。

「るるるるるるーーーー」

ポチが、プルンの飼い主の分まで桃をもってきたというので、それを受け取ってプルンは飛び跳ねて喜んでいた。

自分たちの分の桃を食べていく。

甘くて甘くて、ぷるんはもう1つ食べたそうにポチを見ていた。

「るるるーー?」

半分食べるかいと言われて、プルンは飛び跳ねて喜んだ。

ポチの分を半分もらい、更にはタマが出してきた大好物の林檎を3個出してもらい、3匹はそれぞれ林檎を食べた。

「プルルン!!」

追いかけっこや鬼ごっこをしているうちに、日が傾いてきた。

「りんりんりん」

タマが、そろそろ帰らないと言い出す。

それにプルンが哀しそうな顔をする。

「るるる?」

どうするの?っとポチが聞くと、プルンは飛び跳ねて、こういった。

泊まっていけばいい。

ポチとタマは、少し逡巡したが、プルンの家に1日だけ厄介になることになたった。

「るるるるるーーー」

「りんりんりんーーー」

プルンの主に自己紹介をして、ポチとタマは10畳はあろうかという広い寝室を飛び跳ねて散歩した。

「プルルン!」

その日の夜は、プルンはポチとタマの傍で、リビングのソファーで眠った。

「るるるーーー」

「りんりんりん」

次の日の朝、ポチとタマは林檎をもらい、それを食べて草原でプルンと一緒にまた遊んだ。

かくれんぼをしたのだが、草原なので隠れる場所がなく、すぐに見つかってしまう。

「るるるる」

ポチが、人間の町を探索しようと言い出す。

「りんりんりん」

タマが人間に見つかったら危ないよと言った。

「プルルン!」

結局、小さな村にいって、そこで住人に出くわさないように今度こそかくれんぼをして遊んだ。

「プルルルルン!」

プルンが鬼だった。

プルンが少し迷ったが、匂いでポチが隠れている段ボールを見つけると、それを持ち上げた。

「るるるる」

見つかってしまったと、ポチが残念そうだった。

ただタマには匂いはついておらず、いくらプルンが探しても、見つからなかった。

「プルル!」

降参だとプルンがいうと、タマは屋根の上から降ってきた。

屋根の上で、宝箱に擬態していた。

勝者はタマだった。

3匹は元のプルンの家に戻ると、そろそろ帰らなきゃいけないからと、ロスピア王国の片隅にあるその家から飛び出して、ガイア王国の浮竹と京楽が住む古城へと戻っていった。

「るるるるる」

「りんりんりん」

「ポチ、タマ、昨日帰ってこないから心配したんだぞ」

「るるるーーー」

「りんりんーーーーー」

ポチとタマは、林檎をもらって帰ってきていた。

「そうか。友達の家に厄介になったのか。林檎までもらうとは、こちらも何かお返しをしないといけないな。また遊びに行く時は言ってくれ。何が手土産をよこすから」

「るるる」

「りんりんりん」

2匹は、友達のプルンについていろいろ語った。飼い主のことは言わなかったが、きっと優しい飼い主であるのだろうと思った。

プルンのことを語り終えた2匹のミミックは、嬉しそうに自分たちの巣である暖炉にこもり、眠り出した。

興奮しすぎて、昨日の夜なかなか眠れなかったのだ。

今頃プルンは何をしているかなぁと思いながら、ポチとタマは眠った。


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ポチとタマがお土産にもらった林檎は、京楽がアップルパイにしてくれた。

それを3時のおやつの茶菓子にして、ポチとタマの友達のことに話を咲かせた。

「ポチとタマの友達は、スライムのプルンというそうだ。仲がとてもよくて、林檎が大好物で、他にも果物や野菜もたべて、肉は嫌いだそうだ」

「ベジタリアンなんだね。うちのポチとタマとよく気があったね。あの子たちドラゴンステーキが大好物の、まぁ人間の食べ物の好き雑食性だけど、どちらかというと肉食性なのに」

「そうだな。よほど気があったんだろう」

「異種族で仲良くなるのも珍しいね。まぁ、ダンジョンでは違う群れ同士を混合させて襲ってくるモンスターもいるから、必ずしも仲良くなれないわけじゃないけど。ミミックって基本単体で動くから、ポチとタマが仲良くなっただけでも珍しいのに、スライムの友達ができるなんて、まるで奇跡だね」

浮竹は、京楽の髪を引っ張った。

「早くポチとタマの言っていることが分かるように、今日も魔法文章の勉強だ」

「ええーもういいよ。ポチとタマが何を思っててもいいし」

浮竹はハリセンを持ち出すと、弱気な京楽の頭をばしばしと何回も叩いた。

「主たる者、例え相手がミミックでもちゃんと言葉を理解してやれ」

「はーい」

今日もまた、スパルタな浮竹の勉強が始まるのであった。


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「ねぇ、ここが浮竹と京楽住んでいる城?」

「はい、そのはずです」

アランとキララは、上空から浮竹と京楽が住む古城に来ていた。

そのまま中庭に降り立つと、マンドレイクがいっぱい生えていて、気味が悪かった。

「悪趣味・・・・」

「はい、そうですね」

ジリリリリリン。

警報のようなベルが鳴って、にわかに騒がしくなった。

最初に襲ってきたのは、浮竹の血で作られた戦闘人形たちであった。

魂がないので狩りとれず、キララは魔法を唱えた。

「ファイアアロー」

初歩的な魔法であるが、威力は十分に高く、戦闘人形たちを蒸発させていく。

「どんな奴がきたかと思えば、浮竹にそっくり。浮竹の子種でも盗んで、女神アルテナにでも産ませたのかい」

出てきた京楽の言葉は、それが最初だった。

「ああ、その通りだ。僕の名はアラン。始祖浮竹と女神アルテナの子だ」

「京楽、いくら俺に似ているからって、油断するんじゃないぞ」

「すでに遅いんじゃないの」

アランは、そこら中に血の糸を張り巡らせていて、それで浮竹と京楽をがんじがらめにした。

「今だよ、キララ。こいつらの魂を狩って」

「はい」

キララは死神の鎌を取り出して、まずは京楽の魂を狩ろうとした。

けれど、力の差がありすぎて、魂は狩りとれなかった。

「だめです、アラン様。私にはできません」

「なんだと?使えない死神だな」

「だって、私は1つを無理やり2つにされた。元の力の半分しかありません。元の力があれば、こんな奴らの魂を狩りとれるのに」

「それは聞き捨てならないねぇ。力があったら魂が狩りとれる?本当に、そんなこと思ってるんだ」

京楽は、血の魔法で自分と浮竹を戒める血の糸を切った。

「何故だ!僕はヴァンパイアマスターに限りなく近い。僕の血の糸を切れるだなんて」

「単純に、力の差だよ」

京楽は血の鎌を作り出すと、まずはアランの背を切った。

「ああああ!これしきの傷!」

アランもまた血の鎌を作り出して、京楽の鎌と切り結び合う。

その間に、浮竹はキララの相手をしていた。

「無理やり藍染に従わされている。違うか?」

「それは・・・・・・」

「どうやら、お腹に子がいるようだし、死神の力を一切使わず、もう俺たちの目の前に現れないと誓えるなら、見逃してやろう」

「え・・・」

意外な言葉に、キララが浮竹を見つめる。

「アランという、あれはどのみち処分する。父親があれだとしても、子には関係のないことだ。どうする?約束するなら、白金貨10枚を渡そう」

白金貨1枚あれば、一生裕福に暮らしていける。

キララが迷った末に、浮竹と交渉した。

「お金を、ください。もう二度とあなたたちの前には現れません」

「交渉成立だ。死神の鎌をこちらへ」

「はい」

死神の鎌と引き換えに、白金貨10枚を受け取り、キララはその場から逃げ出した。

「おい、キララ!」

「さようなら!」

「あの裏切者めええええ」

憤怒にもえるアランの周囲に、ぽっ、ぽっ、ぽっと鬼火が灯る。

「京楽、シールドの結界魔法だ!」

「分かったよ」

「ゴッドフェニックス、カイザーフェニックス、エターナルフェニックス・・・・トリプルファイアフェニックス!!」

「「マジックシールド!!」」

炎の最高位魔法を、二人はシールドで防いでしまった。

「なんだと、僕の最高の魔法が!」

「いくらヴァンパイアマスターに近いからと言って、力までそうだとは限らない」

浮竹が作り出した血の刃で、アランは胸を貫かれていた。

「父様・・・慈悲を」

「お前のような子供をもった覚えはない!」

「ああああああああ!!」

アランは持てる魔力の全てを槍に変えて、浮竹に向かって放つ。それはシールドを容易く破壊して、浮竹の心臓を貫いた。

「はははは、やったぞ、俺の勝利だ!」

「浮竹!よくも・・・・・・・」

浮竹は、心臓を破壊されながらも、平気そうに動いた。

血の槍を作り出し、アランの心臓を貫く。

「何故・・・何故、心臓を破壊したのに生きている・・・・・」

「知らなかったのか?俺は始祖である神の愛の呪いによって、不老不死だ」

「不老不死・・・、ならば、俺も!」

「無理だよ。君は不老不死じゃない。さよなら、哀れな浮竹の息子」

京楽は、作り出した血の刃でアランの体中を刺していた。

「藍染様・・・・・・」

その言葉を残して、アランは事切れた。

京楽は魔神の咢を開いて、その魂を貪る。

「カラミティファイア!」

浮竹は、アランの遺体を燃やして、灰にした。

「藍染の奴・・・・俺の子種を入手したようだ。しばらく俺の血を引く刺客がくるかもしれない・・・・って、京楽?」

「君のとても若い時ってあんなに可愛いんだね。今度あの年齢で僕の相手をしてよ」

「アホか!ずっとそんなこと考えていたのか!?」

「うん」

浮竹はアイテムポケットからハリセンを取り出すと、思い切り京楽の頭をばしばしと殴った。

「浮竹がいじめる~」

「戦闘の最中に、よくそんなことが考えられるな!」

「そういう浮竹こそ、死神のキララに金を与えて見逃した」

ぎくりと、浮竹が固まった。

「あれは、哀れだから・・・・・」

「いつか、子を産んでその子が敵討ちだって来ても、知らないからね」

「それくらい、承知している!」

浮竹と京楽は、もつれあいながら倒れた。

「あの子、すごい魔力だった。シールドを張るのに力を抜いていたら、きっと黒こげになっていた。君の血の力ってすごいね」

「正確には血統だろう」

「うん。君がまるで僕以外の伴侶と睦みあってできた子みたいで、嫉妬した。だから、君を抱くよ?」

「どういう理屈だ」

「さぁ、ただのこじつけかもね」


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「あ、あ!」

浮竹は、背後から京楽に貫かれて、ぽたぽたと精液をシーツの上に零していた。

「んあっ!」

ぐちゅぐちゅと、リズミカルに突き上げてくる愛しい伴侶の動きに合わせて、声が漏れる。

「あ、やだ、そこやだあああ」

嫌がる浮竹のいい場所を突きあげてやると、浮竹は背を弓ぞりにしあならせて、オーガズムでいっていた。

「ひあああああ!!」

京楽は気に留めることもなく、浮竹の奥へ奥へと熱い楔を打ちこんでいく。

ごりっと、最奥に入ってこられて、浮竹はまたシーツの上に子種をまき散らしていた。

同時に、京楽も子種を浮竹の胎の奥へ注ぎこむ。

「あ、もっと・・・もっと深く」

もっととねだる浮竹の最奥にぐりぐりと侵入したら、浮竹はびくんびくんと体をけいれんさせていた。

「あああ、やああああああああ!!!」

「君がもっと深くって言ったんだよ?」

「やあああ、深すぎるううう、だめえええ」

「でも、そこがいいでしょ?」

ゴリゴリッと奥を抉られて、浮竹はまた射精していた。

「ああああ!!!」

「んっ、僕もいくよ。受け止めてね」

「んああああ!!」

京楽の子種を最奥で受け止めて、浮竹は妖艶に笑う。

「もっと・・もっとくれ、春水、お前の子種を」

「仕方のない子だねぇ」

浮竹をあおむけにさせて、正常位から浮竹の右の太ももを肩にもちあげて、ずちゅりと音を立てて侵入する。

「あ、もっと・・・・」

「もうすぐあげるから、少し待ってね」

ずちゅりずちゅりと音を鳴らして、浮竹の中を出入りする。結合部はローションと互いの液体が混ざり合ったもので泡立っていた。

「んっ、いくよ。全部、飲み干してね」

「あ、飲む干すから、全部、俺の中に全部注いでくれ」

すでに3回は出したのに、京楽のものまだ硬くて、浮竹の奥にびゅるびゅると精子を注いだ。

「あ、や、いっちゃう!!」

子種を注ぎ込まれながら、オーガズムでいっている浮竹の太ももに噛みつき、吸血してやると、浮竹は泣いて嫌がった。

「やあああ、いってる時に吸血しないでえええ。頭が変になるうう」

「大丈夫、ただ気持ちいいだけだよ」

「やあああ、んあああああ!!!」

浮竹は盛大にいった後で、ぷしゅわあああと潮を漏らした。

「やああ、頭変になって、おもらし、しちゃった・・・・・」

「それはいけない子だ。お仕置きがいるね。愛してるよ、十四郎」

「俺も愛してる、春水・・・・・・」

ぐちゅりと中で円を描かれて、浮竹はまたいっていた。

「やああ、いくの、いくの止まらない、どうしてええ」

「さぁ、どうしてだろうね?」

別に媚薬も盛ってないし、普通のセックスだった。

京楽は硬さを失い、何も出なくなるまで、浮竹を犯した。

浮竹はぐったりしていた。

「大丈夫、浮竹」

「あんなにやられて、大丈夫なわけがないだろう。早く風呂に入れろ」

「はい、調子に乗りすぎました、ごめんなさい」

浮竹をシーツごと抱き上げて、風呂場に向かう。

前の古城より狭いが、それでも10人以上は入れそうな湯船にはたっぷりとお湯が満たされており、その中に浮竹は入れられた。

「あ、また湯の中でかき出すのか」

「そのほうが、かき出しやすし」

「んあああ、お湯が、お湯が中に・・・・」

「出る時に、お湯もかき出してあげるから」

浮竹は、京楽の指の動きだけでいってしまっていた。

「どしたの、今日の浮竹。すごいよ?」

「あ・・・・・昼に飲んだジュースj、血の帝国産のものだけど、きっとブラッディ・ネイが何か媚薬のようのものをいれたのかもしれない」

実際、その通りだった。

何気にお中元のように受け取って飲んだジュースは、媚薬入りだった。

「今度から、血の帝国か送られてきたものは食べないし、飲まない」

「まぁ、それが無難かもね」

京楽は、浮竹の中からお湯をかき出して、髪と体を洗ってやった。

「ん・・・・きもちいい」

「変な意味で?」

「違う。純粋に心地よいだけだ」

浮竹を風呂からあがらせると、その長い白髪の水分を拭きとって、体もふいてやり、寝間着に着替えさせた。

「ん」

「はいはい」

甘えられて、お姫様抱っこして、京楽は浮竹を寝室に連れ戻すと、いったんソファーに身を預けさせて、真新しいシーツをかけてその上に寝かせた。

「おやすみ」

「おやすみ、いい夢を、浮竹」

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「そうか。アランは魔法ではそこそこいけたが、キララが魂を狩り損ねたか」

「あなた、キララを探して。お仕置きをしないと」

「キララの死神の能力は役に立ちそうもない。もう用済みだ」

藍染は、キララを放置することにきめた。

「ミライ。あなたは、キララのようになっては駄目よ?」

「はい、オリガ母様」

「いい子だ、ミライ。絶対者を滅ぼすには絶対者を宛がう。お前は、絶対者だ。いずれ、浮竹を滅ぼしてもらう」

「はい、藍染父様」

歪に歪んだ藍染の世界で、狂った愛を受けながら、ミライは成長を続ける。

「次の子も、アランほど魔力が高ければいいが」

藍染は、肉便器に浮竹の子種を注ぎ、ついでに入手した京楽の子種も注いだ。

「双子だ。浮竹と京楽の子を産んでくれよ、女神アルテナ」

魂を失い、ただの肉便器と化したアルテナであった肉塊は、その言葉に嬉しそうに震える。

やがて、浮竹と京楽の子が生まれた。

二人は仲が良く、何処にいくのも一緒だった。

「あの二人は、まるで幼い浮竹と京楽のようだね」

普通ならっ微笑ましい光景だろうが、藍染にしてみれば、反吐が出るというやつだった。

「適切な教育を施そう」

そうして育った肉便器と浮竹と京楽の子たちは、瞳に色がない少年へと成長した。

「藍染様は絶対!藍染様は世界の全て!」

浮竹の子はシロと名付けられ、京楽の子はハルと名付けられた。

実際の浮竹と京楽の名前からきていた。

「さぁ、逃げてきたふりをして、自分の父親たちを葬るんだ。いいね?」

「「はい、藍染様」」

二人の哀れな子羊は、浮竹と京楽の元に向かうのであった。



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執事京楽、主浮竹

浮竹には幼い頃から執事がいた。

黒い燕尾服を着て、穏やかに微笑むその姿がすきだった。

名は京楽春水。

浮竹は名前を浮竹十四郎という。浮竹家は伯爵の家柄で、両親は浮竹が幼い頃に病死してしまい、僅か8歳で浮竹は当主になった。

他に兄弟姉妹もいなくて、友人もおらず、家庭教師をつけられたが、周りに居る者たちはみんな浮竹のもつ金目当てだった。

僅か8歳で結婚されられそうになった。

浮竹は当主の座を放棄して逃げ出そうとしたが、周りの大人がそれを許してくれなくて、友達もおらず、心を許せる相手は気づけばだ誰もいなかった。

浮竹は、事故で両親を失い、友達もいない寂しさを紛らわすために、だめ元で黒魔術で両親を作り出そうとした。けれどそれは、悪魔召還の儀式だった。

勝手も分からず、黒い本の通りに自分の血で描いた円陣には、中心に人が立っていた。

「父上?」

「残念。僕は悪魔。悪魔の中の上位悪魔。いわゆる魔王ってやつだね。名は京楽春水」

「魔王・・・・・俺を、食うのか?」

目の前の白い髪の少女・・・いや、少年は、魔王と名乗った京楽に一切の恐れを抱かずに、ただ見つめていた。

「んー。君の魂は極上においしそうだ。願いをなんでも叶えてあげよう。ただし、その魂をくれるなら、ね」

「じゃあ、俺と友達になってくれ!」

「は?」

京楽は目を点にしていた。

てっきり、地位や名誉、財産などが欲しい、国が欲しいと言い出すと思っていたのだ。

「あはははは。魔王の僕を呼び出しておいて、友達になってくれ?おおいに結構じゃない。君の友達に、なってあげるよ。期限は君が成人するまで」

「成人するまで・・・・・・」

浮竹にはこうして執事ができた。正体は魔王という、執事が。

京楽は、家庭教師や住み込みの者たちを追い出して、屋敷を京楽だけで切り盛りし始めた。

魔王として配下を生み出し、メイドやコックを、雇う事なく京楽の血から作り出された人形で屋敷の管理を任せていた。

「さぁ、十四郎坊ちゃん、お勉強の時間だよ」

家庭教師には、京楽本人がついてくれた。

座学からテーブルマナー、社交界のダンスの踊り方やら、身のふるまい方。全てを教えてくれた。

浮竹が12歳になる頃には、浮竹はますます美しく成長して、その魂は輝かんばかりで、とてもも美味しそうで、とても愛しく感じた。

12歳で社交界デビューを果たした浮竹は、その財力を狙う貴族の子女に囲まれて、気分が悪いと言ってきた少女を介抱していると、いきなり既成事実を作られそうになった。

京楽が、すんでのところで助けてくれた。

「君は、身の丈にあった相手を選ぶことだ。十四郎坊ちゃんにはつりあわないよ」

「いやああ、浮竹様の執事に襲われたあああ!!!」

少女はドレスを破り、騒ぎ出した。

すぐに京楽は逮捕されて、貴族への暴行未遂ということで死罪となった。

「京楽・・・いなくなってしまうのか?俺を置いていくな!」

「うん。もちろんだよ」

京楽を取り囲んでいた警備の者たちも、社交界にきていた貴族や従者たちも、みな昏倒させた。

その日の記憶を、京楽は全ての人間から奪った。

「君の魂も心も体も、僕のものだ。誰にもあげない」

「京楽・・・・・」

浮竹は、背伸びをして京楽の唇に唇で触れていた。

「十四郎坊ちゃん!?」

「俺はお前が好きだ。友人としても、家族としても。そして、1人の人間としても」

「そうは言われても、僕は悪魔の魔王だよ?」

「それでも、好きなんだ」

浮竹の周囲には、浮竹の金を目当てに集まる者しかいなかった。

そんな心寂しい状態で、唯一の温もりを与えてくれる相手を、どうして好きにならないでいられようか。

「面白い子だ。少し遊ぶのもいいか」

京楽の中で悪戯心が芽生えた。

浮竹が16になる頃、縁談の話が降り積もるようにわいてきた。

それを、京楽が全てつっぱねて、断った。

社交界に出ることはあったが、縁談の話が舞い込む度に、京楽が邪魔をしてきた。

「浮竹様、悪いことはいわないわ。あの京楽という執事、辞めさせたほうがいいわ。あなたの縁談の話の邪魔ばかりするのですよ」

叔母にあたる人の言葉に、浮竹は首を横に振る。

「あれは俺のものだ。俺がどうしようが、俺の勝手だ」

浮竹は、翡翠色の瞳で京楽の鳶色の瞳をいつも見ていた。

その底に浮かぶ欲を知りながら、京楽の傍にいた。

そのまま時は流れ、いつしか18の成人の時を迎えていた。

「今日でお別れだな」

「え、どうして?」

「だって、友人としていてくれるのは、成人の時までだろう?俺は18歳。成人した」

いつもの黒い燕尾服で、京楽はくつくつと笑い出した。

「俺の魂をくれてやる。この世に未練があるとしたら、お前ともっと時を過ごしたかった。それだけだ」

「十四郎坊ちゃん、悪魔の花嫁って知っているかい?」

「悪魔の花嫁?」

浮竹は首を傾げる。

「そう。悪魔やヴァンパイアは、気に入った相手を同族にして迎え入れる。それが悪魔の花嫁だよ」

「まさか・・・」

「そう、そのまさか。僕は君が気に入った。悪魔の花嫁として迎え入れたい。魂をいただくだけじゃ、気がすまない。その心も体も何もかも、僕のものにしたい」

浮竹は、真っ赤になった。

「その、心と体というのは・・・・」

「君が想像している通りだよ」

ふっと耳に息を吹きかけられて、浮竹はぞくりとなった。

「あ、京楽・・・・」

「十四郎坊ちゃん。いや、十四郎。僕を春水って呼んで」

「春水・・・・」

「ああ、いいね。ぞくぞくするよ」

京楽は、浮竹の魂を手中に収めて、それを浮竹に返した。

「あ、どうなったんだ?」

「君は悪魔になった。僕の同族で、僕の花嫁だ」

そのまま、京楽は浮竹の執事であり続けた。

浮竹は、夜になると京楽の部屋を訪れる。

「おや、また来たのかい」

「欲しい・・・お前が、欲しい」

魂まで手中に収められて、浮竹は完全に執事であった京楽のものになっていた。

「んっ」

舌が絡むキスをされて、浮竹は京楽の肩に噛みつく。

「この前つけたキスマーク、まだ残っているね」

浮竹は京楽を欲した。それも頻繁に。

悪魔の花嫁となり、悪魔としてなってしまったせいかは分からないが、魔王の子種を受けて、正気でいられる者などいない。

浮竹は昼は正気を保っているが、夜になると京楽を求めた。

そうなるように、京楽がしむけた。

「今夜は、寝かさないよ」

「ああ・・・春水、愛してる」

「僕も愛してるよ」

くつくつと、京楽は笑う。

愛なんて陳腐な台詞はいらないけれど、それで浮竹が安心するなら、いくらでも愛を囁いてあげよう。

そう思った。

「ああ、ああああ」

京楽に貫かれながら、浮竹は京楽の全部が欲しくて、その背中に手を回す。

「十四郎坊ちゃん、淫乱になっちゃったねぇ」

「ひあああ!」

ごりっと奥を貫かれて、浮竹は自分の腹の上で射精していた。

「もっと・・・もっと、お前をくれ」

浮竹の背中には、肩甲骨のあたりに悪魔の花嫁を意味する翼の文様があった。

「あああ!もっと!」

「十四郎、愛してるよ」

浮竹の胎の奥に子種を注ぎ込んでやり、そのまま京楽は浮竹の体の一部をいじり、孕ませた。

「あああ、やあああ、孕んじゃう!」

「僕たちの子だよ。元気な子を産んでね」

京楽は何度も浮竹の体内に子種を注いだ。

浮竹はオーガズムでいきながら、京楽のことを思う。

伴侶はいれど、子がいないとこの伯爵家を継ぐ者がいなくなる。

だから、京楽は浮竹に子を産ませるような体にした。それは一時的なもので、帝王切開で男児を出産した後は、元の普通の男性に戻っていた。

「んああああ!」

今日もまた、京楽の部屋で浮竹は啼いている。

生まれ落ちた赤子は、二人で慈しみながら育てた。いずれ、社交界でお披露目をするときもあるだろうし、母親は誰だと聞かれることもあるだろうが、息子に母親はもう他界してしまったと言って聞かせてある。

「んっ、もっと・・・・・」

まだまだだと求める浮竹抱き寄せ、銀の糸がひくようになるまで、口づけをかわしあう。

「春水、愛してる」

「僕も愛してるよ、十四郎」

浮竹は、18歳の頃から見た目が変わらなくなった。

それは悪魔の花嫁になったせいであり、悪魔となったせいでもあった。

訝しがる親戚たちの記憶を操作して、京楽は浮竹には結婚した女性がいて、すでに他界して子だけが残されたという設定にした。

「ふふふ。よく寝ているね」

2歳になったばかりの我がを抱きあげて、京楽は人間として生きる生活を送っていた。

「そろそろ、昼寝の時間だ」

「そうだね。よく食べて寝て、大きくおなり。時期浮竹伯爵家の当主で、魔王候補だ」

「魔王になんて、俺がさせないぞ」

「まぁ、そこらはこの子は大きくなってから、家族会議かな」


浮竹十四郎。

伯爵家の当主であり、悪魔の花嫁であり、悪魔でもある。

京楽春水。

浮竹伯爵家の執事であり、召還された悪魔で魔王であり、京楽と浮竹の間にできた子の父であった。

二人は、子がある程度の年齢に達しても、若い姿のままで居続けた。

京楽が国中の人間の記憶を操作して、見た目が変わらないことに関して疑問を抱かないようにしていた。

「京楽父様、浮竹父様、いってきます」

我が子は、家庭教師をつけたりせず、平民と交じって学校で授業を受けさせて、育てていた。

テーブルマナーは社交界のダンス、身の振り方は執事である京楽が教えてくれた。

結ばれても、京楽はあくまで執事であった。

それは京楽のポリシーであり、この世の召還されてはじめてついた職業が執事であり、浮竹の身の回りの世話をするのが好きなせいでもあった。

悪魔京楽。

そっちに世界では魔王として名が売れている京楽だったが、今はただ、この幸せな安寧に浸っているのだった。

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お花見

桜の花が満開だった。

京楽は浮竹を誘って、花見に出かけた。

花見の場所は、京楽の屋敷の一つだった。

「何で花見で、お前の屋敷にこなきゃいけないんだ」

「いいじゃない。おいしい食べ物と君の好きな果実酒を用意するから」

「仕方ない・・・・・・」

浮竹は、京楽にほだされて京楽の屋敷の一つに来ていた。

縁側で、満開の桜の花が見れるようになっていた。

「さぁ、僕らも解放的に!」

院生の服を脱ぎ出す京楽にアッパーをかまして、運ばれてきた食事を食べる。

今は短いが、春休みだった。

浮竹は実家に帰ることもなく、寮で過ごす予定だったが、京楽に外に連れ出されて今に至る。

「はっくしょん」

4月とはいえ、まだ寒い日もある。

京楽はにょきっと起き出して、上着をもってくると、ふわりと浮竹にかぶらせた。

「すまんな」

「君が風邪をひいたら、なかなか治らないからね」

「確かに、お前の言う通りだな」

「ほら、お酒飲もう」

お互いの杯に、酒を満たしていく。

京楽のものには高級な日本酒を、浮竹のものには甘い果実酒を。

桜の花が風に揺れて、杯の中にひらひらと落ちてきた。

「綺麗だね」

「ああ、綺麗だ」

「僕は、桜を背にしている君が綺麗だって言ってるの」

「はいはい」

「だから、ここは裸になって互いの温度を!」

また院生の服を脱ぎ出す京楽の股間を蹴って、浮竹は果実酒をあおり、食事を楽しんだ。

「お前の変態度には呆れるが、いい花見になった」

「そう良かった」

寮の部屋に戻ると、京楽は何かごそごそしだした。

「なんだ、また俺のパンツでも盗んでいるのか」

「え、盗んでいいの?」

「いいわけないだろ!」

綺麗な右ストレートが京楽の鳩尾に決まり、京楽はゴロゴロと痛みを味わいながらも、にんまりと笑んでいた。

「何だお前は」

「んー。押し花してたの」

「何の花を?」

「そりゃもちろん、桜の花を。君と花見をした記念に」

「完成したら、俺にもくれ。栞にしたい」

桜の押し花とは、京楽にしては風流だと思ったが、下心ありありのようだった。

「この押し花が完成した時、君と僕は・・・むふふふふ」

「何不穏なこと考えてるか知らんが、俺は押し花を受け取るだけだからな」

「その俺にあんなことやそんなことを」

そんな京楽に、浮竹は噛みつくようなキスをした。

一瞬のことだったので、京楽には実感がなく。

「もう一回!今度はもっと濃厚なやつを」

「誰がするか。さっきのは、花見の礼だ。ありがたく思え」

「ありがたいありがたい。だからもう一回!」

何度もそう言ってくる京楽に、呆れて浮竹は京楽を抱きしめた。

「今はこれで満足しろ」

「うん・・・・」

京楽は、浮竹を抱きしめ返していた。

キスとハグはするが、それ以上はしない。

それが二人の暗黙のルールだった。いつも京楽が破りそうになるけれど、その都度に浮竹の拳がうなりをあげた。

「そうだ。今から、ちょっと散歩に出てみない?」

「もうすぐ消灯時間だぞ」

「大丈夫。すぐに終わりるから」

京楽に手を繋がれて、二人は寮の部屋を後にする。

京楽が浮竹の手を繋いでやってきた場所は、川の橋の上だった。

風がふいて、満月の中、夜桜がきらきちと散っていた。

「これは・・・また、いい場所を知っているものだな」

「君と、いつかこの夜桜をみたいと思っていた」

「その願いが叶ったら?」

「君を僕だけのものにする」

抱きしめられて、キスをされた。

いつアッパーがきてもいいように身構える京楽は、浮竹の笑い声にぽかんとした。

「はははは、こんなに綺麗なものを見せてもらったんだ。殴らないさ」

「じゃあ、パンツ盗んだけど、それも殴らない?」

「それとこれとは話は別だ」

京楽の耳をつねりながら、あの頭に拳をうならせる。

「ぱんつの1枚や2枚いいじゃない」

「そう言って、去年お前が盗んだパンツの数が200を超えたよな」

びくっと、京楽がまた怒られると身構える。

「お前が盗んだから、お前の金で新しいのを買うだけだ」

「じゃあ、紐パンとかはいて・・・・おぶっ」

頬をビンタされて、それでも京楽は嬉し気だった。

「お前、本当に変態だな」

「うん。僕は変態だよ」

「そこは否定しろよな」

「否定したって、変態なことは変わらないから」

そんな京楽に、浮竹は頭を抱えるのだった。

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魔王と勇者

桜の花が満開だった。

魔王浮竹は、前に言った通り、無礼講の花見パーティーを開催した。

町からコックを雇って、その日のために豪華な食事が用意された。

魔王浮竹と勇者京楽と、後は下働きの者や摂政の魔族なんかが参加していた。身内でのささやかパーティーのはずだった。

「なかなかうまいな、これ」

新勇者は、堂々と魔王城に乗り込んで、無礼講の花見パーティーに交じっていた。

「サンダー・・・・」

「浮竹、今日は無礼講でしょ?いいじゃない、新勇者パーティーがいたって」

新勇者は、タッパをもってきて、料理を詰めるだけ詰め込んでいく。

新勇者だけでなく、女僧侶、少年魔法使い、獣人盗賊、青年戦士まで、タッパーに料理をつめこんでいた。

「浮竹様、どうしましょう!料理の数が足りません!」

「急いで町に買い出しいにってくれ」

「浮竹、我慢だよ、我慢」

「京楽、俺はどうしてもあのモヒカンをやめて辮髪(べんぱつ)になっている、新勇者の頭を燃やしたい」

タッパがいっぱいになたら、限界まで料理を貪る新勇者パーティーに、他の魔族たちがざわざわとしていた。

「ええい、ヘルインフェルノ!」

「あちゃあ!あーちゃちゃちゃちゃちゃあちゃーー!!」

すっかり満州人になりきった新勇者は、拳法を披露しうようとするが、大切な自分の髪の毛が燃えていると知って、わめきだした。

「誰だ、俺の優雅な辮髪を燃やす奴は!」

「どうせアデランスだろ?」

浮竹はにこにこしていた。

その笑顔が怖いと思ったのは、何も京楽だけではないだろう。

「何故ばれている!」

「前のモヒカンもアデランスだったろう」

「べ、別に銀の食器を全部盗んで売ったりしてないからな!」

「へぇ、銀の食器がなくなったの、何故知ってるのかな?」

にこにこ笑う勇者の京楽に、新勇者は指をつきつけた。

「魔王なんかとできている元勇者のお前には分かるまい!俺は世界を救うために冒険をして、この魔王城まできたんだ!魔王浮竹の首をとらない限り、近くに住み着くからな!そして冒険をしていない間金がないから、魔王城のものを盗んで売る!これは正義だ!」

「ほう、正義か。じゃあ、魔王が新勇者を滅ぼすのも正義だよな?」

「え、あ、あれ?」

京楽は、すでに遠く離れていた。

他の魔族たちも、浮竹から離れていた。

「サンダーボルテックス!」

しびびびびび。

「なぜだああああ」

新勇者は、黒焦げになりながらも、魔王である浮竹に魔法を放った。

「カラミティファイア!」

それは、浮竹の白い髪の一部を焦がした。

「新勇者。僕の浮竹を傷つけるとは、いい度胸だね」

「へ、あ、勇者京楽、目を覚ませ!お前はこの魔王に操られているんだろう!」

「へぇ、僕が操られているって?LV限界を突破した僕が?」

「何、レベル限界突破だと!聞いていないぞ!お前たち、チートだな!ずるをしているんだろう!」

「魔王の加護に、レベル限界の突破がある。それがあれば、レベル500まであげられる」

「なにぃ!レベル500だと!お前たち、レベル99をこえているのか」

「こえてるとも。500に近いよ」

「このチート勇者とチート魔王め!正義の剣をくらえ!」

人造聖剣エクスカリバーで斬りかかってきた新勇者を、浮竹はその顔面をハリセンで叩いた。

「おぶ!」

「新勇者を一番ボコボコにした者に、金貨100枚をあげよう」

「まじか」

「やるしかないっしょ」

「俺、やる」

「はらへった」

魔族からの声はなく、代わりに新勇者パーティーが名乗りでた。

少年魔法使いは火の魔法で新勇者をあぶり、女僧侶が杖で新勇者の頭を勝ち割った。

獣人盗賊はナイフで新勇者の服を切り刻み、青年戦士は巨大な岩をもちあげて、それを新勇者に投げつけた。

「きゃあああ、裸にされたあああ!痛いし熱い!!酷い!!」

少年魔法使いは、トドメの魔法をさす。

「ダークエッジ」

黒い闇の刃は、新勇者の少しだけ残っていた辮髪を丸ハゲにした。

「勝者、少年魔法使い!」

わーわー。

魔族たちは喜んだ。

新勇者は、フルチンにされたあげく、辮髪を失い、泣いていた。

「酷い!俺はただ銀の食器を盗んで売って、パーティーの魔物討伐の上前をはねていただけなのに!」

「上前をはねていたですってええ!!」

新勇者は、さらに女僧侶にボコボコにされた。

少年魔法使いは、本当に金貨100枚を渡された。

「よし、今日は焼肉食い放題だ。新勇者はくるなよ」

「酷いいいいいい」

「酷いのはどっちだ!パーティーで退治したモンスターの報奨金はきっちり5分割すると決めていただろう。その上前をはねていたなんて、お前が悪い!」

「うわあああああん!魔王浮竹、あの新勇者パーティーを退治してくれ」

鼻水を垂らしながら全裸で近づいてくるものだから、浮竹は新勇者の足をひっかけてこかした。

「うわあああん。みんな俺をいじめるうううう!!」

「まぁ、とりあえず星になっておいで」

京楽が、新勇者の首を掴むと、そのまま魔王城の彼方の空へ投げ飛ばした。

キラーン。

新勇者は星になった。

花見パーティーは、気にせず続けられ、新勇者のいない新勇者パーティーは、食べて飲んで騒ぎあうのだった。

「新勇者、復活できるのか?」

「さぁ、それはパーティーメンバー次第じゃないかな。まぁ、一応パーティーのリーダーだから、追放はないと思うよ」

「ならいいんだが」

魔王は魔王なりに、新勇者のことを気にかけていた。

それは本当の勇者である京楽もだった。

馬鹿にして吹っ飛ばすが、また復活してきてくれないと楽しくない。

そう思うのであった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター62

ウツクは、見た目こそ邪神ザナドゥにそっくりだし、記憶を継承していたが、浮竹を友人として愛しいと思う気持ちはなかった。

ただその血を与えられて血族となり、富と地位と名誉と力が欲しかった。

浮竹を服従させれば、血族になれると思っていた。

それが大きな誤りであると気づいた時には、遅かった。


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「兄様!今度の古城もいいかんじだね」

「げ、ブラッディ・ネイ。何しにきた」

「やっぱり、兄様覚えてない。明日はボクの誕生日だよ」

「え、そうだったか?」

浮竹が首を傾げる。

そういえば、ここ数年妹の誕生日を祝っていなかったことを思い出す。京楽の誕生日を祝い、自分の誕生日を、毎年ではないが祝ってもらったことはあるが、実の妹の誕生日なんて、日にちすら覚えていなかった。

「ああ、そうだったか、明日だったな」

じとーっと、ブラッディ・ネイは浮竹を見つめた。

「兄様、ボクの誕生日の存在自体、忘れてるね?」

「そ、そ、そんなことないぞ。ちゃんとプレゼントも用意してある」

「ほんと、兄様!明日を楽しみにしてるね!」

ブラッディ・ネイは目をきらきら輝かせて、血の帝国に戻っていった。

「ねぇ、浮竹・・・・・」

「やばい、忘れてた。妹の誕生日など、存在自体を忘れてた・・・くしょん」

「風邪でも引いたの?」

「いや、東洋の俺と浮竹が噂でもしているんだろう」

「ああ、それはありそうだね・・・・・って、現実逃避してる場合じゃないでしょ。プレゼント、何にするの」

「そうだな、生きたマンドレイクを20本くらい・・・・・」

浮竹はかなり本気だった。

「絶対、性別転換の薬飲ませて襲ってくるよ」

「ぐはぁっ!あいつならやりかねん。何か装飾品でも買ってくるか」

「もう夜だよ。どこの店も、きっとしまってるよ」

「ぐはぁっ!どうする俺!操の危機だ!」

「別に、装飾品ならなんでもいいんでしょ。そこらのS級ダンジョンの財宝にあった何かの装飾品でも贈ればいいんじゃないの」

京楽は、ブラッディ・ネイの生誕祭には興味はなかったが、浮竹が行くならついていくつもりだった。

「京楽、お前実は頭が良かったのか」

「何それ!まるで僕をバカだと思ってるみたいじゃない」

「いや、バカだと思ってた」

「酷い!」

泣き真似をする京楽を放置して、アイテムポケットからこのまえS級ダンジョンで拾ったお宝を床に並べる。

金と銀、ミスリル、ミスリル銀のインゴット、金貨、宝石・・・・。

「なんかぱっとしないなぁ」

金貨や宝石を贈ったところで、喜びはしそうだが、金銀財宝を見慣れているブラッディ・ネイが心から喜んでもらえそうなものもない。

浮竹は、さらに財宝をだした。

すると、その中に大きなスターサファイアをあしらったネックレスがあった。

浮竹は、何を思ったのかそのネックレスを錬金術の釜に投げ入れて、生きたマンドレイク、ドラゴンの血、後何かの液体を注ぎこんで煮た。

煮ること30分。

スターサファイアのネックレスは、輝きを増して、持ち主の魔力を高める能力が付与されていた。

「恐るべし浮竹・・・錬金術でそんなものに加工できるだなんて」

「ふっ、俺もミスリルランクの最高位錬金術士だ。こんな加工、朝飯前だ」

「でも、エリクサーの調合に失敗して、錬金術の館爆発させるもんねぇ」

京楽がしみじみと言う。

「エリクサーは成功率が低いんだ!それに調合に失敗したら爆発するのは当たり前だ!」

「そうなの?1週間前、乱菊ちゃんちに遊びにいったけど、爆発なんてしてなかったよ」

「まだ彼女はプラチナランクだろう。エリクサーを調合できないはずだ」

「でも、浮竹ってエリクサー以外でもたまに失敗して館、爆発させてるよね」

「誰にでもミスはある!」

浮竹は、顔を真っ赤にしながら否定した。

「まぁ、別になんでもいいんだけど」

浮竹はアイテムポケットからハリセンを取り出して、京楽の頭を殴る。

スパーン。

いい音がした。

「痛いよ、酷い、浮竹!何するの!」

「俺のほうが傷ついた!プライドを傷つけられた!だから、今日は抱かせてやらない!」

「えー。今日は前から約束してたじゃない」

「抱かせてやらないって言ったら、抱かせてやらない」

「十四郎、愛してるよ」

耳元で低音ボイスで囁かれて、耳を甘噛みされて浮竹はビクンと反応した。

「このばかっ!」

真っ赤になった浮竹は、すでにスイッチが入ってしまったかのようで、浮竹の背に手を回して、何度も口づけを繰り返すのであった。


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「ああああああ!!寝坊した!!!」

昨日遅くまで睦み合ったので、起きたら昼を過ぎていた。

「京楽、すぐ着替えろ!血の帝国にいくぞ!」

「あれ、結局生誕祭には行くの?」

「行くに決まっているだろう。行かなきゃ、ブラッディ・ネイがこっちの世界で半月はずっと居座りそうだ」

「うわあああ、それは急がないと!」

浮竹と京楽は、皇族の正式な格好をして、顔を洗って歯を磨いて、食事はしないまま血の帝国へと繋がる地下の空間転移の魔法陣に乗る。

気づくと、血の帝国が広がっていた。

「急ぐぞ」

宮殿より少し離れた位置に設置されているので、ヴァンパイアに翼を広げてブラッディ・ネイの宮殿にまでやってくると、寵姫たちに囲まれながらも、不貞腐れているブラッディ・ネイと視線があった。

「兄様!ちゃんと来てくれたんだ!ボクは信じてたよ兄様がちゃんと来てくれるって!」

すぐそばでは、ルキアと一護、冬獅郎がこそこそとやりとりをしていた。

「浮竹殿と京楽殿が来ないほうに賭けていたのに」

「お前は皇女で聖女だろうが。賭け事はすんな」

「俺も浮竹と京楽がこない方に賭けてた・・・・負けだな」

「何が負けなんだ?」

額に血管マークを浮かべる浮竹に、3人は蜘蛛の子を散らすように逃げていった。

「全く、人を賭け事の対象にするな」

白哉と恋次もきていた。

皇族王である白哉は、ブラッディ・ネイの次に血の帝国において身分が高い。

白哉の寵愛を得ようと、ブラッディ・ネイの寵姫たちが迫ってくるが、それを恋次が防いでいた。

「だから、白哉さんは俺のものだって言ってるだろうが!」

「勝手にお前のものにするな。私は誰のものでもない」

白哉の冷たい視線と態度に、恋次は見えない犬の尻尾を振っているように見えた。

「もう、白哉さんは照れ屋なんだから」

「散れ、千本桜・・・・」

「うわあああ、冗談です、すみません、すみません」

ぺこぺこと詫びる恋次を、浮竹も京楽もなんともいえない目で見つめていた。

たまに、自分たちもああなるのだ。

浮竹が怒って、それに対して京楽が謝りまくる。その構図が、白哉と恋次あてはまって、なんともえない気持ちになった。

「ブラッディ・ネイ。8045歳おめでとう」

「ありがとう、兄様。年齢はちゃんと覚えてくれてたんだ」

「ああ。俺が8050歳だからな」

神代の頃に生まれてから8千年と少しを超えていた。

ブラッディ・ネイは不老不死の限りなく近い、転生という状態を維持して、血の帝国をずっとまとめあげてきた。

8千年の間、浮竹のように5千年も休眠することなく、ずっと休眠しないで活動してきた。

そのせいか、性格はやや歪み、性愛の対象が十代前半の少女になっていた。

浮竹が眠る前、生まれた頃はちゃんとした異性愛者で、結婚し子を成していた。その血筋が、今の皇族の基本になるのだが。

「ほら、ブラッディ・ネイ。誕生日プレゼントだ」

「ぎいやああああ」

「ぎぃえええええ」

「ぎょわえええええええええ」

そう叫びまくる生きたマンドレイクを出されて、ブラッディ・ネイは寵姫たちに何か命令しだす。

「こ、これはただの手土産だ!本物はこっちだ!」

浮竹は、性別転換の薬を盛られる前に、本命のスターサファイアのネックレスをブラッディ・ネイに与えた。

「わぁ、綺麗。それに、身に着けると魔力が上がるんだね。素敵な贈り物をありがとう、兄様。寵姫たち、さっき命じたことはしなくていいよ」

「お前、俺がマンドレイクだけだったら、俺を女にして襲うつもりだったな?」

「やだなぁ、そんな当たり前のこと」

「当たり前にするな!全く、お前はすぐに俺とどうこうなりたがるから、この宮殿に住まう気がしないんだ」

「別に、ボクがどうこうしなくても、兄様はそのひげもじゃと一緒にいるために、古城に住んでたでしょう?」

「そ、それは・・・・・」

浮竹は赤くなった。

「照れてる兄様かわいい!」

ブラッディ・ネイは浮竹に抱き着いていた。今の体は9代目にあたり、16くらいの皇族の少女の体だった。

もとの皇族の少女の意識はもうない。

ブラッディ・ネイの転生先に選ばれた皇族や貴族は、その身内に莫大な富を与えて、自分の娘を人未御供にしたわけではなく、選ばれた神の子であると信じさせた。

今までそうやって生きてきた。

そういう生き方しか知らなかった。

寵姫たちを愛し、男の子種なしで妊娠させれるようになった。

寵姫の数はいつも40人前後だった。

「お前、そういえば去年に競り落とした魂のルビーはどうした?」

「ああ、あれ。飽きちゃったから、宝物庫にしまってあるよ」

「飽きるのが、相変わらず早いな」

「でも兄様には飽きてないよ!何度転生しても、兄様を愛している」

「俺は、お前を妹としては愛しているのだと思う。だが、お前の求める愛には答えられない」

ぶすーっと、美しい顔でブラッディ・ネイは不貞腐れた。

「全く、あんなひげもじゃの元人間のどこがいいんだか」

「元人間だが、今はヴァンパイアロードであり、魔神だ」

「魔神ってのが気にくわない」

「いざとなったら、君の魂だって食べれるんだよ。魂を喰われてしまえば、君も終わりだ。せいぜい、浮竹にあまり迷惑をかけないことだね」

京楽の余裕ぶった態度が気に食わなくて、ブラッディ・ネイは京楽に向かって、寵姫の誰かがあげた宝石を頭に向かって投げた。

それを後ろを見ないままキャッチする京楽に、寵姫たちの数人が惚れ惚れしていた。

「ほらほら、ボクの寵姫たち。お戯れの時間は終わりだ。後宮に戻りなさい」

「ブラッディ・ネイ様ずるいわ。わたくしも、白哉様や浮竹様や京楽様と話したい」

「だーめ。そんなこと言う子には、お仕置きだよ?」

「きゃっ、ブラッディ・ネイ様のエッチ!」

きゃっきゃと女の子同士で会話しているのは、見ていて和むが、会話の内容が内容だけになんとも言えない気持ちになった。

「浮竹」

「どうした、白哉」

「兄に、何か悪い影が近づいている。せいぜい、気をつけることだ」

「悪い影だって。藍染の手の者だったりしてね」

「そうだねぇ。僕は、確かに藍染の手の者。悪い影かもねぇ」

「誰だ!」

浮竹は、皆に結界を張った。

「ザナドゥ?」

「それは父の名だよ。僕の名はウツク。美しいから、ウツク。この前君が殺したミニクの兄弟さ」

「ザナドゥではないのか・・・そうだな、確かにザナドゥは死んだはずだ」

「浮竹、宮殿を出よう。ここでバトルしたら、被害が出過ぎる」

「僕はここでもいいんだよ?ヘルインフェルノ」

「きゃあああ!!」

「いやあああ!!」

ブラッディ・ネイの寵姫が火に包まれ、ブラッディ・ネイは得意の薔薇魔法で炎を鎮火させると、火傷をの痕が残らないように、自分の血をかけて、寵姫たちを守った。

「お前、関係のない者を巻き込むな!」

「巻き込んで欲しくなければ、君の血族にしてよ」

「な!」

「浮竹、いいから宮殿の外に出よう!」

「僕はここから動かないよ。ここにいる者全員を殺す。それがいやなら、僕を血族にしてよ」

ブラッディ・ネイの薔薇の魔法で束縛されても、ウツクは何事もなかったかのように空に浮かんでいた。

「この、よくもボクの寵姫を!」

「うるさいなぁ。部外者は黙っていてよ。ボルケーノトライアングル」

「くっ」

炎に巻き込まれて、ブラッディ・ネイは薔薇魔法で炎を喰った。

「ブラッディ・ネイ様!」

「兄は、愚かだ。なんの関係もない者を手にかけて、浮竹が兄を血族にするとでも?」

白哉の言葉にいらついて、ウツクは白哉を風の魔法でスタズタにした。

「白哉さん!」

「恋次、やめろ。お前のかなう相手ではない!」

「でも、白哉さん、怪我を!」

「この程度、自分で再生できる」

「さぁ、我が友浮竹。血族にしないと、ここにいる者を全員皆殺しにするよ?血を頂戴」

浮竹は、ワイングラスをとると、それに血を滴らせた。

「これを飲め。血族になれるはずだ」

「やったね。藍染はバカだ。最初からこうすればよかったのに」

浮竹の血を飲んでいき、ウツクはヴァンパイアロードに進化したように見えた。

「あはははは、力が漲ってくる」

「浮竹!」

「京楽、ここは黙って俺の言葉を聞いてくれないか」

「何か策があるんだね。いいよ」

「ちゃんと血族にした。城の外に出ろ」

「はいはい。主の言うことは絶対だからね」

宮殿の外に出ると、太陽の光を通さないための血の幕の結界が血の帝国中を覆っていた。

浮竹は、頭上にある血の結界の一部を壊した。

「なんだ、太陽の光なんて・・・・・・ぎゃあああああああ!!!」

「お前に与えた血は、確かに俺のものだ。だが、俺が望まない限り、血族となってもただのヴァンパイアかそれ以下になる。それに、京楽以外に血族はいらない」

「浮竹・・・・」

京楽は感動して、涙ぐんでいた。

「おのれええ、騙したな!」

「騙されるお前が、間抜けなんだ」

「太陽が、太陽が眩しい・・・・・うぎゃあああああ」

ウツクは、太陽の光を浴びて灰となった。

頭上の結界を元に戻して、浮竹は京楽と一緒に宮殿の中に戻ってくる。

「終わったぞ」

「浮竹かっこいい。痺れる。今すぐ抱いて」

京楽は、浮竹の右腕をぎゅーっと掴んでいた。

「俺はお前に抱かれることはできるが、お前を抱きたくはない」

「振られちゃった。でも浮竹、愛しているよ。血族を一度作ったのも、許してあげる」

「許すも許さないも、血族を誰にするかは俺の自由だ」

京楽の瞳に、狂気に満ちた色が宿っていることを知らずに、ブラッディ・ネイの生誕祭を引き続き行い、夜まで騒ぎ会うのだった。


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「だからさぁ、君の血族は僕だけでいいって、教えてあげなきゃね?」

「やああん」

浮竹は、静かに怒る京楽に、目隠しをされて前を戒められて、手を後ろで拘束されていた。

「やあああ、とって、とってえええ」

「だーめ。君の血族は僕だけだよ。僕の許可なしに血族にしたりして・・・・・・許せない」

京楽は、狂気じみた笑顔を浮かべていた。

浮竹の蕾を指でぐちゃぐちゃにしてやる。

「やああ、あれは、あれは、ただ血族しただけで、愛するとかそういうのじゃなくて」

「それでも、君が僕以外を血族にしたことを許せない」

「ああああ、ごめんなさい」

ぐちゅりと中を突きあげると、浮竹はオーガズムでいっていた。

「これは、お仕置きだからね?」

「やあああ、いきたい、いきたい、とってええ」

「そう簡単にとっちゃったら、お仕置きにならないでしょ?」

「やああああ、いきたい」

「だーめ」

浮竹の中を味わうように、わざとゆっくり挿入する。

そして、ゆっくり引き抜き、またゆっくり突き入れた。

「あ、あ、もっと激しくして、春水」

「欲張りな子だねぇ」

京楽は、言われた通り、ぐちゅぐちゅと音がするほどに貫き、犯した。

浮竹は見えない視線で、京楽を探す。

「目隠しだけは、とってあげる」

涙を吸い取って重くなった目隠しを外してやると、泣きすぎて目を真っ赤にさせた浮竹がいた。

「ごめんね。こんな怒りのぶつけかた、だめなのは分かってる」

「春水、キスして」

「十四郎・・・僕だけのものだよ」

浮竹は、京楽のキスにうっとりしていた。

「あああ!」

京楽がごりごりっと奥を突きあげると、浮竹はオーガズムでいっていた。

「やああ、とってええ、いきたい」

「仕方ないねぇ。あんまりお仕置きになってないけど、とってあげる」

まず手の戒めをといて、最後に京楽が最奥をぐりっとえぐった瞬間に、前を戒めていた紐をとってやった。

「やああああ、いく、いく、いっちゃう♡」

「エロい子だね」

「やあああん」

びゅるびゅると飛んだ精子は、勢いよくはじけて、浮竹と京楽の腹だけでなく、胸や顔にもかかった。

「たくさんだしたね?きもちよかった?」

「あああ、きもちいい、いくの、止まらない♡」

「僕もいくからね。全部うけとってね」

「ああ、春水の子種、ちょうだい」

浮竹は足を開いて、京楽を離すまいと腰を足で挟み、背中に手を回した。

びゅーびゅーと、勢いよく京楽の精液が浮竹の中に注がれる。

「あ、あ、もっといっぱいちょうだい、春水」

「十四郎・・・ほんとにエロくていけない子だ」

京楽は、ぱんぱんと肉がぶつかり合う音をさせながら、浮竹を攻めた。

「ああああ!!」

また、奥で精液を注いでやると、浮竹はオーガズムでいきながら、射精していた。

「ぐずぐずになっちゃいなよ」

浮竹の肩に噛みついて、吸血してやると、浮竹は精液の代わりに潮をふいていた。

「あ、ああ”!いくの、とまらない♡」

「いつまでもいっていていいよ。僕と君との時間は無限にあるのだから」

「やあああ、いきすぎて、変になるうう」

「そしたら、僕が責任をもって、抱いてあげる」

「ああああ!」

ガツンと奥までえぐってくる熱に、浮竹はオーガズムでいきながら、緩やかに気を失うのであった。


「はぁ・・やりすぎちゃったかな。ごめんね」

意識のない浮竹に口づける。

シーツはすごいことになっていた。

洗うだけ無駄だろうからと、捨てることにした。

「愛しているよ、十四郎」

長い白い髪を、すいてから、京楽は後始末をするために、一度寝室を後にするのであった。


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「やっと手に入れた」

藍染は、浮竹の子種が少量だけ入った小瓶を手にしていた。

京楽が後始末のために離れている間に、シーツについていた精液を、式に命令して採取しておいたのだ。

「さぁ、これで親子同士で対決だ。ウツクは見事に京楽を怒らせることに成功した。お陰で、浮竹の精液を入手できた」

肉便器に、薄めた液体を注ぎ込む。

「一匹だけじゃあ、物足りない。ヴァンパイアマスターと女神の子だ。何匹か産んでもらうぞ」

肉便器には、もう女神アルテナの魂はない。

ただ、孕まされて、子を産む落とすだけの肉塊だ。

「なぁ、ミライ」

「はい、父さま」

ミライは、成長促進の禁呪をかけられて、今5歳くらいになっていた。美しい幼子だった。

「いずれ、お前の力が必要だ。始祖ヴァンパイアと同じ絶対存在となった、お前の力が」

「はい、父さま。私は喜んで、父さまの力になりましょう」

「いい子だ。キララ、キララはいるか」

「こ、ここにいます」

キララは、名を呼ばれて急いで藍染の元に向かった。

「お前には、今度生まれてくる子供と一緒に、浮竹と京楽の元へ行ってもらう。今度こそ、魂を狩りとれ。これは命令だ。わかるな?」

「はい・・・全ては藍染様の御心のままに」

キララは、死を覚悟するのであった。

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君ヲ想ウ

浮竹十四郎。

護廷13隊の13番隊隊長にして、ミミハギ様を肺に宿す者。

浮竹は、ユーハバッハが霊王を屠ったことにより、神掛けをしてそのまま世界の安定を保ち、そして死んでいった。

京楽春水。

浮竹十四郎の院生時代からの親友であり、共に2対1本の斬魄刀をもち、よく酒を飲みかわしたりした。

山本元柳斎重國が死んだ、次の総隊長だった。


京楽は、浮竹のことが好きだった。

院生時代から、好きだった。

それは浮竹も同じことで、けれど告白はなく、隊長になってやっと告白しあい、結ばれて200年が経過しようとしていた。

たくさんの思い出ができた。

浮竹は肺の病の他にも病弱で、時折入院したりした。

雨乾堂で臥せっていることも多く、よく見舞いにいった。

体を重ね合わせて、どす黒い感情に苛まれることはあれど、二人の愛は不変だった。

「俺は先に逝く」

「そうかい・・・・・・」

浮竹のその言葉を、京楽はどこか遠くで聞いていた。

「じゃあ、いってらっしゃい」

「ああ、またどこかで会おう」

まるで、明日また会おうと言っているようだった。

護廷13隊のために死なば本望。

浮竹はそれを実現させた。

遺体の保存状態はよかった。

「お別れだね」

冷たくなってしまった唇に口づける。

ポタリ、ポタリ、ポタリ。

隻眼の瞳から、涙がとどめとなく滴り落ちた。

「もっと・・・・もっと、君とこの世界を生きたかった。最後まで一緒にいて、引退して、いつか君がへたくそな盆栽をいじっている、その隣にいたかった」

涙はふけどもふけども溢れてくる。

「君を愛していた!」

棺の中で静かに眠る浮竹の体を抱き寄せた。

「君を今でも愛しているんだ・・・・この感情を、どうすればいいの」

あふれ出す想い。

君を想う。

ただ、恋しくいて恋しくて。

純粋に愛しくて。

浮竹の遺体は、百合の花に包まれて荼毘に付された。

浮竹を失い、京楽の世界から色が消えた。

何もかもが、モノクロに見えた。

雨乾堂を取り壊して、そこに墓を建てた。

けれど世界はモノクロで。


「やぁ、京楽。元気にしているか」

「浮竹・・・?」

「俺のことでいつまでもくよくよするなよ。お前の周りの世界はこんなにも色づいている」

浮竹に、唇を奪われた。

「浮竹!!」

掴もうとするが、それは届かなくて。

白昼夢だったのだろうか。

気が付くと、浮竹の遺品としてもっていた翡翠の髪飾りが落ちていた。

世界が、また色づいて見えた。

「君は・・・・・僕に、会いに来てくれたの?」

また、涙がぽたぽたと落ちていく。

きっと、そうに違いない。

君を想うあまりに、世界の色を失ってしまった僕を、戒めにきたのだろう。

京楽は、隻眼の鳶色の瞳で、涙を流しながら微笑んだ。

「浮竹、僕は元気でやっているよ。確かに君を失って辛い。でも、みんなが支えてくれる。君との思い出がたくさんある・・・・・だから、前を向いて歩いていくよ」

立ち止まるな。

きっと、そう言いにいきてくれたんだろう。

「さて、今日もほどほどに仕事しますか」

総隊長の地位は楽ではない。けれど、支えてくれる仲間たちがいる。

君の魂を、僕は背負っている。

君の魂は、きっと僕の中にある。

この想いがある限り。


君を想う。

どんなことがあろうとも。

君を想う。

どんなにつらくことも。

君を想う。

どんなに離れていても。

君を想う。

どんなに思って、会えなくとも。


ただひたすらに君を想い、愛する。

君ヲ想ウ。







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始祖なる者、ヴァンパイアマスター61

邪神ザナドゥは、邪神ディアブロと同じように、数十万の人間の魂を喰らって、魔神から邪神へとなった。

ディアブロの場合は、伴侶であった浮竹の迫害を止めようとして、一つの王国を滅ぼした。

一方、邪神ザナドゥは欲のままに町をいくつも滅ぼして、邪神となった。

ディアブロが滅んだのが今から5千年前。

ザナドゥが滅んだのは、今から4千年前。ザナドゥは、当時の人間の勇者に滅ぼされた。

邪神でありながら、魔王を名乗っていた。

幾人もの勇者を殺し、血を浴びた。

その血肉を口にして、人喰らいの邪神ザナドゥと恐れられた。

ただ、邪神ザナドゥにも友人がいた。それは今から自分が殺そうとしている、始祖ヴァンパイアの浮竹であった。

浮竹は邪神であろうがなかろうが、人間が嫌いで、ザナドゥを友人として認め、共に過ごしてくれた。ザナドゥが勇者と対峙する度に、どこかへ出かけてしまい、帰ってきては勇者パーティーの血肉を喰らいザナドゥを窘めた。

「こんなことをしていると、本当にいつか勇者か上位神に滅ぼされるぞ」

「ならば、打ち倒すのみ」

浮竹は、人食いの邪神と恐れられるザナドゥの、かけがえない友人であった。

その記憶を、ずっと忘れていた。

浮竹と再び巡り会い、ザナドゥは涙を零す。

かけがえのない友人を葬らねば、自分の呪いが解けぬことに。


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「こら、京楽、何をしている!」

錬金術の館で、錬金術士でもないのに、京楽が釜の中でマンドレイクを生でぶちこみ、ドラゴンの血をぶちこんで、更にいろんなものをぶちこんで、でろでろの青い薬を作りあげた。

「完成したよ!精強剤だ!これで今夜の浮竹を啼かしまくる!」

「待て、錬金術士でもないのに、同じレシピで作っても!」

ぼふん。

音を立てて、京楽は7歳くらいの子供になっていた。

「なんだこれはあああ!!!」

「それはこっちの台詞だああああ!!」

浮竹が、天を仰いだ。

「はぁ。薬の効果が切れるまでまぁ3日程度だろうが、エリクサーをやるには惜しい。そのままの姿で3日暮らすことだ」

「そんなぁ。浮竹をベッドの上であはんあはん言われるつもりだったのに!」

「動機が不純すぎるこのバカ!」

浮竹は、アイテムポケットに入っていたハリセンを取り出して、京楽の頭を殴っていた。

「ぶった。うわああああんん」

「なんだ!?何が起こっている!?」

浮竹は慌てた。まさか、精神年齢まで若がっているとか?いや、それにしても浮竹をベッドの上であはんあはん言わせるとか、大人にしか思いつかないことを言っていた。

「泣き真似しても、謝らないからな。お前が悪い」

「べーっだ。浮竹のバーカバーカ」

ぴしっ。

浮竹は怒り出して、京楽を追いかけるのであった。


「どこへ行った・・・・・・」

京楽は小さくて素早く、浮竹は見失ってしまった。

その頃、中庭ではまだ収穫前のマンドレイクをひっこぬく京楽の姿があった。

若返ったといっても、魔神で浮竹の血族であることには変わりないが、精神年齢がどんどん7歳になっていた。

「ぎゃあああああ」

「ひいいいい」

マンドレイクは、収穫前のものなので、悲鳴の威力も小さかった。

本来ならあと1カ月は植えておかなければならない。

新しい古城の中庭は、前の古城の中庭の2倍ほどの広さがあった。

戦闘人形のメイドたちに命令して、せっかく植えたマンドレイクの苗は、実ることなく京楽の手で引っこ抜かれた。

その悲鳴に気づいた浮竹がやってきた頃には、まだ収穫前のマンドレイク畑の3分の2がひっこぬかれていた。

「京楽ぅぅぅ。いい度胸だな」

「浮竹が僕に構ってくれないのがいけないんだからね」

「知ったことか!ヘルインフェルノ!」

怒った浮竹は、京楽とマンドレイクごと魔法をぶっぱなしていた。

真っ黒に焦げて、頭をアフロにした京楽は、浮竹の前で泣きだした。

「浮竹がいじめる~~」

「京楽、本当にどうしたんだ。お前らしくないぞ。精神年齢まで7歳になったのか」

「そうだとしたら?」

「縄でぐるぐる巻きにして監視下に置く」

「そんなのお断りだね!」

京楽は、素早く風のように逃げた。

そして、浮竹の部屋に入って、浮竹のパンツを古城の窓から降らせた。

「京楽!!」

浮竹の堪忍袋の緒が切れるのは、時間の問題だろう。

「こら、京楽!」

浮竹が京楽が悪戯しているのを見つける度に、浮竹は怒るが、京楽は凄まじいスピードで逃げていた。

玄関の黄金のハニワに油性ペンで落書きしたり、貴重な名画にペンキを塗ったり、しまいにはトイレを詰まらせた。

「京楽ぅぅぅぅ」

堪忍袋の緒が切れた浮竹は、罠をしかけた。

おやつにとっておいたドーナツを、ダイニングテーブルの上において、それを取ると上から網がかぶさるようにしておいた。

お腹をすかせた京楽は、すぐにその罠にひっかかった。

「京楽、覚悟はできているな?」

ポキポキと指の関節の音を鳴り響かせる浮竹に、京楽は泣きだした。

「うわああああん!浮竹がいじめるーーー!」

「あのなぁ、京楽。いい子にしてるなら、俺だって怒らない」

「本当に?」

「ああ。だが、今まで悪戯した分のお仕置きは覚悟してもらおうか」

「浮竹の嘘つきいいいい!!」

京楽は、浮竹にハリセンでボコボコにされて、縄でぐるぐる巻きにされて、しくしくと泣いていた。

「お腹すいた」

「よし、俺がマンドレイクのスープを作ってやろう」

「ひいいい!嫌だ、浮竹の料理は食べたくない!」

「ふふふふ。待っていろ、今特別に作ってやる」

京楽は縛られたまま、尺取虫のようにもぞもぞと動きだすので、浮竹は縄を柱につないだ。

「子供虐待だああ!」

「ふははははは。虐待してやる」

浮竹はブラックモードになっていた。

錬金術用の釜を取りだして、生きたマンドレイクをぶちこみ、ドラゴンの血をぶちこんで、人参、じゃがいも、玉ねぎを切ってぶちこんで、コトコト煮ること20分。

マンドレイクとドラゴンの血入り野菜スープのできあがりだった。

「ほら、食え」

ずいっと、スプーンでスープを口の前にもっていかれて、京楽は死を覚悟した。

「骨は拾ってね」

「縁起の悪いことを」

スープを口にして、京楽は目を輝かせた。

「そんな、浮竹の手料理なのに美味しい!?」

「ちゃんと味見した。戦闘人形にも手伝ってもらった」

「浮竹の手料理が食べれるものなんて奇跡だ」

「もっぺん殴られたいか」

ハリセンを取り出した浮竹に、京楽は首を横に振る。

「ごめんなさい」

「最初からそう言え。もう悪戯はしないな?」

「しない。だから遊ぼう、浮竹」

野菜スープを全部食べて、おなかがいっぱいになった京楽は、遊びたくてうずうずしていた。

「何がしたい」

「かくれんぼ」

「かくれんぼか・・・仕方ないな」

浮竹が鬼になった。

そして、京楽の魔力を探知しようとするが、魔力が小さすぎて分からかった。

この広い古城を探し回るのは骨が折れるので、戦闘人形たちにも探させた。

結果、キッチンの籠に中に隠れて、そのまま眠っている京楽を発見する。

浮竹は幼い京楽を抱いて、寝室のベッドまでくると、京楽を寝かせた。

そして、仕方なくエリクサーを口にして、口移しで京楽に飲ませる。

ぼふん。

音を立てて、京楽は元に戻った。

でも、すやすやと寝ていた。

浮竹は起こすのもなんだしと、戦闘人形に命じて、京楽の悪戯の処理をする。

庭に散っていった浮竹のパンツを拾い集め、黄金のハニワの油性ペンの落書きをシンナーで落として、名画のペンキを修復魔法で元にする。

中庭のマンドレイクは、新しい苗を植えておいた。

「エリクサーの残りがもうないな。材料も切れているようだし・・・・」

市場でも、エリクサーの材料は切れていた。

さっき、京楽に使ったエリクサーが最後の1本だった。

翌日、京楽は7歳になって行った悪戯の数々をちゃんと覚えていた。

「ごめんね、浮竹」

「謝るなら最初からするな。錬金術士でもないのに、薬を作ろうとするな。欲しいなら、俺か乱菊にでも依頼しろ」

「そうだね。今度から、浮竹に言ったら作ってくれないだろうから、乱菊ちゃんに頼もうかな」

リンリンリン。

鈴のような音が鳴った。

「来客か・・・・珍しいな」

新しい古城に引っ越しからというもの、まだ来客は訪れていなかった。

「ザナドゥ?生きて、いたのか」

「誰だい、浮竹」

古城の来客は、邪神ザナドゥであった。長い黒髪に黒い瞳の、美青年だった。

「邪神ザナドゥ。4千年前に人間の勇者に滅ぼされた魔王であり邪神だ」

京楽が威嚇する。

「そんな邪神が、浮竹になんのようだい?」

「藍染の手で蘇った。俺は呪いを受けている。浮竹、おまえとその血族の京楽の血を浴びねば、解けることのない死の呪いだ」

「じゃあ、そのまま死んでよ」

魔神の咢で、ザナドゥの魂を噛み砕こうとする京楽を、浮竹が止めた。

「どうして止めるの?」

「ザナドゥは、俺の友人だ。友を見殺しになどできない。俺と京楽の血を浴びれば、その呪いは解けるんだな?」

「藍染の話によれば、だ」

浮竹は、手首を切り、ザナドゥに自分の血を浴びせた。京楽も黙ってそれに従い、自分の血をザナドゥに浴びせる。

「どうだ、呪いは消えたか?」

「がああああ!!呪いが、侵食を・・・・藍染の言葉は、嘘のようだ。あああ、苦しい。殺す、殺す・・・・」

「ザナドゥ、しっかりしろ!」

「浮竹、危ない!」

浮竹がいた空間の地面にクレーターができていた。

「ザナドゥ!正気に戻れ!」

「だめだよ、呪いに侵食されてる。エリクサーは?」

「それが、在庫を切らしていて・・・・材料も市場に売っていない」

「じゃあ、どうするの」

ザナドゥは暴れ始めた。

中庭に出て、古城が破壊されないようにした。古城に結界を張る。

「うおおおおお、俺を、俺を殺せ、浮竹。どうせ仮初で蘇った命だ。友を殺してまで、生きていたくはない」

「ザナドゥ!」

ザナドゥは、休眠から目覚めたばかりの浮竹が、その時初めてできた友人であった。愛してはいなかったので、血族にはしなかったが、浮竹のお気に入りの友人であった。

「おのれ藍染・・・・俺がザナドゥと友人であることを知った上での行為か」

「いや、藍染はそこまでは知らぬようだ。だが、お前とその血族の血を浴びれば呪いは解けるといわれたが、嘘だったようだ」

「ザナドゥ。封印か死か、どちからを選んでくれ。このまま放置しておけばお前は、京楽に魂を喰われるだろう。封印されてくれないか」

「封印など・・・・また、藍染に利用されるだけだ」

「ザナドゥ!!」

「我が友よ。100年に渡るそなたとの友情は、かけがえのない時間だった。安寧なる死を、俺に・・・・・・・」

浮竹は、涙を零しながら、魔法を詠唱する。

「ゴッドフェニックス、カイザーフェニックス、エターナルフェニックス・・・・トリプルファイアフェニックス!!」

「ああああ!!!」

ザナドゥは魔法をレジストした。

耐えきった。

「これで死なないとは・・・・・」

涙をふいて、浮竹はザナドゥの攻撃を受け止めた。

ザナドゥは巨大な爪で、浮竹を袈裟懸けに斬っていた。

「浮竹!」

「セイントヒール」

浮竹は、苦手な聖魔法の癒しの魔法を使い、深すぎる傷をすぐに癒した。

血の魔法で癒している時間などなかった。

流れ出た血を、ザナドゥは美味しそうにペロリと舐める。

「もっと、もっとお前の血をよこせ。お前の血を」

「もう、正気じゃないね」

「もう一度試させてくれ。エターナルアイシクルフィールド!!」

炎の禁呪が効かなかったので、今度は氷の禁呪を出した。

ザナドゥの体が凍っていく。けれど、凍るはしから溶けていく。

「封印の魔法でもダメか・・・・京楽、せめて苦しめずに屠ってくれ」

浮竹は、また泣いていた。

「さよならだ、ザナドゥ。お前と一緒に過ごした100年は楽しかった・・・・・」

京楽は魔神の咢で、ザナドゥの魂を喰らっていく。

「邪神の魂は、あまりおいしくないんだよね」

そう文句をたれながら、京楽はザナドゥの魂を噛み砕いた。

ぐらりと、ザナドゥの体が倒れる。

もう悪用されないように、浮竹はフェニックスを呼び出す。

ザナドゥの灰から、青い薔薇が狂い咲いた。

「さよなら。俺の友よ・・・・・・」

京楽は、涙を流す浮竹の涙を舐めとった。

「甘い。君は涙さえも甘い・・・・・・」


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「まだ、泣いてるの?」

「残酷なやつだったが、親友だった」

京楽は、浮竹の涙を吸い取って、ベッドに押し倒した。

「でも、血族にはしなかったんだ」

「友人で、愛してはいなかったからな」

「僕は、それでも憎い。僕の知らない君の存在を知っている者が憎い」

「あっ」

浮竹は京楽に口づけられていた。

「そんなこと言っても、お前が生まれてきたのは140年くらい前だろう。8千年の俺の人生は、5千年は休眠だったが、3千年は活動していた。その頃には血族も他にいたし、友人だっていろいろといた」

「その全てが憎い」

京楽は、浮竹の衣服を脱がしていくと、自分のものだといいう所有のキスマークヲ咲かせていく。

「んあっ」

胸の先端をいじられて、浮竹は甘い声を出していた。

「もう終わりがいい?」

「あ、春水・・・・お前をくれ。全てを忘れさせるくらいに、お前をくれ」

京楽は、勃ちあがりかけている浮竹ものを手でしごいた。

「ああああ!!」

浮竹は簡単にいってしまった。

欲情にスイッチが入ったのか、浮竹は自分から足を開いて京楽を受け入れる。

「君が僕のことしか考えられないようにしてあげる」

ローションで後ろを解して、京楽は一気に貫いた。

「ひああああ!!」

びくんと、浮竹はオーガズムでいっていた。

「こっちもいけるでしょ?」

浮竹のものをしごきあげて、オーガズムの途中なのに精液を出して二重にいかせてやった。

「やああああああああ!!」

「君のここは、全然嫌なんていってないよ?僕のものに絡みついてくる」

「ああああ!」

浮竹は、啼いていた。

「んあああ」

京楽は、浮竹を味わうかのように、ゆっくりと犯していく。

「あ、もっと、もっと激しく!お前を、俺の中に刻みこんでくれ」

「分かったよ」

「ああああ!!」

ぱちゅぱちゅんと、激しく浮竹の中を出入りする。

京楽は、浮竹の胎の奥で精液を弾けさせた。

「んああああ」

同時に、京楽に手首を噛まれた。

動脈から直接血を吸われて、その得も言われぬ快感に虜になる。

「あ、もっと、もっと吸ってくれ」

京楽は、次に浮竹の太ももに牙を立てた。

「ああああ!!」

吸血による快楽と、体に与えられる快楽が二重になって浮竹を襲う。

「んあああ、ああ、あ」

京楽に貫かれて抉られ、揺すぶられて、浮竹は涙を流した。

「春水、お前で、満たされていく・・・・・・」

「十四郎。僕のものだ。例え他に血族がいたとしても、僕のものだ」

「ああ、春水・・・・・」

京楽は、ごりごりと奥をけずりながら結腸にまで侵入し、そこで精を放った。

「ああ、熱い・・・・・」

「君は僕のものだっていう、証を、注ぎ込んであげたよ」

「あ、春水。キスを・・・・・」

口づけをねだる浮竹に、舌が絡まるディープキスを繰り返す。

「んっ」

咥内を犯していく京楽の舌が去ってくとつっと銀の糸が垂れた。

「愛している」

「僕も、愛してるよ」

お互いに愛を囁きながら、まどろんでいく。

京楽は浮竹の中から去ると、逢瀬の名残を拭い去って浮竹を清めると、シーツを変えたベッドで、浮竹を抱きしめながら眠るのであった。


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「これは、邪神ザナドゥの子種だ」

藍染は、女神アルテナの肉体のなれの果ての肉便器に、ザナドゥから回収しておいた子種を注いだ。

「前のミニクのような存在でもいい。あの邪神の子は、特別な力をもっているようだしな」

肉便器は、数週間かけて子を産んだ。

今度は、美しい黒神黒目の邪神、ザナドゥそのものが生まれてきたような子供だった。

「名前は何がいいだろう。美しいから、ウツクでいいか」

もう、名付けるのも適当になっていた、

ウツクは、父であるザナドゥの記憶を継承していた。

藍染の首をはねて、肉体をぐちゃぐちゃにして、浮竹と京楽の元へ走り出す。

今度こそ、友人である浮竹の生き血をすすり、血族となって永遠を生きるのだ。

そう決めたウツクは、ばらばらになった藍染が再生するのを阻害するために、聖水をまき散らしていた。

「く、ウツクめ・・・・・やってくれるな」

1週間かけて、やっと再生した藍染は、壊れた女神オリガに泣きつかれた。

「あなた、死んでしまったかと思ったわ」

「オリガ、私は不老不死だ。何があっても、死なない」

「でも、魂を狩られたり、食われたら・・・・・・」

「それは心配ない。浮竹と同じように、この魂は肉体と結びついている。魔神に魂を喰われることはないし、死神に魂を狩りとられることもない」

その言葉に安心した女神オリガは、むずがる自分と藍染の子をあやした。

「ミライ、そんなに泣かないでちょうだい」

女神と邪神の子、ミライと名付けられた女の赤子は、真紅の瞳をしていた。

まるで、始祖ヴァンパイアのような魔力をもっているのであった。



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始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝

ヨーロッパの、その城に観光で西洋の浮竹と京楽は訪れていた。

東洋の浮竹と京楽も一緒だった。

エリザベート・バートリー。

中世でも有名な、肌が白く見えるからと、少女たちを拷問にかけて、生き血を浴びた、まさに魔女のような存在いたこのとある城だった。

(いるね。確かに、エリザベート・バートリーの生贄にされた少女の霊だ)

すでに、浮竹の顔は青く、今にも倒れそうだった。

「東洋の俺。西洋の霊は、やはり東洋のやり方では、成仏させれないのか?」

(うーん、どうだろう。こればかりは、やってみないと分からないな)

「浮竹、これはそもそも僕らに依頼された内容なんだよ」

「幽霊はいやだああああ!!!」

西洋の浮竹は、東洋の浮竹の背後に隠れた。

西洋の歴史にある魔女が存在する世界で、彷徨う少女の霊が哀れだと、血の帝国を介して西洋の浮竹と京楽の元に、どうか少女の霊を成仏させてほしいという依頼があった。

東洋に、退治屋の知り合いがいるとのことで、西洋の浮竹と京楽も、退治屋をしていると勘違いされたのだ。

断ろうにも、相手はすでに事故で死去していた。

ならば無視すればいいだろうに、浮竹はいやだいやだといいながら、西洋の京楽と東洋の浮竹と京楽と共に、生贄になった少女の霊が現れる城にやってきていた。

(これは夜を待つしかないかなぁ。人目もあるし)

「よ、夜まで幽霊と・・・・」

(ああ、しっかり、西洋の俺!)

西洋の浮竹は、眩暈を起こした。

「浮竹、しっかりして。今日の一晩で終わるから」

「う、うむ・・・・・・」

こうして、4人は夜を待った。

夜になると、その少女の幽霊は、よりはっきりと見えた。

「ようこそ、お越しくださいました、お客様」

少女は、自分がまだ生きているのだと思っていた。

「今、主を呼んで参ります」

(待って)

「はい?」

(キミ、気づいてないの。キミはもう死んでるんだよ。エリザベート・バートリーの手にかかり、拷問を受けて血を抜き取られて死んじゃったんだよ)

「私はちゃんと生きていますよ?」

少女はにこにこしていた。

(だめだ。負の感情がない。成仏させられるかどうか・・・・)

「えいえいえいえい!!」

西洋の浮竹は、やけになって聖女ルキアの聖水を少女の霊に向かって投げまくった。

「ぎゃあああ!!」

霊ではあるので、聖水はきいた。

「あああ、殺してやる。殺してやる!私を笑いながら殺したあの女のように!」

一気に負の感情が爆発して、4人は怯んだ。

「どうせいくなら、あなたも道連れにしてやる・・・・」

西洋の浮竹は、足を幽霊に触られて、泣きかけていた。

「ひあああ!霊が、霊に、足を、足をおおお」

(しっかりしてくれ、西洋の俺!今除霊するから!)

「おーい浮竹、お札で成仏させてみたら?」

「あ、東洋の俺からもらった浄化のお札があったんだ。えい」

お札を霊に向かって掲げると、明るい光に満ちた。

「ああ・・。お父さん、お母さん、お兄ちゃん・・・私もそこへ行くわ!」

光が消える頃には、少女の幽霊の姿は消えていた。

(あ、お札でも除霊できたんだ)

(そうみたいだね。わざわざボクらが出向く必要はなかったってことかな?)

「それが・・・少女の霊があと15体・・・ばらばらの場所に・・・・」

浮竹は、思い出したとばかりに口にする。

「次は、東棟にいる少女の霊だよ」

西洋の京楽に引きずられながら、西洋の浮竹は浄化のお札で有無を言わせず霊たちを成仏させていった。

(はぁ。足が痛い)

(ちょっと、何も一晩で終わらせることなかたんじゃない?もう夜明けだよ)

「あと、最後の一体が残ってるよ」

洋館の中にいた少女は、年端もいかないようで、ゴーストと化していた。

「ははは、たかがゴーストの一匹!ホーリーランス!!」

聖属性の攻撃をされて、少女のゴーストは倒されてしまった。

「浮竹・・・ゴーストだと、平気なんだね」

「ゴーストと幽霊は違うんだぞ!幽霊には魔法は効かないが、ゴーストには効く!」

「はいはい。とりあえず、帰って仮眠とってそれから昼食にでもしようか」

4人は、引っ越したばかりの古城にきていた。

4人はそれぞれペアに別れて、寝室とゲストルームで5時間ほど仮眠をとった。

最初に起きだしたのは、東洋の浮竹だった。

時計が昼の2時をさしていたので、急いで西洋の浮竹と京楽を起こす。東洋の京楽は、東洋の浮竹が起きた時点で起きていた。

(うわぁ、ダイニングルーム広い。おまけにホワイトタイガーの毛皮まである。ソファもふかふかだし、テーブルや椅子も高そうだ)

「一級品ばかりかったからな」

「浮竹、こういうことには金かけるんだよね」

(玄関の黄金のハニワは相変わらずだけどね)

東洋の京楽の指摘に、西洋の浮竹が自慢する。

「いい丁度品だろう。骨董屋で見つけた、純金のハニワとそれを複製して作った黄金のハニワの群れだ」

(感想は、あえて言わないでおくよ)

「あ、浮竹、背後霊が・・・・」

「ぎにゃあ!!」

変な声を出して、西洋の浮竹は固まった。それから真っ赤になって東洋の浮竹の背後に隠れる。

「お前とは、今日一日口きいてやんない」

「えー、ただのジョークだよ」

「知るか」

「浮竹~」

そんな二人を見ながら、苦笑して東洋の京楽は昼食を4人分作り、東洋の浮竹は配膳係をするのであった。





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始祖なる者、ヴァンパイアマスター60

邪神ザナドゥは、藍染の血により意識を侵食されていく。

藍染の呪いは少しずつザナドゥを蝕んでいくか、期限にはまだ日数があった。

藍染が肉便器という奇妙な肉体にザナドゥの子種を注ぐと、数日で子は生まれ落ちた。

邪神ザナドゥさえ、嫌悪しそうなくらい醜い肉の塊が生まれた。

性別はどちから分からなかった。

「ほう、邪神の子といっても、邪神が生まれるわけではないのか。それになんて醜い。この世界に呪われて生まれ落ちたかのようだ」

「あああ・・・・・あたしは、う、美しくなりたい・・・・・」

自我は女性であるらしかった。

数日で立ち上がり、母親である肉便器に縋りついた。

「ああああ!太陽が、太陽が眩しい!!

太陽の光を嫌い、夜の闇の中で動いた。

「こんなもの、使えるかどうか分からんが、一応駒として使ってみるか」

「あああ!う、美しくなりたい」

「美しくなれる方法がある。始祖ヴァンパイアの血を浴びれば、お前は美しくなれる」

「本当に?」

「ああ、本当だ。名を与えていなかったな。醜いからミニクだ。それがお前の名前だ」

「ミニク・・・あたしは醜い。だから、美しくなる」

とぷんと、藍染の影の中にもぐりこんだ。

「なんだ!?」

「あたしは、影と影を移動できる。この力があれば、始祖ヴァンパイアの血を浴びれる?」

「ほう、面白い能力だ。せいぜい、がんばっておいで」

ミニクは、影の中を移動しながら、ガイア王国に向かう。

古城にいくと、そこは廃墟になっていた。

「始祖ヴァンパイア・・・・何処に住んでいるの」

ミニクは、辺りを探したけれど分からなかった。

「きゃあああああああ!!!」

通行人にみられて、ミニクはすぐに建物の影に潜り込んだ。

その日のうちに、アラルの町の冒険者ギルドでモンスターの手配書が回った。

「醜い、肉塊のような生き物だったそうだ。影を中を移動するらしい」

「影ねぇ・・・・」

京楽はどうでもよさそうだった。

「とりあえず、まだ被害でてないんだろう。見つけ次第退治する。それでいいだろう」

「ああ、そうしてくてれ」

ギルドマスターに用があると呼び出されたら、前の古城の廃墟の近くで蠢く醜い肉塊が目撃されたのだという。

藍染の手下の者という可能性が限りなく高かったが、少し探れば近くの古城に引っ越したことくらい分かるだろう。

「それより、明日のガイア王国の女王生誕祭に呼ばれているんだろう。行ってこい」

「何故それを・・・・」

「すっぽかしから、俺に咎がいくようにされてしまった。ギルドマスターとしての命令だ。明日の卯ノ花女王の生誕祭に参加すること」

ギルドマスターは、名誉貴族ということにされていた。

「女王とか貴族とか、そういう柵に捕らわれるのは嫌いなんだがな」

「まぁ、浮竹は卯ノ花に気に入られるみたいだし」

「また、夜の誘いをされるかもしれんぞ」

「それは許さないよ、浮竹!」

京楽が真剣な顔で諭してくるものだから、浮竹は笑った。

「このスタールビーにかけて、お前以外を愛さないと誓う」

「浮竹、愛しているよ!」

ギルドマスターの前で抱きついてくる京楽の頭をハリセンで殴って、浮竹と京楽は明日の女王生誕祭のために、正装するのだが、どの衣装にするのか困るのであった。


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結局、京楽は黒のスーツを。浮竹は極東の衣服の袴と羽織を着ていた。

「君がそういう服着ると思わなかった」

「スーツは窮屈で嫌いだ。この姿は、東洋の正装にもなるそうだ。京楽こそ、もっと着飾ればいいのに」

「いや、僕はこれで十分だよ。浮竹、こっちにおいで」

手招きされると、京楽の傍にいくと京楽は白いレースのリボンをとりだし、浮竹の両サイドの髪を三つ編みにして、後ろでリボンで結んだ。

「ほら、かわいい」

「俺は女じゃないぞ」

「でも、似合ってるよ」

そこへ、リンリンと来訪者を告げるベルが鳴った。

「はいはい、今行くから。ほら、浮竹も」

迎えの馬車がやってきたのだ。

卯ノ花は浮竹と京楽のことを気に入り、生誕祭に招いたが、こない可能性もあるでギルドマスターに手を回していた。

「わあ、豪華な馬車だねぇ」

二頭引きの馬車は、金細工が美しかった。

先に京楽がのり、エスコートするように浮竹の手を取る。

「さぁ、生誕祭の夜会に行こうか、僕のお姫様」

「誰がお姫様だ」

京楽のほっぺをつねって、浮竹と京楽を乗せた馬車は宮殿に向かって出発した。

「宮殿っていっても、ブラッディ・ネイの宮殿ほど広くないんだね」

馬車の外から、近くなっていく宮殿を見る。

「あれは、後宮が広いからな。寵姫をいつも40人前後は侍らしている」

「うわー、そんな後宮、浮竹はいっちゃだめだよ!」

「頼まれてもいかん」

一度狙われた京楽のために後宮に入ったことはあるが、それ以外だと女同士になって入ったことを除いて、普通の浮竹が後宮に足を伸ばすとこはあれど、ブラッディ・ネイのために後宮に入ったことなど一度もなかった。

後宮に入ったが最後、女になる魔女の秘薬を飲まされ続け、ブラッディ・ネイ好みの外見年齢にさせられて、子を孕めさせられるに違いない。

浮竹が、ブラッディ・ネイを避けるのは、ブラッディ・ネイが家族愛ではなく、伴侶としての愛を浮竹に囁くからであった。

「到着しました、浮竹様、京楽様」

馬車のドアを開けられて、まずが京楽が外にでた。

浮竹に手を差し出す。

浮竹は何も言わず、その手に手を重ねて、京楽にエスコートされて生誕祭の夜会が行われている広間にやってきた。

「まぁ、浮竹さん、京楽さん、きてくれたのですね」

卯ノ花は、とても3人の大きな子供がいるとは思えない、若々しい姿だった。

艶やかに笑みを浮かべる女王のドレスは真紅だった。

首飾りにピジョンブラッドのスタールビーの大きなものがついているのが見えた。

「あら、ペアリングをなさっているのですね。結婚式は挙げられましたか?」

「いや、まだだ。そういうことは、平和になってからしようと思って・・・・」

浮竹が頬を赤らめながらそう言う。

「果報者ですね、京楽さん」

京楽も赤くなりながら、卯ノ花を見る。

「今日は一段とお綺麗だね」

「ありがとうございます。でも、浮竹さんの出で立ちも可憐ですね。男性にしておくのがもったいないです」

「これは京楽が!」

「わたしと、一曲踊ってくださりませんこと?」

卯ノ花が、浮竹に手を差し出す。

無下にもできないので、その手をとって、広間の中心に来て、オーケストラを鳴らす楽器たちの音色に合わせて踊った。

「まぁ、どこの殿方でしょう。可憐で麗しいわ」

貴族の女性たちが、浮竹に視線を集める。

浮竹は夜会には慣れているのが、見事に踊り終わると、卯ノ花の手にキスをして別れた。

わっと、貴族の女性たちに、浮竹が取り囲まれる。

その間をぬって、京楽が浮竹の手に口づけた。

「俺と一曲踊ってくれないかい?」

浮竹がその手をとると、別に意味で貴族の女性たちはきゃあきゃあと騒ぎ始めた。

貴族の男性も、浮竹を見つめていた。

踊り終わり、貴族に囲まれるのを抜け出して、二人はバルコニーまでやってきた。

シャンパンのグラスを手に、中身を飲み干していく。

「夜会は頼んでいただけるでしょうか?」

「卯ノ花・・・びっくりさせないでくれ」

「あら、これは失礼しました。あなたたちが伴侶であると知らない貴族たちが、迷惑をかけましたね」

「いや、別にそれはいい・・・・」

浮竹は、スィーツ置いてある場所に移動して、次々にスィーツを平らげていく。

「京楽さんは、食べないのですか?」

「いや、僕もある態度食べたから。スィーツに関しては、浮竹の胃はブラックホールなんだよね」

「あら、まぁ。持って帰れるように、手配しましょうか?」

「え、いいの?でも貴族って普通持って帰らないんじゃ」

「あななたちは貴族ではないでしょう?まぁこの国では平民ということになっていますが、血の帝国の皇族でしょう」

「それはそうなんだけど・・・・浮竹、持って帰れると知ったら、大量に持ち帰るよ?」

「別に、構いません」

卯ノ花は、あまり食べられていないスィーツを持ち帰れるように手配してくれた。

アイスなどは溶けるので、その場で食べた。

「これはおみやけどいうことで。ではまた、遊びにきてくださいね」

卯ノ花の微笑みは、あったかい陽だまりのようで、浮竹も京楽もほわんとなった。

「母上!この方たちが、例のヴァンパイアの?」

「ジエ、失礼のないように。紹介しおくれました王太子のジエルド・ルドワール・レ・ガイアです」

「ジエルドと申します。お気軽にジエとお呼びください」

卯ノ花は3人の子が出来が悪いと言っていたが、少なくともこの皇太子のジエルドは普通に見えた。

「浮竹さん、ああ麗しい。どうか、僕と一晩の甘い夜を過ごしませんか」

実の母である卯ノ花と恋人でる京楽を目の前に、そんなことを言いだした。

「酷いわ、ジエ様!今日の夜はわたくしと過ごしてくれる約束だったはず」

貴族の少女が、ジエルドの手を取った。

「ああ、そうだった。君と約束をしていたね。でも、新しい麗し人を見つけたんだ。今日は3Pでどうだろうか」

「あら、それも悪くはないわね」

「どうしてそこに俺の数が入っている!このあほ皇太子が!」

見事な浮竹のアッパーを受けて、ジエルドは床に沈んだ。

「きゃああ、ジエ様!」

「悪いのはジエですよ。反省なさい。すみません、浮竹さん京楽さん。私のバカ息子どもは性欲が強くて、許嫁のいる相手にも手を出してしまうのです」

「そうかい・・・・・・」

「帰るぞ、京楽!」

スィーツのお土産を全部アイテムポケットに入れて、怒った浮竹はそのまま京楽と一緒に帰ってしまった。

帰りも馬車だったが、馬車が急に立ち止まって、浮竹と京楽は前につんのめった。

「何が起きた!?」

「何か、影の中に何かがいるんです!!」

御者の男性は、怖がっていた。

馬も怖がって、蹄で地面の影を蹴っていた。

「これは・・・・フレアロンド!」

ぽっ、ぽっ、ぽっ。

青い火花が生まれていき、影に向かって攻撃する。

「熱いいいいい!!あたしは、熱いの嫌い、ひいいい」

出てきたのは、醜悪な肉の塊だった。

生きているのだと認識はできるが、変な匂いもして、生理的に受け付けれなかった。

「始祖ヴァンパイアの血を浴びればぁ、あたしは美しくなるの。そう藍染様がおしゃったのだから!」

「こんな肉の塊が今回の敵か?」

「すごい醜いね。女の子の言葉を使うから、女なのかな?」

肉塊は、裸だった。

どこもうねっていて、女の特徴らしいものは見えなかったし、男にも見えなかった。

ただうねるだけの肉塊だった。

どうやってしゃべっているのかも、分からなかった。

「始祖ヴァンパイアぁぁあ。血をよこせえぇぇぇぇ」

浮竹は、気まぐれをおこしてミニクに数滴の血を滴らせた。

「あああ、始祖ヴァンパイアの血ぃ!これで、ミニクは醜いじゃない。美しいから、名前はウツクよ!」

何分たっても、肉塊は肉塊のままだった。

「嘘おおおお!なんにも起きない、どうして!!」

ミニクは、ねばねばした液体をどこからか吐き出した。

浮竹と京楽は避けるが、馬車の御者と馬がそのねばねばした液体をかけられて、シューシューと肉が腐っていき、骨になった。

「浮竹、こいつ見た目もやばいけど、能力もやばいよ!」

「攻撃する暇を与えず、攻めるしかないな!エターナルフェニックス!!」

「サンダーボルテックス!」

「いやあああ!ぎゃあああ、熱い、熱い!!」

その巨体を焦げさせて、燃やされて、ミニクは影に沈んだ。

「どこからくる?」

「京楽、後ろだ!」

ねばねばした液体が、さっきまえ京楽のいた空間の地面を腐らせていた。

「ふふふ、影を、利用すれば、あなたたちなんて倒せる」

「こいつ、影を利用するつもりだ」

「影がなくなればいいんだな。サンシャイン!」

かっと、疑似太陽が浮かびあがる。

それはちょうど浮竹と京楽の頭上に輝き、影がなくなった。

「いやああああ、太陽の光は、光は嫌い!!」

失われた影から、ミニクが飛び出してきた。

「「エターナルアイシクルワールド!!」」

「いやああ、寒い・・・さむい・・・・」

ミニクは完全に凍り付いた。

生命活動の停止を確認して、炎の精霊フェニックスではなく、イフリートを呼んだ。

「イフリート、あれを灰にしてくれ」

燃え上がる紅蓮の乙女は、頷いて氷を溶かしていき、ミニクを灰にかえた。

あんな醜いものを、もう一度この世界で違う何かとして生きさせるのがいやだったから、フェニックスではなくイフリートを呼んだ。

「主・・・完了しました」

ミニクは、完全な灰となった。

「分かった、戻ってくれイフリート」

イフリートは、浮竹の胸に吸い込まれていった。

「藍染にしては、えらく醜い化け物をよこしてきたもんだね」

「おまけに、馬と御者が死んでしまった。卯ノ花に詫びをいれないといけないな」

馬車も、腐り、ドロドロだった。

普通黄金は腐らないのに、黄金も腐っていた。

「これが、普通の意思をもって攻撃してきたら厄介だった」

「そうだね。黄金まで腐らせる液体なんて、聞いたことがないよ」

「名前は、醜いからミニクって名前だったんだろう。藍染らしい名づけ方だ」

「少し、可愛そうだね」

京楽が、灰となったミニクを見下ろす。

「藍染の手中で生まれたのが運の尽きだ」

「うん。とりあえずどうする?古城まで時間かかりそうだけど」

「ヴァンパイアの翼で飛んで帰ろう。あとは、式で馬車がだめになったことと、馬と業者を死なせてしまったことも報告しよう」

「ああ、そういえば、影に潜むモンスターの退治依頼があったよね。あれって、さっきの子じゃないの?」

「そうだな。まぁ、今日は遅い。明日、報告に行こう」

その日は風呂に入り、そのまま寝た。

翌日になって、浮竹と京楽は冒険者ギルドにいき、モンスター退治をしたと報告して、大金貨500枚をもらった。

古城に戻ると、式が帰ってきていた。

馬と馬車はいいが、御者の死には驚いたようで、王宮で追悼式が行われることとなり、浮竹と京楽も、喪服を着て参加した。

「卯ノ花すまない。俺たちの戦いに巻き込んでしまった」

「人の死はいつか訪れるもの。今は、黙祷してやってください」

皆で黙祷した。

身寄りはなかったらしく、王家が管理する墓場の片隅に墓が建てられることになった。

「おお、浮竹殿。喪服を着ていても美しい!この僕と、一晩の熱い夜を!!」

「浮竹は僕のものだよ!」

「では京楽さん、あなたも混ぜて3Pで!」

王太子のジエルドに常識は通用しないようで、京楽が怒ってジエルドの股間を蹴りあげた。

「ああん、僕の愛しいたまたまが」

「君には、これをあげよう」

京楽は、浮竹が悪戯で作ったモレ草の薬をジエルドに渡した。

「これは精強剤だ。飲めば効果はばつぐん」

「おお、それはすぐに飲まねば!」

ジエルドは、モレ草の薬をその場で飲んだ。

「のあああああああ!!漏れるうううううう!!!」

ジエルドはトイレにかけこみ、それから3時間は戻ってこなかった。

「京楽、さっき飲ませたのはモレ草の・・・」

「だって、浮竹に手を出そうとしたんだよ」

「効果は薄めてあるだろうな?原液を使うと、人なら死ぬことがる」

「その辺は大丈夫。3日もすれば効果は切れるよ。原液を20倍に薄めた薬を盛ったから」

「なら、いいんだ」

ちなみに、その会話は卯ノ花に筒抜けであった。

「そうですか、王太子のジエルドに、強力な下剤を・・・・・」

「浮竹、逃げよう」

「京楽、足が竦んで・・・・・」

「あら、私は褒めているのですよ?あのくそ息子に下剤をもるなんて、やりますね」

にーっこりと微笑む卯ノ花が怖くて、二人は王宮を去り、古城に戻るのだった。


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「ミニクは死んだか。死んだわりには、ガイア王国で懸賞金がかかるモンスターになるなんて、醜いわりには頑張ったものだ」

「次には、俺にいけというのか」

邪神ザナドゥは、やる気はあまりなさそうだった。

「そうだよ。嫌だと言っても、呪いの侵食まであと1週間。このまま呪いで死ぬか、浮竹と京楽を殺すか・・・・・それは君の自由意思に任せよう」

「では、俺もいくとしよう。ミニクが先に待っている。俺もすぐ、そこにいくさ」

「おや、すでに死ぬ覚悟をしているのかい?」

「あの始祖ヴァンパイアと血族の神喰らいの魔神京楽の力は歪(いびつ)だ。上位神の力をもっている。いずれ、お前も滅ぼされるだろう」

藍染は笑った。

「あれらが、上位神の力があるだって?笑わせないでくれるか」

「好きなようにとるといい。私は、滅ぼされにいく。安寧の死が欲しい・・・・・」

「私が世界で唯一無二の絶対神になるのだ!はははは!!」

邪神ザナドゥは死を見据えて。

藍染は欲望だけを輝かせて。

それぞれ、前へ前へと進んでいくのであった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝

「遊びに来たぞ」

「やっほー。遊びにきたよー」

(西洋の俺!元気にしてたか!)

(西洋のボクも、元気にしてた?)

雑居ビルの狭い部屋に、4人が並ぶ。狭いのに余計狭く感じれたが、楽しいからそんなことどうでもいいのだ。

(そうそう、また幽霊退治を依頼されてな)

東洋の浮竹の言葉に、西洋の浮竹は固まった。

「じゃあ、この前みたいに成仏させにいく?」

のりのりの西洋の京楽の首を、西洋の浮竹が締め上げる。

「お前、俺が幽霊とか悪霊とか、そういうの苦手なの知ってて、わざとやっているのか?」

「キブギブ!!苦じい”~~~」

西洋の京楽の首を解放すると、西洋の浮竹はつーんと違う方向を向いた。

(俺たちがついているから、大丈夫だ!)

(そうそう。いざとなればうちの十四郎が調伏できるし)

「お留守番、というわけにはいかないのか」

(せっかくきたんだし、一緒に行こう。きっと、幽霊も怖くなくなる)

「本当だな?怖かったら、10円はげこさえるぞ?」

(何それ!そっちのほうが怖いんですけど!!)

東洋の京楽の言葉に、みんな笑うのだった。


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(ここが、幽霊の出る場所・・・・って、早速でてるな)

男の幽霊だった。男性に憑依しては、道端を歩く女性に話しかけて、ナンパして振られていた。

「ちっ、もっとイケメンはいねーのかよ」

そこに、西洋の京楽と視線があった。

(いけない!)

「ふへへへ。この体は俺もんだ」

(この、憑依したな。無理やりでも調伏してやる)

「へぇ。俺の京楽に霊が憑りついたのか。物質に力でも効くんなら、容赦しなくてもいいな?」

(おーい、西洋の俺?)

「行きかう先々で、かわいい女の子みてニマニマしやがって!制裁してくれる!」

「ぎゃあああああ!!なんだこの体の持ち主、何をしたんだ!!」

(春水、止めなくていいのか?)

(そういう十四郎こそ、止めなくていいの?)

東洋の浮竹と京楽は、引いていた。

「ひいいい。俺が悪かった、成仏するから助けてくれえええ」

西洋の京楽に憑依していた男性の霊は、本当に成仏してしまった。

(あ、成仏しちゃった)

(ボクたちがきた意味、なくなちゃったね)

とりあえず、結界をはって、もう霊が戻ってこないようにした。

「幽霊はどこだ?」

「浮竹、僕が憑依されてたんだよ。酷いよ、ボコボコにしなくてもいいじゃない」

(霊は、成仏したぞ)

「え、まじか」

(まじで)

「じゃあ、帰るか」

帰ろうとする西洋の浮竹を、東洋の浮竹ががしっとその肩を掴んだ。

(さっきのは、ついでに依頼されていた霊だった。本物はあっちだ)

廃墟の病院があった。

窓から、明らかに人ならざる者がこっちを見つめてきていて、西洋の浮竹は東洋の浮竹の腕に縋りついた。

「な、なんかこっち見てる!」

(地縛霊だね。あの廃病院から動けないんだ。ここ最近、ここで事故が多発してる。あいつのせいだ)

(早く除霊しないと、怨霊になっちゃいそうだね。急ごう)

「はうあっ」

また幽霊と目があって、西洋の浮竹は軽く意識を飛ばして、西洋の京楽に支えられる。

(強い怨念があるね。とりあえず、中にはいろう)

ぴしっパリン。

硝子の壊れる、ラップ音が鳴り響く。

かたかたと、地面に転がった薬品の空の瓶が宙を舞う。

「簡便してくれ!俺はこういうのが一番苦手なんだ!」

西洋の浮竹は、東洋の浮竹の背後に隠れる。

「呪ってやる。あの医者の男、許さない。よくも妻がいることを黙っていたわね!許さない!」

(あー。痴情のもつれか。ああいうのは悪霊になりやすい)

「東洋の俺、どうでもいいから除霊だ!除霊してくれ!」

(まぁ、待って。ちょっと会話してみよう)

(ボクは反対だけどねぇ、こんな悪霊と会話したところで、普通に霊に戻ってくれるとは思えない)

「誰!そこにいるのは誰!!」

(君を退治しにきた。でも、怒りを鎮めてくれるなら、普通に成仏させてあげれる)

「成仏!?ばかじゃないの!あたしはあの男が来るまで、ずっとここにいるのよ!あの男が運転していた車だって事故らせてやったわ!殺せなかったけどね!」

女の地縛霊は、東洋の浮竹を見て、ついでに西洋の浮竹を見た。

「あなたのうちのどちらか一人が、あたしのものになるっていうなら、憎しみを捨ててやってもいいわ」

「君ごときにあげれるほど、僕の浮竹は安くないんでね」

(キミみたいな醜い女に、愛しい伴侶を渡す男がいるはずもない)

それぞれ京楽に抱き寄せられて、おでこにキスをされた。

西洋も東洋も、浮竹は顔を真っ赤にしていた。

「あたしをばかにしてるの!」

(君には、これがお似合いさ)

妖刀をだして、それで地縛霊の体を切る。

「あははは、あたしに物理攻撃がきくわけ・・・ぐっ、何をした!?」

(ちょっと瘴気を食っただけだよ。十四郎)

(分かった)

東洋の浮竹は、浄化の札を取り出して結界を張る。

「祓われる前に、お前を道連れにしてやる!!)

西洋の京楽の傍に隠れて怯えている、一番弱そうに見える西洋の浮竹に襲い掛かる。

(西洋の俺!)

「大丈夫だ。ちゃんと、浄化の護符を身に着けている。選別だ、受け取れ」

襲い掛かってきた幽霊に、小瓶の中の水をかけた。

「ぎゃああああああ!!痛い、苦しい!!」

「今だ、東洋の俺!」

(ああ、分かってる)

東洋の浮竹は、聖なる力を使って地縛霊を綺麗に除霊してしまった。

(怖いのに、よく地縛霊に相手をできたな?)

東洋の浮竹はしゃがみこんでいた。

「聖女の聖水をかけたんだが、こっちの世界でも効くみたいだ。それより・・・腰が抜けた。京楽、背負ってくれ」

「仕方ないねぇ」

西洋の浮竹をおんぶして、西洋の京楽は歩きだす。

ボコボコにしてもされても、二人の仲は良いのだ。

(なんか、仲が悪い時もあるように見えて、基本ラブラブなんだな)

「な、ラブラブなんかじゃないぞ!」

「浮竹、そんなに否定しなくてもいいじゃない。昨日、睦み合った仲でしょ」

「お前は余計なことを言うな」

背中におんぶした西洋の浮竹に首を絞められて、でも西洋の京楽は笑っていた。

「少し幽霊になれた気がする。少しだけだけど」

西洋の浮竹は、もう自力で歩けるからと、地面に立った。

(そうか。苦手なものを克服しようとするのは、いい心がけだぞ)

東洋の浮竹に頭を撫でられて、西洋の浮竹も東洋の浮竹の頭を撫でた。

(どうした?)

「いや、俺はお前の兄でありたいと思っているのに、今回もまたお前に助けられてばかりで情けない」

(そんなことないぞ。お前の強さを、俺も知っているからな?)

「俺も、お前の強さを知っている。鳳凰の技は、俺のエターナルフェニックス・・・炎の禁呪にとてもよく似ている」

(鳳凰と炎の不死鳥の違いはなんだろう?)

「ほとんど同じじゃないか?西洋か東洋かの違いだけで」

「浮竹、置いていくよ」

「待て、京楽!ああ、そうそう、おみやげを。マンドレイクの・・・・」

((却下))

「マンドレイクを乾燥させた茶葉なんだが・・・だめか?」

(茶葉なら、ぎりぎりセーフだな)

(そうだね。くれぐれも、生のマンドレイクを持ってこないように)

「生が欲しいなら、アイテムポケットに・・・・」

(わーわーわー、この世界じゃ生のマンドレイク禁止!乾燥させたやつもNG!)

「なのに、茶葉はいいのか?変なかんじだな」

西洋の浮竹は、乾燥させたマンドレイクの茶葉が入った瓶を、東洋の浮竹にあげた。

(あははは、もらっておくよ)

「こっちには、アッサムの最高級茶葉もある」

(そっちのほうがうれしいなぁ)

「そうか。じゃあこれもやる」

(十四郎、片方もつよ)

(じゃあ、この呪われてそうなマンドレイクの茶葉をもってくれ)

(本当に呪われてそう・・・)

マンドレイクの茶葉は、しなびているけれど、人間の顔をしていた。

「じゃあな、東洋の俺と京楽」

「おいていくよ、浮竹」

「待ってくれ、京楽!!」

歩き始めた西洋の京楽の背中を追って、西洋の浮竹の背中も小さくなってく。

(あのさ。この前もらった乾燥マンドレイク、まだ残ってるって言ったほうがよかっただろうか)

(でも、西洋の君ががっかりするでしょ)

(そうだな。しばらくは秘密にしておこう)

ちなみに、乾燥させたマンドレイクは、段ボールの中に入れっぱなしであった。

(この茶葉・・・お湯入れたら、悲鳴あげそうに見えるのは、気のせいだろうか)

(いや、気のせいじゃないでしょ。西洋の君は、本当にマンドレイクが好きだね)

(俺に言われてもな・・・・)

クスリと、東洋の京楽は笑みを零して、東洋の浮竹の額にキスを落とすのであった。


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始祖なる者、ヴァンパイアマスター59

血の帝国から、浮竹と京楽は、ルキア、一護、冬獅郎を呼び寄せた。

用があるのはルキアだけだが、その守護騎士をしている二人も一緒にやってくるのは、至極当然なことなので、浮竹も京楽も気にしなかった。

「出るんだ」

「何がですか、浮竹殿」

「ぼ、亡霊が出るんだ。13歳くらいの女の子で、私の赤ちゃんがいないって・・・俺は見てしまった。情けない話だが、ゴースト系の亡霊のモンスターなら平気なんが、本物の亡霊は苦手なんだ。昨日出会って、その場で気絶してしまった」

「だっせぇ」

冬獅郎の言葉に、ぐさっと浮竹の心が傷つく。

「浮竹さんにも苦手なものがあるんすね」

「一護君・・・・」

「亡霊なんかで怖がるなんて、かわいいところあるっすね」

「かわいくない!私はかっこいいのだ!」

「はいはい」

一護は適当にあしらって、京楽に話を聞く。

「13歳くらいの女の子の幽霊。赤子がいないってことは、すでに結婚して子供を産んでなくなった少女の霊っすね」

「この古城を買い取ってから、話を聞いたんだよ。今から100年くらい前に、12歳で無理やり嫁がされた少女が、13歳で子供を産み、そのまま亡くなったそうだよ」

「京楽殿、その亡霊は赤子を探していたと?」

浮竹はガタガタ震えて、怖がっていた。

「浮竹が言うには、そうみたいだね」

「ふむ。未練を残したまま亡くなった亡霊ですか。無理やり成仏させることもできますが、その赤子の霊とやらを呼び寄せて、それから成仏してもらった方がいいですね」

「あ、赤子の霊を呼び出すのか」

浮竹は、京楽の服の裾を引っ張った。

「浮竹、君は寝ていていいよ。今晩にでも除霊してもらうから」

「亡霊が現れるかもしれないのに、一人で寝れるはずがないだろう!」

「じゃあ、一緒に亡霊を探す?」

浮竹はガタガタ震え出す。

「そ、それはいやだ!」

「どうやら、その少女の霊は、浮竹殿を気に入ってるようですね。思念の残滓が残っています。浮竹殿には悪いが、囮になってもらおう」

ルキアの言葉に、浮竹は倒れた。

「ちょっと、浮竹!?」

「亡霊の囮なんて嫌だーーー」

「一夜の我慢だよ。成仏すれば、二度と亡霊はでないから」

「ほ、本当だな!?」

「多分、ですが」

ルキアの言葉に、浮竹はまた眩暈がした。

「亡霊は、何もしてこないよな!?」

「どうでしょう。場合によっては憑依したりする亡霊もいますが、100年も亡霊をしていてそれほど騒ぎになっていないところを見ると、憑依したり頻繁に出る亡霊ではない気がします。悪さを働くような亡霊でないなら、放置しておいても大丈夫なのですが」

涙目になっている浮竹を見て、ルキアは溜息をつく。

「まぁ、今晩除霊しましょう。今のうちに仮眠をとっておきましょう」

「ちょうど眠かったんだ。寝れるなら寝る」

冬獅郎は早々と、まるで自分の家のようにゲストルームに入るとベッドに横になった。

ルキアも違うゲストルームで横になる。一護は、ルキアのゲストルームにあるソファーで寝ることしにたようだ。

「一護クン、ゲストルームは5つあるから、そんなソファーで寝なくても、ベッドは空いているよ?」

「いや、念のためにルキアの傍にいたいっすから」

「君は、本当にルキアちゃんが好きんなんだね」

すでに、ルキアは眠り落ちている。

一護は顔を真っ赤にして「そんなことないっす」と言って否定するのだった。

こうして、浮竹、京楽、ルキア、一護、冬獅郎は仮眠をとった。

日が暮れて夜になる。

ささやかな晩餐がふるまわれて、皆、京楽と戦闘人形のメイドの作った料理に満足気であった。

「いいもの毎日食ってるな、浮竹は」

冬獅郎とて、守護騎士としてそれなりのものを食べているが、京楽の手料理や戦闘人形のメイドたちが作る食事はどれも美味で、おいしかった。

「いや、今日は特別だ。3人がいるから、フルコースのメニューになってるだけで、いつもはもう少し質素だ」

「どのみちいいもん食ってんじゃねぇか」

「否定はしない」

湯浴みをして、普通なら就寝時刻なのだが、ルキアが霊を呼び寄やすいお香を焚いた。

「こ、怖くなんかないぞ。どこからでも出てこい!」

「浮竹、そう言いながら僕の服の裾を掴んでるから、強がってるのが丸わかりだよ」

「浮竹殿。その場で一人でいてください。霊が集まってきています」

「じゃあ、そういうことで浮竹」

「お、俺は一人でも怖くないぞ!」

浮竹は、がたがた震えながら、夜は寒いので毛布をかぶって、その場で緊張しすぎてどうにかなったのか、船をこぎ始めた。

「寝ちゃったけど、いいの?」

「大丈夫です。霊は集まってきています。もう少しで現れそうです」

「俺と冬獅郎もいる。なんとかなるだろう」

一護が、ルキアに毛布をかぶせた。

「すまぬ、一護」

「風邪でもひかれちゃ、大変だからな」

おおおおおおおおおお。

うおおおおおおお。

何やら、哀しい叫び声がしてきた。

もやのようなものが集まり、13歳くらいの少女の形をとった。

「返して・・・私の赤ちゃんを返して・・・」

眠っている浮竹にそう訴えかける。

「返して・・・・・」

浮竹は、起きると目の前に亡霊がいて、言葉を失い毛布をかぶって縮こまっていた。

「あなたの名前はララ・フォン・シスターニア。合っていますか?」

ルキアは亡霊に話しかけた。

亡霊を意識をはっきりとさせて、言葉を返してきた。

「そうよ。私はシスターニア伯爵家の三女、ララ・フォン・シスターニア。嫌だといったのに、お父様が借金の肩代わりだと、私をラトゥール家へお嫁にいけと」

「はい、それで?」

「ラトゥール侯爵家は、身分こそ上だったけれど、当主はまだ12歳だった私を無理やり犯して、子を身籠らた。私は初産が13歳であったせいで、この世を去ってしまった。私の赤ちゃんを返して!!」

ルキアは、魔法陣を描きだした。

何か呪文を唱えて、それは天国と呼ばれる霊的な物質が漂う世界とゲートを開く。

魔法陣には、1人の青年が立っていた。

「この方が、あなたの赤ちゃんの成長した姿です」

「私の赤ちゃん・・・本当に?」

「母さん?」

「名前は、名前はなんというの」

「リザ・フォン・ラトゥール」

「ラトゥール・・・私の息子は、成人してそれからラトゥール侯爵の爵位をついだのね」

ララは泣いていた。

リザは、どこか浮竹に似ていて、白髪い翡翠の瞳をもっていた。

ララの亡霊が、浮竹に惹かれて姿を現したのも納得がいった。

「母さん、一緒に天国に行こう。父さんは、母さんを亡くしてしまったことを後悔していたよ。もっと優しく扱ってやるべきだったって。もう、この地に未練も何もないでしょ?僕に会えなかったことが未練なら、もう果たされたはずだ。さぁ、一緒に天国に行こう?」

ふわりと、浮かび上がるリザの背中には、白い翼が生えていた。

ララは、浮竹のところにくると、怯えている浮竹の頭を撫でた。

「ごめんなさい。あなたは私の赤ちゃんの色によく似ていたから、化けて出てしまったわ。でももうそれも終わり。私も、天国に行くわ」

ララの背中にも白い翼が生えていた。

「行くのか?」

「ええ」

「たまに、戻ってきてもいいんだぞ」

「そうね。考えておくわ」

そうして、リザとララは天国に戻っていた。

ルキアは念のために聖水をまき、魔法陣をいたるところで描き出して、結界を張った。

「ふう。これで不浄な霊はこの古城には入ってこれないでしょう」

「ルキアちゃん、ありがとね」

「用事が片付いたなら、俺は寝る。仮眠をとったといっても眠い。また夜だ」

「あれ、そういえば血の帝国での活動時間が夜じゃなかったのか?」

「浮竹殿、知らなかったのですか。血の帝国では、5年前からブラッディ・ネイが活動時間を夜から昼に変えています」

「ああ、そういえばみんな昼なのに活動していたな」

「浮竹、今頃気づいたの」

「今頃で悪かったな」

つーんと尖がる浮竹に、ルキアも一護も眠るといって、ゲストルームに行ってしまった。

「僕たちも眠ろうか。これで、亡霊騒ぎも一段落したし」

「ああ、そうだな」

次の日の昼に、ルキア、一護、冬獅郎は血の帝国へ帰ってしまった。

住んでいる古城が変わったのだが、3人ともあまり興味がないようで、せっかく新しい家具とかを自慢しようと思っていた浮竹は、もの悲しくなった。

ガタン。

音がして、びくっと浮竹が振り返る。

そこには、ララが立っていた。

「あら、驚かせちゃたようでごめんなさい」

浮竹は、気を失っていた。

「浮竹さん、浮竹さん」

ぺちぺちと頬を叩かれて、浮竹は飛び起きた。

「え、ララ?どうして。ルキア君が結界を張ったはずなのに」」

「どうやら、こっちの世界と天国とを行き来でるようになたみたいで。亡霊ではなく、害のある霊を弾く結界のようです。私が悪意がないので、すり抜けられました。私が、怖いですか?」

「ちょっとまだ怖い。でも、悪意がないということはいい幽霊なんだろう?」

「そうですね。あなたの背後霊は・・・・・」

「わあああああ!!そんな話聞きたくない!」

耳を塞ぐ浮竹に、ララは苦笑した。

「ちゃんと、京楽さんの許可もとってありますから」

「そうなのか!?」

驚く浮竹は、京楽の部屋にいき、京楽の首を締め上げた。

「おいこら、害のない幽霊が行き来可能だってなんで教えなかった。ララを見た瞬間気を失ってしまったじゃないか!」

「ぎぶぎぶ!!」

浮竹の手を外して、呼吸を整える。

「いや、まさらララちゃんがこっちにまた戻ってくるとは思わなくて」

「天国なんてつまらないわ。こっちの世界のほうが、よほど刺激がって楽しいわ」

「ララちゃん、くれぐれも僕と浮竹の夜には・・・・・」

「大丈夫、のぞいたりしませんから、安心してください」

浮竹は真っ赤になった。

この古城に引っ越してもうすぐ半月になる。その間に、京楽に4回も抱かれた。

「ララ、本当に見ていないだろうな?」

「ええ、見ていませんよ。これは本当です」

「るるるるる~~~~~~」

「りんりんりん~~~~~~」

ミミックのポチとタマも、ララを歓迎するかのように、その側でくるくる回る。

「古城、幽霊つき・・・・・白金貨50枚に値切っておくんだった」

そんなことを口にする浮竹を、京楽は見る。

「この古城のこと、嫌いになった?なんなら、元の古城に戻ってもいいんだよ?」

「いや、俺はこの古城が気に入っている。幽霊つきだが、前よりも心地よい気がする」

庭には、薔薇園があり、アーチを築いていた。

その薔薇の世話をしたり、もってきた桔梗のプランターの世話をするのも、浮竹の役割だった。

ちなみに、庭の一部では鶏を飼いだした。

毎日、新鮮な卵が取れる。

オスメス飼っているので、そのうちひよこも生まれそうだ。

多すぎたら、かわいそうだがチキンソテーにでもなってもらおう。

そんなことを考えるのであった。


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それは、イデア王国で管理されてた。

邪神、ザナドゥ。

その封印を、藍染は解いた。

ザナドゥは、藍染を殺した。だが、藍染は何度殺しても再生してくる。

「不老不死・・・・始祖の呪いか」

邪神ザナドゥは、諦めの境地に立った。

「自由が欲しくないか」

「別に、いらぬ」

「お前に呪いをかけた。始祖のヴァンパイア浮竹と、神喰らいの魔神京楽の血を浴びねば、1カ月後に死ぬ呪いだ」

「そんな呪い、あるものか!」

藍染は笑った。

「ぐはっ」

呪いの侵食により、ザナドゥは呼吸ができなくなった。

「くそ・・・・・・」

「仮にも邪神だろう?封印を解いてあげたんだ、私の言うことくらい、聞いてもらおうか」

「私は神に滅ぼされた。この器に残った力は、弱い」

「じゃあ、私が力を与えよう」

邪神である自分の血を、藍染はザナドゥに与えた。

邪神である藍染の血は、ザナドゥを侵食していく。

「殺す、浮竹、京楽」

「まずは、女神アルテナの残した肉塊に、子を宿させてもらおうか。私が神の完成体になるまで、遊ぼうじゃないか」

藍染は、そうして笑うのであった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター58

「浮竹殿、京楽殿」

やってきたのは、血の帝国の皇女であり、聖女であるルキアと守護騎士の黒崎一護であった。

「どうしたんだい、ルキア君、一護君」

「あれ、ルキアちゃん、冬獅郎クンの姿が見えないね?」

「その冬獅郎が!!」

ルキアの話では、冬獅郎は何者かに攫われたというのだ。

それが、藍染の手による者の可能性が近いと分かり、浮竹と京楽は顔色を変えた。

「ついに、友人たちに手を出し始めたか」

「ルキアちゃん、多分冬獅郎クンは僕らを襲ってくる。ちゃんと加減して、目を覚まさせてもらうから、ここは僕らに任せてくれないかな」

「浮竹殿と京楽殿がそういうのであれば・・・」

ルキアと一護は、冬獅郎のことは浮竹と京楽に任せることにして、騒ぎを大きくしないためにも、一度血の帝国に戻ってもらった。

「どう思う、京楽」

「そうだね。藍染の血を与えられて、やってくるに1票」

「奇遇だな。俺もそう思っていたところだ」


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「誰だ・・・・・」

冬獅郎は、揺蕩う意識の狭間で、夢を見ていた。、

自分を助けようとしてくれた母親が、優しくしてくれる夢だった。

冬獅郎の母親は、特別な血をもった人間で、稀にしか生まれぬヴァンパイアの子を確実に孕める血をもっていた。

冬獅郎の父親は、ヴァンパイアだった。

ヴァンパイアであった父親は、冬獅郎の母親に血を与えて花嫁と迎えることはせずに、ただ犯して子を産ませた。

ヴァンピールの力は、個体差があれど普通のヴァンパイアより強い。

現に、黒崎一護というヴァンピールは、聖女朽木ルキアの守護騎士をしていた。

冬獅郎には他に4人の兄弟姉妹がいたが、皆力に溺れて幼くして死んでいった。父親であるヴァンパイアは、強いヴァンピールである冬獅郎の力を求めた。

母親は、そのヴァンパイアの父親の元から、冬獅郎を連れて逃げ出そうとして、父親に殺された。

気づけば、冬獅郎は父親を殺して、親殺しのヴァンピールと蔑まれて生きてきた。

そんな冬獅郎に、救いの手を差し伸べてくれたのは、ルキアと一護、それに浮竹と京楽だった。

「誰か・・・・そこにいるのか」

「君は忌まわしきヴァンピール。君が守護するべき朽木ルキアは死んだ。殺したのは、浮竹十四郎と京楽春水」

「ルキアが死ぬはずがない・・・・」

「これを見ても?」

藍染は、強烈な洗脳を行っていた。

「これは・・・ルキアの生首。いやだ、ルキア、ルキア!」

「これも、浮竹十四郎と京楽春水のせいだよ」

次に冬獅郎の前に置かれ生首は、雛森桃のものだった。

「雛森!!うわああああ!!!」

実際は、ただの肉塊であったけれど、冬獅郎にはルキアと雛森の生首に見えた。

浮竹のことと、京楽に関することは記憶が奪われていた。

「許さない・・浮竹十四郎、京楽春水。この手で、葬り去ってやる」

「この血を飲みなさい。君の力になるだろう」

強烈な洗脳にかけられた冬獅郎には、藍染の邪神の血が女神の血に見えた。

冬獅郎は、ワイングラスに入れられた血を飲み干した。

「力が湧いてくる・・・・・」

「さぁ、行っておいで。浮竹十四郎と京楽春水を抹殺するんだ」

「殺す・・浮竹、京楽・・・・」

冬獅郎は、自分の愛刀である氷輪丸を手に、浮竹と京楽の住む古城に向かう。

冬獅郎は、氷の龍を出していた。

それに跨り、空を飛ぶ。

「ルキア、雛森・・・仇は、とってやる」

冬獅郎は、数日でイデア王国からガイア王国へと来ていた。

浮竹たちの住ま古城にくると、まずが使役できる氷の精霊フェンリルと氷女を出して、城ごと凍結させた。

けれど、一度火柱があがり、氷はどんどん溶かされていく。

「どうなっている!」

「待ってたよ、冬獅郎クン」

「冬獅郎君、元に戻るんだ」

庭に出てきた浮竹と京楽を、冬獅郎は憎しみの眼差しで見つめる。

「よくもルキアと雛森を・・・・殺してやる!」

「わお、冬獅郎クン本気みたいだね。どうする、浮竹」

「ある程度力を削ったところで、エリクサーを飲ませる」

冬獅郎は、魔狼フェンリルと氷女の精霊を操って、浮竹と京楽を攻撃する。

それをかわして、浮竹は炎の魔法を放つ。

「ゴッドフェニックス!!」

炎の不死鳥は、氷女を包み込んだが、氷女は炎を凍てつかせた。

「ちょっと、思ったより力つけてるね。これ、本気でいかなきゃ無理かも。サンダーボルテックス!!」

冬獅郎本人に魔法をかまそうとすると、フェンリルが代わりに魔法を受けた。

「げ、魔力に変換して食われた。ちょっと、浮竹どうにかならないの!?」

「ゴッドフェニックス、カイザーフェニックス、エターナルフェニックス・・トリプルファイアフェニックス!!!」

「いきなりそれかい!」

京楽が余波を浴びないように、シールドを張った。

「ウォォォォォン!!」

氷の魔狼フェンリル冬獅郎を庇い、蒸発してしまった。

「よくもフェンリルを!」

冬獅郎は、愛刀氷輪丸を手に、氷の龍を出してきた。

それは浮竹と京楽に襲い掛かる。

「ファイアシールド×5」

浮竹は、5枚重ねの炎の盾を張った。

じゅわっと、氷の龍が蒸発していく。

「まだだ、俺はこんなところで終わってたまるか、ルキアと雛森の仇を取るんだ!」

「冬獅郎!!」

「シロちゃん!!」

中庭から現れたのは、浮竹と京楽に殺されたはずのルキアと雛森だった。

「シロちゃん、私たちは無事だよ!藍染に洗脳されているの!お願い、元に戻って!!」

「全部幻だあああ!!」

冬獅郎は、氷の龍をルキアと雛森に向けた。

「いい加減、目を覚ましやがれ!!」

一護に殴られて、冬獅郎は瞬きを数回繰り返した。

「一護?なんでここにいやがる。ルキアと一緒に死んだはずじゃねぇのか!」

「勝手に殺すな!お前は藍染の手の者に攫われて、洗脳されてんだよ!」

「じゃあ、今この目の前にいるルキアと雛森は、本物?」

「ああ、そうだ!自分が守りたい存在を、自分で壊す気か!」

一護は、冬獅郎の頭を殴った。

でも、そんなことで藍染の洗脳がそう簡単に解けるわけもなく。

「浮竹と京楽、あいつらだけは許せねぇ」

「冬獅郎!」

「シロちゃん!」

浮竹は、さっと雛森の体を攫うと、早口で事情を説明する。

それに真っ赤になって、雛森はエリクサーを手に、冬獅郎の元に駆け寄る。

「シロちゃん、元に戻って!」

雛森は、エリクサーを口にすると、冬獅郎に口移しで飲ませた。

エリクサーを飲みこんで、冬獅郎は我に返る。

「俺は、一体何を・・・・・」

「冬獅郎、元に戻ったのだな!?」

「シロちゃん!」

ルキアと雛森に抱き着かれて、冬獅郎は真っ赤になっていた。

「雛森、さっきのは・・・・」

「えへへへ、ファーストキス。シロちゃんと、しちゃった」

その言葉に、冬獅郎は耳まで真っ赤になった。

「おい、冬獅郎、まずは言うことがあるだろうが!」

一護に急かされて、冬獅郎は、氷の龍が暴れたせいでめちゃくちゃに壊れた古城を見上げながら、浮竹と京楽に詫びを入れた。

「すまん!俺が、洗脳されたせいで、こんなことを引き起こして・・・・」

「まぁ、悪いのは全部藍染だから」

「そうそう。古城は恋次君の時間回帰の魔法でなんとかしてもらうから、気にしなくていいよ」

「京楽、この古城のことは藍染に知られているし、いっそ引っ越すのはどうだ?」

浮竹の言葉に、京楽が首を傾げる。

「けど、どこへ?」

「向こう側に、古城があるだろう。ほら、東の運河の近くにある」

「あれは、貴族が住んでいるよ?」

「ここに白金貨100枚ある。これで買いとる」

「金に全部物を言わす浮竹・・・なんかかっこいい!!」

浮竹はすぐに交渉に乗り出して、その貴族は没落寸前で、古城しか資産がなかったのだが、古城の買取り手もなく、維持費に必要な金を借金して賄っていた。

浮竹の出してきた条件に食いついてきた。

浮竹は、戦闘人形のメイドたちに命令して、無事だった家具やら衣服やらあとあらゆるものをアイテムポケットにいれさせると、まずは掃除が行き届いていないせいで、埃にまみれていた古城を、戦闘人形のメイドたちに徹底的に掃除してもらった。

そして、家具の配置を行っていき、クローゼットに衣服をしまいこむ。

絵画などを飾り、シャンデリアを前の古城のものと入れ替えた。

純金でできたハニワを玄関に飾ってみた。

ペルシャ絨毯を寝室にしいて、天蓋つきのキングサイズベッドのベッドを寝室に置く。

ダイニングルームには、テーブルと椅子に他にも、前の古城のものより広かったので、ホイワイトタイガーの毛皮をしいて、その上にソファーを置いた。

風呂場は前の古城より狭かったが、二人で入るには十分な広さを兼ね備えいた。

玄関から続く赤い絨毯は、職人技のものを選び、他に足りなかったり、壊れたりした家具は、金で一流のものを買いそろえた。

埃にまみれておいた古城は、ビフォアアフターで、どれだけ違いがあるのか分からないほどに、手入れする前の古城とは比べ物にならないくらいに豪華なものになっていた。

浮竹の手元には、ガイア王国の女王からもらった白金貨がまだ5千枚手つかずで残っていた。

ダンジョンにもぐったり、錬金術でもうけた金で事足りた。

前の古城のマンドレイクを全部引き抜いて、新しい古城は前の古城より中庭が広かったので、戦闘メイドたちに畑を耕してもらい、マンドレイクの苗を植えた。

最後に、地下に血の帝国と繋がる空間転移の魔法陣を設置した。

どのみち、周囲には鬱蒼と森が生えていたし、一番近くの町はやはりアラルだった。

前の古城よりもアラルの町が近くなった。

ゲストルームは前より少なくなったが、それでも5つはあって、広さは倍になった。

図書館を配置したり、錬金術用の館を5つ建てた。

外見は少々違えと、前と同じような古城ができあがった。

違う点があるとしたら、家畜小屋ができて、そこで鶏を飼うようになったことだろうか。

使わない暖炉では、いつも通りミミックのポチとタマの巣になっていた。

「るるるるる~~~」

「りんりんりん~~~~~」

ポチとタマは、お引越しは初めてなので、嬉しそうに古城の中を冒険しに出て行ってしまった。

「エリクサーが尽きてしまったな。材料を買い占めて、作るかー」

「また、新しく作った錬金術の館を吹き飛ばすつもりだね」

「当たり前だ!館は吹き飛ばすためにあるようなものだ!」

「そんなこと言う錬金術士は君くらいだと思うけどね」

「ほら、アラルの町に買いだしにいくぞ。ついでに乱菊と冒険者ギルドに引っ越しをしたことを伝えないと」

浮竹は、上着を着て、出かける用意をする。

ついでに夕飯とかの買い出しも兼ねて、外に出る。

鬱蒼とている森には獣道があって、そこを通るとすぐにアラルの町に出られた。

「あら、引っ越したの。古城から古城へ。あんまり、外見以外変わってないんじゃないの?」

乱菊の言葉に、浮竹は「鶏を飼いだした」と威張り始めた。

「まぁ、マンドレイクは相変わらず育ててくれるからいいけど。あの古城、出るって、噂よ?」

「な、何が・・・・・・・」

「ほら、亡霊が・・・・」

「そんなわけあるか!」

浮竹は、ヴァンパイアマスターなのに亡霊が怖いようで、京楽の服の裾を掴んでいた。

「浮竹、もしかして亡霊が怖いの?」

「こ、怖くなんかない!この世界にはゴーストとか亡霊系のモンスターもいるだろう!」

「そうだけど・・・・手が震えてるよ」

「き、気のせいだ」

京楽は、そんな浮竹はかわいくて、頭を撫でて抱きしめた。

「あら、お熱いこと」

「そんなに気になるなら、亡霊退治をしよう。聖女のルキアちゃんも呼んで。ちゃんと成仏してもらおう」

「あ、ああ、そうだな」

その後で、冒険者ギルドにより、住所を変更してその日は食事と風呂に入り、就寝となった。

ふと、すすり泣く声が聞こえて、目が覚めた浮竹は、泣き声をがするほうにふらふらと歩いていく。

「いないの・・・お腹に赤ちゃんがいたのに・・・いないの」

すすり泣く、少女の姿をした亡霊を見てしまい、浮竹はその場で気を失った。

「浮竹、おーい、浮竹。こんな場所で寝たら、風邪引くでしょ?」

朝になって京楽に起こされて、浮竹はその肩を掴んで揺さぶった。

「出た。本当に出た。お腹に赤ちゃんがいないとかいって・・・・13歳くらいの、少女の亡霊だった・・・本当に、出たんだ」

ガタガタと震えて、京楽の服の裾を掴む。

「夢じゃないようだね。今回は、幽霊退治と参りますか」

京楽は、血の帝国からルキア、一護、冬獅郎を呼び寄せて、幽霊退治と乗り込むのであった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター57

魔女エルは、京楽に最後の別れにと古城に会いに来ていた。

浮竹は、それが気に入らなかったが、魔女のエルに京楽の周囲をうろうろされたくなくて、しぶしぶ魔女エルを古城に招きいれた。

「このワインを飲んで。私も飲むから。それで最後ですから」

京楽は、ワイングラスに注がれたワインをなんの疑いもせずに飲む。

青いワインだった。この世界のワインは青や緑、オレンジ、紫などいろんな色があるので、浮竹も気にしていなかった。

青いワインを飲んだ京楽は、ワイングラスを落とした。

パリン!

けたたましい音がして、浮竹が京楽の名を呼ぶ。

「京楽!」

「気安く話しかけないでくれるかな。僕は、エルが好きなんだ」

「は?」

浮竹は固まった。冗談にしては、性質が悪い。

「エル・・・君を愛している。君が大好きだ」

魔女エルを、京楽は抱きしめていた。

「京楽!!!」

「うふふふ、京楽さんは私のものよ!」

狂った顔で笑う魔女エルに、京楽は惚れ薬でも飲まされたのかと、京楽を正気づけようとして、その頬をひっぱたいた。

「京楽、帰ってこい!」

「君みたいな始祖に用はないよ。僕はエルと共に生きる」

魔女のエルは、京楽と口づけしていた。

体が燃えるように熱かった。これが、嫉妬という感情なのだろうか。

「魔女エル、京楽に何を飲ませた!」

「女神の秘薬よ。きっとエリクサーでも治せないわ」

「そんなこと、分からないだろう」

魔女エルはホウキを取り出した。

それにエルが跨り、後ろに京楽を乗せた。

「あははは、京楽さんは私がいただいていくわ。男同士で愛し合うなんて不毛なのもこれで終わりよ。私と京楽さんは結婚して幸せな家庭を築き、子供にも恵まれるの」

魔法を放とうとしたが、京楽が巻き添えになると、我慢する。

「京楽!!」

「じゃあね、浮竹さん。永遠にさようなら」

「じゃあ、浮竹。長い間世話になったね」

「京楽ーーーー!!」

京楽と魔女エルはどこかへ飛び去ってしまった。

「・・・・・京楽のアホ」

浮竹は少しだけ泣いていた。

「俺から京楽を奪うだと?その行為がどれだけ俺を怒らせたのか、知らしめる必要があるな」

浮竹は錬金術士の館からエリクサーをあるだけもってきた。

「神の秘薬・・・・エクリサーは神の涙。どうか、効いてくれ」

浮竹は祈りながら、エリクサーをアイテムポケットに大切そうにしまいこんで、京楽の魔力を探知するのだった。

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「ああ、いいわ、京楽さん」

魔女エルと京楽は睦み合っていた。

「エル大好きだ。僕の主・・・・」

「ああん」

身をくねらす魔女エルに、それ以上に行為でがきなくれて、京楽は愕然とした。

「勃たない・・・」

「そ、そんなに急く必要はないんだから。ゆっくり、一緒に歩んでいきましょう?」

魔女エルは、裸のまま京楽にしな垂れかかった。

「そうだね。子供は、生まれたらでいい。僕は君を愛している。それだけで十分・・・・」

「京楽さん?」

「何か、大切な存在を忘れている気がする・・・」

「気のせいよ!それより、食事にしましょう?」

「ああ、僕が作るよ。戦闘メイドにも手伝ってもらって・・・あれ、戦闘メイドは?」

京楽が訝しがる。

「そ、そんな存在はじめからないわ!」

「頭が痛い・・・・」

「京楽さん!私が食事をつくるから、京楽さんは休んでいて!」

魔女エルは服を着ると、京楽をベッドに寝かせた。

女神の秘薬は効果は絶大だが、すでに最愛の者がいる京楽には、何か違う作用がおきているようで、魔女エルは不安になりながらも、京楽と共に過ごすのであった。

ピンポーーン。

チャイムが鳴った。

魔女の里の外れに新居を構えたのだが、魔女の知人でもやってきたのかと、扉を開ける。

そこには、浮竹がいた。

「浮竹さん!京楽さんは、渡さないわよ!」

浮竹はスリッパはかずに土足であがると、京楽のいる部屋までやってきて、扉を開けた。

「京楽!」

「君は・・君は誰?」

「俺は浮竹十四郎。お前の主で、お前は俺の血族のヴァンパイアロードであり、神喰らいの魔神だ」

「血族・・・主・・・・魔神。頭が・・・・」

浮竹は、アイテムポケットからエリクサーを出すと、それを口に含んで京楽に飲ませた。

「何を・・・・」

「全ての状態異常を治す神の涙と呼ばれている、エリクサーだ」

「僕は、何も異常なんてない。エルが好きなんだ」

その言葉を聞いても、浮竹は取り乱さなかった。

「必ず、京楽、お前を取り戻す。魔女エル、俺も今日からここに住むからな」

「な!部外者は出て行って!」

魔女エルは、驚いて浮竹にクッションを投げつけた。

「僕からもお願いするよ。何か、とても大切なことを忘れている気がするんだ。この浮竹って子が近くにいたら、思い出せる気がする」

「京楽さん、京楽さんは私のものよ!」

浮竹は、くつくつと笑いだした。

「必死だな。せいぜいあがくといいさ」

「浮竹だっけ。もっと傍においでよ」

ごく当たり前のように、京楽は浮竹の近くにくると、顎に手をかけてキスをしていた。

「京楽さん!何をしているの!!」

「え、は、本当だ!ごめんね、浮竹」

浮竹は、もう一度エリクサーを口に含むと、京楽に飲ませる。

「何を飲ませているの!」

「エリクサーだが?」

エリクサーと聞いて、魔女エルは慌て出した。

「無駄よ!女神の秘薬はエリクサーでも治らないと、藍染様がおっしゃっていたんだから」

「ほう。藍染からもらった惚れ薬か」

浮竹は、残忍に笑った。

「藍染と通じているということは、死を覚悟しているんだろう?」

「助けて、京楽さん!」

京楽は、浮竹と魔女エルの間に割って入った。

「エルを傷つけるのは、許さないよ。エルは、僕の全てなんだ」

浮竹は、左手の薬指にしているピジョンブラッドのスタールビーを見せた。

「お前の手も、はまっているはずだ」

「本当だ・・・どうして。ねぇ、エルは知ってる?どうして、僕と浮竹が同じペアリングをしているの?」

「ああああああああ!!!」

魔女エルは、包丁を取り出して、それで浮竹の胸を刺し貫いていた。

「死んで死んで死んで!!!私と京楽さんの中を引き裂こうとする者は、みんな殺してやる」

浮竹は、平気な顔で傷を再生させる。

「ああああ!!死んで!」

もう一度ふりあげようとしたエルの包丁を、京楽が奪う。

「エル、だめだ。人を傷つけてはだめだ」

「こいつは人じゃないわ!ヴァンパイアマスターよ!」

「ヴァンパイアマスター・・・・頭が・・・・・」

「素直に、京楽を解放しろ。そうすれば、命だけは助けてやる」

残酷に笑う浮竹に、魔女エルはきっと睨みつけた。

「嫌よ!京楽さんは私のものよ。私だけを見て、私だけを愛してくれると誓ったわ!」

「それが薬の効果でも?」

「そうよ!薬の効果でも、女神の秘薬よ!エリクサーでも解けなかった!もう、あなたに成す術はないのよ!諦めて帰ってちょうだい!」

「嫌だね。俺も今日からここに住む」

「京楽さん、何か言ってやって!」

魔女エルは、浮竹を追い出してくれるものだと信じていた。

「浮竹。君がよければ、こんな狭い家だけど、一緒に暮らそう」

「そんな・・・・京楽さん」

「どうしたんだい、エル。愛しているよ」

「うふふふ。京楽さんの愛は、私のものよ」

「本当にそうかな?」

浮竹は、血の魔法を使って、自分の指を切った。

にじみ出る鮮血に、ごくりと京楽が唾を飲みこむ。

「ああ、おいしそう・・・」

「ダメよ、京楽さん!あの人の血は猛毒なの!」

「そうなの?おいしそうなのに・・・・・・」

「私の!私の血を飲んで!処女の生き血よ!浮竹さんの血よりもずっとずっとおいしいはずだわ!」

魔女エルは、首を差し出す。

それに、京楽が噛みついて血をすする。

一口分も飲まない間に、京楽は牙をひきぬいた。

「どうしたの、京楽さん」

「まずい」

「え?」

「君の血がまずい。どうしてだい?君を愛しているなら、君の血は甘いはずだ」

不機嫌になる京楽の目の前に、ワイングラスが置かれた。

それに、浮竹が自分の手首をきって、滴り落ちる血を集めた。

「俺の血だ。飲んでみろ」

「浮竹の、血・・・・・」

ワイングラスを手にとり、魔女エルが止める間もなく、京楽は浮竹の血が入ったワイングラスの中身を飲み干した。

「甘い・・・甘すぎて、眩暈がする」

魔女エルは、絶望に顔を歪めた。

その日から、魔女エルに家には京楽の他に浮竹も住みつくことになった。

クスクスクス。

他愛ない会話をして、微笑み合う二人を、それでも京楽を手放すことができなくて、魔女エルは不思議な気持ち見つめていた。

「エルどうしたの。君を愛しているよ」

京楽はエルに愛を囁く。浮竹には愛を囁かない。

それでも、魔女エルといるより浮竹と一緒に過ごす時間のほうが、京楽には多かった。

「今日は一緒に寝よう」

「ええ、そうね!」

エルの寝室にやってきた京楽は、エルを求めた。

途中で違和感を感じた。

「やっぱり、勃たない・・・どうしてだろう。こんなにもエルを愛して、エルの子供が欲しいのに・・・・・・・」

「俺が相手してやろうか?」

ふと、眠っていたと思っていた浮竹が、寝室に入ってきた。

「浮竹!」

あられもない姿でいた京楽は、衣服を整えると、浮竹を抱きしめた。

「どうしてだろう。君を愛していないのに、体は君を求めている」

京楽のものは、浮竹を欲っして勃起していた。

「出てってちょうだい!さぁ、京楽さん、さっきの続きをしましょう?」

「うん、そうだね。おやすみ、浮竹」

「おやすみ、京楽」

浮竹はゲストルームに戻ってしまった。

硬く勃ちあがっていたものは、魔女エルの裸を見たとたん、萎えていた。

「あれ、どうして・・・僕は、浮竹に欲情しているのかな?」

「そ、そんなことないわ!いい加減、出ていってもらわないとね?」

魔女エルは、どうにかしてこの新居から邪魔者である浮竹を追放したがっていた。

「だめだよ!浮竹が出ていくなら、僕も出ていく」

「京楽さん・・・・・・」

もはや、薬の効果は薄れ始めていた。

刷り込み現象のように、エルに愛を囁くが、京楽の意識は浮竹に向かっていた。

「京楽さん、私と一緒に死んで?あの世で、永遠に一緒になりましょう?」

エルは包丁をもちだして、京楽の心臓を突き刺した。

次に自分の手首を切ろうとして、凄い殺気を感じてはっとなった。

「いやああ、私は!京楽さん、京楽さん」

「どけ、じゃまだ」

浮竹は、魔女エルを突き飛ばした。

魔神であっても、京楽はただのヴァンパイアロードだ。不老不死ではない。

心臓が再生されていくのを確認しながら、浮竹は念の為に傷口に自分の血を注ぎこみ、京楽を抱きしめた。

「ここまで愚かだったとは・・・・俺だけならいざ知らず、愛してるはずの京楽を傷つける。それがお前の愛し方か、魔女エル」

「違うの!違うのよ!!」

「もう、お前はいらない。死ね」

「いやあああああ!!京楽さんは私ものよ!私から奪わないでええええええ」

「ゴッドフェニックス!」

浮竹は、炎の不死鳥を呼び出すと、魔女エルを灰に変えてしまった。

「あれ・・・僕は何をしていたんだろう。浮竹?」

「京楽、お帰り」

浮竹は、涙を滲ませていた。

「なんだかよく分からいけど、ただいま」

こうやって、京楽はエルの死で惚れ薬の効果が切れて解放されて、浮竹の元に戻ってきた。

「本当に、お前という男は・・・・」

事情を聞いて、何度も謝る京楽に、浮竹はツーンを態度をとんがらせていた。

「そもそも、愛しい伴侶がいるのに、女なんかに近寄られて、変なものを飲まされるお前が悪い」

「だから、ごめんてば」

「ふん」

「今日の夜、たっぷり愛してあげるから」

耳元でそう囁かれて、真っ赤になる浮竹であった。


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「いいか、これはお仕置きだ。俺がいいっていうまで、これを外すなよ」

京楽のものは、根本が戒められていた。

「ああ・・・・十四郎。いかせてよ」

「だめだ。これはお仕置きなんだから」

騎乗位になって、浮竹は精液を弾けることができず、ずっと硬さを保ったままのそれを、自分の蕾にあてがい、ゆっくりと飲みこんでいく。

「あああ・・・・」

白い喉を見せ妖艶に笑う浮竹に、京楽はごくりと唾を飲みこんだ。

「んあっ」

下から僅かに突き上げられて、浮竹は声を漏らす。

「お仕置きなんだから・・・ひあっ」

ごりっと奥に入ってくるものに、浮竹が驚く。

根元を戒められているというのに、京楽は我慢しながらも浮竹を貪った。

「あああ!」

これでは、どっちがお仕置きをされているのか分からない。

「んああああ!」

ごりごりっと奥をすりあげられて、浮竹はせがんだ。

「春水、いっぱいだしてくれ」

「じゃあ、これとってもいいよね」

「仕方ない。とっていいぞ。ひあああああ!!」

浮竹の奥で、京楽はびゅるびゅると濃い精子を思い切り流し込んでいた。

いつもの2倍の時間をかけての射精に、浮竹もいっていた。

「あ、やあ、子種受けながらいっちゃううう」

「吸血もしてあげる」

肩に噛みつかれて、血をごくりと飲まれる。

その快感にも支配されて、お仕置きどころではなくなっていた。

「ああ、お仕置きが・・・ひあっ」

「我慢した後で出すのって、すごい快感。たまにはこういうのもいいね」

「ひああああ」

京楽は騎乗位から浮竹を押し倒して、ごりっと中を抉る。

その感覚に、浮竹はまたオーガズムでいっていた。

「ああああ!」

「ほら、十四郎、お仕置きは?」

「もう、やああっ」

「結局、僕がリードする羽目になるんだね」

薄く笑いながら、京楽は浮竹を突き上げる。

「やあああ」

「十四郎、かわいい」

「やあ、春水、お仕置き・・・」

浮竹は、自分の意思で京楽を締め上げる。

「んっ、そんなにされたら僕がもたなくなる」

浮竹の奥に精液を流し込む。

また締め付けられて、京楽は2回連続していっていた。

「確かに、お仕置き、だね。僕をこんな風にさせるなんて。十四郎、すごいね、君の中うねってしめつけてくる。熱いよ」

「あああん、春水、春水」

求められるままに口づける。

「んっ」

舌と舌が絡み合うキスを繰り返す。

もう、お仕置きとか関係なく、普通に交わっていた。

「んあああああ!!」

「くっ」

浮竹の最奥に精液を注ぎ込む。

浮竹はもう精を出し尽して、オーガズムでいくばかりであった。

「春水、愛してる。お前は?」

「僕も十四郎、君だけを愛しているよ」

「魔女エルにも愛を囁いていたくせに」

「あれは薬の効果だよ。僕が心から愛しているのは、十四郎、君だけだ」

お互いを抱しめあいながら、口づけを交わしていた。

「もう、惚れ薬なんて飲まされたりするなよ」

「そういう君も、記憶をいじられたりして、元血族にさらわれたりしないようにね」


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「そうか。魔女エルは滅んだか。もともと、うまくいくとは思っていなかった」

藍染は、城でワインを飲んでいた。

「魔女の里にいた魔族は、浮竹と京楽により滅ぼされました。どうなさいますか」

「放っておけ」

「はっ」

そう言って、部下は下がっていった。

「あなた」

「女神オリガか」

「言われた通り、攫ってきたわ」

「この子が、浮竹と京楽の友人か。まだ子供だが、守護騎士ということは、それなりに力があるんだろう。次回はこの子にいってもらおうか」

女神オリガが、血の帝国から攫ってきたのは、ルキアの守護騎士である日番谷冬獅郎であった。

冬獅郎は藍染の血を与えられて、狂暴化するのだった。




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始祖なる者、ヴァンパイアマスター56

魔族が守る。そういって、魔女の里に兵士を派遣していたのは藍染だった。

藍染の手中にあった魔女の里では、魔女狩りが行われていた。

老若問わず、高い魔力のものほど捕まえられていく。

魔女は錬金術士を嗜むものだ。多い魔力もちの者は、はっきり言って数が少ない。

それで、40人ばかり捕らえられて、魔国アルカンシェルの隣にある、現在藍染が住んでいるイデア王国に、魔女たちは連行された。

「君たちには、1人の魔女になってもらう」

藍染の言葉に、魔女たちの間に動揺が走る。

「藍染様、こんなこと聞いていません」

「藍染様、私たちを守ってくださるのではなかったのでですか」

「死神のキララ。後は君に任せたよ」

死神のキララは、半身を京楽に食われたが、女神アルテナの手によって魂と体を分けられて、今いるキララは魂を食われたキララの半分であった。

「はい、藍染様・・・・」

モレ草でトイレに閉じこもり、漏らしていた時は吹き出しだが、実際の藍染は冷酷だ。キララが命令に従わらないなら、どんな手でも使うだろう。

父である死神ナウセルは助けにきてくれない。

母である女神オリガは壊れている。

キララは、まだ保護者を必要とする年齢だった。藍染が、親代わりだった。

それは不幸でしかなかった。

キララは、連れてこられた魔女の肉体から魂を、新しく与えられたカーナの鎌で狩っていく。

魂が40人分抽出された。

肉体は、いらないからと、城の外に捨てられた。

40人分の魔女の魂は、は藍染の手により、難解な魔法をかけられて、1つの魂となった。

禁呪であった。魂に複合体を作る魔法であった。

「40人分の魔力を凝縮した魂だ。邪神である私には及ばないが、それなりの魔力を有しているだろう。さぁ、新生魔女の登場だ」

一番若い、アキラという名前の魔女に、その魂は宿った。

「許さない・・・殺す・・・・・」

魔女たちの無念が宿った魂は、藍染ではなく標的を浮竹と京楽にしていた。

魔女アキラの中で、自分たちをこうしたのは浮竹と京楽ということになっていた。

「殺す・・・浮竹、京楽」

魔女アキラは、ホウキに乗って、古城目指して飛び立っていく。

「少しは面白いことになりそうだ」

くつくつと笑う藍染めを、死神キララは不安な気持ちで見つめるのだった。

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「魔女乱菊さんに助けを求めたら、ここが一番力になってくれるって聞きました!お願いです、同胞たちを助けてください!」

浮竹と京楽に助けを求めにやってきたのは、魔女エル。

年若い15歳くらいの魔女で、とてもかわいかった。

「どういうことだ?」

「藍染の手の者に、40人の魔女が連れて行かれました。皆強い魔力もちの魔女ばかりです」

「魔女の里を、藍染が手中に収めたのは知っている。魔女が40人連れていかれといっても、こっちには関係のないことだ」

「そんな!」

「まぁ、エルちゃんだっけ。僕が詳しい話をきくよ」

浮竹はすることがあると、錬金術の館に閉じこもってしまった。

「藍染が、魔女の複合体の魂を作るために40人の魔女を・・・ねぇ、その魔女たちの肉体は灰にされたの?」

「いいえ、古城の外にまとめて穴をあけてそこに捨てられました」

「なら、なんとかなるかもしれない」

「本当ですか!」

「浮竹の力次第だけど」

「あんな白状な方はあてになりません。京楽さん、助けてください」

エルは、泣いて京楽に縋りついた。

「エルちゃん」

「助けてくれるなら、私、なんでもします!」

京楽に抱き着いて、エルは京楽に口づけていた。

そのシーンを、戻ってきた浮竹に見られた。

「浮竹、これは違うんだよ!エルちゃんから勝手にしてきたことで」

浮竹は、顔を顰めて京楽の頬をぶった。

「この浮気者が!」

いつもなら、ハリセンで頭をはたかれているところなのだが、今回は違った。

「魔女の里にいくぞ」

「あ、はい!」

「待ってよ、浮竹、誤解だってば」

「ふん。その件は後回しだ」

浮竹と京楽と魔女のエルは、閉鎖的な魔女の里に来ていた。

藍染の手下の者たちを皆殺しにした。

殺したのは、京楽だった。

魔神の咢でその魂を喰らい、残った体を浮竹が燃やして灰にした。

魔女の里の住人は、魔族の圧政から救われたと、浮竹と京楽に礼を言った。

「アキラという魔女はどこにいる?」

「魔女アキラは・・・あの魔女狩りで捕まって、唯一戻ってきた魔女です。でも、どこか変なんです。ただの錬金術が得意だった魔女なのに、魔力が高すぎて・・・・」

魔女アキラは、魔女の里に帰ってきていた。

まずは、魔族を滅ぼすためにきていたのだが、魔族は強い。隙を狙うつもりが、浮竹と京楽に先を越されてしまった。

「あたしは魔女アキラ。魔女40人の魂の複合体。こんな魂にされたのは、浮竹、京楽、あなたたちのせいよ!」

魔女アキラは、魔女エルや他の魔女の言うこと聞かずに、呪文を唱え出した。

「エターナルフェニックス!」

リュウウウウウン。

不死鳥は、鳴いて浮竹と京楽に襲い掛かった。

シールドを張ったが、それでも身を焼く温度に耐え切れず、浮竹が氷の魔法を放つ。

「ゴッドフェンリル!」

氷の魔狼は、炎の不死鳥を消していく。

「あたしのほうが魔力で押されている!?ばかな、あたしは魔女40人分の魔力をもっているのよ!!」

「魔女一人一人の魔力の保有量には限界がある。それに、仮に魔女40人分の魔力を複合体としてもったとしても、たった1つの魔女の魂で操れるわけがない」

魔女アキラのもつ魔力は、確かに高かった。魔神や邪神を名乗れるほどに。

けれど無理やり40人分の魔力を凝縮したせいで、歪な力になっていた。

「ああああ!魂が、壊れる!浮竹、京楽、せめて道連れにしてやる・・ゴッドフェニックス・カイザーフェニクス・エターナルフェニックス・・・トリプルファイアフェニックス!!」

炎の禁呪は、魔女の里に火柱をあげて、不死鳥の姿をして浮竹と京楽を燃やし尽くそうとした。

「浮竹さん、京楽さん!」

魔女エルは、二人の心配をしたが、火が魔女の里にもうつって、魔法で雨を降らしたりして消火活動に回った。

「うふふふ。私が新たに手に入れた禁呪。神にしか使えない禁呪よ!あたしの勝ちね!」

燃え盛る業火の中で、蠢く影が2つ。

浮竹と京楽であった。

「な、トリプルファイアフェニックスを受けて生きてるですって!?」

浮竹と京楽は、それぞれ魔力を吸収する闇魔法、ブラックホールを作り出していた。

「神が使う魔法?俺の得意魔法なんだが」

浮竹は、血の魔法を操り、魔女アキラの胸をさした。

「ああ、駄目だよ殺しちゃ」

「分かっている。魔法を使えなくするためだ。ちゃんと、臓器とかは避けた」

「がはっ・・くそ、40人分の魔女の魔力の禁呪よ!いくらブラックホールの魔法があるといえ、吸い尽くせる量じゃないわ!」

「複数設置したとしたら?」

見れば、ブラックホールの魔法は5つあった。

「そんな・・・闇魔法の禁呪でしょう!?それを同時に5つなんて、人間業じゃないわ!」

「その通り。僕らは、ヴァンパイアだ」

「そうだな。俺はヴァンパイアマスターで、京楽はヴァンパイアロードだ」

「ええい、何処までも忌々しい・・・・・」

魔女アキラは、更に魔法を使おうとして、胸の傷を再生するのが先だと体が勝手に反応して、回復系の魔法を唱え出した。

「ゴッドヒール。あはは、これでまたやり直し・・・・」

京楽が、魔神の咢で魔女アキラの魂を奪っていた。

ドサリ。

音を立てて、魔女アキラは倒れた。魔女エルが駆け寄るも、意識はなく心臓がが止まっていた。

「京楽さん、助けてくれるのではなかったのですか!」

「まぁ、ちょっと待ってよ。今、浮竹がなんとかしてくれるから」

浮竹は、血で魔法陣を作り、瞑想していた。

「ラム・アラム・エスタ・ドルキューリ。エドム・エスタ・ドルキューリ。哀れなる魂たちよ、元に肉体へ戻れ!エターナルエリクシール!!」

それは、複合体にされた魂を元に戻す魔法だった。これもまだ禁呪の一つだ。

「ぎゃああああああああ!!!」

魔女アキラが飛び起きる。

「あ、あれ!?元に戻ってる。魔神に喰われたはずなのに!」

魔女のエルは、泣いて魔女アキラを抱きしめた。

「よかった、元に戻ったのね!他の魂たちは!?」

「元の肉体に戻ったはずだ。まだ死んでからそう時間は経っていない。魂さえ戻れば、生き返るだろう」

魔女エルは浮竹の言葉に涙を流して、京楽に抱き着いた。

「京楽さん、ありがとうございます!」

「お礼なら、僕じゃなくて浮竹に言ってよ」

「いいえ、京楽さんが助けてくれると言い出したので、浮竹さんは動いたのでしょう?全ては京楽さんのお陰です!」

京楽も、若い女の子にそうやって抱きしめられて、満更でもなさそうな顔をしていた。

「京楽、お前は・・・・・・」

そこで、浮竹は言葉を区切った。

やはり、血族である京楽は女の伴侶のほうがいいのではいだろうかという不安が、大きな波となって浮竹を襲った。

やがて、夜になり、魔女の里ではホウキで帰還してきた、攫われた魔女たちが戻ってきたことで、大賑わいになっていた。

「全ては、浮竹様と京楽様のお陰です。今宵は、どうぞ魔女の里にお泊りください。精一杯のおもてなしをさせてもらいます」

魔女の里の族長は、そう礼を述べて浮竹と京楽を歓迎してくれた。

魔女の里の一軒の家に泊まるように言われて、そこへ行く。

途中で魔女のエルと会った。

立ち話もなんだからと、案内された家に入る。ベッドが2つと、シンプルな家具とバストイレつきの、簡素な家だったが、掃除は綺麗に行き届いていた。

浮竹ばベッドに腰かける。

魔女のエルは、京楽に抱き着いた。

「あたし、京楽さんが大好きです!」

「僕はね、浮竹のことだけが好きだから。浮竹が僕の伴侶なんだよ」

「それでも諦めません!!」

魔女エルは、京楽に抱き着いて離れなかった。

それを無理に引き離そうとしない京楽に、浮竹の心が不安に揺れる。

女性のほうが好きなのか・・・・。

魔女エルは、涙を零しながら浮竹を指さす。

「絶対に、あなたには負けません!男性の伴侶は普通女性です!あなたは男性だ!」

「京楽、お前もやっぱり伴侶は女性のほうが・・・・・・」

心に罅を入れる浮竹は、エルの言葉に余計に罅が広がっていた。

「何言ってるんだい、浮竹!」

「ちょっと、夜風に当たってくる・・・」

「ちょっと、浮竹!話を聞いて!」

浮竹の手を握ろうとしたら、思わぬ力で払われた。

「離せ!」

浮竹は涙を滲ませて、家の外に走り去ってしまった。

「京楽さん、やっぱり伴侶は女性のほうがいいでしょ?私は15歳で若いし、あなたの血族になれと言われたら、喜んで血を飲み干します」

「黙ってくれないか」

「え?」

「黙れといっている!」

「ひっ」

京楽は怒っていた。今まで感じてきた中で、感情が狂うほどの怒りだった。

自分が傷つけた。

浮竹の心を、傷つけてしまった。

京楽は魔力探知の魔法を使って、浮竹がいる魔女の里の外れの小川にきていた。

季節なのか、蛍が飛んでいた。

美しい蛍に照らされた浮竹もまた、美しかった。

元から浮竹は美しい。そこに蛍の幻想的な美しさが加わって、言葉にできないでいた。

浮竹は、泣いていた。目を真っ赤にしていた。

「浮竹」

「来るな!俺を見るな!」

「浮竹、僕は君の血族だ。君の伴侶で、君の永遠の恋人だ。僕は女性なんてどうでもいいし、浮竹がいてくれたらそれだけでいい。あんな乳臭い小娘に、用はないよ」

「じゃあ、なんで抱きついてくる腕を振り払わない」

「それは、あの子を傷つけると思ったから。浮竹が傷つくくらいなら、あの子の魂を食ったっていい」

浮竹は、それを信じられない顔で見ていた。

「俺のために、罪のない人間の魂をを食うと?」

「それで君の心の傷が癒えるなら」

浮竹は涙を拭い去り、京楽に抱き着いた。

「お前は俺のものだ。他の誰にも渡さない。俺だけを見ていろ」

「うん」

与えられた魔女の家に戻ると、目を真っ赤にした魔女のエルが待っていた。

「京楽さん!」

「近づかないでくれるかな。君は間接的ではあるが、浮竹を悲しませた。そんな存在を僕が許すとでも?これ以上僕らの仲に入ってくるなら、その魂、喰うよ?」

「あああ・・・・・」

魔女エルは、絶望に顔を歪めて走り去ってしまった。

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「君は、僕のものだよ」

「んっ」

たくさんのキスマークを刻まれる。

「あっ」

「君は、僕なしでは生きていけない体にしてあげる」

浮竹のものをなめあげて、指でしごくと、浮竹は簡単に精液を零していた。

「んあっ」

京楽と、深く口づけしあう。

「んんっ・・・はぁっ」

舌を引き抜かれると、銀の糸が垂れた。

京楽は、浮竹の薄い胸を何度もさわり、胸の先端をひっかく。

「んっ」

その刺激だけでまた硬くなってきた浮竹のものを見て、耳元ので囁いた。

「ほら、君の体は素直だ。僕なしじゃあ、生きられないね?」

「あ、春水・・・・・」

やや不安そうな顔で、京楽を見上げる。

「十四郎。僕には君だけだ。愛しているよ」

「んんっ」

「こんな時のために、アイテムポケットにローション入れておいて助かったよ」

「おいばか、外でも盛るつもりだったのか」

「実際、今古城の外じゃない。それとも、止める?」

胎の奥が疼いて、浮竹は素直に京楽を求めた。

「お前が欲しい。きてくれ。お前なしの体では、生きられないようにしてくれ」

京楽は、ローションを人肌の温度になじませると、浮竹の蕾にぬっていく。指をいれると、熱かった。

「君のここ、もうトロトロだね。そんなに僕が欲しいの?」

「ああ、欲しい・・・・・」

「いい子だね。僕の子種なしじゃあ、生きていけにようにしてあげる」

「あああああ!!」

京楽は、浮竹を貫く。

すぐに奥を衝かれて、その衝撃で目がちかちかした。

「んあああ!」

浮竹が精を放つのと、京楽が浮竹の胎の奥に精を注ぐのが同時だった。

「あああ・・・・・・・」

ずちゅずちゅっと、音を立てて、京楽のものが出入りする。

「んあっ」

京楽は浮竹を突き上げて奥をごりごりすりあげながら、浮竹の首筋に噛みついて、吸血していた。

「ああああ!」

オーガズムでいきながら、吸血される快感にも飲まれていく。

「ああ・・・あああ・・もう、お前なしじゃあ、生きられない・・・」

「それなら安心だよ」

京楽は、浮竹の結腸の中にまで侵入した。

「ひああああ!!深すぎる!」

「奥に、子種注いであげるからね?」

「あああああ・・・・」

京楽は、ごりっと最奥をけずりあげながら、精液を放っていた。

「んああああ」

浮竹は、京楽に噛みついて、血をすすりながらオーガズムでいくのであった。


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次の日、魔女アキラも目覚めた。魂の複合体を宿していた時の記憶はないようだった。

魔女エルの姿は見えなかった。たくさんの魔女にお礼をいわれ、金銭や珍しい魔道具、魔法書などをもらって、浮竹は上機嫌にそれらをアイテムポケットに入れていく。

「じゃあ、俺たちは行く。また魔族がくるような時があれば、式を送ってくれ。守ってやろう」

始祖ヴァンパイアに守るといわれて、その色香に惑わされた魔女たちが、ばたばたを気を失っていく。

「浮竹、何かしたの?」

「お前に悪い虫がつかないように、俺自身に京楽に興味を持つ者をチャーム(魅了)する魔法をかけた」

「ええ、じゃあ僕のライバルが増えてしまうよ!今すぐ解いて!」

「分かった。解呪」

魔女たちに一晩のお礼を言って、浮竹と京楽は古城に戻っていった。

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数日が経ったある日、京楽に重要な話があると呼び出された。

「君に渡したいものがあるんだ」

京楽は、改まって浮竹に向き直った。

「なんだ?」

「ペアリング。君と僕の愛が永遠だって証」

プラチナにピジョンブラッドのスタールビーがあしらわれた、指輪を見せられる。

「石の言葉は「絆を深める」。僕と君の絆は永遠だよ。ヴァンパイアだから、真紅の瞳をイメージしたら、この石に辿り着いたんだ」

「これは・・・・」

浮竹の目に、じんわりと涙が浮かんだ。

血の帝国には結婚式の概念がない。結婚指輪もペアリングも、普通つけない。

長い間外の世界にいた浮竹にとって、ペアリングをもらうということは、正式なプロポーズであった。

「お前が、つけてくれ」

左手を差し出すと、京楽は指輪を薬指にはめた。

同じデザインの指輪を、今度は京楽の左手の薬指にはめる。

「僕たちの愛は永遠だよ」

「ああ、永遠だ」

浮竹と京楽は口づける。

今この瞬間が永遠であればいいのにと、二人は思った。


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「そうか。魔女の複合体は解呪されたか。あの魔法には解呪の魔法があるからな。あんな古代の禁呪の解呪をしっているとは、流石は始祖ヴァンパイア。無駄に8千年を生きていないということか」

壊れた女神オリガは、赤子を抱いて揺らしていた。

藍染との間にできた子供だった。

「藍染様に、お目通りをしたいという魔女の小娘がいます。いかがいたしましょう」

「面白い。通せ」

「藍染様・・・私、始祖の浮竹が憎いんです。京楽さんを愛しています!京楽さんを手に入れられる方法をください」

「王に無礼だぞ、小娘」

「いや、いい。名前は?」

「エル・トゥ・バジエル」

少女は、京楽に拒絶された魔女のエルだった。

「いいだろう。君に、一目ぼれの幻の薬をあげよう」

「え、そんなものがあるんですか!?」

「魔女の里で作られるよう薬は、一時的なものだろう。この薬の効果は永遠だ」

ちゃぷんと、コバルトブルーに輝く液体の入った小瓶を、藍染は魔女のエルに渡した。

「うふふふ。これで、京楽さんは私のもの・・・・・」

「よかったんですか、藍染様。あれは、女神の秘薬」

「使い道もなかった。京楽があの薬を飲んで、魔女のエルとやらに夢中になれば、主の浮竹は壊れるだろう。それもまた一驚だ」

魔女エルは、京楽に最後の別れにするからと、秘薬入りの最高級ワインを飲ませた。

「エル・・・君を愛している。君が大好きだ」

隣にいた京楽が突然そんなことを言いだすので、浮竹は慌てた。

「京楽!!!」

「うふふふ、京楽さんは私のものよ!」

魔女エルは、ホウキに乗り、京楽を乗せて飛び立っていく。

「俺から京楽を奪う?馬鹿なことを・・・・その代償、命で償ってもらおうか」

浮竹は絶望していなかった。

残酷に微笑みながら、どうやって調理してやろうかと、考えるのだった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター55

メイドの少女には、女神アルテナが宿っていた。

藍染はその少女に毒を盛られた。普通の毒なら不老不死である始祖には効かないが、モレ草という強烈な下剤効果のある薬だった。

モレ草だけに、本当にもれそうで、藍染は黄金の便器に座り続けた。

玉座に戻ろうとすると、もれた。

なので、ずっと黄金の便器に座っていた。

寝る時も黄金の便器の上だった。食事と風呂は自室でとるが、いつでてもいいようにおまるを用意していた。

恐るべしモレ草と、藍染の手の者や女神オリガは、藍染を心配した。

1週間が過ぎて、やっとモレ草の効果がなくなり、かなりやつれた藍染は、モレ草をメイドに少女に盛った。

やられたらやり返せ。

メイドの少女に女神アルテナが宿っているのを知っての行動だった。

少女はモレ草の強烈な効果で、命を落とした。

女神アルテナの魂は彷徨う。

今度は、近衛騎士に憑依して、また藍染の料理にモレ草を盛った。

藍染は何か分からない宇宙語をしゃべりながら、黄金の便器の住人となった。

城の間では、モレ藍染とあだ名がついていた。

「モレ藍染様・・・・じゃなかった、藍染様」

「今、モレといったな?」

「いえ、気のせいであります!」

「禁固1カ月の刑だ」

「そんな、あんまりだー。このモレモレ藍染め!」

「禁固2か月だ!」

そう言い争っている間にも、腹がぐるるるるとなって、藍染は漏らしていた。

「着替えの下着と服をもってこい!」

急いで風呂場で体を洗い、けれど風呂場でも漏らした。

「くおおお、モレ草め!ああああもれそうだあああ!!」

こうやって、藍染が地獄の苦しみを味わっている間、女神アルテナは人の体を彷徨いながら、遠く魔女の里まできていた。

そこで、凍結封印されていた始祖の魔女、ローデン・ファルストルと邂逅する。

浮竹が生きている限り解けないはずの封印は、女神アルテナの魂によって溶け始めた。

魂は、やがて融合した。

「きゃはははは!あたしは>ローデン・ファルストルであり、女神アルテナよ」

魔女の里が騒がしくなる。

始祖魔女であり、女神アルテナであるローゼンは逃げた。

そして竜帝の子シアンと巡り合う。

二人は、螺旋にからみあいながら、始祖浮竹と神喰らいの魔神京楽を討ち取るべく、動き始めるのだった。


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「藍染がイデア王国を落としたそうだ」

真剣な表情で、浮竹は悩んでいた。

魔国アルカンシェルに放った、血の帝国の工作員の話では、魔国アルカンシェルの隣にあるイデア王国の王族を皆殺しにして、王位を簒奪したらしい。

国民は藍染に支配されていた。

歯向かう貴族や大臣たちを処刑して、残った貴族や家臣の者たちは、藍染に服従を誓った。

「実質、2つの国をもっていることになるねぇ」

「工作員が、この薬を盛った者がいると、薬の見本をもってきたんだが・・・・・」

「うわ、それモレ草の薬じゃない。飲んだが最後、1週間はトイレにこもって過ごすことになるよ」

「モレそうだけにモレ草か・・・・・」

冗談を言ったつもりだった。

「そうだよ。モレそうだから、モレ草って名前がついたんだ。妊婦とかが服用すると、流産するくらいに効果があるから気をつけてね」

「この薬を、藍染は連続して2回も盛られたんだそうだ」

「いい気味だね」

「全くだ」

二人は笑った。

イデア王国では、藍染は黄金の便器の上に座って、次の波が来るのを待っていた。

「あ、きたきた~~~」

ピーゴロゴロゴロ。

ブリリリリリ。

「あーすっきりした。ああ、でもまたもれそうだ。くそ、モレ草だと!?私をばかにして、あの始祖と血族も、今頃このことを聞いて笑っているんだろう!絶対にゆるさん!」

立ち上がったとろこで、次の波が襲ってきて、藍染は黄金の便器の上に座り直した。

「何々・・・・イデア王国の便器は純金でできてる・・・見た目は派手だが、黄金の便器で用をすませるとなると、笑ってしまいそうだ」

「今頃、ピーゴロゴロとかいって、うなってるんじゃないの?」

その通り、藍染は黄金の便器の上でピーゴロゴロになり、唸っていた。

「まぁ、藍染のことは放置で。今日は何をしよう?」

もはや暇人でしかない京楽と浮竹は、その日することもないで、午後は仮眠をとることにした。最近は深夜までS級ダンジョンにこもったりしていたので、睡眠のリズムが不規則になっていた。

「ホウホウ」

「ん?・・・冒険者ギルドからの式か」

昼なのに、梟が窓を開けると入ってきた。

梟の足には手紙が添えられてあった。

「何々・・・火急、依頼内容ができた。できれば今日中に、冒険者ギルドにきてほしい。ギルドマスターより。おい、京楽」

「うふふふ、十四郎のエッチ。そんなことしたら・・・・」

「変な夢を見るな!」

浮竹は、アイテムポケットから取り出したハリセンで、思い切り京楽の顔を殴った。

「うひゃあああ!!!」

変な叫び声をあげて、京楽が飛び起きる。

「なんの夢を見ていたんだ。冒険者ギルドからの呼び出しだ。至急に依頼したい内容があるらしい」

「いや、僕と浮竹がムフフフする夢を見てたよ」

浮竹は、ハリセンで京楽の頭を殴った。

「冒険者ギルドに行くぞ」

「せっかくいい夢を見てたのに・・・・・」

「その夢なら、今晩にでも俺が叶えてやる」

京楽の肩に噛みついて、吸血した。

「浮竹・・・」

つい体を抱きしめそうになったが、浮竹はそれをかわして、ギルドにいくために服を着替えた。

なるべく目立たない黒い服を着て、フードを被った。

「京楽も行く準備をしろ」

「はーい」

京楽も地味目な衣服に着替えて、黒いマントを羽織り、フードで顔を隠した。

最近、S級ダンジョンを踏破しすぎて、有名になりすぎていた。

浮竹が錬金術士であるこということもばれているし、ギルドマスターに至っては、浮竹が始祖ヴァンパイアであり、京楽もまたその血族のヴァンパイアであることがばれていた。

認識阻害の魔法はかけてあるが、鑑定スキルもちには素性はばれてしまう。

エルフとハーフエルフとして冒険者登録しているのも偽の情報になるので、最悪Sランクハンター試験をやり直す必要があった。

冒険者ギルドにやってくると、疫病で閑散としていた時とは大違いで賑わっていた。

「ああ、浮竹と京楽か。2階にきてくれ」

そのままギルドマスターに2階に通されて、依頼内容を聞く。

「北の崖のトエイに、ドラゴンが出没する。始祖の魔女と一緒に。旅人を殺して荷を奪い、襲われたくなければ浮竹と京楽を連れてこいと言ってる」

「ドラゴン・・・竜帝か?」

「そうだ。竜帝の証である燃える炎の鱗をもっていた。始祖魔女のほうは、よくわからんが自分は始祖魔女のローデン・ファルストルで同時に女神アルテナだと言っていた」

「女神アルテナ・・・よりにもよって、封印していた始祖魔女の体を手に入れたのか」

「報酬金は大金貨2百万枚。頼まれてくれるか?」

報酬の金額としては破格だった。

それくらい積まねば、このSランク冒険者を動かせないとギルドマスターは思っていた。

実際は、情報だけで討伐にいくのだが。

報酬金は前払いだった。

白金貨20枚にしてもらい、それをアイテムポケットの中に放り込む。

「依頼は必ず達成する。それまで、トエイの崖には誰も近づけさせないでくれ。王都までの道の中にあるが、迂回するように徹底してくれ」

「分かった。そのように取り計らっておく」

ずっと黙っていた京楽が、二人きりになって口を開く。

「竜帝の証の燃え盛る鱗をもっていたってことは、この前仕留めそこねたシアンとかいう、恋次クンの子だね」

「ああ。始祖魔女は5年ほど前に封印した、ローデン・ファルストルで間違いないだろう。どうやって氷の封印を解いたかは分からないが、ローデンと名乗り、同時に女神アルテナと名乗っているということは、きっと魂が融合したんだ」

「女神の魂・・・あれはうまい」

魔神としての顔を見せる京楽に、浮竹が呆れかえる。

「あの女神アルテナだぞ。よくうまそうなんて言えるな」

「だって僕は、魂を食らう魔神だし。今まで口にしてきた魂の中で一番おいしかたのは、女神だね。食べられるなら、今からわくわくするよ」

「食当たりを起こすなよ」

「分かっているよ、大丈夫さ」

二人は、戦闘の準備を整えて、トエイの崖にきた。

トエイの崖は、王都エザリエに通じる道があるので、商人などがよく行き来していた。そこを占領している、竜帝と始祖魔女の名を、浮竹は呼んだ。

「賊の竜帝の息子シアン、大罪人の始祖魔女ローデン。連れてこいと言われてやった通り、こっちからきてやったぞ」

「キャハハハ!ほんとに来るなんて、命知らずなバカねぇ!」

「俺のドラゴンブレスを食らえ!」

始祖魔女の攻撃も、ドラゴンブレスも、京楽が放った闇の魔法ブラックホールに吸い込まれた。

ブラックホールの口を閉じる。魔力をもっていかれたが、小規模のブラックホールだったので、思ったほどの魔力を失わずに済んだ。

「ばかなのか君たちのほうでしょ。僕と浮竹を敵に回して、生きて帰れるとは思わないでね?あとローデンだっけ。すごくいい匂いのする魂だ・・・やっぱり、女神アルテナの魂と融合してるんだね」

舐めるような視線で見られて、ローデンは身震いした。

「ソニックブレード!」

真空のカマイタチを、ローデンは放つ。それは大規模な魔法で、仲間であるはずのシアンも巻き込み、トエイの崖も崩れ落ち、森の木々が倒れていく。

「浮竹!」

カマイタチにやられて、浮竹は両手と両足に深い傷を負っていた。

「大丈夫だ、それより気をつけろ。あの女神アルテナ、もとい始祖魔女、かなりの魔力だ」

「俺を忘れるなああ!!!ハウリングボイス!」

キィィィンと、耳が嫌な音で塞がれる。

「ゴッドフェニックス!」

浮竹は、傷を再生させながら、魔法を放つ。

その不死鳥は、ローデンの魔法で相殺されてしまった。

「ローデン、俺の邪魔をするな!」

「キャハハハハ!この敵はあたしものよ!始祖浮竹ぇ、血族の京楽ぅ、あたしのカマイタチでばらばらにしてあげる。ソニックブレード!」

「エアリアルエッジ!!」

浮竹の作り出した真空の刃が、ソニックブレードを吹き飛ばす。

「な、なにぃ!?あたしのカマイタチを!ええい、ワールドエンド!!」

闇の終末の魔法を、浮竹が上書きする。

「ワールドエンド!ブラックホール!」

ワールドエンドは全てを無に還す魔法なので、上書きした後にブラックホールに飲みこませた。

ブラックホールは、ローゼンの魔力も吸い上げていく。

「アシッドブレス!!」

「サンダーボルテックス!」

「ファイアブレス!」

「ウォーターレイン!」

隣では、京楽とシアンが魔法とドラゴンブレスの戦いを始めていた。

「こっちもいくか。閉じろ、ブラックホール!」

ブラックホールを閉じたことで、ごっそりと魔力をもっていかれたが、魔力は十分にあるので、浮竹は気にしない。

「相手チェンジだ。女神の魂を、喰らいたいんだろう?」

「え、いいの?」

「くれてやる。とかげの相手は俺だ」

「誰がとかげだと!俺は竜帝!始祖のドラゴンだ」

浮竹は笑った。

「始祖のドラゴンは別にいる。お前よりももっと強い」

「ふざけるああああああ!!俺はドラゴンの中の最強種だ!カイザーブレス!!!」

火、風、土、水、闇、光、雷、氷。

全ての属性を重ねあわせた、最強のブレス攻撃だった。

「ゴッドシールド×5」

それを、浮竹は5重に重ねたシールドしのいだ。

シールドの外の空間は、何も可も吹き飛んでいた。

「俺の、最強のブレスが・・・・・・・」

「エアリアルエッジ!」

失意の底にいるシアンの首を、真空の刃で斬り裂いて首を落とした。

でも、シアンはまだ生きていた。

首だけになった状態で、カイザーブレスを吐きだした。

さっきより威力大きく、ゴッドシールドをとっさのことで3枚はったが、貫かれてしまった。

「ぐ・・・・・」

胸に、巨大な穴があいた。

「浮竹!」

「いいから、お前はそっちをやれ!俺はこいつを叩く」

「ふん、そんな大けがで大きいことほざいても」

「セイントヒール」

浮竹は、苦手な聖属性の魔法で瞬く間に怪我を癒してしまった。

「何だと・・・・回復魔法だと!?闇の眷属のヴァンパイアが、聖属性の魔法だと!?」

「首だけの分際で、ごちゃごちゃうるさい。死ね。ワールドエンド」

「うわああああ!!!」

全てを無に還す魔法に飲みこまれて、竜帝を名乗るシアンは吹き飛んでいく。

「あ、魂!」

京楽が、さっと現れて、魔神の咢でシアンの魂を噛み砕いた。

「ぎゃああああああああああああ」

魂の悲鳴が、響き渡る。

「次は、君だよ?浮竹に最初に怪我をさせたのも、君だしねぇ?」

ニタリと、不気味に京楽は微笑んだ。

「あたしの魂なんて、食べてもおいしくないんだからね!」

「カラミティファイアトルネード」

「きゃあああああああ!!」

災害クラスの炎の竜巻に、浮竹はシールドを張った。

「俺を巻き込むな、バカ!」

「ごめんごめん」

その炎は、ローデンを焼いていく。

「いやあああ、せっかく手にいれた、新しい肉体があああ!!!」

じわりと、女神アルテナの魂が滲みだして、肉体からの分離をしようとしていた。

「そうはいかないよ。いただきます」

魔神の咢が開かれる。

「いやああああああ!魔神に食われたら、終わってしまう!いやよ、いやよおお!!!」

ばりっ、ごりっ、ガリガリッ。

音をたてて、魔神の咢はローデンの魂ごと、女神アルテナの魂を噛み砕いた。

「うん、すごくおいしい。女神の魂って、いいね」

ニタァと笑って、京楽満足気だった。

「その体は灰にしろ」

「うん。それより、さっきの大けがは大丈夫?」

「ああ、魔法で癒した。お前にしては上出来だ。俺が怪我をしても、自我を失わなかった」

「その分、ご褒美くれるんでしょう?」

「仕方ない・・・・・」

浮竹は、夜の誘いに乗った。

「ファイオブファイア!」

京楽は、魂を失い、ただの肉塊になったローデンの体を灰にした。

「終わったね」

「血が足りない。お前の血を、今すぐ吸わせろ」

「やだ、積極的」

「ばか」

京楽の首筋に噛みつき、じゅるじゅると血を啜り、満足して浮竹は京楽から離れた。

「続きは、古城の夜で」


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「んっ」

何度もディープキスを受けて、浮竹は身をくねらせた。

胸の先端を舐めたり、噛みつかれたり、引っかかれたり、つまみあげられたり。

耳を甘噛みしてきたり、舐められたり、息をふきかけられたり。

弱いところばかりを攻められて、浮竹のものは硬くなっていた。

「さわってもいないのに、トロトロだね?感じてる?」

「あ、やっ」

自分のものに指をはわされて、浮竹は触られただけで精を弾けさせていた。

「ああああっ」

「早いね」

「ここ最近、お前と睦み合っていなかったから・・・・たまってる。胎いっぱいに、京楽のもの、ちょうだい」

情欲に濡れた瞳で見つめられて、それだけで京楽はいってしまいそうになって、慌てた。

「本当に、君はサキュバスかインキュバスのようだね」

「早く、こい。胎を満たしてくれ」

さぁと手を広げられて、京楽はローションを手に、蕾を性急に解して、自身にもぬりこんで、浮竹を引き裂いた。

「あああああ!!!」

「んっ、浮竹、そんなに締め付けないで」

「やああああああああ!!」

奥をすりあげてくる衝撃に、浮竹はオーガズムでいっていた。

「ああああ!」

奥をごりごりされて、それが好きで浮竹はせがむ。

「もっと、奥ごりごりってして?お前の子種で、俺の胎を満たして?」

「君って子は・・・でも、これは僕へのご褒美だから、遠慮しなくてもいいよね?」

スタミナポーションを、途中で京楽は口にした。

「ああ、ずるい、お前だけ・・・・・・」

「ふふふ。抱きつぶしてあげる」

「んああああ!!」

奥をごりごりされて、浮竹の胎はきゅんきゅんとなっていた。

「あ、もっと奥にいっぱいちょうだい!!」

乱れる浮竹を犯しながら、京楽は求められるままに浮竹の胎の奥に子種を注いだ。

「あ、もっと、もっと!」

せがんでくる浮竹を黙らせるために、唇を奪う。

そのまま、舌に噛みついてやった。

「はあぁぁん、んんんあああ」

吸血による快楽にも見舞われて、浮竹は突き上げてくる京楽の動きに精液を自分の腹に放ちながら、いっていた。

「んんんん!!!」

あふれ出した血液が、ベッドにまで滴り落ちる。

浮竹は、わざと再生を遅らせていた。

「君の血が・・・もったいない」

血の混ざった唾液をすする京楽に満足して、浮竹は自分の舌の傷を癒した。

「春水・・・愛してる」

「僕も愛してるよ、十四郎」

「ああああ!」

最後に最奥をゴリゴリと音を立てて侵入してくる京楽の動きに、浮竹はオーガズムでいっていた。

「ひああああああ!たくさんくるう。春水の子種♡」

「満足したかい?」

こくりと、浮竹は頷いた。

京楽が引き抜くと、大量の子種が逆流してきた。

「ああ、勿体ない・・・・」

「浮竹、意識がしっかりしているなら、お風呂にいこう」

「分かった」

京楽にお姫様抱っこされて、浮竹は風呂の湯船の中におろされる。

「浮竹の中のもの、かき出さないとね」

「やああ、お湯が入ってくるうう」

浮竹はお湯の中に入れられて、不満そうだった。

「こうしたほうが、かき出しやすいから」

「やあああ、胎がお湯で・・・京楽の子種が・・・」

「また、たっぷり注いであげるから」

「約束だぞ?」

「はぁ、素面の君までどんどんエロく・・・・まぁ、僕の主はエロい」

「俺はエロくなんかない」

ツーンととんがった浮竹の頭を撫でながら、京楽はご機嫌をとる。

「寝る前に、アイス作ってあげる」

「アイス!バニラ味がいい!」

「はいはい」

湯浴みを終えて、京楽は急いでアイスを作る。浮竹はそれを心待ちにして、できあがったばかりの冷たいアイスを口にして、幸せそうだった。


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「竜帝の子は、私の血を与えても、破れたか」

式で全てを見ていた藍染は、けれど黄金の便器の上にいた。

かっこつけているが、現在進行形で腹を下していた。

ぶりりりりーーーーーーーー。。

「ふう。波もようやく収まったようだ」

藍染は黄金の便器から立ちあがり、下着とズボンをはいて、玉座に座った。

「女神アルテナは、神喰らいの魔神京楽に食われたらしい」

「あら、アルテナ姉さま、今度こそ本当に消滅してしまったの。残念だわ」

「肉便器は、神の力を宿したまま残っている。問題はない」

ぷ~~ん。

玉座に座る藍染から異臭がした。

「あら、藍染様、また漏らして・・・・」

「ええい、替えの下着と服をもってこい!」

メイドに命じて、藍染は風呂場へと消えていく。

「女神オリガ。次の手はないか?」

「魔女たちを大量に生贄にして、一人の魔女を作りあげましょう?始祖のローデンなんかよりも、もっともっと強い魔力をもつ魔女を一人」

「魔女一人一人の魔力もなかなかあるが、複合体か。おもしろい」

藍染は、かっこつけているが、玉座の部屋に置かれた黄金のおまるに跨っていた。

「始祖のローデンよりも優れた魔女を作ろう。すぐに魔女の里にいき、若い力のある魔女を捕まえてこい!」

「はい、モレ藍染様!」

「モレは余計だ!あ、きたきた~~~」

次の波がきて、モレ草の効き目が終わるまで、藍染は違う意味で苦しむのであった。






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