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禁忌という名の2

「こんなこと、許されると思っているんですか!」

七緒が、一番最初に糾弾してきた。

「浮竹隊長は、死んだんですよ!?」

「死んでないよ。ここにいる」

一番隊の執務室で、お茶を飲んでいた浮竹は、不思議そうな瞳でこちらを見てきた。その翡翠の瞳と同じ、形見にと渡された極上の翡翠の石を、クローンの浮竹に渡すと、浮竹はこれは自分のものだといって、手放さなかった。

「あの人は違う!」

七緒が、涙を零しながら京楽に縋りついた。

「七緒ちゃん・・・・・」

「もう死んだんです。あの方は・・・・・・どうして、受けいれないんです。どうして、死者を冒涜するような真似をするんですか」

その言葉に、京楽の胸がずきりと痛んだが、もう遅いのだ。

「伊勢副隊長、その辺にしてやってくれないか。京楽が困っている」

「あなたは・・・・・」

あなたは偽物です。

そう言おうとして、言えなかった。

目の前の浮竹は、本当に浮竹そのものに見えて。見た目どころか、少し記憶があやふやなところはあるが、生前の浮竹の記憶をもつという。

そんなの------------まるで、浮竹が生き返ったようではないか。

なんのためにみんな泣いて、死を受け入れたのだと思っているのだろう。また京楽に対する怒りが沸いてきて・・・・・でも、これ以上責めれなくて、七緒は執務室を後にした。

「ここにくるみんなが、まるで俺が死んでいるようなことを言うんだ。おかしいな」

浮竹は、好物のおはぎを食べながら、愛しい京楽の傍に寄り添った。

「俺はここにいるのに」

「そうだよ。君は、今この時を生きている」

とても愛しそうに、浮竹に触れる京楽。

まるで、狂った音を奏でるオルゴール。


また何人かの隊長がやってきて、七緒と同じ様な事を言っては泣き、あるいは怒り・・・・・。

「おい京楽!」

「あ、日番谷隊長!」

日番谷がきたことが嬉しくて、浮竹はその傍にきた。

「浮竹、お前はあっちにいってろ」

「みんなして、意地悪だな・・・・・」

「いいから、少し席を外せ」

「分かった。散歩でもしてくる」

浮竹は、執務室を出ようとした。その手を、京楽が引っ張った。

「だめだよ!浮竹、僕の傍を離れちゃだめだ!」

「どうしたんだ、京楽・・・そんなに、俺を一人にしたくないのか?」

「そうだよ。奥の寝室にいって。すぐに戻るから」

「わかった・・・・・・・・」

しぶしぶ、浮竹は京楽の言葉に従った。


最近の京楽は変だ。雨乾堂もなくなって、行き場所もない。雨乾堂には、浮竹の墓があるという。俺はここにいるのに、墓とはなんなんだろう?


「京楽てめぇ、歯食いしばりやがれ」

日番谷は、京楽を殴った。体が小さい分、パンチにあまり威力がこもらなかったが、それで隊長クラスだ。京楽は倒れなかったが、日番谷がもう一度殴ろうすると、ひょいっと避けた。

「一発目はわざと食らった。でも、二発目はもう食らわない」

「てめぇ、浮竹を愛してるからって、やっていいことと悪いことの区別もできねーのか!」

「できるよ、それくらい。僕は浮竹を、あの子を愛してる。それだけが全てだ」

「それがだめなんだと、言ってるんだ!」

「じゃあどうしろと?あの子を殺せと?」

「それは・・・・・・・・」

日番谷は、浮竹と同じ緑色の瞳をもっている。でも、輝きが全然違う。浮竹が翡翠なら、日番谷はエメラルドだ。

「もう、後には戻れないんだよ。僕は総隊長だ。僕はあの子を13番隊隊長にはしない。あの子を外には出さない。それで、十分だろう?」

「なんでてめぇは!」

日番谷は、怒りに拳を震わせた。

「もう、戻れない。僕は狂っているんだ」

日番谷を追い出して、京楽は浮竹のいる寝室までやってきた。

「京楽。どうして、みんな俺が死んだっていうんだ?」

翡翠の瞳で、小首を傾げてくる浮竹は、とても可愛かった。

「君は、一度死んだんだよ。そして生き返った」

「?・・・・・・・よくわからない。俺はミミハギ様を失って病で死んで、でも生き返った?そうとらえていいんだな?」

「そう、それでいいんだ。全ては、僕の責任だから」

君はクローンで、死んだ浮竹の身代わりだよ。

そんな残酷なことは言えなくて。


浮竹を、ベッドに押し倒した。

「あっ、京楽・・・・・また、するのか?」

浮竹を手に入れてから、毎日のようにその体を抱いた。それでも飽きたりない。

「ああっ京楽・・・・・」

「十四郎・・・・愛している・・・・・」

浮竹の体にいくつも痕を残す。

「春水っ!」

果てて、気を失ってしまった浮竹を抱き締めた。京楽は愛しい者を二度と手放さないと、浮竹が自分の傍から離れるのを許さなかった。

外に出る時は、いつも一緒だった。

浮竹からは、いつもと同じ花の甘い香がした。

浮竹の匂いだ。

京楽は、涅マユリに命令して、浮竹のクローンを作りだした。そこに、特別な義魂丸をいれた。
浮竹を愛し祝福していた花の神から、浮竹という個体を保つためにと、与えられたものだった。

浮竹は赤子の頃、両親がこの命が長く続きますようにと、花の神に捧げられた。花の神------------------別名、椿の狂い咲きの王は、浮竹を愛児として愛した。
その証に、浮竹の体から花の甘い香がした。

今の浮竹も、花の甘い香がした。

この子も、花の神にも愛されている。そう思うだけで、心が穏やかになる。

たとえそれが罪でもいい。

もう一度、浮竹とこの世界を生きれるなら。総隊長という地位も、金も、何もいらない。

「浮竹・・・・・・愛しているよ」

狂った音を奏でるオルゴールは、静かに音を鳴らす。

本来の技術でも、浮竹の記憶と性格をもつ義魂丸は作れた。だが、花の神から贈られたものは特別なのだ。

本来の技術で作られたものは、長くもたない。だが、花の神から贈られたものは、狂うこともなく浮竹としての個体を保ち続ける。

京楽は思う。

世界で、二人きりになれてしまえばいいのにと。

いっそ、浮竹の手をとって、逃げ出そうか。何処か、遠い場所へ。総隊長としての責務も責任も何もかもを捨てて。

「ん・・・・喉、乾いた」

「うん、水もってきてあげるから」

「京楽・・・・どうして、俺は一人で行動してはダメなんだ?どうして、一人で外に出てはだめなんだ?」

京楽は、浮竹にペットボトルに入った水を与えながら、ただ静かに微笑む。

「君が、とても大事だからだよ」

「俺も、お前が大事だ・・・・・・」

二人は、もつれあってベッド倒れこむ。

「「愛してる」」

重なり合う言葉。



ふと、花の神は笑った。愛しい愛児を泣かせるのなら、取り上げようと思っていたが、狂おしいまでの愛を見せられて、笑った。

「あの世界で愛児は二人になり、永久(とこしえ)を与えた。さて、この世界ではどうなる--------------?」

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禁忌という名の

神掛を行い、ミミハギ様を失った浮竹は、肺の病を悪化させていく一方だった。

もう、立って戦うこともできないだろう。

ユーハバッハを打ち取った。黒崎一護が。大戦は終了した。

でも尸魂界には癒えない傷ができた。山本元柳斎重國、卯ノ花烈。そして今まさに、浮竹十四郎もその仲間に入ろうとしていた。

「ぐっ・・・・・・・」

「しっかり。息をして」

「ごほっごほっ」

鮮血を散らして、浮竹は今日も吐血する。

ここ毎日ずっとだ。もう何も食べれなくて、点滴と定期的に行われる回道の手当てだけが、浮竹をかろうじでこの世にとどめていた。

「きょうら・・・・く・・・・・」

「どうしたんだい、浮竹」

浮竹は、ずっと身に着けていた翡翠のお守り石を京楽に渡した。

「これを俺と思って・・・・・もっていて、くれ・・・・・・・」

「だめだ、いかないで浮竹。僕を一人にしないで!」

「俺は、幸せだった----------------みんなに出会えて、そしてお前と巡り合えて」

翡翠の視線は、京楽を見て、それから天井を見上げた。

雨乾堂で最期を迎えたい。

その言葉通り、今いる場所は雨乾堂だった。

4番隊から緊急医療用の器具を導入されている。4番隊で新しく隊長となった虎徹勇音が、浮竹に回道を行って、なんとか命を保たせていたが、それも限界にきていた。

「愛してる----------------」

「脈拍低下!」

「酸素マスクを!」

「浮竹ーーーーーーー!!」

京楽の叫びは虚しく、浮竹はそのまま意識不明に陥った。

もう、雨乾堂では、たくさんの人が意識を失ったままの浮竹の手をとって、頑張れと励ましていた。

「そろそろ、休ませてあげないと・・・・」

京楽は、静かな夜に、浮竹の点滴や酸素マスクを外して、その体を雨乾堂の外に抱き上げながら
移動した。

穿界門が開く。

京楽は、浮竹を連れて現世にいった。

「ほら、星がよく見える」

前の日の、天の涙はもうない。晴れた夜空が広がっていた。

「君と、よくこうして星を見に行ったね。酒を飲み交わして・・・・」

つっと、京楽の黒い瞳から涙が零れ落ちた。

「できれば、一緒に引退して、おじいさんになるまで一緒にいたかったなぁ」

もう、京楽は8番隊隊長ではない。総隊長だ。

弱弱しい呼吸の、浮竹の青白くなった唇に、自分の唇を重ねた。

ぽとりぽとりと、京楽の目から涙が零れ落ちて、浮竹の頬を濡らした。

「京楽・・・?」

「浮竹?」

「多分・・・・・これが、最後だ。これを・・・・」

懐から、何かの包みを取り出して、浮竹はそれを京楽に渡した。

それは、一房切り取られた浮竹の白い髪。

「翡翠の石は、お前からもらったものだから・・・・・・せめて、これだけでも・・・・」

浮竹の、肋骨の浮いた痛々しいまでに細くなった体を抱き締める。

涙が止まらなかった。

浮竹からの甘い花の香が強くなる。


「汝----------愛児を求めるか?」


「僕は浮竹を求める」

「たとえ、偽りの愛児でも-------------?」

ふわりと、花びらに包まれた。浮竹が散っていく。

「浮竹・・・・・ずっと、一緒だよ」

「京楽・・・・・・・」

「たとえ、それが禁忌でもいい」

京楽は、散っていく浮竹を、ずっと抱き締めていた。

星が落ちる---------------。

世界が廻りだす。


その日、浮竹は息を引き取った。

尸魂界に戻った京楽の手で、看取られて。


その日から、何かが狂いだした。

いや、狂っていたのは京楽ただ一人。

雨乾堂に作られた浮竹の墓の前にきて、一人で酒盛りをする京楽は、どこかが狂っていた。

「もうすぐ、また君と会えるね---------------」

浮竹の墓に、値の張る高級酒をかけた。

そして、12番隊の、技術開発局に足を向ける。



「順調かい?」

「ああ、京楽総隊長・・・・順調だヨ。でも、こんなことをして、咎められないと思っているのかネ?」

「罰は、いくらでも受けるさ」

目の前には、液体の入った大きなカプセル状のもの。胎児のように、丸まっている人の姿があった。長い白髪と白い肌が特徴的だった。

「おや、もう目覚めるようだヨ」

カプセルの液体が抜かれる。

裸のその体に、京楽はもってきていた死覇装を着せた。

「おかえり、浮竹」

「俺は・・・・誰?お前は・・・誰?」

「君の名は、浮竹十四郎。僕の名は、京楽春水。君は、僕の全てだ」

「全て?・・・・記憶が混濁していて・・・京楽?」

浮竹の白い髪から、霊骸のクローンを作りだした。そして、浮竹の記憶をもつ義魂丸を入れた。

それは、偽りの浮竹十四郎。本物は、もうこの世界にいない。

「さぁ、いこう」

京楽は、浮竹の手を取って歩きだす。

どんなに弾劾されてもいい。浮竹と、一緒にいられるなら。

たとえそれが、禁忌という名の果てにできた戯れの命でも。

もう一度、君を愛せるなら------------------。


浮竹からは、甘い花の香がした。

花の神に愛されている証拠だ。花の神、別名椿の狂い咲きの王は、時空を渡る。ある世界で、浮竹と京楽を愛して、もう一度、命を授けた。

この世界では、命は授けなかった。でも、京楽が望んだから、愛児を----------浮竹の元となる、義魂丸を授けた。

椿に狂った花の王は、同じように一つの花に狂った孤独な王を、静かに見つめる。

王は京楽。花は浮竹。

禁忌の扉は開かれた。

さぁ、狂った愛を奏でよう。

京楽は、浮竹の手を離さずに歩き出す。浮竹には記憶があるが、それはとてもあやふやなもので。浮竹の世界には、京楽だけが色濃く残っていた。

「京楽」

「どうしたんだい、浮竹?」

「愛してる------------」

ただ、その言葉をまた聞きたくて。

「僕もだよ」

星が落ちる。

空が泣く。

世界が廻る。

全ての果てに、たどりつくのは花に狂った王。


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「好きだよ」

桜の木の下で告白されて、「俺も好きだ」と浮竹は答えた。

想いが通じ合って、それから--------------?



ずきずきと痛む頭に手をあてた。二日酔いなんて初めてではないだろうか。

「え、嘘でしょ」

ベッドの隣には、泣きはらした痕が痛い痛しい、浮竹が寝ていた。

「え、ほんとに?」

自分も浮竹も下着姿だった。浮竹の体中のいたるところにキスマークが残っている。覚えていたのは、二人で飲み屋にいって浴びるほどの酒を飲んだ。

そこまでだった。

確かに、好きだといったし、好きだと言われた。

でも、大切な初めてをこんな形で迎えるなんて、最悪だ。何せ、覚えてないのだ。

「浮竹、浮竹?」

揺り起こしてみると、浮竹はうっすらと目を開けた。

「僕、君に酷いことをした。なんていえばいいのか・・・・」

「覚えていないんだな」

浮竹の翡翠の瞳を見ていられなくて、目を逸らす。

浮竹が、触れるだけのキスをしてきた。

「大丈夫、俺も覚えていない」

親指を立てられた。

ぐっじょぶ。そう言いたいのだろう。

お互いの初めてを、酒のせいで台無しになるなんて、酒はほどほどにしようと思う京楽だった。

でも、本当に酒のせいなのだろうか。自慢じゃないが、今まで浴びるように飲んでも二日酔いになることはなかった。

浮竹といえば、部屋が相部屋なので、服を着て自分のベッドにもぐって、もうひと眠りしようとしている。

ムードも何もあったもんじゃない。

「浮竹、もう一度しよう」

このまま終わるのが悔しくて、浮竹をもう一度ちゃんと抱きたくてそういうと、浮竹が慌てた。

「いや、俺はもういい」

「そんなこと言わないで」

「もう無理なんだ」

「体に負担はかけないから」

「京楽、言うことを聞け!」

浮竹に頭を殴られたが、そんなことで引き下がる京楽ではなかった。

「君とのはじめを覚えていないなんて、恋人失格だ。もう一度、初めてをやりなおそう」

「違うこれは実は・・・・・・」

どっきりでした。

そう言われて、京楽は黒曜石の目を開いた。

「はぁ?」

「いや、お前がいつも廓の女とか買っているから、腹いせに・・・・お前の酒に眠り薬をまぜた」

「僕、浮竹と想いが通じ合ってから廓には・・・・行ってるけど、酒しか飲んでないよ」

「え」

今度は、浮竹が驚く番だった。

「女を、買っているんじゃなかったのか」

「違うよ。酒の酌をしてもらってるだけだよ。勘違いさせてたんだね。辛い思いをさせてしまったね」

そう言って、浮竹の服を脱がそうとする京楽を、浮竹は蹴り落とした。

「酒の力で途中まではしたけど、俺にはまだ覚悟がないんだ。すまないが、抱かれてやるつもりはない」

「そんなぁ・・・」

京楽は、情けない声をあげた。



「・・・・・ということがあってね」

「・・・・・・・そうか」

日番谷は、茶をすすっていた。もう大分慣れたので、少々のことなら動じない、はずだった。

「酷いんだよ。その後、浮竹ったら本当に眠ってしまって。どっきりだかなんだか分からないけどさ。だから、その夜に襲ったんだ」

ブーーーーー!

日番谷はお茶を吹き出していた。

「そうだぞ、日番谷隊長。この男、嫌だって言ったのに、あの時無理強いを・・・・・」

「でも、結局は君もその気になってお互い気持ちよくなって終わったじゃない」

「でも、ドッキリというオチは悪かったが、何もその晩に襲ってこなくても!」

「君がその気になれば、鬼道なりなんなりで逃げれたじゃない」

「それはそうだが・・・・・・」

日番谷は、なんとか平静を保とうとお茶を飲んだ。

「あの時の浮竹は凄かった・・・・ねぇ、浮竹」

「ああっ、京楽・・・・・・・」

「かわいいね、浮竹」

「日番谷隊長が見て・・・ああっ」

「おっさんどもーーーーーーーー!蒼天に座せ氷輪丸!」

ブチ切れた日番谷は、いつも通りの展開を起こす。

「きゃあああああああああ!」

長椅子に寝そべって酒を飲んだせいで飲み潰れていた松本は、それに巻き込まれて天高く昇って行った。

「ふ・・・京楽の金で、立て直せるようになったらから、いいか」

何度も執務室を半壊させるので、さすがの10番隊の懐もまずくなってきた。そこへ、京楽がお金を負担すると申し出てきたのだ。

上流貴族のぼんぼんの京楽には、腐るほどの金があった。

利用しない手はない。

そう思う、日番谷だった。
















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好きな人

「好きなんです」

「それはどうも。でも、私にはもう好きな人がいるんです」

「や、やっぱり黒崎一護ですか!

「ええ、そうなんです」

「ガッデム黒崎一護ーーーーーー!」

青い空に、男子生徒の大声がしみわたっていった。



藍染の企みが発覚した後。

現世組として派遣されたルキアは、堂々と一護の家で寝泊まりすることができるようになった。

遊子と夏梨の部屋を宛がわれたルキアは、家族の視線が集まるのも構わずに堂々と一護の部屋で寝泊まりしていた。

「勘弁してくれよ・・・・・・・」

一護は、風呂からあがって、さぁ寝ようとして自分の部屋に戻ったら、ベッドに眠っているルキアを見つけて、溜息をついていた。

ルキアも風呂上がりなのだろう。傍にいると、いい匂いがした。
一護のパジャマを勝手にきて、ちょっとめくれていて白い腹部が見えた。細い体をしているし、肌の色は白いし、紫水晶の瞳をもつルキアはかなりの美少女だ。

「ん・・・・一護・・・・・」

「なんの夢見てやがんだ」

そっと、ルキアの髪に触れてみる。まだ乾ききっていなくて、湿っていた。

桜色の唇に指をはわせてみると、ルキアはくすぐったそうに身を捩った。

「何してるんだ、俺・・・・・」:

ルキアを尸魂界で奪還して、処刑を中止させた頃から、ルキアのことが常に頭をよぎるようになっていた。

一人で処理するときも、ルキアを思っていた。

「ルキア・・・・・」

多分ではなく、確実に、一護はルキアのことが好きになっていた。

その日も、当たり前のようにルキアを腕の中で抱いて寝た。まだ、好きとさえ告げていないのに、まるで恋人同士みたいだなと思いながらも、眠りに落ちていった。



次の日、男子生徒に果たし状をもらって、屋上まできていた。

「おのれ黒崎一護!井上織姫さんという存在がありながら、朽木ルキアさんにまで想いを寄せられるとは、言語同断!たたんでくれる!」

殴りかかってくるのを、ひょいと避けて、その背中を蹴っ飛ばすと、男子生徒は屋上のコンクリートの上に転がった。

「なんだよ、ルキアに想いを寄せられるって」

男子生徒は泣き出した。

「朽木さんがいったんだ!告白して断られたから、黒崎一護が好きなのかといったらそうなんですって答えたから!お前をしばいてやろうと・・・・・・」

「はぁ?」

一護は、教室に戻るとルキアににじり寄った。

「おいルキア。お前、告白されたら俺が好きっていいふらしてるそうじゃねーか」

「あらー黒崎君、何を言っているのかしらー」

ルキアは、他の生徒もいるのでいつものように、猫を被っていた。

「こい!」

注目されるのが鬱陶しいので、ルキアを連れて屋上にくる。

「お前な、告白された時・・・・」

「一護が好きだから、そう言っている。なにか問題でもあるのか?」

首を傾げられて、一護は真っ赤になった。

「な、な、な・・・・・・俺が好きだと!」

「そうだ。私は恋愛感情でお前のことを好いておる。何か問題でもあるのか?」

「ありまくりだばかやろう!」

啓吾と水色が、屋上の扉の影に隠れて聞き耳を立てていたが、バランスを崩して一護の近くで倒れた。

「お前ら・・・・・・」

「き、きのせいだから」

「そうそう」

そう言って、二人は逃げるように去って行った。多分、今頃クラス中にルキアは一護のことが好きだとわめいているだろう。

「はぁ・・・・・もういい」

「そういう貴様はどうなのだ。私のことが好きなのであろう?」

自信に満ち溢れていた声だった。

一護も、隠す必要はないかと、ルキアを見つめた。

「俺も、お前のことが好きだ・・・・って。その携帯もしかして!」

白哉専門の携帯をとりだして、ボタンを押す。

「兄様、一護と思いが通じ合いました」

ゆらりと、殺気のこもった霊圧を感じて、一護は後ろを振り返った。

「だああああああああ、なんでいやがるううううううう!」

「兄が、ルキアと好きだというのなら、その覚悟を見せろ」

斬魄刀をぬいた白哉に、追いまわされる一護。

その姿を見て、ルキアは呟いた。

「一護と兄様は仲がよいなぁ」

「どこがだあああああああああ」

一護は、休憩時間が終わっても帰ってこなかった。










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初夜(イチルキ)

一護と付き合いだして、5か月が過ぎようとしていた。

ルキアは隊長不在を預かっており、相変わらず忙しい毎日を送っていた。ふと時間が空いたときに、メールを送る。

(今、何をしておるのだ?)

(授業中。眠くて寝ようとしてた)

(馬鹿者、金を払って学校へ行っているのであろう。さぼるような真似はするな)

(へいへい)

「ふふっ・・・・」

他愛のないメールでも、今この瞬間が繋がっているかと思うと、幸福だった。

「なーににまにましてやがんだ」

「きゃわ!恋次!?」

デコピンされた調子に、伝令神機を落としかけた。

「危ないではないか!」

「最近のルキア、幸せそうだな」

恋次は、自分のことのように嬉しげだった。

「私は何もやましいことはしておらんぞ!伝令神機で一護とメールのやりとれなど、しておらぬからな!」

恋次に伝令神機を奪われる。

「返せ!」

「なんだよこの会話。付き合ってるなら、もっとましな言葉送れねぇのかよ」

「例えば?」

「会えなくて寂しい、死にそうとか。愛してるとか」

「たわけ!そのような恥ずかしいこと、メールで打てるか」

恋次から、伝令神機をひったくり返して、ルキアはそれを懐にしまった。

「つまんねーの」

「恋次、貴様も仕事をしろ!」

先の大戦で死亡した、浮竹十四郎の墓が雨乾堂にできて、ルキアが仕事をしているのは新しく13番隊用にと建てられた執務室の中だった。

「13番隊に回す書類もってきんだぜ。仕事はちゃんとしてる」

「そうか・・・・」

書類の束を見て、ルキアが溜息をつく。

「現世にいきたいな・・・・」

「3席の任せて、いってきたらどうだよ」

「たわけ。副隊長クラスがそうほいほい現世へいけるものか。それに。浮竹隊長がいらっしゃらない今は、私が留守を預からねばならぬ」

「まぁ俺も副隊長だけど、けっこう好き勝手に現世にいったりしてるけどな」

「なんだと!どうやってだ!」

「普通に、仕事ごなして非番の日にいくんだよ。あと、まとまった休暇とったりして。この前、一護に会ったぜ?ルキアはどうしてるって聞いてくるから、仕事に追い回されてるっていっておいた」

「非番・・・・まとまった休暇・・・・ちょっと、京楽総隊長のところへいってくる」

ふわりと、ルキアが歩き出す。頭の中にはもう、花が咲いていた。

「おい、仕事はどーすんだ」

「小椿と清音に任せる・・・・」

ふらふら。たまにゴンっと壁にぶつかるという怪しい足取りで、歩いていく。

「ああもう!」

恋次は、そんなルキアを見ていられなく、体を横抱きに抱き上げると、瞬歩で1番隊の執務室の前まできた。

「す、すまぬ恋次」

「いいってことよ。俺は帰るからな」

「うむ」

瞬歩で、恋次は去ってしまった。

「京楽総隊長!」

「どうしたのルキアちゃん」

「折り入って、お話が・・・・・!」


結局、話し合いの結果1週間の休暇をもらった。さらに、月に2回は現世にいってもいいという確約までもらって、ルキアはルンルンと13番隊の執務室まで戻ってきた。

仙太郎と清音が、仕事にとりかかっていた。

「すまぬな二人とも。明日から、私は1週間ばかり、現世にいく」

「朽木副隊長、顔がだらしないです」

「え、そうか?」

にまにましていて、頬の筋肉が緩みっぱなしだった。伝令神機でメールを送る。

(明日から1週間、現世にいけることになった)

しばらくして、返信がきた。

(急だな。俺、この前もいったけどアパートで一人暮らし始めたんだが、住所わかるか?)

(明日、貴様はそのアパートとやらにいろ。霊圧をさぐっていく)

(バイトあるんだけど)

(そんなもの、休め。お前に、どうしても用事がある)

(なんだよ、改まって)

(現世にいった時まで、会うまで秘密だ)

「一護・・・・」

もう、決めたのだ。覚悟を。一護と初夜を過ごすことを。


次の日になり、義骸に入ったルキアは、一護の霊圧をたどってアパートの一室にきた。「

「これまたボロい部屋だな」

「仕方ねーだろ。予算が足りなかったんだから。一人暮らしになった分、誰にも邪魔されないから、そこだけは助かる」

「おい、一護!」

「なんだよ!」

「貴様に、私と初夜を共にする権利を与えてやろう!」

尊大であったが、言ってからルキアは顔を朱くした。一護は、ぽかんとしていた。

「は?冗談だろ?」

「本気だ」

アメジストの瞳で一護を見つめ、ルキアは自分から一護にキスをした。

「本気か?」

「ああ、本気だ」

「すっげー嬉しい」

どさりと、ベッドに押し倒された。

「まて、せめて夜になるまで」

「待てない」

ルキアのワンピースを脱がしていく。小さな胸に口づけて、やわやわともみしだき先端を口にふくんで転がすと、ルキアが甘い声をあげた。

「ああ、一護・・・・・」

「すっげー濡れてる」

「ああっ」

秘所を手でまさぐられて、ルキアは困惑した。

初めては、痛いときいていたのに、襲ってくる快感に脳が焼ききれそうだ。

「んっ」

指で、前立腺のある位置をずっといじられて、ルキアは果てた。

「ああああああっ!!」

頭が真っ白になった。これが、女がいくということなのだろうか。

「もう、止めれない。いいな、ルキア?」

こくりと頷く。

「あああっ!」

一護に貫かれて、ルキアはアメジストの瞳から涙を零した。

繋がった場所から、血が流れ出てくる。処女膜がやぶられたせいだ。

しばらく、一護は動かなかった。

「大丈夫か?」

「ああ。動いていいぞ」

緩慢な動作で、一護が動き出した。

決して荒くはない。優しさの混じった抱き方だった。

「ああっ、そこだめっ!」

だめだといった箇所を、一護は貫いてくる。また、頭が白くなっていく。

「あああ!」

オーガズムで果てると、一護も呼吸を荒くして、ルキアの中で果てた。

「もう一度するか?」

ぐったりとしたかんじで、ルキアが聞くと、一護は首を振った。

「お前を大事にしたい。初めてをもらった。俺は、それだけで満足だ」

一護は、まだ熱をもっていたの、浴室にいって一人で処理してしまった。

「中にだしちまったけど、大丈夫か?」

「この義骸は、子などなせぬようにできている。心配は無用だ」:

「そうか」

どこか悲し気な一護の声をききながら、ルキアは身を清めるために濡れたタオルで全身をふかれた後、気を失った。

どれくらいたっただろう。

気づくと、ベッドの横でずっと一護がこっちの方を向いていた。

「今何時だ?」

「夕方の7時」

「腹がすいた・・・・・」

「待ってろ。今何かつくってくるから」

いつの間にか服を着ていた。一護のパジャマだった。背後から、一護に抱き着いた。

「どうした?」

「これでもう、貴様は私のものだ」

「それはこっちの台詞だ。ルキアはもう、俺のものだ」

これから、1週間が過ぎた後は、月に2回しか会えない。いろんな困難が待ち受けているだろう。死神と人間でありながら、結ばれてしまった。本当なら、それは禁忌。

それでもと、ルキアは思う。後悔はしていない。一護もまた、後悔はしていないだろう。

たとえ、進む道が違(たが)っても。

今は、この幸せを享受しよう。

繋がり合った絆は、強固な鎖となった。

それは、決して腐食することのない、黄金の鎖。

いつか、時が二人を別つまで。

共に在ろうと、決めるのであった。




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出会いと別れ

「腹減ったろ。適当につくったから、食ってけよ」

黒崎家で、深夜妹たちが寝静まった後、一護がありあわせの材料で食事を作ってくれた。

付き合い始めて、2か月目の終わりのことだった。

「貴様がまともなものなど作れるとは思わぬがな」

野菜炒めを口にすると、思っていた以上の味に、はしがとまらなかった。デザートにはカットされたパイナップルがついていた。

「うむ。思ったより美味だった」

「そうか」

「どうして、急に料理などする気になったのだ?」

「この家出て、アパート借りて一人暮らししようと思ってるんだ。今はその資金の貯蓄中」

一護は、バイトをいくつか掛け持ちしていた。最近はラーメン家のバイトをはじめたとかで・・・味にうるさい店主も、一護の作ったラーメンには文句をいえなかったとかで。

「そのラーメン家はどこにある?」

「空座町の------------」

その日、一護とルキアまたいつものように、一つのベッドで眠った。

次の日、起きると腕の中にルキアはいなかった。

尸魂界に帰るとはいってなかったので、多分虚退治に出かけたのだろう。家族がいるが、ルキアのこと話していなかったが、父親は気づいているらしかった。

朝食の席で、こう言われた。

「ルキアちゃんを悲しませるんじゃねーぞ」

「親父には関係ねぇよ。これは俺たち二人の問題だ」

「え、ルキアちゃんがどうしたの」

「なんでもねーよ」

妹たちには話さない。

付き合い始めて2か月目の終わりは、何の問題もなく過ぎて行った。


その日の夕方、いつものようにラーメン店でバイトをしていると、小さな影が入ってきた。

「ルキア!?」

「うむ。貴様のラーメンを食べにきてやった」

私服はいつものワンピース姿だった。ルキアの買い物に付き合わされることもあるが、ルキアは好んでワンピースの服をかっていた。

その服は、一護の部屋の押し入れになおされている。

一度一護の部屋にいき、服を着替えて義骸はいってやってきたのだろう。

義骸でないと、霊圧のない人間に姿は見えない。最近のルキアはよく義骸に入っていて、昨日の夜のように死神姿でいることのほうが稀だった。

「いらっしゃいませ」

やや引きつった笑顔で、ルキアの前にお冷とおしぼしをもっていく。

「ご注文は?」

「貴様がほしい」

「俺一丁・・・・じゃねーだろ」

「おすすめは?」

「豚骨ラーメン定食だな。安いし美味いし、炒飯もついてくる」

「じゃあ、それで」

店の店主にオーダーを通りして、一護がラーメンを作りに厨房に消えて行った。

「ふむ。小汚い店だな」

けっこう綺麗なのだが、朽木家の屋敷を見慣れているルキアには、狭いただの小屋に見えた。
草崎家でさえ、ルキアにいわせれば狭いだけの家だ。

「豚骨ラーメン定食お待ち!」

一護が、豚骨ラーメン定食をもってきた。

「店主!」

ルキアが、店主を呼んでごにょごにょとやり取りをする。万札を数枚に握らせて、店主は一護に今日のバイトはもう終わりで、ルキアの元についているようにと命令してきた。

「てめぇ、金で俺を買ったな?」

「それがどうした」

さも当たり前とばかりに、ルキアは割りばしを手に取った。

「着替えてこい。それから、帰る準備もしてこい」

「へいへい・・・・・・」

一護が着替えて、荷物をもって帰る支度をしている頃には、ルキアが豚骨ラーメン定食を食べ終えてしまっていた。

「食うの早いな、お前・・・・」

「うまかったぞ。昨日の夜食といい、お前のつくるものは美味だな。朽木家の厨房係になる気はないか?」

「ねーよ。尸魂界の住人じゃねーんだから」

冗談を言いあう。

ルキアは、勘定をすませて、一護とラーメン店を出た。

「私が、貴様の一人暮らしの資金を援助してやるといっても、貴様はうけとらぬであろう?」

「当たり前だ!」

一護にも、プライドがある。

「今の一護は、私がラーメン店から2時間ばかりの時間を買ったのだ。ご主人様と呼べ」

「はぁ?・・・・まぁいいか。なんか用かよ、ご主人様」

「キスをしろ」

止まって、アメジストの瞳を閉じる。

一護は、ごくりと唾を飲み込んで、ルキアの唇に唇を重ねた。

「んう・・・・」

舌と舌を絡ませあいながら、お互いが酸素を求めあうまで口づけをした。

潤んだ瞳で、ルキアが見つめてくる。

「これ以上は、お預けだ」

一護は、ルキアの細い体を抱き締めた。

「貴様に話しておかねばならぬことがある・・・」

「なんだよ」

「明日で、私は現世を去る。尸魂界に戻る。次にこれるのがいつかは、分からない」

「戻ってこれねーのか?」

「できれば、2~3か月以内に一度、現世にこれるように申請してみるつもりだが・・・それがかなうかどうかは、分からぬ」

一護は、ルキアを強く抱きしめた。

「待ってる。いつまでも、何年でも待ってるから」

「一護・・・・・・」

「だから、必ず戻って来いよ!」

黒崎家の家の前までやってきた。
そのまま、ルキアは窓から一護の部屋に入り、二人は現世での一時的な最後の時間を過ごし、また一つのベッドで眠りにつく。

「貴様が好きすぎて、尸魂界に戻りたくないのだ・・・・」

「俺も、お前を帰らせたくない」

「だは私は死神だ。守らねばならぬものがある」

「知ってる、だから、いつまでも待ってるぜ」

「貴様がよぼよぼのおじいさんになるまでには、戻ってこれるであろう」

「勘弁しろよ。半年経っても戻ってこないようなら、浦原さんに頼んで俺から迎えにいくからな」

その言葉を、しっかりと受け止めた。

「その時は、私を尸魂界から攫ってくれ、一護」

「そうしたいにのはやまやまだが、俺もお前もお尋ね者になっちまう」

「もどかしいな。何故私は死神なのだろうか」

「でも、ルキアが死神じゃなかったら、俺たちは巡り合わなかった」

「確かに、そうだな・・・・・・・」

いつの間にか、眠りについていた。

朝になり、支度を終えたルキアが、家の前に立っていた。

尸魂界へ続く、穿界門が開かれる。一護の目の前で穿界門に足を踏み入れながら、振り返る。

「またな、一護。また、会おう」

「ああ、待ってるからな!」

出会いと別れを繰り返して。

やがて、二人は結ばれる。

たとえ、死神と人間という、歩くべき道が違っても。

二人は、未来へ向けて、また一歩踏み出すのだ。







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翡翠は揺れる

ある日、浮竹の機嫌が悪そうだった。どうしたのかと聞くと、ふてくされた表情で名を呼ばれた。

「京楽・・・」

「浮竹?」

「蒼って遊女・・・・俺の代わりなのか?」

ぎくりとした。

浮竹は話す。

京楽がいつもいく色街に出かけて、京楽の馴染みだからと話すと、蒼をあてがわれた。

蒼は、浮竹の存在を見て笑っていた。

「京楽の旦那は、あんたの代わりにあたしを抱くんだよ。そりゃもう、激しくてね。あんた、京楽の旦那に抱かれる勇気なんてないでしょう?京楽の旦那は、あんたが抱かせないからあたしを買いににくるんだ」

顔を蒼くして、うつむいている浮竹に、蒼は続けた。

「それに、浮竹といったかい?あたしは今、京楽のだんなの子を身籠っているんだ」

「嘘だ!」

浮竹が叫ぶと、蒼は高笑いをした。

「あははははは!あたしの一人勝ちだね!あんたはせいぜい、京楽の旦那の傍で尻尾ふってるといいよ。京楽の旦那は、あたしのものだ!」

蒼の頬をはたいて、浮竹は逃げ出した。怒りで、気がどうにかなりそうだ。くやしくて、涙がにじむ。

嘘だ嘘だ嘘だ。

そう言い聞かせて。

「蒼が身籠っている?そんなの嘘だ!」

「でも彼女は、確かに-------」

「僕だって、そんな間違いが起こらないようにちゃんと避妊していた!」

その言葉に、浮竹は安堵していた。

「そうか・・・よかった・・・・・」

「浮竹?」

「お前の子を身籠っていると聞いて、殺してやろうかと思った」

浮竹の抱く、渦巻く感情を何と言えばいいのだろう。

「もう、あんな女、俺の代わりに抱くな」

京楽に抱き着いて、浮竹は体を震わせた。

「俺を・・・・・抱いて、いいから」

怖くて怖くて、本当は逃げ出したい。

「無理しなくていいんだよ」

「でも!あんな女を買うくらいなら!」

「もう、女は買わない。君を無理やり・・・強姦するような真似はしない」

「それじゃあ、京楽はどうやって・・・・」

「なに、一人で抜くよ。それより、君はどうなんだい?」

「何が?」

「一人で抜くとき、どうしてるんだい?」

かっと、朱くなって京楽を突き飛ばした。

「な、何を言って・・・・・・」

「君だって男だ。溜まる時もあるでしょう?どうやって抜いてるのかな?僕を思ってくれていると、嬉しいな」

京楽が、体を密着させてきた。

「君も、たまっているんでしょ?抜いてあげる」

「京楽!」

浮竹の制止の声を聞かず、服の上から浮竹のそれをなぞる。何度もそうしていると、浮竹のものが立ち上がりかけた。

「やあっ」

直接の刺激は、あまりにも急すぎて。

衣服の合わせ目から、手が侵入してきた。

いつの間にか、前をくつろげられていた。

しごくように扱うと、少し頭をもたげていたそれは硬くなった。

「京楽!」

「大丈夫。気持ちよくなるだけだから」

「ああっ!」

何度がしごいて、先端に爪をたてると、呆気なく浮竹は果てた。

はぁはぁと、荒い息をついている浮竹の腰に、硬くなっている京楽のものがあたっていた。

「君の手で、処理してくれると嬉しいんだけど」

「これ、俺のせいなのか?」

「そうだよ。君がイク姿を見ていたら、こんなになっちゃった」

京楽は、前をくつろげて、そそり立ったものを見せた。

「手でしごいてくれればいいから・・・・・」

言われるままに、手を上下させると、京楽のものは先ばしりの液を出した。

「ああいいよ。とてもきもちいいよ、十四郎」

下の名を呼ばれて、かっと浮竹が朱くなった。

しごき続けると、京楽も浮竹の手に熱を放った。

でも、お互いまだ足りなかった。

浮竹の花茎に、いきなり京楽は唇をはわせた。

「ああっ、京楽っ」

「春水って呼んで?」

「春水・・・だめだっ」

口腔にいれて、舐めあげる。すぐに硬くなった花茎は、けれど射精前に京楽の手が戒めた。

「やあっいきたい!」

「少し我慢して?」

京楽は、唇を舐めた。

自分のそそり立ったものを、浮竹の花茎にそえて、二本同時にしごきだす。

「ほら、浮竹も」

「ああっ」

矯正をあげながらも、浮竹は自分のものと京楽のものに手を添えて、しごきだす。はきだされた液で、ぬるぬると滑る。

「んあっ」

「いいよ、十四郎・・・・そのまま、最後まで」

「あああああああああっ」

びくんと、浮竹が体を痙攣させた。吐き出された精液は、シーツと衣服を汚した。

「着換て、シーツも洗濯しなきゃね」

はぁはぁと、荒い息をついている浮竹にキスして、衣服を新しいのに着換えさせて、自分も着替えてシーツを交換した。

「気持ちよかったでしょ?」

コクリと、恥ずかしそうに浮竹は頷いた。

「いつか、君が僕の全てを受け入れてくれるまで、待つから-----------」

甘いしびれは、いつまでも浮竹を支配していた。

翡翠の瞳は揺れる。

京楽をずっと我慢させるわけはいかないと分かっていても、踏み出せない。ただ、怖くて。

翡翠の瞳は、ずっと京楽を映していた。











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翡翠の想い

「君が、色街の女ならどんなに良かったか・・・・・・・」

大金を積んで、身請けして自分のものにしていたのに。

京楽の頬をはたいて、出て行ってしまった浮竹の跡を追う気はなかった。追ったとしても、きっと立ち止まってくれない。

「僕はばかだな・・・・・」

大切な存在に、気持ちを確かめもせずに手をだして。

でも、キスくらいならいいんじゃないと思ったのも、本当だ。だが初心(うぶ)な浮竹には、そのキスさえ許せるものではなかったのだろう。

何時間たっても帰ってこないので、京楽は浮竹が心配になって部屋を出た。

すると、部屋の外の扉の前で、浮竹は眠りについていた。

「こんな場所で・・・・風邪ひくよ」

すっかり眠ってしまっている浮竹を抱き上げて、部屋にいれるとベッドに寝かせて、毛布と布団をかけてやった。

結局、次の日浮竹と顔を合わせたが、昨日のことがなかったように振る舞われて、京楽も昨日のことをなかったことにした。



季節は過ぎていく。

夏になり、蒸し暑い季節になった。

浮竹と京楽の仲に進展はなく、お互いを親友として仲良くしていた。

夏の途中に何度か直射日光に浮竹が倒れたり、肺の病の発作で血を吐いて倒れるようなことはあたが、その看病を京楽がしていると、自然と浮竹が倒れると京楽の名が呼ばれた。


ある日の午後。

「京楽、浮竹がまた倒れたんだ!」

もう何回目になるかもわからない。

熱を出した浮竹を寮の部屋に寝かせて、氷水でぬらしたタオルを浮竹の額にのせる。

「京楽・・・・・・」

浮竹は、熱にもうろうとした意識の中で、京楽を求めていた。

「浮竹?僕はここにいるよ」

浮竹の手をにぎって、ぬるくなったタオルを氷水にちゃぷりと浸し、しぼって浮竹の額に乗せた。

「京楽・・・いくな・・・・・」

「僕はここにいるよ。何処にもいかない」

「京楽・・・傍に、いて?」

珍しく、浮竹が甘えてきた。
熱にうなされて、潤んだ瞳に見上げられて、京楽は浮竹に口づけていた。

「んうっ・・・・・・」

「浮竹・・・!」

「やっ・・・・・・」

浮竹の瞳から、涙が零れ落ちる。

京楽は、その涙を吸い上げて、浮竹の少し長くなった髪に口づけた。

出会った頃から、浮竹に白い長い髪が綺麗だから伸ばせばいいと囁いていた。浮竹は、京楽に言われてから、髪を切ることを止めてしまった。

「この髪・・・僕のせいかい?」

「そうだ・・・・京楽のせいだ」

熱に潤んだ瞳で、京楽の漆黒の瞳を射抜く。

「お前の想いは知っている」

ぎくりと、体を強張らせる。でも、何度も口づけた。浮竹の意識がない時、何度もその唇に唇を重ねた。さっきも口づけた。

「俺が好きなんだろう?」

「そうだよ。翡翠の瞳をした太陽が欲しいと思ったんだ。君の存在は、太陽そのもので・・・・翡翠の瞳をしていた」

「誰かの影を、重ねているんだろう?」

「最初はそうだった。でも、今は浮竹、君が好きだ」

浮竹が熱にうなされているのをいいことに、何度も口づけた。浮竹は拒絶しなかった。

首筋を吸い上げると、怒られた。

「痕を、残すな・・・・・・」

「ごめん」

いつの間にか、浮竹のベッドに腰かけて、浮竹の頬に手を寄せていた。

「お前の手・・・・冷たくて、気持ちいい」

すり寄られて、京楽は声もなく浮竹の唇をふさいだ。今までにしたことのない、大人の口づけ。

舌と舌を絡ませあい、逃げていく浮竹の舌を追った。口内を好きなだけ蹂躙すると、浮竹の口から飲み込み切れなかった唾液が、つっと糸をひいた。

ドクン。

京楽の鼓動が高鳴る。

「ああ、もう!」

京楽は、浮竹の細い体を抱き寄せた。

「君は、狼の僕の前であまりにも無防備すぎる!」

「でも、無理やりはしてこないだろう?」

「大切な君を、そんなことで失くしたくない!」

今すぐにでも、浮竹を抱きたいのは事実だった。熱をもった自分自身を、京楽は持て余していた。

「キスとハグと・・・・もう少し先のところまでは、許してやる。でも、俺も男だ。抱かれる覚悟がない」

「君、僕のこと、受け入れてくれるのかい?」

「そうじゃなきゃ、こんなこと言ってないし、お前の行動を許していない。多分お前のことが好きなんだ・・・京楽」

多分と言われたが。

京楽は、拳を握っていた。

「よっしゃーー!」

口調も、珍しく変わる。

「僕は君が好きで、君も僕が好き・・・・・・それで、いいんだね?」

「ああ・・・やぁっ」

浮竹に覆いかぶさって、衣服の襟元をくつろげて、鎖骨のあたりにキスマークを残した。

「や、京楽・・・・・やあっ」

細いが、しなやかな筋肉のある体の輪郭を確かめる。全身にキスの雨を降らせて、でもそこで終わらせた。

これ以上は、熱のある浮竹には負担がかかりすぎるし、浮竹の意思を無視して抱くことなどできない。

「君が、僕の全てを受け入れてくれるまで、いつまでも待つから」

「京楽・・・・・」

その日、熱が収まらない京楽は、久しぶりに蒼を買った。

「どうしたの、京楽の旦那。えらく、機嫌がよさそうだけど」

「ああ、蒼・・・・君を買うのも、そろそろ終わりかもしれない」

「なんだって!?あたし以外に、いい人でもできたのかい!?」

蒼にとって、死活問題だった。

「浮竹と、想いが通じ合ったんだ」

「え・・・・・」

「まだ京楽を抱けないから、蒼を買いにくるかもしれないけど、京楽が僕の想いをすべて受け入れてくれたら、もう色街にはこない」

蒼は、歯ぎしりをした。

せっかくの上客をなくしてなるものかと。

蒼は思案する。どうすれば、京楽が自分のものになるかを。

色街から帰ってくると、浮竹がふてくされていた。

「また、色街にいってきたんだろう」

「ああ・・・確かに女を抱いた。でも、君が嫌ならもうやめる」

「俺が、抱かせないせいだろう?俺の覚悟ができるまで、女を買うことは許してやる」

「ごめんね、浮竹」

浮竹に口づける。浮竹からは、いつも甘い花の香がした。それがまた京楽を刺激する。

「はぁ・・・・浴室に、いってくる」

京楽は若い。蒼を抱いたくらいでは、まだ満足できないでいた。浮竹はどうなんだろう?一人で処理しているのだろうか?

もしそうなら、処理の手伝いをしてやろうとほくそ笑む、京楽がいた。




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やちるⅡ

「ごほっごほっ」

その日も肺の病の発作が起こった。いつもの雨乾堂でなく、たまたま遊びに来ていた11番隊の道場でだった。

「うっきー、大丈夫?」

更木をはじめ、一角や弓親が訓練に精を出すのを、ただ静かに見ていた。

13番隊でも、こういった竹刀をもった訓練をさせるのもいいかもしれないと。

「ごほっごほっ・・・・・・・・・・」

苦し気に身を捩る浮竹に、11番隊の面子も心配そうな顔をする。

「うっきー、今すぐもじゃりん呼んでくるから!」

やちるとて、死神だ。瞬歩くらいは使えた。

8番隊のところにいくと、執務室にいたもじゃりんこと、京楽を引っ張った。

「どうしたのやちるちゃん」

「もじゃりん、うっきーが発作起こして大変なの!」

「ええっ、何処でだい!?」

雨乾堂でなら、仙太郎と清音が気づいてくれえる可能性は非常に高い。

でも外だと・・・・・。

「11番隊の道場だよ!」

やちるを肩に乗せて、京楽は瞬歩で11番隊の道場にやってきた。

「浮竹!」

「ごほっごほっごほっ・・・・・・・・」

何度か吐血を繰り返し、最後に大きく吐血して、浮竹は気を失った。

「どいて!4番隊綜合救護詰所まで運ぶから!」

「今、死神の一人が4番隊に走って行きました」

弓親がそういうが、京楽は首を振った。

「僕の瞬歩の方が早い!」

軽い浮竹を抱き上げて、瞬歩で
4番隊隊綜合救護詰所にやってくると、4番隊の隊長卯ノ花が、回道で応急手当てをしてくれた。

「発見が早かったから、大事に至りませんでしたが・・・数日は、入院することになると思います」

「ありがとう、卯ノ花隊長。いつもいつも、世話になるよ」

「浮竹隊長は病人ですから。病人を看護するもの、4番隊の責務です」

そのまま、浮竹は緊急入院が決まった。

「早く、元気になっておくれ」

意識のない浮竹の手をとってにぎると、生きている証の温かみがあって、それに安堵する。

しばらくしてから、やちるがやってきた。

「うっきー、大丈夫?」

「大丈夫だよ、やちるちゃん。心配してくれて、ありがとうね」

「もじゃりんも、あんまり根気つめないでね」

浮竹の肩によじ登って、その頭を撫でてくる。

今回はやちるに救われた。

4番隊にいって、人を呼んでくる間に、浮竹の病状が悪化する可能性があった。

やちると卯ノ花のお陰で、無事浮竹は命を取り留めた。もっとも、浮竹は発作をおこしてて死にそうになることは何度かあったが、いつも無事なので、心の何処かで安堵していたのだ。

いけないいけない。

浮竹の肺の病は、酷いのだと自分に言い聞かせた。

「うっきー、あんなに血を吐いて大丈夫かな?」

「浮竹は肺を患っているからね」

「肺の病になると、血を吐くの?」

「浮竹の病気はね。でも他人にうつる心配もないし。他にも肺の病はあるけど、吐血する病気は一部だけかな」

「よくわかんない」

やちるは幼い。

幼子に、病気の難しいことを言っても理解不能だろう。

「早くうっきーが元気になるといいね!」

「そうだね」

それから、やちるは毎日のように浮竹の病室にきた。仕事を病室にもちこみ、病室で寝泊まりしている京楽を真似て、1日だけ
綜合救護詰所で寝泊まりをして、帰っていった。

「うっきー、目さまさないね?このまま死んじゃうのかな?」

「大丈夫、もうすぐ意識が戻るよ」

それは、感に似た思い。いつも肺の病で倒れ、意識を失うと1週間くらいで意識を取り戻した。

「ここは・・・・・・」

浮竹が、翡翠の瞳を開く。

「浮竹?大丈夫?」

「ああ・・・・」

点滴の管が痛々しかったが、浮竹は意識を取り戻した。

半身を起こして、浮竹はやちるの存在に気づいて、驚いていた。

「草鹿副隊長?」

「やっほー。うっきー目が覚めてよかったね!」

「どうして草鹿副隊長がここに?」

「君を心配して、毎日見舞いにきてくれていたんだよ」

「そうか・・・・・ありがとう、草鹿副隊長」

「どういたしまして!剣ちゃんが、最近心配してるから、これで戻るね!うっきーともじゃりんは、早くあつあつに戻ってね!」

やちるにまで、浮竹と京楽の仲は知られているようで、二人はしばし無言で・・浮竹など、朱くなって顔を手で覆っていた。

健康だったら、きっとベッドの上でごろごろして、照れ隠しの行動をとっていただろう。

「卯ノ花隊長を呼んでくるね」

「ああ・・いつも、すまないな」

「もう慣れっこだよ」

そう残して、京楽は卯ノ花を呼びにいった。

それから3日ほど安静にと命じられて、病室で静かに過ごしていた。京楽は、相変わらず毎日やってきて、仕事を病室で片付けて、常に傍にいてくれた。

「もう大丈夫でしょう。退院手続きをしますね」

卯ノ花が、浮竹の様子を見てそう言ってくれた。

「仕事、たまってるだろうなぁ」

浮竹が、1週間以上も仕事ができなかったことに、心配げだった。

「3席の子たちが、頑張ってたみたいだよ」

「そうか。仙太郎と清音が・・・・・」

何はともあれ、浮竹は退院した。瞬歩で抱き上げて移動するかいという、京楽の問いには否と答えた。

「少しでも、体力を取り戻さないと。雨乾堂には、歩いて帰る」

けっこうな距離を、休憩をはさみつつ歩く。

雨乾堂でも、しばらくの間無理はさせれない。京楽が浮竹にキスをすると、それに応えてはくれるが、とてもそういう気分にはなれなかったし、無理できないので、しばらくの間はずっとお預けだ。

「もっと元気がでたらな・・・・・・」

「約束だよ」

もう、半月以上浮竹に手を出していない。

退院したばかりの浮竹に無理はさせれないし、京楽は笠ををとって、浮竹の白い長い髪に口づけた。

「早く元気になってね」

「ああ・・・・・」

浮竹と京楽は、やっと雨乾堂に戻ってきた。

「隊長!」

「うわーん隊長!」

仙太郎と清音が、抱き着いてきた。

何度か病室に訪れてきていてくれたらしいが、浮竹の不在を預からなければならないし、貯まっていく仕事を片付けないといけないので、長いこと病室にはいれなかったのだ。

「二人とも、心配をかけたな」

「もう大丈夫なんですか、隊長!」

「このくそ女の言う通りです!無理はくれぐれもしないでください!」

きっと、仙太郎は京楽を睨んだ。

「浮竹隊長に無理をさせたら許しません!」

「まぁまぁ、仙太郎。京楽も、ちゃんと分かってくれているから」

「そうだよ。いくら僕でも、病み上がりの浮竹に無理はさせないさ。もう半月以上お預けくらってるのに、現に手をだしていないでしょ?ただ、キスやハグはさせてほしいな」

「それくらいなら・・・・・」

「浮竹隊長、体力が戻るまで、その気にさせられてものってはいけませんよ!」

清音が、浮竹に釘をさす。

それに苦笑を零して、浮竹は雨乾堂に入っていった。

「はー。10日ぶりの我が家だ・・・・」

「寝ている間、体をふいてもたったり、髪を洗ってもらたりしていたけど、まずは湯あみでしょ?」

「ああ!早く入りたい」

雨乾堂備え付けの浴槽に湯をはって、二人で湯あみをした。

「入院してると、長い髪は洗いにくいからな・・・・・でも、切るとお前が悲しむだろう?」

「そうだよ。浮竹は長い髪が似合っているんだから」

白桃の湯の元をいれているので、湯船からいい匂いがした。

「君の甘い花の香もいいけど、白桃の湯の甘い香りも僕は好きだな」

「俺も好きだな」

互いの髪を洗いあい、背中を流しあって、やっとさっぱりした浮竹は、湯あみが終わると京楽にドライヤーで髪を乾かしてもらった。

それから、もつれあうように布団に横になった。

京楽はキスをしたり抱き着いたりするだけで、それ以上は何もしてこなかった。

「夕餉、食べていくだろう?」

「うん。泊まってく」

浮竹は、京楽とこうやって何気ない日常を過ごすのが少し久しぶりなので、はしゃいでいた。

「夜は酒盛りをしよう」

「大丈夫なの?」

「少々なら、酒くらい大丈夫だ」

二人は、寄り添いあいながら、他愛ない時間を共有するのだった。






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わかめ大使でも日番谷隊長は受難

「ということで、これが日番谷隊長の分だ」

どさりと、わかめ大使を渡されて、日番谷は怒鳴った。

「こんな大量に食えるか!限度ってものを知れ!」

机から零れ落ちるわかめ大使の量に、日番谷の低い背がみえなくて、浮竹が日番谷を探す。

「あれ、日番谷隊長どこいったんだ?」

「わざとか?」

額に血管マークを浮かばせながら、日番谷はわかめ大使を一つ手に取ると、食べた。

「味は悪くねぇんだよな。問題は見た目か・・・・・」

前回、学院に白哉から贈られてきた大量のわかめ大使を寄付したのだが、浮竹は自分の分と日番谷の分と京楽の分を残していた。

大量に。

「おい、松本ーーーー!」

「はーいなんですか隊長・・・・って、このわかめ大使の群れ、どうしたんですか?」

応接間から顔を出した松本は、勝手にわかめ大使を食べた。

「んーおいしい。このお菓子、けっこう好きなんですよね」

松本は、1つのわかめ大使を手に取ると、何かの薬をかけた。それを浮竹に渡す。浮竹は、薬を盛られているとは知らず、そのわかめ大使を食べていく。

「おい松本・・・・さっき、浮竹がくっているわかめ大使に、何か薬いれたな?」

「気のせいです、隊長!」

「まぁいい・・・・。この数を俺らでは処理しきれねぇ。適当に他の隊長のところにいって差し入れとして、もっていってくれ」

「わっかりましたー」

松本は、持てる数を布で包むと、お菓子が大好きなやちるのいる11番隊に向けて、出発した。

結構減ったその量に、日番谷が安堵する。

「っておまえは、ここを自分お執務室と間違えてねーか?」

もっきゅもっきゅとわかめ大使を食べつつ、自分でいれたマイ湯呑にお茶を入れて、浮竹は一服していた。

「やあ、細かいことは気にしないでくれ日番谷隊長」

「浮竹、お前というやつは・・・・はっ!京楽がいない!?」

今頃気づく日番谷。

「なんて平和なんだ・・・・・」

キラキラ輝く日番谷の顔は、次の言葉でどん底に落ちた。

「僕は、今さっきここについたよ」

「京楽・・・なんで来やがる」

「そりゃ、愛しい浮竹がいるからね」

「ああ、このおっさんどもは!とっとと出ていけ!」

「いけないなぁ日番谷隊長。目上の者は、もっと敬うべきだよ」

「ぎゃあああああ」

プロレス技をかけられて、日番谷は思いっきり京楽の鳩尾に蹴りをいれた。

「君といい浮竹といい・・・・最近の子は、足癖が悪いねぇ」

「お前がいきなり攻撃してくるからだろう!」

京楽と距離をとる。

じりじりと詰め寄ってくる京楽に、どうしてやろうかと日番谷は、後ずさる。

「京楽」

「どうたんだい、浮竹?」

浮竹は、潤んだ瞳で京楽を見ていた。

「松本おおおおお!なんの薬盛りやがったーーー!」

叫んでも、今は松本はいない。・

「今すぐお前が欲しい」

はぁはぁと荒い息をついて、上気した薔薇色の頬で京楽を見上げる。

隊長羽織を脱ぎ捨てて、死覇装の襟元くつろげる。

「京楽・・・」

浮竹は、自分から京楽にキスをした。

舌が絡まりあう。

「浮竹、何か盛られたの?」

「分からない・・・・ただ体が熱くて疼く。なんとかしてくれ」

「浮竹・・・・・・!」

「だああああああああああ!蒼天に座せ氷輪丸!」

松本、戻ってきたら覚えやがれ。

そう想いながら、日番谷はいつものように執務室を半壊させるのであった。




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わかめ大使Ⅱ

「わかめ大使が食べたい」

確かに、あの時白哉にそういった。わかめ大使は白屋の屋敷で作られており、一般販売をしていないので、入手するには百哉かルキアに言う必要がある。

「兄の心はわかった。近いうちに、わかめ大使を届けよう」

そう言った、白哉の顔が何処か嬉し気だった。

せっかく考案して、尸魂界に広げようとしても、全然売れないので不良在庫がたまっていた。

それを全て白哉は雨乾堂にもちこんできた。

「白哉!こんなにいらないから!」

「兄のために用意したのだ、ありがたくちょうだいするがよい」

「白哉!」

「では、さらばだ」

朽木家の家人まで用意して、荷車でやってきた白哉は一足先に瞬歩で自分の屋敷まで戻ってしまった。

「誰か~」

いつもなら仙太郎と清音がいるのだが、今日はあいにく学院の生徒に虚退治をさせるための指導係として現世に立ってしまった。

「わかめ大使に埋もれて死ぬとか、洒落にならん」

ゆらりと霊圧をあげる。察知してほしい人にわかるように特殊な霊圧を。

「どうしたの、浮竹」

瞬歩で京楽が現れた。

「助けてくれ~京楽~」

京楽が見たのは、わかめ大使の山につぶされている浮竹の姿だった。

「このわかめ大使・・・・・・どうしたんだい?」

「白哉に欲しいといったら、喜々としてこれだけの数を渡された」

「いくらなんでも限度があるでしょ」

京楽は、少し怒って、そして呆れていた。

「君も君だよ。瞬歩で逃げるなりしないと」

「いや、呆気にとられて・・・・すまない」

浮竹をわかめ大使の山から救い出して、京楽はわかめ大使の山をみる。

「こんな数・・13番隊の死神に配ってもいいんだろうけど、食べてもらえるかもあやしいしねぇ」

「どうやって処理しよう?」

浮竹が困った顔で、京楽を見てきた。

「俺の分はとっておいて・・・・あとは日番谷隊長の分と、京楽の分と・・・それでも、余り過ぎるな」

「そうだ。学院の食堂に寄付するのはどうだい。デザートにつけてもらうとか」

「それだ!」

「わかめ大使を広める絶好の機会になるよ」

「でも、どうやって運ぶんだ?」

「部下の死神がいるでしょ」

京楽がそう口にすると、浮竹は渋い顔をした。

「でもこんな私的なことに・・・・・」

「僕は、現世に買い物にいってもらったり、いろいろこき使ってるよ」

京楽の答えに、浮竹は驚いたが、たまには部下に動いてもらおうという気になった。

「そうか・・・じゃあ、今13番隊にいる部下たちに手伝ってもらおう」

そうして、13番隊の死神の群れと浮竹と京楽は学院にやってきた。視線を集めてしまうのは仕方ないことだが。

食堂にいくと、大量のわかめ大使を渡す。

「これを、食堂のデザートに使ってほしい」

「浮竹隊長・・・・なんですか、これ?」

「わかめ大使だ。朽木白哉のトレードマークだ」

「はぁ・・・・朽木隊長の?」

「何も言わずに食べてみろ」

食堂の厨房係の職員の口に、わかめ大使をつっこむ。

「これは・・・・!美味しい!?」

「そうだろう。見た目は変だが、味はいいんだ」

「分かりました、今日のデザートの冷凍ミカンを後日にまわして、このわかめ大使を今日のデザートにします。余った分は持ち帰り自由ということで」

冷凍ミカンという言葉に、浮竹の耳がピクリと動く。

「その冷凍ミカン、いくつかもらってもいいか?」

「ええ、構いませんが」

浮竹は、学院の食堂で冷凍ミカンを食べていた。

「んーこの味、懐かしい」

キーンとする冷たさの中に甘味があって。

京楽も一緒になって食べていた。

「学院時代を思い出すねぇ」

13番隊の死神にはもう下がっていいと、解散を命じているので、今食堂にいるのは京楽と浮竹と、厨房係だけだった。

「ついでだ、ここで昼飯食っていこう」

「いいのかい?僕たち、学院の生徒じゃないよ」

「大丈夫だろう」

日替わりのAランチ定食を注文すると、ハンバーグ定食だった。

それを、浮竹と京楽は懐かしそうに食べていく。

「なんだか、院生時代に戻った気分だね」

「ああ、そうだな」

案の定、食の細い浮竹は全部を食べきれずに残していた。学院時代もいつもそうだった。

安くてボリュームのある食堂で食事をするのは好きだが、食べきれなくて困っているのを、京楽が浮竹が残した分まで食べてくれた。

「かしてごらん」

京楽は、見かけによらずけっこう食う。

浮竹が残した分を平らげて、お茶をすすった。

「はぁ。本当に懐かしいなぁ。学院時代に戻ったようだ」

「なんなら、生徒としてもう一度入学するかい?」

京楽の悪戯めいた声に、浮竹が笑う。

「俺たちが入学したら、即卒業だな。そして13番隊と8番隊の隊長として、任命されるんだろうな」

二人、手を繋ぎあって学院を出た。

途中何人かの生徒とすれ違ったが、敬意の眼差しで見られた。

「なんだかんだで、白哉には感謝しなきゃな」

こんな意外な懐かしい一日を過ごせたのだから。

京楽と浮竹は、雨乾堂まで歩いて帰った。手は繋いだままだった。

瀞霊廷の死神が、二人のことをとやかく言う者などない。すれ違う人は微笑ましそうに、また羨望と畏怖の眼差しで二人を見ていた。

女性死神は一部が黄色い声をあげていたが。

雨乾堂に戻ったが、懐かしい気分のままで仕事をする気力がおきなかった。急ぎの仕事はないので、明日に回すことにした。

「また、学院に遊びにいこうか」

「今日みたいに、休暇がとれたらね」

正確には、浮竹は非番ではなったのだが。京楽は今日は非番だった。浮竹の仕事をする姿を見守りながら、酒でも飲もうと思っていたのだ。

肝心の酒を、呼び出されるような特殊な霊圧を放った浮竹のせいで、もってきそこねた。

「今日はごろごろしよう」

「そうだね」

二人して、院生時代の話に花を咲かせた。

こんな一日も悪くないと、浮竹と京楽は思うのだった------------。




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あふれ出る想い

一護と付き合いはじめて、4か月が経とうとしていた。

ルキアはその間に一度尸魂界に戻り、13番隊の副官として忙しく勤務していた。先の大戦で浮竹隊長をなくした13番隊だけが、隊長がいなかった。

「もう現世には戻れぬのであろうか」

執務をこなしながら、ふと思う。

ただ忙しい毎日があるだけで。

一護に会いたい---------------。

気づけば、その心だけが大きく動いていて、執務にも支障をきたしていた。

「これは重症だな・・・・」

義兄である白哉に相談してみた。恋次に相談すれば、「会いに行けばいいじゃねーか」と、ただそれだけを言われそうで。

「兄様・・・・・・」

「ルキア。時は有限だ。幸せをつかみたいのであれば、私は邪魔をしない」

白夜の言葉は、思っていたのと違った。

「もっと死神としての誇りと責務を持て」

きっと、こう言われると想像していたのだ。

「兄様。兄様は、私が現世にいって一護に会うのを、ダメとは言わないのですか」

「ルキア。時は有限だ。私が緋真を愛したように、お前に愛する者ができたのなら、その者と結ばれてほしいと、私は思う」

「兄様!」

気づけば、白哉に抱き着いて涙を零していた。

「行ってまいります、兄様。またすぐに戻ってくるでしょうが・・・・・・時間は有限であることを、体験しにいってまいります」

白哉はただ静かに

「そうか」

と頷いただけだった。


穿界門をあけて、現世への道をたどる。2月ぶりになる。早く早く、一護に会いたい--------------。

変わらぬ、空座町に降り立って、一護の霊圧を探す。

黒崎医院に、一護の霊圧があった。だが、その隣に知っている霊圧があった。

「井上・・・・?」

とにかく、会いたくて会いたくて。

伝令神機で一護の携帯とやり取りはできるのだが、それさえも絶っていた。

仕事に支障をきたすと。

こんなことなら、もっと早くから連絡をとればよかった。

「一護!」

一護の部屋の窓ガラスをあけて、その小さな体で部屋の中に入ると、その光景に言葉を失った。

一護は、井上と抱き合っていたのだ。

「一護・・・・すまぬ、邪魔をしたな」

アメジストの瞳からたくさんの涙を流して、ルキアは部屋を後にした。

「おいまて、ルキア!勘違いすんな!」

一護が何かを叫んでいたが、もう聞こえなかった。



「一護の大ばか者!うつけが!」

近くの公園に降り立って、子供のように泣きじゃくった。

「私より、井上をとるのか?私たちは、付き合っているのではなかったのか?私のこの思いはただの自惚れなのか?」

泣くだけ泣くと、すっきりした。

段々腹が立ってきた。

こんなにも愛しく思っているのに、あろうことか井上に抱きつくなど・・・・これは、蹴りではすまさぬ。



コンコンと、窓をたたいた。

窓はすぐにあけられて、部屋には一護しかいなかった。

「井上はどうしたのだ」

「帰ってもらった」

「たわけ、貴様は私という者がありながら、井上と浮気するなどいい度胸だな」

まずは、一護の頭を蹴った。

「いてててて。だから、違うって」

「何が違うのだ」

ルキアは、一護のベッドに腰かけた。

「前から、井上に好きだっていわれてたんだ」

「え」

思ってもいなかった言葉に、アメジストの瞳に涙がたまっていく。

「でも、俺にはルキアがいるからって断った。最後に抱きしめてくれっていうから、さっき抱き締めてた。俺なりに、井上とけじめをつけたつもりだったんだ。でも、お前が泣くくらいなら、止めておればよかった」:

「貴様は、井上を好いておらぬのか?」

「俺にはルキアがいる」

アメジストの瞳から、ポロポロと大粒の涙が零れた。

「お前が今でも私を想っていると、そう考えてもよいのだな?」

「ああ、当たりまえだろ」

暖かな一護の腕に中に包まれて、ルキアは涙をふいた。

「このたわけ!」

一護の頭をまた蹴った。

「さっきから、頭蹴るなよ!」

「公園で泣きまくったのだぞ。貴様を井上にとられたと思って」

「だから、誤解だって」

ルキアを抱き締めて、泣きはらして朱くなった目元に口づけられた。

「おかえり、ルキア」

「ああ・・・・ただいま」

滞在許可は3日。

でも、これからは伝令神機を使って一護とやり取りをしようと決めた。

「これが私の伝令神機・・・・いわゆる携帯の番号で、これがメルアドだ」

「死神って、思ってたよりハイテクなんだな」

「たわけ!虚の位置を把握したりするのに、伝令神機のようなものがないと不便であろう!」

「そのアメジストの首飾り・・・・まだ、してくれてるんだな」

「たわけ。貴様からもらった大切なものだ。私が手放すわけがなかろう」

「好きだぜ、ルキア」

「私も貴様が好きだ」

唇と唇を重ねると、一護の唇が首に移動した。

そのまま、死覇装の襟元をはだけさせられる。鎖骨の位置にキスマークを残していく。

「んっ、一護・・・・・・」

「もう少し、お前に触れていいか?」

「好きにしろ・・」

井上に比べれば、貧乳でしかない胸に、一護の手が落ちてくる。やわやわともみしだかられて、甘い声をあげていた。

「ああっ、一護っ!」

胸の先端をはじかれると、背中に電流が走ったような刺激がやってきた。

「んっ・・・・・これ以上は・・・・・・」

「分かった」

一護とて、辛いだろうに、また我慢を強いらせてしまう。

でも、体を繋げるのが怖いのだ。
死神と人が結ばれるなど、ありえないことで。

「待ってるから。お前が、俺のものになってくれる日を」

顔から、火が吹き出そうなくらい恥ずかしかった。

乱れた死覇装を整えて、3日間滞在するのだと告げると、大学生である一護は学校もバイトも休むといいだした。

何度いっても聞かないので、好きにさせることにした。

それからの3日間は、今まで会えなかった分を補うかのように過ごした。

「愛している一護」

「俺も、お前を愛している」

一つのベッドで、抱き合いながら眠った。

買い物にも出かけたし、季節外れだが海にもいった。

3日は、あっという間に過ぎてしまった。

「またな、一護」

「ああ、またな」

穿界門を通って、尸魂界に戻ってきた。

(一護、これからはメールで連絡をとる)

そう送信すると、すぐに着信がきた。

(たとえ離れていても、俺たちの絆は消えない)

(たわけ、当たり前であろう)

(恋次がお前のことを好きなのは知ってるな。俺がいないからって、恋次とできるんじゃねーぞ)

(たわけ、私には一護、貴様がいる。恋次のことは好きだが、恋愛対象としては見ていない)

(ほんとだな?その言葉信じるからな?)

(そういう貴様も、井上と浮気するなよ)

(しない。俺には、ルキアがいるから)

「ふふ・・・・・・もっと早くから、こうしていればよかった」

二か月も音沙汰もなくしているより、メールでいいからやり取りをすればよかったのだ。

「覚悟していろ一護・・・・・私も、もう心に決めた。次に貴様と会う時は・・・私の、「初めて」をくれてやる」

それが、たとえ禁忌だとしても。

もう、動きだした時は止まらない。

体を重ねることで、何かを失うとしても。

もう、あふれ出た想いは、とまらない-----------------------。






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翡翠は誘う

朝起きると、腕の中に浮竹がいてびっくりした。

そうだ、昨日一人で眠るのが怖いという浮竹と同じベッドで眠ったのだった。

「おはよう、浮竹」

揺さぶっても、返事はなかった。

苦しそうに呼吸をしていて、おかしいとおもって額に手を当てると、すごい熱だった。

「浮竹!」

「きょうら・・・く・・・・・?」

「どうしたの!誰かに薬でも飲まされたの!?」

「違う・・・俺、病弱で・・・・肺を患っていて発作おこしたり・・・熱出したり・・・・」

そういえば、出会ってしばらくすると浮竹は言っていた。自分は病弱で、肺の病を患っているせいで吐血することがあると。

全然そんな様子を見せないので、忘れていたのだ。

「厨房にいって、氷もらってくる。薬はあるかい?」

「棚の奥に・・・・・」

「分かった」

京楽は、急いで厨房に行って氷をもらってくると、それを砕いてビニール袋にいれてタオルで包み、それを浮竹の額の上に置いた。

浮竹は、それが気持ちいいのか、翡翠の瞳を閉じていた。

「薬、一人で飲めるかい?」

「ん・・・飲める・・・・ごほっごほっ」

浮竹が咳をしだした。

苦し気に身を捩っているので、背中をさすっやっていると、浮竹は何かを言おうとしていた。

多分、ありがとうと。

「ごほっ!」

ごぼり。

音を立てて、浮竹が大量に吐血した。

「浮竹!」

服が血で汚れるの構わずに、浮竹の細い体を抱き上げて、医務室まで駆け足で運んだ。

「先生いますか、浮竹がーーー!」

運のいいことに、その日医務室を担当していたのは4番隊の死神だった。

「そこに寝かせて。回道でなんとかしてみよう」

回道で手当てを受けて、青白くなっていた浮竹の頬に、赤みがさしていく。それにほっとしていると、死神は言った。

「この子は浮竹君だね。肺を患っての発作は、学院にきて初めてのようだが・・・残念ながら、病自体の完治は無理だ」

「そんな・・・・・」

「この子も発作には慣れているようだし・・・・発作自体はもう大丈夫だ」

とりあえず、ほっとした。

「ここで寝かせてもいいけど、薬とかあるなら自室のほうがいいだろう。すまないが、この子を部屋まで運んでやってくれるかい?」

「はい」

「ああ、君!京楽君だっけ・・・・浮竹君もだけど、衣服にすごい血がついているから、ちゃんと着替えておくように。君は同室だったね?浮竹君の着替えもできればお願いするよ」

「はい・・・・・・・」

浮竹を抱き上げて、自分の部屋まで戻る。

「すまない・・・・・」

発作から回復した浮竹が、弱弱しく謝ってきた。

「いいから、全部僕に任せて」

まず自分の衣服を着替えた、それから浮竹の着ている服を脱がせて、新しい、学院で至急されている服に着替えさえていく。

浮竹の裸体をみていると、その艶めかしい白さに、驚くと同時に唾を飲み込んでいた。

いけない。

相手は病人だ。

それに、この想いを知られてはならない。

知られたら、きっと傍にいられなくなる。

着換えおわらせて、浮竹のベッドに横たえた。板張りの床や壁に飛び散った浮竹の血を、ぬれたタオルでぬぐっていく。

「すまない・・・・」

「いいから。まだ熱が高いようだし、寝てなさい」

京楽は、浮竹に解熱剤も含む薬を飲ませて、ベッドに横にさせた。

結局、その日は浮竹だけでなく、京楽も学院を欠席した。京楽が無断欠席するのはいつものことだが、優等生の浮竹が欠席をするなんて珍しくて、連絡を入れたにも関わらず、知人がお菓子をもっておしかけてきた。

それに、京楽が激怒した。

「相手は病人だよ!遊びにくるな!」

「おお怖い。まるで、浮竹が自分のものと思っているみたいな怒り方だ」

「あははは。門倉のやつの気持ち、わからないでもないからなぁ。浮竹は綺麗だから」

「色子と間違われたんだって?傑作だな」:

浮竹の周りでも、あまり評判のよくないグループの戯言だったが、気づけば京楽は、浮竹を侮辱した男たちを殴り倒していた。

「いってぇ、何するんだ」

「こいつ、きっと浮竹にホの字なんだよ」

「うあーまじかよ、いこうぜ、ホモがうつる」

男たちは、散々悪態をついて去っていた。

「二度とくるな、屑が・・・・・・」

吐き捨てると、薬を飲んで熱が少し下がった浮竹が起きていた。

「好きなように言わせておけばいい。俺は慣れてるから」

「でもね、君・・・・・・」

「いいから。京楽こそ、不快な思いをさせてしまったな・・・・・・すまない」

「まだ熱あるんだから、寝てなさい!」

浮竹をベッドに追いやると、浮竹が抱き着いてきた。

「浮竹?」

「京楽・・・・・・・俺を、嫌いにならないでくれ」

「何言ってるんだい!好きになることはあれど、嫌いになんてならないよ!」

「そうか・・・・よかった・・・・・」

もう一度、浮竹は解熱剤を飲んだ。

安心したのか、浮竹は処方されている解熱剤に含まれる睡眠薬の成分のせいで、スースーと静かな眠りについてしまった。

「君を好きになることはあれど・・・・・」

熱で潤んだ瞳と、熱のせいで上気した頬で嫌いにならないでと言ってくる浮竹に、欲情している自分に気づいた。

「くそ」

浴室にいって、手早く処理するが、まだ足りなかった。

京楽は、色街に出かけた。

そしていつもの蒼を買った。

「好きだ、浮竹・・・・」

「ああん、もっと」

「愛してる、浮竹」

「もっと奥まできてよ、京楽の旦那」

遊女の手練手管で、京楽はあっという間に精を搾り取られた。

「京楽の旦那、金余ってるんでしょ?あたしを身請けしてよ」

「その気はないよ・・・・・」

「けち。今度から、あたしを抱かせてやらない」

「いいよ、それでも。新しい子、見つけるから」

「ああん、嘘だよ京楽の旦那!また、あたしを買いにきておくれ」


すっきりした気分帰宅した。


部屋に戻ると、完全に熱の下がった浮竹が待っていた。

「色街にいっていたのか?」

「そうだよ

「そうか・・・・・」

何処か寂しく、悲しそうに見えるのは僕の気のせいだろうか。

ねえ、浮竹。

君は太陽のような翡翠だ。

その翡翠の瞳で誘ってくるのは、やめてくれなかい?

「京楽?」

気づくと、浮竹の顎に手をかけて、口づけしていた。

かっと、浮竹の頬が朱色に染まる。

「俺をからかうな!」

「本気だっていったら?」

「京楽!」

浮竹を、ベッドに押し倒していた。

翡翠の瞳が誘ってくる。

潤んだ翡翠の瞳の輝きに、何も考えられなくなる。

もう一度唇を重ねると、浮竹に頬をたたかれていた。

「俺は、色街の女じゃない!」

そういって、部屋を出て行ってしまった。





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翡翠を想う

浮竹の傍にいるのは、心地よかった。

たくさんの友人ができた。浮竹の親友になれてよかったと思う。

極上の翡翠の瞳をもつ親友は、常に京楽のことを気にかけてくれて、その優越感に浸っている自分がいた。

「しかっかりしないか」

いくら翡翠の瞳に白い髪という、京楽が愛したまだ若かった乳母と同じ色をもっているとはいえ、浮竹は自分と同じ男性だった。

その浮竹を欲しいと思うなんて、どうかしている。

ただ、太陽が欲しかった。できれば、翡翠の瞳をした。浮竹はまさに、その太陽そのものだった。

「君さ・・・・・・・」

放課後、先生に頼まれてプリントを整理していた浮竹に声をかける。

「君さ、なんでそんなに優しいの?」

「何がだ?」

浮竹は、翡翠の瞳で京楽の漆黒の瞳を見つめた。

「女遊びの激しい、こんなできそこない、普通親友にする?」

「確かにお前は女遊びが激しいやつだが、一人の人間としては魅力的だと思うぞ」

「どうして?」

「いろいろ親切にしてくれるし、優しいから」

それは、君だからだよ-------------。

言葉を飲み込んで、京楽はプリントを手にして、浮竹の手伝いをした。



「ああっ、いいっ!」

花魁の翡翠の次に夢中になったのは、青い瞳の遊女だった。蒼(あお)という名前で、京楽は惜しむこともなく金をだして、蒼を抱いた。

「浮竹-----------」

「ああ、京楽の旦那!あたしを浮竹と思っていいから、もっと情けを!」

京楽は、女の欲しがるままに腰をふって、蒼と関係を深めていく。

蒼は、京楽の名を知っていた。何せ、上流貴族だ。四大貴族にまでは及ばないものの、相手が上流貴族のぼんぼんだと知った蒼は、この男に身請けしてもらいたいと思っていた。

だが、京楽にその気はなかった。

それでもいいと、蒼は言った。金さえもらえれば、年季も少なくなる。蒼は、自分に夢中になっている間に京楽の金の全てを吸い付くそうと思っていた。

「浮竹!」

浮竹の代わりに、蒼をいつものように抱いていると、廓の外でちょっとした騒ぎが起こっていた。


「色子のくせに、生意気だぞ!」

「誰が色子だ!俺はただの一般人だ!」

「はぁ?お前、色子だろ。そんな恰好して」

「この格好は起きたら勝手にこうなっていたんだ!」

「色子のくせに生意気な!」

パンっと、乾いた音をたてて、頬をはたかれたその人物は、衣服をきて廓の前に様子を見にきていた京楽と視線を合わせた。

「京楽?」

「浮竹!?」

「え、京楽の旦那の馴染みの色子なんですか?すみません、傷物にはしていませんので」

廓で客引きをしていた男が、京楽に謝る。

この色街で、いろんな廓に出入りして派手に遊んでいるせいか、京楽の名は知れ渡っていた。

「この子は色子なんかじゃないよ!」

京楽は、女ものの着物を着せられて、短い髪に髪飾りをして、唇に紅をひいている浮竹を見た。

「どうしたの!ここは、君のような子が来るところじゃないよ!それに、その恰好はなんなの!本気で、色子の真似をしようとしていたの!?」

自分の馴染みの廓にあがらせて、問い詰めると、浮竹は泣き出した。

「呼び出されて、寮の部屋の外にでたら薬をかがされて・・・・・気づけば、こんな格好にされて、廓の布団の上に寝かされていたんだ!」

まさか泣くとは思っていなかったので、京楽はおろおろしだした。

「知らない男が覆いかぶさってきて・・・・体中をまさぐってきて・・・鬼道で抵抗して逃げてきたけど、廓から色子が抜けたって追ってこられて・・・怖かった」

京楽に抱き着いて、浮竹は泣いていた。身に覚えもないのに、いきなり見知らぬ男に操を奪われかけたのだ。それは怖い思いをしたのだろう。

浮竹の頭を撫でていると、浮竹は安心したのか京楽から離れた。

浮竹からは、甘い花の香がして、その香と今の恰好があまりに似合っていて、なんともいえない気持ちになる。

「浮竹、着換えはないの?」

「ない。気づけばこんな格好だ。自分の容姿は知っている。色子に見えるんだろう?」

「それは・・・・・・」

京楽は、居心地の悪さを覚えた。惚れている相手が、まるで自分に抱かれるためにそんな恰好をしているように見えて。

「廓から、男ものの服をもらうから、それに着替えて、一緒に帰ろう。君をこんな目に合わせたやつを突き止めないと」

京楽は、廓の女将を呼んで、男性ものの着物をもってきてもらった、口止めのために少し多めの金銭を与えると、女将はこのことは内緒するといって、出て行った。

「着替えるから、あっち向いててもらえるか」

「ああごめん」

勿体ないと思った。

本当に色子に見えた。白い短い髪に髪飾りをさして、唇に紅を引き、女ものの着物をきている浮竹は、その姿が似合いすぎて、京楽は浮竹を押し倒したいという欲望にかられた。

それを押し殺していると、蒼がやってきた。

「蒼?」

「この子が、旦那のいっていた、浮竹?」

「蒼!」

「あのね、京楽の旦那はあたしを抱くとき浮竹って・・・・・」

「これ、蒼!」

女将に引っ張られて、蒼が奥の部屋に消えて行った。

「?どういいうことだ?」

「ああもう!君は知らなくていいから!」

まさか、蒼を浮竹の代わりに抱いているなんて言えなくて、適当に誤魔化して廓の外にでた。

髪飾りを外し、紅もぬぐったが、男ものの着物を着ていても、さっきまでの浮竹の姿を知っている京楽には、浮竹が妖艶に見えて仕方なかった。

「犯人に、心当たりはないの?」

「ある。門倉だ。前から言い寄られていたし、門倉の家は廓を経営している。俺が寝かされていた廓は、門倉のものだった。でも襲ってきたのは門倉ではなかった・・・・・・」

いちいち、こんな手の込んだ真似をしておいて、他人に襲わせて・・・もしかして、門倉という男は、無理に犯される浮竹を見て興奮する類の男なのだろうか。それだと、余計に始末が悪い。

学院に帰り、門倉を糾弾すると、門倉は意外とあっさりと自分の罪を認めた。自分を振った浮竹がうとましくて、二度と学院にこれないような目に合わせてやろうとしての犯行だったとかで・・・・・京楽からの嘆願もあり、門倉は退学になった。

その日の夜、寮の部屋のベッドで寝ようとすると、おびえた表情の浮竹がいた。

「一緒のベッドで眠っていいか?怖くて、一人じゃ寝れないんだ・・・・」

その様子に、京楽はいけないと思いつつも、了承していた。

腕の中で眠る浮竹の唇に唇を重ねてみる。浮竹は、安堵しているのかよく眠っていた。

「浮竹・・・・・好きだよ。僕の翡翠。僕の太陽」

京楽は、浮竹を出きしめて、自分も眠りについた。





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ずるい京楽

つい一昨日まで、熱で寝込んでいた。

片付けようと思っていた仕事は、3席の清音と仙太郎の手で処理されてしまった。

京楽は、確かたまった仕事を片付けているはず。

することもないので、浮竹は気軽な気持ちで日番谷のところへ遊びにいくことにした。

「日番谷隊長、いるかい?」

「なんだ暇人」

「そう、暇人なんだ。構ってくれ」

「そこにある茶菓子と茶でも飲んでろ。もう少しで仕事が終わるから」

構ってくれと言われて、否定されないくらいには仲が良かった。

「ああ、実は聞きたいことがあるんだが」

「なんだ?なんでも答えるぞ」

きらきらした翡翠の瞳に罪悪感を覚えつつも、質問していく。

「初恋の相手は?」

「幼馴染の女の子」

日番谷は、何を聞いているんだろうと思いながら、浮竹に質問していく。

「初めてキスは?」

「京楽」

「初めての体験は?」

「京楽」

「今好きな相手は?」

「京楽」

「昔の恋人は?」

「昔から今もずっと京楽」

「今の恋人に不満があるとしたら?」

「すぐ欲情する。週に2回って決めたのに守ろうとしない」

「人生をやり直せるとしたら、伴侶に誰を選ぶ?」

「うーん。京楽」

「京楽に一言いうとしたら」

「愛してる」


「だそうだ、京楽」

10番隊の執務室で、不毛な質問のやりとりを続けていた日番谷。京楽から、その質問の内容を浮竹に聞けば金一封と言われたので、聞いてやったのだ。

正直、執務室を半壊させすぎて、10番隊の懐は痛いことになっていた。

現れた京楽は、浮竹を抱き締めようとした。

でも、浮竹は顔を手で覆って床でゴロゴロしていた。かなり恥ずかしかったのだろう。

2分ほどゴロゴロして、やっと京楽の顔を見る。

「日番谷隊長だから答えていたのに!背後にお前がいるなんてずるいぞ京楽!仕事はどうした!」

「仕事なんて、とっくの昔に終わらせたよ」

京楽は、でれでれとだらしない顔をしていた。

「初恋の相手が僕じゃないっていうのは気にくわないけど、ほとんどの質問に僕だと答えたね・・・・・愛してるよ、浮竹」

「俺をはめたな京楽!ばかあほまぬけ!こっちにくるな!」

「まぁまぁそう言わずに」

にじり寄ってくる京楽に、浮竹は日番谷の後ろに隠れた。

近づいてくる京楽に、浮竹は10番隊の執務室にあったものを投げつけた。

「おい、ここは雨乾堂じゃないんだぞ!勝手に物を投げるな!」

「もう怒った。日番谷隊長と浮気してやる!」

なぜ、そこで近くにいる松本の名を出さないのかが謎だった。

「俺を巻き込むなーーーー!」

「日番谷隊長、覚悟はできているんだろうね?」

「おい、浮竹なんとかしろ!京楽も本気になるな!」

「日番谷隊長、助けてくれーーー」

京楽に腕を掴まれた浮竹が、日番谷の服を掴む。

びりっと音たてて、隊長羽織と死覇装の腕の部分がやぶけた。

それでも、浮竹は日番谷を離そうとしない。

「浮気は許さないよ?」

「ぎゃああああ、こっちにくるなーーー!蒼天に座背氷輪丸ーーーーー!!」


今日も、浮竹と京楽はやらかす。

それに対して、日番谷は斬魄刀を解放させるのであった。





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