忍者ブログ

プログ

小説掲載プログ
10 2024/11 14 2324 27 28 29 30 12

恋い焦がれ 愛という名のメロディー

一護は行く当てもなかったが、5席ということで館が与えられた。

そこに移動しようとすると、ルキアは一緒にいくと聞かないものだから、白哉が折れた。

一緒に朽木家にずっと寝泊まりしてもいいことを、許可してくれたのだ。

「白哉、なんかわりぃな」

「悪いと思うのなら、尸魂界のために精々身を粉にして働け」

「へいへい」

ルキアと付き合っていることは、白哉も知っていた。

「一護、てめぇ!」

久し振りに会った恋次が、怒っていた。

「あ?なんだよ、今更ルキアを奪ったとかそういうのなしだぜ」

「違うぼけ!残された家族が友人のことをを、少しは考えやがれ!」

「んーとは言ってもなぁ。他界しちまったもんは仕方ねーし。ま、なるようになるだろ」

「ルキアは泣かせてねーだろうなぁ」

「泣かせるかよ!」

一護が、初めてむきになった。

「なら安心したぜ。腕にぶってねぇなだろうな。仕事終わった後で、6番隊の修練場に来やがれ」

「おう」

一護は、その日から13番隊の5席として働きだした。

副官である小椿や隊長であるルキアに手伝ってもらいながら、死神としての能力を、特に苦手そうな書類仕事を任されて、手伝いがあるとしても、短時間で終わらせてしまった。

「貴様、この手の書類仕事は得意なのか?」

「あー。大学でまぁいろいろと学んだことが役に立ってるみたいだ」

その日6時に死神業務終了時間となった。

「ルキア、すまねぇ!恋次と約束してるから、先に帰っててくれ」

「あ、こら一護!全く・・・しょうがないやつだ」

6番隊の修練場にやってきた。

巨大な岩穴であった。

「 卍解!双王蛇尾丸」

「げ、いきなリ卍解かよ!」

「いっけえええええ!」

恋次の容赦なしの攻撃に、一護も卍解する。

「卍解、天鎖斬月!」

二人の力は拮抗していた。

そのまま30分は暴れ回り、地形をクレーターに変えて、二人して息をついた。

「やるな、恋次」

「てめぇこそな、一護」

「やっべ。あんまり遅くなったらルキアに怒られる」

「ルキアのこと、幸せにしてやってくれよ」

「勿論だ、恋次!そんなこと、言われなくても分かってる!」

朽木家に帰還すると、ルキアが遅いとどなってきた。

白哉はもう夕食を食べたが、ルキアは一護と食べるために待っていたのだ。

その日の夕食は豪華だった。

「豪華だな。なんかの祝いの日か?」

「違う。これは朽木家では当たり前の食事だ」

「ほへー。貧乏な俺には、食費さえ払えそうにないわ」

「ばか者!誰が食費などとるか!」

ルキアは、至極落ち着いていた。

もしも尸魂界がなく、一護の魂がやってこなかったら、泣き叫んでいたかもしれないが、一護が現世で生きようと死のうと、どのみち最終的には尸魂界にやってくるのだ。

その時間が早かっただけなのだ。

「式を挙げようと思うのだ」

「誰が」

「私が」

「誰と」

「あほか貴様は!貴様以外にありえぬであろう!」

「ええええええええ!」

一護が叫んでいた。

「貴様には、朽木一護になってもらう」

「ええええ!もうそこ、必須条件なのか?」

「そうだ。兄様に結婚の許可を願い出たら、朽木一護にするのであれば許すと言われたのだ」

白哉の考えることはよく分からないが、とりあず妹を手放したくないことだけは分かった。

「式の日取りとか、決まってないよな?」

「5月15日」

一護は展開の速さについていけなかった。

「来月じゃねーか」

「兄様が、このまま一護を意味もなく寝泊まりさせるわけにはいかぬというので、事情をうかがったら結婚しろと言われた。まさか、嫌なのか?」

「嫌なわけねーだろ!でもなぁ・・・まだ尸魂界にきたばかりなのに」

「兄様は、怖がっておいでなのだ。私が、緋真姉様のようになる前に、結婚させておきたい、と」

「ちょっと、相談にいってくるわ。いくらなんでも、早すぎる」

一護は、白哉と話し合った。

確かに恋人同士ではあるが、まだ結婚するには早すぎると訴えると、白哉はそうかとだけ答え、問答の末に来年の5月15日に結婚式を伸ばしてもらうことに成功した。

ルキアもそれを知り、安堵しているような残念なような、複雑な顔を浮かべていた。

「俺ら、付き合いだしてまだ1年くらいしかも経ってないだろう?だから、いろいろと縛りがないうちにやっておきたいことあるし」

「それはなんだ?」

「いや、デートとか。とりあえず、来月給料でたら、そんな高価なものは買えなけど、エンゲージリング買うわ」

「エンゲージリング?なんだそれは」

「婚約指輪だ」

「こんにゃく指輪だと!?」

「違う、婚約指輪」

「意識して間違えたのだ!つっこめ!」

ルキアのぼけは、微妙すぎて分からない。

次の月になり、一護は得た給料で、ホワイトゴールドの婚約指輪を買って、ルキアの手にはめた。

自分の分は、ルキアにはめてもらった。

裏には一護のものにはRUKIAと、ルキアのものにはICHIGOと、彫られてあった。

「ふふ・・・・・」

ルキアは嬉しそうだった。

それから、余ったお金で買った、アメジストをあしらったペンダントを買い与えた。

「そうか・・・・結婚してしまえば、こんなこと当たり前になってしまうのだな」

「まぁそうだな」

一護は、それから1年非番の日が以外は休まず、5席としての仕事を続けた。

ほぼ1年後。隊首会がまた開かれて、死神業務に慣れた一護は、13番隊の副隊長として就任することが決まった。

「おめでとう、一護」

「ああ、ありがとな」

屋敷ではほぼ常に一緒だが、職場では別々だった。今後は、職場も同じ13番隊の執務室になる。



新しい歯車が、メロディーを奏でだす。

愛という名の、メロディーを。

拍手[0回]

PR

恋い焦がれ 新しい歯車

井上が退院した。

しばらくして、また、身籠って一護の前に現れた。

一護は一切認知しないと言った通り、井上を無視した。

「黒崎君、黒崎君、ここにあなたの子供がいるのよ?朽木さんは死神だから、子供l産めないでしょ?だから黒崎君、こっちに・・・・・」

浦原のところで買ってきた、新しい強力な記憶置換を、ルキアは井上に使った。

「あれ?私、何してたんだろう・・・あなた、誰?」

「ただの通りすがりの者だ」

「そう。わざわざご丁寧にありがとうございます」

まるでさっきまでと人が違う井上に、一護がルキアに声をかける。

「記憶置換使ったのか・・・・俺たちのこと、記憶から消したのか」

「ああ。もう、友人にも戻れぬだろうと思ってな」

「そうか・・・・形はどうあれ、お前を一度は裏切った。許してくれるか?」

「許するも何も、井上の手で無理やりだろう。それでも許しが欲しいというのなら、私は一護、貴様の全てを許す」

「ルキア・・・・・」

唇が重なった。

一護に自宅に戻り、互いの服を脱ぎあって、体を重ねた。

「なぁ、ルキア・・・・」

「なんだ」

「井上、どうなるんだろう」

「多分、堕胎するのではないか。それから、大学はすでに違う大学に編入したということにしておいた。大学の学生の多数が、一護と井上の仲を知っているであろう」

「まぁ、そうだな」

苦肉の策であった。

本来なら、井上から一護の好きな感情だけを奪うつもりであったが、もう存在自体が受け付けれない。

目の前から、消えていなくなって欲しい。

それはルキアだけでなく、一護の願いでもあった。

「ん・・・・今日のお前は、少し激しい・・・・んん・・・」

「ルキア。お前だけだ。子供は、お前に産んで欲しい。ルキア、好きだ、愛してる・・.・」

「ああ!」

ルキアは嬌声をあげていた。

やがて行為が終わり、二人で熱いシャワーを浴びた。

ルキアは金曜の夜になってきて、月曜の朝に帰る。

ルキアのいない間は寂しいが、仕方のなことなのだ。

もともと、二人の生きる世界が違う。

尸魂界の住人であるルキアは、きっと一護が生きている間中も、あまり年をとらないだろう。

それも覚悟の上だ。

ルキアの、現世と尸魂界における2重の生活は、1年で幕を閉じた。

それは突然のことだった。

全てを思い出した井上が、一護を車に向かって突き飛ばしたのだ。

「あはははは!これで、黒崎君は永遠に私だけのもの!」

救急車とパトカーが呼ばれた。

パトカーで殺人の疑いで捕まった井上は、ずっと笑い続けていた。

救急車で運ばれた一護であるが、もう手の施しようがなく、ほぼ即死だった。

ゆらりと、魂魄がにじみ出る。

それを知らずに迎えにきたルキアは、相手が一護だと知って驚いた。

「一護!?何故貴様が死んだのだ!しかもこんなに若くに!」

「あー。なんかうろ覚えだけど、記憶置換使ったはずの井上が全てを思い出して、俺を車に向かって突き飛ばしたんだ。これで一生私ものだって笑ってた」

「むう・・・・記憶置換の使いすぎであろうか。それとも、そこまで井上の思いが強かったということか・・・・・」

「どうでもいいけど、こんな幽霊のままじゃ虚を呼び寄せちまう。早く魂葬してくれ」

「分かった」

ルキアは、袖の白雪の柄の先のを一護の霊体の額にあてた。

「ようこそ、尸魂界へ。貴様は記憶も霊圧ももったまま、尸魂界へと送られるだろう。では、先に尸魂界へ戻る」

一護の魂魄は、尸魂界へやってきた。

死んだ時の年齢は22歳。卒業が決まり、就職先も決まったところだった。

一護の姿は、17歳の頃に戻っていた。

「一護!」

「ルキア!」

「酷い恰好だな。死神化してみろ」

「どうやって」

「体から出ることを意識すればいい」

粗末なぼろい着物を着ていた一護は、死神化するイメージで、体を外に出すというイメージを抱くと、チャリと鎖を鳴らした卍解状態の天鎖斬月もつ死神の衣装になっていた。

「イメージが強すぎる。普通の死神をイメージしろ」

「普通、普通・・・」

次は、卍解してない状態の斬月を手に持った、死覇装姿に戻っていた。

「それでいい。しばらくは我が朽木家にこい。行く当てもないだろう」

「ああ、言葉に甘える」

「まもなく、隊首会が開かれるだろう」

「なんでだ?」

「馬鹿か貴様は。若くして貴様が他界などするからだ。私はちょっと用があるので、現世に出かける」

「あ、ルキア!」

ルキアは、穿界門をあけて現世に行った。

場所は、留置所。井上織姫は、黒崎一護殺害容疑で逮捕されていた。

その前に、ルキアが現れる。

「ふふ・・・朽木さん、何の用?黒崎君はね、今私のお腹の中にいるの・・・・」

「一護は、死んだ。魂魄となって、尸魂界へやってきた。私と一護は、特に一護は人生の二度目のやり直しだ。貴様のことを恨んでいないようだが、貴様は忘れていたのか?死すれば、その者の魂は尸魂界へくると」

「な・・・じゃあ、黒崎君は、尸魂界で朽木さんと・・・・?」

「愚かだな、哀れだな、井上。せいぜい、長生きして、こっちにはくるな。もっとも、きたくとも貴様は罪を犯した。死ねば、その魂は地獄に落ちるであろう。一護とは、永遠に会えぬ」

「いやああああああああああ!!!!」

泣き叫び、暴れ出す井上に、警察官が慌てだす。

その太腿から、血が流れだしていた。

「いやああああ、黒崎君が、黒崎君が流れてしまう!あいつを捕まえて!」

井上がルキアを指さすが、霊感のない警察官たちに、ルキアの姿は見えなかった。

「警察病院の手配を」

「はい、もうすぐ救急車が到着いたします」

結局、井上の身籠っていた一護の子は流れた。

井上は精神に異常をきたし、さばかれなかった代わりに、一生を精神病院で過ごすこととなった。

それを聞いた一護は、少し複雑そうな顔をしていた。

「元々は、俺が原因なんだよな・・・・・」

「そう悔やむことはない。全てが井上自分が招いたことだ」

「なぁ、隊首会でなんで俺まででなきゃいけないんだ?」

「ばかか、貴様は!尸魂界の恩人を腐らせておくほど、今の尸魂界は甘くない。人材不足なのだ!」

「え。まさか、俺に隊長や副隊長ををあしろと?」

ルキアはもう、13番隊長になっていた。その副官は小椿だ。

「まだ、死神になりたてのひよっこに、いきなり隊長副隊長はさせぬ。だが、席官入りは確実だ。覚悟しておけ」

やがて、隊首会が開かれて、今後一護をどうするかで言い争いあった。

「じゃあ、もうめんどくさいから、13番隊のルキアちゃんのところで引き取ってもらってことで」

京楽総隊長の言葉に、皆も一応納得したようだった。

「じゃあ、一護君、今日から君は13番隊の5席ね」

「え、あ、もっと低いほうが・・・・・」

「君ほどの力の持ち主を、席官にすること自体がおかしいんだよ。でも、本当の死神になりたてみたいだし」

「はぁ・・・・・」

こうして、一護は尸魂界での二度目の生を、13番隊の5席からスタートすることになった。




狂った歯車は、血と一緒に流れ落ちていく。

もう、メロディーさえも奏でない。

そして、新しい歯車が生まれた。







拍手[0回]

恋い焦がれ 狂ったメロディー

その日は、1限だけの授業だったので、ルキアは家でお留守番なる、掃除や洗濯をしてもらっていた。

ルキアは300万円を現金でもってきており、その金でシマムラで下着からワンピース、上着に靴にいたるまで買いそろえた。

「黒崎君・・・・」

泣きはらした目で、井上が久しぶりに学校に来ていた。

「井上・・・・ごめんな」

「少し、話があるの。それがを終わったら、黒崎君のこと全部忘れるから・・・・」

「ああ、分かった」

人気のないところで、井上は何かスプレー状のものを一護に吹きかけた。

「な・・・井上?」

一護の意識が朦朧としだす。

「運んで」

何処かで雇ったのか、男二人が一護の体を裏口からタクシーに乗せた。

タクシーの中で、井上は一護に何かを注射した。

思考がぐるぐるする。眩暈が酷い。

一護は、気づけば井上のアパートのベッドの上にいた。

裸にされて、手足はベッドの柵に括りつけられていた。

「いの・・・うえ・・?」

「私、黒崎君の子供を身籠るの。そしたら、黒崎君も私を無碍にはできないでしょう?」

一護の意識は、そこで途切れた。

遅いので、心配になって霊圧を探ってやってきたルキアに、意識のない一護を引き渡す。

「井上・・・貴様、一護に何をした!?」

「何も・・・ただ、子種をもらっただけ」

「貴様!」

一護を放っておくこともできずに、ルキアはタクシーを呼ぶと意識のない一護を連れて、石田の病院まで訪れた。、

「黒崎がどうかしたのか!」

インターン生である石田が、診てくれた。

「強い睡眠薬を大量に打たれたようだ。あと1日は目覚めないだろう。入院の準備と手続きをしてくる」

「何があったのだ、一護・・・・・・」

一護は、入院した。

丸一日、目覚めなかった。

点滴の管が痛々しい。

「朽木さん!朽木さんも寝ないと!」

様子を見に来た石田が、一睡もしないで一護の傍にいるルキアに、ソファーで横になるように提案した。

ルキアのお金で入院したので、VIPクラスの対応だった。

金は惜しまなかった。

「ああ・・・悪いが、そうさせてもらう。石田、すまないな、迷惑をかけて」

「とんでもない」

横になったルキアは、心労もあってか、眠ってしまった。

次の日の朝、一護が目覚めた。

「ルキア?」

ソファーで横になっていたルキアを揺り起こす。

「ん・・・一護?」

「どうしたんだ、お前、こんな場所で」

「それはこっちの台詞だ一護!貴様、井上に何をされた!」

「井上に・・・俺は・・・・・・」

思い出せない。

そこだけ、もやがかかっているようで、思い出そうとすると頭痛を訴えた。

「もう良い。無理をするな。あと1日安静が必要だそうだ。私が一度家に戻り、着換えとかいろいろもってくる。シャワーも浴びたいしな」

「俺もシャワー浴びてぇ・・・」

「駄目だ。お前がまだ安静にしておらねばならぬのだ。ほら、足元がおぼついていないであろう」

確かに、まだ眠気を感じで足元がおぼつかなかった。

「ここ・・・病院か?やけに豪華な部屋だけど」

「ああ。石田の病院のVIP病室だ」

「そんな金・・・」

「私が出した」

「ルキア!」

「いいのだ。これくらい、させてくれ」

「ルキア・・・・・」

ルキアは、一度一護の自宅に戻り、一護の着換えを下着から上着に至るまでそろえた。

「一護、良いか?」

コンコンとノックして部屋に入ると、一護の声がした。

一護はあれかたもう一度眠り、すっきりした顔をしていた。打たれた眠剤は全てぬけきっているようで、石田の父親にも診てもらったが、一部の記憶の混濁以外は、異常がないということで、今日一日を過ごせば、明日退院だと言われた。

VIP室なだけあって、病室にトイレとバスルームがついていた。

そこで一護は風呂に入り、すっきりして病院服ではない普通の私服に着替えて、一護はベッドで、ルキアはソファーで夜を過ごして、次の日退院になった。

「一護、貴様が思い出せないから何も言わぬが、井上には気を付けろ。もう、一人であやつと一緒にいるのはだめだ」

「ああ。なんか俺も、井上にスプレーみたいなものふきかけられて・・・意識が朦朧としたところを注射されて・・・そっから覚えてねーが、なんか最悪なことされた気分だ」

ルキアは迷った。

一護から子種をもらったという井上の台詞を言うか、言わぬべきか。

思案した結果、言わないことにした。

それから、時間が目まぐるしく過ぎていく。

ルキアは一護と同じラーメン店でバイトするのが板についてきた。最初はメニューを聞いてオーダーを通すのもおぼつかなかったが、今では立派なウェイトレスだ。

そんなこんなで、ルキアがいられる1か月は、あっという間に過ぎ去ってしまった。

ちなみに、一護の入院2日と精密検査で50万はかかったが、それは一護に秘密にしておいた。

最後の夜、ルキアと一護は肌を重ね合わせた。

ルキアは、それから週末になると一護の自宅にきた。金曜の夜にやってきて、月曜の朝、出勤の時刻ぎりぎりまで現世にいた。

そんなこんなで、ルキアが現世にくるようになって2カ月が経った頃、井上が一護とルキアの元にやってきた。

「何の用だ、井上!」

「ふふふ。お腹の中にねぇ、黒崎君の子供がいるの」

「え・・・・・」

一護が目を見開いた。

「お前とする時は、いつも避妊して・・・」

「違うの。この前、一緒に子作りしたでしょ?」

「え・・・そうなのか、井上?」

「騙されるな、一護!全部虚言だ!」

ルキアが叫ぶ。

「でもねぇ、ほら、これ妊娠している証」

産婦人科で、妊娠しているとはっきりと書かれた記録を見せつけられた。

「頭が・・・痛い・・・・」

「黒崎君、帰ってきてよ。愛しいあなたの赤ちゃんがあなたを待ってるよ」

「井上、貴様という女は!一護は渡さぬ!」

蹲ったて頭を押さえている一護を前に立ちふさがり、それ以上井上が近づけないようにした。

「黒崎君、黒崎君、大好きだよ・・・・」

「井上、俺は・・・それでも、ルキアが好きだ!!」

「いやああああああああ!!!!」

井上は錯乱しだした。

手がつけられないくらい暴れ出して、その挙句放心し、太ももから大量の出血をした、

「あは・・・流れてく・・・・黒崎君との、愛の結晶・・・・・」

救急車を呼んで、一護とルキアは念のために井上に付き添った。

「でも、また頑張るから!頑張って、何度でも黒崎君の子供、身籠るから!子種、冷凍保存してもらっているから」

井上は、処置室に連れていかれた。

結果は、やはり流産だった。

ルキアは一護のことを信用している。きっと、眠っている間に井上が一方的に、子を宿す行為をしたのだろう。

病室にいき、一護とルキアは井上をみた。

「ふふ・・・朽木さんと一緒なのは余計だけど、黒崎君、また私のところにきてれた・・・・」

ルキアは逡巡した。

だが、このままでは、狂った井上は何度でも同じことをしでかすだろう。

もしかしたら、自分の命と引き換えにしてでも、ルキアと別れることを言い出しそうで。

「許せ、井上。お前から、一護が好きだという記憶を奪う」

「え、嫌!そんなのいやあああああああああ!!!!」

暴れ出す井上をルキアが抑え込み、記憶置換を使った。

でも、効かなかった。

何故かは、分からなかった。

「あははは、できないんだ。私の記憶、かき替えること。私は何度だって、黒崎君の子供を身籠るよ」

一護は冷たい目でこう言った。

「好きなようにしろよ。例え子供が身籠っても、俺はそれを自分の子供だとは認めねぇ。井上、お前が勝手に育てろ。そこに俺はいない」

「え、嘘、黒崎君・・・?」

「勝手にしろ。俺は一切関知しねぇ」

「そんな、嘘、黒崎君!やだよ!身籠ったら認知してよ!さもないと、レイプされたってみんなに言いふらして・・・・・・・」

ルキアが、井上の喉を締め上げた。

「かはっ・・・・・・」

「そんなこと、してみろ。貴様の名を、全ての知り合いから奪ってやる」

「朽木さ・・・・朽木さんが、全部悪いのに・・・・ぐ、ごほっごほっ」

喉を締め上げていた手を外す。

井上は大きく咳き込んだ。

「言っておくが、私は本気だぞ、井上。お前のバイト先も、親戚も、友人も、教師も。全てから、お前に関する記憶を奪う。アパートにだって、住めなくしてやる」

「そんな・・・・」

泣き叫び、暴れる井上に、医者がやってきて、困りてた末に鎮静剤を投与されて、井上は大人しくなった。



軋んだ歯車が奏でる狂ったメロディーは、通常の者に変わっていく。

静かな音を立てて。





拍手[0回]

恋い焦がれ バイトするルキア

次の週の月曜日、一護はゼミとドイツ語の授業があった。

1、2回生の間にできる範囲で単位はとっておいたので、週に3回くらい授業を受けるだけで良かった。

ルキアは、とえあえず1か月は滞在できるそうで、空座町の滞在死神と1カ月間交代することになった。

大戦から3年と少し。被害が大きかった地域の復旧も進み、今は手の足りない死神を育成するために、真央霊術院の4回生以上上を、実際に隊の中にいれて、半ば一般隊士と同じ業務を受けさせていた。

建物の被害は建築すれば元にもどる。

でも、人材ばかりはそうもいっていられない。

失われたたくさんの隊士の死神の数は、半数を超える。

これから死神になる者達には、大きな期待がかけられていた。

ルキアは、いずれ隊長の座に就くことが決まっていた。卍解を扱えて、その上強い。これは、今は亡き浮竹の遺言でもあった。

「であるからにして、これはこうなり・・・・」

ドイツ語の授業に、ルキアも混ざっていた。

人数指定があるので、不思議に思われぬように記憶置換を使った。

「お前なぁ、いくら一緒の授業に出るとはいえ、そうほいほい記憶置換使うなよ」

昼休み、食堂で狐うどん定食を食べていたルキアに、そう言う。

「何かの副作用がでるわけでもない。別にいいではないか」

「でも、人に記憶いじられるの嫌だろ?」

「それがそうだが・・・・・」

「じゃあ、なるべく記憶置換は使わないこと。いいな?」

「分かった・・・・・」

しゅんとしょげたルキアの頭をぐしゃぐしゃと撫でまわした。

「何をするのだ!」

「お利口さんって意味」

「口で言えばいいではないか!」

一護は、ルキアと同じ狐うどん定食を口にしながら、話を続ける。

「あと3週間は現世にいられる、でいいんだよな?」

「ああ。多分一度尸魂界に戻るであろうが。それ以後は、週末の土日にはこちら側にくるように手配しておいた」

「なぁ」

「なんだ」

うどんのあげを食べながら、一護が問う。

「白哉は許してくれたのか?」

「ああ・・・・兄様には、恋次と添い遂げられぬこと、一護をが好きなことを全部話した。不機嫌ではあったが、許しはもらえた。土日にこちら側にくる了承も得た」

「あの白哉が・・・ああでも、お前には特に甘かったよな」

「そうか?」

「お前、分かってなかったのか」

「いや、兄様は大分優しくなられた・・・・その実感はある。恋次を振って一護を選んだ時、叱責を覚悟していた。だが、ただ兄様は眉間に皺を寄せて「そうか、では、そなたの好きなように振る舞うがよい」とおっしゃられた」

「あの白哉がなぁ・・・・」

眉間に皺を寄せた顔はすぐに想像できた。中性的な美貌の白哉は、よく眉間に皺を寄せていた。

「あと3週間・・・貴様との蜜月だ」

「ぶーーーーー」

「汚い、吹き出すな!」

「蜜月って、お前なぁ。意味わかって使ってるのか?」

一護の問い、ルキアが口を開く。

「親密な関係・・・伝令神機でも、ちゃんと思った通りの言葉であっていると出てくる」

「なんかいろいろと便利だな、伝令神機」

ビービービー。

アラームが鳴った。

「虚か?」

「そのようだ。チャッピーの義魂丸を入れておくから、後は頼んだ!」

「おい待て、ルキア、チャッピーは!」

ルキアは死神化して、瞬歩で去って行ってしまった。

「うどんの続きを食べるんだぴょん」

「ぴょんぴょんうっせぇな」

「何!貴様のうどんも奪うんだぴょん!」

ルキアが虚を退治している間、食堂ではチャッピーVS一護が互いの昼食をかけてはしで争いあっていた。

やがてルキアが戻ってきた。

5分もかかっていなかった。

「早いな」

「何、小型のが一体だけだった。弱かったしな」

「そのなんだ、お前の腕もこの3年間で上がったのか?」

「勿論だ。卍解してもうごけるようになるまで鍛錬した」

「そうか・・・お前の卍解、見たことないからよくわかんねーけど」

「白霞罸だ。範囲内にいる敵と物体を全て凍り付かせることができる。だが、体全体の体温を少しずつあげていかねば、命に関わることもある。だから、滅多なことでは使わぬ」

ルキアは、それだけ言うとチャッピーの義魂丸を抜き取り、義骸に戻った。

「ルキア、その卍解はなるべく使うなよ」

「無論だ。私とて命は惜しい」

その日は、授業は昼までだった。一護は今はラーメン屋でバイトしていて、ルキアを連れてラーメン屋までやってきた。

「なぁ、ルキア」

「なんだ?」

「俺結構バイトで忙しいから、ルキアが良ければなんだが、同じこのラーメン店で3週間バイトしないか?」

「バイトか・・・賃金を得るのだな。しかし、給仕の仕事か・・・まぁいい、当たって砕けろだ。引き受よう!」

「砕けてどうする・・・・」

一護は店長に、令嬢が社会学の勉強のために3週間ばかりバイトがしたいと言いだした。

店長は、ルキアを頭のてっぺんからつま先まで見て。

「OK。主に、給仕になるけどいいかい?」:

「はい」

ルキアはそう答えていた。

こうして、一護とルキアは、離れ離れになることなく、同じラーメン店で仕事をした。

1週間が経ち、ルキアは現世で初めて賃金をもらった。

きついだろうと、一護より短めに仕事を終わらておいたのので、賃金が1万5千程度だったが、それでもルキアにはとても大切なものだった。

「この金で、貴様に白玉餡蜜をおごってやろう!」

「いいのかよ。頑張って得た賃金だぞ?」

「だからこそ、貴様におごってやりたいのだ」

甘味屋まで出かけて、白玉餡蜜を2人前頼んだ。あとぜんざいも。

「ここでの勘定は私に任せろ」

ルキアは、自分で働いた金で食べれる白玉餡蜜が格別に美味しいのか、味わって食べていた。

「隙あり!」

一護の皿から、白玉を盗むルキア。

「ああもう、欲しいなら最初から言え。お前にやるよ」

「だめだ。貴様が食せ。私は、貴様の皿から奪うのが楽しいのだ」

「なんだそりゃ・・・・・」

ルキアはそれからも隙を見つけては一護の皿からとっていった。

ルキアは楽しそうだった。

実に、3年以上ぶりになる、心から楽しそうな笑顔だった。



噛みあった歯車は軋み出す。

狂ったメロディーを奏でて。






拍手[0回]

恋い焦がれ 噛みあった歯車

一護は、無事高校を卒業し、大学に進んだ。井上と同じ大学だった。

石田は医療系の大学へ、茶虎もボクシングをしながら大学へと進んだ。

卒業していった中に、ルキアの姿があったが、ルキアは尸魂界へと戻った。

時折現世に遊びにくるからと、言い残して。それから月日は過ぎていく。一護は井上と付き合ったままだった。婚約はしていないが、多分卒業したら結婚するだろうと思っていた。

肉体関係もあったし、何より井上は一護のことをとても愛していた。でも、一護はルキアのことが心の何処かでまだ好きで。

3年ぶりに、ルキアが現世にやってきた。

一護はそれを心から喜んだ。一護は一人暮らしをアパートでしていて、そこに井上がたまに泊まりにやってくる。

その日、しばらくこっちの世界にいるのだというルキアを、アパートに泊めた。

「私はな、一護。思っていた以上に貴様のことが大切だったらしい。恋次と付き合いだして、けれど心は貴様を恋い焦がれていた」

「ルキア・・・・・・・・」

「3年も放置しておいてと思うだろうが・・・・貴様のことが好きなのだ。恋次とは別れた」

「ルキア・・・俺も、お前が大切で好きだった。お前にのように恋い焦がれて。でも、もう尸魂界から戻ってこないのだと思って、諦めて井上と付き合い続けて。それでもまだ、お前が好きんなんだ、ルキア」

「ふふ・・・・お互い別の相手と付き合ていながら、心は両想いだったのだな。それが分かっただけでも嬉しい。井上と幸せにな」

一護は、去ろうとするルキアの腕を掴んで、抱き寄せた。

「一護?」

「お前、恋次と別れたんだろう?俺も井上と別れるから、付き合おう、ルキア」:

「でも、それでは井上が・・・・・・」

「井上には悪いと思う。自分の心を騙して付き合っていた。でも、本当に好きな相手が目のまえにいて、ルキアをまた失いそうになっているのを前に、動かないなんてできねぇ」

一護は、少し荒々しくルキアを抱き締めた。

「好きなんだ、ルキア。高校卒業する以前から、ずっと好きだった」

「一護・・・・私も、ずっと好きだった。でも、私は死神で貴様が人間で・・・・結ばれないと思い、恋い焦がれる気持ちを封印した。それでも好きだといってくれるのか?」

「ああ。ルキアが死神でもなんでもいい。好きだ」

ルキアはぽろぽろとアメジストの瞳から大粒の涙を零して、一護を受け入れた。

「何故、もっと早くにこうやって、思いを伝えなかったのであろうな?」

高校のあの頃に戻りたい。

他愛もなく、一緒の部屋で住んでいたあの頃に。

一護は決意する。

「井上と別れてくる」

「一護、無理はしなくていいのだぞ」

「いいや、別れる。そしてルキア・・・お前と付き合いたい」

ルキアは逡巡する。

「しかし私は・・・・尸魂界の住民」

「月に2回くらいはこっちにこれねーか?」

「いや、その気になれば土日ごとにこれるが・・・・・・」

「じゃあ決定。俺とお前は付き合う。いいな?」

「う、うむ・・・・・・」

一護に押し切られた形となってしまったが、ルキアも承諾した。

「じゃ、俺井上んちにいってくる」

携帯に電話し、重要な話がるから家で待機してくれと連絡した。

今日は土曜で、休日だった。

井上に別れ話を切り出した。

「黒崎君、やだよ!やだよ、私を捨てないで!」

「井上、ごめんな。高校にいた頃から、ずっとルキアが好きだったんだ。ルキアが死神だからとあきらめて、お前と付き合った。でも、心にはまだルキアがいるんだ」

「酷いよ!酷いよ、黒崎君!」

ポロポロと涙を零して、井上は一護を力のこもっていない手で殴りまくった。

「じゃあ、もう大学であっても、できれば友人として接してほしい」

「そんのいやーーーーー!!!」

一護は、泣き叫ぶ井上を置いて、アパートを出て行った。

「朽木さんさえいなければ・・・・・・」

井上の心に、どす黒い感情がこもる。


一護は、自分のアパートに帰還した。

ルキアがいた。

「ルキア、好きだ」

「私もだ、一護」

抱擁しあい、ベッドに昔のように一護の腕の中に収まるように寝転がった。

「その・・・・してもいいか?」

「ああ。だが、私は初めてではない。恋次と何度か体を重ねている。それでもいいのか?」

「それはこっちの台詞だ。俺も井上を何度か抱いた、それでもいいか?」

お互い、苦笑しあった。

着ているものを脱がしあった。ルキアはワンピース姿だった。

季節は春。

一護は、4回生になろとしていた。

「お前の肌、すっげーすべすべ」

「ん・・・一護は、相変わらず鍛え上げられた体をしているな」

ルキアの体は、恋次に抱かれていたのというのが嘘と思うほど、真っ白で、まるでそんな知識すらもないようで。

「ああっ!」

ルキアを裸にして、体全体を愛撫した。

首やうなじ、鎖骨に胸元に、紅い花びらのようなキスマークを残していく。

「一護・・・・」

ルキアも、一護の鎖骨に、キスマークを残した。

「ルキア・・・・」

薄い胸をもみしだき、先端を口の含むと、びくりとルキアは体を震わせた。

「あ・・・・・・」

「怖いか?」

「怖くなどはない。ただ、純粋に愛しい」

ルキアの秘所に手を伸ばすと、もう濡れていた。

「お前のここは、正直だな」

「あ、そのようなことは・・・・」

手で秘所をの入り口付近の天井を指で刺激されると、ルキアは頭が真っ白になった。

「ああああああ!」

「いったのか?」

「はぁはぁ・・・うむ、そのようだ」

恋次に抱かれてきたので、いったのは始めではない。

「入れるぞ」

「うむ・・・・・ああ!」

指とは比較にならないものを入れられたが、恋次に抱かれ慣れてしまってい体は、敏感に反応した。

「ああ・・・この体を恋次が貪ったのか。全部、俺色で染め上げてやりてぇ」

「では、そうしてくれ。もう、恋次に抱かれることはない。貴様だけだ」

二人は、夜遅くまで睦み合った。

飢えた獣同士のように。

3年以上抱えていた思いを、ぶつけあった。

「シャワー先に浴びるか?」

「ああ」

ルキアが風呂場に行った後、スマホの着信履歴を見ると、井上からだった。

とりあえずざっと内容を読んで、削除した。

ルキアがシャワーからあがった。

一応着換えをもってきていたが、ワンピースだったので一護の服を貸した。

上にスウェットだけで、ぶかぶかだがそれだけでいいとルキアは言った。

井上にも、こんな格好はさせてない。

恋人になったばかりの無防備なルキアの姿に、一護がドキマギしながら自分もシャワーを浴びた。

シャワーからあがった一護は、念を押した。

「いいか、俺以外の前でそんな恰好、絶対にするなよ」

「何が駄目なのだ」

「パンツとか見えそうじゃねぇか!」

「見たいのか?見たいなら見せるが」

「そういう問題じゃない!」

一護が溜息をついた。

尸魂界に戻ってから3年の間で、かなり頭が緩くなってしまったのか。

いや、昔からルキアはこうだ。いつも短いスカートで、階段でパンツが見えてても平気だったのだ。

そのため、一時期は盗撮されるほどの騒ぎに発展した。

全部、一護が締め上げたが。



歯車が廻る。噛みあった。

恋い焦がれた思いは成就する----------------------。

拍手[0回]

恋い焦がれ ルキアの思い一護の思い

ルキアと一護が一緒に生活する時間も、ピリオドがこようとしていた。

卒業だった。

「ルキア、おかしいとこないか?」

「いつも通り、おかしい」

「お前なぁ。人が真剣に聞いてるんだ」

「嘘だ。いつも通りかっこいいぞ、一護」

ルキアの笑顔に、一護が朱くなる。

「ルキアは・・・その髪飾り、恋次からもらったやつか?」

アメジストの髪飾りをルキアはしていた。

「そうだ。たまにはつけてやらぬと、恋次が哀れだからな」

本当なら、一護がアメジストの装飾品を渡したかった。でも、ルキアとは付き合っていない。

井上に、この前水晶のペンタンドをあげた。

井上はとても喜んでくれて、毎日それをつけてくれていた。

「時間だ、行くぞ」

「ああ」

高校に通うのも、これが最後。

今日は特別な日だ。

卒業式が終わると、ルキアは尸魂界に戻ることになっていた。

13番隊隊長代理及び副隊長とて、瀞霊廷の復興に尽力を尽くすつもりだった。

今まで、高校に通っていたのは一護の我儘を、京楽が承諾してくれた形であった。

「京楽総隊長には感謝せねばな・・・・貴様といれた時間、楽しかった」

「ああ、俺もだぜ、ルキア」

二人並んで、登校する。どちらともなしに、手を握り合っていた。

学校につく頃には、名残惜しいが手を放した。

卒業式がはじまる。

一護の父親でもある一心も来ていた。

「ううう、ルキアちゃん・・・・・」

実の息子の旅立ちに涙を流さずに、ルキアに対してのみ涙を流しいた。

一心らしいといえば、そうだった。

やがて、卒業生代表として、生徒会長であった石田がスピーチをする。

在学生がスピーチをして、校長がスピーチをして、卒業証書が渡される。

「黒崎一護」

「はい」

巡り巡って、ルキアの順にになる。

ルキアは出席日数も足りず、テストの点の悪いために留年が決定していた。まるごと記憶置換で教師たちの記憶を改竄した。

「朽木ルキア」

「はい」

ルキアは、卒業証書を手にしながら、泣いていた。

今までの3年間を思う。

藍染の反乱や、ユーハバッハによる大戦など、酷いことが起こった。隊長も副隊長も何人か死んだ。

それでも、前を向いて歩き出さなければならないのだ。

卒業証書を手に、ルキアと井上は、泣いていた。

「井上・・・いつかまた、辛なず現世にくるからな」

「うん・・・石田君も茶虎君も、別れ別れだね」

一護と井上は、同じ大学を進む。

「石田と茶虎も元気でな!」

ルキアは大きく手を振って、一護を一緒に帰宅した。

日常品から衣類までを鞄に詰め込んで、準備ができたルキアが、一護に声をかける。

「一護・・・・貴様には、本当に世話になった」

穿界門が開く。

その中に消えていくルキアは一言。

「貴様のことが好きだ」

そう言って、去ってしまった、

その真意を問おうにも、ルキアは尸魂界だ。そんなことのために、現世から尸魂界に行くわけにはいかない。

悶々としたものを抱えながら、一護はルキアが去っていった夕暮れの中、ただ道路に佇んでいた。


「ただいま帰りました、兄様、恋次」

「おかえり、ルキア」

恋次に抱擁されて、ルキアはああ、帰ってきたんだと実感した。

「ご苦労であった、ルキア。空座町の滞在死神を交換する手続きを、このまま13番隊で行ってこい」

「はい、兄様!」

ルキアは思う。

空座町の滞在の死神の座を明け渡したら、もう空座町とは縁がなくなる。

つまりは、一護に会いにいけないのだ。

それでも、死神としての矜持がある。

ルキアはそれに従った。

13番隊で、手続きを終えたルキアは、朽木邸に引き返す途中で、恋次に捕まった。

「恋次・・・?」

「お前は俺のものだ。そう認識して、いいんだよな?」

「う、うむ・・・・・」

「隊長から、結婚の許しが出た。まだ当分先になると思うが、俺で、本当にいいんだな?」

「恋次・・・私には、恋次だけだ」

ああ、嘘をついている。

ルキアの中には一護が住んでいる。

でも、尸魂界の、仲間の平和のためなら、自分を犠牲にすることは厭わなかった。

その日、ルキアは初めて恋次と体を重ねた。

「ん・・・恋次?」

起きると、体中に入れ墨をいれた恋次の背中があった。

「今更、一護が好きだとか、なしだぜ?」

「ああ、分かっておる・・・・・」

もう、戻れぬところまできてしまったのだ。



一方で。

一護もまた、井上と井上のアパートで体を重ねていた。

「黒崎君、大好き」

「ああ、俺もだ井上」

ルキアはもういない。目の前の井上だけを愛し抜こう。

そう決意した。

でも、その決意が揺らぐほどに、ルキアを思っていた。

だから、井上を抱いた。

もう後戻りはできぬように。



歯車は軋んだ。

恋い焦がれた思いは遥か遠く。

やがて、月日はめぐる----------------------。

拍手[0回]

恋い焦がれ 廻る歯車

何気ない日常が始まる。

ルキアは、一護のベッドで眠るようになっていた。

一護が、ルキアを抱き抱えるような形で。

そうされると、安心できるのだ。

よく、流魂街で眠る時は恋次がそうしてくれた。

「恋次・・・・」

今ここにいない恋次のことを思うと、胸が切なくなる。

でも、今ここにいる一護のことを思うと、もっと胸が切なくなるのだ。

いっそ、一護に思いのたけをぶつけようか。そう何度も思った。でも、それが一護と井上の仲に罅をいれることになる。

一護のことだから、きっと井上をとる。

そうなった後の自分が惨めすぎて、告白などできない。

それに、自分には恋次がいるのだ。

あの、赤い髪の死神は、ルキアとの幼馴染で子供の頃からの付き合いだ。恋次と付き合いだしたと、白哉に報告すると、白哉は嬉し気に、恋次なら任せられると薄くはあるが、確かに微笑んでくれた。

「兄様・・・・・」

恋次を振るということは、白哉も裏切るに等しい。

何故、一護などを好きになってしまったのだろう。

ああ・・・なんの迷いもなく、一護と仲間でいられたあの日々が懐かしい。

ルキアが一護の腕の中で身じろぎすると、もう朝だったので一護も起きた。

「ふあ~。よく寝た」

「貴様、よだれを垂らしておったぞ」

「まじかよ!」

口元に手をやるが、濡れてはいなかった。

「ルキア、お前なぁ」

「ふふ、騙される方が悪いのだ」

一護は、軽く伸びをしてからルキアの方を向いた。

「それより、今日は尸魂界に戻るんだろ?俺と井上も行っていいか?」

「何故だ?」

「大戦の復興がみたい。後、ルキアと恋次と俺と井上でダブルデートしてみたい」

「ななななな!」

「だめか?」

「駄目ではないが・・・・恋次がなんというか・・・・」

「大丈夫、恋次の奴ならきっとOKしてくれるさ」

念のため、伝令神機に連絡を送ると、恋次はあっさりとOKしてくれた。

「よし、じゃあ俺井上を呼んでくるから。浦原さんの穿界門で帰ろうぜ」

霊体を持たぬ井上は、普通の穿界門が使えない。

浦原の手で体を霊子化させるものがないと、尸魂界に行けないのだ。

15分ほどが過ぎて、井上と一護が帰ってきた。

「私、4番隊に行きたいの。まだ、大戦の傷跡が大きいだろうから、怪我してる人を先に診たい」

「分かった。とりあえず、尸魂界に行こうぜ」

浦原の作った穿界門から、尸魂界に出る。そこから瀞霊廷を目指した。

ルキアの霊圧に気づいたのか、瀞霊廷の中で恋次と出会った。

「おう、一護、元気でやってるか?」

「勿論だぜ!そっちこそ、元気でやってるか?」

「あーそうだといいたいところだが、大戦後の復旧に忙しくて」

「副隊長も大変だな」

「おう、ルキア、お帰り」

「ただいま、恋次」

ルキアは自然を微笑んでいた。

その微笑みに、一護の胸がちくりと音を立てる。

とりあえず、井上の言葉通りの4番隊の救護院に行った。重症の患者はあまりいなかったが、手足が欠損して、培養した手足を繋げる手術前の者たちに、術を施す。

「奇跡だ・・・・失った手が」

「俺の足が・・・・・・」

「あたしの右手が・・・・」

井上は、一人で培養する手足を繋げる予定だった者たちを治してしまった。

「やっぱすげぇな、井上の能力は」

恋次が、驚嘆していた。

皆、リハビリを兼ねて数日入院した後、退院が決まった。

大戦の時は、とにかく命が助かりそうな者の致命傷を治して、傷の全部は診なかった。

大戦が終わり、まだ入院している者の過半数は、井上の手で治療が施された。特に目を欠損した者は、職場復帰が無理だろうと言われていたのに、できるようになって井上に何度も礼を言っていた。

「はぁ・・・・疲れちゃった」

「そりゃ、あんだけ治せばな」

「井上、一護、我が屋敷で花見をせぬか?紅梅の梅が満開なのだ」

「ああ、ダブルデートの約束だったもんな」

一護の井上と恋次は、朽木邸にいき、白哉の了承を得て庭で花見をした。

「うわぁ、満開だね。あっちの白梅も見ごろだね」

疲れた井上には、疲れをとるための薬を入れた特別な飲料が渡された。

「なんか・・・・もりもり元気がわいてきた!」

「おい、ルキア、あの飲み物飲ませたのかよ!」

「少しだけだ。分量を間違えると猪突猛進になるからな」

井上は、朽木家の料理人が作ってくれた料理を、美味しそうに一人で全部食べてしまった。

「おい、ルキア、なんか井上の変な薬でも盛ったのか?」

「いや、疲れをとるための薬を少し混ぜただけだ」

「なんか元気ですぎてねぇか?」

「き、気のせいであろう」

朽木家の中にいき、食べれてないので追完の料理をルキアは頼んだ。

「あー、私お腹いっぱい。梅の花、一輪もらっていい?」

「いいぞ、井上」

そう言われて、井上は紅梅の梅の花を一輪手にとった。

それを、ルキアの髪に飾った。

「井上?」

「朽木さんも女の子なんだから、もっとおしゃれしようよ」

「私はいいのだ・・・・」

「よくねーよルキア。俺が贈った簪だってさしてくれねーじゃねぇか」

「あれは、まぁ・・・ええいもう、恥ずかしいのだ!」

ルキアは顔を真っ赤にした。

それを、一護はああかわいいなと見ていた。

「なーに人の女見てやがんだ、一護!」

「いや、微笑ましいなと思ってさ」

「まぁ・・・・大戦の時はこんな時間が訪れるとは思わなかったからな」

恋次は、朽木家の料理を口にしながら、酒を飲みだした。

ルキアも酒を飲んだ。

「どうだ、一護も飲んでみるか?」

「そうだな。現世じゃ違反だけど、尸魂界ならまぁいいか」

そう言って、一護もほどほどに飲んだ。

井上も乗んだが、すぐに酔っぱらって、一護の膝の上に頭を乗せて寝ていた。

「ほんとは今日中に帰るつもりだったんだが・・・・一泊していっていいか?」

「ああ、いいぞ」

ルキアは、一護が傍にいてくれるだけで嬉しかった。それは一護も同じだった。

お互いに恋い焦がれ。でも、お互いの思いに気づかぬまま。

白哉の許可もあり、一護と井上は、朽木邸で泊まることとなった。恋次は自宅に帰ってしまった。

本当は、もっと尸魂界の復興を見ておきたかったのだが、その日は井上が酔っぱらったせいもあって、お開きになった。

「井上とは、上手くいってるようなだ」

「そういうルキアこそ、恋次と上手くいってるようじゃねぇか」

互いに、追加で酒を飲み交わしあった。

一護は未成年だが、ここは尸魂界だ。

別にいいかと、一護は思い酒を口にする。

甘い、カクテルのような味だった。アルコール度も低い。

「私はな、一護・・・・・いや、なんでもない」

「どうしたんだよ、ルキア」

「井上は幸せ者だな。一護に思われて」

一護の鼓動が高鳴る。

まさか、ルキアは俺のことを?

そう思いながら、先ほどまでの仲のよかった恋次とのことを思い出し、その思考を振り払った。

「ルキアは、幸せか?」

「ああ、幸せだ。恋次も兄様も・・・・・それに、一護もいる」

「ああ。俺ら、仲間だもんな」

「そうだな。仲間だ。どれだけ年月が変わろうとも、それだけは変わらない。どれだけ思いが変わろうとも、それだけは変わらない」

「ルキア・・・・・」

一護は、ルキアの杯に酒を注いだ。

「何に悩んでるのか知らないが、ぱーっと飲んで忘れちまえ」

「そう、だな・・・・・・・・」

結局、一泊してルキアと一護と井上は、復興していっている瀞霊廷を見て回り、夕方には現世に帰還した。


廻り出した歯車が、音を立てて砕けていく。

でも、砕けると新しい歯車が生まれるのだ。

恋い焦がれ。互いの心に気づかぬまま、歯車は廻る。





拍手[0回]

恋い焦がれ 一護の怪我

次の日、学校へいくと井上に傷を診てもらった。

「双天帰盾、私は拒絶する!」

屋上で、治癒術にもなる術を施してもらい、一護の腕の傷は完全に塞がった。

「ありがとな、井上」

「ううん、いいの」

「井上の能力はやはり凄いな」

ルキアが感嘆の声を漏らした。

「もう、朽木さんまで!」

照れた井上は、一護の腕を引き寄せた。

ああ・・・見たくない。

この二人の仲のよい姿を。

「それでは、私が少し用があるので先に戻る。貴様らは好きなだけイチャついてろ」

「おい、ルキア!」

ルキアは走り去ってしまった。

「変な奴・・・・」

一護は知らない。ルキアが一護のことを好きだということを。それはルキアも同じで。一護がルキアのことを好きだということを知らない。

そのまま昼休みが終わり、授業が始まる。

ルキアと一護は隣の席同士だった。

くしゃくしゃに丸めた紙を、ルキアに投げる一護。

その紙には、次に尸魂界へ戻るのはいつだと書かれてあった。

ルキアが高校に通う間、空座町の虚退治はルキアの管轄にあった。

時折、尸魂界に帰って報告をしていた。あと、恋次の様子も見に。

(1週間後だ)

そう書かれた紙が、ぽんと一護の頭に当たった。

そのやりとりが少し楽しくて。授業そっちのけでやっていると。

「黒崎、朽木!廊下に立ってなさい!」

そう教師に怒られた。

数学の教師で、一護の成績まぁまぁいいが、ルキアの成績はどん底に近くて、数学の教師はルキアをなんとかしてやろうと思っていたが、結局記憶置換でテストの成績は80点とかにされるので、意味はなかった。

「貴様のせいで、廊下に立たされたのだぞ!」

「いや、お前だって一緒になって紙投げ出したじゃねーか!」

ルキアが言葉に詰まる。

「品行方正で通してあるルキアには、無理だってか?どうせ記憶置換で教師の頭もくるくるぱーになるんだ。いいじゃねぇか」

「なっ!くるくるぱーなどにしてなどおらぬ!あくまで、私個人の成績を改竄しているだけだ!」

「それがくるくるぱーにしてるっていうんだよ」

ルキアは朱くなって反論しだす。

その様子がかわいくて、一護はルキアをからかった。

「お前の数学とあと英語の成績一けただもんな」

「仕方なかろう!あのような授業、尸魂界で受けたのがないのだ!おまけに初めてなのにいきなり難題を出されるのだぞ!」

「んで、教師の頭くるくるぱーにして80点とったってことにするんだろう?」

「記憶置換を使っているだけだ。人格に影響はない!」

ふと、ルキアの伝令神機が鳴った。

「虚か?」

「そのようだ」

「ちっ、最近多いな。大戦が終わってもこれじゃあ、平和になったっていえねぇ」

ルキアはチャッピーの義魂丸と、一護はコンの義魂丸を飲んで、死神化する。

「後は任せた」

「お任せだぴょん」

「コン、変な行動とるなよ!」

「わーってるよ。大人しく、廊下に立ってりゃいいんだろう?」

「じゃあ、俺らいってくるから」

窓から、外に出た。

瞬歩で、空座町の隅っこあたりに出た、虚の大群を一掃する。

「舞え、袖白雪。次の舞、白蓮!」

ごうっと、凍てついた氷の柱ができて、虚の大群はその中に閉じ込められて、粉々に砕け散ってしまった。

残っていた虚を、一護が斬月で切り捨てる。

皆、大人しく霊子の塵となって還っていった。

ビービービー。

ルキアの伝令神機がまたなる。

新しい虚の出現だ。

「どっから湧いてきやがるんだこいつら!」

「あそこだ!あの空間に亀裂がある!」

黒腔(ガルガンタ)が開いていた。

「いかん、このままでも大虚も出かねぬ!浦原に言って、黒腔を塞いでおもらおう!」

ちょうど、大虚のが一匹顔を出した。

「月牙天衝!」

卍解もなしの技で、大虚を駆逐する。

とりあえず出てきた、虚という虚をやっつけていった。

なんとか波が収まった隙に、浦原商店にかけこみ、浦原とコンタクトをとる。

「あー、あれですか。自然に開いてしまった穴ですが、このままだと虚の大群がくるだけだ。よし、わたしが塞ぎますよ」

浦原に頼んで、なんとか黒腔を塞いでもらた。

また伝令神機が鳴った。

「またか!ああでもこの反応・・・1匹だな」

一護が、いつの間にかルキアの伝令神機を手にしていた。

「俺一人で、片付けてくるわ」

「気をぬくなよ!」

「ああ、大丈夫だ」

そのまま、一護は伝令神機を手に、虚退治へと向かった。

出てきたのは、大虚のヴァストローデだった。人型をとっていた。破面だった。

霊圧はさほど感じなかったが、いざ対峙したときに凄まじい霊圧が迸った。

「こいつ・・・グリムジョーくらいか・・・・」

「ほう、グリムジョーを知っているか。あのような敗北者ではない、私は」

一護は卍解した。

急激な霊圧の高まりに、ルキアも、授業を受けていた井上、石田、茶虎もはっとなる。

何度も切り結びあった。

お互い、傷ができる。

軽く殺す、ということはできなかったが、腕は一護のほうが上だった。

何せ、ユーハバッハを倒したのだ。

「月牙天衝!」

その一撃を食らい、破面は倒れ伏した。

「慈悲を・・・・・」

とどめを刺そうとした時にそう言われて、一護は躊躇った。

その隙だった。

一護の足元に絡みついて、破面は自爆した。

意識が遠くなる。

「ああ、ルキア・・・・」

走馬燈のようによぎるのは、ルキアの出会いから大戦に至り、高校生活まで一緒に過ごしてきたルキアの姿。

「ルキア・・・好きだ」

意識が落ちていく。

「一護ーーーー!!」

駆け付けたルキアが見たのは、火傷を負い酷い姿をしている一護だった。

「一護、だめだ、死ぬな!一護、一護!」

ルキアは一護を抱えて、学校の教室に飛び込んだ。

「井上、井上はいるか!一護が!」

「きゃああああ!」

井上は、霊体で他の者には見えない一護とルキアを見て、息を飲んだ。

先ほどの悲鳴は、いきなり机が吹きとんだせいで、一般の女子生徒があげた悲鳴だった。

「屋上へ!」

「おい、井上どこにいく!」

「おなかいたいんでトイレいってきます!」

ルキアが瞬歩で一護を屋上に運ぶ。

「井上、早く術を!」

「うん!双天帰盾、私は拒絶する!」

ぱぁぁぁと音がして、一護の傷も破れた死覇装も元に戻っていく。

しばらくして、一護が目を覚ました。

「ルキア?それに井上?」

「たわけ、心配をかけおってからに!」

「あ・・・俺、自爆に巻き込まれて・・・そうか、井上が助けてくれたのか」

井上は、涙をポロポロと零して、一護に抱き着いた。

「心配したんだから!」

「すまねぇ」

井上が、ルキアの見ている前で一護にキスをした。

ルキアは、悲しそうな顔をしていた。

「では、私は一足先に授業に戻る。今日はもう帰れ、一護。記憶置換で、熱が出て早退ということにしておく。一護を頼んだぞ、井上」

「うん、朽木さんも無理しないでね」

それこそ、無理な話というものだ。

ルキアの好きな一護が、井上を見ている。自分ではなく、井上を。

それがどんなに辛いものなのか、ルキアは痛感した。



廻りはじめた歯車。

恋い焦がれているのに、言葉にだせぬ想い-------------------。

拍手[0回]

恋い焦がれ プロローグ

高校生活も残りわずか。

ルキアは、一護を、一護はルキアを思っていた。

だが、互いに口にすることはなかった。

ふと、視線が重なる。どちらかがあらぬ方を向いてしまった。

時折尸魂界へ戻るルキアに恋次が、一護には井上というそれぞれの存在がいた。

だが、井上に向ける視線をいつの間にか気づくとルキアを追っていた。井上は、一護がルキアのこと好きなままでいいから付き合ってくれと言われて、了承した。

ルキアもまた、恋次に一護を思ったままでもいいからといわれ、付き合いだした。

だが、うまく噛みあわない。

互いに恋い焦がれ。

けれど、思いあっているにの付き合わなかった。

それはルキアが死神だからだ。

ルキアが人間であれば、すでに告白して付き合っていただろう。

だが、ルキアは尸魂界の住民だ。死神なのだ。生きる世界が違うのだ。

尸魂界へは滅多なことではいけない一護は、それを知っているのでルキアを好きと言わなかった。

ルキアもまた、それを知っている上で一護に好きだと、伝えられなかった。

「おい、ルキア」

「なんだ」

「次の授業、移動だってさ」

「ああ分かった、今行く」

他愛ない会話はできるのだ。それに、ルキアは一護の家に住んでいる。

押し入れが、ルキア部屋だった。

普通にベッドで寝ろというと、拒否された。

一緒に眠るのは恋人同士ではないからと。

それでも。どちらかが好きと言うことはなかった。お互いに、遠慮し合っていた。

一護には井上がいるからと。ルキアには恋次がいるからと。

「今日の夕飯カレーだってよ」

「本当か!遊子の作るカレーは美味いのだ!」

「んで、俺らに帰る前に福神漬け買って来いだとよ」

「カレーのためなのだ!その程度、どうということはない」

本当に他愛もない話はできる。

「ルキア、俺・・・」

「あ、私は少し用を思い出した。それではな、一護」

一護は、何回かルキアに思いをぶつけようとした。けれど、その度に逃げられた。

「はぁ・・・やっぱ、俺の思いなんて迷惑なだけか」

一護はそう思い込む。

ルキアには、恋次がいるのだ。

なのに、思いを告げるだけ無駄かもしれない。

今のままの関係がいいのだろう。そう思い込むしかなかった。

放課後になり、途中で井上と別れて、ルキアと二人きりでスーパーへと足を向ける。

福神漬けを買って、家に帰宅する途中、虚の気配を感じた。

「俺が行く!俺の体を頼む!」

死神代行証で霊体となって死神化した一護が、ルキアが何かを言い出す前に瞬歩で走り去ってしまった。

「一護・・・・」

ルキアは、動かないほうりだされた一護の唇に、口づけをした。

「ああ・・・この狂おしい思いのがどうにかなればいいのに」

一方その頃、一護は複数の虚と対峙していた。

動きが素早い奴ばかりで、腕を少しだけ怪我した。だが、ユーハバッハを倒した腕は健在だ。虚を倒して、ルキアのいる場所に帰還した。

「ルキア、すまねぇ待たせた」

「一護、血が!怪我をしているのか!」

「ああ、これくらいどうってことないさ」

自分の体に戻る。血の出ている個所が、肉体にも現れた。

ルキアはもっていたハンカチを裂いて、一護の腕に巻き付けた。

「おい、そのハンカチ・・・・・・」

白哉からもらった思い出の品だが、一護の怪我のほうが優先度は高い。

「よいのだ、一護。兄様からもらったハンカチはこれ一枚ではない」

「いいのか、本当に」

「よいのだ・・・・・・」

何はともあれ、福神漬けを手に帰宅する。

台所では、すでに帰宅していた遊子がコトコトとカレーを煮込んでいた。

「あ、お帰りなさ、お兄ちゃん、ルキアちゃん」

「いい匂いだな」

「ルキアちゃん、味見する?」

「いいのか?」

ルキアの瞳が見開かれる。

味見をして、カレーの味に酔いしれた。

ルキアはカレーが好きだ。カレーに限らず、現世の食べ物は好きだった。

「お兄ちゃんその怪我は?」

「ああ、なんでもねーんだ」

血を滲ませた腕に、遊子が心配そうな声を出す」

「一兄、どうせまた喧嘩でもしたんでしょ」

「ああ、似たようなもんだ」

夏梨の言葉に頷く。

「一兄、ちょっときてよ。ちゃんとした手当するから」

「ルキア、先に俺の部屋に行っててくれ」

「ああ、分かった」

一護は、夏梨の手で手当てをされた。

傷は思っていた以上に深いものだったが、縫う、というほどでもなかった。

「もういいぜ、夏梨。あとは友達に診てもらう」

「織姫ちゃんだっけ」

「ああ。特別な治癒能力をもってる」

「じゃあ、後は織姫ちゃんに任せるよ」

父親が帰ってきた。

往診していたらしい。

「一護・・・・虚にやられたのか」

「ああ。かっこわりぃとこ見せちまったな」

「一応これでも俺の息子だ。どれ、有料で傷の手当てをしてやろうじゃないか!」

「実の息子から金とる気かよ!夏梨に手当してもらったから、もう大丈夫だこのばか親父!」

「なにおう!?」

「なんだよ!?」

睨み合う二人を夏梨が頭を殴った。

「喧嘩すんなよバカ一兄と親父!」

「え、ああごめん。俺、部屋戻るわ」

一護は自分の部屋に戻った。

そこで目にしたものは、一護のベッドで一護の服を抱き締めながら眠るルキアだった。

「ルキア・・・」

触れるだけの口づけをする。

少し深い眠りに入っていのか、起きなかった。

髪に手をやる。

「ん・・・恋次・・・・」

その言葉にはっとなる。

何をしているんだ、俺は。

ルキアには恋次が、一護には井上がいるのに。

でも、廻りだした歯車は止まらない。

好きとも告げていないのに。でも、行動で分かる。お互い、多分好きあっている。

でも、言葉に出して拒否されるのが怖かった。

それに、もうすぐ卒業だ。

ルキアは尸魂界へ帰り、13番隊隊長代理お呼び副隊長としての復帰が、決まっていた。

「お前を思うだけ無駄なのにな。でも、この心はどうしよもないんだ」

夜が更けていく。

廻りだした歯車は、軋んだ音を立てていく。

お互いに恋い焦がれ。

けれど、思いを告げぬまま。

時間だけが流れていく。





拍手[0回]

最後の冬 終章 二人だけの物語

大学2年になり、二十歳になった。

ルキアとの現世での婚礼をが執り行われることになった。 尸魂界の主だった隊長副隊長も参加してくれて、総隊長の京楽の姿もあった。

みんな、ルキアと一護の結婚式を心から喜んでくれた。

現世の式場で、一護は正装して落ち着かない様子だった。

「黒崎君、落ち着いて!新郎がそんなに緊張してどうするの!」

振袖姿の井上が、そわそわしている一護に声をかける。

井上は、正式に石田と付き合いだしていた。

「だって、結婚式だぞ?一生に一度あるかないかの・・・・あああああ」

一護は軽いパニック状態になっていた。

「おい、しっかりしやがれ!」

ばしっと背中を叩かれて、一護が恋次を見る。

「恋次・・・」

「ルキアを幸せにするんだろう?本当なら、その位置に俺がいたかったんだ。まぁ、ルキアが選んだのがお前だったから、仕方ねーけどな」

恋次は、嬉しさの中にもどこか悲しさを見せていた。

「ああ、すまねぇ。気合い入れ直すわ」

自分の頬をぴしゃりと叩いた。

「黒崎、朽木さんを幸せにしろよ!」

「そうだぞ、一護」

石田と茶虎の言葉に、一護は頷く。

一護は、式場に入場する。父親である一心と遊子、夏梨もきていた。

「新郎、新婦の登場です」

一護が先を歩き、後ろから同じく和装の正装をした、白哉に連れられて、純白のウェディングドレスを着た、ルキアが歩いてくる。

「ルキア・・・・綺麗だ」

「ありがとう、一護」

長いウェディングヴェールを被ったルキアは、綺麗だった。

流石に、朽木家が金を出しただけある。

黒崎家も金を出そうとしたのだが、白哉が出すといってくれたのだ。普通の式場よりも何ランクも高い式場を予約してくれた。

「汝、黒崎一護、病める時も健やかなる時も、黒崎ルキアを妻として迎えることを誓いますか?」

「誓います」

「汝、黒崎ルキア、病める時も健やかなる時も、黒崎一護を夫として迎えることを誓いますか?」

「誓います」

「では、誓いの口づけを」

ルキアのヴェールをとって、一護はゆっくりとルキアに口づけた。

その後、一護がバイト代を貯めて買った、小ぶりのダイヤモンドがあしらわれた、結婚指輪を互いにはめあった。

「ルキア、幸せに・・・・」

「はい、兄様!」

朽木家の名で借りた式場で出されたメニューは、豪華だった。

「朽木、幸せにね!」

松本が、手を振っていた。

「ブーケを投げます!」

わっと、その場にいた女性死神から一護の友人たちまで、群がってくる。

投げたブーケは、井上の手に落ちた。

「ふふ・・・石田君、結婚してっていったら、してくれる?」

井上が冗談でそういうと、石田は顔を真っ赤にさせながらこう言う。

「大学を卒業したら・・・・・」

「え」

「え」

お互い、顔を見合わせた。

ルキアとの挙式は、これないと思っていた死神たちも顔を出してくれて、残りを任さた数名の隊長副隊長は、反乱が起きたらどうしようと考えていたが、何もおこらなかった。

「いや、いいねぇ。ルキアちゃん、ウェディングドレス似合ってるよ。ああ、浮竹にも見せてやりたかったなぁ」

京楽は、ここに浮竹がいたら、きっと泣き出すだろうなと思っていた。

2次会は、ホテルのロビーを貸し切って行われた。

酒が振る舞われて、松本などは早くもできあがっていた。

隊長である日番谷は、年齢を未成年と間違われて、飲酒を禁じられた。

「ったく、こっち世界はいつまで経っても、俺をガキ扱いだ」

「冬獅郎もありがとな。わざわざ来てくれて」

「仕方ねーだろ。尸魂界の恩人が結婚するんだ。出るしかねーだろ」

「恩人とか、そんなんじゃねーよ」

一護も二十歳になったので、酒を飲んでいた。

アルコール度の低いカクテルを飲んでいた。隣には、振袖に着替えたルキアが、同じカクテルを口にしていた。

ルキアの髪は、少し伸びた。

一護は、身長がまた少しだけ伸びた。

ルキアと一護の結婚式は無事終わり、二人はヨーロッパへ7泊八日新婚旅行に出かけた。

それも終わり、白哉の出してくれた金で、一軒家を買った。

そこで、ルキアは昼は尸魂界に、夜は現世にと、2重の生活を送っていた。

結婚したのだからと、京楽がそれを認めてくれたのだ。

「ルキアー。帰ってるかー?」

「あ、一護、晩飯はまだだぞ。先に風呂に入っていてくれ」

大学を卒業した一護は、翻訳家になった。ドイツ語の翻訳家だ。在宅で仕事をしながら、家事のほとんどをこなしていた。

今日は、ルキアが夕飯を作ることになっていた。ルキア専用の穿界門が作られていた。

夜の7時に現世にきたルキアは、自分の自宅でもある一護との新居に入り、まずは夕飯にシチューを作った。ご飯は一護が炊いてくれていた。サラダも作り、自分の好物の白玉餡蜜も作った。

「ルキア、あがったぞー」

「あ、分かった。夕飯ができたのだ。食事にしよう」

二人は食卓についた。

「また白玉餡蜜か・・・」

一護の呆れた声に、ルキアが言う。

「べ、別にいいであろう!嫌ならん食さねばいいのだ!」

「誰も嫌だなんて、言ってないだろ?」

ルキアにキスをすると、ルキアはとろんとした目で見つめてきた。明日は休日なのだ。

久し振りに睦み合う予定だった。

食事を終えて、一護が後片付けをしている間に、ルキアが風呂に入った。

「一護・・・その、するのか?」

「する」

いつもは二重の生活をしているルキアを思い、手を出さないが、一護だって男だ。愛しい妻がいれば、抱きたくもなる。

「あ・・・・」

ルキアの白い肌に、キスマークの花びらを散らせていく、

「んんっ・・・」

ルキアの胸をいじっていた一護は、ルキアに急かされた。

「あ、前戯などいいから、早く・・・・」

ルキアも久しぶりで、飢えていた。

すでに濡れている秘所に指をいれて、天井部分をいじってやる。

「ああああ!」

ルキアは、あっけなくいってしまった。

「い、一護・・・・」

「ルキア、入れるぞ」

「うむ・・・・・あああ・・・・!」

一護に貫かれて、ルキアはその快感に涙を零していた。

「痛いのか?」

涙を吸い取って、一護の動きが止まる。

「違う。もっとだ、もっとお前をくれ。一つに溶けあうくらいに、してくれ」

一護は、そう言われて少し激し目に、ルキアを抱いた。

次の日は、ルキアの非番の日だったので、一日中一護と一緒にいた。

周囲の家の人間には、記憶置換でこの館の住人が年をとらぬことを、不思議がる心を消していた。

死神と人間であるので、子はできなかったが、二人とも愛し合い、最後の時まで一緒にいた。

やがて、自宅で最期の時を迎えることに決めた一護の体から、魂魄が滲み出す。

「行こう。尸魂界へ・・・」

ルキアが、若い少年時代の、17歳くらいの姿になった一護の魂を、魂葬した。

魂魄は尸魂界にやってきた。一護は、久し振りに懐かしい姿に戻って、体を存分に動かせることが嬉しかった。

享年80歳。

ルキアが、息を引き取る間際まで傍に居てくれた。

尸魂界にきた一護には、前世の記憶もあったし、霊圧もちゃんとあった。死神の姿になると、斬月を所持していた。

「迎えに来た」

「おう、ルキア!」

「第二の人生だ。また、結婚しよう。今度は、子が欲しい」

一護とルキアの冬は終わり、また春がくる。冬が終わる度に何度でも春を迎えた。

やがて一護は、尸魂界の正式な死神になり、ルキアの副官になった。ルキアは一護と結婚して数年後には、13番隊の隊長になっていた。

「また、はじめようか。俺たちの物語を」

「ああ、一護、愛しているぞ」

「俺もだ。愛してる、ルキア」

もう、最後の冬はこない。

一護の死も、最後の冬にならなかった。

また、巡り合った。

運命のように。

二人は紡ぎ出す。二人だけの物語を。


------------------------------------------最後の冬は、もう永遠にこない。





             最後の冬
              fin

拍手[0回]

最後の冬 大学生活とルキア

桜舞う季節、一護は大学生になった。

予定通り、高校卒業までに貯めていたお金で、生活を始めた。

大学の入学費や授業料は、一心が出してくれた。アパートを借りる金もだ。

いずれ独立すれば返すつもりであった。

そういう約束で、金を借りた。

「はぁ・・・ルキアと離れ離れになるって、けっこう辛いな」

伝令神機で、メールのやりとりをする。、

(今何してる?)

(呆けた面をしている貴様の後ろにいる)

「え、ルキア!?」

後ろを振り向くと、悪戯を思いついたような微笑みを浮かべたルキアがいた。

「どしたんだよ、いきなり!」

「何、急に非番になってな。今日1日だけだが、現世へいく許可をもらったのだ」

二人のことを知っている白哉と、京楽が、穿界門をルキアのためだけに開けることに許可を出してくれて、これからも非番の・・・土日の休みには、現世にくることにしていた。

でも、土日だけじゃな足りなくて、伝令神機でルキアとやりとりをしていた。

「今日は、授業があるのであろう?私も一緒に受ける」

「ああ、いいぜ。でもドイツ語だぞ。人数制だから・・・」

「ふふふ。私にはこれがある!」

記憶置換を取り出す。

それで、ドイツ語の授業を教師と生徒の記憶を改竄して受けた。

こんなことに、記憶置換を使ってもいいものかと思ったが、ルキアと一緒にいたいので、まぁ見ないふりをした。

「あ、朽木さんだ!やっほー!」

井上は、一護を同じ大学に進んでいた。

「井上、数週間ぶりだな!元気にしておったか!」

「うん!朽木さんは?」

「私は、13番隊の隊長を欠いておるので、隊長代理も含めて多忙だ。瀞霊廷の復興が本格的に始まっているしな」

ルキアの話では、壊れてしまった一番隊隊舎などはもう完成したらしい。

雨乾堂は、そのまま浮竹の墓となり、取り潰された。

新しく建築された13番隊の建物で、ルキアは復興活動と、死神の業務に追われていた。

「まぁ、3席の小椿殿が私がいない間も、隊を纏めあげてくれていたし、私のサポートを色々としてくれるので、寝不足になって倒れる、まではいかぬよ」

「そんなことになったら、俺が 尸魂界にまで怒鳴り込む」

「一護のことだから、しかねぬな」

「もうお昼だし、食堂に昼食食べにいこうよ!ここの大学の食堂、安い上にボリュームあって美味しいんだよ!」

井上に引っ張られて、一護もルキアも食堂にやってきた。

「ふむ・・・では、私はカレーランチ定食を」

「ああ、俺もそれでいいわ」

お金を払い、チケットを手にカレーランチ定食を受け取る。

カレーの上にエビフライが2つあって、サラダと福神漬けがついていた。

「むむ。カレーとは、やはり美味いな。復興に伴い、現世の食料も普及してきて、カレーを食す日もあるが、なかなかお目にかかれぬ。やはり現世は美味い食べ物の宝庫だな」

「今日は何時までこっちにいられるんだ?」

一護は、ルキアを優しい瞳で見つめていた。

「夜の10時には、戻らねば」

「そっか。土日もこっちこれるか?」

「ああ、大丈夫だ」

ルキアと一護の会話を聞いていた井上が、羨ましそうに二人をみた。

「いいなぁ、朽木さんと黒崎君。私も彼氏、作ろうかな・・・」

「石田なんてどうだよ。けっこう狙い目だと思うぜ。実家は病院で金持ちだし」

「石田君かぁ。何かにつけて、私に優しくしてくれるし・・・一度、アタックしてみようかな」

「その調子だぞ、井上!当たって砕けろだ!」

「砕けたらいけねぇだろ」

一護の冷静な突っ込みに、ルキアが頬を朱くする。

「と、とにかくだ。私は今日は一護と一緒にいるから、何かあったら井上も来てくれ」

「うん、ありがとう朽木さん!」

その日、一護はバイトがあったが、ルキアがバイト先まで来てくれたので、休まずに済んだ。

うなぎ屋のなんでも屋のバイトを辞めから、駅前のラーメン店でバイトを始めた。

一護の作るラーメンは人気で、その顔みたさに女性客が来るほどだった。

大学が終わり、そのまま一護はバイト先にルキアと一緒に直行した。

店長に彼女で婚約者であることを伝えると、ルキアは店長直々のラーメン定食をおごってもらえた。

「一護君には、もう婚約者がいるのか。俺なんて、三十路の終わりなのに恋人一人できやしない」

「いや、店長ちゃんと婚活すれば彼女できますって!」

一護のフォローに、店長は涙を滲ませながら、婚活しようかなぁと、呟いていた。

8時になって、バイトを切り上げる。

ルキアが帰る時間まで後2時間。ほんとはもっと一緒に過ごしたいのだが、現世と 尸魂界に生きる者では隔たりが大きすぎる。

「帰ったら、白玉餡蜜作ってやるよ」

「本当か!?」

その日の夕食を買い出しして、8時半に自宅につき、料理をしていると9時を回ってしまった。

「あと1時間しかないな。早く食べねば・・・」

一護は、天丼を作ってくれた。

それを早めに食べて、白玉餡蜜を食べる。

残り時間は30分になっていた。

「一護・・・キス、してくれ」

「ああ、いいぜ」

とろけるほどに甘いキスを何度か繰り返した。

10時になって、タイムオーバーになる。

「 尸魂界へ帰らねば・・・・土日にまた来るから、それまで待っていてくれ!」

ルキアが穿界門をくぐって消えたのを確認してから、一護は風呂に入り、課題をして寝た。

その週の土日、ルキアは現世にこなかった。

心配で、伝令神機に連絡をいれるが、一向に連絡は返ってこなかった。

まさか、またルキアの身に何か起きたのか?

そう思った一護は、浦原に頼んで穿界門を開けてもらった。

流魂街に出たが、瞬歩で朽木邸に向かう。

「ルキア!」

勝手にあがりこんできた客に、白哉が声をかける。

「ルキアは、眠っている。熱を出したのだ」

「まさか、また病気か何かか!?」

「病気は病気だが、ただの風邪だ」

「よかった・・・・」

一護は、ルキアの眠る寝室に入ることを許された。

見知った霊圧を感じて、ルキアがうっすらと目を開ける。

「一護・・・・週末はそちらに行くと言っていたのに、すまない・・・」

「いいんだ、ルキア。今は風邪を治すことだけを考えてくれ。伝令神機にも反応がなかったから、思わず浦原さんに頼んで、 尸魂界にきちまった。今日の予定はないし、お前の傍にいるよ」

「こほこほ・・・風邪が、うつるぞ」

「多分、大丈夫だ」

翌日には熱も下がり、動けるようになったルキアと、朽木邸でいろいろ話し合った。

ルキアと一護の今後のことについてだ。

白哉の姿もあった。

「兄は人間だ。それでも、ルキアを娶ると?」

「ああ。ルキアを置いていっちまうだろうが、どうせ他界したら魂魄は 尸魂界につくんだ。記憶はきっと残ると思うし霊圧も残ると思う。死んだら、またルキアと結婚する」

「一護・・・・」

ルキアは、涙を滲ませていた。

「よかろう。式は兄が20になった時に、現世で行うものとする」

「白哉、ありがとう!」

白哉は、優しい瞳でルキアを見た。

「ルキアを・・・幸せに、してやってくれ」

「勿論だ!」

「兄様・・・私は、緋真姉様の分まで、生きます。兄様を、一人にはさせません」

 尸魂界と現世をいったりきたりの生活になるだろうが、それでもよかった。

ルキアと結婚できるならば。


拍手[0回]

最後の冬 卒業旅行

梅の花が咲く季節。

一護、ルキア、井上、石田、茶虎は高校を卒業した。

そして、卒業旅行に出かけた。

沖縄方面という意見もあったが、飯が不味いということで、一護とルキアは訪れたことがあるが、北海道になった。

まだ、雪が積もっていて、井上やルキアは、雪玉を作って投げ合ったりしていた。

一護と訪れえた時も雪が積もっていたが、病気のせいで無理はできなかったのだ。

みんなで雪ダルマとかまくらをつくり、個人個人で雪うさぎを作った。

ルキアだけ、なぜかチャッピーになっていたが、まぁかわいいのでよしと、みんな思った。

「ここのラーメンが美味いのだ!」

札幌の本格的なラーメンの老舗で、昼食をとった。

夕食は、温泉ホテルでカニ鍋を食べた。他にも海の幸を堪能した。

「北海道って、冬は寒いけど、美味しい物多いよね」

「そうだな。石田、茶虎、井上。おみやげは白い恋人と、夕張メロンキャンディがお勧めだ。金に余裕があるなら、カニや新巻鮭もありだ」

石田は家が病院で金持ちだから、知り合いという知り合いに、カ二と新巻鮭を送っていた。

井上はいつもお世話になっている親戚のおばさんに。

茶虎は自宅に自分用に。

温泉に入るとき、浴衣が安く売っていた。

ルキアと井上は、互いにこの浴衣がいい、いやこっちがいいと、見せあっていた。

「ルキア、気に入ったのあるか?買ってやるから」

「む。この浴衣がいいのだ!」

萌黄色の、紅葉をの柄を散らしてある浴衣だった。

「いいなぁ、朽木さん」

「井上さん、良ければ僕が買ってあげるよ」

「え、石田君!?いいの?」

「黒崎のやつ、鈍感だから井上さんの心に気づかないんだろう」

そんな石田に、井上は首を横に振った。

「ううん。ずっと前に告白したの。でも、朽木さんが好きだって言われて、断られちゃった」

「そっか・・・・その浴衣でいいのかい?」

「うん。これがいいの」

瑠璃色で、蝶の柄の浴衣を、井上は選んだ。

浴衣は3千円だった。

男3人は、ホテルの備え付けの浴衣を着ていた。

ルキアと、井上は、きゃっきゃとはしゃぎながら、女湯に入っていく。

「うーむ。覗きたい・・・・」

一護の言葉に、石田が頭を叩く。

「不謹慎なこと言うな、黒崎!」

「いや、だって自分の彼女が温泉でアハハウフフなんだぜ?そういう石田も、実は井上の巨乳が見たいんじゃねーのか!」

「お前と一緒にするな、黒崎!」

「男湯、なんか賑やかそうだね」

「賑やかというか・・・ただ、バカなだけだ」

茶虎は、無言で温泉にすでに浸かっていた。

「茶虎君を見習え!」

「へいへい」

そんなこんなで、夜も更けていく。

寝る部屋は、一護と石田と茶虎の男トリオと、井上とルキアの女ペアに別れていた。

だが、いざ皆が寝静まった頃、ルキアと一護は部屋を抜け出して、ホテルの外にある梅の花を見上げていた。

「梅の花は・・・緋真姉様が好きだったのだ」

「そっか・・・・」

「緋真姉様も、もっと早くにあの病気が毒からきていると分かれば、生きていたかもしれないのに・・・・」

「ルキア。今生きてお前は俺の隣にいる。幸せか?」

「当たり前であろう!幸せでなければ、貴様などと付き合わぬ!」

「そっか・・・・・」

ルキアは、一護が送ったアメジストのネックレスをしてくれていた。

「あのさ、これ・・・・」

「ん?」

ホワイトゴールドの、アメジストがあしらわれた、指輪だった。

「これの何が?」

「裏、名前彫ってあるだろ」

「うむ。ICHIGOと彫ってある」

「そ。これ、エンゲージリング。婚約指輪だ」

「え・・・・」

ルキアの大きな瞳が、更に大きく見開かれた。

「かしてくれ」

「ん・・・」

一護に渡すと、一護はそれをルキアの指にはめた。

「こっちの指輪、裏にRUKIAって彫ってあるんだ。お前の手で、俺の指にはめてくれるか?」

「うむ・・・」

ルキアは真っ赤になりながら、一護の指の指輪をはめた。

「いつか・・・・結婚しよう」

「一護・・・・・・・」

ぽろりと、アメジストの瞳から涙が零れ落ちた。

「貴様は、私を置いていく・・・」

「だけど、魂魄は尸魂界にたどりつくんだろ?俺は絶対に現世のこと忘れない。本物の死神になって、ルキアとまた一から尸魂界で、始めるのも悪くねーだろ?」

「貴様という男は・・・・結婚、する。絶対に」

「白哉にはもう妹さん下さいって言った後だしな」

「貴様は、することすることで、私を驚かせるつもりか」

ルキアは、潤んだ瞳で一護を見つめていた。

「ルキア・・・・」

自然と唇が重なった。

「ん・・・んん・・・・」

何度かされたことのある、ディープキスだった。

梅の花を見上げて、しばらく無言で寄り添い合った後、眠気に負けてお互いの部屋に引き上げていった。

次の日も同じホテルに泊まったので、ルキアと一護は寝れるだけ寝ていた。夜更かししたせいで、昼前に起きてきた。

「黒崎君も、朽木さんも寝すぎ!」

「いや、ちょっとな・・・・」

「う、うむ・・・・・・」

「何、二人で・・・・・あ、指輪!」

目敏い井上に、すぐにばれてしまった。

「一護から・・・いつか結婚しようと、もらったのだ。エンゲージリングだそうだ」

「黒崎君、卒業旅行でプロポーズだなんてやるなー」

井上が驚いていた。

「尸魂界か現世か分からぬが、いずれ式を挙げると、思う」

「うわぁ!その時は絶対に呼んでね、朽木さん!」

「おいルキア、まだ日取りも決まってないんだ。場所もだ。そんなに、ほいほいばらすな」

一護が、ルキアに注意する。

「しかし、このエンゲージリングをしている限り、ばれてしまうであろう!」

「う、それは・・・・」

一護が言葉に詰まった。

「まぁ、朽木さんは一度死にかけたんだ。結婚して、末永く幸せに暮らすといいさ」

石田の言葉に、茶虎も頷く。

「一護、幸せにしてやれよ」

「だー、だからまだ俺ら高校を卒業したばかりだっつの!」

「でも、黒崎君もう18だよね。法律的には結婚できるよね」

井上の言葉に、一護もそうだなと思うが、まだ早い。

付き合いはじめて、まだ5か月なのだ。

せめて、後数年してから・・・・そう一護は思っていた。

そのまま、卒業旅行は終わった。



―-----------------------------------------------------------最後の冬が終わり、春がくる。

拍手[0回]

最後の冬 ルキアの目覚めと卒業

ルキアが仮死状態になって、半月が経とうとしていた。

恋次と一緒になって、戌吊を捜索しまくった。

白哉のほうも、人手を貸してくた。

「あった、この草だ!」

恋次の記憶が本当なら、腹を減らした子供の頃、その草は甘いということで、よくルキアと一緒になって食べていたそうだ。

4番隊の調査により、葉や茎の部分には何もないが、花びらに少量の毒を含んでいることが分かった。

少量を口にするだけならいい。だが、ルキアはよくその草の、特に甘い花を好んで食べていたという。

流魂街から瀞霊廷に来た者だけでなく、流魂街でもルキアと同じ病は密かに広がっていた。みんな、その甘いという毒草を、そうと知らずに口にし続けた者だった。

さっそく、流魂街でこの花は毒草であり、花びらを食べると死に至るという情報を流した。

すでに口にしていた者達の中から、大量に摂取しているのに、発病しない者を見つけて、その者の血を抜いて、検査に回された。

結果、毒に対しての血清があるとのことだった。

ますは、4番隊で同じ病にかかっているの者に、できあがったばかりの 抗毒血清を打ち、数日様子を見ると、病が癒え始めた。

流魂街でも同じ病気に苦しむ者たちに、4番隊は無料で抗毒血清を打ってやった。

皆、奇跡だと喜んだ。

朽木邸で仮死状態になっているルキアを、まずは仮死状態から脱する解毒剤を打った。

ルキアが息を吹き返した。

一護、恋次、白哉の見守る中、虎鉄勇音が、抗毒血清を注射した。

即効性ではないので、時間が必要だったが、数時間後には頬に赤みがさしていた。

「朽木副隊長は、危険な域を脱しました。あとは、この抗毒血清を固めた薬を飲ませ続けてください」

「すまぬ、虎鉄隊長。世話になった」

白哉が、心底安堵したように、礼を言った。

「いえ、私を含めた4番隊は怪我や病を癒す場所ですので」

一護にとって、虎鉄隊長は神様に見えた。

「ああ、そういえば涅マユリに、仮死状態にするとき金払えるのかと言ってたから、朽木家なら払ってくれるさっていってしまったんだが・・・・」

「ふ。ルキアがそのおかげで助かったのだ。いくらでも金を与えよう。とりあえず、1億環くらいでどうだ」

「いや、流石にそれは払いすぎだと思う。あと、俺は実験体になってやるって言ったんだけど、なりたくないからスルーでもいいよな」

そういう一護に、恋次が笑った。

「涅隊長のことなんざ気にするな!ルキアは助かったんだし、今日はぱーっと飲もうぜ」

「でも、それもこれも、恋次があの草を食べていたっていう発言から始まったんだよな」

一護の言葉に、恋次が頷く。

「おう。みんな草を食べていたっていうから、もしかして病の原因なんじゃねーかと半信半疑だったんだが、あの白い甘い花に毒があったなんてなぁ」

「何はともあれ、ありがとな恋次。ルキアの命の恩人だ」

「やめろやめろ。そんな大したことしてねーよ」

「恋次、おまえには特別休暇と、報酬金を支払おう」

「え、まじっすか!やった!」

そのまま、酒宴となった。

ルキアはまだ眠ったままだが、一護が定期的に薬を飲ませていた。もちろん、口移しだ。

酒にある程度酔って、酒宴は打ち切られた。

「んー、ルキア大好きだー。早く目を覚ましてくれ・・・・・」

「ん・・・・・」

「ルキア?」

「一護・・・・?ここはあの世ではないのか?」

ルキアの覚醒に、一護はルキアを思い切り抱き締めた。

「こら、一護、苦しい!」

「あ、ああすまねぇ。ルキア、良かった・・・一度、本当に死んだんだ。話は長くなるけど、涅マユリの電気ショックで息を吹き返して、その後仮死状態にする薬を打ってもたんだ。んで、ルキアが仮死状態になっている半月の間に、病の原因を突き止めて、抗毒血清打ってもらったんだ」

ルキアは、不思議そうに眼を瞬かせた。

「抗毒血清?私は、何か毒を口にしていたのか?」

「恋次も口にしてたけど、飢えた時に甘い草の葉や花を食べていただろう」

「ああ、あの白い花か。あれはまるで蜜を舐めているようで、美味かった」

「その花に、毒があったんだ。長年蓄積された毒が、病気の原因だったんだ」

「それでは・・・姉様も・・・・・・?」

「多分な。飢えて、同じ白い花を口にしていたんじゃねーかな」

ルキアは、一護を抱き締めていた。

「ルキア?」

「病気で諦ていた貴様との未来が、続いている」

「そうだな」

「兄様も、貴様との交際を認めて下さっている」

一護は、半月の間尸魂界にいたことになるのだが、大学の受験日にはちゃんと現世に戻り大学を合格していた。

井上も合格していたようだ。

ルキアは決まった時間に、病を完全に治すために、抗毒血清を固めた薬を飲んだ。

「まずいな、これは・・・」

「ああ、俺も思った。でもちゃんと飲まないと、病が完全に癒えるまで、時間がかかっちまう」

「なぜ、この薬の味が苦いと知っておるのだ」

「そりゃ、意識のない時に口に含んで飲ませてたから」

ルキアは、顔を真っ赤にさせた。

「なんだよ。今頃キス程度で赤くなるなよ」

「兄様や恋次がいる場所でもしたのか!?」

「ああ、そうだぜ」

ルキアは、一護を睨んだ。

「責任をもて」

「ああ。責任もって、嫁にもらってやる。っていっても。将来設計図だけどな」

「一護の嫁・・・・あああああ」

考えただけでも、幸せで、ルキアは布団に横になった。

「どうしたんだ?」

「な、なんでもない、たわけ!」

照れているからなど、口が裂けても言えなかった。


そのまま、ルキアは卒業式の数日前まで、療養していたが、やっと白哉の許しをもらって、現世に戻ってきた。

「朽木さーーーん!」

いいなりタックルをされて、ルキアがふっ飛ばさそうになった。

「い、井上、激しいからもっと優しくしてくれ」

「あ、ごめんなさい。私ったら・・・でも、朽木さんが無事で良かった!本当によかったよう!」

涙を零し、鼻水まで垂れだした井上に、ルキアはハンカチを渡した。

「ありがとう、朽木さん!」

鼻水を盛大にかんでいたが、ルキアは気にしなかった。そのまま、そのハンカチは井上のものになった。何気に金糸や銀糸で刺繍がされた、絹でできた高級品であったが、そんなのはどうでもよかった。

また、井上の友人として傍に居れることが、嬉しかった。

「朽木さん、病気治ったんだね。良かった」

石田は、医学部に合格していた。難関大学であったが、勉強のできる石田にはどうってことはなかった。

「うむ、良かった」

茶虎は、本格的にボクシングを始めるために、ボクシング部のある大学を受けて、受かっていた。そこそこ頭のいい大学だった。

そのまま、何事もなく数日が過ぎた。

いよいよ、卒業式の日がやってきた。

ルキアも井上も、盛大に泣いていた。

「うわーん、みんなと離れたくないよう」

「井上さんは、黒崎と同じ大学じゃあないか」

「でも、石田君も茶虎君も、朽木さんも、離れ離れになっちゃう・・・・・」

「井上、それは仕方のないことだ」

茶虎の言葉に、井上はますます泣いた。

「私は、月に数回は現世にくるから・・・・ぐすっ・・・寂しくなるが、会えなくなるわけfrはない」

ルキアも泣いていたが、井上ほどではなかった。

「朽木さん、約束だよ!卒業しても会いにきてね!」

「ああ。一護に会いくるついでに、大学とやらにも顔を出す」

「そういえば、黒崎君は?」

「ああ、下級生に呼ばれていたみたいだ」

そこへ、一護がやってきた。

ボタンは全部むしられていた。

「次、石田だってよ」

「ええ、なんで僕が!」

「いいから、行って来い!」

一護に押しやられて、石田は下級生にもみくちゃにされて、制服のボタンを全部奪われた。

「茶虎にも、来てるぜ」

「ああ、あの子は問題ない。今交際中だ」

「え、まじかよ茶虎」

「うむ」

最後に、みんなで卒業旅行に出かけることになった。またになるが、北海道だった。




-------------------------------------------二人の最後の冬は終わった。春になろうと、していた。





拍手[0回]

最後の冬 生きているルキア

月日が経っていくのはあっという間で。

高校生活も、残り2か月になっていた。

ルキアは、一時期病気のせいでやせ細ったが、今は小健康状態で、前より肉がついた。

ルキアの顔色がいいので、一護はいろんな場所をルキアと訪れた。

一護にも大学受験が控えていたが、今の成績でも通る普通の大学を選んだ。国際大学で、ドイツ語を第二語学で専攻しようと、一護は思っていた。

ルキアと井上と一緒に、キャンパス見学に訪れていた。

ルキアが大学に行くことはないのだが、大学がどういうところか見たいというので、同じ大学を進むと決めた井上と一緒に、見学に訪れていた。

「お、女子高校生だ。かわいー」

「かわいいなぁ。声かけようかな」

一護が、持ち前のその面の凶悪さを見せつけると、声をかけようとしていた男共は、散り散りになって逃げていった。

「けっ」

「黒崎君、警戒しすぎだよ」

「俺のルキアと、友人の井上を変な目で見る奴は許さねえ」

よく高校で、英語の分からないところを、アメリカ留学から帰ってきたと、質問されるのだが、いつも何かにつけて回答を拒んだ。

何かあると、いつも記憶置換を使っていた。

多用するのはよくないと言っている本人がこれなので、一護も何も言わなった。

あれから、ルキアと肌を重ねることはなかった。

多分、あの日が最初で最後だろう。一護はそう思った。

一護は絶対に諦めないと言いつつ、ルキアが死ぬかもしれないということを、少しずつ受け入れていた。

ルキア。

―----------------------俺の初恋の、俺の始めての彼女。

-------------------------死んでほしくない。

なんとか助かる方法はないかと、石田の父親の経営する病院で診てもらったが、病名さえ分からぬ病気で、手の打ちようがないと言われた。

その時になって、石田に知られた。ルキアが末期の不治の病であることを。茶虎にも教えた。

二人して、病気についていろいろ調べてもらったが、症例もなく、どうやら尸魂界に住まう者だけがかかる病のようであった。

4番隊から、連絡が入った。

病気になる者は、皆、流魂街出身であるということ。流魂街から瀞霊廷に入ってきた者のみがかかる病気であること。

白哉の亡き妻、緋真もそうであった。

流魂街出身で、白哉の妻として瀞霊廷に住んでいた。

流魂街に何かないかと、一護はやみくもに探してみたが、結局何も見つけれなかった。流魂街は広い。広すぎる。

ルキアの小健康状態が続くうちに、行ける場所は行っておきたかった。

冬休みに入り、クリスマスを家族で祝い、年末年始も家族で祝った。勿論、その中にはルキアも含まれていた。

一心は、一護にはお年玉をくれないくせに、ルキアには2万円のお年玉をあげていた。

遊子と夏梨は7千円ずつだった。

「一心殿、お年玉なぞいりません。どうか、このお金で家族と何か美味しいものでも・・・」

「ああ、ルキアちゃん気にしなくていいから。あの朽木家の子だと、2万なんてしけてるかもしれんが」

「いえ、お心遣いとても嬉しいです」

ルキアの笑顔に、一心も笑顔になった。

「おい一護。ルキアちゃん病気なのか?」

「なんで分かるんだ」

「あのなぁ。これでも一応、医者のはしくれだぞ」

一護は、ここまできたのだからと、隠さずに一心にルキアの現状を語った。

「流魂街か・・・戌吊が、ルキアちゃんの出身地だよな。俺は、そこになにかあるような気がするんだ・・・・」

「流魂街の、ルキアの出身地戌吊か・・・今度、尸魂界に行った時、訪れてみる」

「馬鹿野郎!時間がねーんだろ!」

「だからって、ルキアを一人にできるかよ!」

「まぁそれは分からんでもないが・・・とりあえず、明日から3泊4日で北海道いくんだろ?帰ってきたら、戌吊で何か情報でも掴んで来い!」

「わーったよ」

一護は、二人きりの北海道旅行に行った。

ルキアの小健康状態は保たれたままで、吐血することもなかった。

「ルキア、ほら薬・・・・・」

「すまぬ・・・・・」

痛み止めと、肺の薬を飲んだ。

「私が吐血するなど・・・まるで、浮竹隊長のようだな」

「あの人は病弱だったし、肺を患っていたから仕方ないだろ。お前は違う」

「そうだな。もっと酷い。死期が迫っている」

「絶対に死なせねぇ!」

ルキアを胸にかき抱いた。

札幌で本場のラーメンを食べた。ホテルでカニ鍋を食べた。お土産に送る前に、白い恋人と夕張メロンのキャンディも食べてみた。

どれも美味しかった。

「ふふ・・・・死にゆく者にしては、食い意地が張り過ぎかな・・・・」

「んなことねぇよ!」

季節は冬で、ちょうど雪まつりが開かれていた。

いろんな形の、精巧なつくりの雪像を見ていると、ふとルキアの袖白雪のことを思い出した。

「なぁ。氷雪系の斬魄刀で、生きてる者を仮死状態にすることはできるか?」

「できるが、それがどうかしたか?」

「それだ!」

一護は語った。

ルキアの命が尽きる前に、一度仮死状態にして、その間に特効薬を作らせるのだと。

「私を仮死状態にか・・・・そのようなこと、思いもつかなかった。だが、袖白雪では、所有者である私を仮死状態には・・・・」

「冬獅郎がいるじゃねぇか!」

「日番谷隊長か・・・・」

「この旅行が終わったら、すぐ尸魂界へ行くぞ!」

「分かった・・・」

その旅行では、体は重ねなかった。ルキアの体力を無駄に消耗するからだ。

そして空座町に戻り、尸魂界へと渡る。

冬獅郎に頼み込んでみたが、答えは否だった。

「俺の氷輪丸は、凍り付けた相手の命を奪う。朽木の袖白雪とは違う」

「そんな・・・・・」

一護は、愕然となった。

こうしている間にも、病魔はルキアの体を蝕んでいく。

「ぐ・・・ごほっごほっ・・・・」

ルキアは、いきなり咳込み、大量の血を吐いた。

「ルキア!」

「ふふ・・・・思ったより、病気の進行が早いようだ。私はここまでだな・・・一護、すまぬ。愛している。大好きだ。お前を残して逝くこと、どうか許してほしい・・・・・」

「だめだ、ルキア、まだ逝くな!ルキア!!」

浅い呼吸を繰り返すルキアを、最後の可能性をかけて、12番隊の技術開発局にその体を抱き抱えて移動した。

「おい、ここなら、死神を仮死状態にできる何かねぇのかよ!」

12番隊隊長である、涅マユリに食ってかかった。

「なんだネ、やぶからぼうに。おや、朽木副隊長ではないかネ。死にかけと見えるが・・・・」

「仮死状態にする何かはねぇのかって聞いてるんだよ!!!!」

「あるヨ。しかし、君にその金が支払えるのかネ?」

「朽木家が、金ならいくらでも払ってくれるはずだ!それでも足りないなら、俺を実験体にするなり好きなようにしやがれ!!」

涅マユリは、にまりと笑んだ。

「死神であり、人間であり、虚であり、滅却師の血を引いている君を実験体にか。いいネ、気に入ったヨ!ええと、ここでもないこれでもない・・・・」

「早くしやがれ!ルキア、だめだ、まだ逝くな!俺を置いて逝かないでくれ!」

一護の言葉に、うっすらとルキアは瞳を開けた。

「一護・・・貴様と在れたこの数か月・・・悪く、なかった・・・・・・・」

「おい、ルキア、ルキアーーーーーーーーー!!!1」

ルキアの呼吸が止まった。脈もなくなっていく

「どきたまえ!」

涅マユリは、どこから取り出したのか、電気ショックでルキアに刺激を与えた。

「ぐ・・・ごほっごほっ」

ルキアは、息を吹き返した。

その間に、何かの注射を打つ。

すると、ルキアの呼吸と脈が止まった。

「おい、ルキア、ルキア!!」

「うるさいネ。今、仮死状態にする薬を打ったところだヨ。即効性だから、朽木副隊長は、仮死状態だが、まだ生きているヨ」

「そうか・・・・よかった・・・・・」

一護は、冷たくなっていくルキアを抱き抱えた。

「どこかに寝かせておくとか、液体の入ったカプセルに入れるとか、そういうのはねぇよな?」

「ないネ。どこに置いておこうが、仮死状態のままだヨ。解毒薬を注射するまではネ」

一護は、朽木邸で白哉と恋次に全てを話し、仮死状態のルキアを見守ってくれるように頼みこんだ。

白哉は、ルキアがなんとか一命を取り留めている姿に、けれど現状は死んだと同じなので、悲しそうな目をしていた。

「ルキアが・・・不治の病の末期・・・くそ、ルキアの奴なんで教えてくれなかったんだよ!」

「それは、恋次に心配をかけたくなかったんだろう」

布団の上で、冷たいルキアは、本当に死んでいるようで。

でも、仮死状態なのだ。

顔色はそれほど悪くなかったが、白かった。病気独特いの青白さはなかった。





--------------------------------------------二人の最後の冬。ルキアは、生きていた。

拍手[0回]

最後の冬 一つに溶ける

その日は、学校を休んで、二人とも穿界門をくぐり、尸魂界へとやってきた。

「お、一護じゃねぇか。珍しいな」

恋次が出迎えてくれた。

「よお、恋次。元気にしてたか?」

「おう。ルキアの容体はどうだ?」

「恋次まで、知ってたんだな」

ルキアは、一護の後ろに隠れていた。

「おう、ルキア!少しは元気になったか!」

「たわけ、元気に決まっておろう」

ルキアが耳打ちしてきた。

「恋次には、軽い病だと話しておるのだ。真実は話すな」

「わーったよ」

一護は、ルキアに惚れた弱みもあるし、これ以上自分のように苦しんで欲しくないとも思い、恋次に真実を話さなかった。

「今日は、定期健診と、薬をもらいきただけだ。終われば、すぐに現世に立つ」

「おいおい、マジかよ。たまに帰ってきたと思ったら、一泊もしていかねーのかよ」

「今は、現世が私のいるべき場所なのだ。あと5か月もないのだ。現世で5か月過ごせば、それで終わりだ。時折現世にいくだろが、毎日のようにはいかなくなる」

「あーまぁ、尸魂界に戻ってくるんだからな。そういや隊長から聞いたんだが、一護と付き合いだしたってまじか」

「まじだ」

恋次は、はーっと、息をついたかと思うと、一護の襟首を締め上げた。

「てめぇ、ルキアを泣かせてみろ。俺が奪うからな」

「恋次もルキアのこと、好きだもんな」

一護が知っていた。恋次が、ずっとルキアに恋心を抱いていたことを。そして告白する前に、一護に先をこされた。

ルキアは、家族愛では恋次が大好きだった。ただ、異性として見れるかといえば、きっと首を横に振ってしまうだろう。

「恋次。私は、貴様に好きと言われても、一護を選んでいただろう。許せ」

「あーあ。告白する前から振られてるぜ俺。だっせぇ」

恋次はあーだこうだ言いながら、最後にはルキアの頭をくしゃくしゃと撫でて、去ってしまった。

ルキアと一護は、一先ず朽木邸にきた。

「兄様、いらっしゃいますか」

「ルキアか。どうした」

「今から、定期健診に行って参ります。痛み止めが効かなくなったので、もっと強めのものに処方してもらいます・・・その、特効薬のほうは?」

白哉が首を横に振る。

「まだだ。同じ症例の者に与えて試してはいるが、まだなんの手応えもない」

「そうですか・・・・。とりあえず、4番隊に行って参ります、兄様」

「黒崎一護・・・・・義妹を・・・・ルキアを、頼む。幸せにしてやってくれ」

「兄様!心配なさらずとも、私は今十分に幸せです!」

「そうか・・・・・ならば、よい」

白哉は、そのまま屋敷の奥に消えてしまった。

「白哉のやつ、ちょっと薄情じゃねぇか?」

「貴様、兄様を愚弄する気か!私が緋真姉様と同じ病だと知った時の兄様の嘆き・・・その涙・・・決して、忘れることはできぬ」

「白哉が涙を・・・・相当辛かったんだろうな」

あの沈着冷静な白哉が涙を零すほどに、ルキアの病気のことがショックだったのだろう。

愛しい妻を、同じ病気で亡くしているのだ。

そう考えると、一護も胸にじんわりと痛みを感じた。

「ルキア」

「なんだ」

「幸せになろうな?病気なんか克服して」

「そうだな・・・・・」

ルキアの目は、何処か遠くを見つめていた。

4番隊の救護院に行き、ルキアの病気の進行を遅らせる処置をしてもらい、痛み止めの薬を強いものに変えてもらった。

今度の薬には依存性はないが、効果が切れた時の痛みは尋常ではないと、説明を受けた。

「朽木ルキアさん・・・・・・」

「なんですか、虎鉄隊長」

「その、病気の件なんだけど・・・・・」

「何か、分かったのですか!」

「いえ・・・ルキアさんの症状から、もってあと4か月と少しかと・・・・」

一護が息を飲む。

「そう・・・・ですか・・・・・」

4か月と少し。

ちょうど、卒業日あたりだ。

「ルキア、絶対に死ぬなよ!」

「分かっておる。最後の最後まで、足掻いて足掻いて、意地汚く生きてみせる」

ルキアの飲む薬が増えた。

痛み止めと、末期症状の吐血を和らげる、肺の薬だった。

そのまま、現世に戻った。

次の日、ルキアは見た目は普通に見えた。だが、学校について2限目の授業を受けていた時、咳込んで血を吐いた。

「ルキア!」

一護は、頽れるルキアの体を支えた。

「朽木さん!きゃああああ!」

「きゃああああああああ!!!!」

女生徒たちが悲鳴をあげる。

「朽木さん!」

井上が、駆け寄る。

「双天帰盾、私は拒絶する!」

「え、井上!?」

何も知らない生徒たちの間から、ざわめきが漏れる。

一護は、念のためにもたされていた記憶置換で、教師とルキアと井上を除く生徒全員の記憶から、ルキアが吐血したことと、井上の術のことを忘れさせた。

「すまぬ・・・・もう大丈夫だ。双天帰盾のお陰で、吐血の悪化は防げたようだ」

「ルキア、帰るぞ!」

「一護、心配しすぎだ!」

ルキアが止めるが、一護はルキアを横抱きにして、歩き出す。

「馬鹿野郎!血を吐いたんだぞ!」

「末期症状の一種だ・・・・・」

一護は悔しそうだった。何もしてやれに自分が、悔しくて仕方なかった。

「今日は早退する。俺も、お前もだ」

「今帰れば・・・家に、誰もおらぬか?」

「ああ」

「ならば帰りたい・・・・・」

ルキアは、自分足で歩けるといって、歩き出した。その足取りはしっかりしていた。

痛み止めと肺の薬を飲む。

黒崎家に帰宅すると、一護の部屋で、ルキアが抱き着いてきた。

「ルキア?」

「私を、抱け」

「ルキア、お前病気なんだぞ?正気か?」

「正気だ。このまま死んでは、死んでも死に切れぬ。愛しい貴様と、一度でいいから肌を重ねたい」

ルキアの決意は固いようで、何を言っても聞きそうになかった。

一護は、なるべく優しくルキアに口づけて、制服を脱がせていく。

やはり、痩せていた。

その細くなりすぎた体をかき抱いた。

「このような貧相な体ですまぬ・・・・」

ルキアは幼いデザインの、一護が好きなかんじの下着をつけていた。

制服では見得ない、鎖骨から胸元にかけて、花びらを散らしていく。赤いキスマークは、ルキアの白い肌を彩るように見えた。

「あっ・・・・」

ブラジャーを外し、わずかしかない胸の副らみを撫でるように触り、先端を口に含んだ。

「ああ・・・・」

かりっとかじると、ぴくりとルキアの体がはねた。

ショーツを脱がす。

その部分は、蜜をこぼしていた。

「もう、濡れてる・・・・」

「あ、言うな・・・・・」

くちゅりと音を立てて、その場所に指をいれる。浅い部分の天井を何度かこすってやると、びくりとルキアの体が痙攣した。

「ああああああ!!」

「いったのか?」

「あ・・・・これが、いくということなのか?頭が真っ白になって・・・・快感で、何も考えられなくなった・・・・」

「ああ、いった証だ。もう1回いっとくか?」

一護が、秘所の肉をかき分けて、指でこすりあげる。陰核をつままれて、いきそうになったが、ルキアはこらえた。

「嫌だ・・・・・いくときは、一緒がいい・・・・・」

ルキアに求められて、一護も服を脱ぎ去った。

少年のものにしては、よく鍛え上げられた肉体だった。

「入れるぞ・・・」

「ああ・・・いっ・・・・」

いくら潤っていても、初めての行為に、そこは悲鳴をあげた。

「痛い?やめようか?」

「いいから、来い。私に、貴様を刻み付けろ」

最奥までずるりと侵入されて、痛みでも快感でもない涙が滴っていく。

「ああ・・・・いま、貴様と一つだ。溶けていく・・・」

「ん・・ごめん、避妊してないけど、一度出すぜ」

「かまわぬ。私を貴様でいっぱいにしろ」

一護は、ルキアの最奥で子種を散らした。

「妊娠しちまったら、どうしよう・・・・・・」

「この義骸は、そこまでできぬ」

「そうか・・・・」

一護は、ルキアを気遣いながら、何度か抱いた。

「ああっ!」

ルキアは、嬌声をあげて女の悦びというものを知った。

終わると、ルキアをシーツでくるんで、一護は下着だけつけて運び、熱いシャワーを浴びた。

「あ・・・貴様のものが、溢れて・・・・・」

太腿を、血が一緒に流れていく。

「何故、血が?」

「処女膜が破れたんだよ」

「そうか。これで、私も大人の仲間入りだな」

ルキアは、幸福そうだった。

一護は言いたいことがたくさんあったけれど、今はこの幸福に浸っていたかった。





-----------------------------------------二人は最後の冬、体を重ねた。

              それは、ルキアにとって、とても特別なものだった。
             
              どうか、死ぬ前に一度抱かれたい。
            
              女のしての衝動に、まみれていた。          
              







拍手[0回]

新着記事
(11/26)
(11/25)
(11/25)
(11/22)
(11/21)
"ココはカウンター設置場所"