オメガバース京浮短編5
浮竹は、自分をずっとベータだと思っていた。
だって、今まで検査でベータと言われ、オメガのヒートもきたことはないし、オメガのフェロモンにあてられるようなアルファでもなかったので。
それは、突然だった。
ある日、熱を出した。
ただの熱ならよかったのだが、体中が熱くて、自分が性的欲求をおこしているのだと知った。こんな姿、とても4番隊に診てもらう状況じゃなくて、浮竹は熱にうなされながら、どうにかするために、地獄蝶を飛ばして京楽に助けを求めた。
京楽は上流階級出身として当たり前のように、アルファだった。
浮竹には、今自分が抱えている熱がオメガのヒートであるなど、分かる由もなかった。
「どうしたの、浮竹・・・・うううっ」
雨乾堂にやってきた京楽は、その猛烈なオメガのフェロモンに当てられて、ドクリと鼓動が高鳴るのを感じつつ、冷や汗を出した。
「浮竹・・・君、オメガだったの?」
「あ、京楽、助けてくれ。熱くて体が疼くんだ・・・・・」
「これ、ヒートだよ。浮竹、ベータじゃなかったの・・・・」
京楽は、浮竹のオメガ独特のヒートのフェロモンに当てられて、正常な思考を維持するのがやっとだった。
「だめだよ。僕じゃ、浮竹を助けられない」
「じゃあ・・・白哉を呼ぶ」
その言葉に、京楽は首を振った。
「だめだよ、浮竹。君はオメガだ。朽木隊長はアルファだ」
「じゃあ、どうしろって・・いうんだ」
「僕もアルファだ。責任はちゃんととるから。僕に任せて」
「あ、京楽・・・この、高ぶりを沈めてくれるのか?」
まさか、ベータと言われていた浮竹が、オメガだったなんて。
浮竹とは、親友以上であるが、恋人というわけではなかった。
たまにハグはするけれど、キスをしたこともなかった。
浮竹は、熱にうなされていた。
京楽は地獄蝶を4番隊に飛ばして、オメガのヒート抑制剤を持ってくるように頼んだ。
雨乾堂に届けてほしい。決して、中には入るな。
そう地獄蝶に託して、京楽は女物の着物を脱ぐと、隊長羽織を脱ぎ捨てた。
浮竹から出るフェロモンに当てられて、思考が麻痺していく。
それでも、京楽はなんとか己を保って、浮竹の隣にきた。
「今から、君を抱くよ。責任をもって番にするから」
「あ・・・・」
オメガは、アルファの番になることが多いのだと、浮竹は熱にうなされながら思った。
「きょう・・・らく。お前をまきこんで、すまない」
「緊急事態だよ。後天的にオメガになる子は、零ではないからね」
はじめはアルファやベータでも、後天的にオメガになる場合が、本当に極稀にあった。
浮竹は、きっとそうなのだろう。
ベータであったことは事実。でも、今はオメガだ。
浮竹の隊長羽織と死覇装を脱がしていく。
薄いが、ちゃんと筋肉のついた体に、京楽は今まで心の奥底にいた、欲の塊がにじみ出てくるのを感じていた。
浮竹の隣で、親友として一緒に過ごせるなら、それだけでよかった。
恋人になりたかったけれど、振られるのが怖くて、その想いは封印していた。
「今更だけどね、浮竹。僕は、君を好きだったよ。君をこうしたいと、考えたこともあった」
浮竹の薄い胸を撫でながら、京楽は告白をしていた。
「浮竹・・・こんな、君を、僕のものにする僕を、許してほしい」
「あ、京楽・・いいから、もう・・・きて」
浮竹は、自分から京楽を迎えた。
「んんっ」
啄むようなキスを何度も繰り返す。
「やっ、焦らさないで・・・・」
「君、初めてでしょ?優しくしたいんだよ・・・・」
「京楽・・・・・」
「春水って呼んで。僕も十四郎って呼ぶから」
「あ、春水・・・・」
「好きだよ十四郎」
「俺も、好き・・・・・」
「本当に?」
鎖骨を甘噛みして、胸の先端をひっかいていると、浮竹の言葉に京楽は浮竹を見つめた。
「十四郎、本当に僕のこと好きなの?」
「あ・・・・昔から、好き、だった。優しいから、恋人だと錯覚してしまいそうだった」
「それは僕もだよ」
「好きでもない相手と、ハグしたり、しない・・・・」
親友以上恋人未満。
そんな関係を数百年続けていた。
浮竹は、熱が鎮まるならと、京楽に隠していた本心を打ち明けた。
京楽は、喜びに打ち震えた。
「なんだ、僕たち相思相愛だったんだね。なのに、ずっと友達以上恋人未満を続けて」
京楽の唇が、浮竹のものを含んだ。
「あ!」
浮竹は、体を震わせえて、京楽の黒髪をひっぱった。
「やぁ、そんな・・・・」
「一度出しておかないと、つらいでしょ?」
「でも」
浮竹のものを舐めあげながら、手で扱く。
先端の鈴口を指でぐりぐりすると、浮竹は先走りの蜜を零したあと、吐精した。
それを、京楽は舐めとってしまった。
「春水・・・あ・・あああ・・・・」
「濡れてるね・・・・」
オメガのそこは、男でも女のように濡れると、聞いたことがある。
濡れてぐしょぐしょになった蕾は、すぐに京楽の指をすんなりと受け入れた。
「やわらかい。もしかして、自分でいじってた?」
ぶんぶんと、浮竹が首を横に振る。涙を滲ませていた。
「ごめん、意地悪なこと言っちゃたね」
蕾は、たやすく3本の指を飲みこんだ。
それをひきぬいて、京楽は浮竹の耳元で囁く。
「番にするから。君は、僕のものだ」
「あ、春水・・・・ああああ!」
凄く熱くて質量のある熱が入ってくる。
ズズズっと、中に侵入してくる熱を、浮竹は締め付けていた。
「く、ちょっと、君の中すごい。一度出すよ」
「あ、あ、中で?俺の中でいって、春水」
入り口付近で、ビュルビュルと濃い精子をまき散らせて、京楽は硬さのなえない己で、浮竹を貫いた。
「あああ!」
びくんと浮竹が背を仰け反らせる。
前立腺をすりあげて、奥にきた熱は、ぱちゅんと音を立てた。
「ひあ、あ・・・春水が、中で、俺の中で・・・・」
「うなじ、噛むよ。番にするからね」
京楽は、浮竹と交わりながら、その首に噛みついた。
電撃が走り、互いに番になったのだと分かった。
「これで、君は僕のものだ。もう誰にも渡さない」
京楽は、微笑んだ。
浮竹は、京楽にキスをねだった。
「春水、キスしてくれ」
「いいよ」
何度啄むように、そして舌を絡め合わせたりして、何度もキスを繰り返した。
今までハグだけして、キスをしていなかった分を取り戻すかのように。
「ああ、君の中はすごいね。もう一度いくよ」
「ひあっ」
一度引き抜かれて、背後から貫かれた。
「あ、あ、あ、あ!」
ぱちゅんぱちゅんと音を立てながら出入りする京楽のものは、大きかった。
「や、出る、出ちゃう!」
「好きなだけいっていいよ」
「やああああ」
前立腺を突き上げられ、子宮にまで入り込んできた京楽の雄をしめつけながら、浮竹は射精していた。
同時に、中でもいくことを覚えた。
2重にいっていて、浮竹は思考が真っ白になる。
「うあ、や、中でも、外でも、いってる、ああああ、変になるぅ」
「大丈夫、すぐ慣れるよ」
今後、浮竹のヒートが来るたびに抱くつもりである京楽は、浮竹が孕んでしまうことを考えていた。
「十四郎、僕の子なら、産んでくれる?」
「や・・・やぁ」
浮竹は、熱に思考を麻痺させられて、会話が成り立たないでいた。
「十四郎、僕の精子で、僕の子を孕んで」
「あ、あ、あ・・・・・」
ごりごりっと、最奥を抉られて、浮竹は全身を痙攣させながら、また吐精していた。
「ああああーーーー!!!」
ぐったりと弛緩した浮竹の体を抱きながら、京楽もまた浮竹の中にまた精子をぶちまけた。
避妊はしていなかった。
オメガのヒートは、子を成すための期間である。
初めての京楽とのセックスで、浮竹は妊娠した。
「ねぇ、本当にいいの?堕胎してもいいんだよ。君の負担になる」
「俺と京楽の、愛の結晶だ。産むよ」
帝王切開になるが、浮竹の体が妊娠に耐えれるか分からなかった。
何度も4番隊の卯ノ花隊長の世話になりながら、ひましに大きくなっていく腹を撫でながら、浮竹は京楽との子供を産もうとしていた。
「性別は男の子だそうだ」
「名前、考えないとね」
京楽と浮竹は、番になったことを周囲に公表して、結婚した。
浮竹の子供は、正式に京楽家の跡取りとなることが決まっている。成人するまでは手放さないが、いずれ上流貴族の波にもまれるであろう。
京楽の両親は、どこの馬の骨とも分からぬ、オメガの浮竹を睥睨した目で見ていた。
それに怒った京楽が、ブチ切れた。
京楽の両親は、震えながら、自分の子がオメガ結婚することをしぶしぶ受け入れた。
「僕の兄が健在だったらねぇ。後継ぎ問題なんて、なかったんだけど」
京楽の兄は、すでに他界していた。
京楽を当主に添えたいが、京楽は頑なに拒んで、首を縦に振ったことはない。
オメガの男と結婚するなんて。そう蔑まれたが、浮竹が京楽の子を妊娠していると分かって、その子が男子であると分かり、両親は手の平を返したかのように、京楽と浮竹に接するようになった。
「まぁ、成人するまでは俺たちで育てるからな。成人してから、後はこの子の意思に任せればいい」
少し大きくなったお腹をさすって、浮竹は京楽と手を握りあった。
「子供は多い方はいいね」
「俺は、あまり多いのは嫌だぞ。子育てが大変だ」
なまじ、8人兄弟の長兄として生まれたせいで、両親に代わって、弟や妹の面倒を見てきたことがある。
子供も世話は、とにかく大変なのだ。
「隊長、辞めないでしょ?」
「当たり前だ」
「じゃあ、念のために乳母を雇おうか」
「産休はあるんだろう?」
「あるけど、ずっとっていうわけにはいかないでしょ。普段の子供の世話は乳母に任せればいい。僕の乳母は、いい人だったよ。彼女に頼もう」
「ああ、京楽の乳母なら安心だな」
未来を、描いていく。
京楽と共に。
浮竹は、ヒートの度に京楽と共に休暇をとり、一緒に過ごした。
二人目を作ると決めた日以外は、ずっと避妊していた。
京楽は、浮竹とならヒート期間以外でも睦み合った。
夫婦なので、別におかしいことではなかった。
「子供は、二人まででいい」
上の子が8歳になったとき、二人目の子を産んだ。
浮竹は、もうそれ以上子供を作りたくないようで、京楽もそれに従った。
成人すれば京楽家の人間になると分かっているから、少し甘やかして育ててしまい、ちょっと上の子は我儘になった。
逆に下の子は甘えたがりで、よく上の子に泣かされていた。
それを仲裁しつつ、二人は二人の子供に恵まれて、その子たちが成人するまで手元で育てるのであった。
隊長として忙しい時期は、京楽の乳母であった女性が、子供たちの面倒を見てくれた。
本当にいい人で、浮竹も安心して子供を任せた。
「京楽、今日の夜、いいかい?」
耳元で囁いてきた、愛する夫である男に、浮竹は少し赤くなりながら、頷いた。
「離れの屋敷で、過ごそう」
京楽と浮竹は、仲睦まじく、おしどり夫婦と呼ばれるのであった。
だって、今まで検査でベータと言われ、オメガのヒートもきたことはないし、オメガのフェロモンにあてられるようなアルファでもなかったので。
それは、突然だった。
ある日、熱を出した。
ただの熱ならよかったのだが、体中が熱くて、自分が性的欲求をおこしているのだと知った。こんな姿、とても4番隊に診てもらう状況じゃなくて、浮竹は熱にうなされながら、どうにかするために、地獄蝶を飛ばして京楽に助けを求めた。
京楽は上流階級出身として当たり前のように、アルファだった。
浮竹には、今自分が抱えている熱がオメガのヒートであるなど、分かる由もなかった。
「どうしたの、浮竹・・・・うううっ」
雨乾堂にやってきた京楽は、その猛烈なオメガのフェロモンに当てられて、ドクリと鼓動が高鳴るのを感じつつ、冷や汗を出した。
「浮竹・・・君、オメガだったの?」
「あ、京楽、助けてくれ。熱くて体が疼くんだ・・・・・」
「これ、ヒートだよ。浮竹、ベータじゃなかったの・・・・」
京楽は、浮竹のオメガ独特のヒートのフェロモンに当てられて、正常な思考を維持するのがやっとだった。
「だめだよ。僕じゃ、浮竹を助けられない」
「じゃあ・・・白哉を呼ぶ」
その言葉に、京楽は首を振った。
「だめだよ、浮竹。君はオメガだ。朽木隊長はアルファだ」
「じゃあ、どうしろって・・いうんだ」
「僕もアルファだ。責任はちゃんととるから。僕に任せて」
「あ、京楽・・・この、高ぶりを沈めてくれるのか?」
まさか、ベータと言われていた浮竹が、オメガだったなんて。
浮竹とは、親友以上であるが、恋人というわけではなかった。
たまにハグはするけれど、キスをしたこともなかった。
浮竹は、熱にうなされていた。
京楽は地獄蝶を4番隊に飛ばして、オメガのヒート抑制剤を持ってくるように頼んだ。
雨乾堂に届けてほしい。決して、中には入るな。
そう地獄蝶に託して、京楽は女物の着物を脱ぐと、隊長羽織を脱ぎ捨てた。
浮竹から出るフェロモンに当てられて、思考が麻痺していく。
それでも、京楽はなんとか己を保って、浮竹の隣にきた。
「今から、君を抱くよ。責任をもって番にするから」
「あ・・・・」
オメガは、アルファの番になることが多いのだと、浮竹は熱にうなされながら思った。
「きょう・・・らく。お前をまきこんで、すまない」
「緊急事態だよ。後天的にオメガになる子は、零ではないからね」
はじめはアルファやベータでも、後天的にオメガになる場合が、本当に極稀にあった。
浮竹は、きっとそうなのだろう。
ベータであったことは事実。でも、今はオメガだ。
浮竹の隊長羽織と死覇装を脱がしていく。
薄いが、ちゃんと筋肉のついた体に、京楽は今まで心の奥底にいた、欲の塊がにじみ出てくるのを感じていた。
浮竹の隣で、親友として一緒に過ごせるなら、それだけでよかった。
恋人になりたかったけれど、振られるのが怖くて、その想いは封印していた。
「今更だけどね、浮竹。僕は、君を好きだったよ。君をこうしたいと、考えたこともあった」
浮竹の薄い胸を撫でながら、京楽は告白をしていた。
「浮竹・・・こんな、君を、僕のものにする僕を、許してほしい」
「あ、京楽・・いいから、もう・・・きて」
浮竹は、自分から京楽を迎えた。
「んんっ」
啄むようなキスを何度も繰り返す。
「やっ、焦らさないで・・・・」
「君、初めてでしょ?優しくしたいんだよ・・・・」
「京楽・・・・・」
「春水って呼んで。僕も十四郎って呼ぶから」
「あ、春水・・・・」
「好きだよ十四郎」
「俺も、好き・・・・・」
「本当に?」
鎖骨を甘噛みして、胸の先端をひっかいていると、浮竹の言葉に京楽は浮竹を見つめた。
「十四郎、本当に僕のこと好きなの?」
「あ・・・・昔から、好き、だった。優しいから、恋人だと錯覚してしまいそうだった」
「それは僕もだよ」
「好きでもない相手と、ハグしたり、しない・・・・」
親友以上恋人未満。
そんな関係を数百年続けていた。
浮竹は、熱が鎮まるならと、京楽に隠していた本心を打ち明けた。
京楽は、喜びに打ち震えた。
「なんだ、僕たち相思相愛だったんだね。なのに、ずっと友達以上恋人未満を続けて」
京楽の唇が、浮竹のものを含んだ。
「あ!」
浮竹は、体を震わせえて、京楽の黒髪をひっぱった。
「やぁ、そんな・・・・」
「一度出しておかないと、つらいでしょ?」
「でも」
浮竹のものを舐めあげながら、手で扱く。
先端の鈴口を指でぐりぐりすると、浮竹は先走りの蜜を零したあと、吐精した。
それを、京楽は舐めとってしまった。
「春水・・・あ・・あああ・・・・」
「濡れてるね・・・・」
オメガのそこは、男でも女のように濡れると、聞いたことがある。
濡れてぐしょぐしょになった蕾は、すぐに京楽の指をすんなりと受け入れた。
「やわらかい。もしかして、自分でいじってた?」
ぶんぶんと、浮竹が首を横に振る。涙を滲ませていた。
「ごめん、意地悪なこと言っちゃたね」
蕾は、たやすく3本の指を飲みこんだ。
それをひきぬいて、京楽は浮竹の耳元で囁く。
「番にするから。君は、僕のものだ」
「あ、春水・・・・ああああ!」
凄く熱くて質量のある熱が入ってくる。
ズズズっと、中に侵入してくる熱を、浮竹は締め付けていた。
「く、ちょっと、君の中すごい。一度出すよ」
「あ、あ、中で?俺の中でいって、春水」
入り口付近で、ビュルビュルと濃い精子をまき散らせて、京楽は硬さのなえない己で、浮竹を貫いた。
「あああ!」
びくんと浮竹が背を仰け反らせる。
前立腺をすりあげて、奥にきた熱は、ぱちゅんと音を立てた。
「ひあ、あ・・・春水が、中で、俺の中で・・・・」
「うなじ、噛むよ。番にするからね」
京楽は、浮竹と交わりながら、その首に噛みついた。
電撃が走り、互いに番になったのだと分かった。
「これで、君は僕のものだ。もう誰にも渡さない」
京楽は、微笑んだ。
浮竹は、京楽にキスをねだった。
「春水、キスしてくれ」
「いいよ」
何度啄むように、そして舌を絡め合わせたりして、何度もキスを繰り返した。
今までハグだけして、キスをしていなかった分を取り戻すかのように。
「ああ、君の中はすごいね。もう一度いくよ」
「ひあっ」
一度引き抜かれて、背後から貫かれた。
「あ、あ、あ、あ!」
ぱちゅんぱちゅんと音を立てながら出入りする京楽のものは、大きかった。
「や、出る、出ちゃう!」
「好きなだけいっていいよ」
「やああああ」
前立腺を突き上げられ、子宮にまで入り込んできた京楽の雄をしめつけながら、浮竹は射精していた。
同時に、中でもいくことを覚えた。
2重にいっていて、浮竹は思考が真っ白になる。
「うあ、や、中でも、外でも、いってる、ああああ、変になるぅ」
「大丈夫、すぐ慣れるよ」
今後、浮竹のヒートが来るたびに抱くつもりである京楽は、浮竹が孕んでしまうことを考えていた。
「十四郎、僕の子なら、産んでくれる?」
「や・・・やぁ」
浮竹は、熱に思考を麻痺させられて、会話が成り立たないでいた。
「十四郎、僕の精子で、僕の子を孕んで」
「あ、あ、あ・・・・・」
ごりごりっと、最奥を抉られて、浮竹は全身を痙攣させながら、また吐精していた。
「ああああーーーー!!!」
ぐったりと弛緩した浮竹の体を抱きながら、京楽もまた浮竹の中にまた精子をぶちまけた。
避妊はしていなかった。
オメガのヒートは、子を成すための期間である。
初めての京楽とのセックスで、浮竹は妊娠した。
「ねぇ、本当にいいの?堕胎してもいいんだよ。君の負担になる」
「俺と京楽の、愛の結晶だ。産むよ」
帝王切開になるが、浮竹の体が妊娠に耐えれるか分からなかった。
何度も4番隊の卯ノ花隊長の世話になりながら、ひましに大きくなっていく腹を撫でながら、浮竹は京楽との子供を産もうとしていた。
「性別は男の子だそうだ」
「名前、考えないとね」
京楽と浮竹は、番になったことを周囲に公表して、結婚した。
浮竹の子供は、正式に京楽家の跡取りとなることが決まっている。成人するまでは手放さないが、いずれ上流貴族の波にもまれるであろう。
京楽の両親は、どこの馬の骨とも分からぬ、オメガの浮竹を睥睨した目で見ていた。
それに怒った京楽が、ブチ切れた。
京楽の両親は、震えながら、自分の子がオメガ結婚することをしぶしぶ受け入れた。
「僕の兄が健在だったらねぇ。後継ぎ問題なんて、なかったんだけど」
京楽の兄は、すでに他界していた。
京楽を当主に添えたいが、京楽は頑なに拒んで、首を縦に振ったことはない。
オメガの男と結婚するなんて。そう蔑まれたが、浮竹が京楽の子を妊娠していると分かって、その子が男子であると分かり、両親は手の平を返したかのように、京楽と浮竹に接するようになった。
「まぁ、成人するまでは俺たちで育てるからな。成人してから、後はこの子の意思に任せればいい」
少し大きくなったお腹をさすって、浮竹は京楽と手を握りあった。
「子供は多い方はいいね」
「俺は、あまり多いのは嫌だぞ。子育てが大変だ」
なまじ、8人兄弟の長兄として生まれたせいで、両親に代わって、弟や妹の面倒を見てきたことがある。
子供も世話は、とにかく大変なのだ。
「隊長、辞めないでしょ?」
「当たり前だ」
「じゃあ、念のために乳母を雇おうか」
「産休はあるんだろう?」
「あるけど、ずっとっていうわけにはいかないでしょ。普段の子供の世話は乳母に任せればいい。僕の乳母は、いい人だったよ。彼女に頼もう」
「ああ、京楽の乳母なら安心だな」
未来を、描いていく。
京楽と共に。
浮竹は、ヒートの度に京楽と共に休暇をとり、一緒に過ごした。
二人目を作ると決めた日以外は、ずっと避妊していた。
京楽は、浮竹とならヒート期間以外でも睦み合った。
夫婦なので、別におかしいことではなかった。
「子供は、二人まででいい」
上の子が8歳になったとき、二人目の子を産んだ。
浮竹は、もうそれ以上子供を作りたくないようで、京楽もそれに従った。
成人すれば京楽家の人間になると分かっているから、少し甘やかして育ててしまい、ちょっと上の子は我儘になった。
逆に下の子は甘えたがりで、よく上の子に泣かされていた。
それを仲裁しつつ、二人は二人の子供に恵まれて、その子たちが成人するまで手元で育てるのであった。
隊長として忙しい時期は、京楽の乳母であった女性が、子供たちの面倒を見てくれた。
本当にいい人で、浮竹も安心して子供を任せた。
「京楽、今日の夜、いいかい?」
耳元で囁いてきた、愛する夫である男に、浮竹は少し赤くなりながら、頷いた。
「離れの屋敷で、過ごそう」
京楽と浮竹は、仲睦まじく、おしどり夫婦と呼ばれるのであった。
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アイスバース京浮~京楽の場合~
世の中には、アイスとジュースというものが存在する。
アイスの特徴は、体温が冷たいこと、体が弱いこと、もう一つはジュースと結ばれると3分以内に体が溶けてしまうこと。
ジュースはアイスに好意を抱いてしまうことが多く、アイスとジュースが結ばれることはアイスの死を意味している。
ジュースは自分がジュースであるということを知らない場合がほとんどだ。
アイスもジュースも稀なので、検査などたまにしか行われなかった。
京楽は、アイスだった。
そして、浮竹はジュースだった。
京楽は、浮竹を愛していた。浮竹が好きだった。
だが、浮竹は京楽のことを親友と思っていた。
だから、京楽は浮竹に想いを伝えることはせず、一緒に隊長を続けていた。
二人は、親友として寄り添い合っていた。
「浮竹、今日の気分はどうだい?」
「ああ、京楽か。今日は熱も下がって、大分気分がいいんだ」
「でも、無理しちゃだめだよ?体を大切にしなきゃ」
京楽がが、ぎゅっと浮竹の手を握る。
「いつも思うんだが、お前の手って冷たいな」
ぎくりとした。
自分がアイスであると、ばれてしまうのではないかと思った。
「手が冷たい分、心は温かいっていうしな」
朗らかな浮竹の笑顔で、心の中の氷はじわじわと溶けていった。
ああ。
浮竹に、好きと伝えたい。
そして、想いをうけいれてもらいたい。
そうしてアイスとして溶けていけるなら、それでもいい。幸せなまま死ねるなら。
そうとさえ思った。
こんなちっぽけな命。
浮竹のために溶けていけるなら、それもいい。
統学院時代、アイスバースの検査があった。
京楽と浮竹は、正常といわれていた。
真実を知った京楽が、金の力で京楽がアイスであり、浮竹がジュースであることをもみ消したのだ。
愛していた。
愛されたかった。
でも、思いが通じあうことは、京楽の死を意味にしていた。
もしも、浮竹が京楽のことを好きになってしまえば、想いを告げた時に京楽はアイスであるから、溶けて水となって消えてしまう。
残される浮竹のことが、とても心配だった。
浮竹のことだから、後を追うようなことはしないだろうが、きっとすごく塞ぎこんで、悲しみのドン底を味わうだろう。
それが嫌だった。
浮竹には、常に幸せでいてほしかった。
隊長になって、またアイスとジュースの検査があった。
アイスとジュースは、稀に成長した後でもなることがあるのだ。
今回は、京楽がアイスで、浮竹がジュースであることが公になった。
アイスとジュースであるということが、二人に溝を作り、いつしか二人はあまり話さないよになっていた。
というか、浮竹が強制的に京楽から引き離された。
浮竹の副官である海燕が、浮竹が悲しむのを警戒して、京楽を近寄らせなかった。
浮竹は、寂しかった。
浮竹もまた、院生時代からずっと続く友情に、疑問を抱いていた。
きっと、京楽は自分のことが好きだ。
そう思った。
何故なら、浮竹は京楽のことを好きだったから。
自分がジュースであることは知っていた。京楽がアイスであることも知っていた。
溶けて死なせてしまうことなんてできないので、想いを告げずに、告げられても受け入れるつもりはなかった。
時はたち、藍染の反乱が終わったと思ったら、その後に後に大戦と呼ばれる滅却師の襲撃があった。
始めの襲撃で、京楽は右目を失い、右耳も半分失っていた。
敵はユーハバッハ。
狙いは、霊王。
浮竹は、もしもの時のために、神掛の準備を行っていた。
護廷十三隊のために死なば本望。
やがて、霊王はユーハバッハの手で無へと還された。
浮竹の神掛のみが、世界を支えていた。
「ぐっ・・・・ごほっ」
浮竹は何度も血を吐いた。
ミミハギ様を失った肺は、病を進行させていた。
黒崎一護が、ユーハバッハを打ち倒した。
朗報を耳にして、浮竹は安堵した。
もう、残り僅かなこの命、せめて京楽のために散ろう。
そう思った。
「浮竹・・・・じっとしてなきゃだめだよ。どうしたの、一番隊のこんな場所にきて」
京楽は、眼帯をしていた。
右目の再生手術は失敗に終わり、義眼をはめてはいるが、いつも眼帯をしていた。
そんな京楽の傍にいき、京楽に口づけた。
「浮竹?」
「京楽、俺はお前が好きだ。愛している」
「うき・・・たけ・・・・・」
「お前は?お前は、俺をどう思っている?」
「僕は・・・・・」
言ってはいけない。
言っては、尸魂界を、傷ついた瀞霊廷を、たくさんの死神達を残して水になって溶けてしまう。
「京楽、楽になってしまえ。俺と一緒に、きてくれ。俺と一緒に、死んでくれ」
浮竹の命は、風前の灯だった。
「ごほっごほっ」
「浮竹!」
血を吐いて倒れた浮竹は、泣いていた。
「お前が好きだ、春水」
ああ。
もう、何もかもどうでもいい。
愛しい浮竹が、僕のことを好きで愛してくれているという。
ジュースの浮竹は、僕が想いをつげて溶けても、アイスの僕のように溶けることはないだろう。
でも、すでに浮竹は限界にきている。
命を落とすだろう。
もう、助ける方法はない。
京楽は決意する。
浮竹を抱き上げて、かろうじで残っていた雨乾堂に行き、浮竹を横たえた。
「京楽は?京楽も、俺のことを好きなんだろう?」
頬に手をあてられた。
京楽も、泣いていた。
「好きだよ。出会った頃から、ずっと好きだった。でも僕はアイスで、君はジュースで・・・想いを今まで伝えられなかった。ごめんね」
「いい。最後に、お前の全部を手に入れられた」
暖かい浮竹に抱かれながら、愛を告げて受け入れられたアイスの京楽は、浮竹に愛を注いで、溶けるまでの3分間、好きだよ愛してるよと告げて、水になって溶けてしまった。
ばさりと、8番隊の羽織が残された。
ぐっしょりと濡れた死覇装を手にして、浮竹は静かに泣いた。
そして、血を吐いた。
「京楽・・・・俺も逝く。お前と一緒に。行こう、一緒に・・・・・」
京楽春水、浮竹十四郎。
歴史では、二人とも大戦で命を失ったとされた。
愛を告げ合って、心中のように死んでいったことなど、ごく一部の者しか知らなかった。
二人は、一緒の場所にいた。
霊子の海に還り、浮遊していた。
ふとした意識の狭間で、愛を囁き合い、魂が輪廻するのを待つ。
「やぁ。僕は春(ハル)っていうんだ。君は?女の子でしょ?」
「俺は男だ!」
男の子と名乗った、白い髪のふわふわした翠色の瞳をした子は、自分の名を告げる。
「俺は白(しろ)。なんだろうな、春とは初めて会った気がしない」
「奇遇だね。僕もなんだ」
魂は、霊子へと還って輪廻を続ける。
魂がある限り、現世でいき、尸魂界にいき、また現世にいき、尸魂界にいき。
出会いは、繰り返される。
アイスとジュースを克服して、魂は廻る。
そして、浮竹はジュースだった。
京楽は、浮竹を愛していた。浮竹が好きだった。
だが、浮竹は京楽のことを親友と思っていた。
だから、京楽は浮竹に想いを伝えることはせず、一緒に隊長を続けていた。
二人は、親友として寄り添い合っていた。
「浮竹、今日の気分はどうだい?」
「ああ、京楽か。今日は熱も下がって、大分気分がいいんだ」
「でも、無理しちゃだめだよ?体を大切にしなきゃ」
京楽がが、ぎゅっと浮竹の手を握る。
「いつも思うんだが、お前の手って冷たいな」
ぎくりとした。
自分がアイスであると、ばれてしまうのではないかと思った。
「手が冷たい分、心は温かいっていうしな」
朗らかな浮竹の笑顔で、心の中の氷はじわじわと溶けていった。
ああ。
浮竹に、好きと伝えたい。
そして、想いをうけいれてもらいたい。
そうしてアイスとして溶けていけるなら、それでもいい。幸せなまま死ねるなら。
そうとさえ思った。
こんなちっぽけな命。
浮竹のために溶けていけるなら、それもいい。
統学院時代、アイスバースの検査があった。
京楽と浮竹は、正常といわれていた。
真実を知った京楽が、金の力で京楽がアイスであり、浮竹がジュースであることをもみ消したのだ。
愛していた。
愛されたかった。
でも、思いが通じあうことは、京楽の死を意味にしていた。
もしも、浮竹が京楽のことを好きになってしまえば、想いを告げた時に京楽はアイスであるから、溶けて水となって消えてしまう。
残される浮竹のことが、とても心配だった。
浮竹のことだから、後を追うようなことはしないだろうが、きっとすごく塞ぎこんで、悲しみのドン底を味わうだろう。
それが嫌だった。
浮竹には、常に幸せでいてほしかった。
隊長になって、またアイスとジュースの検査があった。
アイスとジュースは、稀に成長した後でもなることがあるのだ。
今回は、京楽がアイスで、浮竹がジュースであることが公になった。
アイスとジュースであるということが、二人に溝を作り、いつしか二人はあまり話さないよになっていた。
というか、浮竹が強制的に京楽から引き離された。
浮竹の副官である海燕が、浮竹が悲しむのを警戒して、京楽を近寄らせなかった。
浮竹は、寂しかった。
浮竹もまた、院生時代からずっと続く友情に、疑問を抱いていた。
きっと、京楽は自分のことが好きだ。
そう思った。
何故なら、浮竹は京楽のことを好きだったから。
自分がジュースであることは知っていた。京楽がアイスであることも知っていた。
溶けて死なせてしまうことなんてできないので、想いを告げずに、告げられても受け入れるつもりはなかった。
時はたち、藍染の反乱が終わったと思ったら、その後に後に大戦と呼ばれる滅却師の襲撃があった。
始めの襲撃で、京楽は右目を失い、右耳も半分失っていた。
敵はユーハバッハ。
狙いは、霊王。
浮竹は、もしもの時のために、神掛の準備を行っていた。
護廷十三隊のために死なば本望。
やがて、霊王はユーハバッハの手で無へと還された。
浮竹の神掛のみが、世界を支えていた。
「ぐっ・・・・ごほっ」
浮竹は何度も血を吐いた。
ミミハギ様を失った肺は、病を進行させていた。
黒崎一護が、ユーハバッハを打ち倒した。
朗報を耳にして、浮竹は安堵した。
もう、残り僅かなこの命、せめて京楽のために散ろう。
そう思った。
「浮竹・・・・じっとしてなきゃだめだよ。どうしたの、一番隊のこんな場所にきて」
京楽は、眼帯をしていた。
右目の再生手術は失敗に終わり、義眼をはめてはいるが、いつも眼帯をしていた。
そんな京楽の傍にいき、京楽に口づけた。
「浮竹?」
「京楽、俺はお前が好きだ。愛している」
「うき・・・たけ・・・・・」
「お前は?お前は、俺をどう思っている?」
「僕は・・・・・」
言ってはいけない。
言っては、尸魂界を、傷ついた瀞霊廷を、たくさんの死神達を残して水になって溶けてしまう。
「京楽、楽になってしまえ。俺と一緒に、きてくれ。俺と一緒に、死んでくれ」
浮竹の命は、風前の灯だった。
「ごほっごほっ」
「浮竹!」
血を吐いて倒れた浮竹は、泣いていた。
「お前が好きだ、春水」
ああ。
もう、何もかもどうでもいい。
愛しい浮竹が、僕のことを好きで愛してくれているという。
ジュースの浮竹は、僕が想いをつげて溶けても、アイスの僕のように溶けることはないだろう。
でも、すでに浮竹は限界にきている。
命を落とすだろう。
もう、助ける方法はない。
京楽は決意する。
浮竹を抱き上げて、かろうじで残っていた雨乾堂に行き、浮竹を横たえた。
「京楽は?京楽も、俺のことを好きなんだろう?」
頬に手をあてられた。
京楽も、泣いていた。
「好きだよ。出会った頃から、ずっと好きだった。でも僕はアイスで、君はジュースで・・・想いを今まで伝えられなかった。ごめんね」
「いい。最後に、お前の全部を手に入れられた」
暖かい浮竹に抱かれながら、愛を告げて受け入れられたアイスの京楽は、浮竹に愛を注いで、溶けるまでの3分間、好きだよ愛してるよと告げて、水になって溶けてしまった。
ばさりと、8番隊の羽織が残された。
ぐっしょりと濡れた死覇装を手にして、浮竹は静かに泣いた。
そして、血を吐いた。
「京楽・・・・俺も逝く。お前と一緒に。行こう、一緒に・・・・・」
京楽春水、浮竹十四郎。
歴史では、二人とも大戦で命を失ったとされた。
愛を告げ合って、心中のように死んでいったことなど、ごく一部の者しか知らなかった。
二人は、一緒の場所にいた。
霊子の海に還り、浮遊していた。
ふとした意識の狭間で、愛を囁き合い、魂が輪廻するのを待つ。
「やぁ。僕は春(ハル)っていうんだ。君は?女の子でしょ?」
「俺は男だ!」
男の子と名乗った、白い髪のふわふわした翠色の瞳をした子は、自分の名を告げる。
「俺は白(しろ)。なんだろうな、春とは初めて会った気がしない」
「奇遇だね。僕もなんだ」
魂は、霊子へと還って輪廻を続ける。
魂がある限り、現世でいき、尸魂界にいき、また現世にいき、尸魂界にいき。
出会いは、繰り返される。
アイスとジュースを克服して、魂は廻る。
血と聖水1-5
血の聖水となった京楽が、同じヴァンパイアロードの心臓を食らう。
驚異的な回復で再生する心臓に噛み付き、そして全身にヴァンパイアの毒である水銀をいきわたらせる。
水銀は危険であるため、人間では取り扱いができない。使役魔も同じだ。主に接触する可能性があるため、使うことはできない。
京楽は、ヴァンパイアの最大の弱点でもある水銀を使う。
それで千年の間生き延びてきたのだ。
同じヴァンパイアの血肉になることもなく、狩られることもなく。
京楽は水銀で同じヴァンパイアを殺し、そしてヴァンパイアハンターは実力で殺した。
ドロドロと、とけていヴァンパイアロードは、ついに灰となった。
ビームサーベルをひきぬく二人。
京楽はすぐに血液となり、元の姿に戻る。
「灰を・・・とらないと」
浮竹が、ハンター協会に提出するために灰を手に取ろうとするのを、京楽が止めた。
「さわらないで。僕がとるよ。水銀にまみれてるから・・・人間にとっても毒だ」
「いつも思うが、なぜ京楽は水銀を使う?」
白哉が首を傾げていた。
「水銀が、ロードにもマスタークラスにも有効だからだよ」
「しかし、兄の命にも影響があるだろう」
「残念。僕は、水銀からうまれたんだよ。水銀の汚染で、3つの王国は勝手に滅びた」
「兄も、賞金首になっているのを知っているか、京楽?」
白哉のビームサーベルが、京楽の胸の前につきつけられる。
「白哉!京楽は、もう昔に吸血行為は俺のみとすると誓った」
「だからといって、過去の罪が消えるわけではない」
「西の帝国を滅ぼした、鷹のヴァンパイアロード。元々ヴァンパイアでありながら、ヴァンパイアハンターとして生きる君に、罪をどうこういういわれはないよ」
京楽は、ビームサーベルを片手で掴んだ。
肉のこげる匂いに、浮竹が泣きそうになった。
白哉は、ビームサーベルをおさめた。
「浮竹の情夫になど、興味はない」
「だ!!だから、京楽は情夫などではない!」
浮竹が真っ赤になって叫ぶ。
「えー。あんなことやこんなことしてるのに?」
「京楽!!悪乗りしすぎだ!」
浮竹が、紅くなったまま京楽を殴り飛ばした。
その時は突然だった。
浮竹の瞳が金色に輝き、背中に六枚の金色の翼が現れたのだ。
「ほう。覚醒か」
ヴァンパイアハンターに現れる、潜在能力を極限にまで引き出す。それが覚醒。
「覚醒?これが・・・って、何もかわったかんじがないが」
翼はすぐに消えて、瞳の色も翡翠色に戻った。
「おかしいな。覚醒をした者は、飛躍的に力がUPすると聞いているが」
「にゃーにゃにゃ。主の星の数が増えてるにゃ」
フェンリルが、目を回していれう京楽のかわりに、自動でLVを告げる星システムの3つ星が4つ星になっているのを見つけた。
「3つ星が4つ星か・・・・ふっ」
白哉は背中をむけてちいさく笑っていた。
「うるさい!!」
浮竹は、怒って白哉を投げ飛ばそうとするが、するりと避けられてしまった。
家には、京楽が召還したナイトメアの背に乗って帰った。
協会に、覚醒を告げ、星が一つ増えたことを嬉しげに伝えると、皆プッって笑っていた。
覚醒で星がたった一つ増えたなんて、はじめてだった。通常はもっと強くなる。
「怒ると、綺麗な顔がだいなしだよ?」
「怒ってなどいない」
「にゃーにゃ。にゃっ」
フェンリルを猫じゃらしで遊ばせながら、京楽は浮竹の額にキスをする。
「情夫って響きはねぇ。せめて彼氏くらいじゃないと」
京楽は、猫じゃらしを浮竹の目の前にもってきた。
浮竹は、それごと京楽を投げ飛ばすのであった。
驚異的な回復で再生する心臓に噛み付き、そして全身にヴァンパイアの毒である水銀をいきわたらせる。
水銀は危険であるため、人間では取り扱いができない。使役魔も同じだ。主に接触する可能性があるため、使うことはできない。
京楽は、ヴァンパイアの最大の弱点でもある水銀を使う。
それで千年の間生き延びてきたのだ。
同じヴァンパイアの血肉になることもなく、狩られることもなく。
京楽は水銀で同じヴァンパイアを殺し、そしてヴァンパイアハンターは実力で殺した。
ドロドロと、とけていヴァンパイアロードは、ついに灰となった。
ビームサーベルをひきぬく二人。
京楽はすぐに血液となり、元の姿に戻る。
「灰を・・・とらないと」
浮竹が、ハンター協会に提出するために灰を手に取ろうとするのを、京楽が止めた。
「さわらないで。僕がとるよ。水銀にまみれてるから・・・人間にとっても毒だ」
「いつも思うが、なぜ京楽は水銀を使う?」
白哉が首を傾げていた。
「水銀が、ロードにもマスタークラスにも有効だからだよ」
「しかし、兄の命にも影響があるだろう」
「残念。僕は、水銀からうまれたんだよ。水銀の汚染で、3つの王国は勝手に滅びた」
「兄も、賞金首になっているのを知っているか、京楽?」
白哉のビームサーベルが、京楽の胸の前につきつけられる。
「白哉!京楽は、もう昔に吸血行為は俺のみとすると誓った」
「だからといって、過去の罪が消えるわけではない」
「西の帝国を滅ぼした、鷹のヴァンパイアロード。元々ヴァンパイアでありながら、ヴァンパイアハンターとして生きる君に、罪をどうこういういわれはないよ」
京楽は、ビームサーベルを片手で掴んだ。
肉のこげる匂いに、浮竹が泣きそうになった。
白哉は、ビームサーベルをおさめた。
「浮竹の情夫になど、興味はない」
「だ!!だから、京楽は情夫などではない!」
浮竹が真っ赤になって叫ぶ。
「えー。あんなことやこんなことしてるのに?」
「京楽!!悪乗りしすぎだ!」
浮竹が、紅くなったまま京楽を殴り飛ばした。
その時は突然だった。
浮竹の瞳が金色に輝き、背中に六枚の金色の翼が現れたのだ。
「ほう。覚醒か」
ヴァンパイアハンターに現れる、潜在能力を極限にまで引き出す。それが覚醒。
「覚醒?これが・・・って、何もかわったかんじがないが」
翼はすぐに消えて、瞳の色も翡翠色に戻った。
「おかしいな。覚醒をした者は、飛躍的に力がUPすると聞いているが」
「にゃーにゃにゃ。主の星の数が増えてるにゃ」
フェンリルが、目を回していれう京楽のかわりに、自動でLVを告げる星システムの3つ星が4つ星になっているのを見つけた。
「3つ星が4つ星か・・・・ふっ」
白哉は背中をむけてちいさく笑っていた。
「うるさい!!」
浮竹は、怒って白哉を投げ飛ばそうとするが、するりと避けられてしまった。
家には、京楽が召還したナイトメアの背に乗って帰った。
協会に、覚醒を告げ、星が一つ増えたことを嬉しげに伝えると、皆プッって笑っていた。
覚醒で星がたった一つ増えたなんて、はじめてだった。通常はもっと強くなる。
「怒ると、綺麗な顔がだいなしだよ?」
「怒ってなどいない」
「にゃーにゃ。にゃっ」
フェンリルを猫じゃらしで遊ばせながら、京楽は浮竹の額にキスをする。
「情夫って響きはねぇ。せめて彼氏くらいじゃないと」
京楽は、猫じゃらしを浮竹の目の前にもってきた。
浮竹は、それごと京楽を投げ飛ばすのであった。
血と聖水1-4
「血と聖水の名において・・・・いでよ、シルフ!切り裂け!」
白哉が、風の精霊シルフを召還し、真空の刃で京楽を切り裂く。
幾つもの傷が、京楽にできるが、すぐに再生した。
「殺しあうがいい」
京楽の中に入ったヴァンパイアロードは、京楽の血で戦闘人形を呼び出す。
その強さは、さっきまでのヴァンパイアロードの血でつくったそれの、比ではなかった。
「ぐ・・・・」
白哉が、戦闘人形の一匹と切り結ぶ。
「強い」
ビームサーベルで、頭と胴を切り離しても、血でできているためにすぐに元に戻る。
「きりがない、浮竹」
「分かっている」
浮竹も、ビームサーベルを手に、戦闘人形を切り倒していくが、すぐに血になり、また戦闘人形に戻っていく。
「白哉、氷属性の精霊の使い魔はいないのか?」
「炎と風属性ばかりで、氷はない」
「そうか。炎でなんとかなるか?」
「血と聖水の名において・・・フェニックス!血を蒸発させろ!」
凄まじい火力が場を満たす。 炎の地獄の猛火が、京楽を包んだ。
「手加減くらいしろ、白哉!あいつは俺の使い魔でもあり、パートナーでもある!」
「いや、単に情夫であろう?」
「じょ、じょ・・・・」
浮竹は顔を真っ赤にした。
「フェニックス、そのまま燃やし尽くせ」
「血と聖水の名において、フェンリルよ!凍てつくせ!」 フ
ェニックスの炎を止めるように、猫くらいの大きさの白い狼が、氷のブレスを吐く。 それは油をかけた火種に、一滴の水を加えるようなものだった。
「にゃあ、にゃあああああ。無理だ、主よ。主の力が足りないにゃ」
「そこをなんとか、フェンリル」
「主が消せばいいにゃ」
「なるほど、それがあったか」
白哉が頷いて、浮竹を燃え盛る京楽向かって投げ捨てた。
投げ捨てた。
普通、仲間を投げ捨てたりしないよね。でもするのが、白哉。
「うわああああ?」
投げられて、とっさに受身もできなかった浮竹は、そのまま燃え盛る京楽に横抱きにされていた。
「熱い!とっても熱い!!」
浮竹が我慢できずに叫ぶと、火が消えた。
「にゃあ。ほら、京楽が主を守るために火を消したにゃ」
「京楽?」
とてつもない温度の炎で焼かれていたというのに、髪一つ焦げていない。
真紅の血の瞳は、鳶色の優しい色に戻っていた。
「いい加減、僕の体から出ていけ!」
京楽の体から追い出され、ヴァンパイアロード、は血の海となって、姿を形づくる。
「どうする?」
京楽が、浮竹を地面に降ろした。
「どうするのだ、浮竹」
「ビームサーベルで、心臓を突き刺そう」
「分かった」
白哉が、肩で息をしているヴァンパイアロードの背後から、ビームサーベルで心臓を突き刺す。
「がああああああ」
「京楽!」
「分かったよ!血と聖水の名において、我血の聖水とならん」
京楽の姿が溶けて、真紅の血液となり、ビームサーベルにまといつく。 そ
のビームサーベルで、浮竹はイルジオンの精霊に残像を作らせ、シルフの力をかりて横にすべり、そこからヴァンパイアロードの心臓を突き刺した。
「ああああああああ!!!!」
白哉が、風の精霊シルフを召還し、真空の刃で京楽を切り裂く。
幾つもの傷が、京楽にできるが、すぐに再生した。
「殺しあうがいい」
京楽の中に入ったヴァンパイアロードは、京楽の血で戦闘人形を呼び出す。
その強さは、さっきまでのヴァンパイアロードの血でつくったそれの、比ではなかった。
「ぐ・・・・」
白哉が、戦闘人形の一匹と切り結ぶ。
「強い」
ビームサーベルで、頭と胴を切り離しても、血でできているためにすぐに元に戻る。
「きりがない、浮竹」
「分かっている」
浮竹も、ビームサーベルを手に、戦闘人形を切り倒していくが、すぐに血になり、また戦闘人形に戻っていく。
「白哉、氷属性の精霊の使い魔はいないのか?」
「炎と風属性ばかりで、氷はない」
「そうか。炎でなんとかなるか?」
「血と聖水の名において・・・フェニックス!血を蒸発させろ!」
凄まじい火力が場を満たす。 炎の地獄の猛火が、京楽を包んだ。
「手加減くらいしろ、白哉!あいつは俺の使い魔でもあり、パートナーでもある!」
「いや、単に情夫であろう?」
「じょ、じょ・・・・」
浮竹は顔を真っ赤にした。
「フェニックス、そのまま燃やし尽くせ」
「血と聖水の名において、フェンリルよ!凍てつくせ!」 フ
ェニックスの炎を止めるように、猫くらいの大きさの白い狼が、氷のブレスを吐く。 それは油をかけた火種に、一滴の水を加えるようなものだった。
「にゃあ、にゃあああああ。無理だ、主よ。主の力が足りないにゃ」
「そこをなんとか、フェンリル」
「主が消せばいいにゃ」
「なるほど、それがあったか」
白哉が頷いて、浮竹を燃え盛る京楽向かって投げ捨てた。
投げ捨てた。
普通、仲間を投げ捨てたりしないよね。でもするのが、白哉。
「うわああああ?」
投げられて、とっさに受身もできなかった浮竹は、そのまま燃え盛る京楽に横抱きにされていた。
「熱い!とっても熱い!!」
浮竹が我慢できずに叫ぶと、火が消えた。
「にゃあ。ほら、京楽が主を守るために火を消したにゃ」
「京楽?」
とてつもない温度の炎で焼かれていたというのに、髪一つ焦げていない。
真紅の血の瞳は、鳶色の優しい色に戻っていた。
「いい加減、僕の体から出ていけ!」
京楽の体から追い出され、ヴァンパイアロード、は血の海となって、姿を形づくる。
「どうする?」
京楽が、浮竹を地面に降ろした。
「どうするのだ、浮竹」
「ビームサーベルで、心臓を突き刺そう」
「分かった」
白哉が、肩で息をしているヴァンパイアロードの背後から、ビームサーベルで心臓を突き刺す。
「がああああああ」
「京楽!」
「分かったよ!血と聖水の名において、我血の聖水とならん」
京楽の姿が溶けて、真紅の血液となり、ビームサーベルにまといつく。 そ
のビームサーベルで、浮竹はイルジオンの精霊に残像を作らせ、シルフの力をかりて横にすべり、そこからヴァンパイアロードの心臓を突き刺した。
「ああああああああ!!!!」
血と聖水1-3
「ゆけ、フェニックス!」
白哉は、契約している炎の精霊を、ヴァンパイアロードに向ける。
ヴァンパイアロードは、蝙蝠となって四散し、炎を避ける。その蝙蝠の群れに、白哉は容赦なくフェニックスの炎を向ける。
白哉の体は空中にあった。
巨大な金色の鷹に乗り、宙を飛べるヴァンパイアロードと対峙する。
巨大な金色の鷹に乗り、宙を飛べるヴァンパイアロードと対峙する。
「しつこい・・・・・」
ヴァンパイアロードは真紅の翼で空をかける。白哉に向かって、自分の血で作ったオートマティックバトルドールたち、戦闘人形をけしかける。
メイドの姿をした少女たちは、皆背中に真紅の翼を生やし、いろんな武器で白哉に向かって切りかかったりする。
「しつこいのはそちらであろう」
スパン。
鋭い音がした。
スパン。
鋭い音がした。
白哉の乗っていた、金色の鷹の首がもげた。
落下していく白哉の体。白哉は瞳を金色に輝かせる。
それは、覚醒者としての証。
金色に輝く六枚の翼が現れる。
そのまま、戦闘人形たちをシルフのつくりだした突風でバラバラにすると、白哉は宙を走る。
ギィン、キィン。
ヴァンパイアロードと、直接刃を交える。
ヴァンパイアロードは血でできた真紅の刃、それに対して白哉は、七つ星のハンターにのみ与えられたビームサーベルを手にしていた。
何度も切り結ぶ。
白哉は何度も使い魔を召還した。
黒い狼を召還すると、白哉はシルフの風で空に飛ばし、何度も蝙蝠になるその蝙蝠を食わせた。
「我が肉体を食らうというのか」
「駆逐する」
「お前が駆逐されろ」
「いや、兄だ」
「お前だ」
「兄だ」
「お前のかあちゃんでべそー」
「私に母はいない。人工生命体だ。でべそは兄のほうであろう?」
「ばれた!?」
ヴァンパイアロードは臍の位置をおさえた。
「いけ、戦闘人形ども!」
自らの血をまた流し、ヴァンパイアロードは何度も戦闘人形を召還する。
白哉は呪札を飛ばした。
それは一枚一枚が口となり、戦闘人形たちを食らっていく。
「遊んでいるのか、白哉?」
フェンリルで上空から、二人の戦いを見ていた浮竹は困った顔になった。
多分、本人たちは真剣なんだろうが、漫才を見ている気分だった。
そのまま、フェンリルで地上にまでおりると、浮竹と京楽は銃を構え、それぞれヴァンパイアロードを撃つ。
「新手か・・・」
すでに手負い状態のヴァンパイアロードは、敵側に同じヴァンパイアロードの姿を見て、唇を吊り上げた。
「ハンターよ、ヴァンパイアロードを使い魔にしたつもりか。知っているか。ヴァンパイアは、より強い者の下につく掟があることを」
しかし、京楽はヴァンパイアロードに向かって銀の弾丸を撃つ。
「ち。力は上か」
ヴァンパイアロードは、血の渦となって、京楽の体に吸い込まれた。
「あれ?えーと・・・・」
はじめ、京楽はぼけっとしていた。
次の瞬間には目が鳶色から真紅ににごり、衣服を破ってヴァンパイアの証である真紅の翼が飛び出した。
次の瞬間には目が鳶色から真紅ににごり、衣服を破ってヴァンパイアの証である真紅の翼が飛び出した。
「従属せぬのであれば、操るまでよ!」
「京楽!」
血と聖水1-2
「武器は・・・聖水と、銀の弾丸の入った銃、それに銀のナイフとビームサーベル。こんなものかな?あとは十字架に・・・」
ヴァンパイアハンターである浮竹の武器を、勝手に身につけていくその青年は、名を京楽春水といった。
浮竹のマスターである。
その昔、とある滅びた王国の公爵家の跡取り息子であったが、ヴァンパイアとなり、千人の人の生き血を啜って、ヴァンパイアロードになった。
ヴァンパイアロードである京楽に、通常の聖水や銀の弾丸、銀の武器、十字架は効かない。
だが、使うものの方法次第ではヴァンパイアロードにもダメージを与えれる。たとえば、心臓に何度も銀の弾丸を撃ち込めば、ヴァンパイアロードでも死ぬ場合がある。
ビームサーベルは、ハンター協会から七つ星以上の最高クラスのハンターにのみ与えられる武器だ。
浮竹は、生まれた時は七つ星クラスのヴァンパイアハンターだった。
だから、無条件で与えられたのだ。
だが、実際に狩りを行い、報告で3つ星にまで落とされた。こんなことは初めてだった。
いきなり4つも星を落とされるヴァンパイアハンターなんて聞いたことがないと、今でも笑い種だ。浮竹だって、特殊な生命体であるから無条件に七つ星にされただけであって、好き好んでそうなったわけではない。
浮竹は、ヴァンパイアロードである京楽に眷属にされた、ヴァンパイアであった。ヴァンパイアロードの特徴をもっていて、ヴァンパイアハンターをするヴァンパイアであった。
ヴァンパイアたちにとって、浮竹の存在は異質で、裏切者だった。
「なぁ、京楽。猫の缶詰なんて・・・フェンリルも連れて行くつもりか?」
「勿論。僕は猫は好きだよ」
「いや、フェンリルは氷の精霊でしかも狼・・・」
「にゃあ。にゃあにゃああ」
開けられた猫の缶詰を、おいしそうにフェンリルは食べていた。
「猫じゃらしも忘れずに、と」
まるで、どこか旅行にいくかのようだ。
これから、大物のヴァンパイアを倒しにいくとは、とても思えない。
浮竹は、使い魔のスズメで朽木百邪と連絡をとりあっていた。白哉の使い魔は、金色の鷹。すずめと鷹・・・ここらへんからして、力量の違いが見えているが、浮竹はくじけない。
朽木白哉も日番谷冬獅郎も、ヴァンパイアハンターとしての「覚醒」をすでに終えている。
浮竹はまだ覚醒していない。
昔、覚醒していなくても、白哉と冬獅郎は七つ星ハンターであった。
浮竹にとって、まぁ人生ほぼ不老不死で長いんだし、そのうちきっと強くなるよみたいなかんじで、焦ってはいなかった。
ヴァンパイアなのに何故ヴァンパイアハンターをしているのかと聞かれる。
何故かは、自分でも分からない。
ヴァンパイアハンター教会の掟で、今の浮竹は他のヴァンパイアハンターから守られている。それはマスターであり、ヴァンパイアハンターの補佐をしてくれる京楽もだった。
パートナーである京楽は、ヴァンパイアロード。千年以上も前にロード直前のハイクラスとなった、つまりは千年間ずっとハンターを返り討ちにしてきたので、ある意味最強である。
本名は、京楽 次郎 総蔵佐 春水というそうだ。京楽 次郎 総蔵佐 春水といえば、千年前に魔女狩りを引き起こす原因となり、南の王国3つを滅ぼしたとして有名なヴァンパイアだった。
それが、今ではこんな腑抜け。当時は空気さえも凍てつくといわれていたのに。
話では、999人目の処女として選んだのが95歳のおばあさんの魔女で、一緒に5年間孫として生きているうちに人間の情が移ってしまったのだという。
魔女の魔法でもあったのかもしれない。
それから、千人目に浮竹で選んだのがさらなる間違いだった。
浮竹は男はであり、処女といえば処女だが女ではない。
女性の処女を吸血しなければならないしきたりのある中、それまでの吸血が全て無意味となった。すでにロードであったが。でも、すっごい人間臭くなった。
コンコン。窓がノックされて、浮竹は窓を開ける。
白哉の使い魔である、白の鷹が入ってきた。白哉は複数の鷹の使い魔を持っている。
鷹は、窓に文字となって消えた。それを読む。
(敵、ヴァンパイアロードと確認。現在交戦中)
「白哉が、敵を確認したようだ。ヴァンパイアロードらしい。急ごう。白哉がすでに交戦中だ」
「フェンリル」
「にゃあ?」
京楽が、牙で自分の親指を噛み切る。そこから滴る甘美な血を、フェンリルに舐めさせた。
ヴァンパイアロードの血は、分け与えた者に力を与える。
京楽は浮竹を両手で抱えた。
「な、何をする!自分で歩けるぞ!」
「いけ、フェンリル」
「にゃああ・・・・・オオオーン」
窓の外に、フェンリルが飛び出す。
すると、真っ白な狼は、狼らしい遠吠えをあげた後、3メートルはあろうかという巨大な狼になった。その背中に、京楽がひらりと飛び乗る。
そっと、浮竹を降ろした。
フェンリルの背にまたがり、二人は白哉の元へと向かった。
フェンリルは、京楽の血を得て、通常よりも巨大に実体化し、空を駆けた。
血と聖水1-1
むせ返るような血の匂い。錆びた鉄の匂いが空気に四散している。
浮竹は、無残にもヴァンパイアに血を吸われた死体を検分していた。
「まだ生暖かい」
死体は、まだ先ほどまで生きていたのだろう。
「血と聖水の名において・・・アーメン」
浮竹に信じる神はない。
浮竹は、もっていた銃で、死体の頭部を撃ち抜いた。
銃の弾丸は銀でできていた。
そうしないと、「ヴァンピール」という、ヴァンパイアの下等な、本能で血を求めるだけのヴァンパイアとして蘇ってしまう可能性があるからだ。
ヴァンピールも一応はヴァンパイアだ。知能はゼロだが、並外れた身体能力を有する場合が多い。
本当なら、心臓に杭をさして聖水をかけ、墓地に埋葬しなければいけなかったが、そんなことをしている時間はない。
死体の血をすすった、ヴァンパイアがまだ近くにいるはずだ。
銃の銀の弾丸が、聖水のかわりになってくれる。頭部を銀の弾丸でうちぬけば、ヴァンピールは死ぬ。
「美しい人・・・・このような荒れ果てた町へようこそ」
背後から声がした。
浮竹は飛んでいた。
地面から体が離れ、ほんの一瞬浮遊感を味わったかと思うと、家のレンガに叩きつけられていた。
「匂いがする・・・・銀の匂いが。ヴァンパイアハンターか」
ぎりっと、長く細い手が伸びて、浮竹の細い首を絞めた。
「かはっ」
目の前にいたのは、美しい容姿をした20代後半のヴァンパイア。
黒一色の服をまとい、血の色のマントをしていた。一般的なヴァンパイアの服装だ。
「それにしても美しいな・・・・」
恍惚とした表情で、ヴァンパイアは浮竹を見た。
浮竹は、目の前のヴァンパイアよりさらに美しかった。長い白髪に、翡翠の瞳、白い肌。
ヴァンパイアの手が、浮竹の喉から外れる。
浮竹は酸素を求めて大きく呼吸すると、いっきに駆け出した。
「血と聖水の名において・・・アーメン!」
長い真紅のコートの下から銀の短剣を取り出し、ヴァンパイアに向かって投げる。
ヴァンパイアは余裕でそれをかわし、一度無数のこうもりの姿になる。それにむかって、銀の短剣を投げる。
「106人目の生贄となってもらおうか」
1000人の人間の生き血を飲むと、ヴァンパイアは完全なる存在となり、銀の武器も、聖水もきかなくなるという。
朝日を浴びて灰になることさえない。
普通の日光の下でも、ヴァンパイアは活動できるが、朝日だけは浴びると必ず灰となった。
朝日の光を浴びても灰にならぬ、その完全存在をヴァンパイアたちはヴァンパイアロードと呼んだ。
浮竹が跳躍し、ヴァンパイアと距離をとる。
ヴァンパイアは、浮竹の影に潜んでいた。
「な!」
ビリビリ。
真紅のコートが凄まじい力で破られ、白い肌が露になる。その首筋に、ヴァンパイアが牙をたてる。
「くっ!」
抗うが、凄まじい力にはなす術もない。
浮竹は、血を吸われ、そしてゆっくりと微笑んだ。
「俺の血を飲んだな?」
「うぐああああ、喉が、喉がやけるうう!」
浮竹の血には、銀が混じっていた。
「血と聖水の名において、出でよフェンリル!」
もがくヴァンパイアに向かって、銀の短剣を投げて描いた陣で、使役魔を呼び出した。
フェンリルと名づけた狼は、氷を司る精霊だ。凍てつく氷のブレスを受けて、ヴァンパイアは凍結した。
氷の彫像と化したヴァンパイアに、浮竹は銀の弾丸を撃ち込んだ。
ガラガラと、氷の彫像が崩れ、そして灰になっていく。
「血と聖水の名において」
灰を小さなカプセルの中に入れ、ヴァンパイアを倒した証とする。灰と引き換えに、ヴァンパイアハンターは報酬金をもらっていた。
「あ。ごめん。戻ってくれ」
呼び出したフェンリルに、ペコリと浮竹はお辞儀した。
でも、フェンリルは実体化したまま尻尾をふって、浮竹にじゃれてくる。
「すまない。戻ってくれないだろうか」
「わん」
「狼なので、わんと咆えないでくれ」
「にゃあ」
「いや、もっと違うから・・・」
浮竹は、銃をホルダーに直し、カプセルを懐にしまうと、ため息をついた。
いつもこんなかんじで、いつまでたっても一流のヴァンパイアハンターになれない。
使役魔の数は他のヴァンパイアハンターと比べてもひけをとらないが、使役魔は主に服従絶対であるのに、浮竹の使役魔は時々いうことを聞いてくれない。
他のヴァンパイアハンターに、バカにされることもしばしばだ。
もう十年もヴァンパイアハンターを続けているのに、未だに字(あざな)をもらえない。
年下の朽木白哉や日番谷冬獅郎は、七つ星をもつ一流のヴァンパイアハンターで、字も持っているのに。
浮竹は、無残にもヴァンパイアに血を吸われた死体を検分していた。
「まだ生暖かい」
死体は、まだ先ほどまで生きていたのだろう。
「血と聖水の名において・・・アーメン」
浮竹に信じる神はない。
浮竹は、もっていた銃で、死体の頭部を撃ち抜いた。
銃の弾丸は銀でできていた。
そうしないと、「ヴァンピール」という、ヴァンパイアの下等な、本能で血を求めるだけのヴァンパイアとして蘇ってしまう可能性があるからだ。
ヴァンピールも一応はヴァンパイアだ。知能はゼロだが、並外れた身体能力を有する場合が多い。
本当なら、心臓に杭をさして聖水をかけ、墓地に埋葬しなければいけなかったが、そんなことをしている時間はない。
死体の血をすすった、ヴァンパイアがまだ近くにいるはずだ。
銃の銀の弾丸が、聖水のかわりになってくれる。頭部を銀の弾丸でうちぬけば、ヴァンピールは死ぬ。
「美しい人・・・・このような荒れ果てた町へようこそ」
背後から声がした。
浮竹は飛んでいた。
地面から体が離れ、ほんの一瞬浮遊感を味わったかと思うと、家のレンガに叩きつけられていた。
「匂いがする・・・・銀の匂いが。ヴァンパイアハンターか」
ぎりっと、長く細い手が伸びて、浮竹の細い首を絞めた。
「かはっ」
目の前にいたのは、美しい容姿をした20代後半のヴァンパイア。
黒一色の服をまとい、血の色のマントをしていた。一般的なヴァンパイアの服装だ。
「それにしても美しいな・・・・」
恍惚とした表情で、ヴァンパイアは浮竹を見た。
浮竹は、目の前のヴァンパイアよりさらに美しかった。長い白髪に、翡翠の瞳、白い肌。
ヴァンパイアの手が、浮竹の喉から外れる。
浮竹は酸素を求めて大きく呼吸すると、いっきに駆け出した。
「血と聖水の名において・・・アーメン!」
長い真紅のコートの下から銀の短剣を取り出し、ヴァンパイアに向かって投げる。
ヴァンパイアは余裕でそれをかわし、一度無数のこうもりの姿になる。それにむかって、銀の短剣を投げる。
「106人目の生贄となってもらおうか」
1000人の人間の生き血を飲むと、ヴァンパイアは完全なる存在となり、銀の武器も、聖水もきかなくなるという。
朝日を浴びて灰になることさえない。
普通の日光の下でも、ヴァンパイアは活動できるが、朝日だけは浴びると必ず灰となった。
朝日の光を浴びても灰にならぬ、その完全存在をヴァンパイアたちはヴァンパイアロードと呼んだ。
浮竹が跳躍し、ヴァンパイアと距離をとる。
ヴァンパイアは、浮竹の影に潜んでいた。
「な!」
ビリビリ。
真紅のコートが凄まじい力で破られ、白い肌が露になる。その首筋に、ヴァンパイアが牙をたてる。
「くっ!」
抗うが、凄まじい力にはなす術もない。
浮竹は、血を吸われ、そしてゆっくりと微笑んだ。
「俺の血を飲んだな?」
「うぐああああ、喉が、喉がやけるうう!」
浮竹の血には、銀が混じっていた。
「血と聖水の名において、出でよフェンリル!」
もがくヴァンパイアに向かって、銀の短剣を投げて描いた陣で、使役魔を呼び出した。
フェンリルと名づけた狼は、氷を司る精霊だ。凍てつく氷のブレスを受けて、ヴァンパイアは凍結した。
氷の彫像と化したヴァンパイアに、浮竹は銀の弾丸を撃ち込んだ。
ガラガラと、氷の彫像が崩れ、そして灰になっていく。
「血と聖水の名において」
灰を小さなカプセルの中に入れ、ヴァンパイアを倒した証とする。灰と引き換えに、ヴァンパイアハンターは報酬金をもらっていた。
「あ。ごめん。戻ってくれ」
呼び出したフェンリルに、ペコリと浮竹はお辞儀した。
でも、フェンリルは実体化したまま尻尾をふって、浮竹にじゃれてくる。
「すまない。戻ってくれないだろうか」
「わん」
「狼なので、わんと咆えないでくれ」
「にゃあ」
「いや、もっと違うから・・・」
浮竹は、銃をホルダーに直し、カプセルを懐にしまうと、ため息をついた。
いつもこんなかんじで、いつまでたっても一流のヴァンパイアハンターになれない。
使役魔の数は他のヴァンパイアハンターと比べてもひけをとらないが、使役魔は主に服従絶対であるのに、浮竹の使役魔は時々いうことを聞いてくれない。
他のヴァンパイアハンターに、バカにされることもしばしばだ。
もう十年もヴァンパイアハンターを続けているのに、未だに字(あざな)をもらえない。
年下の朽木白哉や日番谷冬獅郎は、七つ星をもつ一流のヴァンパイアハンターで、字も持っているのに。
黒魔法使いと白魔法使い2
魔法使いの第一級テストの監督をこなし終えて、浮竹と京楽はやっといつもののんびりとした平穏な時間を取り戻した。
上から、弟子をとれだのああだこうだ言われているが、新婚なのでそんな気は全くない。
キャッキャアハハウフフと、毎日を甘く過ごしていた。
京楽は公爵家の出で、お金は腐るほどもっていた。
浮竹も、第一級魔法使いの称号をもっており、白魔法が使えて、浮竹の使う白魔法は重篤な病を癒したり、体の欠損まで補うので、はるか違う大陸から、その奇跡の魔法を受けるためにやってくる者たちがいた。
大量に謝礼金をもらうので、金には困っていなかった。
京楽は、だが魔物料理が食べたいと疼きだしていた。
ちょうど前のダンジョン攻略終了から半月が経っていた。
「浮竹、京楽。半月が経った。また、俺たちのパーティーに入ってくれないか。新しくできたダンジョンに潜りたいんだ」
この前のパーティーのリーダーであった、剣士がそう誘うと、京楽は顔を輝かせた。
「新しいダンジョンだって!踏破した者はいるのかい!?」
「いや、まだ25階層までしか攻略されていない」
「どんな魔物が出るかも分からないんだね!今から楽しみだよ!」
「引き受けてくれるか、京楽」
「いいよね、浮竹。ね、ね」
京楽に甘い浮竹は、京楽の言葉に乗った。
「まぁいいだろう。俺も暇だしな。しばらく患者は来る予定がないし・・・ダンジョンに潜る期間はどれくらいだ?」
「1週間を想定している」
「京楽の魔物料理に付き合ってもらうことになるが、いいか?」
「ああ。京楽の魔物料理は美味しいし、何かあったら浮竹の魔法で助かるから、大歓迎だ」
「僕の魔物料理が好評のようで、嬉しいよ。さぁ、今すぐ行こう。出発だ!」
「いや、まだ準備できてないから」
「そうだぞ、京楽。まずは1週間分の食材と調味料を確保しておかないと」
完全に魔物だけで料理するわけではない。
調味料も大切だが、野菜や肉も使う時があるので、調達しておく必要があった。
2日かけて準備をして、新しいダンジョンができた村に向かった。
金のない者は馬車や徒歩で向かうのだが、金のある者は瞬間移動の魔法をかけてもらい、村の近くにある地方都市まで飛ばしてもらった。
「よし、セーブポイント作成。何かあったら、転移魔法でこの地方都市まで戻れるよ」
黒魔法には、転移魔法もある。
攻撃魔法がメインだが、転移しまくって敵を混乱させて、強いモンスターなら背後から倒したりした。
「では改めて出発!」
京楽が、杖を掲げて先頭を歩く。
地方都市から、歩いて4時間の場所にダンジョンはあった。
地方都市への往復馬車が出ているが、新しく発見されたダンジョンだけあって、活気にあふれて馬車に乗ることもできないくらい、冒険者であふれていた。
ダンジョンで死ぬと、普通外で蘇生される。
よほど酷い原型をとどめていない死体や、モンスターに食べられたなんかの場合以外、ダンジョンで死んでも蘇生できるので、冒険者は駆け出しの者も含めて多くいた。
そんな新ダンジョンの、1階層2階層を進んでいく。
5階層まではアンデット系ばかりで、お腹がすいたが、アンデット系は食べられないので・・・食べたら、呪われるしステータス異常をおこして、神聖魔法でしか解除できないので、京楽は我慢した。
6階層は、密林だった。
「お、ハーピーがいる!」
京楽は、ハーピーの肉は鶏肉に近いので、焼き鳥にしようかなどと脳内で調理していた。
「本当だ!上からくるぞ、気をつけろ!」
他の冒険者も、ハーピーと戦い、手傷を負って後退する者がほとんどだ。
「うりゃあああああ!!!」
新米の斧使いが、ハーピーに向かって斧を投げる。
斧のあたったハーピーは、地面で動かなくなった。
「でかした!ハーピーの巣はあるかな?」
うきうきとした京楽の顔を見て、剣士がハーピーの巣のあるであろう場所を指さした。
「ちょっといって盗んでくる」
「おい、何を盗むんだ!?」
浮竹のつっこみに、京楽はニンマリと笑うだけだった。
京楽は、マッハで密林をかぎ分けて、一人行ってしまった。
「ハーピーの数が多いな。近くに巣があるんだろう」
攻撃魔法の要である京楽がいなかったが、他の剣士、獣人盗賊、新米斧使い、盾使いもそれなりに力はあるので、ハーピーを倒していく。
もう5体は倒しただろうか。
傷を負うと、浮竹が癒してくれた。
「ヒール」
「てやー」
「ヒール」
「とう!」
「ヒール」
「なんの!」
「ヒール・・・って、いちいち怪我するな!魔力は十分にあるが、癒すのがめんどくさい!」
みんな、浮竹がいるので防御を捨ててハーピーを倒しまくった。
「たっだいまー」
京楽が帰ってきた。
「お、ハーピーいい数倒してるね。全部は無理だけど、解体しようか」
他のハーピーは、京楽がヘルインフェルノを空に打ち上げたのに驚いて、逃げていった。
「おい、あの黒魔法使い、ハーピーを解体してるぞ」
「魔物食じゃないか?かかわらないほうがいいぞ。かわいそうに、干し肉を買う金もないんだろう」
周囲の冒険者からそんな言葉を浴びせられるが、京楽は全く気にしていなかった。
「ドライアドもいたから倒してきた」
アイテムポケットから、ドライアドの体を取り出す。
そしてかまどを作って火をおこした。
ハーピーは、人間の頭をした頭部を切り落として、鳥の胴体部分の羽をむしって内臓をとりのぞき、水で綺麗にあらう。足のほうは、丸焼きにする。
胴体の肉はある程度の大きさに切る。玉ねぎをきって、フライパンで炒める。ハーピーの卵をボウルで溶かす。
フライパンにサラダ油をぬって、ハーピーの肉を焼く。ある程度火が通ったら、玉ねぎを入れてこんがり狐色になるまで焼く。水気がなくなったら、卵の3分の2をいれて、卵が半熟状になったら、残りの卵をいれて、10秒ほど炒めてあからじめたいておいた米の上にのせる。
「じゃじゃーん!ハーピーの親子丼!」
きつね色にほくほく輝く肉と卵、米は、美味しい匂いを周囲に散らせた。
「ごくり」
周囲の冒険者の視線を集めているが、京楽は気にしない。
「ドライアドは、よく洗ってみじん切りにして、鍋にいれて味噌を溶かして、ドライアドの味噌汁に!ドライアドの実には蜂蜜をかけて、ドライフルーツと一緒に煮込んで、少し時間を置いて蜂蜜漬けにしてみたよ!」
今日の昼食の完成だ。
「おい、あいつらハーピー食ってるぞ」
「ハーピーって食えるんだ」
「ドライアドも食ってるぞ」
「ドライアドの実って、毒だよな、確か」
事前に、浮竹がドライアドの実から毒を抽出して、実は毒をぬいて生で食べても安心の状態にした。
京楽と浮竹のパーティーメンバーは、ハーピーの親子丼を食べた。
「うまい!」
「これ、ハーピーか?高い鶏肉の味がする!」
「卵がふわふわだ!」
浮竹も京楽も食べた。
「ほんとだ、ふわふわしてて、少し甘くて美味しい」
浮竹も、ハーピーの親子丼を美味しそうに食べていた。
「ドライアドの味噌汁もうまいな。いい出汁がでてる」
「ハーピーの骨と乾燥させていた昆布から、出汁をとったよ」
他にも、ハーピーの足を焼いたものは、もも肉がうまかった。
デザートのドライアドの実の蜂蜜漬けは、とても甘い中に少しの酸味があり、口当たりがよかった。
じーーー。
他の冒険者の視線を集める。
「ああ、よければハーピーの親子丼食べてく?」
匂いにつられて行きそうな冒険者を、その仲間が引き留めた。
「おい、魔物食に一度とりつかれたら病みつきになって、変なモンスター食べて命落とすのがほとんどだからやめとけ」
「えー。僕の魔物料理は大丈夫なのに」
京楽は口を尖らせて不機嫌そうだった。浮竹が、その肩をたたく。
「京楽、先を行こう。腹ごしらえは終わったし、この密林じゃあ、休息をとる場所も限られているだろうから、先に進もう」
「浮竹の言う通りだ。先に進もう。7階層で、今日は休息しよう」
7階層は、湖のある森だった。
その湖のほとりで、一行は本日の休息をとることにした。
夕飯にはまだハーピーの親子丼とかが残っていたが、新しいメニューに挑戦したくて、浮竹と京楽は湖に釣り糸をたらして、そして新米斧使いを餌に、罠をしかけた。
「おお、大量だ!ブラックシュリンプ(黒い大きいエビ)と、人食いピラニアがよく釣れる」
ちなみに、新米斧使いは浮竹に水中で呼吸できる魔法をかけられて、水底で餌になっていた。お化け貝が新米斧使いを襲い、すぐに引き上げて、新米斧使いは無事だった。
お化け貝を入手した!
「うーんいいね。海じゃないけど、海鮮パスタといこうか」
京楽は、まずは浮竹にブラックシュリンプの殻をむくように頼んだ。
「むき終わったぞ、京楽」
「うん。じゃあ、人食いピラニアの頭部を切って、はらわたをとりのぞいて3枚におろしてくれるかな」
「ああ、分かった」
京楽は、大きな鍋でお化け貝を煮込んでいた。
熱に耐えきず、死んでぱかっと口をあけたお化け貝の身をはぎとって、塩をふる。
パスタを茹でて、別の鍋で細切れにしたブラックシュリンプ、人食いピラニア、刻んだお化け貝の身を炒めて、トマトソースをいれて、ゆであがったパスタにトマトソースをベースにした新鮮魚類の具をかける。
「海鮮パスタもどきの完成だよ!」
名前からしておいしそうだった。
「僕の腕にかかれば、モンスターの人食いピラニアもブラックシュリンプも、お化け貝も、おいしい魚介類さ」
みんな、そのおいしさに涙を流しながら食べた。
浮竹は慣れているので、泣かなかったが。
「浮竹には、僕の下で啼いてほしいから」
ゴスっ。
白魔法使いの聖典の角で、浮竹は真っ赤になって京楽をノックダウンさせた。
「あー。そういえば、お前たち新婚だったよな。すまないな、冒険に参加してもらっている間は、その禁欲生活を強いてしまうから」
「ああ、気にしないでくれ。京楽が性欲が強すぎるだけなんだ。冒険している間は、ハグやキスはするけど、それ以外はしないと約束する」
「えー。やらせてくれないの」
いつの間にか復活した京楽が、浮竹の長い白髪にキスをしていた。
「アホか。ダンジョンで盛るやつがどこにいる!」
「ここにいる!」
「お前は!」
また聖典の角で頭を殴られて、京楽は昇天した。
「今日は、ここでベースキャンプを開こう」
テントをはって、皆思い思いに寛いだ。
7階層はモンスターが少なく、京楽と浮竹をのぞくパーティーメンバーで、一応見張りをしながら、朝を迎えた。
「さぁ、8階層に向かうぞ」
旅はまだ始まったばかり。
目指せ、未踏破の25階層!
浮竹と京楽の旅は続く。
上から、弟子をとれだのああだこうだ言われているが、新婚なのでそんな気は全くない。
キャッキャアハハウフフと、毎日を甘く過ごしていた。
京楽は公爵家の出で、お金は腐るほどもっていた。
浮竹も、第一級魔法使いの称号をもっており、白魔法が使えて、浮竹の使う白魔法は重篤な病を癒したり、体の欠損まで補うので、はるか違う大陸から、その奇跡の魔法を受けるためにやってくる者たちがいた。
大量に謝礼金をもらうので、金には困っていなかった。
京楽は、だが魔物料理が食べたいと疼きだしていた。
ちょうど前のダンジョン攻略終了から半月が経っていた。
「浮竹、京楽。半月が経った。また、俺たちのパーティーに入ってくれないか。新しくできたダンジョンに潜りたいんだ」
この前のパーティーのリーダーであった、剣士がそう誘うと、京楽は顔を輝かせた。
「新しいダンジョンだって!踏破した者はいるのかい!?」
「いや、まだ25階層までしか攻略されていない」
「どんな魔物が出るかも分からないんだね!今から楽しみだよ!」
「引き受けてくれるか、京楽」
「いいよね、浮竹。ね、ね」
京楽に甘い浮竹は、京楽の言葉に乗った。
「まぁいいだろう。俺も暇だしな。しばらく患者は来る予定がないし・・・ダンジョンに潜る期間はどれくらいだ?」
「1週間を想定している」
「京楽の魔物料理に付き合ってもらうことになるが、いいか?」
「ああ。京楽の魔物料理は美味しいし、何かあったら浮竹の魔法で助かるから、大歓迎だ」
「僕の魔物料理が好評のようで、嬉しいよ。さぁ、今すぐ行こう。出発だ!」
「いや、まだ準備できてないから」
「そうだぞ、京楽。まずは1週間分の食材と調味料を確保しておかないと」
完全に魔物だけで料理するわけではない。
調味料も大切だが、野菜や肉も使う時があるので、調達しておく必要があった。
2日かけて準備をして、新しいダンジョンができた村に向かった。
金のない者は馬車や徒歩で向かうのだが、金のある者は瞬間移動の魔法をかけてもらい、村の近くにある地方都市まで飛ばしてもらった。
「よし、セーブポイント作成。何かあったら、転移魔法でこの地方都市まで戻れるよ」
黒魔法には、転移魔法もある。
攻撃魔法がメインだが、転移しまくって敵を混乱させて、強いモンスターなら背後から倒したりした。
「では改めて出発!」
京楽が、杖を掲げて先頭を歩く。
地方都市から、歩いて4時間の場所にダンジョンはあった。
地方都市への往復馬車が出ているが、新しく発見されたダンジョンだけあって、活気にあふれて馬車に乗ることもできないくらい、冒険者であふれていた。
ダンジョンで死ぬと、普通外で蘇生される。
よほど酷い原型をとどめていない死体や、モンスターに食べられたなんかの場合以外、ダンジョンで死んでも蘇生できるので、冒険者は駆け出しの者も含めて多くいた。
そんな新ダンジョンの、1階層2階層を進んでいく。
5階層まではアンデット系ばかりで、お腹がすいたが、アンデット系は食べられないので・・・食べたら、呪われるしステータス異常をおこして、神聖魔法でしか解除できないので、京楽は我慢した。
6階層は、密林だった。
「お、ハーピーがいる!」
京楽は、ハーピーの肉は鶏肉に近いので、焼き鳥にしようかなどと脳内で調理していた。
「本当だ!上からくるぞ、気をつけろ!」
他の冒険者も、ハーピーと戦い、手傷を負って後退する者がほとんどだ。
「うりゃあああああ!!!」
新米の斧使いが、ハーピーに向かって斧を投げる。
斧のあたったハーピーは、地面で動かなくなった。
「でかした!ハーピーの巣はあるかな?」
うきうきとした京楽の顔を見て、剣士がハーピーの巣のあるであろう場所を指さした。
「ちょっといって盗んでくる」
「おい、何を盗むんだ!?」
浮竹のつっこみに、京楽はニンマリと笑うだけだった。
京楽は、マッハで密林をかぎ分けて、一人行ってしまった。
「ハーピーの数が多いな。近くに巣があるんだろう」
攻撃魔法の要である京楽がいなかったが、他の剣士、獣人盗賊、新米斧使い、盾使いもそれなりに力はあるので、ハーピーを倒していく。
もう5体は倒しただろうか。
傷を負うと、浮竹が癒してくれた。
「ヒール」
「てやー」
「ヒール」
「とう!」
「ヒール」
「なんの!」
「ヒール・・・って、いちいち怪我するな!魔力は十分にあるが、癒すのがめんどくさい!」
みんな、浮竹がいるので防御を捨ててハーピーを倒しまくった。
「たっだいまー」
京楽が帰ってきた。
「お、ハーピーいい数倒してるね。全部は無理だけど、解体しようか」
他のハーピーは、京楽がヘルインフェルノを空に打ち上げたのに驚いて、逃げていった。
「おい、あの黒魔法使い、ハーピーを解体してるぞ」
「魔物食じゃないか?かかわらないほうがいいぞ。かわいそうに、干し肉を買う金もないんだろう」
周囲の冒険者からそんな言葉を浴びせられるが、京楽は全く気にしていなかった。
「ドライアドもいたから倒してきた」
アイテムポケットから、ドライアドの体を取り出す。
そしてかまどを作って火をおこした。
ハーピーは、人間の頭をした頭部を切り落として、鳥の胴体部分の羽をむしって内臓をとりのぞき、水で綺麗にあらう。足のほうは、丸焼きにする。
胴体の肉はある程度の大きさに切る。玉ねぎをきって、フライパンで炒める。ハーピーの卵をボウルで溶かす。
フライパンにサラダ油をぬって、ハーピーの肉を焼く。ある程度火が通ったら、玉ねぎを入れてこんがり狐色になるまで焼く。水気がなくなったら、卵の3分の2をいれて、卵が半熟状になったら、残りの卵をいれて、10秒ほど炒めてあからじめたいておいた米の上にのせる。
「じゃじゃーん!ハーピーの親子丼!」
きつね色にほくほく輝く肉と卵、米は、美味しい匂いを周囲に散らせた。
「ごくり」
周囲の冒険者の視線を集めているが、京楽は気にしない。
「ドライアドは、よく洗ってみじん切りにして、鍋にいれて味噌を溶かして、ドライアドの味噌汁に!ドライアドの実には蜂蜜をかけて、ドライフルーツと一緒に煮込んで、少し時間を置いて蜂蜜漬けにしてみたよ!」
今日の昼食の完成だ。
「おい、あいつらハーピー食ってるぞ」
「ハーピーって食えるんだ」
「ドライアドも食ってるぞ」
「ドライアドの実って、毒だよな、確か」
事前に、浮竹がドライアドの実から毒を抽出して、実は毒をぬいて生で食べても安心の状態にした。
京楽と浮竹のパーティーメンバーは、ハーピーの親子丼を食べた。
「うまい!」
「これ、ハーピーか?高い鶏肉の味がする!」
「卵がふわふわだ!」
浮竹も京楽も食べた。
「ほんとだ、ふわふわしてて、少し甘くて美味しい」
浮竹も、ハーピーの親子丼を美味しそうに食べていた。
「ドライアドの味噌汁もうまいな。いい出汁がでてる」
「ハーピーの骨と乾燥させていた昆布から、出汁をとったよ」
他にも、ハーピーの足を焼いたものは、もも肉がうまかった。
デザートのドライアドの実の蜂蜜漬けは、とても甘い中に少しの酸味があり、口当たりがよかった。
じーーー。
他の冒険者の視線を集める。
「ああ、よければハーピーの親子丼食べてく?」
匂いにつられて行きそうな冒険者を、その仲間が引き留めた。
「おい、魔物食に一度とりつかれたら病みつきになって、変なモンスター食べて命落とすのがほとんどだからやめとけ」
「えー。僕の魔物料理は大丈夫なのに」
京楽は口を尖らせて不機嫌そうだった。浮竹が、その肩をたたく。
「京楽、先を行こう。腹ごしらえは終わったし、この密林じゃあ、休息をとる場所も限られているだろうから、先に進もう」
「浮竹の言う通りだ。先に進もう。7階層で、今日は休息しよう」
7階層は、湖のある森だった。
その湖のほとりで、一行は本日の休息をとることにした。
夕飯にはまだハーピーの親子丼とかが残っていたが、新しいメニューに挑戦したくて、浮竹と京楽は湖に釣り糸をたらして、そして新米斧使いを餌に、罠をしかけた。
「おお、大量だ!ブラックシュリンプ(黒い大きいエビ)と、人食いピラニアがよく釣れる」
ちなみに、新米斧使いは浮竹に水中で呼吸できる魔法をかけられて、水底で餌になっていた。お化け貝が新米斧使いを襲い、すぐに引き上げて、新米斧使いは無事だった。
お化け貝を入手した!
「うーんいいね。海じゃないけど、海鮮パスタといこうか」
京楽は、まずは浮竹にブラックシュリンプの殻をむくように頼んだ。
「むき終わったぞ、京楽」
「うん。じゃあ、人食いピラニアの頭部を切って、はらわたをとりのぞいて3枚におろしてくれるかな」
「ああ、分かった」
京楽は、大きな鍋でお化け貝を煮込んでいた。
熱に耐えきず、死んでぱかっと口をあけたお化け貝の身をはぎとって、塩をふる。
パスタを茹でて、別の鍋で細切れにしたブラックシュリンプ、人食いピラニア、刻んだお化け貝の身を炒めて、トマトソースをいれて、ゆであがったパスタにトマトソースをベースにした新鮮魚類の具をかける。
「海鮮パスタもどきの完成だよ!」
名前からしておいしそうだった。
「僕の腕にかかれば、モンスターの人食いピラニアもブラックシュリンプも、お化け貝も、おいしい魚介類さ」
みんな、そのおいしさに涙を流しながら食べた。
浮竹は慣れているので、泣かなかったが。
「浮竹には、僕の下で啼いてほしいから」
ゴスっ。
白魔法使いの聖典の角で、浮竹は真っ赤になって京楽をノックダウンさせた。
「あー。そういえば、お前たち新婚だったよな。すまないな、冒険に参加してもらっている間は、その禁欲生活を強いてしまうから」
「ああ、気にしないでくれ。京楽が性欲が強すぎるだけなんだ。冒険している間は、ハグやキスはするけど、それ以外はしないと約束する」
「えー。やらせてくれないの」
いつの間にか復活した京楽が、浮竹の長い白髪にキスをしていた。
「アホか。ダンジョンで盛るやつがどこにいる!」
「ここにいる!」
「お前は!」
また聖典の角で頭を殴られて、京楽は昇天した。
「今日は、ここでベースキャンプを開こう」
テントをはって、皆思い思いに寛いだ。
7階層はモンスターが少なく、京楽と浮竹をのぞくパーティーメンバーで、一応見張りをしながら、朝を迎えた。
「さぁ、8階層に向かうぞ」
旅はまだ始まったばかり。
目指せ、未踏破の25階層!
浮竹と京楽の旅は続く。
黒魔法使いと白魔法使い
この世には、魔法がある。
黒魔法と、白魔法だ。
あと、精霊魔法と神聖魔法もある。
黒魔法は攻撃用の魔法で、白魔法は主に治癒やサポートの役割を果たす魔法だった。
そんな世界に、京楽春水という黒魔法使いと、浮竹十四郎という白魔法使いがいた。
普通、黒魔法使いと白魔法使いは、仲が悪い。
でもこの二人は、仲が悪いどころかできていた。
結婚したての、ほやほやの新婚さんだった。
「京楽、火の魔法でこの野菜を炒めてくれ」
「あいよ。浮竹、浄化する魔法で、この水を飲めるものにしてくれないかな」
浮竹も京楽も、第一級魔法使いなのに、弟子も取らず新婚旅行に魔女の森を飛び出して、人間世界でウフフアハハとやっていた。
そんな二人は、あるパーティーに、ダンジョン攻略の仲間にならないかと勧誘された。
なんでも、前の黒魔法使いは老人で、老衰で死んでしまったのだという。白魔法使いはいなくて、代わりに神官がいて神聖魔法を使っていたのだが、神殿に呼び戻されて治癒する者がいないのだという。
神聖魔法は、神に祈りをささげる事でもたらされる、奇跡を使った魔法だ。
白魔法よりも高位に存在し、けれど使い手は少なかった。
白魔法使いの第一級を所持している浮竹ならば、聖職者の使う神聖魔法よりもすごい魔法が使えた。
例えば、神聖魔法では体が欠損すると、その部分を治癒するだけで、生えてこない。
でも、高位の白魔法になると、欠損した部位が復活する。
浮竹の元には、たまに大けがをして負傷して、体を欠損した者が訪れる。たくさんの謝礼金をもらって、浮竹はそうした者の治癒をおこなった。
昔に失った腕でも生えてくる。
浮竹の名前は、魔法使いの世界ではけっこう有名だった。
一方京楽は。
魔物食いの京楽と呼ばれていた。
黒魔法でモンスターを倒して、モンスターを解体して食べる、魔物食い。
金銭の乏しい冒険者は、時折モンスターを倒して、その肉を食べたりする。食べれるモンスターと食べれないモンスターがいた。
たとえば、亜人系のゴブリンやオーク、リザードマン、アンデット系やゴーストなどの浮遊系は食べれない。
ちなみに、スライムは倒してよく乾燥させると食べれた。
動物系のモンスター、植物系のモンスターは大半が食べれた。
さて。
なんだかんだあって、金には困っていなかったが、暇を持て余していた二人の魔法使いは、そのパーティーに入ることを承諾した。
ただし、京楽の魔物料理を食べること。
これが、引き換え条件だった。
食中毒になれば、白魔法使いの浮竹がいる。なので、パーティーメンバーは、しぶしぶ了承した。
「ああ、スライムがいっぱいだ!あのスライムは、ゴールデンメタルスライム!金だ!」
京楽は、金が好きだった。
浮竹の稼いだ金を管理もしていた。
元々公爵家の次男坊で、次男であるが領地を与えられて管理していた。
その領地はモンスターがよく出て、作物をあらして不作の時が多かった。
魔法使い学園を卒業した京楽は、そんなモンスターを駆除して領民の生活を安定させた。そして動物系モンスターの味を知ってしまい、魔物食いの京楽と呼ばれるようになった。
さて、今日のメニューは。
ゴールデンメタルスライムのみじん切りに玉ねぎを入れて炒めたもの、マンドレイクのスープ、魚人の刺身。
ゴールデンメタルスライムは、表皮の金をはぎ取られて、ただのスライムになっていた。
それを京楽の火魔法で急速に乾燥させて、食べれるようにしたものを、少し甘味のある玉ねぎと一緒に炒めて、ケチャップで味付けをした。
マンドレイクは、引っこ抜くときの悲鳴を聞くと死ぬので、収穫する前に息の根を止める。
魚人は、焼いても食えるが、焼くと苦みがまして、生のほうがうまい。
「本当に、京楽は魔物を食うのが好きだな」
「浮竹だって、なんだかんだいって、僕の魔物料理食べてくれてるじゃない」
二人は、ラブラブだった。
他のパーティーメンバーは、そんな二人をちょっと遠くから見ていた。
「いてててて・・・・この魚人、寄生虫いるんじゃないか!?」
刺身だったので、寄生虫がいたようだ。
パーティーメンバーのタンクである盾使いが、突然の腹痛を訴えた。
「今、退治して治癒する」
ぱぁぁぁと、浮竹の手が光り輝く。呪文の詠唱もなしで、浮竹は盾使いの腹痛を取り除いてしまった。
「京楽、今度からは寄生虫のことも考えて調理してくれ」
盾使いが、そう文句を言うと、京楽はニンマリと笑った。
「浮竹の魔法使う姿、かわいい」
ズコーー。
パーティーメンバーのみんなが、ずっこけた。
「お、次の階層は海原か」
ダンジョンは、時によって階層ごとに地形が変わる。
地味なボロ船に乗って、陸地を目指す。
「水中を歩行できる魔法はないのか?」
そう聞かれて、浮竹はこう答えた。
「水中で呼吸できる魔法ならある」
「それじゃだめだ。荷物が水に浸かって使えなくなってしまう」
「そうだよ、調味料とかいろいろアイテムポケットに入れてるんだから、もしも海水を飲みこんだら、調味料がだめになっちゃう」
京楽も、水中呼吸をして水中の移動は避けたいようだった。
「見ろ、水中にでかい影がある!」
「わーい!クラーケンだ!」
京楽は喜んだ。
他のメンバーは、クラーケンと聞いて臨戦態勢に入った。
浮竹は、パーティーメンバー全員に、スピードがあがる補助の魔法をかけた。
「気をつけろ、下からくるぞ!」
パーティーメンバーのリーダーである剣士がそう言うと、京楽が持っていた杖を掲げた。
「サンダーストーム!」
びびびびびびび。
大量の電撃を浴びて、クラーケンはあの世に旅立って、死体がぷかりと浮かんできた。
「見て、浮竹。イカだよ、イカ!イカ焼きにしよう!今日の夕飯は、イカ焼きだ!」
魔物食いの京楽。
みんなは、京楽の魔法の腕の高さに凄いと思いながらも、あくまでモンスターを食うその魂を、根性あり、と認めた。
ちなみに、その晩に食べたイカ焼きはあほみたいにおいしかった。
魔物食になじんでいないメンバーもおかわりをするほどに。
5階層が海原で、6階層は砂漠だった。
パーティーは、砂漠で夜のうちに急速をとることにした。
「水・・・・水はないか・・・」
喉を乾かした剣士がそういうと、浮竹がもっていた水袋を渡してくれた。
「中身がほとんどないな」
「そうか。足しておく」
浮竹の手がぱぁぁと光り、飲める透明な水がわきだした。おまけに冷たく冷えている。
みんなその水を飲んだり、その水でタオルをひたして体を拭いたり、髪を洗ったりした。
みんなが寝静まる頃、浮竹は京楽と同じテントで、眠りにつこうかというところを、京楽に邪魔された。
「なんだ、眠い」
「少しだけ。好きだよ、十四郎」
抱きしめて、口づけをしてくる京楽に、浮竹が応える。
冒険中だし、仲間もすぐ近くにいるので、交わることはせずにキスとハグだけで終わらせた。
「俺も好きだぞ、春水。イカ焼き、明日の分もあるか?」
浮竹は、クラーケンでできたイカ焼きが気に入ったみたいだった。
「アイテムポケットにアホほど入れたから、いつでも食べれるよ」
アイテムポケットは、その名の通りアイテムを収納できるポケットで、冒険者には重宝される代物だ。
たいていの冒険者がもっているが、せいぜい食料を1週間分いれておくのが限界で、京楽は金に任せて、屋敷が一軒建つような高級なアイテムポケットをもっていた。
京楽のアイテムポケットは、中では時間が経たず、大きな屋敷が丸ごと入るくらいの収納スペースがある。
今寝泊まりしているテントも、京楽のアイテムポケットから出したものだ。
二人は、お互いを抱きしめ合いながら、静かに眠りについた。
そのまま、一行は7階層、8階層、9階層と進み10階層のダンジョン最深部のボスが出る場所にやってきた。
浮竹と京楽を除くパーティーメンバーは、そこのボス、ミノタウロスに負けた。
ちなみに、黒魔法使いの京楽、白魔法使いの浮竹以外のメンバーは、タンクである盾使い、リーダーである剣士、獣人盗賊、新米の斧使いだ。
「ミノタウロス・・・・牛肉だね。霜降り和牛かな」
「バカ、ミノタウロスが霜降り和牛なわけあるか!」
京楽の嬉しそうな声に、浮竹が突っ込みを入れる。
「光よ!」
浮竹は眩しい太陽を生み出して、ミノタウロスの視界を奪った。
「まぶしい・・・ええいままよ!」
剣士が、剣を振りかざす。
斧使いは斧をぶん投げた。
盾使いは、ミノタウロスの暴れる腕を抑えている。
「じっくり焼きましょう。ヘルインフェルノ!」
京楽が出した火の熱さに、みんな耐え切れずミノタウロスを残して後退する。
「京楽、魔法を出すときは何か言え!」
浮竹が、皆の言葉を代弁する。
「あ、ごめん。牛肉食えると思ったら、つい」
京楽は暴走していた。
牛肉が食える。
ずっと昔に食べた、ミノタウロスの肉は、ほっぺが落ちそうに美味しかった。
「じっくりこんがり焼きましょう、おまけのファイアストーム、ヘルインフェルノ、ボルケーノトライアングル!」
火属性の魔法ばかりを放った。
ミノタウロスは、こんがりと焼かれて息絶えた。
「これ、食えるよな?」
極上のステーキの匂いを出すミノタウロスに、皆ごくりと唾を飲んだ。
京楽が、慣れた手つきで解体していき、火の入っていない部分を焼いて、みんなにミノタウロスのステーキを食べさせた。
「やばい、おいしすぎる」
「今までの肉の味じゃねぇ」
「うまい、うまい」
「よかったな、京楽。うん、美味いぞ」
浮竹におかわりを渡しながら、京楽もステーキを食べた。
あの時と同じだ。
ほっぺが落ちるほど、美味しかった。
「さぁ、宝箱の部屋にいくぞ。分配は均等にいこう」
リーダーの剣士の言葉に、浮竹と京楽が異議を唱えた。
「俺たちの分はいい。京楽は公爵家の人間で金は腐るほどあるし、あと俺も治癒魔法でけっこう稼いでいるからな」
「うん、みんなで分けて」
「いいのか、京楽、浮竹」
「うん。魔物食を楽しんでくれる仲間ができて、楽しかったよ」
「俺も、久しぶりに冒険ができた。それだけで十分だ」
京楽と浮竹の言葉に、パーティーメンバーは涙をこらえながら、四人で宝物を分配した。
「さて、帰りますか」
「そうだな」
「このまま、パーティーには残ってくれないのか」
「うーん、魔物食をまだ探求したいけど、今はまだいいかな。また機会があれば、誘ってよ」
「半月後くらいなら、多分暇を持て余してる。魔法使い一級認定の仕事があるから、半月後によければ合流しよう」
そのまま京楽と浮竹は、パーティーから別れて、帰宅した。
「イカ焼き、残ってるか?」
「浮竹、イカ焼き好きだね」
「クラーケンはでかすぎて、食べれないとばかり思っていたからな」
「あはは。リヴァイアサンなら食べれないけど。倒すことはできても、食べれないんじゃ意味ないしね」
リヴァイアサンは海のドラゴンだ。
聖獣としても崇められている。
なんだかんだで、二人はいちゃいちゃしながら冒険を楽しんだのだった。
ダンジョン攻略は、普段会えないモンスターに会い、食べれるから面白いのだ。
また、いつか二人だけでもいいから、ダンジョンに潜ろうと決意するのであった。
黒魔法と、白魔法だ。
あと、精霊魔法と神聖魔法もある。
黒魔法は攻撃用の魔法で、白魔法は主に治癒やサポートの役割を果たす魔法だった。
そんな世界に、京楽春水という黒魔法使いと、浮竹十四郎という白魔法使いがいた。
普通、黒魔法使いと白魔法使いは、仲が悪い。
でもこの二人は、仲が悪いどころかできていた。
結婚したての、ほやほやの新婚さんだった。
「京楽、火の魔法でこの野菜を炒めてくれ」
「あいよ。浮竹、浄化する魔法で、この水を飲めるものにしてくれないかな」
浮竹も京楽も、第一級魔法使いなのに、弟子も取らず新婚旅行に魔女の森を飛び出して、人間世界でウフフアハハとやっていた。
そんな二人は、あるパーティーに、ダンジョン攻略の仲間にならないかと勧誘された。
なんでも、前の黒魔法使いは老人で、老衰で死んでしまったのだという。白魔法使いはいなくて、代わりに神官がいて神聖魔法を使っていたのだが、神殿に呼び戻されて治癒する者がいないのだという。
神聖魔法は、神に祈りをささげる事でもたらされる、奇跡を使った魔法だ。
白魔法よりも高位に存在し、けれど使い手は少なかった。
白魔法使いの第一級を所持している浮竹ならば、聖職者の使う神聖魔法よりもすごい魔法が使えた。
例えば、神聖魔法では体が欠損すると、その部分を治癒するだけで、生えてこない。
でも、高位の白魔法になると、欠損した部位が復活する。
浮竹の元には、たまに大けがをして負傷して、体を欠損した者が訪れる。たくさんの謝礼金をもらって、浮竹はそうした者の治癒をおこなった。
昔に失った腕でも生えてくる。
浮竹の名前は、魔法使いの世界ではけっこう有名だった。
一方京楽は。
魔物食いの京楽と呼ばれていた。
黒魔法でモンスターを倒して、モンスターを解体して食べる、魔物食い。
金銭の乏しい冒険者は、時折モンスターを倒して、その肉を食べたりする。食べれるモンスターと食べれないモンスターがいた。
たとえば、亜人系のゴブリンやオーク、リザードマン、アンデット系やゴーストなどの浮遊系は食べれない。
ちなみに、スライムは倒してよく乾燥させると食べれた。
動物系のモンスター、植物系のモンスターは大半が食べれた。
さて。
なんだかんだあって、金には困っていなかったが、暇を持て余していた二人の魔法使いは、そのパーティーに入ることを承諾した。
ただし、京楽の魔物料理を食べること。
これが、引き換え条件だった。
食中毒になれば、白魔法使いの浮竹がいる。なので、パーティーメンバーは、しぶしぶ了承した。
「ああ、スライムがいっぱいだ!あのスライムは、ゴールデンメタルスライム!金だ!」
京楽は、金が好きだった。
浮竹の稼いだ金を管理もしていた。
元々公爵家の次男坊で、次男であるが領地を与えられて管理していた。
その領地はモンスターがよく出て、作物をあらして不作の時が多かった。
魔法使い学園を卒業した京楽は、そんなモンスターを駆除して領民の生活を安定させた。そして動物系モンスターの味を知ってしまい、魔物食いの京楽と呼ばれるようになった。
さて、今日のメニューは。
ゴールデンメタルスライムのみじん切りに玉ねぎを入れて炒めたもの、マンドレイクのスープ、魚人の刺身。
ゴールデンメタルスライムは、表皮の金をはぎ取られて、ただのスライムになっていた。
それを京楽の火魔法で急速に乾燥させて、食べれるようにしたものを、少し甘味のある玉ねぎと一緒に炒めて、ケチャップで味付けをした。
マンドレイクは、引っこ抜くときの悲鳴を聞くと死ぬので、収穫する前に息の根を止める。
魚人は、焼いても食えるが、焼くと苦みがまして、生のほうがうまい。
「本当に、京楽は魔物を食うのが好きだな」
「浮竹だって、なんだかんだいって、僕の魔物料理食べてくれてるじゃない」
二人は、ラブラブだった。
他のパーティーメンバーは、そんな二人をちょっと遠くから見ていた。
「いてててて・・・・この魚人、寄生虫いるんじゃないか!?」
刺身だったので、寄生虫がいたようだ。
パーティーメンバーのタンクである盾使いが、突然の腹痛を訴えた。
「今、退治して治癒する」
ぱぁぁぁと、浮竹の手が光り輝く。呪文の詠唱もなしで、浮竹は盾使いの腹痛を取り除いてしまった。
「京楽、今度からは寄生虫のことも考えて調理してくれ」
盾使いが、そう文句を言うと、京楽はニンマリと笑った。
「浮竹の魔法使う姿、かわいい」
ズコーー。
パーティーメンバーのみんなが、ずっこけた。
「お、次の階層は海原か」
ダンジョンは、時によって階層ごとに地形が変わる。
地味なボロ船に乗って、陸地を目指す。
「水中を歩行できる魔法はないのか?」
そう聞かれて、浮竹はこう答えた。
「水中で呼吸できる魔法ならある」
「それじゃだめだ。荷物が水に浸かって使えなくなってしまう」
「そうだよ、調味料とかいろいろアイテムポケットに入れてるんだから、もしも海水を飲みこんだら、調味料がだめになっちゃう」
京楽も、水中呼吸をして水中の移動は避けたいようだった。
「見ろ、水中にでかい影がある!」
「わーい!クラーケンだ!」
京楽は喜んだ。
他のメンバーは、クラーケンと聞いて臨戦態勢に入った。
浮竹は、パーティーメンバー全員に、スピードがあがる補助の魔法をかけた。
「気をつけろ、下からくるぞ!」
パーティーメンバーのリーダーである剣士がそう言うと、京楽が持っていた杖を掲げた。
「サンダーストーム!」
びびびびびびび。
大量の電撃を浴びて、クラーケンはあの世に旅立って、死体がぷかりと浮かんできた。
「見て、浮竹。イカだよ、イカ!イカ焼きにしよう!今日の夕飯は、イカ焼きだ!」
魔物食いの京楽。
みんなは、京楽の魔法の腕の高さに凄いと思いながらも、あくまでモンスターを食うその魂を、根性あり、と認めた。
ちなみに、その晩に食べたイカ焼きはあほみたいにおいしかった。
魔物食になじんでいないメンバーもおかわりをするほどに。
5階層が海原で、6階層は砂漠だった。
パーティーは、砂漠で夜のうちに急速をとることにした。
「水・・・・水はないか・・・」
喉を乾かした剣士がそういうと、浮竹がもっていた水袋を渡してくれた。
「中身がほとんどないな」
「そうか。足しておく」
浮竹の手がぱぁぁと光り、飲める透明な水がわきだした。おまけに冷たく冷えている。
みんなその水を飲んだり、その水でタオルをひたして体を拭いたり、髪を洗ったりした。
みんなが寝静まる頃、浮竹は京楽と同じテントで、眠りにつこうかというところを、京楽に邪魔された。
「なんだ、眠い」
「少しだけ。好きだよ、十四郎」
抱きしめて、口づけをしてくる京楽に、浮竹が応える。
冒険中だし、仲間もすぐ近くにいるので、交わることはせずにキスとハグだけで終わらせた。
「俺も好きだぞ、春水。イカ焼き、明日の分もあるか?」
浮竹は、クラーケンでできたイカ焼きが気に入ったみたいだった。
「アイテムポケットにアホほど入れたから、いつでも食べれるよ」
アイテムポケットは、その名の通りアイテムを収納できるポケットで、冒険者には重宝される代物だ。
たいていの冒険者がもっているが、せいぜい食料を1週間分いれておくのが限界で、京楽は金に任せて、屋敷が一軒建つような高級なアイテムポケットをもっていた。
京楽のアイテムポケットは、中では時間が経たず、大きな屋敷が丸ごと入るくらいの収納スペースがある。
今寝泊まりしているテントも、京楽のアイテムポケットから出したものだ。
二人は、お互いを抱きしめ合いながら、静かに眠りについた。
そのまま、一行は7階層、8階層、9階層と進み10階層のダンジョン最深部のボスが出る場所にやってきた。
浮竹と京楽を除くパーティーメンバーは、そこのボス、ミノタウロスに負けた。
ちなみに、黒魔法使いの京楽、白魔法使いの浮竹以外のメンバーは、タンクである盾使い、リーダーである剣士、獣人盗賊、新米の斧使いだ。
「ミノタウロス・・・・牛肉だね。霜降り和牛かな」
「バカ、ミノタウロスが霜降り和牛なわけあるか!」
京楽の嬉しそうな声に、浮竹が突っ込みを入れる。
「光よ!」
浮竹は眩しい太陽を生み出して、ミノタウロスの視界を奪った。
「まぶしい・・・ええいままよ!」
剣士が、剣を振りかざす。
斧使いは斧をぶん投げた。
盾使いは、ミノタウロスの暴れる腕を抑えている。
「じっくり焼きましょう。ヘルインフェルノ!」
京楽が出した火の熱さに、みんな耐え切れずミノタウロスを残して後退する。
「京楽、魔法を出すときは何か言え!」
浮竹が、皆の言葉を代弁する。
「あ、ごめん。牛肉食えると思ったら、つい」
京楽は暴走していた。
牛肉が食える。
ずっと昔に食べた、ミノタウロスの肉は、ほっぺが落ちそうに美味しかった。
「じっくりこんがり焼きましょう、おまけのファイアストーム、ヘルインフェルノ、ボルケーノトライアングル!」
火属性の魔法ばかりを放った。
ミノタウロスは、こんがりと焼かれて息絶えた。
「これ、食えるよな?」
極上のステーキの匂いを出すミノタウロスに、皆ごくりと唾を飲んだ。
京楽が、慣れた手つきで解体していき、火の入っていない部分を焼いて、みんなにミノタウロスのステーキを食べさせた。
「やばい、おいしすぎる」
「今までの肉の味じゃねぇ」
「うまい、うまい」
「よかったな、京楽。うん、美味いぞ」
浮竹におかわりを渡しながら、京楽もステーキを食べた。
あの時と同じだ。
ほっぺが落ちるほど、美味しかった。
「さぁ、宝箱の部屋にいくぞ。分配は均等にいこう」
リーダーの剣士の言葉に、浮竹と京楽が異議を唱えた。
「俺たちの分はいい。京楽は公爵家の人間で金は腐るほどあるし、あと俺も治癒魔法でけっこう稼いでいるからな」
「うん、みんなで分けて」
「いいのか、京楽、浮竹」
「うん。魔物食を楽しんでくれる仲間ができて、楽しかったよ」
「俺も、久しぶりに冒険ができた。それだけで十分だ」
京楽と浮竹の言葉に、パーティーメンバーは涙をこらえながら、四人で宝物を分配した。
「さて、帰りますか」
「そうだな」
「このまま、パーティーには残ってくれないのか」
「うーん、魔物食をまだ探求したいけど、今はまだいいかな。また機会があれば、誘ってよ」
「半月後くらいなら、多分暇を持て余してる。魔法使い一級認定の仕事があるから、半月後によければ合流しよう」
そのまま京楽と浮竹は、パーティーから別れて、帰宅した。
「イカ焼き、残ってるか?」
「浮竹、イカ焼き好きだね」
「クラーケンはでかすぎて、食べれないとばかり思っていたからな」
「あはは。リヴァイアサンなら食べれないけど。倒すことはできても、食べれないんじゃ意味ないしね」
リヴァイアサンは海のドラゴンだ。
聖獣としても崇められている。
なんだかんだで、二人はいちゃいちゃしながら冒険を楽しんだのだった。
ダンジョン攻略は、普段会えないモンスターに会い、食べれるから面白いのだ。
また、いつか二人だけでもいいから、ダンジョンに潜ろうと決意するのであった。
僕はそうして君におちていく外伝2
浮竹が霊王になって、100年が経った。
浮竹の姿は変わらず、若すぎるわけでもなく老いたわけでもない、隊長の頃の姿のままだった。
京楽は、少しだけ年をとった。
でも、見た目の変化はほとんどなかった。
山本総隊長は2千年を生きた。
京楽もまた、2千年は生きるだろう。
けれど、霊王である浮竹は年齢を重ねても死なない。不死であった。
いつか、別れがくる。
それを事実と受け止めないように、月の一度の逢瀬を重ねて100年が経っていた。
まだまだ、京楽は浮竹のことを愛していて。
浮竹もまた、京楽のことを愛していた。
「昨今の死神は、霊圧が高い者が多いな。上流階級や4大貴族も、子供が多く生まれているのは、先代の霊王の呪いが消えたせいか」
前の代の霊王は、尸魂界全体に呪いをかけていた。
上流貴族ほど、子を作れない呪いだった。
下級貴族である浮竹は、8人兄弟であった。
4大貴族に近くなるほど、子は作りにくかった。
かつて、朽木白哉は妻をもった。緋真という妻は、子を産むことなく死んでしまった。
霊王の呪いなければ、子を産んでいただろう。
白哉には実の兄弟も姉妹もいなかった。それも呪いの影響であった。
ルキアを義妹にして、白哉はルキアの子に朽木家を継がせることにしているようだった。
「たまには、お前以外とも会いたいな。白哉や、日番谷や」
「僕じゃ不満かい?」
「いや、懐かしく感じるだけで、お前がいてくれるだけで、俺は満足だ」
もしも、京楽と会うのが1年に1回なら。もしも、京楽と会えなくなったら。
気が狂ってしまう。
そう思った。
京楽がいるお陰で、霊王として生きようと思えるのだ。
この尸魂界を、世界を支える柱として、神として贄になろうと。
浮竹は、霊王の力を利用して、世界に霊力を降り注いだ。
それは大地を潤し、死神の力を増して、瀞霊廷は今までにないほどの繁栄を謳歌していた。
瀞霊廷は、貴族だらけの場所ではなくなった。多くの流魂街からの者が、死神となり、力をつけて出世していった。
大戦の傷跡はもうない。
ただ昔、霊王と先代の総隊長が殺されたというだけの、昔話になっていた。
完全に復興を遂げた瀞霊廷で、総隊長である京楽は、仕事をしながら、次に浮竹と会える日を楽しみにしていた。
少し日時をずらして、冬の真っただ中、浮竹の誕生日に会えるように調節していた。
浮竹と会ったら、翡翠の簪をあげようと、大前田のところでかった、金細工のかわいい小鳥の形をあしらった鈴のついた、翡翠の簪が入った箱を、大切そうに何度も撫でた。
「早く君に会いたいよ、浮竹」
その日、瀞霊廷はしんしんと降り積もる雪によって、閉ざされた。
霊王の住まう霊王宮には、雪は降らない。
なので、京楽は自分で作った雪兎を、特殊な金属にいれて保存し、浮竹と会えたその日にプレゼントした。
翡翠の簪も渡した。
「お前が、つけてくれ」
「うん。ああ、似合っているよ」
翡翠の簪は、チリンチリンと、動くたびに小さな音を立てた。
十二単の衣をまとった浮竹に、よく似合っていた。軽く髪を結い上げて、まるで天女かと思うほど、美しかった。
「雪か・・・・次に瀞霊廷に降りるのは4年後だな。霊王の力で、雪を降らせてしまおうか」
「そんなこと、できるの?」
「できない。さすがに天候だけは、どうにもならない」
その言葉に、京楽はクスリと笑って、浮竹を抱きしめた。
「君は霊王だから、なんでもできそうなんだけどね」
「一人の男の心を、射止めておくだけで精一杯だ」
「僕の心は、ずっと君だけのものだよ」
「俺が霊王になってもう100年か・・・月日が過ぎるのは早いな」
「そうだね」
瀞霊廷も尸魂界も平和だった。
小さないざこざはあれど、大きな戦いはなく、霊王である浮竹を狙う輩もいなかった。
「誕生日、おめでとう」
「ああ、ありがとう」
京楽が自分でつくった雪兎をプレゼントすると、浮竹は思った以上に喜んでくれた。霊王の力で雪を霊子に変えて、いつまでも溶けないようにして、寝室にあるテーブルに飾った。
「お前がくれたものは全部嬉しいが、この雪兎はとても嬉しい。霊王宮の外はいつも春の気候で、雪が降らないから」
「いつも春なら、君の体にもいいね」
霊王になった時に、肺の病は癒えた。同時に病弱であった体も健康体に戻った。
月に一度の逢瀬が、肺の病や熱が出るから無理、というのはなくて正直嬉しかった。でも、時折浮竹は熱を出した。
病弱であった体の名残が、霊王になってもまだ付きまとっていた。
春の気候は、浮竹の体にとてもよかった。
「春水、俺を抱いてくれ」
浮竹は、自分から京楽を押し倒していた。
「わお、熱烈だね。大歓迎だよ」
「月に一度しか会えないんだ。体が疼く」
霊王になる前は、週に一度は抱かれていた。月に一度は、少ないけれど、霊王である浮竹が京楽に会うには限度がいった。
霊王は清浄なる存在。
いくら、霊王を抱いて同じような清浄の気を宿した京楽でも、浮竹を抱くことは汚すに等しい。
それでも、浮竹は京楽に抱かれたがった。
院生時代に覚えた浅ましい欲は、霊王になっても消えなかった。
隊長になってから、ずっと京楽に抱かれてきた。京楽に抱かれるのは、好きだった。
「いいよ。おいで、十四郎」
すり寄ってくる浮竹を抱きしめて、京楽は苦労して十二単を脱がせながら、浮竹の白い肌にキスマークを残して、花を咲かせていった。
「んっ」
胸の先端を甘噛みされて、ぴりりと浮竹はしびれる体をもてあます。
今から抱かれるという思いに、花茎はだらだらと先走りの蜜を零して、京楽が与えてくれる快感に夢中になった。
「ああ!」
やんわりと手でしごかれて、たまっていた体はあっけなく吐精していた。
「随分早いね。たまってた?」
「俺は、自分でぬいたりしてないから・・・たまってる。もっとお前をくれ」
「十四郎、愛してるよ」
深く口づけると、浮竹は京楽の背中に手をまわした。
「んっ、春水、俺も、愛して・・・ああっ」
京楽は、潤滑油を手に浮竹の蕾に指を侵入させた。
まだ心の準備が整っていなかった浮竹は、いきなり入ってきた指に驚いて、びくんと体をはねさせた。
「きつい?」
「いや、いきなりで驚いただけだ。続けていいぞ」
「うん」
蕾をぐちゃぐちゃと解して、指を3本まで増やした。
ぬるりと、そこに京楽の舌がはいってきて、浮竹は声をあげた。
「やっ、何を!」
「君はここも甘いんだね」
浮竹は、霊王になってから体が甘くなった。純度の高い霊子で構築された体は、とにかく甘かった。
秘所に舌をはわして、浮竹を刺激しつつ、京楽は服を脱いだ。
ぎんぎんにそそり立った己のものを、浮竹の腰にすりよせる。
「あ!」
それで犯されるのだと、浮竹は期待で体が疼いた。
「挿れるよ。力ぬいて」
「ああああ!!!」
一気に引き裂かれて、けれど痛みはなく、快感に頭が真っ白になった。
ぐぽんと結腸にまで入ってきた京楽を強く締め付けて、京楽はそれに眉を寄せる。
「んっ、君を味わいたいけど、いきなりだけど出そうだ。奥に注ぐから、孕んでね」
「あ、出して!春水の子種、俺の奥にいっぱい」
びゅるびゅると、京楽は浮竹の奥で弾けた。
「ああ!」
何度も何度も突き上げられて、浮竹は精液を零しつつ、乱れた。
オーガズムでいくことを覚えた体は、射精しながら同時に中いきをして、浮竹は呼吸を荒くする。
「あっ、や、もれる、やだ、やだ!」
「潮でしょ。十四郎、大丈夫」
「あ、や!」
潮をふきあげて、浮竹は最奥の結腸にごりごりと京楽のものが押し付けられるのを認識しながら、またオーガズムでいっていた。
「やぁ、奥は、奥は弱いから、やぁっ!」
「でも、いいんでしょ?好きだよね、奥をごりごりされるの」
「いやぁ」
前立腺をすりあげられて、最奥もつかれて、浮竹は啼くことしかできなかった。
「ねぇ、浮竹。太もも、閉じられる?」
「え?」
「素股やってみたい」
「あ・・・・うん」
浮竹は、広げていた足を閉じた。
そこに、京楽は怒張したままの己を、背後から浮竹の閉じられた浮竹の太ももにはさんで、sexをしているように、出し入れを繰り返した。
「気持ちいい?」
「うん、最高だよ。浮竹の中もいいけど、これもすごく気持ちいい」
京楽は、浮竹の太ももに精液を散らした。
「まだいけるよね?今日の日のために、涅隊長から特製の精強剤作ってもらって飲んできたから。まだまだ、付き合ってもらうよ」
「あ、や・・・・・壊れる」
「壊れるくらい、抱いてあげる」
「やぁっ、もうやっ・・・許してぇ」
「僕は、まだいけるよ。十四郎もがんばって」
最奥に侵入してきた京楽を締め上げながら、浮竹は泣いていた。
泣かせてしまったことに罪悪感を抱きながらも、浮竹を抱けるのは月に一度だけなので、京楽は思うまま浮竹を貪った。
結局、京楽は7回はいった。
それに付き合わされた浮竹は、意識を飛ばしてぐったりしていた。
「ごめんね、十四郎」
あげた翡翠の簪は畳の上に転がっていた。
浮竹を抱き上げて、風呂に入らせた。かなり無理をさせてしまったみたいで、いつもなら覚醒するのに、浮竹は眠ったままだった。
京楽に汚されても、浮竹の存在は清いままで、逆に京楽が清められた。
浮竹の長い髪を、京楽は乾かしていた。
風呂で浮竹の中に吐いたものをかき出すと、とろとろと零れていき、自分でもよくこんなに出したものだと思った。
「ん・・・京楽?」
3時間ほどして、浮竹が気づいた。
「浮竹、大丈夫?」
「うあ・・・腰が痛すぎる。回道かけとこう」
霊王であるが、死神の頃に覚えた鬼道や回道は使えた。
やがて、腰の痛みもとれた浮竹は、京楽に身を寄せて、甘い京楽という名の毒に浸る。
「俺は、気を失っていたのか」
「うん。ごめんね、ちょっとやりすぎちゃった」
「まぁいい。俺も、気持ちよかったし」
京楽と交わるのは、一種の毒。
それを霊王の力で浄化して、そして交じりあう。
京楽は霊王である浮竹を抱きすぎて、その体は清浄なる者に近くなっていて、霊王しか出入りできない空間でも入ることができた。
その気になれば、霊王宮にも侵入できるだろうが、後が怖いのでそれはしなかった。
「今の京楽なら、穢れも払えるな。今度、霊王宮で尸魂界の穢れを払う祭事がある。使いをよこすから、お前も参加しろ。清める者は多いほうがいい
「浮竹に会えるなら、参加するよ。でも、僕ってそんな力あるの?」
「俺を散々抱いたせいでな」
「なんだか不思議な感覚。君を抱けるのは嬉しいけど、そんな風になるなんて思ってもみなかった」
霊王である浮竹は、世界の柱。世界そのもの。神。
そんな浮竹に触れることが許されるのは、この世界では京楽だけ。京楽だけが浮竹のいる霊王宮まで来ることができて、浮竹を抱くことができた。
院生時代に覚えた浅ましい欲は、隊長になって想いが通じあったことで具現化し、浮竹が霊王となった今でも続いていた。
「浮竹、おいで。髪結ってあげる。翡翠の簪も飾ってあげる」
浮竹は、素直に京楽の傍にやってきた。
螺鈿細工の櫛で、浮竹の長い長い白髪を梳りながら、髪の一部を結い上げて、翡翠の簪を飾った。
ちりんちりん。
浮竹が動くたびに、ついている金の鈴が軽やか音をたてる。
今まで、たくさんの贈り物をしてきたが、浮竹は受け取っても大切にしまいこむ性質で、翡翠の簪は常に身に着けられるので正解だった。
「京楽がまたくる次の月まで、これを京楽だと思って大切にする」
霊王は、下界を見ることができる。
京楽が恋しくなったら、浮竹は時折下界にその眼(まなこ)を向けて、京楽を見つめていた。
見ることはできるけれど、近くにいれない。そのもどかしさが、苦しかった。
月に一度の逢瀬は、浮竹の我儘から始まった。京楽に会えないなら自害すると、首に剣をあてて本当に頸動脈の近くをかき切った。
慌てた零番隊が、京楽を浮竹の元に送り届けてきた。
月に一度、と決めて、浮竹は京楽と出会えるようになった。
本当は、下界に降りたいのだけど、霊王は虚の特上の餌なので、霊王を損なうことは世界を失うことなので、10年に一度の祭事にだけ、下界に降りることを許された。
護廷13隊の隊長副隊長が見守る中で祭事を行う。
護廷13隊が揃っていれば、虚の心配もない。
といっても、霊圧を消して浮竹は京楽と、下界に降りた後も睦み合っていた。霊王としての力がを制御するのは簡単ではない。
それでも、京楽の隣に居たい一心で、コントロールを可能にした。
「また、会いにきてくれ。今度は1月の半ばだ」
「正月の祝いもの、持ってくるね」
「ああ、楽しみにしている」
霊王宮では、四季の祭りごとがない。それでも、霊王である浮竹を喜ばせようと、身の回りの世話をする者たちは、下界の季節の祝い事を真似てくれた。
大晦日には、年越しそばを食べて、正月には、餅を焼いて食う。
しめ縄を飾り、年明けを祝った。
でも、隣に京楽がいないので、浮竹はいつもどこか寂しそうだった。
京楽がきた次の日から数日は、浮竹は上機嫌で、身の回りの世話をする者も零番隊も、そんな浮竹をみて、ほっと心を穏やかにするのであった。
当代の霊王は、総隊長の死神に夢中である。
霊王宮のある天界で、それを知らぬ者はいなかった。
それほどに、霊王である浮竹は京楽に夢中だった。
霊王なった時から、100年経った今でも、そしてこれからもそれは変わらない。
悠久の時を、二人は逢瀬をを楽しみながら、生きていく。
浮竹の姿は変わらず、若すぎるわけでもなく老いたわけでもない、隊長の頃の姿のままだった。
京楽は、少しだけ年をとった。
でも、見た目の変化はほとんどなかった。
山本総隊長は2千年を生きた。
京楽もまた、2千年は生きるだろう。
けれど、霊王である浮竹は年齢を重ねても死なない。不死であった。
いつか、別れがくる。
それを事実と受け止めないように、月の一度の逢瀬を重ねて100年が経っていた。
まだまだ、京楽は浮竹のことを愛していて。
浮竹もまた、京楽のことを愛していた。
「昨今の死神は、霊圧が高い者が多いな。上流階級や4大貴族も、子供が多く生まれているのは、先代の霊王の呪いが消えたせいか」
前の代の霊王は、尸魂界全体に呪いをかけていた。
上流貴族ほど、子を作れない呪いだった。
下級貴族である浮竹は、8人兄弟であった。
4大貴族に近くなるほど、子は作りにくかった。
かつて、朽木白哉は妻をもった。緋真という妻は、子を産むことなく死んでしまった。
霊王の呪いなければ、子を産んでいただろう。
白哉には実の兄弟も姉妹もいなかった。それも呪いの影響であった。
ルキアを義妹にして、白哉はルキアの子に朽木家を継がせることにしているようだった。
「たまには、お前以外とも会いたいな。白哉や、日番谷や」
「僕じゃ不満かい?」
「いや、懐かしく感じるだけで、お前がいてくれるだけで、俺は満足だ」
もしも、京楽と会うのが1年に1回なら。もしも、京楽と会えなくなったら。
気が狂ってしまう。
そう思った。
京楽がいるお陰で、霊王として生きようと思えるのだ。
この尸魂界を、世界を支える柱として、神として贄になろうと。
浮竹は、霊王の力を利用して、世界に霊力を降り注いだ。
それは大地を潤し、死神の力を増して、瀞霊廷は今までにないほどの繁栄を謳歌していた。
瀞霊廷は、貴族だらけの場所ではなくなった。多くの流魂街からの者が、死神となり、力をつけて出世していった。
大戦の傷跡はもうない。
ただ昔、霊王と先代の総隊長が殺されたというだけの、昔話になっていた。
完全に復興を遂げた瀞霊廷で、総隊長である京楽は、仕事をしながら、次に浮竹と会える日を楽しみにしていた。
少し日時をずらして、冬の真っただ中、浮竹の誕生日に会えるように調節していた。
浮竹と会ったら、翡翠の簪をあげようと、大前田のところでかった、金細工のかわいい小鳥の形をあしらった鈴のついた、翡翠の簪が入った箱を、大切そうに何度も撫でた。
「早く君に会いたいよ、浮竹」
その日、瀞霊廷はしんしんと降り積もる雪によって、閉ざされた。
霊王の住まう霊王宮には、雪は降らない。
なので、京楽は自分で作った雪兎を、特殊な金属にいれて保存し、浮竹と会えたその日にプレゼントした。
翡翠の簪も渡した。
「お前が、つけてくれ」
「うん。ああ、似合っているよ」
翡翠の簪は、チリンチリンと、動くたびに小さな音を立てた。
十二単の衣をまとった浮竹に、よく似合っていた。軽く髪を結い上げて、まるで天女かと思うほど、美しかった。
「雪か・・・・次に瀞霊廷に降りるのは4年後だな。霊王の力で、雪を降らせてしまおうか」
「そんなこと、できるの?」
「できない。さすがに天候だけは、どうにもならない」
その言葉に、京楽はクスリと笑って、浮竹を抱きしめた。
「君は霊王だから、なんでもできそうなんだけどね」
「一人の男の心を、射止めておくだけで精一杯だ」
「僕の心は、ずっと君だけのものだよ」
「俺が霊王になってもう100年か・・・月日が過ぎるのは早いな」
「そうだね」
瀞霊廷も尸魂界も平和だった。
小さないざこざはあれど、大きな戦いはなく、霊王である浮竹を狙う輩もいなかった。
「誕生日、おめでとう」
「ああ、ありがとう」
京楽が自分でつくった雪兎をプレゼントすると、浮竹は思った以上に喜んでくれた。霊王の力で雪を霊子に変えて、いつまでも溶けないようにして、寝室にあるテーブルに飾った。
「お前がくれたものは全部嬉しいが、この雪兎はとても嬉しい。霊王宮の外はいつも春の気候で、雪が降らないから」
「いつも春なら、君の体にもいいね」
霊王になった時に、肺の病は癒えた。同時に病弱であった体も健康体に戻った。
月に一度の逢瀬が、肺の病や熱が出るから無理、というのはなくて正直嬉しかった。でも、時折浮竹は熱を出した。
病弱であった体の名残が、霊王になってもまだ付きまとっていた。
春の気候は、浮竹の体にとてもよかった。
「春水、俺を抱いてくれ」
浮竹は、自分から京楽を押し倒していた。
「わお、熱烈だね。大歓迎だよ」
「月に一度しか会えないんだ。体が疼く」
霊王になる前は、週に一度は抱かれていた。月に一度は、少ないけれど、霊王である浮竹が京楽に会うには限度がいった。
霊王は清浄なる存在。
いくら、霊王を抱いて同じような清浄の気を宿した京楽でも、浮竹を抱くことは汚すに等しい。
それでも、浮竹は京楽に抱かれたがった。
院生時代に覚えた浅ましい欲は、霊王になっても消えなかった。
隊長になってから、ずっと京楽に抱かれてきた。京楽に抱かれるのは、好きだった。
「いいよ。おいで、十四郎」
すり寄ってくる浮竹を抱きしめて、京楽は苦労して十二単を脱がせながら、浮竹の白い肌にキスマークを残して、花を咲かせていった。
「んっ」
胸の先端を甘噛みされて、ぴりりと浮竹はしびれる体をもてあます。
今から抱かれるという思いに、花茎はだらだらと先走りの蜜を零して、京楽が与えてくれる快感に夢中になった。
「ああ!」
やんわりと手でしごかれて、たまっていた体はあっけなく吐精していた。
「随分早いね。たまってた?」
「俺は、自分でぬいたりしてないから・・・たまってる。もっとお前をくれ」
「十四郎、愛してるよ」
深く口づけると、浮竹は京楽の背中に手をまわした。
「んっ、春水、俺も、愛して・・・ああっ」
京楽は、潤滑油を手に浮竹の蕾に指を侵入させた。
まだ心の準備が整っていなかった浮竹は、いきなり入ってきた指に驚いて、びくんと体をはねさせた。
「きつい?」
「いや、いきなりで驚いただけだ。続けていいぞ」
「うん」
蕾をぐちゃぐちゃと解して、指を3本まで増やした。
ぬるりと、そこに京楽の舌がはいってきて、浮竹は声をあげた。
「やっ、何を!」
「君はここも甘いんだね」
浮竹は、霊王になってから体が甘くなった。純度の高い霊子で構築された体は、とにかく甘かった。
秘所に舌をはわして、浮竹を刺激しつつ、京楽は服を脱いだ。
ぎんぎんにそそり立った己のものを、浮竹の腰にすりよせる。
「あ!」
それで犯されるのだと、浮竹は期待で体が疼いた。
「挿れるよ。力ぬいて」
「ああああ!!!」
一気に引き裂かれて、けれど痛みはなく、快感に頭が真っ白になった。
ぐぽんと結腸にまで入ってきた京楽を強く締め付けて、京楽はそれに眉を寄せる。
「んっ、君を味わいたいけど、いきなりだけど出そうだ。奥に注ぐから、孕んでね」
「あ、出して!春水の子種、俺の奥にいっぱい」
びゅるびゅると、京楽は浮竹の奥で弾けた。
「ああ!」
何度も何度も突き上げられて、浮竹は精液を零しつつ、乱れた。
オーガズムでいくことを覚えた体は、射精しながら同時に中いきをして、浮竹は呼吸を荒くする。
「あっ、や、もれる、やだ、やだ!」
「潮でしょ。十四郎、大丈夫」
「あ、や!」
潮をふきあげて、浮竹は最奥の結腸にごりごりと京楽のものが押し付けられるのを認識しながら、またオーガズムでいっていた。
「やぁ、奥は、奥は弱いから、やぁっ!」
「でも、いいんでしょ?好きだよね、奥をごりごりされるの」
「いやぁ」
前立腺をすりあげられて、最奥もつかれて、浮竹は啼くことしかできなかった。
「ねぇ、浮竹。太もも、閉じられる?」
「え?」
「素股やってみたい」
「あ・・・・うん」
浮竹は、広げていた足を閉じた。
そこに、京楽は怒張したままの己を、背後から浮竹の閉じられた浮竹の太ももにはさんで、sexをしているように、出し入れを繰り返した。
「気持ちいい?」
「うん、最高だよ。浮竹の中もいいけど、これもすごく気持ちいい」
京楽は、浮竹の太ももに精液を散らした。
「まだいけるよね?今日の日のために、涅隊長から特製の精強剤作ってもらって飲んできたから。まだまだ、付き合ってもらうよ」
「あ、や・・・・・壊れる」
「壊れるくらい、抱いてあげる」
「やぁっ、もうやっ・・・許してぇ」
「僕は、まだいけるよ。十四郎もがんばって」
最奥に侵入してきた京楽を締め上げながら、浮竹は泣いていた。
泣かせてしまったことに罪悪感を抱きながらも、浮竹を抱けるのは月に一度だけなので、京楽は思うまま浮竹を貪った。
結局、京楽は7回はいった。
それに付き合わされた浮竹は、意識を飛ばしてぐったりしていた。
「ごめんね、十四郎」
あげた翡翠の簪は畳の上に転がっていた。
浮竹を抱き上げて、風呂に入らせた。かなり無理をさせてしまったみたいで、いつもなら覚醒するのに、浮竹は眠ったままだった。
京楽に汚されても、浮竹の存在は清いままで、逆に京楽が清められた。
浮竹の長い髪を、京楽は乾かしていた。
風呂で浮竹の中に吐いたものをかき出すと、とろとろと零れていき、自分でもよくこんなに出したものだと思った。
「ん・・・京楽?」
3時間ほどして、浮竹が気づいた。
「浮竹、大丈夫?」
「うあ・・・腰が痛すぎる。回道かけとこう」
霊王であるが、死神の頃に覚えた鬼道や回道は使えた。
やがて、腰の痛みもとれた浮竹は、京楽に身を寄せて、甘い京楽という名の毒に浸る。
「俺は、気を失っていたのか」
「うん。ごめんね、ちょっとやりすぎちゃった」
「まぁいい。俺も、気持ちよかったし」
京楽と交わるのは、一種の毒。
それを霊王の力で浄化して、そして交じりあう。
京楽は霊王である浮竹を抱きすぎて、その体は清浄なる者に近くなっていて、霊王しか出入りできない空間でも入ることができた。
その気になれば、霊王宮にも侵入できるだろうが、後が怖いのでそれはしなかった。
「今の京楽なら、穢れも払えるな。今度、霊王宮で尸魂界の穢れを払う祭事がある。使いをよこすから、お前も参加しろ。清める者は多いほうがいい
「浮竹に会えるなら、参加するよ。でも、僕ってそんな力あるの?」
「俺を散々抱いたせいでな」
「なんだか不思議な感覚。君を抱けるのは嬉しいけど、そんな風になるなんて思ってもみなかった」
霊王である浮竹は、世界の柱。世界そのもの。神。
そんな浮竹に触れることが許されるのは、この世界では京楽だけ。京楽だけが浮竹のいる霊王宮まで来ることができて、浮竹を抱くことができた。
院生時代に覚えた浅ましい欲は、隊長になって想いが通じあったことで具現化し、浮竹が霊王となった今でも続いていた。
「浮竹、おいで。髪結ってあげる。翡翠の簪も飾ってあげる」
浮竹は、素直に京楽の傍にやってきた。
螺鈿細工の櫛で、浮竹の長い長い白髪を梳りながら、髪の一部を結い上げて、翡翠の簪を飾った。
ちりんちりん。
浮竹が動くたびに、ついている金の鈴が軽やか音をたてる。
今まで、たくさんの贈り物をしてきたが、浮竹は受け取っても大切にしまいこむ性質で、翡翠の簪は常に身に着けられるので正解だった。
「京楽がまたくる次の月まで、これを京楽だと思って大切にする」
霊王は、下界を見ることができる。
京楽が恋しくなったら、浮竹は時折下界にその眼(まなこ)を向けて、京楽を見つめていた。
見ることはできるけれど、近くにいれない。そのもどかしさが、苦しかった。
月に一度の逢瀬は、浮竹の我儘から始まった。京楽に会えないなら自害すると、首に剣をあてて本当に頸動脈の近くをかき切った。
慌てた零番隊が、京楽を浮竹の元に送り届けてきた。
月に一度、と決めて、浮竹は京楽と出会えるようになった。
本当は、下界に降りたいのだけど、霊王は虚の特上の餌なので、霊王を損なうことは世界を失うことなので、10年に一度の祭事にだけ、下界に降りることを許された。
護廷13隊の隊長副隊長が見守る中で祭事を行う。
護廷13隊が揃っていれば、虚の心配もない。
といっても、霊圧を消して浮竹は京楽と、下界に降りた後も睦み合っていた。霊王としての力がを制御するのは簡単ではない。
それでも、京楽の隣に居たい一心で、コントロールを可能にした。
「また、会いにきてくれ。今度は1月の半ばだ」
「正月の祝いもの、持ってくるね」
「ああ、楽しみにしている」
霊王宮では、四季の祭りごとがない。それでも、霊王である浮竹を喜ばせようと、身の回りの世話をする者たちは、下界の季節の祝い事を真似てくれた。
大晦日には、年越しそばを食べて、正月には、餅を焼いて食う。
しめ縄を飾り、年明けを祝った。
でも、隣に京楽がいないので、浮竹はいつもどこか寂しそうだった。
京楽がきた次の日から数日は、浮竹は上機嫌で、身の回りの世話をする者も零番隊も、そんな浮竹をみて、ほっと心を穏やかにするのであった。
当代の霊王は、総隊長の死神に夢中である。
霊王宮のある天界で、それを知らぬ者はいなかった。
それほどに、霊王である浮竹は京楽に夢中だった。
霊王なった時から、100年経った今でも、そしてこれからもそれは変わらない。
悠久の時を、二人は逢瀬をを楽しみながら、生きていく。
僕はそうして君におちていく外伝
霊王が降りてくる。
下界へ。
10年の一度、霊王は下界に降りてきた。
それは、浮竹が霊王になってからのことだった。
前の霊王は水晶に閉じ込められていて、楔だの人柱だの言われていた。
今の霊王は、清らかな空気をまとった、長い白髪に翡翠の瞳をもつ麗人だった。
「霊王様だわ!いつ見ても麗しい」
「ほんと、雲の上の方ってかんじ」
十二単をまとい、髪を結い上げて、金銀細工で象られた宝冠を頭にかぶっていた。
司祭が祝詞を唱えて、霊王に10年間世界が平穏であったことへの感謝をしめす。
霊王は宝剣を抜き、護廷十三隊の隊長副隊長の肩に、宝剣を触れさせて、清浄なる力を流して、霊力の上昇を促した。
中には、見違えるように霊圧が上がる者もいた。
京楽は、霊王の宝剣を受け取り、声高々に宣言する。
「尸魂界に霊王はおわす!霊王いる限り、世界は続く!平和を、高い天上の霊王宮にて祈られている!それに我らは、答えねばならぬ!霊王万歳!」
「霊王万歳!」
「霊王様万歳!」
「霊王様!」
「霊王様万歳!」
霊王を祭る祭儀場は、死神と人々の声で熱気があふれていた。
霊王は、その姿を見届けて、霊王宮に戻った。
戻った、ように見せかけた。
「よう、京楽。遅かったな」
「祭事を抜け出すなんて、なかなかできないからね。さぁ、僕の霊王様は、今日はどんな我儘を言うんだい?」
「花見がしたい」
「なんの花?」
「桜だ」
「今七月だよ。桜、咲いてない・・・・・・」
「俺が力を注ぎ込めば、桜は咲く」
「じゃあ、僕の別邸にいこうか。大きな桜の木があるんだ」
10年に一度、霊王は下界に降りてきて、祭事をする。
けれど、本当は京楽に会うために降りてくるのだ。
京楽の別邸に、二人は歩きながら向かった。
浮竹は、霊王ではなく普通の死覇装をまとい、まるで死神として復活したかのような出で立ちだった。
認識阻害の術が浮竹にはかけられていて、浮竹を見てもそれを霊王だと思う者はいない。下界に降りてきても、浮竹のことを知っている隊長や副隊長、その他の死神は浮竹とは違う者の姿を目でとらえて、誰も霊王が浮竹であると気づかなかった。
京楽だけが、例外だったのだ。
霊王に愛されているこの男は、あろうことか霊王と契り、霊王の残滓を身に宿すようになった。
清浄なる気を、生み出す力。
そのお陰か、月に一度の逢瀬で、京楽の気に触れて散っていく草木や花は、散ることがなくなった。
月の一度の逢瀬を、隠し事にせずに堂々としていられた。
今の零番隊は、新たに招集された面子でできており、京楽のことや浮竹のことを知らない。
ただ、霊王の意思に従い、守るだけだ。
「ここだよ」
京楽が、歩みを止めた。
何度か浮竹も来たことのある、京楽の持つ館の一つだった。維持に人は置いているため、急な帰りにも対処できるようにしていた。
ただ、食事は食材を手に入れいれなければならないので、少し事前に知らせておいた。
今頃、厨房は慌ただしいことになっているだろう。
「酒は?」
「あるよ。君の好きな果実酒もあるよ」
霊王である浮竹は、隊長であった頃よりさらに膨らんだ霊圧を、葉桜になっていた大樹に流した。
ざぁぁぁ。
葉桜が散り、桜色の蕾ができて、次々に開花していった。
「すごいね」
「今なら、お前のその右目を治すこともできる」
「遠慮しておくよ。これは、僕のけじめだから」
総隊長となった証でもあるのだからと、浮竹の願いであるが、それだけは聞き入れられないと、京楽はいつも頑なに拒んだ。
「料理、もってきてもらうから、飲もう」
「ああ」
京楽と浮竹は、月が出るまで酒を飲んで、語り合った。
「でね、七緒ちゃんが・・・・・・」
浮竹は、むすっとしていた。
「どうしたの、浮竹?」
「さっきから、伊勢の話ばかりだ。面白くない」
「ああ、ごめん。君は、僕に会いにきてくれたんだよね」
寝室に移動して、浮竹を押し倒した。
サラサラと、白い腰よりも長くなった髪が畳に流れる。
「髪、長いね。洗うの大変じゃない?」
「身の回りの世話をしてくれる者が洗ってくれるので、大分楽だ」
その言葉に、京楽が眉を寄せる。
「君の肌を、誰かに触らしているの?」
「いや、髪を洗ってもらうだけだ。体は自分で洗っているし、せいぜい十二単を着る手伝いをしてもらうくらいで、あとは食事の用意や風呂の用意をしてもらったり、暇つぶしに本をもってきてもったり・・・・お前が思っているようなことは、ない」
「僕の浮竹に触れていいのは、僕だけだから」
「霊王になってもか」
「うん」
「髪くらいは、許してやれ。一人で洗うのは大変なんだ」
「切っちゃえば?」
「霊王の肉体は霊力に満ちているから。髪の一本、爪の欠片さえ、負なる物の恰好の餌になる」
「虚とか?」
「そうだな。だから、霊子に返すために、常に身は清浄であらねばならない。下界に降りれない最もな理由はそこだ」
「今から僕とすること、清浄じゃないよ。それでもいいの?」
「京楽、お前は俺を抱き続けたことで、霊王の残滓を魂に混じらせている。今のお前は、清らかな存在だ。霊王である俺と交じりあっても、なんの害もない」
「それを聞いて安心したよ。ねぇ、抱いていいかな?」
「もとよりそのつもりで降りてきた。好きなようにしろ」
「愛しているよ、十四郎。僕の、霊王」
「春水・・・俺だけが、愛した者。霊王である俺は、春水を愛している」
今でも時折、先代の霊王の意思がまじって、意識が混濁することがあるが、大分慣れた。
浮竹は、はじめ自分が霊王だと言えなかった。
霊王の代わりにされたと思っていた。けれど、浮竹はもう代わりでもなんでもなく、霊王そのものだった。
「んっ」
ぴちゃりと、首筋を舐められた。
耳を甘噛みされて、京楽の黒髪に手を伸ばす。
「んあっ」
浮竹の桜色の唇を啄んでいた京楽が、口を開いた浮竹の口内に舌を入れる。ぬるりと入ってきた舌は、浮竹の舌を絡め合って、歯茎などをなぞっていった。
「んんっ」
呼吸が苦しそうなので、いったん舌を引き抜くと、情欲で濡れた翡翠の瞳と視線が合った。
「もっと・・・」
「かわいい」
浮竹を抱きしめて、正装である十二単ではない、普通の死覇装を脱がしていく。十二単を脱がすのは苦労したが、死覇装はすぐに脱がせれた。
鍛錬をやめたわけではないようで、浮竹には薄いが筋肉がきちんとついていた。
「あっ」
胸の先端を口にふくまれて、転がされる。
京楽の唇は、鎖骨と胸に花びらを散らした。
そのまま、腹、へそへとさがっていき、最後に花茎を口に含んだ。
「んあ!」
霊王の体は、なんと甘いことか。
甘露だ。
「やぁっ」
何度も舐めて先端を舌でぐりぐりと舐めながら、全体を手でしごいていると、浮竹は精液を京楽の口の中にはきだしていた。
その味もまた、甘かった。
霊王になった浮竹は、純度の高い霊子で構築されていて、甘かった。
「綿あめみたい」
「そんなに、俺は甘いか」
「うん、甘いよ。飴みたい」
くすりと、浮竹は笑って、自分から足を開いて京楽を迎え入れる。
京楽は、すぐに挿入はせずに、まずは潤滑油を手の温度になじませて指ですくいとると、蕾に指を押し入れた。
「あっ」
前立腺をかすめた指先に、声が漏れる。
「もっと声、聞かせて?」
「ああ、やっ」
くちゅくちゅと、指を増やして蕾を解していく。トロトロに溶けた頃合いを見計らって、京楽は自分の熱に潤滑油をぬりたくり、浮竹を貫いた。
「ああああ!!!」
そのまま、ゆっくりと浮竹を起き上がらせる。
「あ!」
騎乗位になっていた。
自分の体重で、ずぶずぶと京楽のものを飲みこんでいく。
「好きなように動いていいよ」
「春水・・・・」
浮竹は、ゆっくりと動いた。前立腺を自分ですりあげるように動いて、浮竹は精液を京楽の腹に散らせた。
「もういいかな?僕も動くよ」
「あ、まだだめ、いってる、途中、だ、から・・・・・ああああ!」
下から思い切り突き上げられて、ごちゅんと結腸にまで京楽のものは入ってきた。
「や、深い・・・・」
「ここ、好きでしょ?」
奥でぐりぐりと動くと、浮竹はこくこくと頷いて、京楽に全てを任せた。
「やっ、大きい・・・・・」
「僕の子、孕んでね」
最奥にびゅるびゅると精液を注ぎ込んで、京楽は果てた。
それでも足りずに、3回ほど浮竹を好きなように犯してから、ぐったりとなった浮竹を抱きしめた。
「寝ちゃってる・・・お風呂は、起きてからでいいか」
浮竹の体をふいて清めて、中に出したものをかき出した。
唇を重ねると、やはり甘かった。
「愛してるよ、十四郎。僕だけが、君にこうやって触れられる。僕は満足だよ。君を、霊王宮に戻したくないけど、月に一度会えるならそれでいい」
本当は、毎日のように会いたいけれど。
生きる世界が違うのだ。
はるか天上にある霊王宮は、神の領域だ。
霊王は、ある意味神だ。
神を抱いているなんて知ったら、他の死神や流魂街の住人は仰天するだろう。
だが、その神自体が、霊王そのものが京楽に抱かれるために、京楽を月に一度、霊王宮に招き入れるのだ。
全ては霊王の御心のままに。
眠り続ける愛しい人の、長い白髪を撫でながら、京楽もまた眠りにつくのであった。
下界へ。
10年の一度、霊王は下界に降りてきた。
それは、浮竹が霊王になってからのことだった。
前の霊王は水晶に閉じ込められていて、楔だの人柱だの言われていた。
今の霊王は、清らかな空気をまとった、長い白髪に翡翠の瞳をもつ麗人だった。
「霊王様だわ!いつ見ても麗しい」
「ほんと、雲の上の方ってかんじ」
十二単をまとい、髪を結い上げて、金銀細工で象られた宝冠を頭にかぶっていた。
司祭が祝詞を唱えて、霊王に10年間世界が平穏であったことへの感謝をしめす。
霊王は宝剣を抜き、護廷十三隊の隊長副隊長の肩に、宝剣を触れさせて、清浄なる力を流して、霊力の上昇を促した。
中には、見違えるように霊圧が上がる者もいた。
京楽は、霊王の宝剣を受け取り、声高々に宣言する。
「尸魂界に霊王はおわす!霊王いる限り、世界は続く!平和を、高い天上の霊王宮にて祈られている!それに我らは、答えねばならぬ!霊王万歳!」
「霊王万歳!」
「霊王様万歳!」
「霊王様!」
「霊王様万歳!」
霊王を祭る祭儀場は、死神と人々の声で熱気があふれていた。
霊王は、その姿を見届けて、霊王宮に戻った。
戻った、ように見せかけた。
「よう、京楽。遅かったな」
「祭事を抜け出すなんて、なかなかできないからね。さぁ、僕の霊王様は、今日はどんな我儘を言うんだい?」
「花見がしたい」
「なんの花?」
「桜だ」
「今七月だよ。桜、咲いてない・・・・・・」
「俺が力を注ぎ込めば、桜は咲く」
「じゃあ、僕の別邸にいこうか。大きな桜の木があるんだ」
10年に一度、霊王は下界に降りてきて、祭事をする。
けれど、本当は京楽に会うために降りてくるのだ。
京楽の別邸に、二人は歩きながら向かった。
浮竹は、霊王ではなく普通の死覇装をまとい、まるで死神として復活したかのような出で立ちだった。
認識阻害の術が浮竹にはかけられていて、浮竹を見てもそれを霊王だと思う者はいない。下界に降りてきても、浮竹のことを知っている隊長や副隊長、その他の死神は浮竹とは違う者の姿を目でとらえて、誰も霊王が浮竹であると気づかなかった。
京楽だけが、例外だったのだ。
霊王に愛されているこの男は、あろうことか霊王と契り、霊王の残滓を身に宿すようになった。
清浄なる気を、生み出す力。
そのお陰か、月に一度の逢瀬で、京楽の気に触れて散っていく草木や花は、散ることがなくなった。
月の一度の逢瀬を、隠し事にせずに堂々としていられた。
今の零番隊は、新たに招集された面子でできており、京楽のことや浮竹のことを知らない。
ただ、霊王の意思に従い、守るだけだ。
「ここだよ」
京楽が、歩みを止めた。
何度か浮竹も来たことのある、京楽の持つ館の一つだった。維持に人は置いているため、急な帰りにも対処できるようにしていた。
ただ、食事は食材を手に入れいれなければならないので、少し事前に知らせておいた。
今頃、厨房は慌ただしいことになっているだろう。
「酒は?」
「あるよ。君の好きな果実酒もあるよ」
霊王である浮竹は、隊長であった頃よりさらに膨らんだ霊圧を、葉桜になっていた大樹に流した。
ざぁぁぁ。
葉桜が散り、桜色の蕾ができて、次々に開花していった。
「すごいね」
「今なら、お前のその右目を治すこともできる」
「遠慮しておくよ。これは、僕のけじめだから」
総隊長となった証でもあるのだからと、浮竹の願いであるが、それだけは聞き入れられないと、京楽はいつも頑なに拒んだ。
「料理、もってきてもらうから、飲もう」
「ああ」
京楽と浮竹は、月が出るまで酒を飲んで、語り合った。
「でね、七緒ちゃんが・・・・・・」
浮竹は、むすっとしていた。
「どうしたの、浮竹?」
「さっきから、伊勢の話ばかりだ。面白くない」
「ああ、ごめん。君は、僕に会いにきてくれたんだよね」
寝室に移動して、浮竹を押し倒した。
サラサラと、白い腰よりも長くなった髪が畳に流れる。
「髪、長いね。洗うの大変じゃない?」
「身の回りの世話をしてくれる者が洗ってくれるので、大分楽だ」
その言葉に、京楽が眉を寄せる。
「君の肌を、誰かに触らしているの?」
「いや、髪を洗ってもらうだけだ。体は自分で洗っているし、せいぜい十二単を着る手伝いをしてもらうくらいで、あとは食事の用意や風呂の用意をしてもらったり、暇つぶしに本をもってきてもったり・・・・お前が思っているようなことは、ない」
「僕の浮竹に触れていいのは、僕だけだから」
「霊王になってもか」
「うん」
「髪くらいは、許してやれ。一人で洗うのは大変なんだ」
「切っちゃえば?」
「霊王の肉体は霊力に満ちているから。髪の一本、爪の欠片さえ、負なる物の恰好の餌になる」
「虚とか?」
「そうだな。だから、霊子に返すために、常に身は清浄であらねばならない。下界に降りれない最もな理由はそこだ」
「今から僕とすること、清浄じゃないよ。それでもいいの?」
「京楽、お前は俺を抱き続けたことで、霊王の残滓を魂に混じらせている。今のお前は、清らかな存在だ。霊王である俺と交じりあっても、なんの害もない」
「それを聞いて安心したよ。ねぇ、抱いていいかな?」
「もとよりそのつもりで降りてきた。好きなようにしろ」
「愛しているよ、十四郎。僕の、霊王」
「春水・・・俺だけが、愛した者。霊王である俺は、春水を愛している」
今でも時折、先代の霊王の意思がまじって、意識が混濁することがあるが、大分慣れた。
浮竹は、はじめ自分が霊王だと言えなかった。
霊王の代わりにされたと思っていた。けれど、浮竹はもう代わりでもなんでもなく、霊王そのものだった。
「んっ」
ぴちゃりと、首筋を舐められた。
耳を甘噛みされて、京楽の黒髪に手を伸ばす。
「んあっ」
浮竹の桜色の唇を啄んでいた京楽が、口を開いた浮竹の口内に舌を入れる。ぬるりと入ってきた舌は、浮竹の舌を絡め合って、歯茎などをなぞっていった。
「んんっ」
呼吸が苦しそうなので、いったん舌を引き抜くと、情欲で濡れた翡翠の瞳と視線が合った。
「もっと・・・」
「かわいい」
浮竹を抱きしめて、正装である十二単ではない、普通の死覇装を脱がしていく。十二単を脱がすのは苦労したが、死覇装はすぐに脱がせれた。
鍛錬をやめたわけではないようで、浮竹には薄いが筋肉がきちんとついていた。
「あっ」
胸の先端を口にふくまれて、転がされる。
京楽の唇は、鎖骨と胸に花びらを散らした。
そのまま、腹、へそへとさがっていき、最後に花茎を口に含んだ。
「んあ!」
霊王の体は、なんと甘いことか。
甘露だ。
「やぁっ」
何度も舐めて先端を舌でぐりぐりと舐めながら、全体を手でしごいていると、浮竹は精液を京楽の口の中にはきだしていた。
その味もまた、甘かった。
霊王になった浮竹は、純度の高い霊子で構築されていて、甘かった。
「綿あめみたい」
「そんなに、俺は甘いか」
「うん、甘いよ。飴みたい」
くすりと、浮竹は笑って、自分から足を開いて京楽を迎え入れる。
京楽は、すぐに挿入はせずに、まずは潤滑油を手の温度になじませて指ですくいとると、蕾に指を押し入れた。
「あっ」
前立腺をかすめた指先に、声が漏れる。
「もっと声、聞かせて?」
「ああ、やっ」
くちゅくちゅと、指を増やして蕾を解していく。トロトロに溶けた頃合いを見計らって、京楽は自分の熱に潤滑油をぬりたくり、浮竹を貫いた。
「ああああ!!!」
そのまま、ゆっくりと浮竹を起き上がらせる。
「あ!」
騎乗位になっていた。
自分の体重で、ずぶずぶと京楽のものを飲みこんでいく。
「好きなように動いていいよ」
「春水・・・・」
浮竹は、ゆっくりと動いた。前立腺を自分ですりあげるように動いて、浮竹は精液を京楽の腹に散らせた。
「もういいかな?僕も動くよ」
「あ、まだだめ、いってる、途中、だ、から・・・・・ああああ!」
下から思い切り突き上げられて、ごちゅんと結腸にまで京楽のものは入ってきた。
「や、深い・・・・」
「ここ、好きでしょ?」
奥でぐりぐりと動くと、浮竹はこくこくと頷いて、京楽に全てを任せた。
「やっ、大きい・・・・・」
「僕の子、孕んでね」
最奥にびゅるびゅると精液を注ぎ込んで、京楽は果てた。
それでも足りずに、3回ほど浮竹を好きなように犯してから、ぐったりとなった浮竹を抱きしめた。
「寝ちゃってる・・・お風呂は、起きてからでいいか」
浮竹の体をふいて清めて、中に出したものをかき出した。
唇を重ねると、やはり甘かった。
「愛してるよ、十四郎。僕だけが、君にこうやって触れられる。僕は満足だよ。君を、霊王宮に戻したくないけど、月に一度会えるならそれでいい」
本当は、毎日のように会いたいけれど。
生きる世界が違うのだ。
はるか天上にある霊王宮は、神の領域だ。
霊王は、ある意味神だ。
神を抱いているなんて知ったら、他の死神や流魂街の住人は仰天するだろう。
だが、その神自体が、霊王そのものが京楽に抱かれるために、京楽を月に一度、霊王宮に招き入れるのだ。
全ては霊王の御心のままに。
眠り続ける愛しい人の、長い白髪を撫でながら、京楽もまた眠りにつくのであった。
僕はそうして君におちていく13
私は、小さかった。
私は、愛されていた。
私も、愛していた。
私は世界。私は死神が嫌いだ。
私は楔。あるいは人柱。
私は霊王。
霊王は私。
小さき者。
右腕。
私は殺される。ユーハバッハに。
けれど、私は私を宿した者に蘇る。
私の右腕を、宿らせた者の中に、私は宿る。
-------------------------------
大戦があった。
長い平和を脅かした藍染の反乱から約2年後。
大戦があった。
多くの死神が死んだ。
霊王もまた、ユーハバッハの手により、死んだ。
そして、世界はゆっくりと崩壊していく。
浮竹は、自分の肺に宿らせたミミハギ様を解放して、神掛を行った。
世界の崩壊は止まった。
浮竹は、死ぬはずであった。
けれど、そこに呪いがあった。霊王の呪い。
己の右腕を宿らせた者にの中に、霊王は宿った。
浮竹は、霊王になった。
霊王になった浮竹は、尸魂界の瀞霊廷にいることはできなかった。
零番隊の守る、霊王がいるべき霊王宮へと移動を余儀なくされた。
霊王になった浮竹に課せられたのは、世界に在り、ただ見守ること。
私は霊王。俺は霊王。私は俺。俺は私。
混合する意識の狭間で、浮竹はまどろみながら思う。
愛した人がいた。愛していた。いや、今も愛している。
隻眼の、鳶色の瞳をした男。
総隊長と、呼ばれる者。
私は、夢を見る。
京楽という名の男に、愛される夢を。
そして、私は願う。
また、京楽に会いたいと。
その腕に抱かれたいと、浅ましい欲を抱く。
----------------------------------------
「霊王につきましては、ご機嫌うるわしゅう・・・・・・」
「堅苦しいことはいい。俺がお前を呼んだんだ。お前も、霊王ではなく俺をただの浮竹として接しろ」
「しかし、今の君は霊王だ。僕なんかが、触れていいはずがない」
「だから、それもなんとかする。今、霊王の意識は眠っている。ここにいるのは、ただのお前に愛された、浮竹十四郎だ。京楽、俺を抱け」
霊王の意識を身体の隅に追いやった浮竹は、京楽を見た。
京楽の瞳には、死んだはずの浮竹が、霊王として生きているという喜びがあった。
本当は、触れることは禁忌。
まして、霊王をその手で抱くなど、存在を汚すようなものだ。
けれど、霊王でもある浮竹はそれを欲していた。
私は、俺は、浮竹十四郎。総隊長、京楽春水に愛された、1人の死神。
「俺を、抱け」
「言われるままに・・・・」
京楽は、十二単の衣をきた浮竹を胸にかき抱き、衣を脱がしていく。
やや乱暴に口づけると、浮竹は自分から唇を開いて、京楽の熱い舌を受け入れた。
十二単の衣を全部脱がせるのは、重労働だった。
やっと肌着になった浮竹の最後の服を脱がす。
「あっ」
体の全体を愛撫して、薄い胸に舌を這わせて、先端を口に含んで転がすと、浮竹は声を出していた。
何度も交わったせいで、すでに性感帯となっていた。
京楽は、浮竹の花茎を口に含んだ。
「ああっ」
浮竹がのけ反る。
弱い部分を舐めあげながら、潤滑油に濡れた指を蕾に居れた。
「あ、前も後ろもなんて、あ、あ、ああああ!!」
浮竹は、びくんと痙攣して、京楽の口の中で果てていた。
「やっ、いってるから、いってるから!」
前立腺をこりこり刺激されて、オーガズムでいってしまっていた。
「も、いいから・・・・・こい、春水」
「だめだよ。もっと、とろとろになるまで解さなないと。大事な霊王の体に、傷なんてつけれないからね」
「やあっ」
「ああ、いいね、その視線。ぞくぞくする」
睥睨するような、霊王としての顔に、京楽は支配するという優越感を抱いた。
霊王が、自分の下で乱れ、啼いている。
誰もが崇める、あの霊王が。
「あ、春水・・・・・」
切なそうに見つめられて、京楽も我慢ができなくなった。
「挿れるよ」
「んっ」
カリの部分がズッと音をたてて入り込むと、あとはずるずると中に侵入していくだけだった。
「ああああ!」
引き裂かれる痛みと快感に、生理的な涙が零れる。
その涙を吸い上げて、京楽は浮竹に口づける。
「ひあ!」
何度も入口まで引いて、奥まで突き上げた。
「ああ!」
ごりっと音がして、京楽のものが浮竹の最奥である結腸に入ったのがわかる。
「君の奥が、きゅんきゅんしてる。ぶちまけるから、全部飲んでね」
「あああ!」
ごりごりと奥を、前立腺をすりあげて突き上げられて、浮竹は精液を迸らせていた。
同時に、京楽も浮竹の奥で、熱い熱を放った。
「ん・・・・俺は、意識を失っていたのか?」
「大丈夫、浮竹?」
「ああ。体を清めてくれたのか」
「うん。ご満足かな、霊王様」
「ああ、下等な死神に抱かれて満足だ」
そこは霊王宮。
普通なら、零番隊や身の回りの世話をする者だけが立ち入りを許される場所。
そんな場所に、京楽はいた。
浮竹・・・・霊王は、月に一度、霊王宮に京楽を招きいれた。
京楽は、呼ばれると禊を行い、自分の身を清浄にしてから、霊王である浮竹と会った。
霊王である浮竹は、瀞霊廷をその眼(まなこ)で見ていたが、暇であった。
何より、愛しい者が傍にいないことが不安だった。
「京楽春水、霊王のお召しに参上仕りました」
「よくきたな。私は・・・・俺は、霊王であると同時に浮竹十四郎である。堅苦しい言葉遣いはいらない」
「じゃあ、浮竹。また、会いにきたよ。月に一度だもの。今日は、君が嫌っていっても抱くよ。とろとろになるまで、愛してあげる」
私は、俺は、恋をしている。
隻眼の鳶色の瞳をした、この男に。
遠い昔から、好きだった。
出会ってから、ずっとずっと。
「俺を抱け、春水」
霊王としての意識を眠らせて、浮竹は十二単の衣を引きずって、京楽と共に寝所に向かう。
十二単は、霊王である浮竹の正装であった。
美しい布に包まれた浮竹もまた、美しかった。
昔のような中性的な容姿を保ったままで。
これからも、霊王である浮竹が望む限り、許されし月に一度逢瀬を重ねる。
私は、俺は、霊王。
けれど、死神であった。
この男を、愛している。
そして、愛されていた。
「愛しているよ、十四郎」
「俺もだ、春水」
霊王は、今日も霊王宮で月に一度の愛を囁き囁かれる。
どんなに汚しても、霊王は清らかだった。不浄なる存在にはなりえなかった。
浮竹十四郎。
それは、私の残滓が残した、かわいい私の器にして、私そのもの。俺そのもの。
私は生きる。
俺は生きる。
霊王として。
京楽に愛された、浮竹十四郎として。
私は、愛されていた。
私も、愛していた。
私は世界。私は死神が嫌いだ。
私は楔。あるいは人柱。
私は霊王。
霊王は私。
小さき者。
右腕。
私は殺される。ユーハバッハに。
けれど、私は私を宿した者に蘇る。
私の右腕を、宿らせた者の中に、私は宿る。
-------------------------------
大戦があった。
長い平和を脅かした藍染の反乱から約2年後。
大戦があった。
多くの死神が死んだ。
霊王もまた、ユーハバッハの手により、死んだ。
そして、世界はゆっくりと崩壊していく。
浮竹は、自分の肺に宿らせたミミハギ様を解放して、神掛を行った。
世界の崩壊は止まった。
浮竹は、死ぬはずであった。
けれど、そこに呪いがあった。霊王の呪い。
己の右腕を宿らせた者にの中に、霊王は宿った。
浮竹は、霊王になった。
霊王になった浮竹は、尸魂界の瀞霊廷にいることはできなかった。
零番隊の守る、霊王がいるべき霊王宮へと移動を余儀なくされた。
霊王になった浮竹に課せられたのは、世界に在り、ただ見守ること。
私は霊王。俺は霊王。私は俺。俺は私。
混合する意識の狭間で、浮竹はまどろみながら思う。
愛した人がいた。愛していた。いや、今も愛している。
隻眼の、鳶色の瞳をした男。
総隊長と、呼ばれる者。
私は、夢を見る。
京楽という名の男に、愛される夢を。
そして、私は願う。
また、京楽に会いたいと。
その腕に抱かれたいと、浅ましい欲を抱く。
----------------------------------------
「霊王につきましては、ご機嫌うるわしゅう・・・・・・」
「堅苦しいことはいい。俺がお前を呼んだんだ。お前も、霊王ではなく俺をただの浮竹として接しろ」
「しかし、今の君は霊王だ。僕なんかが、触れていいはずがない」
「だから、それもなんとかする。今、霊王の意識は眠っている。ここにいるのは、ただのお前に愛された、浮竹十四郎だ。京楽、俺を抱け」
霊王の意識を身体の隅に追いやった浮竹は、京楽を見た。
京楽の瞳には、死んだはずの浮竹が、霊王として生きているという喜びがあった。
本当は、触れることは禁忌。
まして、霊王をその手で抱くなど、存在を汚すようなものだ。
けれど、霊王でもある浮竹はそれを欲していた。
私は、俺は、浮竹十四郎。総隊長、京楽春水に愛された、1人の死神。
「俺を、抱け」
「言われるままに・・・・」
京楽は、十二単の衣をきた浮竹を胸にかき抱き、衣を脱がしていく。
やや乱暴に口づけると、浮竹は自分から唇を開いて、京楽の熱い舌を受け入れた。
十二単の衣を全部脱がせるのは、重労働だった。
やっと肌着になった浮竹の最後の服を脱がす。
「あっ」
体の全体を愛撫して、薄い胸に舌を這わせて、先端を口に含んで転がすと、浮竹は声を出していた。
何度も交わったせいで、すでに性感帯となっていた。
京楽は、浮竹の花茎を口に含んだ。
「ああっ」
浮竹がのけ反る。
弱い部分を舐めあげながら、潤滑油に濡れた指を蕾に居れた。
「あ、前も後ろもなんて、あ、あ、ああああ!!」
浮竹は、びくんと痙攣して、京楽の口の中で果てていた。
「やっ、いってるから、いってるから!」
前立腺をこりこり刺激されて、オーガズムでいってしまっていた。
「も、いいから・・・・・こい、春水」
「だめだよ。もっと、とろとろになるまで解さなないと。大事な霊王の体に、傷なんてつけれないからね」
「やあっ」
「ああ、いいね、その視線。ぞくぞくする」
睥睨するような、霊王としての顔に、京楽は支配するという優越感を抱いた。
霊王が、自分の下で乱れ、啼いている。
誰もが崇める、あの霊王が。
「あ、春水・・・・・」
切なそうに見つめられて、京楽も我慢ができなくなった。
「挿れるよ」
「んっ」
カリの部分がズッと音をたてて入り込むと、あとはずるずると中に侵入していくだけだった。
「ああああ!」
引き裂かれる痛みと快感に、生理的な涙が零れる。
その涙を吸い上げて、京楽は浮竹に口づける。
「ひあ!」
何度も入口まで引いて、奥まで突き上げた。
「ああ!」
ごりっと音がして、京楽のものが浮竹の最奥である結腸に入ったのがわかる。
「君の奥が、きゅんきゅんしてる。ぶちまけるから、全部飲んでね」
「あああ!」
ごりごりと奥を、前立腺をすりあげて突き上げられて、浮竹は精液を迸らせていた。
同時に、京楽も浮竹の奥で、熱い熱を放った。
「ん・・・・俺は、意識を失っていたのか?」
「大丈夫、浮竹?」
「ああ。体を清めてくれたのか」
「うん。ご満足かな、霊王様」
「ああ、下等な死神に抱かれて満足だ」
そこは霊王宮。
普通なら、零番隊や身の回りの世話をする者だけが立ち入りを許される場所。
そんな場所に、京楽はいた。
浮竹・・・・霊王は、月に一度、霊王宮に京楽を招きいれた。
京楽は、呼ばれると禊を行い、自分の身を清浄にしてから、霊王である浮竹と会った。
霊王である浮竹は、瀞霊廷をその眼(まなこ)で見ていたが、暇であった。
何より、愛しい者が傍にいないことが不安だった。
「京楽春水、霊王のお召しに参上仕りました」
「よくきたな。私は・・・・俺は、霊王であると同時に浮竹十四郎である。堅苦しい言葉遣いはいらない」
「じゃあ、浮竹。また、会いにきたよ。月に一度だもの。今日は、君が嫌っていっても抱くよ。とろとろになるまで、愛してあげる」
私は、俺は、恋をしている。
隻眼の鳶色の瞳をした、この男に。
遠い昔から、好きだった。
出会ってから、ずっとずっと。
「俺を抱け、春水」
霊王としての意識を眠らせて、浮竹は十二単の衣を引きずって、京楽と共に寝所に向かう。
十二単は、霊王である浮竹の正装であった。
美しい布に包まれた浮竹もまた、美しかった。
昔のような中性的な容姿を保ったままで。
これからも、霊王である浮竹が望む限り、許されし月に一度逢瀬を重ねる。
私は、俺は、霊王。
けれど、死神であった。
この男を、愛している。
そして、愛されていた。
「愛しているよ、十四郎」
「俺もだ、春水」
霊王は、今日も霊王宮で月に一度の愛を囁き囁かれる。
どんなに汚しても、霊王は清らかだった。不浄なる存在にはなりえなかった。
浮竹十四郎。
それは、私の残滓が残した、かわいい私の器にして、私そのもの。俺そのもの。
私は生きる。
俺は生きる。
霊王として。
京楽に愛された、浮竹十四郎として。
僕はそうして君におちていく12
「京楽・・・・その目は?」
鳶色の綺麗な瞳は片方を損ない、眼帯がされてあった。
「ちょっとやられちゃって。再生手術受ける時間もないし、きっと僕はこのままにする」
「傷を見せてくれ」
そっと浮竹は眼帯を外した。
ぽっかりと穴のあいた眼窩には、緑色の義眼が入っていた。
「どうして、緑色を?」
「君とおそろいにしたくて」
愛しい。
ただ純粋にそう思った。
浮竹は、京楽の失われた左目にキスをして、同じく欠けてしまった耳を触った。
「傷、深かったんだな」
「まあ、命に別状はないから後回しにしてたら、片方失明しちゃったけどね。義眼にも視力は多少あるけど、普通の左目と一緒に見ると眩暈が起こるから、眼帯が欠かせない」
「その傷、俺が欲しかった」
「何を言うの!君が傷つくなんて嫌だよ!」
「俺だって、お前が傷つくのは嫌だ」
「君は・・・君はいつもそうだ。自分を率先して犠牲にしようとする。あの場にいたら、君は僕を庇って死んでいただろう」
「それでもいい」
「よくない!死んだら、終わりなんだよ!?」
「お前のために死ねるなら、悪くない。まぁ、もっともこの命は護廷十三隊のために捧げているけどな」
浮竹は、そう言って笑った。
「僕は怖い」
「何が」
「君が、護廷十三隊のために散ってしまうかもしれないことが」
「死神は皆、そうあるべきだ。当たり前のことを、否定しないでくれ」
「僕は嫌だ。君には生き残って、一緒に引退まで隊長をしたい」
「ああ、そうなれるといいな。敵はどうだ。いつまた来ると思う?」
「多分・・・・2、3日後じゃなないかな。奴さんら、本気で僕たちを潰しにかかるだろう。ユーハバッハの狙いは霊王だ」
霊王。
そうと聞いて、浮竹は肺の痛みにせきこんだ。
「浮竹!?」
「いや、なんでもない。ミミハギ様が・・・少し、暴れているだけだ」
私は霊王。私は楔。私は贄。
私には四肢も心臓もない。私は水晶に封じ込められていて、自由もない。
何もできない中で、唯一右腕だけが動かせた。
私は、私を宿らせる者の中に芽吹こうとしていた。
私は霊王。私は世界。私は世界の始まり。
「京楽・・・・もしも、霊王が死んだら、俺は・・・・」
きっと、霊王になる。
とは、言えなかった。
霊王になってしまえば、霊王宮で暮らすことになる。あの地は清浄なる地。
京楽に抱かれることなど、穢れの極みとして、もう京楽の姿を見ることもできなくなってしまうかもしれない。
「なぁ、抱いてくれ」
「どうしたの、浮竹」
「なんでもない。ただ、俺はお前が生きているのを確認したいんだ。抱け」
浮竹から誘ってくるのは珍しくて、夜になるのを待って、京楽は雨乾堂で浮竹を抱いた。
「あああ!」
激しい争いの後だったせいか、京楽は気が立っていた。
少々乱暴に抱かれながらも、浅ましい体は快感を覚えて、白い肌は薄紅色に染まる。
「んあ!」
背後から貫かれて、浮竹は生理的な涙を零した。
「あ!春水、顔が、顔が見たい」
背後からでは、京楽の顔が見れないからと訴えた。
「ううん!」
体を反転させられて、中がごりっと奥を抉った。
「あああーーー!!」
京楽の頬を両手で挟んで、浮竹は自分から京楽に口づけた。
「十四郎・・・・愛してる」
「俺も、愛してる、春水・・・ああ!」
奥をごりごりと抉られて、浮竹はびくんと体を痙攣させた。
オーガズムを覚えた体は、女のようだった。
「ああ・・・んう」
何度も胎の奥で子種を出されて孕むと思った。
「お前の子を、孕みたい」
「じゃあ、もっとたくさん注がないとね」
京楽は、浅ましい欲を浮竹にぶつけた。
浮竹もまた、浅ましい欲でそれを受け入れた。
時間は、あまり残されていない。
愛しい男と共にいる時間も。
霊王宮に入ってしまえば、そこの理に縛られる。
きっと、京楽とも会えなくなってしまう。
そう思うと、もっともっとと、京楽を強請った。
--------------------------------------
霊王は死ぬ。
そして私は死ぬ。
けれど蘇る。
私の器の中の者に。
浮竹十四郎は、霊王となった。
霊王は、ずっと霊王宮にあり、下界の者と接触してはいけない決まりになっていた。
だが、今回の霊王は、意思をもっていた。
決められごとを無視して、下界の京楽を月に一度、霊王宮に招くことを周囲に承諾させた。
そうしないと、霊王は自害すると言い出したのだ。
無論、本当に自害するつもりはなかっただろうが、血を見た零番隊と身の回りの世話をする者は、慌てて下界から京楽を呼んだ。
「一芝居打ったの?」
「ああ」
「霊王様と、呼べばいいの?」
「今まで通り、浮竹でいい」
「浮竹、何も血をこんなに流すことなかったんじゃないの」
首の頸動脈をかき切りそうな勢いの傷は、今は包帯を巻かれていた。
「こうでもしないと、霊王である俺は、お前に会えなかった。会いたかったんだ、京楽」
戦いが終わり、半年が経っていた。
霊王となった浮竹は、霊王宮に閉じ込められて、ただ下界を眺めていた。
愛しい隻眼の、鳶色の瞳をした男は、浮竹の墓を作った。他の死神たちは、浮竹は殉死したものだと思っている。
京楽にだけ、真実を伝えた。
京楽の腕の中で息絶えた浮竹の体は、淡い光を放ち、消え去った。
呆然とした京楽の前で、浮竹は言葉を残した。
「俺は霊王になる。生きている。必ずまたお前と出会う。しばらくの間だけ、お別れだ」
「霊王・・・浮竹、いったい君の身に何が起こっているんだい」
その質問に、答える者はいなかった。
京楽は、戦後の復興処理と死神の人員確保など、慌ただしい毎日を送っていた。
そこに、白い小鳥がやってきて、「霊王があなたに会いたがっている。ここまで来るように」
そう言い残して、霧散した。
半信半疑で、指定された場所にいくと、気づくと霊王宮にいた。
「霊王様・・・・・?」
「私は、俺は霊王である。同時に、浮竹十四郎である」
京楽は、禁忌であると分かっていたが、霊王に触れた。抱きしめた。
あの日冷たくなっていった体は、トクントクンと鼓動をうち、温かかった。
「京楽・・・月に一度、お前と会うことを決めた。これは俺が決めたこと。従ってくれ」
「月に一度でもいいよ。浮竹に出会えるなら」
京楽は、微笑んでいた。
片眼は失ってしまい、愛する人も失ってしまった。でも、愛する人は生きていた。
霊王として。
僕はそうして君におちていく11
私は、彼を愛していた。
彼もまた、私を愛してくれた。
私・・・いや、俺を。
俺は世界。俺は柱。俺は霊王。
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浮竹と京楽が隊長になって、100年が過ぎようとしていた。
虚退治やら、謀反やらいろいろあったが、尸魂界には基本平和だった。
「隊長、また羽織間違てますよ!」
「え、まじか」
副官の海燕の言葉に、自分が13番隊の・・・・京楽の羽織を着ているのだと分かって、浮竹は顔を赤くした。
「そんなに照れなくても、みんな隊長が京楽隊長とできてるって知ってるんですから、大丈夫っすよ」
「でも、恥ずかしいものは恥ずかしい・・・・・」
穴があるなら入りたい気持ちだった。
「やぁ、浮竹に海燕君。遊びにきたよ。あと、浮竹、隊長羽織間違えたでしょ。もってきたよ」
「ああ、すまない。ありがとう」
瀞霊廷のおしどり夫婦と噂される仲になっていた。
京楽は浮竹を手に入れた。浮竹もまた、京楽を手に入れた。
院生時代は親友であった。
今は、恋人同士だ。
いつも傍にいた。
2人は、比翼の鳥のようであった。
持っている斬魄刀も、二対で一つのもの。
「今日は泊まっていくか?」
「うん、そうする」
京楽は、よく雨乾堂に遊びにくるだけではなく、寝泊りもした。
仕事がたまると、副官である新人の伊勢七緒に耳を引っ張られて、8番隊の執務室に強制送還される。
よくもまぁ、あれだけ仕事をためこむものだと、月に数度、京楽のいる8番隊の執務室を訪れるが、山もりになった書類の、雪崩をおこしそうなその量に開いた口が塞がらない。
「仕事、持ってきたか?」
「うん。七緒ちゃんが3日前切れて、8番隊の執務室に強制送還されて、ずっと仕事片付けてた。仮眠もしたけど、流石に疲れたよ」
「仕事を溜めこむからだ」
ふああと大きなあくびをして、京楽は雨乾堂に持ってきた書類の束を、黒檀の文机に置いた。
黒檀の机は細かな金の細工がされてあって、京楽が雨乾堂で浮竹と一緒に仕事をするためにもちこんだものだった。
これまた高そうなものをと、最初は置くことを渋っていた浮竹だったが、京楽と一緒に居れる時間が増えるならいいかと、許可を出した。
その黒檀の机だけで、多分浮竹の給料の3か月分はするだろう。
筆なんかも高級品で、墨もまた高級品だった。
上流貴族だけあって、金をいろんなところでかけていた。
そのくせ、隊長羽織の上から羽織る女ものの着物は安いものを選んでいた。
最初は、趣味が悪いと思っていた浮竹だった。周囲も、趣味が悪いと思っていた。でも、ずっと着ているうちに、それが当たり前になって貫禄の中にも風情が出た。
長くなった、緩やかに波打つ黒髪を一つに束ねて、女ものの簪をさしていた。
簪はいつも同じもので、女ものの着物だけがたまに変わった。
浮竹の長い白髪はさらさらだが、京楽の黒髪はうねっている。固そうに見えて、意外とさわり心地はよかった。
「眠そうだな。少し仮眠するか?」
「君が膝枕してくれるなら」
そうからかい半分に答えると、浮竹は「いいぞ」と了承してくれた。
「え、ほんとにいいの?」
「ただし、俺は仕事をするからな」
「うん」
浮竹の膝に頭を乗せていると、さらりと浮竹の白い髪が顔にかかった。
「ああすまない、髪が邪魔だったな」
「いんや、これでいい・・・君の匂いがする。ちょっと寝るよ。おやすみ」
京楽は、浮竹の白い髪に口づけて、目を閉じた。
いつもかぶっている笠は、黒檀の机の上だ。
浮竹は、正座したまま京楽を起こさないように、上半身だけ動かした。
「海燕、ここの数字間違ってる」
「え、ほんとですか・・・・あちゃー簡単な計算ミスですね。すみません、書いた者に後で連絡しておきます」
海燕は、その書類をもって、新しい書類をどさどさと浮竹の机の上に置いた。
「けっこうあるな」
「隊長が寝込んでた分、けっこうたまってるんで」
「俺も、京楽のことを他人事のように言えないな・・・・・」
「何言ってるんすか隊長!こんな仕事さぼり魔人と、浮竹隊長は違います!それに、隊長は好き好んで仕事をためてるわけじゃないでしょうが。臥せっている時が多いから、仕方ないです」
「本当に、この体はなんとかならないものか」
生まれて数百年。
肺の病はミミハギ様を宿らせたことで、死にそうな目にあうこともあったが、死ななかった。
「うーん」
2時間ほどして、京楽が目覚めた。
「よく寝れたか?」
「うん。君の膝枕のお陰で深い睡眠をとれた。もう眠くないよ」
京楽は起き上がり、黒檀の机の上に置いた笠をどけて、もってきた仕事の書類をどさりと置いた。
けっこうな量であった。
京楽は、普段さぼるが決して仕事ができない男ではない。
たださぼり癖が酷く、限界までため込むことが多かった。
「ちょうど、休憩にしようと思っていたところだ。海燕、茶とおはぎを用意してくれ」
「浮竹、いいの?君のためのおはぎじゃないの?」
京楽の分まで用意していなかっただろうに、浮竹は自分の分のおはぎを京楽に分けてあげた。
「今度、甘味屋行こうね。好きなだけ食べていいよ」
「好きなだけ、食べていいんだな。財布は重くしろよ」
京楽は苦笑する。
浮竹は、甘味物なら人の2~3倍をぺろりと平らげてしまう。
自然と財布の中身も軽くなる。
「仕事が終わったら、天気もいいし、ちょっと外に散歩にでもいこうか」
「ああ、今は桜が見頃だな。花見もいいかもしれない」
「じゃあ、お酒もっていこう」
「海燕に、弁当を作ってもらうように頼んでおく」
海燕は、浮竹の食事をよく運ぶ。調理係にお弁当を作ってくれと言って、海燕は京楽が浮竹と仲良く寄り添っているのを、ただ黙して見ていた。
二人の付き合いは、約150年になる。
このまま、穏やかに時が過ぎていくのを、海燕は祈った。
ミミハギ様。
それが霊王の右腕であるなど、誰も知る由もなかった。
浮竹は知らない。
ミミハギ様が霊王そのものであることを。
霊王をその身に宿し、霊王に何かあった際には、浮竹が霊王となる。
そんなこと、夢にも思わないだろう。
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私は、死神が嫌いだ。
私を封じ込めた5大貴族が憎い。
いや、今は1つ欠落して4大貴族だったか。
とにかく、私は死神が嫌いだ。
なのに、私の半身はある小さき死神に宿っている。
私は世界。私は楔。私は贄。
私は、世界の始まり。
3歳の子の命が散るのが哀れで、私は私を宿らせた。私の右腕を。
他の四肢や心臓は思い通りに動かなかった。
右腕だけが、自由に動かせた。
幼い子供は、無垢でかわいく、そして死にそうだった。
助けてあげたい。
ただそう思い、宿った。
結果、子供は命を取り留めた。
それと同時に、私を宿した。
私は世界。私は楔。私は贄。
いつか、この小さき死神に私は宿り、私と混ざり合って、私は再び霊王となり霊王宮に住まう。
私は俺。俺は私。
遠くない未来、俺は、霊王となる。
僕はそうして君におちていく10
浮竹と京楽は、正座していた。
お互いに向かい合い、ぺこりとお辞儀をした。
「じゃあ、いいかな」
「ああ、いいぞ」
浮竹は隊長羽織をばさりと脱ぎ捨てて、死覇装も脱いで裸になろうとしていた。
「いやいやいや、待って、十四郎」
「なんだ?まさか、今になって抱きたくないとか・・・・」
「そうじゃない。服を脱がせるのも、僕の楽しみの一つなんだから、全部脱がないで」
「あ、ああ・・・・・」
浮竹は、意識しすぎて真っ赤になった。
そっと、褥の上に横たえられた。
乱れた死覇装の中に、京楽の手が入ってくる。
「ん・・・・・」
薄い胸板を這う指が、こそばゆかった。
「あ・・・」
胸の先端をさすられて、クニクニといじられると、そこは固くなっていた。
「んんっ」
京楽の舌が、浮竹の肌を這う。
舌でもう片方を転がされて、ビリビリと全身がしびれるような感覚を覚えた。
「ああ・・・もう、こんなに濡れてる」
浮竹の下肢は、先走りの蜜をダラダラ零して、ゆるりとたちあがっていた。
「やっ」
下着の上から、直接握り込まれた。
そのまま下着を脱がされて、上下に扱われた。それだけで、快感で頭がどうにかなりそうだった。
「ああっ!」
京楽は、浮竹のものを口に含んだ。
根元をしごきながら、チロチロと鈴口を刺激してやると、あっという間にう浮竹は熱を京楽の口の中に放っていた。
「やっ、飲むな!」
ごくりと嚥下してしまった京楽の行為が信じられなくて、浮竹は顔を手で覆ってしまった。
「十四郎、顔見せて。声聞かせて。隠さないで」
「春水・・・・」
「好きだよ」
「俺も・・・・」
唇を重ね合う。
「俺も、する」
「え?」
「俺も、その、お前の、飲みたい」
「いや、そんなのしないでいいから」
「いいから、やらせろ」
浮竹は、京楽を押し倒して、京楽に跨ると、京楽の勃起している熱い熱の塊に、そっと触った。
びくりと、京楽の背がはねる。
「はは、すごいな、お前の」
浮竹は、京楽のものの先端にキスをすると、そのまま口に含んだ。
「・・・・・っあ」
「京楽も、声を出せ。感じているんだろう?」
「十四郎・・・・いいよ、そのまま、そうそう、舌を這わせて・・・・」
「こうか?」
「うん、そう」
ジュぷじゅぷと音をたてて、唾液をつけて舐めあげて、カリ首を吸い上げると、京楽のものが弾けた。
「うわ!」
びゅっと飛んで、それは浮竹の顔にかかった。
「ごめん、十四郎!」
「いや、いい」
浮竹は、顔にかかったものを舐めとった。
「苦い」
「飲まなくていいのに」
京楽が、浮竹を押し倒した。
「初めてでで怖いだろうけど、僕に任せて」
「分かった」
京楽は、用意していた潤滑油を指にまとわせると、浮竹の蕾に指を侵入させた。
「あっ」
「ここ、いい?」
こりこりと前立腺を刺激されて、こくこくと浮竹は頷いた。
ぐちゃぐちゃ。
音をたてて、中を解していく。3本の指を飲みこめるようになった頃には、浮竹の中は熱くてとろけるようだった。
「挿れるから、力抜いて」
「あ、ああ・・・・・んっ!」
ズッと音をたてて、京楽のものが浮竹の中に入ってきた。
「ほら、分かる?僕のものが、浮竹の中に入ってるって。僕たち、今一つになってる」
外側からでも分かるほど、腹部は膨らんでいた。
「やっ、大きい」
「でも、切れてないし、うん、このまま続けるよ」
「んあっ」
ぐちゅぐちゅと水音を立てて、京楽のものが浮竹の中を出入りする。
「きもちいい?」
「あ、きもちいい・・・・・・」
前立腺ばかり突き上げられて、浮竹は頭が真っ白になった。
「あ!」
空いきの、オーガズムを初めて体験して、浮竹は呼吸を乱した。
「もしかして、いっちゃった?」
「あ、あああ!」
「僕も、そろそろ限界かも・・・・・中で出すよ。いい?」
「うあ!」
ズズっと突き上げてくる熱は、最奥の結腸にまで入りこんできた。
ゴンゴンとノックされて、ぱくぱくと結腸が蠢く。
「出すよ、いいね?」
「いあああああ!あ、あ、あ・・・・・・」
最奥に、愛しい男の熱を受け止めながら、浮竹は意識を失った。
気が付くと、眠っていた。
隣では、京楽が眠っていた。
起き上がろうとして、ズキリと痛む腰に手を当てる。
「ああ・・・ほんとに、抱かれたんだ」
「浮竹、大丈夫?」
京楽が、起き出した浮竹に気づいて、こっちを見つめていた。
「僕、まだおさまってないんだ。続き、してもいい?」
「ああ。好きなだけ、抱け」
「その言葉、後悔しないでよ」
「もお、やぁっ」
何度、射精しただろうか。
もう、出すものもないのに、前を扱かれながら、突き上げらていた。
背後からだったり、騎乗位だったりと、京楽の好きなように貪られていた。
「やっ」
「まだいけるでしょ?がんばって」
「無理っ」
「女の子みたいに、なっちゃったね」
「あ、あ、もれる、やだ、やだ!」
潮を吹いた浮竹は、漏らしたと思いこんで、泣きだした。
「ううう・・・・・・」
「十四郎、これは潮だから。女の子みたいにいっちゃっただけだから、おもらしじゃないよ」
「本当に?」
「うん」
「うあ!」
最奥を突き上げられて、浮竹は頭が真っ白になった。
「ああああーーーーー!!!」
オーガズムでいっていた。
京楽は、もう何度目かも分からない精液を、浮竹の中にぶちまけて、やっと満足した。
「お風呂、入ろうか」
「ん・・・・・」
力の入らない浮竹を抱きかかえて、風呂に入った。
中に出したものをかきだすと、白い精液が大量に出てきた。
「いっぱい、十四郎の中で出しちゃった」
「あ、孕んでしまう」
「孕んでよ。俺の子を」
「やっ」
むずがる浮竹を撫でて、京楽は満足げに微笑んだ。
「浮竹の、初めて、確かにもらったよ」
「俺、もうお婿にいけない」
「僕と結婚しよう」
「ああ、それもいいかもな」
浮竹は、うつらうつらと、意識を失い始めた。
疲労感から、眠気を感じている浮竹をささっと体を洗って、風呂からあがらせて、長くなった腰まである白い髪の水分をふきとって、布団をしいてそこに横にさせると、浮竹はすぐに眠ってしまった。
お互いに向かい合い、ぺこりとお辞儀をした。
「じゃあ、いいかな」
「ああ、いいぞ」
浮竹は隊長羽織をばさりと脱ぎ捨てて、死覇装も脱いで裸になろうとしていた。
「いやいやいや、待って、十四郎」
「なんだ?まさか、今になって抱きたくないとか・・・・」
「そうじゃない。服を脱がせるのも、僕の楽しみの一つなんだから、全部脱がないで」
「あ、ああ・・・・・」
浮竹は、意識しすぎて真っ赤になった。
そっと、褥の上に横たえられた。
乱れた死覇装の中に、京楽の手が入ってくる。
「ん・・・・・」
薄い胸板を這う指が、こそばゆかった。
「あ・・・」
胸の先端をさすられて、クニクニといじられると、そこは固くなっていた。
「んんっ」
京楽の舌が、浮竹の肌を這う。
舌でもう片方を転がされて、ビリビリと全身がしびれるような感覚を覚えた。
「ああ・・・もう、こんなに濡れてる」
浮竹の下肢は、先走りの蜜をダラダラ零して、ゆるりとたちあがっていた。
「やっ」
下着の上から、直接握り込まれた。
そのまま下着を脱がされて、上下に扱われた。それだけで、快感で頭がどうにかなりそうだった。
「ああっ!」
京楽は、浮竹のものを口に含んだ。
根元をしごきながら、チロチロと鈴口を刺激してやると、あっという間にう浮竹は熱を京楽の口の中に放っていた。
「やっ、飲むな!」
ごくりと嚥下してしまった京楽の行為が信じられなくて、浮竹は顔を手で覆ってしまった。
「十四郎、顔見せて。声聞かせて。隠さないで」
「春水・・・・」
「好きだよ」
「俺も・・・・」
唇を重ね合う。
「俺も、する」
「え?」
「俺も、その、お前の、飲みたい」
「いや、そんなのしないでいいから」
「いいから、やらせろ」
浮竹は、京楽を押し倒して、京楽に跨ると、京楽の勃起している熱い熱の塊に、そっと触った。
びくりと、京楽の背がはねる。
「はは、すごいな、お前の」
浮竹は、京楽のものの先端にキスをすると、そのまま口に含んだ。
「・・・・・っあ」
「京楽も、声を出せ。感じているんだろう?」
「十四郎・・・・いいよ、そのまま、そうそう、舌を這わせて・・・・」
「こうか?」
「うん、そう」
ジュぷじゅぷと音をたてて、唾液をつけて舐めあげて、カリ首を吸い上げると、京楽のものが弾けた。
「うわ!」
びゅっと飛んで、それは浮竹の顔にかかった。
「ごめん、十四郎!」
「いや、いい」
浮竹は、顔にかかったものを舐めとった。
「苦い」
「飲まなくていいのに」
京楽が、浮竹を押し倒した。
「初めてでで怖いだろうけど、僕に任せて」
「分かった」
京楽は、用意していた潤滑油を指にまとわせると、浮竹の蕾に指を侵入させた。
「あっ」
「ここ、いい?」
こりこりと前立腺を刺激されて、こくこくと浮竹は頷いた。
ぐちゃぐちゃ。
音をたてて、中を解していく。3本の指を飲みこめるようになった頃には、浮竹の中は熱くてとろけるようだった。
「挿れるから、力抜いて」
「あ、ああ・・・・・んっ!」
ズッと音をたてて、京楽のものが浮竹の中に入ってきた。
「ほら、分かる?僕のものが、浮竹の中に入ってるって。僕たち、今一つになってる」
外側からでも分かるほど、腹部は膨らんでいた。
「やっ、大きい」
「でも、切れてないし、うん、このまま続けるよ」
「んあっ」
ぐちゅぐちゅと水音を立てて、京楽のものが浮竹の中を出入りする。
「きもちいい?」
「あ、きもちいい・・・・・・」
前立腺ばかり突き上げられて、浮竹は頭が真っ白になった。
「あ!」
空いきの、オーガズムを初めて体験して、浮竹は呼吸を乱した。
「もしかして、いっちゃった?」
「あ、あああ!」
「僕も、そろそろ限界かも・・・・・中で出すよ。いい?」
「うあ!」
ズズっと突き上げてくる熱は、最奥の結腸にまで入りこんできた。
ゴンゴンとノックされて、ぱくぱくと結腸が蠢く。
「出すよ、いいね?」
「いあああああ!あ、あ、あ・・・・・・」
最奥に、愛しい男の熱を受け止めながら、浮竹は意識を失った。
気が付くと、眠っていた。
隣では、京楽が眠っていた。
起き上がろうとして、ズキリと痛む腰に手を当てる。
「ああ・・・ほんとに、抱かれたんだ」
「浮竹、大丈夫?」
京楽が、起き出した浮竹に気づいて、こっちを見つめていた。
「僕、まだおさまってないんだ。続き、してもいい?」
「ああ。好きなだけ、抱け」
「その言葉、後悔しないでよ」
「もお、やぁっ」
何度、射精しただろうか。
もう、出すものもないのに、前を扱かれながら、突き上げらていた。
背後からだったり、騎乗位だったりと、京楽の好きなように貪られていた。
「やっ」
「まだいけるでしょ?がんばって」
「無理っ」
「女の子みたいに、なっちゃったね」
「あ、あ、もれる、やだ、やだ!」
潮を吹いた浮竹は、漏らしたと思いこんで、泣きだした。
「ううう・・・・・・」
「十四郎、これは潮だから。女の子みたいにいっちゃっただけだから、おもらしじゃないよ」
「本当に?」
「うん」
「うあ!」
最奥を突き上げられて、浮竹は頭が真っ白になった。
「ああああーーーーー!!!」
オーガズムでいっていた。
京楽は、もう何度目かも分からない精液を、浮竹の中にぶちまけて、やっと満足した。
「お風呂、入ろうか」
「ん・・・・・」
力の入らない浮竹を抱きかかえて、風呂に入った。
中に出したものをかきだすと、白い精液が大量に出てきた。
「いっぱい、十四郎の中で出しちゃった」
「あ、孕んでしまう」
「孕んでよ。俺の子を」
「やっ」
むずがる浮竹を撫でて、京楽は満足げに微笑んだ。
「浮竹の、初めて、確かにもらったよ」
「俺、もうお婿にいけない」
「僕と結婚しよう」
「ああ、それもいいかもな」
浮竹は、うつらうつらと、意識を失い始めた。
疲労感から、眠気を感じている浮竹をささっと体を洗って、風呂からあがらせて、長くなった腰まである白い髪の水分をふきとって、布団をしいてそこに横にさせると、浮竹はすぐに眠ってしまった。