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僕_

エリュシオンの歌声2-1

「名前は?」

(浮竹十四郎。そういうお前は?)

「京楽春水。盗賊団、風の魂のリーダーだよ」

(そうか。俺を殺してくれ)

「・・・・・・君に一目ぼれした」

(は?)

「天使だね。どう見ても天使」

(何を言っているんだ)

京楽は、浮竹を抱き上げた。

「軽いね」

(いや、重いだろう)

「軽いよ。鳥みたいだ。翼が生えてるから、天使かな」

(エリュシオンの歌声をもつ者は、皆白い翼をもつ)

「やっぱ君、天使だね」

浮竹の脳に響く声だけで、心が洗われていくような錯覚を覚える。

(神子や神の巫女は、エリュシオンの歌声をもつから白い翼があるんだ)

「君が気に入った。一目ぼれだ」

(何故だ?)

「見た目も可愛いし綺麗だけど、世界を知らない君がすごく愛しく感じる」

(俺は、お前に会ったばかりだぞ)

「うん。でも僕を好きになって。ねぇ、いいでしょ?」

(誰かを好きに・・・・なれるのか?)

「なれるよ。僕は君が好きだよ、十四郎」

(京楽・・・・)

「春水って呼んで」

(春水・・・なんだろう。胸のこの辺りがぽかぽかする)

浮竹は、ぎゅっと心臓のあたり服を手で握りしめた。




盗賊団の仲間には、首級をあげたので先にアジトに帰るように命令した。

誰もがそれに従った。

まさか、リーダーが神子に魅入られているなど、誰も信じないだろう。

京楽は強い男だ。魅了の呪文さえ通用しないほどに、精神も強い。どんな美女が相手でも、彼を篭絡することはできないだろう。


それが、目も耳も足も不自由な、同じ同性の神子に魅入ってしまうとは。

浮竹を抱き上げて、外に出ると、浮竹は空を見上げた。
見えない翡翠の瞳で、空と太陽を映しこむかのように。

(ああ・・・・空って本当に蒼いんだろうな・・・太陽の光は眩しいか?白にしか感じれない)

「ああ、太陽の光は眩しいよ。じかに見ることなんて、真昼だとできない」

(そうなのか?そういえば、朝、昼、夜があるのだな。あの空間には何もないから俺は始めて、外の昼を体験できた。嬉しい。もう、何もいらない。さぁ、俺を神の元へ・・・・)

そっと、手を胸の前で組み、祈る浮竹をを地面に下ろして、京楽は剣を振りかざした。

(さようなら、会えて嬉しかった、京楽)

ザシュ。

それは、浮竹を縛るようないくつもの衣を切り裂いていた。

(?)

「あー。なんてざまだろうね、この僕が・・・・」

京楽は、激しく浮竹を胸にかき抱いた。

(何を・・・・)

「僕のものになりなよ」

(お前の、ものに?でも俺には神が・・・・)

「そんなもの、忘れさせてあげる」

京楽は、用意していた馬に浮竹を乗せ、後ろから手綱をひいて馬を走らせ、兵士が配置されていない国境の森を抜けると、そのまま馬を走らせて隣国に入った。

「ららら~エリュシオンへの扉は今開く~神よ我に光あれ~」

馬の上で、浮竹はエリュシオンの歌声を放つ。

それは透明で、誰をも魅了する歌声だった。

町につくと、浮竹を下ろして宿をとった。

背中の白い翼は魔法で隠せるらしく、京楽の手に抱き上げられて、浮竹は宿の部屋の中に入ると、また首を傾げた。

(どうして・・・早く、殺してくれ。お前の役目は、俺を殺すことじゃないのか)

「あー。あーまぁ、そうだったんだけどね。なんだかねぇ。神の子、朽木白哉みたいなのをずっと想像してたんだよ。なのに・・・君はどうだい。目も見えない、耳も聞こえない、歌うことしか許されない、歩くこともできない。あげくに神殿の外に出たのも始めて。黄金なんて見た目はいいが、ベッドの柵に足枷で繋げられて・・・・まるで囚人みたいな扱いじゃない。幽閉でしょ、あれは」

(でも、皆はそうしないと俺が逃げ出すと・・・)

「無理でしょ。歩けない、おまけに背中の翼も空を飛べないのに、どうやって逃げ出すんだい」

ベッドにとさりとおろされて、浮竹は困ったように微笑んでから、ポロリと涙を零した。

(だって、だって、だって!神様が俺にはいるから!!)

「いないでしょ、神なんて。見えるのかい?君の側にいてくれるのかい?君をを守ってくれるのかい?」

(だって・・・・・エリュシオンの歌声が俺の全てだから・・・・)

「僕のものになりなよ。エリュシオンの歌なんて歌えなくなってもいい。僕が君を守る。僕のものになっちゃいなよ・・・」

窓からは、すっかり日も暮れて綺麗な星空が見えていた。

浮竹の唇を自分の唇で塞ぐと、抵抗はなかった。

(神様が・・・・)

「今は僕のことだけ考えてよ」

ぐいっと、また深く口付けた。

(あ・・・あああ)

歌うことしか許されない浮竹の喉から、言葉にならない声が漏れる。

(ダメ、俺は、男・・・・こんな見た目でも、男だから・・・・・)

浮竹は京楽の髪に手をいれる。

抵抗というより、身をゆだねているに近い。

(だめだ、だめ・・・・俺は)

「なんだい。死ぬ覚悟があるくらいなら、これくらいどうってことないでしょ?嫌なら抵抗しなよ」

(俺は・・・神子の男で・・・女ではない・・・・)

服を次々と脱がしていく、京楽の腕が止まる。

「別に、男同士でもこの世界じゃ珍しいことないじゃない。娼館に色子もたくさんいるし」

ふるふると、浮竹が首を振る。

平らな胸を撫でると、浮竹がかすかに震えた。

「こわい?」

(こわい)

自分のものにすると一度決めたら、なんでも自分のものにしてきた京楽だ。

「男相手でも僕は大丈夫。男娼買ったこともあるし、平気だよ、安心して」

平らな胸に口付けて、そのまま下の服も脱がしていく。

浮竹は京楽にしがみついて、息を殺していた。

(ああ、あ、あ)

舌が絡み合う口づけを交わしあう。

浮竹はこういうことは初めてのようで、軽いパニックになっていた。

(やっ)

「優しくするから」

(でも、こんなの神様が・・・・)

「神様なんていない。それがこの世界だ」

(ああ、あ)

途中で立ち寄った雑貨店で、潤滑油を買ってきていた。浮竹を自分のものにすると決めたので、少しでも負担減らすためだ。

(やあっ)

胸の先端をつまみ、衣服を全部脱がすと、同じ男のものとは思えない白い肌があった。

そこに、所有の証を刻んでいく。

(京楽・・・・・・!)

「春水だ。春水って呼んで。僕も十四郎って呼ぶから。君を一目みて好きになったんだ」

(そんなの、何かの間違いだ。こんな見た目だから・・・)

「君の中身も気に入ってるよ」

(しゅ、春水・・・)

「なぁに?」

(はじめてだから・・・優しく、してくれ)

「どうだろうね。僕は君が欲しくてうずうずしてる。好きだよ、十四郎」


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エリュシオンの歌声1-2


京楽は、剣を腰の鞘にしまうと、神殿の奥へ奥へと入っていく
一番奥に、閉ざされた大きな扉が見えた。

神話のレリーフが施された扉の鍵には魔法がかかっているようで、力でおしても、剣で傷つけようとしてもびくともしなかった。

「だから、鍵ね・・・・まるで、籠の中の小鳥じゃないの」

この中に、神子、浮竹十四郎はいる。
人々の前に姿を現すのは1ヶ月に一度の神祭の時だけ。あとは、いつもこの部屋の奥にいるのだという。

鍵を穴にいれる。
カチャリと音がなる。

京楽は、扉をあけて中に入って息をのんだ。
扉の奥には、きっと広い部屋が広がっているのだろうと思っていた。

確かに、広かった。広すぎる。

そこは、空中庭園だった。

さわさわと風に揺れる緑。小鳥たちの歌う声。花畑と草原。

中央には噴水があり、浮かぶ小さな岩からも水がたえず零れ落ちていく。

「なにこれ・・・・」

太陽が二つ、天空に浮かんでいた。

「夢でも見てるのかな僕は・・・・」

信じられない光景に、自分の頬をつねると、確かに痛みがした。

「らららら~~~」

綺麗な綺麗な、とても美しい歌声が京楽の耳を打った。

その歌声を聞いた瞬間、京楽は涙を流していた。

「なんなんだ・・・・」

エリュシオンの歌声。神の楽園へと導くという、神の歌声。
神に愛された寵児。

「ららら~~~」

さぁぁぁと、風が鳴る不思議な空中庭園の奥に、天蓋つきのベッドがあった。

歌声は、そこから聞こえてくる。

咲いている花を踏み潰して、近づいていく。

(誰だ?)

京楽は、何重もの深いヴェールに覆われたベッドの中に、動く人影をみて足を止めた。何より、頭の中に直接声が響いてきて、彼はびっくりした。
 
(神官長か?それともシスター長のメリア?それとも巫女の誰か?イリアか?昨日会いたいって聞いたから・・・・)

また、綺麗な歌声が聞こえてくる。

「ららら~~神よエリュシオンへの道を~♪」

声と、頭に直接響いてくる声は同じだった。

(今日の患者さん?)

「違う。僕は君を・・・・・・・・」

京楽は、逡巡気味に浮竹に剣を突き付けた。

(なんだ、これは?)

「剣だよ・・・見たことないの?」

(剣?見たことないな)

ふわりと微笑む姿は、とても美しかった。

神の寵児、神子。

本当に、その通りだ。

真っ白な足元まである長い髪をいくつにも束ね、たくさんの装身具を飾りあげてもなお色褪せない美貌。

女神だ。

そう、これはまるで女神。

いや、天使か。

浮竹の背にある大きな白い翼を見て、京楽は剣の切っ先を下げる。

「君、こんなところに一人で住んでるの?」

(そうだ。俺はここで暮らしている。それが神子の定め。外には月に一回しか出れない。ここは俺を閉じ
こめておく偽りの楽園)

「君・・・神殿の外にでたことは?」

(ない。神祭も神殿の中で行われる。神殿から、出たことはない。一度でいいから、本当の空と太陽を見てみたい

すっと、人工の空を見上げる浮竹は、哀しそうな顔をしていた。

とても綺麗なのに、なんて哀しそうなんだろうか。

「なんで、しゃべらないの?」

(禁じられているからだ。歌を歌う以外で、声を出してはいけないんだ)

「それで、テレパシーみたいに直接相手の頭に話しかけるのかい?」

(そうだ。奇跡の力と人は呼ぶ)

「奇跡ねぇ」

京楽は、これから殺す相手、浮竹と言葉を交わしてしまった。

その奇跡の歌声を聞いてしまった。

「なぁ、なんでその翡の目・・・さまよわせてるんだ?」

空を見ていたかと思うと、視線をさまよわせる浮竹に、京楽が首を傾げる。

(目が見えないから)

「はぁ?」

(この翡翠の瞳はものを見ない。魔法をとおして、第6感を通しておぼろけに色と形を教えてくれる。耳も聞こえない。言葉だけは・・・歌の形で、出すことを許されている。お前の声も、魔法で直接脳にとりこんでいる)

「そんなんで、本当に神子なのかi?」

(ああ・・・・あ、まってくれ)

離れていく京楽を追おうとして、浮竹はベッドから転がり落ちた。

「おいおい、何してるんだい。一応魔法で視界はなんとかなるんでしょ?」

浮竹は、静かに京楽の顔を見つめた。

(生まれつき、歩けない・・・・)

「ええっ・・・」

これのどこか、神の子だというのか。

エリュシオンの歌声だけをもつ、綺麗なだけの人形のような天使だ。

声を出すこともできず、目も見えず、耳も聞こえず、あげくに自分の足で歩くこともできないなんて。

どこが、神に愛された寵児だというのか。見た目だけではないか。

(翼も・・・・飛ぶことが、できない。この体は欠陥だらけだ。でも嬉しいな。俺を、連れ出すためにきてくれたのだろう?)

期待で頬を薔薇色に染める浮竹に、京楽の胸が締め付けられた。

「僕は、君を・・・・」

(ああ、殺しにきたんだろう?でも、殺す前に外に連れて行ってくれようと思っているんだろ?)

京楽は、言葉を失った。

「君、死ぬこと怖くないのかい?」

(怖くない。神の御許にいけるのだから。この呪縛から解放される。自分では死ねないんだ。早く外に連れて行って、そして殺してくれ。もう生きていたくない。カナリアのようにこの籠の中で囀ることしかできない俺は、もうこんな生活嫌なんだ)

京楽は、気づくと浮竹の桜色の唇を自分の唇で塞いでいた。

(ん・・・・・)

甘い味。

バサリと、浮竹の背中の翼が広がる。

浮竹の足首には、金色の足枷がしており、それはベッドの柵に繋がっていた。長い金色の鎖が見えた。

それを見た京楽は、剣を振りかざした。

この神子は、本当にここに閉じ込められているのだ。籠の中のカナリアだ。

パキン。

金属的な音をたてて、浮竹を縛っていた鎖がとれる。

(・・・・・・・・本当に、連れて行ってくれるのか?)

浮竹は、自分の鎖が断ち切られたことに、涙を流して京楽にしがみついた。

背の白い翼は小さくなって、折りたたまれている。

「連れて行ってあげるよ。外の世界に」
 

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エリュシオンの歌声1-1

エリュシオン。

神がつくりし、死後の英雄たちの魂が眠るという楽園。

そこにたどり着けることができれば、どんな望みでも叶うという。

エリュシオン。

人はそれを夢見て、エリュシオンの歌声をもつ神子や巫女を崇める。

エリュシオンの歌声だけが、人々をエリュシオンの地へと誘ってくれるという。それはただの伝承。でも、実際にこの世界にエリュシオンの歌声をもつ神子はいる。

小国カール公国が抱える、エリュシオンの歌声をもつ神子。

名は浮竹十四郎。

隣国の大国、ソウル帝国が抱えるエリュシオンの歌声をもつ巫女姫、皇族の血をひく第三皇女でもある朽木ルキア。
同じソウル帝国の神殿にいる神子、ルキアの兄である朽木白哉。

世界には、三人のエリュシオンの歌声をもつ神の子、神の巫女が存在する。

浮竹十四郎は生まれはソウル帝国で、本来ならソウル帝国の神子になるはずであった。

だが、事情がありソウル帝国から赤子のときに連れ出され、ソウル帝国の属国でもあるカール公国で育ち、カール公国の神殿の神子となった。

もともと、ソウル帝国の神殿にいる朽木白哉とは双子であった。朽木白哉は4大貴族出身で、皇族の流れも組んでいる。

皇族や上流階級の貴族にとって、双子は吉凶の証である。

本来ならどちらかを生まれた時に殺すのだが、エリュシオンの歌声を授かった証である小さな翼が浮竹にも白哉にも、両方にあったのだ。

だから、浮竹は朽木の姓を名乗らず浮竹という姓を与えられ、属国であるカール公国の神殿の神子となる運命を辿った。

ルキアは、エリュシオンの歌声をもっているはずなのに、その歌声はエリュシオンにまで届かない。

世界でただ二人、朽木白哉と浮竹十四郎だけが、エリュシオンに歌声が届いた。

この世界にエリュシオンまで歌声が到達する者は、古代から二人までと決められている。

ルキアは、背にエリュシオンの歌声をもつ証である白い翼を持ちながら、その歌声はエリュシオンに届かない。

ルキアの兄である白哉は、ルキアを溺愛していた。

巫女姫でありながら、なぜ愛する妹はエリュシオンの歌声まで到達できないのか。十分に美しい歌声をもっているではないか。日々募る焦燥。

ルキア姫は心広く、自分がエリュシオンの歌声に到達できないことなど、気にしなかった。

だが、帝国の神殿の神の巫女姫という地位も、このままでは追われてしまう。

エリュシオンの歌声に届かなければ、神の巫女姫ではなく、ただの巫女姫だ。

そんな時だった。


カール公国が、属国から解放運動を続け、ついには大国ソウル帝国を敵に回した。
戦争が勃発したのだ。

カール公国を根絶やしにせよ。

ソウル帝国の皇帝がとった判断は、とても厳しいものだった。他にもいくつもの属国があるので、反乱をおこした国を見せしめのようにする必要があった。反乱をおこせば、お前たちの国も滅びるのだと。

皇帝は、カール公国の反旗をよいことに、カール公国の神殿の巫女や神官たちの抹殺も兵士たちに命令した。だが、兵士たちは信心深く、神殿の巫女や神官を殺すことに躊躇いをみせ、命令にはとても従えないと皇帝に直訴した。

それはそうだろう。神殿の巫女や神官は、他者を癒す不思議な魔法を使う特別な存在だ。
聖職者は誰にとってもありがたい存在だ。それを殺せだなんて。

浮竹十四郎もまた、エリュシオンの歌声でいくつもの奇跡をおこしてきた神子。他の聖職者たち・・・巫女、神官、シスターと一緒になって、神殿を訪れる難病や怪我をした者をたくさん救ってきた。

同じように、ソウル帝国でもそれは行われているが、ソウル神殿は寄付した者を優先しており、だから寄付するお金をもたぬ者はカール公国の神殿へと流れる。

それもまた、皇帝にとっては気分のよいものではなかった。

かのエリュシオンの歌声をもつ、神子である浮竹十四郎を亡き者にせよ。

そうすれば、エリュシオンの歌声は、神の巫女姫である、愛しい自分の娘であるルキアに100%宿る。
世界には二人しかいないエリュシオンの歌声をもつ者。その資格である白い翼をもつ愛娘に、エリュシオンの歌声を宿らせてやるのだ。

それは、皇帝が秘密裏に下した命令であった。

抱えている騎士団などに命令しても、神子を殺すことなどできないだろう。

騎士団も兵士たちも皆、どれだけエリュシオンの歌声をもつ者の貴重さと尊さ、そしてその神聖さを知っているのだから。

ソウル神殿には、朽木白哉という、高潔で尊く見目麗しい神子がいる。

それを知っているソウル帝国の人間には、たとえ皇帝の命令であろうとも、神に愛された神子を殺すことなどできないだろう。

だから、皇帝は荒くれ者として有名な、世界中を荒らしまわっている盗賊団「風の魂」のリーダーを呼び出し、彼と彼が抱える盗賊に浮竹十四郎の抹殺を大金をはたいて依頼した。

浮竹十四郎は、神子ではあるが肺の病を抱えており、病弱で他者を自分の命が燃え尽きでも構わないという理念で癒しているような存在だった。

浮竹十四郎は、真っ白な長い髪に、翡翠の瞳をしていて、見目麗しく、双子である朽木白哉とは
全く似ていなかった。

二卵双生児であった。

そんな浮竹十四郎を抹殺せよと依頼を受けた、「風の魂」のリーダーは京楽春水といって、元上流貴族であったが、ふらふらと遊び歩いて親から勘当されて、流れ者になっていた。

「すごい金がまいこんできたよ。前金だけでも、20億環だよ。殺して首をもってくれば残りの20億環ももらえる。そうすれば、盗賊なんて稼業とはおさらばだ。一生全員贅沢して暮らせる。前科もみんな、金さえあれば裁判官を賄賂づけにして取り消せる。なんたって、僕らは盗みはするが殺しはやってきてないからね」

リーダーである京楽春水は大金を前に、盗賊団の仲間たちと高級娼婦のいる娼館を何日も借り切って、酒や女に溺れた。

盗賊団の数はリーダーを含めて20人。一人一億環の配分だ。殺して首を皇帝に届ければ、残りの20億環がもらえる。2億環もあれば、一生遊んで暮らせる。

何せ、払われるのは金貨だ。環金貨。

普通の紙幣の30倍ほどの価値はあるだろうか。

40億環金貨。
目も眩むほどの大金だ。
2億環金貨あれば、貴族の称号を買ってそのまま贅沢に暮らせるほどだ。

盗賊団、風の魂は、皆、残りの20億環金貨を貰うために、必ず浮竹十四郎を殺すことに乗り気だった。

そして、ソウル帝国を後にして、剣などを持って、カール公国神聖神殿へと乗り込んだのであった。

殺しはしない。
それが風の魂の盗賊団の基本であった。だが、今は殺しをしようとしている。

すでにカール公国とソウル帝国は戦争をしており、罪もない国民たちも戦火に巻き込まれている。

「盗賊団だー!」

「きゃあああ」

「うわあああ!!」

すでに、カール公国は周囲をソウル帝国の兵士に囲まれて、逃げ場はない。神殿の聖職者たちは、それでもまさか神殿まで汚すような真似はしないだろうと誰もが信じていた。

だが、現れたのは盗賊団。

騎士団や兵士たちではない。

盗賊団に襲われたことにしてしまえば、神殿も帝国の皇帝を責めることなどできない。暴力に慣れぬ聖職者たちは、神の名を呟いて逃げ惑うだけだ。

逃げ惑う神官やシスター、巫女をかたっぱしから捕まえて、手足を縛って教会の一つの部屋に集めた。

「ねぇ、神子はどこだい?」

探し回っても、神子はどの部屋にもいなかった。

京楽が剣の切っ先を神官長に向けると、彼はただ神の名を呟くばかりだった。

「きゃあああああ!!」

流石盗賊団とあって、行いは悪い。

早速集めた巫女やシスターを犯そうとしていく仲間に、京楽は何の表情も浮かべぬまま、もう一度神官長に剣を向けた。

「このままだと、巫女やシスターたちが全員目の前で犯されるよ?いいのかい?」

神官長は、ガクリとうなだれて、魔法を唱えた。

神殿の聖職者たちが使う魔法は癒しの魔法。人を傷つけるものはない。

ポウと、京楽の前に金色に光る鍵が現れた。

「この鍵で・・・・神殿の一番奥の扉を開けば、そこに神子いる。神子をどうするつもりだ!」

「殺すんだよ」

「な・・・・エリュシオンの歌声をもつ、奇跡の存在だぞ!神の子なんだぞ!それを殺すというのか」

「そうだよ。君ら全員殺せってほんとはいわれてるんだけど、まぁ殺しは趣味じゃないんだ。普通は女は犯してから奴隷として捕らえてうっぱらうんだけどね。まぁ、命があるだけめっけもんでしょ。今回は、大金もらって高級娼婦と何日もいい夜を過ごしてるからね。無傷を約束するよ。そのかわり、これが嘘だったら、女たちは全員犯して奴隷としてうっぱらうよ。いいね?」

ギラリと、銀色の光が京楽の目にも映っていた。

ぶるぶると震える女たちを盗賊団の仲間に命令して、一箇所に集めた。

飾っている宝石などは奪っていく。

「いいね。嘘だったら・・・・」

「嘘ではない。だが、会いにいくのはあなただけにしなさい。神子、浮竹十四郎様に会えるのは一日に一人だけ。その鍵をあける資格が、果たしてあなたにあるかどうか・・・」

「どういうこと?」

眉を顰める京楽に、仲間が耳打ちする。

「神子は会う者を選ぶんだそうだぜ」

「ふふ、力づくでも会ってみるさ」

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オメガバース京浮短編

京楽春水とは、半ば幼馴染であった。

山本総隊長のもとで、統学院に入るまで、浮竹はその身柄を両親から預けられていた。

体がとにかく弱い子で、霊圧は恐ろしいほどにあるのだが、薬代がかさんで借金を背負うはめになった浮竹の両親が、浮竹を捨てることなく暮らせていけるために、山本総隊長の元に預けたのだ。

山本総隊長は、浮竹にいろんなことを教えた。

病弱だが、これほど霊圧があり、ミミハギ様を宿しているお陰で死ぬことはないだろう浮竹の、遊び相手として京楽を招いた。

その日は、浮竹はいつも通り女の恰好をしていた。

浮竹の両親が、浮竹が女の恰好をすることで、命が助かるようにとの呪(まじな)いっであった。

「やぁ、君が浮竹十四郎?女の子なのに、十四郎って変な名前だね」

「俺は気に入っている」

京楽にとって、その女物の着物をきた、まだ13かいくばくかの少女は美しく見えた。

白い髪に翡翠の瞳をしていて、そしてかすかに香るフェロモンから、少女がオメガであると分かった。

「ねぇ。君さえよければ、将来僕の妻にならない?上流貴族だから薬代も心配ないし、大切にするよ」

「出会ったばかりで口説くのか。最低だな」

京楽と浮竹の出会いは、最悪なものだった。


けれど、日を重ねて遊んでいるうちに、お互い親友になっていた。

ある日、浮竹は自分が男であると打ち明けた。

その時の京楽のショックの受けようは、笑ってしまうほどだった。

でも、京楽は強かった。

「浮竹、君オメガでしょ。僕と将来結婚しよう。僕はアルファだ。一目ぼれなんだ。男とかそんなの関係なしに、純粋に君が好きなんだ」

もう女物の着物を着ることのなくなった浮竹にそう告白すると、浮竹は真っ赤になって顔を合わせてくれなかった。

16になっていた。

浮竹は、ヒートを起こした。

京楽は、当たり前のように浮竹を抱いた。

「傷物にしてくれた責任はとってくれるな」

「うん」

けれど、状況は最悪な展開になった。

浮竹がオメガであり、信じられぬような霊力をもっていると知って、京楽より上流貴族の若君が、妾として迎えたいと言い出したのだ。

4大貴族に近い大貴族で、浮竹に拒否権はなかった。

浮竹は、統学院に入る前に、上流階級の男の元へ、家族を殺すと脅されて、妾として嫁いで行ってしまった。


「浮竹・・・・・・・」

京楽は、激しいショックを受けた。

将来妻にすると決めた伴侶を奪われたのだ。

京楽は、金では解決できず、自分より上位の貴族である男には手を表立って出せないので、強硬手段にでた。

浮竹をさらったのだ。

浮竹は、首に番の証である噛み傷があった。

浮竹は病弱なのに、ヒート期間だろうとそうでないと関係なしに抱かれて、衰弱していた。

あんな男の元に二度と元に戻すものかと、浮竹を抱きかかえて、山本総隊長の庇護下に入った。

山本総隊長も、妾に浮竹がなることにしぶっていたが、上流貴族の重圧に、屈してしまったことを一生の恥と思っていた。

戻ってきた浮竹は、体中にキスマークをつけられて、ヒート期間でもないのに熱を出しても抱かれたりして、弱っていた。

まずは食事をさせて、体力をつけさせて少しずつ回復を待った。

歩きまわれる頃には、浮竹は助けてくれた京楽の後をいつも追うようになっていた。

「俺は・・・・あの男の番だ。お前と結ばれることはないが、傍にいさせてほしい」

上流階級の若君は、浮竹にとっくの昔に飽きて、もう手を出してこなかった。

「番をね、解消できる方法があるんだよ」

「まさか、殺すのか!いくら京楽でも、相手はさらに上流貴族の・・・・・」

「違うよ。違法だけど高値で番を解消できる薬が売ってあるんだ。それを買って、君を自由にする」

「京楽・・・・俺の番が、京楽ならいいのに」

「それ、本気で言ってる?」

京楽は、浮竹をのぞきこむように見つめた。

浮竹は赤くなりながら、そっと小声で呟く。

「3年も一緒にいたけど、京楽は俺がヒートで寝込んでいる時、抱いてくれた。抑制剤を一杯飲んでたお陰で、アルファである京楽を誘うような真似をしなかったつもりだが、・・ずっと、抱かれたいと思ってた。そして、お前は俺の願いを叶えてくれた」

「浮竹。番になろう」

「春水・・・・好きだ」

「僕も好きだよ、十四郎」


翌日には、裏マーケットで仕入れた、番を解消させる薬を京楽は手にいれてきた。

屋敷が一軒たつほどの値段のものだったが、京楽にとっては安い買い物だ。浮竹が自分のものになってくれるなら。

番になるためには、交じりあって首筋を噛まねばならない。

浮竹のヒートを、京楽は浮竹と何気ない平和な日々を過ごしながら待った。

「春水・・・・ヒートがきたんだ。助けてくれ。お前の番にしてくれ」

「十四郎、抱くよ」

「ああ、こい」

湯浴みをして用意を済ませ、浮竹と京楽はもつれあうように褥に倒れこんだ。

京楽の下で乱れていく浮竹は、妾にされた時の癖が残っていて、はじめて抱いた時よりとても大胆になっていて、嫉妬と悲しみと同時に愛しさを感じた。

「君は、もう僕だけのものだから」

唇を奪い、頬に口づけて、首筋、鎖骨とキスマークを残していく。

衣服を全部脱がされて、浮竹は顔を手で覆った。

「顔を見せて。我慢しないで」

「あっ」

胸の先端をかじられて、ピクリと浮竹が反応した。

妾にされていた間に、体は敏感になっていて、それが京楽には悲しく思えた。

でも、愛しい。

浮竹の花茎に手をかけてしごきあげると、ゆっくりと浮竹のもの勃ちあがった。

鈴口を指でこすりあげると、浮竹は背をしならせた。そして、ぜいぜいと辛そうな息を吐く。

「ああああ!」

「十四郎、どうしたの」

「あ・・・・妾にされていた間、いじられたことはないし、いかなかったから・・・・」

知らない男に抱かれていたはずなのに、浮竹は綺麗なままだった。

「うつぶせになって。潤滑油で後ろ解すから」

「あ、濡れてるから・・・・」

「だーめ。念のためだよ。君を傷つけたくない」

京楽は、浮竹をうつぶせにすると、濡れている蕾に潤滑油をつけた指を侵入させた。

「あ、あ、あ・・・・んんっ」

声を押し殺そうとする浮竹を、背後から抱きしめる。

「声、おさえないで。すごくいい。かわいいよ」

「ばか・・・・・」

トロトロになるまで解された蕾から指を引き抜いて、浮竹を仰向けにして、正常位から貫いた。

「あああ!」

「きっつ・・・・君、ほんとにあの男に抱かれてたの?」

「聞かないでくれ」

ポロリと、浮竹が涙を流す。

「こんな汚い俺ですまない」

「君は汚れてなんかないよ。綺麗なままだ」

「でも、俺は!」

「なかったことにはできないけど、過去は忘れることができる。君は、僕との未来だけを考えればいい」

「んあっ、あ、あ、あっ」

前立腺をこすりあげた。

浮竹の嬌声が、耳にここちよかった。

「統学院にあと1年もしないで入学するんだし、アフターピルは飲むでしょう?」

「ああ。あの貴族の男も、アフターピルを飲ませていた。妾だが子はいらんらしい」

「もう、あんな男のことなんて言わないで」

「あ!」

ごりっと奥を抉られて、びくんと浮竹の体が痙攣した。

「あ、あ、あ、や、いっちゃ、いっちゃう」

「僕も限界だ。一緒にいこうか」

京楽はラストスパートをかけて浮竹を貫き抉り、揺さぶった。

そして、京楽の雄が浮竹の子宮口にどくどくと子種を注ぎ込む。その時間は長かった。

浮竹を抱くまで、性処理をしていなかったので、子種はどろどろでたくさんでた。

「あ、もっと抱いてくれ」

「言われなくても。立てる?」

「なんとか・・・・・・」

「立って壁に手をついて」

「な、こんな体位で・・・」

「いいからいいから」

崩れおちそうな浮竹の体を抱えて、足を大きく開かせて挿入する。

「あ、んあ、ひっ」

じゅぷじゅぷと京楽のものが出入りする。

「あ、大きい・・・・・・・」

「この日がくるまで、君を抱けなかったし、自虐もしてなかったから、後2回くらいつきあってもらうよ」

「や、やぁ、壊れる」

「壊れる時は僕も一緒だよ」

犯されながら、首筋をかまれた。

びりっと電流が体中を走り、番になれたのだと、安堵する。

「春水・・・・愛してる」

「僕もだよ、十四郎」

ヒート期間であるために、思い切り交わった。

眠り、起きて食事をとって風呂に入り、また交じりあってと、1週間のヒート期間は終了した。



「統学院を卒業したら、一緒になろう」

「プロポーズか?」

「ほんとは、もっとロマンチックなところでしたかったけど、君が相手だとどうにもね」

「俺を何回も傷物にしたんだ。京楽には責任をとってもらう」

「喜んで、責任をとらせてもらいます」

くすりと、二人で笑いあった。

一度、上流貴族の妾にされた。相手はアルファで、浮竹がオメガであることだけを利用して、性欲処理をしていた。浮竹の体が弱いなんて、関係なかった。熱が出ても抱かれた。

京楽は、決してそんなことをしない。

浮竹の体調に気を配り、寒くなったらすぐ自分の着ている上着を着せてくれたりした。

「俺たち・・・・幸せに、なろうな」

「ああ、もちろんだよ」

浮竹を寝取って奪い返した京楽は、満足気だった。

これからの人生も、浮竹と歩んでいく。

どちからかが、いなくなるまで。

いつか、浮竹はミミハギ様を解放させるかもしれない。

けれど、愛し抜こう。

取り残されたとしても、愛し続けよう。

愛は、永遠だから。

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オメガバース京浮読み切り短編2

生まれつき、体が虚弱だった。

両親は精一杯金をかせでい、薬代にしてくれたが、借金を重ねてついにはどうすることもできなくなった。

泣く泣く、体の弱い浮竹は色子として、借金のかたに売られていった。

売られたのは7歳の時。

13で客をとるようになった。

ただ、体の弱い浮竹を何故、高い金を出して薬を飲ませで色子をさせているのかというと、浮竹がオメガだったからだ。

オメガの色子は貴重だ。

当時は妊娠せぬように、ヒート期間はまだきてなかったが、行為の後は念入りに手入れをしてアフターピルを飲まされた。

「自由になりたい・・・・・・」

17になった浮竹は、体の調子のいい時に客を取りながら、そう思うようになっていた。

15の時にはじめてヒートを迎えた。

番をつくることはしなかった。

首筋にかみつかれるのを防止するために、首を覆う首輪をつけさせられた。

オメガの色子が、番をもってしまったら、もう客はとれないから。

「はぁ・・・母上と父上と妹と弟たちは元気でやっているだろうか」

色子として浮竹が売られていった当時、弟と妹が一人ずついた。赤子だったり3歳だったり、幼すぎて、浮竹が色子として売られていった。

自分の身が不幸と思ったことはない。

色子として客はとらされるが、客はみんな優しい相手ばかりで、ヒートになった浮竹を抱くのと一緒に見舞いにきてくれたりした。

客はベータがほとんどだった。

たまにヒート期間中ではない時に、アルファに抱かれたことがある。

店の主人は、浮竹に番ができるのを嫌がって、ヒート期間中は仕事を休むかベータの相手をするようにと言われていた。

ヒート期間を一人で過ごすにはつらいが、フェロモンでつられたアルファのおもちゃになるよりはましだった。

「十四郎、次の客が決まった。なんと上流貴族の坊ちゃんだ。しぼれるだけしぼって、薬代を稼ぎなさい」

「はい」

浮竹の薬代は高い。色子として春を売るが、半額は薬代で消えてしまう。

そこから親への仕送りをしたりして、手元に残る金はわずかだ。

こんな状況では、年季があけるまで色子として働かねばならないだろう。

どうせ、25歳くらいで色子は終わる。

年季が明けるのもそのくらいだ。


貴族は今までにきたことはあったが、上流貴族はさすがにいなくて、念入りに体を洗って前準備をして、浮竹はその上流貴族とやらの客を待った。

「やぁ、はじめまして。浮竹十四郎くんでいいのかな?」

やってきた上流貴族は、名を京楽といい、浮竹と同じ17歳だった。

「初めて君を見かけて一目ぼれしてしまってね。こうやって、会いにきたんだ」

「酒は飲むか?それとも料理を?俺を抱くのは最後になるが」

「君、オメガなんでしょ。僕、アルファなんだ」

「アルファの客はなるべくとっていない。ヒート期間がきたら・・・・・・」

ズクリ。

熱に一気に体が支配される。

「な・・・・・・・」

「君、抑制剤飲んでないの!?すごいフェロモンの香り・・・・頭がどうにかなりそうだ」

京楽は、必死でヒート期間が訪れてしまったオメガの浮竹を、襲うまいと我慢していた。

「抑制剤・・・褥の傍にある。すまないが、持ってきてくれないだろうか。熱に体が支配されて身動きがとれそうにない」

浮竹は、熱に支配されるのにある程度慣れているので、ヒート期間を男なしか自虐なしでいられることはできなかったが、冷静な判断はまだ下せた。

「ほら、抑制剤と、水」

水の入ったコップと一緒に、抑制剤を飲んだ。

少し熱はおさまったが、ヒートで頭がぼんやりとする。アルファの京楽に抱かれたくて、仕方なかった。

「俺は・・・番になれないが、抱いてくれるか。ヒート期間は我慢がなかなかできない。いつもはベータに抱いてもらっているのだが、あいにく今は客がお前しかいない」

「いいのかい?といっても、君を抱くつもりで買ったんだから、まぁ仕方ないよね」

「色子は、もしかして初めてか?」

「どうしてそう思うの」

「白粉の匂いがする。女物の」

「ああ・・・風呂にはいったんだけど、その後遊女にからまれてね。抱いてくれとうるさかったけど、好みじゃなかったんで、金をもたせて去ったよ」

「お前の好みは、俺みたいな色子なのか?」

「言ったじゃない。一目ぼれって。でも、遊びじゃない。君を身請けしたい」

「はっ・・・・俺の身請け金はかなり高いぞ。やめておけ」

「上流貴族だから、金はいくらでも使えるよ」

しぼれるだけしぼって。

廓の主人言葉を思い出す。

「俺は、高いぞ」

「とにかく、君も苦しそうだし、僕も君の出すフェロモンでどうにかなりそうなので、抱くよ」

「ん・・・・・・」

触れるだけの口づけを受ける。

もっと京楽が欲しくなって、浮竹は自分から唇を開いた。

ぬるりとした舌が入ってくる。

ぞくぞくと、体がしびれる。

「キスだけで、ばてばてだね」

「ヒートなんだ・・・子種を俺の中に注げ」

浮竹は、自分から衣服をぬいで、京楽の服も脱がせた。

京楽の狂暴なまでにでかい一物を手でしごき、おずおずと舌でなめとった。

「ああ、いいね。そこ、一番かんじるよ」

色子として4年も働いてきたので、男の感じる部分は分かっていた。

「君を身請けしたら、結婚しよう」

「何をばかな・・・・・・こんな、いろんな男に抱かれて汚い俺を身請けするより、上流貴族の姫君でも娶ればいいんじゃないのか?」

「君がいいんだよ」

「わ!」

我慢できなくなった子種が、びゅるびゅると吐き出されて、浮竹の顔にかかった。

「ああ、ごめん!」

ティッシュで拭われて、不思議な気持ちになった。

ヒート期間以外で抱いてくるアルファは、意地が悪くてみんな浮竹を屈服して支配しようとする。

番にされそうになったことも、一度や二度ではないが、首輪をつけているので、なんとかなった。

「抱くよ、いいかい?」

「俺を買ったのはお前だ。好きなようにするといい」

「優しくするから・・・・痛かったら、言ってね」

「色子になって何度も抱かれた。大丈夫だ」

深い口づけを受けて、浮竹はヒートの熱が高まっていくのを感じていた。抑制剤など、アルファとのセックスではあまり意味がない。

「んっ」

薄い胸板を撫でられ、舌を這わされて、声がもれた。

首筋、鎖骨、胸と赤い花びらが散っていく。

「あっ」

胸の先端が硬くなった部分をかじられて、もう一方は指でつままれた。

4年も色子をしてきたので、完全に性感帯になっていた。

「あ、あ、あ、早く!」

「でも、一度出しておかないと辛いでしょ?」

「そんなこと、いいから!アルファにヒート期間に抱かれるのは初めてだが、我慢がきかない」

浮竹は、自分から足を開いて、京楽を誘った。

その淫靡な姿に、京楽がごくりと唾を飲みこむ。

京楽は、すでに濡れている蕾に舌を這わせた。

「やん!」

「しっかり、濡らして解しておかないとね」

「や、そんなことしなくても、俺はオメガだ。自然に濡れる」

「でも、君を少しでも傷つけたくないから」

舌が入ってきて、それから指を埋め込まれた。

全身の輪郭を愛撫して、口づけを何度も受けながら、指で解されていくのを他人事のように感じていた。熱に支配されて、意識が飛びそうになる。

「あ!」

前立腺をコリコリと刺激されて、浮竹は精を放っていた。

「きもちよかった?」

聞かれて、こくこくと頷いた。

「あ、くれ。お前の子種を・・・・・俺の胎の奥に」

「仕方ない子だねぇ」

京楽は、浮竹が今まで受け入れてきた男の中でも一番でかいやつを挿入されることに、少しの恐怖感を抱いた。

京楽にぎゅっと抱き着いた。

「かわいい、十四郎」

「あ・・・京楽」

「春水って呼んで」

「春水、早く来い」

「いくよ」

「あああああ!!!!!」

一気に貫かれて、濡れているとはいえ、少し痛みを感じた。

幸い、血は出なかった。

「しばらく、このままでいるね」

浮竹の中に自身を埋め込んで、その大きさに慣れるまで、京楽はじっとしていた。

「あ、あ、あ、動け。俺をめちゃくちゃにしてくれ」

オメガ故のあさましい欲望。

浮竹はそれが嫌いだった。けれど、求めずにはいられない。

「動くよ」

「ああ!」

ズッズッと、京楽のものが浮竹の中を拓いていく。

「んあ!」

ごりっと、前立腺を刺激されて、浮竹はびくりと体を跳ねさせた。

「君はここが気持ちいいんだね」

「やああああ、そこばっか攻めるな。いやだ、もっと奥にこい」

京楽は、浮竹の言葉通り最奥までずるりと侵入した。

「あ、ああ・・・・」

子宮口まで犯されて、浮竹は熱に狂った。それは京楽も同じことだった。

「一度出すよ」

「んっ・・・・」

最奥でどくどくと京楽の体液が弾けるのをかんじて、浮竹は涙を零した。

きもちいい。

頭が真っ白になる。

「僕、まだ満足してないからね。君もヒート期間中だし、1回じゃ足りないでしょ」

体位を変えて、背後から抱かれた。

「んあ、あ、あ、ひあああ」

獣同士が交わるように、交じりあった。

「あ、いってしまう。春水、春水!」

「僕もいくよ。一緒にいこう、十四郎」

浮竹の前立腺を抉りすりあげ、口づけをしてから、最奥に叩きこむ。

「んあっ」

「くっ・・・・・・」

ドクドクと、生暖かいものが、もう何度目になるか分からないが、弾けて、浮竹は意識を失った。

「十四郎?」

動かなくなった浮竹が、死んだのはないのかと焦って息を確かめるが、静かに眠っているだけだった。

「ごめんね、十四郎。手加減できなかった」

濡れたタオルで浮竹の全身を清め、できる範囲で中にだしたものをかき出した。

子宮の中にもたっぷり注いだので、このままでは浮竹は妊娠してしまうだろう。

薬箱を探し、アフターピルを見つけると、浮竹に口移しでのませた。


「君を身請けにきたよ」

ヒート期間の間中、京楽は浮竹を抱いた。

それから、ぱったりと京楽はこなくなった。

身請け話など、やはりただの冗談だったかと諦めていたが、大量の黄金や宝石をもってきた京楽に、浮竹は言葉を口にした。

「お前はばかか。こんな病人の色子をそんなに金を払って身請けするなど。

「バカでけっこう。君は僕のものだ。番になりたい」

「なっ」

浮竹は赤くなった。

首輪に手をやって、自分の首がかまれていなかったことを思い出す。

その気になれば、ヒート期間中に交わりながら首を噛めば、番になれたのだ。

京楽は、あくまで浮竹の感情を先に考える。

「本当に、俺でいいのか。俺は色子だ。オメガだからお前の子は産んでやれるが、女のような柔らかさもない」

「いや、君最高だったから。今まで抱いてきたどの遊女より、きもちよかった」

「ば、ばか!」

京楽は、店の主人に黄金や宝石の他に紙幣を払った。

主人はにこにこして。

「幸せになれよ、十四郎」

そう言って、廓の中に去っていった。

「お前は、俺を番にするのか?」

「そのつもりだよ」

「物好きなやつ」

「恋をしたのは初めてんなんだよ。君を一度抱くだけでおさまるかと思ったけど、無理だった」

「そりゃ、お前はアルファだからな」

「アルファもオメガも関係ない。君だから必要なんだ、十四郎」

「・・・・・恥ずかしいやつ」

浮竹を抱き上げて、京楽は馬車に乗り込むと、浮竹の荷物を2台目の馬車につみこんで、出発した。

「京楽十四郎。近いうちに、そう名乗るようになるから、慣れていてね」

「な、結婚するつもりか!俺と!」

「そうだよ。妾なんかにはしない。妻にする」

「もう、どうでも好きにしてくれ・・・・・・・」

浮竹は頭を抱え込みながら、それでも京楽のくれるぬくもりに感謝するのだった。


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オメガバース恋白3

前のヒートから3カ月が経過した。

そろそろヒートが来る頃かと、白哉は自分の体調に気を使い、オメガ用のヒート抑制剤を飲み続けていた。

4カ月が経っても、5カ月が経っても、ヒートは訪れなかった。

白哉はほっとした。

このままずっとヒートがこなければいいのにと思った。

けれど、番となった恋次が気がかりだった。

恋次から求めてくることはあるが、ヒート期間出ない限り、それに応じることはなかった。

ハグやキスをすることはあるが、それ以上はしなかった。

「隊長、好きです。愛してます」

「恋次・・・・・んっ・・・・・」

深く口づけられて、舌と舌が絡み合った。

「ほんとなら、隊長をめちゃめちゃにしたい。番だし。でも、隊長がいやがるからしません」

嫌がる白哉を無理やり抱いたら、きっと番としても終わりになるだろう。

白哉はなんとしても番を取り消す方法を探しだして、実行するだろう。

番である相手が死ぬ以外にも、番を解消できる、高価すぎる薬がある。

きっと、白哉はそれに手を出す。

だから、恋次は白哉に無理強いはしなかった。

ヒートは突然だった。

「はっ・・・・」

護廷13隊が集まった隊首会で、白哉は突然倒れた。

白哉は、念のため総隊長である京楽にだけは、自分がオメガであり、ヒート期間があって仕事に支障が出ることがあるかもしれないことを伝えていた。

「朽木隊長!今、診ます!」

「いらぬ。触るな」

「でも」

4番隊長虎徹勇音の手を、白哉は追い払った。

「誰か、阿散井君を呼んでくれないか。大至急だ」

京楽が、部下を呼んで恋次を呼んでこさせるように手配する。

「いい、一人で歩ける・・・・ううっ」

「無理しなさんな、朽木隊長。阿散井君はすぐにくるから」

言葉通り、隊首会で近場で待っていた恋次が、京楽の部下に呼ばれて、やってきた。

「隊長!」

「恋次・・・・恋次、恋次」

様子のおかしい白哉の様子を見て、他の隊長たちがざわつく。

「何、朽木隊長はちょっとした病気でね。時折発作を起こすんだ」

京楽の言葉に、勇音は身を乗り出す。

「病気なら、やはりちゃんとした診察を受けたほうが・・・・・・」

「いらぬ、と言っている」

「でも・・・・」

「くどい」

「虎徹隊長。朽木隊長のことは、俺に任せてください」

よろよろと、恋次に支えられながら歩く白哉は、恋次に抱きかかえられて瞬歩で、隊首会の会場を後にした。



「恋次・・・・・・ヒートが始まったのだ。薬で抑えられていたのに、突然息ができなくなって、熱に支配されて・・・・・・」

「今、助けますから」

恋次は、白哉を抱いた。

1週間、ヒート期間を白哉と一緒に過ごして、白哉の熱は収まった。

そして、恐れていたことが起きた。

白哉が、オメガであることが、真ささやかに噂されていた。

そして、勇音の独自の診断で、それが事実であると分かった。

4大貴族であり、6番隊の隊長がオメガであることは、瀞霊廷を震撼させた。

他の3大貴族が動いた。

朽木家の当主がオメガであることを知った他の3大貴族たちは、我ぞとこぞって、血縁関係の者を、婚姻させるために朽木家にお目通りを願ってきた。

白哉は、ヒート期間が終わってから、朽木家にいても、見合いばかりさせられるので、辟易として恋次の家に居候していた。

「隊長、帰んなくていいんすか」

「帰ったら、他の貴族の男を宛がわれて、恋次、お前との番を解消させられて番にさせられて、婚姻させられて子を産む道具になり果てる」

4大貴族の当主、朽木白哉の子なら、朽木家の時期当主だ。

その夫となれる存在になりたくて、3大貴族は、直系は動いていないが、傍系などの血筋がお見合い話をもちかけてくる。

下手をすると、攫われて、番を解消する薬を無理やり飲まされて、そのまま強引に関係を強要されて、番にさせられる可能性もある。

「私は、恋次、お前がよいのだ。恋次となら、番でいても苦痛ではないし、子は産めぬが、この際だから婚姻しても構わぬ」

「隊長・・・・・」

結婚話をちらつかされて、恋次の心臓はどくどくと高鳴った。

「隊長・・・・・抱いて、いいですか。結婚、しましょう、俺たち」

「本気か、恋次。このような、できそこないの私と、結婚したいと・・・・・」

どっと背負っていたものがとれるような気分だった。

このまま、流されてしまっていいのだろうか。

「俺は本気です、隊長」

「恋次・・・・」

「愛してます、隊長。嫌じゃないなら、抱きますよ。抱く前にちゃんとアフターピル飲んでもらいますから、妊娠する可能性はありません」

「好きに、しろ・・・・・・」

恋次は、半ばやけを起こしている白哉を抱き寄せた。

アフターピルを口移しで飲ませてから、潤滑油やら褥やら、濡れたタオルやらを用意して、白哉を押し倒して、衣服をはぎとっていく。

恋次の家は一人暮らしの割には広かった。

「あっ」

薄い平らな胸の先端を甘噛みされて、声が漏れた。

ヒート期間ではないが、後ろは濡れていた。

でも、ヒート期間ではないので、滑りが足りずに、潤滑油を使うことになるだろう。

舌が絡み合う口づけを繰り返して、くくっていた赤髪を解いた恋次にキスされると、視界が赤で満たされた。

「んっ」

やわやわと、下肢を弄られた。

衣服を脱がされ、恋次も衣服を脱いだ。

「すげー綺麗。隊長、愛してます」

「恋次・・・私も、愛している」

番となったのだから、恋愛感情はあった。

「んやっ」

花茎に手をかけられて、そのまましごかれて、白哉はたまっていたのか、あっという間に精を弾けさせた。

「ああっ」

「隊長・・・指、いれますよ」

「ん・・・・・」

潤滑油で濡れた、恋次の指が体内に侵入してくる。

ばらばらに動かされて、そのうちの一本が前立腺をかすめて、白哉はびくりと体を跳ねさせた。

「隊長のいいとこ、もう知り尽くしてますから」

前立腺ばかりをいじられて、白哉は熱のこもった潤んだ瞳で恋次を見上げた。

「お前が欲しい。来い」

「はい、隊長」

恋次は、十分に解した白哉の蕾に己の怒張したものをあてがい、一気に貫いた。

「ああああ!!!」

刺激に、白哉が涙を流す。

「んんう」

唇を奪われて、悲鳴は音を失う。

「好きです、隊長」

ぐちゃぐちゃと、連結部が粟立つほどに、ピストン運動を繰り返した。

ずるりと入口付近まで引き抜かれて、子宮口まで貫かれた。

「ひあっ!」

一度ひきぬき、恋次が横になって、白哉に跨るように誘導される。

「んっ、んっ・・・・・・・」

ヒート中のように、熱に支配された体は、番のいうことをよく聞いた。

恋次の上に跨り、恋次のものをゆっくりと蕾が飲みこんでいく。

「あっ」

のけ反った白哉の白い喉を噛んで、所有の証を刻んだ。

騎乗位になり、そのまま深く交わった。

「あ、ああ・・・奥に、奥に当たってる」

「そりゃ、深く犯してますからね」

「やあぁっ」

「ほんとはいいんでしょ?」

「恋次・・・・・」

「隊長、いくから、子種、全部胎の奥で受け止めてくださいね」

「ああ!」

下から思い切り突き上げられて、白哉も恋次と同時に果てた。

濡れたタオルで、下肢を拭われて、中にだしたものをできる限りかき出された後、疲れで白哉はそのまま眠ってしまった。

その黒い絹のような髪を手ですきながら、このまま白哉を閉じ込めて自分のものにしたいと思った。

朝起きると、白哉の姿がなく、恋次は慌てた。

すると、浴衣を着た白哉が、濡れた髪のまま現れたので、ほっとした。

「隊長、ちゃんと髪乾かさないと、風邪ひきますよ」

「お前が乾かしてくれ」

「仕方ないっすね」

白哉は、自分の屋敷に戻る気はないようで、恋次の家から6番隊の隊舎に一緒に出勤した。

そして、結婚しろとおしかけてくる貴族たちに、自分には番がいて、その番と結婚すると、声高々に宣言した。

相手は、なんでも副官だそうだと、3大貴族の血縁関係たちが、ぶつぶつと文句を言っていた。

白哉は、金を使って、番を解消できる薬を買い占めて、破棄した。

これで、恋次を狙うしかない。

でも、恋次ほどの手練れを暗殺できるような暗部を、他の貴族たちはもっていない。

白哉は、決意した。

恋次と、生きていくと。番になったときは、まだそこまで決心していなかった。

恋次が純粋に愛しい。

恋次の子なら、産んでもいいかもしれない。

そう思うほどに、恋次への想いを募らせていた。




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チョコレイト。

2月がやってきた。

恒例のバレンタインの日には、男子も女子もそわそわする。

一護は、いつものように下駄箱をあけると、どさどさとチョコレートが入った箱が入れられていた。

「もてるな、黒崎」

生徒会長でもある石田が、たまたま通りかかっていてそう言ったが、石田は紙袋いっぱいにチョコレートの入った包みやら箱やらを手にしていた。

「お前ほどじゃねーよ」

「僕は将来医者になるって決めてるから、きっといい物件として見られているんだろうさ」

チョコレートをたくさんもらっているのに、少しも嬉しくなさそうだった。

「まぁ、俺は医者になる気はねーけど」

黒崎医院を継ぐつもりはなかった。

将来の夢は、翻訳家だ。

英語の成績はTOPクラスだ。

すでに、ドイツ語を習っている。いつか、ドイツ語の翻訳家になりたいと思っていた。

進学後の大学も国際系統を選び、第2学語にドイツ語を選択するつもりであった。

もうすにで、受験には受かっており、後は高校を卒業して、大学に進学するだけ。

でも、そこにぽっかりと穴ができる。

高校を卒業したら、ルキアは尸魂界に帰ってしまうのだ。

こちらから尸魂界に行くこともできるが、頻繁にいっては迷惑がかかってしまうだろう。おまけにルキアは13番隊の副官で、隊長代理である。

大戦の復旧で忙しいこの時期に、現世にいられるのは、尸魂界にとって大恩人である黒崎一護の我儘だった。

ルキアを、高校卒業まで現世で暮らしてほしいという。

それも、あと1カ月もすれば終わりだ。

まだ、一護はルキアに好きと言っていない。

いつか言おうと思っていたが、ついにバレンタインの日まできてしまった。

教室につき、席についてぼーっとしていると、いつの間にか授業が始まっていた。

もう大学には合格しているので、授業をちゃんと聞いていなくても問題はない。自主休校する生徒も目立つし、授業中にスマホをいじっている生徒も目立つが、教師はあえて何も言わない。

ブー。

一護のスマホが振動した。

教科書を一応盾代わりにして、メール画面を開く。

(貴様に渡したいものがある。放課後、保健室までこい)

(なんだよ、渡したいものって)

(たわけ。この季節になら決まっておろう)

ああ、なんだ。

義理チョコか。

ルキアからもらえるなら、義理チョコでも嬉しい。

気分が高揚して、ついついメールを何度も見てしまった。

やがて放課後になり、言われた通りに保健室にやってきた。

今日は保健室の先生は休みで、ベッドで眠っている生徒もいない。

ルキアは、ベッドに腰かけて、足をぶらぶらとさせていた。

「来たぜ」

「う、うむ」

ぶらぶら。

一護も、ルキアの隣に座って、ベッドが軋んだ。

ルキアは、まだ足をぶらぶらさせていた。

緊張しているようで、一護はルキアの頭を撫でた。

「な、何をするか!」

「何がじゃねーよ。そんなに緊張してどうした?」

「貴様に渡したいものが・・・・・」

「ああ、義理チョコだろ」

「違う!」

「え?」

「あ・・・・えっと・・・・・」

「まさか、本命?」

ドクンと、一護の心臓が高鳴る。

期待、していいのだろうか。

ルキアが好きだ。

ルキアも、自分のことが好きだと、期待していいのだろうか。

「やる。これを機様にやる」

ハート形にラッピングされたチョコレートを渡された。

「い、言っておくが、ほ、本命・・・・・義理じゃ、ない・・・・・・・」

顔を真っ赤にして、エンストしたルキアを抱きしめていた。

「すっげー嬉しい。俺のこと、好き?」

「貴様!す、す、すきやき・・・・・」

「好きだと思って、いいんだな?」

「う、うむ・・・貴様が、大学に進学したら、私は尸魂界に戻る。でも、週1程度なら、現世にいってよいと、総隊長と兄様が・・・・・」

「ルキア、好きだ。結婚を視野に、付き合ってくれ」

「けけけけ、こけっこー!」

真っ赤になったルキアは、またエンストを起こしていた。

「熱あるのか?」

「ち、違う。ただ、いきなりでビックリしただけだ」

「好きだ、ルキア。ルキアは?」

「あーもう!貴様のことが、ずっと好きだった!私を尸魂界に救いに来てくれた時くらいから、ずっと好きだった!」

「俺は出会った頃から好きだった」

「でも、私は死神で、貴様は人間で・・・住む世界が違うから、その・・・・好きだと言えなくて、今まで・・・・・」

「俺は、住む世界が違っても、ルキアが好きだ」

「それは私もだ!」

ルキアは、スマホの代わりに伝令神機を持っていた。それで、一護とメールのやりとりをしたり、ルキアが尸魂界に戻った時なんかに通話をしていたりした。

空白の17カ月。

ルキアも一護も、最大の試練だった。

霊圧を失った一護は、霊圧を取り戻し、大戦を経験してまた大人になった。

ルキアも、いろんなものを失ったが、生きて一護の傍にいれた。

ただそれだけで、十分なのに。

もっともっとと、欲張ってしまう。

だから、ルキアは正直に総隊長と義兄である白哉に想いを告げて、1週間に一度、休暇の日に現世にいくことを許してもらった。

「貴様のことが好きだ、一護。これからも、隣にいたい」

一護は、ルキアをベッドに押し倒していた。

そして、ルキアの唇を奪っていた。

「んっ・・・・・」

「すっげーかわいい」

「茶化すな」

ルキアは両手で顔を隠してしまった。

その手に口づける。

「貴様、経験があるのか?なんか手慣れていないか?」

「いや、京楽さんに連れられて、ちょっと花街にな。遊女は抱いてないぞ!ルキアが好きだから」

「花街・・・・私などより、よほど美人がいたのであろう」

「どんなに美人でも、ルキアじゃねーと意味ねぇんだよ」

「信じていいのか?」

「俺はルキアだけが好きだ」

ちゅっと、額にキスを落とすと、ルキアは顔を覆っていた手をのろのろと外した。

「私も、貴様だけが好きだ」

ルキアは、ぺろりと唇をなめて、一護を押し倒していた。

「ルキア?」

「結界を張った。しばらくは誰もこないし、音も漏れない」

ごくりと、妖艶になるルキアに、一護は唾を飲みこんだ。

「一護、貴様が欲しい。今すぐに」

「ルキア・・・初めてだろ?いいのか、こんな場所で」

「家に帰ったら、できないであろう!」

「確かにそうだな」

黒崎家に居候しているルキアは、一護の部屋に頻繁に訪れて、時折一緒に寝ることはあれど、そういった行為は一切してないなかった。

キスも、今日が始めてだというのに、なんだろうこのかわいくて妖艶な生き物は。

「貴様の、初めてを、もらう」

ルキアは、一護の制服を脱がしていく。

一護も、ルキアの制服に手をかけた。

どちらともなしに肌着になり、一護がルキアを押し倒していた。

「怖いか?」

「少し・・・・でも、貴様となら、大丈夫だ」

ルキアの薄い胸を、触る。

「あっ」

「声、もっと聞かせて?」

やわやわともみしだき、ショーツに手をかけた。ブラジャーはもう外されていた。

「濡れてる」

「や、言うな・・・・・」

ルキアの秘所に手をはわせると、濡れていた。

「指、入れるぞ?」

「ん・・・・」

ゆっくりと、解すように秘所に指をはわせて、かりかりと天井部分をひっかくと、びくんとルキアが反応した。

「ここ、いい?」

「や、なんか、なんか・・・」

くちゅりと音をたてて、一護はルキアを攻め立てた。

「あ!」

ルキアは、いってしまった。

ぜぇぜぇと息をして、そんなルキアにちゅっとリップ音をたててキスをして、一護はすでにたってしまっていた己を取り出して、ゆっくりと秘所にあてがった。

「痛いかもしんねーけど、優しくするから」

「痛くてもいいい。貴様と、一つになりたい」

ルキアの煽る言葉と、唇を舐める仕草に、我慢の限界にきた一護が、ルキアの中に侵入した。

ズッと、音をたてて中を裂いていくと、プチンと、処女膜が千切れる音がした。

秘所から、血が伝い、シーツに染みを作った。

「痛いか?」

「大丈夫だ。動いていいぞ」

ルキアは、一護を煽る。自ら足を開き、一護の唇に唇を重ねた。

「んう」

舌を絡ませあいながら、ゆっくりと交わった。

「そろそろ限界だ・・・・中に出すわけにもいかねーし、どうするかな・・・」

「や、中に出せ。子種を注げ。どうせただの義骸だ、孕むことはない」

「中に出すぞ」

「うむ」

一護の動きが早くなり、じゅぷじゅぷと水音を立てて、秘所を出入りしていたものは、ルキアの子宮口にズルリと侵入してきて、ドクドクと射精した。

「あ、あ、あ!私も、いく!」

「一緒に、いこう」

快感で真っ白になった世界で、息を整えた。

「ごめん、初めてなのに、ちょっと手荒かったか?俺も初めてだから、加減がわからなくて」

「いや、いい。私もきもちよかったし。それより、シーツの染み、どうしよう・・・・・」

「洗濯機に放り込んどけばいいんじゃね?」

保健室には、洗濯機もあった。

「うむ、そうだな」

「ちょっと待ってろ」

一護は服を着て、タオルをお湯で濡らして戻ってきた。

「中にだしたから、きっと垂れてくる。綺麗にしないと」

「あ・・・・そんなの、自分でできる」

「ルキアは休んでろ」

一護は、ルキアの中に出したものが、とろりとルキアの細い太ももを伝う姿に、また欲情を覚えたが、我慢した。

「お互い初めてだったから、うまくいったかわかんないけど、好きだぜ、ルキア」

「貴様に初めてを奪われるとは・・・・・ふふふ」

「なんだよ」

「嬉しいのだ。朽木家に養子になったからには、上流貴族と婚姻せねばなるまいと思っていたのだが、兄様が、一護が好きなら、一護と一緒になってもいいと・・・・・・・」

「あの白哉がか」

「そうだ。許可をもらったのだ」

「ルキア、俺と結婚してくれるよな?」

「ああ」

たとえ、寿命が違っても。

一護が先に死んでも、また死の果てに死神となり、未来はある。

永劫の時を、ルキアと過ごすことを、一護は誓った。

かりっと、指を噛んで、血をにじませると、ルキアも自分の指を噛んで、血をにじませた。

「血の誓いだ。未来永劫、私は貴様と共にある」

「血の誓いを。未来永劫、俺はルキアを愛する」

血の滲む親指を重ね合わあせて、唇を重ねあった。

服を着て、ルキアは結界を解いた。

体液でべとべとになってしまったシーツは、洗濯機にいれて洗濯した。

ルキアが、一護に手を差し出す。

「行こう、私たちの未来へ」

「ああ」

一護は、ルキアからもらったチョコを大切そうに鞄にしまって、他にもらったチョコは処分して、帰路についた。

「ふふ、なんだか不思議だな。結ばれたけれど、まだ付き合い始めたばかりだというのに、貴様の家に帰るのは、なんだがむず痒い」

「だからって、尸魂界に戻るなよ。現世にいてくれ」

「ああ、分かっている。できるだけ、現世にくるようにする」

ルキアと一護の物語は、まだ始まったばかり。

チョコレートから始まった、甘い関係は、甘いまま続いていくのであった。




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酒を飲んでも飲まれるな

「なんだこれは」

朝起きると、横に白哉が寝ていた。

「ん・・・・・・」

美し顔(かんばせ)が、ゆっくりと目を開こうとして、また閉じられた。

いやいやいや。

何この状況。

昨日は・・・・確か、ルキアと白哉と酒を飲みあって・・・・・。

後のことは、覚えていなかった。

いやいやいや。

白哉の衣服が乱れていたり、美しく整った顔は綺麗だが、まさかまさかと。

同じ布団で寝ていたのだ。

おまけに一護は上半身裸で、パンツ一丁という姿。

記憶もあやふやだし、まさかとは思うが、白哉に手を出したわけではないだろう、多分。

そう願いたい。

「兄様、朝ですよ!」

愛しい義兄が珍しく非番とはいえ、遅くまで寝ているのを心配したルキアは、わざわざ白哉を起こしに来た。そして、パンツ一丁の一護と、乱れた衣服のまま眠っている眠り姫こと、白哉を見て固まった。

まだ眠っているとはいえ、衣服の乱れた白哉と、なぜか上半身裸のでパンツ一丁の一護を見て、ルキアは涙をボロボロと零した。

「一護の浮気者!」

ルキアは、一護に強烈なビンタをかまして、走り去って行った。

「あいたたたた」

すごいビンタだった。

思いっきり頬に痕が残った。

とにかく、誤解を解かないといけないので、散らばっていた衣服を着て、ルキアの後を追おうとした時、白哉が起きた。

「おい白哉、なんだこれ!俺ら、なんでもなかったよな!?酒のせいでやちゃったってことないよな?」

「んー・・・・・覚えておらぬ」

「ぐわああああああ」

白哉は、首を傾げていた。ぱらぱらと、長い艶のある髪が頬に零れる。

「先ほど、ルキアの声が聞こえた気がしたが」

「この状況見て誤解したんだよ!浮気者って言われた!」

「ふむ。浮気者が」

「ぐああああああ。俺は何もしていないはずだああああ!」

一護は、衣服を着ると、猛烈な勢いで白哉の寝室を出て、ルキアの霊圧を探りながら、走り出す。

朽木家の本家はとにかく広い。

霊圧を探るのは苦手だが、なんとか感情の高ぶりのためか霊圧があがっているルキアのいる場所を突き止めて、一護はそこに向かった。

椿の花が咲いていた。

それを、ルキアは黙ってただ見ていた。

「ルキア」

「浮気者」

「俺と白哉はなんでもねーって。なんもしてないはずだ。俺にはルキアがいる。ルキアとしか、そういうことはしない」

「浮気者。兄様に手を出すなんて・・・・」

「だから、酒飲んで多分ひゃっはーって気分になってああなっただけで、誤解だ。俺と白哉はなんでもない。白哉はただの義兄だ」

「本当に、信じてよいのだな?」

ルキアは、潤んだ瞳で一護を見つめてきた。

う。

かわいい。

「ルキア、大好きだ」

ルキアを優しく抱きしめると、ルキアもおずおずと抱き返してくれた。

「一護の言葉を信じる」

「ああ」

椿が咲き狂う庭で、口づけを交わした。

「一護の匂いがする。兄様の匂いがない。信じる」

ルキアは、太陽のように笑った。

泣いたり笑ったり、忙しい。

一護は、ルキア成分をたっぷり補充した。

「なぁ、ルキア、今晩・・・・・・」

「兄様はとにかく、一護は当分、酒は禁止だな」

「まじか」

「オレンジジュースでも飲んでいろ」

「まぁ、仕方ねーか」

誤解はあっけなく解けた。

白哉も一護もルキアも、昨日はべろんべろんになるまで飲んだので、皆記憶があやふやだった。

一番素面に近かった一護が、酔いつぶれた白哉を介抱して、そのまま眠気に任せてずるずると寝てしまったのだ。

なんでパンツ一丁だったのかは、その時の一護に聞いてみないと分からない。

一護は飲みすぎると、パンツ一丁になるという噂が、13番隊で流れるようになったのは、後日の話。

その頃の白哉はというと、身なりを整えて、持ち帰っていた仕事をしていた。

休みなのだから、休めばいいと思うのだが、することが特にないそうなので、自由にしておいた。


「一護、ルキア、今日飲みに行かないか」

そう恋次に誘われて、ルキアは首を横に振った。

「つい先日、兄様と一護と飲んで羽目を外してしまい、泥酔した。しばらく酒は飲まない。一護は酒は当分禁止だ」

「なんだ、つまんねーな」

「兄様でも誘え」

「隊長、居酒屋なんかの酒飲むのか?」

「案外いける口だぞ。現世のビールとか、やっすい酒も好きみたいだし」

一護がそう言うと、恋次はうなりながら、白哉を誘うことにしたようだった。

夕飯の席で、白哉は果実酒を飲んでいた。

ルキアはココアを。

一護はオレンジジュースだ。

他のジュースも飲みたいといったのだが、なぜかオレンジジュースに固定されていて、我儘をいうなとどやされた。

「一護は、オレンジ色だからオレンジジュースしか飲んではいけないのだ」

「なんだよそれ」

ルキアを抱き寄せて、耳を甘噛みすると、ルキアが飛び跳ねた。

「ひゃん」

「オレンジジュース飽きたー。バナナオレが飲みたい」

「仕方ないな」

ルキアは、給仕の係に、バナナオレを作って持ってこさせるように言った。

「ふふっ、結局私は一護に甘いな」

「夫婦なんだから、いいだろ」

白哉が、いきなり大きな罅をいれてきた。

「泥酔したあの日、兄は私をルキアと間違えて押し倒して、衣服を脱がそうとした」

「ぶーーーーーー」

持ってこられたバナナオレを、一護はルキアの顔面に噴き出していた。

「一護・・・・私に飲み物を噴き出してかけるとは、いい度胸だな。兄様に迫ったのか・・・とんだ浮気者だな!」

解決したと思っていた案件に火が噴いた。

「おい、白哉!」

怒るルキアの頭をなでながら、白哉は一護にべーっと舌を出した。

「ぐぬぬぬ・・・・・・」

白哉の意地の悪さは変わらないようで。

義妹が一番かわいい白哉は、義弟になった一護をからかったり、怒らせたたり、とにかく嫌がらせをしてくる。

今日の風呂の湯を、白哉が入る前に全部抜いてやろうと、子供のような復讐を企む一護。

しかし、尸魂界も大分機械化が進み、朽木家にはシャワーもある。

白哉専用の、シャンプーとボディーソープの中身を入れ替えてやろうと、ついでに企んだ。

決行した次の日。

朝食の場で一護の席はなく、段ボールの上にめざしが置かれていた。

「ぐぬぬぬぬ・・・・・・」

「兄には、それがお似合いだ」

熱い茶をすすりながら、白哉は席を立って出勤する。

「一護、めざしだけでは腹が減るだろう。ほら、味噌汁ぶっかけご飯だ」

ようするに、猫まんま。

白哉に、一護は猫まんまが好きだと刷り込まされているルキアは、精一杯の優しさを出したつもりだった。

「ルキアがくれるなら、まぁ猫まんまでもいいか」

ルキアの紫紺の瞳が、嬉し気だった。

昼は、ちゃんとしたご飯をたべて、夕飯も普通だった。

風呂に入ろうとしたら、湯がなかった。

シャワーで体を洗おうとしたら、ボディーソープの中身がリンスになっていた。

「く、白哉め!」

やったらやり返される。

それを知っていながら、二人は争いを続けるのだった。




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アイスバーズ京浮

注意。

アイスバーズです。

設定は適当。

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世の中には、アイスとジュースというものが存在する。
アイスの特徴は、体温が冷たいこと、体が弱いこと、もう一つはジュースと結ばれると3分以内に体が溶けてしまうこと。

ジュースはアイスに好意を抱いてしまうことが多く、アイスとジュースが結ばれることはアイスの死を意味している。

ジュースは自分がジュースであるということを知らない場合がほとんどだ。

アイスもジュースも稀なので、検査などたまにしか行われなかった。


浮竹はアイスだ。

身体が生まれつき弱く、長く生きられないとされていたが、ミミハギ様を宿らせたお陰で生き延びることができた。

浮竹の統学院からの大親友である京楽は、実はジュースだった。

浮竹は、自分がアイスであることを知っている。

京楽がジュースであることにも気づいていた。

でも、京楽に激しく惹かれながらも、ただ京楽を悲しませないために、迷惑をかけないためにずっと秘密にしてきた。


「おはよう、浮竹」

「ああ、おはよう」

同じ寮の部屋で寝起きしている浮竹と京楽は、今日も何気ない1日を過ごそうとしていた。

浮竹は京楽が好きだった。

アイスは本能的にジュースに好意を抱く。

そのせいか、同じ男性なのに京楽のことが好きになってしまっていた。

京楽は自分がジュースであることを知らない。

「今日の授業は・・・・・・・」

他愛ない会話を続け、学院に登校して授業を受けた。

昼休みになって、食堂で二人で昼食をとっていた。

「なぁ・・・・アイスとジュースって、知ってるか?」

「んー?ああ、アイスがジュースと想いが通じ合うと、アイスが溶けるってやつでしょ。知ってるけど、それがどうかしたの?」

「いや、ただ興味があっただけで」

「うん。悲劇だよね。結ばれたら、アイスは死ぬんだから」

京楽も、アイスとジュースの関係は知っていた。

今度、アイスとジュースの検査が行われることになっていた。

自分がジュースで、親友のはずの浮竹がアイスで、アイスである浮竹がジュースである京楽に想いを抱いてると知ったら、京楽はどうするのだろうか。

多分、想いあっていても、死に繋がる「好き」という言葉は口にしないだろう。

両想いであっても、好きだと口にして想いを明確にしない限り、アイスは溶けない。

だから、安堵もあった。

京楽が、浮竹のことを想っていても、多分「好き」とは言わないだろう。

それが、アイスとジュースが付き合っていける唯一の選択肢だ。

でも、ジュースは好きという言葉を言ってしまう場合がほとんどだ。だから、恐怖も覚えた。

自分がアイスとして溶けることではなく、溶けてしまった後の残された京楽のことに、恐怖を覚えた。


2週間が経ち、いよいよアイスとジュースの検査の日がやってきた。

結果、浮竹はアイス、京楽はジュースだと判明した。

その日から、浮竹は京楽を避けるようになっていた。

「どうして無視するの」

京楽が、浮竹の肩を掴み、自分のほうを振り向かせる。

「俺はアイスだ。ジュースのお前に迷惑しかかけない」

「そんなの、わかんないでしょ。それに、僕は君のことは」

「好き」とは、京楽は言わなかった。

「僕は、君のことを親友として見ているから、安心して。恋愛感情なんて抱いてないから」

「そうか」

浮竹は、落胆すると同時にほっとした。

京楽が傷つくことがないなら、友人として今まで通り過ごしていけばいいのだ。

「アイスとジュースだが、うまく付き合っていこう。俺も、お前の親友でありたい」

「うん」

握手を交わし合いながら、互いに想いを隠した。

京楽も、浮竹のことが好きだったのだ。

想いを告げることは、浮竹の死を意味するかもしれないと知って、京楽は浮竹に自分の想いをいつか伝えようとしていたが、やめた。

そうやって、アイスとジュースでありながら、二人は親友同士として学院を卒業し、死神となった。

死神になっても、交流は続いた。

お互いの想いを隠して、京楽は花街に繰り出して、浮竹に似た遊女の元に通っていた。

それを、浮竹は傷つきながら、ただ黙って見ていた。

浮竹も気づいていた。

京楽が、自分のことを好きなのだろうと。

京楽は、浮竹が自分のことを好きだとは気づいていないようだが。



「京楽、飲みすぎだぞ。さすがにこの酒は飲みすぎるとやばい」

「いいのいいの。こんなの酒のうちに入らないよ」

居酒屋で、二人で飲み合っていると、京楽が羽目を外して飲んだくれてしまった。

京楽が酔う姿が珍しくて、浮竹は甘い果実酒を飲みながら、京楽の背中を撫でた。

「アイスの俺は、いつ死んでもおかしくない。アイスは元々体が弱いから」

「うん・・・・・・」

「いつか、俺が死んでしまったら、墓参りにはきてくれよ」

「そんな、悲しいこと言わないでよ。僕はジュースだけど、浮竹のことは親友としてしか見てないから、大丈夫だよ」

本当は、大好きだけど。

想いを告げることはできない。

浮竹は、京楽を隊舎に送り届けると、自分に宛がわれた席官の家で、眠れない夜を過ごした。

京楽が欲しい。

京楽に振り向いて欲しい。

想いをつげたい。

眠れなくて、布団でごろごろしながら、悶々と悩みを抱え込む。



やがて、時は流れ二人は死神の隊長になっていた。

それでも、交流は続いた。

一度、浮竹は誘われて京楽と共に花街にでかけたことがあったが、浮竹は楽しくなさそうだったので、京楽はその一度きりの花街以外、誘うことをしなかった。

好きな相手が、遊女に手を出すのを、あまりいい気持ちで見ていられなくて、浮竹は酒をこれでもかというほど飲んで、京楽を困らせた。

「京楽のあほー」

「君、酔うと性格、少し変わるよね」

「そんなことはない。それに俺は酔ってなんかいない。京楽がアホだから、悪いんだ」

「はいはい。僕はアホだよ。好きな相手に好きとも告げれずに・・・・・・」

小声だったので、酔いつぶれた浮竹の耳には届かなかった。

浮竹を介抱して、去ろうとすると、浮竹は京楽の女ものの打掛の端を掴んだ。

「いつか、俺はお前に・・・・・・」

「しー。それ以上はだめだよ」

アイスとジュースである。

二人の想いが通じ合うことは、アイスである浮竹の死を意味していた。

「ん・・・なんでもない」

言葉にせず、好き、と口を動かした。

京楽は、浮竹の世話をいろいろとやいてから、自分の館に戻ってしまった。


「ああ。想いを告げれたらなぁ」

浮竹は、ごろりと天井を見上げながら、涙を零した。

京楽が好きだ。

好きだと告げたい。絶対に、京楽も自分のことが好きだ。

でも、それは自分の死を意味する。

「いっそ、死んでもいいかな・・・・・・・」

そんな思いを抱いて、さらに数十年が経過した。



大戦の勃発。

滅却師が攻めてきて、ミミハギ様を解放することを決めた浮竹は、京楽を呼び出していた。

「俺はミミハギ様を解放する。死ぬだろう」

「浮竹!他に方法はないのかい!?」

「ない」

ならば、せめて。

「俺がミミハギ様を解放したら、俺の元にきてくれ。死ぬ前に、伝えたいことがある」

「浮竹・・・・・・・・」

京楽は、悲痛な顔で浮竹を抱きしめた。

「分かったよ。その時がきたら、君の傍にいく」

やがて、浮竹はミミハギ様を解放して、肺の病が悪化して重篤になった。

大戦は、黒崎一護のお陰で、勝利で終わった。

けれど、浮竹の死はもう確実なもので、もってあと1週間というところだった。

浮竹は、入院せず、ただ己の死を雨乾堂で待っていた。



「浮竹、起きてるかい?」

「寝てる」

「起きてるじゃないか」

「俺はもうすぐ死ぬ。でも、その前にお前に伝えたいことがあるんだ」

「うん。僕も、君に伝えたいことがあって、ここにきたよ」

浮竹の死は明確。

もう、迷うことはやめた。

「好きだよ、浮竹」

「ああ・・・・そう言われるのを、数百年待っていたんだ。俺も好きだ、京楽。愛している」

「愛してるよ、浮竹」

ほろほろと。

少しずつ、浮竹の輪郭があやふやになっていく。

浮竹を胸に抱きしめて、キスをした。

「3分って、意外と長いんだな」

「君がいなくなってしまう」

「どうせ、尽きる命だ。こうして、京楽の想いを受けて、想いを告げれて、死ねるなら本望だ」

京楽は、ぼろぼろと涙を零した。

「ねぇ、神様は残酷だね。なんで君をアイスにしたのかな。なんで僕はジュースなんだろ」

ぎゅっと、腕の中の浮竹を抱きしめて、ただ涙を流した。

「泣くな、京楽」

浮竹は、ほろほろと溶けていく。

「逝かないで」

「俺は満足だよ。お前の腕の中で死ねて」

「僕はどうすればいいの。君を失ったこの世界で、一人で生きろと?」

「お前は強い。俺の死なんて、克服できる」

「浮竹、愛してる」

「俺も愛してる、京楽」

触れるだけの口づけをして、浮竹は溶けてしまった。

「浮竹・・・・・・・」

残された衣類を、抱きしめて、京楽は涙を零し続けた。

浮竹も、最期は泣いていた。

アイスとジュース。

決して想いを告げまいと誓っていたが、浮竹の死が近すぎて、想いを伝えた。

両想いだった。

幸せだった。

浮竹と過ごした数百年、幸せだった。

お互いを好きとは言わなかったが、想いはひそかに通じていたのだ。

アイスの死は、「好き」と告げられて愛されること。

アイスである浮竹は、京楽の好きという言葉と愛されることによって、溶けて世界から消えてしまった。

「大好きだよ、浮竹。愛してる」

13番隊の羽織を抱きしめて、京楽は目を閉じた。



愛とは、時に残酷だ。

アイスとジュースであると分かっていたから、浮竹の死が確定しない間は想いは告げなかった。

ミミハギ様の解放。

それによる、浮竹の病気の進行。

もう、助かる術はないと分かって、想いを告げた。

「僕が・・・君を、殺した。君を溶かした」

でも、不思議と後悔はなかった。

いなくなってしまった浮竹のぬくもりが完全に消え去り、京楽は顔をあげた。

「君の分まで生きるよ、僕は。だから、天国で見守っていてね」

ああ、そうだな。

そんな言葉が聞こえた気がした。

アイスの浮竹は、表向きは病死とされたが、遺体がないことで、アイスとしての死を受け入れたのだと、皆に話した。

京楽は攻められなかった。

逆に、泣いていいんだよと、総隊長でも泣いていいんだよと言われた。

もう、涙は浮竹が溶けていく間に流し尽した。

空の棺桶には、白い百合の花が添えられて、燃やされていく。


「さよなら、浮竹」

どうか、安らかに。

君の想いをもらって、僕は強くなれた。

君の死を乗り越えて、生きていく。

いつか、僕が君の傍にいったら、今度こそ一緒になろう。

さようなら、愛した人よ。

さようなら。





















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好きなものは好き16

「ルキア、誕生日おめでとう」

「ありがとう、一護」

一護は、ルキアの誕生日のためにたくさんの御馳走を作り、ケーキを用意していた。

誕生日プレゼントは、お揃いの腕時計だった。

「チャッピーの腕時計ではないか!これ、なかなか売っていないのだぞ!よく手に入れられたな!」

浦原のつてを頼ったなどど、口が裂けても言えない。

灯されたろうそくの火を吹き消して、ルキアは、一護の手作りのケーキを頬張った。

「うむ、貴様の料理はいつ食してもうまいな!」

「たくさん食ってくれ。ルキアのために作ったんだから」

二人で食べきれる量ではないので、次の日にも食べることになるだろうが、誕生日だしいいだろうと思った。

「好きだぜ、ルキア」

「私も好きだぞ、一護」

食事が終わって、湯浴みをして二人でなぜか携帯ゲームをしていた。

「好きだから負けてくれぬか一護」

「いや、好きだからお前が負けろルキア」

「キーー!」

「なんだよ!」

負けて、ルキアはYES NO の枕で、一護を殴った。

ちなみに今日はNOだ。

「貴様など、生クリームの海に沈んでしまえ」

「すっげぇ胸やけしそう」

ルキアを抱きしめると、自然と唇が重なった。

「ん・・・・・・」

「ルキア、好きだ・・・・・」

「知っておる・・・・・」

互いの体温を共有し合いながら、ベッドに横になると、睡魔が襲ってきた。

一護はルキアを抱く気でいたのだが、ルキアがNOと出したので、手は出さなかった。

ただ、後ろから抱きしめて、何度も唇だけでなく、額やうなじ、首筋、鎖骨とかにキスをした。

鎖骨や首筋、うなじなどにはキスマークが残らないようにした。

今日は、大学がある日だった。

ルキアは非番で、一護の大学についてきた。

冬もののワンピースの上からダッフルコートを羽織り、一護と手を繋いでキャンパスの中を歩いた。

「よー、一護、ルキアちゃんとデートか?」

「デートじゃねぇけど。まぁ似たようなもんかな」

ルキアは黙っていれば、とても綺麗なお人形のようである。

珍しい紫紺色の瞳を瞬かせて、長いまつ毛が頬に影を作る。

「一護、次の授業は休講であろう。食堂へいかぬか。この大学のカレーがまた絶品なのだ」

「って言ってるから、行ってくるわ」

「へいへい。見てるだけでおなかいっぱいだぜ、こっちは」

他愛ない会話を友人とかわして、食堂にくるとルキアは席をとり、エビフライの乗った大盛カレーを注文した。

「お前、細いのにほんとよく食べるよな」

「死神たる者、食せる時に食さねばならぬ時もある」

「へいへい。そういうことにしておくよ」

ちなみに、福神漬けはお代わりしほうだいなので、ルキアは福神漬けもたくさん食べた。

満足したのか、寒いだろうにアイスを購入して食べていた。

「冬にアイスかよ」

「冬にアイスがまた絶品なのだ。風呂上がりが一番だが」

「授業終わったら、買い物いくか。好きなアイス、買ってやるよ」

「うむ」

ルキアは、ご機嫌だった。

「もう1時か。次の講義が始まるのではないのか」

「おっといけね。この授業、出席とるからな。単位落とすわけにもいかねーし、出ないと」

「私も授業を受けていいな?」

「ああ、いいぜ」

大学では、ルキアは一護の婚約者ということになっていた。

なので、ちょっかいをかけてくる輩も少ない。

ただ、一人で放置しておくと、知らない学生に口説かれていたりするので、極力大学にいる時は一緒に行動していた。

ゼミなどのクラスで別れた授業には、記憶置換の装置を使ってゼミの生徒であるということにしていたりする。

ちょっと問題ありそうだが、ルキアと少しでも一緒にいたいので、一護は何も言わない。

「今日はバイトは休みなのか?」

「ああ、そうだ」

「では、買い物して家でごろごろしよう!」

いつもはごろごろなんてできないので、ルキアは現世にくると休息をとる。

一護といちゃつきながら、他愛ない会話をするのが好きだった。

一護は、ハーゲンダッツの一番高いアイスを買わされた。

「たっけぇ・・・ただのアイスなのに・・・・」

「たまにはよいであろう。昨日は誕生日だったのだ。その続きだ」

「へいへい」

唇と唇が重なりあう。

アイスを二人で分け合って食べて、平穏な時間と幸せを共有しあった。

「一護は、私のどこが一番好きなのだ」

「全部」

「一番を聞いているのだ」

「・・・・・・その絶壁のむ」

バキ。

最後まで言わせずに、ルキアが額に血管マークを浮かべて、一護を拳で殴った。

「何か言ったか?」

「いえ、なんでもないです」

ちなみに一護が言おうとしたのは絶壁の胸、である。

胸が小さいことにコンプレックスをもっているルキアには分からないだろうが、一護はルキアを好きになった瞬間から巨乳派から貧乳派へと変わった。

ルキアの好きなところ。

たくさんありすぎて、言葉で表せない。

好きなものは好き、でいいじゃねぇか。

そう思う一護だった。






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満月

酒に酔うたびに、京楽は浮竹に「好きだよ」と囁いた。

京楽が酒に酔うほど弱くないことを、浮竹は知っていた。

だから、長いこと「好きだよ」と言われて、「そうか」としか答えなかった。


はぁあああ。

長い長い溜息を、浮竹はついた。

今日は満月。

月見の季節で、あと1時間ほどすると、京楽が酒をもって遊びにくる予定だった。

「隊長、いい加減、諦めて想いに答えてやったらどうですか」

副官の海燕が、重い溜息をつく上官を見る。

すでに酒盛りを始めていた。

団子を食いながら、浮竹と酒を飲みかわしあっていた。

京楽とは二人で月見をする予定だったので、海燕とはその前に少しだけ月見をした。

「でもなぁ。もう200年以上はただの親友だったんだぞ・・・・・・」

「隊長も好きなんでしょ、京楽隊長のこと」

「それが問題なんだ」

今更、好きと、言えるだろうか。

言った瞬間に、今まで築いていた友情が全て壊れそうで怖かった。


「あ、時間なんで俺下がりますね。あとは京楽隊長と月見楽しんでくださいね」

「あ、海燕!」

待ってくれ、お前もいてくれと言う前に、海燕は下がって去って行ってしまった。

「はぁ・・・・・」

「どうしたんですか、ため息なんかついて」

「海燕か?下がったんじゃないのか?それに声がおかしいぞ」

「いや、ちょっと風邪引いたみたいで」

やけに低い声に、海燕が本当に風邪でも引いたのかと思いつつ、相手は海燕だと思って口にした。

「風邪には気をつけろ。京楽のことが好きすぎて、どうにかなりそうなんだ」

「なんだ、そんなこと」

「へ?」

背後から、抱きしめられた。

ふわりと香る金木犀の香水の甘ったるい匂いに、浮竹の体が強張る。

「お前・・・・海燕の真似なんかして・・・・冗談だ、冗談」

京楽だった。

「君は海燕君の前では嘘は言わないの、知ってるよ」

「京楽・・・・・・」

「僕は、君が好きだよ、浮竹」

「俺は・・・・・・」

「君も、僕のこと好きでいてくれたんだね」

「いや、俺は」

京楽の腕から逃れて、浮竹と京楽は向かいあいながら、お互いの杯(さかずき)に酒を注ぎ合った。

「いい月夜だね」

「そうだな」

浮竹は顔を真っ赤にして、京楽はその様を見て酒を飲んで楽しんでいた。

「いいね、今の君の表情。ぐっとくる」

「京楽、あまり人をからかうな」

「どうして?前からしつこいほど言っているけど、僕は浮竹が大好きだよ。友達としてじゃなくって、恋心で。もちろん友達としても大好きだよ」

「俺は・・・・その・・・・」

「酒のせいにしちゃいなよ」

京楽の飲む強い日本酒をすすめられて、つい飲んでしまった。

くらりと、酔いが体中を回る。

「ああ、好きだ。大好きだばかやろーーー」

浮竹は、もうどうにでもなれと、叫んでいた。

「僕を?」

「ああそうだ。京楽、大好きだ。統学院の頃から好きだった」

「僕もだよ、奇遇だねぇ。お互い好きだったのに、200年経ってやっとお互いの想いが通じ合ったんだね」

けらけらと笑って、京楽は酒を飲みほした。

「さて」

お互い、正座になって、改めて向かい合った。

「僕は君が好きだよ、浮竹。恋人になってくれないかい」

「京楽・・・・俺でいいのか。俺は病弱だし、何より同じ男だ」

「統学院で一目ぼれして、はや200年。全部ひっくるめて、好きだよ」

「俺も、お前が好きだ、京楽・・・・・・」

触れ合うだけのキスを、一度。

次は、舌が絡み合うようなキスを二度。

「ま、待て!」

「どうしてだい?」

「そ、その好きだとは言ったが、こういう関係になるにはまだ心の準備が!」

「そんなの、酒の勢いに任せちゃいなよ」

「ちょ、ま、京楽!」

その日の晩、浮竹は京楽においしくいただかれたそうな。




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告白

「なんだこれは」

ルキアの下駄箱に、手紙が入っていた。

何気にチャッピーのシールをはられており、開けるのを少しルキアはためらった。

「チャッピーのシール・・・・はがすのはかわいそう・・・・でも、中身を見なければ」

中には、大きな文字で「好き」と書いてあった。

差出人は、3時に屋上にくると書いてあった。

「なんだこれは。果たし状ではないのか」

「あー、朽木さんラブレター?」

井上が、ルキアのもっているラブレターをそっとのぞき見る。

「わ、好きだって。でも屋上に呼び出して、その時相手がわかるって、なんか不思議だね」

「果たし状ではないのか、やはり」

「いや、こんな果たし状見たことないから!あ、黒崎君、大変なの!朽木さんが!」

「え?賞味期限3カ月過ぎたアイスでも食って腹壊したとかか?」

一護の言葉に、ルキアはその頭を拳で殴った。

「そんなわけあるか!」

「いってー!ただのジョークだろ!」

「貴様のジョークは面白くない!」

どこからか取り出したハリセンで、また一護の頭をはたいた。

「ポカポカ殴りやがって!俺の頭がアホになったらどうしてくれる!」

「貴様はもともとアホだから別にいいではないか」

「なんだと!一度成績は落ちたとはいえ、これでもまだ上位保ってんだぞ!」

ルキアが、現世にいれる時間は残されている。

尸魂界に、卒業したら帰るのだ。

滅却師たちの侵略を勝利してもう半月になる。

残された時間は短い。

一護は、ルキアのことが好きだったが、言い出せずにいた。

でも、こんな形のラブレターの相手を、好きになるのかもしれないと思って、気が気ではなかった。

ぎゃーぎゃーと言い合いを続け、教室で授業を受けて、昼飯を食べて午後の授業を受けて、結局3時になって、ルキアは屋上にいってしまった。

一護は、ルキアの後を追って、屋上に来ていた。

「なぜ貴様がここにいるのだ!」

「お前のおもり」

「なんだと!いらぬ!消えろ!」

「うっせ。ほら、ご登場だぜ」

さえない顔の、下級生だった。

ルキアは、その下級生から惚れたとか何とか言われて

「好きです、付き合ってください!」

と、手を差し出してきた。

ルキアは猫をかぶって、どう断ろうかと思っていると、一護が。

「ごめんな。こいつ、俺と付き合ってるんだわ」

「え・・・・黒崎先輩とですか・・・・・・ううう、お似合いです!分かりました、失礼します!」

「おい、一護、貴様何を勝手に!」

一護は、ルキアを抱き寄せた。

「いつか、言おうと思ってたのにな。こんな形になるなんてなんかいやだが、ルキア、お前のことが好きだ。付き合ってくれ」

「へ?」

ルキアは、間の抜けた顔をしていた。

それから、白哉専用の携帯を取り出して、一護に告白されたことを白哉に伝えた。

「おい、ルキア、なんで白哉に!」

「わわわわ、私も、貴様のことを、すすすすす、すきやき!」

「ルキア」

一護の腕の中で、固まったルキアに、一護が苦笑する。


「ほう。兄は、ルキアを好きだと。付き合いたくば、私を倒してみろ」

「ほらきたーーーーーー!!!」

一護はこうなるであろうことが分かっていたので、白哉に報告されるのを恐れていたのであった。

「散れ、千本桜」

「ぎゃああああああ!話し合いで解決させろおおおお」

「笑止」

「ルキアのアホおおおおおお」

「兄様・・・・いつ見ても麗しいです」

ルキアは、白哉が大好きだ。

一護も同じくらいに好きだけど。

白哉に、一護とのことを認めてもらいために呼び出したのだと、一護が知るのは後日のことだった。


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オメガバース読み切り

「俺たちは、ずっと親友でいよう。なぁ、京楽」

「そうだね。君がそういうのなら、いつでも、君が死ぬまで親友でいるよ」

そんなやりとりをしたのは、数か月前。

また浮竹がオメガだと分かっていなかった時のこと。




「あ・・・・」

体がかっと熱くなった。

ヒートが始まったのだ。抑制剤は飲んでいたにも関わらず、よりによって統学院でヒートになるなど最悪だった。

ぐらりと、体が傾ぐ。

よろけた浮竹を、同じ特進クラスの京楽が受け止めた。

ぶわりとオメガ特有のフェロモンを受けて、京楽の顔が歪む。

同じように、浮竹のヒート期間特有のフェロモンにあてられたアルファたちが、じりじりと、浮竹を囲んだ。

「なぁ、まわしちまおうぜ」

「いいな、それ」

「どうせ下級貴族だ。問題ねーだろ」

京楽の腕から浮竹を奪い取ったクラスメイトが、浮竹を押し倒す。

「やめろ、いやだ、触るな!」

「おい、京楽、お前も混ざるよな」

びりっと音がして、浮竹の学院服の上が破られた。

浮竹の顔が蒼くなる。

「ひっ」

クラスメイトの男に首筋から鎖骨を触られて、その気色悪さに息がつまった。

ゆらり、と。

殺気が、教室を満たした。

あまりの霊圧の高さに、その場にいた浮竹を犯そうとしていた男たちは、恐怖で顔を強張らせた。

「じょ、冗談だ、な、浮竹、京楽」

「触るな!」

浮竹は、涙をためながら、押し倒している男を押しのけた。

「寮に帰る!」

大声をだして、涙を流しながら起き上がるが、視界は狭くなっていて、がたがたと体が震えた。

犯されそうになった恐怖と、傷つけられたプライド。

よりによって、京楽の前でヒートになるなんて。

京楽とはずっと親友でいようと誓ったのだ。

よろり。

熱でうなされる体は、うまくいうことをきいてくれない。

ガタタンと、机にぶつかった。

くらりと頭が揺れる。

だめだ、意識が・・・・・。

ふわりと、温かいいつもの匂いに満たされた。

「京楽・・・?」

「抑制剤飲んだ?」

「まだだ」

「とりあえず寮に戻ろう。それから抑制剤のもう。ね?」

浮竹と京楽は同じ寮の部屋であった。

山本総隊長が、病弱な浮竹を京楽に任せる形で、今まで暮らしてきた。

それはこれからも変わらないと、普通に思っていた。

自分がオメガであり、京楽がアルファであると分かったその日までは。

浮竹がオメガだと判明したのはつい先々週。

ヒートがいつきてもおかしくない年齢で、抑制剤を欠かさず飲んでいた。

今日はあいにく朝飲むのを、時間がなくてできなかったせいで、ヒートが始まった時に分泌されるフェロモンの量が半端ではなかった。

「浮竹、しっかり捕まって。瞬歩で帰るよ」

「あ、ああ・・・・・・」

抱き上げられて、避難の声を出す暇もなく、寮の自室に戻った。


抑制剤と、水の入ったコップを渡された。

ごくりとそれを嚥下しても、熱は収まらない。


「あ・・・・京楽、すまない、一人にしてくれ」

「無理だよ。こんな状態の君を一人になんてできない。教室の誰かがこっそり部屋に忍び込んできて、浮竹を襲うかもしれないし」

「オメガなんて・・・・・」

「僕は、浮竹がオメガでもよかったよ。僕はアルファだし・・・・・ねぇ、まだ親友でいたいと思ってる?」

「それは・・・・・・」

「ほんとは欲しいんでしょ?」

欲しい。

京楽が。

狂おしいまでに、京楽が好きだった。

オメガであると分かる前から好きだった。親友というポジションと、病弱なのをいいことに、京楽の隣に常にいた。

京楽が花街に行くのを、ただ悲しく寂しい気持ちで見ていた。

オメガであり、ヒートの今なら、京楽を独占できる。

でも、相手は上流貴族。まだ婚約はしていないとはいえ、いずれ上流貴族の姫と結婚するだろう。

それでも。

それでも、京楽が欲しい。

京楽に、自分を見ていて欲しい。

「京楽が欲しいといえば、俺を抱いてくれるか」

にこりと、京楽は微笑んだ。

「君のこと、ずっと滅茶苦茶にしてやりたかったんだ。君のあられもない姿を、何度妄想したことか」

「なっ」

かっと、浮竹が赤くなる。

京楽は、そんな浮竹をベッドに押し倒して、キスをしていた。

「んう」

「僕の下で乱れる君を・・・こうやって、想像していたのが現実になるなんて、夢みたいだ」

「俺はオメガだ。お前はアルファ。俺はヒート期間だし、これはあくまで・・・・・・・」

「番になろう」

「え・・・・・・・・」

「浮竹が、僕以外のものになるなんて許せない。僕だけのものにする」

京楽は、ゆっくりと浮竹の服を脱がして、自分も脱いでいった。

「あ・・・・・・・」

鎖骨を甘噛みされて、声が漏れる。

「君は甘いね。砂糖菓子みたい」

「やめっ・・・・・・んっ・・・・・・」

京楽に触られても、気持ち悪くはなかった。逆にきもちよかった。

ずくりと、胎が疼いた。

京楽の雄が欲しいと。

「濡れてるね・・・・・」

「やっ」

ちゅっちゅとキスマークを残されながら、下肢に京楽の手と唇がいく。

「あっ」

花茎を口に含まれて、思考が真っ白になった。

「やめ、あ、あ、あ!」

「浮竹、かわいい」

浮竹は、京楽の口の中で薄い精液をはじけさせた。

それをごくりと嚥下してから、ぬるりと、浮竹の唇を奪い、舌をいれた。

「んう」

指は、蕾をくるくるといじりながら、ゆっくりと指が一本二本と入ってくる。

「んん!」

はっと、浮竹の息が荒くなるが、それが京楽も同じことだった。

「京楽、今ならまだ間に合う。俺を置いて、どこかへ去れ」

「こんな状態の君を放っておけって?素直になりなよ、浮竹。僕のこと、好きなんでしょう?」

「え・・・・・なんで知って・・・・・・」

「君の日ごろの態度で丸わかり。でも、君は知らなかったでしょう?僕も君が大好きだったんだよ。オメガだと知って、番にしたいと思っていた。やっと叶う」

「あ・・・・・」

優しい口づけを受けて、ポロリと熱のせいではない涙がこぼれた。

「京楽・・・・好きだ。春水」

「僕も大好きだよ、十四郎」

「んん!」

指が、前立腺を刺激した。

「見つけた。君のいい場所」

「や、やめ、あ、あ!」

こりこりと指で刺激していくと、一度萎えた浮竹の花茎が反応する。

「いれていい?」

「もう、どうにでも好きなようにしてくれ。熱でぐずぐずに溶けてる。思考も、理性も」

「いれるよ」

「いっ!」

ズッと、浮竹の中に侵入すると、きつく締めつけてきた。

「ごめん、痛いね?」

濡れて解したとはいえ、そんなことのためにあるのではない器官に、京楽の大きな一物を突き入れられて、浮竹は痛みを感じたが、ヒートの熱ですぐに思考はぐずぐずに溶けていく。

「あ・・・・・春水で、満たして」

「いいよ」

ズッズッと音を立てながら、京楽のものが出入りする。

ぐちゅりと音をたてて、子宮口まで侵入された。

「ひああああ!」

刺激に、びくんと浮竹の体が反応する。

「ここもいいんだ」

「や、変になるから・・・やあああ」

前立腺をすりあげながら、何度も浮竹の体を揺さぶった。

「あ、あ、あ!」

浮竹は白い少し長くなった髪を乱して、京楽を締め付けた。

「出すよ・・・・・いいかい」

「あ、あ・・・・・奥に、胎の奥にだしてくれ」

「番にするよ」

どくどくと、浮竹の子宮の中に精液をぶちまけながら、京楽は浮竹の首を噛んだ。

「あ!」

ぴりっとした刺激があり、番になったことがわかる。

「春水と、番になれた・・・・・・・」

浮竹は、弱弱しくではあったが、笑った。

「十四郎。もう、僕だけのものだ。まだ学生だから、後でアフターピル飲んでね。卒業したら、子を作ろう」

「気が早いな」

「だって、好きだった子とやっと想いが通じたんだもん。オメガとアルファは関係なしに、いずれこうなっていたよ、きっと」

「春水、好きだ」

「十四郎・・・・・・・」

何度も口づけを交わした。



ヒート期間であり、まだ一度しか京楽の精を受けていない浮竹は、もっとと京楽にせがんだ。

「んあっ」

もう何度目になるかわからない精液を、胎の奥で受け止めて、浮竹は意識を飛ばした。アフターピルはもう飲んだ後なのだが、それでもまだ交わりたいと、浮竹がせがむので、最近体の調子がいいのをいいことに、何回も抱いた。

ヒート期間は一週間ほどあるが、ずっと交わるではなく、浮竹と京楽の場合は、まどろみを繰り返しながら、時折交じり合い、食事をして風呂に入り、また眠ったりと、眠る時間が多かった。

アルファ用の抑制剤を、京楽は飲んだ。

体の弱い浮竹をずっと抱いていると、きっと熱を出すだろうと、少しでも抑えようとした。

互いの抑制剤は、ヒート期間中のためのものを飲んだので、眠剤成分が入っていた。

幸せなまどろみだった。


ヒート期間が終わると同時に、浮竹は熱を出した。

「ごめんね、熱ださせちゃって」

「いや、いい。俺も望んだことだから」

京楽は、浮竹の前髪をかきあげて、額にキスをした。

「好きだよ、十四郎」

浮竹は赤くなって、でも小声で「俺も」と言って、布団を頭までかぶってしまった。

やがて、浮竹も京楽も統学院を卒業し、死神になり、席官となり、隊長となり・・・・・・・。

京楽と浮竹は3人の子をもうけて、結婚し、長く幸せな時を過ごすのだった。


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オメガバース恋白2

恋次と番になって、3カ月が経過した。

それまではいつも通りの日常を送っていたが、白哉がヒートを起こした。

薬を飲んでいるはずなのに、ヒートは抑えられなかった。

白哉は自室に閉じこもり、ヒートにうなされながらただ時間が過ぎるのを待っていた。

普通のオメガなら、気が狂いそうになるヒートを、白哉はただ熱を孕んで耐えていた。

恋次は、そんな白哉を敏感に察知して、最初は部屋の外から声をかけて、白哉が部屋に入れてくれるのを待っていたが、我慢の限界がきて白哉の部屋に無断で入った。

「隊長。俺たち番でしょう?なんでヒート我慢するんですか。もっと俺を頼ってください」

「薬で抑えられるはずなのだ。お前に迷惑をかけたくない」

「だから言ってるでしょう、番なんです」

「それでも・・・・私は私がオメガであることを否定したい」

「否定しても何も変わらないじゃないですか。抱きますよ。こっちは隊長のフェロモンにあてられて我慢の限界っす」

恋次は、白哉が横になっている布団をはぎ取り、抑制剤を過剰摂取している、白哉の周りにあった抑制剤を白哉の手の届かない場所に置いた。

「恋次・・・・・・・」

白哉も限界のようで、熱を孕んだ瞳で恋次を見ていた。

「愛してます、隊長」

ゆっくりと、白哉の服を脱がせていく。

白哉は熱にうなされながら、他人事のようにかんじていたが、刺激を与えられると敏感に反応した。

「あ!」

口づけを交わしあい、白哉の衣服をはぎとった恋次は、白哉のたちあがっていた花茎に手をかけて、しごいた。

「や・・・・・・」

自虐すらしなかった白哉にとって、その快感は凄まじいもので、恋次の子種が欲しくなって胎が疼いた。

「すまぬ、恋次」

「なんで謝るんすか」

「私は確かにオメガだ。アルファと偽りの仮面をかぶり、オメガであることを否定し続けてきた。お前に出会うまでは」

「隊長・・・・・」

「んんっ・・・・・」

舌が絡み合う口づけを交わし合い、恋次は白哉の花茎をしごいて、精液を出させた。

「ああああ!」

ヒート期間中は普通物事を考えられないのだが、白哉は抑制剤を過剰摂取し、耐えていた。

しかしそれも薬に抗体ができてきて、抑制剤がきかなくなりつつあった。

いずれ、自分がオメガであることが世間にばれるだろう。

怖かった。

朽木家の当主であり、4大貴族の白哉がオメガだと知ったら、他の4大貴族がきっと、娶りにくるだろう。

子は産みたくない。

それは白哉の希望だった。

それに、番はもういる。番を解消する手がないわけではない。

恋次が死ねばいいのだ。

そんなこと、白哉が許すはずもない。

「あ・・・・お前の子種を、くれ」

白哉もアルファである恋次に狂わされていく。

「言わなくても、たっぷりあげますよ」

既に濡れいる蕾を指で解してから、突きいれた。

「ひああああ!」

白哉は挿入された瞬間に射精していた。

「やっぱヒート期間は休んでください。俺が隊長のヒートに付き合うから、仕事はちょっとたまってしまいますが、それしかヒートを乗り越える道がない」

「あ・・・・・」

胎の奥まできた恋次のものを締め付けて、白哉は美し白い顔(かんばせ)に涙を流した。

快感からくるもので、痛いとか苦しいとかはなかった。

「隊長、もうヒートがきても隠さないでください。番の俺がいるんだ。隠す必要なんてないです」

「あああ・・・うあ」

子宮までずるりと入ってきた恋次のものに、前立腺を刺激されて快感でまた涙が零れた。

「恋次・・・・・」

「隊長、愛してます」

「あ、もっとくれ。お前の子種を。恋次、愛している」

「孕むくらいあげますよ」

ずちゅずちゅ。

卑猥な音をたてて、恋次のものが白哉の中をすりあげて押し入っていく。

「んあっ」

何度も前立腺を刺激されて、白哉は啼くことしかできなくなっていた。

「あ、あ、あ・・・・・」

「中にぶちまけますよ。全部受け取ってくださいね」

ずるりと一度引き抜かれて、背後から貫かれ白哉は体を弛緩させた。

「あ、あ!」

中でいくことを覚えた体は、貪欲に恋次の子種を欲した。

胎が満たされてしまうほどに子種をだされて、白哉は意識を失った。

起きた時、体は綺麗に拭われており、中に出されたはずのものもかき出されたいた。

「隊長。アフターピルです」

「子は産まぬ」

アフターピルを冷水と一緒に受け取って、迷うことなく飲んだ。

もしも子を孕んだとしても、白哉は堕胎するつもりである。

たとえ番の恋次望みであろうと、子は産みたくない。

自分がオメガだと周囲に完全にばれてしまうから。

恋次との子が欲しくないわけではないが、たとえオメガであろうと男である白哉が、子を産むことを望むはずもなく。

結局、ヒート期間の1週間は、白哉と恋次は何度も交じりあいながら、互いが番であることを確認し合うのであった。

もしも白哉が、4大貴族などではなく、貴族でもなく平民であったなら、恋次に嫁ぎ子を産んだだろう。

だが、白哉は4大貴族朽木家当主。

オメガであることを隠し続け、これからも隠していく。

アルファであると、偽りの仮面をかぶって。

その偽りの仮面がはがれ落ちるのは、恋次と二人きりの時だけ。

番になったために、他のベータやアルファを誘うフェロモンはでない。番である恋次にだけフェロモンを出す。

白哉は、恋次を利用しているような関係に、罪悪感を抱いていた。

恋次はただ、白哉を愛しているので、たとえ利用されているだけでも構わない。

「恋次・・・すまぬ」

「いいですよ、隊長。俺は隊長の番になれて嬉しいんです。例え子供を産んでくれなくてもいい。隊長は、俺のものだ」

「私は恋次ものか・・・・ふふ」

白哉はまだヒート期間なので熱に潤んだ瞳をしていたが、思う存分交わった後なので、思考はまともに働いた。

「いつか、私がオメガだと世間に知られたら、私はきっと私でいられない」

「隊長・・・・別にいいじゃないですか。オメガでも」

「よくない。4大貴族でありながら、アルファでなくオメガなど・・・・・・」

「俺は流魂街出身なのに、アルファなんですよね」

「お前が羨ましい」

「隊長、しばらく横になっててください。その調子じゃ、ろくに何も食べてなかったんでしょう。今、何か作ってきてもらいます」

「ふ・・・・確かに空腹だ。ヒートでそれどころではなかったが、交わるとしばらくの間ヒートが収まるのが救いか」

番が恋次でよかった。

白哉はそう思うのであった。







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始めてを君と

「そういう」関係になったのは、京楽に好きだと告白されて、それを受け入れて10年経った頃だった。

いつも、お互いが一緒にいればそれでよかった。

キスやハグはしたけれど、それ以上の行為はなかった。

浮竹が、一度死ぬかもしれないと周囲に言われるほどに酷い発作を起こし、救護詰所の集中治療室に入って、やっとのことで退院できた頃から、京楽の態度が変わってきた。

いつもは、お互いを支え合う感じだったのだが、京楽から支配欲を感じるようになった。

浮竹は、そんな恋人を受け入れた。

「全てを僕のものにするよ」

そう言って、長くなった白い髪を一房手にとり、京楽は口づけた。

「春水・・・・・・・」

死神になって何年経っただろうか。

お互い、席官で忙しかったが、休暇の合間をぬっては小旅行に出かけたり、二人でふらりと総隊長の目をかいくぐって現世に行ったりもした。

「好きだよ、十四郎」

「俺も好きだ、春水」

いつもは、名を苗字で呼ぶ。

下の名で呼ぶ時は、想いを巡らせている時だけ。

「初めてだよね」

「当たり前だ。こんなことしたがるの、お前だけだ春水」

「そんなことはないと思うけどね。君に情欲を抱く者はけっこういるよ。陰でいろいろ始末してるけどね」

「怖いこというな」

「ふふっ。十四郎は、僕が怖い?」

「たまに。獣の目になるから、怖い」

「そっか。でも、初めてだから余計怖いかもしれないけど、逃げないでね」

「逃げるものか。半年悩んだんだ。もう覚悟は決めた」

浮竹の処女を、京楽が奪うと。

「あっ」

はじめて、額と頬と唇以外の場所にキスをされた。

首筋を吸い上げられる。

「んっ・・・・あとは、残すな・・・・・」

「二週間の休暇を揃ってもぎ取ったんだし、そのうち消えるよ」

「んあ・・・・・」

膨らみをもたぬ平らな胸を撫でられて、こりこりと先端を刺激されると、体が疼いた。

「あ・・・・・・」

「きもちいい?」

「分からない・・・・・」

浮竹は、混乱していた。

欲しい。

京楽が。そんな思いを抱くなんて、なんて劣悪な。

でも、京楽に求められて嬉しくて仕方ないのだ。

「足開いて・・・もう少し・・・・そう」

「あ!」

下肢にまとう衣を全てはぎとられて、花茎に手をかけられて、全身が震える。

やわやわと刺激を与えられて、それはゆっくりとたちあがった。

男として性欲は人並みにはあるし、自分で処理はしていたが、それでも普通の死神に比べたら淡泊すぎて性欲がないんじゃないかと言われるような有様だった。

自分のその場所が、他人の、しかも想い人である京楽がしごいていると思うだけで、いってしまいそうになった。

「あ、あ、あ!」

京楽は、浮竹の花茎をゆっくりと口に含んだ。

「あ、やめ!」

「十四郎、大丈夫だから。もっと力ぬいて」

頭を撫でられて、体中から力が抜けていく。

じゅぷじゅぷと水音をたてて、京楽が浮竹のものを口淫すると、浮竹はどろっとした濃い白い液体を、京楽の口の中にぶちまけていた。同時にすごい快楽に襲われて、悲鳴をあげる。

「ああああ!!!」

頭が真っ白になる。

そこから先も、京楽がずっとリードしてくれた。

「これは、体に毒のない潤滑油。濡れないそこを濡らすために、使うよ」

「あ・・・・・」

ぐちゃぐちゃと音をたてて、蕾に潤滑油が塗られて、指が出入りする。

「んあっ」

前立腺を刺激されて、内壁がきゅっとしまった。

「ここだね。君のいいところ」

「あ、変になるから、あんまり、さわるなっ」

指を二本から三本に増やされて、蕾はどろどろに溶けていった。

柔らかくなったことを確認してから、京楽はもうぱんぱんにはっていた前をくつろげて、欲望をとり出すと、浮竹の秘所にあてがった。

「ゆっくりがいい?それとも急がいい?」

「あ、ゆっくりで・・・・・・」

「分かったよ」

京楽は、浮竹を力のまま押し開くこともできたが、本人の希望通りにした。

ゆっくりと、浮竹の中に京楽が入ってくる。

「ん・・・ひあ、ああ、あ・・・んあ」

前立腺をすりあげながら挿入されて、浮竹はまた頭の中が真っ白になっていく。

「あ、春水・・・キスを、してくれ・・・・・」

「うん」

舌が絡み合う濃厚な口づけを交わし合いながら、ゆっくりと交じり合った。

「あ・・・・・」

「分かる?僕のが、全部君の中に入ってる」

「分かる・・・ドクドクしていて、熱い」

「君の中はすごいね。うねって、熱くて、締め付けてくる。最高だよ。やっと君の全てを手に入れた」

「んあ・・・・・・」

とろんと、快楽で溶け切った瞳で、浮竹は京楽を見上げた。

「そろそろ、動くよ」

「ん・・・・俺の中で、いってくれ。俺を孕ませて」

一度ひきぬいて、最奥までぱちゅんと音をたてて、侵入した。

「あ、奥に、奥にあたってる」

直腸を全て貫いて、結腸にまで入り込んだ京楽のオスは、淫らになっていく浮竹を楽しむように、何度も最奥にやってきた。

「あ、あ・・・・・いっちゃう、いってしまう」

「十四郎、いっちゃいなよ。僕もいくから。君の中で出すから」

「あ!!!」

「んっ・・・・」

二人して、浮竹は京楽の手の中に、京楽は浮竹の最奥に欲望をぶちまけていた。

「あ・・・・まだ足りない。春水、もっと、もっと出してくれ」

出ていこうとする京楽を、締め付ける。

「いけない子だね、十四郎は。いいよ、好きなだけ出してあげる」

この日のために、自虐もやめていた京楽にとって、元々一度で終わらす気などなかった。強壮剤までのんで、浮竹をとろとろに溶かすつもりだった。

ず、ず、ぐちゅぐちゅ。

結合部は泡立ち、体位を変えて何度も交わった。

「ああ・・・春水、もうらめぇっ」

したったらずな口調で、浮竹は熱に侵されていた。

「もうでない、春水、春水」

しおれてしまった花茎から一滴までをしぼりとるように、しつこくさすっていると、浮竹は涙を流した。

「もうやぁっ。でないのに、いってる。あ、またいく・・・・・」

中いきを憶えた身体は、淫乱に貪欲に、京楽を締め付けた。

「僕もそろそろ限界かな・・・・中で出すから、しっかり孕んでね」

「あ、あ、できちゃう、子供が・・・・あああ」

男なのだから、子供などできるはずがないのに、女になって種付けされるよりも快感が大きくて、本当に孕みそうな気がした。

ビュービューと、最後の一滴までを浮竹の最奥に流し込んで、京楽は満足した。

浮竹は、涙を流しながら掠れた声で。

「春水・・・好き」

と呟いた。

「僕も好きで愛してるよ、十四郎。初めてを僕にくれてありがとう。気持ちよかったでしょう?」

「うん・・・・・」

くったりと、疲れ気味に浮竹は頷いた。

告白されて十年経って、ようやく体の関係に至ったのだが、もう少し手加減したほうがよかったと思うのは、次の日浮竹がお約束のように熱をだしてしまってからだった。


初めてを君と。

女を抱いてきたことは何度かあるが、同性は浮竹だけだ。

浮竹は同性も異性もなかった。本当に初めてだった。

初めてを君と体験できて、よかったと京楽も浮竹も思うのだった。




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