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小説掲載プログ
10 2024/11 14 2324 26 27 28 29 30 12

梅雨

「梅雨か」

しとしとと降る雨の音に耳を傾ける。

「(*´Д`)ハァハァ」

隣のベッドで一人喘いでいる変態は無視する。

「浮竹~構ってよ~~」

京楽は、浮竹に無視され続けたことで機嫌を損ねていた。

しかし、浮竹にとってはそんな京楽のことなんてどうでもいい。明日の座学の提出用の課題をすることのほうが重要だった。

「ねー浮竹ってば」

「うるさい」

げしっと、その脛を蹴り上げてやると、京楽は痛みにのたうち回りながらも息を荒くしていた。

「(*´Д`)ハァハァ・・・・梅雨の浮竹。雨に濡れて体のラインが・・・・・・」

変態なことを想像しはじめる京楽の頭を、辞書の角で殴ると、京楽は何も言わなくなった。

15分ほどの沈黙。

課題は終わってしまった。

やっと意識の戻った京楽は、浮竹に抱き着いた。

「最近浮竹成分が足りない!補充!」

ハグをしてくる京楽を背負い投げして、ベッドに放り投げた。

「ああもう、むし暑くてただでさえイライラするんだ!ひっつくな!」

「( ゚Д゚)ひどい!僕とのことは遊びだったのね!」

「ああそうだ、全部遊びだ。遊びだ」

遊ぶも何も、京楽が浮竹に一歩的に懸想していて、変態になってしまっているのだが。

浮竹命になっている京楽は、浮竹のパンツを盗んだり、盗み撮りをしたり、お風呂をのぞいたり、とにかくろくなことをしない。

恋人同士ではない。されと友人とカテゴライズするには、あまりにも親密すぎる。

キスとハグまでは、浮竹は許していた。

京楽は、浮竹の背後から抱き着いた。

「ああもう、暑苦し・・・・・んんっ」

唇に唇を重ねる。

最初は触れるだけ。

やがて舌を絡ませあって、京楽は浮竹を自分のベッドに押し倒していた。

「んんっ」

咥内を、舌で蹂躙する。

歯茎に沿って舌を這わせて、あふれ出した唾液を飲み込んで、3分ほどずっとディープキスをしていた。

そのまま、京楽の手が浮竹の服の裾から入ってくる。

「だから、俺は、その気はないと、いつも言っている」

京楽の股間を蹴り上げて、浮竹は乱れた衣服を整えた。

しとしとと、雨の音が聞こえる。

梅雨に入っても、京楽は京楽のままで、浮竹は浮竹のままだ。

キスとハグまではOK。それ以上はNG。

「のああああああ」

股間を蹴られて、のたうちまわっている京楽を蹴り転がして、浮竹は夕食をとりに学院の食堂まで出かけた。

途中、いつも隣にへばりついている京楽がいないので、他の友人たちと夕食を食べた。

食堂から帰ってくると、京楽はベランダにいた。

雨のせいでかわいていない浮竹のパンツをもって、スーハースーハーと匂いをかいでいた。

「死ね」

頭突きを食らわせて、パンツを奪い取って干しなおすと、京楽をす巻きにして京楽のベッドの上に転がしておいた。

「おなか減ったよ・・・・」

す巻きにされて、でも京楽は喜んでいた。

「ごはん、食べさせてー」

浮竹はす巻きの京楽の前に、持ち帰ってきた食堂のお弁当を出してやった。

変態京楽であるが、一応は友人だ。

ご飯を食べそこねるのはかわいそうだと、一応買ってきておいたのだ。

京楽はす巻きになったまま犬食いした。

浮竹の前では、プライドも何もない。

「お前、本当に上流貴族か?」

浮竹の最もな質問に、京楽が答える。

「んー、多分そう」

「そうか。まぁ変態だしな」

「うん。浮竹のことになると変態になるんだ」

自分で変態と認めているのだから、手の施しようがない。

しとしと。

雨はやまない。

梅雨はじめじめして嫌いだと、浮竹は思った。

京楽は、じめじめしていようが浮竹がいればそれでいいので、季節なんて関係ない。

梅雨入りしはじめたばかりの季節。

今日も浮竹と京楽は、友人以上恋人未満の関係で、それでもって京楽をす巻きにしたりして自己防衛をしているのだった。



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何度でも

君と出会えて、よかった。

君を愛せて、よかった。


「愛してるよ・・・・浮竹」


そっと、白百合に満たされた棺の中に横たわる、最愛の人の冷たい頬に手をあてた。

ふわりと、甘い匂いが鼻孔をくすぐった。

ぐすぐすと、死神たちの泣きじゃくる音が聞こえる。特にルキアはたくさん泣いていた。清音と仙太郎も。

京楽は、3人を抱擁して、ぽんぽんと頭を撫でた。

京楽は涙を零さなかった。

泣いてはいけない。

総隊長なのだから・・・・・。

「さよなら」

白い百合の横におはぎを添えて、そっと棺の蓋を閉じた。


荼毘に、ふされていく。

真っ赤に踊り狂う火を、ただ見ていた。


大空は快晴だった。

ユーハバッハの手によって、未曾有の被害を出した尸魂界。

散っていった命は、もう戻ってこない。

浮竹もまた、死神としての矜持をもって、死んでいった。

「さよなら・・・・・・」

天に昇っていく煙を見る。不思議と、涙は零れなかった。

浮竹が死んだ日に泣きすぎて、もう涙は出ない。


-------------------------


「総隊長、総隊長聞いているんですか!」

「ん、あ、何、七緒ちゃん」

「この書類、明日までに目を通しておいてください!目をあけながら寝ないでくださいね!」

「うん、分かったよ」

浮竹が死んで、いろいろ変わった。でも、総隊長なのだからと、歩みを止めることはなかった。

根を詰めすぎているのかもしれない。

息抜きにと、取り壊されることが決まった雨乾堂まで足を運ぶことにした。

「ああ・・・・懐かしいなぁ。もうここには君はいないのに」

がらりと戸をあけると「よお、京楽」と気軽に声をかけてくる君の幻影を見る。

「ふ。君はもういないのにね」

浮竹の遺品は、京楽が引き取った。

院生時代からあふれた、浮竹の誕生日に毎年いろいろなものをあげていたけど、そんなものがたんすの奥に大切そうにしまわれていた。

心が、じくじくと痛んだ。

思い出の品が多すぎた。

京楽の屋敷の一室に、遺品は整理されておかれている。

京楽の手の中には、いつも浮竹がもっていた翡翠のお守り石があった。

これだけは、浮竹のぬくもりがそこに留まっている気がして、身に着けておきたかった。

「ここにね、君の墓を建てようと思うんだ。ここなら、池が見えるでしょ?」

生前、浮竹が大切にしていた池の鯉が泳いでいるのが、目に止まる。

餌をやると、鯉はパクパクと口をあけた。

ふと金色に光る鯉を見て、ああ、やちるちゃんが朽木隊長の庭の池から連れてきた鯉なのだろうと、薄く笑みが浮かんだ。

やちるも、もういない。

「あーあ。君がいないと本当に人生がつまらないねぇ。仕事だけしか残らない」

そういって、一番隊の執務室に戻った。


その日の夜、夢を見た。

浮竹の夢だった。

「京楽、元気か」

「浮竹!会いたかったよ!」

ふわりと、腕の中に麗人を抱き込めば、花の甘い香りがした。

浮竹は、ふわふわと白く、京楽に抱きしめられて幸せそうな顔をしていた。

「俺に会いたいか」

「会いたいよ。すごく会いたい」

「あと100年待ってくれと言ったら、待ってくれるか?」

「何百年でも待つよ。君に会えるなら」

クスリと、浮竹が笑った。

「でも、君を待つよりもお迎えがくるほうが早いかもね」

「京楽、お前は生きろ。俺の分まで」

「浮竹・・・・・」

ふわふわの白い浮竹に、口づける。

綿あめみたいな、甘い味がした。

「いつか、また会いに行く。じゃあな!」

そういって、浮竹は降り始めた雨の中で溶けていった。

ふっと、目が開く。

ああ、夢か。

しとしとと、雨の音がする。

浮竹は綿あめだった。雨に溶けてしまった。

今振っている雨にだろうか。

でも、幸せだった。

夢の中でだとしても、また君に会えたのだから。


--------------------------------


それから、100年近くが経った。

尸魂界は平和で、小競り合いの争いはあったものの、比較的平和だった。

しとしとと、雨の降る6月の季節だった。

笠をかぶって、浮竹の墓参りに来ていた。

酒を墓石にそそぐと、いつものように杯に中身を注ぎ、あおる。

「・・・・・・・・」

真っ白な髪に、翡翠の瞳をした少年が、目の前に立っていた。

「誰だい?」

「・・・・・・」

少年は、ふわりとほほ笑んだ。

「京楽、また会えた」

「え・・・・・」

抱きしめられて、その暖かさと甘い花の香りに、かつての想い人が重なった。

「今の名は十四郎。苗字はない。生まれは流魂街の西地区。親兄弟もいない」

「浮竹・・・・・?」

京楽は、いつの間にか涙を零していた。

「浮竹、なのかい?」

「京楽・・・・・また、会えた。何度でも俺はお前と出会う」

京楽は、力強く十四郎と名乗った白い少年を抱きしめた。

涙が止まらなかった。

「君を・・・・何度でも愛するよ・・・・君がいない世界は色がないんだ・・・」

「今は?」

「世界が色づいている。紫陽花がこんなに綺麗な色をしているなんて忘れていた」

ふと目にとどまった紫陽花の色を確認して、モノクロになりかけていた世界が、艶やかに色を取り戻していく。

「愛しているよ、十四郎」

「愛している、春水。また、会えた・・・・」


何度でも、何度でも。

また、めぐり合う。

どちらかの命が果てたなら、また違う命で。

何度でも、何度でも。

リフレイン。



雨は、しとしととずっと降り続けていた。





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夕日

夕暮れに染められた空は、オレンジ色をしていてとても綺麗だった。

まるで、一護の髪のようだった。

「綺麗だな・・・・」

「ああ、そうだな」

丘の上で、風に吹かれながら夕暮れに染まっていく街を見下ろしていた。

「明日、なんだよな?」

「ああ。明日で、現世を去る」

いつものワンピースを風に翻して、ルキアは一護を見つめていた。

「あのさ」

「あのな」

「なんだよ。さっきにそっちが言えよ」

「貴様のほうこそ、先に言えばよかろう!」

風がさわさわと、吹き抜けていく。

「わーったよ。俺からな」

「ふん」

ルキアは、草の絨毯の上に腰を下ろした。

寝転がっていた一護は、あ、パンツ見えたとか思ったが、口にはださなかった。絶対ボコられるから。

「俺、お前のことが好きだ」

「そうか。私も貴様のことが好きだ」

恋い焦がれて、尸魂界に帰ってしまう大切な友人に、そっと恋の告白をしたつもりだったのだが、何故か両思いということが発覚した。

「な!いつから!」

「貴様が、尸魂界に私を助けにきてくれた頃からだ」

一緒の部屋で暮らしていた。

同じベッドでルキアを抱きしめて眠るのが、一護の小さな幸せだった。

「好きでもない相手と、同じベッドで眠るような真似はせんわ、たわけ!」

「あーーーーー」

街を見落ろす。

オレンジ色はいつの間にか、紅色から紫色に変わろうとしていた。

好きだ。

そう告白するのが、遅すぎただろうか。

でも、まだルキアは隣にいる。

一護はルキアを抱き寄せた。

「何をする!」

ぐいっと手をひっぱられたせいで、寝そべった一護の上に乗りかかるよな体勢にさせられたルキアが声をあげる。

「やっぱ我慢するの無理」

「たわけ・・・・」

ルキアの唇に、唇を重ねていた。

触れるだけのキス。

「月に数回は、こっちこいよ。でさ、付き合わねぇ、俺たち」

「交際か?しかし、私は死神で貴様は人間・・・・」

高校を卒業して、1週間経った日だった、その日は。

一護は大学進学が決まっており、一人暮らしを始める予定だった。

もう荷物は大分まとめて、アパートに届けてあるので、あとは荷物ほどきをするだけだった。家電やらベッドやらはすでに備え付けていた。

「いいじゃねぇか。俺と付き合っちまえ」

「一護・・・・・」

「離れていても、心は繋がってる」

「たわけ・・・・・・」

ルキアのほうから、一護にキスをしてきた。

触れるだけのものではなくて、唇をなぞってくる舌の動きに、一護は口を開けて舌を絡めあい、深く深く口づけた。

「はぁっ・・・・」

「ルキア、かわいい」

「たわけ!」

ぎゅっと、一護がルキアを抱きしめる。

「4月から・・・・月に数回なら、現世にきてやる」

「ルキア」

交際OKでいいんだよな?

そう小さく付け足してくる一護に、ルキアは顔を真っ赤に染めて夕日を見た。

「ああもう!夕日のせいで顔が赤くなる!」

「はは、耳まで真っ赤!」

「それは貴様も同じであろう!」

「ああ、俺も赤いな。ルキアとキスして交際OKもらえたから」

一護は、キーホルダーのついた鍵を、ルキアに握らせた。

「これは?」

「俺が来週から住むことになってるアパートの部屋の合鍵。住所教えなくても、霊圧さぐって俺のとこにくればいい」

「それではまるで通い妻のようではないか!」

「ルキア、好きだ」

「ひゃっ」

耳を甘くかじられて、ルキアはまた真っ赤になった。

「一護、貴様!」

「ルキアかわいー。真っ赤」

「たわけ、貴様のせいだ!」

「うん。帰るか」

「ああ、そうだな」

二人手を繋ぎ合いながら、黒崎家へと帰宅する。

翌日からルキアが尸魂界に帰るということで、その日はお別れ会みたいな流れになった。



「こっちこいよ」

いつも一護のベッドで抱きしめられながら寝るのだが、彼氏彼女の仲になったと思うと、ちょっと恥ずかしかった。

そんなルキアをお構いなしにひっぱって、腕の中に抱き込むと、一護はゴロリとベッドに横になった。

「襲ったりしねーから」

「わかっておるわ!」

一護は優しい。

とても甘い。

ルキアはぎゅっと目をつぶって、一護の胸に顔を埋めた。

「好きだ」

「俺も」

明日には、ルキアは尸魂界に帰る。

でも、月に数回現世に一護に会いにきてくれる。

会えない時は、メールか電話をすればいい。

そんな甘い未来になるとは思わなかった二人は、ベッドの中でクスクスと笑いあった。

じゅれあう子猫のようだった。

夕日はとっくに沈み、空の色は暗いが晴れ渡っていた。

その日の夕日のオレンジ色の鮮やかさを、二人は忘れることはできなかった。

まだ見えぬ未来だが、幸せが、続いていそうだった。



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忘れる記憶

それは、大型虚との対戦で負った後遺症だった。

浮竹は、1日、1日と記憶を失う。

全ての記憶を失うわけではない。死神統学院時代の記憶で、目覚めるのだ。

4番隊でなんとしても回復をと、何度も回道を受けた。外科的な手術も施された。

けれど、浮竹はその日の記憶を明日にまでもちこさない。

学院時代の記憶にスリップしてしまうのだ。

毎日目覚めると、何故自分は隊長羽織を着ているのかと、周囲にもらす。

そんな浮竹を、京楽は悲しい気持ちを抱えながらも世話を焼いた。

学院時代から付き合っていたので、その付き合っていたという記憶は浮竹にはある。

でも、育んできた愛は忘れ去られていた。

「お前は・・・・京楽なのか?」

朝会ってはじめて交わされる言葉は決まっていた。

「そうだよ」

「お前が本物の京楽・・・・なぁ、京楽、なんで俺は・・・・・・」

もう何十回と繰り返されてきた言葉。

「なんで、俺は隊長羽織を着ているんだ?なぜこんなに髪が長いんだ。学院は?」

「浮竹、君はね、記憶する場所に問題があってね、1日、1日の記憶を忘れてしまうんだ。今日教えても、きっと明日には忘れてる。でも何度でも教えるよ。君は僕と一緒に学院を卒業して、君は13番隊の隊長になったんだ。僕は8番隊の隊長にね」

「隊長・・・・」

浮竹は、実感がわかないようで、でも鏡を見てびっくりしていた。

「年をとってる・・・・・」

「そうだよ。君の記憶は400年分は吹き飛んでしまっているから」

「400年・・・・その間、俺は京楽を愛していたか?」

京楽は、寂しそうに笑った。

「うん。君がこうなる前は、おしどり夫婦だったよ」

「そうか」

何故か安堵したように、浮竹は微笑んだ。

「俺は京楽のことをずっと好きでいられたんだな。この記憶が明日になくなっているとしても、お前に言いたい。愛している」

「うん・・・・・」

触れるだけのキスを何度か交わして、離れた。

浮竹を抱きしめると、浮竹でなく京楽が涙をこぼした。

「こんなに好きなのに、こんなに愛しているのに・・・・君は、明日にはまたその全てを忘れてしまうんだね」

「京楽、俺は元に戻りたい。治療方法はないのか?」

「今のところ、ないんだよ・・・・・」

「そうか。すまない・・・・」

また抱きしめあった。

お互いの体温が暖かかった。

京楽は浮竹に教えながら、一緒に書類仕事をした。

浮竹は400年分の記憶がぬけているが、なぜか仕事に関してはあまり忘れていなかった。

その日は、一緒に仕事をして甘味屋にいって、風呂に入って雨乾堂で布団を二組しいて寝た。

浮竹が記憶障害になってから、京楽は色事めいたことは一切しなかった。

「眠るのが怖い・・・・・明日になったら、今日のことを忘れているんだろう?」

「大丈夫。また、僕がいろいろ教えるから」

「そうか」

そうして、浮竹はすっと眠りにつく。



「お前は・・・・・京楽なのか?随分老けているが。ここは学院ではないのか?」

朝起きると、浮竹は首を傾げていた。

「ここはね、雨乾堂。君のために建てられた場所だよ」

「俺のために?」

「君は、記憶障害を負って、1日1日の記憶を忘れてしまうんだ。そして400年分の記憶もすっぽりと抜けている」

「おれは・・・・この羽織は隊長羽織。隊長なのか?」

「そうだよ。君は13番隊の隊長で僕は8番隊の隊長。学院を卒業して死神になって、二人で一緒に隊長まで昇りつめたんだ」

「俺は何故、記憶障害に?」

「虚退治の後遺症。海馬に傷を負ったらしいんだけど、手を尽くしても治らないんだ」

「そうか。じゃあ、俺は昨日も今日のようなことを言っていたのか?」

「そうだね。毎日同じようなやりとりをしてるね」

「京楽は・・・・平気なのか?俺は学院時代のお前しか知らない。400年分きっと、お前と歩んできた記憶がない」

「平気じゃないよ。でも、悲嘆にくれても何もならないじゃない。だから、なるべく明るくいこうと決めているんだよ」

「京楽・・・・お前は、まだ俺のことが好きか?」

「うん、好きだよ」

「俺もお前が好きだ」

振れるだけのキスを、毎日交わす。

その日も、浮竹は今日のことを忘れて眠ってしまった。

その次の日。

「ここは・・・・お前は、京楽なのか?俺は何故こんな場所にいるんだ。これは隊長羽織・・・・どうして・・・・・」

毎日続く、同じようなやりとり。

ある日、京楽は涙を流して浮竹を思い切り抱きしめた。

「京楽?」

「400年分の思いを君に刻み付けたい。今日のことを忘れないでくれと言いたいよ」

「俺も、思い出しだしたい。忘れたくない・・・・・・」

でも、現実は非情だ。

次の日には、また浮竹は京楽と過ごした1日を忘れてしまっていた。



「んー冷たい」

浮竹が1日1日の記憶を忘れるようになって半年。

その日は猛暑で、浮竹のために京楽はかき氷を作ってあげた。

イチゴ味にシロップをつけたかき氷を口にして、冷たいと言いながら、スプーンで中身を口にする。

「京楽も、食べてみろ」

「うん」

京楽はブルーハワイのシロップをかけたものを食べだした。

「明日には、今日かき氷を食べたことも忘れるんだろうな」

「でも、僕の記憶には残るから。例え君の記憶に残らないとしても、君の分まで記憶に残すから・・・・・・・」

もう、涙は零れなかった。

1日の記憶を毎日忘れてしまう浮竹であるが、京楽と過ごす日々は穏やかだった。

「そうそう、この前朝顔の種をまいたんだ。そろそろ芽が出てくるころじゃないかな」

「そうなのか」

そして、ふと浮竹は思いついた。

「そういえば、仕事の隅に朝顔の種をまいたと書いてあった。そうか、忘れるならその日あったことを文章にして、明日の俺につなげればいいんだ!」

「浮竹?」

「京楽、今日あったことを日記に書く。その日記を明日の俺にも、明後日の俺にも書くように言ってくれ。1日何をしたのか。記憶に残らなくても、文章でその日したことを感じられる」

「それ、いいね。今日から、日記をつけよう。僕もつけるよ」

こうして、1日1日を忘れていく浮竹は、日記を書き始めた。

それを読んで、浮竹はそんなことがあったのかと、毎日読むのが日課になった。

「そうか・・・昨日は、こんなことをしたのか」

浮竹は、淡い笑顔を浮かべるようになっていた。

京楽も、微笑みを浮かべる。

「もう朝顔が満開だね。押し花をつくってみるのはどうだろう。それをうちわに仕込んでみるとか」

「おもしろそうだな」

二人して、乾燥を早くさせる方法をとって押し花をつくり、二対のうちわを作った。

「明日の君に、これを渡すよ。だから、明日もまた僕と出会おう」

「京楽・・・・好きだ」

「うん。知ってる。ずっとずっと、僕も好きだから」



「お前は・・・・京楽?俺はどうして・・・・ここは・・・・・・学院は?」

浮竹は記憶を1日1日忘れていく。

それでも、歩き続ける。

浮竹が生きている限り、治療の可能性を模索しながら。

どんなに忘れられても、京楽は諦めない。例え今日を忘れられても、また明日がある。明日を忘れられても、次の日がある。

400年分の思いを胸に、浮竹と歩いていくのだ。










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好きだから好き12

「うぉっほん。よく聞け、一護」

「なんだ?」

ルキアの言葉に、一護は首を傾げた。

「バースディというわけではないのだが、貴様の好きなチョコレートでケーキを作ってみたのだ」

「まじか」

一護の好物はチョコレートである。

「さぁ、好きなだけ食え!」

テーブルの上には、ホールのチョコレートケーキがあった。

一護は感動した。

「さっそくいただきます」

一口食べて、一護は涙を 流した。

「おい、これカカオ何%だ?」

「80%だ」

苦い。

果てしなく苦い。

一護の好きなチョコレートは甘いものであって、砂糖の足りない苦いチョコレートではない。

「苦い」

「何!味見していなかった。どれ」

ルキアがチョコレートケーキを食べて、顔をしかめた。

「さ・・・砂糖が足りないだけでこんなに苦くなるのか」

「ああ、そうだな」

「仕方ない、捨てるか」

「いや、ルキアがせっかく作ってくれたんだ。全部食べる」

「おい、一護、無理はするな!」

一護は、猛烈な勢いでチョコレートケーキを食べた。

「ごちそうさま。はぁ、苦かった」

「一護、そこまでせずともよいのだぞ」

ルキアの瞳には、ケーキを失敗したことへの涙が零れていた。

「ルキアの作った料理は、たとえ失敗作だって食うさ」

「一護・・・・・・」

見つめあう二人は、キスをした。

めちゃ苦い、カカオの味がして、二人して笑った。

「今度、チョコレートケーキのちゃんとした作り方教えてやるよ」

「何、一護貴様はケーキも作れるのか!」

「レシピ通りに作れば作れないもんなんてねぇ」

「一護・・・・・・・」

ルキアは瞳を潤ませた。

「次は二人で一緒につくろうぜ」

「うむ」

平和な一日は、今日もすぎていくのであった。

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恋次を忘れた白哉

6番隊の遠征で、白哉は突如出現した破面にやられて、頭に傷を負った。

傷口自体はそれほど深いものではなかったが、白哉は記憶を忘れてしまった。全ての記憶ではなく、恋次の記憶だけを。

「愛する者を忘れるがいい・・・・くはははは」

その破面はそう言って、恋次によって倒された。

「隊長、大丈夫ですか!」

「兄は・・・・誰だ?」

恋次は固まった。

「隊長、何冗談言ってるんですが。副官の阿散井恋次です」

「副官?私に副官などいない」

状態が状態だけに、白哉は4番隊の救護詰所で治療を受けることになった。

「これは・・・・特殊な力によるもののようですね。術者が死んだことで、効果は永続的ではないと思いますが、いつ朽木隊長から阿散井副隊長の記憶が戻るのかは、わかりません」

勇音の言葉に、恋次が愕然とする。

「そんな・・・・」

恋次は呆然となった。

そして、白哉に今までの自分たちがどうであったかを話した。

「私が・・・兄と恋人同士?冗談はよせ」

白哉は、そう言って恋次と距離をとる。

恋次が自分の副官であることは認識したようだが、互いの関係は白哉が信じてくれず、白哉と恋次はしばらくの間距離をとった。

でも、恋次の我慢が利かずに、恋次はある日執務室で白哉に抱き着いた。

「何をする」

「あんたは俺のものだ。俺を忘れたらなら、もう一度刻みこむ」

そう言って、唇を重ねた。

「んんっ・・・私は、本当に兄とそういう関係だったのか?」

「兄って呼ばないでください。恋次と、呼んでください」

「恋次・・・・・」

「隊長。愛してます」

抱き締める腕に力をこめる。

そのまま、隊首室まで連れて行き押し倒した。

「恋次!」

「だから言った。俺を忘れたなら、また刻みこむと」

白哉から貴族の証をはぎとり、隊長羽織を脱がせるが、白哉は抵抗しなかった。

「どうして抵抗しないんですか。俺とのことが信じられないなら、逃げ出すことだってできる」

「分からぬのだ・・・恋次、お前の顔を見ていると、悲しさで胸が押しつぶされそうになる」

「記憶、完全になくなったわけじゃないみたいですね。感情が残ってる」

「そうなのか?」

白哉は、静かに恋次を見つめた。

「恋次、お前の傷ついた瞳を見ると、胸が痛いのだ。この感情はなんであろう?」

「恋ですよ」

「恋・・・・本当に、恋次と私は恋人同士なのか」

「本当です」

死覇装を脱がせていく。

「思い出してください」

白哉を押し倒して、唇を重ねた。

そのまま全身を愛撫して、潤滑油にぬれた指を白哉の体内にいれる。

「このような行為になんの意味が・・・・ああ!」

「刻みこんでやる。あんたは、俺のものだ。俺を忘れるなんて許せない」

やや乱暴に蕾を解して、そのまま欲望を突き立てた。

「ああああ!」

白哉は、痛みで涙を零した。

「今は優しくできません。すみません」

欲望のまま、恋次は白哉を貫き、穿ち、揺さぶった。

「恋次・・・・・・」

「隊長。愛してます」

「私は・・・・・」

「今は、俺に身を委ねてください」

そう言って、前立腺をつきあげると、白哉はあっけなくいってしまった。

「このような行為・・・私は、知らぬはずなのに、何故か以前もしていた気がする」

「少しずつ、記憶が戻ってきてるんですよ。このまま抱きますよ」

「恋次・・・・・」

白哉は逃げ出すこともせず、恋次を受け入れた。

「あああ!」

花茎に手をかけられて、2回目の絶頂を迎える。

「あんたの腹の奥で、あんたはいつも俺の子種を受け止めていた」

「れん、じ・・・・・」

白哉の瞳が、恋次を見つめる。

「あああ!」

恋次は、白哉の中に欲望をぶちまけた。

一度では足りずに3回ほどぶちまけて、白哉を蹂躙した。

「恋次、お前はいつも私を抱くと何度もしつこく抱いてくる」

「隊長!記憶が戻ったんですか!?」

「ああ。お前との関係も思いだした。それにしても、恋次を忘れてもこのような行為を受けれるとは・・・私も、大分墜ちたものだ」

「墜ちたんじゃなくって、体が覚えてたんですよ」

「んっ」

やや乱暴にキスをされる。

「恋次、怒っているのか?」

「怒ってます。俺を忘れるなんて。他のことは覚えてるのに、俺のことだけ忘れるなんて」

「すまぬ・・・・愛している、恋次」

その言葉に、恋次は一筋の涙を零した。

「隊長・・・・このまま俺を忘れてどこかにいってしまうと思った」

「恋次。もう大丈夫だ。私はもうお前を忘れたりせぬ」

「忘れたら、また刻みこんであげますよ」

「あああ!」

最後に白哉の腹の奥を貫いて、4度目の精を放って、恋次は行為を終わらせた。

「隊首室で抱かれるのは好きでないのだ・・・・すぐに湯あみができぬ」

「大浴場、貸し切りしにしときましたから。そこにいきましょう」

白哉は、行為後は湯浴みをして身を清める。

立つことも危うい白哉を抱き上げて、瞬歩で大浴場にまでくると、そのまま髪と体を洗い、白哉の中にはきだしたものをかきだした。

「また、随分と出したな」

「すみません。あと、あんまり優しくできなくてすんませんでした」

「よい。お前のことを忘れてしまった私に、原因がある」

そんなことを言う白哉を抱き締めた。

「愛してます。あんたが俺を忘れても俺はあんたを愛してる。あんたの命が尽きるまで、俺はあんただけを愛します」

「恋次・・・私も、この命がある限り、お前を愛そう」

「隊長・・・・・・・」

真新しい下着と死覇装、隊長羽織をきて、白哉は執務室に戻ったが、抱かれた直後なので隊首室で横になっていた。

「水、飲みますか」

「ああ」

「甘露水です。気分がおちつきますよ」

「すまぬ、恋次。お前には心配をかけた」

「本当ですよ。敵の攻撃を受けてしまうだなんて、隊長らしくない」

白哉が首を横に振った。

「私は完璧ではない。あれは不意うちだった。避けると、他の者が重症を負いそうだったので、あえて私が受けたのだ」

「隊長は、もっと部下を信頼してください。重症なんておいませんよ、きっと」

「そうであろうか」

「なんのために、俺や席官がいるんですか。隊長は守られてばかりの人じゃないって知ってますが、守るのも限度を考えてください」

「すまぬ」

白哉に口づけて、恋次はその黒絹の髪をすいた。

「隊長が元に戻ってよかった・・・・・俺を忘れて1週間は経ってましたからね。つい我慢の限界がきて抱いちゃいましたけど」

「別に、それはよい。お前に抱かれるのは、嫌いではない」

「嫌いだったら、今の俺と隊長の関係はありませんよ」

「それもそうだな」

恋次は、安堵する。

白哉が自分のことを思い出してくれて。そして、拒否しないでくれて。

「今回はほんとすみません。半分無理やりでした」

「もう、それはよい」

白哉は、隊首室のベッド横になったまま、恋次の頬を撫でた。

「愛している」

「隊長・・・・・・」

記憶を失っていたのが嘘のように、甘かった。

「俺も、隊長を愛してます」

唇を重ねあう。

「仕事するには、少しきついのでしばし眠る」

「はい。おやすみなさい。仕事は責任をもって俺が片しておきますから」

「当たり前だ。私を抱いたのだ。抱かれた後の私が仕事をできないくらいは、分かっているだろう」

「はい。隊長は、体を休めていてください」

「そうする」

白哉が、恋次ことを忘れたのは1週間たらずだった。

思い出すのを待つのではなく、無理やり引き出すような方法だったが、恋次にはそれしかなかったのだ。

自然と恋次のことを思い出すと言われても、待っていられない。

1週間で音をあげた。

兄と呼ばれて、心が苦しかった。恋次と呼んでもらえて、嬉しかった。

仕事を片して、白哉の寝顔を見ながら、恋次は白哉の手をとって口づける。

「俺だけの隊長だ・・・・・」

白哉はしばらくの間、目を覚まさなかったが、仕事が終了の時刻になる前に目覚めた。

「恋次?」

白哉の傍らにいた恋次に、白哉が驚く。

「仕事は全部片しましたから」

「そうか。今宵は、我が館へ泊まっていけ」

「はい!」

朽木邸に、恋次は時折泊まる。

白哉の許可をもらい、恋次は本当に幸せそうに微笑むのだった。





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好きな物は好き11

一護は、引っ越しをした。

1LDKではなく、2LDKの部屋を借りることにした。

ルキアも一緒に、引っ越しの荷物を解いていく。

「ベッド、ダブルベッドにしたから」

「別に、今までのベッドでもよかったのだぞ」

「寝ぼけて転がり落ちる誰かがいるからな」

「ぐ・・・・・」

ルキアは言葉に詰まった。

一護のベッドははっきりいって、一人用で狭い。二人で寝るには狭かった。

なので、バイトの金でダブルベッドを買った。

引っ越した先の家賃は、一心がまだもってくれた。

ルキアからは、食費の他に光熱費をもらっている。だが、流石に家賃までは払わせられなかった。

金曜の夜に現世にきて、月曜の朝に尸魂界に帰る世界をかけた二重生活は今も続いている。

ルキアは、13番隊の隊長になることが決まった。

その祝いもかねて、引っ越し先で囁かな鍋パーティーをした。

「隊長就任おめでとうな。すげーじゃねぇか」

「浮竹隊長の遺言があったのだ・・・・次の隊長は、私にするように、と」

「浮竹さん、残念だったな」

「ああ・・・・」

大戦で散ってしまった浮竹のことを思い、少ししんみりとした気分になった。

「ダブルベッド、羽毛布団にしたからふかふかだぞ」

「なに!けしからん!」

ルキアは、ダブルベッドにダイブした。

「うおおお、ふかふかだ!」

ルキアはベッドの上でぴょんぴょんはねてごろごろしていた。

「前のベッドは硬かったからな・・・・いいな、このベッド」

「今日から、お前もこのベッドで寝るんだぞ」

「そ、それはそうだが・・・・それにしても、よくこんな金があったな」

「まぁ、こつこつためてたからな。お陰でかなりすっからかんだ」

「一護、受け取れ」

ルキアは、一護に200万を渡した。

「いいよ!いらねぇ!」

「いいからもらっておけ!私が滞在している間、何かと金がかかるであろう」

「でも、もう食費も光熱費ももらってる!」

「よいのだ。朽木家は4大貴族だ。土日を一護が私のためにバイトもせず、時間をあけてくれている。その間のバイト代だと思えばいい」

「ほんとにいいのかよ」

「ああ」

一護は、どちらかというと金に困っているほうだった。

バイトでのやりくりにも、限界がある。だからといって、一心から仕送りは受けたくない。

「分かった。もらっとく。家賃とかに使うわ」

「ああ、そうしろ。そして金銭面でもいいから、もっと私に頼れ!私が4大貴族であることを無意味にさせるな!」

「そうは言うけど、男にもプライドってもんがあるんだ。恋人のルキアにばかり金だしてもらいたくねぇ」

「私が良いのだと言っておるのだ!もっと頼れ!」

「じゃあ、食費今の2倍にしてもいいか。お前、けっこうよく食うから・・・・」

「うむ。2倍でも3倍でも払ってやるぞ」

一護の新しい家は、アパートではなくマンションだった。

大学卒業まであと1年もない。

だが、大学を卒業し、一護が就職しても、ルキアは一護の家に通うつもりだった。一護も、それを承知していた。

いつか、金を貯めて一軒家を買い、そこでルキアと暮らすつもりだ。

多分、朽木家の金で買われることになるだろうが。

「今日からふかふかの布団か。いいな、新婚ってかんじがする」

「結婚式、やっぱり挙げたいか?」

「いや、いらぬ。貴様の傍にいれるだけで、私は幸せだ」

ルキアは、ダブルベッドでごろごろしながら、そう言った。

「でも、俺はいつかお前と式を挙げたい」

「一護・・・・・・」

ルキアの涙腺がうるっとくる。

「泣くなよ」

「だって、貴様が私を愛してくれているのが分かるから・・・・」

「ああ、愛してるぜ。どうしようもないくらい、お前を愛してる、ルキア。今日、抱いてもいいか?」

「うむ・・・・・」

二人は、甘い夜を過ごした。

ダブルベッドがふかふかで、安眠を二人に提供してくれるのであった。

一夜あけて、二人は顔を見合わせた。

「そうか。引っ越ししたんだったな」

「そうだぞ。そしてベッドはダブルベッドでふかふかなのだ」

「きもちいいだろ?」

「ああ」

「俺との行為とどっちがきもちいい?」

そう悪戯っぽく一護が聞くと、ルキアは顔を真っ赤にした。

「たわけ!」

ばきっ。

頭を殴られても、一護は嬉しそうだった。

「今度から、この家に帰ってこいよ。間違えて、前の家に行かないように」

「分かっておる!穿界門を移動してもらう」

現世で週末を過ごすルキアのためだけに、特別な穿界門があった。

「引っ越しで、今までの穿界門を移動してもらわねばならぬな」

「余計な手間かけてごめんな」

「いいのだ。新しい新居。新婚さんのようではないか」

「まぁ、そう思ってくれるなら俺も嬉しい」

二人は、新婚のようにラブラブイチャイチャするのだった。




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一護は見てしまった

雨乾堂で、浮竹は昼間っから京楽に押し倒されていた。

そんなこと、そう珍しいわけでもないので、浮竹は何も言わない。

隊長羽織を脱がされ、死覇装に手がかかる。

「十四郎、愛しているよ」

「春水・・・・」

深く口づけを繰り返していると、雨乾堂の戸があいた。

「すんません、浮竹さんちょっと用事が・・・・」

入ってきたのは、一護だった。

「もぎゃ!」

肌も露わな浮竹と、その上にのしかかっているこちらも乱れた死覇装姿の京楽に、一護は真っ赤になって慌てた。

「そ、その別に覗こうとか邪魔しようとしたわけじゃなくって!」

「一護君。2時間後にきてくれない。それまでに終わらせるから」

何を終わらせるとか、聞くだけやぼだ。

「おい京楽、見られたのに続けるつもりか!一護君、すまない。こんな場面にあわせてしまって」

「い、いえどうぞお気遣いなく続けてください、俺はルキアのとこいってきます」

一護は真っ赤になって出ていった。

「どうしよう見られてしまった」

「ずっと前も見られたでしょ。気にすることないよ」

「京楽のアホ!次からどんな顔して一護君に会えなばいいんだ」

「別に、普通でいいんじゃない?それより2時間後って言ったから、続けるよ」

一護に見られたことなど気にしたそぶりもなく、京楽は浮竹を貪っていく。

「ああ!」

見られたのが、抱かれる前でよかったと浮竹は思った。

裸でセックスしているところを見られたら、さすがに浮竹も固まる。

「一護君に最初見られたせいかな。いつもより、感度いいね」

「言ってろ、このばか・・・・あああ!」

確かに、いつもより快感が強い。

2時間はかけないで、二人の睦言は終わった。

後始末をして余韻に浸る浮竹は、色っぽかった。

「すんません、2時間経ったんできました。実は・・・・・」

一護が、2時間経った後やってくる。

いつもの浮竹ではない、情事の後の浮竹は、一護にも目の毒だった。

「浮竹さん、あんたそんなかんじで出歩いたりしないでくださいね」

その言葉が、今は亡き海燕を思いおこさせた。

「一護君、用はなんだい?」

「あ、この死神代行証・・・ちょっと調子悪くて。死神化するのにちょっと時間かかるんだ」

死神代行証を受けとって、浮竹は微調整した。

「多分これで大丈夫だ」

「ありがとう、浮竹さん」

「一護君は、俺たちのことどう思う?」

「熟年夫婦って聞いた。ルキアから」

「熟年夫婦か・・・ははは、面白いことを言うな」

「でも浮竹、僕らけっこう熟年夫婦でおしどり夫婦ってよく言われてるよ」

「え!そうなのか!?」

浮竹は京楽との関係を隠していないので、夫婦のようだといわれることはあったが、京楽がいうような夫婦と言われたことがなかった。

「まぁ、数百年も恋人してると。熟年になるか。それに仲はいいからおしどり夫婦か・・・・」

浮竹は、気分を害したわけではなかった。

「浮竹さん、京楽さん、盛るのはいいけど、ルキアには見せないでくれ」

ルキアも、何度か浮竹と京楽の逢瀬しようとする瞬間に出くわしたことがあった。

「ルキアは副官だし・・・・浮竹さんと接すること多いと思うけど、なるべく見せないようにしてくれないか。ルキアのやつ、二人の邪魔になるって落ち込んでた」

「朽木が!今度から気をつける」

「僕が悪いってことになるんだろうねぇ。夜でもないのに浮竹に手を出すから」

「分かってるなら、夜まで辛抱しろ」

「そうはいってもねぇ。君を抱きたくなるのに朝も昼の夜も関係ない気がする」

「いや、おおありだ」

浮竹は大きなため息をもらした。

京楽は優しいが、気まぐれだ。いきなり朝っぱらから盛られて、そのまま体の関係にいってしまったことが、今まで何度かあった。

「京楽、俺も前から朝とか昼はどうかと思ってた。夜にしろ、夜に」

「そればかりは、僕のその時の気分次第かなぁ」

京楽は、浮竹を困らせて笑っていた。

浮竹も本気で怒らない。

もう、何百年も恋人をやっているのだ。この程度のことで喧嘩はしない。

「じゃ、俺もういくから」

「ああ、すまないな一護君。朽木には、善処すると言っておいてくれ」

大丈夫だから安心しろとは言わない。京楽が気まぐれだからだ。

浮竹も拒否すればいいのに、よほどのことがない限り拒否しない。

京楽に抱かれることは、生活のリズムの中に刻まれていた。流石に院生時代や席官になった当時のくらいに抱き合うことはなくなったが、それも週に一度くらいの頻度で体を重ねていた。

「朽木には謝らないとな・・・・・・」

「ルキアちゃんもそのうち慣れるって」

「慣れさせてどうする、このばかが」

京楽の黒髪を引っ張る浮竹。

「あいたたたたた」

「朽木には、雨乾堂に入る時には許可あげてから入るようにするか」

「それでいいんじゃない?」

京楽は、自分のせいなのに、楽観的だった。

人生、楽しまなければ損だ。

ルキアにみられるのも一興。

そんな考えを浮竹に言うと、浮竹は怒って京楽の胸毛をむしった。

「あいたたたた!まじ痛いからやめて!」

「少しは反省しろ」

「怒らないでよ浮竹。かわいい顔が台無しだよ」

「言ってろ」

喧嘩っぽくなっても、本当の喧嘩にまではいかない。

別れを切り出したこともない。

何百年も恋人をしていると、別れとか考えなくなる。

熟年夫婦と言われる通り、二人は夫婦のようになって長い。

おしどり夫婦といわれるように、とにかく仲がいい。

昔、海燕もルキアのように、二人の逢瀬する直前を見ていた。というか、空気として存在しないものにされたこともある。

ルキアは女の子なので、流石に空気扱いはされないが、許可を得て雨乾堂に入るようにしなければ、海燕の二の舞になりそうだった。






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看病

「京楽・・・・・・・?」

「ああ、いいから寝てなさいな。40度の熱があるんだよ」

頭ががんがんと割れるように痛かった。

酷い眩暈がする。意識が朦朧としていたが、京楽が近くにいることだけは感じとれた。

風邪を悪化させた浮竹は、そのまま救護詰所で入院となった。

肺炎をおこしかけていたのだ。

点滴の管が痛々しかったが、浮竹が発作以外で入院するのは本当に久しぶりで、京楽も焦った。

看病を兼ねて訪れてみると、浮竹は高熱でうなされていた。

それなのに、京楽がきたら気づくのだ。

「傍に・・・・・いてくれ・・・・」

「ああ、いるとも」

ベッドの傍の椅子に座って、浮竹の手を握りしめる。

暖かな手。

力なく握り返してくる浮竹を思いながら、浮竹の病室のソファーで、京楽は眠った。

起きると、浮竹はまだ熱でうなされていた。

もうここ4日は熱が下がっていない。

京楽は、泊まりこみで浮竹の看病をした。

5日目。やっと、浮竹の熱が下がった。

卯ノ花が回道を何度もかけてのことだった。

肺炎にはならずにすんだ。

「京楽・・・・もしかして、ずっと看病していてくれたのか。一度、8番隊の隊舎に戻ったほうがいい」

「うん。それもそうだね。君の熱も下がったことだし、仕事片付けて、また夜にはくるよ」

まともな食事も睡眠もとれていないだろうに。

それでも、京楽は浮竹を優先する。

そんな京楽が倒れたと聞いて、浮竹が吃驚した。

「ただの寝不足と、軽い貧血ですね」

「まいったねぇ。僕まで病人になちゃった」

念のため1日の入院となった京楽は、卯ノ花の配慮で浮竹の病室にベッドが運び込まれて、二人で一部屋となった。

「京楽、お前はばかか。俺なんて看病して倒れて・・・・・」

「でも、本当に心配したんだよ。高熱が下がらないから」

「だからって、倒れるまで看病するやつがあるか。ちゃんと食事をして寝ろ」

「うん。今後気を付けるよ。今はもう、後の祭りだから」

「はぁ・・・・・・」

京楽も、点滴を打たれた。

「点滴、お揃いだね」

「こんなことでお揃いになっても嬉しくない」

「そうだね」

京楽は、少し困ったような顔をした。

「まさか、この僕が倒れるなんてねぇ。君を心配しすぎたのかな」

「そうだぞ。看病にきて倒れるとか、ばかみたいじゃないか」

「まぁ、僕の不注意だからね。ごめんね」

「謝るな。俺が悪いんだから」

浮竹が、唇をかみしめる。

「元々、倒れた俺のせいだ」

「違うよ、浮竹」

「何が違うんだ」

「僕が倒れたのは僕の不注意だから。泣かないで」

その時、始めて自分が涙を流しているのだと気づいた。

「なんで、涙なんて・・・・・・」

「ねぇ、泣かないで」

「分かっている」

病院服の襟で涙をぬぐって、浮竹はなんとか弱弱しい笑みを刻んだ。

「でも・・・・わざわざ看病しにきてくれて、ありがとう」

浮竹の言葉に、京楽もほっこりする。

「君が入院すると見舞ったり看病する癖がついちゃってるからね」

同じ病室でいることが、とても安心できた。

お互い、退院は明日になった。

次の日、すっかり元気になった浮竹と、調子のよくなった京楽は退院した。

「京楽隊長、看病しに来た方が倒れて入院なんて、笑い話にもなりませんよ。以後気をつけてくださいね」

「ああ、卯ノ花隊長、病室を同じにしてくれてありがとう。お陰で心を伝えあえたよ」

「京楽隊長は、献血してもらわねばなりませんから。早くもっと元気になってくださいね。浮竹隊長も、風邪には気をつけてください」

「卯ノ花隊長、世話になった」

浮竹と京楽は、手を繋ぎあいながら雨乾堂に戻った。

布団をしいて、体を重ねるわけでもなく、ただ抱き締めあいながら、横になった。

「君が肺炎になりかけてるって聞いて、傍から離れられなくなった」

「風邪をこじらせたせいだ。だが、今後は本当に気をつけてくれ。俺を看病して倒れるなんて、これっきりにしてくれ」

「分かってるよ」

唇を重ね合わせる。

それからしばらくごろごろして、二人で風呂に入った。

夕餉を食べて、一緒に床につく。

「こうやって、一緒に寝るのも久しぶりだね」

「ああ、そうだな。流石に体を重ね合わせる元気はまだないが」

「僕もだよ。まだちょっと疲れが残ってる」

二人で会話して、笑い合って、ふざけあって、そして眠りについた。

それ以降、京楽が浮竹の看病で倒れることはなかった。

浮竹が発作をおこして入院せず、雨乾堂に入る時は、京楽は泊まりこみの看病をするが、ちゃんと自分の休息も入れた。

浮竹にとって、京楽はアキレス腱でもある。

親友で恋人で。

京楽が倒れたと聞いたあの時は、本当に驚いたのだ。

浮竹が風邪をひいてこじらせ、熱を出すのもいつものことだが。京楽が看病にやってくることも、いつものことなのだ。

「俺は・・・・京楽を失うと、きっと発狂する」

「突然どうしたの」

「今の関係が永遠に続けばいいのに」

「大丈夫、ずっと続くよ」

きっと。

きっと・・・・・。

でも、それが永遠に続くことはなかった。

浮竹の死で、京楽は一人残され、涙を流すのだ。











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卯ノ花隊長とお茶

卯ノ花はできた女性だ。華道だけでなく、茶道もできる。

茶道といえば山本総隊長なのでが、今回は4番隊で茶道が行われた。

何故か知らないが、浮竹と京楽も呼ばれた。

「正座、きついんだよね」

「そうだな」

適当に足を崩していると、卯ノ花に怒られた。

「正座は基本です」

「でも卯ノ花隊長、俺たちは普段正座なんてしないから」

「では、今から修行だと思って身に着けてください」

にっこりとそう笑われて、なんともいえない顔を二人で作る。

茶がまわってくる。

なんとかおぼろげな、昔の茶道の稽古を思い出しながら、茶菓子をいただく。

上品なあんこの入った和菓子だった。

「このあんこ・・・・壬生のものかな?」

「あら、浮竹隊長よくわかりましたね。壬生の店の方に、今日出るお菓子を作ってもらったのです」

「あそこのおはぎは特別においしいからなぁ」

「そうですね」

一人、輪の外にいた京楽は、隙を見て逃げ出そうとしいた。

「京楽~~~犠牲になる時は、一緒だって誓ったよな?」

「いつの話だい!」

「俺を見捨てて、逃げるのか?」

「うっ」

傷ついた子猫のような目で見られて、京楽も動けなくなる。

「茶道にでることが、犠牲ですか?それはそれは・・・・・・」

うふふふふと笑う卯ノ花が怖くて、二人ともいったん口を閉ざす。

「ああ、なんで卯ノ花隊長の華道やら茶道に僕たちが呼ばれるんだい」

「あら、救護詰所を利用することの多い浮竹隊長はもちろんのこと、お見舞いにいらっしゃる京楽隊長もたまにはこういうのもいいでしょう?」

にっこり笑われて、その笑みが怖いとは言えなかった。

足を痺れさせて、なんとか茶道が終わった。

卯ノ花が、回道をかけてくれた。

「卯ノ花隊長、僕らをからかって遊んでない?」

「からかうもなにも、遊んでいるのです」

きっぱりと言われて、浮竹も京楽も、やっぱり卯ノ花は恐いと思った。

「京楽隊長は、この後献血にきてくださいね。浮竹隊長は、健康診断を」

「うへー、また献血かい」

「京楽隊長の血液型は少ないのです。とれるうちにとっておかないと」

「なんだか、怖い台詞だねぇ。浮竹はいいねぇ、健康診断だけなんて」

「とても苦い薬を出される。あと採血もされるし、あまりよくない」

浮竹も、不満があるようだった。

だがそれを卯ノ花にいうほど、愚かではない。

あくまで、京楽との会話だ。

「そうですね、体調がよいようなら、浮竹隊長も献血をなさってはいかがですか」

「いや、俺はいい!京楽が俺の分までとってほしいって」

「まぁ、京楽隊長、ありがとうございます」

「殺されるーーーー!!」

卯ノ花に引きずられて、京楽は献血に連れて行かれた。

合掌。

「お前のことは、忘れない」

1時間後、しおしおになった京楽と、健康診断で血をぬかれてげっそりとなった浮竹が、救護詰所の待ち合わせ室で顔を合わせた。

「散々だったよ」

「俺もだ。採血、卯ノ花隊長だった。卯ノ花隊長、採血下手なんだよな。6か所さされた」

「僕は血をいっぱいとられたよ。ジュースもらったけど、割に合わない」

「しばらく、救護詰所にはいかないでおこう」

「そうだね。浮竹が発作をおこした時以外は、しばらく近づかないでおこう」

「あらあら、二人とも元気がありませんね」

誰のせいだと、二人とも思った。

「ではまたのおこしを、お待ちしております」

できるなら、もうきたくない。

卯ノ花の笑顔を見ながら、そう思う二人であった。


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退化の薬。

12番隊の涅マユリにためていた金をちらつかせて、女体化の薬を作ってもらって、それを酒と一緒に、飲ませた。

ぼふんと音を立てて・・・・白哉は、性別はそのままで10歳くらいになっていた。

「えー、なんで!」

「恋次、お前の仕業か」

白哉はカンカンに怒っていた。

ずり下がる服をなんとか身に纏いながら、恋次に日番谷のところに行かせて、死覇装を借りにいかせた。

恋次がもってきた、日番谷サイズの死覇装は、白哉にぴったり合っていた。

「恋次、1か月禁欲だ」

「ぬおおおおおおおおおお」

子供の姿に戻った白哉は、本当に人形のようで、女の子にしか見えなかった。

黒髪の長さはそのままだが、牽星箝などはサイズに合わないので外していた。

まだ日も高いうちから、何か悪だくみをしようと思っていた恋次に、禁欲1か月では足りないかもしれないと思いながら、恋次に手を引かれて朽木邸までの道を歩く。

2日は元に戻らないと聞いていたのだが、念のために解毒薬を用意してもらっていたのだ。だが、それを飲んでも元に戻らなかったのだ。

12番隊に殴り込みにいくと、渡した薬を間違えたと言われて、女体化するという薬を受け取る恋次に、白哉が千本桜で液体の入った薬の瓶を割った。

「恋次、貴様は一度死にたいと見える」

かわいい子供の姿だが、迸る霊圧は半端なものではない。

「いや、ちょっと試したいと思っただけで・・・・・」

「破道の8、白雷」

「あががががが」

黒焦げになる恋次を置いて、朽木邸に帰ろうとする。

それを、なんとか復活してついてきたのだ。

「兄様なのですか!?なんとおかわいらしい!」

10歳になってしまった義兄を見て、ルキアは目をキラキラさせていた。

とりあえず事情を話す。

「そういえば、いつか私と一護の間に子が産まれた時用にと、兄様が用意してくださっていた着物があります。死覇装は借り物でしょう。そちらにお着がえください」

「ふむ。それもそうだな」

そうやって、白哉はルキアの手で子供用の着物を着させられた。

「2日経てば元に戻るそうだが・・・その間、仕事ができぬ。朽木邸でゆっくりする。恋次、お前はもう一度12番隊にいって、解毒薬をなんとかしてもらいにいってこい」

「そうだぞ恋次!兄様をこのようにかわいい姿にするとはないすジョブ・・・ではなかった、兄様への冒涜だ!」

恋次は後悔した。

女体化した白哉を見てみたかったのだが、まさか子供になるとは思っていなかった。

女体化した白哉に手を出せても、今の白哉に手を出すとただの変態だ。

12番隊にもう一度いき、なんとか解毒薬を作ってもらえる了承をとって、朽木邸に戻ると、ルキアと一護が、白哉を着せ替え人形にしていた。

「隊長!寝室に戻りましょう!」

「うむ・・・流石に疲れた・・・・・」

小さな白哉を抱き抱えて、寝室に連れていく。

「恋次」

「なんですか、隊長」

「お前、私が女でないことがいやなのか?」

「そ、そんなわけないです!」

「では、なぜ女体化の薬など・・・・・」

「純粋に、好奇心ですね。美人な隊長が女になったらどんな美女になるのかなと思って」

白哉は、心の底で抱いていた恐怖に安堵した。

女でないから捨てられるのではないかと思ったのだ。

「捨てられるのかと、思った・・・・」

「そんな!俺が隊長を手放すはずがないでしょう!」

ぎゅっと抱きしめられて、白哉は苦しいと訴えた。

「明日には解毒薬できるそうなので、それまでその10歳の姿で我慢してください」

「恋次」

「はい」

ちゅ。

白哉は、座っている恋次に触れるだけのキスをした。

「隊長~~!愛してますーーーー!」

キスをして、着物を脱がしにかかる恋次に、白哉は。

「破道の8、白雷」

「あががががが」

「このような姿の私に盛るでない。愚か者が。ただの変態ではないか」

「確かに・・・キスやハグくらいは、許してもらえますか?」

「それくらいなら・・・・」

その日の晩、恋次は朽木邸に泊まった。白哉が子供の体になったことを知っているのは、ごく一部の者だった。

恋次は12番隊にいき、解毒薬を受け取って帰ってきた。

「これを飲めば、元に戻れます」

「ふむ・・・よい。もう少しこのままの姿でいる」

「へ?」

「子供の姿でいると、誰も私を朽木白哉と気づかぬのだ。日番谷隊長くらいだったな、気づいたのは」

恋次がいない間、白哉はぶらりと瀞霊廷を一人でぶらついていたのだ。

「お菓子をあげるからと、声をかけられること3回。いきなり拉致して来ようとする者もいた」

「たたたた、隊長、いくら鬼道があるからって、そんな滅茶苦茶可愛い体で歩き回らないでください!」

「皆、鬼道で再起不能になるほどに叩きのめしてやった」

「隊長は、無事なんですよね!?」

「見ての通りだ。子供姿も、悪くない」

女体化してなくてよかったと思った。

きっと白哉が女体化したらすごい美女になって、それこそ襲われてしまいそうな気がする。

10歳の子供も姿でも危ういのに。

2時間ほど恋次と駄菓子屋で菓子を買い、子供心に戻った白哉は、10歳であることを楽しんだ。

朽木邸に戻り、いつもの死覇装と隊長羽織をぶかぶかのまま着て、解毒薬を飲む。

ぼふん。

音を立てて、白哉は元の大人の姿に戻っていた。

「隊長、元に戻ってよかった!」

「こうなったのは、誰のせいだと思っている。禁欲1か月だ」

「うううう」

恋次が涙する。

「仕方のないやつだ」

白哉は、恋次に触れるだけのキスをする。

「キスとハグだけはよいことにしてやる」

「隊長!大好きです!」

抱きついてくる恋次に、白哉は苦笑する。

「お前は、本当に私のことが好きなのだな」

「当たり前です!世界で一番愛してますから!」

「では、今後変な薬は飲ませるな」

「うっ」

「まだこりていないのか。まぁよい。童心に戻れて、それなりに楽しかった」

白哉は、10歳の姿の時帯剣できなかった千本桜を腰に帯剣する。

牽星箝をつけ、銀白風花紗を身に着ける。

いつもの白哉のできあがりだ。

「隊長、キスさせてください。1か月も禁欲だなんて、しおれてしまう」

結局、我慢できなくなった白哉のせいで、恋次の禁欲生活は半月で終わるのだった。

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辛い菓子

6番隊の執務室で仕事をしていると、3時になった。

少し休憩を入れようということで、恋次が茶と鯛焼きをもってきた。

白哉はあからさまに嫌そうな顔をした。白哉は甘いものが嫌いだ。鯛焼きなど食べる気もない。

恋次は、鯛焼きをテーブルの上に置くと、お茶だけ白哉に渡した。

白哉はあまり茶菓子を食べない。茶菓子のほとんどが甘いものだからだ。

「隊長、今日はこれがありますよ!」

恋次が手にもってきたものは、カラムーチョだった。

現世の辛いお菓子で、白哉の好物の一つだった。

「よこせ」

白哉が珍しく、がっつく。

「はいはい」

カラムーチョを手にした白哉は、中身がなくなるまでカラムーチョを食べ続けた。

「隊長、一袋丸々はちょっと食べすぎですよ」

「かまわぬ。食べても太らぬ」

「でも、現世にしかないお菓子でしょう。手に入れるのに苦労したんですから。在庫まだありますけど、明日以降ですね」

「今よこせ」

「駄目ですよ、隊長!数に限りがあるんですから!」

「ふむ・・・一般隊士に命令して、カラムーチョを買ってこさせようか・・・・」

逡巡する白哉に、恋次が言う。

「それ、職権乱用っていうんですよ」

「では、清家にでも頼むか」

「あー。清家さんなら、いいかもしれませんね」

「だが、清家を現世に連れて行ったことがない。義骸が必要だ・・・・まぁ、金は腐るほどあるし12番隊に頼んで清家の義骸を作ってもらおう・・・あとキムチも買ってきてもらおう・・・」

一人、辛い物食べたさに口数が多くなった白哉に、不意打ちをするかのように口づけた。

「カラムーチョの味がする」

「愚か者。食べたすぐ後でキスなどするからだ」

「別にこれはこれで構いませんよ」

「んっ」

また恋次と唇が重なった。

「カラムーチョ手に入れたご褒美ください」

「全く、手のかかる・・・・・・」

盛った恋次に、仕方なく隊首室に移動する。

最後までする気はなかったので、お互いのものを重ね合わせて、すり合わせた。

「ああ!」

「隊長・・・・俺の手で、いってください」

「あ、恋次・・・・ひう」

ぐちゃぐちゃと音をたてて、互いものをいじりあっていると、先端の爪を立てられて白哉はいってしまった。

快感で真っ白になる頭を振り払い、恋次のものをしごくと、恋次も白濁した液体を出していた。

「あー。やべぇ、隊長抱きたい」

「隊首室ではせぬ。逢瀬もこの前したばかりだ。我慢しろ」

「うーーー」

おあずけをくらった犬みたいな顔をして、恋次は白哉に口づけた。

「もっとあんたが欲しい、隊長」

「だめなものはだめだ」

「けち」

「なんとでもいえ」

そのかわりだと、もう一度恋次のものに手をかけた。

口に含み、口淫すると、恋次は息を飲んだ。

「た、隊長・・・・・・」

恋次のものをなめあげて、しごいていく。旺盛な性欲をもつ恋次は、その刺激に耐え切れず、白哉の口の中で達していた。

「・・・・・濃い。この前、あれだけやっただろう。何故にここまで濃いのだ」

「若いからです」

白哉とて、まだ若い。

「お前は盛り過ぎだ。一度医者に診てもらえ」

「いや、普通ですって。隊長が相手だから、盛るんです」

逢瀬は大体一週間に一度くらいだ。

「濃いのは、抜いてなかったからですね」

「一週間に一度では足りぬのか」

「全然足りません」

白哉はどちらかというと性欲があまりない。自分で抜くという行為すらしない。

恋次の旺盛すぎる性欲に眩暈を覚える。

「仕方あるまい。週末、あの館へ・・・」

「一週間経ってないのに、抱いてもいいんですか?」

「そうでもしないと、お前は執務室でも盛るであろう」

「はは、確かに我慢できなくなって隊首室に連れ込むかも」

隊首室は、恋次の仮の寝床だ。何度かそこに連れこまれて抱かれた。

「恋次」

「はい、隊長」

「館へは、やはり今宵もでも構わぬ」

「ほんとですか。よっしゃー」

「その代わり、手加減しろよ」

「はい」

白哉を今夜抱けることになって、恋次は幸せの絶好調にいた。

「茶を入れろ」

「はい」

恋次のいれた緑茶を飲みながら、我ながら甘いと思う白哉だった。

夜になり、いつも逢瀬に使う館にやってくる。

明日は休みではないので、あまり無理はできない。

出されていた食事を食べ、酒を飲むとなし崩しに褥の上に二人で転がった。

「隊長、好きです」

貴族の証をはぎとり、隊長羽織も死覇装も脱がせていく。

「あ・・・・・」

白哉も、恋次の死覇装を脱がせた。

均整のとれたよく筋肉のついた体だ。入れ墨が目立つ。

「恋次は、何故入れ墨など体にいれたのだ」

「え・・・そうですね。かっこいいのと、強さの証みたいに。大きな戦で勝利すると入れ墨をいれます。この背中の下のほうの刺青は、大戦が終わってからいれたものっすね」

「入れ墨は入れるときに想像以上に痛いと聞く。大丈夫なのか?」

白哉の言葉に、恋次は頷いた。

「俺は根性ありますから。少しくらい痛くても平気です」

「もしも、私が入れ墨を入れると言ったらどうする?」

「断固として止めますね!この綺麗な白い肌に入れ墨なんて言語同断です!」

恋次の心配する声に、白哉は苦笑を漏らす。

「言ってみただけだ。入れ墨など、入れる気はない」

「よかった・・・・」

恋次の手が、白哉の体を這っていく。

「んん・・・・・・」

膝を膝でわり、胸の先端を甘噛みした。

「んっ」

キスをしながら、潤滑油に濡れた指を白哉の体内に入れる。

「一度、だけだぞ」

「わかってます」

前立腺を刺激しつつ、蕾を解していく。

トロトロになった頃に、宛がい引き裂いた。

「あああああ!」

「く・・・・・」

白哉の中の締め付けにいきそうになるが、1回だけと言われているので必死に耐えた。

ズチュズチュと音とたてて、白哉の内部を穿っていく。

「あ!」

とろりと、白哉は蜜と一緒に白濁した液を吐きだしていた。

「んんん・・・ひあっ」

女のように犯されて喜ぶようになってしまった腹が、子種を欲しいと訴える。

「くぁ・・・・ひう」

白哉の弱いところばかり突き上げていると、白哉はまたいってしまった。

「あ・・・・もう、お前もいけ・・・私の中で、ぶちまけろ」

言われた通りに、白哉の腹の奥に子種をこれでもかというほど、放ってやった。

お互い、荒い呼吸を繰り返す。

それから横になり、呼吸を整える。

「お風呂いきましょうか」

「ああ」

白哉は行為後、寝てしまうこともあるが風呂に入り、交わった証を流すのが常日頃の行いだった。

とろりと太腿からしたたり落ちてくる、恋次の子種を気にしながら、風呂場について腹の奥にだされたものをかき出してもらった。

「私が女なら、とっくに身籠っているな」

「隊長相手なら身籠らせることができそうな気がします」

「男に子供はできぬ」

「隊長なら・・・・」

髪と体を洗い、湯船に浸かって疲労した体をリラックスさせた。

ほどなく睡魔が襲ってきて、白哉は早めに浴衣に着替えて布団に横になった。

恋次はまだしたりなくて、浴室で一人で白哉のあられもない姿や声を想像して抜いていた。

「あー。俺って性欲旺盛すぎるのか?隊長が淡泊なだけなのか?」

白哉は2回いった。

恋次は1回だ。

日のあるうちに、白哉に2回抜かれたので、今日は合計3回いったことになる。

それでも、まだまだできそうだった。

「隊長に全部ぶつけたら、失神しちまうもんなぁ・・・・・」

翌日が休日の日は、激情の全てをぶちまけることもあったが、愛されている分かりだしてからその頻度は少なくなった。

代わりに、時折酒に分からない程度の媚薬を混ぜて、乱れさせたりもした。

恋次は白哉の元に戻ると、用意されてあった布団に横になる。

隣では、白哉があどけない顔で眠っていた。

抜いたばかりなのに、その寝顔にむらむらしてきた。

「隊長・・・・・」

口づけると、白哉が目覚めた。

「どうした」

「いえ・・・あんまりにもあどけない顔で寝ていたので」

「こちらにこい。添い寝してやろう」

白哉の言葉に、恋次はするりと白哉の布団にもぐりこんだ。

こうやって、1つの寝具で眠ることもたまにある。

「隊長の温もりがする・・・・」

「明日は仕事だ。大人しく、寝ろ」

そう言って、白哉はまた眠ってしまった。

寝付きがいいのが羨ましかった。

布団の中で、白哉の体を抱き締めながら、恋次もいつの間にか意識は闇に滑り落ちていった。

「恋次、起きぬか、恋次!いつまで私を抱いているつもりだ!」

「んー・・・・・」

「もう8時だ。急がねば、9時の仕事に間に合わぬ」

「うあ、そんな時間ですか!」

恋次は白哉を解放してがばりと起きた。

朝食は用意されてあったので、急ぎ目に食べて、二人して6番隊の執務室に瞬歩でやってくる。

時刻は8時50分。

ぎりぎりだった。

「やはり、次の日に仕事があるのに睦み合うのは止めたほうがよいか」

「いえ、ちゃんと起きます!遅刻しないようにしますから、翌日が休日じゃなくても抱かせてください!」

恋次は白哉を抱きたい時に抱けない。欲望のままに白哉を抱いていたら、毎日遅刻だろう。

「3時にカラムーチョを出すのであれば、抱かせてやってもよい」

くすくすと静かな笑いを、白哉が零す。

麗人は、美しかった。

黒絹の髪に、白い肌、中性的に整った美貌。よく手に入れることができたものだと、自分でも思う。

「カラムーチョ2つだします!」

「言ったな。2つだぞ」

1つは持って帰って食べよう。

そう思う白哉だった。

恋次は結局、カラムーチョが尽きて、休日に現世に赴きスーパーで大量に買い込むのであった。あと、キムチもおまけで買っておいた。

白哉の辛いもの好きは、甘いもの好きより苦労する。

それでも、微笑む白哉を見れるなら、どんな苦労もおしまないのであった。











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桜に溶ける

寒波もおさまり、大分春らしくなってきた。

ぽかぽかした太陽の日差しを浴びて、野花も綺麗に咲いていた。無論、桜も。

白哉は、朽木邸の庭にいた。

今年も朽木邸の庭の桜は、狂ったように見事に咲き誇っている。

「隊長」

白哉を迎えにきた恋次は、白哉が散ってく桜の中に佇んでいるのを見ていた。

「隊長!」

ふいに、抱き寄せる。

「恋次?」

「隊長が・・・・桜に奪われてしまう気がする」

「なんだそれは。私はただ、桜が美しいから見ていただけだ」

「あんたは見ていると危なっかしいんです。強いのは知ってるけど、桜に溶けていきそうだ」

「桜に溶けるか。それはそれでよさそうだ」

「よくありません!」

恋次は、白哉を抱き締める腕に力を入れる。

「恋次、苦しい」

「あんたは俺のものだ。たとえ桜にだって一欠片もやりませんよ」

「んっ・・・・・・・」

唇が重なった。

「恋次・・・・」

「好きです、隊長。桜なんかに奪われたくない」

「本当に、お前は焼きもち焼きだな」

「そうだぞ!兄様に失礼だ!兄様は純粋に桜を愛でておられただけだ。恋次の嫉妬は桜にまで向けられるのか」

気づけば、ルキアがいた。

「ルキア」

白哉が名を呼ぶと、ルキア嬉しそうに朝の挨拶をした。

「おはようございます兄様!朝から盛りのついた犬にまとわりつかれて、苦労していませんか?」

「いや、大丈夫だ」

「そうですか。恋次が邪魔になったら言ってください!引き離してみせます」

「ルキア、お前なぁ。人の恋路の邪魔すんな」

「そういう恋次は、兄様の一人の時間の邪魔をするな」

そう言われて、はっとなった。

白哉とて、一人で物思いにふける時間が欲しいだろう。

「隊長・・・・その、俺邪魔ですか?桜、一人で見ていたかったとか・・・・・」

「気にするな、恋次。お前がいてもいなくとも、桜の美しさは変わらぬ」

「もう、6番隊隊舎にいきましょう。桜の中の隊長は、散っていってしまいそうで不安になる」

恋次が、白哉の手をとり歩きだす。

「私が散るか・・・私の代わりに、千本桜が散るだろうな。千本桜も喜んでいる。桜の、同胞の季節がやってきたと」

「隊長・・・・・」

「私が桜が好きだ。己の斬魄刀を千本桜にするほどに」

ひらひらと舞う花びらを受けとめて、白哉は笑った。

綺麗な笑顔だった。

桜に負けないくらい、美しいと思った。

「隊長って、やっぱ美人ですよね」

「男に使う台詞ではない」

「でも美人です。人形みたいに綺麗で、時折本当に生きているのか疑わしくなるくらいに綺麗だ」

白哉の少し長い黒髪に手をやり、絹のような手触りのそれを一房手にとって、口づけした。

「桜、6番隊の執務室に飾りましょう。それなら、ずっと見ていられるでしょう?」

「ああ、そうだな」

「庭の桜の枝、もらいますよ」

「ああ」

白哉の許しを得て、見事の咲いている枝の一本を手折り、6番隊の執務室に行くと花瓶に飾った。

白哉は、たまにぼんやりとその桜を見ていた。

「隊長、手が止まってすよ」

「すまぬ」

心、ここにあらずといったかんじだった。

桜の季節になると、白哉は桜ばかりを見ている。本当に桜に攫われそうで怖い。

でも、それも2週間ばかりの辛抱だ。

桜の花はすぐに散ってしまう。

「今年も桜の季節はもう終わりか」

「隊長には千本桜があるじゃないですか」

「ふむ・・・それもそうだな」

美しい、桜。奥の刃になる千本桜は、桜の花びらとなって敵を襲う。千本桜と名付けたのは白哉だ。

千本の桜の花が散るが如くの桜の奔流。

また、来年も春がくればよいと、白哉は思うのだった。





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卯ノ花隊長と華道

卯ノ花。

4番隊の隊長であり、回道の一番使い手であり、怪我人や病気の者を癒してくれる。

そんな卯ノ花は、華道が好きだった。

同好会を開いて、華道を趣味としていた。

そんな華道の席に、場違いの浮竹と京楽がいた。

救護詰所で話をしている間に、華道も面白そうだという話になり、特別に出席することになったのだ。

「足が痺れそうだ」

「僕も」

普段正座のすることのない二人は、すでに音をあげていた。

やがて花が配られる。

カスミソウ、白百合、赤薔薇、なんかよくわからない黄色の花と、緑の葉っぱだった。

浮竹は、迷いもせずにぱちりと茎をきって、剣山にさしていく。

豪快としかいえないような、できばえだった。

一方の京楽は、バランスを考えて活けていた。

「あらあらお二人とも、生け花に性格がでていらっしゃいますね」

卯ノ花が、楽しそうに二人が活けた花を見る。

「浮竹隊長、剣山にさせばいいというものではありませんよ。もっとバランスを考えないと「

「そ、そうだな」

「京楽隊長、少し花が地味に見えてしまいますね。花が主役なので、緑はそこまで飾ることはありません」

「そうかな」

「では、食べましょうか」

「「は?」」

浮竹と京楽は顔を見合わせ合う。

「あら、お伝えしいなかったでしょうか。今回の白百合は菓子でできています。勿論本物の白百合ですが、成分はお菓子です」

そう言って、卯ノ花はむしゃりと白百合を口にした。

茫然としている二人の前で、他の華道に出席した者も、白百合を食べて茶を口にしていた。

「京楽・・・・食べれると思うか?」

「みんな食べてるんだから、食べれるんじゃないの?」

勇気を振り絞って、二人は白百合を口にしてみた。

でも、本当の花だった。

「ふふふ、ひっかかりましたね。いつも救護詰所で騒ぐお返しです」

「卯ノ花隊長、すまない。次からはもっと静かにする」

「僕も」

「分かっていただければいいのです。さぁ、この白百合をどうぞ。食べれます」

渡された白百合を逡巡したが口にした。

ふたりと、甘い優しい味がした。

「いつも華道の花って食べれるのか?やちるちゃんがよく華道を見に行くついでに花を食べていると言っていたが」

「そうですよ、浮竹隊長。活けるだけだとつまらないですからね。毎回1種類は食べれる菓子の味のする花をいれています」

「風雅なのかどうなのか分からないとこだね」

京楽が口を開く。

活けた花をそのまま飾っっておくのが華道の基本なのだが。

卯ノ花の華道は、少し違うようだった。

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ルキアと中身が入れ替わった件

今まで、京楽、海燕、白哉、日番谷、一護と頭をぶつけて中身が入れ替わったことがあるが、全部同性であった。

「浮竹隊長、資料をおもちしました」

「ああ、朽木、そこにおいてくて」

屈んだルキアと、浮竹は頭をぶつけた。

「あ・・・・やべ、朽木になってる!」

「ええええええ!なんで私がもう一人!」

ルキアは、浮竹から頭をぶつけると、人格が入れ替わることがあると聞いて、卒倒した。

とりあえず、自分の体でうろつかれても困るので、雨乾堂の布団の上に寝かせておいた。

「今度は朽木かぁ。とりあえず、白哉をからかってみるか」

浮竹は、ルキアの体で出かけた。

朽木家に入り、白哉の前にきて、こういった。

「白哉、金をくれ」

「ルキア・・・・・?」

「あ、違った。兄様、金をください」

白哉は、不思議そうな顔をしていたが、ルキアの体の浮竹に、金子をもたせた。

屋敷が一軒買えるような金額だった。

「ちょっと多すぎる・・・」

「本当に、ルキアなのか?霊圧が、浮竹に近いのだが」

「ああ、霊圧でばれるのか。その通り、俺は浮竹だ」

「まさか、入れ替わったのか!私の時のように」

「ああ」

そう言うと、白哉は焦りだした。

「ルキアはどこだ!まさか、雨乾堂ではなかろうな。盛った京楽に何をれるか分かったものではない・・・・・」

「あ、その心配忘れてた」

二人して、瞬歩で雨乾堂に行くが、一歩遅かった。

京楽が、目を白黒させている浮竹の体のルキアに、深い口づけをしていた。

「京楽、兄はルキアから離れろ!」

「え」

浮竹のことをルキアと呼ぶ白哉に、まさかとは思うが、ルキアの姿をした浮竹に聞く。

「もしかして、中身、入れ替わってる?」

「その通りだ、京楽!ルキアから離れろ」

「うわあああ、ルキアちゃんにキスしちゃった!どうしよう」

「京楽隊長にキスをされました!どうすればいいのでしょう!」

慌てふためく二人に、浮竹が口を開く。

「取り合えず、落ちつけ二人とも」

「それも、そうだね・・・・」

「浮竹隊長なのですか、私の体の中身は」

「そうだぞ、朽木。まぁ、しばらくじっとしていよう。2時間くらいで、元に戻るから」

白哉は、浮竹の体とはいえ、ルキアに手を出した京楽に怒っていた。

「朽木隊長、不可抗力だよ。そんなに怒らないでよ」

「兄は、義妹に手を出した。これが怒れずにいられるものか」

2時間が経過して、浮竹とルキアの人格入れ替わりが元に戻った。

「はぁ・・・よかった、私の体だ」

「京楽は、何昼間っから俺にキスして盛ろうとしているんだ」

「いや、君があどけない顔で寝ているのを見てたら、むらむらして」

「浮竹隊長と京楽隊長は、相変わらずですね」

ルキアの言葉に、二人が顔を見合わせあって、苦笑した。

「まぁ、僕たち関係隠してないからね」

「京楽はたまに、朝から盛ってくるぞ」

ルキアは、深いため息を零した。

「今回のことは忘れることにします。京楽隊長のディープキス・・・・ううう、忘れれるかな・・・・」

「ルキア、しっかりしろ。朽木家に戻り、風呂に入って京楽菌を落とせ」

「そうします、兄様」

ばい菌扱いされた京楽は、浮竹の隣で何事もなかったかのように座っていた。

「京楽菌か・・・俺は、京楽菌まみれなんだろうな」

白哉は、浮竹には文句を言わなかった。

「兄様、帰りましょう」

「そうだな。しばらく、京楽の顔は見たくない」

「酷い嫌われようだねぇ、僕」

「まぁ、俺の体とはいえ、大切な義妹が襲われたんだ。白哉は、けっこう妹思いだからな」

去っていく朽木兄妹を見送って、浮竹は京楽の方を向いた。

「たまに入れ替わってる時があるから、今後気をつけてほしい」

「そう言われてもねぇ・・・君が入れ替わってるなんて寝てたら分からないし」

「そもそも、寝込みを襲うな」

「えー、今更でしょ?」

京楽が、意地悪く笑う。

「まぁそうなんだが・・・・聞いているのか、京楽」

京楽は、浮竹の体調羽織を脱がせていた。

「言っておくが、しないからな」

「えー。せっかくその気で来たのに」

「今回は、そういう気分じゃないんだ」:

「じゃ、キスはしてもいい?」

「キスくらいなら・・・・・・」

舌が絡まるディープキスをされて、これをルキアも味わったのかと思うと、可愛そうにと思った。

京楽のキスは大人のもので、ルキアには刺激が強すぎるだろう。

「しばらく、寝込みは襲うなよ」

「分かったよ」

一方、朽木家ではルキアが風呂からあがってぼーっとしていた。京楽のキスは凄かった。その気のないルキアでも、灯がつきそうなくらいに。

「いかんいかん、私には一護がおるのだ!」

一護とまだキスをしたことがない。

ファーストキスが、京楽だったのだ。

「はぁ・・・・私のファーストキスは、京楽隊長か・・・・いやでも、肉体が違うからファーストキスにはならないか・・・うーんうーん」

そんな悩みを抱えるルキアを、白哉が静かに見守っているのであった。





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