教師と式21
「浮竹先生さよなら~」
「先生さようなら~、夏休みあけたらまた会おうねー」
浮竹の本職は小学校の教師である。
猛暑の続く中、小学校は夏休みに入り、浮竹も数日の有休休暇をとったが、今日は学校に来ていた。
「ここが浮竹の勤めてる学校かい。けっこう広いじゃない」
「主、それであやかしが出るという音楽室はどこに?」
生徒たちが、音楽室で怪奇現象を見たといって、浮竹に助けを求めていた。
くしくも夏休みに入り、生徒たちに被害は及んでいないが、そうなる前に怪奇現象の容貌を掴み、あやかしなら祓おうということだった。
「まだ、あやかしと決まったわけじゃないがな」
人がいないのにピアノが演奏されたり、歌声が聞こえるのだという。
浮竹は、その日式神である京楽と白哉を伴って、夜の学校を訪れていた。
音楽室の近くにいくと、ピアノの音が流れてくる。
それに合わせ、もの悲しい歌声が流れてきた。
「これは‥‥‥あやかしというか、人の怨念の塊だな」
「つまりは幽霊ってこと?」
「主、浄化してしまおう」
「いや、待て。まだ人に危害を加えていないし、事情を聞いてからでもいいだろう。説得して成仏してもらえるのであれば、それにこしたことはない」
浮竹は音楽室に入る。
ぼんやりとした形で、人の魂が幽霊の形になって一人、ピアノを奏でながら悲し気に歌っていた。
若い娘の姿をしていた。
「俺は浮竹。この学校の教師をしている。そして祓い屋だ。成仏してほしいんだが、まだこの世界に未練があるんだろう?話してみてくれ」
「祓い屋‥‥術者ですか。私はとあるバーで音楽を奏で歌ってういたミュージシャンです。バーはつぶれ、私は弾いて歌う場所をなくしさまよいました。新しいバーに採用されても、どこもつぶれてしまうのです。私は呪われていました」
「呪いか」
浮竹は、女の話を聞く。
「はい。そして衰弱していき、命を絶ちました。まだ弾いて歌いたい。そんな心から、ピアノのあるこの音楽教室を見つけました。夜に弾いて歌っていると、悲しいけれど少し嬉しいのです。聞いてくれる方はいませんが、弾いて歌っていることで私は私を保っていました。でも、これで最後ですね」
「お前を呪った者の正体は?」
「不知火です。海辺で、私が歌っていると歌声に惚れたから、あやかしになって嫁になれと。断ったら、呪われてこうして悪霊になってしまいました」
「不知火‥‥‥八津原の不知火か?」
「え、ごぞんじなのですか」
「ご存じも何も、この前人の船を惑わせて行方不明にさせるから祓った」
「ああ、そういえばそんな不知火がいたねぇ」
「主に危害を加えようとしたので、刀できったな」
浮竹、京楽、白哉の言葉に女の亡霊は涙を浮かべる。
「そうですか。私を死に追いやった不知火は、もうこの世にいないのですね」
「だから、安心して成仏するといいぞ」
「ふふふふ‥‥‥術者は人の子。その体、もらいます!」
女の亡霊は、浮竹の体を奪おうとした。
「浮竹!」
「主!」
「ふふふふ、これでまたピアノを弾いて歌える。人に見てもらえる‥‥‥‥」
「悪いが、俺は人の子ではない。雷神だ。俺の体から出て行ってもらおうか」
「ぎいやああああああああ」
浮竹は、自分の中に入ってきた女の亡霊に雷を浴びせて追い出す。
「静かに成仏してもらおうと思ったが、無理みたいだな。強制的に祓う」
「いやあああ、消えたくないいいいい」
「浮竹の体を乗っ取ろうだなんて、なんて不届きな亡霊だい。桜の花びらよ、祓ってしまえ」
「いやあああああああ」
女の亡霊は、京楽の出した桜の花びらの渦に飲まれて、浄化されてしまった。
「むう、私の出番はなしか」
「白哉、ないほうがいい」
「それもそうか。主、体に異常はないか?幽霊に入られたのだ、どこかに異常があるかもしれない」
「大丈夫だ」
「それならいいのだが」
出番のなかった白哉に、とりあえず科学室にいた怨霊と、プールにいた溺れ死んだ子供の幽霊を浄化してもらって、学校にいる幽霊は全部浄化した。
「ふう。結界もはったし、しばらくこの学校は幽霊も出ないだろう」
「浮竹、なんだか具合悪そうだね?早めに帰る?」
「ああ、そうだな。少し疲れたようだ」
「主、車を運転するので寝ていろ」
白哉に車の運転を任せて、屋敷まで帰ると、浮竹は寝室にいくと横になった。
「体が熱い‥‥‥あの女の幽霊のせいだな、乗っ取られたときに、何かされたようだ」
「浮竹、大丈夫?」
「主‥‥‥‥私は呪符に戻るゆえ、後は京楽に任す」
「え、白哉くん?」
「京楽‥‥‥‥‥体が熱い。鎮めてくれ」
「え、これいいの?まじで?」
浮竹は、潤んだ瞳で京楽を見てくる。
「抱いていいの?」
「ああ‥‥‥熱を、鎮めてくれ」
「んあっ」
奥を貫かれて、浮竹は甘い声を出す。
「ひああああ」
ぱんぱんと肉がぶつかる音がした。
「あ、春水もっとおおお」
「十四郎、そんなに締め付けないで」
「ひああ、あ、あ」
京楽に犯されて、浮竹は喜びの声をあげる。
「んっ」
ぐちゅぐちゅと前もいじられて、浮竹は中に熱い京楽の精液が出されるのを感じながら、ドライでいっていた。
「んあ、もっとおお」
「十四郎」
京楽は、浮竹を抱き寄せて深い口づけをする。
「んっ」
それにこたえて、浮竹は京楽の背に手をまわしてから、ひっかいた。
「あああああああ!!!」
最奥を抉る京楽の熱に、浮竹は背をしならせて大きくドライでいってしまう。
「やああ、あああ」
「十四郎、まだいけるよね?」
「ひやあああ」
「ボク、まだ足りないよ?君と睦みあうの久しぶりなんだもの」
「あああ、春水」
京楽は、浮竹の中を何度も貫き、抉り、揺さぶる。
浮竹はそのたびに反応する。
「ああああ、快感で頭いおかしくなるううう」
「一緒にいこう。ほら、ここ弱いよね?」
「やあああああああ」
最奥をぐりっと抉って、京楽は精液を浮竹の胎の奥にぶちまける。
同時に浮竹もいっていた。射精もして、ドライでもいって二重にいっていた。
「んああああ!!!」
「十四郎、大好き」
「あ、春水」
浮竹は、京楽の下の名を呼んで意識を失った。
「十四郎?ありゃ、気絶しちゃったかな」
京楽は、浮竹の体を清めて後始末をして、浮竹に衣服を着せる。
「白哉くん、もう出てきても平気だよ」
呪符に戻っていた白哉は、気を失っている浮竹を見て、京楽の頭を殴る。
「あいた、何するの」
「無茶をさせすぎだ。主に万が一のことがあったらどうする」
「えー。セックスで、万が一のことってどんなの」
「し、知らぬ!」
白哉は、顔を赤くして恋次のところにいってしまった。
「ねえ、十四郎」
京楽は、意識のない浮竹の白い長い髪を撫でる。
「今、幸せかい?」
返事はない。
「ボクは幸せだよ。惣右介くんから自由の身になれて、桜食いから桜の花神に戻れて、君の傍にいられる。こんなに穏やかに幸せな気分になれたのは久しぶりかな」
「少しは、加減を、しろ」
気づいた浮竹が、目を覚ます。
「ふふ、ごめんね?久しぶりだったから」
「確かに、久しぶりだな。交わったのは」
浮竹は、着替えの服をもってシャワーを浴びにいく。京楽は、その後をおって、同じくシャワーを浴びにいくのだった。
「先生さようなら~、夏休みあけたらまた会おうねー」
浮竹の本職は小学校の教師である。
猛暑の続く中、小学校は夏休みに入り、浮竹も数日の有休休暇をとったが、今日は学校に来ていた。
「ここが浮竹の勤めてる学校かい。けっこう広いじゃない」
「主、それであやかしが出るという音楽室はどこに?」
生徒たちが、音楽室で怪奇現象を見たといって、浮竹に助けを求めていた。
くしくも夏休みに入り、生徒たちに被害は及んでいないが、そうなる前に怪奇現象の容貌を掴み、あやかしなら祓おうということだった。
「まだ、あやかしと決まったわけじゃないがな」
人がいないのにピアノが演奏されたり、歌声が聞こえるのだという。
浮竹は、その日式神である京楽と白哉を伴って、夜の学校を訪れていた。
音楽室の近くにいくと、ピアノの音が流れてくる。
それに合わせ、もの悲しい歌声が流れてきた。
「これは‥‥‥あやかしというか、人の怨念の塊だな」
「つまりは幽霊ってこと?」
「主、浄化してしまおう」
「いや、待て。まだ人に危害を加えていないし、事情を聞いてからでもいいだろう。説得して成仏してもらえるのであれば、それにこしたことはない」
浮竹は音楽室に入る。
ぼんやりとした形で、人の魂が幽霊の形になって一人、ピアノを奏でながら悲し気に歌っていた。
若い娘の姿をしていた。
「俺は浮竹。この学校の教師をしている。そして祓い屋だ。成仏してほしいんだが、まだこの世界に未練があるんだろう?話してみてくれ」
「祓い屋‥‥術者ですか。私はとあるバーで音楽を奏で歌ってういたミュージシャンです。バーはつぶれ、私は弾いて歌う場所をなくしさまよいました。新しいバーに採用されても、どこもつぶれてしまうのです。私は呪われていました」
「呪いか」
浮竹は、女の話を聞く。
「はい。そして衰弱していき、命を絶ちました。まだ弾いて歌いたい。そんな心から、ピアノのあるこの音楽教室を見つけました。夜に弾いて歌っていると、悲しいけれど少し嬉しいのです。聞いてくれる方はいませんが、弾いて歌っていることで私は私を保っていました。でも、これで最後ですね」
「お前を呪った者の正体は?」
「不知火です。海辺で、私が歌っていると歌声に惚れたから、あやかしになって嫁になれと。断ったら、呪われてこうして悪霊になってしまいました」
「不知火‥‥‥八津原の不知火か?」
「え、ごぞんじなのですか」
「ご存じも何も、この前人の船を惑わせて行方不明にさせるから祓った」
「ああ、そういえばそんな不知火がいたねぇ」
「主に危害を加えようとしたので、刀できったな」
浮竹、京楽、白哉の言葉に女の亡霊は涙を浮かべる。
「そうですか。私を死に追いやった不知火は、もうこの世にいないのですね」
「だから、安心して成仏するといいぞ」
「ふふふふ‥‥‥術者は人の子。その体、もらいます!」
女の亡霊は、浮竹の体を奪おうとした。
「浮竹!」
「主!」
「ふふふふ、これでまたピアノを弾いて歌える。人に見てもらえる‥‥‥‥」
「悪いが、俺は人の子ではない。雷神だ。俺の体から出て行ってもらおうか」
「ぎいやああああああああ」
浮竹は、自分の中に入ってきた女の亡霊に雷を浴びせて追い出す。
「静かに成仏してもらおうと思ったが、無理みたいだな。強制的に祓う」
「いやあああ、消えたくないいいいい」
「浮竹の体を乗っ取ろうだなんて、なんて不届きな亡霊だい。桜の花びらよ、祓ってしまえ」
「いやあああああああ」
女の亡霊は、京楽の出した桜の花びらの渦に飲まれて、浄化されてしまった。
「むう、私の出番はなしか」
「白哉、ないほうがいい」
「それもそうか。主、体に異常はないか?幽霊に入られたのだ、どこかに異常があるかもしれない」
「大丈夫だ」
「それならいいのだが」
出番のなかった白哉に、とりあえず科学室にいた怨霊と、プールにいた溺れ死んだ子供の幽霊を浄化してもらって、学校にいる幽霊は全部浄化した。
「ふう。結界もはったし、しばらくこの学校は幽霊も出ないだろう」
「浮竹、なんだか具合悪そうだね?早めに帰る?」
「ああ、そうだな。少し疲れたようだ」
「主、車を運転するので寝ていろ」
白哉に車の運転を任せて、屋敷まで帰ると、浮竹は寝室にいくと横になった。
「体が熱い‥‥‥あの女の幽霊のせいだな、乗っ取られたときに、何かされたようだ」
「浮竹、大丈夫?」
「主‥‥‥‥私は呪符に戻るゆえ、後は京楽に任す」
「え、白哉くん?」
「京楽‥‥‥‥‥体が熱い。鎮めてくれ」
「え、これいいの?まじで?」
浮竹は、潤んだ瞳で京楽を見てくる。
「抱いていいの?」
「ああ‥‥‥熱を、鎮めてくれ」
「んあっ」
奥を貫かれて、浮竹は甘い声を出す。
「ひああああ」
ぱんぱんと肉がぶつかる音がした。
「あ、春水もっとおおお」
「十四郎、そんなに締め付けないで」
「ひああ、あ、あ」
京楽に犯されて、浮竹は喜びの声をあげる。
「んっ」
ぐちゅぐちゅと前もいじられて、浮竹は中に熱い京楽の精液が出されるのを感じながら、ドライでいっていた。
「んあ、もっとおお」
「十四郎」
京楽は、浮竹を抱き寄せて深い口づけをする。
「んっ」
それにこたえて、浮竹は京楽の背に手をまわしてから、ひっかいた。
「あああああああ!!!」
最奥を抉る京楽の熱に、浮竹は背をしならせて大きくドライでいってしまう。
「やああ、あああ」
「十四郎、まだいけるよね?」
「ひやあああ」
「ボク、まだ足りないよ?君と睦みあうの久しぶりなんだもの」
「あああ、春水」
京楽は、浮竹の中を何度も貫き、抉り、揺さぶる。
浮竹はそのたびに反応する。
「ああああ、快感で頭いおかしくなるううう」
「一緒にいこう。ほら、ここ弱いよね?」
「やあああああああ」
最奥をぐりっと抉って、京楽は精液を浮竹の胎の奥にぶちまける。
同時に浮竹もいっていた。射精もして、ドライでもいって二重にいっていた。
「んああああ!!!」
「十四郎、大好き」
「あ、春水」
浮竹は、京楽の下の名を呼んで意識を失った。
「十四郎?ありゃ、気絶しちゃったかな」
京楽は、浮竹の体を清めて後始末をして、浮竹に衣服を着せる。
「白哉くん、もう出てきても平気だよ」
呪符に戻っていた白哉は、気を失っている浮竹を見て、京楽の頭を殴る。
「あいた、何するの」
「無茶をさせすぎだ。主に万が一のことがあったらどうする」
「えー。セックスで、万が一のことってどんなの」
「し、知らぬ!」
白哉は、顔を赤くして恋次のところにいってしまった。
「ねえ、十四郎」
京楽は、意識のない浮竹の白い長い髪を撫でる。
「今、幸せかい?」
返事はない。
「ボクは幸せだよ。惣右介くんから自由の身になれて、桜食いから桜の花神に戻れて、君の傍にいられる。こんなに穏やかに幸せな気分になれたのは久しぶりかな」
「少しは、加減を、しろ」
気づいた浮竹が、目を覚ます。
「ふふ、ごめんね?久しぶりだったから」
「確かに、久しぶりだな。交わったのは」
浮竹は、着替えの服をもってシャワーを浴びにいく。京楽は、その後をおって、同じくシャワーを浴びにいくのだった。
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教師と式20
「夢を、食われるのだ」
白哉の言葉に、浮竹と京楽が首を傾げる。
「あやかしか?」
「そのようだ。本来ならば悪夢しか食べぬと言われる獏なのだが、普通の夢まで食われてしまう。おかげで、あまり眠れぬ」
白哉に元に、獏が現れて夢を食うのだという。
あやかしたちが住む浮竹の屋敷に、わざわざ式の白哉の夢を食べるとは、変わった獏のようであった。
「獏か。普通悪夢しか食わないが、白哉の夢を食って衰弱させているようだな。祓おう」
「うん、それがいいね」
「獏は毎夜毎夜現れる。主、すまぬが退治してほしい」
「分かった。じゃあ、今日は白哉の寝室で白哉が眠りについて、獏が現れるのを待とう」
そんなこんなで、浮竹と京楽は白哉の寝室で気配を殺して待機して、獏が現れるのを待った。
「夢を‥‥‥おいしい夢をいただこう。その命も一緒に」
現れた獏は、眠っている白哉の枕元にたつ。
「そこまでだ!」
「おとなしく退治されなよ」
浮竹と京楽が、獏を取り囲む。
「術者か。お前たちの夢も食ってやろう」
獏は、すさまじい眠気の音波をだして、浮竹と京楽を昏睡状態にしてしまう。
「ふふふ、これで皆の夢は我のもの」
『お兄ちゃんいじめるの許さない!』
『十四郎、無茶はだめだよ!』
館の離れで居候している鬼の浮竹と鬼神の京楽が、獏に体当たりをかませて浮竹と京楽を起こす。
「すまん、助かった。まさか眠らせる能力まであるとは」
「一本とられたね。お礼は、おやつでいいかな?」
『うん』
『ボクは十四郎が助けたいっていうから助けただけ』
「おのれえええ、夢を食わせろおおおお」
獏は、幼子の鬼の浮竹と鬼神の京楽も含めて眠りの音波を出すが、みんな耳をふさいで防いだ。
「夢をくらいまくり、我はあのお方に力を捧げるのだ」
「もう、夢は食えない。お前は死ぬのだから」
浮竹は、呪符をとりだして獏の動きを封じる。
「京楽!」
「あいよ!桜一閃」
京楽は、桜の花びらで刃を作り、獏を切り裂く。
「ぬおおおお」
「滅!」
「ぎゃあああああああああ」
獏は、断末魔の悲鳴をあげて灰となった。
『俺たち、役にたった?』
「ああ、おかげで助かった」
『十四郎のおかげだよ。もっと感謝するべきだよ』
「鬼神の京楽は、手厳しいな」
「う‥‥‥‥」
眠っていた白哉が起きる。
「白哉、獏は退治した。もう、夢を食われる心配はない」
「すまぬ、主。寝ている時にしか現れぬので、自分では対処のしようがなかったのだ」
『ふあ‥‥眠い。おやすみ』
『ボクも眠い。おやすみ』
鬼の浮竹と鬼神の京楽は、白哉のベッドで眠ってしまった。
「仕方ない、一護くんを呼んで、離れに移動させてもらおう」
白哉は獏を倒されて、衰弱していたのが大丈夫のようであった。
「主、私も手伝おう」
「そうか。じゃあ、一護くんと一緒に運んでやってくれ」
ほどなくしてやってきた一護は、寝ているとこを起こされたのでやや寝ぼけていたが、無事二人を離れの館まで送り届ける。
白哉は一護をまだ認めていない。
「兄は、ルキアのみを愛すると誓えるか」
「俺にはルキアしかいないっす」
「ふむ‥‥‥」
鬼の浮竹と鬼神の京楽をそれぞれ抱き上げて、一護と白哉は言葉少なめに離れの館まで移動する。
「ルキアを泣かせたら、斬る」
「こわっ。泣かしたりしないから安心してください」
二人を離れの館のベッドに寝かしつけて、白哉は浮竹の元に戻り、一護は寝るために自分の寝室に戻った。
「獏が、悪夢以外を食うとは‥‥‥あのお方というのが気になる」
「どうせ、どこぞのボクを式にしていたあいつでしょ。ボクらにちょっかいかけるのやめないんだから」
「獏はもともと無害なあやかしだからな。暴走させていたんだろう」
「呪符に戻って眠っていても現れるので、難儀していたのだ」
「白哉は、とりあえず休め。ろくに睡眠もとれていないんだろう。1週間は、休暇を与える」
「主、すまぬ」
「白哉くんがいないなら、浮竹といちゃこら‥‥‥」
「しないからな、京楽」
京楽は、がっくりとうなだれる。
その日は、皆そのまま就寝した。
離れの屋敷で、鬼の浮竹と鬼神の京楽が目覚める頃には昼になっていた。
『おなかすいた』
『ボクも』
「はいはい、今パンケーキ焼いてあげるんでちょっと待ってください」
「一護、パンケーキだけではだめだ。ちゃんと野菜も食させないと」
「わかってるよ、ルキア。サラダ作ってくれ」
「分かった」
鬼の浮竹と鬼神の京楽の世話は、一護だけでなくルキアも面倒を見てくれていた。
「白哉、大丈夫か?」
獏を倒したが、白哉はまだ元気がなかった。
「ルキアが‥‥‥‥‥」
ただのシスコンの問題だったようなので、浮竹も京楽も放置することにした。
白哉の言葉に、浮竹と京楽が首を傾げる。
「あやかしか?」
「そのようだ。本来ならば悪夢しか食べぬと言われる獏なのだが、普通の夢まで食われてしまう。おかげで、あまり眠れぬ」
白哉に元に、獏が現れて夢を食うのだという。
あやかしたちが住む浮竹の屋敷に、わざわざ式の白哉の夢を食べるとは、変わった獏のようであった。
「獏か。普通悪夢しか食わないが、白哉の夢を食って衰弱させているようだな。祓おう」
「うん、それがいいね」
「獏は毎夜毎夜現れる。主、すまぬが退治してほしい」
「分かった。じゃあ、今日は白哉の寝室で白哉が眠りについて、獏が現れるのを待とう」
そんなこんなで、浮竹と京楽は白哉の寝室で気配を殺して待機して、獏が現れるのを待った。
「夢を‥‥‥おいしい夢をいただこう。その命も一緒に」
現れた獏は、眠っている白哉の枕元にたつ。
「そこまでだ!」
「おとなしく退治されなよ」
浮竹と京楽が、獏を取り囲む。
「術者か。お前たちの夢も食ってやろう」
獏は、すさまじい眠気の音波をだして、浮竹と京楽を昏睡状態にしてしまう。
「ふふふ、これで皆の夢は我のもの」
『お兄ちゃんいじめるの許さない!』
『十四郎、無茶はだめだよ!』
館の離れで居候している鬼の浮竹と鬼神の京楽が、獏に体当たりをかませて浮竹と京楽を起こす。
「すまん、助かった。まさか眠らせる能力まであるとは」
「一本とられたね。お礼は、おやつでいいかな?」
『うん』
『ボクは十四郎が助けたいっていうから助けただけ』
「おのれえええ、夢を食わせろおおおお」
獏は、幼子の鬼の浮竹と鬼神の京楽も含めて眠りの音波を出すが、みんな耳をふさいで防いだ。
「夢をくらいまくり、我はあのお方に力を捧げるのだ」
「もう、夢は食えない。お前は死ぬのだから」
浮竹は、呪符をとりだして獏の動きを封じる。
「京楽!」
「あいよ!桜一閃」
京楽は、桜の花びらで刃を作り、獏を切り裂く。
「ぬおおおお」
「滅!」
「ぎゃあああああああああ」
獏は、断末魔の悲鳴をあげて灰となった。
『俺たち、役にたった?』
「ああ、おかげで助かった」
『十四郎のおかげだよ。もっと感謝するべきだよ』
「鬼神の京楽は、手厳しいな」
「う‥‥‥‥」
眠っていた白哉が起きる。
「白哉、獏は退治した。もう、夢を食われる心配はない」
「すまぬ、主。寝ている時にしか現れぬので、自分では対処のしようがなかったのだ」
『ふあ‥‥眠い。おやすみ』
『ボクも眠い。おやすみ』
鬼の浮竹と鬼神の京楽は、白哉のベッドで眠ってしまった。
「仕方ない、一護くんを呼んで、離れに移動させてもらおう」
白哉は獏を倒されて、衰弱していたのが大丈夫のようであった。
「主、私も手伝おう」
「そうか。じゃあ、一護くんと一緒に運んでやってくれ」
ほどなくしてやってきた一護は、寝ているとこを起こされたのでやや寝ぼけていたが、無事二人を離れの館まで送り届ける。
白哉は一護をまだ認めていない。
「兄は、ルキアのみを愛すると誓えるか」
「俺にはルキアしかいないっす」
「ふむ‥‥‥」
鬼の浮竹と鬼神の京楽をそれぞれ抱き上げて、一護と白哉は言葉少なめに離れの館まで移動する。
「ルキアを泣かせたら、斬る」
「こわっ。泣かしたりしないから安心してください」
二人を離れの館のベッドに寝かしつけて、白哉は浮竹の元に戻り、一護は寝るために自分の寝室に戻った。
「獏が、悪夢以外を食うとは‥‥‥あのお方というのが気になる」
「どうせ、どこぞのボクを式にしていたあいつでしょ。ボクらにちょっかいかけるのやめないんだから」
「獏はもともと無害なあやかしだからな。暴走させていたんだろう」
「呪符に戻って眠っていても現れるので、難儀していたのだ」
「白哉は、とりあえず休め。ろくに睡眠もとれていないんだろう。1週間は、休暇を与える」
「主、すまぬ」
「白哉くんがいないなら、浮竹といちゃこら‥‥‥」
「しないからな、京楽」
京楽は、がっくりとうなだれる。
その日は、皆そのまま就寝した。
離れの屋敷で、鬼の浮竹と鬼神の京楽が目覚める頃には昼になっていた。
『おなかすいた』
『ボクも』
「はいはい、今パンケーキ焼いてあげるんでちょっと待ってください」
「一護、パンケーキだけではだめだ。ちゃんと野菜も食させないと」
「わかってるよ、ルキア。サラダ作ってくれ」
「分かった」
鬼の浮竹と鬼神の京楽の世話は、一護だけでなくルキアも面倒を見てくれていた。
「白哉、大丈夫か?」
獏を倒したが、白哉はまだ元気がなかった。
「ルキアが‥‥‥‥‥」
ただのシスコンの問題だったようなので、浮竹も京楽も放置することにした。
教師と式19
鬼神の京楽が術者にやられて一時行方不明になり、鬼の浮竹はショックで3歳児くらいまで縮んでしまった。
鬼神の京楽は帰ってきたのだが、浮竹を庇って威嚇しまくる。鬼神の京樂も5歳児くらいまで縮んでいた。
そんなんじゃ、日常生活にも支障が出るだろうと、浮竹と京楽は二人をしばらくの間屋敷に住まわせることにした。
『春水、あそぼ』
『‥‥‥うん』
それぞれ言葉遣いが変わって、鬼の浮竹は子供っぽく、鬼神の京楽は少ししか話さない。
それを、浮竹も京楽も、心配しながら見守っていた。
「同じ部屋にしたのは正解だったな」
「そうだね。鬼の浮竹が鬼神のボクがいないと泣き出しちゃうからね」
「鬼神の京楽は、鬼の俺がいないと殺気を出すからな」
「二人とも、いい子っすよ?」
世話を任された一護は、鬼の浮竹を抱き上げていた。
『十四郎‥‥‥‥』
鬼神の京楽は、鬼の京楽をとられた気がして少し不服そうだった。
『一護兄ちゃん、かくれんぼしよ』
『かくれんぼ‥‥ボクもする』
「仕方ないっすねぇ。じゃあ、京楽さんも浮竹さんも混じってください」
「え、ボクらもするの、かくれんぼ」
「数が多いほうが楽しいじゃないっすか」
「仕方ない。京楽、かくれんぼしよう」
こうして、大きな浮竹の屋敷で5人で隠れんぼすることになった。
白哉はこういうのは苦手なので、傍観だ。
「じゃあ、数数えますから逃げてくださいね。10,9,8‥‥」
『春水、キッチンに行こいう。あそこ、木箱とか樽があるからそこに隠れよう?』
『分かったよ』
鬼の浮竹と鬼神の京楽は、キッチンに隠れた。
京楽と浮竹は、京楽は屋根裏部屋に、浮竹は地下室に隠れた。
「じゃあ、探しますよ~」
『ここなら、ばれないよね』
『多分』
「はい、鬼の浮竹さんと鬼神の京楽さんみっけ」
一護にすぐ見つかった。
『な、なんで分かるんだ!?』
「霊力と妖力がだだもれです。隠さないと、分かっちゃいますよ」
『うーん、盲点だったね』
「その点京楽さんと浮竹さんは流石に妖力隠してますね。屋敷は広いし、一人で探すには骨が折れそうっす」
『じゃあ、俺たちも見つけるの手伝う!』
『うん。手伝う』
「じゃあ、二手に別れましょうか」
『うん。十四郎とは、ずっと一緒』
『春水と離れたくないから』
鬼の浮竹と鬼神の京楽は、手をつないで歩きだす。
1時間ほどして、屋根裏部屋の京楽と地下室の浮竹も見つかった。
見つけたのは鬼の浮竹であった。
なんとなく、居場所が分かるといって、捜索したら近くにいたのだ。
「はぁ、見つかった。まぁ、遊びはほどほどにして、昼食にしよう」
『俺、オムライスがいい!』
『ボクも浮竹と同じものでいいよ』
「オムライスくらいなら、俺でも作れますから作りましょうか?今日はルキアは外出中だし」
「すまない、一護くん。任せる」
「一護くんも何気に手料理おいしいからねぇ」
一護は、ささっとオムライスを4人分作ってしまった。
『はい、春水あーん』
『あーん』
『じゃあ、十四郎あーん』
『あーん』
鬼浮竹と鬼神の京楽は、互いに食べさせ合っている。
「浮竹‥‥‥‥」
「言っておくが、しないぞ」
「ガーン」
昼食を食べ終わると、3歳児に縮んでいる鬼の浮竹が眠気を訴えた。
一護が抱き上げて、鬼神の京楽を連れて二人に割り当てられた部屋に行き、ベッドに鬼の浮竹を寝かせる。
「鬼神の京楽さんも寝ます?」
『ううん。十四郎の寝顔見とく』
「じゃあ、俺は家事があるんで、起きたら声かけてください。一緒に夕飯作る約束してるんで」
『分かったよ』
鬼の浮竹は一護によく懐いて、家事の手伝いもしていた。
今日は一護が夕飯を作ると知って、鬼の浮竹は一緒に作りたいと言い出した。
『十四郎‥‥‥ボクが、守るからね』
鬼神の京楽は、眠っている幼子の浮竹の額にキスをするのだった。
鬼神の京楽は帰ってきたのだが、浮竹を庇って威嚇しまくる。鬼神の京樂も5歳児くらいまで縮んでいた。
そんなんじゃ、日常生活にも支障が出るだろうと、浮竹と京楽は二人をしばらくの間屋敷に住まわせることにした。
『春水、あそぼ』
『‥‥‥うん』
それぞれ言葉遣いが変わって、鬼の浮竹は子供っぽく、鬼神の京楽は少ししか話さない。
それを、浮竹も京楽も、心配しながら見守っていた。
「同じ部屋にしたのは正解だったな」
「そうだね。鬼の浮竹が鬼神のボクがいないと泣き出しちゃうからね」
「鬼神の京楽は、鬼の俺がいないと殺気を出すからな」
「二人とも、いい子っすよ?」
世話を任された一護は、鬼の浮竹を抱き上げていた。
『十四郎‥‥‥‥』
鬼神の京楽は、鬼の京楽をとられた気がして少し不服そうだった。
『一護兄ちゃん、かくれんぼしよ』
『かくれんぼ‥‥ボクもする』
「仕方ないっすねぇ。じゃあ、京楽さんも浮竹さんも混じってください」
「え、ボクらもするの、かくれんぼ」
「数が多いほうが楽しいじゃないっすか」
「仕方ない。京楽、かくれんぼしよう」
こうして、大きな浮竹の屋敷で5人で隠れんぼすることになった。
白哉はこういうのは苦手なので、傍観だ。
「じゃあ、数数えますから逃げてくださいね。10,9,8‥‥」
『春水、キッチンに行こいう。あそこ、木箱とか樽があるからそこに隠れよう?』
『分かったよ』
鬼の浮竹と鬼神の京楽は、キッチンに隠れた。
京楽と浮竹は、京楽は屋根裏部屋に、浮竹は地下室に隠れた。
「じゃあ、探しますよ~」
『ここなら、ばれないよね』
『多分』
「はい、鬼の浮竹さんと鬼神の京楽さんみっけ」
一護にすぐ見つかった。
『な、なんで分かるんだ!?』
「霊力と妖力がだだもれです。隠さないと、分かっちゃいますよ」
『うーん、盲点だったね』
「その点京楽さんと浮竹さんは流石に妖力隠してますね。屋敷は広いし、一人で探すには骨が折れそうっす」
『じゃあ、俺たちも見つけるの手伝う!』
『うん。手伝う』
「じゃあ、二手に別れましょうか」
『うん。十四郎とは、ずっと一緒』
『春水と離れたくないから』
鬼の浮竹と鬼神の京楽は、手をつないで歩きだす。
1時間ほどして、屋根裏部屋の京楽と地下室の浮竹も見つかった。
見つけたのは鬼の浮竹であった。
なんとなく、居場所が分かるといって、捜索したら近くにいたのだ。
「はぁ、見つかった。まぁ、遊びはほどほどにして、昼食にしよう」
『俺、オムライスがいい!』
『ボクも浮竹と同じものでいいよ』
「オムライスくらいなら、俺でも作れますから作りましょうか?今日はルキアは外出中だし」
「すまない、一護くん。任せる」
「一護くんも何気に手料理おいしいからねぇ」
一護は、ささっとオムライスを4人分作ってしまった。
『はい、春水あーん』
『あーん』
『じゃあ、十四郎あーん』
『あーん』
鬼浮竹と鬼神の京楽は、互いに食べさせ合っている。
「浮竹‥‥‥‥」
「言っておくが、しないぞ」
「ガーン」
昼食を食べ終わると、3歳児に縮んでいる鬼の浮竹が眠気を訴えた。
一護が抱き上げて、鬼神の京楽を連れて二人に割り当てられた部屋に行き、ベッドに鬼の浮竹を寝かせる。
「鬼神の京楽さんも寝ます?」
『ううん。十四郎の寝顔見とく』
「じゃあ、俺は家事があるんで、起きたら声かけてください。一緒に夕飯作る約束してるんで」
『分かったよ』
鬼の浮竹は一護によく懐いて、家事の手伝いもしていた。
今日は一護が夕飯を作ると知って、鬼の浮竹は一緒に作りたいと言い出した。
『十四郎‥‥‥ボクが、守るからね』
鬼神の京楽は、眠っている幼子の浮竹の額にキスをするのだった。
教師と式18
浮竹の屋敷は広く、庭には大きなプールがある。
今年は猛暑が激しく、干上がった川から浮竹の勤めている小学校のプールに居ついてしまった水虎に、今プールをかしていた。
「水虎、プールを使うがいいか?」
「もちろんだ。このプールはあんたさんのものだからな。わしはすみでおとなしくしておるよ」
浮竹と京楽は、あまりの暑さにプールで遊ぶことにした。
せっかくなので、鬼神の京楽と鬼の浮竹も呼んだ。
『広いプールだな』
『さすが金持ち‥‥‥』
鬼の浮竹と鬼神の京楽は、浮竹の所有するプールを見て、隅っこに水虎が本当にいるのを確認して、苦笑する。
『住処をなくした水虎に、プールをかしていたんだったな。だが、あまり怪異を呼ばないほうがいいぞ』
「今さらだな。水虎に、座敷童に天狗、猫又にこの前は使用人になった向日葵の花鬼の一護くんだ。あやかし絡みになると、どうにも俺は放置できなくてな」
『ほんと、今更だねぇ。怪異に首をつっこみすぎて、おかしなことにならないようにね』
鬼神の京楽の言葉に、浮竹が笑う。
「そもそも、俺は自分を人間だと思っていたが本当は雷神だった。あやかしだから、俺自体が怪異になる」
「浮竹が雷神だったなんて、このボクでもずっと気づかないくらいだったんだよ。強い封印で、人間になっていた」
「今は、俺の意思で雷神になったり人になったりできる。ただ、雷神になった後は虎の耳と尻尾が気をゆるめると出てしまう」
すでに、浮竹の頭には虎の耳があった。
『さ、触ってもいいか?』
「別にいいが」
鬼の浮竹は、浮竹の耳を触ってもふる。
『お持ち帰りしたい』
「だめ!浮竹はボクのだからね!」
浮竹は耳をひっこめるが、今度は虎の尻尾が出てしまった。
「まぁ、触ってもいいが、ほどほどにしてくれ。プールで泳ごう」
『ああ、そうするか』
『せっかく来たんだしね』
鬼神の京楽と鬼の浮竹は、水着姿になって泳ぎ始める。
浮竹と京楽も、泳いだ。
一人、白哉はプールサイドで4人が遊んでいるのを見ながら、足だけプールにつけて、パラソルを設置して涼んでいた。
「かき氷できました」
そこへ、使用人となった一護がかき氷をもって現れる。
「シロップは好きなのかけてください」
「俺はメロン。京楽は?」
「ボクはいちごかな」
『俺たちはブルーハワイで』
『浮竹、舌が青くなっちゃうよ?』
『だから、ブルーハワイを選んだんだ。青い舌っておもしろいじゃないか』
『ええ、そうかなぁ?』
鬼神の京楽は、ブルーハワイのかき氷を食べる。
『猛暑続きだからねぇ。ボクらの住んでるマンションにはかき氷をつくるのなかったから』
「なんなら、かき氷機持って帰るか?」
浮竹がそうすすめるが、鬼の浮竹が首を左右に振る。
『かき氷なんて、家では食べないからいい』
「そうか」
浮竹は、また虎の耳と尻尾を出していた、
へにゃりとなる耳を、鬼の浮竹が撫でる。
『気持ちだけ、ありがたくちょうだいしておく‥‥やっぱお持ち帰りしたい』
『浮竹、だめだよ』
「俺はお持ち帰り禁止だ」
『残念』
京楽が、浮竹を抱き寄せる。
「浮竹はボクの!」
「だ、そうだ」
『花喰いから桜の花神に戻れてよかったな』
鬼の浮竹は、京楽を見て、改めてそう思う。
「もう、ボクは隠し事してないから。藍染とも手をきったし」
「そうだ、鬼の俺。朝顔の花鬼退治の依頼があるんだが、数が多そうで少し困っていたんだ。この後、時間があいていたら手伝ってくれないか」
『ああ、いいぞ。教師の俺には、マンションを貸してもらったり、当分の生活費をもらったりしてお世話になっているからな』
4人はプールで遊び終えると、かき氷も食べ終えて、水着から普段着に着替える。
「ここが、朝顔の花鬼が出る場所だ」
『ふむ‥‥‥35体くらいか。確かに多いな』
「人に害をなすのだ。駆除してほしいと依頼がきている」
白哉が、現れだした朝顔の花鬼を、椿の刀で切り捨てながら説明する。
『じゃあ、京楽、いくぞ』
『うん、浮竹」
二人は、次々と朝顔の花鬼を倒していく。
反対方向では、浮竹が雷を落とし、京楽が桜の花びらで朝顔の花鬼たちを退治する。白哉は、花鬼の遺体を浄化してまわっていた。
『これで、全部か?』
「ああ、そうみたいだ。助かった」
『また、何か力を貸してほしい時は言ってくれ』
「ああ」
「浮竹、朝顔の花鬼のリーダーは、多分藍染の式の市丸ギンって子だよ」
「分かっている。だが、本体を攻撃しないと倒せない。倒しても、本体が無事だとそのうち再生する」
『本体の居場所、つきとめようか?』
「できるのか?」
『多分、できる。この花鬼たちについていた匂いをたどれば‥‥』
「罠の可能性が高いから、今はまだいい」
浮竹と京楽は、鬼の浮竹と鬼神の京楽を車でマンションまで送り届けた。
『朝顔の花鬼は乱れ咲きだ。数が多くなる。また、依頼があったら知らせてくれ。力になりたい』
「ああ、分かった」
4人はそれぞれ2人に別れて、別れの挨拶をすませて日常に戻っていく。
『さて、小説の続きでも執筆するかな』
『俺はガーデニングでもしよう』
一方、浮竹と京楽は。
「参ったな。朝顔の花鬼の子供だ」
朝顔の花鬼たちを退治し終えて、念のためもう一度きたら、一人の朝顔の花鬼の子供が仲間がいなくて泣いていた。
「行くあてもないだろう。俺の屋敷にこい」
「ちょっと、浮竹」
「こんな幼子に何ができる」
「それはそうだけど」
「向日葵の花鬼の一護くんに預けよう。同じ夏の植物のあやかし同士、仲良くやれるだろう」
子供の花鬼の本体の朝顔を、土ごとひっこぬいて、浮竹の屋敷にはまたあやかしが増えるのだった。
今年は猛暑が激しく、干上がった川から浮竹の勤めている小学校のプールに居ついてしまった水虎に、今プールをかしていた。
「水虎、プールを使うがいいか?」
「もちろんだ。このプールはあんたさんのものだからな。わしはすみでおとなしくしておるよ」
浮竹と京楽は、あまりの暑さにプールで遊ぶことにした。
せっかくなので、鬼神の京楽と鬼の浮竹も呼んだ。
『広いプールだな』
『さすが金持ち‥‥‥』
鬼の浮竹と鬼神の京楽は、浮竹の所有するプールを見て、隅っこに水虎が本当にいるのを確認して、苦笑する。
『住処をなくした水虎に、プールをかしていたんだったな。だが、あまり怪異を呼ばないほうがいいぞ』
「今さらだな。水虎に、座敷童に天狗、猫又にこの前は使用人になった向日葵の花鬼の一護くんだ。あやかし絡みになると、どうにも俺は放置できなくてな」
『ほんと、今更だねぇ。怪異に首をつっこみすぎて、おかしなことにならないようにね』
鬼神の京楽の言葉に、浮竹が笑う。
「そもそも、俺は自分を人間だと思っていたが本当は雷神だった。あやかしだから、俺自体が怪異になる」
「浮竹が雷神だったなんて、このボクでもずっと気づかないくらいだったんだよ。強い封印で、人間になっていた」
「今は、俺の意思で雷神になったり人になったりできる。ただ、雷神になった後は虎の耳と尻尾が気をゆるめると出てしまう」
すでに、浮竹の頭には虎の耳があった。
『さ、触ってもいいか?』
「別にいいが」
鬼の浮竹は、浮竹の耳を触ってもふる。
『お持ち帰りしたい』
「だめ!浮竹はボクのだからね!」
浮竹は耳をひっこめるが、今度は虎の尻尾が出てしまった。
「まぁ、触ってもいいが、ほどほどにしてくれ。プールで泳ごう」
『ああ、そうするか』
『せっかく来たんだしね』
鬼神の京楽と鬼の浮竹は、水着姿になって泳ぎ始める。
浮竹と京楽も、泳いだ。
一人、白哉はプールサイドで4人が遊んでいるのを見ながら、足だけプールにつけて、パラソルを設置して涼んでいた。
「かき氷できました」
そこへ、使用人となった一護がかき氷をもって現れる。
「シロップは好きなのかけてください」
「俺はメロン。京楽は?」
「ボクはいちごかな」
『俺たちはブルーハワイで』
『浮竹、舌が青くなっちゃうよ?』
『だから、ブルーハワイを選んだんだ。青い舌っておもしろいじゃないか』
『ええ、そうかなぁ?』
鬼神の京楽は、ブルーハワイのかき氷を食べる。
『猛暑続きだからねぇ。ボクらの住んでるマンションにはかき氷をつくるのなかったから』
「なんなら、かき氷機持って帰るか?」
浮竹がそうすすめるが、鬼の浮竹が首を左右に振る。
『かき氷なんて、家では食べないからいい』
「そうか」
浮竹は、また虎の耳と尻尾を出していた、
へにゃりとなる耳を、鬼の浮竹が撫でる。
『気持ちだけ、ありがたくちょうだいしておく‥‥やっぱお持ち帰りしたい』
『浮竹、だめだよ』
「俺はお持ち帰り禁止だ」
『残念』
京楽が、浮竹を抱き寄せる。
「浮竹はボクの!」
「だ、そうだ」
『花喰いから桜の花神に戻れてよかったな』
鬼の浮竹は、京楽を見て、改めてそう思う。
「もう、ボクは隠し事してないから。藍染とも手をきったし」
「そうだ、鬼の俺。朝顔の花鬼退治の依頼があるんだが、数が多そうで少し困っていたんだ。この後、時間があいていたら手伝ってくれないか」
『ああ、いいぞ。教師の俺には、マンションを貸してもらったり、当分の生活費をもらったりしてお世話になっているからな』
4人はプールで遊び終えると、かき氷も食べ終えて、水着から普段着に着替える。
「ここが、朝顔の花鬼が出る場所だ」
『ふむ‥‥‥35体くらいか。確かに多いな』
「人に害をなすのだ。駆除してほしいと依頼がきている」
白哉が、現れだした朝顔の花鬼を、椿の刀で切り捨てながら説明する。
『じゃあ、京楽、いくぞ』
『うん、浮竹」
二人は、次々と朝顔の花鬼を倒していく。
反対方向では、浮竹が雷を落とし、京楽が桜の花びらで朝顔の花鬼たちを退治する。白哉は、花鬼の遺体を浄化してまわっていた。
『これで、全部か?』
「ああ、そうみたいだ。助かった」
『また、何か力を貸してほしい時は言ってくれ』
「ああ」
「浮竹、朝顔の花鬼のリーダーは、多分藍染の式の市丸ギンって子だよ」
「分かっている。だが、本体を攻撃しないと倒せない。倒しても、本体が無事だとそのうち再生する」
『本体の居場所、つきとめようか?』
「できるのか?」
『多分、できる。この花鬼たちについていた匂いをたどれば‥‥』
「罠の可能性が高いから、今はまだいい」
浮竹と京楽は、鬼の浮竹と鬼神の京楽を車でマンションまで送り届けた。
『朝顔の花鬼は乱れ咲きだ。数が多くなる。また、依頼があったら知らせてくれ。力になりたい』
「ああ、分かった」
4人はそれぞれ2人に別れて、別れの挨拶をすませて日常に戻っていく。
『さて、小説の続きでも執筆するかな』
『俺はガーデニングでもしよう』
一方、浮竹と京楽は。
「参ったな。朝顔の花鬼の子供だ」
朝顔の花鬼たちを退治し終えて、念のためもう一度きたら、一人の朝顔の花鬼の子供が仲間がいなくて泣いていた。
「行くあてもないだろう。俺の屋敷にこい」
「ちょっと、浮竹」
「こんな幼子に何ができる」
「それはそうだけど」
「向日葵の花鬼の一護くんに預けよう。同じ夏の植物のあやかし同士、仲良くやれるだろう」
子供の花鬼の本体の朝顔を、土ごとひっこぬいて、浮竹の屋敷にはまたあやかしが増えるのだった。
熱(京浮)
その日、浮竹は隊首会に出ていた。
1時間ほど山本総隊長の話を聞いて、突然京楽が浮竹を抱きかかえた。
「山じい、浮竹熱あるみたいだから、早引きさせてもらうよ」
「むう。十四郎、無理はするなとあれほどいったのじゃがな」
京楽に抱きかかえられた浮竹は、すまなさそうな声で謝る。
「先生、すみません。この程度の熱なら大丈夫と思っていたのですが、悪化してきたようです」
「春水、十四郎を頼んだぞ」
「任せてよ、山じい」
京楽は、瞬歩で浮竹を雨乾堂まで運ぶ。
「海燕くん、いるかい。浮竹が熱を出したんだ。薬と布団の用意頼めるかな」
「あ、隊長!微熱だって言ってたのにやっぱり悪化してますね!」
海燕は、手早く布団をしいて、解熱剤の用意をする。
「厨房に頼んで、粥用意してきてもらうね?」
京楽は、13番隊隊舎へと向かう。
「京楽のやつ、なんで俺の熱があがったって分かるんだろう」
「さぁ。愛の力ってやつじゃないですか」
海燕は、浮竹を布団に寝かせて、水でしぼったタオルを額に置く。
やがて、数分して京楽が戻ってきた。
「薬のむには、何か食べないとね。一口だけでもいいから、食べて?」
京楽が、匙で粥をすくって浮竹の口元にもってくる。
「じ、自分で食べれる」
「だーめ。ボクの愛がこもってるんだから」
「むう。分かった」
浮竹は、京楽から粥を食べる。
海燕は、そんな様子をため息をついてみていた。
「はい、あーん」
「あーん」
いちゃつく二人に、海燕がいい加減にしろと、粥を食べ終えさせた京楽の頭をハリセンで殴った。
「京楽隊長、隊長は熱があるんです。いちゃいちゃするのは今度にしてください」
「あいたたたた。海燕くんに怒られちゃった」
「海燕、め、だぞ」
浮竹は熱もかなりあがってきたようで、ふらふらしていた。
「いいから、隊長は寝てください。あ、薬」
京楽が、解熱剤を口にふくみ、水と一緒に口移しで浮竹に飲ませる。
「京楽隊長!」
「いいじゃない、これくらい」
「そうだぞ、海燕。目が回る~~~」
「浮竹、おとなしく寝て?」
「京楽、傍にいてくれ」
「困ったねぇ。隊首会まだ続いてるんだけど‥‥山じいに任されたし、傍にいるよ」
海燕が、京楽の頭をハリセンで殴る。
「ちょっと、何するの」
「それはこっちの台詞です。何、浮竹隊長の寝ている布団にもぐりこもうとしてるんですか」
「え、添い寝」
「必要ありません。戻って、隊首会に出てください」
「京楽、傍にいてくれ」
浮竹が、そういうものだから、海燕もそれ以上言えなかった。
「浮竹のご指名だからねえ。添い寝するから、海燕くんは気にせず仕事してていいよ」
海燕は、京楽を一度ぶちのめしたいと思うが、我慢する。
「いいですか、隊長は今熱があるんです。手を出したりしないでください」
「分かってるよ‥‥‥」
京楽は、浮竹を抱きしめて、浮竹が眠りにつくと一緒に寝た。
海燕は、そんな二人を見ながら仕事をする。
「あーもう」
布団を足元にぐしゃぐしゃにしている二人に、海燕は布団をかけなおす。
すると、二人はまた布団をぐしゃぐしゃにした。犯人は京楽だった。
浮竹が風邪をひいたらいけないので、浮竹だけに布団をかぶせる。
2時間ほどして、浮竹が覚醒する。
「ああ、俺は寝ていたのか‥‥‥熱、大分下がったな」
「ほんとに?」
浮竹が起きた気配で、京楽も起きる。
京楽が浮竹とこつんと額同士を合われると、京楽は首を左右に振った。
「まだ熱が高いよ。寝てなさいな」
「しかし、眠気がない」
「ボクが、昔話でもしてあげるから」
海燕は、京楽ってけっこういいところあるんじゃないかと思った。
「昔昔、綺麗な綺麗な浮竹がいました。毎日あはんあはんと、黒い髪の男と」
「あんたは何を言ってるんだ!」
海燕が京楽の頭をハリセンで殴る。
「あいたたたた」
「で、黒い髪の男とどうなったんだ?」
「隊長も空気よんでください!昔話じゃなくってただの猥談ですよ」
海燕が、ハリセンを手に京楽を睨む。
「そ、そうなのか京楽?」
「ううん、昔話だよ」
「だそうだぞ、海燕」
「はぁ。もう、猥談でもなんでもしてください。隊長に手を出さないんだったら、かまいません」
「‥‥‥‥で、浮竹はズキューンバキューン」
完全に猥談になっていた。
「これは、実は昔話ではなく明日訪れる未来だよ」
「そうはさせるかああああ!」
スパーーン。
海燕のハリセンが、京楽の頭に炸裂する。
「ちょっと、海燕くん、ボクは一応上官だよ。隊は違うけど」
「浮竹隊長を魔の手から救い出します。明日はそんなこと、させませんからね」
「えーけちー」
「そもそも隊長の熱が下がっているかも分からないじゃないですか!」
「下がってなかったら、後日に」
スパーン。
「いたい」
「このけだものめ」
そんな二人を見て、浮竹は笑っていた。
「はははは。漫才みたいだな、二人とも」
「隊長、熱は?」
「大分下がった。が、まだおとなしくしておく」
布団に横になり、浮竹は京楽と海燕の手をそれぞれ右手と左手で握る、
「二人とも、仲良くな?ケンカはだめだぞ」
「うん」
「はい」
浮竹がまた眠ると、京楽は雨乾堂に泊まると言い出した。
だめだといっても聞かないので、仕方なく海燕は二人分の夕飯を用意する。
雨乾堂に入ろうとして、京楽と浮竹の声が聞こえてきた。
「あ、京楽、そこいい」
「ここかい?」
「あ、あ、ああ、いい」
「浮竹はここが弱いね」
「何してんだあんたらーーーー!浮竹隊長は熱あるでしょう!!」
スパーンと入口を勢いよくあけたら、半身を起こした浮竹の肩を、京楽が揉んでいた。
「あれぇ?海燕くん、今なにかいかがわしいこと想像したぁ?」
京楽が、にまにまとからかってくる。
「夕餉、京楽隊長の分いりませんね」
「ああ、冗談だから!お腹すいてるんだよ、夕飯抜きはなしにしてえええ」
そんなやりとりを、浮竹は笑ってみていた。
「隊長、熱は?」
「もう下がった。大丈夫だ。京楽も、海燕も、迷惑をかけた」
「いえ、そんなことないです」
「そうだよ、浮竹。ボクは君の体が弱いことも愛しているんだから」
「さらっとのろけられた」
海燕は、夕餉を二人分用意して、退室していくのであった。
1時間ほど山本総隊長の話を聞いて、突然京楽が浮竹を抱きかかえた。
「山じい、浮竹熱あるみたいだから、早引きさせてもらうよ」
「むう。十四郎、無理はするなとあれほどいったのじゃがな」
京楽に抱きかかえられた浮竹は、すまなさそうな声で謝る。
「先生、すみません。この程度の熱なら大丈夫と思っていたのですが、悪化してきたようです」
「春水、十四郎を頼んだぞ」
「任せてよ、山じい」
京楽は、瞬歩で浮竹を雨乾堂まで運ぶ。
「海燕くん、いるかい。浮竹が熱を出したんだ。薬と布団の用意頼めるかな」
「あ、隊長!微熱だって言ってたのにやっぱり悪化してますね!」
海燕は、手早く布団をしいて、解熱剤の用意をする。
「厨房に頼んで、粥用意してきてもらうね?」
京楽は、13番隊隊舎へと向かう。
「京楽のやつ、なんで俺の熱があがったって分かるんだろう」
「さぁ。愛の力ってやつじゃないですか」
海燕は、浮竹を布団に寝かせて、水でしぼったタオルを額に置く。
やがて、数分して京楽が戻ってきた。
「薬のむには、何か食べないとね。一口だけでもいいから、食べて?」
京楽が、匙で粥をすくって浮竹の口元にもってくる。
「じ、自分で食べれる」
「だーめ。ボクの愛がこもってるんだから」
「むう。分かった」
浮竹は、京楽から粥を食べる。
海燕は、そんな様子をため息をついてみていた。
「はい、あーん」
「あーん」
いちゃつく二人に、海燕がいい加減にしろと、粥を食べ終えさせた京楽の頭をハリセンで殴った。
「京楽隊長、隊長は熱があるんです。いちゃいちゃするのは今度にしてください」
「あいたたたた。海燕くんに怒られちゃった」
「海燕、め、だぞ」
浮竹は熱もかなりあがってきたようで、ふらふらしていた。
「いいから、隊長は寝てください。あ、薬」
京楽が、解熱剤を口にふくみ、水と一緒に口移しで浮竹に飲ませる。
「京楽隊長!」
「いいじゃない、これくらい」
「そうだぞ、海燕。目が回る~~~」
「浮竹、おとなしく寝て?」
「京楽、傍にいてくれ」
「困ったねぇ。隊首会まだ続いてるんだけど‥‥山じいに任されたし、傍にいるよ」
海燕が、京楽の頭をハリセンで殴る。
「ちょっと、何するの」
「それはこっちの台詞です。何、浮竹隊長の寝ている布団にもぐりこもうとしてるんですか」
「え、添い寝」
「必要ありません。戻って、隊首会に出てください」
「京楽、傍にいてくれ」
浮竹が、そういうものだから、海燕もそれ以上言えなかった。
「浮竹のご指名だからねえ。添い寝するから、海燕くんは気にせず仕事してていいよ」
海燕は、京楽を一度ぶちのめしたいと思うが、我慢する。
「いいですか、隊長は今熱があるんです。手を出したりしないでください」
「分かってるよ‥‥‥」
京楽は、浮竹を抱きしめて、浮竹が眠りにつくと一緒に寝た。
海燕は、そんな二人を見ながら仕事をする。
「あーもう」
布団を足元にぐしゃぐしゃにしている二人に、海燕は布団をかけなおす。
すると、二人はまた布団をぐしゃぐしゃにした。犯人は京楽だった。
浮竹が風邪をひいたらいけないので、浮竹だけに布団をかぶせる。
2時間ほどして、浮竹が覚醒する。
「ああ、俺は寝ていたのか‥‥‥熱、大分下がったな」
「ほんとに?」
浮竹が起きた気配で、京楽も起きる。
京楽が浮竹とこつんと額同士を合われると、京楽は首を左右に振った。
「まだ熱が高いよ。寝てなさいな」
「しかし、眠気がない」
「ボクが、昔話でもしてあげるから」
海燕は、京楽ってけっこういいところあるんじゃないかと思った。
「昔昔、綺麗な綺麗な浮竹がいました。毎日あはんあはんと、黒い髪の男と」
「あんたは何を言ってるんだ!」
海燕が京楽の頭をハリセンで殴る。
「あいたたたた」
「で、黒い髪の男とどうなったんだ?」
「隊長も空気よんでください!昔話じゃなくってただの猥談ですよ」
海燕が、ハリセンを手に京楽を睨む。
「そ、そうなのか京楽?」
「ううん、昔話だよ」
「だそうだぞ、海燕」
「はぁ。もう、猥談でもなんでもしてください。隊長に手を出さないんだったら、かまいません」
「‥‥‥‥で、浮竹はズキューンバキューン」
完全に猥談になっていた。
「これは、実は昔話ではなく明日訪れる未来だよ」
「そうはさせるかああああ!」
スパーーン。
海燕のハリセンが、京楽の頭に炸裂する。
「ちょっと、海燕くん、ボクは一応上官だよ。隊は違うけど」
「浮竹隊長を魔の手から救い出します。明日はそんなこと、させませんからね」
「えーけちー」
「そもそも隊長の熱が下がっているかも分からないじゃないですか!」
「下がってなかったら、後日に」
スパーン。
「いたい」
「このけだものめ」
そんな二人を見て、浮竹は笑っていた。
「はははは。漫才みたいだな、二人とも」
「隊長、熱は?」
「大分下がった。が、まだおとなしくしておく」
布団に横になり、浮竹は京楽と海燕の手をそれぞれ右手と左手で握る、
「二人とも、仲良くな?ケンカはだめだぞ」
「うん」
「はい」
浮竹がまた眠ると、京楽は雨乾堂に泊まると言い出した。
だめだといっても聞かないので、仕方なく海燕は二人分の夕飯を用意する。
雨乾堂に入ろうとして、京楽と浮竹の声が聞こえてきた。
「あ、京楽、そこいい」
「ここかい?」
「あ、あ、ああ、いい」
「浮竹はここが弱いね」
「何してんだあんたらーーーー!浮竹隊長は熱あるでしょう!!」
スパーンと入口を勢いよくあけたら、半身を起こした浮竹の肩を、京楽が揉んでいた。
「あれぇ?海燕くん、今なにかいかがわしいこと想像したぁ?」
京楽が、にまにまとからかってくる。
「夕餉、京楽隊長の分いりませんね」
「ああ、冗談だから!お腹すいてるんだよ、夕飯抜きはなしにしてえええ」
そんなやりとりを、浮竹は笑ってみていた。
「隊長、熱は?」
「もう下がった。大丈夫だ。京楽も、海燕も、迷惑をかけた」
「いえ、そんなことないです」
「そうだよ、浮竹。ボクは君の体が弱いことも愛しているんだから」
「さらっとのろけられた」
海燕は、夕餉を二人分用意して、退室していくのであった。
熱
「兄様が、高熱を出して臥せられておる。恋次、看病して元気を分けてさしあげろ」
ルキアの言葉は無茶苦茶だったが、白哉が熱を出して臥せっているのは放置できなかった。
「風邪か何かか?」
「分からぬ。風邪の症状はない。ただ熱が高いだけだ」
「分かった。隊長のところに行ってくる」
恋次は朽木家の白哉の寝室に行こうといして、ルキアに止められる。
「くれぐれも、兄様の体に負担になるようなことはするなよ」
それは、白哉を抱いたりするなということだが、恋次とて病の白哉を抱くつもりなど毛頭なかった。
「薬は、これとこれとこれだ。食事ができそうであれば、厨房で粥を頼め。明太子の入った兄様好みの粥を作ってもらえるだろう」
「ああ、分かった」
恋次は、ルキアに後押しされるかんじで、朽木家の白哉の寝室に向かう。
「‥‥‥恋次」
「隊長?」
白哉は熱にうなされながら、恋次の名を呼んでいた。
どうりで、ルキアが恋次に看病を頼むはずだ。
白哉は恋次の名を、よく口にしていたのだ。
「隊長、俺です。分かりますか?」
「ん‥‥恋次?本物か?」
「偽物でも幻でもありません。本物です」
「恋次、近くへ。寂しいのだ」
「隊長?」
白哉は、熱にうなされて自分が何を口走っているのか理解できていない。
「兄がおらぬと、寂しいのだ。恋次、傍にいてくれ」
「氷枕、新しいの作ってもらいにいってきますね。すぐに戻りますから」
「恋次、私から離れるな」
「隊長、ちょっとだけ席外します。すぐに戻ってきますから」
恋次は、すっかりぬるくなってしまった氷枕をもって、厨房にいき氷をもらって新しい氷枕を作って白哉の寝室に戻る。
白哉は、恋次の姿を求めて、半身を起こしていた。
「隊長!寝てなきゃだめじゃないっすか!」
「兄の姿が見えぬから‥‥‥‥」
「氷枕作り変えてきました。傍にいるんで、おとなしく寝ていてください」
「恋次、恋次、恋次‥‥‥‥」
白哉がこの状態では、ルキアが恋次を呼ぶのも仕方ない。
「傍に、いてくれるか」
「はい、傍にいます。安心して寝てください」
白哉は、瞼を閉じて少しだけ眠った。
2時間ほどして目を覚ます。
「恋次」
「ここにいますよ。早くよくなるために薬飲みましょう。厨房に行って、粥をもらってきますね」
「食欲がない」
「でも、薬のむには腹になにかいれないと」
「恋次が食べさせてくれるなら、食べてもいい」
白哉は、熱のせいで恋次に甘える。
「分かりましたから、取り合えず粥もらってきますね?それまでおとなしく寝ていてください」
厨房から明太子の入った粥をもらい、白哉の寝室に戻る。
白哉は恋次の言葉通り、おとなしく横になっていた。
「半身おきれますか」
「うむ」
「じゃあ、食べれますか」
「恋次が、食べさせてくれ」
普通の白哉なら絶対言わない言葉に、恋次はちょっとどきまぎしながら、粥を一口分すくい、白哉の口元にもっていく。それを、白哉は食べる。
「おいしい」
「よかった。食欲ないなら全部たべなくていいっすから、食べられるだけ食べてください」
白哉は、粥を半分たべたところでもういらないと言った。
「薬。飲めますか?」
「恋次が飲ませてくれ」
なんですとーーーーー!?
恋次は、白哉が正気に戻ったらきっと後でボコボコにされるだろうが、そう言われて解熱剤を含む薬を口にして、白湯を含み白哉に口移しで飲ませた。
「んっ」
熱のせいで火照った体と潤んだ瞳が艶めかしい。
白哉はわいてくる欲の衝動を押し殺して、白哉の頭を撫でた。
「早く、よくなってくださいね」
「恋次、傍にいてくれ。兄が傍にいると安心する」
「はい。ちゃんといますから、治すためにも寝てください」
白哉は、眠剤作用のある薬も飲んだので、直に眠りに落ちていった。
恋次は、白哉が眠ったことを確認すると、ごろりと畳に横になって、自分も眠りはじめる。
空腹を感じて厨房で適当におにぎりをもらい、また白哉の寝室で過ごした。
夜が終わり、朝が来る頃には白哉の熱は下がっていた。
「恋次?何故、兄が私の寝室にいる」
「隊長が俺を呼んだんでしょうが。傍にいてほしいって」
「わ、私がか?」
「熱のせいで、甘えたがりになってたんすよ」
「むう、一生の不覚‥‥‥‥」
白哉はやや赤くなって、目を伏せる。
「いや、そこまで言わなくても。でも、熱が下がってよかったっす」
「うむ。書類がたまっているであろう。仕事に‥‥」
「だめですよ、隊長。今日一日は、まだおとなしくしてもらいます」
恋次の言葉に、白哉はため息をつく。
「もう熱は下がったのだ。風邪でもないのだから、平気だ」
「それでもだめです。また熱がぶり返したらどうするんすか」
「むう。分かった。湯あみがしたい」
「分かりました。一緒に入りましょう」
白哉が赤くなる。
「な、なぜ一緒なのだ」
「途中で倒れられたりしたら困るからっす。じゃあ、湯あみしにいきますよ」
白哉は恋次に連れられて、湯殿にくる。
「あまり、見るな」
「隊長、抱かれる時は平気なのに、こういうのには弱いんすね」
「うるさい」
白哉は腰にちゃんとタオルを巻いて、湯に浸かる。恋次は裸だった。
鍛え上げられた体をおしげもなくさらし、白哉は目を背ける。
「今日は一日、隊長の傍にいますからね」
「なぜだ」
「隊長がそう望んだから」
「う‥‥‥‥熱があったのだぞ。その時の言葉だ」
「それでも、一緒にいます。俺がそうしたいから」
「むう‥‥‥もう、好きにせよ」
白哉は湯あみを終えて、普通の食事をとった。恋次と一緒に。
恋次は休暇をもぎとっていた。
「兄様、熱が下がったのですね。40度をこえていたから心配したのです」
ルキアが、朝食を食堂で食べる白哉と恋次を見て、喜ぶ。
「ルキア、すまぬ。心配をかけた」
「恋次は粗相はしませんでしたか。何かしでかしていたら、私がしばきます」
「ねぇよ!看病しただけだ!」
「本当か、恋次」
ルキアが恋次を睨む。
「あたりめーだろ。病気の隊長に手を出すほど飢えてねぇよ」
「兄様、大丈夫でしたか?」
「問題はない‥‥‥ただ、今日も一日傍にいると言ってきかぬのだ」
「まぁ、恋次は兄様の犬ですから」
「勝手に人を犬扱いすんな!」
白哉は、いろいろと言い争いあう二人を見て、クスリと小さく笑う。
とても綺麗で、ルキアも恋次も見惚れるのであった。
ルキアの言葉は無茶苦茶だったが、白哉が熱を出して臥せっているのは放置できなかった。
「風邪か何かか?」
「分からぬ。風邪の症状はない。ただ熱が高いだけだ」
「分かった。隊長のところに行ってくる」
恋次は朽木家の白哉の寝室に行こうといして、ルキアに止められる。
「くれぐれも、兄様の体に負担になるようなことはするなよ」
それは、白哉を抱いたりするなということだが、恋次とて病の白哉を抱くつもりなど毛頭なかった。
「薬は、これとこれとこれだ。食事ができそうであれば、厨房で粥を頼め。明太子の入った兄様好みの粥を作ってもらえるだろう」
「ああ、分かった」
恋次は、ルキアに後押しされるかんじで、朽木家の白哉の寝室に向かう。
「‥‥‥恋次」
「隊長?」
白哉は熱にうなされながら、恋次の名を呼んでいた。
どうりで、ルキアが恋次に看病を頼むはずだ。
白哉は恋次の名を、よく口にしていたのだ。
「隊長、俺です。分かりますか?」
「ん‥‥恋次?本物か?」
「偽物でも幻でもありません。本物です」
「恋次、近くへ。寂しいのだ」
「隊長?」
白哉は、熱にうなされて自分が何を口走っているのか理解できていない。
「兄がおらぬと、寂しいのだ。恋次、傍にいてくれ」
「氷枕、新しいの作ってもらいにいってきますね。すぐに戻りますから」
「恋次、私から離れるな」
「隊長、ちょっとだけ席外します。すぐに戻ってきますから」
恋次は、すっかりぬるくなってしまった氷枕をもって、厨房にいき氷をもらって新しい氷枕を作って白哉の寝室に戻る。
白哉は、恋次の姿を求めて、半身を起こしていた。
「隊長!寝てなきゃだめじゃないっすか!」
「兄の姿が見えぬから‥‥‥‥」
「氷枕作り変えてきました。傍にいるんで、おとなしく寝ていてください」
「恋次、恋次、恋次‥‥‥‥」
白哉がこの状態では、ルキアが恋次を呼ぶのも仕方ない。
「傍に、いてくれるか」
「はい、傍にいます。安心して寝てください」
白哉は、瞼を閉じて少しだけ眠った。
2時間ほどして目を覚ます。
「恋次」
「ここにいますよ。早くよくなるために薬飲みましょう。厨房に行って、粥をもらってきますね」
「食欲がない」
「でも、薬のむには腹になにかいれないと」
「恋次が食べさせてくれるなら、食べてもいい」
白哉は、熱のせいで恋次に甘える。
「分かりましたから、取り合えず粥もらってきますね?それまでおとなしく寝ていてください」
厨房から明太子の入った粥をもらい、白哉の寝室に戻る。
白哉は恋次の言葉通り、おとなしく横になっていた。
「半身おきれますか」
「うむ」
「じゃあ、食べれますか」
「恋次が、食べさせてくれ」
普通の白哉なら絶対言わない言葉に、恋次はちょっとどきまぎしながら、粥を一口分すくい、白哉の口元にもっていく。それを、白哉は食べる。
「おいしい」
「よかった。食欲ないなら全部たべなくていいっすから、食べられるだけ食べてください」
白哉は、粥を半分たべたところでもういらないと言った。
「薬。飲めますか?」
「恋次が飲ませてくれ」
なんですとーーーーー!?
恋次は、白哉が正気に戻ったらきっと後でボコボコにされるだろうが、そう言われて解熱剤を含む薬を口にして、白湯を含み白哉に口移しで飲ませた。
「んっ」
熱のせいで火照った体と潤んだ瞳が艶めかしい。
白哉はわいてくる欲の衝動を押し殺して、白哉の頭を撫でた。
「早く、よくなってくださいね」
「恋次、傍にいてくれ。兄が傍にいると安心する」
「はい。ちゃんといますから、治すためにも寝てください」
白哉は、眠剤作用のある薬も飲んだので、直に眠りに落ちていった。
恋次は、白哉が眠ったことを確認すると、ごろりと畳に横になって、自分も眠りはじめる。
空腹を感じて厨房で適当におにぎりをもらい、また白哉の寝室で過ごした。
夜が終わり、朝が来る頃には白哉の熱は下がっていた。
「恋次?何故、兄が私の寝室にいる」
「隊長が俺を呼んだんでしょうが。傍にいてほしいって」
「わ、私がか?」
「熱のせいで、甘えたがりになってたんすよ」
「むう、一生の不覚‥‥‥‥」
白哉はやや赤くなって、目を伏せる。
「いや、そこまで言わなくても。でも、熱が下がってよかったっす」
「うむ。書類がたまっているであろう。仕事に‥‥」
「だめですよ、隊長。今日一日は、まだおとなしくしてもらいます」
恋次の言葉に、白哉はため息をつく。
「もう熱は下がったのだ。風邪でもないのだから、平気だ」
「それでもだめです。また熱がぶり返したらどうするんすか」
「むう。分かった。湯あみがしたい」
「分かりました。一緒に入りましょう」
白哉が赤くなる。
「な、なぜ一緒なのだ」
「途中で倒れられたりしたら困るからっす。じゃあ、湯あみしにいきますよ」
白哉は恋次に連れられて、湯殿にくる。
「あまり、見るな」
「隊長、抱かれる時は平気なのに、こういうのには弱いんすね」
「うるさい」
白哉は腰にちゃんとタオルを巻いて、湯に浸かる。恋次は裸だった。
鍛え上げられた体をおしげもなくさらし、白哉は目を背ける。
「今日は一日、隊長の傍にいますからね」
「なぜだ」
「隊長がそう望んだから」
「う‥‥‥‥熱があったのだぞ。その時の言葉だ」
「それでも、一緒にいます。俺がそうしたいから」
「むう‥‥‥もう、好きにせよ」
白哉は湯あみを終えて、普通の食事をとった。恋次と一緒に。
恋次は休暇をもぎとっていた。
「兄様、熱が下がったのですね。40度をこえていたから心配したのです」
ルキアが、朝食を食堂で食べる白哉と恋次を見て、喜ぶ。
「ルキア、すまぬ。心配をかけた」
「恋次は粗相はしませんでしたか。何かしでかしていたら、私がしばきます」
「ねぇよ!看病しただけだ!」
「本当か、恋次」
ルキアが恋次を睨む。
「あたりめーだろ。病気の隊長に手を出すほど飢えてねぇよ」
「兄様、大丈夫でしたか?」
「問題はない‥‥‥ただ、今日も一日傍にいると言ってきかぬのだ」
「まぁ、恋次は兄様の犬ですから」
「勝手に人を犬扱いすんな!」
白哉は、いろいろと言い争いあう二人を見て、クスリと小さく笑う。
とても綺麗で、ルキアも恋次も見惚れるのであった。
教師と式17
白哉に想い人ができた。
それは知っていたが、白哉があまり話さないのでそっとしておいていた。
ある日、浮竹の住む洋館に訪ねてくるあやかしがいた。
白哉と同じ椿の花鬼であった。
赤い髪が印象的な、まだ年若い青年だった。
浮竹と出会うなり、青年は自分の名を告げる。
「俺は阿散井恋次っていいます。白哉さんの主ですよね。どうか、俺に息子さんをください!」
ぶばーーーー。
浮竹は飲みかけの紅茶をふいていた。
「れ、恋次、兄は何を言い出すのだ!」
白哉は真っ赤になって、取り乱す。
紅茶をかぶってしまった京楽は、タオルで顔と髪をぬぐいながら、にまにましていた。
「いやぁ、春だねぇ。白哉くんはお嫁にいくのかな?」
「京楽!私は主のものだ。嫁になどいかぬ」
「白哉さん、俺の嫁になるのいやっすか?」
「いやもなにも、婚姻する必要などない」
恋次がしょげる。
「べ、別に兄を嫌っているわけではない」
「じゃあ、俺のこと好きですよね?」
「‥‥‥」
沈黙する白哉の顔は赤い。
「何はともあれ、白哉をあげることはできない。俺の大切な式だからな。ただ、白哉と付き合うのは自由だ」
「ありがとうございます!」
恋次は顔を輝かせて、白哉に抱きつこうとして投げ飛ばされていた。
「白哉さん、照れなくても」
「だ、誰も照れてなどおらぬ」
白哉はこれ以上醜態を見せれないと、呪符に戻ってしまった。
すると、恋次も呪符になり白哉の呪符の上に重なる。
「ええい、呪符になったというのに追いかけてくるな!」
「だって、今日は白哉さんの誕生日っす。一緒に祝おうって約束したじゃないっすか」
「え、今日は白哉の誕生日なのか?」
再び現れた白哉と恋次のやりとりに、浮竹が驚く。
「そうみたいだねえ」
「ルキアと一護くんと海燕を呼んでくれ」
京楽はそう言われて、最近使用人になったばかりの一護も呼んだ。
「今日は白哉の誕生日だそうだ。皆で祝ってやろう」
「兄様、やっと祝わせてもらえるのですね。毎年祝おうとしたら、いらぬと言われるので」
ルキアが喜ぶ。
白哉は、恋次に手を繋がれて、ため息をもらす。
「もう、兄らの好きにせよ」
早速、誕生日ケーキを焼かれて、午前中はプレゼントの買い出しで皆動いて、午後から白哉の誕生日を祝った。
浮竹は楽しそうだった。
自分の式であれ、誰かの誕生日を祝うことはあまりなかったからだ。
「じゃあ、ろうそくをふきけしてくれ」
白哉は251歳になるのだが、さすがにそれだけのろうそくをたてることはできなくて、3本のろうそくがバースデーケーキにのっていた。
白哉は、仕方なくそれを吹き消す。そして皆でケーキを食べた。
ルキアと一護と海燕は、それぞれ贈り物を渡して、でも家事の仕事が残っているので、おめでとと言ってから去っていった。
「誕生日おめでとう、白哉。これは俺からの誕生日祝いだ。いつかやろうと思っていた、妖刀村正だ」
「これは‥‥‥これはもらっていいのか、主」
「ああ。前からあげようと思っていたんだ」
「大切に使わせていただく」
白哉はとても嬉しそうだった。
「じゃあ、ボクから‥‥‥」
「兄の誕生日プレゼントなど、いらぬ」
「ひどい!」
「どうせろくでもないものであろう」
「コンドームだよ」
浮竹は赤くなり、白哉も顔を赤くさせて早速もらった妖刀村正を抜き放つ。
「兄など、切り捨ててくれる」
「わああああ、白哉、まてまて!」
「主の顔をたてて、今回だけは許してやる」
「うへぁぁ、切り捨てられるかと思った」
京楽は胸をなでおろす。
「京楽、デリカシーというものを考えろ」
「浮竹‥‥じゃあ、このコンドームは浮竹と使う‥‥あべし!」
浮竹に勢いよく殴られて、京楽は壁に激突した。
「あいたたたた」
「じゃあ、俺からも。椿をかたどった髪飾りです」
「お、綺麗じゃないか」
「恋次、私は女子ではない。髪飾りは‥‥」
「いやっすか?」
大型犬がくーんくーんとしょげているように、みんな見えた。
「受け取ればいいのであろう」
「じゃあ、髪につけますね」
シャラリと音をたてて、椿をかたどったガーネットでできた髪飾りの、銀細工が揺れる。
「やっぱり似合ってます、白哉さん。白哉さんには、椿が一番似合う」
「私は椿の花神だしな」
「そういう意味じゃないです。それくらい綺麗だってことです」
白哉はまた赤くなる。
「白哉、今日と明日、休暇を与える。好きに行動しろ」
「しかし、主!主の身に危険が及べば!」
「俺は強くなったし大丈夫だ。いざとなったら京楽がいる」
その京楽は、白哉と恋次を見てにまにましていた。
「京楽、主の何かあったら、刀のさびにしてやるからな」
「おおこわ。恋次くん、白哉くん連れていっていいよ」
恋次は、白哉の手を握って歩き出す。
「白哉さん、この前言っていたホタル見にいきましょう」
「しかし‥‥」
「白哉、たまには羽を伸ばせ。いってこい」
「主‥‥‥仕方ない、行くぞ、恋次」
「いやぁ、春だねぇ」
「季節は夏だけどな」
京楽の独り言に、浮竹が軽くつっこみをいれるのであった。
それは知っていたが、白哉があまり話さないのでそっとしておいていた。
ある日、浮竹の住む洋館に訪ねてくるあやかしがいた。
白哉と同じ椿の花鬼であった。
赤い髪が印象的な、まだ年若い青年だった。
浮竹と出会うなり、青年は自分の名を告げる。
「俺は阿散井恋次っていいます。白哉さんの主ですよね。どうか、俺に息子さんをください!」
ぶばーーーー。
浮竹は飲みかけの紅茶をふいていた。
「れ、恋次、兄は何を言い出すのだ!」
白哉は真っ赤になって、取り乱す。
紅茶をかぶってしまった京楽は、タオルで顔と髪をぬぐいながら、にまにましていた。
「いやぁ、春だねぇ。白哉くんはお嫁にいくのかな?」
「京楽!私は主のものだ。嫁になどいかぬ」
「白哉さん、俺の嫁になるのいやっすか?」
「いやもなにも、婚姻する必要などない」
恋次がしょげる。
「べ、別に兄を嫌っているわけではない」
「じゃあ、俺のこと好きですよね?」
「‥‥‥」
沈黙する白哉の顔は赤い。
「何はともあれ、白哉をあげることはできない。俺の大切な式だからな。ただ、白哉と付き合うのは自由だ」
「ありがとうございます!」
恋次は顔を輝かせて、白哉に抱きつこうとして投げ飛ばされていた。
「白哉さん、照れなくても」
「だ、誰も照れてなどおらぬ」
白哉はこれ以上醜態を見せれないと、呪符に戻ってしまった。
すると、恋次も呪符になり白哉の呪符の上に重なる。
「ええい、呪符になったというのに追いかけてくるな!」
「だって、今日は白哉さんの誕生日っす。一緒に祝おうって約束したじゃないっすか」
「え、今日は白哉の誕生日なのか?」
再び現れた白哉と恋次のやりとりに、浮竹が驚く。
「そうみたいだねえ」
「ルキアと一護くんと海燕を呼んでくれ」
京楽はそう言われて、最近使用人になったばかりの一護も呼んだ。
「今日は白哉の誕生日だそうだ。皆で祝ってやろう」
「兄様、やっと祝わせてもらえるのですね。毎年祝おうとしたら、いらぬと言われるので」
ルキアが喜ぶ。
白哉は、恋次に手を繋がれて、ため息をもらす。
「もう、兄らの好きにせよ」
早速、誕生日ケーキを焼かれて、午前中はプレゼントの買い出しで皆動いて、午後から白哉の誕生日を祝った。
浮竹は楽しそうだった。
自分の式であれ、誰かの誕生日を祝うことはあまりなかったからだ。
「じゃあ、ろうそくをふきけしてくれ」
白哉は251歳になるのだが、さすがにそれだけのろうそくをたてることはできなくて、3本のろうそくがバースデーケーキにのっていた。
白哉は、仕方なくそれを吹き消す。そして皆でケーキを食べた。
ルキアと一護と海燕は、それぞれ贈り物を渡して、でも家事の仕事が残っているので、おめでとと言ってから去っていった。
「誕生日おめでとう、白哉。これは俺からの誕生日祝いだ。いつかやろうと思っていた、妖刀村正だ」
「これは‥‥‥これはもらっていいのか、主」
「ああ。前からあげようと思っていたんだ」
「大切に使わせていただく」
白哉はとても嬉しそうだった。
「じゃあ、ボクから‥‥‥」
「兄の誕生日プレゼントなど、いらぬ」
「ひどい!」
「どうせろくでもないものであろう」
「コンドームだよ」
浮竹は赤くなり、白哉も顔を赤くさせて早速もらった妖刀村正を抜き放つ。
「兄など、切り捨ててくれる」
「わああああ、白哉、まてまて!」
「主の顔をたてて、今回だけは許してやる」
「うへぁぁ、切り捨てられるかと思った」
京楽は胸をなでおろす。
「京楽、デリカシーというものを考えろ」
「浮竹‥‥じゃあ、このコンドームは浮竹と使う‥‥あべし!」
浮竹に勢いよく殴られて、京楽は壁に激突した。
「あいたたたた」
「じゃあ、俺からも。椿をかたどった髪飾りです」
「お、綺麗じゃないか」
「恋次、私は女子ではない。髪飾りは‥‥」
「いやっすか?」
大型犬がくーんくーんとしょげているように、みんな見えた。
「受け取ればいいのであろう」
「じゃあ、髪につけますね」
シャラリと音をたてて、椿をかたどったガーネットでできた髪飾りの、銀細工が揺れる。
「やっぱり似合ってます、白哉さん。白哉さんには、椿が一番似合う」
「私は椿の花神だしな」
「そういう意味じゃないです。それくらい綺麗だってことです」
白哉はまた赤くなる。
「白哉、今日と明日、休暇を与える。好きに行動しろ」
「しかし、主!主の身に危険が及べば!」
「俺は強くなったし大丈夫だ。いざとなったら京楽がいる」
その京楽は、白哉と恋次を見てにまにましていた。
「京楽、主の何かあったら、刀のさびにしてやるからな」
「おおこわ。恋次くん、白哉くん連れていっていいよ」
恋次は、白哉の手を握って歩き出す。
「白哉さん、この前言っていたホタル見にいきましょう」
「しかし‥‥」
「白哉、たまには羽を伸ばせ。いってこい」
「主‥‥‥仕方ない、行くぞ、恋次」
「いやぁ、春だねぇ」
「季節は夏だけどな」
京楽の独り言に、浮竹が軽くつっこみをいれるのであった。
教師と式16
「ルキアが何者かにさらわれた」
「それは確かなの?」
「義妹であるが、ルキアと私は魂のレベルで繋がっている。ルキアはさらわれたとみて間違いない」
「大変だ!鬼神の京楽と鬼の俺にも助けを求めよう」
浮竹たちは、鬼神の京楽と鬼の浮竹の住むマンションを訪ねて、事情を説明して一緒に探してくれることになった。
『いたよ。でも、向日葵の花鬼と一緒にいるね』
「それがルキアをかどわかした者か!」
白哉は、鬼神の京楽に教えられた場所に先に行ってしまった。
「白哉!」
浮竹が、慌てる。
「鬼の俺と鬼神の京楽も一緒に来てくれるか。もしも向日葵の花鬼が敵だと、分が悪い。相手が太陽の化身だ」
『うん、わかったよ』
『俺もついていけばいいんだな?』
浮竹と京楽も、白哉のあとを追う。
そこで見たのは、ルキアと向日葵の花鬼の少年と、威嚇している白哉だった。
「ルキアから離れろ。かどわかしたのは貴様か」
「白哉、落ち着け」
「しかし、主‥‥」
「兄様、違うのです。向日葵の花鬼は黒崎一護といって、私をかどわかそうとした狐のあやかしから助けてくれたのです」
「ああ、なんかよくわかんねぇけど、狐のあやかしが無理やり嫁にするとか言ってたので退治しておいた」
よくよく見れば、狐のあやかしの死体があった。
『どうやら、心配はないようだね』
『ああ、敵ではないようだ』
鬼神の京楽と鬼の浮竹は胸をなでおろす。
浮竹と京楽は、一護をしばらく観察していたが、敵対心はないようなので歓迎した。
「よく、ルキアを救ってくれた。感謝する」
「ありがとうね、一護くん」
「‥‥感謝する」
白哉はルキアをとられたようで、少し不満げだった。
「その、私はこの一護に惚れてしまったのです。一緒になりたいのですが」
「ルキア、突然何を言う」
白哉が、一護を睨む。
「ルキア、気がはええって。まずはお付き合いを許してもらってからだろ?」
「兄様、どうか一護と付き合う許可をください!」
ルキアが、白哉に頭を下げる。
「白哉、許してやれ」
「しかし、主‥‥‥相手は太陽の化身。ルキアが何かに巻き込まれでもしたら」
「そこは一護くんががんばって守ってくれるだろう」
「白哉くん、お付き合いくらい許してあげたら?」
「ううむ‥‥」
白哉は悩む。大事な義妹を、このまま太陽の化身である一護と付き合わせていいのか。
「一護くん、家はないのか?」
浮竹がそう聞くと、一護は頭をかきながら困った顔をする。
「その、この向日葵畑が家のかわりっつーか。普段あんまり人化することねーから」
「それなら話は早い。俺の屋敷に居候してみないか」
「え、そんな許可だしていいの、浮竹」
京楽が驚く。
「いずれルキアと一緒になるんだろう?それなら、こんな離れた向日葵畑で会うより、俺の屋敷に住んで会うほうがいい」
「ふむ‥‥‥一理あるな」
白哉が納得する。
「でも、居候って。何もしないでいさせてもらうわけには」
「じゃあ、俺の屋敷は広いから使用人になってくれ」
「使用人っすか?」
「そうだ。空き部屋はいくつでもあるし、プールには水虎、屋根裏部屋には座敷童と天狗、それにペットに猫又を飼っている。今更あやかしが一人増えたところでどうってことない。ちょうど使用人が欲しかったことだし」
「じゃあ、お言葉に甘えようかな‥‥‥」
「ルキア、それでいいか?」
「はい、ご主人様」
「白哉も、それでいいな?」
「うむ。私の目が届くうちは、ルキアはまだやらぬ」
京楽は、ルキアの頭を撫でる。
「ルキアちゃんにも、春がきたんだねぇ」
「京楽殿!」
浮竹も、笑ってルキアの頭を撫でる。それから、一護と握手した。
「今後、頼む。ルキアのことも含めて」
「はい」
こうして、浮竹の屋敷には向日葵の花鬼の太陽の化身である、黒崎一護という少年が使用人として加わるのだった。
教師と式15
「浮竹、白哉くん、話があるんだ」
「ああ、俺もそろそろ話したいと思っていた頃だ。京楽、お前桜食いに堕ちたな?人の命を吸い取っているだろう?」
「浮竹はお見通しか」
京楽は悲しそうに浮竹を見る。
「兄は、本当に私たちを裏切っていたのか?」
白哉の問いに、京楽が答える。
「そうだよ。ボクは今でも惣右介くんの式でもある。でも、これだけは分かってほしい。浮竹の命を守るためにそうせざるをえなかたことを」
「京楽、俺は守られてばかりじゃない。雷神として覚醒した今、藍染にやられはしない」
「浮竹‥‥‥」
「今からでも遅くない。藍染と手を切れ」
「でも、そうしたら惣右介くんの手が君に」
「だから、俺は平気だと言っている。藍染が手を出してきても自力でなんとかできる」
浮竹は、京楽を抱きしめた。
「すまなかった。俺のせいで、辛い思いをさせた」
ぶわりと、京楽は涙を浮かべて浮竹を抱きしめ返した。
「ボク、戻れるかな?前の桜神に。もう人間の生気を吸って殺したりしないから」
「京楽、お前は人の生気を吸って殺してきたというが、完全に殺したわけじゃない。お前に生気を吸われた者たちは生きている」
「え‥‥‥」
「なんとなく分かるんだ。お前と魂のレベルでつながっているからな」
「京楽、本来ならば兄は主の式にふさわしくないので処分だが、主がこれほど兄の身を案じているのだ。人は殺めていないのが幸いだな」
白哉は冷たく言い捨てるが、表情は悲し気で心配しているようだった。
「契約をしよう。もう、人の生気を大量に吸わないという契約を。破ったら俺も京楽も力の全てを失いただの獣になる」
「ボクだけでいいよ!」
「だめだ。お前は俺の式で俺のものだ。藍染とは手を切れ」
「浮竹‥‥‥‥」
京楽は、浮竹の言う通りに契約を交わした。
藍染の式であることも完全にやめた。
「大地の記憶よ、この者のさまよえる魂を導きたまえ‥‥‥」
浮竹が祈りをこめて、血を捧げると、京楽は桜食いではなく、元の桜神に戻ろうとしていた。
「浮竹、どうやったの!?」
「俺の命を星に捧げてお前を前のあやかしに戻している。それだけのことだ」
「浮竹、ごめん、ボクのために命を削るなんて!もう、桜食いには堕ちないから!だから、もう自分の命を縮めないで!」
「俺は雷神だぞ?寿命なんて無限にある」
「でも」
浮竹は、京楽を殴った。
「心配させた、罰だ」
「いいよ。浮竹の気のすむまで殴って」
浮竹は、霊体化させた拳で京楽の腹を抉る。
「う‥‥‥‥」
「服従虫だ。藍染が、お前を裏切らないように監視の意味をこめて寄生させていたんだろう」
「主、こちらへ。ただつぶすだけでは服従虫は死なぬ。浄化の炎で焼く」
「京楽ううう、裏切ったなぁあああ」
服従虫は、藍染の声をあげて浄化された。
「お前は、今日から本当に俺だけの式だ。同胞や人の命を吸わず、大量の人から少しだけ生気を分けてもらって生きていく桜の花神だ」
「浮竹、ボク、ボク‥‥‥‥君を失いたくなくて‥‥」
「もういいんだ。俺は守られるだけじゃない。守り通せる」
京楽は泣いた。涙が枯れるまで。
「京楽、兄は今まで通り桜の花神として生きよ。私の後輩であろう」
「うん、白哉くん、うん」
京楽は泣きまくって疲れたのか、眠ってしまった。
「いるんだろう、藍染の式」
「おや、ばれてもうた?」
それは藍染の式の市丸ギンだった。
「帰って藍染に言うといい。京楽はもうお前のものではないと」
「そうみたいやね。まぁ、京楽なんてはなっから裏切るだろうと思うてたけど」
「俺は藍染に腹を立てているんだ。消えろ」
落雷を落とされて、ギンは黒焦げになりながら、後ずさる。
「藍染様にたてついて、後悔せんことやね」
「元から藍染とは馬が合わなかった。敵対したところで、同じ術者だ。命がけの決闘があるわけじゃなし」
「さぁ、どうやろなぁ」
「主、この者は殺しても?」
「ああ、いいぞ」
「いややわ、殺されとうないから僕は逃げるで?」
ギンは、式札を置いて去ってしまった。
式札は、京楽の力を使う時に使う呪符だった。
藍染の手の中にあったのを、わざわざギンがもってきてくれたのだ。
「あの市丸ギンという式神も、藍染に生粋に服従しているわけではなさそうだな」
「そうだな、主。本来なら、私たちを消そうとするはず」
「まだ、俺たちに利用価値を見出しているんだろう」
それから、3日が過ぎた。
京楽は眠り続けていた。その間に、体は桜食いから桜神に戻っていた。
浮竹も眠っていた。
力をいろいろと使いすぎたせいだ。
「んー、お腹減った‥‥‥」
京楽が起きる。
「起きたか。主はまだ眠っているぞ。兄を桜食いから桜神に戻すのに相当力を消費したようだ」
「浮竹‥‥‥起きて?朝だよ?」
京楽は浮竹の唇に唇を重ねる。
生気を吹き込んだ。
「ん‥‥」
「起きた?」
「主、大丈夫か?」
「ん、ああ。少し力を使いすぎて休眠していただけだ」
「ボク、元の桜神に戻ってる。ありがとう、浮竹」
京楽は、浮竹を抱きしめる。
「もう、桜食いに堕ちたりするなよ」
「うん、絶対にしない」
ぐ~と、浮竹と京楽の腹がなって、3日も食事をしていなかったのでまずは食事をとることにした。
「桜神のお前を、俺は好きだ。桜食いのお前は嫌いだ」
「うん。ごめん」
浮竹は、食事をとるとシャワーだけ浴びてまた寝てしまった。
「京楽、兄に主の護衛を頼む。ルキアが、何者にかさらわれた」
「ええ!」
騒動は、ひと段落したようで再び起こるのだった。
「ああ、俺もそろそろ話したいと思っていた頃だ。京楽、お前桜食いに堕ちたな?人の命を吸い取っているだろう?」
「浮竹はお見通しか」
京楽は悲しそうに浮竹を見る。
「兄は、本当に私たちを裏切っていたのか?」
白哉の問いに、京楽が答える。
「そうだよ。ボクは今でも惣右介くんの式でもある。でも、これだけは分かってほしい。浮竹の命を守るためにそうせざるをえなかたことを」
「京楽、俺は守られてばかりじゃない。雷神として覚醒した今、藍染にやられはしない」
「浮竹‥‥‥」
「今からでも遅くない。藍染と手を切れ」
「でも、そうしたら惣右介くんの手が君に」
「だから、俺は平気だと言っている。藍染が手を出してきても自力でなんとかできる」
浮竹は、京楽を抱きしめた。
「すまなかった。俺のせいで、辛い思いをさせた」
ぶわりと、京楽は涙を浮かべて浮竹を抱きしめ返した。
「ボク、戻れるかな?前の桜神に。もう人間の生気を吸って殺したりしないから」
「京楽、お前は人の生気を吸って殺してきたというが、完全に殺したわけじゃない。お前に生気を吸われた者たちは生きている」
「え‥‥‥」
「なんとなく分かるんだ。お前と魂のレベルでつながっているからな」
「京楽、本来ならば兄は主の式にふさわしくないので処分だが、主がこれほど兄の身を案じているのだ。人は殺めていないのが幸いだな」
白哉は冷たく言い捨てるが、表情は悲し気で心配しているようだった。
「契約をしよう。もう、人の生気を大量に吸わないという契約を。破ったら俺も京楽も力の全てを失いただの獣になる」
「ボクだけでいいよ!」
「だめだ。お前は俺の式で俺のものだ。藍染とは手を切れ」
「浮竹‥‥‥‥」
京楽は、浮竹の言う通りに契約を交わした。
藍染の式であることも完全にやめた。
「大地の記憶よ、この者のさまよえる魂を導きたまえ‥‥‥」
浮竹が祈りをこめて、血を捧げると、京楽は桜食いではなく、元の桜神に戻ろうとしていた。
「浮竹、どうやったの!?」
「俺の命を星に捧げてお前を前のあやかしに戻している。それだけのことだ」
「浮竹、ごめん、ボクのために命を削るなんて!もう、桜食いには堕ちないから!だから、もう自分の命を縮めないで!」
「俺は雷神だぞ?寿命なんて無限にある」
「でも」
浮竹は、京楽を殴った。
「心配させた、罰だ」
「いいよ。浮竹の気のすむまで殴って」
浮竹は、霊体化させた拳で京楽の腹を抉る。
「う‥‥‥‥」
「服従虫だ。藍染が、お前を裏切らないように監視の意味をこめて寄生させていたんだろう」
「主、こちらへ。ただつぶすだけでは服従虫は死なぬ。浄化の炎で焼く」
「京楽ううう、裏切ったなぁあああ」
服従虫は、藍染の声をあげて浄化された。
「お前は、今日から本当に俺だけの式だ。同胞や人の命を吸わず、大量の人から少しだけ生気を分けてもらって生きていく桜の花神だ」
「浮竹、ボク、ボク‥‥‥‥君を失いたくなくて‥‥」
「もういいんだ。俺は守られるだけじゃない。守り通せる」
京楽は泣いた。涙が枯れるまで。
「京楽、兄は今まで通り桜の花神として生きよ。私の後輩であろう」
「うん、白哉くん、うん」
京楽は泣きまくって疲れたのか、眠ってしまった。
「いるんだろう、藍染の式」
「おや、ばれてもうた?」
それは藍染の式の市丸ギンだった。
「帰って藍染に言うといい。京楽はもうお前のものではないと」
「そうみたいやね。まぁ、京楽なんてはなっから裏切るだろうと思うてたけど」
「俺は藍染に腹を立てているんだ。消えろ」
落雷を落とされて、ギンは黒焦げになりながら、後ずさる。
「藍染様にたてついて、後悔せんことやね」
「元から藍染とは馬が合わなかった。敵対したところで、同じ術者だ。命がけの決闘があるわけじゃなし」
「さぁ、どうやろなぁ」
「主、この者は殺しても?」
「ああ、いいぞ」
「いややわ、殺されとうないから僕は逃げるで?」
ギンは、式札を置いて去ってしまった。
式札は、京楽の力を使う時に使う呪符だった。
藍染の手の中にあったのを、わざわざギンがもってきてくれたのだ。
「あの市丸ギンという式神も、藍染に生粋に服従しているわけではなさそうだな」
「そうだな、主。本来なら、私たちを消そうとするはず」
「まだ、俺たちに利用価値を見出しているんだろう」
それから、3日が過ぎた。
京楽は眠り続けていた。その間に、体は桜食いから桜神に戻っていた。
浮竹も眠っていた。
力をいろいろと使いすぎたせいだ。
「んー、お腹減った‥‥‥」
京楽が起きる。
「起きたか。主はまだ眠っているぞ。兄を桜食いから桜神に戻すのに相当力を消費したようだ」
「浮竹‥‥‥起きて?朝だよ?」
京楽は浮竹の唇に唇を重ねる。
生気を吹き込んだ。
「ん‥‥」
「起きた?」
「主、大丈夫か?」
「ん、ああ。少し力を使いすぎて休眠していただけだ」
「ボク、元の桜神に戻ってる。ありがとう、浮竹」
京楽は、浮竹を抱きしめる。
「もう、桜食いに堕ちたりするなよ」
「うん、絶対にしない」
ぐ~と、浮竹と京楽の腹がなって、3日も食事をしていなかったのでまずは食事をとることにした。
「桜神のお前を、俺は好きだ。桜食いのお前は嫌いだ」
「うん。ごめん」
浮竹は、食事をとるとシャワーだけ浴びてまた寝てしまった。
「京楽、兄に主の護衛を頼む。ルキアが、何者にかさらわれた」
「ええ!」
騒動は、ひと段落したようで再び起こるのだった。
教師と式13
「これ、浮竹の血液のサンプル」
京楽は、優し気な顔の青年に、浮竹の血が入った容器を渡す。
「確かに。これで、君の浮竹はまた寿命が延びたわけだ」
「本当に、君って嫌なやつだね。君の式に戻らなくて正解だよ、藍染」
「ふふ、今更なにを。今も私の式のようなものだろう、京楽。約束を違えたら、君の愛しい浮竹はその命が尽きる」
藍染はクスクスと笑う。
「いつまで400年以上生きた桜神と自分を、大切な浮竹に偽るつもりだ?千年以上生きている桜食いのくせに」
「うるさいよ」
「桜ごとまた今月は何人の命を吸った?」
「うるさい!」
京楽は、怒って藍染を殴った。藍染はわざと殴られて、おかしそうに笑う。
「浮竹が本当のことを知ったら、絶望するだろうな」
「脅すのかい」
「いや?脅かさなくても、君は私の忠実なコマの一つ」
「浮竹に手を出したら、いくら君だとしても八つ裂きにするからね」
「怖い怖い」
そう言って、藍染は去っていってしまった。
「‥‥‥‥浮竹、ボクは嘘だからけだ。ごめんね」
その声が、浮竹に届くことはなかった。
--------------------------------------------------------------------------
「桜食いが出るそうだ。京楽、お前のような桜の花神や花鬼を食べて、人の生気も吸ってしまうある意味京楽の天敵のようなやつだ。今回の依頼は、念のため京楽なしでいこうかと思う」
「ボクなら大丈夫だよ。桜食いは何度も倒してきた」
「そうなのか、京楽?」
「うん」
「兄はけれど、敵にとって極上の餌だ。参加せぬほうがいいのではないか。主は私が守る」
「白哉くんだけじゃ心もとないからボクもついていく」
「分かった。危険と判断したら、すぐに呪符に戻すからな」
浮竹は、仕方ないとばかりに京楽を見る。
「うん、分かったよ」
京楽は、浮竹にたくさんの隠し事をしている。それに浮竹も白哉も気づかない。
本来なら浮竹の式でいられるはずもないのだが。京楽は未だに藍染の式でもあった。
「じゃあ、桜食いが出る場所に移動しよう。車で1時間の場所だ」
「ねぇ、浮竹」
京楽は、寂しそうに笑う。
「ボクが偽りだらけでも、君はボクを愛してくれる?」
「ああ、愛する」
京楽は、涙が流れそうになって、拳をぎゅっと握り締めた。
「ありがとう、浮竹」
「変なやつだな」
桜食いが出る場所にくると、見事に桜の木々が枯れていた。
「出てこい、桜食い!人を襲って生気を吸いつくした罰としてお前を退治する」
「ぎろぎろ。人間風情の祓い屋か。おや、そっちは‥‥‥‥」
京楽は、桜食いが何かを言う前に、口を封じてしまう。
「ぎぎぎぎぎ」
「雷夜いけ!」
新しく式神にした雷獣の山猫を、浮竹は桜食いにけしかける。
大量の電撃を浴びて、桜食いは炭化していく。
「同胞のくせに‥‥‥」
桜食いの言葉に、京楽は青ざめる。
「戯言を。俺の式にお魔の同胞などいない」
「騙されているのだ。その桜の花神は……」
「うるさいね。早く死んでよ」
京楽は、桜の花びらを刃にして桜食いにとどめをさした。
「京楽、今日はいつもより殺気だってないか?」
「兄もか。私もそう思う」
雷獣を呪符に戻して、浮竹は心配気に京楽の顔をのぞきこむ。
全ては、浮竹のためだった。
藍染から、浮竹を守るために藍染に従い、桜食いであることを隠して桜の花神として生きていた。
400年どころか、すでに齢は千年をこえていた。
「浮竹。いつか本当のことを全部話すから、今は君を抱かせて?」
京楽は浮竹を抱きしめながら、涙を流した。
「京楽、胎の具合でも悪いのか?」
「うん。ちょっと頭痛い。お腹じゃないけど」
「呪符に戻れ。後始末は俺と白哉でしておく」
「京楽、兄は‥‥‥‥」
「どうしたんだ、白哉」
京楽は呪符の中に消える。
「いや、なんでもない。思い違いのようだ」
白哉は浮竹から感じる妖力が、桜の花神のものではなく、桜食いのものに一瞬似ていた気がしたが、気の迷いだろうと首を左右に振る。
桜食いは、桜も人の生気も吸う。
桜の生気を吸う以外は、桜の花神と変わりない。
京楽は人の命を吸いつくすのをやめて数十年が経過している。いくら大勢の人間から生気を分けてもらっているといっても、浮竹ほど力の強いあやかしは大量の人の生気を必要とする。
「兄が、裏切り者ではないと、私は信じているぞ」
白哉は、京楽が入った呪符を撫でて、浮竹に渡す。
「桜食いのせいで、同胞たちが食われていたのがショックだったんだろう」
浮竹はそう結論づけた。
「主、京楽は近いうちに‥‥‥」
「なんだ?」
「いや、なんでもない」
白哉は、京楽が藍染とコンタクトをとっている場面を目撃してしまっていた。
裏切りだ。
しかし、何か事情があるのだろうと、浮竹には内緒にしていた。そもそも、京楽は元藍染の式だ。藍染の手から完全に切り離されていないことも考えられる。
「主、帰ろう」
「ああ、そうだな。帰ったら、京楽の代わりにルキアに夕食を作ってもらおう。今日の京楽は具合が悪いみたいだし」
「私の義妹のルキアはよくやっているだろう」
「ああ。おかげででかい洋館なのに手入れが行き届いていて助かっている」
白哉は心の中で願う。
どうか、京楽が浮竹を裏切っていないことを。
京楽は、優し気な顔の青年に、浮竹の血が入った容器を渡す。
「確かに。これで、君の浮竹はまた寿命が延びたわけだ」
「本当に、君って嫌なやつだね。君の式に戻らなくて正解だよ、藍染」
「ふふ、今更なにを。今も私の式のようなものだろう、京楽。約束を違えたら、君の愛しい浮竹はその命が尽きる」
藍染はクスクスと笑う。
「いつまで400年以上生きた桜神と自分を、大切な浮竹に偽るつもりだ?千年以上生きている桜食いのくせに」
「うるさいよ」
「桜ごとまた今月は何人の命を吸った?」
「うるさい!」
京楽は、怒って藍染を殴った。藍染はわざと殴られて、おかしそうに笑う。
「浮竹が本当のことを知ったら、絶望するだろうな」
「脅すのかい」
「いや?脅かさなくても、君は私の忠実なコマの一つ」
「浮竹に手を出したら、いくら君だとしても八つ裂きにするからね」
「怖い怖い」
そう言って、藍染は去っていってしまった。
「‥‥‥‥浮竹、ボクは嘘だからけだ。ごめんね」
その声が、浮竹に届くことはなかった。
--------------------------------------------------------------------------
「桜食いが出るそうだ。京楽、お前のような桜の花神や花鬼を食べて、人の生気も吸ってしまうある意味京楽の天敵のようなやつだ。今回の依頼は、念のため京楽なしでいこうかと思う」
「ボクなら大丈夫だよ。桜食いは何度も倒してきた」
「そうなのか、京楽?」
「うん」
「兄はけれど、敵にとって極上の餌だ。参加せぬほうがいいのではないか。主は私が守る」
「白哉くんだけじゃ心もとないからボクもついていく」
「分かった。危険と判断したら、すぐに呪符に戻すからな」
浮竹は、仕方ないとばかりに京楽を見る。
「うん、分かったよ」
京楽は、浮竹にたくさんの隠し事をしている。それに浮竹も白哉も気づかない。
本来なら浮竹の式でいられるはずもないのだが。京楽は未だに藍染の式でもあった。
「じゃあ、桜食いが出る場所に移動しよう。車で1時間の場所だ」
「ねぇ、浮竹」
京楽は、寂しそうに笑う。
「ボクが偽りだらけでも、君はボクを愛してくれる?」
「ああ、愛する」
京楽は、涙が流れそうになって、拳をぎゅっと握り締めた。
「ありがとう、浮竹」
「変なやつだな」
桜食いが出る場所にくると、見事に桜の木々が枯れていた。
「出てこい、桜食い!人を襲って生気を吸いつくした罰としてお前を退治する」
「ぎろぎろ。人間風情の祓い屋か。おや、そっちは‥‥‥‥」
京楽は、桜食いが何かを言う前に、口を封じてしまう。
「ぎぎぎぎぎ」
「雷夜いけ!」
新しく式神にした雷獣の山猫を、浮竹は桜食いにけしかける。
大量の電撃を浴びて、桜食いは炭化していく。
「同胞のくせに‥‥‥」
桜食いの言葉に、京楽は青ざめる。
「戯言を。俺の式にお魔の同胞などいない」
「騙されているのだ。その桜の花神は……」
「うるさいね。早く死んでよ」
京楽は、桜の花びらを刃にして桜食いにとどめをさした。
「京楽、今日はいつもより殺気だってないか?」
「兄もか。私もそう思う」
雷獣を呪符に戻して、浮竹は心配気に京楽の顔をのぞきこむ。
全ては、浮竹のためだった。
藍染から、浮竹を守るために藍染に従い、桜食いであることを隠して桜の花神として生きていた。
400年どころか、すでに齢は千年をこえていた。
「浮竹。いつか本当のことを全部話すから、今は君を抱かせて?」
京楽は浮竹を抱きしめながら、涙を流した。
「京楽、胎の具合でも悪いのか?」
「うん。ちょっと頭痛い。お腹じゃないけど」
「呪符に戻れ。後始末は俺と白哉でしておく」
「京楽、兄は‥‥‥‥」
「どうしたんだ、白哉」
京楽は呪符の中に消える。
「いや、なんでもない。思い違いのようだ」
白哉は浮竹から感じる妖力が、桜の花神のものではなく、桜食いのものに一瞬似ていた気がしたが、気の迷いだろうと首を左右に振る。
桜食いは、桜も人の生気も吸う。
桜の生気を吸う以外は、桜の花神と変わりない。
京楽は人の命を吸いつくすのをやめて数十年が経過している。いくら大勢の人間から生気を分けてもらっているといっても、浮竹ほど力の強いあやかしは大量の人の生気を必要とする。
「兄が、裏切り者ではないと、私は信じているぞ」
白哉は、京楽が入った呪符を撫でて、浮竹に渡す。
「桜食いのせいで、同胞たちが食われていたのがショックだったんだろう」
浮竹はそう結論づけた。
「主、京楽は近いうちに‥‥‥」
「なんだ?」
「いや、なんでもない」
白哉は、京楽が藍染とコンタクトをとっている場面を目撃してしまっていた。
裏切りだ。
しかし、何か事情があるのだろうと、浮竹には内緒にしていた。そもそも、京楽は元藍染の式だ。藍染の手から完全に切り離されていないことも考えられる。
「主、帰ろう」
「ああ、そうだな。帰ったら、京楽の代わりにルキアに夕食を作ってもらおう。今日の京楽は具合が悪いみたいだし」
「私の義妹のルキアはよくやっているだろう」
「ああ。おかげででかい洋館なのに手入れが行き届いていて助かっている」
白哉は心の中で願う。
どうか、京楽が浮竹を裏切っていないことを。
教師と式12
夜叉を封印して以来、浮竹は不思議な夢を見るようになった。
封印されていた力を解放してからというもの、見る夢は全て自分が虎の姿をした雷獣(雷神)になる夢だった。
ある日、風邪を引いた。
教師として仕事をしているうちに、子供からうつされたのだ。
体が弱ったある日、浮竹は気づくと虎の雷獣の姿になっていた。
慌てふためていると、京楽が現れて京楽もパニックになった。
「ええ、浮竹ってあやかしだったの!?」
「俺にも何が何だか分からない!」
雷獣の虎の姿から人化して、虎の耳と尻尾がはえた姿に浮竹はなっていた。
そこへ白哉が現れて、事情を聞いて雷獣となってしまった浮竹を見る。
「兄は‥‥どうやら、人の子ではなく雷神の化身だったようだ。京楽が、浮竹の器としていれた女の腹には人ではなく雷神が宿っていたのであろう」
「でも、27年間も人して暮らしてきたんだぞ?まさか、俺があやかしなんて」
「浮竹の元になった前の浮竹の魂の力は強かったからね。おまけに封印されてたし。それが雷神を封じ込める形になってたんだと思うよ?」
「ふむ。そうか」
あやかしには慣れているので、自分があやかしと言われてもなんとなく納得してしまった。
過去に、3回ほど落雷を浴びたことがあるが、火傷もせずぴんぴんしていた。
雷獣の力だろう。落雷もまた。
「まぁ、耳も尻尾も消そうと思えばできるし、雷獣でもいっか」
「浮竹がそういうならいいんじゃない?」
「兄らは‥‥あやかしが祓い屋をしているのだぞ。他の祓い屋に気づかれぬようにせよ、主。式として欲しがられる」
「そ、それは困る!」
浮竹は、完全に人の姿に戻った。
「ふむ‥‥‥人の姿をしている時は妖力もないのだな。主が雷獣であるということは伏せておこう。分かっているな、京楽?」
「え、あ、うん。でも、今度の依頼退治‥‥‥雷獣を倒してくれって‥‥」
「さすがに雷獣が雷獣を倒すわけにはいかないな。話を聞いてなんとかしてみよう」
数日後、完全に人間の姿の浮竹と京楽と白哉は、車に乗って雷獣が出るという町にやってきた。
工事現場だった。
雷獣を宿しているという石を動かそうとして、雷獣が目を覚まし、工事の邪魔をするのだという。
「雷獣、いるか!出てきてくれ!」
「ほう。人間の祓い屋か」
その雷獣は山猫の姿をしていた。
「宿っているという石は、動かしてもちゃんと祭り上げる。破壊しない」
「人の言葉など信じれるものか」
雷獣は、浮竹に電撃を落とす。
浮竹はぴんぴんしていた。
「雷獣くん、浮竹も今は人の姿とってるけど雷獣で雷神なんだよ?」
「人の式風情が、何を‥‥‥桜の花神?そっちは椿の花神か」
雷獣は、人が神を従えているのにびっくりした。
正確には人ではないのだが。
周囲に人がいないのを確認して、浮竹も雷獣の姿になる。
「あ、あなたは雷神の、雷虎(らいこ)様!おなくなりになったと聞いていたが‥‥‥そうか、人の腹に宿って復活なされたのか。なぜ、人のふりを」
「俺の器がたまたま雷神だっただけだ。そうか。俺は雷虎というのか」
「雷虎様、我らの力で人間をこらしめてやりましょう」
「いや、それはしない」
人の姿に戻った浮竹は、雷獣を長時間説得して、なんとか宿る石を移動させることを納得させた。祓う必要はなかった。
雷を落とて警戒していたが、幸いにも人にケガを負わせたりも殺したりもしていない。
「雷虎様、人として生きていかれるのか。少し寂しいが、式の者たちも神のようだし」
花神になった京楽と白哉は、浮竹が雷神であっても何も変わらなかった。
ただその命に従い、時に勝手気ままに動く。
「では、俺は人の社会に戻る。雷獣も、達者でな」
「はい、雷虎様」
「帰るぞ、京楽、白哉」
「主、耳が出ているぞ」
白哉に指摘されて、浮竹は慌てて虎の耳を消した。
「うう、一度雷獣に姿になると人化が難しい」
「浮竹、まぁのんびりやっていこうよ。君の術には人の記憶を消すものもあるでしょう?」
「記憶を消したり書き換えたりする精神系の術はあまり使いたくない」
浮竹なりに、決めていたことだった。
「でも、今回のことで浮竹が雷虎っていう名前だって分かったし、同胞を殺さずにすんだし、いいんじゃないの?」
「ああ、それもそうだな」
「主、尻尾が出ている」
「あわわわ」
車に乗りながら、浮竹が虎の尻尾を消す。
「ねぇ、浮竹、今度虎の耳と尻尾ある状態でえっちしない?」
「あほか!するか、ぼけ!」
京楽の頭をはたいて、浮竹派安全運転を心がけて、屋敷に戻るのだった。
封印されていた力を解放してからというもの、見る夢は全て自分が虎の姿をした雷獣(雷神)になる夢だった。
ある日、風邪を引いた。
教師として仕事をしているうちに、子供からうつされたのだ。
体が弱ったある日、浮竹は気づくと虎の雷獣の姿になっていた。
慌てふためていると、京楽が現れて京楽もパニックになった。
「ええ、浮竹ってあやかしだったの!?」
「俺にも何が何だか分からない!」
雷獣の虎の姿から人化して、虎の耳と尻尾がはえた姿に浮竹はなっていた。
そこへ白哉が現れて、事情を聞いて雷獣となってしまった浮竹を見る。
「兄は‥‥どうやら、人の子ではなく雷神の化身だったようだ。京楽が、浮竹の器としていれた女の腹には人ではなく雷神が宿っていたのであろう」
「でも、27年間も人して暮らしてきたんだぞ?まさか、俺があやかしなんて」
「浮竹の元になった前の浮竹の魂の力は強かったからね。おまけに封印されてたし。それが雷神を封じ込める形になってたんだと思うよ?」
「ふむ。そうか」
あやかしには慣れているので、自分があやかしと言われてもなんとなく納得してしまった。
過去に、3回ほど落雷を浴びたことがあるが、火傷もせずぴんぴんしていた。
雷獣の力だろう。落雷もまた。
「まぁ、耳も尻尾も消そうと思えばできるし、雷獣でもいっか」
「浮竹がそういうならいいんじゃない?」
「兄らは‥‥あやかしが祓い屋をしているのだぞ。他の祓い屋に気づかれぬようにせよ、主。式として欲しがられる」
「そ、それは困る!」
浮竹は、完全に人の姿に戻った。
「ふむ‥‥‥人の姿をしている時は妖力もないのだな。主が雷獣であるということは伏せておこう。分かっているな、京楽?」
「え、あ、うん。でも、今度の依頼退治‥‥‥雷獣を倒してくれって‥‥」
「さすがに雷獣が雷獣を倒すわけにはいかないな。話を聞いてなんとかしてみよう」
数日後、完全に人間の姿の浮竹と京楽と白哉は、車に乗って雷獣が出るという町にやってきた。
工事現場だった。
雷獣を宿しているという石を動かそうとして、雷獣が目を覚まし、工事の邪魔をするのだという。
「雷獣、いるか!出てきてくれ!」
「ほう。人間の祓い屋か」
その雷獣は山猫の姿をしていた。
「宿っているという石は、動かしてもちゃんと祭り上げる。破壊しない」
「人の言葉など信じれるものか」
雷獣は、浮竹に電撃を落とす。
浮竹はぴんぴんしていた。
「雷獣くん、浮竹も今は人の姿とってるけど雷獣で雷神なんだよ?」
「人の式風情が、何を‥‥‥桜の花神?そっちは椿の花神か」
雷獣は、人が神を従えているのにびっくりした。
正確には人ではないのだが。
周囲に人がいないのを確認して、浮竹も雷獣の姿になる。
「あ、あなたは雷神の、雷虎(らいこ)様!おなくなりになったと聞いていたが‥‥‥そうか、人の腹に宿って復活なされたのか。なぜ、人のふりを」
「俺の器がたまたま雷神だっただけだ。そうか。俺は雷虎というのか」
「雷虎様、我らの力で人間をこらしめてやりましょう」
「いや、それはしない」
人の姿に戻った浮竹は、雷獣を長時間説得して、なんとか宿る石を移動させることを納得させた。祓う必要はなかった。
雷を落とて警戒していたが、幸いにも人にケガを負わせたりも殺したりもしていない。
「雷虎様、人として生きていかれるのか。少し寂しいが、式の者たちも神のようだし」
花神になった京楽と白哉は、浮竹が雷神であっても何も変わらなかった。
ただその命に従い、時に勝手気ままに動く。
「では、俺は人の社会に戻る。雷獣も、達者でな」
「はい、雷虎様」
「帰るぞ、京楽、白哉」
「主、耳が出ているぞ」
白哉に指摘されて、浮竹は慌てて虎の耳を消した。
「うう、一度雷獣に姿になると人化が難しい」
「浮竹、まぁのんびりやっていこうよ。君の術には人の記憶を消すものもあるでしょう?」
「記憶を消したり書き換えたりする精神系の術はあまり使いたくない」
浮竹なりに、決めていたことだった。
「でも、今回のことで浮竹が雷虎っていう名前だって分かったし、同胞を殺さずにすんだし、いいんじゃないの?」
「ああ、それもそうだな」
「主、尻尾が出ている」
「あわわわ」
車に乗りながら、浮竹が虎の尻尾を消す。
「ねぇ、浮竹、今度虎の耳と尻尾ある状態でえっちしない?」
「あほか!するか、ぼけ!」
京楽の頭をはたいて、浮竹派安全運転を心がけて、屋敷に戻るのだった。
教師と式11
「鬼が出るのです。どうか、退治してはいただけませんか。畑を荒らしたり家畜を襲うのです」
その依頼人は、鬼が出るので退治してほしいと依頼してきた。
浮竹はなんの疑いもせず、引き受けた。
そして依頼人のところで出没した鬼を祓おうとしたら、ただの鬼ではなく鬼神の夜叉だった。
「夜叉がなぜ、こんな場所に?」
「祓い屋か。ここの住民は我を怒らせた。こらしめてやっているところだ」
「うーむ。依頼人から鬼を退治してくれと言われたが、鬼神の夜叉だとは」
「我を祓うか、人間よ」
「浮竹、無茶しないで!夜叉は鬼神。神の一種だよ」
京楽が、浮竹を背中に庇う。
白哉もでてきて、ばちばちと雷を放って威嚇する。
「主、相手が悪い。私たちでも夜叉に勝てるだろうが、大けがは否めない」
「夜叉、どうか畑を荒らしたり家畜を襲うのをやめてくれないだろうか」
「ほう。神であるこの我に意見するか。面白い」
夜叉は、霊力でできた槍をもって、浮竹を京楽もろとも串刺しにしようとする。
「そんな攻撃!」
京楽は桜の花びらで結界をつくり、それを防いだ。
「ふむ、やるな人間とその式。よいだろう。今回は桜の花鬼という珍しいものが見れた。この畑を荒らすのも家畜を襲うのも、違う人間に頼まれてやっていたことだ。もう終わりにしてやろう」
夜叉は、ばさりと黒い翼を出すと去っていってしまった。
「依頼は退治だったが、追い払うことでもいいよな?」
「うん。でもまた来るかもね。夜叉の鬼神が人の言葉を素直に聞くとは思えない。それに夜叉をそそのかすって、相当力のある人間だね」
浮竹は、夜叉が出てくるとは思わず、青い顔になっていた。
「もう少しで、お前たちの身に大きなわざわいがふりかかりそうだった。俺も、鬼神と対等に渡り合えるくらい強くならないとな」
「浮竹は力の一部を封印されてるから」
京楽の言葉に、浮竹が顔をあげる。
「封印?」
「そう。君が生まれる前に、魂に施された封印。解き放つ時がきたようだね」
浮竹は羽化する。
魂に刻まれた封印を破って。
「なぜ、京楽はそれを知っているんだ?」
「それは、ボクが前の君の魂を今の君の魂にしたから。浮竹は、昔もいたんだよ。ボクは君を愛しすぎるあまり、病死した君の魂を、君の母親に宿らせた」
「京楽、それは本当か?」
「本当だよ。君はボクが愛した前の浮竹と同じ浮竹だ」
浮竹は、少しショックを受けたようだったが、魂の力の解放を望んで、京楽の話を聞き続けた。
「君が本当に強くなりたいとき、君がいつも身につけている翡翠のペンダントを破壊する。それが君の魂の力を解放する条件だよ」
「これか‥‥肌身はださずもっていろと言われていたが」
「破壊できる?」
「やってみる」
白哉は、主である浮竹を静かに見守る。
「主、兄がどうあろうと、私は兄の式だ」
「ありがとう、白哉」
浮竹は、術で翡翠のペンダントを砕いた。
すると、浮竹からすさまじい霊力が迸り、それは浮竹の中に吸い込まれた。
「浮竹、分かる?君の霊力が今までの3倍くらいになったの」
「ああ、分かる。力があふれてくる。これなら、鬼神でも封印できそうだし、場合によっては祓うこともできそうだ」
浮竹があふれる霊力を暴走することもなく、受け入れた。
「式である京楽、白哉、我が霊力により進化せよ」
浮竹は京楽と白哉に多大な霊力を分け与える。
それは花鬼を花神に変えるほどの力だだった。
「浮竹、兄に力を分け与えられて花恩から花神に進化した。今後、兄の力になるときは今までより強くなっているであろう」
「ボクも強くなったよ。浮竹を守るために」
「京楽、前の俺のこととかは聞かないでおく。俺は俺だから」
「うん。聞きたくなったらいつでも言って。話すかから」
京楽は、寂しそうに笑う。
前の浮竹のことはできるだけ隠しておきたかったが、仕方ない。
浮竹は、その後依頼主の家を見守り続け、約束したのの畑や家畜を荒らしにきた夜叉を封印して、祠を建てた。
「依頼主に報告しよう。封印したと」
「主‥‥‥強くなったな。私も力を増したが、主は今までの2~3倍は強くなった」
白哉は、浮竹を頼もしそうに見る。
「白哉、これからは守られてばかりの俺じゃないからな」
「承知」
「ああ、本当に浮竹はすごいね。魂の封印をといただけでこんなに強くなるなんて」
「京楽、俺の魂に封印を施したのは誰だ?」
「藍染だよ。君の魂を前の君から取り出してもらった。君の魂を輪廻転生にかける代わりに、ボクは藍染の式になった」
「そうか‥‥‥藍染には、感謝するべきなのか悩むところだ」
「ボクが藍染の式になったんだもの。交換条件はもう終わってる。感謝する必要はないよ」
浮竹と京楽と白哉は、依頼人に夜叉を封印して祠を建てた経緯を話し、祠を壊すことなくたまに貢物をすれば夜叉は封印されたまま静かに眠ると伝えた。
「祓ってもよかったんじゃない?」
「神はあまり祓いたくない」
「まぁ、祟りありそうだからそれもそうか」
今の浮竹が生まれる前、浮竹の魂は一度藍染の手に落ちた。それが何を意味するのか、今はまだ誰も分からなかった。
その依頼人は、鬼が出るので退治してほしいと依頼してきた。
浮竹はなんの疑いもせず、引き受けた。
そして依頼人のところで出没した鬼を祓おうとしたら、ただの鬼ではなく鬼神の夜叉だった。
「夜叉がなぜ、こんな場所に?」
「祓い屋か。ここの住民は我を怒らせた。こらしめてやっているところだ」
「うーむ。依頼人から鬼を退治してくれと言われたが、鬼神の夜叉だとは」
「我を祓うか、人間よ」
「浮竹、無茶しないで!夜叉は鬼神。神の一種だよ」
京楽が、浮竹を背中に庇う。
白哉もでてきて、ばちばちと雷を放って威嚇する。
「主、相手が悪い。私たちでも夜叉に勝てるだろうが、大けがは否めない」
「夜叉、どうか畑を荒らしたり家畜を襲うのをやめてくれないだろうか」
「ほう。神であるこの我に意見するか。面白い」
夜叉は、霊力でできた槍をもって、浮竹を京楽もろとも串刺しにしようとする。
「そんな攻撃!」
京楽は桜の花びらで結界をつくり、それを防いだ。
「ふむ、やるな人間とその式。よいだろう。今回は桜の花鬼という珍しいものが見れた。この畑を荒らすのも家畜を襲うのも、違う人間に頼まれてやっていたことだ。もう終わりにしてやろう」
夜叉は、ばさりと黒い翼を出すと去っていってしまった。
「依頼は退治だったが、追い払うことでもいいよな?」
「うん。でもまた来るかもね。夜叉の鬼神が人の言葉を素直に聞くとは思えない。それに夜叉をそそのかすって、相当力のある人間だね」
浮竹は、夜叉が出てくるとは思わず、青い顔になっていた。
「もう少しで、お前たちの身に大きなわざわいがふりかかりそうだった。俺も、鬼神と対等に渡り合えるくらい強くならないとな」
「浮竹は力の一部を封印されてるから」
京楽の言葉に、浮竹が顔をあげる。
「封印?」
「そう。君が生まれる前に、魂に施された封印。解き放つ時がきたようだね」
浮竹は羽化する。
魂に刻まれた封印を破って。
「なぜ、京楽はそれを知っているんだ?」
「それは、ボクが前の君の魂を今の君の魂にしたから。浮竹は、昔もいたんだよ。ボクは君を愛しすぎるあまり、病死した君の魂を、君の母親に宿らせた」
「京楽、それは本当か?」
「本当だよ。君はボクが愛した前の浮竹と同じ浮竹だ」
浮竹は、少しショックを受けたようだったが、魂の力の解放を望んで、京楽の話を聞き続けた。
「君が本当に強くなりたいとき、君がいつも身につけている翡翠のペンダントを破壊する。それが君の魂の力を解放する条件だよ」
「これか‥‥肌身はださずもっていろと言われていたが」
「破壊できる?」
「やってみる」
白哉は、主である浮竹を静かに見守る。
「主、兄がどうあろうと、私は兄の式だ」
「ありがとう、白哉」
浮竹は、術で翡翠のペンダントを砕いた。
すると、浮竹からすさまじい霊力が迸り、それは浮竹の中に吸い込まれた。
「浮竹、分かる?君の霊力が今までの3倍くらいになったの」
「ああ、分かる。力があふれてくる。これなら、鬼神でも封印できそうだし、場合によっては祓うこともできそうだ」
浮竹があふれる霊力を暴走することもなく、受け入れた。
「式である京楽、白哉、我が霊力により進化せよ」
浮竹は京楽と白哉に多大な霊力を分け与える。
それは花鬼を花神に変えるほどの力だだった。
「浮竹、兄に力を分け与えられて花恩から花神に進化した。今後、兄の力になるときは今までより強くなっているであろう」
「ボクも強くなったよ。浮竹を守るために」
「京楽、前の俺のこととかは聞かないでおく。俺は俺だから」
「うん。聞きたくなったらいつでも言って。話すかから」
京楽は、寂しそうに笑う。
前の浮竹のことはできるだけ隠しておきたかったが、仕方ない。
浮竹は、その後依頼主の家を見守り続け、約束したのの畑や家畜を荒らしにきた夜叉を封印して、祠を建てた。
「依頼主に報告しよう。封印したと」
「主‥‥‥強くなったな。私も力を増したが、主は今までの2~3倍は強くなった」
白哉は、浮竹を頼もしそうに見る。
「白哉、これからは守られてばかりの俺じゃないからな」
「承知」
「ああ、本当に浮竹はすごいね。魂の封印をといただけでこんなに強くなるなんて」
「京楽、俺の魂に封印を施したのは誰だ?」
「藍染だよ。君の魂を前の君から取り出してもらった。君の魂を輪廻転生にかける代わりに、ボクは藍染の式になった」
「そうか‥‥‥藍染には、感謝するべきなのか悩むところだ」
「ボクが藍染の式になったんだもの。交換条件はもう終わってる。感謝する必要はないよ」
浮竹と京楽と白哉は、依頼人に夜叉を封印して祠を建てた経緯を話し、祠を壊すことなくたまに貢物をすれば夜叉は封印されたまま静かに眠ると伝えた。
「祓ってもよかったんじゃない?」
「神はあまり祓いたくない」
「まぁ、祟りありそうだからそれもそうか」
今の浮竹が生まれる前、浮竹の魂は一度藍染の手に落ちた。それが何を意味するのか、今はまだ誰も分からなかった。
教師と式10
浮竹は、たまに鬼の浮竹と鬼神の京楽が新しく住み始めた、自分の所有している高級マンションに顔を出すが、いつもは教師として多忙な毎日を送っていた。
その合間に祓い屋としての裏家業もするので、浮竹には休みという日があまりない。
その日は珍しく連休で、日ごろの疲れを癒そうと思っていたのだが、昔知り合った天狗が助けを求めてきた。
「助けてください、浮竹様。同じ天狗の子供が、風神様を怒らせてしまって、村が壊滅状態なのです」
「風神?」
「はい。もとはただの鎌鼬(かまいたち)でした。何百年も齢を重ねて、風神様になったのです」
「祓っていいのか?」
浮竹が、念のために聞いてみる。
「祓うというか封印するしかないでしょ。仮にも神になったのなら、封印だよ、浮竹」
京楽が、天狗の傷を見て生気を分けてやり傷を癒す。
「私も京楽の意見に賛成だ。神を祓うと災いが起こる」
白哉も京楽と同意見なようで、風神は封印するということで一致した。
「ここが村です」
「わぁ、派手にやられたねぇ」
煉瓦作りの家は、粉々になって倒れている。
幸い、死者はいないようで、風神を怒らせた天狗の子供も他の天狗たちと共に森に避難していた。
風神として祭られていた鎌鼬は、今も村を荒らしまくっていた。
「風神よ、聞こえるか。もう十分だろう。おとなしく自分の祠に帰れ!」
「天狗の子を探している。ずたずたに引き裂くまでは帰らぬ」
「このままでは、俺はお前を封印しないといけない。祠でおとなしく眠りについてくれないか」
「ふはははは、人間ごときの分際がこの風神様を封印するだと?」
風神は、狂ったように笑い、そのたびに竜巻が発生する。
「君が殺そうとしている相手は、ボクを式にしている術者だよ」
「なに、桜神の京楽か!ええい、忌々しい」
「私もいることを忘れないでほしいものだ」
「何、狂い咲きの冬の椿の王ではないか。なぜ、お前たちのような強く有名なあやかしが、人間風情の式に‥‥‥」
風神は、もしかして自分はすさまじい相手を敵に回したのだろうかと思うが、人間ごときを殺すなど容易いと、残っていた村の家をつぶしまくる。
「仕方ない、封印しよう。京楽、お前の血をもらえるか」
「もちろんだよ」
神の名をもつ者ほどの封印となると、浮竹一人の力ではかなわない。
京楽の血で陣を描き、その上に白哉が重ね書きをするように血を滴らせた。
浮竹も、自分の血を陣にまぜこむ。
あやかしと祓い屋の血でできた陣は、強力な鎖となった。
赤い鎖は風神を縛り付けて、大地に転がす。
「がああああ!我を風神と知っての狼藉かあああ!」
「浮竹、早く封印して帰ろう。最近休暇とれてないでしょ」
「ああ、そうだな。縛!」
「ぎゃあああああああああああ」
風神は、人の頭ほどの石に封じ込められた。
「この石を、風神の祠に入れておいてくれ。封印は200年はもつだろう。その頃には、風神も怒りを忘れているはずだ」
「すみません、浮竹様。式の方々。お礼をしたいのですが、今回禁を破って風神様の住処であられる祠を壊した天狗の子を、一緒に連れて行ってほしいのです。名前は、茉莉(まつり)。浮竹様の式にでもしてください」
浮竹と京楽と白哉は顔を見合わせる。
浮竹の屋敷はあやかしによって管理されているし、あやかしを居候させている。
プールには水虎、屋根裏部屋には座敷童、ペットして猫又。今更一人加わったところで、あまり大佐はない。
「式にするにはまだ力不足だ。屋敷に寝泊まりして修行してもらう。茉莉、それでいいか?」
「はい、浮竹様。助けられたこの命、いつか式となってお返しします」
「あーあ。浮竹ってば、天然のたらしなんだから」
「何か言ったか、京楽」
「殴ってから言わないでよ!」
浮竹は、京楽を殴った拳をさする。
「石頭だな?」
「ふふん、桜神のあだなは伊達じゃないよ」
「関係ない気もするが」
そこへ、白哉が椿の刀をだして、浮竹に見せる。
「流れた主の血を吸いたいといっている。よいか?」
「ああ、白哉の刀は妖刀だったな。いいぞ」
陣に混ぜられた浮竹の血だけを器用に妖刀は吸い取り、刃を赤くする。
「これで、私の力も増えた。礼をいう、主」
「ボクにも。ボクにも浮竹の生気ちょうだい?」
「疲れるからいやだ。おいで、茉莉。今後の家となる館に戻るから、車にのるんだ」
「はい、浮竹様!」
「天狗の子よ、主様と呼べ。名は軽々しく口にしていいものではない」
京楽はしょっちゅう浮竹の名を呼ぶが、名を呼ぶにはあやかしの場合は力がいる。
「主様、京楽様、白哉様、今日からお世話になります」
館に戻ると、茉莉の住処は座敷童と同じ屋根裏部屋となった。
食事などは自力でどうにかするらしいので、館を管理しているルキアや海燕の負担にはならない。
「しかし、あやかしが増えてきたな‥‥今度、何かを式jするために出かけるか」
「浮竹の式は、ボク一人で十分だから!」
「白哉もいる。あと、偵察用に鳥の式がほしい」
「じゃあそこら辺の雀でも」
「ああ、それもいいな。八咫烏でも捕まえようかと思っていたが、雀に霊力と妖力を注ぎ込んであやかしにしてしまって式にしてしまおう」
浮竹は、呪符で飛んでいた雀を一羽捕まえると、霊力を注ぎ、勝手に京楽の妖力も注ぎ込んだ。
「チュン、チュンチュン」
「お前は、今日から俺の式のチュン太だ」
浮竹にネーミングセンスはない。
「あはは、かわいい‥‥‥って、ボクの頭つつかないで!ボクは食べものじゃないよ!」
「お腹がすいているんだろう。米粒をやるからおいで」
「チュン!」
「ちっ、雀なら浮竹を取られることないと思ったのに。浮竹ってば、天然のたらしの上にあやかしに好かれるからなぁ。身を守ってあげるボクも、頑張らないと」
京楽は、そう言って浮竹の消えていったほうへ歩いていくのだった。
その合間に祓い屋としての裏家業もするので、浮竹には休みという日があまりない。
その日は珍しく連休で、日ごろの疲れを癒そうと思っていたのだが、昔知り合った天狗が助けを求めてきた。
「助けてください、浮竹様。同じ天狗の子供が、風神様を怒らせてしまって、村が壊滅状態なのです」
「風神?」
「はい。もとはただの鎌鼬(かまいたち)でした。何百年も齢を重ねて、風神様になったのです」
「祓っていいのか?」
浮竹が、念のために聞いてみる。
「祓うというか封印するしかないでしょ。仮にも神になったのなら、封印だよ、浮竹」
京楽が、天狗の傷を見て生気を分けてやり傷を癒す。
「私も京楽の意見に賛成だ。神を祓うと災いが起こる」
白哉も京楽と同意見なようで、風神は封印するということで一致した。
「ここが村です」
「わぁ、派手にやられたねぇ」
煉瓦作りの家は、粉々になって倒れている。
幸い、死者はいないようで、風神を怒らせた天狗の子供も他の天狗たちと共に森に避難していた。
風神として祭られていた鎌鼬は、今も村を荒らしまくっていた。
「風神よ、聞こえるか。もう十分だろう。おとなしく自分の祠に帰れ!」
「天狗の子を探している。ずたずたに引き裂くまでは帰らぬ」
「このままでは、俺はお前を封印しないといけない。祠でおとなしく眠りについてくれないか」
「ふはははは、人間ごときの分際がこの風神様を封印するだと?」
風神は、狂ったように笑い、そのたびに竜巻が発生する。
「君が殺そうとしている相手は、ボクを式にしている術者だよ」
「なに、桜神の京楽か!ええい、忌々しい」
「私もいることを忘れないでほしいものだ」
「何、狂い咲きの冬の椿の王ではないか。なぜ、お前たちのような強く有名なあやかしが、人間風情の式に‥‥‥」
風神は、もしかして自分はすさまじい相手を敵に回したのだろうかと思うが、人間ごときを殺すなど容易いと、残っていた村の家をつぶしまくる。
「仕方ない、封印しよう。京楽、お前の血をもらえるか」
「もちろんだよ」
神の名をもつ者ほどの封印となると、浮竹一人の力ではかなわない。
京楽の血で陣を描き、その上に白哉が重ね書きをするように血を滴らせた。
浮竹も、自分の血を陣にまぜこむ。
あやかしと祓い屋の血でできた陣は、強力な鎖となった。
赤い鎖は風神を縛り付けて、大地に転がす。
「がああああ!我を風神と知っての狼藉かあああ!」
「浮竹、早く封印して帰ろう。最近休暇とれてないでしょ」
「ああ、そうだな。縛!」
「ぎゃあああああああああああ」
風神は、人の頭ほどの石に封じ込められた。
「この石を、風神の祠に入れておいてくれ。封印は200年はもつだろう。その頃には、風神も怒りを忘れているはずだ」
「すみません、浮竹様。式の方々。お礼をしたいのですが、今回禁を破って風神様の住処であられる祠を壊した天狗の子を、一緒に連れて行ってほしいのです。名前は、茉莉(まつり)。浮竹様の式にでもしてください」
浮竹と京楽と白哉は顔を見合わせる。
浮竹の屋敷はあやかしによって管理されているし、あやかしを居候させている。
プールには水虎、屋根裏部屋には座敷童、ペットして猫又。今更一人加わったところで、あまり大佐はない。
「式にするにはまだ力不足だ。屋敷に寝泊まりして修行してもらう。茉莉、それでいいか?」
「はい、浮竹様。助けられたこの命、いつか式となってお返しします」
「あーあ。浮竹ってば、天然のたらしなんだから」
「何か言ったか、京楽」
「殴ってから言わないでよ!」
浮竹は、京楽を殴った拳をさする。
「石頭だな?」
「ふふん、桜神のあだなは伊達じゃないよ」
「関係ない気もするが」
そこへ、白哉が椿の刀をだして、浮竹に見せる。
「流れた主の血を吸いたいといっている。よいか?」
「ああ、白哉の刀は妖刀だったな。いいぞ」
陣に混ぜられた浮竹の血だけを器用に妖刀は吸い取り、刃を赤くする。
「これで、私の力も増えた。礼をいう、主」
「ボクにも。ボクにも浮竹の生気ちょうだい?」
「疲れるからいやだ。おいで、茉莉。今後の家となる館に戻るから、車にのるんだ」
「はい、浮竹様!」
「天狗の子よ、主様と呼べ。名は軽々しく口にしていいものではない」
京楽はしょっちゅう浮竹の名を呼ぶが、名を呼ぶにはあやかしの場合は力がいる。
「主様、京楽様、白哉様、今日からお世話になります」
館に戻ると、茉莉の住処は座敷童と同じ屋根裏部屋となった。
食事などは自力でどうにかするらしいので、館を管理しているルキアや海燕の負担にはならない。
「しかし、あやかしが増えてきたな‥‥今度、何かを式jするために出かけるか」
「浮竹の式は、ボク一人で十分だから!」
「白哉もいる。あと、偵察用に鳥の式がほしい」
「じゃあそこら辺の雀でも」
「ああ、それもいいな。八咫烏でも捕まえようかと思っていたが、雀に霊力と妖力を注ぎ込んであやかしにしてしまって式にしてしまおう」
浮竹は、呪符で飛んでいた雀を一羽捕まえると、霊力を注ぎ、勝手に京楽の妖力も注ぎ込んだ。
「チュン、チュンチュン」
「お前は、今日から俺の式のチュン太だ」
浮竹にネーミングセンスはない。
「あはは、かわいい‥‥‥って、ボクの頭つつかないで!ボクは食べものじゃないよ!」
「お腹がすいているんだろう。米粒をやるからおいで」
「チュン!」
「ちっ、雀なら浮竹を取られることないと思ったのに。浮竹ってば、天然のたらしの上にあやかしに好かれるからなぁ。身を守ってあげるボクも、頑張らないと」
京楽は、そう言って浮竹の消えていったほうへ歩いていくのだった。
教師と式9
浮竹は、神鬼の京楽から連絡を受けて、刑事であった浮竹のマンションにきていた。
刑事であった浮竹は、鬼神の京楽の血のせいで覚醒し、鬼になってしまい、警察も辞めてしまったという。
「いるか。俺だ。浮竹だ」
『ああ、ちょっと待ってね』
『‥‥‥‥誰?』
鬼となってしまった浮竹は、浮竹を見て鬼神の京楽の服の袖をつかんで隠れる。
「俺は、お前の友人だった者だ」
『友人?俺は知らない』
「じゃあ、新しく友人になろう」
『春水とらない?』
「ああ、とらない。俺には俺の京楽がいる」
式の京楽が、浮竹の隣から鬼の浮竹を見て、頭を撫でる。
『春水にそっくり‥‥‥でも、春水じゃない』
「鬼神の京楽、当分の生活費と新しいマンションを用意しておいた。家具などは揃っているから、着替えとかをもっていくだけで引っ越しできる」
浮竹は、200万は入っていそうな封筒を渡してくる。
『ごめんね。ありがとう。浮竹がこうなちゃったからねぇ。そろそろ引っ越したいとも思っていたんだよ。お金はいつか必ず返すから』
「別に返さなくてもいいぞ?金には困ってないしな」
『とりあえず、最低限の荷物をまとめて新しいマンションに引っ越しするよ。警察の中から怪異が生まれたと知られると厄介だし』
「オートロック式だ。不審者は通れないだろ」
『高そうなマンションなんだね。ありがとう』
浮竹と京楽と、一緒についてきた白哉は車に鬼となった浮竹と鬼神の京楽の荷物をつめこんで、彼らが新しく生活を始めるマンションまで案内した。
そこは、高級マンションであった。
「ここの最上階だ」
『教師の浮竹って、すごい金持ちなんだね』
「俺じゃなくって俺の親が財産をもっていただけだがな」
最上階の部屋に案内すると、鬼の浮竹がバルコニーに出てはしゃぐ。
『高いし広い!』
「落ちたら大変だから、ほどほどにしておけよ」
浮竹の言葉に、鬼の浮竹は頷く。
『春水、こっちきてくれ。いい眺めだぞ』
鬼神の京楽は、鬼の浮竹の元にいってバルコニーから下の景色を眺めて、息を止める。
ここから落ちたら、鬼とはいえただではすまないだろう。
広がる景色を見渡して、鬼神の京楽はぐうううと腹を鳴らした鬼の浮竹のために料理を作ってやることにした。
『食材、買いにいかなくちゃ』
「そうだろう思って、適当に買ってきておいた。白米もあるぞ。炊飯器でたくだけだ」
『何から何まで‥‥‥本当に、ありがとう』
鬼神の京楽は浮竹に頭を下げる。
「よせ。気にするな」
「そうだよ。浮竹の好意なんだから、かしこまらずに受けとっときなよ」
式の京楽はそう言って、自分の部屋のように寛ぎだしてテレビをつける。
「家具は、これで足りるか?」
浮竹の言葉に、今はぼんやりしている鬼の浮竹をそっとしておいて、京楽が部屋中を見た。
『うん、問題ないよ。むしろ前の家の家具より揃ってる』
「ちなみに、賃貸だがこの部屋は1月50万だ]
『うへあ。払えそうもない』
鬼神の京楽は遠い目をする。
「俺の好意だ。払う必要はない。それより、今後どうしていくつもりだ?警察を辞めて現金収入がなくなっただろう。いつまでの俺の金で生活をする気もないのだろう?」
『ああ、うん、ちょっと小説家にでもなろうかと思ってる』
「小説家?」
『うん。暇つぶしで書いた小説をコンテストに出したら、新人賞とったんだよね。そのつてで、小説書いてやっていくよ。売れなきゃまた何か考える』
「そうか。たまにあやかし退治でお前たちの力を借りることもあるかもしれないが、その時はよろしく頼む」
浮竹は、じっと鬼神の京楽の傍にいる鬼の浮竹の頭を撫でる。
「俺はお前の春水をとったりしないぞ」
『ほんとに?』
「これが俺の京楽だ」
式の京楽の首根っこをつかむ浮竹。鬼の浮竹は、匂いをかいで不思議そうに首を傾げる。
『春水と同じ匂いがする。でも、春水じゃない』
「主、そろそろ時間だ。会合があったのであろう?」
「ああ、白哉教えてくれてありうがとう。遅刻するところだった」
『祓い屋の会合かい?』
鬼神の京楽は、浮竹の心配をする。
『会合で、悪い術者と会うかもしれないよ』
予兆のような言葉だった。
「まぁ、祓い屋といっても犯罪まがいの奴もいるからな。慣れている」
「主、早くせねば遅刻するぞ」
「ああ、白哉先に車を出しておいてくれ」
「分かった。京楽も行くぞ」
「あああ、ボクは浮竹の傍にいるのおお」
「ばかなことを言っていないで、こい。兄jは主の命令に逆らうつもりか」
「そんな気はないけど‥‥‥‥」
京楽は、鬼の浮竹を気に入ったようだった。飴玉をあげて、頭をなでてから白哉のあとを追う。
「しばらくは、覚醒しきるまでぼんやりしていたり、精神年齢が低くなっているかもしれないが、1週間もすれば元に戻るだろう」
浮竹は鬼になった浮竹の様子を見て、そう判断した。
『そんなことも分かるの?』
「人が鬼になったのも見たことがある。たいていは力に飲まれて暴走するが、もう一人の俺なら大丈夫だろう。では、会合があるので行く」
『浮竹、行ってらっしゃい言える?』
『ん。ん-、行ってらっしゃい』
浮竹は、微笑んで鬼の浮竹の頭を撫でる。
「行ってきます」
祓い屋の会合は、出ないと最近のあやかし事情に疎くなるし、お互いどうやっているのか探り合う場所でもある。力を誇示する場の意味もあった。
浮竹は最強と恐れられた桜の花神に京楽と、従うはずのない高貴すぎる強い椿の花鬼の白哉を従えている。
他にも数体式をもっていた。
「あの男には会いたくない。会わないと言いのだが」
浮竹は、京楽と白哉を従えて会合に出たが、会いたくなかった人物は結局会合には来ず、安心して自分の館に戻るのだった。
刑事であった浮竹は、鬼神の京楽の血のせいで覚醒し、鬼になってしまい、警察も辞めてしまったという。
「いるか。俺だ。浮竹だ」
『ああ、ちょっと待ってね』
『‥‥‥‥誰?』
鬼となってしまった浮竹は、浮竹を見て鬼神の京楽の服の袖をつかんで隠れる。
「俺は、お前の友人だった者だ」
『友人?俺は知らない』
「じゃあ、新しく友人になろう」
『春水とらない?』
「ああ、とらない。俺には俺の京楽がいる」
式の京楽が、浮竹の隣から鬼の浮竹を見て、頭を撫でる。
『春水にそっくり‥‥‥でも、春水じゃない』
「鬼神の京楽、当分の生活費と新しいマンションを用意しておいた。家具などは揃っているから、着替えとかをもっていくだけで引っ越しできる」
浮竹は、200万は入っていそうな封筒を渡してくる。
『ごめんね。ありがとう。浮竹がこうなちゃったからねぇ。そろそろ引っ越したいとも思っていたんだよ。お金はいつか必ず返すから』
「別に返さなくてもいいぞ?金には困ってないしな」
『とりあえず、最低限の荷物をまとめて新しいマンションに引っ越しするよ。警察の中から怪異が生まれたと知られると厄介だし』
「オートロック式だ。不審者は通れないだろ」
『高そうなマンションなんだね。ありがとう』
浮竹と京楽と、一緒についてきた白哉は車に鬼となった浮竹と鬼神の京楽の荷物をつめこんで、彼らが新しく生活を始めるマンションまで案内した。
そこは、高級マンションであった。
「ここの最上階だ」
『教師の浮竹って、すごい金持ちなんだね』
「俺じゃなくって俺の親が財産をもっていただけだがな」
最上階の部屋に案内すると、鬼の浮竹がバルコニーに出てはしゃぐ。
『高いし広い!』
「落ちたら大変だから、ほどほどにしておけよ」
浮竹の言葉に、鬼の浮竹は頷く。
『春水、こっちきてくれ。いい眺めだぞ』
鬼神の京楽は、鬼の浮竹の元にいってバルコニーから下の景色を眺めて、息を止める。
ここから落ちたら、鬼とはいえただではすまないだろう。
広がる景色を見渡して、鬼神の京楽はぐうううと腹を鳴らした鬼の浮竹のために料理を作ってやることにした。
『食材、買いにいかなくちゃ』
「そうだろう思って、適当に買ってきておいた。白米もあるぞ。炊飯器でたくだけだ」
『何から何まで‥‥‥本当に、ありがとう』
鬼神の京楽は浮竹に頭を下げる。
「よせ。気にするな」
「そうだよ。浮竹の好意なんだから、かしこまらずに受けとっときなよ」
式の京楽はそう言って、自分の部屋のように寛ぎだしてテレビをつける。
「家具は、これで足りるか?」
浮竹の言葉に、今はぼんやりしている鬼の浮竹をそっとしておいて、京楽が部屋中を見た。
『うん、問題ないよ。むしろ前の家の家具より揃ってる』
「ちなみに、賃貸だがこの部屋は1月50万だ]
『うへあ。払えそうもない』
鬼神の京楽は遠い目をする。
「俺の好意だ。払う必要はない。それより、今後どうしていくつもりだ?警察を辞めて現金収入がなくなっただろう。いつまでの俺の金で生活をする気もないのだろう?」
『ああ、うん、ちょっと小説家にでもなろうかと思ってる』
「小説家?」
『うん。暇つぶしで書いた小説をコンテストに出したら、新人賞とったんだよね。そのつてで、小説書いてやっていくよ。売れなきゃまた何か考える』
「そうか。たまにあやかし退治でお前たちの力を借りることもあるかもしれないが、その時はよろしく頼む」
浮竹は、じっと鬼神の京楽の傍にいる鬼の浮竹の頭を撫でる。
「俺はお前の春水をとったりしないぞ」
『ほんとに?』
「これが俺の京楽だ」
式の京楽の首根っこをつかむ浮竹。鬼の浮竹は、匂いをかいで不思議そうに首を傾げる。
『春水と同じ匂いがする。でも、春水じゃない』
「主、そろそろ時間だ。会合があったのであろう?」
「ああ、白哉教えてくれてありうがとう。遅刻するところだった」
『祓い屋の会合かい?』
鬼神の京楽は、浮竹の心配をする。
『会合で、悪い術者と会うかもしれないよ』
予兆のような言葉だった。
「まぁ、祓い屋といっても犯罪まがいの奴もいるからな。慣れている」
「主、早くせねば遅刻するぞ」
「ああ、白哉先に車を出しておいてくれ」
「分かった。京楽も行くぞ」
「あああ、ボクは浮竹の傍にいるのおお」
「ばかなことを言っていないで、こい。兄jは主の命令に逆らうつもりか」
「そんな気はないけど‥‥‥‥」
京楽は、鬼の浮竹を気に入ったようだった。飴玉をあげて、頭をなでてから白哉のあとを追う。
「しばらくは、覚醒しきるまでぼんやりしていたり、精神年齢が低くなっているかもしれないが、1週間もすれば元に戻るだろう」
浮竹は鬼になった浮竹の様子を見て、そう判断した。
『そんなことも分かるの?』
「人が鬼になったのも見たことがある。たいていは力に飲まれて暴走するが、もう一人の俺なら大丈夫だろう。では、会合があるので行く」
『浮竹、行ってらっしゃい言える?』
『ん。ん-、行ってらっしゃい』
浮竹は、微笑んで鬼の浮竹の頭を撫でる。
「行ってきます」
祓い屋の会合は、出ないと最近のあやかし事情に疎くなるし、お互いどうやっているのか探り合う場所でもある。力を誇示する場の意味もあった。
浮竹は最強と恐れられた桜の花神に京楽と、従うはずのない高貴すぎる強い椿の花鬼の白哉を従えている。
他にも数体式をもっていた。
「あの男には会いたくない。会わないと言いのだが」
浮竹は、京楽と白哉を従えて会合に出たが、会いたくなかった人物は結局会合には来ず、安心して自分の館に戻るのだった。
夏
夏がやってきた。
尸魂界にも夏がやってくる。今年も猛暑らしく、恋次は非番の日、扇風機をかけて暑さにだれて伸びていた。
「恋次、おらぬのか恋次」
「暑い~~~~~。うおおお、隊長の幻聴が聞こえる」
「恋次」
ひやりとした冷たい手が、頬にあたる。
「た、隊長!?」
恋次の家は、席官に与えられる一角に建っていた。
わざわざ白哉が訪れてくれるなんて思わず、暑さで脱ぎ散らかしていた服をぱぱっと着て、白哉の前に正座する。
「隊長、なんでしょうか!今日は隊長も非番の日のはずですよね」
「ルキアがクーラーが欲しいというので家にとりつけたのだ。暑い中だれているであろう兄を心配していた。かき氷も作るし冷えたスイカも切る故、兄も誘おうと思って」
恋次と白哉は付き合っている。
仲はルキアと一護くらいしかしらないが。
「それで、わざわざ俺を誘いに?」
「想い人に会うのに、理由が必要ではないと思うが、念のため理由をつけてみた」
「いや、誘ってくれるだけでありがたいっす。一緒に行きましょう」
「私は家に帰るだけなのだがな。こう暑いと長距離を歩くのはかなわぬ。瞬歩でいくぞ」
「はい、隊長!」
恋次は尻尾を振る大型犬のように白哉のあとを瞬歩でついていく。
「ついたぞ」
「ぬおおお、これがクーラーの威力‥‥‥涼しい」
現世に何度も訪れている恋次には、クーラーはさして珍しいものではないように見えるが、尸魂界にあるクーラーを見るのは初めてだった。
「さすが朽木家‥‥‥」
「浦原の手で、扇風機はもう普及したが、クーラーはまだ貴族の家くらいしかない。あと執務室くらいだな」
「え、執務室クーラーついたんすか」
「ああ、そうだ」
「やったあ!暑くて書類仕事するのも億劫だったんすよね」
白哉は、一度消えると恋次の元にかき氷をもってきた。
「苺シロップでよかろう。兄の髪と同じ色だ」
「俺はなんでもいいっすよ。隊長も食べないんすか?」
白哉は、恋次が食べようとするかき氷を一口食べてしまう。
「た、隊長!」
綺麗な白い顔(かんばせ)が近くなり、恋次は思わずかき氷の入った器を落としそうになった。
「危ない」
「危ないのは隊長の行動です。俺は隊長に惚れてるんすよ。そんなことされたら、誘っているのかと思ってしまいます」
「そうだとしたら?」
唇を苺のシロップがついたので舐める白哉の行動が、艶めかしいものに見えて恋次は喉を鳴らす。
「その、今夜いいですか」
「よいであろう。逢瀬に使う別邸にもクーラーを用意しておいた。暑い中、汗だくにはなりたくないからな」
かき氷を食べ終えると、ルキアがやってきて冷えたスイカをもってきてくれた。
「兄様の邪魔はしておらぬだろうな、恋次」
「ルキア、俺は今幸福なんだ」
「? よくわからぬが、兄様に失礼のないようにな。こら一護、勝手にかき氷のシロップをあけるな。今日は苺の日なのだ!」
「いいだろ、別に。俺はメロンがいい」
「一護!」
遠くから聞こえてくるルキアと一護の声を聴きながら、恋次は白哉と逢瀬をできると知って、すでに昇天しかけていた。
「恋次、恋次」
「はっ!」
「仕方なのないやつだ」
白哉は、触れるだけのキスを恋次に与える、
恋次は、大型犬だったら尻尾を振りすぎていただろう。
「隊長、続きは?」
「夜になってからだ」
「ううう、生殺しだああ」
恋次はなんとか夜まで我慢して、別邸で白哉を抱くのであった。
尸魂界にも夏がやってくる。今年も猛暑らしく、恋次は非番の日、扇風機をかけて暑さにだれて伸びていた。
「恋次、おらぬのか恋次」
「暑い~~~~~。うおおお、隊長の幻聴が聞こえる」
「恋次」
ひやりとした冷たい手が、頬にあたる。
「た、隊長!?」
恋次の家は、席官に与えられる一角に建っていた。
わざわざ白哉が訪れてくれるなんて思わず、暑さで脱ぎ散らかしていた服をぱぱっと着て、白哉の前に正座する。
「隊長、なんでしょうか!今日は隊長も非番の日のはずですよね」
「ルキアがクーラーが欲しいというので家にとりつけたのだ。暑い中だれているであろう兄を心配していた。かき氷も作るし冷えたスイカも切る故、兄も誘おうと思って」
恋次と白哉は付き合っている。
仲はルキアと一護くらいしかしらないが。
「それで、わざわざ俺を誘いに?」
「想い人に会うのに、理由が必要ではないと思うが、念のため理由をつけてみた」
「いや、誘ってくれるだけでありがたいっす。一緒に行きましょう」
「私は家に帰るだけなのだがな。こう暑いと長距離を歩くのはかなわぬ。瞬歩でいくぞ」
「はい、隊長!」
恋次は尻尾を振る大型犬のように白哉のあとを瞬歩でついていく。
「ついたぞ」
「ぬおおお、これがクーラーの威力‥‥‥涼しい」
現世に何度も訪れている恋次には、クーラーはさして珍しいものではないように見えるが、尸魂界にあるクーラーを見るのは初めてだった。
「さすが朽木家‥‥‥」
「浦原の手で、扇風機はもう普及したが、クーラーはまだ貴族の家くらいしかない。あと執務室くらいだな」
「え、執務室クーラーついたんすか」
「ああ、そうだ」
「やったあ!暑くて書類仕事するのも億劫だったんすよね」
白哉は、一度消えると恋次の元にかき氷をもってきた。
「苺シロップでよかろう。兄の髪と同じ色だ」
「俺はなんでもいいっすよ。隊長も食べないんすか?」
白哉は、恋次が食べようとするかき氷を一口食べてしまう。
「た、隊長!」
綺麗な白い顔(かんばせ)が近くなり、恋次は思わずかき氷の入った器を落としそうになった。
「危ない」
「危ないのは隊長の行動です。俺は隊長に惚れてるんすよ。そんなことされたら、誘っているのかと思ってしまいます」
「そうだとしたら?」
唇を苺のシロップがついたので舐める白哉の行動が、艶めかしいものに見えて恋次は喉を鳴らす。
「その、今夜いいですか」
「よいであろう。逢瀬に使う別邸にもクーラーを用意しておいた。暑い中、汗だくにはなりたくないからな」
かき氷を食べ終えると、ルキアがやってきて冷えたスイカをもってきてくれた。
「兄様の邪魔はしておらぬだろうな、恋次」
「ルキア、俺は今幸福なんだ」
「? よくわからぬが、兄様に失礼のないようにな。こら一護、勝手にかき氷のシロップをあけるな。今日は苺の日なのだ!」
「いいだろ、別に。俺はメロンがいい」
「一護!」
遠くから聞こえてくるルキアと一護の声を聴きながら、恋次は白哉と逢瀬をできると知って、すでに昇天しかけていた。
「恋次、恋次」
「はっ!」
「仕方なのないやつだ」
白哉は、触れるだけのキスを恋次に与える、
恋次は、大型犬だったら尻尾を振りすぎていただろう。
「隊長、続きは?」
「夜になってからだ」
「ううう、生殺しだああ」
恋次はなんとか夜まで我慢して、別邸で白哉を抱くのであった。