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始祖なる者、ヴァンパイアマスター31前編

「ラニ、レニ」

「はい、お父様」

「はい、父上」

「いいかい、始祖のヴァンパイア浮竹十四郎か、その血族である京楽春水を屠るんだ。それができなかったら、力を削り取るだけでもいい。がんばりなさい」

「「はい」」

ラニとレニ、藍染は愛娘も手ごまのように扱った。

だが、使い捨てにする気はなかった。

ちゃんと戻る意思を持たせておいたし、魔人ユーハバッハの血を注射して与えて、化け物化することもなかった。

使い捨てにできる手ごまなど、たくさんいる。

藍染は、藍染なりに娘を愛していた。

それが愛ではなく、ただの執着であることに、藍染が気づくことはなかった。

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ラニとレニは、逃げ出した。

ラニとレニは、肩まである金髪に青い目をした、人形のように整った顔立ちの双子だった。

始祖ヴァンパイアのところに行くふりをして、実際に古城にまでやってきた。

そして、浮竹の元にいくと、逃げてきたのだと説明し、魔人ユーハバッハの血液を凝固して作った赤い宝石を差し出した。

「私たちのお父様は、あなたとあなたの血族を狙っているの。私たちに、屠れと命令してきたわ。でも、私たちはお父様の操り人形じゃない。お母様は利用されて殺されてしまった。あんな風には、なりたくないの」

その母様とやらを殺したのは自分たちだとは、浮竹も京楽も言えなかった。

「しばらく古城で保護しよう」

「でもいいの、浮竹。藍染の子だよ。もしも藍染が取り返しに来たら・・・・・」

「その可能性は限りなく薄い。藍染は俺たちの力を知っている。だから、自分の力でなく他者を利用する」

「そうだけどさぁ。なんかきな臭いんだよねぇ」

「京楽の考えすぎだろう。それにまだ幼い少女だ。血の帝国に遣いを送って、血の帝国で保護してもらおう。それなら、京楽も安心だろう?」

「うん、それならいいよ」

こうして、浮竹と京楽と、藍染の双子の娘という奇妙な構図ではあるが、一緒に暮らす生活が始まった。

「ラニ、レニ、起きろ。朝だぞ」

「はい、浮竹様」

「はーい、起きます」

二人は、行儀正しかった。

本当に藍染の娘なのかと疑わしいほどに、似ていなかった。

魔女の血を濃く引き継いだせいか、魔族の匂いもなかった。

逆に魔女の匂いが濃くて、まるで猫の魔女乱菊と生活をしている錯覚に陥った。

双子は幼いなりに、よくできていた。

読み書きもできたし、難しい計算もできた。

特に姉のほうのラニには魔法の才能があるようで、浮竹が個人的に授業を開いて、ラニに魔法の使い方を教えた。

「ファイア!」

「わあ、姉さま上手!」

何もない空間を、凄まじい勢いの炎が宿る。

それを見て、ああ確かに藍染の血を引いているのだなと、おぼろげながらに実感した。

「レニにも魔法の才能はあるようだね。浮竹、レニにも教えてあげたら?」

「そうだな。レニ、明日からお前も授業に参加できるが、参加するか?」

「私も姉さまみたいに、魔法が使えるの?」

「ラニほどうまく魔法は使えないかもしれないが、そこそこ使えるようになると思うぞ」

「なら、私も明日から参加する!」

二人は、純心爛漫を絵に描いたような双子だった。

知識をより貪欲に吸収して、古城にきて1カ月は経という時期には、ラニはもう火と風と水の中級魔法まで使えるようになっていた。

レニのほうは、火と水の魔法の初級までだった。

「いいなぁ、姉さま。中級魔法が使えるなんて」

「学んでいけば、レニも使えるようになるさ」

浮竹も京楽も、すっかり敵対心をなくしていた。

ミミックのポチも、ラニとレニに懐いていた。

「D級ダンジョンに潜ろうと思う。ラニ、レニ、冒険者ギルドに行くぞ」

ラニとレニを、独立させるには冒険者が一番手っ取り早かった。

血の帝国から、保護するための使者が来ていたが、何かと理由をつけて、浮竹は先延ばしにしていた。

ラニとレニを気に入ったのだ。

ラニとレニを連れて冒険者ギルドにいくと、ギルドマスターが直々に来てくれた。

「なんだ、幼い魔女か。冒険者になりたいのか?」

「浮竹様が、それが一番手っ取り早いって」

「まぁそうかもしれないが、命の危険と隣り合わせなことを、忘れるなよ」

それだけ言い残して、ギルドマスターは去って行った。

ラニとレニは、ギルドの受付嬢から渡された書類に記入して、Eランクの冒険者となった。

Eランクなら、D級ダンジョンでもなんとかやっていけるだろう。そういう判断だったのだが、その判断は浮竹を迷わせた。

D級ダンジョンに出てくるモンスターを、レニだけの魔法でやっつけていた。

Sランクの浮竹と京楽は、一切手助けをしなかった。

「やあ!ファイア!」

炎の魔法を受けて、スライムがどろどろに溶けていく。

「レニだけで攻略できそうだな。ラニも、何か魔法を使うといい」

D級ダンジョンは20階層まであった。10階層のボスはリトルケルベロス。

ケルベロスを小さくした魔物だったが、炎をのブレスを吐いてくるしで、意外と強敵だった。

「ウォーターシールド!」

まず、レニがそう唱えて、水の盾を出してリトルケルベロスの炎のブレスを防いだ。

「ウォータープリズン!」

ラニは、リトルケルベロス全体を水の魔法に閉じ込めた。

リトルケルベロスは呼吸ができなくなり、じたばたとしばらくもがいた後で、動かなくなった。

「よくやった、ラニ、レニ」

「浮竹様の指導があってのものです」

「私もそう思います。浮竹様の教えがいいから、ここまで成長できました!まだ成長したいです!もっといろいろ教えてください!」

「ラニ、レニ・・・・・」

浮竹は、ラニとレニを引き取りたいと、京楽に言い出した。

「でも、一応藍染の子なんだし、それは無理だよ」

「だが・・・」

「浮竹様、最下層の20層が見えてきました」

「京楽様も、行くきましょう?」

ラニとレニに手を引っ張られて、京楽と浮竹は最後の20階層を進む。

ボス部屋があった。

中に入ると、プチドラゴンがいた。

「なんだ、プチドラゴンか」

浮竹には雑魚でも、ラニとレニには強敵だった。

「ファイア!」

「ウォーターランス!」

プチドラゴンは、ドラゴンブレスを吐いた。

二人が唱えた魔法は、ドラゴンブレスに相殺された。

「やあああ!!!」

レニが、短剣を取り出して、プチドラゴンの右目を刺した。

「ギィイイイイイイイ!」

プチドラゴンが、悲鳴をあげてレニを振り回す。

レニはそれでも短剣にしがみつき、割れた眼球めがけて、炎の魔法を放った。

「ファイア!」

「ギエエエエエエエエ」

悲鳴をあげて、プチドラゴンは倒れた。

「よくやったな。偉いぞ、ラニ、レニ」

「まさか、ここまでやるとは思ってなかったよ。二人の実力には、僕も脱帽だよ」

「京楽様、財宝の間が見えます!」

「浮竹様も早く早く!」

ラニとレニに追い立てられて、財宝の間にくると、100枚ほどの金貨と宝石がいくつかあった。

D級ダンジョンにしては、報酬は大きかった。

ダンジョンのランクが上がるほど、出てくる敵は強くなり、報酬の財宝の量も増える。

S級ダンジョンをクリアできれば、一生遊んで暮らせるような金が手に入るが、S級ダンジョンを踏破した者は、浮竹と京楽以外では数少ない者しかいなかった。

浮竹と京楽の存在が規格外すぎるのだ。

「ダンジョン踏破の報告に行こう。Dランクに昇格できるはずだ」

念のため、一切手伝っていないことを示す水晶玉を手にして、浮竹と京楽とラニとレニは冒険者ギルドへ帰還した。

「なんですって、その二人だけでD級ダンジョンを踏破したとういうのですか!?」

ギルドの受付嬢が、そんな新人冒険者は久しぶりだと喜んでいた。

「この宝石だが、買いとれるか?」

「あ、はい。金貨6枚になります」

浮竹が、D級ダンジョンでドロップした宝石を売った。

「ほら、ラニとレニ。金貨3枚ずつだ。報酬の金貨も、50枚ずつで分けておいたからな」

「ありがとうございます、浮竹様!」

「京楽様、帰ったS級ダンジョンを攻略した時の話を聞かせてください!」

ラニとレニは、無事Dランクへ昇格した。

このままいけば、半年以内にはCランクへの昇級もありえそうだった。


ラニとレニが寝静まったのを確認して、浮竹と京楽は今後のことについて話し合っていた。

「ラニとレニを、正式に娘にしたい」

「浮竹、君の気持は分かるし、ラニとレニはいい子だ。でも、何かがひっかかるんだ」

「藍染のことか?」

「そう。彼が、愛娘が脱走したのに、何もしてこないのはおかしすぎる」

「俺がいるからじゃないか。藍染は、一度俺に敗れている」

「それもそうなんだけど・・・・・」

京楽は、なんとも言えない表情を作った。

「血の帝国に、保護の必要はないと言っておいた」

「それは!」

つまりは、ラニとレニを手元に置くことを意味していた。

ラニとレニが、そんな二人の会話を聞いて、笑っているなどとは、浮竹にも京楽にも想像できなかった。

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ラニとレニは、深夜になって古城を抜け出した。

一番近くの川の水を桶にはって、水鏡を作る。そして、呼びかける。

「藍染父様」

「やあ、愛しいラニとレニ。計画は順調かな?」

「始祖浮竹と血族京楽は、私たちを娘として迎えようとしているわ」

「それはいいことだ。いいかい、決して殺意を抱いちゃいけないよ。悟られるからね」

「父上、本当にこれでいいのでしょうか」

「レニ?」

「何を言っているの、レニ」

「だって、浮竹様はこんな私たちにとても優しくしてくれる。純粋にいい人に思えて・・・・」

パンと、ラニがレニの頬を叩いた。

「忘れたの、レニ。私たちのお母様を殺したのは、あの始祖浮竹とその血族京楽よ!」

「でも、ラニ姉さま!」

「いいわけは聞きたくないわ。もしも邪魔するなら、レニ、あなたでも殺すわよ?」

「ごめんなさい、ラニ姉さま。私にはラニ姉さまと父上だけなの。私を嫌わないで、ラニ姉さま」

「分かればいいのよ、レニ」

ラニは、レニの金髪を撫でた。

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双子は、殺意を抱かずに浮竹と京楽との生活を楽しんだ。

まるで、浮竹と京楽を実の父親のように感じて、二人の娘であろうとして振る舞った。

ラニとレニに近づいても、水晶のペンダントはいつも濁ることなく、光に煌めいて輝いていた。

「ラニ、レニ、誕生日おめでとう」

「浮竹様、私たちの誕生日は私たちも知らないわ」

「だから、出会って2カ月経ってしまったけれど、今日をラニとレニの誕生日にしようと思う」

「嬉しい、浮竹様!」

ラニとレニは浮竹と京楽に抱き着いた。

「ほら、誕生日プレゼントだ」

そう言って、浮竹はラニとレニに大きな兎のぬいぐるみと、魔法使い用の杖をあげた。

「嬉しい、浮竹様!」

「今日から、父様と呼んでくれ。正式に家族になることにした」

ブラッディ・ネイの許可をとらず、浮竹はラニとレニを娘として迎えた。

「浮竹父様、京楽父様・・・・・」

「なんか、エメラルドを思い出すようで、懐かしいな」

かつて、浮竹と京楽には、エメラルドという名のヴァンピールの娘がいた。

今から100年以上前の話だが。

「今日から、君たちは僕たちの家族だよ」

京楽も、浮竹の熱意に負けて、ラニとレニを娘にすることを許可してくれた。

浮竹も京楽も、幸せだった。

その幸せを壊す足音は、静かに忍びよとうとしていた。


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それから更に一カ月が経った。

「レニ、起きて、レニ」

「ううん、ラニ姉さま?」

「今日が、藍染父様との約束の日よ」

「うん。浮竹父様と、京楽父様を殺す日ね?」

「そうよ。私たちの手で、血の帝国の歴史を変えるのよ」

ラニとレニは、就寝中の浮竹と京楽に近寄る。

浮竹と京楽は、よく眠っていた。

夕飯に混ぜた眠剤が、効いているようであった。

「さよなら、浮竹父様」

ラニは、特殊な銀の短剣で、浮竹の心臓を一突きした。傷口に、回収しておいた魔人ユーハバッハの血を結晶化したものを砕いて、浮竹の心臓に降り注がせる。

「ラニ、レニ!?」

「ぐ・・・・ごほっ」

浮竹は真っ赤な血を吐いて、苦しそうに身を捩った。

「ラニ、レニ!!!」

京楽は、血を暴走させていた。

今までにない、暴走だった。

愛していた者に裏切られた。

何より大切な浮竹を傷つけられた。

「ラニ、レニ、許さないよ」

京楽は、じわりと猛毒の血を滲ませ、まずはラニの手の短剣を砕いた。

次に浮竹の傷口を覆い、侵入していた魔人ユーハバッハの血を自分の血に変えて、浮竹の心臓を癒す。

「許さない。僕の浮竹を傷つける者は、誰であろうと許さない」


「はははは!手に入れたぞ!始祖のヴァンパイアの体だ!」

「浮竹?」

「違う。私の名はユーハバッハ。人は、私のことを魔人と呼ぶ」





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始祖なる者、ヴァンパイアマスターお料理大会

そこは古城だった。

西洋と東洋の浮竹と京楽で別れて、料理大会をすることになった。

それを決めたのは、西洋の浮竹だった。

なんでも東洋の京楽はゲテモノ食いだと聞いて、是非、ゲテモノになる自分のものを食べて欲しいからしかった。

「お題は、卵を使った料理だ!」

「僕は親子丼かな」

(ボクはオムライスかな)

(俺も参加するのか?)

「強制参加だ」

東洋の浮竹は料理ができないで、少しもじもじした。

(じゃあ、卵粥を)

「俺は卵焼きだな」

「ちょっと、浮竹たち。そんな簡単な料理で」

言葉の途中で、西洋の浮竹が西洋の京楽の頭をハリセンで殴った。

「卵を使用すればいいルールだろ。別に問題はないはずだ」

(そうだね。卵粥も卵焼きも、卵を使った立派な料理だよ)

ほれ見ろとドヤ顔する西洋の浮竹に、西洋の京楽は東洋に京楽に「南無阿弥陀仏」と唱えて、合掌した。

(ボクは、こう見えてもなんでも食べれるよ)

「浮竹の料理というか錬金術は殺人級だよ」


こうして、それぞれ西洋と東洋で別れて、料理が始まった。

西洋の京楽は、軽やかにオムライスの具をつくり、トマトケチャップで味付けをする。味見を任された東洋の浮竹は、「おいしい」とにこにこしていた。

さて、西洋のほうはというと。

鶏の肉をある程度の大きさに切る。

玉ねぎをきって、フライパンで炒める。卵をボウルで溶かす。 フライパンにサラダ油をぬって、鶏のもも肉を焼く。ある程度火が通ったら、玉ねぎを入れてこんがり狐色になるまで焼く。水気がなくなったら、卵の3分の2をいれて、卵が半熟状になったら、残りの卵をいれて、10秒ほど炒めてあからじめたいておいた米の上にのせる。

「さぁ、完成だよ」

「ボクも完成だよ」

あつあつの親子丼に、ホクホクのオムライスができていた。

東洋の浮竹は、温度調節が難しいのか、卵粥を少し焦がしてしまったが、一応完成となった。

皆、西洋の浮竹を見ていた。

卵を大量に混ぜたボウルの中に、隠し味だと「うおおお」と悲鳴をあげるマンドレイクをぶちこんだ。あとは、レッドスライムの粉末をぶちこんで、ドラゴンの血もぶちこんだ。

ほいほいといろいろぶちこんでいく姿を、東洋の京楽を除く二人が、かなり引き気味で眺めていた。

「ねぇ、見てよ浮竹の釜の中身。料理なのに、錬金術使ってるんだよ!錬金術の材料ぶちこんで、料理しているんだよ」

(西洋の俺、思っていたのとは違う意味で壊滅的だな)

てっきり、東洋の浮竹は自分と同じように料理ができないものと思っていたのだ。

「料理はできるけど、いらない材料をぶちこむんだよね、僕の浮竹」

(ボクの浮竹は、ただ純粋に料理が苦手なだけだからね)

錬金術の釜でぐつぐつ似ていた液体を、フライパンに乗せて焼いて、それで西洋の浮竹の料理も完成であった。

「ああああ~~ひいい~~~~」

「料理がしゃべってる!」

(西洋の俺の卵やき、なんか足生えてるんだが)

「さぁ、試食といこうか」

(うう、緊張する)

「うわぁ、食べたくないなぁ」

(ボクはけっこう美味しそうに見えたけどね)

「ええ、君、本気かい?」

東洋の京楽は、自分のオムライス、親子丼、次に卵粥を食べた。

(東洋のボクの料理は完璧だね。十四郎は、もっと火力を落としたらいいと思うよ)

(なぁ、春水。本当に、あれたべるのか?)

(食べるよ。美味しそうじゃない)

「うわぁ、勇気あるなぁ。ちなみに僕はたまに浮竹の手料理食わせられるけど、その度に生死の境を彷徨っているよ」

「ウヴァ~~~~ヴァヴァア~~~~」

足をはやして、かさかさ逃げていこうとする卵焼きを、西洋の京楽はフォークで突き刺した。

「ギャアアアア」

「南無阿弥陀仏」

(平気だって)

西洋の京楽は、悲鳴をあげる卵焼きを口に入れてしまった。

(んー辛さの中にツーンとした刺激があり、甘酸っぱい後、口の中がイガイガする。けど、美味しいよ?)

「ええっ、そんな食えるもののはずが!」

西洋の京楽は、足の生えた卵焼きを一口食べて、昇天した。

(しっかりしろ、西洋の京楽!)

「東洋の浮竹も食べてくれ」

期待の眼差しで見られて、東洋の浮竹は困った。

(これ美味しいから、ボクに全部ちょうだい?)

そう、東洋の京楽から助け船を出されて、東洋の浮竹は安堵した。

(うん、病みつきになりそう。この味)

「やっぱり、マンドレイクとドラゴンの血の隠し味が効いているな」

西洋の浮竹は、他のメンバーの料理も食べてから、自分が作った卵焼きを食べた。

「ぎゃあああああ」

悲鳴をあげる卵焼きを咀嚼して、飲みこむ。

「うん。うまい」

(・・・・・西洋の京楽、大丈夫か?)

倒れた西洋の京楽を、東洋の浮竹が癒しの力で治してくれた。

そして、東洋の浮竹は西洋の京楽の作った親子丼を食べた。

目をきらきらさせていた。

「おかわりなら、そっちにあるから」

復活した西洋の京楽からおかわりをもらって、もっきゅもっきゅと食べていく。

その姿がかわいくて、3人とも微笑ましそうに見ていた。


「俺もオムライスとやらを作ってみる」

「ちょっと、浮竹!?」

「さっき、西洋の京楽が作っていた手順で作ればいいんだな」

(そうだよ)

「お願いだから、マンドレイクは・・・・・」

白飯をなべにいれた瞬間、西洋の浮竹はフライパンにマンドレイクをぶちこんだ。

「ああああ!せめて刻んでからにして!」

「マンドレイクはそのままぶちこむほうが、生きがいい」

「オムライスに変な鮮度求めないで!」

(そこで、卵をいれてつつむんだよ)

「こうか?」

(そうそう)

浮竹は、隠し味だと、ドライアドという植物型のモンスターの葉をぶちこんだ。

葉はくねくねとうねっていたが、フライパンの火力にまけて静かになった。

「できた、オムライスだ」

ツーンとした刺激臭がした。

どうにも、それはマンドレイクのせいらしい。

「東洋の俺には、マンドレイクとドライアドの葉抜きのものをやろう」

(ありがとう!)

東洋の浮竹は、それを受け取っておそるおそる食べた。

(ん、意外とおいしい!)

「そうだろう。そこにマンドレイクをぶちこめばもっと美味しくなるんだ。西洋と東洋の京楽には、マンドレイクをぶちこんだものをやろう。マンドレイク、最近高いんだぞ。一本で金貨3枚になる」

マンドレイクをぶちこんだオムライスはくねって、皿の上で踊っていた。

「いただきます・・・・ぐふっ」

西洋の京楽は、数口食べてテーブルの上で白目をむいていた。

(いただきます・・・お、さっきよりツーンとした刺激があっていいね。マンドレイクのせいかな)

「ドライアドの葉っぱも、効いているだろう。炭酸水のように弾けるはずだ」

(お、ほんとだ。口の中でぱちぱちいってる。はじめての食感だね)

東洋の浮竹も、自分のオムライスを食べる。

「こんなにおいしいのに、何故俺のところの京楽は白目をむいて気絶するんだろう」

ある意味、西洋の浮竹もゲテモノ食いだった。

自分の料理を食べて、それを美味いと感じていた。


「うーーーん」

「あ、気が付いたか?東洋の俺に礼を言えよ。治癒してもらったんだ」

「ああ、ありがとう東洋の浮竹」

(いや、別にいいんだ。それより、マンドレイクとドライアドの葉をぬきした西洋の俺のオムライスは美味しかったぞ)

「ええ!じゃあ、変なものをぶちこまないと、浮竹はそれなりに料理できるってこと!?」

「バカをいうな。俺が作る料理は全てマンドレイクをぶちこむ!」

信念があるようだった。

料理=マンドレイク。

それが西洋の浮竹の考え方だった。

「ほら、生きのいいマンドレイクだ。今日の朝、中庭の畑から収穫したものだ」

そう言って、東洋の浮竹と京楽に手土産だと渡そうする、マンドレイクのつったまたビニール袋を奪い取った。

「何をする、京楽!」

「それはこっちの台詞だよ。マンドレイクはこっちにしか存在しない食材だし、その死の悲鳴を聞いた者は、普通命を落とす」

(俺たちはどうってことなかったが)

(ボクもだね)

「あくまで対象は普通の人間だよ。とにかく、こんな厄介な代物は禁止。それより、こっちを持って行って」

西洋の京楽が渡してきたのは、餃子だった。

「東洋の僕からもらったレシピで作ってみたんだ。味は、うちの浮竹が保証して・・・なんか、浮竹の保証が怖くなってきた」

マンドレイクをぶちこんだなんともいえぬ料理を、美味いと食う西洋の浮竹であった。

(ありがとう。食べるの楽しみだなぁ。こっちの春水は、俺の春水と同じくらい料理ができるから)

「俺はマンドレイクに水をやってくる。途中まで、送ろう」

「あ、見送りなら僕もついていくよ」

そうして、二人のヴァンパイアに見送られて、東洋の浮竹と京楽は元いた世界に戻っていった。


「さて、マンドレイクの育ちは順調が見ようか」

「こっちのマンドレイク、しなびれかけてるよ」

「それは大変だ。俺の血を混ぜた水をかけよう」

じょうろいっぱいの水に、浮竹は一滴だけ血を垂らした。

しなびれていたり、枯れかけいたマンドレイクが持ち直し、ツヤツヤと輝いて、日の光を浴びていた。

「ねぇ、浮竹。こんなにマンドレイク育ててどうするの」

「猫の魔女、乱菊に安めに売るんだ。最近マンドレイクが高いから、不足しがちだと言っていた」

「なんだ、料理に使うわけじゃなかったんだね。安心したよ」

「料理にも使うぞ?」

「え?」

「今日の夕飯は俺つくろう。牛肉とマンドレイクのビーフシチューだ」

想像するだけで、昇天しそうだった。

「マンドレイク入れないで~~」

「ばか、マンドレイクを入れなきゃ料理にならんだろう」

そんなやりとりを中庭で広げていた。

浮竹の血のお陰か、マンドレイクはどれもツヤツヤ輝いて、おいしそうだと、浮竹は思うのだった。ちなみに、京楽にはすごい怨念のこもったマンドレイクに見えていたそうな。


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始祖なる者、ヴァンパイアマスター30-2

後日になり、西洋の浮竹と京楽は、改めて東洋の浮竹と京楽を招待した。

「この間はありがとう。おかげで、オロチ教とかいう変な宗教が壊滅した」

(オロチ教か・・・。それにしても、いきなりでびっくりしたぞ!)

東洋の浮竹は、西洋の二人にお土産にと持ってきたカップケーキを当たり前のように頬張りながら、口をもぐもぐさせていた。

「禁呪の連発で倒せないこともなかっただろうが、建物の中だったしな」

(それでボクを呼んだんだね)

「オロチ教というくらいだから、偽物に本物を見せてやりたかったんだ」

「人的被害は騒ぎ少しでたけど、まぁ許容範囲でしょ」

4人は、東洋の京楽のもってきてくれたカップケーキをお菓子にして、お茶会を開いた。

茶は、アッサムの紅茶と、なぜか麦茶だった。

(こっちの世界にも麦茶はあるんだな)

「緑茶もあるぞ?いい茶葉のものが揃ってる。持って帰るか?」

(いいのか?)

「この間に礼だ。それくらいお安い御用だ。ああ、お前からもらった本の栞は、使うことがないから世界三大秘宝をいれた宝石箱に直しておいた」

(せ、世界三大秘宝?大袈裟すぎないか)

「何を言う!東洋のお前の手作りなんだぞ!」

(ぅ、ありがとう…なんか照れるな)

と言いながら、頬を真っ赤に東洋の浮竹はする。

西洋の浮竹はさも嬉しそうに笑う。そんな笑みに釣られて、東洋の浮竹も笑っていた。

西洋と東洋の京楽は、そんな二人を見て微笑まく見守るのだった。


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「浮竹、浮竹」

揺り起こされて、浮竹は目を開けた。

「あれ、東洋の俺と京楽は?」

「お茶をして帰ってもらったじゃない。それより、侵入者だよ」

がばりと、浮竹は起き上がった。

「数は?」

「5人。手練れのヴァバンパイアハンターみたい」

「このまえ、ダニエルというAランクのヴァンパイアハンターを倒したからな。その報復か」

「そうかもね」

浮竹と京楽は、二手に別れた。

「助けてくれ!」

Aランクのヴァンパイアハンターだろうか。

少し顔見知りの人間を、人質にとっていた。

「俺は関係ないんだ!助けてくれ!」

「この古城に、食料を納めていたそうじゃないか。なぁ、ヴァンパイアロードさん?」

銀の短剣を舐めて、ヴァンパイアハンターは好色そうな目で浮竹を見た。

「なんなら、命を取らずに飼ってやってもいいんだぜ?」

「死ね」

浮竹は血の魔法で剣を作り、男の体を引き裂いていた。

「くーー、効くねぇ、さすがヴァンパイアロード」

ヴァンパイアハンターは、古城に食料を納める男を殺していた。

「お前も、魔人ユーハバッハの血を・・・・・」

「そうそう、ご名答。それが5人だ。さぁ、どうする?」

「どうもしない。殺すだけだ」

浮竹は、炎の精霊王と氷の精霊王を呼び出していた。

「炎の精霊王、氷の精霊王。俺の魔力を好きなだけ使っていいから、侵入者を排除しろ」

「我が友の命令とあらば」

「汝がそれを望むなら」

地獄の業火と、地獄の氷結を纏わせた二人に、ヴァンパイアハンターが顔を青くする。

「なんでだ!なんで、ヴァンパイアロード如きが、精霊王などを使役する!」

「それは俺が、ヴァンパイアロードではなく、始祖のヴァンパイアマスターだからだ」

「聞いていたのと話が違う!俺は逃げるぞ!」

「待て、仲間を置いていくのか!」

男たちは、醜くその圧倒的な存在に、我先にと逃げ出そうとしていた。

「精霊王たち、先に京楽の方のヴァンパイアハンターを倒してくれ。血の猛毒がきかいない分、不利になっている」

「承知した」

「汝の望む通りに」

炎と氷の精霊王は、京楽の元へ行ってしまった。

「精霊王がいなければ、こっちのもんだ。死んじまいな!」

銀の弾丸を何度も受けた。

だが、その傷の最初から癒えていく。

「なんだ、こいつ、銀がきかねぇ!」

「聖水だ!くらえ!」

ばしゃりと聖水をかけられるが、浮竹は平気だった。

「なぁ、もしかして、こいつは本当にヴァンパイアマスター?」

「嘘だろ・・・・でも、それならダニエルが死んだのも頷ける・・・・」

「逃げろ!」

「逃がすと思っているのか」

浮竹は、平穏を乱されて怒っていた。

ヴァンパイアハンターたちの下半身から上半身にかけて、血の杭を出して貫いた。

「魔人ユーハバッハの血をもらったのに・・・・・」

男たちは生きていたが、直に生命活動を停止させた。

くらりと、浮竹がふらつく。

二人も精霊王を召還したので、魔力が足りないのだ。

「浮竹!」

炎と氷の精霊王を連れて、京楽がやってきた。

「片付いたんだね。大丈夫?魔力切れを起こしてるの?」

「精霊王たち、戻っていいぞ」

「承知」

「分かった」

二人の精霊王を精霊界に戻して、浮竹は京楽の肩に寄りかかりながら、魔力を回復するポーションを飲み続けるのであった。


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「襲撃が東洋の僕らが帰った後でよかったよ。いらない戦いに巻き込むところだったね」

「あいつらも、藍染がけしかけてきたんだろうな」

「そうだね。魔人ユーハバッハの血を手に入れたんでしょ」

「封印されているといっても、生身の肉体のままなんだろうな。血を抜けるということは」

浮竹は、そう言いって人工血液を口にする。魔力回復ポーションも飲んだ。でもまだ足りないのだと、京楽を見た。

「魔力が足りない。お前の魔力をよこせ」

浮竹が、そう言いながら、寝室のベッドに上に京楽を押し倒した。

浮竹と京楽は、舌が絡み合うディープキスをしていた。

「んっ」

浮竹は唇を舐めて、京楽を見下ろした。

 「わお、こんな方法でも魔力は譲渡可能なの?」

「血族の魔力は主のものだ。触れているだけでも、その気になれば奪える」

「いいよ。僕の魔力全部君にあげる。君の中にいっぱい注いであげるから、受け止めてね?」

そう言って、京楽は浮竹の衣服脱がしていく。

「んんっ」

体全体の輪郭を確かめるように手で触れて、薄い胸の先端をつまみにあげる、

「あ!」

敏感に反応する浮竹に、京楽が笑う。

「ああ、君はこんなところでも感じるようになってしまったね」

「誰のせいだと、思っている」

「僕のせいだね。昂ってきた熱は、ちゃんと処理してあげるから」

京楽は、ゆるく勃ちあがりかけていた浮竹のものに舌をはわせて、手でしごきあげた。

「あああ!」

我慢できずに、浮竹は京楽の口の中に放っていた。

「今度は、俺がしてやる」

「え」

また押し倒されて、京楽が下になった。

すでにぎんぎに昂っているもに、おずおずと舌を這わせる。

「ああ、きもちいよ。もうちょっと上の方もなめてくれないかな?」

「こうか?」

あまりこういった行為を浮竹はしないので、京楽の言われた通りにする。

鈴口にちろちろと舌をはわせた。

「わっ」

ピュッと勢いよく京楽の精が弾けたせいで、浮竹の顔を汚してしまった。

「ごめん、ティッシュで拭くから」

「いい。これにもお前の魔力は宿っている」

浮竹は、自分の顔についた京楽のものを手にして、舐めとってしまった。

「ああ、君は本当に淫らだ」

浮竹を再び押し倒して、京楽はローションを手にとった。

人肌にまで温めて、浮竹の蕾にぬりこみ、自分の指と灼熱にも垂らした。

「んん・・・・あああ!」

指が入り込んできたことで、浮竹は体から力を抜いた。

「あ、あ!」

京楽の指は、わざと前立腺に触れずに解していく。

「やああ、中のいいところ、触って!」

「後でね」

京楽は、前立腺にふれずにかすめる程度にして、指を抜き去った。

「ああ・・・・・」

熱いものが触れてくる。

それで貫かれるのだと、快感を伴う行為の中、そう思った。

「ああああああ!!」

思っていた以上の質量と熱に、本来はそんなことのために使うはずでない器官が、排除するかのようにうねり、締め付けた。

「浮竹、ああ、だめだ出ちゃうよ」

「あ、あ、俺の奥で注げ!」

「無理いわないで」

ドクドクと、浅い部分で精液を注がれた。

京楽は、魔力が吸い上げられていくのを感じていた。

「もっと・・・」

唇を舐めて、京楽の背中に手を回してくる浮竹の色香にやられて、京楽は浮竹を何度も突き上げた。

「ああああ!!!」

前立腺をごりごりすりあげられて、待ち望んでいた快楽に涙を流した。

「春水、きもちいい、もっと」

「いくらでもあげるよ」

前立腺をこすりあげながら、京楽のものは浮竹の最奥まで入っていた。

ズルリと結腸まで入りこんできた京楽は、そこに熱を叩き込んだ。

「うあ、魔力吸われる・・・」

ドクドクと出していく精液と一緒に、京楽の魔力は吸い上げられいった。

「ふう、もう僕のには魔力ないよ?」

何度も浮竹の中に注ぎ込んだ。京楽の魔力はほぼ空になっていた。

「魔力なんてなくてもいい。お前の子種がほしい」

耳元でそう囁かれて、京楽は最後の一滴まで浮竹に注ぎこんで、横になった。

「満足かい?」

「ああ。大分魔力が回復した。満足だ」

「いや、僕とのセックスのこと」

「春水とのセックスは好きだぞ」

「そういえば、一度も噛んでなかったね」

京楽は半身を起き上がらせて、浮竹の首筋に噛みついて吸血した。

「ひああ!」

まだセックスの余韻に浸っていた浮竹は、大きな声を漏らしていた。

「この、不意打ちは、やめろ」

クタリとなった浮竹を抱きしめて、京楽はその長い白髪を手ですいていた。

「俺も喉が渇いた。血をよこせ」

他の者には猛毒なる血液を、主である浮竹は啜った。

浮竹にだけは、京楽の毒は効かなかった。

唇についた血液を舐めとって、満足そうに浮竹が離れていく。

その熱を共有したくて、京楽は浮竹を抱きしめ続けるのであった。


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「ラニ、レニ、元気にしているかい?」

「はい、お父様」

「はい、父上」

藍染の双子の子、ラニとレニは、父である藍染を見上げた。

半月前は赤子だったのに12歳くらいまで成長していた。

「成長促進の魔法がうまくいったようでよかったよ。ラニ、レニ、プレゼントがあるんだ」

「何、お父様?」

「父上のことだから、また力をあげる何かでしょ」

「レニの言う通りだね。魔人ユーハバッハの血液を固めた宝石だ。2人にあげよう」

「わぁ、綺麗」

「綺麗だわ、父上」

「何かあったら、その宝石を噛み砕きなさい。さぁ、僕の敵である始祖の浮竹を屠っておいで」

「はい、お父様」

「はい、父上」

成長促進の魔法をかけた双子の赤子は、美しい少女に育っていた。

魔女の血が濃く、藍染の血も引いているのに藍染の匂いは全くしなかった。

これなら、うまく古城に紛れ込み、始祖ヴァンパイアを殺すまではできなくとも、傷つけられるだろうと、父親である藍染は思った。

「仮にも私の子供だ。そうそううまく、倒せると思うなよ、始祖が」

闇の中、藍染の嘲笑がいつまでも木霊していた。








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始祖なる者、ヴァンパイアマスター30

魔女アリスタシアの腹にいた赤子は、成長促進の魔法をかけられ、臨月を迎えた。

生まれてきたのは、双子の姉妹だった。

「よくやったね」

「待って、その子たちを返して!」

「何故だい?」

「藍染様の子でも、私の子でもあるのです!」

「君はこの子たちを産んだ。もう用はない。魔女の里に帰っていいよ」

「そんな!」

魔女アリスタシアは藍染の足に縋りついて泣き出した。

「お願いです、まだ乳も与えいないんです。赤ちゃんを返して!」

「なら、君が実験台になるといい」

「え?」

魔女アリスタシアは顔をあげた。

藍染の顔は、醜く歪んでいた。

「私の血と魔人ユーハバッハの血を混ぜた、この血液を注射する。さぁ、暴れておいで」

「いやあああああああああ」

魔国アルカンシェルで、藍染の花嫁の悲鳴が響き渡った。


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「んー」

浮竹は、ガイア王国の街の魔法屋で買った、魔法書とにらめっこしていた。

古代エルフ語と古代ドワーフ語、さらには古代魔法文字で書かれていて、謎解きのようになっていて、解読に時間がかかった。

「魔法の威力を一度だけ倍にする魔法・・・・・・」

「すごいじゃない」

「でも、媒介にいろいろと必要だ。普通の時には使えんな」

そう言って、浮竹は読んだ魔法書を棚に入れた。

その棚は古城内にある図書館と繋がっており、いろいろと便利だった。

浮竹と京楽が、魔人ユーハバッハの血を舐めたというヴァンパイアハンターの襲撃から、半年が
経過していた。

始めは二人は次がくるのではないと警戒していたが、何も変わらぬ穏やかな日々に、すっきかり毒されてしまっていた。

「今日の昼食は、海鮮パスタだよ」

「あーうん。そこらへんに置いておいてくれ」

「もう、浮竹ってば自堕落すぎるよ!朝食もベッドの上で食べてたでしょ!」

「別にいいだろう。古城には俺とお前と戦闘人形とポチだけだ」

ソファーで寝転がって、新しい魔法書に夢中な浮竹から、魔法書をひったくった。

「何をする!」

「ちゃんとダイニングルームで昼食とって。僕と一緒に」

「お前、最近暇だからって戦闘人形の仕事手伝ってるし、だらだらする俺をたしなめるし・・
まるで、おかんだな?」

「おかん!それはないよ」

「ははは、分かった。ちゃんとダイニングルームでお前と昼食をとる」

浮竹は起き上がると、ずり落ちそうなふわふわのコートを着直して、ダイニングルームに移動すると、用意されてあった海鮮パスタのいい匂いに釣られて、椅子に腰かけた。

「後はアボガドサラダと、コンスメスープ。どうぞ、召し上がれ」

「いただきます。うん、うまいな」

「るるる~~」

「なんで何気にミミックのポチまで・・・」

「いつも残飯だとかわいそうだろう」

「るるーーー」

ポチは、意思表示するように、箱をかばかぱと開けた。

「浮竹、君毎日ドラゴンステーキあげてるんでしょ?」

「それだけじゃ足りないんだとさ」

浮竹から海鮮パスタを分けられて、ポチはそれを美味しそうに食べていった。

「僕も食べるか」

「るる!」

がばりと、ポチが京楽の頭の齧りつく。

「うわ、真っ暗で何も見えない!」

「ポチ、お座り」

「るーー」

京楽を吐き出して、ポチはお座りと言われた場所で待機していた。

「君たちって、意思の疎通できてるよね」

「ミミック教の教祖様であられるからな、ポチは」

「そう言えば・・・・最近、町でオロチ教って信仰宗教が流行っててね。僕も危うく勧誘されそうになったよ」

京楽は、さも疲れたという顔をしていた。

「オロチ教・・・そういえば、東洋の京楽は八岐大蛇だったな。それと関係しているのだろうか?」

「さぁ、いくらなんでもボクも詳しいことは知らないよ」

「一度、宗教の集まりに参加してみよう」

「ええっ!信仰するの?」

「血の帝国でも流行りだしているそうだ。一度様子を見てくれと、この前ブラッディ・ネイの式の梟が手紙をよこしてきた」

「信者になって、教会本部に潜りこむんでしょ?大丈夫なの?」

「大丈夫だろ」

そんな調子で、二人はオロチ教に入ることとなった。

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「あなたは恵まれいます。このオロチ教の神官になれるのですから!」

持っていた金銀財宝の一部を寄付すると、浮竹と京楽は、一般信徒からすぐに神官まで、スピード出世した。

恐れるべきは、金の力であろうか。

「こちらが、教皇のおられる部屋です」

ドクンドクンと、鼓動が脈打つ音が聞こえた。

「失礼を・・・教皇様は、ベッドの上から動けません。謁見は、カーテン越しに行ってもらいます」

浮竹と京楽は、それに従うそぶりを見せた。

「新しい神官の方ですね。なんでも、莫大な寄付をして下さっとか・・・・」

教皇は、薄いカーテン越しでもわかるほどに、細い少女だった。

だが、ドクンドクンと、醜く脈打つ血管が、部屋のいたるところにあった。

「私のこの部屋を見ても驚かないのですね。流石は、ヴァンパイア」

「血の帝国でも、オロチ教は流行ってるからな」

「それで、何の用なのですが、始祖のヴァンパイア」

浮竹が、薄いカーテンを引き裂いた。

「きゃあああ!」

「うわあああ!!」

教皇の姿をみた、他の神官や巫女が逃げだしていく。

ベッドにいたのは、一人の魔女だった。

魔女であった、というほうが正しいか。

上半身は普通だった。下半身は鱗にまみれて、まるで蛇のようであった。

「ラーミア?」

まるで、蛇の下半身をもち、人間の上半身をもつラーミアというモンスターに似ていた。

だが、ドクリドクリと、脈打つ血管が、ただのラーミアではないと告げていた。

「この血の匂い・・・・藍染!」

「藍染は、私の夫です」

その言葉に、浮竹と京楽が驚愕する。

「あの藍染に、こんなかわいい・・・うん、多分かわいい女の子の妻がいるなんて」

「あなたたちを、おびき出すように、オロチ教などという宗教を作り、教祖となりました」

浮竹と京楽は、それぞれ血の武器を構えていた。

「争い事にはしたくありません。始祖ヴァンパイアの浮竹十四郎。その血族の京楽春水。どうか、あなたの血をください。猛毒というあなたの血を」

「どうして、僕たちを倒さないんだい?」

「私にはそんな力はないから。あるのは、夫である藍染と魔人ユーハバッハの血を注射された、この蛇の下半身」

「なんか、深い事情がありそうだね」

魔女アリスタシアは、京楽からその猛毒である血をもらい、飲みほした。

数分のたうちまわっが、死ぬことができずに、苦しんでいた。

「どうやら、お前の血でも魔人ユーハバッハの血には対抗できないようだ」

「そうみたいだね」

「殺して、ください。お願いします・・・せめて、人の心をもったまま、死にたい・・・・・」

魔女アリスタシアは、ベッドの上で蛇の下半身をくねらせた。

部屋中にとりつき、脈打っていた血管が全てアリスタシアの蛇の下半身が取り込んでしまった。

浮竹は、蛇の下半身と人間の上半身の部分を斬り分けた。

「ありがとうございます。私は、魔女のまま死ねる・・・」

そのまま、上半身のアリスタシアは息絶えた。

浮竹と京楽は、上半身をなくした蛇の下半身に取り囲まれていた。

「これって、ピンチ?」

「とにかく、この場から逃げよう。建物の中だと、障害物が多すぎる!」

浮竹と京楽は中庭に出た。

真っ黒な鱗をもった蛇の下半身が、追いかけてくる。

「ファイアオブファイア!」

浮竹が、禁呪の火の魔法を打ちこむが、蛇の下半身んの鱗を数枚焼いただけだった。

「魔人ユーハバッハって、強いんだね!血だけでこんなに強くなるんだから!」

京楽が、ミスリル銀に氷の魔法を纏わせて、切りかかる。

鱗は斬り裂かれたが、すぐに再生した。

「蛇か・・・そういえば、東洋の京楽は八岐大蛇、オロチ教のシンボルっぽいな。同じ蛇でも、蛇神のほうが数段存在は上だろう。こんな場所で長く戦っていると人目につくし、被害が大きくなる!」

浮竹と京楽は、東洋の友人からもらったお札に祈りをこめた。

ポン。

そんな音を立てて、東洋の京楽は、東洋の浮竹の膝枕で耳かきをしてもらっていたのに、召還されてしまった。

(ちょっと、いきなり何!西洋のボクたち、タイミングってものを・・・何こいつ。複雑な呪いでできてるね・・・ちょっと待って)

東洋の浮竹は、膝枕をして耳かきをしていた場面を目撃して、赤くなったが、下半身しかない黒い蛇の体を見て、清浄な空気を作り出し、まずは結界をはって黒蛇を閉じこめた。

「しゃあああああああああ」

黒蛇の下半身から、女の姿を模倣した上半身がはえてくる。

「食わせろ・・・・始祖を、食わせろ!」

(ボクの友人を食い殺すなんて、許さないよ)

東洋の京楽が、瞳を金色にした。フードで顔を隠してはいるが、その東洋の京楽がまとうものは、魔力ではなかったが、神力でもいうのか、とても凄まじいものだった。

「しゃああああああ」

威嚇する蛇を、召還された数えきれない黒蛇が襲った。

「あああ、食われる、ああああ!!」

蛇の化け物は、獰猛な京楽の黒蛇に食われて、骨だけになった。

「うわぁ、僕たちが苦戦してたのに、あっという間だったねぇ」

「東洋の京楽は蛇神だからな。下位の蛇をやっつけてくれるだろうと思ったんだ」

(呪術というか、ただの蛇の肉の塊が動いてただけだった。ただ、血が・・・・・なんというのか、どす黒すぎて、普通じゃあ殺せないだろうね)

「魔人ユーハバッハの血を取り込んでいたからな」

((魔人?))

首を傾げてハモる東洋の二人に、西洋の浮竹が頷いた。

「人でありながら、人を超越して神になろうとした男だ」

(この世界でも、凄い存在がいるんだね)

(神なろうとした・・・・藍染みたいだな)

「こっちの世界の藍染の血も入ってるからね、さっきの化け物」

(大丈夫だろうとは思うけど、黒蛇たちが胸やけ起こさないといいけど)

「じゃあ、騒ぎになる前に撤収したい。東洋のお前たちは、一度帰ってくれ。また後日にでも呼び出すから」

(うん、分かったよ)

(またな、西洋の俺たち)


騒ぎにかけつけてきた者たちから、自分たちの存在を消し去り、浮竹と京楽はオロチ教を壊滅させた。

実際に壊滅してくれたのは、東洋の浮竹と京楽であったが。

教祖は蛇のお化けだった。

そんな噂が流れて、数日たち、オロチ教は見る影もないほど衰退していった。


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始祖なる者、ヴァンパイアマスター29-2

「くそ、この女が死んでも・・・・・・・」

ブラディカに似せた人形を見せつけてくる。

一瞬の隙をついて、浮竹は血を操りブラディカの人形を奪い取り、それを手で握った。

「ブラディカを傷つけた罪、京楽を傷つけた罪、その命で贖てもらおうか?」

ゆらりと、浮竹が動く。

窓の外の月は、赤くなっていた。

「ブラッディ・ムーン・・・・・」

京楽はぞくりとした。

赤い月は、ヴァンパイアの力を増す。

強ければ、強いほどに。

「浮竹、僕も加勢するよ!」

猛毒の血を燃やして、毒ガスをダニエルに吸わせた。

「く、一度に2匹も!厄介な!」

「フレイムロンド」

ぽっ、ぽっ、ぽっ。

ダニエルの周りに、火の玉が現れる。それは踊るように揺らめき、一気にダニエルに襲いかかった。

「ああああああ!!」

でも、ダニエルは薄い火傷を負っただけだった。

「また、呪術で何かにダメージを負わせているな」

「はは、誰にだろうね?」

浮竹の体が燃え上がった。

「あはははは!馬鹿だね、自分に呪術がかけられているのにも気づかなんて」

浮竹は、炎を纏わせながら、一歩一歩ダニエルに近づいた。

「なんでだ!なんで死なない!」

「俺は始祖ヴァンパイアマスター、浮竹十四郎。神の愛の呪いをもっているせいで、不老不死だ」

「始祖!ヴァンパイアマスター!!」

驚愕に、ダニエルは目を見開いた。

「あはははは、そんな存在に殺されるのもいいね!」

「狂ってるね」

「ああ」

浮竹はいたぶることはせず、ダニエルの首をはねた。

「あははは、最高だね。首をはねられるなんて」

「どうして、死なない!?」

「あの方の血を飲んだからね」

「藍染か」

「違う。魔人ユーハバッハ」

「何!?」

「なんだって!?」

かつてこの世界には、魔人と呼ばれる存在があった。

8種の精霊王を従え、アストラル体となって神界に攻め込み、神の怒りをかって、千年の眠りについている。

「あは、本気にしたの?冗談だよ。染藍さ」

「また藍染か・・・・・・」

浮竹は頭を抱えながらも、ダニエルにトドメをさした。

「死ね。ファイアオブファイア」

「ふふふふ、ひっかかったね!!」

炎に焼かれても、ダニエルは死ななかった。

「な、まさか本当に魔人ユーハバッハの血を!?」

「古代遺跡の研究施設に残されていた血を、盗んで舐めたのさ。飲むことなんでできない。ユーハバッハに支配されてしまう」

「そうそう、支配されるんだよ」

「支配されちゃいなよ」

ダニエルは、複数の自分の声を聞いて、苦しみだした。

「うるさい、うるさい」

「なんだ、様子が変だぞ」

「浮竹、今の間にトドメを」

「分かった。ライトニングフレイムスートム!」

始めは電撃が走り、次の炎の嵐に巻き込まれた。

「支配、されちゃいないよ・・・・・」

体を炭化させながら、ダニエルはまだ生きていた。

「支配する、僕が支配する。支配されるんじゃない、支配するんだ」

心臓を、浮竹の手が貫き、それを握りつぶした。

心臓にはコアがあって、それはかの魔人ユーハバッハの血をとりこんだせいであった。

「ぐはっ・・・・」

ダニエルは血を吐いた。

「まだ死なないのか!?」

「一人でいくのはいやだ。お前も道連れにしてやる・・・・」

血で真っ赤になりながら、ダニエルは浮竹に縋りついた。

「僕の浮竹に、手を触れないで」

心臓に猛毒の血液を注ぎこみ、数分するとダニエルは生命活動を停止させた。

「京楽、怪我はないか?」

「うん、大丈夫。浮竹は?」

「ああ、全部返り血だ。それよりブラディカが危険だ。急いで離宮にいこう」

ブラディカの美しい褐色の肌の生首を手に、二人は古城を抜け出して離宮には入った。

ブラディカは、封印されたまま棺をあけられて、首から上がなかった。体中にいくつも傷ができていた。特に心臓近くが酷かったが、幸いにもコアは無事だった。

浮竹が手首を自分の血の刃で斬ると、じゅわりと滲みだした血をブラディカに与えた。

「ブラディカ嬉しい・・・浮竹、愛してる・・」

ブラディカの首と頭は繋がり、心臓に受けた傷も回復していく。

「ブラディカ、またお眠り」

「ブラディカ・・・・また、眠る。この青い薔薇の棺の中で、浮竹を思いながら、浮竹と過ごす楽しい夢を見るの・・・・・」

ブラディカは、休眠状態に入りながら、まら封印された。


「魔人ユー八バッハ・・・まさか、そんな存在が出てくるなんて」

「こればかりは、どうしよもないね。封印は続いているはすだよ。まだ封印されているということは、こちらに手出しはできないよ。今のうちに魔人ユーハバッハを殺すかい?」

「いや、神と対等に戦った存在だ。封印が破れでもしたら、世界は混沌の渦に飲まれる」

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ドクン、ドクン、ドクン。

それは、鼓動を打っていた。

ドクン、ドクン、ドクン。

それは、脈打っていた。

魔人ユーハバッハは、神の怒りの封印を受けていた。

でも、生きていた。

「ああ。私は、世界だ」

そう言った。

水底であった。ただ、静かに揺らぐ波の中にいた。

「魔人ユーハバッハ。君の血を、もらうよ」

魔族の始祖藍染は、注射器を取り出すと、ユーハバッハの血を抜いていった。

ユーハバッハは、何も言わずされるがままだった。

神の怒りの封印は、動くことさえままならぬ。

「これで、あの始祖ヴァンパイアを・・・」

「始祖、ヴァンパイア?」

ユーハバッハが、興味をもったように聞いてきた。

「そう。始祖ヴァンパイアの浮竹十四郎」

「始祖ヴァンパイア・・・次の私の器には、よいかもしれぬ」

「魔人ユーハバッハ。残念ながら、その始祖が私に殺されるんだよ」

「そうなれば、それもまた運命」

ユーハバッハは目を閉じた。

波の音がする。

藍染が何か言っていたが、ユーハバッハはもう聞いていなかった。

魔人ユーハバッハを封印したのは、創造神ルシエード。

浮竹の父であった。




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始祖なる者、ヴァンパイアマスター29

魔女アリスタシアは、魔国アルカンシェルにいた。

藍染の花嫁として迎え入れられた。

魔国アルカンシェルは、魔女の里の安全を保障した。

そんな保障、始祖浮竹の手にかかえれば何の意味もないのだが。

少なくとも、今浮竹が魔女の里に何かをしかけてくることはなかったし、至って平穏のように見えた。

魔女の里は、事実上魔族の支配下に置かれた。

魔女たちは、魔族のために肉体を強化するなどという薬を作らされていた。

助けを呼ぼうにも、魔女の里は閉鎖的すぎて、仲の良い国などなかった。

血の帝国ならばあるいは、という希望を見出した者もいたが、同胞である魔女や始祖魔女が、ヴァンパイアの始祖である浮竹に行った行為を思い出すと、到底助けてもらえなさそうだった。

事実、今魔女の里が魔族に支配されていると知っても、女帝ブラッディ・ネイはそれがなんだという顔をするし、始祖浮竹に至っては自業自得と思われていた。

魔国アルカンシェルに同盟国はない。

一方、栄えている血の帝国は、聖帝国をはじめとして、いくつかの人間国家と同盟を結んでいた。

血の帝国は、歴史上類を見ないほど長く栄え、今なおそれが続こうとしていた。


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「はぁ・・・」

今日何度目かのため息を、浮竹はついていた。

結婚記念日というか、浮竹が京楽を血族に迎え入れて120年と3年が経とうとしていた。

ヴァンパイアに結婚の概念はない。

血を与えることで、同族を増やすことがあるので、結婚というものを何度もしなければならない時があるからだ。

浮竹はご機嫌だった。

愛しい男と血族になった記念の日だった。

戦闘人形に頼らず、自分の手で料理を作ろうと思った。

メニューは、カレーライスのはずだった。

まず、錬金術に使う釜を使っている時点で終わっていた。

じゃがいも、人参、たまねぎ。

全部、洗うだけで丸ごといれた。

隠し味に、処女の血ではなく、ドラゴンの血を入れた。しかも、大量に。

ドラゴンの血をベースに、疲労回復と魔力回復のポーションを入れる。

鍋でぐつぐう煮込み、死の悲鳴をあげるマンドレイクをぶちこんだ。

辛みをつけるために、レッドスライムの粉末をぶちこんだ。

カレーのルーを大量にぶちこんで、味見をする。

「少し辛さが足りないか」

タバスコとレッドペッパーを大量に放り込んだ。

ぐつぐつとまた煮る。

棚に干してあった、毒薬を薬草と間違えてぶちこんで、また煮た。

カレーらしい匂いのまざる、ツンとした刺激臭の何かができあがった。

「京楽できたぞ。食え」

ガタガタガタガタ。

京楽は震えていた。

過去に浮竹の料理を食べて、倒れなかったことなど一度もなかった。

それほどに壊滅的なのだ。

ご飯は普通だった。

白飯に、緑色の震えて動く物体を出された。

「ねぇ、これ何?」

「見てわからんのか。カレーだろう」

「カレーは普通黄土色だよ!茶色だよ!なんで緑なの!?」

「ドラゴンの血を入れたから」

「あああ、そんな高級な錬金術で使うものを入れないで!しかもこの釜、錬金術の釜だよね!?

「それがどうした」

浮竹は、自分が料理できないなんて、思っていなかった。

料理はできると思い込んでいた。

「なんで震えて動いてるの!?」

「マンドレイクを生きたままぶちこんだせいじゃないか?」

「マンドレイクの死の悲鳴は、普通聞くと死ぬよ!?」

「俺は神の愛の呪いで不死だからな。関係ない。あと、体力つくように疲労回復と魔力回復のポーションをぶちこんでおいた」

京楽は、頭をかきむしった。

こんなもの食えるかと、突き返してやりたかったが、わくわくしながら料理をした浮竹にそんなことをすると、切れるというより本気で泣かれる。

「あああああああ」

「早く、食え」

「君、味見した?」

「したぞ。辛かった」

京楽は、かっと目を見開いて、一気にかきこんだ。

「ぐふっ」

京楽は、倒れそうになるをなんとか踏みとどまった。

「デザートもあるんだ。りんごを使ったケーキだ」

浮竹は、ケーキを切り分けた。

スポンジの中心に丸ごとりんごが入っている、豪快なケーキだった。

それを、京楽は勢いのまま食べた。

「辛い!?どうしてケーキが辛いの!」

「それは俺が、砂糖とタバスコを間違ったからだ」

えっへんと威張る浮竹を、京楽は今にも昇天しそうな魂で見つめる。

どこをどうしたら、砂糖とタバスコを間違えるのだろう。砂糖と塩なら分かるが。

ケーキも平らげて、京楽はぶっ倒れた。

「京楽!?倒れるほどに俺の料理がうまいのか!?」

「僕のHPはあと3だよ・・・。頼むから、僕のアイテムポケットから、乱菊ちゃんの毒消しのポーションと胃腸薬だして、飲ませて」

「分かった」

浮竹は、京楽のアイテムポケットから薬を出すと、京楽に飲ませた。

「ああああ~~~~~。生き返る。流石乱菊ちゃんの薬だ」

「HPはどこまで回復した?」

「ん、半分くらいかな」

「まだ、お替わりあるんだが・・・・・」

京楽は逃げ出した。

マッハで。

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京楽が逃げ出したことで、浮竹はがっかりした。

「やっぱり、俺が作った飯はまずいんだろうな。残りはポチにでもやるか」

ポチに残りのカレーを与えると、ポチは一瞬動かなくなった。

「ポチ、おい、ポチ!?」

「ルルルルルーーー!!!」

ポチは味に怒って、浮竹に噛みついた。

「いたた、ポチ、ごめんてば!」

「ルルルーー!」

ポチに噛みつきまくられてたけど、ポチはカレーを全部食べてくれた。

「ポチ、まずかったんだろう?」

「ルルル~~~~?」

「京楽が逃げていくくらいだ。俺の料理の腕は壊滅的なのかもしれない」

「ルル!ルルルル~~~~~!!!」

「何、元気出せって?」

「ルル!」

「ありがとな、ポチ。大好物のドラゴンステーキを2枚やろう」

「ルルルル~~~♪」

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次の日、昼食を京楽と一緒に作ることになった。

「僕の料理の手伝いからはじめよう。いきなり作らせてもできないからね」

「メニューは?」

「クリームシチューだよ」

「簡単だな」

「工程はね。でも、君には難題だ」

材料を見ていく京楽だったが、マッシュルームを忘れていた。

「おかしいなぁ。ここに、お化けきのこから採取したマッシュルームがまだ残っていたはずなんだけど」

密封されたガラスの瓶を見て、浮竹は。

「ああ、マッシュルームならポチが食べたそうにしていたからあげた」

「ええっ!あのマッシュルームは、最高級なんだよ。シチューに入れると入れないで、美味しさが全然変わるんだよ!」

「じゃあ、取りにいくか?」

「今から?」

「そう、今から」

「夕方になっちゃうよ」

「シチューを夕飯にすればいい」

京楽は、ため息をついた。

浮竹はそう言いだしら、聞かないことがある。

「分かったよ。最寄りのC級ダンジョンで採取できるから、さくっといこう」

お化けきのこのレベルは低い。

でも、お化けきのこに生えているマッシュルームはそこそこ高く売れるので、初心者から一人前の冒険者になる前のパーティーがよく退治した。

「お化けきのこ、いればいいけど・・・・・」

人気が高いので、討伐済みの可能性もあった。

ガイア王国にある、最寄りのC級ダンジョンに潜った。

パーティーが複数いて、浮竹と京楽は目立っていた。

Sランク冒険者がC級ダンジョンに来ているのだ。悪目立ちもするだろう。

そんな視線を無視して、浮竹と京楽は、6階層まで潜り、お化けきのこを探した。

「いた、お化けきのこだ!」

「そっちにいったよ!」

「ウィンドカッター!」

風の魔法で足を切ってやった。

「お、いっぱい生えてる・・・・」

マッシュルームを採取していく。

「せっかくきたんだし、できる限りマッシュルーム採取して帰るか」

「そうだね」

Sランク冒険者の腕にかかればC級ダンジョンのモンスターなんて、雑魚の雑魚である。

次々とお化けきのこを倒して、マッシュルームを採取した。

「この辺でいいか」

「そうだね。しおどきだ」

「全部狩ると、他の冒険者の迷惑にもなるしな」

十分迷惑になっているのだが、二人は気づかない。

ダンジョンを去ると、すれ違った人間から声をかけられた。

「ヴァンパイア?」

浮竹は聞こえないふりをした。それにつられて、京楽も聞かなかったことにする。

「ヴァンパイアの匂いがする・・・今夜あたり、あの古城にヴァンパイアハンターを差し向けよう」

「お前!」

浮竹が振り返るが、そこには人影はもうなかった。

「嫌な気がする。今日は古城に戻らず、町で宿をとろう」

「うん。不穏な気配だったね。ただのヴァンパイアハンターにやられる僕らじゃないけど、念には念を、ね・・・・・」

宿の食堂を貸してもらい、お化けきのこから採取したマッシュルームをふんだんに使った、クリームシチューを作り、それを食べた。

その味に、宿屋の女将がレシピをくれと京楽に頼んできたほどだった。

次の日、古城に戻ると、戦闘人形たちは全て倒されていた。

古城の中は、けれど荒らされていなかった。

「ポチ!?ポチ!?」

いつもは玄関付近にいるミミックのポチの姿が見えなくて、浮竹と京楽は必至に探した。

「るるるる~~~」

ポチは、暖炉の中に身を隠していた。

「よかった、ポチ、無事だったんだな」

「るるるーーー」

「あはははは、見----つけた」

「何!?」

浮竹は、喉の動脈を掻き切られていた。

「ぐっ!」

「あは、やっぱ再生しちゃうんだ?」

「浮竹!」

「京楽、くるな!」

京楽は首に糸を巻かれて、呼吸ができなくなった。

「ぐ、かはっ」

「僕はヴァンパイアハンターAクラスのダニエル・ロンド。さぁ、遊ぼうか」

「Aクラスの、ヴァンパイアハンターだと!?」

「そう。僕は今まで100体以上のヴァンパイアを屠ってきた。古城にヴァンパイアロードがいるって聞いて、退治しに、もとい遊びにきたのさ」

「ヴァンパイアハンター如きが・・・」

浮竹は血の刃で、京楽を戒めている糸を絶ち切った。

「わお、僕の糸を切るなんて、すごいね?」

「死ね」

浮竹は、血の渦を作り出し、ダニエルに向けた。

「これ、なーんだ?」

ダニエルが見せたのは、生首の状態の、ブラディカだった。

「貴様、離宮に侵入したのか!」

「だって、そこにしかヴァンパイアの反応がなかったんだもの。大人しくしないと、この生首の子のコアを破壊しちゃうよ?」

浮竹の動きが止まる。

「だめだよ、浮竹!」

「だが、ブラディカの命が!」

「ブラディカより、僕には君の命の方が重い!」

京楽は、ブラディカの生首を奪い取りながら、猛毒となった自分の血を、ダニエルに向けた。

「わぁ。本当に猛毒なんだ。あの人の言ってた通りだね」

確かに、心臓を貫いたはずだった。

ただの人間のはずなのに、ダニエルは生きていた。

「僕への攻撃は、みんなこの人形が肩代わりしてくれる」

それは、ブラディカに似せた人形だった。

「まさか、ダメージは全部ブラディカにいくのか!」

「正解。呪術だよ」

ダニエルは京楽の背後にくると、糸で京楽をしばりあげ、血で染め上げた。

「このまま、バラバラになっちゃいな」

「ヴァンパイアハンターが!」

京楽は、猛毒の血を燃やした。

毒ガスを吸い込み、ダニエルが怯む。

「ブラディカにかけた呪術など、跳ね返してやる!」

「そんなことできるわけ・・・・ぎゃああ、熱い!」

浮竹は、呪術も操る。

呪術の返しなど、造作もないことだった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝


「温水プールに行こう」

そう言い出した東洋の浮竹を、皆は見た。

「温水プールのあるレジャー施設を貸し切りにした。西洋の俺と京楽は、人前で肌をさらしたくないだろう?だから、貸し切りにした」

「浮竹ってば、また金塊で温水プール貸し切っちゃったんだよね」

(温水プール!プール自体、行ったことがない)

すでに目をキラキラさせている東洋の浮竹の様子に、西洋の浮竹は嬉しそうだった。

(ボクも行ったことないね。行ってみたいよ)

「もちろんだ、東洋の京楽も一緒にいこう。水着は勝手に買ってきたが、別にいいだろう?」

(変なデザインじゃなければね)

「黒の、トランクスタイプの水着だ」

(それなら、問題はないかな)

(早く行こう!温水プールとやらは、やっぱり水は暖かいのか?)

「まだ春だからね。この季節に普通のプールに入ったら、寒くて風邪ひいちゃうよ」

「ウォータースライダーとやらが長くて人気の温水プールらしいんだ。年のために浮き輪も用意している。皆で遊びに行こう」

周囲から見ると双子なので、顔を隠しながら電車で揺られること15分。

温水プールについた。

(わあ、広いなぁ)

東洋の浮竹ははしゃいで、西洋の自分の手をとって急かす。

(早く泳ぎにいこう)

「まぁまて。準備運動とかもあるし、水着に着替えないと」

(楽しみだなぁ)

4人は、男性更衣室で水着に着替えた。

東洋の浮竹の水着は、黒地にペンギンが泳いでいた。

西洋の浮竹と同じデザインであった。

(あ、この水着かわいい)

「ちなみに、京楽のものがホッキョクグマだ」

(わぁそれもかわいい)

愛しい伴侶に褒められて、東洋の京楽は手を開いて東洋の浮竹を抱きしめた。

(十四郎のほうがかわいいし、似合ってるよ)

(ちょ、春水、西洋の俺たちがみてる!)

顔を真っ赤にする東洋の浮竹を、微笑ましそうに西洋の浮竹が見ていた。

「熱々だな」

同じように、西洋の京楽が手を開いて西洋の浮竹を抱きしめようとするのだが、その頭にハリセンを炸裂させて、西洋の浮竹は先に行ってしまった。

「くすん」

一人残された西洋の京楽は、ちょっとがっかりするのだった。


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きちんと準備運動をして、温水プールの中に入った。

(うわぁ、広いし綺麗だし、水が暖かい)

「温水プールだからな。早速、ウォータースライダーに行こう!」

西洋の浮竹は、東洋の自分の手を引っ張って、ウォータースライダーまで移動すると、一気に流れ落ちた。

「うわあああああああ」

(わあああああああ)

ざぶんと落ちてきた二人に、西洋と東洋の京楽が心配そうに見る。

「大丈夫?」

(重四郎、平気?)

「やばい、面白すぎる」

(気持ちいいな!もう1回行こう!)

そんな二人を、東洋と西洋の京楽は和やかに見ているのであった。

「ひゃほーーー」

(気持ちいいーー)

二人の浮竹は、ウォータースライダーにはまったようで、何度も利用していた。

「僕らもやってみる?」

(そうだね。あんなに楽しそうなんだし、きっときもちいいよ)

西洋と東洋の京楽も、ウォータースライダーを滑り落ちてきた。

「もう1回行こう。いや、何度でもいい」

(これはいいね。爽快感がたまらない)

「そうだろう、京楽と西洋の京楽」

西洋の浮竹は、泳げないので浮き輪を使っていた。

「浮竹、君泳げないの?」

「悪いか」

「僕が泳ぎを教えてあげるよ」

「別にいらん。泳げなくても生きていける」

「まぁそう言わずに」

そう言って、西洋の京楽は西洋の浮竹に泳ぎを教える。

一方、東洋の浮竹はすいすい泳ぎでいた。

(泳ぐのうまいね、十四郎)

(ああ、まぁな)

(僕も泳ぎは得意だけどね)

蛇は、川の中でも平気で泳ぐ。

それに似て、東洋の浮竹と京楽はすいすいと水面を泳いでいく。

「浮き輪を奪うな!おぼれる!」

「浮き輪に頼ろうとするから泳げないんだよ」

「俺を溺死させる気か」

「だから、僕が教えてあげるって、浮竹!?」

「がぼがぼ・・・・・・」

西洋の浮竹は、水中にもぐると、西洋の京楽の海パンをずりおろした。

「ちょっと、何してくれちゃってるの!」

「溺死させかけた仕返しだ」

「っていうか、今、君泳いでるよね?」

「あれ?」

西洋の浮竹は、いつの間にか泳げていた。

(西洋の俺、泳げるようになったのか。一緒に泳ごう)

「そうだな。西洋の京楽は放置で一緒に泳ごう」

「ええーそんなー」

西洋の京楽は、海パンを直して、西洋と東洋の浮竹が向こう側まで泳いでいくのを、残念そうな目でみていた。

(振られちゃったね、西洋のボク)

「ああ、東洋の僕!」

(また、一緒にウォータースライダー滑り降りるかい?)

「うん。浮竹の機嫌もすぐに直るだろうし」

二人がウォータースライダーから滑り落ちてきた地点で、ちょうと西洋と東洋の浮竹が泳いでいた。

「うわ、びっくりした」

(俺もびっくりした)

「京楽、そんなにウォータースライダーが気に入ったのか?今度は俺と滑るか」

「うん、浮竹」

西洋の京楽はすでに機嫌の直っている西洋の浮竹を連れて、ウォータースライダーを滑り落ちた。

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お昼になり、空腹を覚えた東洋の浮竹の手を握って、西洋の浮竹がプールより少し離れた場所にいく。

温度は一定に保たれてはいるが、皆パーカーを着ていた。

「バーべキューだ。用意させておいた」

(バーベキュー!)

目をキラキラさせる東洋の浮竹の前で、西洋の浮竹は火をつけた。

「ファイア」

ぼっと、魔力でおこされた火が炭にいきわたる。

(わぁ、魔法は便利だな)

「本当は攻撃魔法だけどな。火力が最大限にまで落とした。海鮮バーベキューを中心にしたんだが、肉のほうがよかったか?」

バーベキューの網には、ほたてやサザエ、アワビ、海老に切り身の魚にイカなどが置かれて焼かれていた。

肉と野菜をさした串も焼かれていた・

(いや、海鮮でもいい。うまそうだ)

東洋の浮竹は、色が変わって食べごろの海老をフォークで突いた。

「それ、もう食えるぞ。調味料とタレはこっち、好きな風に食べるといい」

東洋の浮竹は、もっきゅもっきゅと口いっぱいに頬張った。

「お替わりはいくらでもあるから、急いで食べる必要はないぞ」

(あ、うん)

真っ赤になる東洋の浮竹。

そんな東洋の自分を見て、西洋の浮竹も海老を頬張った。

「海老は塩だけのほうがうまいな」

「このタレつけてもいけるよ?はいあーん」

「ん」

自然と口を開けて、西洋の京楽からタレのついた海老をもらい、味わう西洋の浮竹を見て、東洋の浮竹は真っ赤なっていた。

「どうした。これくらい、お前たちもよくやっているだろう」

(そりゃそうだけど・・・・はたから見てたら、急に恥ずかしくなってきた)

(十四郎、気にしすぎ。ホタテが焼けたよ。ほら、あーん)

(しゅ、春水)

そう言いながらも、東洋の浮竹は口をあけて、焼けたばかりのホタテを味わった。

(やばい、うますぎる。なんのタレだこれ)

「俺たちの世界の、魔女が開発した万能タレだ。素材によって味が変わる」

(なんだそれ!すごいな!)

(味が変わるタレだって・・・レシピは?)

「残念ながら、魔女の秘伝で秘密だそうだ」

(レシピを知りたいね。このタレ、本当においしい)

「魔女は閉鎖的な里にこもっているからな。たまたま魔女に友人ができて、レシピは明かせがと、タレだけもらったんだ」

(魔法といい、魔女といい、本当にファンタジー世界だな。俺はけっこう好きだぞ)

「それを言うと、お前たちの世界は機械仕掛けのからくりだらけの世界になる。でも、俺も好きだ。鉄の塊が空を飛んで、海に浮かんで、馬車の代わりに車や電車がある。便利そうだ」

(でも、もう一人の俺の世界には魔法があるじゃないか!)

「そうだな。魔法で空を飛べるし、海だって水面を歩けし、移動には空間転移が使える」

(いいなぁ。俺も魔法を使ってみたい)

「今度遊びに来た時、魔力がない者でも魔法が使える魔道具でも用意しておく」

(わぁ、楽しみだ)

そんな会話をしながらも、焼けた料理をもぐもぐと口に運んでいた。主に東洋の京楽がバランスを考えて、肉や野菜も与えていた。

一方の西洋の京楽は、こちらも東洋の京楽と同じように、自分も食べながら、焼けていったものを西洋の浮竹の皿に置く。

(なんか、焼き肉の食べ放題をしてる気分だよ)

(そんな豪華な飯ずっと前に一度だけ行ったきりだな。西洋の俺は金持ちだから、こんなバーベキューも用意してくれる。純粋に、ありがたい)

(そうだね)

「金に困っているなら、この大金貨を・・・・・」

「ちょっと、浮竹、だめでしょ!この世界の金の価値は、凄く高いんだから!」

「じゃあ、宝冠を・・・・・」

「だめでしょ!この世界で、金があることを東洋の僕ら以外にあまり知られないこと。じゃないと、お金目的で騙されちゃうよ」

(確かに西洋のボクの言う通りだよ。貸し切りにしてくれるのは嬉しいけど、お金のトラブルが起きないように、ほどほどにね?)

「むう、そちらの京楽も言うのだから、気をつける」

東洋の浮竹と京楽は、貧乏というほどでもないが、質素な生活を好んだ。

反対に、西洋の浮竹は金が湯水のようにあるで、贅沢を好んだ。西洋の京楽も、人間であった時は公爵家の貴族で、贅沢は当たり前だった。

それぞれ、正反対の位置にいる4人であるが、何故か馬が合うし一緒にいると楽しかった。

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「今日は楽しかっよ。また遊ぼうね」

「今後は花見、ピクニック、紅葉狩りなんかを計画している。どこか外出するのに希望の場所があったら、言ってくれ。他にも、したいことでもいい」

(今度までに考えておく)

(ボクは、料理教室がいいね。西洋のボクとで作りあって、そっちとこっちの十四郎に食べてもたいたい。あと、少しだけ料理の腕も身に着けてもらえると嬉しいね)

電子レンジを3回だめにしたことのある東洋の浮竹は、基本キッチン出入り禁止であった。

「そっちの浮竹って、料理駄目なの?」

(うん。もう壊滅的)

「こっちの浮竹も、料理はてんでダメなんだよね。戦闘人形や僕にばかり作らせて、この前卵焼きを作るっていって、錬金術で使う館を爆発させてた」

((うわーー))

東洋の浮竹と京楽がはもった。

(卵焼きを錬金術でとか、どうしてそうなった)

(館爆発って、被害額がすごそうだね)

「古城には5つ錬金術用の館がある。今2つ壊して、壊した館は建築中だ。俺の戦闘人形が」

被害は自分だけで、迷惑をかけていないとドヤ顔だったけど、住んでいる古城で爆発が起きれば、西洋の京楽が心配しないはずない。

「自慢だが、この1年で館を6回爆発させたぞ。エリクサーの調合ミスとかで」

「そんなことを自慢しないでよ、浮竹。錬金術の失敗で館吹き飛ぶようなことがあるなんて、普通じゃ起こらないって乱菊ちゃんも言ってたよ」

「俺はミスリルクラスだからな。既存の薬に、使ったことのない薬品を混ぜたりして、新しい薬を作ろうとして・・・・ドカーーン」

(ああ。俺の中のカッコイイ始祖ヴァンパイアのイメージが崩れていく・・・)

(十四郎、しっかりして)

「まぁ、僕の浮竹はこんなヴァンパイアだから。一緒に過ごしていて、毎日が楽しいよ」

(何気にのろけられてる)

(おなかいっぱいだね。さて、ボクらはそろそろ戻るよ)

「ああ、またな」

西洋の浮竹と京楽は、お土産にとたこ焼きをもらった。

「お土産ありがとう。古城でいただくよ」

そう言って、西洋の浮竹と京楽は、元の世界の古城に戻るのであった。





















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始祖なる者、ヴァンパイアマスター28

「何故だ!何故、封印が解かれるのだ!異界の存在を、手に入れたというのか!」

魔国アルカンシェルで、藍染は荒れていた。

せっかく、血族を封印し、にっくき始祖のヴァンパイアを休眠に追い詰めれたのに。

「藍染様、エスタニシア様の魂がきております」

「消せ!用はない!」

「しかし・・・子を、藍染様の子を違う魔女に宿させたと・・・」

「私の子だと?」

ぴくりと、藍染が動きを止める。

「次の駒には、いいかもしれないな」

そんなことを、藍染は考え出していた。

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(びっくりだったぞ。いきなり呼ばれたんだからな)

(うん、ボクもびっくりした)

「すまない。説明もおざなりで、いきなり力をかしてもらったあげくに、すぐに戻ってもらって」

「でも、お陰で僕は助かったよ。ありがとうね、東洋の僕と浮竹」

(キミは、ボクのお気に入りだからね。封印されたままなんて、我慢できない)

(俺もだぞ。西洋の京楽のいない世界なんて、考えられないからな)

東洋の京楽は、4人分のお茶を入れて、茶菓子を出した。

「それで、改めてお礼を言うために、お前たちを呼んだんだ」

「うん。今回は、僕の封印を解くのに力を貸してくれて、ありがとう」

「本当に、ありがとう」

ぺこりとお辞儀する二人に、東洋の二人が慌てた。

(いいから!そんなに畏まらなくても!)

(そうだよ。ボクらは当たり前のことをしただけだよ)

「俺は、京楽を失うのかと思い、休眠に入りかけていた。ブラッディ・ネイに頬を叩かれて、異界の存在をって言われて、我に戻ったんだ」

「異界の存在って、思わないからね、君たちのこと」

「ああ。大切な友人であるが、異界の存在ということを失念していた」

「今頃、藍染は悔しがっているだろうね」

「そうだな」

西洋の浮竹と京楽は、悪戯を思いついた子供のように笑った。

(俺たちの存在は、他の者には知らせていないのか?)

「ああ。ややこしいから、すでに知っているブラッディ・ネイと一護君を除いて、記憶から消し去った」

(ちょっと残念。こっちの世界の白哉とかにも話をしたかった)

(無理なことを言っちゃだめだよ、十四郎)

「記憶の件もすまないと思っている。だが、2重存在だとばれたら、いろいろ問題がおこりそうだからな」

(そうだよ。ボクらの存在は、あくまで秘密でいいからね)

(俺もだ。この世界にきて、お前たちと会えるだけでいい)

「そう言ってもらえて助かる」

(そうそう、手土産をもってきたんだよ。召還された時に食べていたミルフィーユケーキだよ)

「お、お茶菓子にしよう。もう、礼とかそういう堅苦しいの抜きで、普通にお茶をしよう」

「そうだね」

西洋と東洋の浮竹と京楽は、お茶をした。

(それにしても、藍染はこちらの世界でも悪者なんだな)

「うん。しつこくて、困ってるんだよ」

(また、力が必要になったら、召還してくれて構わないからな?)

「なるべく、そんなことにならないように注意する」

「そうだね。君たちとは、仲良くお茶をしたり、買い物したり、泊まったりしてもらいたいよ」

「今日は、泊まっていけ」

(いいのか?)

(お言葉に甘えよう、十四郎。彼なりの、気遣いなんだよ)

「フルコースの料理でもてなそう。デザートは、京楽が作ってくれる」

(楽しみだな)

(うん、楽しみだね)

その日は、西洋の浮竹の戦闘人形のメイドが作った料理を食べて、西洋の京楽の作ったデザートの苺パフェを食べた。

(んー美味しい!)

’(ボクの分も食べる?)

(いいのか!?)

東洋の浮竹は、目をキラキラさせていた。

(いいよ)

いちゃいちゃしている東洋の浮竹と京楽を見ながら、西洋の浮竹と京楽もやりとりをした。

「苺だけもらっていく」

「あ、ずるい!僕が苺好きなの知ってるくせに」

「早い者勝ちだ」

「じゃあ、アイスをもらっていくよ」

「あ、ずるいぞ。俺がアイスを好きだって知っているくせに」

西洋の浮竹も京楽も、結局はいちゃつくのであった。

その日は、他愛のないことで笑いあいながら、就寝した。

「じゃあ、また!」

「またね!」

(東洋の俺、もっと俺を頼ってくれていいからな?)

「分かってる」

(東洋のボクも、頼ってくれていいからね)

(うん。その時は、助けを求めるよ、素直に)

別れを済ませて、東洋の浮竹と京楽は、元の世界に戻ってしまった。

「なぁ、京楽」

「なんだい」

「もう、俺を庇って封印されるよなことは、するなよ」

「うん。君を悲しませたくないからね」

二人は、口づけあい、互いが今のこの世界にいるのだと実感しあいがら、舌を絡ませあった。

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「やっ」

浮竹のものを舐めあげて、京楽は浮竹の耳元で囁く。

「僕がいないとだめな体に、してあげる」

「もう、十分お前がいないと、俺はこの欲望を鎮められない」

浮竹のものに舌を這わせて、京楽は先端を刺激してやると、浮竹は体をびくんと反応させながら、京楽の口の中で弾けさせていた。

「ああああ!!!」

背後から突き上げられる。

「ひあ!」

ずくりと入ってきた熱は、浮竹の前立腺をすりあげて、奥へと入っていく。

「やあああ!!!」

「十四郎、もっと感じて?」

「やああ!」

何度も貫かれ、揺すぶられ、抉られて、浮竹は精液をシーツに零しながら、オーガズムでもいっていた。

「あ、やあああ!春水の顔が見えない」

泣きじゃくり始めた浮竹をあやしながら、体位を変えて、正常位になった。

「あ、春水!」

浮竹は、京楽の顔を手で包み込んで、キスをしてきた。

「十四郎、かわいい」

「春水、春水」

浮竹は、何度もキスをせがんできた。

それに応えてやりながら、浮竹の奥に侵入する。

「ひああああ!!!」

浮竹は背をしならせて、いっていた。

「あ、ああ・・・」

同時に、京楽は浮竹の鎖骨に噛みついて、吸血した。

「やああああああ!!!」

大きな快感の海に飲まれて、一瞬意識が白くなった。

「あ、あ、や、あ!」

京楽が刻むリズムにあわせて、浮竹は声を出す。

ゴリゴリと奥を刺激されて、浮竹はまた泣いていた。

「春水、春水」

「どうしたの」

「俺の傍に、ずっといてくれ。俺の傍からいなくならないでくれ」

京楽が封印されたことを、まだ浮竹は恐れているようだった。

「十四郎、君が嫌っていっても、僕は君の傍にいるからね」

浮竹の頭を撫でてやりながら、京楽は浮竹の胎の奥に欲望を叩きつけていた。

「ああ、春水のが、いっぱいくる!」

「何度でもいっていいよ。最後まで中で出してあげるからね?」

「ああああ!!」

浮竹の首筋に噛みつき、吸血しながら京楽はまた欲望を浮竹の中に出していた。

「あ、あ、京楽のでお腹が・・・・」

たくさんの精液を出されて、少しだけぽっこりとした腹を、浮竹は愛おしそうに撫でる。

「春水のが、たくさん。ああああ」

浮竹の中に出し尽くして、硬度を失ったものが、浮竹の体から去っていく。

「やあああ、出ないでえええ」

逆流してくる京楽の体液を手で掴みながら、浮竹はまた泣きじゃくる。

「浮竹、僕はここにいるから。だから、安心して。ね?」

「あ、京楽・・・・・」

浮竹は、京楽の動脈に噛みついて、溢れ出る血をすすった。

「お前の命は、俺のものだ」

「そうだね」

動脈の傷を再生させながあら、京楽は浮竹を抱きしめるのであった。


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「エスタニシア」

(藍染様、何故私を手にかけたの)

「君が愛しかったからさ。全部、君のためだよ」

(私の腹に宿っていた藍染様の子は、私の妹のアリスタシアの腹にいるわ)

「アリスタシアか。その名前、憶えておこう」

藍染は、ふっと息を吹きかけた。

エスタニシアの魂は、かき消された。

「アリスタシアの腹の子・・・私の、子、か」

藍染は、狂ったように笑い出す。

「どんなに焦がれても得られなかった我が子が、魔女如きが宿すなど・・・・・」

アリスタシアを探し出し、魔国アルカンシェルに迎え、我が花嫁とする。

そう告げた藍染の言葉を、藍染の寵姫たちは絶望の顔で聞いていた。

子を成せなかった寵姫の末路は、死であった。




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始祖なる者、ヴァンパイアマスター28

血の帝国では、薔薇祭りが開催されていた。

至る所に薔薇が飾られてあり、薔薇を砂糖漬けにしたお菓子や、薔薇のエキス入れたワインなどが無料で振る舞われた。

わあああああ。

民衆は、声をあげて女帝ブラッディ・ネイを褒め称える。

馬車に乗りながら、ブラッディ・ネイはそんな民衆に手を振っていた。隣には、寵姫であるブラッディ・エターナルとロゼ、メフィストフェレスの姿もあった。

ブラッディ・エターナルは一度死に、ブラッディ・ネイの血族ではなくなっていた。

浮竹が、破壊と再生を司る炎の最高位精霊、フェニックスを召還して、再び命を吹き込んだ。

今は、他の寵姫たちと同じ疑似血族となり、ブラッディ・ネイはブラッディ・エターナルだけに固執せず、後宮の寵姫たちを平等に愛した。

お気に入りはいるが、寵姫から追放される者はいなかった。

そんなパレードを、浮竹と京楽は、屋台から薔薇のお菓子を買って食べながら、見ていた。

「人気あるねぇ、ブラッディ・ネイ」

「仮にも、この国の女帝だからな。この薔薇の砂糖漬けうまいな。もっとくれ」

始祖である浮竹も、血の帝国の建国に携わっていたが、こうやって遠くから実の妹を見守っていた。

「薔薇水が売ってるよ」

「なんだと、けしからん。買ってしまおう」

浮竹は、喉が渇いていたので薔薇水を買って飲んだ。

ほのかな甘みが、最高だった。

「薔薇祭りはいいな。東洋のお祭りもいいが、こちらのお祭りもまた違う味わいがある」

浮竹は、そう言って京楽の分の薔薇水まで飲んでしまった。

「あ、僕の分が・・・」

「また買えばいいだろう。店の主人、薔薇水を10個くれ」

「そんなに飲めないよ!?」

「アイテムポケットに入れておくに決まってるだろう!」

そんなやりとりを繰り広げていると、パレードの馬車から降りてきたルキアと会った。

「浮竹殿、京楽殿!パレードに参加しないと思ったら、こんなところで何をされているのですか!」

「いや、ただの見物」

「右に同じく」

「始祖であられる、浮竹殿を披露できないなんて・・・」

「ああ、俺は始祖であることをあまり公にしてないからな。パレードなんかで見せ物になるのはご免だ」

浮竹は、肩を竦めた。

「僕の浮竹を欲しがる人が増えちゃう」

「浮竹殿を披露しようという、兄様との計画が・・・・・」

「白哉まで、そんなことしようとしていたのか?」

浮竹は、白哉が皇族王としてパレードで通り過ぎるのを見ていた。

「だって、浮竹殿は全てのヴァンパイアの源。血の帝国の父ですよ!?」

「母はブラッディ・ネイなんだろ。あいつと同じ位置にいるのは嫌だ」

「浮竹殿・・・・」

浮竹は、ルキアの頭を撫でた。

「気持ちだけ、ありがたくいただいておく」

「浮竹殿?」

「京楽と一緒に、もう少しパレードを見て、屋台めぐりしてくる」

遠くから、ルキアの守護騎士である一護と冬獅郎が、駆けつけてくるのが分かった。

「ルキア、何突然パレードの馬車から飛び降りてんだよ!心配するだろうが」

「とんだじゃじゃ馬姫だぜ」

「すまぬ、一護、冬獅郎」

ルキアは、去っていってしまった浮竹と京楽を、いつまでも見ているのだった。


-------------------------------------------------

「エスタニシア」

「はい」

「分かっているね?」

「はい」

氷結の魔女エスタニシアは、始祖魔族と呼ばれる藍染の言葉に、ただ頷くのであった。

「封印は、この世界の者には解けない。精霊王にもだ。異界の者でもない限り・・・・・」

計画は完璧だと、藍染は笑う。

あの、異界の精霊ドラゴン平子真子でも召還しないと、封印は解けないだろう。

浮竹と京楽には、異界の存在である東洋の浮竹と京楽の存在があるのを、藍染は知らなかった。

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「ふむ、このチョコバナナうまいな」

屋台で買い込んだチョコバナナを頬張りながら、浮竹はパレードが過ぎ去るのを見ていた。

「東洋の祭りみたいに、金魚すくいはないんだな」

「おたまじゃくしすくいならあるよ」

「おたまじゃくし・・・カエルになるんだろう。かわいくないからいらない」

「ひよこ釣りもあるよ」

「にわとりの世話なんてしたくない。却下だ。他にないのか?」

「もう、浮竹は文句ばっかり・・・・」

屋台はずらーっと並んでいて、たくさんのヴァンパイアで賑わっていた。

「射的なんかどう?」

「むう、ヴァンパイアハンターを思い出すな」

そう言いながらも、銀貨を2枚払って、おもちゃの銃を受け取る。

「てい」

適当に射撃したのだが、等身大ブラディ・ネイの抱き枕交換の券が入った、小さな小瓶に当たった。

「やりますねぇ。ブラッディ・ネイ様の等身大抱き枕ですよ!」

「いらん!!」

「ええ!」

「隣のやつと交換してくれ」

「え、この等身大朽木白哉様抱き枕ですか?」

「そっちの方がいい」

「仕方ありませんね~。力あるヴァンパイアロードとお見受けします。特別ですよ?」

店の主人は、そう言って等身大白哉の抱き枕をくれた。

ヴァンパイアロードでなく、世界で一人しかいない、ヴァンパイアマスターなのだが。

浮竹は、渡されたそれをアイテムポケットにしまいこむ。

「そんなのもらって、どうするのさ」

「恋次君にやる」

「確かに、恋次クンなら欲しがりそうだね」

その頃、パレードを終えて、城に帰還した白哉と守護騎士の恋次が、くしゃみをしていたのだった。

「あとは投げ輪とかあるけど」

「それもやる。む、銀貨が尽きた」

財布を見ると、金貨と大金貨しかなかった。

「金貨で支払ってもいいか?」

「お釣りが足りませんよ!」

「じゃあ、釣りはなしでいい」

そう言って、投げ輪を受け取ると、的に向かって投げた。

猫のぬいぐるみが当たって、浮竹は喜んだ。

「ちょっと、お釣りは!?」

「いらん。もらっておけ」

「でも、こんな大金!」

金貨5枚あれば、1カ月を4人暮らしで食べていける額だ。

「まぁまぁ、僕らは皇族なんだ。何も言わず、受け取っておいて?」

「こ、皇族の方でしたか!無礼を、お許しください!」

「おい、京楽、誰が皇族だ」

「え、だって君、ブラッディ・ネイの実の兄ってことは皇族じゃない」

「確かにそうだが・・・・・」

浮竹は、納得がいかなさそうだった。

------------------------------------------------------------------------

薔薇の祭りも、佳境に入ってきた。

空を飛ぶヴァンパイアたちが、薔薇の花や花びらを地面に降らせてきた。

「いいな、あれ。俺もやりたい」

「ちょっと、浮竹!」

浮竹はアイテムポケットから青い薔薇を取り出すと、風の魔法に乗せてその花びらを町中に降らせていった。

「青い薔薇の花びらだ!」

「素敵!」

「青い薔薇って、煎じて飲むと魔力があがるんだろう?」

「金運がアップすると聞いたぞ」

ヴァンパイアの住人たちは、青い薔薇の花びらを拾いはじめた。

「これも、くれてやる」

ブラッディ・ネイにあげようか迷っていた、青い薔薇を使った花冠をばらばらにして、自分の国でもある血の国の民に最後まで分け与えた。

「ふう、もうさすがに青い薔薇はない」

「綺麗だったよ、浮竹。青い薔薇が降り注ぐ中で、凛として立つ君が素敵だった」

浮竹は、赤くなって、京楽に薔薇水を持たせた。

「それでも、飲んでろ」

「うん」

京楽は、甘い薔薇水を口に含むと、口移しで浮竹に与えた。

「んっ」

ほんのり甘い薔薇の蜜の味がした。

「このバカ!」

京楽の頭を殴った。

不意に、肌寒い風を感じて、浮竹も京楽も、顔をあげる。

「この気配・・・・魔女だね」

「乱菊君か?」

「違う。もっと禍々しい・・・・」

首にかけていた水晶のペンダントが、眩しく光った後、濁った。

「敵だ!気を付けろ!」

「こんな町中じゃ危険だよ!空を飛んで、町の外にまで向かおう!」

二人は、ヴァンパイアの赤い翼を広げて、町を出て草原地帯までやってきた。


--------------------------------------------------------------------

「姿を現せ、魔女め!」

じわりと、空気が凍てついた。

身にまとっている魔力が、桁外れだった。

京楽と同じくらいの魔力をまとった、魔女だった。

「私は氷結の魔女エスタニシア」

「氷結の?道理で、寒いわけだ」

「氷かい。残念だけど、浮竹は炎の魔法が得意だよ」

「私の吐息は、全てを凍てつかす」

ごおおおお。

氷のブレスを吐く魔女に、浮竹は炎の魔法を放った。

「フレイムロンド!」

「その程度の炎、恐るるに足りないわ」

「浮竹にそれ以上近づかないでもらおうか」

京楽は、猛毒の血を刃にして、エスタニシアに切りかかった。

けれど、その血は凍って、エスタニシアに届くことはなかった。

「京楽、気をつけろ!この魔女、お前くらいの魔力がある!」

「たった一体の魔女が、こんな魔力を有するなんて!」

「それはそうよ。私は、藍染様のお力で、魔女の里にいた魔女全てから魔力を吸い取った存在なのですもの」

「また藍染か!いい加減にしてほしいな!」

浮竹は、藍染の名が出て眉を顰めた。

「自分の操り人形ばかり作り、自分からしかけてこない。魔族の始祖、藍染も落ちたものだ」

「あの方を侮辱しないで!」

エスタニシアは、腹を撫でた。

「このお腹の中には、あの方の子がいるの」

「うげぇ」

「うわぁ、やだなぁ」

「あの方の子のためにも、封印されておしまい、始祖のヴァンパイア!!」

それは、神の愛の呪いを止めるもの。

「アイシクルエターナルワールド、アイシクルエターナルフィールド!」

禁呪を2つ受けて、浮竹の動きが止まった。

「いけない、浮竹!」

京楽は、凍り付きはじめる浮竹を何とか助け出すと、浮竹の代わりに封印呪文の中心にいた。

「京楽!」

「ちっ、浮竹ではないけれど、あなたでもいいわ!あなたが封印されれば、この始祖は休眠に入る!」

「京楽、京楽ーーーーー!!!」

京楽は、2つの禁呪の封印魔法を受けて、その場に凍結されて封印された。

「よくやったね、エスタニシア」

闇の中から、藍染が滲み出た。

「藍染様・・・・・」

「君の役目は、もう終わりだよ」

「藍染様?」

エスタニシアは、藍染に力の全てを奪われ、その場に倒れた。

「京楽・・・・」

浮竹は、血を暴走させた。

血の海がいくつもの刃となって藍染に襲いかかる。

それを、エスタニシアから奪い取った力で、藍染は凍結させた。

「さぁ、君も凍ってしまえ。この京楽のように。異界の力でもないと、この封印は解けないよ」

「藍染!!」

真紅の瞳で、浮竹は血を暴走させて、凍っても凍っても途切れることのない、血の刃を向けた。

「おっと、君の手にかかって死にたくはないのでね。私はこの辺りで去らしてもらうよ」

藍染は、闇に溶け込んでいった。

「藍染ーーーー!!!」

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ブラッディ・ネイと白哉、恋次、ルキア、一護、冬獅郎が見たのは、平原で凍り付き封印された京楽に寄り添い、休眠に入りかけている浮竹の姿だった。

「何があったのですか、浮竹殿!」

「ルキア君・・・・俺は、京楽のいない世界に、居たくない・・・・」

「この程度の封印など、私の聖女の力で!」

キィィィン。

京楽の封印は、ルキアの力を拒んだ。

「な、私の手でも封印が解けない!?」

「これは・・・・この世界の者だと、解けない絶対封印だね。精霊界の存在でも、だめだろう」

ブラッディ・ネイは、全てを悟り、休眠しようとしている浮竹の頬を叩いた。

「しっかりしてよ、兄様!異界の者を召還すればいいじゃない!」

その言葉に、浮竹がはっとなって、目を見開いた。

「異界の存在・・・・東洋の、俺と京楽!」

想いが通じたのか、その場に東洋の浮竹と京楽が召還されていた。

(え、なんだ?)

(何がどうなってるの?)

いきなり異界に召還された二人は、お茶の途中だったのか、ミルフィーユケーキを食べている最中だった。

「東洋の俺と京楽!俺に、力を貸してくれ!」

皆は、東洋の浮竹と京楽に驚いていたが、ブラッディ・ネイや一護は知っているので、殊更騒ぎたてる者はいなかった。

(なんだか分からないけど、西洋の僕のピンチみたいだね)

(力を貸すぞ、もう一人の俺!)

もっきゅもっきゅと、頬の中のケーキを噛んで飲みこんで、東洋の浮竹は泣いている西洋の浮竹の頭を撫でながら、説明を受けた。

(俺と春水の力で、この封印が解けるんだな?)

「ああ。俺の体に触れていてくれ」

西洋の浮竹に、力を注ぎ込むイメージで、東洋の浮竹と京楽は西洋の浮竹の背に触れた。

「異界の力よ、宿りてその封印を打ち消したまえ!ゴッドトライアングルキュア!」

3人分の、異界の力の混ざったその魔力は、じわじわと凍り付いていた西洋の京楽の氷を溶かし始めた。

(ああ、もうここにはいられない)

(俺もだ。ごっそり力をもっていかれた)

異界の、東洋の浮竹と京楽は、西洋の浮竹が涙をぬぐいさり、微笑んでいるのに安心しながら、元の世界に戻っていった。

「あれ、僕は、封印されたはずじゃ・・・・・・・」

「京楽!」

浮竹は、泣きながら自分の愛しい伴侶を抱きしめた。

「東洋の、俺たちに力をかしてもらったんだ」

「なんだか、意識の狭間で絶対封印って聞いたんだ。この世界の者じゃ、封印は解けないって。異界の、僕らが、力をかしてくれたんだね」

「ああ。よかった、京楽、京楽」

ややこしいので、その場にいた全員の、異界の浮竹と京楽が助けてくれたという記憶を消し去った。

ただ、ブラッディ・ネイと、一護はその存在に触れたことがあるので、記憶は消さなかった。

「よかったね、兄様」

「ああ。ブラッディ・ネイ。俺を叩いて目を覚まさせてくれてありがとう。お前の言葉がなかったら、俺はこのまま休眠に入っていた」

「藍染は、今頃悔しがっているだろうね」

「あいつ、絶対許せない」

「どうして!藍染様!」

その場に残っていた、エスタニシアは藍染に奪われた力を取り戻していた。

「あなたたちがいなければ!」

エスタニシアは、氷の刃を浮竹に向けた。

「ぐふっ!」

いつの間にか、全身に薔薇を咲かせて、エスタニシアは息絶えていた。

「ボクの兄様を悲しませた罰だよ」

「ブラッディ・ネイ・・・・今回は」

「おっと、その続きは無しだよ、兄様。ボクは兄様の幸せを祈っているんだから。もちろん、愛してるよ、兄様!」

抱きついてくる妹を押しやって、浮竹は京楽と共にエスタニシアを炎の魔法で灰にした。

反魂でもされたら厄介だった。

灰は、ブラッディ・ネイの薔薇の魔法で肥料として消えていった。







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始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝

西洋の浮竹と京楽は、東洋の自分たちに会いにきていた。

「温泉宿を貸し切ったんだ。一緒に、温泉に入りに行かないか」

「どうやって・・・とか思ってるでしょ。浮竹ってば、金の延べ棒を出して貸し切ったんだよ。払いすぎだと思うけど、お釣りはいらないっていって、旅館の人たちが卒倒しそうに喜んでたよ」

「ここから、バスとやらに揺られて1時間の場所なんだが、どうだ?」

(いいね。温泉なんて、久しぶりだよ。それに、貸し切りなら十四郎の裸、他人に見られるわけじゃないから)

(温泉!俺も久しぶりだ。でも、貸し切りなんていいのか?)

首を傾げる東洋の浮竹に、西洋の浮竹が首を傾げる。

「金の延べ棒じゃ足りなかったか?じゃあ、このダイヤモンドのネックレスでも・・・・」

(わあああ!そういう問題じゃない!払い過ぎだ!)

東洋の浮竹は、貸し切りなんて負担にならないのかと思っていたようだったが、杞憂であった。

こうして、4人はバスに揺られて1時間の場所にある、山の麓の温泉旅館に来ていた。

あまり広い温泉旅館だと、節約の暮らしをしている東洋の浮竹が困るだろうと思い、中規模な温泉旅館にしておいた。

「いらっしゃいませ。ようこそおいでくださりました、浮竹様、京楽様。荷物をお運びいたしますね」

西洋の浮竹と京楽は、この世界ではアイテムポケットを人前で使ってはいけないと分かってたので、鞄に着替えの衣服やらを詰め込んでいた。

それは、東洋の浮竹と京楽も同じで、大きなカバンを取り出すと、旅館の者が運んでくれた。

「本日お泊りにいただく、スィートルームでございます」

案内されて、その広さに東洋の浮竹が驚いた。

(わぁ、広いなぁ)

24畳の部屋が、ふすまでそれぞれ3つの部屋に分かれている部屋だった。

ふすまが開かれているので、全部で72畳の広さの部屋になった。

(綺麗だし、広いし、畳のイグサいい匂いがする)

西洋の京楽は、茶菓子とお茶を4人分用意して、それぞれに渡した。

「茶菓子も美味いな。口コミでいい温泉と聞いたんだが、貸し切って正解だったな」

みんな、こくこくと頷いた。

「さぁ、風呂に入りにいこう!」

西洋の浮竹は、お風呂グッズを手に、着替えの浴衣とバスタオルを手にしていた。西洋の京楽も同じような姿だった。

東洋の浮竹と京楽も、浴衣とバスタオルだけを手に、露天風呂に向かう。

シャンプーやボディーソープ、リンスなどは備え付けられているので、東洋の浮竹と京楽はそれを使った。

「一緒に洗いっこしよう、東洋の俺」

(あ、うん)

西洋の浮竹に背中を洗われて、東洋の浮竹は少し恥ずかしそうにしていた。

「へえ、東洋の俺は、肌の所々に蛇の鱗があるんだな」

そこを中心に、泡だらけのタオルでこすってやると、東洋の浮竹がこそばゆそうにしていた。

(西洋の俺には、鱗はないんだな)

急に体を触られるものだから、西洋の浮竹は。

「ひゃあ!」

そんな悲鳴を漏らしていた。

東洋の京楽は、それに注意をしながら、クスリと笑っていた。

(次は、俺がお前を洗ってやる)

「ああ、ボディソープはこれを使ってくれ」

いい匂いのする、金木犀の香りのボディーソープをタオルにつけて、それで西洋の浮竹の背中を洗ってやった。

東洋の浮竹は、お返しだとばかりに、泡だらけのタオルで全身をこそばした。

「ひゃあああ!びっくりするじゃないか!」

西洋の浮竹は、こそばゆそうに笑っていた。釣られて、東洋の浮竹も笑う。

洗いっこする二人を、西洋と東洋の京楽は、自分の体を洗いながらほっこりした気分で見ていた。

「東洋の僕、君の体も僕が洗ってあげようか?」

(十四郎に洗ってもらうから、いい)

「じゃあ、僕も浮竹に洗ってもらおっと」

西洋と東洋の京楽は、それぞれの伴侶に背中を洗ってもらった。

お互いに髪も洗いっこをして、長い髪をまとめあげて露店風呂に湯船に入る。

「ああ、いい湯だ。体に染みる」

「浮竹、じじ臭いよ」

「ほっとけ」

(いい湯だな。貸し切りでもないと、人前でこの肌を晒すわけにはいかないからな)

(そうだね。鱗を気味悪がる人も中にはいるだろうし)

「ん、俺は気にしてないぞ」

「僕もだよ」

(あくまで、赤の他人が見たらだ)

「なるほど」

温泉にじっくり浸かり、日頃の疲れを癒した。

温泉からあがると、東洋の浮竹と京楽は、互いの髪の水分を拭き取りあっていた。

「仲かがいいな。見ていてほっこりする」

そう言いながらも、西洋の浮竹も西洋の京楽に髪を拭かれていた。

(そっちも人のこと言えないぞ?)

東洋の浮竹は拭かれながら微笑みながら言う。

浴衣に着替えて、風呂上がりにはこれだと、西洋の浮竹と京楽はフルーツ牛乳を自動販売機から買った。

腰に手をあてて、ごくごくと飲んでいく。

「ふう、美味いな」

「おいしいね」

(俺もやる!)

(十四郎)

(春水もやろう)

(仕方ないね)

東洋の浮竹と京楽も、自動販売機からフルーツ牛乳を買うと、飲んでいった。

体を綺麗にして、水分補給もまして、夕飯までまだ時間があるので、中庭までやってきた。

中庭には、遅咲きの桜が満開だった。

「花見をするのもいいかもな」

「それもいいね」

(うん、俺も思う)

(今日はとりあえず、この桜で我慢しようね)

やがて夕暮れになり、夕食の時間になった。

夕飯は、カニ鍋にカニの蒸し焼き、カニの刺身に天ぷらと、カニ尽くしであった。

(カニだ!カニだぞ!)

東洋の浮竹は、めちゃくちゃ目をキラキラさせて、東洋の京楽の服の袖を引っ張る。

(うん、おいしそうだね)

(おいしそうだな)

東洋の浮竹は、目をキラキラ輝かせたまま、まずは一口。

(うん、うまい)

「確かに、うまいな。カニの時期は少し過ぎている気もしたが、悪くない」

西洋の浮竹も美味しそうに食べていた。

西洋と東洋の京楽は、そんな二人を微笑まく見つめつつ、自分たちもカニを食べていく。

最後の〆の雑炊を食べ終えて、4人は満足した。

(もう食べられない)

「西洋の京楽の分も、一部たべるからだ」

(だって、食べていいと言われたんだぞ。それにカニを食べるのは数年ぶりだ)

そう言いながら、お腹いっぱいになったのか、東洋の浮竹は眠そうにしていた。

うつらうつらと船をこぐ東洋の浮竹の頭を、東洋の京楽が膝枕をした。

眠り始めた東洋の浮竹は、もう食べれないとかむにゃむにゃ言っていた。

そんな東洋の浮竹の頭を優しく撫でながら、東洋の京楽は。

「お酒飲んでいい?」

そんなことを言い出した。

「ああ、そういえば酒を準備させていたが、飲みそこなっていたな」

西洋の浮竹が、冷えたビールと、冷たい日本酒をもってきてくれた。

「俺も飲むぞ」

「浮竹は控えめにね?酒に強くないんだから」

(西洋のボクは、飲めるほうなの?)

「自慢じゃないが、酔いつぶれたことはない」

(へぇ。じゃあ、ボクと飲み比べしよう)

「いいぞ。日本酒で飲み比べをしよう」

二人は、酒豪だった。

酔いつぶれた西洋の浮竹と、膝枕で眠っている東洋の浮竹をそれぞれしかれてあった布団に寝かしつけて、二人の酒豪は酒を飲みかわし合うのだった。


「んー・・・・もう朝か?」

(むにゃむにゃ・・・・)

気づくと、西洋の浮竹の布団の中に東洋の浮竹がいた。

「おい、起きろ。朝だぞ」

(はっ、カニの大軍が!)

「どんな夢見てたんだ」

(いや、昨日久しぶりにカニを堪能したものだから)

「朝風呂に行かないか」

(行く!)

東洋の京楽と西洋の京楽は深夜まで飲み合いをしたのか、まだ眠っていた。

「もう少しだけ、寝かせてやろう」

(分かった)

二人は、朝風呂に入り、戻ってくると二人の京楽は起きていた。

(十四郎、ボクを起こしていってよ)

(すまん、あまりに気持ちよさそうに眠っていたもんだから)

「京楽は、起こさないでよかっただろう?」

「君と、東洋の君だけじゃ、心配だよ!」

「俺は始祖だぞ。それにこっちの俺は蛇神だ」

「それはそうだけど・・・・」

「朝食をとって、戻るか」

4人は、朝食を食べて、バスに1時間揺られて、東洋の浮竹と京楽の住まう雑居ビルに来ていた。

自分の家に戻ると、東洋の京楽は慌ただしくお菓子を作り出した。

「何をしているんだ?」

(君たちに持って帰ってもらう、お菓子を作ってるの)

「気を遣わなくていいだぞ?」

(ボクの十四郎があんなに楽しそうなの見るの、見ていて嬉しかったからね。そのお礼もこめて)

(春水、お土産のお菓子の俺の分はあるか?)

きらきら期待の眼差しで見つめられて、東洋の京楽は笑った。

(もちろん、あるよ)

(やった)

「東洋の俺は、何気に食いしん坊だな」

「それは君もでしょ」

「まぁ、そうなんだが」

お土産のチョコレートブラウニーのお菓子をもらって、西洋の浮竹と京楽は、東洋の自分たちに向かって手を振った。

「またな、東洋の俺、京楽!」

「またねぇ!」

(ああ、またな。今度は俺たちがそっちに行くから)

(元気でね)

4人は、そうして別れを告げて、西洋の浮竹と京楽は元の世界へ戻っていった。


(このチョコレートブラウニーとても美味しいな!)

東洋の浮竹は、そう言ってお土産の残りのチョコレートブラウニーをもきゅもきゅ頬張っていた。

(ああ、ボクの十四郎はかわいいね)

(ん、どうしたんだ春水。お前も食べるか?)

(ボクは、君が食べている姿を見るのが好きなの)

(知ってる)

(十四郎、大好きだよ)

愛を囁くと東洋の浮竹は真っ赤になって。

(お、俺もだ・・・)

そう答えるのであった。



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始祖なる者、ヴァンパイアマスター27

「ここがいいわね」

ガイア王国にある、浮竹の古城から少しいったところにある町の近くに、空いている屋敷があったので、乱菊は世界樹の雫を売った金がまだ残っていたので、その屋敷を買い上げた。

「ふむ、乱菊ちゃんはここに住むんだね?」

「ええ。家具とか、いろいろ出してちょうだい。移動は手伝ってね」

浮竹と京楽は、乱菊の引っ越しを手伝った。

乱菊の魔女の館にあったものは、ほぼ全てアイテムポケットに入れた。

「疲れるな。戦闘人形にも手伝ってもらおう」

浮竹は、自分の血でできた戦闘人形を動かして、屋敷の簡単な掃除をさせて家具を配置させ、一番重要な錬金術に使う鍋や器具などを南向きの部屋の中央に置いた。

「こんな感じでいいか、乱菊?」

「ええ、ありがとう、浮竹さん」

「魔女の里に行かなくても乱菊ちゃんに会えるなんて、嬉しいねぇ」

「そうだな。俺と京楽が遊びにきてもいいだろうか」

「ええ、いいわよ。ただ、お客がきてる時は対応できないかもしれないけど」

「それは分かっている」

「これはお礼よ」

京楽に何かポーションを受け取らせて、耳元でこそこそやっていた。

浮竹はそれに気づかずに、錬金術の鍋の中身を見ていた。

「じゃあ、浮竹、古城に帰ろうか」

「ん、ああ、そうしようか」

「じゃあ、また今度ね、浮竹さん京楽さん」

「近いから、すぐに会えるな」

「ええ、そうね」

そんなやりとりをして、二人は古城に戻っていった。

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「浮竹、新しいワインが届いたんだ。飲んでよ」

「ああ、いただく」

浮竹は中見を飲み干した。浮竹は、ワイングラスを手に、自分の体を抱きしめる。

「浮竹!?」

「お前・・・媚薬入りポーションいれたな・・・」

「ええ、分かる?」

「乱菊の媚薬ポーションは、何度か口にしたからな」

「ええと・・・」

「お返しだ」

浮竹は、媚薬ポーションを口に含んで、原液のまま京楽に飲ませた。

「熱い・・・体が熱くて仕方ないよ」

京楽は、獣のような瞳で浮竹を見た。

浮竹は、その目を見て、ゾクリと感じた。

「ま、待て、せめて寝室で・・・・」

「待てない。今すぐ、君を抱きつぶしたい」

ダイニングルームで、浮竹は京楽に覆いかぶさられていた。

ダイニングテーブルに押し付けられると同時に、京楽の硬くなったものが腰にあたった。

「あ、春水・・・・・」

浮竹は、これからはじまる行為に、情欲に瞳を濡れさせて、自分の唇をペロリと舐めた。

「十四郎、エロすぎ」

京楽は、浮竹の衣服を脱がしていった。

「んっ」

舌と舌を絡み合わせて、乱れていく。

「あ、やっ」

京楽は媚薬の入った体で、自分のものを口に含まれて、浮竹はいつもより感じていた。

「ああ、ああ!」

少しの刺激で、浮竹はいってしまっていた。

「ああ、せっかくダイニングルームだから、蜂蜜でも使おうか」

「や、何を」

ダイニングテーブルの上にあった、調味料などをいれていた籠に、蜂蜜があった。

それを手にとり、浮竹の体に塗っていく。

「やあああ」

それを舐めとる京楽の舌で感じてしまい、浮竹は顔を隠した。

「君の顔がみたい、十四郎」

「あっ」

ダイニングテーブルの上に押し倒されて、京楽は浮竹の手をとって、自分の背中に回させた。

「爪立ててもいいから、顔隠さないで?」

「あああ!」

蜂蜜を舐めとっていく京楽の舌が、浮竹の胸の先端を舐めとる。

「んんん」

「甘いね。君がただでさえ甘いのに、蜂蜜で更に甘い」

京楽は、飢えた獣の瞳で浮竹をじっと見ていた。

「あ、春水・・・・」

浮竹は、京楽の舌が蜂蜜をなめとっていくのを、ただ感じていた。

「ああああ」

浮竹の勃ちあがったものにも蜂蜜は垂らされていた。

全体の蜂蜜を舐めとるように、丁寧に舐められた。

「ああ、あ!」

浮竹のものが次第に硬くなっていき、とろとろと先走りの蜜を零した。

「我慢しなくていいんだよ、十四郎」

「ああ!」

浮竹は、京楽の口の中に精液を吐き出していた。

「ああ、君の体液は蜂蜜に負けないくらいに甘い」

浮竹の精液を舌で味わってから、京楽はそれを嚥下した。

「あ、春水、春水」

「ちょっと待ってね。ローションとってくる」

一人残された浮竹は、熱い体を持て余す。

「ただいま」

「春水・・・・・」

「どしたの」

「俺を置いていかないでくれ」

「今日はもう、ずっと一緒だから、安心して?」

ローションを、下腹部から蕾かけて垂らされた。

「あ、冷たい」

「慣らしていくね?」

「ん・・・・・ああ!」

京楽の指が入ってくる。

それだけで、浮竹はいきそうになっていた。何とか我慢した。

「ああ、あ、あ」

ぐちゅりぐちゅりと中を解していく京楽の指が前立腺に触れる。

「やあああ」

「ここは、後で、ね?」

また、獣の視線で見られた。

「僕も限界だよ。君に媚薬の原液もられたせいで、いつでも弾けそうだ」

浮竹の中に侵入しただけで、京楽のものは弾けていた。

「ん、やっぱり奥までは無理だったね」

「やあっ」

浅い部分を犯されて、もっと奥にと浮竹の中が誘ってくる。

「君のここは吸い付いて僕を離さない」

「やあ、言うな・・・・・」

前立腺をすりあげて入ってきた京楽のものに、浮竹が精を放っていた。

「ああああ!!」

「僕は、君のせいで何度でもいけそうだ。責任もって、付き合ってもらうからね?」

「やああああ」

最奥の結腸にまで侵入されて、浮竹はオーガズムでいっていた。

「ああ、あああ!!!」

何度も出入りを繰り返す京楽の熱を胎の奥で受け止めて、浮竹は満足気に微笑んだ。


「あ、やああ、もう、いきたくない」

「君が、媚薬のポーションを原液で僕に飲ませるから・・・」

もう、京楽は7回以上も浮竹の中に精液を流し込んでいた。

「ああ、やだああ!」

壁に押し付けられて、立ったまま犯されていた。

「やあ、いきたくない、もうやだあっ」

ぐちゅりと音を立てて、京楽のものが出入りする。

京楽のものは一向に萎えることなく、浮竹を貫いた。

「あああ!」

京楽は、浮竹の肩に噛みついて吸血した。

「やああ、いきすぎて、頭が変になるううう」

浮竹は泣いていた。

かわいそうとは思ったが、体を支配する熱はまだ収まってくれない。

何度か浮竹を突き上げると、浮竹は泣きながら京楽を締め付けた。

「んっ・・・・これが最後だから。しっかり、受け止めてね?」

「ああああ!!!」

ぷしゅわああと、浮竹は勢いよく潮をふきだした。

京楽は、最後の一滴までを浮竹の中に注ぎ込んだ。

浮竹の中から出ていくと、ダイニングルームの床に白い水たまりができた。

それは全部、京楽の精液であった。

「こんなに出しちゃったよ」

「やあ、ばかあ」

寝室でなくてよかったと、京楽は思った。

ベッドだと、マットレスまで使い物にならくなりそうな量の精液だった。

「あああ・・・・・」

最後の仕上げとばかりに、首に噛みつかれて血を吸われて、浮竹は意識を失った。

浮竹を抱きつぶした京楽は、満足そうに浮竹の白い長い髪を撫でた。

風呂に入り、身を清めてから浮竹に衣服を着せてやり、寝室のベッドに横たえる。

長時間京楽に犯された浮竹は、幸せなまどろみの中にいるようで、疲れてもいるのか起きる気配はなかった。

「おやすみ、十四郎」

額にキスをちゅっとして、京楽の眠りについた。

-------------------------------------------------------------

「ん・・・浮竹?」

朝起きると、浮竹の姿がなかった。

そういうのは珍しくて、また藍染に攫われたのかと京楽は気が気でなくて、ダイニングルームにまでやってきた。

そこには、ダイニングルームを隅々まで綺麗にする戦闘人形と、それを操っている浮竹がいた。

「よかった、浮竹、無事だったんだ」

「よくない。ダイニングルームなんかで抱きやがって。おまけに蜂蜜も使ったから、テーブルも床もべとべとだ」

「ごめんごめん」

「食べ物を粗末にするな」

「でも、浮竹もよさそうだったじゃない」

浮竹は赤くなって、ハリセンで何度も京楽の頭を殴った。

「ごめん、ごめん」

「乱菊の媚薬ポーションは処分したからな」

「ええっ!せっかくもらったのに」

「おまえが媚薬を飲むとどうなるのか分かった。俺の身がもたない」

「まぁ、加減できなくなっちゃうからね」

「朝食の用意はできてある。ダイニングルームは掃除中だから、キッチンで食べよう」

キッチンにも、テーブルと椅子は備わっていた。

「さて、今日はどうする?」

「薔薇祭りが近いだろう。薔薇をいろいろ咲かせようと思う」

「ああ、薔薇祭りね」

それは、血の帝国の祭りだった。

薔薇の魔法を使い、薔薇を愛するブラッディ・ネイが作り出した祭りであった。

いろんな品種の薔薇を咲かせて、ワインを飲んで料理を食べる。

血の帝国では数少ない祭りの一つだ。

「青い薔薇を咲かせよう」

「浮竹が発見した青い薔薇は、今じゃブラッディ・ネイのお気に入りだもんね」

ブラディカを眠らせる時、棺に青い薔薇をしきつめた。青い薔薇は、ダンジョンでしか咲かなくて、人間社会にもヴァンパイアの世界にも存在しなかった。

2株だけ、妹のために持ち帰った青い薔薇は、今や青い薔薇のアーチを作るほどに、血の帝国で普及していた。

最も、高価であるでの、ブラッディ・ネイの宮殿や皇族貴族の薔薇園くらにしか存在しないが。

浮竹の古城にも、小さいが薔薇園があった。

まだ開花に至っていない青い薔薇の蕾に魔力を注ぎ込むと、綺麗に開花した。

「綺麗だね」

「ああ。青い薔薇は、人間世界では不可能と言われていた。それが、魔力のたまるダンジョンで青くなったんだ。元々は紫色だったと思う」

青い薔薇を世界ではじめて見つけたのは、浮竹だ。

人間に話すと、全てとられると思い、自分の薔薇園で育てる分だけを持って帰った。

ブラディカが休眠に入る際、その青い薔薇をつみとってしきつめたのだが、数が足りずにダンジョンの群生地でいくつか摘み取った。

ブラッディ・ネイへのお土産にもした。

「薔薇祭りか・・・・綺麗な薔薇がいっぱいあるといいね?」

「そうだな」

薔薇祭りまで、あと3日だった。

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魔女の里は、不穏な空気を抱えていた。

魔女ハルキュリアも、始祖のローデン・ファルストルもいなくなった。

猫の魔女、松本乱菊もだった。

「君の名は?」

藍染は、魔女の里に分身体を飛ばしていた。

「魔女エスタニシア。氷結の魔女」

「君に、始祖ヴァンパイアを封印できる魔法を教えてあげよう・・・・エターナルアイシクルワールド。これが、その呪文と効果を書いた、魔法書だ」

かつて、自分が受けた封印の魔法を、エスタニシアに教えると、彼女が首を横に振った。

「魔力が足りないわ。とてもじゃないけど、使えないわ」

「魔力なら、ほら、魔女の里中にあるじゃないか」

藍染は、魔女たちから魔力を吸い上げると、それをエスタニシアに与えた。

「いいかい、これは君たち魔女の総意だ。始祖ヴァンパイアを、封印せよ」

「封印せよ」

「封印を」

魔女会議が開かれた。

もう、藍染の姿はなかった。

「始祖ヴァンパイア、浮竹十四郎を、この魔女の里の魔女たちから吸い上げた魔力で、封印せよ!」

魔女の里の不穏な空気は、濃密になって動きだす。

浮竹も京楽もそれを知らず、薔薇祭りのために血の帝国に旅立つのであった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター27

浮竹は、東洋の浮竹からもらった浴衣を大事そうにクローゼットにしまった。

そして同じようにもらった金魚を金魚鉢にいれて、玄関に飾った。

「うーん、黄金のハニワとのミスマッチがまたいい」

浮竹は、一人悦に浸っていた。

「この金魚、すぐに死んじゃうのかな?」

「死なせない。俺の血を、一滴金魚鉢に注ぎ込む」

そう言って、浮竹は牙で自分の指を噛むと、滲み出た血を一滴、金魚鉢にたらした。

金魚はパシャンとはねて、赤い鱗が更に赤くなる。

「眷属化しちゃったようだよ」

「金魚の眷属か。それはそれで、面白い」

使い魔にはなりそうもないが、大切に育ってくれるだろう。

浮竹は満足して、京楽は金魚に餌をあげていた。

「ああ、よく食べるね。これなら、死ぬ心配もなさそうだ」

「金魚の世話は俺とお前でしよう。戦闘人形に任せることもできるが、せっかく東洋の友人から譲り受けたものだ」

「うん、そうだね」

ほのぼのとした時間が、過ぎていく。


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夢見せの魔女ハルキュリア。

かつて数年前、女帝ブラッディ・ネイを夢で操り、血の帝国を自分のものにしようとした魔女の名であった。

ブラッディ・ネイの怒りを買った後、どうなったかは知らない。

「一護君、ルキア君と冬獅郎君は今どこに?」

「ブラッディ・ネイの宮殿にいます」

「京楽、俺たちも血の帝国の、ブラッディ・ネイの宮殿に向かうぞ」

一護を伴って、浮竹と京楽は血の帝国まできていた。

ベッドには、ルキアと冬獅郎が寝かされていた。

幸せそうな顔をしていた。

点滴の管がつけらており、昏睡状態になって数日が経過しているのが分かった。

ルキアと冬獅郎の胸元を見る。

百合の文様があった。

「間違いない、夢見せの魔女ハルキュリアに夢を見せられている証だ。ハルキュリアは、自分の魔法で夢を見させた者の胸元に、百合の文様を刻む」

「助かる方法はあるんすか!?」

「まず、普通の方法では無理だ。魔女ハルキュリアを殺すか、術を解かせないと。もしくは、こちらから夢の中に干渉して、起こすかだな」

「居場所、分かりますか?」

「分からない。もしかすると、魔女の里からかもしれない」

「じゃあ、どうすれば・・・」

一護は、おろおろとしていた。

「俺と京楽で、夢の中に潜ってみる。うまくいけば、それで目が覚めるはずだ」

「お願いします!ルキアと冬獅郎を助けてやってください!」

「分かっている。いつ何処で昏睡状態になったんだ?」」

「ああ、宮殿をぬけたところに森があって、湖が広がってるんです。その湖の水が、聖水を作るのに一番適してるって、ルキアが冬獅郎連れて出て行って。俺は雑務したので、迎えにいったら、二人とも意識をなくしてたんす」

「ふむ。血の帝国内にいる可能性が高いな。多分、ルキア君の聖女としての力を削ぎたいんだろう。ルキア君の癒しの力は、魔女の作るポーションの比じゃないからな」

ルキアは聖女として、血の帝国内だけでなく、国外からも患者を受け入れていた。

魔女の里は閉鎖的だし、魔女の作るポーションは高い。

ルキアは魔女のポーションに比べると、安い値段で治癒を行っていた。

疫病などが起こった時は、無料で患者を診て、病気を癒した。

それは、元々魔女の役割だった。

「夢の中に入る。俺と京楽の分のベッドを用意してくれ」

「浮竹、大丈夫なの?夢の中は精神体で入るんでしょ。何かあったら・・・」

「京楽も、俺を信じろ。俺は5千年も眠っていたんだぞ。好きに夢を操るくらい、造作もなことだ」

「なら、いいんだけど」

そして、浮竹と京楽は眠り薬を飲んで、ルキアと冬獅郎の体に触れて、夢の中に潜っていった。

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冬獅郎の見ている夢は、両親が生きている夢だった。

「冬獅郎君、それはただの夢だよ」

まず、夢の中にもぐりこんだ京楽が、冬獅郎の目を覚まさせようと、そう言うと、冬獅郎は氷輪丸という氷を操れる剣で、京楽を斬り裂いた。

「これは夢じゃねぇ、現実だ」

斬り裂かれても、夢なので痛くなかった。

「冬獅郎君、ルキア君を、雛森君を一人にしていいのか?」

浮竹の言葉に、冬獅郎の耳がピクリと動く。

「ルキアと雛森がどうしたんだ」

「このまま、君が夢から覚めないと、二人に一生会えないよ」

「そんな馬鹿なことが・・・・・」

「ほら、一緒に帰ろう。ルキア君と一護君が待っているぞ」

冬獅郎は、父と母を見た。その姿は溶けていき、ただの人形が残った。

「俺は・・・父さん、母さん、さよならだ。俺は戻る」

がばりと、冬獅郎は起き上がった。

「ルキア、一護!」

「ルキアはまだ寝ている。冬獅郎、よかった、目が覚めたんだな」

「京楽と浮竹が・・・・って、何してるんだ、こいつら」

眠っている浮竹と京楽を見る。

「冬獅郎とルキアは、夢見せの魔女ハルキュリアの手で眠らされていたんだ。今、浮竹さんと京楽さんが、起こしてくれるために夢に潜り込んでる」

「そうか。だから、あんな幸せな夢を見ていたのに、浮竹と京楽が登場してきたのか」

「どんな夢を見ていたんだ?」

「両親が生きている夢だ」

「ハルキュリアって、酷いことする奴だな、冬獅郎が孤児だってことにつけこんで・・・」

一護は、本気で怒っていた。

「次は、ルキアを起こしに、夢の中に潜りこんでいるんのか?」

「そうだと思うぜ」

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ルキアが見ている夢は、チャッピーといううさぎのキャラクターが生き生きとしている夢だった。

ルキアはというと、チャッピーと会話しながら、大好物の白玉餡蜜を、一護と一緒に食べていた。

「一護クンのことが好きだから、夢の中にもいるんだねぇ」

「誰だ!」

「ルキア君、これは夢だ」

「分かっている」

ルキアは、紫紺の瞳を瞬かせた。

「なら、目覚めないと」

「一護が、目覚めるなというのだ。一護を置いていくわけにはいかぬ」

「一護君なら、夢の外にいるよ。今の君は、魔女ハルキュリアに夢を見せられているんだよ」

「一護が、行ってはいけないと・・・」

ルキアの元に一護がやってきて、キスをして去っていった。

「これは、その!」

「さあ、ルキアちゃん目覚めよう。本物の一護クンが、君を待っているよ」

ルキアは目覚めた。

「目覚めたのか、ルキア!」

一護が、ルキアに抱き着いた。

「ええい、この大馬鹿者め!」

ルキアは、一護にアッパーをかませた。

「なんで。俺なんもしてねえのに」

ルキアは真っ赤になっていた。

「浮竹殿と京楽殿は?」

「まだ眠ってる」

「もう、起きたぞ」

「僕もだよ」

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「浮竹殿、京楽殿、ご迷惑をおかけしました。私と冬獅郎が魔女などに眠らされるとは・・・・」

「いや、ハルキュリアはブラッディ・ネイさえも眠りに落とし、操ろうとした実力者だ。今回のことは仕方ない」

「湖で、聖水を作っていたのです。そこに魔女が現れて、私と冬獅郎は術をかけられ、眠りの中に・・・・・・」

浮竹と京楽は、ルキアと冬獅郎の胸元に百合の文様がなくなっいるのを確認して、話を進める。

「俺が囮になろう」

「だめだよ、危険すぎる」

「京楽殿の言う通りです」

「俺には、東洋の友人がくれた、呪術を跳ね返すお札がある。ハルキュリアの夢を見せ魔法は呪術に近い。跳ね返るだろう」

「それなら、一応は安心かな。でも、僕もいくからね」

「京楽にもお守りの効果はきいてくれると思う」

「兄様が眠りつき、危険だったら、ボクが動くからね」

今まで黙ってことの成り行きを見守っていた、ブラッディ・ネイがそう言った。

「とりあえず、森の湖にまで行こう。そう遠くまでは行っていないはすだ」

浮竹と京楽は、二人だけで魔女ハルキュリアの元に行くことになった。

「多分、隠れ家を作っている。魔法が解かれたとまだ気づいていないだろう。そこを叩こう」

「うん、分かったよ」

森をすすみ、湖まできた。

探したが、どこにも魔女ハルキュリアの姿はなかった。

「もう、魔女の里へ帰ったか?」

「浮竹、見て、湖が!」

湖全体が紫色になって、浮竹と京楽を襲った。

水中で呼吸できなくて、このまま溺死かと思ったら、浮竹はがいつだったか覚えた、水中で呼吸できる魔法を唱えてくれて、京楽は水に飲みこまれたまま呼吸をした。

「うふふふふ。さあ、くたばっちまいな、ヴァンパイアども」

京楽と浮竹は、死んだふりをした。

「あはははは!ヴァンパイアももろいものだ。夢を見せずに、最初からこうして殺したほうがよかったかもしれない」

どさりと、浮竹と京楽は折り重なって倒れた。

「ヴァンパイアにしては美しい男だ。顔を、もらってやろう」

伸びてきたハルキュリアの手を、京楽が掴んだ。

「浮竹に手を出すのは、許さないよ?」

「ちっ、まだ生きてたのか。夢見の魔法を喰らいな!ギャッ!」

魔法を反射されて、ハルキュリアは甲高い声をあげていた。

「魔法を反射だと!?反射の護符でももっているのか!」

「当たりだ」

浮竹が、血の刃でハルキュリアの顔面を切った。

「いやああああ、あたしの、あたしの顔が!」

「燃え尽きろ。バーストロンド!」

「ぎゃああああああ!!!」

ハルキュリアは、灰をとなった。

「一段落だね」

「いや、まだだ」

「え?」

「魔女の里に行くぞ。このハルキュリアは分身体だ」

「でも、灰が・・・・」

灰は、見る見るうちに消えてしまった。

「水鏡で、のぞいているんだろう、ハルキュリア?どこに逃げても無駄だからな。ルキア君と冬獅郎君を魔法で眠りにつかせ、殺そうとしたんだ。代償を、払ってもらおうか」

「浮竹、魔女の里になんてどうやっていくんだい?」

「猫の魔女がいるだろう。彼女に案内してもらう」

「そうか、乱菊ちゃんか」

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「あたし、仲間を売るような真似はしたくないけど、浮竹さんと京楽さんを怒らせた相手なら、話が別ね。放置しておいたら、きっと魔女の里ごと消されちゃうかもしれないわ」

「俺はそこまでしないぞ」

「ううん、しそうだもの」

「確かに、浮竹なら禁呪の一つでもかまして、魔女の里ごと吹っ飛ばしそうだね」

「お前らの中の俺って・・・・・」

「しいてういなら、破壊神」

「魔法の極みの禁呪を平気で発動する、兵器」

「俺っていったい・・・・・」

浮竹は、がっくりと項垂れた。

「あら、過去が見えたわ。あなたの妹さん、一度ハルキュリアの術にかかって、命を落としそうになったのね。怒っても、無理はないわね」

乱菊は、過去を見るオッドアイを持っている。

白い金と銀の目をした猫の姿になることもある、猫の魔女だった。

「そんな昔のことはどうでもいい。俺は、俺の友人に手を出したことに怒っているんだ」

「ついた。ここが、魔女の里よ」

乱菊の魔法で、空を飛んで血の帝国をぬけて、遥か西にある魔女の里に着ていた。

閉鎖的な空間を出していて、魔女たちは扉を固く閉ざして、侵入者を拒んでいた。

「あの、中央の館があたしの家。んで、右にずっといったところにあるのが、ハルキュリアの館よ」

「乱菊君、ありがとう」

「ありがとね、乱菊ちゃん」

浮竹と京楽は、ハルキュリアの館の扉を開いた。

中には、5歳くらいの女の子と、3歳くらいの男の子がいた。

「母さんに、何の用だ!」

「殺しにきただけだ」

「この悪魔め!」

ホウキを手に、殴りかかってくる男の子を、浮竹の血の刃が首を刎ねた。

「う、浮竹?」

京楽が、浮竹を見る。

「ここはハルキュリアのテリトリー。強すぎて、お守りでは反射できなかったようだ。ここは、ハルキュリアの見せる、夢の中だ」

「でも、僕と浮竹を、同じ夢に?」

「お前は、俺の京楽じゃない」

浮竹は、京楽の首を刎ねた。

「どうして。愛しているのに、浮竹」

足に縋りついてくる京楽を、冷めた目で浮竹は見ていた。

「俺の京楽は、そんな香水の匂いなんてさせない。俺を見ると愛しそうに笑って、浮竹と名を呼んで、抱き着いてくる」

「でも、本物だったら?」

「そんなことはあり得ない」

「本物かも、しれないよ?」

複数の京楽が現れた。

浮竹は、血の刃で京楽を消していく。

「俺に京楽を殺させるような真似をしてくれたことにも、礼を言わないとな」

浮竹は冷酷に笑って、魔女ハルキュリアの存在を探した。

ふと一体の京楽が、浮竹を抱き寄せた。

ふっと耳に息を吹き込まれて、その京楽に浮竹はハリセンをお見舞いしていた、

「お前は本物だ。魂が他と違う」

「君って、僕の姿をしている偽物の首、平気で刎ねるんだから、僕が肝が冷えたよ」

「魔女ハルキュリア。出てこい。出てこないのなら、この里の一角ごと、消し去る」

「いやだわ。そんなことされたら、反魂でも蘇れないじゃない」

すでに、ハルキュリアは反魂の用意をしていた。

死んでも構わないと、浮竹と京楽の元に出てくる。

「炎と踊れ。バーストフレイム」

館全体に火の魔法をかけて、反魂の札を燃やしていく。

「なんなのよ!たかが、ヴァンパイアの小娘とガキに、魔法をかけて殺そうとしたくらいで!」

浮竹は瞳を真紅にして、ハルキュリアを血の刃でズタズタに斬り裂いた。

「あはははは、そんなのきかない。だって、ここは夢の中!夢の・・・・・ぎゃあああ、何故痛い!?夢のはずが!」

「ハルキュリア。始祖のヴァンパイアが、夢見の魔法を破る魔法を持っていても不思議じゃないと、思わないか?」

「ひいいい、始祖ヴァンパイア!浮竹十四郎!」

ハルキュリアは、失禁していた。

ただのヴァンパイアだと思っていたのだ。

「浮竹を怒らせた、君が悪いよ」

京楽は、興味なさそうに、縋りついてくるハルキュリアを見ていた。

「なんでもする!なんでもするから、命だけは助けて!」

「そうか。なら、命だけは助けてやろう。お前は、今日からカエルになるといい」

ぼふん。

音を立てて、ハルキュリアはカエルになっていた。

「いやああああああああ!!!」

「あ、黒蛇!」

浮竹を守っていた黒蛇が、影からしゅるしゅると出て、カエルにされたハルキュリアを美味しそうに見つめていた。

「こんなの食べたら、腹痛を起こすぞ?」

しゅるるる。

黒蛇は、それでも食べたそうにしていた。

「言葉さえしゃべれるのなら、人間の姿にだって戻れる!」

ハルキュリアは、カエルから元の魔女の姿に戻っていた。

しゅるるる。

「そうか、そこまで食べたいのか」

浮竹は、もう一度ハルキュリアをカエルにした。

「わあああああああ」

しゅるしゅると音をたてて、黒蛇が近付いてくる。

「いやあああ、食べられる!」

黒蛇は、ハルキュリアを丸のみしてしまった。

「ああ、消化不良を起こさないといいんだが」

魔女ハルキュリアは、反魂も燃やされて効かずカエルとなって、東洋の浮竹からもらった札から出てきた黒蛇に食べられてしまった。

命だけは助けてやると言ったのだが、黒蛇が珍しそうに食べたそうにしていたので、与えてしまったのだ。

黒蛇に取り込まれた魔女ハルキュリアの魔力が、浮竹に注ぎこまれた。

「魔力なんて、これ以上いらない気もするが・・・・まぁ、受け取っておこう」

魔女ハルキュリアの魔力も多かった。

京楽ほどではないが、京楽の半分くらいの魔力があった。

「これで、もう魔女ハルキュリアに夢を見せられることはないね」

「ああ」

焼け焦げた館を見て、心配そうにしていた乱菊と会った。

「大丈夫だったの!いきなり館が燃えたから、心配していたのよ?」

「魔女ハルキュリアは、カエルになって最後は黒蛇に食べられた」

「黒蛇?」

「俺を守護してくれる、使役魔みたいなものだ」

「カエルにされた魔女。かわいそうだけど、浮竹さんの知り合いに手を出したハルキュリアが悪いわね」

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魔女乱菊は、魔女集会に呼ばれた。

「始祖ヴァンパイアは危険だ!排除すべきだ!」

「魔女ハルキュリアも、始祖のローデン・ファルストルも、始祖のヴァンパイアにやられてしまった。報復に出るべきだ!」

他の魔女たちの意見に、乱菊が反論した。

「始祖ヴァンパイアは、手を出さない限り襲ってこないわ」

ざわざわ。

他の魔女たちのさざめきが起こる。

「それにあの人は始祖ヴァンパイア。不老不死。私たちの力では、殺せないわよ?」

「我ら魔女が一団となれば、封印くらいは・・・・・」

「どうでしょうね。そんなに簡単に封印されるくらいなら、もうとっくに封印されてると思うのだけど?」

ざわざわ。

またざわめきが起こる。

「猫の魔女、松本乱菊」

「はい」

「お主には、始祖のヴァンパイアと友好関係を続けることを命令する」

「あら、あたしはそんな命令されなくても、始祖ヴァンパイアとはもう友達ですもの。魔女会議には、もう今度からあたしは出ないわよ。閉鎖的な魔女の里なんてうんざり。ガイア王国にでも館を構えて、錬金術士兼魔女として、生きていくわ」

「魔女の里をぬけるだと!そんなこと、許されると・・・・・」

「あら、あたしに殺されたいの長老?今のあたしは、始祖のヴァンパイアの血を少しだけもらっていて、強いわよ?」

浮竹は、猫の魔女乱菊に、敵対する者の手が伸びないように、数滴の血を分け与えていた。

「魔女の里は、もう終わりかもしれぬ。乱菊がぬけ、魔女ハルキュリアも、始祖のローデン・ファルストルも失った」

「もっと、里を開いて開放的になることね。薬だけの売買のやりとりじゃあ、魔女の里はいつまでたっても閉鎖的だわ」

「今後のことについて、話合おう」

魔女の長老たちの会議はまだ続きそうなので、乱菊は抜け出して浮竹と京楽の元へ来ていた。

「いろいろあって、あたし、ガイア王国で暮らすことにしたから!引っ越し、手伝ってね?」

にーっこりと微笑まれながら、拒否するわけにもいかず、浮竹と京楽は、アイテムポケットを利用して、乱菊の引っ越しを手伝うのであった。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター26

一緒に風呂に入り、寝間着は買っていなかったが、京楽の上着をかしてもらった。

ばっちり、下着まで京楽は買っていた。

苺柄のパンツだった。

それをはいて、京楽の上着を着て寝ようとすると、京楽の濡れた視線とぶつかった。

「言っておくが、この姿の間はしないからな」

「うん、分かってる。でも、キスくらいはいいよね?」

「キスとハグだけだぞ」

京楽は、小さな浮竹の体を抱き寄せて、そっと唇を重ねた。

「なんか、君、お人形さんみたいに顔が整いすぎて、町に一人でいたら、絶対人攫いに攫われるから、一人で町にいっちゃだめだからね」

「分かっている」

その日は、そのまま寝た。

翌日からが忙しかった。いつもは戦闘人形に任せてある家事を、京楽一人で担うことになったからだ。

浮竹は少しずつ魔力を回復させているようだが、まだしばらく子供の姿のままらしい。

朝食と昼食をとり、浮竹はミミックのポチにドラゴンステーキをあげていた。

「るるるる~~~~~?」

浮竹だと分からないポチは、ドラゴンステーキを食べたが、浮竹にかみついてこなかった。・

「ミミックにも、俺が分からないのか・・・」

しょんぼりして、浮竹は京楽の膝に乗って、古代の魔法書を読みだした。

また、ゴスロリ姿であったが。

「ああ、かわいい。食べちゃいたい・・・・・」

「んっ」

舌が重なりあう口づけをされて、浮竹は禁欲生活を強いている京楽のことが少し哀れに思って、譲歩した。

「フェラだけなら、してやる」

「本当に!?」

「あ、ああ・・・・・」

「じゃあ、早速お風呂に入ろう!」

風呂に入って、京楽はぎんぎんに硬くなったものを、浮竹の目の前でちらつかせた。

「下手かもしれないが・・・・んっ」

小さな下で、ペロペロと舐めてくる浮竹は、小さくてかわいいのに、いつもの浮竹の妖艶さがあった。

「ああ、そこもっと強くこすって」

「こうか?」

「そうそう」

普段でも、あまり浮竹は京楽にフェラをしないので、新鮮だった。

小さな舌でペロペロ必死になめる姿がかわいかった。

「んんっ」

大きいので、先端を咥えることもできない。

鈴口を舌で舐めていると、京楽がうなった。

「どうした、気持ちよくないか?」

「反対だよ。気持ちよすぎて・・・んっ、出すよ」

「待て、俺の口じゃ受け止めきれない・・・・って、ああ・・・・」

浮竹は、京楽の精液を顔面におもいきりかけられていた。

髪までついてしまったそれを、浮竹が小さな手で舐めとっていく。

「お前の体液は甘い。勿体ない」

「本当に、君って子は・・・・」

京楽は、浮竹の体を抱きしめて、衣服を脱がした。

「ちょっと、しないぞ!そんな大きなもの、今の俺には無理だ!」

「最後までしないから」

「ああん」

まだ精通も迎えていないであろう浮竹のものに、しゃぶりついた。

「やっ、くすぐったい・・・・」

「太もも、閉じれる?」

「あ、素股をするのか?」

「うん。それなら、10歳の体の君でも大丈夫でしょ?」

「分かった」

浮竹は、言葉通り太ももを閉じた。

トロリと、ローションを垂らされた。

「んっ」

浮竹の小さな体を抱き寄せて、閉じられた太ももの間を行き来させる。

「ああ、きもちいいよ、十四郎」

「んっ・・俺は、変な気分だ」

「ああ、もういくよ。いいかい?」

ぎゅっと小さな体を抱き寄せて、京楽はシーツに向かって勢いよく精液を飛び散らせた。

浮竹の小さな腕に噛みついて、吸血してやった。

「あああ、いやああ!!」

小さな浮竹の血液は、いつものものより更に甘かった。

「ああ、足りない。お前に胎の中で出されないと、満足できない」

小さな指で、浮竹は後ろをいじった。

「ああ、お前のじゃないと、届かない」

「最後までは、しないよ。指で我慢してね?」

ローションを垂らした指が、二本体内に入ってくる。

「ああああ!」

前立腺をすりあげられて、幼い浮竹は泣きだした。

「やあああ」

「ほんとは、君の中に入りたいけど、流石に君の体が小さすぎだ」

「やああん」

前立腺ばかりを指で抉られて、精液を出したいのに、まだ精通を向かえていない体は、オーガズムでいっていた。

「はあああ!!」

がくりと、浮竹が意識を失う。

ぐったりと弛緩した浮竹を抱きしめて、まだ足りない京楽は、浮竹の顔を見ながら自虐行為を繰り返すのであった。


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「ああ、やっと元に戻れた」

いつもの姿に戻った浮竹を、京楽が抱きしめた。

「京楽?」

「10歳の君に手を出しちゃったからね・・・僕は犯罪者だね」

「俺の許可があっただろう」

「でも、法的にはアウトだよ」

「細かいことは気にするな。人間の法律だろう。ヴァンパイアに年齢は関係ない。それに、10歳といても、あの体の実年齢は50歳くらいだ」

「ヴァンパイアだものね。見た目と歳は一致しないよね」

「続きは、しないのか?あの夜の続きを。最後まで、したいんじゃなかったのか?」

浮竹も満足しきれていなかったようで、情欲に濡れた瞳で見つめてきた。

「するから!」

二人で風呂に入り、そしてべッドに上にいた。

「んっ・・・・・」

ローションの滑りをかりて、浮竹が自分で後ろをいじっていた。

ごくりと、何度も京楽が唾を飲みこむ。

「ふふ・・・俺の乱れる姿を見るだけで、お前のここはぎんぎんだな」

足の指で、浮竹は京楽のものに触れた。

「ああ、弾けちゃうよ」

「もう少し、我慢しろ・・・んんっ」

太ももを、とろとろに溶けたローションが伝い落ちてくる。

「挿れるよ」

「あああ!」

突きいれられて、浮竹は悦びで妖艶に微笑んでいた。

「んああああ!」

待ち望んでいた熱に引き裂かれる悦びに、浮竹は体を震わせた。

「んっ」

体の奥で、京楽が熱を弾けさせるのを、感じていた。

「もっと、もっとお前の子種をくれ」

「たっぷりあげるから、そんなにせっつかないで」

味わいつくすように、全身にキスの雨を降らせて、京楽は浮竹を貪った。

「んああああ!」

「もっと、もっと感じて?」

奥をゴリゴリ刺激してやりながら、京楽は浮竹のものに手を伸ばした。

何度か熱を弾けさせていたが、まだ硬かった。

「やああ、そこだめぇえ!」

こすりあげて、鈴口に爪を立てると、びゅるびゅると音を立てて、浮竹が射精する。

「やああああ」

同時に肩に噛みついて、吸血してやった。

「ああああ!!!」

浮竹は潮をふいていた。

「やあああ、止まらない、やだああっ」

「女の子みたいだね?」

クスリと笑って、京楽は浮竹の太ももを肩に担ぎあげると、再び挿入した。

「んああああ!」

「最後の一滴まで、あげるからね?」

「ああ、ひあああ・・・・・・」

最奥の結腸をごりごりされて、浮竹はまたいっていた。

「ひあ!」

「これが今日の最後だよ。味わって、受け取ってね」

「あ、春水の、美味しい!孕むまで、出してくれ」

「たっぷり、出してあげるね?」

びゅーびゅーと、たくさんの精子を、浮竹の中に注ぎ込む。

恍惚とした表情で、浮竹はそれを受け入れた。

引き抜かれると、とぷんと音をたてて、京楽の精液が逆流してくる。

「ああ、勿体ない・・・」

「お風呂、行こうか」

「ああ・・・・・」

二人は風呂にはいり、互いの体にキスマークを残し合った。

もう、お互い出すものが何もなかったので、ただ戯れ合った。


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「ルキアが、目覚めないんだ」

古城にやってきた一護は、そんな言葉を出して、浮竹と京楽に助けを求めてきた。

「冬獅郎も、その場にいたんだが、同じように目覚めないんだ」

浮竹と京楽は、顔を見合わせあった。

「一護君、君から魔女の匂いがする」

魔女が好む、香の匂いがした。

「これは・・・夢見せの魔女、ハルキュリアか?」

かつて、数年前、女帝ブラッディ・ネイに夢を見せて操った、魔女の名前であった。





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始祖なる者、ヴァンパイアマスター26

ブラッディ・エターナル。

ブラッディ・ネイの寵姫にして唯一の血族。

他の疑似血族の寵姫たちのようでない、本当の血族にブラッディ・ネイはブラッディ・エターナルを迎えていた。

喉から手が出る程に欲しい兄の、血を受けつぐ子供。

浮竹と京楽に子はいない。

だが、猫の魔女乱菊から性別転換の秘薬を盛られて、女体化した浮竹は男性のままの京楽と睦み合った。

その時、受精した卵子を、ブラッディ・ネイは呪術で盗みだし、自分の寵姫の腹にいれた。

その寵姫は、僅か3日で臨月を迎え、子を産んだ。

産まれた子は、わずか1週間で12歳にまで成長した。

ブラッディ・エターナルという名を与えられて、ブラッディ・ネイの寵愛を欲しいままにしていた。

でも、ブラッディ・ネイが真に欲しているのは兄である浮竹だ。

そのことが、ブラッディ・エターナルには気に食わなかった。

「ブラッディ・ネイ。あたしがいるのだから、始祖の浮竹のことなんてどうでもいいわよね?」

「そんなことはないよ。ボクは兄様を愛している。その事実だけは、何があっても変えれない」

「始祖、浮竹十四郎・・・・」

ブラッディ・エターナルの心に、どす黒い闇が憑りつく。

「あたしの母親に値するヴァンパイアの始祖・・・・」

母親と言われても、ピンとこなかった。

自分には父も母もいないものだと思っていた。

呪術で、生まれ落ちるはずの命ではないと知った時、ブラッディ・ネイに感謝をするのではなく、憎悪を抱いた。

でも、その憎悪はブラッディ・ネイに愛されることで霧散した。

「始祖の浮竹・・・・ブラッディ・ネイが唯一不遜に愛する存在」

ゆらりと、ブラッディ・エターナルの血が揺らめいた。

始祖の浮竹の子であるのは本当なので、ただの寵姫ではなかった。

------------------------------------------------

古城の庭にいた。

目の前にいる、ブラッディ・エターナルは浮竹によく似ていた。

浮竹が12歳くらいなら、きっと判別がつかないくらいに。

「あなたが、あたしの母様と父様・・・・・」

「ブラッディ・エターナル。俺はお前の母親じゃない」

「僕も君の父親じゃない。娘をもった気はないよ」

「そう。じゃあ、あたしが始祖の浮竹を殺しても、何も問題はないわよね?」

ブラッディ・エターナルの言葉に、まず京楽が身構えた。

「俺は神の愛の呪いを受けている。お前程度に、殺せたりできない」

「あら、それはやってみないと分からないじゃない」

ブラッディ・エターナルは、血の刃を作りだして、それを浮竹に向かって放った。

「やめるんだ、ブラッディ・エターナル!ボクはキミを愛してる。それだけじゃ、不満なのかい!?」

制止するブラッディ・ネイの言葉に、ブラッディ・エターナルは頷いた。

「ブラッディ・ネイ。あなたはあたしに愛を囁くけれど、本当はこの始祖に囁きたいのでしょう?始祖の身代わりだなんて、ごめんだわ。始祖を殺して、あたしがあなたの一番になるの」

「ブラッディ・エターナル!」

「悪いけど、浮竹を害そうとするなら容赦はしないよ」

猛毒でもある京楽の血の刃を、全てブラッディ・エターナルが相殺した。

「あたしはブラッディ・ネイの本物の血族。そして始祖の血を引いている。そんなあたしに、あなたの血の毒は効かないわよ?」

「血の毒が効かなくても、僕にだって力はある!」

血の鎌を作りだして、ブラッディ・エターナルに切りかかるが、それをブラッディ・ネイが止めた。

「やめてよ!あの子は、ボクの寵姫で血族なんだ!

「ブラッディ・ネイ。君の頼みでも、僕の浮竹を傷つけようとする存在は許さないよ」

「ブラッディ・エターナル!いい子だから、やめるんだ!」

「愛しているわ、ブラッディ・ネイ」

ブラッディ・エターナルは、ブラッディ・ネイのオリジナルの薔薇の魔法を使った。

薔薇は浮竹と京楽に絡みつき、血をすする。

「フレイムロンド!」

浮竹は、炎の魔法で血を吸う薔薇をもやしていく。

一方、京楽の血を吸った薔薇は、猛毒である京楽の血のせいで枯れていった。

「薔薇の魔法でもだめ・・・じゃあ、これはどう?」

ブラッディ・エターナルは、自ら血液となって、浮竹の体に侵入した。

「浮竹!」

「ごふっ!」

体中を滅茶苦茶に暴れるブラッディ・エターナルのせいで、浮竹は真っ赤な血を吐いた。

「俺の体から出ていけ!」

浮竹が魔力をこめると、ブラッディ・エターナルは外にはじき出されていた。

「ちっ。始祖が・・・・・」

「ブラッディ・エターナル。今ならまだ間に合う、やめるんだ!」

「ブラッディ・ネイの言葉でも、それは聞けないわ」

「ボクはキミを愛してるんだ!」

涙を流す実の妹に、浮竹がブラッディ・エターナルにとどめを刺すのを躊躇する。

その瞬間を狙って、ブラッディ・エターナルは自身を刃に変えて、浮竹の心臓を突き刺した。

「浮竹!」

「ぐ・・・・・」

ゆらりと、浮竹の体が傾ぐ。

それを受け止めて、京楽は青い顔をしていた。

心臓が、破裂していた。

ドクドクと流れ出る血が止まらない。

「浮竹!」

けれど、浮竹は神の愛の呪いで不老不死だ。

流れ出た血は逆流し、まるで時間が遡っていくように、心臓の怪我は治ったしまった。

「どうして死なない!心臓を、コアを貫いたはず!」

「言っているだろう、俺は始祖ヴァンパイアだと。神の愛の呪いで、不老不死だ」

ゆっくりと、ブラッディ・エターナルを追い詰めていく。

「お前から、俺と京楽の記憶を奪う。ブラッディ・ネイがあれほど愛しているんだ。殺すことはしないでおいてやる。来い、炎の精霊フェニックス!」

浮竹は、フェニックスを召還していた。

「ああああ・・・」

その絶大な魔力に、ブラッディ・エターナルは戦意を消失していた。

「フェニックスの業火に焼かれ、生まれ変わるといい!」

「いやあああああああああ!!!」

フェニックスは、赤い炎の翼を広げて、ブラッディ・エターナルを灰にした。

その灰から、芽が出てみるみるうちに育ち、花が咲き実がなった。

その身の中には、新しい命を与えられた、ブラッディ・エターナルがいた。

「兄様、ありがとう、兄様!ブラッディ・エターナルを殺さないでくれて」

ボロボロ涙を零し、礼をいう実の妹の頭を、浮竹は撫でた。

「ブラッディ・エターナルから俺と京楽の記憶を消した。もう、ブラッディ・エターナルに俺たちのことを言うな。お前の兄様愛してるって言葉は、死んだ俺に向けてということにしておいた。だから、いつもの台詞は言っても大丈夫だ」

「ありがとう、兄様!兄様、愛してる!」

わんわんと泣きながら、実の兄に縋りつくブラッディ・ネイに、京楽は二人を引きはがしたかったが、我慢した。

「ん・・・ブラッディ・ネイ?あたしはどうしたの。いやだ、あたし裸じゃない!」

「これでも着て」

京楽は、アイテムポケットにしまってあった、バスローブをブラッディ・エターナルに渡した。

「誰か知りませんが、ありがとう。あら、そっちのあなた、あたしに似てるのね。不思議ね。他人の空似ってやつね」

浮竹は、鼻水を垂らす美しい顔の妹を押しやった。

「ああ、ただ偶然似ているだけだ」

「ブラッディ・エターナル。血の帝国に帰るよ」

「あ、待ってブラッディ・ネイ!ちょっと、何をそんなに怒っているの!」

「ブラッディ・エターナルのせいなんだからね!兄様に頭撫でられた・・・・」

「兄様?やだ、ブラッディ・ネイってば夢でも見たのね。あなたの兄は、300年前に死んでいるのだから」

そんな二人のやり取りを聞きながら、浮竹も京楽も安堵する。

「破壊と再生を司るフェニックスを使うなんて、考えたね」

「一応、俺とお前の血を、引いているんだろう。殺したくはない」

「そうだね。たとえ生まれ落ちるはずのなかった命でも、もう生まれ落ちてしまった。ブラッディ・ネイがちゃんと制御してくれるさ」

「一度コアを破壊された。再生するのに魔力をたくさん消耗した。今日は、魔力回復のポーションを飲んで、もう、寝る。疲れた」

ふらりと立ちくらみを起こす浮竹の体を抱き抱えて、京楽は激しい戦闘で荒れ果てた庭をどう修理しようと考えながら、古城の中へ戻っていくのだった。

-------------------------------------------------------------------


「疲れた・・・・・」

浮竹は、魔力回復のポーションをたくさん飲んで、眠った。

「おかしい・・・」

次の日になっても、浮竹の魔力は回復しなかった。

「どうしたの、浮竹」

「京楽。魔力が回復しないんだ。何かに吸われてる気がする」

「まさか、ブラッディ・エターナルのせいで?」

「いや、違う。ブラッディ・ネイのせいでもない・・・フェニックスを出した後から、魔力切れが続いている」

もしかしてと思って、浮竹は炎の精霊イフリートを召還した。

「この魔力の消耗、精霊王を召還したのに似ているんだが、炎の精霊王は精霊界にいるか?」

「いいえ、汝がフェニックスを召還した瞬間に強制召還をさせて、今こちらの世界にきています。召還しっぱなしの状態なので、魔力が回復しないのでしょう」

「炎の精霊王め。何処にいるか分かるか?」

「汝の古城のキッチンで。食べまくってます」

ふんがーーー。

浮竹は切れた。

京楽は、それをはらはらと見ていた。

「おいこら、炎の精霊王」

「おお、我が友ではないか。どうした」

戦闘人形に勝手に調理をさせて、それをできあがるはしから、次々と炎の精霊王が食べていく。

「うむ、こちらの世界の食事は美味だな。ワインもうまい」

「召還してないのに、勝手に出てきて、挙句人んちで勝手に飲み食いするとは、いい度胸だな?」

「我が友よ、少しくらいいいではないか。穏便に、穏便に済ませよう」

「このボケナスが・・・・力が、入らない」

「おっと、我が友の魔力を消耗しすぎたようだ」

「え、浮竹!?」

見ると、浮竹は10歳くらいの姿になっていた。

「魔力切れの弊害か。この姿になるのは、800年ぶりだ」

きらんと、京楽の目が輝いた。

「浮竹、めちゃくちゃかわいい!君の子供時代って、こんなにかわいいの!?」

京楽に抱きしめらて、浮竹は苦しそうにしていた。

「京楽、とりあえず離してくれ、苦しい」

「ああ、ごめん。君があまりにも愛らしいから、つい」

「炎の精霊王。この姿になったってことは、魔力が完全に切れた。お前の存在だけこの世界に存在し続けるのは難しいだろうし、魔力切れの症状が治らなないので、精霊界に戻ってくれ」

「我が友・・・ぷくくく。やけに愛らしい姿だな?たくさん食べて飲めたので、我は満足だ。言葉通り、精霊界に戻るとしよう」

「あ、精霊界には、魔力回復の飲み物が・・・・・!」

「もう去っちゃったよ」

「くそ・・数日、この姿でいないとだめだ」

きらんと、京楽の目が輝いた。

「とりあえず、町にいって、子供服買おうか!」

「京楽?楽しんでいないか?」

「そ、そんなことないよ!」

「あやしい・・・・」

町に繰り出した。

普通に歩けると言っているのに、京楽は浮竹を抱っこして、町までやってきた。

認識阻害の魔法は使えなかった。

とても愛らしい子供の浮竹は、人目を引いた。

「かわいい君に、周囲もメロメロだね」

「どうでもいいから、早く服を買って帰ろう」

居心地が悪そうに、浮竹は京楽に抱っこされながら、自分に降り注ぐ人間の視線を気にしていた。

「あら、かわいい。この子の似合う服ね。これなんかどうかしら」

オカマの店長に進められた服は、ゴスロリの少女用の服だった。

「おい、俺はおと・・・・・」

「それ買った!早速、着替えさせてくるね」

「おい、京楽」

「いいじゃない。女の子になった時も、女の子の服平気で着てたでしょ?その延長戦上と思えばいいよ」

赤いゴスロリの少女服を着せられて、ヘッドドレスまでつけられた浮竹は、愛らしい10歳の少女にしか見えなかった。

「すごい似合ってる。ああ、このまま君をお持ち帰りしたい」

「あらん、似合ってるんじゃない!こっちはお父さんかしら?」

「いや、恋人だよ」

「そう。10歳の子に、こんな恋人・・・・犯罪じゃないの」

金貨をちらつかせると、オカマの店長は何も言わなくなった。

「毎度あり~」

その店で、他にも数枚ゴスロリの少女服とヘッドドレスを買って、浮竹と京楽は店の外にでた。

「やあああん、かわいい。あなたのお子さんですか?」

何故か、京楽の子に間違われた。

まぁ、年齢的に京楽の子であっても仕方ないので、浮竹は怯えるそぶりをして、浮竹の背後に隠れた。

今の浮竹は魔力がない。自慢の血の魔法も使えなかった。

「京楽、古城に戻っても、戦闘人形はいないぞ。町で、食べて帰ろう」

「ああ。戦闘人形は君の血と魔力で動いているからね」

手近なレストランに入った。

「2名様ですね」

浮竹の前には、お子様ランチがあった。

「一度でいいから、食べてみたかったんだよな」

「お子様ランチを頬張る浮竹・・・・かわいすぎて、鼻血が出そう」

すでに鼻血を出していた。

「京楽、俺がこんな姿になったの、楽しんでるな?」

「そうだよ。120年間一緒にいて、君がこんな姿になるなんて初めて知ったからね」

「魔力切れは怖いんだ。自分の身を守れない」

「大丈夫。僕が君を守るから・・・・」

「京楽・・・・・」

「浮竹・・・・」

いつもの調子で口づけようとして、注がれる人間の視線に気づき、二人とも咳払いをして誤魔化した。

レストランで食事をして、その日は古城に戻った。

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始祖なる者、ヴァンパイアマスター外伝

古城に訪問者がいた。

東洋の浮竹と京楽だった。

(また遊びにきた)

(お菓子もってきたよ。たい焼きだ。お茶をしよう)

東洋の浮竹と京楽だった。東洋の浮竹と京楽は、存在する世界が違うのに、よく遊びにきてくれた。

「ああ、なんてことだ。今、俺の妹が来てるんだ」

「東洋の僕らまで巻き込むことになっちゃうね?」

(何、西洋の俺の妹だって!すごく会いたい)

(なんか嫌な予感がするんだけど・・・)

「兄様、お客さんって誰」

現れたブラッディ・ネイは、東洋の浮竹と京楽の存在に驚いた。

「この世界の存在じゃないね。違う匂いがする。でも、兄様がもう一人。愛してるよ、兄様!」

東洋の浮竹に抱き着くブラッディ・ネイに東洋の京楽は言霊に近づくなと命令して、ブラッディ・ネイは東洋の浮竹から引きはがされた。

「その、西洋の俺の妹なんだよな?仲良くしよう」

「兄様がボクに仲良くしようだって!鼻血ものだね!」

ぶばっと鼻血を噴き出して、ブラッディ・ネイはティッシュを鼻につめた。

「ボクの名前はブラッディ・ネイ。兄様である浮竹十四郎の実の妹にして、血の帝国の女帝をしている。ちなみに、死ぬたびに10代の少女の中に転生するから、見た目は全然兄様ににてないよ」

(へー、そうなのか?じゃあ、ここにお菓子あるんだがいらないよな・・・・女帝だと、食べ物にもこだわりそうだし)

東洋の浮竹はしょんぼりしながらも懐から出したお菓子を見せる。対して、東洋の京楽は目を金色にさせてブラッディ・ネイを睨みつけている。

「大好きだよ兄様!東洋の兄様でも大好きなんだから!」

ブラッディ・ネイは全力で東洋の浮竹に抱き着いた。

(僕の十四郎に何するの!)

東洋の京楽は、言霊でまたブラッディ・ネイを引きはがした。

「こら、ブラッディ・ネイ!東洋の俺が困っているだろう!」

西洋の浮竹が、ブラッディ・ネイに拳骨をくれるが、ブラッディ・ネイにはそれもご褒美にしかならなかった。

拳骨に嬉しがるブラッディ・ネイに、東洋の浮竹は引き気味で、東洋の京楽も引いていた。

(なんかこの子、やばいんだけど)

そんなことを無視して、ブラッディ・ネイは西洋の浮竹が東洋の浮竹を庇うことににまにましていた。

「やだなぁ、兄様。嫉妬してくれてるの?」

「誰が嫉妬などするか!」

「あ、東洋の兄様、ボクは女帝だから、何か欲しいものあったらあげるよ」

(なんか、始祖ヴァンパイアの妹だけあって、女帝とかすごいことになってるな)

(この子、十四郎のこともそっちの十四郎のことも大好きみたいだね)

「ああ、いつも俺を愛してるとかいって、兄弟愛じゃなくって伴侶としての愛を囁くんだ」

「ブラデッイ・ネイがいるときに遊びにくるなんて、タイミングが悪いね」

西洋の京楽が落胆する。

(まぁ、西洋の妹も交えて、お茶かいをしよう)

(そうそう、存在をないものとして扱えばいいだけなんだから)

「東洋のひげもじゃは、西洋のひげもじゃより辛辣だね」

(ひげもじゃって何。ボクには京楽っていう名前がちゃんとあるんだから)

東洋の京楽は、呆れ気味にブラッディ・ネイを睨んだ。

「おお怖い。西洋も東洋のもひげもじゃは兄様に一途なんだから。でも、ボクも負けてないよ!愛してるからね、兄様!」

「はいはい」

西洋の浮竹は、適当に聞き流した。

「今日は緑茶を用意したよ。そっちの僕がくれたレシピで、白玉餡蜜を作ってみたんだよ。それと、そっちの君たちがもってきてくれたたい屋きも食べよう」

「もちろん、ボクの分もあるよね?」

ブラッディ・ネイの分がないと言い出すと、この非常識な存在は何をしでかすのか分からないので、ブラッディ・ネイの分も用意した。

「今日だけだぞ、ブラッディ・ネイ。茶会が終わったら、すぐ戻れ」

「えー。兄様が二人もいる楽園を置いて去れって?いやだよ」

「去らないなら、もう茶会などしない」

「ちぇっ。分かったよ」

西洋の京楽が、5人分のお茶とスィーツを用意した。

「白玉餡蜜は、ルキア君の好物なんだよな」

(わあ、こっちの世界にもルキアはいるのか)

「え、やっぱりそっちの世界にもいるのか」

(たまに稽古をつけてやっている)

「こっちの世界では聖女をしていて、この前一緒に冒険したな」

(聖女か。同じ存在がいても、全然役割は違うんだな)

東洋の浮竹は、せっかく西洋の浮竹の妹に会ったのだからと、お土産にもってきて、いまふるまわれているタイ焼きをブラッディ・ネイにあげた。

(西洋の俺の妹は、美人だな。愛を囁かれるのは困るけど、タイ焼きまだたくさんあるから食え)

「東洋の兄様優しい!」

(ぎゃああああああああ)

ブラッディ・ネイは東洋の浮竹に襲い掛かった。

それに西洋の浮竹が顔を青くする。

(ちょっと、ボクの十四郎に何するの!手を二度と触れないようにしてあげようか?

「そうだよ。東洋の浮竹から離れてよ!」

東洋の京楽は、ブラッディ・ネイを手にかけたがっていたが、一応西洋の浮竹の妹であるのだからと、自分を戒めた。

二人の京楽につまみあげられて、ブラッディ・ネイはポイッと捨てられた。

「ああ、兄様が二人・・・ひげもじゃも二人だけど、いい・・・・」

自分の世界に入りだしたブラッディ・ネイを無視して、4人はお茶を飲んでスィーツを食べた。

(ああ、この白玉餡蜜、キミがつくったね?)

「ああ、うん。分かるんだ?」

(友人のことだから、たいていのことは分かるよ。美味しくできてるよ)

「君に褒めてもらえるのは嬉しいね」

「京楽、おかわり」

(俺も)

おかわりを所望する二人に、白玉餡蜜をあげて、西洋と東洋の京楽は新しいレシピについて話あっていた。

「兄様の使ったスプーン・・・・」

「おい、ブラッディ・ネイ!何変態的なことをしている!」

西洋の浮竹の使用済みのスプーンを舐める実に妹に、実の兄である西洋の浮竹が、頭をハリセンで叩いた。

「ああ、兄様の愛を感じる」

「もういいから、お前はとっとと帰れ。そのスプーンはやるから」

「兄様成分をもっと補充したい!」

「ぎゃあああああああ」

西洋の浮竹は、悲鳴をあげていた。

衣服を脱がしてくるブラッディ・ネイを、西洋と東洋の京楽が、額に血管マークを浮かべて、べりっと、西洋の浮竹から引きはがした。

「た、助かった・・・」

「何浮竹に手を出してるの。ブラッディ・ネイでも許さないよ」

(実の妹か何かしらないけど、西洋の浮竹に手を出すのは許せないね)

ゴゴゴゴゴ。

二人の怒りを買い、ブラッディ・ネイは東洋の京楽の蛇でぐるぐる巻きにされて、西洋の京楽に使用済みのスプーンをとりあげられた。

「覚えてろ、ひげもじゃ!ボクは、こんなことでは屈しないんだからね!」

血となって、ブラッディ・ネイは戒めを解くと、そのまま血の形で移動して、血の帝国に戻っていった。

「すごいな、東洋の京楽。あのブラッディ・ネイを拘束できるなんて」

(大したことじゃないよ。同じ東洋の浮竹にもできることだよ)

「蛇かー。札をもらったが、つい使うことを忘れるんだよな」

(つ、使ってくれ!使ってくれないと俺みたいに拗ねるからな!)

「ああ、ごめん。でも、この前の遺跡探検では十分に使わせてもらったぞ?」

(それならいいんだ。俺の蛇は、使ってもらわないと拗ねるからな。されより、いいのか西洋の俺。実の妹にあんなふうに接して)

心配してくる東洋の浮竹を、西洋の浮竹が頭を撫でた。

「あの妹は、性格が破綻している上に、いろいろと厄介なんだ。西洋の俺が気にすることじゃない」

そんな二人を見て、西洋と東洋の京楽は、ほっこり二人を見つめていた。

(西洋と東洋の京楽の視線が気になる)

「俺たちが仲良くしていると、何か熱い視線を感じるな」

「いやぁ、いいね。西洋と東洋の君たちが仲良くしてるのは、心が和む」

(まぁ、西洋の浮竹だから許してあげる)

東洋の京楽は、自分の浮竹に誰かが触れることを嫌っていた。自分だけのものだと、知らしめてやりたくなる。

「やっぱり、浮竹こっちにおいで?」

「なんだ、京楽?」

(十四郎もこっちにおいで?)

(春水?)

二人は、それぞれ伴侶を抱きしめた。西洋と東洋の浮竹が仲良くしているのは心が和むが、やはり隣には自分がいたいのだと、西洋と東洋の京楽は思うのであった。

------------------------------------------------------------


「東洋の俺は、いつも同じ着物を着ているな?近くに町があるから、服を買いに行こう」

(え、でも、俺たちはこの国の通貨をもっていないぞ)

「それくらい、俺が出してやる。金なら腐るほどあるからな)

(でも、悪い・・・・)

(十四郎、言葉に甘えたら?西洋のキミが、気遣ってくれてるんだ。たまには甘えもいいんじゃないかあ)

「そうだよ、東洋の浮竹。東洋の僕の服も、一緒に買いに行こう」

そうして、ガイア王国の一番近い街に、4人はきていた。

それぞれ認識阻害の魔法をかけていたので、お互い双子のようであったが、周囲の人間から見たら完全に違う姿に見えた。

東洋の京楽は、念のためにと、東洋の浮竹の影に黒蛇をもぐらせて、守護にあたっていた。

「これなんか似合うな。これもどうだ?」

あれこれと選んでくる西洋の浮竹に、東洋の浮竹はされるがままになっていたが、東洋の浮竹も自分で服を選びはじめた。

それを見守る西洋の京楽と、巨大な黒蛇の姿で見守る東洋の京楽。

「こっちもいいな。そうだ、せっかくなんだから、同じ服を買ってペアルックってのはどうだ?」

「お、いいね。じゃあこの服を2着買ってきなよ」

西洋の浮竹は、ラフな格好の衣服を2枚分買って、東洋の浮竹と試着室でそれぞれ着替えた。

その間に、西洋の京楽は、東洋の京楽に上下セットの衣服を買ってやった。

(ボクの分まで、ありがとう。いいのかい?)

「友人でしょ。そう硬くならないでよ」

(そうだね)

試着室から出てきた西洋と東洋の浮竹は、ファンタジー風味のするこの世界の衣服がよく似合っていた。

「わぁ、いいね、双子でどっちがどっちだが、一瞬分からなくなったよ」

(こっちが、ボクの十四郎だね)

「見た目も同じだけど、纏っている雰囲気が違うからね。こっちが僕の浮竹だね。血の匂いで分かる」

そのまま着て帰るからと、合計で金貨4枚を支払った。

(金貨が4枚・・・・金貨・・・・・)

「東洋の俺、金貨はこの世界の貨幣だ。多分、そっちの世界の金より価値は低いぞ」

(でも、金貨だぞ!)

節約家の東洋の浮竹には、金貨の存在そのものがだめらしい。

「まぁ、この服屋は高いからな。普通は銀貨20枚ってところだ。俺は金銭感覚が一般常識からずれているらしい」

(まぁ、とにかく古城へ戻ろう)

Sランク冒険者の浮竹と京楽がきていると、少しだけ騒がれはじめたのだ。

早めに古城に戻り、西洋の京楽はダージリンのお茶を4人分注いだ。

「お茶でも飲んで、一息つこうよ」

東洋の京楽は、フルーツタルトを作ってもってきてくれた。

みんな、それを味わいながら食べる。

「おいしいな」

「うん、おいしいね。東洋の僕、後でレシピちょうだいね」

(さすがにおかわりはないか。少し残念)

(元の世界に戻ったら、いくらでも作ってあげるから)

そんな東洋の浮竹と京楽に、西洋の浮竹が申し訳なさそうにしていた。

「あの街には冒険者ギルドがあるんだ。Sランク冒険者で登録しているから、顔が認識阻害の魔法をかけていても、知られているんだ」

(びっくりした)

(ボクもだよ)

「夕飯は食べていくか?」

(いや、お茶をしにきただけだから、そろそろお暇する)

「その服、元の世界では着れないデザインかもしれないな。こちらの世界では普通なんだが」

「文化が違うからねぇ。そっちの世界は文明が進んでいるけど、こっちはそっちでいう、異世界ファンタジーの世界だし」

(大切に保管しておく。こっちに来るときにでも、着てくるさ)

(ボクも、西洋のボクから服を買ってもらったんだよね。また遊びに来る時にでも、十四郎と一緒に着てくるよ)

「ああ、気をつけてな。お土産だ。京楽」

「苺のショートケーキだよ。そっちの世界に戻ったら、食べてよ」

ショートケーキを受け取って、東洋の浮竹もお土産だと、白蛇の置き物を取り出した。

(運気逃げそうだが・・・置物はこれくいらしかなくて)

「・・・・まぁいいか。黄金のハニワの傍に飾っておく」


(ありがとう。世話になった。またお茶をしに遊びにくる)

(十四郎、楽しそうだったし、ボクもまた来るよ)

「ああ、じゃあな!」

西洋の浮竹は、ぶんぶんと手を大きく振った。

少しずつ、東洋の二人が透けていく。

やがて完全に消えてしまい、浮竹と京楽は、お茶の続きだとばかりに、二人で友人たちのことに花を咲かせて、ダージリンンの茶を飲むのであった。

-------------------------------------------------------------------------

「母様、父様?」

ブラッディ・エターナルは、自分の実の親になる浮竹と京楽を見ていた。

「俺たちは、お前の母親でも父親でもない」

「血が繋がっているかもしれないけど、僕たちに娘はいない。いたのは、昔養女にしたエメラルドだけだよ」

かつて、娘として愛した、ヴァンピールの少女がいた。

ヴァンパイアハンターに利用されて殺された。

「お前は、俺たちの娘じゃない」

「僕たちには、娘はいない」

ブラッディ・エターナルは、浮竹によく似た顔で、囁く。

「始祖なんて、いらないのに」

浮竹と京楽は、身構える。

ブラッディ・エターナル。

永遠の血の名をもつ少女は、母親に値する始祖の浮竹を睨むのだった。




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