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ボクだけの翡翠4

季節は夏になった。

長期夏季休暇に、尸魂界にはない現世の海にいくことになった。

浮竹と京楽で、夏の熱帯気候の沖縄に近い無人島にやってきた。

「ここの気候なら、大丈夫だと思ったんだけど・・・・」

浮竹は、夏に弱い。

よく倒れる。

遊びにきたのに、早速太陽の熱にやられてパラソルの下でカキ氷を食べながらなんとか涼んで、体調を戻そうとしていた。

「京楽、もう大丈夫だ。回道もかけたし、泳ごう」

「本当に大丈夫かい?無理してない?」

「せっかく現世の海にこれたんだぞ。泳がないと勿体ない!」

浮竹は、珊瑚礁の海の中を潜っていく。

その後をおって、京楽も海の中に潜る。

海の中は鮮やかな熱帯魚たちが泳いでいた。

「ん・・・・・・」

海の中で、口づけされて、ゴポリと空気の泡が浮かんでいく。

「んう」

周囲には、熱帯魚。

浮竹は限界になり、酸素を求めて海面に出た。京楽もその後を続く。

「な、京楽!海の中でキスなんてするな!」

「だって、君が綺麗だったから」

エメラルドグリーンの海に、翡翠の瞳は綺麗で綺麗で、泣きそうなほどに綺麗だった。

「キスする時は、普通にしろ」

キス自体には、怒っていなかった。

食べ物はあまりもってきていなかったので、釣り道具を出して魚を釣り、焼いて食べた。

貝やら魚やら、それにもってきた野菜を焼いて、バーベキューをした。

「こんな夏も、いいな」

「そうでしょ。絶対、思い出に残る」

「尸魂界にいても、熱いだけだからな。夏季休暇は課題を出されるが、すでに終わってしまった。2学期の授業再開まで、暇だったので誘ってくれて嬉しかった」

「あの課題の量、もう全部終わらせたの?まだ夏休みはじまって1週間とそこらだよ」

「簡単だったぞ?ちゃんと授業に出て、予習復習をしていれば、解ける問題ばかりだ」

京楽は、よく授業をさぼった。

浮竹に連れられて、授業に出る時もあるが、寝ていて授業の内容など頭に入っていなかった。

でも、鬼道や剣の稽古には毎度顔を出した。

京楽の剣の腕は凄く、もう特進クラスである浮竹と京楽のクラスで相手になる者は、浮竹くらいしかいなかった。

毎度、浮竹と本当の死闘のような、稽古試合を繰り広げる。

京楽と浮竹を目にかけている山じいの目に狂いはなく、将来絶対に隊長クラスまで上り詰めるだろうと、教師たちや試合を見にきた卯ノ花隊長などに、そう言われていた。

夜になり、真っ暗になる。

浮竹は夜目が効くので、枯れ木を集めて火を起こし、灯りにした。

「ああ、星が綺麗だね」

「本当だ。尸魂界の空にも星はあるが、現世の星はまるで落ちてきそうなほどに輝いているな」

「あ、流れ星だよ」

「え、どこだ!?」

その日は、ラッキーなことに流星群の降る日だった。

たくさんの流れ星を見ながら、京楽は浮竹の隣に座る。浮竹は、京楽と手を繋ぎながら、京楽の肩に頭を乗せて、もたれかかった。

「綺麗だね」

「うん、綺麗だな」

「あ、翡翠色の流れ星・・・・・・」

京楽が、流れ落ちていった星に手伸ばす。

「翡翠、好きだな?」

「君の瞳の色だからね。君は、ボクだけの翡翠だ」

「は、恥ずかしい奴」

浮竹は赤くなって、京楽の胸で顔を隠した。

「もう、寝ようか。明日は浜辺で遊ぼう」

「そうだな」

その夜は、お互い疲れていたのかすぐに眠ってしまった。

「起きろ、京楽、朝だぞ」

「んー。なんか、甘い匂いがする」

「パイナップルという果実だ。朝はこれですまそう」

見た目はとげとげしいかったが、調理器具をもってきていたので、ナイフで半分に切ると、食欲をそそる甘い匂いがした。

「ん、これ甘酸っぱい。酸っぱいようで、甘味が強いね。おいしい」

「尸魂界にも、探せばあると思うぞ。とりあえず、お腹いっぱいになるまで数がいるから、もう少しとってきてくれ。群生地を教える」

京楽は、パイナップルを5つほどとってきた。

それを全部切り分けて、平等に・・・・のつもりだったが、甘いものが好きな浮竹のために、3対2になるように分けた。

「すまん。お前の分まで食べてしまって」

「いいよ。君は食が基本細いから、甘いものをたくさん食べるのはいいことだよ

太陽が真上に昇りきる前に、砂浜でお城をつくったりした。

昼は、ヤドカリを焼いて食べた。

「もう少し滞在したいけど、ボクたちのような存在がいると、虚が集まる。虚をおびき出す前に、尸魂界に帰ろうか」

「そうだな。いくら無人島といっても、近くに大きな島国があるんだろう。虚が出るかもしれない」

念のためもってきていた、斬魄刀を撫でる。

二人は、まだ2回生だというのに浅打から、己の斬魄刀を作り出し、対話できるようになっていた。

「帰ろうか。尸魂界に」

「ああ、帰ろう」

砂浜は、誰もいなくなったけれど、立派な城が残されるのだった。

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ボクだけの翡翠3

結局、浮竹を襲った5人は退学処分となり、警邏隊に引き渡されて、京楽家の力が加わって5年強制労働の罰を受けた。

「京楽、次の授業はとってないよな?俺は受けるから、いつもの桜の木の上で待っていてくれ」

浮竹は、京楽に完全に依存していた。

京楽は、自分の欲を浮竹に見せずに、親友という位置を守り続けた。

浮竹の意識がないのをいいことに、何度か口づけして、キスマークを残したりしたが、あの5人のようになりたくなくて、無理強いはしないし、まだ好きだとも言っていなかった。

でも、浮竹もうすうす感じていた

京楽と、ただの親友でおさまる関係でなくなってきていることに。

ある日、眠っている浮竹に口づけると、翡翠の瞳がゆっくり見開かれた。

「京楽・・・・・・」

「浮竹、これは・・・・」

「ん、いいんだ。俺は、京楽のこと好きだ。その、こういう行為はまだ慣れてないけど、お前が俺のことを好きなように、俺もお前のことが・・・・」

「浮竹!」

「京楽、苦しい」

京楽は、涙を零しながら、浮竹を抱きしめた。

「少し、外を歩こうか。夜桜を見に行こう」

「うん」

浮竹と京楽は、手を繋いで外に出て、ゆっくり移動する。

「綺麗だな。夜桜」

「ボクは、浮竹のほうが綺麗に見える。散っていく花びらに混じって、そのまま消えてしまいそうに儚く見える」

「これでも、一応鍛えてるんだぞ」

「そのわりには筋肉あんまりついていないけどね」

「むう」

浮竹は口を尖らせた。

「その、この前は危ないところをありがとう。でも、京楽はあいつらとは違う。俺のことを一番に見てくれるし、俺を守ってくれる」

「そりゃ、君のことが好きだからね」

「その、恋人同士というのか。好き同士なら」

顔を赤くさせなながら、浮竹は続きを言う。

「京楽となら、恋人同士になっても、いい」

「本当に?浮竹、後悔したりしない?ボクも男だよ。あいつらと同じ欲をもっている。恋人同士になったら、抑えがきかないかもしれない」

「その、京楽は俺のこと考えてくれるだろう?無理やりとか、しないだろう?」

「当たり前でしょ!」

京楽の声が大きくなる。

「うん。俺、お前となら恋仲に落ちていいと、多分ずっと思ってた」

「浮竹?」

「第一印象は最悪だったけど、接しているうちに、ああ、こいつは俺を見てくれているんだなって・・・・・」

浮竹は、赤くなりながら手を差し出してきた。

「最初は、親友の一歩先からでお願いします!」

「ぷ・・・・あはははは」

「ちょ、京楽酷いぞ。俺の一大決心なのに」

「うん。ボクもよろしく。親友の一歩先からで」

京楽は、夜桜を見上げながら、浮竹を抱きしめる。

「京楽?」

「キス、していい?」

「キスくらいなら・・・・・」

「じゃあ、するよ?」

「んんう!」

浮竹の唇を無理やりこじ開けて、縮まっている舌を絡めとり、お互いの唾液を交じり合わせながら、ディープキスを繰り返す。

「きょうら・・・・・ふあっ」

浮竹は、京楽のテクニックの前では赤子のようだった。

「どうしたの?」

「立てない。腰にきた」

「瞬歩で帰ろうか。その、ボクが抜いてあげようか?」

「だ、だめだ!交際は順序がある!」」

浮竹曰く、肉体関係になるには最低でも1年は付き合わなけれはならないらしい。

京楽はもどかしいと思うが、浮竹を手に入れたので、それでもいいかと思った。

浮竹と京楽は、恋人同士になった。

それを察するに者はあまりいなかった。

甘い関係を匂わせるのは二人だけの時で、今はハグとキスだけだった。

そんな関係が半年続き、京楽は焦らずに浮竹が体を許してくれるのを待った。

半年が経って、お互い一緒に入浴するようになった。

浮竹は京楽の逞しい体を羨ましがった。

京楽は線の細い浮竹の体を見て、欲情していた。

「君をめちゃめちゃにしたい」

「でも、しないだろう?」

「うん。君を大切にしたいから」

「その・・・抜きあいっこなら、いいぞ」

その言葉に、京楽は鳶色の瞳を細めた。

「じゃあ、遠慮なく」

「え、あ、はう、ああああ」

浮竹のものに手をはわせて、それから躊躇もなく口に含んだ。

「んんっ」

全体をしごきながら、舐めあげて先端を舌で刺激すると、浮竹は我慢できずに精液を京楽の口の中に放っていた。

「ああ、やああ、京楽、はき出せ」

京楽は、見せつけるようにゴクリとそれを嚥下する。

「京楽!」

「次は浮竹の番だよ?それとも、もっと抜いてほしい?」

「い、いらない。俺がする・・・・その、口ではまだ無理だけど・・・」

京楽の勃起した、自分のものよりはるかに巨大なそれに手をはわせて、しごきあげて、鈴口に爪をたてると、京楽はたまっていた精液を浮竹の顔にかけてしまった。

「ごめん、顔射しちゃった」

「顔射?それってなんだ?」

ある意味純粋培養な浮竹に、男同士のやり方や気持ちのいい場所を教えていく。

浮竹は、真っ赤になってそれを聞いていた。


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ボクだけの翡翠2

「雪だ!」

浮竹は、院生服のまま外にでて、雪兎を作っていた。

「だめだよ、浮竹。ちゃんと上着着なきゃ」

「でも、雪だぞ。瀞霊廷では滅多に降らない。俺が生まれた流魂街でも降らなかった」

本当に雪が積もるほど降るのは珍しく、京楽は浮竹に上着とマフラーと手袋をさせて、浮竹が雪だるまを作るのを手伝った。

「けっこう重労働だね。雪だるま作るのって」

「目は・・・この木の実でいいか。枝を腕にしよう」

適当な位置に茂っていた、葉のない枝を折って、浮竹は雪だるまの腕にした。

「っくしょん」

「ああ、浮竹、もうだめだよ。雪遊びはおしまい。これ以上してたら、風邪をひく」

「多分、もうひいてるかもしれない」

その言葉通り、浮竹は次の日には熱を出し、咳をしていた。

「おかゆ、作ってもらったよ。病院で風邪薬もらってきたから、食べたら飲んでね」

「京楽、そのすまない。せっかくの冬の長期休みなのに、お前は家族のところにも帰らず、俺が寮で過ごすと言い出したから、一緒にいてくれるんだろう?」

「違うよ。ボクの家族はボクをこの学院に放りこんだからね。放蕩息子に嫌気がさしたんだろうさ。今頃実家に帰っても、いい顔をされないよ」

本当は、ずっと浮竹の傍にいたいから、とは言い出せなかった。

浮竹は、困ったような顔をしてから、おかゆを少し食べて風邪薬を飲むと、眠ってしまった。


「ねぇ、浮竹。ボクが、君のことを抱きたいくらいに君が好きって言ったら、どう思う?」

意識のない浮竹の少し伸びた白髪を、手ですいてみる。

浮竹は自分の白い髪が嫌いなのだそうだが、綺麗だから伸ばせばいいと京楽が言ってから、髪を切るのを止めてしまった。

「ねぇ、なんで髪伸ばしてくれてるの?ボクが綺麗だからって言ったせい?」

浮竹の眠りは深く、起きない。

「浮竹・・・・好き、だよ」

意識のない浮竹に、触れるだけの口づけをしてから、京楽は頭を冷やすために風呂に入るのだった。



季節は移りかわり、春になった。

2回生になっていた。

相変わらず浮竹の傍には京楽がいて、浮竹狙いの女子には邪魔な相手だった。

浮竹は、女の子にそれなりにもてた。病弱で下級貴族だが、可憐な容姿をしていて、彼女になりたがる女の子はけっこういた。

でも、みんな告白する前に京楽に告白されて、しばらく付きあったのち振られた。

「もう、春水ってばさいてー。浮竹君狙いだったのに」

「浮竹には、無垢なままでいてほしい」

「なにそれー。あたし、わかんなーい」

馬鹿な頭の女の子を振って、浮竹を守った。

浮竹は、その見た目のせいで男にまでもてた。

男の先輩からラブレターをもらった日には、どうしようと相談してきた。

その気はないと言えばいいというと、怖くて一人では会えないというので、京楽がついていった。

「すみません、俺にはそういう気はないので」

「じゃあ、その側の京楽ってのはなんだよ。お前狙いなんだろ?」

「京楽を侮辱しないでもらいたい。京楽はかけがえのない、俺の親友です」

親友。

そのポジションは、心地よかった。

「ちっ、俺は諦めねーからな」

男の先輩を振った数日後、女の名前で浮竹は呼び出された。

浮竹に変な虫がついてほしくないので、そっと後をつける。

「きたきた。なかなか上玉じゃん。はやく、まわしちまおうぜ」

「え?」

浮竹はいきなり無人の教室の床に押し倒されて、手首を縄で戒められて、院生服をびりっとやぶかれた。

「は、破道の・・んんん」

口にタオルをつっこまれて、浮竹はあまりさらさない白い肌を、男たちの前で見せることになる。

「俺は諦めねーっていっただろ。お前、一度自分のこと理解すればいいんだ。一部の男は、お前をこうした目で見てるってことにな!!!」

「んんーーー!!!」

びりっとさらに院制服を破かれて、浮竹は涙を流す。

「そこまでだよ」

ゆらりと、京楽が凄まじい霊圧でその場を支配した。

「ちっ、またお前かよ!邪魔すんなよ。あ、そっか。お前も仲間に入るか?」

「んーーー!!」

浮竹は、京楽と叫んでいるらしかった。

「その汚いいちもつ、直してくれない?そのかっこのまま、気絶したくないでしょ?」

「うっせぇな。もういい、こいつたたんじまおうぜ。それから、こいつが見ている前で浮竹を輪姦だ」

「んんん!!!」

浮竹は、泣きながら恐怖に震え、京楽を見ていた。

数は五人。対して、こちらは京楽一人。

「やっちまえ」

「おう」

京楽は、鬼道を唱えた。

「破道の4、白雷」

本来なら、人に向かって使用してはいけない、鬼道だった。

「ぎゃああああ」

「ぐぎゃああああ」

足を貫かれて、動けない相手を蹴り飛ばして、顔面を殴る。鼻血が顔面を汚すまで、殴ったり蹴ったりした。

「もう、君たちは学院にはいられないからね?浮竹が、理事長である山じいのお気に入りだって、知らなかったでしょ。この件は山じいに訴える。あと、京楽家の、上流貴族の力で退学後もしばらくは豚箱行きだからね」

「ひいいい」

京楽がふと我に返った時には、全員床の伸びていた。

「んん・・・・・」

「浮竹!ごめんね、すぐにタオルとってあげるし、縄もといてあげる」

「ん・・・京楽、京楽!怖かった!」

浮竹は、肌も露わな上半身をさらして、京楽に抱き着いた。

涙で揺れる翡翠の瞳に、思わずぞくりとなる。

「寮の部屋に帰ろう。こいつらの始末は、京楽家の人間に任せて?」

「うん・・・・・・」

浮竹は、いかにも強姦未遂されましたという出で立ちで、困った京楽は、医務室にいって誰もいないのを確認すると、シーツで浮竹を包んで、瞬歩で寮の部屋に戻った。

破れた院生の服を室内着に着替えさせて、ショックでガタガタ震えている浮竹を抱きしめる。

「怖かった・・・・怖くて、怖くて・・・」

「大丈夫、君の傍にはボクがいる。ボクが、君を守るから」

「京楽・・・・ありがとう」

京楽に抱きしめられながら、浮竹は眠ってしまった。




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ボクだけの翡翠

それは、ボクだけの翡翠。

ボクだけの。




出会いは、山じいの紹介から始まった。

「この子は、お前と同じ寮の部屋に入る相手じゃ。肺を病んでいて、時折血を吐く上に病弱じゃ。じゃが、死神になるのに申し分ない素質をもっておる」

正直、その子を見たとき、翡翠が輝いていると思った。

翡翠の瞳に白い髪の、綺麗な子だった。

「ボク、女の子には優しいよ?」

「俺は浮竹十四郎。男だ!」

浮竹と名乗った翡翠の瞳をもつ、少女でなく少年は、性別を間違えられたことに怒って違う方向を向いてしまった。

「こりゃ、十四郎。これからこの春水と一緒に生活するのじゃぞ。仲良くせんか」

「ごめんごめん。あまりに綺麗な翡翠の瞳に綺麗な顔立ちをしているから、女の子と思っちゃった。悪気はなかったんだ。許してよ」

「・・・・・許してやる。名は?」

「京楽春水。本名はもっと長いんだけど、これで通してる」

「上流貴族か」

「そうだよ」

「俺も下級だが貴族だ。だが、上流貴族だからって、命令とかしても聞かないからな」

第一印象は、最悪のようであった。

その日から、一緒に生活するようになった。

出会いの悪印象は一日で解けて、浮竹はボクの後を追ってくる、子犬みたいだった。

「京楽、次の授業とってるだろう?席をとっておくな?」

「あー次の授業は・・・・・」

「さぼりはだめだぞ。先週さぼっただろう!」

浮竹は、体が弱くて病気がちで授業を休むこともあったが、基本真面目で必須科目以外の座学もとっていた。

鬼道と木刀をもった稽古試合の実力は、目を見張るものがあった。

「次。はい、お前の負け。次!」

次々と木刀で、相手をしてくる者を叩き伏せる。

「次は、ボクだよ」

「京楽か・・・手加減はしないぞ」

「ボクだって」

何度も切り結びあい、お互い息が上がってきた。

それでも、京楽も浮竹も心の底から楽しんでいた。この相手ともっと剣を交えたい、と。

「ごほっ」

浮竹が咳き込み、血を吐いたのを京楽は見ていた。

血を吐いてもなお、木刀を落とさずに切りかかってくる。

その切っ先は、京楽の喉もと。

「参った。ボクの負けだよ」

「ふふ、あの京楽に勝ったぞ。ごほっ、ごほっ・・・・ぐ・・・・・」

ますます咳き込んで、血を吐く京楽を抱き上げて、医務室まで走る。

「すまない、京楽」

「何、負けたのはボクだしね。それにしても、発作が起きてるのにボクに勝つなんて、君、本当に才能あるね」

「鍛錬はできるだけしているからな。先生にも教えてもらっている」

この場合の先生とは、山じいのことだ。

道理で、強いわけだ。

山じいの指導は厳しくて、音を上げる者が殆どだと聞いた。

そんな中、この浮竹は山じいに教えをこい、それを紙が水を吸収するように覚えていくのだろう。

ほしい。

この翡翠が欲しい。

始めて出会った時から、胸は高鳴る一方だった。

同じ性別なので、何かの勘違いかと思っていたのだが、浮竹の一足一挙動が、京楽の心を刺激した。

医務室に行くと、担当医はおらず、ベッドに浮竹を寝かせると、布団をかけてやった。

「ごほっごほっ」

「待ってて。今、水をはったたらいとタオルもってくるから」

院生の服を赤く染める浮竹が心配すぎて、本当は離れたくなかったけれど、浮竹のためだと言い聞かせて、水をはったたらいとタオルで、口元の血を拭う。

「熱があるんじゃない?」

「ん・・・そういえば、朝から体がだるくて、少し熱っぽかった」

体温計で測ると、38度となっていた。

「完全に病人じゃない!そんな体でよくボクに勝てたね」

「熱を出すのはいつものことだ。慣れている」

浮竹は、京楽に濡れたタオルを額に置いてもらいながら、布団をかぶりなおした。

「今度から、熱が出たり出そうだったりする時はボクに言って。簡単なものだけど、回道かけるから」

「京楽、お前もう回道を使えるのか」

「山じいにしごかれて、自分でできた傷を治しているうちに、自然とね」

「俺も回道を使えるようになりたい」

「そのうち、授業で教えてくれるはずだよ」

京楽はそう言うが、浮竹は首を横に振った。

「お前が教えてくれ。少しでも、自分で治して周囲への負担を軽くしたい」

「いいよ。でも、その代わり・・・・ねぇ、ボクと同じベッドで眠って?」

「は?」

浮竹は、翡翠の瞳を見開いた。

「添い寝だよ、添い寝」

「普通、そういうのは女の子に頼まないか?お前、もてるんだろう?」

「もてるよ。でも、飽きちゃった」

「なんだ、それ」

京楽は苦笑した。

「まぁ、いいぞ。添い寝くらい。同じベッドで眠るだけなんだろう。今年の冬は寒いっていうし・・・・・・」

浮竹は、京楽に下心があるなんて、微塵も疑わなかった。

京楽は、下心で浮竹の純粋である部分を侵食していく。

出会いは桜の咲く春。

今は、冬がこようとしていた。

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いちご、すきだ

「いちご、好きだ」

「え、ルキア?」

「何を惚けておる。苺が好きなのだと言っている。貴様の苺をよこせ」

ルキアは今、一護の家に居候している。

夕飯の席でのいきなりの「好きだ」発言に、みんな「ええ!?」っていう顔になったが、デザートで出された苺が甘くておいしくて、ルキアは気に入って、一護の分まで食べた。

「はぁ。ドキッとして損した。俺の青春を返せ」

「はぁ?何を惚けたことを言っている」

すでに余所行きの口調は疲れるし、いつまでも騙せないので、いつものルキアのふるまいで一護の家族とも接していた。

「貴様の名も一護だったな。ふふ、私が貴様を好きだといったと勘違いしたのであろう」

「うっせ。風呂入ってくる」

一護は、自分の分の苺を全部ルキアにとられて、もうどうでもいいようなかんじで、風呂に行ってしまった。

「変な奴だ」

ルキアは、2階の一護の寝室のベッドに寝転がる。

目を閉じると、急激な眠気が襲ってきて、ルキアは眠ってしまった。

「おい、ルキア、風呂入れって親父が・・・・・寝てんのか?」




「一護、好きだ・・・一護・・・・・」

「はぁ、また苺かよ」

ルキアのふっくらとした唇に、指で触れる。

一護は、ルキアが寝ているのをいいことに、キスをした。

その瞬間ルキアの目が開いて、ゴンと、二人は額をぶつけあう。

「な、き、貴様、今、私に何をした!?」

「何って、ただのキス。俺はルキアのこと好きだから。好きな子が自分の部屋にいるんだ。少しくらいちょっかいかけても、かまわねぇだろ?」

「な!」

ルキアがボンと音をたてて真っ赤になった。

「貴様、私のことを好いているというのか」

「そうだぜ。好きだって、いつも常日頃から言ってるだろ」

「友情や家族の好きだと思っていた・・・・・・」

「ひでぇ」

「わ、私も・・・・・・」

一護は首を傾げる。

「私も?その続きは?」

「私も・・・・・一護のことが、好きだ!」

押し入れからコンを取り出して、好きだといいながら、コンを一護の顔に押し付けた。

「姉さん、ひでぇ!」

「おいルキア、コンを使うな」

かあああと、真っ赤になったルキアはかわいかった。

いつもかわいし、可憐な容姿をしているが、今は特別かわいく見えた。

「俺たち、両想いなんだな。じゃあ、付き合うか」

「つ、付き合う!?」

「なんだ、嫌なのか?」

「私は死神で、貴様は人間だぞ」

「愛に、種族も性別もかんけぇねえ」

「そのような言葉だと、私が男だったとしても好きだと言っているように聞こえる」

「ルキアは女の子だろ。例えで話しただけで、俺は女の子しか好きじゃねぇ」

「い、井上がいるであろうが!」

つい先日、井上が一護に告白しのをルキアは知っていた。

それを断ったことまでは知らなかった。

「ああ、井上の告白なら断った。ルキアのことが好きだからって」

「なななな、な!」

ルキアは真っ赤になって、ぼふんと音を立てて倒れた。

「おい、ルキア!?」

のそりと立ち上がり、お風呂セットを手に、部屋の扉をあける。

「風呂に入ってくる・・・少し、頭を冷やしてくる・・・・」

逃げるように、ルキアは一護の前から去った。

ルキアが風呂からあがり、一護の部屋の前で入るのを躊躇っていると、一護が扉をあけてルキアを抱きしめた。

「な、一護!?」

「好きだって言ったよな。お前も俺のこと好きだって。今日もいつもみたいに、一緒に寝ようぜ」

一護は、ルキアを腕の中に抱いて眠る。

今まで恥ずかしくもなかった行為なのだが、好きで好きだと言われて、すごく恥ずかしく思えた。

「わ、私は押入れで寝る・・・・・」

「何もしやしねぇよ。押し入れなんかで寝るなよ。一緒に寝ようぜ」

「しかし・・・・」

「ほら、明日も学校があるんだ。早めに寝ようぜ?」

ルキアを抱きしめて、一護は電気を消すと、すーすーとすぐに眠ってしまった。

「ううう・・・近すぎる。緊張して眠れぬ」

一護の腰にまわされた手を握り返しながらいろいろ考えていると、そのうち睡魔が襲ってきて眠ってしまった。

「ルキア、朝だぜ、起きろ」

「うーん、あと10分・・・・・」

「昨日なかなか寝付けなかったのか?」

「誰かのせいでな!」

ルキアは悪態をつくが、一護は嬉しそうにしていた。

「俺のこと、意識してくれたのか。ルキア、すっげぇかわいい」

「な!」

朝ごはんに呼ばれて、顔が赤いままトーストとサラダを食べて、そのまま登校する。

「手、繋ごうぜ」

「た、たわけ!誰かが見ていたらどうするのだ」

「ああ、今日の朝のうちに、スマホで井上とチャドと石田に、ルキアと付き合うことになったってメッセージ送っておいた」

「ななななな!!!」

ルキアは、これはもう観念するいしかないと思った。

「一護、手を繋ぐぞ。こうなればやけだ。貴様との交際を兄様にも認めてもらう」

「白哉、許してくれるかな?」

「兄様は、私の幸せを一番に考えてくれる。反対はすまい。ただし、浮気などしたら兄様の千本桜で塵一つこの世からなくなると思え」

「うわ、こえー。でも、ルキア以外に興味ねーよ。好きだぜ、ルキア」

「わ・・・・・私も貴様のことが好きだ、一護」

初々しく、手を繋ぎながら登校する。

学校では、ルキアと一護が付きあいだしたと、大騒ぎであった。

一応、水色と啓吾にも報告したのがいけなかったらしい。

「よ、ご両人、お揃いで」

「一護の裏切者おおおお」

朝からハイテンションな水色と啓吾と適当に会話して、一護とルキアは今週の日曜に初デートする約束をするのであった。



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オメガバース恋白4

白哉は、アルファとして振る舞っているが、実はオメガだ。

もうその事実は、貴族の間でも護廷13隊の間でも広まってしまい、隠しようがなかったが、あくまでアルファのように日々を送った。

「隊長、大丈夫っすか?そろそろヒートくる頃っすよね」

「くどい。ヒート抑制剤の新しい新薬を飲んでいる。ヒートはしばらく来ぬ」

「そんな、薬ばかりに頼ってると、体に悪いですよ」

恋次は、白哉のもっていた書類の束を持って、机に置いた。

「今は仕事がたまっている。仕事に集中しろ」

「はいはい」

今日も、白哉は美人だと恋次は思った。

少し長めの黒髪はさらさらで、全く日に焼けていない肌、どこか甘い香りがして、長いまつ毛に囲まれた黒曜石の瞳は、潤んでいるように見えた。

「恋次・・・・・すまぬ、ヒートだ」

「隊長?」

「く、新薬は効果が薄いか・・・・ヒートがきたと言っているのだ。相手をせよ」

「ええっ。ここでですか?」

「違う。隊首室にベッドがあっただろう。あそこでだ」

念のため、恋次は隊首室に潤滑油やらアフターピルやらを用意していた。

それを知らない白哉ではなかった。

「歩くのが億劫だ。抱き上げろ」

「お姫様っすね」

「千本桜で、切り刻まれたいか」

「う、嘘っす。抱き上げますよ」

同じ男にしては華奢すぎる体は、軽かった。

横抱きにして、隊首室まで移動して、ベッドの上に座らせる。

白哉は、自分から恋次に口づけし、口を開いて舌を入れた。

「た、隊長・・・・・」

「黙れ」

恋次の我慢の紐は、すぐにちぎれてしまった。

「んう」

深く白哉に口づけて、舌を絡めとると、唾液がまじりあうくらいにキスを繰り返す。

「あっ」

白哉の隊長羽織と死覇装やもろもろのものをはぎとって、裸にすると、白哉は目を細めた。

「お前も脱げ」

「言われなくても・・・・」

恋次も死覇装を脱いで、鍛えぬいた逞しい体をさらす。

「隊長、愛してます」

白哉の首筋をなめて、キスマークを残し、下へ下へと唇をはわせていく。

胸の先端を甘噛みすると、ピクリと白哉が動いた。

「気もちいいっすか?」

「し、知らぬ」

「ほんと、素直じゃないっすね」

白哉のものを直接口に含んで愛撫してやれば、ビクンと白哉は体をはねさせる。

「ああああ!!」

ヒート期間以外に交わることはあまりないので、けっこう濃いめの精子を白哉は恋次の口の中に吐き出していた。

「濃いっすね。ドロドロだ」

「う、うるさい」

「指、いれますよ」

「んああああ」

潤滑油に濡れた指を蕾に入れて、ばらばらに動かす。

もう片方の手で、まだ萎えていない白哉のものをしごいた。

「ひあああ!!」

指がこりこりと前立腺を刺激して、白哉は中いきと同時に精液を吐き出していた。

「俺も、我慢の限界っす。いれますよ?」

「ん・・こい」

「あっちい・・・・・」

恋次は、己のものを自然に濡れている白哉の蕾にあてがい、貫いた。

「ひああああ!あ!」

白哉は挿入された瞬間、頭が真っ白になった。

快感だけに支配されて、オメガの浅はかな性欲が出てくる。

「あ、や・・・・」

「ここ、こんなに濡らして、いやじゃないですよね?」

「やあっ」

恋次は、白哉の足を肩に担ぐと、奥まで挿入した。

ごりごりと最奥の子宮がある場所まで入り込む。

「やあああ、深い・・・・・」

「きもちいいっすか?」

「あ、し、知らぬ・・・・・」

「ほんと、あんたって素直じゃないっすね」

ぱんぱんと腰を打ち付けると、白哉は恋次の背中に手をまわして、背中に爪をたてる。

「すごいきもいいっす、隊長」

「あ、あ、あ!」

恋次は、リズミカルに動く。

時に浅く、時に深く。

「あああああ!!!」

白哉が快感で真っ白になった瞬間に、恋次は白哉の子宮の奥に子種をたっぷり注いでいた。

「まだ、足りないっすよね?俺も抱くの久しぶりだから、止まらないっす」

「やあああ」

白哉は首を縦に振るが、恋次は白哉の足を広げさせて、奥を貫いた。

「んあ!はう!」

ごりごりと奥を抉ってやると、白哉の締め付けが強くなった。

「ああ、いっちゃてるんすね。いくらでもいちゃってください。後始末とか全部俺がするし、アフターピルも飲ませるんで」

「いあああ!!」

白哉はあまりの快感に涙を流していた。

その涙を、恋次が舐めとる。

「愛してます、隊長」

恋次は番だ。

白哉も恋次を愛しているが、あまり言葉にしてくれない。

「隊長はどうっすか?俺のこと、愛してますか?」

「あ、あ、し、知らぬ」

「じゃあ、もう終わっちゃいますよ?」

熱い熱がずるりと引き抜かれていき、それを締め付けて白哉は甘ったるい声を出した。

「あ、あ、恋次、愛している・・・・・私だけの、番・・・・」

ぱちゅん!

再び貫くと、白哉は精液を吐き出していた。

「あああ、頭が、真っ白に・・・・・・」

「気、失ってもいいっすよ。後始末は全部俺がするんで」

ぐりぐりと子宮に侵入してきた恋次のものは、子種をまき散らす。白哉の舌を絡めとるキスをしながら、欲望をたっぷりと白哉の中に注ぎこんだ。

「恋次・・・・・すまぬ、もう、意識が・・・・・」

「いいっすよ。ヒート期間の始まりっすから、眠るかセックスするかのどっちかしか大抵しない。いった勢いのまま、寝てください。どうせ、予兆があって寝れなかったんでしょう?寝不足の顔してますよ」

「ああああああ!!!」

白哉は中いきをして、喘いでそのまま意識を闇に落としていった。


次に気づくと、朽木家の自分の部屋で寝かされていた。

身は綺麗に清められており、アフターピルも飲んだようで、子を孕んだかんじはしなかった。

「私は・・・なぜ、オメガなのだ」

自分の浅はかな欲と、それを巻き起こすヒートが憎い。

でも、愛しい者ができた。

緋真を愛し失ってから、もう二度と作らぬと思っていた、愛しい者が。

「恋次」

「はい」

「わ!」

白哉はびっくりした。

恋次が、白哉の布団の隣で布団をしいて、寝ていたのだ。起きてはいたが、寝ようとしているところだったようだ。

「あ、念のためもっかいアフターピル飲むっすか?」

「うむ」

白い錠剤と、水の入ったコップを受け取って、胃に流しこむ。

「すまぬ、恋次。ヒート期間は、世話になる」

「何言ってるんすか。俺たち、番でしょう?隊長がヒートになったら、相手してなだめるのが俺の役割っす」

「本当に、オメガというのは厄介だ」

「でも、お陰で隊長を手に入れられた。他のアルファには、気を許さぬようにしてくださいっす。隊長綺麗な上にオメガで、4大貴族朽木家当主だから、狙われやすい」

「私は弱くない。返り討ちにできる」

「でも、ヒート期間はそうは言ってられないでしょ」

「むう・・・・・」

眉間に皺を寄せる白哉に、キスをして、恋次は白哉の布団にもぐりこんだ。

「なんのつもりだ」

「添い寝っすよ」

「いらぬ」

「まぁ、そう言わずに」

またキスされて、今度は舌をからめとられて、ズクンと体が疼きそうになった。

「お前など知らぬ。寝る」

白哉は、恋次を布団から叩き出すと、横になってすぐに眠ってしまった。

「ほんと、俺のお姫様は素直じゃないっすね・・・・・」

隣の布団にもぐりこみ、恋次も眠ることにした。

ヒート期間は1週間は続く。

白哉は抑制剤を飲んで軽いヒートにすませているが、それでもヒート期間は辛い。番となっているから安心できるが、もしも番とならずに上流貴族にでも抱かれて、子でも身籠った日には、恋次は怒りで白哉をきっと奪うだろう。

「おやすみなさい、俺の隊長」

眠る白哉に触れるだけのキスをする、恋次だった。

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奴隷竜とSランク冒険者30

海底にある地下Sランクダンジョンをクリアした。

報酬は、水を大量にだして、水圧で圧死させるウォータープレッシャーの魔法と、綺麗な細工がされたエメラルドのはめこまれた指輪だった。

鑑定すると、マジックアイテムで、一度行ったことのある場所にワープできると書いてあった。

浮竹は、その言葉を信じて指輪をつけてしまった。

パリンと、指輪が音を立てた。

長い時間放置されていたので、呪いがかけられていたのだ。

「は、外れない・・・・」

「大地母神の神殿にいこう。呪いを解呪してもらおう」

呪いの効果が、少しずつHPを削っていくという悪質なものだったため、浮竹は自分のアンチカースの魔法で解呪しようとしたが、失敗した。

ヒールをかけ続けて、HPが0になるのを防ぐ。

HPが0になれば、すなわち死だ。

呪いによる死は、蘇生の魔法リザレクションの奇跡がおこりにくい。

大地母神の神殿にいき、大金を払って大神官に見てもらったが、古代の呪いで解けないとのことで、浮竹と京楽は慌てた。

ヒールをかけ続けれる今はいい。ヒール程度の魔法なら、ずっとかけ続けれる。

でも、寝ている間もHPが削られていくので、これは厄介な呪いだと理解した二人は、ハイエルフの浮竹とダークネスドラゴンの京楽の元に行った。

「Sランクダンジョンの報酬の指輪が、呪われていたんだ。HPがずっと減り続けるという、古代の呪いで、大地母神の大神官でも解けなかった。なんとかならないか?」

「ボクが悪いんだよ。鑑定スキルで全てを見抜けなかった」

ハイエルフの浮竹は、浮竹の呪いの指輪を見て、中央大図書館に皆で移動すると、一冊の古い魔法書を出した。

『ハイネスアンチカースの魔法だ。覚えるといい。この魔法なら、どんな呪いでも解いてくれるはずだ』

「ありがたい。ユニークスキル「オボエルモノ」があるので、俺が覚える」

「ボクも覚える!浮竹に何かあった時、ボクも使えるようにしたい」

浮竹と京楽は、ハイネスアンチカースの魔法を覚えて、早速浮竹の指輪にかけた。

パリンと音がして、呪いは砕け散った。

『それにしても、少しずつHPが減るなんて、また嫌がらせのような呪いだな』

『その呪い、聞いたことあるけどね。確か、あいぜむだったか、あいぜあだったかの魔王が得意とする魔法に、特殊な呪いをかけれるのがあったはずだよ』

「藍染じゃないのか?」

『ああ、そんな名前だったね。興味ないから、覚えてなかったよ』

中央大図書館に一度侵入し、魔法書を盗んでいった魔王は、ダークネスドラゴンの京楽の記憶から名前がさっぱり覚えてもらえていなかった。

『藍染・・・・どこかにめもしないと、また忘れそうだ。どうでもいい奴だから』

ダークネスドラゴンの京楽は、メモ用紙に藍染と書いた。

「ダークネスドラゴンの王種に覚えてもらえない魔王・・・ちょっと笑える」

「モレ草もられた魔王として覚えればいいんじゃない?」

浮竹と京楽の言葉に、ダークネスドラゴンの京楽は手を叩いた。

『なるほど。モレ草をもられてもらした魔王としてなら、名前覚えれそうだよ』



「はっくしょい」

その頃、藍染はくしゃみをしていた。

「ふふ、誰かが私の偉業を口にしているのかな」

そんなことを言っていた。

ちなみに、この後の夕飯にまたモレ草をもられるのであった。




「ハイネスアンチカース、ハイネスアンチカース、ハイネスアンチカース」

浮竹は、今まで呪いがかかって、売れなかったマジックアイテムをかたっぱしから古代の解呪魔法で呪いをといていく。

「オリハルコンの剣とか・・・・・けっこう、金になりそうなものに特殊な呪いが多いんだよね」

京楽は、浮竹が解呪したマジックアイテムを、別のアイテムポケットに収納していく。

「今まで、呪いが解けなくて売れなかったマジックアイテムけっこうあるからな。解呪して売れば、けっこうな額になりそうだ」

浮竹は、臨時収入だと喜んだ。

『ダンジョンのマジックアイテムはたまに呪われてることあるからな。普通のアンチカースの魔法や神官で解ける呪いがほとんどだが、古代のマジックアイテムだと、ちょっと特殊な呪いがかかっていてもおかしくはないな』

ハイエルフの浮竹は、水の上を歩ける靴というのを見て、少し欲しがった。

『これ、もらえるか?』

「ああ、いいぞ。ハイエルフの俺には、いつも世話になっているからな」

「それ、売っても安そうだし、もっていってもいいよ」

浮竹と京楽の許可を得て、ハイエルフの浮竹は水の上を歩ける靴手に入れた。

『そんな靴もらって、どうするの?』

『海を歩ける魔法を作る基礎として、使おうかと』

『海の上歩けるって、なんかメリットある?』

『船から落ちても、溺れない』

『まぁ、確かにそうだね。でも、船乗りは魔法を使ったりしないから、海のフィールドがあるダンジョンで使いそうだね』

浮竹が、目をきらきらさせてハイエルフの浮竹を見つめる。

「魔法、今作れるのか?」

『うん』

「作る瞬間、見てみたい」

「ボクも」

二人の要望を受け取って、錬金術の鍋を取り出して、マンドレイクやらなんやらを放り込んで、最後に白い何も書いていない魔法書を取り出して、魔法を刻み込む。

『ほら、完成だ』

「マンドレイク・・・・」

「マンドレイクだね。あと竜の血と」

『竜の血はボクのものだよ』

ドラゴンの血は、その魔法に属するドラゴンの血が必要だった。大抵は、ダークネスドラゴンの京楽の血を代替えにしてまかなっている。

『どうだ、簡単だろう?』

ハイエルフの浮竹はそう言うが、魔法書をつくるだけの魔力はもっておらず、真似はできなかった。

「あの方法で魔法書って作れるのか。なんか、もっと仰々しい魔法陣とか描いて、瞑想して作るものだと思ってた」

「ボクは、魔力を筆にこめて、書いていくものだとばかり思っていたよ」

『まぁ、魔法陣が書かれた紙の上に、必要な道具を置いて作る方法もあるけどな』

「そっちのほうが、魔法書を作ってるってかんじするな」

浮竹がそう言う。

『ちなみに、魔法名はウォーターウォークだ。禁忌でもないから、気軽に覚えていいぞ』

「じゃあ、早速」

「ボクも」

浮竹と京楽は、ウォーターウォークの魔法を覚えて、近くの湖でためしに水の上を歩いて、はしゃぐのだった。





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え、生きてる?5

虚圏にいた頃は、京楽がちょくちょく会いにきてくれたから、寂しくはなかった。

むしろ、霊王宮に居た頃のほうが、寂しかった。

こちら側からでは京楽のことは見えるのに、会えない。

京楽は、言葉通り浮竹を拉致した。

現世ではなく、あえて虚圏という誰もが思いつかない世界に匿った。

「朝だよ、浮竹」

「んー、あと10分・・・・・」

「出勤の時間だよ?」

「わあああ、それを早く行ってくれ!飯は一番隊隊舎についたら、簡単なのを食べる」

「そう言うだろうと思って、おむすび作ってもらっておいたよ」

「ありがとう、助かる」

真新しい死覇装に袖を通して、浮竹は京楽の補佐として、今日も京楽の隣にいる。

「さぁ、今日もばりばり仕事するぞ」

「ほどほどにね・・・・君が手伝ってくれるるようになってから、書類の仕事が増えて増えて、君がいなかった間苦労したよ」

浮竹は、桜の咲きはじめた京楽の館を出て、小走りに歩く。

それから、京楽に振り向いた。

「俺を、あの鳥かごから助けてくれてありがとう」

「どういたしまして」

「俺には、まだ霊王の残滓が残っている。多分、一生消えない。それでも、傍にいてくれるか?」

「もちろんだよ。君の傍で、君と同じ時間を生きて、死んでいく」

「死ぬのは、千年以上先かもな!」

浮竹は朗らかに笑い、京楽と手を繋いで歩きだす。

霊王には、新しい流魂街出身の子がなった。

悪いことをしたと思っているが、流魂街での暮らしよりは、霊王としての暮らしのほうがましだろう。

「きゃあ、元霊王様よ」

「すてき。元霊王様と、その旦那様の総隊長よ」

仲を隠さなかったので、浮竹と京楽は瀞霊廷でも有名なカップルになっていた。

元霊王だからと、浮竹に懸想するバカがいれば、京楽が記憶いじったりして、ライバルが出ないようにした。

「春の天気は、心地いいな」

「春でも、まだ寒いでしょ。ほら、隊長羽織かしてあげるから」

「ありがとう」

浮竹と、京楽は、ゆっくりと歩んでいく。

霊王として蘇りを果たして、それを放棄しても、命は奪われなかった。

霊王の残滓が、残念だ残念だと泣くが、浮竹は無視する。



仕事もおわり、帰って食事も湯浴みも終わり、夜になった。

「その、いいかい?」

「今更聞くな」

「じゃあ、抱くね」

京楽は、何千回と抱いてきた浮竹の肌を吸い上げる。

衣服を脱がして、浮竹のものを口に含むと、浮竹は京楽の黒い意外と柔らかな髪を掴む。

「あ、もうだめだ。いっちゃう」

「いいよ。僕の口の中に出して」

「ああああ!!」

びくんと浮竹の体が反応して、浮竹は精液を京楽の口の中に吐き出していた。

「あ、だめえええぇぇ」

京楽は、浮竹のものをしゃぶりながら、ローションにまみれた指を蕾にいれて、浮竹のいい場所をこりこりと指で刺激してやった。

「ひああああ!」

浮竹は、中いきと射精を同時にして、息を乱した。

「あ、春水、来い」

「うん」

浮竹は、唇を舐めて、自分から足を開く。

京楽は、そそり立つもので、浮竹を貫いた。

「あああ、奥まで、きてる!ひゃん」

「ふふ、奥、好きでしょ?」

「やああ、奥、ごりごりしないでえええ」

京楽は、浮竹の言葉通り、奥に入らず浅い位置で挿入を繰り返す。

「やああ、もっと、もっと欲しい。奥に、奥にちょうだい!」

「十四郎、かわいい」

「やああん」

浮竹は、京楽の肩に噛みついた。

「いたたたた」

「意地悪するな」

「分かってるよ」

奥をごりっと抉ると、浮竹ば背を弓なりにそらせて、オーガズムでいっていた。

「あ、あ、波が、またくるう。ああああ!!」

胎の最奥で出された京楽の白濁した液体を、浮竹は自分の体で受け止める。

「ひゃあああん、孕む、子供できちゃう!」

「子供、たくさんほしいね。涅隊長に頼んだら、ほんとにできちゃいそう」

「やあああ、子供なんてできたら、京楽をとられる」

浮竹は甘い啼き声をあげながら、京楽のものを締め付ける。

「君の中は、いつも熱くてて気持ちいい」

「あ、あ、もっときもちよくなって、俺もきもちよくしてくれ」

体位を変えて、背後から貫いた。

「あああああ!」

浮竹は、前より更に長くなった白髪を乱す。

「ねぇ、浮竹、髪切らないの?」

「願掛けだ。お前と1年一緒に過ごせたら、切る」

「もう、あと半年だね」

「んああああ!」

京楽の逞しいものに貫かれて、浮竹は中いきと同時に射精していた。

「やああああ、止まらない」

ぷしゅわああと、潮をふいてしまった。

「エロ・・・・ご褒美に、たくさん子種あげるね?」

「あ、ちょうだい、春水のザーメン、俺の胎に」

浮竹は、目をトロンとさせて、正常位に戻ると、京楽の背に手を回し、背中をひっかいた。

「いたたたた」

「マーキング」

くすりと、浮竹が笑う。

妖艶で、とても美しかった。



「今日は休む」

「そうだね。ちょっと無理させすぎちゃったね」

珍しく仕事を休むと言い出した浮竹に、ならばと京楽も、最近休暇をとっていなかったので、休むことにした。

「囲碁をしないか」

「いいよ」

「その後は花札、カルタ、将棋、麻雀・・・・・・」

「したいこと、いっぱいあるね」

「霊王宮に居た頃は暇で、侍女とそんな遊びばかりしていたら、クセになってしまった」

「ボクは、君ともう離れない。逝く時は、一緒だよ」

「俺は、霊王のなりそこないだ。長く生きるかもしれないから、その辺は涅隊長と相談する。一緒の時を、生きたいから」

浮竹は、京楽を見つめた。

京楽は、懐から指輪を取り出した。

「何、これ」

「エンゲージリング・・・・のつもり」

「ふふ・・・京楽が、どんな顔してこれを買ったのか想像できて、笑える」

京楽は、浮竹の指に指輪をはめた。

「ボクの分は、君がはめて?」

「ああ」

指輪を交換し合い、キスをした。

結婚式を挙げるつもりはなかったけれど、籍はいれるつもりだった。

苗字は変わらないが。

「永久(とこしえ)の愛を君に」

「永久の愛を、お前に」

二人は、二人で一つ。

支え合いながら、生きていく。

いつか、寿命がきて死ぬまで。

比翼の鳥のように、お互いを支え合いながら、生きていくのであった。




                fin

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え、生きてる?4

「霊王様。今日も食事を召し上がらないのですか。いくら霊王様となられたとはいえ、今も生身の肉体。食事をしなければ、体に差支えがあります」

「いい。食事はいらない。放っておいてくれ」

「霊王様・・・・・そんなに、京楽春水が恋しいですか?」

「お前、京楽と俺のこと・・・・・」

長い黒髪の美しい娘は、零番隊のリーダーであり、浮竹の身の回りの世話を率先して行っていた。

「存じております。霊王様の恋人であった方でしょう。でも、それも過去の話。霊王様はもう、下界へは戻らない」

「俺は、諦めていない。霊王になっても、京楽に会う」

「特別召還をなさいますか?」

黒髪の娘は、淡く微笑んだ。

「なんだ、それは」

「お気に入りの者を、傍に置くことです。人形のようになりますが、特別に意思を与えて動くようにすれば、霊王様も満足でしょう?」

「いや・・・・・それは、しない」

京楽が傍にいてくれるなら心強いが、京楽は総隊長だ。おまけに、人形のようになるのに、特別に意思を与えるとか、まるで生きた人形を侍らすようで、気が引ける。

それに、京楽がいなくなれば、瀞霊廷は混乱に陥る。

「では、一度きりの特別召還ができる術を授けましょう」

浮竹は、目を輝かせた。

「その術、もらい受ける」

術を自分のものにするのに、半月かかった。半月も、京楽と別れて過ごした。



京楽は、霊王宮にあがるための方法を探し続けていた。

そして、特別召還を知る。

伝令神器は奪われたので、特別な地獄蝶を飛ばして、浮竹のところまでメッセージを送った。

「ボクを、特別召還してほしい。君を奪う」

「京楽・・・・」

浮竹は、そのメッセージを受けて、涙を零した。

そして、誰もが寝静まった深夜に、特別召還を行った。

「浮竹!!!」

「京楽、会いたかった!」

「ボクもだよ!」

お互いを抱擁しあい、京楽は眉をしかめた。

「痩せた?」

「ああ。ほとんど食事をとっていないから。それでも、霊王は死なないそうだ」

京楽は、浮竹を胸にかき抱いた。

「逃げるよ」

「どこへ?」

「虚圏へ」

京楽は、浮竹を連れて虚圏へと渡った。

「しばらくの間は、ここに身を隠して。君は自害したと思わせるために、開発局で君の霊子からうみだしたクローンを、自害させる」

「でも、俺は霊王だ。霊王がいなくなると、世界は・・・・」

浮竹は、言いづらそうにしていた。

「それについては、詳しく調べたんだよ。今だに、ユーハバッハの亡骸は霊王として存在している。正当なる霊王が欲しくて、零番隊は霊王になった君を迎えにいったんだ。君は、霊王であるけれど、死神のままだ」

「俺は・・・霊王じゃなくても、いいのか?」

「そうだよ。君が霊王として存在しなくても、霊王はユーハバッハの亡骸でなんとかなってるんだよ」

「騙されたのか」

「そうなるね」

京楽は、虚圏のラスノーチェスに、浮竹を匿った。

瀞霊廷は、零番隊が霊王が自害したと騒いでいた。

「作戦は、うまくいったみたいだね」

結局、零番隊は浮竹十四郎を諦めて、次の霊王となる子を選び、霊王とした。

そうなるまで、半年ほどかかった。

浮竹は、京楽がちょくちょく様子を見にきてくれるので、寂しくはなかった。

アランカルと出会うこともあったが、比較的交友関係を築けた。

新たなる霊王の即位祭が開かれた時、京楽は浮竹を尸魂界へと戻した。

「れ、霊王様!?」

「ばかな、霊王様は自害なされたはず!」

「俺は霊王じゃない。霊王には、新しい子を選んだのだろう。俺の中には、もうミミハギ様も霊王としての霊圧も存在しない。ただの、浮竹十四郎だ」

「おのれ、京楽春水・・・・謀ったな」

零番隊に囲まれる京楽。

「京楽に傷をつければ、俺は次の霊王を殺す」

「霊王・・・・浮竹様!」

「浮竹様、今ならまだ霊王として復活できます。お考えなおしを」

「俺は、霊王になんてなりたくない。自由がほしい。京楽の傍で、一人の死神として生きて、死んでいきたい」

浮竹は、翡翠の瞳で零番隊を威圧した。

次の霊王に選ばれた子はまだ子供で、一護なみの霊力をもっているが、何せまだ子供なので力の使い方を知らない。浮竹でも、殺害できた。

「皆、今の霊王様を守れ。先代の霊王様は、自害なされた」

その言葉に、浮竹はほっとする。

京楽を囲んでいた零番隊も退いていった。

「京楽!」

「浮竹!」

二人は、再び一緒にいられるようになった。

浮竹の中にはまだ霊王の残滓が残っているが、もう霊王として世界に必要されることはなかった。

京楽と浮竹は、手を繋いで寄り添いあいながら、京楽の屋敷に帰る。

そこが、浮竹の居場所だった。

京楽の隣が、浮竹の居場所だった。

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え、生きてる?3

ドクンドクンと、鼓動がする。

それは、心臓ではない。

肺から聞こえた。

いなくなってしまったミミハギ様の鼓動だった。

「浮竹十四郎。次の霊王よ」

「え?」

夢の中で、浮竹はミミハギ様に語りかけられていた。

「霊王がユーハバッハの亡骸のままでは困るのだ。次の霊王に相応しいのは、汝だ。私を宿した。霊王の右腕を宿した汝の肉体は、霊王となるに相応しい蘇りを果たした。次の霊王は、汝だ」

「そんなばかなことがあるか!!」

ばっと飛び起きると、ベッドの上だった。

「どうしたの?」

横で眠っていた京楽が、浮竹の様子を伺う。

「いやな夢を見たんだ。俺が霊王だと・・・・ミミハギ様が・・・・・」

「変な夢を見たんだね。まだ夜明けまで時間があるから、もう一度寝なよ」

「ああ、そうする」

次に起きると、朝だった。

浮竹は気づく。

失ってしまったミミハギ様が、再び自分の中に宿っていることに。

それは、霊王の右腕。

霊王になれる身代わりの証。

「浮竹?朝ごはん食べるでしょ?」

「ん、ああ」

浮竹は、何故失ったはずのミミハギ様が戻ってきたのか分からなかった。

夢の中の言う通りに、次の霊王になるためか。

「はい、お味噌汁」

「あ、ああ、すまない」

ぼーっとしながら朝ごはんを食べていると、京楽の出勤時間になった。

一番隊隊長補佐についているので、京楽と並んで浮竹も一番隊隊舎に向かう。

ユーハバッハの手による滅却師の侵略の爪痕は深く、瀞霊廷はまだまだ復興途中だった。

「京楽、もしも俺が霊王になって、霊王宮にしかいられなくなったら、どうする?」

「え?そんなの決まってるでしょ。拉致る」

「まじか」

「まじだよ。誰も分からない場所に隠す」

浮竹の運命は、変わろうとしていた。

ただ、地獄が溢れそうだからと蘇ったわけではなかったのだ。

ユーハバッハの亡骸を、いつまでも霊王として留めておけないので、天が下した答えだった。

ミミハギ様を・・・・霊王の右腕を、霊王を宿したことのある者を霊王とせよ。

死しているならば、今一度命を授け、霊王とせよ。

「浮竹?なんか怖い顔してる」

「京楽・・・・・俺は、霊王になりたくない!」

浮竹は、京楽に縋りついた。

「何言ってるの。霊王は、ユーハバッハの亡骸でなんとかなっているよ。君が霊王になる必要なんて・・・・・」

気づけば、囲まれていた。

「浮竹十四郎様。迎えに参りました。次代の、霊王様」

「なんだい、君たちは!」

京楽は斬魄刀を抜いた。

「我らは新たなる零番隊。浮竹十四郎様は、霊王となられるお方です。霊王宮にお連れします。邪魔をするなら、総隊長であるあなたとて、容赦はしません」

「待ってくれ!俺は霊王になんて、なりたくない!」

「これは天の定め。霊王になるのためだけに、あなたは蘇った。浮竹様・・・・・いいえ、霊王様」

京楽は、斬魄刀で新しい零番隊と切り結びあう。

零番隊は8人いて、いくら京楽が総隊長とはいえ、戦況は厳しかった。

「致し方ありません。総隊長は、代わりはいくらでもききます。やっておしまいなさい」

「はっ」

「待ってくれ!!」

隊長羽織を朱に染め上げる京楽を見かねて、浮竹は自分の斬魄刀を捨てて、零番隊に言った。

「俺は霊王になる。霊王宮に連れていけ。ただし、今後一切京楽に手出しするな」

「浮竹!!!」

「大丈夫だ、京楽。きっと、戻ってこれる・・・・戻ってこれなかったら、拉致ってくれ」

「霊王様がお通りになる。道を開けよ!」

浮竹は、零番隊が見守る中、霊王宮に続くゲートをくぐらされて、霊王宮に消えてしまった。

「浮竹ええええええ!!!」

京楽は叫ぶ。

愛しい者をとりあげられた。

ただ、大人しくいつもの日常に、浮竹が生き返ったということなど忘れて、生きろとでも?

京楽の左目には、狂気が宿っていた。

「待っててね、浮竹。必ず、拉致るから」



「霊王様。ユーハバッハの亡骸から、霊王様への力の譲渡が終わりました。これで、浮竹十四郎は死にました。新たなる霊王様です」

「俺は・・・・霊王、か」

「そうです。あなたが霊王様です。この世界を守る贄であり、絶対存在であり、ただ在るだけの存在」

「俺は、霊王になるために生き返ったんじゃない」

「いいえ、世界が霊王となるためにあなたを求めて、あなたを生き返らせた。ミミハギ様を宿していたあなたこそ、霊王に相応しいのです」



「京楽・・・・・・俺を、攫いにきてくれ」

霊王宮は、豪華な場所だった。

新たに建築されて、生きている霊王の浮竹を迎えるために人が住める空間になっていた。

「暇でしたら、下界を見てはいかがですか?」

意識すると、下界が見えた。

浮竹は、京楽を探した。

京楽は、斬魄刀を手に、伊勢と何か言い合いをしていた。

「京楽・・・・助けて、くれ。俺を、ここから連れ出してくれ・・・・・・」

浮竹は、京楽・・・・と呟く。

「京楽春水のことはお忘れください。あなたは霊王様なのです。ただ、ここに在ればよいのです。誰かへの想いなど、いらないはず」

零番隊のリーダーである黒髪の女性が、浮竹に膝ますづいた。

「霊王様、夕餉の支度が整いました。どうぞ、こちらへ」

ついていくと、豪華な食事が並んでいた。

けれど、浮竹は一口も食べずに、水だけを飲んだ。

「霊王様は生きていらっしゃる。食物を摂取しないと、霊王様のためになりません。今はまだ無理強いしはしませんが、どうしても食べないのであれば、点滴を受けてもらいます」

「俺は・・・・霊王になんて、なりたくなかった。ただ、京楽の傍にいれれば、それでよかったんだ」

「霊王様は、もう霊王様です。浮竹十四郎は死んだのです」

「俺は、ここにいて生きている」

「霊王様ですから。今ここにいるあなたは霊王様です。京楽春水は、もうあなたには不要の存在。お忘れなさい」

浮竹は、零番隊のリーダーである女性にむかって水をかけた。

「お怒りを、お沈めください。霊王様の怒りは、大地の怒りとなります」

「京楽・・・・・・」

浮竹は、ただ京楽を求めた。

院生時代から、ずっと一緒にいた。

恋人同士だった。

先に浮竹が神掛をして死んでしまっても、京楽は浮竹を愛し続けていた。

数日が経ち、浮竹はまた下界を見ていた。

京楽は、浮竹と呟いて、仕事も手につかないようだった。

「京楽・・・・俺はここにいる。連れ去ってくれ・・・・・」

霊王になんて、なりたくない。

でも、もう霊王だ。

それでも、京楽と一緒にいたい。

浮竹は、京楽と一緒に生きる道を模索しようとしていた。




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え、生きてる?2

浮竹が生き返って一カ月が過ぎた。

京楽は、浮竹が一人で出歩くのを禁止していたのだが、浮竹が隙を見て逃げ出すので、専用の伝令神機を与えて、一人の行動を許すことにした。

ただし、ちょくちょく連絡をいれなければならない。

「京楽のやつ、過保護になったなぁ」

「兄は、その京楽を追いて私に会いにきていいのか?」

「ああ、白哉。お前は一番隊隊舎にあまりこないから、顔が見たくてな」

「兄が連絡をよこせば、顔くらいは出す」

「いやあ、京楽がいるとあいつ嫉妬するから、親密に語り合えないだろう」

浮竹は、自分がいない間の京楽がどうだったのかとか、今の京楽をどう思うだとか質問してきた。

「全ては、兄次第だ。京楽が兄に執着しているのは知っている。兄がいるから、今は生きているといったかんじだな。兄がいなかった頃は、いつも哀しく孤独な目をしていた」

「そうか。白哉、貴重な時間をすまないな」

「いや・・・・おみやげに、わかめ大使を持っていけ」

大量に渡されたわかめ大使を食べながら、浮竹は次に冬獅郎のところにきた。

「日番谷隊長」

「なんだ、浮竹か。京楽はどうした。いつも一緒だろう」

「いや、一人で行動したくてな。一人の外出禁止令出されてたから、隙をついて逃げ出したら、溜息をつかれて、専用の伝令神機を与えてちょくちょく電話するかわりに、一人の行動を許された」

「京楽のやつ、少し病んでないか?仲はいいが、一人の行動を禁止するなんて、きっと浮竹、お前を失うことを恐れているんだろう」

「そうだろうな。まぁ日番谷隊長は年月が経っても変わらないので安心した」

「おい、身長のこと言ってるんじゃねぇだろうな?」

「え、いや、さぁ?」

「蒼天に座せ、氷輪丸!!!

「のあああああああ」

浮竹は吹っ飛んでいった。



「やれやれ・・・・今度日番谷隊長に会ったら、謝るか」

伝令神機で、京楽に電話を入れる。

「今、自分の墓の前だ。老舗で買ったおはぎを食べてる」

「そうかい。そのまま、そこにいてよ」

「ん、ああ」

数分して、京楽が姿を現した。

「京楽、仕事は?」

「そんなの、君より大事なものなんて他にはない。さぁ、今日はもう帰ろう」

「ん・・・・ああ、そうだな」

京楽に、これ以上余計な気を遣ってほしくなかった。

「どうして、浮竹の中には霊王の残滓があるんだろうね?」

「さぁ、分からない」

そんな会話をしながら、一番隊隊舎に戻る。仕事を終えて、二人で京楽の屋敷に戻り、夜になった。

「ん・・・・・・」

浮竹は、京楽に口づけられていた。

「白哉君と冬獅郎君のところに行ってたでしょ」

「だめか?」

「だめじゃないけど、僕が嫉妬するの、覚えててね?」

「んっ・・ああああ!!」

京楽は、浮竹のものに手をはわせて、そして口に含んで舐めた。

「やああああ」

生き返ってから抱かれたのは数回。

どれも、お互いを気遣いあうセックスで、無理なことはしてこなかった。

「やああ、いかせてええ」

「だめ。ボクから逃げ出した罰だよ」

根本と紐で戒めて、京楽はローションをとりだすと、浮竹の蕾にぬりこみ、指を入れる。

「やあああ、いきたい、いきたい」

「いく時は、一緒にね?」

「ひああああ」

指をずるりと引き抜かれて、比べ物にならない質量の熱に犯される。

最奥をごりごりとけずられて、ビクンと浮竹の体がはねた。

「ふふ、中いきしちゃった?まだいれただけだよ」

「やああ、いやあああ」

「浮竹、愛してるよ。乱れた浮竹を見れるのは、ボクだけだ」

京楽は、昔から浮竹を愛していたが、独占欲の塊のようではなかった。今は、独占欲の塊だ。

「ああああ!!」

ごりっと奥に侵入され、抉られて、浮竹はまたしても中いきしていた。京楽も、熱を浮竹の胎の奥に放つ。

「一緒に、ね?」

「ひああああああ!!」

根元を戒められていた紐を解かれて、ビュルビュルと大量の精液を浮竹は巻き散らかした。

「あーあ、こんなに濡らして。いけない子だ」

「あ、春水・・・もっとちょうだい」

浮竹は、自分の唇をペロリと舐めた。

浮竹が欲情している時よくする仕草だった。

「十四郎、愛してるよ」

「春水、俺も愛してる」

浮竹は、自分から足を開いて京楽を受け入れる。

京楽は、萎えることの知らない己で浮竹を穿ち、挿入して突き上げた。

「あ、ああ、あ!」

「気持ちいい?」

「ああ、気持ちいい・・・・・」

「じゃあこれはどう?」

奥をぐりぐりすると、びくんと浮竹の背が弓なりになる。

「あああ、やあああ」

「また、中いきしちゃったね。ボクもそろそろ限界だよ。全部君の中で出すよ。孕むほど受け止めてね」

「あ、春水、春水」

「愛してるよ、十四郎」

口づけをしあいながら、お互いに精液を吐き出していた。



「ごめん、ちょっと激しかったね」

足腰が立たなくなった浮竹を湯殿に連れて行き、中に出したものをかき出して、体と髪を洗ってやった。

「昔は、いつもこんなかんじだっただろう」

「そうだね。でも、君が幻のように消えてしまう気がして、今までのセックスは薄いのしかしてこなかったから、驚いたでしょ」

「まぁな。いつも一度きりで終わるし、俺を気遣うし・・・・まるで、京楽の偽物みたいな抱き方だった。むしろ、今日みたいな抱かれかたの方が安心する」

「髪かわかして、寝ようか。一緒の布団で」

「お前はでかいから、布団からはみ出すぞ?」

「特注の作らせたから」

「ふふ、そうか」

浮竹と京楽は、一緒に抱きしめ合って眠った。

まだ、浮竹の中にある霊王の残滓は、鼓動を初めていた。













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え、生きてる?

「京楽、よくがんばったな」

「浮竹?」

「俺は神掛をしてよかった。この世界が守られたんだから」

浮竹は、長い白髪を風に揺らしながら、京楽に微笑んだ。

「浮竹!」

抱きしめると、そこで目覚めた。

「あ・・・夢・・・・・・」

ぽたぽたと、自分が涙を零しているのに京楽は気づく。



1番隊隊舎につくと、伊勢が大慌てで知らせてきた。

「そ、その、浮竹隊長の幽霊が!」

「は?浮竹の幽霊?」

「その、墓の前で浮竹隊長を見たという者がいまして。幽霊ではないかと、憶測が飛び交っていて、死神たちの間に動揺が広がっています」

「浮竹は死んだよ。ちゃんとこの腕の中で冷たくなっていくのを見届けた」

伊勢は、言いにくそうに京楽を見る。

「とにかく、浮竹隊長の墓の前に行ってください!」

「幽霊でも、浮竹に会えるなら喜んでいくけどね」

雨乾堂のあった場所に、立派な墓石をたてて浮竹の墓を作った。

1週間に一度は、そこに言って報告をして、酒を墓石に注ぐのが日課だった。

「よお、京楽」

「はぁ?」

京楽は目が飛び出そうになった。

浮竹が、幽霊でもなんでもなく、その墓石の前にいたのだ。

「ちょ、どうなってるの!」

「俺にも分からん。地獄に落ちて、もう一度やり直してこいと追い出された」

「う・・・浮竹ええええええ」

京楽は、浮竹をかき抱くと、わんわん泣いた。

京楽の頭を優しく撫でて、浮竹は京楽が落ち着くのを待った。

「君は、幽霊?」

「それも分からん。一応肉体はあるし、腹が減っている」

「とりあえず、僕の屋敷にいって何か食べようか」

「すまんな。助かる」

浮竹は、自分が一度死んでいることを覚えてるようだった。

最初涅がつくったクローンか何かかとも思ったが、まとう霊圧も浮竹のものそのものだった。

この浮竹は、確かに京楽の腕の中で死んでいった浮竹だった。



「お、これうまいな」

「どんどん食べて。甘味ものも用意してあるから」

「おはぎはあるか?」

「あるよ。ふふ、浮竹ほっぺにご飯つぶついてる」

それをとって食べると、浮竹は真っ赤になった。

「俺が生き返ると、やはりいろいろ都合が悪いよな」

「そんなことないよ!確かに13番隊隊長はルキアちゃんになったけど、君は僕の傍にいればいい。僕の傍で、僕を支えて」

「ああ、いいぞ。それにしても朽木が13番隊隊長か。思っていた通りになって、嬉しいな」

浮竹は、自分のことのように喜んだ。

「僕は、今君が生きて僕の目の前にいることがとても嬉しい」

「霊王の残滓が、俺に残っているんだそうだ。だから、地獄を追い出された」

「地獄って、卯ノ花隊長や山じいもいるの?」

「ああ、いたぞ。みんな元気にしている」

浮竹は朗らかに笑った。

「うーん、なんか死後の世界もあるようで、死が全てを無に返すわけじゃないんだね」

「そうだな。それに、俺は一度地獄に落ちた。だが、地獄には先生と卯ノ花隊長がいて、地獄のバランスがとれないし、俺には霊王の残滓が残っていて完全に死んでいないから、尸魂界に戻れと、地獄の管理人がな」

「浮竹、抱いてもいい?」

「う・・・・・いいぞ」

ご飯を食べて、風呂に入り、数年ぶりに睦みあった。

体温を共有しあいながら、まどろむ。

起きてしまうと、全て夢だったのではないかと思いたくなくて、京楽は浮竹を抱きしめて眠った。



「ふあ~、いい朝だ」

「浮竹、おはよう」

「ああ、おはよう。俺の存在なんだが、皆に話してくれ。俺はお前の傍で、仕事の補佐をしようと思う」

「うん。太陽が昇り切ったら、伝令神機で死神全員に伝えるよ」

何故、浮竹が生きているのかはまだ謎が多かったが、浮竹が生き返ったことは本当で、死神としての霊圧ももっていて、けれど肺の病は癒えているらしく、でも病弱なことには変わりないそうだった。

「浮竹。愛してるよ」

「ん・・・・」

深い口づけを交わし合い、浮竹は京楽の背中に手を回す。

「俺も愛している、京楽」

たとえ神様の悪戯でもいい。

地獄を追い出されたというのなら、大歓迎だ。

霊王の残滓というのが気になったが、京楽は浮竹を抱きしめた。

「死が二人を分かつときまで・・・・傍に、いてね?」

「なんか結婚式の言葉みたいだな。いいぞ。再び俺の命が尽きるまで、お前の傍にいる」

浮竹は、1番隊隊長補佐になった。

皆、喜んで酒宴を開いたりした。

「先生、卯ノ花隊長、今度そっちにいくのは随分先になりそうだ」

「浮竹、死んじゃだめだよ」

「分かっている。もう、神掛は終わったし、俺の中に霊王の残滓が残っているせいで、生きなければならない」

今の世界の霊王の代わりは、ユーハバッハである。

ユーハバッハの亡骸を、霊王の代わりにしていた。

「霊王の残滓って、なんだろうな?」

「さぁ。ミミハギ様じゃないの?」

「いや、ミミハギ様は俺の中から完全に出ていった」

「霊王の残滓があるから、生き返ったんだよね。じゃあ、そのままでいていいんじゃない?」

「まぁ、悩んだところで始まらないからな。第2の人生でも、謳歌するか」

二人は、深夜まで酒を飲み合った。

ふと気づくと、浮竹の姿がなくて京楽は慌てた。

「浮竹、浮竹!!」

「なんだ?ただ、月を見ていただけだぞ」

「僕の傍から、勝手にいなくならないで。心配しちゃうじゃない。全て夢だったって」

「これは現実だ。夢なんかじゃない」

「うん、そうだね」

お互いを抱きしめあい、体温を共有する。

ああ。

神様、ありがとう。

ボクに、もう一度浮竹と会わせてくれて。

いもしない神に、京楽は感謝をした。

「もう遅い。明日の仕事に支障が出る。寝るぞ」

「あ、うん」

浮竹は、1番隊隊長補佐として、主に書類任務をこなしていた。

ルキアや白哉、冬獅郎などがよく浮竹の元を訪れた。

浮竹は、京楽が過保護なまでに心配するので、一人で出歩くことを禁じられた。

「京楽・・・・甘味屋にいきたい」

「ちょっと待ってね。この仕事だけ終わらすから」

浮竹の我儘を、京楽は聞いてくれる。

今幸せかと聞かれると、幸せと答えるしかない。

一度終わった命なのだ。

続くのなら、足掻いて引退まで生きてやろうと思うのだった。




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31話補完小説

「滑稽だな。霊圧で一気に押し潰せば済むものを」

「バカな・・・貴様は藍染」

ルキアは、信じられないものを見る表情で藍染を見つめた。

「久しぶりた朽木ルキア。ひとまず副隊長昇格おめでとう。我々との戦いで功績が認められて何よりだ」

「貴様・・・無間に捕らわれたはずの貴様が何故ここにいる!」

ルキアはかみつくように声を出した。

「戒めを解かれたからさ」

「バカな、一体誰に」

「ボクさ」

「京楽隊長!!」

皆、信じられない様子で京楽を見る。

「何故だと聞くだろうから、先に言うけど、彼の力が必要だと判断したからだ」

「な、しかし!」

「何言ってるんですか、京楽隊長!」

ルキアと恋次が吼える。

「それでいいんですか!」

檜佐木も吠えた。

「こんな野郎の力を借りるなんて納得いかねぇ」

一角は吐き捨てた。

「同意見です。彼のしたことを思えば、到底承服できない」

弓親は、一角に同意した。

「君らがしているのは面子の話かい。それじゃあ護廷の話をしよう。面子じゃ世界を守れない。
悪を倒すのに悪を利用する。ボクは悪だと思わないね」

「議論は終わったようだな。それでは、両手の戒めをはずして、私を椅子から解放してくれるかい」

藍染の要求を、京楽は断る。

「言っただろう。君に使うことを許された鍵は3本。口、左目、右足。それ以外の封印を解くことは許されていない」

「買い被りすぎだな。今の私にそんな力はない」

「君が座ったまま、むざむざとこの目玉の化け物どもに自分の殻を齧られるのを黙って見ているとは思えないって話さ」

「全く・・・やりにくい男だ」

「光栄だね」

京楽は、すぐに危険を察知した。藍染の霊圧がたかくなっていく。

「逃げろ!研究室にさがれ!」

「破道の90、黒棺」

無詠唱の黒棺は、すさまじい威力を発揮した。

「わかっているのか京楽。藍染を解き放った兄の行いは、我々への侮辱だ」

白哉が冷たく言う。

「分かってるさ。あとでいくらでもぶん殴ってくれ。瀞霊廷を護れたらさ」



「霊王宮に用があるなら、私が撃ち落としてやろう」

「霊王宮を打ち落とす!?」

「まさか、そんなことが本当に!」

「無理だよ。自分出言ってただろう。その拘束具は霊圧を消すんじゃなくて、近くにトドメておくしかできない」

藍染の放った一撃は、霊王宮には届かなかった。

「ただその戒めておく力は、とてつもなく強い」

そこに涅が登場し、いかに拘束具が優れているかを話した。




「黒崎君、大丈夫!?」

一護が気づくと、井上が顔を寄せてきた。

「こんちゃんがクッションになってくれて、一命をとりとめたの」

「石田・・・・・」

「ねぇ、ほんとに石田くんだったの?」

「間違いねぇ。あれは石田だ」

石田にやられた傷は、井上が治してくれた。チャド、がんじゅ、夜一の傷も治し、井上がふらつく。

「大丈夫かよ!」

「うん、平気」

「では、反撃というこうかの」

夜一の言葉に、皆頷く。

「石田・・・・絶対、元に引きずり戻してやる」

「少し急ぐぞ」

「急ぐたってあれだろ。まずはあそこにもう1回どうやってのぼるかだろ」

霊王宮ははるか高みにあった。

「俺にもっと力があれば・・・・・」

ユーハバッハを屠ることができるくらいの力があれば。

「こっちからもかなり距離があるぜ」

「その点は心配ない」

夜一がそう言うと、世界が軋む音をたてた。

「この空間の開き方は・・・・」

虚圏と尸魂界が繋がる空間ができる。

そこから出てきたのは、グリムジョーだった。

「お前、グリムジョー!」

突然のグリムジョーとの邂逅は、一護を混乱させるのであった。

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無題

「守ろうこの世界を。護廷13隊の名にかけて」

浮竹が、守ろうとしているこの世界を。

浮竹。

命が尽きようとしている君を、放置するボクを許してほしい。

霊王宮への扉を。

その先にいるユーハバッハを倒すために。


「浮竹・・・・・」

開発局にいる、黒ずんだ浮竹の体を思い出す。

「ごめんね」

--------------------------------------------------------------


全てが終わり、浮竹の冷たい体に温もりを与えるように、抱き込んだ。

「浮竹、がんばったね」

ああ、そうだとも。

そう聞こえた気がした。

衣服が、浮竹が吐いた血に染まっていくのを、京楽は懐かしい気持ちで見ていた。

院生時代、初めて血を吐いて倒れた君を運んだ時も、衣服に君の血が滲んだ。


浮竹。

愛していたよ。

誰よりも、誰よりも。

浮竹。

今、ボクは忙しい。

今すぐ君の元に行きたいけど、それは無理なようだ。

「地獄で、待っててね。きっと、いつか会いにいくから」

浮竹・・・・・。

浮竹十四郎。

13番隊隊長。

長い白髪に、翡翠の瞳をもつ、柔らかな印象の愛しい人。


--------------------------------------------------------



あれから、千数百年が経過した。

ボクの中では、浮竹の顔も仕草も昨日のことのように思い出せた。

(迎えに来た)

「ああ・・・・やっと、君に会えるんだね」

(行こう。一緒に)

「うん。行こう」

(もう、離さない。離れない)

「そうだね」

魂は輪廻する。

霊圧となって、循環する輪の中に還っていく。

「行こうか。もう、瀞霊廷は大丈夫。あれからいろんな謀反やなんだかんだあったけど、瀞霊廷も現世も虚圏も健在だよ」

(そうか。それならよかった。俺が神掛をした意味は、あったんだな)

「うん。君の犠牲のお陰で、尸魂界は、いや、世界の全ては救われた」

(もう、未練はないんだろう?)

「そうだね。あるとしたら、君との思い出も無になってしまうということくらいかな」

(そんなもの、生まれ変わってまた作ればいい)

「ふふ、そう簡単にいくかなぁ?」

(一緒に行くんだろ?その先も、きっと一緒だ)

「そうだといいね」


--------------------------------------------------------------------



「君、名前は?」

「十四郎。苗字はない」

長い白髪に、翡翠の瞳をもつ少年は、うねる黒髪に鳶色の瞳をもつ少年に話しかけられた。

「お前の名は?」

「春水。同じく、苗字はない」

「俺たち、どこかで出会ったことが?」

「さぁ、どうだろう」

いつかまた、巡り合うから。

たとえ、記憶が失われようとも。




だから、さよならは言わない。

またいつかと。

そう言って、泣きながら浮竹の冷たい体を抱きしめて、微笑んだ。



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奴隷竜とSランク冒険者29

浮竹と京楽は、ハイエルフの浮竹とダークネスドラゴンの京楽と一緒にSランクダンジョンに行くことになったのだが、ハイエルフの浮竹に朽木ルキアが会いたがっていて、一緒にSランクダンジョンに行くことになった。

何故か、ルキアの他にルキアの夫である恋次、一護、義兄である白哉までついてきた。

『こんなに人間がくるなんて聞いてない・・・』

ダークネスドラゴンの京楽は、嫌そうにハイエルフの浮竹の背に隠れて、殺気を漏らしていた。

「人が嫌いだからと、誰かれ構わず殺気を垂れ流すなど、兄はまだまだだな」

「ちょ、白哉君その辺にしといて!」

白哉の言葉に、けれどダークネスドラゴンの京楽は揺り動かない。ただ、顔をしかめてうるさいハエがいるような、そんな表情をしていた。

『おい、京楽、こんなダンジョンで殺気を振りまくな』

『だって・・・・一人の人間と会うというから我慢してついてきたのに、他に3人もいるなんて聞いてないよ』

「俺はルキアの夫だ。ルキアに何かあったらいけないから、守るためにいるぜ」

「俺もルキアの夫だぞ。ルキアに何かしたら、承知しねーからな」

一護と恋次は、空気を読まない。

ダークネスドラゴンの京楽は、虚無をまとって殺気を隠した。

「まぁ、ダンジョン攻略もたまには人数が多くてもいいだろう」

浮竹の思考は明るい。

「そ、その、ハイエルフの浮竹殿は、魔法書を書いた初めての方とお聞きしました」

『うん、そうだよ』

ルキアはかわいい。

ハイエルフの浮竹も、ルキアをかわいいと思って、話をする。

「禁忌の魔法も、ハイエルフの浮竹殿が編み出したのですか?」

『そう。俺が全ての魔法を編み出した・・・と言いたいけど、人は進化する。自分たちで魔法を作り出すこともする。まぁ、世界に広まっている魔法の80%は俺が編み出したものだな』

「80%も!すごいです!」

「兄は、このダークネスドラゴンはどうにかならぬのか。虚無を纏っているが、殺気が漏れて、モンスターが近寄ってこない」

ダークネスドラゴンの京楽は、虚無を纏っているが、漏れ出る殺気で、ダンジョンの入ったばかりのところなので、比較的雑魚しかいないので、モンスターは怖がって出てこなかった。

「ああ、殺気に怯えているなら、炙りだせばいいんだ。ヘルファイア」

浮竹が炎の魔法を放つ。

「ぎゃあああああ」

「きしゃああああああ」

比較的雑魚なモンスターが、火で炙られて姿を現す。

「けっ、こんなもん、デス!」

恋次は、広範囲の即死魔法で、炙りだされてでてきたモンスターを全て殺してしまった。

「恋次君、いきなりデスの魔法はないだろう。雑魚でも、戦えば経験の糧になる」

「あ、浮竹さんすんません」

恋次は、浮竹と京楽と白哉には素直に謝る。

一護とは喧嘩みたいなことしか言わず、ルキアは守り通す覚悟で言動をとる。

「恋次のデスの魔法は、凄いのです。魔力少ないから数回しか唱えれませんが、自分より弱い相手なら即死です」

『うん、そうだね。僕ももってるけどね、デスの魔法。君たちにかけたら、どうなるんだろうね?』

『おい、京楽!!!』

『冗談だよ。嫌いな人間とはいえ、いくならんでもパーティーメンバーを殺したり、危害を加えたりしないよ』

その言葉を聞いて、ずっと緊張しっぱなしだった一護と恋次は、肩の力を抜いた。

「兄は、人間が憎いのだな」

『そうだよ。人間は大嫌いだよ』

「では、精霊族もか?」

『うーん、精霊族は嫌いじゃないかな。位置的には、ドラゴンに近い存在だし』

「ここにいる一護は、精霊族ということになっている。だが、その実態はサンシャインレイドラゴンだ」

『『ええええええええ!!』』

「「まじで!?」」

ハイエルフの浮竹とダークネスドラゴンの京楽と、浮竹と京楽は驚いた。

「あ、すんません。俺、サンシャインレイドラゴンなんすけど、精霊族のふりして、冒険者稼業してます。前のマスターがドラゴン使いが荒くて、ルキアが今のマスターっす」

「一護は、ドラゴンでいるのがいやらしく、秘術で精霊族に化けています。サンシャインレイドラゴンと知れたら、その体の欠片でも手に入れようとする厄介な輩がいますから」

「サンシャインレイドラゴンは、ムーンホワイトドラゴンの浮竹以上に珍しいからね。なるほど、確かにそのオレンジの髪は、太陽の色だね」

「すんません、京楽さん、浮竹さん。今まで騙してて」

「いや、いい。一護君がサンシャインレイドラゴンだと分かって、俺は嬉しいぞ。自分と同じくらい希少なドラゴンと会えて」

『君の秘術凄いね。全然、ドラゴンって分からなかった』

「俺がサンシャインレイドラゴンっていうの、内密にしてください。正体がばれたら、俺をのマスターであるルキアを殺して、俺を手に入れようとするやつがでてくるから」

「俺は秘密を守る」

浮竹は、一護を安心させる。

「僕も秘密は守るよ。ということは、ルキアちゃんの他に恋次君、白哉君も一護君がサンシャインレイドラゴンであるってことを、知っていたんだね」

「すんません・・・・・」

一護は謝った。

「こやつは悪くないのです!こやつを使役していた前のマスターが、あまりにも一護を大切にせず、血ばかり抜いて売って、金のこやしにしていたから、私が奪ったのです」

「愛されてるねぇ、一護君」

京楽の言葉に、一護は赤くなる。

「ル、ルキアは俺の嫁だから」

『サンシャインレイドラゴンか。一度じっくり話しあいたいけど、君は頭を使うようなことは苦手そうだね』

ダークネスドラゴンの京楽が、一護を見る。

「でも、凄いな。ここに、サンシャインレイドラゴン、ムーンホワイトドラゴン、ダークネスドラゴンと、世界でも3つの指に入る希少種のドラゴンが集まったことになる」

浮竹が、なんだかわくわくしていそうだった。

「あ、ダンジョン攻略も精霊族として攻略していくんで。ブレスとか吐けないし、ドラゴン化もできないっす」

「それでも、サンシャインレイドラゴンであるってだけで凄い」

「そういう浮竹さんこそ、ムーンホワイトドラゴンじゃないっすか」

「はは、お互い希少種同士だし、仲良くしよう」

『それなら、僕も入ろうかな。僕もダークネスドラゴンだし』

ドラゴンの3人は、最初は仲があまりよろしくないように見えたが、ドラゴン語を使って何かを話しあっていた。

一護が、ルキアがかわいいとかルキア最高だとか、そんなことばかり言っているのを、リカイルスモノを生まれながらにもっているルキアは、真っ赤になって聞いていた。

ちなみに、京楽の金で得たリカイスルモノのユニークスキルは、ハイエルフの京楽の手で剥奪済みで、京楽には3人が何を言っているのかさっぱり分からなかった。

一護は、自分の今までについて説明する。

『ふーん。じゃあ、君は違うドラゴンの中で育ったの。だから、人間と適応能力が高いんだね。人型になれるドラゴンのほとんどは、人と交じりあって暮らすから』

「でも、前のマスターは最悪だった。俺のこと、金としてしか見てなくて、契約を無理に強いてきて、錬金術の素材で高値で売れる希少種のドラゴンの血を俺から抜いて、高値で売りつけてた」

「俺も、奴隷時代はよく血を抜かれて売られた」

『僕は・・・役立たずって思われてたからね。ブラックドラゴンと思われてたみたいで、血はぬかれなかったなぁ』


「兄ら、先に進むぞ」

「あ、白哉にルキアに恋次、待ってくれ」

「京楽、置いていくぞ」

「待ってよ浮竹!」

『お前もおいていくぞ、京楽』

『ちょっと、それは酷いんじゃない?』


結局、80階層まであるSランクダンジョンは、3人の希少種のドラゴンの力と、Sランク冒険者たちの手で、1日でクリアされるのであった。

ちなみに、前までAランクだったルキアと一護は、Sランクになっていた。

一護のドラゴン化した姿を、皆みたいとひっそりと思うのだった。

サンシャインレイドラゴン。別名太陽竜。

きっと、太陽のように眩しいのだろう。

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