忍者ブログ

プログ

小説掲載プログ
10 2024/11 14 2324 28 29 30 12

7話補完小説

一護は、すでに満身創痍だった。

特殊な檻の中に閉じ込められて、出るのに時間がかかりすぎた。

守りたいと思っていた尸魂界の、たくさんの血が流れている場面を見て、ギリッと唇をかみきった。

「なんだよこれ・・・こんなのありかよ・・・・」

瞬歩で歩んでいく。

死体死体死体。

敵敵敵敵。

白哉の前にくると、血まみれで壁にめりこんでぼろぼろな白夜が、ふと目を開けた。

「黒崎一護・・・」

「しゃべるな!」

「黒崎一護・・・・どうか、尸魂界を・・・・・」



瞬歩で、かき消えた山本元柳斎重國の霊圧の名残があった場所まできた。

斬月によく似た男だった。

「お前か」

「何がだ」

「尸魂界をこんなにしたのはお前かってきいてんだよ!」

血を滲ませながら、叫ぶ一護に、ユーハバッハは残酷な笑みを刻んだ。

「そうだ」

「おまえええええ!」

斬月をぶつける。

けれど、切れぬ。

「うおおおおおお!月牙天衝!」

けれど、手傷さえ負わせられぬ、

「陛下」

去っていくユーハバッハを、見ていることさえできなかった。

完膚なきまでに叩き折られた。心も、剣も。

「俺は・・・・」

振り続ける雨の中、一護は折れた斬月を見ていた。



「山じい!」

消えてしまった圧倒的な霊圧に、京楽は息を飲む。

そんな。

「山じい、嘘でしょ?」

山じいが死ぬなんて、そんなこと。

ああ、浮竹は無事だろうか。

敵の去り際の攻撃をまともにくらって、立っていられない。

血が流れていく。寒気を感じた。意識が遠くなっていく。



「元柳斎先生!」

消えてしまった圧倒的な霊圧に、浮竹は涙を零した。

元柳斎先生が死ぬなんて、そんなことあっていいのか。

京楽の霊圧が弱まってくのを感じた。

「京楽、無事でいてくれ!」

祈るように、去っていった敵が戻ってこないのを確認して、京楽のところにまで瞬歩で移動した。

「京楽、しっかりしろ、京楽!」

揺さぶるが、反応はなかった。

酷い怪我だった。

浮竹は幸いなことに、強い敵にぶつかることなく無事だったが、白哉と一護の霊圧が消えていくのを感じた。

「白哉、一護君・・・・」



蹂躙された尸魂界。

死んでいく死神たち。


「私は長くはもたぬ・・・・・黒崎一護。尸魂界を守ってくれ・・・」

血だらけの白哉のつぶやき。

「ごほっ」

白哉は血を大量に吐いた。

「この尸魂界を守ってくれ、黒崎一護・・・・・・」

けれど、その願いは叶わない。


蹂躙された尸魂界。

死んでいく死神たち。

一護の爆発的な霊圧が消えていく。

「兄ですら・・・太刀打ちできぬ、というのか」

真っ暗になっていく視界。

チャリン。

音をたてて、千本桜が消えていく。


その日、ユーハバッハの手によって、尸魂界はもう二度と戻ることのできない爪痕をたてられた。

山本元柳斎重國の死。

尸魂界が崩れていく。

生き残った隊長、副隊長たちは、消えてしまった山本元柳斎重國の霊圧を感じ、嘆き悲しむのであった。

拍手[0回]

PR

白哉の見合い

白哉が、見合いをすることになった。

その知らせは、6番隊に一気に広がった。

相手は、4大貴族とまではいかないが、それなりの上級貴族の姫君。年の頃は人間でいうと20前後で、その貴族の家系の女は男腹で、子を成したら必ず男児を産むとして、人気のある家柄であった。

朽木家に、世継ぎを。

そう、親戚連中に口酸っぱくいわれて、仕方なしにお見合いだけすることを、白哉は許可したのだ。

何より、見合い写真を見たが、亡き緋真によく似ていた。

はじめ、白哉は断ろうと思っていた。だが、あまりにも緋真に似ているために、声を交わしてみたいと思ったのだ。

「隊長・・・見合いするって、ほんとですか」

「本当だ」

「あんたには俺がいるじゃないっすか!」

「思い上がるな」

「隊長・・・・・」

「緋真に、似ておるのだ。言葉を交わすだけだ。婚姻はせぬ、安心せよ」

「いやだ。言葉交わすのも許しません」

「私は!お前のものではない!」

そう白哉は叫んで、その場を後にしてしまった。


そして、いよいよお見合いの日がやってきた。

「沢森シイナと申します・・・」

「朽木白哉という・・・・・」

お見合いの籍では、シイナの両親もいた。

白哉には、ルキアがついてきていた。

本当に、緋真に似ていて、ルキアにも似ていた。

「本当に、義妹であられるルキア様とわたくし、見た目が似ておりますね」

「死別した妻、緋真にも似ておられる」

「わたくし、男腹ですの。地位からして正妻を望みますが、緋真様のことが忘れられないのであれば妾でもかまいません」

「兄は・・・・・妾でいいと・・・・・」

「4大貴族の朽木家と縁ができるのであれば、妾でも構わないと両親も納得ておりますの」

美しい着物を着た、美しい女性だった。

シイナは、緋真によく似ていた。

でも、緋真ではない。

緋真は、妾になるくらいなら縁などいらぬというだろう。

「梅の花は、お好きか?」

「あら、あいにくわたくし梅の花が嫌いですの。椿が好きですわ」

緋真は、梅の花が好きだった。

やはり、違うのだ。

シイナを緋真の代わりとして娶るのは、あまりにもシイナに失礼だ。

「わたくし、かまいませんのよ?緋真様の代わりでも。そのつもりで、見合いを受けておりますの。ご希望であれば、立ち振る舞いも口調も緋真様のようにしましょう」

「兄は・・・・・・」

そんな偽物、妻にしても虚しいだけ。

白哉は、見合いを断ろうと口を開く。

「隊長!」

「恋次!?」

「おいあんた、シイナとかいったな、隊長は俺のもんだ。隊長はな、副官である男である俺できてるんだ!あんたじゃ、隊長を満足させることなどできねぇ!」

「なっ!」

シイナはかっとなって、恋次の頬をはたいた。

「本当なのですが、白哉様!このような下賤な男と、できているのですか!」

シイナの両親は、驚きで言葉も出ないようだった。

「恋次、貴様、場所をわきまえろ!ここは上流貴族同士の見合いの場なのだぞ!」

ルキアの言葉に、恋次は吠える。

「上流貴族だろうが、見合いの場だろうが、知ったことか。愛している隊長が結婚するなんて、我慢できねぇ!」

「この下賤な死神風情が!」

シイナは、顔を真っ赤にして恋次につかみかかった。

ああ、やはり緋真ではない。

緋真は、人を「下賤」などと決して呼んだりしない。

「隊長!」

「白哉様!」

「恋次に言っていることは、本当だ。私は、副官であり同じ男である恋次と肉体関係をもっている」

「衆道・・・・汚らわしい!このお話、なかったことにしていただきます!」

シイナも、シイナの両親も立腹して去ってしまった。

「貴様・・・・兄様に、噂が立ったらどうするのだ。朽木家に恥をかけというのか!」

「う・・・そこまで、考えてなかった」

「兄様、念のため口封じをしておきましょう!」

「ああ、分かっている」

殺すわけではない。鬼道の一種で、記憶を少し飛ばすのだ。

目の飛び出るほど高い品を媒介に使うので、4大貴族くらいしか使えない術だった。

朽木家を出ていく前のシイナとシイナの両親に、白哉はその術を施した。

これで、朽木家の面子は潰れずにすむ。

「恋次・・・貴様、少しは場所を弁えよ」

「すみません。でも、隊長が見合いなんて許せなくて」

「もうよい。どのみち、言葉を交わすだけの予定だった。こちらも幻滅したので、未練も何もない」

「じゃあ、結婚は・・・・・」

「破談だ」

「おっしゃあああ」

「たわけ!恋次、貴様は兄様に幸せになってほしくないのか!」

「俺以外の死神と、幸せになってほしくない」

白哉は、長い溜息を零した。

「ルキア、すまぬが席を外せ」

「はい、兄様。恋次、こうなったからには、兄様を幸せにしろよ!」

「勿論だ!」

「恋次」

「はい」

「愚か者。私を、少しは信用したらどうなのだ」

「だって、隊長が見合いするっていうから・・・・」

「最初から、見合いだけのつもりだったのだ。結婚などせぬ」

「隊長、好きです。愛してます。俺には、隊長だけだ」

はぁと、長い溜息をついて、白哉は恋次に自分からキスをした。

「隊長?」

「そうだな。私にも、今は貴様だけだ、恋次」

白哉の細い腰に手を回す。

「もう、二度と見合いなんてしないでください」

「分かった」

恋次は、もう一度白哉を抱き締めて、その桜色の唇に唇を重ねる。

「あんたには、俺がいる」

「恋次・・・・・」

その日の夜は、睦みあった。

長い長い夜に、なりそうだった。



拍手[0回]

いえいえ、いかがわいいことではないです

「隊長、寝てください」

褥の上に、横になれと恋次は言う。

「するつもりはないぞ」

「今日はそういう約束ですから、手は出しません」

白哉は、大人し横になった。

「あ、うつぶせになってください」

白哉は、大人しくうつぶせになった。

寝るための夜着を着ていた。絹でできており、少し薄かった。

ぐっぐっと、力をこめて、恋次は白哉の腰をもみほぐしていく。

「んっ・・・・」

「隊長?」

「な、なんでもない」

思いっきりではなく、ツボを刺激してマッサージされた。

やはり、声がもれた。

「あっ・・・・」

「隊長、我慢しなくていいっすよ。声出しても。俺しかいませんから」

「貴様、何をかんがえておる」

「別に何も。ただ、最近肩とか腰とか自分で揉んでるようだから、揉んであげようと思って」

恋次は、本当に下心はなかった。

「ああっ・・・・・・」

肩を強く揉んでいくと、白哉はその気持ちよさにあられもない声を出していた。

そんな時間が30分程続いただろうか。

「隊長・・・・隊長のせいで俺、たっちまった。どう責任とってくれるんですか」

白哉は無言だった。

「隊長?」

あまりの気持ちよさに、そのまま白哉は寝てしまっていた。

「うわー、俺お預けですか・・・・・」

仕方ないので、白哉の気持ちよさそうなん寝顔をおかずに、自分を慰める。


「はぁ・・・好きな人が目の前にいるのに、自虐するしかないってどうなんだ?」

恋次はそう思いながら、眠ってしまった白哉に毛布をかけて、寄り添うようにその隣で寝て、意識は闇に落ちていくのだった。



拍手[0回]

恋次の恋文

恋文を書いてみた。

誰でもない、隊長あてに。

恋次は、できるだけ色っぽく、どれだけ愛しているのかを紙に書き綴った。

3日かけて完成したそれを、白哉に差し出す。

「なんだこれは」

「恋文・・・・いわゆるラブレターですね」

「興味ない」

ぽいっと捨てられた。

「ちょっとあんた!俺は3日かけて一生懸命思いをこめて書いたんすよ!冒頭だけでもいいから読んでください!」

「仕方ないな・・・・・」

白哉は、乗り気でなかったが、読んでいった。

白哉は、その綺麗な顔をすましていた。

だが、だんだん顔色が変わってきた。

「よっしゃ!」

恋次は思った。

思いを読んでもらったと。

「これは・・・・・」

紅い顔で、ふるふると手紙を手にしている白哉。

はらりはらりと、手紙が床に落ちる。

「兄様、失礼します。こちらに提出する書類をおもちしました」

ルキアが、6番隊の執務室に入ってきた。

「兄様?」

顔を真っ赤にして伏せている義兄の姿がおかしくて、書類を机の上においた。

「恋次!貴様兄様に何をした!」

「なんもしてねーよ。ただ、ラブレターを読んでもらっただけだ」

「らぶれたー」

白哉の足元に散らばったいっぱい文字の綴られた紙を拾い、内容を読んでいく。

「あんたのあそこはしまりがよくって、俺はつい何度もつきあげたくなる。あんたはイクときの顔はすごくかわいくて、もっと泣かせたくなる・・・・・なんだこれは!ただの卑猥なエロレターではないか!」

「え、そうか?」

「兄様、大丈夫ですか、兄様」

「ルキア・・・私は、何故こんな男を副官に選んだのであろう・・・・・」

「兄様、しっかり!」

「散れ、千本桜」

千の桜の花となった刃は、恋次のかいたエロレターと恋次を攻撃した。

「ぎゃああああああ!なんで!」

「貴様!このような破廉恥な文を私に読ませて!」

白哉は起こって、恋次をボコボコにすると、それから1週間口を聞いてくれなかった。


「俺・・・・なんか間違ったことしたか?」

あほな恋次は、自分がただの卑猥な文章を綴っただけということに、ずっと気づかぬのであった。


拍手[0回]

色のない世界・ゼロ

君がいなくなって、15年が経った。

世界は変わったよ。

もう、大戦の爪痕はほとんどない。

そうそう、君の大切な副官だったルキアちゃんが、阿散井君と結婚したんだ。

苺花というかわいい女の子を産んだよ。

もう8歳だろうか。

班目君の元で、剣の稽古に励んでいるよ。

君のあとは、ルキアちゃんが継いだんだ。

君も、ルキアちゃんなら安心だろう?

ああ、本当に君がいない15年はあっという間だった。

「会いたいねぇ・・・・・・」

君に、会いたい。

一目でいいから。

でも、それは叶わぬ願い。



いつの間にか眠ってしまったみたいだった。

「京楽、元気にしてるか?」

「浮竹!?」

ああ、これは夢か。

そう分かっても、僕にはありがたかった。

「ちょっとな・・・花の神に・・・・」

花の神。浮竹が赤子の頃祝福を授けたという田舎で崇められている名もなき神様。

「花の神は、世界を渡るから。俺も一緒に渡ってきたんだ。夢の中だけだけど、これは現実だ」

「現実?」

「ほら、俺は生きている」

僕は浮竹の隣に並んだ。浮竹ははにかみながら、僕の手をとって、心臓のある位置に置いた。

トクントクンと、鼓動がする。

「本当だ、生きてる」

「夢の中だけだけどな」

それでも。

君が生きていてくれるなら、それだけでいい。

「あの手紙、読んだのか」

「ああ・・・・君が死ぬ1日前に残した手紙だね。読んだよ。いっぱい泣いた。泣きすぎて目が赤くなったよ」

「すまなかった。もっとこう・・・・明るい、未来の話にしておけばよかったな」

「そうでもないよ。あの手紙のお陰で、君への想いがまた生まれた。何度でも繰り返す。君が好きだ。君を愛している」

僕は、浮竹の長い白髪を手にとった。

サラサラとした触覚がして、本当に浮竹は生きているんだと実感した。

「ねぇ、君はこのまま、去ってしまうの?」

「ああ。俺は、この世界では死んでいるから」

「別の世界なら、君は生きているの?」

「ああ」

「いいな。僕もそっちの世界にいってみたい」

「こっちには、こっちの京楽がいるんだ」

浮竹が、困ったように微笑んだ。

「そう、僕が。ややこしいね」

「京楽、一人でいるのか寂しいか?」

「かなりね。でも、みんないるから・・・絶望とまではいかないかな」

「よかった・・・・・・・」

浮竹は、心から安堵した様子で、僕の傍にきて僕を抱き締めた。

暖かった。

「俺は、いつまでもお前を思っている。その証に、これを」

翡翠の石を、渡された。

僕あげたものではない、別の翡翠の石だった。

形も色も違ったから、別物だとはっきりわかった。

「これを、せめて俺と思ってもっていてくれ。俺は、いつでもお前を見守っているから」

「君は・・・・いってしまうんだね」

「ああ。俺はすでに死んでいるからな」

「ねぇ、夢の中なら、またいつか会える?」

「さぁ、どうだろう」

浮竹は、困った顔をした。

ああ。

そんな表情の君さえ、愛しい。

「愛してる、十四郎」

「俺も愛してる、春水」

唇に、触れるだけのキスをした。

「時間切れだ。お前はもう目覚めなきゃいけない」

「嫌だよ・・・・もっと君と語らっていたい。君の傍にいたい」

「京楽総隊長だろ。我儘いうな」

「そうだね。今の僕は京楽総隊長だ。しっかり、しないとね」

ふわりと微笑んで、浮竹は花びらとなって散っていく。

「いつか、お前を迎えにいくよ。それまで、長生きしろよ!」

「浮竹、愛してるよ!」

「ああ、俺も愛してる」



目が覚めた。

「ああ。いい夢だった。覚めなきゃよかったのに」

ふと、甘い花の香がした。

浮竹の匂いだ。

部屋を見ると、桜の花にまみれていた。そして、僕の手の中には夢の中で、浮竹が渡してくれた翡翠の石があった。

「・・・・・・浮竹・・・・」

僕は、ポロリと一粒の涙を流した。

いつかいつか。

僕の命が果てたら。

むかえにきてね、浮竹。


愛してるよ。

色あせることのない、永遠の愛を君に。、




拍手[0回]

世界と浮竹

世界と浮竹。

どっちをとるとしたら、世界だよ。

ごめんね、浮竹。

僕はもう、京楽総隊長。

尸魂界の護廷13隊を率いる、1番隊隊長なんだ。

でも、可能性があるなら君と一緒に生きたかった

この、平和になった尸魂界を。

君と肩を並べて、他愛ない話をして笑いあいたかった。

何もできなかったから、せめて君が愛した場所に君の墓石を建てた。

ごめんね、浮竹。

僕は当分の間、君の元には行けそうにない。


尸魂界に残った大戦の爪痕は色濃く、誰もが必死になって生きた。

僕は、引き取った君の遺品を整理していた。

どれも捨てるつもりはない。想いがいっぱいつまったものだから。

君は本当に、僕を愛していてくれたんだね。

院生時代にあげた他愛もないものから、隊長になってからあげたものまで

君の遺品のほとんどが、僕が君に贈ったものだった。

ふと、1枚の手紙を見つけた。

浮竹十四郎と書いてあった。

封を切り、中身を読んでいく。

それは、浮竹が死ぬ1日前に残した手紙だった。


「君は・・・ずるいね」

ぽたぽたと、眼帯に覆われた目からも涙が溢れてきた。

「愛してる、浮竹十四郎。たとえもういなくても、僕は一生君だけを愛しぬく」

手紙を、鬼道で焼いた。

誰かに見られたくなかったから。


「京楽!」

目を閉じると、君の声も君の姿も、まるで隣にあるように思い出せる。

もう、君を失って1年も経とうとしているのに。

僕は、強くなんかない。

君がいないこの世界は、悲しい。


でも、僕は京楽総隊長、護廷13隊1番隊隊長京楽春水。


君にたくさんのありがとうを。

そして、君にたくさんの愛を。


明日、久しぶりに君の墓参りに行こう。

君に会えるわけじゃないけど、君に少しでも近づけるなら。

僕は、君を愛しているといいながら、君が世界の贄になることをただ黙していた。、

君が選んだ道は、間違っていない。


世界は、今も色づいる。

ただ、僕が見る世界は色を失っているけれど。

僕は生きる。君の分まで。

この色のない世界を。

            NEXT 色のない世界シリーズ

拍手[0回]

世界と自分と

「京楽、愛している」


ミミハギ様を手放さそう。

京楽はどう思うだろう。

浮竹のいない世界を。

「京楽、目は大丈夫か?もう片方の目はちゃんと見えているか?」

山本総隊長が死に、総隊長となった京楽の傍らにはいつも浮竹がいた。

「大丈夫。いつ敵が襲ってくるかもわからないからね」

でも、その日の夜久しぶりに体を重ねた。

「この右目・・・・義眼をいれているのか?」

眼帯を外すと、緑色の無機質な瞳があった。

「君と同じ色の瞳のがいいと思ってね。でも、眼帯をしているから誰が見るものでもないんだけれど」

「俺の目の色は、みんな翡翠みたいだというんだ。そんなに綺麗な色じゃないのに」

「いいや、浮竹の目の色は翡翠だよ」

エメラルドの色は、日番谷だ。

同じ緑でも、色が違う。

「翡翠の首飾り・・・・してくれてるんだね」

「お前がくれた、お守り石だから」

「愛してるよ、京楽」

ああ。

愛しい。

この男が、どうしようもないくらい、狂おしいくらいに愛しい。

先に浮竹が逝くと知ったら、京楽は全てを捨ててまで止めてくれるだろうか。

世界と浮竹。

そんな選択肢になったら・・・・京楽のことだから、浮竹を選んでしまうかもしれない。

世界と、京楽と共に生きること。

その2つのうちに、どちらかを選べと言われたら、浮竹は世界を選ぶ。

だって、世界がなくなったら京楽も死んでしまうから。

愛しい京楽には、生き残ってほしい。

それは浮竹の我儘だった。

「何を考えているんだい」

「総隊長になり、眼帯をしたお前もかっこいいなって思っていた」

唇が重なる。

「浮竹・・・・・どこにもいかないでよ」

それは、できない約束だった。

世界と京楽。

浮竹は、京楽のためにも皆のためにも、世界を選ぶ。

いつか争いがなくなり、平和な時代がきたら、俺を想ってくれ。そう浮竹は心の中で呟いた。

夜明けがくるまで、ずっと二人きりで静かな時間を過ごしていた。

二人きりでいられるのは夜から明け方にかけてくらいで。

敵がいつ襲ってくるかも分からないので、厳戒態勢がしかれていた。

「おはよう、浮竹」

「おはよう、京楽」

今日も、1日が始まる。

最後の1日が、いつか始まる。

神掛をしよう。ミミハギ様を手放さそう。


それは、つまりは浮竹の死。

京楽は克服してくれるだろうか、俺の死を。

前を向いて歩いていってくれるだろうか。


どうか、悲しまないでほしい。

たくさんの愛をもらった。だから、たくさんの愛を与えた。

これは俺の我儘。


死神としての矜持。

尸魂界のためならば、この命。

たとえ、愛する者を裏切るようなことになっても。

喜んで、この命を手放さそう。


だから、どうか泣かないで。これは死神であるが故の選択。

いつか、二人で引退して、尸魂界を平和に生きたかった。

涙が零れそうになった。


「京楽、愛している」


浮竹は墜ちていく。

色のない世界へ。

先生、卯ノ花隊長・・・・いまそちらにいきます。


「京楽・・・愛している・・・・」

その想いだけは永遠。


拍手[0回]

院生時代の部屋エクセトラ

今日は、学院の掃除当番だった。しかも京楽と。

浮竹は頭の中にいつも花を咲かせている京楽を急かして、他の掃除当番と一緒に教室内をはいてゴミをとり、窓をふき、床にもっぷがけをした。

机を移動するのが大変だったが、京楽がもってくれた。

京楽は優しい。こういう心使いはけっこうじんわりとくるのだが、京楽が浮竹に懸想していることを知っているので、何も言えない。

ありがとうと言えば、抱き着いてくる始末だ。

「じゃあ、俺ごみを捨てにいってくるから」

「僕もいくよ。浮竹は今日もかわいいね」

ゴミの量はけっこう多く、一人でもつには重かった。

素直に、京楽の言葉に甘える。

ゴミを焼却炉にまでもっていき、その炎の中に捨てると、ぶわっと炎が大きくなった。

「誰か、ガスの入ったゴミいれたな!」

小さく爆発音がした。

京楽は、浮竹を庇っていた。

何かの破片が背中にささった京楽の姿に驚いて、声をあげる。

「京楽、大丈夫か!?医務室にいくぞ!」

爆発は小さかったけれど、至近距離にいた京楽にダメージを負わせた。

「大丈夫、そんなに痛くないし、破片も小さいから。浮竹が無事でよかったよ」

医務室にいくと、誰もいなかった。

時間を見ると、もうみんな下校する時間だ。医務室の先生も、帰るのが早い。

「くそっ」

もっと自分で回道が使えたら。

仕方なしに、京楽の上の服を脱がせて破片をとると、アルコールで消毒して血止めを行い、ガーゼをあてて包帯を巻いた。

「念のため、帰りに病院に寄ろう」

火傷もしているらしかった。塗り薬をぬって、包帯を巻いていく。

「ありがとう、浮竹」

「俺なんて庇うから」

「あそこで庇わなきゃ、男じゃないよ。好きな子を庇うのは当たり前でしょ」

「このバカ!」

怪我をしているので殴らなかったが、頭にきた。

俺なんて庇うから。

そう思った。

ごみ箱を教室に戻して、下校する。

途中で病院に寄ったが、浮竹の処置はほぼ完ぺきで、火傷の痕が残らないように回道で手当てしてもらい、破片をぬいた傷跡は縫うほどのこともなかったので、同じく回道でほぼ塞いでもらって、包帯を巻きなおした。

その病院は、診察料は高いが、元4番隊の医者がいて、回道で傷を癒してくれるので、とても人気があった。

京楽の名を出すと、すぐに診てもらえた。

「帰るか・・・・・」

学院の食堂のある場所ならまだ空いているだろうが、怪我をして包帯を巻いた京楽を連れて行きたくなかった。

下町の店で弁当を二人分買い込んで、寮の自室に戻った。

「このバカ・・・・・・」

部屋にたどりつくと、浮竹は京楽を抱き締めた。

京楽は、優しく笑って、浮竹の頭を撫でた。

「君が無事でよかった」

「もう二度と、あんな真似するな!」

浮竹は怒っていた。

「でも、僕は何度でも君を庇う。君がそれで助かるなら」

「これから・・・俺たちは死神になるんだぞ。その度にお前が庇っていたら、お前の身がもたない。俺は弱くない。今回みたいな突然の事態には無理だったが、死神になったら俺がお前を庇う」

「じゃあ、お互い庇いあって傷だらけだね」

「そうなる前に敵を殺す」

ガスの入ったスプレーか何かをごみ箱にいれた、誰かも分からぬ者に殺意を覚えた。

「適当に買った弁当だから、美味くないかもしれないけど、食おう」

学院の食堂の料理は安くて美味いしボリュームがあったが、病院に寄っていたのですでに閉まっていたし、包帯まみれの京楽を連れていきたくなかった。

次の日には、嘘みたいに傷は治っていた。浮竹が寝ている間に、京楽家のつてを使い、4番隊の死神を呼んでもらって完全に傷を治癒してもらったのだ。

そのことに、浮竹は安堵しながらも、京楽の心配をしまくていたせいで熱をだしてしまっていた。

「今日は、学校休んでね。僕も休むから」

教師に、ガスの入ったスプレーか何かがごみ箱に入っていたことを知らせ、怪我をしたので1日休ませてくれといったら、教師は今後そのようなことが起こらないように徹底的に生徒を指導すると約束してくれて、京楽は病欠ではなく特別欠席扱いになった。

浮竹は病欠だが。

「はぁ・・・・・」

熱が下がらない。

ごろりと横を向くと、同じベッドにいつの間にか京楽がいた。

「なんだ。病人をあんまり刺激するなよ。熱が高くなる」

「うん。僕を心配して熱出しちゃったんだね。ごめんね」

「別にお前のせいじゃない」

いいや、京楽のせいだった。でも、声には出さない。

目の前にで血を流した京楽に、不安を覚えたのだ。今後の人生は、死神として命をかけていくもの。またいつか、京楽が血を流す様を見てしまうのだろうか。

眩暈がした。

「少し、眠る」

「うん、おやすみ」


side UKITAKE

学校の掃除当番だった。正直めんどくさかったが、品行方正、優等生で日々を過ごしているので、さぼることなどできない。

俺は、俺のことを大好きだという京楽と一緒に掃除をした。

京楽は、何かと俺のことをかわいいといって、好きだといってくる。生憎と、その手の趣味はないので俺は京楽を嫌ってはいないし、好きだが、恋愛相手と見ることはできなかった。

京楽は優しい。机の移動を率先してしてくれた。

「じゃあ、俺ごみを捨てにいってくるから」

俺は、一人でゴミを捨てにいこうとして、その量に驚き、重さに少しふらついた。

「僕もいくよ。浮竹は今日もかわいいね」

京楽の今日もかわいいねという言葉を無視して、手伝ってもらえるならと、京楽にもゴミを持ってもらった。

焼却炉にゴミをいれると、ゆらめいていた炎が大きくなり、小さな爆発音がした。

「誰か、ガスの入ったゴミいれたな!」

目の前で炎がちらつく。何かが弾けて、俺は咄嗟に顔を庇い、目をつぶった。衝撃は、何時までたってもやってこなかった。薄く目をあけると、京楽に抱きしめらていた。

京楽の背中から、ぽたぽたと血が滴りう落ちるのが見えて、気が遠くなりそうになる。京楽が、咄嗟に俺を庇ってくれたのだ。

「京楽、大丈夫か!?医務室にいくぞ!」

「大丈夫、そんなに痛くないし、破片も小さいから。浮竹が無事でよかったよ」

このばか!俺なんかのために。

俺には、京楽に庇ってもらうような価値はない。こんな下級貴族の貧乏な長男なんて。京楽を連れて医務室にいくと、頼みの先生がいなかった。

「くそっ」

仕方なく、子供の頃に覚えた救急処置の仕方で、京楽の傷の手当てをしていく。包帯をぐるぐる巻いていくと京楽が漆黒の瞳でこちらをずっと見つめていた。

その瞳は、慈愛に満ちていた。俺は、その視線に応えることができないでいた。

「念のため、帰りに病院に寄ろう」

京楽は火傷もしていたので、塗り薬を塗って包帯をまいた。

「ありがとう、浮竹」

「俺なんて庇うから」

「あそこで庇わなきゃ、男じゃないよ。好きな子を庇うのは当たり前でしょ」

その言葉に、かっと体が熱くなったが、平静を装った。

「このバカ!」

そして、俺なんかを庇った京楽に、頭にきた。俺も男だ。怪我くらいしても大丈夫だし、京楽に守ってもらうほどやわじゃない。

ごみ箱を教室に置いて、帰る準備をした。

俺は京楽の分の荷物ももち、学院を後にする。

念のために、寮に一番近い病院で診てもらい、ちゃんとした処置を施してもらったが、俺の応急処置がよかったと医師に褒められた。
「帰るか・・・・・」

今の包帯だらけの京楽を、誰にも見られたくなかった。俺のせいで、こんな姿になった京楽に申し訳ない気持ちがいっぱいで。

下町の弁当屋で、適当に弁当を買って寮の自室に戻った。

「このバカ・・・・・・」

俺を庇った京楽を抱き締める。抱き締め返された。しばらく、そうしていた。
今、京楽に愛を囁かれたら、俺はきっと落ちてしまう。そう思いながら。京楽の手が、優しく俺の頭を撫でる。きもちよにさに、目を閉じかけた。

「君が無事でよかった」

その言葉に、現実に引き戻される。

「もう二度と、あんな真似するな!」

俺は、思った通りのことを言っていた。

俺なんて庇うな。俺は、そんな価値のある人間じゃない。

「でも、僕は何度でも君を庇う。君がそれで助かるなら」

京楽の言葉に、眩暈を覚えた。ああ、この男。本当に、俺のことが好きなんだな。

「これから・・・俺たちは死神になるんだぞ。その度にお前が庇っていたら、お前の身がもたない。俺は弱くない。今回みたいな突然の事態には無理だったが、死神になったら俺がお前を庇う」

「じゃあ、お互い庇いあって傷だらけだね」

「そうなる前に敵を殺す」

俺は、弱くない。確かに病弱で肺の病をもっているが、戦闘能力は高い。現世で虚退治もした。もう4回生だ。現世に出て、虚退治の実践訓練を受けている。

ふと、腹のむしがないた。何があっても、生きている限り腹は減る。

「適当に買った弁当だから、美味くないかもしれないけど、食おう」

京楽と、同じベッドに腰かけて食べた。唐揚げ弁当だった。適当に買ったわりには美味しかった。
俺は満足して、京楽の方を見る。

「かわいいね、浮竹」

京楽は、そう言って俺にキスをしてきた。

「んあっ」

俺は戸惑う。突き飛ばすべきかとも思ったが、俺を庇ってくれたこともあり、自由にさせた。しばらく深く浅くキスを繰り返して、京楽は満足したのか離れて行った。

ああ。俺のほうもスイッチが入ってしまった。後で処理しなければ、つらいかもしれない。

頭の中は京楽のことだらけだった。京楽に今求められたら、俺は全てを与えてしまうだろう。幸いなことに、そうはならなかった。だが、怪我をした京楽が心配で心配で、その夜俺は熱をだした。

朝になると、京楽の傷が嘘のように治っていた。

「どうしたんだ、傷は」

「京楽家のつてで、4番隊の死神に治してもらった。君の辛そうな顔を見るのがいやだったから」

「今日は、学校休んでね。僕も休むから」

俺が熱を出していることに、気づかれてしまっているようだった。

京楽も、念のため休みをとるようだった。学校側の責任で、特別欠席扱いになった。俺は病欠だが。
学院を、1年間で3分の1以上欠席すると留年になる。俺はそうならないように、体とうまく付き合いながら、なんとか出席日数が確保していた。今日は病欠だけれど。

「はぁ・・・・・」

熱があがってきた。一向に下がらい。このままでは、明日も休むことになる。

俺は寝がえりをうった。すると、同じベッドに京楽がいて驚いた。

「なんだ。病人をあんまり刺激するなよ。熱が高くなる」

射干玉の瞳で、京楽は俺を見ていた。

「うん。僕を心配して熱出しちゃったんだね。ごめんね」

手が伸ばされた。頬の手が添えられて、触れるだけの口付けを受ける。

「別にお前のせいじゃない」

それは嘘だ。

京楽を心配するあまりに熱を出した。でも、そんなこと口が裂けて言えない。

京楽は、優しく俺を抱きしめてきた。

熱い額に、水でぬらしたタオルが置かれた。解熱剤を飲むと、薬の成分で眠気がやってきた。

「少し、眠る」

「うん、おやすみ」

目覚めると、京楽がじっとこっちを見ていた。

「熱、下がったね」

「ああ」

俺の額に、京楽が手を当てる。完全に熱が引いたことを確認される。俺は起き上がろうとした。

腕を掴まれて、押し倒された。

「京楽・・・・・?」

「少しだけ・・・・ね?」

何がと問う間もなく、口づけられた。院生の服の隙間から手が侵入してきて、全身の輪郭を愛撫された。

「んあっ」

漏れた声に、俺は驚いた。女みたいな声を出してしまっていた。

「京楽!」

膝を膝で割られて、敏感な部分に手を這わされる。

「ひうっ」

喉がなる。

呼吸が荒くなる。

ぐちゃぐちゃと音をたてていじられて、俺は何も考えられなくなった。

先端に爪をたてられて、呆気なくいってしまった。

「ああああああ!」

頭が快感で真っ白になった。涙が出てきた。

「今日はここまで。続きはまた今度」

生殺しの状態だが、安堵した。まだ、京楽を受け入れる決心がついていないのだ。

ああ、濡れてしまった下着を取り換えないと。

俺は新しい院生の服と下着を手に、湯殿に消えた。

生々しかった行為を思いだす。京楽は、ああいうことをいつも・・・・俺を犯すようなことを考えているのかと思うと、体が熱くなった。

俺もまだ若い。

既にたちあがってしまっていたものに、京楽がしたようなことをすると、あっという間に精液を放っていた。

京楽を思いながらしたわけじゃない。ただ、自然の欲求だった。

それを消し去るように湯をかぶり、シャワーを浴びた。シャンプーで髪を洗い、石鹸で体洗う。

「しっかりしろ、浮竹十四郎」

京楽の想い通りになるな。

京楽のペースに巻きこまれたら、いつか美味しくいただかれてしまう。

今はまだ、そんな気になれない。

でも、いつか。

いつか、京楽の想いに応えてやろう。そう思う俺だった。

拍手[0回]

卯ノ花隊長の謎とギックリ腰

「あ。もう無理」

そう言って、浮竹は力尽きた。

「隊長おおおお!!」

海燕が、横になって動かなくなった浮竹にすがりつき、叫んでいた。

「・・・・・何してるの、君たち」

ちょうどその姿を、雨乾堂にやってきて目撃してしまった京楽が、首を傾げていた。

「京楽隊長が無理させるから!」

「え、何を!」

「夜の生活を!」

「え!?」

京楽は、ぎょっとした顔になる。確かに、昨日はしつこく抱いた。

「というのは冗談で・・・・見ての通り、浮竹隊長はああなんで、しばらく夜の生活はなしにしてください」

「ちょっと待って、話の展開がつかめないんだけど」

「あいたたた。重い物をもったら、ぎっくり腰になった」

畳の上に倒れていた浮竹が、ごろりと寝返りをうった。

「ぎっくり腰!?」

確かに、ぎっくり腰だと夜の生活は当分なしだ。

でも、日常生活にも支障をきたすとのことで、浮竹を連れて4番隊にまでいった。

「そうですか。ぎっくり腰に。年ですね」

「卯ノ花隊長は俺より年上・・・・いや、なんでもない」

卯ノ花に回道でぎっくり腰を治してもらいながら、浮竹は痛みが和らいだことで顔色をよくしていた。

「ぎっくり腰は、一度なると癖になりますから。くれぐれもしばらくの間はあまり重い物をもったりしないように」

俺より年上といったことで、にこにこした笑みがさらににこにこと深くなって、その微笑みに慈愛は感じられずに、逃げるように浮竹は京楽に連れられて4番隊を後にした。

「卯ノ花隊長の微笑みが怖い」

「僕も」

多分、卯ノ花を恐れない隊長は少ないと思う。

「それにしても、何をしてぎっくり腰になったんだい?」

「いや、海燕とタンスを移動させようよして」

「そんな重いものもつから・・・・」

「俺も年だなぁ。昔なら、もっと軽く感じたんだが」

「年っていってもまだまだ現役じゃない」

「そうだな」

まだまだ男盛りだ。確かに若くはないが、それでも年をとりすぎたというわけでもない。

雨乾堂に帰ってくると、海燕が転がっていた。

「おい、どうしたんだ!」

「隊長が年だと思って・・・一人でタンス動かそうとしたら、ぎっくり腰になりました」

「はははははは、海燕、ぎっくり腰になった俺を散々年だ年だというから、天罰がくだったんだ」

「隊長。普通、こういう場面は副官を心配するものですよ」

「海燕も仲よくぎっくり腰だ。仕方ないから、4番隊にまで送ってやる」

浮竹は、海燕を連れて4番隊にきた。

「またですか。ぎっくり腰になる方が多いですね」

「すみません」

卯ノ花自ら回道で治してくれた。

「あなたたち13番隊の方々は、ぎっくり腰になるような運命なのかもしれませんね」

にこにこにこ。

その笑顔が怖くて、浮竹も海燕も逃げ出すように、雨乾堂に帰った。

「どうだったの?」

一人留守番をさせられていた京楽が、そう聞くが、浮竹も海燕も卯ノ花の笑顔にやられていた。

「菩薩に見えて修羅だ」

「菩薩に見せかけているだけですよ、あれ」

「卯ノ花隊長のことかい?」

「卯ノ花隊長って、そういえば謎が多いよな。俺たちが隊長になる以前からすでに隊長だったし、その頃からほとんど見かけが変わっていない。妖怪かな?」

その場に卯ノ花がいたら、修羅の顔になっていただろう。

「実は山姥(やまんば)だったりして」

「ありえそうで怖い」

卯ノ花は謎が多い。

「まぁ、ギックリ腰も治ったけど、タンスを動かすのはやめておこう。またぎっくり腰になりそだ」

「そうですね」

3人で何やかんやと騒いでいたら、7時になっていた。

「夕餉もってきます」

海燕は隊舎に戻っていった。

海燕は、それから戻ってこなかった。

どうしたんだと思い、浮竹は京楽と共に隊舎にいくと、腰を押さえている海燕がいた。

「夕食の膳をもとうとしたら・・・・・なりました。ギックリ腰に。ああ、俺も年だ」

「大丈夫か!」

海燕の体を肩に背負い、浮竹も動きをとめてその場に膝をついた。

「どうしたの!」

「ギックリ腰が・・・・・・・」

結局、2人してまた4番隊にいき、ギックリ腰を治してもらった。

卯ノ花は、溜息を零す。

「しばらく、おとなしくしていてください。またギックリ腰になりますよ?」

そう言われて、浮竹も海燕も、しばらくの間大人しくしていた。

浮竹の世話を、3席である仙太郎がしてくれた。

京楽は、ぎっくり腰にならないように日々を過ごす浮竹と海燕にこう言った。

「卯ノ花隊長を山姥なんて言った呪いかもね」

ありそうで怖かった。

1週間ほどしてもうならなかったので、普通の日常が戻ってくる。

「俺、しばらく4番隊にいっても虎鉄副隊長に診てもらう」

「俺もです・・・・・」

卯ノ花烈。

菩薩のような笑みの下に、修羅を宿す4番隊隊長。

回道の腕は確かだし、後方支援に回してこれほど心強い存在はない。

だが、笑みが怖いのだ。

にこにこ微笑んでいるのに、まるで阿修羅がにこにこ笑っているようだと、総合救護詰所でも有名な、隊長であった。






拍手[0回]

イルミネーションと山じい

「こりゃ春水!十四郎まで!」

山じいが怒っていた。

隊首会をあろうことかさぼり、現世にいっていた二人を怒ってこってりしぼろうとしていたのだが、京楽は隙を見て逃げ出したのだ。

京楽の後に続くかのように、浮竹も逃げ出した。

「全く小童どもが。いつになっても、悪戯心をもちおってからに」

山じいは嘆息した。

「おい、いいのか京楽。先生の言葉を聞かず逃げだしたりして」

「山じいのお説教は長いからね。逃げるに限るよ」

元はといえば、自分たちが悪いのだ。

といっても、隊首会のことはすっかり忘れていて、わざとではないのだが、さぼったことには変わりない。



現世で、イルミネーションを見ていた。

今回の隊首会は夜に行われたのだ。いつも朝なので、すっかり忘れていた。

現世にいた時間はわずか3時間ほど。

瞬くイルミネーションを空の上から見下ろしていた。行きかう人々が、クリスマスの気分に浮かれているのを見ていた。

サンタの恰好をしたケーキ屋の売り子が、ケーキを売っていた。

ついそれを見ていたら、京楽は苦笑してケーキを買ってくれた。

死神の姿のまま現世にいくには、霊圧が高すぎるので、隊長でもあるし、霊圧を封印する義骸に入っていた。

「ありがとうございます」

ケーキを1つでは足りないだろうからと、3人分買った。

京楽の優しさに、浮竹は微笑みを返す。

「ありがとう、京楽」

「いいんだよ」

街を歩いていく。

「ここのイルミネーションは有名なんだよ」

まるで水槽を泳ぐネオンテトラ。瞬くイルミネーションたちを見ながら、二人でケーキを手に意味もなく街を歩いた。

イルミネーションは、その通りをずっとずっと奥まで飾られてある。

ちかちかと人工の光を灯すそれを見ながら、京楽が言った。

「ね、現世のイルミネーションは綺麗でしょ」

「ああ・・・凄く綺麗だ」

クリスマスの飾り付けがされたレストランに入って、クリスマスメニューを注文して二人で食べた。

クリスマスケーキは尸魂界に帰ってから食べるつもりであった。

「あ!」

浮竹が、急に声をあげるものだから、何かが起こったのかと京楽が周囲を見るが、何もない。

「しまった。今日の夜は、クリスマスの交流会も兼ねた、隊首会が夜にあったんだ・・・今から出てももう間に合わないな」

「ああ、そういえば・・・・」

山じいが、参加しろとうるさかったのを思い出す。

「すっかり忘れていたよ。尸魂界に戻ったら、一緒に怒られようか」

「先生は一度火がつくと大変だからな」

「じゃあ、山じいのお説教、逃げ出そうか」

「大丈夫なのか?」

「山じいも慣れてるでしょ、僕らの行動には。院生時代から好き勝手やって怒られてきたんだし」

山じいが本気で噴火すると、流刃若火で尻に火をつけられる。

さすがに、今回はそこまで怒りはしないだろう。

「戻ろうか。尸魂界に」

「ああ」

レストランを出て、最後の15分ほどイルミネーションを見回って、穿界門をあけて尸魂界に帰還する。

穿界門をくぐると、山じいが待っていた。

「今頃戻ってきおってからに。隊長格二人が現世に遊びにいったあげく、大切な隊首会を欠席とはどういうつもりじゃ」

「いや、ちょっと現世のイルミネーションを見にね」

「こりゃ、春水!現世のイルミネーションなど見ても何にもならぬだろう!」

「言うけどねぇ、すごいんだよ!現世のイルミネーションは尸魂界の星より綺麗なんだから!」

「イルミネーションなら、12番隊のつくった瀞霊廷にあるクリスマスツリーでも見れるじゃろうが!」

「あんなの、イルミネーションじゃないよ。ただ光が点滅してるだけじゃない!全然綺麗じゃない!浮竹に、綺麗なイルミネーションを見せてあげたかったんだよ!」

「こりゃ十四郎!お主まで春水と一緒になって遊びほうけるとは、どうしたことじゃ!」

「先生、遊びほうけてたわけじゃありません。ちゃんと楽しんできました。ってことは遊びほうけているのか・・・・・?うーん」

悩みだした浮竹に、山じいは矛先を京楽に向ける。

「こりゃ春水、十四郎を無理に連れ出したな!十四郎は、一人ではこのような行動はとらぬ!」

「浮竹にだけなんか甘くない!?僕は浮竹と一緒に現世にいったんだよ!」

「イルミネーションを見て、見ての通りクリスマスケーキを3人分かって・・・・先生、先生のために現世でクリスマスケーキを買いました」

浮竹が嘘をつく。

京楽は、うまいこと切り出したなと浮竹を見守る。

「何、わしのためじゃと?」

「はい、これです。俺と京楽と先生の分を買いました」

ほんとは、全部浮竹一人が食べるつもりだったのだが。

「ふむ・・・・現世のクリスマスケーキか。悪くないのお」

京楽が、心の中で浮竹って悪だなと思った。

「仕方ない、怒るのはまた明日じゃ。クリスマスケーキはもらっておくぞ。明日、また1番隊の執務室に来るように」

「はい」

「山じい、まだ怒ってるの?」

「当たり前じゃ」


そして次の日。

「こりゃ春水!十四郎まで!」

山じいのお説教を受けにやってきたのだが、すでにこそこそと逃げ出そうとしていた。

山じいはクリスマスケーキを食べて、機嫌はそこまで悪くなかった。

実の息子のように思っている浮竹と京楽が買ってきてくれたものだと、信じ込んでいた。

実は苦し紛れの言い訳だったのだが。

京楽は、お説教を受けるためにと顔だしておきながら、逃げ出した。

京楽の後に続くかのように、浮竹も逃げ出した。

「全く小童どもが。いつになっても、悪戯心をもちおってからに」

山じいは嘆息した。

「おい、いいのか京楽。先生の言葉を聞かず逃げだしたりして」

「山じいのお説教は長いからね。逃げるに限るよ」

山じいが一度お説教を始めると、2時間はかかる。

くどくどと過去のことも持ち出し、隊長とはどうあるべきであるかという理想論をつきつけられて、あげくに最悪の場合性根を鍛え直してやると手合わせだ。

そうなったとき、無事ではすまない。

山じいは、京楽より浮竹に甘い。浮竹が病弱で肺の病を患っていることもあって、京楽よりも浮竹に優しく接した。

浮竹も浮竹で、山じいのことを元柳斎先生と呼んで慕っている。

京楽も山じいと慕ってはいるが、山じいの京楽と浮竹の扱いの差に、少し不満をかんじるが、何度もかわいい息子のような浮竹が目の前で血を吐き、意識不明になる様を見ていたら、甘くなってしまうのも分かる気がした。

「山じいも、きっとそんなに怒ってないよ。それより、昨日のクリスマスケーキまだたべてないんでしょ?せっかくだから、一緒に食べよう」

「ああ、まだ残してあるぞ」

クリスマス期間中なのだ、今は。

昨日の交流会は、京楽と浮竹を欠いて行われたらしい。

藍染が倒されて、新しくというか、100年以上前にいた隊長が、復帰した形になるのだが、平子たちと交流させようという山じいの思惑を拾わう形で、京楽は山じいも呼んで、護廷13隊の隊長副隊長全員を招いて、クリスマスパーティーを開こうと企画していた。

協力は、浦原と夜一だ。

「うーん、さすが本場だけあって現世のケーキは美味しいね」

雨乾堂で、浮竹と一緒にクリスマスケーキを食べた。

ホールケーキで、でかかったが、浮竹はあっという間に食べてしまった。

「全く君は。いいよ、僕の分も半分あげる」

「いいのか?」

甘い物に目がない浮竹は嬉しそうだった。

山じいも、この味を堪能してくれたのだろう。

そう思えば、山じいから逃げ出した罪悪感も薄れる。

山じいには世話になっている。今度、たまには親孝行のようなことをしようと、京楽は浮竹と相談し、山じいを近場の温泉に連れ出すのであった。それはまた、別のお話。

拍手[0回]

浮竹死んだけど幽霊です憑いてます10 甘味屋大食い選手権

「今度、壬生の甘味屋で、大食い選手権があるんだ」

そう、浮竹は切りだしてきた。

「それがどうしたの?」

「その選手権に出たいんだ!協力してくれ、京楽!」

「ええっ!」

かくして、甘味屋大食い選手権に、京楽に憑いた浮竹が出ることとなったのであった。


大食い選手権の当日。

ただで食べれて、その上優勝者には賞金がでるということで、たくさんの参加者がいた。

だが、まずはおはぎの食べ放題で、選手は振り分けられた。

次々とギブアップしていく選手の中に、浮竹はいない。体を透けさせたまま、幽霊の状態でさっささっとおはぎを食べていく。

「そこまでですーー!」

残ったのは10人の選手だった。その中には浮竹もいた。

「なんと、今回はあの大戦で亡くなられたのに、幽霊として復活した浮竹十四郎選手がいます!」

京楽に憑いているので、隣には当たり前のように京楽がいた。

その二人の純愛を思って、女性観客からは黄色い声が送られてくる。

そんな女性観客にひらひらを手を振って、浮竹はいざ大食い選手権本番に挑むこととなった。

次の甘味物は白玉餡蜜だった。

浮竹は、さっさっと消して食べていく。

本当なら、もうお腹いっぱいといいそうなのに、幽霊だからか、次々と食べていった。

「そこまででーす!」

4人にまで、選手は絞られた。

まだ浮竹はいた。

「浮竹選手、幽霊であるだけ底なしか!?」

キャーキャーという黄色い声に手をふりながら、いざ、最終決戦へ。

ぜんざいだった。

浮竹はさっさっと食べていく。

だが、他の選手も負けていない。

浮竹が、食べるのに時間がかかりだした。

ぜんざいが、少しだけ減る。

既に2名はギブアップしていて、一騎打ちだった。

「もうだめだ・・・・・ぷはぁ。もう無理。幽霊としてのエネルギーに返還して食べてたけど、俺はここまでのようだ」

「おーっと、ここで浮竹選手ギブアップ宣言!優勝は、原口選手になります!」

原口選手は、100万の金を手に入れた。

「いい戦いだった・・・・おっと、幽霊だから握手はできないか」

「そんなことないぞ」

手だけを実体化させて、驚く相手を気にしもせず、握手をした。

「すまない、京楽。せっかく選手権に出してもらったのに、負けてしまった」

「それにしても食べたねぇ。10人分は食べたんじゃないかい」

「幽霊として存在するエネルギーに変換しまくっていたが、リミットまで溜まってしまったようだ。この様子だと1日くたい実体化できそうだな」

その言葉に、京楽がごくりと唾を飲み込んだ。

「いっとくが、セックスはしないからな!」

「ちぇっ」

「あ、浮竹選手。2位の賞金があります」

「え、2位でも賞金でるのか?」

「はい。30万になります」

「ありがとう」

京楽が、代わりに受け取った。

「この30万、何に使おう?」

「甘味屋で使えばいいんじゃない?」

「それもそうだな」

こうして、浮竹の甘味屋大食い選手権は、幕を閉じたのだった。

次の日、浮竹は1日だけ実体化をした。

京楽と睦みあうことなく、ただだ抱擁してキスを交わし、一緒のベッドで抱き締めあいながrた眠った。

実体化した浮竹は、普通に食べる。そして、湯浴みをした。

「ああ、このさっぱり感、幽霊の時じゃあ感じられない。きもちいい」

「もっと気持ちよくならない?」

尻を触ってくる京楽の手をつねる。

「あいた」

「今回はお預けだ。今度1日実体化した時に、抱かせてやる」

「本当に?約束だよ」

ベッドの上に押し倒された。

口づけがふってくる。

「ううん・・・・・」

ぴちゃりと舌が絡まるキスを何度も繰り返し、抱き締めあった。

「やはり、生身はいいな。お前と触れることができる」

「いっそのこと、ずっと実体化すればいいのにね」

「それじゃあ、生き返ったみたいだろう。ああ、そろそろ時切れだ」

すーっと、浮竹の体が透けていく。

「次に1日実体化できるのは、来月くらいかな。食事をたくさんして、幽霊エネルギーをためないと」

幽霊エネルギーの溜まり具合と、直接浴びている京楽の霊圧のお陰で実体化できるのだ。

「抱くのは、今度な」

「約束だからね」

京楽は、浮竹が実体化できない時、浮竹を喘がせて、一人エッチをして抜いていた。

でも、浮竹が1時間とか1日とか実体化できるようになり、抱けるよになって、一人エッチの回数も減った。

「君が来月に抱けるまで、我慢できそうにないから、ちょっと抜くよ。喘ぎ声、お願い」

「京楽!言っとくが、一人で喘ぐのがとても恥ずかしいだぞ」

「でも、僕のためならしてくれるんでしょ?」

浮竹は言葉を失って、真っ赤になった。

「ああん、京楽、いい!」

「いいねぇ、その調子で」

「ああああ!京楽・・・・・・春水、愛してる、あああ、ひあああ!」

「もう少しで終わるから、頑張って」

「あ、春水がまた硬く・・・・ああん、いい、そこいい、もっとぐちゃぐちゃにして」

「ん・・・・・」

京楽は、ティッシュの中に欲望を2回ほどはきだいした。

「もういいか?」

「うん。満足した。それにしても、浮竹、その芝居で食べていけるんじゃない!」

「あほ!」

手だけ実体可して、ぽかりと京楽の頭を殴った。

「冗談だよ」

「ふん」

すねた恋人の機嫌を直すためあれやこれやするのだが、結局おはぎを食べさせたら、浮竹の機嫌はあっさりと直るのだった。

拍手[0回]

白無垢の京楽と最後の砦のパンツ

白無垢。

それは、和風の結婚式に、早嫁が着るもの。

その日は、京楽が浮竹に告白してちょうど1年が経つ日だった。


院生の皆が集う体育館で、正装した浮竹が、花嫁を連れて歩きはじめる。

しずしずと、静かに歩む花嫁は白無垢姿で、白いウェディングヴェールを被っていた。

美しい・・・・・。

と、誰も思わなかった。

花婿の浮竹は、美しかった。正装が、ばっちり決まっていて肩までの髪をくくり、髪留めで留めてあった。

こっちのほうが、花嫁らしかった。

しずしずと歩む花嫁は、ごつかった。190センチはあろうかという、長身に、がっしりした体躯。もじゅもじゃの体毛に、手入れされたひげ。

「浮竹、僕たちこれで晴れて夫婦だね」

「ああ、京楽」

体育館にいた、院生全員が泣いていた。

「京楽、幸せになれよ!」

「京楽、綺麗よ!」

「京楽、幸せにな!」

酒が注がれ、お互いに飲みか交わしあう。

山じいが、コンと杖を鳴らす。

「これにて、浮竹十四郎は京楽春水を妻に娶り、ここに永遠の愛を誓うものとする!」

わあああああああああ!

体育館に、院生の祝いの声が響き渡った。

美女と野獣・・・の反対のような夫婦だった。

そして、初夜を迎える。

「十四郎・・・僕、はじめてなんだ。優しくしてね?」

「ああ、もちろんだ春水。ああ、お前の白無垢姿を見るのもこれが最後か。綺麗だぞ、春水」

ウェディングヴェールをとり、白い着物を脱がさせていく。

京楽の全身はもじゃもじゃだった。

「ああ、いいもじゃもじゃ具合だ。ますますお前に夢中になりそうだ」

「あああん、十四郎!」

京楽は、喘いだ。




・・・・。

・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・。

・・・・・・・・・・・・・・・。


「うわあああああああああああ!!!!!」

がばりと、浮竹は起きた。

凄い寝汗をかいていた。

「うっ」

軽い吐き気を覚えて、洗面所に向かう。

「はぁはぁ・・・・・」

吐くことはなかったが、冷たい水で何度も顔を洗った。

「京楽の白無垢・・・・もじゃもじゅの花嫁に初夜・・・・おえっ」

見た夢の生生しさに、寒気を覚えた。

「どうしたの、浮竹」

「うわあああああああ!」

京楽は、マジで白無垢姿だった。

「ふふふふ、浮竹が白無垢着てくれないから、僕が着てみたんだ。似合う?」

「ひいいいい」

夢の続きか?

頬をつねるが、痛かった。

「ねぇ、浮竹。僕のお嫁になってくれないなら、僕がお嫁さんになってあげる」

抱き上げられて、ベッドに押し倒された。

「(*´Д`)ハァハァ・・・・僕たち、今日は記念日だよ。僕が君に告白した、1周年記念の日」

白無垢姿を脱いで、もじゃもじゅの京楽は、浮竹の服を脱がせていく。

「ああ、綺麗だ・・・・君の肌は、手に吸い付くようだよ」

「ぎゃああああああ」

「そんな嬉しそうな悲鳴をあげなくても・・・好きだよ、浮竹」

ちゅっと、キスされた。

胸から臍にかけて唇と舌が這い、全身にキスマークを残される。

胸の先端を口に含まれて、なんともいえない痺れを浮竹は覚えた。

「夢!?現実!?」

体を這う京楽の舌は、でもそれが本物であると答えてくれた。

浮竹の最後の砦、パンツに手がかかる。

「破道の4、白雷!」

黒焦げになっても、京楽はパンツを脱がせようとする。

「いい加減に、しろ!」

顔面を蹴った。

「破道の4、白雷!」

もう一度黒焦げにすると、京楽は白目をむいてどさりと倒れた。


「はぁはぁ・・・・・・・」

夢か現(うつつ)であるか分からなくなる。

自分の頬を思いっきりつねると、痛くてこれが現実であると知らせてくれた。

「京楽の白無垢・・・・・・うっ」

おまけに、操まで奪われかけた。

あのまま放置していたら、京楽に美味しく食べられていただろう。

浮竹の着ていた白無垢を手に取る。特注なのが、でかかった。

「京楽のやつ・・・白無垢なんて着て、どうしたんだろう」

「それはね」

白目をむいていた京楽が復活し、浮竹の隣に並んだ。

パンツはかろうじでお互いはいていた。

「僕と君の、告白1周年記念だから、何か驚かせてあげようと思って、白無垢を着てみたんだけど・・・・やっぱり、僕は何を着ても似合うね!」

ついに、女装癖まででたか?

そう思ったが、京楽は首を横に振った。

「と、思いたいところだけど、やっぱり白無垢は浮竹に着てほしいな」

「着ないからな!」

「今じゃなくてもいいからね。いつか、着てね」

ちゅっと、音のなるキスをされた。

それにしても、危なかった。

京楽の白無垢にばかり意識がいって、最後の砦のパンツを脱がされかかった。

京楽が、浮竹を好きと言いだすまでは、互いたまに共同風呂を使ったりして裸は見慣れたものだった。

だが、京楽に想いを告げられてからはパンツの下は見せていない。

パンツは最後の砦。

それを死守しなければ、俺の未来は・・・・・京楽の妻だ。

そう思いながら、げしげしと京楽を蹴ると、京楽は嬉しそうにしているのだった。

ああ、変態だからご褒美にしかならないのだと、遅まきに気づくのであった。






拍手[0回]

紫陽花

6月。

紫陽花が綺麗に咲いていた。

しとしとと雨の降る季節。梅雨の季節だった。

恋次は、傘もささずにただ空を見上げていた。

どうすれば、もっと強くなれる?

隊長をこすほどに。

「恋次」

傘をさした白哉が、外に出て少しも戻ろうとしない恋次を心配して、やってきた。

「何をしておる、こんな場所で」

「イメージトレーニングです」

心の中で、蛇尾丸に話しかける。

蛇尾丸は、黙していた。

「だめか・・・・・」

蛇尾丸と、もっと心を通わせ合うようになれれば、もっと強くなれるのだろうか。

隊長が、千本桜と心を通わせているように。

「イメージトレーンングなら、室内でもできる。風邪をひく。即刻やめよ」

「あんたは!」

恋次は、白哉を抱き寄せた。

「あんたは強い。俺も、もっともっと強くなります。いつか、あんたを追い越します」

「できるものなら」

薄く、白哉は微笑んでいた。

「くそっ」

隊長。

隊長、隊長、隊長。

強くなれば、あんたは心を完全に開いてくれるか?俺のものになってくれるか?

否、強くなればなるほど、あんたも強くなっている。

差は広まることも縮まることもなく。

雨の中、2人は傘もささずに佇んだ。

「恋次・・・・・・」

「隊長。どうしようもないくらいに、あんたが好きだ」

「恋次、私は・・・・・・・」

その唇を奪うように貪った。

「んあっ・・・・・」

白哉の漏らす声に、かっと体中が熱くなった。

この瞬間なのだ。高みが、おぼろげながら見える。

「あんたを抱きたい」

「許さぬ。このような日の高いうちからは、許さぬ」

「じゃあ、日が沈んだいいんすか」

「いつもの屋敷に来い」

それだけ言い残すと、白哉は執務室に消えてしまった。

かっとなったこの体の熱さをどうすればいいか分からず、恋次はただ雨の降る空を見上げていた。


夜になり、いつも睦みあう時に使う館に訪れる。

豪華な食事と酒が用意してあった。

先に食べていた白哉は、恋次が来ても何も言わず、食べて飲んでいた。

だが、あまりにも沈黙が重いので、口を開く。

「何をしている。腹をすかせているのであろう?」

確かに、昼飯を食っていなかったせいもあって、お腹はぐーっとないて、それに恥ずかしさを覚えた。

「遠慮することはない。貴様のために作らせた分だ。食せ」

「隊長・・・・・・」

食事を口にしていくと、その美味しさにはしが止まらなくなった。

高級酒を飲み交わしていると、先に飲みだしていた白哉の酒がきれた。

「もう、終わりか」

「まだありますよ」

杯に注ぐふりをして、口に含んで白哉に口移しで飲ませた。

「ふあっ・・・・・んっ・・・・・・」

こくりと、酒を飲みこむ喉の動きに、かっとまた体が熱くなった。

ああ。

俺は、隊長にはまだ勝てない。

「隊長、褥にいきましょう」

「酒がまだ残っている。飲まぬのか?」

「もう十分です」

褥に白哉を横たえると、鴉のように艶のある漆黒の瞳が、酒のせいか潤んでいた。

「隊長、好きです。あんたがどうしようもないくらい好きです。あんたの全部を手に入れたい」

「欲張りだな・・・・・・」

「そうです。俺は欲張りなんすよ」

白哉と舌が絡ますキスを何度も繰り返し、衣服を脱がせていく。

細い体にはしなやかな筋肉がついており、美しかった。

「あ、あ、あ・・・・・」

全身を愛撫して、刺激を与えていくと、白哉の桜色の唇から、甘い声が漏れる。

「恋次・・・・・好きだ」

「隊長っ!」

潤滑油を手にとり、早急に内部を解していく。

前立腺をコリコリと刺激するように触ると、白哉は射干玉のような瞳で、恋次を見ていた。

「早く、来い」

「でも、ちゃんと解しておかないと・・・・・・」

「よい。貴様が欲しいのだ」

また、体がかっと熱くなった。

普通、抱かれている相手が熱くなるはずなのに、抱いている恋次のほうが熱くなった。

ああ。

隊長に求められるなんて。

なんて、至福。


己を宛がい、一気に白哉を貫いた。

「あああああ!!!」

あまり解していなかったそこは、血を滲ませた。

「く、きつい・・・・・隊長、息すって吐いて・・・・力抜いて」

白哉は、言われた通りにした。

幾分中が緩んで、潤滑油の力を使い最後まで埋め込んだ。

「あ・・・・」

「隊長、わかりますか?今、俺たち一つになってる」

「恋次・・・・・・ああっ!」

前立腺をついてやると、白哉は体を痙攣させた。

ああ、いったのか。

そう思いながらも、白哉の中を楽しむように突き上げて犯した。

前立腺をねらって突き上げてやれば、白哉はまた甘い声をあげる。

「んああっ」

「隊長、好きだ、愛してます!」

「恋次・・・・私も、好きだ・・・・・」

けれど、愛しているとは言ってくれない。

分かっているからと、全てをぶつけるように白哉を犯した。

「ああああ!!!」

恋次が、限界にきて白哉の中に欲望を吐き出す。

白哉の花茎に手をかけて、爪で鈴口をいじっていると、先走りの蜜がぽたぽたと垂れてきた。

白哉から引き抜いて、白哉のものに口を這わせると、白哉は驚いて体をはねさせた。

「ああああ!!」

ちろりちろりと舐めてやれば、白濁した液体が出てくる。苦みのしない淡泊な味のそれを飲み込んだ。

「恋次・・・・・ふあっ」

もう一度、今度は全体をなめていると、むくりとまた白哉は反応した。

「隊長も若いっすね」

「あ、言うな・・・・・ああああ!」

じゅぴじゅぷと音を立てて口淫してやれば、白哉はまた欲望を恋次の口の中に放った。

「あんたの味、薄いな」

「貴様・・・・・・」

ぐったりと弛緩している体を開かせていく。

恋次は、まだ一度しかいってないのだ。若いだけあって体力もある。

ずっずっと音をたてて、白哉を犯した。

何度か中を穿ち、2回目、3回目と熱を中に放った。

最後の頃には、白哉の意識はすでになかった。

意識のない白夜を好き勝手に犯した。

「好きだ、隊長・・・・・・・朽木、白哉」

その名を呟かれたことを、白哉は知らぬまま数時間意識を飛ばしていた。


「ん・・・・・・」

5時間ほど眠って、白哉は意識を取り戻した。傍らにいるはずの恋次は、いなかった。

湯殿にいき、体を洗って清め、シーツをかえて褥に横になる。

「恋次・・・・・?」

恋次の姿を探して暗闇の中さまようと、外にいた。

昼の時のように、今度は月夜を見上げていた。

「あんたが好きだ、隊長。白哉」

「恋次・・・・」

「あんたの全部が欲しい。体は奪った。心もほとんど奪いかけてる。でも、100%奪えない」

「恋次、私は、いつか貴様に全てを与えるだろう」

思いがけない言葉を聞いて、恋次が目を見開く。

「本当に?愛していると、言ってくれるんですか」

「いつか・・・・まだ、今は分からぬ。貴様に抱いているこの感情がなんなのか、分からぬのだ」

射干玉の瞳が彷徨う。

恋次は、白哉をしっかりと抱き留めて、抱きしめた。

「愛しています、隊長」

「私は・・・・・・」

唇を奪う。

どうせ、その続きは沈黙だから。


夜は、更けていく。

二人は、眠くなるまで外で互いを抱き締めあい、呼吸するのだった。

白哉は思う。

この感情がなんなのか分かった時。

恋次に、心の全てを与えようと。

愛していると、告げようと。

紫陽花が、まるで二人を包み込むように、咲いていた。

拍手[0回]

一護とルキア 番外編

「私、チカさんと結婚したい!」

愛娘の言葉に、一護は食卓を囲んでいて味噌汁を飲んでいたのだが、その味噌汁をぶーーーと吹き出していた。

「やだー父様きたないー」

「チカさんって・・・弓親さんのことだよな?」

「そうだよー。私の師匠の一角さんといつもつるんでる、とってもとっても美形で、優しいチカさんのお嫁さんに、来月いくの!」

ブーーーーー。

同じように、味噌汁を飲んでいたルキアが、味噌汁を吹き出した。

「やだー母様まで」

「苺花、貴様はまだ8歳なのだぞ?結婚などできるわけがなかろう!」

「そうだぞ、苺花!大きくなるまで待て。それに、弓親さん以外にもいい男はいっぱいいるんだぞ!」

「父様、じゃあ俺は母様の夫になるー」

ブーーーーー。

苺花の弟である一勇が、そう言いだして、今度は一護がお茶を吹きだした。

「近親相姦かよ!一勇、ルキアは俺の妻だ。お前は、他からお嫁をもらいなさい!」

「えー、だめなの?」

「だめに決まってる!なぁ、ルキア。俺たちの教育が間違っていたんだろうか」

「問うな、一護。普通に教育してきたつもりだ!」

二人はこそこそと相談しあった。

そして、一度二人を白哉に預けて、貴族としての教育を受けさせようということで一致した。


「苺花、お前は明日から、1週間白哉のとこで過ごせ」

「白夜叔父様の?」

苺花は、首を傾げた。

「一勇もだぞ!」

「えー。母様の傍を離れたない」

5歳の一勇は、ルキアにべったりだった。

「文句は言わないこと!」

「「えーー」」

愛しい愛娘と愛息子は、はたして白哉の厳しい教えに耐えれるだろうか。

そう思いながらも、苺花と一勇は朽木家にある者として、いずれ4大貴族の中で育っていく子供たちなのだ。

なるべく自由にのびのびと育ててきたつもりだが、自由すぎた。のびのびすぎた。

そもそも、8歳ですでに一角と打ち合いをできるまで成長している苺花は、きっと将来護廷13隊の席官になるだろう。

今は死神の初等部に通わせている。

ある程度年をとったら、真央霊術院に通わせる予定だが、15までは普通に死神の娘として育てるつもりだった。

一角に教えを受けるようにさせたのが間違いなのだろうか。一角は、自由本舗なところがあるから。

それに、弓親は基本自分のことが好きなので、妻帯するつもりもないようだし、苺花が何をいっても、年頃になっても結婚はしないだろうと思えた。

こうして、苺花と一勇は、白哉の下で貴族であるのが、4大貴族であるのがどういうことかというのを、マナーも交えて1週間みっちりと叩きこまれた。



「おはようございます、お母様」

「苺花?」

「おはようございます、お父様」

「一勇?」

一護と、ルキアは、顔を見合わせあった。

白哉に貴族であるのがなんなんかを叩きこませて、正解だったと思った。

しかし、それも束の間のことだった。

「白哉叔父様、堅苦しい。もっと自由に生きなきゃ、人生損だよね」

「白哉叔父様、お父様よりかっこいい」

そんな言葉をだす二人に、一護もルキアも、溜息を零すのだった。

結局、二人には貴族がなんであるかを叩きこんだが、性根がもう座っていて、性格の修正には無理だということだった。

「兄様・・・お疲れですね」

「ルキアか・・・・一勇はまだましだ。これからの教育次第では、次期朽木家当主として、育つだろう。だが、苺花は・・・・・あれは、私の手に負えぬ」

「兄様がそこまで苦労なさるとは・・・・苺花、教育の仕方間違えたのでしょうか」

「分からぬ。普通に教育してきたのであろう?」

「はい・・・・ただ、本人が望むので、班目副隊長に剣の指導を受けさせていたら、いつも近くにいる綾瀬川3席に懸想したらしく・・・・・」

「まだ、8歳であろう」

「はい」

「綾瀬川3席も分かっておるだろう。朽木家の者であるということを」

「それでも、苺花は結婚したいとか言い出す始末で・・・・・」

「頭が痛いな」

「はい」


また、何気ない毎日が始まる。

苺花は結局、弓親のお嫁さんになるという夢を抱いたままで。一勇は、いつもはおどおどしているが、白哉の鍛錬のせいか、最近顔つきが男らしくなってきた。

苺花と一勇を死神初等部に送り出して、ルキアと一護久しぶりに夫婦として二人きりの時間をすごしていた。

「ああ、こういうのもいいな。貴様の体温が暖かい」

「あの二人がいると、おちおちいちゃつくことこもできないからなぁ」

二人は互いを抱擁しあい、キスを繰り返した。

「なぁ、流石に3人目はいらないか」

「もう、2人で手一杯だ。3人目はさすがにいらぬ」

「そうだな」

「んっ・・・・・・・」

舌が絡みあうキスをして、久しぶりに体を重ねた。無論、避妊して。

「ああっ!」

乱れるルキアは、子供を二人も生んだとは思えぬ細さだった。

「ん・・・・ルキア、愛してる」

「私もだ、一護・・・・・」

体を重ねあいながら、今まで歩んできた道のりを思い出す。

死神と人間。

歴然とした差があった。結ばれるはずはないと思っていた。

だが、二人は結ばれ、二人も子をもうけた。

ルキアを、恋次は慕っていたが、一護との結婚を自分のことのように喜んでくれた。

家族の一員であるように、たまに恋次も加ええて食卓を囲む。

白哉もいる。

そんな食卓は賑やか過ぎて。

でも、悪くないのだ。


一護とルキアが結ばれて、もう実に15年以上が経過しようとしていた。








拍手[0回]

海燕とメリークリスマス

「海燕、メリークリスマス」

「隊長も、メリークリスマス。ついでに仕方ないから京楽隊長も」

「僕だけ、扱い酷くない!?浮竹、僕にメリークリスマスは!?」

「えー。京楽に言ったら、去年ふりふりふわふわのサンタ服着てっていわれて、着てメリークリスマスって言ったら、そのまま押し倒されて3時間はセックスしてきたのでいやだ」

「細かい説明聞きたくもないのにありがとうございます」

海燕は、この上官たちはクリスマスの日も変わらずだなと思った。

「ねーそういわずに。今年は絶対手を出さないから。この、浮竹専用のふりふりふわふわのクリスマスサンタ服着てよ」

「絶対に、盛らないな?」

「絶対の絶対」

「分かった」

あーあ。また、おいしくいただかれちゃうんだろうな。

「着替えるから、浴室いってくる」

「ここで着換ててもいいのに」

「お前の視線があるから嫌だ!」

数分して、ふりふりふわふわのクリスマスサンタ服を着た浮竹が現れた。

「なあ、なんでズボンが半ズボンで、おへそがでるようにされてあるんだ?」

二ーソックスまで、はいていた。

その姿に、海燕は飲んでいた茶をブーーーと吹き出した。

普通のサンタ服ではなかった。

かなり丈の短い半ズボンに、少し長めの上の服。でも、上の服は胸のところまでしかボタンがなくって、へそが見えていた。

正直、年を考えろと言いたかったが、この上官、容姿端麗でとても似合っていた。

無駄な筋肉がついておらず、腹筋の割れていない臍だしはかわいいとしかいいようがなかった。

「隊長、かわいいですよ」

「う・・・・かわいいのか」

「はい」

「こんな格好、風邪をひく」

「いいね、似合ってるよ!」

パシャパシャと、写真をとる京楽。

「ふう、今年も浮竹のかわいい写真がとれた。僕は満足だよ」

「じゃあ、着替えていいか?」

「だめ。寒いでしょ、僕の傍においで」

あーあー。狼に羊が近寄っていく・・・・・。

ぽふりと、京楽の腕の中に抱きしめられる浮竹。

「かわいいねぇ。お肌もすべすべだし」

京楽は、エロ上司のようになっていた。

「あ、京楽・・・・」

見ているこっちなど、お構いなしだ。

「食べちゃいたいよ」

「食べないで・・・・・」

潤んだ翡翠の瞳で懇願される。

あーあー。狼あおちゃってまぁ。この羊、自己防衛能力0だな。

「ああっ」

服の隙間から、胸に手を入れて、全体を撫でまわす京楽に、海燕はここまでだと、声をかける。

「なんか見ていられないので、俺はここで退出します」

「あ、海燕助けてくれ・・・・・」

「無理です。自分で脱出してください」

「んあああ!きょう・・ら・・くぅ」

あーあ。今年も美味しくいただかれてしまってください、隊長。

心の中で念仏を唱えて、雨乾堂を後にした。


京楽は、服を脱がさず、浮竹のサンタ服を楽しんだ。

胸を触り、先端を何度もつまむ。

「あっ」

「ほら、サンタ服めくりあげて?」

言われた通りにすると、胸から腹にかけて京楽の舌がなぞってくる。

「ううん・・」

浮竹の半ズボンを下着ごとずらして、反応しかけている花茎に手をそえて、しごくと、浮竹はびくりと体をはねさせた。

「あ!」

「ああ、いちゃった?早いね」

「最近、してなかったから・・・」

「僕は、浮竹を思って一人でぬいてたけど・・・・やっぱ、本物がいいね」

数日肺の発作で寝込んでいたので、念のためにと体を重ねなかったのだ。

そのまま、潤滑油を垂らした指が蕾を触ろうとして、浮竹のお尻に全体に塗られた。

「京楽?」

「せっかくのサンタ服だし・・・・浮竹も病み上がりだから、素股しようか」

「素股?」

「そう」

京楽は、己の欲望を取り出すと、浮竹の太ももを閉じさせて、太ももと尻の間に一物を入れて、激しくすりあげはじめた。

「んあ・・・」

「交わるほどの快感を浮竹は得られないだろうから、こっちをね」

素股でぬちゃぬちゃと浮竹の閉じさせた太ももの間を出入りしながら、浮竹の花茎に手をかけてしごいていく。

「あ、ああああ!」

「きもちいい?」

「んあ!んんん・・・・・・・・あ、あ!」

ぬちゃぬちゃと、素股で京楽はいった。

浮竹の花茎の先端に爪をたてると、浮竹も京楽の手に欲望を放った。

「足りないから、もう1回ね」

「んあう!」

くちゅくちゅいといやらしい音を立てて、素股を堪能する京楽。

浮竹は、全身を愛撫する手や花茎をしごいてくる京楽の動きに、声をあげる。

「ああ、やだ、いっちゃう・・・・んあああああああ!」

素股をしながら、京楽は浮竹の花茎を戒めた。

「やあ、なんで!やあぁ、いかせてぇ」

「僕と一緒にいこう」

ぐちゃぐちゃと素股で出し入れを繰り返して、京楽は果てた。戒めていた手を離すと、浮竹も果てた。

「ああ・・・・・サンタ服が・・・・・」

精液で、どろどろになってしまった。

「洗濯して乾かせば大丈夫。替えのサンタ服もあるんだ。こっちは、普通のだけど。流石に今きてるサンタ服のようなやつは、風邪ひくからね」

濡れたタオルで体をふかれた。今日は交わっていないので、体内から精液をかきだす必要はなかった。

ふわふわの普通のサンタ服を着せらえた。

「やっぱ、サンタ服は僕より浮竹が似合うね」

浮竹はすねていた。

「手を出さないと言った。絶対の絶対だって言った」

「最後まではしてないでしょ?」

「京楽のばか!」

べしっと頭を叩きつつも、京楽の腕の中に収まる。

「おなか減った・・・・」

「そうだね、軽い運動にもなるから」

「海燕ーーーー」

「はいはい」

隊舎で仕事をしていた海燕がやってくる。

様子を見て、ああ、自分の上官は京楽に美味しくいただかれてしまったのだなと悟った。

「夕餉の支度を頼む」

「クリスマス時期だから、ケーキついてますよ」

「お、いいな。京楽、お前の分のケーキは俺がいただく」

「まぁ、素股させちゃったしね」

その言葉に、海燕がぎょっとなる。

「素股・・・・・またマニアックな・・・・・」

そう言いつつも、二人分の夕餉を用意する。少し大きめのクリスマスケーキがあった。

「ほら、浮竹」

京楽が、自分の分のクリスマスケーキも浮竹に渡す。

他の食事を食べて、浮竹は嬉しそうにクリスマスケーキをほうばった。

サンタ服姿のままだが。

しばらくの間、この格好でいてもらおうと思う京楽だった。




拍手[0回]

新着記事
(11/27)
(11/26)
(11/25)
(11/25)
(11/22)
"ココはカウンター設置場所"