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恋する瞬間 終章一瞬でいい

一護が大学を卒業した6月。

尸魂界では、豪華な結婚式を挙げた。

隊長副隊長がほぼ全員集い、白哉に付き添われた白無垢のルキアが入場する。

一護は、正装して袴をはき、ルキアと酒を飲み交わしあい、婚姻は大勢の祝福の中終わりを迎えた。

尸魂界での婚姻が終わった後は、現世での婚姻だった。

式場を探し、白哉が金を出して一流ホテルの結婚式場とロビーを貸し切りにして、現世でも結婚式を行った。

尸魂界ではこれなかった、井上、石田、茶虎、たつき、水色、啓吾もきていた。

一心と双子の妹もきていた。

「ルキア・・・・2回目の結婚式になるけど、しんどくないか?」

「貴様となら、何度でも結婚式を挙げてやる」

真っ白な純白のウェディングドレスとウェディングヴェールを被ったルキアは美しかった。

白無垢のルキアも綺麗だったけれど、一護としてはウェディングドレス姿のルキアの方が、個人的に好きだった。

誓いの台詞を口にして、結婚指輪をはめあい、キスをする。

あまりの幸せさに、ルキアは涙を零していた。

一護と一緒に、これからも生きていく。

そう、新たに誓った。

新居は、白哉が金を出して買ってくれたこじんまりとした一軒家だった。週末にしかこれないルキアのために、時折ちよが世話係をしてきてくれた。

幸せだった。

死神と人であるため、子はできなかったが、いつまでも一緒にいた。

やがて年月はあっという間に過ぎさり、一護は60手前で亡くなった。

魂葬をして、その魂魄を尸魂界へと導くルキア。

涙は流れなかった。

何故なら、ここからがまた新たなスタートだから。

尸魂界にきた一護は、17歳の姿になっていた。

「ルキア・・・・愛してる。永遠の愛を、お前に」

「一護・・・私も愛している。今度は、子が欲しいのだ。現世では子が成せなかったからな」

夕暮れのオレンジ色に染まる尸魂界で、一護は2回目になるプロポーズをした。

「ルキア。死神となった俺と、永遠を生きてくれ」

「一護・・・・ああ、私は貴様と共に歩く」

3回目になる結婚式を挙げて、ルキアと一護は二人の子供に恵まれて、一護は13番隊の副隊長に就任した。


「見てるかい浮竹・・・・ルキアちゃんに、家族ができたよ」

尸魂界で仲睦ましく過ごす一護とルキアを見て、京楽は浮竹の墓の前で報告をしていた。

「あれ、京楽さん?」

「おや、一護君にルキアちゃんじゃないか。どうしたんだい」

「いや、浮竹さんの墓参りに・・・・・・」

「京楽総隊長も、墓参りですか?」

そう聞いてくるルキアに、京楽は笑顔で、浮竹に報告していたんだと言ってくれた。

京楽が、一護の我儘を受け入れて、ルキアの高校生活を許してくれなかったら、今の一護とルキアは多分なかった。

ルキアは見合いの相手か恋次と結婚して、一護は井上と結婚していただろう。

もう、遠い話だが。

「一護君の霊圧は変わったね・・・・守るものができたせいか、更に強くなったかもしれない」

「あー。死神代行してた頃より、霊圧ちょっとあがってるみたいで」:

「京楽総隊長、一護は私の存在のせいで変わったというのです」

「まぁ、ルキアちゃん。守るものができると、男は強くなるものだよ。子供たちは元気かい?」

今日は子供たちの面倒は、ちよに見てもらっている。

「はい。二人ともやんちゃすぎるくらいで、元気です」

一護は、浮竹の墓に菊の花を添えて、おはぎを供えた。

「やあ、嬉しいねぇ。年月が経ったのに、一護君は浮竹の好物を覚えてくれてていたのかい」

「はい。お世話になったし」

「浮竹も、あの世で喜んでいるよ。13番隊の副隊長には、流石に慣れたでしょ」

こくりと、一護は頷いた。

今の13番隊の隊長はルキアだ。

もう、ずっと昔から。

ルキアは、まだ20代前半の容姿を保っていた。下手をすると10代でも通るかもしれない。

一方の一護は、17歳のまま時が止まったかのようだった。

一度死別して、尸魂界でまた巡り合い、実質3回目の結婚をした。

子供二人に恵まれて、幸せな家庭を築けている。

「じゃあ、俺たちはこれで」

「京楽総隊長、ではまた」

「ああ、またね」



恋する瞬間は、一瞬。

でも、恋した後は、ずっと恋が続くのだ。

だから、恋する瞬間は一瞬でいい。

一護とルキアは、ゆっくりと流れていく時間に身を任せながら、永遠の愛を誓い合い、寄り添いあうのだった。



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浮竹死んだけど幽霊です憑いてます25 浮竹、舞う

浮竹は、霊体のまま甘味屋で甘味物を食べまくっていた。

注文されて、もってこられるものを、片っ端からさっさっと消して食べていく。

実体化するためのエネルギーを蓄えるためだった。

「よく食べるねぇ」

「実体化するには、エネルギーがいるからな。ただ憑いてるだけなら、お前の霊圧を食っているだけでいいんだが」

浮竹はすでに死人だ。

何の悪戯だか、幽霊になって復活した。

京楽にとり憑いていて、始めは離れることさえできなかった。

実体化できるようになったり、長距離を離れていれるようになったりと、できることは増えていった。1日実体化できるようになったら、長い時間を抱かれるようになった。

それまでは、喘ぎ声を無理にあげて、京楽が自分で抜くのを手伝ったりしてやっていた。

今は月に2日くらい実体化できるので、その時に抱かれて、京楽が一人で抜くことはなくなったが、回数が生前よりぐっと減ったので、意識を飛ばしてしまうまで抱かれることが多かった。

軽く6人前くらいを食べて、浮竹は満足したようだった。

京楽と、会計に向かう。

けっこうな金額になったが、浮竹のためなら金なんていくらでも出す京楽だ。痛くも痒くもなかった。

「桜の季節だな・・・・・・」

甘味屋を出て、並木道を歩くと、桜が綺麗に咲いていた。

「ちょっと待ってなよ」

京楽が、背伸びして桜の花を手に戻ってきた。

「ちょっと実体化して」

「あ、ああ・・・・・」

実体化した浮竹の髪に、桜を飾った。

「白い髪だから、もっと濃い色がいいかもしれないけど、とっても似合っているよ。幻想的で綺麗だよ」

「ありがとう」

浮竹は、頬を朱くして霊体に戻った。

桜の花も、霊体化してしまう。

「今度、花見に行こうか。そうだね、ルキアちゃんたちも誘って」

「ああ、それはいいな。朽木家に、阿散井家、両方誘おう」

白哉とルキアと恋次と、あと生まれた苺花で、花見に行こうと決める。

「場所はどこがいいかな?」

「普通に、朽木邸でいいんじゃないか」

「まぁ、苺花ちゃんは幼いから、遠出するわけにもいかないしね」

本当なら、山奥に二人の秘密の桜の園があるのだが、流石にそこまでは行けそうになかった。

「じゃあ、明日花見にしよう!」

「えらい、早いな」

「桜が散る頃は、人事異動で仕事も忙しくなるからね」

「そうか・・・・・京楽も、一応総隊長だもんな」

「一応は余計だよ」

「はははは」

浮竹は、朗らかに笑った。

どんなに京楽が忙しくても、いつも一緒にいるのだ。寂しくはない。

そして、次の日本当に、白哉とルキアと恋次、そして苺花を連れて朽木家で花見を行った。

「兄は・・・・また、今年も我が家で花見か」

京楽は、白哉にそう言われて、笑った。

「ここらへんじゃ、朽木家が一番花見にいいくらい、綺麗に桜が咲いているんだから」

「ふむ・・・まぁいい。浮竹とは、うまくいってるのか?」

「うん。もうばっちり」

その浮竹は、ルキアと恋次と話し込んでいた。

「おーい浮竹」

「なんだ、京楽」

「朽木隊長が、僕らはうまくいっているのかって聞いてきたんだけど、夜の営みもしてるし、うまくいってるよね?」

浮竹は、真っ赤になって京楽の頭を殴った。

実体化して、すとんと地面に降り立つ。

「浮竹隊長!」

苺花をちよに託したルキアが、実体化した浮竹が珍しくて笑顔で寄ってきた。

「浮竹隊長、せっかくなんですから、食べて飲んでください!」

「え、ああ・・・・」

「ルキア、無理はさせるなよ」

「恋次、貴様は黙っておれ!浮竹隊長が実体化されるのは珍しいことなのだぞ」

「いや、そうか?けっこう俺、京楽総隊長と一緒にいるとき、実体化してる場面に出くわすことあるが・・・・・」

「何、ずるいぞ貴様!」

自分の夫を責めるルキアに、浮竹が苦笑する。

「まぁまぁ、今日は花見にきたんだ。仲よくやろう」

「はい」

きらきらした顔で、ルキアは浮竹を見ていた。ルキアにとって、いつまで経っても浮竹は上司なのだ。例え死んでいても。

朽木家の料理が振る舞われて、浮竹も京楽もその味を楽しんだ。

酒が用意されて、飲んでいく。

ふと、浮竹が桜の散る庭で、舞うといいだした。

ちらちらと散る桜の中、白い髪をなびかせて舞う浮竹は綺麗だった。

京楽だけでなく、白哉まで見入っていた。

「拙くて、すまない」

「浮竹、兄の舞いは、素晴らしかった」

「そうか?」

白哉の言葉に、浮竹が照れる。

「いや、ほんとに綺麗でした浮竹隊長」

「さすがです、浮竹隊長」

恋次とルキアにまで褒められて、浮竹は照れ隠しに酒をあおった。

「いつもは、京楽の前でしか舞わなないんだがな」

「独り占めはよくありません!」

ルキアが京楽にそう詰め寄ると、参ったねといいながら、京楽は酒をあおった。

「ルキアも、舞ったらどうだ?」

恋次に言われて、酒が大分入っていたせいか、いつもはそういうことは断るルキアもその気になった。

袖白雪を抜き放ち、剣舞を披露する。

その美しさに、浮竹も拍手を送っていた。

「朽木の舞のほうが、綺麗だと思うぞ」

「そんなことありません!浮竹隊長の舞のほうが綺麗でした」

皆に意見を聞くと、どちらも素晴らしかったと言われて、二人してちょっと赤くなった。

酒を追加して飲みあい、騒ぎあいながら、朽木家の花見は終了した。

「今度は・・・そうだね、また来年くらいになったら、あの山奥の秘密の場所で、花見をしよう」

そう誘ってくる京楽に、浮竹は静かに頷く。

「大人数での花見もいいが・・・・お前と二人きりの花見も、いいものだしな」

手を出してこないのであれば、であるが。

3時間ほど実体化していた浮竹は、最後に京楽に抱き締められて、霊体化した。

「君の舞、よかったよ。見るのは何十年ぶりかな」

「そういえば、舞うこと自体久しぶりだったからな」

「ねぇ、また舞ってよ。霊体のままでいいから、僕だけのために」

「いいぞ」

寝る前に、京楽の前で浮竹は霊体のままで舞いをした。

花見の席では、普通の舞いであったが、寝る前は双魚理を霊体化して剣舞を舞った。

「綺麗だねぇ。心が洗い流されるようだよ」

「大げさだぞ」

舞いを終えて、一息つく。

「水飲むかい」

「ああ」

水がさっと消える。

「君の舞いを見れるのは、嬉しいことだね」

「こんなことくらい、何時でも言ってくれればするのに」

「君が舞いをすること自体、珍しくて忘れていたよ」

「実は、俺自身も忘れていた・・・・ただ、桜が散っていく様を見ていると、体が勝手に動き出していた」

「珍しいこともあるものだね・・・・そろそろ、もう、寝ようか」

「そうだな。夜も大分更けてしまった。明日に障るといけないから、寝るか」

京楽が、ベッドにもぐりこむ。その横に、浮竹も霊体のまま寝転ぶ。

幽霊だけど、睡眠もちゃんととるのだ、浮竹は。

京楽が眠りについたのを確認して、浮竹も眠った。

次の日、京楽は仕事にとりかかっていたが、いつもは起きている浮竹は寝坊で寝たままだった。京楽は浮竹を起こさなかった。

久し振りに深く眠っているようで、そっとしておいた。

浮竹が起きると、昼を過ぎていた。

「おはよう。よく寝れたかい?」

「舞いを舞ったことで、エネルギーが消耗されてしまったようだ。お前の霊圧を吸い上げている・・・・すまない」

「いいよ、そんなこと。吸い上げてるっていってもちょっとでしょ。僕自身、霊圧が吸われているとか感じていないし。その程度のこと、別にいいよ」

「朝食を食べ損ねた。昼食は食べてもいいか?」

「ああ、うん。これからとろうと思っていたところだから。食堂までいこう」

「ああ」

霊体化した浮竹を伴って、食堂にいくと、いつものように視線が集まった。

まぁ、京楽だけでも視線が集まるのに、浮竹が透けてその隣にいるのが原因だった。

「ほらほら、見世物じゃないよ。散った散った」

京楽が声をかけると、皆視線を彷徨わせる。

「俺は、別に見られても平気だが・・・・」

「僕がやなの。君は僕だけのものだ。僕以外のやつが、君を見るのがいやだ」

「無茶苦茶な理由だな」

「そうだよ。嫉妬深いからね」

「はぁ・・・・・」

京楽がここまで浮竹に執着を見せるようになったのは、幽霊になってからだ。昔はそんなことなかったのに。

一度失ったことで、相当の悲しみを味合わせてしまったのだろうなと思い、浮竹は実体化して京楽にキスをした。

「浮竹?」

「俺からの、返答だ。嫉妬深くならなくていい。俺はずっと、お前の傍にいる」

「浮竹・・・・・・」

京楽は、心の中がじんわりと暖かくなるのを感じつつ、浮竹と昼食をとるのだった。

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翡翠に溶ける番外編

「浮竹」

花の神を半身に宿らせて、薄紅色の髪になった京楽が、浮竹の元を訪れた。

死ぬはずだった命を救われたが、代わりに京楽が神の器になった。

「浮竹、大丈夫?」

肺の病は癒えたのだが、熱を出す虚弱体質はそのままで、今日も浮竹は熱を出していた。

肺の病が癒えたが、熱が出やすくなってしまい、前とあまり変わらぬくらいに臥せっていた。
今の浮竹に霊圧はない。もっていた膨大な霊圧は、生命力に変換されてしまった。

「おはぎもってきたんだけど・・・・食べれる?」

「ああ・・・今日は微熱なんだ。頭が少し痛いが、肺の発作を思えばこれくらい平気だ」

布団に半身を起こした浮竹の背を支えてやり、まずは白湯を飲ませた。

「そういえば、最近甘味屋に行っていないな・・・・・・」

「熱が下がったたら、行こうね」

「ああ、そうだな」

二人で寄り添いあう。

死ぬはずだった浮竹の運命を変えた、花の神。

運命を変えられた、浮竹。

運命を変えられることを望み、器となった京楽。

思いは様々だが、こうやってまた一緒に生きれることが嬉しかった。

もう、浮竹に死の気配はない。

肺の病は、花の神の力で癒された。

浮竹は、京楽がもってきてくれたおはぎを食べた。

もう、浮竹は13番隊隊長ではない。その地位は、ルキアが継いだ。

霊圧を失くした浮竹は、13番隊の隊長補佐となっていた。もう戦う力はないが、書類仕事などを任されていた。

「お互い、早く引退したいものだな」

「その気になれば、君は引退できたのに」

「まだ、人生長いんだぞ。それに俺だけ引退しても、お前が引退しないと意味がない。一緒に生きると、決めたんだ」

ふわりと、窓から風が入ってきた。

薄紅になってしまった瞳を瞬かせて、京楽は微笑む。

「じいさんになるまで、お互い引退はなしかな」

「じいさんか・・・・後何百年あるんだろう」

途方もない時間があるだろう。ここまで約500年。さらに千年ほどは時間がいりそうだった。

「今日は、泊まっていっていいかい?」

「ああ」

雨乾堂は、取り壊されることがなかった。

浮竹が生きているからだ。

ただ、ルキアのために新しく13番隊の執務室と隊首室ができた。

「今日も頑張るか」

熱が引いた浮竹は、京楽のいる一番隊の執務室に仕事を持ち込み、一緒に時間を過ごした。

総隊長となった京楽は、仕事をさぼりまくるわけにもいかず、昔のように雨乾堂にくる回数がぐっと減った。

会いに来れないなら、こっちから会いに行けばいいのだ。

大戦を経てもなお、生きていられる。

それがこんなに穏やかで静かで、そして愛しいものだとは思わなかった。

「京楽、おはよう」

「ああ、浮竹おはよう」

今日の京楽は、花の神が所用でどこかににいってしまったせいで、瞳も神の色も元の黒だった。

「花の神は?」

「なんか、神力を貯めるためとかいってどっかいったよ」

「そうか。黒いままのお前の髪と瞳の色を見るのも、久し振りだな」

「僕はどっちでもいいけどね」

花の神の器になったことで、契約は成っている。

浮竹が死ぬことは、もうない。

「仕事が終わったら、久し振りに甘味屋にでも行かないかい」

「行く!」

浮竹が食いついてきた。

翡翠に溶けた浮竹は、たゆたうように人生を漂っている。その手を繋ぎ止めるのは、京楽の役割だった。

翡翠に溶けて。

桜のように、溶けて溶けて。

ただ、たゆたう。

けれど、愛し合う。

翡翠は、愛し合うことで輝きを増すのだった。






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さよならを。

文に、想いをしたためた。

さよならを。

口ではたくさんを語れないから。

ユーハバッハの侵攻により、霊王が死んだ。

浮竹は、死神としての矜持を守り、ミミハギ様を解放し、神掛をした。

残り僅かな命。

その場で力尽きなかったことが、奇跡のようだった。

けれど、刻々と死への時間は近づいている。

「京楽・・・・愛してる」

「僕も愛してるよ、浮竹」

生命維持装置に繋がれることを拒否した浮竹は、雨乾堂にいた。

ユーハバッハは、一護が倒した。

もう、未来は明るい。

でも、京楽の未来は明るくなかった。

「俺はもうすぐ死ぬ・・・・別れをいいたい」

「だめだよ、死んじゃだめだ!」

京楽は涙を流しながら、細くなった浮竹の体を抱き締めた。

もう、食事をすることもできず、ずっと点滴に管に繋がれていた。

「京楽・・・・お前と出会えて、本当によかった」

心からの安堵の言葉に、京楽の目から涙が零れた。

「浮竹・・・・ああ、神様。どうか浮竹の命をもっていかないでください」

「伝えたいことはたくさんある・・・・でも、時間がもうないようだ」

浮竹は、京楽の手の中で深い昏睡状態に陥り、そのまま息を引き取った。


愛しい人がいなくなった雨乾堂に、今日も京楽は訪れた。

いつものように、笑ってきたのかと、微笑みかけてきてくれる麗人は、もういない。

京楽は総隊長だ。責務がある。

いつまでも、浮竹のことを引きずっていてはいけないのだと分かっていても、悲しみは治まらなかった。

雨乾堂を取り壊し、そこに浮竹の墓を作ることになった。

浮竹の遺言だった。

ある日、浮竹の持ち物を整理していると、一通の手紙が混じっていた。

京楽へ。

そう書かれてあった。

中身を読んでいく。

どれほど浮竹が京楽を愛していたのかが、そこに綴られていた。

「こんなのずるいよ、浮竹・・・・・・・もう君は、いないのに」

隻眼となった目から、ぽろぽろと涙が零れ落ちた。

(俺はお前を愛している。たとえ先に逝くことになっても、この想いは永遠だから。永遠の愛をお前に、京楽。どうか泣くな。笑って、俺のことを懐かしむようになってくれ。どうか・・・お前が、俺のせいで狂わないように)

「すでに狂ってるよ・・・・・・」

愛に狂っている。

「大好きだよ、浮竹」

手紙を、鬼道で燃やす。

「君のいない世界は、色がない」

京楽の瞳に映る世界は、モノクロだった。

「君のいない世界なんていらない・・・と言いたいところだけど、そういうわけにもいかないからね」

本当なら、君の後を追いたいくらいには、愛に狂っている。

その日、取り壊しが決まった雨乾堂で、最後の夜を過ごそうと京楽は雨乾堂で寝た。

夢の中に、浮竹が現れた。

「俺がいないからって、くよくよするな」

「無理だよ、浮竹・・・・こんなにも愛してるのに」

「俺も愛している。でも、未来は続いている。いつかきっと、未来でお前に会えるから。いつか同じ場所に辿り着くから・・・それまで、ずっと待ってるから、俺は先に逝く。京楽も、人生をほどほどにしてこっちにこいよ。また夢の中で会いにいくから。そして、いつかきっとお前にもう一度、会いにいく」

そう言われて、ふっと心が軽くなった。

人生はまだまだ長いが、浮竹は京楽の心の中にずっと生きている。

いつか、同じ場所に辿り着ける。

また、夢の中だが、会いにきてくれると誓ってくれた。いつか会いにきてくれると言ってくれた。


雨乾堂は取り壊されて、浮竹の立派な墓ができた。

「君が僕の中にいる・・・・いつか、そっちにいくまで、待っててね」

墓石に酒を注ぐ。

さよならを。

あえて、言わない。

また、いつか。

きっとまた、巡り合える。

たとえ死神でなかったとしても。

いつか、巡り合えると信じて。



「僕は京楽春水っていうんだ。君は?」

白い髪をした少年は、浮竹そっくりだった。

「えっと・・・・春風十四郎です」

名前まで同じ。流石に苗字は違うようだが。

「会いにきた、京楽」

「十四郎・・・・愛してる」

「俺もだ、春水」



ほら。

きっと。

会える。

さよならは、だから言わない。



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恋する瞬間 プロポーズ

ルキアが現世にいられる5か月が終わった。

卒業式は滞りなく終わり、ルキアは尸魂界に戻ることが決まった。

一護は国際大学に進んだ。

ルキアは、週末になると、黒崎家に顔を出した。

「ルキア・・・・」

「好きだ、一護・・・・・・」

その日のルキアは、酔っぱらっていた。

しきりに体を押し付けてきて、一護の我慢も限界を迎えてしまい、幸いにも家族は一護を残して旅行に出かけていたので、体を重ね合った。

「あ、一護・・・・・」

「好きだ、ルキア・・・・」

何度も混じり合った。

一つに溶けてしまうのではないかと思った。

幸福な微睡みの中、ルキアは思う。

一護と結ばれてよかったと。

一護は、大学2年になると、一人暮らしを始めた。

バイトで貯めたお金を使い、2部屋あるアパートを借りた。

ルキアが、週末になると転がり込んできた。

今までのように、家族を気にすることなく過ごすことができて、一護もルキアも、体を重ねあうことに後ろめたい思いをすることがなくなった。

「今日は何が食べたい?」

「んー。キムチチャーハン」

「わーった。材料買いに行くから、一緒に行こうぜ」

土日になるとやってくルキアに、現世の好きな食べたいものを食べさせてやり、デートに出かけたりもした。

「なぁ、ルキア」

「ん?なんだ」

「明日、触れ合い動物園にいこう。ルキア、うさぎ好きだろ?チャッピーじゃないけど。今年はうさぎ年だし」

「触れ合い動物園?なんだそれは」

「犬とか猫、うさぎとかモルモット、あとはアルパカとかカンガルーとかまぁ、いろいろいるんだけど・・・・・」

パンフレットを見ながら、一護がこれだと、そのパンフレットをルキアに差し出した。

「ふむ・・・そう遠くはないな。触れ合えるとは普通の動物園ではできないからな。よいな、行きたい」

「じゃあ、決まり。明日はデートな」

「デートか・・・・」

始めてのデートは水族館だった。甘酸っぱい思い出だ。

あれから2年が経った。

ルキアは土日になると、現世の一護のアパートに転がり込んでくる。それを当たり前のように、一護は受け入れた。

次の日、触れ合い動物園に出かけた。

うさぎに人参をあげて、ルキアは目をキラキラ輝かせていた。

「抱っこ、してもよいだろうか?」

係員に尋ねると、そっとならと言われて、壊れものを扱うように一匹の子うさぎを抱き上げた。

子うさぎは、動くこともなくルキアの手の中でじっとしていた。

「写真とるぞ」

スマホで、一護はルキアがうさぎを抱っこしている写真をとった。

いろんな場所で、二人で写真をとりあっていて、スマホと伝令神機には「ルキアと一護」という
フォルダができてしまっていた。

写真の数は、年月を経るごとに増えていった。

夏きがきて秋がきて冬がきて、また春がきた。

一護は、大学3年生になっていた。

将来の仕事は、翻訳家になるのが夢だった。ドイツ語の翻訳家を目指し、3年の夏に2カ月留学した。

その間は、ルキアとはスマホでもやりとりができず、一護はとにかくルキアは寂しい思いをしていた。

「なぁ、ルキア」

「なんだ、恋次」

「ルキアは、このまま中途半端に一護と付き合うのか?」

「中途半端とはなんだ!」

「だって、そうだろう?婚姻もしないまま、ずっと付き合うだけなのか?」

はっとなった。

一護と付き合いはじめて3年以上になる。でも、好きだ、愛していると言ってくれるが、結婚のことについては何も言ってくれなかった。

ふとした不安感に襲われて、ルキアはその日恋次と夜まで飲み明かした。

「一護は、人間なのだ。死神の私と婚姻など・・・・・」

「前例がないわけじゃないだろ?一護の父親の一心さんは、死神でありながら、一護の母親の、人間と結婚して子供が生まれた」

「私に、死神をやめろと言っているのか?」

「いや、そうじゃねーよ。でも、それくらいの覚悟がないと、これから先やっていけないぞ。もうすぐ、一護も大学卒業して社会人になるんだろ?」

「それはそうだが・・・・一護と、結婚か・・・・・」

ルキアは、酒をぐいぐい飲んだ。

そして、酔っぱらって、恋次を殴った。

「いってぇ」

「貴様が悪いのだ!私を不安にさせるから!」

「それは、一護に言えよ」

殴られた頭を押さえながら、酔っぱらったルキアをルキアをおんぶして、朽木家にまで送り届けた。


一護が、留学から帰ってきた。

その一報を聞いて、ルキアは土日でもないのに、一護の家に転がりこんだ。まとまった休みをもぎとっていた。

「一護、ずっと会いたかった!」

飛びついてくるルキアを抱き締めて、一護はルキアが少しおかしいのに気づいた。

「どうした、ルキア」

「・・・・・・」

ルキアは、しばし無言だった。

「貴様は、このままでいいのか?」

「何がだ」

「このまま、私と付き合い続けることだけで・・・んっ」

唇が重なった。

「参ったな・・・秋頃までとっておこうと思ってたんだけど」

ルキアの手に、一護は指輪をはめた。

「エンゲージリング。俺と結婚してくれ、ルキア」

「一護・・・・・・・!」

ルキアは、アメジストの瞳から涙をポロポロ零しながら、微笑んだ。

「喜んで!貴様と、結ばれてやる」

恋する瞬間は一瞬。

でもその恋は、永遠と続くのだった。



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恋する瞬間 恋は止まらない

なんだかんだで、無事に現世に戻ってきた二人は、一心に無断外泊について怒られた。

それさえ甘酸っぱくて、二人はもじもじしていた。

付き合い始めたばかりなのに、周囲は婚姻まで考えているようで。

一護はその覚悟も決めて、いつか再度ルキアにプロポーズしようと思った。

「ルキア、大好きだ」

「私も好きだ、一護」

2回目のキスをした。

味はしなかったが、甘ずっぱい気がした。

それから、また平和な毎日が訪れた。

一護は、ルキアと交際をしだしたことを周囲に告げて、驚かせていた。

「やっぱり、一護は朽木さんとできてたんだね」

たつきの言葉に、ルキアが顔を真っ赤にする。

「できていたというか、できたのはつい最近なのだ・・・」

「じゃあ付き合いだしてまだ日が浅いんだ」

井上が、残念そうにしていたが、相手がルキアと知って、一護とルキアを祝福してくれた。

「朽木さんも、黒崎君も幸せそう。いいなぁ」

季節は冬なのに、二人には春が訪れていた。

「私のところにも、黒崎君みたいな王子様現れてくれないかなぁ」

井上の言葉に、ルキアが赤くなる。

「い、一護は王子様なんかじゃないぞ。む、むしろ魔王だ!」

「魔王!なんかかっこいい!」

その日のうちに、魔王一護とかいうわけのわからないあだ名が、一護につけられた。

「魔王ってなんだよ、ルキア」

「だ、だって!結婚を誓いあいそうになった桐蔭殿から、私をさらっていったであろう。桐蔭殿はとてもできたお方で、王子様のようであった。だから、一護は魔王だ」

「最近はやりの、異世界アニメかなんかの見すぎだ、お前は」

一護は溜息をついて、魔王とか呼ばれるのを好きにさせていた。

「一護、貴様は何故、皆に私と付き合い出すことを言ったのだ?」

「ん?別に意味はあんまないけど・・・・隠れていちゃいちゃとか面倒じゃねーか」:

「いちゃいちゃ・・・!」

ルキアは真っ赤になった。

「まぁ、学校では極力我慢するけど、キスしたりハグしたりしてーじゃん」

「たわけ!そのようなこと、学校で!」

「まだやってもいないのに、怒るなよ」

「う、うむ・・・・・そうだな」

昼休みになって、屋上で昼食をとった。

メンバーは一護、ルキア、井上、石田、茶虎。

「それにしても黒崎が、朽木さんと付き合いだすなんて、てっきり、もう付き合っているものと思ってたのに・・・・・」

石田の言葉に、茶虎も頷いた。

「はたから見ればラブラブカップルだった」

「な、な、な・・・・」

ルキアは真っ赤になって、オレンジジュースを飲みほした。

「今までの私のどこが、一護とラブラブカップルなのだ!」

「えーだって、登下校は一緒、教室移動も一緒、休み時間には二人でいることが多いし、昼食をはまぁみんなととってたけど・・・・・」

井上の言葉に、くらりとルキアは眩暈を覚えた。

「これのどこが、カップルじゃないっていうんだろう?」

「うう・・・・・」

ルキアは頭を抱えた。

一護は、気にせずにコーヒーを飲みながらパンをかじっていた。

「全部貴様が悪い!責任をとれ、責任を」

「責任とって、付き合いだしてるだろ」

「う、そうであった・・・・私と貴様は、付き合い始めているのだったな」

ルキアの手をとり、抱きしめる。

「な、皆の前で!」

ルキアはさらに真っ赤になった。

「見せつけてくれるね」

石田が、パンを食べながらそう言う。

「青春だな」

と茶虎が。

「あーあ、いいなぁ朽木さん。私も黒崎君にそんな風に扱ってもらいたい」

「井上まで!」

皆に茶化されて、ルキアは真っ赤になって縮こまるのだった。

昼休みを終わるチャイムが鳴って、皆それぞれのクラスに戻っていく。

1年の時は皆同じクラスだったが、3年になってルキアと一護は同じクラスだが、井上、石田、茶虎とは違うクラスになっていた。

授業が全て終わり、一護が鞄を手にルキアに声をかける。

「一緒に帰ろうぜ」

「う、うむ」

いつもなら、何も言わずに一緒に帰るのだが、恋人同士になってから、何故か少しぎこちなくなった。今日の昼休みにハグされたけど、あれは別らしい。

自然体であろうとすればするほど、相手を意識してしまう。

まぁ、それも長くは続かなくて、2週間も過ぎる頃には、告白する前のように自然体で二人は過ごしていた。

「ねぇ、朽木さんは黒崎君と何処まで進んだの」

「な、な、な!」

興味本位の井上の質問に、ルキアは真っ赤になって何も言えなくなった。

「その様子だと、最後までいっちゃたんだね」

いや、全然違うから。

ルキアの代わりに、一護がそう言った。

「俺らは清く正しく交際してるんだよ。キスとハグまでだ」

「きゃー、清く正しくだなんて!」

井上がくねくねしていた。

暴走していく井上を放置して、その日も一緒に帰宅する。

「そのな・・・貴様と、寝るのが・・・すごいドキドキして・・・・・」

寝る前に、いつものようにルキアを抱いて眠ろうとしたら、ルキアがそう言って小さくなった。

「別に、手出したりしないから、安心しろ」

「私では・・・その気にならぬか?」

アメジストの瞳をうるうるさせて、見つめてくるルキアに、一護も理性が吹き飛んだ。

「ルキア・・・・・」

家族がいるのに。

気づかれたら、やばいのに。

分かっていても、止まらなかった。

その日、二人は体を重ねあい、一歩大人の階段を踏み出した。

翌日は休みだったので、とろとろになってしまったルキアを見る者が、一護だけだったので安心できた。

ルキアは、まだ余韻を残したけだるげな表情で、ベッドの上で寝そべっていた。

「いちご・・・・好き・・・・」

「ルキア・・・・」

睦み合うことはできないので、キスを何度も繰り返した。

「ああもう、なんでお前はそんなにかわいいいんだ」

「いちご・・・・・?」

「やっぱ、清く正しく交際するべきだった」

「私と関係をもったのが、嫌だったのか?」

不安そうなルキアの頭を撫でた。

「違う。一度味わってしまうと、貪欲になりそうで怖い」

「私は、一護になら・・・・・」

「ルキア、あおらないでくれ。我慢するの、けっこう大変なんだから」

「す、すまぬ」

ルキアは真っ赤になった。

毎日、同じベッドで抱き締めあいながら寝た。

学校で、時折キスをした。

告白してからの毎日が新鮮で、気づけば5か月という時間が過ぎ去ろうとしていた。

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恋する瞬間 恋と気づいた時

ルキアは、水曜に現世に戻ってきた。

「義骸の具合、どうだった?」

「あ、ああ。それはもうよいのだ」

「そっか。京楽さんの話を聞いていてさ。京楽さんは浮竹さんの大切な相手で。それを考えていたら、俺の大切な相手はルキアなんだなって思ったんだ」

ルキアは、顔を真っ赤にした。

「たわけ!なんだそれは!」

「いや、なんか魂のレベルで繋がりあってるっつーか。とにかく、ルキアは俺にとって「特別」なんだなーって思って・・・・・・」

「たわけが・・・・」

ルキアは、平静に戻っていた。

ルキアにとっても、一護は特別だ。

だが、特別すぎて、好きとか嫌いとか、そんな感情が沸いてこなかった。

「そのな・・・・見合いを、したのだ」

「え・・・・」

「桐蔭那由他という方で・・・13番隊を立て直すのに尽力を尽くしてくださった方で・・・」

「ルキア、そいつと結婚するのか?」

「このままいけば、そうなるだろうな。貴様には井上がいることだし、私は大人しく貴族としての責務を果たすよ」

ルキアの言葉に、一護が叫ぶ。

「井上とはなんでもない!告白されたけど、断った!」

「え・・・・・・」

今度は、ルキアが困惑する番だった。

「だって、貴様は井上のことを好いて・・・・・・」

「ああ、仲間として大切だ。好きだ。でも恋愛感情じゃない。恋愛感情で誰を好きだって聞かれると・・・・多分、ルキアだ」

ぶわりと。

ルキアの大きな紫紺の瞳から、涙が零れた。

「貴様は・・・・こんな私を、好きだというのか?」

「ああ。大好きだ。きっと、これは恋だ。今、恋してる瞬間なんだ」

「貴様は、わけのわからぬことを・・・・・」

「見合いなんてやめろ。俺を選べ!」

「私は・・・・・」

ルキアは逡巡する。

でも、魂まで繋がった仲なのだ。

答えは、初めから決まっていたのだ。

「貴様が、好きだ・・・・・・」

「ルキア。俺も、お前が好きだ・・・・・」

影が重なる。

初めて、異性とキスをした。

ルキアの細い体を抱き締めて、一護は思った。

ルキアを大切にしたい。ずっと一緒にいたい。でも、高校の残りの生活は5か月だ。

「なぁ。付き合おう、俺ら」

「う、うむ・・・・・・」

ルキアは真っ赤になりながら、頷いた。

「それでな。高校を卒業したら、定期的に俺のところに来い。好きなら、それくらいできるだろう?」

「貴様は、無理難題を、軽くおしつけるな・・・・」

「ルキアが会いにこいななら、俺が定期的に尸魂界に行く」

一護は、本当に尸魂界に出向くつもりだった。

「貴様ならしかねぬな。分かった、なんとか月に数回は会えるように、上とかけあってみよう」

「それに、会えないときはメールとかで、連絡取り合うことも今じゃできるし・・・空白の17カ月を思えば、毎日会えないことくらい、なんでもないさ」

「そうだな」

告白しあって、心が軽くなった。

「桐蔭殿には、悪いが見合いはなかったことにしてもらおう」

「お前が見合いしてそのまま結婚するってんなら、俺はお前をさらっていく」

一護は、本気だった。

尸魂界からルキアをさらって、現世も捨てて、虚圏にでも行こうとするだろう。

「帰ってきてあれだが・・・話は早いほうがよい。今日、もう一度尸魂界に戻り、桐蔭殿と話しをつけてくる」

「俺も一緒に行く」

「しかし・・・・・」

「俺の大切な恋人だ。見合いを断るのには俺の責任もある。俺もちゃんとその人と話をしたい」

一護の決意に、ルキアは止めることができないと判断して、尸魂界から戻ってきたばかりなのに、また尸魂界に行くために、穿界門を開けてもらった。

先週のように、一護と一緒に尸魂界に行く。

でも、行く場所は同じだ。

まず朽木家に行き、白哉にルキアは自分の心を正直に告げた。

白哉は許してくれた。一護と付き合うことも。

「黒崎一護・・・・兄は、ルキアの「特別」であることは知っていた。恋愛感情に至っていなくとも、いずれそうなるだろうと思っていた」

「白哉・・・・・・」

「妹を、幸せにしてやってくれ」

「ああ、約束する。俺は、ルキアのために生きる」

少し遠いが、桐蔭家まで一護とルキアと白哉は訪れた。

「どうしたのですか、ルキアさん」

那由他は、一護を見て、ああと納得した。

「愛する人がいることに気づいたのですね。私との縁談は、なかったことで、大丈夫です」

「自分勝手ですみません、那由他殿・・・・・」

「よいのです。幸せに、なってくださいね」

暖かな手で頭を撫でられて、ルキアは嗚咽を漏らした。

「すっげー紳士・・・・・」

一護も、ルキアの相手に選ばれるわけだと、納得してしまった。

「どうか、永久(とこしえ)の愛が、あなたたちにあらんことを」

「ありがとうございます、那由他殿・・・・・」

「ありがとう」

一護も、礼を言っていた。

「兄には、迷惑をかけた」

白哉が頭を下げる。それに驚いて、那由他は慌てた。

「そんな、白哉殿、顔をあげてください。ただ、縁がなかった。それだけのことです。桐蔭家は、これからも13番隊を支持します」

はらはらと、ルキアは泣きっぱなしだった。

まるで自分が悪いような錯覚を覚えて、一護はルキアを抱き寄せた。

「幸せになるから。ありがとう、那由他さん」

ルキアと一護と白哉は、朽木家にまで戻ってきた。

「今日はもう遅い。兄は、今日は朽木家に泊まっていけ」

「え、いいのか白哉」

そんな許しが出るなんて思っていなかったので、一護は驚いた。

「兄は、いずれ義弟になるかもしれない者。放りだすわけにもいくまい」

まだ、付き合うことを決めたばかりなのに、話は先へ先へと進んでしまっていて、ルキアも一護も、なんともいえない顔をしていた。





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恋する瞬間 ルキアの見合い

「朽木ルキア、只今戻りました、兄様」

「ルキアか・・・見合いだが、よいのか?このまま話を進めても」

「はい・・・・・」

ルキアは、胸の中で一護を思った。

一護。

裏切ることになるのだろうか。一護とは、魂のレベルで繋がっている。そんな繋がりを絶つように、見合いをすることになった。

相手は、4大貴族の次に並ぶ大貴族、桐蔭家。

桐蔭那由他(トウインナユタ)という、年の頃は20前後の若者と、見合いをすることが決まっていた。

多分、見合いをすませたら縁談に話は進むだろう。

桐蔭家には、13番隊を存在から立て直すしてもらうのに、かなりの財力を貸してもらった。

断るに断れない。

すぐにちよが呼ばれ、ルキアは死覇装から朽木家の姫君にふさわしい着物を着て、髪を結いあげてもらい、アメジストの髪飾りで髪をまとめられた。

薄く化粧をして、最後に口に紅を塗る。

「美しいです、ルキア様」

「ありがとう、ちよ」

そんなルキアを伴って、白哉は何か言いたげにしていたが、無言で桐蔭を待たせている部屋に、ルキアと共に入った。

見合いは、朽木家で行われた。

「ルキアさん・・・今日は一段と美しいですね」

「那由他様・・・ありがとうございます」

「この度は、急な申し出にも関わらず、見合いを受けていただき感謝しております」

「それはこちらこそ・・・桐蔭家の力がなければ、13番隊は隊長を失ったばかりで、早々に立ち上がることもできなかったでしょう。感謝しているのです」

ルキアは美しかった。今日のために用意しておいた着物もよく似合っていた。

「ルキアさん・・・・無理を、していませんか?」

「何をですか?」

「断っても、よいのですよ。私はルキアさんが好きです。でも、ルキアさんにすでに心に決めた人がいるならば、考えましょう」

「いえ、そのような人物はおりません」

いるとしたら・・・・多分、一護。

でも、一護には井上がいる。

ルキアは、井上が一護に告白するシーンに出くわしていたのだ。

でも、そのまま聞いていられずに走り去った。一護は井上と付き合っているのだと、そうルキアは勘違いをしていた。

「本当なら、縁談を今すぐに・・・と言いたいところなのですが、私も気持ちの整理がついていないのです。しばらく、猶予をくださいませんか」

「時間なら、いくらでもあげましょう。それで私を受け入れて下さるのなら」

「ありがとうございます」

あとは差し障りのない会話を行い、見合いは滞りなく終わった。


一方、仮にできた一番隊の隊舎では、一護が京楽と話をしていた。

「京楽さん・・・ほんとにありがとな。ルキアのこと」

「ああ、気にしなさんな。尸魂界を救ってくれた大恩人の、少しくらいの我儘を聞くくらい、どうってことないよ」

「でも、13番隊は浮竹さんを亡くして、副隊長であるルキアは現世にいて・・・まともに、機能しているんだろうか」

「まぁ、そこらは優秀は3席が二人いるからね。元から浮竹が臥せっていた時は、3席たちが仕事をこなしていたから、問題はないよ」

「そっか。ならいいんだ」」

一護が安堵して、息を吸った。

「尸魂界を見たかい?」

「瀞霊廷なら、ここに来る前に少し見た。大分戦火の爪痕が残ってるけど、少しずつ復旧しているようで何よりだ」

「そうだよ。ただね・・・・・。建物はいくらでも元に戻る。でも、失った人材までは、戻らないんだよ」

京楽は、辛そうに俯いた。

「浮竹さんのこととか・・・・京楽さんも、辛いだろ」

「うん・・・滅茶苦茶年下の君に甘えたいくらい、参ってる。僕はね、浮竹が誰より好きだったんだ。親友だった。大好きだった。それが急にいなくなって・・・涙を零す時間すら、今の僕には与えられていないんだ」

浮竹と京楽は同期で、とても仲がいいと、他の隊長たちの間でも有名だった。学院時代からの付き合いで、数百年という年月を共に過ごしてきたのだという。

一護だったら、とても耐えらえれない。

もしも、相手がルキアだったら・・・・そう思っただけで、寒気がした。

ルキアが居なくなってしまうなんて、考えたくもない。ずっと、傍にいてほしい。

魂のレベルで、結ばれているのだから。

「お墓、雨乾堂の跡に作るんだってな」

「うん。せめて、安らかに眠れるように、ね」

「お墓できたら、俺にも教えてほしい。墓参り、行きたいから」

「うん。今はお墓より、隊舎をまずはどうにかしないといけないから、かなり後になるだろうけど、浮竹は特に君のことを気に入っていたからね。墓参りに行ってあげると、とても喜ぶと思うよ」

もういない浮竹のことで、話を続けた。

総隊長になってしまった京楽は、もう誰にも弱さを見せてはいけないのだからと、一護にだけ弱さを見せた。

浮竹との出会い・・・院生時代の出来事、学院を卒業してお互い席官になったこと、副隊長になったこと、次期は違えど、同じく隊長にまで登りつめたこと。

「はははは・・・聞いてくれて、ありがとね。大分胸がすっきりしたよ」

「京楽さん、俺でいいなら、いつでも話相手になるぜ。一応、メルアド渡しとく」

「ああ、ごめんね。たまに、愚痴かきこむかも・・・・」

「それでもいいさ。溜めこむよりよほどましだ」

「ありがとうね。浮竹が君を大好きだったこと、よく分かるよ。僕も好きになったよ、君のこと」

「照れくさいな」

一護は、頭をぽりぽりとかいた。

「じゃあ、俺はそろそろ現世に戻るから」

「うん、気をつけてね」

「いや、もう敵とかいないから、大丈夫」

「それもそうだね」

お互いに笑いあって、別れた。

京楽は、総隊長になったけれど、心がへし折れてしまいそうな思いを抱え込んでいたのだ。

それを、今回、ルキアの礼を兼ねた一護を利用したのだ。

でも、利用されて一護はよかったと思った。京楽という死神が、飄々として掴みどころのない人物と思っていたイメージが崩れたが、それでよかったのだ。

誰であれ、心に闇がある。

それを吐きだせないことは、とても辛いことだ。

ルキア。

浮竹を失くした京楽。

一護にとって、京楽の中の浮竹は、一護の中のルキアだった。

何があっても、失いたくない。

強く、そう思った。



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恋する瞬間  魂よりも深い場所で

「ねぇ、一護」

たつきの問いかけに、ぶっきらぼうに答える一護。

「なんだよ」

「あんたと朽木さん、できてるでしょ」

ぶーーーーー。

飲みかけだったパックジュースの中身を、一護は吹き出していた。

屋上で、一護、たつき、水色、啓吾と、友人であるメンバーで昼食をとっていた。

いつもならその場にたつきはいないで、代わりにルキアがいたのだが、ルキアは義骸の調子が悪いとかで、今日は浦原商店にいっており、休みだった。

「な、どっからそんな答えが出てくるんだよ!」

「だって、あんた織姫振ったじゃない!好きな人がいるからって!」

井上から、先週告白された。

今は高校3年生。高校時代の終わりまで、あと5か月というところだろうか。

ルキアは、一護の我儘で、総隊長である京楽に、高校卒業までは現世にさせてほしいという我儘を受け入れてくれて、高校生として生きていた。

ルキアはそれに感謝していた。

同じ仲間として戦った戦友たちと、あるいは高校でできた友人たちと過ごす時間がまたできて、それを一護に感謝をしていた。

「またこうして、貴様と一緒に高校に通えるなど思ってもいなかった。貴様には本当に感謝しているのだ」

そう言っていたルキアの言葉を思い出す。

「俺とルキアは、そんなんじゃねーよ。もっと深い・・・なんつーか、魂が繋がってるみたいな・・・・・・」

「おおおお!それは、それほど朽木さんのことを思っているって考えていいんだね!」

「おい、水色」

「いやぁ、一護も大人になったねぇ。やっと女性のよさが分かるようになったんだね」

「ばか、そんなんじゃねぇ!だから、ルキアとはできてねぇって!」

一護がむきになればなるほど、水色はにんまりと笑い、たつきはにやにやして、啓吾は一人取り残されたと涙を流していた。

「なんていうか、ルキアは特別なんだ。好きとか嫌いとかじゃなしに・・・・・」

「織姫を振るほどに、朽木さんのこと好きなんでしょ!だったら、当たって砕けなよ!粉々になったら、回収してボンドでくっつけてあげるから!」

たつきの強い言葉に、一護の心に葛藤が生まれる、

ルキアのことが好きなのだろうか?

確かにルキアは特別だ。ルキアのお陰で死神代行になれて、ルキアのお陰で強くなれて、ルキアのお陰で守る力を手に入れて、ルキアのお陰で守る者たちができた。

全部、ルキアのお陰。

ルキアがいなければ、今頃くすぶって、なんの変化のもない高校生活を送って、それはそれで平和であるだろうが、今の一護から考えてみればそんな生活はありえない。

ルキア。

ルキア、ルキア、ルキア。

誰よりも特別で-------------。

好きとか嫌いとか、考えたことがなかった。

ルキアを、好きなのだろうか。

考え込んで、一護は唸った。

「んー。俺がルキアを好きねぇ・・・・・」

「織姫振ったんでしょ!他に誰が好きっていうのさ!」

確かに、井上を振った。

他に好きな人がいるからと。

その時、心に思い描いた人物は・・・・・ルキア、だった。

「あーもう、たつきうるせぇ!」

「なによ!織姫を振るあんたが悪いんだから!織姫、ずっと泣いてたんだから!」

「井上には、悪いことをしたと思ってる」

「じゃあ、付き合ってあげなよ」

たつきの言葉に、一護が首を横に振る。

「たつき、お前は好きでもない相手に告白されて、それを受け入れるか?」

「受け入れるわけないじゃん」

「それと同じだ。井上のことは好きじゃねぇ。大切な仲間で友人だとは思ってる。でも、それ以上でもそれ以下でもない」

「あーあ。織姫のやつ、こんな一護のどこがいいんだか」

たつきは大きなため息をついた。

「そりゃこっちの台詞だ。俺の何処がいいんだか」

「ま、あんたは見かけだけならいいし、優しいし、面倒見いいし、頼り甲斐あるし・・・・織姫が、好きになる気もち、分からなくもないけど」

「買いかぶりすぎだろ」

「あ、言っててあたしもそう思った」

「あーあ。結局朽木さんとはなんでもないのかー。つまんないなー」

「おい、水色」

茶々をいれてきた水色は、一人会話の中に入れず、涙を流している啓吾を見た。

「ふ、男女恋愛なんて、どうせ俺には縁がないんだ」

「啓吾、しっかりしろよ」

「一護ーーーーー!朽木さんを俺にくれーーーー!」

ばきっ。

音が立つほどに、啓吾を殴った。

「ルキアはものじゃねぇ」

ルキア。

今頃、どうしているだろう。

浦原商店から帰って、黒崎家に帰宅しているだろうか。

チャイムがなり、急いで残りのパンを食べて、一護たちは午後の授業に出た。

授業が終わり、校門のところでルキアが待っていた。

「一護」

「どうしたんだ、ルキア」

「その、義骸の調子が悪くてな・・・・すまぬが、一度、尸魂界に戻ろうと思うのだ」

「急だな。いつ戻ってこれる?」

「多分、来週の水曜には」

「そっか。戻るのはいつだ?」

「明日の昼過ぎだ」

明日は休日だ。

ルキアを見送ってやろうと思った。

「明日か・・・そうだ、俺も尸魂界にちょっと用事があるから、俺もついてく」

「一護?」

「京楽さんに、ルキアの高校生活を許してくれたこと、お礼を直接言いたいんだ」

「そうか。ならば、明日共に尸魂界に戻ろう」

「ああ」

その日の夜も、一護はルキアと同じベッドで眠った。

付き合っているわけでもないのに、抱き締めあいながら寝ていた。その距離の近さに、別段意味があるわけではなかったが、これで付き合っていないというには無理があると、たつきや水色、啓吾たちに見られたら、言われるだろう。

「ルキア、起きろ。朝だぞ」

「ん・・・・もう少し、寝る」

「おい、ルキア」

ベッドの上でもぞもぞしたルキアは、一護の服の裾をしっかりと掴んでいた。

「仕方ねーな」

一護も、また横になった。

1時間ほどが経ち、ルキアが完全に覚醒する。

「ん・・・一護?」

「俺の服の端、ずっと握ったままだったから、俺も二度寝しちまった」

「す、すまぬ!無理やり起こしてくれてよかったのに」

「義骸の調子が悪いんだろう?無理させられねぇよ」

「義骸はまぁ・・・・いや、なんでもない」

ルキアと一護は起きて、少し遅めの朝食をとった。とりとめのない会話をして、昼食をとり、昼過ぎになった。

「さて、いくか」

「ああ」

黒崎家から出ると、穿界門が目の前に現れる。

それをくぐって、一護とルキアは尸魂界に向かった。


尸魂界は、少しずつ復旧が進んでいるが、まだ戦火の爪痕が大きく残っており、仮に建てられた一番隊の隊舎の前で、ルキアと別れた。

「じゃあ、俺は、京楽さんとこ行ってくるから」

「ああ、私は朽木家に戻る。それから、13番隊の様子を見てから、少し溜まっているだろう仕事を片付ける。来週の水曜には、現世に戻るから」

「ああ、しばしの別れだな。じゃあ、またな、ルキア!」

「一護、京楽総隊長に、私も感謝していると伝えておいてくれ」

「そんなの、自分で言えばいいじゃないか」

「京楽総隊長はお忙しいのだ」

そんなに忙しいのに、会いにいって大丈夫だろうかと一護は思ったが、ルキアが背中を押してくれた。

「京楽総隊長は、尸魂界を救ってくれた恩人と会話をする時間くらい作れるさ」

「ああ、そうだな」

ルキアと、別れる。

また、来週の水曜に現世で会うことになるが。

一護は、知らなかった。

ルキアの義骸の調子が悪いのではなく、ルキアに断れぬ見合いが持ち込まれていることを。

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好きなものは好き8

金曜になって、やってきたルキアはエプロン姿だった。

何を思ったのか、今日の夕飯は自分が作ると言い張った。

「別に、夕飯がどっちが作るのでもいいけどよ」

「たわけ!恋人は、普通女のほうが飯を用意するというではないか!」

「ルキアは、そういうことにこだわらないだろ?」

「それもそうだが・・・・たまには、貴様に手料理を食べさせてやりたい」

ルキアが選んだメニューはカレーライス。小学生でも気軽に作れる、失敗するほうが珍しいメニューだった。

シーフードカレーに福神漬け、サラダ、あとは自分の好物の白玉餡蜜を作った。

「これって、ルキアが白玉餡蜜を食いたかっただけじゃないのか?」

「たわけ!作ってもらっておきながら、その言い分はなんだ!食わせてやらんぞ!」

「俺が悪かった」

一護は腹が減っていたので、素直に謝った。

「ん・・・シーフードカレーもたまにはいいな。美味いぜ」

「そうであろう、そうであろう。私とて料理くらい、できるのだ!」

自分で作ったシーフードカレーを、自分でもなかなかの出来だと言いながら平らげて、ルキアは白玉餡蜜を大目に食べた。

「ぐ・・・・食べすぎた」

「そりゃ、あんだけ食えばな・・・・・」

シーフードカレーを2杯食べて、白玉餡蜜を3杯食べたのだ、ルキアは。

「流魂街にいた時に、こんな思いをしたかったな・・・・・」

ふと、ルキアが流魂街にいた頃の話を聞いた。

いつもスリなどの犯罪に手を染めて、生きていた。恋次を残した仲間は、全て殺されてしまった。

「ルキア・・・今は、俺がいるだろ?」

「ああ。今は、一護がいる。恋次もいたけどな」

恋次という言葉に、一護はピクリと反応する。

「恋次のこと、まだ好きか?」

「好きだが、家族としてだ。兄様を愛しているように、恋次もまた愛している」

「そっか。でも、恋愛感情では俺だけを見ろ。お前は、俺のものだ。永遠に」

「永遠か・・・・」

ルキアは、うっとりとした。

永遠に、一護の傍に在れるのなら、それはそれで幸せだろう。

まぁ、この世界に事象で永遠など存在しないが、想いはせめて永遠になる。

「一護、大好きだ」

その日のルキアは、一護に甘えた。

一護も、ルキアを甘やかせた。

抱き締めて、優しくその黒髪を撫でて、キスをする。

エンゲージリングを光に透かせて、お互いに微笑んだ。

「想いは永遠か・・・・・」

「そうだ。たとえ体が朽ちても、想いだけは永遠だ」

「朽ちることのない愛を、お前に」

「同じく、朽ちることのない愛を貴様に」

その日の夜は、睦み合った。

朝起きると、自分が裸なのに気づいて、ルキアは真っ赤になって慌てて脱ぎ散らかした服を着た。

一護はまだ寝ていた。

「一護、起きろ!朝だぞ!」

「んー・・・・・」

一護が起きる。一護は、ボクサーパンツをはいていた。

「なぜ、貴様だけ裸ではないのだ!私は裸だったのだぞ!」

「いや、裸で寝るって抵抗感あったから」

「それは私とて同じだ!貴様、さては私を抱いた後にこそこそと下着を身に着けたな!」

「こそこそしてねーよ。めっちゃ大胆にはいたから。ルキアは俺が裸のほうがよかったのか?俺の裸を見たいのか?」

「うぐ・・・そういうわけでは・・・・・・」

一護は服を着て、ルキアを抱きしめた。

「昨日のお前、すげーかわいかった」

「な、たわけ!そういうことを、口にするな!」

ルキアは真っ赤になって、一護を殴った。

頭をぽかりと思い切り殴られて、一護がふてくされる。

「昨日は可愛かったのに・・・・・」

「たわけ!」

少し遅めの朝食をとる。めんどくさいので、コーンフレークだった。

いつもは一護が作ってくれるが、一護もたまには手を抜きたい時もある。

「なぁ、ルキア」

「なんだ」

「もっと、お前を抱いていいか?」

まじまじとした顔で迫られて、ルキアは真っ赤になった。

「すすすすす、好きにすればよかろう!」

「じゃあ、週1な。まぁ、無理ならいいけど」

一護とて男。恋人と睦み合いたくもなる。

一護がそういうことを言ってくるのが珍しくて、ルキアは呆けた顔で一護を見つめていた。

ああ、私の一護はかっこいいな。

そんなことを思っていた。

「昼食、何食べたい?」

「白玉餡蜜!」

「昨日あんだけ食っときがら、まだ食い足りないのかよ」

「毎日でも食べれるぞ!」

「へいへい。適当にありあわせの食材で作るか」

一護は、炒飯を作った。

「なあ、ルキア」

「なんだ」

「パンツ、チャッピー柄はやめて、もうちょっと大人っぽいやつにしようぜ」

「たたたたたわけ!」

ぽかぽかと殴ってくるルキアの拳を受け止めて、一護は笑う。

「ルキアなら、もうちょっと大人っぽい下着でも似合うと思う。今度、買いにいこうぜ」

「貴様、恥ずかしくないのか!」

「恋人が好きなかんじの下着つけてくれてたら燃える。それを思えば、恥ずかしくない」

「たわけが・・・・・・」

顔を真っ赤にしながらも、翌日一護好みの下着を買いに行った。一護はけろっとした顔でランジェリーコーナーにいた。

「これなどどうだ」

きわどい布地の下着を選ぶルキアに、一護が首を振る。

「こっちがいいな」

少し大人っぱいかんじの下着だった。

「この程度のものでいいのか?」

「ああ。別にスケスケのネグリジェ着ろとかいうわけじゃねーんだし。こういうので十分だ」

一護が選んだ下着を数枚買って、帰宅する。

日曜日の夜、ルキアと一護は一緒にお風呂に入った。互いに体と髪を洗いあった。

えっちなことはなしだった。

一護が選んだ下着を身に着けるルキアに、一護はごくりと唾を飲み込んだ。

「やっべ。今すぐ脱がせたい」

「ま、まて、たわけ!昨日したばかりだろう!」

「あ、ああそうだな。あんまりがっつくのもなんだしな」

「でも、どうしても貴様がしたいと言うのなら・・・・・」

ルキアを抱き上げて、一護はルキアをベッドに押し倒していた。

「あ・・・・」

「誘ったのは、ルキアのほうだからな」

「分かっておる・・・・・」

一護は、最後まで優しかった。

とろとろに愛されて、ルキアは思う。

ああ。一護のものになってよかった。一護に愛されてよかった。

一護が少し大人っぽい下着を好むということが分かり、その後ルキアはそんな下着ばかりを身に着けるようになるのであった。




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移ろわざる者

最近、体調が芳しくなかった。

肺の発作が収まったと思ったら、高熱を出し、熱が下がったと思ったらまた発作をおこした。

おかげで、最近ろくなものを食べておらず、雨乾堂にいながら点滴を受けていた。

救護詰所に入院したほうがいいと海燕は言うが、浮竹は体調が落ち着いた時は仕事をしたりしているので、入院はしなかった。

「隊長、ほんとに大丈夫ですか?」

「ああ、大丈夫だ。最近は発作の回数も減ってきたし、熱も微熱だし・・・・・」

元から細いのに、更に肉を落とした浮竹の体は軽そうだった。

「とにかく、ちゃんと寝ててくださいね!今日は粥くらいなら食べれそうですか?」

「あまり食欲はないが、薬も飲まないといけないし、多分食べれる」

わざわざ卯ノ花隊長にきてもらい、一度回道を受けた。

体調は芳しくないが、快方には向かっているようだった。

海燕は、昼まで寝ていた浮竹に、昼食をとらせるために一度隊舎のほうに下がった。

ほどなくして、鮭の入った白粥と玉露の茶がもってこられた。

食欲は相変わらずないが、何か食べないとこのままでは何時まで経っても点滴を受けなければならない。

白粥を一口食べた。

美味しいと感じたが、相変わらず食欲は出なかった。

無理をして半分ほど食べた。

「もう無理だ・・・・これ以上食べようとしたら、きっと吐いてしまう」

「隊長、そこまで無理して食べなくていいです!無理なら数口でもいいんですから!」

「でも、せっかく用意してもらったのに」

「そんなことより、隊長の体優先です」

出された薬を飲んだ。あと、最近飲みだした肺の病にいいという漢方の薬湯を口にする。

その薬湯は苦くなく、ほんのり甘味があって浮竹は飲むのに支障はなかった。

他の薬は、苦いか味がしないかのどちらかだった。

「全部の薬が甘かったら、喜んで飲むのにな」

ふとそう思う。

今日もまたまだ熱が出ていた。

微熱だが、念のために寝ていることにした。

「はぁ・・・・最近天井ばかり見ている気がする」

「浮竹、大丈夫かい」

「京楽!」

暖簾をくぐって入ってきた京楽に、浮竹は喜びの声をあげた。

体調が芳しくないのと、京楽の仕事が溜まっていたせいで、最近来てくれなかったのだ。

「京楽、お前がくると少し元気が出る気がする」

「なら、もっと早くに来るべきだったねぇ」

頭を撫でられた。

半身を起こして、京楽の手土産のおはぎを見るが、食べれそうになかった。

「すまない、京楽。おはぎは海燕にでもやってくれ。食欲がないんだ」

「熱・・・まだあるね」

こつんと、額と額を合わせてくる。

大好きな京楽。傍にいるだけで、こんなにも世界が色を変える。

「浮竹、元気になったらまた甘味屋にでもいこう」

「ああ」

「まずは、こんな点滴を受けなくていいように、ちゃんと食べることだね」

「食欲がないが、少しずつだが食べれるようにはなっている。初めは食べていたら吐いてしまって、どうにもならなかったんだ」

「かわいそうに」

京楽は、浮竹を優しく抱きしめた。

「ああ、こんなに細くなっちゃって・・・・・」

「ここ2週間ばかり、果物とかしか口にしていないし、点滴ばっかりだったからな」

浮竹は、苦笑した。

京楽の胸が痛む。

「ああ、早く元気になっておくれ」

「お前の顔を見ていたら、元気がわいてきた。昼食半分残したんだが、何か消化にいいものをもってきてもらう」

海燕を呼んで、粥をまたもってきてもらった。

はじめから少しの量にしておいたので、完食できた。

「えらいね、浮竹」

「隊長は、薬より京楽隊長と会せたほうが、元気になるの早いかもしれませんね」

海燕は、そういって食器をもって下がっていった。

「キスしていいかい?」

「いいぞ・・・・んんっ」

舌が絡むキスを繰り返す。

もう、1か月近く交わっていない。

京楽は我慢しているが、それは浮竹もだった。性欲は強くないが、週に一度は交わるのだから、今の状態は少し苦しかった。

「元気になったら、君を抱きたい」

真正面から告白されて、浮竹は頬を赤らめる。

「すまないな・・・我慢させてしまって」

「仕方ないよ。君の体が弱いのは、今に始まったことじゃないし」

浮竹は、京楽を抱き締めた。

「その、抜いてやろうか?」

「だめだよ、熱あるんだから」

「むー」

「元気になったらね」

「ああ」

キスを何度も繰り返した。

まるで交わっている時のように。

「今日は久しぶりだから、泊まっていくね」

「ああ、そうしてくれ。暇なんだ。海燕も仕事があるから、いつも俺に構ってばかりいられないし」

天井ばかりを見ているのに飽きた。

その日は、京楽は隣に布団を敷いて寝た。寝る前に、熱がさがったので、京楽のものを抜いてやった。

翌日になると、昨日の体調の悪さが嘘のように元気になっていた。

まずしたことは、風呂に入った。点滴は外され、普通のご飯も食べれた。

たまっていた仕事を処理して、京楽と久しぶりに・・・・半月ぶりくらいに、甘味屋へ行った。

臥せっていたのが嘘のように、たくさん食べた。

「ねえ、今夜いい?」

「あ・・・ああ」

抱いていいかと、聞かれているのだ。

よいと答えてから、久し振りだなと思った。


夜になり、その日も京楽は雨乾堂に泊まった。

「久しぶりだし・・・病み上がりだから、あんまり無理はさせられないね」

「気にしなくていいのに」

「だめだよ。また熱を出したりしたらどうするの」

「う・・・・」

もっともなことを言われて、浮竹は押し黙った。

キスをされて、長い白髪を撫でられた。

褥にとさりと、押し倒され、長い白髪が畳の上に散らばる。

「ん・・・・・」

隊長羽織と死覇装を脱がされていく。肋骨が少し浮き出ているその細さに、京楽が言う。

「もっと食べて、肉つけなきゃね」

「あっ」

胸の先端をひっかかれ、舌で転がされた。

全身の輪郭を愛撫されて、胸から鎖骨にかけてキスマークを残される。

「んっ」

潤滑油に濡れた指が入ってきた。

久し振りの感覚に、腰が浮く。

「ああ!」

後ろで感じるのも久しぶりすぎて、あっけなく浮竹はいってしまった。

「早いね・・・・」

「たまってたからな」

指をひきぬかれて、京楽のものが入ってくる。

「ひあああああ!」

引き裂かれる感触は、されど悦びで。快感ばかりを生み出した。

「やっ」

前立腺ばかりをすりあげて、突き上げてくる動きに、ふるふると首を横にふる。

「もっと、乱暴にしていいから・・・・お前で、満たしてくれ」

「だめだよ。優しくしたいんだから」

浮竹の中を犯していく。

「ああ!」

腹の奥までくわえこまされて、孕むと思った。

「んん・・・・ああああ!」

行為は荒々しくはなく、最奥まで突き上げられるが、いつもより激しくはなかった。

「やああああ」

最奥をこじあけられるように、熱をたたきつけられた。

じんわりと広がっていく高温に、内部がきゅうきゅうと疼いた。

「あ、もっと・・・・・」

「十四郎・・・・愛してるよ」

「俺も愛してる・・・・・春水っ」

何度も突き上げられて、浮竹も精液を吐きだして、尽きた。

京楽は加減しようとしていたが、あおって、京楽が満足するまで抱かれた。

「風呂にいこうか」

「あ、こぼれる・・・」

京楽の子種が抜き取られたことで、零れていく。

「いっそ、孕めればいいのに」

「何その殺し文句。まだ抱かれたいの?」

「お前になら、何度だって抱かれてやる」

「全く、君って子は・・・・」

ちゅっと、音がなるキスをされて、風呂場につれてこられて中にだしたものをかき出された。

髪と体を洗う。キスマークは太腿とかにまでついていて、京楽が満足するまで抱かれたので浮竹は大分体力を消耗していた。

風呂からあがり、着物を着ると、浮竹は早々に眠ることにした。

「今日は久しぶりすぎて疲れたので、もう寝る。京楽も寝ろ」

同じ布団で、互いを抱き締めあいながら、体温を共有していると、意識は闇に滑り落ちていった。

「ん・・・・寒いね」

ふと、京楽は夜中に目を覚ます。

毛布も布団も、浮竹がもっていってしまっていた。

引っ張ってしまった勢いで起こしてはいけないと、押し入れからもう一組の布団をしいて、そこで寝た。

「おはよう」

「ああ、おはよう・・・そのすまない、どうやら寝相が悪くて一人で布団と毛布を、もっていってしまったみたいで・・・・・」

「そんなこと、いいんだよ。熱はない?」

額に手を当てられる。

幸いなことに、熱はなかった。

「朝ごはん食べれそう?」

「ああ、もう元気だし食べれる。心配をかけてばかりだな、俺は」

「心配をかけさせないのが一番いいけど、君は体が弱いから。仕方ないよ」

海燕を呼んで、朝餉を用意してもらった。

念のために、薬湯も用意してもらった。その薬湯は高くて、京楽がわざわざ手に入れた高価な品であった。味も甘味があるように、調整してもらっている。

「ありがとう、京楽。愛している」

浮竹は微笑んだ。麗人は、真っ白な髪に白い肌、翡翠の瞳をもっていて、笑顔がとても似合う。

「僕も愛してるよ、浮竹」

「あの、朝から恥ずかしいこと言ってないで、早く食べてください」

じと目の海燕など気にせず、二人はキスをした。それから朝食を食べながら、合間に螺鈿細工の櫛で浮竹の長い白髪を櫛削る。

「俺の存在は空気か・・・・・・」

二人のかもしだす、熱を孕んだいちゃいちゃぶりに、海燕はあてられて外に出た。

「はぁ・・・・俺は空気、空気・・・・」

自分に言い聞かせて、いちゃこらしている二人を急かして、京楽を8番隊まで送り、浮竹に仕事を渡す。

「海燕」

「なんですか、隊長」

「お前は、空気なんかじゃないぞ。ちゃんといるって分かってる。それでも、いちゃつくけどな」

「はぁ・・・・あんたも京楽隊長も、どっちも意地が悪い」

「そうかもな」

はははと、笑う浮竹は、元気そうだった。

元気なら、それでいいと思う。ふと、庭を見ると梅の花が咲いていた。

それを切って、花瓶に活けて、飾った。

「海燕?」

「あんたらは、梅の花みたいに咲いて、でも散ることなく今度は季節がきたら桜になって、紫陽花になって、朝顔になって・・・・・・」

「まるで、頭の中に花が咲いているといわんばかりだな」

「咲いてるでしょう」

「咲いているかもな」

くすくすと笑って、浮竹は梅の花を見た。

「もうすぐ、春だな」

「そうですね」

季節は移ろう。でも、移ろわないものもある。

それは浮竹と京楽の関係。

何百年経とうと、変わらぬ愛の軌跡。

移ろわざる者。

それが、二人なのだ。












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キスマーク

ある日、隊長といつも逢瀬に使う館で、俺は隊長のうなじにキスマークを残した。

それを知らない隊長は、翌日普通に6番隊の執務室にきて仕事を始めた。隊舎内を移動する時、ちらちちらと、いつもより多い視線を浴びているのに気づく。

移動するときふわりと黒髪が揺らめいて、隊長のうなじが見えた。

やっべ。

痕、残しすぎたかな。

でも、隊長は俺のものだし、他のやつが隊長に手を出すのを防ぐには効果はあった。

「何を呆けておる」

隊長にそう声をかけられて、はっとなる。

「いえ、なんでもないっす」

隊長の整いすぎた顔に見惚れていたと言ったら、きっと愚か者だと言われるだろう。

執務室で仕事をしだす前に、3席の利吉が小さな声で隊長に耳打ちした。

「うなじにいっぱいキスマークがあります」

おのれ。

ばらすとは卑怯な。

それを聞いて、ゆらりと隊長の霊圧が高くなった。

「恋次、こちらに来い」

「いや、隊長、あのねこれは」

「見えるかもしれない場所には、痕を残すなとあれほど言っていたのを、覚えておらぬのか」

「いえ、覚えてますけど最近の隊長は、色香が増して他の死神たちが食い入るように見てくるから・・・・・それがいやで、虫よけの意味かねて、わざとやりました」

「破道の8、白雷」

「ぎゃわわわわわ」

かなり加減された鬼道であった。普通なら真っ黒こげになる。

ちょっとしびれる程度の鬼道に、隊長が思ったより怒っていないことに気づく。

「怒ってないんですか、隊長」

「色香云々は分からぬが、容姿のせいで注目を集めるのは確かだ」

「そうなんですよ。隊長めっちゃ美人だから、俺心配で」

「私を信じれないのか?」

隊長の悲しそうな表情に、俺はしまったと思った。

俺の言動が、隊長を不安にさせている。

俺は隊長を抱きしめた。

隊長は、俺の腕の中で静かに立って、そして、背中に手が回される。

「私は、お前しか見ていない。それでも心配なのか」

「隊長・・・・・」

顔を寄せると、隊長は目を閉じた。

キスをすると、隊長の体が僅かに震えた。

「私には、恋次、お前だけだ。私が心から愛するのは。言葉だけでは信じられぬか?」

「いいえ、隊長。信じます。信じるしかできません」

隊長を愛している。

隊長しか、目に入ってこない。

隊長を抱き上げて、隊首室へといくと、隊長は首を振った。

「昨日睦み合ったばかりだ。今日はしない」

「最後まではしません」

隊長の隊長羽織を脱がせて、死覇装に手をかける。

隊長が、不安げに俺を見た。

「一回抜くだけです・・・・」

その気になってしまった俺は、隊長を抱きたいという欲を我慢して、自分のものをとりだすと、死覇装を脱がせて隊長のものを取り出すと、すり合わせて扱いだした。

「ああ、恋次!」

お互いのものに手をかけて、しごいていく。

全く反応していなかった隊長のものも、俺が無理やりたたすと、刺激でむくりと顔をもたげた。

「恋次・・・・んんっ」

キスをする。

隊長は、俺とのキスが好きだ。

舌を絡み合わせる深いキスを何度も繰り返し、ラストスパートをかける。

「隊長好きです・・・・愛してます」

「ああ!恋次、私もだ・・・・・・」

硬く熱くなったものをしごいて、俺が隊長のものの先端に爪を立てると、隊長はいってしまった。

「あああ!!!」

俺も、ほぼ同じタイミングで射精する。

「隊長・・・」

「んん・・・・・」

キスを何度も繰り返して、タオルで汚れた部分をぬぐって、お互いに服を着合った。

「恋次、辛くないのか」

「辛いですよ。ほんとなら、隊長を抱きたい。でも、昨日抱いたばかりだし、今は仕事の時間だし・・・・・」

俺のその言葉に、時間に厳格な隊長が、余韻を残した色香のある顔で、怒った。

「せめて休憩時間にせぬか、愚か者」

「でも、隊長だって拒否しなかったじゃないですか」

「それは・・・・」

真っ赤になって俯く隊長が可愛くて、顎に手をかけて上を向かせて、キスをした。

「お前はずるい・・・・」

隊長が、ベッドの上で俺に凭れかかってくる。

「私がお前を100%拒否できぬことを知っているくせに」

「そうですね。でも、昨日隊長を抱いたこともあって俺は我慢しました。少しは褒めてください」

「褒めるようなことではないだろう」

「俺は今すぐにでもしたいんです。でも隊長が嫌がるからしません」

「お前は・・・・手のかかる・・・・・・」

真っ赤になった隊長を抱きしめて、仕事時間中だということも無視して、ベッドに隊長と一緒に横になった。

「恋次?」

「今日だけですから・・・少し、こうして・・・・眠りましょう」

「だが、仕事が」

「もう、今日の仕事は終わってますよ」

「恋次」

ごろりと寝転がっている俺を、隊長は抱き寄せた。

「今日だけだぞ」

俺も、隊長を抱き寄せる。

性欲を解消した後に、緩やかな眠気が押し寄せてきた。

「隊長・・・・好きです」

すぐ近くにある、麗人の顔を見つめて、そのサラリとした黒髪をすいてやった。

「お前だけだ。私を好きにできるのは」

「はい。めちゃ嬉しいです」

触れるだけのキスを繰り返して、隊長の体温を感じながら横になっていると、いつの間にか眠ってしまっていたようだった。

起きると、腕の中に隊長はいなかった。

「隊長?」

執務室にくると、明日の分の仕事にとりかかっている隊長を見つける。

「隊長、そんなに仕事に打ちのめらなくても」

「反対だ。仕事でもしていないと、貴様に抱かれたくなる」

「隊長・・・・今日、館へいきませんか」

「昨日の今日だぞ」

「でも、体が疼くんでしょう?」

「う・・・・・・・」

俺は、隊長とやりとりをして、結局今日館にいって隊長を抱くことを承諾してもらった。

性欲の薄い隊長が俺に抱かれたいと言い出すなど、相当なものだろう。

1回だけ中途半端に抜いたのでは、足りなかったのだろう。

隊長。

好きです。世界で一番愛してます。

心の中で言ったはずが、言葉に出しているらしかった。

「世界で一番か・・・・私も、世界で一番お前を愛している」

思いもかけぬ言葉をもらい、俺は隊長に抱き着いた。

「重い」

「隊長は俺だけのものだ」

「お前も、私だけのものだ」

触れるだけの口づけを繰り返して、俺と隊長は今日も館に行き、一度だけであったが交わるのだった。

その時に、うなじに上書きするように、キスマークを残した。

隊長はそれに気づいたが、怒らなかった。

隊長。

ほんとに、あんたはかわいい人だ。

俺は眠ってしまった隊長の横顔を、眠くなるまでずっと眺めているのであった。





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永遠を誓おう

「よお、久しぶりだなルキア」

「一護も久しぶりだな」

高校を卒業するまで、一緒に現世にいたルキアは、高校を卒業すると進路指導で実家の跡を継ぐといって、尸魂界に帰ってしまって、それから時折現世に遊びにくるものの、すっかり会う回数が減ってしまった。

大学4年生になっていた一護は、就職も決定しており、井上と付き合っていた。

順風満帆な人生を送っていた。

ルキアはまとまった休みをもらったらしく、一護のアパートに転がり込んできた。

ルキアもルキアで、恋次と付き合っているはずなのだが、お互いに誰と付き合っていることについて口にすることはなかった。

「キムチチャーハンが食いたい」

その日は大学が休みだったために、スーパーで材料を買って手料理を作ってルキアに食べさせてやった。

「明日は、休みか?」

「ああ、そうだけど」

「水族館に行ってみたいのだ。連れていってくれるか?」

「別にいいぜ?」

他愛ない昔話に花を咲かせて、その日はルキアは一護のベッドで眠った。まるで付き合っているかのように、お互いを抱き締めあいながら寝た。

「おはよう」

「ああ・・・・おはよう」

寝ぼけ眼(まなこ)のルキアを起こして、真新しい白いワンピースに袖を通したルキアは愛らしく、高校時代から時が止まっているかのようだった。

「ルキアは変わらねーな。純白のままだ」

「貴様もあまり変わっていないではないか。まぁ、髪型は変わったが」

少し短めに切られた一護の髪を手に取る。

「この太陽のような髪、私は好きだ。よければ、また伸ばせ」

「ああ、別にいいけど・・・・それより水族館に行きたいんだろ?近場でいいか?」

「ああ、構わぬ」

弁当を作って、電車とバスを乗り継いで、近い中では一番規模の大きな水族館に連れていった。

昔、高校時代も皆でこうやって、水族館にきたことがあった。

その時のルキアは、アマゾンコーナーの熱帯魚に瞳をかがやかせてじっと見入っていた。

今回も、アマゾンコーナーで、ずっとネオンテトラを見ていた。

「ルキア?」

「懐かしいな・・・・昔、皆で水族館を訪れた。石田と茶虎は元気か?」

「え、ああ。石田は医者になるためにインターン生してる。忙しそうだぜ。茶虎もボクシングの世界チャンピオンになるために、日々修行を重ねてるみたいだ」

そこに、井上は、という問いはなかった。

知っていた。

一護が、井上と付き合っていることを。

「皆・・・変わっていくのだな。変わらぬのは私だけか・・・・・」

「ルキアも、恋次と・・・その、付き合ったりして、尸魂界を復興したりで、変わっていってるじゃねーか」

「恋次とは、もう別れた」

「え・・・・・」

「次は海月を見たい。行くぞ」

「ちょ、待てよルキア!」

一人すたすた歩いていくルキアの後を、追いかける。

海月のコーナーにつくと、ルキアはふわふわ漂う海月をじっと見つめていた。

「今の私は、この海月のようなものなのだ」

「ルキア?」

「ただ世界に流されて・・・・時に流されて・・・・私の、意思は・・・・・・」

「どうしたんだよ、ルキア。今日のルキア、なんかおかしいぞ?」

一護が心配して、ルキアの手を握る。

抱き寄せた。

細く華奢な体は、壊れてしまいそうに見えた。

「なぁ、一護」

「なんだ?」

「今更すぎる。自分勝手すぎる。それでも、お前のことを好きだと言ったら、どうする?」

「冗談だろ?」

一護は、寂しそうに笑った。

高校時代、一度ルキアに告白してこっぴどく振られたのだ。

生きる世界が違うから、と。

「考えていたのだ。貴様は人間で私は死神。共に過ごせば、貴様は先に逝ってしまう。でも、魂魄が尸魂界にくれば、またやり直せる」

「ルキア・・・・・」

「1年前、恋次と別れた。恋次は私をとても大切にしてくれた。私も恋次のことが好きだった。でも、気づいてしまったのだ。その感情が恋愛感情ではなく、家族愛であるということを。私は、ただひたすらに貴様が好きなのだと、会って再び核心した」

「ルキア、俺は・・・・」

ルキアと距離をとる一護。

「ふふ。ただ、貴様の傍に少しいたいだけだ。井上もいることだし、貴様に無理はいわんよ」

そんな言葉を、切なそうな表情で話すルキアを抱きしめていた。

「一護?」

「俺は・・・・自分に嘘をついていた。井上をお前の代わりにしていた。ルキア、昔から・・・そして今も、俺はお前が好きだ。やり直せるなら、チャンスをくれ」

「一護」

ルキアが、驚きに目を見開いていた。

「井上とは別れる。好きだ、ルキア。付き合おう」

「でも、井上が・・・・」

「井上も気づいてる。俺がルキアをずっと好きだってこと。身代わりにされてるってこと。井上を愛しているわけじゃないってことを」

「ずいぶんと、酷い男だな貴様は。井上が哀れだ」

「じゃあ、このまま尸魂界に戻るか?俺に告白したことはなしにして」

「いやだ。私も、貴様が好きなのだ。諦められない」

顔を見合わせて、苦笑した。

「お互い、どうしようもないな」

「そうだな」

お昼になり、お弁当を食べて水族館を二人で周った。

まるで、デートのようだ。否、これはデートだ。

水族館を出ると、一護はイルカのぬいぐるみをルキアに買い与えた。

ルキアは、嬉しそうにそれを大事するといって、チャッピーのリュックの中にしまった。

日が暮れて、一護の家に戻る。イルカのぬいぐるみを胸に、その日も同じベッドで眠った。

翌日は、ルキアは一護の大学についていった。

井上とは違う大学だったが、友人たちから新しい彼女なのかと聞かれて、適当に言葉を濁して誤魔化した。

「一護・・・家で待っていたほうがよかったか?」

「いや、傍にいてほしい。ルキアが好きだから」

大学の授業が終わり、一護のバイト先までついていって、ルキアは一護の傍にいた。そんな一護は、決意した。

「井上と今日別れる」

「一護・・・・」

「ごめん、今日は遅くなりそうだ。飯作っておくから、先に寝ててくれ」

一護は、スマホで井上に連絡を入れて、重要な話があると夜のファミレスに呼び出して、別れ話を切り出した。

井上はぽろぽろ泣いていたが、元から身代わりだったことを理解していたので、別れることを承諾してくれた。

「絶対に、朽木さんと幸せになってね。そうじゃなきゃ、私は黒崎君を許さない」

「すまない、井上・・・・・。今まで、ありがとう」

「これからは、昔みたいに友達でいよう」

「ああ」

井上の思考は前向きだった。

夜のファミレスを出て、井上を自宅まで送って、自分のアパートに帰宅する。

ルキアが、待っていた。

「先に寝てろっていったのに」

でも、そう簡単に寝れないだろう。一護と自分の未来がかかっているのだ。

「井上とは?」

「別れた。ただの友人に戻った。お前を幸せにしなきゃ絶対許さないって言われた」

「井上のやつ・・・自分も辛いだろうに」

ポロリと、ルキアの瞳から涙があふれだした。

「愚かなほどに貴様が好きだ。愛している。尸魂界にいる間中、時折気がおかしくなりそうなくらい、貴様のことを思った。現世に会いにいったりしていたのは、その気持ちを抑えるためでもあった。でも、もう我慢しなくてもいいのだな」

一護は、ルキアを抱きしめた。

「好きだ、ルキア。一度お前に振られても、俺はお前をずっと好きだった。愛してる。どうか・・・・・・一緒に、生きてくれ」

「一護・・・喜んで、その言葉を受け入れよう」

それからが、慌ただしかった。

尸魂界に行き、恋次にルキアと付き合うことになったことを報告した後、白哉にルキアと正式な交際を認めてもらうために朽木家にまで足を延ばした。

「兄は・・・ルキアを、幸せにできると?」

「幸せにできる。俺以外の男がルキアを幸せにはできない」

「大きく出たな・・・・散れ、千本桜」

白哉の千本桜に、一護は斬月をふりあげて、その花びらの本流を断ってしまった。

「ふ・・・・力は、健在なわけか。黒崎一護、ルキアを幸せにしろ。不幸にしたら、私の千本桜が貴様の首をかき切るだろう」

「白哉・・・・・交際、認めてもらえるんだな」

「婚礼も視野にいれておけ。その覚悟はあるだろう」

「ああ」

「兄様!」

ルキアは涙をたくさん流していた。

「兄様、すみません、兄様・・・・・・」

「よいのだ、ルキア。幸せになれ」

「兄様・・・・・」

白哉に抱き着いて泣いていたルキアは、顔をあげて一護の隣にきた。

「俺は、ルキアを幸せにしてみせる。妹さんを、俺にください」

「よかろう・・・・」

白哉は、静かに微笑んだ。

恋次とうまくいってほしかったが、ルキアが恋次ではない他の誰かを見ていることは知っていた。

あえて言及しなかった。

自分の道は、自分で切り開くものだ。

一護は、大学を卒業して翻訳家として、小さな出版会社に就職した。

土日になると、その傍にはルキアがいた。

そんな生活を2年ほど続けただろうか。

「尸魂界で・・・貴様との婚姻を、許された」

「まじか!」

一護は、ルキアを抱き上げて、くるくると回った。

「目が回るではないか!」

ルキアは、現世と尸魂界と行ったりきたりを繰り返していて、専門の穿界門を作られた。

「現世でも、結婚しようぜ」

そう言って、一護はルキアの指にエンゲージリングをはめた。

「尸魂界だと、俺の友人や家族が行けないからさ・・・2回になるけど、結婚、してくれるか?」

「喜んで・・・・」

ルキアは、静かに一護に口づけた。

誓いのキスだった。

その後、ルキアと一護は尸魂界でも現世でも婚姻し、共に時間を過ごした。

そして、一時の別れ。

「さて、尸魂界での生活を満喫しますか!」

魂魄になって若い姿に戻った一護は、魂葬され尸魂界へと落ちていく。

普通は、前世での記憶などない。

でも、一護は元々死神代行だ。

「また、会いにきたぞ、一護」

「ああ、また始めよう、新しい人生を。ルキア、大好きだ。愛してる」

「それは、こちらの台詞だ」

尸魂界で死神化した一護に抱き上げられて、ルキアは綻ぶように微笑んだ。

「永遠の愛を、貴様に」

「じゃあ、俺も永遠の愛をルキアに」

死してもなお、続く愛の軌跡。

二人の物語は、まだ続いていく。

遥かなる未来まで。


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院生時代の部屋

週末、浮竹は風呂からあがると着替えがないことに気づいた。下着はあるが、着物がなかった。

かわりにあったのは、浴衣だった。

京楽のせいだなと思いつつも、浴衣を広げてみて特に変わった様子もないので、その浴衣に袖を通した。

「おい京楽、勝手に人の着替え変えるな」

「(;゚∀゚)=3ハァハァ 浴衣姿の浮竹・・・超萌え」

「京楽?」

明らかに興奮している京楽に、浮竹が一歩後ろに下がる。

服の合わせめから見える生足とか、襟元から見える胸元とかに、京楽は鼻血を出した。

「うわああああ!」

「くっ、久しぶりのエロティック攻撃にやられた」

「浴衣を着ただけだろう」

ふと、悪戯心を覚えて、ちらりと太ももを見せた。

「はうあ!」

もだえる京楽が面白くて、少し襟元をはだけてみたりして挑発していたら、いつの間にかベッドに押し倒されていた。

「おい、京楽・・・・」

「辛抱たまらん」

抱きしめられて、キスをされた。

「んっ」

浴衣の襟元に手をいれられた。

「あ、京楽、だめだ」

「浮竹・・・・好きだよ」

膝を膝で割られて、太ももをもう片方の手が撫で上げていく。

やばい。

自分が招いたこととはいえ、このまま体の関係に発展したくなくて、浮竹は京楽の硬くなっていた股間を思い切りけった。

「うごごごご!」

七転八倒する京楽に、悪いとは思いつつ乱れた浴衣を直す。

それから脱衣所にいって、普通の着物に着替えた。

浴衣はチラリズムが多すぎる。京楽には目の毒だろう。

「ああ、着替えちゃったの・・・・せっかくおいしそうだったのに」

復活した京楽の頭をはたいて、浮竹はお説教した。

「勝手に、人の着替えを変えるな!まぁ、浴衣で悪乗りした俺も悪いが」

「だって、浮竹のチラリズムが見たかったんだもの」

「お前なぁ・・・・」

まぁ、裸に剥かれるよりはよほどましなので、怒りはあまりわかなかった。

「ほら、こい」

両手を広げると、京楽は見えない犬の尻尾を振って、浮竹の腕の中に飛び込んだ。

「浮竹、大好きだよ」

抱きしめられて、抱きしめ返すと、京楽はそのひげ面で浮竹の頬にすりすりした。

「じゃりじゃりしていたい」

「それもまた愛!」

「んっ・・・・・」

ピチャリと舌が絡まるキスを何度か繰り返して、満足したのか京楽は離れていった。

「ねぇ、何もしないから、今日は僕のベッドで眠ってよ」

「本当に、何もしないと約束できるか?破ったら、1週間はキスもハグも禁止だぞ」

「うん。約束する」

その日の夜は、京楽のベッドで眠った。

まるで恋人同士のように、抱き寄せられていた。いつもはあまりしないその体勢に、浮竹がドキドキしてしまった。

京楽の腕の中にすっぽりと入るように抱き寄せられている。

京楽は幸せそうな表情で眠っていた。

「なんで俺は、ドキドキしているんだ」

「ん・・・浮竹?寝れないの?」

「あ・・・・いや、ちょっと体勢がいつもと違うから、落ち着かなくて」

「嫌かい?」

「そうでもない」

京楽の体温に、安堵している自分がいる。

自分を好きだと言ってくる相手の腕の中で眠るなど、無防備すぎるが京楽は変態だが、無理強いはしてこない。

確かに暴走してキスとハグ以上のことをしでかしたりしそうになるが、それも浮竹が嫌がればやめるか、止めなかった時は浮竹が京楽を蹴ったりして止めた。

「今度から、一緒に寝るときはこんな感じで寝たいな」

「そもそも、お前と一緒に寝ること自体がほとんどない」

「浮竹、大好きだよ。世界で一番愛してる」

「知ってる」

京楽が、どれくらい自分のことが好きなのか、浮竹は理解しているつもりだった。もしも浮竹が女なら、すでに付き合って婚約でもしているだろう。

だが、浮竹は男だ。京楽も男だ。

そこにある弊害など、京楽にしてみればないに等しいのだろうが、浮竹にすれば大問題であった。

京楽が女だったら・・・そう想像して、もじゃもじゃの女京楽を想像してしまい、浮竹はその気味の悪さに頭を振った。

「浮竹?眠れないの?」

「いや、もういい。考えるだけ時間の無駄だ」

「?」

京楽の匂いがする。

そう思いながら、浮竹は目を閉じた。

最初は寝つけなかったが、腰に回された京楽の腕のぬくもりを感じながら、いつの間にか意識は闇に滑り落ちていった。

「おはよう」

「おはよう」

すぐそばに、京楽の顔があって、少しドキリとした。

変態行為をしていなければ、見た目はいいし、男前なのだが。

すでに京楽はぱんつ一丁で、起きだすと朝の体操を始めた。

これだから。

浮竹は、ドキリとした自分を後悔する。

京楽の変態が治るようにと思いながらも、このままでもいいかと思う矛盾する気持ちに、浮竹はもやもやするのだった。

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院生時代の部屋 えとせとら

それは、一目惚れだった。

院生時代、入学式に首席の子の挨拶があった。

京楽はさぼっていたので、入学式には出ずに桜の木の上で居眠りをしていた。山じいに見つかり、こっぴどく叱られた。

そして、自分を学院に放り込んだ両親に反抗するかのように、新しく用意されていた屋敷を使わずに寮で生活することにした。

一人部屋を希望していたが、山じいが、病弱なのでどうしても同じ部屋にして、面倒を見てほしいという相手を紹介された。

「浮竹十四郎だ。よろしく」

ぽかん。

そんな顔を、京楽はしていた。

ドストライクだった。だが、残念なことに性別は同じ男だった。

気づけば、あれは一目惚れだったのだろう。

「あ・・・・」

「これ、春水!」

山じいに叱られて、京楽も挨拶する。

「京楽春水だよ。よろしくね」

こうして、もやもやした学院での生活は始まった。


とにかく、浮竹は白い髪に翡翠の瞳という、他の人とは全く違った色をしていた。人目を集めてしまう。

本人はあんまり気にしてないようだが、その視線が鬱陶しいのだと、京楽は浮竹を見てくる、特に男を中心に睨み返した。

浮竹はもてた。

女だけでなく、男にまで。

はじめて男に告白されて、目を白黒させている間に既成事実を作られようとして、助け出したのは昨日のことだった。

浮竹は、ショックのあまり、がたがたと震えていた。

同じ男に、そういう目で見られているということは昔から知っていたが、襲ってこられたのははじめてで、護身術を身に着けていたが、茫然としてしまって対処できなかった。

ピンチを救ってくれたのは、京楽春水という、同じ寮の相手だった。

「大丈夫?」

「あ、ああ・・・・・」

まだ、がたがたと震えていた。

「かわいそうに」

ふわりと抱き締められた。

なぜか、震えが収まった。

「あ・・・」

「ごめん、嫌だったかな」

「いや・・・すまない、もう少し、このままで・・・」

京楽に抱き締められると、何故か安堵した。その体温の暖かさにも、安堵を覚えた。

「君、見た目がいいから気をつけたほうがいいよ。ただでさえ、死神は男の方が多いからね」

「護身術を・・・・習って、いたんだ。子供の頃からそういう目で見られることがあるから、念のためにって・・・でも、いざとなるとだめだった」

くやし涙を浮かべる浮竹の白い髪を手ですいて、頭を撫でてやった。

「困ったことがあったら僕にいいなよ。解決できるなら、手を貸すから」

京楽春水は、優しかった。

でも、女遊びが激しくて、授業をさぼることも多かった。

よく、山じいに怒られていた。

いつの間にか、親友になっていた。寮だけでなく、学院生活に私生活も一緒のことが多かった。

浮竹は病弱で、よく熱を出して、肺病を患っているせいで吐血もした。

でも、そんなことを微塵も感じさせない、明るい性格をしていた。

冗談で、友人の一人が浮竹と京楽はできていると言い出して、みんなして笑っていた。

1回生が過ぎ、2回生になり、3回生になった。

いつの間にか、親友以上の関係になっていた。

京楽の女遊びもなりをひそめ、京楽は浮竹を見ていた。浮竹は、それに気づいていたが、どうすればいいのか分からず、ただ京楽の隣にいた。

4回生の春。

桜の木の下で、京楽に告白された。

「あのね、浮竹。僕、君のことがどうやら好きみたいなんだ。いきなり襲ったりしないから、ためしに付き合ってみない?」

「俺も・・・・お前のことが好きだ」

浮竹は、その答えていた。

京楽は、告白したが浮竹とどうこうなるわけではなかったが、今までなかったキスとハグを経験した。

初めてキスをした時、浮竹は真っ赤になって逃げた。

浮竹は、純粋培養でできた人物で、誰か特定の相手とどうこうなるというのを、経験したことがなかった。

何度かキスをしていると、浮竹は京楽に問いかけた。

「お前は・・・・その、俺と・・・寝たい、のか?」

「あ、もう頭の中では君はあられもない恰好で、僕にいろんなことされてるから」

浮竹は真っ赤になった。

「でも、無理強いはしないから」

京楽は、浮竹がたとえ自分を受け入れなくてもいいと思っていた。

ただ、隣にあれればいいと。

5回生の春。

「お前に、俺の全部をやる!」

意を決した浮竹に、桜の木の下でそう言われて、京楽は浮竹を抱き締めた。

「本当に、いいんだね?」

「ああ・・・・その、やっぱり、俺が抱かれる側なのか?」

「僕を抱きたいなら、それでもいいよ」

「いや・・・お前が抱くで、いい・・・・・・」


初夜は、いろいろと入念に準備しておいた。

男とそんな関係をもったことのない京楽は、男とのやり方を、陰間茶屋で色子を買って、ただ買うだけで抱くことはせず知識をもらった。

潤滑油、媚薬など、いろいろ用意した。

浮竹に、媚薬を使えばきもちいいだけで、痛みはないからと言ったが、媚薬を使うのはいらないと拒否された。

ちょっぴり残念だったが、ずっと欲しかった浮竹を手に入れれるのなら、なくてもよかった。

お互い正座して、ベッドの上に座った。

「その、よろしく」

「あ、ああ・・・・」

軽く触れるだけのキスから始めた。

舌を絡めるようなキスをするのは、これで何回目だろうか。

「ん・・・・」

浮竹の熱のこもった声を聞きたくて、服の上から体のあちこちを弄った。

「あ・・・・」

衣服を脱がされていく。

そのまま、鎖骨を甘噛みされて、胸から臍にかけてキスマークを残された。

「んん・・・・」

浮竹のものを、握りしめると、びくんと浮竹が強張った。

「一緒に、きもちよくなろう」

そそり立った京楽のものと一緒にしごきあって潤滑油もたして、ぬるぬると互いのものを手でいじくりあった。

「あああ!」

「きもちいい?」

こくこくと、浮竹は頷いた。

そのままお互い射精して、呼吸を整える。

「指、いれるよ」

潤滑油に濡れた指を浮竹の体内に入れると、浮竹は体から力を抜いた。

「そうそう。リラックスリラックス」

「あ!」

前立腺がある部分をいじると、浮竹が反応した。

男という生き物は、後ろでもいけるのだ。それは誰もが同じで。色子からもらった知識をフル活用して、浮竹を追い詰めていった。

「あああ!」

ずるりと指をぬいて、自分の怒張したものを宛がう。

優しくするつもりではあるが、侵入するとその中のよさに、あっという間に果ててしまいそうになった。

「ああ!」

なんとか我慢して、根本まで入れた。

「痛くない?」

「少し、痛い・・・・・」

「動くから・・・・きつかったらいって」

「ああ」

ゆっくりと、律動する。

なるべく前立腺をすりあげるように動くと、浮竹もきもちよいのか、感じていた。

その表情を見るだけで、熱が集まる。

「あ、大きくなって・・・・・ああ!」

最奥を犯すと、浮竹は体を痙攣させた。

浮竹がいったのを確認してから、またいくように前立腺を突き上げて、とにかくよいと思う場所を突いた。

「あ、ああ・・・・ひあああ!」

浮竹は、長くなった白い髪を乱していた。

最高にエロかった。

その声と表情だけで軽く何発でも抜けそうだ。

「ん・・・出すよ」

「あ・・・・・・」

じんわりとした熱を腹の奥で感じて、浮竹は目を閉じた。

「好きだ、春水」

「僕もだよ、十四郎」

何度も口づけしあった。

そのまま、また何度か突き上げて、浮竹がいったのを確認してから、京楽もまた熱を浮竹の中に放った。

「ああ・・・・んんん・・・ああ・・・・」

ズチュリと、中を犯す。

体位を変えると、中を抉られて、浮竹は言葉もなく体を痙攣させた。

「ああ、すごいね君の中・・・・・」

「あ・・やあああああ」

気づけば、ぱんぱんと腰がぶつかる音が響いていた。

優しくするはずだったのに、あまりの良さに、加減ができなくなっていた。

「やあ!」

浮竹は、泣いてた。

生理的な涙なのか、感情からくる涙なのか判断がつきかねた。

散々浮竹を蹂躙して、京楽は満足した。

最後は、浮竹は意識を失っていた。

後始末をして、浮竹の中に吐きだした己の精液をかきだすと、驚くほどでてきた。

「ん・・・・・・」

「気づいた?」

「俺は?」

「意識、失ってた」

「もう終わりで、いいか?もう無理だ・・・・」

「うん。初めてなのに、加減できなくてごめんね」

「別に、いい」

浮竹は、照れたように赤くなりながらそっぽを向いた。

「好きだよ」

「うん・・・・・・」

その日から、週に一度は体を重ね合うようになった。

6回生になり、互いに席官として死神になった後も逢瀬を続け、気づけば隊長にまでなっていた。

「浮竹、入るよ」

「ああ、京楽か」

雨乾堂で、今日も浮竹はおはぎをほうばっていた。

昔から、甘いものが好きな子だった。

「京楽も食べるか、おはぎ」

「うん、もらおうかな」

院生時代を経て、なおも続くその関係。

全ては、京楽の一目惚れからはじまったのだった。



院生時代尾の部屋、えとせとら。 終

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