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覚悟

更木剣八。11番隊きっての戦闘狂。

卯ノ花烈。4番隊の癒しの慈母。

互い詳しい過去など、お互い何も知りはしない。

ただ、卯ノ花烈はかつて卯ノ花八千流と名乗っており、初代護廷13隊11番隊隊長だった。

更木は、恐怖を知らない子供だった。

死体の山を築いて、卯ノ花に切りかかった。

子供と油断してたとはいえ、当時の卯ノ花に傷を負わせるだけの技量。

その時、卯ノ花は思った。

自分の後を継がせるのは、この子しかいないと-------------------。


「京楽」

「どうしたんだい、浮竹」

「本気なのか。卯ノ花隊長と更木隊長を切り合わせるなんて」

「ああ、本当だよ」

そう言う京楽の顔に、いつもある優しさがなかった。

「どちらかが死ぬかもしれないんだぞ!?」

「それでも------------これは、卯ノ花隊長が望んだことでもあるしね」

「卯ノ花隊長が・・・・」

卯ノ花は華道が好きだった。

よく、花を手入れしていじっていた。

山本総隊長の茶道にもよく顔を出していた。

「卯ノ花隊長・・・・・」

よく、熱が下がると病室を抜け出して甘味屋にいき、帰ってきたらばれてて、般若になった卯ノ花に説教をされたものだ。

卯ノ花と、特に親しい交流はなかったが、よく入院して回道をかけてくれるので、他の隊の隊長よりは仲が良かった。

「どうしてだ、卯ノ花隊長!」

「ちょっと落ち着きなよ、浮竹」

卯ノ花が死んだら、4番隊はどうなる?

ただでさえ、人でが足りないのだ。

次の侵攻で、またどれだけの死神が死ぬのかも分からない。

「止めにいっても、無駄だよ」

後ろから羽交い絞めにされて。一呼吸すると、浮竹も落ち着いた。

「少しは、冷静になった?」

「ああ・・・・・」

どうか。

どうか卯ノ花隊長、意味もなく命を散らせるな。

散らせるなら、更木を目覚めさせろ。





「はっくしょん!・・・・ああ?なんか誰かが俺の噂でもしてんのか」

「隙、ありです」

右手に、剣を突きたてられた。

それを引き抜く。

「生ぬるいんだよ!本気で俺と命のやりとりをする気はあんのか!?」

「あるに、決まっているでしょう」

更木の剣が、卯ノ花の腹を刺した。

致命傷に見えた。

けれど、卯ノ花はその傷を自分の回道で癒してしまった。

片や、血まみれでボロボロの更木。

片や、ほとんど衣服を血で汚していない、酷薄な笑みを浮かべる卯ノ花。

「その程度では、私をこえらえれませんよ?」

「ほざいてろ!」

更木の霊圧が、これでもかというほど大きくなる。

一撃だった。

更木の放った突きが、卯ノ花の胸に吸い込まれた。

「おい、この程度でくたばんじゃねぇ!俺はもっと戦っていたいんだ!」

これは、私の罪。

そして、私への罰。

こほこほと咳をして、ごぽりと血を吐いた。

もう、回道などでは補いきれない傷だ。

「あなたは、強くなる。私をこえて、さらに高みへ-----------」

「おい、死ぬな!こんなところでくたばるな!俺はあんたのことが・・・・・」

好きだった。

そう言おうとして、卯ノ花が最後の力を振り絞って更木に触れるだけのキスをした。

「最強の剣八は、今日からあなただ」

死の接吻は、酷く甘美な味がした。


「卯ノ花隊長・・・・」

消えていく霊圧を感じた。

そして、より大きくなった更木の霊圧もかんじた。

「ねぇ。もしも僕が、君と戦うとしたらどうする?」

総隊長になった京楽が、ふいにそんなことを言った。

「事情を聞いて説得する」

「剣でしか、語れないなら?」

「手合わせをする。でも、絶対に死なせない」

このあたりが、浮竹には限界だろう。

「そう。僕なら、卯ノ花隊長と同じ道を辿るだろうね」

「京楽!」

心配してくる、浮竹の頭を撫でた。

「心配しなくても、大丈夫だよ。僕らは、そんなことに絶対にならない」

浮竹には、卯ノ花の覚悟も、更木のような荒々しい強さもない。

ただ、そこに凛とさく白い花のようだった。

「さて、一護君が戻ってくるまで、敵が侵攻してこないことを祈るのみだね」

今、一護は零番隊の霊王が住まうとされている場所にいる。

彼がどれだけ強くなるかで、今後の尸魂界の運命は大きく左右される。

破滅か、存続か--------------------。

戦いの火ぶたは、切っておろされようとしていた。

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卯ノ花と更木

「卍解・・・・・皆尽」

「そうこなくっちゃな!切り甲斐があるってもんだぜ」

ああ・・・・・あなたは死線くぐる度に強くなる。それこそがあなたが科した過ち。そして私の罪--------------。

切り合いを続けた。

私の跡を継ぐものは、この者しかいない----------------。

あなたは弱い。私は強い。

でも、それを捻じ曲げて、あなたは遥かなる高みへいく・・・・。

何度更木を切っても、更木には恐怖がないのか、死を賭けた切り合いを楽しんでいた。

「まだまだだぜ!」

キンキンカキン。

剣がこすれ合う音が、無闇に広がった。

やがて、お互いに疲弊してきた。更木は、特別な一撃を放った。

胸に、ザシュリと更木の剣がくいこんだ。

「おい・・・・あんた、死ぬのかよ」

応えはなかった。

「死ぬな!!」

更木は吠えた。

卯ノ花は満足そうな顔をしていた。

役目を果たして死ねることのなんと幸福であることか。

もう、卯ノ花は立ち上がることもできないでいた。

「おい、その程度の傷回道で癒せ!死ぬな!あんたとはもっと戦っていたいんだ!」

「ふふ・・・何を、泣きそうな顔をしているのですか。私は、これで本望です。やっと、剣八の名をあなたにわたせる・・・・・」

「卯ノ花!」

「ふふ・・・・私は、なんと幸福なこと・・・・・か・・・・」

瞳孔が開ききる。

だらんと力をなくした体。

少しずつ冷たくなっていく。

「うおおおおおおおおお!」

更木は吠えた。

そして、卯ノ花の体を抱き上げて、無闇からでてきた。

「更木隊長、卯ノ花隊長は!」

待っていた浮竹に、卯ノ花を渡す。

「死んだ。死んだら、戦うことも楽しめなくなるのに-------------死にやがたった。俺のために」

「そうか・・・京楽、葬儀の用意を」

「うん」

浮竹と京楽は、卯ノ花を遺体大事そうに抱きあげて、戻っていく。

「なぁ。あんたは、これで本当に本望だったのか?」

青空に話しかけていた。

「俺は・・・本気で、あんたのことが好きだったんだぜ?」

答えはもうどこにもない。

愛する者を手にかける。なんと残酷で淫靡な味のすることか。

その日の夜には、殉職した卯ノ花の葬儀が行われた。

「隊長!卯ノ花隊長!」

手紙で思いを伝えられたとはいえ、卯ノ花の死を勇音はすんなり受け入れないでいた。

葬儀に立ち会った者たちは少なかった。

更木の姿もなかった。

ただ、菊の花を添えてくれと、浮竹に渡した。

その菊の花を、棺の中央にいれた。

なんと安らかな死に顔であるだろうか。血のあとはぬぐいとられ、まっさらな死覇装と隊長羽織を着せられていた。

「卯ノ花隊長-----------どうか安らかに」

我慢できなくなって、浮竹は京楽の隣に並んだ。

「ねえ、卯ノ花隊隊長。満足でしょ?更木剣八は、始めてて斬魄刀を持った。君のお陰だよ」

更木を高みにのぼらせるためとはいえ、卯ノ花の死は大きかった。

4番隊の隊長が死ぬ----------それだけ、治癒に余計に時間がかかる。

「卯ノ花隊長、どうか安らかに」

「おやすみ、卯ノ花隊長」

浮竹と京楽は、棺を閉じて火をつけた。

ぱちぱちと、火が爆ぜる。

空高く昇っていく煙は、山本元柳斎重國の時と同じように、雲一つない晴天へと還っていく。

「卯ノ花隊長!」

勇音は、何時までいつまでも泣いていた。

やがて、棺が灰になる。

遺骨を拾う。

一緒に入れて置いた斬魄刀は、灰にはならなかった。

「仕方ない。斬魄刀は、墓にいれようか」

京楽の言葉に、皆頷いた。


大戦が終わり、仮のものではなくきっちりと建てられた卯ノ花の墓の前に、京楽は来ていた。

「満足かい、卯ノ花隊長。更木隊長は強くなり、敵を葬ったよ」

山本元柳斎重國が死に、卯ノ花烈が死に・・・・・愛しい、浮竹十四郎も死んだ。

「今回の大戦は、尸魂界の歴史の中で一番厳しいものだったね」

卯ノ花の墓の前に、菊を添えた。

「でも、悲しくないでしょう、卯ノ花隊長。そっちには、山じいの浮竹もいる。案外、楽しそうに過ごしたりして」

人が死にゆくと尸魂界に来る。

死神が死ぬと、その膨大な霊圧は霊子の流れに還る。

「浮竹ー!寂しくなんて、ないよね!?」

浮竹十四郎の葬儀は終わったが、墓はまだだった。雨乾堂を取り壊して、そこに墓を建ててやろうと思っていた。

聞こえるはずもない、浮竹に話しかける。

「僕は元気でやってるから、君も元気でね」

卯ノ花の墓石に、酒を注いだ。

今は、死者を尊ぶ真似もできない。死神の実に半部以上が死んだ。瀞霊廷は焦土と化した。

「君たちも、天から見守っていてよ。居残った、僕らのあがきを-----------」

例え、這いずり周りながらでも生きていく。

それが人という生き物。

潔く散った3人には悪いが、これ以上隊長副隊長を死なせるわけにはいかない。

「いうか僕もそっちにいくから、3人仲良く待っててね」

空を見上げる。

雲一つない、青空だった。



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9話補完小説

「勘弁してよ、山じい・・・・・」

山本元柳斎重國の遺言により、京楽春水が総隊長となった。

「大丈夫か、京楽」

「あ、うん・・・昨日の今日で、ちょっと寝れてないだけだよ」

「それにしても、先生が京楽を総隊長に任命する遺言を書いていたなんて・・・・」

「ほんとに、冗談にしてほしいよね。でも、決まりだ。総隊長には、今から僕がなる」

「がんばれよ、京楽!後は無理はするな!」

恋人を抱き締めて、口づけた。

京楽の右目は、。光をなくした。耳も欠けた。

今は、黒い眼帯に覆われている。


「卯ノ花隊長、本当にいくのか?」

「どうしたのですか、浮竹隊長。そんな蒼い顔をして」

「だって、更木隊長と切り合いってことは・・・・・・」

「ええ。どちらかが死ぬでしょうね。多分私が」

浮竹は、卯ノ花を抱き締めた。

「浮竹隊長?」

「あなたには世話になった。先にいくとしても、きっと俺も後に続くから」

「ええ。寂しくはありません。すでに山本元柳斎重國がいるのですから」


京楽は、四十六室にいき、卯ノ花と更木の切り合いを承知させた。

「ほんとに、四十六室は、自分の保身だけでいやになるね・・・・・」

浮竹のところに戻ってくると、その膝枕に頭を乗せた。

「少し眠るよ・・・・」

「ああ、おやすみ・・・・・・」

卯ノ花は、死を覚悟して罪人を閉じ込める空間の無闇に、更木と一緒に消えていった。

「卯ノ花隊長-----------------」

護廷13隊のために死なば本望。

命を散らせてまで、更木に強くなってほしいのだ。

山本元柳斎重國の次は卯の花烈。きっと、その次は自分。

そんな予感を抱きながら、深い眠りについてしまった京楽を布団の上に寝かせて、その隣で寝転んだ。

「山本元柳斎重國、卯ノ花烈、そして浮竹十四郎--------------」

死者と死にゆく者へ、自分の名を並べてみる。

なんとも、一番印象が薄い。

山本元柳斎重國は総隊長、卯ノ花烈は卯ノ花八千流と名乗っていた、初代剣八。

その中に自分が並んだとしても、色あせてしまうなと思いながら、京楽の眼帯に手をかける。

そっと眼帯をずらして、摘出した眼球のかわりに入れられていた義眼に、キスをした。

「忙しくなるな・・・・・」

卯ノ花の、葬儀をしなければならない。

まだ、今は生きているが、死ぬのも時間の問題だ。

「死ぬのが怖くないんだな、卯ノ花隊長---------------」

自分は恐い。

死にたくないと思う。

無闇に去り際の。卯ノ花のことを思い出す。

死にに行くにしては、楽しそう顔をしていた、久し振りに、自分の本性を現せるのだ。死をかけた、命をかけた切り合いが楽しくて仕方ないのだ。

さすが、初代剣八といったところか。

「俺も、少し眠るか・・・・・・」

起きた頃には、卯ノ花の遺体が棺に入れられるだろう。

山本元柳斎重國のように、白い百合の花で満たしてやろう。そう思った。


----------------------------------

キンキンカキン。

斬魄刀がぶつかり合う。

「今日は随分饒舌なのですね。私は、寡黙なあなたのほうが好きです」

「ぬかせ!」

何度、剣を合わせただろう。

「けっ、こんなもんかよ!」

更木が、卯ノ花の剣を叩き折ろうとした。

けれど、その剣はびくともしない。

「くそっ・・・・・俺は、あんたに憧れてた」

「剣を交じり合わせての戯言は聞きません」

「あんたが・・・・あんたが、俺に恐怖をくれた。暗闇だった俺の空間に、切ることで生きがいができた」

卯ノ花の背中を切ろうろした・

「甘い!」

卯ノ花の剣が、それを制する。

「卯ノ花八千流・・・・あんたのことが、好きだった。護廷13隊の初代11番隊隊長にして、最強の剣八!」

ザシュ。

いくつもの傷が、更木を血まみれにする。

「俺は、あんたが好きだ」

「戯言を・・・・・」

剣で右肩を貫かれながら、卯ノ花を抱き締めた。

「ああ、一度でいいからあんたを抱きたかったなぁ」

「更木剣八・・・・・あなたは弱い。けれど、死線を潜り抜く度に強くなる。あなたの強さが、今の尸魂界には必要なのです」

唇を重ねていた。

血の味がした。

「何を・・・・・」

「尸魂界きっての大罪人だ、俺もあんたも。護廷13隊の隊長であるということがなければ」

「その程度のこと、知っています」

「続けようじゃねぇか。殺し合いを!」

「望むところです!」

ああ---------------。

私は、この男に殺される--------------。

その味の、なんと甘美なことか。

「死を覚悟なさい!」

それは、私だ。

私が、死を覚悟しなければいけない。

更木剣八。

私の---------------卯ノ花八千流の死体を踏み台にして、その強さを高みの先へと伸ばせ。

ザシュ。

「あ・・・・・・」

ぽたりと、卯ノ花の口から血が溢れた。

「おい、まだ終わりじゃないだろうな!」

「なんのために、私が回道を学んだと思っているのです」

回道で、血止めだけして、また更木と切り結びあった。

ああ。

この浴びせられる斬撃の痺れは、とても甘い。

死の香がする----------------。


卯ノ花と、更木は血を流し、傷だらけになりなあがら、一心不乱で切り結びあった。

「私は、卯ノ花八千流。初代剣八にして、初代護廷13隊11番隊長」

にっと、笑った。

残酷な笑みだった。

私の願いに適わぬ程度なら、いっそ殺してしまおう。

どうかどうか。

私を踏み越えて、高みへと昇ってくれ。

相反する感情を抱きながら、二人は切り結び合うのだった。



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翡翠に溶ける 南国の島

現世に2泊3日の旅行にやってきた。

そこは亜熱帯地方で、薄着できてよかったと浮竹も京楽も思った。

海はとても綺麗で、珊瑚礁が広がっていた。

山じいから、泳ぐこともできると言われていたので、水着を用意していた。

二人とも、夢中になって海の中に潜った。

綺麗な色の魚が、たくさん泳いでいた。サメの姿もあったが、霊圧をぶうけると何処かへ行ってしまった。

その日は、1日中海の中にいた。

こんな綺麗な海に潜ることなど、きっとこれから千年も近い人生を歩む中でもないだろう。

ふと、京楽が何かを見つけて拾い上げる。

天然の真珠だった。

二人して、海からあがった。

「これ拾ったんだ。あげる」

「こんな珍しいもの、いいのか?」

まだ、真珠の養殖による産出はない。真珠はかなり高価な代物だった。海のない尸魂界では、幸せの証として、上流貴族の姫なんかが、髪飾りにつけたりしている。ネックレスになるほど産出がないので、髪飾り簪の他に、指輪が流行っていた。

「元がただだからね」

「それはそうだが、こんな高価なもの・・・・・」

「いいから、もらっておいてよ。ああ、髪飾りにでもしようか。一度よこして」

京楽に渡すと、今日浮竹にあげる予定だった髪飾りの一部に、天然真珠を埋め込んだ。

「これ、今日の記念に」

そういって渡されたのは、翡翠の髪飾りだった。中央に、さっきまであった天然真珠が光っていた。

「こんな高そうなもの・・・・・」

「いらないなんて言わないでね。受け取ってくれないなら、海に放り投げる」

「分かった、受け取るから!」

本当に放り投げそうで、浮竹はその髪飾りを受け取った。

肩より長くなってしまった髪を器用に結い上げて、髪飾りで留められた。

その日は、館で湯浴みをして食事をしてから、外で寝袋を用いて寝た。

満天の星が綺麗だった。

「星が掴めそうだ」

「空ごと落っこちてきそうだね」

何十万年、何百万年、何千万年と輝く星々。

それを見れるだけでも、現世にきた甲斐があったというもの。

次の日は、二人で釣りをした。

京楽はよくヒットして突き上げたが、浮竹は全然だった。

「かかった!」

やっと何かが釣れたと思ったたら、海藻だった。

「海藻か・・・・・・」

浮竹は、水着に着替えて海に潜りだした。

「どうしたの」

「今日の食糧は、俺たちでとらなきゃいけないんだろう。貝をとってくる」

食べられそうな貝を、潜っては浜辺に並べた。

「南国だけあって、貝も綺麗だねぇ。焼いたりした後の貝がらは、お土産に持って帰ろうか」

「それ、いいな。浜辺にも綺麗な貝殻が落ちていたんだ。もう十分、今日の夕食の分はとれたから、お土産の貝殻を拾ってくる」

浮竹は私服のシャツとハーフパンツに着替えて、浜辺を散策しだした。

京楽は釣りの続きだ。鯛が3匹とれた。十分だろうと思いつつも、また釣り竿を垂らす。

ヒットしたのは、南国らしい艶やかな魚だった。

生け簀に放り込んで、京楽は浮竹の後を追った。

浮竹は、浜辺を歩きながら海のが引いては押し寄せる様を楽しんでいた。

「そんなに夢中になって大丈夫?熱出さない?」

隣に、京楽がやってきた。

「こんな生き物がいた」

ヤドカリを見せた。

「うん、食べれそうだね」

「だめだ、かわいいから食べない」

「全く、君って子は・・・かわいいのは、浮竹、君だよ」

拾っていた貝殻が落ちる。

抱き寄せられていた、

「好きだよ、浮竹」

「俺も好きだ、京楽」

唇が重なった。

深い口づけを何度も繰り返す。

ざぁんざぁんと、おしては引いていく波の音だけがした。

散らばった貝殻を拾い集める。

「クラスの女子にはこれでいいとして、男子にはどうしよう?同じ貝殻でいいかな?」

「貝殻でいいんじゃない?珍しいものだから、きっと欲しがるよ」

貝殻は、巻貝がほとんどだった。

浮竹の爪の色や唇の色と同じ、桜色の貝殻が目立った。

その日の夕食は、自分たちがとった魚や貝をいれた鍋だった。館には使用人はいたが、1日分しか食事は用意されておらず、自分たちで調達するしかなかった。

鯛から南国の適当な魚、貝をぶちこんだ鍋に、味噌をいれる。

思っていた以上に、美味しかった。

その日の夜は、ベッドが2つ用意されていたが、1つのベッドで眠った。

「浮竹、起きてる?」

「ああ・・・・・」

「楽しかった?」

「ああ。海にきたのも、潜ったのも初めてだ。あんなに綺麗なものだとは思わなかった」

「そうだね。僕も初めてで、書物で読んだことはあるけど、目の当たりにした初めてだよ。きっと、この日を一生忘れない」

「俺もだ」

唇が重なった。

お互い、付き合っている。

肉体関係も少しだがある。

でも、浮竹は恐くて次の段階に進めないでいる。京楽は、何年でも待つつもりだった。

「京楽は、辛くいないのか?」

「何が」

「その、俺を抱けなくて」

京楽はにまーっとした顔になった。

「凄く凄く辛いよ。抱かせてくれるの?」

「ばか、俺はそんな安い男じゃない!」

「そうですよねー。でも、いつか君を抱きたい」

「男が男を抱くんだぞ?平気なのか?」

「何、女の子を抱くのとあんまり変わらないよ。アナルセックスなら、女の子で経験済みだし」

もろな台詞に、浮竹が赤くなる。

「お前の凶暴なまでにでかいそれが、あんな場所に入りきるとは思わない・・・・」

「試してみる?」

「まだ駄目だ」

「そうですよねー。でも、いつか僕は君を抱くよ」

ドクンと、鼓動が高鳴った。

「すごい、ドキドキしてる・・・・・」

浮竹の胸に、京楽が手を当てる。

「僕もドキドキいってるよ・・・・・・」

浮竹の手を、京楽は自分の心臓のある位置にもってきた。

「すごい。京楽もどきどきいってる」

「うん。僕も緊張してる。君を抱くと思うだけで」

「京楽・・・・」

「浮竹、大好きだよ。かわいい」

「ふあっ・・・」

何度も唇を重ねた。

その日は、浮竹を胸の中に抱くように、丸くなって眠った。

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翡翠に溶ける いつか桜の木の下で

2回生になった。

鬼道の訓練は、さらに種類が増えて広がった。

瞬歩の訓練も始まった。

剣の授業は、木刀で切り結びあうのだが、浮竹と京楽の域についていける者は、教師にもいなかった。だから、剣の稽古になると、浮竹と京楽はいつもペアを組まされた。

「何か物足りないな・・・・先生に、稽古をつけてもらおうかな」

「やめときなよ浮竹。流刃若火で尻に火をつけられるよ!」

「それは京楽だけだろう。この前、先生に稽古の相手をしてもらったとき、痣は少しできたが、尻に火をつけられたことなど、一度もないぞ」

「くそ、あの山じいめ!僕は幼い頃から山じいを知っているけど、1年に3回は、尻に火をつけられるよ」

浮竹が笑った。

強姦されかけた頃は、笑顔が見れなかったけれど、京楽と交際をスタートし、順調だった。

「明日は現世で、虚退治にいく!チームでの行動になる。くれぐれも、一人での行動は慎むように!」

力を均等にするために、浮竹と京楽は違うチームになった。

翌日。

現世に続く穿界門が開かれる。

「僕、現世ってはじめてなんだよね。ちょっとドキドキする」

「俺も初めてだ」

断界をぬけて、現世の空に立つ。

少し離れた場所に、海があった。尸魂界に海はないので、みんな虚退治を忘れてはしゃぎだす。

「この餌で虚を誘い出す。残らず処理するように!」

教師が、虚をおびき寄せる餌を撒いた。

じわり。

闇から滲み出すように、虚が数匹出現する。1体1体、そえぞれのチームが撃破していく。浮竹と京楽はそれぞれサポートに回った。

力がありすぎて、ただの虚如きでは訓練にならないのだ。

いずれ、護廷13隊入りをして人の上に立つだろう。そう考えて、教師たちも文句はいわなかった。

じわり、じわり。

「少し虚の数が多いんじゃないですか、先生」

「ばかな・・・・・この撒き餌では、10体が限度のはず・・・・・」

すでに30体はでてきており、浮竹と京楽も互いのチームと連携をとりながら、虚を切りすてていく。

じわり。

「こあああああああああ!」

すごい音がした。

黒腔(ガルガンタ)が開いた。

「大虚(メノスグランデ)だ!至急、尸魂界に応援を!」

「穿界門をあける!早く逃げろ・・・・・おい、浮竹、京楽!」

「これくらじゃなきゃ、力試しにならないからね!」

「そうだな!」

互いに斬魄刀を始解させる。浮竹は大虚がはなった虚閃(セロ)を右の刃で吸収し、左の刃で鋭く調整して大虚に当てて、巨大な穴をあけた。

「ごおおおおおおおおおお!!!!」

大虚が吠える。

それに京楽が、花天狂骨で切りつけた。ざんっと、袈裟懸けに巨大な体を切り裂く。

大虚は、霊子の塵へと還っていった。

「すごい・・・・まだ2回生なのに・・・・・」

「流石は山本総隊長の愛弟子・・・・・」

教師たちが舌を巻いた。

他に出現した虚も全部処分して、浮竹と京楽は、開けられたままの穿界門をくぐり、尸魂界へと戻った。

緊急でかけつけた死神たちは、何もない現世で頭をひねっていた。

今回のことは、山本早退著の耳に入った。

「そうか。春水と十四郎は、まだ2回生になったばかりでありながら、大虚を倒すほどに成長しよかったか・・・・」

山本総隊長は、自分のことのように嬉しげだった。

「それにしても、あの悪戯小僧の小童の春水がちゃんと学院に来ているのも・・・十四郎のお陰かもしれんな」

その日、二人は山本総隊長に呼び出された。

「ねえ、僕たち怒られるようなことした?」

「あの大虚を倒して、勝手に行動したのがまずかったのだろうか・・・・」

ひそひそと話合う二人に、山本総隊長が向き合う。

「此度の大虚退治、見事であった。報告を受けた。そなたたちがいなければ、死人や怪我人が出たかもしれんと」

「山じい、怒ってるんじゃないの?」

「何故に怒る必要がある?」

「だって僕ら、無断で行動したんだよ」

「その末の大虚退治であろう。大虚が訓練で出るなど、今までに例がない。お前たちがいてくれてよかったと思っておるのじゃ」

「それならよかった・・・・・」

「この度の働きに感謝して、京楽春水と浮竹十四郎に、2日間の現世への旅行を許可するものとする!」

「え、ほんとにいいの、山じい」

「尸魂界にはない海のとある孤島に、館が建っておる。人を遣わせて世話をするように頼んだ。明日から2日間、存分に、現世の海を楽しんでこい」

「やったー!釣りするぞーー!」

「先生、ありがとうございます」

その日は、そのまま解散となった。

「ねぇ、浮竹、起きてる?」

「なんだ、京楽」

「明日が楽しみ過ぎて寝れない」

浮竹は起き出して、京楽のベッドにもぐりこんだ。

「浮竹?」

「その、すっきりさせれば眠れるか?」

「あ、うん!」

浮竹の手が、ぱじゃまから下着に入ってくる。ゆるゆると扱われて、すぐに反応した。

「お前のはでかいな・・・・」

ぐちゃぐちゃと音をたててしごい、鈴口に爪を立てると、京楽はあっけなくいってしまった。

「ほら、浮竹も・・・」

「俺はいい」

「まぁ、そう言わずに」

パジャマと下着の中に手が入ってくる。

「んあっ・・ああああ!」

「君の声いいね・・・聞いてるだけでいっちゃいそう」

ゆっくりとなでられて、浮竹のそこは先走りの蜜を垂らした。

「もうこんなに濡れてる・・・・・・」

「あ、京楽・・・・・」

「好きだよ、十四郎」

名を呼ばれて、びくんと浮竹の体がはねた。

「ひああああ!」

一度いったそこを、さらにすりあげて、すぐに二度目にいかせることに成功した。

「はぁはぁ・・・・・・」

「下着、汚れちゃったね。湯浴みするには遅いから、濡れたタオルで体をふいて、下着だけ交換しようか」

「ん・・・・・」

まだ余韻に浸っている浮竹にキスをする、

二人は、下着だけ変えて、濡れたタオルで体をふきあって、パジャマをまたきて、ベッドに横になった。

ぬいたせいで、適度な疲労を感じて、すぐに眠りの海に落ちていった。


朝になって、浮竹が朱くなっていた。

「俺は・・・いくら寝れないからと、自分からあのような行為を・・・・・」

「浮竹、後悔してるの?」

「少し・・・・」

「でも、僕は浮竹から求めてくれてすっごく嬉しかったよ。浮竹も気持ちよくなったでしょ?」

「癖になりそうで、嫌なんだ」

「別に、抜くくらい誰でもやってるよ。ただ、付き合っている好きな子の手だと、すごくきもちいい」

浮竹はまた真っ赤になった。

「でもこの前の抜いたばかりだし、現世の海に泊まる時はキスくらいで終わらせようか」

その言葉に安堵する浮竹。

「浮竹はかわいいね」

「普通だ」

「いや、かわいいよ。見た目もだけど、中身もね。そうだ、いつか桜の木の下で想いを伝えあおう。きっと、その時にはもう肉体関係はあるだろうけど」

浮竹は、また真っ赤になった。

「桜の木の下で------------------いつか、お前に全てを伝える」

それは確認作業になるだろう。何せ二人は、もう正式に交際をしているのだ。少しだが、肉体関係にもなってきている。


あの、雨の散るような桜の木の下で。

そう思うだけで、軽い眩暈をおぼえた。

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翡翠に溶ける 交際のスタート

年が明けた。

ちらちら降る雪が、冷たかった。

傘をもっていなかった浮竹に、京楽が傘を差しだす。

二人並んで、一つの傘で学院に登校した。

入学した日に、自分の斬魄刀になる元の刀を渡される。それを在学中に始解させて、死神になった暁には自分の斬魄刀として授与される。

浮竹と京楽の斬魄刀は、二人ともすでに始解できた。

名を、それぞれ双魚理と花天狂骨といった。

山本総隊長が我が子のように可愛がるのも分かるような、成長ぶりだった。鬼道の腕もいい。

特に、竹刀を使った剣の腕は、二人は学院の中でもトップクラスだ。上級生でも、ここまで戦える者はいないだろう。

今ある真央霊術院なら、スキップ制度で3回生になっていそうだったが、当時の死神統学院にはスキップ制度がなかったため、二人は6回生まできちんと出席し、卒業する必要があった。

浮竹は、体が弱く肺病を患っているために、よく学院を休んだ。出席日数を確保するために、本来なら休みの土曜や夏季休暇、年末年始の休みに補習を受けた。

未来ある浮竹を、留年させまいと、教師たちも頑張っていた。

「どうじゃ、春水。十四郎は」

山じいが、ある日補習を受けに学院に残った浮竹の付き合うために、学院で待っていた京楽に声をかけた。

「んー。病弱で休むこともあるけど、補習受けたりして頑張ってるよ。補習を受けなくても、出席日数は足りると思うんだけど、同じことが習えなかったって必死さ」

「ふむ。春水、今後も十四郎を支えてやってくれ」

「分かってるよ」

その日は、夕暮れまで浮竹は補習を受けていた。

時間が時間なので、そのまま食堂で夕食をとる。

次の日、浮竹は呼び出された。相手は6回生の男で、護廷13隊入りが決まっていた。

浮竹の霊圧がすごく乱れていたのが気になって、呼び出されたという屋上までいくと、院生の服をぼろぼろにされて、組み敷かれて涙を零している浮竹を見つけた。

「京楽!」

「貴様ああああああ!」

京楽は、殴りかかった。でも、相手はは6回生。花天狂骨を抜くと、6回生の男も斬魄刀を抜いた。

「かわいい浮竹ちゃんは、俺がもらってやるよ」

一撃だった。

風が吹いたのかと思った。

京楽は、6回生の斬魄刀を折り、その体に峰内を食らわせていた。

「こんな・・・・1年坊主如きに・・・・・・」

どすんと、巨大が床に沈む。

「浮竹、大丈夫!?」

「あ、ああ・・・未遂、だったから・・・・・」

肌も露わな院生の服が毒だった。

医務室から毛布をかりてきて、一度寮に戻ると新しい院生の服に着替えさせた。

カタカタとずっと震えていた。

京楽が抱き締めると、震えは収まった。

「今日はもう無理だ。休みなさい」

「分かった・・・・」

「僕は、山じいのところに行ってくる」

山じいに、6回生の男が浮竹を強姦しようとしたことを話すと、山じいは凄く怒って、その生徒を停学2カ月と護廷13隊入りを取り消した。

山じいの処分に、京楽も納得する。

本当なら、退学処分にして欲しかったが、護廷13隊入りを白紙にされたのだ。十分であろう。

寮に帰ると、浮竹が泣いていた。

「どうしたの!」

「こんな自分が情けなくて・・・こんな見た目のせいで・・・・」

「浮竹は何も悪くないよ」

「でも!言い寄ってくる男が後を絶たない」

「それ、本当?」

京楽は怒っていた。浮竹にではなく、浮竹に言い寄る男の存在に。

「お前が一緒にいるときは大丈夫なんだ・・・でも、補習の時とかの休み時間に・・・」

「いっそ、僕たち付き合っていることにしない?」

「でも、それじゃあ京楽に迷惑が!」

「女遊びも、君の存在を忘れるためにしていたことだし、未練なんてないよ。好きだよ、浮竹」

面と向かって、真剣な表情で告白されたのは始めてかもしれない。

「俺は、そういう目でまだお前を見れない。でも、俺も好きだ、京楽。お前は優しい・・・・」

その日から、浮竹と京楽は正式に交際をスタートし、その件は山じいのも耳にも入り、呼び出された。

「何故、呼び出されたか分かっておるの?」

「はい、先生」

「分かってるよ、山じい」

「儂はお前たちに仲のよい友人でいてほしかったのじゃ」

「もう遅いよ」

「先生、すみません」

「謝るということは、噂は本当なのじゃな?春水、十四郎を幸せにできるか?」

「できるよ。僕に不可能はない」

「小童が・・・・まぁよい、十四郎ことを頼んだぞ、春水」

「山じい・・・・」

「先生・・・・ありがとうございました!」

学院内で、浮竹と京楽ができていると噂になっていた。けれど、友人たちは祝福してくれて、気味悪がる者はいなかった。それがせめてもの救いか。

それから、浮竹に言い寄ってくる男はいなくなった。京楽は相変わらずもてて、ラブレターをもらったりしていたが、前のようにいいよってくる女子に優しくすることがなくなったので、次第に言い寄ってくる女生徒もいなくなった。

付き合いはじめて1か月が経つ頃。

「ねぇ。僕らももう一歩歩み寄ってみようか」

「何をだ」

「体の関係」

「俺は・・・・・」

「こっちおいで?」

京楽のほうに行くと、抱き締められて、舌が絡まるキスをされた。

「ふあ・・・・・・んんんん!?」

京楽の手が、袴の中に入り、やんわりと浮竹の花茎を握りしめ、扱いだす。

「やあああああ」

「君の手は、俺のをお願い」

硬くなった京楽のものに、手が触れ。

与えられる刺激に夢中になりそうになりながら、京楽のものをしごいた。

「君、ほんとに始めて?上手いね・・・・」

「やああん、あああ!」

浮竹は、京楽の手の中に欲望を吐きだしていた。

ほぼ同時に、京楽も浮竹の手で射精した。

「あーあ。シーツと服が汚れちゃったね。一緒に湯浴みしようか。変なことはもうしないから」

「本当だな?」

浮竹は、いったばかりで呼吸が乱れていた。

潤んだ視線で見つめてくる。

「その、風呂の中で一人で処理するかもしれないけど。君があまりに色っぽくてかわいいから」

「俺のせいかのか?じゃあ、俺が責任をとる」

結局、湯浴みの途中で浮竹の手で2回抜いてもらった。たまっていたので、まだいけそうだったが。

お礼にと、少し嫌がる浮竹をいかせた。

性欲というものに淡泊な浮竹は、衝撃でぼーとなった。京楽が体と髪を洗ってあげた。

「あ・・・・」

まだいっている余韻の体をふいてあげると、浮竹はのろのろとパジャマを着た。

髪をふいて、かわかしてあげた。

「どう?気持ちよかった?誰かの手でいかされるなんてはじめてでしょ?」

「きもちよかった・・・・世界が真っ白になった」

「僕は女の子と付き合ったことあるから慣れてるけど、君はふだんどうしていたの?自分で抜いていたの?」

恥ずかしそうに、浮竹は言う。

「エロ本見て抜いてた・・・・」

浮竹もお年頃なのだ。

二人は、大人の階段を一歩昇ってしまった。


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翡翠に溶ける 大きな発作

1回生の冬になった。

寮の室内にいた。

寒い空気を吸ったのがいけなかったのか、浮竹は久しぶりの肺の発作で血を吐いた。

それまで、影で発作を起こして自分で鎮静剤を打ち、薬を飲んで大人しくしていたので、京楽の前での発作は初めてだった。

影で発作を起こしていた時は、吐血は少しだった。

でも今回の発作は酷く、手の隙間からぼたぼたちと吐いた血を滴らせていた。

「浮竹!」

ひゅっと、呼吸が止まる。

「浮竹!」

「ごほっごほっごほっ・・・・・京楽、服が汚れる・・・」

「そんなことどうでもいいから!今医務室に連れていくから!」

浮竹を横抱きにして、学院に走った。

まだ瞬歩を1回生のため学んでいないのが、もどかしかった。

「浮竹、しっかりして・・・死なないで!」

浮竹は、意識を失っていた。

医務室にいくと、4番隊の隊士が保険医だった。

「血を吐いたんだね?」

「はい」

「山本総隊長から聞いている。肺の病の子がいると。とりあえず、回道をかけよう」

回道をかけられていくうちに、青白かった浮竹の頬に赤みがさしてきた。

「とりあえず、これで大丈夫だろう。鎮静剤はあるかい?」

「あ、はい」

念のため、浮竹の薬箱をもってきていた。

保険医は、慣れた手つきで浮竹の手をアルコール消毒し、鎮静剤を打った。

「これでもう大丈夫。あとは寝かせて、体力が回復するのを待とう。僕も付き合うから、この子を寮の自室へ戻そう」

担架が用意された。

浮竹の体に負担をかけないよう、運んでいく。

「じゃあ、僕はこれで」

「ありがとうございました!」

保険医に礼を言って、眠ったままの浮竹の頬に手を当てる。

暖かかった。

「君が肺病を患っているのを、失念していたよ」

きっと、今までも発作があっても隠してきたんだろう。

京楽は、浮竹の血の付いた院生の服からパジャマに着替えてしまった。そして、眠っている浮竹の血で濡れた院生の服を脱がして、パジャマを着せた。

同じ男とは思えない、華奢で色白な体だった。細い。

抱き寄せると、いつも浮竹からする甘い花の香がした。

それから1週間、浮竹が目覚めることはなかった。あまりにも長いので、点滴が用意された。

4番隊の隊長だという、卯ノ花という優しそうな女性に診てもらったが、久しぶりの大きな発作で体が疲弊していて、今は休養のために眠っているだけだと言われた。

「浮竹・・・・早く、起きて?」

浮竹のいない学院はつまらなかった。

とうとうさぼりだし、浮竹の傍にいた。

「ん・・・・・・」

ゆっくりと、浮竹が瞼をあける。

「浮竹、大丈夫!?」

「腹が、減った・・・」

実に昏睡状態から目覚めるまで、10日を要した。

寝ている間に体をふいてあげたり、髪を洗ってあげたりしたけど、完璧ではない。

「気持ち悪いので、湯浴みしてくる・・・・・」

そういって、ふらつきながら湯殿に消えてしまった。

時間が長いので、大丈夫かと様子を見に行けば、髪を洗っている浮竹を見てしまった。

「なっ!」

浮竹は裸だった。

「ご、ごめん!あんまり長いから、風呂場で倒れているんじゃないかって」

浮竹の裸体を見たのは初めてだった。

点滴だけだったせいで、肋骨が浮きだしそうなくらいにまで、元々細い体から肉が削げ落ちていた。

風呂あがりでさっぱりした浮竹は、まずはオレンジジュースを飲んだ。

体が糖分を欲しているせいか、もうすぐ目覚めるだろうと用意していたおはぎをぺろりと食べてしまった。

「京楽、心配をかけた・・・そのすまないが、京楽家の料理人の飯が食いたい」

「うん、全然いいよ」

料理人を呼んで、簡単なキッチンのついている寮で調理してもらった。

カニ鍋だった。

二人分用意されてあった。

「病み上がりでカニとか無理?」

「いや、大丈夫だ。お腹がすいてすいて・・・でも、食堂の食事では足りなさそうだったから」

カニを、2匹分では足りないかと、3匹分いれて、他の海鮮物と一緒に野菜もいれた。うどんやもちも入れた。

食べ終わると、雑炊にした。、

よほど腹が減っていたのだろう。いつもの2倍は食べた。

「ふう・・・・満足だ。ありがとう、京楽」

「どういたしまして」

京楽家の料理人にも礼を言った。

「ぼっちゃまの想い人のためならば!」

浮竹は真っ赤になった。

「ねぇ」

「ん?」

「君を抱いて寝ていいかな」

「俺はまだ・・・・・」

「ああ、勘違いしないで。ただ、同じベッドで眠るだけ」

「それくらいならいいが・・・・・」

「ちょっとエッチなことしてくるかもしれないよ」

「飯もごちそうになったし、少しくらいなら我慢する」

「やった!」

その日、浮竹と京楽は同じベッドで眠った。

抱き締められて、舌が絡むキスを何度か繰り返してきた。

「んあ・・・・・」

パジャマの中に手が入る。脇腹と胸を撫でられた。

「細いのに、余計に細くなっちゃったね・・・・もっと食べて体力つけて、肉もつけないと」

その日は、それ以上京楽が触ってくることはなかった。

そのまま、二人は眠りに落ちていった。

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鴉の濡れた羽のように

その柔らかく、少し長い黒髪が、鴉の濡れた羽のように美しかった。

俺は、そっと眠っている隊長の桜色の唇に触れる。

「ん・・・恋次・・・・」

びくりとなった。

気づかれたかと思った。

隊長は、スースーと静かな寝息をたてて眠っていた。

今日は睦みあわず、ただ一緒に眠ることにした。

そんな時もある。隊長が乗り気でない時に誘っても、あまり触れさせてもらえずにお預けをくらうことも多々あった。

10年ばかりこの関係を続けてきるが、隊長の心を手に入れたのはつい最近だ。

「恋次?」

隊長が目覚めて、不安げな視線を送ってきた。

「そんな不安そうな目をしなくても、何もしないし傍にいます」

その言葉に安堵するかのように、薄く微笑む隊長。

「私の隣に来い」

空いているスペースを手で叩かれて、素直に隊長の隣で寝た。

「恋次の匂いがする・・・」

抱き着かれて、この人は本当に今日はしないつもりなのかと疑問に思う。

自分に対して劣情を抱いている相手に、気を許しすぎだし無防備だ。

「隊長、キスでしてもいいですか」

「キスだけなら」

いつも、キスから始まった。

それ以上のことは考えず、隊長の桜色の唇を奪う。

「ふあっ・・・・・」

声だけでいけそうだ。

「もう1回・・・・・・・」

「んあっ」

隊長はキスが好きだ。舌が絡み合うような深いやつが。

そっと舌を引き抜くと、銀の糸が引いた。

「隊長、好きです」

そういって抱きしめると、背中に隊長の手が回ってきた。

「今の私には、もう貴様だけなのだ・・・・」

愛しい義妹であるルキアは、一護の元へ行ってしまった。

ルキアに対して何も思っていないのかと聞かれると、多分好きだったんだろう。幼馴染で、子供の頃はルキアに憧れた。

ルキアを養子に迎えてきた隊長の姿を一目みて、恋に落ちた。

いずれ護廷13隊の死神になるのなら、あの人の下がいいと思った。

初めは違う隊に所属されたが、やがて6番隊の副隊長に任命されて喜んだ。

でも、隊長はとても冷たい人で。

でも、冷たく見せかけているだけなのだと気づいた。

俺が、冬に肩に毛布をかけてやると、「すまぬ」と言って微笑んだ。

茶をいれると「ご苦労」とって目を細めた。

隊長。

俺はあんたに出会って変わった。確かにルキアを処刑しようとしたあんたに牙を向けて、その喉笛を嚙みちぎろうとした。

でも、隊長に己の牙はかろじで届いたくらいで。

その圧倒的な力の差に、絶望を感じたのは確かだ。

誰もいない夜に、あんたが卍解して一人鍛錬をしてるのを知っていた。

あんたは強い。でも、俺ももっと強くなる。

ユーハバッハの侵略で、俺も隊長もどうしようもないくらいの大怪我を負った。零番隊の湯治のお蔭で命を拾い、鍛錬して敵を撃破するくらいに強くなった。

俺は、それでもまた隊長に届かない。

「愛しています・・・・・」

そう言って抱きしめれば、隊長も目を細めてこう言う。

「私も、愛している・・・・」

あんたを口説き落とすのに3年。全てを手にれるのに7年。

そしてあんたの全てを手にれて1年。

10年以上この関係を続けて、つい最近やっと隊長の全てを手に入れた。

「もう、二度と手放さない。あんたを守る。死ぬときは一緒です」

ユーハバッハの侵略によって、死にかけた時のような真似はもうさせない。

どんな敵がきても、俺の蛇尾丸で守ってみせる。

「平和になったのだ。それに、私は貴様に守られるほど弱くはない」

「それでも!」

強くその頭を胸にかき抱くと、隊長は俺の頭を撫でた。

「心配はいらぬ恋次。私は貴様を残していきはせぬ」

「約束ですよ、隊長」

それは、守れるかどうかも分からぬ約束。

それでもずっとあんたの傍にいたい。

あんたを抱いて啼かせてやりたい。

「もう、寝る・・・・・」

隊長の、濡れた鴉の羽のような艶のある黒髪を手ですいた。

柔らかくて、シャンプーのいい匂いがした。

眠りだした隊長の暖かい体温を感じながら、俺もゆっくりと瞼を閉じた。

「おやすみなさい・・・・」

俺の意識も、闇に落ちていくのだった。

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翡翠に溶ける あの時の姿で

秋になった。

芸術の秋。

学院では、選択形式で美術の授業があった。美術の他は、書道、茶道、華道。

浮竹は美術を選択した。自然と、京楽も美術を選択する。

肌も露わば女性のスケッチだった。

顔を朱くしながらも、スケッチしていく。

「もう少し脱いでくれないかな」

「こら、京楽!」

「だって女性はそこにいるだけで華だよ。もっと煽情的なポーズのほうが描きやすい」

「ばかいってないで、デッサン続けるぞ」

その日の美術の授業が終了する。

「ぶっ、何それ」

京楽が、浮竹のデッサンを見て笑った。

「微笑む女性------------そう名付けた」

まるで、ピカソの絵のようだった。

京楽の絵を見ると、綺麗になデッサンの絵があった。

「う・・・お前、絵まで上手いとか反則だ」

美術に雇われた臨時教師が、浮竹の絵を見た。

「ほほう、これは素晴らしい。シュール中に微笑む女性がいる。浮竹君といったかね・・・絵で食べていくことはしないのかね?」

「え、あいえ、死神希望なので・・・・・・」

「勿体ない。たまに絵を描きなさい。素晴らしい腕だ」

褒められて、浮竹もまんざらではなさそうだった。

「僕のは?」

「京楽君の絵か・・・うまいが、それだけだね。光るものがない」

そう言われて、京楽はがっくりとなった。

「やっぱり、分かる人には俺の絵は分かるんだ」

「君の絵、子供の悪戯描きのようじゃない。どこがいいんだかさっぱり分からない」

「ふ、俺の芸術は奥が深いんだ」

その日から、時折暇を見つけては浮竹は絵を描いた。何かにのめりこむのはいいことなので、京楽もつられて同じ題材の絵を描いた。

それが、山じいの目に留まった。

山じいを描いたのだが、まるで写真のようだと褒められた。

「春水の絵は、文句なしに上手いのう。十四郎の絵は、少し独特じゃな」

「元柳斎先生、これは絵なのです。上手ければいいというのじゃありません」

「ふうむ。そう言われると、十四郎の絵は深くて芸術とういかんじがするのう」

「そうでしょう、先生!」

「いや、下手なだけでしょ」

「なんだと!」

「いやごめん、ほんとのこと言ちゃった」

怒ってぽかぽか殴ってくる浮竹はかわいかった。

「ごめん、ごめんってば」

「十四郎も、春水と打ち解けたようで何よりじゃ」

「先生、京楽のやつ意地悪ばかりしてくるんです!」

「いやー、そんなことないよ。愛だよ、愛」

「先生、いつか俺は京楽に美味しくいただかれてしまいます」

「美味しく味わうよ~。時間かけてたっぷり味わうから」

「この京楽が!」

「やったな、浮竹!」

山じいの理事室で、ものを投げ合う二人。

「春水、十四郎、そこまでじゃ!」

山じいの恫喝に、動きが止まった。

「仲がよいのはよい。だが、それで道を見誤らぬように」

「はい」

「勿論だよ」

そのまま、寮の自室に戻った。

「ねぇ。君の絵を描きたいから、モデルになってくれない?」

そう京楽に言われて、アルバイト代を出すならいいと答えていた。

「じゃあ、これくらいでどう?」

その提示された金額に驚いて、引き受けてしまった。

「じゃあ、この服着てちょっと肩を露出させてね。エロ本を始めて見た時のような、恥じらいの表情がほしいな。髪は軽く結って・・・よし、これでいい」

「おい、京楽、この格好・・・・・」

「あ、気づいた?君が遊女の時にしてた恰好に近いものを選んだんだよ。何せ、今思えばあれが初恋だったのかもしれない」

遊女の恰好ではあるが、自分でいうのもなんだが、随分と煽情的な恰好になっていた。

「恥じらないの表情、忘れないで」

どうすればよく分からなかったが、ちょっと照れたように笑ってみた。

「いいね、いいね。ああ、いい絵が描けそうだ」

シャッシャッと鉛筆でデッサンを描いて、陰影をつけていく。

ただ姿と留めるだけなら写真があるが、あえて手描きで、浮竹との出会いを思い出すように絵を描いていく。

「できた」

2時間ほどで、絵は完成した。鉛筆によるデッサン絵だったので、それほど時間はかからなかった。

「ねぇ。お小遣い余計にあげるから、今日1日その恰好でいてくれないかな」

遊女の恰好は、昔から売られかけるたびにさせられていたので、抵抗はなかった。

「別にいいが、露出はしないぞ」

「うん、いいよ」

遊女の恰好のまま、生足が太腿まで露わになるのも気にせず、ベッドに横になる浮竹に、京楽はごくりと唾を飲みこんだ。

「好きだよ・・・・・」

「知ってる」

「大好きだよ・・・・・」

白い足を手が這う。

「やっ」

女ではない。そう分かっていても、止まらなかった。

「ああっ!」

太腿から這い上がった手が、敏感な場所を刺激する。

「や、やめろ!」

浮竹の白い足が、京楽の顔を蹴った。

「おぷ・・・ぐはっ」

京楽は、鼻血を出して気絶した。

「危なかった・・・・」

パンツは死守した。

本当に、俺が欲しいんだ。

そう思うと、顔から火が噴きそうだった。

今後、同じ寮の同じ室内ということが、吉と出るか凶と出るかわからなかった。

今の浮竹には、まだ京楽を受け入れる覚悟はなかった。


「あれ?僕どうしたの」

「俺に襲い掛かってきた」

「え、あ・・・・・・・」

思い出した。

白い足があまりに艶めかしいので、手を這わせて下着に手をかけようとして、顔を蹴られた。

そして、撃沈した。

「ごめん、僕が悪かった!」

「もう、気にしてない」

寝る前だったので、浮竹は遊女の姿からパジャマに着替えていた。

「ねぇ。あの恰好、またしてくれていったら、着てくれる?」

「報酬しだいなら」

浮竹は貧乏だ。薬代のせいで、仕送りは消えてしまう。食費もぎりりで、いつも安いものばかりを食べていたのだが、最近は京楽が資金援助してくれるので、助かっていた。

それでも、個人的に本などの欲しいは出てくる。

それまで京楽に買わせるわけにもいかなくて、我慢していた。

今回、モデルとなったのと、遊女の恰好でいたこと対する報酬で、節約すれば半年は買い物に困りそうにないと思った。

京楽春水。女好きで、廓によく通う上流貴族。

浮竹は知らない。廓で買う女が、どこか浮竹に似ていることを。京楽が、浮竹の代わりに女を抱いていることを。けれど、それを最近ぱったりやめてしまったことを。

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翡翠に溶ける 氷室と熱

「暑い・・・・」

浮竹は、院生の服をはだけさせて、だらしなくベッドの上でごろごろしていた。

ほとんど、半裸に近い。

「なんて恰好してるの!暑いからって、ちゃんと服を着なさい!」

顔を朱くした京楽に、浮竹が小首を傾げる。

「なんでだ?流石にこんな暑さなら、少々脱いだところで熱は出ない」

「君、分かってる?僕、君が好きなんだよ?」

その言葉に、今度は浮竹が朱くなった。

友達から始めましょうと言われたが、京楽のものになると誓ったようなものなのだ。借金のかたに身売りをしたに近い。

「君の艶めかしい白い肌。目に毒だ」

いそいそと、院生の服をちゃんときた。

うちわであおいで風を送るが、全然涼しくなかった、

「そうそう、僕の所有する氷室をあけるから、かき氷を食べよう」

「本当か!」

「うん」

京楽の屋敷まで、足を延ばした。少し遠かったし暑かったが、幸いにも今日は曇りで、直射日光に浮竹がやられることはなかった。

夏季休暇に入るまで、外で授業があるとよく倒れた。

やがて、氷室から出された氷がもってこられる。それをかき氷機でしゃりしゃりと削っていった。

氷の欠片をもらい、それを額や手に当てている浮竹に、苺味のシロップのかかったかき氷が渡された。

「んーひんやりして美味しい」

屋敷の中のに入っているので、外より数度気温が低いが、それでも暑かった。

夢中で食べていくと、すぐなくなってしまった。

京楽はそれに苦笑して、お替りを作ってくれた。今度はメロン味のシロップだった。

「ああ、大分体が冷えた。満足だ」

「どうせなら、今日この屋敷に泊まらない?井戸水でスイカも冷やしてあるんだ」

「泊まる!」

寮の自室でだらだら過ごすよりはいいと思った。

風が入りやすい造りになっていて、室内だが寮の自室にいるより涼しかった。

夕食前に、冷えたスイカが出された。

ペロリと平らげる浮竹に、京楽は呆れつつも、夕食も楽しみにしておいてねと言った。

夕食はちらし寿司と天ぷらだった。

良く冷えた、麦茶がついてきた。

その麦茶のお替りばかりもらいながら、豪勢な夕食を平らげた。

夜には、氷水をいれたたんぽが用意されて、それで体を冷やしながら寝た。

体を冷やし過ぎたのか、次の日浮竹は熱を出した。

幸いなことに氷室があるので、冷えたタオルを額に置かれた。

「京楽・・・・・傍にいて・・・・」

熱で潤んだ瞳でそう言われて、京楽は片時も浮竹から離れなかった。

「キスしてもいい?」

ダメ元で聞いてみると。

「キスしてもいい・・・・」

と返ってきた。

夏休みになるまで、何度か触れるだけのキスをしたことがある。

「深い口づけでもいい?」

「構わない・・・・・」

ゴクリと、喉がなった。

「いただきます」

唇を重ねる。口をあけない浮竹の顎に手をかけて、少し口を開かせると、舌を入れた。びくりと縮こまる舌をおいかけて、歯茎を舐め、何度も舌を絡めあった。

「ううん・・・んあっ」

濡れた声の浮竹のそれだけで、たっしてしまった。

つっと、銀の糸を引いて舌をぬく。

「ちょっと、湯浴みしてくる」

反応してしまった息子さんを大人しくさせるために、風呂場で浮竹の乱れた姿を想像して3回ほどぬいて、すっきりした。

新しい服を着て戻ると、浮竹の姿がなかった。

「京楽・・・・どこ・・・・」

熱のある体で、廊下に立っているのを見つけると、抱き上げてベッドに寝かせた。

「京楽・・・・どこにも、行かないで・・・・・」

ああ。

普段が、今の3分の1でもかわいかったらいいのに。

熱を出した浮竹は甘えてきて可愛かった。

このまま時が止まってしまえばいいと思った。

だがそういうわけにもいかず、夕飯に卵粥を食べさせて、解熱剤を与えた。

浮竹は、すぐに眠ってしまった。

京楽も、浮竹と同じベッドで眠った。


「ん・・・・京楽?」

「あ、おはよう。起きたのかい?」

「狭いのに、一緒のベッドで寝たのか」

「だって君、離れないでって・・・・・」

「俺はそんなこといわない」

どうやら、熱を出していったこととかは覚えていないようだった。

「はぁ・・・・・キスは覚えてる?」

浮竹は真っ赤になった。

「はじめてのディープキだけど、君の声聞いてるだけでいちゃたよ。風呂場で3回抜いた」

「お、俺のせいじゃない」

「君がかわいすぎるからだよ」

ちゅっと、音をたてて、頬にキスをされた。

「おい、京楽!」

「あはは、ほっぺにキスくらい許してよ」

氷室があるせいで、その年の夏は休みが終わるまでずっと京楽邸で過ごすのであった。



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翡翠に溶ける 桜散る場所で

「おはよう」

「おはよう・・・」

なんでもない毎日が、また始まろうとしている。

1回生の春だった。

遅咲きの桜が散っていた。

「ねぇ、浮竹」

「なんだ?」

「いつか、僕はこの桜の下でその時持っている感情を君にぶつける。それまで、友人でいてくれるかい?」

「俺はこんな体だ・・・・・お前の想いとやらに応えれるかどうかは分からないが、その時抱いていた感情を、俺もぶつける」

「約束だからね」

「ああ」

桜の木の下で、浮竹と京楽は手を握りあった。

清い関係だった。

まだ出会って日も浅いということもあって、キスも1回しかしていない。

「春水様ー!」

「なんだ、桜かい」

幼馴染の、吉祥寺桜。

同じ死神統学院に、合格した、特進クラスの女生徒だった。

「あら、浮竹君いたの?」

浮竹のことを、目の敵にしていた。

「いちゃ悪いか」

「下級貴族如き、春水様となれなれしい!」

「桜!」

叱ると、桜は怯えた顔をした。

「春水様・・・桜のことは、もう抱いてくれませんの?」

その言葉に、浮竹が傷ついた顔になる。

「桜、春水様に抱かれるの好き」

「君とはもう終わったんだ。あっちに行きなさい」

しっしと追い払うと、浮竹は完全にへそを曲げていた。

「吉祥寺桜。上流貴族吉祥寺家の一人娘・・・・お前には、似合いの相手だな」

「ちょっと、浮竹!あの子とは終わったんだから!」

「どうだか」

浮竹は、怒ってそれから1週間口を聞いてくれなかった。

席替えがあった。

浮竹と隣同士になった。結局、浮竹が自分が悪かったと謝ってくれて、入学して早々に関係が破綻ということにはならなかった。

吉祥寺桜は、何かあるごとに浮竹を侮辱して、自分が女であるとアピールしてきた。

5月のうららかなある日、浮竹は桜に呼ばれて校舎の裏まで来ていた。

「本当にいいんですか、桜お嬢様。このお方、春水様の想い人であられるのでは・・・・・」

「春水様のまわりをうろうろとするハエですわ。どうか、思い知らせえてやってくださいな」

屈強な男3人に襲われた。

でも、浮竹はその見た目の良さで、悪戯さえそうになったり、人攫いに攫われそうなったりといった人生を過ごしてきたので、細い見た目とは裏腹に、蹴りを重心に置く護身術を身に着けていて、強かった。

「なっ、生意気な!」

3人の男をのした浮竹を殴った。

なので、浮竹も拳で桜を殴った。

「きゃああああああああああ!」

自分の服をびりびりと破いて、桜は悲鳴をあげた。

それにかけつけた者が、泣き叫ぶ桜と、のされた学院の者ではない気絶している大男3人と、顔を思い切り殴られた痣のある浮竹を見て、目を見開く。

「浮竹君が!浮竹君が、護衛の3人に手をかけて、私を襲おうと!」

肌も露わな泣き叫ぶ桜に、浮竹に視線が集まる。

「嘘だね」

かけつけた京楽が、一言そう言った。

「そんな、私のこの姿を見てください!」

「どうせ、自分で破いたんでしょ」

「春水様、酷い!」

「みんなはどう思う?浮竹が、女の子を襲うような人物に見える?」

すると、浮竹の友人の一人が声をあげた。

「あの浮竹が、そんなことするはずがない!」

「そうだそうだ!」

人込みになっていた。騒ぎの大きさに、教師まで出てきた。

「まぁ!桜が自作自演したというの!?」

「そうだよ。吉祥寺桜は、そんな女だ」

「春水様!」

「めんどくさいから、山じいよんで」

「ひっ」

桜は息を飲むが、もう遅い。

山じいが呼ばれ、ことの真相を桜と浮竹から聞いた。

「吉祥寺桜を、退学処分とする!」

「そんな!桜は何も悪くありません!」

「お主が、十四郎をはめようとしたのは証拠もあがっておる」

「何処に!」

「護衛と言っていた3人が白状しおった。吉祥寺桜の命令で、十四郎を暴力で痛めつけようとしていたと!」

「あんな下賤な者たちの言葉を信じるというのですか!浮竹十四郎は、この桜を手ごめにしようとしたのですよ!?」

「それがありえんのじゃ。十四郎は、まだ女性とも付き合ったことのない清らかな存在じゃ。いきなりその方を襲う真似などせんと、儂が断言する」

「この・・・・・!」

桜は、光るものを手に浮竹にぶつかった。

「う!」

「浮竹!」

「十四郎!」

ナイフが、浮竹の太腿に深々と刺さっていた。

傷は動脈にまで達していた。

「いかん、はよ4番隊の席官を呼べ!」

「あはははは!」

桜は、狂ったように笑っているところを身柄を拘束され、警邏隊に引き渡された。

その場にいた教師たちが、回道を行ったことで、幸いにも失血死は避けられた。浮竹はやってきた4番隊の席官から回道を受けて、傷は塞がったが、失った血までは戻せないということ、輸血のために病院まで搬送された。

「吉祥寺桜・・・・あんな、愚か者だったなんて。はぁ、僕の周りにはろくな女がいないね」

京楽が、浮竹の見舞いにきた。

念のための、肺の検査も兼ねた3日間の入院だった。

「おはぎ、もってきたよ」

げんなりしていた表情の浮竹の顔が輝いた。

「お前の傍にいるのは、苦労するな」

「もう、流石に桜みたいなバカは出てこないはずだから」

浮竹は、おはぎを食べた。

「助かる。ここの病院食、質素すぎる上に味付けが薄い」

「あら、そうですか?」

「うわ、卯ノ花隊長!」

4番隊の卯ノ花が、山本総隊長の愛弟子の様子を見にやってきたのだ。

「な、なんでもないです!」

「まあ、言われな慣れてますけどね。だからといって、食事を豪華にしたり、味付けを変えることはありませんが。そんなに嫌なら、京楽家の料理人に食事を作ってもらったらどうです?それには一向にかまいませんよ」

「京楽、頼めるだろうか」

「任せなさい。美味しい料理、食べさせてあげる」

その日の夕食は、豪華だった。京楽家の料理人の腕は確かで、おいしかった。

やがて、退院の日を迎えた。

まだ傷が痛むので、京楽に肩をかしてもらいながら歩きだす。

そのまま、時は流れる。

1回生の夏休みに入ろうとしていた。

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翡翠に溶ける 花街での出会い

花街で、好みの子を見つけた。

「ねぇ、君。そうそう、君、君」

京楽は、かわいい遊女を見つけた。

「何処の子?」

「夏姫・・・・・」

「夏姫?あんな格下の廓にいるの?」

こくりと、その少女は頷い。

「今から遊びにいったら、相手してくれる?」

こくりと、その少女はまた頷いた。

「よし、行こう!」

夏姫は、その花街の中でも下から数えた方が早い廓だった。花魁もいないし、こうぱっとする遊女がいるわけでもない。

「僕は京楽春水っていんだ。君の名前は?」

「・・・・・翡翠」

「そう。翡翠色の瞳をしているもんね。かわいい」

その少女は愛らしかった。白い肩までの髪に安物の簪をさしていた。

「そうだ、これあげる」

いつもの花魁にあげようと思っていた、瑪瑙の簪を、翡翠の髪に飾ってやった。

翡翠は、あどけない顔で笑った。

夏姫に、京楽をつれていくと、ちょっとした騒ぎになった。上流貴族がくるような廓でなく、食事も美味いといえるものではなかったが、翡翠が気に入ったのでそのまま居座った。

「お酒、飲みますか」

「ああ、いただこうかな」

酒を飲んでいると、急に眠くなってきた。

そのまま、京楽は寝てしまった。

気づくと翡翠の姿はなく、廓の女将に聞いても、翡翠は今日きたばかりの遊女の見習いでと言われた。

服はそのままだったが、金目のものがごっそりもっていかれていた。

「ああ、やられてしまった・・・まぁいいか。かわいかったし・・・」

また、いつか会えるといいなぁ。

そんなことを考えながら、それから2年後には死神統学院に入っていた。

首席であると思っていたが、もう一人首席がいた。

興味が沸いて、山じいのお説教を受けるの覚悟で、今日は休んでいるというその首席の子のいる寮の部屋の前にきて、そっと扉をあけて中にいる子を見た。

「え、翡翠!?」

「え・・・・・」

翡翠が、そこにいた。

「君、翡翠でしょ。僕からお金奪っていった悪い子・・・・」

「あ、あの時の・・・・・・」

翡翠は、少女ではなかった。少年だった。

遊女の服をきて、化粧をしているのだから、てっきり少女だと思い込んでいた。

「あの時はすまない・・・・妹が、売られそうで、まとまった金が必要で・・・いつ返すから、待ってくれないか」

「じゃ、君が僕のものになるならいいよ」

「え」

翡翠が、上ずった声をあげる。

「俺は男・・・・・・」

「うん、分かってる。名前は?」

「浮竹十四郎」

「じゃあさ、浮竹、君が僕のものになるなら、お金返さなくてもいいよ。けっこうな額のお金が入ってたんだ・・・・君が、死神になれたとして、返済までに時間かかるよ。君が僕のものになるなら、ちゃらだ」

「妹が、また売られそうになったら、金を貸してくれるか?」

「ああ、いいよ」

「なら、お前のものになる------------」

ぽろりと。

浮竹の瞳から涙が零れ落ちた。

「ちょっと!何も今すぐとって食おうなんて思ってないよ!そうだ、友達になろう!」

「友達?」

「うん。僕は京楽春水。改めて、よろしくね」

「こりゃあああああ、春水!どこじゃあああああ!」

「いっけね、山じいだ!入学式さぼちゃったから。またね」

京楽は、風のように去ってしまった。


「こりゃ、春水」

杖で、ぽかりと頭を叩かれた。

「首席で合格したお前が、入学生代表になるはずじゃったのに、抜け出しおってからに。どこにっておったのじゃ」

「ちょっと、同じ首席の子に興味があってね」

「十四郎のところにおったのか!十四郎は肺を病で欠席じゃった!無理をさせたのではあるまいな!」

「んー。昔、騙されて大金とられてねー。僕のものになるなら、返さなくていいっ言ったら、泣いてた」

「十四郎が、春水を騙したじゃと?何かの間違いではないのか?」

「でも、浮竹は僕のものになるって言ってくれたよ」

「こりゃ春水!もしや、金でなんとかしたのではあるまいな」

当たらず遠からずというところだった。

もしも、また妹が売られそうになった時には、金を貸してやると約束した。そして、とられていった金のかわりに京楽のものになれと、脅しに近い言葉で納得させた。

「でも、かわいかったなぁ・・・・・」

肩まである白い髪に、翡翠色の瞳。女の服を着せて化粧させれば、きっと今でも少女に見える。

「山じい、あの子のこと教えてよ----------------」

山じいに聞いたところ、下級貴族の8人兄弟の長兄だという。治らぬ肺の病を患っている上に病弱だが、類まれな霊圧を持っており、山じいが保護者ということで、学院の寮に入っているらしかった。

「ねぇ、山じい・・・あの子と、同じ部屋にしてよ」

「なんじゃ、春水、寮はあれほどいやだと言っておったじゃろう。近くに屋敷を建てるからと・・・・・」

「んー。浮竹と同じ部屋なら、寮に入っていい」

「寮に入ってもらったほうが儂の目も行き届く。よかろう、十四郎と同じ部屋になることを許可しよう」

「やった!」

次の日、休みだったので荷物を最小限にして2人部屋である浮竹のいる寮の部屋に入った。

「京楽・・・・・」

「今日から、一緒の部屋で住むことになったから。よろしくね」

「よ、よろしく・・・」

出会いが最悪だったため、浮竹は京楽にしばらくの間、心を開かないでいた。

でも、同じ1回生として、同じ特進クラスで学んでいくうちに、氷だった浮竹の心も雪解け水のように溶けていった。


「甘味屋へ行こう、浮竹」

デートというか、いつも一緒に行動した。

浮竹は甘いものに目がなく、甘味屋に誘うと100%OKをもらった。

「ほら、口についてる」

あんこをとって、食べると、浮竹は顔を朱くした。

「どうしたの?」

「その、お前は、俺を抱きたいのか?お前のものになれってことは・・・・・」

「うーんどうだろう。今は君を抱きたいとは思ってないね。ただ、親友として一緒に在りたいとは思っているよ。ただ、君のことが好きなのは本当だ。将来抱きたいというかもしれない。怖いかい?」

「怖くない-----------------でも、俺のどこがいいんだ?」

「全部だよ。君の声も姿形も性格も。全部、僕の好み」

「悪趣味な奴だな」

そう、浮竹は笑った。

甘味屋でその細い体の何処に入るのだというくらい食べて、寮の部屋に戻った。

「すまない、おごらせてばかりで。金がないせいで----------」

謝る浮竹を抱き締めると、吃驚したようで、硬くなった。

「緊張しすぎ。もっとリラックスして」

やっと体の力が抜けていく。

浮竹は、おずおずと、手を京楽の背中に回した。

そのまま、触れるだけのキスをすると、浮竹は赤くなって京楽を突き飛ばして、布団の中で丸くなてしまった。

「どうしたの」

「俺のファーストキスが・・・・・」

「ああ、君キス初めてだったの。僕なんて、童貞もとっくの昔に捨てたし・・・・・」

「ななななな」

「ああ、君やっぱ性格通り、童貞なんだ。綺麗だから、卒業してるかなと思ったけど」

「京楽!」

浮竹が怒った声を出す。

「はいはい、ごめんよ」

楽しいおもちゃを見つけた。そんな気分だった。




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凍り付いた時間

高校3年の冬。

一度だけ、体を重ねた。

一護とルキア。

二人は、別に付き合っているというわけでもなく。それでも、お互いが好きであるということは自覚していた。

「これで、お前への想いも最後だ」

そういうルキアを抱きしめた。

「俺は・・・多分、忘れられないと思う」

細く小さいルキアの体を抱き締めて、キスをした。

一度だけ、体を重ねた。

「ルキア、愛してる-----------------」

「一護、私も貴様を愛している-------------」

やがて、高校生活も終わり、ルキアは尸魂界へと帰っていった。


ルキアが去って、5年が経った。

一護は、大学を卒業し、ドイツ語の翻訳家として在宅で仕事をしていた。

「黒崎君、お茶いる?」

「ああ、織姫、ありがとう」

一護と織姫は、4年半の交際の末に結婚した。

今は家を出て行った遊子と夏梨の部屋を使っていた。

ふと、見知った霊圧を感じて、一護は自分の部屋にきた。

「一護」

窓から入ってくる、あの頃から髪が伸びたルキアがいた。その後ろには恋次もいた。

「この度はな・・・・私と恋次は、結婚することになったのだ!」

「わぁ、おめでとう!」

「おお、井上ではないか。一護と結婚したと聞いているが、どうだ?」

「うん、黒崎君すっごく優しいの。私、愛されてるなぁって思う」

一護は、照れた顔をするわけでもなく、真剣な表情でルキアを見る。

「ルキア、今幸せか?」

「ん?何を言っておるのだ一護・・・・・・・」

「そうか・・・恋次、ルキアを幸せにしろよ」

「おう、言われるまでもねぇ。どうしたんだ、一護?」

「今日は泊まってくだろ?」

「ああ、その予定だ」

「じゃあ、買いだしとかしてくるわ」

「あ、黒崎君、私も行く」

「来るな!」

「え・・・・・」

一護が、冷たく拒絶することは前にもあった。伝令神機でルキアと恋次が付き合いだしたと知った時だった。

でも、一時的なものだった。

「うん、じゃあ待ってる。メニューはカレーにしよっか」

「あと、白玉餡蜜な・・・・・・」

一護は、スーパーまで買い出しに出かけるのと、頭を冷やすために外に出た。

いつか、こうなると分かっていたことだ。だから、井上と結婚した。

ルキアを忘れるために。

でも、高校3年の冬、体を重ね合わせたあの感触が消えない。愛していると、熱っぽく囁かれ、囁いたことが消えない。

今は、黙して二人を祝福しよう。

そう思った。

スーパーでお菓子やジュースも買い込んでいると、1時間以上経ってしまった。

スーパーを出たところで、ルキアと出会った。

「どうしたんだよ、ルキア」

「貴様・・・よもや、5年前のあのことを引きずっているわけではあるまいな」

どう答えればいいのか、分からかったが、本心をぶつけた。

「俺は------------未だにお前のことが好きだ、ルキア」

「そうか。想いは同じか」

「え」

「私も、未だに貴様のことが好きなのだ。忘れられない。私たちの時間は、高校3年のあの時に止まってしまったのだ・・・・・・・・」

「ルキア!」

スーパーの袋をぶら下げたまま、細く小さなルキアの体を抱きしめた。

「一護・・・・」

唇が重なった。

そのまま、一度荷物を自宅に置くと、懐かしい街並みを散策してくといって、家を出た。

向かった先はラブホテル。

お互い、求めあった。

互いに伴侶がいると分かっていたが、一度燃え上がった熱は、どうしようもなかった。

体を何度も重ねた。

5年の空白を埋めるように。

「私は・・・恋次と、別れる。はっきり告げる。一護をまだ想っているのだと」

「俺も、井上と別れる」

「いいのか?結婚してしまっているのだろう?」

「井上が好きだと思ってた。でも違うんだ。井上をルキアの身代わりにしてただけなんだ」

体を重ねあう。

「好きだ、ルキア------------」

「私は恋次に何度も抱かれたのだぞ?それでも好きか?」

「それでも、どうしようもない位にお前が好きだ。俺だって、井上を何度も抱いた。流産しちまったけど、子供もできた」

「そうか・・・・ふふ、私たちはクズ女にクズ男だな。互いに伴侶がいながら、こうして密通している」

ラブホテルからかえってきて、夕食をとった後、それぞれ別れ話を切り出した。恋次のほう薄々気づいていたらしく、案外とあっさりと別れてくれた。

でも、井上はだめだった。どんなに別れるといっても、首を縦にふってくれなかった。

「朽木さんを愛してるなんて今さら!私、黒崎君の子供だって一度できたんだよ!?そんな私に別れろっていうの!?」

「井上、俺は出ていく」

「いやああああああああ、黒崎君!!!」

荷物をまとめて、通帳をかき集めて、金を降ろして一人暮らし用のアパートを借りた。井上には、離婚届を自分の名前を書いて、送った。

当座の生活資金を与えて、田舎に帰らせた。

でも、井上は頑なに離婚届にハンコを押さなかった。

そんな中、月日だけが経っていった。

ルキアと再会して、4か月が経とうとしていた。

ルキアは月に4回は現世の一護の家に来てくれてれた。体を重ねた。

爛れた関係というのは分かっていた。

一護は、井上が田舎に帰ったことで、アパートを引き払い元の黒崎家で生活をしていた。

やがて、観念したのか、井上が離婚届にハンコを押して郵送してきた。

「これで井上とも別れた・・・・止まっていた、高校3年の冬から、砂時計は時を刻みだした」

「本当に、これでよかったのであろうか」

「俺たちは、互いを大切にできなかった。もういいんだ。幸せになっても」

「一護・・・好きだ。愛している」

「ああ、ルキア、俺もだ・・・・・・」

それはまるで雪解け水。

ルキアと一護の関係は、そのまま数十年続いた。

ある日、一護が体調を崩した。末期ガンであることが分かり、病院で入院するよりもと、自宅で性格を送った。

すかっかり、髪に白いものが混ざってしまって老いた一護の傍らには、高校3年の時から時を止めたままのルキアがいた。

「ああ、俺は幸せだった・・・・。ルキア、幸せをありがとう」

一護は、静かに息を引き取った。

でも、ルキアは泣かなかった。

ゆらりと、魂魄が滲み出た。

それは、高校3年の頃の一護の姿をしていた。

「なんだ・・・・死んだら、またお前と会えるのか。なんか別れだって泣きそうになっていた俺がばかみたいだな」

「一護、ようこそ死神の世界へ。貴様は、死んだことで本物の死神になった」

「そうなのか?」

「行こう、尸魂界へ。兄様と恋次の元へ・・・・・」

道は、死んだ後も続いていた。


尸魂界ヘ行くと、変わらぬ姿の恋次と白哉に会った。

「黒崎一護・・・死神となったからには、我が義妹を攫っていったツケを返してもらう。13番隊の3席を用意した故、身を粉にして働け」

「おうおう、死神化するの何十年ぶりだからって、腕は鈍っていないだろうな!?」

始解された蛇尾丸の刀を、一護は斬月で受け止めた。

「よう恋次、鈍っていないみたいだぜ」

「お前には、ルキアをとられた怨みがあるからな。根性叩き直してやる!」

「やめぬか、恋次!一護は、死して尸魂界へ来たばかりなのだぞ!」

「うげ、ルキア・・・・・」

ルキアは、何も尸魂界を捨てたわけではなかった。ただ、一護がの死がはっきりした頃は、尸魂界に戻っていなかった。

「兄様、一護をいきなり護廷13隊に放りこむのはやめましょう。真央霊術院にしばらく預けて死神としての在り方を覚えさせてもいいでしょう」

「ふむ・・・それもそうだな」

白哉は、愛しい義妹が愛した男、黒崎一護を甘く見ていた。

僅か4が月で、真央霊術院ではもう学ぶものがないとして、卒業させられた。

一護とルキアは、籍を入れた。

一護が死ぬ5年前に、井上も死んで尸魂界にきて、真央霊術院に進んだ。4番隊に配属された。

ふと、4番隊にいってこいと、ルキアに言われた。

「え、黒崎君!?」

井上の姿を認めた一護は、顔を顰めた。

「あ、井上・・・・ごめん、お前には本当に酷いことをした」

「もういいよ。私も死んじゃったし・・・石田君と結婚したの。残してくるのには不安はあったけど、石田君も死ねばこっちにくるだろうし・・・うん、もういいの」

井上は、ふっきれた顔をしていた。

「朽木さんと、結婚したの?」

「ああ。籍だけ入れた」

「結婚式はしないんだ」

「ああ・・・・・」

「そっか」

重い空気の中、13番隊に戻ると、ルキアがいた。

「どうだ、井上とは少しは和解できたか」

「ああ、一応な」

細く小さなルキアの体を抱き締める。

「なんだ、一護」

「好きだ、ルキア・・・・・」

「ふあっ・・・・・」

「なぁ。籍もいれたし、子供作らねーか?」

「そればかりは、運を天に任すしかあるまい」

「そうだな。お前といつまでもいちゃいちゃしたいし・・・でも、子供も欲しいなぁ」

始まりは、高校3年の終わり。

それから、実に45年以上は経っていた。


時の歯車は廻る。

幸せの音を立てて。






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浮竹死んだけど幽霊です憑いてます20 新婚旅行

「お待ちしておりました、京楽様、浮竹様」

前にも一度きたことがあるので、幽霊の浮竹については何も触れられなかった。

「荷物をお持ちいたします・・・・」

二泊三日なので、持ち物はそんなになかった。着換えが一組くらいだ。風呂上がりには浴衣を着るので、あまり着換えがいらないから、かさばらずに助かった。

浮竹の分の荷物ももってもらう。こちらも着換えが一組入ってるだけで。

部屋に案内された。

和室ではなく洋室のスウィートルームだった。

「うわ・・・・また、無駄に金をかけて・・・」

「君との新婚旅行だよ!?奮発しなきゃ男じゃないでしょ!」

夕食になる前に、二人で早速温泉に入った。

今夜の夜から眠る時間以外、1日実体化する予定だったので、まだ霊体のままだった。

幽霊にも湯の温度が分かる。

入浴するのにさっぱり感までは味わえないが、暖かい湯に浸かっていると、ほっこりと体が暖かくなった。

湯浴みを終わらせて、夕食になる。

カニ鍋だった。海老、鮭、はまぐりといった、海鮮ものも入っていた。

浮竹は、さっさっと、食べていく。

器用なもので、カニの甲羅だけが残った。

「ああ、美味しかった」

「ああ、そうだね。僕も満足したよ」

2時間くらい、二人で院生時代の話に花を咲かせて酒を飲んでいた。

「浮竹・・・実体化して」

「あ、ああ・・・・」

すーっと、全体の輪郭がはっきりする。

「愛してるよ・・・・・」

浮竹を抱き締めて、口づけた。

「ううん・・・・・」

浴衣の帯を、しゅっと外す。

「あ・・・・・・」

ぱさりと、浴衣がベッドの上に広がる。

「綺麗だよ・・・」

「お前も、脱げ・・・・」

京楽も、浴衣を脱いだ。

お互い、下着をつけていなかった。

こうなると分かっていたからだ。

「あ・・・・・・」

胸から脇腹にかけて、手が這っていく。

うつぶせにされて、肩甲骨から背骨にそって、舌がラインを辿っていく。

「んん・・・・・・」

仰向けにして、抱き締めて口づけた。

ピチャリと舌が絡み合った。

「なぁ・・・・なんか、体が熱いだが。まさか、媚薬系の薬を盛ったとか・・・・・」

「あ、ばれた?」

「このばか・・・ああ!」

殴ろうとして、すでに反応している花茎に手をかけられる。そのまま手でしごかれて、口淫さえれた。

「ああっ!」

浮竹は、あっという間に吐精してしまった。

「今日は、君がとろとろになるまで愛してあげる・・・・・」

潤滑油で濡れた指が体内に入ってくる。何度も前立腺を刺激されて、浮竹は二度目になる熱を放っていた。

「や、なんか変・・・・・やあああ」

指がぬきさられて、灼熱がずっと、体内に入ってきた。

ゆっくりゆっくりと。

「きょうら・・・・・や、もっと激しく・・・・・」

「仕方ない子だ」

パンパンと、音がなるくらいに腰を打ちけていると、浮竹が痙攣した。

3度目の熱を放ったのだ。

「やああああ!俺ばっか・・・・ああ、春水、お前もいけ!」

中を締め上げると、流石の京楽も、浮竹の中に欲望を吐き出した。

「あ、ああ・・・ひう・・・ひあん!」

ぐちゅぐちゅと、前立腺がある場所ばかり犯されて、また精液を吐き出していたが、途中からたらたらと先走の蜜だけになった。
もう、はきだす精液がないのだ。

それでも、京楽に犯され続ける。

「あ、あ・・・ひあっ」

二度目になる熱を、中に吐きだされた後くらいから、意識が怪しくなってきた。

「やああ、もうやあああああああ」

3回、4回と中で放たれ、その間もずっと犯されていた。

もう吐き出すものがない浮竹の花茎は、たらたらと先走りの蜜を垂らすだけで。

ドライのオーガズムで何度もいかされた。

いろんな体位で犯された。

「もうやぁ!犯さないで・・・・・いっちゃう!」

「とろとろになるまで、犯してあげるって言ったじゃない・・・・」

「ああああああ!!!」

びくんびくんと浮竹の体がはねる。

もう何十回目かもわからぬいき具合に、京楽は満足そうだった。

「君を満足させるために、精強剤飲んだからね・・・・まだいけるよ」

「やあああ・・・・・・」

抵抗も、ほとんどない。しようにも、できない。

6回目の熱を放たれて、浮竹は意識を手放した。

1時間ほどそのままにされていたが、ふと京楽に起こされる。

「んあ・・・・・何?」

「お風呂にいって、体を綺麗にしよう」

「ああ、うん・・・・・」

京楽が浮竹の中に吐きだしたものは、かき出しておいた。

「あ・・・・立てない」

「あー。やりすぎちゃったみたいだね、ごめん」

抱き上げられて、替えの浴衣と下着を手に、温泉に入った。

「ああ、やっぱり実体化したときの風呂はいいなぁ」

髪と体も洗った。久しぶりの風呂なので、気持ちが良かった。

霊体では汚れるということがなかった。

霊体になって波長を変えれば、汚した体など元に戻るのだが、せっかく温泉宿に来ているのだ。温泉を楽しまないと損だ。

露天風呂だった。

月と星が綺麗だった。

「どう、体は」

「だるいけど、それ以外は何もない」

「そう。抱くのは今日だけだけど、寝る時は霊体で寝てくれないかな。君と少しでも長い間一緒にいたい」

「分かった」

その日、霊体で眠った。

お陰で、2日は実体化することができた。

温泉を心行くまで楽しんで、睦みあう真似事をした。

お互い、一応初夜になる晩に睦みあいすぎて、出すものもないという感じだった。

3日目の朝がくる。

限界がきて、朝食をとった後、浮竹は体を透けさせた。

「はぁ・・・・もう、3か月以上は1日は実体化できそうにない」

「うん。僕も浮竹との初夜を堪能したし、満足だよ」

「あれ、初夜っていうのか?俺とお前は院生時代に初夜を迎えている」

「まぁ、形式上のことさ。初夜って言ったら初夜なの」

「まぁいいか。とろとろになるまでっていうか、しつこく犯されただけだけど・・・気持ちよかったので、薬を使ったことは不問にしてやる」

「ありがたきお言葉」

浮竹が吹き出した。

「似合ってないから、その口調はやめろ」

「やっぱり、素が一番だね。さぁ、いつもの一番隊の執務室に戻ろう」

京楽が、浮竹の分の荷物をもって、宿を出る。

「また起こし下さい、京楽様、浮竹様」

「うん。また来年あたりにでも来るよ」

総隊長はきついが、休みがないわけじゃない。

それに、傍には浮竹がいる。

二人は、1番隊の執務室に荷物をおき、寝室にくるとばたりとベッドに倒れこんだ。

「楽しかったけど、ちょっと疲れた」

「ちょっと、セックスしすぎたね。お陰で僕もくたくただよ」

「あれはお前が悪い。薬なんて使うからだ」

「でも、お互い楽しんだでしょう?」

「まぁ、悪くはなかった・・・・・」

顔を真っ赤にしながら、浮竹は小さく呟いた。

「そうだ、結婚記念日は毎年あの温泉宿に行こう」

「毎年?」

「うん」

もう、離れないと誓った二人だ。

その指には、互いにエンゲージリングの他の結婚指輪がはまっていた。





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浮竹死んだけど幽霊です憑いてます19 結婚式

「ねぇ」

「なんだ」

「結婚式を挙げない?」

「ぶはっ」

京楽の言葉に、こいつ本気か?って顔をする浮竹。

「勿論、たくさんの人に祝ってもらいたいけど、君は死人だし、あれこれうるさいかもしれないから、教会で二人だけで式を挙げよう」

「別にいいが・・・・」

「よし、じゃあ今から早速式を挙げにいくよ!」

「ええ、今から!?」

まだ、昼の11時だ。

「1時間くらいなら、実体化できるよね?」

「ああ・・・・」

「じゃあ、服も正装しよう」

「言っておくが、白無垢は着ないぞ」

「白い男性用の袴と羽織でいいよ」

その言葉にほっとなる浮竹。

でも、甘かった。教会にいくと、京楽家の者がいて、髪を結いあげられてウェディングベールをかぶされた。

「まぁ、白無垢よりはましか・・・・・」

「とってもお似合いですよ、京楽十四郎様」

「きょうら・・・・・」

もう、ほんとなるようになれと、浮竹は思った。

いま指にはめているエンゲージリングとは違う、ブルーダイヤモンドがあしらわれた指輪を交換する。

「汝、京楽春水。病める時も健やかなる時も、浮竹十四郎を伴侶として愛することを誓いますか?」

「誓うよ」

「汝、浮竹十四郎。病める時も健やかなる時も死んでいる時も、京楽春水を伴侶として愛することを誓いますか?」

「誓う」

「これにて、結婚は成立です」

教会の外から、わっと人が集まってきた。

「朽木!?日番谷隊長や白哉まで・・・・・」

「おめでとう、浮竹、京楽」

教会の外では、隊長副隊長たちが飲んで食べて騒いでいた。

「お前、はめたな?」

「だって、みんなの前でするていったら、うんって言ってくれなかったでしょ」

「もう、なるようになれ」

ウェディングブーケをもたされていた。

それを投げると、松本の手に落ちた。

「やーん、私も素敵な殿方と結婚したいーー」

「うわーおばさんが年も考えず・・・見苦しいね。美しくないね」

「ちょっとあんた、弓親、喧嘩売ってるの!?」

弓親の首を締め上げる松本に、まぁまぁと、京楽が声をかける。

「みんな集まってくれてありがとう!晴れて浮竹と式を挙げることができたよ!無礼講だから、今日は存分に食べて飲んでいってよ!」

わぁぁあと、歓声があがった。

もう、浮竹は実体化を保てず透けた。正装のまま透けた浮竹を伴って、みんなと同じように食べて飲んだ。

浮竹は、幽霊になってから酔うことがなくなったので、お酒をぱかぱかと飲んでいく。

「こら、あんまり飲み過ぎは体に良くないよ」

「幽霊に飲みすぎも食いすぎもないと思う・・・・でも、お酒って実体化するエネルギーにするには一番手っ取り早いかな」

「もっと飲みなさい。そして初夜を!」

「初夜どころか、院生時代にお前に初めてを奪われた」

ぴくぴくと、松本の腐った耳がそれを聞きつける。

「やーん、浮竹隊長、その話もっと詳しく」

「詳しく話す気はない、松本」

「けちーーー」

ウェンディングヴェールは外していたが、結い上げた髪と白一色の正装は、白い色ばかりをもつ浮竹に実に似合っていた。

「綺麗だぞ、浮竹」

「白哉・・・・・なんか、照れるな」

「いい年したおっさんが・・・・とは思うけど、確かに似合っているな」

「日番谷隊長も、ありがとう」

その日は、みんな飲んで食べて騒いだ。


「う・・・なんか、頭が痛くてふらふらする」

次の日になって、浮竹がそう不調を訴えた。

「もしかして、二日用じゃない?」

「ああ、それに似ているな。そうか・・・・・幽霊でも、二日酔いになるのか」

浮竹はいつまでも正装しているわけもいかず、一度実体化して着替えた。

「今日は、ちょっと大人しくしている・・・・」

効くがどうか分からなかが、痛み止めと二日酔い用の薬を飲ませた。

3時間ほどたって、浮竹は元気になった。

「薬が効いたようだ」

「ほんとどうなってるの、君の体」

エンゲージリングの他に、浮竹と京楽の手には結婚指輪が光っていた。

「そうそう、新婚旅行なんだけど。温泉街でいいかな?君を連れ現世にいって、君の霊体が現世で虚化しないと言い切れない。瀞霊廷にある、馴染の温泉宿・・・・君も生前、よく僕と一緒にいったでしょ?」

「いや、別に新婚旅行なんていいのに・・・・・」

「僕がしたいの。それまでに、1日実体化できるようになっていてね」

温泉宿で、初夜を楽しむつもりだと分かっていたが。

仕方なしに、せっせと食事をして、酒を飲んで実体化できるエネルギーを極限までためた。

「もう、1日実体化できるぞ」

「じゃあ、来週の頭には休暇もぎとるから、それまであんまり実体化しないように」

「分かった」

こうして、新婚旅行は近場の温泉宿に決まったのだった。


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