院生時代の部屋 平和な日
朝起きると、パンツ一丁の京楽が、どじょうすくいの踊りを踊っていた。
浮竹は、無視して登校の準備を進める。
「ふん!」
「なっ!」
いきなり目の前が真っ暗になった。
なにかと思ったら、京楽が自分のパンツを浮竹の頭に被せたのだ。
「何しやがる!」
京楽の股間を蹴り上げた。
「のおおおお」
のたうちまわる京楽の尻にも蹴りを入れてやった。
「愛が、愛が痛いいいいいい」
数分のたうちまっていたが、登校の時間の前になると、ちゃんと院生の服を着た京楽の姿があった。
「行くぞ」
「うん」
その日は、平和に過ぎていった。
年始あけそうそう、退学処分になったアキラに鬼道を浴びせられて、命を狙われたのが嘘のような平和な一日だった。
アキラの取り巻きだった者たちは、自分にこれ以上火の粉が降りかからないように、浮竹と京楽には接してこなかった。
元々、2か月の停学処分を2週間に早めることを許した教師の責任もある。
「帰り、甘味屋でもよろうか」
「お、いいな」
アキラに負わされた火傷も綺麗に治って、浮竹にはもう傷跡などなかった。もしも傷跡が残ったら、4番隊を呼んで傷跡まで消す治療をさせていただろう。
甘味屋までいくと、珍しいことに、席がいっぱいだった。
「どうしよう。待つ?」
「俺、こういうの待つの苦手なんだ。今日は諦めよう」
「あ、待って。すみません、おはぎ4人前持ち帰りで」
「はい、かこしまりました」
勘定を払い、京楽は4人前のおはぎを手に戻ってきた。
「寮で食べよう。おはぎだけしかないけど、いいよね?」
「ああ、十分だ」
寮の自室に戻り、おはぎを手にお茶を飲む。
「やっぱ壬生の甘味屋は味がそこらの店よりいいなぁ」
壬生という店で、あちこちにチェーン店を持っている老舗の甘味屋だった。
浮竹は、おはぎを3人前ぺろりと平らげてしまった。
お茶のおかわりを飲む。
お茶は玉露で、味が良かった。無論、京楽の金で買ったものだ。
3人前も食べたんのに、夕食の時刻になったら食堂で普通に夕飯を食べた。
「ほんとにどうなってるの君の胃って」
「甘味物は別腹なんだ」
「別腹すぎるでしょ」
今日の夕食のメニューはおでんだった。
味が染みていて、そこそこ美味しかった。
「やっぱり、京楽家の料理人の料理みたいにおいしくはいかないな」
「気に入ったのなら、毎日でも作らせるけど」
「いや、流石に悪い」
年始に、京楽家の料理人のの豪華なメニューを食べたせいか、少し味に贅沢になっている自分を叱咤する。
「何もない一日は、平和だけど何かすることが欲しいな・・・」
「僕と愛し合う時間を過ごそう・・・グペ」
裏拳で京楽の顔を殴って、黙らせる。
こりずに尻を触ってきたので、その足を思いっきり踏んでやった。
「浮竹~愛の時間をちょうだい~」
ああ、そろそろキスかハグを与えないと暴走すると理解して、寮の自室に戻った。
「ほら、京楽」
浮竹は、ベッドに座って手を広げた。
そこに、京楽がダイブする。
反動で、浮竹の体はベッドに沈んだ。
「浮竹、浮竹、かわいい・・・・・・」
何度も抱き着いてくる。
キスをされた。
始めは触れるだけの。
次に、舌が絡まる深いものを。
「んんっ・・・・」
その声だけで、京楽の動きがとまる。
「なんだ」
「いちゃった」
「風呂場いってこい!」
「はーい。あられもない浮竹の姿を想像して抜いてきます」
「余計なことは言わなくていい!」
尻を蹴られて、京楽は飛び上がった。
「何、僕にもっとしてほしいの?」
「そんなわけあるか!さっさと抜いてこい!」
風呂場に追い立てたれていく京楽は、好きな相手に拒絶されているというのに、嬉し気だった。
京楽と浮竹は、できているわけではない。
キスとハグと。それ以上少し先を時折許すことはあるが、体を重ねることはない。
それが、浮竹と京楽の関係なのだ。
院生時代の部屋 復讐
なかったことにして、二度寝した。
次に起きると、浮竹のパンツを被って太極拳をしている京楽がいた。
時計を見る。8時だった。
そろそろ起きないと、学院に間に合わない。
「京楽、遊んでないで登校するぞ」
寮の自室が京楽と一緒になって一年。もう、慣れたものだ。
マッパで何かしている以外なら、あまりつっこまなくなっていた。
新学期だった。
久しぶりの学院と、戻ってきた日常に自然と笑みが零れる。
「おはよう、浮竹、京楽」
「ああ、おはよう」
「おはようございます、浮竹君、京楽君」
男女問わず、浮竹は人気が高い。それについてまわっているので、京楽への挨拶はついでになる場合が多かった。
「おはよ、浮竹!」
「ああ、おはよう」
「おっと忘れてた。京楽もおはよう」
「おはよう・・・」
朝っぱらから、京楽は挨拶をしてくる友人たちを警戒していた。
クリスマスで同じ特進クラスの女子にはめられかけた。それと同じことが起きないように、警戒しているのだ。
「京楽、そんなに警戒しなくても何も起きない」
「そうかな・・・」
「普通に過ごせ」
「無理」
「普通に過ごせば、放課後5回キスしてやる」
「普通に過ごすよ」
全く、切り替わりの早い・・・。
浮竹は溜息を零しながら、1限目の授業を受けた。
座学だった。尸魂界と護廷13隊の成り立ちについての授業だった。浮竹は、年末年始をだらだら過ごしていたせいか、うとうとと眠りだしてしまった。
隣の席にいた京楽は、起こすこともせずに、一緒になって眠りだした。
授業が終わり、チャイムが鳴る。
はっと、浮竹が起きる。
「寝ていた!?京楽、なんで起こしてくれなかった!」
京楽の方を見ると、よだれを垂らして爆睡中であった。
「次は・・・・鬼道の授業か・・・・」
起こしてやろうか、悩んだ。
でも、気持ちよさそうに寝ているので、そのままにしておいた。
1回生や2回生の頃は、授業をさぼって廓なんぞに行ったりしていたので、出席日数がぎりぎりだったが、2回生の秋に、浮竹に告白をしてから廓に行くこともなくなったし、激しかった女遊びもやめた。
鬼道の腕はいい。
授業をこのままさぼっても、問題はないと判断して、浮竹は鬼道の授業に一人で出た。
「血肉の仮面・万象・羽ばたき ヒトの名を冠す者よ 蒼火の壁に紅蓮を刻む 大火の縁を遠天にて待つ 破道の七十三 双蓮蒼火墜!」
浮竹の完全詠唱のその鬼道は、的を粉々にしてクレーターができた。
アキラという名の、クリスマスの騒ぎで停学二か月処分を、山本総隊長から受けて、護廷13隊入りが難しくなった女生徒が、鬼道の詠唱を始める。
アキラの家は上流貴族だった。なんとか停学を2週間にまで縮めた。
「血肉の仮面・万象・羽ばたき ヒトの名を冠す者よ 蒼火の壁に紅蓮を刻む 大火の縁を遠天にて待つ」
ばっと、的ではなく浮竹に鬼道を放つ先を変えた。
「破道の七十三 双蓮蒼火墜!」
流石の浮竹も、突然のことでまともに鬼道を当てられた。
焦げた匂いをさせて、浮竹が倒れる。
「あはははははは!」
アキラは笑っていた。
教師がすぐにアキラを取り押さえて、怪我を負った浮竹を医務室に運ぶ。
「酷い火傷だ・・・・4番隊から、至急席官クラスの死神を呼んでくれ!」
山本総隊長の秘蔵っ子だ。死なせるわけにはいかない。
医務室の保険医は、できる限りの回道をほどこしたが、火傷はまだ残っていた。
やがて、4番隊から3席の死神がやってきて、浮竹に回道を施す。完璧にとはいなかったが、火傷はほぼ癒えた。
まだ傷跡が残っている腕にや足に湿布を巻いた。
「う・・・・俺は?」
「すぐ、京楽君を呼んでくるから。大人しく、ベッドで横になってなさい」
言われた通りにする。
京楽は、浮竹の霊圧の乱れで起きて、鬼道の授業がある場所にきていた。
そこで、停学処分から開けたアキラが、浮竹に向かって鬼道を放ったと知って激怒した。教師がおさえなかったら、拳で血まみれになるまで殴りつけただろう。
「浮竹!」
医務室に、京楽がやってきた。
「京楽・・・・」
「よかった。思ったより、怪我が酷くなくて」
「4番隊の3席を呼んだからね。火傷が酷かったんだ」
保険医はそう言った。
「ありがとうございます。4番隊を呼んでくれて・・・・・」
「山本総隊長の愛弟子だからね。まぁ、他の子でも呼んださ。それくらい、酷い火傷だった。回道でほとんど癒えたけどね。残りの火傷は、自然治癒に任せるしかないね」
腕や足に、湿布が張られていた。
「痛む?」
「少しだけ」
「俺に鬼道を放ってきた、アキラっていう女生徒はどうなった?」
「退学だよ。でもその前に、殺人未遂で警邏隊に連れていかれた」
「そうか・・・・・・」
「僕が君から目を離した隙にこれだ。浮竹、僕まで寝ていたら、今後起こして。二度とこんなことを起こらせないと誓う」
「ああ・・・・・」
浮竹の火傷は、2週間ほどで完全に治った。
まさか、命を狙う行動までするとは思わなかった。
京楽は、しばらくの間浮竹にべっとりだった。
「ええい、暑苦しい!」
「そんなこといわないで。むちゅー(*´з`)」
「やめろ」
京楽の頭を思い切りはたいた。
アキラの両親が謝罪してきて、罪の軽減を望んできたが、浮竹も京楽も許すことはなかった。
一度甘い考えを出してしまえば、今後同じことが起きた時に困る。
とにかく、退学処分になってよかったと思う二人であった。
愛の果てにあるもの
その想いの果てに、何があるのだろう。
白哉は、趣味の夜の散歩をしていた。
夜だけに冷えるのだが、月夜と星空を見るためなら、少々の寒さも問題ない。
そんな白夜についてくる影があった。
恋次だ。
白哉が夜の散歩をしていると知って、危ないから俺も行くとかいって、眠い目をこすりながらついてきていた。
白哉は、夜の散歩のために少し早く寝る。普通に寝ている恋次には、この時間起きているのはきついだろう。
「恋次、貴様はもう帰れ」
「うう・・・眠いけどいやです。隊長の身に何かあったら・・・・・」
「私は、仮にも6番隊隊長だぞ?たとえ虚に襲われたとしても、何も起きぬ」
「俺の・・隊長は・・・・俺のもんだから・・・・」
朽木邸にくると、恋次は自分の館に戻りもせずに寝てしまった。
「全く、人騒がせな」
ついてくるだけついてきて、後は勝手に眠ってしまうなど。
「恋次の、愚か者・・・・・・」
寝ている恋次に触れるだけのキスをして、白哉も眠った。
「はっ!ここどこだ!」
「私の屋敷の私の部屋だ」
隣で、違う布団に横になっていた白哉がそう言った。
「俺、確か隊長の夜の散歩についていって・・・・・」
「その後、私の屋敷に戻るなり寝てしまったのだ、貴様は」
時計を見る。11時だった。
今日が休みでよかったと恋次は思った。
「隊長が、こんな時間までだらだらしてるの、珍しいですね」
「自分の手を見てみろ」
恋次の右手は、しっかりと白哉の夜着の裾を握りしめていた。
「うわあ!すみません、隊長!」
「別に良い。私もたまには寝過ごしたい日もある」
食堂にいくと、朝餉には遅すぎるということで昼餉がでてきた。
「うお、うめぇ・・・」
普段からの食事も、恋次にとっては御馳走だ。
「それを食したら、自分の館へ帰れ」
「え、嫌ですよ。せっかく一緒にいれるんだから」
昼餉をとり、帰りたがらない恋次を仕方なく白哉の部屋で過ごさせた。
「うわー、隊長の匂いがするー」
少し甘い、シャンプーの匂いだった。
「隊長、好きです」
キスしてくる恋次に、舌を絡めて応えてやる。
「んん・・・・・」
死覇装に手が入ってきた。
「誰かきたら・・・・!」
「ああ、さっき清家さんに、誰も絶対にこの部屋に近寄らないように言っておきました」
「この・・・悪知恵だけが働く・・・・ああ!」
死覇装を脱がされていく。
こんな日の高いうちからするなど初めてで、窓から入ってくる太陽の眩しさに目を細めた。
「ああ、恋次・・・・・・」
この前抱かれたのは先々週だろうか?
一度火をつけられると、体が疼いて仕方ない。
「隊長、かわいい・・・・・」
死覇装を全部脱がされて、白い肌は輝いているようだった。
「あ・・・・」
胸の先端をかりかりと指でひっかかれ、もう片方を口に含まれて舌で転がされた。
「んあっ」
「隊長の濡れた声、すげぇ腰にくる」
下着に手をかけられる。
先走りの蜜で、濡れていた。
「ああもう、こんなに濡らして・・・・・・」
「恋次!ああっ!」
潤滑油をかけた指が、体内に侵入してくる。
ぐっと、前立腺があるところで指を折り曲げられて、その衝撃と快感に、白哉は白濁した液体を放っていた。
「ああああああ!」
「まだ指っすよ?大丈夫ですか?」
「ん・・・問題ない・・・」
何度か指で前立腺を刺激されながら解されていくと、そこは柔らかくなって、受け入れる準備ができたことを知らせてくれた。
指が引き抜かれる。
ああ。
私は、あの灼熱で犯されるのだ。
期待と恐怖に、体が熱くなる。
「ひああああ!」
一気に貫かれた。
「あ、あ、あ!」
そのまま律動が開始される。抉られ、揺すぶられているうちに、また熱が集まってきた。
「や、恋次・・・やあぁ・・・・あああ!」
2回目のなる白濁した液を放っていた。
「ああ、あんたの中凄い・・・俺も限界だ」
恋次も、白哉の腹の奥に欲望を散らせた。
「んあっ」
ズチュリと、恋次の硬いものが中を抉ってくる。
「や、もう私は・・・・」
「まだ、2回目でしょ?まだいけますよ。俺なんかまだ1回目だし」
そのまま、騎乗位で犯された。
自分の体重で、恋次のものをずぶずぶと、根本まで受け入れてしまう。そこから下から突き上げられて、白哉の黒い髪が宙を舞った。
「あ、激し・・・・・・・」
ぐちゅぐちゅと突き上げられるたびに、そこは濡れた音を立てた。
「ひああ!」
騎乗位から、そのまま覆いかぶされて、奥の奥まで届いた。
「あう!」
感じたこともない感触に、涙が零れた。
「きもちいいんですか?」
「分からぬ・・・・」
一度引き抜かれて、前立腺を何度もすりあげられて、白哉は3度目になる熱を放っていた。
恋次も2回目の熱を放ち、それでもしつこく白哉を犯して、結局4回は中に注いだ。
「隊長が女なら、絶対孕んでますね」
「貴様は、精力がありすぎる・・・・」
恋次につき合わされ、息を絶え絶えな白哉が、湯殿にいこうとふらつく足で立ち上がった。
「ああ、無理しないでください!俺が支えますから!」
「あ・・・・・・」
「どうしたんですか?」
「貴様の出したものが、太ももを伝って・・・・」
その言葉だけで、恋次はまた白哉を抱きたくなったが、必死になって我慢した。
死覇装を着ているとはいえ、漏れてきた恋次の精液を吸ったりして、死覇装は汚れてしまっていた。隊長羽織も、念のために洗濯するために洗濯女に託した。
湯殿で、白哉は身を清めた。
いい匂いのするシャンプーで髪を洗う。
白哉の匂いの元であるシャンプーで、恋次も髪を洗った。
白哉の中から、恋次のはきだしたものかき出す。恋次はその量に驚いた。自分でも、思った以上に出していた。
「少なくとも2週間は、貴様と肌を重ねるつもりはない」
「ええ!」
「朽木邸の、よりにもよって私の部屋で盛るなど・・・・」
「でも、隊長もまんざらじゃかったでしょ。いい声で啼いてた」
「貴様、よほどその股の間についているものがいらぬと見える」
「冗談です、すみません!」
白桃の湯に浸かり、疲れた体を癒した。
愛の果てに、何があるのだろう。
その想いの果てに、何があるのだろう。
「恋次・・・貴様は愛の果てには何があると思う?」
「愛の果て・・・・不滅の愛ですかね」
「そうか・・・・・」
愛の果てにも不滅の愛があるならば、それはそれでいいだろう。
同じ質問をルキアにした時、ルキアは「幸せ」と答えてきた。
今はもう十分に幸せなのだ。
「恋次、愛している・・・・」
湯の中でそう囁くと、恋次は鍛え上げられたその逞しい胸に白夜を抱き寄せた。
「俺も、あんたを・・・・・あんただけを、愛してる。愛の果てまで。不滅の愛を、あんたに」
次の日、6番隊にいくと、みんな頬を染めていた。
白哉と同じ匂いを、恋次もさせていたのだ。
一緒に湯浴みしているだけならいいが、体の関係もあると知られてしまうとまずいので、恋次はそうそうに仕事をとりあげられて、6番隊を追い出されるのであった。
愛の果てに
その想いの果てに、何があるのだろう。
「いっちごー」
啓吾が、昼飯を手に一護にタックルをしようとしてきた。それに足を引っかけて転ばす。
「うおう、一護の攻撃に俺のライフは残り10」
「なら、0にしてやるよ」
ぐりぐりと、尻を蹴られて、啓吾は変な声をだした。
「いやん、一護、みんなが見てるのに」
「はいはーい、啓吾はそこまで。脳みそ腐ってるなら、僕が新しいのに交換してあげるよー」
水色が、啓吾を起き上がらせる。
「屋上いこうか」
「ああ」
「待ってくれーいっちごーーーー」
3人で、入学してからよくつるんだ。
その中に、いつからだろうか、ルキアが混じるようになったのは。
「一護、オレンジジュースのストローが刺さらぬ。飲めるようにしろ」
「はいはい・・・・・」
「なぁ、水色、一護って朽木さんと付き合ってないのかな?」
「さぁ、付き合っていないんじゃないの?だって、好きだとか言ってないでしょ」」
「それにしては距離が近いよなー」
風が吹いた。
ルキアの短いスカートが揺れる。
パンツが見えた。
「うお、ピンク・・・・」
「啓吾、てめぇ何ルキアのパンツ見てやがる!」
一護が怒った。
こうやって、怒ってるとことか見ていると、本当に付き合っているように見えるのだが、二人は付き合っていないらしい。
「ルキア、お前スカート短すぎだ。パンツ見えるだろ!もっと丈長いのねーのかよ!」
「別に、パンツくらい・・・・・」
「パンツくらいじゃねぇ!ああもう、俺のセーターでも着とけ!」
一護が、ルキアに自分のセーターを着せる。
だぼだぼで、彼氏のものに見えて、余計に見た目が危うい。
短いスカートから見える華奢な足は白く、それが余計に艶めかしかった。
屋上で、4人で昼食を食べた。
ルキアの弁当は、遊子が作ってくれてる。一護の弁当とお揃いで、色違いだった。
その弁当箱を見ていても、どう考えても二人が付き合っていないのがおかしくて、啓吾はたこさんウィンナーを食べる一護にこう言った。
「なぁ、朽木さんと付き合っているのか、一護」
「俺たちはそんなんじゃねーよ。なぁ、ルキア」
「え、ああ・・・・」
啓吾と水色の前でも、昔は猫を被っていたが、大戦から帰還してからは、いつもの口調で二人にも接していた。
昼食を食べ終わり、啓吾と水色は教室に帰ってしまった。
「なぁ、ルキア」
「なんだ」
「お前、俺のことどう思ってる?」
「どう、とは?」
「その、好きか嫌いかで」
「す、好きではあるぞ」
「そうか」
その言葉に、一護は満足そうだった。
「そういう一護はどうなのだ!私のことを好きなのか、嫌いなのか!」
一護は、悪戯をした子供のように眩しく笑った。
「どうしうようもないくらいに、好きだ」
「え」
「どうした?」
顔を真っ赤にするルキア。
「な、なんでもない、たわけ!」
その日からだろうか。お互いを意識するようになったのは。
それから1週間後には、一護はルキアを連れて屋上にまでくると、こう言った。
「1週間前、どうしようもないくらいに好きだって言っただろ。あれから、お前のことが頭から離れなくて・・・・・好きだ、ルキア」
「一護・・・・私も、貴様のことばかりを考えていた。貴様のことが、好きだ」
お互い、好きと言いあって。
「付き合おうか」
「ああ、そうだな」
二人は、高校生活が終わる4か月前に、はれて交際をスタートさせた。
本当なら、ルキアに高校生活はない。大戦の後の普及に尽力をしないといけない立場であったが、尸魂界を2度にまで渡って救った一護の我儘で、高校を卒業するまでは、死神としてではなく人間として生活をさせてほしいと、総隊長の京楽に願い出たのだ。
一護の我儘に、けれど尸魂界は答えてくれた。
高校3年の4か月間だけ、ルキアは空座町担当の死神として赴任することが決まった。
「ルキア、好きだ・・・・」
一護の部屋で、二人で丸くなって体温を共有しあっていた。
「ふふ、くすぐったい・・・・・・」
ルキアを自分の方に抱き寄せる。その細くて小さい肢体は、折れてしまいそうだった。
「ルキア、明日は休みだから、デートに行こうぜ。遊園地にでも行こうか」
「お、遊園地か。行ったことがないのだ。今から楽しみだな」
次の日、一護がルキアの分までお弁当を作って、二人で遊園地に出かけた。
休日ということもあって、家族連れやカップルが目立った。
「ルキア、寒くねぇか?」
「ん?少し寒いが、どうということはない・・・・」
「これでも、はめてろ」
一護が、自分がしていた手袋をルキアの手にはめた。
「暖かい・・・・でも、貴様が寒いのではないか?」
「俺はいいんだよ」
二人とも、マフラーはしていた。
ジェットコースターに乗り、ルキアは散々悲鳴をあげた。
「あのような恐怖のマシーンだったとは・・・・」
「だから、乗る前に絶叫マシーンだけど大丈夫かって何度も聞いたじゃねーか」
「たわけ、あんなに怖いものと何故もっと説明しなかった!」
ぎゃあぎゃあ言い合った。
「次行こうか」
「ああ、そうだな。せっかく遊びにきたのだ・・・・・」
絶叫マシーンをの取り除いたら、けっこうな数の乗り物がダメになった。
メリーゴーランドに乗り、マジックミラーでできた迷路のダンジョンに入った。
途中で休憩をはさみ、少し遅いが昼食を食べる。
「貴様は料理の腕はあるからな。楽しみだ」
エビチリにキムチチャーハンを中心としたお弁当だった。
「む、美味い!」
ルキアの箸が止まらなくなる。
気づけば、完食していた。デザートはパイナップルだった。
「この、甘酸っぱい味が何とも言えぬ・・・・・」
おいしそうにほうばるルキアに、一護は自分の分のパイナップルもあげた。
昼からは、揺れる映画館に入り、ムービーを見た。
やがて夕刻になる頃、最後にと残しておいた観覧車に乗った。
小さいくなっていく街の風景。
日は沈み、夜景が綺麗だった。
「また、卒業してもここに来よう」
「いいぜ。約束だぞ?」
「ああ・・・・・」
観覧車が一番真上に来たとき、始めてのキスをした。
触れるだけのキス。
甘酸っぱい味がした気がした。
それから、毎日を一日一日大切にしていった。
登下校を手を繋いで、教室移動も一緒、さすがに啓吾と水色には付き合っているのがバレたが、井上や茶虎、石田は気づいていないようだった。
やがて、卒業式の日がやってきた。
「ルキア・・・愛してる」
「一護・・・・・」
尸魂界に続く穿界門に、一護までついてきた。
「貴様、どういうつもりだ」
「別れる前に、お前が欲しい・・・・・・」
「一護・・・・」
流魂街についた。
適当な空き家を見つけて、体を重ねた。
情事あとの色気を残しつつ、ルキアが身支度をする。
「貴様は現世に戻れ」
「なぁ。約束、覚えてるよな?」
「ああ。またあの観覧車に乗ろう」
ルキアと一護は、そこで別れた。
月に3回ほど、ルキアは現世にやってきた。
気づけば、付き合いだして2年が経過していた。
一護は、国際大学に進学した。第二語学にドイツ語を選び、ドイツ語の翻訳家を目指していた。
他愛もないことで、ルキアと喧嘩してしまった。ルキアを泣かせてしまった。
ルキアは、もう現世にはこないといって、尸魂界に帰ってしまった。
それから、何度伝令神機にメールしてもレスはなく、どれだけ待ってもルキアは現世にこなかった。
浦原に頼んでもらい、穿界門を開けてもらった。
朽木邸に、ルキアはいた。
「ルキア」
「一護!?何の用だ!」
「あの時はごめん。俺が悪かった。だから、また会いにきてくれ」
「ふ・・・・私も悪かった。少しきつく言いすぎたな」
和解は、すぐだった。
朽木邸の別宅だった。家人も今はいないということで、二度目になるが、体を重ねた。
「なぁ・・・愛の果てには、何があるんだろう」
「一護?」
「お前のこと、すっげー愛してる。でも、愛の果てには何があるんだろうな?」
「たわけ。決まっているであろう。「幸せ」だ」
その言葉は、一護の中でじんわりと広がった。
「そっか。今幸せだから・・・これが、愛の果てなのか」
ルキアを抱きよせて、キスを繰り返した。
「ふあ・・・・・」
「愛してる、ルキア」
「私も、貴様を愛している・・・・・・」
「貴様、死神になるつもりはないか?」
「死神?もうなってるだろう」
「たわけ!本物の死神にだ。家族を捨てることになるだろうが」
「そうすれば、ずっとルキアの傍にいれるのか?」
「ああ・・・・・・」
「じゃあ、俺死神になるわ」
「おい、少しは迷うとかないのか!」
「お前と幸せになれる道があるなら、例え悪になるとしても道を突き進む」
「一護・・・・」
一護の想いは、十分ルキアに伝わった。
「一護が死神になったら、約束していたあの観覧車に行こう」
それからは、白哉に付き合っていて体の関係もあることを告げて、千本桜で追い回されて、何か特殊な液体を飲まされて、本当に死神になった。
「これで、お前と結婚できる・・・・・」
そして、二人で2年以上前にきた遊園地にいき、観覧車に乗った。
真上にきた時、一護はエンゲージリングをルキアの手にはめた。
「結婚しよう、ルキア」
「一護・・・・・・」
ルキアは、感動のあまりぽろぽろと涙を零した。
「お前のためなら、なんだってするし、なんでも我慢する」
「貴様への答えは・・・・・・YESだ」
ルキアと一護は、付き合いはじめて3年目に式を挙げた。尸魂界でだった。
井上、石田、茶虎もかけつけてくれた。
式は盛大に行われた。初めは反対していた白哉であったが、愛しい義妹が一護のことしか見ていないのに、ため息交じりで式を挙げることを許してくれた。
もう、一護は尸魂界の住人であった。よく、現世には顔を出したが。
結婚して数か月経ったある日、食事中にルキアは吐き気を訴えた。
「ルキア、どうした!?」
「すまぬ・・・・・最近、胸がむかむかして・・・・食べ物の好みも変わったし」
「それって、もしかしておめでたじゃねーのか?」
「ええっ!?そういえば、ここ3か月、月のものがきていないな・・・・・」
医者に診てもらい、懐妊が分かった。
白哉は、自分のことのように喜んだ。家族が増えるのだ。
「俺が父親か・・・・しっかり、しねぇとな」
死神となった一護は、13番隊の副隊長として働いていた。ルキアは黒崎ルキアになったが、相変わらず、一護と朽木家で生活していた。
愛の果てに、何があるのだろう。
その想いの果てに、何があるのだろう。
その果てにあるものは「幸せ」
それを、一護もルキアも噛みしめるのであった。
院生時代の部屋 お年玉
本来なら、もらう年齢をすでに過ぎているのだが、山本総隊長は甘いので、溺愛する二人の愛弟子にお年玉をあげていた。
「山じいありがとう・・・・でも2万か・・・・・しけてるな」
「こりゃ、春水、聞こえておるぞ!」
「先生、ありがとうございます・・・3万入ってた」
「ちょっと、山じい、浮竹とのこの差は何!」
京楽が、浮竹と1万も違うことにショックを受けた。
「そりゃ、悪戯小僧の春水と、品行方正な十四郎の差じゃ」
「くーー、なんか悔しい」
「ありがとうございます先生、このお金で新しい手袋が欲しかったので買おうかな・・・」
浮竹は、欲しがっていたふわふわの手袋を思い出した。
「使い道は自由にするがよい。春水、酒に消えることは許さんぞ」
「えー、自由にしていいって言ったじゃない」
「十四郎は下らぬことに使わぬが、春水お主は廓にいく金にでもしてしまいそうで、禁じておかねば心配じゃ」
「山じい、僕去年の秋以降から廓にはいってないよ」
「それはよいことじゃが、かわりに十四郎に迫っておるのじゃろう」
「それはそうだけど・・・・・」
山本総隊長は、京楽の頭を殴った。
「くれぐれも、無理強いはせぬように!十四郎も、何かあればわしのところに来い」
「はい、先生」
山本総隊長は、それだけ言うと一番隊の執務室に戻るために、学院を後にした。
今は、年間年始の休みで、ちょうど年が明けたばかりだった。
わざわざ呼び出されて、二人とも怒られるのかとびくびくしていたが、お年玉と聞いて喜んだ。正確には、浮竹だけが。金がありあまっている京楽にとっては、お年玉ははした金だ。
でも、山本総隊長の気持ちは嬉しかった。
「帰ろうか、京楽」
「そうだね」
山本総隊長の去った学院は、シーンと静かだった。
「そうそう、京楽家の料理人を呼んだんだ。今日の夕飯は、食堂でとるけど、いつもより豪華にしておくから楽しみにしておいて」
「京楽家お抱えの料理人か。少し、楽しみだ」
そのまま、伝令神機で、尸魂界ネットにアクセスしたりして、時間を潰していると、夕食の時刻になった。
「食堂に、そろそろ移動しようか」
食堂は、いつもより人が疎らだった。
年末年始は、故郷に帰る学生が多い。
浮竹は、夏に帰郷したばかりなので、今年の年末年始は寮で過ごすことにした。京楽は、親から見合いの件があるから一度帰ってこいと言われていたが、無視した。
今まで散々放りだしておいで、学院に入り、護廷13隊入りが決定して、貴族の京楽家に箔がつくので、今のうちに婚約者を決めておきたいらしい。
京楽が、浮竹に懸想していることは、両親にも知られていた。だから、早くに見合いを進めて婚姻させようと躍起になっていた。
「じゃーん伊勢海老が2匹に茹でたカニまるまる1匹分!」
「本当に豪華だな」
浮竹は、出されたメニューを味わって食べてくれた。
「おいしい・・・・」
浮竹が食べきれる量に調整させておいたので、食べ残しはなかった。
茹でたカニは身がとられて、ほじくる必要がないようにしていたので、手が汚れるとかもなかった。
「ありがとう、京楽。ごちそうさま」
「どういたしまして」
夕食を食べ終わり。寮の自室の前にくると、高そうな着物をきた少女がいた。美しく、どこかの上流貴族の姫君らしい。おつきの者が控えていた。
「春水様!お逢いしとうございました。見合いの話、ちっとも受けてくださらないので、このような辺鄙なところまでわざわざ足を運びましたのよ?」
「桔梗院サクラ・・・・だっけ?」
「はい、春水様!」
「帰ってくれない?邪魔だ」
「そんな!もう、正式に婚約を交わしたことになっているのです。未来の妻にそれはあまりにも酷い仕打ち」
ドクンと、浮竹の鼓動が鳴った、
「僕はこの子・・・・浮竹十四郎のことだけが好きなんだ。君と結婚なんてしない。帰って、父上と母上に言ってくれないかい。勝手なことをするなら、京楽家とは縁を切ると」
「そんな・・・この、お前のせいで!」
サクラは、浮竹をぶった。
「何するの!」
火がついたように、京楽が怒り、サクラの頬を思い切り叩いた。
「春水様、酷い!」
「こっちの台詞だよ!」
「・・・ゴホッゴホッゴホッ」
ぽたぽたと、咳をした浮竹の手の隙間から、血が滴った。
「浮竹!」
「きゃああいやああ!うつってしまう!春水様、そんな者に近寄らないで!」
切れた京楽は、拳で美しいサクラの顔を殴った。鼻血をだして、サクラが泣き叫ぶ。
「春水様がこんな暴力男だなんて!この結婚話、なかったことにしていただきます!」
走り去っていくサクラに、反吐が出そうな顔をした。
「こっちからごめんだよ。浮竹、大丈夫!?」
「部屋で・・鎮静剤を・・・お前が見合いと思ったら突然発作が・・・・」
浮竹の薬の中から鎮静剤を取り出して、浮竹の腕に注射する。
「薬が、少し効いてきた・・・・・・」
もう、それ以上血を吐くことはなかった。
「キスしてもいい?」
「血の味がするぞ」
「それでもいい」
浮竹とキスをすると、血の味が確かにした。
それさえ、愛しい。
「ゆっくりお眠り・・・・」
「ああ・・・」
次の日、起きると浮竹のパンツを頭に被った京楽がいた。
ああ、いつもの日常がかえってきたと、浮竹は安堵するのだった。
朽木白哉と浮竹3
「あ、ちょっと待って浮竹!」
京楽の制止をの声も聞かずに、浮竹は朽木邸に向かってしまった。
「はあもう、浮竹ったら・・・・・」
その頃、朽木邸では当主である白哉が、書道をしていた。
「白哉、遊びにきたぞ」
「浮竹・・・・半紙の上に立つな。文字が書けぬ」
「何かいてるんだ?」
「新しいわかめ大使の服を描いている」
わかめ大使と書道で美しく文字がかかれているが、肝心のわかめ大使の服はただの黒一色で、どこからどこまでが服なのか分からないし、絵が下手なのか、わかめ大使自体もかなりシュールなものだった。
「何も、書道でもなくても、鉛筆に紙で書けばいいのに・・・・」
その言葉にはっとなる白哉。
「兄は天才か」
「え、それすら思いつかなかったのか」
「なるほど。書道では、道理でうまくかけないわけだ」
書いた半紙を丸めて、書道の道具を片付けていく。
「遊びにきたといっても、何もないぞ。兄をもてなすことはわかめ大使を与えるくらいしかできぬ」
「ああ、あまり気にしないでくれ。正直に言うと、わかめ大使を食べにきた」
「そうか」
奥の部屋に一度さがしにいき、大量のわかめ大使を手に、白哉が戻ってきた。
「白哉は、自分で作っておきながら食べないんだな」
「甘いものはあまり好きでないゆえ」
「めちゃくちゃ甘いわけではないんだけどなぁ。辛いわかめ大使はないのか?」
「一度作ったが、評判が悪くてな。私も食してみたが、不味かった」
「そうか・・・・・」
浮竹は、わかめ大使を15個ほど食べると、広い朽木邸でごろりと横になった。
「白哉の家は広くていいなぁ」
「浮竹には、広い家は向いていまい。雨乾堂くらいの広さがちょうどいいのであろう?」
「あ、うん、そうだな」
最近、ルキアが一護のことを好きだと自覚して、一護と付き合っていることを相談された。
「一護君は・・・・強いし優しいし頼りがいがあるし、大穴といえな大穴なんだけどな」
「ルキアは恋次と結ばれるものだとばかり思っていた故、このまま人間である黒崎一護と付き合わせ続けていいのか迷っている」
「でも、二人の仲を引き裂こうとはしないんだろう?」
「ルキアが選んだ道だ。ルキアと黒崎一護の仲を引き裂けば、ルキアが泣く」
義妹の涙など見たくないのだと、白哉はいう。
「朽木も愛されてるなぁ・・・・・」
「ルキアのことを、私は一度見殺しにしようとした。貴族の掟ばかりが頭にあった。今はただ、誰と付き合ってもいいから幸せになってほしいと思う」
ルキアがこの場に居れば、涙を流しそうな慈愛深い言葉だった。
「俺は思うんだ・・・・きっと、京楽を置いていく」
「浮竹?」
「きっといつか、愛する京楽を置いて先に死ぬだろう」
「浮竹、そう思うだけで辛くはないのか?」
「辛いさ。でも、きっと俺は死神のとしての矜持を選んで、京楽を置いていく・・・」
----------------------------------
浮竹の墓の前に、珍し影を見つけた。
「やあ、朽木隊長じゃない。どうしたの」
「兄は・・・・兄は、浮竹に愛されていたか?」
浮竹の墓参りに来ていた白哉は、同じく墓参りに来ていた京楽のほうを向いた。
「うん?愛されていたし、愛しているよ」
「そうか。浮竹は、生前私に兄を残して先に死ぬと告げていたのだ。ただの世迷言だとばかり思っていたのだが、まさか護廷13隊のために散るとは・・・・思っていなかった。浮竹が死んだことで、私の心の中に何処かで穴があいた。血がじくじくと滲み出てくる。私も、浮竹のことをよき友人として、あるいは兄として慕っていたのだなと・・・・・」
「うん。浮竹はみんなに愛されていたから。朽木隊長にそこまで言わせたら、浮竹も本望じゃないかな」
「浮竹・・・・どうか、安らかに」
白哉は、浮竹の墓に白い百合の大輪の花束を添えた。
あと、おはぎを。
「山じいに卯ノ花隊長に浮竹。きっと、3人で今頃あの世で酒でも飲んでいるよ」
死神が死ねば、ただの霊子に還る。
その霊子から、やがて新しい命が芽吹くのだ。
「その、猫は?」
猫アレルギーらしい京楽が、猫を連れていて少し驚く。
「にゃああ」
「ああ、シロっていうんだ。白猫のオッドアイの綺麗な子でね。不思議なことに僕の猫アレルギーが出ないんだ。浮竹の生まれ変わりかな?甘い花の香がするんだ」
白哉が、その白猫を抱き上げると、ゴロゴロと猫は甘えてきた。
「確かに、浮竹と同じ香がするな」
まぁ、生まれ変わりにしては早すぎる。
京楽も白哉も知らない。
自分に何かあった時に、白猫に浮竹の記憶を刻んだ義魂丸を入れてくれと、浦原に頼んでいたことなど。浦原はそれを実行して、白猫を京楽に託した。
始めは猫などと、敬遠していた京楽であったが、猫アレルぎーが出ないことと、浮竹と同じ香がすることが気に入って、浮竹の名前の一部である「シロ」と名付けた。
死後も、共に在ろうとする浮竹。
記憶があるだけで、ただの猫であることに変わりないし、何かを猫が思うわけでもない。
ただ、傍に在れればいい。
それがその白猫の願い。
「にゃあああ」
「お腹でもすいたの?」
「にゃあ」
白猫は鳴いて、浮竹の墓石をちょんと触った。
まるで、自分の死を受け入れるように。
白猫に浮竹の自我はない。記憶はあるが、それは京楽が飼い主であるという認識になっていた。
「にゃあ」
白猫は、京楽に抱き上げられて、その肩に乗った。
「帰ろうか。朽木隊長も一緒に・・・・そうだ、今夜一緒に飲むなんてどうだい。浮竹の話でもしながら」
「たまには、それもよかろう」
「にゃああ」
「さすがにシロはお留守番だよー」
「にゃあ!」
不満そうな声をあげる白猫を撫でて、二人は浮竹の墓を後にするのだった。
腐女子の鏡
「俺も好きだ京楽!」
再生されていく動画に、浮竹も京楽も赤くなった。
交わっているわけではなかったが、ハグやキスを繰り返す動画だった。
「と、このような動画が尸魂界チャンネルに拡散していまして・・・・」
清音の、ため息交じりの言葉に、浮竹も京楽もどうしようと顔を合わせる。
「まぁ、どうせ一時的なもので、すぐに消えるとは思いますが・・・・外でいちゃつくのは、しばらく禁止でお願いします」
「清音ちゃん」
「はい」
「僕と浮竹はこれくらいで動じる玉じゃないよ」
「同じく。盗撮するならどんとこい」
二人は、赤くはなったが、この程度痛くもかゆくもなかった。
そして、1週間もすぎればその拡散していた動画も消えてしまった。
「誰の悪戯か知らないけど、陳腐だったね」
「そうだな」
ここは甘味屋である。
京楽は、浮竹にあーんをさせて、白玉餡蜜を食べさせていた。
女性からは黄色悲鳴があがっているが、いつものことなので無視する。
「残りは京楽が食え」
「え、どうしたの。食欲でもないの?」
「白玉餡蜜、考えれば昨日の昼餉にも食った。すみません、ぜんざい3人前お願いします」
「はぁ。まぁいいけどね」
浮竹の残した白玉餡蜜を食べていく。
甘かった。
その写真をかしゃかしゃと撮っている人物を見つけて、京楽が立ち上がった。
「どうした、京楽」
「君はいいから、ぜんざいでも食べてて」
「ああ、分かった」
写真を撮っていた人物を摘みあげて、甘味屋の外に出た。
「で、なんなの、君。僕と浮竹のこと、ずっとつけてたみたいだけど」
10代の少女だった。
流石に乱暴にするわけもいかず、写真からとったネガを押収して、だめにする。
「ああ!収入源が!!」
「収入源?」
「あ、違うんです京楽隊長!二人のむふふなシーンをとると賞金が出されるなんてそんなこと、決してないんですから!」
「細かい説明をありがとう。で、そのサイトの管理人は?」
「松本乱菊・・・・・・・」
「乱菊ちゃんか・・・はぁ・・・・」
その少女に今度盗撮したら警邏隊に引き渡すと脅しておいて、浮竹を伴って10番隊の執務室までやってくる。
「なんだ、京楽と浮竹じゃねーか」
茶をすすっていた日番谷に、松本はいないかと聞いた。
「松本なら、奥の隊首室で仕事もしないで、冬コミの原稿とやらを書いてるが」
「ちょっとうるさくなるかもしれないから、先に謝っとくよ」
「は?おい、京楽!」
「乱菊ちゃん!僕らの写真や動画を拡散したり、とらせて賞金だすのやめてくれないかな!」
「やーん、京楽隊長!ごめんなさい、萌えが足りなくって!もうサイト閉じますから、勘弁してくださいーーー」
「京楽?あの動画の犯人は松本だったのか?」
「そうだよ。甘味屋で盗撮してた子が白状した」
「甘味屋で・・・・・?」
浮竹は、最後まで気づいていないようだった。
「乱菊ちゃんは、閉じますとかいって、それで終わらい子だからね」
松本は、京楽の見ている前でサイトのデータやら写真、動画を全部削除させられた。
「うわあああああん、あたしの萌えがああああ」
「今度こんな真似したら・・・・乱菊ちゃんの同人誌に僕らを登場させるのも禁止にするよ」
「いやああああああ!大事な収入源が!!ごめなさい、もう二度としません!」
さすがに、同人誌で登場を禁止というのがこりたのだろう。
松本は、大泣きしながら京楽と浮竹に謝った。
「は?どういうことだ、京楽、浮竹」
「乱菊ちゃんが、僕らの動画や写真を勝手に撮らせて、賞金を出していたんだよ。その動画の一部がネットに拡散してね・・・個人で楽しむならいいけど、流石に賞金を出してまで募集やネットに拡散は許せない」
「松本おおおおおお!お前というやつは!!」
「ひーーーん、ごめんなさいいいいいいい!」
「ごめんですむか!蒼天に座せ氷輪丸!」
「うきゃああああああああ!」
天高く昇っていく松本を、自業自得だと、浮竹も京楽も止めなかった。
「すまねぇ、京楽、浮竹。松本が迷惑をかけた。今後このようなことが起きないように指導していく」
「指導するだけでな直るなら、苦労はしないんだけどね」
京楽の言葉に、浮竹も頷く。
「松本は腐女子の鏡だからなぁ」
どんな鏡なんだ。
その場にいた誰もが思うのであった。
夏残火
恋次は、夏の暑さにダウンしかけていた。
死覇装をはだけさせて、入れ墨のある肌を晒していた。
そのくせ、白哉は黒い死覇装の上に隊長羽織を羽織っているのに、涼しい顔をしていた。
「暑くないんですか、隊長」
「暑い」
「全然暑そうに見えないんですけど」
ミーンミンミン。
蝉の鳴く声がうるさい、8月の終わり。
「朽木家にくるか?」
「え、なんでです」
「氷室を開く」
「行く行く、行きます!」
つまりは、氷を食べれるのだ。現世の進化とは別に、尸魂界でも冷蔵庫はあるが、氷をたくさん作れるほどには進化していない。
仕事が早めに終わったので、2時くらい切り上げて朽木家に行った。
ルキアがいた。
氷室からとってきた氷とおぼしきもので、かき氷を作って一人で食べていた。
「かき氷を作らせる。シロップは好きなものを選べ」
シャリシャリと、清家がかき氷を作ってくれた。
「じゃあ、メロンで」
いろんな味のシロップがあった。
メロンのシロップをかけたかき氷とスプーンを手渡される。
キーンとした冷たさだった。
「あー、生き返る」
「ルキア、私には宇治金時を」
「はい、兄様」
ルキアは、白哉のために宇治金時のかき氷を用意した。
メロン味のかき氷を食べながら、恋次はふとした疑問を抱いた。
「隊長って、甘いもの好きじゃないんじゃ」
「こんな暑い時くらい、甘くてもかまわぬ」
ルキアが、斬魄刀の袖の白雪で氷を作り出し、それを冷えた麦茶にいれた。
「今年は暑い・・・・氷室の氷もつきかけておる。ルキアに頼んで、補充してもらっておるのだ」
「ルキアの斬魄刀は氷雪系っすからね」
恋次は、冷えた麦茶を飲んで、その日は自分の屋敷に帰っていった。
「あちぃ・・・・」
次の日、また暑さにダウンしている恋次がいた。
「甘味屋で、かき氷でも食べに行くか?」
「行く行く!行きます!」
白哉も、夏の暑さにいい加減嫌気をさしているのだ。
仕事を途中で切り上げて、甘味屋にいくと浮竹と京楽がいた。
「おや珍しい、朽木隊長が甘味屋だなんで」
「白哉、甘いもの嫌いじゃなかったのか?」
「かき氷を食べにきただけだ。この暑さだ・・・流石に、参る」
恋次は、かき氷を宇治金時にして白哉の分を渡した。恋次のかき氷は、昨日と同じメロン味だった。
「相変わらず、仲がいいんだな」
浮竹の言葉に、白哉が少し微笑んだ。
「兄らほどではない」
尸魂界では有名だった。京楽と浮竹はもはや夫婦、と。
去っていく二人を見ながら、恋次はいう。
「俺と隊長も、あんな風になりたいですね」
「四六時中、恋次といろということか?」
「え、嫌なんすか」
「一人の時間は大切だ」
「えー。嘘でもいいから、こういう時は「私も恋次の傍にいたい」って言ってくださいよ」
「私も恋次の傍にいたい」
めっちゃ棒読みだった。
かき氷を食べながら、ふと白哉に口づけた。
「ん・・甘い。メロンの味がする。それより、こういった往来で口づけるのはよせ」
「見せつけちまえばいいんすよ」
「私は、貴様と違ってそういう行動は好まぬ」
かき氷を食べて、幾分が涼んだ調子の白哉がいう。
「執務室でならばよい」
「かき氷、食べ終わったし、早く執務室に戻りましょう!」
切り替わり早い恋次に苦笑を零す白哉。
あまりの暑さに、その年は扇風機を出した。
だが、生ぬるい風を送ってくるだけで、一度現世にいきエアコンを体験してしまった恋次には、その年の夏は厳しいものだった。
「あー現世にいきたい。夏は現世のほうが過ごしやすい」
暑いのに、白哉を膝の上に乗せながら、恋次は生ぬるい風邪を送ってくる扇風機を占領していた。
「鍛錬を積めば、少々の暑さなどどうということはない」
「隊長、そう言いながら、最近かき氷や冷たい麦茶ばかりですね」
「今年は暑すぎる・・・・・」
恋次に口づけて、うだる暑さの中その背中に手を回すと、恋次もそれに応えてくる。
「隊長・・・好きだ、愛してる」
「私もだ、恋次。だから、この暑さをなんとかしろ」
めちゃくちゃ無理難題を押し付けられた。
「そうだ、井戸水で水浴びしませんか」
「井戸水で?」
「そう。水道水はぬるいから」
「ふむ・・・・・・」
その後、死覇装の姿のまま、お互い井戸水の冷えた水で水浴びをした。
白哉は死覇装を脱ぐと言い出したのだが、その白い肌を見ていいのは恋次だけなので、却下した。
ちゃんと、着換え用の死覇装も隊長羽織も下着も用意しておいた。
「はぁ・・・冷たいな」
体が冷えていくのが分かる。
「私はもう十分だ。着替える」
周囲に誰もいないことを確認して、建物の影で着換えさせた。
「なんなのだ」
「隊長の裸見ていいのは俺だけだから!」
「ふ・・・・・」
薄く笑って、白哉は着替えた。
髪は、濡れたままにしておいた。風が吹くと気持ちよかった。
「恋次、井戸水をたらいに入れてくれ」
「はい、隊長」
水浴びを終えたけれど、またすぐに暑くなってきたので、朽木邸の影で縁側に座りながら、足をたらいで組んだ井戸水で冷やした。
それだけでも、かなり違う。
「俺も、もう水浴びやめます」
恋次も、着替えて白哉の隣にやってきた。
「なんだ」
「あんたの足も綺麗だなぁと思って」
「世迷言を・・・・・」
井戸水で冷えた体で抱き着くと、白哉はきもちよさそうな顔をした。
「俺にも、ルキアみたいな氷雪系の斬魄刀があればいいんですけどね」
「貴様の斬魄刀は、あれでいいのだ。あれを、私は好んでいる」
「隊長の斬魄刀も綺麗だし・・・兄妹そろって、綺麗な斬魄刀ですね」
「褒め言葉として、受け取っておく」
「あんたは、千本桜の所有者にふさわしい。それくらい美しい」
「何を言っておる」
「あんたのことが、斬魄刀のも含めて好きだなと思って」
「褒めたところで、何も出ぬぞ」
「じゃあ、俺が奪っていきます」
そう言って、唇を奪ってきた。
ぱちゃんと、白哉が足に浸していた井戸水が音をたてた。
「ふあ・・・・・んんん・・・・・・」
キスに夢中になった。
「今日、あの館へ・・・・・・」
暑かったせいで、8月になって交わっていなかった。
体の芯に火をともされて、それは井戸水程度では消えなかった。
「好きです、隊長・・・・愛してる」
「恋次・・・・・私も、愛している」
ぱちゃりと、白哉の足元で井戸水がまた音を立てるのだった。
愛のあるスケベ
恋し恋され
恋次のことが好きだった。
緋真以外を愛さないと誓いながら、いつの間にか恋次に恋慕を抱いていた。
気づかないふりをしていた。例えそれで恋次を傷つけることになっても、恋次のことを愛していると認めたくなかった。
怖いのだ。
緋真のように、失ってしまうのが。
大戦中、白哉も恋次も、もう助からないと言われるような怪我を負った。あの時は、せめて恋次だけでも生かそうと思った。
でも、いま思えばそれは恋次に-------------緋真を失った、白哉のような思いをしろということだった。
「恋次、愛している」
そう答えれば、恋次はまるで犬が尻尾をふるようにこっちにやってきて、すり寄っって来る。
「隊長、俺も愛してます」
恋次の愛しているという言葉は、軽い気がしてしまう。
いつも------------毎日のように愛を囁いてくる恋次。
「貴様の、「愛している」は軽いな」
そう言うと、恋次は酷く傷ついた顔をした。
「軽くなんてありません。全身全霊であんたが好きで愛してます。俺の全ては、あんただけのものだ」
「そうか」
「そして隊長、あんたは----------------全部、俺のものだ。心も、身体も」
ここ最近、身体を重ねていなかった。
恋次の言葉に、かっと全身が熱くなるのがわかった。
「今宵、あの館へ・・・・・・」
「はい!」
それは、恋次と睦みあうためだけに建てられた館。
広くも狭くもない。管理は清家にさせてあり、きちんと掃除は行き届いていた。
月に数回、この館を使う。
恋次からしてみれば、御馳走が並んでいた。
白哉からしてみれば、いつもの食事だ。ただ、今日は少し豪華にしていた。焼いた伊勢海老がいて、茹でたカニのお吸い物が足されていた。
クリスマスが近い。
たまには、豪華な食事を食べさせてやるのもいいだろうと思った。
「隊長。メリークリスマス。これ、ちょっと早いけどクリスマスプレゼントです」
現世の赤ワインを渡された。
「すまぬ。私は何も用意をしていない・・・・「私」を与えよう」
その言葉に、恋次の赤銅色の瞳が見開かれた。
「このワイン、今飲んでもよいか?」
「え、ああ、どうぞ」
それなりの高額だったのだろう。いい味だった。
ワインを飲み干して、食事を続ける。
先ほどから、恋次はそわそわしていた。
「何をそわそわしておるのだ」
「いや、だって隊長、クリスマスプレンゼントに「私」って、つまりは・・・・・」
「今は、何も言うな」
食事がまだ済んでいない。残すという行為は、あまりしたくないのだ。いくら4大貴族とはいえ、飽食でであることは白哉は嫌いだった。
だから、豪華であるとはいえ二人分の食事だけで、食べ終えることのできる量しかでてこなかった。
「いいだろう。来い、恋次」
許可を与えると、恋次は壊れものを扱うかのように白哉を抱き上げて、褥に寝かせた。
「あ・・・・・・」
服の上から、次々に刺激を与えられる。抱きしめられて、口づけを交わした。
飲んでいたワインの味がした。
「ん・・・・」
ぴちゃりと舌が絡まるキスをする。体が熱くなってくるのが分かった。
死覇装を脱がされていく。
白い白い肌が、露わになる。
傷一つない。反対に、赤銅色の髪をした恋次は、自己鍛錬から敵に負わせられたものまで、戦士としての勲章がたくさんあった。
左胸の傷跡に、白哉が手を当てた。
「まだこの傷、残しておるのだな」
「そりゃ、あんたがくれたものだから」
義妹であるルキアを助けようと、裏切った恋次を倒した。その時につけた傷だった。
「あの時------------しかと、刃は私の首に届いていた」
大戦を経験し、さらに恋次は強くなった。けれど、それは白哉も同じで。
二人の差は、大きくなることはあれど、縮まることはなかった。
「ん・・・・・・」
鎖骨の上にキスマークを残された。そのまま、死覇装を着ていれば見えない位置にたくさんキスマークを残された。
「ふ・・・・」
くすぐったくって、そんな声がもれた。
「あーもう、あんたかわいすぎ」
恋次が、平な胸を撫でてくる。脇腹をなでられ、無駄な筋肉などついていない体を愛撫してくる。
胸の先端をひっかかれると、甘い痺れを感じた。
「あんたのここ・・・・こんなに濡れてる」
下着を脱がされて、先走りの蜜を流す花茎を、あろうことが恋次は口に含んだ。
「ひあ!」
いきなりの刺激に、何も考えられなくなる。
恋次は白哉の花茎を手でしごきながら、じゅぷじゅぷと口淫した。鈴口を舌で刺激されているうちに、白哉は恋次の口の中に放ってしまった。
「あああ!」
白哉が放ったものを、恋次は当たり前のように飲み込む。
「少し濃いですね。最近してなかったから・・・」
「あ、言うな・・・・・・」
潤滑油で濡れた指が体内に入ってきた。
「んん・・・・・・」
異物感は否めない。
でも、コリコリと前立腺を刺激されて、白哉は体をはねさせた。
「ひあああああ!」
「ああ、2回目いっちゃった?」
「あ、いうな・・・・ああっ!」
指を体内で曲げられて、前立腺にそれが当たる。きもちよすぎて、どうかになってしまいそうだった。
「もうよい。早く、来い・・・・」
「隊長・・・・好きです。愛してます」
「あああああああ!」
恋次の熱に引き裂かれて、白哉は唇をかんだ。
「ん!んんんん!!」
自分の手をかんで、なるべく声を押し殺そうとすると、恋次がその手に口づけ太。
「声、きかせてください。あんたの声、すごく腰にくる・・・・・」
「んっ!」
自然と、白哉の腕は恋次の背中に回された。
ズッズッと中を犯していく熱は、半端な質量ではない。
ぐちゅぐちゅと水音をたてて、浅い部分を犯された。
「あああ!」
前立腺を熱でいじられて、また何も考えられなくなる。
キュウッっと中が締まって、恋次は欲望を白哉の中に注ぎ込んだ。
「まだ、してもいいですよね?」
「あ、恋次・・・・・愛している」
その言葉に満足そうになりながらも、白哉を犯した。
「あああああああ!」
白哉を無理やり立たせた。
ズルリと引き抜けば、結合部からが恋次が出したものが溢れて、太ももを伝っていた。
「ひああああ!」
壁によりかかってなんとか立っていられる状態の白哉を、穿つ。
何度もそうしていると、白哉は何度目かも分からない精液を吐き出した。それでもしつこく犯してやると、もう出るものがないのか、先走りの蜜だけを零した。
「ああっ!恋次、もういけ・・・・つらい」
最奥にたたきつけると、びくんと白夜の体がはねた。
もう出るものもないのに、いってしまったのだ。
ドライのオーガムズを経験して、白哉は戸惑っていた。
「隊長、ドライでいくことは何も悪いことじゃありません。好きなだけいってください」
「あああ!!!」
立ったまま、前立腺をすりあげられて、また白哉はいってしまった。
「隊長の中やべぇ・・・・・吸い付いて、離れない。よすぎる」
恋次も、3回目になろうかという熱を、白哉の最奥にたたきつけた。
「ん・・・・」
性行が終わり、ずるりと引き抜くと、たらたらと恋次の放ったものが溢れてきた。
「湯殿いきましょう・・・・肩貸しますから」
「うむ・・・・・・」
交わった直後の湯浴みを少しきついが、後始末をしても完璧にぬぐいきれず、かぴかぴした体でいることのほうが、白哉には嫌だった。
湯殿に行き、髪も体も洗い、恋次が中に出したものをかきだした。
「んあ・・・・・・」
その声に、恋次の息子は反応しそうになったが、我慢だ。
これ以上白哉を抱くと、白哉は行為を嫌がって抱かせてくれない。
二人が入っても広い浴槽は、白桃の湯だった。
「愛してます、隊長」
そう言って抱き締めると、白哉もおずおずと抱き締め返してくれた。
「私も、貴様を愛している・・・・・・」
まるで、夢のようだった。
白哉に愛を囁かれるなんて。
椿の花を手折って誕生日プレゼントにした頃から、もう1年近くが過ぎようとしていた。
あの時の椿の花は、まだ氷室で凍りづいたまま花を咲かせているという。
6番隊を象徴するのは椿。
清廉潔白。
まさに、白哉そのものであった。
恋し、恋され。
この1年で、互いの在りようが大きく変わった。
恋次は白哉を必要とし、白哉もまた恋次を必要としてくれた。
愛されることが、これほど幸せなことだとは思いもしなかった。
恋し、恋され。
永劫の時を、生きていく。
傍らに、寄り添いあいながら。
浮竹死んだけど幽霊です憑いてます18 映画鑑賞会とレモン
年末年始は、総隊長である京楽の仕事も休みだ。
でも、休みが少し長いせいですることもなく、暇だった。
暇なので、幽霊に触れる手袋で浮竹の頭を撫でたり、脇腹から胸にかけてを触っていると、浮竹に怒られた。
「これは、こんなセクハラまがいのことをするために、作られたわけじゃあないんだぞ!」
「ごめん」
浮竹に怒られて、京楽はしょんぼりとなった。
進化した伝令神機を使い、音楽とホログラムで映画を再生させて時間を潰した。
リングと、リング2を見た。
「貞子が・・・・・・」
「貞子おおおおお」
二人とも、作り物と分かっているのに、恐怖にかられて、浮竹は無理に実体化してまで京楽と抱きあった。
「怖かった・・・・」
「現世で一時期流行った映画らしいけど・・・洋風の映画はもっと怖いけど、和風のものはじっとりとした怖さがあるね」
「俺も幽霊だぞ?俺は恐くないのか?」
「浮竹は幽霊っていっても悪霊でもないしね。僕の恋人だ。怖いわけがない」
ふと、伝令神機で涅チャンネルをセットした。
「なんなのだネ!年末年始くらい、休みをくれないのかネ!」
「いやぁ、リングとリング2のお化けみたいな義骸、作れないかい?」
「そんなもの、作ってどうするというんだネ!」
「年末に映画鑑賞会を開くことに決めたんだ。最後に義魂丸を入れた義骸で、みんなを驚かせようと思って」
「ふむ・・・・君が思いつくわりには、面白そうじゃないか。いいネ、用意しておこう」
こうして、年末の最後に、護廷13隊の隊長副隊長全員を収集した隊首会が開かれ、それからそのまま映画鑑賞へと流れていった。
「ひいいいいいいいいい」
松本が、白目をむいて気絶した。
「おい、松本!」
日番谷も恐そうな顔をしていた。
ホラームービーが苦手な白哉に至っては、失神していた。
ずるり、ずるり。
「祟ってやる・・・・・・」
「きゃあああああ!」
ルキアが悲鳴をあげた。
長い黒髪の貞子が、画面から這い出してきたのだ。
阿鼻叫喚地獄となった。
「破道の4、白雷!」
ボン!
DVDプレイヤーと、テレビが、音を立てて壊れた。
貞子の義骸に、とどめをさしたのは日番谷だった。
「ふう・・・虚じゃないみてぇだけど、なられたら困るからな」
「いや、これみんなを驚かせようとして・・・・」
説明すると、京楽に批難ゴーゴーだった。
「こわかったんですからぁ!」
松本が、京楽の首を締め上げた。
「兄の行動は、褒めれたものではない」
「あれー朽木隊長、失神しておいてそういうこというの?」
「ぐ・・兄など、もう知らん!」
「まぁそういわずに、白哉」
幽霊の浮竹が、気分を害していたメンバーに謝ったり、ものでつったりして、機嫌をとる。
「こんなつもりじゃなかったんだけどなぁ。ただ、みんなで怖がってきゃあきゃあ言おうと思ってただけなんだけど」
「君はそういうところが浅はかというんだヨ」
「涅隊長だって、喜んで貞子の義骸作ってたじゃないか」
視線が涅マユリに集中する。
「なんのことだかわからないネ。私は忙しいのでこで失礼するヨ!」
結局、みんなそれなりの恐怖を味わえたと、納得してくれた。
「あーもう、映画鑑賞会っていうから、きっとお涙ありのラブストーリーだと思ってたのに、
ホラームービーとか最悪だわ」
松本は、楽しめなかったようだった。
「あー腹立ってきた。今度の京楽×浮竹は略奪愛にしましょ。朽木隊長に美味しくもっていかれる最後に・・・・・・」
「兄は、まだ同人誌を続けているのか」
びくりとなった。
もう去ったと思っていた白哉が、まだいたのだ。
「兄の同人誌に、私を出すことは許さぬ。出した暁には、千本桜の塵になると思え」
「うわーーーーん」
松本は、泣きだした。
「松本、みっともねぇから泣くな!」
「だって隊長、朽木隊長がいじめるーーーー!」
「元はお前が悪いんだろうが!同人誌を続けるのはいいが、朽木は出すな!俺のところにまで被害が及ぶ!」
以前、恋白で同人誌を出したことがばれて、松本が普段使っている隊首室から執務室に至るまで、半壊にされたのだ。
「じゃあ、解散ってことで」
みんな、思い思いに一番隊執務室を後にする。
「あーあ、テレビとDVDプレイヤー壊れちゃったな」
「何、買いかえればいいだけだよ。お金なら腐るほどあるからね」
「全く、京楽は・・・・・」
浮竹は、日番谷に氷漬けにされた貞子の義骸から、手だけを実体化して義魂丸を出した。
恐怖用に作られており、たまに祭りで開催される「お化け屋敷」なんかに配置された義骸から取り出したもので、借り物だったのだ。
「義魂丸が無事でよかった」
「そうだね」
「壊れていたら弁償ものだぞ。義魂丸を弁償だなんて、ばかげてる」
「ねぇ、浮竹」
ふと、寂しそうな顔で京楽が切り出す。
「なんだ?」
「浮竹は、貞子みたいに悪霊にはならないでね」
「なるなら、とっくにそうなって虚になってるだろうさ」
「そうだね。浮竹が虚にもなれない幽霊でよかった」
少しだけ実体化して、京楽を抱き締めた。
「虚になるかもしれない幽霊と、抱きあえるはずないだろう?」
「うん、うん、そうだね」
キスをした。
浮竹は霊体のまま、レモンのキャンディを舐めていた。
キスは、レモンの味がした。」
お年玉
「ありがとう京楽」
「まてまてまてまて。隊長にお年玉?普通に隊長が自分の親戚とかにあげるはずでしょう!何ちゃっかり、京楽隊長からお年玉なんてもらってるんですか!」
海燕のもっともな言葉であるが、浮竹はかわいらしく首を傾げた。
「俺は、毎年京楽からお年玉をもらっているぞ」
「100万ほどね」
「いやいやいや。隊長にあげる京楽隊長もおかしいけど、そもそも金額がやばい!1万ならまだわかるけど、100万ってなんですか!俺の給料より上じゃないですか!」
「なんだ、海燕君もお年玉欲しいの?」
「いりません!」
本音を言えば欲しいけど、そんなお金で左右される関係になりたくない。
「じゃあ、飴あげる」
飴玉は素直にもらった。
お年玉と飴玉なんて雲泥の差があるが、これでいいのだ。海燕が京楽からお年玉をもたうことなどない。
浮竹は、さっそくもらったお年玉で京楽と共に甘味屋まで出かけてしまった。
「ぜんざいを4人前」
甘味屋で、京楽の分もいれてぜんざいを4人前頼んだ。3人前は浮竹が食べるのだ。
やってきたぜんざいを、浮竹は幸せそうに食べた。
「おはぎを3人前。あと白玉餡蜜を3人前」
次々に注文していく。
京楽は、ぜんざい一人分で満足したらしかった。
食べに食べて、お会計は4万をこした。
京楽からもらったお年玉で、京楽の分まで勘定を払う。
「なんか俺がおごってるんだが、元はお前の金だから、あんまりおごった気にならないな」
「まぁ、いいじゃないの」
そのまま、一度雨乾堂まで帰還する。
「おごってあげたんですか」
「なんでわかった」
海燕に言うと、彼はこう言う。
「あんたのことだから、飲食代以外に使うことがない」
「そうでもないぞ!ガチャガチャしたり、駄菓子を買ったり・・・って、駄菓子は飲食代か」
「はぁ?ガチャガチャ?あんた、自分の年齢知ってますか?」
「500歳くらいだ。多分」
「はぁ・・・・・」
死神の寿命は千年。年を数えることなど、とうに止めてしまった。
「そうだ!新しいフィギュアのガチャガチャが今日入荷なんだ!行くぞ、京楽!」
「勘弁してくださいよ・・・・・・どこの子供ですか」
長い溜息をつくが、すでに浮竹の姿はなかった。
「ええい、最後の元柳斎先生がでない!京楽は10個もだぶっているのに!」
「だぶる僕って、ちょっと多すぎじゃない?」
300円のがちゃがちゃだった。
1万円札を崩して、またガチャガチャに手をかける。
「おっしゃああ!元柳斎先生ゲット!」
だぶった京楽は、おもちゃはリサイクルにという入れ物に捨てる浮竹。
「ちょっと、僕をそんなに簡単に捨てないんでよ!」
「別にいいだろう。10体もだぶってたんだ。9個はいらない」
「僕がかわいそう!」
「なんだ、そんなに気に食わないのか?」
「うん」
すねた京楽に抱き着いて、キスをすると、京楽はにまーっと情けない顔になった。
「ん・・・」
舌を入れてきたので、舌を絡めとり、膝を膝でわり、敏感な部分を袴の上からなぞると、浮竹はびくんと体をはねさせた。
「きょうら・・・・こんな場所・・・ああ!」
いってしまったらしい浮竹は真っ赤になっていた。
子供たちがいるような場所で、こんなこと。
「雨乾堂に帰ろうか」
体に力の入らない浮竹を抱き上げて、瞬歩で雨乾堂まで戻ると、海燕に3時間は入ってこないよにいうと、浮竹の衣服を脱がしていく。
「ああ、下着をこんなに濡らして・・・・・」
「いうな」
先走りの蜜と、白濁した液で汚れた下着をぽいっと投げ捨てて、浮竹の体に自分のものだという証を刻んでいく。
「ああっ!」
胸の先端を何度もかりかりとひっかいてやると、また浮竹の花茎から蜜が零れ落ちた。
「随分、淫乱な身体になったね」
「誰のせいだと、思っている!」
「僕のせいだね」
潤滑油に濡れた指が入ってくる。前立腺がある場所をこりこりされた。ぐっと中で指を曲げて、それが前立腺にあたって、浮竹は京楽の体の下で、痙攣した。
「ああああ!!」
白濁した液を出す。
「十四郎・・・・愛してるよ・・・・・」
ズッと、音を立てて京楽が入ってくる。
「ううん!」
衝撃に、息ができなくなる。
だが、すぐに律動を開始されて、浮竹は白い髪を宙に乱した。
「ひあああああ!」
「もっと啼いて、十四郎」
「春水・・・ああ!」
前立腺ばかりすりあげてくる動きに、快感で涙が零れ落ちる。
「あ、いい・・・もっとそこ・・・・ああああ・・・・」
何度も前立腺を刺激されて、奥の奥まで入ってきた。
京楽を締め付ける内部に、京楽も浮竹の中に熱を放っていた。
「ああ!」
それでも、まだ終わらない。
京楽は、2時間以上時間をかけて浮竹をゆっくり犯した。
最後には、浮竹もぐったりしていた。
濡れたタオルで後始末をするが、どうせこの後は湯あみだからと、意識を失った浮竹に死覇装を羽織らせて、京楽も袴ははいたが、死覇装を羽織っただけの恰好だった。
約束の3時間がすぎて、海燕がやってくる。
「なんて恰好してるんだあんたら!情事の後ですって俺に見せつけたいんですか!」
「いや、そんなわけじゃあないよ」
「ん・・・・海燕?」
「隊長、大丈夫ですか?狼に食べられたんでしょう。操は無事じゃなくていいから、中身のほうはまともですか?」
「ん・・・中に、京楽のが残ってる・・・湯浴み、してくる」
そう言って、浮竹は湯殿に消えていった。
「僕も湯浴みしてくるよ」
京楽と浮竹は、よく一緒に湯浴みをするので、それ自体は何も思わなかった。
白濁した液のついたシーツやら、死覇装を洗うのは海燕だ。
普通なら洗濯女が他の隊にはいるのだが、いくら隠していないとはいえ、隊長の男同士で逢瀬をした後の洗濯物なんて洗濯させられない。
「はぁ・・・・また、汚してくれちゃって・・・・・」
思い切り抱き合ったのだろう。白濁した液は、死覇装だけでなく、隊長羽織まで汚していた。
なんともいえないもやもやした感情を抱きながら、二人が汚したものを回収して、新しシーツ、死覇装、隊長羽織、下着を用意してやった。
「年のくせに、盛んなんだから」
海燕は、大きなため息をつくのであった。
それいけ一護君 年明け
貴族への挨拶回りを終わらせた白哉とルキアはともかく、無理やり連れていかれた一護はくたくだになっていた。
4大貴族の集まる会場で、一護は嫌気があったせいでこれでもかというほど飲んで、潰れた。
「全く、世話のかかる!」
「うへへへ、ルキアかわいいなぁ」
「しっかりせぬか一護!」
会場から朽木家へ、仕方なしに瞬歩で帰った。
「ルキアかわいいーーー」
ルキアのべったりと張り付いて、どうあっても離れなかったので、そのままルキアと一緒に一護は与えられていた寝室に放り込まれた。
「ルキア、かわいい」
そればかりを繰り返す、酔っぱらった夫を抱き締めて、布団の中に入ると、互いの体温がきもちよかったのか、一護はルキアから離れて寝てしまった。
「全く・・・そのような台詞は、素面の時に言ってくれ」
ルキアは、夕食をとるために食堂に向かった。
一護は、結局次の朝までずっと眠っていた。
朝になり、少し痛む頭に顔をしかめる。
「俺、どうしたんだ?」
「貴様、会場で浴びるほど酒をのんで、酔っぱらって潰れたのだ。覚えていないのか」
「なんも覚えてねぇ」
「私のことをかわいいかわいいと連呼していたぞ」
「ああ、なんかふわふわしてて・・・ルキアが俺を誘ってきてた」
「たわけ!誘ってなぞおらぬわ!」
頭をはたかれた。
「ルキア、かわいい」
「う」
「なぁ、こっちを見てくれよ」
「なんだ」
「ルキア、すっげーかわいい」
ルキアを抱き締めて、キスをする。
真っ赤になるルキアが余計に愛らしく見えた。
「ルキア・・・・・・」
「一護・・・・・・」
見つめ合う二人を、じーっと見ている視線があった。
「おう、邪魔してるぞ」
「恋次!お前、いつからいた!」
「一護、てめぇがルキアのことかわいいとか言い出した場面から」
「ほとんど見てたんじゃねーか!夫婦の時間を邪魔するな!」
一護が本気で怒りだす。
「って言われてもなぁ。俺は隊長に呼び出しくらっちまって」
「白哉が?」
「毎年恒例だよ。お年玉ってやつ」
「はぁ!?」
一護は、父親からお年玉をもたっていたのは中学までだ。高校に進む、バイトができるだろうともらえなくなった。
「白哉が恋次にお年玉・・・・?」
「言っとくが、ルキアもだぞ。毎年お年玉をもらっていた。今年は一護、てめぇの分もあるんじゃねーか?」
絶対、俺の分はないに決まっている。
そう思っていると、恋次もルキアも一護も、白哉に呼ばれた。
「あけましておめでとうございます、兄様」
「あけましておめでとうございます、隊長」
「あけおめことよろ、白哉」
最後の略した、一護のどうでもよさそうな言葉に、白哉は柳眉を顰めた。
「あけましておめでとう、ルキア、恋次、ゴミ」
「おい、今ゴミつったな?」
「気のせいだ」
はっきりと聞こえた。ゴミか・・・空気とどっちがましなんだろう。
「おい、空気」
「なんだよ」
「空気にも、ちゃんとお年玉を用意してある」
「まじかよ!」
4大貴族の朽木家のお年玉。
小切手とかだったらどうしよう。
いや、白哉に限って一護にそんなに渡すわけがない。ルキアとの手切れ金としてなら渡しそうだけど。
まず、恋次にお年玉を渡した。
10万入っていた。
次にルキア。
分厚い札束で、100万入っていた。
最後に一護。
チャリン。
10円玉が2枚入っていた。
「ふ、こんなことだろうと思ったぜ」
最初から期待していなかったので、ショックも何もなかった。
「これもやろう」
手書きの、何かの券だった。
「何々・・・・・卍解、千本桜景厳にめっためたにされる券・・・・こんなのいるかああああ!」
「これもやろう」
「何々・・・・肩を揉んであげる券!?俺が白哉の肩を揉むのかよ!」
「そうだ。嬉しいであろう。名誉と思え」
「こんなもんいるかああああ!」
びりびりに破り捨てた。
「仕方ない。これをやろう」
美味い棒を10本渡された。
それをもぐもぐと食べながら、100万ももらってもルキアには使い道がないだろうなと思った。ルキアの欲しがるものはどんな高価なものでも、大抵白哉が買い与えている。
「隊長、ありがとうございます!近所のガキ共に、お年玉あげてからけっこう金とんでいっちまって・・・・・京楽総隊長に言って、給料前借りするところでした」
恋次は心の底から喜んでいたし、ルキアもこれでチャッピーの超レアの等身大人形が買えると喜んでいた。
「20円、ありがたくいただいていく」
「おい、ちょっと待て、一護!」
「なんだよ」
「その十円玉・・・・・純金じゃねーか!」
「へ?」
「尸魂界で、護廷13隊発足500年記念に作られた、純金でできた10円玉の形をしたコインだ。間違いねぇ・・・1枚100万のプレミア価値がある。それが2枚ってことは、200万か!?」
「おい、どういうことだ白哉・・・・・って、いねぇ」
「隊長は、隊長なりに一護のこと気に入ってるんだぜ。今頃照れて顔を洗ってるぜ」
「そういうもんなのか?まぁいい、記念ものなら売るわけにいかねーし、金に困ってるわけでもないし、大事にとっとくか」
白哉は、恋次が言った通り冷たい水で顔を洗っていた。
自分のいる場所では、気づかれないと思っていたのだ。
白哉は、別に一護のことを嫌いなわけではない。ルキアの夫、義弟としてそれなりに思っている。
「はぁ・・・あのような場でばれるとは。どのような顔をして一護と接すればよいのだ」
「兄様、普通でいいのです!」
白哉を心配して、やってきたルキアが、顔を洗ったばっかりの白哉にタオルを差し出した。
「一護は、何か言っていたか」
「記念品なので売ることもできないから、大事にとっておくと申しておりました」
「そうか・・・・・」
それから数日の間は、一護と白哉はぎこちなかったが、すぐにいつもの日常に戻っていった。
「ルキア、かわいい・・・・」
「ふふ、くすぐったい」
ルキアの膝枕の上で、一護はルキアと戯れていた。
「かわいい」
「貴様は、かっこいいぞ」
「お前のかわいさには負ける」
ルキアを抱き締めて、唇に触れるだけのキスを繰り返す。
「随分甘えん坊なのだな、一護」
「この正月、ルキアとあまり触れあえなかった」
「仕方なかろう。年始は忙しいのだ」
「ルキア成分が不足してる・・・・補充していいか?」
耳を甘噛みしてやると、ルキアの体がはねた。
「ひゃう!」
「耳、敏感なのか?」
「こ、こらやめぬか一護」
耳朶をやわやわと触られて、耳に舌が入ってきた。
「きゃう!」
「ルキア、かわいい・・・・・」
閉じ込めて、もう誰にも見せたくない。そう思った。
「あ、兄様からメールだ」
伝令神機がなり、ルキアは一護に膝枕をしてそれを読んだ。
「7日から、通常通り仕事が始まるそうだ。今年は去年に比べて1日休みがおおいな」
「そうか。7日までなら、あと4日あるな。もっといちゃいちゃしようぜ」
「仕方ないな・・・・・・」
一護に、ルキアも甘い。
砂糖菓子のように甘い時間を二人で過ごした。
夕刻になり、実に3日ぶりの朽木家での夕食だった。それまで、挨拶回りで外で食べていたのだ。
伊勢海老がこれでもかというほどいた。
「うわ、豪華だな・・・・・・」
茹でたカニの足もあった。
「本来なら、年始から祝うべきであったのだが、貴族への挨拶回りで遅れた。ルキア、一護、よくぞ朽木家の者として立ち振る舞った。見事であった」
一護の場合、ルキアの影に隠れて、ただ立って飲食をしていただけだったのだが、それでも朽木一護という名はでかかった。
尸魂界を二度の救った英雄を、朽木家に迎え入ることに最初は反対の声もあったのだが、今ではこちら側が婿に欲しい、と言ってくる始末だった。
「一護、貴様は次期当主だ。貴族であることに、早く慣れろ」
「いやいやいや。俺に当主とか絶対無理!それよか、俺とルキアの間の子を当主にしてくれよ」
「貴様の願い、しかと聞き届けた」
白哉は、薄く微笑んだ。
「え?俺なんか変なこと言ったか?」
「たわけ!まだ子などできておらぬであろうが!」
ルキアに頭を思い切りはたかれた。ルキアは真っ赤になっていた。
でも、そんなところも本当にかわいくて。
「ルキア、かわいい・・・」
そう言うと。
「兄様の前だぞ!」
そう言われてお尻をつねられた。
「よい。ルキアと一護は新婚だ。甘い雰囲気を出すこともあるだろう。私がいても、構うことない」
「だってよ、ルキア。これからはもっと堂々といちゃつけるな」
「恥ずかしいであろう!兄様、一護などめっためたのぎったぎったにしてくれてよいのです」
「そうか・・・散れ、千本桜・・・・」
「おい、ルキア何言ってるんだよ!白哉も真に受けるな!」
危うく千本桜に襲いかかられそうになって、やっぱ白哉って俺のこと嫌いじゃないのかと思う一護がいた。
それいけ一護君 年末年始
今年もあと数日で終わりだ。
今年もいろんなことがあった。
13番隊の副隊長になってから、一護はお盆の日以来のまとまった休みをもらった。
それはルキアも同じで、いちゃいちゃできると思っていたのに、白哉も同じく休みだった。
「ルキア、好きだぜ」
「貴様はそれしか言えんのか!邪魔だどけ、大掃除をするぞ」
「えー」
「えー、じゃない!」
その日、朽木家では大掃除が行われた。主に雇っている女中がしてくれるのだが、寝室はルキアと一護が、白哉の部屋は白哉本人が掃除するらしかった。
「白哉が掃除?掃除なんかできるのか、あいつ」
「大半は清家がやってくれる」
「やっぱ一人じゃできねーんじゃねーか」
そういうルキアも、ちよが大掃除を手伝ってくれていた。
「あ、ちよさんすまねぇな」
「いえ、私はルキア様のお世話をするためにいるので」
きっと、白哉もこんな調子で清家に面倒を見てもらっているのだろう。
大掃除が終わり、ピカピカになった寝室で横になった。
「なぁ。年末年始って、することねーんだけど。店とか閉まってし」
「たわけ!朽木家は4大貴族だぞ!貴族同士の挨拶に・・・・・」
「あ、俺パスな。そういうの向いてないから」
「ずるいぞ一護!私とて、好き好んで貴族の交流をしたいわけではないのだぞ!」
そんなルキアを抱き締めて、口づけをしていくと、段々とルキアが大人しくなってくる。
「するのか?」
「していいのか?」
「しないのなら、知らん!」
「するする!」
ルキアをしいた布団に押し倒して、二人は体を重ねた。
年末も終わろうとしていた。
白哉は、現世のテレビでDVDをかりて見ていた。
「貞子が・・・・・・」
またか。
白哉はホラーものが嫌いなくせに、よくホラームービーを見た。
「エクソシストが・・・・あああああ」
ぶんぶんと頭を振って、怖いことを考えないようにしている白夜の前にきて、ハンニバルのDVDを渡した。
「怖くないから」
大嘘だ。レクター博士のカニバリズムのホラームービーだ。
ハンニバルを見た後、白哉は10分ほど意識を飛ばしていた。
「人間が人間を食う・・・・・なんとおぞましい・・・・」
そりゃ、レクター博士だからな。
「一護、貴様私に怖くないなどといって、このような恐怖の映画を見せるとは、私の当主の座を狙っているということだな!?」
え、なんで!?
「いや、飛躍させすぎだろ!」
「私が恐怖のあまり心臓が止まるのを狙っているのであろう!?私は、まだ当主の座を渡すつもりはないからな!」
「いや、頼まれてもいらねーよ!」
4大貴族、朽木家の当主。響きからして重圧しか感じない。
その日は、焼肉だった。
「う、肉は・・・・・・」
ハンニバルで、カニバリズム、つまりは人間が人間を食べるシーンを見てしまった白哉は、食欲をなくして狐うどんを食べていた。
唐辛子がいっぱいかかっていた。
その日、白哉はルキアと一護の寝室にやってきた。
「どうしたんだよ、白哉」
「貞子が・・・・エクソシストが・・・レクター博士が・・・・」
「怖くて一人で寝れないなら、はっきりそう言えよ」
「怖くなどない!ただ・・・・夢に出てきそうで・・・」
そんなことをいう白哉を、かわいいと思ってしまった。
「幸いなことに部屋は広いし、予備の布団もある」
「ルキア、一緒に眠るぞ」
「はい、兄様!」
ルキアの隣の布団は一護のものなのだが、そこを白哉が占領してしまった。
「おい、お前の布団はこっち・・・・・・」
よほど怖かったのか、白哉は安堵してそのまま眠りについてしまった。
「あーもう。ルキア?」
見ると、ルキアも眠ってしまっていた。
「俺、全然眠くないんだけど・・・・昼間寝すぎた」
仕方なしに、食堂にきてテレビをつけて、DVDプレイヤーにエクソシストを入れてみた。
「エクソシストが・・・・・」
次の日、そんなことを口にしてカタカタ震えている一護の姿があった。
それ見たことかと、白哉がハンニバルの映画を見せた一護に、塩をふりかけた。
「悪魔を体内からださねば」
ばっさばっさと塩をかけられて、寺から高層が呼ばれてやってきた。
「黒崎一護に悪魔が乗り移っている。お祓いを」
本当なら神父を呼ぶべきだろうなのが、尸魂界に教会はほとんどなく、神父もいない。
「はぁ~なむなむなむ」
ぼっさばっさと神聖だという木の枝で、一護は叩かれた。
「いい加減にしやがれ!」
「悪魔だ!悪魔が入っている!」
高僧はそういって、一護にお清めの聖水をぶっかけた。
ピキピキピキ。
一護の額にいくつもの血管マークが浮く。
「白哉にも悪魔が乗り移っているんだ。俺が呪った」
「お祓いじゃあああああ」
白哉にも塩がまかれ、聖水をぶっかけられた。
「一護、貴様・・・・」
「一緒にお祓いされようぜ~白哉義兄様~~~~」
二人は、仲良く高僧のお祓いを受けた。効果なんてなにもなかったのだが、白哉は安堵していた。
「これでもう、エクソシストの悪魔も去っただろう」
その日の夜、白哉の部屋を訪ねて、一護はエクソシストの悪魔がとりついたようにカサカサと動いてやった。
白哉は、悲鳴もあげずに気絶した。
「まだまだだな、白哉義兄様」
次の日の朝、一護は木の枝にくくりつけられていた。
「なんだこれ!?」
「清めねば・・・・・・」
ぱちぱちと火の爆ぜる音がする。
「ま、まさか火あぶりか!?」
「たわけ、兄様はそのようなことはせぬ」
「ルキア、助けてくれ!」
「悪魔にとり憑かれておる」
煙で、これでもかというほどいぶされて、流石の一護も謝った。
「悪魔がとり憑いたとか全部嘘だから!」
「何、嘘だと?では、あの高僧の言った言葉は・・・・・」
「全部、口からの出まかせだろ」
「むう、許せぬ」
一護は、ルキアに木の枝から解放してもらった。
「お清めの聖水と塩をこんなに買ってしまった」
白哉は、勿体ないと一護にお清めの聖水をばっしゃばっしゃとかけて、塩をまいた。
「白哉義兄様・・・・・お前もくらえ!」
お清めの聖水を手に、白哉にもかけていく。塩もかけあって、二人ともびしゃびしゃになった。
「兄様、一護、こんな寒い時期に楽しそうに水浴びしても、風邪をひいてしまいます!」
二人して、別々の湯殿に追い立てられて、暖かいお湯に浸かって冷えた体を温めた。
「なあ白哉。年末年始くらい、一時休戦といこうぜ」
「よかろう。年があけると、貴族への挨拶回りで忙しくなる。一護、貴様もくるのだぞ」
「やだ!」
「やだではない。朽木家に名を列ねるからには、出席しもらう」
こうして、年始明けには嫌がる一護をずるずると引きずって、貴族への挨拶回りにでかける白哉とルキアの姿があった。
院生時代の部屋 雪だるま
「浮竹、雪が積もったよ!」
「え、本当か!?」
浮竹は南方の生まれなので、瀞霊廷に来て雪を見るのも始めてだった。1回生の時、空から冷たいものが降ってきて、ずっと凍った雨だと思っていた。
京楽が教えてくれた。
「これは雪っていうんだよ」
積もるのも初めてだった。
ガラリとベランダに続く窓を開ければ、身を切るような寒さと共に、一面が白銀の世界だった。
「雪ダルマを作ろう」
「いいよ」
京楽と二人で、院生の服の上から防寒具を着こんで、耐水性の手袋をして、雪をかき集めて雪だるまの原型を作った。
スコップで、雪をかけかたりして、丸めていく。
「完成だーーー!」
バケツを頭にかぶらせて、木の葉で目と口をつくり、枝をぶっさして手を作った。
浮竹は、京楽が雪だるまの隣に作っていたものを見る。
「かわいいなぁ」
雪兎だった。
「君のほうがかわいいよ。こんなことで夢中になる君がかわいい」
「な、何もでないぞ」
「うん」
変態京楽は、たまに変態でなくなる。今みたいに。
京楽は、雪兎を2つ作った。
「これ、僕と浮竹ね」
「じゃあこの雪玉ルマは?」
「山じいかな」
「先生にしては、太ってるな」
くすくす笑いあっていたが、肺が痛んできた。
「すまない、発作が起きそうだ・・・部屋に帰らないと」
京楽は、浮竹を抱き上げて瞬歩で部屋まで戻った。
肺の発作用の薬を飲んで、なんとか咳込むことも血を吐くこともなかった。
だが、長時間寒い外で雪遊びをしていたせいか、熱が出てきた。
「はぁ・・・・自分の体の弱さがいやになる」
「解熱剤飲んで横になっていれば、熱も下がるよ」
「今日のお前は優しいし、変態じゃないな・・・・珍しい」
「僕はいつでも紳士だよ!」
すたっと立って、懐から浮竹のパンツを取り出すと、それを頭に被った。
「ああ・・・・・お前は、そのほうが安心する」
変態京楽であることに安心するあたり、浮竹もかなり毒されていた。
「ん・・・・眠くなってきた。少し寝る」
睡魔に襲われながらも、雪遊びは楽しくて、熱にを出したことも気にならないほどだった。
次に起きると、夕方だった。
粥を、京楽はもってきてくれた。
まだ、熱は完全に下がっていない。食欲はなかったが、薬を飲むために半分は残してしまったがなんとか食べた。
もう一度、肺の薬と共に解熱剤を飲んだ。
「次に起きる時は、熱が下がっていたらいいな・・・・・」
次に起きると、朝だった。早朝だ。
日差しは冬のわりにはぽかぽかしていて、ベランダに出るといつもと同じ景色が広がっていた。
「ああ・・・・雪だるまもみんな、溶けてしまったのか」
少し残念に思った。
でも、京楽は雪兎を冷凍庫に入れて、保存していた。
「雪うさぎならあるから」
「ああ、本当だ。かわいいな」
「かわいいのは浮竹だよ。今日もかわいい・・・・・・(*´Д`)ハァハァ」
一人くんくんと臭いをかいでくる変態京楽を放置して、学院に登校する準備をする。雪だるまを作った日は土曜の休みだった。日曜は熱を出して寝ていた。
「今日は、斬り合いの授業があるのか」
切り合いといっても、刃をつぶした剣だ。
打撲くらいの怪我は負ってしまうことはあるだろうが、血を流すようなことはない。
念のためにと、4番隊の隊長がくるらしかった。
浮竹もたまにお世話になる、卯ノ花隊長だった。
卯ノ花隊長には謎が多い。護廷13隊ができた頃からのメンバーだという。だが、山じいのように老けてはおらず、若い姿を保っていた。
「今日の切り合い斬り合いは、本気でいくからな」
「僕だって負けないよ」
切り合いの授業になった。浮竹と京楽はペアだった。二人は、己たち二人以外では力の差がありすぎて、試合にさえならないのだ。
15分ほど切り合いを続けていて、ふと汗で道場の板が滑った。
キンキンカキン。刃をつぶした刀で戦っていたが、滑った調子で受け損ねて、肩から切られる形になった。
「そこまで!勝者京楽!」
「くそ・・・・」
全身に汗をかいていた。12月だというのに。
本気の切り合いは、死神になったときの命をかける戦いの代わりになる。
京楽のつぶれた刃が肩にくいこんで、酷い痣になっていた。
「なかなかの腕でした。いずれ、護廷13隊の隊長になるかもしれませんね」
そう言って、卯ノ花はが痣を回道で癒してくれた。
完全ではないので、湿布をはられた。
切り合いの時はあんなに嬉しそうな顔をしていたのに、試合が終わったとたん、京楽の表情が変わる。
「大丈夫?痛くない?」
「ああ、大分回道で癒してもらったから。痣も薄くなってる。数日のうちには消えるさ」
「ああ、もう僕のバカバカバカ。浮竹の柔らかですべすべのお肌に傷を負わせるなんて」
「本気で斬り合ったんだ。それくらい、平気だろう?」
「でも・・・・・」
「ええい、男がめそめそするな」
授業が終わり、寮の自室まできた。
京楽を抱き締めて、キスをしてやると、京楽は浮竹をベッドに押し倒して、院生の服を少しだけはだけさせて、湿布のはっている場所に口づけてきた。
「早く治るといいね」
「ああ」
女ではないのだから、例え傷跡が残ってもどうってことはないのだが、京楽は心配性だ。念のため、京楽の名で4番隊の席官を呼んで、再び回道をかけてもらうと、薄くなりつつあった痣は綺麗に消えてしまった。
「よかった・・・・・」
京楽は、心底ほっとしていた。
「その、京楽の我儘ですみません」
浮竹は、4番隊の席官に謝った。
すると、4番隊の席官は、こういう。
「4番隊は、他の隊と違って危険手当が出ないから、給料が少ないんだ。今回のこの回道で、1年分の金をもらった。ありがたいことだよ」
「京楽のやつ・・・・・」
金をかけすぎだ。
まぁ、みんなハッピーエンドのようなのでいいかと思う、浮竹であった。