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黒猫と白猫の亜人42

「ねぇ、白哉君。ボクのイメージってどんなかんじ?」

「ん?兄は‥‥‥浮竹が大好きなアホだな」

白哉に面と向かってアホと言われて、京楽はズーンと沈む。

「兄はアホでもいいのだぞ。明るい兄がいるおかげで、浮竹は健やかでいられる。兄は猫になるとかわいいしな。兄がどうであれ、浮竹は兄を愛しているだろう」

「うん、それは知ってる。最近、サタン君にアホって言われて、言い返そしたけど周りの猫からアホって言われて悩んでたんだよ」

アホでいることに、罪はない。

アホでいたほうが、楽しいこともある。

肝心な場面さえしっかりしておけば、アホだってアホなりにやっていける。

「お主、そんなことを考えるなどやはりアホだのお。我もアホだが」

サタンは、自分を偉大といいながら、たくさんの雌猫としっぽりしたりするアホだと自分でも認めていた。

「アホであるがゆえにたまにミスもするが、アホであるがゆえに許される。がはははは!我はサタン!アホ猫キングである!」

「アホ猫キング。そこまで自信満々に言えるなんてすごい」

京楽は、ちょっときらきらした瞳でサタンを見る。

「夜にな、ごにょごにょ」

サタンからごにょごにょを教わって、京楽は実行に移した。

「このダアホがあああああ」

「ぎにゃああああああああ」

京楽は、ごにょごにょしたテクニックで夜をしっぽりしようとして、浮竹に蹴られていた。

「く、サタン君、上級者じゃないとごにょごにょはできないみたい」

京楽は力尽きた。

「たまにはサタンのところで寝ようっと」

「ええ、浮気!?」

京楽が立ち上がって、浮竹を止めようとする。猫の姿になっていたが。

浮竹も猫の姿で、サタンのところに行くことしたが、自分だけで行くと言い張った。

「俺は、サタンと一緒にただしゃべって寝たいだけだ。浮気じゃない」

「サタン君のところには今3匹の夫人がいて、子猫もたくさんいるんだよ?」

「だからいいんじゃないか。家族の一員になれたかんじで。じゃあ、俺はサタンのところに行ってくる。お前は勝手にしろ」

「そんなあああ」

浮竹は、本当にサタンの元に行ってしまった。

「よう浮竹。3夫人と子猫たちと共に、来訪を歓迎するぞ。我はサタン!アホ猫キングなり!ワハハハハハハ!!」

「アホ猫キング!」

浮竹は目をきらきらさせていた。

『ふふ、楽しんでるみたいだね』

「うわぁ、びっくりした」

「ぎにゃああああ」

サタンの影から幽鬼の京楽が出てきて、浮竹はびっくりする。

サタンにいたっては、ひっくり返っていた。

『あはははは!サタン君ひっくり返ってる。おかしー』

「う、うるさい!我の影からいきなり出てくるからだ!我は偉大なる悪魔猫サタンなり!」

「悪魔王じゃなくなってる」

浮竹は楽しそうに笑う。

「お前がきてるってことは、魔王の俺も来てるのか?」

『うん。白哉君ところに、君たちを魔王城に招待したいって、言いにいってるよ』

「そうか。じゃあ、魔王の俺のところに行こう」

「魔王城か。我も行ってみたい」

『いいよ』

「え、いいのか?一応、元悪魔王だぞ。今は猫だけど」

浮竹が心配そうな声を出すと、幽鬼の京楽は楽しそうにまだ笑っていた。

『浮竹もサタン君のこと気に入ってるからね。別に問題はないはずだよ』

白哉のところに行くと、魔王の浮竹と京楽がいた。

「京楽のダアホ」

「浮竹、ごめんてばぁ」

『お、サタンも一緒か』

『サタン君も魔王城にきたいんだって。いいよね?』

『ああ、別に構わんぞ。それにしてもかわいい姿になったな、元悪魔王サタン?』

「にゃっ!魔王め。我は偉大なる悪魔猫サタンなり!」

こうして、サタンも一緒に皆で魔王城に向かった。

サタンは猫だが、元悪魔王だけあって、紅茶も飲むし紅茶クッキーも食べた。

猫だけど。

『チュールいるか?』

「は、はやくよこせ!ここのチュールはなんなのだ!うますぎる!!」

サタンはチュール一本で魔王浮竹の手に落ちた。

ちょろすぎた。

『サタン君って、やっぱちょろいよね』

「ふ、それもまた我の魅力なのだ。我はサタン!偉大なる悪魔猫ぞ!アホ猫キングでもある!」

その宣言に、魔王の浮竹がぶっと吹き出して笑い出した。

『サ、サタン、お前こんなにかわいくなってしまって』

「チュールもっとよこせ」

サタンはチュールをいっぱいもらった。

浮竹と京楽も、沢山ではないがそれなりにもらって、満足していた。

魔王の浮竹は、猫じゃらしを取り出して、サタンの前で振る。

「にゃっ!」

サタンは猫なので本能に抗えない。

「にゃにゃにゃ!我はこの程度では‥‥うにゅ、楽しいのだああ」

サタンが魔王の浮竹と幽鬼の京楽と仲良くしているシーンを、浮竹と京楽は和んでみている。

「魔王浮竹、覚悟!」

突然、下女の一人がナイフを手に魔王の浮竹を刺そうとする。

それを、京楽がナイフを叩き落とした。

「ボクの友人に手を出すのは、許さないよ?」

『君の言う通りだ。ボクの浮竹に手を出そうとしたね?消えて』

「ぎゃあああああああ」

下女は干からびて灰となった。

「がははははは!やるな、幽鬼の京楽」

『ふふ、サタン君も猫だけど元悪魔王なのに、魔王の国にくるなんて度胸あるね?』

「猫なってしまった我が動いた程度では、悪魔族は動かぬ。悪魔族はもともと魔族と共存しているしな。がはははは、我は魔王、お主と同盟を築いてもいいぞ」

『お、いいな。俺は和平条約を結びたい』

「よかろう。我が血をもって、我ら悪魔族は魔族と和平条約を結ぶものとする!」

サタンは、猫になっても悪魔族の長であった。その日、悪魔族たちは皆、魔族との和平条約の締結を喜んだ。

「では、運動してくるゆえ、浮竹、京楽、お主らもつきあえ」

サタンは、浮竹と京楽を連れて魔王城を散策しはじめる。

「魔王と平和条約結べるんだな、サタンは」

「すごいね」

「はははは、我は偉大なり!我はサタン!悪魔猫であるぞ!」

魔王城でも、サタンはサタンなのであった。



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黒猫と白猫の亜人47

「にゃーん(しっぽりしない?)」

「にゃんにゃん(京楽さん、前みたいにしっぽりしましょうよ)」

猫の発情期の季節がやってきた。雌猫たちは亜人でもあるが猫の姿をとれる浮竹と京楽ににゃんにゃん言いながら、交尾を迫ってくる。

猫の亜人とただの猫の間には子が成せないが、それでも浮竹と京楽は人気があって、猫の姿でいると襲われそうなので人の姿をしていた。

「あいにくだけど、浮竹と結婚してるからしっぽりはできないよ」

「俺もだ。しっぽりはできない。しっぽりするなら、サタンはどうだ?」

「にゃあにゃあ(あら素敵。サタン様の子を宿したいわ)」

「にゃーーん(サタン様がいたわ!夫人じゃないけどしっぽりしましょう)」

雌猫たちは、こぞってサタンの元に赴いた。

「わはははは、苦しゅうないぞ。夫人にはできぬが、我としっぽりしたいかわい子ちゃんはまとめてしっぽりしてやるぞ」

サタンががぜんやる気で、たくさんの猫としっぽりした。

ただし、一応避妊はしていた。

たくさんの猫との間に子供ができたら流石にやばい。

一気に50匹くらい子猫が増えてしまうかもしれない。なので、サタンは白哉の作った猫用コンドームをつけてたくさんの雌猫たちとしっぽりした。

雌猫たちはサタンが避妊しているのに最初は文句を言っていたが、そのテクニックで天国を味わい、満足して去っていく。

「うむ、流石に大勢を相手にして疲れたな。しかし、夫人であるジョセフィーヌちゃんとリリムちゃんとバニーちゃんとは発情期の間にしっぽりして子猫を産んでもらわねば」

サタンの子は人気が高く、貴族の間で予約ができるほど貰い手がいる。

なので、白哉がサタンに子を夫人との間にならばもうけてもいいと言っていて、サタンもかわいい我が子をまたみたいので、猫になって3回目の発情期の夫人たちの間に子を12匹もうけた。

「かわいいねぇ」

「かわいいなぁ」

「かわいい」

うまれてよちよち歩きするサタンの子猫たちは、やっぱり小さな黒い翼があるが悪魔ではない。

浮竹と京楽も白哉も、そんなサタンの子猫がかわいすぎてもふっている。

「にゃーん」

まだ子猫なので、何を言っているのか分からないが、きっとお腹がすいているのだろうと夫人の元に戻すと、よちよち歩きでおっぱいのところにいって母乳を飲みだす。

「にゃーん(浮竹さん京楽さん、白哉様にありがとうと言って。白哉様のお陰で今があるのだから)」

ジョセフィーヌちゃんの言葉を白哉に伝えると、白哉は淡く微笑みながらジョセフィーヌちゃんの頭を撫でる。

「かわいい、私の家族だ」

「む、では我も家族か?」

「そうなるな。サタンも私の家族だ」

「ぬおおおおおん。人と家族になるなんて嫌だっと思っていたが、白哉となら家族になってもかまわないのである。我はサタンぞ!」

サタンは漢泣きして、それからひょいっと白哉の肩に乗る。

「苦しゅうないぞ。我をもふるがいい」

白哉は、サタンをもふった。

猫じゃらしで遊んで、チュールをあげる。

「あ、俺も」

「ボクも」

猫の姿になった浮竹と京楽も白哉と遊んでチュールをもらった。

「うーん、やっぱチュールおいしいな」

「おいしすぎる」

浮竹と京楽は猫の間は味覚も猫なので、チュールのおいしさの虜になる。

白哉は猫じゃらしをサタンだけでなく、浮竹と京楽にもむける。

「にゃにゃ!」

「にゃ!」

猫の亜人とはいえ、猫でいる時間も多いので、本能的に猫じゃらしを追いかける。

『おーい、遊びにきたぞ』

そこに、魔王の浮竹が現れた。後ろには幽鬼の京楽もいた。

『お、遊んでいるのか?白哉、俺にも猫じゃらしを』

「兄の分までないので、私が使っているこれを使え」

魔王の浮竹は、白哉から猫じゃらしを受け取ると、浮竹と京楽の前で振る。

「にゃっ!」

「にゃん!」

すっかり猫モードになった浮竹と京楽は、猫じゃらしにじゃれつく。

『京楽、ねずみのおもちゃあっただろ。使ってみろ』

『うん』

ねずみの形をした走るおもちゃに、浮竹と京楽が夢中になる。

『かわいいなぁ。やっぱほしい』

「いくら魔王の兄とはいえ、浮竹と京楽は私のものだ。やれぬぞ」

白哉は、浮竹と京楽の家族である。

『分かっている。言ってみただけだ。この二人を連れて魔王城に行くが、問題ないな?』

「かまわぬ。ただ、最近京楽がちょっと食べすぎなので、チュールは数を控えるように」

『だそうだぞ、黒猫の京楽』

「えー。ダイエット必要かな?」

『そこまではいかないでしょ。運動をその分しっかりすればいいだけだよ』

幽鬼の京楽が、黒猫の自分を抱いてその体重にそれほど重くないと言う。

「昨日は浮竹としっぽりしたしそれなりに運動に」

浮竹から猫パンチをもらい、京楽は黙り込む。

ふしゃあああと逆毛を立てる浮竹。

京楽は耳と尻尾をたらして、反省する。

「それでよろしい」

「はい」

『別に隠さなくていいだろう。お前たちは結婚してるんだし』

『そうだね。結婚してるんだし』

「それでも恥ずかしいものは恥ずかしいんだ!」

浮竹は猫の姿のまま、魔王の自分の腕に抱かれて顔をこすりつける。

『くすぐったいぞ』

浮竹は、ずっとそうしているのであった。照れ隠しのつもりが、甘えたかんじになるのであった。


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むちゅー

「浮竹、マニハニー」

そう言って、服を全部脱いでベッドにダイブしてきた京楽の顔面を、浮竹は蹴り飛ばした。

「服を着ろ!せめてパンツははけ!」

「うふふふ、浮竹の照れ屋さん♡」

もうだめだこいつって視線で、浮竹ははりせんを取り出すと京楽の頭を殴りまくる。

「あいたたたた。愛が痛いなぁ」

「誰が愛だ!お前はフルチンになるしか能がないのか!」

「うん、ボクフルチン大好き。解放感がしてすーっとするよ」

浮竹は、斬魄刀を持ち出してきた。

すでに浅打から双魚理に進化した斬魄刀を鞘をつけたまま、京楽の股間を殴る。

「ああああ、ああああ、ああああいくうううう」

京楽はいっていた。

「うげ」

鞘に、精液がこびりついた。

「ぎゃあああ、俺の鞘が!除菌しないと!」

「うふふ、昂ったボクを鎮めて浮竹?」

ぼぎゃ。

そんな音を京楽は、股間から出した。

「ぎゃあああああ、骨折したあああ」

骨もないので骨折でもなく、ただの打撲であるがおっきしている箇所を、躊躇なく殴るのは流石浮竹というところだろうか。

「お前なんて知らん。昼までそうしてろ」

浮竹は冷たい声で、学院まで登校してしまった。

「ボクのマッスルキャノンが。あいたたたた」

京楽は回道の才能はあまりないが、ないよりはまだしだと苦手な回道を自分の股間にかける。

やがて復活した京楽は、浮竹を求めて登校する。

授業に出ていた浮竹は、1時間遅刻してやってきた京楽に舌打ちする。

「ええ、浮竹いま舌打ちしなかった?」

「気のせいだ」

なんだかんだといっても、二人は仲がいい。

昼食の時間は食堂で一緒にAランチを頼んだ。

「あ、エビフライ、ボクの分もあげるね」

「じゃあ、千切りキャベツをやろう」

等価交換になっていないが、交換する。

「ふー。次の授業、剣の稽古だって。また浮竹とペアだね」

「他に強い相手がいないからな」

特進クラスでは、京楽と浮竹がずば抜けており、ついてこれる他の生徒はいなかった。

「また、山じいが稽古つけてくれないといいけど」

「先生が稽古つけてくださるのは稀だ」

そして、午後の授業は山本総隊長の指揮の元の剣の稽古だった。

「こい、わっぱども」

浮竹と京楽は、木刀で山本総隊長に切りかかるがかすりもしない。

「それだけか。こちらからいくぞ」

山本総隊長は木刀で浮竹を打ち負かし、京楽が勢いよく振るってきた木刀を木刀で折ってしまった。

折れた木刀は、今日の朝の傷がまだ完全い癒えていない股間にあたった。

「や、山じい酷い」

「す、すまん」

山本総隊長も、股間にいくとは思わずに、ついつい謝る。

「京楽、お前がアホだからだ」

浮竹は、とどめとばかりに股間を蹴り上げた。

京楽は嬉し涙を流しながら気絶する。

「浮竹、お主慈悲というものは」

「ありません。京楽に関しては仏の心などいりません」

「そ、そうか」

でも、浮竹は気を失った京楽に回道をかけてやる。浮竹の回道は自分を癒すためにも使うので、それなりに効果はあった。

「浮竹、マイハニー!」

京楽が蘇り、浮竹に抱きつこうとしてくるのを避ける。

「ふふふふ、逃げなくてもいいじゃない。むちゅーーーー」

キスを迫る京楽。浮竹は山本総隊長の後ろに隠れた。

むちゅーと、京楽は山じいとキスをする。

「もぎゃああああああ!?」

「このしれ者がああああ!」

「うぎゃあああああああああ」

山じいにこてんぱんにされる京楽を見て、笑う浮竹だった。ちなみに全治2週間のけがを負うのであった。



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黒猫と白猫の亜人46

浮竹は、人の姿でいる時に人攫いにおそわれそうになり、魔法を放った。炎の魔法であったが、人攫いたち魔法の護符で防御してしまう。

「この!」

浮竹が2発目の魔法を放とうとした時、甘い香りがした。

「え、あ‥‥‥俺は、誰だ?」

人攫いは、浮竹に特殊なお香をかがせて、拉致しようとした。

「あ、お前たちは誰だ?」

「白哉様の使いです」

「白哉の」

浮竹は一時的に記憶を忘れる忘れ香を、かがされていた。何も分かないが、白哉のことだけは覚えていた。

「白哉様がお待ちです。さぁ、一緒に行きましょう」

「うん」

馬車に乗ろうとしたところで、京楽が駆けつけてきた。

「この、邪魔をするな!今回必要なのはこの見目麗しい白猫の亜人なんだ!」

「浮竹を離せ!」

京楽は、馬車ごと風の魔法でずたずたに切り裂く。浮竹の身には一切傷がつかないように。

「ぎゃああああああ」

風の魔法で、人攫いたちはずたずたになって、死んでしまう。

「浮竹、大丈夫?」

「‥‥‥お前は、誰だ?」

「え?あ、このお香忘れ香!くそ、こんなもの!」

京楽は、お香を蹴り飛ばす。

忘れ香とは、嗅いだ者の記憶を一時的に消すお香だった。

「浮竹、君とボクは結婚しているんだ。ほら、お揃いの結婚指輪してるでしょ?」

「結婚‥‥‥白哉は?白哉はどこだ?」

浮竹は、白哉のことは覚えているようで、京楽を警戒していた。

「仕方ない‥‥猫の姿になって。白哉君のところに連れていくから」

「分かった」

浮竹は白猫の姿になると、京楽の手に抱きかかえられて、主である白哉の屋敷まで帰ってきた。

「白哉君、浮竹が‥‥‥‥‥」

事情を白哉に話すと、白哉は忘れ香の効果を消すお香を取り寄せると約束してくれた。

「白哉、抱いていてくれ。お前が主ということ以外、何も思い出せない」

浮竹は、猫の姿で白哉の腕の中にいた。

それから1週間経ったが、まだ浮竹は記憶を取り戻さず、忘れ香の効果を消すというお香も手に入り辛くて、難儀していた。

「白哉、頭撫でてくれ」

浮竹はすっかり白哉になつき、白哉の言うことをよく聞くが、京楽のことは忘れたままで、京楽と二人きりにすると怖がって、白哉を呼んで泣き出してしまうので、白哉と一緒にさせていた。

「浮竹さん、あんた白哉さんと距離近すぎ!」

「恋次だっけ。俺と白哉は結婚した仲なんだぞ」

「なんですと!?」

恋次が驚いて「酷いです、白哉さん、俺とは遊びだったんですか」とか言い出すので、白哉はとりあえず恋次の赤い頭を殴っておいた。

今の浮竹は、何も知らない子猫のように純真だった。

「京楽、このままでは浮竹はいつまで経っても記憶を戻さぬ。忘れ香の効果を消すお香は出回っていないのだ。かなり闇マーケットまで探したが見つからなかった」

「そんな!」

「魔王の、浮竹の手を借りるのはどうであろうか」

「魔王の!」

京楽はその手があったかと、嫌がる浮竹を抱きしめて、魔王城までテレポートする。

「ここはどこだ?」

『お、白猫の俺!少しだけ久しぶりだな』

「俺と同じ顔?お前は誰だ」

『え?』

『どうしたの、浮竹』

『白猫の俺が、俺のこと誰だって‥‥‥』

京楽が事情を説明する。

魔王の浮竹は、魔王城近辺でも忘れ香の効果を消すお香など出回っていないので、仕方なく自分の手を切った。

『ちょっと、浮竹?』

『魔王の血は、万能薬の代わりを果たす。一番手っ取り早い』

そう言って、血の数滴を浮竹に飲ませた。

血を飲んだ浮竹は、目を数度瞬かせた。

「魔王の俺!今、怪我治すからな?」

浮竹は、全てを思い出したようで、まずは自分のために傷を負った魔王の自分の傷を、魔法で癒そうとする。

『あ、そんなことしなくても勝手に塞がるぞ』

「それでも治す!」

浮竹は、魔法で魔王の自分の怪我を癒した。

「浮竹、ボクのこと思い出した?」

ゆっくり京楽が聞いてくるので、浮竹は長い息をつきながら。

「エロで色欲魔の京楽。俺の結婚相手で恋人で夫」

『エロの色欲魔。君、旦那なのにそう思われてるんだね』

幽鬼の京楽がクスリと笑う。

「ボクがエロいのは認めるけど色欲魔はないでしょ。君だけを愛してるよ?」

「うん」

浮竹は、京楽に抱きしめられながら、口づけをする。

『元に戻ってよかったな、白猫の俺!』

「わざわざ血を与えなくても、エリクサーとかあっただろうに」

『探すのがめんどくさかった。それに俺の存在まで忘れてしまっているとか、認めたくなかったからな』

『浮竹は、君の身を案じて血を与えたんだよ。本来、魔王の血は与えることは厳禁なんだけどね』

「そうなのか。すまない」

浮竹は、魔王の自分の頭を撫でる。

『ああああ、かわいい』

魔王の浮竹は、猫に姿になった浮竹を頬ずりして撫でまくり、喉の下をくすぐってゴロゴロいわせて、猫じゃらしで遊びはじめる。

「ああ、ボクの浮竹が‥‥‥この1週間ほとんど会話してなかったんだけど、まぁいいか」

記憶を失っている間、京楽のことを怖がり、二人きりになると浮竹は悲鳴をあげて泣き出すので、京楽は1週間一人で過ごし、浮竹の身は白哉に任せていた。

「魔王の浮竹ってすごいね。血が万能薬か‥‥‥神の秘薬エリクサーにも負けないね」

「にゃああん」

すっかり猫になって、猫じゃらしに夢中になる浮竹の隣で、同じく黒猫の姿になった京楽が猫じゃらしに反応する。

「ボクも遊んで」

『かまわんぞ?黒猫の京楽も、猫の姿になるとかわいいな』

京楽は、魔王城にいる間ずっと浮竹の傍にいて、傍にいられなかった1週間を埋めるようにしていた。

魔王城で豪華な食事をもらい、昼寝をして、チュールをもらい、猫用シャンプーで体を洗ってもらって、ブラッシングされて、猫じゃらしで遊んでもらう。

魔王の浮竹も幽鬼の京楽も、浮竹と京楽を甘やかす。

「はぁ、極楽」

「極楽だな」

魔王の浮竹と一緒に風呂に入っていた。薔薇風呂だった。猫の姿で猫かきをして泳いでいた。

『溺れないようにな?』

「大丈夫だ。いざとなったら人の姿に戻る」

「ボクも」

魔王の浮竹は、二人をうんと甘やかして、幽鬼の京楽と一緒に、猫の姿のままの浮竹と京楽と同じベッドで眠る。

肌寒い季節になってきたので、猫姿の浮竹と京楽はかわいい湯たんぽ代わりであった。

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黒猫と白猫の亜人45

浮竹と京楽は、白哉の代わりに貧民街の孤児院の視察に訪れていた。

ちょっと前に市場で盗みを働いて折檻されそうになっていた、シャーリーという名の少女を助け、他の孤児たちと一緒に孤児院に送った。

どうしているのか見たかったからだ。

白哉の運営する孤児院は3つあり、今78人が所属している。

シャーリーの仲間で、孤児院に連れて行くといってさらわれた3人がいたが、騎士団の捜索のおかげで人攫いたちも捕まり、奴隷として売られていった子供たち3人が救出された。

浮竹と京楽は、お菓子をたくさんもって1つめのシャーリーのいる孤児院にいった。

「わぁ、お菓子だ!」

「お兄さん、あの時のお兄さんだ!」

シャーリーが近寄ってきて、浮竹に抱きつく。

「浮竹お兄さん、将来私を側室にしてね」

シャーリーはそんなことを言うが、浮竹は首を横に振る。

「俺には京楽がいるから。その約束はできない」

「えー、けちー」

シャーリーは年の割にはませた少女だった。

浮竹のお嫁さんになるとか最初は言っていたのだが、浮竹が京楽と結婚していることを知っているので、結婚ではなく妾である側室になると言い出していた。

「ほら、お菓子いっぱいあるから好きなのをとれ」

「わーい」

シャーリーも子供だ。お菓子が大好きだった。

何気に浮竹もお菓子を食べていた。

「浮竹、孤児たちの分だよ。何も今食べなくても」

「チョコレートがあるからいけないんだ。チョコが俺に食ってくれと囁いている」

浮竹は甘いチョコレートが好きだった。

お菓子はアイテムポケットにもいっぱい入っているので、京楽もまぁいいかと思った。

黙って見ていたのだが、浮竹がたくさんチョコ菓子を食うものだから、京楽が止める。

「こら、浮竹。ダメでしょ、このお菓子は子供たちのものなんだから」

「むうう」

かわいいと、京楽は思った。

浮竹と京楽は、猫の姿になると子供たちは驚いたがすぐに寄ってくる。

「猫ちゃんだー」

「猫だー」

「にゃんこだ」

元が浮竹と京楽であるということも忘れ、猫になった二人を抱っこしたり、撫でたりする。

浮竹がそっと猫じゃらしをくわえると、シャーリーがそれを浮竹の前で振った。

「にゃ!」

本能のせいで、反応してしまう。

京楽も浮竹と一緒になって、猫じゃらしで遊んだ。

満足した浮竹と京楽は、人の姿に戻る。

「お兄さん、猫になれるんだね」

シャーリーが、浮竹の毛並みのいい尻尾を撫でながら、にっこり笑う。

「今日は来てくれてありがとう!とっても楽しかったわ。また、遊びにきてね」

浮竹と京楽は、その調子であと2つの孤児院を訪れて、子供たちが健やかに成長していることを確認してから、白哉の元に戻る。

「子供たちは、みんな伸び伸び元気に過ごしてたよ。最近入ったばかりの子たちは文字と算数を学んでるみたい」

「シャーリーという子が、最近入った子のリーダーだ。いい子だぞ」

「そうか。視察、ご苦労であった。特別なチュールを用意しておるゆえ、猫の姿で存分に味わってくれ」

「わーい、チュールだ」

「浮竹はチュールに弱いね。まぁ、ボクもなんだけど」

二人は猫の姿になると、白哉の手からチュールをもらって、そのおいしさに夢中になる。

「うむ、孤児院の視察ご苦労であった。我の分のチュールもよこせ」

サタンがやってきて、何もしてないのに白哉からチュールをもらう。

「サタン君、君なにもしてないじゃない」

「そ、そんなことないぞ。お前たちの留守を守っておったのだ」

万年発情期のサタンは、前にいた3匹の夫人以外にも2匹の夫人をめとり、ハーレムを築いていた。

「まぁ、君の子供は貴族にもらわれていくから、好きなだけしっぽりすればいいんじゃない?」

「我が子がもらわれていくと、なかなかもう会えないので少し悲しいのだ」

サタンは、それは嘘ではないようで、子供がもらわれていくたびにうおおんと大泣きを繰り返す。

すでに20匹はもらわれていった。

サタンのせいで、5匹の夫人の猫たちも万年発情期に近く、子はいくらでもできる。

今のところ、子をもらう予約まであるので、白哉は避妊しろとは言わなかった。

「サタン君って、しっぽりしすぎじゃない?」

「お前に言われたくないぞ、京楽。浮竹、そうだろうが」

「確かに、京楽もしっぽりしすぎだ。付き合わされる俺の身にもなってくれ」

「ふふ、嫌じゃないくせに」

耳元で囁かれて、浮竹は頬を赤くする。



「んあっ」

その日の夜、浮竹は京楽に抱かれていた。

「ああ、だめぇぇえ」

浮竹のものを舐めあげて、手で全体をしごいて精液を出すように促していたら、浮竹は身をくねらせて京楽の口の中に精液を出す。

「あああ!」

そのあまりの快感に、浮竹の頭が真っ白になる。

「ボクの番。いいよね?」

「あ、早くう」

浮竹に急かされて、ろくに慣らしもせずにいれると、浮竹は少し痛みを感じて涙を流すが、京楽のものには潤滑油がたくさん塗られていたので、よく京楽のものを受け止めるそこは、案外素直に京楽のものを受け入れて、締め付ける。

「浮竹、体から力ぬいて。いっちゃいそう」

「いってしまえ」

「んっ」

わざと京楽を締め付けると、京楽は浅い部分で浮竹の中に精液を出す。

「さぁ、お前の子種を胎の奥にくれ」

自分の秘所を、くぱぁと開いて誘ってくる浮竹に、京楽はごくりと唾を飲み込んで、再び突き入れた。

「ひあああん、奥にきたああぁぁぁ」

最奥を穿ち、抉ると浮竹はドライのオーガズムでいっていた。

「ああん、いくの止まらないいいぃぃ」

京楽の手が、浮竹のものをしごく。

両方でいくのは、浮竹は好きだが体力をけっこう消耗する。

「ひあああ、いくううう」

「ボクも君の中でいくよ?子種いっぱいあげるから、孕んでね?」

「いあああああ!」

びゅるびゅると濃い精子を結腸で受け止めて、浮竹はびくんを背をしならせて精液を出してから、潮をふいていた。

「ああん、潮でちゃううう」

「気持ちいい証拠でしょ?好きなだけ出しちゃいなよ」

「だめええええ」

浮竹は、結局京楽の子種を5回受け止めて、ぐったりとなった。

「浮竹、意識ある?」

「ある。相変わらず絶倫か、お前は」

「でも、君は最初は初めのほうで気を失ってたじゃない。最近は、最後まで付き合ってくれてる」

「お前の性欲の強さに慣れてきたからだ」

「うん、いいことだね」

「どこがだ」

ぽかりと京楽の頭を殴り、浮竹は濡れたタオルをもってきた京楽の前で、くぱぁと秘所を広げて、中に出されたものをかき出そうとして、京楽に止められた。

「ごめん、したくなった。もう一発やらせて」

「はぁ!?」

驚く浮竹の濡れてしまった蕾に猛ってしまったものをあてがい、貫く。

「ひあああん!!!」

びくびくっと、浮竹は体を反応させてオーガズムでいっていた。

京楽は、前立腺をこすりあげながら、浮竹の浅い部分で子種を出す。

「はぁ‥‥‥‥気持ちよかった」

「ばかぁ」

浮竹はぐったりとなって、後始末を京楽に任せるのであった。



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黒猫と白猫の亜人44

魔王の浮竹と幽鬼の京楽は、ネモフィラ畑で浮竹と京楽たち一緒にピクニックした後、魔王城に戻ってきた。

『明日、プライべーとビーチに連れて行ってやる』

「やった!」

魔王の浮竹が、前に連れていってやると言って、けっこう時間が経っていたので、浮竹は忘れられたのかと思っていた。

『南国の島だから、泳げるぞ?水着の準備はしておこうか?』

「ああ、頼む。猫の姿でも泳ぐが、人の姿のほうが海の中では動きやすいだろうし。あと、白哉も誘っていいか?」

『いいぞ?』

こうして、魔王の浮竹と幽鬼の京楽、浮竹と京楽と白哉は、魔王の浮竹のもつ南国のプライベートビーチに遊びに出かけた。

「わぁ、綺麗だな」

「あったかいねぇ。浮竹、砂の城作ろうよ」

「私はわかめ大使でも作るか‥‥」

白哉は、恋次を連れてこなかったが、連れてこなくて正解だと思った。

恋次はうるさいし、空気を読まない。

白哉は、巨大なわかめ大使を作る。

「白哉、上手だな!わかめ大使か!」

『わかめ大使‥‥‥?』

『わかめだね』

魔王の浮竹と幽鬼の京楽はわかめ大使を知らない。

「あ、魔王の俺に幽鬼の京楽。わかめ大使というのは、白哉がデザインした菓子なんだ。中にあんこが入っていて、うまいんだぞ?これが現物だ!」

浮竹からわかめ大使をもらって、魔王の浮竹と幽鬼の京楽は、そのデザインに苦笑しながら食べる。

『お、案外おいしい』

『うん。あんこ、上品なの使ってるね』

その時、白哉がもってきていた荷物ががさごそと動いた。

なんだとみんなが見てみると、猫姿の恋次が白哉の鞄の中に無理やり入り込み、ついてきていたのであった。

「俺だけ除け者ですか!?」

「れ、恋次!」

白哉が驚く。道理で荷物が重いわけだ。

『やぁ、ごわごわ赤毛君』

「む、俺の名前は恋次です!」

「す、すまぬ。このアホ猫は、私が面倒を見ておくゆえ」

「白哉さん、水着姿が似合いすぎて俺は」

「うるさい」

「ぎにゃあああ」

白哉は、荷物の中のわかめ大使を出して、今日泊まる宿に恋次を連れて行ってしまおうとするが。

『そんなごわごわ赤毛猫君ほっといて、白哉君も楽しもう?』

そう幽鬼の京楽に言われて、白哉は猫の姿のままの恋次を砂浜に埋める。

「白哉さん。あああ、身動きがとれないいい」

「兄は、そのままそこで荷物の番でもするがよい」

そんな恋次を放置して、浮竹と京楽は海で泳ぐことにした。

「まぁ、気にせず泳ぐか」

「うん。浮竹、浮き輪はいらない?」

「いらない。プールで京楽に泳ぎ教えてもらってから、ちゃんと泳げる」

二人は海の中にもぐり、サンゴ礁を見て熱帯の魚たちの色鮮やかさに驚いていた。

『白猫の俺、こっちにこい』

「ん?」

海の中で、酸素の入った球体に入っている魔王の浮竹と幽鬼の京楽に手招きされて、浮竹もその中に入る。

海の中に酸素ありで入れて、まるで水族館のトンネルを歩いている気分だった。

京楽も、遅れてその酸素の入った球体に入ってくる。

『サンゴ礁や魚を見るなら、こういう風魔法の使い方もあるぞ』

「へぇ。俺でも使えるかな?」

『白猫の俺なら、できるだろう。黒猫の京楽も、風属性の魔法を使えるだろろうから作り出せるだろう』

「ためしてみるよ」

京楽は、見事に酸素の入った球体を作り出した。

浮竹はそっちにうつり、魔王の浮竹と幽鬼の京楽は、海の奥へと消えていく。

「あの二人、どこまでいくんだろう」
「海中散歩だな。この近くには昔財宝を乗せた船が沈んでいるらしいぞ。天候が変わりやすい海なので、まだ手付かずだとか」
「それをひきあげにいったのかな?」
「かもな」

浮竹と京楽は、浅瀬でサンゴ礁に群れる熱帯魚たちを見ていた。

やがて時間が経ち、二人は海からあがる。

白哉が、海鮮バーベキューの用意をしてくれていた。

『大量だった』

そこへ、魔王の浮竹がアイテムポケットを手に戻ってくる。

『少しいった海の底に、財宝を乗せた沈没船があった。金目のものをもらってきた』

魔王の浮竹は、アイテムポケットからサファイアやエメラルド、ルビー、ダイヤモンドといった宝石をとり出す。

『あとは金貨や銀貨に、金塊とか王冠とかアクセサリーとかかな』

幽鬼の京楽も、アイテムポケットから財宝の一部を見せる。

『これらの財宝は、貧しい地域の発展に使おうと思う』

魔王の浮竹の言葉に、白哉が頷く。

「兄が、よい魔王で本当によかった。どの国でも、貧民地区やスラム街はあるゆえ」

白哉が統治する北の領地と王都には、貧民街はあるが、孤児院やら教会の炊き出しがあり、違う国なら流れてくる貧民も多かった。

白哉は、そんな貧民も受け入れていた。

「バーベキューの用意をしておいた。肉は上等の黒毛和牛のものをもってきている」

『わぁ、気が利くねぇ』

『恋次はあのままでいいのか?』

「かまわぬ。私に勝手についてきた罰だ」

「白哉はそう言いつつ、少しだけ恋次のために残すんだよな?」

浮竹の指摘に、白哉はやや頬を染める。

「う、浮竹」

「ふふ、仲がいいね?うん、おいしいね。白哉君も食べなよ」

「うむ」

魔王の浮竹も幽鬼の京楽も、バーベキューを楽しんだ。

埋められたままの恋次に、白哉は砂から出してやって、焼いた魚をあげる。

「これに懲りたら、もうこのような行動をおこすな」

「はい」

恋次は猫の姿のまま尻尾を揺らして魚を食べる。

犬みたいだと、白哉は思った。

その日はそのまま宿に泊まり、次の日はビーチバレーをしたり砂浜を歩いたりしてまったりと過ごす。

浮竹は、いろんな貝殻を拾って嬉しそうにしていた。

「魔王の俺にあげよう」

ほら貝を拾って、浮竹は魔王の自分の元に行く。

『ありがとう。大切にする』

魔王の浮竹にそう言われて、浮竹はにこにこしていた。

「白哉のとこの猫たちにもあげるんだ」

『じゃあ、いっぱい拾わないとな?』

「京楽と、もう一回拾いにいってくる!」

浮竹は、京楽の元へと戻っていく。

プライベートビーチに、皆を招待してよかったと思う魔王の浮竹であった。


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黒猫と白猫の亜人43

「あー、極楽極楽」

3日天日に干されて、本能を強くさせた京楽の相手をさせられた浮竹は、魔王の浮竹からもらった回復のポーションを飲んで、薔薇風呂に入っていた。

「極楽だねぇ」

猫の姿の京楽も一緒に入っていた。

「京楽を天日に干すはやめる」

「ボクは構わないよ?その後すごく気持ちよくなれるから」

10回近くいく京楽の相手をさせられて、浮竹はもう嫌だと思った。

魔王の浮竹から、結界を張れと言われたので浮竹ではなく、京楽がはったのであるが、魔王城で情事に及ぶのははじめてだった。

「お前のいく回数が半端じゃない。付き合わされたこっちの身にもなれ」

「ふふ、まぁしばらく猫の姿になっちゃって人の姿に戻れないからね」

「いっそのこと、一生猫でいるか」

「ボクがずっと猫だと、疼く君の体の相手する子がいなくなるよ?」

「ちっ」

浮竹は、京楽を抱いていた腕を離す。

京楽は泳ぎが得意なので、スイスイ広い湯船の中を泳ぐ。

浮竹は、猫用のシャンプーでなんだかんだ言いながら、京楽の体を洗ってあげた。

また薔薇風呂に入り、浮竹は京楽と一緒に風呂からあがった。

『お盛んだねぇ。結界、長いことはってあったし、白猫の浮竹があんまりぐったりしてるので、ボクが回復のポーション出したんだけど、あれは失った生命力を取り戻すけっこう貴重なやつだったんだよ』

『回復のポーションなんて、錬金術でいくらでも作れるだろうが』

浮竹に回復のポーションを渡した、魔王の浮竹が言う。

「魔王の俺、世話になる」

『別にいいぞ。ただ、その、魔王城で情事は』

「ああ。しないようにする」

「あはははは、ボクは今猫だからねぇ。手を出そうにも出せないよ」

京楽がからからと笑う。

『明日から、魔王城で運動会があるんだが』

「え、そうなの?」

『せっかくだから、白猫の俺と黒猫の京楽も出ろ』

「運動会‥‥‥俺は学校に通わせてもらってなかったから、参加するのははじめてだ」

「ボクは学校に通ってたから、何回かあったけどね?」

魔王城の運動会は、日々の運動不足を解消するものだった。兵士はいいのだが、文官などが運動不足になりがちで、そういった魔王軍の仲間を、意思を統率して競い合わせるものだった。

『じゃあ、白猫の浮竹と黒猫のボクは白組ね。浮竹とボクは赤組で』

「魔法とかの使用は?」

『一切厳禁だよ』

「つまりは、体力勝負か。ふふ、俺は猫の亜人だから敏捷性には自慢があるぞ?」

『俺だって、魔法を使わなくてもなんとかなる』

ああだこうだ言いながら、次の日がやってきた。

魔王軍の運動会。

けっこう大規模な催し物で、出店とかまで並んでいた。

住民たちも参加できるし、優勝した個人には報奨金が与えられたりで、けっこう賑わっている。

「俺、パン食い競争と借り物競争‥‥‥」

「ボクは玉入れと魔王軍のリレー」

『がんばれよ、白猫の俺』

『ボクは、見てるだけで参加しないけどね』

魔王の浮竹は魔族なので、獣人の一種である猫の亜人は身体的に適わない。

幽鬼の京楽も、普段はぼーっとしてることがあるが、身体的能力は高いが運動会などに興味ないので、参加しない。

浮竹は、パン食い競争のパンを最初にとって、1位でゴールした。

京楽は玉入れをがんばっていっぱい入れた。

浮竹の借り物競争のお題は、尊敬する人物であった。浮竹は、魔王の浮竹の手を取ってゴールする。魔王の浮竹は、お題を見てゴールした後で、浮竹の頭を撫でまくっていた。

「さて、最後の目玉のリレーだよ。ボクも出るから応援してね、浮竹」

浮竹は、敵チームである赤組の、魔王の自分を応援していた。

「いけ、魔王の俺。そうだ、その調子で追い抜いて引き離してしまえ」

『次、頼んだぞ!』

魔王軍の幹部が走り出す。それを、京楽もバトンをもらって走り出して、お互い抜いて抜かれてを繰り返し、アンカーにバトンを渡した。

「いけえええ」

『がんばれ、赤組』

「白組がんばれ!」

『アンカーは魔王軍の将軍の二人だからね。勝ったほうが有給休暇1カ月』

「なにそれ、めっちゃいいな」

浮竹が反応する。

そもそも、浮竹も京楽も猫の亜人な上に白哉に飼われていて、毎日が休みなのだが。

お金は望めば、いつでもけっこうな額がもらえるし。

「今年の魔王軍の運動会、優勝は赤組です!」

アナウンサーの報告で、白組だった浮竹と京楽はがっかりするけれど、楽しかったのでよしとした。

「なお、赤組の方々には有給1週間が贈呈されます」

「ボクらだと、もらっても意味ないしね」

「そうだな」

『魔王の俺は有給って言われてもなぁ。京楽もだろう?』

『まぁねぇ。ボクは魔王軍にはいるけど、働いているわけじゃないし』

「じゃあ、人間界にこないか。この前、綺麗なネモフィラ畑を見つけたんだ。そこでピクニックしてみたい」

『いいぞ?いつ行こうか』

「明日!」

「浮竹、唐突すぎだよ」

『いや、大丈夫だぞ。魔王軍は統治はしっかりしているし、俺は君臨しているが、国々が反旗を翻してこない限り攻め込まないからな』

『じゃあ、明日はボクがサンドイッチでも作るね?』

「やった!一緒にピクニック行きたかったんだ」

浮竹のささやか願いは、けっこうあっという間にかなうのだった。

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黒猫と白猫の亜人41

朝起きると、浮竹は裸だった。

ずきりと痛む頭に手を当てる。

見慣れた天井でない天井を見上げて、ここが宿なのだと気づく。昨日、深夜まで深酒をして‥‥そこから先のことは覚えていなかった。

恋次とは違う、赤い猫の亜人と猫の姿でまたたびに酔い、人の姿になって酒を飲んでよっぱらった。相手は少女だった。

「昨日のことが思い出せない‥‥」

少女の名はティセ。

京楽の友人だそうで、浮竹も羽目を外しすぎた。

「うーん」

同じベッドに、ティセが裸でいるのだと気づいて、浮竹はパニックになった。

「あああああああああ、やらかしたああああああああ」

浮竹とて男だ。女性としっぽりすることができる。本来なら京楽の妻で、京楽に抱かれるのだが、女性を抱くことはできた。

「子供できちゃったりとか、ないよな?」

これはまさしく不倫。一夜の過ちとはいえ、もしも子ができてしまったら大問題だ。

「ティセ、起きろ、ティセ」

「なんなのにゃー?もっと寝かせろにゃー。ぎにゃああああああああ!なんで裸にゃ!?」

「その、俺たちやちゃったのかな?」

「分からないにゃ。でも腰が痛いにゃ」

「もぎゃああああ」

とりあえず、ティセにシャワーを浴びてもらい、服を着てもらう。その後で、浮竹もシャワーを浴びて服をきた。

「責任はとる。俺の夫人になってくれ」

「ちょっと、浮竹?」

宿の部屋に入ってきた京楽が、ティセの頭を撫でなら、浮竹を窘める。

「ただの、どっきりだよ?ティセと君との間に肉体関係はないよ?それにしても、責任とって夫人になってくれとか、なかなかに甲斐性があるね?」

ドッキリと言われて、ポカーンとしている浮竹がおかしくて、京楽は笑う。

「ふふ、驚いた?」

「京楽」

「うん?」

「いっぺん、死んでこいやあああああああああああ!!!」

浮竹は、華麗なアッパーを京楽に決めた。

「ティセ、こんなアホに付き合うことなかったんだぞ」

「それがにゃあ、給金がよくてにゃあ。最近超金欠だったから、浮竹には悪いと思ったけど、京楽のどっきりに乗ってしまったのにゃあ」

「京楽」

「う、浮竹、ごめんてば」

「実家(魔王城)に帰らせていただきます」

浮竹は、白哉の自分たちの家に戻ると、荷物をまとめてお札を使う。

「ああ、浮竹!そんな大荷物抱えて!ただのどっきりじゃない!」

「いっぺん、死んでこいやあああああああああ」

「ぎゃあああああああああああああ」

テレポート前に浮竹を追ってきた京楽を、再び華麗なアッパーで沈めて、浮竹は魔王城にやってくると、猫の姿になり魔王の浮竹の胸に飛び込んだ。

『白猫の俺?』

「京楽があああ」

事情を説明すると、魔王の浮竹も怒ってくれた。

『純情な白猫の俺の心を弄ぶとは許せん』

『まぁ、黒猫のボクもただの悪戯心でしただけじゃないの?』

「それでも性質が悪い」

『まぁ、そうだねぇ。3日くらい干して、反省してもらうとか?』

「干すって?」

『ご飯とお水あげずに、天日に干すの。喉が渇いたら最低限の水をあげて、ご飯はあげない。めちゃくちゃお腹の減っている相手の前でごちそう食べるの』

「それだ」

浮竹は、機嫌を直したといって京楽を連れてくると、京楽を縄でぐるぐる巻きにした。

「ちょっと、浮竹ぇ?」

「京楽、お前を3日間干す」

「へ?」

「俺の心を弄んだ罰だ!」

『まぁ、白猫の俺の気がすむまで干されてくれ』

「ぎいやあああああああああああああ」

幽鬼の京楽が、ぐるぐる巻きの黒猫の自分を天日に干す。

「喉がかわいたよう。お腹へったよう。暑いよう」

「水だけなら、やる」

浮竹は、お水だけを魔法で京楽の口元に浮かべて、京楽はそれを飲んだ。

丸一日放置されて、京楽がねをあげる。

「ごめんなさい、浮竹、ボクが悪かったから許してよ」

「3日は干す。お腹のすいたお前の目の前で、ご馳走食ってやる」

ぎゅるるるるると腹をならす京楽を無視して、京楽を干している前で魔王の浮竹も幽鬼の京楽も混ぜて、豪華な夕飯をとった。

「おなかすいたよー」

「魔王の俺」

「うん?」

浮竹は、魔王の浮竹に抱きついて、頬にキスをする。

「ぬああああ、浮竹ぇぇぇ。不倫だあああ」

「不倫してしまったと思わせたお前に言われたくない!」

「ああああ、ボクが悪かったからああぁぁぁ」

結局は3日天日に干されて、しおしおになって京楽は解放された。

「これにこりたら、もうあんな真似するなよ」

「はい。しません」

京楽は氷水を飲んで、3日ぶりになる食事をすごい勢いで食べてから風呂に入り、浮竹を抱きしめる。

その目つきが怪しくて、浮竹は京楽を振りほどこうとする。

「極限状態だと、子を残す本能が凄いんだよね。さぁ、付き合ってもらうよ浮竹」

「ぎにゃああああああああああああ」

客室での浮竹の悲鳴に、魔王の浮竹は止めに入ろうとしたのだが、幽鬼の京楽にとめられた。

『しっぽり中みたいだから』

『む、しっぽりか』

次の日、つやつやの京楽とぐったりした浮竹がいるのだった。

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黒猫と白猫の亜人40

「あ、蒼結晶だ」

「あっちには赤結晶があるよ?」

「こっちには紫水晶‥‥‥にゃあああああああああ」

浮竹と京楽は、猫の姿で人のしかけた罠にはまってしうまい、捕まってしまった。

「へっへっへ、珍品と名高い黒猫と白猫の亜人だ。これを魔王様に捧げれば、俺は大金持ちだ!」

浮竹と京楽は、大人しくするように睡眠ガスで眠らされてしまい、気づいた時には魔王城の謁見の広間だった。

「魔王様!世にも珍しき白猫と黒猫の亜人です!どうぞ、奴隷としてお納めください!」

「魔王の俺ー助けてー」

「幽鬼のボク、助けてー」

目の前の魔王は、にっこり笑ったあと、浮竹と京楽を捕まえた人間を串刺しにする。

「ま、魔王様、何故」

『俺の友人を、こんな目に合わせせて奴隷として献上するからだ。この黒猫と白猫の亜人は、俺のお気に入りの友達だ』

そのまま、魔王の浮竹は人間を灰にしてしまった。

『大丈夫か、白猫の俺、黒猫の京楽』

「まいったねぇ。光ものに目がいってたら、罠にかかちゃった」

「宝石が散らばっていたんだ。先に先に進むと、罠があった」

『気をつけなよ?君たちを欲しがる人間はごまんといるんだから』

幽鬼の京楽が、檻から浮竹と京楽を出してくれた。

猫の姿のまま、不満をもらす二人を、魔王の浮竹が抱き上げてもふる。

『ん-いい毛並みだ。ブラッシングはちゃんとされてあるな。あといい匂いもする』

「白哉に猫用シャンプーの新しいの買ってもらったんだ!白哉に風呂に入れてもらって、ブラッシングもしてもらった!」

白哉も浮竹と京楽のことがお気に入りなので、二人の世話はよく白哉がしてくれた。

『せっかくだから、泊まっていくか?』

「ああ」

「うん」

魔王の浮竹と幽鬼の京楽は、浮竹だけでなく京楽も甘やかした。

おいしいキャットフードに、お風呂にいれてもらってブラッシングをしてもらった後、チュールをもらってねずみのおもちゃとか猫じゃらしで遊んでくれた。

「ん-、眠くなってきた」

「ボクも」

いつも昼寝をする時間なので、魔王の浮竹は机の上に京楽を、膝の上に浮竹をのせながら書類仕事をしていた。

「にゃーん」

浮竹が起き出して、体を伸ばす。

すると、ぱちりと京楽の目があいて、鳶色の目を瞬かせた。

「そっか。ボクたち捕まって魔王の君のところへ連れてこられたんだった」

『ほんとに、気をつけろよ?今回は俺のところに献上したバカでよかったが』

「うん。気を付ける。チュールちょうだい」

「あ。俺も!」

おいしいチュールを食べて、浮竹と京楽は猫の姿のまま中庭で互いでおかけっこを始める。

『和むねえ』

『ああ。人の姿でもいいが、猫の姿でいられるとかわいくてたまらん』

『浮竹、でもうちの子にはできないよ?』

『むむむ‥‥‥‥‥』

魔王の浮竹は、なんとかうちの子にしたいと考えていたが、浮竹と京楽は白哉を主と認めているし、奪ってもなんだからと諦める。

魔王の浮竹のところへ、手紙をつけた鳩が飛んでくる。

相手は白哉からだった。

浮竹と京楽が拉致されててしまい、至急応援を求むという内容だったので、救出して魔王城にいると返信の手紙をくくりつけて、鳩を離す。

「白哉からの手紙か?」

『ああ、そうだ。お前たちが攫われたから、応援を求めるという内容だった』

「夜はここに泊まるから、一度、白哉の家に戻るな?心配をかけたままじゃあれだから」

『一応、無事だという返信をしておいたんだが、手紙が届くよりお前たちが直接帰ったほうが早いな。白哉に無事な姿を見せてくるといい』

「ありがとうね、魔王の浮竹」

「ありがとう、魔王の俺」

浮竹と京楽は、テレポートの魔法で一度白哉の家に戻った。

「浮竹、京楽!無事であったか!」

焦っていた様子の白哉が、安堵のため息を零す。

「宝石につられて、人間の罠にかかって眠りのガスで眠らされた。献上先が魔王城で、魔王の俺に助けてもらった」

「そうか。献上先が、魔王の元でよかった。コレクターのところに運ばれていたら、剥製にされていたかもしれぬ」

それを想像して、浮竹と京楽は蒼くなる。

「猫の姿を剥製にするのかな?」

「分からぬ。だが。亜人の姿のまま剥製にするわけもにいくまい。多分、猫の姿で殺されて毛皮をはがされて、肉や臓物は京楽の場合は悪魔崇拝の手に、浮竹は剥製にされずに白涙石を目的に虐待され続けていたかもしれぬ」

「人間って怖い」

「怖いね」

もう大分慣れてきたが、それでも自分たち黒猫と白猫の亜人を狙う輩が多いのだと、改めて知らされた。

「まぁ、ボクらは魔法が使えるから。なんとかなるんじゃない?」

「その割には、今回簡単に捕まってしまったな。慢心はいかんぞ」

「うん、気をつけるよ」

「気をつける。なぁ、白哉、紫水晶の結晶もってないか?」

「あるにはあるが。そんなもの、どうするのだ?」

「罠に綺麗な紫水晶があったんだ。欲しくなったから」

白哉は、使用人を呼んで、加工前の紫水晶をもってくる。

「俺の首輪につけれるか?」

「ぶら下げる形でいいのか?」

「うん、それでいい」

「しばし待て」

白哉は、魔法で浮竹の純金の首輪に小さな紫水晶の欠片をぶら下げた。

「ありがとう、白哉!」

ごろごろと喉を鳴らして、浮竹は白哉にすり寄る。

「たやすい用事だ」

「浮竹、魔王城には行かないの?」

「あ、行く。白哉、今日は魔王城で泊まってくる!」

「うむ。気をつけていくように。京楽もだぞ」

「は~い」

二人は、魔王城までテレポートすると、猫の姿になって、魔王の浮竹の腕に飛び込む。

『お、戻ってきたか。おや、白猫の俺は、アメジストの原石をぶら下げているな。白哉にしてもらったのか?』

「そうなんだ。罠に、紫水晶がおいてあって、どっても綺麗だったから、同じ紫水晶の欠片を首からぶら下げれるように頼んだんだ」

『そうか。他に欲しくなった宝石があればなんでもいうといい。宝物庫にないものは取り寄せよう』

「魔王の俺、これあげる!」

浮竹は、桜色の貝殻を魔王の自分にあげた。

「これは?」

「この前、市場で売ってたんだ。魔王の俺に似合うと思って、お小遣いで買った!」

『そうか。綺麗だな。大切にする』

「幽鬼のボクには、アイスのあたりくじあげるね?」

『差が激しくて微妙だけど、もらっておくよ』

ふと、浮竹が貝殻を見てこう言う。

「今度、海に遊びに行きたい。浜辺のあるとこに」

『ふむ。プライベートビーチにでも、連れていってやるか』

「わーい」

素直に喜ぶ浮竹がかわいくて、京楽は猫の姿のまま浮竹にすり寄る。

そんな浮竹と京楽を、魔王の浮竹と幽鬼の京楽はもふるのであった。

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隻眼

白哉が、遠征で隊士を庇って負傷した。

そのニュースは、6番隊の中にすぐに広がった。

あの朽木白哉が。隊士を庇ったとはいえ、虚で傷を負うとは。

「隊長‥‥‥‥」

恋次は、いてもたってもいられずに、白哉が運び込まれた救護詰所に急いだ。

白哉は、右目に黒い眼帯をしていた。

「隊長!?」

「恋次か。目をやられたのだ。しばらく義眼で過ごす。新しい目の移植手術は、1週間後らしい」

「隊長の綺麗な顔に傷が!なんてことだ!」

「目ばかりは回道では治らぬ。移植手術ができるだけましであろう」

「その、隊長を傷つけた虚は退治されたんですか」

「私が退治した」

白哉は、隻眼に慣れぬのか、壁にあたりそうになって、恋次に後ろから抱きしめられる。

「恋次?」

「俺がどれだけ心配したと思ってるんすか」

「すまぬ。私も油断していた。いくら隊士を庇ったとはいえ、目をやられるなど」

白哉も今回の遠征は反省するべき点がおおいと、恋次の手に手を重ねる。

「朽木邸に帰る」

「あんた、その右目は移植手術でどうにかなるとして、もう片方の左目霞んでるんじゃないっすか?」

白哉は驚く。

救護詰所で、内緒にしてくれるように言っておいたのだ。

右目も左目も、同時に負傷した。

ただ、左目は軽かったので、回道でなんとか見えるようにはなっていたが、視力が落ちていた。

「なぜ、分かる?」

「あんた、さっき壁にぶつかりそうになってた。片方の目だけでもちゃんと見えてるなら、普通そんなことにならない」

「ふ‥‥兄はかなわぬな。恋次、しばし私の目となれ」

「はい」

その日、白哉を朽木邸まで送って、一緒に泊まり、視力の堕ちた片目の補佐をできる限りした。

一緒に風呂に入ったっり、恋次がむらむらすることはあったが、白哉の視力が回復するのが最優先だった。

処方してもらった目薬をさして、2日ほどで白哉の左目の視力は回復した。

恋次は、まだ右目が見えていないからと、朽木邸に泊まりこみ、白哉の世話をした。

「恋次、もうよいのだぞ。左目は視力を回復した。右目の移植手術にはあと3日かかるが」

「それまで、隊長の目になります。あんたの目になれっていったのは、あんただ」

「恋次」

恋次は、白哉の寝室で白哉を抱きしめる。

「右目の移植手術、成功しますよね?京楽総隊長のようにはなりませんよね?」

「京楽は、あれはわざと目の移植手術を受けておらぬのだ」

「はい」

「大戦の傷跡だと。私の場合は違う。虚になど受けた傷、なんとしても癒す」

目の移植手術は高いが、白哉になら簡単に払える額だった。

ただ、成功率は五分五分であった。

今度受ける移植手術でだめだったら、何度でも移植手術に挑むつもりだった。

「この目が治るまで、何度でも移植手術を受ける」

「はい」

「もう夜も遅い。兄は寝ろ」

恋次は、白哉と同じ部屋で寝ていた。

「隊長、また昨日みたいに夜の散歩に行くつもりでしょう」

白哉が驚く。

「気づいていたのか」

「そりゃ、傍から隊長の霊圧が遠くなれば。今夜の夜の散歩は、俺も付き合います」

その日、白哉は恋次と夜の散歩に出かけた。

月見の季節で、満月が綺麗に空に浮かんでいた。

手を伸ばせば、星さえつかめそうな。

そんな晴れた夜だった。

やがて、右目の移植手術の日がやってきた。

恋次は仕事を早めに終わらせて、手術室の前で祈る。

2時間ほどして、右目に包帯を巻いた眠っている白哉が運ばれていく。

「朽木隊長の、目の移植手術は成功です」

虎徹隊長の言葉に、恋次は心底安堵する。

包帯がとれる数日の間、入院することになった。

恋次は、毎日のように見舞いにいった。

白哉は救護詰所では暇だからと、他の隊士にもってこさせた書類仕事をしたりしていた。

とりあげると怒るので、恋次は白哉のやりたいようにさせていた。

「あんたが大好きすぎて、包帯がとれたら朽木邸から出なきゃいけない自分がもどかしいです」

「では、ずっと一緒にいるか?」

「え?」

「兄とは長い付き合いだ。婚姻していないだけで、夫婦のようなものであろう」

面と向かって言われて、恋次は赤くなる。

「いいんですか」

「何がだ」

「俺みたいな狼、自分の家において」

「それもそうであった。泊まりたい時にだけくるがよい。屋敷内での性的な行為は許さぬ。キスとハグまでは許す」

恋次は、大型犬のように見えない尻尾を大きく振って、白哉を抱きしめる。

「大好きです、隊長」

「苦しい。やめぬか」

そう言いつつも、白哉は柔らかい表情をしていた。

やがて傷も全て癒えて、元の日常が戻ってくる。

恋次は、週に2回ほど朽木邸にお泊りする。

そして、週に一度別邸で白哉を抱く。

「んっ」

執務室で、白哉に口づける恋次。

「やめよ、ここは執務室だ」

「あんたが欲しい」

「おとつい、交わったばかりであろう」

「足りねぇ」

盛る恋次の頭を拳で殴る白哉。

「いってえええ」

「兄は、することしか頭にないのか!」

白哉に怒られて、恋次は正座をさせられる。

「そもそも、兄は‥‥‥聞いているのか」

「移植した目の色、茶色なんすね。元の目の色が黒だから、オッドアイになってて綺麗だ」

じーと見つめてくる恋次の顔を見ていられずに、白哉は視線を一度伏せる。

「兄は、本当に私のことが好きだな?」

「あたりまえです!世界で一番好きです。あんたを好きな人はいっぱいいるでしょうけど、きっと俺が一番好きだ。この感情は、ルキアにだって負けねぇ」

「恋次‥‥‥」

白哉は、恋次を抱きしめる。

「隊長?」

「私も兄と同じだ。兄を思っている」

「隊長、俺!」

「盛るなよ。ここは執務室だ」

「うぐぐぐぐ」

恋次は、ひたすら我慢を強いられるのあった。最近一緒に何もなく生活していたせいで、白哉は恋次にあまり抱かれようとしない。

「隊長、今日は隊長を抱かせてください」

猛烈アピールを繰り返し、仕事にならぬので、仕方なく白哉は了承する。

なんだか、私はこの駄犬に流されているのではないだろうか。

そう思う白哉だった。

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アイスバーズ恋白 恋次の場合

白哉はジュースだった。反対に恋次はアイスだった。

アイスの者は、ジュースに愛を告げると溶けて死んでしまう。

それを知っていたので、白哉は恋次に厳しく接していた。

恋次は、白哉に憧れていた。

その強さに。その精神に。

やがて、恋心を抱くようになった。

「私はジュースで、兄はアイスだ。この意味は分かるな?」

アイスの恋次が決して告白などしないように、そう冷たく告げると白哉は恋次の上官である以外はかかわらないことにした。

「隊長、俺は‥‥」

「やめよ。私は兄のことをなんとも思っていないのだ。いうだけ無駄だ」

「でも」

「兄は、自分の命が大切ではないのか?」

「そりゃあ、大切にしたいですけど、あんたに言いたいことがある」

白哉はため息をついて、恋次を抱き寄せる。

「これが、答えだ。言葉にせずともいい」

「隊長、俺」

「やめよ。兄の気持ちはわかっている」

一度だけ抱きしめただけで、その後の白哉はいつも通りそっけなかった。

「やっぱ、俺の気持ちあんたに伝えたい、隊長」

白哉のいないところで、恋次はそう言って白哉の温もりを思い出す。


「ルキア、そなたなら恋次のことをなんとかできぬか」

「恋次が兄様を好きなのは、ずっと知っていました。まさか兄様がジュースで恋次がアイスだなんて」

「恋次は、このままでは私に告白して溶けて消えてしまう」

「はい。私も恋次が好きです。私が、恋次を愛します。兄様の分まで」

ルキアは、恋次に告白した。

答えはNOだったが、ルキアは恋次を愛して、一緒に行動することが多くなった。

「好きだ、恋次」

「俺は」

「よいのだ。私は貴様の側で、貴様を愛せるだけでいいのだ」

「ルキア、こんなの間違ってる」

口づけしてきたルキアを押しのけて、恋次は顔を俯ける。

「俺は、隊長が好きなんだ。隊長を愛している」

「恋次、貴様はアイスだ。兄様はジュースだ。その意味は分かっているな?」

「分かってる。でも、好きなんだ」

恋次は、もう恐れなどしなかった。

白哉を呼び出し、桜の木の下で恋次は白哉に口づける。

「やめよ、恋次。私は、兄とは」

「好きです、隊長。愛してます」

「恋次!!!」

言ってはいけない言葉を言ってしまった。

白哉の答えは分かっていた。

ぽろぽろと涙をこぼして、白哉は恋次を抱きしめて、告げる。

「私も兄が好きだ、恋次。だから、溶けていなくなってしまわないでくれ」

「ああ、隊長もやっぱり俺のこと好きだった。それだけで、俺は幸せです」

「愚か者!私と共に歩く道は死を意味するのだぞ」

「それでも、伝えたかったんです」

恋次は、足元から少しずつ溶けていく。

「恋次、いくな!」

白哉は、もう立っていられない恋次の頭を膝の上にのせて、恋次を抱きかかえる。

「恋次、恋次、愛している。私を残して先にいくな」

白哉の涙が、ぽつぽつと恋次の顔に降ってくる。

「恋次」

「俺、幸せです。隊長に思いを告げれて、受け入れてもらえて。俺、アイスだけど生まれてきてよかった。こんな幸せな気分でいけるんだから」

「溶けるな、恋次。私を独りにするというのか」

「いつかまた、あんたに会いにいきます」

「恋次!」

「愛してます、隊長。さよなら‥‥‥」

恋次は水になって溶けてなくなってしまった。

白哉は、桜の雨が降り注ぐ中、恋次の死覇装を手にいつまでも泣いているのだった。




それから、200年が経過した。

白哉は相変わらず美しく、200年前とほとんど変わらぬ姿をしていた。

ある日、ふと流魂街を訪れた。

小さな赤い髪の子供が、白哉とぶつかる。

「あ、すみません」

「いい。兄の名は?」

「恋次っていいます」

白哉は微笑む。

あまりに綺麗な笑顔だったので、恋次と名乗った子供は白哉に見惚れた。

それから、その恋次という子供は孤児だってので、白哉が引き取った。

「何度でも、何度でも、兄と出会う。私は朽木白哉。兄が愛した者だ」

恋次は成長し、朽木恋次と名乗り、白哉の側にいた。

霊圧があり、真央霊術院に入学して死神になった。

やがて6番隊の副隊長になる。

「兄を愛している、恋次」

「俺も、隊長のこと愛してます」

一度は失ったけれど。

また巡り会えた。

白哉は、恋次に口づける。

「んっ」

恋次は白哉と舌を絡ませあう。

「そんなこと、どこで覚えてきたのだ」

「さぁ。自分でも分かりません。でも、ずっと前から隊長とこうしたかった。そんな気がします」

「恋次、兄を愛している。もう、私の前からいなくなるな」

「はい」

白哉は、再び恋次と巡り会い、数百年の時間をそのまま過ごしていくのであった。

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黒猫と白猫の亜人33

「あ、京楽ぅ」

浮竹は、完全な発情期になっていた。

白猫の亜人の発情期は長く、1カ月以上続く。

同じ白猫の亜人と睦みあうのであれば1週間程度で終わるらしいが、白猫以外の色の猫の亜人である、おまけに同性である京楽に抱かれることは、発情期の終わりではなく、長引く予兆だった。

「んあっ」

中にはいってきた熱い京楽のものを、自然と締め付ける。

「んあ、いい」

「はぁっ。君の中、すごい熱い」

「とろけそうだろう?俺もとろけそうだ」

本当に、溶けてしまうかというくらいの熱さだった。

「ここ、君のいい場所」

とんとんと、京楽は己のもので浮竹の中の一点を突く。

「んあああ!」

びくんと浮竹が背をしならせていくものだから、京楽は驚く。

わずかな刺激のつもりだったのだ。

「あ、いい。もっと、もっと俺を犯してぐちゃぐちゃにしてぇ」

「ああもう、君って子は」

言葉だけで、京楽のものはぎんぎんに勃起する。

「奥に、出すよ?」

「あ、京楽のザーメンどぴゅどぴゅだしてぇ」

京楽は、浮竹の中を熱で犯して、奥に入っていく。しまいには結腸にまではいりこんでしまい、そこで京楽は子種を弾けさせた。

「あー、あー、いってるううう」

浮竹は、京楽がいくのと合わせて、オーガズムでいっていた。

「あ、もっとおお」

「君は、まるでサキュバスだね?」

浮竹は、京楽の背に手を回して、京楽の肩に噛みつく。

「もっと」

ぐちゅっと音がなって、一度抜くと、騎乗位になって下から突き上げると、浮竹はリズムをつけてくちゅくちゅと音をたてて、自分で動いた。

「はぁ、京楽の、俺のいいところにあたるう」

下から思い切り突き上げてやれば、浮竹は精液をだしながら、オーガズムでもいっていた。

「あ、あ、いくのとまらないぃぃ」

下から何度か突き上げて、そのまま押し倒す。

中の抉る角度がかわって、浮竹は呼吸を忘れる。

そんな浮竹に、京楽はキスをして、ついでに酸素を送った。

「んあああ、いっちゃううう」

もう何度目になるか分からない、中いきを繰り返す浮竹。

京楽も、子種を結腸で出して、あと3回ほどが限度になる。黒猫の亜人である京楽は性欲が強く、他の男より回数が多くいけた。

「全部、君の中に注いであげるからね?」

「あ、京楽」

浮竹は、快感でうっとりとなっていた。

今度は、後ろから浮竹を犯す。

「んあ、顔見えない」

「一度だけ、この体勢でさせて?」

「ん、わかった。熱いザーメン、俺のお尻の奥でだしてぇ」

京楽は、ぱちゅんぱちゅんと肉と肉がぶつかりあう音を立てて交わる。

「あ、いい。奥にきてるうぅぅ」

最奥で精液を吐き出す。

そして、今度は正常位で交わりだす。

浮竹は、相手の顔が見える正常位が好きだった。

「京楽、大好きぃ」

「ボクも大好きだよ、浮竹」

「春水。あ、おっきくなったぁ♡」

「もお、いきなり下の名前で呼ばないで。興奮して大きくなちゃった」

「春水。奥に、ザーメン出せるだけ全部ちょうだい」

かわいくおねだりしてくるが、言っている意味はすごかった。

「仕方ないね」

京楽は、浮竹を何度も犯した。

精液の全てを注ぎこみ、浮竹も精液を出し尽くして、もう出ないのに浮竹は京楽を求める。

「あ、もっとおおお」

「ボク、もうでないよ?」

「じゃあ、指で」

「ほんと、発情期ってすごいね。出すもの出しまくってもまだ続くの」

京楽は、浮竹の言う通り指をいれる。

浮竹のお腹は、京楽のものでぽっこりと膨らんでいた。

「こんなにボクの精液ためこんで」

「あ、ザーメンタンクみたい?」

京楽は、浮竹に深く口づける。

「君は、サキュバスだね」

「なんでもいい。俺を、もっといかせて」

指でいじっていると、京楽のものが逆流してでてきたので、一度風呂場でかき出した。

「あ、そこいい」

指で、ぐっと前立腺の部分を刺激すると、浮竹はオーガズムでいく。

「あと1回くらいできるかも」

「あ、いれてぇ。京楽のじゃないと、奥まで届かない」

京楽は、ずずっと音をたてて浮竹の中に侵入する。それに、蕾に指をいれてくぱぁと中をあけようとする。

「やあああ、だめぇ。ガバガバになっちゃううう」

浮竹が泣き出したので、京楽は指をいれるのをやめる。

「ごめん。泣かないで?」

「うん‥‥‥お前の、奥にくれたら、泣き止む」

「仕方のない子だ」

もぅ6回目になる精液を、浮竹の結腸に注ぐこむと、浮竹は潮をふいていっていたが、しまいには黄金水をちょろちょろと出してしまった。

「あ、やぁぁあ」

京楽は、浮竹からひきぬくと、風呂場にいって、浮竹を抱えながら足を広げさせる。

「さぁ、全部だしちゃいなよ」

「んあああ、出ちゃうううう」

じょろじょろと、浮竹は風呂場でおしっこをしてしまう。

「んあああ、いくうう」

潮まじりのおしっこを出しきって、浮竹も満足したようだった。

浮竹が眠っている間に、風呂場を綺麗にしておいた。

布団の濡れたシーツも交換する。

5時間ほど寝て、浮竹が起きて京楽を求めてきた。

「ちょ、さすがに今日はもうでないよ?」

「俺は出るぞ?」

浮竹のものは硬くなっていた。

京楽は、仕方なく口で奉仕して浮竹を3回いかせてやるが、浮竹はもの欲しそうな顔をする。

「京楽に、ぐちゃぐちゃにされたい」

「簡便して。今日はもう無理だって」

そんな日々が1週間続き、京楽はしおしおになっていた。強性剤を飲んだりしたが、それでも浮竹の欲望がつきることはなかった。

「ああああん、すごいいいいい」

仕方なく、大人の玩具を使った。

バイブで奥までいれて、振動を強にさせると、浮竹は身をくねらせて喜ぶ。浮竹の性器には、ローターをとりつけて、そっちの振動も強にしておいた。

「ひああああ、いくうううう」

何度も大人の玩具でいかされても、浮竹は京楽も求めた。

それに答えてやりながら、さてどうしたものかと思案する。

結果、医者に一度診せることにした。

浮竹の性欲の強さというか、発情期は異常すぎたせいだ。

「浮竹、獣人専門のお医者さんに診てもらおう?君の中の熱を、冷ましてくれるかもしれない」

「あ、京楽がそう言うなら、医者に診てもらう」

こうして、浮竹は獣人専専門の医者に診てもらい、発情期による性欲過多と診断されて、それを治すポーションをもらう。

「さぁ、これを飲んでこらん?熱が収まるから」

「うん」

浮竹はこくりと頷いて、ポーションを飲んだ。

「あ、体の熱が引いていく‥‥‥‥」

「それは、ミミキの草と、ジジの根と、マンドラゴラをすり潰して液体にしてろ過したポーションじゃ。媚薬を飲まされた者などに、主に処方するポーションでもある」

「うん。浮竹、楽になった?」

「嘘みたいに、発情期の熱が消えてる」

「よかyった」

こうして、浮竹の1週間以上に及ぶ発情期は終わるのだった。



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黒猫と白猫の亜人39

「冒険者ギルドから、冒険者ギルドのギルドマスターのヨハンという者が来ている」

「げっ」

「うわー」

「とりあえず、応接間に通す故、会うがいい」

浮竹と京楽は、数日前気まぐれから冒険者ギルドに登録し、Fランクでスライム退治を受けた。トトカという初心者用のダンジョンで、スライムと一緒に洗われた現れた、黒いワイバーンを一匹、二人で倒してしまったのだ。

Fランクからはじまるはずが、いきなりBランクに昇格されると言われて、冒険者でやっていく気のない浮竹と京楽は逃げ出したのだ。

「浮竹君、京楽君。Aランクの、アースドラゴンの退治を受けてみないか。ブラックワイバーンは、ワイバーン種の中で一番ドラゴンに近い。それを葬った君たちなら、できるはずだ」

「パス」

「同じくパスで」

「何故だああああああああ!!!」

「俺たち、白哉の猫だから。白哉がしろというのなら、聞くが」

「朽木様、どうかアースドラゴンの退治を受けてみるように言ってください!」

「しかし、仮にもドラゴン。危険なのではないか」

「アースドラゴンはドラゴン種の中で2番目に弱いのです。なんなら、Sランク冒険者であられる朽木様が同行して下さって構いません」

ヨハンの言葉に、浮竹と京楽が驚く。

「え、白哉君、Sランク冒険者だったの?」

「白哉、本当か?」

「まだ少年時代に、冒険者を3年していた。ドラゴンをこの千本桜という刀でソロで倒せると恐れられた。貴族の当主にならねばならなかったので、冒険者は廃業したのだ。まぁ、これも何かの縁だ。アースドラゴンの退治とやらをしてみよう。浮竹、京楽、兄らで倒せ。私はあくまで見守る役だ」

「あーもう、分かったよ」

「しかないなぁ」

こうして、サザン高原に住む、アースドラゴン退治にいくことになった。

白哉のテレポートの魔法で、サザン高原にまでつくと、いきなりアースドラゴンが襲ってきた。

「どうやら、私の魔力に感づいて、先制攻撃に出るようだ」

「白哉君の魔力量、人としては異常だからね」

「ウィンドランス!」

浮竹が魔法を唱えて、アースドラゴンの四肢を風の槍で貫く。

「GYAOOOOOOOOO!!!」

「ファイナルフレア!」

京楽が、上位の火属性の魔法を放つと、アースドラゴンは黒焦げになるかと思ったが、レジストして耐えた。

「ウォータースライサー」

浮竹は、水の刃でアースドラゴンの首を落とすと、それでもアースドラゴンは生きていた。

「頑丈なドラゴンだな。核を攻撃せねば、倒せぬか」

白哉が、緑の魔法を使う。浮竹と京楽の魔力量が2倍になった。

「カラミティフレアランス!」

「カラミティウィンドランス!」

二属性の、上位魔法をくらって、アースドラゴンは核を破壊されて倒れた。

「やっぱ、ドラゴンだけあって、手強いね」

「魔王の俺とかなら、一撃なんだろうな」

「そうだろうねぇ。幽鬼のボクでも一撃かも。あの二人、世界を滅ぼすレベルだから」

『はっくしょい』

『はっくしょん』

その頃、魔王城では魔王の浮竹と幽鬼の京楽はくしゃみをしていた。

『んー、誰か俺たちの噂してるな』

『白猫の君と黒猫のボクだったりして』

まさにその通りであるのだが。

「魔石は回収できそうか?」

白夜がアースドラゴンの死体を回収する前に、浮竹に魔石をとらせた。

「でっかい魔石だねえ。さすがドラゴン」

「さぁ、これでヨハンの言っていたことは終わりだ。帰ろうか」

浮竹と京楽は、京楽のテレポートの魔法で王都の冒険者ギルドに辿り着く。

白哉は、一足先にギルドマスターのヨハンを呼びに行っていた。

「これが、アースドラゴンの魔石だ」

「おお、本物だ。アースドラゴンの死体は?」

「ああ、白哉君がもってるね」

「素材として買い取るのか?」

白哉が尋ねると、ヨハンは頷いた。

「ああ、ぜひそうしたい」

「風と炎の魔法で駆除したゆえ、鱗の一部は焦げているが、爪、牙、目、角などは素材になるであろう」

白哉は、解体室でアースドラゴンの死体を出す。

「で、どうだっのだ、朽木様。この二人だけで倒したのか、あなたの助力で倒したのか」

「私は、緑の魔法で二人に魔力量を2倍にした。だが、二人はその魔力を使わずに倒した。浮竹と京楽の二人だけで倒したと断言していい」

「うおおおおおおおお。実は、あのアースドラゴンはSランクじゃないと倒せないんだ。どうだ、やはりSランク冒険者として華々しくデビューを!」

「興味ない」

「興味ないねぇ」

浮竹と京楽は、猫の姿になって、白哉の手からチュールをもらって食べていた。

「ぬおおおお。なぜだああああ」

嘆くヨハンを追い出して、浮竹と京楽は毛皮を舐めあって毛づくろいを始める。

「冒険者の最終目的は魔王の討伐でしょ?ボクら、魔王の浮竹と友達だしね」

「そうだ。魔王の俺は怒らすと怖い」

二人は、魔王の浮竹だけでなく、一緒にいる幽鬼の京楽も世界を滅ぼすほどの力をもっているのを知っていた。

「では、冒険者ギルドへの登録は、こちらから抹消しておく」

「ありがとね、白哉君」

「世話をかける、白哉」



今日は、満月だった。

サタナシア・オルタナティブが騒ぐが、封印する。

「んあ、京楽、もっとおお」

浮竹は、片足を肩にかづがれて、深く挿入されていた。

「んあ、もっと奥にぃ」

「エロいねぇ、浮竹は」

「だって、満月は体が疼くから。んあああ!!!」

ぱちゅんと音を立てて奥まで貫かれて、浮竹は喜びの声をあげる。

「うんん、もっと、もっと奥まで犯してぇ」

「分かってるよ」

最奥の結腸まで入りこむと、浮竹はオーガズムでいっていて、締め付けが強くなる。

ドクドクと、子種を浮竹の奥に吐き出す京楽。

「んあ、いい。もっとお前の子種ちょうだい。孕みたい」

「いっぱいあげるからね?」

「んああああ!!!」

浮竹は、京楽の手でしごかれて、精液を出していた。その精液を、京楽が舐めとる。

「やっぱり、君の甘い。蜂蜜みたい」

「んあ、奥にくれ。お前のザーメン」

「はいはい」

京楽は、結合部がくちゅくちゅと水音をたてて泡立つまで犯し、最奥に子種を2回連続で注ぎ込む。

「あああ、熱いいいい」

「満足したかな?ボクはもう一回いけるけど」

「あ、俺はもう無理ぃ。手で、抜いてやる」

「頼むよ」

浮竹は、まだ硬い京楽のものを両手でしごいて、いかせた。

「あっ」

びゅるるると、3回出したとは思えない量の精液が、浮竹の顔や髪にかかる。

「ごめんごめん。お風呂入ろ?」

浮竹は、顔についた京楽のものを舐めとる。

男娼時代に、他人の精液を甘く感じるように人工的に体は改造されていた。

「京楽の子種も甘い」

「え、そうかい?」

「ふふ・・・・・」

浮竹は妖艶に微笑む。

二人は一緒にお風呂に入って、寝ることにした。

ふと、京楽が目を覚ます。瞳は金色だった。

「満月は、君はうるさないねぇ、サタナシア・オルタナティブ。おとなしく、ボクの奥でボクと混じりあっておきなよ」

「ん‥‥‥京楽?寝れないのか?」

浮竹が起きてきて、カーディガンを京楽に羽織らせる。

「ちょっと、肌寒いと思っただけだよ。さぁ、もう一度寝ようか」

浮竹と同じベッドに横になり、二人は満月の夜が消えていくのを、心の奥で感じとるのであった。

亜人種は、満月の夜に本来の獣の姿になり、暴走すると言われている。でも、実際に暴走したケースは少ない。

それに、京楽にはサタナシア・オルタナティブがいる。

暴走すると、凄まじいことになるので、自分と混じり合わせて、通称サタンはただのナニカになるのであった。


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黒猫と白猫の亜人38

浮竹と京楽は、冒険者ギルドに登録してみた。

はじめての登録なので、Fランクからだった。

掲示板で張り出されていた、スライム退治を引き受けて、初心者用のトトカのダンジョンにいくと、スライムもいたが、ワイバーンもいた。

「ねぇ、浮竹。初心者のダンジョンでワイバーンってありだと思う?」

「ないな。LVが違いすぎる。誰かの罠か‥‥‥」

浮竹は、風魔法を使う。

「エアリアルエッジ!」

ワイバーンの翼が片方が切り落とされて、地面に落ちてくる。

「グラビティゼロ!」

浮竹が重力の魔法を使うと、ワイバーンはブレスも使うことができず、大地にめりこむ。

剣をもっていた京楽は、火の魔法を剣にエンチャントする。

「ファイアウェポン」

そこらの道具屋で売っているただの鋼の剣で、京楽はワイバーンの首を落としてしまった。

魔石をとり、ワイバーンの死体をアイテムポケットに収納して、スライムも退治して魔石をアイテムポケットに入れると、冒険者ギルドに帰還して、ワイバーンが出たことを伝えると、みんなに笑われた。

「はっはっは、兄ちゃんよしてくれ。トトカのダンジョンにはスライムしか出ないんだぞ」

「もしも出たとしても、初心者の兄ちゃんたちだとすぐに殺されてる」

「これが、証拠だ」

浮竹は、アイテムポケットからワイバーンの死体を出す。

皆、黙り込む。

「ギ、ギルドマスターを呼んできます!」

受付嬢はそういって、浮竹と京楽は2Fの応接室に呼ばれた。

「俺が、この王都の冒険者ギルドマスターのヨハンだ。ワイバーンが出て、退治を二人でしたんだな?」

浮竹と京楽は頷いて、ワイバーンの魔石を取り出す。

「本物だな。遺体ならあるだけでごまかせるが、魔石があるということは倒した証だ。君たちを、Bランクまでランクをあげよう。ワイバーンを倒せるのは、Bランク以上の冒険者だ」

「はぁ」

「まぁ、なんでもいいんだが」

「な、嬉しくはないのか!?冒険者として、異例の出世だぞ!」

「俺たちは冒険者で食べていくつもりじゃないからな」

「多分、冒険自体これっきりかも」

「もったいない!!Aランク以上の実力があるとみた。それなのに、冒険者をしないのか!」

浮竹と京楽は顔を見合わせあう。

「暇つぶしにしてただけだからな」

「うん。市場で野良猫たちとおしゃべりしてたほうが楽しいし」

「もったいないいいいい」

そう泣くギルドマスターを放置して、鋼の剣とか魔法の杖とか、かりていた装備を返して、浮竹と京楽は冒険者ギルドから出ると、猫の姿になって消えてしまう。

「朽木白哉様のところの猫か‥‥‥自由すぎてなんともいえない」

冒険者ギルドのギルドマスターは、猫の姿になって市場に消えてしまった浮竹と京楽の存在を、白哉に冒険者の素質ありとして通達することにするのであった。


「にゃあにゃあ(あら、京楽さん、浮竹さん、どうしたの?)」

「ああ、リリーちゃん。冒険者ギルドで冒険者として遊んでいたら、素質あるとか言われてねぇ。冒険者にされそうだったので、逃げてきたんだよ」

「いきなりBランクとか言われたしな」

「にゃあああ(あら、それは大変。でも、猫なんだから冒険者なんてする必要ないでしょ。自由気ままに生きましょ)」

「そうだね。リリーちゃんの言う通りだよ」

「俺もそう思う。冒険者なんてやって、怪我でもしたら大変だ」

京楽と浮竹は、魔法が使えるが、冒険者としてやっていくつもりはないようだった。

「冒険者ギルドに登録してしまったし、白哉の猫だとばれているが、まぁなるようになるだろ」

昼は昼寝をして、市場に出かけては魚を盗んで、市場に集まる他の野良猫にあげたりして、白哉の猫にならないかと勧誘してまわるのが、浮竹と京楽の日常だった。

お陰で、白哉の猫は半野良猫が半分を占めていた。

サタンの子供も生まれたりしたし、いろいろあって162匹まで増えていた。

猫たちが集まる猫の広場を白哉は改築して、もっと大きな広場にしていた。

162匹の猫が暮らせる空間だった。

キャットタワーはあるし、キャットフードをもらえる食事場と、トイレの砂場とペットシーツをひいてある場所は広場から少し離れていた、

162匹の面倒を一人では見きれないので、白哉は猫たちの相手をする専用の使用人をもっていた。みんな猫好きで、職場としては幸せだろうが、ケンカしないかとか、怪我や病気にも目を光らせなければいけないので、意外と大変である。

キャットフードやチュールを与える他に、トイレを交換したり、ブラッシングしたり、お風呂に入れてあげたり、爪を切ったり、猫草をあげたり‥‥仕事はけっこう多岐にわたる。

始めて入った元野良の予防接種したり、ノミの駆除などには、白哉が信頼を寄せている獣医が担当していた。

浮竹のなまけ病を治してくれたのも、その獣医だった。

「最近は、野良からノミの感染がおおい。浮竹も京楽も気を付けるように」

浮竹と京楽は、またいつものように市場に出かけると、茶色の猫の亜人の子供の女の子が、市場でパンを盗んだと、殴らているのを見つけて、二人は止めに入った。

「やめろ。相手はまだ子供だ」

「こいつは、すりとかっぱらいの常習犯なんだ!庇うなら、お前たちも同じ目に合わせるぞ」

「おい、純金の首輪してるぞ。こいつら、朽木様の猫の亜人だ!」

「ひいいい、怪我させたら首が飛ぶ!逃げようぜ!」

ならず者たちは逃げだした。

「大丈夫かい?」

「あ、ありがとう」

「君、ここら辺の子?」

「違うの。西から流れてきたわ」

京楽が、猫の亜人なら受け入れてくれる場所があると説明すると、茶色の猫の亜人の女の子は、目を輝かせたが、相手が貴族と知って暗くなる。

「貴族は嫌い。貴族の世話になるくらいなら、死んだほうがましよ」

「お前、名前は?」

「シャーリー」

「そうか。仲間はいないのか?」

「いる。路地裏の孤児たちが、あたしの仲間」

「貧民街に行ってみればいい。孤児院があるはずだ。君や他の孤児たちを受け入れてくれるだろう。俺たちの主の白哉っていうのが運営してるんだが、衣食住はもちろん、読み書きから計算まで教育を施してくれるし、将来なりたい職業につくための訓練もしてくれる」

「え、本当?そんな、夢のような場所があるの?」

「シャーリーちゃんだっけ。それがあるんだよ。この王都は白哉君に任されているからね。孤児院は朽木白哉君っていう、貴族が運営してるけど、白哉君は本当にいい貴族だよ」

「ありがとう。貴族が運営してるってのが気に食わないけど、このままじゃ人さらいに捕まるか、飢え死にしてしまうわ。みんなを連れて、貧民街まで行ってみるわ」

浮竹と京楽が、シャーリーというまだ小さい少女の頭を撫でる。

「孤児院につくまで、警護しよう。俺たちみたいに、純金の首輪をもっている猫の亜人や猫は、白哉のものって証なんだ。害したら、厳しい処罰を受ける。最近は少なくなったが、人さらいもいるからな」

シャーリーは、路地裏で他の孤児たちを呼んだ。

「みんな、このおじさんたちが、孤児院に案内してくれるって」

「え、でもこの前孤児院に入れてあげるって言って、3人がさらわれていったよ。そのおじさんたち、本当に信用できるの?」

浮竹と京楽は、おじさん扱いされてちょっと悲しくなった。

まだ、20歳なのに。

「お兄さんたちは、君たちをさらったりしないよ。それに前にさらわれたという子のことを、孤児院についたら騎士団を派遣するから、教えてほしい。きっと、取り返しくれる」

「ありがとう、おじさん!」

「おじさん、ありがとう!!」

シャーリーを含めた孤児たち12人は、無事王都の貧民街の孤児院に受け入れられて、怪我をしたり病気のものが多かったので、まずは治療を受けることになった。

「ヒール」

浮竹は、シャーリーの怪我を治してやった。

「ありがとう、お兄さん」

シャーリーは、浮竹の唇にキスをする。

「ああああ!」

「京楽、落ち着け」

「ふふ、あたしのファーストキスあげる。おっきくなって、一人前のレディになれたら、お兄さんのお嫁さんになってもいいわ」

「あああああ」

「気持ちは嬉しいが、俺はこの京楽と結婚してるんだ」

「ええ、結婚してるの?」

シャーリーは、浮竹と京楽を見て、不思議そうな顔をしていた。

「じゃあ、俺たちは帰るな?」

「お兄さん、名前教えて」

「俺は浮竹十四郎。こっちは京楽春水だ」

「じゃあ、浮竹お兄ちゃん、またねぇ。孤児院に、今度遊びにきてねぇ」

白哉の経営している孤児院は3つあり、現在63人の孤児たちがいた。

「シャーリー、これをやる」

浮竹は、新婚旅行の時とったサファイアの原石の結晶を、シャーリーにあげた。

「わぁ、綺麗」

「立派なレディになれよ」

「ふふふ、浮竹お兄さんが驚くような美人さんになるわ」


「ああああ、浮竹にキスしたああ。あの子、ライバルだあああ」

「京楽、落ち着け」

「上書きしなきゃ」

孤児院からそう離れていない場所で、京楽にキスされて、浮竹は京楽の頭を拳で殴る。

「痛い」

「子供に嫉妬するな。見苦しい」

「だってええええ」

浮竹と京楽は猫の姿になり、魚屋でまだ飛び跳ねている魚を盗む。

「ああ、白哉様のとこの猫!こら、お代をもらいにいくのめんどうなんだぞ!相場の5倍支払ってくれるけど!」

そんな魚屋の主人が気をとられている隙に、他の白哉の猫が魚を盗む。

「ああもう、白哉様んとこの猫は自由すぎだ!ちゃんと餌もらってるだろうに、なんで魚を盗むんだか」

魚がいると、かぶりつきたくなるから。

浮竹と京楽は、猫のふりをして、にゃあにゃあと鳴きながら白哉の家に戻っていくのであった。




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記憶というモノ

「隊長、愛してます」

「虚退治の遠征、がんばってこい。兄が、やられるわけはないと思うが、重々気をつけて」

「はい、隊長」

そう言って、白哉は恋次を送り出した。


「くそっ」

恋次は、虚の大軍に襲われていた。

5席の者を庇って、怪我をしていた。

「隊長‥‥すみません。約束、破っちまうかも」

大量の虚を前に、恋次は卍解をするが、全てを一掃できずに頭に傷を負った。深い傷で、それが元で記憶喪失になった。

「あ、俺は何を?」

戦うことだけは覚えていて、体は動くが、自分が誰なのか思い出せなかった。

「おい、そこのあんた」

虚を全て退治し終わって、恋次は近くにいた負傷している5席に声をかける。

「あんた、俺が誰か知ってるか?俺、記憶喪失になったみたいなんだ」

「阿散井副隊長‥‥‥‥」

「阿散井?それが、俺の名前なのか」

4番隊が呼ばれて、5席の者と一緒に、頭に怪我を負って、けっこう重症な恋次も救護詰所で診てもらうことになった。

幸い傷は命に関わるものではなく、ただ記憶喪失とだけ告げられた。

「恋次!」

恋次の元にきた白哉を、恋次は不思議な顔で見つめた。

「俺は阿散井恋次。6番隊の副隊長。で、あんたは誰ですか」

「私のことを、忘れたというのか」

白哉が、茫然とした目になるが、すぐに己を取り戻して、ゆっくり告げる。

「私は6番隊隊長、朽木白哉。兄の上司だ」

「あ、そうなんすか。今回は、へまをしてしまったようですみません」

「私のことは、思い出さぬのか?」

「それが、自分のことも分からなくて」

白哉は、恋次が一人暮らしをできるかも心配なので、記憶が戻るまで朽木家で面倒を見ることにした。

「兄様と私のことを忘れただと!このたわけめが!」

ルキアという、白哉の妹は、白哉と全然似ていなかった。

それを告げると、白哉は悲しそうな顔をして言う。

「ルキアは、私の義妹だ。私にはかつて緋真という妻がいた。亡くなったが、その緋真の実の妹がルキアだ。緋真の遺言で、ルキアを義妹として朽木家に迎え入れた」

「兄様。このような輩、放り出してしまいましょう」

「そう言うな、ルキア。恋次はそなたと同じ流魂街の出身。一緒にいれば、記憶を取り戻すかもしれぬ」

「でも、このたわけは兄様との仲も忘れてしまったのでしょう?」

「それについては、私から言う」

ルキアは悲しそうな顔をする。

「あの俺、ほんとにここにいていいんですか?」

「恋次。兄様をこれ以上悲しませたら、容赦せぬからな」

「はぁ?」

意味も分からず、恋次は頭に?マークを浮かべる。

「その、私と兄は特別だった。恋仲だったのだ」

「はぁ!?あんた、綺麗すぎるけど男っすよね。俺も男。ありえない」

最初から否定されて、白哉は悲し気に目を伏せる。

「そうだ。初めから、兄との仲は無理があったのだ」

白哉は、自分に言い聞かせるように、今までの恋仲でいられたことが奇跡だったのだと思うようになった。

恋次は、朽木家で暮らし始めた。

ルキアとはぎゃあぎゃあ言い合うまで、仲を深めていたが、恋次と白哉の距離は遠くなる一方だった。

「ルキア」

「はい、兄様」

「恋次を、6番隊の執務室に連れていこうと思うのだが、どう思う?」

「まだ、仕事ができないのでは?」

「うむ。ただ、記憶を取り戻すきっかけになればと思ってな」

「それなら、行ったほうがいいかと思います」

次の日、恋次は白哉と一緒に6番隊の隊舎に来ていた。

「阿散井副隊長、記憶がまだ戻らないって本当ですか?」

「阿散井副隊長!」

「なんだ、頭がいてぇ」

名を呼ばれて、恋次は頭を抱えてしゃがみこむ。

「恋次」

「何かを思い出しそうなんです‥‥‥ああ、俺は元11番隊だった。理由は分からないけど、6番隊の副隊長になったんだった」

少しだけ、恋次は記憶を取り戻していた。

「私のことは、分かるか?」

「すんません、まだ思い出せません」

「そうか。ルキアや自分のことは?」

「ルキア。ああそうだ、ルキアだ。流魂街の犬吊で出会った‥‥俺の、家族同然の仲間」

恋次は、ルキアのことを思い出したらしい。

それから、自分のことも少しだけ。

「俺は、犬吊から真央霊術院に入って、死神になって‥‥‥」

白哉は、その日は仕事をせずにルキアを呼んだ。

「お呼びですか、兄様!」

「恋次が、そなたのことを思い出したらしい。少し話をしてやってくれ」

「このたわけ!やっと、私のことを思い出したか」

「ああ、思い出した」

「兄様のことは?」

「まだ、思いだせねぇ」

ルキアは、恋次の頭を蹴った。

「いってええええ!!」

「このたわけがああ!私のことを思い出したのなら、兄様のことも思い出せ!」

「あー。そういや、お前の傍に、いつも誰かいなかったっけ。その、オレンジ頭の」

「一護のことか!今すぐ、連れてくる!」

ルキアは、風のように現世に向かってしまった。

「いずれ、記憶がある程度戻ったら、ここで仕事をしてもらう。執務室がこっちで、こっちが隊首室。恋次、兄がよく寝泊まりに使う部屋だ」

「はぁ」

隊首室にいくと、恋次の私物がいろいろあった。

「あ、これ懐かしい。俺が最初に買ったゴーグルだ」

「このゴーグルは、覚えておらぬか?」

「覚えてないっす。そんな高そうなの。ほんとに俺のものっすか?」

「私が、兄の誕生日に買ってやったものだ」

「あの、あんたのこと、もっと、知りたい」

恋次は、白哉の手を握りしめて、抱き寄せた。

「温かい。なんだか、安心する」

「兄は‥‥‥覚えておらぬのなら、このような真似はするな」

「あ、はい。気に障ったのなら、すんません」

しばらくして、ルキアが一護を連れてきた。

一護は大学生になっていて、講義があるのにルキアに拉致されて、ご立腹だった。

「おい、ルキア、なんだってんだよ!」

「恋次が、記憶喪失なのだ!だが、貴様のオレンジ頭を思いだしおった。貴様と直接顔を合わせれば、何か思い出すかもしれぬ」

「おい、恋次、お前記憶喪失ってって、いてぇ」

恋次が、一護の頭を殴る。

「ああああ、一護おおおお。俺から、ルキアを奪ったやつ!」

その言葉に、ルキアが真っ赤になる。

「おう、その通りだ。ルキアは、俺のもんだ」

「いいんだよ、俺には‥‥‥‥あれ?俺には、大切な人がいた。そんな、気がする」

ルキアと一護と恋次の3人でしばらくいさせた後、ルキアは一護を現世に返した。それに、恋次もついていった。

「私は、兄のことを諦めるべきなのであろうか」

白哉は、天を仰ぐ。



夜になり、朽木家で寝泊まりしている恋次は、ルキアと話しこんでいた。

「だから、貴様は兄様と」

「隊長‥‥‥でいいんだよな。呼び方」

「うむ、そうだ。その調子だそ、恋次!」

「俺は、隊長を目標に6番隊に入った。隊長に憧れて」

「その通りだ!」

ずきっと、頭が痛み、恋次が頭を抱え込む。

「だめだ、そっから先が思い出せねぇ」

恋次が朽木家で寝泊まりするようになって、1週間が過ぎようとしていた。

「ルキア、あまり無理はさせるな」

「あ、はい、兄様」

恋次は、大分自分のことや周りのことを思い出していた。

一護と出会ったことも、藍染との一件のことも、白哉の姿だけ欠けて思い出していた。

「ユーハバッハは、まだ思い出せぬか?」

「ユーハバッハ‥‥‥うろ覚えだけど、なんか思い出してきた」

恋次の中の記憶には、白哉の影がなかった。

白哉のことだけすっぽ抜けて、記憶を思い出していた。

「ユーハバッハの軍に襲われた貴様と兄様は、瀕死の重傷を負い、零番隊のところへ行ったのだ。私と一護も一緒だった」

「お前と一護ができてるってことは思いだした。でも、隊長のことだけが、何故か思い出せねぇ。憧れて、憧れて‥‥‥それから、どうなったんだ?」

「これ以上は、私の口からは言えぬ」

「大切なことを、俺は忘れてる?」

その日は、そのまま恋次は大人しく眠った。

次の日になり、白哉の出勤と一緒に、ほぼ記憶を取り戻した恋次も、仕事のために6番隊の執務室に出かけた。

「恋次、まだ完全に記憶が戻ったわけではあるまい。あまり、無理はするな」

「無理じゃないっすよ、隊長」

「恋次?」

「あ、俺‥‥隊長の、こと」

ズキリと頭が痛んで、恋次はしゃがみこむ。

「恋次、恋次、大丈夫か?」

「あんたが、大切だった。あんたの、太陽でいたかった。あんたを手に入れたかった」

「恋次?」

恋次は、白哉をソファーに押し倒す。

「あんたが、欲しかった」

「恋次!」

「あ、俺!なんてことを!すんません!」

恋次は、逃げ出そうとした。その死覇装の袖を、白哉が掴む。

「私たちは、恋仲であった。恋次、愛している」

「あ、隊長‥‥全部、思い出しました。俺も、隊長が好きで愛してます」



隊首室にいき、白哉は恋次に押し倒されていた。

「ああ、久しぶりの隊長だ」

「一緒の屋根の下で暮らしていたであろう」

「それとこれとは別です。隊長、あんたが欲しい」

熱い眼差しで見つめられて、白哉の瞳が潤む。

「好きだ、恋次。私を好きにして、かまわぬ」

「あんたを、抱きます」

はじめはそっと触れた。

口づけをしてみて、大丈夫と分かった後は、恋次は白哉を征服していく。

「あああ!」

貫かれて、白哉は恋次の下で乱れた。

大輪の椿の花が、ゆっくりと散っていくようだった。

「あ!」

真っ白な白哉の肌に、恋次は自分のものだとキスマークを残していく。

「んあっ」

奥を抉られて、白哉はオーガズムでいっていた。

「あ、もっと」

「隊長、エロい‥‥‥」

足を自分から開く白哉のものをしごいて、無理やり射精させると、白哉はビクンと体を反応させる。

「あ、熱い‥‥‥‥」

「隊長の中も熱いです。俺、とろとろに溶けちまいそうだ」

恋次は、白哉の奥を抉ると、締め付けが強くなって、白哉の中に恋次は欲望を吐き出していた。

「あ、あ!」

びくんびくんと体を痙攣させて、白哉はオーガズムでいきまくっている。

「隊長、俺のものだ」

「あ、恋次」

「好きです、隊長」

「もう、二度と記憶など失うな」

「はい。約束します」

恋次は白哉を後ろから犯した。

「んあ、あ、あ」

突き上げる度に、白哉は濡れた声をあげる。

「隊長、いいですか?」

「あ、いい。いいから、早く」

白哉のいいところをすりあげて、奥まで貫くと、白哉は精液を出しながら背をしならせる。

「いくの、止まらないぃぃ」

「はっ、隊長、エロい‥‥」

恋次は、また白哉の中で子種を弾けさせる。

「ああーーー」

白哉が、意識を失う。

「隊長?隊長?」

揺すぶっても返事はないが、気絶しているだけだと確認して、恋次は安心するも、やり過ぎたと反省する。


「あ、ここは?」

「目、覚めましたか?」

「恋次。本当に、恋次なのだな?私のことを忘れてはいまいな?」

「忘れてません。ここは、俺の家です。席官に与えられる、俺の家です。たまにしかこっちにこないけど、手入れはされてあるので。隊首室だと風呂が大浴場しか使えないんで、俺んちに、気を失った隊長を抱いて、瞬歩でここまで移動しました。あ、後始末とか隊首室でしたんで」

白哉は、濡れている自分の髪を見る。

「そうか。兄が、私を風呂にに入れたのだな?」

「はい。ふいただけじゃあ、気持ち悪いだろうと思って。いつも、行為の後は湯あみするから、隊長は」

白哉は、新しい死覇装を着ていた。恋次のものだった。

「隊長羽織は?」

「こっちにあります。一応、洗濯して干しておきました」

「私の死覇装は?」

「ああ、あの服はその」

「体液で汚れたのだな。処分して構わぬ」

「隊長、朝ごはん食べますか?」

「ああ、そうだな。もらおう」

恋次は、一人暮らしをできるくらいの能力と生活力はあった。

鮭を焼いたもの、味噌汁、白ごはんを出されて、白哉は何も文句を言わず、恋次と一緒に食べていく。

「一度、自宅に戻る。兄も、私の家でずっと過ごすわけにはいかぬから、荷物を持って帰れ」

「はい」

恋次と白哉は、朽木邸に帰宅して、恋次は一度自分の家に荷物を置いた。

「兄様、恋次が全ての記憶を取り戻したのですね!」

「何故、分かる?」

「兄様から、恋次の匂いがしますから!」

愛する義妹に、恋次と寝たことが筒抜けで、白哉は軽いめまいを覚える。

「では兄様、私は先に行ってきますね」

「ああ。私も、もうすぐ6番隊に行く」

時間になり、6番隊の執務室に行くと、恋次と会った。

お互い、赤くなる。

「あの!」

「な、なんだ」

「その、ルキアたちも呼んで、飲みに行きませんか。俺の快癒祝いだそうで、ルキアがメンバー揃えるって」

「まぁ、よいであろう」

「まじっすか。隊長が来てもいいような、けっこうお謝礼な店なんで。あと、面子は11番隊からも出るかもしれませんが」

「よい。一度承諾したのだ」

「あ、はい。その、昨日のせいで腰が痛いとかは?」

白哉が赤くなる。

「あ、すんません」

「腰は、少し痛む。少しだけだ」

「久しぶりなのに、激しくしちまってすみませんでした」

「かまわぬ」

白哉は、微笑んでいた。

その柔らかい笑みに、恋次が釘付けになる。

「隊長、今日はめいっぱい飲みましょう!」

白哉と恋次は、ほどほどにして、帰り道を歩いていく。

「隊長」

「なんだ?」

「その、また今度抱いてもいいっすか?」

ストレートに聞かれて、白哉は顔を赤くする。

「私がいいと言えば、許そう」

恋次は、大型犬のように見えない尻尾を振って、白哉に抱きつくのだった。









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