白哉の家にお泊り
朽木邸の食堂に、浮竹が混じっていた。
ルキアは何故と白哉を見るが、白哉はいたって平常運転だった。
「今日から1週間、浮竹が我が家で泊まることになった」
「ええ、浮竹隊長がですか!?」
浮竹の誕生日に、何か一つだけ願いを叶えてやると言ったら、浮竹は白哉の家に1週間お泊りしたいと言い出したのだ。
なんでも願いを叶えてやると言ったが、健康な体が欲しいとか言われたらどうしようと、遅まきながら焦っていた白哉は、浮竹の朽木邸に泊まりたいという、些細な願いなら構わないと判断した。
「そういうわけだ、朽木、よろしくな。おっと、白哉も朽木だったな。俺が朽木と呼ぶのは朽木ルキアのほうで、白哉は白哉と呼んでいる」
「はぁ・・・・」
ルキアは、驚きを隠せないまま、浮竹の言葉を聞いていた。
「それにしても、朝から豪華だなぁ。流石4大貴族の朽木家」
食卓を共に囲むが、浮竹がいるだけでその場が明るくなった気がした。
いつもは、ルキアは朝食をとる時はあまり白哉と話さない。話しても、昨日は何をしただの、簡単な話題ですぐに沈黙が訪れる。
ルキアと白哉の仲が悪いわけではない。昔のように溝があった頃に比べたら、格段に進歩しただろう。
朝食の席で、このまえチャッピーのリュックサックが限定発売されて、それが欲しいのだと話していたら、次の日白哉はチャッピーの限定のリュックサックをくれた。
金に物を言わせてだが、素直に嬉しかった。
「おかわり」
浮竹は、遠慮というものをしなかった。
おかわりをして、それぞれ6番隊と13番隊の隊舎に別れて歩きだす。
「どうしたんですか、浮竹隊長。朽木家に泊まるなんて」
「いや、一度4大貴族の生活というものを体験してみたかったのと、白哉ともっと仲良くなろうと思ってな」
「兄様とは、十分に仲がいいと思いますが」
「正直を言うと、京楽が遠征にいっていてな・・・寂しいから、ちょっと甘えてみた」
「ああ、今回の遠征は8番隊でしたね」
「そうなんだ。京楽がいないのに慣れなきゃいけないんだが、毎日のように会っているから、ちょっと寂しくてな」
クスリと、ルキアが笑った。
「浮竹隊長も、かわいいところあるんですね」
「こら、朽木、笑うな」
それぞれ、隊舎と雨乾堂について、別れた。
いつもは雨乾堂で夕食をとるのだが、朽木家に泊まりにいっているので、ルキアと一緒に朽木家に帰還した。
「夕飯の準備が整っております」
白哉の付き人である清家が、二人にそう言った。
出された夕食も豪華で、浮竹はお泊りを楽しんでいるようだった。やがて風呂の時間になり、浴衣姿の浮竹が客間で寝ることになった。
朽木家は広い。
客間は10部屋はある。
「白哉・・・・」
浮竹の客間に、白哉が行ったのを見て、ルキアはどうしたんだろうと思った。
「あ、白哉・・・・そこだ、そこそこ」
「?」
襖に聞き耳を立てる。
「くーきくなぁ」
「何をしている、ルキア」
襖を開けられて、ルキアは真っ赤になって縮こまった。
「兄様が、浮竹隊長の部屋に入っていくのを見てしまい、気になってしまいました」
「ただ、腰を揉んでいただけだ」
「そうだぞ、朽木。白哉、こう見えてけっこうマッサージが上手いんだ。前から揉んでもらおうと思っていたんだ」
「そ、そうでしたか!」
まさかできているのではと、少しでも疑った自分が恥ずかしかった。
やがて夜を迎えて、3人はそれぞれ別々の部屋で就寝した。
それから1週間はあっという間だった。
楽しかった浮竹隊長のお泊りも、終わりだ。
朝になり、朝食をとろうとした席に、京楽が乱入してきた。何処から入ってきたのか、止める者はいなかった。
「浮竹、僕を捨てて朽木隊長に乗り換えたって本当かい!?」
吃驚する浮竹に、京楽は浮竹を背中に隠して、白哉と対峙する。
「なぜそのような話になる。浮竹は、ただ1週間ばかり、我が家の客人になっていただけだ」
「え、本当のなの?」
「ああ、そうだぞ。誕生日に何か願いごとを叶えてやると言われたから、白哉の家に1週間お泊りを希望したんだ」
京楽が、肩の力を抜く。
「仙太郎君と清音ちゃんが、僕を捨てて朽木隊長に乗り換えたっていうから・・・・」
「あの二人のことを真に受けるだけ無駄だぞ」
「そうだね。何もなかったようだし。雨乾堂に帰ろう、浮竹」
「あ、朝食を食べてからな。せっかくだし、京楽も食っていけ」
「ええ、いいのかい。朽木隊長は?」
「私は別に構わぬぞ。朝食がにぎやかになってよいことだ」
京楽の分も追加で朝食が用意された。
「美味いね・・・僕のとこのろ料理長の朝食と、ためはれるよ」
「浮竹隊長は、京楽隊長が遠征でいなくて寂しいので、我が家に泊まられていたのです」
「こら、朽木、余計なこと言うな」
「はっ!す、すみません」
京楽が、朝食を食べ終えてにんまりと笑んだ。
「へー。僕がいなくて寂しかったの。でも、だからって朽木隊長の家にお泊りは、ちょっとねぇ・・・・」
「別にどこに泊まろうといいだろう!」
「僕が嫉妬する。さぁ、帰ろうか、浮竹」
ひょいっと肩に担がれて、浮竹は白哉に礼を言った。
「白哉、1週間泊めてくれてありがとう。楽しかった」
「造作もないことだ。また泊まりにきたくなったら、言うがよい」
「朽木隊長、うちの子はもう泊まりにこないからね」
「それを決めるのは、兄ではないだろう」
ばちばちと、目線で争いあう。
白哉にとって、浮竹は実の兄のような関係だった。
「じゃ、雨乾堂に戻るよ。荷物は後で僕が引き取りにいくから」
「あ、白哉ありがとな。朽木も」
再度礼を言って、浮竹は京楽の肩に担がれて、瞬歩で雨乾堂まで移動した。
「ねえ、浮竹。僕がいなくて、そんなに寂しかった?」
「当たり前だろう。最近はずっと一緒にいたのに、急に遠征でいなくなるから・・・・」
にんまりと、京楽は笑むと、布団をしいてそこに浮竹を押し倒した、
「君に、教えてあげなきゃね。寂しいからって、他の男の家に泊まりにいくなんて許せないってことを」
「おい、朽木もいたんだぞ。それに、ただ泊まっただけだ」
「それでも、僕は嫉妬するよ」
「京楽!」
唇を奪われた。
後は、なし崩しに抱かれて、そのまま眠ってしまった。
長い白髪を撫でて、京楽は独り言をいう。
「君が朽木隊長のところに行ったと言われて、腸(はらわた)が煮えくり返りそうになったよ」
「ん・・・・」
浮竹が身動ぎするが、まだ眠ったままだ。
「君は僕のものだ。たとえ朽木隊長であれ、渡さない」
頬にキスをして、京楽も眠った。
8番隊の遠征は終了し、またいつもの日常が戻ってくる。
京楽は、また毎日のように雨乾堂に顔を出して、仕事をもってきては一緒に仕事をした。
それから、8番隊でまた遠征があったが、浮竹が白哉の家に泊まることはなかったという。
ルキアは何故と白哉を見るが、白哉はいたって平常運転だった。
「今日から1週間、浮竹が我が家で泊まることになった」
「ええ、浮竹隊長がですか!?」
浮竹の誕生日に、何か一つだけ願いを叶えてやると言ったら、浮竹は白哉の家に1週間お泊りしたいと言い出したのだ。
なんでも願いを叶えてやると言ったが、健康な体が欲しいとか言われたらどうしようと、遅まきながら焦っていた白哉は、浮竹の朽木邸に泊まりたいという、些細な願いなら構わないと判断した。
「そういうわけだ、朽木、よろしくな。おっと、白哉も朽木だったな。俺が朽木と呼ぶのは朽木ルキアのほうで、白哉は白哉と呼んでいる」
「はぁ・・・・」
ルキアは、驚きを隠せないまま、浮竹の言葉を聞いていた。
「それにしても、朝から豪華だなぁ。流石4大貴族の朽木家」
食卓を共に囲むが、浮竹がいるだけでその場が明るくなった気がした。
いつもは、ルキアは朝食をとる時はあまり白哉と話さない。話しても、昨日は何をしただの、簡単な話題ですぐに沈黙が訪れる。
ルキアと白哉の仲が悪いわけではない。昔のように溝があった頃に比べたら、格段に進歩しただろう。
朝食の席で、このまえチャッピーのリュックサックが限定発売されて、それが欲しいのだと話していたら、次の日白哉はチャッピーの限定のリュックサックをくれた。
金に物を言わせてだが、素直に嬉しかった。
「おかわり」
浮竹は、遠慮というものをしなかった。
おかわりをして、それぞれ6番隊と13番隊の隊舎に別れて歩きだす。
「どうしたんですか、浮竹隊長。朽木家に泊まるなんて」
「いや、一度4大貴族の生活というものを体験してみたかったのと、白哉ともっと仲良くなろうと思ってな」
「兄様とは、十分に仲がいいと思いますが」
「正直を言うと、京楽が遠征にいっていてな・・・寂しいから、ちょっと甘えてみた」
「ああ、今回の遠征は8番隊でしたね」
「そうなんだ。京楽がいないのに慣れなきゃいけないんだが、毎日のように会っているから、ちょっと寂しくてな」
クスリと、ルキアが笑った。
「浮竹隊長も、かわいいところあるんですね」
「こら、朽木、笑うな」
それぞれ、隊舎と雨乾堂について、別れた。
いつもは雨乾堂で夕食をとるのだが、朽木家に泊まりにいっているので、ルキアと一緒に朽木家に帰還した。
「夕飯の準備が整っております」
白哉の付き人である清家が、二人にそう言った。
出された夕食も豪華で、浮竹はお泊りを楽しんでいるようだった。やがて風呂の時間になり、浴衣姿の浮竹が客間で寝ることになった。
朽木家は広い。
客間は10部屋はある。
「白哉・・・・」
浮竹の客間に、白哉が行ったのを見て、ルキアはどうしたんだろうと思った。
「あ、白哉・・・・そこだ、そこそこ」
「?」
襖に聞き耳を立てる。
「くーきくなぁ」
「何をしている、ルキア」
襖を開けられて、ルキアは真っ赤になって縮こまった。
「兄様が、浮竹隊長の部屋に入っていくのを見てしまい、気になってしまいました」
「ただ、腰を揉んでいただけだ」
「そうだぞ、朽木。白哉、こう見えてけっこうマッサージが上手いんだ。前から揉んでもらおうと思っていたんだ」
「そ、そうでしたか!」
まさかできているのではと、少しでも疑った自分が恥ずかしかった。
やがて夜を迎えて、3人はそれぞれ別々の部屋で就寝した。
それから1週間はあっという間だった。
楽しかった浮竹隊長のお泊りも、終わりだ。
朝になり、朝食をとろうとした席に、京楽が乱入してきた。何処から入ってきたのか、止める者はいなかった。
「浮竹、僕を捨てて朽木隊長に乗り換えたって本当かい!?」
吃驚する浮竹に、京楽は浮竹を背中に隠して、白哉と対峙する。
「なぜそのような話になる。浮竹は、ただ1週間ばかり、我が家の客人になっていただけだ」
「え、本当のなの?」
「ああ、そうだぞ。誕生日に何か願いごとを叶えてやると言われたから、白哉の家に1週間お泊りを希望したんだ」
京楽が、肩の力を抜く。
「仙太郎君と清音ちゃんが、僕を捨てて朽木隊長に乗り換えたっていうから・・・・」
「あの二人のことを真に受けるだけ無駄だぞ」
「そうだね。何もなかったようだし。雨乾堂に帰ろう、浮竹」
「あ、朝食を食べてからな。せっかくだし、京楽も食っていけ」
「ええ、いいのかい。朽木隊長は?」
「私は別に構わぬぞ。朝食がにぎやかになってよいことだ」
京楽の分も追加で朝食が用意された。
「美味いね・・・僕のとこのろ料理長の朝食と、ためはれるよ」
「浮竹隊長は、京楽隊長が遠征でいなくて寂しいので、我が家に泊まられていたのです」
「こら、朽木、余計なこと言うな」
「はっ!す、すみません」
京楽が、朝食を食べ終えてにんまりと笑んだ。
「へー。僕がいなくて寂しかったの。でも、だからって朽木隊長の家にお泊りは、ちょっとねぇ・・・・」
「別にどこに泊まろうといいだろう!」
「僕が嫉妬する。さぁ、帰ろうか、浮竹」
ひょいっと肩に担がれて、浮竹は白哉に礼を言った。
「白哉、1週間泊めてくれてありがとう。楽しかった」
「造作もないことだ。また泊まりにきたくなったら、言うがよい」
「朽木隊長、うちの子はもう泊まりにこないからね」
「それを決めるのは、兄ではないだろう」
ばちばちと、目線で争いあう。
白哉にとって、浮竹は実の兄のような関係だった。
「じゃ、雨乾堂に戻るよ。荷物は後で僕が引き取りにいくから」
「あ、白哉ありがとな。朽木も」
再度礼を言って、浮竹は京楽の肩に担がれて、瞬歩で雨乾堂まで移動した。
「ねえ、浮竹。僕がいなくて、そんなに寂しかった?」
「当たり前だろう。最近はずっと一緒にいたのに、急に遠征でいなくなるから・・・・」
にんまりと、京楽は笑むと、布団をしいてそこに浮竹を押し倒した、
「君に、教えてあげなきゃね。寂しいからって、他の男の家に泊まりにいくなんて許せないってことを」
「おい、朽木もいたんだぞ。それに、ただ泊まっただけだ」
「それでも、僕は嫉妬するよ」
「京楽!」
唇を奪われた。
後は、なし崩しに抱かれて、そのまま眠ってしまった。
長い白髪を撫でて、京楽は独り言をいう。
「君が朽木隊長のところに行ったと言われて、腸(はらわた)が煮えくり返りそうになったよ」
「ん・・・・」
浮竹が身動ぎするが、まだ眠ったままだ。
「君は僕のものだ。たとえ朽木隊長であれ、渡さない」
頬にキスをして、京楽も眠った。
8番隊の遠征は終了し、またいつもの日常が戻ってくる。
京楽は、また毎日のように雨乾堂に顔を出して、仕事をもってきては一緒に仕事をした。
それから、8番隊でまた遠征があったが、浮竹が白哉の家に泊まることはなかったという。
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発作の次の日
ごほごほと、咳込む浮竹の背をさすってやった。
吐血こそしないものの、呼吸がしにくそうで苦しそうだった。
「ごほっごほっ・・・・・」
ぱたたたた。
鮮血が、浮竹の手から漏れて布団に滴り落ちる。
「大丈夫?今4番隊に連れていくからね」
腕の中で抱えられて、瞬歩で4番隊の救護詰所に行った。
ちょうど、11番隊の遠征が終了し、怪我人がたくさん運ばれている状態で、卯ノ花に診てもらうことはできなかったが、副隊長の勇音に診てもらえた。
「軽い発作ですね。薬をだしておきます。回道はすでにかけたので、あとは自然回復に任せるしかありません」
いつものことなので、浮竹は平気な顔をしていた。
血こそ吐いたが、苦しいほどの発作ではなかったのだ。出歩いてもいいと言われたら、きっと甘味屋にでも行ってしまいそうな元気さだ。
「ちゃんと、布団に横になるんだよ?」
幼子に言い聞かせるように、浮竹を抱いて瞬歩で雨乾堂に戻った。
血でよごれた布団を変えて、真新しい布団の上に横になる。
「すまないな・・・・遊びにきてくれたのに」
「いいんだよ。君が元気なのが何よりだから」
そう言って笑う京楽の、その優しさが好きだった。
体を重ねあうようになって、数百年。変わらない関係は、別れというものを匂わせることなく、続いている。
次の日、浮竹は6番隊の白哉のところに訪れていた。
「白哉、人生ゲームをしよう」
「兄は・・・・発作を起こしたのではないのか。昨日、救護詰所に運ばれたと聞いたぞ」
「ああ、もう大丈夫だ」
そう言って、白哉とあと恋次も巻き込んで人生ゲームを始めた。
昔も人生ゲームをして遊んでいたが、いつも白哉の一人勝ちだった。今回はそういうわけではなく、浮竹が億万長者になって、子供も4人もうけてゴールした。
白哉は借金にまみれた人生でゴールした。
恋次は、普通に会社員で子供を二人もうけてゴール。
「納得がいかぬ。なぜ私が借金まみれなのだ」
「いや、白哉これはゲームだから」
そう言っても、白哉は納得がいかないようで、もう1回人生ゲームをした。
白哉が石油を掘り当てて石油王になり、何人もの妻をめとってのゴールとなった。
浮竹と恋次は借金まみれのゴールだった。
「隊長、このゲーム極端すぎませんか。億万長者か借金王って」
恋次が、不服そうにそう言葉を出すが、白哉はいたって冷静だった。
「私が金持ちになるのは当たり前なのだ。現実でもそうであるのだから」
「うわー」
浮竹は、少し引いた。
「浮竹、浮竹いるかい?」
その時、6番隊の執務室に京楽がやってきた。
「どうしたんだ、京楽」
「どうしたんじゃないよ!昨日発作起こしたばかりで、何朽木隊長と阿散井君と遊んでるの!」
「いや、暇だったから・・・・・・」
浮竹はそう言うが、京楽は本気で心配していた。
「すまないね、朽木隊長」
「いや、ただ人生ゲームで遊んでいただけだ」
「浮竹、戻るよ」
ひょいっと浮竹を肩に担ぎあげて、京楽は6番隊の執務室を去ろうとして、恋次に人生ゲームを渡された。
「浮竹隊長のものです。もっていってください」
「人生ゲームねぇ・・・・」
浮竹を抱えた反対側の手で人生ゲームを持って、京楽は雨乾堂に戻った。
「ねぇ、浮竹。昨日発作を起こしたばかりなのに、なんで君は出歩くの」
「発作なんていつものことだ。治まってしまえば、あとはなんてことない」
「浮竹は、もっと自分の体を大事にしなよ」
京楽が、心配そうな声を出す。
「癒えない肺病だ・・・人生をそれで狂わされてるんだ。気分がいい時くらい出歩いてもいいだろう」
「だめだよ。少なくとも、発作をおこした次の日は安静にしていなきゃ」
「でも暇なんだ」
「僕を呼んで。話相手になってあげるから」
浮竹は、逡巡したあげく、京楽の顔を見る。
「怒っているのか?」
「少しね。それより、呆れてる。まぁ、君が元気そうで何よりだけど」
「じゃあ、二人で人生ゲームでもするか」
「寝ていなくていいの?」
「本当に、今日は調子がいいんだ」
確かに、頬に赤みがさしているし、元気そうだった。
「二人だけの人生ゲームってなんかつまらなさそうだね」
「じゃあ、朽木と仙太郎と清音を呼ぼう」
白哉のところで人生ゲームをしていたのは昼休みだった。
仕事があるのに、いいのかなと思いながらも、京楽は頷いた。
そして、ルキア、仙太郎、清音が呼ばれた。
「人生ゲームですか。一護の妹と遊んだことがあります」
「私は遊んだことありません。できるでしょうか」
「不細工女は人生ゲームでも借金王になるんだろ?」
「なんですってぇ!」
「清音も仙太郎も、仲よくしないか。ルールを説明する・・・・・」
そうやって、5人で人生ゲームをした。大人数でやると楽しくて、つい3回もやってしまった。
浮竹は、3回とも借金まみれでゴールした。京楽は3回とも大金持ちでゴールした。
ルキアと仙太郎と清音は、ばらばらだった。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。仕事があるので、2時間ばかり付き合ってもらって、3人は仕事に戻っていった。
「僕はゲームの中でも大金持ちか。君が借金まみれなら、君を救ってあげられるね」
「まぁ、現実も借金まみれとまではいかないが、金はあまりないからな」
浮竹が苦笑する。
京楽の金で助けてもらっている部分も多い。
浮竹が、家族への仕送りをやめれば金はあるのだが、子供の頃に借金をしてまで薬代を捻出してくれた両親のためにも、仕送りはやめれない。
「仕事は仙太郎と清音が片付けてしまっていたし・・・もうすることもないな」
「花札でもしようか?」
「飽きた」
「じゃあ、昔話でもしよう」
「そうだな」
京楽は、今日も仕事はさぼりだった。後で伊勢にどやされることになるだろうが、傍にいてくれて浮竹は嬉しかった。
「院生時代の話でもするか」
他愛ない、京楽がよくさぼって、それを浮竹が見つけて授業に出させるという話題だった。
あの頃から、今も変わらない関係。数百年も続くとは思わなかった。
でも、別れることなんて頭にない。
「昔のほうがまだ発作が少なかったな・・・年とともに体力が落ちているんだろうな」
「僕ら、まだまだ現役だよ。そんなおじいさんくさいこと言わないでよ。浮竹もまだ十分若いよ」
「だが、ここ数百年と同じ隊長であるのは、先生と俺とお前と卯ノ花隊長くらいだろう。あとは若い子たちが隊長になって消えていったり・・・年はとりたくないものだな」
苦笑いを零す浮竹の髪を、京楽は手ですいた。
「まだまだ僕らも現役なんだから。そう悲観することもないよ」
「そうだな」
京楽の手は優しかった。
頭を撫でられて、次に抱き寄せられた。
「ん・・・・」
口づけを交わして、離れる。
「今日は無理だぞ。元気がいいといっても、睦み合う気はない」
「分かってるよ。発作を起こした数日は抱かない。僕たちの暗黙のルール、ちゃんと守るから」
京楽の言葉にほっとする。
「今日は泊まっていけ」
「わかったよ」
昔なら海燕がいたが、彼が死んで50年は経過している。
今は、副官は空席だった。
いつか、副官を置くならルキアだろう。そう確信めいたものを、浮竹は思う。
「一緒にお風呂に入ろう」
「ああ」
夕飯を食べて、風呂に入り布団に寝転んで、また昔話に花を咲かせた。
いつか副官を置くようになったら、また違う日々がくるのだろう。
そう思うのだった。
吐血こそしないものの、呼吸がしにくそうで苦しそうだった。
「ごほっごほっ・・・・・」
ぱたたたた。
鮮血が、浮竹の手から漏れて布団に滴り落ちる。
「大丈夫?今4番隊に連れていくからね」
腕の中で抱えられて、瞬歩で4番隊の救護詰所に行った。
ちょうど、11番隊の遠征が終了し、怪我人がたくさん運ばれている状態で、卯ノ花に診てもらうことはできなかったが、副隊長の勇音に診てもらえた。
「軽い発作ですね。薬をだしておきます。回道はすでにかけたので、あとは自然回復に任せるしかありません」
いつものことなので、浮竹は平気な顔をしていた。
血こそ吐いたが、苦しいほどの発作ではなかったのだ。出歩いてもいいと言われたら、きっと甘味屋にでも行ってしまいそうな元気さだ。
「ちゃんと、布団に横になるんだよ?」
幼子に言い聞かせるように、浮竹を抱いて瞬歩で雨乾堂に戻った。
血でよごれた布団を変えて、真新しい布団の上に横になる。
「すまないな・・・・遊びにきてくれたのに」
「いいんだよ。君が元気なのが何よりだから」
そう言って笑う京楽の、その優しさが好きだった。
体を重ねあうようになって、数百年。変わらない関係は、別れというものを匂わせることなく、続いている。
次の日、浮竹は6番隊の白哉のところに訪れていた。
「白哉、人生ゲームをしよう」
「兄は・・・・発作を起こしたのではないのか。昨日、救護詰所に運ばれたと聞いたぞ」
「ああ、もう大丈夫だ」
そう言って、白哉とあと恋次も巻き込んで人生ゲームを始めた。
昔も人生ゲームをして遊んでいたが、いつも白哉の一人勝ちだった。今回はそういうわけではなく、浮竹が億万長者になって、子供も4人もうけてゴールした。
白哉は借金にまみれた人生でゴールした。
恋次は、普通に会社員で子供を二人もうけてゴール。
「納得がいかぬ。なぜ私が借金まみれなのだ」
「いや、白哉これはゲームだから」
そう言っても、白哉は納得がいかないようで、もう1回人生ゲームをした。
白哉が石油を掘り当てて石油王になり、何人もの妻をめとってのゴールとなった。
浮竹と恋次は借金まみれのゴールだった。
「隊長、このゲーム極端すぎませんか。億万長者か借金王って」
恋次が、不服そうにそう言葉を出すが、白哉はいたって冷静だった。
「私が金持ちになるのは当たり前なのだ。現実でもそうであるのだから」
「うわー」
浮竹は、少し引いた。
「浮竹、浮竹いるかい?」
その時、6番隊の執務室に京楽がやってきた。
「どうしたんだ、京楽」
「どうしたんじゃないよ!昨日発作起こしたばかりで、何朽木隊長と阿散井君と遊んでるの!」
「いや、暇だったから・・・・・・」
浮竹はそう言うが、京楽は本気で心配していた。
「すまないね、朽木隊長」
「いや、ただ人生ゲームで遊んでいただけだ」
「浮竹、戻るよ」
ひょいっと浮竹を肩に担ぎあげて、京楽は6番隊の執務室を去ろうとして、恋次に人生ゲームを渡された。
「浮竹隊長のものです。もっていってください」
「人生ゲームねぇ・・・・」
浮竹を抱えた反対側の手で人生ゲームを持って、京楽は雨乾堂に戻った。
「ねぇ、浮竹。昨日発作を起こしたばかりなのに、なんで君は出歩くの」
「発作なんていつものことだ。治まってしまえば、あとはなんてことない」
「浮竹は、もっと自分の体を大事にしなよ」
京楽が、心配そうな声を出す。
「癒えない肺病だ・・・人生をそれで狂わされてるんだ。気分がいい時くらい出歩いてもいいだろう」
「だめだよ。少なくとも、発作をおこした次の日は安静にしていなきゃ」
「でも暇なんだ」
「僕を呼んで。話相手になってあげるから」
浮竹は、逡巡したあげく、京楽の顔を見る。
「怒っているのか?」
「少しね。それより、呆れてる。まぁ、君が元気そうで何よりだけど」
「じゃあ、二人で人生ゲームでもするか」
「寝ていなくていいの?」
「本当に、今日は調子がいいんだ」
確かに、頬に赤みがさしているし、元気そうだった。
「二人だけの人生ゲームってなんかつまらなさそうだね」
「じゃあ、朽木と仙太郎と清音を呼ぼう」
白哉のところで人生ゲームをしていたのは昼休みだった。
仕事があるのに、いいのかなと思いながらも、京楽は頷いた。
そして、ルキア、仙太郎、清音が呼ばれた。
「人生ゲームですか。一護の妹と遊んだことがあります」
「私は遊んだことありません。できるでしょうか」
「不細工女は人生ゲームでも借金王になるんだろ?」
「なんですってぇ!」
「清音も仙太郎も、仲よくしないか。ルールを説明する・・・・・」
そうやって、5人で人生ゲームをした。大人数でやると楽しくて、つい3回もやってしまった。
浮竹は、3回とも借金まみれでゴールした。京楽は3回とも大金持ちでゴールした。
ルキアと仙太郎と清音は、ばらばらだった。
楽しい時間はあっという間に過ぎてしまう。仕事があるので、2時間ばかり付き合ってもらって、3人は仕事に戻っていった。
「僕はゲームの中でも大金持ちか。君が借金まみれなら、君を救ってあげられるね」
「まぁ、現実も借金まみれとまではいかないが、金はあまりないからな」
浮竹が苦笑する。
京楽の金で助けてもらっている部分も多い。
浮竹が、家族への仕送りをやめれば金はあるのだが、子供の頃に借金をしてまで薬代を捻出してくれた両親のためにも、仕送りはやめれない。
「仕事は仙太郎と清音が片付けてしまっていたし・・・もうすることもないな」
「花札でもしようか?」
「飽きた」
「じゃあ、昔話でもしよう」
「そうだな」
京楽は、今日も仕事はさぼりだった。後で伊勢にどやされることになるだろうが、傍にいてくれて浮竹は嬉しかった。
「院生時代の話でもするか」
他愛ない、京楽がよくさぼって、それを浮竹が見つけて授業に出させるという話題だった。
あの頃から、今も変わらない関係。数百年も続くとは思わなかった。
でも、別れることなんて頭にない。
「昔のほうがまだ発作が少なかったな・・・年とともに体力が落ちているんだろうな」
「僕ら、まだまだ現役だよ。そんなおじいさんくさいこと言わないでよ。浮竹もまだ十分若いよ」
「だが、ここ数百年と同じ隊長であるのは、先生と俺とお前と卯ノ花隊長くらいだろう。あとは若い子たちが隊長になって消えていったり・・・年はとりたくないものだな」
苦笑いを零す浮竹の髪を、京楽は手ですいた。
「まだまだ僕らも現役なんだから。そう悲観することもないよ」
「そうだな」
京楽の手は優しかった。
頭を撫でられて、次に抱き寄せられた。
「ん・・・・」
口づけを交わして、離れる。
「今日は無理だぞ。元気がいいといっても、睦み合う気はない」
「分かってるよ。発作を起こした数日は抱かない。僕たちの暗黙のルール、ちゃんと守るから」
京楽の言葉にほっとする。
「今日は泊まっていけ」
「わかったよ」
昔なら海燕がいたが、彼が死んで50年は経過している。
今は、副官は空席だった。
いつか、副官を置くならルキアだろう。そう確信めいたものを、浮竹は思う。
「一緒にお風呂に入ろう」
「ああ」
夕飯を食べて、風呂に入り布団に寝転んで、また昔話に花を咲かせた。
いつか副官を置くようになったら、また違う日々がくるのだろう。
そう思うのだった。
緋真の命日
「春だな・・・・・」
桜の満開の季節、白哉は恋次を呼んで、ルキアと一護と共に、庭で花見をした。
「朽木家の桜は、ほんとにすごいっすね」
「当たり前であろう!兄様の斬魄刀が千本桜と分かって、桜の木をたくさ植えたのだ!」
ルキアが、さも自分のことのように得意げになる。
「おい、ルキア」
「なんだ一護」
「せっかくの花見なんだから、二人きりにさせてやろうぜ」
「ふむ、それもそうだな。では兄様、私と一護は向こうの方で花見をします故、好きなだけいちゃついてください」
ルキアの言葉に、ぴくりと眉を動かしたが、感情には出さなかった。
「一護のやつ、気が利きますね」
「別に、お前と二人きりでなくともよかったのに」
「まぁ、そう言わずに。酒でも飲みましょう」
恋次が、白哉に杯をもたせて、高級酒を注ぐ。
それを、白哉は一気に飲み干した。
恋次も、同じ酒を飲んでみる。その酒の強さに、顔をしかめた。
「隊長、この酒きつすぎます。違う酒持ってきますね」
そう言って、恋次は朽木家の厨房に消えていった。
白哉は、その強い酒を何度か飲んで、残りを桜の木にかけた。
「緋真・・・桜の花が満開だぞ・・・・そなたの笑顔のようだ」
帰ってきた恋次に、その言葉の全てを聞かれていた。
「隊長、俺と居る時は、俺を見てください」
「すまぬ・・・・軽率であった」
死人に嫉妬しても、何にもならない。
白哉の心は手に入れた。でも、緋真を愛する心までは、何があろうとも奪えなかった。
「こっちの酒なら、そんなに強くないですから」
杯に酒を注ぐ。
白哉は、浴びるように酒を飲んだ。
恋次も、同じように浴びるように酒を飲んだ。
二人して、酔っぱらったが、悪酔いはせず、桜の花を見ていた。
「今宵、あの館で・・・・・」
誘われて、恋次はガッツポーズをとる。
そのまま桜を見ながら、お弁当を食べて、その日の休日の午後は緩やかに過ぎていった。
夜がきて、いつも逢瀬に使う館にくると、白哉がすでに酒を飲んでいた。
「隊長、今日がちょっと飲みすきじゃないですか?」
「よいのだ。酒に溺れたい」
「どうしてですか?」
「今日は・・・・緋真の、命日なのだ」
その言葉に、恋次が息を飲む。
道理で、緋真のことを口にするはずだった。いつもの白哉は、緋真のことを普段口にしない。
「緋真さんの命日なのに、いいんですか、俺といて」
「寂いのだ。あの陽だまりを失った日から、今日という日はただ虚しく悲しいだけだった。それが嫌なのだ」
白哉は、恋次に抱き着いた。
「酒に溺れても、忘れられぬ。緋真の最期が」
真っ赤な血を吐いて、そのまま散っていった、最愛の者。
「全てを忘れたい・・・・・・」
「とりあえず、食事にしましょう。何も食べなかったら、余計に気が滅入りますよ」
恋次の言葉に、白哉も頷いて、用意されていた夕餉を全て食した。
それから、また酒を飲んだ。
「緋真のことを、忘れたくないのだ。だが、忘れたい」
相反する感情に苛まれる。
酒で酔った白哉は、いつもより色香が増していた。
「一時でいいなら。全部、忘れさせてあげます」
白哉を抱き抱えて、褥に横にさせる。
貴族の証を乱暴にはぎとって隊長羽織と死覇装に手をかけた。
「恋次、約束しろ・・・・私を置いて、先に逝かぬと」
「いくらでも約束します。それであんたの気が紛れるのなら」
「恋次・・・好きだ。愛している。私を置いていくな・・・・・」
「隊長、あんたがどうしようもないほどに愛しい。俺はあんたを置いていかない」
安堵して、心なしか表情が柔らかくなった、白哉の鎖骨から胸元にかけて、キスマークを残していく。
「ふ・・・くすぐったい・・・・・」
そう言う白哉に深い口づけをした。
舌が絡まりあい、銀の糸をひいて舌が出ていく。
胸の先端にかみついて、もう片方を指で転がすと、白哉がぴくりと反応した。
「あ・・・・・」
声を噛み殺すように、口元に手を当てる。
その手に口づけて、恋次が自分の背中に回させた。入れ墨だらけの体は引き締まっていて、筋肉質だった。ただ、その背中には白哉の爪によるひっかき傷ができていた。
交わる頻度が高くなったために、完治する前に次のひっかき傷ができた。
白哉の花茎に手をかけて、まずは先にいかせようとするのを、白哉が止めた。
「お前と一緒に、いきたい」
「じゃあ・・・・」
お互いのものをくっつけて、手でしごいた。白哉は恋次のものを扱っていたが、恋次の扱いの方がうまくて、白哉は先にいってしまった。
「あああ!」
恋次も、白哉の手で次の瞬間には、白濁した液を吐きだしていた。
「指、いれますよ」
こくりと、白哉が頷く。
つぷりと音をたてて、恋次の潤滑油にまみれた指が入ってきた。
「んんん・・・・・・」
キスを何度も繰り返しながら、ぐちゃぐちゃと音をたてて、中を解していく。
前立腺をひっかかれて、ぴくんと白哉が反応した。
「もういい。来い」
指をひきぬき、恋次は自分のものを宛がい、ゆっくりと埋めていった。
「ひう」
根元まで埋め込むと、白哉がようやく息をした。、
そのまま、突き上げる。
「あ!」
前立腺をすりあげるように突き上げると、白哉は白濁した液をぽたぽたと滴らせていた。
「今日は、感じやすいんですか?いつもより、いくの早いですね」
「言うな・・・・・」
突き上げられて、抉られて、揺さぶられる。
黒絹のような白哉の髪が、宙を舞った。
「あ・・・・・・」
騎乗位にされて、白哉が戸惑う。
下から突き上げられて、白哉の髪が宙を舞った。
「あ、はげし・・・・・・あああ!」
下から突き上げながら、恋次は白哉の花茎に手をかけてしごいていく。
前も後ろも攻められて、何も考えられなくなった。
「ああああ!」
ぽたぽたと、恋次の腹の上に精液を吐きだしていた。
恋次も、白哉の中に欲望を吐きだす。
「あ、もう・・・・・」
3回もいってしまった白哉は、もう吐き出すものはほとんど残っていなかった。
下からリズミカルに突き上げられながら、オーガズムで達していた。
「恋次・・・・!」
恋次は、白哉を押し倒した。
内部を深く抉られて、白哉の体が痙攣をおこす。
「あああ!」
外からでも分かるくらい、恋次の太いものが白哉の腹の中にいるのが分かった。
「あ・・・・・あ!」
最奥を抉り、こじあけて恋次は最後の一滴までを白哉に注ぎ込んだ。
ぬくと、ぽたぽたと恋次が放ったものが逆流して太腿を伝い落ちる。それをタオルでふきとって、白哉を横抱きにして湯殿に向かった。
「あ・・・・」
恋次のはきだしたものが、またとろりと白哉の太腿を伝う。
そのまま、中にだしたものをかき出された。
「座ってください。髪と体、洗うから」
言われた通りにすると、恋次が白哉の髪と体を洗った。
恋次も、自分の髪と体を洗う。
それから、湯船に浸かって、白哉のほうを見た。
「一時でも、緋真さんのこと、忘れられましたか?」
「今の今まで、忘れていた。私は薄情者だな」
「セックスしてる時に、他の奴のこと考える間なんて与えません」
「緋真の命日だというのに、昔のように悲しくないのだ。確かに悲しい気持ちはあるにはあるが、恋次、お前のせいで薄らいでいっている」
「無理に忘れろとかはいいません。ただ、俺と居る時は、俺のことを考えてください」
「分かった・・・・」
そのまま湯からあがり、下着をつけて浴衣を着て、上から羽織りを着て、褥とは別にしかれていた二組の布団の上に、それぞれ横にになった。
「添い寝、しましょうか?」
「いらぬ」
「じゃあ、隊長が俺に添い寝してください」
「仕方ない・・・・」
恋次の寝ている布団に、白哉がもぐりこんでくる。
「ああもう、なんであんたこんなにかわいいんだ」
「んんっ」
唇を奪われて、恋次の胸を叩いた。
「もう盛るな!」
「すみません」
結局、恋次に添い寝を強要されて、白哉は恋次と同じ布団で眠りについた。
「ん・・・・・朝か」
隣に恋次はいなかった、
「恋次?」
姿を探すと、恋次は冷蔵庫にあった食材で、簡単な朝食を作っていた。
「隊長も、朝飯食べていきますよね」
いつもなら、目覚めるとそのまま朽木家に戻り、朝食を食べるのだが、せっかくなので恋次の作った朝食を食べた。
「意外と美味い・・・・」
「伊達に、一人暮らししてませんよ。自炊くらいしますからね」
「そうか」
ふわりと、白哉が微笑んだ。
それに見惚れて、ぼとりと卵焼きを落とす。
「どうしたのだ」
「あんたの笑顔が、あんまりにも綺麗だったから、見惚れてしまいました」
「ふっ・・・おかしな奴だな」
流れる時間は穏やかで、優しかった。
「もう、緋真さんのこと、大丈夫ですか」
「ああ。もう寂しくはない。お前のお陰だ」
恋次は、白哉を抱き締めた。
「不安になったり、寂しくなった時は言ってください。慰めることしかできないけど、一人で抱え込むより楽になるはずです」
「そう・・・だな。今まで、ずっと一人で抱え込んでいた。お前の言う通りだ。私の周囲には、お前だけでなくルキアもついでに婿入りいした一護もいるのだし・・・・」
「なるべく、俺を頼ってくださいね。ルキアならともなく、一護には渡したくない」
「一護は、ルキアの夫だ。家族だ。何もお前が考えているようなことは起こらない」
「そうでしょうけど、なんか一護に頼られると、俺の存在がない感じがして嫌です」
「ふっ・・・・」
白哉は笑った。
綺麗な微笑みだった。
ぼとり。
恋次は、また卵焼きを落とした。
「あーもう、その笑みはあんまり外で見せないように!」
「分かっている。お前の前だけだ」
「ほんと、性質が悪いですね。あんたの笑みって、なまじすごい綺麗な顔してるから、微笑むと男女見境なく視線を集めますから・・・・・」
白哉が、笑うようになったのは、最近だ。
恋次を愛していると気づいてからだった。
恋次の存在で、笑みを浮かべるほどに穏やかになった。それはいいことなのだが、男女関係なく視線を集めるのが気になった。
朝食を食べ終えて、今日は休日なので、恋次をつれて朽木家まで帰還した。自分の寝室で、恋次と穏やかな時間を過ごす。
それもまた、愛の形の一つだろう。
緋真の命日は、いつも寂しかった。周りに人がいても不安だった。哀しかった。でも、恋次と過ごし、恋次を愛していると自覚した時からくる、緋真の命日は、寂しいとか不安とか悲しみが薄らいでいるのに気づいた。
全部、恋次のお陰だということに気づいていた。
「恋次・・・・永久(とこしえ)の愛を、お前に・・・・・・」
そう言うと、恋次はびっくりして、その後に笑った。
「俺も、隊長に永久の愛を・・・・・」
互いに誓い合い、口づけを交わす。
緋真。
そちらにいくまで、私が恋次を愛することを、許してほしい。
緋真。
そなたを、永遠に愛している。この気持ちだけは、決して消えない。
だが、恋次を愛することを、どうか許してくれ。
桜の満開の季節、白哉は恋次を呼んで、ルキアと一護と共に、庭で花見をした。
「朽木家の桜は、ほんとにすごいっすね」
「当たり前であろう!兄様の斬魄刀が千本桜と分かって、桜の木をたくさ植えたのだ!」
ルキアが、さも自分のことのように得意げになる。
「おい、ルキア」
「なんだ一護」
「せっかくの花見なんだから、二人きりにさせてやろうぜ」
「ふむ、それもそうだな。では兄様、私と一護は向こうの方で花見をします故、好きなだけいちゃついてください」
ルキアの言葉に、ぴくりと眉を動かしたが、感情には出さなかった。
「一護のやつ、気が利きますね」
「別に、お前と二人きりでなくともよかったのに」
「まぁ、そう言わずに。酒でも飲みましょう」
恋次が、白哉に杯をもたせて、高級酒を注ぐ。
それを、白哉は一気に飲み干した。
恋次も、同じ酒を飲んでみる。その酒の強さに、顔をしかめた。
「隊長、この酒きつすぎます。違う酒持ってきますね」
そう言って、恋次は朽木家の厨房に消えていった。
白哉は、その強い酒を何度か飲んで、残りを桜の木にかけた。
「緋真・・・桜の花が満開だぞ・・・・そなたの笑顔のようだ」
帰ってきた恋次に、その言葉の全てを聞かれていた。
「隊長、俺と居る時は、俺を見てください」
「すまぬ・・・・軽率であった」
死人に嫉妬しても、何にもならない。
白哉の心は手に入れた。でも、緋真を愛する心までは、何があろうとも奪えなかった。
「こっちの酒なら、そんなに強くないですから」
杯に酒を注ぐ。
白哉は、浴びるように酒を飲んだ。
恋次も、同じように浴びるように酒を飲んだ。
二人して、酔っぱらったが、悪酔いはせず、桜の花を見ていた。
「今宵、あの館で・・・・・」
誘われて、恋次はガッツポーズをとる。
そのまま桜を見ながら、お弁当を食べて、その日の休日の午後は緩やかに過ぎていった。
夜がきて、いつも逢瀬に使う館にくると、白哉がすでに酒を飲んでいた。
「隊長、今日がちょっと飲みすきじゃないですか?」
「よいのだ。酒に溺れたい」
「どうしてですか?」
「今日は・・・・緋真の、命日なのだ」
その言葉に、恋次が息を飲む。
道理で、緋真のことを口にするはずだった。いつもの白哉は、緋真のことを普段口にしない。
「緋真さんの命日なのに、いいんですか、俺といて」
「寂いのだ。あの陽だまりを失った日から、今日という日はただ虚しく悲しいだけだった。それが嫌なのだ」
白哉は、恋次に抱き着いた。
「酒に溺れても、忘れられぬ。緋真の最期が」
真っ赤な血を吐いて、そのまま散っていった、最愛の者。
「全てを忘れたい・・・・・・」
「とりあえず、食事にしましょう。何も食べなかったら、余計に気が滅入りますよ」
恋次の言葉に、白哉も頷いて、用意されていた夕餉を全て食した。
それから、また酒を飲んだ。
「緋真のことを、忘れたくないのだ。だが、忘れたい」
相反する感情に苛まれる。
酒で酔った白哉は、いつもより色香が増していた。
「一時でいいなら。全部、忘れさせてあげます」
白哉を抱き抱えて、褥に横にさせる。
貴族の証を乱暴にはぎとって隊長羽織と死覇装に手をかけた。
「恋次、約束しろ・・・・私を置いて、先に逝かぬと」
「いくらでも約束します。それであんたの気が紛れるのなら」
「恋次・・・好きだ。愛している。私を置いていくな・・・・・」
「隊長、あんたがどうしようもないほどに愛しい。俺はあんたを置いていかない」
安堵して、心なしか表情が柔らかくなった、白哉の鎖骨から胸元にかけて、キスマークを残していく。
「ふ・・・くすぐったい・・・・・」
そう言う白哉に深い口づけをした。
舌が絡まりあい、銀の糸をひいて舌が出ていく。
胸の先端にかみついて、もう片方を指で転がすと、白哉がぴくりと反応した。
「あ・・・・・」
声を噛み殺すように、口元に手を当てる。
その手に口づけて、恋次が自分の背中に回させた。入れ墨だらけの体は引き締まっていて、筋肉質だった。ただ、その背中には白哉の爪によるひっかき傷ができていた。
交わる頻度が高くなったために、完治する前に次のひっかき傷ができた。
白哉の花茎に手をかけて、まずは先にいかせようとするのを、白哉が止めた。
「お前と一緒に、いきたい」
「じゃあ・・・・」
お互いのものをくっつけて、手でしごいた。白哉は恋次のものを扱っていたが、恋次の扱いの方がうまくて、白哉は先にいってしまった。
「あああ!」
恋次も、白哉の手で次の瞬間には、白濁した液を吐きだしていた。
「指、いれますよ」
こくりと、白哉が頷く。
つぷりと音をたてて、恋次の潤滑油にまみれた指が入ってきた。
「んんん・・・・・・」
キスを何度も繰り返しながら、ぐちゃぐちゃと音をたてて、中を解していく。
前立腺をひっかかれて、ぴくんと白哉が反応した。
「もういい。来い」
指をひきぬき、恋次は自分のものを宛がい、ゆっくりと埋めていった。
「ひう」
根元まで埋め込むと、白哉がようやく息をした。、
そのまま、突き上げる。
「あ!」
前立腺をすりあげるように突き上げると、白哉は白濁した液をぽたぽたと滴らせていた。
「今日は、感じやすいんですか?いつもより、いくの早いですね」
「言うな・・・・・」
突き上げられて、抉られて、揺さぶられる。
黒絹のような白哉の髪が、宙を舞った。
「あ・・・・・・」
騎乗位にされて、白哉が戸惑う。
下から突き上げられて、白哉の髪が宙を舞った。
「あ、はげし・・・・・・あああ!」
下から突き上げながら、恋次は白哉の花茎に手をかけてしごいていく。
前も後ろも攻められて、何も考えられなくなった。
「ああああ!」
ぽたぽたと、恋次の腹の上に精液を吐きだしていた。
恋次も、白哉の中に欲望を吐きだす。
「あ、もう・・・・・」
3回もいってしまった白哉は、もう吐き出すものはほとんど残っていなかった。
下からリズミカルに突き上げられながら、オーガズムで達していた。
「恋次・・・・!」
恋次は、白哉を押し倒した。
内部を深く抉られて、白哉の体が痙攣をおこす。
「あああ!」
外からでも分かるくらい、恋次の太いものが白哉の腹の中にいるのが分かった。
「あ・・・・・あ!」
最奥を抉り、こじあけて恋次は最後の一滴までを白哉に注ぎ込んだ。
ぬくと、ぽたぽたと恋次が放ったものが逆流して太腿を伝い落ちる。それをタオルでふきとって、白哉を横抱きにして湯殿に向かった。
「あ・・・・」
恋次のはきだしたものが、またとろりと白哉の太腿を伝う。
そのまま、中にだしたものをかき出された。
「座ってください。髪と体、洗うから」
言われた通りにすると、恋次が白哉の髪と体を洗った。
恋次も、自分の髪と体を洗う。
それから、湯船に浸かって、白哉のほうを見た。
「一時でも、緋真さんのこと、忘れられましたか?」
「今の今まで、忘れていた。私は薄情者だな」
「セックスしてる時に、他の奴のこと考える間なんて与えません」
「緋真の命日だというのに、昔のように悲しくないのだ。確かに悲しい気持ちはあるにはあるが、恋次、お前のせいで薄らいでいっている」
「無理に忘れろとかはいいません。ただ、俺と居る時は、俺のことを考えてください」
「分かった・・・・」
そのまま湯からあがり、下着をつけて浴衣を着て、上から羽織りを着て、褥とは別にしかれていた二組の布団の上に、それぞれ横にになった。
「添い寝、しましょうか?」
「いらぬ」
「じゃあ、隊長が俺に添い寝してください」
「仕方ない・・・・」
恋次の寝ている布団に、白哉がもぐりこんでくる。
「ああもう、なんであんたこんなにかわいいんだ」
「んんっ」
唇を奪われて、恋次の胸を叩いた。
「もう盛るな!」
「すみません」
結局、恋次に添い寝を強要されて、白哉は恋次と同じ布団で眠りについた。
「ん・・・・・朝か」
隣に恋次はいなかった、
「恋次?」
姿を探すと、恋次は冷蔵庫にあった食材で、簡単な朝食を作っていた。
「隊長も、朝飯食べていきますよね」
いつもなら、目覚めるとそのまま朽木家に戻り、朝食を食べるのだが、せっかくなので恋次の作った朝食を食べた。
「意外と美味い・・・・」
「伊達に、一人暮らししてませんよ。自炊くらいしますからね」
「そうか」
ふわりと、白哉が微笑んだ。
それに見惚れて、ぼとりと卵焼きを落とす。
「どうしたのだ」
「あんたの笑顔が、あんまりにも綺麗だったから、見惚れてしまいました」
「ふっ・・・おかしな奴だな」
流れる時間は穏やかで、優しかった。
「もう、緋真さんのこと、大丈夫ですか」
「ああ。もう寂しくはない。お前のお陰だ」
恋次は、白哉を抱き締めた。
「不安になったり、寂しくなった時は言ってください。慰めることしかできないけど、一人で抱え込むより楽になるはずです」
「そう・・・だな。今まで、ずっと一人で抱え込んでいた。お前の言う通りだ。私の周囲には、お前だけでなくルキアもついでに婿入りいした一護もいるのだし・・・・」
「なるべく、俺を頼ってくださいね。ルキアならともなく、一護には渡したくない」
「一護は、ルキアの夫だ。家族だ。何もお前が考えているようなことは起こらない」
「そうでしょうけど、なんか一護に頼られると、俺の存在がない感じがして嫌です」
「ふっ・・・・」
白哉は笑った。
綺麗な微笑みだった。
ぼとり。
恋次は、また卵焼きを落とした。
「あーもう、その笑みはあんまり外で見せないように!」
「分かっている。お前の前だけだ」
「ほんと、性質が悪いですね。あんたの笑みって、なまじすごい綺麗な顔してるから、微笑むと男女見境なく視線を集めますから・・・・・」
白哉が、笑うようになったのは、最近だ。
恋次を愛していると気づいてからだった。
恋次の存在で、笑みを浮かべるほどに穏やかになった。それはいいことなのだが、男女関係なく視線を集めるのが気になった。
朝食を食べ終えて、今日は休日なので、恋次をつれて朽木家まで帰還した。自分の寝室で、恋次と穏やかな時間を過ごす。
それもまた、愛の形の一つだろう。
緋真の命日は、いつも寂しかった。周りに人がいても不安だった。哀しかった。でも、恋次と過ごし、恋次を愛していると自覚した時からくる、緋真の命日は、寂しいとか不安とか悲しみが薄らいでいるのに気づいた。
全部、恋次のお陰だということに気づいていた。
「恋次・・・・永久(とこしえ)の愛を、お前に・・・・・・」
そう言うと、恋次はびっくりして、その後に笑った。
「俺も、隊長に永久の愛を・・・・・」
互いに誓い合い、口づけを交わす。
緋真。
そちらにいくまで、私が恋次を愛することを、許してほしい。
緋真。
そなたを、永遠に愛している。この気持ちだけは、決して消えない。
だが、恋次を愛することを、どうか許してくれ。
京楽に任されば安心でもそれが一番危険だった
時は院生時代。
京楽は、一人のんびりと二人用の寮の部屋を使うはずだった。
そこで、山じいが、面倒をみてやってほしいと、一人の同い年の少年を紹介した。
「春水、この子は体が弱い。お主が、面倒を見てやってほしい」
「嫌だよ。めんどくさい」
相手の顔も見もせずに、断った。
「しかしのう・・・・体が弱い上に見た目がいいので、この前同じ寮の部屋になったうつけ者が十四郎に手を出そうとしてなぁ。春水、お主くらいしか、安心して頼める相手がいないのじゃ」
そう言われて、はじめて相手の顔を見た。
少女かと思った。かなりの美少女。
でも、まとう凛とした雰囲気や幼さを残しながらも佇む空気から、彼が少年であると分かった。
ぼけーと見惚れていると、山じいに頭をどつかれた。
「これ春水、返事をせぬか」
「ああ、うん。いいよ。面倒見てあげる。同じ寮の部屋でいい」
「そうかそうか。春水になら、安心して任せられる。よかったのお、十四郎」
山じいは、十四郎という少年の頭を撫でて、去っていった。
「俺は浮竹十四郎という。よろしく」
「僕は京楽春水。よろしくね」
今思えば、それは運命だった。
浮竹は肺を病んでおり、時折酷い発作をおこして、入院した。また、体が弱く、よく熱を出した。
その看病を、京楽は率先して行った。
そして、刷り込むようにキスやハグを覚えさせた。
「んん・・・・」
京楽の腕の中で、浮竹は苦し気に身を捩る。
酸素を求めて開く口に唇を重ねた。
「あ、京楽・・・・・」
「春水って呼んで。十四郎」
「春水・・・・」
かわいそうに。
同じ寮の部屋にならなければ、京楽の魔の手から逃げられたかもしれないのに。京楽は、自分でそんなことを思った。
甲斐甲斐しく世話をやく京楽に、浮竹はすっかり懐いてしまった。
キスをしても、拒絶しない。
始めは嫌がっていたが、一度キスをすると、その行為が好きになり、浮竹はよく京楽にキスを強請ってきた。
「ねぇ」
2回生になっていた。
「僕と、試しに寝てみない?」
「え?」
「せっくす、してみない?」
浮竹は、顔を真っ赤にさせた。
「お前は、俺が気味悪くないのか。こんな白い髪の・・・・おまけに病弱で、発作で血を吐くし、おまけに同じ男だし、その他いろいろ問題が・・・・」
「うん。全部わかってる。でも、全部すっとばして、君とせっくすしたいんだ。君のことが好きだから」
浮竹はまた真っ赤になった。
「俺も京楽が好きだ」
「じゃあ、一度せっくすしてみよう。無理そうなら、時間をかけて落としていくよ」
京楽は女遊びが激しい。
はじめは冗談かと思った。
「俺は、女じゃないんだぞ。お前が通っている廓にいるとしたら、色子だ」
「うん。最近、君のことしか頭になくって、女の子の裸見てもたたないんだ」
「なっ・・・・・」
浮竹は言葉をなくす。
「君のあられもない姿を想像して、女の子抱いてたけど、いい加減うんざりしてきた。女の子を使って、一人で抜いてるようなものだから」
「京楽・・・」
「君が嫌じゃなければ、一度セックスしてみようよ」
「でも、俺は男だし、女の子のようには・・・・」
浮竹の逡巡する言葉に、京楽が続ける。
「世の中には色子もいるでしょ。男同士でも、セックスはできるよ。むしろ、最近廓にいくと色子を買って話を聞いているんだ。男同士で気持ちよくなる方法、教えてもらった」
「だからって、何故俺なんだ?」
首を傾げてくる浮竹がかわいすぎて、京楽は鼻血を出しそうになった。
「いや、君が好きだから」
「本当に?」
「うん」
「俺も好きだが、恋愛感情なのか分からない」
「そんなこと後回しでさ。とりあえず、セックスしてみようよ」
京楽に押し切られて、浮竹は頷いていた。
「分かった・・・・」
「最初は辛いからもしれないから、これ飲んで?」
「なんだ、これは」
「軽い媚薬だよ。感じやすくなれる。痛みも忘れてしまう。ちょっと体が熱くなるようなかんじになるけど、体に害はないから」
「飲んだ方がいいのか?」
「乱れる君を見たい。飲んで欲しいな」
「分かった」
浮竹は、京楽から受け取った軽い媚薬という液体を飲んだ。
その日の夜、浮竹はがちがちに固まっていた。その体をほぐすように、浮竹の好きなキスを何度も繰り返すし、輪郭を愛撫していると、浮竹の体から力が抜けていった。
「あっ・・・・・」
花茎に手をかけられて、羞恥のあまり逃げようとする浮竹をおさえこんで、しごく。
性欲があまりない浮竹であるが、直接の刺激は強すぎて、媚薬のせいかあっという間にいってしまった。
「ああ!」
白い液体を、京楽は口にして飲み込んだ。
「京楽!」
「指、いれるよ」
この日のために、潤滑油を用意しておいた。
「ああ!」
つぷりと指を入れられることにも反応するようで、指を折り曲げて前立腺を刺激すると、浮竹の花茎はたらたらと透明な蜜を零した。
「いれるよ。力抜いて」
「ひあああああ!」
引き裂かれる----------*。
でも、痛みは感じなかった。
それが媚薬のせいだというのに、浮竹は気づいていなかった。
「体が、熱い・・・・・」
「今、楽にしてあげるから。僕の背中に手を回して。爪を立ててもいいから」
「あああ!」
突きあげられる度に、少し長くなった白髪が宙を舞う。
「どう?いい?」
「あ、もっと・・・・」
「十四郎、好きだよ」
「ああ!春水!」
ぐちゃぐちゃになった結合部から、浮竹の太腿にお互いの体液が混じったものが伝う。
それをタオルでふきとって、行為を再開させた。
「うんんん!」
ぴちゃりと、舌が絡まるキスをされて、浮竹は妖艶に微笑んだ。
「あ、そこ、きもちいい・・・・」
「ここかい?」
前立腺がある部分を突き上げて抉ってやると、浮竹は体を痙攣させて二度目の熱を放っていた。
「ん・・・・・」
京楽も、浮竹の腹の奥に、熱を弾けさせていた。
「春水・・・・キスして?」
「十四郎はかわいいね」
キスを何度も繰り返した。
後ろから突き上げると、浮竹はまた熱を放ったが、媚薬のせいかまだいけるようだった。
「んん・・・・・」
最奥を突きあげられて、浮竹の体が痙攣する。
またいったのだ。
京楽は、自分でも性欲の強い男だと自負しているが、今の浮竹を満足させるまでもちそうになかった。
浮竹の最奥に欲望を叩きつけて、それからまた何度か突き上げていってしまうと、もう何もでなくなった。
「あ・・・まだ、体が熱い・・・・・」
「軽いはずの媚薬だったんだけどねぇ。騙されたかな?」
京楽は、浮竹のものを口にふくんで、なめあげると、浮竹は「体が熱い」と繰り返して、いってしまい、お互いもう何もでなくなった。
「んー。初めて男の子抱いたけど、浮竹のせいか想像以上に気持ちよかった。女の子とするの比じゃないね」
「俺は・・・きもちよかった。薬のせいだろうけど・・・・・・」
「いや、薬のせいだけじゃないよ。元々、男でも感じれる部分はあるからね」
「俺がおかしいんじゃないのか?」
「君は普通だよ。僕だって、もしも君みたいに抱かれたら同じ言葉を言うと思う」
「抱かれるひげもじゃのお前は、想像できない」
浮竹が笑った。
その笑みだけで、心はぽかぽかした。
「お風呂、いこっか。立てる?」
「なんとか」
二人で、少し広めの風呂に入り、髪と体を洗って、浮竹の中にだしたものをかきだして、湯を浴びて風呂からあがった。
「まだ、体が熱いんだ・・・・」
「我慢できる?」
「ああ」
「お違い、もう何もでないからね。指でいかせれるけど、するかい?」
「いや、いい。我慢できるから」
「ごめんね。軽い媚薬のはずが、少しきつかったみたいだ」
「でも、そのお陰で気持ちよかった。別にいい」
浮竹は、京楽とセックスしたことを後悔したわけじゃないようだった。
「僕としては、今後も時折でいいから君とセックスしたいんだけど、いいかな?」
「あまり、激しくなければ・・・・薬とかもぬきで」
浮竹は、赤くなりながら小さく呟いた。
「ねえ、順序が逆になちゃったけど、僕たち付き合おう」
「恋人同士になるのか?」
「そうだよ。君を傷物にしてしまった責任はとらないと」
「俺は、別に傷物になったわけでは・・・・・・・」
「一般的な考え方から、君は僕のせいで傷物になっちゃったんだよ」
浮竹は、少しぽかんとしてから、口を開いた。
「そうか。なら、責任をとってくれ」
「うん。責任をとるから、僕だけを見てね。僕だけを好きになって」
「京楽は・・・・俺だけを見れるのか?俺だけを好きになれるのか?女遊びは?」
「女遊びはやめる。もともと君を想像して抱いてたからね」
そうして、二人は付き合いだした。
ある日、山じいが、二人の様子が親密すぎておかしいと様子を見に来たが、見たのは浮竹と京楽のキスシーンだった。
「お主ら、何をしておるのじゃ!こりゃ春水、面倒を見てやれと言ったが、手を出せと言った記憶はないぞ!」
「ああごめん、山じい。山じいの紹介で、惚れて僕のものにしちゃった」
「じ、十四郎・・・・・・」
「すみません、先生。京楽と付き合っています。肉体関係ありで」
山じいは、ぶっ倒れた。
「山じい!」
「先生!」
「うーーーん。春水に任せれば大丈夫だと思ったのに、なんということじゃ。お主たちの子を見るのが、わしの未来の楽しみじゃったのに・・・・」
「それはまじでごめん、山じい。でも、僕はフリーでも結婚する気はなかったよ」
「俺も、こんな体です。結婚する気はありません」
「うーーんうーーん」
山じいは、その日一日中うなされた。
なんとか自力で一番隊の隊首室にくるなり、ベッドにつっぷして意識を失い、うなされ続けて、翌日になってまた二人の元を訪れた。
「どうしたんだい、山じい」
「春水、十四郎、別れる気はないのだな」
「ないよ」
「ありません」
「よう分かった。二人とも、仲よくするのじゃぞ。わしから子を見る夢を奪ったのじゃ。いつまでも仲睦まじくしておらんと、流刃若火が、火を吹くからの」
「怖い怖い」
「大丈夫です、今のところ順調です」
その関係が、数百年に渡って続くとは、その時の二人は知る由もなかった。
だが、山じいの言う通り、いつまでも仲睦まじくいたのだった。
京楽は、一人のんびりと二人用の寮の部屋を使うはずだった。
そこで、山じいが、面倒をみてやってほしいと、一人の同い年の少年を紹介した。
「春水、この子は体が弱い。お主が、面倒を見てやってほしい」
「嫌だよ。めんどくさい」
相手の顔も見もせずに、断った。
「しかしのう・・・・体が弱い上に見た目がいいので、この前同じ寮の部屋になったうつけ者が十四郎に手を出そうとしてなぁ。春水、お主くらいしか、安心して頼める相手がいないのじゃ」
そう言われて、はじめて相手の顔を見た。
少女かと思った。かなりの美少女。
でも、まとう凛とした雰囲気や幼さを残しながらも佇む空気から、彼が少年であると分かった。
ぼけーと見惚れていると、山じいに頭をどつかれた。
「これ春水、返事をせぬか」
「ああ、うん。いいよ。面倒見てあげる。同じ寮の部屋でいい」
「そうかそうか。春水になら、安心して任せられる。よかったのお、十四郎」
山じいは、十四郎という少年の頭を撫でて、去っていった。
「俺は浮竹十四郎という。よろしく」
「僕は京楽春水。よろしくね」
今思えば、それは運命だった。
浮竹は肺を病んでおり、時折酷い発作をおこして、入院した。また、体が弱く、よく熱を出した。
その看病を、京楽は率先して行った。
そして、刷り込むようにキスやハグを覚えさせた。
「んん・・・・」
京楽の腕の中で、浮竹は苦し気に身を捩る。
酸素を求めて開く口に唇を重ねた。
「あ、京楽・・・・・」
「春水って呼んで。十四郎」
「春水・・・・」
かわいそうに。
同じ寮の部屋にならなければ、京楽の魔の手から逃げられたかもしれないのに。京楽は、自分でそんなことを思った。
甲斐甲斐しく世話をやく京楽に、浮竹はすっかり懐いてしまった。
キスをしても、拒絶しない。
始めは嫌がっていたが、一度キスをすると、その行為が好きになり、浮竹はよく京楽にキスを強請ってきた。
「ねぇ」
2回生になっていた。
「僕と、試しに寝てみない?」
「え?」
「せっくす、してみない?」
浮竹は、顔を真っ赤にさせた。
「お前は、俺が気味悪くないのか。こんな白い髪の・・・・おまけに病弱で、発作で血を吐くし、おまけに同じ男だし、その他いろいろ問題が・・・・」
「うん。全部わかってる。でも、全部すっとばして、君とせっくすしたいんだ。君のことが好きだから」
浮竹はまた真っ赤になった。
「俺も京楽が好きだ」
「じゃあ、一度せっくすしてみよう。無理そうなら、時間をかけて落としていくよ」
京楽は女遊びが激しい。
はじめは冗談かと思った。
「俺は、女じゃないんだぞ。お前が通っている廓にいるとしたら、色子だ」
「うん。最近、君のことしか頭になくって、女の子の裸見てもたたないんだ」
「なっ・・・・・」
浮竹は言葉をなくす。
「君のあられもない姿を想像して、女の子抱いてたけど、いい加減うんざりしてきた。女の子を使って、一人で抜いてるようなものだから」
「京楽・・・」
「君が嫌じゃなければ、一度セックスしてみようよ」
「でも、俺は男だし、女の子のようには・・・・」
浮竹の逡巡する言葉に、京楽が続ける。
「世の中には色子もいるでしょ。男同士でも、セックスはできるよ。むしろ、最近廓にいくと色子を買って話を聞いているんだ。男同士で気持ちよくなる方法、教えてもらった」
「だからって、何故俺なんだ?」
首を傾げてくる浮竹がかわいすぎて、京楽は鼻血を出しそうになった。
「いや、君が好きだから」
「本当に?」
「うん」
「俺も好きだが、恋愛感情なのか分からない」
「そんなこと後回しでさ。とりあえず、セックスしてみようよ」
京楽に押し切られて、浮竹は頷いていた。
「分かった・・・・」
「最初は辛いからもしれないから、これ飲んで?」
「なんだ、これは」
「軽い媚薬だよ。感じやすくなれる。痛みも忘れてしまう。ちょっと体が熱くなるようなかんじになるけど、体に害はないから」
「飲んだ方がいいのか?」
「乱れる君を見たい。飲んで欲しいな」
「分かった」
浮竹は、京楽から受け取った軽い媚薬という液体を飲んだ。
その日の夜、浮竹はがちがちに固まっていた。その体をほぐすように、浮竹の好きなキスを何度も繰り返すし、輪郭を愛撫していると、浮竹の体から力が抜けていった。
「あっ・・・・・」
花茎に手をかけられて、羞恥のあまり逃げようとする浮竹をおさえこんで、しごく。
性欲があまりない浮竹であるが、直接の刺激は強すぎて、媚薬のせいかあっという間にいってしまった。
「ああ!」
白い液体を、京楽は口にして飲み込んだ。
「京楽!」
「指、いれるよ」
この日のために、潤滑油を用意しておいた。
「ああ!」
つぷりと指を入れられることにも反応するようで、指を折り曲げて前立腺を刺激すると、浮竹の花茎はたらたらと透明な蜜を零した。
「いれるよ。力抜いて」
「ひあああああ!」
引き裂かれる----------*。
でも、痛みは感じなかった。
それが媚薬のせいだというのに、浮竹は気づいていなかった。
「体が、熱い・・・・・」
「今、楽にしてあげるから。僕の背中に手を回して。爪を立ててもいいから」
「あああ!」
突きあげられる度に、少し長くなった白髪が宙を舞う。
「どう?いい?」
「あ、もっと・・・・」
「十四郎、好きだよ」
「ああ!春水!」
ぐちゃぐちゃになった結合部から、浮竹の太腿にお互いの体液が混じったものが伝う。
それをタオルでふきとって、行為を再開させた。
「うんんん!」
ぴちゃりと、舌が絡まるキスをされて、浮竹は妖艶に微笑んだ。
「あ、そこ、きもちいい・・・・」
「ここかい?」
前立腺がある部分を突き上げて抉ってやると、浮竹は体を痙攣させて二度目の熱を放っていた。
「ん・・・・・」
京楽も、浮竹の腹の奥に、熱を弾けさせていた。
「春水・・・・キスして?」
「十四郎はかわいいね」
キスを何度も繰り返した。
後ろから突き上げると、浮竹はまた熱を放ったが、媚薬のせいかまだいけるようだった。
「んん・・・・・」
最奥を突きあげられて、浮竹の体が痙攣する。
またいったのだ。
京楽は、自分でも性欲の強い男だと自負しているが、今の浮竹を満足させるまでもちそうになかった。
浮竹の最奥に欲望を叩きつけて、それからまた何度か突き上げていってしまうと、もう何もでなくなった。
「あ・・・まだ、体が熱い・・・・・」
「軽いはずの媚薬だったんだけどねぇ。騙されたかな?」
京楽は、浮竹のものを口にふくんで、なめあげると、浮竹は「体が熱い」と繰り返して、いってしまい、お互いもう何もでなくなった。
「んー。初めて男の子抱いたけど、浮竹のせいか想像以上に気持ちよかった。女の子とするの比じゃないね」
「俺は・・・きもちよかった。薬のせいだろうけど・・・・・・」
「いや、薬のせいだけじゃないよ。元々、男でも感じれる部分はあるからね」
「俺がおかしいんじゃないのか?」
「君は普通だよ。僕だって、もしも君みたいに抱かれたら同じ言葉を言うと思う」
「抱かれるひげもじゃのお前は、想像できない」
浮竹が笑った。
その笑みだけで、心はぽかぽかした。
「お風呂、いこっか。立てる?」
「なんとか」
二人で、少し広めの風呂に入り、髪と体を洗って、浮竹の中にだしたものをかきだして、湯を浴びて風呂からあがった。
「まだ、体が熱いんだ・・・・」
「我慢できる?」
「ああ」
「お違い、もう何もでないからね。指でいかせれるけど、するかい?」
「いや、いい。我慢できるから」
「ごめんね。軽い媚薬のはずが、少しきつかったみたいだ」
「でも、そのお陰で気持ちよかった。別にいい」
浮竹は、京楽とセックスしたことを後悔したわけじゃないようだった。
「僕としては、今後も時折でいいから君とセックスしたいんだけど、いいかな?」
「あまり、激しくなければ・・・・薬とかもぬきで」
浮竹は、赤くなりながら小さく呟いた。
「ねえ、順序が逆になちゃったけど、僕たち付き合おう」
「恋人同士になるのか?」
「そうだよ。君を傷物にしてしまった責任はとらないと」
「俺は、別に傷物になったわけでは・・・・・・・」
「一般的な考え方から、君は僕のせいで傷物になっちゃったんだよ」
浮竹は、少しぽかんとしてから、口を開いた。
「そうか。なら、責任をとってくれ」
「うん。責任をとるから、僕だけを見てね。僕だけを好きになって」
「京楽は・・・・俺だけを見れるのか?俺だけを好きになれるのか?女遊びは?」
「女遊びはやめる。もともと君を想像して抱いてたからね」
そうして、二人は付き合いだした。
ある日、山じいが、二人の様子が親密すぎておかしいと様子を見に来たが、見たのは浮竹と京楽のキスシーンだった。
「お主ら、何をしておるのじゃ!こりゃ春水、面倒を見てやれと言ったが、手を出せと言った記憶はないぞ!」
「ああごめん、山じい。山じいの紹介で、惚れて僕のものにしちゃった」
「じ、十四郎・・・・・・」
「すみません、先生。京楽と付き合っています。肉体関係ありで」
山じいは、ぶっ倒れた。
「山じい!」
「先生!」
「うーーーん。春水に任せれば大丈夫だと思ったのに、なんということじゃ。お主たちの子を見るのが、わしの未来の楽しみじゃったのに・・・・」
「それはまじでごめん、山じい。でも、僕はフリーでも結婚する気はなかったよ」
「俺も、こんな体です。結婚する気はありません」
「うーーんうーーん」
山じいは、その日一日中うなされた。
なんとか自力で一番隊の隊首室にくるなり、ベッドにつっぷして意識を失い、うなされ続けて、翌日になってまた二人の元を訪れた。
「どうしたんだい、山じい」
「春水、十四郎、別れる気はないのだな」
「ないよ」
「ありません」
「よう分かった。二人とも、仲よくするのじゃぞ。わしから子を見る夢を奪ったのじゃ。いつまでも仲睦まじくしておらんと、流刃若火が、火を吹くからの」
「怖い怖い」
「大丈夫です、今のところ順調です」
その関係が、数百年に渡って続くとは、その時の二人は知る由もなかった。
だが、山じいの言う通り、いつまでも仲睦まじくいたのだった。
君に捧ぐ
ごほごほ。
雨乾堂に足を踏み入れると、咳をする辛そうな音が聞こえた。
「大丈夫、浮竹?」
「ああ・・・京楽・・・ごほっごほっ」
ぽたたた。
畳に、血が滴った。
「浮竹!」
布団で寝ていた浮竹を抱き上げて、4番隊の救護詰所まで瞬歩でやってくる。
「卯ノ花隊長はいるかい!?」
京楽に抱えられた浮竹を見て、4番隊の死神がすぐに卯ノ花を呼んでくれた。
卯ノ花に診てもらう間、京楽ははいらいらしていた。
「なぜ、もっと早くにこなかったのですか」
「いや・・・・少しの吐血だったから、大人しくしていれば大丈夫だと思ったんだ」
「始めの発作はいつですか?」
「今日の朝の7時」
「5時間は経ってますね・・・まぁ、思ったより悪化していないようでよかったですが。今度からは、発作が起きればすぐに人を呼ぶようにしてください」
「ああ、分かった」
卯ノ花から回道を受けて、薬を処方してもらい、浮竹は歩いて京楽の待っている待合室まできた。
「もう大丈夫なのかい?」
京楽は、珍しく怒っているようだった。
「京楽?」
「おけに、血をはいていたね。僕は連れてくる前にも発作起こしてたんでしょ」
「ああ・・・そうだ」
京楽は、溜息をついた。
「なんで、もっと早く助けを呼ばないの。3席の清音ちゃんなら、すぐ回道である程度癒してくれるでしょうに」
「あいにく、清音は実家に帰っている」
「それでも!人を呼ぶことくらい、できるでしょ!?」
「すまない・・・・発作があまり酷いものではなかったので、大丈夫だと慢心していた。今度から、少しの発作でも人を呼ぶようにする」
「本当に、君って子は!」
待合室で、抱き締められた。
「京楽・・・とりあえず、移動しよう」
集中する視線が痛くて、救護詰所の外に出た。
外に出ると、また強く抱きしめられた。
「君が吐血する度に、僕は恐怖する。このまま君が死んでしまうのではないかと」
「そんなことはない。病気は治ることはないが、進行することもない。死ぬことは、多分ないはずだ」
「それでも、心配なんだよ」
「すまない」
「君は、謝ってばかりだね」
「他にどう声をかけていいのか、分からないんだ」
浮竹は、困ったような顔をしていた。
そんな浮竹に、触れるだけの口づけをする。
「発作を起こしたら、本当に、少しでも人を呼ぶんだよ。苦しくてそれができないようなら、霊圧を暴走させるといい。僕が気づくから」
「京楽は、優しいな」
「当たり前でしょ。何百年君と一緒にいると思っているのさ」
「さぁ・・・もう400年をこえたあたりで、数えるのをやめた」
院生時代から隊長になるまで。
もう400年以上は経っている。
浮竹をそっと抱き上げて、京楽は雨乾堂まで瞬歩で帰った。
「いいかい、食事をしたら薬を飲んでちゃんと横になるんだよ?」
「分かっているさ」
浮竹は、過保護な京楽に苦笑を零す。
「君はすぐフラフラ何処かにいってしまいそうだから・・・今日は、僕も雨乾堂に泊まるよ」
「朽木に、料理を二人分用意してくれと言わなければな」
ルキアが、今の浮竹の副官だった。
海燕を失い、長らく空いていた副官に、ルキアがなった。
浮竹の世話にまだ慣れていないので、京楽がよく力をかしてくれた。
ルキアを呼んで、夕飯を二人分にしてくれるように頼んで、遅めの昼食をとり浮竹は大人しく布団に横になった。
薬もちゃんと飲んだ。
血で汚れた畳は、いつの間にか血の痕がぬぐわれていた。
「朽木悪いな、世話ばかりかけて」
「いいえ、隊長、そんなことありません!」
明るいルキアに、浮竹も心が和む。
「着がえのほうは、雨乾堂に置かれているもので大丈夫なのですか?」
「ああ。それで充分だ」
「悪いね、ルキアちゃん。突然泊まるとかいいだして」
「いいえ、京楽隊長は浮竹隊長の大事な方ですから!」
浮竹が朱くなった。
「浮竹、今更だよ。この程度で照れてどうするの」
「朽木は純粋培養だったのに・・・俺たちのせいで、濁ってしまった」
「浮竹隊長、濁っていいんです!京楽隊長とできているのを記録するのは女性死神協会の務め!」
「今、さらっと記録とかいったな」
「はっ!いえ、なんでもないのです!」
「まぁいい、朽木、ほどほどにな」
「はい!」
ルキアは、隊舎に下がっていった。
「寝れそうかい?」
「京楽・・・・子守唄を、歌ってくれないか。君に捧ぐという題名の、子守唄を」
「ああ・・・昔、君が寝付けない時、たまに歌ってあげたね」
「その子守唄が聞きたい。寝れるかは分からないが」
「仕方ないねぇ」
京楽が、歌の旋律を口ずさむ。
君に捧ぐ。
始めは恋歌だった。それがどう変化したのか、子守唄になった。
京楽のゆっくりと流れる子守唄を聞いていると、薬の中の鎮静剤の効果か、瞼が重くくなってきた。
そのまま目を閉じると、闇に滑り落ちていった。
「ん・・・・」
「起きたかい?」
「今何時だ?」
「夜の7時半だよ。夕餉の用意はされてあるから、君が起きたら一緒に食べようと思って」
「ああ・・・・先に食べていてくれても、構わなかったのに」:
「君だけをおいて先に食事とか、ちょっと無理だね」
発作を起こして、薬で眠っていたのだ。臥せっているのと大差ない。
「薬が大分効いたみたいだ。もう大丈夫だ」
「無理はしないでね」
夕餉を食べて、二人で風呂に入り、寝るまで時間があるので花札をした。
それから、院生時代の話題で盛り上がった。
やがて、夜の10時になる。
「早いけど、そろそろ寝ようか」
「ああ」
「また・・・君に捧ぐの子守歌、歌ってくれないか」
「いいよ。君のためなら。上手くもないだろうけど」
「いや、お前の歌はいいぞ。本当に眠たくなってくる。歌声が意外に綺麗なんだ」
「おや、嬉しいことを言ってくれるねぇ」
浮竹に近寄り、触れるだけのキスをして、二組の布団の上にそれぞれ寝転がって、浮竹は京楽の歌う子守歌に耳を傾けた。
7時半まで眠っていたので、睡魔はなかなか訪れなかったので、眠剤を飲んだ。
かわりに、今度は浮竹が京楽に子守唄を歌う。
「君の声は綺麗だね。透き通っている」
「そうか?」
子守唄を歌っていると、うつらうつらと睡魔が押し寄せてきた。
「すまない、京楽、先に寝る・・・・・」
浮竹は、眠剤の効果のせいで、深く眠ってしまった。
「君に捧ぐ・・・か。元々は恋歌なのに、何故子守歌になったんだろうねぇ」
そう言いながら、京楽も何も考えずに布団の中で寝がえりを繰り返している間に、眠りの中へ旅立っていった。
「寝すぎた」
朝起きると、10時だった。
「京楽、遅刻だ!」
揺さぶる起こされて、京楽が目を覚ます。
「浮竹・・・今日は土曜で、仕事は休みだよ」
「え、土曜?金曜と思っていた」
「そういうことだから、僕はもう一眠りするよ」
京楽は、仕事をさぼってよく昼寝をする。睡眠が浅いのかもしれない。
浮竹は、顔を洗って着替えて、朝餉をとると、京楽の寝顔を見ていた。
1時間ほどして、京楽が目覚める。
「どうしたんだい」
「お前の寝顔を見ていた」
「面白いものじゃないでしょ」
「いや、いい男だなと思って」
げっほげっほ。
お茶を口にしていた京楽は、浮竹の思ってもいない言動にむせた。
「君、ずるいよ。君こそ、寝顔はあどけなくてかわいいのに」
「京楽の寝顔もあどけないぞ。かわいいというよりは、かっこいいだな」
「全くもう」
京楽は、頭をがしがしとかいてから、浮竹を押し倒した。
「朝から、その気にさせる気?」
「いや、さすがに朝からはないな」
押し倒されたまま、深い口づけをされた。
「きゃわあああああああ!すみません、何も見ていません!昼食、ここに置いていきます」
ルキアが、そんな二人を目撃してしまった。
ルキアも土曜は休みなのだが、今日は仕事で出勤していたのだ。
「ルキアちゃんに、見られちゃったね」
「そのうち慣れるだろ。海燕みたいに」
「そうかなぁ。ルキアちゃんは、純真っぽいからね。いつまでも慣れないかもしれないよ」
「まぁ、その時はその時だ。別に睦み合っているところを見られたわけでもない」:
ルキアにとっては、それも大差なかったが。
浮竹と京楽は、関係を隠そうとしないので、ハグやキスなど、人目のある場所でもすることがある。
ルキアが慣れるまで、時間はかなりかかりそうだった。
雨乾堂に足を踏み入れると、咳をする辛そうな音が聞こえた。
「大丈夫、浮竹?」
「ああ・・・京楽・・・ごほっごほっ」
ぽたたた。
畳に、血が滴った。
「浮竹!」
布団で寝ていた浮竹を抱き上げて、4番隊の救護詰所まで瞬歩でやってくる。
「卯ノ花隊長はいるかい!?」
京楽に抱えられた浮竹を見て、4番隊の死神がすぐに卯ノ花を呼んでくれた。
卯ノ花に診てもらう間、京楽ははいらいらしていた。
「なぜ、もっと早くにこなかったのですか」
「いや・・・・少しの吐血だったから、大人しくしていれば大丈夫だと思ったんだ」
「始めの発作はいつですか?」
「今日の朝の7時」
「5時間は経ってますね・・・まぁ、思ったより悪化していないようでよかったですが。今度からは、発作が起きればすぐに人を呼ぶようにしてください」
「ああ、分かった」
卯ノ花から回道を受けて、薬を処方してもらい、浮竹は歩いて京楽の待っている待合室まできた。
「もう大丈夫なのかい?」
京楽は、珍しく怒っているようだった。
「京楽?」
「おけに、血をはいていたね。僕は連れてくる前にも発作起こしてたんでしょ」
「ああ・・・そうだ」
京楽は、溜息をついた。
「なんで、もっと早く助けを呼ばないの。3席の清音ちゃんなら、すぐ回道である程度癒してくれるでしょうに」
「あいにく、清音は実家に帰っている」
「それでも!人を呼ぶことくらい、できるでしょ!?」
「すまない・・・・発作があまり酷いものではなかったので、大丈夫だと慢心していた。今度から、少しの発作でも人を呼ぶようにする」
「本当に、君って子は!」
待合室で、抱き締められた。
「京楽・・・とりあえず、移動しよう」
集中する視線が痛くて、救護詰所の外に出た。
外に出ると、また強く抱きしめられた。
「君が吐血する度に、僕は恐怖する。このまま君が死んでしまうのではないかと」
「そんなことはない。病気は治ることはないが、進行することもない。死ぬことは、多分ないはずだ」
「それでも、心配なんだよ」
「すまない」
「君は、謝ってばかりだね」
「他にどう声をかけていいのか、分からないんだ」
浮竹は、困ったような顔をしていた。
そんな浮竹に、触れるだけの口づけをする。
「発作を起こしたら、本当に、少しでも人を呼ぶんだよ。苦しくてそれができないようなら、霊圧を暴走させるといい。僕が気づくから」
「京楽は、優しいな」
「当たり前でしょ。何百年君と一緒にいると思っているのさ」
「さぁ・・・もう400年をこえたあたりで、数えるのをやめた」
院生時代から隊長になるまで。
もう400年以上は経っている。
浮竹をそっと抱き上げて、京楽は雨乾堂まで瞬歩で帰った。
「いいかい、食事をしたら薬を飲んでちゃんと横になるんだよ?」
「分かっているさ」
浮竹は、過保護な京楽に苦笑を零す。
「君はすぐフラフラ何処かにいってしまいそうだから・・・今日は、僕も雨乾堂に泊まるよ」
「朽木に、料理を二人分用意してくれと言わなければな」
ルキアが、今の浮竹の副官だった。
海燕を失い、長らく空いていた副官に、ルキアがなった。
浮竹の世話にまだ慣れていないので、京楽がよく力をかしてくれた。
ルキアを呼んで、夕飯を二人分にしてくれるように頼んで、遅めの昼食をとり浮竹は大人しく布団に横になった。
薬もちゃんと飲んだ。
血で汚れた畳は、いつの間にか血の痕がぬぐわれていた。
「朽木悪いな、世話ばかりかけて」
「いいえ、隊長、そんなことありません!」
明るいルキアに、浮竹も心が和む。
「着がえのほうは、雨乾堂に置かれているもので大丈夫なのですか?」
「ああ。それで充分だ」
「悪いね、ルキアちゃん。突然泊まるとかいいだして」
「いいえ、京楽隊長は浮竹隊長の大事な方ですから!」
浮竹が朱くなった。
「浮竹、今更だよ。この程度で照れてどうするの」
「朽木は純粋培養だったのに・・・俺たちのせいで、濁ってしまった」
「浮竹隊長、濁っていいんです!京楽隊長とできているのを記録するのは女性死神協会の務め!」
「今、さらっと記録とかいったな」
「はっ!いえ、なんでもないのです!」
「まぁいい、朽木、ほどほどにな」
「はい!」
ルキアは、隊舎に下がっていった。
「寝れそうかい?」
「京楽・・・・子守唄を、歌ってくれないか。君に捧ぐという題名の、子守唄を」
「ああ・・・昔、君が寝付けない時、たまに歌ってあげたね」
「その子守唄が聞きたい。寝れるかは分からないが」
「仕方ないねぇ」
京楽が、歌の旋律を口ずさむ。
君に捧ぐ。
始めは恋歌だった。それがどう変化したのか、子守唄になった。
京楽のゆっくりと流れる子守唄を聞いていると、薬の中の鎮静剤の効果か、瞼が重くくなってきた。
そのまま目を閉じると、闇に滑り落ちていった。
「ん・・・・」
「起きたかい?」
「今何時だ?」
「夜の7時半だよ。夕餉の用意はされてあるから、君が起きたら一緒に食べようと思って」
「ああ・・・・先に食べていてくれても、構わなかったのに」:
「君だけをおいて先に食事とか、ちょっと無理だね」
発作を起こして、薬で眠っていたのだ。臥せっているのと大差ない。
「薬が大分効いたみたいだ。もう大丈夫だ」
「無理はしないでね」
夕餉を食べて、二人で風呂に入り、寝るまで時間があるので花札をした。
それから、院生時代の話題で盛り上がった。
やがて、夜の10時になる。
「早いけど、そろそろ寝ようか」
「ああ」
「また・・・君に捧ぐの子守歌、歌ってくれないか」
「いいよ。君のためなら。上手くもないだろうけど」
「いや、お前の歌はいいぞ。本当に眠たくなってくる。歌声が意外に綺麗なんだ」
「おや、嬉しいことを言ってくれるねぇ」
浮竹に近寄り、触れるだけのキスをして、二組の布団の上にそれぞれ寝転がって、浮竹は京楽の歌う子守歌に耳を傾けた。
7時半まで眠っていたので、睡魔はなかなか訪れなかったので、眠剤を飲んだ。
かわりに、今度は浮竹が京楽に子守唄を歌う。
「君の声は綺麗だね。透き通っている」
「そうか?」
子守唄を歌っていると、うつらうつらと睡魔が押し寄せてきた。
「すまない、京楽、先に寝る・・・・・」
浮竹は、眠剤の効果のせいで、深く眠ってしまった。
「君に捧ぐ・・・か。元々は恋歌なのに、何故子守歌になったんだろうねぇ」
そう言いながら、京楽も何も考えずに布団の中で寝がえりを繰り返している間に、眠りの中へ旅立っていった。
「寝すぎた」
朝起きると、10時だった。
「京楽、遅刻だ!」
揺さぶる起こされて、京楽が目を覚ます。
「浮竹・・・今日は土曜で、仕事は休みだよ」
「え、土曜?金曜と思っていた」
「そういうことだから、僕はもう一眠りするよ」
京楽は、仕事をさぼってよく昼寝をする。睡眠が浅いのかもしれない。
浮竹は、顔を洗って着替えて、朝餉をとると、京楽の寝顔を見ていた。
1時間ほどして、京楽が目覚める。
「どうしたんだい」
「お前の寝顔を見ていた」
「面白いものじゃないでしょ」
「いや、いい男だなと思って」
げっほげっほ。
お茶を口にしていた京楽は、浮竹の思ってもいない言動にむせた。
「君、ずるいよ。君こそ、寝顔はあどけなくてかわいいのに」
「京楽の寝顔もあどけないぞ。かわいいというよりは、かっこいいだな」
「全くもう」
京楽は、頭をがしがしとかいてから、浮竹を押し倒した。
「朝から、その気にさせる気?」
「いや、さすがに朝からはないな」
押し倒されたまま、深い口づけをされた。
「きゃわあああああああ!すみません、何も見ていません!昼食、ここに置いていきます」
ルキアが、そんな二人を目撃してしまった。
ルキアも土曜は休みなのだが、今日は仕事で出勤していたのだ。
「ルキアちゃんに、見られちゃったね」
「そのうち慣れるだろ。海燕みたいに」
「そうかなぁ。ルキアちゃんは、純真っぽいからね。いつまでも慣れないかもしれないよ」
「まぁ、その時はその時だ。別に睦み合っているところを見られたわけでもない」:
ルキアにとっては、それも大差なかったが。
浮竹と京楽は、関係を隠そうとしないので、ハグやキスなど、人目のある場所でもすることがある。
ルキアが慣れるまで、時間はかなりかかりそうだった。
院生時代の部屋 浮竹ってちょろい
朝から、京楽は踊っていた。
ソーラン節だった。
服は着ていたので、欠伸をかみ殺しながら起きる。
「楽しいか?」
「君を満足させる体をつくるためにやってるから、楽しいよ!」
「俺は満足しないから」
「ええ、僕のテクの前ではメロメロでしょ!?」
そういう京楽を蹴り転がして、顔を踏みつける。
「誰が誰のテクでメロメロだと?」
「足をぺろりーーーー」
「ぎゃああああ」
裸足の足の裏を舐められて、浮竹は悲鳴と共に京楽を蹴り転がした。
「愛が痛い」
「京楽菌がうつった!」
足をタオルで何度もぬぐう。
「京楽菌は頑固だから、そんなんじゃとれないよー」
自分を菌扱いされているのに、京楽は楽し気だった。
「アホ言ってないで、学院に行くぞ」
寮の部屋を出て、学院に向かう。遅めにおきたので、朝食は抜きだが、いつものことなのであまり気にしない。
教室について、授業を受けた。
隣の席の京楽は、ノートに浮竹すきすきとかいて、それを投げてよこしてきた。
浮竹は、死ね死ねとかいて、投げてよこした。
そのやりとりに教師は気づいているが、二人とも成績優秀なので、特に何も言わない。特に浮竹は優等生だ。京楽はたまに授業をさぼるので、優等生とはいえないが、能力は座学、鬼道、剣どれをとってもTOPになるくらいの成績だった。
できていそうで、できていないカップルとして、二人は有名だった。
紙の投げ合いをしていると、流石に教師も怒って、注意する。
「浮竹、京楽、廊下に立っていなさい」
「ばか、お前のせいで怒られたじゃないか!」
「えー。君だって楽しそうにやりとりしてたじゃない」
こほんと、教師が咳払いをすると、二人はそそくさと廊下に立った。
でも、反省は全然しなかった。
「お前のせいで立たされた」
「え、僕のせいであそこがたったって?」
「死ね!」
破道の8、白雷を落とす。
京楽はぶすぶすと焦げたけど、にこにこしていた。
「浮竹の愛は激しいなぁ」
「全く、お前は・・・・」
加減したとはいえ、鬼道だ。痛いだろうに、京楽にはきいていなかった。
やがてチャイムがなり、その時間の授業の終了の合図が鳴る。
「浮竹、京楽、あまり遊ばないように」
廊下に立たされても、反省のそぶりを見せない二人に、教師は溜息をつきながらそう注意した。
「遊んでいません。抹殺しようとしているんです」
「いやあ、抹殺したいほどに僕に惚れているんだね」
二人の会話は噛みあわない。
それに教師は深い溜息をついた。
「お前たちは、成績優秀なのに、何故そうなんだ」
「京楽が邪魔をするからです」
「浮竹がいるからだよ」
こういう時だけ、息が合う。
「とにかく、授業中は騒がずに大人しくするように」
次の授業も座学だった。
紙でやりとりしていたが、すでに教師は諦めているのか、二人を注意することはなかった。
やがて昼休みになり、昼食をとりに出かける。
なんだかんだ言っても、二人は行動は常に一緒だった。
京楽を抹殺するとか言っておいて、すでに浮竹はそのことを忘れていた。
他の友人たちに囲まれた浮竹を攫い、昼飯を手に席につく。
「お前なぁ。友人たちと会話もできないのか、俺は」
「だって君は僕のものだもの」
「はぁ・・・・・」
浮竹は溜息をついて、今日の昼食・・・きつねうどんを食べだした。
二人きりになった京楽と浮竹に近づく、勇気ある友人はいない。浮竹が友人に声をかけて、それがきっかけで輪ができる。
京楽もその輪に交じる時もあれば、混じらない時は浮竹を拉致した。
「今日の放課後、甘味屋へ行こうか」
「本当か?」
機嫌の悪い浮竹を喜ばせる方法として、甘味物でつるのが一番手っ取り早かった。
「うん。いつものあの店にいこう」
贔屓にしている、甘味屋の店があった。老舗で、人気も高い。
浮竹は、午後は機嫌がよくなった。
放課後になり、二人で壬生の甘味屋まできた。
お代はもちろん京楽もちだ。
仕送りの少ない金でやりくりをしている浮竹には、甘味物を食べるお金の余裕などない。
「ぜんざいを5人前。おはぎを10個。白玉餡蜜を3人前」
浮竹は、始め京楽と知り合った頃は遠慮していたが、今では甘味物を別腹で食べることにも気にしていない。
浮竹は、甘味物になると、普通の人の3~5倍は食べた。
メニューがやってきて、テーブルがいっぱいになる。
どんどん平らげていく浮竹を見ながら、京楽は抹茶アイスを食べながらにこにこと笑んでいた。
食べたものから、下げられていく。
「今日はこのくらいにしておくか・・・・・」
「まだ食べる気だったの?」
「食べようと思えば食べれたけど、夕飯が食べれなくなる」
あれだけの甘味物を食べて、夕飯が入るのだから、この細い体のどこにあれだけの甘味物が入るのだろうと、京楽はいつも不思議に思っていた。
浮竹は、ご機嫌で寮に一度戻り、夕食を食べに食堂へ行った。
今日は天ぷらだった。
一人前を少なくしてもらったものを受け取り、食べる。
元々、浮竹は食が細い。なのに、甘味物になるとたくさん食べた。
京楽は思う。
不機嫌な浮竹は、甘味屋に連れていけば機嫌が直ってちょろいなと。
そんなことを本人に知られたら、きっと簀巻きにされてベランダ行きだろう。
夕食も食べ終わり、二人は寮の部屋に戻った。
風呂に入り、余った時間で復習と予習をして、就寝時間になる。
浮竹は、京楽を同じベッドに誘った。
「今日は一緒に寝てかまわない。おごってもらったからな」
「ひゃっほう!」
京楽は、浮竹に抱き着いた。暖かかった。
いつもは背中あわせに、別々の方向を向いて寝ていたが、最近は京楽の腕の中で浮竹は眠るようになっていた。
真に、慣れとは恐ろしい。
どんどん京楽色に染め上げられていく浮竹。
まぁ、まだまだ体の関係はないので、キスとハグはありの、親友以上恋人未満の関係を続けていくのだろう。
今は3回生の冬の終わり。
きっと、4回生になってもそれは変わらないのだろう。
ソーラン節だった。
服は着ていたので、欠伸をかみ殺しながら起きる。
「楽しいか?」
「君を満足させる体をつくるためにやってるから、楽しいよ!」
「俺は満足しないから」
「ええ、僕のテクの前ではメロメロでしょ!?」
そういう京楽を蹴り転がして、顔を踏みつける。
「誰が誰のテクでメロメロだと?」
「足をぺろりーーーー」
「ぎゃああああ」
裸足の足の裏を舐められて、浮竹は悲鳴と共に京楽を蹴り転がした。
「愛が痛い」
「京楽菌がうつった!」
足をタオルで何度もぬぐう。
「京楽菌は頑固だから、そんなんじゃとれないよー」
自分を菌扱いされているのに、京楽は楽し気だった。
「アホ言ってないで、学院に行くぞ」
寮の部屋を出て、学院に向かう。遅めにおきたので、朝食は抜きだが、いつものことなのであまり気にしない。
教室について、授業を受けた。
隣の席の京楽は、ノートに浮竹すきすきとかいて、それを投げてよこしてきた。
浮竹は、死ね死ねとかいて、投げてよこした。
そのやりとりに教師は気づいているが、二人とも成績優秀なので、特に何も言わない。特に浮竹は優等生だ。京楽はたまに授業をさぼるので、優等生とはいえないが、能力は座学、鬼道、剣どれをとってもTOPになるくらいの成績だった。
できていそうで、できていないカップルとして、二人は有名だった。
紙の投げ合いをしていると、流石に教師も怒って、注意する。
「浮竹、京楽、廊下に立っていなさい」
「ばか、お前のせいで怒られたじゃないか!」
「えー。君だって楽しそうにやりとりしてたじゃない」
こほんと、教師が咳払いをすると、二人はそそくさと廊下に立った。
でも、反省は全然しなかった。
「お前のせいで立たされた」
「え、僕のせいであそこがたったって?」
「死ね!」
破道の8、白雷を落とす。
京楽はぶすぶすと焦げたけど、にこにこしていた。
「浮竹の愛は激しいなぁ」
「全く、お前は・・・・」
加減したとはいえ、鬼道だ。痛いだろうに、京楽にはきいていなかった。
やがてチャイムがなり、その時間の授業の終了の合図が鳴る。
「浮竹、京楽、あまり遊ばないように」
廊下に立たされても、反省のそぶりを見せない二人に、教師は溜息をつきながらそう注意した。
「遊んでいません。抹殺しようとしているんです」
「いやあ、抹殺したいほどに僕に惚れているんだね」
二人の会話は噛みあわない。
それに教師は深い溜息をついた。
「お前たちは、成績優秀なのに、何故そうなんだ」
「京楽が邪魔をするからです」
「浮竹がいるからだよ」
こういう時だけ、息が合う。
「とにかく、授業中は騒がずに大人しくするように」
次の授業も座学だった。
紙でやりとりしていたが、すでに教師は諦めているのか、二人を注意することはなかった。
やがて昼休みになり、昼食をとりに出かける。
なんだかんだ言っても、二人は行動は常に一緒だった。
京楽を抹殺するとか言っておいて、すでに浮竹はそのことを忘れていた。
他の友人たちに囲まれた浮竹を攫い、昼飯を手に席につく。
「お前なぁ。友人たちと会話もできないのか、俺は」
「だって君は僕のものだもの」
「はぁ・・・・・」
浮竹は溜息をついて、今日の昼食・・・きつねうどんを食べだした。
二人きりになった京楽と浮竹に近づく、勇気ある友人はいない。浮竹が友人に声をかけて、それがきっかけで輪ができる。
京楽もその輪に交じる時もあれば、混じらない時は浮竹を拉致した。
「今日の放課後、甘味屋へ行こうか」
「本当か?」
機嫌の悪い浮竹を喜ばせる方法として、甘味物でつるのが一番手っ取り早かった。
「うん。いつものあの店にいこう」
贔屓にしている、甘味屋の店があった。老舗で、人気も高い。
浮竹は、午後は機嫌がよくなった。
放課後になり、二人で壬生の甘味屋まできた。
お代はもちろん京楽もちだ。
仕送りの少ない金でやりくりをしている浮竹には、甘味物を食べるお金の余裕などない。
「ぜんざいを5人前。おはぎを10個。白玉餡蜜を3人前」
浮竹は、始め京楽と知り合った頃は遠慮していたが、今では甘味物を別腹で食べることにも気にしていない。
浮竹は、甘味物になると、普通の人の3~5倍は食べた。
メニューがやってきて、テーブルがいっぱいになる。
どんどん平らげていく浮竹を見ながら、京楽は抹茶アイスを食べながらにこにこと笑んでいた。
食べたものから、下げられていく。
「今日はこのくらいにしておくか・・・・・」
「まだ食べる気だったの?」
「食べようと思えば食べれたけど、夕飯が食べれなくなる」
あれだけの甘味物を食べて、夕飯が入るのだから、この細い体のどこにあれだけの甘味物が入るのだろうと、京楽はいつも不思議に思っていた。
浮竹は、ご機嫌で寮に一度戻り、夕食を食べに食堂へ行った。
今日は天ぷらだった。
一人前を少なくしてもらったものを受け取り、食べる。
元々、浮竹は食が細い。なのに、甘味物になるとたくさん食べた。
京楽は思う。
不機嫌な浮竹は、甘味屋に連れていけば機嫌が直ってちょろいなと。
そんなことを本人に知られたら、きっと簀巻きにされてベランダ行きだろう。
夕食も食べ終わり、二人は寮の部屋に戻った。
風呂に入り、余った時間で復習と予習をして、就寝時間になる。
浮竹は、京楽を同じベッドに誘った。
「今日は一緒に寝てかまわない。おごってもらったからな」
「ひゃっほう!」
京楽は、浮竹に抱き着いた。暖かかった。
いつもは背中あわせに、別々の方向を向いて寝ていたが、最近は京楽の腕の中で浮竹は眠るようになっていた。
真に、慣れとは恐ろしい。
どんどん京楽色に染め上げられていく浮竹。
まぁ、まだまだ体の関係はないので、キスとハグはありの、親友以上恋人未満の関係を続けていくのだろう。
今は3回生の冬の終わり。
きっと、4回生になってもそれは変わらないのだろう。
好きなものは好き10
「一護、ここのパフェが食べたい!」
金曜に現世にやってきたルキアは、パンフレットを手に一護に迫った。
「何々・・・ジャンボパフェ今なら3割引き。いいぜ。明日、行こうか」
「本当か!やったー!」
ルキアの無邪気な喜びように、一護はほんわかとなった。
次の日、ジャンボパフェ3割引きというレストランにきていた。
客がけっこういるようで、待たされたが、ルキアはわくわくしていた。やがて順番になり、テーブルにつくと、ルキアは給仕係にジャンボパフェを2つ注文した。
「おい、流石に2つは無理だろ!」
「何を言うのだ。貴様の分に決まっておろう」
「いや、俺別に食べたいってわけじゃねーんだけど」
「いいから食せ!3割引きなど、滅多にないのだぞ!前にここのレストランで食べたパフェの美味さに私は虜なのだ!」
「もう注文しちまったし、わーったよ。俺も食う」
やがて、ジャンボパフェがやってきた。
名前に違わず、ボリュームがあった。一人で完食できるのか怪しい量だった。
それを、ルキアはぱくついて食べていく。
「美味いな!」
あっという間に、3分の1を食べてしまった。
一護は普通に食べていた。フルーツが多く入っていて、一護でも美味しいとかんじれたし、一護の好物のチョコレートも入っていた。
「これは貴様にやる」
チョコレートを、ルキアはスプーンで一護のジャンボパフェの上に乗せた。
「お、ありがとな」
一護は素直に礼を言った。
チョコレートは大好物だ。
下の層はチョコレートパフェだったので、一護も完食した。
ルキアは、とっくの昔に食べ終えていた。
「食べるの早いな、お前」
「たわけ!この日のために、昨日の夕飯を抜いたのだ。もう1つ食べるぞ!」
「おいおい」
ルキアは、追加でジャンボパフェの苺味を頼んで注文した。
「一護も食せ。私一人でも食せるが、せっかくなのだ。共に食べようではないか」
やがてやってきた苺のジャンボパフェを、ルキアが食べていく。
「こら、一護も食べぬか!」
「へいへい」
すでに一護のお腹はかなりいっぱいだったのだが、しぶしぶスプーンですくって、食べれる分だけ食べた。
ほとんどをルキアが食してしまったが。
「ふう、満足だ。もう食えぬ」
「カロリー、怖いことになりそうだな」
「ぐ・・・・乙女に、カロリーの話をするな!」
ルキアに怒られながら、レストランを後にした。
「でも、実際いくらカロリーあるんだろうな。あんだけあると、流石に太って・・・ぶべ!」
ルキアの鉄拳が、一護の顔に炸裂した。
「私は、食っても太らん体質なのだ!太るとかいうな!」
「まぁ、確かにルキアはよく食べるわりに華奢だよな」
「そうであろう。食べても太らぬ体質に、松本副隊長に嫉妬されまくりなのだ」
「あー。まぁ乱菊さんなら、羨ましがりそうだなぁ」
尸魂界でいつもは生活しているルキアは、現世の食べ物に興味津々であった。
スィーツというスィーツに手を出している。
「和菓子より、私は洋菓子のほうが好みなのだ。和菓子も捨てがたいが、洋菓子の種類の豊富さと美味さに、メロメロなのだ」
「じゃあ、あのケーキ屋で何か買って帰るか」
「よいのか!?」
「ああ。今日は流石に食わせれねーけど、明日になら食ってもいい」
「今日は、確かに甘いものをとりすぎたからな」
ケーキ屋に入ると、色とりどりのケーキに、ルキアは迷っていた。
「チョコレートケーキと、苺ショートケーキを1つずつ」
「はい、かしこまりました」
一護が、決めかねているルキアの代わりに、ケーキを買った。
「苺ショートケーキが私の分だな。貴様の分はチョコレートケーキか」
「食いたいなら、俺の分食ってもいいぜ」
「いやいや。そこまで私は食い意地は・・・・はってないと言い切れないが」
「言いきれないのかよ」
一護は笑った。
昼食は、ジャンポパフェを食べたことでなしになった。
夕飯も軽めにものにした。
ルキアはおかわりをしていたが。
「また、パフェを食べに、あの店にいこう」
「ああ、いいぜ」
次の日になって、3時のおやつの時間に昨日買って、冷蔵庫で冷やしておいたケーキを食べた。
美味しかったが、ルキアはものたりなくて、一護が食べているチョコレートケーキをじーっと見つめていた。
「ああもう、そんな顔すんなよ。ほら、やるから」
チョコレートケーキを差し出されて、ルキアは吃驚する。
「え、そんな顔って、私は何か物欲しそうな顔でもしていたのか?」
「ああ、めっちゃ食べたいって顔してた」
「ぐ・・・すまぬ。ありがたくいただくとしよう」
一護の食べかけのチョコレートケーキを、ルキアは1分もたたずに完食してしまった。
「もうなくなってしまった・・・・・」
「ああもう・・・・。今日の夕飯に、白玉餡蜜作ってやるから」
「本当か!?」
「嘘ついてどうする。そもそも、味わってくえ。食うの早すぎなんだよ」
「すまぬ・・・・甘い物を食べる時、流魂街にいた頃のくせが抜けなくてな。早くに食べてしまうのだ」
流魂街にいた頃のルキアの生活は、散々なものだった。
朽木家に拾われてからも、甘いものを出されるとゆっくり味わうといことをせずに、早くに食べてしまう癖が抜けきれないでいた。
無論、流魂街にいた頃と比べると、大分食べるのもゆっくりになったが、それでも食べるのが早いらしい。
「誰も、お前の分をとったりしないだろ?」
一護の言葉は、ルキアの胸に染み渡った。
夕飯は豚骨ラーメンだった。茹でるだけのやつで、スープは別についていた。
誰でも気軽に美味しく食べれるものだった。
一護は、白玉餡蜜を作ってくれた。
それをゆっくり食べた。いつも周囲に甘味物を食べるのがはやいなとは言われていたが、それを注意する者はいなかった。
一護に言われて、初めて自分は流魂街の癖が残っているのだと確信した。
「おかわり」
「へいへい。多めに作ってあるから、好きなだけ食え」
一護も、白玉餡蜜を食べた。
甘い、優しい味がした。
ルキアの好き味だった。
結局作り過ぎて、冷蔵庫で冷やして、日曜も食べることになるのであった。
金曜に現世にやってきたルキアは、パンフレットを手に一護に迫った。
「何々・・・ジャンボパフェ今なら3割引き。いいぜ。明日、行こうか」
「本当か!やったー!」
ルキアの無邪気な喜びように、一護はほんわかとなった。
次の日、ジャンボパフェ3割引きというレストランにきていた。
客がけっこういるようで、待たされたが、ルキアはわくわくしていた。やがて順番になり、テーブルにつくと、ルキアは給仕係にジャンボパフェを2つ注文した。
「おい、流石に2つは無理だろ!」
「何を言うのだ。貴様の分に決まっておろう」
「いや、俺別に食べたいってわけじゃねーんだけど」
「いいから食せ!3割引きなど、滅多にないのだぞ!前にここのレストランで食べたパフェの美味さに私は虜なのだ!」
「もう注文しちまったし、わーったよ。俺も食う」
やがて、ジャンボパフェがやってきた。
名前に違わず、ボリュームがあった。一人で完食できるのか怪しい量だった。
それを、ルキアはぱくついて食べていく。
「美味いな!」
あっという間に、3分の1を食べてしまった。
一護は普通に食べていた。フルーツが多く入っていて、一護でも美味しいとかんじれたし、一護の好物のチョコレートも入っていた。
「これは貴様にやる」
チョコレートを、ルキアはスプーンで一護のジャンボパフェの上に乗せた。
「お、ありがとな」
一護は素直に礼を言った。
チョコレートは大好物だ。
下の層はチョコレートパフェだったので、一護も完食した。
ルキアは、とっくの昔に食べ終えていた。
「食べるの早いな、お前」
「たわけ!この日のために、昨日の夕飯を抜いたのだ。もう1つ食べるぞ!」
「おいおい」
ルキアは、追加でジャンボパフェの苺味を頼んで注文した。
「一護も食せ。私一人でも食せるが、せっかくなのだ。共に食べようではないか」
やがてやってきた苺のジャンボパフェを、ルキアが食べていく。
「こら、一護も食べぬか!」
「へいへい」
すでに一護のお腹はかなりいっぱいだったのだが、しぶしぶスプーンですくって、食べれる分だけ食べた。
ほとんどをルキアが食してしまったが。
「ふう、満足だ。もう食えぬ」
「カロリー、怖いことになりそうだな」
「ぐ・・・・乙女に、カロリーの話をするな!」
ルキアに怒られながら、レストランを後にした。
「でも、実際いくらカロリーあるんだろうな。あんだけあると、流石に太って・・・ぶべ!」
ルキアの鉄拳が、一護の顔に炸裂した。
「私は、食っても太らん体質なのだ!太るとかいうな!」
「まぁ、確かにルキアはよく食べるわりに華奢だよな」
「そうであろう。食べても太らぬ体質に、松本副隊長に嫉妬されまくりなのだ」
「あー。まぁ乱菊さんなら、羨ましがりそうだなぁ」
尸魂界でいつもは生活しているルキアは、現世の食べ物に興味津々であった。
スィーツというスィーツに手を出している。
「和菓子より、私は洋菓子のほうが好みなのだ。和菓子も捨てがたいが、洋菓子の種類の豊富さと美味さに、メロメロなのだ」
「じゃあ、あのケーキ屋で何か買って帰るか」
「よいのか!?」
「ああ。今日は流石に食わせれねーけど、明日になら食ってもいい」
「今日は、確かに甘いものをとりすぎたからな」
ケーキ屋に入ると、色とりどりのケーキに、ルキアは迷っていた。
「チョコレートケーキと、苺ショートケーキを1つずつ」
「はい、かしこまりました」
一護が、決めかねているルキアの代わりに、ケーキを買った。
「苺ショートケーキが私の分だな。貴様の分はチョコレートケーキか」
「食いたいなら、俺の分食ってもいいぜ」
「いやいや。そこまで私は食い意地は・・・・はってないと言い切れないが」
「言いきれないのかよ」
一護は笑った。
昼食は、ジャンポパフェを食べたことでなしになった。
夕飯も軽めにものにした。
ルキアはおかわりをしていたが。
「また、パフェを食べに、あの店にいこう」
「ああ、いいぜ」
次の日になって、3時のおやつの時間に昨日買って、冷蔵庫で冷やしておいたケーキを食べた。
美味しかったが、ルキアはものたりなくて、一護が食べているチョコレートケーキをじーっと見つめていた。
「ああもう、そんな顔すんなよ。ほら、やるから」
チョコレートケーキを差し出されて、ルキアは吃驚する。
「え、そんな顔って、私は何か物欲しそうな顔でもしていたのか?」
「ああ、めっちゃ食べたいって顔してた」
「ぐ・・・すまぬ。ありがたくいただくとしよう」
一護の食べかけのチョコレートケーキを、ルキアは1分もたたずに完食してしまった。
「もうなくなってしまった・・・・・」
「ああもう・・・・。今日の夕飯に、白玉餡蜜作ってやるから」
「本当か!?」
「嘘ついてどうする。そもそも、味わってくえ。食うの早すぎなんだよ」
「すまぬ・・・・甘い物を食べる時、流魂街にいた頃のくせが抜けなくてな。早くに食べてしまうのだ」
流魂街にいた頃のルキアの生活は、散々なものだった。
朽木家に拾われてからも、甘いものを出されるとゆっくり味わうといことをせずに、早くに食べてしまう癖が抜けきれないでいた。
無論、流魂街にいた頃と比べると、大分食べるのもゆっくりになったが、それでも食べるのが早いらしい。
「誰も、お前の分をとったりしないだろ?」
一護の言葉は、ルキアの胸に染み渡った。
夕飯は豚骨ラーメンだった。茹でるだけのやつで、スープは別についていた。
誰でも気軽に美味しく食べれるものだった。
一護は、白玉餡蜜を作ってくれた。
それをゆっくり食べた。いつも周囲に甘味物を食べるのがはやいなとは言われていたが、それを注意する者はいなかった。
一護に言われて、初めて自分は流魂街の癖が残っているのだと確信した。
「おかわり」
「へいへい。多めに作ってあるから、好きなだけ食え」
一護も、白玉餡蜜を食べた。
甘い、優しい味がした。
ルキアの好き味だった。
結局作り過ぎて、冷蔵庫で冷やして、日曜も食べることになるのであった。
それ行け一護君 温水プールにいこう
ルキアと二人で、温水プールに出かけるはずが、なぜか白哉までついてきた。
隊長クラス二人の現世の移動には、霊力を極端に抑える義骸に入り、限定封印を施してもらう。緊急時には限定解除が許されて、いつもの力を振るえた。
ルキアの水着姿に、目を奪われる。
フリルの深いビキニタイプのものだった。
「かわいいな、ルキアの水着」
「そ、そうか?」
胸のなさをカバーできる作りになっていたが、一護はルキアの胸がないことなどどうでもよかった。むしろ好ましい。何せルキアのせいで貧乳派なので。
「兄様、ウォータースライダーにいきましょう!」
水着姿の白哉を誘い、ルキアが手をひいていく。
「おのれ・・・・白哉め。本当なら、二人きりのはずなのに」
一護は、少し怨みのこもった視線で白哉を見ていた。
でも、白哉はこういうのは始めてで、小さくではあるが感情を表に出して、嬉しそうにしていた。それを見ていると、一護もまぁいいかという気分になった。
「俺もウォータースライダーいってこよ」
ルキアと行きたかったが、何度でも利用できるので、ルキアとは痕で一緒にいけばいい。
「きゃわああああああああ兄様、大丈夫ですかあああ!?」
ウォータースライダーを滑り落ちながらのルキアの悲鳴は、よく聞こえた。
流れ落ちて、プールに着地する。
「ふむ・・・なかなかに面白い」
「兄様、気に入ってくださいましたか」
「うむ。中々によいものだ。もう一度行ってくる」
「あ、兄様!」
ルキアを残して、白哉はまたウォータースライダーに行ってしまった。
「一護?どこだ?」
一護の姿を探すが、近くにはいなかった。
「のわあああああああああ」
一護がウォータースライダーから飛び出して、ルキアの近くに着地する。
「なんだ、貴様は一人でウォータースライダーに行っていたのか」
「お前といきたかったけど、兄様兄様って白哉といっちまったじゃねーか」
「それはそうだが・・・・・」
「まぁ、せっかくだしいろいろ遊ぼうぜ」
普通に温水プールを泳いだ。
白哉が戻ってきて、白哉はパラソルの下でベンチに座っていた。
「兄様、泳ぎましょう!」
そんな白哉の手をとって、ルキアは白哉を温水プールの中に誘った。
「あまり、泳ぎは得意ではない」
そう言いながらも、白哉は軽やかに泳いでいた。
「泳げないとかいって、めっちゃ泳いでるし」
一護の言葉に、ルキアが胸を張る。
「兄様は、なんでもできるのだ。兄様は素晴らしい」
「はいはい。もうお腹いっぱいだぜ」
白哉を自慢するルキアの言葉に、一護はそう言った。
「ルキア、俺とウォータースライダー行こうぜ」
「何故だ?」
「何故って・・・・お前、白哉と一緒に滑っただろ。じゃあ、俺とも一緒に滑ってくれよ」
「兄様は、始めてであるからお誘いしたのだ。貴様は始めてではないだろう」
「いーから、一緒に滑ろうぜ」
ルキアの手をとって、ウォータースライダーに行く。
「わきゃああああああ」
「のわああああああ」
二人して、ウォータースライダーを滑っていく。
純粋に楽しかった。
「楽しいな、一護」
「おう。誘って正解だったな」
温水プールなので、夏ではない今の時期でも遊べる。今は5月の始めだった。
「はじめ、プールと聞いて暑くはあるが、こんな季節にとは思ったが、温水プールとは。これなら、冬でも楽しめそうだな」
「そうだろ。また、機会あったらこようぜ」
白哉は、泳ぎ疲れたのか、またベンチに座っていた
「白哉もまたくるか?」
「そうだな。機会があれば」
多分、ルキアと現世でまた温水プールに行くというと、ついてくるだろう。
温水プールの中にある屋台で軽い昼食をとり、また午後は泳いだ。
朝からきていたので、3時頃になって現世の他の場所を回るために、温水プールを後にした。
繁華街へやってきた。
一護とルキアは手を繋いでいた。そこに、男が寄ってきて、声をかけてくる。
「ねぇ、君、僕と遊ばない?」
「いらぬ」
なんだと思えば、声をかけられているのは白哉のほうだった。
白哉は中性的な美貌で、人目を引く。ルキアと一護も容姿がいいため人目をひくが、それの3倍は軽く人目をひいていた。
女にも男にも声をかけられて、白哉は無視を決め込んだ。
「ねぇ、そこのあなた・・・ひいいい」
人を威圧する視線で、圧倒していく。
「白哉、はぐれるなよ」
「兄は、誰に向かっていっておるのだ」
繁華街で少し買い物をして、レストランに入った。
「ご注文は・・・・ひいいい」
「おい、白哉、給仕係まで威圧しなくていいから」
「ふむ・・・・・」
「兄様は、かっこよすぎるのです!だからくだない人間が近寄ってきてしまう・・・盲点でした。兄様、不快な思いをさせてしまってすみません」
「よい。ルキアのせいではない」
白哉は、周囲を威圧するのをやめて、ベルを鳴らした。
給仕係がやってくる。
辛い料理を中心に、注文した。
ルキアと一護はスパゲッティを注文し、ルキアはパフェも注文した。
「この店、昔よくきたんだけど、味はいいぜ」
「ふむ」
しばらくして持ってこられた料理を口にして、白哉が一言。
「確かに、美味いな」
と言った。
一護もルキアも安心して、やってきたメニューを食べていく。
ちょうど食べ終わった頃に、パフェがやってきた。
「ルキア、俺にもくれ」
「仕方ないな・・・・」
アイスの部分をすくったスプーンを、一護の口元にもっていく。それを、一護は何の迷いもなく食べた。
それを、じーっと白哉が見ていた。
「な、なんだよ文句でもあるのか」
「別に」
つーんと、白哉はそっぽを向いてしまった。
「兄様も食べますか?」
「甘いのは好まぬ」
「そうですね。辛いパフェはないですから」
ルキアのしょんぼりとした声に、白哉は手を伸ばしてルキアの頭を撫でた。
「その思いだけで、十分だ」
「兄様!」
うるうるとなるルキア。
白哉にまたルキアをとられた一護は、一人ルキアのパフェをかってに食べていた。
「ああ、私のパフェが!もうほとんど残っておらぬではないか!」
「また注文すればいいだろ」
「たわけ、貴様というやつは!」
結局、ルキアはもう1つパフェを注文した。
白哉は、酒を注文して、飲んだ。
酔うほどではないが、一護も酒を飲みたかったが、外見年齢が未成年なために、無理だった。
「今日は、なかなかに面白かった。現世とはよい場所だな」
「そうでしょう、兄様!また、遊びにきましょう!」
「うむ」
ルキアとのデートのはずが、白哉までついてくる。でも、白哉も楽しそうだし、ルキアも嬉しそうなので、これはこれでいいかと、一護は思った。
穿界門を開けてもらい、尸魂界に戻る。
「ルキア、今日は一緒の布団で眠ろうぜ」
「む」
白哉が何かいいたそうだが、ルキアと一護は結婚しているのだ。仲を裂くことはできない。
「甘えん坊だな、貴様は」
「いや、ただ単に嫌がらせをしてるだけだ」
「誰にだ?私にか?」
「さぁ、誰だろうな」
白哉はぷいっとあっちの方向を向くと、朽木邸に入って去ってしまった。
「とりあえず、風呂入るか。たまにはルキアも一緒に入ろうぜ」
「まぁよいが・・・・」
二人で風呂に入った。幸いなことに、湯は抜かれていなかった。
夜になり、一組の布団で寝た。
そして次の日朝起きて、食堂に向かうと、朝食がにぼしになっていた。
「またか・・・・」
厨房にいき、普通のメニューをもらってくる。
にぼしは、飼っているオッドアイの白猫にあげた。
「にゃあ」
猫は嬉し気に鳴いた。
ちゃんとキャットフードもあげているので、おやつみたいなものだ。
飼い猫を一番かわいがっているのは、意外にも白哉だった。
「白哉も、お前くらいかわいげがあったらいいのになぁ」
「にゃああ」
「なんの話だ」
白猫は、白哉を見るとすり寄っていった。
「な、なんでもねぇよ。気のせいだ」
「子供はまだか?」
ぶばーーーーー!
ルキアも一護も、飲みかけだった茶を吹き出した。
「そ、それは運を天に任せるしかねーだろ」
「早く姪か甥を見たい。家族が増えるのはよいことだ」
白哉はまだ若い。その気になれば後添いを迎えることもできるだろうが、緋真だけを想い、後添えをという周囲の言葉を無視している。
はじめは、分家あたりから養子をもらい、それを次の当主に時がくればすると言っていたが、今の白哉はルキアの子に朽木家を継がせるつもりだった。
「子は多くてもよい。子作りに励むがよい」
ルキアは真っ赤だった。一護も赤くなる。
恥ずかし気のない白哉の言葉は、二人を真っ赤にさせてぎくしゃくさせるのであった。
隊長クラス二人の現世の移動には、霊力を極端に抑える義骸に入り、限定封印を施してもらう。緊急時には限定解除が許されて、いつもの力を振るえた。
ルキアの水着姿に、目を奪われる。
フリルの深いビキニタイプのものだった。
「かわいいな、ルキアの水着」
「そ、そうか?」
胸のなさをカバーできる作りになっていたが、一護はルキアの胸がないことなどどうでもよかった。むしろ好ましい。何せルキアのせいで貧乳派なので。
「兄様、ウォータースライダーにいきましょう!」
水着姿の白哉を誘い、ルキアが手をひいていく。
「おのれ・・・・白哉め。本当なら、二人きりのはずなのに」
一護は、少し怨みのこもった視線で白哉を見ていた。
でも、白哉はこういうのは始めてで、小さくではあるが感情を表に出して、嬉しそうにしていた。それを見ていると、一護もまぁいいかという気分になった。
「俺もウォータースライダーいってこよ」
ルキアと行きたかったが、何度でも利用できるので、ルキアとは痕で一緒にいけばいい。
「きゃわああああああああ兄様、大丈夫ですかあああ!?」
ウォータースライダーを滑り落ちながらのルキアの悲鳴は、よく聞こえた。
流れ落ちて、プールに着地する。
「ふむ・・・なかなかに面白い」
「兄様、気に入ってくださいましたか」
「うむ。中々によいものだ。もう一度行ってくる」
「あ、兄様!」
ルキアを残して、白哉はまたウォータースライダーに行ってしまった。
「一護?どこだ?」
一護の姿を探すが、近くにはいなかった。
「のわあああああああああ」
一護がウォータースライダーから飛び出して、ルキアの近くに着地する。
「なんだ、貴様は一人でウォータースライダーに行っていたのか」
「お前といきたかったけど、兄様兄様って白哉といっちまったじゃねーか」
「それはそうだが・・・・・」
「まぁ、せっかくだしいろいろ遊ぼうぜ」
普通に温水プールを泳いだ。
白哉が戻ってきて、白哉はパラソルの下でベンチに座っていた。
「兄様、泳ぎましょう!」
そんな白哉の手をとって、ルキアは白哉を温水プールの中に誘った。
「あまり、泳ぎは得意ではない」
そう言いながらも、白哉は軽やかに泳いでいた。
「泳げないとかいって、めっちゃ泳いでるし」
一護の言葉に、ルキアが胸を張る。
「兄様は、なんでもできるのだ。兄様は素晴らしい」
「はいはい。もうお腹いっぱいだぜ」
白哉を自慢するルキアの言葉に、一護はそう言った。
「ルキア、俺とウォータースライダー行こうぜ」
「何故だ?」
「何故って・・・・お前、白哉と一緒に滑っただろ。じゃあ、俺とも一緒に滑ってくれよ」
「兄様は、始めてであるからお誘いしたのだ。貴様は始めてではないだろう」
「いーから、一緒に滑ろうぜ」
ルキアの手をとって、ウォータースライダーに行く。
「わきゃああああああ」
「のわああああああ」
二人して、ウォータースライダーを滑っていく。
純粋に楽しかった。
「楽しいな、一護」
「おう。誘って正解だったな」
温水プールなので、夏ではない今の時期でも遊べる。今は5月の始めだった。
「はじめ、プールと聞いて暑くはあるが、こんな季節にとは思ったが、温水プールとは。これなら、冬でも楽しめそうだな」
「そうだろ。また、機会あったらこようぜ」
白哉は、泳ぎ疲れたのか、またベンチに座っていた
「白哉もまたくるか?」
「そうだな。機会があれば」
多分、ルキアと現世でまた温水プールに行くというと、ついてくるだろう。
温水プールの中にある屋台で軽い昼食をとり、また午後は泳いだ。
朝からきていたので、3時頃になって現世の他の場所を回るために、温水プールを後にした。
繁華街へやってきた。
一護とルキアは手を繋いでいた。そこに、男が寄ってきて、声をかけてくる。
「ねぇ、君、僕と遊ばない?」
「いらぬ」
なんだと思えば、声をかけられているのは白哉のほうだった。
白哉は中性的な美貌で、人目を引く。ルキアと一護も容姿がいいため人目をひくが、それの3倍は軽く人目をひいていた。
女にも男にも声をかけられて、白哉は無視を決め込んだ。
「ねぇ、そこのあなた・・・ひいいい」
人を威圧する視線で、圧倒していく。
「白哉、はぐれるなよ」
「兄は、誰に向かっていっておるのだ」
繁華街で少し買い物をして、レストランに入った。
「ご注文は・・・・ひいいい」
「おい、白哉、給仕係まで威圧しなくていいから」
「ふむ・・・・・」
「兄様は、かっこよすぎるのです!だからくだない人間が近寄ってきてしまう・・・盲点でした。兄様、不快な思いをさせてしまってすみません」
「よい。ルキアのせいではない」
白哉は、周囲を威圧するのをやめて、ベルを鳴らした。
給仕係がやってくる。
辛い料理を中心に、注文した。
ルキアと一護はスパゲッティを注文し、ルキアはパフェも注文した。
「この店、昔よくきたんだけど、味はいいぜ」
「ふむ」
しばらくして持ってこられた料理を口にして、白哉が一言。
「確かに、美味いな」
と言った。
一護もルキアも安心して、やってきたメニューを食べていく。
ちょうど食べ終わった頃に、パフェがやってきた。
「ルキア、俺にもくれ」
「仕方ないな・・・・」
アイスの部分をすくったスプーンを、一護の口元にもっていく。それを、一護は何の迷いもなく食べた。
それを、じーっと白哉が見ていた。
「な、なんだよ文句でもあるのか」
「別に」
つーんと、白哉はそっぽを向いてしまった。
「兄様も食べますか?」
「甘いのは好まぬ」
「そうですね。辛いパフェはないですから」
ルキアのしょんぼりとした声に、白哉は手を伸ばしてルキアの頭を撫でた。
「その思いだけで、十分だ」
「兄様!」
うるうるとなるルキア。
白哉にまたルキアをとられた一護は、一人ルキアのパフェをかってに食べていた。
「ああ、私のパフェが!もうほとんど残っておらぬではないか!」
「また注文すればいいだろ」
「たわけ、貴様というやつは!」
結局、ルキアはもう1つパフェを注文した。
白哉は、酒を注文して、飲んだ。
酔うほどではないが、一護も酒を飲みたかったが、外見年齢が未成年なために、無理だった。
「今日は、なかなかに面白かった。現世とはよい場所だな」
「そうでしょう、兄様!また、遊びにきましょう!」
「うむ」
ルキアとのデートのはずが、白哉までついてくる。でも、白哉も楽しそうだし、ルキアも嬉しそうなので、これはこれでいいかと、一護は思った。
穿界門を開けてもらい、尸魂界に戻る。
「ルキア、今日は一緒の布団で眠ろうぜ」
「む」
白哉が何かいいたそうだが、ルキアと一護は結婚しているのだ。仲を裂くことはできない。
「甘えん坊だな、貴様は」
「いや、ただ単に嫌がらせをしてるだけだ」
「誰にだ?私にか?」
「さぁ、誰だろうな」
白哉はぷいっとあっちの方向を向くと、朽木邸に入って去ってしまった。
「とりあえず、風呂入るか。たまにはルキアも一緒に入ろうぜ」
「まぁよいが・・・・」
二人で風呂に入った。幸いなことに、湯は抜かれていなかった。
夜になり、一組の布団で寝た。
そして次の日朝起きて、食堂に向かうと、朝食がにぼしになっていた。
「またか・・・・」
厨房にいき、普通のメニューをもらってくる。
にぼしは、飼っているオッドアイの白猫にあげた。
「にゃあ」
猫は嬉し気に鳴いた。
ちゃんとキャットフードもあげているので、おやつみたいなものだ。
飼い猫を一番かわいがっているのは、意外にも白哉だった。
「白哉も、お前くらいかわいげがあったらいいのになぁ」
「にゃああ」
「なんの話だ」
白猫は、白哉を見るとすり寄っていった。
「な、なんでもねぇよ。気のせいだ」
「子供はまだか?」
ぶばーーーーー!
ルキアも一護も、飲みかけだった茶を吹き出した。
「そ、それは運を天に任せるしかねーだろ」
「早く姪か甥を見たい。家族が増えるのはよいことだ」
白哉はまだ若い。その気になれば後添いを迎えることもできるだろうが、緋真だけを想い、後添えをという周囲の言葉を無視している。
はじめは、分家あたりから養子をもらい、それを次の当主に時がくればすると言っていたが、今の白哉はルキアの子に朽木家を継がせるつもりだった。
「子は多くてもよい。子作りに励むがよい」
ルキアは真っ赤だった。一護も赤くなる。
恥ずかし気のない白哉の言葉は、二人を真っ赤にさせてぎくしゃくさせるのであった。
浮竹と京楽と海燕と 南の海
「夏だ!海に行こう!」
その年、山じいの許可なしに夏の暑い日に現世の海に出かけた。
山じいの許可をとっていたら、何カ月先になるか分かりゃしないという京楽の言葉に、悪いと思いつつも浮竹と海燕も現世にいった。
いつか、海燕に珊瑚礁を見せてやりたいと言っていた。
その年は、無人島の珊瑚礁のある南の島で、キャンプすることになった。
「うわぁ、本当に綺麗ですね。海がエメラルド色で宝石みたいだ」
海燕は、始めてみる南の海の珊瑚礁に、感嘆の声をあげていた。
「そうでしょ。ここ、僕と浮竹だけの秘密のスポットなの」
「え、いいんですか。そんな場所に俺を連れてきたりして」
「気にするな、海燕。昔院生時代からここにきたことがあって、ここはまぁ現世では馴染のあるところだからな」
「とにかく泳ごうよ。それから、夕飯になるような魚をとったり、貝をとったりしよう」
キャンプと決め込んで、食材は現地調達だった。もってきたものといえば、水と念のための保存食くらいか。
京楽は、海パン姿になって泳ぎだした。
「浮竹も、泳ごう。そのまま直射日光にやられる前に、泳いじゃないよ」
浮竹も、逡巡しながらも海パン姿になって泳ぎ出した。泳いでると言うか、おぼれていた。
「泳げないの忘れてた・・・・」
京楽に助けられて、浮竹は浅い海辺で海水浴となった。
海燕も、海パン姿になって、まずは珊瑚礁の海にもぐった。色鮮やか魚たちに、海燕は感動して言葉もでない。
もってきて網で、魚をとる。
海燕は、銛で魚をついてとった。
浮竹は、浜辺をほって貝探しだ。
夕日が傾く頃には、けっこうな量の魚と貝がとれた。無人島だが、川が流れているために、そこの川の水をくんで、鍋にした。
仕上げに味噌を溶かすと、いい匂いが漂ってきた。
「あ、うまいですねこれ。味噌とけっこう合う」
「焼いた魚もあるから、そっちも食べていいぞ」
魚は丸焼きで、塩をかけただけだったが、美味かった。
もちろん鍋も美味かったが。
夕食を終えて、寝袋にくるまり、3人で星を見ながら横になった。
「現世の星空は綺麗ですね。尸魂界とは比べものにならない」
「尸魂界の星は、現世の星とは違うからね」
「今日は月も綺麗だぞ」
浮竹が、下弦の月を見上げた。
「ほんとだ、綺麗ですね」
「海燕をここに連れてこれて、嬉しいんだ」
「どうしてですか?」
「海燕は俺と京楽にとっても大切な友人だからな・・・まぁ、上官とかそういうのは置いておいてな」
そう言われて、海燕はほろりと涙を零した。
「おい、泣くなよ」
「泣きますよ!自分の上官から、大切な友人なんて言われたら、泣きます!」
京楽が、茶々をいれる。
「浮竹が海燕君泣かせた~~」
「京楽、お前は黙ってろ」
ごきっと、寝袋から出した拳で鳩尾を殴られて、京楽は身もだえた。
「でも、お前はいてくれて本当によかったと思っている。今日は、いつものご褒美みたいなもんだけど思ってくれ・・・・・ただし、尸魂界に戻ったら先生がカンカンだろうけど」
京楽が忘れていたと、眉を顰めた。
「浮竹と海燕君は、僕の誘いに乗せられたってことで、僕だけ尻に火がつくんだろうなぁ」
「安心しろ京楽。俺も尻に火をつけられてやる」
「じゃあ、俺も」
3人揃えば、怖くないというのか、山じいの尻に火を体験したことのない海燕には、山じいの尻に火をつけられる熱さが想像できないのだろう。
無人島で一泊二日を終えて、3人は尸魂界に戻ってきた。
「こりゃ、春水、十四郎、それに志波海燕!」
山じいは、かんかんに怒っていた。
「勝手に現世に出かけおってからに!許可をとることくらいせぬか!」
「えーだって、現世に遊びにいくための許可なんて、通らないでしょ?」
「当たり前じゃ!遊びに現世にいくなど、言語同断!」
「じゃあ、やっぱり無断で遊びにいくしかないね」
「こりゃ春水!なぜそうなる!ええい、火をつけてくれる。流刃若火!」
京楽の尻に火がついた。
あちゃあちゃと、京楽が逃げ回る。
ついでに浮竹と、海燕にも尻に火がつけられた。
「あちちちち」
「あっついです!」
なんとか鎮火させるが、京楽の火だけはなかなか消えないのか、鎮火するのに数分を要した。
「やっぱり、山じい僕だけにきつくない?」
「お主が十四郎と志波を誘惑したんじゃろうが!」
「まぁ、否定はしないけどね」
実際は、京楽が発案して、浮竹がそれに同意して、海燕がそれに巻き込まれてついてきたかんじなのだが。
山じいは、3人を正座させてくどくどと説教をたれた。
ありがたいお説教のはずだが、3人とも聞いていなかった。
「分かったな、春水、十四郎、志波」
「え、あ、うん。わかったよ山じい」
「分かりました、先生」
「同じく分かりました」
山じいのお説教は、眠い。死神が現世にいくことは禁じられていないが、遊びにいくのには許可はそうそうおりない。
今後も現世に遊びに行くときは、山じいのお説教を覚悟の上でしようと思う、京楽と浮竹だった。
その年、山じいの許可なしに夏の暑い日に現世の海に出かけた。
山じいの許可をとっていたら、何カ月先になるか分かりゃしないという京楽の言葉に、悪いと思いつつも浮竹と海燕も現世にいった。
いつか、海燕に珊瑚礁を見せてやりたいと言っていた。
その年は、無人島の珊瑚礁のある南の島で、キャンプすることになった。
「うわぁ、本当に綺麗ですね。海がエメラルド色で宝石みたいだ」
海燕は、始めてみる南の海の珊瑚礁に、感嘆の声をあげていた。
「そうでしょ。ここ、僕と浮竹だけの秘密のスポットなの」
「え、いいんですか。そんな場所に俺を連れてきたりして」
「気にするな、海燕。昔院生時代からここにきたことがあって、ここはまぁ現世では馴染のあるところだからな」
「とにかく泳ごうよ。それから、夕飯になるような魚をとったり、貝をとったりしよう」
キャンプと決め込んで、食材は現地調達だった。もってきたものといえば、水と念のための保存食くらいか。
京楽は、海パン姿になって泳ぎだした。
「浮竹も、泳ごう。そのまま直射日光にやられる前に、泳いじゃないよ」
浮竹も、逡巡しながらも海パン姿になって泳ぎ出した。泳いでると言うか、おぼれていた。
「泳げないの忘れてた・・・・」
京楽に助けられて、浮竹は浅い海辺で海水浴となった。
海燕も、海パン姿になって、まずは珊瑚礁の海にもぐった。色鮮やか魚たちに、海燕は感動して言葉もでない。
もってきて網で、魚をとる。
海燕は、銛で魚をついてとった。
浮竹は、浜辺をほって貝探しだ。
夕日が傾く頃には、けっこうな量の魚と貝がとれた。無人島だが、川が流れているために、そこの川の水をくんで、鍋にした。
仕上げに味噌を溶かすと、いい匂いが漂ってきた。
「あ、うまいですねこれ。味噌とけっこう合う」
「焼いた魚もあるから、そっちも食べていいぞ」
魚は丸焼きで、塩をかけただけだったが、美味かった。
もちろん鍋も美味かったが。
夕食を終えて、寝袋にくるまり、3人で星を見ながら横になった。
「現世の星空は綺麗ですね。尸魂界とは比べものにならない」
「尸魂界の星は、現世の星とは違うからね」
「今日は月も綺麗だぞ」
浮竹が、下弦の月を見上げた。
「ほんとだ、綺麗ですね」
「海燕をここに連れてこれて、嬉しいんだ」
「どうしてですか?」
「海燕は俺と京楽にとっても大切な友人だからな・・・まぁ、上官とかそういうのは置いておいてな」
そう言われて、海燕はほろりと涙を零した。
「おい、泣くなよ」
「泣きますよ!自分の上官から、大切な友人なんて言われたら、泣きます!」
京楽が、茶々をいれる。
「浮竹が海燕君泣かせた~~」
「京楽、お前は黙ってろ」
ごきっと、寝袋から出した拳で鳩尾を殴られて、京楽は身もだえた。
「でも、お前はいてくれて本当によかったと思っている。今日は、いつものご褒美みたいなもんだけど思ってくれ・・・・・ただし、尸魂界に戻ったら先生がカンカンだろうけど」
京楽が忘れていたと、眉を顰めた。
「浮竹と海燕君は、僕の誘いに乗せられたってことで、僕だけ尻に火がつくんだろうなぁ」
「安心しろ京楽。俺も尻に火をつけられてやる」
「じゃあ、俺も」
3人揃えば、怖くないというのか、山じいの尻に火を体験したことのない海燕には、山じいの尻に火をつけられる熱さが想像できないのだろう。
無人島で一泊二日を終えて、3人は尸魂界に戻ってきた。
「こりゃ、春水、十四郎、それに志波海燕!」
山じいは、かんかんに怒っていた。
「勝手に現世に出かけおってからに!許可をとることくらいせぬか!」
「えーだって、現世に遊びにいくための許可なんて、通らないでしょ?」
「当たり前じゃ!遊びに現世にいくなど、言語同断!」
「じゃあ、やっぱり無断で遊びにいくしかないね」
「こりゃ春水!なぜそうなる!ええい、火をつけてくれる。流刃若火!」
京楽の尻に火がついた。
あちゃあちゃと、京楽が逃げ回る。
ついでに浮竹と、海燕にも尻に火がつけられた。
「あちちちち」
「あっついです!」
なんとか鎮火させるが、京楽の火だけはなかなか消えないのか、鎮火するのに数分を要した。
「やっぱり、山じい僕だけにきつくない?」
「お主が十四郎と志波を誘惑したんじゃろうが!」
「まぁ、否定はしないけどね」
実際は、京楽が発案して、浮竹がそれに同意して、海燕がそれに巻き込まれてついてきたかんじなのだが。
山じいは、3人を正座させてくどくどと説教をたれた。
ありがたいお説教のはずだが、3人とも聞いていなかった。
「分かったな、春水、十四郎、志波」
「え、あ、うん。わかったよ山じい」
「分かりました、先生」
「同じく分かりました」
山じいのお説教は、眠い。死神が現世にいくことは禁じられていないが、遊びにいくのには許可はそうそうおりない。
今後も現世に遊びに行くときは、山じいのお説教を覚悟の上でしようと思う、京楽と浮竹だった。
甘い呼び声
浮竹が死んだ。
神掛をおこない、そのまま病気が進行して、京楽の腕の中で息を引き取った。
枯れ枝のように細くなってしまった浮竹の遺体を抱いて、泣いた。
棺の中に白百合がいっぱいいれられて、大戦も終戦したので皆で見送った。
棺の蓋が閉じられる。
そのまま、荼毘に付されるを、京楽はただ黙って見ていた。煙が、空高く昇っていく。
本当は泣き叫びたかった。
でも、京楽は総隊長だ。恋人が死んだからといって、泣き叫んでなどいられない。総隊長としての責務を果たさねばならない。
浮竹の墓は、雨乾堂に建てられた。
浮竹が死んで1か月が経った。
世界は色を失った。
浮竹が死んで半年が経った。
世界はようやく色を戻し始めた。
浮竹が死んで1年が経った。
もう君は、どこにもいないんだね。
そう呟いた。
浮竹が死んでも、世界は廻る。
時折浮竹の墓参りにいっては、夢でいいから会いたいと思った。
すると、その日の夜、本当に夢の中で浮竹が出てきた。
いつもと変わらぬ姿で、元気そうだった。
真っ白な長い髪を風になびかせて、桜吹雪の中に凛として立っていた。
「浮竹!」
京楽は、浮竹を抱き締めた。暖かかった。
キスをすると、浮竹は京楽の背中に手を回した。
そして、柔らかく微笑んだ。
「京楽、俺がいないからって、いつまでもくよくよするなよ。俺は、待っている。お前を。お前を迎えにいく日まで、長生きしろよ」
そういって、浮竹は桜の花びらとなって散ってしまった。
「浮竹!」
目覚めると、涙を流していた。桜の花びらが、どこから入りこんできたのか布団の上に散らばっていた。
「浮竹・・・夢で、会いにきてくれたの?」
京楽は、意を決して浮竹の遺品を引き取ることにした。
翡翠の髪飾り、かんざし、お守り石、螺鈿細工の櫛・・・高価なものから、硝子細工でできた安い髪飾りとかまで。
京楽が学院時代から浮竹が死ぬ前にまでに贈った様々なものがあった。
「懐かしいねぇ・・・・」
翡翠の石を太陽に透かしてみると、翠の影が落ちた。
浮竹の遺品をまとめて、自分の屋敷の一室に保管することにした。
翡翠のお守り石は、いつも浮竹が持っていてくれたものなので、京楽がもつようになった。
世界は・・・・・色づいている。
浮竹を失くしたことは悲しい。ずっと一緒に傍にいたかった。一緒に引退して、老後を送りたかった。
でも、世界は色づいている。
浮竹を失ったことで色を失った世界は、時と共に色づきはじめた。
そうやって、数百年も、気づけば総隊長を続けていた。髪に白いものがまじるようになった。さらに数百年時が経った。
もう、山じいをばかにできない年齢になっていた。
「迎え来たぞ、京楽」
長い白髪の麗人は、京楽の寝ているベッドの傍にくると、京楽に口づけた。
「浮竹・・・・?ずるいな、君だけ年をとっていないなんて」
「いこう。果てのない世界へ。墜ちて墜ちて墜ちて・・・いつか、生まれかわろう」
「なんとも甘い呼び声だね」
「京楽、老衰だ。お前を千年もまたせて、すまなかった。でも、これからはずっと一緒だから。同じ場所に墜ちていこう。俺は輪廻を拒否していた。京楽がくるまでと思って」
「浮竹・・・・・」
気づくと、京楽の姿は浮竹と同じくらいの姿に変わっていた。
「君をずっと待っていたんだ・・・・・・もう、離さない」
浮竹を抱き締めて、二人は桜の花びらになって散っていく。
かつんと、翡翠のお守り石が落ちた。
「あ、あれは大事なものだから」
散っていく中で、京楽が手を伸ばして拾いあげる。
「俺のお守り石・・・・・お前が、持っててくれたのか」
「うん。君だと思って」
唇が重なった。
さらさらと、世界から消えていく。
ただ永久にある安寧の大地へと墜ちていく。
いつか、きっとまた新しい世界で、二人揃って産声をあげて巡り合える。
そんな気がした。
浮竹の甘い呼び声に、京楽は答えた。
京楽は遺体もないまま生死不明となり、京楽の人生の幕は閉じる。
でも、傍らには愛しい浮竹がいるので、京楽は寂しくなかった。
ああ。
墜ちていく。
世界の果てに。
ああ。
愛している。
千年経っても、まだ浮竹を愛している。
ああ。
浮竹が迎えにきてくれてよかった。
甘い呼び声に、そっと身を任せて、ただ墜ちていく--------------------。
神掛をおこない、そのまま病気が進行して、京楽の腕の中で息を引き取った。
枯れ枝のように細くなってしまった浮竹の遺体を抱いて、泣いた。
棺の中に白百合がいっぱいいれられて、大戦も終戦したので皆で見送った。
棺の蓋が閉じられる。
そのまま、荼毘に付されるを、京楽はただ黙って見ていた。煙が、空高く昇っていく。
本当は泣き叫びたかった。
でも、京楽は総隊長だ。恋人が死んだからといって、泣き叫んでなどいられない。総隊長としての責務を果たさねばならない。
浮竹の墓は、雨乾堂に建てられた。
浮竹が死んで1か月が経った。
世界は色を失った。
浮竹が死んで半年が経った。
世界はようやく色を戻し始めた。
浮竹が死んで1年が経った。
もう君は、どこにもいないんだね。
そう呟いた。
浮竹が死んでも、世界は廻る。
時折浮竹の墓参りにいっては、夢でいいから会いたいと思った。
すると、その日の夜、本当に夢の中で浮竹が出てきた。
いつもと変わらぬ姿で、元気そうだった。
真っ白な長い髪を風になびかせて、桜吹雪の中に凛として立っていた。
「浮竹!」
京楽は、浮竹を抱き締めた。暖かかった。
キスをすると、浮竹は京楽の背中に手を回した。
そして、柔らかく微笑んだ。
「京楽、俺がいないからって、いつまでもくよくよするなよ。俺は、待っている。お前を。お前を迎えにいく日まで、長生きしろよ」
そういって、浮竹は桜の花びらとなって散ってしまった。
「浮竹!」
目覚めると、涙を流していた。桜の花びらが、どこから入りこんできたのか布団の上に散らばっていた。
「浮竹・・・夢で、会いにきてくれたの?」
京楽は、意を決して浮竹の遺品を引き取ることにした。
翡翠の髪飾り、かんざし、お守り石、螺鈿細工の櫛・・・高価なものから、硝子細工でできた安い髪飾りとかまで。
京楽が学院時代から浮竹が死ぬ前にまでに贈った様々なものがあった。
「懐かしいねぇ・・・・」
翡翠の石を太陽に透かしてみると、翠の影が落ちた。
浮竹の遺品をまとめて、自分の屋敷の一室に保管することにした。
翡翠のお守り石は、いつも浮竹が持っていてくれたものなので、京楽がもつようになった。
世界は・・・・・色づいている。
浮竹を失くしたことは悲しい。ずっと一緒に傍にいたかった。一緒に引退して、老後を送りたかった。
でも、世界は色づいている。
浮竹を失ったことで色を失った世界は、時と共に色づきはじめた。
そうやって、数百年も、気づけば総隊長を続けていた。髪に白いものがまじるようになった。さらに数百年時が経った。
もう、山じいをばかにできない年齢になっていた。
「迎え来たぞ、京楽」
長い白髪の麗人は、京楽の寝ているベッドの傍にくると、京楽に口づけた。
「浮竹・・・・?ずるいな、君だけ年をとっていないなんて」
「いこう。果てのない世界へ。墜ちて墜ちて墜ちて・・・いつか、生まれかわろう」
「なんとも甘い呼び声だね」
「京楽、老衰だ。お前を千年もまたせて、すまなかった。でも、これからはずっと一緒だから。同じ場所に墜ちていこう。俺は輪廻を拒否していた。京楽がくるまでと思って」
「浮竹・・・・・」
気づくと、京楽の姿は浮竹と同じくらいの姿に変わっていた。
「君をずっと待っていたんだ・・・・・・もう、離さない」
浮竹を抱き締めて、二人は桜の花びらになって散っていく。
かつんと、翡翠のお守り石が落ちた。
「あ、あれは大事なものだから」
散っていく中で、京楽が手を伸ばして拾いあげる。
「俺のお守り石・・・・・お前が、持っててくれたのか」
「うん。君だと思って」
唇が重なった。
さらさらと、世界から消えていく。
ただ永久にある安寧の大地へと墜ちていく。
いつか、きっとまた新しい世界で、二人揃って産声をあげて巡り合える。
そんな気がした。
浮竹の甘い呼び声に、京楽は答えた。
京楽は遺体もないまま生死不明となり、京楽の人生の幕は閉じる。
でも、傍らには愛しい浮竹がいるので、京楽は寂しくなかった。
ああ。
墜ちていく。
世界の果てに。
ああ。
愛している。
千年経っても、まだ浮竹を愛している。
ああ。
浮竹が迎えにきてくれてよかった。
甘い呼び声に、そっと身を任せて、ただ墜ちていく--------------------。
温泉旅行
京楽と、温泉にやってきた。
湯治目的であるが、なんの病にもきく湯というちょっとうさんくさい温泉だった。
まぁ、せっかくまとまった休日を二人揃ってもらえたのだから、何処か小旅行でもいこうということになって、最近肺の発作をおこした浮竹のために、京楽が湯治はどうだと言い出したのだ。
浮竹は、京楽の心使いに感謝して、湯治にいくことにした。
瀞霊廷の端の端にあるその温泉旅館は寂れていた。
なんにでもきく湯というのがふれこみだが、きっとただの温泉なのだろう。
浮竹と京楽は2泊3日で泊まりこむことになったが、他の客はいなかった。
まぁ、お陰で露天風呂とか貸し切りだったし、寂れているとはいっても、閉店に追いやられるというほどでもなく、中は綺麗だった。
京楽が洋室を頼んだので、和室ではなくベッドで寝ることになった。
「とりあえず、温泉いこっか」
「そうだな。せっかくここまできたんだ。なんにでも効くってのがうさんくさいけど」
二人は、浴衣と下着をバスタオルを手に、露店風呂に入った。
互いの背中を流しあい、髪を洗いあった。
温泉は、白桃の湯で、ふんわりと甘い香りしがして、暖かかった。
「白桃か・・・・まさか京楽・・・」
「あ、ばれた?僕が、入れておいてって頼んだの」
「またお前はそうやって金を無駄にする・・・・・」
白桃の湯の元は高い。こんな温泉風呂をまるごと白桃の湯にするのにいくらかかったのか、考えたくなくて、浮竹は湯船にぶくぶくと浸かった。
先に京楽があがったが、浮竹はもう少し入るといった。
20分が経ち、流石におかしいと思った京楽が見たのは、ぷかりと浮かんでいる浮竹の姿だった。
「浮竹!」
「あー。湯当たり、しただけ、だから・・・・」
浮竹を抱き上げて、水気をふいて浴衣を着せてから、冷水を飲ませる。
ほてった体を冷やすために、氷をもらってきて氷まくらをつくり、その上に浮竹を寝かせた。
30分ほどで、浮竹は何もなかったかのように元気になった。
「温泉の効果は本当にあるんだろうか。温泉に入る前より、体調がよくなっている」
「さぁ、どうだろうね。血のめぐりがよくなっただけかもしれないよ。でも、体が楽になるのはいいことだ。また夜にでも入ろう」
二人で、することもなく旅館の中庭を散策したり、卓球をしたりした。
夕方になり、夕ご飯が運ばれてくる。
寂れた旅館のわりには、豪華だった。
「まさか、これも京楽が?」
「ううん。ここの旅館の料理だよ」
「ふむ・・・けっこうおいしいな。なんでこんなに寂れているんだろう」
「やっぱ、瀞霊廷の隅の隅にある立地条件と、なんにでも効く湯っていう、うさんくさいふれこみのせいじゃないかな」
「そうか・・・・・」
浮竹は思案する。
そして、旅館の女将に会って、効能をしぼったほうがいいと言っておいた。
翌日には、何でも効くという湯は、腰痛、血のめぐりがよくなるというフレーズにかわっていた。
浮竹はそれを見て、なんともいえない感覚を味わった。
まぁ、確かに血のめぐりはよくなった。体が軽い気がする。
腰痛はもっていないので分からなかったが。
1泊したその次の日も、温泉に入った。
普通の透明な湯だった。
浮竹が白桃の湯にするなというので、京楽がやめたのだ。
2日目は、湯あたりすることなく、今度はサウナに入った。
あまりの熱さに、浮竹はすぐに出て冷水に浸かった。
京楽はしばらくの間サウナに入っていた。
山本総隊長に尻に火をつけられるくらいなので、熱いのには耐性があるのだろう。
30分経って、冷水につかった京楽は、いい汗をかいたと嬉しそうだった。
2日目の夜になって、京楽が浮竹のベッドにやってくる。
「頬に赤みがさしているね。湯治、正解だったかもね」
「ん・・・・・・」
触れるだけのキスをされた。
「ねぇ、もっと求めていい?」
「聞くまでもないだろう」
京楽は、浮竹の浴衣を脱がせていく。
浮竹も京楽の浴衣を脱がせた。
「んっ」
口づけが深くなる。
京楽は労わるように浮竹を、優しく愛撫する。
「あ・・・・・・」
たちあがったものに手をかけられる。
「んんん!」
浮竹も、京楽のものに手を伸ばした。
お互い、こすりあって、ぬるぬると先走りの蜜で滑るのをそのままに、お互いをいかせようと手の動きを早くさせるが、快感に弱い浮竹が先に根をあげて、白濁した液体を放った。
「あああ!」
「君の中で君を犯して孕ませたい」
「春水・・・・・・」
「好きだよ、十四郎」
体内に潤滑油で濡らした指が入ってくる。解されて、とろとろになったそこに、まだいっていない京楽のものが宛がわれた。
「ああああ!」
みしりと、音をたてて引き裂かれた。
痛みはあるが、すぐに快感に変わったてしまった。男に抱かれ慣れてしまった体は、貪欲に快楽を求めている。
「キスを・・・・・」
浮竹は京楽とのキスが好きだ。
何度も深く口づけを繰り返し、突き上げられた。
「ひあう!やっ」
最奥を抉られて、浮竹は痙攣した。
同時にドクドクと最奥に注がれる京楽の熱を感じた。
「あ・・・く・・・ああ・・・んんん」
前立腺を突き上げられて、抉られて快楽に真っ白に染まる思考の中で、京楽の名を呼ぶ。
「春水・・・春水・・・・・」
「どうしたの、十四郎。僕はここにいるよ」
「好きだ・・・・」
「僕も大好きだよ」
突き上げられて、揺さぶられる。白い髪が乱れた。
お互い、出すものもないくらい睦みあって、満足した。
「温泉にいこう。このまま寝るのはいやだ」
「分かったよ」
浮竹はと京楽は、髪と体を洗い、浮竹の中にだしたものをかきだしてから、温泉に浸かった。
「この温泉は、血のめぐりのよさと腰痛に効くという効果にしたらしい」
「へー。高齢者の利用客が増えそうだね。腰痛だと。あとは女性かな。血のめぐりがよくなると冷え性とかもきくからね」
「まぁ、どっちも本当に効果があるのか分かったものじゃないが・・・」
「まぁいいじゃないの。人がくるようになれば、それでいいんじゃない?」
京楽の言葉に、浮竹は首を傾げる。
「でも、効かない効果で温泉というのもなぁ」
「まぁ、よければまたこよう。血のめぐりがよくなるのは本当っぽいから」
浮竹の頬には赤みがさしたままで、肺の発作もおこしそうになかった。
「じゃあ、いつかまたここにくるか」
「そうだね。来年なんてどう?」
「早いな」
浮竹が、クスリと笑う。
京楽も、クスリと笑った。
年に数回、一緒に休暇をとる。何処かへ出かけたりもするけど、基本雨乾堂でだらだら過ごす。
海燕が亡くなった今、副官を置いていない浮竹は仕事が京楽より多い。それでも、二人揃って休日をもぎとった。
「今度は違う温泉にいこう」
「じゃあ、流行ってるところいこうか」
「それも、いいかもな」
肺の発作がこのまま起きず、熱が出なかったらの話だが。
きっと、肺の発作も起こすし、熱も出すだろう。
でも、そんな時傍らに京楽がいてくれるだけで、苦しくなくなるのだ。
「俺は、お前のお陰で苦しくないんだ」
「何が?」
「お前が傍にいてくれると、発作の苦しみも熱も和らぐ気がする」
「じゃあ、発作おこしたら今まで通り傍にいればいいんだね」
「ああ」
何度も助けられてきた。
その甘い手に身を委ねて。
これからも、身を委ねていくのだろう。
そう思うのだった。
湯治目的であるが、なんの病にもきく湯というちょっとうさんくさい温泉だった。
まぁ、せっかくまとまった休日を二人揃ってもらえたのだから、何処か小旅行でもいこうということになって、最近肺の発作をおこした浮竹のために、京楽が湯治はどうだと言い出したのだ。
浮竹は、京楽の心使いに感謝して、湯治にいくことにした。
瀞霊廷の端の端にあるその温泉旅館は寂れていた。
なんにでもきく湯というのがふれこみだが、きっとただの温泉なのだろう。
浮竹と京楽は2泊3日で泊まりこむことになったが、他の客はいなかった。
まぁ、お陰で露天風呂とか貸し切りだったし、寂れているとはいっても、閉店に追いやられるというほどでもなく、中は綺麗だった。
京楽が洋室を頼んだので、和室ではなくベッドで寝ることになった。
「とりあえず、温泉いこっか」
「そうだな。せっかくここまできたんだ。なんにでも効くってのがうさんくさいけど」
二人は、浴衣と下着をバスタオルを手に、露店風呂に入った。
互いの背中を流しあい、髪を洗いあった。
温泉は、白桃の湯で、ふんわりと甘い香りしがして、暖かかった。
「白桃か・・・・まさか京楽・・・」
「あ、ばれた?僕が、入れておいてって頼んだの」
「またお前はそうやって金を無駄にする・・・・・」
白桃の湯の元は高い。こんな温泉風呂をまるごと白桃の湯にするのにいくらかかったのか、考えたくなくて、浮竹は湯船にぶくぶくと浸かった。
先に京楽があがったが、浮竹はもう少し入るといった。
20分が経ち、流石におかしいと思った京楽が見たのは、ぷかりと浮かんでいる浮竹の姿だった。
「浮竹!」
「あー。湯当たり、しただけ、だから・・・・」
浮竹を抱き上げて、水気をふいて浴衣を着せてから、冷水を飲ませる。
ほてった体を冷やすために、氷をもらってきて氷まくらをつくり、その上に浮竹を寝かせた。
30分ほどで、浮竹は何もなかったかのように元気になった。
「温泉の効果は本当にあるんだろうか。温泉に入る前より、体調がよくなっている」
「さぁ、どうだろうね。血のめぐりがよくなっただけかもしれないよ。でも、体が楽になるのはいいことだ。また夜にでも入ろう」
二人で、することもなく旅館の中庭を散策したり、卓球をしたりした。
夕方になり、夕ご飯が運ばれてくる。
寂れた旅館のわりには、豪華だった。
「まさか、これも京楽が?」
「ううん。ここの旅館の料理だよ」
「ふむ・・・けっこうおいしいな。なんでこんなに寂れているんだろう」
「やっぱ、瀞霊廷の隅の隅にある立地条件と、なんにでも効く湯っていう、うさんくさいふれこみのせいじゃないかな」
「そうか・・・・・」
浮竹は思案する。
そして、旅館の女将に会って、効能をしぼったほうがいいと言っておいた。
翌日には、何でも効くという湯は、腰痛、血のめぐりがよくなるというフレーズにかわっていた。
浮竹はそれを見て、なんともいえない感覚を味わった。
まぁ、確かに血のめぐりはよくなった。体が軽い気がする。
腰痛はもっていないので分からなかったが。
1泊したその次の日も、温泉に入った。
普通の透明な湯だった。
浮竹が白桃の湯にするなというので、京楽がやめたのだ。
2日目は、湯あたりすることなく、今度はサウナに入った。
あまりの熱さに、浮竹はすぐに出て冷水に浸かった。
京楽はしばらくの間サウナに入っていた。
山本総隊長に尻に火をつけられるくらいなので、熱いのには耐性があるのだろう。
30分経って、冷水につかった京楽は、いい汗をかいたと嬉しそうだった。
2日目の夜になって、京楽が浮竹のベッドにやってくる。
「頬に赤みがさしているね。湯治、正解だったかもね」
「ん・・・・・・」
触れるだけのキスをされた。
「ねぇ、もっと求めていい?」
「聞くまでもないだろう」
京楽は、浮竹の浴衣を脱がせていく。
浮竹も京楽の浴衣を脱がせた。
「んっ」
口づけが深くなる。
京楽は労わるように浮竹を、優しく愛撫する。
「あ・・・・・・」
たちあがったものに手をかけられる。
「んんん!」
浮竹も、京楽のものに手を伸ばした。
お互い、こすりあって、ぬるぬると先走りの蜜で滑るのをそのままに、お互いをいかせようと手の動きを早くさせるが、快感に弱い浮竹が先に根をあげて、白濁した液体を放った。
「あああ!」
「君の中で君を犯して孕ませたい」
「春水・・・・・・」
「好きだよ、十四郎」
体内に潤滑油で濡らした指が入ってくる。解されて、とろとろになったそこに、まだいっていない京楽のものが宛がわれた。
「ああああ!」
みしりと、音をたてて引き裂かれた。
痛みはあるが、すぐに快感に変わったてしまった。男に抱かれ慣れてしまった体は、貪欲に快楽を求めている。
「キスを・・・・・」
浮竹は京楽とのキスが好きだ。
何度も深く口づけを繰り返し、突き上げられた。
「ひあう!やっ」
最奥を抉られて、浮竹は痙攣した。
同時にドクドクと最奥に注がれる京楽の熱を感じた。
「あ・・・く・・・ああ・・・んんん」
前立腺を突き上げられて、抉られて快楽に真っ白に染まる思考の中で、京楽の名を呼ぶ。
「春水・・・春水・・・・・」
「どうしたの、十四郎。僕はここにいるよ」
「好きだ・・・・」
「僕も大好きだよ」
突き上げられて、揺さぶられる。白い髪が乱れた。
お互い、出すものもないくらい睦みあって、満足した。
「温泉にいこう。このまま寝るのはいやだ」
「分かったよ」
浮竹はと京楽は、髪と体を洗い、浮竹の中にだしたものをかきだしてから、温泉に浸かった。
「この温泉は、血のめぐりのよさと腰痛に効くという効果にしたらしい」
「へー。高齢者の利用客が増えそうだね。腰痛だと。あとは女性かな。血のめぐりがよくなると冷え性とかもきくからね」
「まぁ、どっちも本当に効果があるのか分かったものじゃないが・・・」
「まぁいいじゃないの。人がくるようになれば、それでいいんじゃない?」
京楽の言葉に、浮竹は首を傾げる。
「でも、効かない効果で温泉というのもなぁ」
「まぁ、よければまたこよう。血のめぐりがよくなるのは本当っぽいから」
浮竹の頬には赤みがさしたままで、肺の発作もおこしそうになかった。
「じゃあ、いつかまたここにくるか」
「そうだね。来年なんてどう?」
「早いな」
浮竹が、クスリと笑う。
京楽も、クスリと笑った。
年に数回、一緒に休暇をとる。何処かへ出かけたりもするけど、基本雨乾堂でだらだら過ごす。
海燕が亡くなった今、副官を置いていない浮竹は仕事が京楽より多い。それでも、二人揃って休日をもぎとった。
「今度は違う温泉にいこう」
「じゃあ、流行ってるところいこうか」
「それも、いいかもな」
肺の発作がこのまま起きず、熱が出なかったらの話だが。
きっと、肺の発作も起こすし、熱も出すだろう。
でも、そんな時傍らに京楽がいてくれるだけで、苦しくなくなるのだ。
「俺は、お前のお陰で苦しくないんだ」
「何が?」
「お前が傍にいてくれると、発作の苦しみも熱も和らぐ気がする」
「じゃあ、発作おこしたら今まで通り傍にいればいいんだね」
「ああ」
何度も助けられてきた。
その甘い手に身を委ねて。
これからも、身を委ねていくのだろう。
そう思うのだった。
2月の終わり
「2月も終わりだというのに、雪か・・・・」
白哉は、どんよりと曇った空を見て、ちらちら降りだした雪を手に受け止めた。
雪はすぐに水になってしまった。
今週は最後の寒波で、これがすぎると大分温度も温かくなるだろう。
梅の花も終わりか。
そう思いながら、執務室の窓硝子を閉じた。
「隊長、寒いでしょう」
恋次が、ストーブを近くにもってきてくれた。
「ああ、すまぬ」
「2月も終わりってのに雪ですか。なんか季節外れですね」
「雪ももう終わりだ。春の足音が聞こえてくる」
桜が満開になったら、千本桜も喜ぶだろう。同胞だと。
「3月が終わったら4月・・・・人事異動の季節ですね」
「お前には関係ないであろう」
「でも、席官がたまに入れ替わったり、新しい死神が入ってきますからね」
6番隊でも、新しい死神が10名ほど配属される予定だった。
みんな、白哉に憧れての入隊だった。
「入隊動機が、隊長に憧れてってばかりなのが気になりますが」
「そういうお前も、6番隊の副官になったのは私に憧れてであろう」
「まぁ、憧れがほとんどでしたけど、隊長を追い抜きたいって動機もありました」
「若造だった分際で、目標が大きすぎるな」
今では、卍解も双王蛇尾丸となり、副官に配属された頃に比べると数倍も強くなった。
それでも、まだ白哉に届かない。
届いたと思ったら、白哉は更に高みにいってしまう。
「いつになった、隊長に届くんですかね」
「お前は副隊長だ。私に届かなくともよいのだ。今のままでも十分に強いのだから」
「隊長・・・・・・」
白哉の細い体を抱き寄せる。
「いつか、追い越してみせます」
「できるものなら」
唇が重なった。
「ん・・・・」
「夜の技なら、負けないんですけどね」
かっと、白哉が赤くなる。
「お前は、何を言っているのだ」
「冗談ですよ、隊長。そう距離をとらないでください」
恋次が何かしかけてくるかもしれないと、身構える白哉を見て、恋次が笑う。
「今年の新人死神もしごくぞー」
「ほどほどにしておけ」
恋次の修行はきつい。新人にはたまったものではないだろう。
「隊長の修行のほうが、よほどきついですよ」
「そうか?」
「精神的にきますからね。自分の斬魄刀との対話もできないような死神は、6番隊にはいらないって言いますし」
「事実だ」
「でも、対話できるようになるのも時間がかかるんですよ」
「死神になった時点で、斬魄刀を持っているのだから、対話できないほうがおかしい」
「いや、新人はなかなか対話までいけませんから」
恋次がつっこむが、白哉は対話もできないほどの死神には、精神修行をさせた。
それがまたきついのだ。朝も昼も夜も、飯ぬきで、ただ座禅をして斬魄刀と向き合う。かろうじで水をとることは許されるが、それが2日は続くのだ。寝ることも許されない。
でも、それを乗り越えた死神は自分の斬魄刀と対話できるようになり、始解できなかった者も始解できるようになる。
6番隊の平隊士は、圧倒的に他の隊の平隊士より始解できる者が多い。
「命を賭けるのだから、始解くらいできぬような死神に、価値はない」
まぁ、どうしても始解までいけなくて、鬼道や白打で死神をしているような子もいるけれど。
「隊長は、そこらが厳しいです」
「そうか?」
恋次は、白哉の黒髪を手にとって、口づける。
「言いたいことはわかりますけど、入ったばかりの隊士を追い出すような真似はしないでくださいね」
「分かっている」
大戦を経験してからの白哉は、厳しさも緩くなった。昔は孤高であったが、今は隊士たちと歩み寄ったりしている。昔に比べて・・・白哉も変わったのだ。
優しくなったと思う。
「俺は、昔の気高い隊長も好きですが、どっちかっていうと、誰かを気遣うことを覚えた今の隊長のほうが好きです」
「そうか。今の私は、確かに昔の傲慢だった私を捨てた」
「隊長は、傲慢っていうより厳しいんですよ。自分自身に対して」
「ふ・・・・」
「隊長?」
「変わったのは、お前のせいかも、しれぬな。お前に愛されて、人を愛することを覚えた。弱い自分を受け入れることを覚えた」
「殺し文句ですか」
「んう・・・」
舌が絡まるキスをされて、恋次の腕の中で白哉は目を閉じた。
「変わろうと思えば、変われるものなのだと、知った」
白哉は、恋次の背中に手を回した。
「愛している、恋次」
「それはこっちの台詞です、隊長。愛してます」
ちらちらと降る雪はいつの間にか止んでいた。
2月の終わりの最後の雪は、あまり長く降らなかった。
季節が移ろうように、人も移ろう。
だが、白哉と恋次は変わらない。共に歩み道を進んでいくのだ。
白哉は、どんよりと曇った空を見て、ちらちら降りだした雪を手に受け止めた。
雪はすぐに水になってしまった。
今週は最後の寒波で、これがすぎると大分温度も温かくなるだろう。
梅の花も終わりか。
そう思いながら、執務室の窓硝子を閉じた。
「隊長、寒いでしょう」
恋次が、ストーブを近くにもってきてくれた。
「ああ、すまぬ」
「2月も終わりってのに雪ですか。なんか季節外れですね」
「雪ももう終わりだ。春の足音が聞こえてくる」
桜が満開になったら、千本桜も喜ぶだろう。同胞だと。
「3月が終わったら4月・・・・人事異動の季節ですね」
「お前には関係ないであろう」
「でも、席官がたまに入れ替わったり、新しい死神が入ってきますからね」
6番隊でも、新しい死神が10名ほど配属される予定だった。
みんな、白哉に憧れての入隊だった。
「入隊動機が、隊長に憧れてってばかりなのが気になりますが」
「そういうお前も、6番隊の副官になったのは私に憧れてであろう」
「まぁ、憧れがほとんどでしたけど、隊長を追い抜きたいって動機もありました」
「若造だった分際で、目標が大きすぎるな」
今では、卍解も双王蛇尾丸となり、副官に配属された頃に比べると数倍も強くなった。
それでも、まだ白哉に届かない。
届いたと思ったら、白哉は更に高みにいってしまう。
「いつになった、隊長に届くんですかね」
「お前は副隊長だ。私に届かなくともよいのだ。今のままでも十分に強いのだから」
「隊長・・・・・・」
白哉の細い体を抱き寄せる。
「いつか、追い越してみせます」
「できるものなら」
唇が重なった。
「ん・・・・」
「夜の技なら、負けないんですけどね」
かっと、白哉が赤くなる。
「お前は、何を言っているのだ」
「冗談ですよ、隊長。そう距離をとらないでください」
恋次が何かしかけてくるかもしれないと、身構える白哉を見て、恋次が笑う。
「今年の新人死神もしごくぞー」
「ほどほどにしておけ」
恋次の修行はきつい。新人にはたまったものではないだろう。
「隊長の修行のほうが、よほどきついですよ」
「そうか?」
「精神的にきますからね。自分の斬魄刀との対話もできないような死神は、6番隊にはいらないって言いますし」
「事実だ」
「でも、対話できるようになるのも時間がかかるんですよ」
「死神になった時点で、斬魄刀を持っているのだから、対話できないほうがおかしい」
「いや、新人はなかなか対話までいけませんから」
恋次がつっこむが、白哉は対話もできないほどの死神には、精神修行をさせた。
それがまたきついのだ。朝も昼も夜も、飯ぬきで、ただ座禅をして斬魄刀と向き合う。かろうじで水をとることは許されるが、それが2日は続くのだ。寝ることも許されない。
でも、それを乗り越えた死神は自分の斬魄刀と対話できるようになり、始解できなかった者も始解できるようになる。
6番隊の平隊士は、圧倒的に他の隊の平隊士より始解できる者が多い。
「命を賭けるのだから、始解くらいできぬような死神に、価値はない」
まぁ、どうしても始解までいけなくて、鬼道や白打で死神をしているような子もいるけれど。
「隊長は、そこらが厳しいです」
「そうか?」
恋次は、白哉の黒髪を手にとって、口づける。
「言いたいことはわかりますけど、入ったばかりの隊士を追い出すような真似はしないでくださいね」
「分かっている」
大戦を経験してからの白哉は、厳しさも緩くなった。昔は孤高であったが、今は隊士たちと歩み寄ったりしている。昔に比べて・・・白哉も変わったのだ。
優しくなったと思う。
「俺は、昔の気高い隊長も好きですが、どっちかっていうと、誰かを気遣うことを覚えた今の隊長のほうが好きです」
「そうか。今の私は、確かに昔の傲慢だった私を捨てた」
「隊長は、傲慢っていうより厳しいんですよ。自分自身に対して」
「ふ・・・・」
「隊長?」
「変わったのは、お前のせいかも、しれぬな。お前に愛されて、人を愛することを覚えた。弱い自分を受け入れることを覚えた」
「殺し文句ですか」
「んう・・・」
舌が絡まるキスをされて、恋次の腕の中で白哉は目を閉じた。
「変わろうと思えば、変われるものなのだと、知った」
白哉は、恋次の背中に手を回した。
「愛している、恋次」
「それはこっちの台詞です、隊長。愛してます」
ちらちらと降る雪はいつの間にか止んでいた。
2月の終わりの最後の雪は、あまり長く降らなかった。
季節が移ろうように、人も移ろう。
だが、白哉と恋次は変わらない。共に歩み道を進んでいくのだ。
院生時代の部屋 恐怖、押しかけ花嫁
朝起きると、白無垢姿の京楽がいた。
「ぶばっ」
その姿に、浮竹が吹き出す。
「何してるんだ、おまえ」
「え。浮竹と結婚する準備。白無垢は着てくれないだろうから僕が着るから、袴姿になってね正装してね」
置かれていた花婿の正装の和服に、浮竹は冗談に付き合うつもりで着替えた。
手をひかれて、移動する。
今の京楽は、押しかけ花嫁だ。
神主がいた。
酒を注がれて、京楽が飲み干す。浮竹は、飲み干さずに逃げ出した。
本気だった。
観客はいなかったけど、本気で結婚式を挙げるところだった。
その気のない浮竹は、寮に戻って着替えて、和服の正装を踏みつけた。
「危なかった・・・・・冗談のつもりだと思っていたら、本気なんだものな」
京楽の白無垢姿はあまりに滑稽で笑えたけど、あのまま酒を飲んでいれば、結婚が行われたことになってしまうだろう。
「京楽と結婚とか・・・ありえない」
親友以上恋人未満。この関係から外れるとしたら、ただの友人に戻るという選択肢で、京楽と結婚式を挙げて既成事実を作られ、迫られるなどもっての他だった。
「浮竹~」
白無垢姿の京楽が、逃げてきた浮竹を追って、寮に入ってくる。
「おまえなんかこうだ!」
白無垢をはぎとってやった。
「あーれー。浮竹ってば大胆♡」
「あほいってないで、服を着ろ!」
京楽の院生服を出してやり、それの顔に投げつけた。
「僕が花嫁なら、結婚してくれると思ったのになぁ」
「おまえみたいな花嫁、願い下げだ」
「やっぱり、花嫁は浮竹じゃないとだめか」
「そういう問題じゃない!男同士で結婚式なんて挙げれるわけないだろう」
京楽は、笑った。
「金さえ積めば、結婚式なんていくらでもできるんだよ」
「そんなことに金を積むな!俺はおまえと結婚する気はないからな!」
「えー。けちー」
「あほ!」
京楽の脛を蹴飛ばした。
「あいたっ」
「結婚式なんて挙げなくても、俺たちは今のままでもいいだろう?」
京楽を押し倒してみる。
京楽は、ふっと真顔になって、浮竹の頬に手を当てた。その手に手を重ねる。
自然と唇が重なった。
「んっ・・・・」
離れようとしても、京楽がむちゅーと吸い付いてきて離れない。
「この駄アホ!」
京楽の顎を殴って、軽い脳震盪を起こさせると、ばたりと京楽は倒れた。
「なんか最近、京楽のペースに乱されがちだな・・・・・」
とりあえず、京楽はベッドの上で寝かせて、布団で簀巻きにしておいた。
1時間ほどして気づいた京楽は、簀巻きにされたのに喜んでいた。
「浮竹、我慢できないからって僕を簀巻きにしなくても」
「おまえの頭は本当に花が咲いてるな」
京楽が、手を出してこないように簀巻きにしたのだ。
簀巻きにした京楽の傍に座る。ギシリと、二人分の体重をかけたベッドが軋んだ音をたてる。
「もう、白無垢とは笑える恰好はするな。それと、俺はお前と結婚式を挙げるつもりはない。遥かなる未来までは分からないが、今は挙げるつもりはこれぽっちもないからな」
「残念」
京楽が悲しそうな声を出すが、遥かなる未来までは分からないという言葉に、希望を見出したようだった。
「学院を卒業する頃には、君は僕のものになっている。その時に改めて結婚式を挙げよう」
「勝手に言ってろ」
浮竹はため息を零した。
次の日、普通に学院に登校する。
「結婚式は洋風のほうがいいの?」
「和風よりは俺は洋風のほうが好きだ」
「じゃあ、僕がウェディングドレスを着るね」
「やめろ、塑像してしまう。毛むくじゃらのウェディングドレス姿を想像させるな!」
「じゃあ、浮竹がウェディングドレス着てくれる?」
「バカ言うな。タキシードなら着てやってもいい」
他の生徒がいる中でそう言い合いあって、二人は夫婦になるとか噂がたったが、いつも通りのバカップルぶりに、周囲にまたこの二人は・・・・などと、思われるのだった。
「ぶばっ」
その姿に、浮竹が吹き出す。
「何してるんだ、おまえ」
「え。浮竹と結婚する準備。白無垢は着てくれないだろうから僕が着るから、袴姿になってね正装してね」
置かれていた花婿の正装の和服に、浮竹は冗談に付き合うつもりで着替えた。
手をひかれて、移動する。
今の京楽は、押しかけ花嫁だ。
神主がいた。
酒を注がれて、京楽が飲み干す。浮竹は、飲み干さずに逃げ出した。
本気だった。
観客はいなかったけど、本気で結婚式を挙げるところだった。
その気のない浮竹は、寮に戻って着替えて、和服の正装を踏みつけた。
「危なかった・・・・・冗談のつもりだと思っていたら、本気なんだものな」
京楽の白無垢姿はあまりに滑稽で笑えたけど、あのまま酒を飲んでいれば、結婚が行われたことになってしまうだろう。
「京楽と結婚とか・・・ありえない」
親友以上恋人未満。この関係から外れるとしたら、ただの友人に戻るという選択肢で、京楽と結婚式を挙げて既成事実を作られ、迫られるなどもっての他だった。
「浮竹~」
白無垢姿の京楽が、逃げてきた浮竹を追って、寮に入ってくる。
「おまえなんかこうだ!」
白無垢をはぎとってやった。
「あーれー。浮竹ってば大胆♡」
「あほいってないで、服を着ろ!」
京楽の院生服を出してやり、それの顔に投げつけた。
「僕が花嫁なら、結婚してくれると思ったのになぁ」
「おまえみたいな花嫁、願い下げだ」
「やっぱり、花嫁は浮竹じゃないとだめか」
「そういう問題じゃない!男同士で結婚式なんて挙げれるわけないだろう」
京楽は、笑った。
「金さえ積めば、結婚式なんていくらでもできるんだよ」
「そんなことに金を積むな!俺はおまえと結婚する気はないからな!」
「えー。けちー」
「あほ!」
京楽の脛を蹴飛ばした。
「あいたっ」
「結婚式なんて挙げなくても、俺たちは今のままでもいいだろう?」
京楽を押し倒してみる。
京楽は、ふっと真顔になって、浮竹の頬に手を当てた。その手に手を重ねる。
自然と唇が重なった。
「んっ・・・・」
離れようとしても、京楽がむちゅーと吸い付いてきて離れない。
「この駄アホ!」
京楽の顎を殴って、軽い脳震盪を起こさせると、ばたりと京楽は倒れた。
「なんか最近、京楽のペースに乱されがちだな・・・・・」
とりあえず、京楽はベッドの上で寝かせて、布団で簀巻きにしておいた。
1時間ほどして気づいた京楽は、簀巻きにされたのに喜んでいた。
「浮竹、我慢できないからって僕を簀巻きにしなくても」
「おまえの頭は本当に花が咲いてるな」
京楽が、手を出してこないように簀巻きにしたのだ。
簀巻きにした京楽の傍に座る。ギシリと、二人分の体重をかけたベッドが軋んだ音をたてる。
「もう、白無垢とは笑える恰好はするな。それと、俺はお前と結婚式を挙げるつもりはない。遥かなる未来までは分からないが、今は挙げるつもりはこれぽっちもないからな」
「残念」
京楽が悲しそうな声を出すが、遥かなる未来までは分からないという言葉に、希望を見出したようだった。
「学院を卒業する頃には、君は僕のものになっている。その時に改めて結婚式を挙げよう」
「勝手に言ってろ」
浮竹はため息を零した。
次の日、普通に学院に登校する。
「結婚式は洋風のほうがいいの?」
「和風よりは俺は洋風のほうが好きだ」
「じゃあ、僕がウェディングドレスを着るね」
「やめろ、塑像してしまう。毛むくじゃらのウェディングドレス姿を想像させるな!」
「じゃあ、浮竹がウェディングドレス着てくれる?」
「バカ言うな。タキシードなら着てやってもいい」
他の生徒がいる中でそう言い合いあって、二人は夫婦になるとか噂がたったが、いつも通りのバカップルぶりに、周囲にまたこの二人は・・・・などと、思われるのだった。
浮竹と京楽と海燕と 朝っぱらから盛った
「んっ・・・・んんっ・・・・・・」
朝に起こしにきた海燕が見たのは、乱れた着衣の浮竹と、それを押し倒している京楽の姿だった。
「なっ・・・あんたら、朝っぱらから何してるんだ!」
「え。せっくす」
「ばか、京楽、こんな朝からなんて・・・・んんっ」
浮竹の文句は、京楽の唇に塞がれて、届かない。
「海燕君、2時間どっかいってて。2時間後にまたきてね」
そう言って、海燕を雨乾堂から追い出して、京楽は浮竹との行為を再開した。
「もう、1か月も君を抱いてない・・・いい加減、我慢の限界だよ・・・・」
「だからって、何も朝に・・・・・」
「夜になって、抱こうとしたら眠ってしまうのはどこの誰だろうね」
「どこの、誰、だろうな」
浮竹は、体を這う恋人の指に翻弄されながら、言葉を濁した。
「んっ」
胸の先端を口に含まれて、もう片方を指でひっかかれて、ぴくんと浮竹の体が反応する。
「君なしじゃ、僕は狂ってしまう」
「俺は、別にこんな行為なくてもいいんだがな・・・・」
性欲の薄い浮竹にとって、京楽と体を重ねるのは苦痛ではなかったが、自分から抱かれにいくとかいうことはほとんどなかった。
しなかったらずっとしないままで、一人で抜いて処理することもしない。
「あああ!」
死覇装を脱がされて、花茎に手をかけられて、浮竹は喘いだ。
「君は、本当に淡泊だねぇ。そのくせ、ここはとろとろに愛されることを願っている」
蕾に潤滑油で濡れた指が突き入れられる。
2時間と時間を決めたので、行為は性急だった。
「んあ!」
浮竹の花茎を手でしごきながら、もう片方の手で浮竹の体内に埋めた指をばらばらに動かしていく。
「あ!」
前立腺を刺激されて、浮竹はいってしまった。
「もういいかな?」
潤滑油を直接注ぐくらいたっぷり中までいれられて、京楽の灼熱に引き裂かれた。
「ひあああああああ!」
「ん・・・久しぶりだから、狭いね」
「んあ・・・・ああ・・・・」
ズチュリと音をたてて、突き上げられる。
「あ!」
くちゅくちゅと音をたてて、浅い部分を抉り、次に最奥まで突き上げた。
「んあ!」
浮竹は、キスをねだってきた。
「京楽・・・・キス、して・・・・」
「愛してるよ、十四郎」
「春水・・・・」
睦み合いの時だけ、下の名で呼びあった。
「んん・・・・んう」
ぴちゃりと舌が絡みあう。
「あ!あ!・・・・やっ」
背後から突き上げられて、浮竹の白い髪が宙を舞う。
「やああ!」
「十四郎・・・・・・」
浮竹の腹の奥で、京楽は熱を弾けさせた。
でも、それだけではまだ行為は終わらない。
何度も、浮竹を貫いた。
抉られ、突き上げられて、浮竹も精液を吐きだしていた。
京楽に抱かれ慣れてしまった体は、京楽の行為に敏感に反応する。
お互い何も出ないほどに貪り合って、終わった。
「うわお。1時間45分。3時間にしてもらうべきだったかな」
「海燕がくるんだろう!早く風呂に入るぞ!」
浮竹は、とろりと太腿を京楽の出した精液が伝い落ちるのも構わずに、風呂に入って体や髪を洗ったりはせずに、行為の痕を洗い流した。
京楽が、浮竹の中に出したものをかき出す。
「んっ」
「もう、そんな声ださないでよ。またしたくなっちゃう」
「ばか!」
浮竹は慌てていたが、京楽はゆっくりしていた。
一人、湯船に浸かっている。
浮竹は先にあがって、髪をかわかしていた。
長い白髪は、なかなかかわいてくれない。水分をふきとって、あとは自然乾燥に任せることにした。
「・・・・・・失礼します」
ちょうど2時間きっちり経って、海燕が現れた。
「海燕、これはだな・・・・・」
「仕事は、してもらいますからね。ああもう、また髪を乾かしてないんですか。ドライヤーあるでしょ。乾かしますよ?」
「あ、ああ、すまない」
その時、京楽が風呂からあがってきた。
「すとーっぷ。浮竹の髪を乾かすのは、僕の役目だよ」
「どっちでもいいですけど。朝餉はなしです。いい年なんだから、朝っぱらから盛らずに夜に盛ってくださいね」
「ああ、すまない・・・・・・」
全くその通りだ。
まさか京楽が朝から盛ってくるとは思っていなかったので、浮竹も頷く。
「全部、京楽が悪いんだ」
ドライヤーで浮竹の髪を乾かしながら、京楽がにんまりと笑む。
「僕が悪いでいいよ。君を抱けるなら」
「ああもう、お前は!」
浮竹は、頭を抱えた。
「気にしないでください。俺は空気になれますから。どうぞ、気にせず睦み合うなり、仕事するなり、好きにしてください」
「海燕~~~」
情けない声をあげる浮竹に、京楽はキスをする。
「空気なら、何しても・・・・」
ばきっ。
浮竹に殴られて、京楽は地面に沈んだ。
「仕事するぞ、仕事!」
海燕が、京楽を踏みつけた。
「もぎゅっ!」
「ああ、いたんですか」
絶対、わざとだった。
「海燕君・・・・空気になれるわりには、わざとだね」
「そりゃわざとですよ。体の弱い上司を、朝っぱらから抱く他の隊の隊長なんて、この雨乾堂にはいりませんから」
「でも、浮竹は拒否しなかったよ」
「そりゃ、あんたとは夫婦ですからね」
「そうだねぇ。よく夫婦っていわれる」
「ああもう、京楽も海燕も、いいから仕事するぞ仕事!京楽も仕事もってきているんだろう?」
浮竹が聞くと、京楽は仕事をまた持ち込んでいて、浮竹と並んで黒檀の文机の上に書類を置き、二人で仕事にとりかかった。
すでに10時をこえており、仕事時間には遅刻だが、さぼることのない浮竹と、浮竹と一緒にいたいがために、わざわざ8番隊から仕事を持ち込む京楽は、けっこうなスピードで仕事を片していった。
やがて昼食の時間になる。
京楽がくると思っていなかったし、指示を忘れていたので、京楽だけ一般隊士の食事をとった。浮竹は隊長だけあって、一般隊士より豪華なメニューだった。
「今日は泊まっていくんですか」
「うん」
海燕は、夕食を二人分にするように、厨房に指示を出した。
浮竹が終わらせた書類をチェックしていく海燕は、溜息をつきつつ3時の休憩時間を入れた。
「冗談抜きに、朝から盛るんは勘弁してくださいね」
「悪かった」
「隊長に言ってるんじゃありません。そこの笠を被ったどこぞの隊長に言ってるんです」
「えー、うん、まぁなるべく夜にするから」
曖昧な回答をして、京楽はへらへらと笑った。
浮竹を抱けて満足して、浮竹と同じ空間にいれることを素直に喜んでいるのだ。
全く。
海燕は思う。
自分の隊長の恋人の分まで、食事とか世話を焼かないといけないのだが、浮竹のためと思えばそれも苦でないと思う自分がいるのに、苦笑するのだった。
朝に起こしにきた海燕が見たのは、乱れた着衣の浮竹と、それを押し倒している京楽の姿だった。
「なっ・・・あんたら、朝っぱらから何してるんだ!」
「え。せっくす」
「ばか、京楽、こんな朝からなんて・・・・んんっ」
浮竹の文句は、京楽の唇に塞がれて、届かない。
「海燕君、2時間どっかいってて。2時間後にまたきてね」
そう言って、海燕を雨乾堂から追い出して、京楽は浮竹との行為を再開した。
「もう、1か月も君を抱いてない・・・いい加減、我慢の限界だよ・・・・」
「だからって、何も朝に・・・・・」
「夜になって、抱こうとしたら眠ってしまうのはどこの誰だろうね」
「どこの、誰、だろうな」
浮竹は、体を這う恋人の指に翻弄されながら、言葉を濁した。
「んっ」
胸の先端を口に含まれて、もう片方を指でひっかかれて、ぴくんと浮竹の体が反応する。
「君なしじゃ、僕は狂ってしまう」
「俺は、別にこんな行為なくてもいいんだがな・・・・」
性欲の薄い浮竹にとって、京楽と体を重ねるのは苦痛ではなかったが、自分から抱かれにいくとかいうことはほとんどなかった。
しなかったらずっとしないままで、一人で抜いて処理することもしない。
「あああ!」
死覇装を脱がされて、花茎に手をかけられて、浮竹は喘いだ。
「君は、本当に淡泊だねぇ。そのくせ、ここはとろとろに愛されることを願っている」
蕾に潤滑油で濡れた指が突き入れられる。
2時間と時間を決めたので、行為は性急だった。
「んあ!」
浮竹の花茎を手でしごきながら、もう片方の手で浮竹の体内に埋めた指をばらばらに動かしていく。
「あ!」
前立腺を刺激されて、浮竹はいってしまった。
「もういいかな?」
潤滑油を直接注ぐくらいたっぷり中までいれられて、京楽の灼熱に引き裂かれた。
「ひあああああああ!」
「ん・・・久しぶりだから、狭いね」
「んあ・・・・ああ・・・・」
ズチュリと音をたてて、突き上げられる。
「あ!」
くちゅくちゅと音をたてて、浅い部分を抉り、次に最奥まで突き上げた。
「んあ!」
浮竹は、キスをねだってきた。
「京楽・・・・キス、して・・・・」
「愛してるよ、十四郎」
「春水・・・・」
睦み合いの時だけ、下の名で呼びあった。
「んん・・・・んう」
ぴちゃりと舌が絡みあう。
「あ!あ!・・・・やっ」
背後から突き上げられて、浮竹の白い髪が宙を舞う。
「やああ!」
「十四郎・・・・・・」
浮竹の腹の奥で、京楽は熱を弾けさせた。
でも、それだけではまだ行為は終わらない。
何度も、浮竹を貫いた。
抉られ、突き上げられて、浮竹も精液を吐きだしていた。
京楽に抱かれ慣れてしまった体は、京楽の行為に敏感に反応する。
お互い何も出ないほどに貪り合って、終わった。
「うわお。1時間45分。3時間にしてもらうべきだったかな」
「海燕がくるんだろう!早く風呂に入るぞ!」
浮竹は、とろりと太腿を京楽の出した精液が伝い落ちるのも構わずに、風呂に入って体や髪を洗ったりはせずに、行為の痕を洗い流した。
京楽が、浮竹の中に出したものをかき出す。
「んっ」
「もう、そんな声ださないでよ。またしたくなっちゃう」
「ばか!」
浮竹は慌てていたが、京楽はゆっくりしていた。
一人、湯船に浸かっている。
浮竹は先にあがって、髪をかわかしていた。
長い白髪は、なかなかかわいてくれない。水分をふきとって、あとは自然乾燥に任せることにした。
「・・・・・・失礼します」
ちょうど2時間きっちり経って、海燕が現れた。
「海燕、これはだな・・・・・」
「仕事は、してもらいますからね。ああもう、また髪を乾かしてないんですか。ドライヤーあるでしょ。乾かしますよ?」
「あ、ああ、すまない」
その時、京楽が風呂からあがってきた。
「すとーっぷ。浮竹の髪を乾かすのは、僕の役目だよ」
「どっちでもいいですけど。朝餉はなしです。いい年なんだから、朝っぱらから盛らずに夜に盛ってくださいね」
「ああ、すまない・・・・・・」
全くその通りだ。
まさか京楽が朝から盛ってくるとは思っていなかったので、浮竹も頷く。
「全部、京楽が悪いんだ」
ドライヤーで浮竹の髪を乾かしながら、京楽がにんまりと笑む。
「僕が悪いでいいよ。君を抱けるなら」
「ああもう、お前は!」
浮竹は、頭を抱えた。
「気にしないでください。俺は空気になれますから。どうぞ、気にせず睦み合うなり、仕事するなり、好きにしてください」
「海燕~~~」
情けない声をあげる浮竹に、京楽はキスをする。
「空気なら、何しても・・・・」
ばきっ。
浮竹に殴られて、京楽は地面に沈んだ。
「仕事するぞ、仕事!」
海燕が、京楽を踏みつけた。
「もぎゅっ!」
「ああ、いたんですか」
絶対、わざとだった。
「海燕君・・・・空気になれるわりには、わざとだね」
「そりゃわざとですよ。体の弱い上司を、朝っぱらから抱く他の隊の隊長なんて、この雨乾堂にはいりませんから」
「でも、浮竹は拒否しなかったよ」
「そりゃ、あんたとは夫婦ですからね」
「そうだねぇ。よく夫婦っていわれる」
「ああもう、京楽も海燕も、いいから仕事するぞ仕事!京楽も仕事もってきているんだろう?」
浮竹が聞くと、京楽は仕事をまた持ち込んでいて、浮竹と並んで黒檀の文机の上に書類を置き、二人で仕事にとりかかった。
すでに10時をこえており、仕事時間には遅刻だが、さぼることのない浮竹と、浮竹と一緒にいたいがために、わざわざ8番隊から仕事を持ち込む京楽は、けっこうなスピードで仕事を片していった。
やがて昼食の時間になる。
京楽がくると思っていなかったし、指示を忘れていたので、京楽だけ一般隊士の食事をとった。浮竹は隊長だけあって、一般隊士より豪華なメニューだった。
「今日は泊まっていくんですか」
「うん」
海燕は、夕食を二人分にするように、厨房に指示を出した。
浮竹が終わらせた書類をチェックしていく海燕は、溜息をつきつつ3時の休憩時間を入れた。
「冗談抜きに、朝から盛るんは勘弁してくださいね」
「悪かった」
「隊長に言ってるんじゃありません。そこの笠を被ったどこぞの隊長に言ってるんです」
「えー、うん、まぁなるべく夜にするから」
曖昧な回答をして、京楽はへらへらと笑った。
浮竹を抱けて満足して、浮竹と同じ空間にいれることを素直に喜んでいるのだ。
全く。
海燕は思う。
自分の隊長の恋人の分まで、食事とか世話を焼かないといけないのだが、浮竹のためと思えばそれも苦でないと思う自分がいるのに、苦笑するのだった。
浮竹と京楽と海燕と 海へ行く
3人で、許可をとって現世の海にきていた。
まだ春で、海水浴をするには早すぎる時期であるが、浮竹は一度海燕に、本物の海を見せてやりたがっていたので、京楽も一緒になってなんとか山じいから許可をもぎとった。
「これが海だぞ、海燕。お前の名前の元になるものだ」
「これが海ですか・・・・どこまでも、水が続いてるんですね」
海燕は、夕暮れに染まっていく海を、ただ見ていた。
「綺麗ですね」
「ああ、綺麗だろう。夕暮れになると、海も浜辺も街も、何もかもオレンジ色に染め上げられていく」
「どうせなら、夏にくればよかったのに」
京楽の言葉に、海燕もそうだなと思った。
「夏は・・・・暑いし、人が多いだろう。それに俺は直射日光に弱いから、夏はあまり外に出れない」
「それもそうだね」
京楽が、浮竹を抱き締めた。京楽の腕の中で、浮竹は申し訳なさそうにしていた。
滞在が許された時間は半日。
なので、夕暮れから夜にかけてを選んだ。
「せっかくだし、写真でも撮ろうか」
「そうだな」
カメラで、3人で夕暮れの海をバックに、写真をとった。
綺麗にとれて、後日焼き回しをして浮竹と京楽と海燕だけでなく、一般隊士までなぜか出回るようになった。
夜の海は静かだった。
ざぁんざぁんと、押し寄せては返す波を、海燕はただ見ていた。
「海って・・・綺麗だけど、なんか寂しいですね」
「そうか?」
「俺は雨乾堂にある池のほうが好きです」
「まぁ、人懐っこい鯉もいるしな」
雨乾堂にある池は、浮竹にとってもお気に入りだ。
「隊長、今日は海に連れてきてくださって、ありがとうございました。記憶に一生刻みこんでおきます」
「そんな大層なことじゃないだろう」
「だって、俺が現世にこれることなんてそうそうないですから」
「それを言えば、俺と京楽だって現世にはこれないぞ」
「まぁ、今回は僕が山じいを脅したに近いからね」
「なんだと!」
浮竹が気色ばむ。
「まぁまぁ。現世に行かせてくれないと、浮竹と一緒にかけおちするって言っただけだし」
京楽なら、その気になれば、本当に浮竹を連れて現世にでもかけおちしそうだった。
「山じい、困った顔してたねぇ。けっさくだった」
「あまり、先生を困らせるなよ」
「まぁ、お陰で海燕君は余計だけど、現世の海を二人で見れたことだし」
「また俺は空気ですか」
「うん」
「こら、京楽!海燕は空気じゃないぞ」
「隊長・・・」
自分の部下が空気扱いされたことに、浮竹が怒るが、そんな浮竹にキスを何度もしていると、浮竹はそれ以上空気じゃないとか言わなかった。
「んっ」
現世の、夜とはいえは浜辺で男同士でキスしているシーンを、他に見られてはなるまいと、海燕がきょろきょろと辺りを見回した。
「隊長、京楽隊長、盛るなら雨乾堂でしてください!」
手を伸ばせば、届きそうな星空が綺麗だった。
「多分、現世には今後ほとんどこれないだろう。海燕、もういいか?」
「はい。俺は別に、現世に興味なんて元からあんまりありませんから」
「そうか・・・・海を見せたこと、余計だったか・・・」
しゅんとしおれる浮竹を見て、海燕が首を横に振る。
「いえ、海は見れて感動しました」
「そうかそうか」
朗らかに笑う浮竹に、海燕も安堵する。
「多分、3人で現世にこれることなんてもうないだろうから。海燕、海は綺麗だろう。本当は、南の珊瑚礁のある昼の海も見せてやりたかったんだが、そっちは写真だけになるが、いいよな?」
「はい」
「もし、また許可が下りたら、夏に一度珊瑚礁の海にいこう。俺も直射日光でやられないように対策するから。京楽も、たまには現世の海で泳ぐのもいいだろう?」
「そうだねぇ。無人島なら、人に会う心配もないだろうし」
「じゃあ、決まりだ。もし、また現世にくることがあったら、昼の珊瑚礁の海に行こう」
「はい」
珊瑚礁の海。
とても綺麗な色をしていると、書物で読んだことがあった。
「じゃあ、戻ろうか。尸魂界へ」
「はい」
「うん、戻ろう。僕たちのいるべき場所へ」
名残惜しいが、滞在時間が限られている。海を最後に振り返った。3人で。
「また、いつか・・・・」
現世の海に手をふって、浮竹たちは穿界門をくぐった。
尸魂界に戻ると、山じいが待っていた。
「うげっ」
「こりゃ、春水!お主、ようもわしを脅しよったな!体の弱い十四郎が、お主と共にかけおちななど、考えてみればするはずもないことじゃ!」
ぼっと、流刃若火で京楽の尻に火がついた。
「あちゃちゃちゃ!」
「十四郎、その身になんの危険もなかったか?」
「はい、先生。海燕もついていてくれましたし」
浮竹は、尻に火がついた京楽の火を消してやってから、海燕を見た。
「ほんに、お主はよい副官をもった。志波海燕、今後も十四郎を頼む」
「はい!」
海燕は、山じいから直々に声をかけられて、感動で震えていた。
ああ。
やっぱり、浮竹隊長の副官でよかった。
そう思うのだった。
まだ春で、海水浴をするには早すぎる時期であるが、浮竹は一度海燕に、本物の海を見せてやりたがっていたので、京楽も一緒になってなんとか山じいから許可をもぎとった。
「これが海だぞ、海燕。お前の名前の元になるものだ」
「これが海ですか・・・・どこまでも、水が続いてるんですね」
海燕は、夕暮れに染まっていく海を、ただ見ていた。
「綺麗ですね」
「ああ、綺麗だろう。夕暮れになると、海も浜辺も街も、何もかもオレンジ色に染め上げられていく」
「どうせなら、夏にくればよかったのに」
京楽の言葉に、海燕もそうだなと思った。
「夏は・・・・暑いし、人が多いだろう。それに俺は直射日光に弱いから、夏はあまり外に出れない」
「それもそうだね」
京楽が、浮竹を抱き締めた。京楽の腕の中で、浮竹は申し訳なさそうにしていた。
滞在が許された時間は半日。
なので、夕暮れから夜にかけてを選んだ。
「せっかくだし、写真でも撮ろうか」
「そうだな」
カメラで、3人で夕暮れの海をバックに、写真をとった。
綺麗にとれて、後日焼き回しをして浮竹と京楽と海燕だけでなく、一般隊士までなぜか出回るようになった。
夜の海は静かだった。
ざぁんざぁんと、押し寄せては返す波を、海燕はただ見ていた。
「海って・・・綺麗だけど、なんか寂しいですね」
「そうか?」
「俺は雨乾堂にある池のほうが好きです」
「まぁ、人懐っこい鯉もいるしな」
雨乾堂にある池は、浮竹にとってもお気に入りだ。
「隊長、今日は海に連れてきてくださって、ありがとうございました。記憶に一生刻みこんでおきます」
「そんな大層なことじゃないだろう」
「だって、俺が現世にこれることなんてそうそうないですから」
「それを言えば、俺と京楽だって現世にはこれないぞ」
「まぁ、今回は僕が山じいを脅したに近いからね」
「なんだと!」
浮竹が気色ばむ。
「まぁまぁ。現世に行かせてくれないと、浮竹と一緒にかけおちするって言っただけだし」
京楽なら、その気になれば、本当に浮竹を連れて現世にでもかけおちしそうだった。
「山じい、困った顔してたねぇ。けっさくだった」
「あまり、先生を困らせるなよ」
「まぁ、お陰で海燕君は余計だけど、現世の海を二人で見れたことだし」
「また俺は空気ですか」
「うん」
「こら、京楽!海燕は空気じゃないぞ」
「隊長・・・」
自分の部下が空気扱いされたことに、浮竹が怒るが、そんな浮竹にキスを何度もしていると、浮竹はそれ以上空気じゃないとか言わなかった。
「んっ」
現世の、夜とはいえは浜辺で男同士でキスしているシーンを、他に見られてはなるまいと、海燕がきょろきょろと辺りを見回した。
「隊長、京楽隊長、盛るなら雨乾堂でしてください!」
手を伸ばせば、届きそうな星空が綺麗だった。
「多分、現世には今後ほとんどこれないだろう。海燕、もういいか?」
「はい。俺は別に、現世に興味なんて元からあんまりありませんから」
「そうか・・・・海を見せたこと、余計だったか・・・」
しゅんとしおれる浮竹を見て、海燕が首を横に振る。
「いえ、海は見れて感動しました」
「そうかそうか」
朗らかに笑う浮竹に、海燕も安堵する。
「多分、3人で現世にこれることなんてもうないだろうから。海燕、海は綺麗だろう。本当は、南の珊瑚礁のある昼の海も見せてやりたかったんだが、そっちは写真だけになるが、いいよな?」
「はい」
「もし、また許可が下りたら、夏に一度珊瑚礁の海にいこう。俺も直射日光でやられないように対策するから。京楽も、たまには現世の海で泳ぐのもいいだろう?」
「そうだねぇ。無人島なら、人に会う心配もないだろうし」
「じゃあ、決まりだ。もし、また現世にくることがあったら、昼の珊瑚礁の海に行こう」
「はい」
珊瑚礁の海。
とても綺麗な色をしていると、書物で読んだことがあった。
「じゃあ、戻ろうか。尸魂界へ」
「はい」
「うん、戻ろう。僕たちのいるべき場所へ」
名残惜しいが、滞在時間が限られている。海を最後に振り返った。3人で。
「また、いつか・・・・」
現世の海に手をふって、浮竹たちは穿界門をくぐった。
尸魂界に戻ると、山じいが待っていた。
「うげっ」
「こりゃ、春水!お主、ようもわしを脅しよったな!体の弱い十四郎が、お主と共にかけおちななど、考えてみればするはずもないことじゃ!」
ぼっと、流刃若火で京楽の尻に火がついた。
「あちゃちゃちゃ!」
「十四郎、その身になんの危険もなかったか?」
「はい、先生。海燕もついていてくれましたし」
浮竹は、尻に火がついた京楽の火を消してやってから、海燕を見た。
「ほんに、お主はよい副官をもった。志波海燕、今後も十四郎を頼む」
「はい!」
海燕は、山じいから直々に声をかけられて、感動で震えていた。
ああ。
やっぱり、浮竹隊長の副官でよかった。
そう思うのだった。