桜のあやかしと共に57
鴆の京楽が解毒してくれて、なんとか助かったが、毒の妖術を与えた妖巫に、京楽は桜鬼になって、死体となった後も剣で切り刻む。
彼岸花の精霊の浮竹に眠らされて、京楽の中の闇は、ひとまず静かになった。
「う‥‥‥」
「ん‥‥」
浮竹と京楽は、ほぼ同時に起きた。
「十四郎、傷は!?」
京楽が、浮竹の受けた傷を見るが、傷口は塞がっており、毒状態も回復していた。
「大丈夫なようだ。鴆の京楽に助けられてな」
「よかった‥‥‥」
ぎゅっと抱きしめられて、浮竹も抱きしめ返す。
「すまない、油断していた。もう、俺は大丈夫だから。だから、桜鬼の姿から元に戻ってくれ」
「うん‥‥」
京楽は人の姿に戻ると、ずっと浮竹を抱きしめていた。
「離さない。君を一人にはしない」
「京楽、苦しい」
「あ、ごめん」
ぱっと手を離すが、やはりまた抱きついてきた。
「ふふ、寂しいのか?」
「君を失いそうで怖い」
「俺はそう簡単には死なないぞ?」
京楽は、浮竹の傍にずっといた。
ご飯の時も、お風呂も、眠る時も。さすがにトイレにまでついてこられそうになって、扉の外でまっていてくれとお願いしたが。
浮竹が買い物にいくとついてくる。
散歩にいってもついてくる。
子猫姿になって、ふりきろうとしたら、捕まえられて抱きしめられた。
「京楽、ちょっとおかしいぞ。前はこんなにずっと四六時中一緒ではなかっただろうに」
「君が傷つくのが怖い。君を失うのが怖い」
浮竹は、はぁと大きなため息をついた。
「俺はお前の傍にいるから、安心しろ。俺を守ってくれるんだろう?」
「うん。君の傍にいる」
浮竹は、諦めて京楽の好きにさせた。
「あやかし退治だ。水龍神が暴れて、村を水没させたらしい」
「うん。ボクは行かなきゃいけないけど、浮竹もきて?」
「分かっている。そんな精神状態のお前を一人にさせるほうが危険だ」
水没したという村まで、高級車で向かう。
4時間かかった山奥に、湖があって、その近くの村が水没していた。
「ああ、術者の方ですか!お願いです、水龍神を退治してください!」
「水龍神はかりにも神だぞ。そうやすやすとは倒せない」
「そこをなんとかお願いします。生贄を要求してきて、拒んだら村を水没させたんです。何人か犠牲が出ました」
「十四郎、その水龍神とやらと、とりあえず話をしてみない?」
「ああ、そうだな」
「前の水龍神様は村を守ってくださっていたのに、代替わりしてから酷いのです」
浮竹と京楽は、水龍神が塒(ねぐら)にしているという、滝の裏側の洞窟にやってきた。
「誰ぞ。輪が眠りを妨げるのは誰ぞ」
「水龍神、話がある!」
「なんだ、あやかしの子か。なんの用だ」
「代替わりしてから、生贄を要求したり、村を水没ざせたのはお前か?」
「水龍神でも、場合によっては封印するよ?」
京楽の言葉に、水龍神は笑った。
「神である我を封印だと?笑わせてくれる。500年も生きている我は、我の好きなようにするのだ。父は愚かなことに、人間の娘と恋に落ちて神の座を空位にした。子である我が引き継いだのだ。好きなようにしてもいいであろう」
「間違っているぞ、水龍神。人に害をなすな。生贄の要求など、もっての他だ。他のあやかしではなく、水龍神、お前が村を水没させたんだな?」
「十四郎、封印しよう」
「ああ。神は殺すと厄介だからな」
「ははははは!あやかしの術者か!笑わせてくれる!我を封印だと?その命、よほどいらぬと見える。よく見れば、そっちの白い髪のあやかしはなかなか麗しいではないか。我の奴隷にしてくれようぞ」
「極滅破邪、天炎!」
京楽が、水龍神の言葉に怒り、天の炎をもたらす。
「ぐがががが、我に炎など‥‥」
「十四郎がボクのものだよ。奪おうとするなら、神でも殺すよ?」
「京楽、封印だ」
「あ、うん、そうだね」
京楽は、式神を飛ばして、円陣を描く。
「四季の王の名において命ずる!きたれ、冬の王よ!」
「へあ?」
いきなり召喚されて、冬獅郎はぼけっとしていた。
「な、なんだ!?」
「冬獅郎くん、この水龍神を凍らせてくれ!」
浮竹の言葉に、冬獅郎は頷く。
「冬の息吹よ!」
「ぬおおお、我の体があああ!四季の王だと!?」
凍てついていく水流神は、自分が敵に回したのは王の名を冠するきわめて神に近い者だと知る。
「おのれ、四季の王も京道連れにしてくれる」
「十四郎には、手を出させないよ?」
京楽が、桜鬼になって、氷ついていく水龍神の体を砕く。
「あははは、君は塵がお似合いだよ」
「京楽、しっかりしろ!闇に飲まれるな!」
浮竹から口づけられて、京楽は人の姿に戻る。
「ごめん、十四郎」
「封印するぞ!」
「うん!極滅破邪、永久凍土!」
京楽の放った冷気は、冬の王の冬獅郎にも負けず、水龍神を完全に凍らせた。
粉々に砕き、いくつもの結界を構築して封印する。
「俺、必要あったのか?」
「さぁ?」
京楽が、首を傾げる。
「浮竹、四季の王だからと‥‥」
召喚された冬獅郎は、それを言い残して強制送還された。
「封印、うまくいったかな?」
「ああ。さすがだぞ、春水」
「十四郎を傷つけたり自分のものにしようとするから、封印されている間、針の山にいるような痛みを感じるようにさせてやったよ」
「水龍神も、おとなしくしていれば、人に敬われて捧げものや神酒をもらえたものを」
浮竹と京楽は、洞窟から出た。
水没していた村は、水がひいていた。
「ありがとうございました、術者の方!これは、村の者たちでかき集めた金です。これで、手を打ってくれないでしょうか」
「いらない」
「え?」
「これから、村の復興に金がかかるでしょ。だから、いらない」
依頼人は、顔を輝かせた。
「本当にありがとうございました!」
「帰ろう、十四郎」
「ああ、そうだな」
高級車に乗って、また4時間もかけて帰るのかと思うとちょっと億劫だった。
「車ごと、異界送りをするか」
「え、そんなことできるの?」
「ちゃんと駐車場に、ゲートを繋げた」
京楽のマンションに帰還する。玄関に、恋次の靴があった。
「あああ!!」
白哉の甘い声が聞こえて、浮竹と京楽は赤くなり、結界をはる。
「ううう、俺の白哉がああああ」
「白哉くんはもう、すっかり恋次くんのものだね」
「阿散井恋次‥‥‥消すか?」
本当にやりかねないので、京楽がなだめまくる。
「十四郎には、ボクがいるでしょ」
「それはそうだが、白哉は俺の弟で‥‥」:
「ねぇ、ボクたちもしようよ」
「え、こんな時間からか?」
「いや?」
「いやじゅないが‥‥ううん」
京楽からディープキスされて、寝室にお姫様抱きで連れていかれて、浮竹は赤くなりながらも、京楽の首に手を回すのであった。
桜のあやかしと共に56
鴆の京楽と彼岸花の精霊の浮竹がその間に遊びにきて、浮竹は彼岸花の精霊の浮竹に、着せ替え人形のように女性の着物をいろいろ着せられて、髪を結われて唇には紅をさされていた。
あやかし退治から帰ってきた同じく女性になったままの京楽は、浮竹を見ると本当に綺麗だと思った。
「似合っているよ、十四郎」
「嬉しくない‥‥」
鴆の京楽と彼岸花の精霊の浮竹が去って行ったあとで、恋次のところに行っていた白哉が帰ってきた。
「白哉、大丈夫だったか?」
「恋次のやつめ、手加減を知りおらん。絶対孕んだ」
「も、元にはちゃんと戻るから、その時には孕んでいたとしても何もなくなる」
浮竹が、キスマークをいっぱいつけて帰ってきた白哉を気遣う。
「それにしても、浮竹、兄はかわいい姿になっているな?」
美少女の上に紅までさして、髪を結いあげていたままだった。
「そういう白哉、お前だって綺麗だしかわいいぞ。白哉に似合いそうな着物を、もらっておいたんだ。着ないか?」
「まぁ、よかろう」
「せっかくだし髪も結おう」
京楽はグラマラスな美女だったが、白哉は長い黒髪の美しい少女の姿だった。
「白哉は肌が白いから、この緋色の着物なんかあうんじゃないか?」
「別になんでもよい。しばらく女の姿のまま過ごさねばいかぬのだろう。もっている服ではサイズが合わぬ。ネットで適当なものを買うか」
浮竹に緋色の着物を着せられて、髪を浮竹と同じ形に結い上げる。
「紅、さしてもいいか?」
「それで兄の気がおさまるなら、好きにせよ」
「じゃあ、さすな?」
唇に紅をいれると、浮竹と白哉jは姉妹のようだった。
「白哉、にあってるぞ。かわいい」
「確かにかわいいね。浮竹の次にだけど」
「京楽、兄だけなぜ大人なのだ」
美女になっている京楽は、首を傾げる。
「ボクにも分からない。浮竹と白哉くんは少女だけど、ボクだけ大人なんだよね」
浮竹も京楽も白哉も、女体化してしまったことを恥ずかしがりもせず、堂々としていた。
「白哉、パフェ食べに行こう」
「よいが、京楽は?」
「京楽も行くか?」
「うん、行く」
京楽は、浮竹が行くならどこでもついてきそうだった。
女体化して一番困ったのは、公衆トイレであった。男性のほうに入って、悲鳴をあげられた。これではまるで痴女のようだ。
女性用のトイレに入るのには戸惑いはあったが、慣れてしまえばあとはどうってことなかった。
「京楽、白哉に似合いそうな髪飾りを買ってもいいか?」
普段浮竹が使う金は、京楽のクレジットカードだった。
浮竹自身、金塊を古くからもっており、あと「春」の遺産があるのでそこそこ金持ちだったが、京楽のほうがさらに金持ちなので、京楽の金を使っていた。
「うん、いいよ」
京楽の許可をもらい、ジュエリー店にいき、30万するルビーの髪飾りを買った。
それを、白哉の髪に飾る。
「では、私はこのサファイアの髪飾りを買おう。浮竹、兄の髪に飾る」
白哉は、あやかしなのに京楽に負けないほどの富豪であるので、60万するスターサファイアをあしらった髪飾りを買って、京楽の髪に飾った。
「ルビーとサファイア。対象的でいいね。兄弟だから、姉妹だね」
髪飾りをつけた二人を見て、京楽はスマホで写真をとった。
三人は、ちょっとおしゃれな喫茶店に入り、それぞれパフェを頼んだ。
「俺はマンゴーパフェを」
「ボクは苺パフェで」
「私は‥‥チョコレートパフェで」
三人は、男性の視線をくぎ付けにしていたが、無視して頼んだパフェがやってくると、食べた。
途中で服屋により、ネットで買うといっていた白哉の分の女もののシンプルなデザインの服を買う。
「白哉は美人さんだからな。あまり飾り立てたないほうが、かえって綺麗でそそる。俺のお嫁さんにしたい‥‥‥」
「浮竹にはボクがいるでしょ」
「白哉は特別だ!俺の弟‥‥‥今は妹だが、とにかく特別なんだ」
「でたよ、ブラコン‥‥‥今は、シスコンかな?」
わいわい騒ぎながら、雑貨店に入る。
熊さんのマグカップを、白哉が気に入ったので、浮竹は自分と京楽の分もあわせて、3つ買った。
帰りに、視線をたくさんあびながらスーパーにより、今日の食材を確保する。
今日は、白哉の好きな和食にということになった。
それから、一週間経った。
京楽と白哉は、元の男性に戻ったが、浮竹だけがまだ美少女のままであった。
「な、なんで俺だけ元に戻らないんだ?」
「女体化の薬とか怪しいもの作るから、ばちがあたったんじゃない?」
「そんなわけあるか!」
「まぁ、ボクも白哉くんもは男性に戻れたから、しばらくしたら元に戻れるでしょ」
その日の夜、結界をきちんと張って、京楽が夜這いにきた。
「十四郎、しようよ」
「えー。眠い‥‥‥」
「女の子同士でも交わったけど、男女ではまだじゃない。ね、しようよ」
京楽からディープキスをされ、ツルペタな胸をもまれて、浮竹は眠気も吹き飛んだ。
「あああ、やあああん」
「ここ、感じるよね?」
下着は男性ものであったが、秘所のGスポットを指で抉ると、浮竹は甘い声を出す。
「あ、春水だめぇぇ」
いつもと違った姿の浮竹の妖艶さに、唾を飲み込む。
指でいいぱい愛撫してやり、秘所に舌をはわせると、浮竹派ビクン体をはねさせていっていた。
「あああ、春水、ちょうだい]
[何を?」
「やああ、春水の意地悪!春水の大きな熱いやつで、俺を犯して?」
「このまま女性のままなら、子供できちゃうね?」
そう言いながら、京楽は濡れた浮竹の秘所に自分のものを挿入した。
「あああ!」
Gスポットを抉られながら、陰核をつままれて、浮竹はいってしまう。
「やあああ」
ぶつりと、何かが切れる音がして、浮竹の太ももを血液が伝った。
「え、あ、なんで?」
「多分、処女膜が切れたんだよ。続けるよ?」
「あ、だめ、今いってるから‥‥ひああああんん」
ぷしゅわあああと、浮竹は潮をふいた。
「十四郎、かわいい。もっと?」
「あ、もっと、もっと俺をめちゃくちゃにして?」
京楽は、浮竹の子宮の奥に子種を出す。
「あああ、春水の熱いザーメン、直接注がれてるううう」
「いっぱいあげるから、元気な子を産んでね?」
あと数日もしないうちに、浮竹も元の男性に戻るだろう。今しか味わえない快楽を求めて、二人は交じりあう。
「あああ、もうだめええええ」
「ふふ、きっと孕んじゃったね?」
「責任をとれええ」
「じゃあ、今度結婚式でも挙げる?」
「いらない」
浮竹は即答する。
「お前とは、契約を交わした時点で婚姻している」
「じゃあ、今度エンゲージリング買ってくるね?そういや、白哉くんもシンプルなデザインの指輪はめてたね?恋次くんから、もらったんだろうね」
「俺の白哉があああ」
浮竹が、京楽に抱かれながら涙を零す。
「浮竹のブラコンもけっこうきてるね」
「白哉を幸せにしないと、桜の禁忌で呪ってやるううううう」
「十四郎、今は白哉くんより、ボクを見て?」
「んああああ、ひあっ」
子宮の中にまで入り込んできた京楽の熱は、たくさんの精液を注ぎ込む。
「んあ。もう終わりにしろ」
「仕方ないねぇ。ボク、まだ満足してないから、素股お願いするよ」
浮竹は、それを了承した。
「ああん。京楽の熱いのがこすれて‥‥」
「そのまま、股閉じててね?すぐに終わらせるから」
ぐちゅぐっちゅと音を立てて、性器をこすりあわせえて、京楽は満足した。浮竹は、逆に火がまたついてしまったようだった。
「あああ、体がうずく」
「指と舌でしかできないけど、いかせてあげるね?
京楽の手で二回ほどいかされて、浮竹も満足した。
深夜なので、風呂は起きてからと、裸のまま眠りにつくと、次の日のは浮竹も元の男性に戻っていた。
「やっともとに戻れたーーーー!!」
「あーあ。かわいすぎる浮竹も終わりかぁ」
「十分楽しんだだろう?」
「まぁね」
買ってしまった女ものの服やもらった着物は、使っていない部屋のクローゼットになおす。
捨ててもいいのだが、また浮竹が悪戯心をおこして女体化の薬を作った時用に残しておくことにした。
『遊びにきたぞ。あれ、元に戻ってしまったのか?』
「元に戻った」
『せっかく、似合いそうな着物持ってきたのに:』
遊びにきた彼岸花の精霊の浮竹は、少しつまらなさそうにしていた。
『元に戻れて、よかったね」
鴆の京楽はほっとする。
「まぁ、まだ材料はあるから、気が向いたらまた作って飲んでみるかな」
懲りない浮竹であった。
桜のあやかしと共に55
浮竹は、畑で栽培していたマンドラゴラの他に西洋の魔女から手にいれたドラゴンの血やら、世界樹の雫やらを混ぜで、怪しい薬を作り出した。
「名付けて女体化作戦!京楽を春水から春子に変えていじってやるううう」
数日前の、浮気だといわれて激しくエロいことをされたのを、浮竹は根に持っていた。
京楽を女にしていまい、浮竹がいつもとは反対に抱いてしまえと思ったゆえの結果であった。
「これを、京楽の紅茶に混ぜて‥‥」
「あれ?十四郎が紅茶をいれてくれるなんて珍しいね」
何も知らない京楽は、浮竹のいれた紅茶を飲む。
けれど、いつまで経っても効果が表れない。
「失敗か?」
浮竹は、自分も薬いりの紅茶を飲んだ。
ぼふん。
音をたてて、浮竹は女になった。同時に、京楽も女になっていた。
「なんじゃこりゃあああああああ」
京楽の悲鳴に、浮竹が。
「俺まで女になってどうするううう!春子を抱けないじゃないか!」
「十四郎?これは十四郎のせいなのかな?」
にこにこ怖く微笑む京楽は、ボンキュッボンの美女になっていた。
一方の浮竹は、華聯な深窓の令嬢のようであったが、つるぺただった。
「十四郎?」
「もぎゃああああああああ」
京楽に押し倒されて、浮竹は慌てる。
「何をしているのだ、兄たちは。女体化したのか?」
妖力で、浮竹と京楽であると分かった白哉が、紅茶を飲もうとする。
「あ、だめだ、白哉、その紅茶には!」
「ん?」
ぼふんと音をたてて、白哉まで女体化した。
「私までなるとは‥‥‥‥‥これはこれでおもしろい。恋次のとろこに行ってこよう」
虎の前に肉を差し出すような行為だったが、白哉と恋次の問題なので、二人はあえてつっこまなかった。
「十四郎、なんでこんなことしたの」
「前のエッチが、不満だったから」
「え、もっとしてほしかったの?」
「逆だ逆!やりすぎだ。おまけに俺は、その、おもらしまでしてしまった」
「気にすることないのに」
「気にする!」
浮竹な長い白髪の華聯な美少女になっていた。
年齢まで変わるとは思っていかった。
「まるで、今の君は桜の王じゃなくて、桜姫のようだね」
「そういうお前は、ワイルド系の出てるとこ出てる美女だな。桜鬼姫だ」
お互い、顔を見合わせる。
「とりあえず、いつ元に戻るかも分からないから、下着は今のままでもいいけど、服買いにいこうか」
浮竹と京楽は、背も大分縮んでいた。それでも170近いが。
外に出るを嫌がる浮竹をなんとか宥めて、外に連れだす。
百貨店に向かうが、行きかう人々は二人を見て、振り返る。
こそっと、声が聞こえてきた。
「見ろよ、すげー美女。巨乳すげぇ。あっちはツルペタだけどすげー美少女。一度やってみたい」
「誰がツルペタだ!」
浮竹が叫ぶ。
好きでツルペタになったわけじゃない。どうせなら、京楽のようなぼんきゅっぼんな美女になりたかった。
京楽は、クレジットカードでまず自分の服を買った。
ワイルド系な装いだった。
そして嫌がる浮竹を連れて、ゴシックロリータの店にはいる。
ふわふわのフリルやリボンがいっぱいついた衣装に、かわいいヘッドドレスまでつけられて、まるで生きている動く人形のようだった。
「十四郎、かわいい。かわいすぎて、鼻血出てきた」
西洋のお人形のような浮竹を見て、鼻血を出す京楽に、浮竹が呆れてハンカチをさしだす。
「せっかく女になったんだし、女性限定のスイーツ店にでも行こうか」
「何、スイーツだと!是がひでも行くぞ!」
浮竹と京楽は、並んで手を繋ぎながら歩きだす。
途中で何度もナンパにあったが、無視してスイーツ店までいき、食べ放題なので浮竹は限界まで食べた。
「食べ過ぎた‥‥」
「ホールケーキ丸ごと食べてたしねぇ」
京楽のマンションに帰還して、ラフな服装に変える。
「シャワー浴びておいで。ボクも浴びるから」
「分かった」
浮竹は、女性用のパジャマを手に、バスルームに向かう。
浮竹が入ったのを確認して、京楽も裸になって同じバスルームに入ってきた。
「なんだ。ツルペタの胸でも見たいのか」
「うん」
「へ?」
「女の子同士でも、エッチはできるんだよ?」
「は?」
浮竹は、シャワーを冷水にして京楽にかけた。
「冷たいけど、今の季節にはいいねぇ」
京楽は、浮竹を抱きしめて口づける。
「ふあああん」
ツルペタの胸を撫でて、先端をつまみあげられた。
「ひあ!」
「ふふ、女でも男でも、感じる場所はほとんど同じだね?」
「こうしてやる!」
浮竹は、負けてなるものかと京楽の豊満な胸をもんだ。
「ん、変なかんじだね」
「ひゃん!」
京楽の手が下肢に伸びて、浮竹の秘所をいじる。
「だめええええ」
陰核をつまみあげて、秘所の天井を指でこすってやると、浮竹はいってしまっていた。
「あああ!」
ふと、京楽は悪戯を思いついた子供のような目で、シャワーヘッドを浮竹の秘所にあてて、水力を強にしてお湯をだした。
「ひあああーー!」
浮竹はまたいっていた。
「く、俺ばかり‥‥‥お前も、いけ」
浮竹が、京楽の秘所に指をもぐりこませて、Gスポットを刺激すると、京楽もいっていた。
「んんんん」
「素直に俺みたに喘いだらどうだ」
「それはだめ。でも‥‥あああ、きもちいい、ね」
お互いの秘所を指で刺激しあいながら、何度も達した。
「もう無理。外にいくぞ」
「ボクも、さすがにこれ以上いきたくないね」
お互い、長い髪を乾かして、パジャマに着替える。
『遊びにきたぞ』
「げ、彼岸花の浮竹が!浮竹、元も戻る薬はないの?」
「そんなもの、作ってない。数日で効果が切れるが‥‥」
浮竹と京楽は、気まずそうに彼岸花の精霊の浮竹と鴆の京楽を室内に迎え入れる。
『これまた、かわいい姿になったな?』
彼岸花の精霊の浮竹は、驚きながらも、女体化してしまっている浮竹の頭を撫でる。
「ボクは撫でなくていいよ」
『遠慮するな』
彼岸花の精霊の浮竹は、女体化した京楽の頭も撫でた。
『いつ、元に戻るんだい?』
鴆の京楽の問いに、二人そろって。
「「そのうちに戻る」」
と、はもるのであった。
桜のあやかしと共に54
桜のあやかしと共に53
山の王の京楽の手紙を読んで、藍染の手下にやられたが、生きているようなので安心した矢先の出来事だった。
彼岸花の精霊の浮竹も、洞窟にはもういない。
山にいかなくなって、1年が経った。
「彼岸花の精霊の俺の気配がする。あと、山の王は何かのあやかしに転生したな。あの山に行ってみよう」
「いいの?また、失うかもしれないよ」
京楽が、浮竹のためを思って口にするが、浮竹は首を横に振った。
「それでも、俺は何度でも友になる」
山にいくと、彼岸花の精霊の浮竹がいた。
『久しいな。1年ぶりというところか』
「お前は元気そうで安心した。そっちの京楽が、新しく転生した元山の王か?」
『ああ、そうだ。鴆(ちん)というあやかしだ』
「鴆の京楽、俺たちのことは‥‥」
『残念ながら、俺のことは記憶にあるらしいが、お前たちのことは忘れてしまったみたいなんだ』
浮竹と京楽は顔を見合わせる。
「はじめまして、鴆の京楽。俺は桜の王。お前の転生する前の友人だ」
『えっと、はじめまして。ごめんね、浮竹のことは覚えているけど、それ以外のことは覚えていないんだ』
「かまわない。友達に、なろう」
「ボクは桜鬼の京楽。桜の王と一緒で、君の友人だったよ」
『転生前のボクって、友達がいたんだね』
嬉しそうに微笑む鴆の京楽は、前と同じように洞窟に住むらしかった。
「麓の町がなくなっているな。強力な幻術だったわけか」
『ああ。全ては京楽を殺すための。それさえ、四季の王になりたがっている藍染とやらの手下の
せいだった』
雪女の言葉を思い出す。
友人が死ねば、悲嘆にくれて弱った桜の王を殺せるかもしれない。確か、そんなことを言っていた。
「お前が殺された最初の原因は俺にあるかもしれない。すまない」
『ううん。ボクはまたこうやって浮竹と出会えたし、何も不満はないよ』
「そうか。それならいいんだ。ちょっとまってろ、今コーラと酒と作り置きしておいたガトーショコラもってくる」
浮竹は一度京楽のマンションに戻ると、コーラと赤ワインとガトーショコラをもって帰ってきた。
『お、久しぶりのしゅわしゅわだ』
嬉しそうな彼岸花の精霊の浮竹は、コーラを受け取って、コップに注ぎ飲んでいく。
『ボクは主食は毒蛇なんだけど‥‥‥人の食べ物も食べれるかな?』
鴆の京楽は、おそるおそるガトーショコラを口にする。
『少し苦いけど、甘みもあっておいしいね?』
「だろう?酒ももってきたんだ。まぁ飲め」
「十四郎、ほどほどにね?」
京楽が、苦笑する。
『人間の酒はうまいからな』
彼岸花の精霊の浮竹も、赤ワインを口にした。
『じゃあ、ボクも』
鴆の京楽も、赤ワインを口にする。
『君たちは飲まないの?』
「じゃあ、ボクも飲もうかな」
「俺も飲む」
京楽が止めるより先に、浮竹がグラスに並々と注がれた赤ワインを飲み干す。
「うぃーーー。妖艶でけしからんぞおおお」
浮竹が、彼岸花の精霊の浮竹を押し倒す。
『ふふふ、俺を抱くのか?』
彼岸花の精霊の浮竹は、妖艶に微笑み、浮竹を抱きしめる。
「ZZZZZZZZZZZ]
『寝てる‥‥』
浮竹をべりっとはがして、京楽が謝る。
「ごめんね、浮竹酒に弱い上に酒乱なんだ。君たちにまた出会えて、よっぽど嬉しかったんだね」
『浮竹はボクのものだから、あげないよ』
鴆の京楽は、そう言って彼岸花の精霊の浮竹を抱きしめた。
「ぐへへへへへ。京楽、げへへへへ」
「どんな夢見てるんだか」
浮竹を抱きしめながら、京楽はため息をつく。
『久しぶりだし、お前たちも泊まっていったらどうだ?』
「うーん、浮竹はこんなだし、一晩だけ泊まっていこうかな」
京楽は、洞窟の奥にある藁のベッドに浮竹を寝かせた。
そして、この1年間をどう過ごしていたのか、お互いに話しあった。
藍染は以前姿を見せず、雲隠れしたままだった。
祓い屋稼業をしていて、彼岸花の精霊がたくさん術者を殺したという噂があったが、あえて触れないでおいた。
日も暮れて、鴆の京楽は毒蛇を調理したものを食べて、彼岸花の精霊の浮竹と、起きてきた浮竹と京楽は、ビーフシチューを食べた。
『人の世界の食べ物は、うまいな』
「だろう。特に俺の作る料理は世界一なんだ」
「十四郎の料理は、本当においしいからね」
そんな風に夕飯を食べて、晴れているので、寝袋をもってきて、浮竹と京楽は外で星を見ながら寝ることにした。
「ねぇ、十四郎」
「なんだ」
「死ぬ時は一緒だけど、もしそんなことがあったら、一緒に転生しようね」
「不吉なことを言うな。転生するのはいいとして、俺たちはそう簡単には死なない」
「うん、そうだね」
洞窟の奥では、藁のベッドで彼岸花の精霊の浮竹と鴆の京楽が、お互いを抱きしめあいながら寝ていた。
「四季の王の名の元に命ずる。命咲かせよ、花たち」
浮竹は、洞窟の前を春の花畑に変えてしまった。
「明日になったら、あの二人驚くかな」
「驚くよ。ボクも、君がこうやって花を咲かせるのあまりみたことないからね」
「ふふ、酔って押し倒してしまった詫びだ」
「もう寝よう。腕時計だけど、0時過ぎてるから」
「ああ、おやすみ」
「おやすみ」
朝起きると、洞窟の前が花畑に変わっていて、彼岸花の精霊の浮竹はそこに彼岸花も加えてみた。
「き、昨日の詫びだ。べ、別に酒に酔って押し倒してしまったのは、お前があまりにも綺麗だったからってわけじゃないからな!」
『ふうん』
クスクスと、彼岸花の精霊の浮竹は笑う。
鴆の京楽は、花畑で花冠を作ると、それを彼岸花の精霊の浮竹の頭にのせる。
『綺麗だよ、浮竹』
『ふふ。俺はお前のものだから、当たり前だ』
彼岸花の整理絵の浮竹は妖艶に微笑む、
京楽も花冠を編んで、浮竹の頭にのせる。
「十四郎、かわいい」
「べ、別に嬉しいなんて思ってないんだからな!」
一晩を山で過ごして、浮竹と京楽は朝食を作って食べてから、自分たちの家に戻っていくのであった。
桜のあやかしと共に52
スーパーで特売していたサイダーをたくさん買いこんだ浮竹は、2リットルサイダーを3つ鞄に入れて、山の王の京楽の洞窟に来ていた。
京楽も、少し遅れてやってくる予定だった。
洞窟の奥から、声がするので二人はいるようだったが、様子がおかしかった。
「山の王の京楽に彼岸花の精霊の俺?」
洞窟の中に踏み込むと、二人は睦みあっている最中だった。
『ひああああ、春水、もっと奥ううう』
『ボクの子種、たくさん注いであげるからね?』
『ああああ、もっと、もっと奥を抉ってえええ』
浮竹は、真っ赤になり動かなくなった。
ぷしゅーーー。
音をたてて、固まる。
キャパオーバーを起こした浮竹。それに気づいた二人が、睦みあうのを止めて服を着て浮竹に話しかける。
『桜の王?見ちゃったの?しっかりしてよ』
『ふふ、京楽、もっと見せつけてやるか?』
彼岸花の精霊の浮竹は、妖艶だった。乱れた着物と白い髪と翡翠色の瞳が、怪しく輝いているように見えた。
「なななななな、なにも見ていないし、聞いてない」
浮竹は、サイダーの入った鞄を山の王の京楽に押し付ける。
『お、新しいしゅわしゅわか?』
浮竹は茹蛸(ゆでだこ)のように真っ赤になったまま、ぷしゅーと音を立ててなかなか動かない。
そこに、遅れて京楽が現れる。
「十四郎、しっかりして、十四郎!」
「京楽、俺はもうだめだ」
「ちょっと、二人とも十四郎に何したのさ」
京楽が、腕の中に倒れてきた浮竹を支える。
『何もしていないぞ。しいていえば、桜の王が勝手に見てしまっただけだな』
そう言って、彼岸花の精霊の浮竹は怪しく微笑む。
「え、それって‥‥‥」
『ボクと浮竹が睦みあってるの、見ちゃったみたい』
山の王の京楽は、頭を抱えた。
「あちゃー。十四郎、しっかりして。傷は浅いよ!」
「俺はもうだめだ‥‥」
がくり。
でも、浮竹はちゃんと意識があった。冗談の芝居であった。
そんなやりとりをするものだから、彼岸花の精霊の浮竹と山の王の京楽は苦笑する。
『まさかやってる最中のに人がくるなんて思ってなかったからね』
『こんな山の中に普通、人はこないからな』
「そうだね。普通はそうだね。今回ばかりは、十四郎のタイミングが悪かったね」
「むう、こんな真昼間からやっているなんて、普通は思わないだろう」
浮竹がむくれる。
そんな浮竹に、彼岸花の精霊の浮竹が綺麗な顔でクスクスと笑う。
そして。
『あ。京楽の精液が、もれてきた‥‥‥』
そういって、足を伝う白い液体を見て、浮竹だけでなく京楽も赤くなる。
『浮竹の中に出したものかき出すために、天然温泉いってくるね。すぐに戻るから』
山の王の京楽は、そう言って彼岸花の精霊の浮竹をお姫様抱きにして、消えていった。
「浮竹、大丈夫?」
「白哉の気持ちが、少しだけ分かった気がする」
たまに結界を張り忘れて、やっている場面を同居人である白哉に見られたり聞かれたりしたことがあった。
白哉はその度に、気まずい思いをして少し赤くなる。
「あの二人には、今後結界を張ってもらうことにする」
「うん、そうだね」
待てども、二人は帰ってこない。
きっと、天然温泉でまた睦みあっているのだろうと思い、サイダーを置いて浮竹と京楽は帰ることにした。
『あ、桜の王が、待ってる、からぁ』
『わかってるけど、あおってきたのは君でしょ?』
『ああん、そこだめぇええ』
『ここ、ぐりぐりされるの好きだよね?』
『あ、いっちゃう!』
山の王の京楽に最奥を抉られて、彼岸花の精霊の浮竹はびくんと体を痙攣させる。
『ああああ、いくの、とまらないいい』
山の王の京楽は、子種を彼岸花の精霊の浮竹の胎の奥にぶちまけた。
『いあああ、いってるから、動いちゃダメえええ』
『孕むくらい、出してあげるからね?』
『だめええ、またいっちゃうううう』
浮竹と京楽が来ていたことなど、すっかり忘れて、二人は出すものがなくなるまで交じりあうのであった。
家に戻ると、浮竹は。
「彼岸花の精霊の俺が、山の王の京楽あおって、絶対やってる。そして、俺たちが来ていることを忘れているに違いない」
「まぁ、あれから1時間待ったけど帰ってこなかったもんね」
「置き手紙で、今度からは結界を張ってくれと書いておいたので、今後は多分大丈夫だろう」
「そうだと、いいんだけどね?」
「そうじゃなきゃ困る。彼岸花の精霊の俺は、乱れていると誰もが虜になりそうだ」
彼岸花の精霊の浮竹は妖艶で、見る者をぞくりとさせるミステリアスな雰囲気があったが、乱れているときはまた違った怪しさを出す。
浮竹はそれを見てしまったことに、ため息をつくのであった。
ただのアホ
「やっと思いが通じたんだね!ボクも好きだよ、浮竹」
「お前に抱かれたい。俺をめちゃくちゃにしてくれ」
「鼻血でちゃうじゃない!君を天国に連れてってあげる」
京楽は、本当に鼻血を出していた。
その光景を、浮竹は冷めた視線で見ていた。
「何しとるんだ、お前は」
「あ、浮竹!手人形つくってみたから、一人遊びしてたの」
「それで、俺がお前に抱かれたい?めちゃくちゃにしてくれだと?」
ハリセンを手に、浮竹が京楽との距離を縮める。
京楽は、手人形で謝った。
「ごめんなさい、調子にのってました」
「分かればいい」
あれ?
浮竹が怒ってこない。
京楽は不思議に思って、浮竹のほうを見た。
浮竹は、ごほごほと咳をしていた。まさか発作かと思って、浮竹の背を撫でる。
「あんまり近づくな。インフルエンザになった。京楽、お前はしばらく違う空き部屋で過ごしてくれ」
「嫌だよ。誰が君の看病をするの」
「一人でなんとかする‥‥」
浮竹は、ふらついて京楽の腕の中に倒れこむ。
「わぁ、すごい熱じゃない。今すぐ、氷枕作るから、浮竹は大人しくベッドで寝ていて?」
「すまん」
熱があるせいか、素直な浮竹に京楽はこう言ってみた。
「将来、ボクと結婚してくれるよね」
「何を言っている。あほか」
いつもと同じ反応に、京楽は少し残念に思った。
「熱がある時くらい、ボクにつきあってよ~」
「既成事実作るとか言って、襲ってきそうだから嫌だ」
「そんな、病気の時とか具合が悪い時はボクは何もしないでしょう?」
「そうだが、元気になったら襲ってくるだろうが」
「そうだけど」
いつでも元気な京楽は、具合がよくなって全快して元気になった浮竹を襲って、縄で縛られて布団ですまきにされてベランダによく放置されていた。
「でも、ボクは君が好きだよ?」
「俺は好きじゃない。友人としてなら好きだが、恋愛感情は抱いていない」
「もう、ここは素直に、ボクも好きだって言ってよ」
「そう言って、肉体関係に陥ったら、このシリーズが終わる」
「そ、それもそうだね」
京楽は、氷枕をつくり、浮竹をベッドに寝かせた。
「解熱剤飲むよね?」
「ああ。何か食べないといけないな。でも、食欲がない」
「みかんの缶詰あるから、それを少しでもいいから食べて?」
京楽はみかんの缶詰をあげて、スプーンで浮竹の口元に運ぶ。
少しだけ食べて、浮竹はもういらないと言った。
「じゃあ、解熱剤とってくるから、おとなしくしててね?」
「こんな熱じゃ、お前をしばくのもなかなかできなくて苦労する」
「ボクをしばかなくていいからね!?」
京楽は、キッチンに行って、浮竹の薬箱をあけると、解熱剤をとりだして、コップに水を入れてもってくる。
「ほら、解熱剤。飲める?」
「一人で飲める」
浮竹は、高熱を出すのに慣れているので、自力で解熱剤を飲んだ。
「病院には行った?」
「朝のうちに行った。熱があって、インフルエンザと診断された。京楽、もしもうつったなら、すまない」
「浮竹に看病してもらうからいいよ」
「俺のインフルエンザが完治しなくとも、熱が下がって身動きできる程度までにならないと、看病はできないぞ」
「ボクを看病するときはナース服を着てね?」
「アホ。誰がそんな変態のコスプレするか」
ごほごほと咳こんで、浮竹は苦しそうにしていたが、薬が効いてきたのか、次第にうつらうつらと眠りはじめる。
「早くよくなりますように」
浮竹の額にキスをして、京楽は浮竹のために薬局に行き、冷えピタシートを買った。
眠っている浮竹の額にはると、浮竹がぼんやりと目をあける。
「‥‥‥好きだ」
「え?まじで?」
やっと浮竹が自分のことを好きだと言ってくれた。そう思ったら。
「‥‥‥みかんの缶詰が好きだ。京楽、買ってきてくれ」
そう言うものだから、京楽はコレクションの浮竹のパンツをすーはすーはして、頭にかぶり、インフルエンザが早く治るように快癒の踊りを踊る。
はたから見れば、ただのアホだった。
いや、京楽の場合存在自体がただのアホである。
でも、京楽は素直にみかんの缶詰を買いに行ったり、変態だけど優しいところもきちんとあるのであった。
桜のあやかしと共に51
「だから、濡れ衣やいうてるやん」
新しく夏の朝顔の王になった、平子真子は、春の桜の王で、四季の王でもある浮竹に訴える。
「俺はまだ朝顔の王になって半月も経ってないねんで。全部の夏の花をすぐに従えるなんて無理や。あんたを襲った朝顔の花鬼たちは、前の王の市丸ギンに忠誠を誓ったやつらや。それを永久追放処分にしたあんたを恨んでの犯行やないのかいな」
「確かに、俺は市丸ギンを永久追放にした。けれど、襲ってくる時期が遅い」
「だからって、俺のせいにしなや。俺のせいじゃあらへんで。俺は藍染なんか嫌いやし、まして手下になるなんて死んでもいやや」
平子は、夏の王の館でやってきていた浮竹と京楽と会っていた。
浮竹がたくさんの朝顔の花鬼に襲われた。何故襲ったのか、生き残った花鬼に聞くと、平子真子に命令されたといって自害した。
なので、浮竹は京楽を連れて、平子のいる夏の王の館まで来ていた。
「彼、嘘はついてないみたいだよ」
「そうだな」
「だから、最初から言うてるやん。俺のせいやないって」
「話は分かった。まだ藍染の下についている花鬼は、処分対象になるが、いいな?」
「仕方あらへんな。俺の力にも限界あるさかいに。好きに処分してええで」
平子は、王としてまだまだ未熟で、夏の花鬼たち全てを従わせることができず、今回のような騒動を起こしてしまった。
「平子、お前は夏の王として、力をつけろ。そうだな、冬の椿の王の日番谷冬獅郎の元で、しばらく修行しろ」
「修行?王になったのに、違う王の元で修行せなあかんのかいな」
「四季の王の言葉だよ、平子くん」
「はいはい、わかりましたよ。言う通りにすればええねんやろ」
こうして、平子真子は、冬の王の日番谷冬獅郎の元で修行することになった。
「藍染についている、花鬼の数はけっこう多いな。特にひまわりの花鬼は強い」
「そうだね。厄介だね」
「そうだ。彼岸花の精霊の俺と、山の王の京楽の実力を知りたいと思っていたんだ。あの二人に、頼んでみるか」
「いいの?彼らは藍染と関係ないのに」
京楽が、二人のことを思って口にする。
「俺たちが接触してるんだ。いつか、藍染とも接触するかもしれない。それに、あの二人なら藍染の手下になることもないからな」
「確かに、彼らならそれはあり得ないね」
浮竹と京楽は、夏の王の館から異界渡りをして、彼岸花の精霊の浮竹と山の王の京楽の住む山にやってくる。
『やぁ、遊びにきたの?』
山の王の京楽の洞窟にくると、彼岸花の精霊の浮竹もいた。
『こんな朝から、珍しいな』
「お前たちに頼みたいことがある‥‥」
浮竹の説明で、案外あっさりと、二人は花鬼退治を了承した。
『最近、穏やかなあやかしばかりで、力がありあまってたんだよね』
『ふふふ、夏の花鬼か。美しい彼岸花にしてやろう』
二人は、そう言った。
「今からでも大丈夫か?」
『うん、問題ないよ』
『俺も平気だ』
浮竹と京楽は、二人を連れて夏の王の館に行き、浮竹が最初に襲われた朝顔の群生地に移動した。
桜の術で、桜の王に敵意を持っている者の心を揺さぶり、襲い掛かるようにした。
「あぶない、十四郎」
京楽が、ひまわりの花鬼を倒す。
『後は任せて?』
山の王の京楽は、青龍刀を取り出して風をまとわせ、襲いかかってくる花鬼たちを切り倒していく。
『さぁ、綺麗な花を咲かせるといい:』
彼岸花の精霊の浮竹は、襲いかかってくる花鬼たちから、彼岸花を咲かせて養分として倒してしまう。
「強いな」
「そうだね」
浮竹と京楽は、襲いかかってこられてもいつでも対処できるようにしていた。
『これで、最後だよ!』
山の王の京楽は、一人で百体近いひまわりの花鬼を数分もかからずやっつけてしまう。
彼岸花の精霊の浮竹の周囲には、彼岸花が咲いていた。
どれも、元は藍染の手下である、花鬼たちであった。
『あれ、もうおしまい?』
『ものたりないな』
「君たちの強さは十分にわかったよ」
「ああ。これだけ強ければ、藍染も手を出せないだろう」
『藍染って?』
「俺をはじめとした季節の花の王たちの長で、長老神をしている。穢れをもたらす、神になれなかった男だ。四季の王でもある、俺の命を狙っている」
『わお。やっかいな相手と敵対してるんだね』
「慎重な上に神出鬼没でな。ある理由があって、四季の王である俺を直接殺せないんだ。だから、こうやって花鬼やあやかしを操って、俺を殺そうとしている」
『藍染か‥‥養分にしたら、きっと大輪の彼岸花が咲くんだろうな』
危ない橋を渡りそうな彼岸花の精霊の浮竹を、山の王の京楽に回収してもらう。
異界渡りをして、四人は山に戻る。
「二人とも、思っていた以上に強くて、俺は安心した。藍染が手を出してきても、撃退できるだろう」
「そうだね。ひまわりの花鬼は強いのに、数分もしないで百体くらいやっつけるとか、けっこうすごいね。彼岸花の精霊の浮竹も、相手を彼岸花の養分にしてしまうし」
『俺はただ、美しい彼岸花を咲かせただけだぞ?』
「うん、綺麗な彼岸花がたくさん咲いたね?」
京楽がそう言うと、彼岸花の精霊の浮竹は妖艶に微笑んだ。
『俺が咲かせる彼岸花は美しいだろう?』
「ああ、そうだな」
浮竹が頷く。養分にされた花鬼から咲いた彼岸花は、特別に美しかった。
『ボクたちの助力がいる時は、遠慮なく言ってね?』
頼もしい山の王の京楽の言葉に、浮竹も京楽も頷いた。
「じゃあ、俺たちは戻る。またな」
『しゅわしゅわが飲みたい』
彼岸花の精霊の浮竹が、ご褒美にくれと言いたげなので、買い置きしてあったコーラを一度京楽の自宅に戻りとってくると、渡した。
『しゅわしゅわだ!』
『よかったね、浮竹』
再度別れを告げて、四人は別れた。
「ギンは降格処分の上に永久追放。おまけに私を裏切った。さて、どうしたものか‥‥」
藍染は、かっこつけてはいるが、おまるに座っていた。
怒った浮竹が、藍染の侍女をしている桜の花鬼に命じて、この前の2,5倍のモレ草を盛ったのだ。
死んでもおかしくない量だったのだが、藍染はしぶとかった。
1週間以上トイレで過ごし、寝る時はいつもれてもいいように、おまるに跨ったまま眠った。
モレ草。
強烈な下剤の効果のある薬草であった。
藍染は、今日の料理にもモレ草が入っていたとも知らず、下痢を病気と思うのだった。
桜のあやかしと共に50
テントやバーベキュー用の野菜や器具を手に。
「彼岸花の精霊の俺は、まだ来てないんだな?」
『気まぐれだからね』
山の王の京楽が、そんなことを言っているうちに、彼岸花の精霊の浮竹がやってくる。
そして、それぞれ別れて、浮竹と山の王の京楽は魚を釣りに、京楽と彼岸花の精霊の浮竹はテントをはることになった。
それが終わり、山の王の京楽は、思い出したとばかりにこう言う。
『近くに、天然温泉があるんだよ』
「ほう、いいな」
『よければ、入っておいで』
「そうする」
「あ、十四郎待って!ボクも行く」
「お前はこなくていい」
「そんなこと言わずに」
昼間から、今夜の夜はどうだと京楽に聞かれていたので、エロいことをしそうで、浮竹は天然温泉に行くべきか迷ったが、せっかくだから行くことにした。
「わあ、けっこう広いな」
「ねぇ、十四郎」
「まだ昼間だぞ!」
「いいじゃない。減るものじゃなし」
京楽に言いくるめられて、結局浮竹は天然温泉で、京楽に抱かれた。
終わると、浮竹は京楽をハリセンでボコボコにした。
「帰ったぞー」
『おかえり』
「しくしく‥‥‥」
京楽は傷だらけで帰ってきた。浮竹は、少し赤くなっていた。
「べ、別に京楽にいかがわしいことんなんてされてないんだからな!」
『いや、そんなこと聞いてないよ?』
山の王の京楽は、苦笑する。
浮竹は、彼岸花の精霊の自分がいないので、どこにいるのだと聞くと、洞窟の奥で寝ているらしかった。
『ああ、浮竹は今寝てるから』
山の王の京楽が、洞窟に入ろうとする浮竹を引き止める。
「飯がいるかどうか、確認しなきゃいけないだろう」
『どうした?』
洞窟から出てきた彼岸花の精霊の浮竹は、いかにも事後ですという気だるげな表情で、着物を乱して妖艶に立っていた。
『ああもう、浮竹、そんな恰好で出歩かないで』
『なぜだ?』
浮竹は真っ赤になって、京楽はニマニマした表情で、浮竹を見る。彼岸花の精霊の浮竹の様子を見て、京楽はまた浮竹を抱きたくなっていた。
「あ、ちょっと用事を思い出したんで。十四郎、行くよ」
「ちょっと待て、京楽」
消えていく二人を、彼岸花の精霊の浮竹は妖艶に微笑んで、山の王の京楽は首を傾げるのであった。
「おい、京楽、どこに行くんだ」
「さっきの天然温泉」
「行ってどうする」
「エロいことする」
浮竹は、ハリセンで京楽を叩くが、京楽は彼岸花の精霊の浮竹の妖艶さを見て、自分の浮竹も交わっているときは妖艶だと思った。
「さぁ、十四郎、おいで?」
「仕方のないやつだな‥‥‥‥」
浮竹は、京楽は先に天然温泉に入ってしまったので、もう後にはひけないとばかりに、衣服を脱いで、天然温泉に入った。
「んっ」
深い口づけをされて、浮竹にもスイッチが入る。
「春水‥‥‥俺を孕ませるくらい、奥に出して?」
「十四郎、エロいね」
京楽は、妖艶に笑う浮竹を、抱き寄せると、口づけをかわしあう。
「んんっ」
「もう、こんなになってる。温泉の中じゃないと、濡れてるだろうね?」
「や、意地悪いうな。早く、お前をくれ」
先刻まで京楽のものをくわえこんでいたそこは、指で解さなくてもいいくらい、柔らかかった。
「指、いれるよ?」
「んあっ」
濡れた音がした。
「や、早くぅ」
「仕方のない子だねぇ」
京楽は、熱く昂ったもので、浮竹を貫く。
「いああああああ!!!」
びくんと浮竹の体が動き、お湯の中に精液を吐き出していた。
「もっと欲しい?」
「あ、もっと。もっと欲しい」
緩く突きあげると、浮竹は彼岸那波の精霊の浮竹のように、妖艶に微笑んだ。
「俺を、ぐちゃぐちゃにして?」
「ボクは、君の声だけでいっちゃいそうだよ。奥に、いっぱいあげるね?」
前立腺をすりあげてやると、浮竹は啼く。
「んああああ!そこもいいけど、もっと奥にきて?」
「こうかい?」
「ひあああああ!11」
ごりごりと音をたてて、最奥を抉られて、浮竹は体を弓なりにのけぞらせる。
「んあああ、いっちゃうう」
「君の欲しがってるもの、たくさん注いであげるね?」
「ああああ!熱いので、溢れる‥‥‥」
浮竹は恍惚となり、京楽は子種を浮竹の胎の奥に注ぎ込む。
「もっとお。もっとちょうだい?」
「仕方のない子だねぇ」
京楽は、浮竹の奥を抉り揺さぶりながら、浮竹のものをしごく。
「ひああああん!同時はだめええ」
「さぁ、また注いであげるから、いっぱい気持ちよくなってね?」
「んあああああ!」
浮竹は、大きく中いきをしながら、京楽の手でしごかれて、精液を出していた。
「ああああ、頭がおかしくなるう」
「気持ちいい?」
「あ、春水、きもちよすぎる」
「ふふ、十四郎はこんな時は素直でかわいいね。いつもかわいいけど、さらにかわいくなる」
「春水、春水」
浮竹は、京楽の名を呼びながら、びくんびくんと体を痙攣させる。
何度も中いきのオーガズムを繰り返していた。
「やらああ、いくの、止まらないいいい」
「好きなだけいくといいよ。ちゃんと、皆の元に戻れるようにしてあげるから」
「ああああ!!!」
浮竹は、大きくいって気を失った。
京楽は、子種を全て浮竹の中に注ぎ込んで、終わらせた。
「ん‥‥」
「ああ、気がtついた?」
「俺は、意識を失っていたのか」
「うん。でも、10分くらいだよ」
浮竹は、京楽の手で中に出したものをかきだされて、衣服を着ていた。
「戻るぞ」
「あーあ。十四郎が、普段もあんなにかわいかったらいいのになぁ」
「何を言っている!」
「なんでもありませーん」
山の王の京楽と彼岸花の精霊の浮竹のところに戻ると、山の王が苦笑いして、彼岸花の精霊の浮竹は、妖艶に微笑みながら聞いてくる。
『お楽しみは、終わったか?』
「べ、別に京楽となにかあったわけじゃないからな!」
クスクスと、彼岸花の精霊の浮竹が笑う。
『首にキスマーク、いっぱいついてるぞ?』
「な!京楽、お前!」
浮竹が、彼岸花の精霊の浮竹を軽くハリセンではたいた後、京楽をハリセンでたたきまくる。
『どんな風に楽しんだ?』
『はいはい、浮竹そこまでね』
山の王の京楽が、やんわりと止める。
『聞いちゃいけないことなのか?』
『二人が困ってるでしょう?』
『ふむ‥‥‥』
浮竹は、真っ赤になって動かない。
「十四郎とは、天然温泉でね‥‥」
彼岸花の精霊の浮竹の問いに、京楽が答えようとするので、浮竹は真っ赤になりながら追加で京楽をハリセンでしばく。
それを見て、彼岸花の精霊の浮竹はくすくすと笑い、山の王の京楽は、痛そうだなぁと思うのであった。
桜のあやかしと共に49
あやかしのしわざで、犯人は野衾(のぶすまき)であった。
一体ではなく、複数現れて、一人の人間を動けなくして襲い、体中の血を吸いつくしてしまうのだという。
正式な依頼はなかったが、町を守るために三人は動き出した。
「十四郎、そっちにはいなかったかい」
「ああ、こっちにはいなかった」
スマホで連絡をとりあい、三人別々に別れて、捜索しているのだが、野衾はなかなか尻尾を出さない。
「白哉のほうは?」
「私のほうにも、何も現れない」
野衾の妖力をたどってみるが、もっと強力が妖力を見つけた。そっちの方向に、野衾も集まっている気配を感じた。
「野衾たちが集まっている。あと、もっと強力なあやかしがいる。俺が一番近いから、次の被害者が出る前になんとかしてみせる。京楽と白哉も、急いで俺のところにきてくれ」
「気をつけて。すぐに行くけど、くれぐれも油断しないようにね」
「浮竹、兄なら大丈夫であろうが、念のために恋次にも連絡を入れておいた」
浮竹は、スマホを切って、野衾ともっと強力なあやかしがいるほうへ走る。
浮竹が見たものは、野衾が六匹と、それを操っている女だった。
「あら、桜の王から来てくれるなんて、手間が省けたわ。藍染様から、あなたの四季の王としての実力を測ってこいと言われているの」
「野衾もお前も、藍染の手下か」
「私は吸血鬼の王。王同士、仲良くしましょう?」
「いけ、桜の花びらよ!」
浮竹は、ふっと桜の花びらを刃にして、野衾たちを切り裂く。
けれど、切り裂いたところから再生してしまう。
「無駄よ。この子たちの王である私がいるんですもの」
「じゃあ、お前を退治するだけだ」
浮竹は、ふっと桜の花びらを吹いて、業火で吸血鬼の王を包み込む。
「うふふふ、私は不死なのよ」
業火でもやされても、吸血鬼の王の女は平然としていた。
浮竹は、雷を打ったり、風で切り裂いたり、水で窒息してみたりといろいろ攻撃をくわえるが、吸血鬼の王はにやにやと笑うだけだった。
「核の心臓を、どこかに隠しているな?」
「あら、ばれたの。でも、どこにあるのか分からないでしょう?」
「京楽、吸血鬼の王が出た。俺の桜の花びらが、その吸血鬼の王の核である心臓のところ導くから、破壊してくれ!」
「十四郎、くれぐれも無理はしないでね!」
京楽にスマホで連絡をいれて、浮竹は桜の花びらで体を包み込み、核の心臓が破壊されるまでの間、防御しながら攻撃することにした。
「うふふ、攻撃はもうおしまい?四季の王といっても、しょせんはただの桜の王ね。でも、その血はすごくおいしそう」
浮竹を包んでいた桜の花びらの結界が壊される。
「なに!?」
一瞬隙を見せてしまった浮竹に、吸血鬼の王は素早く近づいて、その細い首に牙をたてて、浮竹の血をすすった。
「ぐ‥‥‥」
野衾たちにまで血をすすられて、浮竹の意識が遠くなる。
「こんなところで‥‥‥」
浮竹は意識を失い、仮死状態になる。
「おいしいわ。こんなおいしい血、初めて飲むわ。野衾たち、吸った血をよこしなさい」
そこに、京楽が現れた。
「十四郎!?十四郎、しっかりして!」
「うふふふ、その桜の王の血はとてもおいしかったわ。残念ながら、体中の血を吸われて死んでしまったみたいだけど」
「よくも十四郎を!」
京楽は、桜鬼になって、吸血鬼の王の目の前に、浮竹の桜の花びらが導いてくれた、吸血鬼の王の核である、心臓を取り出す。
「な、おまえ、どこでそれを!」
「浮竹が教えてくれたんだよ」
「やめろ、それを返せ!」
吸血鬼の王は、血相を変えて、京楽に襲い掛かる。
京楽は、吸血鬼の王の心臓を握りつぶした。
「ぎゃあああああああ!私の、不死があああああああ!!!」
「業火に焼かれ朽ちるがいい!極滅破邪、天炎!」
「いやああああああああ!!」
吸血鬼の王も、野衾たちも、京楽の天の炎に焼かれて、灰になっていく。
不死である吸血鬼の王だが、核である心臓を別の場所に隠すことで、一時的な不死になっていたにすぎなかった。
「十四郎‥‥死なせないよ。死ぬ時は、一緒だからね?」
京楽は、仮死状態の浮竹に、治癒の術をかける。自分の生命力を燃やしてまで、浮竹に生きろと促した。
「ここは?」
浮竹は、気づくと彼岸花の花畑にいた。
『ここは、お前のくるべき場所じゃない。帰るんだ』
「彼岸花の精霊の俺?そうか、俺は仮死状態になって、冥界にきているんだな」
『そうだ。ここに長くいると、本当に死んでしまう。生きているのに冥界(に来るなんて、不思議だな?桜の王?』
彼岸花の精霊の浮竹は、妖艶に微笑んだ。
『さぁ、戻るんだ。いるべき場所へ』
「どうやって‥‥‥」
『あちらの方角に光が見えるなら、お前はまだ生きる道がある。ないなら、三途の川を渡るしかない』
「光が見える。青白い光だ」
『それが、お前を待っている者の命の光だ。さぁ、ゆけ』
「春水‥‥今、戻る」
浮竹が目覚めると、そこは高級タワーマンションの京楽の家だった。
「よかった、やっと目覚めたんだね。呼吸も心臓の鼓動も止まっていたから、最大の治癒術を使うと呼吸も鼓動も戻ったんだよ。でも、目が覚めないから、心配したんだよ?」
「白哉は?」
「君を徹夜で看病して、今疲れて仮眠してる」
「そうか。心配をかけた」
「ほんとに、危なかったんだからね!」
京楽は、目尻に涙を浮かべていた。
ゆっくり抱擁される。
「君がいない世界に興味はないよ。君が死んだら、ボクも死ぬところだった」
「春水」
「十四郎、約束したでしょ。死ぬ時は一緒だって」
「ああ。眠っている間に、彼岸花の精霊の俺にあったんだ。俺は冥界に迷い込んでいたらしい。ここは来るべき場所じゃないから、戻れと言われた」
「うん」
「光が見えるなら生きる道があると言っていた。光っていたのは、春水、お前の命の色の青白い光だった」
「ボクの命の色は青白いの。でも、十四郎が無事に目覚めてよかったよ。白哉くんを起こして、知らせてくるね」
「ああ。白哉も俺の看病をしてくれていたんだったな。礼を言わないと」
浮竹はベッドから起き上がろうとして、ふらついた。
「だめだよ、まだ寝てなきゃ。仮死状態までいったんだから」
「すまない。迷惑をかける」
「ううん。十四郎が無事なら、それでいいよ」
その後、起きてきた白哉に思い切り抱き着かれて、そんなことはとても珍しいので、浮竹は戸惑う。
「浮竹、兄が無事でよかった。「春」の時のように、残されていくのはいやだ」
「白哉、俺はもう大丈夫だから」
「いや、まだ兄からほのかに死の香りがする。とれるまで、ずっと一緒にいる」
白哉は、ぞう言って浮竹と京楽を困らせた。
一時的な死を体験して、浮竹は力を増しているのに気づく。
「四季の王として、少しは強くなっただろうか」
「妖力が、今までの1.5倍くらいになってるね」
「そうか。俺を仮死状態にまでおいこんだ吸血鬼の王とやらは、藍染の手下だった」
「また、藍染‥‥‥」
「いずれ、決着をつけないといけないだろうな」
浮竹の言葉に、京楽も白哉も頷くのであった。
桜のあやかしと共に48
そこには、転生する前の妖狐の浮竹と、夜刀神の京楽と、浮竹と京楽で映った4人の写真があった。それをフォルダに移動させる。
そして、新しい待ち受け画面に、彼岸花の精霊の浮竹と山の王の京楽と一緒に、4人で映った写真にした。
休眠から目覚めて、2か月が経とうとしていた。
転生をした二人を見つけられて、浮竹はよかったと思っていた。
「カスタードケーキを作ってみた。京楽、二人のところに行くんだが、くるか?」
「もちろんだよ。十四郎の行く場所にはついていく」
京楽は、2リットル入りのコーラをもっていた。
「しゅわしゅわ好きだって言ってたからね。2リットルあれば、2~3日はもつでしょ」
「ふふ、京楽もなんだかんだいって、あの二人が好きなんだな」
「そうだね。ボクの中の闇はそんなわけないって言ってるけど、ボク自身は結構好きだよ?」
浮竹は、京楽がうるさいので、玄関に異界へのゲートを開く。
異界渡りをすると、彼岸花の精霊の浮竹と山の王の京楽がいる山の麓にやってきた。
少し歩くと、山の王の京楽の住んでいる洞窟があった。
「おーい、いるか?」
『あれ、どうしたの』
「遊びに来た。これはおみやげのカスタードケーキ」
『浮竹、おいで。二人が遊びにきてくれたよ』
『お、その桜鬼の京楽がもっているものは、もしかしてしゅわしゅわか?』
彼岸花の精霊の浮竹は、ちょうど冥界から山の王の京楽の元にきていて、誰も欠けることなく会えた。
「この洞窟には、茶器はあるかな?」
『一応、あるよ。ちょっと古いけど』
山の王の京楽は、洞窟の奥から、古びた茶器をもってきた。
京楽は、それにコーラを注いで、彼岸花の精霊の浮竹に渡す。
『しゅわしゅわだ。おいしい』
『よかったね、浮竹』
「カスタードケーキをもってきたんだ。皆で食べよう」
カスタードケーキを食べながら、京楽が古い茶器に入れた紅茶を飲んで、浮竹が外の景色を見た。
「もうすぐ夏だな。テントをもってきて、キャンプしたり、川遊びができるな」
『そうだね。釣りなら今の時期でもできるけど』
「釣りか。いいな。してみたい」
『お、釣りにいくかい?」
カスタードケーキを食べ終えた4人は、川へ釣りにでかけた。
『ここらへんなら、鮎がとれるよ』
「景色が殺風景だな。桜を咲かせよう」
『え、今初夏だよ?』
「俺は四季の王でもあるが、桜の王だからな。季節なんて関係なしに、桜を咲かせれる」
浮竹は、雑草ばかりが生い茂る空間を、満開の桜でいっぱいにした。
『へぇ、綺麗だな。これが桜か』
『浮竹は現世に疎いからね。冥界の彼岸花くらいしか知らないから』
山の王の京楽が、桜の王と名がついているのに、桜を知らないといって怒られるんではないかと思い、助け舟を出す。
「ああ、これが俺の名前の由来になった桜という木だ。綺麗だろう?」
『綺麗だな。儚くて、幻想的だ』
「だろう」
自分の花だけに、浮竹は褒められてうれしそうだった。
『おっと、最初の目的を忘れそうだったよ。釣りをしよう』
「俺は大物をとるぞ」
「ボクも負けないよ」
浮竹と京楽は、どっちが大物を釣れるか勝負することにした。
負けたほうが、夕飯ぬきということにした。
『お、ボクのにさっそくかかったみたいだね』
山の王の京楽の竿に、大きな鮎が釣れた。
『大きいね。魚影が多い。なんでだろう?』
「俺が、桜の術で呼び寄せた。心配しなくても釣りすぎはしないし、術は時間が経てば消える」
『桜の王って、いろんな術が使えるんだね』
『俺の彼岸花の術とは違う系統なんだな』
「俺は桜の術で、いろんなことができるぞ」
『じゃあ、緑色のしゅわしゅわを出してくれ』
彼岸花の精霊の浮竹にそうお願いされるが、さすがの浮竹もそれは無理だった。
ちなみに、緑色のしゅわしゅわとは、メロンソーダのことだ。
「便利屋じゃないからな。それはさすがに無理だ」
『浮竹、竿に魚がかかってるよ』
『あ、ほんとだ‥‥小さいな。逃がしてやろう』
隣では、浮竹と京楽が釣竿を垂らしているが、全然釣れなかった。
3時間ほど釣りをして、京楽は5匹、浮竹は7匹釣った。
大きさは、どちらも変わらず、暇つぶしの勝負は引き分けとなった。
「鮎を塩焼きにするだけじゃ味気ない。このまま一度京楽の家に行って、調理して出すから、彼岸花の精霊の俺も、山の王の京楽も、京楽の家に移動しよう」
「ゲートはベランダはだめだよ!玄関にしてね!」
浮竹は分かっているので、素直に玄関に繋がるゲートを開く。
浮竹は、鮎の塩焼き以外に、鮎甘露煮の炊き込みご飯、鮎のポワレ、鮎の天ぷらなどを作った。
それを京楽と留守番をしていた白哉を含めた4人にふるまった。
『へぇ、鮎って塩焼き以外にも調理方法あるんだ』
「洞窟暮らしでは調理に限界があるだろうが、一応レシピを渡しておく」
『ありがとう。調理するときは、桜鬼の家のキッチン、かりていいかな?』
「いいぞ」
「浮竹がいいって言うなら、いいよ」
京楽の言葉に、彼岸花の精霊の浮竹は、クスクスと笑う。
『仲がいいんだな』
彼岸花の精霊の浮竹は、何もない空間から彼岸花を取り出す。
『イメージは悪いが、俺の花も綺麗だろう?』
「一株もらえる?ベランダに植えてみたい」
「京楽はこう見えて、園芸が得意だからな」
『道理で、ベランダにたくさんのプランターやら鉢植えがあって、花がよく咲いているわけだ』
山の王の京楽は、京楽の趣味を知ってこう言う。
『今度、綺麗な花があって、種が実っていたら、とっておくね』
「うん、ありがとう」
「もう夏か‥‥今度の朝顔の王は、無事夏の王としてやっていけるといいが」
市丸ギンは、永久追放されて、新しく夏の朝顔の王になったのは、平子真子という。
市丸のように、藍染に飲まれないように願う。
『君の作る料理は、多彩だしおいしいね』
「本当のことを言っても何も出ないんだからな」
浮竹の言葉に、京楽が苦笑いする。
「さて、日が暮れる前に山に戻る?」
『うん、そうするよ』
『俺も、京楽と一緒に帰る』
「彼岸花の精霊の俺、おみやげだ!」
浮竹は、そう言って、サイダーとメロンソーダの、2リットル入りのペットボトルを渡す。
『お、重い』
「この鞄をやろう。これに入れてもっていけ」
『全部、しゅわしゅわなのか?』
「味は違うが、しゅわしゅわだ」
『一気に飲まないようにする』
「あ、言い忘れてた。開封してちゃんと栓をしないと、炭酸がぬけてまずくなるから気をつけろ」
浮竹がそう言うと、彼岸花の精霊の浮竹は、きっちり線をして、一週間くらいかけて飲むと言って、山の王の京楽と共に、山に帰っていった。
「彼岸花の精霊の俺のために、また炭酸飲料買いにいかないとな。あと、いつ来てもいいようにお菓子を作っておこう」
浮竹は楽しそうであった。京楽は、そんな浮竹を優しい目で見る。
「今日は恋次が私を抱きたい言うので、恋次のところに行ってくる。帰りは、明日になる」
爆弾発言をして、異界に消えた白哉に、浮竹は「白哉ああああ」と、取り乱すのであった。
契約をしていたのは知っていたが、あの白哉がそう簡単に体を許さないだろうことも知っていた。
浮竹と京楽のような仲になるには時間がかかりそうだと思っていたが、休眠期間中はこの家には白哉しかいなかったので、その間に恋次との仲が深まり、肉体関係に陥ったらしい。
「俺の白哉があああ!!!」
浮竹は、京楽がリラックス効果のあるハーブティーを入れるまで、取り乱しているのであった。
桜のあやかしと共に47
ベランダのガラス窓をたたく音がして、京楽はそちらへ行った。
「これは‥‥山の王のボクからの手紙?鷹をてなづけてるのかい」
「どうしたんだ、京楽」
「うん。山の王のボクから、手紙がきてね」
「見せてみろ」
浮竹は、鷹の足にくくられた手紙を読んで、渋い顔になった。
「彼岸花の精霊の俺が、祓い屋を殺してしまったらしい。理由は、山を開拓にしにきた人間が術者を雇って、山の王の京楽たちを殺そうとしたから」
「ボクの同業者を殺してしまったのかい?」
「そうみたいだな。どうする?」
「一応正当防衛だし、今回は見なかったふりをするよ。人を殺め続けるようであれば、祓わないといけないけど」
浮竹が、悲しい顔をする。
「せっかく転生したんだ。二人には幸せになってほしい」
「うん、そうだね。まぁ、きっと山の王がむやみに人を殺していけないって教えてるだろうから、問題はないと思うよ」
「そうだな。そうだよな」
浮竹は、顔を輝かせた。
「追伸。苺パフェが好きみたい‥‥今度こっちにきたとき、チョコレートパフェでも作ってやるか」
「うん。まずは、転生する前くらいにまで仲良くならないとね?」
「彼岸花の精霊の俺は、現世に疎いらしくて、あと山の王の京楽jにしか興味がなさそうだ」
「でも、食べ物で好感度UPは期待できるんでしょう?」
「そうだな。明日にでも、チョコレートパフェの材料、買ってくるか」
「チョコレートパフェなら、私も食べたい」
黙って話を聞きながら、本を読んでいた白哉が本を閉じた。
「白哉?甘いもの、あまり好きじゃないんじゃないのか?」
「浮竹、兄の作ったものなら食べれる」
「うわ、白哉くんシスコンの上にブラコンなの」
「京楽、兄はよほど千本桜の錆になりたいらしいな‥‥」
白夜が、何もない空間から、千本桜という名の日本刀を取り出す。
「ごめんなさい、なんでもありません。千本桜はまじで冗談にならないからやめて」
一度、京楽は白哉を怒らせて、千本桜で攻撃されたことがあった。
かなりの傷を負って、治癒術がなかったら大変だと思える鋭さをもつ、桜の花びらとなった刀身が、刃を億の数にして敵を葬る。
白夜の本気の千本桜の解放があれば、浮竹や京楽とて危ない。
「千本桜が、京楽、兄などまずくて切りたくないと言っている」
「ああ、その刀意思をもつんだったね」
「そうだ。それより、来週はあいているか?」
白夜の問いに、浮竹が答える。
「あやかし退治の依頼は片付けたから、時間はあるはずだ」
「ルキアと、黒崎一護が、伸ばしに伸ばしていた結婚式をおこなうのだ。兄ら二人には、仲人をつとめてもらいたい」
「うん、ボクはいいよ」
「俺もかまわない」
「うむ。恩にきる」
次の週になり、一応正装した二人は、ネモフィラの花畑にきていた。
ネモフィラの花鬼たちが、忙しく料理を作り、テーブルと椅子を用意していた。
一際でかいケーキをみて、浮竹が。
「あれ、入刀用のケーキだろうけど、本格的に作られてるな。後で皆で分けて食べるんだろう」
「あ、京楽さん、浮竹さん、来てくれたんすか」
一護も正装していた。
「仲人をするという、約束だったからな」
「うん、ボクも別に仲人じゃなくてもきたけどね」
そこにルキアが現れた。
ひらひらの水色のウェディングドレスを着ていて、同じく水色のヴェールを被っていた。
「綺麗だぞ、ルキアちゃん。まるでネモフィラの女王のようだ‥‥‥って、太陽の王の妻になるってことは、本当にネモフィラの女王になるんだな」
浮竹が、しみじみと言う。
「浮竹殿、京楽殿。今宵は、夜が明けるまで結婚式の宴となります。どうか、楽しんでいってください」
ルキアと一護の結婚式が始まる。
浮竹と京楽は、ちゃんと仲人の役をして、出されてきたご馳走を食べた。
上等な赤ワインもふるまわれたが、浮竹にはオレンジジュースだった。
若い二人の門出を、酒乱で台無しにする気はないようで、京楽は安心する。
「ルキア。幸せになるのだぞ」
「はい、兄様。実は、もう腹の中に子が‥‥‥」
白哉も浮竹も京楽も、ぎょっとなった。
「すんません。避妊忘れた日にできちゃって。どうせ結婚するのだから‥‥」
「散れ、千本桜」
「もぎゃああああああああ」
手加減はしているが、結婚前に子を作るのは白哉にはタブーのようであった。
「盾よ!」
京楽が、結界をはって、一護を守った。
「ほらほら、義弟になるんだから、もっと仲良くしないと」
「むう。浮竹、どう思う?」
「愛し合っているならいいんじゃないのか」
「そうか。兄がそう言うのであれば、許そう」
「こえええ。白哉こええええ」
一護は、乱れた正装を直してから、ルキアの元にいく。
結婚指輪をはめあって、キスをした。
神父役は、ネモフィラの花鬼の男性だった。
ネモフィラの花鬼のほとんどが女性なので、男性は珍しかった。
二人は愛を永遠に誓いあう。
ルキアが投げたブーケは、ネモフィラの花鬼たちが我先にとろうとしていたが、ちょうど浮竹の腕の中に落ちてきた。
「これ、ボクらも結婚式挙げろってことかな?」
「しないぞ」
「えーケチー」
「エンゲージリングなら、はめてやってもいい」
「まじで?今度買いに行ってくる」
ルキアと一護の結婚式には恋次もきていて、白哉のパートナーとして隣にいた。
「ルキア、一護、幸せにな」
恋次はそう言うと、白哉の指に指輪をはめる。
「れ、恋次。皆が見ているであろうが」
白哉は珍しく赤くなる。
「おー、あっちも春だねぇ」
「恋次くんを選んだのは白哉だ。俺の義弟になるんだな」
「あー、うん、そうなるねぇ」
その日は、太陽が昇るまで宴が開かれて、浮竹は中身を間違えてワインを口にしてしまい、白哉が問題行動を起こす前に桜の術で眠らせてくれた。
朝になり、京楽は浮竹をおんぶして、皆に別れを告げる。
「また、来るからね。その時は十四郎も一緒だけど」
「ありがとうございました、浮竹殿、京楽殿」
「ありがとさん、浮竹さん、京楽さん」
ネモフィラ畑は、家から近いので、遊びにこようと思えばすぐにこれるが、しばらくは新婚の二人きりにさせてあげようと思うのであった。
桜のあやかしと共に46
「そうか。市丸ギンを永久追放処分にしたのは、正解だったな。俺の椿の宝玉も奪われた。藍染が四季の王と神になるのに失敗して、粉々になったから、今は俺の右目が椿の宝玉だ」
ついこの間、四季の王になった浮竹は、元夏の朝顔の王である市丸ギンを、王を剥奪してただの朝顔の精霊に降格処分し、乱菊という愛しい者と永久追放処分にした。
市丸ギンが犯した罪を考えれば、処刑もありえたが、浮竹は永久追放処分に留めた。
「やっぱり、冬獅郎くんのところの宝玉も奪っていったか」
「ああ。桔梗の王の卯ノ花の宝玉も奪われたらしい」
「俺の場合、すでに右目が宝玉だったので、くりぬかれた」
「うわ、痛そうだな」
日番谷冬獅郎が、きていた。
新しい夏の王を決めるためにやってきて、新しい夏の王は朝顔の王のままに決まり、卯ノ花の推薦から平子真子という者に決まった。
「平子真子といえば、先代の夏の王の息子だな」
「そうなのか」
「ああ」
「俺は四季の王になったが、春の王で、桜の王でもある」
「ややこしいな。まぁ、単純に四季の王が追加されたと考えるだけいいか」
冬獅郎は、京楽が出してきた紅茶を飲む。
茶菓子は、あやかしまんじゅうであった。
「いよいよ、藍染が動き出したね」
京楽は、自分の分の紅茶を飲みながら、白あんのあやかしまんじゅうを食べる。
「普通、四季の王と長老神はセットだからな。藍染は、よほど四季の王になりたいらしい」
浮竹は、紅茶のおかわりを京楽に頼んだ。
「でも、四季の王だと余計に藍染に狙われないか?」
「いや、そうでもない。四季の王は、元々長老神がもっていたものだった。藍染は別だが。長老神が、四季の王を手にかけることは自殺に似ている。俺を殺せば、藍染も死ぬという仕組みになっている」
「うまいことできてるんだな」
冬獅郎は、あやかしまんじゅうを気に入ったようで、浮竹は帰りにおみやげとして買い置きしていた分をあげようと思った。
「四季の王になりたいが、四季の王を手にかけると自分が死ぬ。でも、藍染自身が直接手をくださなく殺せば、四季の王は空位になるな」
「気をつけろよ、浮竹」
「ああ、大丈夫だ。四季の王の力は藍染に匹敵する」
「十四郎ってば、どんどん強くなるから、ボクが守る意味がなくなちゃう」
「いや、京楽、お前の存在は助かっている。この前の市丸ギンの襲撃事件でも、お前の治癒術のおかげで一命をとりとめた」
「うん。あの時は君を失うと思って怖かったよ」
「もう、藍染に従う王はいない。側近はいるようだが‥‥‥そうだ、モレ草を藍染にもってやろう」
悪戯を思いついた子供のように、浮竹の目が輝く。
「モレ草って、下痢の止まらなくなる強力な薬草だろう?滅多に出回っていないんじゃないのか」
「俺が管理している畑で、栽培させてる」
「十四郎ってば、いつか役に立つとかいって、マンドラゴラとかも栽培してるんだよ」
京楽が、重いため息をつく。
「モレ草を藍染に盛るのか。面白そうだな」
冬獅郎も、興味をもったようだった。
「藍染の手下に、桜の花鬼がいる。命令して、藍染に盛らせることにしよう」
こうして、四季の王である浮竹は、その地位を利用して、藍染にモレ草を盛ることにするのであった。
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「実は、気になる人間がいるんだ」
冬獅郎は、言いにくそうに切り出す。
「恋か?」
「まぁ、似たようなもんだ。名前は雛森桃。氷の城に、何度も遊びにくるんだ」
「それは、桃ちゃんって子が冬獅郎くんに惚れてるんだろうね」
「やっぱりそうなのか?俺は誰かを愛したことがなかったから、この感情がなんであるのかはじめは理解できなかった」
「青春だねぇ」
「青春だな」
「でも、人間とあやかしは生きる時間が違うだろう?どうすればいいのか、分からない」
「契約すればいい。俺の京楽も、元はただの人間だ。俺と契約して、いろいろあって桜鬼になって、あやかしになった」
「契約?なんだそれ」
「桜の秘術の一つだからな。知らなくても無理はない。契約の仕方と方法を教えてやろう」
浮竹は、冬獅郎に人間と同じ時間を生きる桜の秘術を教えた。
「一度、思いを告げてから雛森に聞いてみる」
「ああ。それがいいだろう。互いを好きじゃないと、契約は成り立たないからな」
冬獅郎は、あやかしまんじゅうをお土産に、帰っていった。
「さて、藍染にモレ草を盛るか」
「ほんとにやるの?モレ草、下手したら死ぬかもしれないくらい下すよ」
「死ねば、平和的解決で万々歳だ」
京楽は、ほんの少しだけ藍染に同情する。
浮竹は、藍染の元に出入りしている桜の花鬼を召喚すると、モレ草を渡して、夕食に混ぜるように命令した。
桜の花鬼は、四季の王の命令には逆らえず、藍染にモレ草を盛った。
「ぬおおおおおおおお!!!」
藍染は、モレ草を盛られて、腹をくだした。
それが強力で、トイレから出れなかった。
藍染は、1週間トイレで過ごした。
「くううう、神となるべき私が、なぜこのような目に」
浮竹のせいでモレ草を盛られたとも知らず、今日もまた藍染はげりぴーぴーで、おまるに座って長老神の仕事をした。
一応、長老神であるから、仕事だけはしているようであった、
「ぬおおおおおお、ピーピーが止まらない」
桜の花鬼は、追加で飲み物にモレ草を混ぜて飲ませた。
「ふがあああああああ!!」
結果、藍染は5キロやせるほどに下痢を続けるのであった。
それを知った浮竹tと京楽は、ざまーみろと思うのであった。
桜のあやかしと共に45
桜の王の血族に代々受け継がれるものであるが、浮竹が桜の王になったのは今から5千年前。その前の前の桜の王から受け継がれてきたものだった。
本当は、大切にしないといけないものだった。
桜の秘術が入っており、浮竹はその秘術の全てを使えたし、内容は頭にしっかりと刻み込まれていた。
そして、はじめて愛した人間の「春」の死を塗り替えようと、桜の秘術でも禁忌の蘇りの術を浮竹は「春」にかけた。
だが、「春」は蘇らなかった。魂のレベルで、拒否されたのだ。
自暴自棄になった浮竹は、大切な大切な桜の宝玉を粉々に壊してしまった。
それが桜のただの一族であれば、極刑ものだった。
だが、王自らが壊した。
桜の宝玉は、こうして失われた‥‥はずであった。
だが、桜の宝玉はもう一つ存在する。
それは、桜の王の右目であった。
それを知る者は、浮竹だけのはずであった。だが、記憶を見られたのか、藍染にも伝わっていた。
「ほんと堪忍なぁ。桜の王。こないなことしたないねんけど、藍染様が桜の宝玉をどうしても欲しがっとるんや」
夏の朝顔の王、市丸ギンに、浮竹は右目をくりぬかれた。
「ああああ!!!!」
激しい出血と痛みで、何も考えられない。
「十四郎、今治癒するからしっかりして!」
「ほな、桜の宝玉はもろたで。さいなら」
「く、行かせるものか!」
白夜が、桜の術を使うが、桜の業火に包まれても、市丸は涼しい顔をして、去っていった。
「浮竹、兄がいなくなるなど、ないだろうな!私はいやだぞ!兄を失うのは、絶対にいやだ!」
京楽の卓越した治癒能力のおかげで、浮竹は一命を取り留めた。
右目は、再生して元の翡翠色に輝いていて、見ることもできた。
だが、もうそこには桜の宝玉は宿っていない。
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「ははははは!ついに手に入れたぞ!桜の宝玉を!」
藍染は、狂ったように笑っていた。
「朝顔の宝玉、桔梗の宝玉、椿の宝玉、それに桜の宝玉。これで、私はついに神となるのだ!」
4つの季節の花の宝玉を集めた者は、四季の王となり神となれる。
はずであった。
「何故だ!何故、何も起きない!」
宝玉たちは、かたかたと震えて、ピシリピシリと、罅が入っていく。
宝玉たちは、意思をもっている。四季の王にふさわしくない者の前で、粉々に砕け散った。
同時に、4つの季節の王の誰かを、四季の王にした。
神にはしなかったが、四季の王となれば、藍染と闘っても勝てる可能性がでてくる。
四季の王に選ばれたのは、桜の王、浮竹だった。
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その時、浮竹の体が黄金色に輝いた。
「十四郎、君‥‥‥」
「ああ。どうやら、四季の王になったらしい。宝玉を4つ集めて、神になるのにふさわしい者が掲げると、四季の王になり神となる。逆に、ふさわしくない者の場合、宝玉は砕け散り、季節の花の王の誰かが四季の王となる」
「じゃあ、藍染が宝玉を集めて神になろうとしたけど失敗して、十四郎が四季の王に選ばれたってことだね?」
「そうだな」
浮竹は、宝玉が砕け散ったことで、再び右目に宝玉を宿していた。
「四季の王というが、基本は何も変わらない。ただ、俺と俺の宝玉が敵とみなした者の前で、力を発揮する」
「へぇ。浮竹が神様になるんじゃないんだ。でも、神様の浮竹は遠いかんじがするから、四季の王までだね。ボクが許せる範囲は」
ふと、ベランダに敵の気配がした。
「またきたで~。もう一度、右目の宝玉もらうためにきてん。藍染様、一度失敗してるのに、もう一度試すって聞かなくてほんま、簡便やわ」
「俺は、四季の王として、藍染に加担する夏の朝顔の王、市丸ギンを敵とみなす」
「だからなんなん?この間みたいに、桜の術かけて敗北するん?」
「敗北するのはお前だ」
浮竹の体が金色に輝き、瞳も金色に輝いていた。
浮竹は、黄金の炎で市丸を焼いた。
「こんなもん通用するはず‥‥‥‥ぎゃあああ!!」
市丸は、黄金の炎に飲まれる。
「お前に愛しい者がいて、その者もお前を愛しいと思っているなら、一度だけ命を繋げるチャンスをやろう。代償は、愛しい者の命」
「あかん、あかんで。ボクが自分の命惜しさに、乱菊を差し出すとでも思うたんか?」
「乱菊‥‥‥召喚」
突然、召喚された乱菊は、目をぱちくりさせていたが、愛しい市丸の変わりはてた姿に、市丸にすがりつく。
「ギン、ギン、しっかりして!」
「あかん、ボクの傍から離れ、乱菊。今まで散々悪さしてきたつけがきたんや」
「市丸を愛する者よ。その命、捧げることはできるか?」
「できるわ。ギンを助けてくれるなら、あたしの命なんていくらでもあげる」
「十四郎‥‥‥‥」
京楽が、やめろと言いたげな顔をする。
浮竹は、四季の王としての裁きをくだす。
「市丸ギン、今日をもって、朝顔の王からただの朝顔の精霊に降格し、永久追放処分とする」
「ギン、聞いた?あたしの命も、あなたの命もどっちもとらないって」
「甘いわ、四季の王」
「愛する者を、犠牲にしてでも助けてくれと言っていたら、お前を殺していた」
「十四郎、立派だよ」
京楽は、浮竹の出した裁きは、甘くはあるが、誰の命もとらずにすんで、安心した。
市丸ギンの火傷を、京楽が癒す。
「さぁ、もうお前は夏の王でも朝顔の王でもない。どこへなりとも、その乱菊という愛しい者と消えるがいい」
「藍染様‥‥‥ボクは、あんたへの忠誠心より、乱菊のほうが大事や。乱菊、一緒にきてくれるかいな?」
「行くわ。どこまでも、あなたと一緒よ」
こうして、浮竹は四季の王となった。
市丸ギンは朝顔の王から外されて、藍染の部下であることもやめて、乱菊と共に、旅立っていった。
市丸ギンの夏の王がかけた穴を誰にすべきか、残された冬の椿の王日番谷冬獅郎と、秋の桔梗の王卯ノ花烈と会い、会議が開かれた。
結果、平子真子という朝顔の花鬼が夏の朝顔の王になることが決まるのであった。
桜のあやかしと共に44
『ああ、洞窟は奥が深くて入り組んでるから、行かないようにね。過去に戻ってこなかったあやかしがいるから』
山の王の京楽の言葉に、浮竹はついつい探検しようと思っていて、びくっとなる。
「そ、そいうことを言うなら、おとなしくしてやらんでもない」
『ねぇ、桜鬼のボク。この子って‥‥』
「一種のツンデレだよ。ツンが多くてデレが少ないけど」
『やっぱり‥‥‥』
二人の京楽は、ため息をつく。
「それより、彼岸花の精霊の俺には、家はないのか?」
『ないぞ。冥界の彼岸花の花畑が家のようなものだ』
「じゃあ、今度は俺たちの家に来ないか?」
『いいが、遠いと行けないぞ』
『そうだね。遠いと無理だね』
二人の意見は一致している。
そこで、浮竹は異界へのゲートを開く。
「異界渡りをしよう。一度行った場所には、異界を通っていくことで、すぐにつく。ここに来るのも、異界渡りをした」
『じゃあ、行ってすぐ帰ることもできるの?』
「俺が道案内をしなきゃいけないが、可能だ」
『じゃあ、言葉に甘えてお邪魔しようかなぁ』
山の王の京楽は、楽しそうにはっしゃいでいた。
異界渡りをして、迷子にならないようにみんなで手をつないで、向こう岸のゲートを出ると、京楽のマンションの玄関だった。
『広いな』
彼岸花の精霊の浮竹は、きょとんとしていた。
それから、浮竹をじーっと見つめてくる。
「3億するらしいぞ。このマンション」
『高級タワーマンションかぁ。いいなぁ』
山の王の京楽は、一度住んでみたいという顔をしていた。
浮竹は、彼岸花の精霊の浮竹にじーっと見つめられて、ついつい目をそらすこともできずに、じーっと見返してきた。
「何してるの?見つめあって」
「彼岸花の精霊の俺が、俺を見てくるから視線合わせてた」
『浮竹、ほら、珍しいからってジーっと見ちゃだめだよ。変に思われちゃう』
「べ、別に、視線が合って嬉しいなんて、これぽっちも思っていないからな!」
浮竹は、ツンデレになっていた。
「こっちが寝室で、こっちがバスルーム。こっちがキッチンで、こっちがトイレ。リビングルームにゲスト部屋が5つ。うち1つは、浮竹の弟である白哉くんが使ってるよ」
『きみ、弟なんているんだ』
「ああ。血は繋がっていないが、弟だな。俺は桜の王で、異界に俺の本体の桜の大樹がある。そこから株分けされた桜が、朽木白哉という。俺の自慢の弟だ。今は恋次くんというパートナーとあやかし退治に出かけている」
『桜鬼のボク』
「なんだい?」
『依頼があったら、やっぱり祓うのかい?』
「時と場合によるね。話し合いで解決できるならそうするし、だめでも封印とかの場合もある。問答無用で祓うのは、人に害をなすあやかしくらいだね」
『そっか、よかったぁ。ボクと浮竹はあやかしでしょ?祓われたらどうしようと、思ってたんだよ』
京楽は、クスっと笑う。
「祓う相手を、自分の家に招くことなんてしないよ」
『それもそうだね』
「茶菓子はあやかしまんじゅうしかないが、これでも飲んでくれ」
浮竹が出してきたのは、コーラだった。紅茶の茶葉を切らしていたのだ、
『お、これはコーラだね。人の子からもらって飲んだことあるよ』
『しゅわしゅわしている。毒じゃないのか?』
「毒じゃないぞ。ほら、俺が飲んでる」
浮竹が、コップにコーラを注いで、飲んでみせた。
『じゃあ、俺も飲んでみる。なんだこれ!しゅわしゅわしてて甘くておいしい!』
「コーラ、見たことないのか?」
『ああ。初めてだ。飲むのも初めてだ』
「じゃあ、今度違う種類のドリンクを飲めるようにしておく」
『ああ、楽しみにしている』
山の王からもらった川と山の幸を鍋にして食べて、4人は満足した。
「今度来るときは、泊まっていってね?」
『考えておく』
『山のことがあるからね。調整しないと』
その3日後、再び彼岸花の精霊の浮竹と、山の王の京楽は京楽の家にきていた。
『ドリンク』
「ああ、待ってろ。今、メロンソーダとバナナ・オレをコップに入れるから」
2つの飲み物をもってこられて、しゅわしゅわしているメロンソーダを先に飲む。
『おいしい!』
「こっちもうまいぞ?炭酸じゃないから、しゅわしゅわしてないが」
バナナ・オレを飲んで、彼岸花の精霊の浮竹は、幸せそうな顔をする。
『飲み物がこんなにうまいなんて。人の世界は広いな』
京楽達は、今日の夕飯の準備をしていた。
今日のメニューは、簡単にカレーだった。京楽達は、サラダを作っていた。
「じゃあ、俺が世界一うまいカレーを作ってやるから、少し待ってろ」
『出た、世界一。でも、実際おいしいんだよねぇ』
『カレー、食べたことがない。楽しみだ』
「浮竹の作る料理は、どれもおいしいよ?」
『桜の精霊王の俺が作った料理を食べると、胸の奥がほっこりするけどうずくんだ。何か、大切なことを忘れている気がして』
「あー。転生した名残かなぁ」
『転生?』
「ううん、なんでもないよ。今のことは、忘れて?」
京楽は言葉を濁して、彼岸花の精霊の浮竹に、バナナ・オレのおかわりをついであげた。
「できたぞー」
『あ、なんかすごいい匂い。香辛料がきいてそう』
『‥‥‥泥?』
彼岸花の精霊の浮竹の言葉に、浮竹がずこーっとこける。
「泥はないだろ、泥は!」
『じゃあ、うんこ』
「食事の前なんだから!」
『す、すまん。でも、においはうまそうだ』
「実際、おいしいよ?食べてごらん」
京楽に渡されたスプーンで、彼岸花の精霊の浮竹は、カレーを一口食べて。
『う、うまい!なんだ、この異様なまでのうまさは!』
カレーを気に入ったようで、3回もおかわりをしていた。
「サラダも食べてね?」
京楽達が作ったサラダは、普通の味だった。
「デザートは、苺のミルフィーユだ」
『デザートもうまい!お前、料理が本当に上手だな!』
彼岸花の精霊の浮竹に褒められて、浮竹は嬉しそうにはにかみながら、涙ぐんだ。
『どうした?また、目にゴミでも入ったのか?』
「ああ、そうだ。京楽、ちょっと‥‥」
カレーとサラダとデザートを食べ終わった浮竹は、京楽と話していた。
「やっぱり、転生のことを話すのはよそう」
「君のことだから、てっきり話すと思ってたのに」
「今の彼らの存在を否定してしまう。それは嫌だ」
「そうだね。また、一から友情を育んでいくといいよ」
京楽に頭を撫でられて、額にキスをされる。
「もう、失いたくない」
「大丈夫。彼らとて、そう簡単に死んだりしないさ」
戻ってきた浮竹は少しだけ赤い目をしていた。
『また、泣いていたのか?』
「ああ。少しな」
『理由は?』
「秘密だ。俺と京楽だけの秘密」
『むう。ずるいぞ』
『浮竹、苺のミルフィーユ1つ余ってるんだけど、食べる?』
『ああ、食べる』
その細い体のどこにそんなに入るのか、彼岸花の精霊の浮竹はよく食べた。
『ああ、今日は泊まっていけるからね?』
「じゃあ、先にお風呂使って。バスルームは2つあるから」
『じゃあ、俺もお風呂にする』
彼岸花の精霊の浮竹はそう言って、違うバスルームに消えていく。山の王の京楽は、一緒に入りたそうな顔をしていたが、諦めたようだった。
「ゲストルーム、2つ使って寝る?それとも、そっちのボクと同じベッドで寝る?」
『俺は同じベッドでいい』
『わお。いいね』
山の王の京楽は、喜んだ。
やましいことはまだ何もできないけれど、一目惚れの相手と一緒に寝れるのだ。それなりの幸せだろう。
「じゃあ、俺も京楽と一緒に寝る。おやすみ」
みんな就寝している中、浮竹は気配を感じて起きてきた。
「いるんだろう、夏の王」
「おや、ばれはった?うまく気配隠せてたつもりなんやけどなぁ」
「何の用だ」
「新しい友人を失いたくなければ、桜の宝玉を渡せ、らしいで?」
「桜の宝玉は‥‥‥もう、ない」
「ええ、まじやの?」
「まじだ。「春」を失ったその日に壊した。もう、桜の秘術は全部俺が覚えているから、必要ない」
「あちゃー。君にきてもろうてもいいんやけど、京楽はんがうるさそうやな。また来るさかい、その時に藍染様の欲しいもの、言うわ」
「もう二度と来るな。もし、俺の友人や家族に手を出したら、生まれてこなければよかったという目に合わてやる」
怒りむき出しの浮竹を、夏の王の市丸ギンは、こわいこわいといって、去るのであった。