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小説掲載プログ
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翡翠に溶ける 交際のスタート

年が明けた。

ちらちら降る雪が、冷たかった。

傘をもっていなかった浮竹に、京楽が傘を差しだす。

二人並んで、一つの傘で学院に登校した。

入学した日に、自分の斬魄刀になる元の刀を渡される。それを在学中に始解させて、死神になった暁には自分の斬魄刀として授与される。

浮竹と京楽の斬魄刀は、二人ともすでに始解できた。

名を、それぞれ双魚理と花天狂骨といった。

山本総隊長が我が子のように可愛がるのも分かるような、成長ぶりだった。鬼道の腕もいい。

特に、竹刀を使った剣の腕は、二人は学院の中でもトップクラスだ。上級生でも、ここまで戦える者はいないだろう。

今ある真央霊術院なら、スキップ制度で3回生になっていそうだったが、当時の死神統学院にはスキップ制度がなかったため、二人は6回生まできちんと出席し、卒業する必要があった。

浮竹は、体が弱く肺病を患っているために、よく学院を休んだ。出席日数を確保するために、本来なら休みの土曜や夏季休暇、年末年始の休みに補習を受けた。

未来ある浮竹を、留年させまいと、教師たちも頑張っていた。

「どうじゃ、春水。十四郎は」

山じいが、ある日補習を受けに学院に残った浮竹の付き合うために、学院で待っていた京楽に声をかけた。

「んー。病弱で休むこともあるけど、補習受けたりして頑張ってるよ。補習を受けなくても、出席日数は足りると思うんだけど、同じことが習えなかったって必死さ」

「ふむ。春水、今後も十四郎を支えてやってくれ」

「分かってるよ」

その日は、夕暮れまで浮竹は補習を受けていた。

時間が時間なので、そのまま食堂で夕食をとる。

次の日、浮竹は呼び出された。相手は6回生の男で、護廷13隊入りが決まっていた。

浮竹の霊圧がすごく乱れていたのが気になって、呼び出されたという屋上までいくと、院生の服をぼろぼろにされて、組み敷かれて涙を零している浮竹を見つけた。

「京楽!」

「貴様ああああああ!」

京楽は、殴りかかった。でも、相手はは6回生。花天狂骨を抜くと、6回生の男も斬魄刀を抜いた。

「かわいい浮竹ちゃんは、俺がもらってやるよ」

一撃だった。

風が吹いたのかと思った。

京楽は、6回生の斬魄刀を折り、その体に峰内を食らわせていた。

「こんな・・・・1年坊主如きに・・・・・・」

どすんと、巨大が床に沈む。

「浮竹、大丈夫!?」

「あ、ああ・・・未遂、だったから・・・・・」

肌も露わな院生の服が毒だった。

医務室から毛布をかりてきて、一度寮に戻ると新しい院生の服に着替えさせた。

カタカタとずっと震えていた。

京楽が抱き締めると、震えは収まった。

「今日はもう無理だ。休みなさい」

「分かった・・・・」

「僕は、山じいのところに行ってくる」

山じいに、6回生の男が浮竹を強姦しようとしたことを話すと、山じいは凄く怒って、その生徒を停学2カ月と護廷13隊入りを取り消した。

山じいの処分に、京楽も納得する。

本当なら、退学処分にして欲しかったが、護廷13隊入りを白紙にされたのだ。十分であろう。

寮に帰ると、浮竹が泣いていた。

「どうしたの!」

「こんな自分が情けなくて・・・こんな見た目のせいで・・・・」

「浮竹は何も悪くないよ」

「でも!言い寄ってくる男が後を絶たない」

「それ、本当?」

京楽は怒っていた。浮竹にではなく、浮竹に言い寄る男の存在に。

「お前が一緒にいるときは大丈夫なんだ・・・でも、補習の時とかの休み時間に・・・」

「いっそ、僕たち付き合っていることにしない?」

「でも、それじゃあ京楽に迷惑が!」

「女遊びも、君の存在を忘れるためにしていたことだし、未練なんてないよ。好きだよ、浮竹」

面と向かって、真剣な表情で告白されたのは始めてかもしれない。

「俺は、そういう目でまだお前を見れない。でも、俺も好きだ、京楽。お前は優しい・・・・」

その日から、浮竹と京楽は正式に交際をスタートし、その件は山じいのも耳にも入り、呼び出された。

「何故、呼び出されたか分かっておるの?」

「はい、先生」

「分かってるよ、山じい」

「儂はお前たちに仲のよい友人でいてほしかったのじゃ」

「もう遅いよ」

「先生、すみません」

「謝るということは、噂は本当なのじゃな?春水、十四郎を幸せにできるか?」

「できるよ。僕に不可能はない」

「小童が・・・・まぁよい、十四郎ことを頼んだぞ、春水」

「山じい・・・・」

「先生・・・・ありがとうございました!」

学院内で、浮竹と京楽ができていると噂になっていた。けれど、友人たちは祝福してくれて、気味悪がる者はいなかった。それがせめてもの救いか。

それから、浮竹に言い寄ってくる男はいなくなった。京楽は相変わらずもてて、ラブレターをもらったりしていたが、前のようにいいよってくる女子に優しくすることがなくなったので、次第に言い寄ってくる女生徒もいなくなった。

付き合いはじめて1か月が経つ頃。

「ねぇ。僕らももう一歩歩み寄ってみようか」

「何をだ」

「体の関係」

「俺は・・・・・」

「こっちおいで?」

京楽のほうに行くと、抱き締められて、舌が絡まるキスをされた。

「ふあ・・・・・・んんんん!?」

京楽の手が、袴の中に入り、やんわりと浮竹の花茎を握りしめ、扱いだす。

「やあああああ」

「君の手は、俺のをお願い」

硬くなった京楽のものに、手が触れ。

与えられる刺激に夢中になりそうになりながら、京楽のものをしごいた。

「君、ほんとに始めて?上手いね・・・・」

「やああん、あああ!」

浮竹は、京楽の手の中に欲望を吐きだしていた。

ほぼ同時に、京楽も浮竹の手で射精した。

「あーあ。シーツと服が汚れちゃったね。一緒に湯浴みしようか。変なことはもうしないから」

「本当だな?」

浮竹は、いったばかりで呼吸が乱れていた。

潤んだ視線で見つめてくる。

「その、風呂の中で一人で処理するかもしれないけど。君があまりに色っぽくてかわいいから」

「俺のせいかのか?じゃあ、俺が責任をとる」

結局、湯浴みの途中で浮竹の手で2回抜いてもらった。たまっていたので、まだいけそうだったが。

お礼にと、少し嫌がる浮竹をいかせた。

性欲というものに淡泊な浮竹は、衝撃でぼーとなった。京楽が体と髪を洗ってあげた。

「あ・・・・」

まだいっている余韻の体をふいてあげると、浮竹はのろのろとパジャマを着た。

髪をふいて、かわかしてあげた。

「どう?気持ちよかった?誰かの手でいかされるなんてはじめてでしょ?」

「きもちよかった・・・・世界が真っ白になった」

「僕は女の子と付き合ったことあるから慣れてるけど、君はふだんどうしていたの?自分で抜いていたの?」

恥ずかしそうに、浮竹は言う。

「エロ本見て抜いてた・・・・」

浮竹もお年頃なのだ。

二人は、大人の階段を一歩昇ってしまった。


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翡翠に溶ける 大きな発作

1回生の冬になった。

寮の室内にいた。

寒い空気を吸ったのがいけなかったのか、浮竹は久しぶりの肺の発作で血を吐いた。

それまで、影で発作を起こして自分で鎮静剤を打ち、薬を飲んで大人しくしていたので、京楽の前での発作は初めてだった。

影で発作を起こしていた時は、吐血は少しだった。

でも今回の発作は酷く、手の隙間からぼたぼたちと吐いた血を滴らせていた。

「浮竹!」

ひゅっと、呼吸が止まる。

「浮竹!」

「ごほっごほっごほっ・・・・・京楽、服が汚れる・・・」

「そんなことどうでもいいから!今医務室に連れていくから!」

浮竹を横抱きにして、学院に走った。

まだ瞬歩を1回生のため学んでいないのが、もどかしかった。

「浮竹、しっかりして・・・死なないで!」

浮竹は、意識を失っていた。

医務室にいくと、4番隊の隊士が保険医だった。

「血を吐いたんだね?」

「はい」

「山本総隊長から聞いている。肺の病の子がいると。とりあえず、回道をかけよう」

回道をかけられていくうちに、青白かった浮竹の頬に赤みがさしてきた。

「とりあえず、これで大丈夫だろう。鎮静剤はあるかい?」

「あ、はい」

念のため、浮竹の薬箱をもってきていた。

保険医は、慣れた手つきで浮竹の手をアルコール消毒し、鎮静剤を打った。

「これでもう大丈夫。あとは寝かせて、体力が回復するのを待とう。僕も付き合うから、この子を寮の自室へ戻そう」

担架が用意された。

浮竹の体に負担をかけないよう、運んでいく。

「じゃあ、僕はこれで」

「ありがとうございました!」

保険医に礼を言って、眠ったままの浮竹の頬に手を当てる。

暖かかった。

「君が肺病を患っているのを、失念していたよ」

きっと、今までも発作があっても隠してきたんだろう。

京楽は、浮竹の血の付いた院生の服からパジャマに着替えてしまった。そして、眠っている浮竹の血で濡れた院生の服を脱がして、パジャマを着せた。

同じ男とは思えない、華奢で色白な体だった。細い。

抱き寄せると、いつも浮竹からする甘い花の香がした。

それから1週間、浮竹が目覚めることはなかった。あまりにも長いので、点滴が用意された。

4番隊の隊長だという、卯ノ花という優しそうな女性に診てもらったが、久しぶりの大きな発作で体が疲弊していて、今は休養のために眠っているだけだと言われた。

「浮竹・・・・早く、起きて?」

浮竹のいない学院はつまらなかった。

とうとうさぼりだし、浮竹の傍にいた。

「ん・・・・・・」

ゆっくりと、浮竹が瞼をあける。

「浮竹、大丈夫!?」

「腹が、減った・・・」

実に昏睡状態から目覚めるまで、10日を要した。

寝ている間に体をふいてあげたり、髪を洗ってあげたりしたけど、完璧ではない。

「気持ち悪いので、湯浴みしてくる・・・・・」

そういって、ふらつきながら湯殿に消えてしまった。

時間が長いので、大丈夫かと様子を見に行けば、髪を洗っている浮竹を見てしまった。

「なっ!」

浮竹は裸だった。

「ご、ごめん!あんまり長いから、風呂場で倒れているんじゃないかって」

浮竹の裸体を見たのは初めてだった。

点滴だけだったせいで、肋骨が浮きだしそうなくらいにまで、元々細い体から肉が削げ落ちていた。

風呂あがりでさっぱりした浮竹は、まずはオレンジジュースを飲んだ。

体が糖分を欲しているせいか、もうすぐ目覚めるだろうと用意していたおはぎをぺろりと食べてしまった。

「京楽、心配をかけた・・・そのすまないが、京楽家の料理人の飯が食いたい」

「うん、全然いいよ」

料理人を呼んで、簡単なキッチンのついている寮で調理してもらった。

カニ鍋だった。

二人分用意されてあった。

「病み上がりでカニとか無理?」

「いや、大丈夫だ。お腹がすいてすいて・・・でも、食堂の食事では足りなさそうだったから」

カニを、2匹分では足りないかと、3匹分いれて、他の海鮮物と一緒に野菜もいれた。うどんやもちも入れた。

食べ終わると、雑炊にした。、

よほど腹が減っていたのだろう。いつもの2倍は食べた。

「ふう・・・・満足だ。ありがとう、京楽」

「どういたしまして」

京楽家の料理人にも礼を言った。

「ぼっちゃまの想い人のためならば!」

浮竹は真っ赤になった。

「ねぇ」

「ん?」

「君を抱いて寝ていいかな」

「俺はまだ・・・・・」

「ああ、勘違いしないで。ただ、同じベッドで眠るだけ」

「それくらいならいいが・・・・・」

「ちょっとエッチなことしてくるかもしれないよ」

「飯もごちそうになったし、少しくらいなら我慢する」

「やった!」

その日、浮竹と京楽は同じベッドで眠った。

抱き締められて、舌が絡むキスを何度か繰り返してきた。

「んあ・・・・・」

パジャマの中に手が入る。脇腹と胸を撫でられた。

「細いのに、余計に細くなっちゃったね・・・・もっと食べて体力つけて、肉もつけないと」

その日は、それ以上京楽が触ってくることはなかった。

そのまま、二人は眠りに落ちていった。

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鴉の濡れた羽のように

その柔らかく、少し長い黒髪が、鴉の濡れた羽のように美しかった。

俺は、そっと眠っている隊長の桜色の唇に触れる。

「ん・・・恋次・・・・」

びくりとなった。

気づかれたかと思った。

隊長は、スースーと静かな寝息をたてて眠っていた。

今日は睦みあわず、ただ一緒に眠ることにした。

そんな時もある。隊長が乗り気でない時に誘っても、あまり触れさせてもらえずにお預けをくらうことも多々あった。

10年ばかりこの関係を続けてきるが、隊長の心を手に入れたのはつい最近だ。

「恋次?」

隊長が目覚めて、不安げな視線を送ってきた。

「そんな不安そうな目をしなくても、何もしないし傍にいます」

その言葉に安堵するかのように、薄く微笑む隊長。

「私の隣に来い」

空いているスペースを手で叩かれて、素直に隊長の隣で寝た。

「恋次の匂いがする・・・」

抱き着かれて、この人は本当に今日はしないつもりなのかと疑問に思う。

自分に対して劣情を抱いている相手に、気を許しすぎだし無防備だ。

「隊長、キスでしてもいいですか」

「キスだけなら」

いつも、キスから始まった。

それ以上のことは考えず、隊長の桜色の唇を奪う。

「ふあっ・・・・・」

声だけでいけそうだ。

「もう1回・・・・・・・」

「んあっ」

隊長はキスが好きだ。舌が絡み合うような深いやつが。

そっと舌を引き抜くと、銀の糸が引いた。

「隊長、好きです」

そういって抱きしめると、背中に隊長の手が回ってきた。

「今の私には、もう貴様だけなのだ・・・・」

愛しい義妹であるルキアは、一護の元へ行ってしまった。

ルキアに対して何も思っていないのかと聞かれると、多分好きだったんだろう。幼馴染で、子供の頃はルキアに憧れた。

ルキアを養子に迎えてきた隊長の姿を一目みて、恋に落ちた。

いずれ護廷13隊の死神になるのなら、あの人の下がいいと思った。

初めは違う隊に所属されたが、やがて6番隊の副隊長に任命されて喜んだ。

でも、隊長はとても冷たい人で。

でも、冷たく見せかけているだけなのだと気づいた。

俺が、冬に肩に毛布をかけてやると、「すまぬ」と言って微笑んだ。

茶をいれると「ご苦労」とって目を細めた。

隊長。

俺はあんたに出会って変わった。確かにルキアを処刑しようとしたあんたに牙を向けて、その喉笛を嚙みちぎろうとした。

でも、隊長に己の牙はかろじで届いたくらいで。

その圧倒的な力の差に、絶望を感じたのは確かだ。

誰もいない夜に、あんたが卍解して一人鍛錬をしてるのを知っていた。

あんたは強い。でも、俺ももっと強くなる。

ユーハバッハの侵略で、俺も隊長もどうしようもないくらいの大怪我を負った。零番隊の湯治のお蔭で命を拾い、鍛錬して敵を撃破するくらいに強くなった。

俺は、それでもまた隊長に届かない。

「愛しています・・・・・」

そう言って抱きしめれば、隊長も目を細めてこう言う。

「私も、愛している・・・・」

あんたを口説き落とすのに3年。全てを手にれるのに7年。

そしてあんたの全てを手にれて1年。

10年以上この関係を続けて、つい最近やっと隊長の全てを手に入れた。

「もう、二度と手放さない。あんたを守る。死ぬときは一緒です」

ユーハバッハの侵略によって、死にかけた時のような真似はもうさせない。

どんな敵がきても、俺の蛇尾丸で守ってみせる。

「平和になったのだ。それに、私は貴様に守られるほど弱くはない」

「それでも!」

強くその頭を胸にかき抱くと、隊長は俺の頭を撫でた。

「心配はいらぬ恋次。私は貴様を残していきはせぬ」

「約束ですよ、隊長」

それは、守れるかどうかも分からぬ約束。

それでもずっとあんたの傍にいたい。

あんたを抱いて啼かせてやりたい。

「もう、寝る・・・・・」

隊長の、濡れた鴉の羽のような艶のある黒髪を手ですいた。

柔らかくて、シャンプーのいい匂いがした。

眠りだした隊長の暖かい体温を感じながら、俺もゆっくりと瞼を閉じた。

「おやすみなさい・・・・」

俺の意識も、闇に落ちていくのだった。

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翡翠に溶ける あの時の姿で

秋になった。

芸術の秋。

学院では、選択形式で美術の授業があった。美術の他は、書道、茶道、華道。

浮竹は美術を選択した。自然と、京楽も美術を選択する。

肌も露わば女性のスケッチだった。

顔を朱くしながらも、スケッチしていく。

「もう少し脱いでくれないかな」

「こら、京楽!」

「だって女性はそこにいるだけで華だよ。もっと煽情的なポーズのほうが描きやすい」

「ばかいってないで、デッサン続けるぞ」

その日の美術の授業が終了する。

「ぶっ、何それ」

京楽が、浮竹のデッサンを見て笑った。

「微笑む女性------------そう名付けた」

まるで、ピカソの絵のようだった。

京楽の絵を見ると、綺麗になデッサンの絵があった。

「う・・・お前、絵まで上手いとか反則だ」

美術に雇われた臨時教師が、浮竹の絵を見た。

「ほほう、これは素晴らしい。シュール中に微笑む女性がいる。浮竹君といったかね・・・絵で食べていくことはしないのかね?」

「え、あいえ、死神希望なので・・・・・・」

「勿体ない。たまに絵を描きなさい。素晴らしい腕だ」

褒められて、浮竹もまんざらではなさそうだった。

「僕のは?」

「京楽君の絵か・・・うまいが、それだけだね。光るものがない」

そう言われて、京楽はがっくりとなった。

「やっぱり、分かる人には俺の絵は分かるんだ」

「君の絵、子供の悪戯描きのようじゃない。どこがいいんだかさっぱり分からない」

「ふ、俺の芸術は奥が深いんだ」

その日から、時折暇を見つけては浮竹は絵を描いた。何かにのめりこむのはいいことなので、京楽もつられて同じ題材の絵を描いた。

それが、山じいの目に留まった。

山じいを描いたのだが、まるで写真のようだと褒められた。

「春水の絵は、文句なしに上手いのう。十四郎の絵は、少し独特じゃな」

「元柳斎先生、これは絵なのです。上手ければいいというのじゃありません」

「ふうむ。そう言われると、十四郎の絵は深くて芸術とういかんじがするのう」

「そうでしょう、先生!」

「いや、下手なだけでしょ」

「なんだと!」

「いやごめん、ほんとのこと言ちゃった」

怒ってぽかぽか殴ってくる浮竹はかわいかった。

「ごめん、ごめんってば」

「十四郎も、春水と打ち解けたようで何よりじゃ」

「先生、京楽のやつ意地悪ばかりしてくるんです!」

「いやー、そんなことないよ。愛だよ、愛」

「先生、いつか俺は京楽に美味しくいただかれてしまいます」

「美味しく味わうよ~。時間かけてたっぷり味わうから」

「この京楽が!」

「やったな、浮竹!」

山じいの理事室で、ものを投げ合う二人。

「春水、十四郎、そこまでじゃ!」

山じいの恫喝に、動きが止まった。

「仲がよいのはよい。だが、それで道を見誤らぬように」

「はい」

「勿論だよ」

そのまま、寮の自室に戻った。

「ねぇ。君の絵を描きたいから、モデルになってくれない?」

そう京楽に言われて、アルバイト代を出すならいいと答えていた。

「じゃあ、これくらいでどう?」

その提示された金額に驚いて、引き受けてしまった。

「じゃあ、この服着てちょっと肩を露出させてね。エロ本を始めて見た時のような、恥じらいの表情がほしいな。髪は軽く結って・・・よし、これでいい」

「おい、京楽、この格好・・・・・」

「あ、気づいた?君が遊女の時にしてた恰好に近いものを選んだんだよ。何せ、今思えばあれが初恋だったのかもしれない」

遊女の恰好ではあるが、自分でいうのもなんだが、随分と煽情的な恰好になっていた。

「恥じらないの表情、忘れないで」

どうすればよく分からなかったが、ちょっと照れたように笑ってみた。

「いいね、いいね。ああ、いい絵が描けそうだ」

シャッシャッと鉛筆でデッサンを描いて、陰影をつけていく。

ただ姿と留めるだけなら写真があるが、あえて手描きで、浮竹との出会いを思い出すように絵を描いていく。

「できた」

2時間ほどで、絵は完成した。鉛筆によるデッサン絵だったので、それほど時間はかからなかった。

「ねぇ。お小遣い余計にあげるから、今日1日その恰好でいてくれないかな」

遊女の恰好は、昔から売られかけるたびにさせられていたので、抵抗はなかった。

「別にいいが、露出はしないぞ」

「うん、いいよ」

遊女の恰好のまま、生足が太腿まで露わになるのも気にせず、ベッドに横になる浮竹に、京楽はごくりと唾を飲みこんだ。

「好きだよ・・・・・」

「知ってる」

「大好きだよ・・・・・」

白い足を手が這う。

「やっ」

女ではない。そう分かっていても、止まらなかった。

「ああっ!」

太腿から這い上がった手が、敏感な場所を刺激する。

「や、やめろ!」

浮竹の白い足が、京楽の顔を蹴った。

「おぷ・・・ぐはっ」

京楽は、鼻血を出して気絶した。

「危なかった・・・・」

パンツは死守した。

本当に、俺が欲しいんだ。

そう思うと、顔から火が噴きそうだった。

今後、同じ寮の同じ室内ということが、吉と出るか凶と出るかわからなかった。

今の浮竹には、まだ京楽を受け入れる覚悟はなかった。


「あれ?僕どうしたの」

「俺に襲い掛かってきた」

「え、あ・・・・・・・」

思い出した。

白い足があまりに艶めかしいので、手を這わせて下着に手をかけようとして、顔を蹴られた。

そして、撃沈した。

「ごめん、僕が悪かった!」

「もう、気にしてない」

寝る前だったので、浮竹は遊女の姿からパジャマに着替えていた。

「ねぇ。あの恰好、またしてくれていったら、着てくれる?」

「報酬しだいなら」

浮竹は貧乏だ。薬代のせいで、仕送りは消えてしまう。食費もぎりりで、いつも安いものばかりを食べていたのだが、最近は京楽が資金援助してくれるので、助かっていた。

それでも、個人的に本などの欲しいは出てくる。

それまで京楽に買わせるわけにもいかなくて、我慢していた。

今回、モデルとなったのと、遊女の恰好でいたこと対する報酬で、節約すれば半年は買い物に困りそうにないと思った。

京楽春水。女好きで、廓によく通う上流貴族。

浮竹は知らない。廓で買う女が、どこか浮竹に似ていることを。京楽が、浮竹の代わりに女を抱いていることを。けれど、それを最近ぱったりやめてしまったことを。

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翡翠に溶ける 氷室と熱

「暑い・・・・」

浮竹は、院生の服をはだけさせて、だらしなくベッドの上でごろごろしていた。

ほとんど、半裸に近い。

「なんて恰好してるの!暑いからって、ちゃんと服を着なさい!」

顔を朱くした京楽に、浮竹が小首を傾げる。

「なんでだ?流石にこんな暑さなら、少々脱いだところで熱は出ない」

「君、分かってる?僕、君が好きなんだよ?」

その言葉に、今度は浮竹が朱くなった。

友達から始めましょうと言われたが、京楽のものになると誓ったようなものなのだ。借金のかたに身売りをしたに近い。

「君の艶めかしい白い肌。目に毒だ」

いそいそと、院生の服をちゃんときた。

うちわであおいで風を送るが、全然涼しくなかった、

「そうそう、僕の所有する氷室をあけるから、かき氷を食べよう」

「本当か!」

「うん」

京楽の屋敷まで、足を延ばした。少し遠かったし暑かったが、幸いにも今日は曇りで、直射日光に浮竹がやられることはなかった。

夏季休暇に入るまで、外で授業があるとよく倒れた。

やがて、氷室から出された氷がもってこられる。それをかき氷機でしゃりしゃりと削っていった。

氷の欠片をもらい、それを額や手に当てている浮竹に、苺味のシロップのかかったかき氷が渡された。

「んーひんやりして美味しい」

屋敷の中のに入っているので、外より数度気温が低いが、それでも暑かった。

夢中で食べていくと、すぐなくなってしまった。

京楽はそれに苦笑して、お替りを作ってくれた。今度はメロン味のシロップだった。

「ああ、大分体が冷えた。満足だ」

「どうせなら、今日この屋敷に泊まらない?井戸水でスイカも冷やしてあるんだ」

「泊まる!」

寮の自室でだらだら過ごすよりはいいと思った。

風が入りやすい造りになっていて、室内だが寮の自室にいるより涼しかった。

夕食前に、冷えたスイカが出された。

ペロリと平らげる浮竹に、京楽は呆れつつも、夕食も楽しみにしておいてねと言った。

夕食はちらし寿司と天ぷらだった。

良く冷えた、麦茶がついてきた。

その麦茶のお替りばかりもらいながら、豪勢な夕食を平らげた。

夜には、氷水をいれたたんぽが用意されて、それで体を冷やしながら寝た。

体を冷やし過ぎたのか、次の日浮竹は熱を出した。

幸いなことに氷室があるので、冷えたタオルを額に置かれた。

「京楽・・・・・傍にいて・・・・」

熱で潤んだ瞳でそう言われて、京楽は片時も浮竹から離れなかった。

「キスしてもいい?」

ダメ元で聞いてみると。

「キスしてもいい・・・・」

と返ってきた。

夏休みになるまで、何度か触れるだけのキスをしたことがある。

「深い口づけでもいい?」

「構わない・・・・・」

ゴクリと、喉がなった。

「いただきます」

唇を重ねる。口をあけない浮竹の顎に手をかけて、少し口を開かせると、舌を入れた。びくりと縮こまる舌をおいかけて、歯茎を舐め、何度も舌を絡めあった。

「ううん・・・んあっ」

濡れた声の浮竹のそれだけで、たっしてしまった。

つっと、銀の糸を引いて舌をぬく。

「ちょっと、湯浴みしてくる」

反応してしまった息子さんを大人しくさせるために、風呂場で浮竹の乱れた姿を想像して3回ほどぬいて、すっきりした。

新しい服を着て戻ると、浮竹の姿がなかった。

「京楽・・・・どこ・・・・」

熱のある体で、廊下に立っているのを見つけると、抱き上げてベッドに寝かせた。

「京楽・・・・どこにも、行かないで・・・・・」

ああ。

普段が、今の3分の1でもかわいかったらいいのに。

熱を出した浮竹は甘えてきて可愛かった。

このまま時が止まってしまえばいいと思った。

だがそういうわけにもいかず、夕飯に卵粥を食べさせて、解熱剤を与えた。

浮竹は、すぐに眠ってしまった。

京楽も、浮竹と同じベッドで眠った。


「ん・・・・京楽?」

「あ、おはよう。起きたのかい?」

「狭いのに、一緒のベッドで寝たのか」

「だって君、離れないでって・・・・・」

「俺はそんなこといわない」

どうやら、熱を出していったこととかは覚えていないようだった。

「はぁ・・・・・キスは覚えてる?」

浮竹は真っ赤になった。

「はじめてのディープキだけど、君の声聞いてるだけでいちゃたよ。風呂場で3回抜いた」

「お、俺のせいじゃない」

「君がかわいすぎるからだよ」

ちゅっと、音をたてて、頬にキスをされた。

「おい、京楽!」

「あはは、ほっぺにキスくらい許してよ」

氷室があるせいで、その年の夏は休みが終わるまでずっと京楽邸で過ごすのであった。



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翡翠に溶ける 桜散る場所で

「おはよう」

「おはよう・・・」

なんでもない毎日が、また始まろうとしている。

1回生の春だった。

遅咲きの桜が散っていた。

「ねぇ、浮竹」

「なんだ?」

「いつか、僕はこの桜の下でその時持っている感情を君にぶつける。それまで、友人でいてくれるかい?」

「俺はこんな体だ・・・・・お前の想いとやらに応えれるかどうかは分からないが、その時抱いていた感情を、俺もぶつける」

「約束だからね」

「ああ」

桜の木の下で、浮竹と京楽は手を握りあった。

清い関係だった。

まだ出会って日も浅いということもあって、キスも1回しかしていない。

「春水様ー!」

「なんだ、桜かい」

幼馴染の、吉祥寺桜。

同じ死神統学院に、合格した、特進クラスの女生徒だった。

「あら、浮竹君いたの?」

浮竹のことを、目の敵にしていた。

「いちゃ悪いか」

「下級貴族如き、春水様となれなれしい!」

「桜!」

叱ると、桜は怯えた顔をした。

「春水様・・・桜のことは、もう抱いてくれませんの?」

その言葉に、浮竹が傷ついた顔になる。

「桜、春水様に抱かれるの好き」

「君とはもう終わったんだ。あっちに行きなさい」

しっしと追い払うと、浮竹は完全にへそを曲げていた。

「吉祥寺桜。上流貴族吉祥寺家の一人娘・・・・お前には、似合いの相手だな」

「ちょっと、浮竹!あの子とは終わったんだから!」

「どうだか」

浮竹は、怒ってそれから1週間口を聞いてくれなかった。

席替えがあった。

浮竹と隣同士になった。結局、浮竹が自分が悪かったと謝ってくれて、入学して早々に関係が破綻ということにはならなかった。

吉祥寺桜は、何かあるごとに浮竹を侮辱して、自分が女であるとアピールしてきた。

5月のうららかなある日、浮竹は桜に呼ばれて校舎の裏まで来ていた。

「本当にいいんですか、桜お嬢様。このお方、春水様の想い人であられるのでは・・・・・」

「春水様のまわりをうろうろとするハエですわ。どうか、思い知らせえてやってくださいな」

屈強な男3人に襲われた。

でも、浮竹はその見た目の良さで、悪戯さえそうになったり、人攫いに攫われそうなったりといった人生を過ごしてきたので、細い見た目とは裏腹に、蹴りを重心に置く護身術を身に着けていて、強かった。

「なっ、生意気な!」

3人の男をのした浮竹を殴った。

なので、浮竹も拳で桜を殴った。

「きゃああああああああああ!」

自分の服をびりびりと破いて、桜は悲鳴をあげた。

それにかけつけた者が、泣き叫ぶ桜と、のされた学院の者ではない気絶している大男3人と、顔を思い切り殴られた痣のある浮竹を見て、目を見開く。

「浮竹君が!浮竹君が、護衛の3人に手をかけて、私を襲おうと!」

肌も露わな泣き叫ぶ桜に、浮竹に視線が集まる。

「嘘だね」

かけつけた京楽が、一言そう言った。

「そんな、私のこの姿を見てください!」

「どうせ、自分で破いたんでしょ」

「春水様、酷い!」

「みんなはどう思う?浮竹が、女の子を襲うような人物に見える?」

すると、浮竹の友人の一人が声をあげた。

「あの浮竹が、そんなことするはずがない!」

「そうだそうだ!」

人込みになっていた。騒ぎの大きさに、教師まで出てきた。

「まぁ!桜が自作自演したというの!?」

「そうだよ。吉祥寺桜は、そんな女だ」

「春水様!」

「めんどくさいから、山じいよんで」

「ひっ」

桜は息を飲むが、もう遅い。

山じいが呼ばれ、ことの真相を桜と浮竹から聞いた。

「吉祥寺桜を、退学処分とする!」

「そんな!桜は何も悪くありません!」

「お主が、十四郎をはめようとしたのは証拠もあがっておる」

「何処に!」

「護衛と言っていた3人が白状しおった。吉祥寺桜の命令で、十四郎を暴力で痛めつけようとしていたと!」

「あんな下賤な者たちの言葉を信じるというのですか!浮竹十四郎は、この桜を手ごめにしようとしたのですよ!?」

「それがありえんのじゃ。十四郎は、まだ女性とも付き合ったことのない清らかな存在じゃ。いきなりその方を襲う真似などせんと、儂が断言する」

「この・・・・・!」

桜は、光るものを手に浮竹にぶつかった。

「う!」

「浮竹!」

「十四郎!」

ナイフが、浮竹の太腿に深々と刺さっていた。

傷は動脈にまで達していた。

「いかん、はよ4番隊の席官を呼べ!」

「あはははは!」

桜は、狂ったように笑っているところを身柄を拘束され、警邏隊に引き渡された。

その場にいた教師たちが、回道を行ったことで、幸いにも失血死は避けられた。浮竹はやってきた4番隊の席官から回道を受けて、傷は塞がったが、失った血までは戻せないということ、輸血のために病院まで搬送された。

「吉祥寺桜・・・・あんな、愚か者だったなんて。はぁ、僕の周りにはろくな女がいないね」

京楽が、浮竹の見舞いにきた。

念のための、肺の検査も兼ねた3日間の入院だった。

「おはぎ、もってきたよ」

げんなりしていた表情の浮竹の顔が輝いた。

「お前の傍にいるのは、苦労するな」

「もう、流石に桜みたいなバカは出てこないはずだから」

浮竹は、おはぎを食べた。

「助かる。ここの病院食、質素すぎる上に味付けが薄い」

「あら、そうですか?」

「うわ、卯ノ花隊長!」

4番隊の卯ノ花が、山本総隊長の愛弟子の様子を見にやってきたのだ。

「な、なんでもないです!」

「まあ、言われな慣れてますけどね。だからといって、食事を豪華にしたり、味付けを変えることはありませんが。そんなに嫌なら、京楽家の料理人に食事を作ってもらったらどうです?それには一向にかまいませんよ」

「京楽、頼めるだろうか」

「任せなさい。美味しい料理、食べさせてあげる」

その日の夕食は、豪華だった。京楽家の料理人の腕は確かで、おいしかった。

やがて、退院の日を迎えた。

まだ傷が痛むので、京楽に肩をかしてもらいながら歩きだす。

そのまま、時は流れる。

1回生の夏休みに入ろうとしていた。

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翡翠に溶ける 花街での出会い

花街で、好みの子を見つけた。

「ねぇ、君。そうそう、君、君」

京楽は、かわいい遊女を見つけた。

「何処の子?」

「夏姫・・・・・」

「夏姫?あんな格下の廓にいるの?」

こくりと、その少女は頷い。

「今から遊びにいったら、相手してくれる?」

こくりと、その少女はまた頷いた。

「よし、行こう!」

夏姫は、その花街の中でも下から数えた方が早い廓だった。花魁もいないし、こうぱっとする遊女がいるわけでもない。

「僕は京楽春水っていんだ。君の名前は?」

「・・・・・翡翠」

「そう。翡翠色の瞳をしているもんね。かわいい」

その少女は愛らしかった。白い肩までの髪に安物の簪をさしていた。

「そうだ、これあげる」

いつもの花魁にあげようと思っていた、瑪瑙の簪を、翡翠の髪に飾ってやった。

翡翠は、あどけない顔で笑った。

夏姫に、京楽をつれていくと、ちょっとした騒ぎになった。上流貴族がくるような廓でなく、食事も美味いといえるものではなかったが、翡翠が気に入ったのでそのまま居座った。

「お酒、飲みますか」

「ああ、いただこうかな」

酒を飲んでいると、急に眠くなってきた。

そのまま、京楽は寝てしまった。

気づくと翡翠の姿はなく、廓の女将に聞いても、翡翠は今日きたばかりの遊女の見習いでと言われた。

服はそのままだったが、金目のものがごっそりもっていかれていた。

「ああ、やられてしまった・・・まぁいいか。かわいかったし・・・」

また、いつか会えるといいなぁ。

そんなことを考えながら、それから2年後には死神統学院に入っていた。

首席であると思っていたが、もう一人首席がいた。

興味が沸いて、山じいのお説教を受けるの覚悟で、今日は休んでいるというその首席の子のいる寮の部屋の前にきて、そっと扉をあけて中にいる子を見た。

「え、翡翠!?」

「え・・・・・」

翡翠が、そこにいた。

「君、翡翠でしょ。僕からお金奪っていった悪い子・・・・」

「あ、あの時の・・・・・・」

翡翠は、少女ではなかった。少年だった。

遊女の服をきて、化粧をしているのだから、てっきり少女だと思い込んでいた。

「あの時はすまない・・・・妹が、売られそうで、まとまった金が必要で・・・いつ返すから、待ってくれないか」

「じゃ、君が僕のものになるならいいよ」

「え」

翡翠が、上ずった声をあげる。

「俺は男・・・・・・」

「うん、分かってる。名前は?」

「浮竹十四郎」

「じゃあさ、浮竹、君が僕のものになるなら、お金返さなくてもいいよ。けっこうな額のお金が入ってたんだ・・・・君が、死神になれたとして、返済までに時間かかるよ。君が僕のものになるなら、ちゃらだ」

「妹が、また売られそうになったら、金を貸してくれるか?」

「ああ、いいよ」

「なら、お前のものになる------------」

ぽろりと。

浮竹の瞳から涙が零れ落ちた。

「ちょっと!何も今すぐとって食おうなんて思ってないよ!そうだ、友達になろう!」

「友達?」

「うん。僕は京楽春水。改めて、よろしくね」

「こりゃあああああ、春水!どこじゃあああああ!」

「いっけね、山じいだ!入学式さぼちゃったから。またね」

京楽は、風のように去ってしまった。


「こりゃ、春水」

杖で、ぽかりと頭を叩かれた。

「首席で合格したお前が、入学生代表になるはずじゃったのに、抜け出しおってからに。どこにっておったのじゃ」

「ちょっと、同じ首席の子に興味があってね」

「十四郎のところにおったのか!十四郎は肺を病で欠席じゃった!無理をさせたのではあるまいな!」

「んー。昔、騙されて大金とられてねー。僕のものになるなら、返さなくていいっ言ったら、泣いてた」

「十四郎が、春水を騙したじゃと?何かの間違いではないのか?」

「でも、浮竹は僕のものになるって言ってくれたよ」

「こりゃ春水!もしや、金でなんとかしたのではあるまいな」

当たらず遠からずというところだった。

もしも、また妹が売られそうになった時には、金を貸してやると約束した。そして、とられていった金のかわりに京楽のものになれと、脅しに近い言葉で納得させた。

「でも、かわいかったなぁ・・・・・」

肩まである白い髪に、翡翠色の瞳。女の服を着せて化粧させれば、きっと今でも少女に見える。

「山じい、あの子のこと教えてよ----------------」

山じいに聞いたところ、下級貴族の8人兄弟の長兄だという。治らぬ肺の病を患っている上に病弱だが、類まれな霊圧を持っており、山じいが保護者ということで、学院の寮に入っているらしかった。

「ねぇ、山じい・・・あの子と、同じ部屋にしてよ」

「なんじゃ、春水、寮はあれほどいやだと言っておったじゃろう。近くに屋敷を建てるからと・・・・・」

「んー。浮竹と同じ部屋なら、寮に入っていい」

「寮に入ってもらったほうが儂の目も行き届く。よかろう、十四郎と同じ部屋になることを許可しよう」

「やった!」

次の日、休みだったので荷物を最小限にして2人部屋である浮竹のいる寮の部屋に入った。

「京楽・・・・・」

「今日から、一緒の部屋で住むことになったから。よろしくね」

「よ、よろしく・・・」

出会いが最悪だったため、浮竹は京楽にしばらくの間、心を開かないでいた。

でも、同じ1回生として、同じ特進クラスで学んでいくうちに、氷だった浮竹の心も雪解け水のように溶けていった。


「甘味屋へ行こう、浮竹」

デートというか、いつも一緒に行動した。

浮竹は甘いものに目がなく、甘味屋に誘うと100%OKをもらった。

「ほら、口についてる」

あんこをとって、食べると、浮竹は顔を朱くした。

「どうしたの?」

「その、お前は、俺を抱きたいのか?お前のものになれってことは・・・・・」

「うーんどうだろう。今は君を抱きたいとは思ってないね。ただ、親友として一緒に在りたいとは思っているよ。ただ、君のことが好きなのは本当だ。将来抱きたいというかもしれない。怖いかい?」

「怖くない-----------------でも、俺のどこがいいんだ?」

「全部だよ。君の声も姿形も性格も。全部、僕の好み」

「悪趣味な奴だな」

そう、浮竹は笑った。

甘味屋でその細い体の何処に入るのだというくらい食べて、寮の部屋に戻った。

「すまない、おごらせてばかりで。金がないせいで----------」

謝る浮竹を抱き締めると、吃驚したようで、硬くなった。

「緊張しすぎ。もっとリラックスして」

やっと体の力が抜けていく。

浮竹は、おずおずと、手を京楽の背中に回した。

そのまま、触れるだけのキスをすると、浮竹は赤くなって京楽を突き飛ばして、布団の中で丸くなてしまった。

「どうしたの」

「俺のファーストキスが・・・・・」

「ああ、君キス初めてだったの。僕なんて、童貞もとっくの昔に捨てたし・・・・・」

「ななななな」

「ああ、君やっぱ性格通り、童貞なんだ。綺麗だから、卒業してるかなと思ったけど」

「京楽!」

浮竹が怒った声を出す。

「はいはい、ごめんよ」

楽しいおもちゃを見つけた。そんな気分だった。




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凍り付いた時間

高校3年の冬。

一度だけ、体を重ねた。

一護とルキア。

二人は、別に付き合っているというわけでもなく。それでも、お互いが好きであるということは自覚していた。

「これで、お前への想いも最後だ」

そういうルキアを抱きしめた。

「俺は・・・多分、忘れられないと思う」

細く小さいルキアの体を抱き締めて、キスをした。

一度だけ、体を重ねた。

「ルキア、愛してる-----------------」

「一護、私も貴様を愛している-------------」

やがて、高校生活も終わり、ルキアは尸魂界へと帰っていった。


ルキアが去って、5年が経った。

一護は、大学を卒業し、ドイツ語の翻訳家として在宅で仕事をしていた。

「黒崎君、お茶いる?」

「ああ、織姫、ありがとう」

一護と織姫は、4年半の交際の末に結婚した。

今は家を出て行った遊子と夏梨の部屋を使っていた。

ふと、見知った霊圧を感じて、一護は自分の部屋にきた。

「一護」

窓から入ってくる、あの頃から髪が伸びたルキアがいた。その後ろには恋次もいた。

「この度はな・・・・私と恋次は、結婚することになったのだ!」

「わぁ、おめでとう!」

「おお、井上ではないか。一護と結婚したと聞いているが、どうだ?」

「うん、黒崎君すっごく優しいの。私、愛されてるなぁって思う」

一護は、照れた顔をするわけでもなく、真剣な表情でルキアを見る。

「ルキア、今幸せか?」

「ん?何を言っておるのだ一護・・・・・・・」

「そうか・・・恋次、ルキアを幸せにしろよ」

「おう、言われるまでもねぇ。どうしたんだ、一護?」

「今日は泊まってくだろ?」

「ああ、その予定だ」

「じゃあ、買いだしとかしてくるわ」

「あ、黒崎君、私も行く」

「来るな!」

「え・・・・・」

一護が、冷たく拒絶することは前にもあった。伝令神機でルキアと恋次が付き合いだしたと知った時だった。

でも、一時的なものだった。

「うん、じゃあ待ってる。メニューはカレーにしよっか」

「あと、白玉餡蜜な・・・・・・」

一護は、スーパーまで買い出しに出かけるのと、頭を冷やすために外に出た。

いつか、こうなると分かっていたことだ。だから、井上と結婚した。

ルキアを忘れるために。

でも、高校3年の冬、体を重ね合わせたあの感触が消えない。愛していると、熱っぽく囁かれ、囁いたことが消えない。

今は、黙して二人を祝福しよう。

そう思った。

スーパーでお菓子やジュースも買い込んでいると、1時間以上経ってしまった。

スーパーを出たところで、ルキアと出会った。

「どうしたんだよ、ルキア」

「貴様・・・よもや、5年前のあのことを引きずっているわけではあるまいな」

どう答えればいいのか、分からかったが、本心をぶつけた。

「俺は------------未だにお前のことが好きだ、ルキア」

「そうか。想いは同じか」

「え」

「私も、未だに貴様のことが好きなのだ。忘れられない。私たちの時間は、高校3年のあの時に止まってしまったのだ・・・・・・・・」

「ルキア!」

スーパーの袋をぶら下げたまま、細く小さなルキアの体を抱きしめた。

「一護・・・・」

唇が重なった。

そのまま、一度荷物を自宅に置くと、懐かしい街並みを散策してくといって、家を出た。

向かった先はラブホテル。

お互い、求めあった。

互いに伴侶がいると分かっていたが、一度燃え上がった熱は、どうしようもなかった。

体を何度も重ねた。

5年の空白を埋めるように。

「私は・・・恋次と、別れる。はっきり告げる。一護をまだ想っているのだと」

「俺も、井上と別れる」

「いいのか?結婚してしまっているのだろう?」

「井上が好きだと思ってた。でも違うんだ。井上をルキアの身代わりにしてただけなんだ」

体を重ねあう。

「好きだ、ルキア------------」

「私は恋次に何度も抱かれたのだぞ?それでも好きか?」

「それでも、どうしようもない位にお前が好きだ。俺だって、井上を何度も抱いた。流産しちまったけど、子供もできた」

「そうか・・・・ふふ、私たちはクズ女にクズ男だな。互いに伴侶がいながら、こうして密通している」

ラブホテルからかえってきて、夕食をとった後、それぞれ別れ話を切り出した。恋次のほう薄々気づいていたらしく、案外とあっさりと別れてくれた。

でも、井上はだめだった。どんなに別れるといっても、首を縦にふってくれなかった。

「朽木さんを愛してるなんて今さら!私、黒崎君の子供だって一度できたんだよ!?そんな私に別れろっていうの!?」

「井上、俺は出ていく」

「いやああああああああ、黒崎君!!!」

荷物をまとめて、通帳をかき集めて、金を降ろして一人暮らし用のアパートを借りた。井上には、離婚届を自分の名前を書いて、送った。

当座の生活資金を与えて、田舎に帰らせた。

でも、井上は頑なに離婚届にハンコを押さなかった。

そんな中、月日だけが経っていった。

ルキアと再会して、4か月が経とうとしていた。

ルキアは月に4回は現世の一護の家に来てくれてれた。体を重ねた。

爛れた関係というのは分かっていた。

一護は、井上が田舎に帰ったことで、アパートを引き払い元の黒崎家で生活をしていた。

やがて、観念したのか、井上が離婚届にハンコを押して郵送してきた。

「これで井上とも別れた・・・・止まっていた、高校3年の冬から、砂時計は時を刻みだした」

「本当に、これでよかったのであろうか」

「俺たちは、互いを大切にできなかった。もういいんだ。幸せになっても」

「一護・・・好きだ。愛している」

「ああ、ルキア、俺もだ・・・・・・」

それはまるで雪解け水。

ルキアと一護の関係は、そのまま数十年続いた。

ある日、一護が体調を崩した。末期ガンであることが分かり、病院で入院するよりもと、自宅で性格を送った。

すかっかり、髪に白いものが混ざってしまって老いた一護の傍らには、高校3年の時から時を止めたままのルキアがいた。

「ああ、俺は幸せだった・・・・。ルキア、幸せをありがとう」

一護は、静かに息を引き取った。

でも、ルキアは泣かなかった。

ゆらりと、魂魄が滲み出た。

それは、高校3年の頃の一護の姿をしていた。

「なんだ・・・・死んだら、またお前と会えるのか。なんか別れだって泣きそうになっていた俺がばかみたいだな」

「一護、ようこそ死神の世界へ。貴様は、死んだことで本物の死神になった」

「そうなのか?」

「行こう、尸魂界へ。兄様と恋次の元へ・・・・・」

道は、死んだ後も続いていた。


尸魂界ヘ行くと、変わらぬ姿の恋次と白哉に会った。

「黒崎一護・・・死神となったからには、我が義妹を攫っていったツケを返してもらう。13番隊の3席を用意した故、身を粉にして働け」

「おうおう、死神化するの何十年ぶりだからって、腕は鈍っていないだろうな!?」

始解された蛇尾丸の刀を、一護は斬月で受け止めた。

「よう恋次、鈍っていないみたいだぜ」

「お前には、ルキアをとられた怨みがあるからな。根性叩き直してやる!」

「やめぬか、恋次!一護は、死して尸魂界へ来たばかりなのだぞ!」

「うげ、ルキア・・・・・」

ルキアは、何も尸魂界を捨てたわけではなかった。ただ、一護がの死がはっきりした頃は、尸魂界に戻っていなかった。

「兄様、一護をいきなり護廷13隊に放りこむのはやめましょう。真央霊術院にしばらく預けて死神としての在り方を覚えさせてもいいでしょう」

「ふむ・・・それもそうだな」

白哉は、愛しい義妹が愛した男、黒崎一護を甘く見ていた。

僅か4が月で、真央霊術院ではもう学ぶものがないとして、卒業させられた。

一護とルキアは、籍を入れた。

一護が死ぬ5年前に、井上も死んで尸魂界にきて、真央霊術院に進んだ。4番隊に配属された。

ふと、4番隊にいってこいと、ルキアに言われた。

「え、黒崎君!?」

井上の姿を認めた一護は、顔を顰めた。

「あ、井上・・・・ごめん、お前には本当に酷いことをした」

「もういいよ。私も死んじゃったし・・・石田君と結婚したの。残してくるのには不安はあったけど、石田君も死ねばこっちにくるだろうし・・・うん、もういいの」

井上は、ふっきれた顔をしていた。

「朽木さんと、結婚したの?」

「ああ。籍だけ入れた」

「結婚式はしないんだ」

「ああ・・・・・」

「そっか」

重い空気の中、13番隊に戻ると、ルキアがいた。

「どうだ、井上とは少しは和解できたか」

「ああ、一応な」

細く小さなルキアの体を抱き締める。

「なんだ、一護」

「好きだ、ルキア・・・・・」

「ふあっ・・・・・」

「なぁ。籍もいれたし、子供作らねーか?」

「そればかりは、運を天に任すしかあるまい」

「そうだな。お前といつまでもいちゃいちゃしたいし・・・でも、子供も欲しいなぁ」

始まりは、高校3年の終わり。

それから、実に45年以上は経っていた。


時の歯車は廻る。

幸せの音を立てて。






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浮竹死んだけど幽霊です憑いてます20 新婚旅行

「お待ちしておりました、京楽様、浮竹様」

前にも一度きたことがあるので、幽霊の浮竹については何も触れられなかった。

「荷物をお持ちいたします・・・・」

二泊三日なので、持ち物はそんなになかった。着換えが一組くらいだ。風呂上がりには浴衣を着るので、あまり着換えがいらないから、かさばらずに助かった。

浮竹の分の荷物ももってもらう。こちらも着換えが一組入ってるだけで。

部屋に案内された。

和室ではなく洋室のスウィートルームだった。

「うわ・・・・また、無駄に金をかけて・・・」

「君との新婚旅行だよ!?奮発しなきゃ男じゃないでしょ!」

夕食になる前に、二人で早速温泉に入った。

今夜の夜から眠る時間以外、1日実体化する予定だったので、まだ霊体のままだった。

幽霊にも湯の温度が分かる。

入浴するのにさっぱり感までは味わえないが、暖かい湯に浸かっていると、ほっこりと体が暖かくなった。

湯浴みを終わらせて、夕食になる。

カニ鍋だった。海老、鮭、はまぐりといった、海鮮ものも入っていた。

浮竹は、さっさっと、食べていく。

器用なもので、カニの甲羅だけが残った。

「ああ、美味しかった」

「ああ、そうだね。僕も満足したよ」

2時間くらい、二人で院生時代の話に花を咲かせて酒を飲んでいた。

「浮竹・・・実体化して」

「あ、ああ・・・・」

すーっと、全体の輪郭がはっきりする。

「愛してるよ・・・・・」

浮竹を抱き締めて、口づけた。

「ううん・・・・・」

浴衣の帯を、しゅっと外す。

「あ・・・・・・」

ぱさりと、浴衣がベッドの上に広がる。

「綺麗だよ・・・」

「お前も、脱げ・・・・」

京楽も、浴衣を脱いだ。

お互い、下着をつけていなかった。

こうなると分かっていたからだ。

「あ・・・・・・」

胸から脇腹にかけて、手が這っていく。

うつぶせにされて、肩甲骨から背骨にそって、舌がラインを辿っていく。

「んん・・・・・・」

仰向けにして、抱き締めて口づけた。

ピチャリと舌が絡み合った。

「なぁ・・・・なんか、体が熱いだが。まさか、媚薬系の薬を盛ったとか・・・・・」

「あ、ばれた?」

「このばか・・・ああ!」

殴ろうとして、すでに反応している花茎に手をかけられる。そのまま手でしごかれて、口淫さえれた。

「ああっ!」

浮竹は、あっという間に吐精してしまった。

「今日は、君がとろとろになるまで愛してあげる・・・・・」

潤滑油で濡れた指が体内に入ってくる。何度も前立腺を刺激されて、浮竹は二度目になる熱を放っていた。

「や、なんか変・・・・・やあああ」

指がぬきさられて、灼熱がずっと、体内に入ってきた。

ゆっくりゆっくりと。

「きょうら・・・・・や、もっと激しく・・・・・」

「仕方ない子だ」

パンパンと、音がなるくらいに腰を打ちけていると、浮竹が痙攣した。

3度目の熱を放ったのだ。

「やああああ!俺ばっか・・・・ああ、春水、お前もいけ!」

中を締め上げると、流石の京楽も、浮竹の中に欲望を吐き出した。

「あ、ああ・・・ひう・・・ひあん!」

ぐちゅぐちゅと、前立腺がある場所ばかり犯されて、また精液を吐き出していたが、途中からたらたらと先走の蜜だけになった。
もう、はきだす精液がないのだ。

それでも、京楽に犯され続ける。

「あ、あ・・・ひあっ」

二度目になる熱を、中に吐きだされた後くらいから、意識が怪しくなってきた。

「やああ、もうやあああああああ」

3回、4回と中で放たれ、その間もずっと犯されていた。

もう吐き出すものがない浮竹の花茎は、たらたらと先走りの蜜を垂らすだけで。

ドライのオーガズムで何度もいかされた。

いろんな体位で犯された。

「もうやぁ!犯さないで・・・・・いっちゃう!」

「とろとろになるまで、犯してあげるって言ったじゃない・・・・」

「ああああああ!!!」

びくんびくんと浮竹の体がはねる。

もう何十回目かもわからぬいき具合に、京楽は満足そうだった。

「君を満足させるために、精強剤飲んだからね・・・・まだいけるよ」

「やあああ・・・・・・」

抵抗も、ほとんどない。しようにも、できない。

6回目の熱を放たれて、浮竹は意識を手放した。

1時間ほどそのままにされていたが、ふと京楽に起こされる。

「んあ・・・・・何?」

「お風呂にいって、体を綺麗にしよう」

「ああ、うん・・・・・」

京楽が浮竹の中に吐きだしたものは、かき出しておいた。

「あ・・・・立てない」

「あー。やりすぎちゃったみたいだね、ごめん」

抱き上げられて、替えの浴衣と下着を手に、温泉に入った。

「ああ、やっぱり実体化したときの風呂はいいなぁ」

髪と体も洗った。久しぶりの風呂なので、気持ちが良かった。

霊体では汚れるということがなかった。

霊体になって波長を変えれば、汚した体など元に戻るのだが、せっかく温泉宿に来ているのだ。温泉を楽しまないと損だ。

露天風呂だった。

月と星が綺麗だった。

「どう、体は」

「だるいけど、それ以外は何もない」

「そう。抱くのは今日だけだけど、寝る時は霊体で寝てくれないかな。君と少しでも長い間一緒にいたい」

「分かった」

その日、霊体で眠った。

お陰で、2日は実体化することができた。

温泉を心行くまで楽しんで、睦みあう真似事をした。

お互い、一応初夜になる晩に睦みあいすぎて、出すものもないという感じだった。

3日目の朝がくる。

限界がきて、朝食をとった後、浮竹は体を透けさせた。

「はぁ・・・・もう、3か月以上は1日は実体化できそうにない」

「うん。僕も浮竹との初夜を堪能したし、満足だよ」

「あれ、初夜っていうのか?俺とお前は院生時代に初夜を迎えている」

「まぁ、形式上のことさ。初夜って言ったら初夜なの」

「まぁいいか。とろとろになるまでっていうか、しつこく犯されただけだけど・・・気持ちよかったので、薬を使ったことは不問にしてやる」

「ありがたきお言葉」

浮竹が吹き出した。

「似合ってないから、その口調はやめろ」

「やっぱり、素が一番だね。さぁ、いつもの一番隊の執務室に戻ろう」

京楽が、浮竹の分の荷物をもって、宿を出る。

「また起こし下さい、京楽様、浮竹様」

「うん。また来年あたりにでも来るよ」

総隊長はきついが、休みがないわけじゃない。

それに、傍には浮竹がいる。

二人は、1番隊の執務室に荷物をおき、寝室にくるとばたりとベッドに倒れこんだ。

「楽しかったけど、ちょっと疲れた」

「ちょっと、セックスしすぎたね。お陰で僕もくたくただよ」

「あれはお前が悪い。薬なんて使うからだ」

「でも、お互い楽しんだでしょう?」

「まぁ、悪くはなかった・・・・・」

顔を真っ赤にしながら、浮竹は小さく呟いた。

「そうだ、結婚記念日は毎年あの温泉宿に行こう」

「毎年?」

「うん」

もう、離れないと誓った二人だ。

その指には、互いにエンゲージリングの他の結婚指輪がはまっていた。





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浮竹死んだけど幽霊です憑いてます19 結婚式

「ねぇ」

「なんだ」

「結婚式を挙げない?」

「ぶはっ」

京楽の言葉に、こいつ本気か?って顔をする浮竹。

「勿論、たくさんの人に祝ってもらいたいけど、君は死人だし、あれこれうるさいかもしれないから、教会で二人だけで式を挙げよう」

「別にいいが・・・・」

「よし、じゃあ今から早速式を挙げにいくよ!」

「ええ、今から!?」

まだ、昼の11時だ。

「1時間くらいなら、実体化できるよね?」

「ああ・・・・」

「じゃあ、服も正装しよう」

「言っておくが、白無垢は着ないぞ」

「白い男性用の袴と羽織でいいよ」

その言葉にほっとなる浮竹。

でも、甘かった。教会にいくと、京楽家の者がいて、髪を結いあげられてウェディングベールをかぶされた。

「まぁ、白無垢よりはましか・・・・・」

「とってもお似合いですよ、京楽十四郎様」

「きょうら・・・・・」

もう、ほんとなるようになれと、浮竹は思った。

いま指にはめているエンゲージリングとは違う、ブルーダイヤモンドがあしらわれた指輪を交換する。

「汝、京楽春水。病める時も健やかなる時も、浮竹十四郎を伴侶として愛することを誓いますか?」

「誓うよ」

「汝、浮竹十四郎。病める時も健やかなる時も死んでいる時も、京楽春水を伴侶として愛することを誓いますか?」

「誓う」

「これにて、結婚は成立です」

教会の外から、わっと人が集まってきた。

「朽木!?日番谷隊長や白哉まで・・・・・」

「おめでとう、浮竹、京楽」

教会の外では、隊長副隊長たちが飲んで食べて騒いでいた。

「お前、はめたな?」

「だって、みんなの前でするていったら、うんって言ってくれなかったでしょ」

「もう、なるようになれ」

ウェディングブーケをもたされていた。

それを投げると、松本の手に落ちた。

「やーん、私も素敵な殿方と結婚したいーー」

「うわーおばさんが年も考えず・・・見苦しいね。美しくないね」

「ちょっとあんた、弓親、喧嘩売ってるの!?」

弓親の首を締め上げる松本に、まぁまぁと、京楽が声をかける。

「みんな集まってくれてありがとう!晴れて浮竹と式を挙げることができたよ!無礼講だから、今日は存分に食べて飲んでいってよ!」

わぁぁあと、歓声があがった。

もう、浮竹は実体化を保てず透けた。正装のまま透けた浮竹を伴って、みんなと同じように食べて飲んだ。

浮竹は、幽霊になってから酔うことがなくなったので、お酒をぱかぱかと飲んでいく。

「こら、あんまり飲み過ぎは体に良くないよ」

「幽霊に飲みすぎも食いすぎもないと思う・・・・でも、お酒って実体化するエネルギーにするには一番手っ取り早いかな」

「もっと飲みなさい。そして初夜を!」

「初夜どころか、院生時代にお前に初めてを奪われた」

ぴくぴくと、松本の腐った耳がそれを聞きつける。

「やーん、浮竹隊長、その話もっと詳しく」

「詳しく話す気はない、松本」

「けちーーー」

ウェンディングヴェールは外していたが、結い上げた髪と白一色の正装は、白い色ばかりをもつ浮竹に実に似合っていた。

「綺麗だぞ、浮竹」

「白哉・・・・・なんか、照れるな」

「いい年したおっさんが・・・・とは思うけど、確かに似合っているな」

「日番谷隊長も、ありがとう」

その日は、みんな飲んで食べて騒いだ。


「う・・・なんか、頭が痛くてふらふらする」

次の日になって、浮竹がそう不調を訴えた。

「もしかして、二日用じゃない?」

「ああ、それに似ているな。そうか・・・・・幽霊でも、二日酔いになるのか」

浮竹はいつまでも正装しているわけもいかず、一度実体化して着替えた。

「今日は、ちょっと大人しくしている・・・・」

効くがどうか分からなかが、痛み止めと二日酔い用の薬を飲ませた。

3時間ほどたって、浮竹は元気になった。

「薬が効いたようだ」

「ほんとどうなってるの、君の体」

エンゲージリングの他に、浮竹と京楽の手には結婚指輪が光っていた。

「そうそう、新婚旅行なんだけど。温泉街でいいかな?君を連れ現世にいって、君の霊体が現世で虚化しないと言い切れない。瀞霊廷にある、馴染の温泉宿・・・・君も生前、よく僕と一緒にいったでしょ?」

「いや、別に新婚旅行なんていいのに・・・・・」

「僕がしたいの。それまでに、1日実体化できるようになっていてね」

温泉宿で、初夜を楽しむつもりだと分かっていたが。

仕方なしに、せっせと食事をして、酒を飲んで実体化できるエネルギーを極限までためた。

「もう、1日実体化できるぞ」

「じゃあ、来週の頭には休暇もぎとるから、それまであんまり実体化しないように」

「分かった」

こうして、新婚旅行は近場の温泉宿に決まったのだった。


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院生時代の部屋 平和な日

「ふんふーん」

朝起きると、パンツ一丁の京楽が、どじょうすくいの踊りを踊っていた。

浮竹は、無視して登校の準備を進める。

「ふん!」

「なっ!」

いきなり目の前が真っ暗になった。

なにかと思ったら、京楽が自分のパンツを浮竹の頭に被せたのだ。

「何しやがる!」

京楽の股間を蹴り上げた。

「のおおおお」

のたうちまわる京楽の尻にも蹴りを入れてやった。

「愛が、愛が痛いいいいいい」

数分のたうちまっていたが、登校の時間の前になると、ちゃんと院生の服を着た京楽の姿があった。

「行くぞ」

「うん」

その日は、平和に過ぎていった。

年始あけそうそう、退学処分になったアキラに鬼道を浴びせられて、命を狙われたのが嘘のような平和な一日だった。

アキラの取り巻きだった者たちは、自分にこれ以上火の粉が降りかからないように、浮竹と京楽には接してこなかった。

元々、2か月の停学処分を2週間に早めることを許した教師の責任もある。

「帰り、甘味屋でもよろうか」

「お、いいな」

アキラに負わされた火傷も綺麗に治って、浮竹にはもう傷跡などなかった。もしも傷跡が残ったら、4番隊を呼んで傷跡まで消す治療をさせていただろう。

甘味屋までいくと、珍しいことに、席がいっぱいだった。

「どうしよう。待つ?」

「俺、こういうの待つの苦手なんだ。今日は諦めよう」

「あ、待って。すみません、おはぎ4人前持ち帰りで」

「はい、かこしまりました」

勘定を払い、京楽は4人前のおはぎを手に戻ってきた。

「寮で食べよう。おはぎだけしかないけど、いいよね?」

「ああ、十分だ」

寮の自室に戻り、おはぎを手にお茶を飲む。

「やっぱ壬生の甘味屋は味がそこらの店よりいいなぁ」

壬生という店で、あちこちにチェーン店を持っている老舗の甘味屋だった。

浮竹は、おはぎを3人前ぺろりと平らげてしまった。

お茶のおかわりを飲む。

お茶は玉露で、味が良かった。無論、京楽の金で買ったものだ。

3人前も食べたんのに、夕食の時刻になったら食堂で普通に夕飯を食べた。

「ほんとにどうなってるの君の胃って」

「甘味物は別腹なんだ」

「別腹すぎるでしょ」

今日の夕食のメニューはおでんだった。

味が染みていて、そこそこ美味しかった。

「やっぱり、京楽家の料理人の料理みたいにおいしくはいかないな」

「気に入ったのなら、毎日でも作らせるけど」

「いや、流石に悪い」

年始に、京楽家の料理人のの豪華なメニューを食べたせいか、少し味に贅沢になっている自分を叱咤する。

「何もない一日は、平和だけど何かすることが欲しいな・・・」

「僕と愛し合う時間を過ごそう・・・グペ」

裏拳で京楽の顔を殴って、黙らせる。

こりずに尻を触ってきたので、その足を思いっきり踏んでやった。

「浮竹~愛の時間をちょうだい~」

ああ、そろそろキスかハグを与えないと暴走すると理解して、寮の自室に戻った。

「ほら、京楽」

浮竹は、ベッドに座って手を広げた。

そこに、京楽がダイブする。

反動で、浮竹の体はベッドに沈んだ。

「浮竹、浮竹、かわいい・・・・・・」

何度も抱き着いてくる。

キスをされた。

始めは触れるだけの。

次に、舌が絡まる深いものを。

「んんっ・・・・」

その声だけで、京楽の動きがとまる。

「なんだ」

「いちゃった」

「風呂場いってこい!」

「はーい。あられもない浮竹の姿を想像して抜いてきます」

「余計なことは言わなくていい!」

尻を蹴られて、京楽は飛び上がった。

「何、僕にもっとしてほしいの?」

「そんなわけあるか!さっさと抜いてこい!」

風呂場に追い立てたれていく京楽は、好きな相手に拒絶されているというのに、嬉し気だった。

京楽と浮竹は、できているわけではない。

キスとハグと。それ以上少し先を時折許すことはあるが、体を重ねることはない。

それが、浮竹と京楽の関係なのだ。




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院生時代の部屋 復讐

朝起きると、浮竹のパンツをもぐもぐしている京楽がいた。

なかったことにして、二度寝した。

次に起きると、浮竹のパンツを被って太極拳をしている京楽がいた。

時計を見る。8時だった。

そろそろ起きないと、学院に間に合わない。

「京楽、遊んでないで登校するぞ」

寮の自室が京楽と一緒になって一年。もう、慣れたものだ。

マッパで何かしている以外なら、あまりつっこまなくなっていた。

新学期だった。

久しぶりの学院と、戻ってきた日常に自然と笑みが零れる。

「おはよう、浮竹、京楽」

「ああ、おはよう」

「おはようございます、浮竹君、京楽君」

男女問わず、浮竹は人気が高い。それについてまわっているので、京楽への挨拶はついでになる場合が多かった。

「おはよ、浮竹!」

「ああ、おはよう」

「おっと忘れてた。京楽もおはよう」

「おはよう・・・」

朝っぱらから、京楽は挨拶をしてくる友人たちを警戒していた。

クリスマスで同じ特進クラスの女子にはめられかけた。それと同じことが起きないように、警戒しているのだ。

「京楽、そんなに警戒しなくても何も起きない」

「そうかな・・・」

「普通に過ごせ」

「無理」

「普通に過ごせば、放課後5回キスしてやる」

「普通に過ごすよ」

全く、切り替わりの早い・・・。

浮竹は溜息を零しながら、1限目の授業を受けた。

座学だった。尸魂界と護廷13隊の成り立ちについての授業だった。浮竹は、年末年始をだらだら過ごしていたせいか、うとうとと眠りだしてしまった。

隣の席にいた京楽は、起こすこともせずに、一緒になって眠りだした。

授業が終わり、チャイムが鳴る。

はっと、浮竹が起きる。

「寝ていた!?京楽、なんで起こしてくれなかった!」

京楽の方を見ると、よだれを垂らして爆睡中であった。

「次は・・・・鬼道の授業か・・・・」

起こしてやろうか、悩んだ。

でも、気持ちよさそうに寝ているので、そのままにしておいた。

1回生や2回生の頃は、授業をさぼって廓なんぞに行ったりしていたので、出席日数がぎりぎりだったが、2回生の秋に、浮竹に告白をしてから廓に行くこともなくなったし、激しかった女遊びもやめた。

鬼道の腕はいい。

授業をこのままさぼっても、問題はないと判断して、浮竹は鬼道の授業に一人で出た。

「血肉の仮面・万象・羽ばたき ヒトの名を冠す者よ 蒼火の壁に紅蓮を刻む 大火の縁を遠天にて待つ 破道の七十三 双蓮蒼火墜!」

浮竹の完全詠唱のその鬼道は、的を粉々にしてクレーターができた。

アキラという名の、クリスマスの騒ぎで停学二か月処分を、山本総隊長から受けて、護廷13隊入りが難しくなった女生徒が、鬼道の詠唱を始める。
アキラの家は上流貴族だった。なんとか停学を2週間にまで縮めた。

「血肉の仮面・万象・羽ばたき ヒトの名を冠す者よ 蒼火の壁に紅蓮を刻む 大火の縁を遠天にて待つ」

ばっと、的ではなく浮竹に鬼道を放つ先を変えた。

「破道の七十三 双蓮蒼火墜!」

流石の浮竹も、突然のことでまともに鬼道を当てられた。

焦げた匂いをさせて、浮竹が倒れる。

「あはははははは!」

アキラは笑っていた。

教師がすぐにアキラを取り押さえて、怪我を負った浮竹を医務室に運ぶ。

「酷い火傷だ・・・・4番隊から、至急席官クラスの死神を呼んでくれ!」

山本総隊長の秘蔵っ子だ。死なせるわけにはいかない。

医務室の保険医は、できる限りの回道をほどこしたが、火傷はまだ残っていた。

やがて、4番隊から3席の死神がやってきて、浮竹に回道を施す。完璧にとはいなかったが、火傷はほぼ癒えた。

まだ傷跡が残っている腕にや足に湿布を巻いた。

「う・・・・俺は?」

「すぐ、京楽君を呼んでくるから。大人しく、ベッドで横になってなさい」

言われた通りにする。

京楽は、浮竹の霊圧の乱れで起きて、鬼道の授業がある場所にきていた。

そこで、停学処分から開けたアキラが、浮竹に向かって鬼道を放ったと知って激怒した。教師がおさえなかったら、拳で血まみれになるまで殴りつけただろう。

「浮竹!」

医務室に、京楽がやってきた。

「京楽・・・・」

「よかった。思ったより、怪我が酷くなくて」

「4番隊の3席を呼んだからね。火傷が酷かったんだ」

保険医はそう言った。

「ありがとうございます。4番隊を呼んでくれて・・・・・」

「山本総隊長の愛弟子だからね。まぁ、他の子でも呼んださ。それくらい、酷い火傷だった。回道でほとんど癒えたけどね。残りの火傷は、自然治癒に任せるしかないね」

腕や足に、湿布が張られていた。

「痛む?」

「少しだけ」

「俺に鬼道を放ってきた、アキラっていう女生徒はどうなった?」

「退学だよ。でもその前に、殺人未遂で警邏隊に連れていかれた」

「そうか・・・・・・」

「僕が君から目を離した隙にこれだ。浮竹、僕まで寝ていたら、今後起こして。二度とこんなことを起こらせないと誓う」

「ああ・・・・・」

浮竹の火傷は、2週間ほどで完全に治った。

まさか、命を狙う行動までするとは思わなかった。

京楽は、しばらくの間浮竹にべっとりだった。

「ええい、暑苦しい!」

「そんなこといわないで。むちゅー(*´з`)」

「やめろ」

京楽の頭を思い切りはたいた。

アキラの両親が謝罪してきて、罪の軽減を望んできたが、浮竹も京楽も許すことはなかった。

一度甘い考えを出してしまえば、今後同じことが起きた時に困る。

とにかく、退学処分になってよかったと思う二人であった。

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愛の果てにあるもの

愛の果てに、何があるのだろう。

その想いの果てに、何があるのだろう。


白哉は、趣味の夜の散歩をしていた。

夜だけに冷えるのだが、月夜と星空を見るためなら、少々の寒さも問題ない。

そんな白夜についてくる影があった。

恋次だ。

白哉が夜の散歩をしていると知って、危ないから俺も行くとかいって、眠い目をこすりながらついてきていた。

白哉は、夜の散歩のために少し早く寝る。普通に寝ている恋次には、この時間起きているのはきついだろう。

「恋次、貴様はもう帰れ」

「うう・・・眠いけどいやです。隊長の身に何かあったら・・・・・」

「私は、仮にも6番隊隊長だぞ?たとえ虚に襲われたとしても、何も起きぬ」

「俺の・・隊長は・・・・俺のもんだから・・・・」

朽木邸にくると、恋次は自分の館に戻りもせずに寝てしまった。

「全く、人騒がせな」

ついてくるだけついてきて、後は勝手に眠ってしまうなど。

「恋次の、愚か者・・・・・・」

寝ている恋次に触れるだけのキスをして、白哉も眠った。

「はっ!ここどこだ!」

「私の屋敷の私の部屋だ」

隣で、違う布団に横になっていた白哉がそう言った。

「俺、確か隊長の夜の散歩についていって・・・・・」

「その後、私の屋敷に戻るなり寝てしまったのだ、貴様は」

時計を見る。11時だった。

今日が休みでよかったと恋次は思った。

「隊長が、こんな時間までだらだらしてるの、珍しいですね」

「自分の手を見てみろ」

恋次の右手は、しっかりと白哉の夜着の裾を握りしめていた。

「うわあ!すみません、隊長!」

「別に良い。私もたまには寝過ごしたい日もある」

食堂にいくと、朝餉には遅すぎるということで昼餉がでてきた。

「うお、うめぇ・・・」

普段からの食事も、恋次にとっては御馳走だ。

「それを食したら、自分の館へ帰れ」

「え、嫌ですよ。せっかく一緒にいれるんだから」

昼餉をとり、帰りたがらない恋次を仕方なく白哉の部屋で過ごさせた。

「うわー、隊長の匂いがするー」

少し甘い、シャンプーの匂いだった。

「隊長、好きです」

キスしてくる恋次に、舌を絡めて応えてやる。

「んん・・・・・」

死覇装に手が入ってきた。

「誰かきたら・・・・!」

「ああ、さっき清家さんに、誰も絶対にこの部屋に近寄らないように言っておきました」

「この・・・悪知恵だけが働く・・・・ああ!」

死覇装を脱がされていく。

こんな日の高いうちからするなど初めてで、窓から入ってくる太陽の眩しさに目を細めた。

「ああ、恋次・・・・・・」

この前抱かれたのは先々週だろうか?

一度火をつけられると、体が疼いて仕方ない。

「隊長、かわいい・・・・・」

死覇装を全部脱がされて、白い肌は輝いているようだった。

「あ・・・・」

胸の先端をかりかりと指でひっかかれ、もう片方を口に含まれて舌で転がされた。

「んあっ」

「隊長の濡れた声、すげぇ腰にくる」

下着に手をかけられる。

先走りの蜜で、濡れていた。

「ああもう、こんなに濡らして・・・・・・」

「恋次!ああっ!」

潤滑油をかけた指が、体内に侵入してくる。

ぐっと、前立腺があるところで指を折り曲げられて、その衝撃と快感に、白哉は白濁した液体を放っていた。

「ああああああ!」

「まだ指っすよ?大丈夫ですか?」

「ん・・・問題ない・・・」

何度か指で前立腺を刺激されながら解されていくと、そこは柔らかくなって、受け入れる準備ができたことを知らせてくれた。

指が引き抜かれる。

ああ。

私は、あの灼熱で犯されるのだ。

期待と恐怖に、体が熱くなる。

「ひああああ!」

一気に貫かれた。

「あ、あ、あ!」

そのまま律動が開始される。抉られ、揺すぶられているうちに、また熱が集まってきた。

「や、恋次・・・やあぁ・・・・あああ!」

2回目のなる白濁した液を放っていた。

「ああ、あんたの中凄い・・・俺も限界だ」

恋次も、白哉の腹の奥に欲望を散らせた。

「んあっ」

ズチュリと、恋次の硬いものが中を抉ってくる。

「や、もう私は・・・・」

「まだ、2回目でしょ?まだいけますよ。俺なんかまだ1回目だし」

そのまま、騎乗位で犯された。

自分の体重で、恋次のものをずぶずぶと、根本まで受け入れてしまう。そこから下から突き上げられて、白哉の黒い髪が宙を舞った。

「あ、激し・・・・・・・」

ぐちゅぐちゅと突き上げられるたびに、そこは濡れた音を立てた。

「ひああ!」

騎乗位から、そのまま覆いかぶされて、奥の奥まで届いた。

「あう!」

感じたこともない感触に、涙が零れた。

「きもちいいんですか?」

「分からぬ・・・・」

一度引き抜かれて、前立腺を何度もすりあげられて、白哉は3度目になる熱を放っていた。

恋次も2回目の熱を放ち、それでもしつこく白哉を犯して、結局4回は中に注いだ。

「隊長が女なら、絶対孕んでますね」

「貴様は、精力がありすぎる・・・・」

恋次につき合わされ、息を絶え絶えな白哉が、湯殿にいこうとふらつく足で立ち上がった。

「ああ、無理しないでください!俺が支えますから!」

「あ・・・・・・」

「どうしたんですか?」

「貴様の出したものが、太ももを伝って・・・・」

その言葉だけで、恋次はまた白哉を抱きたくなったが、必死になって我慢した。

死覇装を着ているとはいえ、漏れてきた恋次の精液を吸ったりして、死覇装は汚れてしまっていた。隊長羽織も、念のために洗濯するために洗濯女に託した。

湯殿で、白哉は身を清めた。

いい匂いのするシャンプーで髪を洗う。

白哉の匂いの元であるシャンプーで、恋次も髪を洗った。

白哉の中から、恋次のはきだしたものかき出す。恋次はその量に驚いた。自分でも、思った以上に出していた。

「少なくとも2週間は、貴様と肌を重ねるつもりはない」

「ええ!」

「朽木邸の、よりにもよって私の部屋で盛るなど・・・・」

「でも、隊長もまんざらじゃかったでしょ。いい声で啼いてた」

「貴様、よほどその股の間についているものがいらぬと見える」

「冗談です、すみません!」

白桃の湯に浸かり、疲れた体を癒した。



愛の果てに、何があるのだろう。

その想いの果てに、何があるのだろう。


「恋次・・・貴様は愛の果てには何があると思う?」

「愛の果て・・・・不滅の愛ですかね」

「そうか・・・・・」

愛の果てにも不滅の愛があるならば、それはそれでいいだろう。

同じ質問をルキアにした時、ルキアは「幸せ」と答えてきた。

今はもう十分に幸せなのだ。

「恋次、愛している・・・・」

湯の中でそう囁くと、恋次は鍛え上げられたその逞しい胸に白夜を抱き寄せた。

「俺も、あんたを・・・・・あんただけを、愛してる。愛の果てまで。不滅の愛を、あんたに」


次の日、6番隊にいくと、みんな頬を染めていた。

白哉と同じ匂いを、恋次もさせていたのだ。

一緒に湯浴みしているだけならいいが、体の関係もあると知られてしまうとまずいので、恋次はそうそうに仕事をとりあげられて、6番隊を追い出されるのであった。


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愛の果てに

愛の果てに、何があるのだろう。

その想いの果てに、何があるのだろう。



「いっちごー」

啓吾が、昼飯を手に一護にタックルをしようとしてきた。それに足を引っかけて転ばす。

「うおう、一護の攻撃に俺のライフは残り10」

「なら、0にしてやるよ」

ぐりぐりと、尻を蹴られて、啓吾は変な声をだした。

「いやん、一護、みんなが見てるのに」

「はいはーい、啓吾はそこまで。脳みそ腐ってるなら、僕が新しいのに交換してあげるよー」

水色が、啓吾を起き上がらせる。

「屋上いこうか」

「ああ」

「待ってくれーいっちごーーーー」

3人で、入学してからよくつるんだ。

その中に、いつからだろうか、ルキアが混じるようになったのは。

「一護、オレンジジュースのストローが刺さらぬ。飲めるようにしろ」

「はいはい・・・・・」

「なぁ、水色、一護って朽木さんと付き合ってないのかな?」

「さぁ、付き合っていないんじゃないの?だって、好きだとか言ってないでしょ」」

「それにしては距離が近いよなー」

風が吹いた。

ルキアの短いスカートが揺れる。

パンツが見えた。

「うお、ピンク・・・・」

「啓吾、てめぇ何ルキアのパンツ見てやがる!」

一護が怒った。

こうやって、怒ってるとことか見ていると、本当に付き合っているように見えるのだが、二人は付き合っていないらしい。

「ルキア、お前スカート短すぎだ。パンツ見えるだろ!もっと丈長いのねーのかよ!」

「別に、パンツくらい・・・・・」

「パンツくらいじゃねぇ!ああもう、俺のセーターでも着とけ!」

一護が、ルキアに自分のセーターを着せる。

だぼだぼで、彼氏のものに見えて、余計に見た目が危うい。

短いスカートから見える華奢な足は白く、それが余計に艶めかしかった。

屋上で、4人で昼食を食べた。

ルキアの弁当は、遊子が作ってくれてる。一護の弁当とお揃いで、色違いだった。

その弁当箱を見ていても、どう考えても二人が付き合っていないのがおかしくて、啓吾はたこさんウィンナーを食べる一護にこう言った。

「なぁ、朽木さんと付き合っているのか、一護」

「俺たちはそんなんじゃねーよ。なぁ、ルキア」

「え、ああ・・・・」

啓吾と水色の前でも、昔は猫を被っていたが、大戦から帰還してからは、いつもの口調で二人にも接していた。

昼食を食べ終わり、啓吾と水色は教室に帰ってしまった。

「なぁ、ルキア」

「なんだ」

「お前、俺のことどう思ってる?」

「どう、とは?」

「その、好きか嫌いかで」

「す、好きではあるぞ」

「そうか」

その言葉に、一護は満足そうだった。

「そういう一護はどうなのだ!私のことを好きなのか、嫌いなのか!」

一護は、悪戯をした子供のように眩しく笑った。

「どうしうようもないくらいに、好きだ」

「え」

「どうした?」

顔を真っ赤にするルキア。

「な、なんでもない、たわけ!」

その日からだろうか。お互いを意識するようになったのは。

それから1週間後には、一護はルキアを連れて屋上にまでくると、こう言った。

「1週間前、どうしようもないくらいに好きだって言っただろ。あれから、お前のことが頭から離れなくて・・・・・好きだ、ルキア」

「一護・・・・私も、貴様のことばかりを考えていた。貴様のことが、好きだ」

お互い、好きと言いあって。

「付き合おうか」

「ああ、そうだな」

二人は、高校生活が終わる4か月前に、はれて交際をスタートさせた。

本当なら、ルキアに高校生活はない。大戦の後の普及に尽力をしないといけない立場であったが、尸魂界を2度にまで渡って救った一護の我儘で、高校を卒業するまでは、死神としてではなく人間として生活をさせてほしいと、総隊長の京楽に願い出たのだ。

一護の我儘に、けれど尸魂界は答えてくれた。

高校3年の4か月間だけ、ルキアは空座町担当の死神として赴任することが決まった。

「ルキア、好きだ・・・・」

一護の部屋で、二人で丸くなって体温を共有しあっていた。

「ふふ、くすぐったい・・・・・・」

 ルキアを自分の方に抱き寄せる。その細くて小さい肢体は、折れてしまいそうだった。

「ルキア、明日は休みだから、デートに行こうぜ。遊園地にでも行こうか」

「お、遊園地か。行ったことがないのだ。今から楽しみだな」

次の日、一護がルキアの分までお弁当を作って、二人で遊園地に出かけた。

休日ということもあって、家族連れやカップルが目立った。

「ルキア、寒くねぇか?」

「ん?少し寒いが、どうということはない・・・・」

「これでも、はめてろ」

一護が、自分がしていた手袋をルキアの手にはめた。

「暖かい・・・・でも、貴様が寒いのではないか?」

「俺はいいんだよ」

二人とも、マフラーはしていた。

ジェットコースターに乗り、ルキアは散々悲鳴をあげた。

「あのような恐怖のマシーンだったとは・・・・」

「だから、乗る前に絶叫マシーンだけど大丈夫かって何度も聞いたじゃねーか」

「たわけ、あんなに怖いものと何故もっと説明しなかった!」

ぎゃあぎゃあ言い合った。

「次行こうか」

「ああ、そうだな。せっかく遊びにきたのだ・・・・・」

絶叫マシーンをの取り除いたら、けっこうな数の乗り物がダメになった。

メリーゴーランドに乗り、マジックミラーでできた迷路のダンジョンに入った。

途中で休憩をはさみ、少し遅いが昼食を食べる。

「貴様は料理の腕はあるからな。楽しみだ」

エビチリにキムチチャーハンを中心としたお弁当だった。

「む、美味い!」

ルキアの箸が止まらなくなる。

気づけば、完食していた。デザートはパイナップルだった。

「この、甘酸っぱい味が何とも言えぬ・・・・・」

おいしそうにほうばるルキアに、一護は自分の分のパイナップルもあげた。

昼からは、揺れる映画館に入り、ムービーを見た。

やがて夕刻になる頃、最後にと残しておいた観覧車に乗った。

小さいくなっていく街の風景。

日は沈み、夜景が綺麗だった。

「また、卒業してもここに来よう」

「いいぜ。約束だぞ?」

「ああ・・・・・」

観覧車が一番真上に来たとき、始めてのキスをした。

触れるだけのキス。

甘酸っぱい味がした気がした。

それから、毎日を一日一日大切にしていった。

登下校を手を繋いで、教室移動も一緒、さすがに啓吾と水色には付き合っているのがバレたが、井上や茶虎、石田は気づいていないようだった。

やがて、卒業式の日がやってきた。

「ルキア・・・愛してる」

「一護・・・・・」

尸魂界に続く穿界門に、一護までついてきた。

「貴様、どういうつもりだ」

「別れる前に、お前が欲しい・・・・・・」

「一護・・・・」

流魂街についた。

適当な空き家を見つけて、体を重ねた。

情事あとの色気を残しつつ、ルキアが身支度をする。

「貴様は現世に戻れ」

「なぁ。約束、覚えてるよな?」

「ああ。またあの観覧車に乗ろう」

ルキアと一護は、そこで別れた。

月に3回ほど、ルキアは現世にやってきた。

気づけば、付き合いだして2年が経過していた。

一護は、国際大学に進学した。第二語学にドイツ語を選び、ドイツ語の翻訳家を目指していた。

他愛もないことで、ルキアと喧嘩してしまった。ルキアを泣かせてしまった。

ルキアは、もう現世にはこないといって、尸魂界に帰ってしまった。

それから、何度伝令神機にメールしてもレスはなく、どれだけ待ってもルキアは現世にこなかった。

浦原に頼んでもらい、穿界門を開けてもらった。

朽木邸に、ルキアはいた。

「ルキア」

「一護!?何の用だ!」

「あの時はごめん。俺が悪かった。だから、また会いにきてくれ」

「ふ・・・・私も悪かった。少しきつく言いすぎたな」

和解は、すぐだった。

朽木邸の別宅だった。家人も今はいないということで、二度目になるが、体を重ねた。

「なぁ・・・愛の果てには、何があるんだろう」

「一護?」

「お前のこと、すっげー愛してる。でも、愛の果てには何があるんだろうな?」

「たわけ。決まっているであろう。「幸せ」だ」

その言葉は、一護の中でじんわりと広がった。

「そっか。今幸せだから・・・これが、愛の果てなのか」

ルキアを抱きよせて、キスを繰り返した。

「ふあ・・・・・」

「愛してる、ルキア」

「私も、貴様を愛している・・・・・・」

「貴様、死神になるつもりはないか?」

「死神?もうなってるだろう」

「たわけ!本物の死神にだ。家族を捨てることになるだろうが」

「そうすれば、ずっとルキアの傍にいれるのか?」

「ああ・・・・・・」

「じゃあ、俺死神になるわ」

「おい、少しは迷うとかないのか!」

「お前と幸せになれる道があるなら、例え悪になるとしても道を突き進む」

「一護・・・・」

一護の想いは、十分ルキアに伝わった。

「一護が死神になったら、約束していたあの観覧車に行こう」

それからは、白哉に付き合っていて体の関係もあることを告げて、千本桜で追い回されて、何か特殊な液体を飲まされて、本当に死神になった。

「これで、お前と結婚できる・・・・・」

そして、二人で2年以上前にきた遊園地にいき、観覧車に乗った。

真上にきた時、一護はエンゲージリングをルキアの手にはめた。

「結婚しよう、ルキア」

「一護・・・・・・」

ルキアは、感動のあまりぽろぽろと涙を零した。

「お前のためなら、なんだってするし、なんでも我慢する」

「貴様への答えは・・・・・・YESだ」

ルキアと一護は、付き合いはじめて3年目に式を挙げた。尸魂界でだった。

井上、石田、茶虎もかけつけてくれた。

式は盛大に行われた。初めは反対していた白哉であったが、愛しい義妹が一護のことしか見ていないのに、ため息交じりで式を挙げることを許してくれた。

もう、一護は尸魂界の住人であった。よく、現世には顔を出したが。

結婚して数か月経ったある日、食事中にルキアは吐き気を訴えた。

「ルキア、どうした!?」

「すまぬ・・・・・最近、胸がむかむかして・・・・食べ物の好みも変わったし」

「それって、もしかしておめでたじゃねーのか?」

「ええっ!?そういえば、ここ3か月、月のものがきていないな・・・・・」

医者に診てもらい、懐妊が分かった。

白哉は、自分のことのように喜んだ。家族が増えるのだ。

「俺が父親か・・・・しっかり、しねぇとな」

死神となった一護は、13番隊の副隊長として働いていた。ルキアは黒崎ルキアになったが、相変わらず、一護と朽木家で生活していた。


愛の果てに、何があるのだろう。

その想いの果てに、何があるのだろう。


その果てにあるものは「幸せ」


それを、一護もルキアも噛みしめるのであった。






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院生時代の部屋 お年玉

「ほれ、春水に十四郎。お年玉じゃ」

本来なら、もらう年齢をすでに過ぎているのだが、山本総隊長は甘いので、溺愛する二人の愛弟子にお年玉をあげていた。

「山じいありがとう・・・・でも2万か・・・・・しけてるな」

「こりゃ、春水、聞こえておるぞ!」

「先生、ありがとうございます・・・3万入ってた」

「ちょっと、山じい、浮竹とのこの差は何!」

京楽が、浮竹と1万も違うことにショックを受けた。

「そりゃ、悪戯小僧の春水と、品行方正な十四郎の差じゃ」

「くーー、なんか悔しい」

「ありがとうございます先生、このお金で新しい手袋が欲しかったので買おうかな・・・」

浮竹は、欲しがっていたふわふわの手袋を思い出した。

「使い道は自由にするがよい。春水、酒に消えることは許さんぞ」

「えー、自由にしていいって言ったじゃない」

「十四郎は下らぬことに使わぬが、春水お主は廓にいく金にでもしてしまいそうで、禁じておかねば心配じゃ」

「山じい、僕去年の秋以降から廓にはいってないよ」

「それはよいことじゃが、かわりに十四郎に迫っておるのじゃろう」

「それはそうだけど・・・・・」

山本総隊長は、京楽の頭を殴った。

「くれぐれも、無理強いはせぬように!十四郎も、何かあればわしのところに来い」

「はい、先生」

山本総隊長は、それだけ言うと一番隊の執務室に戻るために、学院を後にした。

今は、年間年始の休みで、ちょうど年が明けたばかりだった。

わざわざ呼び出されて、二人とも怒られるのかとびくびくしていたが、お年玉と聞いて喜んだ。正確には、浮竹だけが。金がありあまっている京楽にとっては、お年玉ははした金だ。

でも、山本総隊長の気持ちは嬉しかった。

「帰ろうか、京楽」

「そうだね」

山本総隊長の去った学院は、シーンと静かだった。

「そうそう、京楽家の料理人を呼んだんだ。今日の夕飯は、食堂でとるけど、いつもより豪華にしておくから楽しみにしておいて」

「京楽家お抱えの料理人か。少し、楽しみだ」

そのまま、伝令神機で、尸魂界ネットにアクセスしたりして、時間を潰していると、夕食の時刻になった。

「食堂に、そろそろ移動しようか」

食堂は、いつもより人が疎らだった。

年末年始は、故郷に帰る学生が多い。

浮竹は、夏に帰郷したばかりなので、今年の年末年始は寮で過ごすことにした。京楽は、親から見合いの件があるから一度帰ってこいと言われていたが、無視した。

今まで散々放りだしておいで、学院に入り、護廷13隊入りが決定して、貴族の京楽家に箔がつくので、今のうちに婚約者を決めておきたいらしい。

京楽が、浮竹に懸想していることは、両親にも知られていた。だから、早くに見合いを進めて婚姻させようと躍起になっていた。

「じゃーん伊勢海老が2匹に茹でたカニまるまる1匹分!」

「本当に豪華だな」

浮竹は、出されたメニューを味わって食べてくれた。

「おいしい・・・・」

浮竹が食べきれる量に調整させておいたので、食べ残しはなかった。

茹でたカニは身がとられて、ほじくる必要がないようにしていたので、手が汚れるとかもなかった。

「ありがとう、京楽。ごちそうさま」

「どういたしまして」

夕食を食べ終わり。寮の自室の前にくると、高そうな着物をきた少女がいた。美しく、どこかの上流貴族の姫君らしい。おつきの者が控えていた。

「春水様!お逢いしとうございました。見合いの話、ちっとも受けてくださらないので、このような辺鄙なところまでわざわざ足を運びましたのよ?」

「桔梗院サクラ・・・・だっけ?」

「はい、春水様!」

「帰ってくれない?邪魔だ」

「そんな!もう、正式に婚約を交わしたことになっているのです。未来の妻にそれはあまりにも酷い仕打ち」

ドクンと、浮竹の鼓動が鳴った、

「僕はこの子・・・・浮竹十四郎のことだけが好きなんだ。君と結婚なんてしない。帰って、父上と母上に言ってくれないかい。勝手なことをするなら、京楽家とは縁を切ると」

「そんな・・・この、お前のせいで!」

サクラは、浮竹をぶった。

「何するの!」

火がついたように、京楽が怒り、サクラの頬を思い切り叩いた。

「春水様、酷い!」

「こっちの台詞だよ!」

「・・・ゴホッゴホッゴホッ」

ぽたぽたと、咳をした浮竹の手の隙間から、血が滴った。

「浮竹!」

「きゃああいやああ!うつってしまう!春水様、そんな者に近寄らないで!」

切れた京楽は、拳で美しいサクラの顔を殴った。鼻血をだして、サクラが泣き叫ぶ。

「春水様がこんな暴力男だなんて!この結婚話、なかったことにしていただきます!」

走り去っていくサクラに、反吐が出そうな顔をした。

「こっちからごめんだよ。浮竹、大丈夫!?」

「部屋で・・鎮静剤を・・・お前が見合いと思ったら突然発作が・・・・」

浮竹の薬の中から鎮静剤を取り出して、浮竹の腕に注射する。

「薬が、少し効いてきた・・・・・・」

もう、それ以上血を吐くことはなかった。

「キスしてもいい?」

「血の味がするぞ」

「それでもいい」

浮竹とキスをすると、血の味が確かにした。

それさえ、愛しい。

「ゆっくりお眠り・・・・」

「ああ・・・」

次の日、起きると浮竹のパンツを頭に被った京楽がいた。

ああ、いつもの日常がかえってきたと、浮竹は安堵するのだった。
 


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