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桜のあやかしと共に45

昔、桜の宝玉というものがあった。

桜の王の血族に代々受け継がれるものであるが、浮竹が桜の王になったのは今から5千年前。その前の前の桜の王から受け継がれてきたものだった。

本当は、大切にしないといけないものだった。

桜の秘術が入っており、浮竹はその秘術の全てを使えたし、内容は頭にしっかりと刻み込まれていた。

そして、はじめて愛した人間の「春」の死を塗り替えようと、桜の秘術でも禁忌の蘇りの術を浮竹は「春」にかけた。

だが、「春」は蘇らなかった。魂のレベルで、拒否されたのだ。

自暴自棄になった浮竹は、大切な大切な桜の宝玉を粉々に壊してしまった。

それが桜のただの一族であれば、極刑ものだった。

だが、王自らが壊した。

桜の宝玉は、こうして失われた‥‥はずであった。

だが、桜の宝玉はもう一つ存在する。

それは、桜の王の右目であった。

それを知る者は、浮竹だけのはずであった。だが、記憶を見られたのか、藍染にも伝わっていた。

「ほんと堪忍なぁ。桜の王。こないなことしたないねんけど、藍染様が桜の宝玉をどうしても欲しがっとるんや」

夏の朝顔の王、市丸ギンに、浮竹は右目をくりぬかれた。

「ああああ!!!!」

激しい出血と痛みで、何も考えられない。

「十四郎、今治癒するからしっかりして!」

「ほな、桜の宝玉はもろたで。さいなら」

「く、行かせるものか!」

白夜が、桜の術を使うが、桜の業火に包まれても、市丸は涼しい顔をして、去っていった。

「浮竹、兄がいなくなるなど、ないだろうな!私はいやだぞ!兄を失うのは、絶対にいやだ!」

京楽の卓越した治癒能力のおかげで、浮竹は一命を取り留めた。

右目は、再生して元の翡翠色に輝いていて、見ることもできた。

だが、もうそこには桜の宝玉は宿っていない。



---------------------------------------------------------


「ははははは!ついに手に入れたぞ!桜の宝玉を!」

藍染は、狂ったように笑っていた。

「朝顔の宝玉、桔梗の宝玉、椿の宝玉、それに桜の宝玉。これで、私はついに神となるのだ!」

4つの季節の花の宝玉を集めた者は、四季の王となり神となれる。

はずであった。

「何故だ!何故、何も起きない!」

宝玉たちは、かたかたと震えて、ピシリピシリと、罅が入っていく。

宝玉たちは、意思をもっている。四季の王にふさわしくない者の前で、粉々に砕け散った。

同時に、4つの季節の王の誰かを、四季の王にした。

神にはしなかったが、四季の王となれば、藍染と闘っても勝てる可能性がでてくる。

四季の王に選ばれたのは、桜の王、浮竹だった。


-----------------------------------------------------------------


その時、浮竹の体が黄金色に輝いた。

「十四郎、君‥‥‥」

「ああ。どうやら、四季の王になったらしい。宝玉を4つ集めて、神になるのにふさわしい者が掲げると、四季の王になり神となる。逆に、ふさわしくない者の場合、宝玉は砕け散り、季節の花の王の誰かが四季の王となる」

「じゃあ、藍染が宝玉を集めて神になろうとしたけど失敗して、十四郎が四季の王に選ばれたってことだね?」

「そうだな」

浮竹は、宝玉が砕け散ったことで、再び右目に宝玉を宿していた。

「四季の王というが、基本は何も変わらない。ただ、俺と俺の宝玉が敵とみなした者の前で、力を発揮する」

「へぇ。浮竹が神様になるんじゃないんだ。でも、神様の浮竹は遠いかんじがするから、四季の王までだね。ボクが許せる範囲は」

ふと、ベランダに敵の気配がした。

「またきたで~。もう一度、右目の宝玉もらうためにきてん。藍染様、一度失敗してるのに、もう一度試すって聞かなくてほんま、簡便やわ」

「俺は、四季の王として、藍染に加担する夏の朝顔の王、市丸ギンを敵とみなす」

「だからなんなん?この間みたいに、桜の術かけて敗北するん?」

「敗北するのはお前だ」

浮竹の体が金色に輝き、瞳も金色に輝いていた。

浮竹は、黄金の炎で市丸を焼いた。

「こんなもん通用するはず‥‥‥‥ぎゃあああ!!」

市丸は、黄金の炎に飲まれる。

「お前に愛しい者がいて、その者もお前を愛しいと思っているなら、一度だけ命を繋げるチャンスをやろう。代償は、愛しい者の命」

「あかん、あかんで。ボクが自分の命惜しさに、乱菊を差し出すとでも思うたんか?」

「乱菊‥‥‥召喚」

突然、召喚された乱菊は、目をぱちくりさせていたが、愛しい市丸の変わりはてた姿に、市丸にすがりつく。

「ギン、ギン、しっかりして!」

「あかん、ボクの傍から離れ、乱菊。今まで散々悪さしてきたつけがきたんや」

「市丸を愛する者よ。その命、捧げることはできるか?」

「できるわ。ギンを助けてくれるなら、あたしの命なんていくらでもあげる」

「十四郎‥‥‥‥」

京楽が、やめろと言いたげな顔をする。

浮竹は、四季の王としての裁きをくだす。

「市丸ギン、今日をもって、朝顔の王からただの朝顔の精霊に降格し、永久追放処分とする」

「ギン、聞いた?あたしの命も、あなたの命もどっちもとらないって」

「甘いわ、四季の王」

「愛する者を、犠牲にしてでも助けてくれと言っていたら、お前を殺していた」

「十四郎、立派だよ」

京楽は、浮竹の出した裁きは、甘くはあるが、誰の命もとらずにすんで、安心した。

市丸ギンの火傷を、京楽が癒す。

「さぁ、もうお前は夏の王でも朝顔の王でもない。どこへなりとも、その乱菊という愛しい者と消えるがいい」

「藍染様‥‥‥ボクは、あんたへの忠誠心より、乱菊のほうが大事や。乱菊、一緒にきてくれるかいな?」

「行くわ。どこまでも、あなたと一緒よ」

こうして、浮竹は四季の王となった。

市丸ギンは朝顔の王から外されて、藍染の部下であることもやめて、乱菊と共に、旅立っていった。

市丸ギンの夏の王がかけた穴を誰にすべきか、残された冬の椿の王日番谷冬獅郎と、秋の桔梗の王卯ノ花烈と会い、会議が開かれた。

結果、平子真子という朝顔の花鬼が夏の朝顔の王になることが決まるのであった。




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桜のあやかしと共に44

山の王の洞窟で、浮竹と京楽はもの珍しそうにきょろきょろしていた。

『ああ、洞窟は奥が深くて入り組んでるから、行かないようにね。過去に戻ってこなかったあやかしがいるから』

山の王の京楽の言葉に、浮竹はついつい探検しようと思っていて、びくっとなる。

「そ、そいうことを言うなら、おとなしくしてやらんでもない」

『ねぇ、桜鬼のボク。この子って‥‥』

「一種のツンデレだよ。ツンが多くてデレが少ないけど」

『やっぱり‥‥‥』

二人の京楽は、ため息をつく。

「それより、彼岸花の精霊の俺には、家はないのか?」

『ないぞ。冥界の彼岸花の花畑が家のようなものだ』

「じゃあ、今度は俺たちの家に来ないか?」

『いいが、遠いと行けないぞ』

『そうだね。遠いと無理だね』

二人の意見は一致している。

そこで、浮竹は異界へのゲートを開く。

「異界渡りをしよう。一度行った場所には、異界を通っていくことで、すぐにつく。ここに来るのも、異界渡りをした」

『じゃあ、行ってすぐ帰ることもできるの?』

「俺が道案内をしなきゃいけないが、可能だ」

『じゃあ、言葉に甘えてお邪魔しようかなぁ』

山の王の京楽は、楽しそうにはっしゃいでいた。

異界渡りをして、迷子にならないようにみんなで手をつないで、向こう岸のゲートを出ると、京楽のマンションの玄関だった。

『広いな』

彼岸花の精霊の浮竹は、きょとんとしていた。

それから、浮竹をじーっと見つめてくる。

「3億するらしいぞ。このマンション」

『高級タワーマンションかぁ。いいなぁ』

山の王の京楽は、一度住んでみたいという顔をしていた。

浮竹は、彼岸花の精霊の浮竹にじーっと見つめられて、ついつい目をそらすこともできずに、じーっと見返してきた。

「何してるの?見つめあって」

「彼岸花の精霊の俺が、俺を見てくるから視線合わせてた」

『浮竹、ほら、珍しいからってジーっと見ちゃだめだよ。変に思われちゃう』

「べ、別に、視線が合って嬉しいなんて、これぽっちも思っていないからな!」

浮竹は、ツンデレになっていた。

「こっちが寝室で、こっちがバスルーム。こっちがキッチンで、こっちがトイレ。リビングルームにゲスト部屋が5つ。うち1つは、浮竹の弟である白哉くんが使ってるよ」

『きみ、弟なんているんだ』

「ああ。血は繋がっていないが、弟だな。俺は桜の王で、異界に俺の本体の桜の大樹がある。そこから株分けされた桜が、朽木白哉という。俺の自慢の弟だ。今は恋次くんというパートナーとあやかし退治に出かけている」

『桜鬼のボク』

「なんだい?」

『依頼があったら、やっぱり祓うのかい?』

「時と場合によるね。話し合いで解決できるならそうするし、だめでも封印とかの場合もある。問答無用で祓うのは、人に害をなすあやかしくらいだね」

『そっか、よかったぁ。ボクと浮竹はあやかしでしょ?祓われたらどうしようと、思ってたんだよ』

京楽は、クスっと笑う。

「祓う相手を、自分の家に招くことなんてしないよ」

『それもそうだね』

「茶菓子はあやかしまんじゅうしかないが、これでも飲んでくれ」

浮竹が出してきたのは、コーラだった。紅茶の茶葉を切らしていたのだ、

『お、これはコーラだね。人の子からもらって飲んだことあるよ』

『しゅわしゅわしている。毒じゃないのか?』

「毒じゃないぞ。ほら、俺が飲んでる」

浮竹が、コップにコーラを注いで、飲んでみせた。

『じゃあ、俺も飲んでみる。なんだこれ!しゅわしゅわしてて甘くておいしい!』

「コーラ、見たことないのか?」

『ああ。初めてだ。飲むのも初めてだ』

「じゃあ、今度違う種類のドリンクを飲めるようにしておく」

『ああ、楽しみにしている』

山の王からもらった川と山の幸を鍋にして食べて、4人は満足した。

「今度来るときは、泊まっていってね?」

『考えておく』

『山のことがあるからね。調整しないと』

その3日後、再び彼岸花の精霊の浮竹と、山の王の京楽は京楽の家にきていた。

『ドリンク』

「ああ、待ってろ。今、メロンソーダとバナナ・オレをコップに入れるから」

2つの飲み物をもってこられて、しゅわしゅわしているメロンソーダを先に飲む。

『おいしい!』

「こっちもうまいぞ?炭酸じゃないから、しゅわしゅわしてないが」

バナナ・オレを飲んで、彼岸花の精霊の浮竹は、幸せそうな顔をする。

『飲み物がこんなにうまいなんて。人の世界は広いな』

京楽達は、今日の夕飯の準備をしていた。

今日のメニューは、簡単にカレーだった。京楽達は、サラダを作っていた。

「じゃあ、俺が世界一うまいカレーを作ってやるから、少し待ってろ」

『出た、世界一。でも、実際おいしいんだよねぇ』

『カレー、食べたことがない。楽しみだ』

「浮竹の作る料理は、どれもおいしいよ?」

『桜の精霊王の俺が作った料理を食べると、胸の奥がほっこりするけどうずくんだ。何か、大切なことを忘れている気がして』

「あー。転生した名残かなぁ」

『転生?』

「ううん、なんでもないよ。今のことは、忘れて?」

京楽は言葉を濁して、彼岸花の精霊の浮竹に、バナナ・オレのおかわりをついであげた。

「できたぞー」

『あ、なんかすごいい匂い。香辛料がきいてそう』

『‥‥‥泥?』

彼岸花の精霊の浮竹の言葉に、浮竹がずこーっとこける。

「泥はないだろ、泥は!」

『じゃあ、うんこ』

「食事の前なんだから!」

『す、すまん。でも、においはうまそうだ』

「実際、おいしいよ?食べてごらん」

京楽に渡されたスプーンで、彼岸花の精霊の浮竹は、カレーを一口食べて。

『う、うまい!なんだ、この異様なまでのうまさは!』

カレーを気に入ったようで、3回もおかわりをしていた。

「サラダも食べてね?」

京楽達が作ったサラダは、普通の味だった。

「デザートは、苺のミルフィーユだ」

『デザートもうまい!お前、料理が本当に上手だな!』

彼岸花の精霊の浮竹に褒められて、浮竹は嬉しそうにはにかみながら、涙ぐんだ。

『どうした?また、目にゴミでも入ったのか?』

「ああ、そうだ。京楽、ちょっと‥‥」

カレーとサラダとデザートを食べ終わった浮竹は、京楽と話していた。

「やっぱり、転生のことを話すのはよそう」

「君のことだから、てっきり話すと思ってたのに」

「今の彼らの存在を否定してしまう。それは嫌だ」

「そうだね。また、一から友情を育んでいくといいよ」

京楽に頭を撫でられて、額にキスをされる。

「もう、失いたくない」

「大丈夫。彼らとて、そう簡単に死んだりしないさ」

戻ってきた浮竹は少しだけ赤い目をしていた。

『また、泣いていたのか?』

「ああ。少しな」

『理由は?』

「秘密だ。俺と京楽だけの秘密」

『むう。ずるいぞ』

『浮竹、苺のミルフィーユ1つ余ってるんだけど、食べる?』

『ああ、食べる』

その細い体のどこにそんなに入るのか、彼岸花の精霊の浮竹はよく食べた。

『ああ、今日は泊まっていけるからね?』

「じゃあ、先にお風呂使って。バスルームは2つあるから」

『じゃあ、俺もお風呂にする』

彼岸花の精霊の浮竹はそう言って、違うバスルームに消えていく。山の王の京楽は、一緒に入りたそうな顔をしていたが、諦めたようだった。

「ゲストルーム、2つ使って寝る?それとも、そっちのボクと同じベッドで寝る?」

『俺は同じベッドでいい』

『わお。いいね』

山の王の京楽は、喜んだ。

やましいことはまだ何もできないけれど、一目惚れの相手と一緒に寝れるのだ。それなりの幸せだろう。

「じゃあ、俺も京楽と一緒に寝る。おやすみ」

みんな就寝している中、浮竹は気配を感じて起きてきた。

「いるんだろう、夏の王」

「おや、ばれはった?うまく気配隠せてたつもりなんやけどなぁ」

「何の用だ」

「新しい友人を失いたくなければ、桜の宝玉を渡せ、らしいで?」

「桜の宝玉は‥‥‥もう、ない」

「ええ、まじやの?」

「まじだ。「春」を失ったその日に壊した。もう、桜の秘術は全部俺が覚えているから、必要ない」

「あちゃー。君にきてもろうてもいいんやけど、京楽はんがうるさそうやな。また来るさかい、その時に藍染様の欲しいもの、言うわ」

「もう二度と来るな。もし、俺の友人や家族に手を出したら、生まれてこなければよかったという目に合わてやる」

怒りむき出しの浮竹を、夏の王の市丸ギンは、こわいこわいといって、去るのであった。









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桜のあやかしと共に43

半年間の休眠から目覚めた浮竹と京楽を待っていたのは、あやかし退治であった。

白哉や恋次にはできなかったあやかし退治を、半月かけて消化して、一息ついたところで、新しい依頼が舞い込んできた。

「人を食い殺す恐ろしい山の王がいるんです。退治してください」

「どうでもいいけど、君、天邪鬼だね」

「けっ、正体がばれちまったか」

京楽に依頼をしてきた老人の男性は、天邪鬼だった。

嘘をつく妖怪として知られており、天邪鬼が言ったことはあてにならない。 

「とにかく、山の王が恐ろしい妖怪なんだ。人を100人以上も食い殺している。依頼料はここに置いていく、とにかく退治を頼んだぜ!」:

そう言って、天邪鬼は去ってしまった。

依頼料としておかれていたのは、山の幸であった。

「どうしよう、十四郎」

「天邪鬼は嘘をつくからな。あてにできない。そもそも100人以上も食い殺していたら、ニュースになるだろ」

「それもそうだねぇ。放置でいいかな?」

「いや、念のために、山の王とやらを確かめにいこう。いいあやかしなら、退治を依頼しにきた者がいると教えよう」

「うん、分かったよ」

浮竹と京楽は、人里離れた山まで、高級車で向かう。

「はぁ‥‥‥‥なんだか、友人だったあいつらに似た妖力を、山から感じるんだが」

「うん。ボクも感じる」

「山の王とやらが、転生した妖狐の俺か、夜刀神の京楽だったりしてな?」

山の麓で聞き込みをすると、山の王というのは大変人気のある、いいあやかしであることがわかった。

「退治する必要はないみたいだな。念のため、山の王に会って、天邪鬼が退治してくれと言っていた件を知らせよう」

山の中のあやかしの中から、花鬼を選んで、山の王の住処の洞窟を知る。

そこに踏み入ると、懐かしい夜刀神の妖力を感じた。

「夜刀神?‥‥‥‥いや、今は山の王か」

その洞窟に住んでいる気配はあったが、今はいないようだった。

「気配が、あっち側からする」

「ほんとだね。人間もまじってるみたい」

山の王は、彼岸花の精霊となった浮竹と共に、山の開拓をしようという連中と睨み合っていた。

「もめごとかい?」

「あ、術者の方!依頼を受けてくれたんでしょう?」

人間の一人が、京楽に猫なで声で話しかける。

「確かに、依頼はあったけど、依頼してきたのは天邪鬼だった。正式な依頼としては引きうけていないね」

「そんな!じゃあ、ここで私が依頼します。山の王と、その連れを退治してください!」

『浮竹、争いになるかも』

『それはそれで面白い』

山の王と彼岸花の精霊を見て、浮竹は涙を滲ませた。

「お前たち‥‥…転生、していたんだな?」

『浮竹と同じ顔?でも、気をつけて。あの子、桜の王だ』

『桜の王?なんだそれ。あっちの術者はあやかしのようだが、京楽にそっくりだな?』

山の王の京楽と、彼岸花の精霊の浮竹は、自分たちにそっくりな存在を知ったが、威嚇していた。

「山の王、それにその連れの子。ボクたちに敵意はないよ。さっきの人間の依頼は引きうけない」

『ほう』

彼岸花の精霊の浮竹が、じーっと京楽を見つめる。

『懐かしい感じがする。どこかで会ったことがあるのか?』

浮竹が、京楽の耳元で。

「転生したけど、前世の記憶が残っていないんだ。初めて会ったということにしろ」

そう耳打ちをしていた。

「山の王、俺たちはお前たちに危害を加えるつもりはない」

『ほんとに、そうみたいだよ?』

山の王の京楽が、彼岸花の精霊の浮竹と何度か会話して、4人は和解ということで落ち着いた。

「人間たちよ。愚かな争いはやめて、去るといい」

浮竹は、桜の花びらをふっと吹いた。

すると、雷となった。人やあやかしにはあたらなかったが、人間を脅すには十分だった。

「化け物だあああ!逃げろおお!」

その場には、4人が残された。

「まず、初めましてかな。ボクは京楽春水。花鬼だよ」

「俺は浮竹十四郎‥‥‥桜の王で‥‥ぐすっ」

『なぜ、泣く?』

彼岸花の精霊の浮竹は、きょとんとしていた。

「こ、これは目にゴミが入ったからだ!」

『ボクたちと姿が同じで名前も同じ。何か縁(えにし)を感じるね。浮竹、とりあえず帰ろう?人間はいなくなったみたいだし』

『ああ、そうしようか』

「ま、また会えるか?」

浮竹が、やや緊張気味に声を出す。

『会いにきてくれるならね』

山の王の京楽は、そう返した。

「また、会いにくるから」

「ボクも」

「じゃあ、俺たちも帰るな。また、絶対遊びにくるから!」

浮竹は、手をぶんぶんふって、別れをした。



「ほんとに転生してた。また会えて、嬉しい」

「そうだね。休眠してたかいがあったね」

「また、会いにいこう。一度きたから、今度は異界渡りで行けるから」

「うん」

浮竹と京楽は、彼岸花の精霊の浮竹と、山の王の京楽と、こうして再び邂逅するのであった。



‥‥








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桜のあやかしと共に42

それは突然だった。

妖狐の浮竹と、夜刀神の京楽がいなくなり、その妖力が完全にこの世界から気えてしまった。

「世代交代が、近いかもしれないと言っていたな。きっと、夜刀神の寿命に限界がきて、妖狐の俺も一緒に連れていったんだろうな」

「そうなの?」

京楽が、不思議がる。

「あの二人、嫌いじゃなかったのに」

「ちょっと、二人の最期の確認に行ってくる」

「あ、ボクも行くよ」

浮竹と京楽は、天逆海(あまのざこ)と会う。かすかだが、妖狐の浮竹と夜刀神の京楽の妖力の名残りがあった。

「ああ、あの二人なら一緒に逝ったよ。あたしが手にかけた。退治でもするかい?」

「いや、それはあの二人は望んでいないだろう。新しいあやかしにしたんだろう?」

「桜の王は、何もかもお見通しかい。そうだよ。あの二人は、またあやかしとして新しい命を芽生えさせる」

「また、会えるということか」

「そうなるねぇ」

「十四郎、この子、穢れの神だよ。放置していいの?」

「俺たちでは、どうしようもできない存在だ。放置でいいんじゃないか」

「あら、つまんない」

「二人の最期を確認しにきただけだ。争いをするためにきたんじゃない」

そう言って、浮竹と京楽は異界渡りをして、元の京楽のマンションに戻る。

「春水」

浮竹は、泣いていた。

「十四郎、おいで」

京楽に優しく抱きしめられて、ぽろぽろと涙をこぼす。

「あの二人が、好きだった。いきなり二人していなくなるなんて、ずるい。また、俺を置いていく‥‥‥春水も、いつか俺を置いていくのか?」

「ううん、ボクは君の傍にいるよ。逝く時は、あの二人のように一緒だよ」

「悲しいし、寂しい。少し、休眠しようと思うんだ」

「どのくらい?」

「ん、半年はどかな。それだけあれば、あの二人は転生しているだろうから」

「じゃあ、ボクも眠りにつくね。あやかし退治はどうする?」

「白哉には悪いが、恋次くんや阿散井一門に任せようと思う」

「そう。眠る前に、白哉くんと話さないとね?」



浮竹と京楽は、半年間休眠することを、白哉に話すと、白哉は当たり前のように受け入れた。

「理由は分かった。浮竹は長いと10年ほど休眠することがあったからな。半年など、短いほうだ」

「すまない、白哉。恋次くんがいるから、寂しくはないな?」

「浮竹、兄がいないと寂しいが、恋次もいるし我慢はできよう」

白哉は、静かに浮竹達の休眠を受け入れる。

「じゃあ、また半年痕に」

「ボクも、浮竹と一緒に眠るから」

「京楽、兄も浮竹を大事にな。同じ異界の桜の大樹で眠るのであろう?」

「ああ、そうなるな。あやかし退治については、恋次くんと白哉に任せる形になる」

「ああ、分かっている。住民のいなくなった、妖狐の浮竹と夜刀神の京楽の屋敷には、こちらから誰かを住まわせよう。人がいいか」

「そうだな」

浮竹は、休眠モードに入りかけており、眠そうだった。

「じゃあ、俺と京楽は、半年ほど眠りにつく。後は任せた」

そう言って、浮竹と京楽は、異界にわたり、桜の大樹の元へいく。

その中に入り、二人は半年間の休眠をすることにした。

「まだ起きているか、春水」

「うん、まだ起きてるよ」

「今度も、仲睦まじいまま、会いにきてくれるといいな」

「ボクの闇の部分が、正直君を独り占めできるとか思ったけど、考えてみれば白哉くんもいるし、君を本当の意味で独り占めできるのは今くらいかな」

京楽は、クスリと笑う。

「生まれ変わってもまた一緒なんて、いいね。ボクらも、そんな風になりたいね」

「俺たちは消えない。いつまでも一緒だ」

「うん」

「眠くなってきた‥‥おやすみ。また、半年後に」

「うん、おやすみ」

時が鮮やかに過ぎていく。

妖狐の浮竹は、彼岸花の精霊の浮竹に、夜刀神の京楽は、山の王の京楽へと、転生していくのであった。










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僕はそうして君に落ちていく外伝5

浮竹が霊王になって200年。

一か月に一度の京楽との逢瀬を、半月に一度にしろと言って、霊王である浮竹は霊王宮から忽然と姿を消して、大騒ぎになった。

一週間、浮竹は下界の京楽の元にいた。

新しい零番隊は、きっと京楽の元にいるだろうと京楽の霊圧を探ったが、京楽も霊王である浮竹も完全に霊圧を消しており、結局一週間経って、京楽と月に2回会えるということで、話は落ち着いた。

「じゃあ、半年後は下界での祭事だ」

別れる前、浮竹はそう言って、半月後も会えるのだが、祭事をほどほどに切り上げて抜け出して、京楽と会うのを何よりもの楽しみにしていた。

やがて半年が経ち、浮竹は霊王として祭事のために霊王宮から下界に降りてきて、人々の前に姿を現す。

「きゃあああ、霊王様よ」

「ありがたや、ありがたや」

霊王となった浮竹は、霊王宮にいるのには飽きて、10年委一度、祭事として下界に降りてくる。ただ、祭事とは口実で、本当は京楽に会うために降りてくるのだ。

霊王としての正装である十二単を身にまとい、長い白髪を結い上げて、金銀細工の宝冠をかぶっていた。

霊王であるは浮竹は宝剣を抜き、護廷十三隊の隊長副隊長の肩に、宝剣を触れさせて、清浄なる力を流して、霊力の上昇を促した。

京楽は、霊王の宝剣を受け取り、声高々にいつものように宣言する。

「尸魂界に霊王はおわす!霊王いる限り、世界は続く!平和を、高い天上の霊王宮にて祈られている!それに我らは、答えねばならぬ!霊王万歳!」

「霊王様万歳”!」

「万歳”!」

「霊王様!!」

死神や人々は、美しい浮竹を霊王として受け入れる。

祭事が終わり、零番隊が霊王である浮竹に帰ることを促そうとすると、すでに霊王の姿はなかった。

「霊王様の悪い癖だ。あの京楽という総隊長を愛するのは、やめていただきたいのだが」

「だめだだめだ。京楽がいるから、霊王様は霊王として君臨されておられる。霊王様から、京楽をとりあげたら、自害しかねぬ」

零番隊の者たちは、重いため息をつくのであった。


「京楽」

「わあ、びっくりした!会いに来るのは分かってたけど、まさか一番隊の執務室にくるなんて思ってなかったよ」

「抜け出してきた」

「そうみたいだね」

十二単の衣装のまま、浮竹は京楽に抱き着いた。

「会いたかった」

「半月前に会ったばかりじゃない」

「それでも、会いたかった」

「隊首室いく?それとも、ボクの屋敷に‥‥‥」

京楽は、もちろん浮竹を抱くつもりだし、抱かれるために浮竹は京楽に会いにくる。

「待てない。隊首室でいい」

「仕方ない子だねぇ」

京楽は、少しずつ浮竹の着ている十二単を脱がしていく。

浮竹も、京楽の隊長羽織を脱がせて、死覇装も脱がせた。

「んっ」

薄い衣だけになった浮竹を、衣服の上から輪郭をなぞっていく。

「あ、春水、早く」

「愛してるよ、十四郎。ボクだけの霊王様」

京楽は、薄い衣も脱がせて、浮竹のものを手でしごく。

「ああああ!!!」

すぐに、あっけなく浮竹はいってしまった。

「たまってた?」

「ああ」

「いっぱい、気持ちよくさせてあげる」

「エロ総隊長め」

「じゃあ、君はエロ霊王だね」

額をくっつけあって、クスクスと笑い合う。

居楽は浮竹の体を愛撫して、胸の先端を甘噛みする。

「あ、春水‥‥」

「ゆっくり、ね?」

「ああ」

口で浮竹は京楽に奉仕されて、またすぐに精液を吐き出していた。

「俺もする」

「え」

「いつも俺ばかりだ。たまには、お前に奉仕してみたい」

そう言って、浮竹は硬く勃ちあげっていた京楽のものを手でつつみこんで、しごき、鈴口を舌で刺激すると、京楽は浮竹に奉仕されているという映像だけでいってしまっていた。

「むう、顔についた」

「ごめんごめん。ティッシュでふいてあげるから」

浮竹は、ぺろりと京楽の精液をなめとる。

「まずい」

「うわあああ、味あわなくていいから!」

「じゃあ、春水、早く来い」

「仕方ないねぇ」

早急に、ローションを手に、浮竹の蕾を指で解して、熱い灼熱を浮竹の蕾にあてがう。

「あんまりならしてないから、痛いかもしれないよ?」

「構わない。お前がくれるなら、痛みでもいい」

京楽は、一気に浮竹を貫いた。

「ああああ!!!」

「く、きつい‥‥十四郎、体の力抜いて」

「くああ、あ、あ」

なんとか呼吸を整える。

「君の仲、熱いね」

「春水のも、熱い。俺の仲でどくどくいってる」

「動くよ?」

「あああ!ひあああ!!」

京楽が律動を開始すると、浮竹は快感に涙を浮かべながら、京楽を求める。

「あ、もっと、春水」

「今、いっぱいあげるからね?」

浮竹の最奥を貫いてごりごりと抉ると、浮竹は背をしならせて大きく中いきをしていた。

「ああああ!!」

びゅるびゅると、京楽の精子が、胎の奥ではじけたのがわかる。

「ん‥‥もっと。もっと俺を犯して?」

「十四郎。めちゃくちゃになっても、知らないからね?」

「ひあ!」

京楽は、一度引きぬくと、最奥まで一気に貫いた。

「ああああ!!!」

精液を出していきそうな浮竹のものの根元を手で戒める。

「やあああ、いきたい!いかせてえええ」

「ボクと一緒に、ね?」

京楽は、ぱんぱんと肌と肌がぶつかりあう音をたてて、浮竹を攻める。浮竹の根本は、帯で戒めておいた。

「んああああ」

ズチュリと、水音が下半身から聞こえる。

浮竹は、蕾から京楽の精液を逆流させていた。ふとももをつたっていく京楽の子種をもったいないと感じた。

「ああ、お前の子種を全部体の中で留めておければいいのに」

「だーめ。おなか壊しちゃうよ?終わったら、全部かきだしてあげるから」

「ひああああ!!!」

ごりごりと最奥まで抉られる。途中で前立腺をすりあげられて、根元を戒められた浮竹は、己のものからたらたらと蜜をたらしていた。

「いやああ、もらしちゃううううう」

「潮でしょ?」

京楽は、浮竹の者を戒めていた帯をとく。

京楽は、浮竹の中に子種を注ぎこむ。浮竹は、精液と同時に潮をふいていた。

「ああああ‥‥」

浮竹は、潮とは理解できずに、恥ずかしそうに泣いていた。

「十四郎、潮だから。おもらしじゃないよ?」

「ほんとに?」

「うん」

浮竹は、また潮をふきながら、中いきしていた。

「あああ、頭が、おかしく、なるうう」

「ぐちゃぐちゃになっちゃいなよ。今の君は霊王じゃなくって、ただのエロい浮竹十四郎だね」

「ひあ---!!!!]

京楽に貫かれたまま揺さぶられて、浮竹はついには意識を飛ばしてしまった。

「十四郎?」

名を呼んでも、返事はない。

「ごめんね、十四郎。酷くしちゃって」

京楽は、浮竹から自身をひきぬくと、こぽりと精液が逆流してくる。

それをたおるでぬぐい、簡単に浮竹を清めて、中に出したものをかきだして、置いてあった京楽の死覇装を着せた。

「屋敷にいこうね?」

意識のない浮竹をお姫様抱っこして、京楽は一番近い屋敷にいくと、布団をしいて浮竹を寝かせる。

3時間ほどして、浮竹は起きた。

「ここは?」

「ボクのもってる屋敷の一つだよ。お風呂、一緒に入ろうか」

「ああ。あと、腹が減った」

「家人に頼んで、遅いけど夕食を作ってもらうよ」

「すまんな。せっかくの、10年に一度の祭事なのに」

「浮竹が、そう言いながら、ボクに抱かれに降りてくるの、ボクは好きだよ?」

「また,10年後だな。半月後に、霊王宮で会えるが」

「うん。また、会いにいくから。とりあえず、お風呂に入ろ」

「ああ」

二人は、200年の間に、こうして20回下界で逢瀬を重ねる。

これからも、ずっとずっと、同じ時が流れていくのだろう。







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桜のあやかしと共に 外伝8

冬の王である日番谷冬獅郎から冬を託されて、冬の終わりがきて春がきていた。

桜が咲く季節、太陽はぽかぽかしていて、妖狐の浮竹は、京楽のマンションで狐姿になって日向ぼっこをしていたら、眠ってしまっていた。

夜刀神は、その隣でこうもり姿で同じように日向ぼっこをして、寝ていた。

妖狐の浮竹の体に体を重ねるようにして、浮竹までオッドアイの白い子猫姿になって、昼寝していた。その隣には黒い子猫になった白哉も寝ていた。

「はぁ。ボクだけか‥‥たぬきだけど、ボクも変化して寝よう」

京楽は、桜鬼になったことで、桜の高位精霊と同じ地位にいるのだが、普通は変化すると猫になるのだが、なぜかたぬきだった。

最初に変化した時は、白哉につぶれたあんぱんと言われるほどに酷かった、

何度か変化を繰り返すうちに、たぬきでもかわいいたぬきになれたので、京楽は満足していた。

「さて、寝ようかな」

浮竹たちが寝ている窓辺のソファーの、あいているところで丸くなって、京楽も眠った。

ぴんぽーん。

チャイムが鳴って、まだ眠りの浅かった京楽は、人型に変化して対応する。

新聞の勧誘であった。

今時新聞をとる家なんて少ないので、適当にあしらって、もう一度寝ようとしたら、たぬきの尻尾が出たままになっているのに気づいた。

「見られたかな‥‥まぁ、見られても偽物の尻尾だって思うから、大丈夫でしょ」

京楽は、今度こそ日当たりのいいソファーの上で眠った。

起きると、夜になっていた。

妖狐の浮竹は、妖狐の姿で、猫じゃらしで、子猫姿の浮竹と遊んでいた。

夜刀神は、そんな妖狐の浮竹の傍で人の姿で緑茶を飲みながら、あやかしまんじゅうを食べていた。

白哉も、黒い子猫姿で妖狐の浮竹に猫じゃらしを目の前にちらつかされて、つい前足が出て、猫なので体が反応してしまう。

「もう、みんな起きてるなら、ボクも起こしてよ」

「すまん。あんまり気持ちよさそうに眠っていたものだから」

浮竹が、猫じゃらしに反応しながら言う。

「昼からこんな時間まで‥‥‥ボクってば、7時間も寝てたの?」

「そうだな。今日の夜は寝れんだろうな」

『精霊の俺、眠れない桜鬼の京楽とむふふするのか?』

「しない!」

猫パンチを決められても、子猫なので痛くなかった。

「今日は海鮮鍋にする予定なのだが」

白夜が、人の姿になって、キッチンに移動する。鍋とガスコンロを持ってきた。

京楽はまだたぬきのままで、浮竹の子猫のままだった。

「戻れない‥‥こんな時に、時の呪いか」

かつて、西洋の桜の女神の求婚を断って、変化すると時間がある程度たたないと元に戻れないという呪いを受けた。

数年に一度しか発動しないのだが、最近よく子猫姿になるので、時の呪いも発動しやすくなっていた。

「白哉、鍋は任す。俺と京楽は、猫缶でいい」

「え、ボクは人の姿に戻れるよ」

「相方を猫の姿のまま一人で過ごせと?」

「わかったよ。ボクもたぬきのままでいるから」

『おや、夜のむふふはできなくなったな』

『子猫とたぬきの姿でむふふするかもしれないよ?』

妖狐の浮竹と夜刀神が、からかってくる。

いつもなら、浮竹のハリセンがうなるのだが、今絶賛子猫の姿中なので、ハリセンはとんでこなかった。

『ツッコミ役がいないと、からかっても面白くないねぇ。むふふはいつだろう?』

『元に戻ったら、きっとむふふするんだろうな』

「お前たちは、一度むふふから離れろ」

浮竹が、高級猫缶を食べながら、呆れる。

京楽も、たぬきの姿のままで高級猫缶を食べる。

「お、おいしい‥‥」

「ドッグフードはまずいだろ。猫缶のほうが絶対美味しいに決まっている」

「浮竹、兄に後でチュールをやろう」

白哉は、妖狐の浮竹と夜刀神と、海鮮鍋を食べていた。

「ボクにもチュールを」

「兄は、自分で食え」

「差別だ!!!」

「当り前だ。兄である浮竹と比べれば劣るに決まっている」

『ねぇ、この海鮮鍋、苺入ってるんだけど‥‥』

『こっちにはバナナ入ってるぞ』

「ただの海鮮鍋では面白くないので、フルーツを入れて闇鍋にしてみた」

「白哉ああああ!鍋は任せると言ったが、闇鍋にしろとは言ってないいいい」

浮竹が、心の叫びをそのまま出す。

『あ、でもこのフルーツ闇鍋けっこうおいしいかも』

『俺も思った』

妖狐の浮竹と夜刀神は、平気な顔でフルーツ海鮮鍋を食べる。無論、白哉も。

「京楽、兄には特別にこれをやろう」

皮をむいていない鍋に入っていたバナナをもらって、京楽はどうすればいいのか途方にくれる。

『そうだ。精霊の俺、これはどうだ?』

妖狐の浮竹が取り出したものは、またたびだった。

「にゃおーん」

またたびによって、すっかりご機嫌になった浮竹は、妖狐の浮竹にもふられまくる。

「にゃーん」

『いつもこうなら、かわいいんだけどなぁ』

『いつもこんな桜の王はいやだよ‥‥浮竹をとられちゃう』

『ふふ、京楽、嫉妬か?』

『ボクもかまってよ』

夜刀神は、苺を食べながら、京楽にもまたたびをあげてみた。

「にゃーお」

『わお、桜鬼のボクまでまたたびによってる。しかもたぬきなのに、猫みたいになくし』

『たぬきもかわいいな』

妖狐の浮竹は、京楽ももふる。

もふられる二人を見て、白哉もうらやましくなったのか、黒い子猫になって、はじめてまたたびを体験して、へろへろになるのであった。

その日は、妖狐の浮竹と夜刀神は泊まっていった。

朝になり、すっかりもとに戻っている浮竹を見て、二人は残念がるのだった。

『つまんない』

『そうだねぇ。もうちょっともふればよかった』

「昨日のこと、ちゃんと覚えているからな。またたびは‥‥たまになら、いい」

『うわ、ツンツンしながら、少しだけでれたよ!』

「うっさい!」

余計なことを言う夜刀神をハリセンでしばいて、浮竹は赤くなるのであった。

ちなみに、7時間も仮眠した京楽は、夜も9時間寝て、頭痛を訴えるのであった。





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桜のあやかしと共に 外伝7

「これが一番おすすめの、惚れ薬です」

「そんなもの、いらないぞ」

「まぁまぁ、そう言わず。すでに惚れている相手に使うと、もう夢中になってきますよ」

「ふむ。まぁいいか。買う」

「毎度あり」

商売相手は、小豆とぎであった。その小豆とぎは、あやかしまんじゅうの経営にも参加していて、商売が好きで、商売上手でもあった。

桜の王には金がある。

それを知って、小豆とぎはなかなか売れない惚れ薬を売り払った。

桜の王に、また愛しい者ができた。

あやかしまんじゅうの販売店でも、噂になっていた。それを聞きつけての、商売であった。

「京楽に飲ませよう。アルコールだと変に思われるから、ジュースに混ぜとくか」

浮竹は、つい軽い気持ちで惚れ薬をオレンジジュースに混ぜた。

そして、数日が経ち、惚れ薬のことなどすっかり忘れていた。

妖狐の浮竹tと、夜刀神の京楽が遊びにきていた。

おみやげにと、シフォンケーキをもってきた。

京楽が紅茶をいれようとして、茶葉を切らせていたことに気づく。

「緑茶でいいかな?」

『なんでもいいぞ:』

「私の緑茶を使うな。なかなか手に入らぬ代物なのだ」

白哉が反対するので、何か飲み物はないかと冷蔵庫を探すと、オレンジジュースがあった。

京楽は、それを出そうとして、浮竹が惚れ薬を入れていたことを思い出す。

「だめだ、飲むな!」

「なんで?」

『どうしたんだ、精霊の俺』

『なにかやましいものでも?』

感に鋭い夜刀神が、にやにやする。

「なんでもない!俺が飲む!」

浮竹は、惚れ薬を飲んでも、京楽を愛しているので、京楽だけに惚れる自信があった。

オレンジジュースを一気飲みして、バタンと浮竹は倒れる。

『精霊の俺!?大丈夫か?』

『ちょっと、そのオレンジジュースの中身の残り、ちょうだい』

京楽が、夜刀神にオレンジジュースを渡す。

『あちゃ、何か薬いれたね。なんの薬かまでは分からないけど』

「十四郎が薬を?ボクに飲ませるつもりだったのかな」

『桜の王のことだし、多分そうだろうね。浮竹、気を付けて‥‥』

ぱっと目覚めた浮竹は、妖狐の浮竹を見た。

「好きだあああああああ」

『ぎゃあああああああああ』

浮竹に押し倒されて、妖狐の浮竹は驚く。

『た、助けてくれ~~~~~~』

『ちょっと、桜の王、何とちくるってのさ』

「十四郎?ボクがいるでしょ?」

「京楽のことも好きだけど、妖狐の俺も好きだ。今すぐ結婚して子作りしよう」

「十四郎!?」

『ぎゃあああああああ』

服をはぎとられて、キスされて、妖狐の浮竹が悲鳴をあげると、夜刀神が人の姿になって、浮竹の頭を殴る。

『しっかりしてよ、桜の王!ボクの浮竹に何するのさ!』

「夜刀神‥‥‥‥お前でもいい。好きだ。結婚して今すぐ子作りしよう」

『もぎゃああああああああ』

節操のない浮竹に、白哉が緑茶をすすりながら。

「これでもいれたのはないか?」

そう言って、惚れ薬の瓶を取り出した。

『あ、それ小豆とぎが売ってるやばい惚れ薬。まさか、ボクと浮竹に飲ませるつもりじゃなかっただろうから、桜鬼のボクに飲ませようとして、証拠隠蔽のために自分が飲んで‥‥桜の王、アホだね』

「やらせろおおおおおおお」

『ほげあああああああ!!!』

夜刀神は、再び浮竹に押し倒されていた。

『こ、こんな効果の出る薬じゃなかったはずなんだけど』

京楽が、浮竹を羽交い絞めにして、夜刀神が不思議がる。

「体質とやらであろう。浮竹は、昔から薬に弱いというか、変な効き方をする」

白哉は、我関せずとうかんじで、シフォンケーキを一人で食べながら、緑茶をすする。

「解毒剤とか何かないの!?」

『あの小豆とぎの惚れ薬は、解毒剤とかなかったはずだよ。自然に効果が切れる待つしかないね』

「浮竹、寝ておけ」

白哉が、桜の術で京楽と白哉以外にせまってくる浮竹を眠らせる。

「二日は起きぬ。目覚めれば、薬の効果も切れているであろう」

「助かったよ、白哉くん」

『精霊の俺が、こんなに力強いなんて思ってなかった。見た目は綺麗だけど、力持ちだな』

『まぁ、ボクの浮竹に被害があまり及ばなくてよかったよ』

『服脱がされたんですけど!キスもされました!』

口調を変えて訴えてくる妖狐の浮竹に、夜刀神は。

『消毒しておかなくちゃね』

そう言って、妖狐の浮竹とキスをする。

そんな二人を生温かい眼差しで、京楽と白哉が見る。

『こ、これは違うぞ!ラブシーンじゃない!』

「兄らにはあまり興味をもっていないので、どうでもいい」

白哉の言葉に、妖狐の浮竹がショックを受ける。

『どうでもいいって言われた~~~』

『ちょっと、白哉くん、そういう言い方はないでしょ』

「好きなだけいちゃついてていいよ。ボクは、浮竹をベッドに寝かせてくるから」

「私も、恋次のところにでもいこう」

妖狐の浮竹と夜刀神だけが残された。

二人は、人の家でラブシーンの続きをするわけにはいかないので、素直に家に帰る。



「白哉、好きだあああああ!!結婚して‥‥あれ?俺は何を言って何をしようとしてたんだろう?」

2日たって、薬の効果の名残を少しだけ残して、浮竹は目覚めた。

抱きつかれた白哉は、優しく浮竹の背中を撫でる。

「兄の愛しい者は、これだ」

「これ‥‥‥十四郎、惚れ薬をオレンジジュースに混ぜたね?」

「あ‥‥京楽に飲ませようと買って‥‥皆に飲ませるわけにもいかないから、自分で飲んで‥‥そこから、記憶が途切れてる」

「はぁ。ボクは、何があっても十四郎だけを好きだし、今更惚れ薬なんて使わなくても、めろめろだから」

「う、うん‥‥‥」

浮竹は赤くなった。

なんだかいつもよりかわいく見えて、京楽は浮竹を抱きしめる。

「愛してるよ、十四郎」

「うん。俺も愛してる、春水」

浮竹と京楽は互いを抱きしめあって、キスをする。

「ほら、恋次、ラブシーンとはあのようにするのだ」

「うっす!勉強になるっす!」

恋次が見ているのに気づいて、浮竹は京楽をハリセンで殴った。

「ハリセンで殴るのも、ラブシーンですか、白哉さん」

「違う。あれは浮竹だけのものだ」

「はい。勉強になりました」

「びゃ、白哉、恋次くんはいつから」

「最初からいましたけど?」

恋次は悪びれもせずに、浮竹に言う。

「わああああ、全部忘れろおお」

浮竹は、恋次にもハリセンを食らわせるのだった。

ちなみに、白哉には弟なのでハリセンはなかった。ハリセンどころか、眠らせて場を解決してくれたので頭を撫でていた。

京楽も恋次も、白哉だけ特別扱いされてずるいなぁと思うのであった。










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桜のあやかしと共に41

「鏡?」

「はい。映った者の姿のままでてきて、ドッペルゲンガーになるんです」

依頼人は、布でくるんだ、古い鏡を京楽に渡す。

「京楽、それ、雲外鏡だ。付喪神がついているわけじゃなくって、鏡自体があやかしだ」

「ひええええ」

依頼人は、京楽に鏡を押し付けると、逃げてしまった。

はらりと、鏡を包んでいた布がとれる。

姿が映ったのは、浮竹だった。、

「十四郎?」

浮竹が、二人になっていた。

「わぁ、俺が二人いる」

「俺のほうが本物だ」

「違う、俺のほうが本物だ」

京楽は、見た目も声も妖力も変わらない二人を見て戸惑う。

でも、はっと思いこんで、二人の浮竹にキスをした。

一人は顔を赤くして、おとなしくなり、もう一人は顔を赤くして、ハリセンで京楽をはたきまわす。

「こっちが、本物だね」

「なぜじゃ。なぜばれた」

「化けた相手の記憶や癖はないようだね。雲外鏡、まだまだ修行が足りないよ」

「そうか。では、記憶も癖も追加しよう」

再び、浮竹が二人になる。

「こっちが偽物だ」

「違う、こっちが偽物だ」

二人はぎゃあぎゃあと言い争いあう。

京楽は、今度は浮竹の尻を触った。

二人とも、怒ってハリセンではたいてきた。

「うーん、どっちも同じ反応‥‥‥そうだ、十四郎はボクだけが好きなんだよね?」

「いや、「春」も好きだし、白哉もあのばかな夜刀神も妖狐の俺も好きだ」

「俺も同じだ。あのあほうの夜刀神は、いつかぎゃふんと言わせてやる」

「困ったなぁ。判別がつかないよ。ボクの前に好きだった人のこと言える?」

京楽が聞くと、浮竹達は自信満々に。

「「春」」が好きだ」

「「春」」を今でも愛してる」

そう言った。

「記憶まで一緒かぁ。参ったなぁ」

京楽は、二人の浮竹を相手に、白哉ならどうだろうと、白哉を呼んだ。

「おーい、白哉くん」

「なんだ、さっきから騒々しい‥‥‥‥浮竹が二人?」

「どっちかが雲外鏡なんだよ。どっちかわかる?」

「浮竹、兄は私に借金があるな?」

「え、そうなの十四郎」

京楽が、反応する。一方、二人の浮竹は。

「「おとついかりたジュース代の120円が借金か」」

声をはもらせて言い返してきた。

「すまぬ。私にも、どちらが本物なのか分からぬ」

「あちゃー、白哉くんでもだめかー。こうなったら‥‥」

京楽は、妖狐の浮竹に電話をかけた。

妖狐の浮竹は、こうもり姿の夜刀神の京楽を連れて、京楽のマンションにやってくる。

『俺をいれたら、3人になるな』

そう言いつつ、匂いをかいだ。

『うーん。こっちが若干油揚げのにおいがする。こっちは、稲荷寿司のにおい』

「ちょっと、君だけが頼りなんだから」

『冗談だ。こっちが雲外鏡だ。古い付喪神のようなにおいがする』

「わしの負けじゃあ。さぁ、叩き割るなりなんなりするといい」

ぼふんと、一人の浮竹が鏡になった。

『もう一度、今度はこっちの浮竹になれる?』

「なれるが、なんじゃ?」

ぼふんと音を立てて、雲外鏡は妖狐の浮竹になった。分かりやすいように、髪をリボンでくくる。

『やぁ、遠慮なしで抱きしめてみたかったんだよね』

そう言って、夜刀神の京楽は、雲外鏡の妖狐の浮竹を思い切り抱きしめた。

ボキボキバキっ。

骨が折れる音がして、浮竹も妖狐の浮竹も、それに京楽も顔を蒼くする。

『京楽、お前、こんなことを俺にしたかったのか』

『できないから、雲外鏡に頼んだの』

雲外鏡は、妖狐の浮竹の姿で気絶していた。妖狐の浮竹は、雲外鏡の傷を癒してあげた。

「助かったわい。わしは、もうしばらく‥‥そうじゃな、こっちの浮竹とやらになっておくとしよう」

京楽は、違いが分かるように、雲外鏡の浮竹の髪をポニーテールにした。

「やばい、偽物って分かってるのに、かわいい‥‥あべし!」

本物の浮竹にハリセンでしばかれて、京楽は本物の浮竹に迫る。

「君の絹のような髪も、結わせて?」

「す、好きにしろ」

「わーい」

京楽は、浮竹の両サイドの髪を三つ編みにして、後ろでくくる。

「かわいいね」

「ふん、知るか。ああ、妖狐の俺に夜刀神、それに雲外鏡も。俺の作る夕飯を食べていけ」

「へ?わしもいいのかいの?」

浮竹の姿のまま、じじ臭い声を出す。

「確かに俺の姿になったが、悪さをしたわけでもない。退治する必要はない。今後、誰かに化けないこと。ドッペルゲンガー状態をやめるのが、条件だ」

「分かった。わしは、この時代にはいらぬのだな。夕飯をごちそうになったら、眠りにでもつくことにするよ」

「そうか」

『俺、においを判別するためだけに呼ばれたのか』

『自分のパートナーも分からなくなるなんて、まだまだだね』

「髪結ってないと、どっちがどっちだったか、分からないくせに」

『なんだって。やる気?』

「そっちがその気なら」

『はい、終了!』

妖狐の浮竹が、京楽たちの不毛な争いを止める。

浮竹はキッチンのほうに行ってしまい、白哉も手伝うと、キッチンに行ってしまった。

できたての夕食を食べながら、雲外鏡はそのおいしさに涙を流していた。

「できれば、俺の姿で泣かないでくれ」

「こんなに優しくされたのは、久方ぶりじゃて」

「思ったのだが、雲外鏡、術者の式になるつもりはないか?」

「へ?わしが式に?」

白哉の言葉に、皆首を傾げる。

「私のパートナーに、式を大量に操れる恋次という者がいる。その者の下で、働いてはみぬか?」

「わし、なんかでよいのか?」

「その、ドッペルゲンガーになれる能力を眠らせるにはおしい」

白哉は、恋次をスマホで呼び出すと、5分もせずに恋次がすっとんできた。

「白哉さん、式にしたいあやかしって?」

「この、雲外鏡だ。雲外鏡、元の鏡に戻ってくれ」

「あいわかった」

元の鏡に戻ると、雲外鏡は白哉の姿になった。

「おお、すごい。こいつは、式の中でもかなり強力な戦力になりそうっす」

「だそうだ、雲外鏡」

「わしでよければ、あんさんの式になろう。名がほしい」

雲外鏡は、元の鏡の姿に戻る。

「じゃあ、今日からあんたは俺の式だ。名は‥‥‥そうだな、雲(くも)でどうだ?」

「安直なネーミングセンスじゃが、それでいい」

「よかったな、雲外鏡」

浮竹がそう言うと、雲外鏡は笑った。

「おぬしらのおかげじゃて」

「恋次くん、雲外鏡をよろしくね」

「ああ、任せてくださいっす」

「恋次、雲外鏡を使いこなせるように、今夜は一緒に特訓だ」

「は、はい!」


そんな5人を、妖狐の浮竹と夜刀神は、ぼけーっと見ながら、浮竹の作ったデザートを食べていた。

『なんか、急に呼び出されたのに、蚊帳の外だね』

『いっぱい食ってやる』

妖狐の浮竹は、デザートを全て一人で平らげる。

白哉と恋次と雲外鏡がいなくなり、浮竹と京楽は、デザートが全部食べられてしまったので、作り置きしておいた苺パフェを冷蔵庫から取り出して食べる。

『あ、パフェなんてずるい!俺にも!』

『まだ、食べるの?』

『デザートは、別腹だ!』

「あと一人分しかないぞ」

『俺が食う』

『うん、ボクはいいよ』

「妖狐の俺、突然呼び出したりしてすまなかった。雲外鏡のことばかりで、あまり相手もできず」

『俺には、京楽がいるから大丈夫だ』

「そうか。帰りには、詫びの意味もかねて、あやかしまんじゅうをやろう」

『わーい』

京楽たちは、微笑みあうそれぞれのパートナーである浮竹たちを見て、苦笑するのだった。



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桜のあやかしと共に40

港町で、人魚が現れて漁場を荒らしているから、退治してほしいという依頼を受けた。

「人魚か。本当にいるんだろか。もうほとんどいないと聞く。肉を食べれば不老不死になると言われているが、実際は毒で、不老不死になってもすぐに死んでしまう」

「人魚じゃ、ないかもね?」

「多分、人魚もどきだろう」

京楽が運転する高級車で、港まで向かった。

異界を通っても、その漁場には行ったことがないので行けない。なので、車での移動になった。

「見えてきた。この港町だ」

車を駐車場に置いて、依頼人の家にまずは行った。

「人魚が本当に出るんです。若い男は、人魚の歌声に惑わされて、食われそうになりました。網にかかった魚を食い荒らして、困っているんです。人も食おうとするし、退治してください」

「その人魚は歌って、人間の男を惑わすんだね?」

「はい、その通りです」

「多分、セイレーンだね。外国の人魚だ。船かなんかについてきて、住み着いてしまったんだろう。セイレーンは人を襲う。退治しよう」

「セイレーンでもなんでもいいです。ぜひ、退治してください」

京楽と浮竹は頷いで、人魚というか、セイレーンが現れる岩場にきた。

そこには、尼僧が立っていた。

「お前は、元鬼女の八百比丘尼じゃないか!600年ぶりだな!」

「あら。桜の王じゃないですか。人魚を退治しに?」

「そうだ。お前は?その姿を保つために、相変わらず魚を生で食ってるのか?」

「生で今も食ってますよ。昨日はタイを生で食いました。久しぶりに、セイレーンでいいから、人魚の肉を食べたくなったので」

八百比丘尼は、浮竹の知り合いであった。

「俺たちは、退治しにきたんだ」

「じゃあ、肉は私にくださいな。食べます」

「浮竹、いいの?」

「ああ。八百比丘尼は元々鬼女だが、人間に害をなすあやかし退治をしてくれる。気まぐれなので、依頼しても引き受けてくれないことが多いがな」

「八百比丘尼のルカと申します、桜の王のパートナーの方」

「これはどうも。京楽春水といいます。術者ですが、桜鬼です」

桜鬼という言葉に、ルカは驚いた。

「桜の王から、桜鬼を引き継いだのですか?」

「うん、そうなるね。堅苦しい言葉使いはやめよう」

「ふふふ。桜の王に、愛しい方ができてしまったけれど、死んでしまったと聞きました。また、新しい愛しい人を見つけたのね」

浮竹は赤くなった。

「ふふ、桜の王は相変わらず恥ずかしがり屋ですね」

「オオオーン」

ふと、人の声が岩場からして、3人は岩に身を隠して様子をみる。

「ララララ~~~~」

綺麗な声で歌う人魚がそこにいた。いや、セイレーンか。

西洋の人魚なので、人魚ではないとは言い切れない。

セイレーンは、人がしかけた網を手に、かかっていた魚を生で丸かじりしだした。

「姿は美しいけれど、野蛮で醜いこと。でも、食べがいがありそう」

ルカはどう調理しようかと、思案する。

「セイレーン、そこまでだ。漁場を荒らし、人を食おうとする。退治する」

浮竹がセイレーンに姿を現してそう言うと、セイレーンは歌いだした。

普通の人間の男なら、幻惑されて誘惑され、セイレーンの元に行くのだが、浮竹は桜の王であやかしである。セイレーンの歌声は通用しなかった。

「く、あやかしか!」

セイレーンは、海の中に逃げようとする。

「縛!」

「な、動けない!?」

「肉は残しておくんだよね?」

「はい」

八百比丘尼のルカは、頷いた。

「じゃあ‥‥天嵐(てんらん)!」

激しい竜巻に、セイレーンは岩場で頭を打ち、意識を失った。

「念のため、俺がとどめをさすがいいな?」

浮竹が桜の花びらを鋭い刃物に買えて、セイレーンの心臓を貫く。

「ぎゃっ!」

意識を失っていたセイレーンは、短い悲鳴をあげて息絶えた。

「鍋にしようと思って。よかったら、一緒にどう?」

「たまにはいいかもな。人魚の肉は美味だ」

「ぞの代わり、人が食べると毒ですけどね。あやかしが食べると毒は効かないし、不老不死にもなりません。私は、伝説の人魚を食せたので、元鬼女であったので、毒はきかないで若いままの姿でいられるけれど。食べた人魚が、偶然不老不死の力をもっていたせいで800年も若いまま」

「セイレーンの肉っておいしいの?」

京楽は、あやかしを食べるのは初めてなので、不思議そうな顔をしていた。

上半身が人の姿をしているので、普通の人間なら食べたいとは思わない。

京楽も、すっかり桜鬼に染まっていた。

「うまいぞ。俺も人魚の鍋を、八百比丘尼に食わせてもらったが、とてもおいしかった」

「じゃあ、今晩は宿の厨房でもかりて、鍋にしましょう」


ということで、まずは外でセイレーンを解体して、食べる部分だけを残し、後は冷凍して八百比丘尼のルカの住まいである寺まで、クール宅急便で届けてもらうことにした。

野菜やきのこ、鮭やらホタテを入れた鍋に、一口サイズに切ったセイレーンの肉をぶちこむ。

湯であがると、鮮やかな深紅になった。

「うん、久しぶりに食うけど、うまいな」

「でしょう。桜の王の料理の腕のせいもあるかもしれませんが」

「セイレーンだと思うと、ちょっとあんまり食欲わかないけど‥‥‥匂いとかおいしそうだし、ボクもいただくよ」

京楽は、初めて食べる人魚ことセイレーンの肉のうまさに、目を見開いた。

「おいしい!!!」

「ほらほら、俺の分もやるから食え」

「ありがとう、十四郎」

あやかしがあやかしを食うのは珍しいことだが、食用のあやかしもいる時代である。

ルカと浮竹と京楽は、セイレーン鍋を楽しみ、酒を飲んだ。

「あ、十四郎はオレンジジュースだよ」

「えー。コーラがいい」

「明日にでも買ってあげるから、今日はオレンジジュースで我慢して」

「あははは、桜の王、酒に弱かったですね。酒乱で、昔は歌いまくって意識を失いましたっけ」

「むう、昔の話はするな」

浮竹がむくれる。

「京楽さん、昔の桜の王のこと、聞きたくない?」

「いや、ボクは今の十四郎が好きだから。過去は詮索しないよ」

「あら、つまらないわ。まぁ、セイレーンだけど人魚の肉を食べれるのは数百年に一度程度。あやかしはほぼ不老なので、わざわざ人魚を食べるもの好きな輩は私たちくらいね」

「人魚が絶滅しかけているのは、やはり人間のせいか?」

浮竹がルカに聞くと、ルカは頷いた。

「人にとっては毒だというのに、不老不死のために密漁されています」

「そうか‥‥」

浮竹も京楽も、どうしようもなかった。

「でも、セイレーンがいるなら、セイレーンが今後の人魚になりそうね」

「セイレーンは厄介だな。人魚に似ているが、人を食う」

「まぁ、どれも人間が招いた結果。私たちは、今を楽しみましょう?桜の王、セイレーンの肉、少し持って帰りません?」

「ん。ああ、いただこう。妖狐の俺と夜刀神は食いたくないだろうから、白哉にでも食わせてみるかな」

「十四郎、一発やらせて」

「はぁ!?」

ルカの前で迫ってくる、京楽の頭をハリセンでたたく。

「あら、忘れていたわ。人魚の肉と酒は、一緒にとると男性は性欲がましましになってギンギラギンになるってこと」

「それを早く癒え!」

「ねぇ、十四郎の胎の奥にボクのもの、いっぱい出していい?」

「教育的指導!」

そう言って、浮竹は桜の術で京楽を寝かせた。

「あら、つまらない」

「面白がるな!」

「ふふふ。鍋も終わりだし、今日はもう寝ましょうか。性欲ましましになった京楽さんも、明日には元に戻っているでしょう」

「今日は、京楽と同じ部屋で寝ないことにする」

「それが正解ね。人魚の肉と酒におぼれた男は、死ぬまでやるから」

「うわー、そんな京楽いやだ」

こうして、人魚ことセイレーン鍋を食べて、退治しおわったことを翌日依頼人に言って、報酬金をもらった。

「そういえば、この前妖狐の俺と夜刀神にも人魚の件がきたらしいが、セイレーンだろうな。人魚は、今の時代じゃあほんとにお伽話の存在だ。八百比丘尼のルカが食った人魚が、多分人里で見れた最後の人魚だろうな」

「ボク、あんまり覚えていないんだけど、すごく十四郎とやりたくなって、それで頭がいっぱいになったところで寝ちゃったんだよ。もう少し起きていたかったねぇ」

「俺はごめんだ」

「うーん、なんで寝ちゃったんだろう?」

「さぁな?」

桜の術でわざと寝かせたと言えなくて、浮竹は適当に誤魔化す。

そしてセイレーンの肉を持って帰り、白哉にも食べさせて、非常に美味であると言わせることに成功するのであった。

ちなみに、妖狐の浮竹と夜刀神は、肉は受け取ったが、食したかどうかは分からないままであった。




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桜のあやかしと共に 外伝6

『これは、ホットケーキというのか。甘くておいしいな』

ある日、浮竹は妖狐の浮竹のためにホットケーキを焼いて、たくさんシロップをかけたものをあげた。

油揚げやら稲荷寿司ばかり食べていたので、久しぶりにあやかしまんじゅう以外に甘いものが食べられて、妖狐の浮竹は嬉しそうだった。

「お前たちの分もあるぞ」

「十四郎がつくると、簡単なおやつでもプロの味になるんだよねぇ」

『ホットケーキくらい、誰が作っても同じでしょ』

夜刀神は、そう言いながら、浮竹の作ったホットケーキを食べようとすると、浮竹にもっていかれた。

『ケチ』

「この際だ、どっちが作ったホットケーキがうまいか、勝負しろ、夜刀神」

『いいね。勝負は嫌いじゃないよ。ボクも料理できるし、君をぎゃふんと言わせてあげる』

「ぎゃふん」

そう浮竹がからかいながら言うものだから、夜刀神に火が付いた。

『真剣勝負だよ。判定は‥‥‥そうだね、浮竹と桜鬼のボクだけじゃあ偏るから、白哉くんにも審査員になってもらおう』

「私は、あまり甘すぎるものは好きではない‥‥‥聞いていないな、二人とも」

『ごめん、白哉。京楽と、精霊の俺につきあわせちゃって』

「まぁ、たまにはよい」

「ボクは十四郎に票を入れるけどね。作る前から、すでに料理の腕に差があるのは明らかだし」

『料理は愛情っていうじゃないか。京楽の作るホットケーキのほうが、うまいかもしれないぞ?』

「それはないねえ」

『むう』

「ケンカはするな。浮竹と夜刀神は、真剣勝負をしているのだ。黙って、完成を待とう」

30分もしないうちに、浮竹がホットケーキをもってやってきた。

「食べてくれ」

『うん、さっき食べたのよりおいしい』

「さすが十四郎だね。ただのホットケーキなのに、すごいおいしい」

「甘い‥‥まぁ、悪くはない」

妖狐の浮竹、京楽、白哉の順で感想を言われる。

『ボクもできたよ。食べてみて?』

『うん、うまいぞ』

「焦げてる。苦い。マイナス100点」

「焦げたホットケーキ‥‥‥‥意外と、悪くないな」

妖狐の浮竹が夜刀神の肩をもつのは分かるが、まさか白哉まで夜刀神の京楽の作ったホットケーキを褒めるとは思わなくて、みんな白哉を見ていた。

「私は、斬新な味なので夜刀神の京楽に票を入れる」

『俺ももちろん京楽に』

「ボクは絶対浮竹だね」

2対1で、ホットケーキの料理対決は、夜刀神の京楽に勝ちになった。

「納得いかない。かせ、食う」

浮竹が、残っていた夜刀神の作ったホットケーキを食べて、眉根を寄せる。

「苦い。ホットケーキの味が台無しだ」

『そ、それでもボクの勝ちだからね』

「勝ったところで、何かが変わるでもない」

『残念でしたー。そっちのボクから、1日君を自由にこき使える権利をもらったよ』

浮竹は、京楽を見る。

京楽は、目をそらして口笛を吹いていた。

「春水、後で覚えておおお」

夜刀神にひっぱられながら、浮竹はたまった洗い物やら洗濯をする羽目になるのであった。


ちなみに、京楽は絶対に浮竹が勝つからと、そんな無謀なことを言ったのだが、1日が終わって自由になった浮竹から、3日間無視され続けるのであった。

合掌。

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結婚記念日

その日は、3年目の結婚記念日だった。

一護とルキアは、休暇をとって、現世の沖縄にきていた。

「って、結婚記念日の旅行なのに、なんでてめぇがいるんだ、白哉!」

「ルキアに誘われたのだ。沖縄には行ったことがないと言うと」

「ルキア!」

名を呼ばれて、ルキアは不思議そうな顔をする。

「兄さまも一緒じゃ、だめだったのか?」

うるうるした瞳で見つめられて、一護は天を仰いだ。

「あー、はいはい。白哉とも仲良く、旅行満喫するか」

泊まるホテルは、隊長であっても泊まれるかどうかの賃金の額を思わせるホテルであった。ちなみに、泊まる部屋はスィートルーム。

白哉が全部負担してくれた。

「ルキア、温水プールがあるのだ。一緒に行かぬか?」

「行きたいです、兄さま!でも、水着をもってきていません」

「ないなら買えばよい」

一護もついていくことにしたのだが、白哉はルキアと自分用の水着を高級なものを買うが、一護が買う水着には1円も出してくれず、一護は自腹で安い水着を買った。

「貧相だな。兄には、お似合いだ」

「がるるるるる。噛みつくぞ、このやろう」

「はしたない。こんなものが、ルキアの夫であるなど、恥だ」

「ムキーーーーー」

「一護、どうしたのだ」

ルキアが、泳げないのでうさぎさん柄の浮き輪で、プールの中を漂いながらこっちを見ていた。

「いや、なんでもねぇよ」

まさか、ルキアにお前の義兄は腹黒でケチで根性歪んでるとか言えない。

更衣室で着替える。

プールに入ると、白哉が水鉄砲で一護の目を狙ってきた。

案外かわいいところあるじゃないかと思えば、水鉄砲の中身は、匂いから柑橘系の果汁であることが分かる。

そんなもの、目に入った日には痛くて目をあけてられない。

「兄さま、おもしろそうですね。私にもやらせてください」

「目をねらうのだぞ。そこが弱点だ」

「はい、兄さま」

一護は、ルキアの水鉄砲から逃げた。全力で泳ぐ。

「むう。一護は、水鉄砲は嫌いなのだろうか」

「ルキアと私の仲を、今は邪魔したくないのであろう」

「一護、兄さまと仲悪そうだったけれど、いつの間に仲良く?」

「さぁ、どうであろうな。あれとは、仲が良いとは言えないのでな」

ルキアは、頬を膨らます。

「兄さま、一護は私の夫です。喧嘩はよくありません」

「分かっている、ルキア」

白哉は、そう言いながら、泳いで戻ってきた一護の目を狙って、水鉄砲をうつ。

「ぎゃあああああ、しみるううううううう」

見事に目に入ってしまい、一護は水の中にもぐって、目を洗う。

「ふむ。すぐに洗えるのが、難点か」

「兄さま?一護が、その水鉄砲の中身を受けて、とても苦しんでいるのですが」

「気のせいだ」

「そうですか。一護は、苦しんでいるふりをしてい                         るのですね。兄さまにやられたと思わせるために」

ルキアの思考は、一護の心配より、白哉と久しぶりにプライベートな時間を過ごせるので、一護より白哉をとった。

「ルキア、泳ごう」

「はい、兄さま」

一護は、すぐに目を洗ったとはいえ、涙が止まらなくて苦労する。

「白哉ああああ。今に見てろおおおお」

温水プールを、一護以外楽しんで、夕飯の時刻になった。

高級レストランに入り、注文する。

「私とルキアは同じ会計で。一護、兄は自腹だ」

「むきいいいいいいい」

「兄様、それでは一護が水だけ飲む状態になってしまいます。会計は同じで」

ルキアが一護の心配をすると、白哉はあっさりと言葉を覆す。

「会計は同じでいい。勝手に好きなものを頼め。私とルキアは、季節のコースを選ぶ」

「じゃあ、俺もそれで」

「やはりやめだ。ルキア、日替わりのメニューを頼もう」

「はい、兄様」

「きいいいいいい」

一護は、噴火するのを耐えるしかなかった。

眠るときも、ルキアの隣のベッドを占領されて、一護だけソファーで寝る羽目になった。ルキアと同じベッドで寝ようとすると、白雷を食らった。

一護は、結婚記念日の旅行で、胃をやられた。

「軟弱者め」

「誰のせいだと思ってやがる!」

「私のせいだな」

「キーーー、認めやがった。でも、何も変わらない。ルキアは俺のものだからな」

「ルキアは、大事な私の義妹だ。兄との結婚をしても、それは変わらぬ」

一護は、白哉を隠し持っていたハリセンでたたく。

「ほう。よほど、その命いらぬものとみえる」

双連蒼火堕の詠唱を始める白哉から、一護は全力ダッシュで逃げるのあった。
ちなみに、一護はストレスで軽い胃潰瘍になってしまい、さすがの白哉も嫌がらせをやめて、一護とルキアを静かに見守るのであった。






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浮竹の生きている世界線3

浮竹が溶けていく。

雨に打たれて、トロトロと。

「浮竹!」

「京楽‥‥お前とまた会えてよかった。もう、思い残すことはない」

「だめだよ、浮竹、いかないで!十四郎!!」

「俺はすでに死んだ身。元の地獄に戻るだけだ。お前の幸福を、ずっと祈ってる」

「ボクの幸福は、十四郎、君がいるからあるんだ!君のいないこの世界なんていらない!」

そこで、はっと目覚めた。



「夢‥‥‥なんてリアルで、不吉な」

ふと見ると、隣の布団で浮竹はすやすや寝ていた。

「浮竹‥‥大好きだよ」

短めの白い髪をそっと撫でて、額に口づける。

「今日は、もう寝れそうにないね」

まだ夜明け前だ。

満月が出ていた。ふと、酒を飲みたい気分になって、冷蔵庫から冷えた酒をもちだしてきて、一気にあおった。

「はぁ、おいしいねぇ」

満月を見ながら、一人で月見をしていたら、浮竹が起きてきた。

「京楽?なんでこんな時間に酒を飲んでるんだ?」

「浮竹‥‥‥‥約束して。ボクを置いて、地獄に戻ったりしないって。消えたりしないって」

「何を言ってるんだ。‥‥‥泣いてるのか?」

「浮竹ぇ」

浮竹は、子供をあやすように京楽を抱きしめて、優しく背中をとんとんと叩く。

「大丈夫だ。俺は消えたりしない」

「ほんとに?」

「ああ」

「じゃあ指切りをしよう」

「いいぞ」

京楽と浮竹は、指切りをした。

「なんか安心したら、眠くなってきちゃった。少し、寝るね」

布団に戻り、横になる。

「俺ももう一度寝る」

浮竹は、自分の布団に入らず、京楽の布団の中に入ってきた、

「京楽は、あったかいなぁ」

「浮竹‥‥ボクをあおらないでよ」

「ただ、一緒に寝るだけだ。手を出して来たら、1日中口聞いてやんない」

子供の我儘のように、浮竹は言う。

「じゃあ、おやすみ」

「ああ、おやすみ」


朝になったと思ったら、昼を過ぎていた。

「わあぁぁぁぁ、大遅刻だあああ」

「そうだなぁ」

「ほら、浮竹笑ってないで着替えて!一番隊の隊舎に行くよ!」

「急いだところで、遅刻は遅刻だ」

浮竹は、浮竹十四郎の弟だと周囲には思われていた。

まさか本物がある日突然蘇り、京楽の傍にずっといるなど、誰が想像できようか。

「まぁ、どのみち昼休憩の時間だ。朝飯兼昼飯を食ってから、執務室に行こう」

急いでいた京楽も、マイペースな浮竹にのまれて、そうすることにした。

昼飯はウナギだった。

「さすが上流貴族。昼飯からウナギか」

「夜は、カニ鍋だよ」

「カニときたか」

京楽は、浮竹においしいものを食べさせることに金を惜しまない。

着るものも何気に高級品を送り、着させていた。

「そういえば、俺の遺品ってどうなってるんだ?雨乾堂がなくなり、俺の墓が建てられたのは知っているけど、遺品は」

「全部、ボクが預かってるよ」

「そうか、よかった。お前からもらった思い出の品がいっぱいだからな」

ぽつぽつと。

雨が降り出してききた。

「浮竹、雨に打たれちゃだめだよ!」

「どうしてだ?」

「溶けちゃう」

「俺は、絵具か何かか?」

面白がって、浮竹は外に出ると、ざーざーと降ってきた雨に打たれた。

「だめだ、行かないで!」

享楽も雨に打たれて、浮竹を抱きしめた。

「あれ‥‥溶けない」

「俺は絵具じゃないって、言ってるだろう?」

平気な浮竹に、京楽は安堵して、浮竹の頭を撫でた。

「ねぇ、また髪伸ばしてよ」

「短いほうがすっきりしてていいんだけどな?まぁ、京楽がそう望むのであれば、また伸ばすことにする」

「いっそ、涅隊長に髪が伸びる薬でも作ってもらおうかなぁ」

「嫌だぞ、俺は!」

「じゃあ、ゆっくりでいいから伸ばして?前の長さになるまでは、毛先以外にはさみいれちゃ、だめだよ?」

「ああ、分かった」

浮竹は頷いた。

「今日は、もう休みにしちゃおうか。こんなに雨に濡れちゃ、風邪ひいちゃう」

「なんでか、俺は肺の病もなおってるし、病弱でもなくなっているんだよな」

「それでも、風邪ひいちゃ大変だから、一緒にお風呂に入ろう?」

「変なことはするなよ?」

「うん、しないから、一緒にお風呂入ろ?」

京楽に強く誘われて、浮竹は京楽と一緒にお風呂に入った。

風呂では何もされなかったが、休みにしてしまい暇をもてあましていと、盛った京楽に襲われて、浮竹はその日とその次の日と、京楽と一切会話をしない刑に処すのであった。



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桜のあやかしと共に39

「天狗?」

「はい。娘が、天狗にさらわれてしまったのです。嫁にすると言って。娘は半年後、結婚式を挙げる予定なのです。どうか、娘を取り返してください!」」

必死な様子の依頼人に、京楽が励ます。

「絶対に取り返してみせますので、ご安心ください」

「ありがとうございます。少ないですが、前払い金です」

依頼人は、200万の札束を置いて帰っていった。

「どう思う?」

「ただ、天狗にかどわかされただけじゃないのか。天狗は人を食わない。助ければいいだろう」

京楽が浮竹に意見を求めると、もっともな意見が返ってきた。

「それならいいんだけどねぇ」

依頼人は、大手の会社の社長だった。

裏に何かある気がした。


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「ここが、その天狗の住処の森だ」

「人の手があまり入っていないようだね。自然のままだよ」

「天狗をどうやっておびき寄せる?森を破壊するとかか?」

「君、かりにも植物のあやかしの王でしょ。もっと平和な方法はないの?」

浮竹は、森中に響き渡るような声を出す。

「やーい、天狗のあんぽんたん!ばーか!まぬけ!」

「十四郎‥‥そんな方法で出てくるはずが」

「誰があんぽんたんだ!人の子の分際で、森からたたき出してやる!」

「誰が人の子だって?こちとら、桜の王と桜鬼だぞ」

出てきた天狗に、浮竹が言い返す。

「げ、桜の王‥‥」

「な、お前は岩凪(いわなぎ)」

「知り合い?」

「古い知り合いだな」

京楽が、岩凪という名の天狗を見る。普通の天狗だった。

「君、人間の女の子かどかわしたでしょう。その子を返してもらうよ」

「俺はかどわかしてなんていない!サキが、俺が好きだからと、嫁にくるといってやってきたんだ」

岩凪は、弁解する。

「ほーら、やっぱり裏があった。前金で200万も払ってくるから、何かあると思ったんだよね」

「そのサキとやらはどこにいる?」

「あ、俺の木の上の小屋にいる」

「とりあえず、会ってみていいかい?」

「桜の王の連れなら、仕方ないな。お前、術者だがあやかしだな?」

「うん。ボク、桜鬼だよ」

「うげぇ」

岩凪は、サキという女性がいる自分の家を指さす。

「あの小屋から、普通の屋敷へのゲートがある。サキはその向こう側だ」

「おじゃまするよ」

「ほぅ、天狗の家を見るのははじめてだが、普通、里で暮らす者が多いが、中から里に繋がる屋敷に出るのか」
浮竹と京楽と岩凪は、木の上にある小屋に入り、岩凪の屋敷までワープした。

「いっちゃん、お帰り。この人達誰?」

「いっちゃん?」

浮竹が首を傾げる。

「サキがつけた俺のあだ名だ」

「ふむ。いっちゃん」

「やめろおお、桜の王!お前にそんな風に呼ばれたら、鳥肌が立つ!」

「十四郎の古い知り合いなんだってね?」

京楽は、あまり岩凪に好印象を抱いていないようだった。

岩凪が見た目がいい。

「い、言っておくが、俺は桜の王とただ知り合いなだけで、特別な関係とかじゃないぞ。友人でもない。ただの、知り合いだ」

「そうだぞ、京楽。嫉妬するなよ」

「自制してる」

嫉妬の心は闇を生み出す。もう、闇に飲まれないように、京楽は精神的な訓練も受けた。

「京楽、顔が怖い」

「ふふふ。元からこんな顔だよ?」

浮竹を抱き寄せる。

「桜の王、この連れはパートナーなのか」

「ああ、そうだ。そして、桜鬼に俺のためになってくれた」

「ボクは、十四郎だけのもので、十四郎もボクだけのものだよ」

「春水、こういうのは後でしよう」

「後ならいいんかい!」

岩凪は、ついついツッコミを入れていた。

「サキ、おいで」

「何、いっちゃん」

岩凪は、サキという人間の女性を横に立たせる。

「サキ、君を迎えにきた術者だ。父親の元に帰るか?」

「いやよ!私、いっちゃんといる!父のところに帰ると、あのヘンタイ男の嫁にされちゃう」

サキは、身の上話を語った。

北条というグループの会社の社長の娘であるが、政略結婚のためにある男の元に嫁がねばならないという。その男がSMが趣味で、何度か会いにいったサキをいたぶり、喜んでいた。それを父親に伝えると、「それくらい我慢しろ。誰のおかげで裕福に暮らせていると思うんだ。絶対に結婚させる」と言ってきたそうだ。

そして、サキは家出して、森の中で迷い子になり、足をくじいたところを岩凪に発見されて手当てされて、岩凪に惚れて嫁になると言い出して、一緒に暮らしだしたのだそうだ。

「うーん。でも、ボクは君を連れて帰れと依頼されてるからねぇ」

「いやよ!」

「サキとやら、一度だけ帰ってくれ。その後で、岩凪とまた暮らせばいい」

「いいの、十四郎」

「俺たちの任務は、このサキを連れ帰ることだけ。その後のことは依頼されてないし、依頼されても断るといい」

「ということで、サキちゃん、一緒にきてくれるかな?」

「いいわよ。またいっちゃんと暮らせるなら」

こうして、浮竹と京楽はサキを社長の元に連れ帰った。

サキは、1週間は大人しくしていたが、父親の金庫から金銀財宝をもちだして、岩凪の元へいき、嫁として里で迎えらえれた。

サキの父親は、再び京楽に、今度は岩凪を含めた天狗の駆除の依頼を出したが、京楽は引き受けなかった。

「たまには、依頼人の依頼を断る必要もあるんだね」

「あやかしの全てが悪いわけじゃないからな。人と結婚か‥‥最後まではうまくいかないだろうが、まぁ仕方ない」

「人は寿命が短い。あの岩凪って子なら、多分サキちゃんを天狗にしちゃうんじゃないかな。だから、里の者も反対しなかったんだよ」

「そうかもな。もしくは、俺とお前のように、契約をするか」

浮竹は、触れるだけのキスを京楽にする。

京楽は、浮竹を抱きしめる。

「ボクらのように、なれるといいね?」

「ああ、そうだな」

浮竹と京楽は、互いを抱きしめあいながら、キスを続けてから、マンションに戻った。

マンションでは、白哉と恋次が今まさにラブシーンに突入しようとしていて、浮竹と京楽は、異界の浮竹の家にこもって、二人の邪魔をしないようにしたのだが。

「きょうが冷めた」

と、白哉は途中で恋次に待ったをかける。

白哉と恋次の恋仲は良好ではあるが、肉体関係にまではなかなかいかないのであった。










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桜のあやかしと共に38

「そういえば、京楽は花鬼になれたのだから、猫にもなれるな?」

「え?猫?」

京楽は、浮竹の言葉に首を傾げた。

「俺と白哉はたまに子猫になるだろう。桜の高位精霊は、みんな猫になれる。京楽の存在も、桜の高位精霊と同じだから、猫になれるはずだ」

「犬になったりしてな」

白哉がからかうと、京楽は猫になれると自信ありげにのたまった。

「ボクも猫になれるよ」

「じゃあ、なってみろ」

「うん‥‥‥あれ?」

なかなか猫になれない。

「京楽、ぱっとしてすっとすると、猫になれるぞ」

浮竹は、久しぶりにオッドアイの白猫の子猫になっていた。それを真似て、白哉も黒い子猫になる。

「ぱっとしてすっと‥‥‥全然分からない」

「猫になるイメージを脳で描けばいい。そうれば、猫になれる」

白哉の分かりやすい言葉に、京楽はかわいい猫を思い描くのではなく、山猫を思い描いた。

ぼふん。

京楽の姿が変化する。

「‥‥‥なんだそれ。あっはっはっは」

「ひしゃげたあんぱんだな」

なんとも珍妙な生き物なってしまい、浮竹はツボにはまったのがかなり笑っていた。白哉の適格な言葉に、また浮竹が笑う。

「あははははは!!」

「え、ええ!も、もう一度!」

白哉の言葉と浮竹の態度に、ショックを受けながら、もう一度、今度は普通のアメリカンショートヘアをイメージした。

「‥‥‥なんだそれは」

「山でみたことがあるな。たぬきだな」

白哉の言葉に、京楽はまたショックを受ける。

浮竹はというと、5千年生きているが、たぬきなど見たこともないという珍しいほうなので、京楽がたぬきになっても、それがなんだかわからなかった。

「あはははは。たぬきか。それはそれで似合っているぞ」

たぬきだが、割と愛らしい顔をしていて、浮竹は気に入ったみたいだった。

「ええと、元に戻るには‥‥」

「あ、やばい。久方ぶりの変化で、きっと時の呪いが発動している。元に戻るのに時間かかるぞ。白哉はどうだ?」

「あいにく、私もだ。数時間はこのままの恰好だな」

「え、じゃあボクも元に戻れないの?」

「京楽なら、元に戻れるだろう。元に戻るとイメージしてみるといい」

ぼふん。

たぬきのままだったが、今度は信楽焼のたぬきになっていて、その不格好さに浮竹が笑う。

「あーっはっはっは。京楽、お前、俺を笑い殺したいのか。金玉が‥‥ひー」

子猫の姿で、床をたしたしとたたきながら、浮竹は爆笑する。

「も、もう一回!」

ぼふん。

今度は、元のたぬきに戻っていた。

「このままでは何も解決せぬな。浮竹、京楽、兄らの友人を読んだらどうだ。あちらも、変化するのであろう?」

「ああ、そうだな。妖狐の俺の電話番号はっと‥‥」

器用に子猫姿でスマホの電話番号を押して、妖狐の浮竹と夜刀神にヘルプを求めた。

2時間ほどして、二人がやってくる。

『子猫のままって‥‥ほんとだ。かわいいなぁ』

妖狐の浮竹が、鍵をあけておいた玄関から入ってきて、オッドアイの白い子猫になった浮竹を抱き上げ、頬にすりすりする。

「妖狐の俺、俺とそっちの黒猫は白哉で、時間が経てば元に戻るんだが、京楽が元に戻れないんだ。お前も狐に変化してから元の姿に戻るだろう?」

『俺も狐になる』

「へあ?」

浮竹は、動物だらけの部屋で、元々こうもりだった夜刀神が、狐になった妖狐の浮竹の頭の上にいいるのを見て、マヌケな声を出す。

「人間の手がほしかったんだが」

『じゃあ、俺が元に戻る』

妖狐の浮竹は元に戻ろうとするが、できなかった。

『なんでだ?元に戻れない』

「あー。俺と白哉の元に戻れない時の呪いを受けたか」

『そんなもの、あるのか?』

「ああ。元には戻れるが、時間がかかる」

「ボクはどうすればいいわけ?」

京楽の声に、夜刀神が反応した。

『桜鬼のボクは、猫じゃなくってたぬきなの。なんかおもしろいね』

「面白がっている場合か。夜刀神、お前も元に戻れないぞ」

「へ?あ、まじだ」

こうして、浮竹と白哉は子猫に、京楽はたぬきに、妖狐の浮竹は狐に、夜刀神はこうもりと、まるで小さな動物園ができたかのようであった。

『桜鬼の京楽、元に戻れるんだろう?方法が分からないだけで。戻り方を伝授してやろう』

「うん、ありがとう」

妖狐の浮竹は、擬音ばかりの戻り方の説明で、京楽には理解できなかった。

「えーと。夜刀神のボク、ざっくりでいいから翻訳できる?」

『いいよ。えっとね‥‥‥‥」

夜刀神の京楽の説明も、妖狐の浮竹とほとんど変わらなかった。

「ごめん、何を言っているのか理解ができないよ」

白哉が、説明する。

「頭の中で人間のイメージをして、全身の血液が心臓に集まっていることを意識すればいい、だそうだ」

「え、白哉君、この二人の言葉わかるの?」

「ざっくりだが、何とかわかる」

「うーん。試してみるね」

京楽は、たぬきから桜鬼の姿に戻れた。

「なんか、ボクだけ人の姿なのもあれだし、たぬきでいいから、変化しよっと」

ぼふん。

「あ、ばか!」

「へ?」

京楽も時の呪い受けて、人の姿に戻れなくなっていた。

「わあああ、どうしよう。みんな動物じゃない」

「世話をしてくれる者が必要だな。仕方ない、恋次を呼ぼう」

白哉は、浮竹のスマホから恋次に電話を入れる。

「はい、阿散井です」

「恋次、私だ。後で説明する故、京楽の家にきてほしい。鍵はあいている」




「なんじゃこりゃああああああああ」


恋次が動物の群れを見て、大声で叫んだのは言うまでもない。



「助かった、恋次」

チュールを恋次からもらいながら、白哉は礼を言う。

「白哉さんって、黒猫の子猫になれるんすね。今日、一緒のベッドで寝てもいいっすか?」

「ああ、よかろう」

ちなみに、他のメンバーの食事は、浮竹にはキャットフード、京楽と妖狐の浮竹にはドックフード、夜刀神にはフルーツだった。

『京楽だけずるいぞ。でも、狐のままでいるせいかドッグフードがとてもおいしく感じれる』

『それにしても時の呪いねぇ。またやっかいな呪詛受けてるねぇ』

「時折子猫になったまま戻れぬだけだ。そう不自由ではないので、放置していた。俺の呪いは、人の姿から動物になる者にうつることを、すっかり失念していた」

『時の呪いは神の呪いだよ。これまた、どうして』

「西洋の桜の女神に求婚された。「春」がいたので断った。そしたら、呪われた」

『あちゃあ。西洋の女神かぁ。呪い、そうそう解呪できないね』

「妖狐の俺でも無理か」

妖狐の京楽は、狐姿で3本の白い尻尾を揺らした。

『さすがに、西洋の神の呪いは理屈が分からない。おまけに力ある女神の呪いだろう?』

「ああ。世界樹の女神の一人だそうだ」

『さすがのボクにも無理だねぇ。神としてのレベルが違う』

夜刀神は、ため息をつく。

「もともと、夜刀神になんて何も期待してない」

『言うね。新しいハリセン、あげないよ』

「夜刀神はかっこいいなぁ」

『はぁ。そんなんだから、西洋の上位女神に呪われるんだよ』

「求婚を断っただけだぞ。それに、当時俺には「春」がいた。断って当り前だろう」

『まぁ、そうだねぇ』

『精霊の俺に非はないだろう。その女神とやらが性悪なんだ』

妖狐の浮竹は、水を飲みながらそう言って、浮竹を庇ってくれた。

京楽は、時の呪いの存在を知らなくて、しょんぼりしていた。

「時の呪いとか、教えてもらえなかった」

「春水、かけられた張本人の俺も忘れていた呪いだ」

「うん。十四郎、呪いも一緒に受けるよ」

「まぁ、変化するあやかしにうつるから、春水も呪われたようなものだな」

『ボクらもね』

「夜刀神は、一応神だろう。呪いは多分今回きりだ。その力の恩恵を受けている、妖狐の俺もだ。桜関係のあやかしは、うつりやすいし、どうにもならん。もう、諦めている。そんなに頻繁に呪いが発動するわけでもないしな」

浮竹は、からりとしていた。

『はぁ。西洋の桜の女神か。とりあえず、注意しておくよ。またいつ来るか分からないし』

「多分こないぞ。同じ世界樹の子である、楓の男の神と結婚して、子供を産んだらしい。俺の存在も、忘れているだろう。多分だが」

「十四郎、呪いを受けるのも一緒で嬉しいよ」

『一人、壊れてるのがいるね』

「まぁ、闇に飲み込まれるよりはましだろう。ああ、春水、ずっと一緒だ。何もかも」

恋次は、できている二人の世界をぽかんと見ていた。

「恋次、眠くなってきた。共に眠ろう」

白哉の言葉に我に返り、顔を輝かせる。

「もふりまくっていいですか」

「もう、十分もふったであろう」

「まだ、足りません」

最近できたばかりのカップルを、浮竹や京楽たちは、興味深そうに見ているのであった。


「じゃあ、俺と白哉さんはちょっと仮眠いってきます」

「右のゲストルーム使ってね?左は、もう一人のボクらが使うから」

『たぬきと狐って、どっちが強いんだろう』

ふと、妖狐の浮竹がそんなことを言う。

「勝負とかするなよ?春水も、妖狐の俺も」

『いや、かわいさで』

『もちろん狐でしょ』

夜刀神が即答する。

「たぬきだってかわいいぞ。な、京楽」

「ボクは、十四郎がそう言うなら、もっとかわいくなるよ」

そう言って、ぼふんと音をたてて、子たぬきになる。

「春水、かわいい」

「十四郎は綺麗だね。子猫でこんな美人な子、みたことがないよ」

二人だけの世界に入っていく浮竹と京楽を、にまにましながら、妖狐の浮竹(狐)と夜刀神(こうもり)は、見つめるのであった。

夜になり、それぞれパートナと眠りにつく。

夜が明けて朝になる頃には、時の呪いは解けて、人の姿になっていた。なので、白哉は早めに恋次をねかせたまま。リビングに移動していた。

「おはよう、白哉」

「おはよう、浮竹。京楽はどうした?」

「まだ寝ていたから、初めての変化で疲れているだろうから、まだ寝かせておいた。白哉も、絵恋次くんを寝かせたままなのだろ?」

「うむ」

「皆の分の朝食を作る。白哉、手を貸してくれ」

「兄がそれを望むのであれば」

浮竹と白哉は、6人分の朝食を用意するのであった。




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桜のあやかしと共に37

京楽は、桜鬼の姿でぼんやりと立っていた。

「京楽」

「十四郎、どうしたの」

浮竹の言葉にしか、反応しない。

一度妖狐の浮竹と夜刀神のところにいったのだが、やっぱりぼーっとして、浮竹の言葉に主に反応を示した。

しかし、妖狐の浮竹の尻尾をもふもふもして寝てしまったり、少しは桜鬼のまま闇にとらわれているのが薄くなってきた。

「京楽‥‥いや、春水。心配しなくても、俺はどこにも行かないし、お魔の傍にいる」

「うん。信じてる」

京楽は幸せそうな顔をする。

その頭を、浮竹は撫で続けた。



「河童の子供がいたずらをするんです」

いつだったか、河童の子供のを退治してくれと言われて、後まわしにしてそのまま忘れていたので、依頼者が再度京楽と浮竹の元を訪れた。

京楽は桜鬼の姿のままだったので、浮竹がさ蔵の術で人の姿に戻していた。

「河童の子供。興味ないね」

「あ、すみません。河童の子供の件は引きうけます。たざし、退治ではなく説得して悪戯をやめさせるか、移動させるかになると思います」

京楽の代わりに、浮竹が依頼を引き受けた。

依頼人は、河童の子供の悪戯がなくなれば、それでいいということで落ち着いて、帰っていった。

「春水、早く元に戻ってくれ」

浮竹は、京楽の頭をただひたすら撫でるのであった。



「河童の子供が出るのはこの辺りか」

依頼人に教えてもらった池に、きゅうりの罠をしかける。

2時間もしないうちに、河童の子供は罠にかかった。

「何するんだこんちくしょう!俺がこの池の主の河童の三平(さんぺい)と知っての仕業か!」

河童の子供、三平は、姿を現した浮竹に泥を投げた。

足首が罠にかかって移動できないでいるが、手は自由だった。

「浮竹に危害をくわえるの?消すよ?」

京楽が、桜鬼の姿になって、術を詠唱しだす。

「極滅破邪!天雷!」

「わあああああああああ!!!」

三平が悲鳴をあげる。だが、三平を浮竹が庇った。

浮竹は、額から血を流す。

「十四郎どうして!」

「こいつは、ただ悪戯を寂しいからして、人間にかまってもらいたいだけなんだ。そうだな?」

「う、うん」

三平は、震えながら頷く。

「春水、元に戻ってくれないなら、俺は一度桜の中で眠る」

「やだ、やだよ。いなくならないで。いつまでも一緒にいるって約束したじゃない」

「お前も、一緒に眠るんだ」

「ボクも?」

京楽は、浮竹の言葉に首を傾げる。

「半月ほど、お互い休眠しよう。桜に包まれて眠れば、お前の中の闇も消えるだろう。俺も一緒に眠るから」

「うん。十四郎が一緒なら、眠ってもいいよ」

河童の三平は、もう悪戯はしないと泣いて、池に戻っていった。

「眠ろう。闇も眠りにまではついてこない。目覚めた時は、元通りだ」

浮竹は、河童の三平の説得を終了したことを依頼人に報告してから、異界にある本体の桜の大樹の中に、京楽を抱きしめながら入り、眠りについた。

白哉にだけは、理由を説明しておいた。


浮竹と京楽がいなくなったと、少し騒ぎになったが、白哉が休みをとっているのだと、言い触れてくれた。

半月が経った。

京楽は目覚めた。

「十四郎、起きて」

浮竹の反応はない。

「十四郎が起きてくれないなら、ボクはもう一度眠るよ?そして起きてもまた十四郎が眠っていたなら、永遠の眠りに二人でついてしまおう」

「春水、そういう考えはよせ。俺はお前を失いたくないし、お前といれるこの時間が大切なんだ」

浮竹は起きた。

京楽の中の闇は消えていて、桜鬼の姿でもなかった。

「もう、闇に飲まれるな」

浮竹は、自分の唇を噛み切って、京楽にキスをして血を飲ませる。

「俺の、闇にとらわれないようにと言霊をこめた血だ。飲め」

「うん。君の血は甘美だね。何よりもおいしい」

「俺以外の血を、飲むなよ?」

「桜鬼になっても、十四郎以外の血はいらない」

京楽は、強く浮竹を抱きしめる。

大きな桜の木は満開で、ちらちらと花吹雪が二人を包み込む。

二人は、桜の大樹の下で近いあうように、深い口づけを交わし合う。

「もう、ボクは大丈夫。闇に飲まれても、十四郎が祓ってくれるから」

「約束だぞ、春水。俺を置いていくな。俺の傍にいろ。俺だけを見ていろ」

「うん」

浮竹は、子供のように我儘をいう。

それを、京楽は浮竹を抱きしめながら受け止める。

「ボクは君だけのもの。君だけのために生きて、死ぬ」

「死ぬときは、一緒だからな?」

浮竹涙を流しながら、京楽の背中に手を回す。

「泣かないで、十四郎。もう、ボクは大丈夫だから」

「本当だな?」

「うん。妖狐の君や夜刀神といちゃいちゃしていても、自制するから」

「いちゃいちゃなんてしない!」

浮竹が声をあげると、京楽はきょとんとなる。

「でも、妖狐の浮竹とキスしてたよね?」

「あ、あれはあいさつみたいなものだ」

「そう。ならいいんだけど」

京楽は、何度か桜鬼の姿になっては人に戻ることを繰り返していた。

「うん。桜鬼から普通に戻れる。夜刀神が言ってたね。ボクは人からあやかしになったから、闇に飲まれやすいみたいなこと。もしも、またボクが闇に飲まれたら、十四郎が元に戻して」

「仕方ないな‥‥‥」

そう言いながらも、闇を追い払い、元に戻った京楽の姿に浮竹は心から喜び、もしも京楽はまた闇に飲まれるようであれば。言霊を混ぜた血を与えて正気づかせるか、それでもだめなら、また桜の大樹で休眠しようと思うのだった。

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