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始祖なる者、ヴァンパイアマスター18

古城に、訪問者がいた。

自分を、始祖精霊にして、炎の精霊王クルル・ルデール・ファイアオブファイアと言い出した。

燃えるような赤い髪に、赤い瞳の若い美青年だった。

「単刀直入に聞く。精霊王の力を、欲しくはないか」

「あ、別にいらん」

ズコー。

炎の精霊王は、ずっこけた。

今まで、魔法を極めた者は皆、精霊王を使役することを望んだ。

それを、この浮竹という始祖ヴァンパイアは、いらないのだという。

浮竹は、身に着けている、邪気を感じとることのできる水晶を見た。

濁ってはいなかった。少なくとも、敵意はないようであった。

「我を使役できれば、もっと力が増すぞ」

「いや、俺は十分に今のままでもやっていけるからな。どうせ、試練だとかいって、我を倒してみよとか言い出すんだろう?」

「ぎくっ」

「無益な争いは好まない。炎の最高位精霊フェックスを使役だけるだけでも、十分だ」

「我の誘いを断った者は、貴殿が初めてだ」

「浮竹、この子本当に精霊王なの?」

「そうみたいだぞ。宿している魔力が半端じゃない」

「うーん、僕にはわからないけどなぁ」

炎の精霊王は、自分の魔力を隠蔽していた。それを感じ取ることができるのは、精霊王を使役できる力を有している証でもあった。

「本当に、いらぬのか」

「いらん。帰れ」

「ぐ・・・・今日は帰るが、またくる」

「もうこなくていいぞ」

「うん、こなくていいよ。ばいばい」

京楽は、浮竹に近づく怪しい青年だと、警戒しているようだった。

精霊王が帰った後の訪問者に、浮竹と京楽が驚いた。

東洋の浮竹と京楽だった。

(久しぶりだな)

(元気にしてた?)

「ああ、元気にしている。水晶のペンダントありがとう。いつでも身に着けている。おかげで、邪気があるかないかが分かって便利でいい」

「うん、ありがとね東洋の僕と浮竹」

(役に立っているようならよかった)

(うん、プレゼントした甲斐があるってもんだね)

東洋の浮竹と京楽は、仲睦まじく寄り添い合っていた。

「ねぇ、浮竹・・・・」

「却下!」

「クスン」

東洋の浮竹と京楽は、お茶をしてから、西洋の浮竹と京楽の影に潜ってしまった。

蛇神であるので、影に潜むことができるのだ。

「S級ダンジョンに行こうと思っていたんだが、一護君という少年を鍛えるために、連れていこうと思っていた。一緒に行動すればややこしくなるんだが、影に潜んでいられるなら、問題ないな」

(危なくなったら、いつでも加勢するぞ?)

(うん、ボクも)

「いや、一護君の手前もあるから、なるべく姿を潜めてほしい」

(分かったよ)

(なるべく、静かにしとく)

--------------------------------------------------

「一護君、俺たちと一緒に、S級ダンジョンにもぐらないか」

浮竹の突然の訪問に驚いたのと同時に、自分を指名する浮竹に、一護は首を傾げた。

「はあ、別にいいっすけど」

「ルキア君を守りたいんだろう?もっと強くなりたいと、思わないか?」

「そうだよ。今回は、一護君を鍛える意味も兼ねているから」

「俺だけっすか?ルキアや冬獅郎は?」

「ルキアちゃんは聖女だ。別に強くなくてもいい。冬獅郎君は、ちょっと今回炎の精霊王なる者が訪ねてきたので、氷の精霊をもつ冬獅郎君とは相性が悪いだろうから、一護君だけにすることにした」

「はぁ。なんか良く分からないけど、強くなれるんなら、そのS級ダンジョンとやらに同行するっす」

こうして、浮竹と京楽と一護は、影に東洋の浮竹と京楽を潜ませながら、S級ダンジョンに行くことになった。

50階層まである、S級ダンジョンを選んだ。

攻略に3日ほどはかかるので、3人分+2人分の食料と水をアイテムポケットに入れて、テントやら布団やら寝泊まりするのに必要なものを用意した。

「東洋の君らの食事も、一応用意するからな」

「うんうん」

(ありがとう。気を使ってくれなくても、いいんだぞ?)

「でも、影に潜んでいても腹はすくし、喉は乾くだろう」

(それはまぁ・・・・)

「5人分の食料と水を、3日分ほど用意しておいた」

(ありがとう)

(感謝するよ。S級ダンジョンなるもの、見ておきたいって、十四郎が言うものだから)

(こら、春水、それは秘密だろう)

(ああ、ごめんよ十四郎。まぁもう言ちゃったものは仕方ない)

「何ごちゃごちゃ言ってるんすか?」

「ああ、一護君、なんでもないんだ。出発しようか」

「あの、なんか準備した荷物、明らかに二人分多いんですけど」

「浮竹、隠し通すのは無理だよ」

「はぁ、仕方ないなぁ。なぁ、出てきてくれ。一護君に紹介する」

「え?」

一護は、目が点になった。

「東洋の僕らだ」

「そうそう、東洋の。蛇神で、神様でもあり妖でもあるよ」

(はじめまして、こちらの世界の一護君)

(いやぁ、ボクらの世界の一護クンにそっくりだね)

「はえ?浮竹さんと京楽さんが二人?ええええ!?」

「話せば長くなるが、東洋の、極東の島国に僕らと同じ存在がある世界があるんだ。いつもは夢渡りで俺たちもいくんだが、今回はわざわざ遊びにきてくれたんだ。まぁ、陰に潜んでいてもらうし、ダンジョン攻略は基本俺と京楽と一護君で行う。いいな?」

「え、あ、なんだか分かりませんが、違う世界の浮竹さんと京楽さんでいいんすね?」

「そうだ。飲みこみが早くて助かる」

影から姿を現していた東洋の浮竹と京楽は、蛇の形になって、それぞれ自分を同じ西洋の浮竹と京楽の影に潜った。

「なんかすげぇ。影渡り・・・。影があれば移動できる。すごいっすね」

「まぁ、神様でもあるからね」

「そういう浮竹さんも、始祖だしある意味神様に近いっすよ」

「浮竹はまぁ、神々が生きてまだこの世界にいた頃から、生きているからね」

「とりあえず、出発しましょう!」

一護は、混乱することをすっかりなかったことにして、S級ダンジョンへと足を伸ばしていった。

-------------------------------------------

S級ダンジョン、第一階層。

草原が、広がっていた。

「うわぁ、ダンジョンの中に草原がある!」

「宝箱だ!」

草原のど真ん中に置いてあった、宝箱は見るからに怪しかった。

浮竹は、早速宝箱を開けた。

ミミックだった。

「暗いよ、怖いよ、狭いよ、息苦しいよ~~~」

「何してんすか、あれ」

「いや、浮竹はダンジョンで宝箱を見たら、ミミックにかじられるのが好きなんだよ」

(何してるのあれ)

(ミミックに齧られるんじゃないの?)

「浮竹、ほら、東洋の僕らも呆れているよ!君のミミック好きにも、困ったものだね」

「京楽さん、助けなくていいんすか」

「一護君が助けてごらん」

「ていや!えい!」

一護は、ミミックを蹴ったり殴ったりしていた。

「うわあああ、ミミックが更に噛んでくる!」

「俺じゃ無理みたいっす」

(ねぇ、西洋の十四郎は、本当にヴァンパイアの始祖なんだよね?全然そうは見えないんだけど)

(う、それは俺も思った)

「ほらほら、東洋の僕らが、呆れているよ」

「京楽、助けてくれー」

「仕方ないねぇ」

京楽は、浮竹の体を引っ張り出すのではなく、押し込んだ。

ミミックがおえっとなって、浮竹を離す。

「ファイアボール!」

浮竹は、ミミックを退治した。

後には、魔法書が残されていた。

「やった、魔法書だ。何々、雨の色を変える魔法。へぇ、面白そうだ」

早速、浮竹は習得する。

すると、都合のいいことに、空の天気が崩れて小ぶりの雨が降ってきた。

「ブルーレイン!」

浮竹が呪文を唱えると、雨粒が青くなった。

「レッドレイン」

今度は、赤くなった。

「なんだこれ、けっこうおもしろい。それに綺麗だ」

「いい魔法書でよかったね、浮竹」

「ああ」

浮竹はにこにこしていた。

雨は、すぐにやんでしまった。

一階層は、色違いのスライムが出た。スライムといっても、巨大な個体で、一護がジャンプしてコアのある部分に、魔剣で電撃を浴びせた。

スライムを、そんな風に倒して、2階層にまできた。

ゴースト系のモンスターが出た。

浮竹が、炎の魔法で屠っていく。

そんな調子で、5階層まで進み、ボスのワイバーン3体をやっつけると、宝物個への扉が開いた。

「金銀財宝だ!金だ!」

「うわぁ、浮竹さん世俗にまみれてる」

一護がそう言った。

うきうきと浮竹は宝物個の宝箱を開けた。

中には、金銀財宝がつまっていたが、浮竹はあからさま残念そうだった。

「どうしたの、浮竹」

「宝箱が、普通だった。ミミックじゃなかった・・・・・」

「そこ、残念がるとこなんすか!?」

(あっはははは)

(ちょっと、十四郎、笑っちゃかわいそうだよ。ぷくくく)

「俺はミミック教を布教している。信者は俺一人!だけど東洋の俺たち、ぜひミミック教に」

うわぁ、西洋の俺少しやばいと言うかイカれているな

(ミミック教。いくところまで、いっちゃってるね。ミミック教ってネーミングセンスもばいね)

影の中で、東洋の京楽は肩すくめていた。

「ほらほら浮竹、東洋の僕らが引いてるよ。ミミック教は君一人で楽しんでなさいな」

「残念。ミミックのかじられるあの快感が、分からないとは」

「いや、普通痛いっすよ!」

「一護君、ミミックに関したら浮竹はただのアホだから、放置してていいよ」

「アホっていうな!聞こえてるぞ」

浮竹は、炎の矢で京楽の尻を燃やした。

「あちちちち」

(仲いいのか悪いのか、分からないな)

(仲はいいでしょ。じゃなきゃ、一緒にいないさ)

「じゃあ、6階層に行こう」

浮竹は、文句を垂れながらも、財宝をアイテムポケットにしまいこんだ。

一護を中心として、敵を倒していく。

「俺、強くなってるんすかね?」

「初めの頃より、動きが綺麗だし、魔法も使えるようになってる」

そう、一護はこのS級ダンジョンにきて、初めて魔法が使えるようになっていた。

今まで、魔剣を通してしか、魔法は使えなかったし、雷系の魔法のみだった。

10階層で、水の精霊の乙女、ウンディーネを倒したことで、一護は魔剣の媒介なしに、雷と水の魔法を使えるようになっていた。

「このダンジョンに来てよかったっす。まさか、俺が魔法を使えるようになるなんて。ルキアのやつ、驚くだろうな。冬獅郎も、驚くな、きっと」

「俺も驚いている。ここまで一気に成長するとは思わなかった。一護君は、精霊を使役していなかったから、今まで使えなかっただけで、魔法の素質はあったんだろうな。10階層のウンディーネを倒した時、強制契約になったんだろう。それがきっかけで、魔法が使えるようになったんだと思うぞ」

「確かに、一護クンがもってる魔力は高いからね。魔法が、魔剣を媒介にしないと使えないと聞いて、少し不思議におもっていたんだよ。素質はあったんだね、やっぱり」

京楽と浮竹に褒められて、一護は照れ臭そうにしていた。

10階層の財宝をもっていたのは、ミミックだった。

「ミミックだ!やった!」

浮竹が、ミミックだと分かっているのに突っ込んでいく。

「いつもより痛い~。暗いよ狭いよ怖いよ痛いよ~」

「はいはい」

京楽が、浮竹を救出する。

ミミックは、ハイミミックだった。

エンシェントミミックの次に強いミミックだった。

「ウォーターボール!」

一護が、ハイミミックにトドメを刺した。

ばさりと、古代の魔法書が3冊と、金銀財宝が出てきた。

浮竹は、金銀財宝よりも、古代の魔法書に興奮していた。

「何々、髪がアフロになる魔法、どこでも耳かき棒が出る魔法、しもやけが治る魔法・・・・民間魔法ばかりか」

浮竹が、何故か熱のこもった視線で京楽を見つめていた。

「嫌だからね!僕を実験台にしないでよ!アフロになんて、なりたくないからね!」

「一護君・・・・」

「俺も嫌っす」

しゅんと、浮竹は項垂れた。

(・・・・ボクもパス)

(・・・・おれも遠慮しとく)

京楽と浮竹の影から、そんな声が聞こえてくる。

----------------------------------------------------------

(ボクの十四郎は、いっちゃたりしてないし、やっぱりボクの十四郎が一番だね)

「そんなことないよ!確かに今の浮竹はいっちゃってるけど、いつもはかわいいし、美人だし、気品があるし、強いし、頼りがいがあるし、それからそれから」

(ボクの十四郎は、更にその上をいくからね)

「僕の浮竹だって、もっともっと、いいところいっぱいあるんだから!エロいし!」

東洋と西洋の京楽の言い合いに、東洋と西洋の浮竹は真っ赤になっていた。

真っ赤になった西洋の浮竹に、同じ西洋の京楽さんは殴られた。

そして、影の中で、東洋の浮竹は同じ東洋の京楽の着物の裾を引っ張るのだった。


15階層のボス、風の精霊シルフィードを倒して、今日はその宝物庫で寝ることにした。

テントを、3つはった。

それぞれ、一護、西洋の浮竹と京楽、東洋の京楽といった感じで別れた。

一護は、西洋の浮竹と京楽にまたびっくりしながらも、ごく普通に接してくれた。

「このダンジョン・・・・少しおかしい」

「何が?」

「ボスが精霊なんて、普通はありえない。このままいけば、最下層は多分・・・・炎の精霊王だ」

「なんだって!引き返すかい?」

「いや、ここまできたんだ。精霊王が相手でも、負ける気はしない」

「浮竹さん、京楽さん、最下層が精霊王ってほんとっすか。俺じゃあ足手まといになるんじゃないっすか」

「いや、このダンジョンの潜る理由は元々一護君を成長させるためだ。一護君にも、参戦してもらう。水の魔法が弱点だろうし」

「はい!」

一護は、顔を輝かせた。

そうやって三日かけて、やがて最深部の50階層に到達した。

合計、115回浮竹はミミックにかまれていた。

「きたな」

「やっぱりいたな、炎の精霊王」

「我が名は炎の精霊王クルル・ルデール・ファイアオブファイア。さぁ、我が試練に・・・・・・」

「アイシクルランス!」

「ウォーターボール!」

浮竹と一護が、最後まで言わせず氷と水の魔法を放つ。

「ちょっと待て、話を聞け、我は・・・・・・・」

「ブリザードオブデス!」

「アクアエレメンタルストーム!」

京楽も、剣に氷の魔法をエンチャントして、精霊王に切りかかった。

「だああああ、ファイアオブファイア!」

炎の精霊王が放った魔法に、三人は飲みこまれた。

浮竹が、炎のシールドを展開して、魔法を吸収して、放つ。

「ファイアオブファイア!」

「我に、炎の魔法など効かぬ・・・・うおおおおおおおおお」

その威力に、炎の精霊王は、長い見事な赤い髪を焦がしていた。

「我の魔法より、上だというのか。創造神ルシエードの子、始祖のヴァンパイアよ」

「創造神ルシエードは俺の父。俺は始祖のヴァンパイアマスター、浮竹十四郎。喰らうがいい、エターナルアイシクルワールド!」

氷の禁呪の魔法で、炎の精霊王は体を凍てつかせていた。

「見事だ、浮竹十四郎。我は汝、汝は我。我、炎の精霊王クルル・ルデール・ファイアオブファイアは、汝を主と認めよう」

「あれ?終わったの?」

京楽が、てっきり死闘になると思っていたがのだが、割とあっけなく精霊の使役としての契約が終わったことに、驚いていた。

「京楽も一護君もお疲れ!これで、S級ダンジョンは踏破だ!」

「やったあ!」

「本当っすか!?ルキアに、自慢できる」

「我は、これより汝の力となるであろう。だが、我の召還には膨大な魔力を伴う。そのリスクを、念頭に置いておけ」

そう言って、炎の精霊王は、浮竹の中に消えていった。

(炎の精霊王を使役する始祖ヴァンパイア・・・・・くやしいけど、かっこいいな)

(確かに精霊の王を従えるなんて、凄いね)

「そうだろう、そうだろう、東洋の僕。僕の浮竹は、精霊王、神に近い存在も操れる、大陸でも類を見ない魔法の使い手なんだよ」

ここぞとばかりに、いばりちらしてくる西洋の京楽に、東洋の京楽は頷いた。

(確かに、すごいね。でも、ボクの十四郎も負けていないよ?)

(あれは俺でもできないぞ?)

(知ってるけど?・・・・行け、影蛇)

突如、東洋の浮竹の影から蛇を出す東洋の京楽に、西洋の京楽も浮竹も驚く。

(・・・・・はい、どうぞ)

(え?ああ・・・・そう言うことか)

東洋の京楽は、東洋の浮竹にそれだけ言う。すると、東洋の浮竹は全てを察し、自身の指を切り血を滴らせ蛇に与える。

すると、ぼんやりとした影であった蛇が、黒い立派な蛇へと変わり西洋の浮竹と京楽を見て首を傾げている。

「おお、凄いな。そんなこともできるのか」

「これはまた、違った意味で凄いね」

そんな西洋と東洋の浮竹と京楽のやり取りを、一護は不思議な気持ちで見ていた。


そうして、S級ダンジョンを踏破した3人と2人は、ダンジョンの外に出た。


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好きなものは好き17

「一護、たのもう!」

いきなり玄関前で、ルキアの大声がして、びっくりして一護は扉をあけた。

「なんだよルキア。いつもみたいに、堂々と入ってくればいいだろう?」

「そのだな、今日は、ホワイトバレンタインなるものの日と聞いて・・・・」

「ああ、ちゃんと用意してあるぜ。とりあえず、あがれよ」

大学生である一護は、アパートを借りて、そこで一人暮らしをしていた。

そこに、土日になると、現世にくるルキアが転がり込んでくる。

金曜の夜にやってきて、土日を一緒に過ごして、月曜の朝に尸魂界に戻った。

ルキアは、がちがちに固まっていた。

そんなルキアが可愛くて、一護はルキアを抱きしめていた。

「ああ、もう、お前まじで可愛すぎ」

「一護?」

「夕食作るから、ちょっと待ってろ」

「あ、私も手伝う!」

夕食は、親子丼だった。

ルキアは電子レンジに卵をいれて、爆発させていたが。

「電子レンジ、買い直さないと」

「すまぬ・・・弁償はする」

「ルキア、卵を入れたら電子レンジが爆発するって、知らなかったのか?」

「初耳だ。すまぬ、その、余計な手間をかけてしまって」

「いいぜ、別に。知らなかったなら、仕方ないだろ?誰にだって失敗はある」

「貴様はなぜ、そんなに私に甘いのだ?」

「そんなの、好きで愛してるからに、決まってるだろ?」

「一護・・・・・」

一護は、ルキアにキスをした。

「親子丼、冷める前に食っちまおうぜ」

「う、うむ・・・・・」

次の日の朝に、一護はルキアにホワイトバレンタインのプレゼントをあげた。

新しい、麦わら帽子だった。

いつもの白いワンピースに似合い、ルキアはすぐに気に入った。

高いものではないだろうか、気を使わせてしまっていないだろうかと、悶々とした一夜を過ごしたのだ。

「嬉しいぞ、一護!」

ルキアは、ワンピース姿に麦わら帽子をかぶって、クスクスと笑っていた。

「似合ってる、ルキア。写真、とろうぜ」

スマホで、並んで写真を撮った。

麦わら帽子には、ルキアの瞳の色と同じ、紫のリボンがついていた。

「この紫のリボンが、愛らしいな」

「店でこれ見かけて、もう暑くなってきたし、これだと思ってそっこう買った」

昼からは、ルキアが壊した電子レンジを買いにいくことになっていた。

「一護、私は幸せだ。貴様の隣にいれて」

「それは、俺もだぜ」

外を並んで歩く。

手を繋いだまま、家電製品の店にやってくると、これでもないあれでもないと、電子レンジを吟味した。

「これがいい!」

ルキアが選んだのは、壊れた電子レンジと同じものだった。

値段も比較的安いので、一護もそれに決めた。

配達を日曜に頼んで、家電製品の店を出て、町をあてもなくぶらついた。

一護は、コンビニに入って、パピコを買った。

「なんだそれは?」

「パピコっていうアイス。2つで1つなんだ。今の俺たちみたいだろ?」

ぱきっとパピコを割って、片方をルキアに渡した。

「マスカットの味がする・・・おいしい」

「レストランで、軽く昼食でも食うか。パフェ、たのんでもいいぜ。白玉餡蜜は、夜に作ってやるから」

「すまぬ、一護。私は与えられてばかりだ。どうすればいい?」

「いいんだよ、ルキア。ルキアがいるだけで、俺は満たされるから」

「だが」

「じゃあ、キスしてくれ」

「わ、私からか?」

「ああ」

「し、仕方のない奴め!」

外だったので、ちゅっとリップ音を立てて、ルキアは真っ赤になりながら一護の唇にキスをした。

以前なら、照れて頬にキスをするのが手一杯か、殴られた。

にまにまする一護の脛を、ルキアが蹴った。

「いつまでにやけておるのだ!」

「いやぁ、俺、愛されてるなぁと思って」

「たわけ!」

ぽかりと殴ってくるその腕にには、あまり力は入っていなかった。

「じゃあ、レストランにでも行くか」

「あ、ああ・・・」

ルキアは、一護からもらった麦わら帽子を、現世にいれない間尸魂界にも持って帰って、一護のようにニマニマして眺めるのであった。


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始祖なる者、ヴァンパイアマスター17

女帝ブラッディ・ネイが消えた。

それは血の帝国を震撼させた。

「全く、どこへいったんだあの妹は!」

浮竹は、ブラッディ・ネイの宮殿にきていた。京楽も一緒だ。

「ブラッディ・ネイが消える前、何かおかしなことはなかったかな?」

家臣や寵姫たちに、そう聞いて回る京楽。

浮竹は、ブラッディ・ネイが自ら望んで消えたわけではないと考えていた。

「後宮を封鎖しろ。寵姫たちを外に出すな」

「浮竹、まさか寵姫が?」

「その可能性が一番高い。俺はブラッディ・ネイと血を分かち合っているので分かるんだ。ブラッディ・ネイの気配は、まだ宮殿の中だ」

「君たち、後宮を封鎖して!寵姫の誰一人も、外に出れないようにして!」

京楽が、ブラッディ・ネイの家臣たちにそう命令すると、家臣たちは後宮を閉鎖するために動いてくれた。

「ブラッディ・ネイが寵姫の誰かに連れ去られたと思うの?」

「その可能性が一番高い。あの愚昧は、俺をおいて血の帝国から消えるような存在じゃない」

浮竹には、絶対の自信があるらしかった。

ロゼと中身を交換してまで、抱こうとするほど、ブラッディ・ネイは浮竹に固執しているし、浮竹のことを伴侶のように愛していた。

ブラッディ・ネイが浮竹に抱く愛は、家族愛ではない。

浮竹を愛し、自分のものにしたいという欲からくる愛だ。それは、京楽が浮竹に抱いている愛に似ていた。

一番の寵愛を受けている、ロゼ・オプスキュリテと話をした。

「最近のブラッディ・ネイに変わったことはなかったか」

「そういえば、最近一番若い、8歳の少女を後宮入りさせました。それくらいでしょうか」

「8歳!完全に犯罪だろ」

ブラッディ・ネイは年端もいかぬ10くらいの少女から、15才くらいまでの少女を愛した。

後宮に住まう寵姫の数は35人。

それぞれ、血を少しだけ与えられて、疑似血族にされていた。

ブラドツェペシュの件があり、ブラッディ・ネイは本物の血族をもつことを辞めた。

それまで血族にしていた寵姫を、血の盟約を破棄して血族ではなくし、その後に新たに疑似血族とした。

疑似血族は、血族によく似ているが、血族とは違う。

縛るようなものがないし、主として守らなければという意思もわかない。

「その8歳の子には会えるか?」

8歳というが、実年齢ではない。あくまで見かけの年齢であった。実際は30歳ほどだ。

他の寵姫たちは100歳を超えている。

ブラッディ・ネイの血を与えられた者は、成長が止まり、若い姿のまま死んでいく。

「その、自閉症で・・・会うのは、難しいかと」

「ふむ。ますます怪しい」

浮竹と京楽は、後宮にきていた。

京楽にも、後宮にブラッディ・ネイの存在があるのが分かった。

「俺と京楽は、宮殿でしばし留まる。何かあれば、式を飛ばしてくれ」

「はい、始祖様」

「あの子、式使えるの?」

「疑似血族とはいえ、一番の寵姫だ。限りなく血族に近い。血族は主の能力を模倣できるからな。京楽、お前が魔法は本当は使えないのに、俺が主のせいで、俺が使う魔法を使えるように」

「そうか。ロゼって可能性はないの?」

「ロゼは寵愛を欲しいままにしている。今回の犯人は、寵愛を欲している寵姫とみて、間違いはない」

「うわぁ、肉欲の泥沼。僕には、ブラッディ・ネイの寵愛を欲しがることが理解できない」

「それは俺にも理解できない。同じ女の女帝に体を玩具にされて、それでもなお愛されようとするなど」

1週間ほどが過ぎた。

ロゼから、式が届いた。

ブラッディ・ネイが深夜にロゼの元を訪問して、抱いていったのだという。

「復活したのなら、何故戻らない。戻れない理由でもあるのか・・・・」

「一時的に復活しただけかもしれないよ。肉欲を満たすために、ロゼを抱いて、また拉致られたとか」

「多分、拉致られたんだろうな。ブラッディ・ネイが命をかけてまで寵愛する寵姫は存在しない」

「でも、浮竹のためなら、ブラッディ・ネイは命を投げ出すんじゃない?」

「それはありそうだが。まあ、限りなく不老不死に近い。死んでも、皇族の少女に転生する」

「それもそうだね。ほんと、人騒がせな。どこにいったんだろう?」

さらに3日ほど経った。

危惧していた血の帝国での内乱や、内輪もめなどなく、時はただ静かに過ぎていく。

女帝ブラッディ・ネイの代わりに皇族王である白哉が、統治に当たっていた。

「白哉がいて助かった。女帝排斥派はすでに淘汰済みだし、しばらくは白哉が政治をしてくれるだろう」

「白哉クン、肩の荷が重そう。かわいそう」

「仕方ない。ブラッディ・ネイを見つけるまでは、代わりに血の帝国を統治してもらわないと」

一度、浮竹と京楽は、忙しい白哉と面会が叶った。

「忙しそうだな、白哉」

「兄か。早く、ブラッディ・ネイを見つけてくれ。忙しくて目が回りそうだ」

「ブラッディ・ネイって肉欲の海に沈んでいるだけに見えるけど、ちゃんと血の帝国を統治しているんだねぇ」

「そうでなければ、女帝を8千年も続けられぬだろう」

もっともな白哉の意見に、浮竹も京楽も頷くのだった。

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「8歳の、少女に会う」

「でも、始祖様。あの子は自閉症で、他人に会うのを酷く嫌います」

ロゼの言葉に、けれどと、浮竹は続ける。

「8歳の少女が、犯人だと思う。幼いヴァンパイアは、その身を護るために魅了の魔法を使う。きっと、それが強すぎたんだろう」

「自閉症で魅了の魔法が使える。なんかややこしい子だね」

「では、通してもらう」

浮竹と京楽は、後宮の奥にある、ブラッディ・ネイがお気に入りの子を集めた館に足を運んでいた。

水晶の鍵で扉を開ける。

館は寵姫たちは出入り自由であるが、閑散としていた。

3階の奥の部屋で、件(くだん)の寵姫はいた。

濃い、血の匂いがした。

「君が・・・・名前は、確かメフィストフェレス。大悪魔の名をもつ、自閉症の8才の子」

「気安くあたしに話かけないで」

「自閉症というのは、嘘みたいだな」

「自閉症は、ブラッディ・ネイ様に治したもらった。誰にも渡さない。あの方は、あたしのもの」

東洋の京楽と浮竹からもらった、水晶のペンダントが輝いて、次に白く濁った。邪な力を感じると、煌めく水晶は白く濁るのだ。

今、真っ白に濁っていた。

「俺達に、敵意があるようだ」

「仕方ないね。子供とはいえ、容赦はできない」

「助けて、ブラッディ・ネイ様!」

じわりと、少女を中心に、血の海が滲む。

それは薔薇の花となり、咲き乱れた。

「く、ブラッディ・ネイオリジナルの薔薇の魔法か!厄介な!」

「ブラッディ・ネイ様はあたしのもの。あたしの中で、あたしだけを愛して永遠を生きるのだわ」

薔薇の匂いが部屋中に満ちた。

薔薇の花びらが、刃となって浮竹と京楽を襲う。

それを血のシールドで防いだ。

「ブラッディ・ネイの血族になっているのか!道理で強いわけだ!」

「あたしからブラッディ・ネイ様を取り出すのは、許さない!」

「内部に、取り込まれてるみたいだよ。どうする?」

水晶の濁りが、消えた。

「それまでだよ、メフィストフェレス。どんな存在であろうと、兄様を傷つけるのは許さない」

ゆらりと、メフィストフェレスから血の女帝がにじみ出た。

「だめ、ブラッディ・ネイ様、出てこないで!」

「もう十分だろう。君を癒して、君を愛した。ボクは、ボクを支配しようとするような子より、ロゼのほうが好きだ」

「いやよ!あたしのものよ!ロゼなんか、あたしが殺してやる」

メフィストフェレスの言葉に、ブラッディ・ネイは瞳を真紅にさせて怒った。

「ボクを魅了にかけた腕は認めよう。でも、ロゼを害するなら、ボクは本気で君を捨てるよ。ボクは、君をあまり愛していない。ロゼや他の愛しい寵姫、それに兄様に危害を加えるなら、黙っていないよ」

メフィストフェレスは、目に涙をためて泣きだした。

「うわあああああああん」

血の薔薇は、いつの間にかブラッディ・ネイの体に戻っていた。

「やれやれ・・・泣かれるのは、一番困る。君をあまり愛していないと言ったのは嘘だ。そうじゃなきゃ、自閉症を治すなんて無理難題、しているわけがない」

「ほんと?ほんとに、ブラッディ・ネイ様はあたしを愛してる?」

「ああ、本当だとも。兄様への愛には負けるけど」

また、水晶が濁った。

「始祖浮竹・・・ブラッディ・ネイ様の最愛の者。死んで?」

ブラッディ・ネイが何かを言う前に、メフィストフェレスは血でできた薔薇の花で、浮竹の胸を貫いていた。

「ぐっ・・・」

「浮竹!」

「兄様!」

「ふふふふ。浮竹十四郎、死んで?」

藍染の匂いがした。

「藍染の手に、一度落ちたな、メフィストフェレス!」

浮竹が、傷を再生しながら、メフィストフェレスを睨んだ。

「この魔力、藍染のものだ」

「なんだって!」

「キミは・・・・どこまで、愚かな・・・・・」

ブラッディ・ネイはメフィストフェレスを薔薇の魔法で包み込む。

「邪魔しないでブラッディ・ネイ様!」

水晶の濁りが頂点に達して、淡く輝いた。

「だめだ、浮竹。処分しよう」

「ああ」

「待って、兄様!」

「だめだ。藍染に洗脳されている。どこまでも攻撃してくる」

「メフィストフェレス!ボクはキミを愛している!だから、こんなことは止めるんだ!」

「藍染が、あたしに力をくれたの。始祖を屠る力を!」

メフィストフェレスは、その体そのものを血の渦と化して、浮竹と京楽に襲いかかった。

それを、京楽が血のシールドで押し返す。

「くそう、どうして?力が足りない!始祖の血族にすら、歯が立たないの!?」

京楽は、血の刃を作り出して、メフィストフェレスを攻撃した。

「きゃあああああ!痛い、痛い!」

「今なら、まだ間に合う。引け、メフィストフェレス」

浮竹は、瞳を真紅にしながら、メフィストフェレスを自分の血で包み込み、攻撃できなくした。

「嫌よ!ブラッディ・ネイ様が一番に愛しているのはお前だもの!お前を屠って、あたしが一番になるの!」

「俺は神の呪いを、神の愛を受けている。不老不死だ。殺しても、死なない」

「そんなことないわ!藍染が言っていたもの!創造神の力があれば、例えその寵児であろうと殺せるって!」

「創造神ルシエードは、もうこの世界にいない」

「だから、召還するのよ!藍染は言っていたわ。創造神を召還するって!」

「そんなこと、不可能だ」

「この世界を去った創造神は、もうこの世界には戻ってこないよ。一度作った世界に興味をもつ神々はいないからね。諦めなよ」

京楽の言葉に、メフィストフェレスは歯ぎしりした。

攻撃できないはずの血の結界を通りぬけて、メフィストフェレスは血でできた槍を浮竹に放った。

「死ね、始祖浮竹ーーー!!!」

「メフィストフェレス!ローズコキュートス!」

「どう・・・して?」

浮竹に攻撃をしかけようとしたメフィストフェレスを、ブラッディ・ネイが薔薇の魔法で凍らせていく。

「誰であろうと、兄様を害そうとする存在は、許さない。それが寵姫であっても」

「ああ。ああ、愛してる、ブラッディ・ネイ様。あなたの手で殺されるなら、あたしも本望よ」

「メフィストフェレス!」

「どけ、ブラッディ・ネイ!」

「兄様!?」

「浄化の炎よ、踊れ踊れ!一度灰になりてそこから生まれ出でよ!フェニックス・ファイア!」

浮竹は、炎の最高位精霊、フェニックスを召還させると、その炎でメフィストフェレスを焼いた。

「兄様、何を!」

「炎の最高位精霊、フェニックスは死と再生を司る精霊だ。死を与え、そこから新しい命を与える。反魂なんかじゃなく、完全な復活だ」

灰になっていくメフィストフェレスは、けれど新しい命として、この世界に再び芽吹いた。

「あたし・・・生きてる。殺されたはずなのに」

「メフィストフェレス!」

ブラッディ・ネイが、泣きながら幼い愛しい寵姫を抱きしめた。

「もういいんだ、メフィストフェレス。君は、藍染に操られていただけなんだ。そうだね、兄様?」

「ああ。藍染の魔力が感じれない。精霊での蘇生は、魔力をごっそり消費しる。俺にはもう、魔法を使う力もない」

倒れる浮竹を、京楽がそっと受け止めて、抱き上げた。

「ブラッディ・ネイ。メフィストフェレスを大切にしてやれ。ちゃんと愛すれば、分かってくれるだろう」

それは、最大限の浮竹の情であった。

妹ブラッディ・ネイが愛する者を、殺したくなかった。

「全く、浮竹も無茶をする。魔力が足りなかったら、その身はフェニックスに焼かれていたよ」

「でも、神の愛の、魂に刻まれた呪いによって、俺は死なない。フェニックスに焼かれてもまた再生して元に戻る」

「まぁ、そうだから、好きなようにさせたんだけどね。ブラッディ・ネイが、自分を取り込んで、浮竹に攻撃したメフィストフェレスを許すとは思わなかったよ」

「ああ、俺もだ。俺を傷つけたから、殺すのだとばかり思っていた」

ブラッディ・ネイも、しょせん一人のヴァンパイアなのだ。

たくさんの愛しい寵姫たちを、差はあれどほぼ等しく愛していた。

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こうして、ブラッディ・ネイの失踪事件は解決した。

ロゼは、泣いてブラッディ・ネイの帰還を喜んだ。

「浮竹様・・・・・・」

メフィストフェレスが、ブラッディ・ネイの玉座のある広間にきて、浮竹を熱い視線で見つめていた。

「始祖の浮竹様、この度は愚行を働いたあたしを許してくれてありがとうございます。愛してます、浮竹様!」

幼い8歳の少女に抱き着かれて、浮竹は目を点にしていた。

「メフィストフェレス?また、変なことになっているのか?」

「いいえ、精霊フェニックスで焼かれ芽生えたこの命。浮竹様のものです。ブラッディ・ネイ様も愛していますが、浮竹様も愛しています!」

「ちょっと、メフィストフェレス!兄様をボクのものだよ!」

ごごごごご。

背後を振り向けば、凄い嫉妬の炎を燃やす、京楽の姿があった。

「浮竹は、僕のものだから。誰にも、あげないよ。浮竹、浮気は許さないよ?」

「違う、これは不可抗力だ!ちょっと、聞いてるのか京楽!」

「はいはい、言い訳は古城のベッドの上で、ね?」

その京楽の言葉に、ブラッディ・ネイもメフィストフェレスも、いいなぁと、羨望の眼差しを送るのであった。

もう、メフィストフェレスを前にしても、水晶は濁ることはなかった。

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風呂に入って、夕食をとると、静かにしていた京楽が、突然立ち上がり、浮竹を横抱きにして有無を言わせない力で、押し倒してきた。

「ねぇ、十四郎。君が誰のものであるか、きっちり体に教え込む必要があるよね?」

「待て、春水!昼のは、あれは不可抗力だと言っている」

「たくさんの者に愛されて。でも、君を一番愛しているのは、僕だから」

浮竹の衣服を脱がしていく。

浮竹も抗うのを諦めて、京楽の服を脱がせていった。

「そういえば、ホワイトデーだね?君からチョコレートもらったお礼、してなかったね?」

「そんなの、どうでもいい」

「どうでもよくないよ。ああ、ホワイトチョコ用意していたんだ。ちょっと待ってて?」

京楽はそういうと、一度寝室から抜け出した。

熱く火照る体をもてあまして、浮竹は目を閉じた。


浮竹のものは、ホワイトチョコまみれになっていた。

「あ!」

浮竹は、自分のものをしゃぶる京楽を見ていた。

瞳は真紅に輝いていた。

今宵は満月だ。満月はヴァンパイアの力を高めてくれる。

「満月だぞ、春水」

「そんなもの、月に一度見れる。それよりこっちに集中して、十四郎」

「あああああ!!!」

京楽は、普通にホワイトチョコあげずに、浮竹の肌にホワイトチョコを溶かしたものを塗りたくった。

シーツも、ホワイトチョコで汚れてしまっている。

体についたホワイトチョコを舐めとっては、愛撫された。

京楽の舌は、しつこく浮竹のものを舐めあげてくる。鈴口を刺激して、射精しそうな瞬間を、京楽の手が戒めた。

「いやああ、出させて、やあああ!!」

「少し、我慢してね?」

京楽の瞳も、真紅になっていた。

浮竹の首に噛みつき、吸血する。同時に、戒めていた手をどかした。

「あ”あ”!」

吸血による快楽と、射精による快楽がごちゃ混ぜになって、浮竹を襲う。

「やああああああ!!」

京楽の下で乱れる浮竹は、妖艶だった。美しかった。

「あああ、あ・・・・・・・」

ローションをたっぷり、下の口で飲みこまれさせた。ホワイトチョコも混ぜられていた。

蕾を、京楽の舌がはう。

「ああ、甘いね。ホワイトチョコの味がする」

「こんなことに、使う、お菓子じゃない、からぁ」

ぴちゃりと、蕾に舌をいれられて、ビクンと浮竹の体がはねた。

そのまま舌は蕾をぐりぐりと刺激すると、去っていた。

「甘いね」

舌の次に、指でぐちゅぐちゅと解される。

「や、そこやぁっ」

前立腺をかすめる指先に、浮竹が快感の涙を零す。

「ここ、好きだよね、十四郎」

「やあああ!!」

こりこりと前立腺を触られて、浮竹は射精せず、いっていた。

「ひああああああ!」

ごりごりと音を立てて、京楽のものが入ってくる。

「あああ!」

一気に奥の結腸にまで入られて、浮竹は背をしならせた。

「いやあ!」

精液を噴き出していた。

「ここも、好きだよね?」

ぐりぐりと、結腸に京楽は熱を押し当てる。

「ああ!好き、春水、好き、もっと・・・・・」

「ここ、ぐりぐりされるの好き?」

「あ、好き」

京楽は、愛らしく答える浮竹に満足して、律動を開始した。

「やん、や、や、あ」

京楽が動くリズムに合わせて、浮竹が啼く。

「あ、あ、あ・・・・」

浮竹は、腰を自然と自ら振っていた。

「ああ、今夜の君は、満月のせいかいつもよりエロいね」

「それは、お前もだろ・・・・・・・」

京楽の腰を足で挟み込む浮竹に、京楽は眉を寄せて、締め上げてくる浮竹の内部に熱を放っていた。

「まだまだ、愛してあげる」

「俺もまだまだ、愛されてやる」

ズチュリと、また入り込んでくる京楽に、浮竹は喘ぐ。

「ああん!」

ぱんぱんと、肉と肉がぶつかる音がした。

ホワイトチョコで体はベタベタするけれど、そんなことどうでもよかった。

「んあ!」

また、最奥にズルリと入ってくる熱に、浮竹が軽くいってしまう。

それに合わせるように、京楽もいっていた。

「あ、熱い!体の奥が、熱い!」

「僕のホワイトチョコだよ。おいしく、いただいてね?」

「ああああ!!」

京楽は、牙を伸ばして浮竹の肩に噛みつくと、吸血した。

浮竹も、牙を伸ばして、京楽の肩にかみつき、吸血する。

お互いに吸血しあっていた。

めぐる快感の虜になりなながら、更に睦み合うのであった。


「ああ、もう最悪だ!体がホワイトチョコでべたべただ!」

「浮竹も楽しんでいたじゃない!」

「そうだが、シーツなんてもう使えないぞ」

「捨てればいいよ」

「それはそうだが。ベッドのマットレスにもこびりついている。あと、枕も」

「予備があるでしょ?全部、捨てちゃいなよ」

「仕方ない・・・・・・」

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「始祖のヴァンパイアマスター、浮竹十四郎。最高位の炎精霊、フェニックスを操る者」

水鏡の中には、ミミックにかじられている浮竹の姿が映しだされていた。

「我が力をもらうにふさわしいか、ためさせてもらうか」

炎の精霊王クルル・ルデール・ファイアオブファイアは、そっと目を閉じた。

「精霊王様、謁見の時間です」

「今、行く・・・・・」

精霊族の始祖でもある、炎の精霊王は、浮竹の姿を思い出す。

ミミック如きにかじられていたが、もつ魔力は、精霊や神に近かった。

「そうか、創造神ルシエードの、寵児か」

ふと、旧友の言葉を思い出す。

精霊王も、神代の時代から生きる存在だった。

「神の子、絶対存在。面白い」

「精霊王、お早く・・・・・」

「分かっている」

炎の精霊王が、精霊界から姿を消した。そんな騒ぎと、浮竹と京楽の元を、赤い髪に赤い瞳をした、炎を操る青年が訪ねてくるのが、ほぼ同時であった。

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黒魔法い使いと白魔法使い

目指せ、未踏破の26階層!

浮竹と京楽は、剣士と盾使いと獣人盗賊と新米斧使いのパーティーに入っていた。

京楽は優秀な黒魔法使いだが、魔物食が好きで、倒したモンスターを調理して食べた。

今回の旅は、1週間の予定だった。

まだまだ、食材はあった。魔物食は、完全に魔物を食べるのではなく、普通の食材と組み合わせて食べた。

朝食は、この前食べたハーピーの親子丼だった。

「うーん、食べるの2回目になるけど、この味飽きないな」

「どんどん食べて。おかわりもあるよ!」

京楽は、うきうきしていた。

次の階層は、8階層だった。

朝食を食べ終えたパーティーメンバーは、8階層へと足を伸ばした。

8階層は、草原だった。

草原には、一角兎がいた。

美味しそうなので、生きたまま捕まえた。

可愛かったが、これも食のためと、京楽は目を閉じて一角兎にトドメをさした。

毛皮をはいで、アイテムポケットにしまう。一角兎の毛皮は、そこそこの値段で取引される。

浮竹とパーティーリーダーの剣士が、5羽一角兎を捕まえてきてくれた。

すでにトドメはさしてあり、調理していく京楽のために、浮竹が毛皮をはいで解体していった。

始めは、京楽の魔物食に慣れていなかった浮竹であったが、結婚してからほぼ毎日のように魔物食を作る京楽に慣れてしまっていた。

パーティーメンバーも、慣れてしまっていた。

「今日の昼食は、定番メニューっぽい、一角兎のクリームシチューだよ!」

一口サイズに切って、香草をまぶして肉から臭みをなくした一角兎の肉を、まずはバターをひいた鍋で軽く炒める。

手頃な大きさに切り刻んだじゃがいも、人参を入れて、一角兎の肉と一緒に水を入れて茹でる。

灰汁をとり、食べ頃になったら、クリームシチューの元であるルーを入れて、混ぜる。コトコトと数分煮込んで、完成だ。

「うまい。一角兎の肉が、臭みがないし、柔らかい。クリームシチューによく合うな」

浮竹は、おかわりをした。

「うん、これは確かに美味い。定食屋のクリームシチューより、美味いな」

「おいしい」

「俺もおかわり!」

「俺も!」

剣士、盾使い、獣人盗賊、新米斧使いにも好評だった。

「もっと、捕まえれる?肉を確保しておきたい。この下の階層に肉になるモンスターがいない時のために、解体してアイテムポケットに入れておきたい」

京楽と浮竹も、他のパーティーメンバーも、一角兎を狩りまくった。

結果、40羽という数になった。

「これだけいると、毛皮だけでもまぁまぁな値がつくな」

「みんなの倒し方がうまいからね。毛皮を損なうような倒し方を、あまりしてないでしょ」

「まぁ、毛皮は売るにはもってこいだからな。毛皮をダメにするような倒し方は、新米のやり方だ」

剣士の言葉に、新米斧使いがズーンと沈みこんだ。

一撃では仕留められなくて、ズタズタに切り殺したせいで、毛皮は素材として売り物にならなかった。

肉はなんとか食えそうだったが。

最近は、京楽の影響なのか、冒険者ギルドでもモンスターの肉の買取りが始まっていた。

貴族の好事家などが、魔物食にはまっているらしい。

一度、講義に招かれた貴族の子弟たちが集う館で、魔物食を振る舞った。

その美味しさに、その館の持ち主であった貴族をはじめ、貴族の子弟たちにも好評で、そんな知り合いの貴族が冒険者ギルドに、魔物の肉の買取りを依頼しているらしかった。

「肉はアイテムポケットに入れている限り腐らないけど、必ずしも調理できる場所があわるわけじゃないからね。夕食の分も、用意しておこうか」

一角兎の肉を焼いて、たれをかけて、ご飯の上に乗せた。牛丼ならぬ、兎丼であった。

出来立てをアイテムポケットに収納する。アイテムポケットの中は時間が経たないので、出した時はアツアツのままだ。

草原には、一角兎の他に、いろんな色のスライムが出た。

京楽は、氷の魔法でスライムの核を貫き、どろりとなったその体を風の魔法で急激に乾燥させて、まな板の上に置くと、適当な間隔で切っていく。

「スライムの麺のできあがりだよ!」

浮竹をはじめとして、みんなちょと食べたくなさそうな顔をしていた。

スライムである。あのスライムだ。

ぶよぶよしていて、固形じゃなくって、時にはドロドロしているスライム。その麺とは、果たしてどんな味なのか。

「スライム好きだな、京楽。始めて、ダンジョンにこのパーティーで潜った時も、ゴールデンメタルスライムを食べていたな。ゴールデンメタルスライムは固形だからまだ分かるが、不定形なスライムも食えるのか?」

「ちゃんと乾燥させたら、食べれるよ。ほのかに甘みがあっておいしいんだ。そうだね、茹でて果物を混ぜてデザートにしよう。みんな、まだ食べれるよね?」

皆、頷いた。

「じゃあ、強火でさっと茹でちゃおう」

本当に、強火でさっと茹でると、スライム麺はぷるぷるしていた。そこに苺、パイナップル、桃を入れた皿の中に、ぷるぷるのスライム麺を入れた。

「スライム麺のフルーツ盛り合わせの完成だよ!」

皆、恐る恐る口にする。

そして、目を見開く。

「ほんのり甘い!フルーツの甘酸っぱさとマッチしてる!」

浮竹が、おかわりを所望した。

他のメンバーも、おかわりをしていた。

「ね、スライム美味しいでしょ?」

みんな頷いた。

「じゃあ、腹ごしらえも済んだことだし、次の階層に行こう!」

9階層は、森だった。

ポイズンスネーク、マンティコア、キメラがいた。

「このダンジョンは、階層によって出てくる敵の強さが違うみたいだな。8階層は雑魚ばかりだったが、マンティコアとキメラは強敵だ!」

浮竹は、防御を高める魔法を皆にかけた。

「シャアアア!!」

襲ってくるマンティコアを、京楽が火の魔法で黒こげにする。

「ファイアランス!」

キメラも襲ってきた。

剣士が、切り倒した。

「この森は、素材になるモンスターはポイズンスネークくらいだな。マンティコアとキメラは食べれそうにないし、強いし、討伐の証の結晶だけをとろう」

浮竹は、京楽が黒こげにしたマンティコアから、結晶をぬきとって、京楽に渡した。

たくさん収納できるアイテムポケットを持っているのは、京楽だけであった。

他のメンバーのアイテムポケットは、すでに、一角兎の毛皮と肉でぱんぱんだった。

あと、金銭問題で公爵家の出身で、貴族でもある京楽が一番安心できるのだ。金をもっているので、持ち逃げの可能性が零に等しい。

というか、零だ。

9階層の森を歩き、ポイズンスネークを捕まえて、毒の牙を採取する。皮は防具の材料になるし、肉も食えたが、森の中での調理は危険なので、アイテムポケットにしまっておいた。

10階層は、ボス部屋だった。

出てきたのは、ドラゴンゾンビ。

「くさい!」

京楽の一言に、みんなズコーとこけた。

「匂いより、存在がやばい。ゾンビでも、ドラゴンだぞ!」

「このダンジョンは、初心者向けじゃあないようだね」

流石に、まだ25階層までしか踏破されていないことがあった。

ドラゴンゾンビが出るなんて、Aランククラスのダンジョンだ。

「ファイアオブファイア!」

「ホーリーブレス!」

京楽と浮竹の手にかかれば、ボスも倒せる。でも、京楽も浮竹も、自分たちだけが活躍しないように、他の仲間のメンバーにも、ドラゴンゾンビの相手をさせた。

アタッカーには京楽が武器に炎のエンチャントをして、タンクである盾使いには、浮竹が聖闘士ブレスで、盾を聖なる物に変えて、攻撃を受けたらダメージが入るようにした。

皆で力を合わせ合って、ドラゴンゾンビを倒した。

「ドラゴンゾンビ・・・・骨だけなら・・・」

食べたいと言い出しそうな京楽を引きずって、ボスを倒した後に開く宝物庫へと入った。

中にあったのは、ひとふりの剣だった。

「魔剣だね。かなりの魔力がある」

「俺に、使いこなせるだろうか?」

剣士のレベルは2レベルあがって、67だった。

「使えるのはレベル65から。ぎりぎりセーフだね」

ちなみに、京楽と浮竹はレベル99だった。

レベルカンストしているので、モンスターを倒した経験値は、自動的に仲間に与えられる。

盾使いがレベル60、獣人盗賊がレベル62、新米斧使いはレベル27だったが、冒険してきてレベル39まであがっていた。

「やっぱり、斧使いはレベルが低いだけあって、ガンガンあがるね」

「京楽と浮竹のお陰だ。レベルカンストの、自分たちよりかなり弱い冒険者のパーティーに入ってくれる者など、ほとんどいないからな」

皆、ソロで活動するか、高レベル冒険者の仲間になる、そんな冒険者ばかりだった。

ソロでの活動は、分け前が自分だけな分楽だが、危険と隣り合わせだ。

Sランク冒険者として、レベル80以上のパーティーに入るのが普通だった。

「京楽と浮竹には、本当に感謝している」

「まだ、冒険は終わってないよ。次の階層へ行こう。昨日はよく休んだから、今日は行けるところまでいこう!」

京楽の言葉に、皆頷いた。

11階層、12階層ときて、13階層にセーブゾーンがあった。

13階層は荒地で、シルバーウルフ、ホワイトファングウルフの群れが出現した。

京楽の炎の最高位魔法で、モンスターは一掃されて、セーブポイントで夕飯をとり、今日の冒険は終了となった。

11階層では、カエルのモンスターが、12階層では人食い植物が出た。

それぞれ、魔物食の為に、解体しないままアイテムポケットに入れていた。

京楽は、まずカエルのモンスターを解体した。皮をはぎ、肉に香草をまぶしてしばらく置き、適当な大きなに切って、溶き卵に浸し、パン粉をまぶしてフライにした。

食人植物は、細かく刻んで、トマトときゅうりを入れて、サラダにした。

「大ガエルのフライ、食人植物のサラダ、それ昼に作っておいた一角兎の兎丼ので今日の夕飯のメニューは完成だよ!」

大カエルのフライはさくさくでおいしかった。

食人植物の葉はほのかに甘みがあった。

兎丼は、ほかほかで美味しく、兎の肉とは思えない味だった。

「京楽がいるお陰で、うまい飯は食えるし、モンスターも討伐し放題で、本当に助かる」

夕飯を食べながら、剣士はそんなことを言っていた。

「僕のほうこそ、魔物食を食べる仲間がいることは嬉しいし、こうやってダンジョンを探索するのは何より面白いからね。どんなモンスターが出るのがわくわくするし、どうやって調理しようかと悩んでしまう」

「京楽のやつ、家でも魔物食食べるからな。ダンジョンの中だと、さらに生き生きしている」

浮竹を抱きしめて、京楽は浮竹に口づけた。

「僕たち、新婚だから。ダンジョンに潜るの、新婚旅行さ」

「なんちゅー新婚旅行だ」

浮竹が、皆の前でいちゃつくので、京楽の頭に聖典の角をめりこませながら、真っ赤になった。

「はははは。お前たち、新婚だものな。忘れていたよ」

この世界では、同性婚を認められていて、そう珍しいことでもなかった。特に男性に多い傾向にあった。

この世界は、一時女性のみに流行り病が広がり、女性の人口は激減し、男性7割に対して女性は3割だった。

「さぁ、食べたら片づけをして寝よう。明日の朝も早いし、たくさん寝て元気をつけよう!」

京楽は、水を生み出して食器や調理器具を洗った。

テントを張り、今日は13階層で休憩を入れることになった。

冒険を初めて2日で13階層。このままいけば、未踏破の26階層までいけそうであった。





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始祖なる者、ヴァンパイアマスター16-2

皇帝シェルキアの傷を、合流したルキアが癒してくれた。

浮竹の血でも癒せるが、京楽が血を与えるのにいい顔をしないので、ルキアもいることだし、幸いにも命に関わるような傷でなかったので、皇帝シェルキアは傷を癒されて、改めて浮竹たちに礼をいった。

「この子は、皇女マリアだった。かわいそうに。シスター・ノヴァの転生先に選ばれてしまった」

皇帝シェルキアは、封印された元聖女シスター・ノヴァの氷の封印に、手で触れた。

「この封印は、神族が代々皇族に伝えていく。地下に厳重に管理して、封印は解けないようにしよう」

「そうしてくれ。もう、シスター・ノヴァなんかにうろちょろされるのはご免だ。後、シスター・ノヴァが所属していた黒魔術の組織があるようだ。取り潰してくれ」

「浮竹殿が、そういうなら、そうなるよう取り計らいましょうぞ」

浮竹と京楽たちは、今度の戦争で聖帝国を救ってくれた恩人であると、国民たちに紹介をして、数日聖帝国に滞在した。

シスター・ノヴァを封印した氷は、宮殿の地下深くに置かれ、シェルキアの手により再度封印され、二重の封印を受けた。

黒魔術の組織はすぐに見つかり、シスター・ノヴァに手を貸していた者は全て極刑となった。

「では、俺たちはこれで」

「ありがとうございました、浮竹殿、京楽殿、それに仲間のお方がた」

「俺たちは仲間のお方がたかよ」

冬獅郎が文句を言うが、浮竹がその頭を撫でた。

「冬獅郎君には、感謝している。フェンリルがいないと、いろいろ不便だっただろし。力を貸してくれてありがとう」

「お、おう」

改めて褒められて、冬獅郎はぷいっと横を向いた。照れているのは丸わかりだった。

「では、浮竹、別れはもういいか?」

「ああ、白哉。恋次君、帰りも頼むよ」

「任せてくださいっす!」

一護とルキアと冬獅郎は、まだいる神族の負傷者を診るために、半月ほど聖帝国に滞在することが決まっていた。

「後のことは頼む、ルキア君、一護君、冬獅郎君!」

「任せてください」

「任せとけ」

「では、浮竹殿、京楽殿、兄様、恋次、しばしの別れだ!」

「ルキア、くれぐれも魔力切れを起こさないように」

ルキアは、重症の患者を治療しすぎて、1日だけ魔力切れを起こして癒しの魔法が使えなくなったことがあった。

「わかっています、兄様!」

浮竹、京楽、白哉を乗せた、竜化した恋次が羽ばたく。

空を渡り、聖都アルカディアを後にした。


一方、魔族の国アルカンシェルでは、藍染が悔しがっていた。

「くそ、あのシスター・ノヴァの誘惑に乗ったら、私の部隊が壊滅だと!始祖浮竹め!」

なんのために、浮竹の血を抜いて、魔族の戦士たちに与えたのかその意味が、全てなくなったのだ。

魔力が増大するが、時間の経過と共に、その魔力が消えていくことは分かった。

筋力はそのままであるが。

「始祖浮竹に、洗脳はほとんど通じない。どうしたものか」

「藍染様!」

「なんだ!」

「その、ブラッディ・ネイ様が来られております!」

「なんだと!通せ!」

「はい!」

ブラッディ・ネイは、分身体で魔国アルカンシェルを訪れていた。

「今回の件もあり、ボクは君たちの国と、正式に敵対することを決めた。兄様を拉致監禁した件もあるしね。もう、国交は断絶する。この国いるヴァンパイアは、皆血の帝国が引き受ける」

「ブラッディ・ネイ。始祖の浮竹を、自分のものにしたくないか?」

ピクリと、ブラッディ・ネイは動きを止めた。

「それはどういう意味?」

「そのままの意味だ。自分だけのものにしたくはないか?お前の血の力があれば・・・」

「断るよ。どうせ失敗するに決まってる。それに、最近の兄様はボクにも優しい。今の関係を、壊したくない」

「ちっ、どいつもこいつも!使えない!」

「自分だけの力で、どうにかしてみたら?ちなみに、今度兄様を拉致したら、血の帝国は総力を挙げて、魔国アルカンシェルを攻め滅ぼす」

ヴァンパイアと魔族では、再生能力の高い、ヴァンパイアの方が強かった。

このまま戦争になれば、血の帝国に勝てないだろう。

血の帝国は広い。多種族を、血族という形でヴァンパイアにできるので、魔族だったヴァンパイアも多い。

人口は、魔国アルカンシェルの4倍はいる。

「死ね!」

藍染は、ブラッディ・ネイの首をはねた。

「あはははは!ボクの分身体を殺しても、呪っても、意味ないからね。この分身体は式の応用だ」

ブラッディ・ネイは首だけになって、笑った。

「お前なんて、死んでしまえ、藍染」

ブラッディ・ネイの言葉は、毒のように、藍染を数日苦しめるのだった。

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「兄様、お帰りなさい」

「ただいま」

ブラッディ・ネイは大好きな兄を出迎えて、抱きしめた。

以前なら警戒されて、触らせてもくれなかったが、兄妹の仲は大分良好な方へと進んでいた。

「これ、土産のサボテン」

「あはははは!兄様から土産もらうなんて、はじめて!」

「ブラッディ・ネイ?いくら実の妹だからって、それ以上浮竹にくっついているのは、僕が許さないよ?」

「何さ、もじゃひげの京楽。兄様を抱いているんだから、少しくらいボクが触ってもいいじゃない」

ブラッディ・ネイの言葉に浮竹は真っ赤になった。

その場には、ブラッディ・ネイの寵姫や家臣、白哉に恋次もいたからだ。

皆、聞かなかったふりをした。

「あっかんべー」

「きいいい、浮竹、ブラッディ・ネイやっつけていい?」

「やめとけ。バカにされるだけだぞ」

「やーいもじゃひげー。バーカバーカ」

「ムキーーー!」

「京楽、その、今夜・・・・」

暴走する京楽を止めるために、そう言ってみたのだが、浮竹は墓穴を掘った。

「よし、今すぐ古城に帰って、お風呂に入って睦み合おう。この2週間、君に触れるだけで、抱けなかったからね」

「おい、ちょ、京楽!」

その場で、誰もが目を閉じた。

「んんん!」

濃厚なキスをされて、浮竹は腰が砕けた。

「バカ、血の帝国内ではするなと!」

「君が欲しい」

真剣な表情で、京楽は浮竹に求愛した。

「古城に、戻ろう」

「うん。いっぱい、愛してあげるからね」

「またね、兄様」

「ああ、皆またな」

京楽は、立てないでいる浮竹をお姫様抱っこして、翼を広げて宮殿を抜けると、空間転移の魔法陣までやってきて、魔力を流しこみ、古城の地下に戻った。

「京楽、落ち着け。まだ、食事も・・・ううん」

「うん。先に、お風呂入って、君を抱きたい。いいよね?」

「好きにしろ」


浮竹は、京楽の下で乱れるのは久しぶりだった。

聖帝国では、キスやハグはしていたけど、京楽に抱かれていなかった。

「ああ!」

京楽の逞しいもので突き上げられて、浮竹は宙にその白い髪を舞わせた。

「んあああ!!」

騎乗位だった。

久しぶりの睦み合いは、濃厚なものだった。

もう、三度も京楽の熱を体内で受け止めていた。

一向に、京楽のものが硬さを失うことはなかった。

「あああ!」

前立腺をすりあげられて、浮竹は白濁した液体を、京楽の腹に滴らせていた。

「ひあ!」

ちゅどんと、音をたてて、結腸にまで入り込んできた熱に、浮竹は背をしならせる。

ドライのオーガズムでいきながら、浮竹は京楽の手で追い詰められて、また精液を出していた。

睦み合う前に、せめて何か飲もうと言われて、甘い液体を、浮竹は飲ませられた。

浮竹は、それが媚薬だと知っていた。

知っていながら、服用した。

「ああああ!!」

体の熱は、治まることを知らず、何度も精液を吐き出した。

「やああああああ!もう、やぁっ!」

与えらる快感に泣きながら、それでも京楽にこたえた。

「んああああ!」

「血を、吸ってもいいかい?」

「あ、やあ!」

「吸うよ?」

「や、だめ、今、いってるから・・・・いやあああああああ!!」

ゴリゴリと結腸を抉られて、オーガズムでいっている最中に首に噛みつかれて、吸血された。

「やあああ!!」

ぷしゅわああ。

浮竹は、潮をふいていた。

「ああ、十四郎はエロい体になっちゃったね?男の僕に犯されて、女の子みたいに潮ふいちゃって」

「あ、あ、言うな、あああ!!」

ごりっと、奥の奥を抉られた。

騎乗位から、浮竹は押し倒されていた。

中に入ったままの、京楽のものに抉られて、啼いていた。

「あああ!ひあ、もうやぁ!許して、春水・・・・・」

「僕はまだまだいけるよ?浮竹も、まだまだいけるでしょ?」

耳を甘噛みされながら、耳元で囁かれた。

「やぁん」

「十四郎、かわいい」

「やぁ」

「また、女の子みたいに潮ふいて、きもちよくなって?十四郎の潮、すごく甘い」

「春水・・・・バカ。でも、愛してる」

浮竹は、自分から京楽に口づけた。

「ふあっ」

舌を絡み合わせていると、京楽の牙が舌を噛んだ。

「んあっ」

キスをしながら、吸血されてイっていた。

「あああ・・・・」

長く睦み合った。

夕方くらいに体を重ね合わせたのに、時計は11時を指していた。

時折休憩を混ぜて、京楽は浮竹を貪った。

浮竹も、休憩の間に人工血液を口にして、京楽に血を吸われた。

また、少し休憩を入れる。

トロトロと、浮竹の太ももを、京楽が出したものが伝い落ちていく。

「あ、や・・・・・・・・」

京楽は、濡れたタオルでそれをふいた。

「もういいよね?」

「あ、やっ」

唇を奪われていた。

「んんっ」

舌を絡めあい、京楽の下が歯茎をくすぐってくる。

それに、浮竹がさっきのお返しだとばかりに噛みついて、少しだけ吸血した。

「ああ、きもちういいよ、十四郎」

「ん・・・」

京楽は、浮竹の胸を撫で下ろし、先端を口に含んで舐め転がした。

「んあ」

ぴくりと、浮竹が反応する。

もう片方をつまみあげると、浮竹は可愛くお願いをしてきた。

「もっと、もっと、春水が欲しい。春水の色に、俺を染め上げて?」

「ああ、君は僕を煽るのが上手だね。ご褒美をあげなくちゃね?」

「あああああ!!」

熱い熱に貫かれて、浮竹は乱れる。

純粋に妖艶で、美しかった。

「ああ、あ!」

最奥までつきあげてくる熱を、浮竹は締め上げた。

「いって!俺の奥で、春水」

「うん。たくさん出すから、受け止めてね?」

「ああああ!」

びゅるびゅると、まだ濃い精子を胎の奥で受け止めて、浮竹は唇を舐めた。

ゾクリとした。

この愛する者は、サキュバスなのかと思った。

「愛してる、春水」

「僕も愛してるよ、十四郎」

「あああ!」

また、もう何十回目になるかも分からないオーガズムの波にさらわれながら、浮竹は眠りに落ちていった。


------------------------------------------------------------------------

「ん・・・・」

目覚めると、東洋だった。

「ああ、また夢渡りで世界を渡ったのか」

「気が付いた、浮竹?」

「ああ」

「東洋の僕らが、エメラルドのブローチをくれたお礼がしたいって」

(目覚めたのか。大丈夫か?)

「ああ、大丈夫だ」

(その、睦み合っていたんだな。タイミングが悪かっただろか)

「問題ない」

(これは、俺と春水で用意した、花の種だ)

東洋の浮竹は、花の種が入ったラッピングされた小さな包みをくれた。

(そうそう、この花の花言葉は「永遠の愛」。まさに、君たちにぴったりだと思ってね)

「永遠の愛か。俺と京楽の愛みたいで、本当にいいな。ありがとう。綺麗に咲かせてみせる」

(じゃあ、時間もないようだし、またね)

(ああ、また会おう)

「うん」

「また、夢渡りをして世界を渡ってくるから、その時はお茶でもしよう。この前、豆大福をもらった時みたいに。緑茶、取り寄せておく」

そうして、浮竹も京楽も、その夢渡りの先にある世界を去って行った。

(桔梗の花、綺麗に咲くといいな)

(ボクらみたいに、特殊な力をもっているから、花を咲かせるなんて容易いことじゃないかな)

(そうだな。大好きだ、春水)

(ふふふ、あっちの十四郎もかわいいけど、ボクの十四郎は世界一かわいいね)

東洋の浮竹は、真っ赤になって、同じ東洋の京楽から口づけをもらうのだった。

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「花の種か。自然に咲かせるのもいいが、早く見たいから、咲かせてしまおう」

「もったいなくない?」

「咲かせたら、すぐに種ができるようにしよう。後、全部は植えないで、自然に咲くのを待とうか」

「それがいいかもね」

浮竹と京楽は、古城の庭に出て、プランターに種を植え、そこに浮竹が数滴血を滴らせた。

みるみる芽が出て、成長していき、美しい花が咲いた。

「桔梗か。綺麗だな」

「うん。浮竹?」

浮竹は、2つほど摘み取って、溶けることのない氷の魔法で、桔梗の花を包み込んだ。

「これで、いつでも見れる」

「どこに置くの?」

「もちろん、寝室に」

二人は、手を繋ぎ合って、昇ってくる太陽を見ていた。

黄金色に輝く朝日は、美しかった。

「永遠だ。俺とお前の愛は。この花言葉のように」

「うん。永遠の愛を君に」

普通のヴァンパイアは太陽の光が苦手だ。すぐに灰になることはないが、やけどを負う。

浮竹と京楽は、始祖のヴァンパイアマスターで、京楽はその血族のヴァンパイアロード。

太陽の、特にヴァンパイアたちを灰にする朝日は、効かなかった。

美しい黄金の朝焼けを見れるヴァンパイアは限られている。

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聖帝国から帰還して、半年が経っていた。

「兄様?」

眠っていたブラッディ・ネイは、愛しい存在がすぐ近くにあるのに気づいて、実の兄の抱き着いた。

「愛している、ブラッディ・ネイ」

「兄様、ボクもだよ!兄様、兄様!」


ブラッディ・ネイが消えた。

血の帝国を震撼させた、女帝行方不明事件は、すぐに浮竹と京楽の耳に入り、平和な日々を壊していくのだった。


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始祖なる者、ヴァンパイアマスター16

一行は、竜化した恋次の背に乗って、聖帝国を目指した。

浮竹の住む古城があり、血の帝国があるアステア大陸と反対側にある、カドワキ大陸に聖帝国はあった。

砂漠化が進む、不毛の大地が広がっていた。

「こんなところに、神族は住んでいるのですか」

ルキアが、熱い日光を遮断させる、特殊が外套を羽織ながら、太陽を仰ぎ見た。

みんな、ルキアと同じ外套を羽織っていた。

浮竹が錬金術で成功させた、光を遮断し、空気を冷やす効果のある外套であった。

錬金術といってもいろいろある。液体のもの以外の道具や武器防具、衣服まで錬金術で作ることができた。

急いでいたので、錬金術に使う館で急ごしらえした割には、完璧にできていた。

「とりあえず、聖帝国に入ろうぜ」

一護が、先を進んでいく。

「おい一護、先さき進むな!まだ恋次が竜化したままであろうが!」

「恋次なら、竜化してそのまま聖帝国に入って、敵を驚かせればいいじゃねぇか」

一護の言葉に、浮竹はその手があったかと思った。

「恋次君、そのまま聖帝国の聖都アルカディアへ向かってくれるか?白哉も一緒に」

「え、いいっすけど」

「浮竹、何か考えでもあるのか」

「まだ、味方がきたことを知らせていない。式では、気味悪がられてまともに取り合ってもらえないだろう。白哉には、皇族を保護しておいてほしい」

「分かった。兄は、ルキアたちと共に敵を叩くのだな?」

「ああ。思う存分暴れてやる」

「じゃあ、魔族の戦士とやらは殺していいんだな?」

冬獅郎が、愛剣の氷の魔法を操れる氷輪丸を手に、暴れたくて仕方ないという顔をしていた。

「一護君も冬獅郎君も、好きなだけ暴れていいぞ。今回の魔族に温情を与える必要はない。藍染の手の者だ。おまけに他国を蹂躙して当たり前と思っている者ばかりだろう」

魔族は、多種族を差別する。自分たちが一番優れていると思っているのだ。

ヴァンパイアも分類されれば魔族になるが、魔族とはその存在が異なっていた。

人間国家は、魔族と敵対している。

浮竹拉致監禁の件で、ブラッディ・ネイが藍染と結んだ、不可侵条約も無駄に終わってしまっている。

一行は、恋次と白哉を先に行かせて、冬獅郎のもつ氷の精霊フェンリルの、巨大が狼の背に跨って、移動した。

聖帝国に入り、オアシスのいくつかを通ったが、神族は惨殺されていた。

「ひでぇ」

「うむ」

「魔族め」

浮竹と京楽は、無言だった。

やがて、次のオアシスが見えてきて、悲鳴が聞こえてきた。

「いやああああ!」

「うわああああ!」

「ほらほら、どんどん殺せ、犯せ、奪え!」

叫んでいたのは、魔族の将軍であった。

100人の強化魔族ごとに将軍を一人置いていた。

「ヘルインフェルノ!」

浮竹は、加減もない炎の高位魔法を、魔族に叩き込んだ。

数人が蒸発した。

「誰だ!貴様ら、神族ではないな!何者だ!!」

「そういうお前は、魔族の将軍であっているな?」

「俺の名は・・・・」

「名前なんてどうでもいいよ。死んで?」

京楽が、氷をまといつかせたミスリル銀の魔剣で、魔族の将軍の心臓を刺し貫いていた。

「ごふっ!」

ぱきぱきと、傷口から氷の彫像になっていく。

「ま、待て、俺を殺したら、藍染様が!」

「ああ、藍染はいないでしょ。魔都で、封印されていたことで失った膨大な魔力と傷を癒しているはずだよ」

浮竹が放った式が、もちこんできた情報であった。

魔族の将軍に、興味を失った京楽は、氷の彫像となったそれを砕き壊した。

魔族の将軍がやられて、散々好き勝手暴れまわっていた魔族が、こちらを取り囲んでくる。

「神族を巻き込まなくてすむから楽だ」

「ああ、一護の言う通りだ。ルキア、暴れてもいいな?」

「間違っても、神族に攻撃するなよ!」

一護と冬獅郎は、思う存分に暴れた。

一護は雷の使える魔剣でサンダーストームを使い、たくさんの魔族を黒こげにして死なせた。

冬獅郎は、氷の精霊フェンリルを操って、魔族を精霊で噛み殺し、牙でその肉体を裂いた。

「浮竹の血を取り込んでいるって言っても、あっけないね」

「俺の血は、確かに一時的に能力をあげる。だが、俺の意思なしで投与されれば、ただの戦闘人形のなりそこねになる」

事実、魔族たちはその身に宿らせていた浮竹の血による魔力を、失いつつあった。

筋力は、まだあるようだったが。

「ヘルインフェルノ!」

魔族の副将軍が、浮竹の前を遮って、いきなり魔法を使って攻撃してきた。それを、浮竹が血のシールドで防ぐ。

「始祖のヴァンパイア、浮竹十四郎殿とお見受けする。魔族とヴァンパイアは不可侵条約を結んでいるはず!何故、我らの邪魔をする!」

「不可侵条約?そんなもの、君らのところの一番のお偉いさん、藍染の浮竹拉致監禁事件で、とっくに無効になってるよ?」

「そんなばかな!そうだとしても、神族を庇う理由などないはず!」

浮竹は、ゆらりと瞳を真紅にして、魔族の副将軍を睨みつけた。

「俺から無理やり奪いとった血で、肉体を強化しても、俺の意思がないと魔力は一時的に膨れ上がっても、直に消える」

「く、ヴァンパイアの始祖が!黒こげになれ!」

魔族の副将軍は、剣を浮竹に向けた。

それに、京楽が浮竹を庇う形で、魔剣を向ける。

「ヘルインフェルノ!」

敵は、さっきと同じ魔法を放ってきた。どうやら、魔力をあげたまま失っていない個体らしかった。

「ヘルインフェルノ!」

使おうと思えば使える、浮竹の魔法を京楽が使っていた。

同じヘルインフェルノとはいっても、使い手によって威力の違いがある。

敵のヘルインフェルノを、京楽が放ったヘルインフェルノが飲みこんで、魔族を焼き殺した。

「ぎゃあああああ!藍染様万歳!」

魔族はそう言って死んでいった。

「一護君、冬獅郎君、そっちは片付いたか?」

「ああ。今ルキアが負傷者の手当てをしてる」

ルキアの傍には、たくさんの神族の負傷者が集まっていた。

軽傷なものは、一護と冬獅郎が傷の手当てをして、重傷者を中心にルキアは患者を助けていった。

「おお、聖女よ。これは少ないですが・・・・・」

そのオアシスの村にいる村長が、涙で作った上質の宝石をルキアに渡そうとして、ルキアは拒否するのだが、冬獅郎が受け取ってしまった。

「労働に対価を払ってくれるなら、受け取るべきだ。どうせ、こんなオアシスしかない、あとは不毛の大地だ。食料と交換してくれる相手なんていないだろう」

「その通りです、少年よ。我ら神族の涙は宝石になる。いつもはその宝石を皇族の方が受け取って、食料と、水のない地域では水もくださるのだが、こんな戦争がおこってしまっては、当分のの間食料の配布はないでしょう。このままでは、我らは飢えてしまう」

浮竹は、思案した結果、アイテムポケットにいれたままの、ドラゴンの肉の塊を、冷凍保存した状態で出した。

「これで、しばらくはもつか?」

「おお、肉がこんなに!これは竜族の肉!少量を口にしただけでも、十分生きていけます!ありがとうございます!」

村長は涙を零した。周囲の、ルキアに治療されている者たちも涙を零した。

それは宝石となった。

上質のオパールだった。

村長は村の者に言って、今宝石になったものを集めて、浮竹に渡した。

「少ないですが、これをお礼に」

「ありがたく、いただいておく」

浮竹も、何も慈善事業で魔族を殺しているわけではない。

ただ、自分の血で強力なった魔族を放置できないので駆除しているのであって、神族を命をかけてまで、助けるつもりはなかった。

それは、聖帝国に向かう前に、浮竹が出した条件であった。

ルキアの治癒の魔法で重傷者は助け、軽症者は、包帯や薬を渡して去る。

あまり長居ができないだろうから、浮竹は猫の魔女乱菊に依頼して、傷を治すポーションを大量に発注して、その一部を村に残して移動した。

次のオアシスは無事だった。

どうやら、オアシスを転々として奪略と殺戮を繰り返していた魔族はあの100人だけで、あとは聖都アルカディアに向かったらしい。

浮竹たちは、また氷の精霊フェンリルの背に乗ると、聖都アルカディアを目指した。

聖帝国は、小さな国であった。

血の帝国の10分の1もない。

聖都アルカディアには、氷の精霊である、巨大な魔狼フェンリルの背に乗って5時間ほど移動した場所にあった。

死体が、魔族と神族両方あった。

「神族は軍隊を持たないが、流石に皇族は守られるために騎士団を有している」

「白哉クンと恋次クン、皇族の保護に間に合ったかな?」

「あの二人のことだ。心配ないだろう」

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「恋次、皇族はそれで最後か!」

「あ、はい。この子供で最後っす!」

白哉は、身体能力を高めた魔族を千本桜を解放して、血の刃で斬り捨てていく。300人はいるので、斬っても斬ってもわいてきた。

宮殿に押しかけてきた魔族を、白哉が倒しながら、恋次が皇族を集めて、守りながら屋上まで移動した。

「恋次、竜化して皇族たちを乗せて移動しろ!私もすぐに後を追う!」

「だめです!あんたも乗ってください!」

「だが、敵を引き付ける者が・・・・」

竜化した恋次は、ドラゴンブレスを吐いた。

いきなりドラゴン、それも竜族が現れて、さすがの強化魔族たちも逃げ出す。

「今です!さぁ、皇族の方たち、俺の背に乗って下さい。白哉さんも!」

「すまぬ、恋次!」

「お安い御用です」

白哉は、皇族が全員いるか確認してから、恋次の背に乗った。

「とりあえず、遠く離れたオアシスへ向かえ!」

「はい!」

ばさりと、巨大な翼で恋次は羽ばたいた。

神族の皇族は全部で14人。

全員、無事だった。

「ありがとうございます。私は皇帝のシェルキアと申す者。この度は、危ないとこを助けていただき、感謝の気持ちでいっぱいです」

「感謝するなら、始祖ヴァンパイアの浮竹にすることだ。神族の皇族を助けると言い出したのは、あの者なのでな」

白哉も恋次も気づいていなかった。

かつて聖女であった、シスター・ノヴァが皇族に交じっていたなど。姿形をかえて、美しい少女の皇族に転生していた。

聖女ではなくなったが、始祖の神族であった。

オアシスに到着して、皆を降ろした恋次は、人型になると急に倒れた。

「恋次!?」

「白哉さ・・・・その皇族の少女、シスター・ノヴァだ!」

「シスター・ノヴァだと!?」

「何!?そんなばかな!この子は私の第5子の皇女マリア。シスター・ノヴァであるはずが」

ぐさりと、深くはないが短剣で腹を刺されて、皇帝シェルキアはその場で倒れた。

「あなたたちには、始祖浮竹十四郎をおびき寄せる餌になってもらうわよ。わたくしは元聖女のシスター・ノヴァ。今は黒魔術の司祭をしているわ」

「我が子が、シスター・ノヴァだなんて!」

聖女は堕ちた。

シスター・ノヴァは今や始祖の聖女ではなく、ただの始祖の神族になっていた。

浮竹と京楽に、深い恨みをもっていた。ブラッディ・ネイにもだ。

「あなたたちの方から、聖帝国に来てくれるように、始祖魔族の藍染を篭絡してみせたんだけど、見事に成功したようね」

「なっ!シスター・ノヴァ。兄は、自らの故郷を売ったというのか!」

「そうよ。あたくしに、この聖帝国はふさわしくない。魔族の国、アルカンシェルに行くわ」

黒魔術の司祭をになったというのは本当のようで、白哉と恋次は、呪われた。

「ただの、動きを封じる呪いよ。命まではとらないわ」

「兄は、愚かなことをしているという自覚はあるのか」

「うるさい!皇族王だが知らないけど、知ったような口を利かないでちょうだい!」

パンと、シスター・ノヴァは白哉の美しい顔を平手打ちした。

白哉は口の中を切って、血を流した。

「うふふふ。でも、あなた綺麗ね?あたくしのものになる?」

「死んでもごめんこうむる」

「ふん!ヴァンパイアときたら、高飛車なやつばかり。わたくしにふさわしいのは、そう、あなたのような・・・・・」

「俺に触るな。白哉さんに怪我させたこと、いつか絶対に後悔させてやる」

動けないでいる恋次は、竜化することもできず、金色の瞳の瞳孔を縦に収縮させて、シスター・ノヴァを睨んだ。

「ふん。どいもこいつも、わたくしをバカにして!」

シスター・ノヴァは、白哉のふりをして、式を浮竹の元に飛ばすのだった。

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「白哉から式がきた。皇族は無事全員保護したらしい。俺たちは、聖都アルカディアに残った魔族を駆逐して、白哉と恋次君と合流しよう」

聖都、アルカディアは散々たる様子だった。

建物のあちこちが壊れて、神族が死んでいた。

中には騎士らしき姿のものもいて、魔族の死体もあった。

「おお、獲物が向こうからやってきたぞ」

「藍染様を封印した罰を受けてもらうぞ!」

わらわらと押し寄せてくる魔族を、浮竹はもう神族は周囲にいないと判断して、禁呪の魔法を発動させた。

「ブラックホール」

それは、全てを吸い込む魔法。

浮竹たちを除いた、全ての魔族が飲みこまれていく。

「うわあああ、吸い込まれる!」

「なんだ、この魔法は!」

「ぎゃああああああ!!」

吸い込まれていく先から、悲鳴が聞こえた。

「なんだ、吸い込まれた先に何があるんだ!」

「モンスターが!モンスターの群れが!ぎゃあああ!!!」

5分ほどして、全ての魔族はブラックホールに飲みこまれ、浮竹が血で飼いならしている食肉のモンスターの群れのいる場所に放り込まれて、生きながら食われていった。

「浮竹・・・怒ってる?」

「この式、念蜜に装っているが、白哉のものじゃない。シスター・ノヴァの匂いがする」

「まさか、兄様の身に何か!?」

式が、再びやってきた。

それは、本当に白哉がよこしたものだった。

中身は、シスター・ノヴァの手紙だった。

「白哉と恋次君の身柄を返してほしければ、俺と京楽の二人で、聖帝国のあるオアシスまで来い、だそうだ」

「罠だ、浮竹!」

冬獅郎の言葉に、浮竹は冬獅郎の頭を撫でた。

「罠と分かっていても、白哉と恋次君をそのままにはしておけない」

「浮竹殿、どうか兄様を!」

「分かっている」

「ルキアちゃん、僕らを信じて?」

浮竹と京楽は、ヴァンパイアの翼を広げて、指定されたオアシスに向かった。

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「よくもまぁ、のこのことやってこれたものね?」

「お前が、白哉と恋次君を人質にとっているせいだろうが」

「ふん、その美しい顔を、焼いてあげる」

「浮竹!」

「大丈夫だ。俺には、東洋の妖からもらったお守りがある」

シスター・ノヴァは、浮竹に酸で顔を焼くという、オリジナルの呪いをかけた。

「ぎゃああああああ!何故、何故反射されるの!?わたくしの美しい顔が!」

「シスター・ノヴァ。その顔のほうが、お似合だよ」

京楽は、醜く焼けただれたシスター・ノヴァの顔を見て、笑っていた。

「人質がどうなってもいいの!」

「なんのことだ?」

「俺ら、浮竹さんが近くにきた時点で、呪いから解放されたっすよ」

白哉と恋次は、何事もなかったかのように立っていた。

浮竹と京楽の元にいく。

東洋の妖からもらったお守りは、自分以下の相手の呪いを反射するものであった。血族や親しい者にも、その効果はあった。

金運UPの効果もあったが。

東洋の妖を気に入っている浮竹は、もらったお守りを肌身離さず身につけていた。

「く、こうなったら、血族を呪ってやる!」

シスター・ノヴァは京楽を呪おうとした。

「ぎゃっ!」

また呪いを反射されて、シスター・ノヴァは老婆になっていた。

「ああああ!あたくしの美しい姿が!」

「もう、永遠に、その姿のまま、いるといい」

浮竹は、冷酷に真紅に瞳を輝かせた。

自分だけでなく、京楽に呪いをかけたのだから、浮竹が怒って当然であった。

シスター・ノヴァには、お守りの反射の効果で、浮竹と京楽が、白と黒の蛇に見えていた。

東洋の妖は、元々白と黒の蛇を形どっている。その効果が出ていた。

「白哉、恋次君、俺の傍を離れるなよ。お守りの効果で、血族やそれに親しい者も、呪いを反射してくれる」

「浮竹、すまぬ。世話をかけた」

「浮竹さん、すんません。捕まってしまって・・・・・」

「相手は呪詛の元聖女。今は呪いの黒魔術の司祭らしいけど、黒魔術の司祭なんて、なろうと思ったら金があったら、誰でもなれる。しかも元聖女で呪詛を嗜むときたら、組織が喉から手が出るほど欲しがったんだろう。ちやほやされて、それだけで終わってればよかったのにな?」

浮竹は、呪いが効かないことで、ガクガクと震え出したシスター・ノヴァを、真紅にした瞳のまま見た。

「どうやら、私たちの出番はないようだ」

「浮竹さん、やちゃってください。こいつ、白哉さんに怪我を負わせた。許せないっす」

「浮竹、二人もこう言ってることだし、封印しっちゃいなよ」

「ああ。でも、俺でなく京楽も呪おうとした報いも受けてもらう」

浮竹もまた、呪術が使えた。

「永遠に冷めぬ、悪夢を見ながら、眠りにつくといい」

「いやあああああ!!あたくしの美貌を、汚さないでえええ!わたくしは聖なる存在!わたくしを、汚さないでえええ!!」

悪夢を見ながら、醜い老婆になり果てたシスター・ノヴァに向かって、浮竹は手をつきだした。

「そえれは永久(とこしえ)の眠りにして封印。燃え盛る業火さえも凍てつかせる世界の終わり。深淵の闇に落ちていく汝に、永遠の眠りあれ。永久凍土をその身に宿し、凍り付け!エターナルアイシクルワールド!」

浮竹は、呪文を詠唱した。

完全なる詠唱は、封印の効果を高めてくれる。

「いやああ白と黒の蛇が・・・・・・」

そう言って、シスター・ノヴァは凍り付いて、封印された。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝

それは、まだ浮竹が京楽を血族に迎え入れて、20年程経った頃のお話。

古城に、奇妙な訪問者がいた。

まだ10歳くらいの少女だった。

浮竹は、その少女を迎え入れた。ただの人間なら、記憶を奪って森の外に戻すのだが、少女は珍しいことに、ヴァンピール、ヴァンパイアと人間の間に生まれた子供だった。

「お父さんとお母さんは?」

「どっちも死にました。お母さまが、ここに来れば始祖様が助けてくれるって。始祖様、私のお父様になってください」

その言葉に、浮竹は眩暈を覚えた。

少女は十分に愛らしかった。

京楽を血族に迎えて、甘い日々を送っているが、新鮮なものに欠けていて、少し退屈していたのだ。

「少しの間なら、君のお父様になってあげよう」

それは、浮竹が起こした気まぐれであった。

少しの間というが、浮竹にとっては10年も少しの間だ。

時間間隔が人間とは違う。

京楽はまだ、人間であった頃の名残で、時間感覚が人間に近かった。


「で、この子を娘にするって?」

京楽が、勝手に浮竹が決めてしまったことに怒ることはなく、呆れることもなかった。

「身寄りがないそうだ。しばらくの間保護するくらい、いいだろう?」

「しばらくってどれくらい?」

「10年くらい」

「それじゃあ、この子は成人しちゃうね」

「え、ヴァンピールだろう。そんなに早く成長するものか?」

娘となった少女の名はエメラルド・ラスタナ。

浮竹と同じような緑の瞳をしていた。

浮竹の瞳を宝石に例えるなら翡翠だが、少女の瞳を宝石に例えるならまさにエメラルド。

良い名だと、浮竹も京楽も思った。

「ヴァンピールは、個体差もあるけど、人間と同じ速度で成長して、成人したくらいで肉体の時間が凍結する。ヴァンパイアは子供の頃の時間が長いかもしれないけど、ヴァンピールの子供が刻む時間は、人間に似ている」

「そうなのか」

愛らしい少女が、10年も経てば大人の女性になってしまうことを、浮竹は残念がった。

「浮竹父様、京楽父様、なんのお話?」

「いや、なんでもないエメラルド。お前はもう、俺と京楽の子だ。始祖の娘として、堂々と振る舞うといい」

エメラルドを、浮竹は溺愛した。京楽もまた、エメラルドを実の娘のようにかわいがり、愛した。


「浮竹父様、京楽父様。クッキーを焼いてみたの。食べてくれる?」

「ああ、食べる」

「僕ももらうよ」

エメラルドは、浮竹の戦闘人形に教えてもらいながら、クッキーを焼いてくれた。

動物を形をしていて、かわいかったが、黒焦げだった。

そんなこと気にせずに、浮竹も京楽も食べた。

「今度から、焼く時間を少し短くしてごらん。そうすれば、もっとおいしいのができるから」

「焼く時間難しいよ、京楽父様」

「じゃあ、明日一緒にクッキーを作ろうか」

京楽はエメラルドにアドバイスをして、次の日にはエメラルドと一緒にクッキーを焼いた。

そんな様子を、浮竹は幸せな気持ちで見ていた。

エメラルドが、実の娘のように思えていた。

エメラルドは、お菓子作りが好きだった。最初は失敗するが、京楽が教えると知識としてちゃんと吸収し、次からは美味しいものができあがった。

「浮竹父様、頬が緩みっぱなしだよ?」

エメラルドの言葉に、自分がだらしない顔をしていたのに気づいて、浮竹は顔を引き締めた。

「いや、エメラルドがかわいいなぁと思って」

「浮竹父様、嬉しい。私、かわいい?」

「ああ。世界一かわいいよ。京楽もそう思うよな?」

「僕は、浮竹も同じくらいかわいいと思ってるよ」

「浮竹父様、夜に時折京楽父様と部屋にこもって、なんか声が漏れてるんだけど、何をしているの?」

浮竹は真っ赤になった。

濡れ場を見られたわけではないが、娘に聞かれていた。

「浮竹と僕はね、睦み合ってるの」

「おい、京楽」

「隠すこともないでしょ。家族なんだから」

「私のお父様とお母様みたいな、関係なの?」

10歳のエメラルドは、浮竹と京楽の関係を、異常だとは思わなかった。同性同士でも、気味悪がったりしなかった。

「そうだぞ、エメラルド。俺は京楽を愛していて、血族にしている」

「京楽父様は、もともと人間なんだよね?」

「そうだよ」

「浮竹父様は、どうして私のことを血族にしてくれないの。本当の娘じゃないから?」

「エメラルド、俺は人生でその時伴侶になる者しか血族にしないんだ。こればかりは譲れない。ごめんな、エメラルド」

「ううん、いいの、浮竹父様!わがままいって、ごめんなさい!」

その日は、親子として川の字で眠った。


浮竹が、ヴァンピールの少女を娘にした。

そんな話は、隠していたつもりなのに、ブラッディ・ネイの耳に入った。

「へぇ、この子が兄様の娘ねぇ。かわいいじゃない。ボクの寵姫にならない?」

ブラッディ・ネイは、浮竹がエメラルドを娘にして1年が経った頃、話を耳にしてわざわざ分身体をよこして、浮竹の古城にきていた。

「ブラッディ・ネイ。エメラルドに手を出したら、例え実の妹のお前でも、ただですむとは思っていないだろう?」

「ああ怖い。兄様は愛した者に夢中になるから。あのひげもじゃの血族といい、このヴァンピールの子といい、兄様は愛した者に惜しげもなく愛をあげるから。ボクのことも、少しは愛してよ、兄様」

「お前を愛した結果、お前はこうなった。俺はもう、お前を家族としては認めるが、愛することはないだろう」

ブラッディ・ネイは浮竹に固執していた。

始めは浮竹を独占していたが、浮竹を愛しすぎるあまり、浮竹の周囲にいる者を殺した。

浮竹は、その時になってブラッディ・ネイを愛したことを後悔した。

そして、ブラッディ・ネイを愛さないことを決めた。神代の時代の話であるが。

「いいなぁ。兄様の娘か。ボクも、そんな立場になってみたい」

「俺の妹であるだけで十分だろうが」

「まぁ、それもそうだね。兄様は、一応家族としては、ボクのこと認めてくれてるから」

「俺はお前を妹であるとは思っている。でも、お前は妹として愛されたいのではなく、伴侶として愛されたいのだろう。そんなこと、無理に決まっている」

「つれないなぁ、兄様。ボクの心を知っているのに、いつも冷たい」

「俺は実の妹に手を出すような者になりたくない」

「兄様なら、大歓迎なんだけどね。欲を言えば、兄様が姉様ならよかったのに、ってとこかな」

ブラッディ・ネイは同性愛者だ。

8千年に渡り、休眠に入ることもなく、血の帝国で女帝をしていて、最初は異性愛者であったのに、長く生き過ぎて狂ったのか、10~15歳くらいの外見の少女を寵姫として後宮に入れて、自分の欲を満たしていた。

あげくに、男性の精子がなくとも、少女たちを懐妊させ、子を産ませた。

生まれた子は皇族として迎え入れられ、寿命を全うするまで皇族として生きる。

ブラッディ・ネイは後宮の少女たち全てを血族にしていた。

後に、ブラドツェペシュの件があり、後宮の寵姫たちの血族を破棄して、疑似血族とするのだがそれはまだ遠い未来の話。


「浮竹父様、もう、出てきてもいい?」

「ああ、もういいぞ」

ブラッディ・ネイが、寵姫にならないかと言った時に、浮竹は血の結界でエメラルドを守っていたのだ。

「本当に、君の妹はなんともいえないね」

一緒にいた京楽は、浮竹の気苦労を労わるように、その長い白髪を撫でた。

「私、将来浮竹父様と京楽父様のお嫁さんになる!」

「あははは。期待しないで、待っておくよ」

「エメラルド、俺は京楽を愛しているんだ。いくらエメラルドでも、花嫁にすることはできない」

エメラルドは、頬を膨らませて怒った。

「浮竹父様の意地悪!」

でも、すぐに謝った。

「ごめんなさい、浮竹父様。我儘いわないから、私を娘のままでいさせて?」

「ちょっとくらい、我儘言っていいんだぞ、エメラルド。花嫁にはできないが、もしも伴侶にしたい相手ができたら、盛大に祝ってやるぞ」

「うーん、私、父様たち以外にまだ好きな人いないから、わかんないや」

穏やかに、時は流れていく。

浮竹と京楽が、エメラルドを娘にして5年が経っていた。

エメラルドは、誰もが振り向くような美貌の少女に育っていた。

最近、エメラルドは古城の外、人間社会によく出入りしていた。外の世界に好きな者ができたと告げられた時、娘を花嫁に出す父親の気持ちがよく分かった。

「人間が、好きなんだな?」

「だめ?浮竹父様」

「一度、この古城に連れてきなさい」

「え、でも浮竹父様、この古城に人間をいれてはだめなんじゃ」

「娘の婿になるかもしれない相手だ。特別だ」

「あーあ、エメラルドもお嫁さんにいっちゃうのかぁ。京楽父様は、悲しいよ」

「こら、京楽、娘に婿ができるかもしれないんだぞ。祝ってやれ」

「うん、まぁまずはその男を見定めてから、かな?」

エメラルドを不幸にするような男と、結婚は許せない。

エメラルドは知らなかった。今、自分が付き合っているのが実はヴァンパイアハンターで、浮竹と京楽を狙っていたことなど。

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「いやあああ!浮竹父様!ひどい、何をするの、オブライエン!」

オブライエンと呼ばれた20代前半の青年は、ヴァンパイアハンターだった。

銀の弾丸をたくさん浴びせられて、まさか娘の婿候補がヴァンパイアハンターなどと思っていなかったので、防御が遅れて、血を流した。

「よくも浮竹を・・・・・・」

京楽は、血を滲ませてオブライエンを殺そうとした。

「おっと、動くな。エメラルドがどうなってもいいのか?」

エメラルドの頭に、銀でできた弾丸が入った銃を向けた。

ヴァンピールは、銀の弾丸は効かないとはいえ、頭を撃ち抜かれたら、たいして力のないエメラルドは死んでしまうだろう。

浮竹も京楽も、降参した。

「そうだ、それでいい・・・・いてぇ!」

エメラルドは、オブライエンに噛みついた。

「このアマ!」

ダァァアン!

オブライエンの放った弾丸が、エメラルドの胸に当たった。

「この人間のヴァンパイアハンター如きが!」

真紅の瞳で、血を刃に変えて、浮竹はそれでオブライエンの体を斬り裂いた。

「ぐふ!」

「浮竹、エメラルドの傷が回復しない!」

「なんだと!」

「はは、気づいていなかったのか。エメラルドは既に死んでるよ。そこにあるのは、反魂で蘇らせた、まがい物だ」

「この、人間が!」

ぐしゃりと音を立てて、オブライエンは脳みそ中身をまき散らして、死んでいった。

反魂は、魂の一時的な蘇り。

完全な反魂でない限り、命は容易く消えてしまう。

「浮竹父様、京楽父様、ごめんなさい。あいつ、ヴァンパイアハンターだったのね。気づかずに、古城に入れてしまった。本当に、ごめんなんさい」

「そんなことはどうでもいい!血を、いま血を与えるから!」

「浮竹父様、だめよ。私は不完全な反魂で蘇った存在。血をもらっても、体は朽ちていくわ」

さらさらと、足のほうからエメラルドの体が灰になっていく。

「遺体も残せない・・・せめて、これを私だと思って・・・もっていてくれると、嬉しいな・・・・」

エメラルドは、エメラルドでできたブローチを、浮竹に渡した。

「エメラルド!」

「エメラルド!くそ、何か方法はないのかい!?」

「反魂は、俺の範疇外だ。くそおおお!!!」

浮竹も京楽も、涙を流していた。

「せめて・・・せめて、お前の形だけでも残す」

浮竹は、魔法でエメラルドの姿形をトレースした、戦闘人形を生み出していた。

「俺の戦闘人形は、エメラルド、お前の外見にしよう。このブローチは、大切にする」

「ああ、嬉しいなぁ、浮竹父様。じゃあ、私はずっと、浮竹父様と一緒なんだね。浮竹父様の戦闘人形として、エメラルドがいたことを、残してくれるんだね」

「エメラルド!」

すにで、下半身は灰になってしまった。

「逝くな、エメラルド!」

「エメラルド!」

京楽もまた、浮竹のように涙を流していた。

「京楽父様、浮竹父様を、悲しませないで、ね?」

「ああ、約束するよ」

「嬉しい。私、短い間だったけど、浮竹父様と京楽父様の娘として愛されて、幸せでした」

そう言って、エメラルドは完全な灰となってしまった。

「浮竹・・・・」

「京楽、オブライエンという男が所属している、ヴァンパイアハンターギルドは分かるか?」

「調べてみるよ」

浮竹の怒りをかったそのヴァンパイアハンターに所属するヴァンパイアハンターと、ギルド長は、生きながら浮竹が放った血で飼いならしたモンスターに食われていった。

浮竹は、エメラルドのブローチを、大切に保管した。

エメラルドが死んだ日から、浮竹の戦闘人形は、全てエメラルドの姿形をしていた。

意思をもたせた戦闘人形のリーダーは、まるでエメラルドが生き返ったかのようだった。

「エメラルド。俺はお前のことを忘れない」

灰は、古城の敷地に墓を作り、そこに埋めた。

灰の後から、世にも珍しい、緑の薔薇が咲いた。

「エメラルド、僕らの子は、君だけだよ」

その薔薇に水をやりながら、京楽は浮竹を抱きしめていた。

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「俺たちの娘の形見なんだ、そのエメラルドのブローチ。大切なお守りをもらった、お礼だ。できるだけ、換金しないでほしい」

(そんな大切なもの、受け取れないよ!)

東洋の京楽は、西洋の浮竹にエメラルドでできたブローチを返そうとする。

「もう、いい加減克服しなきゃいけない。形見があると、引きずるんだ。だから、大切な友人であるお前たちに、持っていてもらいたい。お前たちは、俺の中でエメラルドと似たような存在だから」

西洋の浮竹は、少し寂しそう笑ったあと、東洋の自分を抱きしめた。

(西洋の俺、いいのか、本当に。こんな大事なものをもらって)

「ああ。お前たちに、持っていてもらいたい。何もかかっていない、ただの装飾品だが。エメラルドの質はいい。どうしても困ったら、換金してくれても構わない」

(絶対に売らない!)

(ボクも、春水と同意見だよ)

「じゃあ、夢渡りで世界を渡る時間がもうないから、俺たちは戻る」

(ありがとう)

(大切にするね)

「ああ。東洋のお前たちになら、託して正解だ」

「浮竹、戻ろう。夢渡りの時間をオーバーすると、違う世界に飲まれてしまう。じゃあね、東洋の僕たち。また、会おう」

(ああ、また)

(次に会える日を、楽しみにしている)

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「ふう。夢渡りは、疲れるな。魔力の消費が半端じゃない」

「東洋の僕ら、仲睦まじかったね。西洋の僕らも、負けてられないね」

「聖帝国に行くのに、準備を終わらせないとな」

聖帝国に向かった、始祖魔族藍染の戦士たちは、浮竹の血を注射されて、魔力も筋力も、普通の魔族とは比べ物にならないものになっていた。

そんな魔族が、400人もいるのだ。

白哉、恋次、ルキア、一護、冬獅郎にも参加してもらうことにしていた。

少数精鋭で、叩くつもりだった。

聖帝国は、軍隊を持たない。

そもそも、神族と言われてはいるが、神族は魔族のように高い魔力を有してはいるが、それを涙の宝石の還元するので、戦う力はを持つ者はほとんどいないのだ。

だから、藍染は、はじめに聖帝国を狙ったのだ。

相手が血の帝国や人間国家なら、少なくとも2千以上の兵士はいるだろう。

「藍染の狙いは、きっと聖帝国の皇族だ。その心臓は、魂のルビーと言われる、世界三大秘宝の一つになる。莫大な富で、更に富国強兵をして人間社会や血の帝国に侵略するのが目的だろうな」

「藍染め。封印から復活したとも聞いたよ。油断ならないね。始祖だけあって、死なないから」

藍染は、京楽の言葉通り、魔族の聖女に封印を解いてもらって、復活していた。

「死ななくても、限りなく死に近い状態にはできる、封印したり、弱らせたり」

現在の藍染は、聖帝国には行っていなかった。

浮竹と京楽につけられた怪我を癒し、封印されたことで失った膨大な魔力を回復中であった。

「とにかく、厳しい戦いなるかもしれない。京楽、覚悟はいいな?」

「もちろんだよ。君と一緒なら、例え地獄にだって付き合うよ」


いざ、聖帝国へ。

始祖ヴァンパイアとその血族は、やがて聖帝国の地を踏む。

そこには、強化された魔族の兵士と、蹂躙される神族の姿があった。

「ヘルインフェルノ!」

浮竹は、まず初めに魔族の兵士たちに向かって、炎の高位魔法を放つのであった。










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始祖なる者、ヴァンパイアマスター15-2

「ごめん、顔しゃしちゃったね」

「ん・・・・・」

京楽がティッシュをとり、浮竹の顔をふいた。

「ああああ!」

京楽は、浮竹のものをジュルジュルと吸い上げる。

浮竹は、京楽の口の中に、精液を吐き出していた。

「あ・・・・」

浮竹は、期待で情欲にまみれた翡翠の瞳で、京楽を見つめていた。

「春水、今日はこのシャツを着たままするのか?」

「うん。見えそうで見えないのが、すごくいい」

「分かった・・・・」

京楽に押し倒されて、浮竹はローションを纏わせた指を入れられていた。

「ああ!」

前立腺をわざと刺激ばかりしてくるしつこい動きに、また浮竹のものが勃ちあがる。

「僕のことはいいから、いくといいよ」

「や、春水と一緒がいい!」

「全く、君はかわいいねぇ」

「んあ・・・・・」

ズチュリと、京楽のものが侵入してきた。

「あああ!」

最奥をこじあけるように、突き上げてくる。

その熱さに、どうにかなってしまいそうだった。

「あ、あああ、あ!」

きゅうきゅうと締め付けてくる結腸に、京楽は眉を顰める。

「もっと君を味わいたいけど、僕も限界みたい」

「あ、出せ。俺の胎の奥で、春水のザーメンいっぱい飲みたい」

「えっちなこという子だねぇ。どこでそんな言葉覚えてきたの」

「エロ本」

「誰の」

「ブラッディ・ネイの」

「あの同性愛者、異性のものでも集めてるの?」

「ううん。俺と京楽の情事を描いた、エロ本だった」

「なんてものもってんだい、ブラッディ・ネイ!今度借りないと!」

「春水?」

「ああ、ごめん、続きしようか」

「あ!」

内部でまた大きく硬くなったものに、浮竹が反応する。

「や、奥ごりごりしないでぇ」

「それが好きなんでしょ?」

「やあああ!!」

結腸にまで入りこんで、ごりごりと奥を圧迫する京楽のものに、最奥までえぐられて、浮竹はオーガズムでいっていた。

「ひああああ!!!」

「ああ、僕もいくよ。僕のザーメン、受けとめてね?」

「んああああ!!」

情事後、けだるそうな浮竹を抱き抱えて、風呂に入った。睦み合う前も入るが、睦み合った後も入るのが日課だった。

「京楽が咲かせた花が、いっぱいある」

硝子に映る、自分の鎖骨から胸にかけてのキスマークに、浮竹は頬を赤くした。

「浮竹、なーにキスマークで赤くなってんの」

「だって・・・・京楽のものだっていう証だから、俺は嬉しい」

そんなことを言う浮竹がかわいくて、京楽はむらむらして、風呂場でももう一回交わってしまうのだった。

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「おのれ、おぼえてろ、浮竹十四郎、京楽春水!」

魔都

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター15前編

微睡んでいた。

幸せな夢を見ていた。

愛した血族に愛され、また自分も血族を愛していた。

その男の名は京楽春水。

元々はただの人間。

血族に迎え入れえて、いつしか愛し合うようになっていた。

その微睡みの中に、ノイズが走る。

藍染惣右介。

俺の愛しい血族。

はて、愛しいはずの血族はそんな名前だったろうか?

いつもよく睦み合っていた。

はて、確か黒髪に鳶色の瞳だったはず。

こんな焦げ茶色の髪と目ではなかったはず。

「お前は誰だ。京楽はどこだ」

目の前にいた男、魔族の始祖藍染惣右介はため息を零した。

「記憶をいじったのに、まだ完全じゃないのか。全く、大したものだ」

浮竹は、何処か分からない広いが暗い部屋に閉じ込められていた。

お風呂やトイレはついているが、あるのはベッドだけ。

そのベッドに、腰かけていた。

浮竹は頭痛が酷くなり、一度意識を手放した。

次に気づくと、京楽がいた。浮竹が愛した、血族がいた。

「愛しているよ、十四郎」

藍染は、京楽の姿を形どり、浮竹に愛を囁いた。

浮竹をベッドに押し倒した。

「どけ。虫唾が走る。お前は京楽じゃない。俺が愛しているのは、本物の京楽だけだ。魂が、違う」

「魂のレベルまで、繋がっているのか」

口づけてくる、京楽の姿をした藍染に、浮竹は冷酷な目を向けて、伸ばした爪でその顔を引っかいた。

首に鎖が巻かれていて、魔法が使えなかった。

ただ、血は操れた。

しゅるるるる。

血を鎌の形に変えて、藍染に向けると、体が強張った。

「なん、だと」

「ちょっと、君に呪いではない、祝福を与えたよ。呪いには耐性があるみたいだから」

「祝福?」

「魔族にも聖女がいる。その子に頼んで、人の命を奪えない祝福を与えた」

「呪いと、ほとんど同じじゃないか」

「でも、聖女がかけたんだから、祝福になるんだよ。まぁ、今の君には解けない祝福だ。血を暴走でもしない限りは」

藍染は笑った。

それが、浮竹にはとてつもなく気に入らなかった。

「さて、どうして君を手に入れたものか。君を抱こうにも、君の血族の姿をしてもだめ、強姦しようとしたら、休眠状態一歩手前までいかれてしまった」

あの微睡みは、休眠に入ろうとしていたからだったのだろうか。

「まぁ、君が手に入らなくても、君の血があればこちらはそれでいい」

藍染は、浮竹から血を抜いた。

「ここはどこだ」

「さぁね?」

「俺を誰だと思っている」

「始祖ヴァンパイアの、浮竹十四郎」

さらに血を抜こうとする藍染に、呪いが侵食した。

同時に、浮竹の思考も、呪いに侵食される。

「俺は神の寵児。この世界で一番最初に、創造神ルシエードの子、始祖ヴァンパイアとして生まれ落ちた命。絶対存在」

浮竹の魂には、呪いがあった。

不老不死の呪い。

絶対に死ねない呪い。その呪いは、命に何かが起きようとすれば、発動する。その呪いが、藍染を侵食しようとしていた。

その呪いは、それは神の愛。

どうか、同じ時間を生きてくれという。

けれど、浮竹は捨てられた。

創造神ルシエードは、浮竹を置いて違う世界へ行ってしまった。

浮竹には心があった。

でも、神に心はなかった。

愛した我が子を捨て去り、違う世界へと旅立った。

神々は、絶対存在と呼ばれた。

そして、世界で一番最初に生まれた始祖も、絶対存在であった。

藍染は世界に3番目の始祖として、2番目には神族のシスター・ノヴァがそれぞれ違う神々によって、生み出された。

創造神の仕事は、世界を作り出すこと。

元々、命を吹き込むのは別の神の仕事だった。

気まぐれに、同じ絶対存在として、始祖のヴァンパイアを作ってみた。それが浮竹十四郎。

その世界を去る間際に、浮竹の妹として、ブラッディ・ネイを作った。不老不死ではなかったが、それに限りなく近くすることはできた。

「これは・・・・魂の呪いか。厄介な。君の魂にかけられた呪いの正体は、神の愛か」

「神の、愛?」

浮竹は、首を傾げた。

敵に捕らわれている状態ではあるが、命の危険はとりあえずなさそうであった。

もっとも、殺されても死なないが。

「そう、神の愛。私やシスター・ノヴァなどがもつのは、不老不死の呪い。私たちの呪いは、ただの不老不死の呪いだ。でも、君の呪いは神の愛だ。神と同じ時間を生きろという、創造神の愛の呪い」

「創造神の、愛の、呪い・・・俺は、神に、捨て、られ、て・・・・・・」

しゅるるるるる。

浮竹の血でできた鎌が消えていく。

そのまま、静かに浮竹はベッドに寝転がった。

「ははははは。そうか。これは、神の愛か」

狂ったように、笑い出した。

「ははははは。神に愛されていたのか。だから、死ねないのか。ただの不老不死の呪いでは、なかったのか。創造神は、俺に神と同じ時間を生きろと、いうのか」

「今日は、とりあえずこの分だけ血をもらっていく。これ以上、君の神の愛の呪いを受けるのは嫌なのでね。神の愛は、魂に刻まれている。どの聖女でも、解けないだろう」

「そんなこと、始めから知っている」

「死ねない同じ呪いを持つ身としては、羨ましいけれどね。魂の呪いの真実が神の愛だなんて」

「俺には、最悪だ。ただの呪いと思っていた。神の愛だなんて、お前の戯言として受け取りたい気持ちだ」

生まれ落ちた時、創造神を父のように思った。同じ絶対存在であるのが嬉しかった。違う世界に行かれて、もう愛されていないのだと思っていた。

あの神が、俺を愛していた。

同じ時間を生きてほしくて、神の愛の、不老不死の呪いを受けさせられた。

本当は、短い時間を生きる人間が妬ましかった。

不老不死であることを呪った。

でも、その魂に刻まれたものは神の愛。呪いではなかった。

ただの呪いがよかった。

それなら、神に捨てられても何も思わない。

でも、同じ時を生きてほしい。それは、即ち、あるはずのない心で、神は俺を愛していたのだ。

あの神には、心があったのだ。

「京楽・・・・会いたい。愛している。だから、俺を愛してくれ。俺を、捨てないでくれ」


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「イグル大陸の魔都サラテアルに行きたい」

そう言いだした京楽を、ブラッディ・ネイが睨んでいた。

「キミがいながら、兄様が魔族の始祖なんかに拉致された。君は、主を守れなかった。血族失格だ」

京楽の心に罅が入った。

「まだ、間に合うはずだよ!ブラッディ・ネイ、力を貸して!」

「無理だ。兄様を攫ったのは許せない。でも、相手は始祖魔族。ボクたちと魔族は、お互い不可侵の条約を結んでいる。ボクが行ったら、政治的な問題が起こる」

「では、兄の代わりに私が行こう」

「白哉クン!」

「俺もいくっす。浮竹さんには、いろいろ世話になりましたから」

「恋次クンも!」

京楽は、涙が出そうになっていた。

一人でとても行ける場所ではないのだ。だから、ブラッディ・ネイの力を借りようとした。ブラッディ・ネイのことは大嫌いだ。でも浮竹の存在がかかっているから、頭を下げた。

でも、政治的な問題でいけないという。

一人で辿り着けるだろうか。そう悩みはじめた矢先の出来事だった。

「兄と、恋次と、私で、イグル大陸の魔都サラテアルに行こう。血の帝国からイグル大陸への船が出ている。それに乗ってイグル大陸にまでついたら、恋次が竜化して、その背にのって魔都サラテアルまでいこう。片道一週間ほどかかかるが、それは仕方あるまい」

「本当に、一緒に来てくれるんだね?」

「男に二言はない」

「上に同じ」

京楽一人の力では、あの始祖魔族に太刀打ちできないだろう。

でも、そこに白哉と恋次の力が加わればどうだろう?

「白哉がそこまで言うなら仕方ない。行っておいで。ただし、絶対に兄様を連れ戻して。2カ月経っても戻ってこなかったら、ボクはもう、不可侵条約を破棄して、魔族に戦争をふっかけるから」

血の帝国を巻き込んでの争いになる。

そんなこと、浮竹は絶対望んでいない。

そうして、京楽と白哉と恋次は、旅の支度を慌ただしくして、血の帝国からイグル大陸まで出ているはずの定期船を丸ごと買いこんで、本当は月に2回の渡航なのだが、無理やり渡航させた。

白哉と恋次が風の魔法で帆に風を送り、船を強制的に早く進ませた。お陰で、2日時間を短縮できた。

「ここがイグル大陸か・・・」

「あちいなぁ」

「こっちの大陸では、夏のようだな」

血の帝国のあるアステア大陸は春の気候だった。

近くの街で、夏ものの服を買い込んで着て、人気のない場所で恋次に竜化してもらい、その背に乗って、魔都サラテアルを目指した。

途中で、何度か休憩し、夜を明かして、また飛んだ。

24時間飛び続けることはできないし、それをさせたら恋次が倒れてしまう。この三人の中では、多分一番恋次の力が強い。

その恋次を白哉が倒したというのだから、詳しくは分からないが。

とにかく、戦力は多いにこしたことはない。

血の帝国を飛び出して、4日半で魔都サラテアルについた。

それなりに繁栄をしていて、魔族領土ではあるが、ヴァンパイアの姿もたまに見受けられた。

「さて、ここからどうするかが問題だ」

「僕に任せて。浮竹の魔力を探知できる」

「この人ごみとこの大きな都市で、それが可能なのか?」

白哉の言葉を耳にしながら、浮竹は目を閉ざし、集中した。

白いフードを被って、正体がばれないようにしていた。

「こっちだよ!」

京楽は、強く感じた。

浮竹の魔力だった。

それも数十体。

京楽と白哉と恋次がきた場所は、リハビリ施設だった。

「こんなとこに、浮竹さんがいるのか?」

「でも、微弱だけど浮竹の魔力を感じた」

「これは・・・・確かに、浮竹の魔力を宿しているが、多分抜いた血を注射させたのだと思う」

白哉が答えた。

リハビリ施設の中にいたのは、限界まで筋力を膨らませた魔族の戦士たちだった。

見つからないように、部屋を探したが、魔族の兵士ばかりで、肝心の浮竹の姿がなかった。

「見つかったか?」

「いや、いねーっす」

「こっちも見つからないね。こっちが発見されたら厄介だ。一度、建物の外に出よう」

京楽の心の罅は、深くなっていく。

浮竹が攫われて、もう5日になる。

いつ血が暴走しても、おかしくない状況だった。


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「また、食べてないのかい。でも、人工血液は飲んでもらうよ」

藍染に、浮竹は無理やり人工血液を飲ませられて、血に変換させられた。

藍染の目的は、浮竹の血を使った魔族の最強な兵士の誕生だった。

そんな戦士を何百人と作り上げて、まずは聖帝国を踏みつぶそうとしていた。すにでリハビリ施設やその近くの屋外で戦闘訓練をくませた兵士50人ばかりを、聖帝国への突入部隊として送り込んだ。

「ぐっ、ごほっ、ごほっ」

人工血液が器官に入って、浮竹はむせた。

「君が、私の計画に素直に協力してくれるのなら、こんな手荒な真似はしないのだがね」

「俺の血で、戦士を強化して聖帝国と戦争だと?ばかげている」

「しかし、君の血は実に戦士たちを強くしてくれた」

「そりゃ、一応始祖のヴァンパイアだからな。俺の血は、血族にする者の飲ませるか、怪我を癒すために少し与えるか程度で、濃い血液を大量に与えたら、ただの戦闘人形のなりそこないになる」

「君は、自分の血で戦闘人形を無数に作れるんだったね。その力も欲しい」

「はっ、無理だな。俺の意思じゃないと作り出せない」

「じゃあ、京楽君の命がかかっているとすれば、どうかね?」

藍染は、水鏡を持ってきた。

そこに映っていたのは、京楽と白哉と恋次の姿だった。

「バカな、何故この魔都にいる!?」

「それは、愛しい君を助けたい一心で、駆け付けたんだろうさ。私が指示を出したら、この3人は、血まみれになるよ?」

「あいつらは、そこまで弱くない」

浮竹は、血の刃で日にちをかけて、魔法を使えなくしている首に巻かれた鎖を削っていた。

毎日、人工血液を大量に与えられて、大量に血を抜かれた。

こんな生活を、他のヴァンパイアが行っていると、確実に死んでいるだろう。

神の愛の呪いをもつ浮竹は、苦しかったが生きていた。拉致されて5日になるが、とにかく苦しかった。

いっそ、死んで楽になりたいと思った。

そうだ。

自分を、殺してみよう。

ふと、浮竹はそう思った。

自分を殺したら、どうなるのか。

知りたかった。

神の愛が、暴走するのだろうか。


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京楽は、浮竹が捕らわれているであろう館を見つけた。

白哉も恋次も、確かにその屋敷から、微弱ではあるが浮竹の存在がすると言ってくれた。

気になったのは、浮竹の魔力が少ないというか、ほぼないことだった。

あと、濃厚な血の匂いがした。

浮竹の血の匂いを、京楽が間違えるはずなかった。

「突入するよ!」

「ああ」

「おう」

三人は、その存在が藍染にばれているとも知らずに、館の中へ入った。

館の中は、無人だった。

ただ、濃い血の匂いがした。

「浮竹・・・・?」

館全部を探したが、浮竹の姿はなかった。

地下室だけが残った。

「多分、地下だ」

「そうみたいっすね」

「浮竹の血の匂いが酷い。何かあったようだ」

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「あああああ!!」

始祖の藍染が、絶叫していた。

あろうことか、始祖の浮竹十四郎は、魔法を封じる鎖を解き放ち、同時に自分の首を血の鎌ではねたのだ。

毒でもある呪い、神の愛が発動した。

「何故、死ねない・・・・・」

首は、くっついていた。血の暴走がはじまっていた。

魔族の始祖、藍染は、全身の体から血を抜かれてもがいていた。

「こんなはずは・・・・・これが、神の愛の呪いなのか」

血の暴走は、部屋を満たした。

いくつもの血の刃を作り、浮竹はそれで部屋中をめちゃくちゃにした。

血を全身から抜かれ、干からびた藍染は、しかし不老不死。肉体は再生を始める。

血を再生する傍から、吸われた。

「不味い。人工血液のほうがましだ」

浮竹は、真紅になった瞳で、藍染を見下ろした。

「この程度か。魔族の始祖」

「く、こうなったら仕方ない。お前を殺す」

藍染は、禁呪の闇魔法を浮竹に浴びせた。

浮竹は、その魔力ごと、魔法を血の渦で吸収してしまった。

「浮竹!助けにきたよ!」

そこに、本物の京楽が現れた。

浮竹は、神の愛の呪いで、思考が混濁していた。

「俺は、捨てられた。血族など、もういらない」

「浮竹・・・?」

京楽は、浮竹の「血族など、もういらない」という言葉に、精神を、心を崩壊させていく。

「何言ってるの、浮竹。僕は、君を愛しているよ?」

「愛など、目に見えぬもの。そんなもの、信用できない」

「浮竹、愛してるんだ」

「俺は、愛していない」

京楽は、瞳を真紅に染め上げて、血を暴走させていた。

「ちょ、二人そろって暴走だって?」

「恋次、ひとまず逃げるぞ。ここにいては、私たちは足手まといの上に、餌にされてしまう」

「白哉さん、なんとかする方法ないんすか!」

「あればとっくにしている!」

白哉と恋次は、地下室を後にして、館の外に出た。

「いらない。俺は、もう何もいらない。愛している。誰を?分からない」

浮竹は、神の愛の呪いで、自分が創造神の子供であった頃に心が戻っていた。

「僕は君のものだ。君がいらないといっても、君のものだ。君は僕のものだ。君がいらないといっても、僕のものだ」

二人は負の感情を連鎖させて、血の暴走を起こしていた。

浮竹は京楽を、京楽は浮竹を攻撃していた。

「こんな、化け物・・・・・・・・」

藍染は、やっと再生した体で二人の化け物がぶつかり合うのを、目撃していた。

血の渦に飲まれ、互いの血で体を喰らい合う。

そのそばから、肉体は再生を始める。

浮竹の神の愛の呪いは、血族である京楽も巻き込んでいた。

「いらない・・・愛など。俺は、誰も愛さない」

「愛してる、愛してる、愛してる・・・・・」

狂ったように愛を囁く京楽と、愛を否定する浮竹。

何度もお互いの体を食い合い、20分ほどが経った。

ふっと、真紅の瞳だった京楽の瞳が鳶色に戻った。我に返ったのだ。心はまだ痛く、ズタボロだったが、愛する浮竹の暴走を見ていられなかったのだ。

そして酷い状態の浮竹を見て、涙を零して浮竹を抱きしめた。

「僕は、君を愛している。たとえ君が僕をいらなくなっても。僕は、君だけを愛している」

京楽は、気休めだとは思ったが、エリクサーを口にして、中身を口移しで浮竹に飲ませた。

「俺は誰も愛さない・・・・愛さな・・・・愛されていた。創造神に。京楽に。たくさんの人たちに」

浮竹の真紅の瞳が、翡翠色に戻っていく。

「おかえり、浮竹」

「・・・・・・ただいま、京楽」

奇跡が起こった。

神の呪いに、エリクサーが効いたのだ。

神の愛の呪いに、エリクサーが応えてくれた。

「ひいいいい」

藍染は、二人の化け物に、見下ろされていた。

「ヘルインフェルノ」

「ぎゃあああああああ!!」

魔力と血を吸われた藍染は、もはや始祖魔族の力をあまりもっていなかった。

地獄の業火で焼かれ、生きたまま火あぶりにされた。

「よくも浮竹を・・・・・・」

京楽は、腰に帯びていたミスリル銀の剣で、藍染の四肢を切断した。

「ああああ、私の足が、腕が!!ぎゃあああああああ!!」

「封印する?」

「念のため。でも、魔族にも聖女がいるから、きっと救い出される」

浮竹は、始祖魔女を封印した時と同じ魔法を使った。

「エターナルアイシクルワールド!」

「この私が、封印など、されても、無意味だと」

「アイシクルランス」

「ぎゃあああああああああ!!」

浮竹は、氷の槍で藍染の心臓を突き刺した。藍染は、封印の魔法に完全に取り込まれて、その活動を停止した。

「浮竹、血を抜かれいたんでしょ!?大丈夫!?」

「ああ。全てが嫌になって、自分の首を自分ではねたら、神の呪いが発動して、血の暴走を起こしてしまった」

「!!!」

京楽は、ぎゅっと浮竹を抱きしめた。

「もう、そんな真似絶対しないで!いくら不老不死でも、しないで!」

「ああ。もうしない。約束だ」

浮竹と京楽は、唇を重ね合わせた。

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「兄様、無事でよかった!」

ブラッディ・ネイに抱き着かれて、いつもなら拒絶する浮竹であったが、今回ばかりは妹の好きなようなさせていた。

調子に乗ったブラッディ・ネイが、ロゼと浮竹の中身を交換させようとしたので、とりあえずブラッディ・ネイを殴った。

「ちぇっ。兄様は、やっぱり兄様だ」

「白哉、恋次君、俺を助けに来てくれてありがとう」

あの後、皆は竜化した恋次の背に乗って、港町まで移動して、そこからアステア大陸の血の帝国に入る船を見つけて、乗り込んだ。

後はもう帰るだけだったので、急がなかった。

浮竹は、式を飛ばしてブラッディ・ネイに自分が無事であることを知らせた。

何気にまじで魔族と戦争をおっぱじめようとしていたので、家臣たちは安堵した。

「浮竹も、本当に迷惑をかけた」

「いいよ、そんなこと。僕と君の仲でしょ?」

「ああ、そうだな」

「兄様、いちゃつくなら、古城に戻ってからにしてね」

「いちゃついてなんて!」

白哉も恋次も、目を合わせてくれなかった。

「うー」

浮竹は、京楽を抱きしめた。

「ああ、いちゃついてる!」

「いちゃついてやる!」

「僕は大歓迎だね!」

ぎゃあぎゃあ言い争いあって、とりあえあず無事を確認したので、ブラッディ・ネイは玉座に戻った。そこに、ロゼやキュリアなどの寵姫が侍った。

「お前は、相変わらず肉欲の塊だな」

「いやだなぁ、兄様。ちゃんと政治もしてるよ?」

「まぁ、そうなんだろうな。そうでなきゃ、血の帝国が8千年も続くはずがない」

「うん、そうだね、兄様」

「とりあえず、俺と京楽は古城に戻る。何かあれば、式をよこしてくれ」

「はーい」

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「さぁ、おいで十四郎」

「春水・・・その、この格好は、ある意味裸より恥ずかしいのだが」

京楽は、浮竹にサイズの大きなシャツを着せて、いわゆる彼シャツをさせていた。

「ああ、かわいいね、十四郎。黒いシャツだから、君の白い肌と髪を引き立てる」

「んあっ」

服の上から愛撫されて、浮竹は啼いていた。

下着は、つけていなかった。

「やん」

尻をさわられ、撫でられて、浮竹はこれから起こることにごくりと唾を飲みこんだ。

「あっ」

ローションを纏わせた指が、体内に入ってくる。

「はう!」

いきなり前立腺を刺激されて、浮竹のものは緩く勃ちあがった。

それを、京楽が口に含む。

「やっ!」

「いいの、間違いでしょ?」

「やん!」

浮竹も、勇気を出して京楽のものを触った。

「ああ、いいね。もっと先端を触って?そうそう、そこをこすって」

言われた通りにすると、京楽のものは精液を吐き出して、それは浮竹の顔にかかった。

「ごめん、顔しゃしちゃったね」

「ん・・・・・」

京楽がティッシュをとり、浮竹の顔をふいた。

そして、京楽は浮竹のものをジュルジュルと吸い上げる。

「ああああ!」

浮竹は、京楽の口の中に、精液を吐き出していた。

「あ・・・・」

浮竹は、期待で情欲にまみれた翡翠の瞳で、京楽を見つめていた。

「春水、今日はこのシャツを着たままするのか?」

「うん。見えそうで見えないのが、すごくいい」

「分かった・・・・」

京楽に押し倒されて、浮竹はローションを纏わせた指を入れられていた。

「ああ!」

前立腺をわざと刺激ばかりしてくるしつこい動きに、また浮竹のものが勃ちあがる。

「僕のことはいいから、いくといいよ」

「や、春水と一緒がいい!」

「全く、君はかわいいねぇ」

「んあ・・・・・」

ズチュリと、京楽のものが侵入してきた。

「あああ!」

最奥をこじあけるように、突き上げてくる。

その熱さに、どうにかなってしまいそうだった。

「あ、あああ、あ!」

きゅうきゅうと締め付けてくる結腸に、京楽は眉を顰める。

「もっと君を味わいたいけど、僕も限界みたい」

「あ、出せ。俺の胎の奥で、春水のザーメンいっぱい飲みたい」

「えっちなこという子だねぇ。どこでそんな言葉覚えてきたの」

「エロ本」

「誰の」

「ブラッディ・ネイの」

「あの同性愛者、異性のものでも集めてるの?」

「ううん。俺と京楽の情事を描いた、エロ本だった」

「なんてものもってんだい、ブラッディ・ネイ!今度借りないと!」

「春水?」

「ああ、ごめん、続きしようか」

「あ!」

内部でまた大きく硬くなったものに、浮竹が反応する。

「や、奥ごりごりしないでぇ」

「それが好きなんでしょ?」

「やあああ!!」

結腸にまで入りこんで、ごりごりと奥を圧迫する京楽のものに、最奥までえぐられて、浮竹はオーガズムでいっていた。

「ひああああ!!!」

「ああ、僕もいくよ。僕のザーメン、受けとめてね?」

「んああああ!!」

情事後、けだるそうな浮竹を抱き抱えて、風呂に入った。睦み合う前も入るが、睦み合った後も入るのが日課だった。

「京楽が咲かせた花が、いっぱいある」

硝子に映る、自分の鎖骨から胸にかけてのキスマークに、浮竹は頬を赤くした。

「浮竹、なーにキスマークで赤くなってんの」

「だって・・・・京楽のものだっていう証だから、俺は嬉しい」

そんなことを言う浮竹がかわいくて、京楽はむらむらして、風呂場でももう一回交わってしまうのだった。

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「おのれ、おぼえてろ、浮竹十四郎、京楽春水!」

魔都サラテアルで、藍染は、屈辱に震えていた。

浮竹に封印されたが、魔族の聖女によって封印は解かれた。

「何はともあれ、聖帝国への侵攻を開始する!」

浮竹の血で教化された魔族の戦士たちは、全部で400名。

先に50名を送り込み、すでに戦争は始まっていた。

聖帝国の聖帝は、誰に助けを求めればいいのか分からず、手あたり次第に援軍をよこせと手紙を書いた。

血の帝国にも、それをよこした。

「俺の血で、狂暴になった戦士たちだ。俺たちで、なんとかしよう」

「えー。兄様、真面目すぎ。それに、聖帝国と国交をしてるとはいえ、戦争に参加するのは」

「俺と京楽と、白哉や恋次君、ルキア君に一護君、冬獅郎君の面子でどうだ」

「あーもう、仕方ないねぇ。兄様は、一度決めたら聞かないんだから。許可するよ。ブッディ・ネイの名において、友軍として聖帝国に派遣するものとする!」

浮竹は知らなかった。

シスター・ノヴァが黒魔術の司祭になっていて、浮竹の命を狙っていることなど。




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始祖なる者、ヴァンパイアマスター14後編その2

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風呂の中で、浮竹は京楽に抱かれていた。

「あ・・・・・」

声が少し響くが、どのみち古城には浮竹と京楽以外は、戦闘人形しかいない。

「んんっ」

ボディーソープで体全体を洗ってくる京楽の手は、きわどい場所ばかり洗い、肝心の部分に触ってくれない。

「あ!」

胸の先端をかすめた泡だらけの指先は、浮竹の顎に伸びる。

「んっ」

京楽と、口づけをしていた。

「ふあっ・・・・・」

浮竹のものは勃ちあがり、だらだらと先走りの蜜を零していた。

「もうやっ。触って、春水」

「よく言えました」

「ああっ!」

浮竹のものをしごきながら、京楽は熱いシャワーを出して、浮竹のものの鈴口にシャワーのヘッドを押しあてた。

「ああああ!!!」

水圧にビクンと、浮竹が反応する。

「やあああ!」

浮竹は、精液を吐き出していた。それは、熱い湯と共に、排水溝へと流れていく。

「浮竹、おいで」

お風呂の中で、京楽が浮竹を抱き寄せた。

「んっ」

お湯は浴槽の半分ほどしか入っておらず、てらてらとグロテスクに光る京楽のものがそそり立っていた。

「自分でいれてごらん」

ローションを渡して、浮竹に自分で蕾を解すように誘導する。

「あ、や・・・・」

浮竹は、熱に思考を侵されて、指を二本自分の体内にいれた。

「んっ・・・届かない。京楽のものじゃないと、届かない」

「じゃあ、自分でいれてみて?」

「んあっ」

ローションまみれの京楽のものに、おざなり程度に解した蕾をあてがう。

「あああ、んあっ、大きい、ああああ!!!」

いつも京楽を飲みこんでいるせいもあるし、ローションの助けもあって、浮竹は京楽のものを全部飲みこんでいた。

「あ、あ、あ!」

京楽は、下からリズムつけて突き上げる。

「あああ!」

浮竹は、長い白髪を宙に乱れさせた。

「んあ!」

ごりっと、結腸にまで入り込んできた熱を、締め上げる。

浮竹は、唇を舐めると、京楽の耳元で囁いた。

「俺の中で、いけ」

「あっ」

京楽は珍しく声をだしていた。

浮竹が、わざと強く締め付けてきたからだ。

その誘惑に負けて、京楽は浮竹の胎の奥に精子をぶちまけていた。

「あああ!!」

浮竹のものを、京楽が握る。

「やっ」

「まだ、いけるでしょ?さぁ、一緒にいこうか」

「やあああ!!!」

突き上げてくるリズムが早くなった。

前立腺をコリコリと抉られて、浮竹は生理的な涙をこぼす。

それは、ぽちゃんとお風呂の湯に混ざった。

「ん、いくよ。さぁ、君も」

「ああああ!!!ひあああ!」

京楽が浮竹の最奥に熱を叩きつけるのと、京楽の手が浮竹をおいあげて精液を出させるのがほぼ同じタイミングだった。

「吸血するよ?」

「だめぇええ、今、いってるから、ああ!」

浮竹を抱き寄せて、その喉元に噛みついて、京楽は浮竹の血をすすった。

「ああ、甘い。美味しい。君の血で、僕はどうにかなってしまいそうだ」

「それは、こちらの、せりふ、だ!」

浮竹は吸血されたことへの大きな快楽を乗り切って、京楽の心臓の位置の、胸に噛みついた。そのまま牙を深くたてて、血を飲む。

「ああ、いいね。君に吸血されるの、好きだよ、僕は」

「快楽にしかなっていない・・・・お仕置きにもならない」

そんなことを言う浮竹に、京楽は浮竹の筋肉は薄くついているが、どちらかというと京楽に比べれば華奢な体を抱きしめた。

「愛してるよ、十四郎」

「俺も愛してる春水」

深く口づけしあいながら、また乱れあう。

湯が満タンになる頃には、浮竹は意識を失っていた。

「ちょっと、血を飲みすぎちゃったかな」

軽い浮竹の体を抱き上げて、水分をとって寝間着を着せた。

「また明日。十四郎、おやすみ」

ちゅっとリップ音をたてて、京楽は同じベッドで眠りについた。

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朝起きると、浮竹の姿がなかった。

「どこだい、浮竹?」

京楽は、古城を探し回った。

離宮や錬金術の館にもいなかった。東洋の妖(あやかし)からもらった、いつも肌身離さずもっているはずのお守りが、ベッドの上にあった。

「どこにいったんだろう?」

古城の近くの湖に、浮竹はいた。

「浮竹?」

「ああ、キミがこの子の血族かい?」

「君は誰だ!」

浮竹の隣に現れた、黒尽くめの男に、京楽が威嚇する。

「僕は藍染惣右介。始祖の魔族さ」

始祖の魔族という言葉に、京楽が強張りつく。

「浮竹、危ないからこっちにおいで?」

「お前は・・・・・誰だ?」

「え?」

京楽は、呆然となった。

「浮竹・・・。十四郎?」

「俺はお前を知らない。俺が知っているのは、俺を愛しているこの始祖魔族の藍染惣右介だけ」

愛おしそうに、浮竹は藍染の肩にしな垂れかかった。

「浮竹!そうか、お守りを持っていなかったから、呪いが!」

「呪い、ではないよ。記憶を、少しいじったんだよ。今は、ボクが浮竹の中で愛しい血族だ」

「そんな!おい、藍染といったな、目的はなんだ!」

「目的?そんなもの、このヴァンパイアの始祖の浮竹以外、ないだろう?」

藍染は、あろうことか、京楽の見ている目の前で、浮竹に口づけた。

「惣右介・・・早く、戻ろう?城へ」

「そうだね。戻ろうか」

浮竹を抱き上げて、藍染は闇の中に滲んでいく。

「まて、藍染!浮竹を返せ!」

「ふふふ・・・イグル大陸の魔都サラテアル。来れるものなら、来てごらん」

「浮竹ーーーーーーー!!!!」

浮竹は、藍染の腕に抱かれて、闇の中に完全に溶けてしまった。

「浮竹・・・嘘だろう?」

君が、僕以外を愛するなんて。

君が、僕を忘れるなんて。

君は僕のもの。僕だけのもの。

「始祖魔族、藍染惣右介。イグル大陸の魔都サラテアル。地獄だろうと何処だろうと、行ってやろうじゃないの」

京楽は、浮竹が最近いつも身につけていたお守りを握りしめて、空に向かって咆哮した。

「うおおおおおおおお!!!!」



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始祖なる者、ヴァンパイアマスター14後編

猫の魔女、松本乱菊の滞在は長かった。

やってきてすぐに、浮竹と京楽の友人として打ち解けた。

一度は魔女の里に帰ったが、また遊びにきた。

その時の乱菊はヴァパイアの始祖を屠れという密命を帯びていたが、始祖のヴァンパイアである浮竹を殺す方法などないし、友人を手にかけることなどしたくないと、魔女会議で決定された事柄を無視した。

乱菊が戻ってきて、3日が過ぎた頃、エリクサーの材料で、市場で出回っていない世界樹の雫を手に入れるために、S級ダンジョンにもぐることにした。

S級ダンジョンは1つではない。

世界にいくつか存在した。

3人は、1週間分の食料を3人分アイテムポケットにいれて、出発した。

まず、S級ダンジョンのある国の首都に、空間転移魔法陣を起動させて、転移する。そこから馬車で2時間ほど揺られて、ダンジョンの最寄りの街に移動して、宿屋で一日休息をとり、空間転移で失った魔力を補充した。

街から徒歩一時間ほどした場所にS級ダンジョンはあった。

まだ来たことのないS級ダンジョンであった。

主にドラゴン系が住み着いており、難攻不落とも言われていた。

ドラゴン系といっても、個体数200しかいないドラゴンうち2体がボスをしているだけで、後のドラゴンは雑魚で真のドラゴンとしては分類されなかった。

200体しかいないドラゴンは竜族と呼ばれている。

その他のドラゴンは、ただの雑魚ドラゴンだ。

かつて、浮竹が退治したブラックドラゴンやファイアードラゴンは竜族だ。

竜族と雑魚ドラゴンの違いは、人語を理解し人型をとる知恵あるドラゴンか、人語を理解しない頭の悪いドラゴンかの違いであった。

始祖竜であるカイザードラゴンは、人型をとり人語を理解する。

もっとも、浮竹は竜族だろうが雑魚ドラゴンであろうが、関係なく倒してしまうが。

一階層を進むと、プチドラゴンと呼ばれる、雑魚ドラゴンの幼体ができてた。

「このダンジョン、雑魚ドラゴンや竜族でできているから、素材が金になる」

浮竹は、スパスパと血の刃ででてくるプチドラゴンを倒していった。

乱菊も魔法を使い、プチドラゴンを倒す。

京楽は、倒されていったプチドラゴンの素材にできる部分だけを切り取って、アイテムポケットに収納していった。

「あ、宝箱!」

「ちょっと、浮竹!」

「あがががが、いつもより痛い!」

浮竹をがじがじと噛むミミックは、エンシェントミミックだった。

「暗いよ~狭いよ~怖いよ~生暖かいよ~」

乱菊は、腹を抱えて笑っていた。

「あはははは、始祖ヴァンパイアがミミックに食われるなんて・・・おかしい、あははは」

「見てないで助けてあげて?浮竹ってミミックが大好きで、宝箱を発見してそれがミミックでもわざと食われにいくんだよ」

京楽は、エンシェントミミックに食われてじたばたしている浮竹の下半身を見ていた。

「京楽、助けてくれ」

「全く、君のミミック好きには毎度あきれるよ」

エンシェントミミックも通常のミミックと同じで、押し込むことでおえっとなって、浮竹をはきだした。

「ボルケーノトライアングル!」

浮竹が、火の範囲魔法でエンシェントミミックを退治する。

「ちょっと、オーバーキルだよ」

「今日初めて会ったミミック様だ。盛大に燃やそう」

「ミミック様って・・・」

「古城のポチを象徴として、俺が勝手に設立した、ミミック教だ!」

それを聞いて、京楽は眩暈を覚えた。

「ミミック教っていっても、ミミックは結局倒すんだね」

「倒さなきゃ、宝物を落としてくれないだろうが」

「あはははは!あなたたち、いつもダンジョンでこんな風なの?漫才してるみたい」

「これが俺と京楽の通常運転だ」

「違うよ、乱菊ちゃん!浮竹が暴走してるだけだよ」

「お、魔法書が3つか。ラッキー」

浮竹は、エンシェントミミックが残していった魔法書を手にとった。

2つは民間魔法で、肩こりが余計にひどくなる魔法、10円ハゲを作る魔法だった。

「あまり役に立ちそうにないな」

2つの民間魔法を習得する。

「役に立ちそうにないとかいいながら、ちゃんと覚えるんだね」

「京楽、10円ハゲできる魔法使ってもいいか?」

「やめてよ!僕を実験台にしないで!」

京楽は、乱菊の後ろに隠れた。

「ちょっと、あたしもいやよ!10円ハゲなんて!」

「血をやると再生するから、10円ハゲを作らせてくれ」

「血がもらえるの?10円ハゲ、こさえてもいいわよ」

乱菊は、現金だった。

浮竹が魔法を唱えると、豊かな金髪に10円ハゲができた。

「おお、本当に10円ハゲができた」

「血をちょうだい。治さなきゃ」

浮竹は、自分の血の入った小瓶を、乱菊に渡した。

再生の力だけが宿っていて、レアなポーションの材料になる血ではなかった。

「あら、魔力を帯びていないのね。残念。でも、これはこれで大けがを治すとかによさそうだから、とっておくわ」

乱菊は、血を少しだけなめた。

10円ハゲだった部分にぶわっと髪が生えてきた。長くなりすぎたので、もっていた短剣で適当な長さに切った。

「もう一つの魔法書は・・・古代の、炎の魔法。おお、すごいぞ、俺がまだ覚えていない魔法だ。攻撃魔法で覚えていない魔法を覚えるのは久しぶりだ。えーと、ファイアオブファイア!」

ごおおおお。

すさまじ炎が踊り、地面が黒こげになった。

「浮竹、その魔法あんま使わないでね?火力強すぎるよ」

「そうだな。ドラゴン系の素材を燃やしてしまったら、もったいない。これからも今まで通り、血の刃で殺すとしよう」

「あたしも覚えられるかしら」

「試してみるか?」

「ええ」

浮竹は呪文の詠唱を破棄しているが、魔法は通常呪文の詠唱がいる。

「その身に宿るのは己が意思の炎。天よりきたりて我が前に立ちふさがりし愚者を炎の贄にせよ!ファイアオブファイア!」

シーン。

魔法は発動しなかった。

「だめだわ。魔力が足りないみたい。浮竹さん、よくこんな魔法を簡単に使えるわね」

「俺は魔法を極めているからな。魔力も、自分でいうのもなんだがこのガイア王国一だと思う。
血の帝国でも多分一番だ。ブラッディ・ネイが魔法の腕をあげていなければの話だが」

「ブラッディ・ネイって、血の帝国の女帝の名前だわよね?」

「そうだよ。浮竹の実の妹だよ」

京楽の言葉に、乱菊が驚く。

「ええっ、女帝の兄!あの女帝は8千年も血の帝国に君臨し続ているのに、浮竹さんは女帝の代わりに皇帝になったりしないの?」

「一時期、皇族王をしていた。皇帝にはなる気はなかったな。俺には、血の帝国の統治には向いていない。ブラッディ・ネイは一人のヴァンパイアとしては問題がありすぎたが、血の帝国をちゃんとまとめあげて政治を行っている。今は白哉が、皇族王の地位にあり、摂政としてブラッディ・ネイの右腕をしている」

「白哉クンも大変だよね」

「選んだのは白哉だ。後宮に入り浸るブラッディ・ネイを快く思わない者もいるからな。そういう女帝排斥派を黙らすのが、白哉の仕事でもある」

そんな会話をしながら、モンスターを倒して5階層にまできた。

「ボスはワイバーン。数は1体。楽勝だな」

「ワイバーンはあまり素材にならないからね」

「さっきの魔法でやっつけちゃえば~?」

「シャアアアアアア」

襲い掛かってくるワイバーンの攻撃を3人とも躱して、浮竹は魔法を使った。

「ファイアオブファイア!」

「シャアアアアア!」

ワイバーンは雄叫びをあげて、灰になった。

骨すらも残らなかった。凄まじい火力であった。

「ちょっと、これ禁呪に近いかもしれない。あまり使わないようにする」

浮竹が、覚えたての魔法を初めてモンスターに使ったが、その威力の高さにびっくりしていた。

「そうだね。ちょっと威力が高すぎるかな。ボス戦以外では、使わないようにしようよ」

「ボスはドラゴン系だから、ボスにも使わない。素材がだめになる」

あくまで、浮竹の中でドラゴン系統は素材の山という認識だった。

10階層まで進むと、アンデットドラゴンがボスとしてでてきた。

骨だけのドラゴンだった。

「骨と牙と爪は素材になる!コアを破壊しよう!」

スライムなどの不定形の魔物や、アンデット系の魔物にはコアへの攻撃が一番よく効いた。

「ファイアオブファイアじゃ、骨も残らなさそうだな。京楽、任せてもいいか?」

「もちろんだよ!」

「あたしは援護にまわるわ!」

「頼む!」

「エクステンドアイビー!」

浮竹は、蔦を伸ばす魔法を使って、アンデットドラゴンの動きを封じた。

乱菊がコアの周りの骨を、魔法で破壊する。

そこに、聖なる魔力を宿した、京楽のミスリル銀の剣がコアを粉々に切り崩した。

「ギャルルルル」

雄叫びをあげて、アンデットドラゴンは活動を停止した。

「ドラゴン素材だ!金になる!」

道中の雑魚ドラゴンより、このアンデットドラゴンの素体は竜族であったので、素材として雑魚ドラゴンの2~3倍はした。

竜族の素材には魔力が満ちている。

雑魚ドラゴンの素材には魔力がない。どちらを加工すればいい武具ができるかなど、一目瞭然であった。

そうして、一行は4日かけてダンジョンの最深部までやってきた。

S級ダンジョンなだけあって、出てくる敵は強く、階層が下になればなるほど、ボスのような個体がわんさかと出てきた。

始めは素材のため、と言っていたが、出てくる数が多いので、ファイアオブファイアで焼き払う始末だった。

「は~。やっと70階層まできた。このダンジョン、何階層まであるの?」

「確か、105階層だ」

「うえーまだそんなにあるの」

ボス部屋の前のセーブポイントで昼食をとって休憩を入れながら、浮竹はこう言った。

「世界樹の雫がとれる階層は、77階層。ここのボスを倒したら、終わりだ」

「やったー!地上に帰れる!」

「あたし、お風呂に入りたい」

リフレッシュの魔法で体の清潔さを保ってはいるが、お風呂に入る爽快感はない。

「さて、いこうか」

「うん」

「ええ」

---------------------------------------------------------

「きしゃああああああああ!!!」

75階層で待ち受けていたのは、真のドラゴン、竜族であった。

だが、呪いでステータス異常を起こしていた。

魂にまで刻み込まれた呪いなので、聖女でもいない限り解呪はできないだろう。

「竜族か。話し合いで片をつけたかったが、憤怒のステータス異常だ。解呪できないし、このままにするのも哀れだ。せめて、俺たちの手で屠ってやろう」

ドラゴンは、エンシェントドラゴンであった。

カイザードラゴンほどではないが、3千年は生きている、竜族の中でも古い個体だった。

「エンシェントドラゴンが、100年ほど前にいなくなったと聞いていたが、こんな場所にいるとは」

「ぎゃるるるるる」

炎のドラゴンブレスを吐かれて、浮竹と京楽はシールドを展開する。

そのシールドに罅が入った。

浮竹が、もう一枚シールドを増やす。

「何て威力だ。ブレス特化か!」

次は、氷のブレスを吐いてきた。

シールドでずっと防ぎ続けるが、魔力の消耗が激しかった。それほどの威力のブレスだった。

炎、氷、雷、水、風、大地、光、闇。

エンシェントドラゴンは、全ての属性のブレスを吐いた。

それを、シールドで防ぎ続ける。

「このままじゃ、こっちの魔力が尽きる」

「なんとかしないと!」

乱菊は、危ないのでセーブポイントにいてもらった。

乱菊のレベルでは、竜族にダメージを負わせるのがやっとで、足手まといになるからと、説得した。

「がんばって、浮竹さん、京楽さん!」

扉の向こう側で、そんな乱菊の言葉が聞こえた。

「ドラゴンの弱点である、顎の逆鱗をついてくれ、京楽!」

「そうは言われても、このブレスじゃあ、近くによることもできないよ」

「俺がなんとかする。エターナルアイシクルワールド!」

禁呪でもある氷の魔法を放ち、エンシェントドラゴンの下半身を氷漬けにすると、エンシェントドラゴンは、炎のブレスで氷を溶かそうとしていた。

封印の威力もあるので、氷の魔法は溶けない。

「ぐるるるるるる!」

エンシェントドラゴンの瞳には、浮竹が映っていた。

「我を・・・・殺せ。始祖の、ヴァンパイア」

「エンシェントドラゴン?呪いが消えたのか?」

「我は、100年前、始祖魔族藍染惣右介の手で、ここに閉じ込められた。外に出ることもかなわず、ただSランク冒険者の相手を、時折していた。殺さず先に行かせたことも何度かある。我の呪いは魂への呪い。時折ふと元に戻ることはあれ、もう呪いは解けぬ。このような場で生き続けるよりも、我は死して新たなるエンシェントドラゴンとして生まれ変わりたい」

輪廻転生。

それは竜族だけがもつ、転生の在り方。

「分かった。京楽!」

「うん!」

炎の魔法を帯びた魔剣で、京楽はドラゴンの弱点である、逆鱗を斬り裂いた。

「ありがとう・・・・我は眠る。次にまた会いまみえることがあれば、我は幼体であろう。その時は、かわいがってくれ」

「さよなら、エンシェントドラゴン」

エンシェントドラゴンはずどおおんと、巨体を倒して、死んでいった。

浮竹と京楽は、エンシェントドラゴンの体をアイテムポケットに入れる。

体が巨大なので、浮竹のアイテムポケットには入りきれなくて、結局中身があまり入っていない京楽のアイテムポケットに入れた。

「勝ったの、浮竹さん、京楽さん」

「ああ、一応な」

「エンシェントドラゴンは?」

「倒したので、素材としてアイテムポケットにいれた」

その言葉に、乱菊が顔を引き攣らせていた。

「真のドラゴン、竜族も素材にしちゃうのね」

「また竜族の個体が減ったな。恋次に連絡して、減った数のドラゴンを孵化させてもらおうか」

「うん、そうだね」

「じゃあ、77階層目指して、がんばりましょう!あと一息よ!」

るんるんと前を歩く乱菊の後を追う。

「ちょっとたんま。休憩しよ」

京楽が、魔力切れを起こしていた。浮竹の魔力もかなり減っていた。

76階層のモンスターは、上のほうの階層のボス並みの相手がほとんどだ。

なんとかセーブポイントを見つけると、浮竹はテントを張った。周囲には、念のための魔物避けのお札を置いた。

「今日は、ここで休息しよう。俺も京楽も、随分と魔力を消費した。一日経てば元の状態に戻るだろうから」

「じゃあ、あたし食事つるくわね」

浮竹のアイテムポケットから食材を出してもらい、乱菊は豪快に野菜をきっていって、鍋でいためて水をそそいで、シチューを作っているらしかった。

なんともいえない、つーんとした匂いのするシチューができあがった。

「味見したか?」

「いやねぇ。するわけないじゃない!だって不味いんだから!」

「不味いなら、最初から作るな!」

「あら、そんなこと言っていいの?これ、魔女の特選のレシピ、魔力を回復させるシチューよ?本当なら薬にして、1個金貨3枚はいただくんだけど」

乱菊は、もってきていた薬草のほとんどを鍋にいれてしまったらしかった。

「せめて、薬の形がよかったよ・・・・・」

京楽は、文句を言いながらもシチューを全部食べた。浮竹もそれを見習って、不味くて苦いが、シチューを全て食べた。

「お、大分魔力が回復してるな」

「ほんとだ」

「ふふふふ、魔女の調合する薬をなめないでもらいたいわ」

そのまま、3人は時間が夜になっていることもあり、テントで就寝した。

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「これが世界樹の雫・・・・・・」

乱菊は、目をウルウルさせていた。

77階層に生えている世界樹の葉に宿る、虹色に光る世界樹の雫の結晶を、そっと大切そうに鞄にしまいこむ。

「ここまできたんだ。とれるだけとってしまおう」

浮竹は、世界樹の雫の結晶をいっぱいとって、アイテムポケットに入れていた。

世界樹の雫は、液体ではない。液体だとすぐに蒸発してしまうので、宝石のように固まった結晶だった。

「これだけあれば、エリクサーも作れるだろう」

浮竹も乱菊も、好きなだけ世界樹の雫をとった。

このS級ダンジョンの77階層に生える世界樹しか、世界樹の雫を生み落とさないので、S級ダンジョンにもぐるSランクの冒険者が、世界樹の雫を冒険者ギルドに売らない限り、市場には出回らない。

乱菊はちまちま市場に出して、金を稼ぐつもりであった。

大金になると、喜んでいた。

浮竹は、エリクサーの材料にするので売る気はなかった。

ガイア王国に帰り、3人は冒険者ギルドの解体工房でエンシェントドラゴンの遺体を出した。

受付嬢は、浮竹と京楽が以前ブラックドラゴンを持ち込んだ時に居合わせたので、驚くものかと心がけていたが、更に上位のエンシェントドラゴン、真竜に口をぽかんとあけて、その鮮度の高い遺体を見ていた。

「肉はある程度もらう。あと、瞳と血もだ。残ったのを買い取ってくれ」

認識阻害の魔法をかけているので、浮竹はエルフの魔法使いで京楽はハーフエルフの剣士にみえた。乱菊は獣人族の盗賊に見えていた。

ギルド長が、他のギルド職員と相談して、買取金額を提示してきた。

「ブラックドラゴンの時が金貨5千枚だったが、今度はエンシェントドラゴンの真竜。魔力の保有量が桁違いだ。状態もいい。瞳と血と肉以外でも、金貨7千枚で買い取りたい」

「いいぞ。その値段なら、売ろう」

浮竹は、あっけなく売ることを承諾した。

乱菊はその値段の高さに、もう慣れてきたとはいえ、驚いていた。

「あの、世界樹の雫を1つ売りたいのですけど」

「世界樹の雫だと!今、ちょうど市場でも出回っていなくて、ミスリルクラスの錬金術士が欲しがっているんだ。金貨2千500枚でどうだろう?」

「お売りします」

乱菊は、世界樹の雫を売った。

こんなに高価だとは思っていなかったので、喜びを隠しきれないでいた。

「自分で使う分を置いておいても、あと10個はあるわ。里の近くの冒険者ギルドで定期的にうりましょっと」

乱菊は、里にある自分の家をもっと広い家に建て替えて、魔女として薬の調合の腕もあがったことだし、良い薬を作って、里の外の人に薬を売ろうと思っていた。

商会は通していないので、乱菊は自分で薬を売る。

貧民や平民には安価に、貴族や大金持ちには少々高く売りつけた。

いろんな病気の薬だったり、怪我を治癒するポーションだったり、毒を無効化する薬だったりと薬の内容は多岐に渡った。

痺れ薬、毒薬、惚れ薬、自白剤・・・そんなものも取り扱っているが、顧客は王侯貴族である。

薬を買って、それをどう使うかは、買った者の自由であった。

だが、犯罪に使われるようなら、冒険者に依頼して、薬を取り返してもらっていた。

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「約束だ。エリクサーを調合しよう」

「待ってました!」

浮竹は、京楽も伴って、錬金術に使っている館で、乱菊の前でエリクサーを調合した。

はじめの5回は失敗。

失敗するたびに爆発するので、京楽にシールドを張ってもらった。

6回目にしてようやく成功した。

液体に世界樹の雫を液状化したものを混ぜると、エリクサーになる予定の小瓶に入った水色の液体は、まざりあい虹色の光をきらめかせた。

キラキラと光る七色の液体は、まぎれもない本物のエリクサーであった。

「成功だ。最後に、世界樹の雫を入れるんだ。肌の温度と同じくらいに液状化したものでないと、失敗する」

「うわぁ、本物のエリクサーだぁ。そうやって調合するのね。失敗すると爆発すると」

乱菊は、メモに材料と調合の時の注意点などを書いていた。

「俺の弟子になったことで、今乱菊は金クラスまで腕があがっているはずだ」

「ほんとぉ?やったあ!」

上から3位目のクラスだ。

「魔女の最高位クラスでプラチナが一人いるだけなのよね。金クラスは8人いるけど、あたしをいれてこれで9人だわ!大金持ちになったし、魔女の里でのあたしの地位もあがるはず。あたしをおばさん呼ばわりした始祖ローデン・ファルストルめ、ざまーみろだわ。仇のヴァンパイアの始祖に弟子入りした魔女なんて、絶対未来永劫あたしくらいだわ」

「その、いいのか、乱菊。仇である俺の弟子になったこと」

「いいのいいの、気にしないで。魔女の始祖は、世界征服するとかアホなこと言ってたけど、それに同意していたのはごく一部の者よ。血の帝国に戦争しかけて、敗戦して。戦後賠償金を払わないといけないから、里の者たちにも罰金がくるのよ」

「ああ、ローデン・ファルストルが戦争をふっかけてきたけど、血の帝国全土を巻き込む大きな戦いにならなかったから、ブラッディ・ネイが出す戦後賠償金もそれほど桁は大きくないと思うよ」

京楽が、賠償金に悩んでいる乱菊に助け舟を出した。

「京楽、かっこよく決めているつもりだろうが、髪型がアフロなせいでアホに見えるぞ」

浮竹と乱菊をエリクサー調合の失敗の爆発から、シールドでその身を守っていたが、一度自分自身を守るのを忘れたのだ。

京楽の髪は、アフロになっていた。

「ムキー!アフロで悪い!?」

「あはははは!」

乱菊は、腹を捩って笑っていた。

「ついでに、十円ハゲを作ってやろう」

「ぎゃはははは!!」

アフロのいたるところに10円ハゲができて、乱菊は笑いすぎで呼吸が苦しそうだった。

「浮竹、僕のこと本当に愛してるの?」

「ああ、愛して・・・・・ぷっ」

浮竹もまた、ひどい恰好になった京楽の姿を見て、笑った。

「酷い!」

「悪い悪い。血を飲んでいいぞ」

「遠慮なくもらうよ」

京楽は、浮竹の首に噛みついて、その血を啜った。

髪型が元に戻っていく。

「ああ、君の血の味は甘いね。チョコレートや砂糖菓子より甘い」

「んっ」

乱菊は目を手で隠していたが、指の隙間からばっちり見ていた。

「見せつけてくれるわねぇ」

「あ、すまない乱菊。京楽の吸血行為はいつものことだ。乾きを覚えたら、俺の血を吸うようにさせてあるから」

「そういえば、京楽さんは人工血液飲まないのね?」

「僕は浮竹の血だけでいい。浮竹になにかあって、乾いていたら人工血液を口にすることはあるけど、あの微妙な甘ったるさは嫌いだよ。浮竹の血のほうがまろやかで美味しい」

「ふーん。あたし、明日には魔女の里に帰ろうと思うの」

「急だな」

「でも、これ以上長居したら、その、あなたたちの夜の生活がね?」

浮竹は真っ赤になって、京楽も少しだけ照れていた。

「じゃあ、今日はお別れの送別会を開こう。戦闘人形に、フルコースを作るように頼んでおく」

「ありがとう、浮竹さん!」


その日の夜は、乱菊の送別会としてささやかなパーティーが行われた。

七面鳥を焼いたものやら、フォアグラやトリュフやキャビアやらと、高い食材をふんだんに使った料理がでた。

エンシェントドラゴンのステーキもあった。

ちなみに、ポチは今古城で放し飼いになっていた。晩餐の広間にやってくると、勝手にドラゴンステーキを食べていた。

「こら、ポチ!食べる前はちゃんと牙を洗いなさい」

「浮竹、それ無理あるから。ポチもお腹すいてるんだね。もっとドラゴンステーキあげていい?」

「いいぞ」

「よかったね、ポチ」

ちなみに、ポチはミミックだ。

最近は浮竹を見てもすぐには噛みつかない。餌をくれようとする瞬間に、えさごと噛みついた。

京楽がポチにドラゴンステーキをあげるのを、羨ましそうに浮竹が見ていた。

「浮竹が、ポチにご飯あげる?」

「そうする!」

ポチにエンシェントドラゴンのドラゴンステーキを与えた。

「うわー、暗いよ狭いよ怖いよ息苦しいよーーーー」

ポチに噛まれた浮竹を助け出している京楽に、乱菊もまじって浮竹を救出した。

「るるる~~~~~~」

ポチはそう鳴いた。

「ポチが初めて鳴いた!あと、ポチの中にダイヤモンドがあった」

大粒のダイヤモンドを、ポチは浮竹に与えた。

いつもドラゴンステーキをくれるお礼だった。

その日は、遅くま騒ぎ合った。



「じゃあ、いつかまた」

「またね、乱菊ちゃん」

「浮竹さん、京楽さん、ほんとにお世話になったわ~。また遊びんいきていいかしら?」

「いつでも遊びにおいで」

「うん、僕も待ってるよ」

「じゃあ、あたしもう行くわね」

猫の魔女、松本乱菊は、猫に化身して、空を飛ぶほうきに乗って、去って行った。

「いい子だったね」

「ああ。京楽がいなかったら、血族にしたいくらいの子だった」

「浮気はだめだからね、浮竹?」

「お前もだぞ」

二人は、顔を見合ってから、古城の中に戻っていった。













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始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝

「お守り?」

「そう。東洋の妖(あやかし)の俺らからもらったものだ」

「ああ、夢渡りであったあの二人かい?」

「そう。俺にと、蛇の抜け殻が入ったお守りをもらった」

「効果は?」

「金運UP。あと、俺くらいの強さの相手からかけられた呪詛を、跳ね返して相手に負わせることができるそうだ」

「なにそれ。すごくいいじゃない」

「ああ。お礼に木苺のタルトとケーキとジュースをあげた」

「なんか釣りわないような」

「俺は魔法書とか呪術の書やら、古代の魔道具とか、もしくは金銀財宝しかもってないだろう」

浮竹は、返せるものがないのだと、言葉を濁す。

「じゃあ、金銀財宝あげればよかったじゃない」

「ああ、一応大粒のエメラルドを、付け足しておいた」

多分、今頃気づいて喜んでくれているだろうかと、浮竹は遠い東洋の島国いる、自分たちにそっくりな妖を思った。

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夢渡りを利用して、世界を渡り歩いた。京楽と浮竹は、東洋の島国にいた。

東洋の京楽は、じっと目の前の瓜二つの、西洋の浮竹と京楽を見つめていた。

すると、急に西洋の浮竹に手を伸ばし東洋の京楽は触ろうとするが、隣の東洋の浮竹がぷくぅーと頬を膨らましてそっぽを向く。

(ごめん、十四郎。機嫌直して?)

(おれよりもそっちの十四郎の方がいいのか?)

(ううん、そっくりだったから触っても大丈夫かな?って思っただけだよ?)

(ホントだな?)

(うん、ホントだよ?後で日光浴付き合うから赦して?)

そう東洋の京楽が言うと東洋の浮竹の頬に手を這わす。

東洋の浮竹は、それに対して嬉しそうに頷く。


「本当に、京楽そっくりだな」

西洋の浮竹は、八岐大蛇である東洋の京楽の顔を、穴が開くほど見ていた。

(そんなに見られると照れるなぁ)

そんな東洋の京楽に、東洋の浮竹は、怒っていた。

(ごめんごめん。キミが一番可愛くて美人だよ)

頭を撫でて抱きしめると、東洋の浮竹は機嫌を直した。

「東洋の京楽は、嫉妬の嵐と聞いたんだが」

(うん。ボクの十四郎が、たとえ似た存在とはいえ、東洋のボクに触れるのはいやかな)

「そうか」

(うん)

「京楽、東洋の俺に触るなよ」

「ええっ。触りたいのに」

「だめだ。東洋の俺は、東洋の京楽のものだ」

西洋の浮竹は、ヴァンパイアの始祖としての顔を見せた。

(西洋の十四郎って、キミと同じ顔をしているのに、すごく気高いかんじがするね?)

(そうだな。気品がある)

「一応、俺はヴァンパイアの始祖であり、皇族でもあるからな」

「え、浮竹って皇族だったの?」

「ブラッディ・ネイと生活していた時期があった。今の白哉の地位の、皇族王をしていた」

「初耳だ・・・・・」

東洋の京楽は、初めて知ったと、興味津々だった。

(皇族だって。やばい、ボク、何か無礼なことしたかな)

(大丈夫だ春水。無礼なら俺たちの存在自体が無礼になる)

「ああ、大丈夫。お前たちのことは、親友だと思ってる」

「うん。東洋の島国に、退治屋をしている僕と浮竹。貧乏だけど、慎ましく生きている。涙を誘うねぇ」

「お前は、俺の金があるから楽な生活をできているだけだろう」

「ヒモで悪いかい!?」

(おい、こっちの春水はヒモなんだそうだぞ)

(えええ~~!かっこ悪い!ボクでもあるんだから、もうちょっとしっかりしてよ!)

「無理だよ。僕は浮竹のせいですっかりお金持ちな生活に慣れてしまった」

西洋の京楽は、悟りを開いていた。

(入れ替わったりでもしたら、こっちで生活していけそうにないね)

「まさにその通り!」

東洋の京楽の言葉に、西洋の京楽が頷いた。

「で、僕らをこんな東洋の島国に呼んだりして、何かあったのかい?」

「そうだな。夢渡りを利用して世界を渡るのは、時間制限がある」

(いや、純粋に十四郎に血を分けてくれたことの感謝を伝えたくて)

(ああ。俺を元に戻してくれるために、わざわざ血をくれたから)

「そんなこと、お安い御用だ。同じ姿形の者が、低俗なヴァンパイアの眷属になっているなんて、放っておけなかったからな」

「うんうん」

西洋の京楽も頷いていた。

(お前に悪い気が迫っている。これはそれを受け付けないためのお守りだ)

東洋の浮竹はそう言うと、懐から片手で持てるサイズのお守りを取り出して西洋の浮竹に差し出す。

(血族にも効果はあるがあとは気の持ちよう…だ)

そう東洋の浮竹は言って、西洋の京楽を見る。

(ボクと瓜二つのキミには怒りで我を忘れないようにしてね?怒りは全てをダメにするから…)

東洋の京楽は西洋の京楽にそう言うと笑いかける。その笑い方は自分も暴走した経験があるような苦労した笑い方だ。

「ああ、ありがとう。このお守り、大切にする。とりあえず、お礼だ」

そう言って、西洋の浮竹は、アイテムポケットから大量の木苺のタルト、ケーキ、ジュースを取り出した。

「ああ、もう時間切れのようだ」

(お守りの効果、詳しく書いた紙をいれておくから)

「ありがとう」

「またね、東洋の浮竹と僕」

そう言って、西洋の浮竹と京楽は、元いた世界に戻ってしまった。

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「ねえ」

「なんだ、京楽」

「僕らも、東洋の僕らみたいに仲良くしようよ」

「すでに仲はいいだろう」

「そういうことを言ってるんじゃなくって!もう、分かるでしょ?」

「分からない」

そう言って、クスクス笑いながら、浮竹は京楽の衣服を脱がせていく。

「何、君も、その気だったの?」

「抱き合って仲を深めたいんだろう?」

「うん」

浮竹の直球の言葉は、妖艶な笑みとセットだった。

「ああ、僕たべられちゃう。始祖の君に」

「骨の髄まで、しゃぶり尽してやる」


「あ、あああ、あ!」

浮竹は、京楽に食べられていた。




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始祖なる者、ヴァンパイアハンター14

「にゃああああ」

京楽は、白猫にキスをした。

白猫はぺろぺろと応えてくれた。

白いオッドアイの猫を見て、浮竹は眉を顰めた。

「どうしたの浮竹。猫、嫌い?」

「いや、嫌いじゃない。でも、猫は寿命が短いから、飼うのはちょっと・・・・」

「じゃあ、始祖の血をあげたら?」

「猫に始祖の血が効くのか?」

「分かんない。試してみれば?」

浮竹は、指を噛み切って、血をにじませるとそれを猫の口元に持ってきた。

「にゃあん」

猫は、浮竹の怪我をした傷口を舐めるように、血を口にした。

そして、京楽の肩に乗った。

「やったー!始祖の血よ!」

ドロン。

音がして、京楽を下敷きにして、肌も露わな神々の谷間を持つ、金髪の美女がいた。

「胸が重い・・・・」

「えー。あたしの胸は、楽園よ?」

「と、とにかくどいてくれないかな」

「やーん。あたしとキスした仲じゃない?」

「京楽・・・浮気は・・・・」

怒りに震える浮竹に、京楽が首を振る。

「うわー、違う、浮竹、これは違う!」

「あら。いい男だと思ってたら、奥さんいたの」

「奥さん?誰がだ」

「だって、あなたからこの男の匂いがする」

浮竹は、真っ赤になって、美女をどかそうとした。すると、美女は神々の谷間にその手を誘導した。

「いやん、エッチ♪」

「お前は誰だ。魔女だろう」

「あら、ばれてるの?」

「魔女の使う、香の匂いがする。何より、その身に宿す魔力が尋常じゃない。人ではないのがすぐに分かる」

浮竹は、美女と距離をとる。

「あたしは、猫の魔女、松本乱菊。始祖のローデン・ファルストルを封印した始祖のヴァンパイアがいるって聞いて、魔女の代表として会いにきたの。よろしくね?」

「敵でも打とうというつもりか?」

「ううん。あたし、あの始祖嫌いだから。ちょっとあたしより見た目が若いからって、あたしのことおばさんっていうのよ、あの始祖!ほんと許せない!」

「おば・・・・」

「何か言おうとした?」

「な、なんでもない」

浮竹は、猫のように爪を尖らせた乱菊を見て、顔を青くさせた。

乱菊は猫の時のように、オッドアイだった。

銀と金の、綺麗なオッドアイだった。

「魔女の中には、瞳に力を持つ者がいる。オッドアイはその傾向が強い。乱菊、お前もそうだろう?」

「そうよ。あたしは、あたしの目で見つめた者を、自分の虜にできる。でも、あなたたち二人は、できてるみたいだから、あたしの目を見てもなんにもならないみたい」

「それはよかった」

「とりあえず、どいてくれないかな、乱菊ちゃん」

「あら、ごめんなさい。まだ名前を聞いていなかったわね?」

「俺は浮竹十四郎。お前の下にいるのが京楽春水。俺の血族だ」

「あら、お熱いのねv」

また、浮竹は真っ赤になった。

「お前のその瞳は、過去も見れるのか!?」

「そうよ。未来はほとんど見えないけど、過去はよく見るわ。あら、ホントに熱い。あなた、華奢なのにこの京楽さんって人と最後まで睦み合えるのね?」

浮竹は、ゆでダコのように真っ赤になって、乱菊の下から這い出してきた京楽を、拳で殴った。

「痛い!なんで僕を殴るの!何もしてないよ!」

「この魔女は過去を見る力がある。俺とお前がセックスしてるシーンを、見られ放題なんだ」

乱菊は、浮竹と京楽の睦み合う過去を見つめた。

浮竹の、そのけしからん色っぽさに、乱菊も鼻血を噴き出した。

「ああ、いいもの見せてもらったわ」

「勝手に過去を見るな!」

「僕は別に構わないよ?」

「俺が、嫌なんだ!」

浮竹は、乱菊に命令した。

「しばらくの間この古城にいてもいいが、過去をむやみに見ないこと!分かったな?」

「あら~。話が分かる人で助かったわ。始祖の浮竹さん?あなたの血、確かにいただいたわよ」

そういう乱菊の舌の上には、凝固された浮竹の血の結晶があった。

「この血があれば、いろんなポーションが作れそう」

魔女は、薬を作ることが多く、大半は錬金術士の資格を有している。

「あ、それはエリクサー!」

浮竹は、わざとエリクサーを乱菊に見せた。

「これが欲しいか?」

乱菊の前で、ゆらゆらとエリクサーの中身を振ってみせる。

猫の魔女だけあって、じゃれついたように反応した。

「もらい!」

口で、エリクサーをくわえて、乱菊はエリクサーを大事そうに神々の谷間に入れた。

「売れば大金持ちよ!」

「ちなみに、そのエリクサーは俺が作った。大人しくしているなら、このミスリルランクの錬金術士としての腕を、見せてやらんでもない」

「ええ、マジなのそれ!みたい、みたいわ!ミスリルランクなんて、この世界で五人もいないじゃないの!」

「ふふふふ・・・・・・」

浮竹は、乱菊の懐柔に成功した。

「浮竹さん、約束よ?ちゃんと、エリクサー作る場面見せてね?」

乱菊は、猫の姿になると、浮竹の肩に乗って、浮竹にキスをした。

「あ、浮竹、浮気は許さないよ」

「ただのあいさつだろう」

「そうよ。魔女の世界では、キスはただの挨拶。まぁ、唇には普通しないんだけど」

「やっぱり浮気だ!」

食ってかかる京楽を、スリッパではたいて、浮竹は寝るために寝室に戻っていった。

「しくしく・・・・(ノД`)・゜・。」

一人取り残された京楽は、涙するのであった。

----------------------------------------

まだ、魔女の乱菊が来る前の、浮竹と京楽が睦み合っていた頃。

「うふふふ。兄様素敵。兄様、兄様・・・・・・」

血の帝国の宮殿にある後宮で、千里眼をもつ寵姫に、浮竹と京楽が睦み合っている姿をイメージで分けてもらって、ブラッディ・ネイはもだえていた。

本棚には、京楽×浮竹とかいう同人誌が、置かれていた。

ブラッディ・ネイは実の兄、浮竹に固執している。

変態的な意味でも。

実の兄の情事を盗み見て、興奮していた。

「キュリア、もういいよ。ボクは、君を抱きたい」

「ブラッディ・ネイ様・・・・」

寵姫キュリアは、頬を染めて、体をブラッディ・ネイに任せた。

「兄様って呼んでいい?」

「ブラッディ・ネイ様のお好きなように・・・この身はブラッディ・ネイ様のもの。あなたが望まれるのなら、この千里眼をいくらでもお使いください」

キュリアの肩に噛みついて、吸血する。

キュリアは、その快感に頬を薔薇色に染めた。

「あああ、ブラッディ・ネイ様」

「兄様、兄様・・・ああ、愛してるよ兄様。たとえ京楽が相手でも、許してあげる。兄様が愛しているなら・・・。兄様、愛してる」

寵姫キュリアに接吻する。

甘い血の味を、キュリアにも味合わせた。

「ボクの血を飲んで、キュリア」

「はい、ブラッディ・ネイ様」

キュリアは、ブラッディ・ネイの肩に噛みついて、吸血した。


セックスの時の吸血行為は快感でしかなく、ブラッディ・ネイもキュリアも、どちらもお互いを吸血しあいながら、乱れていった。

「ああ、愛してるよ兄様。もっと、もっと乱れて?もっとボクを求めて?ああ、いいね、兄様・・・・」

「ああん」

甘い声をあげる寵姫を抱きながら、脳内では浮竹を犯していた。


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「ここでこうだ」

ボン!

錬金術士の館で、浮竹は魔女の姿に戻った乱菊の前で、エリクサーを調合していたのだが、失敗して黒こげになっていた。

せっかくの白い髪も、焦げてしまっていた。

金髪の乱菊の髪はアフロになっていた。

「神の涙というだけあって、調合が難しいわね」

「そうなんだ。成功率は5%以下。材料費が高いから、元をとるためにどうしても高くなる」

「おまけに、エリクサーを調合できる、ミスリルランクの錬金術士は世界に5人しかいないわ。浮竹さんを入れて、6人かしら」

「まぁ、俺は正式に錬金術士ギルドに登録してないからな。一応金クラスってことにはなってるらしいが」

「あら、もったいない。ミスリルクラスなら、依頼がいっぱいきてうはうはじゃないの。まぁ、金クラスでも依頼はたくさんくるでしょうけど」

錬金術士は、銅、鉄、鋼鉄、銀、金、プラチナ、ミスリルの順でランクが高くなっていく。

浮竹が装っている金クラスは、上から3つ目で、かなりの上位であるが、昔人間社会の錬金術士ギルドに登録した頃から、金クラスのままだ。

ミスリルクラスになったことを、報告していなかった。

ミスリルクラスになっていれば、ガイア王国から王宮への徴収がかかる。

そんなの、死んでもごめんだった。

おまけに始祖ヴァンパイアだと分かると、退治されそうだ。死なないけど。

「今日はこのへんにしとこう。エリクサーの材料が切れた。町に、買い出しにいってくる」

浮竹は、自分の焦げた髪を再生させて、アフロになった乱菊の髪にも血を少しだけわけてあげて、普通の髪型に戻してやった。

「あら、あたしもついていくわ」

「だめだ。お前の美貌は目につくから、認識阻害の魔法をかけなきゃいけない」

「浮竹さんは、自分にもいつも認識阻害の魔法をかけてるの?」

「ああ。京楽と冒険者ギルドに行く時とかなんかにかけてる」

「あたしも、これでも魔女よ。自分に認識阻害の魔法くらい、かけれるわ」

「じゃあ、この材料を買ってくるか?」

「うーん」

ずらりと書かれた材料に、果たしてお金はどれくらいかかるのだろうかと計算していた。

「浮竹、乱菊ちゃん、昼食の用意ができたよ」

「あら、京楽さんのビーフシチュー、おいしくて私好きなのよね」

「今日はカレーだよ」

「それもおいしそう」

「乱菊、あまり京楽を調子づかせるな。また明日もカレーになるぞ」

「あら、おいしいならいいじゃない」

「3日間、3食カレーとか体験してみろ。絶対、嫌になる」

「それはさすがに嫌ね」

「酷い!」

泣いたふりをする京楽を無視して、食堂に移動した。

テーブルの上では、おいしそうなシーフードカレーが、海鮮サラダと一緒に三人分用意されてあった。

飲み物は、最高級クラスのワインだった。

「あら、このワイン、やだ、年代ものじゃない。金貨10枚はするわよ」

「金は腐るほどある。金がなくなったら、ドラゴンを退治して素材を売りさばいて、住処にためこんだ金銀財宝もいただく」

「やだ、鬼畜だわ」

「まぁ、性格の穏やかなドラゴンは倒せないから、金銀財宝を奪うだけになる時が多いが」

「やだ、ドロボーだわ」

「乱菊ちゃん、それ浮竹には全然ダメージにならないよ。浮竹、楽しんでるから」

浮竹は、くつくつと笑った。

「反応が新鮮で面白い。魔女の友人なんてできるとは思わなかった」

「あら、あたしもヴァンパイアに友人ができるとは思わなかったわ」

「僕も、その中に入ってるよね?」

「あら、京楽さんはただの知り合いよ」

「酷い!僕とのことは遊びだったのね!」

泣きだす京楽を無視して、二人はカレーを食べだした。

「あら、おいしい。隠し味に、人間の血を使ってるでしょ?」

「なんでわかったんだい?」

「あなたの過去を少し見たの。浮浪児の少女から、注射器で血を抜いて、金貨を10枚握らせているシーンが浮かんだわ」

「京楽、カレーにまた人間の血を混ぜたのか」

「ごめん、いつもの癖で」

「魔女には、口に合わないだろう?」

「別に大丈夫よ。魔女の中には、処女の血が長生きの否決になるって、ヴァンパイアみたいに襲って血をぬいたりするバカもいるくらいだし。人間の血を好むはずのヴァンパイアと一緒にいれば、自然と血を口にするときもあるでしょうし」

「なんていうか、心が広いな。嫌いじゃない」

「あら、嬉しいわ。あたし、浮竹さんのこと、けっこう好きよ?」

「俺も乱菊のことは、けっこう好きだ」

「浮気はだめだよ!」

二人は、顔を見合ってクスリと笑った。

「あくまで、友人としてだ」

「そうよ。血族のいる始祖ヴァンパイアに惚れるほど、愚かじゃないわ」

カレーとサラダを食べ終えて、浮竹と京楽と乱菊の三人で、町に買い出しに出かけた。

食材は戦闘人形が買ってきてくれていたので、主に錬金術の材料になるものを買い漁った。

魔法屋で、浮竹はわけのわからない古代の魔法書を、金貨4枚で購入していた。

「水虫が早く治る魔法だそうだ。民間魔法の一つだな」

浮竹は、宝箱のミミックに齧られて倒して魔法書を手にする以外にも、魔法や呪術を集めている。民間魔法は生活の中にある魔法であって、普通の攻撃魔法などのように、伝えられていかない。

呪術も同じで、同じ呪いをしないようにと、呪術を記した古文書がたまに発見されるくらいだ。

浮竹は、大金をはたいて古文書や古代の魔法書を買い漁る。

長い時間を生きていると、趣味も変な形になってくる。

「あ、これもいい」

「浮竹、それ水虫を感染させる魔法だよ。誰にかけるの」

「京楽に」

「酷い!僕ってモルモット?」

京楽は、浮竹から水虫を感染させる魔法書をとりあげて、浮竹の背では届かない棚の上に置いた。

「まったく、浮竹は変な魔法ばかり欲しがるんだから」

「むー」

浮竹は、ふてくされた。

でも、他に4つ魔法書を買い、古代の魔道具を3つほど買って、魔法屋を後にした。

「浮竹、いつまですねてるのさ」

「ふん」

「帰ったら、プリン作ってあげるから」

「プリン!約束だぞ?」

浮竹の機嫌はすでに直っていた。

戦闘人形はある程度のデザートは作れるが、プリンやらアイスクリームは作れなかった。

浮竹はスイーツが大好きだ。

以前、レストランで生まれて初めてプリンを食べて、感動していた。

京楽は、浮竹を喜ばせるためにレシピを取り寄せ、最近ようやく納得のできる代物が作れるようになったのだ。

結局、魔法屋で金貨40枚を使った。

「浮竹さんって、金銭感覚ずれてると思うの。金貨5枚あれば、一家四人が一カ月は楽に生活できる値段だわ」

浮竹は、もっていた魔法書やらをアイテムポケットに収納した。

「そのアイテムポケット、いいわね」

「魔法道具屋で、金貨100枚で売ってるぞ」

「高すぎるわよ」

「そうか?」

「まぁ、浮竹は収集物に金をかけるの好きだから。金持ちだし。僕も浮竹にいつも買ってもらって・・・・・・はっ、僕って、ヒモ?」

「ヒモね」

「ヒモだな」

京楽は、二人の反応にズーンと落ち込んだ。

「ヒモでもいいじゃないか、京楽。俺は、ヒモでもお前を愛してるぞ」

「こんな往来でラブシーンかますの?」

「はっ、ここは古城の外だったな」

「認識阻害の魔法がかかっているとはいえ、目立つから駄目だね」

そのまま、3人は錬金術士ギルドでエリクサーの材料をいくつか買い、市場でプリンの材料をかって、古城に戻った。

「見てくれ。新しく習得した暖かい空気を出せる魔法なんだが、髪を乾かす時なんかにいいと思わないか?」

浮竹が魔法を使うと、熱風とまではいかなかったが、温かい風がでてきた。

「お、その魔法いいね。寒い時なんかでも使えそうだ」

「あらほんと。髪を乾かすのに便利そうね」

「買って正解だった。民間魔法の中には、こんな風に役立つ魔法もあるから、魔法収集は止まらない」

浮竹は、古今東西の魔法書を買いあさり、ほとんどを会得していた。

火属性の魔法が得意だが、全属性の魔法を使える。聖属性の魔法は苦手であるが。

禁呪といわれる魔法にも、手を出していた。

禁呪の魔法は、威力がけた違いなので、いつもは封印している。

ちなみに、始祖魔女ローデン・ファルストルを封印した魔法は禁呪の魔法の一つであった。

浮竹がその気になって、禁呪を使えば、こんな古城は跡形もなく消しとぶだろう。

今日の夕食のメニューは、ピザにポテトフライ、唐揚げ、プリンだった。

「うーん美味しい!カロリーめちゃ高そうだけど、止まらない!」

戦闘人形に、人間世界のジャンクの食べ物のレシピを渡して、作らせたものだった。

「ピザは、チーズがうまいな。それにプリンもある」

「約束だからね」

夕飯ができるまでの間、浮竹は乱菊と錬金術について語っていた。

魔女と錬金術は切っても切れない仲だ。

乱菊自身、鋼鉄クラスの錬金術士だった。

夕食を食べ終わり、風呂に入って三人が今後のことについて話していた。

「エリクサーの材料に、世界樹の雫がいる。S級ダンジョンの深層部でしか手に入らない。まず今市場には出回ってないな」

「じゃあ、とりにいく?」

「とにりにいこうよ」

乱菊がまずとりにいくといって、次に京楽がとりにいくことを承諾した。

それから数日がすぎた。

浮竹の元で、乱菊は錬金術の腕を磨いていた。銀クラスまで腕があがっていた。

「ふう、今日はここまでにしよう」

「ありがとう浮竹さん。もう、師匠ね。浮竹師匠って呼ぼうかしら」

「普通に浮竹でいい」

その日の夜。

「乱菊、S級ダンジョンのモンスターは倒せるか?」

「力不足だったら、後ろからついていくでいいわよ?」

「乱菊ちゃんの身は、僕が守ろう」

「あら、嬉しい」

「乱菊・・・・その、今夜はその」

「あー、そういうことね。あたしは3階のゲストルームで寝るし、二人についての過去は覗かないって約束したから、早めに休むわ」

「すまん」

「もうあたしがここにきて半月ですもんね。そりゃ、我慢も限界になるでしょ」

京楽と浮竹は顔を見合わせあって、赤くなるのであった。


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「ああっ!」

浮竹は、乱れた。

数日に1回は必ず睦み合うのだが、乱菊が来てから一度も肌を重ねていなかった。

「浮竹のここ、きゅうきゅう絞めつけてくる」

「やっ」

最奥を抉られて、浮竹は啼く。

「あああ、あ!」

京楽の熱は、やや乱暴に浮竹の中を出入りした。

「気持ちいいかい?」

「あ、気持ちいい・・・血を、血を吸ってくれ」

吸血もされていなかった。

京楽は、肩にもちあげた浮竹の太ももに噛みついて、吸血した。

「ああああ!」

びくんと浮竹の背がしなり、浮竹は精を吐き出していた。

「乱菊ちゃんが同じ古城にいると思うと、燃えるね」

「やあああ、あ、あ!」

「十四郎は、燃えない?」

「あああ、背徳感が、する、ああ!」

ずちゅりと中を犯していく熱に、思考まで侵されていく。

「乱菊ちゃんもかわいいけど、やっぱり浮竹が一番かわいくて美人だよ」

「やあっ」

「僕の精子、たっぷり受け止めてね?」

「ああああ!!!」

京楽は、猛った己のもので、浮竹を貫いた。

最奥までくると、びゅるびゅると、最近溜まっていたので濃い精子を吐き出していた。

「ああ、うあああ」

浮竹も、京楽の手の中に白い液体を吐き出していた。

「んん・・・・」

何度も口づけを交わし合い、お互いに吸血を繰り返した。

そんな夜も更けていく。

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始祖なる者、ヴァンパイアハンター13

ローデン・ファルストルは、始祖の魔女。

始祖には死がない。不老不死である。

「厄介な・・・・」

目覚めた浮竹が初めて口にしたのは、そんな言葉だった。

ブラディカの言葉を受けて、目覚めた京楽と浮竹は、早速血の帝国へと出発した。

一方、血の帝国では、始祖の魔女ローデン・ファルストルが攻めてきたと、ブラッディ・ネイが指揮をとり、騎士団を総動員して、攻撃を開始していた。

ローデンは、まず最初に強敵である血の帝国を自分のものにしようとしていた。

ブラディカの夢渡り、夢で告げられた言葉と映像を信じて、浮竹と京楽が見たものは、始祖の魔女ローデンに苦戦する、血の帝国の騎士団の姿だった。

「ブラッディ・ネイ。戦況は?」

「兄様!相手は始祖の魔女といっても一人。今は旗色が悪いが、魔力を消耗させ続ければ、こちらも好機は十分にあると思う」

「俺と京楽は、白哉と恋次の元に向かう。お前には、ローデンの操る部隊を叩いてほしい。ローゼンそのものは俺がなんとかする」

「兄様が、ボクを頼りにするなんて珍しいね」

「時間がない。俺と京楽は、もう行くぞ!」

「兄様も気をつけて!」


白哉は、血を流して傷ついていた。

傷は再生していくが、再生を始めた傍からまた怪我をした。

「恋次、しっかりしろ、恋次!」

「愛しの白哉。殺して食ってやる。俺の血肉にする」

「恋次!」

白哉は、恋次が始祖のカイザードラゴンであることを念頭にはしていたので、千本桜を解放して、血の花びらで、数億の刃として恋次に向けた。

「ぎゃああああああ!!」

恋次が悲鳴をあげる。

その悲鳴に、びくりとなって、千本桜の刃を止める。

「白哉さ・・・俺を、殺してくれ」

「何を言っておるのだ、恋次!」

「始祖の魔女に洗脳された。俺は殺しても死なない。一度死ねば、タトゥーを刻んでまた再生する。その時には、きっと洗脳はとけている・・・・」

「恋次、恋次!」

恋次は、ついに人型からカイザードラゴンの姿に戻ってしまった。

「ぎゃおおおおおおお!」

「恋次!!」

白哉は、怪我を再生させた恋次に、魔力をこめた刃を向ける。

「白哉!始祖の洗脳は、俺がなんとかする!」

「浮竹!それに京楽も・・・・式を飛ばしていないのに、何故ここが?」

「ブラディカの言ってた通りだね。白哉クンと恋次クンが危ないって、浮竹の血族であった女性が知らせてくれたんだよ」

「何か分からぬが、始祖である浮竹に頼む。恋次を、恋次を助けてやってくれ」

「もちろんだ、白哉」

浮竹は、始祖の血の刃で、カイザードラゴンの鱗を斬り裂く。

「ああああ、痛い、痛い!」

「恋次!」

「白哉クン、ちょっとごめんね」

京楽が、白哉の背後から、首の根元に手刀を入れて、白哉を気絶させる。

「浮竹、これで思う存分暴れていいよ」

「すなまい、京楽!」

浮竹は、炎の精霊フェニックスを召還した。同時に、最近やっと手に入れたイフリートを出す。

「炎の精霊たちよ!燃やし尽くせ!」

「キシャアアアアアアア!」

「シャオオオオオオオ!」

二匹の精霊は、雄叫びをあげながら、カイザードラゴンに巻き付いた。

「熱い、熱い!」

カイザードラゴンは、氷のブレスを出す。

だが、二匹の精霊の炎の方が上だった。

黒こげになりながら、恋次は暴れまわった。宮殿の外であったが、その暴れ具合に宮殿の建物にも被害が出始める。

「浮竹、トドメを!」

京楽からの血の刃を受け取って、浮竹は瞳を真紅に輝かせた。

「ヘルインフェルノ!」

カイザードラゴンの心臓めがけて、地獄の業火を叩きこむ。

カイザードラゴンは、煙をあげて倒れた。

守護騎士姿の人型に戻ると、恋次は目を覚ました。

大やけどを負っていたので、浮竹が指を歯で噛みちぎり、始祖の血を数滴その怪我に滴らせると、あれほど大きかった大やけどが再生して綺麗に治った。

「あ、俺は・・・・・?」

「ローデン・ファルストルに洗脳されて、白哉を殺そうとしていたんだ」

「そうだった。くそ、ローデンめ!白哉さんは!?」

ぐったりとした白哉を抱き抱えている、京楽の傍にかけつける。

「大丈夫、気を失ってるだけだよ」

「よかった・・・・。助かりました、浮竹さん京楽さん」

「洗脳は、解けたのか?」

「そうみたいっス」

「じゃあ、今回の原因である本体を叩くか!」

「そうだね」

「俺も、加わります。よくも、白哉さんを俺の手で傷つけさせてくれたな」

ゆらりと、始祖のドラゴンの力を滲ませる恋次に、京楽が圧倒される。

浮竹は、静かに恋次の肩を叩いた。

「怒りに我を忘れるな。大切な者を守りたいなら、冷静でいろ」

「はい」

「浮竹がそれを言う?怒りで血を暴走させたこと何度もあるのに」

「そういう京楽こそ、血で暴走しただろうが!」

ぎゃぎゃあ言い合いになって、恋次はほんとにこの面子で大丈夫なんだろうかと思った。


「キャハハハ!」

ローデン・ファルストルの笑い声は、苛立ちをさらに助長させるものだった。

「キャハハハ、みんなで争いあって死んじゃえ」

ローデンは幻覚の魔女。幻を見せて、同士討ちをさせていた。

けれど、ヴァンパイアは分類すると魔族にあたり、魔法に対する耐性が強い。

ローデンの力をもってしても、ヴァンパイアの騎士たちに、全てに幻覚を見せることはできなかった。

幻覚を見て仲間に襲いかかった者は、他の騎士に魔法をぶつけられて我に返る。

「一護、負傷者を運んでくれ!冬獅郎は、氷で重傷者の血を止めてくれ!」

ルキアが、傷ついて倒れる血の帝国の騎士たちを癒してく。

戦争なのだ、これは。

血の帝国に対する、侵略行為だった。

だから、いつもは肉欲の快楽にふけるだけの、ブラッディ・ネイも参戦した。

いい加減なように見えて、ブラッディ・ネイはそれでも女帝として、8千年も君臨し続けるほどの手腕の持ち主であった。

最近は白哉を摂政の皇族王としておいて、統治の右腕としていた。

「よくもボクの国を。ボクの騎士たちを・・・許さない」

ブラッディ・ネイは始祖に近い血の海を作り出し、ローゼンの手下たちから血を全て抜いて、干からびさせて殺した。

「キャハハハ!ブラッディ・ネイ、これでも攻撃できる?」

ローデンの腕の中には、ロゼ・オプスキュリテがいた。

「ロゼ!」

「ネイ様、助けて!」

「貴様、ロゼを離せ!」

「やーだよ。こんな小娘こうだ」

美しいロゼの顔を、ローデンは硫酸で焼いた。

「あああ!!!」

「やめろ!ロゼ、ロゼ!」

ローデンは興味を失ったように、ロゼを放り投げた。

ブラッディ・ネイは血を分け与えようとして、我に返る。

ロゼ・オプスキュリテなら、この程度の怪我自分で癒せる。それに本物のロゼは ボクをネイ様だなんて呼ばない。ブラッディ・ネイ様とフルネームで呼ぶ」

そう言って、ブラッディ・ネイはロゼの頭を踏みつぶした。

ぐしゃりと音を立てて、ロゼの体が崩壊していく。

「やーだ、ブラッディ・ネイってば、本物ならどうするの?」

「ボクの寵姫たちには、僅かだけどボクの血を与えている。そう簡単に、捕まったりするもんか!」

ブラッディ・ネイは、今は血族をもっていない。

2年前に死去した、ブラドツェペシュを血族としていたが、彼女は死んでしまった。

自分のせいで。

なので、ブラッディ・ネイは今は血族を作っていなかったし、すでに血族であった者とは盟約を破棄させた。

かわりに、寵姫たちに数滴の血を与えて、血族のような関係を与えていた。

疑似血族である。

ヴァンパイアロード以上のクラスになれば、複数の者に血を与えて血族として迎えいれられるが、今のブラッディ・ネイは浮竹の影響か、いい方向へ進んでいた。

ブラッディ・ネイはある意味色欲魔だ。後宮に10歳~15歳くらいまでの美少女を数十人囲っている。

どの寵姫もブラッディ・ネイの血を少し与えられており、普通のヴァンパイアより長生きするし、美貌を損なうこともなかった。

ブラッディ・ネイの後宮の寵姫たちは、侵略者に震えてブラッディ・ネイの後ろにいるではなく、自ら武器を手に取り、最前線で戦っていた。

ブラッディ・ネイの血を分け与えられたことで、傷の回復が早いので、騎士達よりも戦果をあげていた。

「残るはローデン・ファルストル、お前だけだ」

ブラッディ・ネイは空に浮かんでいるローゼンに、ヴァンパイアの翼を出して同じように空中に浮いた。

「ヘルインフェルノ!」

「ちょ、いきなりなんなの!」

「兄様、ボクを巻き込もうとしたね!?」

突然の攻撃に、ローゼンは驚きと共に、実の妹であるブラッディ・ネイも巻き添えにしそうな攻撃に、眉を顰めた。

「ブラッディ・ネイはゴキブリ並みにしぶとい。俺の魔法を受けて炭化しても、また別の体に転生するだけだし、問題はない」

「兄様、酷い!」

泣き真似をするブラッディ・ネイを無視して、浮竹は血の糸を作り出してローゼンを拘束すると、地面に引きずり下ろした。

「アタシを、始祖の魔女ローデン・ファルストルと知っての狼藉なの!?」

「血の帝国に攻めてくるなど、愚行の極みだな」

「そうだね」

「俺に殺させてください!」

京楽は、浮竹の拘束の血の魔法に魔力を注ぎ、ローゼンが身動きできないようにしていた。

恋次は、血走った眼で、守護騎士の剣を抜いた。

「ま、待ってよ!平和的に解決しようよ!」

恋次は、自分のドラゴンの牙で作り出した、竜の剣をもっていた。

それで、袈裟懸けにローゼンを斬った。

「何故・・・・恋次」

そこに倒れていたのは、白哉だった。

「白哉さん!?」

恋次は驚いて、浮竹の血の拘束を取り除き、怪我に浮竹から念のためにともらっていた血を惜しげもなく注いだ。

「アハハハハ、こんな簡単な罠にひっかかるなんて傑作!キミ本当に始祖竜?始祖も種族によって、こんなバカもいるんだ」

「な!」

確かに、その存在は白哉に見えた。魔力も白哉のものだったし、存在感も白哉そのものだった。

「アタシは幻惑のローデン・ファルストル。幻覚が本物にしか見えない時もある」

「では、その幻惑の魔法を呪って使えなくさせよう」

「え?」

浮竹は、持っていたエリクサーに呪詛を吹き込み、それをローデンに投げた。

「ああああ!?」

ローデンは、得意の幻惑魔法を使おうとした。

でも、足元がもつれた。

いつの間にか、浮竹が地面に始祖の血で、網のようなものを作っていたのだ。

地面に部様に転がったローデンに、呪詛を含んだエリクサーの入った小瓶はまともに当たって、中身はローデンの体を濡らした。

「いやああああ、体が、体が焼けるように熱い!」

「幻惑の魔法を使おうとすれば、地獄の業火に焼かれる呪詛をかけた。エリクサーを媒介に使ったから、エリクサーでも治せない」

浮竹は、冷酷であった。

大事な友人である白哉と恋次を傷つけ、多くのヴァンパイアを巻き込んで、攻め込んできたローデンの存在を許すわけにはいかなかった。

「あと、エリクサーの入った小瓶は2つある」

「浮竹、何気にそんなに隠しもってたの!?」

「浮竹さん、そんな神薬をほいほい使って・・・金持ちなんスね」

周囲の者の反応は微妙であったが、浮竹はさらに呪詛をエリクサーにこめて、地獄の業火で焼かれ、やけどを負ったローデンの口をあけて、中身を無理やり飲ませた。

「ぐぇっ、げほっ、げほっ」

「血の帝国にいる限り、魔法は使えない呪い」

「くそがああああ!ぎゃあああああ!!」

ローデンは魔法で脱出しようとして、全身が針で刺されたような痛みを覚えた。

「痛い痛い痛い!始祖魔女に、なんてことをするんだ!」

「そう。お前が始祖であることが、一番大変な理由なんだ。始祖である限り死なない。死んでも肉体は再生するか、転生する。お前の場合、後者だろう。転生を繰り返している」

「何故、知っている・・・・・」

「俺は始祖ヴァンパイア。他の始祖の情報を集めていても、不思議ではないだろう?」

「ぎゃあああああ、痛い、痛い!熱い!」

二重の呪いで、ローデンは息も絶え絶えだった。

「いいさ、こんな体、捨ててやる・・・・!?」

「俺の特別な血を混ぜておいた小瓶を、浴びただろう。あれには、転生を阻害する呪詛をかけておいた」

「キャハハハ!アタシを、それでやっつけたつもり!?アタシは始祖!転生の阻害なんてされても、その程度の呪詛なら自分で解ける!」

「だから、お前を封印する」

「え、できるですか、浮竹さん」

恋次が、驚いた顔で浮竹を見ていた。

「できなきゃ、この始祖はまた血の帝国にくるだろう?」

「さすが僕の浮竹。惚れ直しちゃう」

「ローデン・ファルストル。幻惑の魔女にして始祖の魔女よ。始祖ヴァンパイア浮竹十四郎が命じる。永久(とこしえ)の封印の眠りにつけ!」

渦巻く魔力が、ローデンを満たしていく。

「いやだ、アタシは世界を手に入れるんだ!こんな、血の帝国のヴァンパイアの始祖如きに!」

ザシュリ。

京楽の剣が、ローデンの腹部を貫いていた。

「僕の浮竹を侮辱するのは、許さないよ」

「アタシは、始祖の魔女。転生を、転生を・・・・・・ぎゃああああああ!!覚えてろ!次、目覚めた時がお前の最期だ!」

魔法でなんとかしようとするローデンが、体中に針をさされたような痛みに転げまわる。

「エターナルアイシクルワールド!」

始祖の魔女は、始祖ヴァンパイア浮竹の手によって、封印された。

その体は巨大な氷の塊に封印された。

始祖である、浮竹が生き続ける限り、封印は解けない。

「そうだ、白哉さんは!?」

「ルキアちゃんのところに預けてきた。今頃目を覚ましている頃だよ」


「ルキア、ここは?」

「あ、兄様、目覚められましたか。負傷者を集めたテントです」

「私は行かねば」

「あ、兄様どこへ!?」


白哉は、ちょうど浮竹が氷のローデンを氷の中に封じ込めるのを見ていた。

「白哉、もう大丈夫なのか?」

「元々、大した怪我は追っておらぬ。それより恋次!」

「はい!」

怒られると思っていた恋次は、白哉の黒曜石の瞳が、優しく自分を見ているのに気づき、抱き着いた。

「好きです、白哉さん!」

頭をはかたかれていた。

「その、すまぬ。お前を傷つけた」

「いや、俺の方こそ、傀儡になっていたとはいえ、自分が守護すべき白哉さんに傷を負わせた」

「もう、再生している」

「そうみたいっすね」

ふわふわと、薔薇の花びらが降ってきた。

それは一枚の手紙になった。

「ブラッディ・ネイの薔薇の魔法だ。戦利を祝って、祝賀会をあげるそうだ」

「浮竹、参加するの?」

「いや、古城に戻る。あの性悪の妹の傍にいえると、またロゼ・オプスキュリテに中身を入れ替えられて、貞操の危機になる」

「帰ろう浮竹。ブラッディ・ネイの毒牙のかかる前に、帰ろう」

せかす京楽を先に空間転移魔法で古城に帰して、浮竹は白哉と恋次と別れをすまし、旅立つ前にルキアと一護と冬獅郎の元を訪れた。

「今回は、活躍したようだな」

「はい。何人が、敵の将を討ち取りました」

一護の言葉に、冬獅郎が浮竹をみる。

「一番は、お前にもっていかれたみたいだがな」

「ローデン・ファルストルは始祖の魔女だ。まだ冬獅郎君、君では力不足だ」

「そうだな。俺はもっと強くなる。雛森を守れるくらいに!」

「雛森?」

「あ、浮竹殿。私の身の回りの世話をしている、雛森桃という少女の名です。冬獅郎に一目ぼれしたみたいで、冬獅郎もまんざらでもないようで・・・・」

「すみにおけないな、冬獅郎君も」

クスリと笑う浮竹に、舌を出して、冬獅郎は走り去った。

「あの氷の封印、浮竹さんが生きている限り続くんすよね?」

「そうだ」

「じゃあ、もうこんな戦争はおきないですよね」

「それは分からない。世界には他の始祖もいる。それに最近、始祖魔族が活動をはじめたという噂を聞いた」

「俺らも、神族にとっては魔族なんすよね?」

「ああ。でも、本当の魔族はもっと闇が濃い」

「浮竹殿は、祝賀会には参加しないのですか?」

「ああ、俺はもう戻るよ。京楽を先に行かせてしまったし」

「ではまた、古城で。また遊びにいきます。なぁ一護、冬獅郎・・・・と、冬獅郎は自分の部屋に戻ってしまったか」

「では、また」

浮竹は、ヴァンパイアの翼を広げると、広い宮殿の空を飛び、空間転移魔法陣がある場所まできた。

「先に帰ってなかったのか」

「君が、ブラッディ・ネイに何かされるんじゃないかって心配で」

「ブラッディ・ネイも、さすがに祝賀会で何かをしかけてくるほど、性格は悪くない・・・・と、言いたいんだが」

浮竹の元に、薔薇の花びらが降ってきた。

それはお風呂グッズになった。

薔薇の魔法は、ブラッディ・ネイだけのオリジナルの魔法だ。

「風呂グッズ。また、これか」

「せっかくだし、使っちゃおう」

「俺は気乗りしないんだが」

「ここに説明書あるよ。何々・・・ただの薔薇の香りがするだけで、他には何もない・・・だってさ」

「ブラッディ・ネイだしなぁ」

「まぁまぁ、たまには妹を信用してやりなよ」

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結局、ブラッディ・ネイの薔薇のお風呂グッズを使って、二人でお風呂に入った。

もみほぐし券というのを使うと、顔が薔薇で体がマッチョな謎の生物が出てきて、浮竹と京楽の体をマッサージしてくれた。

「ああいい、そこそこ」

「うわぁ、きもちいいねぇ」

二人は、最後にサウナに入り、かいた汗を水風呂で流すと、二人して腰に手をあててフルーツ牛乳を一気飲みした。

パンツ一丁で。

浮竹は服を着たが、京楽はパンツ一丁のままだった。

「服を着ないのか、京楽」

「喉が渇いたんだ。君の血を飲みたい・・・・・・あと、ね?」

硬いものが浮竹の腰に当たった。

「また盛ってるのか」

「うん。君の裸を見てたら、むらむらしてきちゃった」

「今度から、一緒に風呂に入るのはやめよう」

「ああああ!僕の楽しみをとらないでよ、浮竹!」

「それでするのか、しないのかどっちだ」

「する!」

京楽は、浮竹を抱き上げて寝室まで運んだ。

「薔薇のいい匂い・・・・・・」

浮竹の長い白髪に顔をおしつけて、京楽は薔薇の香りを楽しんだ。

「お前の薔薇の香りもすごいぞ。多分、精液もまた薔薇の味になってるんだろうな」

「確認しよう」

「ちょ、春水、いきなり・・・ああっ!」

浮竹の衣服を脱がすと、京楽は浮竹のものを口に含んだ。

「薔薇の味がする」

先走りの蜜が、すでに薔薇の味をしていた。

「やっ、しゃべるなら、舐めるな!」

「やだ。舐める」

犬がバターを舐めるように、ペロペロと舐め続ける京楽の行為に我慢できなくなって、浮竹は京楽の口の中に精液を吐き出していた。

「薔薇の蜜みたい。甘い」

「ばか!」

起き上がろうとする浮竹を押し倒して、通販で買ったローションを手に取る。

「今日はローションなのか」

「こっちのほうがベタベタしないから」

「んっ」

京楽は、浮竹の胸の先端を口に含むと舌でつついた。

「あっ」

それに敏感に反応する浮竹がかわいくて、もう反対側をきゅっと抓ると、浮竹はびくりと体を震わせた。

「やっ」

「いやなの?もうここ、こんなになってる」

触られてもいないのに、浮竹のものは勃ちあがっていた。

「や、見るな」

「エロい浮竹、かわいいからもっと見せて?」

京楽の目を塞いで、浮竹は噛みつくようなキスをした。

「んんっ」

京楽は浮竹の舌を絡めとった。

舌を引き抜かれると、つっと銀の糸が垂れた。

「あ!」

体内に、京楽の指が入ってくる。

もう慣れてしまったはずの行為だが、恥ずかしさは今でもある。

「んん!」

前立腺を刺激されて、浮竹のものはだらだらと先走りの蜜を零していた。

目を閉じる。

ぐちゃぐちゃという水音が耳に響いた。

「あああ!」

指を引き抜かれて、京楽のもので貫かれると同時に、浮竹は瞳を真紅にして、京楽の肩に噛みついて、吸血した。

「ん、きもちいいけど、どうしたの、十四郎?」

「喉の渇きを覚えた。こんなの、久方ぶりだ」

「もっと飲んでいいよ?」

「だめだ。お前は俺と違って、人工血液をすぐに血液に転換できない」

「じゃあ、僕が君の分まで、吸血してあげる」

ズッと、京楽は浮竹の中に打ちこんだ楔を動かす。

「あああ!!」

同時に首に噛みつかれて、吸血されていた。

「ああ、ああ!あ!」

浮竹は、シーツに白い精液を飛び散らせていた。

ごりごりと、奥を抉ってくる京楽の熱を締め付ける。

「んっ、浮竹、そんなに締め付けたら・・・・」

濃い精子を、京楽は浮竹の胎の奥に出していた。

浮竹がペロリと自分の唇を舐める。

その妖艶な姿に、京楽はゴクリと喉を鳴らした。

「もっとだ、春水。もっとお前をくれ。お前の精液で、満たして?」

「好きなだけ、あげるよ、十四郎」

奥をごりごりと削りあげれば、浮竹はオーガズムでいっていた。

「あ、あ、そこいい!もっと、もっと!」

「く、またそんなに締め付けて・・・・僕のほうがもたないよ」

最奥で、再び京楽は熱を弾けさせていた。

浮竹が唇をまた舐めた。

「もっと・・・・」

「ん、これが最後だよ。受け取って!」

「ああああああ!!!」

前立腺をすりあげて、奥をごりごりと抉られて、浮竹はオーガズムでいっていた。

もう、出すものがないのだ。

ぷしゅわああと、透明な潮をふいた。

「ああああ!!」

「女の子みたいだね、十四郎」

いっている最中なのに、京楽は浮竹の肩に噛みついて、吸血する。

二重の快感に、浮竹は意識を失っていた。


「ん・・・・・・」

「気が付いた?」

「また俺は、気を失っていたのか」

「水?人工血液剤?それとも人工血液?それとも僕?」

「お前で」

「まじで」

「そんなわけあるか!人工血液でいい」

京楽に思い切り血を吸われたせいで、軽い貧血になっていた。

人工血液をワイングラスに入れて、飲みほしていく。

輝く赤い雫は、本物の血そっくりであるが、成分は同じだが、人の血より甘くできていた。

血の帝国のヴァンパイアは、皆、人工血液か人工血液剤で生きている。

人間の血のほうが不味いのだ。

ワインや料理に入れて、隠し味に人の血を入れることはある。

浮竹や京楽も、そうして時折人の血を口にすることはあった。

「腰、大丈夫?」

「大丈夫じゃない。加減を考えろ」

「だって君がかわいくおねだりしてくるから」

「ああもう、その話はなしだ」

「明日、S級ダンジョンにでも行こうか。エンシェントミミックを狩りに」

「ミミックだと!?」

とたんに瞳を煌めかせる浮竹に、京楽は機嫌を損なわずに済んだと、安堵した。

---------------------------------

「にゃあああ」

「おや、かわいい猫ちゃんだね。迷いこんできたのかい?」

「にゃああ。みゃあああ」

「ここは怖いヴァンパイアの住む古城だよ。人間の世界にお帰り」

白いオッドアイの猫は、京楽の肩に乗った。

「仕方ない、古城においで?」

「にゃあ」

その白い猫が、猫の魔女と呼ばれる、松本乱菊だと、京楽はまだ知らなかった。








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始祖なる者、ヴァンパイアハンター12

ブラディカ・オルタナティブは、京楽に口づけた。

口づけられた京楽は、眠りの海に旅立つ。

「ブラディカは、京楽、あなたも愛してる。浮竹が愛する者は、ブラディカも愛してる」

夢の中で、京楽は浮竹とブラディカと一緒に暮らしていた。

幸せだった。3人の子供に恵まれて、どちらがどちらの子なのか分からなかったが、そんなことはどうでもいいほど幸せだった。

「起きろ、京楽、おい、京楽!」

「うーん、いい夢を見ているんだ。もう少し寝かせて」

「京楽、それはブラディカが見せている夢だ。起きろ!」

バシンと頭を叩かれて、京楽はゆっくりと目を開けた。

浮竹の隣で、ブラディカ・オルタナティブは浮竹の腕を抱きしめていた。

「浮竹・・・浮気は許さないよ」

「ブラディカ、いい加減離してくれ」

「いや。ブラディカは浮竹のもの。浮竹もブラディカのもの」

ブラディカは、妖艶な美女であったが、口調は幼かった。自分のことをブラディカと呼んだ。

「キスしてくれたら、手を離してあげる」

浮竹は逡巡してから、ブラディカの額に口づけた。

「唇がいいのに」

「ブラディカ、簡便してくれ。2千年前、休眠したまま眠り続けた俺を見限って、お前は違うヴァンパイアロードの男と結婚して、二人の子をもうけていたじゃないか」

「あんなの、ブラディカにとっては遊び。二人の子ももう死んでしまった。ブラディカは浮竹の血族。夢から覚めたあなたを迎えにきた」

「もう、120年以上も前に起きてる。何より、お前は死んだはすだ。ブラディカはヴァンパイアハンターに殺された」

「ブラディカは今ここにいる。ヴァンパイアハンターには、確かに殺された。でも、浮竹の血族であったせいで、長い休眠に入り、傷を癒していた」

「ここにいるブラディカは反魂ではないと?」

「そう。ブラディカは本物」

「じゃあ、血族を解く。お前との血の契りを破棄する」

ブラディカは、見る見るうちに涙をためて、泣きだした。

「浮竹が意地悪する!京楽、助けて!」

泣きじゃくる美女を、京楽は庇った。

「浮竹、血族なんでしょ。もっと優しくしてあげなよ」

「俺の血族は、京楽、お前だけでいい」

「僕はそれでもいいけど、せめてもう少しだけこのブラディカって子に優しくしてあげて?僕はもう浮竹の血族だから分かるけど、血族を解かれて血の契りを破棄されるのは、すごく悲しいことなんだよ」

「ブラディカ、すまない。俺は、今は京楽だけを愛してるんだ」

「ブラディカは、それでも構わない。浮竹が京楽だけを好きでもいい。でも、ブラディカも浮竹のことが好き。愛してる」

「なんかこれ・・・・泥沼の、三角関係?」

京楽の言葉に、浮竹は頭を抱えた。

「もともとの原因は、ブラディカを血族にして、死んだ確認をせずに休眠に入ったままで、覚醒したら京楽を血族にした俺が悪いのか・・・・」

「浮竹、血族なら死んでるか生きてるか分かるんじゃないの?」

「ブラディカは休眠に入っていたんだろう?」

「うん。ブラディカは眠っていた」

「休眠は限りなく死に近い。死んだと判断しても仕方ない」

浮竹は、ブラディカを血族から外すことを決めた。

「俺は、血族は常に一人だけだ。俺はブラディカ、お前をもう愛していない。血の契りを破棄する」

「酷い!ブラディカの心を弄んだの!?」

「お前だって酷いじゃないか!俺がいるのに、夫を迎えて子供を二人も作って・・・浮気、だろう」

びくりと、ブラディカは浮竹の言葉に反応する。

「ブラディカ、あの時は夫を好きだったの。浮竹も好きだった。それじゃだめ?」

「だめだ。誰か一人にしないと、浮気になる」

「ブラディカ、浮気、してたの。ブラディカ・・・・浮竹に必要なくなるなら、死ぬ」

ブラディカは、血の刃で作り出したもので、自分の心臓を突き刺した。

「ブラディカ!」

浮竹は、指を噛み切って、その傷ついた心臓に、血を滴らせようとする。

それを、京楽が阻む。

「どうしてだ、京楽!」

「浮竹は僕を選んでくれたんでしょ?ここでブラディカを助けたら、また三角関係の泥沼だよ」

京楽の静止をふりきって、浮竹はブラディカの始祖の血を癒しの力として分け与えた。

「だからといって、血族をむざむざ死なせるわけにもいくか!」

「そう。じゃあ、僕は浮竹の元から去るよ?」

「嘘だ、京楽!」

「もう、君には愛想がつきた。僕は、君の血族であることを破棄するよ。ばいばい、浮竹」

「待ってくれ。京楽、京楽!」

涙を流す浮竹は、これが現実であるわけがないと、歯ぎしりする。

「こんなことは起きるわけがない。京楽は俺を愛している。俺も京楽を愛している。ブラディカ・オルタナティブ。夢渡りにして、夢を操る魔女の末裔よ。俺は目覚めるぞ!」

カッと、浮竹の体が光った。

ゆっくりと目を開けると、心配そうに覗き込んでくる京楽がいた。

「ブラディカは?」

「隣で、寝てるよ」

ふりあげた拳は、けれど女性であるのだしと、力なく降ろされる。

元を言えば、確かに浮竹が全部悪いのだ。

ブラディカを血族にしなければ、こんなことにはならなかった。

「ブラディカ。ここに、血族の破棄を盟約する」

ブラディカは目覚めると、涙を流して京楽に泣きついた。

「こんなに愛してるのに・・・浮竹、酷い」

「酷いのはどっちだ。こんな悪夢を見せて・・・・」

「ブラディカ、悪くないもん!悪いのは、全部浮竹でしょ!」

パン。

乾いた音が、鳴り響いた。

「浮竹のせいにしなさんな。浮竹がいながら、夫をもって子を二人ももうけて。浮気していたのに、それも全部浮竹のせいにするの?」

「京楽、酷い・・・・」

ブラディカは、京楽に頬を叩かれて、血を暴走させた。

「こんなの、ブラディカは望まない。みんな、ブラディカのこと愛してくれた。ブラディカを愛さない存在なんていらない!」

血の刃が、浮竹と京楽を襲った。

二人は、自分の血のシールドでそれを防ぐ。

「ブラディカ・オルタナティブ。血族の主に向かって攻撃することは、何を意味するのか分かるな?」

「あ・・・・。やだ、ブラディカ死にたくない!ブラディカは、浮竹の血族として永遠を生きるの。そうじゃないと、ブラッディ・ネイからもらったこの命の意味が!」

「ブラッディ・ネイ?ブラッディ・ネイがお前に何かしたのか!?」

「ヴァンパイアハンターに殺された後に、ブラディカに血をくれた。おかげで、ブラディカは一命を取り留めた」

「ブラッディ・ネイ・・・・余計なことを」

「ブラディカはもう、この世界に絶望した。もう、こんな世界、いらない」

「そうか。お別れだ、ブラディカ・オルタナティブ」

ゆっくりと、浮竹は始祖の血の刃で、ブラディカの心臓を突き刺していく。

「愛していた、ブラディカ。俺の手で、せめて眠ってくれ」

浮竹は、ブラディカを強制的に休眠状態にさせた。

殺すことはできなかった。

かつて愛した女性を、手にかけることは、とうとう最後まで無理だった。

「いい夢を。ブラディカ」

浮竹は、ブラディカの体を、青い薔薇の入った棺に入れて、そっと蓋を閉じる。

浮竹が生き続ける限り、ブラディカは休眠状態のまま生きるだろう。

それは、限りなく死に近いが。

「浮竹・・・・」

「今は、何も言わないでくれ」

浮竹は、京楽に抱き着いて、涙を零した。

こんな結末しか用意できなかった自分を、恥じた。

「浮竹は、何も悪くないよ。血族のまま眠り続けるなら、きっといい夢を見ているさ。夢渡りの
夢を操れる魔女の末裔でしょ?」

「ああ」

「きっと、いい夢を見て眠っているよ」

「京楽、俺はもう、本当にこれが最後だ。血族にするのはお前が最後」

「うん。僕以外に血族を作ったら、僕がその血族を殺すから」

京楽は、ブラディカが女でなければ、すでに殺していただろう。

夢渡りの魔女は、永遠に近い眠りについた。

それを脅かす者は誰もいない。

「ブラディカは青い薔薇が好きだった。せめて、棺を青い薔薇で満たしてやりたい」

「青い薔薇?そんなの、存在するの?」

「S級ダンジョンの26階層、薔薇の洞窟に咲いている」

「じゃあ、そこに青い薔薇を摘みにいこう」


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さすがにS級ダンジョンなだけあって、出てくるモンスターも強かった。

5階層、10階層、15階層とボスを倒して、出てきたお宝や、素材として売れるモンスターだけを選んでアイテムポケットにいれる。

5階層はケルベロスが3体。10階層はリッチが5体。15階層はワイバーン5体だった。

20階層に続く階段を、京楽は浮竹と二人で降りていく。

19階層は、城のダンジョンだった。

複雑に入り組んだ地形を、マッピングしながら進んでいく。

「あ、宝箱!」

「ちょっと、浮竹!」

「もがーー!かじられるううう」

普通のミミックではない、エンシェントミミックだった。

がじがじと浮竹の上半身をかじっているが、殺すつもりはないのか、はてまた殺すまでの威力がないのか、牙でがじがじと浮竹の上半身をかじるだけだった。

京楽に助け出されて、浮竹は魔法を唱える。

「アイシクルランス」

氷でできた槍に貫かれて、エンシェントミミックは宝物を残して消えてしまった。

「ドラゴンウルフの毛皮で作られたコートか・・・・」

ドラゴンウルフは、狼系モンスターの最上位である、氷の精霊フェンリルの次に強いモンスターだ。

「ドラゴンウルフ?聞いたことないね」

「古代の生物だから。地上では絶滅してしまった。S級ダンジョンとかに少しだけ生息している」

「ふーん。そのドラゴンウルフの毛皮はすごいの?」

それを聞くと、浮竹は目を輝かせた。

「耐熱性と氷の耐性に優れていて、ドラゴンのブレス程度なら弾ける。それに、毛皮はキラキラしていて、星が瞬いているようで綺麗なんだ。防寒装備にもなるし、軽いし、とにかくいい装備なんだ」

「じゃあ、浮竹が着て?」

「でも、俺は別にこんな装備なくても、結界でドラゴンのブレスくらい反射できるし」

「その星の瞬きのように、毛皮がキラキラ光ってるの、気に入ったの。浮竹が着たら、絶対似合う」

「そ、そうか?」

「うん、着てみてよ」

浮竹は、京楽に勧められて、着てみた。

でろでろでろ~~~。

音楽が流れて、装備が呪われていたことが分かった。

「ああ!呪われていて脱げない!」

「そんなことだろうと思った」

「おい京楽、呪われたと知っていたなら、何故止めなかった」

「浮竹は、何気にエリクサーもってるでしょ。それで解呪できるじゃない」

「エリクサーを隠しもっていることにも気づいていたのか。抜け目のないやつだな」

「浮竹、この前金クラスの錬金術士って言ってたけど、実はミスリル級でしょ。そのエリクサー、自分で作ったね?」

「な、なんのことだ」

「古城の離れにある館、錬金術士が住んでいるような風情になってた。エリクサーの失敗作が散乱してた」

「ぎくっ」

浮竹は白状した。

ブラックドラゴンの財宝を売った金で、エリクサーの材料を買いあさり、何度も調合して失敗を繰り返してできた3つのうちの1つだという。

エリクサーは、別名神の涙。奇跡の薬。

どんな呪いも毒もステータス異常も治してくれる。

「エリクサー、高いんだぞ」

「どれくらい?」

京楽の耳に、浮竹はぼそぼそと値段を言う。

「ええ、まじで?」

屋敷が一軒建てれそうな値段だった。

「浮竹、呪われたままでいなさいな。そんなコートのために使うなんてばかげてる。古城に帰ったら、血の帝国からルキアちゃんを読んで解呪してもらえばいい」

「それもそうだな」

そのまま階段を降りていくと、20階層に続く扉があった。それを開けて中にすすむと、更に扉があった。

その手前が、セーブポイントになっていた。

「外はもう、太陽が沈んでいるだろう。今日は、ここで野営しよう」

「うん、分かった」

アイテムポケットからテントを取り出して、テントをはると、浮竹はまたごそごそとアイテムポケットを漁り、ドラゴンステーキを取り出した。

「まだあったの、ドラゴンステーキ」

「まだまだあるぞ。ブラックドラゴンの肉、けっこうもらったからな」

ブラックドラゴンを退治した時、冒険者ギルドには肉以外の全てのものを売った。肉は一部をのぞいて、浮竹がもらっていった。

ドラゴンの肉は、とにかく美味い。シャトーブリアンなんて目じゃない。

世界に200体いるかどうかという、ドラゴンは絶滅危惧種だ。

だが、個体数が150を割ると、次のドラゴンが次々と孵化するので、絶滅はしない。

そうなるよう、始祖ドラゴンのカイザードラゴン、恋次が調節している。

20階層のボスの扉の前で一夜を明かすと、二人は顔を洗って、簡単な朝食をとり、持ち物をチェックしてから、ボスの部屋に続く扉を開けた。

「うわ、くっさ!ドラゴンはドラゴンでも、腐ってやがる」

「ドラゴンゾンビだね!うわぁ、肉が!僕、もうドラゴンステーキ食べれないかも・・・」

浮竹は火の上位魔法ヘルインフェルノをドラゴンゾンビに叩きつけた。

ドラゴンゾンビの弱点は、聖属性か炎属性だ。

「燃え尽きろ!ヘルインフェルノ!」

一撃目をくらって、肉のほとんどを蒸発させて、骨だけになったドラゴンゾンビは浮竹に襲い掛かった。

それを、浮竹がもう一度ヘルインフェルノを使って、ドラゴンの骨ごと炎の魔法でつつみこむ。

「浮竹、止めは任せて!」

ホーリーエンチャント、聖属性をもたせたミスリルの剣で、京楽はドラゴンゾンビのコアを破壊した。

「ぎゃるるるるるう!」

ドラゴンゾンビの体が崩れていき、ばらばらの骨になった。

「何してるの、浮竹」

「見ての通り、ドラゴンゾンビの骨や牙を回収している」

「お金になるの?」

「死んでもあくまでドラゴンだぞ。その骨と牙と爪は通常のドラゴンと同じ値段で売買される」

「うわぁ、またお金もちになるんだね」

「金はあればあるほど困らない」

「また、エリクサーの材料買い漁って、失敗させて館を爆発させるんだね」

「な、館を爆発させたことを何故知っている!」

「1週間前、爆発させてたの、気づかないとでも思った?」

「く、気づかれていたとは。今度は聖女の涙でも錬金で作ろうかな」

「今度はアクセサリー?」

「せっかく8千年もかけて最高位のミスリルクラスになったんだ。たまには錬金術で遊ぶのもいい。金にもなるし、一石二鳥だ」

聖女の涙とは、オパールのような見た目の宝石で、聖女と同じ聖なる属性をもち、闇を祓う。そこらのモンスターなら、持っているだけで浄化される、世界三大秘宝の最後の一つであった。

「よし、26階層に向けて進むぞ」

「うん」

ドラゴンゾンビの素材をアイテムポケットにいれて、けっこう強いモンスターたちを蹴散らして、25階層にまできた。

「今度のボスはなんだろうな?」

「さぁ、ドラゴンだったりして」

「それはないだろう。このS級ダンジョン、50階層まであるんだぞ。50階層なら分かるが、25階層にドラゴンは・・・・・・・」

「シャアアアアアアアア」

扉の中を覗き込んだ京楽が、顔を青くさせた。

「いた、ドラゴンだ。しかもカイザードラゴン」

「恋次君か?何してるんだ、恋次君」

「シャアアアアアアアって、浮竹さんじゃないっスか」

カイザードラゴンは、大きな翼を折りたたむと、浮竹と京楽を見下ろした。

「俺はたまにここの階層のボスをするようにしてるんスよ。暇な時だけ。力ある者には祝福を、力なき者には敗北を」

人型になり、タトゥーを刻んだ体はまたタトゥーが増えていた。

「また、最近死んだのかい?」

恋次もまた始祖で、死なない呪いをもっている。でも、一応死ぬのだ。復活するが。

「ああ、先週毒殺されたっス。毒殺は慣れないから、いつも毒を入れられるんですよね」

「ここにエリクサーがある。これをもっていけ」

「ええええ!エリクサーって、めっちゃ高い神薬じゃないっすか!」

「俺の血も混ぜてある。毒が含まれていたら、近くにおいておけば色が変わって、教えてくれるだろう」

「ただでもらって、いいんすか?」

「ふふふふ。今度、遊びにおいで。ドラゴンの素材から作りたい薬があるんだ。ちょっと、体で返してもらうだけだ。ぐふふふふふ」

「浮竹、顔が悪人になってるよ。台詞もいっちゃってる」

京楽のつっこみに、浮竹は咳払いした。

「とにかく、それで毒殺は防げるはずだ」

「ありがとうございます。あ、俺を倒したってことでいいっすよ。先に進んでください」

「ああ、ありがとう」

「恋次クン、また古城に遊びにおいで」

「ああ、白哉さんを口説きにいくついでに、寄らせてもらいます!」

始祖竜、カイザードラゴンは、S級ダンジョンで25階層のボスをしていた。力試しにと、ソロで訪れていた白哉に負けた。初めてのことだった。

8千年生きてきて、それまで敗北したことはなかった。

黒髪の美しいヴァンパイアロードに、気づけば恋をしていた。

自分が皇帝をしている帝国をほっぽりだして、よく血の帝国で白哉の守護騎士として過ごしていた。ちなみに、皇帝ではあるが、お飾りなので影武者をたてているだけで問題なかった。

問題があるとすれば、その影武者がよく毒殺されかかるくらいだろうか。

「じゃあ、先に進む。ありがとう、恋次君」

「おつかれっす」

「恋次クン、またね」

「はい」

26階層は、薔薇の洞窟。

出てくるモンスターも、薔薇だった。

「ヘルインフェルノ!」

「ファイアエンチャント!」

浮竹は炎の魔法で薔薇のモンスターを焼き払い、京楽は炎を帯びた剣で焼き殺していく。

「この、26階層の奥に、青い薔薇の群生地がある」

「囲まれたよ。どうする?」

「ここは、他にも珍しい薔薇があるから、なるべく火魔法は使いたくないな。氷の魔法でいく。
ヘルコキュートス!」

地獄の氷で凍らされて、薔薇のモンスターは粉々になった。普通の薔薇は、氷がとけてきらきらと咲いていた。

「浮竹の魔法の威力ってすごいよね。さすが始祖」

「京楽、お前もその気になれば、俺の使える魔法を使えるだろう」

「いや、けっこう制御が難しいから、暴走しそうであんまり使いたくない」

「今度、恋次君相手に修行させてもらったらどうだ」

「うん、それもいいかもね。始祖ドラゴンなら、どれだけ傷ついても死なないし」

「あった、青い薔薇だ!」

洞窟の一番奥で、青い薔薇はそこだけ天上に穴があいていて、月の光を受けながら美しく咲いていた。

「ブラディカがよく眠れるように、花を摘もう」

「うん」

二人は、青い薔薇を摘んで、アイテムポケットに入れた。二株ほど根をつけたままとった。

「それはどうするの?」

「性悪の妹に、たまには手土産を。ブラッディ・ネイは薔薇が好きだからな。青い薔薇の存在を知ったら、欲しがると思うから」

「浮竹ってさ、なんだかんだいっても妹のブラッディ・ネイに甘いよね」

「そうか?」

首を傾げる浮竹は愛らしかったが、京楽は口づけしたいのを我慢した。

「まぁいいや。古城に戻ろう」

「ああ。ブラディカが待っている」

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古城に帰還すると、離宮に赴き、ブラディカを入れた棺の蓋を開ける。

褐色の肌に金髪の絶世の美女が眠っていた。

アイテムポケットから青い薔薇を取り出し、ブラディカの眠る棺にしきつめてまた蓋をしめた」

「ヘルコキュートス」

薔薇が枯れないように、休眠状態であるブラディカが半永久的に眠り続けるようにと、冷凍魔法をかけた。

「おやすみ、ブラディカ・オルタナティブ。いい夢を・・・・・・」


浮竹と京楽は、古城のいつも過ごしている部屋に戻った。

「ねぇ、浮竹は僕だけのものだよね?」

「何を言っているんだ」

「ブラディカを、もう愛していないよね?」

「京楽?」

「怖いんだ。これが、ブラディカのが見せている夢の続きじゃないんだろうかと思えて。このまま、君は眠りから覚めたブラディカと何処かへ行ってしまう気がして」

京楽は、浮竹を抱きしめると、深い口づけをした。

「そんなに怖いなら、確認すればいいだろう。俺が、誰のものであるか」

「いいの。嫌って言っても、やめないよ」

「俺が嫌がってお前が途中でやめたためしがないんだが」

京楽は、浮竹を天蓋つきのベッドに押し倒した。

「待て。昨日風呂に入っていない。先に風呂に入ろう」

「ああ、うん」

二人で風呂に入り、二人は全身から薔薇の匂いをさせていた。

「あの入浴剤、まさかブラッディ・ネイの式がいれたのか・・・・・・」

「さぁ。でも、催淫作用はないみたいだし、いい匂いするだけだから、いいんじゃない?」

二人は風呂に入り、上がると早速浮竹は京楽にベッドに押し倒されていた。

「春水、落ち着け」

「落ち着いてるよ?」
衣服を脱がされて、浮竹は早速潤滑油を手にとった京楽にまったをかけた。

「いきなりするなら、させないからな」

「分かったよ。たっぷり、愛してあげる」

骨の髄まで愛されるのではないかという、愛撫を受けた。

「あ、ああ!」

白い肌には、いくつもの花を咲かせていた。

「んんっ」

耳を甘噛みされる。

浮竹は耳が弱い。

「あ、だめっ」

「ここ、好きだよね?」

耳を甘噛みして、噛みついて吸血すると、浮竹は情欲で濡れた瞳で京楽を見た。

それを合図に、京楽は浮竹を全裸にすると、胸の先端を口に含んで転がした。

「んっ」

深く口づけしあい、舌を絡めあう。

飲みこみ切れなかった唾液が、浮竹の顎を伝った。

「うわ、めっちゃエロい・・・・・十四郎、かわいいね?」

「あ、春水・・・もう、我慢できない」

「僕の十四郎は、素直でいい子だね?」

ゆるりと勃ちあがっていた浮竹のものに、京楽はしゃぶりついた。

「あああ!!」

全体を指でしごいて、先端の鈴口を舌でちろちろと舐めていると、甘い薔薇の味がした。

「精液が甘い薔薇の味がする」

「ブラッディ・ネイの式だな・・・・・薔薇の魔法をかけていったようだ」

「僕はいいけどね。甘いから病みつきなりそう」

「俺は嫌だ。何処かで覗いているかもしれない」

「見せつけてやればいいのさ」

京楽は、潤滑油を手に取って、浮竹の蕾を撫でた。

「んんっ」

「もうひくついて、僕を誘ってる」

「あ、あ!」

つぷりと、京楽の指が入ってくる。

浮竹は、自然とそれを締め付けていた。

「君の中、すごく熱くて締め付けてくる」

「や、言うなっ」

「どうして?かわいいよ、十四郎」

指を増やしてばらばらに動かずと、前立腺を刺激したのか、びくんと浮竹の体がはねた。

「ここ、いい?」

こりこりと、前立腺ばかりを刺激されて、快感で浮竹は生理的な涙を流した。

「ああ、もういいから、早く!春水!」

妖艶な浮竹に、ごくりと喉を鳴らして、京楽はたけったものを宛がった。

ずぷりと、音を立てて貫くと、浮竹は精液を迸らせていた。

「ああああ!!!」

「挿れただけでいっちゃうなんて、淫乱な子だね」

「あ、あ、春水、春水」

「僕はここにいるよ。大丈夫だから」

ズチュリと音を立てながら、浮竹を犯していく。

「あ、あ、あ!」

ごりっと奥まで入ってきて、浮竹は啼くことしかできなかった。

「あああ!!!」

「ここ、君、好きだよね?」

「やあああ、奥、ごりごりしないでぇっ」

最奥の結腸に入り込み、ごりごりと抉ると、浮竹はオーガズムでいっていた。

「ひああああ!」

「君の奥深くで出すからね」

京楽は、浮竹の胎の奥で子種を注いでいた。

「あああ、やぁ、春水、吸血は、やぁ!」

浮竹をいかせながら、京楽は浮竹の首筋に噛みついて、吸血していた。

「やあああ、変になる、やだぁっ」

精液もでなくなった浮竹は、透明な液体を出していた。潮をふいたのだ。

「やあ、おもらし、やあああ!」

「潮吹いてるだけだから。十四郎、僕の血も吸って?」

差し出された右手の甲に噛みつき、浮竹は京楽の血を啜った。

「ああ、気持ちいいね。セックス中の吸血は最高だ」

「んん・・・・・・ん」

舌を絡め合いながら、落ちていく。

京楽が体液を全て浮竹の中に注いで、満足する頃には、浮竹はぐったりとしていた。


「ごめん、加減できなかったね」

「体をふいてくれ」

「うん。中にだしたものも、かき出すよ」

とても風呂にいく気力はなくて、京楽の手で逢瀬の名残を清められた。

浮竹の肌には、京楽が咲かせた花がいっぱいあった。そのまま、眠りの海に誘われる。

「待っていたの、浮竹、京楽」

「ブラディカ?これは夢か?」

「そう。二人の夢を渡り歩いて、くっつけたの」

「ブラディカ、休眠に入ったんじゃないのか?」

「休眠状態でも、ブラディカは夢渡りの魔女の末裔。少しは、力が残っているから。これは警告。白哉の存在が、危ないの」

「白哉が?」

「始祖竜が、傍にいる。守護騎士として。その守護騎士は、白哉を愛している。でも、それにつけこまれて、白哉を食べてしまおうとしている。始祖竜が」

「恋次が!?そんな馬鹿な!始祖だぞ、始祖を操れる者など・・・シスター・ノヴァ、あるいはブラッディ・ネイ、あるいは他の誰か・・・・」

「白哉と始祖竜を助けてあげて。ブラディカの力は、これでおしまい。どうか、血の帝国の心臓を守って」

白哉は、血の帝国の皇族王であり、女帝ブラッディ・ネイの次に偉い。

同時に摂政であり、血の帝国においては心臓であった。

夢渡り魔女の末裔、ブラディカ・オルタナティブは、そのまま二人に笑顔を向けると、消えてしまった。

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白哉は、血を流しながら、千本桜を手に、恋次と睨み合っていた。

「愛している。愛しているから食って殺す。血肉にして愛する」

「お前は、気がふれたのか、恋次!」

自分の守護騎士である恋次に、刃を向けられて、白哉は戸惑っていた。

相手は始祖竜だ。

己が皇族のヴァンパイアロードだとはいえ、敵うかどうか。

リィィン。

「鈴の、音?」

白哉の耳には、確かに鈴の音が聞こえた。

それは眠っていた浮竹と京楽の耳にも、聞こえていた。


「キャハハハハハハ!アタシは、始祖の魔女ローデン・ファルストル。人間の国も、血の帝国も、聖帝国も、全部アタシのもの!キャハハハハ!」

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