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海燕の死

ふと、雨乾堂で荷物を整理していると、古いアルバムが出てきた。

「懐かしいなぁ・・・・・うわぁ、俺が院生時代の写真まである。一番最近のは・・・海燕のか・・・・」

もう、写真など撮らなくなって久しい。

あの優秀だった副官、海燕は死んだ。浮竹が、死神として死ぬ道を選んだ海燕を思う通りに行動させた。あれは、優秀な副官を死なせたのだ。

誰でもない、浮竹自身が。

ふと感傷に浸ってしまい、このままではいけないと頭を振って、アルバムを閉じた。

持っているだけ、悲しくなるだけだ。

海燕には悪いが、海燕の持ち物は全部処分したのだ。めぼしいものは志波家に託した。アルバムの中から海燕が映っている写真だけを抜き取って、鬼道で燃やしていく。

もう、副隊長はいらない。

その浮竹の思いは硬く、数十年経っても、副隊長を置かなかった。

代わりに、3席が2名できた。清音と仙太郎だ。

二人とも、甲斐甲斐しく、浮竹の身の周りの世話から仕事までしてくれた。

数日が経った。

「そういえば、今日は海燕さんの命日ですね」

「ああ、そうか・・・・・」

海燕が死んでから、何年経っただろう?

20年くらいまでは数えたが、数えるだけ虚しくなるだけで止めてしまった。

「今日は、墓参りにいってくる」

京楽を誘った。

京楽は、浮竹が誘うところなら例え火の中水の中、喜んでついてきてくれる。

「京楽、海燕の墓参りに行こうと思うんだ。お前も一緒にきてくれ」

「うん。海燕君には世話になったからねぇ」

思い出の品を処分しても、やはり情は残る。

海燕の墓は、元5大貴族である志波家の廟堂の中にあった。

墓は立派なものだった。

今は落ちぶれてしまったが、かつて志波家は上流貴族の中の上流貴族だった。

「俺は元気でやっている。いつか、俺がそっちにいくまで、待っててくれよ」

「ちょっと、そんな不吉なこと言わないでよ。海燕君、悪いけど浮竹はそう簡単に渡さないからね」

「死人に、渡すも渡さないもないだろう」

「それでもだよ。君、海燕君が死んだ時、茫然となって3日は眠りもせず食べもせず・・・虚空ばかりを見ていて、このまま海燕君が連れていくのかと心配したんだよ」

あの時は、茫然自失としていた。

何故、自分は副官の死を許し、部下を見捨てたのかと。

自分を責めているうちに、生きているのがいやになって、魂魄を滲ませていた。

結局4番隊に運ばれて、卯ノ花に診てもらい、点滴を受けて鎮静剤を投与されて、深く眠った。

あんなに深く眠ったのは、初めてかもしれない。

1週間は起きなかった。

病気というわけでもないのに、起きない浮竹がおかしいと、また卯ノ花診てもらい、心を閉ざして起きることを拒否していると言われた。

「強く訴えかければ目を覚ますかもしれません」

そう言われて、浮竹の耳元で何度も帰ってこいと囁いた。

思いが通じたのか、昏睡状態から10日後には、浮竹は意識を取り戻した。

「あれ、俺は何をしていたんだ?京楽、どうしたんだ?」

「どうしたって君、海燕君が死んだせいでこうなって・・・・・」

「海燕?誰だ、それ」

「え」

本当だった。

浮竹は、生きるために「海燕」の全てを忘れていた。

卯ノ花には記憶は徐々に戻るでしょうと言われ、退院を許可された。

「海燕・・・・言われれば、そんな者がいたかもしれない」

最初の一週間は、そんな存在ほんとにいたのかと疑心暗鬼になりながら。

1か月後には、海燕はいたことを思いだしていた。

そして、2カ月目には自分が見殺しにしたことを思いだして、取り乱した。

「しっかりして、浮竹!もう海燕君は安らかにいったんだから!君にお礼を言っていたんでしょう?」

はっきりと、記憶が蘇り、浮竹は海燕を失ってはじめて涙を見せた。

海燕が死んで、3か月が経とうとていた。


「こいつは、素直じゃないからこんなこと言ってるが、海燕、お前のことを京楽も好いていたんだぞ」

「不思議だね・・・・いないのがこんなに寂しくなるなんて」

「ああ、寂しいな」

隊長!そう言って、寝込んでいたのに熱が下がって甘味屋にいった浮竹を叱る者がいなくなった。

「おはぎ・・・・お前も好きだったよな。ここに供えておくから」

墓の前に、菊の花とおはぎを供えた。

「俺は、これからも歩いていく。京楽と一緒に・・・・・・」

「浮竹・・・・・」

京楽とキスをする。

「ふふ・・・海燕はいつも、俺たちがキスをしても、平然な顔をしていたな。今度副官になる予定の男がいるのだが・・・断るよ、海燕。しばらくの間はお前がずっと副隊長だ」

「でも浮竹、副隊長がいないといろいろ不便でしょ?」

「何、清音と仙太郎がいる。ここ20年以上もなんとかなってきたんだ。大丈夫だ」

でも、雨乾堂は、本当に静かになった。

海燕と3人でぎゃあぎゃあ言い合っていたのが、昨日のことのように思い出される。

「海燕君・・・浮竹は、僕が攫っていくから。君には、あげない」

そう言って、踵を返す。

先に歩き出した浮竹の後を追う。

隊長、ありがとうございます!

ふと、そんな言葉が聞こえた気がして振り返る。

何もなかった。

浮竹は、迷いをふっきって、歩き出す。

明日へ向かって。

京楽と共に。

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エンゲージリング

大戦の傷跡は濃かった。

実に半分以上の死神が死んだ。

そんな中、護廷13隊の被害は少ないと言われれば、そうだろう。

山本元柳斎重國、卯ノ花烈、そして浮竹十四郎。

隊長クラスでは、13人中3人だけだ。

そのうち卯ノ花烈と浮竹十四郎は、道を選び死んだ。

滅却師たちにやられたわけではない。



君が死んで、1日が経ち、1週間が経ち、1か月が経ち、1年が経った。

相変わらず君を想ったまま、毎日を過ごす。

総隊長として、復興に尽力を尽くしたせいもあり、焦土と化してしまった一番隊の執務室も新しく作られた。

「はぁ・・・・君に会いたいなぁ」

1年はあったとう間だった。それからまた時間だけが過ぎていく。

2年、3年・・・・・。

ふと、君の遺品を整理していて、僕あての手紙を見つけた。

死の直前にも手紙を渡された。

その時は、先にいく俺を許してくれ、愛している、迎えにいくまで達者で生きろとか、そんな言葉が書かれてあった。

僕は、勇気をだして僕宛の手紙の封を切り、中身を読んでいく。

引退するまで、一緒に仲良くやっていこう。そんなことがつらつらと書き綴られていた。

君が死んだ時ですら、零さなかった涙があふれて、手紙の上に雫を滴らせた。

「ずるいね君は・・・・・こんな幸せそうな未来図を僕に与えておいて、肝心の君がいない」

あと500年ほど死神を続けたら、一緒に引退して、屋敷で悠々自適な生活を送り、残りの人生を謳歌しよう。

そう書かれてあった。

もう乾いていたと思っていた涙が、溢れるように流れ落ちる。

「浮竹!浮竹、浮竹、浮竹ええええええ!!!」

泣いて叫ぶと、すっきりして涙はとまった。

代わりに、無理やり傷口を塞いだ心臓からドクドクと血が流れ出ていた。

「ふふ・・・・これ、僕がはじめて君にあげたものだ・・・・・」

高いものはいらないとつっぱる浮竹のために、柘榴の色硝子でできた髪飾りをあげた。

他にもいっぱい思い出の品がでできた。

螺鈿策の櫛、翡翠の髪飾り、翡翠のペンダント、お守り石。

僕は、浮竹の瞳の色が好きだった。

翡翠だと思った。

だから、高価なものでももらうようになってくれた君に、たくさんの翡翠の装飾品をプレゼントした。

死の間際まで、君の指に光っていたエンゲージリングが出てくると、また涙が零れそうになった。

墓の下までもっていってほしいと思っていたが、浮竹は死の間際に外して、僕に言ったのだ。

「約束を守れなくてすまない。せめて、このエンゲージリングを俺と思ってくれ」

そんなこと言われても。

僕は、記憶に蓋をするように、そのエンゲージリングも浮竹の遺品の中にいれていたのだ。

道理で、探しても見つからないはずだ。

エンゲージリングを手に取り、外に出て太陽に透かせてみせた。

裏側に、UKITAKEと名前が彫られていた。

小さな翡翠の飾られたエンゲージリングだった。

自分の分の、KYORAKUと名が彫られたエンゲージリングは今も指に光っている。

僕、君のエンゲージリングを小指にはめた。

「おかえり、浮竹・・・・」

エンゲージリングにキスをした。

ああ。

今日から、またしばらくの間不眠で悩まされそうだ。

4番隊にいって、眠り薬をもらってこないと。

君が大切にしたこの世界を、僕は一人で生きる。

見えない君の影を纏いながら。

浮竹。

僕は、君を失ったけど、それでも幸せだよ。

この世界には、笑顔が溢れている。

君が守りたかったものが、守られて息づいている。


「浮竹・・・・・・・・」

その日の夜、眠り薬を飲んで寝たのに、夢を見た。

浮竹が出てきた。

院生姿で、桜の木の下で僕が告白すると真っ赤になって殴りかかってきた。

ああ、懐かしいな。

もっと見ていた・・・・・。

ちゅんちゅんと、雀の鳴き声がして目が覚めた。

「ああ、夢か・・・・おはよう、浮竹」

浮竹のエンゲージリングにキスをした。

また、総隊長としての忙しい毎日がやってくる。

せめて、朝だけはゆっくりしたい。

「また、君の夢を見たいな・・・・・」

そんなことを思いながら、一番隊の執務室にやってくる。仕事の量は多い。

君を忘れることなく、生きていく。

僕が引退するその日まで。

そして、いつか迎えにきてね。

ずっと、ずっと待ってるから------------------。


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卯ノ花と浮竹と京楽2

「卯ノ花隊長、これはないんじゃないか」

「何を言うのです。高熱で倒れて入院したというのに、熱が下がればすぐ甘味屋にいくような患者を、自由にさせるほど甘くはありません」

浮竹は、ベッドの上で簀巻きにされていた。

「これだと、食事もできないのだが」

「その時だけ解いてあげましょう」

「卯ノ花隊長、俺が悪かったーーーーー」

「すでに、一度きつく言いきかせたのに、それを守らない人に人権はありません」

散々ないわれようだった。

その後、夕餉の7時まで放置された。

「卯ノ花隊長、厠にいきたいんだが」

「仕方ありませんね」

簀巻きを解かれた。

ここぞとばかりに逃げだそうとした浮竹の背後にまわり、その腕を捻じ曲げた。

「痛い痛い、いたたた、腕がもげる!」

「あら。腕が折れたら、ちゃんと治療してあげますよ」

にこにこにこ。

微笑む菩薩は、けれど修羅だ。

「夕餉を置いておきますので、食べてくださいね。くれぐれも逃げようとしないように。今度逃げ出したら・・・・細切れにして料理の中にいれますからね」

にーっこり。

そう言われて、浮竹は大人しくなった。

肺の病の入院ではないので、卯ノ花も本当にきつくは怒らない。

肺の発作は生死に関わるので、療養しろと言われたらちゃんとしていた。

ただ熱がある場合は、熱が下がれば病室だろうと抜け出していた。今までばれていなかったが、運悪く瞬歩で病室に戻った時、卯ノ花と出くわしてしまった。

「ああ・・・・俺の人生終わった」

鬼の角をはやした卯ノ花に、1時間ほどこってりとしぼられて、何度も謝ったのに反省していないと布団で簀巻きにされてしまった。

夕飯を食べて湯浴みをして、あとは寝るだけとなったのだが、また浮竹は簀巻きにされた。

仕方ないので、簀巻きのまま寝た。

「ふあ~~」

簀巻きで寝たのは初めてだったが、寝れないわけじゃなかった。

起きた浮竹の簀巻きをとってやり、体温計で熱を測る卯ノ花。

「おめでとうございます。今日も熱がないようなので、退院ですね」

「本当か、卯ノ花隊長!」

顔を輝かせる浮竹の耳元に、囁く。

「今度、肺の病であろうと、癒えて念のための入院になった時は簀巻きですからね」

ひーーーーー。

まだ怒ってるーーーーー。

浮竹は、退院のために自分の私物をまとめた。

卯ノ花烈。下の烈という名の通りの性格だった。

「浮竹、迎えにきたよ。今日退院でしょ」

「ああ、京楽・・・・俺、しばらく入院したくない・・・」

げっそりとした浮竹に、さては病室を抜け出したのが卯ノ花にばれたのだなと、すぐに分かった。

「卯ノ花隊長のいうことをちゃんと聞かないから」

「でも、一日中簀巻きだぞ!飯とか風呂とかの時は解いてくれたが、寝る時まで簀巻きだった」

「どうせ、病室抜け出して甘味屋にでもいったんでしょ?」

「うぐ・・・・・・」

「しかも、きっと僕のツケってことで飲み食いしたんだよね」

「ぐああああああ」

浮竹は、頭をかきむしった。

「4番隊の飯は不味いんだ!病院食ということで質素すぎるし味がしない!甘味屋に行きたくなる!」

「まぁ、僕も一度だけ虚退治の遠征で怪我をして入院したことあるけど、確かに食事は不味いね」

「あら・・・そんなに不味いというなら、あなたが肉になってみますか?」

ひいいいいいい。

でたあああああああ。

卯ノ花は、浮竹の病室でにこにこ微笑んでいた。

「患者には、胃に優しいものを食べさせます。自然と素味になるし、質素になるのは仕方ありません。でも、食事が出るだけましだと思ってくださいね?」

緊急時の入院や、入院費用を払えないものからはとりたてないのだ。

そのせいで、食事が豪華になることは余計にない。

「浮竹隊長も、仕送りなどで入院費が払えないものとして、無料で入院しているのですよ?ただなのに、食事に文句をつけないでください」

「う、すまない・・・・・」

「そういえば、京楽隊長は今日も元気そうですね。そうですが、そんなに献血をしたいのですか・・・・」

「僕、何も言ってないし何もしてないよ!?」

「あなたの血は新鮮なのです。この前たっぷりとった後も元気でしたし・・・さぁ、献血に参りましょう」

「浮竹た~す~け~て~」

連れていかれる京楽に向かって、浮竹は手を合わせて念仏を唱えだした。

「京楽、骨は拾ってやるからな!」

「浮竹、お~ぼ~て~な~よ~」

京楽はたっぷり献血されて、少し干からび帰ってきた。

献血をしたお礼にともらった野菜ジュースをちゅるるるると飲みほした。

「はぁ・・・・どうも、卯ノ花隊長は僕を血液の塊だと思ってるみたいだね。もうしばらく病院にはいたくない・・・・・帰ろう、浮竹」

浮竹は私物を手に、京楽と手を繋いで歩き出す。

浮竹が助けてくれなかったことは、根にもっていなかった。誰であろうと、卯ノ花を言い負かすことなどできない。

雨乾堂について、お互いを抱き締めあって、キスをした。

ここ1週間触れあっていなかった。

何度もキスを繰り返した。

病み上がりなので、京楽も浮竹もそれ以上はしなかった。

もしも病院で盛ったりした場面を見られたら、卯ノ花に闇に葬られる気がした。卯ノ花烈。

本当の名を卯ノ花八千流。

尸魂界きっての隊罪人であり、初代剣八だということを、二人はまだ知らないのであった。









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椿2

「好きです、愛してます隊長!」

しっぽをぶんぶん振る犬のようだと、白哉は思った。

恋次に愛していると告げた日から、何かが急に変わるわけでもなく、平穏な毎日だった。

ただ、恋次が愛しているだの、好きだなどと言ってくる回数が極端に増えた。

いちいち言葉を返すわけにもいかないので、聞き流していると、執務室で恋次が文机に向かっていた白哉をそっと抱き締めた。

「隊長、隊長はどうなんですか。俺の事どう思っていますか」

「しつこい駄犬だと思っている」

「ひでぇ!」

クスリと、小さな笑みを白哉は零した。

「冗談だ」

「ほんとに?半分本気だったでしょう」

「ああ」

そう言えば、恋次は白哉の肩を揉んできた。

「なんだ」

「いえ、また凝ってるなぁと思って」

気持ちよかったので、そのまま肩揉みを続けさせた。

「ああ、もう少し左を・・・・・」

恋次のことを、まるでマッサージ機扱いだったが、恋次にはそれでもよかった。

愛しい白哉に触れれるなら。

15分ほど肩を揉んでもらって、白哉も満足した。

「愛してます隊長」

「-----------私も愛している、恋次」

また聞くことができたその言葉に、恋次は眩しいばかりの笑みを零す。

「お前は、表情がすぐ顔にでるのだな」

「そういう隊長が、顔に出さなすぎなだけです。まぁ、昔の鉄面皮に比べれば、大分感情らしきものが浮かぶようになりましたが」

昔は、薄い微笑みを浮かべることさえなかった。

その頃はまだ白哉のことをただの上官として慕っていた。

もう、10年以上前のことだ。

もう、この関係になって10年ばかりが経つのかと、ふと思った。

いつか、あんたから全てを奪って、俺のものにしてみせる。そう豪語していたが、白哉は緋真のことだけを愛して、恋次のことを愛しているとは言ってくれなかった。

それが、この間誕生日プレゼントを用意できず、椿をあげた頃から変わっていった。あの椿を氷室で保存しているという白哉の言葉に、正気かと思った。

ただの椿だ。

でも、白哉にとっては大切な椿だったのだ。

愛した者からもらった、何気にないものではあるが、椿は6番隊の隊花でもある。

花言葉は、高潔な理性。

いつもの白哉にぴったりの花言葉だった。

「隊長・・・椿の花は好きですか」

「ああ、好きだ。冬の寒さをものともせず、凛と咲き誇る様は美しい」

まだ、椿は咲いている。

次の日、恋次は椿の花を散らした湯を用意していた。

「これは?」

「足のマッサージに使うんです」

「このようなことに椿を散らすなど・・・・」

「そこらへんにいくらでも咲いてますよ」

ちゃぷんと湯の中に、裸足になった白哉の足がひたされる。

綺麗に整った爪を見ながら、足の裏をほぐしていく」

「あ・・・・・」

「隊長?」

「なんでもない。続けよ」

ぐっぐっと、足のツボを刺激していくと、痛いのか気持ちいいのかどちか分からなくなってきた。

「もうよい」

「はい」

足をふいて、足袋をはいた。

「うつ伏せになって寝てください。腰をマッサージします」

うつ伏せになり、いつかの時のようにマッサージしてもらった。ここ最近睡眠は十分にとっているので、あの時のように眠くなりはしなかった。

「最後にこれを」

椿を、髪に飾られた。

「私は、おなごではない」

「それでも、似合っています」

「恋次・・・愛している」

恋次に、口づけた。

白哉からキスをしてくるのは本当に珍しいので、恋次は真っ赤になった。

「隊長、今夜いいですか」

「ああ」

「うっしゃ!」

逢瀬を重ねることを許可した。

爛れた関係だと思った。愛しているといえば、それで終わりになるのだと思った。

でも、違うのだ。

愛しているからこそ、大切にし大切にされるのだ。

気づくのが、少し遅かったが、別れることにならなくてよかったと白哉は思うのだった。

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最後の時まで

俺を許してくれるか、京楽-------------------

ミミハギ様を解き放ち、神掛を行った浮竹には、もうあまり時間は残されていなかった。

この命が費えるのももうすぐだ。

こうなる前に、書をしたためた。

京楽宛に。

中身は、ただ許してくれと。

ただ、愛していると。

そんなことをたくさん書いた。

書きなぐったに近い文だから、誤字脱字もあるかもしれないし、矛盾も大きくあるだろう。

愛しているのに、置いていく。

そのことに、浮竹はいつしか罪悪感を感じないようになっていた。

護廷13隊の死神は、尸魂界のために死なば本望。

それは京楽も一緒だ。

「ああ・・・・先生、卯ノ花隊長、今そちら側にいきます・・・・・」


霊王は亡くなったままだが、世界の崩壊は止まった。

「浮竹!」

浮竹がミミハギ様を手放したのだと知って、京楽は辛い顔をした。



たくさんの犠牲の果てに、ユーハバッハは打ち取られた。

ぱちぱちぱち。

浮竹の遺体を収めた棺は、白い百合の花で満たされていた。

安らかな顔をしていた。

呼吸を確かめなければ、今も生きているようだった。

「君は・・・ひどいね。僕を残していくなんて」

でも、それは浮竹が望んだこと。

護廷13隊の死神は、尸魂界のために死なば本望。

それは京楽も同じだった。

棺に蓋がされて、火葬されていく。

山じいや卯ノ花隊長が死んで、その棺を焼いた時と同じ青天で、その嫌味なまでに雲一つない空を見上げた。

パチパチパチ。

煙が、天高く昇っていく。

棺が完全に灰になるまで、ずっと見守っていた。

残された遺骨を、骨壺におさめる。

つっと、一筋だけ涙が零れ落ちた。

「愛してるよ、浮竹・・・・」

墓は、取り壊した雨乾堂の跡に建ててやった。骨と一緒に、双魚理も埋めた。

それから、月に一度は絶対に墓参りにきた。

命日の時は、遅くまで墓の前で過ごした。

そんな時を千年ばかり繰り返しただろうか。


京楽も老い、命の終わりを迎えようとしていた。

この千年、平和だった。

確かに反乱もあったし、尸魂界を揺るがす事件が何度も起きたが、藍染やユーハバッハのような強大な悪は現れなかった。

もうぼろぼろになった、浮竹からの手紙を手にとる。

「ふふ・・・もう、何が書いてあるのかも分からない」

でも、その文の言葉は心の中に染みている。

いつか迎えにくるから、それまで元気でいろよ。そう、最後に書かれていたのを思いだす。

「僕もこれまでかなぁ・・・・・」

ふっと、眠りが深くなった。

「京楽・・・・・」

「浮竹?ああ、これは夢か・・・・」

何千回も、浮竹の夢を見てきたけれど、これほど鮮明なのは始めてだった。

「-----------迎えにきた」

「ああ・・・・僕の命も、やっと終わりか」

浮竹は若い頃の姿のままだった。

年老いていた京楽の体が、若返っていく。

気づくと、二人とも院生時代の恰好になっていた。

「一緒にいこう。今度こそ、永遠に一緒だ」

「浮竹・・・君と一緒にいけば、君の傍に永遠に居れるかい?」

「ああ。一緒にいってくれるか、京楽」

「喜んで」

二人はもつれあいながら、死を享受した。

京楽春水は、総隊長として千年を生きた末に、老衰で身罷った。

とても穏やかな顔をしていた。

「京楽総隊長・・・・・」

もう決して若いといえぬルキアが、その死を看取った。

棺の中は遺言により百合の花で満たされて、墓は雨乾堂の浮竹の墓の隣に建てられた。

「そうですか。総隊長は、やっと浮竹隊長の元へ、いけたのですね」

ルキアは泣いた。

もうずっと昔に亡くなった浮竹隊長と、京楽総隊長のことを思って。

もう、浮竹隊長という元13番隊隊長がいたということさえ、皆知らない。

二人は、永遠を誓い合って、落ちていく。

そこは色のない世界ではなく、始まりの場所。

霊子の渦となり、新しい命にいきつくのだ。

浮竹は、ずっと待っていた。京楽を。

新しく何かになることを拒絶していた。

そして京楽と共に霊子になり、何かを形作った。

それは、二羽の小さな白い小鳥。

寄り添いあいながら、羽ばたいていく。

(何があっても、もう永遠に一緒だよ)

(ああ、そうだな)

羽ばたいていく。

雲一つない青空を。

まるで、棺を焼いた日に似ていた。







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キスはレモンの味

「なぁ、ルキア好きだぜ」

「知っておる」

屋上で、ルキアと一護は、井上、石田、茶虎と共に昼食をとっていた。

もう、高校卒業まであと3か月しかない。

だから、一護は想いをルキアに伝える。

すると、ルキアは「知っておる」とだけ答えて、それ以上は何も言ってくれなかった。

「はぁ・・・今日も「知っておる」で終わりか・・・・」

チャイムが鳴った。

一護と井上を残し、3人は授業を受けるために戻ってしまった。

「どうしたんだよ、井上。授業でないのか?」

「黒崎君!私、黒崎君のことが好き!」

抱き着いてきた井上に、動揺を隠しきれない一護。

でも、ふっと悲しそうに笑って、井上から離れた。

「それでも、例え振り向いてくれなくても、俺はルキアが好きなんだ」

「朽木さんのことなんて忘れさせてみせる!」

豪語する井上であるが、一護はルキアを好きな気持ちのまま井上と付き合うことはできなかった。

「ありがとう。気持ちだけ、受け取っておく」

「黒崎君!私、いつでも待ってるから!黒崎君が私を見てくれなくてもいい!私は黒崎君のことが好きなの!」

ガタン。

音がした。

そちらの方を見ると、ルキアが立っていた。

涙を、流していた。

そして、そのまま走り去ってしまった。

「まて、ルキア!」

「黒崎君、追わないで!私を見て!私の想いを受け入れて!」

「井上、俺が必要としているのはルキアだ!お前じゃない!」

「酷い!」

井上が泣きだすが、今はそんなことどうでもよかった。

ルキア。

ルキア、ルキア、ルキア。

涙を流すということは、俺に少しでも気があったと受けとっていいんだよな?

走り去っていったルキアを追うが、どこにいったか分からなくなった。

精神を研ぎ澄ます。

ルキアの僅かな霊圧を感知して、川の近くの河川敷にまできていた。

ルキアは、草の上に座っていた。

12月の寒い中、上着も羽織らずに。学校を無断で二人とも抜けだしたので、二人とさぼりということになる。

ルキアの背後から、ルキアに制服の上着をかけてやった。

「一護・・・・・私は、卑怯なのだ。貴様には、私以外などいないと思っていた。私だけが貴様を見ていると思っていた・・・・井上と幸せになれ」

煌めく水面を見つめながら、涙を零し続けるルキアを、そっと背後から抱きしめた。

「何度も言っただろう。お前が好きだって」

「知っている」

そんなルキアの言葉にカチンときて、ルキアの頭を殴った。

「何をする、たわけ!」

「俺が井上に告白されてお前は泣いてるのに、なんでもっと素直になれねーんだよ!「私だけが貴様を見ていると思っていた」だって!?そりゃつまり、お前も俺のこと好きってことじゃねーか!」

「そうなのか?」

「ああ、もう!」

一護は、ルキアを抱き締めた。

「一護、苦しい・・・・・・」

「お前は、俺のことが好きなんだよ。素直になれ。俺もお前のことが好きで・・・両想いだ」

「だが、私はもうすぐ尸魂界へ・・・・・!」

「そんなこと関係ねぇよ。恋愛に年も種族も性別も、住んでるところも身分もなにもねぇ」

「だが、私はいずれ朽木家から、上流貴族に嫁ぐことが決まっておる・・・」

「そんなもの、俺がめちゃくちゃにしてやるよ!」

「ふふっ・・・・・」

ルキアが泣き止み、やや赤い目をしながら笑った。

「そうだと、いいなぁ・・・・」

「そうなる。そうさせる」

「一護・・・」

二人で、手を繋いで河川敷を歩いた。

石を川に投げ入れる。

「あと3か月しかないけど・・・・・一緒に過ごそう。3か月が過ぎたら、会いにきてくれ」

「なんなのだ・・・まるで、恋人同士のようではないか」

「あのなぁ」

一護が、ルキアの頬を両手で挟み込んだ。

「お互い好き同士は、もう恋人みたいなもんなんだよ!」

「そ、そうなのか!?」

「ああもう、これだから天然は・・・・・」

くどくどと、恋愛とはどういうものかを語って聞かせた。

「つ、つまり貴様の部屋で一緒に生活していた時点で、私はその恋人やらと同じことを・・・・」

ルキアは真っ赤になって、ボンと破裂した。

「はう~~」

ショートしてしまったルキアを背中におぶって、黒崎家に帰宅する。

ルキアは意識を取り戻したが、朱い顔で一護のほうをまともに見なかった。そのまま、夕食の時間になり、風呂に入り、消灯前になった。

「なぁ、ルキア。もう一度、今度こそ言葉にしてくれ」

「な、何をだ!」

「ルキア・・・俺はお前のことが好きだ。ルキアは?」

「わ、私は・・・」

「ルキア、かわいい。なぁ、言ってくれよ。はっきり言葉にしてくれ。ルキア」

ルキアは逡巡していた。

想いを完璧に告げることで、今後の死神としての生き方が大きく変わる気がした。

でも、ルキアも伝えたかった。

「一護・・・貴様のことを、ずっとずっと想っていた。尸魂界に、処刑のために連れ去れた私を助けに来てくれた頃から・・・・ずっと、好きだった」

「俺も、お前のことがずっと好きだった。お前と会えなかった1年と7か月はとても辛かった」

「一護・・・・・」

「絶対に幸せにしてみせる。だから、付き合ってくれ、ルキア!」

一護は、ルキアのために用意していたアメジストの髪飾りをルキアの髪に飾った。

「このような、高価そうなもの・・・貧乏な学生の貴様には、大金であったろうに」

「バイトでためた金だ。どう使おうが俺の自由だ。綺麗だ、ルキア。少し早いけど、誕生日プレゼント」

「一護、貴様はそこまで、私を想ってくれるのか」

「ああ。今の俺には、ルキア以外何も見えていない」

「井上はどうするのだ」

「いらない。井上が欲しいんじゃない。ルキアが欲しいんだ」

「一護・・・・」

ルキアは、ぽろぽろと涙腺を決壊させた。

「好きだ。好きだ好きだ好きだ。貴様がどうしようもないくらいに好きなのだ。貴様は人間で、私は死神・・・この差はどうしても埋めがたい。それでも、どうしようもないくらいに、貴様が好きだ、一護!」

一護は、優しくルキアを包み込んだ。

「そんなに泣くなよ。死神が人間と付き合うの、別に尸魂界の法でだめだって決められているわけじゃないんだろ?」

「それはそうだが・・・・でも・・・・・」

「いいじゃねぇか。死神と人間でも」

「一護・・・貴様はずるい。私の心をもっていく・・・」

「ああ。俺はずるいんだ。お前の全てが欲しい」

「好きだ、一護」

「俺も好きだ、ルキア」

その日は、お互いを抱き締めあうように丸くなって眠った。


「遅刻する!」

「瞬歩でいくぞ、一護!」

想いをぶつけ合って、二人は正式に交際をスタートさせた。

後の残り3か月。

それを過ぎたら、ルキアは多くても週に一度くらいしかこちらにこれない。

一日一日が、宝物のようで。


「ルキア・・・・・」

「ん?」

学校の帰り道、振り返ったルキアに、はじめてキスをした。

「ななななな!」

まだ、清い関係でしかない二人。

「もう一回、してもいいか?」

「好きにせよ・・・・」

今度は、舌が入ってきた。

「ん・・・・・」

キスは、一護が食べていたレモンのキャンディの味がした。


やがて、卒業式を迎えた。

一護は、ルキアと一緒に黒崎家へと帰っていく。

帰宅すれば、同時に尸魂界へと戻る。

「俺の大学進学も決まったし、一人暮らしもきまった。地図かいておいただろ?今度来るときは、その住所のところを訪ねてくれ」

「たわけ!そんなことしなくても、貴様の霊圧を探ればどこにいるかくらい分かる!」

「ルキア!また来週会おうぜ!大学、案内してやるよ!」

「ああ!」

穿界門が開く。

でも、開ききり、ルキアが去る前に一護はルキアとキスをした。

キスは、やっぱり一護が食べていた、レモンのキャンディの味がした。


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抜けだした浮竹と罰

海燕は怒っていた。

熱をだし、安静にしていなければいけないはずの浮竹の姿がなかった。

「ほんと、どこいったんだあの人・・・・・」

海燕は知らない。

浮竹の熱がもう下がってしまったことを。でも、念のため今日一日は大人しくしてほしかった。

「海燕君入るよ。おみやげもってきた」

そう言って雨乾堂に入ってきた京楽の右腕には、京楽に捕まってしまった浮竹の姿があった。

「おみやげありがとうございます。どこで拾ったんですか」

「壬生の甘味屋で、お見舞いのためにおはぎでも買おうとしてたら、中で食べてた」

まだ、浮竹はもぐもぐと手にしたおはぎを食べていた。

反省する気ゼロな上司に、いつもは穏やかな海燕も般若になる。

「隊長、のんきにおはぎなんて食べてないで、なぜ勝手に部屋を抜け出したんですか!」

「いや、熱も下がったし平気だと思って。今日は壬生の甘味屋オープン50年セールで、半額だったんだ。行くしかないだろう!」

そんなことを言う浮竹の頭をぽかりと思い切り叩いた。

「あいた!暴力反対!」

またぽかりと叩いた。

「あんたは!俺がどれだけ心配したか・・・・・・」

「その程度じゃ、浮竹は動じないよ。浮竹、来月いっぱい甘味屋に行くのはなしね」

「!!!!!!」

凄くショックな顔をする浮竹。

「すまない、俺が悪かった海燕。今度からは、勝手にいなくなったりしない。熱が下がったら、ちゃんと下がったといって出かける」

甘味物でつられないと、反省もなかなかしない浮竹に、ほんとに心からの長い溜息が出る。

「京楽隊長は、よくこんなのと一緒に何百年もいられますね」

「おい、上司に向かってこんなのとはなんだ!」

浮竹の言葉を、海燕は無視した。

「まぁ、こんなんだけど、これはこんなんなりにかわいいんだよ。熱が下がったらすぐに甘味屋に行こうとする行動もかわいい」

「京楽、こんなんってなんだ」

「はいはい。浮竹はそこで大人しく座って反省でもしてなさい」

しぶしぶと、座布団の上に座る浮竹。

海燕に、文机でもう約束を破らないようにと、書道で「健康一番、許可なしに抜け出さない」と、書かされた。

1枚だけならいいのだが、5枚も書かされて、浮竹も海燕に心から謝った。

「すまなかった。行動が軽率だった・・・・・」

「言いますけどね、こうやって勝手に抜け出すの、今年で8回目ですからね」

「う・・・・・」

「あんたって人は、ほんとに約束守らないんだから・・・」

「心を入れ替える!」

「はいはい。期待しないで待ってます」

海燕は、本当に期待していなかった。

この上司は・・・・・流石に肺の発作を起こした後は安静にしているが、熱をだして臥せっていると思ったら勝手にいなくなるのだ。

そのたびに海燕は大きく心配したが、段々と心配する心は呆れる心に変わってきた。

何処にいったと探し、甘味屋で見つけてずるずると引きずるように帰ってきたこともあった。

大抵、いなくなったと思ったら甘味屋にいる。

それか、京楽のところだった。

「京楽隊長。今日は俺が許します。浮竹隊長に罰を与えてください」

「え、海燕!?」

「むふふふふ~~そういうことなら。おいしくいただきます!」


海燕が去った雨乾堂で、日が高いうちから、お仕置きと称されて、死覇装を脱がされていった。

何か、黒い布で視界を塞がれて、浮竹は恐そうに震えていた。

「ただ抱いただけじゃあ、お仕置きにならないからね」

「あ、いやだ京楽、これとって・・・・」

手も、死覇装の帯で戒められた。

キスをされた。

いつもと違うのか怖いのか、浮竹の舌が縮こまっていた。それを無理絡めとる。

「ふあっ・・・・」

全身を這う、指の動きにさえ敏感になっていた。

鎖骨から胸、胸から臍へと舌を這わせていく。

「んんっ・・・怖い、京楽・・・・・」

「こうでもしないと、お仕置きにならないでしょ」

「でも・・・・」

「こんなに感じてるくせに」

袴を脱がせていくと、浮竹の花茎はだらだらと先走りの蜜を零していた。

「まだ、触ってもいないのに・・・・・」

「ああ!」

直接握られて、ビクンと痙攣した。

それだけでいってしまったのだ。

「もしかして、目隠しプレイ気に入った・・・・?」

「や、そんなんじゃない・・・・京楽、京楽どこだ・・・・」

触れてこない京楽に我慢ができずに、見えない目で探した。

「こっちだよ」

「ふあっ・・・」

後ろから抱きしめられて、キスをされた。

鎖骨から臍まで、キスマークをいっぱい残された。

「京楽・・・」

胸の突起を口に含み、わざとがりっと強めに噛めば、浮竹は戒められた手で、京楽に触れてきた。背中で戒めるのは流石に可愛そうだと思い、前で戒めた。

自由にはできないが、触れることくらいはできる。

「俺をお仕置きするんだろう・・・・?」

「浮竹・・・・・・・」

潤滑油を指にかけて、浮竹の内部に指をいれる。

「ああ!」

浮竹は、その衝撃を心待ちにしていた。

こりこりと前立腺ばかりいじられて、気持ちいいとしか考えられなくなる。

京楽と肌を重ねるのは好きだ。いつも、意識を飛ばすくらいいく。

くちゅくちゅと水音とたてていたそこから、指が引き抜かれる。

ああ、今度こそ・・・・・・。

「ああああ!」

衝撃に、先走りの蜜を零していた花茎から白濁した液が漏れた。

「んあああああ!」

浅く深く。

前立腺をすりあげて、突き上げられる。

「これじゃあ、罰にならないねぇ。ここも戒めてしまおう」

花茎を紐で戒められて、いきたくてもいけなくなってしまった。

「や、やあああああ!!!」

ぐちゅぐちゅと中を犯す熱は、まだ硬度を保ったままだ、

一度、最奥に京楽は精液をたたきつけた。

それでも硬いまま、浮竹を刺し貫いた。

「ああああ!」

いきたい。でもいけない。

「ひう・・・京楽、いきたい、とってえええぇ」

「まだ、だーめ」

「あああ!」

目隠しをされた瞳の奥から、涙が溢れてきた。

いきたいのにいけないもどかしさで、頭が変になりそうだ。

「ひっ、いく!」

びくんびくんと浮竹の体が痙攣する。でも前を戒められているせいで、射精できない。ドライでいってしまった浮竹に、ごくりと唾を飲み込みながらも、腰をうちつけた。

「やああ、あああ、あ、や・・・・・変になる・・・・」

京楽は、二度目の熱を浮竹の中に放った。

浮竹は、刺激のたびに体を痙攣させた。もう何度ドライのオーガズムでいったのか分からなかった。

「一緒にいこう、十四郎」

「ああ!春水!」

ぐちゃりと音をたてて、一度引き抜くと、溢れてくる白い液体に栓をするように最奥まで突き入れた。

同時に、浮竹の前の戒めを解いてやる。

「あ、あああーーーーーー!!」

びゅるびゅると、凄い勢いで浮竹は精液を放った。それは浮竹の腹と胸を汚した。

中のしめつけもすごく、最後の一滴まで浮竹の中に注ぎこんだ。

「ふあ・・・・・あああ・・・・・・あ・・・・・・」

目隠しも手の戒めもとってやりでで、びくびくとまだいった余韻に浸っている浮竹を、濡れたタオルで清めてやる。

「ふあっ・・・・・・」

体内から精液をかきだすと、それだけでまた浮竹はいってしまった。

「こりゃ、違う意味の罰だねぇ。いきまくりの罰」

浮竹は、ゆっくりと意識を失った。


数時間して、海燕が二人の様子を見に来る。

いつもと同じように、1つの寝具で眠っていた。

「隊長、京楽隊長、起きてますか?」

「ああ、海燕君。今起きたとこ」

「夕餉の時刻ですが、どうしますか」

「ああ、いただくよ・・・・・浮竹?」

「ん・・・・・・俺も、食べる・・・・・・」

「京楽隊長、どうやったんですか。隊長の罰。元気ないみたいだし、ほんとに罰になってる」

「いやね目隠しして、手も戒めて、前も戒めたら・・・いきまくってね。いきすぎて疲れてるみたい」

「ぶーーー!」

茶を飲みかけていた海燕は、それを京楽の顔にかけてしまった。

「海燕君・・・・・」

「ああ、すみません京楽隊長!」

「とにかく夕餉の支度を。それまでに、ふにゃふにゃになった浮竹を連れて湯浴みしてくるから」

湯浴みで精神がすっきりしたのか、浮竹はもう元に戻っていた。

でも、京楽に怒っていて、半月の禁欲を迫ってきた。

「これは、海燕君のせいなんだよ!」

「ああ、京楽隊長全部俺のせいにするつもりですか!」

京楽と海燕はぎゃあぎゃあやりだした。

そんな二人のやり取りを他所に、今回のセックスは悪くなかったと思う浮竹がいたという。

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卯ノ花の決意

「あなたは変わりましたね。まぁ、私もなんですが」

卯の花は、早急に建てられた山本元柳斎重国の墓の前まできていた。

本当なら時間をかけて立派な墓建ててやりたいと思っていた京楽と浮竹であったが、暫定的に仮初の墓を建てた。

山本元柳斎重国は、あまり酒を飲まなかった。

茶を好み、茶道教室を開いていた。

なので、酒でも水でもなく茶を墓石に注いだ。

「変わったせいで、あなたはユーハバッハにやられた----------でも、かつての私でも太刀打ちできなかったでしょうね。年を取りすぎたせきいでしょうか・・・平穏になってしまい、私も腑抜けたものです・・・・でも、剣八の名を継ぐ者には、目覚めてほしい----------」

命をかけることになるだろう。

「死剣」卯ノ花八千流。

「私ももうすぐそちらへ参ります。だから、寂しくはないでしょう?----------------」

山本元柳斎重国の墓に、菊をささげた。一番隊の隊花でもある。

真実と潔白。

まさに山本元柳斎重国にふさわしい。

「卯の花隊長じゃないか!」

「これは京楽隊長に浮竹隊長・・・・・・」

「山じいの墓参りかい」

「ええ、まぁそんなものです」

死を告げにやってきた・・・・・そんなことを言ったら、二人は絶対に更木と切りあいになることを止めるだろう。

止められるわけにはいかないのだ。

たとえ、この命が散ることになっても。

「山じい・・・・安らかに。尸魂界は、僕らで守ってみせるから」

「先生・・・俺たちの手で、尸魂界は守ります」

若い。

卯の花はそう思った。

古参の二人であるが、卯の花からみればまだ子供だ。

「先に失礼します」

卯の花は歩き出す。自分の死へむかって。

「卯の花隊長、ちょっと雰囲気かわったかな?」

「なんだか-----------いつもより修羅に近いというか、鋭い切っ先のようだった」

二人とも、隊花である菊を捧げた。

すでにそこには卯ノ花が捧げた見事な菊があった。大ぶりの花で、白かった。

京楽と浮竹は手を繋ぎあった。

山本元柳斎重国の死を無駄にしないように、二人は歩んでいく。

卯ノ花八千流の次は、浮竹十四郎。

連鎖していく死の螺旋。

浮竹はまだその時がくること気づいていない。

「いこう、浮竹」

「ああ」

愛しい京楽と過ごせるのもあと僅か。

それでも、時がきたら浮竹も歩いていく。

死へと。

山本元柳斎重国の死は始まりにすぎない。

二人の隊長が、その後を追うことに、その時はまだ誰も知らなかった。

卯ノ花八千流-----------「死剣」にして初代剣八。


「ああ・・・・空は、いつもぬけるように蒼いですね」

ふと空を見上げる。

太陽がぽかぽかと照ってくる。

まるで、私の死を祝福しているよう----------。

「もうすぐですよ、山本元柳斎重国。罪人であった私を護廷13隊に引き入れたあなたの元へ、私ももうすぐ落ちていくでしょう・・・・」

卯ノ花は、4番隊に帰って重傷者に回道を施しながら、後の全てを勇音に任せるために、自分の死を告げた。

勇音は最初は受け入れなかったが、何度も話あっているうちに分かってくれた。

護廷13隊隊長。

死神。

尸魂界のために死なば本望。

更木を目覚めさせ、尸魂界を守らせるために死ぬならば、それも本望。

そして、その後を浮竹十四郎が追う。

彼もまた、死神としての矜持のために。

尸魂界のために死なば本望。


愛する者を残してでも、尸魂界を守るために、命をかけるのだ。



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浮竹死んだけど幽霊です憑いてます17 恐怖と手加減 

目覚めると、いつも透けて隣にいるはずの浮竹の姿がなかった。

「浮竹?浮竹!?」

探しても、どこにもいなかった。

「どこにいってしまったの、浮竹・・・・・・」

まさか、京楽を置いて成仏してしまったのではないか。

そんな不安が襲ってきて、布団を被って丸くなった。

「浮竹のいない世界は嫌だ・・・・」

一度、浮竹を失い色のない世界になってしまった。幽霊であるが、浮竹が隣にいてくれたことで世界はまた色づきだした。

「ただいまー」

「浮竹!?」

浮竹は、霊体のまま白哉のところに遊びにいき、わかめ大使を食べさせてもらったと嬉しげだった。

「実体化できる?」

「少しなら」

「浮竹、浮竹、浮竹!」

狂おしいほどに胸にかき抱かれて、浮竹は苦しそうにしていた。

「京楽?」

「君が、僕を置いて成仏してしまったんじゃないかと思った。長い距離を離れる時は、頼むから何か言ってからにして」

京楽は、涙を滲ませていた。

「すまない!ただ、遊びにいっただけの軽い気持ちだったんだ。ちょっとの間なら長く離れれるようになったから、それも楽しみたくて・・・・・・・」

「うん。でも、そうやって出かけるなら、頼むから何か言ってからにして」

京楽は、本気で浮竹をまた失ったと思ったのだろう。

カタカタと体が震えていた。

その体に毛布を掛けてやり、抱き締めた。

「俺はどこにもいかない。京楽と、死ぬまで一緒だ」

「うん・・・・」

ずっと抱き締めていると、京楽も安堵したのか浮竹に触れるだけのキスをした。

「京楽の分もわかめ大使もらってきたぞ」

「ええ、そんなことできるの?」

「霊体化する時に触れたものも霊体化する。それを実体化すればこの通り」

どさどさと大量のわかめ大使が、ベッドの上に置かれた。

「こんなに食べきれないよ」

「主に俺が食うから大丈夫だ。京楽は1つか2つなら食べれるだろう?」

「うん」

先ほどまでの恐怖がなくなり、京楽はわかめ大使を1つ食べた。

「甘い・・・・」

「不思議だろう、京楽。白哉は甘いものが嫌いなのに、わかめ大使には甘いあんこを入れるんだ。そしてそれを食べるんだ」

「朽木隊長は、4大貴族だけど、こんなわかめ大使をとか思いついたりするし、ちょっと変わったところがあるからね」

「自慢の白哉なんだがな。子供の頃はそれはそれは愛らしくて・・・・・」

霊体に触われる手袋をして、京楽が浮竹を抱き寄せた。

背中だけに触れているので、抱き締めることは叶わず、浮竹の霊体が京楽の体にめり込んだ形になる。

「ああ、もう、仕方ないな。本当は来週の予定だったんだが・・・今から2時間、実体化する」

「浮竹・・・・・」

「煮るなり焼くなり、好きにしろ」

「浮竹、愛してる・・・・・十四郎」

抱き着いてきた京楽を抱き締め返す。

「俺も愛してる、春水」

京楽は、しばらく抱き締めあっていたが、2時間しか時間がないことに気づいて、浮竹に口づけた。

「ううん・・・・・」

深いディープキスを繰り返し、服の上から輪郭をなぞり、衣服を脱がしていく。浮竹も、京楽の衣服を脱がした。

「はぁっ・・・・・」

平らな胸を撫でまわされて、突起を強くつままれた。

「ん・・・・」

またキスを繰り返す。浮竹は、行為中の京楽とのキスが好きだった。

「あああ!」

潤滑油で濡れた指が体内に入ってきた。

もう慣れたが、そこはやはり異物を排除しようと動く。それを無理やり指をつっこんでかき回された。

ぐちゃりと水音がした。

「んああああ」

前立腺をコリコリされて、涙がでた。

気持ちよすぎる。

「あ、もっと・・・」

前立腺を刺激されまくって、浮竹は一度目の熱を京楽の手の中に吐きだした。

「いくよ・・・」

ずっずっと音をたてて、指とは比較にならないものが侵入してくる。

「ひあっ!」

「息、ちゃんとして。きつい」

ぎちりと締め付けてくる内部に、京楽の眉が寄る。

なんとか力を抜こうとするが、うまくいかない。

「仕方ないね・・・・・」

浮竹の花茎を手でいじってやれば、中も緩んだ。

その隙をついて、最奥まで突き上げる。

「あ!」

最奥で、京楽は弾けた。

まだまだ1時間半くらいは時間がある。

京楽は、ことさらゆっくり浮竹の体を犯した。

「んああああ!」

前立腺ばかりすりあげられて、花茎に手をそえてしごかれて、もう浮竹の思考はきもちいいしかなかった。

「あ、あ、きもちいい、春水、もっと・・・・・・」

奥へ奥へと、誘ってくる。

前立腺をすりあげてやりながら、奥を犯してやった。

「ひあう、あ、あ、あ・・・・・・」

舌が絡まるキスを何度も繰り返した。

「ひう!」

最奥を穿たれて、浮竹の体がびくんと痙攣する。もう何度もいったので、出すものもない体はドライのオーガズムでいってしまった。

「きょうら・・・・やああ・・・もう、以上気持ちいいのイラナ・・・・頭が、変になる・・・」

「もっと気持ちよくなって、十四郎」

ゆっくりと奥を突きあげながら、京楽も何度目も分からぬ精を放った。

濡れたタオル体中をぬぐい、浮竹の中にだしたものをかきだすと、トロリと溢れてきた。

「きもちよかったかい?」

とろんとした目つきの浮竹が頷いた。

「僕もすごくよかったよ」

実体化していられるまであと10分を切った。

衣服を着せてやり。一緒にベッドに横になっていると限界時間がきて、浮竹の体はすーっと透けていった。

霊体を触れる手袋をして、浮竹の頭を撫でてやった。

「さ来週もなしだ」

「ええ、なんで!」

「きもちよすぎて気が変になる」

「じゃあ、今度から回数減らすし、君をいかせすぎたりしないから!」

京楽も必死だった。月に2回抱く浮竹との睦み事が生きがいなのだ。

「本当だな?手加減しろよ?」

「うん、約束する」

結局、その約束は2週間後の交わりで、果たされることなく、とろとろになるまで浮竹は京楽に犯されるのであった。



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卯ノ花と浮竹と京楽と

優しき笑みの中に般若を宿す。

その名は卯ノ花烈。


4番隊綜合救護詰所の病室に入院していた浮竹。酷い発作を起こして血を大量に吐いて、京楽の手で4番隊綜合救護詰所まで運ばれて、意識を回復した。

安静にしていろと言われた1週間を過ぎても、退院許可が下りなかった。

この前も発作を起こして倒れたばかりなので、念のためと3日間入院させられた。京楽がよく見舞いにきてくれたが、ずっといてくれるわけじゃない。

おまけに4番隊の飯は質素すぎて味も薄く、浮竹は辟易していた。

近くに甘味屋があったので、浮竹はベッドに丸めたシーツを入れているふりをして、甘味屋にでかけた。

見つからないようにと、窓から瞬歩で移動した。

久しぶりに4番隊の飯以外のものを口にして、感激した。

甘い味が体に浸透していく。

甘味物に目がない浮竹は、京楽のつけということにして、3人分は甘味物を食べて、満足して病室に戻った。

「浮竹隊長、そんなに入院を長引かせたいのですか?」

「うげ、卯ノ花隊長!」

にこにこにこ。

その笑顔が、怖かった。

笑顔の裏に般若がいた。

「そうですか・・・そんなに入院を長引かせたいなら、新しく開発させたこのウィルスを・・・・」

「ウィルス!?涅隊長じゃあるまいし!」

4番隊綜合救護詰所では、今後流行るであろうこのウィルスの治療に躍起になっています。そんなに実験体になっていただきたいのなら、もっと早くに言ってくださればいいのに」

「ごめんなさい!もう無断でぬけだしたりしません!」

ベッドの上で土下座すると、修羅は菩薩に変わった。

「あなたは、ただでさえ病弱なのですから。肺の発作が立て続けにおこって体が疲弊しているのです。大人しく、安静にしていてください」

「一つだけいいだろうか、卯ノ花隊長」

「なんですか?」

「飯を、13番隊のものを食べてもいいだろうか」

「そんなにお口に合いませんか?」

「薄味すぎて、食べた気にならない」

「まぁいいでしょう。元気になってきている証ですから・・・・特別ですよ?」

「やった!」

浮竹は喜んだ。

清音に伝えて、夕食は13番隊のものを用意してもらった。

それを食べて湯浴みをして病室に戻ると、京楽がいた。

「どうしたんだ、こんな時間に」

「君が、病室を抜け出したって聞いてね」

「それは・・・・」

「浮竹、頼むから無茶なことはしないで。安静にしていろと言われたら、その通りにして」

「悪かった・・・・ちなみに、この近くにある甘味屋にいったんだ。金がなかったから、お前のツケということにした」

「はぁ・・・・・君がこんな調子だから、利用したこともない店でツケを払えと取り立てられる僕・・・・・」

「すまない!」

すまないとは言うが、返すとは言わない浮竹である。

浮竹の給料の大半は仕送りで、残りは薬代で消えてしまい、飲み食いする金がないのだ。

だから、京楽のつけがきくのをいいことに、たまに勝手に甘味屋で飲み食いをした。

居酒屋などでは、ツケがきかない店もあるので、そういう時は必ず京楽と一緒にでかけた。京楽の財布は浮竹の財布状態だった。

「卯ノ花隊長、怒ってたでしょ」

「般若だった。怖かった。新しいウィルスに感染させられそうになった」

「うわーまるで涅隊長のようだね。怖い怖い。山じい言わせると、古参中の古参らしいのに、全然老けてないし・・・妖怪かな?」

いつもは菩薩なのだが。

「京楽隊長、誰が妖怪ですって?」

卯ノ花が、音も立てずに病室にいた。

「うわあああああ!!!」

「病院内では静かにお願いします」

「な、なんでもないんだ、卯ノ花隊長!」

京楽は顔を真っ青にして、ぶんぶんと首を横に振っていた。

「そんなに元気があるなら、献血してください」

「助けてーうーきーたーけー」

ズルズルと引っ張っていかれる京楽に、浮竹は手を合わせた。

「成仏してくれ」


卯ノ花烈。

菩薩と修羅をもつ女性。

色々と謎が多い。

その卯ノ花が、初代剣八であり、護廷13隊結成当時からいる古参中の古参であり「死剣」と呼ばれていたことがわかるのは、まだ先のお話であった。


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それは愛

このもやもやとした感情が、何であるのかやっと分かった。

それは「恋心」

愛しているのだ、恋次を。

緋真だけを愛すると誓った白哉は揺れていた。

このまま、全てを恋次に与えて、恋次に包み込まれていいのだろうか?

なぁ、緋真。

そなたなら、どう思う?

このようになってしまった私を。


大戦も終結し、尸魂界はゆっくりとではあるが復興の道を辿っていた。

かつて、白哉は死にかけた。生きてるのが奇跡だという傷を負い、斬魄刀である千本桜も失ってしまった。

あの時の、恋次の顔が今でも時折ちらつく。

とても傷ついた目をしていた。

愛する者を失う時の目だった。

かつて、私が身罷った緋真を見る目だった。

仏壇に手をそえて、緋真の写真に向かって語る。

「緋真・・・・私は、もう一度幸せになっていいのであろうか?」

ずっとそうしていたら、外から恋次が白哉の名を呼んだ。

「緋真・・・許してくれ。私は当分そちら側にいけぬし、緋真そなたを残して・・・愛する者と、歩み出す」

一歩一歩を噛みしめるように、歩き出す。

「隊長、どうすたんですか。あんまりにも襲いので、迎えにきました」

「恋次・・・・」

白哉は、辛そうな顔をしていた。

「どうしたんですか、隊長!どこか具合でも悪いんですか!」

恋次を連れて、6番隊の執務室にいくと、何もなかったように一日が始まる。

でも、白哉は今まで雰囲気がどことなく違っていて・・・なんていうのか、空気が優しかった。

「隊長?カラムーチョでも食べますか?」

3時になり、一休憩いれる。

辛い味の好きな白哉は、現世の辛い菓子のカラムーチョに夢中であった。

茶をいれると、それを全部飲みほしてしまった白哉のために、また茶をいれた。

「恋次」

「はい」

「愛している」

「は?」

「もう言わぬ」

「ちょ、隊長!今なんつったあんた!」

長椅子に座っていた白哉を押し倒した。

夢中になって口づけを繰り返す。

「ああっ」

少し死覇装を乱させてしまった。

白哉は、熱の入った潤んだ瞳で、こちらを見てきた。

でも、こんな仕事の部屋で白哉を抱くことなどできぬので、我慢した。

「あんた、確かに俺のこと愛しているっていいましたよね?」

「知らぬ」

嘘をつく白夜の服ごしから体を触っていくと、白哉は戸惑った。

「やめよ」

「いやだ。あんたが、はっきり言ってくれないならここで抱く」

こんな場所で抱かれては困るので、仕方なしにもう一度口にする。

「恋次、愛している。今の私には、お前だけだ」

「おっしゃああああああ!」

恋次は、ガッツポーズをとった。

ずっと愛していると言わせようとしていた、雪解け水前の氷の白哉に、やっと言わせたのだ。

今の白哉は雪解け水。

恋次を愛していると告げて、自分の中にある感情にくぎりをつけた。

「今夜、抱いてもいいですか」

「ならぬ」

「どうしてですか」

「おとつい、抱いたばかりであろう」

「それでも、あんたを抱きたい」

「ならぬ。愛され続けてほしければ、限度を弁えよ」

愛されている。

今は、その言葉だけで十分だった。

白哉に舌が絡み合う深い口づけをして、お互い離れる。

なんか、こそばゆかった。

新婚さんのような気分だ。

恋次は、望んでいた白哉の全てを手に入れた。幸せの絶頂にいた。

大戦の時、一度白哉を失うかと思った。

恋次も満身創痍だったが、白哉の傷はそれよりはるかに深かった。零番隊の湯治がなければ、白哉はこうして意識をもっていることも、話すこともできなかったであろう。

「じゃあ隊長、今日は飲みに行きましょう」

「お前の馴染の店は、品性がない」

「まぁそういわずに。高級酒ばかりだと飽きるでしょう。たまには、安酒を浴びるほど飲むのもいいですよ」

ふっと。

微かに白哉が笑った。

時折、恋次にだけ見せる顔だった。

「今日だけだぞ」

「よっしゃ!」

居酒屋で、白哉を口説き落としてやろう。

愛する恋次は、そんなことを企んでいるなど知らずに、名もない感情に気づいたばかりの白哉は、恋次に誘われるままに居酒屋で飲み、酔いつぶれて寝てしまうのであった。

「あんた、安酒だと弱いのか・・・」

いつもは高級酒を飲んでもあまり酔わない白哉。

白哉の幸せそうな顔を見ていると、口説き落とせなかったこともどうでもよくなってきた。

「ありがとう、隊長。俺を選んでくれて・・・・・」

その桜色の唇は、酔いつぶれる前に「恋次、お前だけを愛している」

と言ってくれた。

今は、その言葉だけで十分だった。





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7~8話補完小説

卍解を奪われた。

千本桜の奥の刃を受けて、白哉は傷だらけになりながら壁にめりこんだ。

「隊長!」

「くるな!恋次!」

「卍解!」

「卍解はするな!お前まで、卍解を奪われる!」

名も分からぬ敵だった。

ただ、滅却師であるとは分かった。

また、億の刃に切り刻まれる。

「私は・・・もう、無理だ。戦えぬ。恋次、お前だけでも生き延びて・・・・・」

がくりと、白哉の意識はそこで一度途絶えた。

「うおおおおおおおお!」

敵にむかって、卍解せぬまま切りかかる。

千本桜の奥の刃を受け止め切ることができず、全身に酷い怪我をした。

ああ、この敵は本当に隊長の卍解を奪ってしまったのだと思った。

「とどめだ・・・・・」

ああ、ここで死ぬのか。

隊長と一緒なら、それもいいかもしれない。

けれど、敵は引いていった。


一護がかけつけてきた。

「白哉!」

「・・・・・尸魂界を、守ってくれ・・・・・・」

白哉の怪我は酷いものだった。酷過ぎて、どうすればこんなに傷つくことができるのか分からないほどだった。

「尸魂界を・・・・兄の力で・・・・」

「俺は!」

一護が叫ぶ。

「俺は誰も守れなかった!俺は!」

「それでも。兄の力は、必要だ・・・・・ごほっ」

ぼたりと、大量の血をはいた。

「隊長・・・・・」

白哉の傍で、恋次も力尽きた。


「うおおおおおおおおおおおお!」

しとしとと雨が降り出した。

傷にしみた。

でも、それよりも心の傷が痛んだ。

じくじくと血を流している。


ああ。

もっと早くに尸魂界についていれば。

もっと俺が強ければ。


4番隊の手によって、白哉と恋次は運ばれ、施術を施されたが、どうにもならない状態だという。その中には、ルキアの姿もあった。

やがて、0番隊が現れ、意識のない白哉、恋次、ルキアと一人重症のわりには元気一護を連れて
湯治がされた。

白哉も恋次も、ふと少しだけ意識を取り戻した。

「生き延びたか、恋次・・・・」

「隊長を一人にして死ぬことなんて、できるはずがないでしょう!」

湯の中に沈んでいるのに、呼吸もできたし言葉も交わした。

「少し、眠る・・・・・」

「俺も・・・・」

流れ出る濁った血と霊圧。

それを、湯治で入れ替えるのだ。

湯の中は、まるで母の胎内にいるようで心地よかった。

二人は微睡む。

まだ、生きている。

生きている限り、挽回の余地はある。

生きて生きて生き延びて、醜くてもいいから敵の喉笛にかみつけ。

そう思った。

卍解を奪い返し、今度敵と会ったら無様に一方的にやられたりせず、せめて一太刀でも浴びせろ。


尸魂界は揺れていた。

山本元柳斎重國の死。

尸魂界は泣いていた。

ユーハバッハによる侵攻と侵略。


ああ。

私は、きっとまた戦える。


ああ。

俺は、きっとまた戦える。


だから、今は黙して傷を癒そう。


世界は廻る。

軋む音を立てて。

次の侵攻までに、力を取り戻せ!



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8話補完小説

「ルキア・・・・・・・」

施術が終わったルキアは、重症だった。

一護も重症であったが、立って歩くくらいはできた。

ふと、片目になっていたルキアの意識が戻る。

「一護・・・・そうか、守れなかったのだな」

「すまねぇ!」

「貴様が謝ることはない。今回の事態は、総隊長が亡くなるほど酷い戦いだったのだ・・・」

「おい、あんましゃべんな。傷に響く」

「これ以上は悪化せぬ」

ルキアは、片方だけの瞳から涙を零した。

「一護、一護、一護・・・・尸魂界を、守ってくれ・・・・・」

「分かってる」

ルキアに触れるだけのキスをして、別れた。


白哉の怪我は酷かった。

もう、意識は戻らないといわれた。

そんな中、0番隊が迎えにきた。

霊王を守る集団である。


カポーン。

「なんだよこれ!」

「みりゃ分かるだろ、湯治だ!」

白哉もルキアも恋次も、湯の中に沈んでいた。

滲み出す血は、けれど血と一緒に濁り切った霊圧を2種類の湯に浸り分けて入れ直すのだという。

ぷかりと浮かんできた白哉を、0番隊の男は紅い湯に無造作放り投げた。

「おい、乱暴に扱うなよ!」

「てめぇは、てめぇの心配だけしときやがれ!」

ふと、少しだけ白哉の意識が戻った。

でも、体は動かない。

「そうか・・・・私は、助かったのか・・・・」

ぶくぶくぶく。

また、湯に沈められた。

不思議と息苦しさはなかった。湯の中でも息ができた。

同じように湯に沈んでいる恋次とルキアを見る。二人とも重症だ。

黒崎一護だけが、見た目より元気そうだった。

「尸魂界を守るには、兄の力が必要なのだ・・・・黒崎一護」

白哉はまた、意識を失った。


ざっぱーんと、ルキアの体を0番隊の男が投げる。

包帯を巻かれているとはいえ、裸に近い恰好に、一護の眉が寄る。

「心配しなくてもとってくったりしねぇよ」

ルキア。

助けられなくてごめん。

ルキア。

愛してる。

どうか早く元気になってくれ。

一護の斬魄刀は折れた。だが、元に近い形に叩き直せるという。

今は、それにすがるしかなかった。


「ルキア、恋次、白哉・・・・・俺は絶対に強くなる。そして尸魂界を守ってみせる。だからお前たちも、早く元気になってくれ」

一人、傷の癒えかけた一護は誓うのだった。


ルキア。

今度は、必ず尸魂界を守ってみせる。

だから、ルキアも強くなってくれ。

ルキアは、漂う意識の中で、一護に触れた。

「ふふ・・・貴様は、なんでも一人でしょいこんで・・・・仲間だろう私たちは」

一護。

愛している。

どうか、尸魂界を守ってくれ。

一護は立ち上がる。未来に向かって、歩き出すために。


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ネオンテトラ

「いちごおお」

「うおっ、酒くせぇ!」

「うふふふふ」

甘てくるルキアは、浴びるように酒を飲んだらしく、酒臭かった。

「おい、しっかりしろよ」

「にゃふふ。世界が回っておるー」

ここは現世の一護の部屋だった。

ルキアの見た目は十代半ば。

現世で酒が飲めるはずがない。尸魂界で酒を飲み、わざわざべろんべろんに酔っぱらって一護に会いにきたのだ。

「好きだぞ、いちごおお」

「おい、そういう冗談はやめろ」

ルキアのことは、好きか嫌いかでいうと好きだった。

でも、こんな酒に酔った状態で好きと言われても、うれしくない。

「何故、信じぬのだ」

アメジストの瞳からボロボロと涙が零れている。

「何故って、お前冗談だろ?」

「たわけ!酔っていても、このような冗談は言わぬ!」

「ルキア・・・・・」

「付き合ってくれ、一護」

その細い体を、気づけば抱きしめていた。

「ああもう、酔っ払いのくせになんでこんなにかわいいんだよ!」

「いちご?」

「俺もお前が好きだ、ルキア。言われてはっきりした。この心の中でお前に対して抱いていた感情は恋なんだって」

「一護、私の手をとってくれるのか。私と生きてくれるのか」

「ああ。ルキアが好きだ。愛してる」

ルキアは涙をぼろぼろと零したまま、一護に抱き着いた。

浴びるような酒の匂いがしたが、気にならなかった。

「明日起きたら、全部忘れましたってパターンなしにしてくれよな」

「ふにゃあ・・」

緊張が解けたのか、ルキアは一護の腕の中で眠ってしまった。

その細い体を抱き上げて、ベッドに寝かせる。

ルキアをその腕の中で抱きしめるような形で、一護も眠った。

次の日は休日だった。

「ん・・・・」

少し遅めにルキアが瞼を開く。

「おはよう、ルキア」

すぐ近くに一護の顔があって、ルキアは吃驚した。

「昨日、べろんべろんに酔って俺の部屋にきて・・・・・俺に言った言葉、覚えてるか?」

かーっと、ルキアの頬が赤くなった。

「おぼえておるわ、たわけ!」

一護をぽかぽかと叩いてきた。

「貴様が悪いのだ!私の想いにも気づかず、私の方ばかりみているくせに何も言ってこない貴様のことを、恋次にぶつけて一緒に飲んでいたら、想いをぶつけてこいと現世に追い出されて・・・・・仕方なしに、貴様に想いを打ち明けた」

「それでも、すげぇ嬉しい」

起き上がったルキアを抱きしめる。

ルキアは、一護の腕の中で身動ぎしていたが、おとなしくなった。

「責任をとれ!貴様にここまで言わせた責任を!」

「ああ、いいぜ。付き合おう」

耳までルキアは赤くなった。

「分かった・・・・今日から、私は一護の彼女だ」

「俺は、今日からルキアの彼氏だ。恋人同士だからいいよな」

「何をだ」

最後まで言わせず、唇が重なった。

「んん・・・・」

舌が絡むディープキスだった。

ルキアはじめてで、立っていられなくなった。

一護はルキアをベッドに座らせて、その柔らかい黒髪を手ですいた。

「ルキアはかわいいな」

「そんなこと言うの、貴様くらいだ。恋次には色気のないガキと言われた」

「恋次もお前のこと好きなんだぜ」

「ええ!ではなぜ、私を現世に送り出した」

「そりゃ、好きな相手に幸せになってもらいたいからに決まっているだろ」

ルキアは、真っ赤になった。

「私は、二人の男に思われていたのか?」

「そうだ。恋次の態度とかばればれなんだよ。俺もだけど」

ルキアを腕の中に抱きしめて、とさりとベッドに横になる。

ルキアの心臓のドキドキが、こっちまで伝わってきた。

「すげぇドキドキいってる」

「そ、それは貴様も同じであろう!」

「ああ」

ルキアの目をふさいだ。

「ふあ・・・・」

口づけられた。

「一護・・・・今日はもう帰らねばならぬ」

「もうかよ」

「来週の土日!必ずくるから、浮気するなよ!」

「そりゃこっちの台詞だぜ。恋次といちゃいちゃするなよ!」

「たわけ、恋次は家族だ!そんなものではないわ!」

ルキアは、穿界門をあけて、尸魂界へ帰ってしまった。


次の週の土曜。

眠っていた一護めがけて、何かが突撃してきた。

「なんだ!?」

驚いておきた一護であるが、布団の上から一護の体の上に座っていたルキアを見て、はにかむような笑みを浮かべた。

「おはよう、ルキア」

「たわけ、私が呼びに来ねば、貴様寝過ごしていたであろう!」

「う・・・・・」

目覚ましなんてセットしていなかった。

ルキアがいつ来るかも分からずに、眠っていただろう。

「迎えにきてくれたのか?」

「そうだ。まずはデートをするぞ」

「ああ、いいぜ」

ルキアの言う通りに、水族館を訪れていた。

ネオンテトラばかりを見ていたルキアに、一護がいう。

「熱帯魚、好きなのか?」

「イルミネーションのようで美しい。なぜアマゾンという場所には、これほど美しい魚がいるのであろう。尸魂界にもこんな魚がいればいいのに」

4大貴族であるルキアが望めば、自家用発電機でヒーターを用意して、熱帯魚を飼うこともできるだろう。

だが、白哉を困らせたくないので、我儘を言わないルキア。

「そんなに好きなら、飼おうか、熱帯魚」

「え、いいのか!?そもそも、売っているものなのか!?」

「ペットショップに普通に売ってるぜ」

飼育も、そんなに難しくない。

水族館の帰り道、ペットショップに寄って水槽のセットと水草と、ネオンテトラを15匹ほどかった。あとグッピーと掃除屋としてシュリンプを。

黒崎家に戻り、一護の部屋に水槽をセットする。

水をいれてヒーターをいれ、じゃり石と色硝をひいて、水草をはやして、ネオンテトラを中心とした熱帯魚をはなった。

「綺麗だ・・・・」

泳ぐ優雅な姿に、ルキアは一護の方を見ようともせず、ずっと水槽を見ていた。

「おい、ルキア」

「なんだ」

「お前、俺の彼女だろ。彼氏を放置するな」

そう言われて、耳まで真っ赤になった。

「べ、別に一護と同じ部屋にいるのがドキドキして、一護の匂いがするとかそんなこと露ほども思っておらぬからな!」

ルキアの言葉に、一護がルキアを抱き寄せた。

「熱帯魚、またいつでも見に来いよ。俺にも会いにこい。彼女だろ?」

「一護・・・・・」

とさりと、同じベッドで丸くなりながら、体温を共有しあった。

「私は死神だ。いつか貴様は私を置いていってしまう」

「ああ」

「そしたら、私は必ず貴様の魂魄を見つけ出して、また付き合うのだ」

「それ、いいな」

寿命を全うし、ルキアと別れても、またルキアと会える。

そう考えるだけで、死神と人間だからという、大きな障害も気にならなくなった。

「俺がよぼよぼのじいさんになっても、愛してくれるか?」

「当たり前であろう!貴様はあと60年もすれば死んでしまう。魂魄は若い姿のまま現れる・・・ふふ、今から楽しみだ」

「勝手に殺すなよ。今は今の幸せを享受しろ」

ルキアの目を隠して、キスをすると、ルキアがもっととねだってきた。

深く浅く口づけを繰り返す。

そうして夕飯を食べた後、湯浴みもしていちゃついていたら、いつの間にか眠ってしまっていた。

「おはよう、ルキア」

「ふにゃああ」

「ルキア、朝に弱いのか?」

まだ寝ぼけ眼のルキアを起こす。

「今日は水槽を見ながら、怠惰に一日を過ごすぞ」

「おう。でも彼氏である俺も見てくれよな」

「一緒に水槽を見るのだ」

ルキアは、熱帯魚が大層気に入ったようで、餌やりもしていた。

日曜はルキアと一緒にだらだら過ごした。

ルキアの膝枕の頭をのっけて、イチャイチャラブラブしていた。

「明日の朝には、尸魂界に戻らねば」

「窓、何時でも開けておくから、いつでもこいよ」

「また、来週の土日んいくるからな!」

「ああ!」

付き合いはじめたと一護は、まるで水槽の中の水草のように漂う。

ネオンテトラのルキアが泳いでくれることで、生きる意味を見出した。

それから何度か会い、一護は一人暮らしを始めて、そこに熱帯魚も移動した。

ネオンテトラは、いつまでも美しい色で泳いでいた。

まるで、ルキアのように。

二人は人間と死神だ。

子はできなかったが、ルキアは毎週土日になると遊びにきた。

やがて、一護も老いた。寿命がくる。

一護が死んだ時、その体から滲み出た魂魄を、ルキアがさらっていった。

「もう、貴様は私だけのものだ」

少年時代の姿をした一護は、約束通りずっと傍にいてくれたルキアに感謝しつつも、尸魂界へとやってくる。

本物の死神になるために。

「朽木ルキア、只今戻りました。黒崎一護を連れてまいりました!」

大戦の英雄は、死神として尸魂界に迎え入れられるのだった。






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寝不足の浮竹

朝8時は、浮竹が起きていた。

朝餉をとり終わり、定時の9時から仕事を始める。そのまま昼餉も食べず仕事をバリバリする浮竹の様子が変に思って、見ていたら、目を開けたまま、仕事をするふりをして寝ていた。

「隊長、起きてください!」

「はっ、おはぎは!?」

見ると、仕事は4分の1くらいしか終わってなかった。

ずっと、目を開けたまま寝ていたのだ。

「あんた、目を開けたまま寝てましたよ」

「ああ。最近できるようになったんだ」

にっこりと、海燕は笑った。

「仕事しやがれこのくそ隊長があああああああああああ!」

キーーーーン。

耳元で叫ばれて、浮竹がコロンと寝転んだ。

「だめだ眠い・・・昨日、京楽がしつこくて余り寝ていないんだ。今日の仕事は明日片付けるから、昼寝させてくれ」

ダメと言っても、どうせ目を開けたまま寝るのだ。

仕方なしに、布団をしいてやった。

「すまん」

布団に横になると、本当に眠かったのだろう。1分もしないで眠ってしまった。

京楽に、無理をさせないように言おう。

そう思っていたら、今日の仕事を終えたらしい京楽がやってきた。ご機嫌だった。

羊を寝不足にするまで襲った狼は、自分だけ満足しているようであった。

「京楽隊長、話しがあります」

「ふふふ~~ん♪なんだい海燕君」

「あんた、隊長に無理させ過ぎだ!隊長、あまり寝かせてもらえなかったって、そのせいで今昼寝してます!」

「あー。確かに昨日はちょっと無理させちゃったかなぁ」

「もう少し、回数を減らすとか時間制限をするとかしたらどうですか!」

「海燕君」

「なんですか」

「それはね、浮竹と僕の問題なの。第三者である君が口出しする権利はないよ」

「でも!」

食い下がろうとする海燕に、京楽が言う。

「最近、浮竹発作おこしてないでしょ」

「え、ああはい」

「新しい新薬を投与してるんだ。お値段は1日分で30万。浮竹からだよ、体で返すって言ってきたの。まぁ、もっともそんなつもりはないんだけどね」

「30万・・・・」

海燕の収入の3分の1だ。

とてもじゃないが、浮竹が払える額ではないだろう。

「僕を満足させようと、浮竹がね・・・それで、ちょっとやりすぎになっちゃうだけ」

「それでも!」

「もー、海燕君は心配性だなあ。熱を出してる浮竹を抱いてるわけじゃあないんだから」

「そんなことしたら、俺はあんたを軽蔑します」

「おーきついきつい」

京楽は、この話はここで終わりだとばかりに、浮竹の眠っている布団に入りこんで、京楽も眠ってしまった。

3時間くらいして浮竹が起き出す。

「え、京楽?」

京楽はまだ眠っていた。

起こすのもなんなので、そのままにしておいた。

「むふふふふ・・・・・浮竹、外でなんて・・・・・」

「なんの夢を見てやがんだ・・・・・」

それでも、京楽は起こさない。

京楽も、一度味わってしまえばいい。寝すぎて、夜眠れない辛さを。

浮竹は、臥せっている時寝すぎで、よく夜に眠れなかった。安静にしていろと言われるので、仕方なしに布団の上で羊を何千匹も数えだす。

その日、本当に久しぶりに肺の発作を起こした。

京楽からもらった新薬が効いていて、しばらくの間発作を起こしていなかった。

「ごほっ、ごほっ、ごほっ」

洗面器の中に大量に吐血する。

「大丈夫ですか、隊長!」

「どいて!」

京楽が、浮竹を抱き上げると瞬歩で4番隊にまでいった。

隊首室に入り、卯ノ花を起こす。

「すまない、卯ノ花隊長。突然発作を起こしたんだ」

寝ようとしていた卯ノ花は驚いたけれど、すぐに回道で浮竹を癒してくれた。

「発見が早かったようなので、大事には至らないでしょう。今日は特別ですよ。寝ようとしている女性の元に無断侵入なんて、頬を往復ビンタされても文句は言えませんからね」

「ごめんよ・・・・・」

浮竹と京楽と卯ノ花は、500年以上隊長をしている古株だ。

「浮竹隊長には、念のため3日ほど入院してもらいます。文句はありませんね、京楽隊長」

「うん・・・・」

それから、退院するまでの3日間、京楽は浮竹の傍にいた。

海燕も様子を見に来たが、仕事があるのでずっとついていることはできなかった。

京楽の甲斐甲斐し様を見て、京楽を最悪な男だと認識していた海燕の考えも改まる。やはり、二人は尸魂界でも有名な夫婦なのだ。

夫婦の中に口を挟むのは、なるべくしないようにしようと決める海燕であった。


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