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好きから始まる物語 ルキアとの再会

「またか・・・・」

ルキアは、一護のベッドで眠っていた。

そのルキアを腕の中で抱き締める形で、一護も眠った。

高校卒業まであと4か月。

それが、一護に残された時間だった。

一護は、ルキアのことが好きだった。

でも、ルキアはそういうわけじゃなくて、一護をただの大切な仲間として見ていた。

好きだと、告げたかった。だが、ルキアの傍にはすでに恋次がいた。

「なぁ、お前と恋次ってできてるのか?」

「な、たわけ!そのようなものではない。恋次は家族だ」

ルキアは頬を朱くしたが、恋次とできているわけでもなさそうだった。

これって、もしかしたら脈あるんじゃね?

そう思って、冗談のように囁いてみた。

「俺がお前のこと・・・その、異性をとして見ているかもしれないと言ったらどうする?」

「たわけ!そんな冗談は、顔だけにしろ」

ただの冗談として取られた。

ああ、脈なんてなさそう。

好きといっても、断られると思った。だから、思いをひた隠しにしていた。これ以上好きにならないようにと言い聞かせながら、高校生活を送った。

毎日、一緒に登下校を繰り返した。

一緒の部屋で眠り、一緒の家で生活した。

たまに、恋次が遊びにきた。

「おう、一護、元気にしてるか?」

「よお、恋次。お前こそ元気か?」

恋次に、相談した。

「なぁ。恋次はルキアのこと好きなんだろ」

恋次は真っ赤になったが、否定しなかった。

「そりゃ、ずっと一緒にいるしな。でも、告白したけど、家族としてしか見られないって、断られちまった」

「恋次でも無理なのか・・・・・」

「なんだ、お前ルキアに告白したいのか?」

「ああ」

頷くと、恋次は渋い顔をした。

「どうだろうなぁ。お前のこと、特別のように見てるきもするけど」

「でも、この前「俺がお前のこと・・・その、異性をとして見ているかもしれないと言ったらどうする?」って聞いたら、冗談は顔だけにしろって言われた」

「くーーーー、ルキアの奴きついな。でも、ルキアはお前のこと好きだと思っていたんだけどなぁ」

「ルキアの心の中には、誰も住んでいないのかな」

「どうだろうな。俺もしつこく何度かアプローチしたが、全部無視された」

ルキア。朽木ルキア。

例え拒絶されても、お前のことが好きだ。

でも、断られるのが怖くて、ルキアと同じ場所にいながら、結局好きだと言えぬまま。日々を過ごしていった。、



高校を卒業して、ルキアは尸魂界に帰った。

一護は、井上と同じ大学に進んだ。茶虎は別の大学に通いながら、プロボクサーとして、石田は医師の卵として難関大学の医学部に進んだ。

ルキアは、ちっとも顔を見せてくれなかった。伝令神機のメルアドの交換先さえ教えてくれなかった。

一護は諦めていた。

ルキアは、死神。高値の花。

ルキアと別れて2か月が経つ頃、ずっと前から好きだと伝えられて、井上と付き合いだした。

ルキアのことを好きだと、井上は知っていた。

ただ、それでもいいと、井上は言ってくれた。

井上と付き合い、ルキアのことを忘れようとした。つきあって1年目、一護は井上を抱いた。どんなに井上を抱いても、ルキアのことを忘れられなかった。

「ごめんな、井上。俺、まだルキアのこと、忘れられそうにない」

「うん、それでもいいの。黒崎君が私の傍にいてくれるなら・・・・・・私、どんなことだってするよ」

井上はかわいかった。

一護のためならなんでもしてくれた。


「井上・・・・・・いつか結婚しよう」

もう、ルキアのことは忘れよう。

そう思った。

井上は、その言葉に凄く喜んでくれた。

貯金をはたいて、婚約指輪を買った。

アメジストをあしらったもので、まるでルキアの瞳のようだった。

「しっかりしろよ俺・・・・ルキアのことは忘れちまえ」

何度も自分に言い聞かせた。

指輪を贈ると、井上は泣いていた。

アメジストがルキアの瞳の色だから買ったなんて、毛ほどにも知らない様子だった。

ああ。

ルキア、ルキア、ルキア。

もう一度会いたい。声を聞きたい。抱きしめたい、

でも、かなわぬ願い。

ルキアが尸魂界に戻り、現世を去って3年が経とうとしていた。井上との交際は順調で、父親と妹たちに、婚約していることを教えた。

「え、ルキアちゃんは?」

夏梨がそんなことを言った。

一護は眉を顰めて言った。

「俺とルキアはそんなんじゃねーよ」

もう、戻ってこないのだ、あの愛しいアメジストは。



それから3日後のこことだった。

浦原に頼まれて、浦原商店にきていた。

「いやー、黒崎サンすみませんね。どうしてもあなたに会いたいという人がいるものですから」

「もったいつけるなよ」

「朽木サーン」

「え」

一護は固まった。

現れたのはルキアだった。3年前と何一つ変わらぬ姿。

「一護・・・・元気にしておったか」

心を鬼にする。

「ルキア、何の用だよ」

「ふ・・・3年はあっとう間のようで長いか。あの頃の私は、恋愛をすれば発病する特殊なウィルスに感染していた。最近、やっと治ったのだ」

ルキア、ルキア、ルキア。

恋愛をすれば発病する特殊なウィルス?

じゃあ、俺のことを?

「貴様が・・・・・ずっと好きだった、一護」

今更だ。

何す勝手なこと言ってるんだよ。

俺には井上がいる。

「だが、一護は井上のことが好きなようだし。だた、会って想いを告げておきたかったのだ。恋次の想いもあるし、私は身を引くよ。さらばだ、一護。ああ、メルアドを教えておく。会いにくるとこは滅多にないだろうが、せめて友人として傍にさせてくれ」

ルキアを抱き締めていた。

「一護?」

「遅いんだよバカ野郎!どれだけ待たせれば気が済むんんだよ!俺は・・・・昔からずっと、お前のことが好きだった。今でも好きなんだよ!」

こう答えると、ルキアはアメジストの瞳から涙をたくさん零した。

「そうか・・・そうか・・・私たちの心は、通じ合っておったのだな・・・・」

もう、ルキアしか見えない。

井上のことなんて、どうでもよくなっていた。





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院生時代の部屋 山じいの思い

今日は、尸魂界での虚退治の訓練日だった。

浮竹と京楽はペアを組んだ。そして、教師でも手がたたない強力な虚をなんとかしろと言われた。

念のため、6番隊の隊長朽木銀嶺がついていた。山本総隊長も見ていた。

浮竹と京楽は、違いに斬魄刀を始解させて、強力な虚に切りかかった。

30分ほど格闘していただろうか。

虚の放った攻撃を、浮竹が双魚の理で右の剣で吸い取り、左の剣ではじき返す。一瞬の隙をついて、京楽が花天狂骨で虚を真っ二つにした。浮竹が、さらに駒切にしていく。

「見事じゃ、春水、十四郎。たった3年で、よくここまで成長した。まだ斬魄刀を始解出来ぬ者もおるのに、よう己の斬魄刀と心を通わせあった。お主らなら、いずれ卍解を習得し、隊長にまで登りつめることであろう」

「やめてよ山じい。まだ3回生だよ?もうすぐ4回生になるけど」

この冬が終わり、桜の花が咲く季節、浮竹と京楽は4回生になる。

「元柳斎先生、ありがとうございます。いつか絶対に卍解を習得し、隊長になってみせます」

「それより・・・・春水、お主、十四郎に懸想しているとは本当か」

「あれ、ばれっちゃった?」

「学院でも有名じゃ。十四郎、春水を切りすてるつもりはないのか?」

「それは、ありません」

京楽は喜んだ。

自分の気持ちを、踏みにじることは決してしないと、尊敬している山じいに伝えたのだ。

「いつか時がきたら、自分で解決します、元柳斎先生」

「ふむ・・・教え子が、同じ性別でできるなど、歓迎できたものではないが、お主らのことじゃ。禁じればそれを破るのであろう」

「当たり前でしょ、山じい。山じいといえ、恋愛にまで口を出す権利はないよ」

「十四郎のほうは、まだ春水とできることを承諾しているわけではないのじゃろう。それでも、干渉はいらぬというのだな、十四郎」

「はい、元柳斎先生」

「あいわかった。お主らが婚礼し、子を見るのを楽しみにしておったのじゃが、このままではそれもかわなぬか」

「ごめん、山じい」

「すみません、元柳斎先生」

「まぁよい。お互いを大切にするのじゃぞ、春水、十四郎」

「山じいもこう言ってることだし、今日にでも結ばれよう、浮竹!」

そう言い出した京楽の鳩尾に蹴りをいれて、叫ぶ。

「調子に乗るな!あ、元柳斎先生すみません。お見苦しいところを見せました」

「もうよい」

山本総隊長は、朽木銀嶺を連れて、去っていった。

「ねぇ、どうして山じいはいきなり僕らの様子見に来たりしたのかな」

「元柳斎先生なりの、お考えがあるだろう」

真実は違った。

恋愛に現を抜かし、鍛錬を怠っているようであれば、二人の仲を裂こうとしていたのだ、山本総隊長は。

浮竹に、妻を早々に娶らせるつもりだった。京楽は、もう浮竹しか見えていないようだから、まだ正常な浮竹に妻を娶らせて、京楽のことをただの友人として見るように指導しようと思っていた。

だが、互いを庇いあう二人を見て、考えを改めた。

恋愛を強制する権利は、山本総隊長にもない。

「十四郎はああ言っておったが、もう春水の想いを受け入れる覚悟ができている顔じゃった・・・・」

若いな、と思うと同時に、惜しいと思った。

きっと、子ができればその力、受け継がれていくだろうに。

「のう、銀嶺。お主は、もしも我が子が同じ性別でできてしまったらどうするのじゃ。仲を引き裂くか、歓迎するか、黙認するか」

「山本総隊長、もしも私の子がそのようになれば、黙認いたしましょうぞ。子は、一族から養子をもらい、それに跡を継がせましょう」

「そうか・・・・」

山本総隊長の心も決まったようだった。

このまま、自然の流れにあの二人を任せることにすると。


「ねぇねぇ、山じいもああいってたんだし、僕らもできようよ」

「しつこい!」

「おぷ!」

寮の自室で、しつこい京楽の顔に裏拳を入れて黙らさせた。

「はぁ・・・」

山本総隊長に、自分でいずれ問題を解決すると言ったが、干渉はいらないと断言してしまった。つまり、京楽とできることを黙認してくれといったよなものだった。

「十四郎、春水を切りすてるつもりはないのか?」

「ありません」

あのやりとりを、その記憶を、その場にいた全ての者から消してしまいたかった。特に京楽に。

「はぁ・・・・・」

その日、浮竹は何度も溜息をついた。

消灯の時間になって、おやすみのキスを京楽にすると、吸い付いて離れてなかったので、頭突きをかまして気絶させた。

「はぁ・・・・」

しばらくの間、京楽は山じいの言葉通りできようとうるさかったが、1週間ほどすると、いつものように浮竹のパンツを頭に被るただの変態に成り下がっていた。

山じいの言葉通りになろうと、真剣に迫られて、貞操の危機に陥ったこと実に3回。

最後の砦であるパンツは死守したが、パンツの上から直接触れかけられて焦った。

「それ以上すると、キスもハグもなしにするぞ!」

そう脅すと、大人しくなった。

本当に、京楽は厄介だ。

隙をみせるわけにはいかないと分かっていたが、吐血した。

「ごほっごほっ・・・・」

「大丈夫、浮竹!?」

「う・・・・薬を・・・・」

ごぽりと血の塊を吐くと、少し楽になった。

京楽は、服が浮竹の吐いた血で汚れるのも構わず、医務室に送ってくれた。

寮の自室から学院の医務室まで距離をあるだろうに、無理に習得したばかりの瞬歩を使ってくれた。

もってきていた薬を飲まされ、医務室で回道の治療を受けて、発作は静かになった。

「浮竹、苦しいならいってね」

「ん・・・・」

ズキンズキンと肺が痛んだ。

「鎮痛剤を・・・・・」

京楽の手で、薬として与えられえている、発作の時のための鎮痛剤を打たれた。

「傍に・・・・いてくれ・・・・」

「うん、ちゃんと傍にいるよ」

肺の病で、一人きりになるのはとても寂しいのだ。

京楽は、浮竹が眠っても、その傍を離れなかった。

寮の自室に戻された。意識のない浮竹を京楽が運んだ。

寮の自室でも、京楽は浮竹と同じベッドで眠り、傍にいた。

血で汚れた服は、京楽が着換えさせてくれた。

その気になれば、襲える隙などいくらでもあるのだ。でも、京楽は絶対に熱をだしたり、吐血して意識のない浮竹に手を出さない。

京楽は確かに変態でどうしようもないが、とても優しい。その優しさについ甘えてしまう。好きだと毎日のように囁かれて、頷いてしまいそうになる自分を叱咤する。

変態京楽とできるのは御免だった。

変態を辞めたら、京楽を受け入れていいかもしれないと思いながら、変態が治るようにと思いながらも、自分のためにこの変態ぶりが続きますようにと、矛盾の思いを抱える浮竹だった。

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院生時代の部屋 ご褒美

ドンドコドンドコ。

そんな音楽が聞こてきた。

この前配られた、伝令神機という機械から音はでていた。

「ん・・・うるさい・・・・」

ドンドコドンドコ。

「うるさい!」

枕を投げつけた。

でも、音楽は止まらず、仕方なく浮竹は起きた。まだ、朝の6時半だった。

いつも8時前まで寝ているので、早起きになった。

音楽が鳴っているほうを見る。

京楽が踊っていた。頭には浮竹のパンツを被り、でもそれだけだった。

あとはまっぱのフルチンだった。

「またか・・・・」

音楽に合わせて、京楽は自分のナニを隠したり、見せたりしていた。

「おい、変態!」

京楽は一心不乱に踊っていた。

「好きだ、京楽!」

「何、浮竹!」

京楽のどあっぷがきた。

「パンツをまずははけ」

「分かった」

頭に被っていた浮竹のパンツをはいた。

それでもまだ、裸でいられるよりはましかと、浮竹は思った。

「こんな朝早くから、お前はまっぱのフルチンでなんの踊りを踊っているんだ」

「あそこが凄くなる踊り。ネットで見つけたんだ。好きな人を満足させるだけの回数をこなせて、硬くて大きくなって、好きな相手はイチコロだっていう」

「ああ、確かにイチコロだ」

「浮竹!?僕の想いに答えてくれる気になったのかい!?」

「お前の汚いナニを朝から見せられて、眠気がイチコロに飛んだわ!」

浮竹は、京楽の大切に踊りを踊ってまで大きくしたいと思っている股間を思いっきり蹴った。

「オウ・・・・オウオウオウ・・・・・」

京楽は股間を抑えてその場に頽れた。

「ふん!」

眠気は完全に覚めてしまった。

仕方ないので、伝令神機を使って尸魂界ネットワークにアクセスする。

「今日のあなたは、朝から恋人に迫られるでしょう。ラッキーカラーは赤」

京楽ははいている、浮竹のパンツも赤だった。

「オウオウ・・・浮竹、占い通りだね。恋人の僕に迫られて・・・僕の浮竹のパンツも赤だし」

「いつからお前の恋人になった!」

顔面を蹴ると、京楽は鼻血を出して白目をむいた。

「はぁ・・・・・」

朝から、濃ゆい一日だった。

登校すると、ささっとみんなが道を開ける。

何事かと背後を見れば、鼻血にそまったティッシュを鼻につめて、浮竹の赤いパンツを頭にかぶり、はぁはぁと荒い息の京楽がいた。

「京楽・・・学院では、パンツを頭に被るのはやめろ」

近くにいる浮竹まで、同じように見られてしまう気がして、浮竹は嫌がった。

「分かったよ」

鞄の中に、パンツを大切そうにしまう。

「ああ、浮竹は今日もかわいいなぁ」

京楽はにこにこしていた。

変態行為をしなければ、常に傍に置いていてもいいのだが。まぁ、変態でも京楽は常に浮竹の傍にいた。

今日が席替えの日だった。

京楽とは離れていたので、このまま離れていることを祈った。くじをひき、番号順に席につく。

京楽は、浮竹の隣だった。

くらりと眩暈を起こした。

「お前の隣だと・・・・今日は、とことんついてない」

これから、最低1か月は席はそのままなのだ。

授業がはじまる。鬼道の詠唱を暗記する授業だった。

(かわいい、浮竹)

そう、紙を投げてよこされた。

(授業に集中しろ)

(浮竹に集中してる)

(お前・・・教科書に隠して何を見ているんだ)

何か、鬼道の詠唱がかかれてある教科書に隠して、何か薄い本のようなものを見ている京楽のほうをむいて、こっそりとのぞき見る。

衆道の、エロ本だった。しかも、名前を全部浮竹と京楽に修正されていた。

「先生、俺と京楽、気分が悪いので少し医務室に行ってきます」

鬼道の詠唱は二人とも完璧に近いので、教師はその言葉を信じたわけではないが、許可をくれた。

京楽をひっぱって、廊下まででる。

「お前はーーーー!」

京楽が読んでいた衆道の本をびりびりにして破り捨てた。

「ああ、僕のオアシスが!」

浮竹は、院生の服の胸の部分をはだけさせて、こういう。、

「本物の俺のほうがいいだろう?」

ごくりと、京楽が唾を飲み込む。

「ちゃんとしたら、ご褒美あげるから、あんな本を授業中に読むの止めろ。教師に見つかったら没収されるし、俺と京楽の変な噂がまたたつ」

「僕は、浮竹とたつ噂ならなんでもいいんだけど」

「俺が嫌なんだ」

二人はできているようでできていないとして通っているが、最近浮竹が誘ってわざと京楽をいたぶっているという噂を耳にした。

確かに、誘うよな真似をして京楽の変態行為を止めることはあるが、京楽をいたぶったことなどない。変態に対するお仕置きが、いたぶるということになればそうかもしれないが、それを京楽は喜ぶ。

「浮竹ーーー!」

「学院の中では、待てだ、京楽」

まるで犬のようだが、その躾は京楽の身に刻まれていた。

学院でキスやハグをすると、浮竹は口を聞いてくれなくなるし、毎日の習慣であるおやすみの、触れるだけのキスもしてくれない。

大人しくしていれば、寮の自室ならキスやハグは許してくれるし、最近はディープキスも許してくれるようになった。

このままいけば、体を許してくれる日もくるはず。そう考えていた。

授業が終わり、寮の自室に戻ると、京楽は夕食までの間、名前を京楽と浮竹に修正した衆道のエロ小説を読んでいた。

小説に夢中になっている間はこっちに全く被害はでないから、浮竹は好きにさせていた。

夕食を食べ、湯浴みを終わらせる。

「すんすん・・・・浮竹の甘い香り・・・すんすん」

浮竹は、嫌な顔を浮かべなかった。慣れって怖いと、自分でも思った。

消灯前になって、京楽に触れるだけのキスをする。

「今日は、ちゃんと言いつけ守ったから、ご褒美ちょうだい?」

「んっ!」

唇を唇で塞がれる。覆いかぶさってくる京楽。

「あ・・・・・・」

口に指を入れられて、それに舌を這わせる。

「んん・・・」

深いキスを何度もされた。抱きしめられて、浮竹は京楽の背中に、服ごしに爪をたてていた。

「あ!」

ぴりっとした電流が走る。

首に、キスマークを残された。こんなこと、初めてだったが、浮竹は京楽の下から這い出た。

「ここまでだ」

「うん」

次の日、浮竹の首にキスマークが残っていたせいで、2人は結ばれたと勘違いされるのであった。



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狼と羊

「いい加減起きてください」

「んー。今日はまじで無理だー。昨日、夜遅くまで京楽と体を重ねて・・・」

眠そうに、浮竹は布団の上でごろごとしていた。

「京楽隊長が言ってましたよ。拒絶されたって」

「ちっ」

「おいあんた、さっき舌打ちしましたね?俺を騙そうとしましたね?」

「気のせいだ」

「いや、絶対騙そうとしてた!」

布団をはぎとられた。

12月の肌寒い季節だ。

「寒い」

「知りません。顔洗って着替えてください。すぐに朝餉の準備しますので」

「海燕の意地悪!」

「はいはい」

顔を洗って、着替えて上着を羽織ったがまだ寒くて、毛布を被って火鉢に当たっていた。

「朝餉、準備しました。毛布被るの毎年のことなのであまりきつくは言いませんが、京楽隊長以外の隊長や副隊長がきそうな時は脱いで下さいね」

「こんな寒い時期に、他のやつがくるわけないだろう」

「浮竹、邪魔するぞ」

「えええ、白哉!?」

やってきた白哉は、何か大切な仕事の書類を持っていた。

「浮竹・・・・いくら室内だからとその恰好は・・・・・」

「あ、朽木隊長これは違うんです。朝から寒気がしているそうで、今測ったら熱があったんです」

海燕が、咄嗟に嘘をつくが、それを白哉はなんの躊躇のせず信じこんだ。

「そうなのか。浮竹、兄は病弱であるからこの季節はきついであろう。暖かくして寝ろ」

白哉は、仕事の書類を浮竹ではなく、海燕に渡して去っていった。

「はーーー。危なかったーーー」

「白哉がきたからといっても、毛布は脱がんぞ!」

「あーもう、好きにしてください」

書類を読んで、浮竹に渡す。

浮竹はその書類にはんこを押して、8番隊にまでもっていくと言って、毛布を脱いで雨乾堂から出て行ってしまった。

ちゃんと、ペロリと朝餉は食べらていた。

「ほんとに、ちゃんとしてるのかいい加減なのか分からない隊長だな・・・・」

思う。

京楽や海燕の前ではだらだらしているが、肝心な時はちゃんとしている。あまりないが、虚退治の時の強さは本物だ。

ただ惜しいことに、肺を患っている上に病弱だった。

おまけに、京楽とできている。まぁ、京楽とできているのは、海燕が副官になる遥か以前のことだからいいのだが。

8番隊から帰ってきた浮竹には、京楽がついてきていた。

昼餉は8番隊で食べてきたらしかった。

ああ・・・・また、飢えた狼に羊が食べられる。それを知らずに、羊は自分から飢えた狼を連れてきた。

どうなっても知るかと、海燕はその日、急に泊まると言い出した京楽の分の夕餉を確保するのに忙しかった。

「海燕、夕餉の支度を・・・・」

「はいはい」

急だったので、食材の確保からなんやらと忙しくて、今日はくたくただった。

「味わって食べてくださいね。京楽隊長が急に泊まるとか言い出したせいで、食材の確保まで俺がしたんですから」

「すまない、海燕」

「ごめんねぇ、海燕君」

本当にすまないと思っているなら、急に泊まるとかいいだすなよと、海燕は思った。

湯浴みを終えた二人に、甘い時間がやってくる。

「夕餉の膳、下げにきました」

「んあ・・・京楽、こんな時間からなんて・・・・・」

「いいじゃない。深夜にして寝不足になりたくないでしょ」

早速、羊は狼に食べられている真っ最中だった。

海燕の存在に気づいても、二人は止まらない。

浮竹の、腰にくるような甘い声を聞きながら、隊舎に下がった。

「ああ!」

死覇装が脱がされていく。

12月の寒い季節だが、交わるには服は邪魔だった。

「ん・・・・」

かりっと胸の先端をかじられた。

「んあ・・・」

舌が絡みあうキスを何度も繰り返す。

「ああ!」

潤滑油に濡れた指が体内に入ってきた。蕾の中で指を折り曲げられて、ちょうど前立腺の部分にあたって、浮竹は先走りの蜜をたらやらと零した。

「好きだよ・・・」

「あ、京楽・・・・・」

「春水って呼んで、十四郎」

「ああっ、春水!」

灼熱が狭い体内をかき分けて貫いてくる。

「あああああ!」

前立腺をすりあげられて、中がキュウっとしまって、京楽は浮竹の浅い部分に精液を吐き出した。

「君の中、凄いね」

「ああ!」

浮竹も、京楽とほぼ同時に白濁した液を吐き出していた。

ずっずっと音を立てて、京楽が挿入を繰り返してくる。

「ひう」

何度も前立腺を突き上げられて、浮竹は体を痙攣させた。白濁した液体を吐き出しながら、いいところばかりつかれて、ドライのオーガズムでもいった。

「いあああ・・・・変になる・・・・春水・・・やあああ」

「大丈夫、気持ちよくなるだけだから」

ペロリと、京楽は乱れる浮竹を見ながら舌を舐めた。

「あ!あああ!!」

ぐちゅぐちゅと体内で音がする。最奥を突かれる。

抉られて、また浮竹は高みにのぼっていった。

「ひああああああ!」

ビクンと体を痙攣させて、精液を吐き出す。

キュウキュウと締め上げてくる内部に我慢できずに、京楽は浮竹の腹の奥にに二度目の精液を放った。

「ん・・・・もうや・・・・春水・・」

「うん。今日はここまでにしよう、十四郎」

珍しく、京楽が満足した様子で引き抜いた。

トロリと、浮竹の中に吐き出したものが、浮竹の太腿を伝って流れ落ちる。

それを濡れたタオルで拭った。体内に出したものを全部かきだして、浮竹をふいて清めた。

京楽も己をふいた。

そのまま服を着あって、シーツを変えた布団に横になる。

少し早いが、眠気がやってきて二人そろって眠ってしまった。

「んん・・・・京楽、起きてるか?」

「ん・・・どうしたの、浮竹」

「早くに眠りすぎて、目が覚めた」

時計を見ると、朝の4時だった。

「僕も目が覚めちゃたよ。寒いでしょ、もっと近くにおいで」

京楽にすり寄ると、京楽は腕の中に浮竹を抱き締めた。

「まだ、寝れそう?」

「ん・・・京楽と体温共有しあっていたら、多分そのうちまた寝る・・・」

1時間ほど起きていたが、二人はいつの間にかまた眠ってしまった。浅い眠りと覚醒を繰り返す。

「いい加減、二人とも起きてください。朝ですよ」

海燕に起こされて、のろのろと浮竹が起き出す。死覇装の前がいつの間に乱れていて、キスマークがいっぱいついていた。

「ちゃんと服きてください、隊長!そんな、情事の後みたいな恰好」

海燕が真っ赤になった。都という妻をもつが、浮竹の色香にいつもやられそうになって、自分を叱咤する。

「浮竹、おいで」

「ん・・・」

京楽が、浮竹の乱れた死覇装を整えて、隊長羽織を羽織らせた。

浮竹は、京楽に甘えまくった。

ああ、これは熱を出すな。

京楽も海燕も思った。

案の定、午後から熱を出した浮竹を寝かしつける。

「やっぱ冬は毛布被らせないとだめだね」

「毛布被っても、隊長は熱出す時は出しますよ。今回はあんたが抱いたから熱を出したのかまでは分かりませんが、1週間は隊長に手を出さないでください」

「厳しいねぇ、海燕君は」

「当たり前でしょう!病人を抱くつもりですか!」

「いや、そんなことはしないけど。ただ、一緒の布団で寝ることは許してほしいな」

「まぁ、それくらいなら・・・・・」

海燕は浮竹に甘い。そして、結局京楽にも甘くなるのだ。

そんな年月をもう何十年と続けていくのだった。




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般若の海燕

「隊長、いい加減に起きて下さい!」

「ぬおおおおお、あと1時間は寝る!」

布団を死守する浮竹を、海燕がどけようとする。

「もう9時ですよ!他の隊長たちはとっくに起きて仕事してます。さぁ、あんたもいい加減に起きて仕事しろおおおお!!」

10分ほど格闘したであろうか。

海燕は、大きなため息をついて布団を手放した。

「もう、好きなだけ寝てください。でも、今日は夕餉抜きですからね!ちゃんと罰与えなきゃ癖になりそうだし・・・・・」

「もう一度寝れる・・・・むにゃむにゃ」

そのまま、浮竹は惰眠を貪った。

「いい加減に起きろこの野郎!」

海燕が、再び起こしにやってきた。

「あんた、昼餉も食べないつもりか!」

「このまま寝る~~」

「ああ、もう知りません。今日は放置しますよ」

海燕は、自堕落すぎる上司に愛想をつかせてしまった。

「んー・・・起きる・・・」

もそもそと、浮竹が起きだしたのは午後の2時だった。

顔を洗って、服を着替える。

お腹がすいた。

「海燕、ご飯ーー!」

何度呼んでも海燕はきてくれなかった。

仕方なしに、13番隊の厨房にいくと、今日は浮竹の分の食事は夕餉を含めてないという。

「海燕め・・・・・」

そんなことで、反省するような浮竹ではない。

仕事は明日するということにして、8番隊の執務室にいき、仕事をしている京楽に飯がでないんだと手短に説明すると、少し遅めだが昼餉が用意された。

それを食べて、さらに京楽を伴って甘味屋でバカ食いした。

お弁当屋さんで、夕餉の代わりの弁当を買った。

「なんか、海燕君が哀れだね・・・・」

「ふん、海燕のやつ、俺を飯ぬきにしようとしているらしいが、そうは問屋が卸すものか」

京楽を伴って、雨乾堂にいく、角の生えた海燕がいた。

「あんた、仕事さぼって8番隊で昼餉をごちそうになったそうですね」

「さらに、京楽と一緒に甘味屋まで行ったぞ」

カッ。

海燕は般若になった。

「1か月、3時のおやつぬき!」

「ええっ!海燕、俺が悪かった~~~」

こんな他愛なことで、反省する浮竹を京楽はかわいいと思った。

海燕も、怒りながらかわいいと思ってしまった。

「ちゃんと、俺の言うことききますか」

「きく。ちゃんと8時には起きるし、仕事もさぼらない」

「約束ですよ」

「ああ、約束だ」

その日の夕餉は結局用意されなかたので、甘味屋に行ったついでに買った弁当を食べた。

「やっぱ13番隊のご飯のほがいい・・・」

同く弁当を口にして、京楽は言う。

「でもいいのかい?あんな口約束をして」

「俺は心を入れ替えるんだ」

京楽は、今日はお泊りだった。体はこの前重ねたので、ただ泊まるだけだった。

次の日の朝、京楽は仕事があるからと、8時には8番隊の執務室に戻ってしまった。

「あんたは~~昨日誓ったでしょう!8時に起きるって」

「あと2時間寝る~~~」

布団にへばりつく浮竹。

「だめです!」

布団をとりあげられた。

仕方なしに、のろのろと浮竹が起き出す。

朝餉を、食べた。

よし、一安心だと、海燕は膳を下げて、文机に向かった上司を心の中で褒めた。

「昼餉もってきました・・・・・」

返事がない。

熱でも出したのか、肺の発作でも起こしたのかと、必死になって浮竹の方を見ると、幸せそうに眠っていた。

仕事は途中で放りだされていた。

「起きろおおおお!!!!!」

浮竹を揺り動かすか、この上司、一度眠ると梃でも起きない。

「あああああ!!!」

海燕は頭を掻きむしった。

いっそ、水でもぶっかけてろうかとも思ったが、風邪をひかれて熱を出されては困る。

今日の3時にだそうと思っていたおはぎをもってくると、それを浮竹の近くまでもってきて、ぱたぱたろとうちわであおいだ。

「ん・・・・おはぎの匂いがする・・・・」

ゆっくりと、浮竹が翡翠の瞳をあける。

「おはぎ!」

食べようとするのを、さっともっていく。

「海燕、大人しくおはぎをよこせ」

「そういうあんたが、大人しく仕事をしてください!」

にじりにじり。

二人の間に緊張が走る。

「おーい、浮竹入るよーーー」

京楽の声がして、それに意識をもっていかれた一瞬だった。

さっと、皿からおはぎが消えていた。

もっきゅもっきゅとほうばる浮竹に舌打ちする。

「あんたは・・・・ちゃんと働け!」

「あれ、どうしたの海燕君」

「この上司、仕事放置して寝てたんですよ!」

「いいじゃないそれくらい」

「よくありません!」

「僕なんて、1か月分仕事ためて、七緒ちゃんに耳引っ張られて、無理やり仕事させられるけどなぁ」

「だらしないあんたと一緒にしないでください!うちの子はうちの子です!ちゃんと仕事してもらわないと!」

「これくらいの仕事の量、午後にするから昼餉にしてくれ。お腹減った」

「はぁ・・・・なんで、俺、こんな上司の副官になったんだろう」

溜息を強く零しながら、遊びに来た京楽の分まで昼餉を出した。

3時になっておやつの羊羹を手に雨乾堂にくると、浮竹と京楽は囲碁をしていた。

「あんた、仕事は」

「全部終わらせた」

「あの量を!?」

「そっちにあるだろう。できているかチェックするといい」

確かに、仕事は全部片付いていた、

「はぁ・・・・できるんなら、最初から言ってください」

「だからいつも言っている。「あのくらい午後でできる」と」

海燕は、浮竹の仕事処理能力に脱帽した。

これで、ちゃんとした時間に起きてくれれば文句はないのだが。

次の日、また11時くらいまで海燕と格闘の末に勝利して、惰眠を貪る浮竹の姿があった。

仕事ができるので、海燕もあまりしつこく起こさなくなった。

浮竹は、おはぎが大量にやってくる幸せな夢を見るのだった。



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浮竹死んだけど幽霊です憑いてます15 苺花

ルキアと恋次の間に、待望の子ができた。

妊娠していると告げられて、浮竹は意識を失った。ショックではなく、嬉しさのあまりに。

「大丈夫、浮竹?」

「ん、ああ。早く、子供を見に行こう」

浮竹に急かされて、朽木邸までやってきた。

子供が1歳になるまで、実家である朽木家で過ごすことを決めたルキアと恋次であった。

「わぁ、かわいいなぁ」

すやすやと寝ている赤子は女の子ということだった。

「名前は苺花です、浮竹隊長」

まだ産後間もないので、ベビーベッドの隣に布団をしいて、ルキアは横になっていた。

出産も、朽木家で行った。 産婆を呼んでいた。念のためにかかりつけの医師にも待機してもらっていた。

初産は、時間は少々かかったが、何の問題もなかった。

出産には恋次も立ち会った。 白哉は、別室で生まれるのを今か今かと待っていた。

「おぎゃあおぎゃあ」

生まれたのが女の子だと分かって、ちょっとした騒動になった。

男の子だと言われていたのだ。 産着から将来のための服までと、気が早い白哉は用意してしまっていた。女の子分かったので、産着はまぁいいといして、子供用の男の子用の着物がすぐに女の子用のものに変えさせた。

「兄様、気が早すぎます」

「子が成長するのは早い」

朽木家にも縁続きの姫君が生まれたのだ。

「朽木、抱いても大丈夫だろうか」

「そっとなら」

全身を実体化させて、浮竹は恐る恐るベビーベッドから苺花を抱き上げた。

苺花はすやすやと眠っていた。

「かわいいなあ。目元はなどは朽木そっくりだ。美人になるぞ」

「僕にも抱かせて」

京楽の腕の中に入ると、苺花は火がついたように泣きだした。

「なんで!?」

「ああ、多分お乳の時間なんです」

恋次も傍にいたが、浮竹と京楽を部屋の外へ追い出した。

「妻の、お乳をあげる姿を見せるわけにはいきません」

「白哉はいいのか?」

「隊長は家族なので」

浮竹と京楽が顔を見合わせた。

「なぁ、僕らも子供を」

「無理だ!産めない!」

「涅隊長に・・・・」

「却下!」

浮竹は、苺花をみてとても嬉しがり、にこにこしていたが、今は怒っていた。

「いいか、俺との間に子供を求めるな!できないのは自然の理だ!」

「うん、分かった」

京楽は、ちょっと残念そうな顔をしていた。

やがてお乳をあげ終わったことが告げられて、京楽も浮竹も苺花とルキアのいる部屋に戻った。

「女の子ということは、いつかお嫁に・・・・・・」

「浮竹隊長、気が早すぎます」

ルキアが笑っていた。

「浮竹もそう思うか。私は少し年が離れることになるが、四楓院家の当主がいいのではないかと思っておるのだ」

「兄様まで!苺花は一昨日生まれたばりなのですよ!」

ルキアに怒られて、浮竹だけでなく白哉までしょげた顔をしていた。

「ほら浮竹、もう十分でしょ。いつでも見にこれるんだから、帰るよ」

京楽は、家族の時間の邪魔をするのは悪いと、実体化したままの浮竹を引きずって、朽木家を後にした。

霊体に戻って、浮竹はぼんやりと考える。

苺花が花嫁にいく姿を、このまま拝むことがきるだろうかと。 きっと、100年以上先の話になるが、その時自分がまだこうして京楽の隣に在れるかどうか・・・・考えていると、ポロリと涙が頬を伝った。

それに、京楽がぎょっとなる。

「どうしたの。そんなに苺花ちゃんの傍にいたかったの?」

「違う。苺花ちゃんが嫁に行く頃・・・・俺は、こうしてまだ京楽と共に在れるのかと思ったら、不安で・・・・・」

「大丈夫。100年でも200年でも、このままだよ」

少しだけ実体化した浮竹を抱き寄せて、頭を撫でてやる。

「浮竹は甘えん坊だね。大丈夫、君はずっと僕の傍にいれる」

「どうして、言いきれる?」

涙を流す浮竹に口づける。

「君が僕に憑いた日から思ってた。君、存在するのに僕の霊圧を食っている」

「霊圧を?」

「そう。霊圧を食うことで、存在し続けられている。つまりは、僕が生きている以上はそのまま在れるってことだよ」

浮竹が食う霊圧の量はたかが知れていて、浮竹は気づかなかったのだろう。

他の者も気づいていない。 本人である京楽だから分かるのだ。 浮竹は泣き止んでいた。

「俺は、お前が死ぬその時まで傍にいることを誓う」

「僕も、僕が息絶えるまで君の傍にいることを誓うよ」

それは、まるで結婚式で誓いを立てるようで。 二人は、いつまでの抱き締めあっていた。 やがて、浮竹の実体化の限界時間がきて離れるが、心は寄り添いあったままだった。

「甘味屋にでも行って、気分転換でもしよう」

「ああ。食べまくるぞ!」

「そうそう、元気だして!」

浮竹は、京楽が驚くくらい甘味物を食べた。実体化するためのエネルギーにするのだ。いつしかの大食い選手権のように食べまくる浮竹に、苦笑を零す京楽であった。

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浮竹死んだけど幽霊です憑いてます14 懐かしい場所

「ということで、諸君らが死神になるのを応援するよ」

京楽は、その日総隊長として真央霊術院で全校生徒に向かって、挨拶をしていた。

みんな注目している。京楽ではなく、その隣で透けて立っている浮竹を。

「まぁなんだ、大戦を終えてから元13番隊の隊長が幽霊になって僕にとり憑いてね・・」

「お祓いをするべきです!成仏しないなんて、自分勝手すぎる!」

勇気を出して、一人の生徒がそういうと、京楽は笑った。

「きっと、この中の大半の者が知っていると思うけど、僕は元13番隊隊長浮竹十四郎とできていてね。お祓いをしても成仏しなかったし、今のままでいいと思っているんだよ」

女生徒からは、黄色い悲鳴があがった。

「ま、そういうことだから、今後上官になるかもしれない京楽には俺が憑いていると思ってくれ」

浮竹が、そう言って京楽と一緒に真央霊術院の講堂を後にした。

「よかったのか?まだ知らない者のいたかもしれないのに」

「僕と浮竹のことを知っていないと、困惑するだろうからね。早いうちに関係をはっきりしておいたほうがいいよ」

「そういうものなのか・・・?」

その日は、真央霊術院のいろんな場所を見て回って、授業を受ける生徒たちを応援した。

女生徒の黄色い声が半端なく、ふと一人の女生徒がサインをもらいに京楽のところにやってきた。

サインを書くための色紙はなく、何かの本をもっていた。

「ずっと、京楽総隊長と浮竹隊長の話を読んで憧れていたんです!」

松本の書いた、京楽×浮竹の同人誌だった。

「松本のか・・・・・」

浮竹が呆れた声を出す。

死神や、その死神になるためのひよこである生徒たちにとって、隊長副隊長はいわゆる芸能人のアイドルに似ている存在だった。

高値の花なのだ。

もう死んでしまったはずの、浮竹が幽霊として、時に実体化して京楽と一緒にいる姿は、今の隊長副隊長をはじめとする死神たちに受け入れられていた。

真央霊術院の施設は、校舎自体も昔と変わっていて、あまり懐かしさを感じさせてくれなかったが、その存在は懐かしさを駆り立てられた。

校庭に生えている桜の木は、あの下で告白をしあった記念のものだ。

500年以上経っても、毎年春に花を咲かせる桜の巨木は存在した。

「ああ、懐かしいねこの桜の木・・・・・君に想いを告げたのは、この桜の木の下だった」

「そうだな。あと、よく花見にこの木の下にも来た」

京楽は、桜の大木によじ登った。

「ここから見える景色は、あの頃と変わっていないね・・・・」

「いい景色だな」

「ちょっと、午睡しようか。どうせ、この後暇だし・・・・・」

桜の木の大木の上で、京楽は眠ってしまった。その安らかな寝顔を見ているうちに、浮竹も眠くなってしまって、京楽の上の折り重なるようにして眠ってしまった。

「京楽、おい、京楽!」

「ん~?」

「もう夕刻だ。寝すぎた!」

「あ、本当だ。いっけない、七緒ちゃんと仕事の話を午後にする予定だったのに!」

京楽は急いで桜の木の上から去ろうとして、ゆっくりとした動作で起き上がる。

「どうせ、今日はもう無理だ。こんな時間だ、明日に回すよ」

「いいのか?すまない、俺がもっと早くに気づけば」

「君は僕が寝たから、一緒に寝たんでしょ。君は悪くないよ」

「でも・・・・」

「ちょっと実体化して」

言われた通り、透けていた体に輪郭が戻ってくる。

「んあ・・・・・・」

激しい口づけを受けた。

「ああっ・・・・」

服の上から、体を弄られる。

「きょうら・・・く・・・・・」

「僕のことだけを考えて。自分が悪いなんて、思わないで」

「分かった・・・・・・」

そのまま貪られるかと思う激しささだったが、この前1時間実体化して体を重ねたばかりなので、今は数分しか実体化を保てなかった。

それが分かっていながらの行動に、浮竹が不満をもらす。

「お前、俺の体に火をつけといて放置とは・・・・・」

「いつも、君を抱きたいと思ってるのに抱けない僕の気持ち、少しは分かった?」

「う・・・すまない」

この幽霊の体は便利でもあるが、こういう時不便だった。

好きな時に好きなだけ実体化できれば問題はないが、それでは生き返ったのと同じだ。

あくまで、浮竹は死者である。

神様の悪戯か、京楽に憑いて自我を保ち、こうして実体化して触れれるようになったのだ。

「なんなら、霊体をさわせる手袋で、手でいってしまうかい?」

「いや、いい。そこまで飢えてるわけじゃない」

多分、京楽にそうさせると、今度実体化した時にその時の分もと言われて、いつもより激しく抱かれるだろうと思ったので、遠慮しておいた。

「僕は、いつでも君を抱きたいと思っている。今の月2は少なすぎるけど、仕方ないから我慢している」

今、月に2回だった。1時間以上実体化するには、エネルギーがいる。食べたものを実体化させるエネルギーに変えているが、頑張っても月3回が限度だろう。

無理のない範囲でとなると、月2回が限度であった。

でも、その日の夜、結局体が疼いて、霊体を触れる手袋で触られて、2回ほどいってしまった。

霊体でも、性欲を覚えるのだ。食欲と睡眠欲もある。

始めの頃は何もなかったのだが、京楽の霊圧を間近で浴び続けることで、人間化しているようであった。

幽霊だけど、半分生きているに近い幽霊。

変な存在だとは思ったが、こうして京楽の隣に在れるだけで幸せなのだ。

それ以上の欲をもつなど、我儘すぎるだろう。

「はぁはぁ・・・・・」

京楽の手でいかされたけれど、汚れた体は霊体の体を少し波長を変えるだけで元に戻った。

「ああ・・・・君の乱れる姿を見ていたら、僕もたっちゃった」

生前は週に2回体を重ねていた。月2回は少なすぎて、京楽は浮竹の喘ぎ声をおかずに、週に一度くらい自虐して抜いていた。

「喘ぎ声、いるか?」

「お願い」

「あ、ああ、ああん、京楽いい、もっとそこ触って」

耳元で囁くと、破裂しそうな京楽の一物が、先走りの蜜を流し出す。

「ああ、いいね。その調子で・・・・」

恥ずかしいが、京楽の耳元で喘ぎ続けた。

京楽は二度ほど抜いて、すっきりした顔をした。

「ああ、でも本物を抱きたいなぁ。次は・・・来週の終わりくらいかな」

「そうだな」

「甘味物一杯食べて、エネルギー溜めてね。1時間じゃ物足りないから、2時間は実体化してほしい」

「また、そんな無茶を言う・・・・・」

けれど、愛しい京楽のために、浮竹はたくさん食べてエネルギーを補給し、次の週の終わりには2時間は実体化し、京楽にこれでもかというほど抱かれて、霊体化した後もふらふらとするのであった。




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現世の浮竹?

時は院生時代まで遡る。

「京楽!」

浮竹は、京楽と寮の外の甘味屋の前で待ち合わせしていた。

いつもなら、寮の部屋から直接いくのだが、今日はデートだった。

院生の服のままだが、もらった翡翠の髪飾りで、肩より伸びた髪を結いあげてまとめていた。

今、院生の4回生だった。

「浮竹、今日はかわいいね。いつもかわいいけど、いつもよりかわいい」

自分があげた髪飾りをしていてくれることが、とても嬉しかった。

「甘味屋、入ろうか」

「ああ」

甘味屋でまずおはぎを注文した。それから、ぜんざい、白玉餡蜜、羊羹、桜もち、団子、杏仁豆腐・・・3人分をペロリと平らげた。

「うふふふ~~」

「なんだ、気持ち悪いな」

「いや、かわいいなぁと思って」

「かっこいいと言え!」

無理な相談だった。

そもそも、翡翠の髪飾りで髪を結い上げてる時点でかわいすぎるのだ。

ちらちらと、女性客だけでなく男性客の視線を集める浮竹のかわいさに、京楽はできることなら浮竹を隠してしまいたいと思った。

お茶を飲んで一服する。

これだけ甘味物を食べても太らない。おまけに、昼食や夕食も平らげる。

「この後どうする?」

「現世に行ってみたい」

山じいの許可を得て、現世にやってきた。

時は戦国時代。

「姫!」

「え?」

「貴様、姫に何をしている!姫、そのように髪を短くして・・・何があったのですか」

次々と、武装した兵士たちが集まってきた。

一般人に手をあげるわけにもいかず、京楽は大人しく捕まっていた。

「姫、さぁこちらへ」

「あの、俺は違うんだ。姫とかじゃなくって・・・・・」

「何を言っておられる、姫。今夜は殿との結婚式・・・姫の姿が見えず、途方にくれていた次第です。見つかってよかった」

どうやら、現世のどこかの武家の姫が家出したらしい。しかも浮竹にそっくりなそうで、髪の色さえ何も言われなかった。

京楽が捕らえらえられているので、下手な行動には移れない。

仕方なしに、一人で着替えられるといって、十二単を適当に着込んだ。

「あれまぁ姫、着方が間違っております」

侍女に、十二単を整えてもらって、浮竹は殿とやらと会った。

「おお、姫、いなくなって心配したのだ」

とてもごつい、お世辞にも美男と言える男じゃなかった。小太りで、浮竹の傍にくるとねっとりとした視線を送ってくる。

「姫・・・今宵、我らは結ばれる。さぁ、褥へ・・・・」

服の上から体を弄られて、このままではいけないと思い、殿という身分とはいえ、一般人には悪いが気を失ってもらおう。

「破道の4、白雷!」

かなり手加減した。殿とやらは焦げて意識を失った。

見張りの兵士たちを次々と気絶させて、京楽が捕らわれている牢屋にいき、京楽を助け出す。

「いやあ、助かったよ。脱獄もできたけど、騒ぎを広げるわけにもいかないね・・・それにしてもその恰好、恐ろしいほどに似合っているね。姫と言われるだけのことはあるよ」

二人して、城を抜け出した。

途中、女性と出会った。

「え、私?」

「え、俺?」

本当にそっくりだった。違うのは身長と髪の長さくらいで。

浮竹のほうがわずかに背が高かった。

事情を説明すると、姫は泣きだした。

「すみません、私が結婚が嫌になって城をぬけだしたせいで、迷惑をかけてしまい・・・・」

姫は、ここ数日の間で恐怖のあまり髪が白くなってしまったのだという。

姫は、もう決意していた。

この時代、結婚は政略結婚が多い。本当に好きな相手は側室にしてしまうとかも多かった。

「私はもう行きます。どうか、ご武運を・・・・」

姫は、城の方へ行ってしまった。

「止めなくてもよかったのかい」

「止めても、あの姫が結婚しないと、姫の家のほうの武家が責を問われる」

「ああ、そうか・・・・武家って厄介だね。きっと政略結婚だろうけど」

「尸魂界に戻ろう」

「そうだね。現世の海でも見ようと思ってきたんだけど、こんな厄介ごともうごめんだ」

尸魂界にに戻ると、院生の服を取り返すのを忘れていたことに気づく。

「どうしよう。この格好、まるで花街の遊女だ」

「遊女でも十二単なんて豪華なもの、着ないと思うけどね」

浮竹は、山に身を隠した。

「院生の服をもってきてくれ。ここに隠れておくから」

「分かったよ」

京楽は、一度寮に戻ると、浮竹の院生服を手に山に戻ってきてくれた。

「ああもう!どうやって脱げばいいんだ」

「手伝ってあげる」

京楽に手伝ってもらい、浮竹はなんとか院生の服に着替えた。

「君の肌・・・すべすべだね」

「盛るなよ!」

「分かってるよ。でも、姫の姿よかったなぁ。かわいかった。今のままでも十分かわいいけど」

京楽は、珍しいからと、十二単を残すらしかった。

「いつか、また着てほしいな」

「ごめんこうむる」

すっかり夜になってしまっていた。

「また、来週の日曜デートしようよ、今日のやり直しに」

「ああ。でも、もうしばらく現世にはいかない・・・」

また、姫と間違われたくない。

京楽以外の男に、服の上からであるとはいえ、体を弄られた時拒絶反応か、吐き気がした。

「俺は、お前以外の男に触られるのが嫌だ」

その言葉に、京楽が真面目な顔になる。

「あの殿とやらに何かされたの?」

「服の上から体を弄られただけだ。でも、それだけで悪寒がした」

京楽は浮竹を抱き締めた。

「君に他の男が触れるのさえ、僕も嫌だ」

寮の自室に戻ると、どちらともなしに唇を重ねた。

とさりと、ベッドに横になりながら、あの姫は大丈夫だろうかと考えながら、体温を共有しあった。

睦みあうことはなく、その日は眠るだけだった。

次の週の日曜、また甘味屋に行った。

それからは本屋で小説を買い込んで、衣服屋で普段着用の着物を買った。

夜は居酒屋に入り、二人で飲んだ。

「あの姫、大丈夫だろうか。恐怖で髪が白くなるくらいだ。婚姻が嫌だったんだろうな」

「だからって助けてあげることもできないしね。浮竹にそっくりだったから、できれば助けてあげたいけどそういうわけにもいかないし」

その後、浮竹と京楽は気になって仕方なくて、もう一度現世にいった。

浮竹は念のためにフードで顔を隠していた。

「あ、あなたたちはあの時の!」

姫に出会うと、姫は幸せそうな顔をしていた。

「殿が、思った以上に優しい方でした。私、あの方となら幸せになれそうです」

「よかった・・・・・・」

浮竹はフードをとった。

「本当、そっくり。まるで私の兄上であるといっても、通用しそうですね」

「本当に、不思議なくらいに似ているな。俺は浮竹という」

「まぁ。先祖に、浮竹という名の戦神がいたと聞きます。きっと、血がどこかでつながっているのでしょう」

「なるほど・・・・」

昔、浮竹一族のある男が、尸魂界を捨てて人間になり、現世にいったという話を聞いたことがあった。

多分、その血筋なのだろう。

「俺とあなたは、どこかで血がつながっているようだ。このまま、幸せになれることを祈ってます」

「ありがとうございます。殿の世継ぎを立派に産んでみせます。あなたも、その方とずっと結ばれていますように」

「浮竹のことは、僕に任せておけば大丈夫だから」

「なっ」

浮竹が顔を朱くしながら、京楽の耳を引っ張った。

「では、俺たちはこの辺で」

尸魂界へと戻った。現世の人間と会話をすること禁じられているわけではないが、過度の干渉は禁じられていた。

もう会うこともないだろうと思いながら、現世を後にする。

「本当に不思議な方たち・・・・」

姫は、その後10人の子宝に恵まれ、殿と一緒に幸せな人生を送ることになるのだが、それは浮竹と京楽には知らせることは、ついにかなわなかったという。


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凍った砂時計 家族

ルキアに、待望の子が生まれた。

女児で、苺花と名づられた。

3人目の子もできた。男児で、一音と名づけられた。


「父様、今日も稽古をお願いします」

「ああ、一勇。今日はだめだ」

一勇は8歳になっていた。

「ルキアの誕生日なんだ」

「母様の!」

「母様、誕生日なの?」

苺花は6歳で、一音は2歳だ。

やんちゃな一音を、苺花がしっかりと面倒を見ていた。

ルキアは、護廷13隊の13隊隊長に就任していた。副官は一護だ。

「みんなで、ルキアの誕生日を祝おう!」

バースディケーキを用意して、ルキアが帰ってくるのを待った。一護はこの日のために休暇をとっていた。

アメジストのピアスを、一護は大前田の宝石店から買ってきていた。

ルキアが帰ってくる。

「ハッピーバースディ、ルキア!」

ぱんぱんと、クラッカーをならすと、本当に驚いたようで、じんわりと涙を零し始めた。

「母様、どこか痛いの?」

「違う。お前たちの気持ちが嬉しいのだ」

「ルキア、誕生日おめでとう。これ、誕生日プレゼント」:

「ピアスか。だが、ピアス穴がない・・・・・」

「俺があけてやるよ」

消毒した針で、ピアスのための穴をあけた。

「痛いか?」

「少しだけ。でも、この一護からもらったピアスをつけるためだと思えば、痛みすら甘い」

「母様、僕からも誕生日プレゼント!白哉叔父様とつくったんだ!」

それは、ビーズ細工の指輪だった

拙かったけど、義兄である白哉も一緒に作ってくれたと知って、感動も普通の2倍だった。

「ルキア、一護、おるか」

「はい、白哉兄様!」

「どうしたんだ、白哉!」

「誕生日プレゼントだ」

わかめ大使のパジャマを、一護の分まで渡された。

「おう、俺にまでありがとな、白哉。お前がいなかったら、俺は死神にならず、こんな幸せ、手に入れることができなかった」

「兄は・・・十分ルキアを愛してくれている、子も二人もできたし・・・・・」

「白哉叔父様、私、大きくなったら、叔父様の花嫁になる」

苺花がおませことを言うが、白哉静かに微笑んで、苺花の頭を撫でた。

「そうか。その日を楽しみにしている」

「はい、白哉叔父様!」

白哉は緋真以外の妻を娶る気はなく、朽木家時期当主は、女であるが順番からして苺花だった。

かわいそうだ、一勇には罪人の血は流れているとのことで、当主にはなれないようだ。

もっとも、一勇も自分が罪人の血を引いてると知って、一時期塞ぎこんだが、一護の「お前は俺とルキアの息子だ」という言葉に、徐々に笑みを取り戻し、今では克服していた。

「そういえば、白哉も誕生日近いんだよな。ちゃんと祝うから、その日は休暇とってくれよ」

「兄は・・・・私の誕生日まで、祝うつもりか」

「だって、家族だろ」

もう二度と手に入らないと思っていた、家族団らんの愛が、白哉にも向けられていた。

「ルキア、ケーキ食べよう。白哉にはカラムーチョな」

一勇と、苺花と、一音にもケーキを食べさせた。

「おいしいな」

「ああ、美味いな」

朽木家の料理人に頼んで作ってもらったのだ。

その日の夕飯は豪華だった。ルキアにだけ、白玉餡蜜がついていた。

子供たちも欲しがったが、子供たちには特別に菓子を与えた。

夕飯後の菓子なんて、体に悪いのだが、今日は特別だ。


夜になって、ルキアと一護は褥を共にした。

無論、避妊している。

さすがにこれ以上、子供はいらない。

「ああっ、一護!」

乱れていくルキアを見るのは、一護だけの特権だった。

「ルキア、いくつになっても綺麗だ。とても3児の母親には見えない」

「これでも、食事とか運動に気を配っておるのだ・・・・・・ああ!」

朽木一護。

人間であることを捨てて、家族も友人も捨てた。

でも、それ以上の幸せを手に入れた。

10代後半のままで時を止めた二人は、長い長い死神の寿命を、いつも共に在りながら、すごしていくのであった。


             凍った砂時計

              fin




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凍った砂時計 最愛の者

「そうか・・・・ルキアが兄のことを思い出したのか・・・よかった」

「ああ、ありがとう白哉」

ルキアは一護のことを全て思いだした。

一護と出会い、死神の力を託したこと。仲間と力を合わせ、強敵と何度も戦ってきたこと。1年と7か月の空白の末に、再会したこと。

それに、高校生活の最後の4か月間。

ルキアに好きと告げ、ルキアからも好きと告げられたこと。

2カ月目に、初めて結ばれたこと。

全てを鮮明に思い出して語ってくれた。

涙が出そうになった。

ルキアは、一護にべったりだった。

「そうそう、結婚式の日取りが決まったって・・・・」

「貴様との婚礼か!今からでも待ち遠しい」

すでに籍はいれてあるが、結婚式を挙げていなかったのだ。白哉の言葉もあり、二人は婚礼を挙げることにした。


結婚式当日。

4大貴族、上流貴族の他に、護廷13隊の隊長副隊長も出席して、とても賑やかな結婚式になりそうだった。

「なあ、冬獅郎、俺の恰好変じゃないよな?」

日番谷にそういうと、日番谷は苦笑しながら答えた。

「どこも変じゃねーよ。ちゃんと、朽木家の家紋の入った正装だ。似合っている」

「よかった・・・・・」


やがて、同じく正装した白哉に連れられて、白無垢姿のルキアがやってきた。

「ルキア、綺麗だ・・・・・・」

「一護もかっこいいぞ」

二人は並び、結婚することを誓いあい、酒を飲み交わし合い、指輪をはめた。

「これで、俺たちは夫婦だな」

「ああ、そうだ」

ルキアにとって、これは二度目の婚礼になるが、一度目ははめられたのだ。ノーカウントだろう。

一勇は、始め市崎ナガレの両親が次期当主だから渡せとうるさかったが、白哉が黙らせてくれた。今は乳母に預けている。

「なぁ、俺女の子がほしいんだ」

白無垢姿のルキアの耳元にそういえば、ルキアは頬を朱くして頷いた。

「子供は・・・運を天に任すしかないが、たくさん作ろう」

「あんまり大過ぎても負担が大きいから、一勇も居れて二人でいい」

「二人でいいのか?」

「もっと欲しいのか?」

「貴様との愛の結晶だ。何人いても構わぬ」

「じゃあ、3人」

一護が、笑った。

ああ。この笑顔を思い出すのに、1年もかかったのだ。そんな自分を呪いながら、けれどまた結ばれたことに天に感謝した。

「私はただ巻き込まれただけなのだヨ!なのに減俸半年などありえない・・・・」

毒々しい姿の涅マユリの姿があった。

記憶置換で、市崎ナガレは、一部の隊長の記憶まで改竄した。それはもはや、護廷13隊に対する反乱であった。処刑されたのは、ルキアを好き勝手にしたことと、隊長への記憶の改竄のせいだった。

上流貴族で罪に問えないのではと、一部の者が心配していたが、本物の4大貴族の白哉の嘆願もあり、処刑となった。

処刑されぬようにと、市崎ナガレの両親が詫びにやってきたのをつっぱねた。四楓院家でも、処刑をと、嘆願が出された。夜一からのものであった。

今はもう、ルキアは他の男に穢されたことも克服し、一護と二人幸せに向かって突き進んでいく。

結婚式は厳かだったが、派手に行われ、他の4大貴族も集まるということで、これ以上ないくらいの美酒と御馳走が振る舞われた。

「あーん、このお酒おいしい!こっちの料理もおいしい!流石朽木家の結婚式」

「松本お!ただ飯とただ酒にありつくために、きたんじゃないぞ!恥ずかしいからやめろ!」

日番谷に怒られても、松本は平気な顔をしていた。

檜佐木など、たっぱに料理をつめていた。

さすがに貴族たちに嫌な顔をされていたが。

結婚式の2次会は京楽が主催で、一番隊執務室で行われた。そこでも美酒と御馳走がふるまわれた。


「はぁ疲れた・・・・」

「私も、くたくただ・・・・・・・」

結婚式がなんとか終わり、普段の死覇装に戻った二人は、褥に横になった。

「初夜なんだけど・・・・いいか?」

「ああ。私を一護色に染め上げてくれ」

「んな可愛いこと言ってると、手加減できなくなっちまう」

「手加減などいらぬ。市崎ナガレとの初夜を消し去ってくれ」

「ルキア・・・・・・」

「んっ・・・」

まず、口づけた。そっと抱き締める。

ルキアは泣いていた。

「貴様のことを忘れていたなど・・・・・私は、愚かだ」

「お前のせいじゃない」

唇を深く重ねていく。

死覇装の紐をしゅるっと解き、襦袢を脱がせれば、白い肌が露わになった。

全身にキスマークを残していく。

「ああ!」

「もっと乱れろよ」

秘所に指を差し込んで、くちゅくちゅといじってやれば、びくんとルキアの体が痙攣した。

「あああああああ!」

「好きだ、ルキア」

「いちごお」

秘所に指を深くいれて、折り曲げる。

いい場所にあたって、またルキアが啼いた。

「ああ!」

「ここが、いいんだな?」

「あう!」

灼熱を宛がい、そこめがけて突き上げる。

「ひあ!」

びくんと、またルキアが痙攣する。

「ごめん、ルキア。初夜だし、手加減できそうにない。あいつのことも忘れさせてやる」

「ひああああ!」

奥に突き上げると、きゅうっと中がしまった。我慢できず、1回目の欲望をルキアの中に放った。

ズチュズチュと音がなるくらい突き上げていく。

「はう!」

「気持ちいいか?」

「あ、いちごお。きもち、いい・・・・」

淫らなになったルキア。

一護は、純白の雪のようなルキアをそうさせた。

結合部は泡立ち、突き上げるたびに秘所はくちゅりと音を立てた。

「ああああ!」

もう何度目かも分からない。オーガズムで何度いっただろうか。

一護が満足する頃には、ルキアはぐったりとなっていた。

「ごめんな、ルキア」

「よいのだ。あいつとの初夜が上書きされた。それだけでも嬉しいのだ」

「子供、できるといいな」

「そればかりは、運を天に任すしかあるまい」

それからの新婚生活が順風満帆だった。

一勇もいれて、3人で仲睦まじく過ごした。



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凍った砂時計 始まりの関係

現世にいれるまで、あと1か月。

ルキアと一護の距離はますます縮まっていく一方だった。

クラス中で話題になった。

一護の家から、ルキアが出てくるところを見られたせいで、親の許可をもらって婚約しているという噂が流れたが、二人は肯定も否定もしなかった。

手を繋いで、登下校を繰り返し、学校の中でも常に一緒にいた。

付き合う前から二人の距離は近かったが、その距離はもっと縮まっていた。

「黒崎のやつ、朽木さんと付き合ってるんじゃない?」

たつきのその言葉に、井上がいう。

「何言ってるの。黒崎君は人間だし、朽木さんは死神だよ?付き合っても別れが見えてるんだから、きっと付き合ってないよ」

それは、井上の願望。

井上は一護のことが好きだった。

藍染のところに連れていかれた時、命をはってまで助けにきてくれて、愛されていると思った。

でも、あの頃からも一護の視線の先にいるのはルキアで・・・・・・。

「朽木さん、次体育だよ。移動しよ」

体育は男女別々なので、一護は名残惜しそそうにルキアと別れた。

「ねぇ、朽木さん。黒崎君のこと、同おもっるの」

「別に何も」

嘘をついた。

「信じていいんだよね?」

「井上?」

「私、黒崎君が好き」

「井上・・・・・・」

でも、こればかりは譲れない。

一護はもう、ルキアのものだ。

その会話は、バスケットボールが始まるのと同時に打ち切られた。

「どうしたんだ、ぼーっとして」

放課後、椅子の上でぼーっとしているルキアを、一護が心配した。

「いや、そろそろ一度、尸魂界に戻らねばと思って」

「おい、もう戻っちまうのかよ!?」

「案ずるな、ただ様子を見に行くだけだ。すぐに帰ってくる」

「それなら、いいんだけど・・・・なぁ」

「なんだ」

「卒業しても、こっちにこいよ。俺たち、付き合ってるんだから」

「分かっておる。休暇の日はちゃんと現世にくる」

「約束だからな」


世界が軋む。

音を立てて。


一護とルキア。出会いは突然、別れもあり、また戻ってきた。激しい戦いがあった。互いに生きているのが疑わしい時があった。

手に入れた平穏な生活を満喫するが、僅か4か月。

与えられた時間は少なかった。

一護は、ルキアの後をばかりを見て、ルキアばかりを見ていた。ルキアも、一護の後ばかりを見て、一護ばかりを見ていた。

学校の放課後、誰が来るかも分からない教室で互いを抱き締めあい、キスをした。

「ん・・・・・」

触れるような優しいものから、舌が絡むよな激しいものまで。

「ふあ・・・・・・いちご・・・・・」

「ルキア、かわいい・・・・」

一護は思う。

ルキアを手に入れることができるなら、なんでもするのにと。

付き合っていると言っても、死神と人間だ。その差は大きすぎる。

いつか、ルキアを置いて俺はいってしまう。よぼよぼになった時、ルキアは今のように愛していると言ってくれるだろうか。

不安ばかりが募って、ルキアを抱き締める手に力がこもってしまった。

「一護、痛い・・・・・」

「あ、ごめんルキア!」

すぐに離して、頭をなでてやると、気持ちよさそうにルキアはアメジストの瞳を細めた。

買ってやった、アメジスのペンダントをいつもルキアは身に着けいた。一応、記憶置換で優等生で頭がよく、朽木家という大財閥のお嬢様と生徒や先生に記憶させているので、アメジストのペンダントのことで怒られたことはなかった。

「家に帰ろう、ルキア」

「ああ・・・・」

手を繋いで、歩き出す。

あまり遠くないその距離を、ゆっくりと歩いた。

黒崎家に辿り着く。

「一兄、ルキアちゃんお帰り。一兄、ルキアちゃんとイチャこらするのはいいけど、せっかく大学進学がきまったんだから、ほどほどにしなよ」

「ルキアは・・・卒業したら、実家に帰るんだ」

「え、ほんとなのルキアちゃん」

夏梨の言葉に、ルキアは戸惑いの表情を出す。

「で、でも土日には黒崎家に遊びにくるから!」

「それでも寂しい~~~」

遊子も、寂しそうな顔をした。

「今日はルキアちゃんの大好きなカレーだよ!エビフライもついてるの!誕生日なんでしょ!白玉餡蜜もあるよ!」

「あ、ルキアの誕生日・・・・俺、何も用意してない」

「貴様には、この前アメジストのペンダントをもらった。あれが誕生日プレゼントだと思っている」

「そっか。誕生日おめでとう、ルキア。生まれてきてくれてありがとう」

「ありがとう、一護」

「ほらほら、妹たちの目のある場所でいちゃつかないの!」

その日、ささやかなルキアのバースディパーティーが開かれた。遊子が買ってきたケーキを、一護と一護の家族全員とルキアで分けて食べた。

おいしかった。


世界は軋む。

音を立てて。

砂時計は凍る。

まるで、ルキアの斬魄刀のように。


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凍った砂時計 一護とルキア

それは、尸魂界にルキアが帰る前に遡る。

市崎ナガレと婚姻する前だ。


一護に、残された期間は僅か4か月。

「なぁ、ルキア」

「なんだ」

同じべッドで横になっていた。

一護の腕の中に、ルキアはいた。

それは、一護がルキアを好きだと言い出す前からの行動で、当たり前のようにルキアは一護の腕の中で、その細く小さい肢体をすっぽりと収めていた。

「付き合おう、俺たち」

「え・・・」

「だって、お前も俺のこと好きなんだろ?じゃあ、付き合おうぜ」

「う、うむ・・・・」

一護の腕の中で、ルキアは真っ赤になっていた。

「なんだよ、照れてるのかよ。今更だろ。この体勢も前からだし・・・・そもそも、お前は男に対して無防備すぎるんだよ!まさか、恋次ともこういう風に寝てたんじゃねぇだろうな」

「う・・・・・」

図星だった。

たまに、恋次と飲みにいって酔っぱらった後、恋次の腕の中にいることがあった。

「もう、俺以外の男に気を許すなよ」

「兄様もか?」

「いや、白哉はいいけど。お前の兄貴で家族なんだし」

その言葉に、ルキアはほっとしていた。

「なぁ、ルキア」

「なんだ」

「明日、デートしようぜ。ちょうど土曜だし」

「でででで、デート!?」

「なんだよ、嫌なのかよ」

「そうではないが・・・・・」

どう答えればいいのか、ルキアには分からなかったのでこういった。

「き、貴様とのデート、受けてたってやろう」

「おい、決闘じゃねーんだぞ」

「私にとっては似たようなものだ!でででデートなど、けしからん!」

「だめなのか?」

「だめじゃない」

「あーもう、ルキアかわいすぎ」

一護は、腕の中のルキアを抱き締めた。

「もう寝るぞ!」

「ああ、そうだな」

明日か。わくわくする。そう思いながら、ルキアも一護も眠った。

「おい、起きろ一護!」

「んー、後1時間・・・・」

「私とデートする約束はどうなるのだ!」

そう言われて、一護はばっと飛び起きた。

「ええっ、もう1時かよ!」

一護は慌てて支度をして、1時半にルキアと一緒に外に出た。

まず、ファミレスで食事をとった。

3時から2時間ばかり、恋愛ものの流行りの映画を見た。

それから、デパートで買い物をした。

ふと、ルキアが宝石店のアメジストのペンダントを見ているのを見て、その値段を見て一護は決意する。

「これ、ください」

「おい、一護!こんな高いもの・・・・」

「いいんだよ。バイトしてためた金あるから」

本当は、一人暮らしの時のためにためていた金であるが、ルキアを喜ばせるめなら惜しくなかった。

包装してもらわず、そのままルキアの首に飾ってやった。

「似合ってるぜ、ルキア」

「一護・・・・・・ありがとう」

その日は、それが最後だった。

それから毎週、土日はデートした。ルキアと在れる時間を大切にした。

ルキアと付き合いはじめて2か月目。

父親と、双子の妹が旅行に出かけた。

「なぁルキア・・・・・抱いていいか」

一護とルキア以外、誰もいない黒崎家で、一護がそう言った。

ルキアは、体を硬くさせた。

「私は・・・初めてなのだ。その、こんな私でいいのか?」

「お前じゃなきゃだめなんだ」

「構わぬ。抱け」

ベッドに大の字で寝転ぶルキアに、苦笑を零して、その体を抱き寄せた。

「優しくするから・・・・・」

口づけられた。

「んっ・・」

キスは、もう何十回としてきた。

一護は、ルキアの服を全部脱がせると、自分も裸になった。

「ルキア好きだ・・・・」

「ああっ!」

輪郭全体を愛撫され、薄い胸に手をかけられる。全体をやわやわともみしだかられて先端を口に含まれた。

「んあっ」

もう片方をつままれると、甘い電流が全身に走った。

「あ・・・」

くちゅりと、濡れてしまった秘所に手を這わされる。

「や・・・」

「優しくするから・・・・」

くちゅくちゅと、手で愛撫されて、ルキアは頭が真っ白になった。前立腺を刺激されて、陰核をつままれて何も考えられなくなる。

「ああああああ!」

「いったのか?」

「いく・・・これが?」

「ああ。気もちいい?」

「あ、気持ちいい、一護、もっと・・・・」

キスを何度もされた。

やがて、一護自身がルキアの中に入ってくる。

「んあああ」

ぶちぶちと音をたてて、処女膜が破られる。

「ごめん、ルキア・・・・」

「あ・・・・・」

優しく貫かれた。何度も気持ちのいいとろを突き上げられて、何度もルキアはいった。

ズチュリと音を立てて、奥まで犯される。

「ああ!」

一護は、ルキアの体の中に、欲望を放っていた。

「避妊してなかったけど・・・・大丈夫だよな?義骸だし・・・」

「ん・・・・ああ、義骸が妊娠することなどない」

「よかった・・・・・」

ルキアは何度もいかされたが、一護がいったのは一回だけ。

「物足りぬであろう」

ルキアに手淫されて、一護は二度ほど欲望を放って、その日は一緒に湯浴みして、眠った。

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凍った砂時計 始まりの砂

少し寒い季節になってきた。

ある、穏やかな土曜日。

「ルキア」

「一護、どうしたのだ」

一護の部屋で、一護は真剣な表情でルキアを抱き締めた。

「おまえが好きだ」

「え・・・」

「ルキア、ずっとずっと、お前のことを見ていた。好きだ、ルキア」

一護の腕の中で、ルキアは身じろいだ。

「私は、死神だぞ」

「知ってる。俺は死神代行だけど、ただの人間だ。それでもルキア、お前のことが好きなんだ」

「私は・・・・・」

ルキアは逡巡する。

死神である自分。人間である一護。

それでも。

それでも、。

ルキアは一護に口づけていた。

「ルキア!」

「私も・・・・貴様のことが、好きだ」

「俺は、お前を愛している」

「一護・・・・」

一護は、腕の中のルキアを抱き締めた。

「この感情に、名があるとしたら、きっと恋なのであろうな」

ルキアを抱きしめて、ベッドに横になる。

「ん・・・・抱くのか?」

「いきなり抱いたりしねーよ。ただ、こうして体温を共有しあって、横になりたいだけだ」

「一護・・・・」

「ルキア・・・・・」

出会って、3年。

一護は、密かにルキアに恋をしていた。でも、ルキアもそれは同じで。

高校3年の終わり。

大戦が終結し、本来なら尸魂界に帰らなければならないルキアは、現世にいた。

一護の我儘だった。

せめて、高校を卒業するまではルキアと共に過ごしたいと、総隊長である京楽に願い出た。尸魂界を二度にまで渡った英雄の言葉に「本当はいけないんだけどねぇ」と言って、京楽は許可をくれた。

高校卒業まであと4か月。

ルキアと共に居れる時間は、あと4か月しかなかった。

今までのように、ルキアに普通に接しようと思っていた。でも、ルキアのはにかむゆうに笑う笑顔に、我慢という言葉は粉々に崩れ落ちた。

アメジストの瞳が綺麗で好きだった。

柔らかい艶のある黒髪が好きだった。

その、細いあまり胸のない肢体が好きだった。

よく笑う、その笑顔がすきだった。

「うーーー、お前のこと好きすぎて、どうにかなりそうだ」

「貴様、どれだけ私のことが好きなのだ」

「世界一周するくらい」

「世界・・・それだけなのか?」

不満げなルキアに、一護は付け加える。

「太陽の距離くらいまで」

ルキアは微笑んだ。

「太陽は、貴様そのものであろう。このオレンジの髪も、太陽のようだ」

「じゃあ、ルキアは月だな」

「私が、月?」

「太陽がいないと、始まらない、月だ。月の女神みたいに綺麗だぜ、ルキア」

「貴様は、恥ずかしい台詞を堂々と・・・・」

ルキアは真っ赤になっていた。

「ルキアは美人だぜ。綺麗だ。確かにちょっと胸がたりな・・・・おぶ!」

最後まで言わせず、一護の顔面にルキアの飛び蹴りが炸裂した。

「胸のことは気にしているのだ!井上のように豊満ではないからな!」

「いや、それがいいんだよルキア。貧乳最高」

すぐに復活した一護がそう言うので、ささやかな膨らみしかない胸に、一護の手を当てた。

「これでも、いいと思うのか?」

やわやわともみしだかられて、ルキアが甘い声をもらす。

「あっ・・・・」

「最高。このまま死んでもいい」

ビービーと、伝令神機が鳴った。

「虚か!」

「俺も行くぞ!」

ルキアも一護も、死神化して虚の出現現場に向かった。

3匹の虚がいた。

1匹が、瞬歩より早くルキアの背後に移動して襲いかかる。

「危ない!」

一護は、虚の攻撃をまともに受けた。

「一護!この!」

虚を退治していく。

一護は、背中に血を滲ませていた。

「すまぬ、一護!」

「いいんだよ。そんな傷ついた顔すんな。お前が無事でよかった」

「今、井上のところに連れていく!」

瞬歩で井上のところにまでくると、井上は驚いた顔をしたが、すぐに一護の怪我を癒してくれた。

「黒崎君、大丈夫?」

「お、すまねぇ井上。お陰でもう大丈夫だ」

「黒崎君が怪我するなんて、何があったの?」

「一護が、私を庇ったのだ」

「そう。朽木さんが無事でよかった・・・・」

「すまぬ、井上。心配をかけた」

井上の家を後にして、2人は黒崎家の一護の部屋まで帰ってきた。

「貴様、私を庇うなど無茶をしおってからに」

「俺は、誰であろうと庇ったぜ。でも、ルキアは特に庇う」

「一護・・・・・」

一護は、ルキアの顎に手をかけた。

「一護?ふあっ・・・・」

舌が絡まる。

「んんっ・・・・」

始めは驚いて一護の肩を叩いていたが、そのうちルキアの手が一護の背中に回された。

つっと、銀の糸を引いて舌が出ていく。

「好きだ、ルキア。俺は、どうしようもないくらいに、お前が好きだ」

「一護・・・・私も、貴様が好きだ。月は、太陽がないと死んでしまうのだ。お前がいないと私は死んでしまう」

残された期間が4か月。

一護とルキアの、物語が始まろうとしていた。





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凍った砂時計 蘇る記憶

ルキアと一護は、常に一緒にいた。

ある日、一緒にいると、ふとルキアが動きを止めた。

ボロボロと涙を零し出すルキアに、一護がぎょっとなった。

「ルキア、どこか痛いのか?」

「思い出したのだ。貴様のことを。貴様に死神の力を託し、処刑されるはずだった私を助けに来てくれた。一緒に虚圏にいって、戦った。大戦では、一護の存在がなかったら勝てなかった・・・・」

「ルキア、思い出してくれたのか」

「ああ、何もかも鮮明に・・・付き合い始めた頃のことも、貴様と初めて体を重ねた時のことも・・・・・ああ何故私は今の今まで、これほど大切なことを忘れていたのであろうか」

ルキアを抱き締めた。

「お前は何も悪くない・・・・・」

「一護、愛している。私には、貴様だけなのだ」

ルキアと一護は互いを抱き締めあい、長い時間抱擁しあっていた。



ルキアが、ある日こう言った。

「貴様を死神化するという話が宙に浮いたままになっていたな。今日、その薬を飲んでもらうことになる」

「そうか」

白哉に呼び出された。

そして、死神に完全になるという薬を渡された。

一護は、白哉とルキアの目の前で、その薬を飲んだ。。

「だあああ、まずい!しかも辛い!水、水!」

ルキアに水を与えられて、それをごくごくと飲んでいった。

「これで、兄は晴れて死神の仲間入りだ。ルキアとの婚礼も控えているし、護廷13隊13番隊の3席が、兄には用意されてある」

「ああ、白哉いろいろとすまねーな」

白哉も市崎ナガレに記憶をいじられていたが、4番隊に診てもらい、完全に記憶は戻っていた。

ルキアは、一護のことを思い出してくれた。

記憶がなかった時、ルキアは、また一護を選んでくれた。一護の手を取ってくれた。それだけで十分だった。

「ルキア、俺との婚礼大丈夫か?市崎ナガレのこと、フラシュバックしたりしないか?」

「あのようなクズのことなど忘れた。一護、貴様と私は結ばれる。私には、貴様と出会い共有した3年間といく記憶を失っていたが、それでもまた一護、貴様のことを好きになった」

「ああ、嬉しいぜルキア」

「もう、決して私を手放すな。一護、愛している」

「俺も愛している、ルキア」

ルキアは、愛らしい男児を産んだ。市崎ナガレとの子であったが、一護は自分の子として迎え入れた。

すでに、ルキアと一護は籍が入れられており、一護が朽木家に婿入りした形であった。

その日の夜。

一護は、ルキアを抱いた。市崎ナガレに抱かれたことをずっと気にして、体を許してくれなかったルキアであったが、一護が自分のために人間であることを捨てて死神となったのだ。ご褒美を与えてあげないといけないと思った。

「ルキア・・・綺麗だ」

「あ、一護・・・・・」

寝室で睦みあった。

子を産んだが、体形はどこも崩れておらず、細かった。

子を産んだせいで、少し豊満な胸にしゃぶりつくと、母乳が出てそれを一護は当たり前のように飲んだ。

「貴様、それは一勇の・・・・」

男児は、一勇と名付けられて、ルキアと一護が育てていた。

「いいじゃねぇか、減るもんじゃなし」

「減るわたわけ!」

蹴られて、でも一護は微笑んでいた。

「好きだ、ルキア」

「私も好きだ、一護・・・・」

お互い、一糸纏わぬ姿になって、褥に横になった。

「ああっ」

輪郭全体を愛撫してやり、胸を揉んだ。

「んっ・・・」

舌が絡まるキスをした。

秘所に手を這わすと、そこは濡れいた。

「んあああ!」

一護が、秘所に舌を入れてきた。あふれ出す愛液を舐めとる。

「い、一護、そのような・・・・」

「一度、いっちまえ」

指で秘所の前立腺がある天井部分をくちゅくちゅとこすってやり、陰核を摘みあげると、びくんびくんとルキアの体がはねた。

「あああああ!!」

ルキアの中で、何かが弾けた。

「ああああ!」

何度も手で秘所をいじられていると、体全体が熱くなり、指では物足りなくなってきた。

「一護、もう指はよい。早く、来い」

「抱いても、大丈夫そうか?」

「大丈夫だ。お前と、早く一つになりたい・・・・・」

一護は、ルキアの希望通り、ルキアを貫いた。

「ひああ!」

体をずりあげて逃げようとするルキアの体を、抑え込む。

「逃げるなよ」

ぐちゅぐちゅと、結合部はいやらしい音を立てた。

「あ、あ、あ!」

何度も突き上た。

陰核を摘みあげると、ルキアはまたいってしまった。

「あああああああ!

「もっといけよ」

「ああ、一護!一護も一緒に・・・・・」

「ああ、ルキア、愛してる」

ルキアの子宮の奥まで突き上げて、中にびゅるるると、濃い液体を注いでやった。

「あああ!」

一護は、それだけでは終わらなかった。

ルキアを、背後から貫いていく。

「あ、この体勢、嫌だ・・・」

「なんで?」

「貴様の顔が見えない・・・見えないのは、嫌だ・・・ああああ!」

中を抉るようにしに、元の体位に戻る。

それから騎乗位にして、ルキアを下から突き上げた。

「んあう!」

「ルキア、ここ好きだよな?」

くちゅくちゅと、前立腺のある入り口の天井あたりを灼熱でこすってやると、ルキア涙を零した。

「ああ、今一護と一つになってどろどろに溶けている・・・・・・」

「もっとどろどろになれよ。俺以外のこと、忘れるようなくらいに・・・・・・」

「ひああああああ!」

前立腺を突き上げられて、ルキアは今日何回目にかになるかも分からない、女としての喜びを与えられて、いってしまった。

結局、一護はルキアの中で4回も弾けた。

「子種、たくさん注いいでやったから、子供できるかもな」

「貴様との子なら、さぞ愛らしいであろうな・・・・・・」

「今度は、女の子がいい」

「子ができるのも、性別も、天に運を任すのみだ・・・・」

その日の夜は、二人で同じ褥で眠った。


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凍った砂時計 救出

一護は、深夜の闇に紛れて、夜一と共に朽木家に侵入した。

幸いなことに、見張りの姿はなく、まずは白哉を救い出すために動いた。

「う・・・・兄は・・・夜一も・・・・・私は、何を・・・・」

幸いなことに、白哉は少し記憶をいじられて、あとは睡眠薬を大量に与えられて眠らされていただけなので、記憶はあやふやだが元に戻りつつあった。

「黒崎一護・・・私の、義妹を、頼む・・・・」

そう言って、白哉は再び意識を失った。

清家を呼び、至急4番隊のところにまで運んでもらった。

薬で眠らされていたせいで、体力の消耗が激しく、すぐに入院が決まった。

「ルキア、待ってろよ」

ルキアの霊圧は弱弱しく、霊圧探知能力の低い一護では場所が分からなかった。

「どうやら、ルキアは朽木家にはいないようじゃ。そうすると、市崎家か。行くぞ、一護」

「ああ、夜一さん!」

瞬歩で市崎家までくると、ルキアはナガレと睦みあっている途中だった。

「ああん、ナガレ、いい、もっと!」

「本当にあなたは淫乱だ。だが美しい」

「ああ、いい、そこもっと!」

まず、夜一が音もなくナガレの首をコキリと音をたてさせて気絶させた。

「なっ、四楓院夜一殿!私の夫に何を!」

「それより、服をきたらどうじゃ」

ルキアは、服を着た。

さっきまで、ナガレと睦みあっていたルキアは色っぽかった。

「一護じゃ。覚えておるか?」

「いちご?誰だ、それは」

「ルキア!俺のことがわからねぇのか!」

「だから、誰なのかと聞いておる!」

ルキアは、愛する夫と幸せに体を重ねている時に急に現れた、オレンジの髪の少年に、嫌悪を覚えた。

「こちらにくるな!吐き気がする!」

「ルキア・・・他の男に抱かれてたっていい。たとえそれで子供を孕んでもいい。好きだ、ルキア」

「近寄るな!」

「ルキア・・・・」

一護は、一歩一歩ルキアに近寄った。

「誰か、誰かおらぬか!」

ルキアが大きな叫び声をあげると、家人がやってきたが、夜一が気絶させた。

「帰ろう、ルキア。記憶がないなら、また一から築いていこう」

一護は、ルキアを抱き締めた。

「あっ・・・・」

ルキアの太腿を、ナガレが出した精液が伝う。

「ちくしょう・・・・ちくしょう!」

一護は、ルキアを抱き締めながら泣いた。

一護が泣くのは、本当に珍しいことだった。

「貴様、私が市崎ルキアと知って・・・・・・」

「ルキア、好きだ、愛してる」

「いち・・・・・ご・・・・・」

「ルキア!?」

ルキアは、意識を失った。

揺り動かそうとして、夜一に止められた。

「無理やり記憶置換で記憶を何度も改竄されておる。体にも相当負担がかかっておるようじゃ。白哉のように、4番隊で診てもらおう」

そっと、その細い体を抱き上げるが、どうしても我慢できなくて、ナガレを斬魄刀で切り殺そうとした」

「やめよ。これでも、4大貴族の次に名のある男じゃ。殺してしまえば、こやつに罰を与えることができぬ」

「でも夜一さん、こんな屑・・・・・」

「愛しい者をとられたお主の気持ちは痛いほど分かる。じゃが、こやつなどのためにお主がさばかれるのは見とうない」

「夜一さん・・・・」

ルキアを抱き上げて、4番隊に移動する。

警邏隊を呼び、砕蜂の手で捕縛させた。

罪状は、朽木白哉及び朽木ルキアの記憶改竄と傷害罪、その他の一部隊長の記憶改竄など。

四十六室で裁かれることになるが、極刑は免れないだろう。


「うう・・・・」

総合救護詰所で、ルキアは気が付いた。

「ここは・・・・・?」

「ルキア、俺が分かるか?」

「?貴様は誰だ」

ルキアのかけられていた記憶置換による記憶の改竄を、なんとかできるところまで回道で癒した。結果、ルキアは自分が朽木ルキアであり、市崎ナガレの手によって無理やり花嫁にされて身籠ってしまったことを認識した。

だが。
だが、ルキアの中から一護のことが空白になっていた。

「ルキア・・・・・・・」

「貴様は誰だ」

「俺は黒崎一護。死神代行で、お前の恋人だ」

「私の恋人・・・・・・うう、頭が痛い!」

虎鉄隊長が叫ぶ。

「黒崎さん、あまり朽木さんに刺激を与えないでください!記憶が絡み合って、人格にまで支障をきたすほど、精神が蝕まれています!」

「分かった・・・・ルキア、俺を見てくれ。愛してる。もう一度、最初から始めよう。俺は黒崎一護。ただの、死神代行だ」

「私は朽木ルキア・・・・護廷13隊、13番隊副隊長」

その日から、ルキアと一護の、新しい一日が始まった。

ルキアは退院しても、一護のことを思いださなかった。

だが、大切な存在であるとは分かるようで、いつも傍にいた。

「一護・・・・私は、孕んでおるのだろう?」

「ルキア・・・・・」

「おろしたいが、せっかく宿った命。その命に罪はない。私は産みたいと思う。貴様は、反対はせぬのか?」

「ルキアの子供、俺の子供だ。おろせとは言わねーよ」

ルキアと一護の距離は、どんどんと近づいていった。

「ルキア、そなた一護のことを思いだしているのか?」

「兄様、いいえ、相変わらず一護との記憶は戻りません。でも、とても大切なのです。私は、一護を好いております」

「そうか。そなたは、記憶をなくしても、もう一度黒崎一護を選ぶのだな・・・・・」

白哉は、優しく微笑んだ。

市崎ナガレの処刑を、二人で見守った。

「おのれええええええ、覚えていろ黒崎一護おおおおお!ルキアああああああ、お前は私のものだあああああ、私の子供を孕んでいるのだからなああああ!」

スパンと。

市崎ナガレの首がはねられた。

間近で見ていた一護の頬に、ぴっと、血が飛び散る。

「哀れな男だ」

「そうだな」

ルキアを奪還した。ルキアは俺のことを覚えていないが、また好きだと言ってくれた。

大切だと言ってくれた。

それだけで十分だった。

「ルキア、甘味屋に寄ろうぜ。お前の好きな白玉餡蜜、おごってやるよ」

「本当か!」

ルキアは顔を輝かせて、一護の手をとる。

二人は取り戻した。

絆を。

凍っていた砂時計は、再び砂が流れ出す。



一護が尸魂界にきて、1年が経とうとしていた。



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