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さくら

桜の花が満開になった。

朽木邸の桜も、見事に咲きほこっていた。

そんな庭で、恋次と白哉は花見をしていた。縁側に腰かけて、朽木家お抱えの料理人が作った弁当を食べて、高級酒を飲み交わし合った。

「桜は好きだ」

白哉の言葉に、恋次が頷く。

「そりゃ、隊長の斬魄刀も千本桜ですしね」

「浅打と対話しているときに、ふと満開の桜を思い浮かべたのだ。桜のことばかり考えていると、浅打は千本桜になった。始解した時の千本桜の美しさに、私は言葉を忘れた」

確かに、白哉の千本桜は美しい。ルキアの袖白雪のような見かけの美しさはないが、始解、卍解した時の花びらの本流となった美しさは、瀞霊廷の死神がもつ斬魄刀でも5本の指に入るほどの美しさであった。

卍解すれば、桜の花びら一つ一つが、億の刃となって襲いかかってくる。美しいが、とても強い。そんな斬魄刀だった。

「なんか隊長にすごく似合ってますね。綺麗なのに、鋭い」

「斬魄刀を千本桜にしてしまうほど、桜が好きなのだ」

白哉は穏やかな顔で、庭の桜の花を見上げていた。

「ちょっと待っててください」

恋次は手の届く範囲にある桜の花を一輪手にとると、白哉の黒髪に飾った。

「よく似合ってますよ」

「女子(おなご)ではないのだ。髪に花を飾られても・・・」

「いいじゃないっすか。似合ってるんだから」

「ところで、お前の斬魄刀は何故に蛇尾丸なのだ?」

「いやー。浅打と対話してるときに蛇とか狒々とか動物をイメージしてたら、そのまま形になっちまって・・・まぁ、今の蛇尾丸に満足してますけど、もうちょっと優雅な斬魄刀でもよかったかもしれないって、千本桜を見ているとそう思います」

それに異を唱えるように、腰に帯刀した蛇尾丸が震えた。

「おっと、蛇尾丸の奴が怒ってやがる」

「私の斬魄刀に懸想するからだ」

「いや、千本桜は好きですけど、懸想しているのは隊長に、です!」

「知っている」

ふわりと、白哉が微笑んだ。

桜の花びらがちらちらと降り注いでいく。

その中にいる白哉は、美しかった。

「やっぱ、隊長めっちゃ美人ですね」

「中世的な美貌だとは、よく言われる」

「そうですね。男性にしては美しすぎるし、女性にしては凛としています」

「褒めすぎだ」

「いやいや、本当のことですから」

恋次に言わせたら、白哉を褒める言葉は尽きないだろう。

「隊長は美人です!」

白哉の手をとって、口づける。

「隊長・・・・・」

白哉をじっと見つめる。

ふっと、白哉が目を閉じた。

それを合図に、触れるだけのキスをした。

キスは、高級酒の味がした。喉を焼くような強い酒ではなく、清廉とした味だった。

「ん・・・・」

何度か白哉の唇を貪っている間に、キスがより深いものになる。

舌を絡め合わせていると、杯に桜の花びらが落ちた。

「もう、よい・・・・」

「隊長、好きです。愛してます」

「知っている」

花びらごと高級酒を口にした。

ふと恋次に抱き寄せられて、その体温の暖かさに安堵する。

「ふ・・・私も、甘くなったものだな」

ずっと昔は、近づくことさえ許さなかったのに。今は、白哉の心にまで恋次は入ってくる。

「後添えをと望む声が多い。だがそれを否定しているのは、緋真だけを妻として愛し、今はお前がいるからだ」

「隊長・・・・・」

恋次は、白哉を抱き締めたまま離さなかった。

「一生、離しません」

「お互い戦火になれば散る可能性もある。だが、永遠の安寧に近いものが訪れた今、こうやって寄り添いあうのもいいのかもしれぬ」

もう、ユーハバッハの侵攻のような、脅威は訪れないだろう。

死神は千年を生きる。

その無限に近い命を、共にしていくのも悪くないと、思うのだった。

ちらちらと。

桜の花びらが散っていく。

桜が好きな白哉は、ただその光景を恋次に抱き締められながら、目に焼き付けていた。



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安酒

高級料理店でもない居酒屋に、白哉の姿があった。

たまには、普通の店で飲みませんかと戯れに誘ったら、本当についてきた。

いつもは、みんな飲んで騒ぐうるさい居酒屋であったが、白哉がいるだけで店の気温がマイナスになったくらい、冷たく感じられた。

「この酒は・・・意外にうまいな。私のことは構わず、騒ぐがよい。今日は私が皆をおごってやろう」

そんな話になって、さっきまでの静けさが嘘のように、騒がしくなった。

ここぞとばかりに、店で一番高い酒や料理を注文する、恋次にとってはモブに等しいどうでもいい奴ら。

その居酒屋で、白哉はいつもの高級酒ではない日本酒を飲んだ。

けっこうなハイペースで飲んでいたので、心配になって白哉に声をかけてみる。

「隊長?」

「なんだ」

ほんのり頬が染まっていた。

「今日はこの辺にしておきましょう」

「分かった」

「というわけだから、今まで飲んで食った代金は払っていくけど、新しく注文した分は自分たちで払えよ!」

恋次がそう言って聞かせると、ブーイングが響き渡った。

居酒屋の日本酒は、高級酒のほうの日本酒よりも、アルコール度が高かった。

勘定をすませる。けっこうな代金になったが、白哉のもっているお金の2割にも満たない値段だった。

白哉は、足元がふらついていた。

「ああ、もう!」

恋次は、白哉を抱き上げて朽木邸にまでくると、白哉を下ろした。

「恋次・・・・今日は泊まっていけ」

「いいんすか、隊長」

「隊長命令だ」

白哉は、湯浴みをしてさっぱりすると、寝室で違う湯殿で風呂に入った恋次の膝に、寝転んでいた。

「恋次・・・好きだ」

白哉は、酔っぱらっていた。

「隊長・・・好きです」

押し倒して、口づけると、白哉の手が背中に回された。

深い口づけを繰り返したが、流石に抱くわけでもいかず、生殺しの状態だった。

「いつもの館にいきませんか。あんたを抱きたい」

「構わぬが・・・」

その言葉を聞いた時には、白哉を連れていつも睦み合う時に使う館にきていた、

今日は人を雇ってはおらず、真っ暗だった。

明かりを灯して、寝室にいき、布団をしくとそこに白哉を横たえた。

「ん・・・・」

薄い明かりに照らされた白哉は、綺麗だった。

中性めいた美貌に、白い肌と黒い髪が艶めかしい。

貴族の証も、衣服もはぎとる。

そのしっとりとした肌に舌を這わせながら、恋次は言う。

「やっぱ、安い居酒屋だと、酔いも早いですね」

「そうか?」

「いつもの半分の量で、今酔ってますよ、あんた」

「私には、分からぬ・・・ただ、何かふわふわした心地がする」

「それが寄っている証です」

鎖骨から胸元にキスマークを残していく。

「んんっ・・・」

全身の輪郭を確かめるように愛撫して、胸の先端をかりかりとひっかっくと、白哉が声をあげた。

「何故、私は抱かれているのだ?」

「あんた、抱いてもいいかって聞いたら、いいって答えたじゃないですか」

「覚えておらぬ」

「ああ、もう・・・・でも、今更引き返せませんよ」

白哉の花茎に手をかけて、しごいて先端に爪をたてると、白哉はあっけなくいってしまった。

「あああ!」

潤滑油で濡らした指が、白哉の体内に入る頃には、大分酔いも冷めてきたようだった。

「ん・・・もっと、奥だ]

「はい」

前立腺を刺激してやると、白哉の花茎はとろとろと先走りの蜜を零した。

「いれますよ。いいですか」

「ん・・・・・こい」

灼熱を、ゆっくりと埋め込んだ。

「んあ・・・・・」

痛みは少ないが、鈍痛に似たものを感じる、

一気に貫くと痛みは一瞬で終わるが、かなり痛い。

ぐちゅりと音を立てて、内部を犯していくと、白哉は恋次のキスを求めてきた。

それに応えてやる。

「愛してます、隊長・・・・」

飾立てた言葉を並べる必要はない。

「あ・・・・私も、愛している、恋次・・・」

白哉の太腿を肩に担いで、突き上げた。

「ああ!」

だんだん交わりが激しくなってくる。

ぐちゅぐちゅと音をたてて内部を突き上げる。

白哉の体がびくんとはねる。

白哉が精を放ったのを確認した後で、また前立腺を突き上げてやった。

「ん、あああ、あ、あ!」

後ろでもいかされて、白哉は快感に染まった思考で、恋次の背中に爪をたてた。

細やかな反抗のようなものだ。

「隊長、俺のものだ・・・あんたは、俺のだ」

「んんん!ああ!」

恋次は、白哉の腹の奥で熱を放った。それでも足らずに、白哉を貪った。

「あ・・・・あああ!」

くちゅくちゅと音を立てて、前立腺ばかりを突き上げてやると、また白哉の体が痙攣した。

「ひあ!あ、あ!」

精液を吐きだした後は、透明な蜜がトロトロと零れるだけで、もう限界だと分かった。

恋次は、白哉を突き上げる。

体勢を変えて、後ろから突き上げると、中を抉られて、白哉が鳴く。

「ああああ・・・・ひああ!」

何度か後ろから突き上げている最中も、白哉はドライでいったらしく、黒髪を乱していた。

「も、無理・・・・・・・」

何度目かも分からぬ熱を白夜の腹の奥にぶちまけて、恋次も満足した。

「あ、風呂の用意してきます!」

人を雇っていなかったので、湯をわかしていなかった。

白哉は、行為後は風呂に入るのがいつもの習慣だった。

30分ほどして湯の用意ができて、白哉を抱き抱えながら、一緒に風呂に入った。

白哉の中に吐きだしたものをかきだして、髪と体を洗う。そのまま湯に浸かった後、体をふいて新しい服に着替えた。

「安い酒の割には美味かったが、アルコール度が高いな」

「それが、あの店の売りでもあるんですけどね。強い酒が飲めるって有名な店です。隊長があんなに飲むとは思ってなかった」

「もう、あの店には行かぬ」

白哉は、まだ濡れた黒絹のよな髪を、恋次の手で水分をタオルでふいてもらっていた。

「多分それが正解でしょうね。隊長は高級酒のほうが似合ってるし、そっちのほうが好みっすよね」

「まぁ、安酒の割には、楽しめた。酔ったのは久しぶりだ」

「足元ふらついてましたからね」

「いつもはそこまで飲まぬからな。お前もいたし、少し羽目を外しすぎたな」

恋次は、白哉に口づけた。

「あんた、キス好きですよね」

「否定はせぬ」

「俺以外の前で、酔っぱらわないでくださいよ。何されるか分かったもんじゃない」

「馬鹿なことを。私は男だ」

「俺も男ですけどね。隊長は男でも惑わすような美人ですから」

「戯言を・・・・・」

白哉は、自分から恋次に口づけた。

噛みつくようなキスだった。

「私をこんな気もちにさせるのは、お前だけだ」

「特別なんだって、受け取っておきます」

次の日は仕事の日だったので、6番隊の執務室にいった。

二人とも、同じ匂いを漂わせていたせいで、気づく者はすでに気づいでいたが、沈黙がルールだったので、誰も何も言わない。

そんなこととは知らずに、二人は普通の上官と副官を演じるのだった。


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鈍感もなんのその

「好きだぜ、ルキア」

「そうか」

いつものように、好きと言うと、ルキアはそうかとだけ答えて何も他に返事をしてくれない。

今までもそうだった。

多分、このままではずっとそうだろう。

ルキアを抱き締める。

「恋次?」

「俺の言い方が悪かったんだな。恋愛感情で好きだ、ルキア。結婚を前提に、俺と付き合ってくれ」

「そうか・・・・・って、えええええええ!!!」

ルキアは素っ頓狂な声をあげていた。

「やっぱり、今までの俺の「好き」って言葉は伝わってなかったんだな」

「あの、恋次?本気か?」

ルキアは首を傾げて聞いてきた。

その様があまりにも可愛らしいので、恋次は再びルキアを抱き締めていた。

「恋次、苦しい」

「あ、すまねぇ」

ルキアを離す。

でも、その手を握ったままだった。

「答えは?」

「今、答えねばならぬのか?」

「いや、時間おいてもいいぜ。でも、できれば今がいい。ルキアに好きだって告白したの一護にばれたら、一護までお前のこと好きだって言ってきそうだ」

「ええええええ!一護まで!?」

「やっぱ、お前きづいてねぇのな。自分ことに関してちょっと鈍感すぎやしねぇか」

「恋次と一護が、私を好き・・・・」

ぷしゅーと、湯気をたててルキアは真っ赤になった。

片方の手は恋次に握られたままなので、もう片方の手で顔を覆っていた。

「ルキア、答えは?」

「恋次・・・6番隊の、何席か忘れたが、女性がかわいいとかなんとか言っていたではないか」

ルキアが、一生懸命考える。

「お前の気を引くために、そんな話をした。でも俺が好きなのは、ルキア、お前だけだ。俺は隊長の副官だし、お買い得だと思うぞ」

「そんな、自分をセール品みたいに・・・・」

「答えは?」

「い、いえすだ」

「おっしゃああああ!!!!」

恋次はガッツポーズをとった。

一護が、ルキアを好きなのは知っていた。恋次もルキアが好きで、どちらが先に告白してどちらが先にそのハートをいただくのかという話に発展したことがあった。

一護には悪いが、井上という存在もあるし、きっぱりと諦めてもらおう。

「じゃあ、結婚前提でいいんだな?」

「う、うむ・・・・兄様に報告しないと・・・」

「ああ、隊長にはすでに結婚前提で付き合う許可、もらってあるから」

「行動が早いな!?私に振られたら、どうするつもりだったのだ!」

「考えてなかった」

ルキアは、ガクリとなった。

恋次は、突っ走ると止まらない。猪突猛進と言えばいいのだろうか。

ルキアのことを一度好きになったら、きっと嫌だと言っても何度も告白してくるだろう。

本気で嫌がれば流石に引いてくれるだろうが、ルキアは恋次のことが好きだった。一護のことも好きだが、仲間として他のみんなも好きだった。

その中で、恋次は隣にいたいという、「特別」の好きだった。

好きにはいろんなものがある。愛と一言でくくっても、友情愛、家族愛、仲間愛などいろいろある。

そんな中でも、恋次は特別だった。幼い時から一緒に過ごしてきただけに、恋次の考えていることは分かっていたつもりだったが、恋次が自分のことを恋愛感情で好いていてくれるとは思っていなかった。

「はぁ・・・・恥ずかしい」

顔を真っ赤にして、両手で覆っているルキアを、恋次は抱き上げた。

「れ、恋次!?」

「今日は飲もうぜ!」

「ええ!」

恋次に連れられて、居酒屋にやってきた。

恋次は上機嫌で、どんどん酒を飲んでいく。

ルキアは、アルコール度の低い果実酒を少しずつ飲んでいた。

自慢ではないが、酔っぱらうとろくなことにならない。酒癖が悪いらしい。

「ルキアももっと飲め!」

日本酒をどんと置かれて、けれどルキアはそれを飲むのを断った。

「恋次、私は酒にあまり強くないのだ。日本酒など飲めば、べろんべろんによっぱらって、貴様に迷惑をかける」

「じゃあ俺が飲む」

恋次は、酒に強かった。

時折、白哉と飲み交わすことがあるが、白哉も比較的酒に強かった。

「そろそろ帰るか」

居酒屋で飯も食べて、ルキアは朽木邸に向けて帰ろうとするが、恋次が手をひっぱって反対方向に歩きだす。

「なんなのだ、恋次」

「俺の家に泊まってけ」

「き、貴様、いくら結婚前提とはいえ・・・・・」

「何もとってくおうってわけじゃねーよ。ただ、一緒にいたいだけだ」

「貴様・・・ずるいぞ。そんな顔をしおって」

子供の時から見せる、少し寂しそうな笑い顔。

ルキアは、その顔を見るたびに恋次を元気づけた。

「一緒にいてくれるか?」

「ああ、いてやる」

恋次の家は、席官クラス以上がもてる館の通りにあり、けっこう広かった。

庭の手入れなどもきちんとされてあって、そんな時間がどこにあるのだろう思ったが、どうやら時折人を雇って、清掃などを行ってもらっているらしい。

館には、生活感があまりなかった。6番隊の隊首室で寝泊まりすることが多いので、館に帰るのは月に数度くらいだった。

「風呂、先に入るだろ?」

「しかし、着換えが・・・・」

「俺の服でかまわねーだろ」

ルキアは、それ以上言わずに、風呂場に消えていった。

20分くらいが経ち、恋次が風呂に入る。

ルキアは、下着をつけていなかった。ぶかぶかの恋次の服を羽織ったまま、恋次が風呂からあがってくるのを待った。

「寝るか。昔みたいに、一緒の布団でも構わねーだろ?」

流魂街にいた頃は、いつもよく同じ毛布をかぶって、寒さに震えながら、お互いの体温を共有しあって寝たものだ。

しかれた一組の布団に、恋次が横になって、ルキアも横になる。

ルキアは酒をほどほどにしていたが、眠気がゆっくりと襲ってきた。このまま寝ても、恋次は何もしないという確信はあった。ルキアが寝てほどなくして、恋次も眠ってしまった。

次の日の朝起きると、ルキアの姿がなかった。

「ルキア?」

「ああ、起きたのか恋次」

縁側に、ルキアはいた。ぶかぶかの恋次の服から見える胸元や細い手足が、目の毒だった。

「昨日の服、着てくれ・・・・いろいろ見えそうで、俺の理性がやばい」

ルキアは真っ赤になって、昨日脱いだ死覇装に袖を通した。

「で、では私は一度、朽木邸に戻る。ま、またな恋次」

「ああ」

ルキアは、瞬歩で去ってしまった。

脱衣所に、薄い色の何かが落ちていた。

それがルキアのブラジャーとパンツということを理解した時には、恋次は鼻血を垂らして昏倒していた。

その日、恋次は6番隊の執務室に遅れてやってきた。

白哉がなぜかと問うと、ルキアのパンツとブラジャーと答えて、千本桜の鞘で思い切り頭を叩かれた。

「告白したばかりであろう。よもや、手を出したのではあるまいな」

手を出していたら、きっと千本桜でめためたにされただろう。

「一緒の布団で、眠っただけです・・・・」

白哉は恋次を信頼していた。その言葉に偽りはないと信じる。

「そうか。あれは、天然なところがある」

「そうっすね・・・・・」

あのパンツとブラジャーどうしよう。

後日、洗ってルキアに返したが、ひっぱたかれた。
















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好きなものは好き2 

ルキアは、約束した通り、金曜の夜には現世にやってきて、月曜の朝には尸魂界へと戻っていった。

大学生活も残りあと1年。

土日はバイトでつぶれそうだったのを、なるべくあけるようにして、大学が休みの日にバイトをいれまくった。 週末になり、金曜の夜にルキアがやってきた。

「ルキア、おかえり」

「ああ、ただいま」

金曜の夜は、仕事が終わり次第こちらにきているので、夕食は現世で食べることになる。

現世の豊富な、食べたことのないメニューを食べるルキアは、とても幸せそうだった。

今日はカルボナーラだ。 パスタ系はあまり食べたことのないルキアは、できあがるのをまだかまだかと待っていた。

ベーコンと玉ねぎを炒めたものに、濃厚な卵黄のコクがスパゲティに絡んだカルボナーラに、粉チーズをかけた。ドレッシングをいれたサラダと、デザートにパイナップルを出した。

「美味い!初めて食べたが美味いな!これは外国の料理なのだろう?」

「そうだぜ。本場はイタリアだったかな」

「おかわり!」

「へいへい」

大目に作っておいて正解だった。

ルキアは、ぺろりと二人前を食べてしまった。

サラダとパイナップルも食べた。

「このドレッシングも美味いし、パイナップルというデザートも美味い。ああ、現世は美味いものの宝庫だな」

「スパゲッティ、結構買ったから、明日はペペロンチーノを作ってやるよ」

ルキアは顔を輝かせた。また、食べたことのないメニューを食べれるのだ。

「スパゲッティ・・・この細い麺のことか」

「そうだ」

「ふむ。尸魂界でいえばうどんか蕎麦のようなものか」

「まぁかなり違うけど、麺類であることにはかわりねーな」

「私も、作れるであろうか?」

ルキアがきらきらした顔で、聞いてくる。

「作りたいのか?」

「兄様に、作ってさしあげたいのだ」

「じゃあ、ここにレシピ書いとくから・・・・材料はスパゲッティとベーコンをもっていけば、あとは卵は尸魂界にあるとして・・・粉チーズもいるか。けっこう材料現世にしかないものだが、いいのか?」

「構わぬ!」

白哉ラブのルキアにとって、現世の料理はぜひとも朽木家で、白哉にも食べさせたいものであった。

そのまま、土日は水族館と美術館と図書館でデートして、月曜の朝に尸魂界へとルキアは戻っていった。

「また金曜な!」

「ああ。カルボナーラの材料もすまないな」

ルキアは、カルボナーラを作る材料として、ベーコンとスパゲッティ、粉チーズを手に尸魂界へと戻っていった。

尸魂界に戻ったルキアは、夕飯の一部を自分で作る許可を白哉にもらい、13番隊の執務室に向かった。

夜になり戻ってくると、カルボナーラをレシピ通りにつくった。辛いものが好きな白哉のために、塩味を少しきつめにしておいた。

「兄様、現世の外国料理だそうです。味はどうですか」

「ふむ・・・変わった味だが、美味いな」

「ありがとうございます」

ふと、白哉の方を見る。

「兄様・・・私が、一護と付き合っているのを、何も言わぬのですか」

「それはルキアの選んだ道であろう。ルキアが望むのであれば、止めはせぬ」

「兄様!今度、一護を連れてきます!」

「分かった」

その次の週、一護はルキアに連れられて尸魂界の朽木家に来ていた。

「兄は、ルキアを幸せにできるか?」

白哉の開口一番の声に、はっきりと答えた。

「ああ、できる。ルキアを幸せにしてみせる」

「ならば許そう。ルキアと付き合うことを」

「ありがとう、白哉」

白哉とはもっともめると思っていたので、あまりにもあっさりすぎて、一護は内心驚いていた。

「次は恋次だ」

恋次を呼び出すと、恋次は厳しい顔つきで現れた。

「ルキアと付き合ってるんだってな。泣かしたら、どうなるか分かっているんだろうな?」

「泣かさねーよ」

「俺も、ルキアのこと好きだったんだけどな。一護にまんまとさらわれちまった」

「な、な、な、恋次、私のことを恋愛感情で好いていたというのか?」

ルキアが、吃驚していた。

「何度も好きだっていっただろう」

「いや、言われていたが・・・友人として好かれているのだと思っていた」

「恋次、ルキアのやつは、白哉と恋次と俺が好きって言っておいて、俺だけ恋愛感情で好きだといったつもりだったというくらい、好きだという言葉を伝えるのが苦手なんだ。ちょっとやそっとの告白じゃあ、動かねぇぜ」

恋次は天を仰いだ。

「もっと強く押しとくべきだったか」

「ばーか。ルキアの中にいるのは俺だ」

「ばかとはなんだ、ばかとは」

恋次は、紅蓮の髪を揺らした。

「まぁ、ルキアが自分の意思で一護を選んだんだ。ルキア、一護が嫌になったら言え。俺はルキアなら大歓迎だ」

「そんなことなるかよ。ルキアは手放さない」

恋次の目の前で、ルキアを抱き寄せた。

「い、一護・・・・・」

「お前が好きなのは誰だ?」

「い、一護だ・・・たわけ」

恋次は、ガクリと項垂れて帰って行った。

「たまには、朽木家で泊まれ。今夜は尸魂界で過ごせ」

「いいのか?」

「ああ。兄様には後からになるが、許可をとる」

白哉から許可をもらい、ルキアの寝室に泊まった。

2つの布団で寝ていたが、一護はルキアを腕の中にかき抱くようにして眠った。ルキアがいつも一護のベッドで寝る体勢と同じだった。

「ふあーよく寝た」

次の日、一護は日曜ということもあって、ゆっくりしていた。

「たまには、尸魂界で過ごすのも悪くないであろう?」

「ああ」

起きると、休日なだけあって、少し高価そうな着物をきたルキアがいた。髪を珍しく結っており、花が飾られていた。

「ルキア、すっげーかわいい。おしゃれに目覚めたか?」

現世にいるときは、いつも同じようなワンピース姿を見てきたので、着物姿のルキアは新鮮だった。

「ちよが・・・・好きな殿方の前では、着飾るのが普通だと、このような恰好にされた」

「ああ、前に言ってた付き人の人か」

「うむ」

そんなルキアを抱き上げて、くるりくるりと回った。

「わあ」

「ほんとにお姫様みてぇ。4大貴族の姫君だったな」

そっとルキアを下ろした。

「なんなのだ、一護」

「いや、俺の彼女はめちゃくちゃかわいいなと思って」

ぼふんと音を立てて、ルキアが真っ赤になる。

「き、貴様はずるい。私とて、貴様のことはかっこいいと思っておるぞ」

「おう」

その日は、尸魂界の瀞霊廷をいろいろ案内してもらった。

やがて日が暮れて、一護は現世に戻ることにした。ルキアは、一護の髪をひっぱって、かがませた。

「なんだ?」

「目を閉じろ」

精一杯背伸びして、触れるだけのキスをした。

「ルキア・・・じゃあ、また来週な」

「うむ」

ルキアと一護は、朽木家の庭で別れた。穿界門が開かれる。

「また来週な、一護!」

「ああ、また来週な!」

たとえ生きる世界が違っても、好きなものは好きなんだから、しょうがない。

白哉の許しも得たし、恋次にもきっぱりと諦めてもらった。

「ふふっ」

唇を指でなぞる。

まだ一護の唇の感触があった。

幸せだと思う。生きる世界が違うのに、交際を許可されたのだ。愛の果ては幸せだと思う。きっと、もうすでに愛の果てなのだ。

こんなに幸せなのだから。



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院生時代の二人

時は院生時代。3回生の頃の話だ。

お互い、友人以上の仲だった。

友人以上恋人未満。そんな仲がずっと続いていた。

ある日、浮竹は桜舞う季節、桜の木の下に呼び出された。内心ドキドキしながら、京楽を待つ。

やってきた京楽は、真面目な話があると、浮竹に告げた。

「迷惑かもしれないけど・・・・君のことが好きなんだ。恋愛感情で」

浮竹は迷うことなく告げる。

「俺も、お前が好きだ。恋愛感情で」

京楽は目を見開く。友人以上恋人未満の関係が続いていたので、きっと拒否されると思っていたのだ。

「本当に?僕の傍にいてくれる?」

「ああ。お前が嫌だといっても、傍にいる」

京楽は、浮竹を抱き締めていた。

友人以上恋人未満といっても、プラトニックな関係に近く、抱き締めるのは初めてだった。

「細いね。ちゃんと食べてる?」

「食べてるぞ。あまり太らない体質なんだ」

「キスしてもいい?」

「あ、ああ・・・・」

翡翠の瞳が閉じられる。

京楽は、そっと触れるだけのキスをして、また浮竹を抱き締めた。

「君に想いが届く日がくるなんて・・・・・・」

その日から、二人は変わった。

お互いを恋人同士として接するようになった。

学院の中では隠していたつもりだったが、けっこうばればれであった。

「浮竹、起きて。もう8時だよ」

冬の季節になると、浮竹は冬眠するように眠りに入り、なかなかおきない。

同じ寮の部屋を、上流貴族の権限でとっていた京楽は、浮竹との甘い毎日に満足していた。

「んーあと10分・・・」

「用意とかしてると遅刻するよ」

布団をひっぺがすと、寝ぼけ眼で浮竹が起きた。

今日も朝食はなしだ。顔を洗い、院生の服に着替えて、荷物をもって走って学院に行った。なんとか遅刻は免れた。

冬になると、放っておくと浮竹はけっこう遅刻する。

京楽が浮竹を起こし、遅刻ぎりぎりで登校した。

恋人同士になって、半年が経とうとしていた。

ハグやキスはするけれど、それ以上はまだしていない。

京楽は、ある日の夜、浮竹に思い切って告げる。

「君を、抱いてもいいかい?」

浮竹は真っ赤になったが、頷いた。

「覚悟は、もうできていたんだ。抱いてもいいぞ」

お互い、1つのベッドの上で正座した。

「では、よろしくお願いします」

「よ、よろしく・・・」

浮竹の衣装を脱がしていく。

真っ白な肌だった。白い髪と同じで色素の少ない肌だった。

京楽も服を脱ぎ捨てる。

「キスを・・・・・」

浮竹は、京楽とのキスが好きだった。

深く口づけられて、浮竹は吐息を漏らす。

「んんっ・・・・」

その声を聞きながら、体全体を愛撫して、薄い筋肉のついた胸の先端をかりかりとひっかく。

「ああっ」

反応してくれることが嬉しくて、何度もつまみあげたり舌で転がしたりした。

浮竹のものに手をはわす。

「あっ」

花茎はとろとろと先走りの蜜を零していた。

そのまま手でしごき、先端に爪を立てると、浮竹はあっけなくいってしまった。

「ああああ!」

ぜぇぜぇと荒い息をつく浮竹にキスをして、潤滑油で濡らした指を蕾に突き入れる。

「ああ!」

初めての感覚に、体がついてこない。

やがて前立腺をいじられて、浮竹は痛みだけでないものを感じ出した。

「あ、京楽、変になる・・・・・・あああ!」

「ここ、きもちいんだね?」

「んんっ」

キスを何度もした。

ぐちゃぐちゃと音がたつほどに解された場所に、京楽のものが宛がわれる。潤滑油で濡らしているとはいえ、その質量に浮竹が息を飲む。

「痛いかもしれないけど、我慢してね」

「分かった」

はじめて受け入れるそこは、浮竹に苦痛をもたらした。

「ひう!」

痛みでぽろぽろと涙が零れる。

「ごめん、痛いよね。やめようか?」

「大丈夫だ・・・・・こい」

浮竹は京楽を迎え入れた。

中の締め付けはきつくて、いれただけで京楽は熱を浮竹の中に放っていた。

「君の中すごい・・・」

「あ・・・・」

じんわりと広がっていく熱を感じた。

前立腺を突き上げると、浮竹の体がはねた。

「あ!」

「きもちいい?」

何度も前立腺をすりあげてやると、浮竹はこくこくと頷いた。

「きもちいい・・・・」

「よかった・・・男は後ろでも感じれる場所があるから」

「そうなのか?」

そんな知識0の浮竹には、男が後ろで感じれることが不思議でたまらなかった。

「前立腺っていってね。感じれる場所があるんだよ。ほら、ここ」

突き上げられて、浮竹はびくりと体を震わせた。

「あ、そこなんか変・・・・」

「かんじてるんだよ。僕が君の処女を奪った」

京楽の陶酔した言葉に、浮竹が異を唱える。

「俺は男だ。処女とかそういうのはない」

「あるよ。男で後ろを奪われるのは処女を失うに等しいんだ」

「じゃあ、責任、とれよ?」

「もちろんだよ。君が嫌といっても離さない」

そのまま、何度か貫かれて、奥までねじこまれて、浮竹は啼いた。

「ああああ・・・・・あああ!」

もういきすぎて、花茎はトロトロと蜜を零すだけで、精液などでなかった。

「んう」

何度も京楽とキスを交わした。

京楽も数度浮竹の中に熱を放って、満足した。

中からひきぬかれると、こぽりと出したものが逆流して溢れてくる。

「あわわ、タオルタオル」

シーツは体液で汚れてしまい、洗うことにした。

新しいシーツを広げて、浮竹を浴室につれていき、中にだしたものをかきだして、体と髪を洗った。京楽も体と髪を洗い、二人では少し狭い浴槽で湯に浸かる。

「体、大丈夫かい?」

「腰が痛い・・・・・・」

「ごめん、初めてなのにやり過ぎたね」

「別にいい。こうなることを望んだのは俺だ」

「愛してるよ、十四郎」

「俺もだ、春水」

もうさすがに交わることはしなかったが、何度もキスをした。

「また、あの桜の木の下にいこう」

「ん?」

浮竹は、首を傾げた。それ以上京楽が何も言ってこないので、その時はそれで終わった。



季節は流れ、4回生の春になった。

呼び出され、浮竹は桜舞い散る、告白された場所にきていた。大きな桜の大木があって、そこで告白すると成就すると院生内では噂のスポットだった。

京楽がやってくる。

肩まで伸びた浮竹の白い髪が、風で桜の花びらと一緒にさらさらと流れた。

「どうしたんだ、京楽」

「指を出して」

「?」

素直に指を出すと、翡翠のはめこまれた指輪をされた。

「指輪?」

「エンゲージリング。婚約指輪だよ。結婚はできないけど、これがその想いの代わりだよ」

浮竹は、涙を零した。

「京楽、俺は・・・・・」

「もう片方。僕の指に君がはめてくれる?」

同じ形の指輪を、京楽の指にはめた。

「想いは永遠だよ。何があっても、君を離さない」

「京楽・・・・・」

桜の木の下で、将来のための2回目のプロポーズ。

桜の大木は、花びらを雨のように降り注がせて、二人を祝福するのだった。


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好きなものは好き

ルキアが好きだった。

でもルキアには恋次がいて。

でも、思いを告げぬまま終わらせる気はなかった。

大戦が終わって3年。一護は大学4年生になっていた。

ドイツ語の翻訳家を目指して、ドイツ語を身につけた。大きくはないが、出版社から翻訳の依頼を受けて就職も決まっていた。

「ルキア・・・・・・」

今はここにいない、彼女を思い出す。

ルキアは、月に2度くらいは一護の家に遊びに来た。

そのまま泊っていく日もある。

ある日、遊びにきたルキアに真剣な話があると切り出した。

「その、お前は恋次と付き合っていて、今更だと思うだろうけど・・・」

ルキアはきょとんとしていた。

「私は恋次と付き合ってなどいないぞ?」

「ええ!?だって、恋次のことが好きだって・・・・」

「ああ、家族としてな。兄様を好きな気持ちに似ている」

「なんだよそれ・・・」

ずっと遠慮していたのがばかみたいだった。

「あのな、俺はルキアのことずっと好きで」

「知っておる。私は、だから一護の家に泊まりにきているのだ」

一護は、顔を真っ赤にした。

「じゃあ、ルキアも俺のことを?」

「ああ、好きだ。男女の恋愛感情で。1年前に好きだと告げたであろう」

思い出す。確か、白哉も恋次も一護も好きだと言っていた記憶があった。





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合鍵

ルキア。

ルキア、ルキア、ルキア。

空白の1年と5カ月、ルキアのことを忘れたことはなかった。

ルキアをずっと求めていた。好きだった。

いざ霊圧が戻り、再会したルキアは1年と5カ月前とあまり変わらぬ姿をしていた。その内に秘める膨大な霊圧と、副官の証がある以外は。

「ルキア・・・」

ルキアは、懐かしい目で一護を見ていた。

「久しいな、一護」

「ルキア、俺は・・・・・」

「また、会いにくる。その時、つもる話をしよう。今は銀城を連れていくのが先だ」

魂葬を行い、尸魂界へと落ちていく魂たち。

守ることのできる力を、また手に入れた。

尸魂界を、ルキアを守る。

そう頑なに誓った意思は、ユーハバッハの侵攻によって遮られた。

大けがをおったルキアが、目を開いた。片目は負傷しており、片目だけで一護の姿を見ると、安堵したようだった。

「貴様が無事でよかった・・・・」

一護も大けがを負っていた。普通なら歩けないような重症である。

それでも、ルキアを見に来た。

「ルキア・・・守るから。きっと、お前を・・・・」

そのまま、一護、ルキア、恋次、百哉は零番隊の湯治で傷を回復させた。

一護は新たな斬月を手に入れ、ルキアは卍解を会得した。

たくさんの仲間に支えられて、一護は遂にユーハバッハを打ち倒した。

平穏が、やっと戻ってきた。

一護は高校を卒業し、大学へと進んだ。

将来翻訳家になるために、ドイツ語を選んだ。留学も3か月した。

一護は、大学生になってからずっとアパートで一人暮らしとしていた。学費は奨学金と、アパート代は将来返すという約束で父親の一心から出してもらっていた。

バイト代は生活費に消えていく。

ふとしたある日、授業を終えてバイトも終わり、家に帰ると鍵が開いていた。

泥棒かと思い、身構えると、中にルキアがいた。

「ルキア?」

「おお、帰ってきたか一護。部屋の前でぽつんと待っていると、大家さんが現れて、事情を説明すると中にいれてくれたのだ」

「そうか。くるなら事前に連絡くれよ」

「ああ、忘れておった。伝令神機でメールを使えたのだったな」

ルキアは天然ぽいところがある。

一人暮らしの男の家に転がり込んでくるなど、いくら見知った仲といっても、時刻も時刻だしと思うが、ルキアには関係ないようだった。

「これ、やるよ」

ルキアに向かって、チャリンと金属音をたてた合鍵を放り投げた。

高校を卒業して3年が経っていた。

ルキアは月に1、2回のペースで現世に遊びにくる。

留学時は、現世にはきていなかったようだ。

「合鍵か・・・・いつでもここにきてよいと、とってもいいのだな?」

「ああ。俺に会いたくなったら、その鍵で中で待っとくといい」

「一護・・・・私はな・・・・」

一護はルキアを抱き締めた。

「一護?」

「俺は・・・・どうしようもないくらいに、お前が好きだ。ルキア、ルキア、ルキア・・・空白の1年と5カ月、どれだけ苦しかったことか・・・・」

「一護・・・・私はな、現世にくるたびにいけないと分かりつつも、貴様の元に訪ねてしまうのだ。いけないと分かりながら、貴様の傍にいたくなるのだ」

「ルキア・・・・・・」

「私も、貴様のことが好きだ、一護」

「ルキア、俺も大好きだ」

抱き締めあい、そのままごろりとベッドに横になった。

「その・・・恋人という男女は・・・・」

「何もしねぇよ」

「私には魅力がないか?」

「そうじゃねぇ。大切にしたいんだ」

一護は、ルキアに触れるだけのキスをした。

「もう少し、現世にこれないか?」

「週末なら・・・・」

「じゃあ、約束。今週の週末、また俺の家に来てくれ」

ルキアは、その日一護の家に泊まった。

ルキアを腕の中で抱き締める形で、同じベッドで眠った。

ルキアは翌朝には尸魂界に帰ってしまったが、週末になったらまたきてくれると思うだけで、元気がわいてきた。

ルキアの好きな白玉餡蜜を買って、週末の土曜に家で待っていると、昼にルキアが合鍵を使って中に入ってきた。

白いワンピースに麦わら帽子と、まさに夏のスタイルだった。

「ふう、現世はクーラーがきいていて涼しいな。尸魂界の夏は暑くて好かん。扇風機なるものが最近出回っているが、それでも暑い」

「おかえり、ルキア」

「う、うむ。ただいま、一護」

クーラーのきいた一護の部屋は涼しかった。

「今日は土産があるのだ!スイカだ!」

「でかいな」

「兄様が、甘くて熟れたものを買ってきてくださったのだ!」

「そうか・・・・」

スイカを切り分けて、冷蔵庫で冷やしている間に、ルキアは白玉餡蜜を食べていた。

「なぁ、ルキア」

「なんだ」

「また、来週もきてくれるか」

「ああ、貴様がいやでなければ、毎週きてやる」

「そうか。俺たち、付き合わないか」

「えっと・・・・うむ。私のでいいのなら・・・・」

ルキアは真っ赤になって、俯いた。

ミーンミンミン。

蝉の声がうるさかった。

一護は、ルキアに口づけた。深い口づけだった。

「ん・・・・・ふあっ・・・・・」

ルキアの瞳がとろんとなる。

一護は、ルキアを抱き締めた。

「大切にしたいのに、めちゃめちゃにしたい。俺でもわけわかんねぇ。でも大切にする。ルキア・・・・」

「一護・・・私は、貴様になら何をされても構わない」

「そんな、煽るようなこと言うなよ・・・・・」

「これからは、会えない日は伝令神機でやり取りをしよう。私たちはもう、恋人同士なのであろう?」

「ああ、そうだな」

メールアドレスは交換していたが、メールのやりとりはしていなかった。

日曜はバイトがあったので、ルキアを待たせてしまう形になるが、こちらにも生活というものがある。ルキアはバイトしているラーメン店にきて、一護の手作りのラーメンを食べて家に戻ってしまった。

夕方になり、バイトを切り上げて、早めに自宅に戻った。

部屋に入ると、カレーのいい匂いがしてきた。

「ちょうどカレーできる野菜とルーがあったので、勝手に作ってしまったが構わぬであろう?」

「ああ。ありがとな。俺も夕飯カレーにしようと思ってたんだ。てかルキア、料理できたのか・・・・・」

「たわけ!これでも一応は花嫁修業と、料理くらいできるようには仕込まれている」

「ただいま、ルキア」

「お、お、お、おかえり・・・・・・」

ルキアが愛しくてたまらなかった。

合鍵をもたせたのは、パートナーの意味もあった。

エプロン姿のルキアを背後から抱きしめた。

カレーはすでに出来上がっていて、ルキアは真っ赤になりながら、目を閉じた。

キスをする。浅く深くを繰り返す。

ルキアのアメジストの瞳が見開かれた。

お互い、視線を絡み合わせながら、また抱き締めあった。

「恋人とは、妙に甘ったるいものなのだな」

「今度こそ、俺が守りぬく。だから、ルキア、傍にいてくれ・・・・」

「私は、ずっと傍にいるぞ。貴様とまた出会えたあの日から、貴様の隣にいることを考えていた。やっと、その願いが叶った・・・・」

死神と人間という大きな溝がある。

それでも、二人は惹かれ合う。

人生のパートナーとして、生きていこう。

ルキアと一護の新しいページが開こうとしていた。



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ルキアと恋次

ルキアと恋次は、尸魂界で子供の頃からの知り合いだ。幼馴染というか、一緒に孤児として流魂街で育った。

同じく一緒に育っていた仲間たちは、皆死んでしまった。

ルキアと恋次には霊力があった。最悪の生活から抜け出すために、真央霊術院に入り、死神となることをめざした。

恋次は特進クラスだった。ルキアは普通のクラスだが、学院に入り数年して、朽木家の養子として、真央霊術院を卒業せずに死神となった。

恋次の力は認められていた。

一方のルキアも、志波海燕という当時の13番隊副隊長に鍛えられて、実力をつけていった。

そんな年月が50年以上が過ぎた。

恋次は6番隊の副隊長として、ルキアは13番隊の隊長代理及び副隊長として、また強くなっていった。

大戦を生き延び、2年が経った。

「ルキア!俺のたい焼き返せ!

「ふふふ、とれるものならとってみろ」

ルキアは、恋次の大好物であるたい焼きを奪い、悪戯めいた瞳で走っていた。

障害物をひょいひょいと避けて、通っていくのはルキアの小柄な体のほうが有利だった。

でも、恋次のほうが走るスピードは速い。

がしっと掴まれて、ルキアが降参の声をあげた。

「降参だ、恋次。たい焼き、うまかった」

「ああ、2個少ねぇ!」

恋次は袋の中のたい焼きを数えて、5つあったのが3つになっていて、ルキアの頭をぽかりと殴った。

「上流貴族の姫君だろうが。他人のものを取るような真似すんな!」

「だって、相手が恋次だったから、つい」

悪戯した後のルキアは、きらきらしていてとても可愛かった。

「ぐ・・・・しっかりしろ、俺」

「恋次?」

「な、なんでもねぇ」

そう言って、恋次はルキアと歩きながらたい焼きを口にした。

「白あんも捨てがたいんだよなぁ・・・」

「恋次、あんこがついているぞ」

「え、どこだ」

「もっとこっちによれ」

ルキアの顔のほうまで顔を近づける。

ぺろりと、ルキアが恋次の頬についていたあんこを舐めとってしまった。

「な、な、な・・・・」

恋次は顔を真っ赤にして、ルキアを見る。

「どうした?」

「お前、何考えてんだ!」

「いや、普通に恋次が好きだなと思って。ああ、恋愛感情でだぞ」

「な、な、な・・・・・・」

更に真っ赤になる恋次。

「どうした恋次、顔が茹蛸のようだぞ」

「好きな相手に好きって言われて、照れてるだけだ」

「そうか、好きな相手に好きと・・・・・ええええ!!!」

今度はルキアが叫んだ。

「れ、恋次、貴様いつから私のことを・・・・」

「ガキの頃から」

「私も、子供の頃から好きだった。最初は家族愛、友人愛であった。大戦が起る以前あたりから、貴様が恋愛感情で好きなのだと自覚した。ただ、恋次は私のことなど興味ないだろうと、冗談で告白したのだが・・・・・・・」

「今更、冗談にするなよ?」

恋次に、ぐいっと抱きしめられた。

すでにたい焼きを食べ終えてしまった恋次は、ルキアに口づけた。

ほんのりとあんこの味がした。

「れ、れ、れ、恋次」

ルキアは真っ赤になって小さくなった。

元から小さいのに、縮こまってしまって、恋次が動揺する。

「き、キスいやだったか?」

「いや、そういうわけではないのだが・・・・ひたすらに恥ずかしい」

二人がキスをする現場を、偶然居合わせた日番谷が見ていた。

「ひ、日番谷隊長!」

恋次が、名を呼ぶ。

「なんだよ。なんもいわねーよ」

「日番谷隊長はキスとかしたことありますか」

「んなもん、子供の頃に経験済みだ」

「ぐふっ・・・・」

恋次とルキアはさっきのがファーストキスだった。

日番谷は興味ないとばかり去ってしまった。ここに松本がいたら、面白可笑しく騒ぎ、死神の間で恋次とルキアのことが噂で流れてしまうだろう。

「乱菊さんがいなくてよかったぜ・・・・・・」

「それは同意見だ・・・松本副隊長がいたら、今頃伝令神機で写真とられて、いろんな人にメールで写真を送られているところだ」

二人して、安堵した。

「というわけで、私は恋次のことが好きなのだが、貴様も私のことが好きだと理解してもいいのだな?」

「ああ。俺もルキアのことが好きだ」

「では、早速兄様に報告に参ろう」

朽木家に向けて、恋次の手をとると、恋次が叫んだ。

「えええええええええ」

「なんだ、何か後ろめたいことでもあるのか」

「なんで付き合うのに隊長の許可がいるんだ」

「兄様がおっしゃっていたのだ。誰でもいいから、好きになった相手は必ず連れてこいと」

義妹ラブな白哉のことだ。

いろいろ言われそうだが、ルキアと付き合えるならそれでもいいかと思った。

「よし、今から隊長のところにいくぞ」

「その意気だ、恋次!」

いざ、白哉のいる朽木邸にくると、恋次はドキドキしだした。それはルキアも同じだ。

「兄様、只今戻りました」

「恋次が一緒なのか」

「隊長、このたびは誠にお日柄もよろしく・・・」

「恋次、しっかりせぬか!」

脇腹を肘でつつくルキア。

「隊長、俺ルキアのことが好きです。愛してます。お付き合いすることを許可してください!」

緊張しすぎて、口調がおかしくなっていたが、誠意は届いたようだった。

「ルキアとか・・・・よかろう。そこらの死神より、恋次のほうがよほど信頼がおける」

流石上官と副官だけあって、お互いの性格とかいろいろ知っている。

白哉の許しを得て、二人してほっとする。

「恋次、今日は泊まっていけ」

「え、いいんすか隊長」

「たまには良いだろう。いずれ、義弟になるかもしれぬのだし」

「に、兄様、気が早すぎます」

ルキアの言葉に、恋次は真剣にルキアとの結婚を視野に入れ出した。

「ただこれだけは言っておく。幸せにできなければ、奪い返す」

「に、兄様・・・・・」

じんわりと涙をためるルキアを押しのけて、恋次は言う。

「絶対、幸せにしてみせます」

まだ、お互い先ほど告白したばかりなのだが。

そんなことも忘れて、ルキアと恋次は白哉の許しを得たと、心から喜ぶのであった。



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当たって砕けろ

「当たって砕けろ、だ!」

恋次に思い切りぶつかって、砕けないけどルキアは尻もちをついた。

「おいおい、ルキア何してんだよ」

「当たって砕けろを実践していたのだ」

「はぁ?」

「何事も、当たって砕けろというだろう。だから恋次に当たって、この身は砕けなかったが、砕けたつもりなのだ」

「また、何か変な本でも読んだか?」

ルキアが持っていた本をとりあげる。

彼氏ができる100の方法という本だった。

栞が挟まれていたページをみる。当たって砕けろ作戦。好きな相手とぶつかって、交流を深めましょう。

「ルキア、あのなぁ。こんなことしなくても、俺はお前のこと好きだし大切だぞ?」

「なななななな」

真っ赤になるルキア。

自分からしかけておいて、いざそういう態度をとられると極度に緊張した。

「このゴミ虫め!貴様など、茶わんにいれて蒸し殺してやる!」

もはや、自分でも何を言っているのかわかっていない。

「ゴミ虫・・・・どんな虫だ」

「ち、違うのだ!別に恋次がゴミ虫のようであるからとかそういうわけではなく!」

「ルキア、とりあず落ち着け」

そう言われて、ルキアは深呼吸をするが、ラマーズ法になっていた。

「いや、それ妊婦の呼吸だから。普通に息を深く吸ってはいてを何度か繰り返してみろ」

何度か深呼吸を繰り替えずと、ドクドクと打っていた心臓の鼓動が和らいだ。

恋次が、しゃがみこんで視線を合わせてくる。

「俺はな、ルキア、お前が好きだし大事だ」

「そ、そんなこと知っておる!」

「へぇ。じゃあ、この本はなんだろうな?」

「あ、返せ!現世で買ったのだ」

ルキアもかわいいところがあるなぁと、恋次は思った。そうでなくてもかわいいのに、余計にかわいく見えてくる。

ルキアを抱き上げた。

「恋次?」

「お前の口から、言ってくれよ。俺をどう思っているのか」

「このたわけが!・・・・・す、す、すきやき!」

ルキアの言葉に、そういえば久しくすき焼きなど食べていないなとい思い出す。

「今日すき焼き食いに行くか」

「す、す、隙がある!」

「がんばれ、ルキア」

「す、す、す・・・・・・好きだ」

か細い声でそうぽつりとつぶやいた。

「上出来」

ルキアを抱き上げたままくるくると回る。

「め、目が回る!」

ルキアは小さく細い。恋次の鍛え上げられた体の3分の2ほどしかないように見える。

くるくる回るのを止めると、恋次はルキアを抱き締めた。

「ずっとずっと好きだったぜ。それくらい、知ってるよな?」

いくら鈍感なルキアとはいえ、恋次の接してくる態度で自分に気があるのではないかとは、思っていたのだ。

でも、確かめようがなかった。

さっき、現世の本の変な方法であったが、確かめれてほっとした。

「恋次・・・私も、ずっと貴様が好きだった・・・」

流魂街の頃から。

朽木家に養子としてもらわれていき、一時は離別した。

でも、また線は交じわった。

ルキアの処刑が決まり、恋次は白哉に牙をむいた。結局は勝てなかったが、自分の上官である白哉にたてつくことほどに、ルキアの処刑を止めたがっていた。

藍染の反乱、ユーハバッハの侵攻。

たくさんのことに傷つき、血まみれになりながらも、二人は戦友として共に戦い、そして打ち勝ってきた。

瀞霊廷の復興も大分進み、もう穏やかな時間が流れるだけだった。

「ルキア。俺と、結婚前提で付き合ってくれ!」

差し出された恋次の手を、ルキアはとっていた。

「本当に、私でいいのか?」

「お前じゃないとだめなんだ。ガキの頃からずっと好きだった。お前を幸せにしたい」

恋次の言葉の一つ一つに赤くなる。

「れん・・・・・」

言葉は、唇で塞がれた。

「んう・・・」

浅く、深く。

そんな経験のないルキアは、目を白黒させていた。

やがて息が苦しくなり、恋次の胸を叩く。

「あ、すまねぇ。初めてだったよな」

恋次は、何度か廓で女を抱いたことがあるので、始めてではなかった。

女の喜ばし方というのを学んだ。

ルキアという好きな存在がいながら、他の女を抱くのは、なんともいえぬ背徳感があった。

「ルキア・・・俺は、今までに何度か廓の女を抱いてきた。それでも、俺を好きでいてくれるか?」

「恋次とて、男。欲求を解消するにはその手の店にいくことも仕方なかろう。それでも、私は恋次が好きだ」

「隊長に、結婚前提でお付き合いしていいですかって、聞かないと・・・・・・」

「兄様は厳しいぞ」

「知ってる」

白哉のことだ。その覚悟はあるのかと、剣を交えてくるかもしれない。

それでも、ルキアのことが好きだ。

ちょっとやそっとのことでは、引くつもりはない。

「ルキア、今日から正式に交際スタートだ」

「う、うむ」

手を握りあった。

普段でもよくあったが、こうして意識して握りあっていると、恥ずかしかった。

「白玉餡蜜が食べたい」

ぽつりとそう呟く。最近食べていない。

「おし、甘味屋までいくか。おごってやるよ」

「本当か!」

「これが俗にいうデートってやつだな」

「ででででデート!?」

ルキアが真っ赤になったりふらふらしらりしていた。

「しっかしろよ、ルキア。デートなんて今後何度でもするんだぞ」

「恋次とデート・・・恋次とデート・・・茶碗で蒸す・・・・・」

ルキアの頭の回路はショート寸前であった。

なんとか甘味屋にいき、白玉餡蜜を食べるとルキアも元気を出した。

「今度、現世にデートにいかぬか」

「現世か。ちょっと手続きがややこしいけど、いいかもな」

「一護の井上に茶虎と石田にも会いたい」

ここ4年ばかり、ほとんど会いにいっていない。

もう彼らは社会人となり、新しい人生を歩み出している。

ルキアも13番隊隊長になった。

やがてルキア恋次と婚礼をあげて、苺花という女児を授かるが、それはまた別のお話である。

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恋せよ乙女

「一護は変わったな」

「そうか?」

大戦が終わり、3年が経った。

久しぶりに現世を訪れたルキアは、一護のアパートに転がり込んでいた。

「心なしか、あの頃より表情が柔らかくなった。あとは、髪型を少し変えたせいであろうか」

「まあ、平和に大学通ってるしな。死神化することもほとんどないし、斬月を振り回すこともなくなった。あの大戦はきつかったし、犠牲もいっぱいでたけど、やってきた平和はもう穏やかすぎて、二度とあんなことが起こらないように祈るだけだ」

「尸魂界では、復興が大分進んでいる。焼野原だった大地に、新しい隊舎が建てられたりして」

一護は、ルキアの言葉を聞いて安心した。尸魂界に未曽有の被害を与えたユーハバッハ。民たちは未だ霊王が存在していると思い込んでいる。

「そうか。んで、今日は何しにきたんだ?」

「理由がないと、遊びにきてはいけぬのか?」

「いや、そうじゃないけど。でも、尸魂界での復興に忙しいんだろう?」

一護の言葉に、ルキアは頷く。

「そうだ。ろくに休みもとっていなかったせいで、休暇が1か月以上もたまっておったのだ。たまには、現世で貴様の顔でも見てやろうと思ってな」

「要するに、暇なんだな」

「う・・・それより、貴様は彼女とかはいなのか?」

「今はいねーよ。だって俺にはルキアがいるから」

変わらない。

一護は、ずっとルキアを思ってくれていた。

それに振り向かないまま、3年の月日が経ち、たまに一護のアパートに遊びにくるたびに、好きだと言われた。

ルキアはまとまった休みもとれたことだし、一護と真剣に向き合おうと決めた。

「一護。私も貴様のことが、すすすすすすすきやき!」

「落ち着けよ。俺のことが好きなんだな?」

こくりと、頷くルキアを抱きしめた。

「ああ、思いが通じるってすごいな。幸福感が半端ない」

「一護、だが私は死神だ。毎日一緒にはいれぬ。せいぜい週に2日これればいいほうだ。忙しい時は月に2回ほどしか現世にこれぬかもしれぬ」

「じゃあ、その時は俺が尸魂界に行けばいいだろ?」

「一護・・・・」

ルキアの目が潤んだ。

そうほいほいと、一護が尸魂界にくるわけにはいかないが、たまにならいいだろう。

「ルキア、好きだ」

だきしめて、耳元で囁くと。

「ひゃあ」

と変な声をルキアは出していた。

「ルキア、耳弱いのか?」

「し、しらぬ。んっ」

耳を甘噛みされると声が漏れた。

一護のほうを見ると、一護はにんまりしていた。

「ルキアの弱いところ、1つ発見」

「一護!」

真っ赤になってぽかぽかと叩いてくるルキアの頭を撫でた。

それから、抱き上げた。

「俺、3年前からもう少し身長伸びたんだ。でも、ルキアは小さいままだな」

「仕方なかろう!私はこれ以上は伸びないのだ!」

むきになってくるルキアが可愛かった。

「体重軽いし・・・はぁ、ルキアの匂いがする」

抱き上げられたまま、匂いをかがれてルキアが真っ赤になった。

「お、乙女をからかうでない!」

恋せよ乙女。

そんなタイトルのくだらない恋愛漫画を、高校時代に遊子の漫画から借りて読んだことがある。

ヒロインが、愛しい人に想いを告げぬまま3年が経ち、愛しい人に愛を告げられて、お互いに想いをつげあって、ハッピーエンドになる漫画だった。

今と、状況が似ていた。

「恋せよ乙女・・・・・」

「は?」

「い、いやなんでもないのだ!それより、夕飯の時間だろう、そろそろ」

「ああ、適当になんか作ってやるから、待ってろ」

一人暮らしするようになってから、高校時代もたまに家事をしていた一護は、特に料理の面で眠っていた才能を発揮していた。

「ほらよ」

天丼をだされた。

デザートには、いつでもルキアが遊びにきていいように、白玉餡蜜を作れるようにしていたので、それもつけた。

「む・・・・美味い」

一護特定の天丼は美味しかった。

一護も、同じメニューを食べる。

「明日から、どうせ暇なんだろ?」

「う、うむ・・・・・」

「じゃあ、一緒に大学の講義でも受けるか。記憶置換はあるよな?」

「ここに、あるぞ」

「人数制の教室では、それ使ってなんとかしようぜ」

「う、うむ・・・」

恋する乙女は一直線に進んでいく。

次の日から、まるで結婚したてのような生活が始まった。

一護は朝にルキアを起こし、ルキアが朝食を作ってくれて、それを食べて大学の講義に出る。

一護はラーメン店でバイトしていた。バイト時間は大人しくラーメン店の中で待っていて、8時に仕事が終わると手を繋いで家に帰った。

次の日も、大学に行った。

「おい、黒崎、その子新しい彼女か?」

時折、一護は彼女を作った。ルキアが振り向いてくれないので、それを忘れるように彼女をつくり、愛そうとした。

でも、無理だった。

井上ともそんな関係になりそうになったが、寸でのところで一護が思いとどまった。

「そうだな。貴様には昔は彼女もいたしな・・・・・」

「ああ。ルキアのこと忘れようと思って適当に付き合ってた。すぐに別れたけどな」

この3年の間に、何人の女と付き合っただろう。見かけのよい一護はよくもてた。

「ルキアと付き合う前は、4人と付き合ってた。どれも、1か月も経たずに破局した」

「私のせい、か?」

ルキアが、一護を見つめる。

「いや、俺がルキアを忘れられなかったからで。ルキアのせいじゃない」

ふわりと、包み込むように抱き締められた。

「一護・・・どうして私は、今までこの腕をとらなかったのであろうな?」

「死神と人間だから、だろ?」

一護が、ルキアに何度もプロポーズするたびに、断る原因であることを口にする。

「そうだ。私は死神で貴様は人間・・・・でも思ったのだ。貴様と一緒に過ごし、貴様が死ねば魂魄は尸魂界にやってくる。また、やり直せると・・・・」

「おい、俺はまだ死ぬ気はないぞ」

「当たり前だ!あくまで、一緒に過ごして死んでしまったらだ!」

「死んでもルキアと一緒か。悪くねぇな」

「だからといって、早死にはするなよ!」

「しねーよ。安心しろよ」

ルキアの頭をくしゃくしゃと撫でた。

「一護!貴様、髪がぐしゃぐしゃになるではないか!」

ルキアのそんな声に笑いながら、一護と次の授業の部屋まで移動した。

その日はバイトはなかった。夕焼けの中、二人で手を繋いで歩いた。

ふと、一護が立ち止まる。

「なぁ、ルキア」

「なんだ」

「俺と、一緒に生きてくれと言ったら、生きてくれるか」

夕焼けに照らされて、一護のオレンジの髪がますます色を濃くしていた。

「よいぞ。一緒に、生きてやる」

恋する乙女は一直線。

「そうか。はははは」

ルキアを少しだけ抱き上げて、一護はくるくると回った。

「い、一護、目が回る・・・・・」

「おっとすまねぇ。そっか。一緒に生きてくれるのか」

「責任はとれよ!貴様のために、私の貴重な若い時間を与えるのだ」

「結婚しよう。尸魂界でいいから。白哉に許しをもらって・・・・」

「け、結婚!?」

「まだ先の話だけどな」

一護の言葉に、ルキアは心臓をドキドキさせっぱなしだった。

愛する者と、人間という種族の違いはあるが、結婚などできるはずもないうと、思いこんでいた。

だが、一護のことだから、きっと本当に結婚してくれるだろう。

「恋せよ乙女、だ!」

ルキアは、そう言って、夕焼けに照らされて笑っていた。あの漫画も、ハッピーエンドが結婚だった。夕焼けの中でプロポーズをされて。

「私は恋する乙女なのだ」

「乙女って年なのか?」

一護のつっこみに、脛を蹴ってやった。

「あいて!」

「まだ、十代でも通る肉体をしている!」

ルキアは、そう言って一護に思い切り抱き着いた。

「恋する乙女は一直線なのだ!」

「なんだかよくわからねーけど、ルキアは告白してからは一直線だな」

「そうであろう」

えらそうなルキアをの頭をくしゃくしゃと撫でて、夕日の中また手を繋いで歩きだす。

明日も、明後日も。そうやって、生きていくのだ。





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それいけ一護君

恋次から、6番隊の隊花は椿だと聞いた。

朝から、一護の朝食はご飯と梅干しだけだった。

それをルキアが不憫に思い、おかずを分けてくれた。

「白哉義兄様は、相変わらずのようで」

「知らぬ」

白哉は、ルキアと同じメニューで少し辛口のものを食べていた。ルキアのものは普通の味付けで。一護のものに至っては、梅干しだけであった。

その日は休みだった。

庭では、6番隊の隊花であるという椿が咲き誇っていて、白哉はその一輪一輪を見て、淡い微笑みを浮かべていた。

一護がしたのは、咲いている椿の花をの全てを斬り落とすことだった。

「へっへっへ。これでどうだ」

まるで、どこぞの悪党のような台詞だった。

昼前になり、また椿を愛でにきた白哉は、椿が一輪もないのに驚いていた。

「く・・・やられた」

椿は、もったいないのでルキアにいって、氷の中に保管して、氷室に移動させた。

「貴様も、仕返しにしては少しやりすぎではないか」

「いーや、白哉にはこれくらいしないと、ききやしねぇ」

「しかし、この椿たちは兄様が丹精こめて咲かさせた由緒ある花・・・」

「高いのか?」

「貴様の給料ではきかぬくらいにな」

ぐっと、一護が詰まる。

いくら朽木一護になったとはいえ、家庭に金はいれてないのでまるで、居候のような存在だった。

「で、でも今日の朝飯は梅干しだけだぞ」

「厨房にいき、何か頼めばよかったのだ」

「それが、最近は白哉様ご命令で無理ですとか言わる始末だ」

「うーん。兄様にも困ったものだな」

ルキアは、白哉の一護に対しての嫌がらせを、まだ真剣に受け取っていなかった。

一護とて、できることなら穏便にすませたいのだ。義兄にあたる人なのだし。

一護と白哉の冷戦は、かなりの間続いている。

それなのに、お年玉に200万もする純金のコインをくれたり、ちょっと意味が分からない。

「一護、一緒に謝ってやるから、今回の椿の件は謝ろう。兄様にとっては特別なのだ。緋真姉様と一緒に育てた椿たちなのだ・・・・」

「え・・・・・」

一護は、驚いた。

緋真。白哉にとって、何にも代えがたいほどに大切な、亡き妻。

緋真と一緒に育てた椿という時点で、一護は謝る決意をした。

「俺、謝ってくる」

「待て、一護。私も行く!」

白哉の部屋に行き、一護は頭を下げた。

「あんたの大事な椿を、一輪残さず切り落としたのは俺だ。緋真さんと育てた、大事な椿とは知らなかったとはいえ、今回は俺がやり過ぎた」

「もうよい」

白哉の頬を涙が伝っていた。

「え、あの、ほんとにすんません!」

一護は土下座した。

「く・・・・くくく、ここまでうまくひっかかるとは」

「へ?」

白哉は、目薬をもっていた。

「あーーーー!!!」

「兄の土下座での謝罪、きちんと伝令神機で写しておいた。知り合いに一斉送信だ」

ぴっと音を立てて、メールが送られた。

「ふんがーーー!」

「ま、待て一護!とどまれ!」

一護は、ついに切れて、けれど暴力には訴えずに、白哉の部屋にあった花瓶の花ごと水を白哉にぶっかけた。

「兄は・・・この銀白風花紗が家10軒に相当するものと知っての行為か?」

「だからなんだ!洗う時くらいあるだろ。その手間が省けてよかったな」

「もうよい。頭の悪い兄といると、私の頭の中まで空っぽになりそうだ。下がれ」

「べーだっ」

あっかんべーをして、一護は去っていった。

とりあえず、ルキアは持ってきたタオルで白哉の髪をふき、休日でも着ている死覇装と隊長羽織を変えさせて、銀白風花紗をかわかすために天日に干した。

「兄様、少し一護にきつく当たり過ぎではありませんか?あれでは一護も怒ってしまいます」

「ルキア、これは戦争なのだ」

「せ、戦争ですか」

「そうだ。和平は遠いのだ」

「そうですか・・・兄様、では私もここで失礼します」

ルキアも、白哉の部屋を後にした。

一護は、ルキアと寝室でいちゃこらしていた。

「ルキア、好きだぜ・・・・」

「あ、一護・・・・・」

一護に押し倒されて、でもルキアも満更でもないようで。

「ルキア、かわいい」

「一護、好きだ・・・・・」

ルキアを膝の上に乗せて、抱き締めた。

睦み合うことこそしなかったが、抱擁したりキスをしたりしていた。

ルキアと背中合わせになって体温を共有しあい、本を読んでいた。

たまにお互いの髪をなでたり、どちらかの膝に寝転んだりしていた。

甘い時間だった。

大戦も終わり、平和だった。

ルキアの隣にいれることを、一護は心から感謝していた。

昼食の時間になって、食堂のいくと、一護の皿にめざし1匹が乗っていた。白飯もなしだ。

「ちょっと、厨房いってくる」

「あ、一護!」

「おらおらおら、白哉の命令だからって、めざし1匹はないだろ」

そう言われて、厨房の料理人は、普通の昼食を一護にくれた。

「え?白夜の命令は?」

「今回は、そのようなことは承っておりませんので」

「?なんか変な感じだな」

そのまま、昼食を食堂まで運んで椅子に座ると、栗のイガイガが置いてあって、一護はおもいっきり尻に突き刺さって、叫んだ。

「いってー!」

ルキアは、おろおろしていた。白哉はそしらぬ顔だ。

「白哉義兄様よ、言いたいことあるなら口で言ったらどうだ」

「知らぬ」

「いや、これ絶対お前のしわざだろ!」

「知らぬ」

「キーー!」

一護は、栗のイガイガを白夜の頭に向かって投げた。それをひょいっとかわす白哉。

とりあえず、昼食を食べて、またルキアと寝室に引きこもった。

「今日は天気が良いのだ。散歩にでも行かぬか?」

「おう、たまにはいいかもな」

そうして、梅の花を見ながら川沿いを歩いた。何故か、白哉も一緒だった。

「なんで白哉がいやがんだ」

「私がお誘いしたのだ。たまには夜ではなく、昼の散歩でもどうかと」

「余計なことを・・・・・」

白哉が、ルキアを奪うように、連れて歩き出す。

「あ、待て、ルキアの隣は俺のもんだ!」

そうやって、右側は一護が、左側は白哉が占領して、お互い一歩も引かなかった。

「その、歩きにくいのだが」

ばちばちと、見えない目線での火柱をあげる二人。

「そうだ、ルキア、今日飲みに行こうぜ」

「む・・・・」

白哉が眉を潜める。

白哉は、自分から飲みに行こうとか誘うタイプではない。

結局、その夜は白哉も加わって、普通の居酒屋に来ていた。

「なんでついてくんだよ」

「たまには、庶民の味を知りたいからだ」

「まぁまぁ、一護も兄様も。ここは焼き鳥が美味いのだ。酒もいろいろある。最近のものでは、辛いものでは日本酒がよいかもしれぬ」

すにで、ルキアは酒を飲んでいた。

「おい、ルキア、ここにあった瓶の中身・・・」

「ああ、全部飲んでしまった。ふわふわするなぁ・・・・」

「うわー、あれアルコール度高いのに・・・・」

ルキアは、焼き鳥のほかにホルモン焼きをいくつか食べて、酔っぱらった。

「ういー。おい、いちごおおお、すきだぞおおおおおおおお」

「酒癖わりぃなぁ」

「ルキア」

「はい、兄様」

「眠れ」

「ぐー・・・・ZZZZZZ・・・」

「え、おいまじか?」

「本当だ。私は、酔ったルキアを簡単に眠らせることができる」

どうやら、嘘ではないらしい。

仕方なく、白哉と一護で飲んだ。焼き鳥を中心に食事もした。会話という会話もあまりなかったが、ふと白哉が尋ねてきた。

「今、兄は幸せか?」

「どういう意味だ」

「そのままの意味だ。兄は、幸せか?」

「ああ、幸せだぜ。ルキアと結婚できて、愛して愛されて、ちょっと姑ちっくな義兄に困ってたりするけど、幸せだ」

「そうか。それならば、よいのだ」

酔っぱらったルキアを背中に背負って、一護は会計を支払うと、歩き出した。

「私は、夜の散歩に行ってくる。先に帰っていろ」

「へいへい」

一護は、ルキアを背負いなおして、朽木家にまで帰宅すると、爆睡しているルキアをパジャマに着替えさせて、布団に寝かせた。

そして、一護は風呂に入った。

このまま湯を抜いてやろうかと思ったが、今日の夕方は比較的平和だったのでやめた。

やがて、白哉が帰ってくる。

「みやげだ」

そういって、辛子明太子入りのおにぎりを渡された。

「おう、ありがとう」

「ルキアは寝たか?」

「ああ」

「そうか。私も湯あみをして寝る」

こうやって、一護の好物のものを渡してきたり、優しかったり、白哉は本当によく分からない。

でも、冷戦状態は続いているようで。

翌朝起きると、朝食は猫まんまだった。厨房にいくと、それしか出してはだめだと白哉に言われていると言われた。

「けっ!」

「ふん!」

「二人とも、仲よく!」

結局、ルキアの多めの朝食を分けてもらい、そのまま13番隊の執務室にまでやってきた。

「いつか、ぎゃふんと言わせてやる」

「一護、兄様は恥ずかしがっておいでなのだ」

「いーや、違うね。あれは、姑みたいなもんだ。義弟の俺が気に食わねーんだ」

「でも、本当に兄様に嫌われているのなら、一緒に住めぬぞ?」

「それは・・・・」

言葉に詰まる。

だから、よく分からないのだ。

白哉に、切り落とした椿の花は氷室に保管してあると知らせると、白哉は嬉しそうに微笑んだ。

切り落としたことを攻めてこない。

それどころか、礼を言ってきた。

本当に、よく分からない。

でも、何故だか分からない、今のままでもいいかと思うのだった。



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兎年だから

「・・・・何をそんなに見ている」

「な、なんでもありません!」

恋次がじっと見ていたのは、白哉の頭の上にある兎耳だった。

なんでも、ルキアが一護に飲ませようとしていた薬いりのお茶を、間違って飲んでしまったらしい。涅マユリの薬で、解毒剤はなく、3日もすれば自然と消えるとのことで。

でも、真面目な白哉は病欠でもないので、その程度のことで仕事は休まないと言って、出てきたのだ。

6番隊の皆が、白哉の兎耳を見ていた。

ああもう。

隊長は俺のなのに。

恋次は不満たらたらだった。確かに、兎耳を生やした隊長は愛らしい。でも、元から整った顔立ちで目立つのに、更に目立って、女死神でなく男死神からもくる視線が鬱陶しかった。

6番隊の隊士を集めての連絡は終わり、白哉が執務室に向かって歩きだす。それにつられて、たくさんの隊士たちが動いた。

「あの、朽木隊長その耳は本物ですか?」

「よかったら触らせて・・・・」

ギロリと、氷の眼差しで睨まれて、一般隊士たちは動けなくなっていた。

席官数名は、白哉の言動に慣れているので、3席の理吉などは平然と白哉を受け入れていた。

以前、猫耳を生やしてやってきたことがあった。あれは、一護がルキアに飲ませようとした茶を、間違えて飲んだせいだった。

一護とルキアは、思いあっているのはいいが、たまに互いに変な薬を飲ませようとする。それを間違って、とばっちりで白哉が薬を飲んでしまうことが多い。

一度、一護とルキアに文句を言おうと決めた。

「そんなにこの耳が気になるのか」

「はい」

兎耳は真っ白で、内側がピンク色だった。

「特別だ。触ってもよい」

「ほんとですか!」

恋次は喜んだ。

さっそくと、白哉の背後に回る。

「思ったより、冷たいですね」

兎耳の外側は、ふわふわの毛でおおわれていたが、思ったほど体温がなかった。もっと暖かいものだと勘違いしていたので、不思議に思った。

「うさぎは汗をかく機能が発達していない。細かな血管が行き渡った耳を外気にさらし、放熱して体温を調節している。だから、少し冷たくて当たり前なのだ。冷たすぎるのは体温が下がっている証だから、気をつけねばならぬが」

「隊長、物知りですね!」

「子供の頃・・・兎を飼っていた」

「隊長が!」

今からでは、想像もできない。

子供の頃の隊長もかわいかったんだろうなぁと、想像する恋次。

もふもふしていると、白哉が言う。

「もういいだろう、いい加減にしろ恋次」

「いや、もう少しだけ・・・骨ないし、なんかすべすべしてきもちいい・・・・」

「んっ・・・・・」

「え?隊長?」

恋次の聞き間違いかと思った。

「もういいであろう、耳をあまり触るな」

「もう少し・・」

「ん・・・あっ・・・・」

君間違いではなかった。白哉は、兎耳を触られて感じていたのだ。

「隊長、きもちいいですか?」

こりこりしている兎耳を、撫でまわすと、白哉は真っ赤になった。

「も、もうやめろ。恋次!」

怒られて、恋次はぱっと兎耳から手を離した。

その代わり、白哉を抱き締める。

「恋次、仕事中だ・・・・」

「少しくらい、いいじゃないっすか・・・」

白哉を抱き締めて、唇を重ねると、白哉の兎耳がぴこぴこと動いた。

深く口づけると、また動いた。

「隊長の兎耳、一緒に動くんですね。すっげーかわいい」

「あ、勝手に・・・・」

恋次は、兎耳をかじった。

「ひゃっ」

「隊長?感じた?」

「このたわけが!」

まるで、ルキアのような台詞だ。

白哉は真っ赤になって、恋次を払いのけた。

「兎耳がとれるまで、接触禁止だ!」

「ええ、まじですか」

けれど、その言葉もむなしく、白哉は結局次の日恋次おいしくいただかれてしまうのであった。






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愛の果ての

愛の果てには何があるのか。

そんなことを、ふいに思う。

「おい、ルキア、ルキア」

「え、なんだ恋次!?」

「てめぇーなぁ、せっかく花見に来ようって言ったのがてめぇじゃねえか」

「す、すまぬ。少し考えごとをしていた」

「また一護のことか?」

恋次の機嫌が急速に悪くなる。

一護とはけっこう仲がよくなって、告白されたのだ。

それを、恋次がいるからと断ったのはつい、先日の出来事だった。

「いや、そういうわけでは・・・」

「お前、嘘つくのへたくそだからな」

確かに、一護のことを考えていた。

愛の果てにあるのは幸せだ、俺と幸せにならないかと告白された。

「ええい、何もかも貴様が悪いのだ!」

ルキアは、恋次がいるせいだと、恋次を力のこもらぬ拳でぽかぽかと殴った。

「全然痛くねぇ」

恋次は、ルキアの尻を触った。

「ひゃあ!このばか恋次!」

ばきっ。

ストレートパンチが決まって、恋次は桜の花の海に沈みこんだ。

「へっ、やればできるじゃねぇか・・・・ガクッ」

「おい、恋次、恋次!?」

その頬をぺちぺちとしてやるが、恋次は意識を取り戻さない。

まさか頭でも打ったのかと、恋次の頭を膝の上にもってきた。

「へへっ・・・ルキアのバーカ」

「なっ」

真っ赤になるルキアに、恋次は起き上がって、チュ、と音がなるだけのキスをした。

「きききき貴様!私は初めてなのだぞ!」

「だから、俺がいただいんだよ。一護になんか渡してたまるか」

ちらちらと、桜の海が降っていく。

その下で、抱き締められた。

「ずっとずっと、子供の頃からお前が好きだった、ルキア」

「恋次・・・・」

「ガキの頃は、いつかでっかくなってお前を迎えにいくとか考えてた。でも、今じゃ俺もお前も副隊長だ。差はねぇ」

「うむ・・・・」

「でも、想いの深さなら負けねぇ。もう100年以上もお前を思ってるんだぜ?」

「私は・・・・」

何と言えばいいのか逡巡するルキア。

「お前は、俺を選べ」

「選べとか何様だ、貴様!で、でも、私も恋次、貴様のことが好きだ・・・・」

「やっぱりな。昔から、お前は俺をずっと目で追ってた」

「ぐ・・・・」

言い返せなくて、ルキアは真っ赤になった。

誰かに告白されるのは、これで2回目だった。

「一護のことは断ったんだろう?だったら、俺にしとけ」

「一護のことがなくとも、貴様を選んでいる、恋次。好きだ」

真っ直ぐ射貫いてくるアメジストの瞳に、恋次は紅蓮の髪と同じ色の瞳で見つめ返した。

それから、恋次も真っ赤になった。

「なんか、勢いで言っちまったけど、案外恥ずかしいな・・・・」

「たわけ。なら、初めから言わぬことだ」

「でも、俺が思いを伝えなけりゃ、お前は一護の方に行きそうで・・・」

「たわけ。どれだけの間貴様といると思っているのだ。確かに一護はとても大切だ。でも、恋愛観感情で好きかと言われると、恋次、貴様のほうが好きだ」

ルキアも、言ってから真っ赤になった。

「ほ、ほら、花見するんだろ?」

「そ、そうであったな!」

ギクシャクと、桜の花を見上げる。

桜の雨はちらちらと降り注いでくる。

朽木家お抱えの料理人が作ってくれた重箱のお弁当を食べ、酒を飲みながら、ルキアは言う。

「貴様とこういう二人きりで花見もいいものだな。また、できれば来年もこよう」

「ああ、そうだな」

ルキアは、そっと恋次の横に寄り添った。

「今日から、貴様は彼氏だ。彼女である私を大事にしろ」

「お、おう」

恋次は、顔を朱くしながらも、ルキアと手を繋いだ。

ずっと近くにいたけれど、こうやって改めて意識すると、ルキアも女の子なのだと思った。

いい匂いがして、柔らかい。

恋次は、ルキアを抱き締めていた。

「恋次?」

「もう、絶対に離さねぇ」

ルキアが処刑されそうになった時、もう少しで見捨ててしまう形になったのだ。

力が及ばずに。

「もっと強くなって、お前を守る」

「たわけ。私は守られてばかりではない。背中を任す」

「おう!」

恋次は、桜の花びらの下で、ルキアとキスをした。

「ん・・・・恋次・・」

愛の果ては幸せ。

この果てにあるものは幸せなら、それはそれでいいかもしれないと、ルキアは思うのだった。





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梅の花

「隊長見てください、梅の花が満開ですよ」

そんな恋次の言葉に、そうか、暦は2月かと思い出す白哉。

寒い日がまだ続くが、それでも正月の頃の寒波を考えると大分、寒さも和らいだ。

「梅の花か・・・・緋真が好きだったな・・・」

亡くした愛しい妻、緋真は梅の花が好きだった。桜の花もすきだが、冬の寒さ中でも凛として咲きほこる梅の花が好きだった。

「隊長・・・・・・」

恋次が、昔に想いを馳せる白哉に何かいいたげだった。

「案ずるな。緋真の元にいきたいなどとは思わぬ。今は、お前がいる」

恋次に思い切り抱きしめられた。

いつもより強い力に、白哉が眉を寄せる。

「恋次、痛い」

「痛いくらいに抱きしめてるから、そりゃ痛いでしょうね」

「恋次」

「緋真さんのことは俺が忘れさせてやるって言いたいところですが、隊長の思いの強さは知っています。でも、今は目の前にいる俺のことを考えてください」

そこは、睦み合うために密かに使われている館だった。

いつも、そこで恋次と白哉は同じ夜を過ごす。

なるべく次の日、白哉が非番の日にしていた。

白哉に思いの丈をぶつけるのはいいが、肝心の白哉はあまり行為になれておらず、恋次が完全に何もでなくなるまで抱いた日には、白哉は大抵意識を飛ばした。

「梅の花・・・確かに、綺麗ですね」

「私個人は桜の花の方が好きだがな」

「そりゃ、千本桜もってるくらいですからね」

自分の斬魄刀が桜なら、桜を好きになるのは当たり前だろう。

「だが、あれは梅の花がすきだった・・・少し、枝を手折ってくれぬか」

言われて、恋次は満開の梅の花の枝を一本手折った。

白百合の活けてある花瓶に、梅の枝をいれる。

「梅の花は、綺麗だがあまり匂いがしない」

「そういえばそうっすね」

花を間近でかいでも、あまり匂いがしなかった。

「そんなことろが謙虚でいいと、あれは・・・・」

「隊長、俺がいる前であの人の話はしないでください」

「恋次?」

「俺は自分の目の前にいる隊長が、たとえ死んでいても思っていた人のことを口にするのは嫌です」

死人にどれだけ嫉妬しても、無駄だからと、恋次は白哉の耳元で囁いた。

「すまぬ・・・だが、梅の花を見るために緋真のことを思い出すのだ」

「隊長、好きです・・・・・」

そんな言葉を受けながら、食事をして酒を飲み交わしあった。

やがて、夜が訪れる。

睦み合うために、わざわざ館を用意してあるのだが、その関係はルキアや一護にはばれているが、他の6番隊の者にあまりばれていなかった。

睦みあった次の日は非番の時が多いので、お互いの体から同じシャンプーと石鹸の匂いがするが、二人がただ同じ風呂を使ったのだろうと思うだけで、仲まで勘繰ってくる者などいなかった。

「恋次・・・・」

恋次は、梅の花を一輪手にとると、くしゃくしゃにして白哉の顔の前で花びらをひらひらと舞わせた。

「この梅の花と同じだ、緋真さんは。もう散ってしまった」

「あ・・・・」

恋次の心は、傷口をぱっくり開けていた。

いつまでたっても、愛してくれないと言っていたあの頃に戻ったように。

「恋次、すなぬ、私は今はお前を愛している・・・・」

「じゃあ、証明してみせてください」

「恋次・・・・・」

白哉は、おずおずと自分から恋次の体を抱き寄せて、その筋肉質の体を抱き締めて、口づけた。

「ふあ・・・・・・」

キスをしていると、恋次が白哉と舌を絡めだす。

「これでは、証明にならぬか?」

「いえ、十分です」

白哉は性的なことに疎い。恋次が覚えさせたことを、白哉はなぞっているにすぎないが、日頃決してそのような行為をせぬ白哉が、自分から口づけをしてくること自体とても珍しいのだ。

「抱きますよ。いいですか」

「構わぬ」

白哉の衣服を脱がせ、貴族の証であるものを全てはぎとると、さらりと黒髪が褥に広がった。

「隊長の髪・・・綺麗ですね」

「お前の髪も綺麗だ。紅蓮のようで」

白哉が、ぱさりと落ちてきた長い恋次の髪を一房とって、口づけた。

「んんっ・・・・・・」

ぴちゃりと、舌が絡まるキスを何度も繰り返す。

手の平全体で、体の輪郭を確かめるように愛撫した。

「んっ」

脇腹をなであげて、鎖骨から胸にかけてキスマークを残された。

「あ、恋次・・・・」

求められて、また浅く深く口づけする。

胸を弄っていた手が、先端をきゅっと摘みあげた。

「あ!」

びくんと、白哉が動く。

くりくりと転がしてやれば、硬くなったそこは快感となって白哉に襲いかかった。

「ん・・・・」

舌で甘噛みして、段々と位置をずらしていく。

反応しかけた花茎を口に含むと、白哉は喘いだ。

「ああああ!」

ねっとりとした咥内にいれられて、そのままちろちろと舌を這わされた。口に入りきらぬ部分は手でしごかれた。

自虐もしない白哉は、薄い精液を恋次の口の中に放った。

今度は、白哉が恋次のものを口に含んだ。

こんなこと、教え込んだのは自分だ。恋次は罪悪感を抱きながらも、白哉の奉仕を受ける。

「ん・・・・」

びゅるるると、勢いよく恋次が精液を吐きだした。

「ぐ・・・・」

飲み込むには無理があって、こほこほとせきこむ白哉にティッシュを渡す。だが、白哉はできる限りを飲み込んだ。

「隊長、無理しなくていいから!」

「よいのだ。私がこうしたいと思ったのだ」

白哉を組み敷いて、潤滑油を指にかけて体内に潜り込ませる。

何度か前立腺をいじり、解していくうちに、白哉は自分の手の甲を噛んでいた。

「隊長、声我慢でしないでください。聞かせて?」

白哉の歯型がついてしまった手に、口づける。指には、エンゲージリングが光っていた。

「ああ!」

ぐりっと、指で前立腺を刺激されて、白哉はたらたらを花茎から蜜を零していた。

「挿入れますよ」

「んん・・・ああああ!!」

指とは比較にならならいものに引き裂かれて、白哉は涙を零した。

いつも、行為は快感と痛みをまぜこぜのしたものだった。

「ん・・・・」

痛みで溢れた涙を吸い取ってやれば、あとはただ快楽に墜ちていくだけ。

ゆるりと中を突き上げてやれば、白哉は二度目になる熱を放っていた。

「・・・・・あああ!」

恋次もその締め付けにたまらず、白哉の中に放つ。

「んう・・・・」

何度も突き上げながら、浅く深くキスを繰り返した。

「ひあああ!」

最奥をこじあけて、中に侵入する。

「あ、あ、あ!」

最奥はひくついて、恋次を離さなかった。

「ひあ!」

最奥で精をぶちまける恋次の、熱い熱を感じた。

「んう・・・・」

前立腺を突き上げながら、いつの間にかいってしまったらしい白哉の萎えかけたものをしごく。

少しだけ精液を吐きだして、後は透明な蜜をたらたらと零すだけだった。

「んあ!」

ぐちゃりと音と立てて中を犯してやると、白哉はドライのオーガズムで達していた。

「・・・・・んああ!あ!あ・・・・・」

何度が中を抉って体位を変えて貪っていると、流石の恋次も果てて、それ以上でなくなてしまった。

「ん・・・・・」

少し意識を飛ばしていたらしい白哉の、黒髪を撫でた。

「・・・恋次?」

「ちょっと、無茶させてしまいましたか?すんません」

「別に構わぬ。お前ががっつくのはいつものことだ」

もう、白哉も慣れてしまっている。

白哉もまだ若いが、恋次はもっと若い。1回のセックスで3~4回出すことがおおい。

「湯浴みに・・・・」

ふらつく白哉を抱き上げて、湯殿にいくと、まずは白哉の体内に出したものをかきだした。

「腹の奥・・・まるで、孕むかと思った」

「ぶはっ」

恋次は、すごい殺し文句に、顔を真っ赤にさせた。お互いの裸など見慣れているが、白哉の白い肌はやはり恋次を煽ってきて、心臓に悪いと思った。

体を洗い、お互いの髪を洗いあって、湯船に浸かる。

湯殿から出て、下着をつけて浴衣に着替えて、その上から上着の着物を着た。

「まだ寒いから、湯冷めしないでくださいね」

ぽたぽたと雫を落とす、少し長くなった白夜の黒髪を、タオルで水分をとってやった。

恋次はすでに紅蓮の髪をふいた後だ。そのまま、タオルを首に巻いた。

浦原の手で大分電化製品が普及した。

この館にも、掃除機、洗濯機、炊飯器、冷蔵庫などがあった。

自家発電機は安くないが、これらの便利な電化製品を取り入れる家は多く、浦原が開発した自家発電機は飛ぶように売れていた。この館の自家発電機も、浦原のところから買ったものだった。

ドライヤーを手にして、まずは白哉の髪を乾かした。最後に自分の髪を乾かして、褥とは違う布団に横になる。

「忘れるな。私は、確かに緋真を愛している。だが、お前も愛している。緋真のことを愛するなと言われてでもそれはできぬ。だが、お前を愛せと言われればそれはできる」

「はい、隊長。今は、それで充分です。愛しています、隊長」

「私も愛している、恋次・・・・」

口づけを交わして、一組の布団で抱き締めあって寝た。

「ふあ~。あれ、隊長まだ寝てるんですか」

スースーと、白哉はまだ寝ていた。

「こうしてる人形みたいに綺麗だけど、かわいいなぁ・・・・」

白磁のような肌は、ほんのり色づいている。生きてるのだと、分かる。

「隊長、起きてください、朝ですよ」

「ん・・・恋次?今何時だ?」

「8時です」

「そうか。起きる。朝餉は用意されてあるはずだから、もってくる」

「いいですよ!俺がやりますから、隊長はそこにいてください!」

館であるが、少し広い。

朽木邸の屋敷ほどではないが。個人がもつ家にはしては広いほうだろう。

やはり迷子になったのか、恋次が声をあげた。

「隊長、どこですかー。俺はどこにいるんですかー」

白哉ははそれがおかしくて、笑った。

「私はここだ。そのまま前へと進んで左に曲がれ」

声の位置から大体の場所を察知して、白哉は叫んだ。朝餉を手に、恋次が現れた。

「やっぱ、この館も大分広いですね」

「この程度の広さで迷子になるなど、情けない」

「すみません」

犬のようにしゅんとしょげる恋次の紅蓮の髪を、くしゃくしゃと撫でまわして、白哉は笑んでいた。

「隊長?」

「お前の存在で、私はどれほど救われたことか・・・・」

愛しい者がいるということは、生きようとする意志になる。

思いの果てに愛があり、愛の果てに幸せがあると、ルキア言っていた。

「愛の果てだ」

「は?」

「私は幸せ、ということだ」

「隊長が幸せなら俺も幸せです」

少し冷めてしまっているが、朝餉を食べながら、今日はすることもないのでこのまま恋次と、戯れあうのもいいかもしれないと思った。

「隊長、見てくださいバナナですよ。現世では珍しくないですけど、こっちで食べるのは久しぶりです」

「そうか。これは、バナナというのか」

黄色い果物を口にする。

ほんのりと甘かった。

まるで、恋次と過ごす日常のようだと思った。











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猫がにゃあ

「知り合いから、猫を預かったのだ」

6番隊の執務室で、綺麗なその白猫は、にゃあと鳴いて白哉にすり寄っていた。

「ぐ・・・猫のくせに、俺の隊長を誘惑するとは・・・」

「お前、頭は大丈夫か?猫に嫉妬しておるのか?」

白猫は、オッドアイで、金色と青色の目をしていた。

「この種のオッドアイの猫は寿命が短かかったり、耳が聞こえなかったりと弱いのだ」

「く、かわいいけど、隊長は俺のものだ!」

恋次は白猫を抱き上げると、隊首室に連れて閉じ込めてしまった。

ちゃんと、トイレとエサと水は置いてきた。

恋次の行動に、白哉は目を丸くしていた。

「本当に、猫になど嫉妬していたのか」

「猫でも、隊長に甘えるのは俺の特権です!」

白哉は薄く笑った。

恋次の行動が、とても幼く見えたのだ。

「にゃあにゃあー」

「鳴いている。一匹では寂しいのだろう」

そう言って、白哉はせっかく恋次が閉じ込めた猫を、隊首室のドアを開けて、外にだしてしまった。

「隊長!」

「なんだ」

「猫になんて構わないで、俺に構ってください」

「お前など、いつでも構える。だが、この猫は今日しかいない」

「明日にはいなくなるんですか?」

「そうだ。ちなみに、名は「オレンジ」だそうだ。恋次と響きが似ているので気に入っている」

「今日だけですからね」

「何がだ」

「隊長が、俺以外と親密になるの」

「子供か、お前は」

苦笑されてしまった。

それでも、オレンジという名の白猫は、恋次にも懐いてすり寄ってきた。

「こうして俺にだけ懐いてば、いいんですけどね」

白哉が、猫に現世の猫にあげるのに流行っている、チュールをあげてみた。

面白いほどによく食べた。

「そうか。このえさが好きなのか」

もう1つチュールをあげた。

その姿を、恋次は悶々と見ていた。

チュールを食べ終わると、猫はうたた寝をはじめてしまった。

しかも、文机に向かった白哉の膝の上でだ。

我慢できなくて、猫を抱えて自分の膝に乗せた。

猫はにゃあと鳴いたが、すぐに恋次の膝の上で寝てしまった。

「かわいいけど・・・隊長の膝の上はアウト」

白猫に語って聞かせるが、肝心の白猫は夢の中だ。

その日、恋次は仕事をこなしたが、いつもの3割ほど遅かった。

「猫になど、現を抜かしておるからだ」

「違う。猫に構う隊長に現を抜かしていたんです」

「お前は・・・・んんっ」

噛みつくようなキスをされた。

「恋次・・・・・」

もう一度、キスをする。今度は、舌が絡まる深いキスだ。

「んっ・・・・はあっ・・・・」

恋次は、白哉を抱き締めた。

「猫にだって嫉妬します。俺の隊長に触れていいのは、俺だけだ」

「お前は、そんなに嫉妬深かったか?」

「そうですよ。同じ屋敷に住んでいる一護にだって、嫉妬しています」

ルキアと結婚して、死神になった一護は、黒崎という性を捨てて、朽木一護になった。

「一護は、ルキアと同じでただの家族だ・・・・」

「それでも、嫉妬してしまいます。俺も隊長の屋敷に住みたい」

「四六時中盛ったお前といるのはきつい」

白哉は、冗談なんか本気なのか分からない言葉を口にした。

「俺のこと、重荷ですか?」

「軽くはない。だが、重荷と感じたこともない」

「隊長、好きです。愛してる」

「ん・・・・恋次、私もだ」

「にゃあああ」

猫はもともと夜行性だ。活発になってきた猫を抱き抱えながら、恋次は白哉を家まで送り、夕飯を御馳走になった。

「おう、恋次元気か?」

食堂で、そう一護に聞かれて、恋次は一護にデコピンをした。

「いってぇ」

「元気に決まっているだろう」

「そうか。ならよかった」

「たわけ、貴様夕飯をただ飯で食っておきながら、態度がでかいぞ!」

ルキアが噛みついてくる。

恋次は、ルキアを適当にあしらって、白哉の部屋までくると、白哉を抱き締めた。

「恋次・・・」

「ああ、やっぱ俺一人暮らしが正解ですね。隊長が毎日傍にいたら、盛って身がもたねぇ」

触れるだけの口づけをして、恋次は自宅に帰ることにした。

白哉が、屋敷の玄関まで送ってくれた。

「今日は夕飯ごちそうさまでした。じゃあ、また明日、執務室で」

「ああ」

白哉の見送りに感謝して、そのまま恋次は自宅まで戻った。

一人で住むには大きな館だ。たまに手入れのために人を雇う。

食事をして、風呂に入って寝る以外に、使い道のない館だった。

朽木邸で過ごせればいろいろと面白いだろうが、白哉はすぐ隣にいるとつい盛ってしまいそうになる。

俺も若いなと、恋次は思った。

次の日、執務室は静かだった。

「おはようございます、隊長」

「おはよう」

猫がいない執務室は、こんなに静かだったのかと思うほど、静かだった。

「にゃあ」

「え、何処から!」

「すまぬ、恋次。知り合いが病気にかかり、しばらくの間預かってくれと頼まれたのだ」

「隊長の屋敷では、だめなんですか」

「ああ、そういえばそれでもいいのか・・・・・」

恋次は頭を抱えた。

わざとではないだろうが、猫を傍に置いておきたいのだろう。

名も気に入ったといっていた。オレンジ。恋次の名前の響きがある。

「俺も大人です。猫には嫉妬しないようにします」

「そうか。ならばよかった」

「しばらくって、どのくらいですか」

「半月ほどだなな」

「やっぱ前言撤回。猫にだって、嫉妬します」

半月も白夜に構われる猫に嫉妬する。

猫はそれを知らず、ただかわいい姿でにゃあと鳴くだけだった。










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