最後の冬 終章 二人だけの物語
大学2年になり、二十歳になった。
ルキアとの現世での婚礼をが執り行われることになった。 尸魂界の主だった隊長副隊長も参加してくれて、総隊長の京楽の姿もあった。
みんな、ルキアと一護の結婚式を心から喜んでくれた。
現世の式場で、一護は正装して落ち着かない様子だった。
「黒崎君、落ち着いて!新郎がそんなに緊張してどうするの!」
振袖姿の井上が、そわそわしている一護に声をかける。
井上は、正式に石田と付き合いだしていた。
「だって、結婚式だぞ?一生に一度あるかないかの・・・・あああああ」
一護は軽いパニック状態になっていた。
「おい、しっかりしやがれ!」
ばしっと背中を叩かれて、一護が恋次を見る。
「恋次・・・」
「ルキアを幸せにするんだろう?本当なら、その位置に俺がいたかったんだ。まぁ、ルキアが選んだのがお前だったから、仕方ねーけどな」
恋次は、嬉しさの中にもどこか悲しさを見せていた。
「ああ、すまねぇ。気合い入れ直すわ」
自分の頬をぴしゃりと叩いた。
「黒崎、朽木さんを幸せにしろよ!」
「そうだぞ、一護」
石田と茶虎の言葉に、一護は頷く。
一護は、式場に入場する。父親である一心と遊子、夏梨もきていた。
「新郎、新婦の登場です」
一護が先を歩き、後ろから同じく和装の正装をした、白哉に連れられて、純白のウェディングドレスを着た、ルキアが歩いてくる。
「ルキア・・・・綺麗だ」
「ありがとう、一護」
長いウェディングヴェールを被ったルキアは、綺麗だった。
流石に、朽木家が金を出しただけある。
黒崎家も金を出そうとしたのだが、白哉が出すといってくれたのだ。普通の式場よりも何ランクも高い式場を予約してくれた。
「汝、黒崎一護、病める時も健やかなる時も、黒崎ルキアを妻として迎えることを誓いますか?」
「誓います」
「汝、黒崎ルキア、病める時も健やかなる時も、黒崎一護を夫として迎えることを誓いますか?」
「誓います」
「では、誓いの口づけを」
ルキアのヴェールをとって、一護はゆっくりとルキアに口づけた。
その後、一護がバイト代を貯めて買った、小ぶりのダイヤモンドがあしらわれた、結婚指輪を互いにはめあった。
「ルキア、幸せに・・・・」
「はい、兄様!」
朽木家の名で借りた式場で出されたメニューは、豪華だった。
「朽木、幸せにね!」
松本が、手を振っていた。
「ブーケを投げます!」
わっと、その場にいた女性死神から一護の友人たちまで、群がってくる。
投げたブーケは、井上の手に落ちた。
「ふふ・・・石田君、結婚してっていったら、してくれる?」
井上が冗談でそういうと、石田は顔を真っ赤にさせながらこう言う。
「大学を卒業したら・・・・・」
「え」
「え」
お互い、顔を見合わせた。
ルキアとの挙式は、これないと思っていた死神たちも顔を出してくれて、残りを任さた数名の隊長副隊長は、反乱が起きたらどうしようと考えていたが、何もおこらなかった。
「いや、いいねぇ。ルキアちゃん、ウェディングドレス似合ってるよ。ああ、浮竹にも見せてやりたかったなぁ」
京楽は、ここに浮竹がいたら、きっと泣き出すだろうなと思っていた。
2次会は、ホテルのロビーを貸し切って行われた。
酒が振る舞われて、松本などは早くもできあがっていた。
隊長である日番谷は、年齢を未成年と間違われて、飲酒を禁じられた。
「ったく、こっち世界はいつまで経っても、俺をガキ扱いだ」
「冬獅郎もありがとな。わざわざ来てくれて」
「仕方ねーだろ。尸魂界の恩人が結婚するんだ。出るしかねーだろ」
「恩人とか、そんなんじゃねーよ」
一護も二十歳になったので、酒を飲んでいた。
アルコール度の低いカクテルを飲んでいた。隣には、振袖に着替えたルキアが、同じカクテルを口にしていた。
ルキアの髪は、少し伸びた。
一護は、身長がまた少しだけ伸びた。
ルキアと一護の結婚式は無事終わり、二人はヨーロッパへ7泊八日新婚旅行に出かけた。
それも終わり、白哉の出してくれた金で、一軒家を買った。
そこで、ルキアは昼は尸魂界に、夜は現世にと、2重の生活を送っていた。
結婚したのだからと、京楽がそれを認めてくれたのだ。
「ルキアー。帰ってるかー?」
「あ、一護、晩飯はまだだぞ。先に風呂に入っていてくれ」
大学を卒業した一護は、翻訳家になった。ドイツ語の翻訳家だ。在宅で仕事をしながら、家事のほとんどをこなしていた。
今日は、ルキアが夕飯を作ることになっていた。ルキア専用の穿界門が作られていた。
夜の7時に現世にきたルキアは、自分の自宅でもある一護との新居に入り、まずは夕飯にシチューを作った。ご飯は一護が炊いてくれていた。サラダも作り、自分の好物の白玉餡蜜も作った。
「ルキア、あがったぞー」
「あ、分かった。夕飯ができたのだ。食事にしよう」
二人は食卓についた。
「また白玉餡蜜か・・・」
一護の呆れた声に、ルキアが言う。
「べ、別にいいであろう!嫌ならん食さねばいいのだ!」
「誰も嫌だなんて、言ってないだろ?」
ルキアにキスをすると、ルキアはとろんとした目で見つめてきた。明日は休日なのだ。
久し振りに睦み合う予定だった。
食事を終えて、一護が後片付けをしている間に、ルキアが風呂に入った。
「一護・・・その、するのか?」
「する」
いつもは二重の生活をしているルキアを思い、手を出さないが、一護だって男だ。愛しい妻がいれば、抱きたくもなる。
「あ・・・・」
ルキアの白い肌に、キスマークの花びらを散らせていく、
「んんっ・・・」
ルキアの胸をいじっていた一護は、ルキアに急かされた。
「あ、前戯などいいから、早く・・・・」
ルキアも久しぶりで、飢えていた。
すでに濡れている秘所に指をいれて、天井部分をいじってやる。
「ああああ!」
ルキアは、あっけなくいってしまった。
「い、一護・・・・」
「ルキア、入れるぞ」
「うむ・・・・・あああ・・・・!」
一護に貫かれて、ルキアはその快感に涙を零していた。
「痛いのか?」
涙を吸い取って、一護の動きが止まる。
「違う。もっとだ、もっとお前をくれ。一つに溶けあうくらいに、してくれ」
一護は、そう言われて少し激し目に、ルキアを抱いた。
次の日は、ルキアの非番の日だったので、一日中一護と一緒にいた。
周囲の家の人間には、記憶置換でこの館の住人が年をとらぬことを、不思議がる心を消していた。
死神と人間であるので、子はできなかったが、二人とも愛し合い、最後の時まで一緒にいた。
やがて、自宅で最期の時を迎えることに決めた一護の体から、魂魄が滲み出す。
「行こう。尸魂界へ・・・」
ルキアが、若い少年時代の、17歳くらいの姿になった一護の魂を、魂葬した。
魂魄は尸魂界にやってきた。一護は、久し振りに懐かしい姿に戻って、体を存分に動かせることが嬉しかった。
享年80歳。
ルキアが、息を引き取る間際まで傍に居てくれた。
尸魂界にきた一護には、前世の記憶もあったし、霊圧もちゃんとあった。死神の姿になると、斬月を所持していた。
「迎えに来た」
「おう、ルキア!」
「第二の人生だ。また、結婚しよう。今度は、子が欲しい」
一護とルキアの冬は終わり、また春がくる。冬が終わる度に何度でも春を迎えた。
やがて一護は、尸魂界の正式な死神になり、ルキアの副官になった。ルキアは一護と結婚して数年後には、13番隊の隊長になっていた。
「また、はじめようか。俺たちの物語を」
「ああ、一護、愛しているぞ」
「俺もだ。愛してる、ルキア」
もう、最後の冬はこない。
一護の死も、最後の冬にならなかった。
また、巡り合った。
運命のように。
二人は紡ぎ出す。二人だけの物語を。
------------------------------------------最後の冬は、もう永遠にこない。
最後の冬
fin
ルキアとの現世での婚礼をが執り行われることになった。 尸魂界の主だった隊長副隊長も参加してくれて、総隊長の京楽の姿もあった。
みんな、ルキアと一護の結婚式を心から喜んでくれた。
現世の式場で、一護は正装して落ち着かない様子だった。
「黒崎君、落ち着いて!新郎がそんなに緊張してどうするの!」
振袖姿の井上が、そわそわしている一護に声をかける。
井上は、正式に石田と付き合いだしていた。
「だって、結婚式だぞ?一生に一度あるかないかの・・・・あああああ」
一護は軽いパニック状態になっていた。
「おい、しっかりしやがれ!」
ばしっと背中を叩かれて、一護が恋次を見る。
「恋次・・・」
「ルキアを幸せにするんだろう?本当なら、その位置に俺がいたかったんだ。まぁ、ルキアが選んだのがお前だったから、仕方ねーけどな」
恋次は、嬉しさの中にもどこか悲しさを見せていた。
「ああ、すまねぇ。気合い入れ直すわ」
自分の頬をぴしゃりと叩いた。
「黒崎、朽木さんを幸せにしろよ!」
「そうだぞ、一護」
石田と茶虎の言葉に、一護は頷く。
一護は、式場に入場する。父親である一心と遊子、夏梨もきていた。
「新郎、新婦の登場です」
一護が先を歩き、後ろから同じく和装の正装をした、白哉に連れられて、純白のウェディングドレスを着た、ルキアが歩いてくる。
「ルキア・・・・綺麗だ」
「ありがとう、一護」
長いウェディングヴェールを被ったルキアは、綺麗だった。
流石に、朽木家が金を出しただけある。
黒崎家も金を出そうとしたのだが、白哉が出すといってくれたのだ。普通の式場よりも何ランクも高い式場を予約してくれた。
「汝、黒崎一護、病める時も健やかなる時も、黒崎ルキアを妻として迎えることを誓いますか?」
「誓います」
「汝、黒崎ルキア、病める時も健やかなる時も、黒崎一護を夫として迎えることを誓いますか?」
「誓います」
「では、誓いの口づけを」
ルキアのヴェールをとって、一護はゆっくりとルキアに口づけた。
その後、一護がバイト代を貯めて買った、小ぶりのダイヤモンドがあしらわれた、結婚指輪を互いにはめあった。
「ルキア、幸せに・・・・」
「はい、兄様!」
朽木家の名で借りた式場で出されたメニューは、豪華だった。
「朽木、幸せにね!」
松本が、手を振っていた。
「ブーケを投げます!」
わっと、その場にいた女性死神から一護の友人たちまで、群がってくる。
投げたブーケは、井上の手に落ちた。
「ふふ・・・石田君、結婚してっていったら、してくれる?」
井上が冗談でそういうと、石田は顔を真っ赤にさせながらこう言う。
「大学を卒業したら・・・・・」
「え」
「え」
お互い、顔を見合わせた。
ルキアとの挙式は、これないと思っていた死神たちも顔を出してくれて、残りを任さた数名の隊長副隊長は、反乱が起きたらどうしようと考えていたが、何もおこらなかった。
「いや、いいねぇ。ルキアちゃん、ウェディングドレス似合ってるよ。ああ、浮竹にも見せてやりたかったなぁ」
京楽は、ここに浮竹がいたら、きっと泣き出すだろうなと思っていた。
2次会は、ホテルのロビーを貸し切って行われた。
酒が振る舞われて、松本などは早くもできあがっていた。
隊長である日番谷は、年齢を未成年と間違われて、飲酒を禁じられた。
「ったく、こっち世界はいつまで経っても、俺をガキ扱いだ」
「冬獅郎もありがとな。わざわざ来てくれて」
「仕方ねーだろ。尸魂界の恩人が結婚するんだ。出るしかねーだろ」
「恩人とか、そんなんじゃねーよ」
一護も二十歳になったので、酒を飲んでいた。
アルコール度の低いカクテルを飲んでいた。隣には、振袖に着替えたルキアが、同じカクテルを口にしていた。
ルキアの髪は、少し伸びた。
一護は、身長がまた少しだけ伸びた。
ルキアと一護の結婚式は無事終わり、二人はヨーロッパへ7泊八日新婚旅行に出かけた。
それも終わり、白哉の出してくれた金で、一軒家を買った。
そこで、ルキアは昼は尸魂界に、夜は現世にと、2重の生活を送っていた。
結婚したのだからと、京楽がそれを認めてくれたのだ。
「ルキアー。帰ってるかー?」
「あ、一護、晩飯はまだだぞ。先に風呂に入っていてくれ」
大学を卒業した一護は、翻訳家になった。ドイツ語の翻訳家だ。在宅で仕事をしながら、家事のほとんどをこなしていた。
今日は、ルキアが夕飯を作ることになっていた。ルキア専用の穿界門が作られていた。
夜の7時に現世にきたルキアは、自分の自宅でもある一護との新居に入り、まずは夕飯にシチューを作った。ご飯は一護が炊いてくれていた。サラダも作り、自分の好物の白玉餡蜜も作った。
「ルキア、あがったぞー」
「あ、分かった。夕飯ができたのだ。食事にしよう」
二人は食卓についた。
「また白玉餡蜜か・・・」
一護の呆れた声に、ルキアが言う。
「べ、別にいいであろう!嫌ならん食さねばいいのだ!」
「誰も嫌だなんて、言ってないだろ?」
ルキアにキスをすると、ルキアはとろんとした目で見つめてきた。明日は休日なのだ。
久し振りに睦み合う予定だった。
食事を終えて、一護が後片付けをしている間に、ルキアが風呂に入った。
「一護・・・その、するのか?」
「する」
いつもは二重の生活をしているルキアを思い、手を出さないが、一護だって男だ。愛しい妻がいれば、抱きたくもなる。
「あ・・・・」
ルキアの白い肌に、キスマークの花びらを散らせていく、
「んんっ・・・」
ルキアの胸をいじっていた一護は、ルキアに急かされた。
「あ、前戯などいいから、早く・・・・」
ルキアも久しぶりで、飢えていた。
すでに濡れている秘所に指をいれて、天井部分をいじってやる。
「ああああ!」
ルキアは、あっけなくいってしまった。
「い、一護・・・・」
「ルキア、入れるぞ」
「うむ・・・・・あああ・・・・!」
一護に貫かれて、ルキアはその快感に涙を零していた。
「痛いのか?」
涙を吸い取って、一護の動きが止まる。
「違う。もっとだ、もっとお前をくれ。一つに溶けあうくらいに、してくれ」
一護は、そう言われて少し激し目に、ルキアを抱いた。
次の日は、ルキアの非番の日だったので、一日中一護と一緒にいた。
周囲の家の人間には、記憶置換でこの館の住人が年をとらぬことを、不思議がる心を消していた。
死神と人間であるので、子はできなかったが、二人とも愛し合い、最後の時まで一緒にいた。
やがて、自宅で最期の時を迎えることに決めた一護の体から、魂魄が滲み出す。
「行こう。尸魂界へ・・・」
ルキアが、若い少年時代の、17歳くらいの姿になった一護の魂を、魂葬した。
魂魄は尸魂界にやってきた。一護は、久し振りに懐かしい姿に戻って、体を存分に動かせることが嬉しかった。
享年80歳。
ルキアが、息を引き取る間際まで傍に居てくれた。
尸魂界にきた一護には、前世の記憶もあったし、霊圧もちゃんとあった。死神の姿になると、斬月を所持していた。
「迎えに来た」
「おう、ルキア!」
「第二の人生だ。また、結婚しよう。今度は、子が欲しい」
一護とルキアの冬は終わり、また春がくる。冬が終わる度に何度でも春を迎えた。
やがて一護は、尸魂界の正式な死神になり、ルキアの副官になった。ルキアは一護と結婚して数年後には、13番隊の隊長になっていた。
「また、はじめようか。俺たちの物語を」
「ああ、一護、愛しているぞ」
「俺もだ。愛してる、ルキア」
もう、最後の冬はこない。
一護の死も、最後の冬にならなかった。
また、巡り合った。
運命のように。
二人は紡ぎ出す。二人だけの物語を。
------------------------------------------最後の冬は、もう永遠にこない。
最後の冬
fin
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最後の冬 大学生活とルキア
桜舞う季節、一護は大学生になった。
予定通り、高校卒業までに貯めていたお金で、生活を始めた。
大学の入学費や授業料は、一心が出してくれた。アパートを借りる金もだ。
いずれ独立すれば返すつもりであった。
そういう約束で、金を借りた。
「はぁ・・・ルキアと離れ離れになるって、けっこう辛いな」
伝令神機で、メールのやりとりをする。、
(今何してる?)
(呆けた面をしている貴様の後ろにいる)
「え、ルキア!?」
後ろを振り向くと、悪戯を思いついたような微笑みを浮かべたルキアがいた。
「どしたんだよ、いきなり!」
「何、急に非番になってな。今日1日だけだが、現世へいく許可をもらったのだ」
二人のことを知っている白哉と、京楽が、穿界門をルキアのためだけに開けることに許可を出してくれて、これからも非番の・・・土日の休みには、現世にくることにしていた。
でも、土日だけじゃな足りなくて、伝令神機でルキアとやりとりをしていた。
「今日は、授業があるのであろう?私も一緒に受ける」
「ああ、いいぜ。でもドイツ語だぞ。人数制だから・・・」
「ふふふ。私にはこれがある!」
記憶置換を取り出す。
それで、ドイツ語の授業を教師と生徒の記憶を改竄して受けた。
こんなことに、記憶置換を使ってもいいものかと思ったが、ルキアと一緒にいたいので、まぁ見ないふりをした。
「あ、朽木さんだ!やっほー!」
井上は、一護を同じ大学に進んでいた。
「井上、数週間ぶりだな!元気にしておったか!」
「うん!朽木さんは?」
「私は、13番隊の隊長を欠いておるので、隊長代理も含めて多忙だ。瀞霊廷の復興が本格的に始まっているしな」
ルキアの話では、壊れてしまった一番隊隊舎などはもう完成したらしい。
雨乾堂は、そのまま浮竹の墓となり、取り潰された。
新しく建築された13番隊の建物で、ルキアは復興活動と、死神の業務に追われていた。
「まぁ、3席の小椿殿が私がいない間も、隊を纏めあげてくれていたし、私のサポートを色々としてくれるので、寝不足になって倒れる、まではいかぬよ」
「そんなことになったら、俺が 尸魂界にまで怒鳴り込む」
「一護のことだから、しかねぬな」
「もうお昼だし、食堂に昼食食べにいこうよ!ここの大学の食堂、安い上にボリュームあって美味しいんだよ!」
井上に引っ張られて、一護もルキアも食堂にやってきた。
「ふむ・・・では、私はカレーランチ定食を」
「ああ、俺もそれでいいわ」
お金を払い、チケットを手にカレーランチ定食を受け取る。
カレーの上にエビフライが2つあって、サラダと福神漬けがついていた。
「むむ。カレーとは、やはり美味いな。復興に伴い、現世の食料も普及してきて、カレーを食す日もあるが、なかなかお目にかかれぬ。やはり現世は美味い食べ物の宝庫だな」
「今日は何時までこっちにいられるんだ?」
一護は、ルキアを優しい瞳で見つめていた。
「夜の10時には、戻らねば」
「そっか。土日もこっちこれるか?」
「ああ、大丈夫だ」
ルキアと一護の会話を聞いていた井上が、羨ましそうに二人をみた。
「いいなぁ、朽木さんと黒崎君。私も彼氏、作ろうかな・・・」
「石田なんてどうだよ。けっこう狙い目だと思うぜ。実家は病院で金持ちだし」
「石田君かぁ。何かにつけて、私に優しくしてくれるし・・・一度、アタックしてみようかな」
「その調子だぞ、井上!当たって砕けろだ!」
「砕けたらいけねぇだろ」
一護の冷静な突っ込みに、ルキアが頬を朱くする。
「と、とにかくだ。私は今日は一護と一緒にいるから、何かあったら井上も来てくれ」
「うん、ありがとう朽木さん!」
その日、一護はバイトがあったが、ルキアがバイト先まで来てくれたので、休まずに済んだ。
うなぎ屋のなんでも屋のバイトを辞めから、駅前のラーメン店でバイトを始めた。
一護の作るラーメンは人気で、その顔みたさに女性客が来るほどだった。
大学が終わり、そのまま一護はバイト先にルキアと一緒に直行した。
店長に彼女で婚約者であることを伝えると、ルキアは店長直々のラーメン定食をおごってもらえた。
「一護君には、もう婚約者がいるのか。俺なんて、三十路の終わりなのに恋人一人できやしない」
「いや、店長ちゃんと婚活すれば彼女できますって!」
一護のフォローに、店長は涙を滲ませながら、婚活しようかなぁと、呟いていた。
8時になって、バイトを切り上げる。
ルキアが帰る時間まで後2時間。ほんとはもっと一緒に過ごしたいのだが、現世と 尸魂界に生きる者では隔たりが大きすぎる。
「帰ったら、白玉餡蜜作ってやるよ」
「本当か!?」
その日の夕食を買い出しして、8時半に自宅につき、料理をしていると9時を回ってしまった。
「あと1時間しかないな。早く食べねば・・・」
一護は、天丼を作ってくれた。
それを早めに食べて、白玉餡蜜を食べる。
残り時間は30分になっていた。
「一護・・・キス、してくれ」
「ああ、いいぜ」
とろけるほどに甘いキスを何度か繰り返した。
10時になって、タイムオーバーになる。
「 尸魂界へ帰らねば・・・・土日にまた来るから、それまで待っていてくれ!」
ルキアが穿界門をくぐって消えたのを確認してから、一護は風呂に入り、課題をして寝た。
その週の土日、ルキアは現世にこなかった。
心配で、伝令神機に連絡をいれるが、一向に連絡は返ってこなかった。
まさか、またルキアの身に何か起きたのか?
そう思った一護は、浦原に頼んで穿界門を開けてもらった。
流魂街に出たが、瞬歩で朽木邸に向かう。
「ルキア!」
勝手にあがりこんできた客に、白哉が声をかける。
「ルキアは、眠っている。熱を出したのだ」
「まさか、また病気か何かか!?」
「病気は病気だが、ただの風邪だ」
「よかった・・・・」
一護は、ルキアの眠る寝室に入ることを許された。
見知った霊圧を感じて、ルキアがうっすらと目を開ける。
「一護・・・・週末はそちらに行くと言っていたのに、すまない・・・」
「いいんだ、ルキア。今は風邪を治すことだけを考えてくれ。伝令神機にも反応がなかったから、思わず浦原さんに頼んで、 尸魂界にきちまった。今日の予定はないし、お前の傍にいるよ」
「こほこほ・・・風邪が、うつるぞ」
「多分、大丈夫だ」
翌日には熱も下がり、動けるようになったルキアと、朽木邸でいろいろ話し合った。
ルキアと一護の今後のことについてだ。
白哉の姿もあった。
「兄は人間だ。それでも、ルキアを娶ると?」
「ああ。ルキアを置いていっちまうだろうが、どうせ他界したら魂魄は 尸魂界につくんだ。記憶はきっと残ると思うし霊圧も残ると思う。死んだら、またルキアと結婚する」
「一護・・・・」
ルキアは、涙を滲ませていた。
「よかろう。式は兄が20になった時に、現世で行うものとする」
「白哉、ありがとう!」
白哉は、優しい瞳でルキアを見た。
「ルキアを・・・幸せに、してやってくれ」
「勿論だ!」
「兄様・・・私は、緋真姉様の分まで、生きます。兄様を、一人にはさせません」
尸魂界と現世をいったりきたりの生活になるだろうが、それでもよかった。
ルキアと結婚できるならば。
予定通り、高校卒業までに貯めていたお金で、生活を始めた。
大学の入学費や授業料は、一心が出してくれた。アパートを借りる金もだ。
いずれ独立すれば返すつもりであった。
そういう約束で、金を借りた。
「はぁ・・・ルキアと離れ離れになるって、けっこう辛いな」
伝令神機で、メールのやりとりをする。、
(今何してる?)
(呆けた面をしている貴様の後ろにいる)
「え、ルキア!?」
後ろを振り向くと、悪戯を思いついたような微笑みを浮かべたルキアがいた。
「どしたんだよ、いきなり!」
「何、急に非番になってな。今日1日だけだが、現世へいく許可をもらったのだ」
二人のことを知っている白哉と、京楽が、穿界門をルキアのためだけに開けることに許可を出してくれて、これからも非番の・・・土日の休みには、現世にくることにしていた。
でも、土日だけじゃな足りなくて、伝令神機でルキアとやりとりをしていた。
「今日は、授業があるのであろう?私も一緒に受ける」
「ああ、いいぜ。でもドイツ語だぞ。人数制だから・・・」
「ふふふ。私にはこれがある!」
記憶置換を取り出す。
それで、ドイツ語の授業を教師と生徒の記憶を改竄して受けた。
こんなことに、記憶置換を使ってもいいものかと思ったが、ルキアと一緒にいたいので、まぁ見ないふりをした。
「あ、朽木さんだ!やっほー!」
井上は、一護を同じ大学に進んでいた。
「井上、数週間ぶりだな!元気にしておったか!」
「うん!朽木さんは?」
「私は、13番隊の隊長を欠いておるので、隊長代理も含めて多忙だ。瀞霊廷の復興が本格的に始まっているしな」
ルキアの話では、壊れてしまった一番隊隊舎などはもう完成したらしい。
雨乾堂は、そのまま浮竹の墓となり、取り潰された。
新しく建築された13番隊の建物で、ルキアは復興活動と、死神の業務に追われていた。
「まぁ、3席の小椿殿が私がいない間も、隊を纏めあげてくれていたし、私のサポートを色々としてくれるので、寝不足になって倒れる、まではいかぬよ」
「そんなことになったら、俺が 尸魂界にまで怒鳴り込む」
「一護のことだから、しかねぬな」
「もうお昼だし、食堂に昼食食べにいこうよ!ここの大学の食堂、安い上にボリュームあって美味しいんだよ!」
井上に引っ張られて、一護もルキアも食堂にやってきた。
「ふむ・・・では、私はカレーランチ定食を」
「ああ、俺もそれでいいわ」
お金を払い、チケットを手にカレーランチ定食を受け取る。
カレーの上にエビフライが2つあって、サラダと福神漬けがついていた。
「むむ。カレーとは、やはり美味いな。復興に伴い、現世の食料も普及してきて、カレーを食す日もあるが、なかなかお目にかかれぬ。やはり現世は美味い食べ物の宝庫だな」
「今日は何時までこっちにいられるんだ?」
一護は、ルキアを優しい瞳で見つめていた。
「夜の10時には、戻らねば」
「そっか。土日もこっちこれるか?」
「ああ、大丈夫だ」
ルキアと一護の会話を聞いていた井上が、羨ましそうに二人をみた。
「いいなぁ、朽木さんと黒崎君。私も彼氏、作ろうかな・・・」
「石田なんてどうだよ。けっこう狙い目だと思うぜ。実家は病院で金持ちだし」
「石田君かぁ。何かにつけて、私に優しくしてくれるし・・・一度、アタックしてみようかな」
「その調子だぞ、井上!当たって砕けろだ!」
「砕けたらいけねぇだろ」
一護の冷静な突っ込みに、ルキアが頬を朱くする。
「と、とにかくだ。私は今日は一護と一緒にいるから、何かあったら井上も来てくれ」
「うん、ありがとう朽木さん!」
その日、一護はバイトがあったが、ルキアがバイト先まで来てくれたので、休まずに済んだ。
うなぎ屋のなんでも屋のバイトを辞めから、駅前のラーメン店でバイトを始めた。
一護の作るラーメンは人気で、その顔みたさに女性客が来るほどだった。
大学が終わり、そのまま一護はバイト先にルキアと一緒に直行した。
店長に彼女で婚約者であることを伝えると、ルキアは店長直々のラーメン定食をおごってもらえた。
「一護君には、もう婚約者がいるのか。俺なんて、三十路の終わりなのに恋人一人できやしない」
「いや、店長ちゃんと婚活すれば彼女できますって!」
一護のフォローに、店長は涙を滲ませながら、婚活しようかなぁと、呟いていた。
8時になって、バイトを切り上げる。
ルキアが帰る時間まで後2時間。ほんとはもっと一緒に過ごしたいのだが、現世と 尸魂界に生きる者では隔たりが大きすぎる。
「帰ったら、白玉餡蜜作ってやるよ」
「本当か!?」
その日の夕食を買い出しして、8時半に自宅につき、料理をしていると9時を回ってしまった。
「あと1時間しかないな。早く食べねば・・・」
一護は、天丼を作ってくれた。
それを早めに食べて、白玉餡蜜を食べる。
残り時間は30分になっていた。
「一護・・・キス、してくれ」
「ああ、いいぜ」
とろけるほどに甘いキスを何度か繰り返した。
10時になって、タイムオーバーになる。
「 尸魂界へ帰らねば・・・・土日にまた来るから、それまで待っていてくれ!」
ルキアが穿界門をくぐって消えたのを確認してから、一護は風呂に入り、課題をして寝た。
その週の土日、ルキアは現世にこなかった。
心配で、伝令神機に連絡をいれるが、一向に連絡は返ってこなかった。
まさか、またルキアの身に何か起きたのか?
そう思った一護は、浦原に頼んで穿界門を開けてもらった。
流魂街に出たが、瞬歩で朽木邸に向かう。
「ルキア!」
勝手にあがりこんできた客に、白哉が声をかける。
「ルキアは、眠っている。熱を出したのだ」
「まさか、また病気か何かか!?」
「病気は病気だが、ただの風邪だ」
「よかった・・・・」
一護は、ルキアの眠る寝室に入ることを許された。
見知った霊圧を感じて、ルキアがうっすらと目を開ける。
「一護・・・・週末はそちらに行くと言っていたのに、すまない・・・」
「いいんだ、ルキア。今は風邪を治すことだけを考えてくれ。伝令神機にも反応がなかったから、思わず浦原さんに頼んで、 尸魂界にきちまった。今日の予定はないし、お前の傍にいるよ」
「こほこほ・・・風邪が、うつるぞ」
「多分、大丈夫だ」
翌日には熱も下がり、動けるようになったルキアと、朽木邸でいろいろ話し合った。
ルキアと一護の今後のことについてだ。
白哉の姿もあった。
「兄は人間だ。それでも、ルキアを娶ると?」
「ああ。ルキアを置いていっちまうだろうが、どうせ他界したら魂魄は 尸魂界につくんだ。記憶はきっと残ると思うし霊圧も残ると思う。死んだら、またルキアと結婚する」
「一護・・・・」
ルキアは、涙を滲ませていた。
「よかろう。式は兄が20になった時に、現世で行うものとする」
「白哉、ありがとう!」
白哉は、優しい瞳でルキアを見た。
「ルキアを・・・幸せに、してやってくれ」
「勿論だ!」
「兄様・・・私は、緋真姉様の分まで、生きます。兄様を、一人にはさせません」
尸魂界と現世をいったりきたりの生活になるだろうが、それでもよかった。
ルキアと結婚できるならば。
最後の冬 卒業旅行
梅の花が咲く季節。
一護、ルキア、井上、石田、茶虎は高校を卒業した。
そして、卒業旅行に出かけた。
沖縄方面という意見もあったが、飯が不味いということで、一護とルキアは訪れたことがあるが、北海道になった。
まだ、雪が積もっていて、井上やルキアは、雪玉を作って投げ合ったりしていた。
一護と訪れえた時も雪が積もっていたが、病気のせいで無理はできなかったのだ。
みんなで雪ダルマとかまくらをつくり、個人個人で雪うさぎを作った。
ルキアだけ、なぜかチャッピーになっていたが、まぁかわいいのでよしと、みんな思った。
「ここのラーメンが美味いのだ!」
札幌の本格的なラーメンの老舗で、昼食をとった。
夕食は、温泉ホテルでカニ鍋を食べた。他にも海の幸を堪能した。
「北海道って、冬は寒いけど、美味しい物多いよね」
「そうだな。石田、茶虎、井上。おみやげは白い恋人と、夕張メロンキャンディがお勧めだ。金に余裕があるなら、カニや新巻鮭もありだ」
石田は家が病院で金持ちだから、知り合いという知り合いに、カ二と新巻鮭を送っていた。
井上はいつもお世話になっている親戚のおばさんに。
茶虎は自宅に自分用に。
温泉に入るとき、浴衣が安く売っていた。
ルキアと井上は、互いにこの浴衣がいい、いやこっちがいいと、見せあっていた。
「ルキア、気に入ったのあるか?買ってやるから」
「む。この浴衣がいいのだ!」
萌黄色の、紅葉をの柄を散らしてある浴衣だった。
「いいなぁ、朽木さん」
「井上さん、良ければ僕が買ってあげるよ」
「え、石田君!?いいの?」
「黒崎のやつ、鈍感だから井上さんの心に気づかないんだろう」
そんな石田に、井上は首を横に振った。
「ううん。ずっと前に告白したの。でも、朽木さんが好きだって言われて、断られちゃった」
「そっか・・・・その浴衣でいいのかい?」
「うん。これがいいの」
瑠璃色で、蝶の柄の浴衣を、井上は選んだ。
浴衣は3千円だった。
男3人は、ホテルの備え付けの浴衣を着ていた。
ルキアと、井上は、きゃっきゃとはしゃぎながら、女湯に入っていく。
「うーむ。覗きたい・・・・」
一護の言葉に、石田が頭を叩く。
「不謹慎なこと言うな、黒崎!」
「いや、だって自分の彼女が温泉でアハハウフフなんだぜ?そういう石田も、実は井上の巨乳が見たいんじゃねーのか!」
「お前と一緒にするな、黒崎!」
「男湯、なんか賑やかそうだね」
「賑やかというか・・・ただ、バカなだけだ」
茶虎は、無言で温泉にすでに浸かっていた。
「茶虎君を見習え!」
「へいへい」
そんなこんなで、夜も更けていく。
寝る部屋は、一護と石田と茶虎の男トリオと、井上とルキアの女ペアに別れていた。
だが、いざ皆が寝静まった頃、ルキアと一護は部屋を抜け出して、ホテルの外にある梅の花を見上げていた。
「梅の花は・・・緋真姉様が好きだったのだ」
「そっか・・・・」
「緋真姉様も、もっと早くにあの病気が毒からきていると分かれば、生きていたかもしれないのに・・・・」
「ルキア。今生きてお前は俺の隣にいる。幸せか?」
「当たり前であろう!幸せでなければ、貴様などと付き合わぬ!」
「そっか・・・・・」
ルキアは、一護が送ったアメジストのネックレスをしてくれていた。
「あのさ、これ・・・・」
「ん?」
ホワイトゴールドの、アメジストがあしらわれた、指輪だった。
「これの何が?」
「裏、名前彫ってあるだろ」
「うむ。ICHIGOと彫ってある」
「そ。これ、エンゲージリング。婚約指輪だ」
「え・・・・」
ルキアの大きな瞳が、更に大きく見開かれた。
「かしてくれ」
「ん・・・」
一護に渡すと、一護はそれをルキアの指にはめた。
「こっちの指輪、裏にRUKIAって彫ってあるんだ。お前の手で、俺の指にはめてくれるか?」
「うむ・・・」
ルキアは真っ赤になりながら、一護の指の指輪をはめた。
「いつか・・・・結婚しよう」
「一護・・・・・・・」
ぽろりと、アメジストの瞳から涙が零れ落ちた。
「貴様は、私を置いていく・・・」
「だけど、魂魄は尸魂界にたどりつくんだろ?俺は絶対に現世のこと忘れない。本物の死神になって、ルキアとまた一から尸魂界で、始めるのも悪くねーだろ?」
「貴様という男は・・・・結婚、する。絶対に」
「白哉にはもう妹さん下さいって言った後だしな」
「貴様は、することすることで、私を驚かせるつもりか」
ルキアは、潤んだ瞳で一護を見つめていた。
「ルキア・・・・」
自然と唇が重なった。
「ん・・・んん・・・・」
何度かされたことのある、ディープキスだった。
梅の花を見上げて、しばらく無言で寄り添い合った後、眠気に負けてお互いの部屋に引き上げていった。
次の日も同じホテルに泊まったので、ルキアと一護は寝れるだけ寝ていた。夜更かししたせいで、昼前に起きてきた。
「黒崎君も、朽木さんも寝すぎ!」
「いや、ちょっとな・・・・」
「う、うむ・・・・・・」
「何、二人で・・・・・あ、指輪!」
目敏い井上に、すぐにばれてしまった。
「一護から・・・いつか結婚しようと、もらったのだ。エンゲージリングだそうだ」
「黒崎君、卒業旅行でプロポーズだなんてやるなー」
井上が驚いていた。
「尸魂界か現世か分からぬが、いずれ式を挙げると、思う」
「うわぁ!その時は絶対に呼んでね、朽木さん!」
「おいルキア、まだ日取りも決まってないんだ。場所もだ。そんなに、ほいほいばらすな」
一護が、ルキアに注意する。
「しかし、このエンゲージリングをしている限り、ばれてしまうであろう!」
「う、それは・・・・」
一護が言葉に詰まった。
「まぁ、朽木さんは一度死にかけたんだ。結婚して、末永く幸せに暮らすといいさ」
石田の言葉に、茶虎も頷く。
「一護、幸せにしてやれよ」
「だー、だからまだ俺ら高校を卒業したばかりだっつの!」
「でも、黒崎君もう18だよね。法律的には結婚できるよね」
井上の言葉に、一護もそうだなと思うが、まだ早い。
付き合いはじめて、まだ5か月なのだ。
せめて、後数年してから・・・・そう一護は思っていた。
そのまま、卒業旅行は終わった。
―-----------------------------------------------------------最後の冬が終わり、春がくる。
一護、ルキア、井上、石田、茶虎は高校を卒業した。
そして、卒業旅行に出かけた。
沖縄方面という意見もあったが、飯が不味いということで、一護とルキアは訪れたことがあるが、北海道になった。
まだ、雪が積もっていて、井上やルキアは、雪玉を作って投げ合ったりしていた。
一護と訪れえた時も雪が積もっていたが、病気のせいで無理はできなかったのだ。
みんなで雪ダルマとかまくらをつくり、個人個人で雪うさぎを作った。
ルキアだけ、なぜかチャッピーになっていたが、まぁかわいいのでよしと、みんな思った。
「ここのラーメンが美味いのだ!」
札幌の本格的なラーメンの老舗で、昼食をとった。
夕食は、温泉ホテルでカニ鍋を食べた。他にも海の幸を堪能した。
「北海道って、冬は寒いけど、美味しい物多いよね」
「そうだな。石田、茶虎、井上。おみやげは白い恋人と、夕張メロンキャンディがお勧めだ。金に余裕があるなら、カニや新巻鮭もありだ」
石田は家が病院で金持ちだから、知り合いという知り合いに、カ二と新巻鮭を送っていた。
井上はいつもお世話になっている親戚のおばさんに。
茶虎は自宅に自分用に。
温泉に入るとき、浴衣が安く売っていた。
ルキアと井上は、互いにこの浴衣がいい、いやこっちがいいと、見せあっていた。
「ルキア、気に入ったのあるか?買ってやるから」
「む。この浴衣がいいのだ!」
萌黄色の、紅葉をの柄を散らしてある浴衣だった。
「いいなぁ、朽木さん」
「井上さん、良ければ僕が買ってあげるよ」
「え、石田君!?いいの?」
「黒崎のやつ、鈍感だから井上さんの心に気づかないんだろう」
そんな石田に、井上は首を横に振った。
「ううん。ずっと前に告白したの。でも、朽木さんが好きだって言われて、断られちゃった」
「そっか・・・・その浴衣でいいのかい?」
「うん。これがいいの」
瑠璃色で、蝶の柄の浴衣を、井上は選んだ。
浴衣は3千円だった。
男3人は、ホテルの備え付けの浴衣を着ていた。
ルキアと、井上は、きゃっきゃとはしゃぎながら、女湯に入っていく。
「うーむ。覗きたい・・・・」
一護の言葉に、石田が頭を叩く。
「不謹慎なこと言うな、黒崎!」
「いや、だって自分の彼女が温泉でアハハウフフなんだぜ?そういう石田も、実は井上の巨乳が見たいんじゃねーのか!」
「お前と一緒にするな、黒崎!」
「男湯、なんか賑やかそうだね」
「賑やかというか・・・ただ、バカなだけだ」
茶虎は、無言で温泉にすでに浸かっていた。
「茶虎君を見習え!」
「へいへい」
そんなこんなで、夜も更けていく。
寝る部屋は、一護と石田と茶虎の男トリオと、井上とルキアの女ペアに別れていた。
だが、いざ皆が寝静まった頃、ルキアと一護は部屋を抜け出して、ホテルの外にある梅の花を見上げていた。
「梅の花は・・・緋真姉様が好きだったのだ」
「そっか・・・・」
「緋真姉様も、もっと早くにあの病気が毒からきていると分かれば、生きていたかもしれないのに・・・・」
「ルキア。今生きてお前は俺の隣にいる。幸せか?」
「当たり前であろう!幸せでなければ、貴様などと付き合わぬ!」
「そっか・・・・・」
ルキアは、一護が送ったアメジストのネックレスをしてくれていた。
「あのさ、これ・・・・」
「ん?」
ホワイトゴールドの、アメジストがあしらわれた、指輪だった。
「これの何が?」
「裏、名前彫ってあるだろ」
「うむ。ICHIGOと彫ってある」
「そ。これ、エンゲージリング。婚約指輪だ」
「え・・・・」
ルキアの大きな瞳が、更に大きく見開かれた。
「かしてくれ」
「ん・・・」
一護に渡すと、一護はそれをルキアの指にはめた。
「こっちの指輪、裏にRUKIAって彫ってあるんだ。お前の手で、俺の指にはめてくれるか?」
「うむ・・・」
ルキアは真っ赤になりながら、一護の指の指輪をはめた。
「いつか・・・・結婚しよう」
「一護・・・・・・・」
ぽろりと、アメジストの瞳から涙が零れ落ちた。
「貴様は、私を置いていく・・・」
「だけど、魂魄は尸魂界にたどりつくんだろ?俺は絶対に現世のこと忘れない。本物の死神になって、ルキアとまた一から尸魂界で、始めるのも悪くねーだろ?」
「貴様という男は・・・・結婚、する。絶対に」
「白哉にはもう妹さん下さいって言った後だしな」
「貴様は、することすることで、私を驚かせるつもりか」
ルキアは、潤んだ瞳で一護を見つめていた。
「ルキア・・・・」
自然と唇が重なった。
「ん・・・んん・・・・」
何度かされたことのある、ディープキスだった。
梅の花を見上げて、しばらく無言で寄り添い合った後、眠気に負けてお互いの部屋に引き上げていった。
次の日も同じホテルに泊まったので、ルキアと一護は寝れるだけ寝ていた。夜更かししたせいで、昼前に起きてきた。
「黒崎君も、朽木さんも寝すぎ!」
「いや、ちょっとな・・・・」
「う、うむ・・・・・・」
「何、二人で・・・・・あ、指輪!」
目敏い井上に、すぐにばれてしまった。
「一護から・・・いつか結婚しようと、もらったのだ。エンゲージリングだそうだ」
「黒崎君、卒業旅行でプロポーズだなんてやるなー」
井上が驚いていた。
「尸魂界か現世か分からぬが、いずれ式を挙げると、思う」
「うわぁ!その時は絶対に呼んでね、朽木さん!」
「おいルキア、まだ日取りも決まってないんだ。場所もだ。そんなに、ほいほいばらすな」
一護が、ルキアに注意する。
「しかし、このエンゲージリングをしている限り、ばれてしまうであろう!」
「う、それは・・・・」
一護が言葉に詰まった。
「まぁ、朽木さんは一度死にかけたんだ。結婚して、末永く幸せに暮らすといいさ」
石田の言葉に、茶虎も頷く。
「一護、幸せにしてやれよ」
「だー、だからまだ俺ら高校を卒業したばかりだっつの!」
「でも、黒崎君もう18だよね。法律的には結婚できるよね」
井上の言葉に、一護もそうだなと思うが、まだ早い。
付き合いはじめて、まだ5か月なのだ。
せめて、後数年してから・・・・そう一護は思っていた。
そのまま、卒業旅行は終わった。
―-----------------------------------------------------------最後の冬が終わり、春がくる。
最後の冬 ルキアの目覚めと卒業
ルキアが仮死状態になって、半月が経とうとしていた。
恋次と一緒になって、戌吊を捜索しまくった。
白哉のほうも、人手を貸してくた。
「あった、この草だ!」
恋次の記憶が本当なら、腹を減らした子供の頃、その草は甘いということで、よくルキアと一緒になって食べていたそうだ。
4番隊の調査により、葉や茎の部分には何もないが、花びらに少量の毒を含んでいることが分かった。
少量を口にするだけならいい。だが、ルキアはよくその草の、特に甘い花を好んで食べていたという。
流魂街から瀞霊廷に来た者だけでなく、流魂街でもルキアと同じ病は密かに広がっていた。みんな、その甘いという毒草を、そうと知らずに口にし続けた者だった。
さっそく、流魂街でこの花は毒草であり、花びらを食べると死に至るという情報を流した。
すでに口にしていた者達の中から、大量に摂取しているのに、発病しない者を見つけて、その者の血を抜いて、検査に回された。
結果、毒に対しての血清があるとのことだった。
ますは、4番隊で同じ病にかかっているの者に、できあがったばかりの 抗毒血清を打ち、数日様子を見ると、病が癒え始めた。
流魂街でも同じ病気に苦しむ者たちに、4番隊は無料で抗毒血清を打ってやった。
皆、奇跡だと喜んだ。
朽木邸で仮死状態になっているルキアを、まずは仮死状態から脱する解毒剤を打った。
ルキアが息を吹き返した。
一護、恋次、白哉の見守る中、虎鉄勇音が、抗毒血清を注射した。
即効性ではないので、時間が必要だったが、数時間後には頬に赤みがさしていた。
「朽木副隊長は、危険な域を脱しました。あとは、この抗毒血清を固めた薬を飲ませ続けてください」
「すまぬ、虎鉄隊長。世話になった」
白哉が、心底安堵したように、礼を言った。
「いえ、私を含めた4番隊は怪我や病を癒す場所ですので」
一護にとって、虎鉄隊長は神様に見えた。
「ああ、そういえば涅マユリに、仮死状態にするとき金払えるのかと言ってたから、朽木家なら払ってくれるさっていってしまったんだが・・・・」
「ふ。ルキアがそのおかげで助かったのだ。いくらでも金を与えよう。とりあえず、1億環くらいでどうだ」
「いや、流石にそれは払いすぎだと思う。あと、俺は実験体になってやるって言ったんだけど、なりたくないからスルーでもいいよな」
そういう一護に、恋次が笑った。
「涅隊長のことなんざ気にするな!ルキアは助かったんだし、今日はぱーっと飲もうぜ」
「でも、それもこれも、恋次があの草を食べていたっていう発言から始まったんだよな」
一護の言葉に、恋次が頷く。
「おう。みんな草を食べていたっていうから、もしかして病の原因なんじゃねーかと半信半疑だったんだが、あの白い甘い花に毒があったなんてなぁ」
「何はともあれ、ありがとな恋次。ルキアの命の恩人だ」
「やめろやめろ。そんな大したことしてねーよ」
「恋次、おまえには特別休暇と、報酬金を支払おう」
「え、まじっすか!やった!」
そのまま、酒宴となった。
ルキアはまだ眠ったままだが、一護が定期的に薬を飲ませていた。もちろん、口移しだ。
酒にある程度酔って、酒宴は打ち切られた。
「んー、ルキア大好きだー。早く目を覚ましてくれ・・・・・」
「ん・・・・・」
「ルキア?」
「一護・・・・?ここはあの世ではないのか?」
ルキアの覚醒に、一護はルキアを思い切り抱き締めた。
「こら、一護、苦しい!」
「あ、ああすまねぇ。ルキア、良かった・・・一度、本当に死んだんだ。話は長くなるけど、涅マユリの電気ショックで息を吹き返して、その後仮死状態にする薬を打ってもたんだ。んで、ルキアが仮死状態になっている半月の間に、病の原因を突き止めて、抗毒血清打ってもらったんだ」
ルキアは、不思議そうに眼を瞬かせた。
「抗毒血清?私は、何か毒を口にしていたのか?」
「恋次も口にしてたけど、飢えた時に甘い草の葉や花を食べていただろう」
「ああ、あの白い花か。あれはまるで蜜を舐めているようで、美味かった」
「その花に、毒があったんだ。長年蓄積された毒が、病気の原因だったんだ」
「それでは・・・姉様も・・・・・・?」
「多分な。飢えて、同じ白い花を口にしていたんじゃねーかな」
ルキアは、一護を抱き締めていた。
「ルキア?」
「病気で諦ていた貴様との未来が、続いている」
「そうだな」
「兄様も、貴様との交際を認めて下さっている」
一護は、半月の間尸魂界にいたことになるのだが、大学の受験日にはちゃんと現世に戻り大学を合格していた。
井上も合格していたようだ。
ルキアは決まった時間に、病を完全に治すために、抗毒血清を固めた薬を飲んだ。
「まずいな、これは・・・」
「ああ、俺も思った。でもちゃんと飲まないと、病が完全に癒えるまで、時間がかかっちまう」
「なぜ、この薬の味が苦いと知っておるのだ」
「そりゃ、意識のない時に口に含んで飲ませてたから」
ルキアは、顔を真っ赤にさせた。
「なんだよ。今頃キス程度で赤くなるなよ」
「兄様や恋次がいる場所でもしたのか!?」
「ああ、そうだぜ」
ルキアは、一護を睨んだ。
「責任をもて」
「ああ。責任もって、嫁にもらってやる。っていっても。将来設計図だけどな」
「一護の嫁・・・・あああああ」
考えただけでも、幸せで、ルキアは布団に横になった。
「どうしたんだ?」
「な、なんでもない、たわけ!」
照れているからなど、口が裂けても言えなかった。
そのまま、ルキアは卒業式の数日前まで、療養していたが、やっと白哉の許しをもらって、現世に戻ってきた。
「朽木さーーーん!」
いいなりタックルをされて、ルキアがふっ飛ばさそうになった。
「い、井上、激しいからもっと優しくしてくれ」
「あ、ごめんなさい。私ったら・・・でも、朽木さんが無事で良かった!本当によかったよう!」
涙を零し、鼻水まで垂れだした井上に、ルキアはハンカチを渡した。
「ありがとう、朽木さん!」
鼻水を盛大にかんでいたが、ルキアは気にしなかった。そのまま、そのハンカチは井上のものになった。何気に金糸や銀糸で刺繍がされた、絹でできた高級品であったが、そんなのはどうでもよかった。
また、井上の友人として傍に居れることが、嬉しかった。
「朽木さん、病気治ったんだね。良かった」
石田は、医学部に合格していた。難関大学であったが、勉強のできる石田にはどうってことはなかった。
「うむ、良かった」
茶虎は、本格的にボクシングを始めるために、ボクシング部のある大学を受けて、受かっていた。そこそこ頭のいい大学だった。
そのまま、何事もなく数日が過ぎた。
いよいよ、卒業式の日がやってきた。
ルキアも井上も、盛大に泣いていた。
「うわーん、みんなと離れたくないよう」
「井上さんは、黒崎と同じ大学じゃあないか」
「でも、石田君も茶虎君も、朽木さんも、離れ離れになっちゃう・・・・・」
「井上、それは仕方のないことだ」
茶虎の言葉に、井上はますます泣いた。
「私は、月に数回は現世にくるから・・・・ぐすっ・・・寂しくなるが、会えなくなるわけfrはない」
ルキアも泣いていたが、井上ほどではなかった。
「朽木さん、約束だよ!卒業しても会いにきてね!」
「ああ。一護に会いくるついでに、大学とやらにも顔を出す」
「そういえば、黒崎君は?」
「ああ、下級生に呼ばれていたみたいだ」
そこへ、一護がやってきた。
ボタンは全部むしられていた。
「次、石田だってよ」
「ええ、なんで僕が!」
「いいから、行って来い!」
一護に押しやられて、石田は下級生にもみくちゃにされて、制服のボタンを全部奪われた。
「茶虎にも、来てるぜ」
「ああ、あの子は問題ない。今交際中だ」
「え、まじかよ茶虎」
「うむ」
最後に、みんなで卒業旅行に出かけることになった。またになるが、北海道だった。
-------------------------------------------二人の最後の冬は終わった。春になろうと、していた。
恋次と一緒になって、戌吊を捜索しまくった。
白哉のほうも、人手を貸してくた。
「あった、この草だ!」
恋次の記憶が本当なら、腹を減らした子供の頃、その草は甘いということで、よくルキアと一緒になって食べていたそうだ。
4番隊の調査により、葉や茎の部分には何もないが、花びらに少量の毒を含んでいることが分かった。
少量を口にするだけならいい。だが、ルキアはよくその草の、特に甘い花を好んで食べていたという。
流魂街から瀞霊廷に来た者だけでなく、流魂街でもルキアと同じ病は密かに広がっていた。みんな、その甘いという毒草を、そうと知らずに口にし続けた者だった。
さっそく、流魂街でこの花は毒草であり、花びらを食べると死に至るという情報を流した。
すでに口にしていた者達の中から、大量に摂取しているのに、発病しない者を見つけて、その者の血を抜いて、検査に回された。
結果、毒に対しての血清があるとのことだった。
ますは、4番隊で同じ病にかかっているの者に、できあがったばかりの 抗毒血清を打ち、数日様子を見ると、病が癒え始めた。
流魂街でも同じ病気に苦しむ者たちに、4番隊は無料で抗毒血清を打ってやった。
皆、奇跡だと喜んだ。
朽木邸で仮死状態になっているルキアを、まずは仮死状態から脱する解毒剤を打った。
ルキアが息を吹き返した。
一護、恋次、白哉の見守る中、虎鉄勇音が、抗毒血清を注射した。
即効性ではないので、時間が必要だったが、数時間後には頬に赤みがさしていた。
「朽木副隊長は、危険な域を脱しました。あとは、この抗毒血清を固めた薬を飲ませ続けてください」
「すまぬ、虎鉄隊長。世話になった」
白哉が、心底安堵したように、礼を言った。
「いえ、私を含めた4番隊は怪我や病を癒す場所ですので」
一護にとって、虎鉄隊長は神様に見えた。
「ああ、そういえば涅マユリに、仮死状態にするとき金払えるのかと言ってたから、朽木家なら払ってくれるさっていってしまったんだが・・・・」
「ふ。ルキアがそのおかげで助かったのだ。いくらでも金を与えよう。とりあえず、1億環くらいでどうだ」
「いや、流石にそれは払いすぎだと思う。あと、俺は実験体になってやるって言ったんだけど、なりたくないからスルーでもいいよな」
そういう一護に、恋次が笑った。
「涅隊長のことなんざ気にするな!ルキアは助かったんだし、今日はぱーっと飲もうぜ」
「でも、それもこれも、恋次があの草を食べていたっていう発言から始まったんだよな」
一護の言葉に、恋次が頷く。
「おう。みんな草を食べていたっていうから、もしかして病の原因なんじゃねーかと半信半疑だったんだが、あの白い甘い花に毒があったなんてなぁ」
「何はともあれ、ありがとな恋次。ルキアの命の恩人だ」
「やめろやめろ。そんな大したことしてねーよ」
「恋次、おまえには特別休暇と、報酬金を支払おう」
「え、まじっすか!やった!」
そのまま、酒宴となった。
ルキアはまだ眠ったままだが、一護が定期的に薬を飲ませていた。もちろん、口移しだ。
酒にある程度酔って、酒宴は打ち切られた。
「んー、ルキア大好きだー。早く目を覚ましてくれ・・・・・」
「ん・・・・・」
「ルキア?」
「一護・・・・?ここはあの世ではないのか?」
ルキアの覚醒に、一護はルキアを思い切り抱き締めた。
「こら、一護、苦しい!」
「あ、ああすまねぇ。ルキア、良かった・・・一度、本当に死んだんだ。話は長くなるけど、涅マユリの電気ショックで息を吹き返して、その後仮死状態にする薬を打ってもたんだ。んで、ルキアが仮死状態になっている半月の間に、病の原因を突き止めて、抗毒血清打ってもらったんだ」
ルキアは、不思議そうに眼を瞬かせた。
「抗毒血清?私は、何か毒を口にしていたのか?」
「恋次も口にしてたけど、飢えた時に甘い草の葉や花を食べていただろう」
「ああ、あの白い花か。あれはまるで蜜を舐めているようで、美味かった」
「その花に、毒があったんだ。長年蓄積された毒が、病気の原因だったんだ」
「それでは・・・姉様も・・・・・・?」
「多分な。飢えて、同じ白い花を口にしていたんじゃねーかな」
ルキアは、一護を抱き締めていた。
「ルキア?」
「病気で諦ていた貴様との未来が、続いている」
「そうだな」
「兄様も、貴様との交際を認めて下さっている」
一護は、半月の間尸魂界にいたことになるのだが、大学の受験日にはちゃんと現世に戻り大学を合格していた。
井上も合格していたようだ。
ルキアは決まった時間に、病を完全に治すために、抗毒血清を固めた薬を飲んだ。
「まずいな、これは・・・」
「ああ、俺も思った。でもちゃんと飲まないと、病が完全に癒えるまで、時間がかかっちまう」
「なぜ、この薬の味が苦いと知っておるのだ」
「そりゃ、意識のない時に口に含んで飲ませてたから」
ルキアは、顔を真っ赤にさせた。
「なんだよ。今頃キス程度で赤くなるなよ」
「兄様や恋次がいる場所でもしたのか!?」
「ああ、そうだぜ」
ルキアは、一護を睨んだ。
「責任をもて」
「ああ。責任もって、嫁にもらってやる。っていっても。将来設計図だけどな」
「一護の嫁・・・・あああああ」
考えただけでも、幸せで、ルキアは布団に横になった。
「どうしたんだ?」
「な、なんでもない、たわけ!」
照れているからなど、口が裂けても言えなかった。
そのまま、ルキアは卒業式の数日前まで、療養していたが、やっと白哉の許しをもらって、現世に戻ってきた。
「朽木さーーーん!」
いいなりタックルをされて、ルキアがふっ飛ばさそうになった。
「い、井上、激しいからもっと優しくしてくれ」
「あ、ごめんなさい。私ったら・・・でも、朽木さんが無事で良かった!本当によかったよう!」
涙を零し、鼻水まで垂れだした井上に、ルキアはハンカチを渡した。
「ありがとう、朽木さん!」
鼻水を盛大にかんでいたが、ルキアは気にしなかった。そのまま、そのハンカチは井上のものになった。何気に金糸や銀糸で刺繍がされた、絹でできた高級品であったが、そんなのはどうでもよかった。
また、井上の友人として傍に居れることが、嬉しかった。
「朽木さん、病気治ったんだね。良かった」
石田は、医学部に合格していた。難関大学であったが、勉強のできる石田にはどうってことはなかった。
「うむ、良かった」
茶虎は、本格的にボクシングを始めるために、ボクシング部のある大学を受けて、受かっていた。そこそこ頭のいい大学だった。
そのまま、何事もなく数日が過ぎた。
いよいよ、卒業式の日がやってきた。
ルキアも井上も、盛大に泣いていた。
「うわーん、みんなと離れたくないよう」
「井上さんは、黒崎と同じ大学じゃあないか」
「でも、石田君も茶虎君も、朽木さんも、離れ離れになっちゃう・・・・・」
「井上、それは仕方のないことだ」
茶虎の言葉に、井上はますます泣いた。
「私は、月に数回は現世にくるから・・・・ぐすっ・・・寂しくなるが、会えなくなるわけfrはない」
ルキアも泣いていたが、井上ほどではなかった。
「朽木さん、約束だよ!卒業しても会いにきてね!」
「ああ。一護に会いくるついでに、大学とやらにも顔を出す」
「そういえば、黒崎君は?」
「ああ、下級生に呼ばれていたみたいだ」
そこへ、一護がやってきた。
ボタンは全部むしられていた。
「次、石田だってよ」
「ええ、なんで僕が!」
「いいから、行って来い!」
一護に押しやられて、石田は下級生にもみくちゃにされて、制服のボタンを全部奪われた。
「茶虎にも、来てるぜ」
「ああ、あの子は問題ない。今交際中だ」
「え、まじかよ茶虎」
「うむ」
最後に、みんなで卒業旅行に出かけることになった。またになるが、北海道だった。
-------------------------------------------二人の最後の冬は終わった。春になろうと、していた。
最後の冬 生きているルキア
月日が経っていくのはあっという間で。
高校生活も、残り2か月になっていた。
ルキアは、一時期病気のせいでやせ細ったが、今は小健康状態で、前より肉がついた。
ルキアの顔色がいいので、一護はいろんな場所をルキアと訪れた。
一護にも大学受験が控えていたが、今の成績でも通る普通の大学を選んだ。国際大学で、ドイツ語を第二語学で専攻しようと、一護は思っていた。
ルキアと井上と一緒に、キャンパス見学に訪れていた。
ルキアが大学に行くことはないのだが、大学がどういうところか見たいというので、同じ大学を進むと決めた井上と一緒に、見学に訪れていた。
「お、女子高校生だ。かわいー」
「かわいいなぁ。声かけようかな」
一護が、持ち前のその面の凶悪さを見せつけると、声をかけようとしていた男共は、散り散りになって逃げていった。
「けっ」
「黒崎君、警戒しすぎだよ」
「俺のルキアと、友人の井上を変な目で見る奴は許さねえ」
よく高校で、英語の分からないところを、アメリカ留学から帰ってきたと、質問されるのだが、いつも何かにつけて回答を拒んだ。
何かあると、いつも記憶置換を使っていた。
多用するのはよくないと言っている本人がこれなので、一護も何も言わなった。
あれから、ルキアと肌を重ねることはなかった。
多分、あの日が最初で最後だろう。一護はそう思った。
一護は絶対に諦めないと言いつつ、ルキアが死ぬかもしれないということを、少しずつ受け入れていた。
ルキア。
―----------------------俺の初恋の、俺の始めての彼女。
-------------------------死んでほしくない。
なんとか助かる方法はないかと、石田の父親の経営する病院で診てもらったが、病名さえ分からぬ病気で、手の打ちようがないと言われた。
その時になって、石田に知られた。ルキアが末期の不治の病であることを。茶虎にも教えた。
二人して、病気についていろいろ調べてもらったが、症例もなく、どうやら尸魂界に住まう者だけがかかる病のようであった。
4番隊から、連絡が入った。
病気になる者は、皆、流魂街出身であるということ。流魂街から瀞霊廷に入ってきた者のみがかかる病気であること。
白哉の亡き妻、緋真もそうであった。
流魂街出身で、白哉の妻として瀞霊廷に住んでいた。
流魂街に何かないかと、一護はやみくもに探してみたが、結局何も見つけれなかった。流魂街は広い。広すぎる。
ルキアの小健康状態が続くうちに、行ける場所は行っておきたかった。
冬休みに入り、クリスマスを家族で祝い、年末年始も家族で祝った。勿論、その中にはルキアも含まれていた。
一心は、一護にはお年玉をくれないくせに、ルキアには2万円のお年玉をあげていた。
遊子と夏梨は7千円ずつだった。
「一心殿、お年玉なぞいりません。どうか、このお金で家族と何か美味しいものでも・・・」
「ああ、ルキアちゃん気にしなくていいから。あの朽木家の子だと、2万なんてしけてるかもしれんが」
「いえ、お心遣いとても嬉しいです」
ルキアの笑顔に、一心も笑顔になった。
「おい一護。ルキアちゃん病気なのか?」
「なんで分かるんだ」
「あのなぁ。これでも一応、医者のはしくれだぞ」
一護は、ここまできたのだからと、隠さずに一心にルキアの現状を語った。
「流魂街か・・・戌吊が、ルキアちゃんの出身地だよな。俺は、そこになにかあるような気がするんだ・・・・」
「流魂街の、ルキアの出身地戌吊か・・・今度、尸魂界に行った時、訪れてみる」
「馬鹿野郎!時間がねーんだろ!」
「だからって、ルキアを一人にできるかよ!」
「まぁそれは分からんでもないが・・・とりあえず、明日から3泊4日で北海道いくんだろ?帰ってきたら、戌吊で何か情報でも掴んで来い!」
「わーったよ」
一護は、二人きりの北海道旅行に行った。
ルキアの小健康状態は保たれたままで、吐血することもなかった。
「ルキア、ほら薬・・・・・」
「すまぬ・・・・・」
痛み止めと、肺の薬を飲んだ。
「私が吐血するなど・・・まるで、浮竹隊長のようだな」
「あの人は病弱だったし、肺を患っていたから仕方ないだろ。お前は違う」
「そうだな。もっと酷い。死期が迫っている」
「絶対に死なせねぇ!」
ルキアを胸にかき抱いた。
札幌で本場のラーメンを食べた。ホテルでカニ鍋を食べた。お土産に送る前に、白い恋人と夕張メロンのキャンディも食べてみた。
どれも美味しかった。
「ふふ・・・・死にゆく者にしては、食い意地が張り過ぎかな・・・・」
「んなことねぇよ!」
季節は冬で、ちょうど雪まつりが開かれていた。
いろんな形の、精巧なつくりの雪像を見ていると、ふとルキアの袖白雪のことを思い出した。
「なぁ。氷雪系の斬魄刀で、生きてる者を仮死状態にすることはできるか?」
「できるが、それがどうかしたか?」
「それだ!」
一護は語った。
ルキアの命が尽きる前に、一度仮死状態にして、その間に特効薬を作らせるのだと。
「私を仮死状態にか・・・・そのようなこと、思いもつかなかった。だが、袖白雪では、所有者である私を仮死状態には・・・・」
「冬獅郎がいるじゃねぇか!」
「日番谷隊長か・・・・」
「この旅行が終わったら、すぐ尸魂界へ行くぞ!」
「分かった・・・」
その旅行では、体は重ねなかった。ルキアの体力を無駄に消耗するからだ。
そして空座町に戻り、尸魂界へと渡る。
冬獅郎に頼み込んでみたが、答えは否だった。
「俺の氷輪丸は、凍り付けた相手の命を奪う。朽木の袖白雪とは違う」
「そんな・・・・・」
一護は、愕然となった。
こうしている間にも、病魔はルキアの体を蝕んでいく。
「ぐ・・・ごほっごほっ・・・・」
ルキアは、いきなり咳込み、大量の血を吐いた。
「ルキア!」
「ふふ・・・・思ったより、病気の進行が早いようだ。私はここまでだな・・・一護、すまぬ。愛している。大好きだ。お前を残して逝くこと、どうか許してほしい・・・・・」
「だめだ、ルキア、まだ逝くな!ルキア!!」
浅い呼吸を繰り返すルキアを、最後の可能性をかけて、12番隊の技術開発局にその体を抱き抱えて移動した。
「おい、ここなら、死神を仮死状態にできる何かねぇのかよ!」
12番隊隊長である、涅マユリに食ってかかった。
「なんだネ、やぶからぼうに。おや、朽木副隊長ではないかネ。死にかけと見えるが・・・・」
「仮死状態にする何かはねぇのかって聞いてるんだよ!!!!」
「あるヨ。しかし、君にその金が支払えるのかネ?」
「朽木家が、金ならいくらでも払ってくれるはずだ!それでも足りないなら、俺を実験体にするなり好きなようにしやがれ!!」
涅マユリは、にまりと笑んだ。
「死神であり、人間であり、虚であり、滅却師の血を引いている君を実験体にか。いいネ、気に入ったヨ!ええと、ここでもないこれでもない・・・・」
「早くしやがれ!ルキア、だめだ、まだ逝くな!俺を置いて逝かないでくれ!」
一護の言葉に、うっすらとルキアは瞳を開けた。
「一護・・・貴様と在れたこの数か月・・・悪く、なかった・・・・・・・」
「おい、ルキア、ルキアーーーーーーーーー!!!1」
ルキアの呼吸が止まった。脈もなくなっていく
「どきたまえ!」
涅マユリは、どこから取り出したのか、電気ショックでルキアに刺激を与えた。
「ぐ・・・ごほっごほっ」
ルキアは、息を吹き返した。
その間に、何かの注射を打つ。
すると、ルキアの呼吸と脈が止まった。
「おい、ルキア、ルキア!!」
「うるさいネ。今、仮死状態にする薬を打ったところだヨ。即効性だから、朽木副隊長は、仮死状態だが、まだ生きているヨ」
「そうか・・・・よかった・・・・・」
一護は、冷たくなっていくルキアを抱き抱えた。
「どこかに寝かせておくとか、液体の入ったカプセルに入れるとか、そういうのはねぇよな?」
「ないネ。どこに置いておこうが、仮死状態のままだヨ。解毒薬を注射するまではネ」
一護は、朽木邸で白哉と恋次に全てを話し、仮死状態のルキアを見守ってくれるように頼みこんだ。
白哉は、ルキアがなんとか一命を取り留めている姿に、けれど現状は死んだと同じなので、悲しそうな目をしていた。
「ルキアが・・・不治の病の末期・・・くそ、ルキアの奴なんで教えてくれなかったんだよ!」
「それは、恋次に心配をかけたくなかったんだろう」
布団の上で、冷たいルキアは、本当に死んでいるようで。
でも、仮死状態なのだ。
顔色はそれほど悪くなかったが、白かった。病気独特いの青白さはなかった。
--------------------------------------------二人の最後の冬。ルキアは、生きていた。
高校生活も、残り2か月になっていた。
ルキアは、一時期病気のせいでやせ細ったが、今は小健康状態で、前より肉がついた。
ルキアの顔色がいいので、一護はいろんな場所をルキアと訪れた。
一護にも大学受験が控えていたが、今の成績でも通る普通の大学を選んだ。国際大学で、ドイツ語を第二語学で専攻しようと、一護は思っていた。
ルキアと井上と一緒に、キャンパス見学に訪れていた。
ルキアが大学に行くことはないのだが、大学がどういうところか見たいというので、同じ大学を進むと決めた井上と一緒に、見学に訪れていた。
「お、女子高校生だ。かわいー」
「かわいいなぁ。声かけようかな」
一護が、持ち前のその面の凶悪さを見せつけると、声をかけようとしていた男共は、散り散りになって逃げていった。
「けっ」
「黒崎君、警戒しすぎだよ」
「俺のルキアと、友人の井上を変な目で見る奴は許さねえ」
よく高校で、英語の分からないところを、アメリカ留学から帰ってきたと、質問されるのだが、いつも何かにつけて回答を拒んだ。
何かあると、いつも記憶置換を使っていた。
多用するのはよくないと言っている本人がこれなので、一護も何も言わなった。
あれから、ルキアと肌を重ねることはなかった。
多分、あの日が最初で最後だろう。一護はそう思った。
一護は絶対に諦めないと言いつつ、ルキアが死ぬかもしれないということを、少しずつ受け入れていた。
ルキア。
―----------------------俺の初恋の、俺の始めての彼女。
-------------------------死んでほしくない。
なんとか助かる方法はないかと、石田の父親の経営する病院で診てもらったが、病名さえ分からぬ病気で、手の打ちようがないと言われた。
その時になって、石田に知られた。ルキアが末期の不治の病であることを。茶虎にも教えた。
二人して、病気についていろいろ調べてもらったが、症例もなく、どうやら尸魂界に住まう者だけがかかる病のようであった。
4番隊から、連絡が入った。
病気になる者は、皆、流魂街出身であるということ。流魂街から瀞霊廷に入ってきた者のみがかかる病気であること。
白哉の亡き妻、緋真もそうであった。
流魂街出身で、白哉の妻として瀞霊廷に住んでいた。
流魂街に何かないかと、一護はやみくもに探してみたが、結局何も見つけれなかった。流魂街は広い。広すぎる。
ルキアの小健康状態が続くうちに、行ける場所は行っておきたかった。
冬休みに入り、クリスマスを家族で祝い、年末年始も家族で祝った。勿論、その中にはルキアも含まれていた。
一心は、一護にはお年玉をくれないくせに、ルキアには2万円のお年玉をあげていた。
遊子と夏梨は7千円ずつだった。
「一心殿、お年玉なぞいりません。どうか、このお金で家族と何か美味しいものでも・・・」
「ああ、ルキアちゃん気にしなくていいから。あの朽木家の子だと、2万なんてしけてるかもしれんが」
「いえ、お心遣いとても嬉しいです」
ルキアの笑顔に、一心も笑顔になった。
「おい一護。ルキアちゃん病気なのか?」
「なんで分かるんだ」
「あのなぁ。これでも一応、医者のはしくれだぞ」
一護は、ここまできたのだからと、隠さずに一心にルキアの現状を語った。
「流魂街か・・・戌吊が、ルキアちゃんの出身地だよな。俺は、そこになにかあるような気がするんだ・・・・」
「流魂街の、ルキアの出身地戌吊か・・・今度、尸魂界に行った時、訪れてみる」
「馬鹿野郎!時間がねーんだろ!」
「だからって、ルキアを一人にできるかよ!」
「まぁそれは分からんでもないが・・・とりあえず、明日から3泊4日で北海道いくんだろ?帰ってきたら、戌吊で何か情報でも掴んで来い!」
「わーったよ」
一護は、二人きりの北海道旅行に行った。
ルキアの小健康状態は保たれたままで、吐血することもなかった。
「ルキア、ほら薬・・・・・」
「すまぬ・・・・・」
痛み止めと、肺の薬を飲んだ。
「私が吐血するなど・・・まるで、浮竹隊長のようだな」
「あの人は病弱だったし、肺を患っていたから仕方ないだろ。お前は違う」
「そうだな。もっと酷い。死期が迫っている」
「絶対に死なせねぇ!」
ルキアを胸にかき抱いた。
札幌で本場のラーメンを食べた。ホテルでカニ鍋を食べた。お土産に送る前に、白い恋人と夕張メロンのキャンディも食べてみた。
どれも美味しかった。
「ふふ・・・・死にゆく者にしては、食い意地が張り過ぎかな・・・・」
「んなことねぇよ!」
季節は冬で、ちょうど雪まつりが開かれていた。
いろんな形の、精巧なつくりの雪像を見ていると、ふとルキアの袖白雪のことを思い出した。
「なぁ。氷雪系の斬魄刀で、生きてる者を仮死状態にすることはできるか?」
「できるが、それがどうかしたか?」
「それだ!」
一護は語った。
ルキアの命が尽きる前に、一度仮死状態にして、その間に特効薬を作らせるのだと。
「私を仮死状態にか・・・・そのようなこと、思いもつかなかった。だが、袖白雪では、所有者である私を仮死状態には・・・・」
「冬獅郎がいるじゃねぇか!」
「日番谷隊長か・・・・」
「この旅行が終わったら、すぐ尸魂界へ行くぞ!」
「分かった・・・」
その旅行では、体は重ねなかった。ルキアの体力を無駄に消耗するからだ。
そして空座町に戻り、尸魂界へと渡る。
冬獅郎に頼み込んでみたが、答えは否だった。
「俺の氷輪丸は、凍り付けた相手の命を奪う。朽木の袖白雪とは違う」
「そんな・・・・・」
一護は、愕然となった。
こうしている間にも、病魔はルキアの体を蝕んでいく。
「ぐ・・・ごほっごほっ・・・・」
ルキアは、いきなり咳込み、大量の血を吐いた。
「ルキア!」
「ふふ・・・・思ったより、病気の進行が早いようだ。私はここまでだな・・・一護、すまぬ。愛している。大好きだ。お前を残して逝くこと、どうか許してほしい・・・・・」
「だめだ、ルキア、まだ逝くな!ルキア!!」
浅い呼吸を繰り返すルキアを、最後の可能性をかけて、12番隊の技術開発局にその体を抱き抱えて移動した。
「おい、ここなら、死神を仮死状態にできる何かねぇのかよ!」
12番隊隊長である、涅マユリに食ってかかった。
「なんだネ、やぶからぼうに。おや、朽木副隊長ではないかネ。死にかけと見えるが・・・・」
「仮死状態にする何かはねぇのかって聞いてるんだよ!!!!」
「あるヨ。しかし、君にその金が支払えるのかネ?」
「朽木家が、金ならいくらでも払ってくれるはずだ!それでも足りないなら、俺を実験体にするなり好きなようにしやがれ!!」
涅マユリは、にまりと笑んだ。
「死神であり、人間であり、虚であり、滅却師の血を引いている君を実験体にか。いいネ、気に入ったヨ!ええと、ここでもないこれでもない・・・・」
「早くしやがれ!ルキア、だめだ、まだ逝くな!俺を置いて逝かないでくれ!」
一護の言葉に、うっすらとルキアは瞳を開けた。
「一護・・・貴様と在れたこの数か月・・・悪く、なかった・・・・・・・」
「おい、ルキア、ルキアーーーーーーーーー!!!1」
ルキアの呼吸が止まった。脈もなくなっていく
「どきたまえ!」
涅マユリは、どこから取り出したのか、電気ショックでルキアに刺激を与えた。
「ぐ・・・ごほっごほっ」
ルキアは、息を吹き返した。
その間に、何かの注射を打つ。
すると、ルキアの呼吸と脈が止まった。
「おい、ルキア、ルキア!!」
「うるさいネ。今、仮死状態にする薬を打ったところだヨ。即効性だから、朽木副隊長は、仮死状態だが、まだ生きているヨ」
「そうか・・・・よかった・・・・・」
一護は、冷たくなっていくルキアを抱き抱えた。
「どこかに寝かせておくとか、液体の入ったカプセルに入れるとか、そういうのはねぇよな?」
「ないネ。どこに置いておこうが、仮死状態のままだヨ。解毒薬を注射するまではネ」
一護は、朽木邸で白哉と恋次に全てを話し、仮死状態のルキアを見守ってくれるように頼みこんだ。
白哉は、ルキアがなんとか一命を取り留めている姿に、けれど現状は死んだと同じなので、悲しそうな目をしていた。
「ルキアが・・・不治の病の末期・・・くそ、ルキアの奴なんで教えてくれなかったんだよ!」
「それは、恋次に心配をかけたくなかったんだろう」
布団の上で、冷たいルキアは、本当に死んでいるようで。
でも、仮死状態なのだ。
顔色はそれほど悪くなかったが、白かった。病気独特いの青白さはなかった。
--------------------------------------------二人の最後の冬。ルキアは、生きていた。
最後の冬 一つに溶ける
その日は、学校を休んで、二人とも穿界門をくぐり、尸魂界へとやってきた。
「お、一護じゃねぇか。珍しいな」
恋次が出迎えてくれた。
「よお、恋次。元気にしてたか?」
「おう。ルキアの容体はどうだ?」
「恋次まで、知ってたんだな」
ルキアは、一護の後ろに隠れていた。
「おう、ルキア!少しは元気になったか!」
「たわけ、元気に決まっておろう」
ルキアが耳打ちしてきた。
「恋次には、軽い病だと話しておるのだ。真実は話すな」
「わーったよ」
一護は、ルキアに惚れた弱みもあるし、これ以上自分のように苦しんで欲しくないとも思い、恋次に真実を話さなかった。
「今日は、定期健診と、薬をもらいきただけだ。終われば、すぐに現世に立つ」
「おいおい、マジかよ。たまに帰ってきたと思ったら、一泊もしていかねーのかよ」
「今は、現世が私のいるべき場所なのだ。あと5か月もないのだ。現世で5か月過ごせば、それで終わりだ。時折現世にいくだろが、毎日のようにはいかなくなる」
「あーまぁ、尸魂界に戻ってくるんだからな。そういや隊長から聞いたんだが、一護と付き合いだしたってまじか」
「まじだ」
恋次は、はーっと、息をついたかと思うと、一護の襟首を締め上げた。
「てめぇ、ルキアを泣かせてみろ。俺が奪うからな」
「恋次もルキアのこと、好きだもんな」
一護が知っていた。恋次が、ずっとルキアに恋心を抱いていたことを。そして告白する前に、一護に先をこされた。
ルキアは、家族愛では恋次が大好きだった。ただ、異性として見れるかといえば、きっと首を横に振ってしまうだろう。
「恋次。私は、貴様に好きと言われても、一護を選んでいただろう。許せ」
「あーあ。告白する前から振られてるぜ俺。だっせぇ」
恋次はあーだこうだ言いながら、最後にはルキアの頭をくしゃくしゃと撫でて、去ってしまった。
ルキアと一護は、一先ず朽木邸にきた。
「兄様、いらっしゃいますか」
「ルキアか。どうした」
「今から、定期健診に行って参ります。痛み止めが効かなくなったので、もっと強めのものに処方してもらいます・・・その、特効薬のほうは?」
白哉が首を横に振る。
「まだだ。同じ症例の者に与えて試してはいるが、まだなんの手応えもない」
「そうですか・・・・。とりあえず、4番隊に行って参ります、兄様」
「黒崎一護・・・・・義妹を・・・・ルキアを、頼む。幸せにしてやってくれ」
「兄様!心配なさらずとも、私は今十分に幸せです!」
「そうか・・・・・ならば、よい」
白哉は、そのまま屋敷の奥に消えてしまった。
「白哉のやつ、ちょっと薄情じゃねぇか?」
「貴様、兄様を愚弄する気か!私が緋真姉様と同じ病だと知った時の兄様の嘆き・・・その涙・・・決して、忘れることはできぬ」
「白哉が涙を・・・・相当辛かったんだろうな」
あの沈着冷静な白哉が涙を零すほどに、ルキアの病気のことがショックだったのだろう。
愛しい妻を、同じ病気で亡くしているのだ。
そう考えると、一護も胸にじんわりと痛みを感じた。
「ルキア」
「なんだ」
「幸せになろうな?病気なんか克服して」
「そうだな・・・・・」
ルキアの目は、何処か遠くを見つめていた。
4番隊の救護院に行き、ルキアの病気の進行を遅らせる処置をしてもらい、痛み止めの薬を強いものに変えてもらった。
今度の薬には依存性はないが、効果が切れた時の痛みは尋常ではないと、説明を受けた。
「朽木ルキアさん・・・・・・」
「なんですか、虎鉄隊長」
「その、病気の件なんだけど・・・・・」
「何か、分かったのですか!」
「いえ・・・ルキアさんの症状から、もってあと4か月と少しかと・・・・」
一護が息を飲む。
「そう・・・・ですか・・・・・」
4か月と少し。
ちょうど、卒業日あたりだ。
「ルキア、絶対に死ぬなよ!」
「分かっておる。最後の最後まで、足掻いて足掻いて、意地汚く生きてみせる」
ルキアの飲む薬が増えた。
痛み止めと、末期症状の吐血を和らげる、肺の薬だった。
そのまま、現世に戻った。
次の日、ルキアは見た目は普通に見えた。だが、学校について2限目の授業を受けていた時、咳込んで血を吐いた。
「ルキア!」
一護は、頽れるルキアの体を支えた。
「朽木さん!きゃああああ!」
「きゃああああああああ!!!!」
女生徒たちが悲鳴をあげる。
「朽木さん!」
井上が、駆け寄る。
「双天帰盾、私は拒絶する!」
「え、井上!?」
何も知らない生徒たちの間から、ざわめきが漏れる。
一護は、念のためにもたされていた記憶置換で、教師とルキアと井上を除く生徒全員の記憶から、ルキアが吐血したことと、井上の術のことを忘れさせた。
「すまぬ・・・・もう大丈夫だ。双天帰盾のお陰で、吐血の悪化は防げたようだ」
「ルキア、帰るぞ!」
「一護、心配しすぎだ!」
ルキアが止めるが、一護はルキアを横抱きにして、歩き出す。
「馬鹿野郎!血を吐いたんだぞ!」
「末期症状の一種だ・・・・・」
一護は悔しそうだった。何もしてやれに自分が、悔しくて仕方なかった。
「今日は早退する。俺も、お前もだ」
「今帰れば・・・家に、誰もおらぬか?」
「ああ」
「ならば帰りたい・・・・・」
ルキアは、自分足で歩けるといって、歩き出した。その足取りはしっかりしていた。
痛み止めと肺の薬を飲む。
黒崎家に帰宅すると、一護の部屋で、ルキアが抱き着いてきた。
「ルキア?」
「私を、抱け」
「ルキア、お前病気なんだぞ?正気か?」
「正気だ。このまま死んでは、死んでも死に切れぬ。愛しい貴様と、一度でいいから肌を重ねたい」
ルキアの決意は固いようで、何を言っても聞きそうになかった。
一護は、なるべく優しくルキアに口づけて、制服を脱がせていく。
やはり、痩せていた。
その細くなりすぎた体をかき抱いた。
「このような貧相な体ですまぬ・・・・」
ルキアは幼いデザインの、一護が好きなかんじの下着をつけていた。
制服では見得ない、鎖骨から胸元にかけて、花びらを散らしていく。赤いキスマークは、ルキアの白い肌を彩るように見えた。
「あっ・・・・」
ブラジャーを外し、わずかしかない胸の副らみを撫でるように触り、先端を口に含んだ。
「ああ・・・・」
かりっとかじると、ぴくりとルキアの体がはねた。
ショーツを脱がす。
その部分は、蜜をこぼしていた。
「もう、濡れてる・・・・」
「あ、言うな・・・・・」
くちゅりと音を立てて、その場所に指をいれる。浅い部分の天井を何度かこすってやると、びくりとルキアの体が痙攣した。
「ああああああ!!」
「いったのか?」
「あ・・・・これが、いくということなのか?頭が真っ白になって・・・・快感で、何も考えられなくなった・・・・」
「ああ、いった証だ。もう1回いっとくか?」
一護が、秘所の肉をかき分けて、指でこすりあげる。陰核をつままれて、いきそうになったが、ルキアはこらえた。
「嫌だ・・・・・いくときは、一緒がいい・・・・・」
ルキアに求められて、一護も服を脱ぎ去った。
少年のものにしては、よく鍛え上げられた肉体だった。
「入れるぞ・・・」
「ああ・・・いっ・・・・」
いくら潤っていても、初めての行為に、そこは悲鳴をあげた。
「痛い?やめようか?」
「いいから、来い。私に、貴様を刻み付けろ」
最奥までずるりと侵入されて、痛みでも快感でもない涙が滴っていく。
「ああ・・・・いま、貴様と一つだ。溶けていく・・・」
「ん・・ごめん、避妊してないけど、一度出すぜ」
「かまわぬ。私を貴様でいっぱいにしろ」
一護は、ルキアの最奥で子種を散らした。
「妊娠しちまったら、どうしよう・・・・・・」
「この義骸は、そこまでできぬ」
「そうか・・・・」
一護は、ルキアを気遣いながら、何度か抱いた。
「ああっ!」
ルキアは、嬌声をあげて女の悦びというものを知った。
終わると、ルキアをシーツでくるんで、一護は下着だけつけて運び、熱いシャワーを浴びた。
「あ・・・貴様のものが、溢れて・・・・・」
太腿を、血が一緒に流れていく。
「何故、血が?」
「処女膜が破れたんだよ」
「そうか。これで、私も大人の仲間入りだな」
ルキアは、幸福そうだった。
一護は言いたいことがたくさんあったけれど、今はこの幸福に浸っていたかった。
-----------------------------------------二人は最後の冬、体を重ねた。
それは、ルキアにとって、とても特別なものだった。
どうか、死ぬ前に一度抱かれたい。
女のしての衝動に、まみれていた。
「お、一護じゃねぇか。珍しいな」
恋次が出迎えてくれた。
「よお、恋次。元気にしてたか?」
「おう。ルキアの容体はどうだ?」
「恋次まで、知ってたんだな」
ルキアは、一護の後ろに隠れていた。
「おう、ルキア!少しは元気になったか!」
「たわけ、元気に決まっておろう」
ルキアが耳打ちしてきた。
「恋次には、軽い病だと話しておるのだ。真実は話すな」
「わーったよ」
一護は、ルキアに惚れた弱みもあるし、これ以上自分のように苦しんで欲しくないとも思い、恋次に真実を話さなかった。
「今日は、定期健診と、薬をもらいきただけだ。終われば、すぐに現世に立つ」
「おいおい、マジかよ。たまに帰ってきたと思ったら、一泊もしていかねーのかよ」
「今は、現世が私のいるべき場所なのだ。あと5か月もないのだ。現世で5か月過ごせば、それで終わりだ。時折現世にいくだろが、毎日のようにはいかなくなる」
「あーまぁ、尸魂界に戻ってくるんだからな。そういや隊長から聞いたんだが、一護と付き合いだしたってまじか」
「まじだ」
恋次は、はーっと、息をついたかと思うと、一護の襟首を締め上げた。
「てめぇ、ルキアを泣かせてみろ。俺が奪うからな」
「恋次もルキアのこと、好きだもんな」
一護が知っていた。恋次が、ずっとルキアに恋心を抱いていたことを。そして告白する前に、一護に先をこされた。
ルキアは、家族愛では恋次が大好きだった。ただ、異性として見れるかといえば、きっと首を横に振ってしまうだろう。
「恋次。私は、貴様に好きと言われても、一護を選んでいただろう。許せ」
「あーあ。告白する前から振られてるぜ俺。だっせぇ」
恋次はあーだこうだ言いながら、最後にはルキアの頭をくしゃくしゃと撫でて、去ってしまった。
ルキアと一護は、一先ず朽木邸にきた。
「兄様、いらっしゃいますか」
「ルキアか。どうした」
「今から、定期健診に行って参ります。痛み止めが効かなくなったので、もっと強めのものに処方してもらいます・・・その、特効薬のほうは?」
白哉が首を横に振る。
「まだだ。同じ症例の者に与えて試してはいるが、まだなんの手応えもない」
「そうですか・・・・。とりあえず、4番隊に行って参ります、兄様」
「黒崎一護・・・・・義妹を・・・・ルキアを、頼む。幸せにしてやってくれ」
「兄様!心配なさらずとも、私は今十分に幸せです!」
「そうか・・・・・ならば、よい」
白哉は、そのまま屋敷の奥に消えてしまった。
「白哉のやつ、ちょっと薄情じゃねぇか?」
「貴様、兄様を愚弄する気か!私が緋真姉様と同じ病だと知った時の兄様の嘆き・・・その涙・・・決して、忘れることはできぬ」
「白哉が涙を・・・・相当辛かったんだろうな」
あの沈着冷静な白哉が涙を零すほどに、ルキアの病気のことがショックだったのだろう。
愛しい妻を、同じ病気で亡くしているのだ。
そう考えると、一護も胸にじんわりと痛みを感じた。
「ルキア」
「なんだ」
「幸せになろうな?病気なんか克服して」
「そうだな・・・・・」
ルキアの目は、何処か遠くを見つめていた。
4番隊の救護院に行き、ルキアの病気の進行を遅らせる処置をしてもらい、痛み止めの薬を強いものに変えてもらった。
今度の薬には依存性はないが、効果が切れた時の痛みは尋常ではないと、説明を受けた。
「朽木ルキアさん・・・・・・」
「なんですか、虎鉄隊長」
「その、病気の件なんだけど・・・・・」
「何か、分かったのですか!」
「いえ・・・ルキアさんの症状から、もってあと4か月と少しかと・・・・」
一護が息を飲む。
「そう・・・・ですか・・・・・」
4か月と少し。
ちょうど、卒業日あたりだ。
「ルキア、絶対に死ぬなよ!」
「分かっておる。最後の最後まで、足掻いて足掻いて、意地汚く生きてみせる」
ルキアの飲む薬が増えた。
痛み止めと、末期症状の吐血を和らげる、肺の薬だった。
そのまま、現世に戻った。
次の日、ルキアは見た目は普通に見えた。だが、学校について2限目の授業を受けていた時、咳込んで血を吐いた。
「ルキア!」
一護は、頽れるルキアの体を支えた。
「朽木さん!きゃああああ!」
「きゃああああああああ!!!!」
女生徒たちが悲鳴をあげる。
「朽木さん!」
井上が、駆け寄る。
「双天帰盾、私は拒絶する!」
「え、井上!?」
何も知らない生徒たちの間から、ざわめきが漏れる。
一護は、念のためにもたされていた記憶置換で、教師とルキアと井上を除く生徒全員の記憶から、ルキアが吐血したことと、井上の術のことを忘れさせた。
「すまぬ・・・・もう大丈夫だ。双天帰盾のお陰で、吐血の悪化は防げたようだ」
「ルキア、帰るぞ!」
「一護、心配しすぎだ!」
ルキアが止めるが、一護はルキアを横抱きにして、歩き出す。
「馬鹿野郎!血を吐いたんだぞ!」
「末期症状の一種だ・・・・・」
一護は悔しそうだった。何もしてやれに自分が、悔しくて仕方なかった。
「今日は早退する。俺も、お前もだ」
「今帰れば・・・家に、誰もおらぬか?」
「ああ」
「ならば帰りたい・・・・・」
ルキアは、自分足で歩けるといって、歩き出した。その足取りはしっかりしていた。
痛み止めと肺の薬を飲む。
黒崎家に帰宅すると、一護の部屋で、ルキアが抱き着いてきた。
「ルキア?」
「私を、抱け」
「ルキア、お前病気なんだぞ?正気か?」
「正気だ。このまま死んでは、死んでも死に切れぬ。愛しい貴様と、一度でいいから肌を重ねたい」
ルキアの決意は固いようで、何を言っても聞きそうになかった。
一護は、なるべく優しくルキアに口づけて、制服を脱がせていく。
やはり、痩せていた。
その細くなりすぎた体をかき抱いた。
「このような貧相な体ですまぬ・・・・」
ルキアは幼いデザインの、一護が好きなかんじの下着をつけていた。
制服では見得ない、鎖骨から胸元にかけて、花びらを散らしていく。赤いキスマークは、ルキアの白い肌を彩るように見えた。
「あっ・・・・」
ブラジャーを外し、わずかしかない胸の副らみを撫でるように触り、先端を口に含んだ。
「ああ・・・・」
かりっとかじると、ぴくりとルキアの体がはねた。
ショーツを脱がす。
その部分は、蜜をこぼしていた。
「もう、濡れてる・・・・」
「あ、言うな・・・・・」
くちゅりと音を立てて、その場所に指をいれる。浅い部分の天井を何度かこすってやると、びくりとルキアの体が痙攣した。
「ああああああ!!」
「いったのか?」
「あ・・・・これが、いくということなのか?頭が真っ白になって・・・・快感で、何も考えられなくなった・・・・」
「ああ、いった証だ。もう1回いっとくか?」
一護が、秘所の肉をかき分けて、指でこすりあげる。陰核をつままれて、いきそうになったが、ルキアはこらえた。
「嫌だ・・・・・いくときは、一緒がいい・・・・・」
ルキアに求められて、一護も服を脱ぎ去った。
少年のものにしては、よく鍛え上げられた肉体だった。
「入れるぞ・・・」
「ああ・・・いっ・・・・」
いくら潤っていても、初めての行為に、そこは悲鳴をあげた。
「痛い?やめようか?」
「いいから、来い。私に、貴様を刻み付けろ」
最奥までずるりと侵入されて、痛みでも快感でもない涙が滴っていく。
「ああ・・・・いま、貴様と一つだ。溶けていく・・・」
「ん・・ごめん、避妊してないけど、一度出すぜ」
「かまわぬ。私を貴様でいっぱいにしろ」
一護は、ルキアの最奥で子種を散らした。
「妊娠しちまったら、どうしよう・・・・・・」
「この義骸は、そこまでできぬ」
「そうか・・・・」
一護は、ルキアを気遣いながら、何度か抱いた。
「ああっ!」
ルキアは、嬌声をあげて女の悦びというものを知った。
終わると、ルキアをシーツでくるんで、一護は下着だけつけて運び、熱いシャワーを浴びた。
「あ・・・貴様のものが、溢れて・・・・・」
太腿を、血が一緒に流れていく。
「何故、血が?」
「処女膜が破れたんだよ」
「そうか。これで、私も大人の仲間入りだな」
ルキアは、幸福そうだった。
一護は言いたいことがたくさんあったけれど、今はこの幸福に浸っていたかった。
-----------------------------------------二人は最後の冬、体を重ねた。
それは、ルキアにとって、とても特別なものだった。
どうか、死ぬ前に一度抱かれたい。
女のしての衝動に、まみれていた。
最後の冬 ルキアの病、5か月の命
憔悴した顔で、一護が帰ってきた。
「全部、兄様から聞いたのであろう?」
「ルキア・・・・なんで、黙ってた?」
「こんな残酷なこと・・・・私の口からは言えぬ。私とて生きたいのだ!最後の最後まで、可能性を模索して足掻いてやる!」
ルキアの細い体を、抱き締める。
「なんか・・・前より、痩せたか?」
「少しな・・・だが、茶虎と石田と井上には内緒だぞ」
「そうだ、井上!井上に診てもらえば・・・・!」
「だめだ。井上の能力は、怪我を治すもの。病気は治らぬよ」
「でも、そんなのやってみなくちゃわかんねーだろ!?」
一護は必死だった。
やっと手に入れた愛しい存在が、あと5か月もすれば消えてなくなってしまうのだ。
「日曜、井上の家にいこう。事情は俺が話すから・・・・・」
「それで貴様の気が紛れるのであれば、行こう・・・」
こうして、次の日は日曜だったので、井上のマンションに出かけた。
「え・・・嘘。朽木さん、嘘だよね?ねぇ、こんなの嘘だよね!?」
井上に事情を話すと、井上はボロボロと大粒の涙を零しながら、それが真実だと知ると、泣き叫んだ。
「いやあああああ!朽木さんがいなくなるなんていや!」
抱き着いてくる井上の背中をぽんぽんと叩き、ルキアは安心させてやった。
「まだ、5か月あるのだ。4番隊で、今この病を治す特効薬を作ってもらっている。状況は芳しくないが、私は最後まで可能性を捨てない」
「双天帰盾、私は拒絶する!」
井上が、回復術でもあるその力を使う。
「どう!?朽木さん、病は!」
「ありがとう、井上。だが、双天帰盾は病を治すための術ではない。私とて、兄様が財を投げ打って、4番隊に特殊な治療を施してくれたのだ。だが、病の進行を遅らせるだけで、完治には至らなかった」
「そんな・・・・・」
茫然とした様子で、井上が泣きじゃくる。
「いや、朽木さん、私たちを残して逝かないで!」
「井上は泣き虫だな、あとまだ5か月はある。なるようになるさ」
ルキアの言葉に、井上が顔をあげる。涙でぐしゃぐしゃだった。
「朽木さんは、死ぬのが怖くないの!?」
「死には、慣れてしまった。自分が死ぬことは恐くはない。ただ、残していく者のことを思うと、悲しみで心が押しつぶされそうになる」
「ルキア、なんでお前はこうやって平然としていられるんだ!」
いつの間にか、一護も泣いていた。
「ふふ・・・私を思ってくれるのか、二人とも。私は、幸せ者だな・・・・」
ルキアを背後から抱き寄せて、一護は止まらない涙を零していた。
「好きなんだ・・・愛してるんだ・・・死ぬな!」
「ああ、私も一護、貴様を好きだし愛している。多分、もう5か月も持たないかもしれないが・・・・私を、愛してくれ」
ルキアは背後から一護に抱き締められながら、艶やかな笑みを浮かべていた。
「ずるいよ、朽木さん!死んじゃったら、黒崎君をとっていかれた意味がないじゃない!」
「井上・・・貴様も泣き虫だなぁ。まだ時間はあるのだ。そのように泣くな。一護もだ」
「馬鹿やろう!恋人の余命が5か月って宣告されて、平気でいられるかよ!」
「そうだよ、朽木さん!あと5か月しかないんだよ」
「反対に言えば、あと5か月はあるのだ。せいぜい、足掻くさ。月に二度は尸魂界に戻って、痛み止めと病気の進行を遅らせる治療を受ける」
ルキアは、自重的な笑みを浮かべていたが、やがて耐えきれなくなったのか、涙を零し始めた。
「ああ・・・一護と、高校を卒業しても歩んでいきたかったなぁ。井上は、きっと一護を好きなまま、誰かを好きになるのだと思っていたが・・・一護のことを頼んでもいいか、井上」
井上は首を横に振った。
「嫌だよ!そんなの嫌!朽木さんのいない世界なんて嫌!」
ルキアは、井上を抱き締めた。
井上も抱き締め返してくれた。
一護は、その様子を涙を滲ませて見ていた。
「ルキア・・・生きよう。なんとしても、5か月の間に、病を克服する方法を見つけよう!」
一護は、井上との抱擁をやめたルキアを抱き上げた。
「どうしたのだ、一護」
「俺が、命に代えても絶対お前を死なせねぇ!」
一護の決意は固かった。
一護も、井上も、もう泣いていなかった。
「私も、尸魂界にいって、4番隊の人達と相談する!絶対、朽木さんを死なせない!」
「貴様ら・・・・・・・」
じわりと、ルキアの涙腺が緩む。
悲しいのではない。
嬉しいのだ。
ああ。ここまで、愛する者と友人に思われているだけでも、もう心残りはない。
そうとさえ思った。
食後に痛み止めを飲む。
もう、慣れてしまった。
味のないカプセル状のものだ。
本来なら、痛みで体を動かせないのを、痛み止めで無理やり動かせていた。
特効薬ができたとしても、末期だ。助かるかどうかは分からない。
それでも、ルキア自身諦めていなかった。
一護は、ルキアの負担にならないように、できるだけルキアを丁寧に扱った。
「よいのだぞ?そのように、優しく扱わずとも」
「無理だ。俺がそうしたいんだ」
ルキアにキスをすると、ルキアはそれに応えてくれた。
「んんっ・・・・・はっ・・・・・ん・・・・・・」
息をつぐ暇を与えず、ルキアの唇を貪った。
「たわけ、苦しいわ!」
一護の頭を殴ると、一護は嬉しそうにしていた。
「ちょっとは、元気でたか?」
「たわけ。薬を飲んでいる間は、元気だ。だがそろそろストックが切れる。食後だけでは足りなくなってきた・・・もっと強い薬に変えるか」
「大丈夫なのか?お前が飲んでるのその痛み止め・・・・・・」
「依存性がある。あまりよくない。だが、痛み止めがないと、動くこともままらなぬ」
その言葉を聞いて、一護が辛そうにしていた。
「ルキア・・・辛いなら、学校休んでもいいんだぜ」
「たわけ!そんなことをしたら、何故私が現世にきたのか・・・その意味がなくなるではないか!」
「それはそうだけど・・・ああ、まぁ一日中ベッドの上にいるのも暇だしな」
「そうだぞ。検査入院の時など、虎鉄隊長から1週間の入院を強制されて、とてもつまらなかった。伝令神機でネットサーフィンをしていたが、充電がしょっちゅう必要で、充電中のつまらないことこの上ない。おまけに、出される飯はまずいし味も薄いし・・・・散々であった」
ルキアは、そこで言葉を区切った。
「明日、一度尸魂界へ戻る。痛み止めをもらいに・・・あと、病の進行を少しでも遅らせるために」
「俺もいく」
「貴様がいっても、何も楽しいことなどないぞ?」
「それでも、一緒にいく。片時も、お前の傍を離れたくない」
「貴様は・・・子供か」
ルキアは溜息を零した。
一護は随分と過保護になっていた。
やはり、病気のことは隠しておいたほうが良かったのだろうか・・・・・そうとも思った。
だが、いきなり死なれるよりも、ちゃんと告知しておいて死んだほうが、悲しみは少ないだろうと思って、わざわざ白哉に話してもらったのだ。
自分の口から言う勇気が、出なかったからだ。
「分かった。明日、貴様と尸魂界へ行こう」
「ああ、ルキア」
一護は、その日もルキアを抱き締めるようにして眠った。
―-------------------------一護とルキアの終わりの冬は、音もなくかけ足で過ぎ去ろうとしていた。
「全部、兄様から聞いたのであろう?」
「ルキア・・・・なんで、黙ってた?」
「こんな残酷なこと・・・・私の口からは言えぬ。私とて生きたいのだ!最後の最後まで、可能性を模索して足掻いてやる!」
ルキアの細い体を、抱き締める。
「なんか・・・前より、痩せたか?」
「少しな・・・だが、茶虎と石田と井上には内緒だぞ」
「そうだ、井上!井上に診てもらえば・・・・!」
「だめだ。井上の能力は、怪我を治すもの。病気は治らぬよ」
「でも、そんなのやってみなくちゃわかんねーだろ!?」
一護は必死だった。
やっと手に入れた愛しい存在が、あと5か月もすれば消えてなくなってしまうのだ。
「日曜、井上の家にいこう。事情は俺が話すから・・・・・」
「それで貴様の気が紛れるのであれば、行こう・・・」
こうして、次の日は日曜だったので、井上のマンションに出かけた。
「え・・・嘘。朽木さん、嘘だよね?ねぇ、こんなの嘘だよね!?」
井上に事情を話すと、井上はボロボロと大粒の涙を零しながら、それが真実だと知ると、泣き叫んだ。
「いやあああああ!朽木さんがいなくなるなんていや!」
抱き着いてくる井上の背中をぽんぽんと叩き、ルキアは安心させてやった。
「まだ、5か月あるのだ。4番隊で、今この病を治す特効薬を作ってもらっている。状況は芳しくないが、私は最後まで可能性を捨てない」
「双天帰盾、私は拒絶する!」
井上が、回復術でもあるその力を使う。
「どう!?朽木さん、病は!」
「ありがとう、井上。だが、双天帰盾は病を治すための術ではない。私とて、兄様が財を投げ打って、4番隊に特殊な治療を施してくれたのだ。だが、病の進行を遅らせるだけで、完治には至らなかった」
「そんな・・・・・」
茫然とした様子で、井上が泣きじゃくる。
「いや、朽木さん、私たちを残して逝かないで!」
「井上は泣き虫だな、あとまだ5か月はある。なるようになるさ」
ルキアの言葉に、井上が顔をあげる。涙でぐしゃぐしゃだった。
「朽木さんは、死ぬのが怖くないの!?」
「死には、慣れてしまった。自分が死ぬことは恐くはない。ただ、残していく者のことを思うと、悲しみで心が押しつぶされそうになる」
「ルキア、なんでお前はこうやって平然としていられるんだ!」
いつの間にか、一護も泣いていた。
「ふふ・・・私を思ってくれるのか、二人とも。私は、幸せ者だな・・・・」
ルキアを背後から抱き寄せて、一護は止まらない涙を零していた。
「好きなんだ・・・愛してるんだ・・・死ぬな!」
「ああ、私も一護、貴様を好きだし愛している。多分、もう5か月も持たないかもしれないが・・・・私を、愛してくれ」
ルキアは背後から一護に抱き締められながら、艶やかな笑みを浮かべていた。
「ずるいよ、朽木さん!死んじゃったら、黒崎君をとっていかれた意味がないじゃない!」
「井上・・・貴様も泣き虫だなぁ。まだ時間はあるのだ。そのように泣くな。一護もだ」
「馬鹿やろう!恋人の余命が5か月って宣告されて、平気でいられるかよ!」
「そうだよ、朽木さん!あと5か月しかないんだよ」
「反対に言えば、あと5か月はあるのだ。せいぜい、足掻くさ。月に二度は尸魂界に戻って、痛み止めと病気の進行を遅らせる治療を受ける」
ルキアは、自重的な笑みを浮かべていたが、やがて耐えきれなくなったのか、涙を零し始めた。
「ああ・・・一護と、高校を卒業しても歩んでいきたかったなぁ。井上は、きっと一護を好きなまま、誰かを好きになるのだと思っていたが・・・一護のことを頼んでもいいか、井上」
井上は首を横に振った。
「嫌だよ!そんなの嫌!朽木さんのいない世界なんて嫌!」
ルキアは、井上を抱き締めた。
井上も抱き締め返してくれた。
一護は、その様子を涙を滲ませて見ていた。
「ルキア・・・生きよう。なんとしても、5か月の間に、病を克服する方法を見つけよう!」
一護は、井上との抱擁をやめたルキアを抱き上げた。
「どうしたのだ、一護」
「俺が、命に代えても絶対お前を死なせねぇ!」
一護の決意は固かった。
一護も、井上も、もう泣いていなかった。
「私も、尸魂界にいって、4番隊の人達と相談する!絶対、朽木さんを死なせない!」
「貴様ら・・・・・・・」
じわりと、ルキアの涙腺が緩む。
悲しいのではない。
嬉しいのだ。
ああ。ここまで、愛する者と友人に思われているだけでも、もう心残りはない。
そうとさえ思った。
食後に痛み止めを飲む。
もう、慣れてしまった。
味のないカプセル状のものだ。
本来なら、痛みで体を動かせないのを、痛み止めで無理やり動かせていた。
特効薬ができたとしても、末期だ。助かるかどうかは分からない。
それでも、ルキア自身諦めていなかった。
一護は、ルキアの負担にならないように、できるだけルキアを丁寧に扱った。
「よいのだぞ?そのように、優しく扱わずとも」
「無理だ。俺がそうしたいんだ」
ルキアにキスをすると、ルキアはそれに応えてくれた。
「んんっ・・・・・はっ・・・・・ん・・・・・・」
息をつぐ暇を与えず、ルキアの唇を貪った。
「たわけ、苦しいわ!」
一護の頭を殴ると、一護は嬉しそうにしていた。
「ちょっとは、元気でたか?」
「たわけ。薬を飲んでいる間は、元気だ。だがそろそろストックが切れる。食後だけでは足りなくなってきた・・・もっと強い薬に変えるか」
「大丈夫なのか?お前が飲んでるのその痛み止め・・・・・・」
「依存性がある。あまりよくない。だが、痛み止めがないと、動くこともままらなぬ」
その言葉を聞いて、一護が辛そうにしていた。
「ルキア・・・辛いなら、学校休んでもいいんだぜ」
「たわけ!そんなことをしたら、何故私が現世にきたのか・・・その意味がなくなるではないか!」
「それはそうだけど・・・ああ、まぁ一日中ベッドの上にいるのも暇だしな」
「そうだぞ。検査入院の時など、虎鉄隊長から1週間の入院を強制されて、とてもつまらなかった。伝令神機でネットサーフィンをしていたが、充電がしょっちゅう必要で、充電中のつまらないことこの上ない。おまけに、出される飯はまずいし味も薄いし・・・・散々であった」
ルキアは、そこで言葉を区切った。
「明日、一度尸魂界へ戻る。痛み止めをもらいに・・・あと、病の進行を少しでも遅らせるために」
「俺もいく」
「貴様がいっても、何も楽しいことなどないぞ?」
「それでも、一緒にいく。片時も、お前の傍を離れたくない」
「貴様は・・・子供か」
ルキアは溜息を零した。
一護は随分と過保護になっていた。
やはり、病気のことは隠しておいたほうが良かったのだろうか・・・・・そうとも思った。
だが、いきなり死なれるよりも、ちゃんと告知しておいて死んだほうが、悲しみは少ないだろうと思って、わざわざ白哉に話してもらったのだ。
自分の口から言う勇気が、出なかったからだ。
「分かった。明日、貴様と尸魂界へ行こう」
「ああ、ルキア」
一護は、その日もルキアを抱き締めるようにして眠った。
―-------------------------一護とルキアの終わりの冬は、音もなくかけ足で過ぎ去ろうとしていた。
最後の冬 ルキアとのデート
ルキアと一護が、学校に通い出して1週間が過ぎた。
ルキアは私服がないので、一護の服を借りていた。
一度、風呂上がりで、一護の上着だけを羽織った姿を見た一護は、「悩殺するつもりかお前!」と鼻血をだしながら、ぶかぶかだがボトムのズボンをはかせた。
「今日は土曜だし、服買いに行くぞ!」
「うむ。流石に遊子の服を借りっぱなしというわけにはいかぬしな」
外に出るにあたって、一護の服はあまりにもぶかぶかなので、遊子の服を借りたのだ。サイズはほぼぴったりで、ルキアは中学生になった遊子と同じサイズかと、少し悲し気だった。
シマムラにやってきた。
「これとこれとこれ。後これも」
「おい、金は大丈夫なんだろうな?」
「任せろ。兄様から、300万をもらった。足りなければ、尸魂界に戻り現世の金と変えて戻ってくる」
「お前ら義兄妹は、ほんと金の感覚がおかしいな」
「そのようなことはないぞ!300万は大金だ!シマムラは安いので、たくさん買っても5万以内には収まるであろう?」
「まぁそうだけど・・・・・」
一護は、荷物持ちをさせられていた。
当分の間の着る物を買うのだ。長袖のワンピースが色違いで10着。上着も10着。さらにその上から着るコートを2着。あとは靴下だの、靴だの・・・・最後にランジェリーのところに着て、一護が朱くなる。
「適当に選んでこい!俺はここで待ってるから!」
「何を照れておるのだ」
「男が女のランジェリーのところにいることの恥ずかしさを、お前に言ってもわかんねーだろ!」
「ほう、恥ずかしいのか」
ルキアがぐいぐい腕を引っ張ってくる。
「勘弁してくれよ」
「貴様でも、情けない声を出すのだな」
ルキアは弱点を見つけたとばかりに、嬉し気だった。
結局一護は、ルキアはどんなパンツが、一護の好みなのかとか聞いてきたので、一護が選んだ。
「ほう、このような幼いデザインが好きか・・・」
「悪かったな!」
一護が真っ赤になっていた。
「まぁ良い。貴様を下着で悩殺などせぬが、貴様が好きなものを着ていたい」
「だから、ワンピースばかりなのか?」
「そうだ。一護も、私のワンピース姿を似合っていると、昔言ってくれたであろう」
一護が、ワンピース以外の服を手にとって、ルキアに渡そうとする。
「もっと他の服も買えばいいだろう。お前に似合いそうな服、いくらでもある」
「よいのだ。私はワンピースが好きなのだから」
それを、ルキアは拒絶した。
「でも冬だぞ?上は上着でなんとかなるけど、足が寒いだろう」
「そんな時のこれ!二ーソックスだ」
「う」
二ーソックスに、膝上のスカートとか、もう悩殺ものだ。そういえば、ルキアの買ったワンピースのうち3着ほどが、スカートが短めだった。
さては俺を悩殺する気か。
そう思いながら、会計を済ませる。いくら安いといっても、買った量が量で、4万を超えた。
ルキアは背中にしょったチャッピーのリュックから、300万をとりだして、レジに置いた。
店員が引き攣った顔をしていた。
その中から一護が5万を取り出して、会計を終えた。
「うわ、すげー荷物の量。一度、家に戻るか」
「そうだな。このような荷物をもったまま、どこかへは行けまい」
ルキアも頷く。
「ま、一応これデートだしな」
「な、なんだと!?こ、これがデートというものなのか」
「彼女の買い物に付き合う。立派なデートだろ」
「ううむ・・・・・」
ルキアは納得がいかなさそうだったが、とりあえず黒崎家に帰り、リビングに大量の荷物を置いて、また外に出た。
「腹減ったな。ファミレスでもいくか」
「うむ」
近くのファミリーレストランにより、一護はパスタを、ルキアが海老のグラタンを頼んだ。
それだけでは物足りないので、ルキアはジャンボパフェを注文した。
「おい、これ一人で食べきれるのか?」
「よく見ろ。スプーンが2ついておるであろう」
「あ、ほんとだ」
一護も、反対側からジャンボパフェを食べだした。
チョコレートの塊を前にして、どちらが食べるか争い、ルキアがちょっと目を離した隙に、一護が食べてしまった。
「貴様、ずるいぞ!」
「いいじゃねーか。チョコレートくらい、後でいくらでも買ってやるよ」
「その言葉、本当だな?」
「ああ」
会計は、一護が持った。
それから、不思議がるルキアを連れて、宝石店に入る。
「なんなのだ?」
「いや、前に見かけた・・・・あ、まだあった」
アメジストのネックレスだった。
金額は高くもないが、安くもなった。
「すみません、これ下さい」
「はい。こちらの商品で間違いはございませんでしょうか?」
「はい」
お金を払う。一護の財布から、一万円札が3枚ほど飛んでいく。
「では、包装を・・・・・・」
「いえ、つけていくのでいいです」
「一護?」
そのネックレスを、ルキアの首に飾ってやった。
「一護、このような高いもの・・・貴様の財布が!」
「いいんだよ。17カ月の間に、このネックレス買って、いつかルキアに送りたいと思ってバイトしてたし。まぁ、大学生になったら、一人暮らし貯める資金でもあるんだけどな」
「そのような大切な金で、何故私にネックレスなど・・・・」
「アメジストだからだ」
「え?」
「お前の瞳と同じアメジスト。ハート型で、中にダイヤモンドが入ってる」
「本当だ・・・・キラキラしていて、綺麗だな・・・・・」
ルキアはネックレスが気に入ってくれたようで、一護も嬉し気だった。
その日の夜は、マクドナルドにいってジャンクフードを食べた。
「体に悪い分かっているが・・・・美味いな」
「ああ。一時期は凄く安かったんだが、最近どこも物価が高くなって、この店もこの前値上げしやがった」
「それでも、ファミレスよりは安いであろう?」
「そうだな」
ルキアは、何かの錠剤を水と一緒に飲み干した。
「薬?どうしたんだ、ルキア?どこか悪いのか?」
「いや・・・義骸との連結を強くするだけの薬だ・・・・・・・」
「そっか・・・・・・・」
食事を食べ終えた二人は、誰もいない公園にきていた。
「なぁ、キスしてもいいか?」
「む、いいぞ」
一護は、ルキアに唇に唇を重ねた。
始めは触れるだけ。次に深く。
舌が絡まり合い、そのようなこと体験したことのないルキアは、震えていた。
ルキアを抱き締めた。
「ふあっ・・・・・・」
舌を引き抜かれると、怒ると思っていたのだが、ルキアは怒らなかった。
「兄様がくる。私は、先に帰っておく。兄様から説明がある。どうか、落ち着いて、心して聞いて欲しい」
「おい、ルキア!?」
ルキアは、走り出して見えなくなってしまった。
「黒崎一護・・・・」
代わりに声をかけてきたのは、少し懐かしい霊圧。朽木白哉だった。
「兄に、知らせておかねばならないことがある」
「なんだよ、改まって」
「ルキアのことだ」
「ルキアが、どうかしたのか?」
一護は首を傾げた。
「妹さん下さいって言ったこと、怒ってるとか?」
「そのようなことではない。もっと重要な話だ」
「なんだよ・・・・まさか、どこかの貴族と見合いして結婚するとか、そんなこと言い出すんじゃないだろうな!」
「違う。もっとルキア自身に関わる、深い問題だ」
「なんだよ」
一護は、白哉の真剣な眼差しに、一護も真剣になった。
「あれは・・・・我が泣き妻、緋真と同じ病を抱えている」
「え・・・・・・・」
「余命は、もってあと5か月」
「え・・・・うそ、だろ?」
「このようなことで、兄に嘘をついてなんになる」
だって。
だってルキアは、とても健康そうで。笑っていた。ついさっきまで、ずっと隣にいた。
「治す方法はないのかよ!何か薬とか!」
「ない。不治の病だ。だが、あれはそれを知っても、日常を兄と過ごしたいと言ってきた。4番隊で診てもらったが、もう末期だそうだ。痛み止めの薬を飲んでいるであろう」
そういえば、食後に何か錠剤のような薬を飲んでいた。
「あれが、痛み止め・・・・・・」
がらがらと、一護の中で何かが崩れていく。
「ルキアが・・・余命5カ月・・・・・」
ちょうど、高校を卒業する頃には、死ぬというのか。
あのルキアが。
とても活発で、笑い、時には涙を零し・・・一見すると健康にしか見えないルキアが。
「そんなの、ありかよ・・・・・・」
「ルキアから、兄に伝えてくれと言われたので伝えた。私からの願いだ。あれを、逝くその時まで愛してやってくれ・・・・・・」
白哉の目から、涙が零れていた。
妻に続き、義妹も白哉を置いていこうとしているのだ。
白哉にとって、生きてさえいれば、たとえ現世に嫁にいってもよかったのだ。
亡き緋真と同じ病。不治の病。薬もない。
「痛み止めさえ飲んでいれば、通常の日常を過ごせる。どうか、最後まであれを愛し抜いてやってくれ」
「うわあああああ!!」
一護は、月に向かって吠えていた。
ルキア、ルキア、ルキア。
あと5か月でお別れなんて、嘘だろう?
誰か、嘘といってくれ。
-----------------------------------------一護とルキアの、最後の冬が、訪れようとしていた。
ルキアは私服がないので、一護の服を借りていた。
一度、風呂上がりで、一護の上着だけを羽織った姿を見た一護は、「悩殺するつもりかお前!」と鼻血をだしながら、ぶかぶかだがボトムのズボンをはかせた。
「今日は土曜だし、服買いに行くぞ!」
「うむ。流石に遊子の服を借りっぱなしというわけにはいかぬしな」
外に出るにあたって、一護の服はあまりにもぶかぶかなので、遊子の服を借りたのだ。サイズはほぼぴったりで、ルキアは中学生になった遊子と同じサイズかと、少し悲し気だった。
シマムラにやってきた。
「これとこれとこれ。後これも」
「おい、金は大丈夫なんだろうな?」
「任せろ。兄様から、300万をもらった。足りなければ、尸魂界に戻り現世の金と変えて戻ってくる」
「お前ら義兄妹は、ほんと金の感覚がおかしいな」
「そのようなことはないぞ!300万は大金だ!シマムラは安いので、たくさん買っても5万以内には収まるであろう?」
「まぁそうだけど・・・・・」
一護は、荷物持ちをさせられていた。
当分の間の着る物を買うのだ。長袖のワンピースが色違いで10着。上着も10着。さらにその上から着るコートを2着。あとは靴下だの、靴だの・・・・最後にランジェリーのところに着て、一護が朱くなる。
「適当に選んでこい!俺はここで待ってるから!」
「何を照れておるのだ」
「男が女のランジェリーのところにいることの恥ずかしさを、お前に言ってもわかんねーだろ!」
「ほう、恥ずかしいのか」
ルキアがぐいぐい腕を引っ張ってくる。
「勘弁してくれよ」
「貴様でも、情けない声を出すのだな」
ルキアは弱点を見つけたとばかりに、嬉し気だった。
結局一護は、ルキアはどんなパンツが、一護の好みなのかとか聞いてきたので、一護が選んだ。
「ほう、このような幼いデザインが好きか・・・」
「悪かったな!」
一護が真っ赤になっていた。
「まぁ良い。貴様を下着で悩殺などせぬが、貴様が好きなものを着ていたい」
「だから、ワンピースばかりなのか?」
「そうだ。一護も、私のワンピース姿を似合っていると、昔言ってくれたであろう」
一護が、ワンピース以外の服を手にとって、ルキアに渡そうとする。
「もっと他の服も買えばいいだろう。お前に似合いそうな服、いくらでもある」
「よいのだ。私はワンピースが好きなのだから」
それを、ルキアは拒絶した。
「でも冬だぞ?上は上着でなんとかなるけど、足が寒いだろう」
「そんな時のこれ!二ーソックスだ」
「う」
二ーソックスに、膝上のスカートとか、もう悩殺ものだ。そういえば、ルキアの買ったワンピースのうち3着ほどが、スカートが短めだった。
さては俺を悩殺する気か。
そう思いながら、会計を済ませる。いくら安いといっても、買った量が量で、4万を超えた。
ルキアは背中にしょったチャッピーのリュックから、300万をとりだして、レジに置いた。
店員が引き攣った顔をしていた。
その中から一護が5万を取り出して、会計を終えた。
「うわ、すげー荷物の量。一度、家に戻るか」
「そうだな。このような荷物をもったまま、どこかへは行けまい」
ルキアも頷く。
「ま、一応これデートだしな」
「な、なんだと!?こ、これがデートというものなのか」
「彼女の買い物に付き合う。立派なデートだろ」
「ううむ・・・・・」
ルキアは納得がいかなさそうだったが、とりあえず黒崎家に帰り、リビングに大量の荷物を置いて、また外に出た。
「腹減ったな。ファミレスでもいくか」
「うむ」
近くのファミリーレストランにより、一護はパスタを、ルキアが海老のグラタンを頼んだ。
それだけでは物足りないので、ルキアはジャンボパフェを注文した。
「おい、これ一人で食べきれるのか?」
「よく見ろ。スプーンが2ついておるであろう」
「あ、ほんとだ」
一護も、反対側からジャンボパフェを食べだした。
チョコレートの塊を前にして、どちらが食べるか争い、ルキアがちょっと目を離した隙に、一護が食べてしまった。
「貴様、ずるいぞ!」
「いいじゃねーか。チョコレートくらい、後でいくらでも買ってやるよ」
「その言葉、本当だな?」
「ああ」
会計は、一護が持った。
それから、不思議がるルキアを連れて、宝石店に入る。
「なんなのだ?」
「いや、前に見かけた・・・・あ、まだあった」
アメジストのネックレスだった。
金額は高くもないが、安くもなった。
「すみません、これ下さい」
「はい。こちらの商品で間違いはございませんでしょうか?」
「はい」
お金を払う。一護の財布から、一万円札が3枚ほど飛んでいく。
「では、包装を・・・・・・」
「いえ、つけていくのでいいです」
「一護?」
そのネックレスを、ルキアの首に飾ってやった。
「一護、このような高いもの・・・貴様の財布が!」
「いいんだよ。17カ月の間に、このネックレス買って、いつかルキアに送りたいと思ってバイトしてたし。まぁ、大学生になったら、一人暮らし貯める資金でもあるんだけどな」
「そのような大切な金で、何故私にネックレスなど・・・・」
「アメジストだからだ」
「え?」
「お前の瞳と同じアメジスト。ハート型で、中にダイヤモンドが入ってる」
「本当だ・・・・キラキラしていて、綺麗だな・・・・・」
ルキアはネックレスが気に入ってくれたようで、一護も嬉し気だった。
その日の夜は、マクドナルドにいってジャンクフードを食べた。
「体に悪い分かっているが・・・・美味いな」
「ああ。一時期は凄く安かったんだが、最近どこも物価が高くなって、この店もこの前値上げしやがった」
「それでも、ファミレスよりは安いであろう?」
「そうだな」
ルキアは、何かの錠剤を水と一緒に飲み干した。
「薬?どうしたんだ、ルキア?どこか悪いのか?」
「いや・・・義骸との連結を強くするだけの薬だ・・・・・・・」
「そっか・・・・・・・」
食事を食べ終えた二人は、誰もいない公園にきていた。
「なぁ、キスしてもいいか?」
「む、いいぞ」
一護は、ルキアに唇に唇を重ねた。
始めは触れるだけ。次に深く。
舌が絡まり合い、そのようなこと体験したことのないルキアは、震えていた。
ルキアを抱き締めた。
「ふあっ・・・・・・」
舌を引き抜かれると、怒ると思っていたのだが、ルキアは怒らなかった。
「兄様がくる。私は、先に帰っておく。兄様から説明がある。どうか、落ち着いて、心して聞いて欲しい」
「おい、ルキア!?」
ルキアは、走り出して見えなくなってしまった。
「黒崎一護・・・・」
代わりに声をかけてきたのは、少し懐かしい霊圧。朽木白哉だった。
「兄に、知らせておかねばならないことがある」
「なんだよ、改まって」
「ルキアのことだ」
「ルキアが、どうかしたのか?」
一護は首を傾げた。
「妹さん下さいって言ったこと、怒ってるとか?」
「そのようなことではない。もっと重要な話だ」
「なんだよ・・・・まさか、どこかの貴族と見合いして結婚するとか、そんなこと言い出すんじゃないだろうな!」
「違う。もっとルキア自身に関わる、深い問題だ」
「なんだよ」
一護は、白哉の真剣な眼差しに、一護も真剣になった。
「あれは・・・・我が泣き妻、緋真と同じ病を抱えている」
「え・・・・・・・」
「余命は、もってあと5か月」
「え・・・・うそ、だろ?」
「このようなことで、兄に嘘をついてなんになる」
だって。
だってルキアは、とても健康そうで。笑っていた。ついさっきまで、ずっと隣にいた。
「治す方法はないのかよ!何か薬とか!」
「ない。不治の病だ。だが、あれはそれを知っても、日常を兄と過ごしたいと言ってきた。4番隊で診てもらったが、もう末期だそうだ。痛み止めの薬を飲んでいるであろう」
そういえば、食後に何か錠剤のような薬を飲んでいた。
「あれが、痛み止め・・・・・・」
がらがらと、一護の中で何かが崩れていく。
「ルキアが・・・余命5カ月・・・・・」
ちょうど、高校を卒業する頃には、死ぬというのか。
あのルキアが。
とても活発で、笑い、時には涙を零し・・・一見すると健康にしか見えないルキアが。
「そんなの、ありかよ・・・・・・」
「ルキアから、兄に伝えてくれと言われたので伝えた。私からの願いだ。あれを、逝くその時まで愛してやってくれ・・・・・・」
白哉の目から、涙が零れていた。
妻に続き、義妹も白哉を置いていこうとしているのだ。
白哉にとって、生きてさえいれば、たとえ現世に嫁にいってもよかったのだ。
亡き緋真と同じ病。不治の病。薬もない。
「痛み止めさえ飲んでいれば、通常の日常を過ごせる。どうか、最後まであれを愛し抜いてやってくれ」
「うわあああああ!!」
一護は、月に向かって吠えていた。
ルキア、ルキア、ルキア。
あと5か月でお別れなんて、嘘だろう?
誰か、嘘といってくれ。
-----------------------------------------一護とルキアの、最後の冬が、訪れようとしていた。
最後の冬 学校生活
尸魂界から、穿界門を通り、現世へと戻ってきた一護とルキア。
ルキアは、まず一心に挨拶して、双子の妹にも挨拶して、また一緒に暮らせることを伝えた。
双子の妹たちは、ルキアを実の姉のように慕い、一心も実の娘のように扱った。
相変わらず双子の部屋を与えられたが、ルキアは一護の部屋でいいと断った。
「ルキアちゃんに手を出すんじゃねーぞ!」
「ああ、それは無理。俺たち、付き合うことにしたから」
「一護、貴様!私と貴様がいつ付き合うとう言った!」
「いや、だってお互い告白し合ったら、後は付き合うしかねーだろ」
「そそそそ、そうなのか?」
ルキアに恋愛面の経験はないので、一護はそうだと言って、ルキアを丸めこんだ。
「井上と茶虎と石田にも報告しないとな。ルキアも帰ってきたって」
早速三人に連絡を入れる、一護の部屋に集まることになった。
井上は、売り残りのパンを、石田と茶虎はお菓子とジュースを手に、集まった。
「朽木さーん!また一緒の高校に通えるなんて嬉しい!」
「うむ、私もだ井上・・・むぐぐぐ」
井上に抱き寄せられて、背の低いルキアはその豊満な胸に顔を圧迫されて、窒息死しそうになっていた。
「おい、井上、ルキアが窒息死する!」
「あ、私ったら、嬉しくてつい」
「黒崎が大戦から帰ってきたら高校の通うのは当たり前だけど、まさか朽木さんまでとは・・・」
「俺が、京楽総隊長にお願いしたんだ」
「そうか・・・・・・」
「みんな、パンあるから食べてねー」
「む、いただく」
よく井上のパンにお世話になっていた茶虎が、売れ残りのパンを口にする。
「それにしても、こんなに売れ残りのパンだして、お前のところのバイト先マジで大丈夫か?」
「えへへ、平気平気」
「あ、あと報告。俺とルキア、付き合うことにしたから」
「たわけ、貴様!」
ルキアが、顔を真っ赤にさせた。
「え、黒崎君と朽木さん付き合うんだ!朽木さんから告白したの?」
「違う、俺からだ」
「黒崎君は優しいから。私も、一度告白したんだけど振られちゃった。朽木さんが好きだって」
「井上・・・・」
「黒崎君、思いがかなってよかったね」
心なしか、井上は少し涙ぐんでいた。
でも、一護にはどうすることもできない。
「まぁ、ぱーっと騒ごうよ!せっかく石田君と茶虎君が、お菓子とジュース買ってきてくれたんだから!」
「ああ、そうだな」
ルキアが頷く。
「私は、明日から復学するこになった。生徒と教師の記憶は、記憶置換で少しいじることになるが・・・・・・」
「ほらほら、石田くんも飲みなよ~。ぐいっと」
コーラをコップに注いで、なくなった側から、井上が足していく。
「ちょっと待ってくれ、井上さん!そんなにコーラばっかり飲めない!」
「じゃあ茶虎君も~」
茶虎も、おなかがたぷんたぷんになるまでコーラを飲まされた。
「ほらぁ、朽木さんも」
「む。私はコーラでなく、オレンジジュースが良い」
「ではオレンジジュースを飲んで~飲みまくって~」
「うむ。苦しゅうない」
どこかの殿さまのようになっているが、上流貴族なのだ。そういう扱いをされるのに、慣れているのだろう。
「朽木さん、今度買いものに行こうよ。冬用の服、持ってないでしょ」
「うむ・・・制服はなんとか、浦原のつてで冬服が手に入ったが・・・」
「浦原さん、そんなことまでするのかよ」
「あやつは、いろいろつてがあるからな」
その日は、深夜近くまで騒いで、解散となった。
井上がもってきたパンとお菓子を食べたせいで、夕飯はいらなかった。
二人分の夕飯は、サランラップで包まれて、テーブルの上に置かれてあった。
「遊子に悪いことをしたな」
「明日食べればいいだけじゃねぇか」
「それはそうだが・・・・・・」
その日は、湯浴みをして眠ることにした。
「ほら、ルキアこっち」
「わ、私は押し入れが恋しいのだ!」
「一緒に寝るぞ」
ルキアをひょいっと持ち上げて、一護はルキアをベッドに寝かせると、その隣で当たり前の用に横になり、腕の中にルキアを抱き抱えて、一護は眠ってしまった。
「一護・・・?」
問いかけてみるが、静かな寝息がするだけで、一護は寝てしまっていた。
「私だけ、意識しすぎなのか・・・・」
一護に好きと言われて、付き合うことになったというものの、ルキアは胸のドキドキが収まらなかった。
やがて、ルキアの意識も闇に落ちていった。
次の朝。
「やっべ、遅刻だ!」
一護が慌てて着替えるものだから、その着替えシーンをばっちり見てしまって、ルキアは頬を赤らめた。
「ルキア、外で待ってるから、早く着換えて用意しろ」
「う、うむ・・・・・」
すぐ扉の外で一護が待っていると考えるだけで、頬が朱くなる。
もう慣れてしまったが、死覇装の袴では見えぬ足が、スカートから膝上くらいから丸見えだった。
「うぬ・・・久しぶりの制服のスカートは、スースーするな」
「いいから、急げ、ルキア!走ればまだ間に合う!」
義骸に入っているので、瞬歩は使えない。
一護も死神でいることが大戦で慣れてしまって、やりにくそうだった。
「瞬歩使えないのって、けっこうきついな」
「そうであろう。私の今までの大変さを貴様も味わえ」
17カ月前。
義骸で過ごしていたルキアの気持ちが、少しだけ分かった。
学校に到着すると、門が閉められていた。
「よっと」
「うむ」
二人はそれをひらりと乗り越えて、教師の怒り声を背後から受けながら、下駄箱のある入り口にいく。
一護は3週間ぶり近くになる登校であったが、自分の下駄箱をあけると、バサバサと溜まっていたラブレターが入っていた。
「ふん。貴様はもてるのだな」
「ルキア、今焼きもちやいただろ」
ニマニマする一護に、ルキアはごほんを咳払いをした。
「そ、そのようなことはない!」
一護は、ラブレターの束を読むこともせず、捨ててしまった。
「じゃあ、なんで眉間に皺寄せてるんだ?」
「そ、それは私の上履きがないからだ!」
「あるだろ。その隅っこの一番上」
「あ、本当だ・・・・」
でも、身長の低いルキアでは届かなかった。
「む、この!」
「どけよ。俺が出してやるから」
「う、うむ。苦しゅうない」
「その苦しゅうないってなんだ?どっかの時代劇の殿様みたいだな?」
ルキアに上履きを出してやり、登校するときはいていた革靴を下駄箱になおす。
「どうでもよかろう、そのようなこと!今は急がねば、朝礼が始まってしまう!」
すでに記憶置換により、ルキアはアメリカに留学していて、今日から復学が決定した設定であった。
「それにしても、アメリカに留学の設定って無理ないか?英語大の苦手だろ」
「そのあたりは、記憶置換でどうにでもなる」
「それ、めっちゃ便利だよな」
「む、貸さなぬぞ!これは人が使ってよい物ではない」
「別にいらねーよ。誰かの記憶を改竄したいなんて思ってねーし」
ガラリと戸を開けると、朝礼の途中であった。
「遅いぞ、黒崎!朽木もだ!」
担任の教師は、一護とルキアを叱った。
ちなみに、一護とルキアは親戚という設定しておいた。その方が、黒崎家から二人が出てくるところを見られても、平気だからだ。
「えーこの度、アメリカ留学から帰ってきた朽木が復学することになった。しばらくぶりなので、いろいろと大変だろうから、いろいろ気を使ってやってくれ」
「おほほほ・・・・よろしくお願いたします」
「きもい」
そう言った一護の頭を殴り、ルキアも一護も席についた。
一護の隣だった。ルキアの席は。
授業を受けるが、ルキアには国語と古典以外ちんぷんかんぷんだった。
一護も一護で、尸魂界に3週間近くいたせいか、ついていけなかった。
「これはやばい・・・茶虎にでも頼んで、休んでいた間の勉強教えてもらおう」
石田と茶虎と井上も尸魂界に赴いたが、帰還は一護よりずっと早かった。
「あー、あんた、授業についてけないんでしょ」
「あ、たつき。すまねぇ、休んでいた時の分教えてくれ」
「それは別にいいけど・・・・あんた、いいの?」
「何が」
「朽木さん放っておいて。男子生徒二人に連れていかれたよ」
「まじかよ!」
一護が、男子生徒二人に連れていかれたという屋上にやってくると、ルキアがちょうど男子生徒の一人の顔面に蹴りを入れているところだった。
「あ、パンツ見えた。水玉か・・・・・」
「一護!助けにきてくれたのかと思ったら、パンツなど見よって!けしからん!」
ルキアは体が軽いが、けっこう蹴りは強いのだ。
もう一人の男子生徒も、腹を蹴られて、屋上で蹲っていた。
「おい、お前ら。ルキアは俺のものだ。手だしたら、無事でいられないと思え」
それぞれの生徒の頭を蹴って、ルキアの方を向く。
「だ、誰が貴様のものだ!私は私自身のものに決まっておろう!」
「ルキア、愛してる」
「う・・・卑怯だぞ!そのような切ない顔で、そのような台詞!」
「ルキアは、俺のこと好きか?」
「す、好きに決まっておろう!」
「じゃあ、愛してる?」
「し、知らぬ!」
真っ赤な顔をして、ルキアは屋上から立ち去ってしまった。
「ああもう、かわいいなぁ」
一護は、ルキアに大分毒されているようだった。
―-------------------------------------------二人の最後の冬がやってくる。
ルキアは、まず一心に挨拶して、双子の妹にも挨拶して、また一緒に暮らせることを伝えた。
双子の妹たちは、ルキアを実の姉のように慕い、一心も実の娘のように扱った。
相変わらず双子の部屋を与えられたが、ルキアは一護の部屋でいいと断った。
「ルキアちゃんに手を出すんじゃねーぞ!」
「ああ、それは無理。俺たち、付き合うことにしたから」
「一護、貴様!私と貴様がいつ付き合うとう言った!」
「いや、だってお互い告白し合ったら、後は付き合うしかねーだろ」
「そそそそ、そうなのか?」
ルキアに恋愛面の経験はないので、一護はそうだと言って、ルキアを丸めこんだ。
「井上と茶虎と石田にも報告しないとな。ルキアも帰ってきたって」
早速三人に連絡を入れる、一護の部屋に集まることになった。
井上は、売り残りのパンを、石田と茶虎はお菓子とジュースを手に、集まった。
「朽木さーん!また一緒の高校に通えるなんて嬉しい!」
「うむ、私もだ井上・・・むぐぐぐ」
井上に抱き寄せられて、背の低いルキアはその豊満な胸に顔を圧迫されて、窒息死しそうになっていた。
「おい、井上、ルキアが窒息死する!」
「あ、私ったら、嬉しくてつい」
「黒崎が大戦から帰ってきたら高校の通うのは当たり前だけど、まさか朽木さんまでとは・・・」
「俺が、京楽総隊長にお願いしたんだ」
「そうか・・・・・・」
「みんな、パンあるから食べてねー」
「む、いただく」
よく井上のパンにお世話になっていた茶虎が、売れ残りのパンを口にする。
「それにしても、こんなに売れ残りのパンだして、お前のところのバイト先マジで大丈夫か?」
「えへへ、平気平気」
「あ、あと報告。俺とルキア、付き合うことにしたから」
「たわけ、貴様!」
ルキアが、顔を真っ赤にさせた。
「え、黒崎君と朽木さん付き合うんだ!朽木さんから告白したの?」
「違う、俺からだ」
「黒崎君は優しいから。私も、一度告白したんだけど振られちゃった。朽木さんが好きだって」
「井上・・・・」
「黒崎君、思いがかなってよかったね」
心なしか、井上は少し涙ぐんでいた。
でも、一護にはどうすることもできない。
「まぁ、ぱーっと騒ごうよ!せっかく石田君と茶虎君が、お菓子とジュース買ってきてくれたんだから!」
「ああ、そうだな」
ルキアが頷く。
「私は、明日から復学するこになった。生徒と教師の記憶は、記憶置換で少しいじることになるが・・・・・・」
「ほらほら、石田くんも飲みなよ~。ぐいっと」
コーラをコップに注いで、なくなった側から、井上が足していく。
「ちょっと待ってくれ、井上さん!そんなにコーラばっかり飲めない!」
「じゃあ茶虎君も~」
茶虎も、おなかがたぷんたぷんになるまでコーラを飲まされた。
「ほらぁ、朽木さんも」
「む。私はコーラでなく、オレンジジュースが良い」
「ではオレンジジュースを飲んで~飲みまくって~」
「うむ。苦しゅうない」
どこかの殿さまのようになっているが、上流貴族なのだ。そういう扱いをされるのに、慣れているのだろう。
「朽木さん、今度買いものに行こうよ。冬用の服、持ってないでしょ」
「うむ・・・制服はなんとか、浦原のつてで冬服が手に入ったが・・・」
「浦原さん、そんなことまでするのかよ」
「あやつは、いろいろつてがあるからな」
その日は、深夜近くまで騒いで、解散となった。
井上がもってきたパンとお菓子を食べたせいで、夕飯はいらなかった。
二人分の夕飯は、サランラップで包まれて、テーブルの上に置かれてあった。
「遊子に悪いことをしたな」
「明日食べればいいだけじゃねぇか」
「それはそうだが・・・・・・」
その日は、湯浴みをして眠ることにした。
「ほら、ルキアこっち」
「わ、私は押し入れが恋しいのだ!」
「一緒に寝るぞ」
ルキアをひょいっと持ち上げて、一護はルキアをベッドに寝かせると、その隣で当たり前の用に横になり、腕の中にルキアを抱き抱えて、一護は眠ってしまった。
「一護・・・?」
問いかけてみるが、静かな寝息がするだけで、一護は寝てしまっていた。
「私だけ、意識しすぎなのか・・・・」
一護に好きと言われて、付き合うことになったというものの、ルキアは胸のドキドキが収まらなかった。
やがて、ルキアの意識も闇に落ちていった。
次の朝。
「やっべ、遅刻だ!」
一護が慌てて着替えるものだから、その着替えシーンをばっちり見てしまって、ルキアは頬を赤らめた。
「ルキア、外で待ってるから、早く着換えて用意しろ」
「う、うむ・・・・・」
すぐ扉の外で一護が待っていると考えるだけで、頬が朱くなる。
もう慣れてしまったが、死覇装の袴では見えぬ足が、スカートから膝上くらいから丸見えだった。
「うぬ・・・久しぶりの制服のスカートは、スースーするな」
「いいから、急げ、ルキア!走ればまだ間に合う!」
義骸に入っているので、瞬歩は使えない。
一護も死神でいることが大戦で慣れてしまって、やりにくそうだった。
「瞬歩使えないのって、けっこうきついな」
「そうであろう。私の今までの大変さを貴様も味わえ」
17カ月前。
義骸で過ごしていたルキアの気持ちが、少しだけ分かった。
学校に到着すると、門が閉められていた。
「よっと」
「うむ」
二人はそれをひらりと乗り越えて、教師の怒り声を背後から受けながら、下駄箱のある入り口にいく。
一護は3週間ぶり近くになる登校であったが、自分の下駄箱をあけると、バサバサと溜まっていたラブレターが入っていた。
「ふん。貴様はもてるのだな」
「ルキア、今焼きもちやいただろ」
ニマニマする一護に、ルキアはごほんを咳払いをした。
「そ、そのようなことはない!」
一護は、ラブレターの束を読むこともせず、捨ててしまった。
「じゃあ、なんで眉間に皺寄せてるんだ?」
「そ、それは私の上履きがないからだ!」
「あるだろ。その隅っこの一番上」
「あ、本当だ・・・・」
でも、身長の低いルキアでは届かなかった。
「む、この!」
「どけよ。俺が出してやるから」
「う、うむ。苦しゅうない」
「その苦しゅうないってなんだ?どっかの時代劇の殿様みたいだな?」
ルキアに上履きを出してやり、登校するときはいていた革靴を下駄箱になおす。
「どうでもよかろう、そのようなこと!今は急がねば、朝礼が始まってしまう!」
すでに記憶置換により、ルキアはアメリカに留学していて、今日から復学が決定した設定であった。
「それにしても、アメリカに留学の設定って無理ないか?英語大の苦手だろ」
「そのあたりは、記憶置換でどうにでもなる」
「それ、めっちゃ便利だよな」
「む、貸さなぬぞ!これは人が使ってよい物ではない」
「別にいらねーよ。誰かの記憶を改竄したいなんて思ってねーし」
ガラリと戸を開けると、朝礼の途中であった。
「遅いぞ、黒崎!朽木もだ!」
担任の教師は、一護とルキアを叱った。
ちなみに、一護とルキアは親戚という設定しておいた。その方が、黒崎家から二人が出てくるところを見られても、平気だからだ。
「えーこの度、アメリカ留学から帰ってきた朽木が復学することになった。しばらくぶりなので、いろいろと大変だろうから、いろいろ気を使ってやってくれ」
「おほほほ・・・・よろしくお願いたします」
「きもい」
そう言った一護の頭を殴り、ルキアも一護も席についた。
一護の隣だった。ルキアの席は。
授業を受けるが、ルキアには国語と古典以外ちんぷんかんぷんだった。
一護も一護で、尸魂界に3週間近くいたせいか、ついていけなかった。
「これはやばい・・・茶虎にでも頼んで、休んでいた間の勉強教えてもらおう」
石田と茶虎と井上も尸魂界に赴いたが、帰還は一護よりずっと早かった。
「あー、あんた、授業についてけないんでしょ」
「あ、たつき。すまねぇ、休んでいた時の分教えてくれ」
「それは別にいいけど・・・・あんた、いいの?」
「何が」
「朽木さん放っておいて。男子生徒二人に連れていかれたよ」
「まじかよ!」
一護が、男子生徒二人に連れていかれたという屋上にやってくると、ルキアがちょうど男子生徒の一人の顔面に蹴りを入れているところだった。
「あ、パンツ見えた。水玉か・・・・・」
「一護!助けにきてくれたのかと思ったら、パンツなど見よって!けしからん!」
ルキアは体が軽いが、けっこう蹴りは強いのだ。
もう一人の男子生徒も、腹を蹴られて、屋上で蹲っていた。
「おい、お前ら。ルキアは俺のものだ。手だしたら、無事でいられないと思え」
それぞれの生徒の頭を蹴って、ルキアの方を向く。
「だ、誰が貴様のものだ!私は私自身のものに決まっておろう!」
「ルキア、愛してる」
「う・・・卑怯だぞ!そのような切ない顔で、そのような台詞!」
「ルキアは、俺のこと好きか?」
「す、好きに決まっておろう!」
「じゃあ、愛してる?」
「し、知らぬ!」
真っ赤な顔をして、ルキアは屋上から立ち去ってしまった。
「ああもう、かわいいなぁ」
一護は、ルキアに大分毒されているようだった。
―-------------------------------------------二人の最後の冬がやってくる。
最後の冬 一護の我儘
「ルキア・・・・」
この1年5カ月、ずっとルキアを思っていた。いや、それはルキアが処刑されるために尸魂界へと、連れ去られたのを助け出したのをきっかけで、ずっとルキアを思っていた。
そして先の大戦から数週間後。
ルキアは、高校生として現世に帰ってきた。
高校卒業まで現世にいさせてほしいという、一護の願いが通じたのだ。
尸魂界を救った英雄。一護はそう呼ばれていたが、英雄でもなんでもない。みんなの力があったから、ユーハバッハを倒せたのだ。
先の大戦で、山本元柳斎重國、卯ノ花烈、浮竹十四郎というメンバーが死んだのは知っていた。
ルキアにとっては、上司である浮竹の死は一番こたえたのではなかろうか。葬儀の時、とてもたくさんの涙を零していた。
浮竹の死は尸魂界侵攻のほぼ終わり頃なので、一護もまだ尸魂界にいて、葬儀に参加した。
真っ白い百合に囲まれた浮竹は、真っ白な髪とあいまって、百合がよく似合っていた。ルキアを含む席官たちが涙を流す。いつも一緒にいた京楽も、とても悲しそうな目をしていた。
「浮竹隊長!」
「ルキア、こっちへこい。一人で泣くな。俺の胸で泣け」
そういうと、ルキアは一護の死覇装を握りしめて、ポロポロといつまでいつまでも泣いていた。
浮竹の棺が蓋をされ、火葬されて灰になって。
ただ、泣いていた。
彼女が泣き止んだのは、葬儀が完全に終わって2時間ほどしてからだった。
泣きはらした目で、朽木邸に帰っていくルキアを、一護は送った。まだ数日尸魂界に滞在する予定だったので、朽木家に泊めてもらった。
これから復興がはじまる。
隊長副隊長は忙しくなる。
分かっていて、京楽に切りだした。
「なぁ、京楽さん。ルキアを------------------せめて、高校卒業まで、現世にいさせてくれないか」
「これまた無茶をいうねぇ、一護君」
「これから復興で忙しいのは知っている。しかもルキアの隊は浮竹さんを欠いている。それでも・・・・ルキアと一緒に過ごす時間が欲しいんだ」
「尸魂界の恩人だしねぇ。まぁいいよ。高校卒業まで、あと5か月もないでしょ。13番隊には、僕からなんとかなるようにしておくから」
「すまない、京楽さん」
朽木家に戻り、ルキアにそれを話すと、ルキアはきょとんとした目をしていた。
「私が現世へ?何故だ」
「高校卒業まで、現世にいさせてくれって京楽さんに頼んだんだ」
「だから、何故だと聞いておる!」
「ああ、もう少しは察しろよ!」
一護は、ルキアを抱き締めていた。
「なななな、何をする!」
顔を真っ赤にさせたルキアに、耳元で囁く。
「好きなんだ、ルキア。お前のことがどうしようもなくらいに、好きだ」
「わわわわ私も・・・・・好きだ」
蚊の鳴くような声だった。
それでも一護にはちゃんと届いていた。
「恋次のことも好きか?」
「ああ、好きだ」
「石田に茶虎に井上のことは?」
「無論好きだ」
一護は長い溜息を零した。
「そいう好きじゃなくって、俺は恋愛感情でルキアのことが好きなんだ」
ルキアは真っ赤になって、倒れた。
「おい、ルキア!」
「たたたたわけ!私の心臓を止める気か!」
ルキアは、朽木邸のルキアに与えられた部屋の中で、真っ赤になって逃げ道を探していた。
「なんで逃げるんだよ」
「にににに、逃げてなどおらぬ!」
「ならこっちにきて、ちゃんと答え聞かせてくれ」
「わわわ私は・・・・・・」
見てるだけで分かるくらいの反応だった。
それでも、答えが聞きたくて、ルキアの細い腰をぐいっと自分の方に抱き寄せた。
一護の腕の中にすっぽりと納まってしまったルキアは、頬を朱くしてぎゅっと目を閉じていた。
「何も、とって食ったりしてーよ」
「ほ、本当か?」
そーっと目を開けるルキア。
ドアップで、一護の顔を見てしまい、そのかっこよさにルキアはプシューと音をたてていた。
「私も貴様のことが恋愛感情で・・・このバカカレーはうまい、兄様に一度は食べさせてあげねば・・・・・・」
ルキアは、真っ赤になって、一護の腕の中にいた。
「少し落ち着けよ」
「落ち着いていられるか馬鹿者!この手を離せ!」
「え、ああすまねぇ」
ルキアを解放すると、ルキアは布団にもぐりこんだ。
「どうしたんだよ、ルキア?」
「すでに答えなら言ったであろう。私も貴様のことを恋愛感情で-----------------と」
ルキアの肝心な部分の沈黙に、一護が言う。
「いや、肝心の部分が聞こえてねぇから」
「貴様を!恋愛感情で!好きだと言っておるのだ!」
「んで、照れて布団被ってるのか?」
「そうだ!何か悪いか!」
「悪くねぇけど、かわいい」
くすくすと笑う一護に憤慨して、ルキアは頭突きを食らわした。
「いってぇ」
「いつまでこっちにいる気なのだ!現世に戻り、高校に通うのであろう?」
ルキアの問いかけに、一護が答える。
「ああ、明後日には現世に戻ろうと思ってる」
「では、明後日には私も現世へか。13番隊はどうなるのだ。隊長副隊長不在では・・・・」
「そこらへんは、京楽さんが何とかしてくれるって言ってた」
「京楽総隊長が・・・・・」
それでも、どうしても不安が残る。隊長副隊長不在が、約5か月ほど続くのだ。
「俺の我儘なんだ。ルキアともっと一緒にいたい。残り5か月もないけど、一緒にいたいんだ」
一護が、背後からルキアを抱き寄せた。
「こら、一護!」
「ルキアの匂いがする・・・・・」
「一護・・・・・」
「ルキア、大好きだ」
ルキアは、ぽろぽろと涙を零した。
「ルキア?」
「分からぬ。分からぬが、心が痛いのだ。浮竹隊長は亡くなられた。なのに、私だけこんな幸せを享受していいのかと・・・・・」
ルキアの頭を撫でた。
「一護・・・・」
「今日、お前の部屋に泊まってもいいか。何もしねぇから。これは絶対だ。何もしねぇと誓う」
「兄様が・・・・許してくれるかどうか・・・・・」
「ああ、それならもうずっと前に、妹さんを俺に下さいって言っておいた。千本桜で切り刻まれそうになったけど、了承はもらったみたいだ」
「兄様・・・このような者、斬り捨ててくればよかったのに」
「そりゃねーだろ、ルキア」
抱き寄せてくる腕に力が籠る。
それでも、優しい腕だった。
「では、貴様は今日も明日もこの私の部屋で寝泊まりするのか?」
「ああ、そうだ」
ルキアは真っ赤になった。さっきから赤くなってばっかりだ。
「だから、何もしねぇよ。まぁ抱き着いたりくらいはするけど。現世にいた頃も、俺のベッドでよく一緒に寝てただろ?あんなかんじだよ」
「あの頃は、お互い何も思っても口に出さなかったからよかったのだ!恋愛感情で好きと言われて、気にしないほうがおかしいであろう!」
「まぁまぁ」
もう夜も遅い。ルキアは、すでにひいていた布団の隣に、もう1つの布団をしこうとして、一護に止められた。
「なんだ」
「お前と一緒の布団で眠りたい」
「勝手にしろ!」
ルキアが布団に入ると、その隣に一護が入ってきた。
「ルキアの心臓すっげードクドクいってる」
「は、恥ずかしいのだ!」
後ろから一護に抱き締められて、腕の中にすっぽりと納まってしまっていた。
一護のほうには恥ずかしく顔を向けれないので、背をむけていると、一護の手がルキアの頭を撫でた。
「子供扱いするな!」
「してねーよ。さらさらの髪だなと思って。昔とちっともかわってねぇな」
1年と5カ月前の頃と、本当に何も変わっていない。少なくとも、外見上は。その戦闘能力は、卍解に至るまでになった。
「ルキア、もうちょっと俺の方に寄って」
「うむ・・・こうか?」
ちゅっと。
音をたてて、頬にキスをされた。
「き、貴様、何もせと言ったであろう!」
「いいじゃねぇか、頬にキスくらい」
「一護のあほ!」
ルキアは拗ねたように、一護の方を向いたと思うと。
ちゅっ。
一護のの頬に、キスをしていた。
「ルキア?」
「これで、お互い同じだ!いいな!」
一護が笑う。
「あーもう、マジでお前かわいい」
「な、何もするなよ!キスもだめだぞ!」
「わーってるって」
一護が、抱き締めてくる腕に力をこめると、細いルキアの肢体は、一護の胸の中へ。
互いに体温を共有し合って眠った。
---------------------最後の冬が、訪れようとしていた。
この1年5カ月、ずっとルキアを思っていた。いや、それはルキアが処刑されるために尸魂界へと、連れ去られたのを助け出したのをきっかけで、ずっとルキアを思っていた。
そして先の大戦から数週間後。
ルキアは、高校生として現世に帰ってきた。
高校卒業まで現世にいさせてほしいという、一護の願いが通じたのだ。
尸魂界を救った英雄。一護はそう呼ばれていたが、英雄でもなんでもない。みんなの力があったから、ユーハバッハを倒せたのだ。
先の大戦で、山本元柳斎重國、卯ノ花烈、浮竹十四郎というメンバーが死んだのは知っていた。
ルキアにとっては、上司である浮竹の死は一番こたえたのではなかろうか。葬儀の時、とてもたくさんの涙を零していた。
浮竹の死は尸魂界侵攻のほぼ終わり頃なので、一護もまだ尸魂界にいて、葬儀に参加した。
真っ白い百合に囲まれた浮竹は、真っ白な髪とあいまって、百合がよく似合っていた。ルキアを含む席官たちが涙を流す。いつも一緒にいた京楽も、とても悲しそうな目をしていた。
「浮竹隊長!」
「ルキア、こっちへこい。一人で泣くな。俺の胸で泣け」
そういうと、ルキアは一護の死覇装を握りしめて、ポロポロといつまでいつまでも泣いていた。
浮竹の棺が蓋をされ、火葬されて灰になって。
ただ、泣いていた。
彼女が泣き止んだのは、葬儀が完全に終わって2時間ほどしてからだった。
泣きはらした目で、朽木邸に帰っていくルキアを、一護は送った。まだ数日尸魂界に滞在する予定だったので、朽木家に泊めてもらった。
これから復興がはじまる。
隊長副隊長は忙しくなる。
分かっていて、京楽に切りだした。
「なぁ、京楽さん。ルキアを------------------せめて、高校卒業まで、現世にいさせてくれないか」
「これまた無茶をいうねぇ、一護君」
「これから復興で忙しいのは知っている。しかもルキアの隊は浮竹さんを欠いている。それでも・・・・ルキアと一緒に過ごす時間が欲しいんだ」
「尸魂界の恩人だしねぇ。まぁいいよ。高校卒業まで、あと5か月もないでしょ。13番隊には、僕からなんとかなるようにしておくから」
「すまない、京楽さん」
朽木家に戻り、ルキアにそれを話すと、ルキアはきょとんとした目をしていた。
「私が現世へ?何故だ」
「高校卒業まで、現世にいさせてくれって京楽さんに頼んだんだ」
「だから、何故だと聞いておる!」
「ああ、もう少しは察しろよ!」
一護は、ルキアを抱き締めていた。
「なななな、何をする!」
顔を真っ赤にさせたルキアに、耳元で囁く。
「好きなんだ、ルキア。お前のことがどうしようもなくらいに、好きだ」
「わわわわ私も・・・・・好きだ」
蚊の鳴くような声だった。
それでも一護にはちゃんと届いていた。
「恋次のことも好きか?」
「ああ、好きだ」
「石田に茶虎に井上のことは?」
「無論好きだ」
一護は長い溜息を零した。
「そいう好きじゃなくって、俺は恋愛感情でルキアのことが好きなんだ」
ルキアは真っ赤になって、倒れた。
「おい、ルキア!」
「たたたたわけ!私の心臓を止める気か!」
ルキアは、朽木邸のルキアに与えられた部屋の中で、真っ赤になって逃げ道を探していた。
「なんで逃げるんだよ」
「にににに、逃げてなどおらぬ!」
「ならこっちにきて、ちゃんと答え聞かせてくれ」
「わわわ私は・・・・・・」
見てるだけで分かるくらいの反応だった。
それでも、答えが聞きたくて、ルキアの細い腰をぐいっと自分の方に抱き寄せた。
一護の腕の中にすっぽりと納まってしまったルキアは、頬を朱くしてぎゅっと目を閉じていた。
「何も、とって食ったりしてーよ」
「ほ、本当か?」
そーっと目を開けるルキア。
ドアップで、一護の顔を見てしまい、そのかっこよさにルキアはプシューと音をたてていた。
「私も貴様のことが恋愛感情で・・・このバカカレーはうまい、兄様に一度は食べさせてあげねば・・・・・・」
ルキアは、真っ赤になって、一護の腕の中にいた。
「少し落ち着けよ」
「落ち着いていられるか馬鹿者!この手を離せ!」
「え、ああすまねぇ」
ルキアを解放すると、ルキアは布団にもぐりこんだ。
「どうしたんだよ、ルキア?」
「すでに答えなら言ったであろう。私も貴様のことを恋愛感情で-----------------と」
ルキアの肝心な部分の沈黙に、一護が言う。
「いや、肝心の部分が聞こえてねぇから」
「貴様を!恋愛感情で!好きだと言っておるのだ!」
「んで、照れて布団被ってるのか?」
「そうだ!何か悪いか!」
「悪くねぇけど、かわいい」
くすくすと笑う一護に憤慨して、ルキアは頭突きを食らわした。
「いってぇ」
「いつまでこっちにいる気なのだ!現世に戻り、高校に通うのであろう?」
ルキアの問いかけに、一護が答える。
「ああ、明後日には現世に戻ろうと思ってる」
「では、明後日には私も現世へか。13番隊はどうなるのだ。隊長副隊長不在では・・・・」
「そこらへんは、京楽さんが何とかしてくれるって言ってた」
「京楽総隊長が・・・・・」
それでも、どうしても不安が残る。隊長副隊長不在が、約5か月ほど続くのだ。
「俺の我儘なんだ。ルキアともっと一緒にいたい。残り5か月もないけど、一緒にいたいんだ」
一護が、背後からルキアを抱き寄せた。
「こら、一護!」
「ルキアの匂いがする・・・・・」
「一護・・・・・」
「ルキア、大好きだ」
ルキアは、ぽろぽろと涙を零した。
「ルキア?」
「分からぬ。分からぬが、心が痛いのだ。浮竹隊長は亡くなられた。なのに、私だけこんな幸せを享受していいのかと・・・・・」
ルキアの頭を撫でた。
「一護・・・・」
「今日、お前の部屋に泊まってもいいか。何もしねぇから。これは絶対だ。何もしねぇと誓う」
「兄様が・・・・許してくれるかどうか・・・・・」
「ああ、それならもうずっと前に、妹さんを俺に下さいって言っておいた。千本桜で切り刻まれそうになったけど、了承はもらったみたいだ」
「兄様・・・このような者、斬り捨ててくればよかったのに」
「そりゃねーだろ、ルキア」
抱き寄せてくる腕に力が籠る。
それでも、優しい腕だった。
「では、貴様は今日も明日もこの私の部屋で寝泊まりするのか?」
「ああ、そうだ」
ルキアは真っ赤になった。さっきから赤くなってばっかりだ。
「だから、何もしねぇよ。まぁ抱き着いたりくらいはするけど。現世にいた頃も、俺のベッドでよく一緒に寝てただろ?あんなかんじだよ」
「あの頃は、お互い何も思っても口に出さなかったからよかったのだ!恋愛感情で好きと言われて、気にしないほうがおかしいであろう!」
「まぁまぁ」
もう夜も遅い。ルキアは、すでにひいていた布団の隣に、もう1つの布団をしこうとして、一護に止められた。
「なんだ」
「お前と一緒の布団で眠りたい」
「勝手にしろ!」
ルキアが布団に入ると、その隣に一護が入ってきた。
「ルキアの心臓すっげードクドクいってる」
「は、恥ずかしいのだ!」
後ろから一護に抱き締められて、腕の中にすっぽりと納まってしまっていた。
一護のほうには恥ずかしく顔を向けれないので、背をむけていると、一護の手がルキアの頭を撫でた。
「子供扱いするな!」
「してねーよ。さらさらの髪だなと思って。昔とちっともかわってねぇな」
1年と5カ月前の頃と、本当に何も変わっていない。少なくとも、外見上は。その戦闘能力は、卍解に至るまでになった。
「ルキア、もうちょっと俺の方に寄って」
「うむ・・・こうか?」
ちゅっと。
音をたてて、頬にキスをされた。
「き、貴様、何もせと言ったであろう!」
「いいじゃねぇか、頬にキスくらい」
「一護のあほ!」
ルキアは拗ねたように、一護の方を向いたと思うと。
ちゅっ。
一護のの頬に、キスをしていた。
「ルキア?」
「これで、お互い同じだ!いいな!」
一護が笑う。
「あーもう、マジでお前かわいい」
「な、何もするなよ!キスもだめだぞ!」
「わーってるって」
一護が、抱き締めてくる腕に力をこめると、細いルキアの肢体は、一護の胸の中へ。
互いに体温を共有し合って眠った。
---------------------最後の冬が、訪れようとしていた。
雪遊び
雪が積もった。
瀞霊廷で雪が積もるのは久しぶりで、恋次は6番隊隊舎の庭にでて雪だるまなど作り出した。
「恋次。休憩時間にしろ。今は業務時間だ」
「あ、すみません隊長。あんまりに珍しいので、ちょっと浮かれちゃって」
恋次は執務室に戻ると、体を震わせてまといついていた雪を落とした。
「犬かお前は。そのような行為、室内に入る前にしろ」
「あ、すんません」
口ではすみませんと言っているが、反省は全然していないようだった。
「恋次」
「どうしたんです、隊長?」
「瀞霊廷に雪が積もるは、実に20年以上ぶりだ」
「俺が真央霊術院にいた頃も、一度だけ積もったこしました。同期の吉良と雛森とで遊んだ記憶があります」
もう50年以上も前のことだ。
未だに鮮明に覚えてる。雪かきしなければいけないほどに積もって、グラウンドを使えないし、道場の入口も積もって中に入れないので、みんなで雪かきをした。
雪玉を投げ合ったり、雪だるまをつくったり、雪ウサギをつくったり、かまくらを作ったりして、遊んだものだ。
昼休憩時間になり、恋次は昼飯を早々に食べ終えて、雪だるまをまた作り出した。まださっきまでは途中だったので、見事に完成した雪だるまを、白哉に見せる。
「隊長、見てください!けっこう我ながら力作だと思います」
木の葉や枝で顔と腕を作った。
「甘い」
白哉は珍しく、雪で何かを作り出した。
10分後、雪でできた見事なわかめ大使があった。
「隊長すげぇ。こんな短時間で、こんなに完ぺきにわかめ大使を作るなんて・・・ぶべ」
恋次の顔に雪玉が投げつけられた。
それが白哉が投げたものだと理解するのに、数秒を要した。
まさか、隊長が子供のように雪遊びをするなんて、思わなかったからだ。
恋次はにやりと笑んで、雪玉を作るとそれを白哉に投げた。
白哉はひょいっと避けた。
でも、恋次がもっていた雪玉は1つだけではなかった。2個3個4個tなげていると、そのうちの1個が、白哉の顔面に当たった。
「よい度胸だ」
白哉も雪玉をたくさん作り、二人で投げ合って遊んだ。
「なんか複雑だな」
「何がだ」
「まさか、隊長が雪遊びするなんて思わなくて」
「私とて、たまには童心にかえりたい時もある。こんなに雪が積もっているのだ。20年以上ぶりだ。次にいつ積もるのかさえ、分からぬ」
そういって、白哉は雪ウサギを作り出した。
その隣に、恋次ももう一羽雪ウサギをつくった。
「これ、俺と隊長です。溶けるまで、仲良くここにあります」
「私とお前か。だが、私たちは溶けるようなものではない。ちゃんとここにいて、恋次の傍にいるであろう」
「隊長!」
恋次は白哉に抱き着いた。
そのあまりの勢いに、雪の中に倒れこむ。
「冷たい・・」
「あ、すんません」
「雪がついた。払うのを手伝え」
起き上がった白哉の髪についていた、雪を払ってやる。
「隊長、体が冷たい。早く執務室に戻って、ストーブにでもあたりましょう」
浦原から流通する家電製品の中の、こたつとストーブは、TV、洗濯機、掃除機とまでいかないものの、それなりの人気商品であった。
執務室に戻り、火鉢とは比べものにならない、その暖かさに恋次も白哉もほっとする。
「隊長、風邪引きそうなったりしてませんよね?」
「病弱ではないのだ。この程度で風邪をひかぬ」
今は亡き、浮竹を思い出す。彼なら、多分風邪を引いて熱を出すだろう。
「でもこの前インフルエンザにかかってたじゃないですか」
「それはお前もだろう」
「隊長のがうつっただけです」
「私も、席官がひいていたのがうつっただけだ」
白哉は、インフルエンザになどかかってしまった自分が、情けないと思っていた。
「人は誰しも何かの病にかかりますから」
まるで白哉の気持ちを分かっているような、言い種だった。
「お前はずるいな・・・・私の心をもっていく」
「え、隊長?」
抱き締められて、恋次は慌てた。でもすぐに冷静になり、白哉を抱き締め返した。
「俺には、隊長だけですから」
「私も、お前だけだ・・・・・」
触れるだけの口づけを交わす。
それがいつしか深いものに変わっていた。
「んん・・・・ふあ・・」
抜いていかれた舌が、つっと銀の糸を引く。
「隊長、もっと・・・」
「我慢しろ。この前睦み合って、3日も経っておらぬ」
恋次はそう言われて、我慢するしかなかった。
無理やり襲うこともできるが、そんなことをすれば白哉の怒りはかなりのものになる。
1か月接触禁止とかくらいそうだ。
白哉が恋次から離れていく前に、いつの日にか贈ったエンゲージリングのされた手に、キスを落とした。
「恋次・・・・」
白哉は、切なそうに恋次を見た。
恋次も、白哉を見つめる。
気づけば、またキスをしていた。
「今日はここまでだ。仕事に戻るぞ」
すでに、昼休憩の時間は過ぎていた。
庭に飾られたままの雪うさぎは、白夜所有の氷室にうつされて、溶けることなくその姿を保ち続けるのであった。
瀞霊廷で雪が積もるのは久しぶりで、恋次は6番隊隊舎の庭にでて雪だるまなど作り出した。
「恋次。休憩時間にしろ。今は業務時間だ」
「あ、すみません隊長。あんまりに珍しいので、ちょっと浮かれちゃって」
恋次は執務室に戻ると、体を震わせてまといついていた雪を落とした。
「犬かお前は。そのような行為、室内に入る前にしろ」
「あ、すんません」
口ではすみませんと言っているが、反省は全然していないようだった。
「恋次」
「どうしたんです、隊長?」
「瀞霊廷に雪が積もるは、実に20年以上ぶりだ」
「俺が真央霊術院にいた頃も、一度だけ積もったこしました。同期の吉良と雛森とで遊んだ記憶があります」
もう50年以上も前のことだ。
未だに鮮明に覚えてる。雪かきしなければいけないほどに積もって、グラウンドを使えないし、道場の入口も積もって中に入れないので、みんなで雪かきをした。
雪玉を投げ合ったり、雪だるまをつくったり、雪ウサギをつくったり、かまくらを作ったりして、遊んだものだ。
昼休憩時間になり、恋次は昼飯を早々に食べ終えて、雪だるまをまた作り出した。まださっきまでは途中だったので、見事に完成した雪だるまを、白哉に見せる。
「隊長、見てください!けっこう我ながら力作だと思います」
木の葉や枝で顔と腕を作った。
「甘い」
白哉は珍しく、雪で何かを作り出した。
10分後、雪でできた見事なわかめ大使があった。
「隊長すげぇ。こんな短時間で、こんなに完ぺきにわかめ大使を作るなんて・・・ぶべ」
恋次の顔に雪玉が投げつけられた。
それが白哉が投げたものだと理解するのに、数秒を要した。
まさか、隊長が子供のように雪遊びをするなんて、思わなかったからだ。
恋次はにやりと笑んで、雪玉を作るとそれを白哉に投げた。
白哉はひょいっと避けた。
でも、恋次がもっていた雪玉は1つだけではなかった。2個3個4個tなげていると、そのうちの1個が、白哉の顔面に当たった。
「よい度胸だ」
白哉も雪玉をたくさん作り、二人で投げ合って遊んだ。
「なんか複雑だな」
「何がだ」
「まさか、隊長が雪遊びするなんて思わなくて」
「私とて、たまには童心にかえりたい時もある。こんなに雪が積もっているのだ。20年以上ぶりだ。次にいつ積もるのかさえ、分からぬ」
そういって、白哉は雪ウサギを作り出した。
その隣に、恋次ももう一羽雪ウサギをつくった。
「これ、俺と隊長です。溶けるまで、仲良くここにあります」
「私とお前か。だが、私たちは溶けるようなものではない。ちゃんとここにいて、恋次の傍にいるであろう」
「隊長!」
恋次は白哉に抱き着いた。
そのあまりの勢いに、雪の中に倒れこむ。
「冷たい・・」
「あ、すんません」
「雪がついた。払うのを手伝え」
起き上がった白哉の髪についていた、雪を払ってやる。
「隊長、体が冷たい。早く執務室に戻って、ストーブにでもあたりましょう」
浦原から流通する家電製品の中の、こたつとストーブは、TV、洗濯機、掃除機とまでいかないものの、それなりの人気商品であった。
執務室に戻り、火鉢とは比べものにならない、その暖かさに恋次も白哉もほっとする。
「隊長、風邪引きそうなったりしてませんよね?」
「病弱ではないのだ。この程度で風邪をひかぬ」
今は亡き、浮竹を思い出す。彼なら、多分風邪を引いて熱を出すだろう。
「でもこの前インフルエンザにかかってたじゃないですか」
「それはお前もだろう」
「隊長のがうつっただけです」
「私も、席官がひいていたのがうつっただけだ」
白哉は、インフルエンザになどかかってしまった自分が、情けないと思っていた。
「人は誰しも何かの病にかかりますから」
まるで白哉の気持ちを分かっているような、言い種だった。
「お前はずるいな・・・・私の心をもっていく」
「え、隊長?」
抱き締められて、恋次は慌てた。でもすぐに冷静になり、白哉を抱き締め返した。
「俺には、隊長だけですから」
「私も、お前だけだ・・・・・」
触れるだけの口づけを交わす。
それがいつしか深いものに変わっていた。
「んん・・・・ふあ・・」
抜いていかれた舌が、つっと銀の糸を引く。
「隊長、もっと・・・」
「我慢しろ。この前睦み合って、3日も経っておらぬ」
恋次はそう言われて、我慢するしかなかった。
無理やり襲うこともできるが、そんなことをすれば白哉の怒りはかなりのものになる。
1か月接触禁止とかくらいそうだ。
白哉が恋次から離れていく前に、いつの日にか贈ったエンゲージリングのされた手に、キスを落とした。
「恋次・・・・」
白哉は、切なそうに恋次を見た。
恋次も、白哉を見つめる。
気づけば、またキスをしていた。
「今日はここまでだ。仕事に戻るぞ」
すでに、昼休憩の時間は過ぎていた。
庭に飾られたままの雪うさぎは、白夜所有の氷室にうつされて、溶けることなくその姿を保ち続けるのであった。
インフルエンザ
ある日、白哉がインフルエンザにかかった。
原因は、席官がかかっていたのがうつったのだ。
「ごほっごほっ・・・恋次、あまり近よるな。うつる」
「俺、インフルエンザの予防接種受けたから大丈夫です」
「そのような問題ではない。ワクチンを打ったとしても、かかる可能性があるのだ。私のことはよいから、下がれ」
朽木邸の寝室で、寝たきりになっている白哉の傍に、恋次はいた。
確かに、ワクチンを打っていても万能ではない。インフルエンザにかかる可能性があることは、否定できない。
それでも、白哉の傍にいたかった。
「水、飲みますか?」
「ああ・・・」
白哉も、一向に去ろうとしない恋次を諦めて、好きなようにさせた。
「熱ありますね。風呂は入れてないから気持ち悪いでしょう。体ふきますよ」
恋次に蒸したタオルでふいてもらい、氷枕を用意されて、薬を飲んで大人しく横になった。
「6番隊は大丈夫なのか。隊長の私が抜けて、恋次、お前までここにいるということは、隊長副隊長不在であろう」
「大丈夫ですよ。今までも何度もそんなことあったじゃないですか。うちの隊は、隊長副隊長が欠席していても、通常通りです」
そうは言うが、席官が仕事をする羽目になる。あまり無理はさせたくなかった。
「恋次、お前は明日から業務に戻れ」
「ああ、そのつもりです。今日は隊長の様子見に、昼から欠席しましたけど、今日の分の仕事は隊長がやらなきゃいけない重要書類以外は、片付けてきましたから」
恋次は、戦いに熱くなりやすいタイプであるが、書類仕事もちゃんとできた。
そうじゃないと、副官なんてやっていけない。
白哉は、熱があがってきたのか苦しそうだった。
「恋次・・・・傍に、いろ」
「はい、隊長」
白哉の黒髪を撫でた。
今は死覇装ではなく、白い夜着を着ていた。
「恋次が傍にいると、安心するのだ」
熱のせいで、いつもより素直に甘えてくる。
「恋次、手を握ってくれ」
言われた通りにすると、白哉は幸せそうに微笑んだ。
「お前の存在が、私にとってどれだけ大切であるか・・・お前には、理解できまい」
「理解、ちゃんとしてますよ。俺も隊長がいなきゃ、生きていけないくらい好きで愛していて、依存してますから」
「私も、愛している----------------------」
白哉がインフルエンザでなかったら、押し倒していただろう。
素直な白哉はどこか幼く、愛らしかった。
この綺麗な人は、熱にうなされても、やはり綺麗なままなのだ。潤んだ瞳と熱のせいで上気した肌が、とにかく色っぽかったけど、相手は病人なのだと言い聞かせる。
「今夜は、泊まっていきます」
「恋次・・・・・」
インフルエンザがうつるかもしれないのに、恋次は引こうとしない。
そのまま、白哉の部屋で布団をもってきてもらい、眠りについた。
次の日。
恋次も、インフルエンザでダウンした。
「だから言ったであろう。うつると」
「いや、あんたからうつったものだから、別にいいです」
二人一緒に、白哉の部屋で療養生活を続けた。
結局6番隊はしばらくの間隊長副隊長不在で、忙しいことになっていた。
4日ほどが経ち、白哉のインフルエンザが治った。
白哉は、早々に職場に復帰して、溜まっていた書類を片付けた。
「恋次、茶を・・・・・・ああ、いないのであったな」
いつも傍にいる恋次がいないだけで、こんなに寂しい思いになるのかと思った。
恋次は、一人暮らしであったため、自分の面倒が見れないと困るということで、治るまで白哉の部屋で療養を続けた。
白哉から遅れること3日。
恋次もインフルエンザが治り、職場に復帰していた。
「お前のいないこの3日、寂しかった」
白哉に抱き着かれて、恋次は白哉を抱き上げて隊首室に向かった。
「恋次?」
「大人しく、抱かれてください。あんたを抱きたいの、ずっと我慢してたんです」
「館まで、もたぬのか?」
「無理です」
一言ですまされて、白哉も恋次の首に抱き着いた。
「大浴場を、貸し切りにしておけ」
なんとか、白哉の権限で、大浴場を貸し切りにした。
「んう・・・」
舌が絡まる。
隊首室のベッドに、白哉は押し倒されていた。
隊長羽織を脱がされて、銀白風花紗をとられて、死覇装も脱がされた。牽星箝を外されてはらりと肩まである黒髪が頬にかかる。
「は・・・ああ・・・あぁっ」
薄い胸の筋肉をマッサージするように触られて、先端を口に含まれ、もう片方をかりかりとひっかかれた。
恋次の手が、脇腹を撫であげる。
「んん・・・・」
また、舌が絡まる口づけを交わした。
隊首室は、恋次の私室にもなっていたので、潤滑油が置いてあった。
それを指につけて、白哉の体内に指を埋めこんでいく。
「ああ!」
いいところを触られて、ビクンと白哉の体がはねた。
前立腺ばかり刺激されて、白哉の花茎はとろとろと蜜を零していた。それに手をそえられて、しごかれるとあっという間に白哉は熱を放っていた。
「あああ!・・・・ううん」
恋次の指が、生き物のように白哉の中で動く。
やがて指が引き抜かれて、怒張したものが宛がわれた。潤滑油で濡れ、その場所を解されているとはいえ、そういうことに使う器官ではないので、引き裂かれると痛みで、涙が零れた。
「んああああああ!ひあ!」
「すんません・・・痛いですよね。ちょっと我慢しててくださいね」
涙を恋次が唇で吸い取った。
前をいじってくる。
「ああ・・・・そんな・・やめっ」
前立腺を突き上げながら、恋次は白哉のものを手でしごく。
ぬちゃぬちゃと音がした。
結合部は、ぐちゅりと音をたてて、恋次は前立腺をすりあげる。
「あああ・・・・・んああああ・・あっ!」
白哉は、二度目になる熱を放っていた。
月に2回の逢瀬が、最近4回まで増えていた。お互い、まだ若い。
迸らせる熱を感じながら、恋次が白哉の中に放った。腹の奥でじんわりと広がる熱に、白哉は目を閉じた。
「愛してます、隊長・・・・・・」
「私も、愛している・・・」
お互いの思いを確認し合いながら、睦みあう。
ズチュンと奥を突かれて、白哉の体が痙攣する。
「あ、あ、いや・・・・もう、いや」
何度目になるかも分からない絶頂を、もう吐き出すものがないのでドライのオーガズムで達していた。
最後に恋次が、白哉の腹の奥で射精する。
引き抜くと、とろりと白い液体が溢れてきた。
濡れたタオルでそれをふきとって、なんとか死覇装だけを着させて大浴場に瞬歩で向かう。
白哉は、恋次の腕に抱きかかえられていた。
行為後は、必ず風呂に入って清める白哉のために、大浴場を貸し切りにしていた。
「よい。自分で歩ける」
恋次が中に注いだものをかきだされる。
「あっ・・・・」
声が漏れて、白哉は己の口を手で閉じた。
「隊長、声聞かせて・・・」
「んう・・・」
舌が絡むキスを何度か繰り返して、離れた。
「これ以上は、もういらぬ」
恋次は反応しかけていた下肢のものを、自分でしごいて抜いた。
「お互い、若いですからね」
若いといっても、白哉は恋次より50以上は年上だ。それでも、白哉はまだまだ若かった。
互いの髪と体を洗って、湯に浸かる。
「今日のお前は、切羽詰まっていたな。隊首室で私を抱くなど・・・・・」
「すみません。館まで耐えれそうになかったんで」
「よい。どのみち、夜には館に呼ぶ予定だった」
まだ仕事の時間なので、大浴場は貸し切りでなくとも人は入ってこないだろう。
仕事は少し溜まっていたが、二人が本気になると今日の残り時間で片付くだろう。
湯からあがり、着ていた死覇装とは別の、真新しい死覇装をきた。
着ていたものは、体液で汚れてしまっている。
「隊首室でなど・・・・昔の私であったら、許していないであろうな」
白哉も変わった。
緋真だけを愛していたのに、恋次を愛していると気づき、思いを口にした。
恋次は、隊長は俺だけのものだと豪語する。
それもまた、よいかもしれないと思う白哉がいた。
「牽星箝・・・一人ではつけられぬのだ。いつも清家に手伝ってもらっている」
「俺が手伝いますよ」
恋次は、四苦八苦しながら、白哉の髪を乾かして、牽星箝をつけた。
いつも通りの隊長の姿になる。
睦みあった痕跡など、胸のあたりから臍にかけて残したキスマークだけで、はたから見ればいつもの白哉だった。
「お前は、意外に器用なのだな」
牽星箝をつけたことに対して言っているのだろう。
「いや、滅茶苦茶難しかったです」
「そうか・・・やはり、清家でないとだめか」
「その清家さん・・・いつも隊長の支度を?」
「ああ。手伝ってもらっている」
白哉おつきの者だ。嫉妬しても仕方ないが、恋次は軽い嫉妬を覚えた。
「清家に嫉妬しているのか?あれは、私の使用人だ」
「そうですけど・・・隊長と一つ屋根の下で暮らしているのも、納得いきません」
「清家は、使用人のための別宅で暮らしておる。一緒に住んでいるのは、ルキアと一護だ」
ルキアの婿入りをしてきた一護は、今は朽木一護と名前を変えて、貴族になっている。
「一護も奴も、羨ましい・・・・」
「そんなに我が屋敷に泊まりたいなら、たまにであれば、泊めてやろう」
「まじですか」
恋次は食いついた。
インフルエンザの時のような理由もなく、白哉の隣にずっといれるなら、それは理想だ。
「ただし、盛るなよ」
「う・・・・」
痛いところを突かれたが、恋次は結局次の日には早速朽木家の泊まりにいくのであった。
原因は、席官がかかっていたのがうつったのだ。
「ごほっごほっ・・・恋次、あまり近よるな。うつる」
「俺、インフルエンザの予防接種受けたから大丈夫です」
「そのような問題ではない。ワクチンを打ったとしても、かかる可能性があるのだ。私のことはよいから、下がれ」
朽木邸の寝室で、寝たきりになっている白哉の傍に、恋次はいた。
確かに、ワクチンを打っていても万能ではない。インフルエンザにかかる可能性があることは、否定できない。
それでも、白哉の傍にいたかった。
「水、飲みますか?」
「ああ・・・」
白哉も、一向に去ろうとしない恋次を諦めて、好きなようにさせた。
「熱ありますね。風呂は入れてないから気持ち悪いでしょう。体ふきますよ」
恋次に蒸したタオルでふいてもらい、氷枕を用意されて、薬を飲んで大人しく横になった。
「6番隊は大丈夫なのか。隊長の私が抜けて、恋次、お前までここにいるということは、隊長副隊長不在であろう」
「大丈夫ですよ。今までも何度もそんなことあったじゃないですか。うちの隊は、隊長副隊長が欠席していても、通常通りです」
そうは言うが、席官が仕事をする羽目になる。あまり無理はさせたくなかった。
「恋次、お前は明日から業務に戻れ」
「ああ、そのつもりです。今日は隊長の様子見に、昼から欠席しましたけど、今日の分の仕事は隊長がやらなきゃいけない重要書類以外は、片付けてきましたから」
恋次は、戦いに熱くなりやすいタイプであるが、書類仕事もちゃんとできた。
そうじゃないと、副官なんてやっていけない。
白哉は、熱があがってきたのか苦しそうだった。
「恋次・・・・傍に、いろ」
「はい、隊長」
白哉の黒髪を撫でた。
今は死覇装ではなく、白い夜着を着ていた。
「恋次が傍にいると、安心するのだ」
熱のせいで、いつもより素直に甘えてくる。
「恋次、手を握ってくれ」
言われた通りにすると、白哉は幸せそうに微笑んだ。
「お前の存在が、私にとってどれだけ大切であるか・・・お前には、理解できまい」
「理解、ちゃんとしてますよ。俺も隊長がいなきゃ、生きていけないくらい好きで愛していて、依存してますから」
「私も、愛している----------------------」
白哉がインフルエンザでなかったら、押し倒していただろう。
素直な白哉はどこか幼く、愛らしかった。
この綺麗な人は、熱にうなされても、やはり綺麗なままなのだ。潤んだ瞳と熱のせいで上気した肌が、とにかく色っぽかったけど、相手は病人なのだと言い聞かせる。
「今夜は、泊まっていきます」
「恋次・・・・・」
インフルエンザがうつるかもしれないのに、恋次は引こうとしない。
そのまま、白哉の部屋で布団をもってきてもらい、眠りについた。
次の日。
恋次も、インフルエンザでダウンした。
「だから言ったであろう。うつると」
「いや、あんたからうつったものだから、別にいいです」
二人一緒に、白哉の部屋で療養生活を続けた。
結局6番隊はしばらくの間隊長副隊長不在で、忙しいことになっていた。
4日ほどが経ち、白哉のインフルエンザが治った。
白哉は、早々に職場に復帰して、溜まっていた書類を片付けた。
「恋次、茶を・・・・・・ああ、いないのであったな」
いつも傍にいる恋次がいないだけで、こんなに寂しい思いになるのかと思った。
恋次は、一人暮らしであったため、自分の面倒が見れないと困るということで、治るまで白哉の部屋で療養を続けた。
白哉から遅れること3日。
恋次もインフルエンザが治り、職場に復帰していた。
「お前のいないこの3日、寂しかった」
白哉に抱き着かれて、恋次は白哉を抱き上げて隊首室に向かった。
「恋次?」
「大人しく、抱かれてください。あんたを抱きたいの、ずっと我慢してたんです」
「館まで、もたぬのか?」
「無理です」
一言ですまされて、白哉も恋次の首に抱き着いた。
「大浴場を、貸し切りにしておけ」
なんとか、白哉の権限で、大浴場を貸し切りにした。
「んう・・・」
舌が絡まる。
隊首室のベッドに、白哉は押し倒されていた。
隊長羽織を脱がされて、銀白風花紗をとられて、死覇装も脱がされた。牽星箝を外されてはらりと肩まである黒髪が頬にかかる。
「は・・・ああ・・・あぁっ」
薄い胸の筋肉をマッサージするように触られて、先端を口に含まれ、もう片方をかりかりとひっかかれた。
恋次の手が、脇腹を撫であげる。
「んん・・・・」
また、舌が絡まる口づけを交わした。
隊首室は、恋次の私室にもなっていたので、潤滑油が置いてあった。
それを指につけて、白哉の体内に指を埋めこんでいく。
「ああ!」
いいところを触られて、ビクンと白哉の体がはねた。
前立腺ばかり刺激されて、白哉の花茎はとろとろと蜜を零していた。それに手をそえられて、しごかれるとあっという間に白哉は熱を放っていた。
「あああ!・・・・ううん」
恋次の指が、生き物のように白哉の中で動く。
やがて指が引き抜かれて、怒張したものが宛がわれた。潤滑油で濡れ、その場所を解されているとはいえ、そういうことに使う器官ではないので、引き裂かれると痛みで、涙が零れた。
「んああああああ!ひあ!」
「すんません・・・痛いですよね。ちょっと我慢しててくださいね」
涙を恋次が唇で吸い取った。
前をいじってくる。
「ああ・・・・そんな・・やめっ」
前立腺を突き上げながら、恋次は白哉のものを手でしごく。
ぬちゃぬちゃと音がした。
結合部は、ぐちゅりと音をたてて、恋次は前立腺をすりあげる。
「あああ・・・・・んああああ・・あっ!」
白哉は、二度目になる熱を放っていた。
月に2回の逢瀬が、最近4回まで増えていた。お互い、まだ若い。
迸らせる熱を感じながら、恋次が白哉の中に放った。腹の奥でじんわりと広がる熱に、白哉は目を閉じた。
「愛してます、隊長・・・・・・」
「私も、愛している・・・」
お互いの思いを確認し合いながら、睦みあう。
ズチュンと奥を突かれて、白哉の体が痙攣する。
「あ、あ、いや・・・・もう、いや」
何度目になるかも分からない絶頂を、もう吐き出すものがないのでドライのオーガズムで達していた。
最後に恋次が、白哉の腹の奥で射精する。
引き抜くと、とろりと白い液体が溢れてきた。
濡れたタオルでそれをふきとって、なんとか死覇装だけを着させて大浴場に瞬歩で向かう。
白哉は、恋次の腕に抱きかかえられていた。
行為後は、必ず風呂に入って清める白哉のために、大浴場を貸し切りにしていた。
「よい。自分で歩ける」
恋次が中に注いだものをかきだされる。
「あっ・・・・」
声が漏れて、白哉は己の口を手で閉じた。
「隊長、声聞かせて・・・」
「んう・・・」
舌が絡むキスを何度か繰り返して、離れた。
「これ以上は、もういらぬ」
恋次は反応しかけていた下肢のものを、自分でしごいて抜いた。
「お互い、若いですからね」
若いといっても、白哉は恋次より50以上は年上だ。それでも、白哉はまだまだ若かった。
互いの髪と体を洗って、湯に浸かる。
「今日のお前は、切羽詰まっていたな。隊首室で私を抱くなど・・・・・」
「すみません。館まで耐えれそうになかったんで」
「よい。どのみち、夜には館に呼ぶ予定だった」
まだ仕事の時間なので、大浴場は貸し切りでなくとも人は入ってこないだろう。
仕事は少し溜まっていたが、二人が本気になると今日の残り時間で片付くだろう。
湯からあがり、着ていた死覇装とは別の、真新しい死覇装をきた。
着ていたものは、体液で汚れてしまっている。
「隊首室でなど・・・・昔の私であったら、許していないであろうな」
白哉も変わった。
緋真だけを愛していたのに、恋次を愛していると気づき、思いを口にした。
恋次は、隊長は俺だけのものだと豪語する。
それもまた、よいかもしれないと思う白哉がいた。
「牽星箝・・・一人ではつけられぬのだ。いつも清家に手伝ってもらっている」
「俺が手伝いますよ」
恋次は、四苦八苦しながら、白哉の髪を乾かして、牽星箝をつけた。
いつも通りの隊長の姿になる。
睦みあった痕跡など、胸のあたりから臍にかけて残したキスマークだけで、はたから見ればいつもの白哉だった。
「お前は、意外に器用なのだな」
牽星箝をつけたことに対して言っているのだろう。
「いや、滅茶苦茶難しかったです」
「そうか・・・やはり、清家でないとだめか」
「その清家さん・・・いつも隊長の支度を?」
「ああ。手伝ってもらっている」
白哉おつきの者だ。嫉妬しても仕方ないが、恋次は軽い嫉妬を覚えた。
「清家に嫉妬しているのか?あれは、私の使用人だ」
「そうですけど・・・隊長と一つ屋根の下で暮らしているのも、納得いきません」
「清家は、使用人のための別宅で暮らしておる。一緒に住んでいるのは、ルキアと一護だ」
ルキアの婿入りをしてきた一護は、今は朽木一護と名前を変えて、貴族になっている。
「一護も奴も、羨ましい・・・・」
「そんなに我が屋敷に泊まりたいなら、たまにであれば、泊めてやろう」
「まじですか」
恋次は食いついた。
インフルエンザの時のような理由もなく、白哉の隣にずっといれるなら、それは理想だ。
「ただし、盛るなよ」
「う・・・・」
痛いところを突かれたが、恋次は結局次の日には早速朽木家の泊まりにいくのであった。
12話補完小説「斬月」
真咲は、虚化が進んでいた。
「そのお嬢さん、真咲さんはもう二度と元には戻りません」
そう言われた時石田竜弦は、酷い眩暈を感じた。
「魂魄自殺は防ぐことができます。でも、彼女の命を救い、虚化させず、人間のまま留めるには、更に強い力が必要です。彼女が死ぬときまで、片時も傍を離れず彼女の虚化を抑え続ける、相反する存在が」
虚化を止め、命を救うには、浦原の作った特殊は義骸に入って、一心が常に傍にいる必要があった。
そんなこと、この男にとってなんの 得にならないと、石田竜弦は感じた。
いろいろ条件を言われたけれど、一心は一言。
「わかった、やる」
とだけ答えた。
「未練に足を引っ張られて、恩人を見殺しにした俺を、明日の俺は笑うだろうぜ」
そう言った。
一心は、傍にいることを望んだ。
「俺は、この子を守る」
そう言って、義骸に入ってしまい、死神と人間の中間の位置になった。
真咲が滅却師と虚の中間の位置にいる、反対側の存在へと。
真咲は太陽に似ていた。いや、太陽そのものに見えた。
真咲は明るかった。
真咲に振り回さるのが、嫌ではなかった。
「そして、お前が生まれた、一護」
真咲は、9年前、本来なら死ぬはずではなかった。
聖別(アウスヴェーレン)
ユーハバッハによって行われたその儀式のせいで、真咲は滅却師としての力を奪われて虚に負けて死んだ。
一護には、ユーハバッハの血が流れている。
ユーハバッハは、滅却師の王であり、滅却師の始祖。
その血が、真咲から一護へと伝わっていた。
思い出す。
ユーハバッハと会った時の言葉を。
「闇に生まれし我が息子よ」
そう、確かに言っていた。
自分ことを、息子だと。
「親父・・・・ありがとな」
一護は、全てを語ってくれた一心に、礼を言っていた。
そして、尸魂界へほぼ無理やり連れてこられた。
たくさんいる浅打の中から、一護は一体の浅打を選んだ。
それは、一護に眠る虚自身。
斬月は、見事に二つの刃となって蘇った。
斬月は語る。
「私は、斬魄刀のふりをしていた」
「おっさん・・・おっさんは、斬月なんだろ!?」
「違う。私は・・・・・」
その姿は千年前のユーハバッハ。
「今まで君の内側で、斬魄刀のふりをしていた男のことを!」
刀神の言葉に、はっとなる。
「尸魂界を蹂躙する敵として、現れたはずだ。死神の力じゃない。その男は、君の中の滅却師の力。その姿は千年前のユーハバッハだ!」
はじめてユーハバッハをみたときに、誰かを思いだしそうになったことに、一護は気づいていた。
斬月だ。
斬月を、思い出しかけていたのだ。
その姿はあまりにも斬月にそっくりで。
始めてあいつを見た時に「誰か」を思い出しそうになった。それに、気づかないふりをしていた。ずっと、考えないようにしていた。
「どういうことだ斬月」
「私は、斬月ではない」
「じゃあ、誰だっていうんだよ!」
「私は、お前の中の滅却師の力の根源。ユーハバッハであり、ユーハバッハでないもの」
「わかんねぇよ!敵なのか味方なのか!?どっちなんだよ!?」
「分かっているだろう?お前を救ってきたのが・・・私ではなく、虚だったことを」
「どうして・・・・・」
「私はお前を死神にさせたくなかった。そしていつか必ず、私自身の手でお前を殺さなければならぬだろう」
炎の中に、刃が見てた。
「持っていけ。それがお前の真の斬魄刀「斬月」だ」
―------------斬月。
俺はあんたが誰だってかまわねぇ。あんたは違うと言うだろうけど、あんたもあいつも、きっとどちらも「斬月」なんだ。
斬月として在れた、年月。
「これ以上の幸せがあるものか。身を引けることに、喜びさえかんじている」
斬月は散っていく。まるで桜が風を受けて舞い散っていくように。
「待ってくれ斬月!俺はまだ!」
斬月に向かって手を伸ばす。
でも、その手は、届かなかった。
「もっていけ、それがお前の真の斬魄刀だ。斬月だ」
炎の中から、鍛え上げられたばかりの2対の斬魄刀を手にする。
新しい斬月だった。
「斬月、おれはあんたが誰でも構わない」
斬月と今まで一緒に戦ってきたのだ。
でも、もうそれもしまいだ。
「斬月、俺は俺自身で戦う」
心の中にいる斬月と、決別した。もう散ってしまった斬月と。
「ありがとう、斬月。あんたは俺だ」
一護は、2対の斬魄刀を手にしていた。
その刃で風を切る。余波で、壁が切れた。空間が歪んだ。
「これが、新しい斬月・・・俺の、斬魄刀・・・・・・」
二対になった斬月を手にする。
1つはユーハバッハの姿をしていた斬月で、もう1つは一護に眠る虚の力そのものである錯覚を覚えた。
「よろしくな、斬月!」
一護は、自分の斬魄刀に挨拶をしていた。
これからは、自分の力のみが頼りなのだ。
今まで、散々斬月にの手をかりてきた。でも、それも終わりなのだ。
「斬月・・・心の中にもうお前はいないけど、お前斬月だ」
斬月を手に、歩き始める。
新しい斬月と、共に。
どこまでも、どこまでも。
「そのお嬢さん、真咲さんはもう二度と元には戻りません」
そう言われた時石田竜弦は、酷い眩暈を感じた。
「魂魄自殺は防ぐことができます。でも、彼女の命を救い、虚化させず、人間のまま留めるには、更に強い力が必要です。彼女が死ぬときまで、片時も傍を離れず彼女の虚化を抑え続ける、相反する存在が」
虚化を止め、命を救うには、浦原の作った特殊は義骸に入って、一心が常に傍にいる必要があった。
そんなこと、この男にとってなんの 得にならないと、石田竜弦は感じた。
いろいろ条件を言われたけれど、一心は一言。
「わかった、やる」
とだけ答えた。
「未練に足を引っ張られて、恩人を見殺しにした俺を、明日の俺は笑うだろうぜ」
そう言った。
一心は、傍にいることを望んだ。
「俺は、この子を守る」
そう言って、義骸に入ってしまい、死神と人間の中間の位置になった。
真咲が滅却師と虚の中間の位置にいる、反対側の存在へと。
真咲は太陽に似ていた。いや、太陽そのものに見えた。
真咲は明るかった。
真咲に振り回さるのが、嫌ではなかった。
「そして、お前が生まれた、一護」
真咲は、9年前、本来なら死ぬはずではなかった。
聖別(アウスヴェーレン)
ユーハバッハによって行われたその儀式のせいで、真咲は滅却師としての力を奪われて虚に負けて死んだ。
一護には、ユーハバッハの血が流れている。
ユーハバッハは、滅却師の王であり、滅却師の始祖。
その血が、真咲から一護へと伝わっていた。
思い出す。
ユーハバッハと会った時の言葉を。
「闇に生まれし我が息子よ」
そう、確かに言っていた。
自分ことを、息子だと。
「親父・・・・ありがとな」
一護は、全てを語ってくれた一心に、礼を言っていた。
そして、尸魂界へほぼ無理やり連れてこられた。
たくさんいる浅打の中から、一護は一体の浅打を選んだ。
それは、一護に眠る虚自身。
斬月は、見事に二つの刃となって蘇った。
斬月は語る。
「私は、斬魄刀のふりをしていた」
「おっさん・・・おっさんは、斬月なんだろ!?」
「違う。私は・・・・・」
その姿は千年前のユーハバッハ。
「今まで君の内側で、斬魄刀のふりをしていた男のことを!」
刀神の言葉に、はっとなる。
「尸魂界を蹂躙する敵として、現れたはずだ。死神の力じゃない。その男は、君の中の滅却師の力。その姿は千年前のユーハバッハだ!」
はじめてユーハバッハをみたときに、誰かを思いだしそうになったことに、一護は気づいていた。
斬月だ。
斬月を、思い出しかけていたのだ。
その姿はあまりにも斬月にそっくりで。
始めてあいつを見た時に「誰か」を思い出しそうになった。それに、気づかないふりをしていた。ずっと、考えないようにしていた。
「どういうことだ斬月」
「私は、斬月ではない」
「じゃあ、誰だっていうんだよ!」
「私は、お前の中の滅却師の力の根源。ユーハバッハであり、ユーハバッハでないもの」
「わかんねぇよ!敵なのか味方なのか!?どっちなんだよ!?」
「分かっているだろう?お前を救ってきたのが・・・私ではなく、虚だったことを」
「どうして・・・・・」
「私はお前を死神にさせたくなかった。そしていつか必ず、私自身の手でお前を殺さなければならぬだろう」
炎の中に、刃が見てた。
「持っていけ。それがお前の真の斬魄刀「斬月」だ」
―------------斬月。
俺はあんたが誰だってかまわねぇ。あんたは違うと言うだろうけど、あんたもあいつも、きっとどちらも「斬月」なんだ。
斬月として在れた、年月。
「これ以上の幸せがあるものか。身を引けることに、喜びさえかんじている」
斬月は散っていく。まるで桜が風を受けて舞い散っていくように。
「待ってくれ斬月!俺はまだ!」
斬月に向かって手を伸ばす。
でも、その手は、届かなかった。
「もっていけ、それがお前の真の斬魄刀だ。斬月だ」
炎の中から、鍛え上げられたばかりの2対の斬魄刀を手にする。
新しい斬月だった。
「斬月、おれはあんたが誰でも構わない」
斬月と今まで一緒に戦ってきたのだ。
でも、もうそれもしまいだ。
「斬月、俺は俺自身で戦う」
心の中にいる斬月と、決別した。もう散ってしまった斬月と。
「ありがとう、斬月。あんたは俺だ」
一護は、2対の斬魄刀を手にしていた。
その刃で風を切る。余波で、壁が切れた。空間が歪んだ。
「これが、新しい斬月・・・俺の、斬魄刀・・・・・・」
二対になった斬月を手にする。
1つはユーハバッハの姿をしていた斬月で、もう1つは一護に眠る虚の力そのものである錯覚を覚えた。
「よろしくな、斬月!」
一護は、自分の斬魄刀に挨拶をしていた。
これからは、自分の力のみが頼りなのだ。
今まで、散々斬月にの手をかりてきた。でも、それも終わりなのだ。
「斬月・・・心の中にもうお前はいないけど、お前斬月だ」
斬月を手に、歩き始める。
新しい斬月と、共に。
どこまでも、どこまでも。
お茶が不味い
「まずい」
だーっと、恋次はお茶を吹き出した。
白哉が、お茶を入れるというので、嬉しくそれを受け取って飲んだのだ。
玉露の最高級の茶葉で入れたお茶が、どうすればこんなに苦く不味くななるのかが知りたくて、白哉のお茶を入れる手順を見せてもらった。
まず、急須に茶葉を入れる。そこの熱湯を注ぐ。そこまではいい。そこから変な実やら薬らしきものまで、ぽいぽいと急須に入れるのだ。
「何、茶葉以外に入れてるんですか!」
「プロテイン、ビタミン剤、栄養のつくという木の実、その他いろいろだ」
「そんなもの、お茶にいれるなーーー!!!」
恋次は、お茶の入れ方というものを白哉に教えた。
「普通に茶葉をいれて、熱湯じゃなしに適温のお湯を注いで茶葉から香りと茶の色がでてきたら、それを注ぐ。簡単でしょう?」
「プロテインにビタミン剤に木の実は?」
「そんなもの入れません!」
しゅんと、白哉はしおれた。
多分、恋次のためを思って茶を入れてくれたのだろう。
その思いは嬉しいが、流石にあんな不味い茶を飲めるほど、鈍感にはできていなかった。
恋次の言う通りに急須に茶葉をいれて、適温の湯をいれて、2~3分経ってから、湯のみに茶を注いだ。
「うん、今度は美味しい。やればできるじゃないっすか隊長」
「ルキアは、私の入れた今までのやり方の茶を美味いといってくれる。なのに恋次は不味いという。どちからが本当であるのであろう?」
「あー。ルキアはあんたのことめっちゃ愛してるから、たとえ不味くても美味しいっていうに決まってます」
「そうか。最近、朽木一護になったあの者にも、同じ茶を飲ませたが、失神しおった」
どんだけ不味い茶を飲ませたんだ、あんた。
めっちゃつっこみをいれたくなったが、かわいらしく首を傾げるそのあどけない表情に釘付けになった。
めっちゃ、かわいい。
執務室でなかったら、襲ってしまいたい。
なんとか理性と戦いながら、まともな入れ方を身に着けた白哉の入れてくれた茶を飲んで、茶菓子を出した。
茶菓子は、わかめ大使であった。
白哉用のものは、中に辛子が入っていて、めちゃ辛い。
一度間違えて食べて、凄い目にあったので、辛子の入ったわかめ大使の袋には、辛子入りと書かれるようになった。
「わかめ大使・・・高級なあんこ使ってるだけあって、美味しいのに売れませんね」
「下々の者は、見る目がないのだ」
いや、完全にあんたのデザインのせいだ。
そうつっこみたかったが、無駄なことで怒らせたくないので、口を閉じた。
高級和菓子店とかに、何気に置かれているわかめ大使。
でも、売れたという報告はたまにしか入ってこなかった。
「この辛いわかめ大使も、和菓子店に置いたほうがいいいのであろうか」
「いや、止めてください!いいですか、絶対に止めてくださいよ!辛いわかめ大使、ピリ辛の域超えてますからね!?普通のキムチより辛いですからね!?」
「ルキアは、泣きながら食してくれるぞ」
おいあんた、何義妹に涙を流させてまで食べさせてるんだ。
っていうかルキアすげーな。
義兄の愛だけで、あの辛過ぎるわかめ大使を、たとえ涙を零しながらでも食うなんて。
「一護には、食べさせたんすか?」
「まだだ」
「じゃあ、今日あたりに食べさせてやってください」
にやりと、恋次は笑んだ。
白哉の近くにいつもいれる、一護が妬ましかった。
恋次は、白哉の恋人とはいえ、同じ屋根の下で暮らしていない。
「ふむ・・・ルキアが涙するほどのものなのだ。あの者も、涙を流しながら感動して食べるに違いない」
その日の夜、白哉は一護に、辛いわかめ大使を食べさせた。
一護は気絶した。
気絶するほどにうまいのかと思いながら、白哉は玉露で入れた茶をすする。
「兄様、今後、一護には辛いほうのわかめ大使を与えないでください。こやつは味音痴なので、兄様の作品のよさが分からぬのです」
「そうか」
必死のルキアのフォローを真に受ける白哉。
ルキアは出された辛いわかめ大使を、1つだけ涙を流しながら食べた。
辛い。泣き出したい・・・いや、すでに泣いている。
ここでくそ不味い、食べられたものでないと訴えると、兄様が酷く傷つく。
その思いだけを胸に、ルキアは食し終わると、今まので不味さとは比較にならない美味しい茶を飲んだ。
「兄様、兄様が入れたお茶ですよね?入れ方変えました?」
「ああ、恋次に不味いと言われて、入れ方を変えてみた」
「このお茶、凄く美味しいです!」
「そうか」
白哉は薄く微笑んだ。
ちなみに、一護は明け方になるまで気絶していた。
だーっと、恋次はお茶を吹き出した。
白哉が、お茶を入れるというので、嬉しくそれを受け取って飲んだのだ。
玉露の最高級の茶葉で入れたお茶が、どうすればこんなに苦く不味くななるのかが知りたくて、白哉のお茶を入れる手順を見せてもらった。
まず、急須に茶葉を入れる。そこの熱湯を注ぐ。そこまではいい。そこから変な実やら薬らしきものまで、ぽいぽいと急須に入れるのだ。
「何、茶葉以外に入れてるんですか!」
「プロテイン、ビタミン剤、栄養のつくという木の実、その他いろいろだ」
「そんなもの、お茶にいれるなーーー!!!」
恋次は、お茶の入れ方というものを白哉に教えた。
「普通に茶葉をいれて、熱湯じゃなしに適温のお湯を注いで茶葉から香りと茶の色がでてきたら、それを注ぐ。簡単でしょう?」
「プロテインにビタミン剤に木の実は?」
「そんなもの入れません!」
しゅんと、白哉はしおれた。
多分、恋次のためを思って茶を入れてくれたのだろう。
その思いは嬉しいが、流石にあんな不味い茶を飲めるほど、鈍感にはできていなかった。
恋次の言う通りに急須に茶葉をいれて、適温の湯をいれて、2~3分経ってから、湯のみに茶を注いだ。
「うん、今度は美味しい。やればできるじゃないっすか隊長」
「ルキアは、私の入れた今までのやり方の茶を美味いといってくれる。なのに恋次は不味いという。どちからが本当であるのであろう?」
「あー。ルキアはあんたのことめっちゃ愛してるから、たとえ不味くても美味しいっていうに決まってます」
「そうか。最近、朽木一護になったあの者にも、同じ茶を飲ませたが、失神しおった」
どんだけ不味い茶を飲ませたんだ、あんた。
めっちゃつっこみをいれたくなったが、かわいらしく首を傾げるそのあどけない表情に釘付けになった。
めっちゃ、かわいい。
執務室でなかったら、襲ってしまいたい。
なんとか理性と戦いながら、まともな入れ方を身に着けた白哉の入れてくれた茶を飲んで、茶菓子を出した。
茶菓子は、わかめ大使であった。
白哉用のものは、中に辛子が入っていて、めちゃ辛い。
一度間違えて食べて、凄い目にあったので、辛子の入ったわかめ大使の袋には、辛子入りと書かれるようになった。
「わかめ大使・・・高級なあんこ使ってるだけあって、美味しいのに売れませんね」
「下々の者は、見る目がないのだ」
いや、完全にあんたのデザインのせいだ。
そうつっこみたかったが、無駄なことで怒らせたくないので、口を閉じた。
高級和菓子店とかに、何気に置かれているわかめ大使。
でも、売れたという報告はたまにしか入ってこなかった。
「この辛いわかめ大使も、和菓子店に置いたほうがいいいのであろうか」
「いや、止めてください!いいですか、絶対に止めてくださいよ!辛いわかめ大使、ピリ辛の域超えてますからね!?普通のキムチより辛いですからね!?」
「ルキアは、泣きながら食してくれるぞ」
おいあんた、何義妹に涙を流させてまで食べさせてるんだ。
っていうかルキアすげーな。
義兄の愛だけで、あの辛過ぎるわかめ大使を、たとえ涙を零しながらでも食うなんて。
「一護には、食べさせたんすか?」
「まだだ」
「じゃあ、今日あたりに食べさせてやってください」
にやりと、恋次は笑んだ。
白哉の近くにいつもいれる、一護が妬ましかった。
恋次は、白哉の恋人とはいえ、同じ屋根の下で暮らしていない。
「ふむ・・・ルキアが涙するほどのものなのだ。あの者も、涙を流しながら感動して食べるに違いない」
その日の夜、白哉は一護に、辛いわかめ大使を食べさせた。
一護は気絶した。
気絶するほどにうまいのかと思いながら、白哉は玉露で入れた茶をすする。
「兄様、今後、一護には辛いほうのわかめ大使を与えないでください。こやつは味音痴なので、兄様の作品のよさが分からぬのです」
「そうか」
必死のルキアのフォローを真に受ける白哉。
ルキアは出された辛いわかめ大使を、1つだけ涙を流しながら食べた。
辛い。泣き出したい・・・いや、すでに泣いている。
ここでくそ不味い、食べられたものでないと訴えると、兄様が酷く傷つく。
その思いだけを胸に、ルキアは食し終わると、今まので不味さとは比較にならない美味しい茶を飲んだ。
「兄様、兄様が入れたお茶ですよね?入れ方変えました?」
「ああ、恋次に不味いと言われて、入れ方を変えてみた」
「このお茶、凄く美味しいです!」
「そうか」
白哉は薄く微笑んだ。
ちなみに、一護は明け方になるまで気絶していた。
温もり(恋白)
「お前は温いな・・・・・・」
逢瀬の後、湯浴みも終わり、髪も乾かして同じ布団で眠っていた白哉が、ふと呟いた。
「隊長、寒いんですか?」
「お前の温もりが心地よいだけだ」
なんという殺し文句だと思いながら、もう手は出せないので、白哉の黒髪を手で梳いた。
「寝ないのか?」
「それはこっちの台詞です。ああ、明日は休みか。でもそれでも、早起きするんでしょう?」
「いつも6時には起きる」
「うわ、あと6時間しか寝れないじゃないですか。早く寝てください!」
恋次が、明かりを消した。
流魂街にいた頃は、こんな贅沢な暮らしができるなど、思ってもみなかった。
せいぜい平隊士になれて、こつこつと貯金して生きていくんだと思っていた。
真央霊術院で特進クラスになれて、これは将来期待できるかもしれないと思った。まさか、4大貴族の当主に惚れるなんて、ちっとも考えていなかった。
ルキアを養子にと迎えにきたあの日、これは運命なんだと思った。
それまでルキアばかりを追っていたのに、いつの間には白哉を追うようになっていた。
死神になり、6番隊に配属されなかったことがとても不満だった。
だがやがて実力をつけて、6番隊の副隊長を任せられようになった。憧れの人のすぐ傍にいることができた。
決死の覚悟でアタックした。
想いは実り、憧れの白哉に振り向いてもらえるようになった。
体を重ねあう関係になった。
逢瀬を重ねる時に使う館では、いつも口にできないような豪華な食事と高級酒を口にした。他の誰よりも恵まれていると思った。
ふと、隣で白哉がくすぐったそうにしていた。
いつの間にか、恋次の手は白哉の頭を撫でていた。
「あ、すんません。寝るのに邪魔ですよね」
「もっと撫でても、構わぬ。お前に触れられるのは、嫌いではない」
そう言われて、我慢の糸が切れる気がした。
でも、もう抱くわけにもいかないし、出すものもないくらい睦みあったので、ただ白哉の頭をなで、その黒髪を手で梳いた。
いつの間にか、白哉は眠ってしまっていた。
薄暗いが、少し照明があるので、ぼんやりと白哉の寝顔が目に入った。
あどけない。
そう思った。
中性的な美貌をもつ白哉の顔は、人形のようによく整っていた。美しいと思う。男性に対して使う言葉ではないが、本当に美しかった。
これで、6番隊の隊長で朽木家の現当主というのだから、女は放っておかないはずだ。何度も何度も、見合いの話が舞い込んできた。
それを、白哉は後添えはいらぬと、頑なに断った。
一度だけ、どうしてもと見合いをしたことがあるが、恋次の登場で滅茶苦茶になった。
そんなことはしなくても断るつもりだったのだと、言われた。
今頃、朽木家では本当の死神になり、ルキアの婿養子にきた一護とルキアも睦みあった後で、一緒に眠っているかもしれない。
一護が白哉の傍にいるのは、奇妙な感覚だったが、ルキアしか目に入っていない様子で、安心できた。
そのうち、恋次も眠くなり、意識は闇に滑り落ちていった。
「ん・・・」
ふと気づきくと、白哉の温もりが遠かった。
布団からはみ出してしまいそうな形で眠っていたので、毛布と布団をかけ直して、傍に寄り添って眠ることにした。
次に目覚めると、朝の9時だった。横では、白哉がまだ寝ていた。
いつもは6時には起きるのに、珍しいことだ。
まさか熱でもあるのかと、額に手を置くと、白哉が目覚める。
ばっと時計をみて、眉を寄せた。
「寝過ごして・・・しまった。恋次の温もりに安堵していたら・・・」
なにその殺し文句。
「ああ、めちゃかわいい」
そう言ってキスをすると、白哉は急いで出勤しようとして・・・・今日は休日だったのを思い出して、動きが鈍くなった。
「そうか。今日は休みをとっていたのだ・・・」
「二度寝しますか?」
「もう十分寝た。6時間寝れば十分なのに・・9時間近く眠ってしまった。恋次のせいだ」
「なんで俺のせいなんですか」
「お前の温もりが、とても心地よかったせいだ」
恋次が溜息を零す。
本当に、隊長はこれで誘っていないつもりなのだろうに、誘っているとしか受け取れなかった。
「隊長、寒くて眠れない時あったら、伝令神機でいつでも呼んでください。添い寝しにいきますから」
「そのようなこと、不要だ」
白哉はそっけなかった。
そのそっけない態度と、さっきの言葉が妙にチグハグで、恋次は笑っていた。
「何がおかしい」
「隊長って、かわいいなと思って」
「戯言を・・・」
白哉の手が、長い恋次の髪を掴む。
「あいててて、髪は勘弁してください!」
「ならば、戯言など言うな」
「いや、本気なんすけど」
また髪の毛を引っ張られた。結んでいた髪ゴムが切れて、ばさりと紅蓮の色が広がった。
「焔のようだな。お前の髪は。業火を思わせる」
「そんな綺麗なもんじゃないですよ」
「そうか?私はお前の髪の色が好きだ。炎のようで」
紅蓮色の髪を、恋次は新しい髪ゴむで大雑把にまとめあげた。
「嘘でも、嬉しいです」
「嘘などついて、何になる・・・」
「それより、朝食どうします?」
昨日の夕飯を作ってくれた料理人は、帰った後だった。
「仕方ない。お前も来い。我が屋敷で朝食をとる」
言葉通り屋敷へつくと、一護とルキアが出迎えてくれた。
「白哉、どうしたんだ、遅かったな」
「貴様、兄様は無駄なことはせぬ!何かあったのだ」
「寝坊しただけだ」
白哉の言葉に、ルキアが驚く。
「兄様が寝坊!明日は槍が降る・・・・・」
「大げさだな、ルキア。寝坊なんて、誰にでもあるぜ」
恋次は笑って、4人で食堂で朝食をとった。
一護が婿養子にきてからというもの、朽木家は少し騒がしくなった。
一護の存在が、ルキアも、ひいては白哉も明るくさせているのだ。
一護は、今は13番隊の3席だ。
まだ死神業務になれておらず、いずれ副隊長になるだろうが、今はルキアが隊長で副隊長は小椿だった。
「今日は、俺も屋敷にいていいんですか?」
「好きにするがよい」
そう言われて、恋次は白哉の傍に、鬱陶しいと怒られるまで、傍にいるのであった、
逢瀬の後、湯浴みも終わり、髪も乾かして同じ布団で眠っていた白哉が、ふと呟いた。
「隊長、寒いんですか?」
「お前の温もりが心地よいだけだ」
なんという殺し文句だと思いながら、もう手は出せないので、白哉の黒髪を手で梳いた。
「寝ないのか?」
「それはこっちの台詞です。ああ、明日は休みか。でもそれでも、早起きするんでしょう?」
「いつも6時には起きる」
「うわ、あと6時間しか寝れないじゃないですか。早く寝てください!」
恋次が、明かりを消した。
流魂街にいた頃は、こんな贅沢な暮らしができるなど、思ってもみなかった。
せいぜい平隊士になれて、こつこつと貯金して生きていくんだと思っていた。
真央霊術院で特進クラスになれて、これは将来期待できるかもしれないと思った。まさか、4大貴族の当主に惚れるなんて、ちっとも考えていなかった。
ルキアを養子にと迎えにきたあの日、これは運命なんだと思った。
それまでルキアばかりを追っていたのに、いつの間には白哉を追うようになっていた。
死神になり、6番隊に配属されなかったことがとても不満だった。
だがやがて実力をつけて、6番隊の副隊長を任せられようになった。憧れの人のすぐ傍にいることができた。
決死の覚悟でアタックした。
想いは実り、憧れの白哉に振り向いてもらえるようになった。
体を重ねあう関係になった。
逢瀬を重ねる時に使う館では、いつも口にできないような豪華な食事と高級酒を口にした。他の誰よりも恵まれていると思った。
ふと、隣で白哉がくすぐったそうにしていた。
いつの間にか、恋次の手は白哉の頭を撫でていた。
「あ、すんません。寝るのに邪魔ですよね」
「もっと撫でても、構わぬ。お前に触れられるのは、嫌いではない」
そう言われて、我慢の糸が切れる気がした。
でも、もう抱くわけにもいかないし、出すものもないくらい睦みあったので、ただ白哉の頭をなで、その黒髪を手で梳いた。
いつの間にか、白哉は眠ってしまっていた。
薄暗いが、少し照明があるので、ぼんやりと白哉の寝顔が目に入った。
あどけない。
そう思った。
中性的な美貌をもつ白哉の顔は、人形のようによく整っていた。美しいと思う。男性に対して使う言葉ではないが、本当に美しかった。
これで、6番隊の隊長で朽木家の現当主というのだから、女は放っておかないはずだ。何度も何度も、見合いの話が舞い込んできた。
それを、白哉は後添えはいらぬと、頑なに断った。
一度だけ、どうしてもと見合いをしたことがあるが、恋次の登場で滅茶苦茶になった。
そんなことはしなくても断るつもりだったのだと、言われた。
今頃、朽木家では本当の死神になり、ルキアの婿養子にきた一護とルキアも睦みあった後で、一緒に眠っているかもしれない。
一護が白哉の傍にいるのは、奇妙な感覚だったが、ルキアしか目に入っていない様子で、安心できた。
そのうち、恋次も眠くなり、意識は闇に滑り落ちていった。
「ん・・・」
ふと気づきくと、白哉の温もりが遠かった。
布団からはみ出してしまいそうな形で眠っていたので、毛布と布団をかけ直して、傍に寄り添って眠ることにした。
次に目覚めると、朝の9時だった。横では、白哉がまだ寝ていた。
いつもは6時には起きるのに、珍しいことだ。
まさか熱でもあるのかと、額に手を置くと、白哉が目覚める。
ばっと時計をみて、眉を寄せた。
「寝過ごして・・・しまった。恋次の温もりに安堵していたら・・・」
なにその殺し文句。
「ああ、めちゃかわいい」
そう言ってキスをすると、白哉は急いで出勤しようとして・・・・今日は休日だったのを思い出して、動きが鈍くなった。
「そうか。今日は休みをとっていたのだ・・・」
「二度寝しますか?」
「もう十分寝た。6時間寝れば十分なのに・・9時間近く眠ってしまった。恋次のせいだ」
「なんで俺のせいなんですか」
「お前の温もりが、とても心地よかったせいだ」
恋次が溜息を零す。
本当に、隊長はこれで誘っていないつもりなのだろうに、誘っているとしか受け取れなかった。
「隊長、寒くて眠れない時あったら、伝令神機でいつでも呼んでください。添い寝しにいきますから」
「そのようなこと、不要だ」
白哉はそっけなかった。
そのそっけない態度と、さっきの言葉が妙にチグハグで、恋次は笑っていた。
「何がおかしい」
「隊長って、かわいいなと思って」
「戯言を・・・」
白哉の手が、長い恋次の髪を掴む。
「あいててて、髪は勘弁してください!」
「ならば、戯言など言うな」
「いや、本気なんすけど」
また髪の毛を引っ張られた。結んでいた髪ゴムが切れて、ばさりと紅蓮の色が広がった。
「焔のようだな。お前の髪は。業火を思わせる」
「そんな綺麗なもんじゃないですよ」
「そうか?私はお前の髪の色が好きだ。炎のようで」
紅蓮色の髪を、恋次は新しい髪ゴむで大雑把にまとめあげた。
「嘘でも、嬉しいです」
「嘘などついて、何になる・・・」
「それより、朝食どうします?」
昨日の夕飯を作ってくれた料理人は、帰った後だった。
「仕方ない。お前も来い。我が屋敷で朝食をとる」
言葉通り屋敷へつくと、一護とルキアが出迎えてくれた。
「白哉、どうしたんだ、遅かったな」
「貴様、兄様は無駄なことはせぬ!何かあったのだ」
「寝坊しただけだ」
白哉の言葉に、ルキアが驚く。
「兄様が寝坊!明日は槍が降る・・・・・」
「大げさだな、ルキア。寝坊なんて、誰にでもあるぜ」
恋次は笑って、4人で食堂で朝食をとった。
一護が婿養子にきてからというもの、朽木家は少し騒がしくなった。
一護の存在が、ルキアも、ひいては白哉も明るくさせているのだ。
一護は、今は13番隊の3席だ。
まだ死神業務になれておらず、いずれ副隊長になるだろうが、今はルキアが隊長で副隊長は小椿だった。
「今日は、俺も屋敷にいていいんですか?」
「好きにするがよい」
そう言われて、恋次は白哉の傍に、鬱陶しいと怒られるまで、傍にいるのであった、