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小説掲載プログ
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奴隷竜とSランク冒険者28

「ぴーぴー」

「浮竹、いい加減に人型に戻ってよ」

「ぴ?」

新月の夜は、人型をとれる真竜のドラゴン族は、元のドラゴンの姿に戻る。

今までの新月の夜は、浮竹は一人になりたいと言って、京楽をあまり近づけさせなかった。

森の中で、一人巨大なムーンホワイトドラゴンの姿になり、朝が来るのを待った。

そんな浮竹も、一緒にいたいという京楽の願いを聞き入れて、森の中で一緒に過ごす新月の夜も多くなった。

だが、浮竹は見た目は成人しているが、ドラゴンの年齢で考えるとまだ子供だった。

ある日の新月の夜、浮竹はいつもの大きな白い羽毛に覆われた、儚くも美しい珍しいドラゴン姿から、もこもこした毛玉のような子ドラゴンになった。

京楽はそんなことは初めてなので、慌ててハイエルフの浮竹とダークネスドラゴンの自分のところに行ったが、問題はないとのことだった。

「ねぇ、浮竹」

「ぴーー?」

「もう、夜明けだよ。新月の夜は終わった。なのに、なんで子ドラゴンの姿のままなの。早く、人型に戻ってよ」

「ぴー」

浮竹は、宿のベッドの上ではねて、スプリングがきいて自分がぽよんぽよんする遊びを、楽しんでいた。

完全に一夜が明けても、元に戻らないので京楽は、ハイエルフの浮竹とダークネスドラゴンの京楽に助けを求めた。

曰く、時間が解決してくれるらしい。

「ぴーーーー?」

「浮竹・・・・元に戻って・・」

「ぴぴ」

「十四郎、たとえ君がそのままの姿でも、僕は君を愛しているよ」

「ぴーーーー!!」

京楽はちびドラゴンの浮竹を思い切り抱きしめて、キスをした。

ぼふん。

音をたてて、浮竹が人型に戻る。

「え、キスで変化するってまるでおとぎ話みたい」

「ち、違うぞ。決して、元に戻れるのに子供姿の自分が面白くて、慌てる京楽が面白くて、ちびのままでいたんじゃないぞ」

「へー、そうなの。お仕置き、必要だね」

「ぎゃあああああああああ」

浮竹はその場で押し倒されて、ハリセンで京楽の頭を殴りまくり、なんとか京楽をなだめた。

「子ドラゴンの時はドラゴン語しか言えないんだ。ぴーぴーと言っているが、ちゃんと言葉になっている。まぁ、京楽はドラゴン語は身に付けられないだろうが」

「なんで?ハイエルフの浮竹には分かるんでしょ?僕も勉強すれば・・・・」

「ハイエルフの俺は、知識量が半端じゃない。言語理解のユニークスキルをもっているはずだ。京楽のユニークスキルはフタツナルモノ・・・・・魔法と剣に大幅に上昇効果が得られるスキルだ。ユニークスキル、リカイスルモノがなければ、ドラゴン語は分からない」

「じゃあ、僕はそのリカイスルモノもらってくる」

「へ?」

浮竹は間抜けな声を出していた。

「魔法屋に、金をつめばユニークスキルを覚えさせてくれる店がある。そこには、確かリカイスルモノも扱っていたはずだよ」

「ユニークスキルが、売買の対象に?人間って、恐ろしい・・・・」

浮竹は、まだ人間社会については詳しくなかった。

生まれ持って覚えていたユニークスキル以外のユニークスキルを、なんらかのことがあって手に入れるなら分かるが、売買できるなんて、初めて知った。

浮竹は、京楽の後を追って、その魔法屋にやってきた。

「はいはい、リカイスルモノですね。白金貨150万枚になります」

「もうちょっとまけてよ」

「うーん、魔法屋の常連さんの京楽さんですから、白金貨120万枚で」

「もう一声」

「うー、渡り上手な人だ。いつもエリクサーやエリクシールを買っていただいているので、白金貨100万枚です。これ以上は、いくら京楽さんでも無理です」

「よし、買った」

アイテムポケットから、白金貨100万枚の入った袋をとりだして、店の主人に渡す。

すると、店の主人はポーションをさしだしてきた。

「ポーション?」

「そうだよ、浮竹。飲んで、覚えるの」

「飲んで、覚える・・・・ユニークスキルを飲む・・・・・」

京楽は、青く輝くポーションを飲んだ。

ぴろりろりーん。

京楽は、ユニークスキル、リカイスルモノを手に入れた。

そんな音と声がして、京楽は本当にリカイスルモノを手に入れてしまった。

「戦闘系に関わるユニークスキルの売買は国が禁止しているから、リカイスルモノなら戦闘系じゃないから買えたよ」

「子ドラゴンになってみて」

「ぴーーー」

「京楽のあほばかうんこたれ。この絶倫のすけべ・・・・う、浮竹?」

「ぴーーーーー」

「やっべ、ほんとのこと言っちゃった・・・・うきたけぇぇぇ?」

ぽん。

人型に戻り、浮竹は京楽を引きずって店を出る。

「いいか、ユニークスキルを売買できるのはこのメリアナ王国くらいだ。あっちのハイエルフの俺とダークネスドラゴンの京楽には言うなよ」

「え、あ、うん」

「俺もユニークスキルが売買できるなんて初めて知って、すごく驚いているんだからな」

「でも、ドラゴン姿になったもう一人の僕の言葉に反応するだろうから、ユニークスキルをどうやって手に入れたって聞かれて、答えるしかなくなると、ばれるよ」

「ああああ!京楽、ダークネスドラゴンの京楽や俺がドラゴン語でしゃべっていても、反応するな」

「無理だよ。せっかく覚えたんだから」

「はぁ・・・・ハイエルフの俺、怒るかな」

「なんで?」

「ユニークスキルは生まれ持っているか、相当の苦労をして手に入れるものだからな。お金で簡単に売買できるなんて知ったら、店をつぶしそうだ」

「そえりゃ困る。分かったよ、ドラゴン語は理解できないふりするね」

「そうしてくれ」

結局ハイエルフの浮竹に全部ばれて、売られていたユニークスキルは全て破棄させられて、その魔法屋は潰れるのであった。

そして、次の新月の夜にまた浮竹はちびドラゴンになるのだが、今度は人型に戻れなくて、京楽が「助けて」とハイエルフの浮竹とダークネスドラゴンの京楽のところに行くのは、また違うお話であった。

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奴隷竜とSランク冒険者28

月が弓張り付きになった。

浮竹は、朝からベッドの上でごそごそして、一向に起きてこない。

今日は冒険者稼業はついこの間、氷のSランクダンジョンを踏破したので、2週間ほど休養日をとることにした。

「おーい、浮竹、いい加減起きてきなよ。もうお昼の1時だよ?」

「京楽・・・・飯をもってきてくれ。俺は、今は動けない」

「ああ・・・・弓張り月の日は発情期か。苦しい?」

「う、うるさい。あっちに行け」

浮竹は、ベッドの中でごそごそと動いた。

布団を、京楽がひっぺがす。

「な、何をする!」

「発情期で辛いんでしょ?僕が愛してあげる」

「は、発情期はいつものことだ!薬をのんで寝ていればそのうち治まる」

「そんなもったいないこと、できないよ。発情期の浮竹ってエロいから」

「え、エロくなんかな・・・・んう」

唇を奪われて、浮竹は翡翠の目を見開いた。

すぐにトロンとした輝きになり、京楽の背中に手を回す。

「春水・・・・・抱いて、くれ」

「素直な十四郎はかわいいね」

「あ!」

ベッドに押し倒されて、いきなり服を脱がされて、浮竹のものに京楽は舌を這わす。

発情期のせいかすでに勃起していたものは、すぐに透明な先走りの蜜を零した後、白い液体を京楽の口の中に吐き出した。

それを、京楽は当たり前のように飲みこむ。

「な、飲むな・・・・あああ」

「知ってた?発情期の君の精液って、甘いんだよ。いつものも甘いけど、いつもの数倍甘い」

口づけを受けて、自分の精液を少しだけ流し込まれる。

確かに、花の蜜のようで甘かった。

「あ、春水・・・・俺を、めちゃくちゃにしてくれ」

「ふふふ、十四郎がいつもこうだったら、いいのにね?」

「春水・・・好きだ」

「僕も大好きだよ、十四郎」

お互い裸になって、肌を重ね合う。

ローションをとりだして、京楽は浮竹の蕾に指を三本入れた。

「あああ!」

「まだ、指だよ?」

「やあああ、そこだめええ」

「ここかい?ふふ、こここりこりってされるの好きだよね」

指で前立腺を刺激されながら、もう片方の手で浮竹のものをしごいて、中いきと同時に射精させた。

「んあああああああ!!」

「いい声で、啼くね?」

浮竹は、ペロリと自分の唇を舐めた。

「こい、春水」

「うわ、えっろ・・・・いれるよ?」

「ひあああああ!!」

指とは比べ物にならない質量の熱い熱に引き裂かれる。

「あああ、あ、あ」

一気に貫かれたが、その後は緩慢な動きだった。

「や、もっと激しく・・・・俺をめちゃくちゃにするくらいに、抱いてくれ」

また、ぺろりと唇をなめる。

浮竹は気づいていないのだろう。

その行動が、どれだけ京楽をあおっているのか。

「望み通り、めちゃくちゃにしてあげる」

一度引き抜いて、ぱちゅんと音がたつほどに挿入する。

「あ、あ!」

ぱちゅん、ぱちゅんと、挿入を繰り返されて、浮竹の太ももは京楽の精液で白いものが伝いおちていた。

すでに、いれた時に締め付けがすごくて、一度中に出していた。

「あ、ああ、お前の子種が欲しい。胎の奥にぶちまけろ」

「アフターピル飲まなきゃいけないから、嫌なんじゃないの?」

「奥にきて。ごりごりってして」

浮竹は、翡翠の瞳を情欲に輝かせていた。

「お望み通り、奥まで貫いてあげる」

ごりごりと、最奥まで侵入してきた京楽の熱は、何度も浮竹の胎の奥をごりごりと抉ってから、白い精液をぶちまけた。

ドクンドクンと自分の中に注がれる愛しい男の熱に、浮竹はうっとりとする。

「もっとくれ・・・もっと、お前がほしい」

「たくさんあげるから、孕んでも知らないよ?」

「あ、あ、孕んでもいいから、お前の子種ちょうだい」

京楽は、一度抜くと浮竹をベッドの上に立たせた。浮竹は壁に背中を預けて、前から立ったまた京楽に貫かれた。

「あああ!深い、やああああ」

「深く抉られるの、好きでしょ?」

「やあああ、おかしくなるうう」

「セックスでおかしくなったこと、ないでしょ?」

「やあああん」

「あおってるの?」

「あ、春水、春水」

浮竹は、京楽の背中に手をまわして爪を立てた。

ぴりっとした痛みを感じつつも、それさえ気持ちよく感じて、京楽は浮竹を穿ち、奥をごりごりと抉って、また精液を吐き出した。

「んああああ!!やあああ、もれる、もれる!」

「潮でしょ?」

ぷしゅわああと、透明な潮を浮竹は出していた。

「やあああ、いやあああ」

あまりの恥ずかしさに、浮竹は京楽の肩に噛みついた。

「春水・・・・・俺の、ものだ」

「そうだよ。僕は君のもの。そして、君は僕のものだ」

ベッドに四つん這いにさせて、背後から貫くと、浮竹は背をしならせた。

「ああああ!!」

もう出すものがないでの、中いき、オーガズムでいくばかりであった。

「十四郎、女の子みたい。かわいいね」

「やあ、春水のばかぁ」

体位を変えて、さらに何度か精液を胎の奥に注ぎ込まれて、浮竹は満足した。

京楽のほうが、こってりしぼられたかんじで、しおしおだった。

「もう、出すものがないよ」

「お陰ですっきりした。アフターピル飲んでくる」

浮竹は、タオルで太ももを伝い落ちる京楽の精液をふきながら、アフターピルを口にして飲む。

「なんだ、これくらいでしおしおなのか。いつものお前はどうした。俺を抱きつぶすようなお前が」

「いや、発情期の浮竹ってすごいから。もう、こっちは5回は出したんだよ?流石に疲れるよ」

「ふふふふ」

浮竹は、ペロリと唇をなめて、浮竹の首筋に吸い付いた。

「何してるの?」

「マーキング。お前がいつも俺にするのの、仕返しだ」

「わお、熱烈だね」

「お前のお陰で、発情期は乗り越えれる。感謝している」

「僕もいい思いさせてもらってるから、あおいこさ」

また、来月も発情期は訪れる。

発情期とか関係なしに混じりあっている二人には、発情期は浮竹が積極的になってエロくなりまくるだけの、少し特別な日であった。



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奴隷竜とSランク冒険者27

浮竹は、ダークネスドラゴンの京楽とお留守番をして、ドラゴンについていろいろ教えてもらった。

その後、「慰めてあげなよ」と言われて、なぜか京楽にメリアナ王国にもどって、宿に帰ってからベッドに押し倒された。

「なに、するんだ!」

「なにって、むふふふなこと」

「な・・・・やん」

服の上から弱いところを刺激されて、浮竹は甘い声を出す。

「君の声は、いつ聞いてもそそるね」

「やっ、京楽・・・・・・」

結局、浮竹はそのまま京楽に抱かれた。



「やあああ、孕むから、やあああ」

「ふふ、卵産んでもいいんだよ?」

激しく突き上げられて、浮竹な涙を零した。

「やん、そこだめめええええ」

「ここ、いいんでしょ?ごりごりってされるの大好きだよね?中で子種注いだら、いつも中いきしてるもんね」

「やああ、や、やああ」

京楽にごりごりと奥を突きあげられて、結腸にまで侵入してきた熱は、濃い子種をビュルビュルと浮竹の胎の奥に注いだ。

浮竹は、中いきをしながら、精液をはきだしていた。

ビクンビクンと体がはねる。

「やああ、いっちゃう、いっちゃううう」

「いくらでもいっていいよ?」

「春水のばかああ」

「十四郎、愛してるよ」

奥で射精しながら、京楽は浮竹に深く口づけた。



「むう」

湯浴みをして、念のために回復魔法もかけたが、浮竹の機嫌は悪い。

いきなり押し倒されて、行為に至ったので、京楽はとりあず往復ビンタを10回はくらったのだが、機嫌がよかった。

「いきなりするなんて、「慰めてあげなよ」ってこういう意味だったのか。ダークネスドラゴンの京楽のやつ、今度会ったらチョップしてやる」

「えへへへ、僕は幸せだなあ」

「殴るぞ」

「言う前に殴ってる・・・・・・」

拳を鳩尾にめりこんで、浮竹はダークネスドラゴンの京楽からもらった、ドラゴン大百科事典を広げた。

「何、おみやげにもらったの?」

「ああ。どこにどのドラゴンが住んでいるのかとかも書いてるんだ」

「マザードラゴンも?」

「マザードラゴンは世界樹のある場所に住んでいる、そうだ。実際に姿を見た者はほとんどいない。存在しているんだろうが、神なので違う空間に住んでいるのかもしれない」

「ふーん。月竜は、太陽竜と並んで美しい存在である・・・・当たり前だね。浮竹は月竜じゃなくても綺麗だよ?」

「ばか」

浮竹は赤くなって、京楽の頭をはたいた。

「ふふふ、続きする?」

「まだしたりないのか!3回も出しただろう俺の中に!」

「うん。まだいけるよ」

「簡便してくれ。アフターピルまた飲むのは嫌だ」

浮竹という月竜は、オスでも妊娠できる。

異種族間でも可能で、浮竹は京楽とのセックスが終わると必ずアフターピルを飲んだ。

意識を飛ばした後でも、よくきくアフターピルを飲んでいるので、妊娠したことはなかった。

「最近部屋の中にばかりいて、体が鈍ってきたな。久しぶりに、Sランクダンジョンにでも挑むか」

「そうだね。それもいいね」




京楽が選んだSランクダンジョンは、氷のダンジョンだった。

「なんで、俺の属性にあうところを選んだ。アイシクルブレスが通用しないじゃないか」

「でも、氷の属性だから全体的に魔力も体力もUPしてるでしょ?」

「まぁ、それはそうだが」

でてきたアイスタイタンゴーレムを、浮竹が魔法で屠る。

「グラビティゼロ」

ハイエルフの浮竹の管理する、中央大図書館で覚えた、覚えたての魔法だった。

「浮竹、魔力が過剰だよ。魔石まで砕けちゃってる」

「うーむ、扱いがまだちょっと難しいな。禁忌系は、使うには慣れないと、いざという時に使えない」

今度は、アイスガーゴイルがでてきた。

「グラビティゼロ」

「きゅおーーん」

次はうまくいった。魔石は残り、アイスガーゴイルの冷たい石の体を砕くだけで終わった。

「この魔法は、素材系になるモンスターには向かないな」

「デス」

京楽は、即死魔法で周囲を取り囲んでいたモンスターを一掃し、浮竹を見る。

「この魔法、便利でしょ。消費魔力が多いのが欠点だけど、素材回収にはもってこいだと思わない?」

「この階層で素材になるモンスターはほとんどいない。いざというときにとっておけ」

「うん、そうだね」

5日かけて、深層の60Fまでたどり着き、氷のヒュドラがボスだった。

「Sランクダンジョンのボスって、ヒュドラが多いね」

「くるぞ!」

「エターナルアイシクルフィールド!」

ヒュドラが、氷の魔法を放ってくる。

浮竹はそれを吸収して、炎は無理なので雷の魔法を唱えた。

「ヘルボルテックス!」

「があああああああああ」

「さぁ、ドラゴンスレイヤー、ドラゴンじゃないけどそれに近いヒュドラだよ。その血をすすり、糧とせよ!」

京楽が魔剣を解放して、雷で感電して動けないでいる氷のヒュドラを、真っ二つに切った。

「きしゃあああああああ」

どおおおんと音をたてて、ヒュドラが倒れる。

「素材回収っと」

流れ出た血を集めて、小瓶にいれていく。

ヒュドラはドラゴンに近いので、肉や血も素材となった。

後は、爪、牙、鱗の皮、目、角など。

あますとことなく、素材となる。

アイテムポケットにヒュドラの体をしまいこんで、浮竹と京楽は帰還の転移スクロールを使って、外に戻った。

「邪神ザナドゥの呪いあれ」

「え?」

「へ?」

二人は、黒いフードをかぶった妖しい男に、術をかけられた。

寿命をけずっていく呪いだったが、浮竹のオボエルモノのユニークスキルで覚えたアンチカースの魔法で、解呪できるレベルだった。

「アンチカース」

「ありがと」

京楽は、呪いを解除してもらうと、自分にもアンチカースの魔法をかける浮竹を見ていた。

「邪神ザナドゥ。今勇者が攻略中だっていう、あの邪神か」

「そうみたいだね。それの配下の者かな。腕の高いSランク冒険者が呪われて、大地母神神殿で解呪を行ってもらっているという噂を聞いたよ。犯人はさっきのやつだろうね」

「魔力探知できるか?」

「当たり前だよ」

浮竹と京楽は、魔力探知で去って行った妖しい男の居場所をつきとめた。

なんと、大地母神の神殿の中だった。

「大神官・・・・・君、邪神ザナドゥの信者だね?」

「な、何を証拠にいきなり・・・・」

「メモリー」

浮竹が、大神官の記憶をのぞく魔法を使うと、大地母神の大神官でありながら、邪神ザナドゥの信徒であり、呪いをふりまいていた元凶と分かり、身柄を確保されて、王国騎士団に引き渡した。

「呪いを解く大神官が呪いをかけていたなんて。荒れるね」

「そうだな」

魔王藍染と同じほどに厄介な、邪神ザナドゥは、密やかに信者を増やし、メリアナ王国の中心部まで食い込んでいくのだった。

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奴隷竜とSランク冒険者26

藍染は元勇者であり、現在は魔王である。

「うーんうーん」

その藍染は、傍若無人ぶりから前の魔王の側近に去られてしまい、藍染には配下の者がいなかった。

それを侍女にやつ当たりするものだから、侍女は魔王の財宝をくすねて、1個白金貨3枚もするモレ草という強力な下剤を、藍染に盛った。

10枚分。

普通は死ぬ。

「うーんうーん」

藍染はうなっていた。

でも藍染は死ななかった。ただ、金のおまるに1週間すわり、トイレにこもろうにも漏らすので、べッドの傍に金のおまるを置いて、緊急時に備えた。



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「っていう、現在の魔王の状態なんだそうだが、どう思う?」

「うーん、ガセじゃないの?あの藍染だよ。この前、中央大図書館に侵入して、いくつかの禁忌の魔法書を盗んでいたっていうよ。そんな者が、モレ草もられて激ピーピーになる?」

「それもそうだな。とりあえず、お前は中央大図書館に今すぐ行きたそうな顔してるし、盗まれた魔法書を確認しに、ユハール大陸の俺たちのところにいこうか」

浮竹と京楽は、ゲートを使い今いる大陸からワープして、ユハール陸に到着する。

空間転移魔法は、古代魔法都市文明の遺産で、今は残っているゲートを修復して使っている状態だった。

ハイエルフの浮竹にならば、ゲートを作って違う場所に飛べそうだが、空を飛べたりするし、そうそう遠くには行かないので、今のところは新しいゲートは必要なかった。

「おーい、いるかー?」

中央大図書館に続く遺跡を進み、ドアをノックすると、ハイエルフの浮竹が出てきた。

『あれ、どうしたの』

「いや、藍染の襲撃を受けたと聞いてな。何か役に立つことはないだろうかと、やってきただけだ」

『ありがたい。魔法書が乱雑にされて、整理に困っていたんだ』

『何、ムーンホワイトドラゴンの浮竹と、冒険者のボク?』

ダークネスドラゴンの京楽は、浮竹を見るときは柔らかな表情になるが、京楽を見る時はどこか威嚇したような目で見た。

「僕、何もしてないんだけど」

『ここの魔法書が本当は目当てなんでしょ。バレバレだよ』

「そんな言い方って・・・」

「京楽、おちつけ。ダークネスドラゴンの京楽も、煽るようなことはするな」

『魔法書は、浮竹に聞いてよ。浮竹なら、君たちに甘いから、いくつか魔法書くれるだろうさ』

ダークネスドラゴンの京楽は、そう言って藍染の手で砕かれてしまった本棚を新しいものと交換していた。

「ハイエルフの俺何をすればいい?」

『んー、何だ?』

「藍染に襲撃されたそうだな。手伝えることはあるか?」

『あ、助かる。魔法書がばさばさになって、あるべき場所に戻すのに苦労してるんだ。人手は多いほうがいいけど、この中央大図書館に通せる相手はそうそういないからな』

「ハイエルフの浮竹、新しい魔法覚えたいんだけど、何かいいのない?」

『んーそうだなぁ。このヘルジャッジメントとエクスカリバーの魔法なんてどうだ?』

「おお、いいね!」

効果を聞いて、京楽は早速魔法書に目を通して、覚えてしまった。

「浮竹も覚えたら?中央大図書館にある魔法を覚えれるなんて、そうそうないから」

「ああ」

浮竹は、魔法書に一瞬目を通した。

「覚えたぞ」

「ええ。一瞬見ただけじゃない!」

「俺は魔法を覚えるのは得意だからな。一瞬目を通すだけで覚えれる。「魔法を行使する者」というユニークスキルを持っている」

「ええ、まじで。はじめて聞いた・・・・・」

京楽は、浮竹のことで知らないことがあったのが哀しいようで、違う魔法書はないかとハイエルフの浮竹に聞く。

『サンシャインレイはどうだ?サンシャインレイドラゴンしか、普通は覚えられない魔法だ』

「お、いいね!」

『浮竹、そっちの京楽に魔法を覚えさすの、ほどほどにね。世に出回ることになるから』

「いや、浮竹と二人きりでダンジョンもぐった時にしか使わないよ」

京楽は、そう言う。

『どうだか』

「俺が保証する」

『君が言うなら、うん、まぁ・・・・・』

ダークネスドラゴンの京楽は、浮竹の言葉を信用することにした。

「なんでも僕はだめで、浮竹ならいいの」

『信頼度の差だね。君はボクの大嫌いな人間だけど、ムーンホワイトドラゴンの浮竹は数少ない同族だから』

結局、京楽と浮竹は、サンシャインレイの魔法の他に数種類の魔法を覚えた。

ハイエルフの浮竹が、ほいほいと教えるものだから、ダークネスドラゴンの京楽にそこまでとストップがかかる。

『これ以上覚えさせたら、世界を破壊できる者になるよ』

『大丈夫だ。この二人なら、その心配はない。だが、さすがに禁忌ばかり教えすぎたな。このエターナルフレイムエンドの魔法で、終わろうか』

「うわー、凄い魔法だね。一夜で幻の古代都市を滅ぼした魔法か」

「なるべく使わないようにしよう。使ったとしても、魔力で制限をつけるべきだ」

「うん、そうだね」

浮竹と京楽は、魔法書を丁寧に片づけていくご褒美とばかりに、魔法書の魔法をいろいろ見せてもらった。

『ふう、大分片付いたな。後は俺と京楽で十分だ』

「そうか。じゃあ、俺たちは覚えた魔法をぶっぱしに、Sランクダンジョンにでもいく」

「浮竹、ぶっぱって、魔力制御するんでしょ?」

「当たり前だろう。禁忌を魔力の全てで放つと、Sランクダンジョンそのものが崩壊する」

「うわー、怖い」

「お前は、そんな魔法を覚えたがったんだろうが」

「覚えるだけでよかったんだけどね。別に使わなくてもいいよ」

「使わずも覚えてるだけを宝の持ち腐れというんだ」

浮竹は他にもくどくどと京楽に説教した。

「ねぇ、それより今度の満月の夜に・・・・・」

「んっ」

ハイエルフの浮竹とダークネスドラゴンの京楽の目の前で、ディープキスをする。

『う、浮竹は見ちゃダメ!』

『えー』

「ちょ、お前、こんな場所で・・・・んんんっ、んあっ」

「ということで、僕らは帰るねー。僕の浮竹から僕の匂いがするのはこういうことなんで」

京楽は、ダークネスドラゴンの京楽にバイバイと手を振った。

『人間ってやっぱり・・・でも、ボクも相手が浮竹なら・・・・』

『ちょ、京楽、どこ触ってるんだ!』

京楽に触発されて、ダークネスドラゴンの京楽も浮竹にいらぬちょっかいをかけはじめるのであった。



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奴隷竜とSランク冒険者25

『キュウ』

「これは・・・・どうしたことなんだ?」

浮竹が、ちびドラゴンになってしまったダークネスドラゴンの京楽の様子を、監察する。

『キュウキュウ』

「遊んで?いつものダークネスドラゴンの京楽らしくないな」

『キュウウウウ』

「腹減った?って、いたたたた、俺は食べ物じゃないぞ」

『キュウウ』

『ちょっとしたことがあってな。京楽はちびドラゴンになってしまった。噛むのは愛情の証だ』

ハイエルフの浮竹が、ちびになったダークネスドラゴンの京楽を抱き抱える。

「いいなー。じーーーーーーーーー」

熱い京楽の視線を感じて、浮竹は溜息を零した。

「今回だけだぞ。俺もちびドラゴンになろう」

浮竹は、ポンっと音をたてて、肩に乗れるくらいの猫の大きさのドラゴン姿になった。

羽毛で覆われていて、もふもふだった。

「わーい、浮竹のちびさんだーーー」

「ちょ、京楽、抱きしめる力が強い!俺は体は子供の姿になっているんだ」

「あ、ごめん。いつもの調子で抱き着いちゃった。このまま人間化すると、やっぱり小さいの?」

「いや、普通に元の人型に戻る。だから言っただろう。今回だけだと」

「浮竹かわいい。まじ天使。浮竹かわいい」

「それしかいえんのか」

浮竹は京楽の顔面に猫パンチならぬドラパンチをすると、ダークネスドラゴンの京楽に話しかける。

「さぁ、俺もちびになったぞ。おかげで遊びたい。一緒に遊ぼう」

『キュウ!』

いいよと言ってくれて、浮竹はダークネスドラゴンの京楽とじゃれあっていた。

「いいなぁ。僕もまじりたい」

『俺もまじりたい』

「でも、せっかくチビドラゴンになれた同士で遊ばせてあげたいしね」

『そうだな』

京楽とハイエルフの浮竹は、パタパタと空を飛んで追いかけっこする2匹の子ドラゴンをかわいいなぁと、眺めていた。

『きゅう、きゅう』

「おい、ハイエルフの俺。ダークネスドラゴンの京楽が腹が減ったそうだ」

『俺はドラゴン語は分かるぞ』

「そうか」

『ご飯にしよう。・・・・・・でも、俺は料理できない』

ハイエルフの浮竹は、いつもダークネスドラゴンの京楽がおいしいものを作ってくれるので、料理の腕など磨いたことがなかった。

「僕がつくるよ。材料は・・・うーん、海鮮パスタでいいかな」

『あ、そっちの京楽は料理できるのか?すごく助かる』

「こっちの浮竹も料理の腕はいまいちでね。僕が基本ダンジョンとかでは作るようにしてるよ。高級宿にいる時は、料理は作ってもらったの食べてるけど、料理はできるよ。浮竹に会う前は、ソロ冒険者してたからね」

「京楽の料理はうまいぞ」

『きゅう、きゅう』

「早く作れだとさ」

「僕にはドラゴン語はさっぱりだからねぇ。翻訳してくれて助かるよ」

京楽は、手慣れた手つきで海鮮パスタを作り、サラダとデザートにパイナップルに蜂蜜をかけたものを出してきた。

『お、美味いな』

ハイエルフの浮竹は、美味しそうに食べる。

浮竹はというと、ちびドラゴン姿のまま食べていた。

「人間に戻らないの?」

「一度ちび化すると、1日はこのままだ」

『きゅう、きゅうう』

ダークネスドラゴンの京楽は、海鮮パスタにもサラダにもデザートにも顔を突っ込んで食べるものだから、顔が最後は蜂蜜まみれになっていた。

『こら、京楽行儀が悪いぞ』

ハイエルフの浮竹が、濡れたタオルでダークネスドラゴンの京楽の、ちびドラゴンの小さな顔をふいてやる。

『きゅう、きゅう』

「お腹いっぱいになったから、寝たいだそうだ。俺も一緒に寝ないかと誘っている」

「だめ!いくらちびになったとしても、浮竹は僕のものだよ!ぜーーーーったいにだめ!」

「京楽・・・・お前、心がせまいな。今のこの子ドラゴンに、欲があると思うか?」

「それでもだめ。寝るっていうんなら、僕も混ざるよ」

『京楽、寝ていいが一人で寝ろ。ちゃんと傍にいるから』

『キュウウ!!』

「はい、ご主人様だって。そっちの俺は、そっちの京楽にご主人様と思われてるのか」

『あ、ああ。思考まで幼児化していて、いろいろ大変だ』

「京楽、保存できるような食事をたくさん作ってやれ。ハイエルフの俺は料理が苦手のようだし、このちびどらごん姿では、ダークネスドラゴンの京楽は飯を作れないだろうし、しばらく元に戻りそうにない」

「仕方ないねぇ。浮竹の頼みとあらば、冷凍して温めたら食べれる料理、1週間分くらい用意するよ。まずは買い出しに行かないとね」

「ああ、俺はこの姿だからお留守番だ。ハイエルフの浮竹と買い出しに行ってくれ。ダークネスドラゴンの京楽のことは、俺が見ておく」

ベッドに丸くなって眠っているダークネスドラゴンの京楽を、ちびドラゴンになった浮竹が優しく撫でた。

『急いで戻ってくるから!それまで、頼むよ。さぁ、人間の京楽、買い出しにいくぞ』

「え、ああ、うん」

ハイエルフの浮竹と京楽は、風の魔法を使って空を飛んで、マッハで買い物をしてアイテムポケットに買ったものをつっこんで帰ってきた。

「は、はやいな。まだ20分しか経ってないぞ」

『京楽が目を覚ました時、俺がいないと泣くからな』

「そうか。俺もこっちの京楽のことは一応主だとは思っているが、対等の関係でいたいのでそういう契約を交わしている」

『俺もだ』

「しかし、いつそっちの京楽は元に戻るんだ?」

『さぁ、俺にも分からない」

「そうか。愛する者を愛せば、意外と早く戻るかもな?」

『どういう意味だ?』

「それは、お前で考えろ」

『むう』


「さぁできた!1週間分の冷凍食品作ったから、帰るよ、浮竹」

「ん、ああ。そうだな」

浮竹は、京楽のアイテムポケットの中に入って、姿を見られないようにして自分の住む大陸の王国に、京楽と一緒に戻っていく。

「じゃあ、またな。ハイエルフの俺に、ダークネスドラゴンの京楽」

「またね~」


『はぁ・・・・京楽、いつになったら元に戻ってくれるんだ?』

『キュウ?』

目覚めたダークネスドラゴンの京楽は、重い溜息をつく浮竹にすり寄るのだった。

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奴隷竜とSランク冒険者24

ハイエルフの浮竹とダークネスドラゴンの京楽のいる大陸で、迷いの森があるSランクダンジョンを踏破した。

4人での攻略が楽しくて、浮竹はダークネスドラゴンの京楽に、下手な字で手紙を書いた。

いわく、こっちの大陸でSランクダンジョンにいかないかというものだった。

『はぁ・・・・断るのもなんだしねぇ』

『転送陣があるからな、向こうの大陸まではすぐにつける』

ハイエルフの浮竹は、荷物をアイテムポケットに収納して、行く気満々であった。

『ボクは、人間のボクに会いたくないんだよね。ムーンホワイトドラゴンの浮竹には興味あるけど、彼ってば人間の匂いが染みついてて、それが嫌なんだよね』

『そういうえば、京楽は人間の自分が嫌いなんだな』

『人間はみんな嫌いだよ』

そう言いながらも、ダークネスドラゴンの京楽は、ダンジョンに挑む準備をしっかりとしていた。



「やあ、ダークネスドラゴンの京楽と、ハイエルフの俺。この前ぶりだな」

『やあ』

ハイエルフの浮竹は気軽に返事をするが、ダークネスドラゴンの京楽は、浮竹の隣にいる人間の京楽に眉をしかめた。

「僕、何かした?」

『人間くさい。ボクは人間が嫌いなんだ。できるだけ放っておいて』

「そ、そうか」

『ごめんね、冒険者の京楽。うちの京楽はああなんだ。まぁ、そのうち慣れるかもしれないから、それまで我慢してくれないか』

「いや、別に好かれたいわけじゃないから。僕は、僕の浮竹がいればそれでいいし」

『こっちの京楽も、言ってることお前と同じだな』

ハイエルフの浮竹は、クスクスと笑った。

『な、全然違う』

『はいはい。そう言うことにしておく』



「ダークネスドラゴンの京楽、今日行くダンジョンは火属性のモンスターが多いから、俺が前衛になる」

「僕も前衛するよ?」

「京楽は、アイシクルブレス吐けないだろう。ブレスは魔力を使わないから、使い勝手がいいんだ。だから、俺が前衛になる」

「じゃあ、僕は君を守るよ」

「守ると言われても、俺は強いぞ。俺に背を預けて、いつものように一緒に戦ってくれ」

「分かったよ」

『さすがSランク冒険者をずっとしているだけあるね。息がぴったりだ』

炎のSランクダンジョンの到着しての、二人の活躍ぶりは目を見張るものがあった。

ファイアマンティコアを、浮竹がアイシクルブレスで纏っている炎を消して体を氷つかせ、そこを京楽がドラゴンスレイヤーの魔剣できっていく。

氷漬けで切られた魔物の素材は新鮮で、京楽はアイテムポケットに収納していく。

『京楽、こっちにも来るぞ!』

『ダークブレス!』

ハイエルフの浮竹に襲い掛かってきたファイアイーグルは、ダークネスドラゴンの京楽の闇のブレスにやられて地におちて、ばたついていることろをハイエルフの浮竹の魔法がとどめをさす。

『アイスジャベリン!』

「やるな、ハイエルフの俺!」

「ただのアイスジャベリンなのに、大地まで凍りついてるね」

「ハイエルフの俺の魔力はかなり高いからな。俺もそっちの京楽も、神竜クラスの力をもっているが、それに近い」

「神竜か・・・・・本当に、実在するの?」

「実在する神竜は今のところマザードラゴンだけだな。全てのドラゴンの母であり、守護者でもある」

『ボクたちは希少種の上に力があるからね。そのせいで、人に狙われる』

「まぁ、それもそうだが、俺は人間は好きだ。自由を与えてくれたのは京楽という人間だ」

ムーンホワイトドラゴンの浮竹と、ダークネスドラゴンの京楽は、ダンジョン攻略期間中に満月の日が訪れるのを失念していた。

ダンジョンにもぐって3日目、満月の日になった。

「どうしよう、京楽。半竜人化してしまった」

「いつものように振舞えばいいよ。あっちの僕も半竜人化してるみたいだし」

見ると、白い天使のような翼をもった浮竹とは正反対の、悪魔のような皮膜翼をもつダークネスドラゴンの京楽がいた。

『君は、半竜人化すると天使の翼になるんだね。綺麗でいいね』

「そ、そうか?でも、お前もかっこいいぞ」

『京楽が、半竜人化した姿を見せるってことは、少しは心を開いた証かな』

ハイエルフの浮竹は、そう言って夕飯のシチューを作っていた。

「あ、僕も手伝うよ」

ハイエルフの浮竹の料理の腕はからっきしで、危ない手つきでじゃがいもの皮をむいているのを放置できず、京楽が手伝うといってほぼ全て、一人で作ってしまった。

『ご飯はおいしいんだけどね・・・人間が作ったって思うと、ちょっとね』

「食べながら文句を言うんじゃない。おい、ダークネスドラゴンの京楽、せめて俺の京楽の前では人間嫌いをあまり見せないでくれ。俺が哀しくなる」

『ごめん』

『すまんな、ムーンホワイトドラゴンの俺。京楽は極度に人間が嫌いだから』

「ハイエルフの俺も、人間嫌いを治すようにしないのか」

『こればかりは、本人の意思だしな』

「はいはい。僕が人間で悪かったね。でも、ダークネスドラゴンの半竜人化した姿ははじめて見るけど、ドラゴンっぽい感じがしていいね。浮竹はなんか尻尾と角の生えた天使に見えるから。まぁ、中身も天使なんだけど」

「こら、何を言ってるんだ京楽!」

浮竹は真っ赤になった。

『ムーンホワイトドラゴンは羽毛が鱗のかわりに生えてるから、天使の翼になるんだな。でも、京楽みたいに皮膚が鱗にならないのはいいな。皮膚が羽毛になってたら、ちょっとヤダ』

「ふふ、お前たちだけだぞ?半竜人化した姿を見せるのは」

『それは僕もだよ』

ドラゴンの二人は、尻尾を揺らした。

「ちなみに、浮竹は尻尾が弱いよ」

『俺の京楽は角だな』

「おい、何を言い合っているんだ!」

『浮竹、秘密にしておいてよ!』

「へー。角に弱いの~」

京楽は、意地の悪い笑みを見せた。

『ほう、尻尾に弱いのか』

ハイエルフの浮竹も、意地の悪い笑みを見せる。

二人そろって、ドラゴンの二人の弱点を攻めると、ドラゴンの二人は呼吸を荒くして、赤くなった。

「京楽・・・・・体が熱い。抱きしめてくれ。すぐに治まるから」

『浮竹、抱きしめさせて。この火照り、すぐに静まらないけど、なんとかするから』

それぞれお互いのパートナーを抱きしめて、夜は更けていく。



炎のSランクダンジョンのボスは、炎のヒュドラだった。

「アイシクルブレス」

「エターナルアイシクルワールド!」

『アイスジャベリン』

『アイシクルエッジ』

4人で氷の魔法を叩きこみ、袋叩きにすると、炎のヒュドラは炎を凍り付かされて、最後のおたけびをあげる。

「「「「エターナルアイシクルワールド!!!!」」」」

4人分の氷の禁忌に近い魔法を受けて、炎のヒュドラはは氷像と化して息絶えた。

財宝の間が開く。

中に会った魔法書に、ハイエルフの浮竹がため息をつく。

『俺が書いた魔法書だ』

「お、新しい魔法か。何々・・・・・グラビディゼロ。重力の魔法か。なかなかに使い勝手がよさそうだ。京楽」

「なんだい?」

「グラビディゼロ」

「ぬおおおおおおおおおお」

京楽にすごい重力がかかり、京楽の体は地面にめりこんだ。

「ふむ、すごいな」

「ちょっと浮竹、僕を実験台にしないでよ!」

「お前は魔法抵抗力がずば抜けて高いから、モンスターよりお前を実験台にしたほうが早い」

「だからって・・・・うがががが・・・ええい、マジックキャンセル!」

京楽は、浮竹の魔法を無理やり消滅させた。

「つまらん」

「僕を使っていじめてない!?」

「たまにはいいだろう。夜は散々俺を弄ぶくせに」

『『やっぱり』』

ハイエルフの浮竹とダークネスドラゴンの京楽は、浮竹に京楽の匂いが染みついている理由が分かった気がした。

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30話補完小説

「よくやった、雨竜」

ユーハバッハは、静かにそう言った。

一護は、石田雨竜を睨んでいた。

「陛下の邪魔をするな、黒崎」

「なんの真似だってきいてるんだよ、石田!!!」

喉が張り裂けそうな声を出す。

なぜ、なぜ、なぜ。

仲間だったはすだ。友人だったはすだ。

「石田・・・・・・」

「動くなよ、全員だ。全員その場から少しでも動いたら、撃つ」

一護は真っ先に動いた。

「撃つと言った」

「ふざけてんじゃねぇぞ!俺らがなんのためにここへ来たのか分かってんのかよ!」

「聞いていた。陛下を止めるためだろう。それをさせないと言っているんだ」

一護は、唇を噛み切った。

「知らねぇのか!そいつを止めねぇと、尸魂界も現世も虚圏もみんな消えてなくなっちまうんだぞ!」

「それを知らずに、ここにいると思っているのか?」

石田はたんたんとしていた。

「・・・・・・知ってんのかよ」

一護は、斬魄刀を強く握る。

「俺たちが来た理由も知って、戦う理由も知ってて、それでなんで・・・・・!!!」

石田。

なんでだ、石田。

俺たちは仲間で、友達で・・・・。

「なんでお前はまだそこにいるんだよ!!」

「僕が滅却師だからだ」

その一言が全てだった。

「石田ああああ!!!」

「僕の覚悟だ。さぁ、黒崎、どうする?」

石田は、力を解放した。

「月牙十字衝!」

一護は、クロスさせた月牙天衝を放つ。

それを、石田の弓の矢が迎え撃つ。

「石田ああああ!!!」

「甘いな、黒崎。僕を殺そうとしないその甘さが、命取りだ」

放たれた月牙十字衝は、石田の体をかすめて遠くへと飛んでいく。

「俺は滅却師。お前は死神。元々、敵対関係だ。死神など、この世界にいらない」

「石田・・・・・」

ぼろぼろになった一護が、空から、霊王宮から落ちていく。

落ちていく。

落ちて。



霊王の右腕であるミミハギ様を神掛した浮竹は限界を迎えようとしていた。

びくびくと、黒ずんだ体がはねる。

「危険です、もう無理です、これ以上は!」

虎徹勇音副隊長が止めようとするのを、虎徹清音3席が止める。

「浮竹隊長・・・・・」

ルキアは、浮竹を見ていられないとばかりに、顔を伏せた。



「石田・・・・・・」

空から落ちながら、一護は思う。

石田とは、相容れられなかったのだろうか。

和解する術はなかったのだろうか。

「滅却師がんだ、死神がなんだっつうんだ!」

石田、石田、石田。

お前は、滅却師で、俺の仲間で、俺の友達だ。

絶対に、諦めない。

お前の目を、覚まさせてやる。


一人の滅却師と死神は、争い合い、答えは闇の中であった。

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奴隷竜とSランク冒険者24

その日は、満月だった。

ムーンホワイトドラゴンの浮竹は、半竜人化して、ゆらゆらと尻尾を揺らしていた。

「今日は、月がよく見えるね。ねぇ、お月見しない?」

「いや、俺は・・・・」

「いいじゃない。誰もいないし、ほら、おいで?」

京楽に手を引っ張られて、浮竹は月の光を浴びた。

すると、浮竹の肌が淡く光り、全体が月の雫を浴びたように銀色に輝やいた。

「浮竹・・・・すごい美人。いつも綺麗だけど、いつもの倍くらい綺麗・・・・」

「だから、嫌なんだ、満月の月の光を浴びるのは。体が変に光るし、周囲にチャーム(魅了)の魔法を無条件で発動する」

「ん、僕は平静だよ」

「え。俺のチャーム、効かないのか?」

「うん。でも、ほんとにいつもより綺麗だよ、浮竹」

抱きしめられて、平静でいる京楽が嬉しくて、浮竹はドラゴンの尻尾をゆらゆらと揺らした。

「ねぇ、したい」

「ん・・・少しだけ、なら」

尻尾を握られて、その気になってしまった浮竹は、京楽に口づけた。

そのままベッドまで連れていかれる。

窓からも月の光が入っていて、浮竹の肌は淡く銀色に輝き、白い髪も銀色になっていた。

緑の瞳にも銀色の光がまじって、不思議な色をしていてとても綺麗だった。

「ん・・・・・」

京楽の舌が、縮こまっている浮竹の舌を絡めとる。

「んあっ」

服の上から敏感な場所を触られて、びくっと反応する。

「綺麗だよ、浮竹」

「んう・・・・・」

衣服を脱がされて、浮竹も京楽の衣服を脱がしていく。

「ああっ」

舌で胸の先端を舐め転がされて、甘いしびれが体中をかけめぐる。

「ちょっと、寒い」

「そうだね。最近冷えてきたものね・・・・・プチファイア」

体を温める魔法をお互いにかけて、抱きしめ合う。

「あったかい・・・」

「うん、あったかいね。君の鼓動の音が聞こえる」

「京楽は心拍数が高いな」

浮竹は、尻尾を揺らした。

「いつもより魅力的な君に、見惚れてしまいそうだよ」

京楽は、ベッドサイドからローションを取り出した。

それを手の温度で温めて、浮竹の蕾の中に塗り込んでいく。

「ああ!」

びくんと、浮竹の体がはねる。

「ふふ、いつもより敏感だね。満月の半竜人化してるせいかな?」

「ああ、や、尻尾はだめ・・・・・」

浮竹のものをしごきながら、京楽は片方の手で尻尾をにぎにぎした。

尻尾は性感帯らしく、尻尾を強くこすると、浮竹は自分のものをかたくして、精液を放っていた。

「あああああ!!」

「え。尻尾いじってるだけで、いちゃったの?」

「だ、だから半竜人化して抱かれるのは嫌なんだ」

半竜人化して抱かれるのは初めてだった。

「かわいい。尻尾、弱いんだ?」

「ん・・・・」

尻尾を揺らして、浮竹は京楽を誘う。

「こい」

「うん。いれるよ?」

すでに指で蕾を解していたので、京楽の怒張したものはローションのぬめりをかりて、すんなりと浮竹の体内に入る。

「あああ!」

「ん、君の中、いつもより熱い」

「あ、半竜人化すると、体温が高くなるんだ」

「きもちいい・・・・」

「ああ!」

京楽は、浮竹の中を味わうように緩慢な動作で動いた。

「あ、もっと、もっと強く!」

「ふふ、もっと刺激ほしい?」

「奥までごりごりってして!」

「分かったよ」

最奥まで入り、ごりごりと中をすりあげてやると、浮竹は淡く光る肌を明滅させて、オーガズムでいっていた。

「ひああああ!!!」

「中に出すよ。僕の子種、ちゃんと受け止めてね」

「ひあ、だめ、今日はいつものアフターピル切れてるから、中に出しちゃだめぇ。卵うんじゃう!」

希少種のムーンホワイトドラゴンは、オスでも身籠れる。

異種族との間にも、子ができる。

京楽は、それでも中に注いだ。

「君が卵うんだら、責任もつから」

「あ、だめえええ、孕んでしまう!」

「確率は低いんでしょ?」

「でも、でも。生はだめ・・・・・」

「生だから、いいんだよ。もう一回出すよ」

「ああああ!!!」

ずりずりと、音をたてて京楽が侵入してくる。

「あ、くる、いっちゃう、いっちゃう!」

最奥をごりごりと突き上げて、京楽は浮竹の胎の奥に子種を放った。

浮竹がもしも卵を産んだら、たとえすぐに巣立つとしても大切にしようと思った。

「んあ・・・あ、あ、そうだ、クローゼットの奥に、予備のアフターピルあった・・・とってきて、春水」

「仕方ないねぇ」

京楽は、浮竹からずるりと自分を引き抜くと、灯りをつけてクローゼットの奥を探すと、アフターピルを見つけた。

「あったよ、十四郎」

「飲ませて」

「仕方ないねぇ」

京楽は、口にアフターピルを含むと、浮竹に口移しで飲ませた。

「あ!」

また、京楽が浮竹に覆いかぶさり、貫いた。

「やああああ、いやああ」

「いやじゃないでしょ?ここをこんなに濡らして」

「ああ、やあああ」

前立腺を刺激してやりながら、浮竹のものをしごくと、浮竹は尻尾をぴんとたてて、いってしまった。

「んああああ・・・・・・」

「きもちい?」

「あ、気持ちいい・・・・中に、生でたくさんだして」

「うん。言われなくても、そうするよ」

浮竹の胎の奥にたくさんの子種を注いで、京楽は満足した。

「お風呂、入ろうか」

「変なことはしない?」

「しないしない。もう十分に君を味わったし。尻尾、洗ってあげる」

「や、尻尾はダメ。自分で洗う」

一緒に風呂に入り、結局尻尾を京楽に洗われて、浮竹は軽くいってしまった。

「半竜人化してのセックスは、もうしない」

「なんで~」

「尻尾嫌だって言ってるのに、さわってくるからだ」

浮竹の肌は、まだ満月なので淡く輝いていた。

髪は銀髪になり、尻尾も角も、体も淡く輝いていて、浮竹は神秘艇だった。

特に瞳が緑色の中に銀色を宿し、闇の中の獣のように輝いていた。

「君のその不思議な瞳の色、また見たいな」

「変なことしないなら、また半竜人化した満月の夜に、月の光を浴びてやる」

「うん。約束だよ」

指切りをした。

次の満月の夜。

半竜人化した浮竹は、また月の光を浴びた。

尻尾をいじくられて、その気になってしまった浮竹を、京楽が抱いたのはいうまでもない。


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奴隷竜とSランク冒険者23

今回は、白哉と恋次のパーティーと合同でSランクダンジョンの難易度の高いダンジョンに挑むことになった。

「散れ、千本桜・・・・・」

白哉は、でてきたブラックワイバーンの群れを、魔剣千本桜を解放して、数億の花びらの刃にして、ブラックワイバーンの体を切り裂いていく。

「おい白哉、もう少し綺麗に殺せないか。皮がずたずただ」

浮竹が、白哉にそう言うと、白哉は笑った。

「敵を倒すために戦っている。素材の状態など、気にせぬ。金はあるからな」

「そりゃ、白哉さんは上流貴族だから金あるだろうっすけど、俺は素材を大切にしたいっす」

恋次が、ブラックワイバーンを即死魔法のデスで殺していく。

「うん、恋次君の魔法の使い方はいいね。まぁ、敵が自分と同レベルくらいになったらほとんど効かない魔法だけど、格下の相手を殺すにはいいよ」

京楽が、パーティーを代表してアイテムポケットに倒したモンスターの体を収納していく。

雑魚の場合は魔石だけを回収するが、ブラックワイバーンはドラゴンに近い劣等化した亜種なので、牙、爪、鱗の皮と、素材になった。

肉は食用として、わりと美味なので重宝された。

「今日の夕食は、ブラックワイバーンの肉を使ったシチューにしよう」

「お、いいっすね。ブラックワイバーンの肉ってけっこう高いから、普段あんまり食えないっす。まぁ、ルキアと結婚して朽木家に世話になりはじめて食べれるっすけど」

「白哉君は飽きるほど食べてるだろうけどね」

「確かに。飽きている」

「まぁそういわずに。僕の作るシチューはそれなりにうまいよ。ねぇ、浮竹」

「ああ。京楽の作る食事はうまい」

浮竹は小さなブラックホールの胃をもつので、すでに辛抱しきれず干し肉をかじっていた。

「ちょっと、浮竹、おなか減ったからって夕食前に干し肉を食べないの」

「だって、ひもじい」

「ひもじいって、貧乏人みたいなことを」

「これでも食せ」

白哉が、自分のアイテムポケットから、まんじゅうをたくさん取り出して、浮竹に与えた。

「白哉、好きだ!」

「ちょ、浮竹!」

まんじゅうを食べながら、白哉に抱き着く浮竹。

それを、べりっと京楽と恋次が離す。

「白哉さんは、大事にな義兄です」

恋次は白哉の義妹のルキアと結婚しているので、いわば義兄弟であった。

「浮竹、白哉君に気を許し過ぎ。ちょっと距離が近いよ」

「だって、俺、白哉のこと好きだぞ?」

「私も、兄のことはけっこう好きだ」

「え、まじで浮気?」

「この程度、浮気にならぬであろう」

「そうだぞ、京楽。考えすぎだ。俺がそういう意味で好きなのは京楽であって、白哉はなんだか弟のように思える」

「私も、浮竹を兄弟のように思っている」

「それならいいんだけど・・・・って、またくっついてる」

「京楽さん、離すだけ無駄ですね、これ」

夕飯のシチューは、皆満足する味で、美食家でもある白哉もおいしいと言っていた。

「リフレッシュ」

「リフレッシュ」

浮竹と京楽は、身を綺麗にする魔法を使って、風呂代わりにした。

ダンジョンの中で体を拭くこともできるが、それよりリフレッシュの魔法を使ったほうがすっきりするし、危険もない。

ただし、リフレッシュの魔法を使えるのは魔法の才にある者がほとんどなので、恋次は使えなかった。

白哉が使えるので、いつも恋次は白哉にリフレッシュの魔法をかけてもらっていた。

ルキアと一護のいるパーティーの時は、ルキアにかけてもらう。

「そういえば、恋次君は新婚だったな。ルキアとはどうなんだ?」

「え、あ、うえ、その、まぁまぁです」

顔を真っ赤にする恋次。

いつも、一護と妻であるルキアを取り合っていた。

「恋次は奥手だからな。ルキアと、まだ体の関係をもっていない」

「ちょ、白哉さん何ばらしてるんすか!」

「一護は、とうにルキアと寝たらしいぞ」

「まじっすか!一護の奴、帰ったらしばく!」

恋次は指の骨をバキバキ鳴らした。

「今日はこのセーブポイントで寝よう。明日は30階層までもぐりたいから、少し早くなる。眠れないなら、京楽にスリープの魔法をかけてもらえ」

浮竹は、テントを張ってすでに眠そうにしていた。

「じゃあ、俺は先に寝る」

「ちょ、早いよ浮竹!まだ9時じゃない!」

「明日は6時には起きるから、早く寝る」

「6時に起きるとしても、ちょっと早くない?」

「兄は私にスリープの呪文をかけろ。恋次もまだ眠れぬであろう。スリープの魔法をかけてもらえ」

「あ、はい」

白哉と恋次にスリープの魔法をかけて、京楽は先に寝てしまった浮竹のいるテントに入り、ベッドですでに眠っている浮竹を抱きしめて、自分にもスリープの魔法をかけた。

朝になると、浮竹は一番早くに起きた。

京楽を起こし、朝食を作れと命令する。

「ほんと、人使いのあらいドラゴンなんだから・・・・・」

そう言いつつも、京楽は幸せそうであった。

朝は、アイテムポケットに入れておいた野うさぎの肉を使った、サンドイッチを作った。

「おはよう。太陽は昇らぬが、いい朝だな」

「おはよう、白哉」

「兄は、いつも一番に起きるな」

「まぁな」

「んー、ねむぃ」

恋次はまだ眠たそうにしていた。

スリープの魔法は、ほぼ無理やり寝るための魔法なので、目ざめの良し悪しは人による。

朝食を食べ終えて、ダンジョンを下層へ下層へと降りていく。

30階層のボスは、アンデットドラゴンだった。

「せっかくもらって覚えたばかりの、コロージョンの魔法使えないね」

「そうでもない。コロージョン」

「ぎゃおおおおおおおお」

アンデットドラゴンは、腐肉の体をさら腐敗させて、苦しそうにもがく。

「わお、アンデットにも有効なの。流石はハイエルフの魔法だね」

「京楽、火の魔法で行け」

「カラミティファイア!」

白哉も同じ呪文を唱える。

「カラミティファイア!」

「えーと・・・ファイアボール」

デス以外の魔法が不得意な恋次は、初歩魔法を使う。

威力はお察しくださいだ。

カラミティファイアの魔法を2つも受けて、アンデットドラゴンは灰になった。

巨大な魔石が残される。

「でかいな。流石は元ドラゴン。売れば白金貨5万枚はしそうだ」

「兄らにやる。金には困っていないのでな」

「ありがたくいただいておくよ」

「白哉さん、俺の取り分がなくなるっす」

「恋次は、朽木家で衣食住を保証されているだろう」

「まぁ、そうなんすけど」

「足りないのであれば、小遣いをやろう。白金貨300万枚でいいか?」

白哉の言葉に、ポカーンと口をあける浮竹と京楽。

「上流貴族って・・・・・」

「僕も上流貴族出身だけど、王国でも4大貴族にじょされる朽木家の財は、半端ないね」

「白哉、恋次君に小遣いをあげるなら、桁を2つなしにして3万枚にしておけ」

「なぜだ?」

「300万枚はSランク冒険者の年収くらいだぞ」

「そうなのか。では、3万枚だ」

「あーもう、浮竹さんせっかく大金もらえるとこだったのに。ルキアに思いっきり贅沢させてやりたかった」

「ルキアに贅沢をさせてやりたいのか。では、白金貨30万枚だ」

「はぁ・・・・上流貴族って・・・・・」

「はぁ・・・・・・」

浮竹と京楽は溜息を零して、白哉と恋次と共に、2週間かけてSランク高難易度ダンジョンを踏破するのであった。



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奴隷竜とSランク冒険者22

冒険者ギルドにいくと、見慣れた顔があった。

自分たちよりも一回りほど年上の、浮竹と京楽の姿だった。

なんでも、違う大陸からやってきたらしい。

「異世界じゃなしに、こっち世界でも同一存在がいたのか」

浮竹は、ハイエルフの浮竹を見た。

京楽は、ダークネスドラゴンの京楽を見る。

「はじめまして。僕は京楽春水、君もそうだよね?」

『うん、そうだよ』

「じゃあ、こっちもはじめましてだな。浮竹十四郎だ。そっちも同じ名だろう?」

『驚いたね。同じ存在がいるなんて』

『こっちの京楽と俺は、年若いな。まぁ、俺たちが年齢を重ねすぎているだけだろうが』

「ちなみに、そっちは何歳だ?」

浮竹が尋ねると、ハイエルフの浮竹は。

『千は余裕でこしてるな』

『ボクもそれくらいいってるんじゃないかな。500から数えるのやめたけど』

「ふむ。まぁ、一緒に食事でもどうだ?」

浮竹は、ハイエルフの浮竹とダークネスドラゴンの京楽を誘い、自分のパートナーである京楽を伴って、高級レストランに入った。

『うわ~、高そうな店だね』

『Sランク冒険者だっけ。そんなに儲かるんだな』

「ああ。俺たちは金があるほうだからな。寄付したりもするけど、贅沢をするときもある」

京楽と浮竹は、いつものようにメニューを頼むが、ハイエルフの浮竹とダークネスドラゴンの京楽はどれがどんな料理か分からずに、困惑気味であった。

「この二人にも、俺たちと同じメニューを」

「はい、かしこまりました」

「日替わりランチにしておいた。支払いは俺がもつから、好きなだけ食べるといい。食べたいメニューが他にあるなら、好きに注文してくれ」

『わお、太っ腹』

『俺たちも金はあるほうだが、負けそうだ』

4人は、いろいろ会話をした。

ムーンホワイトドラゴンの浮竹は、ダークネスドラゴンの京楽に興味をもったようだ。

『浮気するなよ』

ハイエルフの浮竹に、釘を刺される。

「あいにく、俺には京楽がいる。奴隷だった俺を買ってくれた」

『ボクも似たようなものだよ。捕まって売られてたけど、誰も買わなかったけど浮竹が買ってくれた』

「そうか。似たような境遇だったんだな。ダークネスドラゴンは希少種だからな」

『ムーンホワイトドラゴンのほうが希少種だよ』

いろいろ話しあって、ハイエルフの浮竹は魔法書をつくる著者であると知って、浮竹は興味深そうにいろいろ聞いた。

そして、豪華な昼飯を食べ終えて、冒険者ギルドの前で別れた。



「ねぇ、浮竹。ダークネスドラゴンの僕は、人が憎いみたいだね」

「ああ。捕まって売られてたんだ。そりゃ、人を憎むだろう」

「浮竹は、憎まなかったの?」

「俺は、卵時代から奴隷だったからな。憎んでも何もならないから、そういう感情は抱かないようにしていた」

浮竹は、感情の怒りが乏しいかんじがしていたのは、そのせいだったのかもしれない。

「人を憎んでもなんにもならないからな。自分の運命を呪うこともしなかった。いつか、自由が訪れるという希望だけ抱いていた」

「僕が君を買って、自由にしてあげた。世界は広いね。同一存在が他にあるなんて」

「そうだな」

浮竹と京楽は、高級宿に戻った。

浮竹が、本棚からごそごそと何かをとりだす。

「なぁに、それ」

「ハイエルフの俺が書いた魔法書だ。J.Uと書かれているが、十四郎 浮竹 だったんだな」

「その魔法書の魔法、会得してるの?」

「いや。まつ毛を長くする魔法らしい。民間魔法は興味ないので、覚えていない」

「あ、こっちにもあるね。J,U著、皿が自動で並ぶ魔法・・・・・・なんか、どうでもいい魔法だね。魔力使って魔法を行使するより、自分で並べたほうが早そう」

浮竹は、苦笑する。

「このJ,.U著の魔法のすごいところは、とてつもなくどうでもいい魔法ばかりのところだ。だけど、新しい魔法なので集めるコレクターはいる。ダンジョンの宝からでてきた魔法書は、ほとんどがJ.U、ハイエルフの俺の作った魔法だな」

「魔法を作るとかすごいね」

「ハイエルフの中でも古参の、魔法に秀でた種族だろうな」

「そういえば、なんで浮竹はこんな民間の魔法書もってるの?」

「実にくだらない魔法なので、ある意味すごいと思って集めてた。俺もコレクターの一人になるわけだ」

浮竹は、本棚の中から一冊の本をとる。

「まともな魔法書はこれぐらいだな。ヘルムーン。月の隕石を落とす、攻撃魔法だ。規模がでかいでの、禁忌に近い」

「へぇ、ハイエルフの浮竹って、普通に攻撃魔法も作れるんだ」

「作ろうと思えば、オリジナルの攻撃魔法を作れるんだろう」

「今度会ったら、何か魔法を作ってもらう?」

「それもいいな」

浮竹は、ヘルムーンの魔法書を開く。

「京楽も覚えてみるか?」

「うん・・・んー、古代語だねぇ。読めるけど、字が汚いね。まぁ、大体の作りは理解したよ。呪文を唱えたら、使えそうだ」

「じゃあ、ちょっと練習してみるか」

「え、こんな宿の中で?」

「異空間を作る。ミラーハウス」

浮竹が魔法を唱えると、鏡でできた扉が現れた。

その中に入ると、虚無の何もない空間が広がっていた。

「こんな魔法、覚えてたんだ」

「この前、Sランクダンジョンで宝箱から出た魔法書の魔法だ。著者は魔法大学教授のエリット・ヴァンネット」

「宝箱に魔法書いれる係は、ダンジョンマスターになるけど、ダンジョンマスターも大変だね。攻略されてお宝をもっていかれるたびに、補給しないといけないなんて」

「けっこう高額でバイトの募集口あるぞ」

「遠慮しとく。とりあえず、この空間は魔法を使っても外の世界に支障はないんだね?」

「ああ」

「月よ形作れ。涙の銀を流し、今そこに銀の雨となって降りそそがん。ヘルムーン!」

京楽が、覚えた魔法書の呪文を詠唱すると、月の隕石が降り、何もない空間を壊していく。

「ねぇ、これって・・・・・」

「空間を破壊しそうな勢いだな。普通に魔法作らせたら、多分すごい攻撃魔法ができると思うのに、民間魔法の、しかもどうでもいいのばっかり書いてて・・・・才能の無駄だな。勿体ないと思うんだが」

「そうだね。勿体ないね」

浮竹と京楽はミラーハウスの空間から現実世界に戻る。

「ごっそり魔力もっていかれたよ」

「威力と比例して、魔力の消費量も多いな。他の初級魔法を極めた魔法のほうが、威力もコスパもいいか」

「でも、僕はヘルムーンの魔法気に入ったよ。隕石を降らせるなんて凄い」

「隕石なら、カラミティメテオのほうが使い勝手がいいだろう」

「うーん、月ってところがいいんだよ。君は月竜でしょ?だから、気に入ったの」

「そうか。月竜と呼ばれるのは、あんまり慣れていないからな」

「ハイエルフの君も凄いんだね」

「みたいだな」

浮竹と京楽は、今までSランクダンジョンで入手した魔法書をかたっぱしから持ち出して餞別し、売るのと覚えるのとで分けるのだった。

実は、魔法書のほとんどは見た時に興味がわいた魔法以外、覚えてなかった。

J,.U、十四郎 浮竹著の魔法書の群れは、いらないものとして売られていくのであった。

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奴隷竜とSランク冒険者21

「ハッピーハローウィン!」

「は?なんだそれは」

「え、知らないの。ハロウィンっていって、子供が仮装してトリックオアトリート、お菓子をくれなきゃ悪戯するぞって言って家々を訪問していくの。大人も仮装して、街では祭りも開かれてるよ」

「え、祭り?」

浮竹は、人の世界のお祭りを見たことはあるが、檻の中からだったので、そわそわしだした。

「お、お前が行きたいなら、そのハロウィンとやらの祭りにいってやらなくもない」

「ふふ、素直じゃないねぇ。でも、そんなとこも好きだよ。そうだね、浮竹は魔女のコスプレをしてもらおう」

「おい、俺は女じゃないぞ」

「コスプレに性別は関係ないよ。はい、黒い服にほうき」

あらかじめ用意していたのか、浮竹の衣装はすんなりと決まった。

「そして僕は、狼男だ。ふふ、魔女の君を食べちゃったりして」

「そ、そういうのは夜にいえ」

「え、ただの冗談なのに」

お互い顔を見合わせて、赤くなった。

「と、とにかく祭りにいくぞ」

「うん、そうだね」

王都だけあって、賑やかな祭りが開かれていた。

いろんな出店があって、浮竹は金魚すくいに夢中になって、金貨5枚はらってやっと1匹の金魚がとれた。

金魚すくいの屋台の主は、まさか金貨5枚も払う太っ腹がいるとはにわかに信じられず、浮竹と京楽を貴族だと思って、丁寧に接してきた。

「金魚、おまけで3匹足しておきますね。これ、おつりの銀貨3枚」

「京楽見ろ!おまけしてもらったぞ」

「良かったねぇ。金魚鉢も売ってるね。その金魚鉢とか飼育に必要なのもろもろ売ってもらえる?」

「え、この金魚鉢は魔法がかかってて、売り物じゃあないんですが」

「白金貨3枚でどう?」

「売った!」

屋台の主は、天国に行きそうなほどに幸福な顔をしていた。

そして、次の客を適当に扱う。

「ねぇ、この金魚鉢、水の魔法がかかってるね」

「ああ、そうなんです。水を綺麗に浄化してくれて、水をとりかえる必要がないんです。えさも自動的に出してくれて、あまり家にいられない人なんかにおすすめで」

「いいねぇ、気に入った。さらに白金貨2枚あげる」

Sランク冒険者である京楽と浮竹は、高級宿を家にしているが、帰ってこれない時も多い。

ダンジョンにもぐると2週間近くは時間を拘束されるし、クエストを受けても長いと半月くらい宿に戻ってこれない。

「浮竹、この金魚鉢なら金魚、世話しなくても飼えるよ」

「え、飼っていいのか!」

キラキラした眼差しで見つめられて、京楽は笑った。

「ペットなんていないからねぇ。ほんとは犬や猫を飼いたいけど、宿の主人に世話を任せることになるのが多そうだし、金魚くらいなら構わないよ」

「やったー、ペットだ!」

浮竹は、袋の中を泳ぐ4匹の金魚をじーっと見つめた。

「サンクチュアリ」

僅かに弱っていた個体を見つけたので、範囲魔法のヒールに相当するものを使うと、金魚はぴちぴちと跳ねて元気そうになった。

「浮竹、金魚なんかに癒しの魔法使わなくても」

「俺たちのペットなんだろう?ペットとは、家族であると教えられた。山じいに」

「まぁ、家族だけど。金魚が家族か。ふふ、面白いね」

「あ、フランクフルト!あれ食いたい!あと、ポテトフライも食いたい。その後は林檎飴を・・・・・・・」

なまじお金があるので、遠慮というものを知らない。

浮竹の胃は小さなブラックホールがあるようなもので、とにかくたくさん食べた。

「綿菓子をもう3個。たこ焼きあと2つ。焼きそば3つ」

付き合わされた京楽は、かなり疲れていた。

でも、浮竹とまるでデートしているようなかんじなので、食べ物を欲しがる浮竹に、財布のひもをあけてあれこれ買ってやる。

「そうだ、金魚に名前をつけよう。この赤いのがポチで、赤白まだらなのがたま、黒い出目金がたろうで、なんかわからんがこの青いのがじろーだ」

「そういえば、この金魚青いね。青いのってなかなかに珍しい」

「金魚といえば赤だからな」

「薔薇もそうだよね。青いのは珍しい」

浮竹は、じろーと名付けた青い金魚を特に気に入ったみたいで、早速餌をあげていた。

祭りを一通り楽しんで、一度宿に戻って金魚鉢に水を入れて金魚を放ち、もう一度祭りに出かける。

音楽が軽やかに流れ出し、皆踊っていた。

浮竹と京楽は、手を取り合い軽いステップを踏む。

周りは男女関係なしに、恋のダンスを踊っていた。

さすがに恋のダンスなんて知らないので、ワルツを踊る。

「あら、あの子綺麗」

「あら、どこ?」

「ほんと。白い長い髪に緑の瞳って珍しいわ。どこぞの貴族様かしら」

貴族なのは京楽なのだが、京楽は貴族を感じさせない容姿をしているので、黒髪に鳶色の瞳は珍しくもないが、女性の視線を集めていた。

「相手の人、かっこいい。でも、踊っている魔女の女性とお似合いね」

女性と間違われたことを、浮竹は文句を言うかと思ったが、楽しそうに踊って周りの言葉など耳に入っていなかった。

「さぁ、フィナーレだ!」

誰かがそう言って、花火がぱぁんぱぁんと打ち上がる。

京楽と浮竹は、ステップを踏んで踊り終わると、浮竹は空に向けて魔法を放った。

「カラミティプチファイア!」

それはいろんな色の炎を灯して、空へ空へとあがっていく。

「ファイアサークル」

京楽の魔法は、炎が輪になって踊りながら空へ吸い込まれていく。

「よ、いいね!ランクの高い冒険者さんとみた。祭りの最後に、売りれ残ったビールを半額で販売中だ。一杯どうだい?」

「いいね、もらうよ」

「俺も飲む!」

「浮竹は一杯だけね。酒に弱いんだから」

「むう」

浮竹と京楽は冷えたビールを飲む。

浮竹の頬が赤らんで、目がとろんとなる。

「もう酔ったのかい。今日はここまでだね。さぁ、帰ろうか」

「おんぶ」

「え?」

「おんぶしてくれなきゃ、帰らなない」

まさかの甘え方に、京楽はにやけた。

「酔った浮竹は素直でかわいいから、好きだよ」

「酔ってないぞ~~~~うぃっく」

酒癖の悪い親父みたいなかんじになっていたが、京楽から見ればそれもかわいいのだ。

「また、来年もこの祭りを楽しもうね」

「ああ。また、来年も・・・再来年も、ずっとずっと・・・・・・」

京楽は、浮竹に竜の刻印を刻まれて、不老不死に近い肉体になった。

祭りを、何度もで楽しめるだろう。

周りの人が一生を終えても、その後も、その後も。

京楽は、眠ってしまった浮竹をおんぶして、宿に帰路につくのであった。


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勇者は死んだ

新勇者は、いっこうに魔王の浮竹を倒せないので、国王からの支援が途絶えた。

今は、勇者教のメンバーからなんとか生活資金をもらって、暮らしているらしい。

新勇者のパーティーは、新勇者もいれてダンジョン探索をしたり、冒険者ギルドで依頼を受けてその報酬金でやりくりしているが、新勇者がアデランスとかで無駄使いするでので、新勇者には金は渡されていなかった。

「ああああ、今日のギガントサイクロプス退治、大金貨400枚の収入だったのに、俺には金貨1枚すらもらえないってどういうことだ!」

新勇者は、仲間をなじった。

「お前が、アデランスとかでパーティーメンバーの資金を無駄遣いするからだ」

少年魔法使いが、冷たく言い放つ。

「そうよ。あんたにあげる金なんて銅貨1枚もないわ」

女僧侶の言葉に、新勇者は泣いた。

「ひどいいいいいい」

新勇者は、泣いて、勇者京楽に縋りついた。

「なんとかしてくれ、勇者京楽!」

ここは、魔王城であった。

魔王城のテラスで、魔王こと浮竹と勇者として魔王を討伐することをやめた京楽は、冷ややかな眼差しで新勇者を見ていた。

「僕の知ったことじゃないよ」

「ひどい!俺とのことは、遊びだったのね!」

「気持ち悪いこと言わないでくれる。僕の恋人は浮竹だけだよ」

「おい、新勇者。お前、また魔王城の備蓄ちょろまかしただろ」

「あははは、何のことかなぁ」

新勇者は誤魔化そうとしているが、そんな犯人は新勇者しかいないので、浮竹は魔法を放つ。

「カラミティファイア!」

「ぎゃああああああああ」

業火にもやされて、新勇者は黒こげになるが、すぐに復活する。

「ふはははは、燃やされ続けたせいで俺は火属性の魔法のダメージを大幅に軽減するスキルを覚えた。みたか、魔王浮竹!今の俺は強い」

「カラミティサンダー」

「ぎにゃああああああああ!違う属性だなんてずるいぞおおお」

雷で黒こげになって、新勇者は動かなくなった。

新勇者のパーティーメンバーは、気にせず魔王城のテラスで午後のお茶をしていた。

浮竹は、侍女に京楽の分も紅茶のおかわりを頼む。

5分経っても、10分経っても、新勇者は復活しなかった。

さすがに様子がおかしいと訝しんだ浮竹が、新勇者の元にいってみる。

「息、してない」

「ええ!ちょっと、それはまずいんじゃないの」

京楽が、新勇者を殴った。

反応は返ってこない。

「仕方ないねぇ。リザレクション」

死者を蘇らすことのできる、大いなる奇跡の魔法を京楽は使う。

「わん」

「へ?」

「わんわんわん」

「ああ、死んだのに時間がちょっと経ったものだから、そこらへんにいた犬の浮遊霊が勇者の体に入ったようだね」

「お手」

「わん」

「おまわり」

「わんわん!!」

女僧侶は、犬になりさがった新勇者を楽しんでいた。

「仕方ないねぇ」

京楽は、新勇者の中の犬の浮遊霊を追い出して、元の新勇者の魂を肉体に導く。

その頃には、新勇者は犬の首輪をされて、女僧侶が鎖で魔王城の柱に鎖でつないでいた。

「はっ、俺は!?三途の渡ったから、死んだのかと思った・・・・・ってなんだこれは!俺は犬じゃないぞ!」

「君、本当に死んでたんだよ。困るよ、死んでもらっちゃ。からかえないじゃない」

「ええ、何その心配の仕方!」

「浮竹が人殺しになるなんて、ごめんだからね。浮竹、放った魔法、加減するの忘れたね。本気だったでしょ」

「ああ。つい本気を出してしまった」

「だめでしょ、こいつは雑魚の中の雑魚なんだから」

「酷い!あんまりだあああああ」

新勇者は、なんとか鎖を解いて、首輪を引きちぎると、人工聖剣エクスカリバーで女僧侶に襲いかかった。

「ちょ、なんで私なのよ!」

「犬扱いしただろう!いつも俺を不幸な目にあわせやがって。裏でパパ活してホストに貢いでること、知ってるんだぞ!」

「ちょ、あたしの秘密をこんな場所で言わないでよ!」

ぴろりろりーん。

貧乏神のスキルがLVマックスになりました。ユニークスキル不幸なる者を覚えました。

「うわああああああん!不幸なんていらない!魔王浮竹にあげる!!!」

新勇者は、自分のスキルを浮竹に放り投げて、浮竹が不幸なる者を獲得してしまった。

「大丈夫、浮竹!?」

ぴろりろりーん。

ユニークスキル、不幸なる者が進化して、幸福なる者に進化しました。

「新スキル返せえええええ」

浮竹は、新勇者に幸福なる者を返した。

すると、新勇者のスキルはまた不幸なる者に戻った。

「なんでえええええ」

「お前が不幸だからだろう」

「うわああああん」

「カラミティプチサンダー」

浮竹は、加減しまくった雷の魔法を新勇者にあてた。

「ぎゃおおおおお!あああ、おしっこもれる!」

何故かしらんが、不幸なる者のスキルが発動して、失禁していた。

「えんがちょ。こっちくるな」

「こっちにこないでね」

「あ、うんこももらした」

ぶりぶりぶり~~~。

異臭を放つ新勇者から、みんな遠ざかる。

「ぐへへへへ。今まで散々いじめてくれたお礼だ!まずは魔王浮竹、お前に俺のピーをぶつけてやる!」

「カラミティアイシクルチェーン」

「ぬおおおお、身動きがとれない」

「リフレッシュ」

浮竹は、汚いまま魔王城を汚されるのがいやなので、新勇者のおもらしをなんとかしてやった。

「はははは、俺は最強だ!」

「うん、まぁ、ある意味最強だね。人前で脱糞した勇者なんて見たことないよ。勇者教の人に教えてあげよっと」

京楽の言葉に、新勇者の顔色が変わる。

「ど、どうか、勇者教の信者にはご内密に!」

「じゃあ、裸になってフラダンスしたら、内密にしてあげる」

新勇者は、恥じらいもないのでフルチンになるとフラダンスを踊り出した。

「あ、やっぱりパンツはいて。浮竹にそんな汚いもの見せられない」

パンツを頭にかぶった。

「ちょ、はいてっていったんだよ。かぶってっていってないよ」

「ぐへへへへ、魔王浮竹、俺の華麗な裸フラダンスでダメージを負え!」

「ぐあっ」

汚い踊りを見せられて、浮竹は100のダメージを受けた。

「お、効いてる!もっと踊るぞおおおお」

「アイシクルクラッシャー」

京楽が、新勇者の裸フラダンスを氷漬けにしたあげく、吹き飛ばして止めた。

「浮竹、セイントヒール、セイントヒール、セイントヒール」

「京楽、そんなにヒールかけなくても自動HP回復でダメージは回復している」

「よかったぁ」

「チートだあああ!!!」

新勇者は、氷を砕いて、今度はちゃんとパンツをはいて、人工聖剣エクスカリバーを京楽に向ける。

「よくもやってくれたな!勝負だ!」

「新勇者が負けるに金貨100枚」

「同じく負けるに金貨50枚」

「おいこらそこ、賭けすんな!」

新勇者は怒った。

憤怒の状態になり、全てのステータスがあがった。

京楽は、溜息をついて本物の聖剣エクスカリバーを抜くと、人工聖剣エクスカリバーを叩き折った。

「ぎゃああああああ!!!俺の聖剣が!俺の武器が!」

「ちょっとは頭冷やしておいで」

京楽は、新勇者を持ち上げると、窓からぶん投げた。

キランと、新勇者はお星さまになった。

「新勇者のパーティーも、退場してくれ」

「ああん、お菓子まだ食べたかったのに」

「あたしはもうおなかいっぱい食べたから満足にゃん」

文句を言う女僧侶と反対に、獣人盗賊は食べまくったらしい。

「外にいって、新勇者回収してきてね」

「仕方ないわねぇ」

「あー、気乗りしねぇ」

少年魔法使いは、新勇者が飛んでいった方角を図る。

「回収にいくぞ。一応、あんなんだがリーダーだし、リーダーがいないと冒険者ギルドでクエスト受けれないからな」

「いっそ、リーダーかえちゃばいいのにゃん」

「まぁ、回収してから議論しよう」

新勇者パーティーが去っていき、浮竹と京楽だけが残った。

「ねぇ、また来ると思う?」

「絶対くる」

「そうだね。今は、僕たちだけの時間を楽しもう」

「あっ」

「ふふっ、浮竹かわいい」

「京楽・・・・・」


新勇者は、結局3日後に留置所から保護された。

パンツ一丁で町を徘徊し、パンを万引きして、定食屋で無銭飲食したらしい。

その次の日には、新勇者も新勇者のパーティーも、何もなかったかのように魔王城にきて、昼食を食べていくのであった。

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僕はそうして君に落ちていく外伝3

私は霊王。

俺は霊王。

私は楔。世界の贄。ただ在るだけの存在。

私は、私を殺したユーハバッハから私を奪い、唯一の残されていた右腕に全てを預けた。

結果、私は俺になった。

ミミハギ様と呼ばれるそれは霊王となり、それを宿す浮竹十四郎は霊王となった。

霊王は清浄なる存在。

霊王宮に住まい、清浄な空気の中で生きた。

私は・・・・俺は、霊王。

同時に、浮竹十四郎である。

霊王になって、120年が経った。


下界には、10年に一度祭事の時だけ降りることができた。霊王を崇める祭りの中を抜け出して、京楽と逢瀬を楽しむのが好きだった。

はじめ、霊王になった時もう京楽に会えないと言われて、脅すつもりで首の頸動脈を切った。

慌てた周囲は、月に一度京楽春水を霊王宮に招きいれることを承諾した。

霊王である浮竹は、下界を見たりしているが基本暇で、書物を読んだり1日の大半を寝たりして過ごしていた。

そんな浮竹が、今日はご機嫌で早起きをしていつもの十二単をまとい、そわそわしていた。

「霊王様・・・・京楽春水が、参りました」

「ご苦労。通せ」

霊王の身の回りの世話をする者たちを、霊王宮から遠ざける。

「京楽、会いたかった」

「僕もだよ、浮竹。1カ月ぶりだね。今日は、君が霊王になってから120年目の日だよ。霊王になった頃のこと、覚えてる?」

「んー、あんまり覚えない。気づいたら、迎えの者がきて霊王宮にいた。あなたは霊王だと言われて、ここで住んでもう二度と下界と接触してはいけない、京楽春水と会ってはいけないと言われて、刀で自分の首の頸動脈を脅しで切ったことは覚えている」

「ふふ、君はいつも危ない橋を渡るね」

「だって、京楽と会っちゃいけないっていうんだぞ。俺たち恋人同士なのに」

「総隊長の恋人が霊王だなんて、尸魂界の者が知ったら、卒倒しそうだね」

そもそも、霊王に意思などいらないのだが、今の霊王は意思をもつ。

浮竹に宿っていたミミハギ様は霊王の欠片。

欠片は浮竹を侵食したが、支配はできずに浮竹という名の自我を残した。

「京楽、近くへ」

「うん」

京楽は、十二単を着て動きにくそうな浮竹の傍に寄り添って、十二単を脱がすと、室内用の着物を渡した。

「今は、暦では下界は秋だよ。金木犀がよく咲いていて、いい香りがする。これ、お土産の金木犀の香水」

「ありがとう、京楽」

前の贄だった霊王とは違い、浮竹は生きて生活をしている。

身の回りの世話をする者が必要だった。

大半のことは自分でしたが、十二単は正装で、一人で着るのは難しくて侍女に手伝ってもらった。

「霊王宮の外の一部を、秋にしたんだ。金木犀も咲いてるぞ」

「また、霊王の力使ったの?体は大丈夫?」

「ああ、大丈夫だ」

肺の病は癒えたが、病弱さが完全に消えたわけではなく、時折熱を出す。

霊王の力を使えば、熱を出して寝込むに決まっているのに、浮竹は京楽と秋を感じたいのだと霊王宮の庭を一部秋にしてしまった。

「もみじもある。紅葉が綺麗な季節だ。モナカ食うか?」

「うん、いただくよ」

今の霊王、浮竹十四郎は甘いものが好きで、特におはぎを好んだ。

「おはぎ、持ってきてるよ」

「食う!」

目をきらきらさせて、浮竹は京楽からおはぎをもらうと味わって食べた。

霊王宮でもおはぎを出されるが、味が下界のものとは違う。

京楽がもってくるおはぎは、下界の浮竹が好んで食べていた店のおはぎで、味は別格だった。

お菓子を食べ終えて、二人で手を繋いで霊王宮の外に出て、秋の庭を散歩する。

ちちちちちと、小鳥が浮竹の肩に止まった。

「かわいいね」

「そうだろう。ここの小鳥はよくなついてくれる」

「僕がかわいいって言ってるのは、浮竹のことだよ」

「う、そうか」

浮竹は頬を赤く染めながら、京楽と霊王宮の寝室に行く。

「俺を、抱け」

「言われなくても、そのつもりで来たから」

室内用の着物を脱がして、シミ一つない真っ白な肌を愛撫していく。

「あっ」

胸の先端を舌で転がされると、びくんと浮竹が反応する。

「やあ、そこは」

京楽は、浮竹の下着を取り去って、浮竹自身に舌をはわせた。

甘い蜜が零れ落ちる。

霊王の体は霊子が濃くできており、甘い味がした。

精液さえも、濃い砂糖水のように甘い。

「君は、本当に甘いね。死神だった頃が懐かしいよ。甘い浮竹は、嫌いじゃないよ」

「や、霊王に、好きでなったわけじゃない」

「知ってる」

浮竹のものに舌をはわせて、吐精した白い甘い液体を飲みこむ。

ごくりと音を立てて飲みこむ京楽に、浮竹は唇を舐めて、京楽に口づけた。

「んっ・・・・んんっ・・・・甘い」

「自分の体液、味わってどうするの」

「ふふ・・・・・・」

「抱くよ」

「早く、こい。俺の胎の奥で、子種をたくさん注いでくれ」

潤滑油に濡れた指が体内に入ってくる。

3本は飲みこむようになった頃には、蕾はとろとろにとけて、京楽のものを待ち望んでいた。

「んああああああ!!!ひあ!」

いきなり挿入されて、浮竹の体がベッドの上ではねる。

「そんなに、締め付けないで」

「やあああ、あ、あ、ああああ」

一度深くまで挿入してから、ずるずると抜いて、また突き上げる。

「あ、頭、白くなる・・・・・」

真っ白な長い髪をベッドで舞わせて、浮竹は放たれた京楽の子種を体の奥で受け止めた。

「あ、あ、あ、春水、もっと」

「愛してるよ、十四郎。1カ月に一度しか会えないのが寂しいね」

「もっと欲しい。1カ月が限度だって、零番隊の連中に泣かれたからな」

今の零番隊は昔とは違う。

本当なら、霊王である浮竹を、下界の存在である京楽に会わせたくもないのだが、霊王である浮竹自身が会いたいと望み、抱きたがられるので、京楽は会う前は必ず禊をして身を清めてからというのが決まりだった。

京楽は下界の者。

下界の者と交われば、穢れがうまれる。

だが、清浄な浮竹は、穢れをうむことはなく、逆に抱いた京楽が清浄なる者となった。

「あ、あああ、あ」

ズッ、ズッと、音をたてて出入りする京楽のものは大きく、浮竹の体の負担になるのだが、京楽は浮竹に出会えるだけでもよかったのだが、とうの浮竹が京楽に抱かれたがった。

「ふふ・・・熱が、はじけてる。俺の胎の奥で、お前の子種がどくどくいってる」

ぐちゅぐちゅと、結合部は泡立ち、浮竹の白い太ももを、京楽の精液が伝い落ちる。

「ひああああ、あ、あ!」

「たくさんあげるから、全部受け止めてね?」

「いやああああ」

ごりっと、最奥の結腸まで入ってきた熱に、浮竹は潮をふいていた。

「やああ、もれる、もれちゅう」

「ただの潮だよ。ふふ、そんなの僕のこれ、おいしい?」

「あ、おいしい。もっと、もっとくれ」

舌が絡みあう口づけを交わし合いながら、二人は乱れた。

「んああああ」

「ああ、君の精液は甘いね」

最後の精液を放った浮竹のものを口にして、京楽はそれを舐めとった。

「やああ、甘いのは、霊王であるせいで・・・・」

「死神だった頃の君の味も、嫌いではなかったよ」

「ああああ」

浮竹を起き上がらせて、騎乗位になった。

ずぷずぷと、自分の体重で浮竹は京楽を飲みこんでいく。

「あ、深い・・・・・」

「好きでしょ、こうして下から突かれるのも」

「あ、あ、ああん、や、だめぇええ」

「君のここは、浅ましいまでに貪欲だよ」

「春水、いじわる、するな」

浮竹は、涙を零した。

「ごめんごめん、じゃあ終わりにしようか」

「んあっ」

下から突き上げられて、そのまま腹の奥に子種を最後の一滴まで京楽は注ぎこんだ。

「ああ・・・・孕めれば、いいのに」

「そうだとしたら、子供いっぱいできてるよ」

「ん・・・・・」

京楽の楔が抜き取られると、大量の精液が逆流して太ももを伝い、ベッドのシーツに精液の水たまりを作った。

「ああ、このシーツももうだめだな。捨てないと」

「ごめんね。1カ月に一回しか逢瀬できないから、いつも加減がきかない」

「別にいい。俺も望んだことだ」

二人で風呂に入って身を清め、中に出されたものをかき出されて、前のシーツは捨てて、新しいシーツをしき、お日様の匂いのするベッドで二人は互いを抱き合いながら眠った。

「ん・・・・朝か。明日までいられるんだろう、京楽」

「うん。今日は何をしようか?」

「エッチなことはもうなしだぞ」

「さすがに、僕もあれだけやってまたやるほどの若さはないかも」

浮竹は霊王となった時点で、体が時を刻むのを止めている。

霊王であり続ける限り、若いままだろう。

一方の京楽は、120年という時を経たので、少しだけ年をとった。外見はほとんど変わらないが。

「いつか、お前が死んだら、俺も霊王をやめて死ぬ」

「不吉なこと言わないで」

「俺はお前さえいれば、今は尸魂界もどうなってもいい」

「だめだよ、尸魂界を支える霊王がそんなんじゃ」

「ふふ、零番隊の連中に泣かれるな」

「君って、時折意地悪だからね」

「今日はカルタをしよう。あと、外で蹴鞠をしよう」

「いいよ。なんにだって、付き合ってあげる」



私は贄、私は世界、私は霊王。

私は浮竹十四郎という者になり、残滓となった。

ミミハギ様となった私は、浮竹十四郎に逆に支配された。

もう、私は霊王とは呼べない、浮竹十四郎の魂の欠片。

でも、私も京楽春水を愛している。

それは、私であった頃の浮竹十四郎の思いなのだろうか。

私は静かに眠る。

浮竹十四郎の中で。


俺は贄、俺は世界、俺は霊王。

俺は浮竹十四郎。

霊王となっても、想いは変わらず、京楽のことを愛している。

月に一度の逢瀬。

10年に一度の、祭事として下界に降りるのが、俺の楽しみ。

俺が生きている証。


私は、俺は、霊王。

そこに在ればいいだけの存在は自我を持ち、歩き動き考える。


「愛してる、春水」

「僕も愛してるよ、浮竹」


霊王として、浮竹十四郎として。


俺は、今日も霊王宮で、愛しい相手と言葉を交わすのだ。

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無題

「行くのかい」

「ああ」

「そうかい。いつか、地獄で会おう」

「そうだな、春水」

「そうだね、十四郎」



遥か昔。

まだ学生だった頃、親友となった。

変わる季節の中で、お互いを大切にした。

浮竹の肺の病は、ミミハギ様のお陰で時を止めただけにすぎず、完治はしなかった。

時には稽古で2対の木刀で、浮竹が血を吐いたのもかまわずにきりかかったりした。

結果は引き分け。

互いの関係は、親友であり戦友でありライバルでもあった。

ミミハギ様を宿したまま、浮竹は肺の病と闘いながら京楽と同じ隊長にまで上り詰めた。

海燕亡き後、副隊長をを望む46室に、副隊長はいらぬと啖呵を切った。

京楽にミミハギ様のことを教えて、信じてもらえた。



絆は、深い。

魂のレベルでいつしか結ばれ合っていた。




「君が逝く時、きっと僕は藍染の力を借りる」

「俺が逝く時、どんな方法を使っても、尸魂界をもちこたえらせろ」



思いは、一つ。


この尸魂界を守りたい。

世界を、生きる者を守りたい。




「浮竹隊長!!浮竹隊長がいなくなれば、13番隊はどうすればいいんですか!」

「すまないな、朽木。まぁ、なんとかしてくれ」

浮竹は、神掛をした。

五臓六腑が黒くなり、はるか高みにある霊王宮までミミハギ様の、霊王の右腕はやってくる。

葬られた霊王の代わりに、この世界を少しでも永らえさせるために。


「京楽・・・・・後は、頼んだ・・・・・・」

「浮竹・・・・後は、任せなよ」

思いは交差する。


尸魂界のために死なば本望。

浮竹十四郎は、そんな男だった。

そして、一番仲のいい親友は、それを嘆きつつも受け入れる、総隊長だった。


そこには、確かに愛に似たものがあった。

何百年と同じ時を過ごし、互いに惹かれあっていた。

浮竹は死を。

京楽は生を。


それぞれ、選びとる。


「十四郎、今までお疲れさま。もう、泣いていいんだよ」

ミミハギ様を失い、体から抜け出た霊魂は、京楽の元に向かった。

「春水。もう時間がない。俺は地獄に落ちる。今まで、ありがとう。たくさんの愛を、ありがとう」

親友として、戦友として。

愛をもらった。

たくさんのありがとうを、お前に。


「地獄には、いつか老いぼれになってから、来いよ」

「うん」

京楽は、一滴の涙を零した。

「泣くな。これは、俺が決めたことだ」

「そうだね。君は、いつも僕の先をいってしまう。ずるいよ」

「ふふ。またな、春水」

「うん、またね、十四郎。今までお疲れさま」


浮竹の魂魄は、尸魂界の霊子に還っていく。

京楽は、藍染を外に出そうとしていた。


「また、いつか。十四郎、会いに、いくよ」

愛しい者の命が尽きても、総隊長である責務から逃れることはできない。

ユーハバッハを倒すためなら、どんな汚い手段でも使う。


京楽は、藍染を連れて外にでる。


「ああ、君のお陰で世界はまだ在るんだね」

もうすぐ、その命は尽きるけれど。





「いつか、俺が死んで先に地獄にいったら、お前をいつか迎えにいく」

「うん。迎えにきて」


いつの日だったかの、戯れの誓いは、いつか遠い未来で叶うだろう。


たくさんのありがとうを、君に。

たくさんの愛を、君に。


今まで、ありがとう。

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奴隷竜とSランク冒険者20

「ねぇ、浮竹、浮竹ってば!息をしてない!?そんな、浮竹!!!」

京楽は、人型のまま動かなくなった浮竹を抱きしめて、涙を流した。

「リザレクション!!!」

死者を蘇生できる魔法を使ってみる。

「生き返らない!どうして!浮竹ぇええええ!!!」

「呼んだか?」

ひょこっと風呂場から、浮竹が顔を見せたものだから、涙や鼻水でぐちゃぐちゃになった京楽を見て、浮竹は詫びた。

「ああすまない。今日、脱皮したんだ。人型で脱皮すると、死体みたいなのが残るの、言うの忘れてた」

「浮竹ぇぇぇぇ!!生きてる、生きてるんだね!?」

「ああ、生きているぞ。我ながら立派に脱皮したな。ただの死体に見える」

「浮竹のばかああああ!!心配したんだからねえええ!!!」

涙をぼとぼとと流して、京楽は風呂に入り、身を清めて衣服をきたばかりの浮竹にすり寄り、抱きしめてきた。

「うわ、鼻水と涙ふけ。服が汚れる」

「うきたけえええええ」

「ああ、俺が悪かった。落ち着くまで、抱いていていいぞ」

「ううう、ほんとに、心配したんだからね」

ぼとぼとと、涙の止まらない京楽。

京楽が泣き止み、落ち着くまで3時間はかかった。

「すまない。ほんとはドラゴン化して脱皮しようと思ったんだが、ドラゴン化しても死体みたいなのが残るから、処理がめんどうだから人型のままでいいかと思って」

「君が脱皮するなんて、初めて聞いた。どうして教えてくれなかったの?」

「いや、単純に俺が忘れてた。脱皮は10年に1回だから」

「10年に1回・・・・・奴隷時代も脱皮してたの?」

「ああ。死んだと思われて、逃げれそうだったんだが、うまくいかなかった」

京楽は、膝に浮竹を乗せて、その白い髪を手ですいていた。

「もう、しばらくは脱皮はしないよね?」

「ああ。早くても8年は先だ」

浮竹は、さらにすまなさそうに謝った。

「お前に、謝罪しておかなければならないことがある。体を重ね合わせ続けた結果、お前に俺の刻印が刻まれた。背中の肩甲骨あたりを見てくれ」

姿見の鏡やらで、なんとか肩甲骨の部分を確認すると、ドラゴン型の紋章があった。

「俺と同じ時間を生きる呪いを、お前は受けた」

「え」

「俺はドラゴンだ。人の数十倍は生きる。お前は人だ。百年もしない間に死んでしまう。でも、刻印を刻めば同じ時間を生きられる。俺は、お前に同じ時間を生きて欲しいと思って、刻印が刻まれるのを見て見ぬふりをしていた」

「僕はいいよ。浮竹と同じ時間を生きれるなら、何百年何千年生きたっていい」

「でも、知り合いは死んでいくぞ?それでもいいのか?」

「僕には、浮竹が一番だから。それに、まだまだ寿命を迎えるにも若すぎるし、まだまだ知り合いも生き続ける」

「うん」

浮竹は、ほろりと涙をこぼした。

二人して、泣いた。

「一緒の時間生きられるの、嬉しいよ」

「ただし、俺が死んだらお前も死ぬ。それでもいいのか?」

「君のいない世界に興味なんかない。構わないよ。君が死んだら、僕も死ぬ」

「京楽・・・・・」

「浮竹・・・・・・」

二人は、自然と唇を重ね合わせた。

「それにしても、この脱皮した抜け殻どうしよう」

「焼いちゃえば?」

「それもそうだな。外に出して焼くか」

人目のあるところで焼くと、人を焼き殺したと間違われそうなので、深夜にアイテムボックスの中に浮竹の脱皮したものを入れて、人気のない森までくると、魔法で火をつけた。

「おお、我ながらよく燃えるな。いい匂いがするだろう」

「ほんとだね。金木犀みたいな、甘い匂いがする」

「その昔、ムーンホワイトドラゴンの数が多かった頃、脱皮した品は上流階級者のお香として流行ったことがある」

浮竹は、この世界に生まれてまだ20年と少しだ。

ムーンホワイトドラゴンは成人するまでは早いが、成人してからは年を重ねない。

京楽も20代半ばほどの姿で、二人はこれから20代の容姿を保ったまま数百年、数千年を生きるのだ。

「浮竹に、永遠の愛を」

「なんだ、急に」

「うん・・・・浮竹が死んじゃったと思って、あとをおおうと思ってた」

「すまない・・・・俺が、事前に知らせていれば」

「うん。今度からは、些細なことでもいいから、知らせてね?」

「ああ」


その日の夜、浮竹は夢渡りをした。

異能力者のもう一人の浮竹が出てきて、その場に浮竹の脱皮した死体のようなものがあって、もう一人の浮竹はショックで言葉を失っていた。

「あ、俺は生きてるぞ。それは脱皮した後の残骸だ・・・・気絶しとる」

『うあ・・・・あれ?ドラゴンの俺?生きているのか!?」』

もう一人の浮竹も、涙をボロボロこぼして、ドラゴンの浮竹に抱き着いた。

『死んでない・・・・生きてる・・・暖かい・・・よかった』

「すまない。俺は、羽毛をもつドラゴンだが、10年に1回脱皮するんだ。脱皮すると、死体みたいなのが残る。これの処理も大変でな」

夢の中で、ドラゴンの浮竹は自分の脱皮したものに火を放った。

『わあああ、もったいない!』

「いや、死体コレクターでもない限りいらんだろ。燃やす」

完全に灰になったのを確認すると、もう一人の浮竹は涙を流していた。

「どうしたんだ?」

『いつか、俺やお前もこうなるのかと思って・・・・』

「思い込みしすぎだ。ほら、向こうの世界の京楽が待ってるぞ」

ゆらゆらと、夢が薄れていく。

向こう側の京楽の声が聞こえた。

『浮竹、朝だよ、起きて』

「じゃあ、俺は戻るな。またな、異能力者の俺!」

『ああ、またな』

すーっと、異能力者の浮竹もドラゴンの浮竹も消えて、夢の残骸だけが残った。



「浮竹、浮竹?」

「ん、ああ・・・夢渡りをしていた。もう一人の異能力者の俺に会っていた。俺の脱皮したのがあって、気絶してた。燃やしたけど」

「夢の中まで、脱皮してたの」

「なんかわからんが、夢の中でも脱皮してた」

「向こうの浮竹、ショック受けてたでしょ」

「気絶してた」

「あらまぁ。ちゃんと謝った?」

「ああ。謝った」

朝食を食べて、顔を洗って歯を磨き、身支度を二人で整える。

浮竹と京楽は、ピクシー探しのクエストに出かけるのであった。




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