エンシェントエルフとダークエルフ27
浮竹は、武器屋をのぞいていた。
エルフの森を出る時にもらった、餞別代わりのミスリルの剣が折れてしまったのだ。
一通り見るが、ミスリル製のものはなく、代わりにミスリル銀の魔剣があった。
白金貨10枚。
その値段に、浮竹が唸る。
「うーん。高い。だが、ものはいい・・・」
「命を預ける武器なんだ。出し惜しみしなくていいよ。白金貨なら電撃のボルからもらった千枚の貯金に白金貨50枚が利子でついていたよ」
「よし、このミスリル銀の剣を買おう!」
「お、お目が高いですね。それはさる高名な魔族が使っていた剣で、流れ流れてうちみたいな武器屋にやってきたはいいが、値段が高すぎて誰も買わなかった品です。魔剣としては意識はありませんが、闇属性の魔法が使えて、水火土風の魔法を強化してくれる嬉しいおまけつきです」
「決めた!この魔剣を買う!」
「はい、白金貨10枚になります。分割払いですよね?」
「全額払いだ!」
どんと、白金貨を10枚出すと、店の主人はびびった。
白金貨の本物を見るのは初めてだったのだ。
白金貨1枚で大金貨10万枚に値する。つまりは大金貨100万枚だ。
それをポンと出す浮竹を、どこかの貴族か大金もちと勘違いしたのか、店主は店の奥にあるよくわからない武器を取り出してきた。
「これら、よくわからなくて売れてない品なんですけど、欲しいものありますか?おまけでおつけしますよ」
上客を逃す手はないと、店の主人はサービス精神を出す。
「この杖・・・・・。京楽、持ってみろ」
「ああ、闇の属性の杖だね」
「この杖をもらってもいいか?」
「いいですけど、それ、所持者がみんな死んでいく呪われているという杖ですよ。いろんな属性の魔力を高めてくれますが、正直その杖はやめておいたほうがいいかと」
店の主人は困惑していた。
「闇属性の適正がないと、持ち主の魂を喰う杖だ。幸い僕は、闇魔法を使えるからね」
「闇魔法なんて使えるんですか!」
この世界では珍しかった。
このウッドガルド大陸は人間や亜人種が住む大陸で魔族が少なく、普通闇魔法が使えるのは魔族だ。
「僕はダークエルフで魔族だからね」
「またご冗談を」
「冗談じゃないんだけどなぁ」
店の主人は、最後まで京楽がダークエルフであることを冗談と受け取っていた。
「前のミスリルの剣あったじゃない。鍛冶屋で引き取ってもらえば?」
「そうだな。打ちなおしてもらうことも考えたんだが、ミスリル銀の剣なんてミスリルより貴重だ」
ミスリルの剣でも、白金貨5枚はする。
市場を回って歩き、いつもミスリルの剣を研いでもらっている鍛冶屋までやってきた。
「すまない、このミスリルを買い取ってもらえないだろうか」
「お、浮竹さんじゃないか。あらら、大事なミスリルの剣が折れちまってらぁ。打ち直しはしないでいいんですか?」
「ああ、ミスリル銀の魔剣を買ったんだ」
「ミスリル銀!また、高価なもの買いましたねぇ。Sランク冒険者の装備ですよ、普通」
「金ならあったからな」
「折れた剣先もあるし、もう一度ミスリルの剣として命を吹き込んでやりまさぁ。白金貨2枚でどうですか?」
「ああ、それでいい。引き取ってくれるか?」
「もちろんでさぁ。ミスリルなんて、そうそう打つことができない神の金属だ。喜んで買い取りますよ」
あとは、食べ物の市場を回って、プルンが遊びに来た時用にりんごを50個かって、アイテムポケットにいれる。
その他、1週間分の食料を買った。水は、水魔法で新鮮な水が出せるし、水道も通っている。
「前の杖がちょっとボロボロだったからね。浮竹のお陰で、いい杖が手に入ったよ」
市場に外れにくると、空間転移してマイホームに戻った。
「さて。買い出しも終了したし、冒険者ギルドに行くか」
「そうだね」
「くくる~~」
ブルンは、市場で大量のゴミの処理もとい食事をして、元気いっぱいだった。
「ブルンもくるか?」
「くくーー」
当たり前だよ。
そう言っていた。
冒険者ギルドに二人がやってくると、浮竹宛に手紙がきていた。
「何だ・・・・エルフの森の族長から?」
中身を読んでいって、浮竹の顔色が変わった。
「どうしたの」
「次期族長になるはずだった兄が死んだ。それで、俺に戻ってきて見合いをしろと・・・」
「何それ!今まで散々放置しといて、いきなり!?」
「京楽すまない、きっと嫌な目に合うかもしれないが、俺と一緒にエルフの森までついてきてほしい」
「もちろん行くよ。君の伴侶は僕だからね」
浮竹と京楽は荷造りをして、冒険者ギルドにしばらく依頼を請け負えないことを通達してから、ブルンを師匠の元に預けて、京楽はエルフの森に住んでいたので、空間転移魔法でエルフの森の入り口まできた。
「誰だ!」
「エンシェントエルフの浮竹だ。族長ハオの次男だ。兄のマオが死んだ件で、帰ってきた」
「浮竹様でしたか・・こちらは、まさかダークエルフの・・・」
「そうだよ?僕はダークエルフの京楽。族長ハオが拾って幽閉して、最後に処刑しようとしていたダークエルフだよ」
京楽が一歩前に進み出て、そう言う。
「浮竹様、危険です。こんなダークエルフ、早速処分を」
「俺に命令するな!それに京楽は俺の伴侶だ。すでに儀式は済ませ、正式に伴侶になっている」
「なんてことだ・・・・早く族長のハオ様のところへ知らせを」
しばらくすると、族長のハオがやってきた。
浮竹や他のエルフと同じで、20代後半くらいの若々しい姿で成長が止まり、死を迎えるその時まで若い姿のままなのが、エルフの特徴であった。
ハオは、浮竹の頬を殴った。
浮竹は後ろに吹っ飛ばされて、口の中を切ってしまった。
「この恥さらしが!ダークエルフと契っただと!?」
「そうだよ、父さん。マオ兄さんが死んだからって、俺を次期族長になんてできないだろう?」
「このダークエルフを殺すか、契りの儀式を破棄させてやる!」
族長ハオは、頭に血が上っていて、京楽のことをまともに見ていなかった。
「この僕を殺すだって?できるものなら、やってみるといいよ」
「このダークエルフが!・・・・なんだ、その魔力は!」
京楽は笑った。
「ダークエルフとして覚醒したのさ。昔みたいに幽閉されてた幼い頃の僕はもういない。浮竹の見合いも、浮竹が次期族長になることも認めない」
「ダークエルフが!エルフの森に災いをふりかけにやってきたのか!」
族長のハオは、京楽のもつ強大な魔力を感じながらも、続ける。
「違うよ。僕は浮竹のれっきとした伴侶だ。契りの儀式を済ませて、伴侶になっている。僕を殺して上書きもできないし、浮竹は僕との契りの儀式の破棄をなんて、するはずがない」
「このダークエルフが!拾ってやった恩を仇で返す気か!」
「誰も拾ってなんて頼んでないし、幽閉して処刑しようとまでしたくせに」
ハオは、それ以上何も言えなかった。
「とりあえず、昔住んでいた小屋に数日泊まる。次期族長の件については、俺も案を出そう」
「恥さらしが!」
「その恥さらしを作り出して育てたのは、父さんだ」
「くっ・・・・・」
母親はすでに他界しており、子ができにくいのがエルフの特徴であるので、今から妾を迎えるとかそういう方法はなかった。
昔住んでいた小屋は掃除が行き届いており、兄のマオが使用していたらしかった。
「浮竹、ほんとに僕を連れてきてよかったの?」
「そうじゃないと、俺は捕らわれて今頃お前との契りの契約を破棄させられていたぞ」
「そんなの駄目!絶対駄目!」
京楽が浮竹を抱きしめる。
「ほらな?お前を連れてきて正解だったろう?」
「そうだね。憎しみは全部僕が浴びればいい。浮竹を奪ったのは僕だ」
「そんなことはない。お前を連れ出して逃げだのは、俺の意思だ」
「いつか、エルフの森の住民全てに、分かってもらえるといいね」
「ああ、そうだな」
その小屋で二人は数日を過ごした。
次期族長を誰にするかという会議に、ダークエルフである京楽と共に出席して、京楽は憎しみの視線を浴びせられていたが平気そうで、結局いとこが継ぐことに決まった。
「お前とは、勘当だ。二度と、エルフの森に帰ってくるな」
族長のハオは、浮竹と京楽を追いだして、去って行った。
「追い出されちゃった」
「勘当だってさ」
二人は、手を握り合いながら、エルフの森を後にする。そして、転移魔法でマイホームまで戻ってきた。
『あ、帰ってきた』
精霊の浮竹が、迎えにきてくれた。精霊の浮竹に、ブルンを預けていたのだ。
「師匠も、お元気そうで」
『なんでも、エルフの森の族長問題で呼び出されたそうだね』
「勘当された。京楽と契りの儀式を済ませた知った時の、父の顔といたったら、傑作で」
『大丈夫そうでよかったよ。エルフのボクも大丈夫だよね?』
「当たり前だよ。浮竹に浴びせられる憎しみも全て僕の方へ向いていた。計算通りさ」
「京楽・・・・お前には、本当にすまないと思っている。エルフの森は、閉鎖的だからな」
エルフの浮竹は、エルフの京楽に抱きしめられてキスをされた。
「僕は全然かまわないよ。君と契りの契約を交わしたことも後悔していない」
「くくるーーー!!!」
僕の存在を忘れないで!!
ブルンは、エルフの二人頭の上を飛んでいた。
「ごめんな、ブルン。今回ばかりは、お前を連れていけなかった」
「くるるー」
仕方ないなぁ。
ブルンは、飛び跳ねているプルンの頭の上に乗った。
「ププウ!」
あ、お兄ちゃんだ。
そう言いながら、プルンは体を黄色の喜びの色に変えていた。
穏やかな時間が過ぎていく。
もう、エルフの森には二度と帰れないだろう。
その道を、二人は選んだ。
京楽も、後悔していない。浮竹と出会って逃げ出したことも、契りの契約を交わしたことも。
『じゃあ、僕らは戻るから』
「じゃあ、師匠、また」
『またな』
最後に精霊の浮竹が手を振って、プルンの転移魔法でロスピア王国にある自分の家まで戻っていった。
「久しぶりに、明日冒険者ギルドに行こう。何かいい依頼があるかもしれない」
「そうだね」
エルフの森には、もう帰れない。
分かってはいたが、二人とも心の何処かで寂しいと思うのであった。
エルフの森を出る時にもらった、餞別代わりのミスリルの剣が折れてしまったのだ。
一通り見るが、ミスリル製のものはなく、代わりにミスリル銀の魔剣があった。
白金貨10枚。
その値段に、浮竹が唸る。
「うーん。高い。だが、ものはいい・・・」
「命を預ける武器なんだ。出し惜しみしなくていいよ。白金貨なら電撃のボルからもらった千枚の貯金に白金貨50枚が利子でついていたよ」
「よし、このミスリル銀の剣を買おう!」
「お、お目が高いですね。それはさる高名な魔族が使っていた剣で、流れ流れてうちみたいな武器屋にやってきたはいいが、値段が高すぎて誰も買わなかった品です。魔剣としては意識はありませんが、闇属性の魔法が使えて、水火土風の魔法を強化してくれる嬉しいおまけつきです」
「決めた!この魔剣を買う!」
「はい、白金貨10枚になります。分割払いですよね?」
「全額払いだ!」
どんと、白金貨を10枚出すと、店の主人はびびった。
白金貨の本物を見るのは初めてだったのだ。
白金貨1枚で大金貨10万枚に値する。つまりは大金貨100万枚だ。
それをポンと出す浮竹を、どこかの貴族か大金もちと勘違いしたのか、店主は店の奥にあるよくわからない武器を取り出してきた。
「これら、よくわからなくて売れてない品なんですけど、欲しいものありますか?おまけでおつけしますよ」
上客を逃す手はないと、店の主人はサービス精神を出す。
「この杖・・・・・。京楽、持ってみろ」
「ああ、闇の属性の杖だね」
「この杖をもらってもいいか?」
「いいですけど、それ、所持者がみんな死んでいく呪われているという杖ですよ。いろんな属性の魔力を高めてくれますが、正直その杖はやめておいたほうがいいかと」
店の主人は困惑していた。
「闇属性の適正がないと、持ち主の魂を喰う杖だ。幸い僕は、闇魔法を使えるからね」
「闇魔法なんて使えるんですか!」
この世界では珍しかった。
このウッドガルド大陸は人間や亜人種が住む大陸で魔族が少なく、普通闇魔法が使えるのは魔族だ。
「僕はダークエルフで魔族だからね」
「またご冗談を」
「冗談じゃないんだけどなぁ」
店の主人は、最後まで京楽がダークエルフであることを冗談と受け取っていた。
「前のミスリルの剣あったじゃない。鍛冶屋で引き取ってもらえば?」
「そうだな。打ちなおしてもらうことも考えたんだが、ミスリル銀の剣なんてミスリルより貴重だ」
ミスリルの剣でも、白金貨5枚はする。
市場を回って歩き、いつもミスリルの剣を研いでもらっている鍛冶屋までやってきた。
「すまない、このミスリルを買い取ってもらえないだろうか」
「お、浮竹さんじゃないか。あらら、大事なミスリルの剣が折れちまってらぁ。打ち直しはしないでいいんですか?」
「ああ、ミスリル銀の魔剣を買ったんだ」
「ミスリル銀!また、高価なもの買いましたねぇ。Sランク冒険者の装備ですよ、普通」
「金ならあったからな」
「折れた剣先もあるし、もう一度ミスリルの剣として命を吹き込んでやりまさぁ。白金貨2枚でどうですか?」
「ああ、それでいい。引き取ってくれるか?」
「もちろんでさぁ。ミスリルなんて、そうそう打つことができない神の金属だ。喜んで買い取りますよ」
あとは、食べ物の市場を回って、プルンが遊びに来た時用にりんごを50個かって、アイテムポケットにいれる。
その他、1週間分の食料を買った。水は、水魔法で新鮮な水が出せるし、水道も通っている。
「前の杖がちょっとボロボロだったからね。浮竹のお陰で、いい杖が手に入ったよ」
市場に外れにくると、空間転移してマイホームに戻った。
「さて。買い出しも終了したし、冒険者ギルドに行くか」
「そうだね」
「くくる~~」
ブルンは、市場で大量のゴミの処理もとい食事をして、元気いっぱいだった。
「ブルンもくるか?」
「くくーー」
当たり前だよ。
そう言っていた。
冒険者ギルドに二人がやってくると、浮竹宛に手紙がきていた。
「何だ・・・・エルフの森の族長から?」
中身を読んでいって、浮竹の顔色が変わった。
「どうしたの」
「次期族長になるはずだった兄が死んだ。それで、俺に戻ってきて見合いをしろと・・・」
「何それ!今まで散々放置しといて、いきなり!?」
「京楽すまない、きっと嫌な目に合うかもしれないが、俺と一緒にエルフの森までついてきてほしい」
「もちろん行くよ。君の伴侶は僕だからね」
浮竹と京楽は荷造りをして、冒険者ギルドにしばらく依頼を請け負えないことを通達してから、ブルンを師匠の元に預けて、京楽はエルフの森に住んでいたので、空間転移魔法でエルフの森の入り口まできた。
「誰だ!」
「エンシェントエルフの浮竹だ。族長ハオの次男だ。兄のマオが死んだ件で、帰ってきた」
「浮竹様でしたか・・こちらは、まさかダークエルフの・・・」
「そうだよ?僕はダークエルフの京楽。族長ハオが拾って幽閉して、最後に処刑しようとしていたダークエルフだよ」
京楽が一歩前に進み出て、そう言う。
「浮竹様、危険です。こんなダークエルフ、早速処分を」
「俺に命令するな!それに京楽は俺の伴侶だ。すでに儀式は済ませ、正式に伴侶になっている」
「なんてことだ・・・・早く族長のハオ様のところへ知らせを」
しばらくすると、族長のハオがやってきた。
浮竹や他のエルフと同じで、20代後半くらいの若々しい姿で成長が止まり、死を迎えるその時まで若い姿のままなのが、エルフの特徴であった。
ハオは、浮竹の頬を殴った。
浮竹は後ろに吹っ飛ばされて、口の中を切ってしまった。
「この恥さらしが!ダークエルフと契っただと!?」
「そうだよ、父さん。マオ兄さんが死んだからって、俺を次期族長になんてできないだろう?」
「このダークエルフを殺すか、契りの儀式を破棄させてやる!」
族長ハオは、頭に血が上っていて、京楽のことをまともに見ていなかった。
「この僕を殺すだって?できるものなら、やってみるといいよ」
「このダークエルフが!・・・・なんだ、その魔力は!」
京楽は笑った。
「ダークエルフとして覚醒したのさ。昔みたいに幽閉されてた幼い頃の僕はもういない。浮竹の見合いも、浮竹が次期族長になることも認めない」
「ダークエルフが!エルフの森に災いをふりかけにやってきたのか!」
族長のハオは、京楽のもつ強大な魔力を感じながらも、続ける。
「違うよ。僕は浮竹のれっきとした伴侶だ。契りの儀式を済ませて、伴侶になっている。僕を殺して上書きもできないし、浮竹は僕との契りの儀式の破棄をなんて、するはずがない」
「このダークエルフが!拾ってやった恩を仇で返す気か!」
「誰も拾ってなんて頼んでないし、幽閉して処刑しようとまでしたくせに」
ハオは、それ以上何も言えなかった。
「とりあえず、昔住んでいた小屋に数日泊まる。次期族長の件については、俺も案を出そう」
「恥さらしが!」
「その恥さらしを作り出して育てたのは、父さんだ」
「くっ・・・・・」
母親はすでに他界しており、子ができにくいのがエルフの特徴であるので、今から妾を迎えるとかそういう方法はなかった。
昔住んでいた小屋は掃除が行き届いており、兄のマオが使用していたらしかった。
「浮竹、ほんとに僕を連れてきてよかったの?」
「そうじゃないと、俺は捕らわれて今頃お前との契りの契約を破棄させられていたぞ」
「そんなの駄目!絶対駄目!」
京楽が浮竹を抱きしめる。
「ほらな?お前を連れてきて正解だったろう?」
「そうだね。憎しみは全部僕が浴びればいい。浮竹を奪ったのは僕だ」
「そんなことはない。お前を連れ出して逃げだのは、俺の意思だ」
「いつか、エルフの森の住民全てに、分かってもらえるといいね」
「ああ、そうだな」
その小屋で二人は数日を過ごした。
次期族長を誰にするかという会議に、ダークエルフである京楽と共に出席して、京楽は憎しみの視線を浴びせられていたが平気そうで、結局いとこが継ぐことに決まった。
「お前とは、勘当だ。二度と、エルフの森に帰ってくるな」
族長のハオは、浮竹と京楽を追いだして、去って行った。
「追い出されちゃった」
「勘当だってさ」
二人は、手を握り合いながら、エルフの森を後にする。そして、転移魔法でマイホームまで戻ってきた。
『あ、帰ってきた』
精霊の浮竹が、迎えにきてくれた。精霊の浮竹に、ブルンを預けていたのだ。
「師匠も、お元気そうで」
『なんでも、エルフの森の族長問題で呼び出されたそうだね』
「勘当された。京楽と契りの儀式を済ませた知った時の、父の顔といたったら、傑作で」
『大丈夫そうでよかったよ。エルフのボクも大丈夫だよね?』
「当たり前だよ。浮竹に浴びせられる憎しみも全て僕の方へ向いていた。計算通りさ」
「京楽・・・・お前には、本当にすまないと思っている。エルフの森は、閉鎖的だからな」
エルフの浮竹は、エルフの京楽に抱きしめられてキスをされた。
「僕は全然かまわないよ。君と契りの契約を交わしたことも後悔していない」
「くくるーーー!!!」
僕の存在を忘れないで!!
ブルンは、エルフの二人頭の上を飛んでいた。
「ごめんな、ブルン。今回ばかりは、お前を連れていけなかった」
「くるるー」
仕方ないなぁ。
ブルンは、飛び跳ねているプルンの頭の上に乗った。
「ププウ!」
あ、お兄ちゃんだ。
そう言いながら、プルンは体を黄色の喜びの色に変えていた。
穏やかな時間が過ぎていく。
もう、エルフの森には二度と帰れないだろう。
その道を、二人は選んだ。
京楽も、後悔していない。浮竹と出会って逃げ出したことも、契りの契約を交わしたことも。
『じゃあ、僕らは戻るから』
「じゃあ、師匠、また」
『またな』
最後に精霊の浮竹が手を振って、プルンの転移魔法でロスピア王国にある自分の家まで戻っていった。
「久しぶりに、明日冒険者ギルドに行こう。何かいい依頼があるかもしれない」
「そうだね」
エルフの森には、もう帰れない。
分かってはいたが、二人とも心の何処かで寂しいと思うのであった。
PR
エンシェントエルフとダークエルフ26
「ふふ・・・・このキメラは、そこいらのキメラとは違う」
そのキメラは、足はケルピーの足でできており、尻尾はデッドリーポイズンスネーク、胴はドラゴン、翼はペガサス、頭はダークエルフだった。
「ああああああ!!」
人語を話すキメラは、ある遺跡で、やってくる冒険者たちを次々と殺していった。
Sランク指定の、変異キメラであった。
イアラ帝国のウララ高原にある、スキア帝国の遺跡に出た。
その遺跡は、中でミスリルの鉱石が取れることで有名で、いろんな冒険者たちがやってきては、変異キメラに殺されて、食われた。
地下にはモルモットにされているダークエルフの姿があるのだが、それを浮竹と京楽はまだ知らなかった。
----------------------------------------------------
Sランク指定の依頼であった。
もともとAランク指定で、Bランクの冒険者3人のパーティーが行ったが、いつまで経って帰ってこなくて、急遽Sランクに指定された。
魔の悪いことに、イアラ帝国のSランク冒険者たちは皆違う国の魔物討伐に赴いていた。
一番評価の高い、Aランクの浮竹と京楽が、その変異キメラを退治することになった。
「何か、悪い予感しかしないんだけど。その遺跡って、いろんな冒険者が訪れる遺跡でしょう?その冒険者たちを殺して食ったとなると、僕らの手だけでどうにかなるのかな」
「念のために、師匠を呼んでおいた」
浮竹と京楽は、そのスキア帝国の遺跡の前にいた。
「ここからでも、血の匂いが分かる。かなりの数の人間を食ったみたいだね」
「気を引き締めていこう」
「ライト」
京楽が、光の魔法で光源を出す。
それをずっと維持しながら、中を進んでいく。
中は荒れていて、ところどころに食いちぎられた人の手足が散乱しており、変異キメラの狂暴性が窺われた。
「ぐるるるるる」
「近くにいるよ、気をつけて!」
「しゃあああ!!!」
ダークエルフの顔をもつ変異キメラが、襲い掛かってきた。
「この!ファイアフェニックス!」
「ぎゃおう!」
咄嗟に浮竹が放った上級魔法を顔に受けて、ダークエルフの顔は醜く焼けただれたが、すぐに再生してしまった。
「再生能力が半端じゃないね。浮竹、剣でいける?」
「ああ、アシッドエンチャント!」
錆びないミスリルの剣に、金属まで溶かす酸を付与して、そのドラゴンの胴体らしき鱗に切りかかると、なんとミスリルの剣が折れてしまった。
「なんだと!?」
浮竹は動揺した。
その一瞬の隙を狙って、ダークエルフの頭部が浮竹の腕を噛みちぎる。
「ぐっ」
「セイントヒール!
「すまない、京楽!」
「いいって。それより、魔法で倒すしかないようだね」
「弱点の属性が分からないが、幸い京楽は闇以外の属性を使えるからな」
「助けて・・・・殺して」
ダークエルフの頭部は、そう言って血の涙を流した。
「ゴッドフェンリル!」
「ゴッドファイアフェニックス!!」
それぞれ、氷の魔狼と炎の不死鳥を出した。
まずはフェンリルが氷のブレスを吐いて、ケルピーでできた足を凍らせた。次にフェニックスが、翼を燃やす。
傷を負わせると、再生していく。
「これ、勝てるの?」
「なんとかするしかないだろう。ここで負けたら、俺たちのSランクになるという冒険者の夢も終わりだ!」
「トリプルフレア!」
「バーストロンド!」
じりじりと、獲物を追い詰めるように、変異キメラは二人を追い詰めていく。
「浮竹、地下に通じる小さな階段がある!一度撤退しよう!」
「分かった!サンシャイン!」
変異キメラの目を、光で一時的につぶして、二人は遺跡の地下におりた。
そこでは、目に見るもの無残な光景があった。
ダークエルフたちが、ある男に生きたまま解剖されていた。
「誰だお前は!」
「おや、もうきてしまったのかい。じゃあね」
男は、転移魔法で消えてしまった。
「あああ・・・殺してくれ」
「殺してくれ・・・・」
ダークエルフたちは、もう原型をとどめておらず、変異キメラになりかけていた。
「くっ」
京楽は、胸が疼いた。
「京楽は目を瞑っていろ。同胞たちだろう。俺が片付ける。ゴッドファイアフェニックス!」
浮竹は、炎の魔法で殺してくれと哀願してくるダークエルフのなれの果てを灰にしていった。
ドクン、ドクン、ドクン。
鼓動の音がした。
「どうしたんだ、京楽?」
「あああああ!!!」
京楽は、発狂したかのように叫んで自分の頭を抱え込んだ。
ドロリと、京楽纏う魔力が闇のものになる。
「しっかりしろ、京楽!」
「浮竹、僕は・・・・ああああ!!」
京楽は、遺跡の階段をあがり、変異キメラと対峙する。
「ワールドエンド」
京楽は、使えないはずの闇魔法を使っていた。
それに、変異キメラの体がぐちゃぐちゃになっていく。
「あはははは」
「京楽!」
「アハハハ・・・・浮竹、こっちに来ちゃだめだ」
ワールドエンドは、禁忌の魔法だ。
「僕の力じゃ、もうこの魔法をとめられない」
『ここはスキア帝国の遺跡。ボクの妖刀がいた遺跡とは別だねえ』
「あ、師匠!」
『やあ、エルフのボクに浮竹。エルフのボクは、禁忌を発動したはいいけど、力の使い方を迷っているようだね』
「師匠、京楽を助けてやってくれ」
剣士の京楽は頷くと、手を前に突き出した。
それだけで、ワールドエンドの魔法は終わった。
「ああああ、僕は、僕は!!」
「京楽、しっかりしろ。俺はここにいる」
エルフの京楽は、浮かべた涙を一筋流した。
「僕は、ダークエルフなのに、同胞たちを助けられなかった・・・・」
「それはお前のせいじゃない。手を下したのは俺だし、あんな風になるようにしたのは、影の暗躍者だ」
『それね、名前は藍染っていうの』
「その、藍染とかいうやつが全部悪んだ。京楽は、何も悪くない」
「ああ・・・・感じる。闇の鼓動だ」
『それは闇魔法を習得した証だな』
いつの間にか現れた精霊の浮竹が、エルフの浮竹の肩に手を置いた。
『このまま、彼を抱きしめて』
「分かった」
エルフの浮竹は、優しくエルフの京楽を抱きしめた。
精霊の浮竹のおかげか、エルフの京楽は安らかな顔になり、エルフの浮竹を抱きしめ返した。
「これはなんていうんだろう。魔力の底が見えない。闇の魔法を習得するのって、こんななの?」
『全属性習得なら、そうだろうね。今のキミなら、宮廷魔術師にもなれる』
「そんなものに、なりたくはないよ。僕は、浮竹、君の傍にいたい」
「京楽、落ち着いたか?」
エルフの浮竹がエルフの京楽の顔をのぞきこむ。
「うん。ごめんね。浮竹」
「なんか、京楽、お前の魔力の量、尋常じゃないほどにあがってないか?」
『覚醒したんだろう。ダークエルフとして』
剣士の京楽の言葉に、エルフの京楽が自分の手の平をみた。
「これが覚醒・・・・鼓動が高鳴ったのは感じた」
『覚醒の予兆だね。ワールドエンドは禁忌の中の禁忌。よほどのことがない限り、使わない方がいいよ』
「うん、あんな凄い魔法、まだしばらくの間制御できそうにないよ」
エルフの京楽は、憑き物がとれたようなすっきりした顔をしていた。
「僕はダークエルフだ。自分と向き合おうと思う」
「京楽、無理はしなくていいんだぞ」
「いや、ギルドでも言うよ。僕がダークエルフだってことを」
「でも、自分で魔族だって言うようなものだぞ?」
エルフの京楽は頷く。
「それでも、僕はもう自分を偽るのが嫌になった。いつまでも隠し続けてうじうじするより、告白して受け止めてもらいたい」
「分かった。でも、ギルドで告白する隣には、俺を置いてくれ」
「うん」
「師匠、ありがとうございました」
「ぷぷる~~」
「くくる~~」
『ああ、プルンとブルンを忘れていたね』
プルンは飛び跳ねながら、ブルンは空を飛びながらやってきて、二人の京楽の頭と肩に、それぞれ乗った。
「戻ろうか」
「ああ」
師匠である剣士の京楽と、精霊の浮竹と、エルフの浮竹と一緒に、イアラ帝国の冒険者ギルドにやってきた。精霊の浮竹は妖刀姿だった。
みんな、剣士の京楽を見て怖がっていた。
「Aランクの変異キメラの討伐は終わったよ。なんとか魔石だけは回収できたから」
エルフの京楽が受付嬢に変異キメラの魔石を渡すと、人工的に作られたものだとすぐに分かって、ギルドマスターのキャサリンがやってきた。
「あら、春ちゃんうっきーちゃん・・・・お尻さわりたいところだけど、剣士の春ちゃんに殺されるから我慢するわ」
「報酬金は金貨500枚と、人工魔石の買取り額が金貨100枚になります」
合計で金貨600枚を、エルフの京楽はもらってアイテムポケットにいれた。
「みんな、話があるんだ」
Aランクの京楽に視線が集まる。
「僕は、ウッドエルフで通していたけど、本当はダークエルフなんだ」
「がんばれ、京楽」
エルフの京楽の隣で、エルフの浮竹が心を支えてくれた。
「なんだ、そんなことか。知ってるやつ、けっこういるぞ」
「ダークエルフだらかってなにかあるのか?京楽は京楽じゃないか」
「みんな・・・・・・」
駆け出しの冒険者や京楽とあまり顔見しりでない冒険者は、ダークエルフと聞いて怯えていたけれど、多数の冒険者がそれをさも当たり前のことのように受け取るので、怯える者はいなくなった。
「みんな、僕が怖くないの?」
「浮竹に手を出した時の京楽は怖いが、それ以外の京楽なら怖くない」
京楽は、涙を流した。
「受け入れて、もらえた・・・・・」
「京楽、みんなダークエルフとか種族関係なしに、Aランク冒険者の京楽を見ているんだ」
「浮竹も、ありうがとうね?」
「どういたしまして」
「じゃあ、マイホームに帰ろうか」
「そうしよう」
剣士の京楽は、キャサリンを睨んでいたが、キャサリンが何もしなかったので、ただ黙してエルフの二人の後をついていった。
「ああ、今日は疲れたよ」
『ダークエルフとして覚醒した感想は?』
「いきなりレベルアップしたかんじ」
『そのままだな』
人型をとった精霊の浮竹が、苦笑していた。
「今日は遅いし、泊まっていく?」
『ああ、お言葉に甘えよう。いいな、京楽?』
『僕は別にどっちでもいいよ』
適当に夕食を済ませて、風呂に入り、それぞれゲストルームと寝室で眠った。
「ププルウ!」
ぽよんと、ブルンがはねて、剣士の京楽と精霊の浮竹を起こした。
「くくるーー」
寝室では、ブルンが空を飛んでから体当たりをして、エルフの二人を起こしていた。
「ププルウ」
「くくるー」
「え、何、お腹へった?はいはい、朝ごはんだね」
プルンには林檎を10個、ブルンにはアイテムポケットに入れていたゴミをあげた。
「くくるーー」
「ププウ」
プルンが残した林檎の芯を、ブルンが食べた。
『それにしても驚いたね。エンジェリングスライムとは。このままいくと、アークエンジェリングスライム、セラフィスライムに進化するだろうね』
「そうなのか、師匠」
『うん。天使に近くなるね』
「天使族みたいなものかな?」
この世界には、魔族の対になる、天使族がいる。
真っ白な純白の翼をもち、頭にわかったのある、本物の天使に似た種族であった。
「天使族に近いスライムだなんてすごいな、ブルン」
「くくる!」
そうでしょそうでしょ。
自慢するブルンに、プルンは。
「プププううう」
すごいすごいお兄ちゃん、天使になるんだ。
そう勘違いをおこしていた。
『じゃあ、俺らは戻るな。またなにかあったら、式を飛ばしてくれ:』
精霊の浮竹は、剣士の京楽とプルンと共に、プルンが使った転移魔法で消えてしまった。
「ねぇ、浮竹」
「なんだ?」
「僕、ダークエルフでよかったよ。いっぱい辛い目にもあったけど、君と出会えた」
「俺も、エンシェントエルフでよかった。族長がお前を拾い、幽閉したのは俺と出会うための運命だったんだ」
二人で手を繋ぎ合い、またベッドに横になった。
「愛してるよ、浮竹」
「俺も愛してる、京楽」
触れるだけの口づけをして、二人はまた眠るのであった。
----------------------------------------------------------------------------
「ダークエルフとしての覚醒か。まぁいい、次は・・・・・」
真っ暗な部屋で、藍染は血のような赤いワインを飲み干した。
藍染の後ろでは、水槽の中で奇妙な肉塊が動き続けるだった。
そのキメラは、足はケルピーの足でできており、尻尾はデッドリーポイズンスネーク、胴はドラゴン、翼はペガサス、頭はダークエルフだった。
「ああああああ!!」
人語を話すキメラは、ある遺跡で、やってくる冒険者たちを次々と殺していった。
Sランク指定の、変異キメラであった。
イアラ帝国のウララ高原にある、スキア帝国の遺跡に出た。
その遺跡は、中でミスリルの鉱石が取れることで有名で、いろんな冒険者たちがやってきては、変異キメラに殺されて、食われた。
地下にはモルモットにされているダークエルフの姿があるのだが、それを浮竹と京楽はまだ知らなかった。
----------------------------------------------------
Sランク指定の依頼であった。
もともとAランク指定で、Bランクの冒険者3人のパーティーが行ったが、いつまで経って帰ってこなくて、急遽Sランクに指定された。
魔の悪いことに、イアラ帝国のSランク冒険者たちは皆違う国の魔物討伐に赴いていた。
一番評価の高い、Aランクの浮竹と京楽が、その変異キメラを退治することになった。
「何か、悪い予感しかしないんだけど。その遺跡って、いろんな冒険者が訪れる遺跡でしょう?その冒険者たちを殺して食ったとなると、僕らの手だけでどうにかなるのかな」
「念のために、師匠を呼んでおいた」
浮竹と京楽は、そのスキア帝国の遺跡の前にいた。
「ここからでも、血の匂いが分かる。かなりの数の人間を食ったみたいだね」
「気を引き締めていこう」
「ライト」
京楽が、光の魔法で光源を出す。
それをずっと維持しながら、中を進んでいく。
中は荒れていて、ところどころに食いちぎられた人の手足が散乱しており、変異キメラの狂暴性が窺われた。
「ぐるるるるる」
「近くにいるよ、気をつけて!」
「しゃあああ!!!」
ダークエルフの顔をもつ変異キメラが、襲い掛かってきた。
「この!ファイアフェニックス!」
「ぎゃおう!」
咄嗟に浮竹が放った上級魔法を顔に受けて、ダークエルフの顔は醜く焼けただれたが、すぐに再生してしまった。
「再生能力が半端じゃないね。浮竹、剣でいける?」
「ああ、アシッドエンチャント!」
錆びないミスリルの剣に、金属まで溶かす酸を付与して、そのドラゴンの胴体らしき鱗に切りかかると、なんとミスリルの剣が折れてしまった。
「なんだと!?」
浮竹は動揺した。
その一瞬の隙を狙って、ダークエルフの頭部が浮竹の腕を噛みちぎる。
「ぐっ」
「セイントヒール!
「すまない、京楽!」
「いいって。それより、魔法で倒すしかないようだね」
「弱点の属性が分からないが、幸い京楽は闇以外の属性を使えるからな」
「助けて・・・・殺して」
ダークエルフの頭部は、そう言って血の涙を流した。
「ゴッドフェンリル!」
「ゴッドファイアフェニックス!!」
それぞれ、氷の魔狼と炎の不死鳥を出した。
まずはフェンリルが氷のブレスを吐いて、ケルピーでできた足を凍らせた。次にフェニックスが、翼を燃やす。
傷を負わせると、再生していく。
「これ、勝てるの?」
「なんとかするしかないだろう。ここで負けたら、俺たちのSランクになるという冒険者の夢も終わりだ!」
「トリプルフレア!」
「バーストロンド!」
じりじりと、獲物を追い詰めるように、変異キメラは二人を追い詰めていく。
「浮竹、地下に通じる小さな階段がある!一度撤退しよう!」
「分かった!サンシャイン!」
変異キメラの目を、光で一時的につぶして、二人は遺跡の地下におりた。
そこでは、目に見るもの無残な光景があった。
ダークエルフたちが、ある男に生きたまま解剖されていた。
「誰だお前は!」
「おや、もうきてしまったのかい。じゃあね」
男は、転移魔法で消えてしまった。
「あああ・・・殺してくれ」
「殺してくれ・・・・」
ダークエルフたちは、もう原型をとどめておらず、変異キメラになりかけていた。
「くっ」
京楽は、胸が疼いた。
「京楽は目を瞑っていろ。同胞たちだろう。俺が片付ける。ゴッドファイアフェニックス!」
浮竹は、炎の魔法で殺してくれと哀願してくるダークエルフのなれの果てを灰にしていった。
ドクン、ドクン、ドクン。
鼓動の音がした。
「どうしたんだ、京楽?」
「あああああ!!!」
京楽は、発狂したかのように叫んで自分の頭を抱え込んだ。
ドロリと、京楽纏う魔力が闇のものになる。
「しっかりしろ、京楽!」
「浮竹、僕は・・・・ああああ!!」
京楽は、遺跡の階段をあがり、変異キメラと対峙する。
「ワールドエンド」
京楽は、使えないはずの闇魔法を使っていた。
それに、変異キメラの体がぐちゃぐちゃになっていく。
「あはははは」
「京楽!」
「アハハハ・・・・浮竹、こっちに来ちゃだめだ」
ワールドエンドは、禁忌の魔法だ。
「僕の力じゃ、もうこの魔法をとめられない」
『ここはスキア帝国の遺跡。ボクの妖刀がいた遺跡とは別だねえ』
「あ、師匠!」
『やあ、エルフのボクに浮竹。エルフのボクは、禁忌を発動したはいいけど、力の使い方を迷っているようだね』
「師匠、京楽を助けてやってくれ」
剣士の京楽は頷くと、手を前に突き出した。
それだけで、ワールドエンドの魔法は終わった。
「ああああ、僕は、僕は!!」
「京楽、しっかりしろ。俺はここにいる」
エルフの京楽は、浮かべた涙を一筋流した。
「僕は、ダークエルフなのに、同胞たちを助けられなかった・・・・」
「それはお前のせいじゃない。手を下したのは俺だし、あんな風になるようにしたのは、影の暗躍者だ」
『それね、名前は藍染っていうの』
「その、藍染とかいうやつが全部悪んだ。京楽は、何も悪くない」
「ああ・・・・感じる。闇の鼓動だ」
『それは闇魔法を習得した証だな』
いつの間にか現れた精霊の浮竹が、エルフの浮竹の肩に手を置いた。
『このまま、彼を抱きしめて』
「分かった」
エルフの浮竹は、優しくエルフの京楽を抱きしめた。
精霊の浮竹のおかげか、エルフの京楽は安らかな顔になり、エルフの浮竹を抱きしめ返した。
「これはなんていうんだろう。魔力の底が見えない。闇の魔法を習得するのって、こんななの?」
『全属性習得なら、そうだろうね。今のキミなら、宮廷魔術師にもなれる』
「そんなものに、なりたくはないよ。僕は、浮竹、君の傍にいたい」
「京楽、落ち着いたか?」
エルフの浮竹がエルフの京楽の顔をのぞきこむ。
「うん。ごめんね。浮竹」
「なんか、京楽、お前の魔力の量、尋常じゃないほどにあがってないか?」
『覚醒したんだろう。ダークエルフとして』
剣士の京楽の言葉に、エルフの京楽が自分の手の平をみた。
「これが覚醒・・・・鼓動が高鳴ったのは感じた」
『覚醒の予兆だね。ワールドエンドは禁忌の中の禁忌。よほどのことがない限り、使わない方がいいよ』
「うん、あんな凄い魔法、まだしばらくの間制御できそうにないよ」
エルフの京楽は、憑き物がとれたようなすっきりした顔をしていた。
「僕はダークエルフだ。自分と向き合おうと思う」
「京楽、無理はしなくていいんだぞ」
「いや、ギルドでも言うよ。僕がダークエルフだってことを」
「でも、自分で魔族だって言うようなものだぞ?」
エルフの京楽は頷く。
「それでも、僕はもう自分を偽るのが嫌になった。いつまでも隠し続けてうじうじするより、告白して受け止めてもらいたい」
「分かった。でも、ギルドで告白する隣には、俺を置いてくれ」
「うん」
「師匠、ありがとうございました」
「ぷぷる~~」
「くくる~~」
『ああ、プルンとブルンを忘れていたね』
プルンは飛び跳ねながら、ブルンは空を飛びながらやってきて、二人の京楽の頭と肩に、それぞれ乗った。
「戻ろうか」
「ああ」
師匠である剣士の京楽と、精霊の浮竹と、エルフの浮竹と一緒に、イアラ帝国の冒険者ギルドにやってきた。精霊の浮竹は妖刀姿だった。
みんな、剣士の京楽を見て怖がっていた。
「Aランクの変異キメラの討伐は終わったよ。なんとか魔石だけは回収できたから」
エルフの京楽が受付嬢に変異キメラの魔石を渡すと、人工的に作られたものだとすぐに分かって、ギルドマスターのキャサリンがやってきた。
「あら、春ちゃんうっきーちゃん・・・・お尻さわりたいところだけど、剣士の春ちゃんに殺されるから我慢するわ」
「報酬金は金貨500枚と、人工魔石の買取り額が金貨100枚になります」
合計で金貨600枚を、エルフの京楽はもらってアイテムポケットにいれた。
「みんな、話があるんだ」
Aランクの京楽に視線が集まる。
「僕は、ウッドエルフで通していたけど、本当はダークエルフなんだ」
「がんばれ、京楽」
エルフの京楽の隣で、エルフの浮竹が心を支えてくれた。
「なんだ、そんなことか。知ってるやつ、けっこういるぞ」
「ダークエルフだらかってなにかあるのか?京楽は京楽じゃないか」
「みんな・・・・・・」
駆け出しの冒険者や京楽とあまり顔見しりでない冒険者は、ダークエルフと聞いて怯えていたけれど、多数の冒険者がそれをさも当たり前のことのように受け取るので、怯える者はいなくなった。
「みんな、僕が怖くないの?」
「浮竹に手を出した時の京楽は怖いが、それ以外の京楽なら怖くない」
京楽は、涙を流した。
「受け入れて、もらえた・・・・・」
「京楽、みんなダークエルフとか種族関係なしに、Aランク冒険者の京楽を見ているんだ」
「浮竹も、ありうがとうね?」
「どういたしまして」
「じゃあ、マイホームに帰ろうか」
「そうしよう」
剣士の京楽は、キャサリンを睨んでいたが、キャサリンが何もしなかったので、ただ黙してエルフの二人の後をついていった。
「ああ、今日は疲れたよ」
『ダークエルフとして覚醒した感想は?』
「いきなりレベルアップしたかんじ」
『そのままだな』
人型をとった精霊の浮竹が、苦笑していた。
「今日は遅いし、泊まっていく?」
『ああ、お言葉に甘えよう。いいな、京楽?』
『僕は別にどっちでもいいよ』
適当に夕食を済ませて、風呂に入り、それぞれゲストルームと寝室で眠った。
「ププルウ!」
ぽよんと、ブルンがはねて、剣士の京楽と精霊の浮竹を起こした。
「くくるーー」
寝室では、ブルンが空を飛んでから体当たりをして、エルフの二人を起こしていた。
「ププルウ」
「くくるー」
「え、何、お腹へった?はいはい、朝ごはんだね」
プルンには林檎を10個、ブルンにはアイテムポケットに入れていたゴミをあげた。
「くくるーー」
「ププウ」
プルンが残した林檎の芯を、ブルンが食べた。
『それにしても驚いたね。エンジェリングスライムとは。このままいくと、アークエンジェリングスライム、セラフィスライムに進化するだろうね』
「そうなのか、師匠」
『うん。天使に近くなるね』
「天使族みたいなものかな?」
この世界には、魔族の対になる、天使族がいる。
真っ白な純白の翼をもち、頭にわかったのある、本物の天使に似た種族であった。
「天使族に近いスライムだなんてすごいな、ブルン」
「くくる!」
そうでしょそうでしょ。
自慢するブルンに、プルンは。
「プププううう」
すごいすごいお兄ちゃん、天使になるんだ。
そう勘違いをおこしていた。
『じゃあ、俺らは戻るな。またなにかあったら、式を飛ばしてくれ:』
精霊の浮竹は、剣士の京楽とプルンと共に、プルンが使った転移魔法で消えてしまった。
「ねぇ、浮竹」
「なんだ?」
「僕、ダークエルフでよかったよ。いっぱい辛い目にもあったけど、君と出会えた」
「俺も、エンシェントエルフでよかった。族長がお前を拾い、幽閉したのは俺と出会うための運命だったんだ」
二人で手を繋ぎ合い、またベッドに横になった。
「愛してるよ、浮竹」
「俺も愛してる、京楽」
触れるだけの口づけをして、二人はまた眠るのであった。
----------------------------------------------------------------------------
「ダークエルフとしての覚醒か。まぁいい、次は・・・・・」
真っ暗な部屋で、藍染は血のような赤いワインを飲み干した。
藍染の後ろでは、水槽の中で奇妙な肉塊が動き続けるだった。
エンシェントエルフとダークエルフ25
ケルピー。
水属性の馬のモンスターであった。水魔もしくは水霊の一種ともいわれていた。
そのケルピーが、馬の牧場を襲い、雌馬を妊娠させてしまうのだという。
牧場の主は、ケルピーに誘われて、川で溺死体として見つかった。
牧場が襲われている時点で対処すればよかったのだが、高ランクの冒険者がおらず、Cランクの冒険者が討伐に向かったのだが、ケルピーにやられて半死半生で戻ってきた。
Bランクの依頼であったが、他にぱっとする依頼もなく、Aランクの浮竹と京楽が引き受けることとなった。
「あらん、ケルピー退治?ケルピーはセイレーンみたいに人を惑わせて、食わないけど溺死させることがあるから、注意してねん?♡」
セイレーンの歌声に惑わされて、幸福な夢を見ながら昏睡状態に陥ったことのある浮竹は、顔を引き締めた。
「ケルピーの惑わしには、気をつけるぞ。お互い、注意していこう」
「そうだね」
ケルピーが出るのは、イアラ帝国から少し離れた、ウア王国だった。
ウア王国でも冒険者ギルドはあるが、ケルピーの退治を失敗して死人を出しており、急遽イアラ帝国にも依頼書が届いたのだ。
「ウア王国にはいったことないからね。帰りは転移魔法で帰れるけど、行きは辛抱してね」
「ああ、分かった」
「くくるーー!」
今回も、ブルンと一緒だった。
3日かけてウア王国まで馬車で到着すると、そこからまた場所を乗りついで、半日かけてそのケルピーが出僕するという馬の牧場までやってきた。
「ああ、冒険者の方ですか。私は今この牧場を管理している者です。兄がケルピーに殺されて、それからも雨の日になるとケルピーが牧場に現れて、雌馬を襲うんです」
「確か、天気予報では明日が雨だったね」
「はい。明日、ケルピーが出没すると思いますので、今夜は宿の代わりに我が家をご使用ください」
ケルピーに溺死させられた牧場主の弟だという人物に、一晩の宿を借りることになった。
「どう思う、浮竹?」
「ケルピーは、普通ケルピー同士で結ばれて仔馬を産む。メスが乱獲されて数が激減しているのかもしれないな」
「ケルピーは食用にもなるからね。雌馬のほうがうまいってされてあるから、乱獲されたのかもね」
実は、影の暗躍者がケルピーのメスを大量に乱獲して、研究素材にしているのだが、その事実を浮竹と京楽は知ることはなかった。
翌日は大雨だった。
近くの川が増水して、氾濫の恐れがあったが、浮竹と京楽は仮眠をとって、モンスターが出るであろう夜に備えた。
「HIHINNN」
「出た、ケルピーだ!」
馬の鳴き声が外から聞こえてきて、急いで浮竹と京楽は厩(うまや)のある方へ向かった。
厩では、雌馬が怯えていた。
ケルピーの数は全部で15匹。
思っていたよりも多かった。
3~4匹を想像していた。牧場主の話でも、現れたのは3匹程度と言っていたので、その数の多さに、まずは魔法で足止めをする。
「エターナルアイシクルワールド!」
地面を凍らせて、ケルピーの足も凍らせた。
ケルピーは水の玉を使って、こっちに射撃してくる。
もしくは、水の玉で顔を包み込んで、溺死させようとしてきた。
「HIHIHINN」
「ヒヒーン」
「なんだ?」
浮竹と京楽は、水の玉を火の魔法で相殺させながら、苦しみ出した普通の雌馬をみた。
その雌馬の腹から、仔馬のケルピーが腹を食い破って出てきた。
「この子を、迎えにきたんだろう」
仔馬は、すぐにケルピーの元にいき、水の散弾を飛ばしてきた。
「フレアサークル!フレイムロンド!ファイアフェニックス!」
「HIHIHINN!!」
ケルピーたちは、炎の魔法で焼かれて、身に纏っている水分を蒸発させられて、倒れていく。
「炎の魔法が有効だよ」
「そんなの、始めから知ってる。産まれてきたばかりで悪いが、あの世にいってもらおう。エターナルゴッドフェニックス!!」
炎の高位呪文を浮竹が放つ。
ケルピーたちは、浮竹と京楽を溺死させるために人を操る鳴き声を出した。
「HIHINN~~」
京楽が、ケルピーの元に行こうとするのを、浮竹が剣の鞘を頭に投げて、正気づかせた。
「はっ、僕は!?」
「ケルピーの誘いの鳴き声に惑わされていた」
「ありがとう、浮竹。お陰で正気に戻ったよ。たんこぶできたけど」
「溺死に比べれば、たんこぶの100や200、軽いもんだろ」
京楽が正気に戻る頃には、ケルピーたち浮竹の魔法で焼かれて倒れていた。生まれたばかりのケルピーの仔馬も死んでいた。
「かわいそうだが、こうするしかない。雌馬のほうは?」
「だめだよ。腹を食いう破られていて、即死だよ」
「そうか・・・・・」
他の雌馬たちは無事だった。牡馬ももちろんのこと、仔馬も元気だった。
「ヒヒーン」
「ブルルル」
この騒ぎで起き出した馬たちが、神経過敏になっていた。
牧場主を起こして、ケルピーの退治が済んだことを知らせると、一頭の白馬の牡馬を連れてきた。
「この子、馬車を引くのにいいんです。ただ、その馬車が事故にあちゃって、返品されちゃって。よければ、連れていってやってください」
「家で飼うことはできないから、冒険者ギルドの厩で暮らすことになるけど、いいの?」
「放牧すると、他の牡馬にいじめられるんです。雌馬もよりつかなくて。冒険者ギルドの厩ってことは、しっかりしたものなのでしょう?」
「ああ、まぁな。馬車の貸し出しも行っているから、専門の職の人もいる」
「じゃあ連れて行ってやってください」
「ケルピーの死体はどうするの?」
「馬肉して、近所に差し入れます」
「ケルピーは確かに食用にもなるしな。分かった、じゃあ死体はこのままにして・・・・」
「解体、手伝ってくださあああいい」
「冒険者ギルドの解体工房の人を呼んだほうがよさそうだね。ちょっと、呼んでくるよ」
京楽は空間転移の魔法でイアラ帝国の冒険者ギルドにいくと、解体工房にいた解体作業人を連れて戻ってきた。
「この15体のケルピーの解体を頼む」
「出張サービスなんて久しぶりですね。任せてください。食用にするんですね?」
「ああ、頼む」
「お願いします」
浮竹と京楽も手伝たが、浮竹と京楽はそれぞれ1匹ずつ解体している間に、解体作業人は13匹と仔馬のケルピーの解体を終えてしまった。
「食肉用なら、金貨40枚で買取りますが」
「どうする。ここは、牧場主であるあなたの判断にゆだねる」
「あ、じゃあ買いとってください。20枚をこちらに、残りの20枚を冒険者さんにあげてください」
「毎度あり!」
解体作業人は、アイテムポケットにケルピーの肉を入れて、金貨20枚をそれぞれ、牧場主と浮竹と京楽に渡した。
「くくるーー!」
ブルンが、解体して余った骨やいらない部位を、ごみとして溶かして食べていった。
「じゃあ、僕たちは帰るね?」
「あ、本当にありがとうございました。ケルピーの子を宿した雌馬には、流産してもらおうと思います」
「ああ、がんばってくれ」
ブルンを頭の上に乗せて、浮竹は京楽と手をつなぐ。京楽は白馬に手を置く。解体作業人も、白馬に手を置いた。
一人分の転移魔法で、手を繋いでいたり触れていたりすると、移動できるのだ。全員に空間移動の魔法を使うのは魔力がいる。
冒険者ギルドに戻ると、キャサリンが怒っていた。
「もう、勝手に解体工房の解体作業人を連れ出さないでちょうだい!」
「ああ、ごめんね。青髭オカマ」
「ブス」
「何か言ったかしら?」
浮竹の悪口に、ポキポキと関節を鳴らすオカマのギルドマスターは、ケルピーの新鮮が肉が手に入ったので酒場で馬刺しを食べようという声につられて、行ってしまった。
「浮竹、いくら本当のことだからって、ブスはまずいよ」
「ブスにブスと言って何が悪い」
浮竹はけっこう毒舌だった。
ギルドの厩に、白馬を連れて行き、餌や水やり、ブラッシングとか蹄の手入れとかもろもろを頼みこむ。特別にかまってやってくれと話をつけて、金貨5枚を厩の職人に払った。
冒険者ギルドに戻ると、ブルンの様子がおかしくなった。
「くくるー・・・・・・」
「ブルン?具合でも悪いの?」
「くくう・・・」
ぱっと、眩しい光が満ちた。
その中心には、ブルンがいた。
「存在の進化か!ケルピーの骨とかを食べたんで、LVUPしたんだ」
「エンジェリングスライムかい?」
「くくるーー!!」
ブルンは、以前と大きさが変わらないが、頭の上の輪っかが光っており、翼が背中にはえていた。
ぱたぱたと、飛んだ。
まだぎこちなく、天井にぶつかって落っこちてきた。
「ブルン、大丈夫?」
「くるるー!!」
「大丈夫みたいだな。魔石を買い取ってもらって、報酬金を受け取って帰ろう」
ケルピー15匹+ケルピーの仔馬の魔石で金貨25枚。報酬金はBランクの依頼であったので、金貨150枚だった。
「まぁまぁだね」
「うん、まぁまぁだ」
Bランクの依頼としては、普通なほうだった。
「僕らも、久しぶりに酒場で食事していかない?ケルピーの解体してたら、馬刺しが食べたくなちゃった」
「仕方ないな、京楽は」
二人は、酒場で新鮮な馬刺しを食べて、酒を飲むのだった。
----------------------------------------------------------
「ケルピーのメスを使った実験は終わりだ」
ワイングラスに真っ赤な血のようなワインを注ぎ込み、影の暗躍者はワインを飲み干した。
「さて、次は何を実験に使おうか?」
男の背後では、水槽の中に光る物体が蠢いていた。
地下に降りる。
ケルピーのメスが、黄金の試験官の中に並んでいた。
その黄金の液体を捨てると、試験官の中でケルピーのメスたちは声もなく液体化して崩れていくのだった。
水属性の馬のモンスターであった。水魔もしくは水霊の一種ともいわれていた。
そのケルピーが、馬の牧場を襲い、雌馬を妊娠させてしまうのだという。
牧場の主は、ケルピーに誘われて、川で溺死体として見つかった。
牧場が襲われている時点で対処すればよかったのだが、高ランクの冒険者がおらず、Cランクの冒険者が討伐に向かったのだが、ケルピーにやられて半死半生で戻ってきた。
Bランクの依頼であったが、他にぱっとする依頼もなく、Aランクの浮竹と京楽が引き受けることとなった。
「あらん、ケルピー退治?ケルピーはセイレーンみたいに人を惑わせて、食わないけど溺死させることがあるから、注意してねん?♡」
セイレーンの歌声に惑わされて、幸福な夢を見ながら昏睡状態に陥ったことのある浮竹は、顔を引き締めた。
「ケルピーの惑わしには、気をつけるぞ。お互い、注意していこう」
「そうだね」
ケルピーが出るのは、イアラ帝国から少し離れた、ウア王国だった。
ウア王国でも冒険者ギルドはあるが、ケルピーの退治を失敗して死人を出しており、急遽イアラ帝国にも依頼書が届いたのだ。
「ウア王国にはいったことないからね。帰りは転移魔法で帰れるけど、行きは辛抱してね」
「ああ、分かった」
「くくるーー!」
今回も、ブルンと一緒だった。
3日かけてウア王国まで馬車で到着すると、そこからまた場所を乗りついで、半日かけてそのケルピーが出僕するという馬の牧場までやってきた。
「ああ、冒険者の方ですか。私は今この牧場を管理している者です。兄がケルピーに殺されて、それからも雨の日になるとケルピーが牧場に現れて、雌馬を襲うんです」
「確か、天気予報では明日が雨だったね」
「はい。明日、ケルピーが出没すると思いますので、今夜は宿の代わりに我が家をご使用ください」
ケルピーに溺死させられた牧場主の弟だという人物に、一晩の宿を借りることになった。
「どう思う、浮竹?」
「ケルピーは、普通ケルピー同士で結ばれて仔馬を産む。メスが乱獲されて数が激減しているのかもしれないな」
「ケルピーは食用にもなるからね。雌馬のほうがうまいってされてあるから、乱獲されたのかもね」
実は、影の暗躍者がケルピーのメスを大量に乱獲して、研究素材にしているのだが、その事実を浮竹と京楽は知ることはなかった。
翌日は大雨だった。
近くの川が増水して、氾濫の恐れがあったが、浮竹と京楽は仮眠をとって、モンスターが出るであろう夜に備えた。
「HIHINNN」
「出た、ケルピーだ!」
馬の鳴き声が外から聞こえてきて、急いで浮竹と京楽は厩(うまや)のある方へ向かった。
厩では、雌馬が怯えていた。
ケルピーの数は全部で15匹。
思っていたよりも多かった。
3~4匹を想像していた。牧場主の話でも、現れたのは3匹程度と言っていたので、その数の多さに、まずは魔法で足止めをする。
「エターナルアイシクルワールド!」
地面を凍らせて、ケルピーの足も凍らせた。
ケルピーは水の玉を使って、こっちに射撃してくる。
もしくは、水の玉で顔を包み込んで、溺死させようとしてきた。
「HIHIHINN」
「ヒヒーン」
「なんだ?」
浮竹と京楽は、水の玉を火の魔法で相殺させながら、苦しみ出した普通の雌馬をみた。
その雌馬の腹から、仔馬のケルピーが腹を食い破って出てきた。
「この子を、迎えにきたんだろう」
仔馬は、すぐにケルピーの元にいき、水の散弾を飛ばしてきた。
「フレアサークル!フレイムロンド!ファイアフェニックス!」
「HIHIHINN!!」
ケルピーたちは、炎の魔法で焼かれて、身に纏っている水分を蒸発させられて、倒れていく。
「炎の魔法が有効だよ」
「そんなの、始めから知ってる。産まれてきたばかりで悪いが、あの世にいってもらおう。エターナルゴッドフェニックス!!」
炎の高位呪文を浮竹が放つ。
ケルピーたちは、浮竹と京楽を溺死させるために人を操る鳴き声を出した。
「HIHINN~~」
京楽が、ケルピーの元に行こうとするのを、浮竹が剣の鞘を頭に投げて、正気づかせた。
「はっ、僕は!?」
「ケルピーの誘いの鳴き声に惑わされていた」
「ありがとう、浮竹。お陰で正気に戻ったよ。たんこぶできたけど」
「溺死に比べれば、たんこぶの100や200、軽いもんだろ」
京楽が正気に戻る頃には、ケルピーたち浮竹の魔法で焼かれて倒れていた。生まれたばかりのケルピーの仔馬も死んでいた。
「かわいそうだが、こうするしかない。雌馬のほうは?」
「だめだよ。腹を食いう破られていて、即死だよ」
「そうか・・・・・」
他の雌馬たちは無事だった。牡馬ももちろんのこと、仔馬も元気だった。
「ヒヒーン」
「ブルルル」
この騒ぎで起き出した馬たちが、神経過敏になっていた。
牧場主を起こして、ケルピーの退治が済んだことを知らせると、一頭の白馬の牡馬を連れてきた。
「この子、馬車を引くのにいいんです。ただ、その馬車が事故にあちゃって、返品されちゃって。よければ、連れていってやってください」
「家で飼うことはできないから、冒険者ギルドの厩で暮らすことになるけど、いいの?」
「放牧すると、他の牡馬にいじめられるんです。雌馬もよりつかなくて。冒険者ギルドの厩ってことは、しっかりしたものなのでしょう?」
「ああ、まぁな。馬車の貸し出しも行っているから、専門の職の人もいる」
「じゃあ連れて行ってやってください」
「ケルピーの死体はどうするの?」
「馬肉して、近所に差し入れます」
「ケルピーは確かに食用にもなるしな。分かった、じゃあ死体はこのままにして・・・・」
「解体、手伝ってくださあああいい」
「冒険者ギルドの解体工房の人を呼んだほうがよさそうだね。ちょっと、呼んでくるよ」
京楽は空間転移の魔法でイアラ帝国の冒険者ギルドにいくと、解体工房にいた解体作業人を連れて戻ってきた。
「この15体のケルピーの解体を頼む」
「出張サービスなんて久しぶりですね。任せてください。食用にするんですね?」
「ああ、頼む」
「お願いします」
浮竹と京楽も手伝たが、浮竹と京楽はそれぞれ1匹ずつ解体している間に、解体作業人は13匹と仔馬のケルピーの解体を終えてしまった。
「食肉用なら、金貨40枚で買取りますが」
「どうする。ここは、牧場主であるあなたの判断にゆだねる」
「あ、じゃあ買いとってください。20枚をこちらに、残りの20枚を冒険者さんにあげてください」
「毎度あり!」
解体作業人は、アイテムポケットにケルピーの肉を入れて、金貨20枚をそれぞれ、牧場主と浮竹と京楽に渡した。
「くくるーー!」
ブルンが、解体して余った骨やいらない部位を、ごみとして溶かして食べていった。
「じゃあ、僕たちは帰るね?」
「あ、本当にありがとうございました。ケルピーの子を宿した雌馬には、流産してもらおうと思います」
「ああ、がんばってくれ」
ブルンを頭の上に乗せて、浮竹は京楽と手をつなぐ。京楽は白馬に手を置く。解体作業人も、白馬に手を置いた。
一人分の転移魔法で、手を繋いでいたり触れていたりすると、移動できるのだ。全員に空間移動の魔法を使うのは魔力がいる。
冒険者ギルドに戻ると、キャサリンが怒っていた。
「もう、勝手に解体工房の解体作業人を連れ出さないでちょうだい!」
「ああ、ごめんね。青髭オカマ」
「ブス」
「何か言ったかしら?」
浮竹の悪口に、ポキポキと関節を鳴らすオカマのギルドマスターは、ケルピーの新鮮が肉が手に入ったので酒場で馬刺しを食べようという声につられて、行ってしまった。
「浮竹、いくら本当のことだからって、ブスはまずいよ」
「ブスにブスと言って何が悪い」
浮竹はけっこう毒舌だった。
ギルドの厩に、白馬を連れて行き、餌や水やり、ブラッシングとか蹄の手入れとかもろもろを頼みこむ。特別にかまってやってくれと話をつけて、金貨5枚を厩の職人に払った。
冒険者ギルドに戻ると、ブルンの様子がおかしくなった。
「くくるー・・・・・・」
「ブルン?具合でも悪いの?」
「くくう・・・」
ぱっと、眩しい光が満ちた。
その中心には、ブルンがいた。
「存在の進化か!ケルピーの骨とかを食べたんで、LVUPしたんだ」
「エンジェリングスライムかい?」
「くくるーー!!」
ブルンは、以前と大きさが変わらないが、頭の上の輪っかが光っており、翼が背中にはえていた。
ぱたぱたと、飛んだ。
まだぎこちなく、天井にぶつかって落っこちてきた。
「ブルン、大丈夫?」
「くるるー!!」
「大丈夫みたいだな。魔石を買い取ってもらって、報酬金を受け取って帰ろう」
ケルピー15匹+ケルピーの仔馬の魔石で金貨25枚。報酬金はBランクの依頼であったので、金貨150枚だった。
「まぁまぁだね」
「うん、まぁまぁだ」
Bランクの依頼としては、普通なほうだった。
「僕らも、久しぶりに酒場で食事していかない?ケルピーの解体してたら、馬刺しが食べたくなちゃった」
「仕方ないな、京楽は」
二人は、酒場で新鮮な馬刺しを食べて、酒を飲むのだった。
----------------------------------------------------------
「ケルピーのメスを使った実験は終わりだ」
ワイングラスに真っ赤な血のようなワインを注ぎ込み、影の暗躍者はワインを飲み干した。
「さて、次は何を実験に使おうか?」
男の背後では、水槽の中に光る物体が蠢いていた。
地下に降りる。
ケルピーのメスが、黄金の試験官の中に並んでいた。
その黄金の液体を捨てると、試験官の中でケルピーのメスたちは声もなく液体化して崩れていくのだった。
エンシェントエルフとダークエルフ24
「水龍神の呪い?」
「ああ。なんでも、イリア帝国の片隅にある田舎村に、水龍神が住み着いているっていうんだ。その呪いを解いてほしいという、あやふやな依頼だ」
「ウォータードラゴンなら分かるけど、東洋の龍?」
「はっきりとは分からない」
「引き受けるの?」
京楽の言葉に、浮竹は首を傾げる。
「迷っている。本当に水龍神が出るなら、勝ち目はないかもしれない。でも、姿を見せないということは、人語をしゃべるモンスターが水龍神を偽っているのかもしれない。
水龍神の呪いは、ある日水龍神の住む湖の水を飲んだら、全身に発疹ができて少し熱が出る、それが村中に感染してしまって、今は封鎖されている。疫病の可能性があると検査されたんだが、どの病気でもないらしい。
ちなみに水龍神は月に女性を一人生贄によこせと言ってくるんだ。あと貢ぎものとして、毎週肉をたくさん供えるそうだ」
「ますますきな臭いね。それ、絶対違うモンスターの仕業だよ」
「引き受けたいんだが、いいか?」
「うん。生贄を欲するなんて、討伐に値する。引き受けよう」
Aランクの依頼だった。
ひっぺがして、受付嬢に依頼書を渡し、受理してもらう。
そのまま、行ったことのある一番近い町に空間転移して、そこから馬車で依頼の出ている田舎のボエナ村を目指した。
ブルンにも、念のためについてきてもらった。
「くくるーー」
ブルンは旅行だと思っているようで、はしゃいでいた。
「ブルン、今回は旅行じゃないぞ。多分だけど、水龍神になりすましているモンスターの討伐だ」
「くくるー!」
「え、任せろって?ブルンは頼むしいねぇ」
浮竹と京楽は、馬車の上でひと時の平和を楽しむのであった。
-------------------------------------------
村に到着すると、村の出入り口は封鎖されており、帝国の兵士が見張りをしていた。
「誰だ!」
「冒険者ギルドの者だよ」
「これは失礼した。村長の家まで案内しよう」
浮竹と京楽とブルンは、村の中央になるやや大きめの家に入った。
「おお、冒険者の方か。どうか、水龍神の呪いを解いて欲しい・・・・・・」
「くくるーー!!」
ヒーリングスライムのブルンは、全身に発疹のできていた少し熱のある村長に、ヒールの魔法をかけた。
「おお、体が元に・・・・」
ブルンの魔法は、神に匹敵するヒールだ。
病気でも癒してしまう。
ただ、全ての病気が癒せるわけではない。症状を緩和するくらいか回復方向にもっていくことはできた。
「ブルンで治るってことは、病気の可能性もあるけど、一番疑わしいのは毒だね。村長、見張りをしている兵士たちはどこで水を飲んでいる?」
「はぁ、湧き水のある裏山のほうの水を飲んでいます」
「ますます毒が疑わしい」
村長は、泣いて浮竹と京楽に縋りついてきた。
「水龍神の呪いを、どうか癒してください。そして、あさって生贄になる予定だった村の少女を助けてください!」
まずは、村人を全員集めて、ブルン魔法の効果範囲を広げてもらい、全員に一斉にヒールをかけた。
「ああ、発疹が・・」
「熱も下がったぞ!」
「湖の水は、飲まないようにしてください!」
浮竹がそういうと、人々は困惑した。
「でも、この村に井戸がないんです」
「浦山の湧き水を使ってください」
「わかりました。みんな、聞いたであろう。この方たちが、水龍神の呪いを解いてくださり、水龍神の討伐もおこなってくださるそうだ!」
わあああと、皆喜びあった。
「ねぇ、大丈夫、浮竹?」
「俺の感が当たっていたら、大丈夫だ」
そのまま、湖の水を調べると、微量だが毒が発見された。確かに呪いによるものだった。
少し飲むだけならいいが、ずっと飲んでいると発疹や発熱をする毒であった。毒自体は弱いが、村人たちが今後も湖の水を使えるように、ブルンにお願いして、ヒールの対象を湖に向けた。
湖全体が光り輝き、毒が消えた。
「おお、湖が、元の美しい輝きを・・・・・」
「ありがとうございます!あなたたちは村の恩人です。どうか、このまま水龍神を退治してください!」
その日は村長の家に泊まり、生贄になる少女の変わりに、浮竹が女の衣をいつもの冒険者の服の上からまとい、船に乗せられて、水龍神が住んでいるという、滝のところまでやってきた。
滾の裏側は洞窟になっており、そこに入るように促されて、浮竹だけでなく、空を飛んでついてきていた京楽も、洞窟の天井すれすれを飛んで、洞窟の中に入った。
「よくやってきた。我は水龍神である。さぁ、そのナイフで自分の首を切るのだ。汝の生命の雫はこの水龍神に宿り、村を守るであろう」
洞窟の中は、深い霧に覆われていた。
霧の奥で、うねる水龍神らしき影が見えた。
「さぁ、我が生贄となれ。汝の血肉は我のものとなり、この村を永遠に繁栄させるであろう」
「ウィンドトルネード!」
京楽が、風の魔法で霧を追い払うと、水龍神の形をした人間が作ったであろう木のはりぼてがあった。
「何をする!神の怒りが怖くないのか!」
また、霧が出てきた。
浮竹は、言われた通りに首をナイフで切ったふりをした。
モンスターは血の匂いに敏感なので、かわいそうだがかわりに息の根を止めていた鶏の血を浴びて、地面に滴らせた。
「うむ、それでよい」
霧の中から現れのは、なんとマンティコアであった。
「くくく、美味そうな女だ」
「そこまでだよ!」
「誰だ!」
洞窟の天井すれすれを飛んでいた京楽が、マンティコアを睨みつけて、浮竹の傍に降りてきて合図する。
浮竹は、隠しもっていたミスリルの剣でマンティコアのライオンの胴体を突き刺した。
「ぐおおおおお!!」
「マンティコア如きが水龍神の真似ねぇ。グラビティ・ゼロ!」
京楽は重力の魔法でマンティコアを押しつぶしにかかる。
「ぬおおおおおお!あの方に、力をもらったのだ!」
ぐぐぐぐっと、週十倍の重量が降っているのに、立ち上がる。
「ウォータースパイラル!クリエイトデッドリーボイズン!!」
水の槍に猛毒を付与して、浮竹はマンティコアを貫いた。
「があああ、毒だと!ぬああああ!!!」
ビクンビクンと痙攣して、マンティコアは動かなくなった。
「ブルン、この毒を浄化してくれ」
「くるるーー」
ブルンに、浮竹が作り出した猛毒中の猛毒を、ただの水に戻してもらった。
「湖にでも流れていくと、魚が死んで水を飲んだ人間も死ぬからな」
「うわ。浮竹また凄い毒を作ったんだね」
「エインの毒。一滴で死ぬ人間の数は数百万。もしも湖に流れたら、生態系が確実に狂う」
「うへー。エインの毒かい。またやっかいな毒を・・・」
かつて、賢者の中の賢者と呼ばれたエインの作った毒で、その毒で王国の民を死滅させてしまい、エインは自害した。
エインの毒と呼ばれ、原液はもうこの世界には存在しない。
薄めた毒が、とある王国の宝物庫に眠っているくらいだ。
「浮竹、これまた死体の毒も浄化するの?」
「もちろんだ。ブルン、頼む」
「くくう」
ブルンに浄化してもらい、マンティコアを解体して魔石だけを取り出した。
霧は、魔法を使って出していたらしい。
洞窟の奥に進むと、女性と子供のものらしい遺骨が3体分確認できて、きちんと埋葬するためにアイテムポケットに入れた。
マンティコアの体もアイテムポケットに入れる。素材にはならないが、村人たちに説明するためにもって帰ることにした。
「それにしてもこの水龍神の形をしたはりぼて、明らかに人の力によるものだね」
「そうだな。裏で暗躍しているという、あいつの仕業かもしれない」
全ギルドで指名手配されている、名も無き暗躍者のことであった。
「とりあえず、村に戻ろう」
「うん」
-------------------------------------------------------------------
「そうだったのですか・・・アンティコアが、水龍神のふりを・・・・」
「洞窟の奥で、3体分の遺骨を見つけた。ここに出す」
アイテムポケットから、遺骨と遺品らしきものとボロボロの服をだした。
「いやああ、ヨハン!」
「あああ、ミレーネ!」
「アリス・・・・・」
肉親であった者たちは、遺骨や遺品、ボロボロの服を手に泣きだすのであった。
「それにしても、何故王国軍の兵士は水龍神の退治をしてくれなかったんだ?」
「それが、上の者からそう命令されていると言われて・・・」
村人と一緒に集まった兵士たちは、ある男からそう言われたのだが、それが女帝の言葉であると信じ切っていた、今考えたらおかしいと、言い出した。
「これも、影の暗躍者のせいかな」
「多分な」
こうやって水龍神の呪いを解くクエストは終わった。
村人たちから、金はないが、たくさんの食品をもらった。
イアラ帝国の帝都アスランの冒険者ギルドで、マンティコアの魔石を鑑定してもらうと、マンティコアそのものが人工的に作られたモンスターだと発覚した。
オカマのキャサリンのギルドマスターに呼ばれて、今回のマンティコアの件は他言無用だと言われた。
「全く、ギルドもギルドで、どうして隠すのかな~?」
「無用な混乱を避けるためだろう。Bランク以上の冒険者は、一応陰で暗躍する者がいると教えているが、実際に暗躍した後にあたるの俺たちか、Sランク冒険者らしい」
「まぁ、今回報酬金ははずんでもらったから、いいけどね」
補習は金貨450枚と、マンティコアの人工的な魔石は高純度のエネルギーになるらしく、金貨100枚で買いとってもらえて、合計金貨550枚の収入になった、
「さて、エインの毒のことは他言無用だね?」
「当たり前だ。作り出せる者がいると分かると、暗殺に使われる。京楽、秘密だぞ?」
「ふふ、君と秘密を共有し合うのは、なんだか楽しいね」
「まぁ、共有する秘密はお前がダークエルフであることも含まれているが」
「それでも、秘密を共有するのは、お互いがかけがえのないパートナーってことで、安心できるよ」
「とりあえず、今日は帰って飯を食って風呂に吐いて寝よう。俺は枕が変わると眠れないタイプなんだ。さっさと寝たい」
ふあああと、大きな欠伸をして、浮竹と京楽は帰路につくのであった。
------------------------------------------------------------------
「ふ、しょせんはマンティコア。作り出しても、脅威にすらならぬ、か」
茶色の髪の、全ギルドで指名手配になっているその男は、地下に降りていく。
地下には、いっぱい試験官が並び、そこではいろんなモンスターの幼体が、黄金に輝く液体の中で浮遊していた。
「さて、次はどれにしようか・・・・・・」
「ああ。なんでも、イリア帝国の片隅にある田舎村に、水龍神が住み着いているっていうんだ。その呪いを解いてほしいという、あやふやな依頼だ」
「ウォータードラゴンなら分かるけど、東洋の龍?」
「はっきりとは分からない」
「引き受けるの?」
京楽の言葉に、浮竹は首を傾げる。
「迷っている。本当に水龍神が出るなら、勝ち目はないかもしれない。でも、姿を見せないということは、人語をしゃべるモンスターが水龍神を偽っているのかもしれない。
水龍神の呪いは、ある日水龍神の住む湖の水を飲んだら、全身に発疹ができて少し熱が出る、それが村中に感染してしまって、今は封鎖されている。疫病の可能性があると検査されたんだが、どの病気でもないらしい。
ちなみに水龍神は月に女性を一人生贄によこせと言ってくるんだ。あと貢ぎものとして、毎週肉をたくさん供えるそうだ」
「ますますきな臭いね。それ、絶対違うモンスターの仕業だよ」
「引き受けたいんだが、いいか?」
「うん。生贄を欲するなんて、討伐に値する。引き受けよう」
Aランクの依頼だった。
ひっぺがして、受付嬢に依頼書を渡し、受理してもらう。
そのまま、行ったことのある一番近い町に空間転移して、そこから馬車で依頼の出ている田舎のボエナ村を目指した。
ブルンにも、念のためについてきてもらった。
「くくるーー」
ブルンは旅行だと思っているようで、はしゃいでいた。
「ブルン、今回は旅行じゃないぞ。多分だけど、水龍神になりすましているモンスターの討伐だ」
「くくるー!」
「え、任せろって?ブルンは頼むしいねぇ」
浮竹と京楽は、馬車の上でひと時の平和を楽しむのであった。
-------------------------------------------
村に到着すると、村の出入り口は封鎖されており、帝国の兵士が見張りをしていた。
「誰だ!」
「冒険者ギルドの者だよ」
「これは失礼した。村長の家まで案内しよう」
浮竹と京楽とブルンは、村の中央になるやや大きめの家に入った。
「おお、冒険者の方か。どうか、水龍神の呪いを解いて欲しい・・・・・・」
「くくるーー!!」
ヒーリングスライムのブルンは、全身に発疹のできていた少し熱のある村長に、ヒールの魔法をかけた。
「おお、体が元に・・・・」
ブルンの魔法は、神に匹敵するヒールだ。
病気でも癒してしまう。
ただ、全ての病気が癒せるわけではない。症状を緩和するくらいか回復方向にもっていくことはできた。
「ブルンで治るってことは、病気の可能性もあるけど、一番疑わしいのは毒だね。村長、見張りをしている兵士たちはどこで水を飲んでいる?」
「はぁ、湧き水のある裏山のほうの水を飲んでいます」
「ますます毒が疑わしい」
村長は、泣いて浮竹と京楽に縋りついてきた。
「水龍神の呪いを、どうか癒してください。そして、あさって生贄になる予定だった村の少女を助けてください!」
まずは、村人を全員集めて、ブルン魔法の効果範囲を広げてもらい、全員に一斉にヒールをかけた。
「ああ、発疹が・・」
「熱も下がったぞ!」
「湖の水は、飲まないようにしてください!」
浮竹がそういうと、人々は困惑した。
「でも、この村に井戸がないんです」
「浦山の湧き水を使ってください」
「わかりました。みんな、聞いたであろう。この方たちが、水龍神の呪いを解いてくださり、水龍神の討伐もおこなってくださるそうだ!」
わあああと、皆喜びあった。
「ねぇ、大丈夫、浮竹?」
「俺の感が当たっていたら、大丈夫だ」
そのまま、湖の水を調べると、微量だが毒が発見された。確かに呪いによるものだった。
少し飲むだけならいいが、ずっと飲んでいると発疹や発熱をする毒であった。毒自体は弱いが、村人たちが今後も湖の水を使えるように、ブルンにお願いして、ヒールの対象を湖に向けた。
湖全体が光り輝き、毒が消えた。
「おお、湖が、元の美しい輝きを・・・・・」
「ありがとうございます!あなたたちは村の恩人です。どうか、このまま水龍神を退治してください!」
その日は村長の家に泊まり、生贄になる少女の変わりに、浮竹が女の衣をいつもの冒険者の服の上からまとい、船に乗せられて、水龍神が住んでいるという、滝のところまでやってきた。
滾の裏側は洞窟になっており、そこに入るように促されて、浮竹だけでなく、空を飛んでついてきていた京楽も、洞窟の天井すれすれを飛んで、洞窟の中に入った。
「よくやってきた。我は水龍神である。さぁ、そのナイフで自分の首を切るのだ。汝の生命の雫はこの水龍神に宿り、村を守るであろう」
洞窟の中は、深い霧に覆われていた。
霧の奥で、うねる水龍神らしき影が見えた。
「さぁ、我が生贄となれ。汝の血肉は我のものとなり、この村を永遠に繁栄させるであろう」
「ウィンドトルネード!」
京楽が、風の魔法で霧を追い払うと、水龍神の形をした人間が作ったであろう木のはりぼてがあった。
「何をする!神の怒りが怖くないのか!」
また、霧が出てきた。
浮竹は、言われた通りに首をナイフで切ったふりをした。
モンスターは血の匂いに敏感なので、かわいそうだがかわりに息の根を止めていた鶏の血を浴びて、地面に滴らせた。
「うむ、それでよい」
霧の中から現れのは、なんとマンティコアであった。
「くくく、美味そうな女だ」
「そこまでだよ!」
「誰だ!」
洞窟の天井すれすれを飛んでいた京楽が、マンティコアを睨みつけて、浮竹の傍に降りてきて合図する。
浮竹は、隠しもっていたミスリルの剣でマンティコアのライオンの胴体を突き刺した。
「ぐおおおおお!!」
「マンティコア如きが水龍神の真似ねぇ。グラビティ・ゼロ!」
京楽は重力の魔法でマンティコアを押しつぶしにかかる。
「ぬおおおおおお!あの方に、力をもらったのだ!」
ぐぐぐぐっと、週十倍の重量が降っているのに、立ち上がる。
「ウォータースパイラル!クリエイトデッドリーボイズン!!」
水の槍に猛毒を付与して、浮竹はマンティコアを貫いた。
「があああ、毒だと!ぬああああ!!!」
ビクンビクンと痙攣して、マンティコアは動かなくなった。
「ブルン、この毒を浄化してくれ」
「くるるーー」
ブルンに、浮竹が作り出した猛毒中の猛毒を、ただの水に戻してもらった。
「湖にでも流れていくと、魚が死んで水を飲んだ人間も死ぬからな」
「うわ。浮竹また凄い毒を作ったんだね」
「エインの毒。一滴で死ぬ人間の数は数百万。もしも湖に流れたら、生態系が確実に狂う」
「うへー。エインの毒かい。またやっかいな毒を・・・」
かつて、賢者の中の賢者と呼ばれたエインの作った毒で、その毒で王国の民を死滅させてしまい、エインは自害した。
エインの毒と呼ばれ、原液はもうこの世界には存在しない。
薄めた毒が、とある王国の宝物庫に眠っているくらいだ。
「浮竹、これまた死体の毒も浄化するの?」
「もちろんだ。ブルン、頼む」
「くくう」
ブルンに浄化してもらい、マンティコアを解体して魔石だけを取り出した。
霧は、魔法を使って出していたらしい。
洞窟の奥に進むと、女性と子供のものらしい遺骨が3体分確認できて、きちんと埋葬するためにアイテムポケットに入れた。
マンティコアの体もアイテムポケットに入れる。素材にはならないが、村人たちに説明するためにもって帰ることにした。
「それにしてもこの水龍神の形をしたはりぼて、明らかに人の力によるものだね」
「そうだな。裏で暗躍しているという、あいつの仕業かもしれない」
全ギルドで指名手配されている、名も無き暗躍者のことであった。
「とりあえず、村に戻ろう」
「うん」
-------------------------------------------------------------------
「そうだったのですか・・・アンティコアが、水龍神のふりを・・・・」
「洞窟の奥で、3体分の遺骨を見つけた。ここに出す」
アイテムポケットから、遺骨と遺品らしきものとボロボロの服をだした。
「いやああ、ヨハン!」
「あああ、ミレーネ!」
「アリス・・・・・」
肉親であった者たちは、遺骨や遺品、ボロボロの服を手に泣きだすのであった。
「それにしても、何故王国軍の兵士は水龍神の退治をしてくれなかったんだ?」
「それが、上の者からそう命令されていると言われて・・・」
村人と一緒に集まった兵士たちは、ある男からそう言われたのだが、それが女帝の言葉であると信じ切っていた、今考えたらおかしいと、言い出した。
「これも、影の暗躍者のせいかな」
「多分な」
こうやって水龍神の呪いを解くクエストは終わった。
村人たちから、金はないが、たくさんの食品をもらった。
イアラ帝国の帝都アスランの冒険者ギルドで、マンティコアの魔石を鑑定してもらうと、マンティコアそのものが人工的に作られたモンスターだと発覚した。
オカマのキャサリンのギルドマスターに呼ばれて、今回のマンティコアの件は他言無用だと言われた。
「全く、ギルドもギルドで、どうして隠すのかな~?」
「無用な混乱を避けるためだろう。Bランク以上の冒険者は、一応陰で暗躍する者がいると教えているが、実際に暗躍した後にあたるの俺たちか、Sランク冒険者らしい」
「まぁ、今回報酬金ははずんでもらったから、いいけどね」
補習は金貨450枚と、マンティコアの人工的な魔石は高純度のエネルギーになるらしく、金貨100枚で買いとってもらえて、合計金貨550枚の収入になった、
「さて、エインの毒のことは他言無用だね?」
「当たり前だ。作り出せる者がいると分かると、暗殺に使われる。京楽、秘密だぞ?」
「ふふ、君と秘密を共有し合うのは、なんだか楽しいね」
「まぁ、共有する秘密はお前がダークエルフであることも含まれているが」
「それでも、秘密を共有するのは、お互いがかけがえのないパートナーってことで、安心できるよ」
「とりあえず、今日は帰って飯を食って風呂に吐いて寝よう。俺は枕が変わると眠れないタイプなんだ。さっさと寝たい」
ふあああと、大きな欠伸をして、浮竹と京楽は帰路につくのであった。
------------------------------------------------------------------
「ふ、しょせんはマンティコア。作り出しても、脅威にすらならぬ、か」
茶色の髪の、全ギルドで指名手配になっているその男は、地下に降りていく。
地下には、いっぱい試験官が並び、そこではいろんなモンスターの幼体が、黄金に輝く液体の中で浮遊していた。
「さて、次はどれにしようか・・・・・・」
エンシェントエルフとダークエルフ23
セイレーン。
美しい、海の魔物。
歌声で男を惑わし、食う。
そんなセイレーンは、冒険者によって絶滅させられて、残ったのは無人島なんかに住むセイレーンだけだった。
だが、ある港町でセイレーンが大量に湧き出した。
ある人物の証言によると、茶色の髪に茶色の瞳の、冷たく整った顔立ちの男が何かを海に投げ入れて、そこからわさわさとセイレーンが湧き出てきたのだという。
その男は、ギルドで指名手配されている、名も分からない暗躍者であった。
その男が召還したセイレーンは、ただ相手を惑わすだけでなく、歌声を聞くと過去のトラウマを生み出すらしい。
早速ギルドから派遣された浮竹と京楽は、耳栓をしながら、セイレーンに小舟で近づき、炎の魔法で殺していった。
セイレーンが、大きな歌声をあげだした。
それは耳栓をしていても聞こえる、魂の歌だった。
京楽は、自分を捨て去っていく灼熱のシャイターンを見ていた。そして、同胞に拾われたが、石を投げられてまた捨てられて、エンシェントエルフの族長に拾われて、牢屋に閉じ込められて・・・・・。
そこで終わりだったら、京楽はセイレーンに殺されていただろう。浮竹の顔が、脳裏をよぎり、正気に戻った京楽は、近くにいたセイレーンに炎の魔法を放った。
「フレイムロンド!」
「GIYAAAAAAAA!!」
すご叫び声をあげて、セイレーンは死んでいった。
浮竹を探すと、浮竹は小舟の上で倒れていた。
セイレーンにやられたのか、耳から血を流していた。
「ファイアワールド!」
京楽は怒って、その一帯の海の水と共に全てを蒸発させた。
浮竹は、セイレーンを倒しても、起きなかった。
心配になって、マイホームまで戻って、冒険者ギルドに報告だけして魔石は蒸発させたことを報告すると、調査員が派遣されて、セイレーンは綺麗さっぱりいなくなったとのことで、報酬金の金貨180枚を手に、浮竹の元に戻った。
けれど、浮竹は目覚めなかった。
医者に見せると、何かの夢を見て昏睡状態であると言われた。
京楽は、打てる手がなくて、師匠である剣士京楽の家の前に空間転移した。
「浮竹が、起きないんだ」
『どうしたの?』
「浮竹が、起きてくれないんだ・・・・」
京楽は、ぽろぽろと泣きだした。
夢でシャイターンに捨てられて、同胞に石を投げられまた捨てられて、エンシェントエルフに拾われて幽閉されていた時の哀しさが、何故か今のになって襲ってきて、泣いていた。
『ほら、エルフの京楽。これで涙を拭け』
「うん、突然ごめんね。浮竹が起きないんだ・・・・・」
事情を説明すると、剣士の京楽はこう言った。
『トラウマのない人間は、昏睡状態に入って幸せな夢を見てそのまま食い殺されることがあるらしい。今のエルフの浮竹は、きっと幸せな夢を見ていて起きないんでしょ』
「どうすれば起きるの?」
『精神世界に入り込むしかないな。幸い、俺ができる』
「ううん、僕が精神世界に入る。だから、その手助けを頼むよ」
剣士の京楽と精霊の浮竹は、エルフの二人のマイホームに来て、眠り続けるエルフの浮竹を見た。
『こりゃ、完全にセイレーンの世界に取り込まれてるね。君が精神世界に行きたいの?』
「うん」
『浮竹、頼めるかい?』
『ああ。一緒に精神世界にもぐって、エルフの京楽だけ好きに行動できるようにしよう』
「ありがとう」
エルフの京楽は、精霊の浮竹と手を繋ぎ合いながら、エルフの浮竹とも手を繋ぎあった。
ゆっくりとスリープの呪文を剣士の京楽にかけられて、意識が落ちていく。剣士の京楽は、魔力を維持するために、精霊の浮竹と手を繋いだ。
気づくと、そこは浮竹の精神世界だった。
色がない、モノクロの世界だった。
幼い浮竹がいた。同じように、幼い京楽がいた。
笑って、外で遊んでいる。
そんな夢だった。
「これが、浮竹の幸せな夢・・・・」
幼い京楽が閉じ込められると、その度に幼い浮竹が隠し通路を使って迎えにきてくれて、また二人で遊ぶ、そんな夢だった。
『お前との出会いが、幸せだったんだろう。この夢を、エルフの浮竹は繰り返し見ている』
「浮竹、帰ろう?」
「おじちゃん、だあれ?」
「僕は京楽取水。そっちの幼い子成長した姿だよ」
「おじちゃん、京楽なの?」
「そうだよ」
そう言って、エルフの京楽は幼い浮竹の頭を撫でた。
すると、世界が一瞬で色づいた。
幼いエルフの浮竹は、今と同じ年齢にまで成長していた。
「京楽・・・・迎えにきて、くれたのか?」
「うん、そうだよ」
「ありがとう、京楽」
精神世界で、浮竹は京楽にキスをした。
『見せつけてないで、戻るぞ。しっかり、エルフの俺の手を握ってやれ」
「うん!」
目を開けると、そこには目をあけて、涙を浮かべるエルフの浮竹がいた。
『無事、二人とも戻ってこれたようだな』
『浮竹、お疲れさま』
精霊の浮竹は、他人の精神世界に入るのは少し疲れるようで、剣士の京楽から甘めのオレンジ水をもらって、それをコクコクと飲んでいった。
「俺は・・・幸せな夢を見ていた。同じ夢を繰り返し見ていた。変わらない日々を望んでいた。
俺にもトラウマはあった。京楽の処刑が決定した日だった。でも、そんなことは完全に忘れて、ただ幸せな夢を見ていた・・・・」
エルフの浮竹が、ぽろぽろと涙を零した。
「あの日、俺が京楽を連れ出さないと、京楽は処刑されていた。それがとてつもなく怖くて、ただ幸せな夢を見ようとしていた」
『うん、それは悪いことじゃないよ』
「でも、真実から目を背けて、ただ幸せを願って・・・・俺は、我儘だ」
「浮竹、そんな我儘は誰でも持っているんだよ」
エルフの浮竹をは顔を上げると、エルフの京楽の胸に顔を埋めて、静かに泣きだした。
『じゃあ、僕らはいったん戻るね。また何かあったら、知らせて』
『伴侶を、大切にしろよ』
剣士の京楽と精霊の浮竹は、プルンを連れていたので、プルンの転移の魔法でロスピア王国の自宅へと戻っていった。
「怖かったんだ。長い長い間、お前と過ごした幼い時間が、なくなるのがすごく怖かったんだ」
「うん・・・・・」
「成長は遅いのに、でも成長は止まらなくて、お前が処刑されることを知っていたのに、俺は隠していた。ずっとずっと、幼いままでいたかった」
「うん。でも、人はいずれ変わるものだよ」
「変わるのが、怖かったんだ。お前が外の世界をもっと知って、俺の傍からいなくなるのが、怖くて怖くて、俺は・・・・・」
京楽は、静かに浮竹の唇に唇を重ねていた。
「京楽?」
「あの日、僕を助けてくれてありがとう。ずっと言ってなかったね。僕に、外の世界を見せてくれてありがとう。僕を選んでくれて、ありがとう。僕には、君だけだよ。君だけが、僕の全てだ」
「京楽・・・・・・・」
浮竹は、また泣きだした。
「ああもう、何をすれば泣き止んでくれるの?」
「くくるーーー?」
「ほら、ブルンも心配してるよ」
「うん。ありがとう、京楽。俺と出会ってくれて、ありがとう。俺を選んでくれてありがとう。たくさんのありがとうを、お前に」
「うん」
二人は、また唇を重ねあった。
「一緒に歩んでいこう。これからの人生も」
「ああ」
セイレーンの事件は、これで全て終わったのだが、今だにセイレーンを港町に召還した者の影は、分からなかった。
------------------------------------------------------
「エルフの京楽と浮竹・・・・また、面白い存在だな」
茶色の髪のその人物は、セイレーンを召還した人そのものだった。
いや、人というのが正しいの分からない。
その存在は歪(いびつ)で歪んでいた。
神になるのだ。
その人物は、悲願のために世界を渾沌に導こうとしていた。
そして、世界はゆっくりとその男の存在を受けいれていく。
弾くとしたら、剣士の京楽か、あるいは精霊の浮竹。
男は、ワインを口にした。
真っ赤なワインは、人の血と同じ色だった。
美しい、海の魔物。
歌声で男を惑わし、食う。
そんなセイレーンは、冒険者によって絶滅させられて、残ったのは無人島なんかに住むセイレーンだけだった。
だが、ある港町でセイレーンが大量に湧き出した。
ある人物の証言によると、茶色の髪に茶色の瞳の、冷たく整った顔立ちの男が何かを海に投げ入れて、そこからわさわさとセイレーンが湧き出てきたのだという。
その男は、ギルドで指名手配されている、名も分からない暗躍者であった。
その男が召還したセイレーンは、ただ相手を惑わすだけでなく、歌声を聞くと過去のトラウマを生み出すらしい。
早速ギルドから派遣された浮竹と京楽は、耳栓をしながら、セイレーンに小舟で近づき、炎の魔法で殺していった。
セイレーンが、大きな歌声をあげだした。
それは耳栓をしていても聞こえる、魂の歌だった。
京楽は、自分を捨て去っていく灼熱のシャイターンを見ていた。そして、同胞に拾われたが、石を投げられてまた捨てられて、エンシェントエルフの族長に拾われて、牢屋に閉じ込められて・・・・・。
そこで終わりだったら、京楽はセイレーンに殺されていただろう。浮竹の顔が、脳裏をよぎり、正気に戻った京楽は、近くにいたセイレーンに炎の魔法を放った。
「フレイムロンド!」
「GIYAAAAAAAA!!」
すご叫び声をあげて、セイレーンは死んでいった。
浮竹を探すと、浮竹は小舟の上で倒れていた。
セイレーンにやられたのか、耳から血を流していた。
「ファイアワールド!」
京楽は怒って、その一帯の海の水と共に全てを蒸発させた。
浮竹は、セイレーンを倒しても、起きなかった。
心配になって、マイホームまで戻って、冒険者ギルドに報告だけして魔石は蒸発させたことを報告すると、調査員が派遣されて、セイレーンは綺麗さっぱりいなくなったとのことで、報酬金の金貨180枚を手に、浮竹の元に戻った。
けれど、浮竹は目覚めなかった。
医者に見せると、何かの夢を見て昏睡状態であると言われた。
京楽は、打てる手がなくて、師匠である剣士京楽の家の前に空間転移した。
「浮竹が、起きないんだ」
『どうしたの?』
「浮竹が、起きてくれないんだ・・・・」
京楽は、ぽろぽろと泣きだした。
夢でシャイターンに捨てられて、同胞に石を投げられまた捨てられて、エンシェントエルフに拾われて幽閉されていた時の哀しさが、何故か今のになって襲ってきて、泣いていた。
『ほら、エルフの京楽。これで涙を拭け』
「うん、突然ごめんね。浮竹が起きないんだ・・・・・」
事情を説明すると、剣士の京楽はこう言った。
『トラウマのない人間は、昏睡状態に入って幸せな夢を見てそのまま食い殺されることがあるらしい。今のエルフの浮竹は、きっと幸せな夢を見ていて起きないんでしょ』
「どうすれば起きるの?」
『精神世界に入り込むしかないな。幸い、俺ができる』
「ううん、僕が精神世界に入る。だから、その手助けを頼むよ」
剣士の京楽と精霊の浮竹は、エルフの二人のマイホームに来て、眠り続けるエルフの浮竹を見た。
『こりゃ、完全にセイレーンの世界に取り込まれてるね。君が精神世界に行きたいの?』
「うん」
『浮竹、頼めるかい?』
『ああ。一緒に精神世界にもぐって、エルフの京楽だけ好きに行動できるようにしよう』
「ありがとう」
エルフの京楽は、精霊の浮竹と手を繋ぎ合いながら、エルフの浮竹とも手を繋ぎあった。
ゆっくりとスリープの呪文を剣士の京楽にかけられて、意識が落ちていく。剣士の京楽は、魔力を維持するために、精霊の浮竹と手を繋いだ。
気づくと、そこは浮竹の精神世界だった。
色がない、モノクロの世界だった。
幼い浮竹がいた。同じように、幼い京楽がいた。
笑って、外で遊んでいる。
そんな夢だった。
「これが、浮竹の幸せな夢・・・・」
幼い京楽が閉じ込められると、その度に幼い浮竹が隠し通路を使って迎えにきてくれて、また二人で遊ぶ、そんな夢だった。
『お前との出会いが、幸せだったんだろう。この夢を、エルフの浮竹は繰り返し見ている』
「浮竹、帰ろう?」
「おじちゃん、だあれ?」
「僕は京楽取水。そっちの幼い子成長した姿だよ」
「おじちゃん、京楽なの?」
「そうだよ」
そう言って、エルフの京楽は幼い浮竹の頭を撫でた。
すると、世界が一瞬で色づいた。
幼いエルフの浮竹は、今と同じ年齢にまで成長していた。
「京楽・・・・迎えにきて、くれたのか?」
「うん、そうだよ」
「ありがとう、京楽」
精神世界で、浮竹は京楽にキスをした。
『見せつけてないで、戻るぞ。しっかり、エルフの俺の手を握ってやれ」
「うん!」
目を開けると、そこには目をあけて、涙を浮かべるエルフの浮竹がいた。
『無事、二人とも戻ってこれたようだな』
『浮竹、お疲れさま』
精霊の浮竹は、他人の精神世界に入るのは少し疲れるようで、剣士の京楽から甘めのオレンジ水をもらって、それをコクコクと飲んでいった。
「俺は・・・幸せな夢を見ていた。同じ夢を繰り返し見ていた。変わらない日々を望んでいた。
俺にもトラウマはあった。京楽の処刑が決定した日だった。でも、そんなことは完全に忘れて、ただ幸せな夢を見ていた・・・・」
エルフの浮竹が、ぽろぽろと涙を零した。
「あの日、俺が京楽を連れ出さないと、京楽は処刑されていた。それがとてつもなく怖くて、ただ幸せな夢を見ようとしていた」
『うん、それは悪いことじゃないよ』
「でも、真実から目を背けて、ただ幸せを願って・・・・俺は、我儘だ」
「浮竹、そんな我儘は誰でも持っているんだよ」
エルフの浮竹をは顔を上げると、エルフの京楽の胸に顔を埋めて、静かに泣きだした。
『じゃあ、僕らはいったん戻るね。また何かあったら、知らせて』
『伴侶を、大切にしろよ』
剣士の京楽と精霊の浮竹は、プルンを連れていたので、プルンの転移の魔法でロスピア王国の自宅へと戻っていった。
「怖かったんだ。長い長い間、お前と過ごした幼い時間が、なくなるのがすごく怖かったんだ」
「うん・・・・・」
「成長は遅いのに、でも成長は止まらなくて、お前が処刑されることを知っていたのに、俺は隠していた。ずっとずっと、幼いままでいたかった」
「うん。でも、人はいずれ変わるものだよ」
「変わるのが、怖かったんだ。お前が外の世界をもっと知って、俺の傍からいなくなるのが、怖くて怖くて、俺は・・・・・」
京楽は、静かに浮竹の唇に唇を重ねていた。
「京楽?」
「あの日、僕を助けてくれてありがとう。ずっと言ってなかったね。僕に、外の世界を見せてくれてありがとう。僕を選んでくれて、ありがとう。僕には、君だけだよ。君だけが、僕の全てだ」
「京楽・・・・・・・」
浮竹は、また泣きだした。
「ああもう、何をすれば泣き止んでくれるの?」
「くくるーーー?」
「ほら、ブルンも心配してるよ」
「うん。ありがとう、京楽。俺と出会ってくれて、ありがとう。俺を選んでくれてありがとう。たくさんのありがとうを、お前に」
「うん」
二人は、また唇を重ねあった。
「一緒に歩んでいこう。これからの人生も」
「ああ」
セイレーンの事件は、これで全て終わったのだが、今だにセイレーンを港町に召還した者の影は、分からなかった。
------------------------------------------------------
「エルフの京楽と浮竹・・・・また、面白い存在だな」
茶色の髪のその人物は、セイレーンを召還した人そのものだった。
いや、人というのが正しいの分からない。
その存在は歪(いびつ)で歪んでいた。
神になるのだ。
その人物は、悲願のために世界を渾沌に導こうとしていた。
そして、世界はゆっくりとその男の存在を受けいれていく。
弾くとしたら、剣士の京楽か、あるいは精霊の浮竹。
男は、ワインを口にした。
真っ赤なワインは、人の血と同じ色だった。
エンシェントエルフとダークエルフ22
それは、Aランクの緊急クエストだった。
森にトレントが住み着き、男性を襲って殺しては、肉体の一部を盗むというものだった。
すでに犠牲者の数は10人を超えており、緊急を要した。
「俺が囮になろう」
「だめだよ、危険すぎる!」
浮竹の言葉に、京楽はだめだと言う。
「でも、トレントだろう?森の精霊が、そんなに乱暴になるわけがない」
「それでも僕は反対だ。君が囮になるのなら、僕も囮になる」
「じゃあ、二人仲良く囮になろうか」
「そうだね」
結局、言い争いになる前に、二人で囮になる道を選んだ。
トレントの出るという森に、二人は手を麻の縄で繋ぎ合わせて、1人になることを避けた。
しゅるるるるる。
やってきたのが男性と分かったせいか、森が騒がしくなり、しゅるるると、蔦が這いまわる音がした。
どこからか、優しい歌声が流れてくる。
それに、急速な眠気を感じたが、皮膚に爪を食いこませることで、京楽は我慢した。浮竹は抗えず、意識を失っていた。
「うふふふふ。今度はエルフが二人・・・・そうね、あの方の右腕と左足首になってもらいましょう」
トレントが、姿を現した。
肌も露わな、緑色の皮膚をした美しい女性であった。
そのトレントの隣には、つぎはぎだらけの男の体があった。足りないのは、頭と右腕と左足首と左手。
普通なら、つぎはきだらけの肉体は腐っているだろうに、どういう処置を施しているのか、うじの一匹もわいておらず、死臭もしなくて新鮮なままだった、
「浮竹、起きて、浮竹!」
繋いでいた右手の麻でできた紐を引っ張る。
「ん・・・・・」
浮竹は意識を取り戻した。
「あら、あなたの顔は綺麗ね?あの方ほどじゃないけれど、その生首をいただきましょうか」
しゅるしゅると、蔦が這い寄ってきて、のこぎり状になった。
「く、フレイムロンド!」
「きゃああ、火は、火はいやあああ!!」
なんとかトレントは雨の魔法でスコールを降らせて、浮竹の魔法の炎を鎮火してしまった。
スコールはひどく、このままでは弱点である炎の魔法は使えなさそうだった。
「あの方を復活させるのよ。体を繋ぎ合わせれば、きっとあの方は復活して、また私に愛を囁いてくれるわ」
「愛しい、男がいたのか」
「そうよ。愛しいあの方をつくるために、その右腕を頂戴!」
浮竹は、氷の魔法を使った。
「エターナルアイシクルワールド」
こっちには這い寄ってくるトレントの体が氷つく。
しかし、死んだわけでもない。
氷はトレント全体を包み込んで、スコールが止んだ。
「ファイアフェニックス!」
京楽が炎の不死鳥を放つと、トレントが命よりも大事にしていた、つぎはぎだらけの体に火がついた。
「いやあああああ!愛しいあなたあああ!!私を、置いていかないでえええ!!」
「今度は、お前も一緒さ。ファイアフェニックス!」
「ああ・・・・あたしも、あなたの元へ行けるのね?」
「ああ、行けるとも」
浮竹は、優しい表情でトレントを灰にしていった。
灰からは、2つの芽がでていた。
「夢を見ていたんだ。トレントには恋した男がいた。男もトレントを愛していた。でも、男には婚約者がいて、逆上して男を殺してしまった。
トレントは泣き叫んだ。すると、ある男が、男の体を繋ぎ合わせて、恋人によく似た人形を作ったら、それに愛しい男の魂を宿してやると言ったんだ。
トレントは、その言葉を信じて、森を歩く旅人の男を、歌声で眠らせて殺しては、体の一部分を奪い、繋ぎ合わせた。
繋ぎ合わせた肉体に、愛した男の命が再び宿ると信じて・・・・・・」
「かわいそうな、精霊だったんだね」
「ああ。でも、人を殺した。人を殺したり殺そうとするモンスターは倒される。トレントは元々森の精霊だ。悪い存在じゃない」
「トレントを騙したそのある男というのが鍵だね」
「ああ。トレントは始末してしまったからもう聞き出しようがないが、最近謎の男が暗躍していると聞く。その男なのかもしれない」
「とりあえず、トレントの魔石を持って帰ろう」
浮竹と京楽は、なんとも言えない気分で冒険者ギルドに戻ってくると、魔石を受付嬢に渡した。
「買取り額は金貨30枚になります。緊急クエスト達成として、報酬金金貨350枚に、即日の対応だったので、報酬金が金貨50枚上乗せされます」
合計で金貨430枚になったが、二人の心は晴れないままだった。
「いやん、何そんな辛気臭い顔してるのお?明るくいきましょうよ。ああん、あたしのあそこも明るくいっちゃう♡」
「冗談に付き合っている気分じゃないんだ」
「僕もだよ。消えてくれない?」
「ひどおおい!キャシー、泣いちゃう!」
「勝手に泣け」
「酷い顔だ。ああ、元からだったかい」
浮竹と京楽は、キャサリンに事情の全てを話して、裏で暗躍しているらしい男の影を、ギルド側も掴んでいると聞いて、真剣な表情になった。
「その男の正体は?」
「まだ、分からないわ。ただ、茶色の髪と瞳で、凄く冷徹だそうよ。なんでも、自分が神になるって言ってたらしいの」
「人間が神に・・・・そんなの、なれるわけないのに」
「あら、そうでもないわよ?魔神や邪神は、人間からでもなれるわよ?なりかたは教えてあげないけれどね?♡」
浮竹と京楽は、トレントが灰になった後にでてきた芽を、鉢植えに植え替えて、帰宅した。
太陽をいっぱい浴びれる、南向きのバルコニーに置くと、一夜で成長し、次の日は花を咲かせて、小さなトレントが生まれた。
「君の名は?」
「名前なんてない」
「じゃあ、レトと名乗るといい」
「トレントだから、レト?安直ね」
「森に帰りたいかい?」
「帰りたくないわ。ここで暮らすわ」
レトは、寂しそうに笑った。
じゃあ、同居人を紹介しなくちゃな。こっちはエンシェントエルフの浮竹十四郎。君のもう一人のマスターだ。それから、ヒーリングスライムのブルン」
「くるるる」
「かわいい」
「君も、十分かわいいよ。ねぇ、浮竹も、そう思うでしょ?」
「知るか」
「ふふっ。あのエンシェントエルフ、私にあなたを取られたと思って嫉妬してるわ」
「すごいね。君、人の心が読めるのかい?」
京楽は、レトと名付けたトレントの小さな頭を撫でた。
「ある程度はね。あなたはダークエルフ。皮膚の色が違うから、種族を偽っている」
「ほんとにすごいね」
「よしてよ。あたしは、ただのレトいう名の小さなトレント。それだけよ」
「そうだね。君はレト」
京楽は、レトを手の平に乗せた。そんな小さなサイズのトレントだった。
「哀しい記憶を持っているのね」
「なんだい?」
「あなたは灼熱のシャイターンに捨てられ、迫害されてきた。でも、浮竹十四郎と出会って、全てが変わった」
「うん、そうだよ」
「じゃあ、早くその浮竹って人のところに行ってあげて。凄く悲しんでる」
「分かったよ」
京楽は、レトを植木鉢に戻すと、浮竹の後を追う。
「浮竹」
「なんだ」
「僕が愛しているのは、浮竹だけだよ。あのトレントには同情しか抱いていない」
抱きしめられてキスされて、浮竹は真っ赤になった。
「な、何をする!」
「いや、君が小さなトレントなんかに嫉妬しちゃって、かわいいなぁと思って」
「嫉妬してなんか!」
浮竹は叫びかけてやめた。
「嫉妬、してた。少しだけ」
京楽は、浮竹の顎に手をかけて、ディープキスをしていた。
「んっ」
「ふふ、かわいいね。食べちゃいたい」
「まだ昼間だぞ」
「そうだね」
クスクスと、京楽が笑うものだから、浮竹も嫉妬心を忘れてクスクスと二人で笑いあった。
「ねぇ、今日いい?」
「ばか、そういうこといちいち聞くな。んっ」
またキスをされた。
エルフに欲が全くないわけではないのだ。
ただ、薄いだけで。
-----------------------------------------------------------------------------
「そうか、あのトレントは死んだか。呆気ないものだ」
その男は、背が高く茶色の紙に茶色の瞳をしていた。
その男は、世界を渾沌に陥れようと暗躍していた。
神になろうとしていた。
神になり、剣士の京楽を破壊神にしようともくろんでいた。
その男の名は、まだ分からなかった。
森にトレントが住み着き、男性を襲って殺しては、肉体の一部を盗むというものだった。
すでに犠牲者の数は10人を超えており、緊急を要した。
「俺が囮になろう」
「だめだよ、危険すぎる!」
浮竹の言葉に、京楽はだめだと言う。
「でも、トレントだろう?森の精霊が、そんなに乱暴になるわけがない」
「それでも僕は反対だ。君が囮になるのなら、僕も囮になる」
「じゃあ、二人仲良く囮になろうか」
「そうだね」
結局、言い争いになる前に、二人で囮になる道を選んだ。
トレントの出るという森に、二人は手を麻の縄で繋ぎ合わせて、1人になることを避けた。
しゅるるるるる。
やってきたのが男性と分かったせいか、森が騒がしくなり、しゅるるると、蔦が這いまわる音がした。
どこからか、優しい歌声が流れてくる。
それに、急速な眠気を感じたが、皮膚に爪を食いこませることで、京楽は我慢した。浮竹は抗えず、意識を失っていた。
「うふふふふ。今度はエルフが二人・・・・そうね、あの方の右腕と左足首になってもらいましょう」
トレントが、姿を現した。
肌も露わな、緑色の皮膚をした美しい女性であった。
そのトレントの隣には、つぎはぎだらけの男の体があった。足りないのは、頭と右腕と左足首と左手。
普通なら、つぎはきだらけの肉体は腐っているだろうに、どういう処置を施しているのか、うじの一匹もわいておらず、死臭もしなくて新鮮なままだった、
「浮竹、起きて、浮竹!」
繋いでいた右手の麻でできた紐を引っ張る。
「ん・・・・・」
浮竹は意識を取り戻した。
「あら、あなたの顔は綺麗ね?あの方ほどじゃないけれど、その生首をいただきましょうか」
しゅるしゅると、蔦が這い寄ってきて、のこぎり状になった。
「く、フレイムロンド!」
「きゃああ、火は、火はいやあああ!!」
なんとかトレントは雨の魔法でスコールを降らせて、浮竹の魔法の炎を鎮火してしまった。
スコールはひどく、このままでは弱点である炎の魔法は使えなさそうだった。
「あの方を復活させるのよ。体を繋ぎ合わせれば、きっとあの方は復活して、また私に愛を囁いてくれるわ」
「愛しい、男がいたのか」
「そうよ。愛しいあの方をつくるために、その右腕を頂戴!」
浮竹は、氷の魔法を使った。
「エターナルアイシクルワールド」
こっちには這い寄ってくるトレントの体が氷つく。
しかし、死んだわけでもない。
氷はトレント全体を包み込んで、スコールが止んだ。
「ファイアフェニックス!」
京楽が炎の不死鳥を放つと、トレントが命よりも大事にしていた、つぎはぎだらけの体に火がついた。
「いやあああああ!愛しいあなたあああ!!私を、置いていかないでえええ!!」
「今度は、お前も一緒さ。ファイアフェニックス!」
「ああ・・・・あたしも、あなたの元へ行けるのね?」
「ああ、行けるとも」
浮竹は、優しい表情でトレントを灰にしていった。
灰からは、2つの芽がでていた。
「夢を見ていたんだ。トレントには恋した男がいた。男もトレントを愛していた。でも、男には婚約者がいて、逆上して男を殺してしまった。
トレントは泣き叫んだ。すると、ある男が、男の体を繋ぎ合わせて、恋人によく似た人形を作ったら、それに愛しい男の魂を宿してやると言ったんだ。
トレントは、その言葉を信じて、森を歩く旅人の男を、歌声で眠らせて殺しては、体の一部分を奪い、繋ぎ合わせた。
繋ぎ合わせた肉体に、愛した男の命が再び宿ると信じて・・・・・・」
「かわいそうな、精霊だったんだね」
「ああ。でも、人を殺した。人を殺したり殺そうとするモンスターは倒される。トレントは元々森の精霊だ。悪い存在じゃない」
「トレントを騙したそのある男というのが鍵だね」
「ああ。トレントは始末してしまったからもう聞き出しようがないが、最近謎の男が暗躍していると聞く。その男なのかもしれない」
「とりあえず、トレントの魔石を持って帰ろう」
浮竹と京楽は、なんとも言えない気分で冒険者ギルドに戻ってくると、魔石を受付嬢に渡した。
「買取り額は金貨30枚になります。緊急クエスト達成として、報酬金金貨350枚に、即日の対応だったので、報酬金が金貨50枚上乗せされます」
合計で金貨430枚になったが、二人の心は晴れないままだった。
「いやん、何そんな辛気臭い顔してるのお?明るくいきましょうよ。ああん、あたしのあそこも明るくいっちゃう♡」
「冗談に付き合っている気分じゃないんだ」
「僕もだよ。消えてくれない?」
「ひどおおい!キャシー、泣いちゃう!」
「勝手に泣け」
「酷い顔だ。ああ、元からだったかい」
浮竹と京楽は、キャサリンに事情の全てを話して、裏で暗躍しているらしい男の影を、ギルド側も掴んでいると聞いて、真剣な表情になった。
「その男の正体は?」
「まだ、分からないわ。ただ、茶色の髪と瞳で、凄く冷徹だそうよ。なんでも、自分が神になるって言ってたらしいの」
「人間が神に・・・・そんなの、なれるわけないのに」
「あら、そうでもないわよ?魔神や邪神は、人間からでもなれるわよ?なりかたは教えてあげないけれどね?♡」
浮竹と京楽は、トレントが灰になった後にでてきた芽を、鉢植えに植え替えて、帰宅した。
太陽をいっぱい浴びれる、南向きのバルコニーに置くと、一夜で成長し、次の日は花を咲かせて、小さなトレントが生まれた。
「君の名は?」
「名前なんてない」
「じゃあ、レトと名乗るといい」
「トレントだから、レト?安直ね」
「森に帰りたいかい?」
「帰りたくないわ。ここで暮らすわ」
レトは、寂しそうに笑った。
じゃあ、同居人を紹介しなくちゃな。こっちはエンシェントエルフの浮竹十四郎。君のもう一人のマスターだ。それから、ヒーリングスライムのブルン」
「くるるる」
「かわいい」
「君も、十分かわいいよ。ねぇ、浮竹も、そう思うでしょ?」
「知るか」
「ふふっ。あのエンシェントエルフ、私にあなたを取られたと思って嫉妬してるわ」
「すごいね。君、人の心が読めるのかい?」
京楽は、レトと名付けたトレントの小さな頭を撫でた。
「ある程度はね。あなたはダークエルフ。皮膚の色が違うから、種族を偽っている」
「ほんとにすごいね」
「よしてよ。あたしは、ただのレトいう名の小さなトレント。それだけよ」
「そうだね。君はレト」
京楽は、レトを手の平に乗せた。そんな小さなサイズのトレントだった。
「哀しい記憶を持っているのね」
「なんだい?」
「あなたは灼熱のシャイターンに捨てられ、迫害されてきた。でも、浮竹十四郎と出会って、全てが変わった」
「うん、そうだよ」
「じゃあ、早くその浮竹って人のところに行ってあげて。凄く悲しんでる」
「分かったよ」
京楽は、レトを植木鉢に戻すと、浮竹の後を追う。
「浮竹」
「なんだ」
「僕が愛しているのは、浮竹だけだよ。あのトレントには同情しか抱いていない」
抱きしめられてキスされて、浮竹は真っ赤になった。
「な、何をする!」
「いや、君が小さなトレントなんかに嫉妬しちゃって、かわいいなぁと思って」
「嫉妬してなんか!」
浮竹は叫びかけてやめた。
「嫉妬、してた。少しだけ」
京楽は、浮竹の顎に手をかけて、ディープキスをしていた。
「んっ」
「ふふ、かわいいね。食べちゃいたい」
「まだ昼間だぞ」
「そうだね」
クスクスと、京楽が笑うものだから、浮竹も嫉妬心を忘れてクスクスと二人で笑いあった。
「ねぇ、今日いい?」
「ばか、そういうこといちいち聞くな。んっ」
またキスをされた。
エルフに欲が全くないわけではないのだ。
ただ、薄いだけで。
-----------------------------------------------------------------------------
「そうか、あのトレントは死んだか。呆気ないものだ」
その男は、背が高く茶色の紙に茶色の瞳をしていた。
その男は、世界を渾沌に陥れようと暗躍していた。
神になろうとしていた。
神になり、剣士の京楽を破壊神にしようともくろんでいた。
その男の名は、まだ分からなかった。
エンシェントエルフとダークエルフ外伝 ブルンとブルンの大冒険
「ププウ」
「くくるー?」
プルンとブルンは、お留守番を言い渡されていた。
ここは、イアラ帝国のエルフの浮竹と京楽が住むマイホームだ。
「ププウ~」
ねぇ、ちょっと散歩にいこうよ。
「くくーー」
でも、ご主人様たちがいつ帰ってくるか分からないよ。
「ププル」
大丈夫、いざとなったら転移魔法があるから。
「くくるーー!!」
じゃあ、森に行こう。いろんなモンスターがいて、楽しいんだよ。
「ププ!」」
行こう行こう。
こうして、2匹はイアラ帝国の外に広がる森まで、ぽよんぽよんとはねて、出かけるのだった。
森は鬱蒼としていて、いろんな動物やモンスターがいたけれど、みんな進化したスライムのプルンとブルンを怖がり、逃げてしまった。
「プププ」
みんな逃げちゃった。
「くくる」
前はもっとみんなフレンドリーだったのに。
「ぐるるるるる!!」
現れたのは、Bランクのモンスターブラックタイガーであった。
「ププー―」
何こいつ、やるつもり?
「くくーー」
やるつもりなら、やっつけちゃおう!
「ぐるる、ぐあああ!!」
プルンに襲いかかったブラックタイガーは、プルンのウォーターボールの魔法で、窒息死しそうになっていた。
「ププウ」
ご主人さまが、こうすれば素材を傷一つなく倒せるって教えてくれたよ。
「くくるーーー」
えーつまんない。僕も攻撃する!
ブルンは、散弾をブラックタイガーの首めがけて吐き出した。
窒息死しかかっていたブラックタイガーは、すぐにあの世へと旅立っていった。
「ププウ!」
そうだ、これを解体してお土産にして、ご主人様たちを喜ばせよう。
「くくるるるー」
それはいい考えだね。僕が解体するね。
ブルンは、体の一部を金属のようにとがらせて、ブラックタイガーの頭と首を切り離し、血抜きしてから、肉と骨と毛皮、牙と爪に解体してしまった。
「ププウ」
こいつ、肉はまずいらしいよ。骨も使えないって。
「くくう」
じゃあ、肉は弟の君には食べれないから、僕が食べちゃうね。骨も食べちゃう。
「ププルン」
じゃあ、素材は俺の体内にいれておくね。
「くくうるー」
じゃあ、転移魔法お願い。冒険者ギルドに転移して、買いとってもらおう。
「ププーー」
分かったよ。捕まっていてね、お兄ちゃん
「くくー」
うん、弟よ。
プルンとブルンは、冒険者ギルド前に転移すると、ぽよんぽよんと跳ねて、受付嬢のところまでカウンターに乗ると、プルンが中身を出した。
「え、あ、浮竹さんと京楽さんのところのスライム・・・・これは、ブラックタイガー!まさか、あなたたちが倒したの?」
「ププー」
「くくるー」
二匹ともそうだよと言って、飛び跳ねていた。
「確か、ブラックタイガーは討伐依頼にあったはず・・・あ、ありました。金貨120枚です」
「ププウ?」
「くくるー?」
「魔石の状態は非常に良いですね。毛皮の部分も損傷が少ない。牙と爪も傷一つない。これなら、魔石金貨8枚、素材を金貨20枚で買いとれます。しめて、金貨148枚ですね」
「ププウ!」
プルンは、にょきっとてを突き出して、金貨の入った袋を体の中にしまいこむ。
「くくうるー」
帰ろう。お金、奪ってくるいやなやついるかもしれないから、転移魔法お願い。
「ぷぷ」
わかったよ、お兄ちゃん。
プルンとブルンは、冒険者ギルドを出たところで転移して、イアラ帝国のエルフの浮竹と京楽のマイホームに戻ってきた。
「今探しに・・・・・って、ブルン?」
「わあ、プルンまで。どうしたの?」
エルフ浮竹と京楽は、突然目の前に現れたプルンとブルンに驚いていた。
「ぷぷう」
『なんだって?ブラックタイガーを倒したって?』
剣士の京楽が、聞き返す。
「くくるーーーー」
「素材やら報酬金やらお金でもってきた?」
「ププ」
プルンが口をあけると、金貨のつまった麻袋がでてきた。
中身をあけて、金貨の枚数を数えて、4人とも驚いた。
『金貨148枚って、一体どうしたんだ』
「くくるー」
「倒してお金もらっただけ・・・・って、はぁ。プルンもブルンも、偉いけど、今後は二人きりで冒険しちゃだめだよ。お金になるって、悪い連中に攫われたのかと思ったけど、何もなくてよかったよ」
エルフの京楽の言葉に、みんな頷いた。
『プルン、ブルン、今度からは、ちゃんと俺たちがついている時に冒険しような?』
「ププウ」
分かった、ご主人様。
「くくるーーー」
僕もわかったなのー。
こうして、プルンとブルンの小さな大冒険は終わるのであった。
「それにしても、ブラックタイガーってBランク+のモンスターでしょ。よくやっつけられたね」
『プルンは、いろんな攻撃魔法を使えるし、回復魔法も上級まで使えるからな』
「なんだそれは。すごいじゃないか」
エルフの浮竹が驚くと、エルフの京楽も負けてはいられないと、ブルンの長点を言う。
「うちのブルンだって負けてないよ。確かに攻撃魔法は使えないけど、散弾で金属まで溶かすし、神クラスのヒールを永遠と出し続けれるよ」
『なんか、飼っているスライム自慢話になってきたね』
『ああ、そうだな。とりあえず、プルンとブルンはすごい。そしてかわいい!!」
エルフの浮竹と、精霊の浮竹にそれぞれ頬ずりをされて、プルンとブルンは喜んでいた。
プルンは黄色に、ブルンは白くなっていた。
『あははは、感情が色で分かるスライムも珍しいね』
「とにかく、今後は二匹で散歩してもいいけど、モンスター退治なんて危ないことはしないこと。分かったね?」
エルフの京楽の言葉に、プルンとブルンは。
「ププウ」
分かった。りんごほしいな。お兄ちゃんだけ食事しちゃたから。
「くくるー」
分かったから、ごみちょうだい。お腹すいた。
分かったの分かっていないのか、2匹は食事のことばかり気にしていて、4人は溜息と共に、プルンにはりんごを10個、ブルンには近所から集めたゴミの山がプレゼントされるのであった。
「くくるー?」
プルンとブルンは、お留守番を言い渡されていた。
ここは、イアラ帝国のエルフの浮竹と京楽が住むマイホームだ。
「ププウ~」
ねぇ、ちょっと散歩にいこうよ。
「くくーー」
でも、ご主人様たちがいつ帰ってくるか分からないよ。
「ププル」
大丈夫、いざとなったら転移魔法があるから。
「くくるーー!!」
じゃあ、森に行こう。いろんなモンスターがいて、楽しいんだよ。
「ププ!」」
行こう行こう。
こうして、2匹はイアラ帝国の外に広がる森まで、ぽよんぽよんとはねて、出かけるのだった。
森は鬱蒼としていて、いろんな動物やモンスターがいたけれど、みんな進化したスライムのプルンとブルンを怖がり、逃げてしまった。
「プププ」
みんな逃げちゃった。
「くくる」
前はもっとみんなフレンドリーだったのに。
「ぐるるるるる!!」
現れたのは、Bランクのモンスターブラックタイガーであった。
「ププー―」
何こいつ、やるつもり?
「くくーー」
やるつもりなら、やっつけちゃおう!
「ぐるる、ぐあああ!!」
プルンに襲いかかったブラックタイガーは、プルンのウォーターボールの魔法で、窒息死しそうになっていた。
「ププウ」
ご主人さまが、こうすれば素材を傷一つなく倒せるって教えてくれたよ。
「くくるーーー」
えーつまんない。僕も攻撃する!
ブルンは、散弾をブラックタイガーの首めがけて吐き出した。
窒息死しかかっていたブラックタイガーは、すぐにあの世へと旅立っていった。
「ププウ!」
そうだ、これを解体してお土産にして、ご主人様たちを喜ばせよう。
「くくるるるー」
それはいい考えだね。僕が解体するね。
ブルンは、体の一部を金属のようにとがらせて、ブラックタイガーの頭と首を切り離し、血抜きしてから、肉と骨と毛皮、牙と爪に解体してしまった。
「ププウ」
こいつ、肉はまずいらしいよ。骨も使えないって。
「くくう」
じゃあ、肉は弟の君には食べれないから、僕が食べちゃうね。骨も食べちゃう。
「ププルン」
じゃあ、素材は俺の体内にいれておくね。
「くくうるー」
じゃあ、転移魔法お願い。冒険者ギルドに転移して、買いとってもらおう。
「ププーー」
分かったよ。捕まっていてね、お兄ちゃん
「くくー」
うん、弟よ。
プルンとブルンは、冒険者ギルド前に転移すると、ぽよんぽよんと跳ねて、受付嬢のところまでカウンターに乗ると、プルンが中身を出した。
「え、あ、浮竹さんと京楽さんのところのスライム・・・・これは、ブラックタイガー!まさか、あなたたちが倒したの?」
「ププー」
「くくるー」
二匹ともそうだよと言って、飛び跳ねていた。
「確か、ブラックタイガーは討伐依頼にあったはず・・・あ、ありました。金貨120枚です」
「ププウ?」
「くくるー?」
「魔石の状態は非常に良いですね。毛皮の部分も損傷が少ない。牙と爪も傷一つない。これなら、魔石金貨8枚、素材を金貨20枚で買いとれます。しめて、金貨148枚ですね」
「ププウ!」
プルンは、にょきっとてを突き出して、金貨の入った袋を体の中にしまいこむ。
「くくうるー」
帰ろう。お金、奪ってくるいやなやついるかもしれないから、転移魔法お願い。
「ぷぷ」
わかったよ、お兄ちゃん。
プルンとブルンは、冒険者ギルドを出たところで転移して、イアラ帝国のエルフの浮竹と京楽のマイホームに戻ってきた。
「今探しに・・・・・って、ブルン?」
「わあ、プルンまで。どうしたの?」
エルフ浮竹と京楽は、突然目の前に現れたプルンとブルンに驚いていた。
「ぷぷう」
『なんだって?ブラックタイガーを倒したって?』
剣士の京楽が、聞き返す。
「くくるーーーー」
「素材やら報酬金やらお金でもってきた?」
「ププ」
プルンが口をあけると、金貨のつまった麻袋がでてきた。
中身をあけて、金貨の枚数を数えて、4人とも驚いた。
『金貨148枚って、一体どうしたんだ』
「くくるー」
「倒してお金もらっただけ・・・・って、はぁ。プルンもブルンも、偉いけど、今後は二人きりで冒険しちゃだめだよ。お金になるって、悪い連中に攫われたのかと思ったけど、何もなくてよかったよ」
エルフの京楽の言葉に、みんな頷いた。
『プルン、ブルン、今度からは、ちゃんと俺たちがついている時に冒険しような?』
「ププウ」
分かった、ご主人様。
「くくるーーー」
僕もわかったなのー。
こうして、プルンとブルンの小さな大冒険は終わるのであった。
「それにしても、ブラックタイガーってBランク+のモンスターでしょ。よくやっつけられたね」
『プルンは、いろんな攻撃魔法を使えるし、回復魔法も上級まで使えるからな』
「なんだそれは。すごいじゃないか」
エルフの浮竹が驚くと、エルフの京楽も負けてはいられないと、ブルンの長点を言う。
「うちのブルンだって負けてないよ。確かに攻撃魔法は使えないけど、散弾で金属まで溶かすし、神クラスのヒールを永遠と出し続けれるよ」
『なんか、飼っているスライム自慢話になってきたね』
『ああ、そうだな。とりあえず、プルンとブルンはすごい。そしてかわいい!!」
エルフの浮竹と、精霊の浮竹にそれぞれ頬ずりをされて、プルンとブルンは喜んでいた。
プルンは黄色に、ブルンは白くなっていた。
『あははは、感情が色で分かるスライムも珍しいね』
「とにかく、今後は二匹で散歩してもいいけど、モンスター退治なんて危ないことはしないこと。分かったね?」
エルフの京楽の言葉に、プルンとブルンは。
「ププウ」
分かった。りんごほしいな。お兄ちゃんだけ食事しちゃたから。
「くくるー」
分かったから、ごみちょうだい。お腹すいた。
分かったの分かっていないのか、2匹は食事のことばかり気にしていて、4人は溜息と共に、プルンにはりんごを10個、ブルンには近所から集めたゴミの山がプレゼントされるのであった。
エンシェントエルフとダークエルフ21
それは、Bランクの退治依頼であった。
Dランクのダンジョンの15階層に、ミノタウロスが複数姿を現して、その先にいけないのだそうだ。
Dランクは駆け出しの冒険者から一皮むけて、冒険者らしくなってくる階級だ。
そのDランクダンジョンにミノタウロスとは。
浮竹と京楽は、昔一度来たことがあるので、京楽の空間転移魔法でDランクのダンジョンの前まで飛んだ。
空間転移魔法は、一度行ったことのある場所なら、結界を張られていない限り、行き来が可能だたが、消費魔力が大きいので、そう連打することはできない。
すでにブルンにヒールをしてもらい、魔力回復をしていた。
ダンジョンは階層ごとにフィールドがかわるタイプで、上級呪文も使えそうだった。
雑魚は適当に倒して放置しておこうとしたのだが、浮竹がわざわざ魔石を集めるので、仕方なく遭遇して倒した敵の魔石は拾って集めた。
15階層にくると、ミノタウロスがいたが、普通のミノタウロスより牛に近かった。
「MOOOOOOOO!!」
まるで牛のような雄叫びをあげて、襲い掛かってくるので、火の魔法を使う。
「フレイムロンド!」
「ファイアサークル!」
「MOOOO!!!」
こんがりと、焼かれたミノタウロスは、いい匂いをがした。
「まだいるぞ」
「ファイアフェニックス!」
火の魔法でこんがり焼かれたミノタウロスは、いい匂いがした。
駄目だと分かっているのだが、ミスリルの剣で肉を切り出すと、皿を取り出して炎で焼いた。
ミノタウロスのステーキだった。
「食べても大丈夫かな?」
「レストランでも、ミノタウロスのカルビってメニューがあるくらいだぞ。高級食材だ」
浮竹と京楽は、倒したミノタウロスの1体の肉を斬って焼いて食べてを繰り返した。
「ああ、おいしかった」
「ただだと思うと、余計おいしくかんじるね」
ブルンは、ミノタウロスの骨を消化してもらった。あと、食べれない部位とか。
残ったミノタウロスは、アイテムポケットに入れて持ち帰ることにした。すでに焼かれている状態ではあるが、ステーキとして需要があるので、別に構わないだろう。
空間転移して、冒険者ギルドまで戻ってくると、皆そのスピードの速さに驚いていた。
依頼を受注して、2時間とかかっていなかった。
魔石はちゃんと回収しておいた。
「あらん、春ちゃんいるの間に空間転移の魔法なんて覚えたの?このキャシーと、いけないことをするために、覚えたのね?」
「うるさい、青髭オカマ!近寄らないでよ」
「酷い、春ちゃん酷いわああああ!!!」
キャサリンは、浮竹に抱きついて尻を揉んできた。
「尻を揉むなこの変態オカマ!」
ミスリルの剣の鞘でオカマのギルドマスターを叩くと、キャサリンは涙を流してくねくねしていた。
「13体の討伐の確認をしました。魔石は金貨39枚で、依頼料の報酬は金貨180枚となります。あと、雑魚の魔石の買取り額は、金貨2枚と銀貨3枚になります。
「その、ミノタウロスの買取りを頼みたいんだけど」
「それなら、解体場へどうぞ」
解体工房で、ミノタウロスの遺体を12体分提出する。
「火で焼かれていますが、肉の需要としては問題ありません。1体金貨30枚、しめて金貨360枚になります。魔石とミノタウロスの数が足りませんが、1体食べましたね?」
「え、あ、うん、まぁね」
「ミノタウロスの肉は高級食材ですが、素人が料理すると食中毒が怒る確率はゼロではありません。なるべく、解体工房に提出してから、食べる分の肉を受け取ってください」
「うん、分かったよ」
「わかった」
浮竹と京楽は、匂いにつられてダンジョン内でステーキを食べたことを反省した。
「それより、味はどうでした?とれたてはやっぱりおいしかったですか?」
「うん、すごくおいしかった。できれば塩コショウで味付けしたかったね。そしたら、余計においしくなると思うよ」
「魔法の火で焼いたんだが、うまいことミディアムレアになってな。調味料はなかったが、最高にうまかった」
じゅるりと、受付嬢が涎を垂らしそうになっていた。
「決めました!今月の給料の3分の1になるけど、ミノタウロスのシャトーブリアンの部位を、4食分ほどください!」
「「おおーーー」」
大盤振る舞いにミノタウロスの最上位部位のシャトーブリアンを頼む受付嬢に、浮竹と京楽は感激した。
ギルドの受付嬢の給料は悪くないが、それでもBランク以上の冒険者の月に稼ぐ額には届かない。
それなのに、給料の3分の1も費やして、食べようとするその根性が気に入った。
「いいレストランを知っているんだ。そこで、焼いてもらおう」
ギルドの受付嬢マーサは、浮竹と京楽もついでにシャトーブリアンの部位を1食分買い取って、
一緒に高級レストランに入り、厨房でステーキを調理してもらうことにした。
ちなみに。調理するのにも金貨1枚が必要で、マーサも浮竹も京楽も、それぞれ金貨1枚ずつ払った。
「お待たせしました。ミノタウロスのシャトーブリアンミディアムレア焼きのポテト添えでございます」
焼かれてもってこられたステーキは、最高においしそうだった。
ナイフとフォークを入れて、切って食べていく。
3人とも、涙を流した。
「うまい」
「うまいわ」
「うますぎる」
一匹放置された、ブルンが抗議する。
「くくるーーー」
僕にも美味しいの食べさせて。
「ああ、すまないがゴミ箱にこのブルンというスライムを入れてやってくれないか。ゴミを食べるんだ」
「本当ですか。ゴミがいっぱいで、困ってたんです」
客の食べこぼしとかもゴミとして捨てられる。
それも消化したので、いつものゴミより美味しいと、ブルンは後で語ってくれた。
夕飯を食べて帰ってくると、ボルがいた。
「どうしたんだ、ボル」
「いやなぁ、こっちの大陸のコーラのほうがうまくて、買ってきてくれね?金なら渡すから。何処で売ってるのかしらねーんだよ」
「いつも僕たちがいるわけじゃあないからね。ついておいで。売ってる店紹介してあげる」
「あーもう、なんでわかんねーかなー。俺は、遊びにきたんだよ!」
「コーラは?」
「あ、やっぱコーラは買いに行く」
京楽と飲み物を専門に置いてある店で、2ダースコーラを買って、銀貨8枚払った。
ボルが、自分のアイテムポケットにコーラを入れた。
「こっちの物価って安いんだな」
「そうかい?魔大陸は高いの?」
「あの量のコーラなら、金貨2枚はする」
「ウッドガルド大陸の約3倍だね。値段にすると」
京楽とボルは、浮竹の待つマイホームに戻ってきた。
「なんだよ、今日は料理ねぇの?」
「特別だよ。明日にしようと思ってた海鮮シーフードピザ作ってあげる」
1時間経って、ボルは他の四天王の悪口をいいながら、コーラを飲みまくり、そして9時なると眠いといってゲストルームで寝てしまった。
「何しにきたんだろうね?」
「ただ、おしゃべりにきたんじゃないか?」
「そういうもんなの?」
「友達だと思われてるんじゃないか」
「魔族の四天王の友達ねぇ。悪くはないね」
「まぁな。きっと明日の6時には叩き起こされる。俺たちも、早めに就寝しよう」
結局ボルの来た意図は分からず、朝の8時になると空間転移の魔法で、魔王城まで帰ってしまうのであった。
Dランクのダンジョンの15階層に、ミノタウロスが複数姿を現して、その先にいけないのだそうだ。
Dランクは駆け出しの冒険者から一皮むけて、冒険者らしくなってくる階級だ。
そのDランクダンジョンにミノタウロスとは。
浮竹と京楽は、昔一度来たことがあるので、京楽の空間転移魔法でDランクのダンジョンの前まで飛んだ。
空間転移魔法は、一度行ったことのある場所なら、結界を張られていない限り、行き来が可能だたが、消費魔力が大きいので、そう連打することはできない。
すでにブルンにヒールをしてもらい、魔力回復をしていた。
ダンジョンは階層ごとにフィールドがかわるタイプで、上級呪文も使えそうだった。
雑魚は適当に倒して放置しておこうとしたのだが、浮竹がわざわざ魔石を集めるので、仕方なく遭遇して倒した敵の魔石は拾って集めた。
15階層にくると、ミノタウロスがいたが、普通のミノタウロスより牛に近かった。
「MOOOOOOOO!!」
まるで牛のような雄叫びをあげて、襲い掛かってくるので、火の魔法を使う。
「フレイムロンド!」
「ファイアサークル!」
「MOOOO!!!」
こんがりと、焼かれたミノタウロスは、いい匂いをがした。
「まだいるぞ」
「ファイアフェニックス!」
火の魔法でこんがり焼かれたミノタウロスは、いい匂いがした。
駄目だと分かっているのだが、ミスリルの剣で肉を切り出すと、皿を取り出して炎で焼いた。
ミノタウロスのステーキだった。
「食べても大丈夫かな?」
「レストランでも、ミノタウロスのカルビってメニューがあるくらいだぞ。高級食材だ」
浮竹と京楽は、倒したミノタウロスの1体の肉を斬って焼いて食べてを繰り返した。
「ああ、おいしかった」
「ただだと思うと、余計おいしくかんじるね」
ブルンは、ミノタウロスの骨を消化してもらった。あと、食べれない部位とか。
残ったミノタウロスは、アイテムポケットに入れて持ち帰ることにした。すでに焼かれている状態ではあるが、ステーキとして需要があるので、別に構わないだろう。
空間転移して、冒険者ギルドまで戻ってくると、皆そのスピードの速さに驚いていた。
依頼を受注して、2時間とかかっていなかった。
魔石はちゃんと回収しておいた。
「あらん、春ちゃんいるの間に空間転移の魔法なんて覚えたの?このキャシーと、いけないことをするために、覚えたのね?」
「うるさい、青髭オカマ!近寄らないでよ」
「酷い、春ちゃん酷いわああああ!!!」
キャサリンは、浮竹に抱きついて尻を揉んできた。
「尻を揉むなこの変態オカマ!」
ミスリルの剣の鞘でオカマのギルドマスターを叩くと、キャサリンは涙を流してくねくねしていた。
「13体の討伐の確認をしました。魔石は金貨39枚で、依頼料の報酬は金貨180枚となります。あと、雑魚の魔石の買取り額は、金貨2枚と銀貨3枚になります。
「その、ミノタウロスの買取りを頼みたいんだけど」
「それなら、解体場へどうぞ」
解体工房で、ミノタウロスの遺体を12体分提出する。
「火で焼かれていますが、肉の需要としては問題ありません。1体金貨30枚、しめて金貨360枚になります。魔石とミノタウロスの数が足りませんが、1体食べましたね?」
「え、あ、うん、まぁね」
「ミノタウロスの肉は高級食材ですが、素人が料理すると食中毒が怒る確率はゼロではありません。なるべく、解体工房に提出してから、食べる分の肉を受け取ってください」
「うん、分かったよ」
「わかった」
浮竹と京楽は、匂いにつられてダンジョン内でステーキを食べたことを反省した。
「それより、味はどうでした?とれたてはやっぱりおいしかったですか?」
「うん、すごくおいしかった。できれば塩コショウで味付けしたかったね。そしたら、余計においしくなると思うよ」
「魔法の火で焼いたんだが、うまいことミディアムレアになってな。調味料はなかったが、最高にうまかった」
じゅるりと、受付嬢が涎を垂らしそうになっていた。
「決めました!今月の給料の3分の1になるけど、ミノタウロスのシャトーブリアンの部位を、4食分ほどください!」
「「おおーーー」」
大盤振る舞いにミノタウロスの最上位部位のシャトーブリアンを頼む受付嬢に、浮竹と京楽は感激した。
ギルドの受付嬢の給料は悪くないが、それでもBランク以上の冒険者の月に稼ぐ額には届かない。
それなのに、給料の3分の1も費やして、食べようとするその根性が気に入った。
「いいレストランを知っているんだ。そこで、焼いてもらおう」
ギルドの受付嬢マーサは、浮竹と京楽もついでにシャトーブリアンの部位を1食分買い取って、
一緒に高級レストランに入り、厨房でステーキを調理してもらうことにした。
ちなみに。調理するのにも金貨1枚が必要で、マーサも浮竹も京楽も、それぞれ金貨1枚ずつ払った。
「お待たせしました。ミノタウロスのシャトーブリアンミディアムレア焼きのポテト添えでございます」
焼かれてもってこられたステーキは、最高においしそうだった。
ナイフとフォークを入れて、切って食べていく。
3人とも、涙を流した。
「うまい」
「うまいわ」
「うますぎる」
一匹放置された、ブルンが抗議する。
「くくるーーー」
僕にも美味しいの食べさせて。
「ああ、すまないがゴミ箱にこのブルンというスライムを入れてやってくれないか。ゴミを食べるんだ」
「本当ですか。ゴミがいっぱいで、困ってたんです」
客の食べこぼしとかもゴミとして捨てられる。
それも消化したので、いつものゴミより美味しいと、ブルンは後で語ってくれた。
夕飯を食べて帰ってくると、ボルがいた。
「どうしたんだ、ボル」
「いやなぁ、こっちの大陸のコーラのほうがうまくて、買ってきてくれね?金なら渡すから。何処で売ってるのかしらねーんだよ」
「いつも僕たちがいるわけじゃあないからね。ついておいで。売ってる店紹介してあげる」
「あーもう、なんでわかんねーかなー。俺は、遊びにきたんだよ!」
「コーラは?」
「あ、やっぱコーラは買いに行く」
京楽と飲み物を専門に置いてある店で、2ダースコーラを買って、銀貨8枚払った。
ボルが、自分のアイテムポケットにコーラを入れた。
「こっちの物価って安いんだな」
「そうかい?魔大陸は高いの?」
「あの量のコーラなら、金貨2枚はする」
「ウッドガルド大陸の約3倍だね。値段にすると」
京楽とボルは、浮竹の待つマイホームに戻ってきた。
「なんだよ、今日は料理ねぇの?」
「特別だよ。明日にしようと思ってた海鮮シーフードピザ作ってあげる」
1時間経って、ボルは他の四天王の悪口をいいながら、コーラを飲みまくり、そして9時なると眠いといってゲストルームで寝てしまった。
「何しにきたんだろうね?」
「ただ、おしゃべりにきたんじゃないか?」
「そういうもんなの?」
「友達だと思われてるんじゃないか」
「魔族の四天王の友達ねぇ。悪くはないね」
「まぁな。きっと明日の6時には叩き起こされる。俺たちも、早めに就寝しよう」
結局ボルの来た意図は分からず、朝の8時になると空間転移の魔法で、魔王城まで帰ってしまうのであった。
エンシェントエルフとダークエルフ20
京楽と浮竹の元に、奇妙な客人がきていた。
アークデーモンに捕らわれていた少女ユンと、その兄と名乗る、魔王ヴェルが四天王の一人、電撃のボルであった。
「よう、勝手にあらがせてもらってるぜ」
「お兄ちゃん、やはり勝手はびっくりさせちゃうんじゃないですか?」
「はぁ。まぁ、人生長く生きてたらこんなことも起こるね」
そう言いながら、京楽はバタンと倒れた。
「はははは、魔王の四天王、電撃のボル」
浮竹は、笑ってからバタンと倒れた。
「どうしよう、お兄ちゃん!」
「あー、ほっとけ。すぐ目をさまずだろうさ」
その通り、5分ほどで意識を取り戻した二人は、自分の家なのに窮屈そうにしていた。
「今、紅茶をいれてくる」
「コーラいれてくんねぇか」
「は?」
「俺はコーラがいいつってんだよ。なかったら、買いに行け」
「お兄ちゃん、お礼を言いに来たんでしょう?」
「あ、ああそうだったな」
「この前飲み会した時に、未成年用にコーラ買っておいたの残ってた。はい、どうぞ」
京楽からコーラをもらって、ボルはまるで命の水のように飲んでいった。
「オレは、このしゅわしゅわした感覚がたまらねーんだよな。飲み物は全部コーラ。好きな食べ物はなしでとにかくコーラだぜ!」
「それより、お兄ちゃん」
「あ、ああ、そうだな。前回は、俺の妹のユンを助けてくれて、すまねーな」
「いや、こちらも白金貨千枚ももらったし・・・・」
この前、式で大金貨100枚を宗教組織の人身売買で行方不明だったものが魔大陸で見つかったことを、イアラ帝国の騎士団に情報伝達する小遣いとしてつけられたのだが、ただ言伝するだけで大金貨100枚はありえないと、式に金をもたせて帰らせた。
とにかく、依頼以外で金が舞い込んでくることが多いのだ。
「なんなら、白金貨千枚をお返ししようか?」
「いらねぇよ。ユンを助けてくれた感謝の金だ。受け取っときな」
ボルはぶっきらぼうだったが、根は優しい青年だと分かった。
「その、ウッドガルド大陸では魔族は生きにくいからな。ユンは、魔大陸に連れていく。だが、その前に助けてもらったあんたらに会いたいっていうんで、わざわざ俺らから会いにきてやったってわけよ」
「そうか。ユンちゃん、魔大陸に帰るんだね」
「うん。おじいさんももう歳だし、一緒に魔大陸のお兄ちゃんの庇護下の元に居ることに決めたの」
「ユンちゃんとちゃんとした場面で会うのはじめてだったな」
浮竹が微笑むと、ユンはほのかに頬を赤くした。
「おいてめぇ、ユンに何しやがった!」
「な、何もしていない」
「違うの、お兄ちゃん!ただ、綺麗なエルフだなぁと思っただけだから」
「お、おう、そうか。すまねーな。オレ、こんな性格だからいつも先走っちまう」
「うん、別にいいけどね。君の性格にも慣れてきたよ。ほら、おかわりのコーラ」
「お、気が利くじゃねぇか」
ボルは、コーラを一気飲みして、げふーっとげっぷをした。
「やだあ、お兄ちゃんげっぷしないでよ」
「でるもんはでるんだから、仕方ねーだろうが」
「まぁまぁ。ああ、そうだ、ユンちゃんから預かってたこのペンダントだけど、返すよ」
「お、それは俺がユン誕生日にあげた、紋章入りのペンダントじゃねぇか!」
「ごめんなさい、お兄ちゃん。他に渡すものがなくって、魔族絡みならこれでどうにかなると思って渡してしまったの」
「返して、くれるのかよ?」
「うん、返すよ。僕らが魔族に関わることなんて、今回はあったけど、今後はないだろうし」
京楽の言葉に、ボルはペンダントを受け取って、ユンの首にかけてやった。
「まぁ、礼を言いに来ただけだ。泊まってやってもいいんだぜ」
「はいはい。じゃあ、夕食の用意するから、この部屋で寛いでて。浮竹はコーラとワインと今から書いていくメモの中身の買い出しを頼むよ」
「ああ、分かった京楽」
Aランク冒険者だ。
貧しい暮らしをしていると思われたら、また白金貨を渡されそうなので、今日は特に豪華にすることにした。
七面鳥を丸焼きにして、フォアグラやキャビア、トリュフなどを使った贅沢な料理を出してふるまった。
「お、すっげ―いいもん食ってんじゃんか。オレ、ここんちの子になろうかな」
浮竹と京楽は首を横に振った。
こんな大きな子供いりませんと。
「まぁ、冗談だ。今日は遅いし、泊まって行っていいか?」
「ああ、上の階に僕らの寝室の他にゲストルームが2つある。そこを使ってくれて構わないよ。ただ風呂場とトイレは一つだから、そこは気をつけてね」
ユンとボルは、先に風呂をかりて、寝間着に着替えてえボルはまたコーラを飲んでいた。
「そんなにコーラばっかり飲んでて、虫歯にならないのか?」
浮竹がふとした疑問を口にすると、ボルは笑った。
「今時、どこもゼロカロリーコーラだぜ。第一、虫歯になんて魔族はなんねーよ」
「そ、そうなのか。そういえばエルフの俺たちも、虫歯になったことはないな。ちゃんと歯を磨いてるせいだろうか」
「虫歯は、人間種族の病気だぜ。他種族がなるには、粘膜感染だ」
「つまり、人間とキスしない限り、他種族は虫歯にならないと?」
「そうだぜ。そんな当たり前のことも知らねーのかよ」
「すまない。何分、エルフなもので、人間世界にも魔族側にも事情が疎いからな」
「今から知っていきゃいいんだよ」
ボルは、魔王のことた四天王のことをいろいろ教えてくれた。
くそメガネと言われる四天王の時には、笑い合った。
「灼熱のシャイターンは、あんたを捨てたこと、くやんでるぜ」
「え」
「愛してなんかいないって、何度も否定しやがんだ。ほんとに捨てて興味なかったら、話題にのぼっただけで怒って出ていっちまう」
「そっか・・シャイターンが」
「よかったな、京楽」
「うん」
「おっし、眠くなってきたから寝る」
「まだ、9時だぞ?」
「魔族は早寝早起きが基本なんだよ。9時には寝て、6時に起きる」
「そ、それは健康的だな」
「お兄ちゃんは先に寝てて。浮竹さん、ちょっと話あるんだけどいいですか?」
「ああ、なんだろう?」
「す、好きなんです!」
京楽が後ろにいる場所で、ユンは浮竹に告白をした。
「もちろん、無理なのは分かってます。私は魔族で、あはたはエルフ」
「いや、そういう以前に俺にはすでに伴侶がいるんだ。後ろで固まってる、あいつだよ」
「あ、そうだったんですか」
ユンは、しゅんとなったが、すぐに顔をあげた。
「あー、告白して振られてすっきりした―。私も寝ますね」
「ああうん、おやすみ」
「台風みたいな兄妹だね」
「まぁ、そうだな。それより、この残った料理、俺らでは食べきれないな。冷蔵庫に入れておこうか」
「うん、そうしよう」
次の日の朝、6時に叩き起こされた。
「朝食まだかよ?」
「ああ、はいはい、今起きて作るよ」
寝ぼけ眼で、京楽はトーストを4枚焼いて、浮竹を起こして、スクランブルエッグを4人分用意して、ダイニングテーブルの椅子に座った。
「「いただきます」」
ユンとボルは・・・・ユンは分かるが、ボルは言葉遣いは乱暴だが、礼儀はわきまえてあるらしかった。
浮竹と京楽も、言葉に出さないがいただきますと心の中で言って、食べていく。
「「ごちそうさま」」
ユンが、朝ごはんの片付けを手伝ってくれた。
「ユンちゃん、いいお嫁さんになれるよ」
「本当?じゃあ京楽さんが夫になって」
「んだとこらぁ、ユンの夫になるだって?」
「違う違う、冗談だよ。ね、ユンちゃん?」
「半分本気なんだけどな。シャイターンの捨て子白いダークエルフだったって有名じゃない。京楽さんのことでしょ?」
「そうだけど、僕には浮竹がいるからね」
「なんだ、そうだったのか。水くせぇな。そうならそうと言ってくれりゃあいいのに」
「いや、ボル君に、いきなりできてますなんていう勇気はないよ」
「ボル君、いつ出発するんだ?」
「あー、8時くらいかな。空間転移で帰るから」
「じゃあ、ユンちゃもお別れだね。元気でね」
「はい。浮竹さんも京楽さんもお元気で」
「じいさんを、町の宿屋で待たせてあるから、ちょっくらとってくるぜ」
ボルは、凄まじいスピードで宿屋があるほうに走っていき、すぐ帰ってきた。
ボルの右手には、魔族のおじいさんがいた。
「やあ、はじめまして、エルフの方々。ユンとボルの祖父です」
「じいちゃん、そんな話はもういいから、魔大陸に戻るぞ」
「ユン、ちゃんと気持ちは伝えかい?」
「はい、おじいちゃん。でも、振られちゃいました」
「そうかそうか。人生は長い。そういうときもある」
「じいちゃん、それにユン、俺の手を離すなよ」
空間転移の魔法陣が起動しはじめる。
次の瞬間には、ボルもユンもその祖父もいなくなっていた。
「ああ、今日は濃い一日の始まりだねぇ。今日は休みにしようか。昨日は心配で夜もまともに眠れなかったし、6時に叩き起こされたせいで、寝不足気味だし」
「ああ、俺も眠い。二度寝をしよう」
「「あ」」
二人してハモる。
師匠である剣士京楽の家に、ブルンを遊びにいかせたままだった。
京楽は、つい最近空間転移の魔法を覚えた。
「寝る前に、僕が迎えにいってくるよ」
「ああ、頼んだ」
浮竹は、一足早く眠ってしまった。
京楽は、空間転移の魔法でロスピア王国の剣士京楽の家の前までくると、呼び鈴を鳴らした。
『はーい』
「ああごめん、ブルンを引き取りにきた」
『ああ、奥の部屋にいるから、とりあえずあがりなよ』
「おじゃまします」
『あ、エルフの京楽。ちょうど、ブルンが寂しがっていたとこなんだ』
「くくるーー!!」
ブルンは、プルンと遊んでいたがエルフの京楽の姿を見て、顔に体当たりしてきた。
「ブルン、痛いから」
「くくる!」
「え、浮竹?家で寝てるよ。電撃のボルが家におしかけてきてね」
『電撃のボルだと?何もされなかっただろうね?』
『大丈夫だろう。中立を守っているようだし』
「ああ、戦闘には至らなかったよ。妹のユンちゃんとおじいさんを魔大陸に送るついでに、礼をしに僕らの家に寄っただけみたい」
『それなら、いいんだけど』
「浮竹はまだ寝てるし、僕も正直凄く眠いんだ。ボルのせいでほとんど寝れなかったから」
『そうか。じゃあエルフの浮竹にもよろしくと言っておいてくれ』
「うん、じゃあ、僕も戻って寝るね」
部屋の中で、空間転移の魔法陣を描き、エルフの京楽とブルンは消えてしまった。
『今度は、エルフの京楽まで空間転移の魔法を覚えたのか。プルンといい、便利そうだな』
「ププゥ~~~」
プルンは、ブルンと別れたことを哀しんで青くなっていたが、りんご10個をさしだされて、黄色になるのであった。
アークデーモンに捕らわれていた少女ユンと、その兄と名乗る、魔王ヴェルが四天王の一人、電撃のボルであった。
「よう、勝手にあらがせてもらってるぜ」
「お兄ちゃん、やはり勝手はびっくりさせちゃうんじゃないですか?」
「はぁ。まぁ、人生長く生きてたらこんなことも起こるね」
そう言いながら、京楽はバタンと倒れた。
「はははは、魔王の四天王、電撃のボル」
浮竹は、笑ってからバタンと倒れた。
「どうしよう、お兄ちゃん!」
「あー、ほっとけ。すぐ目をさまずだろうさ」
その通り、5分ほどで意識を取り戻した二人は、自分の家なのに窮屈そうにしていた。
「今、紅茶をいれてくる」
「コーラいれてくんねぇか」
「は?」
「俺はコーラがいいつってんだよ。なかったら、買いに行け」
「お兄ちゃん、お礼を言いに来たんでしょう?」
「あ、ああそうだったな」
「この前飲み会した時に、未成年用にコーラ買っておいたの残ってた。はい、どうぞ」
京楽からコーラをもらって、ボルはまるで命の水のように飲んでいった。
「オレは、このしゅわしゅわした感覚がたまらねーんだよな。飲み物は全部コーラ。好きな食べ物はなしでとにかくコーラだぜ!」
「それより、お兄ちゃん」
「あ、ああ、そうだな。前回は、俺の妹のユンを助けてくれて、すまねーな」
「いや、こちらも白金貨千枚ももらったし・・・・」
この前、式で大金貨100枚を宗教組織の人身売買で行方不明だったものが魔大陸で見つかったことを、イアラ帝国の騎士団に情報伝達する小遣いとしてつけられたのだが、ただ言伝するだけで大金貨100枚はありえないと、式に金をもたせて帰らせた。
とにかく、依頼以外で金が舞い込んでくることが多いのだ。
「なんなら、白金貨千枚をお返ししようか?」
「いらねぇよ。ユンを助けてくれた感謝の金だ。受け取っときな」
ボルはぶっきらぼうだったが、根は優しい青年だと分かった。
「その、ウッドガルド大陸では魔族は生きにくいからな。ユンは、魔大陸に連れていく。だが、その前に助けてもらったあんたらに会いたいっていうんで、わざわざ俺らから会いにきてやったってわけよ」
「そうか。ユンちゃん、魔大陸に帰るんだね」
「うん。おじいさんももう歳だし、一緒に魔大陸のお兄ちゃんの庇護下の元に居ることに決めたの」
「ユンちゃんとちゃんとした場面で会うのはじめてだったな」
浮竹が微笑むと、ユンはほのかに頬を赤くした。
「おいてめぇ、ユンに何しやがった!」
「な、何もしていない」
「違うの、お兄ちゃん!ただ、綺麗なエルフだなぁと思っただけだから」
「お、おう、そうか。すまねーな。オレ、こんな性格だからいつも先走っちまう」
「うん、別にいいけどね。君の性格にも慣れてきたよ。ほら、おかわりのコーラ」
「お、気が利くじゃねぇか」
ボルは、コーラを一気飲みして、げふーっとげっぷをした。
「やだあ、お兄ちゃんげっぷしないでよ」
「でるもんはでるんだから、仕方ねーだろうが」
「まぁまぁ。ああ、そうだ、ユンちゃんから預かってたこのペンダントだけど、返すよ」
「お、それは俺がユン誕生日にあげた、紋章入りのペンダントじゃねぇか!」
「ごめんなさい、お兄ちゃん。他に渡すものがなくって、魔族絡みならこれでどうにかなると思って渡してしまったの」
「返して、くれるのかよ?」
「うん、返すよ。僕らが魔族に関わることなんて、今回はあったけど、今後はないだろうし」
京楽の言葉に、ボルはペンダントを受け取って、ユンの首にかけてやった。
「まぁ、礼を言いに来ただけだ。泊まってやってもいいんだぜ」
「はいはい。じゃあ、夕食の用意するから、この部屋で寛いでて。浮竹はコーラとワインと今から書いていくメモの中身の買い出しを頼むよ」
「ああ、分かった京楽」
Aランク冒険者だ。
貧しい暮らしをしていると思われたら、また白金貨を渡されそうなので、今日は特に豪華にすることにした。
七面鳥を丸焼きにして、フォアグラやキャビア、トリュフなどを使った贅沢な料理を出してふるまった。
「お、すっげ―いいもん食ってんじゃんか。オレ、ここんちの子になろうかな」
浮竹と京楽は首を横に振った。
こんな大きな子供いりませんと。
「まぁ、冗談だ。今日は遅いし、泊まって行っていいか?」
「ああ、上の階に僕らの寝室の他にゲストルームが2つある。そこを使ってくれて構わないよ。ただ風呂場とトイレは一つだから、そこは気をつけてね」
ユンとボルは、先に風呂をかりて、寝間着に着替えてえボルはまたコーラを飲んでいた。
「そんなにコーラばっかり飲んでて、虫歯にならないのか?」
浮竹がふとした疑問を口にすると、ボルは笑った。
「今時、どこもゼロカロリーコーラだぜ。第一、虫歯になんて魔族はなんねーよ」
「そ、そうなのか。そういえばエルフの俺たちも、虫歯になったことはないな。ちゃんと歯を磨いてるせいだろうか」
「虫歯は、人間種族の病気だぜ。他種族がなるには、粘膜感染だ」
「つまり、人間とキスしない限り、他種族は虫歯にならないと?」
「そうだぜ。そんな当たり前のことも知らねーのかよ」
「すまない。何分、エルフなもので、人間世界にも魔族側にも事情が疎いからな」
「今から知っていきゃいいんだよ」
ボルは、魔王のことた四天王のことをいろいろ教えてくれた。
くそメガネと言われる四天王の時には、笑い合った。
「灼熱のシャイターンは、あんたを捨てたこと、くやんでるぜ」
「え」
「愛してなんかいないって、何度も否定しやがんだ。ほんとに捨てて興味なかったら、話題にのぼっただけで怒って出ていっちまう」
「そっか・・シャイターンが」
「よかったな、京楽」
「うん」
「おっし、眠くなってきたから寝る」
「まだ、9時だぞ?」
「魔族は早寝早起きが基本なんだよ。9時には寝て、6時に起きる」
「そ、それは健康的だな」
「お兄ちゃんは先に寝てて。浮竹さん、ちょっと話あるんだけどいいですか?」
「ああ、なんだろう?」
「す、好きなんです!」
京楽が後ろにいる場所で、ユンは浮竹に告白をした。
「もちろん、無理なのは分かってます。私は魔族で、あはたはエルフ」
「いや、そういう以前に俺にはすでに伴侶がいるんだ。後ろで固まってる、あいつだよ」
「あ、そうだったんですか」
ユンは、しゅんとなったが、すぐに顔をあげた。
「あー、告白して振られてすっきりした―。私も寝ますね」
「ああうん、おやすみ」
「台風みたいな兄妹だね」
「まぁ、そうだな。それより、この残った料理、俺らでは食べきれないな。冷蔵庫に入れておこうか」
「うん、そうしよう」
次の日の朝、6時に叩き起こされた。
「朝食まだかよ?」
「ああ、はいはい、今起きて作るよ」
寝ぼけ眼で、京楽はトーストを4枚焼いて、浮竹を起こして、スクランブルエッグを4人分用意して、ダイニングテーブルの椅子に座った。
「「いただきます」」
ユンとボルは・・・・ユンは分かるが、ボルは言葉遣いは乱暴だが、礼儀はわきまえてあるらしかった。
浮竹と京楽も、言葉に出さないがいただきますと心の中で言って、食べていく。
「「ごちそうさま」」
ユンが、朝ごはんの片付けを手伝ってくれた。
「ユンちゃん、いいお嫁さんになれるよ」
「本当?じゃあ京楽さんが夫になって」
「んだとこらぁ、ユンの夫になるだって?」
「違う違う、冗談だよ。ね、ユンちゃん?」
「半分本気なんだけどな。シャイターンの捨て子白いダークエルフだったって有名じゃない。京楽さんのことでしょ?」
「そうだけど、僕には浮竹がいるからね」
「なんだ、そうだったのか。水くせぇな。そうならそうと言ってくれりゃあいいのに」
「いや、ボル君に、いきなりできてますなんていう勇気はないよ」
「ボル君、いつ出発するんだ?」
「あー、8時くらいかな。空間転移で帰るから」
「じゃあ、ユンちゃもお別れだね。元気でね」
「はい。浮竹さんも京楽さんもお元気で」
「じいさんを、町の宿屋で待たせてあるから、ちょっくらとってくるぜ」
ボルは、凄まじいスピードで宿屋があるほうに走っていき、すぐ帰ってきた。
ボルの右手には、魔族のおじいさんがいた。
「やあ、はじめまして、エルフの方々。ユンとボルの祖父です」
「じいちゃん、そんな話はもういいから、魔大陸に戻るぞ」
「ユン、ちゃんと気持ちは伝えかい?」
「はい、おじいちゃん。でも、振られちゃいました」
「そうかそうか。人生は長い。そういうときもある」
「じいちゃん、それにユン、俺の手を離すなよ」
空間転移の魔法陣が起動しはじめる。
次の瞬間には、ボルもユンもその祖父もいなくなっていた。
「ああ、今日は濃い一日の始まりだねぇ。今日は休みにしようか。昨日は心配で夜もまともに眠れなかったし、6時に叩き起こされたせいで、寝不足気味だし」
「ああ、俺も眠い。二度寝をしよう」
「「あ」」
二人してハモる。
師匠である剣士京楽の家に、ブルンを遊びにいかせたままだった。
京楽は、つい最近空間転移の魔法を覚えた。
「寝る前に、僕が迎えにいってくるよ」
「ああ、頼んだ」
浮竹は、一足早く眠ってしまった。
京楽は、空間転移の魔法でロスピア王国の剣士京楽の家の前までくると、呼び鈴を鳴らした。
『はーい』
「ああごめん、ブルンを引き取りにきた」
『ああ、奥の部屋にいるから、とりあえずあがりなよ』
「おじゃまします」
『あ、エルフの京楽。ちょうど、ブルンが寂しがっていたとこなんだ』
「くくるーー!!」
ブルンは、プルンと遊んでいたがエルフの京楽の姿を見て、顔に体当たりしてきた。
「ブルン、痛いから」
「くくる!」
「え、浮竹?家で寝てるよ。電撃のボルが家におしかけてきてね」
『電撃のボルだと?何もされなかっただろうね?』
『大丈夫だろう。中立を守っているようだし』
「ああ、戦闘には至らなかったよ。妹のユンちゃんとおじいさんを魔大陸に送るついでに、礼をしに僕らの家に寄っただけみたい」
『それなら、いいんだけど』
「浮竹はまだ寝てるし、僕も正直凄く眠いんだ。ボルのせいでほとんど寝れなかったから」
『そうか。じゃあエルフの浮竹にもよろしくと言っておいてくれ』
「うん、じゃあ、僕も戻って寝るね」
部屋の中で、空間転移の魔法陣を描き、エルフの京楽とブルンは消えてしまった。
『今度は、エルフの京楽まで空間転移の魔法を覚えたのか。プルンといい、便利そうだな』
「ププゥ~~~」
プルンは、ブルンと別れたことを哀しんで青くなっていたが、りんご10個をさしだされて、黄色になるのであった。
エンシェントエルフとダークエルフ19
今回の依頼は、Aランクの依頼だった。
コカトリスが大量にわいて、村一つが石像になった。その村人の救出と、コカトリスの退治であった。
事前に、神殿で絶対に石化しないお守りを2つ買った。金貨40枚になったが、コカトリスの石化は強烈だ。経費に申請すれば、金は戻ってくるだろう。
さっそく石像にされた村にいくと、大量のコカトリスに囲まれた。
「KOKEEEEEEEE!」
コカトリスは、石化の視線を送った。
しかし、お守りの効果で何時まで経っても石化しない浮竹と京楽を見て、少し後退する。
「もう、遅いんだよねぇ!バーストロンド!」
「フレアサークル!」
爆炎と灼熱の範囲魔法を放つ。
村にいたコカトリスの3分の1が吹っ飛んで焼かれて死んでいった。
コカトリスたちは、逃げ出す。
村の外に出すわけにいかないので、京楽が網をかける魔法を唱える。
「スパイダーウェーブ!」
白い蜘蛛の糸のようなものでコカトリスは、コケーコケーと鶏の声で鳴きながら、慈悲をこうた。
そんなの関係なしに、浮竹はミスリルの剣で、京楽は魔法でコカトリスを葬っていく。
「はぁ、疲れた。もう、コカトリスはいないかな?」
「ああ、全部片づけたようだ。あっちに巣があったから、卵を全部破壊してきた」
京楽は、魔力回復のポーションを大量にもってきていた。
「くくるーーー」
ブルンにも回復魔法をかけてもらい、魔力を回復する。
これから、200人以上はいる村人の石化を解かなければいけないのだ。
「キュアストーン」
「ああ、コカトリスが!」
「キュアストーン」
「俺はどうなっていたんだ」
「キュアストーン」
「あはん、あなた・・・・あら?」
「キュアストーン」
「くけけけーーーあれ?」
「キュアストーン」
ひたすら、キュアストーンの魔法を使い続ける。状態異常回復の魔法はけっこう魔力を使うので、ブルンに常にヒールをかけてもらいながら、魔力回復ポーションを口にする。
村人200人全員の石化解除が終わった頃には、魔力回復ポーションでおなかはたぷたぷだし、精神的にも肉体的にも、疲れ果てていた。
「ほんとうに、村を救っていただき、ありがとうございます。これはほんのお礼のつもりです」
金貨の入った袋を受け取って、アイテムポケットにしまいこむ。
冒険者は、救った相手から金銭にからむものをもらうのは自由だった。
「それより、今晩は泊まっていいかな。魔力を使いすぎて、動くのもだるいんだよ」
「宿屋へ案内しますね」
宿屋のスィートルームに通されて、そのふかふかのベッドの上で京楽は横になるとすぐに眠り始めた。
夕飯まではまだ時間があるので、浮竹は村に異常がないかどうかの探索に出た。
村の少し遠くの森までいくと、コカトリスが出てきた。
巣があった。
「そうか、ここでコカトリスは増えたのか」
コカトリスたちは石化の視線を浮竹に送る。
一向に石化しない浮竹に、コカトリスたちは本能的に敵わないと分かって、逃げ出そうとするのを、炎の魔法でしとめていく。
「ファイアオブファイア!」
「くええええええ」
最後の一羽を葬り去って、巣の中にたヒナのコカトリスにとどめをさして、卵を破壊していった。
それから、森をぐるりと回ってみたが、ブラックベアと出会ったくらいで、異常はなかった。
「これでもう、コカトリスに石化されることはなくなったな」
村に戻ると、日も傾き、夕方になっていた。
「京楽、起きろ京楽。夕飯の時間だぞ」
「うーん。まだお腹がちゃぷちゃぷいってるから、少しだけ食べるよ」
「ああ、少しでも食っておいたほうが、体力の回復が早い」
ブルンに大分ヒールをかけてもらったので、魔力は半分ほどにまで回復していた。
恐るべきは、ブルンの魔力量だった。
ヒールといっても、ほぼ万能な神のヒールだ。それを何百回連発しても、魔力が尽きることなく永遠と魔法を使い続けられるのだ。
浮竹が推理するには、空気中のマナを吸っているのではないかということだった。
「ブルンもお疲れ。そとに町中のゴミを用意してもらったから、全部食べていいぞ」
「くくるーーー」
ブルンは喜んで、宿屋の裏に置かれたごみの山を全て消化してしまった。
「すいません、ゴミの処理までしてもらって」
「いや、この子はゴミが主食なんだ」
「変わった形をしていますが、色と特徴からブラックスライムですか?」
「ああ、そうだ。今はヒーリングスライムになっているが、元々はブラックスライムだ」
「そうですか・・・・・・」
宿屋の主人の目が、ぎらついた気がした。
「回復魔法も唱えられるんですよね。神クラスのヒールを」
「それはそうだが、けが人以外には滅多に使わないぞ。それと、灼熱のシャイターン一族の紋章が刻まれている。誘拐とかされたら、灼熱のシャイターンを敵に回すととってもらってかまわない」
宿屋の主人は、小さな声で舌打ちしていた。
シャイターンの紋章がなければ、攫って売り飛ばす算段でも考えていたのだろう。
ブルンは、売れば大金になる。
何せ神のヒールを無制限に使えるのだ。売れないほうがおかしい。おまけに食事はゴミでいいし。
その日は、宿屋のスイートルームに泊まって、朝早くに出発し、昼には冒険者ギルドに戻って、コカトリス65羽分の魔石を鑑定してもらい買取りをしてもらった。
村にいた50羽以外にも、森で倒した15羽分の魔石も含めれていた。
「こちら・・・金貨130枚になります」
報酬金は、金貨320枚。
まぁまぁの収入になった。
「あらん、うっきーちゃん春ちゃん、何を悩んでいるの?」
背後から尻を触られて、浮竹は蹴りを食らわせようとしたが、しっかりとガードされてしまった。
「このオカマギルドマスターが!」
「いやん、オカマじゃなくってオ・ト・メよ♡」
「おえー」
京楽が、気持ち悪そうにしていた。
「ひどい、春ちゃん!ベッドではあんなに優しくしてくれたじゃない!」
「誤解を招くような冗談はよしてくれないかな?焼くよ?」
「いやーん、こわーい」
キャサリンは、他のSランク冒険者のほうにちょっかいをかけにいった。
でも、尻はさわらない。
かわりに胸板を触っていた。
十分にセクハラの変態であったが、有能なので、セクハラだと訴えてもそれがどうしたと、上から言われるだけだった。
「浮竹、貯金も十分に貯まってきたし、別荘飼わない?」
「いいな。海辺の見える、そんなに遠くない場所にしよう」
二人は、不動産屋にいって、別荘の物件を見て回った。
「これなんてどう?ロスピア王国のアカシ海岸に近い別荘。剣士の僕の家から徒歩で1時間くらいの場所」
「お、いいな。師匠の家と近いのはいい」
「じゃあ、これに決めようか」
「ああ」
2階建ての洋館で、中古物件であったが、一度実物を見に行ってリフォーム済みだったので、すぐにでも暮らせそうだった。
さっそく家具を手配して、配置してもらった。
金貨2700枚が飛んでいったが、お気に入りの別荘になった。
剣士の京楽の家にいき、剣士の京楽と精霊の浮竹を誘い、海辺の別荘に案内した。
精霊の浮竹は、別荘の中で他に人がいないことを確認すると、人型をとった。
『いい別荘じゃないか。すごいな』
精霊の京楽は、目をキラキラさせていた。
「金貨2200枚の物件だったんだよ」
『へぇ、リフォーム済みにしては安いね。別荘まで買ちゃって、金持ちになったね』
「冒険者稼業でためた金だからな。白金貨は貯金したままだ」
『ぱーっと使っちゃえばいいのに』
「もったいなさすぎて、使えないよ」
Sランク冒険者なら、白金貨を報酬にもらうときはあるかもしれないが、Aランク冒険者ではまず白金貨を拝む機会がない。
かなり前、イアラ帝国の女帝卯ノ花の夫、更木の失った右腕をブルンで癒した時に白金貨をもたったのが最初だった。
次にはアークデーモンの討伐の時、魔王の四天王が一人、電撃のボルの妹ユンを救った時の謝礼だと、白金貨千枚をもらった。
あれには、二人はびびりまくった。
家に置いておくと危険な気がして、そのまま貯金した。
今現在、利子で少しずつ金額が増えていた。
「今日は海鮮バーベキューをしたいと思うんだ。バルコニーで焼くから、精霊の浮竹も人型のままで大丈夫だよ」
『海鮮バーベキューか。いいな。人がいると人型はとれんからな。バルコニーなら、人に見られることもないから、この姿でも大丈夫だろう』
「じゃあ、そうと決まれば市場で買い物をしてくるよ。はい、これ」
『え、なんだいこれは』
「買い物から戻ってくるまでしばらくかかるから、魚でも釣ってて」
自分の師匠を、顎で使うように、エルフの京楽は釣竿と餌を渡した。
『釣りか。いいな、俺もしてみたい』
「この時期は人がほとんどいないとはいえ、外で人型をとるのは危険だ。プルンとブルンの相手でもしてやってくれ」
こうして、エルフの浮竹と京楽は、海鮮バーベキューをするために、市場に行ってしまった。
『この僕に釣りをしろってさ』
『行って来たらどうだ?』
『じゃあ、妖刀になって。一緒に居たい』
『分かった』
精霊の浮竹は、妖刀に戻ると、京楽に連れられて海で釣りをはじめた。
これがまた、面白いようにかかった。
『お、今度はタイだ。縁起がいいね』
市場から帰ってきた浮竹と京楽は、剣士の京楽が釣りあげた獲物の数々を見て、口をあんぐりとあけたままだった。
『だてに、1500年も生きちゃいないよ』
エルフの浮竹と京楽の師匠である、剣士の京楽は、ヒウ帝国という、1500年前に滅びた帝国の生き残りであった。
女神のフレイアの子で、神人であり、不老不死であった。
どんな傷でも、たちどころに癒えてしまうのだという。
妖刀の浮竹のことも、少し知った。
いろんなことを、この前剣士の京楽、もとい師匠の家に行った時に、告白してもらったが、二人はそんなこと関係なく普通に接してくれた。
今もそうだ。
「テラスに行こう。おーい、バーベキューの用意するよー」
『ああ、分かった』
『ちょっと釣りすぎたかなぁ』
「バーベキューを焼くやつは借りものだ。師匠が釣った魚は俺が捌こう」
エルフの浮竹は、器用に魚を3枚卸にしていく。
それに塩をまぶして、串を通して火であぶり、4人は海鮮バーベキューを楽しんだ。
海老やホタテ、カニなんかも買ってあった。
カニは甲羅に切れ目をいれて、ある程度冷ましてから食べた。
『ふふ、こういうのもいいね』
『そうだな。家族が増えたみたいだ』
「師匠は、もう家族同然だ」
「まぁ、浮竹の言う通りだね」
剣士の京楽は、じんわりと胸が暖かくなっていくのであった。それは精霊の浮竹も同じだった。
「ププルウ!」
「くくるーー」
「ああ、お前たちにもごはんあげないとな」
プルンにはりんご10個を、ブルンはバーベキューで出たゴミを食べてもらった。
楽しい時間は、長くはなかったが、記憶の一ページになるくらいには続くのだった。
コカトリスが大量にわいて、村一つが石像になった。その村人の救出と、コカトリスの退治であった。
事前に、神殿で絶対に石化しないお守りを2つ買った。金貨40枚になったが、コカトリスの石化は強烈だ。経費に申請すれば、金は戻ってくるだろう。
さっそく石像にされた村にいくと、大量のコカトリスに囲まれた。
「KOKEEEEEEEE!」
コカトリスは、石化の視線を送った。
しかし、お守りの効果で何時まで経っても石化しない浮竹と京楽を見て、少し後退する。
「もう、遅いんだよねぇ!バーストロンド!」
「フレアサークル!」
爆炎と灼熱の範囲魔法を放つ。
村にいたコカトリスの3分の1が吹っ飛んで焼かれて死んでいった。
コカトリスたちは、逃げ出す。
村の外に出すわけにいかないので、京楽が網をかける魔法を唱える。
「スパイダーウェーブ!」
白い蜘蛛の糸のようなものでコカトリスは、コケーコケーと鶏の声で鳴きながら、慈悲をこうた。
そんなの関係なしに、浮竹はミスリルの剣で、京楽は魔法でコカトリスを葬っていく。
「はぁ、疲れた。もう、コカトリスはいないかな?」
「ああ、全部片づけたようだ。あっちに巣があったから、卵を全部破壊してきた」
京楽は、魔力回復のポーションを大量にもってきていた。
「くくるーーー」
ブルンにも回復魔法をかけてもらい、魔力を回復する。
これから、200人以上はいる村人の石化を解かなければいけないのだ。
「キュアストーン」
「ああ、コカトリスが!」
「キュアストーン」
「俺はどうなっていたんだ」
「キュアストーン」
「あはん、あなた・・・・あら?」
「キュアストーン」
「くけけけーーーあれ?」
「キュアストーン」
ひたすら、キュアストーンの魔法を使い続ける。状態異常回復の魔法はけっこう魔力を使うので、ブルンに常にヒールをかけてもらいながら、魔力回復ポーションを口にする。
村人200人全員の石化解除が終わった頃には、魔力回復ポーションでおなかはたぷたぷだし、精神的にも肉体的にも、疲れ果てていた。
「ほんとうに、村を救っていただき、ありがとうございます。これはほんのお礼のつもりです」
金貨の入った袋を受け取って、アイテムポケットにしまいこむ。
冒険者は、救った相手から金銭にからむものをもらうのは自由だった。
「それより、今晩は泊まっていいかな。魔力を使いすぎて、動くのもだるいんだよ」
「宿屋へ案内しますね」
宿屋のスィートルームに通されて、そのふかふかのベッドの上で京楽は横になるとすぐに眠り始めた。
夕飯まではまだ時間があるので、浮竹は村に異常がないかどうかの探索に出た。
村の少し遠くの森までいくと、コカトリスが出てきた。
巣があった。
「そうか、ここでコカトリスは増えたのか」
コカトリスたちは石化の視線を浮竹に送る。
一向に石化しない浮竹に、コカトリスたちは本能的に敵わないと分かって、逃げ出そうとするのを、炎の魔法でしとめていく。
「ファイアオブファイア!」
「くええええええ」
最後の一羽を葬り去って、巣の中にたヒナのコカトリスにとどめをさして、卵を破壊していった。
それから、森をぐるりと回ってみたが、ブラックベアと出会ったくらいで、異常はなかった。
「これでもう、コカトリスに石化されることはなくなったな」
村に戻ると、日も傾き、夕方になっていた。
「京楽、起きろ京楽。夕飯の時間だぞ」
「うーん。まだお腹がちゃぷちゃぷいってるから、少しだけ食べるよ」
「ああ、少しでも食っておいたほうが、体力の回復が早い」
ブルンに大分ヒールをかけてもらったので、魔力は半分ほどにまで回復していた。
恐るべきは、ブルンの魔力量だった。
ヒールといっても、ほぼ万能な神のヒールだ。それを何百回連発しても、魔力が尽きることなく永遠と魔法を使い続けられるのだ。
浮竹が推理するには、空気中のマナを吸っているのではないかということだった。
「ブルンもお疲れ。そとに町中のゴミを用意してもらったから、全部食べていいぞ」
「くくるーーー」
ブルンは喜んで、宿屋の裏に置かれたごみの山を全て消化してしまった。
「すいません、ゴミの処理までしてもらって」
「いや、この子はゴミが主食なんだ」
「変わった形をしていますが、色と特徴からブラックスライムですか?」
「ああ、そうだ。今はヒーリングスライムになっているが、元々はブラックスライムだ」
「そうですか・・・・・・」
宿屋の主人の目が、ぎらついた気がした。
「回復魔法も唱えられるんですよね。神クラスのヒールを」
「それはそうだが、けが人以外には滅多に使わないぞ。それと、灼熱のシャイターン一族の紋章が刻まれている。誘拐とかされたら、灼熱のシャイターンを敵に回すととってもらってかまわない」
宿屋の主人は、小さな声で舌打ちしていた。
シャイターンの紋章がなければ、攫って売り飛ばす算段でも考えていたのだろう。
ブルンは、売れば大金になる。
何せ神のヒールを無制限に使えるのだ。売れないほうがおかしい。おまけに食事はゴミでいいし。
その日は、宿屋のスイートルームに泊まって、朝早くに出発し、昼には冒険者ギルドに戻って、コカトリス65羽分の魔石を鑑定してもらい買取りをしてもらった。
村にいた50羽以外にも、森で倒した15羽分の魔石も含めれていた。
「こちら・・・金貨130枚になります」
報酬金は、金貨320枚。
まぁまぁの収入になった。
「あらん、うっきーちゃん春ちゃん、何を悩んでいるの?」
背後から尻を触られて、浮竹は蹴りを食らわせようとしたが、しっかりとガードされてしまった。
「このオカマギルドマスターが!」
「いやん、オカマじゃなくってオ・ト・メよ♡」
「おえー」
京楽が、気持ち悪そうにしていた。
「ひどい、春ちゃん!ベッドではあんなに優しくしてくれたじゃない!」
「誤解を招くような冗談はよしてくれないかな?焼くよ?」
「いやーん、こわーい」
キャサリンは、他のSランク冒険者のほうにちょっかいをかけにいった。
でも、尻はさわらない。
かわりに胸板を触っていた。
十分にセクハラの変態であったが、有能なので、セクハラだと訴えてもそれがどうしたと、上から言われるだけだった。
「浮竹、貯金も十分に貯まってきたし、別荘飼わない?」
「いいな。海辺の見える、そんなに遠くない場所にしよう」
二人は、不動産屋にいって、別荘の物件を見て回った。
「これなんてどう?ロスピア王国のアカシ海岸に近い別荘。剣士の僕の家から徒歩で1時間くらいの場所」
「お、いいな。師匠の家と近いのはいい」
「じゃあ、これに決めようか」
「ああ」
2階建ての洋館で、中古物件であったが、一度実物を見に行ってリフォーム済みだったので、すぐにでも暮らせそうだった。
さっそく家具を手配して、配置してもらった。
金貨2700枚が飛んでいったが、お気に入りの別荘になった。
剣士の京楽の家にいき、剣士の京楽と精霊の浮竹を誘い、海辺の別荘に案内した。
精霊の浮竹は、別荘の中で他に人がいないことを確認すると、人型をとった。
『いい別荘じゃないか。すごいな』
精霊の京楽は、目をキラキラさせていた。
「金貨2200枚の物件だったんだよ」
『へぇ、リフォーム済みにしては安いね。別荘まで買ちゃって、金持ちになったね』
「冒険者稼業でためた金だからな。白金貨は貯金したままだ」
『ぱーっと使っちゃえばいいのに』
「もったいなさすぎて、使えないよ」
Sランク冒険者なら、白金貨を報酬にもらうときはあるかもしれないが、Aランク冒険者ではまず白金貨を拝む機会がない。
かなり前、イアラ帝国の女帝卯ノ花の夫、更木の失った右腕をブルンで癒した時に白金貨をもたったのが最初だった。
次にはアークデーモンの討伐の時、魔王の四天王が一人、電撃のボルの妹ユンを救った時の謝礼だと、白金貨千枚をもらった。
あれには、二人はびびりまくった。
家に置いておくと危険な気がして、そのまま貯金した。
今現在、利子で少しずつ金額が増えていた。
「今日は海鮮バーベキューをしたいと思うんだ。バルコニーで焼くから、精霊の浮竹も人型のままで大丈夫だよ」
『海鮮バーベキューか。いいな。人がいると人型はとれんからな。バルコニーなら、人に見られることもないから、この姿でも大丈夫だろう』
「じゃあ、そうと決まれば市場で買い物をしてくるよ。はい、これ」
『え、なんだいこれは』
「買い物から戻ってくるまでしばらくかかるから、魚でも釣ってて」
自分の師匠を、顎で使うように、エルフの京楽は釣竿と餌を渡した。
『釣りか。いいな、俺もしてみたい』
「この時期は人がほとんどいないとはいえ、外で人型をとるのは危険だ。プルンとブルンの相手でもしてやってくれ」
こうして、エルフの浮竹と京楽は、海鮮バーベキューをするために、市場に行ってしまった。
『この僕に釣りをしろってさ』
『行って来たらどうだ?』
『じゃあ、妖刀になって。一緒に居たい』
『分かった』
精霊の浮竹は、妖刀に戻ると、京楽に連れられて海で釣りをはじめた。
これがまた、面白いようにかかった。
『お、今度はタイだ。縁起がいいね』
市場から帰ってきた浮竹と京楽は、剣士の京楽が釣りあげた獲物の数々を見て、口をあんぐりとあけたままだった。
『だてに、1500年も生きちゃいないよ』
エルフの浮竹と京楽の師匠である、剣士の京楽は、ヒウ帝国という、1500年前に滅びた帝国の生き残りであった。
女神のフレイアの子で、神人であり、不老不死であった。
どんな傷でも、たちどころに癒えてしまうのだという。
妖刀の浮竹のことも、少し知った。
いろんなことを、この前剣士の京楽、もとい師匠の家に行った時に、告白してもらったが、二人はそんなこと関係なく普通に接してくれた。
今もそうだ。
「テラスに行こう。おーい、バーベキューの用意するよー」
『ああ、分かった』
『ちょっと釣りすぎたかなぁ』
「バーベキューを焼くやつは借りものだ。師匠が釣った魚は俺が捌こう」
エルフの浮竹は、器用に魚を3枚卸にしていく。
それに塩をまぶして、串を通して火であぶり、4人は海鮮バーベキューを楽しんだ。
海老やホタテ、カニなんかも買ってあった。
カニは甲羅に切れ目をいれて、ある程度冷ましてから食べた。
『ふふ、こういうのもいいね』
『そうだな。家族が増えたみたいだ』
「師匠は、もう家族同然だ」
「まぁ、浮竹の言う通りだね」
剣士の京楽は、じんわりと胸が暖かくなっていくのであった。それは精霊の浮竹も同じだった。
「ププルウ!」
「くくるーー」
「ああ、お前たちにもごはんあげないとな」
プルンにはりんご10個を、ブルンはバーベキューで出たゴミを食べてもらった。
楽しい時間は、長くはなかったが、記憶の一ページになるくらいには続くのだった。
エンシェントエルフとダークエルフ18
アリアラス=ヒウは、宗教組織を作った。
自分はヒウ帝国の皇族であり、神はヒウ帝国の第二皇子であるとした。ヒウ帝国の第二皇子の名は秘密だが、今も生きているという。実際は、名前は知らないのだが。
巨額の金が動き、その宗教組織は見る見るうちに信者を増やして、大きくなっていった。
裏では、人身売買や、人工生命体の誕生など、黒いことを行って金を稼いでいた。
信者なると、無条件で金貨10枚を与えられるので、宗教の興味のない若者なども宗教に入団した。
宗教組織の名は、神の王国であった。
緊急クエストが冒険者ギルドで持ち上がった。
宗教組織、神の王国の壊滅であった。
人身売買で得た金で、モンスターを作り出し、操ってもいたので、ロスピア王国の退治屋にも援助を要請した。
Cランク以上の冒険者で、一斉に宗教組織の裏の分まで摘発が始まった。
退治屋の剣士の京楽は、人工的に作り出されたモンスターたちを屠っていく。
『ここはボクに任せて、逃げようとしている組織の人間の捕縛を!』
今度は、剣士の京楽は冷静だったので、宗教団体の上の者たちや、人身売買に関わった者たちを殺すことはなかった。
冒険者たちに捕縛されていく宗教組織の上位の者や、人身売買に関わった者は、何かに呪われているかのように、突然苦しみだして、死んでいく。
「これも、秘密を守るためだよ。あーっはっはっは」
アリアラス=ヒウは、そう言い残して自害した。
結局、宗教組織の上にいた者たち、人身売買に携わった者たちは全て死んでしまい、普通の一般信徒が一時的に捕縛された。
こうして、神の王国は、大きな謎を残したまま壊滅した。
証拠書類などが残っていたので、犯した犯罪は明確にされた。
売られていった者たちを買っていった、貴族たちが逮捕された。大半が女性と子供で、性的な奴隷にされていた。
「ふう。とりあえず、捕縛した奴らは何かの呪いかで死んでしまって、TOPのアリアラス=ヒウも自害してしまった。今回の件は、犯人のいないまま、迷宮入りしそうだね。ヒウ帝国の第二皇子が生きているって件も、信用していいのか分からないね」
「そうだな」
売られていった女性や子供が次々と保護されていった。
中には、奴隷を買っていった者の中に、イアラ帝国の女帝の直臣もいて、イアラ帝国の内部でも、被害者がいるということで、国をあげての行方不明者の捜索がされた。
半月をかけて捜査が行われて、行方不明者は160人から15人まで減っていた。
奴隷として売られていった人間の数は約300人。そのうち助けられた数が260人。残りの40人は、殺害されたか、自害したかのどちからかだった。
行方不明の15人は、引き続き捜索が行われるが、半年を期限として、それ以上探しても見つからない場合は、哀しいが死亡したということにされた。
緊急クエストだったが、報酬はそこそこで、一人あたり金貨200枚が配られた。Cランク冒険者からの参加だったので、金貨200枚をもらったCランク冒険者たちは、喜んでいた。
Bランク冒険者も喜ぶ額であった。
ただ、Aランク、Sランクの冒険者には物足りなかったが、帝国側からの報酬金であるので、文句は言えなかった。
ランクに関係なく、今回の件で捜査をしてくれた者には金貨200枚を配るという約束だった。
冒険者ギルドのほうでも、一人あたり金貨50枚の報酬金が出ることになった。
ただ、参加した人数が多かったので、50枚が出せる額の精一杯であるらしかった。
浮竹のポケットの中に、「僕は冒険者じゃないからあげるよ」と、金貨50枚の入った袋が入っていた。
「師匠が、冒険者ギルドの者と間違われたんだな」
「うふん、うっきーちゃんも春ちゃんも、逮捕に尽力を尽くしてくれてありがとうね?♡」
通称青髭オカマ、自称キャシーのキャサリンギルドマスターは、くねくねしながら、浮竹と京楽の尻を揉んだ。
「セクハラだ!」
「そうだよ、セクハラだよ!」
「あらん、あたしがギルドマスターだから、ただの挨拶よん?」
「この青髭オカマが!」
「あらん、何か言った春ちゃん?」
京楽の首をしめあげながら、キャサリンはにこにこしていた。
「な、なんでもない、ギルドマスター!」
「やだ、キャシーって呼んで♡」
「今回は、後味が悪い事件だったね」
「ああ。真実を知る者はみんな死んでしまった」
「まぁ、そんな時もあるわ。今夜は、神の王国壊滅を祝して、酒場で飲み放題食い放題のパーティーがあるから、是非参加してね♡」
Fランクからの冒険者からも参加ができるらしく、酒場はその日、人が入りきらないほどに賑わった。
二人は、ある程度飲んで食べてから、S、A、Bランクのそれぞれの知り合いと会話をした。
皆、不完全燃焼であることが気に入らないようだった。
どのみち、生きていても処刑だったろうなので、処刑する手間が省けたとして考えることにした。
「じゃあ、僕たちは帰るね」
「くるるー」
ブルンは、生ごみをいっぱい食べて、お腹いっぱいであるらしかった。
「じゃあ、また明日」
浮竹も、知り合いたちに手を振って別れた。
マイホームにつくと、浮竹と京楽は手を握りあい、昔話をしだした。
「君が、僕に会いに来てくれたのが、全ての始まりだったね」
「ああ。ダークエルフが捕まったって、大騒ぎだったんだぞ」
当時を振り返る。
ダークエルフの子供が捕まった。すぐに牢屋に入れられて、幼い浮竹は、門番にスリープの魔法をかけて、ダークエルフの京楽と出会った。
「誰。誰か、そこにいるの?」
「君、ダークエルフなの?肌が白いよ」
「でも、ダークエルフなんだよ」
「ちょっと待ってて。お腹すいたでしょ?今、パンもってきてあげる」
浮竹は、自分の昼食用のパンとスープを、牢屋の中にいる浮竹に差し出した。
「ありがとう・・・。こんな暖かい食事をするのは久しぶりだよ。昨日まで、雑草を口にして飢えを凌いでいたからね」
「おかわりいるか?」
「欲しいけど・・・・これ、君の分の食事じゃないの?」
「俺は族長の次男だから。ある程度は融通が利くんだ」
「そう。じゃあ、おかわりほしいな」
「分かった」
浮竹は頷いて、自分の自宅の厨房からパンとスープを持ってくると、京楽の牢屋の中に入れた。
それから、浮竹は、見張りの目をかいくぐり、毎日のように京楽の元に通った。
やがて80年が経ち、12歳の見た目になった二人は、浮竹が抜け道を作ってくれた牢屋から抜け出して、冒険者登録をした。
エルフ種族は、80歳にならないと冒険者登録できないようになっていた。
度々牢獄を抜け出して、浮竹と京楽はFランク冒険者として、依頼をこなしていくが、あまり長く牢屋をあけていられないので、冒険者稼業は月に2回くらいだった。
もう、その頃には京楽は浮竹に惚れていた。浮竹も京楽を必要としていた。
120歳になり、成人した二人に待っていた運命は、京楽の処刑と、族長の長の補助をしろというがんじがらめの人生のレールだった。
二人は、手を取り合って逃げ出した。
逃げ出す直前、浮竹の父親であり、族長であったエルフから、ミスリルの剣をもらった。
餞別代りだった。
こうして、エルフの森を捨てた二人は、人間社会で暮らすようになった。
Cランク冒険者になっていたが、収入はそれほどなく、最初の頃は宿屋の厩(うまや)で、夜を過ごした。寝床は藁だった。寒かったが、文句は言っていられなかった。
やがてCランクも板につき、毎日金貨5枚程度を稼げるようになると、1日銀貨2枚の宿を利用するようになった。
宿はいろいろに荷物があったので、二部屋借りた。
浮竹と京楽は、そういう欲はあまりなかったが、Bランク昇格試験に受かった日、契りあった。
お互い、居なくてはいけない存在になっており、伴侶であった。
エルフでそういう関係に陥るのは珍しいことなので、それを知ったギルドマスターは、不幸になるかもしれないと、二人に諭したが、二人はいつも一緒だった。
今は180歳になるが、かれこれ150年は一緒にいた。
エルフの寿命は長い。
人生の5分の1を一緒に過ごしてきた。
もう、お互いに居なくてはいけない存在だった。
「懐かしいねぇ。君がパンとスープを差し出してきた姿が、今でも鮮明に蘇る」
「それなら、俺も覚えているぞ。薄汚れた格好で、暗い目をしていた。でもとても孤独な目をしていた。お腹がいっぱいになったら、少しは違う表情を浮かべるんじゃないかって、自分の分の昼食をあげたんだ」
「ああ、あの食事、やっぱり君の昼食だったの」
「おかわりは、屋敷の厨房から盗んだ」
二人して、クスクスと笑い合った。
もう、遠い日の記憶である。欲は薄いが、二人は時折契り合う。
それは子孫を残すためのものではなく、お互いの存在を確かめ合うためだった。
「今日はもう遅い。寝ようか」
「ああ、そうしよう」
すでに風呂には入った。
同じキングサイズのベッドに横になり、互いを抱きしめ合うよな恰好で眠りにつく。
ダークエルフに生まれてよかった-------------。
いつからか、京楽はそう思うようになっていた。未だに種族は偽っているが、浮竹と出会えたのは、京楽がダークエルフだったからだ。
いつか、皆にもダークエルフだと、告げれる日がくればいい。そう思いながら、眠りの底に引きずられていくのだった。
自分はヒウ帝国の皇族であり、神はヒウ帝国の第二皇子であるとした。ヒウ帝国の第二皇子の名は秘密だが、今も生きているという。実際は、名前は知らないのだが。
巨額の金が動き、その宗教組織は見る見るうちに信者を増やして、大きくなっていった。
裏では、人身売買や、人工生命体の誕生など、黒いことを行って金を稼いでいた。
信者なると、無条件で金貨10枚を与えられるので、宗教の興味のない若者なども宗教に入団した。
宗教組織の名は、神の王国であった。
緊急クエストが冒険者ギルドで持ち上がった。
宗教組織、神の王国の壊滅であった。
人身売買で得た金で、モンスターを作り出し、操ってもいたので、ロスピア王国の退治屋にも援助を要請した。
Cランク以上の冒険者で、一斉に宗教組織の裏の分まで摘発が始まった。
退治屋の剣士の京楽は、人工的に作り出されたモンスターたちを屠っていく。
『ここはボクに任せて、逃げようとしている組織の人間の捕縛を!』
今度は、剣士の京楽は冷静だったので、宗教団体の上の者たちや、人身売買に関わった者たちを殺すことはなかった。
冒険者たちに捕縛されていく宗教組織の上位の者や、人身売買に関わった者は、何かに呪われているかのように、突然苦しみだして、死んでいく。
「これも、秘密を守るためだよ。あーっはっはっは」
アリアラス=ヒウは、そう言い残して自害した。
結局、宗教組織の上にいた者たち、人身売買に携わった者たちは全て死んでしまい、普通の一般信徒が一時的に捕縛された。
こうして、神の王国は、大きな謎を残したまま壊滅した。
証拠書類などが残っていたので、犯した犯罪は明確にされた。
売られていった者たちを買っていった、貴族たちが逮捕された。大半が女性と子供で、性的な奴隷にされていた。
「ふう。とりあえず、捕縛した奴らは何かの呪いかで死んでしまって、TOPのアリアラス=ヒウも自害してしまった。今回の件は、犯人のいないまま、迷宮入りしそうだね。ヒウ帝国の第二皇子が生きているって件も、信用していいのか分からないね」
「そうだな」
売られていった女性や子供が次々と保護されていった。
中には、奴隷を買っていった者の中に、イアラ帝国の女帝の直臣もいて、イアラ帝国の内部でも、被害者がいるということで、国をあげての行方不明者の捜索がされた。
半月をかけて捜査が行われて、行方不明者は160人から15人まで減っていた。
奴隷として売られていった人間の数は約300人。そのうち助けられた数が260人。残りの40人は、殺害されたか、自害したかのどちからかだった。
行方不明の15人は、引き続き捜索が行われるが、半年を期限として、それ以上探しても見つからない場合は、哀しいが死亡したということにされた。
緊急クエストだったが、報酬はそこそこで、一人あたり金貨200枚が配られた。Cランク冒険者からの参加だったので、金貨200枚をもらったCランク冒険者たちは、喜んでいた。
Bランク冒険者も喜ぶ額であった。
ただ、Aランク、Sランクの冒険者には物足りなかったが、帝国側からの報酬金であるので、文句は言えなかった。
ランクに関係なく、今回の件で捜査をしてくれた者には金貨200枚を配るという約束だった。
冒険者ギルドのほうでも、一人あたり金貨50枚の報酬金が出ることになった。
ただ、参加した人数が多かったので、50枚が出せる額の精一杯であるらしかった。
浮竹のポケットの中に、「僕は冒険者じゃないからあげるよ」と、金貨50枚の入った袋が入っていた。
「師匠が、冒険者ギルドの者と間違われたんだな」
「うふん、うっきーちゃんも春ちゃんも、逮捕に尽力を尽くしてくれてありがとうね?♡」
通称青髭オカマ、自称キャシーのキャサリンギルドマスターは、くねくねしながら、浮竹と京楽の尻を揉んだ。
「セクハラだ!」
「そうだよ、セクハラだよ!」
「あらん、あたしがギルドマスターだから、ただの挨拶よん?」
「この青髭オカマが!」
「あらん、何か言った春ちゃん?」
京楽の首をしめあげながら、キャサリンはにこにこしていた。
「な、なんでもない、ギルドマスター!」
「やだ、キャシーって呼んで♡」
「今回は、後味が悪い事件だったね」
「ああ。真実を知る者はみんな死んでしまった」
「まぁ、そんな時もあるわ。今夜は、神の王国壊滅を祝して、酒場で飲み放題食い放題のパーティーがあるから、是非参加してね♡」
Fランクからの冒険者からも参加ができるらしく、酒場はその日、人が入りきらないほどに賑わった。
二人は、ある程度飲んで食べてから、S、A、Bランクのそれぞれの知り合いと会話をした。
皆、不完全燃焼であることが気に入らないようだった。
どのみち、生きていても処刑だったろうなので、処刑する手間が省けたとして考えることにした。
「じゃあ、僕たちは帰るね」
「くるるー」
ブルンは、生ごみをいっぱい食べて、お腹いっぱいであるらしかった。
「じゃあ、また明日」
浮竹も、知り合いたちに手を振って別れた。
マイホームにつくと、浮竹と京楽は手を握りあい、昔話をしだした。
「君が、僕に会いに来てくれたのが、全ての始まりだったね」
「ああ。ダークエルフが捕まったって、大騒ぎだったんだぞ」
当時を振り返る。
ダークエルフの子供が捕まった。すぐに牢屋に入れられて、幼い浮竹は、門番にスリープの魔法をかけて、ダークエルフの京楽と出会った。
「誰。誰か、そこにいるの?」
「君、ダークエルフなの?肌が白いよ」
「でも、ダークエルフなんだよ」
「ちょっと待ってて。お腹すいたでしょ?今、パンもってきてあげる」
浮竹は、自分の昼食用のパンとスープを、牢屋の中にいる浮竹に差し出した。
「ありがとう・・・。こんな暖かい食事をするのは久しぶりだよ。昨日まで、雑草を口にして飢えを凌いでいたからね」
「おかわりいるか?」
「欲しいけど・・・・これ、君の分の食事じゃないの?」
「俺は族長の次男だから。ある程度は融通が利くんだ」
「そう。じゃあ、おかわりほしいな」
「分かった」
浮竹は頷いて、自分の自宅の厨房からパンとスープを持ってくると、京楽の牢屋の中に入れた。
それから、浮竹は、見張りの目をかいくぐり、毎日のように京楽の元に通った。
やがて80年が経ち、12歳の見た目になった二人は、浮竹が抜け道を作ってくれた牢屋から抜け出して、冒険者登録をした。
エルフ種族は、80歳にならないと冒険者登録できないようになっていた。
度々牢獄を抜け出して、浮竹と京楽はFランク冒険者として、依頼をこなしていくが、あまり長く牢屋をあけていられないので、冒険者稼業は月に2回くらいだった。
もう、その頃には京楽は浮竹に惚れていた。浮竹も京楽を必要としていた。
120歳になり、成人した二人に待っていた運命は、京楽の処刑と、族長の長の補助をしろというがんじがらめの人生のレールだった。
二人は、手を取り合って逃げ出した。
逃げ出す直前、浮竹の父親であり、族長であったエルフから、ミスリルの剣をもらった。
餞別代りだった。
こうして、エルフの森を捨てた二人は、人間社会で暮らすようになった。
Cランク冒険者になっていたが、収入はそれほどなく、最初の頃は宿屋の厩(うまや)で、夜を過ごした。寝床は藁だった。寒かったが、文句は言っていられなかった。
やがてCランクも板につき、毎日金貨5枚程度を稼げるようになると、1日銀貨2枚の宿を利用するようになった。
宿はいろいろに荷物があったので、二部屋借りた。
浮竹と京楽は、そういう欲はあまりなかったが、Bランク昇格試験に受かった日、契りあった。
お互い、居なくてはいけない存在になっており、伴侶であった。
エルフでそういう関係に陥るのは珍しいことなので、それを知ったギルドマスターは、不幸になるかもしれないと、二人に諭したが、二人はいつも一緒だった。
今は180歳になるが、かれこれ150年は一緒にいた。
エルフの寿命は長い。
人生の5分の1を一緒に過ごしてきた。
もう、お互いに居なくてはいけない存在だった。
「懐かしいねぇ。君がパンとスープを差し出してきた姿が、今でも鮮明に蘇る」
「それなら、俺も覚えているぞ。薄汚れた格好で、暗い目をしていた。でもとても孤独な目をしていた。お腹がいっぱいになったら、少しは違う表情を浮かべるんじゃないかって、自分の分の昼食をあげたんだ」
「ああ、あの食事、やっぱり君の昼食だったの」
「おかわりは、屋敷の厨房から盗んだ」
二人して、クスクスと笑い合った。
もう、遠い日の記憶である。欲は薄いが、二人は時折契り合う。
それは子孫を残すためのものではなく、お互いの存在を確かめ合うためだった。
「今日はもう遅い。寝ようか」
「ああ、そうしよう」
すでに風呂には入った。
同じキングサイズのベッドに横になり、互いを抱きしめ合うよな恰好で眠りにつく。
ダークエルフに生まれてよかった-------------。
いつからか、京楽はそう思うようになっていた。未だに種族は偽っているが、浮竹と出会えたのは、京楽がダークエルフだったからだ。
いつか、皆にもダークエルフだと、告げれる日がくればいい。そう思いながら、眠りの底に引きずられていくのだった。
エンシェントエルフとダークエルフ17
その依頼は、神隠しにあった子供たちの調査というものだった。
ハーメルンの笛吹と名乗る人物が通って行った後には、12歳以下の子供がいなくなるのだという。
進路からして、次に狙われるのはイアラ帝国の隣のアスピラ王国のロトスという村だった。
緊急クエストだったので、浮竹と京楽の他にも、Bランク6名、Aランク3名が、派遣された。
やがて、笛の音がしてきた。
ハーメルンの笛吹だった。
青年は、一見するとただの人間に見えた。
でも、エルフの浮竹と京楽には分かった。
「正体は、魔女だ!このまま、後をつけるぞ」
魔女を倒す適正はSランクだ。
Bランク冒険者は援軍を呼ぶために冒険者ギルドに戻ってもらい、Aランク冒険者3人と一緒に行動を開始した。
「さぁ、いい子だからこの洞窟の中にお入り」
そこは、暗くて深い洞窟だった。
気づかれないように、音を立てずに後をついていく。
洞窟の奥は牢になっており、これまで行方不明になっていた子供たちもみんな揃っていた。
「さて、次の町は・・・・・」
「そこまでだ!」
京楽がライトの光で洞窟を照らし、浮竹が剣でハーメルンの笛吹の喉もとに剣を突きつける。
「なんですか、あなたたちは!」
「それはこっちの台詞だ!」
「私はただ、迷子の子供たちを保護しただけで」
「正体はばればれなんだよ、この魔女が!」
Aランクの剣士の一人が、ハーメルンの笛吹に剣を向けるて切りかかると、浮竹の剣を振り払い、Aランクの剣士の剣を叩き折った。
「ふん、人間風情が。用があるのは、子供だけだ。他は、皆殺しにしてくれる」
「エアプレッシャー」
「ファイアランス!」
「てやあああ!!」
他の3人のAランク冒険者は攻撃をしかけるが、魔法を易々と弾いて、切りかかっていた剣士のサブの剣を身に受けるが、少し切られただけだった。
「エアプリズン」
魔女は、空気の檻を作り、そこから空気をぬいてAランク冒険者たちを酸欠にさせる。
「僕の存在を忘れないでほしいね!ウォータープリズン!」
「ちっ、エルフか!」
エルフは、人間の魔法よりも魔法に優れている。特にダークエルフの京楽は上級魔法を軽々と使いこなす。
「こっちもだぞ!」
浮竹が、正体を現した魔女の右足を剣で貫いた。
「ブルン、Aランク冒険者たちに回復魔法を!」
「くくるーー!!」
ブルンは白く光ると、酸欠で倒れていた3人のAランク冒険者にヒールの魔法を使った。
「ありがとうございます!」
「私たちも、まだまだ戦えるわ!」
「俺も魔法で援護します!」
「ええい、まとめて死ね!ゴッドエクスプロージョン!!!」
洞窟に穴があくほどの威力だった。
幸いにも、牢屋の中の子供たちには落石は起きなかったようで、無事だった。
浮竹と京楽は、マジックバリアを4重に起動させて、3人のAランク冒険者を守った。
「すみません」
「アイシクルランス」
「ウォータースラッシャー!」
浮竹と京楽も、魔法を唱える。
「エアリアルエッジ」
「フレイムランス!」
洞窟の中だったので、大規模な魔法は使えなかった。
魔女は最初はシールドを出して防いでいたが、4人も魔法を使える者がいて、次々に魔法を唱えるものだから、シールドをはるだけで精一杯で、浮竹がミスリルの剣をAランクの剣士に貸したことなど、知らなかた。
「もらった!」
剣士は、魔女の体を袈裟懸けに斬り裂いた。
「ぎゃあああああ!!!」
「サイレンス!」
ハーメルンの笛吹と名乗る人物が通って行った後には、12歳以下の子供がいなくなるのだという。
進路からして、次に狙われるのはイアラ帝国の隣のアスピラ王国のロトスという村だった。
緊急クエストだったので、浮竹と京楽の他にも、Bランク6名、Aランク3名が、派遣された。
やがて、笛の音がしてきた。
ハーメルンの笛吹だった。
青年は、一見するとただの人間に見えた。
でも、エルフの浮竹と京楽には分かった。
「正体は、魔女だ!このまま、後をつけるぞ」
魔女を倒す適正はSランクだ。
Bランク冒険者は援軍を呼ぶために冒険者ギルドに戻ってもらい、Aランク冒険者3人と一緒に行動を開始した。
「さぁ、いい子だからこの洞窟の中にお入り」
そこは、暗くて深い洞窟だった。
気づかれないように、音を立てずに後をついていく。
洞窟の奥は牢になっており、これまで行方不明になっていた子供たちもみんな揃っていた。
「さて、次の町は・・・・・」
「そこまでだ!」
京楽がライトの光で洞窟を照らし、浮竹が剣でハーメルンの笛吹の喉もとに剣を突きつける。
「なんですか、あなたたちは!」
「それはこっちの台詞だ!」
「私はただ、迷子の子供たちを保護しただけで」
「正体はばればれなんだよ、この魔女が!」
Aランクの剣士の一人が、ハーメルンの笛吹に剣を向けるて切りかかると、浮竹の剣を振り払い、Aランクの剣士の剣を叩き折った。
「ふん、人間風情が。用があるのは、子供だけだ。他は、皆殺しにしてくれる」
「エアプレッシャー」
「ファイアランス!」
「てやあああ!!」
他の3人のAランク冒険者は攻撃をしかけるが、魔法を易々と弾いて、切りかかっていた剣士のサブの剣を身に受けるが、少し切られただけだった。
「エアプリズン」
魔女は、空気の檻を作り、そこから空気をぬいてAランク冒険者たちを酸欠にさせる。
「僕の存在を忘れないでほしいね!ウォータープリズン!」
「ちっ、エルフか!」
エルフは、人間の魔法よりも魔法に優れている。特にダークエルフの京楽は上級魔法を軽々と使いこなす。
「こっちもだぞ!」
浮竹が、正体を現した魔女の右足を剣で貫いた。
「ブルン、Aランク冒険者たちに回復魔法を!」
「くくるーー!!」
ブルンは白く光ると、酸欠で倒れていた3人のAランク冒険者にヒールの魔法を使った。
「ありがとうございます!」
「私たちも、まだまだ戦えるわ!」
「俺も魔法で援護します!」
「ええい、まとめて死ね!ゴッドエクスプロージョン!!!」
洞窟に穴があくほどの威力だった。
幸いにも、牢屋の中の子供たちには落石は起きなかったようで、無事だった。
浮竹と京楽は、マジックバリアを4重に起動させて、3人のAランク冒険者を守った。
「すみません」
「アイシクルランス」
「ウォータースラッシャー!」
浮竹と京楽も、魔法を唱える。
「エアリアルエッジ」
「フレイムランス!」
洞窟の中だったので、大規模な魔法は使えなかった。
魔女は最初はシールドを出して防いでいたが、4人も魔法を使える者がいて、次々に魔法を唱えるものだから、シールドをはるだけで精一杯で、浮竹がミスリルの剣をAランクの剣士に貸したことなど、知らなかた。
「もらった!」
剣士は、魔女の体を袈裟懸けに斬り裂いた。
「ぎゃあああああ!!!」
「サイレンス!」
魔法を唱えられないように、すかざす京楽が沈黙の魔法をかける。
「魔法が使えない!おのれえええ」
魔女は衣服をやぶいて、巨大な獣になった。
「全員、食ってやる!」
「フレアフィールド」
「あ、熱い!」
足を火傷した魔女であった獣は、見せかけだけで、ただの魔女に戻った。
「おのれええ。呪い殺してくれる・・・・ガハッ」
剣士からミスリルの剣を返してもらった浮竹が、魔女の心臓を貫いた。
「こんなところで、私が死ぬはずが・・・・」
心臓を貫いてもまだ生きていたので、浮竹は首を刎ねた。
魔女は、そのまま動かなくなり、魔石を残して灰となった。
Aランクの冒険者3人と、浮竹と京楽はハイタッチを交わした。
「子供たちを解放しよう」
「鍵がないようね」
「俺に任せてくれ」
浮竹は、アイテムポケットから針金を取り出して、カチャカチャと何度かいじって、鍵を開けた。
「うわああああん!!」
「わああああん!!」
子供たちは、洗脳が解けて泣きだした。
応援のSランク冒険者もかけつけてくれて、神隠しにあった子供は、一人残らず保護された。
「さて、今回の報酬金の話だが」
浮竹が、報酬金金貨300枚を手に、Aランク冒険者に金貨70枚ずつを3人に、残りの金貨90枚を、わざわざ援護として駆けつけてくれたSランク冒険者3人に、30枚ずつ分けた。
「これじゃあ、浮竹さんと京楽さんの取り分がないじゃないか」
「いや、とある筋からかなりの金をもらったことがあるので、今回は魔石の代金だけをいただくよ」
「俺達は大丈夫だから、遠慮しないでくれ」
「じゃあ・・・・」
Aランクもランクの冒険者たちも、ありがとうといって、金貨を振り分けた通りに受け取っていった。
「さて、魔女の魔石だけど。いくらになるかな?銀貨5枚だとかだと笑えるね」
受付嬢に魔石を鑑定してもらい、買取り金額をきくと、銀貨3枚と銅貨6枚だった。
「その、魔女の魔石は大変な粗悪品が多いものでして・・・すみません」
「よし、今日はこの銀貨3枚と銅貨6枚分の食事をレストランでとろう」
あまり高級なレストランには入れなかったので、ちょっと廃れたレストランで、ちょうど銀貨3枚と銅貨6枚になるように注文して、食べて飲んだ。
「たまには、質素なのもいいよね」
「そうだな。節約するのもいい」
白金貨千枚をまるまる貯金している。
生活にかかるお金は、休日に決めた土日以外の毎日で依頼を受けて、その分で賄っていた。
1日の依頼で金貨300枚がたまることがある。
少し贅沢をしているので、二人で月にかかるお金は金貨200枚だった。
銀貨3枚銅貨6枚なんて、駆け出しの冒険者をやっていた頃を思い出す。
「僕らも、立派になったものだよね。はじめはFランク冒険者だったのに」
「そうだな。時間はかかったが、今ではAランクだ」
そもそも、エルフは成人するのに100年くらいかかる。
12歳の容姿になるまで、80年かかった。
それまでは、冒険者登録はできずに、成人するまでの間に依頼をスローペースでこなしていき、今に至る。
成人した時にCランクの冒険者となり、エルフの森を飛び出した。
今や、マイホームをもち、豪邸を買えるようなお金持ちだ。
「貯金、楽しいよね」
「ああ、そうだな」
銀行に白金貨千枚はまるまる預けていた。
利子だけで、年間に白金貨50枚はいきそうだった。
「まぁ、これからも貯金していこう」
「そうだね。次は別荘でも買おうか」
「お、いいな。ただし、稼いだ金でだぞ」
「うん、当たり前だよ」
そうこう言ってるうちに、すぐに別荘がもてるようになるまで、金が貯まるのであった。
「フレアフィールド」
「あ、熱い!」
足を火傷した魔女であった獣は、見せかけだけで、ただの魔女に戻った。
「おのれええ。呪い殺してくれる・・・・ガハッ」
剣士からミスリルの剣を返してもらった浮竹が、魔女の心臓を貫いた。
「こんなところで、私が死ぬはずが・・・・」
心臓を貫いてもまだ生きていたので、浮竹は首を刎ねた。
魔女は、そのまま動かなくなり、魔石を残して灰となった。
Aランクの冒険者3人と、浮竹と京楽はハイタッチを交わした。
「子供たちを解放しよう」
「鍵がないようね」
「俺に任せてくれ」
浮竹は、アイテムポケットから針金を取り出して、カチャカチャと何度かいじって、鍵を開けた。
「うわああああん!!」
「わああああん!!」
子供たちは、洗脳が解けて泣きだした。
応援のSランク冒険者もかけつけてくれて、神隠しにあった子供は、一人残らず保護された。
「さて、今回の報酬金の話だが」
浮竹が、報酬金金貨300枚を手に、Aランク冒険者に金貨70枚ずつを3人に、残りの金貨90枚を、わざわざ援護として駆けつけてくれたSランク冒険者3人に、30枚ずつ分けた。
「これじゃあ、浮竹さんと京楽さんの取り分がないじゃないか」
「いや、とある筋からかなりの金をもらったことがあるので、今回は魔石の代金だけをいただくよ」
「俺達は大丈夫だから、遠慮しないでくれ」
「じゃあ・・・・」
Aランクもランクの冒険者たちも、ありがとうといって、金貨を振り分けた通りに受け取っていった。
「さて、魔女の魔石だけど。いくらになるかな?銀貨5枚だとかだと笑えるね」
受付嬢に魔石を鑑定してもらい、買取り金額をきくと、銀貨3枚と銅貨6枚だった。
「その、魔女の魔石は大変な粗悪品が多いものでして・・・すみません」
「よし、今日はこの銀貨3枚と銅貨6枚分の食事をレストランでとろう」
あまり高級なレストランには入れなかったので、ちょっと廃れたレストランで、ちょうど銀貨3枚と銅貨6枚になるように注文して、食べて飲んだ。
「たまには、質素なのもいいよね」
「そうだな。節約するのもいい」
白金貨千枚をまるまる貯金している。
生活にかかるお金は、休日に決めた土日以外の毎日で依頼を受けて、その分で賄っていた。
1日の依頼で金貨300枚がたまることがある。
少し贅沢をしているので、二人で月にかかるお金は金貨200枚だった。
銀貨3枚銅貨6枚なんて、駆け出しの冒険者をやっていた頃を思い出す。
「僕らも、立派になったものだよね。はじめはFランク冒険者だったのに」
「そうだな。時間はかかったが、今ではAランクだ」
そもそも、エルフは成人するのに100年くらいかかる。
12歳の容姿になるまで、80年かかった。
それまでは、冒険者登録はできずに、成人するまでの間に依頼をスローペースでこなしていき、今に至る。
成人した時にCランクの冒険者となり、エルフの森を飛び出した。
今や、マイホームをもち、豪邸を買えるようなお金持ちだ。
「貯金、楽しいよね」
「ああ、そうだな」
銀行に白金貨千枚はまるまる預けていた。
利子だけで、年間に白金貨50枚はいきそうだった。
「まぁ、これからも貯金していこう」
「そうだね。次は別荘でも買おうか」
「お、いいな。ただし、稼いだ金でだぞ」
「うん、当たり前だよ」
そうこう言ってるうちに、すぐに別荘がもてるようになるまで、金が貯まるのであった。
エンシェントエルフとダークエルフ16
その組織は、1500年前の大昔に滅んだヒウ帝国の末裔と、科学者たちでできていた。
人間や亜人種が住む、ウッドガルド大陸の一番端にある、レイサ共和国に研究所はあった。
モンスターを捕まえて、人工的に手を加えたり、人工的にモンスターを生み出す研究所であった。
その研究所のことを知っているのはごく一部であったが、中にはおしゃべりな者もいて、研究所があることは、近くの農村では知られていた。
だが、自分たちに害になるわけでもないので、共和国の上の者に直訴する者はいなかった。
ヒウ帝国の末裔も、科学者たちも、自分たちが世界を革命へと導いていると信じていた。
組織の名は、ヒウの翼。
今はまだ影の存在で、培養されたモンスターが野に放たれることはあったが、それが冒険者ギルドの者に倒されて、魔石が鑑定されて、人の手で生み出されたモンスターであることがばれるなど、夢にも思わないのであった。
緊急収集には、浮竹と京楽も出た。
人がモンスターに手を加えたか、人工的に作り出した可能性が高いということで、その組織を見つけるためにも、討伐したモンスターの魔石は、必ず鑑定してもらうことになった。
各地で情報収集をしてると、レイサ共和国でモンスターを捕まえては培養している謎の組織があることが分かった。
ロスピア王国の退治屋に今回の研究所のことは任せられた。
「なんか、モンスターの培養とか、きな臭くなってきたね」
「そうだな」
「剣士の僕と精霊の浮竹の出番だね」
「師匠もいることだし、あの二人なら組織を壊滅に追い込んでくれるだろう」
浮竹と京楽は、施設の完全なる壊滅を祈るのだった。
--------------------------------------------------
レイサ共和国の研究所では、京楽が狂ったように、すでに死体となった人間を何度も妖刀でさしていた。
まだ、研究員は生きている者もいた。
『あはは、はは』
剣士の京楽は、狂った笑い声をだしながら、逮捕するための研究員を斬ってしまった。
他のSランク冒険者たちのうちの一人が、殺戮をしていく剣士の京楽に向かって叫んだ。
「化け物!!」
すると、剣士の京楽は、狂ったように笑った。
『そうだとも、僕は「化け物」さ』
全てが終わった。
モンスターも人も、剣士の京楽一人で殺してしまった。
「師匠・・・・・」
エルフの浮竹が、剣士の京楽を心配して、青白い顔の京楽に声をかける。
「大丈夫か、師匠」
『大丈夫だよ・・・・・』
とてもそうは見えなくて、せめて返り血をどうにかしてやりたくて、魔力消費は多いが、身が綺麗になるリフレッシュの魔法を使って、返り血や人の脂などをとってあげた。
京楽と妖刀の浮竹を、エルフの浮竹と京楽はロスピア王国の家まで送り、一時的に冒険者ギルドに戻った。
「施設は当たりだったようだわ。ロスピア王国の退治屋に依頼したら、壊滅してくれわ。ただ、科学者の一人が研究資料をもって逃げたみたいで、みんな血眼になって探しているの。アリアラス=ヒウっていう名前の男よ」
「組織名はヒウの翼だったな。やはり、滅んだヒウ帝国と関係ある人物なのか?」
「そうよ。帝国の皇族の端にいた人物みたい。代々ヒウの名を継がせて、いつかヒウ帝国の復活のために組織を立ち上げたみたいね」
「厄介だな」
京楽の頭の上で、ブルンがぽよぽよとはねた。
「そうだね、心配だね。ロスピア王国のもう一人の僕の家に、もう一度向かってみようか」
ブルンがあの二人とプルンが心配だという言葉もあって、浮竹と京楽は、ロスピア王国に向かうことにした。
馬車に揺られること3時間。
ロスピア王国の端にある、魔物退治の専門の店に、剣士の京楽と精霊の浮竹はいた。
ただ、とても顔色が悪かった。
「大丈夫かい?」
エルフの京楽が、精霊の浮竹に話しかけると、青い顔をしていた。
『少し、気分が悪い』
「師匠、大丈夫か?」
『ああ、大丈夫だよ・・・・・』
「ププルー」
プルンが心配して、飛び跳ねていた。
「ブルン、一応ヒールを。精神的なものでも、少しは楽になると思う」
「くくるーー」
ブルンは、二人に回復魔法をかけた。
まだ顔色は悪かったが、少しだけましになった気がした。
「今日は、俺たちで飯を作ろう。師匠もそんな気分じゃないようだし」
「僕も手伝うよ」
エルフの二人は、簡単にエビピラフと中華スープを作った。
「ほら、食欲はないかもしれないが、少しは食べてくれ」
『うん・・・・・』
精霊の浮竹は、のろのろとスプーンを動かして、食べていく。
「ほら、師匠も」
『ボクはいらない』
「そんなこと言ってると、精霊の浮竹にキスしちゃうよ?」
エルフの京楽の言葉に、剣士の京楽はギロリと睨んできた。
『食べる。あと、そんなことしたら、消し炭だからね』
「おお、怖い怖い」
エルフの浮竹と京楽は、ご飯を食べてすぐに横になった二人に毛布をかけてやりながら、疑問を口にした。
「師匠は、何かを隠しているんだろうな」
「そうだね。でも、まだ教えてもらえる段階じゃないと思う」
「うん、俺もそう思う。いつか、師匠が自分から話してくれるのを待とう」
「プルルゥ」
「くくるーー」
プルンとブルンは、飼い主たちの心配や体調を少しは気にしているようだったが、久しぶりに会ったので、プルンがブルンを頭の上にのせて、そこら中をはねていた。
「プルン、ブルン、二人が寝ているから、静かにな?」
「ププル~~」
「くるる~」
二匹のスライムは、分かっているのか分かっていないのか、鳴き声のボリュームを落としながら、ぽよんぽよんと跳ねていた。
「プルンもブルンも、こっちへおいで」
「ププウ?」
「くくるー?」
エルフの浮竹と京楽は、修行中にも借りていた隣の空き家に入り、食事や風呂をすませると、置きっぱなしにされたったべッドで横になって眠った。
プルンにはリンゴ10個、ブルンには生ごみを大量に与えてやった。
プルンとブルンも、満足して寝てしまった。
『やぁ』
次の日、剣士の京楽の家にいくと、朝食の用意をしていた剣士の京楽と鉢合わせた。
「精霊の浮竹は?」
『まだ眠ってる。起こさないであげてね』
「ああ、分かった、師匠」
「昨日の塞ぎこみようが嘘のようだね」
『こっちにも、いろいろ事情があってね。まぁ、気持ちの区切りはついたよ』
「式から知らせがあって、逃げた研究員の一人は、結局見つからなかったそうだ」
『そうかい・・・・・』
剣士の京楽は、もう興味はないのだと、朝食にトーストを4枚焼いて、バターを塗っていく。
『朝ごはん、食べていくでしょ?』
「ああ、師匠気を遣わせてしまったか。ありがとう。ほら、京楽も礼を言え」
京楽はぶすっとなって、剣士の京楽に礼をを言った。
「ありがとう」
『プルンは?』
「ああ、昨日うるさいと眠れないだろうと思って、一夜だけ預かった。隣の家、使わせてもらったけど、平気だよね?」
『ああ、それは問題ない』
「プルン、ブルン、お互いに離れたくないって我儘をいってな。引きはがすのに時間がかかった・・・」
「ププルーーー!!」
剣士の京楽の足元で、プルンは跳ねた。
ブルンは、エルフの浮竹の頭の上で跳ねていた。
「くくるーー」
「また引き離してしまうが、また会えるから。なぁ、ブルン」
「くくるう」
「プルル」
またねぇ、お兄ちゃん。
またね、弟よ。
そう挨拶をしてから、朝食だけ食べて、エルフの二人はイアラ帝国に帰ってった。
ブルンがいなくなり、プルンは吸恋寂しそうにしていたが、りんごを10個食べてもいいと並べられて、食欲のことでブルンの存在を一時忘れてしまうのであった。
----------------------------------------------------
「はぁはぁ。ここまで逃げてくれば、安全だろう」
アリアラス=ヒウは、研究資料と巨額の金をもっていた。
そして、こともあろうか、イアラ帝国で自分はヒウ帝国の皇族であり、神はヒウ帝国の第二皇子であるとして、宗教組織として発展していき、裏では人身売買や人工生命体の存在などに手を出すのだった。
人間や亜人種が住む、ウッドガルド大陸の一番端にある、レイサ共和国に研究所はあった。
モンスターを捕まえて、人工的に手を加えたり、人工的にモンスターを生み出す研究所であった。
その研究所のことを知っているのはごく一部であったが、中にはおしゃべりな者もいて、研究所があることは、近くの農村では知られていた。
だが、自分たちに害になるわけでもないので、共和国の上の者に直訴する者はいなかった。
ヒウ帝国の末裔も、科学者たちも、自分たちが世界を革命へと導いていると信じていた。
組織の名は、ヒウの翼。
今はまだ影の存在で、培養されたモンスターが野に放たれることはあったが、それが冒険者ギルドの者に倒されて、魔石が鑑定されて、人の手で生み出されたモンスターであることがばれるなど、夢にも思わないのであった。
緊急収集には、浮竹と京楽も出た。
人がモンスターに手を加えたか、人工的に作り出した可能性が高いということで、その組織を見つけるためにも、討伐したモンスターの魔石は、必ず鑑定してもらうことになった。
各地で情報収集をしてると、レイサ共和国でモンスターを捕まえては培養している謎の組織があることが分かった。
ロスピア王国の退治屋に今回の研究所のことは任せられた。
「なんか、モンスターの培養とか、きな臭くなってきたね」
「そうだな」
「剣士の僕と精霊の浮竹の出番だね」
「師匠もいることだし、あの二人なら組織を壊滅に追い込んでくれるだろう」
浮竹と京楽は、施設の完全なる壊滅を祈るのだった。
--------------------------------------------------
レイサ共和国の研究所では、京楽が狂ったように、すでに死体となった人間を何度も妖刀でさしていた。
まだ、研究員は生きている者もいた。
『あはは、はは』
剣士の京楽は、狂った笑い声をだしながら、逮捕するための研究員を斬ってしまった。
他のSランク冒険者たちのうちの一人が、殺戮をしていく剣士の京楽に向かって叫んだ。
「化け物!!」
すると、剣士の京楽は、狂ったように笑った。
『そうだとも、僕は「化け物」さ』
全てが終わった。
モンスターも人も、剣士の京楽一人で殺してしまった。
「師匠・・・・・」
エルフの浮竹が、剣士の京楽を心配して、青白い顔の京楽に声をかける。
「大丈夫か、師匠」
『大丈夫だよ・・・・・』
とてもそうは見えなくて、せめて返り血をどうにかしてやりたくて、魔力消費は多いが、身が綺麗になるリフレッシュの魔法を使って、返り血や人の脂などをとってあげた。
京楽と妖刀の浮竹を、エルフの浮竹と京楽はロスピア王国の家まで送り、一時的に冒険者ギルドに戻った。
「施設は当たりだったようだわ。ロスピア王国の退治屋に依頼したら、壊滅してくれわ。ただ、科学者の一人が研究資料をもって逃げたみたいで、みんな血眼になって探しているの。アリアラス=ヒウっていう名前の男よ」
「組織名はヒウの翼だったな。やはり、滅んだヒウ帝国と関係ある人物なのか?」
「そうよ。帝国の皇族の端にいた人物みたい。代々ヒウの名を継がせて、いつかヒウ帝国の復活のために組織を立ち上げたみたいね」
「厄介だな」
京楽の頭の上で、ブルンがぽよぽよとはねた。
「そうだね、心配だね。ロスピア王国のもう一人の僕の家に、もう一度向かってみようか」
ブルンがあの二人とプルンが心配だという言葉もあって、浮竹と京楽は、ロスピア王国に向かうことにした。
馬車に揺られること3時間。
ロスピア王国の端にある、魔物退治の専門の店に、剣士の京楽と精霊の浮竹はいた。
ただ、とても顔色が悪かった。
「大丈夫かい?」
エルフの京楽が、精霊の浮竹に話しかけると、青い顔をしていた。
『少し、気分が悪い』
「師匠、大丈夫か?」
『ああ、大丈夫だよ・・・・・』
「ププルー」
プルンが心配して、飛び跳ねていた。
「ブルン、一応ヒールを。精神的なものでも、少しは楽になると思う」
「くくるーー」
ブルンは、二人に回復魔法をかけた。
まだ顔色は悪かったが、少しだけましになった気がした。
「今日は、俺たちで飯を作ろう。師匠もそんな気分じゃないようだし」
「僕も手伝うよ」
エルフの二人は、簡単にエビピラフと中華スープを作った。
「ほら、食欲はないかもしれないが、少しは食べてくれ」
『うん・・・・・』
精霊の浮竹は、のろのろとスプーンを動かして、食べていく。
「ほら、師匠も」
『ボクはいらない』
「そんなこと言ってると、精霊の浮竹にキスしちゃうよ?」
エルフの京楽の言葉に、剣士の京楽はギロリと睨んできた。
『食べる。あと、そんなことしたら、消し炭だからね』
「おお、怖い怖い」
エルフの浮竹と京楽は、ご飯を食べてすぐに横になった二人に毛布をかけてやりながら、疑問を口にした。
「師匠は、何かを隠しているんだろうな」
「そうだね。でも、まだ教えてもらえる段階じゃないと思う」
「うん、俺もそう思う。いつか、師匠が自分から話してくれるのを待とう」
「プルルゥ」
「くくるーー」
プルンとブルンは、飼い主たちの心配や体調を少しは気にしているようだったが、久しぶりに会ったので、プルンがブルンを頭の上にのせて、そこら中をはねていた。
「プルン、ブルン、二人が寝ているから、静かにな?」
「ププル~~」
「くるる~」
二匹のスライムは、分かっているのか分かっていないのか、鳴き声のボリュームを落としながら、ぽよんぽよんと跳ねていた。
「プルンもブルンも、こっちへおいで」
「ププウ?」
「くくるー?」
エルフの浮竹と京楽は、修行中にも借りていた隣の空き家に入り、食事や風呂をすませると、置きっぱなしにされたったべッドで横になって眠った。
プルンにはリンゴ10個、ブルンには生ごみを大量に与えてやった。
プルンとブルンも、満足して寝てしまった。
『やぁ』
次の日、剣士の京楽の家にいくと、朝食の用意をしていた剣士の京楽と鉢合わせた。
「精霊の浮竹は?」
『まだ眠ってる。起こさないであげてね』
「ああ、分かった、師匠」
「昨日の塞ぎこみようが嘘のようだね」
『こっちにも、いろいろ事情があってね。まぁ、気持ちの区切りはついたよ』
「式から知らせがあって、逃げた研究員の一人は、結局見つからなかったそうだ」
『そうかい・・・・・』
剣士の京楽は、もう興味はないのだと、朝食にトーストを4枚焼いて、バターを塗っていく。
『朝ごはん、食べていくでしょ?』
「ああ、師匠気を遣わせてしまったか。ありがとう。ほら、京楽も礼を言え」
京楽はぶすっとなって、剣士の京楽に礼をを言った。
「ありがとう」
『プルンは?』
「ああ、昨日うるさいと眠れないだろうと思って、一夜だけ預かった。隣の家、使わせてもらったけど、平気だよね?」
『ああ、それは問題ない』
「プルン、ブルン、お互いに離れたくないって我儘をいってな。引きはがすのに時間がかかった・・・」
「ププルーーー!!」
剣士の京楽の足元で、プルンは跳ねた。
ブルンは、エルフの浮竹の頭の上で跳ねていた。
「くくるーー」
「また引き離してしまうが、また会えるから。なぁ、ブルン」
「くくるう」
「プルル」
またねぇ、お兄ちゃん。
またね、弟よ。
そう挨拶をしてから、朝食だけ食べて、エルフの二人はイアラ帝国に帰ってった。
ブルンがいなくなり、プルンは吸恋寂しそうにしていたが、りんごを10個食べてもいいと並べられて、食欲のことでブルンの存在を一時忘れてしまうのであった。
----------------------------------------------------
「はぁはぁ。ここまで逃げてくれば、安全だろう」
アリアラス=ヒウは、研究資料と巨額の金をもっていた。
そして、こともあろうか、イアラ帝国で自分はヒウ帝国の皇族であり、神はヒウ帝国の第二皇子であるとして、宗教組織として発展していき、裏では人身売買や人工生命体の存在などに手を出すのだった。
エンシェントエルフとダークエルフ15
今回の依頼は、サイクロプスの群れの退治だった。
サイクロプスとは、一つ目の巨人だった。
巨人は力が強いので、普通の剣士では倒しにくいが、弱点である目をつぶしてしまえば、戦えないこともない。
Bランクの依頼だった。
至急に、ということで、Aランクの依頼ではなかったが受けた。
出たのは、ミスリル鉱山の奥だった。
イアラ帝国の大切なミスリル鉱山で、イアラ帝国の財政を担う鉱山の一つだった。
なので、至急の依頼だった。
報酬金もBランクにしては高くて、好条件なので浮竹と京楽が受理した。
馬車ではなく、現地には空間転移の魔法陣で行き来できるようになっていた。
発掘したミスリルを、すぐにでも帝都のアスランで加工するためであった。
転移魔法陣に乗って、サイクロプスの群れが出るという鉱山に辿り着いた。
「くくるーー」
鉱山の入り口で、すでにサイクロプスが陣取っており、その一つ目にめがけてブルンが酸弾をかけた。
「ぐぎゃあああああああ!!」
「いきなりやるね、ブルン」
「くくるーー」
そうでしょ、そうでしょ、もっと褒めて。
そう言う小さなスライムの頭を撫でてやる。
ブルンは、京楽の頭の上に乗って、遅いかかってくるサイクロプスの一つ目だけを的確に狙って、酸弾を飛ばした。
「鉱山だから、大きな魔法は使えないね。浮竹、任せてもいいかい?」
「ああ、大丈夫だ。皮膚が少し硬いが、ミスリルの剣で切れないわけじゃない!」
浮竹が、目を失って暴れまくるサイクロプスの攻撃をかいくぐり、その首を刎ねていく。
気づけば、サイクロプスの死体だらけになっていた。
魔石をとりだして、体は素材になりそうにないので、京楽の火の魔法で灰になるまで焼いてもらった。
「緊急性を要する割には、簡単な依頼だったな」
「危ない!」
そこまで、浮竹がいた空間が棍棒が襲ってきた。
ギガントサイクロプスが出てきた。
「京楽、大丈夫か!?」
「あいたたた」
「くくる~~~」
ブルンは、すぐに京楽に回復魔法をかけた。
「ありがとう、ブルン。ギガントサイクロプスか・・・でかいね」
「GYUUUUUUU!」
「この坑道では、爆発の魔法は厳禁だな。火の魔法も高威力のものは厳禁だ。氷か水か、その他の属性の魔法で倒そう!」
浮竹は、ミスリルの剣に酸の魔法をエンチャントして、ギガントサイクロプスの右足に剣を突き立てた。
「GUUUUUUUUU!!!」
ギガントサイクロプスは、怪我をいとも簡単に再生してしまった。
「こいつ、再生能力が高いな」
「じゃあ、氷漬けにしちゃおう」
「ああ!」
「「エターナルアイシクルワールド!!」」
二人が一緒に唱えた氷の上級魔法で、ギガントサイクロプスは氷漬けになったが、なんと氷を割って生きて出てきた。
「凍結魔法が効かないのか?」
「いや、ダメージは受けてるみたいだよ」
体の節々に氷が残り、動きは鈍くなっていた。
浮竹は、酸が付与されているミスリルの剣で、まず特徴的な目をつぶした。
「GUAAAAAAAA!!」
雄叫びをあげるギガントサイクロプスの肩に乗って、その首に剣を通す。
「GIIYAAAA!!!」
硬い皮膚を酸で焼いていくが、首を刎ねることはできず、再生していくものだから、浮竹はまだ傷が塞がっていない場所から、体内に向かって魔法を唱えた。
「レッドクリムゾン!!!」
「GIYAAAAAAAA!!]
体の内側から焼かれて、さすがのギガントサイクロプスも倒れた。
まだ痙攣して息のあるギガントサイクロプスの生命力には、感嘆するものがあった。
「ウォーターボール」
倒れてもう手足を動かせず、虫の息なので、水の魔法で顔を包み込んで、水死させる京楽であった。
「ウォーターボールは、簡単だけど、溺死するまでに暴れまくるからね。動きが封じられている相手に効果が高いよ」
「窒息死が一番苦しいからなぁ。ウォーターボールの餌食になるモンスターにはお悔やみを申し上げたい」
そんな軽口をたたきながら、ギガントサイクロプスから魔石を回収する。
「これまた、巨大な魔石だな」
「そうだね。さすがは上位種族なだけあるよ」
「くくるーーーー」
鉱山の奥から、まだ小さいサイクロプスが数匹出てきた。
「幼体か・・・かわいそうだけど。ウォーターボール」
「ウォーターボール」
死体を運ぶ手間を省くために、ウォーターボールで窒息死させた後、灰になるまで焼いた。鉱山なので空気が薄いため、一酸化炭素中毒にならないために、ウィンドの基本の風魔法で、新鮮な空気を送ってもらった。
「とりあえず、鉱山を一通り回ってみよう。まだサイクロプスの生き残りがいるかもしれない」
広い鉱山なので、マップを頼りに二手に別れてしらみつぶしに探したが、もうサイクロプスはいないようだった。
ちなみに、ブルンは回復魔法が使えない浮竹のもしものために、浮竹についていってもらっていた。
ミスリル鉱山の一番深くに、サイクロプスの卵を発見して、浮竹は次々と壊していった。
鉱山の奥深くは、サイクロプスの巣と繋がっているようで、サイクロプスの巣を見て回ると、活動していたサイクロプスは倒したのが全部で、幼体もいないし、卵も他になかった。
「サイクロプスの巣と繋がっていた・・・・・一応、教えておく必要があるな」
「くくるーーー」
「え、お腹すいた?そこらへんのゴミを食べていいぞ」
「くくる」
サイクロプスの巣があった場所には、ごみがいっぱい散乱していた。
そのゴミを綺麗さっぱり食べて、ブルンは満足したようだった。
「くっくるー」
「そうか、満足か。じゃあ、帰ろうか」
「くくる!」
京楽と鉱山の入り口で合流して、空間転移の魔法陣で帰ってくると、ギルドマスターのキャサリン、通称キャシーの口づけが、頬に待っていた。
「「ぎゃあああああああああ」」
「うふん、いやん、二人ともそんなに喜んでくれなくてもいいのよ?」
「誰が喜ぶか!ウォーターボール」
京楽は水を出すと、アイテムポケットからタオルを出して水に浸すと、頬をごしごしぬぐった。その後は、浮竹の頬もぬぐってあげた。
「緊急クエストだから、報酬金は高いわよ~?Bランクだけど、報酬金は金貨500枚よ!」
すでに、アークデーモンの件で助けた魔王配下の四天王、電撃のボルの妹を救ったことで、ボルからと、白金貨千枚を渡されていた。
金銭感覚がおかしくなりそうで、金貨500枚と言われたら、昔は飛び跳ねて喜んだが、今はああ、ありがとうと受け取るだけだった。
「魔石の鑑定と買取りを頼むよ」
「この巨大な魔石は?」
「ああ、それはギガントサイクロプスのものだよ。上位種族だから、魔石も大きいんだろうね」
「この魔石には、人の魔力の反応があります。多分、人工的に作り出されたた個体かと」
「Aランク以上の冒険者を緊急収集してちょうだい!」
キャサリンは、真面目な顔でギルドマスターとして、動き出す。
人の手によって、モンスターが生み出された可能性がある。
それは、冒険者ギルドにとっても、世界にとっても、衝撃的な内容であった。
サイクロプスとは、一つ目の巨人だった。
巨人は力が強いので、普通の剣士では倒しにくいが、弱点である目をつぶしてしまえば、戦えないこともない。
Bランクの依頼だった。
至急に、ということで、Aランクの依頼ではなかったが受けた。
出たのは、ミスリル鉱山の奥だった。
イアラ帝国の大切なミスリル鉱山で、イアラ帝国の財政を担う鉱山の一つだった。
なので、至急の依頼だった。
報酬金もBランクにしては高くて、好条件なので浮竹と京楽が受理した。
馬車ではなく、現地には空間転移の魔法陣で行き来できるようになっていた。
発掘したミスリルを、すぐにでも帝都のアスランで加工するためであった。
転移魔法陣に乗って、サイクロプスの群れが出るという鉱山に辿り着いた。
「くくるーー」
鉱山の入り口で、すでにサイクロプスが陣取っており、その一つ目にめがけてブルンが酸弾をかけた。
「ぐぎゃあああああああ!!」
「いきなりやるね、ブルン」
「くくるーー」
そうでしょ、そうでしょ、もっと褒めて。
そう言う小さなスライムの頭を撫でてやる。
ブルンは、京楽の頭の上に乗って、遅いかかってくるサイクロプスの一つ目だけを的確に狙って、酸弾を飛ばした。
「鉱山だから、大きな魔法は使えないね。浮竹、任せてもいいかい?」
「ああ、大丈夫だ。皮膚が少し硬いが、ミスリルの剣で切れないわけじゃない!」
浮竹が、目を失って暴れまくるサイクロプスの攻撃をかいくぐり、その首を刎ねていく。
気づけば、サイクロプスの死体だらけになっていた。
魔石をとりだして、体は素材になりそうにないので、京楽の火の魔法で灰になるまで焼いてもらった。
「緊急性を要する割には、簡単な依頼だったな」
「危ない!」
そこまで、浮竹がいた空間が棍棒が襲ってきた。
ギガントサイクロプスが出てきた。
「京楽、大丈夫か!?」
「あいたたた」
「くくる~~~」
ブルンは、すぐに京楽に回復魔法をかけた。
「ありがとう、ブルン。ギガントサイクロプスか・・・でかいね」
「GYUUUUUUU!」
「この坑道では、爆発の魔法は厳禁だな。火の魔法も高威力のものは厳禁だ。氷か水か、その他の属性の魔法で倒そう!」
浮竹は、ミスリルの剣に酸の魔法をエンチャントして、ギガントサイクロプスの右足に剣を突き立てた。
「GUUUUUUUUU!!!」
ギガントサイクロプスは、怪我をいとも簡単に再生してしまった。
「こいつ、再生能力が高いな」
「じゃあ、氷漬けにしちゃおう」
「ああ!」
「「エターナルアイシクルワールド!!」」
二人が一緒に唱えた氷の上級魔法で、ギガントサイクロプスは氷漬けになったが、なんと氷を割って生きて出てきた。
「凍結魔法が効かないのか?」
「いや、ダメージは受けてるみたいだよ」
体の節々に氷が残り、動きは鈍くなっていた。
浮竹は、酸が付与されているミスリルの剣で、まず特徴的な目をつぶした。
「GUAAAAAAAA!!」
雄叫びをあげるギガントサイクロプスの肩に乗って、その首に剣を通す。
「GIIYAAAA!!!」
硬い皮膚を酸で焼いていくが、首を刎ねることはできず、再生していくものだから、浮竹はまだ傷が塞がっていない場所から、体内に向かって魔法を唱えた。
「レッドクリムゾン!!!」
「GIYAAAAAAAA!!]
体の内側から焼かれて、さすがのギガントサイクロプスも倒れた。
まだ痙攣して息のあるギガントサイクロプスの生命力には、感嘆するものがあった。
「ウォーターボール」
倒れてもう手足を動かせず、虫の息なので、水の魔法で顔を包み込んで、水死させる京楽であった。
「ウォーターボールは、簡単だけど、溺死するまでに暴れまくるからね。動きが封じられている相手に効果が高いよ」
「窒息死が一番苦しいからなぁ。ウォーターボールの餌食になるモンスターにはお悔やみを申し上げたい」
そんな軽口をたたきながら、ギガントサイクロプスから魔石を回収する。
「これまた、巨大な魔石だな」
「そうだね。さすがは上位種族なだけあるよ」
「くくるーーーー」
鉱山の奥から、まだ小さいサイクロプスが数匹出てきた。
「幼体か・・・かわいそうだけど。ウォーターボール」
「ウォーターボール」
死体を運ぶ手間を省くために、ウォーターボールで窒息死させた後、灰になるまで焼いた。鉱山なので空気が薄いため、一酸化炭素中毒にならないために、ウィンドの基本の風魔法で、新鮮な空気を送ってもらった。
「とりあえず、鉱山を一通り回ってみよう。まだサイクロプスの生き残りがいるかもしれない」
広い鉱山なので、マップを頼りに二手に別れてしらみつぶしに探したが、もうサイクロプスはいないようだった。
ちなみに、ブルンは回復魔法が使えない浮竹のもしものために、浮竹についていってもらっていた。
ミスリル鉱山の一番深くに、サイクロプスの卵を発見して、浮竹は次々と壊していった。
鉱山の奥深くは、サイクロプスの巣と繋がっているようで、サイクロプスの巣を見て回ると、活動していたサイクロプスは倒したのが全部で、幼体もいないし、卵も他になかった。
「サイクロプスの巣と繋がっていた・・・・・一応、教えておく必要があるな」
「くくるーーー」
「え、お腹すいた?そこらへんのゴミを食べていいぞ」
「くくる」
サイクロプスの巣があった場所には、ごみがいっぱい散乱していた。
そのゴミを綺麗さっぱり食べて、ブルンは満足したようだった。
「くっくるー」
「そうか、満足か。じゃあ、帰ろうか」
「くくる!」
京楽と鉱山の入り口で合流して、空間転移の魔法陣で帰ってくると、ギルドマスターのキャサリン、通称キャシーの口づけが、頬に待っていた。
「「ぎゃあああああああああ」」
「うふん、いやん、二人ともそんなに喜んでくれなくてもいいのよ?」
「誰が喜ぶか!ウォーターボール」
京楽は水を出すと、アイテムポケットからタオルを出して水に浸すと、頬をごしごしぬぐった。その後は、浮竹の頬もぬぐってあげた。
「緊急クエストだから、報酬金は高いわよ~?Bランクだけど、報酬金は金貨500枚よ!」
すでに、アークデーモンの件で助けた魔王配下の四天王、電撃のボルの妹を救ったことで、ボルからと、白金貨千枚を渡されていた。
金銭感覚がおかしくなりそうで、金貨500枚と言われたら、昔は飛び跳ねて喜んだが、今はああ、ありがとうと受け取るだけだった。
「魔石の鑑定と買取りを頼むよ」
「この巨大な魔石は?」
「ああ、それはギガントサイクロプスのものだよ。上位種族だから、魔石も大きいんだろうね」
「この魔石には、人の魔力の反応があります。多分、人工的に作り出されたた個体かと」
「Aランク以上の冒険者を緊急収集してちょうだい!」
キャサリンは、真面目な顔でギルドマスターとして、動き出す。
人の手によって、モンスターが生み出された可能性がある。
それは、冒険者ギルドにとっても、世界にとっても、衝撃的な内容であった。
黒魔法使いと白魔法使い4
14階層は、ゴーレムばかりでた。
ストーンゴーレム、アイアインゴーレム、ファイアゴーレム、アイスゴーレム、グリーンゴーレムだった。
ファイアゴーレムとアイスゴーレムは反対の属性の魔法で京楽が倒していった。
グリーンゴーレムに火の魔法で、ストーンゴーレムとアイアンゴーレムは火の魔法を付与せたパーティーリーダーの剣できっていったが、アイアンゴーレムは硬かった。
新しい剣を手に入れたので、付与しても錆びない酸を付与して、アイアンゴーレムに切りかかると、酸にふれたところがじゅわっとと溶けていき、心臓部分にあったコアを破壊すること倒していった。
盾使いは、ストーンゴーレムとアイアンゴーレムの攻撃を全部引き受けて、新米斧使いと獣人盗賊は、グリーンゴーレムを倒していった。
新米斧使いは、力が強いのでストーンゴーレムもアイアンゴーレムも斬り裂いてしまった。
魔石だけ取り出して、アイテムポケットにしまい込む。
15階層はブラックベアとブラックサーペントが出た。
ブラックベアもブラックサーペントも、肉が食えた。
ブラックベアは毛皮を、ブラックサーペントは皮が素材となった。浮竹と京楽とパーティーメンバーたちは次々に倒していく。毛皮と皮と肉を京楽のアイテムポケットに入れて、16階層、17階層と進んで、16階層で出会った強敵コカトリスの卵をゲットして、その体もアイテムポケとに入れていた。
17階層にはセーブゾーンがあって、そこで遅めの昼食をとることになった。
ブラックベアとブラックサーペントとコカトリスの肉を適当に斬り分けて、野菜やキノコを入れて鍋にした。
コカトリスの卵は、〆の雑炊につかった。
「ふう、うまかった」
「おいしかった」
「うんうん、作った僕もいうのもなんだけど、適当な肉を鍋にしたわりにはおいしかったね」
「コカトリスがボスでもいいくらいの強さだからな。石化を解く魔法を覚えているが、誰も石化しなくよかった」
浮竹は、鍋を食べ終えて、一安心といったところだった。
コカトリスと遭遇したとき、強い毒をもっている尾の蛇を、まずはリーダーの剣士に切り落としてもらった。それから、鶏の両目を石化するので浮竹がサンシャインの光の魔法で潰し、京楽がエクスプロージョンの魔法を放って、トドメをさした。
肉は食えるので、エクスプロージョンの魔法は頭部あたりにしてもらった。
コカトリスの肉と卵はまだ残っているので、次の18階層に進む。
それまで草原地帯であったが、がらりと外観がかわって、砂漠地帯になった。
サンドワームの群れが出てきた。
倒していくと、魔石の他に、京楽が食べるので体液を採取しろという。
みんな嫌そうな顔をしていた。
でも、京楽が食べれるということはおいしいのだろう。緑色のグロテスクな体液を集めて、大きめのガラスの瓶に入れた。
それをアイテムポケットに入れて、19階層に進む。
19階層も砂漠で、サンドコヨーテとサンドスコーピオンが出た。どちらも食用には値しないと思われたのだが、京楽が倒したサンドスコーピオンの尾を切り離した胴体をアイテムポケットにいれた。
それかから、サンドコヨーテは毛皮だけをアイテムポケットにいれる。
20階層はいよいよボスで、サイクロプスだった。
一つ目の巨人は、斬りかかってきたパーティーリーダーの剣を弾き飛ばした。
「くそ、めちゃ硬い」
「まずは目をつぶそう」
浮竹の言葉に、盾使いがヘイトを稼いで挑発のスキルを発動させて、攻撃のターゲットを引き受けた。
その間に、獣人盗賊が投げたボウガンの弓がサイクロプスの一つ目をつぶした。
「ぐあああああああ!!」
サイクロプスは手をぶんぶん振り回し、暴れまくる。
盾使いは一度下がり、新米斧使いがサイクロプスの右腕を切り飛ばした。
「よし、じゃあ倒しちゃいますか」
「そうだな」
京楽と浮竹は魔法を唱え出す。
京楽と浮竹はLVカンストの99で、倒してもこれ以上レベルが上がらない。なるべく仲間たちに戦闘をさせて、LVがあがりやすいようにして、自分たちにふりわけられるはずだった経験値は、自然と仲間たちに振り分けられた。
それでも、浮竹と京楽が倒しただけでは、LVだけあがって技術がついていかないので、よほど危険なボスとかモンスター以外は、他のパーティーメンバーにも攻撃してもらった。
攻撃すればする分、経験値がたまる。
「アイシクルスピア!」
「ホーリーランス!」
それぞれ氷と聖属性の槍で体を貫かれて、サイクロプスは倒れた。肉は人間に近い体をした亜人の一種に近いので、食べないことにした。
20階層を踏破して、財宝の間が開いた。
金貨300枚とミスリルのインゴットが10個あった。
全部、浮竹と京楽以外の4人で分ける予定だった。
とりあえず、京楽のアイテムポケットに入れた。
そのまま21階層、22階層と進んで、22階層で夜を過ごすことしにた。
草原のフィールドなので、敵が近づいてきても分かりやすいからだ。
21階層も砂漠で、アイアンスコーピオン、デッドスコーピオンなどがでた。
体が硬いうえに猛毒なので、京楽の氷の魔法で屠ってもらった。
22階層では、キラーラビットが出たが、弱かったのですぐに倒せた。みんな、この新ダンジョンにきてLVも上がり、強くなっていた。
キラーラビットを20匹くらい屠って、毛皮と肉に解体する。
毛皮は京楽がアイテムポケットにしまい込んだ。
まず、キラーラビットの肉を適当な大きさに斬り分けて、コカトリスの卵をとかしたものにつけて、サンドワームの体液につけた。
「うわ、サンドワームの体液つけるのかよ」
「ピリ辛くておいしいんだよ?」
サンドワームは、食べれないかもしれないと思いつつも、昔京楽は焼いたものを口にしたことがあった。肉は口にできたものではなかったが、体液はピリッと辛くておいしかった。
それを高熱の油であげていく。
キラーラビットのサンドワームフライの完成だった。
バジリスクの残りの肉も同じようにサンドワームのフライにした。
サンドスコーピオンは茹でて、塩をまぶして、切り身をいれて中身の身を食べることになった。
今回のメニューは、食べるのに少し勇気が必要だったけれど、京楽がまずいものを作るはずがないと、皆信用して口にした。
「あ、辛くておいしい」
「ほんとだ、辛さと肉のうまみがマッチしてる」
「もっと辛くしたかったら、熱を通しておいたサンドワームの体液があるから、それをつけて食べてね」
例えるなら、エビフライのタルタルソースのようなかんじだった。
「サンドスコーピオンの肉は、カニの味に近いな」
浮竹が、サンドスコーピオンの切れ目から真っ赤になった身を口にした。
「でしょ。ほんとはアイアインスコーピオンもデッドスコーピオンも食べたかったんだけど、硬くてナイフが通らないから、辛抱したよ。ミスリル製のナイフが欲しいなぁ。今度の冒険に出るときは、ミスリルのナイフを用意しよう」
今のナイフは、普通の鋼鉄製だった。
少し欠けていた。
予備のナイフは5本はあるので、この旅の間でナイフが使い物にならなくなるということは、ないだろう。
「今日はここで野営しよう」
浮竹と京楽がパーティーに入る条件として、金銭の分配はいらないが、魔物食を食べること、あとは深夜の警戒への不参加であった。
浮竹と京楽は見張りに参加せず、他のパーティーメンバーのリーダーの剣士、盾使い、獣人盗賊、新米斧使いの順に、見張りの当番をした。
朝起きると、もう京楽は起き出して、朝食の準備をしていた。
余ったキラーラビットの肉を串焼きにしていた。野菜なんかも串に通して、朝飯はキラーラビットの串焼きだった。
「辛い味付けが欲しい人は、サンドワームの体液をかけてね」
浮竹をはじめとして、みんなもうサンドワームの体液が不味いとは思っておらず、辛いソースのような感じで、串焼きにかけて食べていた。
「さて、3日目の夜が明けた。あと4日、できるところまで探検しよう!」
もうすぐ、未踏破の26階層が見えてくる。
そんな階層であった。
ストーンゴーレム、アイアインゴーレム、ファイアゴーレム、アイスゴーレム、グリーンゴーレムだった。
ファイアゴーレムとアイスゴーレムは反対の属性の魔法で京楽が倒していった。
グリーンゴーレムに火の魔法で、ストーンゴーレムとアイアンゴーレムは火の魔法を付与せたパーティーリーダーの剣できっていったが、アイアンゴーレムは硬かった。
新しい剣を手に入れたので、付与しても錆びない酸を付与して、アイアンゴーレムに切りかかると、酸にふれたところがじゅわっとと溶けていき、心臓部分にあったコアを破壊すること倒していった。
盾使いは、ストーンゴーレムとアイアンゴーレムの攻撃を全部引き受けて、新米斧使いと獣人盗賊は、グリーンゴーレムを倒していった。
新米斧使いは、力が強いのでストーンゴーレムもアイアンゴーレムも斬り裂いてしまった。
魔石だけ取り出して、アイテムポケットにしまい込む。
15階層はブラックベアとブラックサーペントが出た。
ブラックベアもブラックサーペントも、肉が食えた。
ブラックベアは毛皮を、ブラックサーペントは皮が素材となった。浮竹と京楽とパーティーメンバーたちは次々に倒していく。毛皮と皮と肉を京楽のアイテムポケットに入れて、16階層、17階層と進んで、16階層で出会った強敵コカトリスの卵をゲットして、その体もアイテムポケとに入れていた。
17階層にはセーブゾーンがあって、そこで遅めの昼食をとることになった。
ブラックベアとブラックサーペントとコカトリスの肉を適当に斬り分けて、野菜やキノコを入れて鍋にした。
コカトリスの卵は、〆の雑炊につかった。
「ふう、うまかった」
「おいしかった」
「うんうん、作った僕もいうのもなんだけど、適当な肉を鍋にしたわりにはおいしかったね」
「コカトリスがボスでもいいくらいの強さだからな。石化を解く魔法を覚えているが、誰も石化しなくよかった」
浮竹は、鍋を食べ終えて、一安心といったところだった。
コカトリスと遭遇したとき、強い毒をもっている尾の蛇を、まずはリーダーの剣士に切り落としてもらった。それから、鶏の両目を石化するので浮竹がサンシャインの光の魔法で潰し、京楽がエクスプロージョンの魔法を放って、トドメをさした。
肉は食えるので、エクスプロージョンの魔法は頭部あたりにしてもらった。
コカトリスの肉と卵はまだ残っているので、次の18階層に進む。
それまで草原地帯であったが、がらりと外観がかわって、砂漠地帯になった。
サンドワームの群れが出てきた。
倒していくと、魔石の他に、京楽が食べるので体液を採取しろという。
みんな嫌そうな顔をしていた。
でも、京楽が食べれるということはおいしいのだろう。緑色のグロテスクな体液を集めて、大きめのガラスの瓶に入れた。
それをアイテムポケットに入れて、19階層に進む。
19階層も砂漠で、サンドコヨーテとサンドスコーピオンが出た。どちらも食用には値しないと思われたのだが、京楽が倒したサンドスコーピオンの尾を切り離した胴体をアイテムポケットにいれた。
それかから、サンドコヨーテは毛皮だけをアイテムポケットにいれる。
20階層はいよいよボスで、サイクロプスだった。
一つ目の巨人は、斬りかかってきたパーティーリーダーの剣を弾き飛ばした。
「くそ、めちゃ硬い」
「まずは目をつぶそう」
浮竹の言葉に、盾使いがヘイトを稼いで挑発のスキルを発動させて、攻撃のターゲットを引き受けた。
その間に、獣人盗賊が投げたボウガンの弓がサイクロプスの一つ目をつぶした。
「ぐあああああああ!!」
サイクロプスは手をぶんぶん振り回し、暴れまくる。
盾使いは一度下がり、新米斧使いがサイクロプスの右腕を切り飛ばした。
「よし、じゃあ倒しちゃいますか」
「そうだな」
京楽と浮竹は魔法を唱え出す。
京楽と浮竹はLVカンストの99で、倒してもこれ以上レベルが上がらない。なるべく仲間たちに戦闘をさせて、LVがあがりやすいようにして、自分たちにふりわけられるはずだった経験値は、自然と仲間たちに振り分けられた。
それでも、浮竹と京楽が倒しただけでは、LVだけあがって技術がついていかないので、よほど危険なボスとかモンスター以外は、他のパーティーメンバーにも攻撃してもらった。
攻撃すればする分、経験値がたまる。
「アイシクルスピア!」
「ホーリーランス!」
それぞれ氷と聖属性の槍で体を貫かれて、サイクロプスは倒れた。肉は人間に近い体をした亜人の一種に近いので、食べないことにした。
20階層を踏破して、財宝の間が開いた。
金貨300枚とミスリルのインゴットが10個あった。
全部、浮竹と京楽以外の4人で分ける予定だった。
とりあえず、京楽のアイテムポケットに入れた。
そのまま21階層、22階層と進んで、22階層で夜を過ごすことしにた。
草原のフィールドなので、敵が近づいてきても分かりやすいからだ。
21階層も砂漠で、アイアンスコーピオン、デッドスコーピオンなどがでた。
体が硬いうえに猛毒なので、京楽の氷の魔法で屠ってもらった。
22階層では、キラーラビットが出たが、弱かったのですぐに倒せた。みんな、この新ダンジョンにきてLVも上がり、強くなっていた。
キラーラビットを20匹くらい屠って、毛皮と肉に解体する。
毛皮は京楽がアイテムポケットにしまい込んだ。
まず、キラーラビットの肉を適当な大きさに斬り分けて、コカトリスの卵をとかしたものにつけて、サンドワームの体液につけた。
「うわ、サンドワームの体液つけるのかよ」
「ピリ辛くておいしいんだよ?」
サンドワームは、食べれないかもしれないと思いつつも、昔京楽は焼いたものを口にしたことがあった。肉は口にできたものではなかったが、体液はピリッと辛くておいしかった。
それを高熱の油であげていく。
キラーラビットのサンドワームフライの完成だった。
バジリスクの残りの肉も同じようにサンドワームのフライにした。
サンドスコーピオンは茹でて、塩をまぶして、切り身をいれて中身の身を食べることになった。
今回のメニューは、食べるのに少し勇気が必要だったけれど、京楽がまずいものを作るはずがないと、皆信用して口にした。
「あ、辛くておいしい」
「ほんとだ、辛さと肉のうまみがマッチしてる」
「もっと辛くしたかったら、熱を通しておいたサンドワームの体液があるから、それをつけて食べてね」
例えるなら、エビフライのタルタルソースのようなかんじだった。
「サンドスコーピオンの肉は、カニの味に近いな」
浮竹が、サンドスコーピオンの切れ目から真っ赤になった身を口にした。
「でしょ。ほんとはアイアインスコーピオンもデッドスコーピオンも食べたかったんだけど、硬くてナイフが通らないから、辛抱したよ。ミスリル製のナイフが欲しいなぁ。今度の冒険に出るときは、ミスリルのナイフを用意しよう」
今のナイフは、普通の鋼鉄製だった。
少し欠けていた。
予備のナイフは5本はあるので、この旅の間でナイフが使い物にならなくなるということは、ないだろう。
「今日はここで野営しよう」
浮竹と京楽がパーティーに入る条件として、金銭の分配はいらないが、魔物食を食べること、あとは深夜の警戒への不参加であった。
浮竹と京楽は見張りに参加せず、他のパーティーメンバーのリーダーの剣士、盾使い、獣人盗賊、新米斧使いの順に、見張りの当番をした。
朝起きると、もう京楽は起き出して、朝食の準備をしていた。
余ったキラーラビットの肉を串焼きにしていた。野菜なんかも串に通して、朝飯はキラーラビットの串焼きだった。
「辛い味付けが欲しい人は、サンドワームの体液をかけてね」
浮竹をはじめとして、みんなもうサンドワームの体液が不味いとは思っておらず、辛いソースのような感じで、串焼きにかけて食べていた。
「さて、3日目の夜が明けた。あと4日、できるところまで探検しよう!」
もうすぐ、未踏破の26階層が見えてくる。
そんな階層であった。