交差する想い
時間が経つのはあっという間で。
2週間が過ぎた。
「おいルキア、学校行くぜ」
「待ってくれ、一護」
記憶置換で、ルキアも大学4年生であるとした。
大学に通い、授業内容はちんぷんかんぷんだが、いつも一護の傍にいて、一緒に笑いあった。
一護は大学でも友達が多く、その輪の中にルキアも混ざった。
「しかし、びっくりだなぁ。この前まで、織姫ちゃんと付き合ってたのに、こんなかわいいルキアちゃんと付き合いはじめるだなんて。巨乳好きかと思っていたが、実は貧乳派だった?」
「おい、ルキアに謝れ」
一護が、怖い顔をしてその友人を睨んでいた。
「あ、ルキアちゃんごめん、別にルキアちゃんが貧乳っていうわけじゃ・・・」
「別に、よい」
ルキアは笑っていた。
一護の傍にいれるなら、少々好まぬ相手がいようと、友人としてあろうと。
昼になり、食堂に行く。
ルキアはカレーが好物で、今日はカツカレーを注文した。
「ほんとに、よく食うなぁ」
「頭を使った後は、腹が減るのだ」
カツカレーの他にサラダとデザートを注文して、それを全部食べていくルキアを、一護は呆れた表情で見ていた。
「この後の授業が終わったら、どうするのだ?」
「ルキアとずっと一緒にいたいけど、まだ井上にちゃんと別れ話してなかったから、ちゃんと身辺整理をしてくる」
「井上と、別れるのか」
「そりゃそうだろ。同時に付き合うほど器用じゃないし、そこまでクズ男じゃねーよ」
「ふむ」
「ただなぁ。ずっと、井上の携帯に電話いれてるんだけど、電源いれてないか、留守電になってて、出てくれないんだ。まさか、自殺なんてしてないと思うけど、ちょっと心配でさ・・・」
「井上には、悪いことをしたな」
「仕方ねーよ。元から、ルキアの代わりにって付き合ってたし」
「ふん、けっこうなクズ男ぶりだな」
「うっせーな。自分でも分かってるよ。だけど、原因は全部ルキアにあるんだぞ。お前が俺を捨てていくから」
その言葉に、ルキアが瞳を潤ませる。
「書置きを、ちゃんと残した」
「あんなんで、分かるかよ。ただ、捨てられた、そう思うだろう、普通」
ポロリと、ルキアの瞳から涙が零れた。
「すまない・・・寂しい想いをさせて、捨てたと思わせて、すまなかった・・・・」
「おい、こんなところで泣くなよ!勘弁してくれ!」
ルキアを抱き締めて、涙をぬぐってやると、ルキアは悲しそうな顔をした。
「今頃、井上はどれほど辛いであろうな・・・」
「井上のことは、俺がなんとかするから。どうにもならなかったら、ルキア、お前の力をかりるかもしれない」
その日の午後に、井上の家に一護はいくことになった。
ずっと、連絡をとろうとしても出てくれなくて、直接井上の家を訪れると、井上は泣いていた。
ずっとずっと、泣いていたのだろう。
まともに大学にも通わず、泣きはらした目でこちらを睨んできた。
「黒崎君・・・・・・」
「井上、ごめん。ルキアが好きで、ルキアを愛しるんだ。別れてくれ」
「嫌」
「いやっていわれても、もう俺は井上の家にはこないし、もう会わない。俺を殴ってくれても構わない。でも、ルキアを恨まないでくれ」
「いや、いやよ!黒崎君は、私のものなんだから!今更しゃしゃり出てきて朽木さんなんかに、あげない!」
「井上!」
しゅっと、何か液体をかけられた。
とたんに、眩暈を起こして立っていられなくなった。
「おやまぁ、ほんとに、簡単に罠にかかるものなのだネ。だが、それでこそいじりがいがあるというものだヨ」
「涅マユリ!?なんで現世に・・・・・」
「頼まれたのだヨ、この人間の女に。将来、死んだらその特殊能力についての実験体になるから、黒崎一護、お前から、朽木ルキアという死神が好きだという感情を奪ってくれと」
「井上・・・・・お前・・・・・」
「黒崎君が悪いのよ。私がいながら、朽木さんなんかに、また乗り換えようとするから」
意識が、暗くなっていく。
一護はいい聞かせた。
自分の魂に。
例え、死んでも・・・・・ルキアを忘れるな。
忘れるくらいなら、死のうと。
いつまで経っても、一護は帰ってこなかった。
心配したルキアは、念ために教えてもらっていた井上の家を訪れる。
「あははははは、黒崎君はこれで私のもの。朽木さんになんか渡さない」
部屋の中で、笑っている井上を見つけた。
傍らには、ぼんやりとした表情の一護。
「井上、一護に何をした!?」
「あははは、残念でしたー。もう、黒崎君はあなたのことなんて、好きじゃないって。私のことだけを見てくれるって」
「何を言っておるのだ、井上。一護、おい一護!」
かすかだが、涅マユリの霊圧を感じた。
何かをされたのだと分かったが、どういう状況なのか飲み込めなくて、ルキアは一護を抱き締めた。
「さわんなよ」
「・・・・一護?」
「もう、ルキア、お前とは終わりだ。俺は、井上と結婚する」
「え」
「俺も、もう21だからな。結婚できる。来月にでも、式を挙げるつもりだ」
「一護?」
「そんな泣きそうな顔しても、もうお前には飽きたんだ。勝手に俺裏切って、俺を捨てておいて、今更やり直そうなんて、むしが良すぎるんだよ!」
じくじくと、心臓から血があふれ出しそうだった。
「一護・・・いやだ、私を捨てないでくれ」
「うっせーな。俺は井上のほうがいいんだよ!このアバズレ!」
「いち・・・・ご・・・・・」
ルキアの、アメジストの瞳から、たくさんの涙が溢れてくる。
つっと、頬を伝う涙は止まらない。
「いやだ、いちご、いちご、いちごおおおおおおおおお!!!」
一護に抱き着いて泣き叫ぶと、一護がルキアを蹴った。
「あう!」
「俺、この井上の部屋で新婚生活スタートさせるから。じゃあな、ルキア」
「いち・・・ご・・・・・うわあああああああああ」
ルキアは、泣きながら、井上の家を後にした。
そして、一護の部屋に戻ると、ベッドにもぐりこみ、カタカタと震えながら、丸くなった。
あの、優しかった一護が。
この2週間、ずっと私だけを見てくれていた一護が。
どうして。
「どうして?」
一護のためなら、恋次や兄様も、死神とての長い寿命も捨て去ろうとさえ思ったのに。
一護が、私ことが嫌いだという。
裏切者だと。
アバズレだと。
「私は・・・・・」
ルキアは、一晩中泣きあかした。
そして、けれど決意する。このまま現世に戻ったら、永久に一護は戻ってこない。
確かに、涅マユリの霊圧の名残を感じたのだ。
一護は、マユリに何かをされたのだ。
もう一度、明日一護のところに行こう。それでダメなら兄様の力を借りよう。
そう思った。
白哉との約束
もしも想いが実らず、振られたのならば、もう一生現世にいかぬようにと。たとえ、黒崎一護が寿命を迎え、その魂魄が尸魂界に来ても、決して会うことなどするなと。
ルキアは、遠くから一護の姿を見守っていた。
一護の隣には、井上がいた。
にこにこと笑んでいて、楽しそうだった。一護と一緒にいて、幸せそうだった。
本来なら、あの場所は私のもの。
そう思った。
なんて醜い。愛した人を裏切り、捨てて、一度尸魂界に戻り、理由も告げずに他の男と婚姻し子供までもうけた自分。
それなのに、あの位置に戻ることを欲していた。
二人のあとをつけて、水族館に入った。
ふわふわと揺れる海月が、まるで自分に見えた。
世界の片隅で、一護を求めてふわふわと漂う海月。一護をその、触手の先にある毒でからめとって、自分の傍まで落としていきたい。
海月はまるで私だ。
何処に行く当てがあるわけでもなく、ふわふわと世界を漂う。
触手で一護を絡めとって、毒で自分のものにしてしまう。
井上など、いなくなってしまえ。
一護は、私のものだ。
井上など、存在しなくなれ。斬魄刀で、井上を切り裂いた。そして、放心している一護に「貴様は私ものだ」と囁いた。
ああ、なんて醜いこの想い。
はっと起きると、一護の部屋だった。
「夢か・・・・なんて酷い夢だ」
井上をその手にかけるなど。寝汗をかいていたので、一護に頼んで朝のシャワーを浴びせてもらった。
昨日のうちに処理したのか、井上のものとおぼしきシャンプーはなくなっていた。
一護の使っているシャンプーで髪を洗い、ボディーソープで肌を洗った。
シャワーからあがると、いい匂いがしていた。
「おい、ルキア。スクランブルエッグでもいいよな?トースト焼いたから、服着たら皿だして冷蔵庫からバターだしてくれ」
「ああ、分かった」
ルキアは、昨日とは違うワンピースを着た。今は5月。
一護と別れて、ちょうど3年と少し。
服を着たルキアは、皿をだしてトーストを置くと、冷蔵庫からバターを取り出して、二人分のバターをトーストに塗った。
「なぁ、今度はいつまでこっちにいられるんだ?」
一護が、トーストをかじりながら、聞いてくる。
「兄様と、約束をしたのだ。想いが実らずに振られたら、もう一生現世にはいかぬと。その代わり、想いが実ったのなら、5年の期間を与えると」
「5年?そんなにいられるのか」
ルキアは教えてくれた。
4大貴族にしかならない奇病のせいで、13番隊副隊長を引退したこと。その後、病が癒えたとはいえ、心の傷になっていて、とても13番隊副隊長に復帰できないこと。
全ての決着次第で、現世には永久にいかぬこと。ただし、想いが実ったのであれば5年の期間を与え、その間に人間になるか、死神のままでいるかを選ぶこと。
「人間になる?ルキアが?」
「そうだ。兄様と話しをつけたのだ。5年後のありよう次第で、私は朽木ルキアという名を捨て、ただのルキアになる。尸魂界から、追放という形で」
「そっか・・・そこまで、白哉が・・・・」
一護は、しんみりとしていた。
そして、今までの3年間どうしていたかを今度は教えてくれた。
翻訳家を目指している。
始めは、医者を目指していた。だが、頭がそこまでよくないし、インターン生など、寝る間もあまりないという。ルキアのことを考えると、インターン生は無理だと思った。
石田とスマホで直接話したが、石田はすでにインターン生として忙しい毎日を送っているという。茶虎も、プロボクサーとしてもう名前は世界中に響き渡っている。
英語もそこそこ話せるが、英語は翻訳できる者が多いため、ドイツ語を選んだ。
3年生の時、3か月間留学した。
ドイツ語はもう日常会話も平気でできて、分厚い本でも読むことができる。
4年生になった今は、就職先の出版社を探している。
井上とは、ルキアが去った次の日には会い、慰めてもらい、誘われて誘われるまま、蛾が蛍光灯に群がるように抱いて、3年間付き合っていたこと。
将来、結婚も視野にいれていたこと。
そこにルキアがやってきて、全ての未来像が大きく歪んだこと。
「私は・・・・本当に、これでよかったのだろうか」
愛する者を、たとえ病のためとはいえ、産んだ子供を尸魂界に永久に残すかもしれないことに。
「俺は、お前の子なら、たとえ俺の血を引いていなくても育てるぞ」
「心配ない。四楓院家の姫君として育ててくれると、四楓院夕四郎咲宗殿がおっしゃってくれた」
「俺以外の男のことは考えるな。忘れちまえ」
「うむ・・・・」
「そうだ、今日は休みだし、昨日の水族館にもう1回行かねーか?なんか、昨日のままだと、酔い思い出にならないから」
「でも、井上が・・・・デートなど、してよいのだろうか」
「井上のことは、俺に任せてくれ」
きっちりと、別れ話をすると。
そう言ってくれた。
その日は、昨日きた水族館に来ていた。昨日は違う彼女と。今日は本命と。
たいした、クズ男だ。
自分でも嫌気がさす。
「海月・・・・好きなのだ。まるで私のようだ」
ふわふわと漂う海月を見ていた。
飽きもせず、10分くらい眺めていた。
「もういいだろ。次、行くぞ」
「ああ」
一護の隣に、またいれる。
恋次には止められたが、私はきっと、人間として生きる道を選ぶ。
朽木家を捨てて。
ただの、ルキアになる。
もともとがそうであったように。
恋次と、義兄の顔がちらついた。気づけば、涙を流していた。
「ルキア?どっか痛いのか?」
恋しい。
恋次が。白哉が。
人間になると、全てを捨てなければならない。
そのことを素直に一護に話すと、一護は別の方法はないかと言ってきた。
「別とは?」
「俺が、死神になる、方法だ。本物の死神になる方法」
「あ・・・・・・」
そんな可能性、一つも考えていなかった。
白哉に伝令神機で連絡をとると、死神化できるのなら、本当の死神になる方法もあると言われた。
「でも、一護、貴様が死神になれば、家族と・・・・・・」
「家族より、俺はルキアをとる」
「一護・・・・」
涙が溢れた。
「愛してる、ルキア」
「愛してる、一護」
その二人の姿を、呪うように見ている女がいることなど、二人は気づかなかった。
ルキアと一護の悲しみ
ルキアだった。
3年前と、何一つ変わっていない。
アメジストの瞳も、髪も背丈も細さも。その心の中にある強さも。
白哉は、千本桜をしまった。
一護も、死神化を解いた。
「あとは、当人たちでやれ。ルキア、病の説明はしておいた。あとは、一護次第だ」
さっと、音もなく白哉は去っていった。
「ルキア・・・・」
「黒崎君!」
はぁはぁと、荒い息をついて、井上もやってきた。
「井上・・・・」
「やだよ、黒崎君!私を捨てないで!」
井上はボロボロ泣いていた。
ずきりと、一護の心が痛んだ。
「俺は・・・・・・」
ルキアか、井上か。
ふとルキアが悲しそうにアメジストの瞳を伏せた。
「よい。もうよいのだ、一護。貴様を待たせすぎた私が全ての元凶なのだ。一護が、まだ私を想っていてくれている。それが分かっただけでよい。もう、現世には・・・・・」
ルキアの目を見開かれた。
ルキアは、一護の腕の中にいた。
「そんな・・・・・黒崎君・・・酷い!」
井上は、ぼろぼろと泣きながら走り去ってしまった。
「ルキア、ルキア、ルキア・・・・・・・」
3年だった。
たった3年。でも、もう3年。
一護は、泣いていた。
「愛してたんだ。ずっとずっと、愛してたんだ。好きだっていう感情を封印して、お前と思い出のつまったものは全部処分して、お前のものも処分して・・・・・」
「一護・・・・愛している、一護。泣くな・・・・・私まで、涙が・・・」
二人で、青空の下で泣いた。わんわんと、声をあげて。
しばらくして、一護は泣き止んだ。ルキアは、まだ泣いていた。
「しばらく、こっちにいるんだろう?白玉餡蜜と、夕食の材料、買いにいこうぜ」
「一護、井上とは・・・・・」
「もう、いいんだ。俺は酷い男だから。井上とは別れる」
「でも、それではあまりにも井上が!」
「なら、お前が身を引くか?引いても、手放さねーけど」
一護が、ブラウンの瞳で優しくルキアを見ていた。
「一護・・・・もう、手放さないでくれ。私は貴様のもので、貴様は私のものだ」
唇を重ねなった。
3年ぶりになるキスだったが、甘い味がした。
3年前、別れた時のようにハヤシライスに白玉餡蜜だった。
「尸魂界に戻って、後悔したのだ。やはり、事情を説明してくるべきだったかと。だが、兄様に言われた。何も言わずに、ただ黙して病を癒せと。事情を説明したらしたで、貴様を苦しめるだけだと分かって、私は兄様の言葉に従った。だが、事情を説明しないほうが、傷つけてしまったのだな・・・・・・・・」
「もういいんだ、ルキア」
ハヤシライスを食べて、白玉餡蜜を口にして、ルキアは幸せそうだった。
「貴様と、またこうして肩を並べ合うことができるとは、思っていなかった」
「俺もだ。浦原さんに頼んでも、尸魂界に行けなくて、ルキアは俺を捨てたんだと思っていた」
「違うのだ、一護!捨てたわけではなく」
「ああ。病の治療のためには、どうしようもなかったんだろ?四楓院夕四宗郎咲って人、優しかったか?」
「ああ。病のためだと分かっていてたが、本当の妻のように扱ってもらった。子は、置いてきたが・・・女の子で、名前は苺花という。一護の名前を与えたかったのだ」
「そうか・・・・」
その日、一護とルキアは褥を共にした。
「あ、一護・・・・」
ルキアの、子を産んだせいか、少し膨らみが大きくなった胸に手を当てる。
「すげードキドキしてる」
「当たり前だ。子を成すために交わったのは一度だけ。涅マユリの薬を飲んで、100%妊娠できるようにして抱いてもらった。儀式的なもので・・・貴様とは全然違う」
「俺の胸も触ってみろ」
「ん・・・ドキドキしてて、暖かい」
唇を重ねあう。
「一護、好きだ、愛してる。ずっとずっと、この3年間貴様を想っていた」
「俺もだ、ルキア。お前に捨てられたと思っても、心の何処かにはお前がいた」
ルキアの秘所に手を伸ばす。
そこは潤み、一護がくるのを心待ちにしていた。
「こんなに濡れてる・・・・・」
「ああっ・・・・夕飯を、食していた時から・・・夜はこうなるかもしれないと、思って、ずっとずっと、体が疼いて・・・・・」
ずっと、一護がルキアの中に侵入する。
「ああ!」
「いいか?」
「あ、きもちいい、一護。もっと奥まできて」
もう処女ではない。まして、違う男に抱かれ、子を産んだ。
でも、そんなこと信じられないくらい秘所はせまくて、そしてぶちぶちと音がして、秘所から血が流れ落ちた。
「おい、血が・・・・・」
「あ、良いのだ。涅隊長に頼んで、処女膜を再生してもらっていたのだ」
「ルキア・・・」
せめて、心の中では一護に操を立てるように。
ルキアは病気が治っているかどうか4番隊に診てもらい、呪術的な病気であるからと、12番隊にも診てもらった。他の男と交わったことは消せないが、処女膜を再生できると打診されて、それに縋りついた。
「あ、あ、あ・・・・・」
一護が突き上げると、ルキアは甘い痺れを感じた。
「ああ、一護・・・・ああああ!」
このベッドで、井上を抱いたのだ。
その罪悪感を抱えたまま、ルキアを貫いた。
「いああああ!」
前立腺のある場所ばかりをくちゃくちゃといじってやると、ルキアは呆気なくいってしまった。
「ああああ!」
一護も、ルキアの中に欲望を放った。
行為の後、二人で湯浴みをした。行為前にも湯あみしたので、ただ情事の後を流すためだけに湯船に浸かった。
「このシャンプーとかリンス・・・・」
「ああ・・・・井上が、よく泊まりにきたから。でも、全部処分する」
「そうか」
一護は、もう井上を忘れ去るほどにルキアに夢中になっていた。
ちくちくと、ルキアの心が痛んだ。
「井上、すまぬ」
そう呟いた。
悲哀色狂病
井上が、ポロポロ涙を零しながら、ルキアを抱き締めた一護の体を揺さぶっていた。
一護ははっとなって、ルキアを離す。
「ごめん、井上。ルキアもごめん」
走って、一護は逃げ出した。
最低だ。
今の彼女である井上を泣かした上に、戻ってきたルキアに心を持っていかれそうになった。
「俺は・・・・・・」
井上が好きだ。でも愛してない。
ルキアはもう好きじゃない。でも愛してる。
「最低だ、俺・・・・・」
二人の女の子を泣かせて。
今更、どんな顔をしてルキアの手をとればいい?
ルキアのいつか戻ってくるかもしれないという手紙を信じず、井上と付き合いだして。
井上との未来を想像しだしていた。
井上は知っている。一護が、まだルキアのことを愛していると。
一護は、本当に逃げ出した。
家に帰り、鍵をかけて、スマホの電源も切った。
「もう俺のことは放っておいてくれ・・・・」
ルキアも井上も。
傷つけるだけで、どちらの手も握れない。最低のクズ男だ。
一護は、もうこれ以上、傷つくのも傷つけるのも嫌だった。
「井上・・・・一護と、付き合っているのだな」
取り残された水族館で、ポロポロお互いに泣いて視線を集めていたので、いったん外に出た。
「もう、黒崎君は私のものだよ。例え、朽木さんにだって渡さない」
「一護は言った。もうお前とは終わっているのだと。でも、だったら、なぜ抱き締めた?」
ぐっと、井上が言葉につまる。
「朽木さんは、同じ4大貴族の四楓院家の当主と結婚して、子供を産んだんでしょう?もう、そんな穢れた体で、元の鞘に収まろうなんてずうずうしすぎる!」
「そうだな。少し前の私は、四楓院ルキアだった。だが、世継ぎを産み、病を克服して、私は戻ってきた」
「・・・・病?」
「一護には言わなかった。4大貴族にかけられた、呪いのような病だ。同じ4大貴族と結ばれ、子を成さなければ、色狂いになって死んでしまう奇病。「悲哀色狂病」というのに、私はかかっていた」
「悲哀色狂病・・・・」
「私は養子だから大丈夫だと思っていたのだ。だが、4大貴族であることが病気の原因なのだ。兄様の母君も、この悲哀色狂病にかかってお亡くなりになられた。兄様が、私を助けるために、四楓院家の当主である四楓院夕四郎咲宗殿との婚姻をなせるように取り計らってくれたのだ。子をもうけ、次の次期当主を産み、私は悲哀色狂病を克服した。一護が、待っていてくれるのであればと思ったが・・・・もう、遅いのだと分かっていたのだ。でも、一護は私を抱き締めてくれた」
ルキアは顔をあげた。
もう、泣いていなかった。
「井上、貴様には悪いが、一護は私がもらっていく」
「この卑怯者!病気だったからって、それが何!黒崎君は、今私と付き合っているの!体の関係だってあるんだから!」
その言葉に、ルキアの瞳が潤んだ。
「そうか・・・・一護は、井上と・・・・」
「たとえ、代わりでもいいからって最初は思ってた。でも、もう戻ってこないからって、黒崎君の方から求めてきてくれた。黒崎君を渡したくない。たとえ朽木さんでも!」
井上の決意は固いようだった。
昔の井上のような優しさは、今は感じられない。それはそうだろう。一護を一度捨てておきながら、また奪おうとしているのだから。
「私は・・・・卑怯でかまわない。また、一護に会いにいく。その時に、一護に答えを聞かせてもらう」
ルキアは、伝令神機を取り出して、尸魂界と連絡をとった。
「すまないが、しばらくの間こちらに残ることになりそうだ。兄様に、くれぐれも手を出さないようにと、言っておいてくれ、恋次」
「いや、もう無理だルキア。隊長のやつ、もう現世に行っちまった」
「何!?」
「見ていたんだってよ。水族館で、他の女連れてたの。ルキアを抱き締めてから逃げ出して、隊長は舌打ちして一護の後を追っていった」
「兄様!」
ルキアは、一護の家に走って向かった。
井上はわけがわからなかったが、とにかく黒崎君に会わなきゃと言って、ルキアの後を追った。
「ここを開けよ、黒崎一護」
「・・・・・・・・・」
「開けぬなら、無理やりこじあける」
「なんだよ・・・・白哉。お前の大切な義妹は、俺を裏切って、俺以外の男を選んで子供を産んで・・・・」
つっと、千本桜の切っ先が、一護の首に当てられた。
「ルキアが、本当に兄を裏切ったと思っているのか?」
「そうじゃねぇか!同じ4大貴族の四楓院家の当主と婚姻して、子供まで孕んで・・・無事生まれたんだろう?よかったじゃねぇか。姪っ子か甥っ子かどっちか知らねーが、子供ができて」
「貴様は、本気でそう思っているのか?」
「何がだよ」
「ルキアが、本気で貴様を裏切ったと、思っているのか?好き好んで、お前をいたぶったとでも?」
「もう、ルキアとは終わったんだ」
切っ先が、少し肌に食い込んだ。血が流れる。
一護も、死神姿になった。
「なんだよ、白哉。言いたいことあるなら、はっきり言いやがれ!」
斬月に手をかけて、白哉の千本桜を押しのけた。
「ルキアは・・・・・貴様に何も言わなかったのだな。ルキアは、4大貴族の者にだけかかる特殊な病気にかかっていた。養子であるから、大丈夫であろうと思っていたのだ。病の名は「悲哀色狂病」私の母も、この病気で死んだ」
長々と、病気の説明をされた。
「なんだよそれ!そんな病気本当にあるのかよ!じゃあ、ルキアは俺を裏切ったわけじゃなく、病気を治すために、愛してもいない男と結ばれて子供を成したっていうのかよ!」
「兄の言う通りだ」
「そんな・・・ルキア・・・・・」
一護は、世界が真っ白になった。
ルキアに拒絶されて、裏切られたのではないのだ。ルキアには、やむにやまれぬ事情があり、四楓院家に嫁ぎ、操を捨てて、子を成して・・・・愛してもいない四楓院家の当主と。
「ルキア・・・・・」
戻ることなら、3年前に戻りたかった。
病気の説明を受けて、納得した上で、ルキアと一時的な別れをしたかった。
でも、もう遅い。3年経った。
僅か3年だ。けれど、もう3年だ。
「兄ら人間には3年の月日は長いであろう。私たちには一瞬でもある。だが、ルキアの3年は長く、そして悲しく苦しく・・・・兄である私が断言しよう。ルキアは、貴様のことだけを想い、貴様のことを今も想い続けている」
「ルキア!」
一護は、叫んでいた。
会いたい。
ルキア。
悲しみの一護
ただ、書き置きだけが置かれていた。
(すまない、一護。きっと謝っても仕方のないことだと思う。私は、もう朽木ルキアではないのだ。四楓院ルキア。四楓院夕四郎咲宗殿と、婚礼をあげ、お腹にはもう子がいる。お前の朽木ルキアは死んだのだ。朽木ルキアは、最後までお前を愛していた。それだけは本当だ。いつか、朽木ルキアに戻る時がくるかもしれない。その時まで、愛していてくれるのなら、待っていてくれ)
「なんだよコレ・・・・ルキア!いねぇのかルキア!」
どんなに探しても、ルキアの姿はなかった。
浦原のところにいき、尸魂界まで送ってくれというと、拒否された。
「いやー、朽木さんに硬く禁止を食らいましてねぇ。朽木白哉さんのほうからも圧力がかかって・・・黒崎さんを、尸魂界に行かせることはできないんす」
「なんだよそれ・・・・・」
一護は、目の前が真っ暗になった。
昨日、はじめて睦みあって、これからだという時なのに。
ルキアは、俺を裏切っていたのか?
子供がいるってことは、高校時代から?
いつか朽木ルキアに戻るかもしれないから、その時まで愛しているなら待っていてくれ?
随分と、自分勝手だな、ルキア。
「・・・・・・もういい浦原さん」
伝令神機にメールを送る。
着信拒否になっていた。
「ルキアのバカ野郎ーーーーーーー!!!」
一護は、家に戻ると泣いた。
ルキアのことが、大好きだった。
たとえ、結婚していて、誰が違う他人の子を孕んでいても、愛する自信はあった。でも、拒否された。
いつか朽木ルキアに戻る時はくるかもしれないから。
そんな、可能性の言葉、信じられなかった。
「ルキア・・・・」
昨日の、ルキアの泣きそうな顔を思い出す。お腹は平らだった。多分、妊娠してまだ1か月も経っていないと思う。
「ルキア・・・・」
ルキアのいないこの世界は、真っ暗だった。
ルキアが、例え遠くても居ると思うから、頑張ってきた。
でも、もうどうでもいい。
ルキアに捨てられたのだ。
もう、俺がルキアを愛しても、ルキアは俺を愛してくれないのだろうか。
一護は、携帯からルキアのメールアドレスを削除した。
そして、一護は、井上に電話をかけた。
尸魂界には、何度か浦原のところに行けないかと頼みんでみたが、やはり無理だった。
今、一護は井上と付き合っていた。
井上はかわいい。
俺のことを愛していると言ってくれるし、何より裏切らない。
井上と、何度か体を重ねた。
ルキアと別れて、3年の月日が流れていた。
「井上、今日は俺の部屋に泊まってけよ」
「え、いいの、黒崎君」
「お前がよければだけどな」
一度、井上を抱いた時にルキアと呼んでしまい、とても悲しそうな目をされた。でも井上はいう。ルキアの代わりでいいから、傍に置いてくれと。
一護は、井上を好きなんだろう。多分。愛しているとまでは言えないが、好きだとは言えた。
「井上・・・・好きだ」
「あ・・・黒崎君、私も、黒崎君のこと大好きだよ」
体を重ねながら、ふとルキアの最後の手紙を思い出す。
(いつか、朽木ルキアに戻る時がくるかもしれない。その時まで、愛していてくれるのなら、待っていてくれ)
もう、3年だ。
1年目は待った。
井上と友達からスタートしながら。
2年目になって、諦めがついた。
3年目になり、絶望が残った。
もう、ルキアは戻ってこないのだ。
尸魂界には、もう行こうとも思っていない。
今は、井上がいる。
でも・・・・心の中では、ルキアをまだ愛していた。
だから、井上に好きだとは言うが、愛しているとは、言えなかった。
「井上、明日暇か?」
「うん、どうしたの、黒崎君」
「なんか、俺の家にきて俺の飯ばっかくって、一緒に泊まるだけだろう、最近。デートしようぜ。水族館のチケットとってあるんだ」
「水族館?わぁ、嬉しい!久しぶりのデートだね!」
このまま、ルキアを忘れて、井上と結婚して暖かい家庭を築こう。
そう、思い始めていた。
いつかと、ルキアのために用意しておいたエンゲージリングは、値段のせいもあって捨てられないまま、タンスの中にしまってある。
置いてあったルキアの衣装は全て処分した。
この部屋に、ルキアの物はもう何もない。ただ、エンゲージリングだけが冷たくタンスの中で眠っている。いつか、ルキアにプロポーズするときのために置いておいたものだから。
次の週の日曜日、水族館で待ち合わせをして、井上と水族館の中を回った。
イルカショーなどを見たりした。
井上は熱帯魚がお気に入りなのか、アマゾンの熱帯魚コーナーにずっと張り付いていた。
「井上、次いくぞ」
「はーい」
ふと海月(くらげ)のコーナーにきた。
ふわふわとただよう海月が、癒しの感覚を与えてくれる。
そういえば、高校時代ルキアとデートした時、海月をみてそれをルキアはじっと眺めていたな・・・そんなことを思いながら、海月を見ていると、アメジストの瞳と目線があった。
ここに、いるはずがない。
ついに、恋しさのあまり幻覚まで見るようになったのだろうか。
だが、そのアメジストの瞳は本物だった。いつか大学の授業を受けた時と同じようなワンピースに、ファーのついたコートを羽織っていた。
「一護・・・・・・」
「ルキア!?」
「一護、愛している」
ぽろぽろと、涙を零しながら、こちらにくるルキアに、井上がきっと顔をあげた。
「こないで!朽木さん、黒崎君は今私と付き合っているの!あなたが、黒崎君を酷く捨てたんでしょ!こないで!現世にこないで!尸魂界に帰って!」
「一護・・・・・」
「帰れ、ルキア。お前とは、もう終わった・・・・・」
ルキアは、とても傷ついた顔をしていた。
「そうか・・・・やはり、待ってはくれなかったのだな。分かった。もう二度と、現世には・・・・・」
井上が見ていた。
井上のことが好きだ。
ルキアは俺を捨てた。
他の男を選んだ。
ルキアに裏切られた。
それでも。それでも。
「ルキア!」
気づくと、その細い体を、抱き締めていた。
卒業
井上が、わんわん泣いていた。
一護は無事、志望校に合格し、4月からは大学生だ。
その日は、卒業式だった。
ルキアが、現世にいられる最後の日。
「卒業おめでとう、ルキア」
「貴様もおめでとう、一護」
ルキアは、死神に戻るが、進路先は家の家業を手伝うことになっていた。
桜はまだ咲いていない。
高校の卒業式は、桜の季節よりも少し早い。少しだけ長い春休みを迎えて、それが終わったら、大抵の者が大学生になる。一部はもう就職だ。
「桜・・・・咲いてたらよかったのにな」
「仕方なかろう。桜の咲く時期に、また一護に会いにいく」
「ああ、待ってる。ずっと待ってるから」
石田も、茶虎も、井上も大学に進学する。石田は将来医師として、茶虎はプロボクサーとしてという、しっかりとした夢があった。
井上と一護くらいが、まだぼんやりとこうなりたいかもしれない、という程度の夢を抱いていた。
一護は、できれば翻訳家になりたいと思っていた。
なので、国際系の大学を受験して合格した。英語の成績はいい。
「帰ろうか、家に」
「ああ」
友人たちに別れを告げて、一護とルキアは手を握りしめあいながら、帰宅した。
その日の夜は、最後なのでたくさん話した。
たくさん抱擁しあった。たくさんキスをした。
やがて、次の日になり、義骸を脱いで死覇装の死神姿になったルキアが、穿界門の中へ消えていく。
「メール送るから!返事くれよな!」
「ああ、分かっている!」
ルキアは尸魂界に戻ってしまった。
一護は、少し寂しい想いを抱えたまま、けれど霊力をなくした時は1年と7か月も耐えたのだ。
今は伝令神機でメールのやりとりもできる。
(愛してる、ルキア。どんなに離れていても、心はお互い一つだ)
(もう早速、寂しいのか?貴様も寂しがり屋だな)
(悪いかよ。この3か月、ずっと毎日お前といたんだ。寂しくなるの、当たりまえだろう)
(正直、私も少し寂しい。だが、私はこれから尸魂界の復興を手伝っていかねばならぬ。もう時間だ、返信はまた今度にする)
そのまま、メールは途絶えた。
大学が始まった。
桜の花が咲く季節、約束通りルキアがやってきた。
「ルキア!」
「一護!」
大学の、桜の木の下で、抱き締めあった。キスをした。
ちらちらと散っていく桜の下で見たルキアは、長袖のワンピースにフリルのついたコートを羽織っていた。
かわいいと思った。
背中には、チャッピーの鞄。
「メールの連絡がないから、来てくれないのかと思った」
「たわけ。メールではなく、ちゃんと貴様と言葉を交わしたかったからだ」
入学式も終わった大学は、新入生であふれかえっていた。けっこう大きめの大学に入学したので、大学のキャンバスも広い。
「俺、今日は授業あるから・・・お前も一緒に受けるか?」
「ああ」
尸魂界ではやっと復興のメドが経ってきたらしい。ユーハバッハとの大戦は大きな爪痕を瀞霊廷に残し、特に1番隊あたりは焦土となって何も残らなかったらしい。
住民の避難は完了していたので、住民への被害は少なかったが、死神の実に過半数が死んだ。
山本元柳斎重國、卯ノ花烈、浮竹十四郎。
3人の死は、瀞霊廷に大きな衝撃を与えた。
特に、山本元柳斎重國は総隊長であるだけあって、戦時中に走った衝撃は計り知れず、一護も言葉をなくしたほどだ。
「尸魂界、今大変なんだろ?こっちにきて大丈夫なのか?」
「確かに大変だが、総隊長より特別の許可をいただいている。非番の日は、こちらにきてもいいように取り計らってもらっていて、その分通常の仕事は大変だが、今のところなんかなっておる」
その言葉に、一護はほっとした。
英語の授業をルキアと一緒に受けた。少人数制だったので、無理かと思ったら、そんなことに使っていいのかと思う記憶置換を使って、ルキアは生徒の一人として教室で認識された。
「ではここを・・・朽木ルキアさん。解いてください」
「え?」
ルキアは真っ青になった。
英語は得意にちんぷんかんぷんで、テストの点はいつも10点くらいだった。
教科書もないので、教授が訝しみだす。
「おやぁ?何故教科書がないのですか。そもそも朽木さんは・・・・おや?そんな生徒、いたかな・・・・・」
「失礼しました!」
ルキアは逃げ出した。一護も、トイレといって、ルキアの後を追った。
「うーん。浦原のところで買った記憶置換は、効能がいまいちだな」
「そんなもんに頼らずに、素直に待ってればよかったのに」
「貴様の傍に、少しでも長くいたかったのだ」
「そっか・・・この食堂で、悪いが待っててくれ。カレーでも食っとけ。金はあるよな?」
「背中のリュックに200万いれておる」
「おい、それ生徒の前で見せるなよ。ったく、白哉と一緒で金銭感覚ずれてるんだから。俺は授業の続きに出てくる。将来の夢のための一歩なんだ」
「そうか!では行ってこい!」
ルキアは、一護を見送った。
「さて・・・・・」
ルキアは、カレーを注文して、美味しそうにほうばった。
一護は30分程で授業を終え、ルキアのところにきた。
2杯目のカレーを食べているルキアに苦笑しつつ、一護もカレーを注文した。
一護はエビフライつきのカレーを頼んでいた。ルキアがじーっと、一護のエビフライを見つめているものだから、溜息を零しつつ、エビフライをルキアの皿にのせた。
「すまんな!」
「食い意地だけは一人前だな」
「うるさい」
また、この何気ない日常が、たとえ1日だけとはいえ戻ってきて、一護は安心する。
一護は、もう一人暮らしを始めていた。金はないので、将来ためて返すという約束で、父親である一心から、金をかりてアパートをかりた。バイトもしている。大学の授業料は、一心が「息子の教育を最後まで見届けるのが親の責任だ」といって、全額負担してくれるらしかった。
私立だったので、正直バイトで金をためても、食費くらいしか稼げそうになかった。将来仕事を得ても、奨学金を返すのは辛いところだったので、父親の言葉に甘えた。
「次の授業は、クラス制じゃないから、普通にでれるぞ」
「そうか」
昼飯を食べ終えて、次は日本歴史の授業だった。
ルキアと隣同士で、授業を受けた。ルキアが、伝令神機で一護にメールを打つ。一応授業中なので、私語は厳禁だった。
(実は、明日も現世にいれるのだ。今日は授業が終わったら、貴様のアパートに泊まってもよいか?)
(ああ、かまわねーよ。ただし、一人暮らしようだから狭いぞ)
(狭いのはあの一護の部屋の押し入れで慣れておる)
「ぶっ・・・・」
一護が吹き出した。
(笑うな、愚か者)
(はいはい。夕食は何がいい?)
(カレーは昼に食べたし・・・・ハヤシライスがいい)
(分かった)
授業が終わり、一護はルキアと買い物をして帰った。
夕食は、ルキアの希望通りハヤシライスにした。そして特別にデザートに白玉餡蜜の材料を買い、デザートとして出すと、ルキアは顔を輝かせてそれを食べた。
「うまい。一護の作る料理は、うまいな」
何度か、高校時代手料理を作って、ルキアに食べさせたことがあった。反対にルキアが作ることもあったが、簡単なものしか作れなかっし、料理は得意ではなさげだった。
一護は、今ラーメン店でバイトしていた。その前は中華料理店。大戦のあと、なんでも屋のうなぎ屋をやめたのだ。
「ルキアとこうして、日常を過ごせるのって幸せだな」
「ああ、私もだ」
その日、二人は初めて体を重ねた。
「ルキア・・・綺麗だ」
白い肌も露わなルキアは美しかった。肌はすべすべで、手に吸い付いてくるかのようだった。
僅かな膨らみしかもらぬ胸を優しくもんで、先端を口に含むと、ルキアは甘い痺れをかんじた。
「ああっ・・・・」
秘所を手で弄ると、濡れていた。
「もうこんなに濡れてる」
「あ、いうな・・・ああ!」
秘所の奥のほうの天井をくちゅくちゅとこすってやると、ルキアはびくんと体を痙攣させた。
いってしまったのだ。
「ああああ!」
はぁはぁと荒い息をつくルキアに口づける。
「俺のものだ、ルキア」
秘所に、一護は侵入した。
「あ、あ、あ・・・・・」
秘所の浅い部分をこすりあげて、前立腺ばかりを刺激して、陰核を手でつまむと、またルキアはいった。
「あああ!」
「何度でもいけ、ルキア」
「ああっ一護」
何度もルキアの中を突き上げて、一護はルキアの中に欲望を放った。
「愛してる、ルキア」
「私も、愛している・・・たとえ、何があっても・・・・・」
一護は、知らなかった。
ルキアが、すでに婚姻していたことを。ルキアの中に、一護とのものでない新しい命が宿っていることも。
隠していた想いの果てに
「なんだ」
高校3年生の冬。
冬休みになっていた。
本来なら、ルキアはここにはいない。尸魂界で、13番隊の副隊長として大戦の後の復興を手伝わなければいけない身の上だった。
一護の我儘だった。
どうか、ルキアを高校卒業まで現世にいさせてほしいと。
ユーハバッハを倒した尸魂界の英雄に、京楽は渋い顔をしながらも、ルキアが現世に残ることを承諾してくれた。
それにルキアは驚きだけで。
何故、一護がそんなことを言い出したのか、ほんのりと胸の中では分かっていた。でも、知らないふりをしていた。
これからも知らないふりをするつもりだった。
デートというわけでもなく、暇なので冬の海にきていた。
ざぁんざぁんとなる海が綺麗だった。
「お前、綺麗だよな」
「は?」
「ばーか。冗談だ」
「このたわけ!」
怒りだしたルキアを、そっと抱き留める。
「一護?」
「春になって、現世を去る前に、伝えたいことがある」
「言うな!」
「なんでだよ。まだ何を言うかもわかってねぇじゃねぇか」
「分かっておる。気づいておるのだ」
「ルキア・・・・」
「やめろ、一護。私は死神、貴様は人間・・・・・この埋められぬ溝が」
ざぁんざぁんと、おしては引き返す波の音だけがした。
一護は、ルキアにキスをしていた。
目を見開くルキア。アメジストの瞳から、ぽろりと涙が零れた。
「貴様はずるい・・・・・」
「ルキア、お前のことがどうしようもないくらいに好きなんだ。俺の手をとってくれ!俺と生きよう!」
ルキアは、その手を払いのけるはずだった。
だが、抱き締められてまたポロポロとアメジストの瞳から涙を零した。
「私は死神・・・・貴様は人間。それでも・・・・それでも・・・・・」
ルキアは、一護の手をとっていた。
「大好きだ、ルキア」
「私も貴様が大好きだ、一護」
ざぁんざぁんと、おしては引き返す冬の海が、とても幻想的に見えた。
それからの日々は、いつもと違った。冬休みがあけて、学校が始まった。
お互い恋人同士として振る舞った。
黒崎家でも、学校でも。
「ねー、一護、もしかして朽木さんと付き合ってるの?」
たつきの質問い、一護は
「ああ」
とだけ答えた。
その答えを聞いて、井上が泣きだした。
「ちょっと、織姫、屋上いこう」
井上が、一護を好きなのは、一護自身も気づいていた。でも、井上ではだめなのだ。
ルキアでないと、だめなのだ。
「一護、貴様・・・井上が泣いていたぞ」
「俺たちが付き合っているっていったら、泣きだした」
「井上は・・・・そうか、お前のことを」
「気の毒だから身を引こうなんて思うなよ」
「たわけ。私も貴様のことを好いておると言っておるであろう。誰に反対されても・・・たとえ、恋次や兄様に反対されても、貴様と別れるつもりはない」
一護は、ルキアを連れて人気のない廊下にきた。
そして、思いっきり抱き締めた。
「ああもう、こんな学校でそんな嬉しいこと言われても、なかなか抱き締めたりキスしたりできねーじゃねぇか」
「たわけ、貴様学校でなど・・・」
スリルはあった。でも、それを楽しむつもりはない。
「ルキア・・・卒業しても、こっちにきてくれよな?」
「当たり前だ。私の彼氏、なのだろう?会いにいくに決まっておる」
その日は、二人手を繋ぎながら、ゆっくりと帰った。
家につくと、いつものように一護の部屋で過ごした。
好きだと言って、抱き締めたりキスしたりする以外は、前と変わらない。
ただ、密着すると温度が気になる。
ルキアは、疲れたのかベッドに横になっていた。同じベッドで、一護もルキアを腕の中に抱いて、横になる。
「なぁ」
「なんだ」
「こんな甘い日々も、あと2か月ちょっとで終わりなんだな」
「そうだな」
卒業式まであと2か月と少し。
おまけに、一護には大学受験が控えている。勉強はもうできるだけやったので、後はその日を待つだけだ。
「ルキア、好きだ」
「知っておる」
抱き寄せてくる腕は、けれどまだ互いにキスとハグ、それ以上には進めないでいた。
黒崎家だから、というのもある。
一護の父親や妹たちがいるこの家で、体を重ねる勇気などなかった。
「俺、大学生になったら一人暮らししようと思ってるんだ。そしたら・・・・なぁ、その、なんでいうか・・・・」
「いいぞ。抱きたいのであろう?」
その言葉に、一護は真っ赤になった。
「なんで分かってるんだよ!」
「だって、お互い好きで恋人同士なら、自然な関係であろう。貴様も男だ。こんな私に劣情を抱く者がいるのは珍しいが、そんな気になってしまうであろう。私とて、我慢しているのだ、一護」
ルキアが、甘く囁いてくる。
「貴様を、私のものにしたい、一護」
「ルキア・・・・」
唇が重なった。
舌と舌が絡み合う深い口づけと、ふれるだけの浅い口づけを繰り返す。
「ああ、もう。その気になっちまう。我慢だ我慢」
一護は、ルキアと付き合う以前からずっと我慢していた。
キスやハグができるようになって喜んでいたのだが、それ以上に進みたくなった自分に戸惑いを覚えているのも確かだ。
「なぁ。もう1回言ってくれ。好きだって」
「何千回、何万回でも囁いてやる。好きだ、一護」
高校3年の終わり。一護とルキアの交際はスタートした。
子猫とルキア
子猫だった琥珀は立派な大人の猫になっていた。雌猫だった。猫好きな雛森の勧めで、同じオッドアイの白猫と一緒に過ごさせて、子猫を産んだ。
「うわぁ、かわいいなぁ」
にゃあにゃあと、おっぱいを求めて鳴く5匹の子猫を抱き締めて、ルキアは幸せそうだった。
一護は、最近ルキアが子猫に夢中になっているため、放置され気味だった。
「ルキア、夫の俺にもスキンシップくれよ」
「何を言うのだ。貴様は時間が経っても変わらぬ、この子猫たちは、時間が経つと成長してしまい、大人になってしまうのだぞ。今が一番かわいい盛りなのだ」
「ルキアのばか!」
「ほら、一護も抱いてみろ。かわいいであろう?」
「確かにかわいいけど、かわいいって言ってるお前のほうがかわいい」
その言葉に、ルキアが朱くなる。
「恥ずかしいやつだな、貴様は!」
「にゃあ」
一護が、猫の鳴きまねをしてルキアに抱き着いた。
「ええい、鬱陶しい・・・・・」
「なールキア。子供なら俺たちも作ろうぜ」
「そればかりは、天に運を任せるしかあるまい」
まだ新婚といっていい時期ではある。セックスは週に2回くらいはしていた。
「ルキアが食べたい」
「こら、一護」
ルキアを腕の中に抱いて、一護はルキアにキスをする。
「盛るのはいいが、ここが食堂であることを心得よ、駄犬」
「きゃいん!ってでもいえばいいのか、白哉義兄様!」
ばちばちと、二人の目線が火花を散らす。
「ルキア、今日の昼餉はルキアの弁当を食したい」
「はい、兄様、喜んで作ります!」
それ見たかと、白哉は得意げになった。
「ルキア、今日夜は二人で焼肉食い放題の店にいこうぜ」
「何、焼肉食い放題だと!けしからん、必ず行くぞ、一護!」
ふふんと、今度は一護が得意げになった。
そもそも、ルキアと籍を勝手にいれ、黒崎一護を朽木一護にしたのは白哉なのだ。
それなのに、ルキアの取り合いをしたり、嫌がらせをしたり。
白哉の性格は、何気にねじ曲がっている。おまけの極度のシスコンだ。
それに加えて、義妹であるルキアの白哉大好きのブラコンなのだ。
この兄妹、本当になぜ一護と結婚したのだろうかと思うほどに仲がよい。
「では、今から兄様のお弁当を作ってきます。一護は、兄様と先に朝餉をとっていてくれ」
「うわ、最悪だ」
「こちらの台詞だ」
朝食のメニューがやってくる。白哉のは普通であったが、一護のはわかめ大使だった。
「ふ・・・甘いぜ」
わかめ大使をもきゅもきゅと、一護は食べた。
しかし、顔色が赤くなって蒼くなって、また赤くなった。
「からいいいいい!」
唐辛子とマスタードが、これでもかというほど入っていた。
水をごくごく飲む。
水のおかわりを頼むと、沸騰したお湯をもってこられた。
「水!」
仕方なしに、井戸までいって水を飲んだ。
「くー白哉めえええ!覚えてろーーー!」
その日の朝は、白哉の勝ちだった。
9時前になり、一護もルキアも13番隊隊舎に出勤する。
「今日は、通常の仕事の他に、流魂街での虚退治がある」
「お、待ってました。最近体あんま動かしてないから、いい運動になるぜ」
一護は、ルキアの他に誰もいないことを確認すると、ルキアを抱き締めた。
「ふあっ!?」
突然のことで、ルキアが目を丸くする。
「好きだぜ、ルキア」
「それくらい、知っておる」
舌が絡まるキスをして、二人は離れた。
それから12時まで執務仕事をして、12時になって、朽木家から昼のメニューがやってくる。
豪華ではあるしメニューの数は多いが、1品自体の量は少なく、食べ残しをあまりしないように配慮されていた。
足りない時は、言えば追加メニューが出てくる。
今日の一護のメニューは普通だった。普通すぎて、つまらなかった。美味しかったけど。
一方の白哉は。
愛しい義妹の手作り弁当を食べようとしていた。
さらさらと、弁当箱が粉っぽいことに気づき、まさかと思って中身をあけると、弁当の上にいっぱい砂糖がかけてあった。
「く、あやつ・・・・・・」
白哉は甘い物が嫌いだ。
仕方なしに清家を読んで、早急に昼餉の準備をしてもってくるように命じた。
「せっかくのルキアの手作り弁当だというのに・・・・・」
砂糖のかかっていない一部分だけしか、食せなかった。
昼は、一護の勝ちだった。
一方、一護とルキアは。
それから流魂街に、席官を数名伴って、虚退治に出かけた。最近24地区で暴れまわっている虚の大群だった。
姿を現した虚たちを、ルキアと一護はなんの遠慮もなく切っていく。
虚の数は多く、こちらは席官をいれて5名だったが、尸魂界を二度も救った英雄がついているのだ。
遅れをとることなど、万に一つもない。
「うらぁ!・・・ああ、たまには卍解するような強敵はいねぇもんかなぁ」
「たわけ!貴様が卍解をするような相手がいたら、尸魂界にとっても脅威だ!」
「それもそうだな」
斬魄刀をしまい、帰路につく。
今日は戦闘があったので、執務仕事をは早めに打ち切られて、4時には仕事は終わりとされて、
あがることができた。
「少し早いけど、焼肉食い放題の店に行こうぜ」
「うむ。食べ放題なのであろう。今から楽しみだ」
少し早かった。店は5時からあくのだ。
仕方なしに、ベンチに座って、膝にルキアを乗せた。
「これは、なんの意味があるのだ?」
「ん?意味なんかねーよ。ただ、お前といちゃつきたいだけ」
「たわけが・・・・・」
そう言いながらも、ルキアは長くなった黒髪をいじってくる手を止めなかった。
そうだと、一護は懐から何かの箱をとりだした。
「これは?」
「やるよ。この前店で見つけて、いいなと思って買ったんだ」
先端にアメジストをあしらった、ヘアピンだった。
「かわいいではないか。貴様にしては、私のつぼをよく分かっているな」
「お前のつぼはたまにチャッピーとかわけわからないのあるけど、概ね10代の少女のまんまだろ」
「10代のままか・・・・そういう一護も、18のまま時が止まってしまったな。死んだこと、本当に後悔しておらぬのか?」
「ああ?別に後悔してねーよ。確かに親父や妹たちや友人を置いてきたのは悪いと思ってるけど、こっちにこれてお前と結婚できて、俺は死んで良かったとさえ思っている」
未練も悔いもないと言われて、ルキアもすっきりした顔をしていた。
「私はな・・・・いつか、貴様が他界したら、魂をもらいにいこうと思っていたのだ。技術開発局で開発した、魂魄の若返りの装置を使い、貴様を若返らせて、死神にさせようと思っていた。それが、若くして、事故ではあるがこちら側にきて、喜んではいけないのだが喜んでしまったのだ。また、共に在れると。そして貴様は本物の死神となった。いつか、貴様にこの狂おしい想いを告げようとして・・・・兄様が、籍をいれてしまったのだがな」
ルキアは苦笑する。
「まぁ、籍のことは白哉に感謝かな。お前、恋次とできそうになってただろ」
「な、何故それを知っておるのだ!」
「恋次のやつ、お前にベタ惚れだったからな。横からかっさらうようで悪かったが、こればかりは俺も譲れねぇ。ルキア、お前は俺のものだ」
「一護・・・・・・」
唇が重なる。
「お待たせいたしました、只今より開店でーす」
二人は、ぱっと離れた。
そして、焼肉食い放題を思う存分頼んで、酒も飲んで二人は朽木邸に帰宅した。
食堂で、白哉が長椅子に横になって寝ていた。子猫と遊んでいたらしく、周囲には猫の玩具が散乱していて、子猫が3匹、白哉と一緒に眠っていた。
「お疲れなのだろう。そっとしておこう」
「ああ」
眠いっている白哉の表情は穏やかで、同じ男とは思えない端正な作りをしていた。
「今日の夜は、勝負はなしだ、白哉義兄様」
ルキアは、寝室からもってきた毛布をそっと白哉にかけて、にゃあにゃあと鳴き出した子猫3匹を連れて、食堂を後にした。
琥珀は、ルキアと一護の寝室にいた。
にゃあにゃあと、残りの2匹の子猫にお乳をあげていた。・
「琥珀、この子らをわすれているぞ」
3匹の子猫を与えると、琥珀はぺろぺろと3匹の毛並みを舐めた。
「よし、ルキア、俺たちも子作りするぞ!」
「おい、一護、こんな時間から!」
「夕飯もくったし、後は湯あみするだけだろ」
「で、では湯浴みをしてからだ」
「分かった。でも、湯浴みが終わったら、抱くぞ」
ルキアは真っ赤になった。
たまに、一護は男らしいところがある。でも、優しいのだ。
ルキアが拒否すると、まずしないだろう。
「一度、だけだぞ」
「うっし。好きだぜ、ルキア」
触れるだけのキスを何度もしてくる。
一護は、甘く優しい。
甘くて甘くて、まるで砂糖菓子のようだった。
山じいの紹介ではじまる未来。
誰もが羨まむ境遇だと、他人は思うのだろう。この窮屈で、貴族であるということに執着しまくっている京楽家で、霊力が並外れてあるせいで、子供のうちから異端のように扱われた。
そして死神統学院に半ば無理やり入らされた。
両親に、死神になれと。
けれど、それは京楽にとってあの窮屈な家から抜けだすことのできる口実となった。
始めの頃は真面目に授業に出ていたが、そのうちに飽きて授業中に廓に遊びにいくようになっていた。
「惜しいのお」
恩人である山じいが、そんなことをいうけれど、女遊びもただ暇を持て余しているからだけで、本当はどうでもよかったのだ。
「お主に、紹介しておきたい人物がおる」
誰だと思って振り向くと、白い髪に白い肌の、翡翠の瞳をした同い年くらいの子だった。
「浮竹十四郎という。よろしく」
「・・・・・・京楽春水だよ。よろしくね」
綺麗な子だった。同じ性別なのかと思うくらいに。
寮の部屋が、京楽家の名で二人部屋を一人で使っていたのに、急遽寮に入ることになった浮竹と同室になった。
なんでも、下宿していた先の親戚が、急に死んでしまい、寮に入ることになったそうだ。
浮竹は誰にでも優しく気さくで、まるで陽だまりのような子だった。
一度、悪戯で女物の院生服まみれにしてやると、全く気にしたそぶりも見せずそれを着て授業を受けたことがあった。
たくさんの男に囲まれて、悪戯した京楽が浮竹を庇う羽目になった。
かわいいということが、学院中に知れ渡ることになって、次の日普通に男ものの院生の服を着ているのに、ナンパされたり告白されたりしていた。
「冗談がすぎた、ごめんね浮竹」
「この程度、悪戯だろうと思ったしどうってことない」
「ごめん」
京楽は、深く反省した。
「どうじゃ、春水。十四郎は」
たまに顔を見せる山じいに、そんなことを聞かれた。
「いい子だね。惹かれた」
「そうじゃろうそうじゃろう。十四郎のような死神になれ」
「それは無理な相談だなぁ」
「じゃが、廓での女遊びもなくなった。十四郎をよき友人として紹介して正解じゃったわ」
よき友人か。
親友の位置にはいるのだと思う。多分。
浮竹の友人の輪の中心に常にいたし、一緒に行動して、座学に励み、剣の稽古をして、鬼道を習った。
浮竹は、肺を患っていた。たまに発作を出して、血を吐いた。おまけに病弱で、すぐ熱を出した。
京楽は、気づけば浮竹を看病するようになっていた。
昨日、浮竹は授業中に血を吐いた。すぐに医務室に運ばれて処置がされ、大事に至らずにすんだが、念のため3日は安静にするようにと言い渡されて、面白くもなく天井を睨んでいた。
京楽が学院から京楽が帰ってくると、浮竹はぱっと顔を輝かせた。
「今日の学院はどうだった?」
「今日はね・・・・」
そんな日が、3日続いた。
3日目には安静にしているのにも飽きて、貸本屋からかりてきた小説なんかを読んでいた。
「何、読んでるの?」
「うわあ、吃驚した」
タイトルを見る。星の砂。そう書かれていた。
ああ、最近瀞霊廷で人気の恋愛ものの小説なのだと分かって、興味なさげに京楽はベッドに横になった。
「京楽は、もてるからこんな小説面白くないんだろうが、恋もしたことのない俺にはけっこう面白い」
「それより、こっちを見なよ」
たまに読む小説を投げてよこす。
中身を読んでいって、浮竹は真っ赤になった。
「官能小説じゃないか!」
小説版のエロ本だ。
「それ読んで、勉強したら。君もけっこうもてるでしょ。男からももてちゃってるけど、ちゃんと女の子からも告白されてるでしょ?」
「今は、誰とも付き合う気はないんだ。それにこんな体だ・・・付き合う相手に悪い。それに、
誰かを好きになったことがない」
「じゃあさ、僕を好きになりなよ」
冗談のつもりだった。
「お前を?」
「そう、僕を」
「分かった」
頬を染めて、浮竹はベッドに横になって毛布を被った。
あれ?
僕、何か変なこと言ったかな?
ただの冗談なのに。
「その・・・時間を、くれないか。流石にこういうのは初めてで・・・・その、いやなんでもない、すまない」
冗談のつもりが。
あれ?
確かに、京楽も浮竹に惹かれていた。
キスしてみたいとも思った。あわよくば、それ以上もしてみたいと考えたこともある。けれど、同じ性別である、というところで、踏みとどまっていた。
初めて見た時に、一目惚れをしたのだ。
その日を境に、何かがおかしくなっていった。
浮竹が京楽を見る目がきらきらしていた。二人きりになると、恥ずかしそうにする浮竹を見ていて、何故かかわいいと思った。
女物の院生服を着せた時、本当に美人だった。背はやや高かったが、女といっても通用する容姿をしていた。
「京楽」
京楽の行く場所について歩く浮竹を、鬱陶しいと思ったことはない。かわいいと思った。
それより、離れた時のほうが心配になった。
「あ、京楽・・・・」
その日、まだ1回生なのに、6回生の先輩に呼び出されて、恐怖に震えて泣いている浮竹をみた。院生の服が破れていて、肌も露わになっていた。見るからに強引に関係を迫っていたのがわかった。頭に血が昇り、沸騰した。
京楽も浮竹もまだ1回生だ。鬼道もやっと習い始めたばかり。かたや6回生のその男は屈強で、卒業したら死神になることが決まっていた。
なるようになれと、喧嘩をしかけた。
たくさん傷を負ったけど、浮竹を庇いながらなんとか勝った。
「京楽、俺のせいでこんなに怪我を・・・すまない」
涙をぽろぽろと流して、地面に座り込んだ京楽の体を抱き締めた。
教師が呼ばれ、その6回生は退学処分になった。山じいのお気に入りに手をかけたのだ。当たり前であろう。毛布にくるまれて、浮竹はそれでも京楽の心配をしていた。
京楽は、全治2週間の傷を負った。京楽家の者に手をあげただけでも退学処分ものなのに、よりにもよって、山じいのお気に入りの浮竹を強姦しようとしたのだ。
京楽に力があったら、半殺にしていただろう。
寮の部屋に戻ると、カタカタと浮竹が震えていた。
「あ、京楽、大丈夫か、傷は・・・・」
「僕の傷より、君の心の傷のほうが問題だよ」
「お、俺は大丈夫・・・・・・」
そんな浮竹を抱き締めた。カタカタと音を立てて震えていた浮竹の震えがなくなった。
「京楽・・・・俺、京楽になら・・・」
京楽は、その言葉の最後までを言わせず、キスをした。
「君の心が傷ついてしまう。ゆっくりでいいよ」
ほっとした表情を、浮竹は浮かべた。
それから、瞬く間に時間は過ぎ去っていく。
3回生になっていた。
いつも一緒に、常に傍にいた。
「うむうむ、十四郎もあのことはもう忘れたようだし、よく成長しておる」
「山じいの目は節穴かい。強姦未遂の件は、今でも浮竹の心に深く傷を負って血を流させているよ」
「そんなことなかろう。もう2年前の話じゃ。それより春水。お主、十四郎をどうするつもりなのじゃ!」
「どうするって?僕のものにするだけだよ」
「こりゃ、春水!」
山じいを置いて、逃げ出した。
「京楽、元柳斎先生は、何か言っていたか?」
「いや、特には何も」
浮竹を抱き締めて、口づけると、浮竹は朱くなりながらこう言った。
「京楽は、その、俺のことを抱きたいと思うのか?」
「思ってるよ。いつでも、脳内で君を犯してる」
「なっ」
更に真っ赤になった浮竹がかわいくて、抱き上げた。
「僕のものになる決心はついた?」
こくりと、小さく浮竹は頷いた。
あの強姦未遂の事件から、時間をかけてきて成功だった。性急に関係を求めていたら、フラシュバックで拒絶されただろう。
都合のよいことに、寮はまた同じ二人部屋だった。
京楽が浮竹の病の看病を引き受ける形で、上とやり取りをして同じ部屋にさせた。
浮竹に邪な思いを抱いている者が数人、同じ部屋になりたがっていたが、京楽のせいで却下されていた。京楽以上の身分の者・・・一人だけいた。浮竹が、たまに声をかける人物。
4大貴族の1つの家の、傍系の子だった。死神など興味がないようで、いつもふらふらしていた。
何はともあれ、とさりと浮竹をベッドに寝かせる。
浮竹ががちがちになっていた。ぎゅっと目をつぶっている。
優しくキスをすると、体が柔らかくなっていき、翡翠の瞳で見つめてきた。
「京楽・・・1回生の頃、言われた通りに、お前を好きになった」
「1回生・・・・そんなこと、僕言ったっけ」
「言った。まぁいい、責任はとれよ?」
キスを何度も繰り返し、通販でかった潤滑油を用意する。
すでに、いつかこうなると覚悟していたのか、その手の知識を京楽も浮竹も身に着けていた。
「あ、胸は・・・・」
胸をなでられると、浮竹は苦しそうな顔をした。
「あの男に、散々なでられて・・・・ああでも、京楽の手だと気にならない。暖かい」
ほっとした様子だった。この調子なら、フラッシュバックは起きそうになかった。
互いに院生の服を脱ぎ、抱き締めあった。
「あ・・・・」
脇腹、胸、鎖骨、臍、腹とキスマークを残していく。
膝を膝で割って、縮こまっている浮竹の中心に触れる。
「んあう」
びくんと、浮竹の体が痙攣した。
「大丈夫、気持ちよくするだけだから」
「でも・・・」
浮竹の花茎に手をかけると、先走りの透明な蜜がでてきた。それを潤滑油代わりにぐちゃぐちゃと浮竹のものに手を這わせ、しごいていると、浮竹がまた痙攣した。
「ああああ!」
他人の手でいかされるのは初めてなのか、ぜいぜいと荒い息をついていた。
「大丈夫?」
「ん・・・・大丈夫」
潤滑油を指にかけて、浮竹の内部に入りこむ。
「ああっ!」
こりこりと、前立腺を刺激してやれば、また花茎がとろとろと透明な蜜を零した。
ぐちゃぐちゃと音が経ちだした頃にぬきさって、京楽のものを宛がうと、ゆっくりと侵入した。
「あ、あ、あ・・・・・・・」
中は狭く、異物を排除しようと動いて、痛いくらいだった。
「もうちょっと、力ぬいて?」
「ん・・・・」
なんとか全部をいれきった。大きさに馴染むまでの間、口づけを交わしていた。
浮竹は、京楽とのキスが好きだった。
「ふあっ」
とろけるようなキスを繰り返し、前立腺めがけて突き上げた。
「ああっ」
浮竹は、それだけでいってしまった。
「十四郎、好きだよ・・・・愛してる」
「俺もだ春水・・・好きだ、愛してる」
とろけるようになった浮竹の内部を堪能しながら、前立腺をすりあげていく。
何度も突き上げて、引き抜いて、また挿入を繰り返していると、京楽も余裕がなくなって浮竹の中に欲望を出していた。
「あ・・・・京楽が、中で・・・・・」
「まだ終わりじゃないよ、浮竹」
「あ・・・・・ああ、ひあああ」
今度は激しく突き上げ始めた。
その激しさに、白い髪が宙を舞う。1回生の頃は短かったが、今は肩より少し長くなっていた。
「ああ!きょうら・・・・激し・・・・・」
乱暴に中を侵すと、浮竹は啼いた。
「ひああああ!」
何度か腰を腰に打ち付けて、京楽は二度目の欲望を浮竹の中に放つ。同時に浮竹の花茎に手をかけて、先端の爪を立てると、浮竹もまた白濁した液を出した。
「んあああ!」
体だけなく、恋人同士として過ごすようになった二人を、山じいは困った目で見ていた。
「十四郎を、このようにするために紹介したのではないのだがのう」
「もう、浮竹は僕がいただいたから」
「いつか、互いに妻を娶らせて子を成さようといわしの計画が・・・あの十四郎が、春水なんぞの恋人になるとは・・・・・」
「すみません、元柳斎先生。京楽のことだけは、譲れません」
浮竹が、本当にすまなさそうに山じいを見た。
「これもまた何かの縁(えにし)。春水よ、十四郎を大切にするのじゃぞ」
「勿論、当たり前だろ、山じい」
こうして、二人は学院を卒業し、山本元柳斎重國の秘蔵っ子として、学院卒業初の護廷13隊席官となった。
その数年後には副隊長となり、その50年後には隊長にまで若くして登りつめた。
二人は、いつも一緒だった。
院生時代の関係を築きながら、山じいに時にはそこのことで怒られはしたが(隊首会に遅れたりして)、概ね順風満帆な人生をおくるのであった。
嫉妬と青空
「白哉じゃないか。どうしたんだ」
恋次を連れて、雨乾堂まできた白哉は、本当に珍しくおはぎなどもって浮竹の見舞いにきていた。
「浮竹は、この間の隊首会もその前も病欠したであろう。病状はどうなのだ?」
「あー、今はよくもなく悪くもなくだな」
「見舞いをもってきた。食べろ」
「おはぎか。俺の好物をわざわざありがとう。辛い物好きなお前には、買うのもきつかったんじゃないのか?」
「恋次に買わせた」
「なるほど」
長い白髪の、白い肌をした浮竹も容姿がかなり整っているが、白哉も負けていなかった。
白皙の美貌は、気品があり、気高い。
二人並べば、大輪の花が咲いたようだと、恋次は思った。
「浮竹隊長、どうかお大事に」
「ああ、ありがとう」
今まで何度か浮竹が会いにきたり、会いに行ったりするのを見てきた。
嫉妬というわけではないが、やはりあまり気分のいいものではなかった。
「隊長、浮竹隊長とは長いんですか」
「子供の頃から、たまに面倒を見てもらった。兄のようなものだ」
父というほどには、まだ年齢は離れていない。
白哉は幼い頃に父を戦死でなくしている。先代の当主銀嶺が、親代わりだった。
「やっぱり、長いこと一緒にいる人が羨ましい。隊長の子供の頃か。かわいかったんだろうなぁ」
少年時代は、冷めやすく熱しやすかった。
よく、夜一にからかわれては、瞬歩で追いかけっこののような真似ごとをしたものだ。
「浮竹に嫉妬などするなよ」
「う」
「あれは、私の兄のような存在だ。そんな存在に嫉妬するだけ、無駄というもの」
「でも、嫉妬しちゃいます」
浮竹は、京楽とできているという噂をよく耳にする。
白哉とできることはないだろうが、それでも自分の知らないところでよく会っている二人の存在を見つけると、嫉妬心が沸いた。
「隊長は、もっと俺だけをみてください」
「戯言を・・・・・」
恋次は、本気だった。
「隊長は、戯言だというけど、俺は本気ですよ」
前を塞がれる。
「邪魔だ、どけ」
「好きです、隊長」
その細い顎をとらえて、口づけるすると、白哉のまゆねが寄った。
「んん・・・・」
舌と舌がからみあい、ぴちゃりと音を立てた。
「ん・・・・やめろ、恋次」
「隊長・・・・・」
「往来だ。やめよ」
凄まじい霊圧を当てられて、流石の恋次も動きが止まった。
「外では、このような真似はするな」
「俺は、別に見られて困るようなことはないっすけどね」
「朽木家に関わる問題になる。やめよ」
「わかりましたよ」
ふてくされる恋次を放りだして、白哉は来た道を戻る。
「執務室でなら、時折なら許す」
その言葉に、まるで尻尾をふる犬のように恋次が喜んだ。
「隊長、大好きです!」
抱き着いてくる恋次から距離をとりながら、白哉は何故こんな、恋次のような副官をすきになっってしまったのだろうかと思いながら、空を見上げるのであった。
風邪はあげれません
今年の冬は風邪が流行った。インフルエンザも流行ったが、幸いなことに白哉のはただの風邪であるらしかった。
治りが遅く長引いていた。
「隊長、大丈夫っすか?」
「大丈夫と言いたいところだが、あまり芳しくなはない」
ごほごほと咳き込んで、まるで浮竹のようだなと、ふと白哉は思った。
浮竹はこんな咳の辛い状態をいつも抱えてるのかと思うと、脱帽する思いだった。
布団に横になっていたが、恋次がきたので半身を起こしていた。
「昼、何か食べました?」
「粥を食した。薬も飲んだ。医者にも診てもらった。後は、自然治癒に任せるしかない」
まさか、ただの風邪で4番隊にかかるわけもいかないので、白哉は風邪が長引いてるために、職務を休みながら自宅で療養生活を送っていた。
「りんご剥いたんですけど、食べれますか」
「ああ」
かわいくウサギカットにされたりんごを見て、ふっと、小さな笑みをこぼす。
「はい、あーん」
「何のつもりだ。一人で食べれる」
「まぁまぁ。はいあーん」
そうしないと、いつまでたっても終わらないだろうと感じて・・・恋次はしつこいから。
素直に口を開けると、りんごを放り込まれた。
少しだけ甘い味が口に広がる。
甘いのは嫌いだが、たまにはいいかと思う。
「はい、あーん」
そうやって、1個分のりんごを食べさせられた。
2個目を剥いていくので、白哉が声をかける。
「もう、りんごはいらぬ」
「あ、俺が食べるんす」
「それよりも、うつるかもしれぬ。早々にでていけ」
「いやです。今日は隊長の傍にいたい」
もう、1週間も会っていなかった。
寂しさは募り、こうやって会いにきたのだ。
「ん・・・・」
少し、熱いと感じた。
「隊長、顔赤いですよ。熱あるんじゃないっすか」
「ふむ・・・・・少し、あるようだ」
「寝てください!濡れたタオル、用意しますから」
「それより、薬箱から解熱剤をとってほしい」
薬箱を探して見つけて、解熱剤をとってもってくる。水の入ったコップを渡すと、白哉はそれを飲んだ。
「少し寝れば、熱も下がるであろう」
「じゃあ寝てください」
「貴様は戻れ」
「嫌です。隊長の顔を見ていたい」
「眠った私を見ていても、つまらぬであろう」
「いや、いろいろと想像するから、大丈夫です」
「貴様・・・・下劣なことを考えているのではあるまいな」
「さぁ?」
白哉はため息をついた。
「こちらにこい、恋次」
「はい」
ちゅっ。
頬にキスを受けて、恋次が目を見開く。
「貴様にかまってやれぬ、詫びだ」
「唇にもしてください」
「調子に乗るな。それに、風邪がうつる」
「隊長からもらえるなら、風邪でもいい」
「愚か者」
ぴしゃりと、そう言われた。
熱が上がってきたのか、白哉は咳込みながら、布団に横になった。
額にひんやりとしたものが当てられて、ふと目を開ける。
恋次が氷水で冷やしたタオルを白哉の額に置いたのだ。
「すまぬ・・・・」
「いいんすよ」
解熱剤に入っていた、睡眠成分のせいか、白哉はすーっと深い眠りに落ちていった。
「ん・・・何時だ」
「午後の5時です」
「まだいたのか・・・・仕事はどうした」
「今日は休暇をとりました」
「隊長である私がいないというのに、副隊長の貴様までいないと・・・・」
「何、今まで戦時中もそんな日が多々とあったので、平気っすよ。それより、熱さがりましたよね?」
聞かれると、確かに熱は下がっていた。
「大分、風邪は癒えたようだ。明日から、通常通り仕事に戻る」
「そうですか」
恋次は嬉しそうだった。
「貴様も、風邪などひかぬようにな」
「大丈夫、風邪とかほとんどひいたことないんで」
真冬でも、薄い死覇装一枚の恋次は、とにかく元気だ。
健康すぎて、白哉も少し羨ましくなるくらいだ、個人的に親しい浮竹に、その元気を分けてやりたいと思うのだった。
緋真の墓参り
「何故、貴様までついてくる」
「だって、隊長が愛した人でしょう?」
朽木家の者が代々葬られる廟堂に、白哉と恋次の姿があった。
白哉は、本当なら一人で訪れるはずが、途中で恋次と出会ってそのまま恋次がついてきたのだ。
「ルキアに、似てましたか?」
「見た目は実の姉妹だから、そっくりだ。だが、性格が違う。緋真は、陽だまりのような人だった。ルキアは、太陽そのものだ」
「ルキアを、陽だまりにしたような人か・・・・・」
想像できなかった。
ルキアは芯が強く、流魂街にいた頃からどこか気品があって、男言葉を使うせいもあり、どこか少年のような形をもっていた。
「ルキアが、陽だまり・・・・」
「ついたぞ」
「うわ、立派だな」
廟堂は、立派なものだった。
中に入り、緋真の眠っている墓の前にきて、緋真が好きだった梅の花をそえた。
「緋真、ルキアは元気にしている。この通り、私も元気だ」
「緋真さん、隊長は俺がもらっていくけど、悪く思わないでくれよ」
「そのような戯言を・・・・・」
恋次の手をはたく。
「緋真、他の男に体を許しているといえば、お前はどんな顔をしてしまうのだろうな。こんな情けない夫を、許してくれ」
「緋真さん、隊長は責任をもって俺が幸せにするんで、天国から見守っていてください」
「また戯言を・・・・・」
黙祷を捧げて、緋真の好きだった食べ物をそえて、廟堂の外に出た。
「んっ」
恋次に、いきなりかき抱かれ、舌が絡み合う口づけをされて、白哉は眉をしかめた。
「緋真が見ているかもしれないような場所で、このような真似を・・・・」
「見せつけてるんすよ」
「貴様、切られたいのか?」
「俺を切ったら、隊長の体を慰めてくれる人がいなくなりますよ」
「戯言を・・・・」
ぷいっとあっちの方を向いて、白哉が歩いていく。
その後を、恋次が追いかける。
「いつか、絶対緋真さんを忘れさせてみせる!」
「そのようなこと、この世界が滅んでもありえぬ」
白哉の心の奥深くには、今も緋真がいる。
いつか、追い出してみせる。
追い出すのが無理なら、片隅にいかす。
「緋真・・・愛している」
廟堂を遠くからみながら、白哉は陽だまりであった、あの愛しい妻のことを思うのだった。
愛しているのは
情事の後、湯浴みをして寝ている白哉の顔を眺めていた。
恋次も同じ寝具で眠っていたのだが、ふと目が覚めたのだ。
白哉の白い肌は、男のものとは思えないくらいすべすべしているのを、知っている。
その夜烏のような漆黒の瞳が、潤み、熱を孕む様を知っている。
桜色の唇が、「恋次」と名を呼び、甘い喘ぎ声をあげるのを知っている。
その男のものにしては端正すぎる顔が、イクときの顔を知っている。
「ん・・・恋次?」
「ああ、目がさめたんすか。まだ朝方の4時です。もっと眠って下さい」
「こっちにこい」
言われるままに、傍によると、白哉が甘えるようにすり寄ってきた。
「貴様も、寝ろ」
「いや、なんか目がさえちゃって・・・・」
白哉が半身を起こして、恋次に口づけた。
「隊長?」
「眠れるように、おまじないだ」
「隊長・・・あんた、ほんとにかわいいっすね」
「かわいいは、余計だ」
つんと拗ねる様が、余計にかわいいのだ。
「そういえば、今日は皆既月食でしたよ。見てないし、もう、流石に見れないでしょうけど」
「それなら、貴様が寝ている間に見た」
「ええっ、起こしてくださいよ!」
「するだけして、爆睡している貴様を起こすほど、寛容ではない」
「するだけって・・・・・あんたも、十分に楽しんだでしょう。そうじゃなきゃ、こんな関係続けてない」
「私は、貴様のことを好いてはおるが、愛してはいない」
「隊長・・・・・」
知っているのだ。
この関係が、永遠に続くわけではないと。
白哉が、恋愛感情で愛しているのは、今は亡き緋真のみ。
それを知っていても、この関係を続けている。
白哉はルキアを愛しているが、それは家族愛だ。
「いつか、あんたに愛していると、言わせてみせる」
「ふ・・・言わせてみせろ」
もう睦みあったので、抱きしめたりキスをしたりしながら、褥の上で横になっていると、二人ともいつの間にか眠ってしまっていた。
いつか。
あんたの口から、「恋次、愛している」そう言わせてみせる。
そう強く思う恋次だった。
にゃんにゃんにゃん
酒を飲み交わしあっていると、じんわりと体があったかくなってから、急にかっと体が熱くなった。
「なんだ・・・・・何か変・・」
一緒に酒を飲んでいた京楽は、浮竹の変化にごくりと唾を飲み込んだ。
「にゃあああ」
猫のように鳴いた浮竹の頭には猫耳が、お尻には猫の尻尾が生えていた。
「何これ・・・やっ、体が熱い・・・京楽・・・」
京楽に助けを求めて抱き着いた。
多分、何かの薬を盛られたのだと分かってはいたが、まるで発情期の猫のように体が疼いて仕方なかった。
「京楽・・・・助けて」
京楽は、浮竹を抱き上げると、用意していた褥に座らせた。
「んっ」
耳をやわやわとさわれると、下半身に熱が集まるのが分かった。
それでも、我慢する。
「あっ」
尻尾をさわられると、それだけでいってしまいそうになった。
京楽は、意地悪だ。
耳と尻尾ばかり触って、肝心なところに触れてくれない。
10分くらい、耳と尻尾ばかりを触られていて、いい加減限界が近づいてきた;
「きょうら・・・・触って・・」
立ち上がってしまった花茎に、京楽の手を誘導する。
京楽は、待ち望んでいたように、袴をずらして隙間から浮竹のたちあがり、先走りの蜜を垂らす花茎をいじった。
「んあっ」
少しいじられてしまっただけで、いきそうになる、
「んあう」
そのまま、ぐちゃぐちゃうと音をたてて扱われて、鈴口に爪をたてられて、浮竹は衣服をきたまま射精してしまった。
「あっ・・・・・服が・・・・ああっ」
隊長羽織を脱がされ、死覇装まで抜かされた。濡れてしまった下着までぬがされた。
ゆらりと、もの欲しそうに猫の尻尾が揺れた。
「にゃあって、いってみて?」
「にゃあ・・・・んんっ」
キスをされて、浮竹は口づけに夢中になった。
ぴくぴくと、猫耳が動いた。
その耳をさわり、耳朶をかみ、耳に舌をいれられた。
「んあっ」
さわさわと、胸を撫でる手が、突起をつまむ。
「あう」
「たまには・・・・・ね?」
死覇装の帯で、手首を戒められた。
「やあっ、こんなのいやっ」
瞳を閉じさせられた。
「んっ」
舌を出して、京楽の舌を追った。
全身を、愛撫してくる手。体が熱かった。
脇腹をなであげられて、猫の尻尾が揺れた。
「もうこんな濡らしちゃって・・・・」
「やっ」
潤滑油ので濡れた指が、先走りの蜜で濡れてしまった蕾に、ぐちゅりと入ってくる。
「ああっ!」
入ってきただけで、射精してしまった。
こりこりと前立腺を刺激される。
「にゃあっ」
啼く声まで、猫が混じる。
「あ、あ、あ、あ・・・・・」
前立腺をくちゅくちゅと音を立てて、指で刺激されていると、また花茎が立ち上がった。いくらなんでも、何度もいきすぎなのに、止まらない。
「んっ」
指が引き抜かれて、熱い灼熱が宛がわれて、尻尾が揺れた。
待ち望んだ衝撃を与えられえて、いってしまった。
吐精した浮竹を、そのまま突き上げる。
「んあーー!」
前立腺をすりあげられて、いってるのに中でもいってしまった。
「ひうっ」
何度も突き上げられて、まただらだらと先走りの蜜を零した。
「やあっ、この体変っ」
何度もいってるのに、まだ精を放つ。
多分、精強剤の成分も入っているのだろうか。
「にゃあっ・・・・んあっ」
京楽の与えてくれる刺激だけでは物足りなくんて、自分からいい場所に当たるように体を動かした。
「好きだよ、浮竹」
「きょうら・・・・おれも、すき。にゃあっ」
ゆっくりと犯された。
時間をかけて、何度も緩く浅く、時に強く深く突き上げられた。
「あ、あ、あ・・・・・・」
しっぽがゆらりと揺れて、耳がぴくぴくと動いた。
「あ、またいく・・・・・やああああ」
前立腺をすりあげられて、5回目になる射精を迎えた。でも、流石に限界で、もう花茎はだらだらと先走りの蜜を零すだけで、吐精はしなくなった。
それなのに、もっと何度でもいきたくなった。
「京楽・・・・・俺の中で、いって。んああああ」
京楽が、一際大きく突き上げると、京楽もやっと1回目の熱を浮竹の中に注いだ。
「にゃあっ・・・・んあっ」
ずちゅずちゅと、突き上げられた。
結合部は泡立ち、お互いの体液でどろどろにになっていた。
「ああん・・・んあ」
前立腺ばかりをすりあげられる。
快感で、涙が零れた。
「ああ、いっちゃう!」
もう、ドライのオーガズムでいくしかなかった。
びくんびくんと体を痙攣させる。
手を戒められているので、京楽に抱き着きたくても抱き着けない。
「京楽・・・・・手の、取って・・・キスして・・・・・・」
京楽は、言われた通り手を戒めていた布をとった。
京楽に抱きついて、その腰を足で挟んだ。
「京楽・・・・・もっと・・もっと犯して」
キスを受けながら、もっとと強請った。
京楽は、望み通り犯してくれた。
ゆっくりだった交わりが、激しくなる。
「あん、んあ!」
何度も前立腺をすりあげて、突き上げてくる。
「あ、あ、あ・・・・・・・」
ゆらりと、猫のしっぽが物欲しそうに揺れる。
「十四郎、かわいい」
「あ、春水・・・・・にゃあああ」
また、ドライのオーガズムで達してしまい、飲み込み切れなかった唾液が顎を伝った。
「んう」
激しく犯されているのに、気持ちいい。それしか考えれなくなる。
「あ、気持ちいい・・・ああ!」
無理やり立ち上がらさせられて、立ったまま欲望を蕾で受け止める。
くちゅくちゅと音をならして、前立腺をつきあげてくる。
「ああっ!」
ぐちゃぐちゃと、犯されて、体は喜んでいた。
太ももを肩まで抱え上げられて、貫かれた。
「あーーーーーーー!」
もう、言葉にできない。
快感で、頭が真っ白になる。体の疼きが、なくなってくる。
2回目の京楽の欲望を注ぎ込まれて、浮竹も満足した。
「にゃあ・・・・」
ゆらりと、尻尾が揺れる。
そして、意識を失った。
「ん・・・・・・」
気づくと、もう、体には媚薬の影響は残っていなかったが、猫耳と尻尾はそのままだった。
「京楽の、バカ」
「きもちよかった?」
「にゃあ・・・・・」
「猫になる媚薬。高かったんだよ。屋敷一軒分ぼったくられた。でも、僕も満足したよ」
「にゃあ・・・・・おい、この・・・・にゃあああ。・・・・鳴き声をと猫耳と尻尾はどうにかならないのか」
「かわいいから、しばらくそのままでいてよ」
「他人事だと思って・・・・」
結局、1週間は猫耳と猫の尻尾をつけたままだった。
なので、雨乾堂から出れなくて、人前にも出れなくて、臥せっていると嘘をついた。
「にゃああ」
京楽が、猫耳をさわって、尻尾をにぎにぎしてくる。
触れるのは、京楽だけ。
京楽と浮竹は、猫耳と猫の尻尾があるうちに、もう一度体を重ねたが、その時はそんなに乱れず、快感はあるがそれで頭がいっぱいになることはなかった。
猫耳と尻尾が消えて、やっと元に浮竹に戻ると、京楽は少しだけ残念そうにしていた。
そして、猫になる媚薬を盛られたのだと知って、1週間京楽と口を聞いてやらなかった。
半月の禁欲を言い渡すと、京楽はそんなぁと、とても残念そうにしていて、ざまぁみろと思う浮竹だった。
こちらの空気にはお帰りを願います。
「んーあと1時間」
「もう9時ですよ!死神の仕事業務始まってます!ちゃんと時間を守ってください」
「ふあーーー」
大きな欠伸をして、浮竹は起きた。
顔を洗い、遅めの朝餉をとると、10時になっていた。
「仕事でもするか・・・・・」
「今日の昼は杏仁豆腐らしいですよ。仕事がんばってくれたら、俺の分もあげます」
「さぁ、きりきり仕事するぞ!」
浮竹はその気になって、ばりばりと仕事を始めた。
ここ最近、臥せっていたので仕事が溜まっていたのだ。それを、すごいスピードで処理していく。
仕事をさぼる京楽の、その気になった仕事処理能力ほどではないが、それに勝るとも劣らぬスピードで、仕事を片していった。
昼の12時なったが、お腹がすいていなかったので、1時まで仕事を続けて、1時になって昼餉を食した。
海燕の分の杏仁豆腐をもらい、至福顔の浮竹に、海燕もなんだが心がぽかぽかした。
午後の3時まで仕事を続け、一休憩を入れる。
おはぎを食べて、お茶をのんで、糖分を吸収してまた仕事を処理し始めた。
「・・・・・・・・・」
視線が、浮竹に突き刺さる。
浮竹は、それをないものとして扱った。
「僕さ、10時からずっとこの雨乾堂にいるんだよね。ここまで無視されると、怒りを通りこして、悲しみも通りこして、何かを悟りそう」
「空気がしゃべった。おい、海燕、あの空気に餌をやれ」
ぐーぐーと、お腹をならす京楽に、海燕は昼餉をあげた。
それを食し終わって、京楽はずーっと浮竹を見ていた。
浮竹はその視線を無視して、仕事を続ける。
「ねぇ、浮竹。君、そんなに涅隊長の媚薬盛ったこと、怒ってるの?」
「空気がしゃべった。おい、海燕、あの空気にお茶とおはぎをやれ」
「はいはい・・・・・空気京楽隊長・・・うぷぷぷぷ」
「副官にまで馬鹿にされる僕って一体・・・・・・」
がっくりとしながらも、浮竹が空気としてでも扱いだしてくれて、ほんのりと嬉しさを感じ出す。本気で怒ると、1週間は口を聞いてくれないのだ。
「空気がね、こう言ってるよ。君も十分楽しんでいたようだから、そこまで怒らなくていいじゃないって」
「うるさい空気だな。海燕、窓をあけて寒気してくれ。空気がうるさい」
「うぷぷぷぷ。京楽隊長、媚薬なんて浮竹隊長に盛るから・・・・」
「でもね、院生時代から何十回と盛ってきたんだよ?今更じゃない」
「ああ、この空気が!」
べしっと、座布団を投げられた。
6時になって、死神の業務が終わると、京楽が土下座した。
「ごめんなさい。しばらくの間、もう媚薬は盛りません」
「本当だな?信じるぞ。約束破ったら、また空気だからな!」
媚薬を盛った後の怒りが空気くらいなら、まだまだ大丈夫。そう京楽は思った。
はじめて媚薬を盛ったのは、院生時代。怒りまくられて、そして浮竹は熱を出した。それからはしばらく媚薬はつかわなかったが、学院を卒業して死神の席官になった頃、あまりに淡泊な性関係にまた媚薬を使った。
隊長になってからは、時々。そして、涅マユリという媚薬の種類まで選べる供給源をもって、年に2回ほど、媚薬を盛った。
浮竹は、年に2回ほど、こうして怒りだす。
ちなみに前回は、ちょうど半年前で、1週間口を聞いてもらえず、半月の禁欲生活を強いられた。
それに比べたら、今回は軽い。
何せ、盛った媚薬が普通のものだったからだ。
半年前に盛った媚薬は、猫の耳と尻尾がはえて、盛りの季節を迎えた状態になるものだった。
思いっきり楽しんだけど、反動はでかかった。
「京楽、俺はな、別にお前との関係をやめるつもりはない。愛しているし、愛されていると思う。なのに、なんで媚薬なんて盛えるんだ」
「いや、君、媚薬盛るとすごいから。思い出すだけで鼻血でそう」
「海燕、この空気にお帰りになってもらうように言ってくれ」
「はい。すみません、空気さん、隊長がこういっているので、帰ってもらえますか」
「浮竹、愛してるよ!」
「んあう」
いきなり、舌が絡むキスをされて、きわどい部分を触ってきた。
「やっ・・・・・」
「浮竹、僕だけのものだ。空気はね、いつでも君を欲しがっているから」
「やあっ」
隊長の声は腰にくるものがあるので、海燕は耐えた。
「んっ、空気・・・・分かったから、やめろ、空気・・・・京楽」
潤んだ瞳で京楽を見つめる浮竹は、京楽の手練手管で落とされてしまった。
「はぁっ・・・・」
何度も抱き締められて、舌が絡みあうキスをされた。浮竹は、京楽とのキスが好きだった。
とろんとした瞳で、京楽を見つめる。
「京楽のバカ・・・・・」
ぽふりと、その体に体重を預けて、浮竹は京楽を許した。
「僕はバカだよ。君のことになると、一途なバカになるんだ」
幸いなことに、行為に及ぶわけではなさそうなので、海燕も安心した。
この二人は、海燕がいても、それこそ海燕を空気のように思って盛りだすから、始末が悪い。
「じゃあ、空気改め京楽隊長、今日はお泊りじゃないので、帰ってくださいね」
「海燕君まで、辛口だなぁ」
「そりゃ、敬愛する上司に媚薬なんて盛るやつを、普通には扱えません」
「浮竹、今日は僕ももう帰るから。また明日ね」
「ああ・・・・」
去り際に、ちゅっと音がなるキスを頬にして、京楽は去って行った。
「はぁ・・・・・」
海燕が、溜息を零す。
「隊長、怒ってもやっぱ、最終的には許すんですね。俺なら、絶対別れてるけど」
「京楽は・・・悪い奴じゃあないんだ。まぁ、悪乗りをする時もあるが、優しいし、包容力はあるし、見た目はいいし、俺に甘いし・・・」
「何気にすごいのろけられてる」
「はぁ。疲れたから、ちょっと早いけど湯浴みしてくる」
「じゃあ、夕餉の用意しときますね」
海燕は、浮竹の副官であることを―——嫌になったりはしないが、やはり京楽のことは上官である浮竹のように素直に、尊敬とか、そういう気持ちを抱けそうにはなかった。