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ルキアを忘れた一護 遠征

一護が、13番隊に所属されてから半月。

遠征があった。

ルキアをはじめとする、13番隊と白夜のいる6番隊との合同の遠征だった。

大量の虚がでてきたが、尸魂界を救ったとだけあって、一護の力は凄まじかった。

卍解を使っていた。

負けてなるものかと、ルキアと白哉も卍解していた。

敵の取り合いになった。

一護が月牙天衝で、一番多くの敵を葬ってしまった。

白哉の千本桜も、逃げる虚を億の刃で切り刻んだ。

ルキアは、周囲を氷点下の温度まで下げて、敵を凍りつかせて倒してしまった。

「おれらの出番がねぇ・・・・」

恋次が、苦々しそうにしていた。

「なぁ、一護。ルキアのこと忘れたって、ほんとか?」

「ああ、本当だ。今、井上と暮らしている。そのうち、籍を入れるつもりだ」

「てめぇ!井上と離婚しておきながら、今更井上に乗り換えるのかよ!」

「止めよ、恋次」

「でも、ルキア・・・・・」

恋次が、ルキアのほうを見る。

恋次は、ルキアのことが大好きだった。婚礼の手前までいったのだ。肉体関係もあった。

ルキアが、どうしても一護のことが忘れられず、やはり婚姻は無理だと言われて、引き下がったのだ。

「じゃあ、ルキアは俺がもらっていく。それでもいいんだな?」

「好きにしろよ」

その答えに、恋次は一護を殴っていた。

「てめぇ!あれだけルキアを愛しておきながら、今更忘れただって!?んなこと、許されると思ってるのかよ!」

「じゃあ、恋次が取り戻してくれよ!俺の記憶を!好きで、ルキアのことを忘れたわけじゃねぇ!」

その言葉に、恋次もそれ以上一護を追い詰めることができなかった。

「絶対に、記憶を取り戻せ。俺がなんのために身を引いたと思ってやがるんだ・・・・」

「恋次、すまぬ・・・・」

ルキアの額を、恋次がデコピンした。

「ひゃあ!」

「俺とお前の仲だろ。相談ごとがあったら、乗るからいつでも俺のところにこい」

「ありがとう、恋次」

恋次は優しい。一度は結婚を誓いあった。裏切る形になってしまったが、それでも恋次はルキアのことを思っていた。

次の日、ルキアは恋次のかまえる屋敷に赴いた。

「お、ルキアじゃねーか。どうした」

「苦しいのだ・・・・今の一護見ているのが」

「まぁ、座れよ。何もしねぇから」

出された座布団の上に座る。昔恋次にあげた、チャッピー柄の座布団だった。

「いっそ、一から口説いてみるのはどうだ?」

「だめだ。一護は井上のことを好きだと思っている」

「井上ねぇ・・・・何か怪しいな」

「井上が、何かしたとでも?」

「一護がルキアの記憶を亡くして一番喜ぶ奴って誰だ?」

「井上だが・・・・・まさか」

「そうだとなぁ。あの優しい井上が、そんなことするわけねぇだろうし」

恋次もルキアも知らなかった。

一護のことになると、井上の性格が豹変することを。

「ま、今日はパーッと飲んで、嫌なことは忘れちまえ」

恋次の酒をどんどん飲んでいくと、ルキアは泥酔しだした。

「家族としてだが、未だに恋次のことも好きだぞおおおお」

酔っぱらったルキアを布団で寝かせる・

「昔だったら、襲ってたんだろうなぁ。まぁ、一護がいる限り、俺に勝ち目はねぇからな。早く、一護の記憶が戻るといいな」

「ふにゃー恋次好きだーー」

「おい、ルキア。俺は未だにお前に恋してるんだぜ。そんなこと言ってると、マジで襲っちまうぞ」

「それはだめだ。私には一護がおるのだ」

「ルキアの記憶がなくても?」

「たとえなくても、私は一護だけを心の底から愛している・・・・」

恋次はもう何度目かに分からない振られ方に、溜息を零す。

「ふにゃーーーーー」

結局、その日は恋次の家に泊まった。

次の日。

「うう、飲み過ぎた・・・・・」

二日酔い悩まされながらも、恋次の家から13番隊の執務室に出勤する。

恋次は朝食まで用意してくれて、二日酔いの薬までくれた。

優しい恋次。

何故、恋次ことを振ってしまったのだろうと思いつつも、胸に残る一護への思いは消えない。

「一護・・・・」

今頃、井上の家から出勤しているのだろうか。

そう思うだけで、胸が切なくなった。

「おはよう、ルキア」

「ああ、おはよう一護」

こうして挨拶を交わしてる時などは、一護がルキアのことを忘れているようには見えなかった、

一護は、ルキアのことを隊長とも呼ばず、昔のようにルキアと呼んでくれた。

それがいっそうルキアの心を苦しくさせているのだが、ルキア以外の呼ばれ方を・・朽木ルキアさんだとか、朽木隊長だとか言われることのほうが、余計に苦しいのだ。

「恋次のところで、酒をのんだ」

「ふーん。恋次とは、付き合い長いのか?」

「流魂街の・・・子供の頃からの付き合いだ」

「じゃあ、恋次のことが好きなんじゃないのか」

「好きだった。結婚の手前までいって、一護、貴様への思いが、結婚をできなくさせていた。今でも恋次のことが家族として好きだ。でも、愛しているのは一護、貴様だけだ」

ルキアの訴えに、一護は戸惑う。

「俺は・・・ルキアを覚えてないから、好きだとかいえない。それでもいいのか?」

「今は仕方ない・・・ただ、覚えておいてくれ。私はいつでも一護、貴様のことを愛していると」

「・・・わかった。頭のすみっこで覚えとく」

「すみっこか・・・それでも、何も思われぬより、ましであろうな」

ルキアは願う。

早く、一護が自分のことを思い出してくれますようにと。

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ルキアを忘れた一護 ルキアとの生活

北海道へ新婚旅行へ出かけた。

牧場にいったり、札幌でラーメンを堪能したり、本場のカニを味わったりした。

ちょうど冬だったので、雪像祭りがあった。

きらきら光る明かりに照らされた、いろんな雪像が綺麗だった。

「まるで・・・日番谷隊長の作る氷像のようだ」

「あーそういえば、冬獅郎は、瀞霊廷通信でなんか、氷像を紹介するページもってたな

「私も、真似て氷像を作ろうとしたのだ。だが、うまくいかなかった。細かい部分にどうしても罅がはいって、そこから壊れてしまう」

「どうせお前のことだ。チャッピーの氷像でも作ろうとしんだろう?」

「何故わかるのだ!」

ルキアは驚いていた。

「さては、どこかで盗み見しておったな?」

「あのなぁ。多分それ俺がまだ人間の頃の話だろう。俺はもう尸魂界に行ってなかったから、盗み見なんてできねーよ」

死神代行とはいえ、用もなく尸魂界へと毎回遊びにくるわけにはいかない。

まぁ、何度か直接ルキアに会いに、尸魂界と赴いたことはあるが、いつもはルキアのほうから会いにきてくれた。

これって新婚旅行だよな?と思いつつも、なぜかお土産を買い漁る一護とルキア。

「白い恋人は絶対だ。夕張メロンのキャンディもいる。新巻鮭にカニも、札幌ラーメンのインスタントパックに・・・・・」

二人は、抱えきれぬほどの荷物を手にしていた。仕方ないので、持てない荷物は浦原商店にまで配達してもらい、そこで受け取ることに決めた。
ちゃんと、その旨を浦原に伝えておいた。そうでもしないと、浦原が自分で食べてしまうからだ。

一護が人間として死んだ後も、まだ浦原商店があるのに驚きだった。だが、古くなりすぎて、一度、建て直したのだという。

相変わらず駄菓子を売りながら、裏では尸魂界に電化製品を流しているらしい。

浦原にも、新巻鮭とカニを送っておいた。

ホテルで体を何度か重ねあっていたが、それ以外は新婚旅行だが、ただ現世に遊びに来た形となってしまたったが、ルキアがとても楽しそうだったので、一護はルキアの隣でルキアの喜んだり驚いたりする顔を見つめて、ああ、幸せだなぁと思った。




一護が尸魂界にきてから、1年が過ぎた。

ルキアとの新婚生活は甘く、順風満帆だった。

井上も、一護のことを諦めて、4番隊の席官の男性と結婚した。式にはでなかったが、二人で花束を贈った。

「ルキア、これ何処に置けばいい?」

「あ、それはこっちだ」

あれから一護に記憶の障害が起こることはなく、ルキアのことを思い出したまま、日常をすごしていた。

「ふう、年末の大掃除も大変だな」

「これが終わって年が明けたら、朽木家と合同で、他の貴族の家へ、挨拶回りだ」

「まじかよ。勘弁してくれよ」

「お兄様の嘆願もあるが、黒崎家を新しい貴族として認めてくれたのだ。礼を言わねば」

「そりゃ、礼にをいいにいくしかないな」

黒崎家が貴族であるということで、ルキアは朽木家で過ごしてきた日常とあまり代わりない毎日を過ごせていた。

ルキア専用の使用人にでもあるちよは、黒崎家で寝泊まりをして、ルキアのちょっとした世話を焼いてくれた。

例えば、髪の長くなったルキアの髪を結い上げたり。

「あ、その髪飾り・・・・ぼろぼろじゃないか。お前にあげたやつだろ。新しいの買ってやるから、捨てろ」

「だめだ!これは、貴様から初めてもらった誕生日プレゼントなのだ!捨てないぞ!」

そんなところが可愛くて、つい手を出してしまいそうになった。

「大掃除がまだだ!」

つっぱねられて、一護もまた大掃除に戻った。

それなりにでかい屋敷で、家人総出で、隅々まで掃除した。

一護が大戦を経験した後から、浦原の手で家電製品があふれ出して、今では尸魂界では掃除機もエアコンも冷蔵庫も洗濯機も・・・・何から何まで、現世の生活を思い出せる品ばかりだった。

流石に車やバイクはないが、自転車は普及していた。

もっとも、死神は自転車より瞬歩を使った方が早いので、瞬歩を使えない死神の家族とか貴族とかの間で、自転車が流行っていた。

「はぁ。終わった・・・テレビでも見るか」

現世の番組が映し出された。

もう、夜になっていた。

「ああ懐かしい。紅白歌合戦か・・・・まだ、やってるのか」

「そんなに懐かしい番組なのか?」

「ああ。俺の子供の頃から、いつも年末の一番最後の夜にやってる、歌番組だ」

「大分、長寿だな。貴様、今いくつだ?」

「死神する前も数えると87かな」

「87か。まだまだ若い。私は200歳をこえてしまった」

確かに、一護が少年時代に記憶していた、あどけなさの残る少女の顔立ちではなかったが、まだまだ20代の若さを保った見た目だった。

「白哉もそういえば若いままだな。恋次もだし。死神って、どうなってるんだ?」

「一護も、その姿のまま100年以上は生きるのだぞ」

「先が長すぎて、眩暈おこしそうだぜ」

100年後も、こうやってルキアと共にありたいと話すと、ルキアは赤くなりながら頷いた。

「その、子供がそろそろほしいのだ・・・・・」

「ああ・・・今まで、ほとんど避妊してやってたからなぁ」

「よいであろう?二人ほど、欲しいのだ」

「よし、今日から子作りだ。ルキア、覚悟しろよ」

「貴様、今日からだと!もう日付が変わってしまっているではないか!」

「まぁまぁ・・・・」

寝室に戻り、ルキアを押し倒す。

まだまだルキアも一護も若い。何度かして、すっきりして湯浴みをしてから寝た。

「一護、起きろ、一護」

「んー。あと1時間寝かせてくれーー」

「たわけ、起きろ!今日から、貴族の挨拶回りだと言っておいただろう!」

「ああ、そうだった」

一護は、眠い目をこすりながら起きた。

顔を洗って食事をして黒崎家として新しく作られた家紋の入った正装をして、出かけた。

白夜とも一緒になって、主に4大貴族の家を訪問した。

四楓院家を訪れると、夜一もいた。

「ほう、一護、ルキアとの記憶を失っておったと聞いたのじゃが、元に戻ったのじゃな」

「ああ、夜一さん久しぶりだな」

「本当に。何十年ぶりであろうな?」

褐色の肌の夜一はまだまだ若々しく、背後に砕蜂を連れていた。

「貴族風情が、夜一様に馴れ馴れしくするな!」

ガルルルルと威嚇する砕蜂も、昔と全然変わっていなかった。

「こら、やめよ砕蜂」

「はい、夜一様!」

夜一に頭を撫でられると、気持ちよさそうにしていた。

その他、かつて朽木家と縁続きになっていた貴族の館を訪れる。

その度に出される茶や茶菓子で、おなかはたぷんたぷん状態になっていく。

「う、年末早々これはきつい・・・今夜は夕飯はなしにしよう」

「俺、厠いってくる・・・・」

「待て、私も行く!」

厠も、水洗のウォシュレットになっていたりで、吃驚だった。

帰る頃には、くたくたになっていた。

「よし、今日も子作りだ」

「ちょっと待て、一護。くたくたなのだ・・・・・」

「子供が欲しいんだろ?半分寝てていいから・・・・」

「たわけ!」

ルキアは、まずは風呂に入った。一護も一緒だった。

「風呂場でするか?」

「たわけ!あがってからだ!」

布団を挟みあって、お互い正座をする。

「今夜もよろしく」

「おう」

お互いをお辞儀をしあってから、睦みあった。

ルキアと一護の甘い夜は、更けていくのだった。

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ルキアを忘れた一護 記憶

井上の館に置いてあった、自分の荷物をまとめる。

「じゃあな、井上」

「いやああああ、行かないでーーー!」

すがりついてくる井上を無視して、一護は13番隊の6席となったことで、与えられていた自分の館で住むようになった。

相変わらず、ルキアとの記憶は思い出せないが、ルキアを愛しいという記憶だけあって、上司であるルキアとと、時折いけない関係へと発展した。

貴族の子女が、婚姻もなしに関係をもつことは、禁じられていた。

それを、白哉が黙しているのをいいことに、一護はルキアとの関係を深めていった。

「夢みたいだ・・・またこうやって、貴様と居られることが」

「きっと、記憶は取り戻すから。それまで待っていてくれ、ルキア」

一護の言葉に、ルキアは一護にの傍にもたれっかかった。ここは、一護の館だった。

「今のままでも、もうよい・・・。また、新しく関係を一から築いていくのも、悪くない」

「俺は、今までの記憶を取り戻したい。ルキアと、愛し合っていた記憶を」

「ならば、一度試してみるか?」

「何をだ?」

「もう1つの可能性・・・・記憶の、混濁だ。涅マユリに頼めば、そんな薬くらいありそうだ」

「それで記憶が取り戻せるなら、試したい」

「分かった・・・・」

ルキアが手配して、記憶が混濁するという薬がやってきた。

記憶の混濁は一時的なもので、後には元にもどるという、安全な薬であった。

「飲むぞ」

「ああ」

ルキアの目の前で、薬を飲んだ。

「ここはどこだ・・・・・俺は誰だ・・・・・」

「貴様は、黒崎一護。ここは尸魂界で、貴様は死神だ。そして私は朽木ルキア。お前を愛し、お前が愛する者だ」

「朽木・・・ルキア・・・・・ああ・・・・15歳の夏に出会った・・・・」

「そうだ、その調子だ、一護!」

「でも俺は、一向に来てくれないお前を諦めて・・・・井上と結婚して・・・でもまたお前は現れて、俺の心をもっていった・・・・・」

「一護、私が分かるか?」

「朽木ルキア。朽木白哉の義妹で、俺の恋人」

そこで、薬の作用を止まらせる薬を飲ませた。

「はっきりと、思い出した。あれは高校一年の夏だったかな・・・いきなりお前が現れて、死神としての力をくれた。でも、それのせいで尸魂界に追われて、処刑されることになって・・・全部、藍染がしくんだことで・・・・」

「一護、愛している!」

ルキアは、一護に抱き着いて離れかった。

一護も、ルキアを離そうとしなかった。

「ルキア、俺の永遠の恋人・・・俺が死ぬ間際まで、いてくれた」

「そうだ。そして死後も、貴様は私と一緒にいるはずだった」

「井上はどうなる?」

「さばかれることはないように、手配した。だが、もしもまた貴様に手をだすようななら、罪人として警邏隊に引き渡す」

「そうか・・・・ありがとな。井上に温情をかけてくれて」

一護は、ルキアの頭を撫でた。

思い返す。この細く小さな体を、いつも抱き締めていた。時に体を重ねた。

「ルキア、結婚しよう」

「一護?」

「もう、こんなことが起こらないうちに、結婚しよう。俺はお前を愛している。朽木家から出るのは嫌か?」

ルキアは、ポロポロと涙を流した。

「嫌なわけあるか・・・・このたわけが!」」

その年の年末、籍をいれて、式を挙げた。

石田と茶虎、それに他の隊長副隊長に、一護と縁のあった者のほとんどが出席してくれた。ただ、その中に井上の姿はなかった。

井上は、席官をやめて平隊士となり、皆に交じって生活をしはじめていた。

井上に思いを寄せる男性と、最近付き合いだしたとう噂を聞いて、一護もルキアも、ほっとした。

「朽木と縁続きになるのだ。くれぐれも、貴族社会に波をたてるな」

そう白哉に念押しをされた。

黒崎ルキアとなったルキアであるが、いつの間にか、一護は貴族に名を列ねていた。

かつでの5大貴族、志波家の末裔として。

屋敷も何もない名前だけの貴族であったが、貴族社会とはまぁ適当に付き合いつつ、一護とルキアのために建てられた屋敷で、二人は過ごすようになった。

「お前、白哉から愛されてるなぁ」

「兄様はとても優しいぞ?」

「あの白夜が、ここまで義妹のお前に骨抜きにされるとはなぁ」

「骨抜きではない。家族愛だ!」

「いや、それでも義妹の結婚のために、こんな立派な屋敷建ててくれるなんて・・・」

朽木家から、料理人やその他の家人を呼んであったので、生活は楽だった。

一護は、13番隊の副官にまで登りつめていた。

「なぁ、ルキア」

「なんだ?」

「許しもらえたら、現世に新婚旅行にいこうか」

「面白そうだな!行くぞ!」

白哉に願い出たが、断られるとばかり思っていたが、思ったよりあっさりと許可がおりた。

北海道へ、5泊6日の旅にでた。





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ルキアを忘れた一護 井上の思い

その日、4番隊と12番隊の隊長に、それぞれ診てもらった。

結果、記憶が改竄された可能性が高いと言われた。いずれ月日がくれば、記憶を取り戻すかもしれないとも言われた。

「俺の記憶を改竄するような奴・・・・ルキアと愛し合っていた記憶を、忘れさせる奴・・・」

ふと思いついて、首を振る。

井上だった。

井上なら、ルキアと交際していた一護に薬か何かを使って、ルキアのことを忘れさせると、自分は井上のほうを見るに違いないと思って・・・・。

そこまで思考をして、やはりと首を振る。

「井上は優しくて大人しいやつだ。そんな大それたこと、するわけがない」

井上の館に帰宅すると、もう尸魂界にきて井上と暮らし出して2カ月になるので、いい加減籍をいれようという話になった。

少し戸惑ったが、承諾した。

「明日、井上と籍をいれることになっている」

上司であるルキアにそう話すと、ルキアは悲しそうな瞳で一言。

「そうか」

そして、決意する。井上から、一護を取り戻すことを。

「よし、今日は祝いだ。おごってやろう」

「まじかよ」

「上司がおごってやると言っておるのだ。しかも、私は4大貴族の姫君・・・お前の給料ではいけないような、高級料理店につれていってやろう」

「まじか!行く!」

高級料理店といわれて、一護は飛びついた。

おいしい料理を食べて、泥酔するまで酔った。

「私は、朽木ルキアだ・・・・覚えていないか、一護」

「んー。ルキア、愛してる」

「私のことを、思い出したのか!?」

「いいや、なんかルキアのことが好きだっていう思いだけが溢れてきて・・・・」

「そうか。あの宿で、休憩しよう」

ルキアの誘いに、一護は乗った。

そのまま、酒の勢いに任せて、二人は体を重ねた。

次の朝、平静に戻った一護は、ルキアに土下座した。

「すまねぇ。俺には井上がいるのに、あんたを抱いちまった。なんでもできることは言ってくれ。責任はとるから」

「そうか・・・・・・ならば、井上と籍を入れるのをやめろ」

「それは・・・」

「できぬのか?私を傷物にしておきながら・・・」

「わかった!ルキアの言う通りにするから!」

ルキアは、記憶を取り戻さなかった一護に落胆しながらも、ルキアを好きだという思いが溢れてきたとう言葉に、感動していた。

ゆっくりではあるが、確かに一護は、ルキアの存在を受け入れていっていた。


一護は、井上の館に帰宅すると、謝った。

ルキアと関係をもってしまったこと。ルキアとの約束で、籍が入れれえないこと。

井上は、珍しく激高して、一護の頬を叩いた。

「黒崎君はいつもそう!私を見ているようで、朽木さんばっかり見てる!朽木さんのこと、そんなに未だに好きなの!?」

「おい、なんだよその言葉。まるで、俺がお前を蔑ろにして、ルキアとできてたみたいな・・・・記憶の改竄・・・・・まさか、井上?お前が?」

「ち、違うの、黒崎君!これは混乱していて!」

「井上、どうなんだ!」

迫ると、井上は泣きながら逃げ出していった。



そのことを、ルキアに伝えた。

「なぁ。井上が、俺の記憶を改竄した可能性があるんだ。ルキア、あんたは気づいたか?」

「知っておった。井上が、貴様の中から私のことを消したのだと」

「ルキア!なんでそんなに平然といられるんだ!」

「仕方なかろう!お前の記憶を元に戻す方法が、可能性でしかないのだ!戻せるなら、とっくに戻しておる!」

ルキアは、ぼろぼろと涙を流しながら、一護に抱き着いていた。

「貴様の記憶が戻るなら、すにでその方法をとっている。泥酔するか、記憶が混濁した時しか、思い出す可能性がないのだと言われた。昨日貴様を泥酔させて、「ルキア、愛している」という言葉も聞けたし、私を抱いてくれた。だが、正気になったお前の中に、やはり私はいなかった・・・・・」

「井上が俺の記憶を改竄した確信が、あるのか?」

「ああ。浦原という男が、死後の記憶を一部欠落させる薬を、井上に売ったと白状した」

「そんな・・・俺の記憶は、戻らないのか?」

「分からぬ。一護、好きなのだ!貴様のことが、どうしようもないくらいに、好きなのだ!

「ルキア・・・・・」

一護は、ルキアを抱き締めていた。

「いちご?」

「記憶は戻ってないけど、ルキアを好きって感情は戻ったみたいだ」

「一護!」

ルキアに思いきり抱き着かれて、尻もちをつく。

「一護、一護、一護・・・・世界で、一番好きだ!」

「ルキア・・・俺も、好きだ」

一護は、ルキアから離れた。

「いちご?」

「ちょっと、井上と話つけてくるわ」

「一人で大丈夫なのか?」

「井上をああまで追い詰めたのは俺だ。俺に責任がある」

一護は、井上の霊圧を追った。

4番隊の隊舎の中で見つけて、無理やり手をとって、外に連れ出す。

「お前、だったんだな。俺の記憶改竄したの」

「黒崎君・・・・全部、黒崎君が悪いんだから!私がいながら、朽木さんと浮気するんだから!」

「それでも、人の記憶をいじっていいってことには、ならないだろ!」

一護が叫ぶと、びくっと、井上は身をちぢこませた。

「井上、悪いがもうお前と籍は入れれない。俺は、ルキアのことが好きだってことだけだけど、思い出した。お前とは、いられない」

「黒崎君のばかーーーー!」

泣きながら、力のこもらない手で殴ってくるのを、じっと受け止めていた。

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ルキアを忘れた一護 ルキアの幻

「ルキア、愛してる」

「私もだ、一護・・・」

二人は、幸せそうだった。

その様子を、井上は涙を滲ませながら見ていた。

「私の、黒崎君なのに・・・・・」

浦原商店に向かい、死後に記憶の一部が欠如するという薬を購入した。頑張ってためたお金で、浦原に口止めをした。

「誰に使うんですか?」

「さぁ・・・・・・」

「薬の使い方間違えると、大変なことになりますよ。だから、相手に飲ませる時は少量にしてくださいねぇ」

「はい・・・・・」

井上は、ルキアにも一護にも、薬を飲ませた。

だが、ルキアが死ぬことはないので、意味はないだろう。

「井上・・・ごめん、俺やっぱお前と別れるわ。ルキアを好きなまま、お前と結婚したことに問題があったんだ」

「嫌だよ、黒崎君!私を捨てないで!」

「ごめんな、井上。この家は、お前にやるから」

「そんなのいらない!どこにもいかないで、黒崎君!」

井上は、泣きじゃくっていた。

「じゃあ、俺出ていくから・・・・・・」

ルキアと一緒に、黒崎家を出ていく一護。

「朽木さんのせいだ・・・・何もかも、朽木さんのせい・・・・・・」

全部、朽木ルキアが悪いのだと思った。せめて、死後は私の元にきてほしい。

浦原から、飲ませる時に強く念じれば、その相手を忘れるというから、ジュースに混ぜて飲ませる時に、朽木ルキアを忘れろと、怨念のように呪うように強く念じた。

「やっぱ俺、ルキアのことが忘れられない・・・・さよならだ、井上」


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「黒崎君!!行かないで!!!」

ばっと起きると、そこは席官クラスに与えられる井上の館だった。井上は、その特殊な治癒能力が買われて、4席だった。広くも狭くもないその館の寝室のベッドで、井上は寝ていた。

「夢・・・・・・」

隣には、一護が寝ていた。

「ふふ・・・今の黒崎君は、私だけのもの」

それは、狂気に似た思い。

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「よお、茶虎、石田」

「黒崎!?お前も死んで、死神になったのか!」

10番隊に配属されていた石田と、居酒屋で出会った。隣には、6番隊に配属された茶虎がいた。

「そういう石田こそ、滅却師のくせになんで死神なんかやってるんだ?」

「先の大戦で、滅却師は凄い怨みをかったからね。滅却師のままだと、尸魂界でも命が危うそうで・・・・・仕方なしに、死神になったのさ」

「俺は、力があるなら人のために役立てたい。だから、死神になった」

「茶虎は立派なのに、石田が死神になったのは、保身のためか」

「仕方ないだろう!」

「そうだな・・・なぁ、朽木ルキアって知ってるか?」

「はぁ?知ってるも何も、君の恋人じゃないか」

「そうだぞ、一護。尸魂界の反対を押し切って、付き合っていたじゃないか」

二人の言葉に、やはりルキアとの記憶だけが欠如しているのが不思議で仕方なかった。

「俺の中に、今ルキアの記憶がないんだ。ルキアのことだけ、忘れちまっている」

「おい、それはどういうことだ!」

石田が問いつめてくるが、魂葬をしたルキアに連れられて、尸魂界にやってきた時には、もうルキアのことだけを忘れていたのだと話した。

「誰かに脳をいじられたか・・・・何かの病気か・・・・・・」

「今度、4番隊と12番隊の隊長に診てもらうことになってる。まぁ、なるようになるさ。俺は13番隊の6席に配置されたんだ。今月分の給料が出たから、二人ともおごってやるよ」

そうやって、3人は現世にいた頃の他愛ない話に花を咲かせた。

「ここの酒、うまいな・・・・酔っちまった」

「ほどほどにしとけよ、黒崎」

「そうだぞ、一護」

「ルキア・・・・愛してる・・・・・」

ルキアの幻を見ていた。

アメジストの瞳でくるくる表情のかわるルキアを。

「おい、今、黒崎、ルキア愛してるって・・・」

「んー?なんかふわふわしてすっげー心地いい。ルキアのことは忘れちまったけど、なんかさっき一瞬ルキアの幻を見た気がする」

「黒崎、お前やっぱり、何かが原因で記憶が欠如してるんだ。4番隊に、早めに診てもらえ!」

「うーん。まぁ、また今度な。じゃあ、俺帰るわ・・・・・」

ふらつきながらも、一護は井上の館に帰ってきた。

「黒崎君、酔ってるの?」

「ルキア、好きだぜ・・・・」

「黒崎君、私を見て!

「んー?井上・・・・?」

「そう、私は井上織姫。あなたの妻で、あなたは私の夫。朽木ルキアのことは、全て忘れなさい」

浦原から、薬の欠点を教えられていた。泥酔したり、記憶が混濁すると、思い出す可能性があると。今まさに、一護は泥酔していて、ルキアのことを思い出しかけていた。

もしも思い出しかけた時には、忘れさせたい者の名を強く思い、言いきかせること。

「井上・・・・俺が愛してるのは、井上だけだ・・・・・」

「嬉しい、黒崎君」

その日、二人は体を重ね合った。

そのことを、翌日に13番隊の執務室で一護から聞いたルキアは、茫然となった。

「そうか・・井上と・・・・」

「ルキア、俺のことは忘れろよ。恋次とやり直すのはどうだ?」

「一護・・・・私には、貴様しかいないのだ。愛している、一護・・・・」

「やめてくれ!俺は井上を愛してるんだ。洗脳するみたいな言い方は止めてくれ!」

「洗脳・・・・まさか!」

まさかと思い、浦原の店を訪ねた。

そこで、数十年前に、確かに井上に死後の記憶を欠如させる薬を、井上に売ったと聞き出した。

だが、薬の解毒薬はなく、泥酔したり意識が混濁すると思い出しそうになるくらいで、根本的な解決法はないとの、ことだった。

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ルキアを忘れた一護 13番隊への所属

一護は、井上と一緒に生活をしだした。

籍はまだ入れいないが、そのうち入れて結婚式を挙げるつもりだった。

井上に話を聞くと、石田も茶虎も他界していて、尸魂界にきても現世の記憶があって、真央霊術院に進み、死神となったそうだ。

それぞれ、茶虎は6番隊に、石田は10番隊に配属されているそうだ。

石田は滅却師であるから、死神になるのは始め反対していたのだが、滅却師をそのまま放置するわけにもいかないという尸魂界の掟にのっとり、仕方なく死神になったらしい。

「石田に茶虎かー。懐かしいなぁ。今度会いに行こうかな」

「ねぇねぇ、黒崎君はもう死神だけど、隊首会に呼ばれてるんでしょ?」

「え、ああ。京楽さんが、尸魂界の恩人がやってきたーってめっちゃ嬉しそうだった。今日の午後から、隊首会に出る。俺はどこに配属されるんだろうな・・・井上と同じ4番隊がいいけど、俺には治癒能力とかないからな」

やがて、一護は隊首会に呼ばれた。

大戦を経験した後からもう65年以上はたっているので、その当時の隊長副隊長とは違う面子もいた。

「知らない子には紹介しておこう。この子が、黒崎一護君。尸魂界を二度にわたって救ってくれた英雄だよ」

「いや、京楽さん、俺はそんなんじゃないから」

照れながら、一護が笑う。

「そうだねぇ・・・・ルキアちゃんと仲がよいから、13番隊に配属しよう」

「あの京楽さん」

「ん、どうしたんだい?」

「俺には、その朽木ルキアさんに関する記憶がないんだ。なんでか知らないけど・・・覚えてないんだ。白夜のことは分かるが、朽木ルキアさんのことが全然記憶にない」

「それは本当なの?」

京楽の問いかけに、皆同じ思いだった。

「あんだけ朽木と仲良かったじゃないか!」

日番谷がそう言い、白哉が眉根を寄せた。

「あんなに愛し合っていたであろう・・・・」

「いや、まじで記憶がないんだ。なぁ、朽木ルキアさん」

「まず、その朽木ルキアさんという言い方をやめろ。ルキアでいい」

「じゃあ、ルキア」

ルキアは、皆の視線を集めたが、なんとか冷静を保っていた。

「一護の中に私に関する記憶がないのは本当だ。何故かは分からぬが・・・とにかく、一護には私のことを思い出してもらいたい。13番隊の配属で問題ないなら、13番隊へ」

「そういうことなら、13番隊へは必須事項だね。黒崎一護君には、そのうち4場隊と12番隊の隊長に診てもらうことにしよう」

「げ、涅マユリに!?」

「げ、とはなんなんだネ!失礼な小僧だ。私は12番隊隊長だ。今の君より身分が上であることを、忘れないでくれたまえヨ」

涅マユリは、不機嫌そうだった。その毒々しい姿は、相変わらずだった。

「では、13番隊の空いているのは・・・6席だったか」

「はい、京楽総隊長」

「では、ここに黒崎一護君、君を13番隊の6席に任命するものとする」

「じゃあ、俺の上司はルキアさん・・・・じゃなくって、ルキア?」

「そうだ。貴様は卍解も使えるだろうし、戦闘では問題ないだろうが、普段の死神の業務を覚えてもらう。何せ、真央霊術院に通っていないのだ。死神として知識をつけてもらわねば」

「わーったよ」

一護は、ぶっきらぼうに言った。

また、ズキリとルキアの心が泣き出した。

ルキアのことを忘れたといって、尸魂界にやってきて、もう1週間になる。

その間に、一護は井上にとられてしまっていた。

だが、今のルキアに二人の仲を切り裂く権限はない。一護は、とても幸せそうな顔をしていたのだ。それは本来、ルキアに向けられるべき表情であった。

「では、明日から9時前には13番隊の隊舎にくるように」

「わーったよ、ルキア」

「貴様・・・井上の家に、一緒にずっと住んでいるのか?」

「ああ、そうだぜ。今度、籍をいれることになっている」

「そうか・・・・・」

ルキアは、拳を握りしめた。

泣いてはいけない。ここでまた泣いたら、一護に変に思われる。

「ルキア」

「なんだ」

「なんだかなー。昔、こうやってあんたの名前を呼んでた気がするんだ」

「それは、気がするではなく、実際に呼んでいたのだ。私と貴様は、貴様が他界する少し前まで、時折一緒に過ごしていた」

「うーん。実感がわかねぇ。まぁ、今日のところは井上の家に帰るわ。結婚式にはルキアも呼ぶからきてくれよ。俺の隊長さん」

去っていった一護に、ぽたりぽたりと、涙が零れていく。

「貴様の、結婚式を見届けろと・・・そんな残酷なことを、貴様は平気でいうのだな・・・」

ああ、黒崎一護を愛するんじゃなかった。そう思ったが、もはや愛してしまったものは仕方ないのだ。

体の関係まであった。

かなりディープな関係だったと思う。

「一護・・・貴様が、恋しいよ・・・・」

ぽたりぽたりと、滴っていく涙は、当分の間止まりそうになかった。


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ルキアを忘れた一護 一護の他界

黒崎一護が死んだ。

老衰だった。85歳で他界した。

一護は、一度井上と結婚したが、離婚していた。

原因は、ルキアの存在だった。

時折、ルキアが来ては、二人は体を重ね合った。

その現場をついに見られてしまい、井上は拒絶したが一方的に、離婚を切り出した。

二人の間には、子はできなかった。

井上は、一護より先に他界していて、現世の記憶をもったまま、死神となるための真央霊術院を2年で卒業し、4番隊に配属されていた。

ルキアも、恋次と婚姻しそうになったが、結局断った。

一護と密通を重ねる自分の、その性根の悪さに自分でもほとほと困りながらも、一護への思いを絶つことはできなかった。

「ルキア・・・・大好きだ」

「私もだ、一護」

その関係は、一護が他界して尸魂界に魂がやってきても、続くと思われた。

ルキアが、一護の魂葬を行った。

尸魂界に来ると、一護はぽかんとしていた。17歳の頃の姿を保っていた。

「ここどこだ?あんた誰だ?」

はじめ、ただ混乱しているのかと思った。

「ここは尸魂界。お前は黒崎一護だ。そして私は朽木ルキア」

「ルキア?どこかで聞き覚えが・・・・いや、知らないな」

「貴様、現世での記憶がないのか!」

ルキアが、まさかと声をあげる。魂葬は、本来現世の記憶を忘れさせるもの。そのせいかと思った。

「あるぜ。井上が好きで、井上と結婚した。死神代行もしていた。でも、俺はなんで、大切な井上と離婚したんだろう」

一護の中から、ルキアの存在だけがすっぽりと抜けていた。

「貴様、本当に、私が分からぬのか!?」

「朽木ルキアさんだろ」

「朽木ルキアさん・・・・・だと・・・・・」

ポロポロと、ルキアは涙を零した。

今まで、約70年間、老衰する間際までルキアと一緒にいたのに。

ルキアはこんなにも一護をのことを思っているのに。

一護には、現世の記憶があるのに。

ルキアのことだけが、一護の中から消え失せていた。

「なぁ、何泣いてるんだ?」

「たわけ・・・私のことを、あんなに愛しているといったではないか・・・」

「え」

一護は固まった。

「俺が、朽木ルキアさんを?」

「そうだ、思い出せ!」

「うーん。だめだ、全然記憶がない。あんたの、思い違いじゃないか。俺は85で老衰して死んだけど、独り身だったし」

正確には、老衰して死ぬ間際まで、ルキアに見守れていた。

一護が老いていく姿を悲しくもありながら、それでも魂魄が尸魂界にくれば、もう一護またやり直せるのだと思っていた。

石田も茶虎も死んだ。

みんな、現世の記憶を持っていた。そのまま真央霊術院を卒業し、死神になっていた。

だから、一護も当たり前のように現世の記憶があるのだと思っていた。

実際にあった。

でも、肝心のルキアのことだけを忘れてしまっていた。

「一護・・・大好きだ」

抱き締められて、一護は戸惑う。

「ごめん、俺には井上がいるから・・・・・」

それは、一護が井上に言った言葉と似ていた。

俺にはルキアがいるから。そう言って、井上と離婚したのだ。

「一護、いちごおおおおおおおお」

一護は、戸惑いつつもルキアの頭を撫でた。

「何かしらねぇけど、俺のことが好きなんだな」

「そうだ。一護、もう一度私を好きになれ!」

「俺には、井上がいるから」

「私は諦めない、一護。必ず、貴様の記憶を取り戻させて見せる。もう一度私のことを愛していると言ってみせる」

ルキアは泣きながら、去っていく一護の姿を見送った。

4番隊で、井上が死神として働いているのを知って、一護は井上に会いに行った。

「井上!」

「え、黒崎君!?」

「井上、俺はお前を愛していたのに、何故お前のと離婚しちまったんだろう」

「朽木さんは?」

「ああ、朽木ルキアさんか。なんか俺のこと愛してるとか言って泣いてたけど、記憶にないし、俺もよくわからねぇ」

「朽木さんの、記憶、ないんだ」

井上は、ニヤリと笑った。

それは、井上の罠。浦原商店で買いこんだ、死後の記憶が塗り替えられるという薬を、離婚の直前に一護に飲ませていたのだ。

こんなものが本当に効くのかと思っていたが、効いたようだった。

「おかえりなさい、黒崎君。黒崎君も、真央霊術院に行って、一緒に死神になろう。そしてまた、私と結婚しよう」

「ああ、そうだな井上・・・・」

二人のその姿を見て、ルキアはショックのあまり言葉を失っていた。それから、ぽつりと呟く。

「一護・・・本当に、私のことを忘れてしまったのだな・・・・・」

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それいけ一護君 久しぶりの現世

「なぁ、今度現世にいくことになったのだ。浦原に頼み事があるのと、空座町に最近出没するという強い虚を倒すためだ。お前も来い、一護。家族や友人にあえるチャンスだ」

「現世・・・俺もいっていいのか?・・・」

「死神として、立派に暮らしていると知れば、残されていった者たちも安堵するであろう」

「俺が行ってもいいなら、行きたい」

現世に残してきた者達に別れの言葉すら、告げられなかった。だが、ルキアと結婚するにあたり、現世の家族や友人に連絡を入れた。

死神として生きていると。

結婚式当日は、井上、茶虎、石田もきてくれた。

子供を庇ってトラックにはねられて死亡とか、まるで漫画のような展開だった。でも、それが一護の死因であって。

瞬歩なりなんなり使って、助ければよかったのだが、生憎死神化していなかったので、生身の肉体で庇うのには限界があった。それでも、鍛え上げられた一護なら大丈夫と、誰しもが思った。救急車で搬送されていく一護に付き添った、双子の妹に親父である一心には、虚しくご臨終ですと告げられて、集まった井上、石田、茶虎にもそれは伝えらえれた。

「そんな・・・黒崎君・・・うわあああああああん」

あの時の、井上の悲痛な叫びを、魂魄の状態で聞いていた。

すぐにルキアが魂葬を行ったが、普通は前世の記憶は失うはずなのに、一護は死神代行であったせいか、現世の記憶をもったまま尸魂界にやってきた。

そのまま、死神のことを何も知らないとのことで、真央霊術院にいれられて半年で卒号し、13番隊の副隊長になった。

今では、少しだが鬼道も使える。

命中すれば威力がでかいが、よく自爆した。恋次といい勝負だ。

朽木邸で、現世にいくのはあさってからだと告げられて、少しわくわくしていた。

次の日は、普通に仕事をこなした。13番隊の副隊長として、平隊士たちに稽古をつけて、席官クラスにも稽古をつけた。

「さすが朽木副隊長・・・・・」

そう言われて、何かむず痒かった。

黒崎と呼ばれ慣れていたせいか、今になっても朽木一護という名前がしっくりこなかった。

白哉から、白哉が頭につけている牽星箝をするために、髪を伸ばせと言われていたが、そんな気はさらさらなかった。

牽星箝などつけるものかと、反抗した。

極度のシスコンの白哉とは、うまくいっていないのかいっているのか分からない状態で。極度のブラコンのルキアは、一護のことを大切してくれるが、よく放りだして白哉の方へ行く。

まぁ、それにも慣れた。

次の日になり、一護は空座町にルキアと共にやってきた。

ルキアは浦原に用があると、先に一護に家族に会って来いと言われて、恐る恐るではあるが、黒崎医院とかかれた自宅のドアをあける。

念のため、義骸に入っていた。

「え、一兄!?」

夏梨が、驚いた声をあげた。

「え、お兄ちゃん!?生き返ったって本当なの!?」

そう言われて、どう説明すればいい分からずにいると、一心が一護の頭をぐりぐりしだした。

「いってーな!」

「その様子だと、死神としてうまくいってるらしいな」

「そうだよ。なんか文句あるか!」

「なんでもねーよ。だが、親より先に死ぬ息子なんて、情けない!真咲が泣いているぞ!」

リビングルームにある真咲の写真の隣に、小さく一護の写真が飾られてあった。

「この扱いの差、なんなんだよ!」

「だって一兄は生きてるんでしょ?死神として」

「まぁ、そうだけど・・・・・」

家族でなんだかんだと、今の状態を話すと、一心が「ルキアちゃんはやっぱ四大貴族だったのか」と、溜息をついた。

「お前、ルキアちゃんとその家族とは、うまくいってるのか?」

「まぁ、ぼちぼちな」

1時間ほど話あって、次に井上と石田のところに訪れた。二人は今付き合っているらしく、石田の一人暮らしの家に、井上が転がりこんできた形となっている。

「黒崎君、久し振り。朽木さんとは、うまくいってる?」

「黒崎、まさか朽木さんを泣かせはいないだろうな?」

「ルキアとはうまくやってるよ。ただ、ルキアの兄貴とちょっとうまくいってないけど」

「朽木白哉だったっけ?」

石田の言葉に頷く。

「そうだ、石田、ぬいぐるみ作れるか?」

「そんなもの、すぐに作れる」

「じゃあわかめ大使の・・・こういうぬいぐるみを作ってほしい」

もっていたハンカチが、わかめ大使の柄付きだった。

「30分待て。すぐ作る」

30分が経過する頃には、見事なわかめ大使のぬいぐるみができあがっていた。

「石田、相変わらず裁縫の腕がいいな」

「褒め言葉として、受け取っておこう」

「茶虎は、何処にいるか知らないか?」

「今、ボクシングの世界ツアーに参加してて、私たちもどこにいるかしらないの」

「そっか・・・・・」

茶虎にはメールを送っておいた。

合流する時間になり、一護は石田と井上に礼をいって、またそのうち会いにくると約束して、空座町の真上にきた。

「たわけ、遅いぞ一護。強いという虚も、私一人で退治してしまったではないか。む、なんだそれは!けしからん、わかめ大使のぬいぐるみではないか!」

ルキアがとろうとするが、身長差があすぎて無理だった。

「これは、白哉への土産だ。石田に作ってもらった」

「むう、石田に頼めばチャッピーのぬいぐるみも、作ってくれるであろうか」

「メールで頼んでみろよ。これ、石田のメルアド」

ルキアは、早速石田にメールをした。

「作ってくれるそうだ!資料を送らねばな」

るんるん気分のルキアを抱き寄せる。

「一護?」

「やっぱ、死神になって正解だわ。ルキアの傍にいられないとか、精神的にも物理的にも無理だわ」

ルキアは、キスをされていた。

「うん・・・・んう」

「ルキア、好きだ・・・・・」

「一護、私もだ・・・・・」

抱き締めあって、尸魂界へと続く穿界門をくぐる。

名残惜しいが、死神が人間と関わるのは極力避けるべきなのだ。

朽木邸に戻ると、ちょうど夕飯の時間だった。

「これやるよ、白哉」

白哉にわかめ大使のぬいぐるみを渡すと、白哉は固まった。

「兄は・・・・これを、何処で手にいれた?」

「石田っていう、現世の友達に作ってもらたんだ。あんたも知ってるだろう?滅却師の石田だ」

「なんという芸術的なセンス・・・・まさにこれは至上の美だ」

あ、やべ。

白哉のスイッチおしちゃった。

「清家」

「はっ」

「すぐに腕のいい裁縫士たちを集めて、このぬいぐるみを大量生産するのだ」

「御意」

「おい、白哉そんなぬいぐるみをたくさん作って、どうするんだだよ!」

「わかめ大使博物館をつくる」

「いいですね、兄様!チャッピーの部屋も用意してもらっていいですか!?」

きらきらした目で見られて、白哉もすぐに快諾した。

「わかめ大使&チャッピー大使館をつくるぞ、一護!石田を拉致してこい」

「あんたら・・・・・アホだろ。石田をそんなことのため拉致とかできるかよ!」

「アホとはなんだ!アホというほうがアホなのだ!」

「いいや、アホなのはお前らだ」

「一護、このたわけ!兄様の崇高なる思いを理解できぬ凡人が!」

「凡人でけっこう!」

一護は、飯をさっさと食い終わって、湯浴みをして寝てしまった。

夜遅くまで、白哉とルキアはわかめ大使がどうのチャッピーがどうのと、意見を出し合っていた。

数日後、ルキアの腕の中に、石田に作ってもらったとおぼしきチャッピーのぬいぐるみがあった。

そして、瀞霊廷のど真ん中の土地を買い、本当にわかめ大使&ちゃっぴーの博物館を作ってしまったのだ。

見学人は、ほとんど零で、ほどなく閉館するのであった。









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海燕に怒られる京浮

春になった。

桜の花が散り出す季節。

「起きろおおおおおおおおおお」

「起きた」

冬の冬眠のような眠りとは真逆に、浮竹は自分から起き出した。

「ああああああ!冬のことが嘘みたいだああああああああ」

海燕は、嬉し泣きをしていた。

「海燕、お前はそんなに俺が一人で起きることが嬉しいのか?」

「嬉しいってレベルじゃありません。感動ものです」

だーーと涙を流す海燕に、大袈裟だと言っておいた。

8時には起きて、顔を洗い服を着替えて、朝餉をとる。

最近ちゃんと朝餉をとってくれるので、料理人は嬉しがっていた。

それは海燕もだ。

朝餉を食べず、酷い時は昼餉も食べずに寝続ける浮竹だ。

寝すぎたその日の晩には、寝れないと夜更かしすることもなくなった。

「ああ、冬はいやだなぁ。隊長が起きてくれないから。春~秋はいいですね。隊長が自分で起きてくれる・・・・・」

9時になり、仕事の始まりだった。

春~秋は、書類の作業能力は冬に比べて落ちる。

冬は、とにかく怠惰に眠りたいと、仕事をすぐに片付けてしまうのだが、春~秋は早めから起きて仕事をするので、比較的ゆっくりと仕事をした。

「海燕、ここの計算間違ってる」

「あ、ほんとだ」

冬の仕事もほぼミスはないが、間違いのチェックなど細かいところに、春~秋は気づいてくれる。

「その書類の計算がだめで、こっちもそれを応用してるからこっちも間違っている。訂正しておくから、6番隊に訂正した書類をもっていってくれ」

「朽木隊長のところか・・・・」

最近、朽木銀嶺と代替わりした、朽木白哉という若い青年が新しく隊長になって、まだ日が浅い。

「白哉は、まだひよっこだからな。書類のミスも多いだろうが、大目に見てやってくれ」

年齢にすると、海燕と同い年くらいだろうか。

ちょっと親近感がわいたが、頑なに貴族の掟を守ろうとする姿に、あまり好感をもてなかった。

「なんなんですか、朽木白哉って!4大貴族だかなんか知らないけど、態度がでかすぎる!」

ぷんすか怒って、戻ってきた海燕を宥めた。

「これから、6番隊に書類をもってくのは俺が直接行く」

「そうしてください。知り合いなんでしょう?」

「弟みたいなものだ」

「はぁ!?あんな弟、俺は絶対欲しくない・・・・」

「やぁ、やってるかい」

京楽だった。

「お前は、また気配を消して・・・普通に入ってこれないのか」

「いや、君が珍しく朝から起きてると聞いてね。僕も、珍しく仕事をこなしてきたわけさ」

「自分でいって珍しくってことは、どんだけ溜めこんでるんだ」

「さぁ。まだ半月分くらいじゃないかい」

「伊勢がかわいそうだ」

「七緒ちゃんは、これくらい慣れてるよ」

浮竹は思う。

「海燕も、伊勢も、上官に恵まれていないな」

「はぁ?何言ってるんだ、あんた」

「だって、俺は冬になるとずっと寝てしまうだろう」

「それは知ってます。病弱なことも全部ひっくるめて、俺は上官としてあんたを信用しているし、信頼していますし、尊敬しています。それは伊勢副隊長も同じじゃないんですか」

「七緒ちゃんも、海燕君みたいな考え方だったらいいな」

「そう思うなら、まず仕事を溜めこむな」

「浮竹の意地悪」

「ほら、京楽も仕事をもってきたんだろう?こっちの文机を使え」

京楽は、暇つぶしによく雨乾堂にやってくるが、時折仕事をもってきて、浮竹と同じ空間で仕事をした。

いつもは溜めこみすぎて、浮竹が手伝う羽目になるのだが、今のところまだ大丈夫なようだった。

「あーそっちの計算ミスってる」

「あ、ほんとだ」

「白哉の書類だ。まだ隊長になって日が浅いから、些細なミスをする。今度注意しておく」

そういう浮竹に、京楽がすね出す。

「朽木隊長のこと、名前で呼ぶんだ?仲いいんだね」

「この前も言っただろう。弟のようなものだと」

「どうだか・・・・」

つーんとなる京楽に、浮竹がその頬を両手で挟んで、キスをした。

「おいおい、あんたら何してるんだ」

「海燕うるさい。いいか、京楽。俺と白哉は、兄弟のような関係だ。俺が愛しているのは、京楽。お前一人だ。分かったな?」

「う、うん・・・・・」

京楽は、いきなり浮竹がキスをしてくるとは思っていなかったので、赤くなっていた。

「じゃあ、仕事続けるぞ」

昼餉の時間になり、京楽の分を用意していなかったので、京楽だけ一般隊士の食事と同じものになった。

それでも、随分質素だった頃から考えると、美味しいし、メニューも豊富になっていた。

「今日のデザートは桃か・・・・・」

「君、桃好きでしょ。僕の分もあげる」

一部のメニュー以外は、浮竹は一般隊士と同じ食事だった。ただ、隊長であるし病弱であるから、精をつけてもらおうと、一部が豪華になっていた。

「ありがたく、いただくとしよう」

カットされた桃を、爪楊枝で浮竹の口元にもっていくと、浮竹はそれをぱくりと食べた。

桃の果汁にまみれた唇を、ペロリと舐める浮竹。

京楽は、桃を口に含んで浮竹に口づけた。

「ん・・・・むう・・・・」

桃を咀嚼して、飲み込む。そのまま、ディープキスを繰り返していると、浮竹も京楽も頭をはたかれた。

「何まだ仕事が残ってるのに、盛ってるんですか!昼休みはもう終わりですよ!」

「ちぇっ・・・・・」

京楽をギロリと睨む。

「おお怖・・・・・」

「海燕、キスくらい別にいいだろ」

「だめです!あんたら放っておくと、仕事後回しにして睦みあうんだから!」

何度かそんなことがあったので、海燕も過敏になっていた。

「はいはい、大人しく仕事を片付ければいいんだろう」

「こういう時の海燕君って、七緒ちゃんなみに怖いね」

「そこ、聞こえてますから!」

「怖い怖い・・・・」

京楽はそう言いながら、仕事を片付けていくのだった。








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それでも隊長だった

「起きろおおおおおおおおおおおお」

「いやだあああああああああああああ」

「起きやがれこのやろうおおおおおおおおお」

「絶対に起きてやるもんかああああああああああ」

朝から、浮竹と海燕は熾烈なバトルを繰り広げていた。

布団をはがそうとする海燕と、それを阻止する浮竹。

普通に見ているだけなら微笑ましいが、本人達は命をかけた戦のように、戦っているのだ。

「もう10時だ、勤務時間の9時を回ってるんですよ!起きやがれ!」

「11時に起きる!」

「はぁ・・・・全く、今日も起こせなかった・・・・・」

海燕は力尽きた。

「よっしゃ、今日は俺の勝ちだ。じゃあ、11時にまたおこしにきてくれ。ZZZZZZZZ」

「はぁ・・・・なんつー上司だ。冬になると布団にへばりついて寝過ごして・・・まぁ、1日の仕事を残りの時間でちゃんとこなすから、目を瞑る日もありますが・・・・・」

11時なって、海燕が浮竹を起こしにきた。

「11時になりました。起きろおおおおおおおおおお」

布団と毛布をひっぺがすと、浮竹はその寒さにばっと起き上がった。そして、小さく舌打ちした。

「今、明らかに舌打ちしましたね!?11時に起こせといったのはあんたでしょう!」

「そんなの、守らなくてもいいのに」

「あんたね。仮にも13番隊隊長なんですよ!少しは隊長としての自覚を持ったらどうですか!」

「俺が寝過ごすことで、誰かに迷惑をかけているでもない」

「俺が非常に、迷惑を被っています」

「運命として、諦めろ」

「あんたねぇ!」

がみがみとお説教されていたが、浮竹は欠伸をかみ殺していた。

「全然聞いてねぇな、あんた!」

「聞いていた。他の隊長たちは最低でも8時には起きる、だろう?」

「なんだ、ちゃんと聞いてるんなら、実行に移してください!」

「他所は他所、うちはうち」

そう言い出した浮竹に、海燕は噴火しそうだった。

「隊長!」

「やぁ、おはようっていうかこんにちわ。浮竹、今起きたばかりかい?」

「京楽隊長も、何とか言ってやってくださいよ!この人、8時に起きないんです!9時の死神の業務の始まりの時間なっても起きやしない」

「浮竹ぇ、だめだよ。せめて9時には起きようよ」

「えーー」

「あんまり我儘いってると、甘味屋にいくのなしにするよ?」

その言葉に、浮竹は飛び起きた。

「海燕、早く昼餉と水をいれたたらいをもってこい!」

浮竹は夜着から死覇装に着替えて、きびきびと動き出す。

「さすが、京楽隊長・・・・・・」

「甘味物を与えないって脅せば、この子大抵起きるよ」

「なるほど・・・・・」

「こらそこ、海燕に情報を与えない!」

もちこまれた水をはったたらいで顔を洗い、急いで昼餉を食べて、仕事にとりかかった。

3時間もすれば、今日1日中かかると思われていた書類仕事は片付いていた。

「よし、今日の仕事は終了だ。文句はないな、海燕?」

「はいはい。もう自由時間です。京楽隊長といちゃつくなり、甘味屋にいくなり、寝るなりなんでもしてください」

「京楽、さっそく甘味屋へ行くぞ」

「はいはい」

こうして、始まりの遅い浮竹の一日は過ぎていく。

浮竹は、4日ぶりになる甘味屋でのスウィーツに満足そうな顔をしていた。

「たまには、苦労している海燕君におはぎでも持って帰るかい」

「ああ、そうだな。すみません、おはぎ20個持ち帰りで」

「ちゃっかり自分の分まで確保する君の精神には、感服するよ・・・・・」

おはぎが20個つまったパックンの入った袋を手に、浮竹は海燕を呼んだ。

「海燕、おはぎを買ってきたんだ。食え」

「え、まじですか。隊長が自分で食べないで俺にくれるなんて・・・・・明日、槍が降るな」

「俺の分は確保してある」

皿に、15このっているおはぎを、浮竹は食べていく。

パックの残りを見る。

5個入っていた。

3個で十分だと思い、口に出す。

「あと、2個、俺の分から食べても構いませんよ」

その言葉に、浮竹が固まった。

「お前、何考えている!さては、明日俺を起こすための取引材料か!?」

「なんでそんな思考にいきつくんですか」

海燕は長い溜息をついて、浮竹の食べているおはぎの乗った皿に、2個つけたした。

「おはぎを分けてもらっても、9時にしか起きないからな!」

「9時なら、十分です。いつも11時か昼まで寝てるんだから・・・・・・」

次の日。

浮竹は、珍しく8時に起きた。

朝餉を準備してもらおうと海燕を呼ぶと、額に手を当てられた。

「隊長が8時に起きるなんて、ありえない」

熱はなかった。

「うおおおお、なんて不吉なんだ」

「おい」

「今日は槍が降るうううううう」

「おい」

「ああっ、人生の最後かも!都に遺書を渡しておくんだった」:

「おい」

浮竹は、額にいっぱい血管マークを浮かべて、微笑んでいた。

「そうか、そんなに俺に早起きしてほしくないのか。もういい、もう一度寝る!」

「ああっ、違います隊長!起きてください!起きろおおおおおおおお!!!!」

「ZZZZZZZZZZZZZ]

揺さぶってもちっとも起きやしない。

布団と毛布をひっぺがそうとするが、ひっついていてなかなかとれない。

「今日の3時のおやつ、抜きにしますよ!ちなみに外郎(ういろう)です」

がばっと、浮竹は起き出した。

「朝餉と、水をはったたらいを」

「隊長がいつも朝飯食わないんで、朝餉の用意ができていません。一般隊士のものでいいなら、すぐに用意できます」

「一般隊士のものでいい」

京楽の言葉は、本当によく効いた。

これから浮竹を起こす時は、甘味物があることを口にしようと思う海燕。

これでも、13番隊の隊長なのだ。

きちんとしていれば、申し分ない。

そう思うのだった。











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院生時代の部屋 雑煮三昧


ぬ(はぁと、浮竹は溜息をついた。

「今日の昼飯も雑煮だ。朝飯も雑煮だった。夜も雑煮なんだ」

もちを飾りすぎた上流貴族の、京楽なんかが中心となって、カビを生やせるのはもったいないと食堂に寄付したのだ。

その量が多すぎて、1日3食雑煮になっていた。

「僕は、自分ちの料理人呼んで、いつも違うメニュー作ってもらってるからねぇ。食材も僕の財布から出ているから、文句を言うやつはいないし」

「すまない京楽、雑煮が終わるまで、お前のところの料理を一緒に食べていいか?」

「勿論だよ。キスしてキス!」

仕方なくキスをすると、ベッドに押し倒された。

「ううん・・・・」

ぴちゃりと、舌が絡み合う。

「好きだよ、浮竹」

「あ、京楽・・・・」

ハグをして、離れる。

京楽はもっとその先にいきたいのだけれど、浮竹は拒絶したままだった。

「早速食堂にいくかい?」

「ああ。雑煮を食べないでいいと思ったら、気分が楽になってきた」

食堂にいくと、京楽家専門の料理人が、慌てて二人分の食材を用意して、料理をしてくれた。

今夜のメニューは、うなぎのかば焼きとお吸い物、ご飯に煮込んだ鯛のアラだった。

「はぁ・・・久しぶりのまともな、というか相変わらず豪勢だな」

「こんなの、普通でしょ」

周囲の生徒たちが羨ましそうにしていた。

みんな、雑煮なのだ。

雑煮でない二人に、自然と視線が集中する。

「いいよな、上流貴族は」

「ほら、あっちでも違う上流貴族が違うご飯食べてる」

綱彌代時灘(つなやしろときなだ)だった。

4大貴族綱彌代家の分家の末裔だ。

同じ学年の院生だからと、時折浮竹が声をかけるが、いつも無視するような人物だった。

綱彌代時灘は、後に隊長であった東仙を嘆かせる原因となる、自分の妻及び友人を殺害するが、
4大貴族であるからと、その罪を許される。

それはまた別のお話で。

京楽は、興味もなさそうに、綱彌代時灘を見た。

他の者を屑扱いする上流貴族で、好きではなかった。

「浮竹、食べ終わったら早めに寮に戻ろう」

雑煮ばかりで飽きた院生たちの鬱憤が、こちらにまで及んできそうなのだ。

その前に、浮竹は食堂の料理長を呼んだ。

「もちでも、雑煮以外のものを作れるだろう?焼いてみたり、お吸い物にいれたり。雑煮ばかりでは、他の生徒たちがもたない」

「はぁ・・・でも、明日からは通常通りのメニューですので」

「それならよかった」

その言葉を聞いた院生が、みんなに聞こえるように大声でいった。

「雑煮三昧、今日でおしまいだって!明日からは普通のメニューが食えるぞ」

わあああと、歓声があがった。

よほど、1日3食雑煮がきいていただろう。

何せ、ここ3日連続で雑煮三昧だったのだ。流石に飽きる。

だからと外で食べるにも金がかかる。

食堂は安くて美味くてボリュームがあるが常だったのだ。明日から通常運転委戻るようだった。

「浮竹君だったか。あまったもちでおはぎを作ってみたんだ。持って帰りなさい」

「いいんですか?」

浮竹の目がきらりと輝いた。

おはぎをいれた重箱をもらい、浮竹はルンルン気分で京楽の元に戻った。

「寮に戻ろうか」

「うん」

寮に戻り、おはぎを食べだす浮竹。

「重箱は、明日返さないとな」

「僕にも一つちょうだい」

「たくさんあるから、好きなだけ食べるといい」

重箱3段に、おはぎが詰め込まれていた。

浮竹が、甘味物だと人の3倍は食べると知れていたようで。

「甘くておいしいね」

「ああ。壬生のおはぎにも負けない味だ。学院の食堂の料理長は、元々甘味物を作る職人だったらしい」

初めての情報だった。

時折、浮竹に甘味物を流してくれていたのだ。

「ああ、もつべきものは友人と知り合いだな」

重箱にあったおはぎを、京楽は4つほど食べたが、残りを全て浮竹がペロリと平らげてしまった。

「明日から、普通に食堂のメニューを食べよう。僕らだけ、特別メニューばかりしていると、嫉妬されてろくなことにならないからね」

「ああ、そうだな」

京楽家の料理人の作る料理はおいしいが、いつも豪華なのだ。

さすが上流貴族といいたいところだが、浮竹もその味になれてしまって、食堂の料理を食べれなくなることを懸念していた。

「しかし、何故にこうまで雑煮三昧だったのか・・・・・」

それが、大半が自分が寄付したもちのせいだと、知らない浮竹に安堵する。

「まぁ、誰かがもちを大量に寄付したそうだよ。綱彌代とか」

完全に、人のせいにしていた。

「あいつは、4大貴族の末裔だからな。ありそうだな」

浮竹は、騙されているとも知らないで、納得してしまった。

翌日、久し振りに朝食をとりにいった。

「京楽のぼっちゃんから寄付されたもち、なんとか使い切りました」

そういう料理人に、浮竹が京楽をジト目でみた。

「ふーん。犯人は、お前だったのか」

「いや、これは違うんだ!」

「俺にまで嘘をつくのか。今日一日、口聞いてやらん」

「ええ、そんなー!キスやハグは!?」

つーんと、浮竹はついてくる京楽の言葉に反応しないまま。朝食を食べ終えてから授業に出た。

ほんとに1日中口を聞いてくれなくて、泣きそうな京楽がいたそうな。















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浮竹の誕生日

「浮竹、誕生日おめでとう」

「ああ、ありがとう」

「今年のプレゼントはこれだよ!」

全世界でNO1になったという、赤ワインだった。

お値段も、とんでもないことになっていた。

「これは・・・・高すぎ、だろう。ただの赤ワインのくせに」

「あ、ごめん、値札とるのわすれちゃった」

多分、わざとだ。

そう思いつつも、素直に受け取った。

「誕生日プレゼントは僕」とか言い出してきた過去を思えば、まだまだましだ。

「ついにでのプレゼント「僕」さぁめしあがれ」

浮竹は、聞かなかったことにした。

京楽の頭にまかれていたラッピングリボンで、手をぐるぐる巻きにした。

「え、浮竹?」

「これで、手は出せない」

「え、ちょっと!」

そのまま、京楽を放置して、ワイングラスが用意されてあったので、もらった赤ワインを注いで飲んでみた。

「美味いな、これ・・・・・・」

「ああっ、僕も飲むはずが・・・・・」

「なんだ、飲みたいのか?」

「そりゃ、世界NO1っていうくらいだから、飲みたいよ」

「仕方ないなぁ」

ワイングラスに注いでやり、それを身動きがあまりとれない京楽の口元にもっていき、傾けた。

「美味い・・・・」

「だろう」

「あ、もぅちょっと飲ませて」

「仕方ないなぁ」

そういって、互いにワイングラスの中身を飲み干していけば、赤ワインはすぐになくなってしまった。

「もうない。おいしすぎて、飲み終わるのすぐだったな」

「ところで、なんで僕は手をぐるぐる巻きにされているのかな?」

「お前は!毎年毎年、俺の誕生日になったら盛って!」

「今年は盛らないから!」

「本当だな?」

「うん」

その黒曜石の瞳を信じて、浮竹は京楽のラッピングリボンを巻かれた手の戒めを外してやった。

「愛してるよ、浮竹」

押し倒されて、キスをされた。

死覇装の中に手が入ってくる。

浮竹は、頭突きを京楽に食らわせた。

「痛いじゃないか!」

「俺も同じく痛い!盛らないといっただろう」

「こんなの盛ってるうちに入らないじゃない!」

「いいや、完全に盛ってた!」

ぎゃいぎゃい言い合う二人に、副官であるルキアがそっと声をかける。

「浮竹隊長、ハッピーバースディ。さぁ、京楽隊長も!」

雨乾堂の外に出ると、綺麗にイルミネーションが灯るモミの木が置かれていた。

白哉と日番谷の姿もあった。

13番隊の中にまで、イルミネーションを施した木が、道標のように輝いていた。

「ありがとう、みんな」

13番隊の中につくと、みんなからハッピーバースディと言われ、浮竹と京楽の姿を形どったチョコの乗ったケーキがあった・

「これ、食べてもいいのか?」

「はい、隊長」

ルキアが頷く。

浮竹は、早速ケーキを食べてみた。

おいしかった。

「これは・・・・朽木家の料理長のものだろう」

「え、なんで分かるんですか」

「砂糖がちょうどいい感じなんだ。味付けもいい」

浮竹は、ケーキをぺろりと平らげてしまった。

「ああ、僕の形をしたチョコまで食べて・・・・・」

「いいじゃないか。バースディケーキなんだし」

白哉が、プレゼントを渡してきた。

わかめ大使の枕だった。

「ありがとう、白哉」

「健康祈願をかけてある。寝るときに手でなでてから寝るといい」

「なにそれ」

京楽のつっこみを、あえて無視した。

「ほら、浮竹」

日番谷のもってきたのは養命酒だった。

昨日の日番谷の誕生会でよっぱらって、べろんべろんになった浮竹への嫌味をこめたプレゼントなのに、浮竹は当たり前のことのように喜んだ。

「ありがとう、日番谷隊長」

「お、おう」

「今年で何歳か忘れたけど、毎年誕生日を祝ってもらえるのはうれしいなぁ」

昨日は日番谷のバースディパーティーが行われた。それより規模は小さめだったが、一般隊士も参加できる立食会形式のバースディパーティーが開かれた。

料理と酒を用意したのは、京楽だった。

「京楽も、毎年ありがとうな」

「いや、いいんだよ」

クリスマスも近い。

浮竹は、結局昨日の日番谷の誕生日と同じように、べろんべろんに酔っぱらってしまった。

そんな浮竹を、京楽は抱き抱えて、バースディパーティーも解散となった。

「誕生日おめでとう、十四郎。生まれてきてくれてありがとう」

「ふにゃ~~~~~~~」

浮竹は半分眠っていた。

雨乾堂にしいた布団に寝かせる。まくらは白哉からもらっらた、わかめ大使のやつにしておいた。

日番谷からもらった養命酒は、テーブルの上に置いた。

ルキアやそのほか一般隊士からもらったプレゼントが、雨乾堂の入口に置かれてあった。

「君は、本当に人気があるねぇ」

浮竹の寝顔にキスをした。

「来年は僕を祝ってね」

そう言い残して、京楽は8番隊の隊舎に戻っていくのであった。






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白哉も語尾がニャン

「白哉、これを飲んでみてくれニャン」

「浮竹?また薬を飲まされたのか?」

「そうだニャン。さぁさぁ、この酒を俺の代わりに飲んで感想を聞かせてくれ」

何か怪しいとは思ったが、白哉は素直にその酒を飲んだ。

「苦い・・・・ニャン」

自分の語尾にニャンがついて、白哉がやはりかという顔をする。

「私を仲間にいれたかったのかニャン?」

「だって俺一人じゃ恥ずかしいじゃないかニャン!白哉も語尾がニャンなんだニャン」

よく見ると、浮竹には猫耳と尻尾も生えていた。

「まさか、私まで猫耳と尻尾がニャン?」

ぴょこんと、白哉の頭に、猫耳がはえて尻尾がゆらりと揺れた。

「ニャンたることだニャン」

白哉は、頭に手をやって猫耳が生えたことを確認し、揺れる尻尾を押さえた。

「浮竹、兄は何故私にニャン」

「日番谷隊長にはもう飲ませたことがあるからなニャン」

「なので、私なのかニャン」

「そうだニャン」

「隊長!?」

ニャンニャン言い合って、猫耳と尻尾がはえた白哉を恋次が見つけて、引きずっていく。

「どこにいくのだ、恋次ニャン」

「あんたを、そんなかわいい恰好で放置なんてできません。きっと、みんなに言い寄られる。今夜は隊首室で寝て下さい」

「騒ぎになるような姿なのかニャン」

恋次はやや頬をそめながら、言う。

「めちゃくちゃかわいいです」

「そうなのか・・・・・ニャン」

去って行ってしまった白哉に、浮竹はついていった。

「なんでついてくるんですか、浮竹隊長」

「だって、一人でこの姿だと悲しいニャン」

「私にこうなる薬を飲ませたのは浮田だニャン」

「浮竹隊長、うちんところの隊長になにしてるんですか!」

「いや、一人はかなしいからなニャン。白哉なら似合うとおもったしニャン」

「だそうだ、ニャン」

「だあああもう!」

ニャンニャン言い合う二人を、6番隊の執務室に通した。

「京楽がくるかもしれないニャン」

「なぜだニャン」

「俺にいかがわしいことをしようと、この薬を飲ませたに違いないニャン」

「霊圧を消しておけニャン」

言われた通りに、霊圧を消すが遅かった。

「楽しそうなことしてるねぇ」

いつの間にか、京楽が6番隊の執務室のドアのところに立っていた。

「ふふふふ。浮竹、僕から逃げ切れるとでも?」

「このアホニャン!いっぺん死んで来いニャン」

「まぁまぁ」

そう言って、浮竹を肩に抱き上げる。

「白哉、助けてくれニャン」

白哉が、京楽の行く手を阻む。

「兄をこのまま通すわけにはいかないニャン」

「朽木隊長もかわいくなっちゃって。おい阿散井君、耳と尻尾が性感帯なんだよ。覚えておくといい」

京楽は、白哉の猫耳をふにふにして、尻尾をにぎった。

「にゃああああん」

白哉は自分が出した声に驚く、口を手で塞いだ。

「まじっすか隊長」

恋次の目がきらりと光った。

恋次と白哉ができていることを、京楽も浮竹も知っていた。

「じゃあ、おっさんたちは去るから。あとは若い者同士、ニャンニャンするなりお好きなようにどうぞ」

瞬歩で、京楽と浮竹が消える。

「隊長ーーーー!」

押し倒してくる恋次の鳩尾に拳をいれて、白哉はなんとか身を守ろうとするが、結局おいしくいいただかれてしまうのだった。

「なぁ、京楽ニャン」

「なんだい」

「後で、絶対白哉にお互い怒られるニャン」

「まぁ、その時はその時さ。さぁ、僕らもニャンニャンしようか」

「ぎゃあああああああああニャン」

結局、浮竹もおいしくいただかれてしまうのであった。


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比翼の鳥のよに

恋次が、負傷した。

流魂街の親子を守って、素早い虚に右目をやられた。

「隊長、そんな心配しなくても、移植手術でなおりますって」

白哉は、右目を欠いて、不自由そうな恋次の傍にいた。

「目の移植手術は、神経系統が複雑なため、成功確率は50%だと聞いている」

「大丈夫ですってば。たとえ失敗したとしても、俺にはまだ左目があります。京楽総隊長だって、左目だけでやってるじゃないですか」

「京楽は、大戦の戦時中であるために、移植手術を行わなかった。戦後、移植手術に望んだが、失敗したのだ」

50%の可能性に負けたのだと、白哉は悲し気な顔をした。

「だから、大丈夫ですって隊長」

「何を根拠にそんなことが言える」

「俺には、隊長がいるから。京楽隊長には、もう浮竹隊長がいない。でも、俺にはまだあんたがいる」

恋次は、抱き締めてくる白哉を抱き締め返した。

「怖いのだ。このまま、恋次が光を失ってしまうのが」

「まだ左目があるじゃないっすか」

「右目を失明したら、左目しか残らない。もしも、もう片方の目まで失えば・・・残っているのは、闇だ」

「でも・・・・元隊長の東仙は、盲目でも隊長をしてました」

「それはそうだが・・・・・」

不安げな白哉にキスをして、頭を撫でた。

「とにかく、移植手術にいってきます」

恋次は、手術室に運びこまれた。

待合室で、白哉はなんともいえない不安を抱えながら、待った。

やがて、手術が終わった。

「虎鉄隊長、容体は?」

「喜んでください。移植手術は成功です。あとは回道をかけ続けて、瞳が光を取り戻すのを待つだけです」

「そうか・・・・・・」

白哉はほっとした。

ほっとしたら、今までの疲れがどっと押し寄せてきて、移動もめんどうなので仮眠室を借りて仮眠した。

恋次は、普通の病室に移された。

そこで数日を過ごし、退院となった。

傍には白哉がいた。

まだ右目には眼帯がされてあったが、光を取り戻すのは、時間の問題だと言われた。

いつも、逢瀬の時に使う館へきていた。

「恋次、右目を見せてくれ」

白哉にそう言われて、眼帯を外す。恋次の鮮やかな髪の色と同じ紅蓮の瞳がそこにあった。

「どうだ、見えるか?」

「まだぼやけてますが、見えます」

「そうか・・・・・」

白哉は、心底ほっとした。

「抱いてもいいですか」

「好きにしろ」

今日は酒のみだった。夕飯は、朽木邸で白哉と恋次とルキアと、ルキアの婿養子にきている一護とでとった。

家族の時間を大切にする。

それが、白哉の導き出した答えだった。

恋次も、もはや家族同然であった。

伴侶なのだ。白夜の。

「ん・・・・・」

口づけられて、白哉が少し身動ぎした。

「どうしたんすか」

「なんでも、ない・・・」

白哉は、何度も恋次の紅蓮の右目に、口づける。

「こそばゆい」

「どうだ、焦点はあってきたか?」

「はい。もうはっきり見えます」

褥に押し倒された。

「あんたの姿が、はっきりと見える。しっかり刻みつけないと」

「恋次・・・愛している。お前の片目が失われなくてよかった」

「隊長・・・俺も愛してます。右目、きっと隊長のお陰ですね。隊長の祈りが通じたんだ」

白哉は、薄く微笑んだ。

「そうだと、よいのだがな・・・んっ」

死覇装で見えない場所に、キスマークを残していく恋次。

「ああっ!」

潤滑油に濡れた指が入ってきた。

そのまま前立腺を刺激されて、白哉のものは先走りの蜜を零した。

それを躊躇なく、口に含む。

「ああ!」

ねっとりと絡みついてくつ咥内に、白哉はあっという間に熱を放ってしまった。

「やっぱり薄いですね、あんたの・・・・」

それを嚥下する。

「恋次・・・こい」

もう前戯はいいのだとばかりに、白哉が求めてくる。

恋次は、己の熱を白夜のそこに宛がい、一気に貫いた。

「ひあああああ!」

白哉の黒曜石の瞳から、生理的な涙が流れた。

「あ・・・・あ・・ああっ」

ズチュズチュと中を犯してくる熱に、恋次のこと以外何も考えられなくなる。

「恋次・・・キスを・・」

恋次が、それに応える。

舌が絡まるキスを繰り返しながら、何度も白哉の中を抉り、突き上げ、かき乱した。

「あああ!」

白哉が前立腺を貫かれて、二度目の熱を放つ頃には、恋次も熱を白哉の中に放っていた。

「もう1回だけ、していいっすか」

「好きにせよ・・・・・」

舌が絡み合うキスをしながら、恋次が再び入ってくる。

「んう・・・・」

激しくはなく、緩慢な動きだった。

ゆるゆると動かれて、白哉も余裕がなくなってくる。

「あ、もういけ・・・・」

「もう少し、このままで・・・・」

白哉のなかを堪能するように、恋次が浅く前立腺をつきあげた。

「ひう・・・!」

白哉が三度目の熱を放つ頃には、恋次も二度目になる熱を、白哉の中に放っていた。

「湯殿いきましょうか・・・・・」

ふらつく白夜を支えて、湯殿までくると、白哉の中に吐きだしたものをかき出す。

「ん・・・・・・」

白哉の眉が寄った。

牽星箝(けんせいかん)を外した黒髪は、サラサラだった。

湯をまずは浴びせて、お互いの髪と体を洗う。時折、白哉は恋次の視力の戻ったばかりの、紅蓮の瞳に口づけた。

「最近のお前は怪我がおおい。注意を怠るな。庇うなら、もっとうまく庇え」

「はい・・・・おっしゃる通りです。すみません」

この前の遠征でも、仲間を庇って酷い怪我をした。

あの時の背中の傷跡は、まだ残っていた。

白哉の場合なら治すように勧めるだろうが、恋次は自分の体の傷を、勲章としている。

「このような傷を、残して・・・・・」

恋次の背中を、白哉の白く美しい指がなぞる。

恋次の体には、傷跡がたくさんあった。白哉には傷一つない。

白哉は、自分の体に傷跡が残るのを嫌う。だから、大戦のおりに負った大けがは全て4番隊で傷跡がなくなるように処置してもらった。

そうしないと、恋次が怒るのだ。

「あんたの体は、傷一つでも許せねぇ」

そういって、口づけてくる。

それにこたえながら、湯の中に入った。

「私は、お前の痛みを知らぬ。だが、お前も私の痛みを知らぬ。だからこそ、右目は失って欲しくなかった。お前が失えば、私の右目も疼くのだ」

「隊長・・・・・・」

湯の中でキスを繰り返しあっていた。

ちゃぷんと、お湯が音をたてる。

どちからが傷つけば、もう片方も傷つくのだ。

まるで、比翼の鳥のように。

恋次が右目の視力を失ったときいて、白哉の右目に痛みを感じた。

きっと、目のみえない何か糸のようなもので、お互いに繋がっているのだ。きっと、糸の色は恋次の髪や目の色と同じ、焔の色だ。

比翼の鳥は、糸を絡めあいながら羽ばたいていくのであった。





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語尾がニャン再び

「甘露水だよ。喉にいい薬入れておいたから、少し苦いかもしれないけど」

「ああ、すまない・・・・・」

肺の発作で臥せっていた浮竹に、喉にいい薬といって、語尾はニャンになる薬を入れえて、それを飲ませた。

「この苦さ、どこかで・・・ニャン」

自分口を手で抑えた。

「京楽~~~~~~~お前というやつはこりないのかニャン!」

「いやぁ、この前は半年前だったかなぁ。まぁいいじゃない。臥せっている間だけだし」

「なんだ・・・むず痒いニャン」

ぴょこんと猫耳が生えて、尻尾も生えてきた。

「京楽のあほーーーーーーーニャン」

「いやぁ、かわいいねぇ。語尾のニャンもいいけど、猫耳と尻尾もあったほうがいい」

「さわるなニャン。変なかんじだニャン」

「性感帯なのかな?」

「しらないニャン」

ふにふにと、猫耳をさわり、にぎにぎと尻尾を握られた。

「にゃああああん」

思わず出た声に、浮竹が驚く。

「やっ、変なのニャン」

「ねえ、一応発作を抑える薬いれておいたから、もう大丈夫?」

「え・・・あ、体が軽いニャン。うそのようだニャン」

「しても、いいかい?」

「だめニャン!まだ病み上がりだニャン!」

「じゃあ、明日」

そう言って、京楽は去ってしまった。

「どうしようニャン」

日付は、とっくの昔に過ぎて、朝になっていた。

すっかり元気な浮竹だったが、今の姿を他の隊士に見られたら大変なので、雨乾堂に閉じこもっていた。

ルキアが、事情を聞いて夕餉や朝餉をもってきてくれた。

「隊長、けしからんかわいさです!もう一度、私にも耳と尻尾をさわらせてください」

「朽木・・・・・なんか変なんだニャン。耳と尻尾をさわられると、背筋がぞくぞくするんだニャン」

「今もですか」

「今も少し。でも京楽に触られると、すごいんだニャン」

「やっぱり、愛し合っておられるからじゃないですか?」

「何がだい?」

「京楽隊長!こんにちわ!」

「ああ、ルキアちゃんこんにちわ。浮竹の具合はどうだい」

「はい、全くといっていいほど健康であります。昼餉に食べましたし、甘味物もおはぎを10個は食べました」

「浮竹。昨日の続き、してもいいかい?」

「いやだニャン!逃げるニャン!」

逃げ出そうとしたところを、尻尾を掴まれた。

「にゃあああああああん」

「浮竹?」

「尻尾と耳はだめなんだニャン」

「ルキアちゃん」

「はい」

「すまないけど、3時間ばかり雨乾堂には誰にも近寄らせないで」

その意味することが分かり、ルキアは顔を真っ赤にしながら雨乾堂を退出した。

「さぁ、これで僕たちは二人だよ」

「しるかニャン」

猫耳をもふられて、尻尾をにぎにぎされるだけで、甘い声が漏れた。

「にゃああああああん」

キスをされた。

「ふあ・・・・・・」

どうやら、喘ぎ声にはニャンがつかないようで。

「にゃあああ」

かわりに、にゃあにゃあと鳴いた。

布団の上に押し倒される。

そのまま死覇装に手をかけられて、尻尾をにぎにぎされながら、体全体を左手と唇が這う。

「やっ」

袴を脱がされて、花茎を握りこまれた。じゅぷじゅぷと音をたて、先走りの蜜を潤滑油代わりにしながらしごかれて、先端に爪をたてられた。

「にゃあああああ!」

「浮竹、かわいい」

浮竹はいってしまっていた。ゆらりと、ものほしそうに尻尾が揺れる。

潤滑油で濡れた指が体内に入ってくる。

「うあ、や、いや・・・・・」

「ここは?」

「にゃあっ」

前立腺をこりこりと刺激されて、浮竹は何も考えられなくなる。

ただ、キスがほしくてねだった。

「きすがほしい・・・ニャン」

「いくらでもあげる」

指を動かされながら、浮竹は京楽と舌が絡み合う深いキスをした。

「ふあ・・・あああ・・・・にゃんにゃああ」

ずっと、灼熱に引き裂かれた時、今まで一番高い声を出していた。

「にゃああああああ!!」

にゃあにゃあと啼きながら、そこは喜んで浮竹を迎え入れた。

「く、きつい・・・・一度、出すよ」

「にゃあ!」

腹の奥に、じんわとした熱が広がっていく。

「十四郎、好きだよ。愛してる」

ずちゅずちゅと音をたてて、貫かれる。

「普通は、愛してる相手に薬なんて盛らないニャン」

「いやいや。マンネリ化も防ぐ意味もあるし」

「そうだとしても・・・・・・ああああ!」

衝撃でずり上がっていく体を、京楽が尻尾を握った。

「やめ・・・ニャン・・・尻尾はだめニャン」

びくびくと、貫かれながら、尻尾を握りこまれて、体が痙攣した。

「ああああ!」

2回目の熱を放ち、浮竹はまたゆらりともの欲しそうに尻尾を揺らした。

「にゃあああ」

京楽が猫耳を甘歯噛みしてくる。

「猫耳もだめ・・・・・ニャン」

「猫化すると、大分えろいね」

「いってろニャン。今度覚えておけニャン」

「にゃんにゃんかわいくて、怒られてる気が全然しないよ」

浮竹の腹の奥まで突き上げて、京楽も二度目の熱を浮竹に注いだ。

「あ、あ、あ・・・・・・ひあああ・・・・にゃああああ」

そのまま睦みあい、何度かも分からぬ精を吐いて、浮竹はドライのオーガズムで何度かいかされた。

耳も尻尾も、元気なくしおれている。

「さっさといけニャン。お前性欲がおおせいだから、つきあうこっちの身にもなってみろニャン」

「ふふ、ごめんよ。もう終わるから」

最後の一滴まで浮竹に注ぎ込む。

「満足したかのこのあほ・・・・・ニャン」

「さて、風呂にでも入ろうか」

「いいけど、変なことはするなよニャン」

京楽は、意地が悪そうに微笑んだ。

「いやー、猫耳と猫の尻尾洗うのが楽しみだなあ」

「やっぱり一人で入るニャン」

「まぁそう言わずに」

がしっと大きな手で肩を掴まれる。そのままひょいっと、体をもちあげられた。

「着換えは用意しておいたから」

「用意周到かこのやろうニャン!」

「まぁまぁ。触られると、きもちいでしょ?」

「教えないニャン」

浮竹はぷんすか怒った。

それがまたかわいくて、京楽はでゅふふふふふと、奇妙な笑い声をあげるのであった。




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