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小説掲載プログ
10 2024/11 14 2324 28 29 30 12

それいけ一護君 クリスマス

「そういえば、クリスマスだな」

「おお、もうそんな季節か」

「朽木家にねーよな。クリスマスツリーとか」

一護の言葉に、ルキアが顔を輝かせた。

「あるぞ、クリスマスツリー。イルミネーションが綺麗なのだ。今年も飾りつけをしなければ!」

「あんのかよ!いつ誰が買ったんだよ」

「私がクリスマスツリーが欲しいと言ったら、次の日にはでっかいクリスマスツリーがあった。買ってくださったのは兄様だ!」

「ほんと、白哉はお前に甘いんだな・・・・・・」

「兄様は、とても優しいぞ?」

ルキアの処刑を黙って見ていた頃の白哉は、もうどこにもいなかった。

その日は休みだった。

ルキアと一緒にでかいクリスマスツリーを出して、飾りつけをしていく。

あまりにでかいので、脚立とかが必要になった。

「後はイルミネーションのスイッチいれればOKだな」

「いれるぞ」

「ああ」

いろんな色に点滅するイルミネーションは綺麗だった。

現世のデパートなんかに置いてあるクリスマスツリーにも負けない豪華さだった。

「にゃあああ」

「琥珀、貴様もクリスマスツリーを見に来たのか?」

白哉がルキアに買い与えた猫の琥珀は、白猫でオッドアイが綺麗だった。

「やっぱ、クリスマスプレゼントとか用意するべきなのかな?」

「まだなのか?私は貴様の分も兄様の分も用意してあるぞ」

「まじかよ」

一護は、伝令神機で尸魂界ネットワークにアクセスして、ルキアのためのチャッピー抱き枕を注文した。

「ルキアの分は手配できたけど、白哉の分がなぁ・・・・・」

仕方なしに、現世の赤ワインなどを頼んでみた。

けっこうな値段になって、ルキアと違ってお小遣いをもらっていない一護には痛い出費だった。

抱き枕は値段が5千くらいだが、赤ワインは高級なのを選んだから、5万はした。

でも、5万の赤ワインなど、白哉に言わせればきっと水のようなものだろう。

辛いのが好きな白哉のために、辛い味付けのチキンを頼んだ。

クリスマスケーキは、白哉が甘いものがだめなため、ルキアと一護で食べる分を注文した。

「早く、クリスマス当日にならぬかな」

「それよりさ・・・・」

クリスマスの飾りつけも終わり、時間も余った二人は、寝室にいた。

ルキアを座らせて、その膝の上に一護は頭を乗せていた。

「いきなり膝枕させろだなんて、なんなのだ貴様」

「いや、たまには誰にも邪魔されずに二人だけの時間を過ごしたいと思って」

「たわけ!」

ルキアは朱くなったが、まんざらでもないようだった。

ルキアを抱き締める。ルキアは朱くなったが、抱き締め返してくれた。

「はぁ・・・・平和だ。好きだぜ、ルキア」

「あ、私も貴様のことが好きだ・・・・・ふあっ」

触れるだけのキスをした。

今は白哉がいないので、まだ太陽があるうちからいちゃいちゃできた。

「好きだ・・・・」

ルキアの衣服を脱がせていく。

「あ、一護・・・・」

夫婦になってから、夜の営みがないわけじゃなかったが、日があるうちからは初めてだった。

「いちごお・・・好きだ・・・ああっ」

ルキアのいいところばかりを責めてやると、ルキアはあっという間に高みに登ってしまった。

一護も満足して、二人で布団の上で横になた。

丸くなったルキアを抱き締めて、一護も丸くなって眠った。

3時間くらいが経ち、日もすっかり暮れてしまった。

「ああ、そろそろ夕飯の時間か・・・・・・」

ルキアを起こそうとすると、腕の中にルキアはいなかった。

ルキアの姿を求めて彷徨っていると、白哉とルキアが会話しているシーンに遭遇した。

「で、抱き締めると、私もきもちよくなってしまって・・・」

おいおいおいおい。

「ルキア!」

「どうしたのだ、一護!」

「お前、夜の営みを白哉に話てるのかよ!」

「はぁ!?」

ルキアは真っ赤になって、一護をぽかぽかと殴ってきた。

「たわけ、この愚か者!琥珀を抱き締めると、私もその毛並み気持ちよくなってしまったと話していたのだ!いくら私でも、貴様との夜のころを話すほど愚か者ではない!」

ぽかぽか殴ってくるけど、全然痛くなくて、一護はルキアを抱き上げた。

「わあ!」

白哉は険しい顔をしていた。

「白夜のバーカ!ルキアは俺のもんだ」

「・・・・散れ、千本桜」

「ぎゃあああああああ」

ルキアを放りだして、桜の海に一護が溺れる。千の桜の刃を受けて、けれど一護も斬月を取り出す。

「月牙天衝!」

千の桜の群れは、消えてしまった。

「・・・・・卍解・・」

「待ってください、兄様!このような場所で卍解など、いけません!一護、貴様が悪い謝罪申し上げぬか!」

「はいはい、ごっめ~ん白哉義兄様、ついルキアを一人占めにしちまった」

白哉の涼しい顔に、ピキピキと怒りの血管マークが浮いていく。

「明日はクリスマスだし、俺が悪かった」

全然悪びれもしない顔でそういうと、白哉はぷいっと一護を無視して食堂に消えてしまった。

「夕飯の時刻だな。私たちも、食堂にいこう」

食堂にいくと、一護の前の皿に、骨がおいてあった。他には何もなかった。

「おい、白哉義兄様。これはないだろ」

「知らぬ」

「ふん!」

厨房に行って食事をもらおうとすると、白哉の命令で骨以外は出せないという。

「ふーんだ。ルキア、行くぞ」

「おい待て、私はまだ食事の途中!」

「居酒屋に行こうぜ」

「でも」

「いいから」

ルキアをずるずると引きずって、財布をもって一護は瀞霊廷の居酒屋に、ルキアと一緒に行った。

よく恋次と飲み交わす店で、案の定恋次がいた。

「一護にルキアじゃねーか!どうしたんだ?」

「白哉義兄様が骨しか食わせてくれねーから、酒飲むついでに夕飯食いにきた」

「何か、隊長を怒らすことでもしたのか?」

「ルキアとの仲見せつけて、バーカって言ってやった」

その言葉に、恋次が震えあがった。

「隊長にバーカなんて、よく言えるな!俺が言ったら、卍解ものだぜ」

「ああ、卍解しようとしてた」

「根性座ってるな、一護」

「白哉とは、一応家族だからな。卍解しても、本気で切りかかってはこねーよ」

「そうだぞ、兄様は優しいのだ!」

ルキアが、酒を飲んで朱い顔をしながら、いくら優しいのか語ってくれた。

「優しいっていうか、ただの重度のシスコンだろ」

一護が言う。

「そのようなことはないのら~~」

既に酔っぱらったルキアも、重度のブラコンだ。

「あー。また酔いつぶれやがって・・・酒に弱いんだから、あんま飲むなっての」

「このまま、ルキアを美味しくいただくつもりか、一護!」

「いや、昼過ぎにもう美味しくいただいから、今日はもういいわ」

恋次が朱くなった。

「お前ら、淡泊のようですることしっかりしてるんだな」

「そりゃ夫婦だしな。いずれ子供も欲しいし」

「兄様~それはわかめ大使ではなく、こんぶ大使です~ふにゃら~~~」

一護は、居酒屋でお腹いっぱい食べると、べろんべろんに酔っぱらったルキアを連れて、帰宅した。

白哉が待っていた。

「なんだよ」

「ルキアは、酒に弱い。あまり飲ますな」

「へいへい。今度からは飲ませないように気をつける」

日付が変わり、クリスマスになった。

「メリークリスマス、白哉」

白哉は驚いた顔をしていた。用意していた赤ワインをもってきて、渡す。あと、辛い味付けにしたチキンも。

「兄は・・・今回は、私が悪かった」

「え、白哉が俺に謝罪!?熱でもあんのか!?」

額に手をあてると、平熱であった。

「白哉が俺に謝罪するとか、きっと夢だ」

ほっぺをつねるが、痛かった。

「夢じゃない!じゃあ、白哉の偽物か!おいこら、本物の白哉を出せ!」

「兄は・・・・・」

ふるふると、白哉が震える。

「散れ、千本桜・・・・・・」

「ぎゃあああああああ!!」

ルキアをそっと抱き上げ、千本桜をまともに受けて、白目をむいた一護を、ぺっと、朽木家から放りだして、玄関の鍵をかけた。

「ふにゃー兄様、愛していますー」

「私も愛している、ルキア」

一護は、寒さで気がついた。、

「おい、締め出しかよ。まじかよ」

玄関はびくともせず、窓も全部施錠されていた。

「白哉めー。覚えてろ」

仕方なしに恋次のところに行って、泊めてもらう一護であった。



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禁忌という名の番外編 リピート

それは、願い。

どうかどうか、京楽がこちら側へきませんように。



一度散ってしまった命だ、浮竹の命は。

京楽が、オリジナルの一房の白い髪から作り上げられた霊骸のクローン。

それが今の浮竹だった。

涅マユリの手で生み出されたクローンである浮竹には、花の神によって与えられた特殊な義魂丸が入ってる。

それが今の浮竹だった。

オリジナルの浮竹がもっているはずの記憶を、完全ではないがもっていた。

たくさん愛された。偽りの命でありながら、1年という限られた時間ではあったが、愛され愛しあった。

1年が経った。

お別れの時間になった。

笑って別れようと思っていたのに、涙が止まらなかった。


ああ。

お前は、こちら側にくるな。

でも、京楽はこちら側へくることを選んだ。

たくさんのありがとうを。

一緒に落ちてくる京楽に。


京楽には、生きていて欲しかった。でも、「俺」という存在をつくりだすほどに浮竹を愛していた京楽には、たとえ偽りでも「俺」という名の浮竹を失うのは、もう我慢ができなかったのだろう。


ゆらりと、水底で花の神の愛児となり、眠りにつく二人はまた始める。

二人の物語を。



「俺は、浮竹十四郎という」

「京楽春水だよ」

学院で出会った、違う世界線の二人に、花の神は水底に眠る愛児たちの記憶を与えた。

学院で、たくさんの人が見ている中、二人は逃げるようにお互いの手を取り合って走り出した。

誰もいないのを確認する。

「本当に、浮竹?これは夢じゃないの?」

今の京楽には、過去に浮竹と一緒に落ちることを選んだ記憶があった。

「お前こそ、本当に京楽なのか?」

クローンの浮竹であった記憶が、今の浮竹の中にあった。

「これは現実なのか・・・・」

「本当の本当に?」

二人は、涙をぼろぼろ零しながら、抱き合った。

口づける。

お互い、甘い花の香がした。

「この世界の未来はもう知っている。浮竹、一緒にこの世界をユーハバッハの手から守ろう」

500年以上先の未来まで知っている。

「ああ。俺はもう神掛もしないし、ミミハギ様を失ったりしない。未来を知る俺たちなら、ユーハバッハが完全に目覚めるまでになんとかできそうだ」

もう、二度とこの世界で失わないようにと。

山本元柳斎重國と卯ノ花烈も死なないような、未来を描こう。

誰もが、笑顔でいられるような未来を。

「おっと、授業には出なきゃいけないね」

「そうだな。お互い卍解もできるだろうが、まだ斬魄刀もない。鍛錬して、霊圧を高めないと、未来でユーハバッハと戦えない」

この世界で、もう誰も散ることのないように。

世界の歴史を捻じ曲げるだろう。

そうなることで、この世界がどうなるかは分からない。

それでも。


それでも、もう一度

「君」と

「お前」と


生きることができるのならば。

本望。


永遠の愛を

「君」へ

「お前」へ






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色のない世界 番外編 山じい

「おはよう」

「ああ、おはよう」

今日も、二人の何気ない一日が始まろうとしていた。

季節は春。

うらかかな日差しを浴びて、植物たちが芽吹き花を咲かせる。

今はなくなってしまった、雨乾堂の浮竹の墓の前まできていた。

墓石がった場所に酒を注いで、桜の花を添えた。

「何か、意味があるのか?」

「一応、君の墓であったことに変わりはないからね」

花の神の力で、もう一度生命を与えられた二人は、愛された証の甘い花の香をさせながら、生きた。

結婚式を挙げた。

今日は、3回目の結婚記念日だった。

「花の神は・・・・桜は嫌いかな?」

雨乾堂があった場所のすぐそばにある池に、桜を沈めた。

椿の狂い咲きの王が欲する椿はもう散ってしまった。椿は冬にしか咲かない。

以前は毎年冬のなると椿を沈めた。

この前は、夢魔に襲われたのを、花の神の助けを受けて現実世界に帰ってきた。

存在理由をなくした花の神であるが、愛児である浮竹と京楽が生きることで、また自分の存在理由を取り戻し、力を取り戻した。

「さぁ、いこうか」

桜が沈んでいったことを確認して、京楽は浮竹と手を繋ぎながら歩きだす。

「結婚記念日だけど、特にすることがないね」

「そうだな」

京楽は総隊長だ。

今日は休暇をとっているが、二人で何処かへ旅行にいけるほど、休みはもらえそうにない。

総隊長としての日々は忙しく、浮竹も仕事を手伝っていた。

「元柳斎先生に、結婚のことを報告するのはどうだろう?」

「ああ、いいね。山じいの墓参り最近行ってなかったし・・・・」

また、酒を用意して、桜の枝を折って、山本元柳斎重國の墓参りをした。

「山じい・・・尸魂界は見ての通り復興して、僕らもぼちぼち幸せにやっているよ。僕たち、ついに結婚したんだ」

「元柳斎先生・・・結婚しました。よりにもよって京楽ですが、毎日楽しくやってます」

「よりにもよってって酷くない?」

「だって、元柳斎先生はいつも京楽のことを叱っていただろう」

「そうだね。浮竹には甘かった・・・・あの差は、今でも悔しいなぁ」

ふと、猛烈な眠気に誘われて、浮竹も京楽もその場に倒れこんでしまった。


「こりゃ春水!十四郎!」

「え、元柳斎先生!?」

「山じい!?」

「ちょいと、お前たちの神様とやらに頼んでな。こうやって、夢の中で言葉を送っておるんじゃ」

「元柳斎先生!」

「山じい!」

二人な涙を零しながら、親のようであった山本元柳斎重國に抱き着いた。

「こりゃ春水、十四郎。この程度のことで泣きだすなど、鍛錬がたりんぞ!」

「平和になったからねぇ、自己鍛錬くらいで、山じいと一緒に戦っていた頃のようにはいかないよ」

「俺は一度死んだのに蘇って・・・・もう隊長じゃなくなったったので、自己鍛錬もあんまりしてないです。すみません」

「まぁよい。結婚じゃと?」

「うん」

「はい」

「はぁ・・・わしは、お主らの子を見るのをずっと楽しみにしておったのじゃがのう。十四郎が死に、春水は身を固めるかと思ったら、十四郎を思うあまりに独り身で。まぁよいわ。二人の元気な姿をみれただけでもよしとするかのう」

山本元柳斎重國は、笑った。

自分の死後、確かに尸魂界は息づいている、

今は平和すぎて、大戦の記憶もない者も多い。新しく生まれてくる命は、大戦のことを知らない。阿散井苺花のように。

「地獄は、あまりよくないが、卯ノ花とまぁまぁぼちぼちやっておる。十四郎も一時はいたので、覚えおるじゃろう」

「それが、元柳斎先生。死んだ後の記憶なんてないんです」

「そうか。ないほうがよじゃろうな。地獄は、生きにくいところじゃて」

色のない世界だ、そこは。

隊長クラスの者は、死ぬと地獄に落ちる。霊子が高すぎるために。山本元柳斎重國、卯ノ花烈、浮竹十四郎と、たて続けに地獄に霊子があふれ、一時期地獄の蓋があき、ザエルアポロといった亡霊が出没した。

それもなんとかなり、尸魂界はまた平穏を取り戻した。

「十四郎。地獄で嘆いておったな。京楽も一緒に落としたいと」

「元柳斎先生!」

「まぁ、その頃の記憶がないのは幸いじゃ。地獄は地獄。お主らは、当分死ぬなよ。死なれては、また地獄の蓋が開く」

「はい、元柳斎先生」

「山じい・・・山じいは、心残りとかないの?」

「あったとも。今目の前にいるお主らじゃ。尸魂界はきっと大丈夫じゃと信じておったらその通りになった。じゃが、死んでしまった十四郎の引きずられるように、こちら側にきそうな春水、お主のことを心配しておったのじゃ」

「山じい・・・」

「じゃが、花の神にまた十四郎を与えられた。もうわしも心に思い残すことは何もない。春水も十四郎も、寿命を全うしてからやってこい。地獄は気安いところではないが、まぁ戦いには飽きるこはなかろうて」

「絶対死なない。地獄なんてやだ」

「俺も嫌です」

「ふふふ・・・まぁ、わしが伝えたいのはそれだけじゃ」

ふわりと、音もなく花の神が山本元柳斎重國の隣に立った。

「もう、二度と言葉は交わせない。言っておくことは、他にないか?」

「元柳斎先生、お元気で!」

「そうそう、山じい、元気でね!霊子が巡り、やがて何かに生まれ変わったらまた会おう!」

「うむ」

山本元柳斎重國も、花の神も花びらとなって散っていく。

「桜の花、悪くなかった----------------」

はっと、二人して目が覚めた。

「夢?」

「いや、夢の中の現実だな」

もってきた桜の枝よりも多い、桜の花びらに二人は埋もれていた。

「山じい、元気そうだったね」

「ああ、そうだな」

もう一度、山本元柳斎重國の墓に酒を注ぎ、冥福を祈った。


「行こうか」

「ああ」

一度、浮竹は死んだ。京楽もだ。

花の神に二度目の命をもらい、今を生きている。

「また、冬になれば椿の花を沈めよう・・・・・」

「そうだね」

花の神、椿の狂い咲きの王のために。


世界は廻る。

軋む音を立てて。

一度終わった生をまた繰り返す浮竹。浮竹のために一度は命を手放した京楽。

花の神に愛されて、二人は同じ世界で同じ道を歩む。


もう、色のない世界はない。

世界は、色づいていた。








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院生時代の部屋 パンツ星人

浮竹が、湯浴みをしようと自分のたんすの中からパンツを取り出そうとして、1枚もなかった。

「京楽ーーーーー!」

「はーい('ω')ノ」

「貴様というやつは!」

首を締め上げた。

「とったパンツ、全部返せ」

鬼の形相をされて、京楽は悲しげにパンツが入った包みを出してきた。

「さよなら、ジョセフィーヌ、マリア、アリエス、トワ、クルーナ、マリアンヌ、リエット」

パンツ1枚1枚に名前をつけているらしかった。

浮竹は引き気味になりながらも、取り返したパンツが無事であるのを確認してから、湯殿に消えた。

「むふふふふ」

名前をつけたパンツをまた奪い、湯浴みをしている浮竹の用意していたパンツも奪った。

「ぐふふふふ」

湯浴みを終えて、体をふいてパンツをはこうとすると、ぱんつがなかった。仕方なしに、胸元までバスタオルで隠して、京楽の目の前にくる。

「(*´Д`)ハァハァパンツはいてない浮竹・・・」

「パンツを返せ」

「嫌だ!全部僕の物だ!」

「そうか。よほど命がいらないのだな。破道の4、白雷」

鬼道の攻撃を、さっと京楽は交わした。

何度繰り返しても、避けられてしまう。

浮竹は、仕方なしに胸までまいていたバスタオルを、ばっとその中身を全て、一瞬だけ京楽に見せた。

ぶーーーーーー!

京楽は、鼻血を出して倒れた。

京楽の手からパンツを奪い返し、はいてパジャマを着る。

まさか自分が、変態京楽が、コートの下のパンツを見せつけるのと同じような行動に出るしかないなんてと、自己嫌悪した。

パンツは全部で15枚。全部奪い返して、鍵をかけた。

まだドクドクと鼻血をこぼしている京楽の体を蹴りあげる。

「おい、京楽」

「ぬふふふふ、浮竹の裸、ばっちり網膜に焼き付けた」

「忘れろ」

その脳天に、ひじ打ちをかますと、京楽は静かになった。

そのまま消灯する。

次の日、起きると大きめのバスタオルを被った京楽がいた。

ばっと中を見せる。

フルチンのまっぱだった。

「破道の4、白雷」

「あぎゃああああ」

昨日よけまくっていたのは、偶然だったらしい。

黒焦げになったっ京楽の頭をぐりぐりと踏みつけた。

「あん、もっと踏んで浮竹」

ぺろぺろと裸足の足を舐められえて、京楽の体を蹴り転がした。

「愛が痛いけど・・・・幸せ」

ガクリと、京楽は意識を失った。

京楽を放置して学院に登校する。

「お、珍しいな、京楽は?」

「知るか」

「おーこわ。浮竹の奴荒れてるぞ」

いつもの友人たちは、声をあまりかけてこなかった。

昼前になり、京楽が授業に出てきた。

「ふん」

浮竹はご機嫌斜めだった。教室移動になった。

去ろうとする浮竹の手をとる。

「なんだ」

そんな浮竹の顎に手をかけて、口づけられた。

「んっ・・・・」

ちろりと、京楽の舌が浮竹の唇を舐める。

自然と口を開けてしまい、舌が入ってきた。

「んんっ・・・・ふあっ・・・・・・」

何度も浅く深く口づけられて、抱き締められる。

「おまえっ・・・・・・ああっ」

全身の輪郭を確かめられて、うなじにキスマークをつけられる。

立っていられなくなって、京楽に寄り掛かった。

「愛してるよ、浮竹」

「俺は愛してない」

「またまぁ」

なんとか自分の力で立ち、調子に乗っている京楽の股間を蹴り上げた。

「キスもハグも、寮の室内だけだ!外でするなら、もうさせないぞ」

「ごめんなさい~~~」

股間を抑え、悶絶しながらも京楽は言いつけを守るらしかった。

「あと、俺のパンツを盗むのをやめろ」

「それだけは約束しきれないなぁ」

浮竹は長い溜息をついた。

「行くぞ。次は教室移動だ」:

京楽は犬が尻尾を振るように喜んで、あとをついていく。

それからしばらくの間は、京楽は浮竹のパンツを盗まなかった。

すでに50枚以上盗んでいるので、それで我慢しているらしかった。

浮竹は、念のためにネットでパンツを10枚購入した。黒のパンツばかりだった。

「ふふ~~ん」

ある日、帰宅すると京楽は黒いパンツを頭に被っていた。

まさかと思いタンスを見ると、カギが壊されていた。

パンツが全部なくなっていた。

「京楽~~~パンツ返せええええええ!」

般若になった浮竹と、破道の4白雷で黒焦げにされて、半分泣きながらパンツを返して許しを請う京楽の姿があったという。

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浮竹死んだけど幽霊です憑いてます16 未遂の反乱

「ふあー」

「どうしたの、浮竹。眠いの?」

「んー。幽霊だから普通はないはずだけど、実体化できるようになってから、睡眠欲と食欲と性欲がある」

「性欲があるのはいいことだね!」

「なぜ性欲を強調する・・・・・」

浮竹が、少し嫌そうな顔をした。

「だって、君にも性欲があるってことは、僕とむふふふなことをしたいってことでしょ!?」

手だけ実体化して、京楽の頭を殴った。

「あいた」

「お前は色欲魔人か!この前したばかりだろう!」

「あれからもう1週間だよ」

「まだ1週間だ!」

ぎゃあぎゃあといいっていると、七緒がやってきた。

「ラブラブイチャイチャしてるところ申し訳ありませんが、緊急の仕事です。7番隊の隊士に、反乱の動きあり、と」

京楽の顔つきが変わる。浮竹も京楽の隣にある椅子に座って、話を聞き出した。

「まだ憶測の位置ですが、7番隊の4席と5席が反乱を起こしそうだと。虚を引き寄せる餌を大量に買い込み、1番隊に撒こうとしているらしい、と」

「今すぐ7番隊の4席と5席の捕縛を」

それだけ言って、京楽は7番隊隊舎に向かった。

「違います!私は反乱など・・・京楽総隊長、誤解なんです!」

4席と5席の持ち物から、滅却師がよく使う撒き餌がが大量に見つかった。

「これは、何かの陰謀です!私ははめられたのです!姦計です!」

「それは、取り調べ室でゆっくり聞こう」

引っ立てられていく4席と5席は、最後には京楽に向かって唾をはきかけた。

「お前みたいな上流貴族にはわからねーんだよ1

「そうだそうだ」

「はいはい。四十六室から、追って沙汰がくだるまで牢屋いきー」

「くそおおおおおお、もう少しだったのに!」

悔しがる4席と5席。

「全然もう少しじゃないからね。滅却師の撒き餌で集まった虚程度、護廷13隊はひっくり返らないし、僕もやられて死んだりしないから」

総隊長である京楽の命を狙うだけでも反逆罪だ。

未遂とはいえ、霊力の全てを剥奪されて流魂街に追放は免れないだろう。

処刑にならないだけ、感謝するべきだ。


一番隊の執務室にくると、浮竹が実体化して京楽を抱き締めた。

「どうしたの?」

「未遂とはいいえ、お前を虚に殺させようだなんて・・・・寒気がする」

カタカタと、浮竹の体が震えていた。

「大丈夫。僕はこの通り生きてるし、虚の大群がきたとしても生き残る自信はある」

「それでも・・・・・平和になった瀞霊廷をひっくり返そうだなんて・・・・」

浮竹を抱き締め返した。

そのまま寝室にいき、とさりとべッドに押し倒す。

「30分くらい、実体化できる?」

「ああ・・・・・・」

激しいキスを受けた。

愛撫も適当で、乱暴に潤滑油で濡れた指が体内に入ってくる。

「ん!」

前立腺を刺激することはせず、解すだけにとどまった。

「ああああああ!」

前立腺をすりあげて、京楽が侵入してくる。

抱き合うつもりのなかった浮竹は、京楽の背中に手を回し、爪をわざと立てた。

「んあああああ!」

ずちゅりずちゅりと、中を侵される。

快感はあった。

でも、いつもより少なかった。

前立腺ばかりをすりあげられて、浮竹は白濁した液を零した。

京楽も、浮竹を乱暴に犯して、2回ほど欲望を放った。

二人して、はぁはぁと激しい息を吐いた。

30分が経って、服を脱がされた格好のまま、浮竹は霊体化した。

「ごめん、かき出すことも清めることもできなくて・・・」

「別に、いい・・・・・・・」

波長をかえて、京楽が中に吐き出したものを消した。情事の痕も消し去り、死覇装を着て隊長
羽織を着て、いつもの普通の浮竹に戻った。

京楽はもっと時間がかかったが、のろのろと服を着た。

「ああ・・・・君を愛してるって伝えたいけど、流石に時間が足りないね」

「別に、無理に体を重ねる必要はないだろう」

「君に分かってもらうには一番手っ取り早いから」

「来週には1時間は実体化する予定だったが、今日のでだめになったぞ」

「ええ、そんなぁ」

京楽が、心底残念そうな声を出す。

「急に抱くお前が悪い」

「悪かったってば」

浮竹はふくれていた。怒っているのだ。

「抱きたいなら抱きたいと言え」

「分かったよ。今度から気を付ける」

そう言いながら、京楽は浮竹を抱くとき何も言わずに始めるのだ。

「ねぇ、まだ足りないでしょ?」

「え?」

確かに、一度しかいっていないので、体が中途半端に疼いていた。

京楽が、霊体を触れる手袋をした。

嫌な予感がして逃げ出そうするのを、手首を捕まえられてしまった。

「君を満足させてあげる」

その後、手だけで何度もいかされて、浮竹はぐったりとなった。

「満足する前に死にそうになるんだが」

「それくらい、気持ちよかったってことでしょう?」

「知るか」

浮竹は怒って、それから3日は口を聞いてくれなった。

3日経って、まだ拗ねている浮竹のご機嫌をとろうとする。

「だから、ごめんてば。君をきもちよくさせたいと思っただけで」

「大きなお世話だ。体の疼きは放っておけば消えるんだ。酷いようなら、無理してでも実体化しておまえと体を重ねる」

「ねえ、今週は?」

「なしだ」

「じゃあ、来週は?」

「なしだ」

「ええっ!僕に浮竹とのセックスなしで生きろって言うの!」

「元々、なしで生きていけたろうが!この色欲魔人が!」

ぎゃあぎゃあ言い合っているところに、冷めた顔の七緒がやってくる。

「この間の事件の、判決が下りました。4席も5席も禁固250年です」

「え、霊力剥奪の上に流魂街に追放じゃないの」

「それではあまりにも甘いということで・・・蛆虫の巣に、投獄です」

「うわーよりによって蛆虫の巣かい」

浮竹も噂では聞いたことがあった。

最悪な場所らしい。

「まぁ、自業自得だね」

「京楽隊長」

「なあに、七緒ちゃん」

「あまり、執務室濃い話はやめてください。セックスがどうとか・・・・・」

浮竹が真っ赤になった。

「ち、違うんだ、伊勢、これは!」

「浮竹隊長も、嫌なら嫌と意思表示をするように。狼に食べられるだけの羊ですよ」

真っ赤になった浮竹は、手だけ実体化させて京楽をぽかぽかと殴った。

「あははは、痛い痛い」

京楽は、実に嬉しそうに殴らていたのであった。

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年末年始

「今年も、もうすぐ終わりだなぁ」

年末年始の休みに入っていた。

虚が出て始末する以外、通常は休みだが、海燕は関係なく働いていた。

といっても、仕事ではなく浮竹の世話のためなのだが。

「海燕、お前も今年こそ休みをとったらどうなんだ」

浮竹がそう言うが、海燕は首を横に振る。

「隊長を放っておくと、昼過ぎまで寝て飯もあまり食べないで寝てばっかりいるからだめです」

「ちっ」

「おい、今舌打ちしたな!?」

「気のせいだ・・・・・」

ああ、だらだらとした年末年始の夢が、今年も叶えられそうにない。

1日でいいから20時間くらい寝たいなぁ。

まぁ、臥せってる時はいつもそれくらい寝てるけど。

浮竹はそう思いながら、畳の上でごろりと横になった。

「ほらそこ、寝転がらない!」

「いいじゃないか。年末年始くらい」

「あんたの場合、年末年始関係なしにごろごろするでしょう!」

「ちっ」

「また舌打ちしましたね!?」

「気のせいだ」

海燕は、よく面倒を見てくれる。まるで母親のようだ。ありがたいが、たまにありがたすぎてうざくなる。

「ああ、やめだやめだ!」

浮竹は布団をしきだした。

「何してるんですか!」

「だらだらするんだ。年末年始くらいだらだらさせろ!俺は昼寝する!」

「許しません!」

「俺の勝手だろう!お前、都はどうした。せっかくの年末年始なのに放置か?」

「あ、忘れてた・・・・・・」

もう、独身ではないのだ。

愛しい妻を放りだして、自堕落な隊長に時間を潰されるよりは、妻を選ぶ。

「俺、帰ります」

「おう、帰れ帰れ」

「隊長は!くれぐれも寝すぎて昼夜逆転にならないように!」

毎年、年末年始はごろごろしすぎて、夕方に起きてくることがある

まぁ、2~3日時間をかければ昼夜逆転も直る。

「は~。極楽・・・・・・」

そのまあ、浮竹は昼餉もとらずに眠ってしまった。

起きると、夕方の7時だった。

少し眠りすぎたかと、副官の名を呼ぶ。

「海燕ーお腹すいたー」

しーんとしていた。

「ああいかん、海燕は帰ったんだった」

13番隊の食堂に行き、年末年始も出勤になり、代わりに年あけにまとまった休暇をもらう死神以外の者はいなかった。

全体的にがらんとしていた。

わざわざ雨乾堂まで夕餉をもっていくのがめんどうだったので、食堂で食べた。

「隊長、珍しいですね」

「仙太郎か・・・・・・」

3席である仙太郎は、年末年始も出勤のようだった。

「海燕が家に帰ったからな。いちいち夕餉をとりにいったり下げにいったりするのがめんどうだったから、食堂でいいと思って」

「隊長、それよりそんな薄着で大丈夫ですか?」

薄着というか、いつもと同じ死覇装に隊長羽織なのだが、いつも雨乾堂では毛布を羽織っているか、上着を着ていたので、そういえば寒いなと思った。

「上着置いてきてしまった・・・・・」

「とってきましょうか」

「いやいい。夕餉をとる間の時間だけだ」

夕餉をとり、雨乾堂まで戻る。身を切るよな寒さだった。

「はっくっしょん・・・ああやばい、熱だすかもな・・・・」

そう思いながら雨乾堂まで戻ると、京楽が来ていた。

「海燕君帰ちゃったんだね」

「ああ、俺が帰した」

「そんな恰好で。こっちおいで。ぬくめてあげる」

京楽は毛布を被り、火鉢に当たってその腕の中に来いといってくる。

浮竹は、なんの逡巡もなしのその腕の中に収まった。

「ああ、あったかい・・・・」

京楽は、人間ほっかいろだ。

京楽の腕の中でぬくぬくしていると、まだ眠気がやってきた。

いい加減寝すぎかもしれないと思いつつも、瞼を閉じた。

次に起きると、京楽と布団の中だった。

毛布を浮竹に数枚かけられていた。

「う・・・眠くない・・・・」

それから何度か寝ようと目を閉じたが、12時過ぎまで寝た挙句、昼寝をして今まで眠っていたのだ。寝れるわけがなかった。

「2時か・・・・・」

時計は、深夜の2時を指していた。

仕方ないので布団から這い出すと、毛布を被って火鉢にあたりながら、最近読んでいた小説の続きを読みだす。

「浮竹?」

「あ、京楽、構わずに寝てくれていいぞ」

「本当は、いけないんだけどね」

京楽は、何かを口にすると、水と一緒に浮竹に飲ませた。

「んっ・・・・何?」

「眠剤。寝れるように。僕、たまに不眠の時に使ってるんだ」:

「京楽が不眠?」

「本当に時折だけどね。いろいろあって、朝方まで眠れないから、寝れないと思った時には服用してる」

数分がたつと、ろとんと瞼が重くなってきた。

解熱剤に含まれるわずかな睡眠薬成分でも寝てしまうのだ。

眠剤など、免疫がなくて眠気はすぐにやってきた。

すーすーと眠りについた浮竹を抱き上げて、京楽は布団の中に入ると浮竹に毛布を数枚かけた。

「明日の朝には、すっきりしてると思うよ」

もう意識のない浮竹に語りかける。

京楽も、眠剤を口にして、眠った。

「あああ!寝すぎた!」

起きると、1時を回っていた。

「京楽、昨日の薬効きすぎだ!」

「ああ、安心してたら僕まで寝過ごしちゃった」

本来なら、京楽は8時には起きる。

でも、久しぶりに眠剤を口にしたこともあり、寝過ごしてしまった。

いつもは起こしにきてくれる海燕は今日は休みでいない。

「ああ、海燕がいないならいないで好きなだけ寝れて嬉しいけど、寝ていたくない時まで寝過ごしてしまう!」

「浮竹は、ほんと海燕君がいないとだめだね」

「仕方ないだろう!海燕がいつも起こしてくれるんだから!」

二人して、13番隊の食堂にいき、遅めの昼餉をとった。

「今日は何をしよう?」

「休みだし・・・年末年始で店も休みだろうから、だらだらしよう」

一人でだらだらするのはつまらないが、京楽と一緒なのだ。京楽と自堕落な時間を過ごすのもいいだろうと思う浮竹であった。

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山本元柳斎重國の死

「酷いものだね・・・・・」

一番隊があった場所は焦土と化していた。

「元柳斎先生の死体は、見つからなかったらしい」

浮竹が、悲しそうに地面を見る。焦土と化した、1番隊の執務室があった場所にきていた。

燻っていた火は、泣きだした空で鎮火した。

激しい炎だった。まさに太陽。尸魂界の大気から水分を失なわせてしまうような、山本元柳斎重國の卍解であったが、ユーハバッハに奪われ、切られた。

その場面を見た者はいなかったが、切られたのだろうとなんとなくわかった。

その体は自らの炎に巻き込まれるかのように、泣きだした雨にも関わらず、灰となった。

遺体がないので、死んだかどうかさえ最初は疑わしかった。

だが、霊圧は完全に消えている。

死亡したのは、確かだ。

「山じいの代わりに総隊長だなんて・・・・嫌だといいたいのに、肝心の山じいがいないんじゃね・・・」

京楽は、深い溜息をはいた。

山本元柳斎重國の葬儀が、静かに行われた。

白い百合の花でみたされて、中央に流刃若火が置かれていた。

流刃若火は刃が折れていてガタガタで、もう使い物にならないと一目でわかった。

山本元柳斎重國の遺体がないまま、棺に火がつけられる。

パチパチと火が爆ぜて、その踊る火を間近で京楽も浮竹も見ていた。葬儀に参加した隊長副隊長は全員ではない。

白哉などは酷い傷で、動くこともできないという。

呆然とした様子で立っている一護に、京楽が声をかける。

「一護君、君も傷が深い。早く帰って4番隊で治してもらいなさいな」

4番隊で治療を受けていた一護であるが、山本元柳斎重國の葬儀と聞いてやってきたのだ。

「俺が・・・・もっと強ければ」

「一護君、今回のことは誰にも止められなかったんだよ。一護君が最初からきていても、きっと結果は同じだっただろう」

「でも!俺がもっと早くについていたら、死者の数だって!」

「己惚れるな!」

京楽が叫んだ。

「おい、京楽!」

浮竹が止めようとするが、京楽は止まらない。

「山じいを殺すような相手だよ?現に君だって太刀打ちできなかったじゃないの。いくら君が強いと言っても、君は一人だ。そして今後の尸魂界を守ってくれる要だ・・・・頼むから、自分を責めないでほしい」

京楽の言葉に、浮竹は何も言えなくなる。

尸魂界のために死なば本望。

それを、山本元柳斎重國は現実にしたのだ。

ああ。

次の侵略では誰が傷つき、誰が死ぬのだろうか。

現在、副隊長である吉良イヅルの死が確認されている。なんとかなるかもしれないと、涅マユリがその身柄を引き受けていったが、もう「生きる」ということは不可能だろう。

心停止していて、体の実に上半身の3分の1が吹き飛んでいた。

吉良イヅルも本来なら山本元柳斎重國と同じく棺に入れられて、焼かれる存在なのだが。

涅マユリは時に奇跡を起こす。

だから、誰も止めなかった。

そうせ死人だ。それ以上酷くなることはない。

どうかどうか。

もうこれ以上、尸魂界から死者が出ませんように。

浮竹は祈った。

京楽も片目を失い酷い怪我を負った。本来なら移植手術で時間をかければ、光を取り戻しそうだが、そんな時間の余裕もないのだ。


浮竹は、気づいていた。

尸魂界のために死なば本望。

きっと、自分もこの身を尸魂界のために捧げるだろう。

「なぁ、京楽。俺が尸魂界のために散ったならば、泣いてくれるか?」

「何不吉なこと言ってるの。そんなこと、起こるわけないよ」

死神として死のう。

浮竹の決意は固い。

それが死神としての矜持。

どうか、悲しまないでくれ。

でも、少しは俺を思って泣いてほしいな。

矛盾する思いを掲げながら、浮竹も京楽も一護も、煙となって天に還っていく山本元柳斎重國の棺を、飽きることなくいつまでもいつまで、完全な灰になるまで見ているのであった。

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俺の隊長

隊長が乱れる様を見るのは、俺の特権だった。

俺の下で、隊長を突き上げると、隊長は女のような高い声で、喘ぎ声を漏らす。

「ああっ、恋次!」

隊長は、俺だけを下の名で呼ぶ。

ルキアのことも下の名で呼ぶこともあるが、ルキアは義妹だ。数には入らない。

隊長がルキアを可愛がり、愛していることを知っている。

でも、今ばかりは隊長は俺のものだ。

「んあああああああ!」

ずちゅずちゅと、隊長を犯しているあそこから、水音がした。

「やああああああ」

「いや、じゃないでしょう?」

わざと、気持ちいいところを狙って突き上げると、隊長は体を痙攣させた。いったのだとわかり、中がキュウとしまって、俺も我慢できずの隊長の中に白濁した液をぶちまけた。

「隊長、好きです」

「あ、恋次・・・・」

唇が重なる。

舌が絡み合った。何度もキスを繰り返しながら、隊長を突き上げていると、背中に回さた手が、俺の背中に爪を立てた。

がりっと音がして、鈍い痛みを感じた。

「ひああああ!」

隊長の奥の奥まで突き上げると、隊長は一際高い声をあげて、いくのと同時に気を失った。

隊長から引き抜くと、トロリと中で吐き出したものが太腿を伝って流れ落ちていく。

ああ、隊長を孕ませることができればどんなにいいか。

俺のものだという証を刻みこめる。

すでに、今日はもう何度目かも分からない欲望を隊長の中で吐き出していたが、まだいけそうだった。

でも隊長は意識を飛ばしている。

さすがに起こして続ける勇気はなかった。

とりあえず、濡れたタオルで情事の後をぬぐう。

隊長は、3時間ほどして気がついた。

「私は、どれくらい気を失っていた?」

「3時間くらいです」

「湯あみをしてくる」

隊長は、情事の後は必ず湯あみをする。

痕跡を残されるのを嫌がった。

キスマークを残すなど、もっての他だった。

隊長が消えていった湯殿に、俺も向かう。もう睦みあう気はないが、あの人は一人で俺が出したものをかきだすことができない。

「恋次、出し過ぎだ」

とろとろと、隊長の蕾から俺が出したものが溢れてくる。

「すみません」

言葉だけで謝っておく。

隊長。

あんたがそんなに美人でかわいいから、俺はあんたの中にいっぱい注ぎ込むんだ。

言っても分からないだろうだから、舌が絡まるキスをしておいた。

「あ、恋次・・・もう、しない。今日はもう無理だ」

「分かってますよ、隊長」

隊長。

愛してる。

「隊長、愛してます」

「私は・・・・」

いつも通り、隊長は言葉に出さない。

俺を愛していないのは知っている。

でも、好きでいてくれる。

今はまだ隊長の心の全てを手に入れられないけど、それでもいい。

「隊長、好きです・・・・・・・・」

同じ寝具で眠った。

同じ男とは思えぬ白い肌に細い体、整った美形な顔。でも、女っぽいかんじは微塵もない。

美しく気高く孤高な・・・・まるで、虎か猛禽類のようで。

俺は、眠ってしまった隊長に口づけて、自分も横になった。

睡魔は直に襲ってきて、意識を手放すのであった。

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恋というもの

「冬か・・・・・」

季節は冬。

椿の花が咲いていた。

ちらりちらりと、空から雪が降ってきた。

「隊長、そんな薄着で大丈夫ですか」

「心配ない」

身を切るような寒さはしたが、この程度で風邪を引くようなやわな体ではない。

実の兄のように慕っている浮竹なら、きっと風邪を引いてこじらせてしまうだろうが。

「これ、着てください」

ふわりと、暖かな体温に包まれた。

「このような安物・・・・・」

恋次が着ていた、安物の着物の上着だった。

「でも、暖かいでしょう?」

「それは・・・・」

確かに、暖かかった。

「恋次の匂いがする・・・・」

そういうと、恋次は顔を朱くしてこういった。

「誘ってるんすか?」

「何故そうなる」

頭痛がしそうだった。

ただ、本当のことを言っただけで、盛るまで盛りのついた雄猫のようだ。実質は犬に近いが。

「今日は、抱かせぬからな」

「えー」

「この前、抱いたばかりであろう」

恋次が、椿の花を手折ってきた。

何をするのかと見ていいたら、白哉の髪に飾った。

「何を・・・・・」

「あんたは、髪飾りや簪贈っても受け取ってくれないから。これなら、つけていても平気でしょう?どうせすぐに散ってしまう」

飾られた椿と同じ椿を見る。

濃い紅色をしていた。

それは、白い肌に少し長い黒髪の白哉によく似あった。

「このような、安物中の安物・・・・・」

金さえかかっていない。ただだ。

「手折られる椿がかわいそうだ。今後、このような真似はするな」

「えー」

何が不満なのか、恋次は先ほどから不満の声をばかりをあげていた。

「今日は、隊長の誕生日だけど・・・何にも用意できなかったから」

「ああ、そういえば誕生日であったか・・・・・忘れていた」

もう、何歳になったのか忘れてしまった。

200をこしたあたりから、年を数えるのを止めてしまった。

「誕生日、おめでとうごいます」

「礼だけは言っておく」

今日は、何か辛いものが食べたい・・・・黒崎一護が教えてくれた、「麻婆豆腐」なるものを料理人に作らせようと決める。

6番隊執務室を後にして、朽木家に帰る途中まで、恋次がついてきた。

「何故、ついてくる」

「いや、ルキアにちょっと用があって」

「そうか」

ルキアは、今黒崎一護と付き合っている。

白哉と恋次のような爛れた関係ではなく、純愛だ。

純愛。

緋真がいた頃は、そんな気持ちもあった。

だが、死別してもう心に決めた。誰も恋愛感情で愛さないと。

ルキアのことは愛している。家族愛だ。

恋次のことは好きだし、逢瀬を重ねているが、愛しているとは言えないでいた。

恋次と一緒に夜を共にすると、時折もやもやとしたよく分からない感情を抱いた。

それがなんなのであるか、分からない。

分からぬままでいいのだと思う。

分かってしまったら、爛れていてるし、この関係も終わりだ。

「兄様、その椿は?よく似合っています」

家につくと、ルキアにそう言われて、椿を髪に飾ったままなのだと気づいて、ルキアの髪にかざった。

「ルキアのほうが似合う」

それは本当だった。

義妹であるルキアは美しい。緋真によく似ている。

「ルキア、その椿は隊長のものだ」

「なんだ、恋次!貴様、朽木家にまでくるとは、よほど兄様が恋しいのだな」

「な、そんなんじゃねーよ!」

「ふーん。兄様、誕生日おめでとうございます」

ルキアは、現世のカラムーチョという、最近白哉がはまっている菓子をいっぱいいれた包みをププレゼントしてきた。

辛い物が好きな白哉のために、わざわざ現世まで・・・・そう思うと、自然と笑みが零れた。

「兄様、ご機嫌ですね」

「恋次、お前はもう下がれ。ここは朽木家だ」

「隊長、好きです」

抱き締められた。

「ルキアが見ている。やめよ」

「それでも、あんたが好きだ」

さすがに義妹の前で、睦みあう真似事をされるのが嫌で、恋次と距離をとる。

「いつか、あんたを攫っていく」

「ふ・・・できるものなら」

恋次は、朽木家を後にした。

「兄様、この椿、お返しします」

なんともいえない感情に支配されて、ルキアに頼んでその椿を氷漬けにしてもらい、氷室で保存することにした。

「この感情は、なんなのであろう」

もやもやしている。

でも、分からなくていいのだ。

分かってしまえしまえば、もうお前とはいられぬのだから。

私が愛するのは、亡き緋真のみ。

それだけが全て。




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好きから始まる物語 ルキアと一護の一日

結局、2人は死神に戻ってしまった。

長い生を重ねるだろう。記憶置換で、周囲の人間には老化しないことを不思議に思わせないようにしていた。

「なぁルキア・・・・好きだぜ」

「ん・・・・いちごおお」

寝室で、体を重ねていた。

「あ、一護・・・・」

「好きだ、ルキア・・・」

「私も好きだ、一護・・・」

今、ルキアのお腹の中には、一護とルキアの愛の結晶が宿っていた。

次の日、遅くまで睦みあっていたせいで、寝坊した。

「んー、一護、好き・・・・・・」

むにゃむにゃいうルキアを寝かせたまま、一護はその日の仕事を始めた。

黒崎家の通帳は、ルキアの義兄である白哉のせいで、億をこえる金が貯蓄されている。

仕事をしなくても生きていけたが、暇すぎるので、仕事は続けていた。

「いちごお?」

寝ぼけ眼のルキアを抱き締めて、膝の上に座らせた。

「なんなのだ、貴様・・・・・・」

「んー。甘い時間もほしいと思って」

「そんなに白玉餡蜜が食いたいのか。仕方ないな・・」

立ち上がろうとしたルキアを制して、膝の上に乗せたままにする。

「どうしたというのだ」

「好きだから、こうしてる」

「ん・・・・いちごお」

甘ったるい空気。ルキアから、一護に舌の絡まるキスをしてきた。

「誘ってる?」

「ち、違う!」

「あーもう、なんでこんなにかわいいんだよ、ルキア!」

膝の上に乗ったたままのルキアを抱き締めた。

「一護・・・・・」

「ルキア・・・・」

また、唇が重なった。

ちゅっと、触れるだけのキスを繰り返す。

「抱かないのか?」

「昨日抱いたばかりだ」

「そうであったな」

ルキアを抱き締める。シャンプーの甘い香りがした。

「一護、貴様は太陽のようだな」

「そういうルキアは月みたいだ」

「ふふ・・・互いに存在しないと、生きていけぬところとか、そっくりではないか」

ルキアを抱き締めたまま、一護は平らなルキアの腹を撫でた。

「男の子かな?女の子かな?」

「多分ではあるが、男の子であると思うのだ」

「名前はもう決めてある。男の子なら、一勇、女の子なら苺花・・・・」

ルキアを座らせて、その膝に寝転んで、お腹をなでたあと、胸の服のボタンを外して、醜く残ってしまったルキアの胸の傷跡を触り、口づけた。

「なぁ。傷跡消す整形手術受けれるとしたら、どうする?」

「私はこのままで良い・・・・この傷も、貴様と過ごした時間の証だ」

「そうか・・・・」

一護は、それ以上傷跡のことは何も言わなかった。

お腹を撫でる。

「ふふ・・・くすぐったい」

「もっと触っていいか?」

「ああ、もっと触ってくれ。きっと、お腹の中の子に伝わる。貴様の愛が」

暖房の利いた部屋で、ルキアと丸くなって横になる。

ルキアを腕の中で抱きしめる形で。

「愛している、一護・・・・・・」

「俺も愛してる、ルキア・・・・・」

互いの体温を共有し合った。

こんな場面、恋次が見たら真っ赤になって卒倒するだろう。

甘い甘い時間だった。

「ん、一護、もう少しそっちにいってもいいか?」

「ああ、来いよ」

ルキアを抱き寄せる。

ルキアの細い体を抱き締めながら、一護は砂糖みたいに甘いルキアとの時間を楽しむ。

「ああ、一護、暖かい・・・・・」

「ルキアもあったかいな・・・・・」

互いの体温が気持ちよかった。

「あれほど寝たのに、また眠くなってきた・・・・・」

「寝ていいぜ。俺も、ちょっと眠い・・・・・・」

二人は、ソファーの上で、猫のように丸くなって眠った。


「ああ、もうこの二人は・・・・・」

やってきた恋次は、猫のように丸くなって眠る二人に毛布をかけてやり、伝令神機をオフにする。

今日は、一護とルキアが籍を入れた、いわゆる結婚記念日だ。

今日くらい、虚退治は自分が引き受けてやろうと思った。


「ん・・・いい匂いがする・・・・」

ルキアが目を開けると、台所からコトコトと音がしてきた。

「お、ルキア起きたか。今日は俺が飯作るから。メニューは中華スープ、キムチチャーハンに、エビチリ、エビマヨ、麻婆豆腐に杏仁豆腐だ」

「今日は、豪勢なのだな」

「結婚記念日だからな」

「え、そうなのか?」

「ああ。白哉が籍を入れた日だ」

籍をいれて2年目になる。

「兄様が勝手に籍をいれてしまったからな。結婚したという気がいまいち分からぬ」

「でも、こうして一緒にいると、結婚したって気にならないか?」

「どうであろう・・・・」

ルキアを抱き締める。

「永遠の愛を、お前に」

「永遠に愛を、貴様に」

唇が重なる。

「ふふ・・・・・」

「はは・・・・・」

お互いの額に額をぶつけあい、包容を続ける。

「貴様は、空気でさえ甘い。どこもしこも甘くて、蜂蜜のようだ」

「それはお前だろ。ああ、甘いな・・・・・」

耳をかじってやった。

「ひゃん!」

変な声が出た。

「もっと、声、聞かせて?」

「貴様、作りかけの夕飯はどうするのだ!」

「そうだった!」

一護が鍋の中を見る。幸いなことに、焦げてはいなかった。

「おい、一護、ルキア」

「わあ!」

勝手に入ってきた恋次に、ルキアが顔をしかめた。

「たわけ!勝手に入ってくるなと何度言えば分かるのだ!」

「ちゃんとチャイム押した!」

「そうか?聞こえなかった」

「どうせイチャイチャラブラブしてたんだろ?」

「恋次!」

「はははははは!今日はお前らの結婚記念日だから、特別にこの地域の虚退治を引き受けてやったんだよ!こういう日に限って虚はよく出やがるし・・・」

「恋次も食べていけ。私の愛しい夫は、料理も得意なのだ」

「ああ、確かに一護の作る飯がうめぇからな」

恋次も、まるで家族の一員だ。

来年になると、また家族が増える。

「兄様は、元気にしているか?」

「元気すぎて、この前雑魚の虚相手に卍解して、ぎったぎたにしてた」

「兄様も、ストレスがたまっているのであろうか・・・そうだ、一護、麻婆豆腐を皿に入れてラッピングしてくれ」

「どうするんだ?」

皿にいれてラッピングした麻婆豆腐を、恋次に押し付ける。

「兄様は辛いものが好きだからな。恋次、これを兄様に渡してくれ」

「分かった」


白哉は、それを尸魂界で受け取り口にして、目を見開いた。

「恋次。黒崎一護に、このメニューのレシピをメモしたものをよこせと、言っておけ」

「分かりました、隊長」

白哉は現世にこそあまりこないが、伝令神機で義妹のルキアとはよくやりとりをしていた。

「幸せなったのだな、二人とも・・・・・・」

白哉は満足げに微笑んだ。


そして次の年。

ルキアは男児を産み、「一勇」と名付けられるのであった。


         好きから始まる物語

                                         fin


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好きから始まる物語 人間として

朽木家で、白哉はルキアと一護のほうを向いた。

「ルキアのことを、幸せにすると誓えるか?」

「誓う。命に代えても」

「一護・・・・」

ポロポロと、アメジストの瞳から涙が零れていく。

「ルキア。人として・・・死神の長き命も、この尸魂界も、家族も。何もかも捨てれるか?」

「兄様。一護と共にいれるなら、このルキア。死神を辞めてもかまいません」

「その言葉に、偽りはないな?」

「はい」

「おい、白哉!」

一護が口をはさみそうになるが、それを白哉が制した。

「兄は黙っておれ。これは、ルキアと私の問題だ」

「兄様」

「この私と、今生の別れになるとしても?」

「それは・・・・」

ルキアが少し逡巡する。

白哉を愛しているルキアには、酷なことだろうが、ルキアは涙を流しながら頷いた。

「はい、兄様。それでも、一護を選びます」

「よく分かった・・・・今日をもって、朽木ルキアは朽木家より追放とする。人間になる薬を与えて、現世に永久追放とする!」

「おい、そりゃあんまりだろ!」

「よいのだ、一護。こうするしかないのだ。私は4大貴族、朽木ルキア。それが、ただの人間と結ばれるなど・・・・・・こうするしか、ないのだ」

「でも・・・・」

「兄が、この傷ついたルキアを癒すのだ」

「そんなこと、言われなくても分かってる!」

次の日、ルキアは白哉と一護が見守る中、人間になる薬を飲んで義骸に入った。何度やっても、義骸からは抜け出すことはできなかった。鬼道はかろうじで使えるようであったが、現状は一護に死神の力を託して義骸に入っていた頃に近かった。

「何があるか分からぬ故、死神としての霊圧は残す。鬼道は使えるであろうが、もう二度と斬魄刀である袖白雪には触れることはできぬであろう」

袖白雪は、ルキアの目の前にあった。

「袖白雪・・・・長いこと、世話になった」

袖白雪はリィィィンと音を立てた。

まるで、主との別れを悲しむように。

「空座町に大規模な記憶置換を行った。今日から、朽木ルキアは黒崎ルキアだ。婚姻はまだだが、籍を入れていると認識させた」

「兄様、何から何までありがとうございます」

「念のため、ルキアにはこの伝令神機を渡しておく。死神でなくとも使えるタイプのものだ」

なんだかんだいって、白哉もルキアと別れるのが惜しいのだ。

伝令神機でやりとりをするつもりなのだろう。

「さぁ、現世へ・・・・・・」

白哉の声で、穿界門が開けられる。

「兄様、お元気で!」

「白哉、いろいろとありがとな!」

穿界門が閉じられる。

もう二度と帰ってこないルキアを思い、白哉はしばらくの間そこから動くことができなかった。

ルキアには、大金をもたせておいた。今頃、現世ではちょっとした騒動になっているかと思うと、白哉は少しだけ微笑んだ。


現世に帰ってきた。

一護はアパートではなく、一戸建ての家で暮らしているということになっていた。

一括返済で、家を買った少し金持ちと認識されていた。

「どういうことだよ、これ」

「兄様が、私の身を心配して、貧乏暮らしなどせぬようにと・・・・」

「はぁ!?」

白哉と、そんな会話しているシーン見ていなかったのだが、ふとルキアの伝令神機を見ると、白哉からの着信でいっぱいだった。

「白哉のやつ・・・追放とか言っときながら、やっぱお前には甘いんだな」

「た、たわけ!兄様のお陰で、アパートの狭い家から一戸建ての広い家に住めるのだぞ!」

「俺は、前のアパートでもよかったけどな。掃除とか大変そうだ」

「それなら、問題ありません」

尸魂界でルキアの面倒を朽木家で見ていたちよが、現世の新しい黒崎家に派遣されていた。

「ちよが、これからもルキア様の面倒を見させていだたいます」

「ちよ!」

「おい、俺の存在も無視しするんじゃねぇよ!」

「恋次!?」

「隊長に言われて、ちょくちょくお前らの様子見てこいって言われた」

「兄様・・・・・」

ルキアは微笑んだ。

「白哉のやつ、今生の別れとか嘘ばっかじゃねぇか!」

「でも、私は護廷13隊13番副隊長を辞めてしまったのだ・・・いろいろ、兄様には迷惑をかけることになる」


ちよは、週に2回家事の手伝い、主に掃除と洗濯の手伝いに来てくれるだけで、ルキアと一護の仲を壊すよなことはしなかった。

大学を、一護は卒業した。

一護は出版社に就職して、自宅でドイツ語の翻訳家として働いていた。

「一護、おやつの時間だ!白玉餡蜜を食え!」

「お前、また白玉餡蜜作ったのかよ!おとついもそれ食っただろ!」

「文句を言わずに食え」

無理やりスプーンを持たせられた。

「はい、あーん」

ルキア、平気な顔でそういう。

「あーん」

一護は口を開けた。

白玉餡蜜をこれでもかとつっこまれた。

「げっふごっふ・・・殺す気か!?」

「白玉餡蜜で死ねるなど、本望ではないか!」

「何処がだ!」

「おい、俺がいるの忘れてねーか?」

「なんだ恋次、いたのかよ」

「俺は空気か何かか!?」

恋次は、このバカ夫婦を見るのが日常になっていた。ルキアに想いを寄せていた頃が懐かしい。

結局、ルキアと一護は式を挙げなかった。

だが、ルキアの指にも一護の指にも、アメジスとがあしらわれたエンゲージリングが光っていた。

新婚旅行には、ドイツに2週間いってきた。

ルキアは初めて見る異国にはしゃぎまくっていた。恋次は、よく黒崎夫婦の家の出入りをしていた。そして、見たことを、白哉に告げると、白哉も穏やかな顔になった。

「もうそろそろいいんじゃないっすか?」

「そうだな」

ルキアと一護は、白哉に呼び出された。

そして、突然何かの注射を打たれた。

「あ・・・死神としての力がもどっています、兄様!」

「え、なんか俺もなんか本物の死神になってるんだけど!どういうことだよ、白哉!」

「黒崎一護、黒崎ルキア。本日をもって、現世永住の死神として、空座町赴任の死神とする!」

「はぁ!?」

一護は、わけがわからない顔をしていた。

白哉が、結局ダメだったのだ。義妹が死ねば、元死神であるから、その魂は尸魂界に戻ってこない。ただ、霊子に還るだけ。
一護の魂は尸魂界にくるが、ルキアは散ってしまう。

そんなこと、白哉に耐えれるわけがなかった。

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好きから始まる物語 略奪

その日は休みだったので、動物園に来ていた。

平日だったので、客はまばらだった。

「ああ、あの虎・・・兄様のようだ」

「白哉に?」

「気品があり、気高く美しい・・・それでいて、大人しく見えて獰猛で・・・・・」

「白哉って獰猛なのか?」

白哉の、揺れ動くことのない綺麗な顔を思い出す。

「兄様を怒らすと、怖いぞ」

「お前何やらかしたんだよ」

「秘密だ」

ルキアは笑った。悪戯めいたその微笑みに、一護は見惚れていた。

「そろそろ昼だな・・・・休憩にするか」

昼食は、一護特製の弁当だった。

ルキアのものには一護の顔が、一護にはルキアの顔がかかれたキャラ弁だった。

「ぬう、勿体なくて食べられぬ」

「まだいつでも作ってやるから、普通に食え」

「約束だぞ!」

「ああ」

昼食をとった後は、パンダやコアラなど、かわいい系の動物を見て回った。

そして、動物園の一角にある触れ合いコーナーに行くと、兎とモルモットがいた。

「兎・・・・美味そう・・」

「こらルキア!ここの兎は愛玩用だぞ!」

「わ、わかっておる」

そう言いながら、よだれを垂らしそうな顔をしていた。

奥の方に進み、カンガルー、ワラビー、羊、鹿・・・・大型の動物に触れる。

エサをもって近づくとわらわらと寄ってきた。

「くすぐったい・・・・・」

ルキアは、餌を何度もやった。

3時頃に動物園を出て、今度は近くにある水族館に行った。

キラキラと泳ぐ、アマゾンコーナーのネオンテトラをルキアはずっと眺めていた。

「好きなのか、この魚」

「何故、こんなに美しいのであろう」

グッピーも泳ぐ次の水槽にきても、水槽の前にへばりついていた。

「なんでかまでは分からないけど、綺麗だな。ルキアのアメジストの瞳みたいだ」

「私の目は、ここまで美しくない」

やがて、海月の前にくると、ルキアはまた足をとめた。

「さっきの美しい魚たちとは違うが、これも美しいな」

ゆらゆらと漂う海月。

まるで、自分のようだ。

尸魂界がありながら、現世で人間の一護相手に現を抜かす、漂う海月。

「一護、大切な話があるのだ」

「なんだ?」

「その、家に帰ってからでよい」

「変なやつ」

そのままイルカショーを見て、ラッコを見て、貝がうまそうだと、ルキアは笑っていた。

家に帰宅しても、結局ルキアは大切な話とやらをしてくれなかった。

そのまま夜になり、ルキアは涙を零しながら、眠ってしまった一護を抱きしめ、そっとキスをした。

「たくさんの思い出をありがとう、一護・・・・・・」

明日。

明日、尸魂界に戻らなければならない。

次にやってこれるのは、いつか分からない。

伝令神機があるとはいえ、メールでは思いを伝えることに限度がある。

悲しいが、一護とは別れよう。

白哉に言われていた。

現世の時間を堪能して戻ってきたら、四楓院家の当主に嫁ぐのだ。

「一護・・・永遠に、貴様だけを愛している」

ルキアは、書き置きだけを残して。現世を後にした。

尸魂界に戻ったのだ。

「ルキア・・・・・・」

朝起きると、ルキアがいなかった。

さよならという言葉の書き置きがあった。現世を離れたら、四楓院家に嫁ぐと書いてあった。

一護は、けれど絶望していなかった。浦原のところにいくと、尸魂界に連れていくことできないと言われた。

「ルキア・・・・・」

手紙には、また会おうと書いてあった。

いつかまた、現世にやってくる。

例え、他の男の元に嫁いでも、永遠に俺だけを愛していと書いてあった。

信じよう。

ルキアの言葉を。

でも、いてもたってもいられなくて、空座神社まで来ていた。

神社や寺には、自然の力で尸魂界への穴が開くことがあるのを知っていた。

一護は見つけた。

小さな小さな穴を。

それを、でたらめな自分の霊圧をぶつけて、広げると、空間の狭間に入った。

穿界門から断界に入るのとは違い、どちらかというと黒腔(ガルガンタ)に似ていた。

微かな・・・本当に、微かなルキアの霊圧を辿って道を進む。

虚がたくさん出没した。たくさん殺した。

死覇装は、虚の返り血でべっとりと汚れていた。

やっと出口を見つけて、外に出る。

流魂街の外れにいた。

瞬歩で瀞霊廷にまで移動して、ルキアの霊圧を辿って四楓院家にまでくると、見張りの死神たちを蹴り飛ばして、四楓院家の当主の前にくる。

「一護!?貴様、どうやってここに・・・・」

ルキアが吃驚していた。

ルキアは白無垢姿で、まさに四楓院家の当主に嫁ぐ瞬間だった。

「四楓院夕四郎咲宗、悪いけどルキアは俺のものだ」

四楓院家の当主は驚くことなく、こうなることが分かっていたようで、ルキアの方を向いた。

「朽木ルキアさん。あなたを慕う死神代行がこう言っているのです。僕は、僕を想ってくれない妻などいりません。この結婚話、なかったことにしていただきます」

「四楓院夕四郎咲宗殿!」

「どうか・・・黒崎一護と、お幸せに・・・」

「一護・・・どうしてきたのだ・・・・」

ルキアはボロボロと泣きだした。

「愛しいお前が逃げるなら、追いかけて捕まえるだけだ」

「一護!」

「ルキア!」

ルキアは、白無垢姿であった。

「これって、略奪婚なのか?」

「貴様、ばか!」

朽木白哉は静かに怒っていた。

だが、義妹が一護と離れられないことを確認すると、長い溜息をついた。

「黒崎一護。ルキアの結婚を台無しにしたのだ。責任はとってもらう」

「ああ、いいぜ。この命をかける!」

「一護!」

ルキアに、心配するなと、視線を送る。

「散れ、千本桜・・・・・」

千の刃を、斬月で弾く。

「やめてください、兄様、一護!」

「ルキア、お前はどいていろ」

「兄様!」

一護と白哉は何度も切り結びあった。

お互い、細かい傷がいっぱいできて血を流す。

「兄は・・・・どうしても、我が義妹、ルキアを攫って行くのだな?」

「ああ」

白哉は、剣を収めた。

一護も、斬月をしまう。

「ルキア・・・・黒崎一護を想う気持ちに、変わりはないか?」

「ありません、兄様」

「そうか・・・・黒崎一護。4大貴族同士の婚姻を無駄にしたのだ。ルキアともども、おって沙汰を言い渡す」

「兄様!」

ルキアが目を見開く。

「黒崎一護、ルキア、一度朽木家に来い」

言われた通りに朽木家にいくと、一護もルキアも湯あみをさせられて、虚の血にまみれていた一護の服は洗われた。その血をがついた白無垢を着ていたルキアも、普通の恰好に戻った。

「さて、黒崎一護。私の大切な義妹であるルキアを、奪いにくるまで、愛しているのだな?」

「ああ」

「ルキア、正直に話せ。この黒崎一護を、愛しているのだな?」

「はい、兄様」

白哉は、天を仰いだ。

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好きから始まる物語 初めての夜を共に

「ルキア、もう大丈夫か?」

「ああ、もうなんともない」

ルキアが傷を負ってから半月が経っていた。

最初の頃は大学もバイトも欠席していたが、ルキアが平気そうなので、一護は日常生活に溶け込んでいった。

「今日は、白玉餡蜜作ってやるからな」

「やった!」

そんなことで喜ぶルキアが可愛かった。


夜になり、たつきがやってきた。

「一護、織姫を助けけて!あんたたちの力なら、織姫を刑務所から出すこともできるでしょ!?」

たつき言葉に、一護は首を横に振った。

「もう無理だ、たつき。井上は、自分で罪を犯した。盾舜六花で少し怪我を負わせたくらいなら、謝罪させてなんとかなったが、サバイバルナイフで胸を一突きだぜ。明確な殺意があったし、俺は井上を許せない。もう少しで、ルキアを失うところだった」

「いちごおおおおお・・・・・・・・」

たつきは泣いていた。

たつきを追い出す。

「井上はそうか・・・刑務所に・・・・・」

「助けようなんて思うなよ、ルキア!」

「流石に殺されかけたのだ。そこまで甘くない。たとえ刑務所から出しても、きっとまた私の命を狙う。私が一護、貴様の傍にいる限り」

「井上はもう、10年以上は外に出れない」

「哀れだな・・・恋に狂ったか。私は、例え井上の位置にいても、貴様が他の女とできてしまっても、それを祝福する。でも、井上にはそれができなかったのだな。確かに、尸魂界の私が死んでも罪にはならぬ。だが、それでは意味がない。だから、浦原が記憶置換で、別の人間の女を刺したということにした」

井上は、もう人生そのものが終わった。

「ルキア・・・・胸の傷、見せてくれ」

ルキアが、パジャマのボタンを外して、胸の傷跡を見せてくれた。

酷い傷跡が残っていた。

「これ、4番隊の回道でも治せないのか?」

「そのようだ。井上の特殊な
盾舜六花の力が混ざっていたのだろう。この傷後は、一生残る」

「ごめんな、ルキア。守り切れなくてごめんな・・・・・」

「貴様が謝ることはない。全ての元凶は私にある。私が現世に訪れ、貴様の心をもっていった。貴様を奪われたことを納得できずに、井上は私に手をかけた。
盾舜六花の力ならば、ねじ伏せて言い聞かせることもできた。だが、庇った貴様が血を流すのも厭わず、サバイバルナイフで襲ってきた・・・・私の鬼道を防いで。貴様を手に入れるためならば、私を消しさろうとしていた。私は我慢ならなかった。私を庇って傷を負った貴様を見ても平然としている井上が」

「ルキア・・・・好きだ」

パジャマのボタンを外した格好のまま、押し倒された。

「あ、一護・・・・・」

胸の傷跡に、口づけられた。

好きだと告白して、3か月が経とうとしていた。

どちらともなしに、唇が重なった。

「一護・・・・好きだ。愛している」

「俺もルキア、お前だけを愛してる。好きだ」

ルキアのパジャマを脱がせて、下着も脱がせた。

「ああっ!このよな姿、見るな・・・・・」

「すげー綺麗だ」

「私だけなんてずるい・・・一護、貴様も裸になれ」

ほどよく筋肉がついた、鍛え上げられた体が露わになる。

「いちご・・・・・・」

何度も口づけあった。

「ふあ・・・・・」

深いディープキスを繰り返すと、アメジストの瞳はとろけて、とろんとした瞳でこっちを見てきた。

「一護。貴様は、私のものだ・・・・・・」

「ああ。俺のはお前のものだ」

醜い傷跡に何度も口づけして、ささやかな膨らみしかもたぬ胸を手で触る。

「こんな胸・・・・井上の、豊満な胸に比べれば・・・・」

「俺は、巨乳より貧乳派だから」

「恥ずかしいことを・・・・・」

ルキアの胸をもみしだき、先端を口に含むと、ルキアは一護の下で身じろいだ。

「ああ・・・・・」

「もっと声、聞かせて?」

すでに潤い、濡れてしまっている秘所に指を差し入れる。

「あああ!」

ぐっと、秘所の天井付近をこすりあげて、指を折りまげてやると、ルキアはいってしまった。

「あああ!」

「続けても、大丈夫か?」

「あ、来い、一護・・・・・・」

何度か指で秘所の前立腺を刺激し、陰核をつまみあげると、ルキアは啼いた。

「ああ、いい・・・・・・」

ゆっくりと、ルキアの中に一護は己を埋めた。

ぶちぶちと音を立てて、処女膜が破れる。

血が、太ももを伝った。

「あ・・・・・」

「俺のものだ、ルキア」

「ああ!」

貫いて揺さぶると、ルキアは一護の背中に手を回した。

「ひう!」

中を抉られて、息が止まった。

「ルキア、ちゃんと息して」

「あ・・・・いちごおお」

快感で泣きじゃくるルキアの頭をなでて、突き上げると、キュウ中が締まった。

一護は、ルキアの中に欲望を吐き出した。

「あと1回してもいいか?」

「好きにせよ・・・・やっと、本当に結ばれたのだ」

一度ルキアの中から引きぬいて、ティッシュをとって流れ落ちた血をふき取った、

「本当に、始めだったんだな」

「たわけ!私が操を差し出すなど・・例え相手が恋次であろうが、あり得ぬ!」

「俺が、始めてで最後の相手だ」

「ああん」

再びルキアの中に侵入した。

ルキアの中は、一度交わったせいで、スムーズに入ることができた。

「あ、あ、あ・・・・」

一護が与える振動に、ルキアが声を漏らす。

「ああ・・・一護・・・・」

ルキアの流す涙を、唇で吸い取る。

「一緒にいこう、ルキア」

「ひあああああ!」

前立腺をすりあげていく一護の動きに、耐えきれなくなった体が逃げるようずり上がる。

それを制して、一護はルキアの子宮の中ので白濁した液体を迸らせた。

「ひん・・・・・」

びくりと、ルキアの体が痙攣する。

びくんびくんと、何度もいくルキアの体を抱き締めた。

「俺だけのものだ、ルキア」

「あああっ、いちごおおお」

ルキアは、がくりと意識を失った。

「ごめんな、ルキア。初めてなのに・・・・」

ルキアの体を濡れたタオルでふいて清めて、服を着せて一緒のベッドで丸くなって眠った。

ルキアの細い体を抱き締める。

醜い胸の傷跡を指で辿りながら、自分の方に抱き寄せて眠った。


「ん・・・いちご?」

「目、覚めたかルキア」

「腹がすいた・・・・」

今日は、大学が休みだった。珍しいことに、一護のバイトも休みだった。

「今日はデートしようぜ」

「腰が痛いのだが・・・・」

「若いから大丈夫!」

「そういう問題なのか?」

一護が起き出して、スクランブルエッグを作ってくれた。

トーストをかじりながら、ルキアは幸せそうな笑みを零した。

「どうしたんよ?」

「貴様と、また一歩未来を踏み出した・・・・・」

一護も微笑む。

「お弁当作っていくから、動物園にでもいこう」

ああ、幸せだ。

私は、こんなに幸せでいいのであろうか?

ルキアは黙っていた。

尸魂界に戻る時間が迫っていることを。

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好きから始まる物語 狂った歯車

その日から、一護はルキアと同棲を始めた。

井上の荷物は全部まとめて、井上の家の前に置いてきた。

井上とは、もう終わった。

スマホで電話をかけても、井上は出てこなかった。井上は、そのまま大学にも姿を現さず、心配した一護が一度家を訪ねても、留守のようだった。

「今日は休みだけどラーメン家のバイトがあるから。家で大人しく待っててくれ」

「何時に終わるのだ?」

「夜の8時だ」

「では、7時頃に迎えにいく。ついでに、貴様の作ったラーメンも食べてやろう」

「おう、来いよ。空座町の駅の隣にある」

地図を渡した。

ルキアが現世にきて、2か月が経とうとしていた。

井上は大学を辞めた。

一護は心が痛んだが、どうしようもなかった。

井上は、今は田舎で暮らしてているという。はっきりと別れを承諾してくれたわけではないが、もう井上とは終わった。

「ルキア、かわいい・・・・」

ルキアを抱き締めると、腕の中でルキアはくすぐったそうにしていた。

「くすぐったいぞ、一護」

「おっと、バイトに遅れる。じゃあな、ルキア。夜の7時に、俺のバイト先で」

「ああ。頑張れよ、一護」

一護は、4回生のためが授業がゼミと少しの教科だけで、大学に行くのは週に3回だった。あとの残りの日にはバイトを入れていた。

ルキアと、もっと時間を一緒に過ごしたかったが、一護にも生活がある。

ルキアの分まで食費や光熱費が増えたことは痛かったが、その分はルキアが朽木家からもってきた大金で賄えた。

一護がバイトしなくても生きていけるようにすると言われたが、申し訳なさ過ぎて断った。

ルキアと・・・・いつか、尸魂界に戻るかもしれないが、ルキアと過ごしていく1日1日が大切で、宝物のようだった。

「井上・・・・大丈夫かな」

時折、大学を辞めてしまった井上のことが気になったが、もう過ぎてしまったことだ。

井上の友人・・・特にたつきからが「お前、最低のくず男だ」と言われて殴られた。

本当のことなので、そのまま殴られた。

井上は、一度だけ姿を見せてくれた。

たつきが一護を殴るのを

「止めて!黒崎君が悪んじゃないの!全部全部、朽木さんのせいなの!」

といって止めた。

「ルキアは悪くねーよ。悪いのは俺だ、井上」

「ううん、黒崎君は朽木さんに騙されてるだけ。きっと何か、薬でもつかったんでしょ、朽木さん。涅隊長あたりから、何かもらったに決まってる」

「井上・・・・・」

どんどん醜くくなる井上を見ていられなくて。

「お別れだ」

最後に、キスをして、井上と別れた。

「ずっと、待ってるよ、黒崎君。どうせ朽木さんはいつか尸魂界に帰るんだから。そしたら、迎えにきてね」

井上は、最後まで一護の話を聞かず、井上にとっては別れは一時的なものになっていた。


「あーそろそろ7時か」

客が入ってくのも少なくなってきた。

ふと、ルキアの姿を見つけて、微笑む。

「ルキア!」

「む、一護・・・・貴様、ラーメン店の従業員の姿も似合っているな。かっこいいぞ」

「なんだ、一護の彼女か?」

店長が、ルキアを見た。

「ああ、そう店長」

「井上って子はどうしたんだ?」

「別れた」

「別れて、こんな綺麗な子と交際か。若いっていいな」

「店長まだ30代じゃないですか、十分若いです」

一護の言葉に機嫌をよくしたのか、店長はルキアの飯をおごってくれた、

「ふーん、朽木ルキアちゃんっていうのか。恰好からして、どこかのいいとこのお嬢さんでしょ」

ルキアは否定しなかった。

ワンピース姿ではあるが、どこか気品があって、やっぱり4大貴族の朽木家の姫君なんだなと、思った。

「ルキア、俺が作ったんだ。絶対おいしいから、残すなよ」

ルキアに、豚骨ラーメンと炒飯を出した。

ルキアは、恐る恐るはしを動かしたのだが、すぐに止まらなくなった。

「お、おかわり・・・・」

どんだけ食べるだろ思いつつも、今度は味噌ラーメンを単品で出してやると、それも完食してしまった。

「ルキアちゃん、いい食べっぷりだね」」

「美味しかったぞ、一護!食べすぎた・・・・・」

満腹で苦しそうなルキアに苦笑する。

その日から、一護がバイトのある日は、終わる8時まで店にいて、ラーメンを食べていくようになった。

「貴様の作ったラーメンは、朽木家の料理人にでも驚くだろうほどに美味かった」

「おう、ありがとな」

「これなら、毎日食べてもいい」

「太るなよ?」

「たわけ、ちゃんと運動もしておるし、食べても太らぬ体質なのだ!」

その日の夜も、手を繋いで帰った。

家に帰る途中、黒づくめの姿の、女らしき影が、一護とルキアの跡をつけているのに、2人とも気づいていた。

「貴様、何者だ!」

「黒崎君。あんまり襲いから、迎えにきたよ♪」

「な、井上!?」

その手には、キラリと光るサバイバルナイフがあった。

「危ない、ルキア!」

ルキアを庇うと、一護の腕に傷ができた。

「あは、黒崎君、ダニは駆除しなきゃ」

「破道の4、白雷!」

 「三天結盾、私は拒絶する!」

ばちっと、ルキアの放った鬼道を塞がれた。

「あはははは、朽木さん死んで?・・・・・」

グサリと。

血を流すルキア。

その胸には、井上が持っていたサバイバルナイフが光っていた。

「ルキアーーーーーーーー!」

「あはははは、私、治せるけど治してあげない。死んで?朽木さん♪」

すぐに救急車が呼ばれた。

目撃していた人が多数いて、井上は殺人未遂の罪で捕まった。

ルキアは、自分に回道をかけたが傷は深く、手術が行われた。無事に成功し、集中治療室に運び込まれ、ルキアが井上に刺されたということは浦原の耳にまで届き、4番隊から山田花太郎が治療のために派遣された。

山田花太郎の回道の腕は確かで、ルキアは意識を取り戻した。

「大丈夫かルキア!」

記憶置換で、ルキアが入院していたことを皆に忘れてもらった。

「ああ、なんとか・・・・」

完全ではないが、ほとんど傷は癒えていた。

「後は、自然治癒に任せるしかありません」

「花太郎、ほんとにありがとう」

「いえいえ、ルキアさんのためなら、この身が砕けても回道しに来ます!」

山田花太郎は、尸魂界に戻っていった。

ルキアは、一護の部屋に帰宅して、療養することになった。

「まさか、井上があんな行為に出るなんて・・・・」

井上は、10代ではない。

しかるべき法的処置がほどこされるであろう。

浦原も、流石は今回ばかりはどうしようもなく、ルキアが相手なので記憶置換で別人を刺したということにして、現世の法に任せた。

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好きから始まる物語 まるで雪解け水

ルキアを、自分の家に案内した。

一護は、大学生になってから一人暮らしを始めていた。

そう広くもない、一人暮らし用のアパート。

うなぎ屋をやめて、普通のラーメン店でバイトをしていて、家賃は無理だがせめて食費くらいは自分で出せるようにしていた。大学の費用やアパート代は、父親がもってくれた。

「成人しても仕事につくまでは俺の子供だ」

そう言って、学費の面倒までみてくれるので、甘えていた。

いつか卒業して金が溜まったら、学費を返還する予定だった。

「まぁあがれよ。何もない場所だけど」

「これは・・・・井上のものか」

クローゼットにある女ものの衣服を見て、ルキアが溜息を零す。

「いいのだぞ、一護。無理をしなくても。貴様は、井上が好きなのであろう?」

「確かにそれなりに好きだけど・・・もともと、ルキアを忘れるために付き合っていたんだ。ルキアと井上、どっちかをとれと言われたら、俺はルキア、お前をとる」

「一護・・・・・・」

「夕飯の買い出しにいこうぜ。白玉餡蜜作ってやるよ」

「ああ、行こう」

せめて今だけは、安らかな時間を享受しよう。そう思うルキアだった。

スーパーに行って夕飯の買い出しをした帰り道、偶然であるが井上と会った。

仲睦まじそうに手を繋いで歩く一護とルキアの姿に、涙をポロポロと零した。

「黒崎君、いやだよ!私を捨てないで!」

「井上・・・・・」

一護は、苦しそうな顔をしていた。

「なんでもするから!私を捨てないで!」

「ごめん、井上。俺、やっぱりルキアが好きなんだ。別れよう」

「別れない!私、絶対に黒崎君と別れない!」

「井上!」

「朽木さんも朽木さんよ!今更現れて、横から私の黒崎君を盗っていくなんて!このドロボーー!」

井上の言葉に、一護の顔が歪む。

「井上・・・・お前、そんな酷い奴だったのか」

「ち、違うの黒崎君!これが気が動転してて!」

「もういい。悪いが、お前との婚約もなかったことにしてくれ。俺は、ルキアと共に生きる」

「いやああああああああ!」

井上は、泣き叫びながら去ってしまった。半狂乱であった。

「井上を追わずによいのか!?」

「今追っても、事態は最悪な展開にしかならねーよ。それより時間を置いて、別れるように説得する」

「一護、私は・・・・」

「言っとくがルキア、身を引こうとか思うなよ。もしも尸魂界に戻ったら、俺はどんな手段をとってでも、お前に会いに行く」

「一護・・・・・好きだ」

「俺も好きだ」

帰宅して、一護は夕飯を作ってくれた。

カレーだった。ルキアの好きなメニューだ。白玉餡蜜をデザートして出してくれた。

その味を堪能する。

「やはり、貴様の作ったご飯はうまい」

「おかわりあるぞ?もっと食うか?」

「ああ、頼む」

白玉餡蜜のお代わりをあげながら、一護は言う。

「ルキアが帰ってくるとは思ってなかったんだ。だから、井上と婚約してた」

ルキアの顔が大きく歪む。

「でも、ルキアは俺のこと、忘れてなかった。俺たちの時間は高校3年の時に凍り付いて、やっと雪解け水になってきたんだ」

ルキアを抱き締めた。

一護からは、お日様の匂いがした。

「一護・・・・私は、どうしようもないくらいに、貴様が好きだ」

「それは俺もだぜ」

その日は、昔のように同じベッドの上で、丸くなって眠った。

腕の中のルキアの体は細くて小さい。

自分の方に抱き寄せた。

「なんなのだ、一護」

「俺のものだ、ルキア。何もかも」

「ふふ、くすぐったいぞ」

「もう、離してやらねぇ。俺がお前が大好きなんだ、ルキア」

「一護・・・・」

自然と、唇が重なった。

初めてのキスは、味がしなかったがなんとなく甘い気がした。


朝になり、一護は大学に行く準備をしていた。4回生になったばかりで、キャンバスには桜の花が咲き乱れいた。

一緒についてきていたルキアは、桜を見上げた。

「綺麗だな」

「ああ。高校の卒業式じゃ見れなかったしな」

「桜を見ていると、兄様を思い出す」

「そういや、白哉は元気か?恋次は?」

「どちらも元気だ。病気だったことを知り、恋次には散々好きだと言われた。でも、その気にはなれなかったのだ。私の心の中には、一護、貴様が住んでいたから」

「ルキア・・・・・・」

抱き締める。

細い体は、相変わらず細かった。

「よ、一護じゃねーか」

「よ、お前か」

一護の友人の一人だった。

「なんだよ、お前すっげー綺麗な子連れてるじゃねぇか。井上はどうしたんだ?」

「別れた。正確には別れようとしている」

「ええ!あのお前べったりの井上を振るなんて、お前鬼畜だな!婚約までしてたんだろう?」

「それでも、もっと大切な存在に巡りあったんだ」

「その子か?」

ルキアは、一護の後ろに隠れていた。

「今日、井上休みだよ」

「ああ・・・俺のせいだ」

「電話でさ。殺したい相手がいるって言ってたぜ」

「井上が?」

「ああ」

「そうか・・・・・」

きっと、一護を殺したいのだろう。

そう思っていた。

「紹介する、朽木ルキア。俺の大切な人だ」

「うわ、お前ひでぇな。まじであの井上のを振るつもりなのか。じゃあ、俺が井上に好きだって言っても、止めないよな?」

「ああ」

おっしゃと、友人はガッツポーズをとった。

できることなら、このまま穏便に井上と別れたかった。

そして、新しい恋人と生活をスタートしてほしかった。

一護は知らなかった。井上が、ルキアに殺意を抱いていることを。


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