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小説掲載プログ
10 2024/11 14 2324 29 30 12

おはぎ

「ごほごほっ」

ああ、また咳込んでいる。

そう思って、雨乾堂の中を覗くと、いつも通り京楽に背中を撫でられている上司がいた。

また来てる。

無理をさせるようなことをしなければいいが。

一抹の不安を残して、海燕はその場を去った。

3時間後、浮竹のことが心配で、また様子を見に行った。睦みあったのか、衣服を乱した浮竹が京楽の腕の中で眠っていた。

ああ、やっぱり無理をさせている。

「京楽隊長・・・・あんまり浮竹隊長に、無理をさせないでくださいね」

「ああ、分かっているよ海燕君」

本当に、分かっているのだろうか?

でも、京楽はとても幸せそうな顔をしていた。浮竹は、もっと幸せそうな顔をしていた。

二人の仲に口出しするのも悪いが、せめて隊長が体の調子が悪い時くらい、そっとしてあげられないものかと思った。

でも、その後に聞くことになるが、浮竹から求めてきたそうだ。

次の日、甘味屋にいって、隊長が好きなおはぎをたくさん買ってきた。

「隊長、生きてますか」

「ほどほどに生きてる」

「おはぎ買ってきました。食べませんか」

「食べる」

海燕が雨乾堂に入るより前に、ひょいっと立ち上がった浮竹が、重箱の中のおはぎを一つとって、ぱくりと食べた。

「行儀悪いですよ」

「俺とお前しかいないんだ。気にしなくてよし」

海燕も、お茶をだしながらおはぎを食べた。

本当に、この細い体の何処に入るのだろうという甘味物を、浮竹は食べる。3人前はあったのを、ぺろりと平らげてしまった。

「海燕・・・・あんこついてる」

「え、どこですか」

ぺろりと、浮竹がなめとっていく。

「ななななな、何してるんすかあんたは!」

いきなりの行動に、真っ赤になる海燕。

「ああ、京楽にされているから、つい癖で」

「呼んだかい?」

ひょいっと、入口の暖簾を避けて、京楽がやってきた。

「おはぎか。あちゃータイミングが悪かったね。僕もおはぎ持ってきちゃったんだ」

「食べる」

「大丈夫かい?食べすぎはよくないよ」

「大丈夫だ。甘味物は別腹だから」

「別腹すぎるでしょう」

海燕が、呆れた声を出す。

あれだけ食べたのに、更に食べようとは、ちょっと食い意地がはっていないか。

「お茶、いれてきます・・・・・」

止めても無駄だろうから、この前京楽にもらった玉露のお茶を3人分もってきた。 

茶をすすっていると、浮竹が言葉を出す。

「なんか、京楽と海燕って、嫁と姑みたいだな」

ぶばーー!

海燕は、茶を吹き零した。

「な、何言ってるんですか」

「嫁は僕かな?」

「そうそう。それで口をすっぱくする海燕が姑」

「俺は、別に」

「顔に書いてあるぞ。京楽めって」

確かに、京楽が来ることにあまり喜びはしない。むしろ、また隊長の病状を悪化させたりしないだろうかと、心配にはなる。

「まぁ、でも、僕は別に海燕君を姑のようにはみてないから。そうだね、浮竹の世話をやく好々爺ってかんじかな」

「どんだけ老けてるんですか俺は」

「まぁまぁ、二人ともその辺にしとけ」

浮竹が、二人の間を取り持つ。

「浮竹隊長は京楽隊長に甘すぎます」

「そういう浮竹は、海燕君の前で素を出し過ぎじゃないかな」

「ああ、もう」

浮竹は頭を抱えこんで、二人の口におはぎを詰め込んだ。

「むぐっ」

「むっ」

「イライラしている時は甘いものでも食って、疲れを癒せ」

そういう問題ではないのだが。

でも、浮竹の楽しそうな様子を見ていると、どうでもよくなってきた。

京楽が浮竹のことをとても大切にしているのは知っているし、海燕の存在を蔑ろにすることもない。

京楽隊長というのは、浮竹隊長よりよくできた人だと思った。

こんな、子供みたいな浮竹隊長と長く付き合うことができるのだから、そうなるのも自然かもしれないが。

「ああ、太陽が眩しい」

そう言って、窓のカーテンを閉めた。

浮竹は、太陽のような人だ。陽だまりで、暖かくて。それに、京楽が吸い寄せられて、結局海燕も吸い寄せられる。

「睦みあうのはいいですが、ほどほどにしてくださいね。雨乾堂の前を通ると、声が聞こえる時があります」

浮竹と京楽が同時に赤くなった。

「すまない・・・・」

「ごめん・・・・」

「まぁ、うちの隊の全員が二人の関係知ってるので、特に何かを言い出す人はいませんが、他の隊長が訪れてきた時とかやばそうですから」

海燕のさりげない一撃は、二人に大いに効いた。

それからしばらくの間は、浮竹と京楽は体を重ね合わせてもなるべく声を出さないようにしていた。でも、物足りないのですぐに甘い声を浮竹はあげるようになる。

雨乾堂の前にきて、ああ、その最中かと分かって、引き返す。

京楽隊長のことは、嫌いではないが、好きになれそうもなかった。

何度言っても、微熱がある程度なら抱いてしまうのだ。浮竹を。

それを快く思っていない自分に気づいて、苦笑した。

「また、今度おはぎでももっていくか・・・・・・・」

今度は、京楽の分も含めて。

そう思う海燕であった。



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紫陽花と我儘

「我儘をいっていいか、京楽」

「なんだい」

「俺の傍にいてくれ・・・・・」

院生時代の6回生の時、そう言った。

「いるよ。君の傍に。ずっといるよ・・・・」

浮竹にとっては、ただ親友として、友人として傍にいてほしいという願い。

でも、それは京楽にとっては恋人として一緒にいたいという願いだった。

すぐに卒業式がきて、お互い離れ離れになったが、暇な時間を見つけては一緒に過ごした。

「んっ」

ある日、京楽が浮竹に口づけた。

「なんでだ・・・・京楽。俺じゃなくても、相手はいっぱいいるだろう」

浮竹は、頬を朱く染めながらも、京楽の口づけを否定した。

「僕には、浮竹しかいない。いろんな女の子と付き合ったり、廓にいったりしたけど、やっぱり浮竹、君がいいんだ」

「俺は、男だ」

そう言って、その日浮竹は去ってしまった。

まずい別れ方をした。そう思った。

京楽はあれから、一緒に過ごさなくなった。浮竹を見つけても、避けるようになっていた。

「ああもう!」

浮竹から、行動を起こすことにした。

京楽のいる8番隊にいって、当時まだ副隊長だった京楽を引っ張り出して、近くの居酒屋に入った。

「お前の求める意味で、傍にいたいならそれでもいい。頼むから、俺を見てくれ。拒絶しないでくれ。拒絶されるのが一番堪える」

「僕は・・・・・・恋愛感情で、浮竹のことが好きなんだよ?」

「それでもいいから。俺も、きっと京楽のことを好きになる。だから、傍にいてくれ」

京楽は、浮竹に口づけた。でも、浮竹が拒絶することはなかった。

「浮竹・・・・大好きだよ」

「ああ・・・」

俺も、とはまだ言えなかったけれど。

そのまま時は流れ、二人は若くして隊長にまで登りつめた。学院を卒業して、50年も経っていなかった。

「浮竹、行くよ」

「ああ」

虚退治に8番隊と13番隊で出かけていた。

尸魂界に2つしかない、二対一刀の斬魄刀を持つ二人は、院生からの付き合いだ。お互いの背中を預けて、始解をして虚の群れを退治していく。

「危ない!」

大虚(メノスグランデ)が現れた。

なんとか攻撃は避けたが、その大きさに眩暈を覚えた。

ただの大虚ではない、小さめの虚が出現する。それは、大虚の中でも、最下位のギリアンより上のアジューカスだった。

「RRRRRRRRRRRRRRRR!!!」

もはや、叫び声も理解できない。

元々虚はしゃべることもできるが、戦闘に特化したそのアジューカスは、とにかく強かった。

滅多に卍解しない浮竹が卍解して、一撃を加えるが、それが効いているかも謎だった。

「浮竹、離れていて・・・・・僕が卍解する」

もうすでに、席官クラスも含めて、死神たちには退避を言い渡してあるので、花天狂骨の卍解も可能だった。

京楽が卍解する。その範囲の外にでて、結末を見守るしかない。

アジューカスと同じ傷を、京楽が背負う。

けれど、最後に立っていたのは京楽だった。

アジューカスは霊子の塵となり、一緒に現れたギリアンの大虚と一緒に消えていった。

ふらりと、京楽の体が傾ぐ。血が吹き出た。それを支えて、叫ぶ。

「酷い怪我だ!すぐ、4番隊のところにいこう!」

なんとか回道で止血だけをして、京楽に肩をかして瞬歩で移動する。

「ねぇ、浮竹」

「しゃべるな、怪我に響くぞ。俺の回道では止血で精いっぱいだ」

「僕は君がずっと好きだった。死ぬ前に、君にいっておきたい。君を愛してる」

「死ぬなんていうな!俺もお前が好きだ!愛してる!だから、簡単に死ぬなんて言うな!」

「君からその言葉だけでも、聞けて、よかった・・・・・・」

そのまま、京楽は意識を失った。

卯ノ花に診てもらったが、容体は芳しくないようだった。

集中治療室に運ばれて行った京楽の命が助かるように、縋る神などいないのに、神に祈った。

「浮竹・・・?」

浮竹の回道の血止めがきいたせいで、京楽は九死に一生を得ることとなった。

「気づいたのか、京楽!」

京楽は順調に回復して、2か月ほどで退院を迎えた。

「あのな、京楽・・・・・・」

「なんだい、浮竹」

伝えたいことはいっぱいあったが、何から伝えればいいのか分からなくて、こう言っていた。

「お前の回復祝いに、飲もう!」

雨乾堂にまで京楽を招き入れて、他の隊士を近づけないようにした。

「ああ、いいね。もう2か月以上も飲んでないから」

「京楽が好きそうな酒、買っておいたんだ」

京楽は、喉が焼けるような日本酒を好む。高いので、少し粗悪なものになったが、それでも高い値段の酒をもってきた。

「お前の好きな、強い日本酒だ。俺も飲むぞ」

酒に強いわけでもないのに、京楽のために買った酒を、浮竹ものんだ。

「おいおい、大丈夫かい?」

京楽は、酒を飲んでいて、何か甘ったるいものが混じっていることに気づく。

「浮竹、このお酒・・・・」

「媚薬入りだ。こうでもしないと、俺は勇気が出せない。お前に抱かれたい」

「浮竹・・・・・・」

京楽が、目を見開いた。

「君、本当にいいの?」

「ああ。ずっとお前の傍にいると誓った。愛している、京楽」

京楽も、次期に媚薬が回ってきたのか、苦しそうにしていた。

「俺を抱け、京楽」

隊長羽織と、死覇装を脱ぎ去る浮竹。

その白い髪と同じくらい白い肌に、京楽は夢中になった。

「あっ・・・・・」

鎖骨のあたりにキスマークを残す。

「もう、後戻りはできないよ?」

「構わない」

体が熱かった。

浮竹は、このときのために買ってあった潤滑油を京楽に渡した。

「その気はあると、とっていいんだね?」

深い口づけを繰り返した。

「ああっ」

潤滑油まみれの指が、浮竹の蕾を出入りし、ぐちゃぐちゃと音を立てた。

前立腺ばかり刺激されて、浮竹は始めて後ろでいった。

「あ!」

びゅるると、勢いよく精子が飛び出す。

「たまっていたんだね」

「すまない・・・・その、こういうことも自虐もあまりしない性質で」

「君の初めてをもらうよ」

「んっ」

指を引き抜かれて、かわりに熱い熱をあてられた。

ゆっくりと侵入してくる。

「んああああああ!」

先端を入れおわると、後はすんなり入った。

「あ!」

前立腺を突き上げられる。太ももを両肩に乗せられて、あられもない姿勢で貪られた。

「ひあっ」

中で抉られて、突き上げられる位置が変わった。

「ひっ」

経験もしたことがないような深さを抉られる。

「あああ・・・・・」

最奥で、京楽の熱が弾けるのを感じた。

「ん・・・・・」

ゆっくりと引き抜かれて、やがて口づける。

まだ、媚薬はきいていたが、泥のように眠気が襲ってきた。浮竹も京楽も、一度交わっただけでそのまま眠ってしまった。

「おい、起きろ京楽!」

「ん・・・僕、寝ていたのか」

「体液がかわいてかぴかぴになってる!お互いべとべとだし・・・一緒に湯あみするぞ」

「一緒になんて、また襲っちゃうよ?」

「お前の好きなようにしろ」

結局、湯あみをしながらもう一度抱き合った。

「愛してるよ、浮竹・・・・・」

「俺も愛してる、京楽・・・・・」

髪を京楽に洗ってもらい、浮竹は上機嫌だった。

櫛削られていく白髪は、とても長い。腰の位置まである。

「浮竹、もう少し、髪を切らないかい?」

「いいぞ。いっそ、お前が切ってくれ」

そう言われて、京楽は手鏡と鋏をとりだした。ちょきちょきと、器用に浮竹の髪を切っていく。

10センチばかり切られただろうか。腰より少し上の位置で整えられた。

「うん、この長さなら、座っても地面につかないでしょ」

「ああ、ありがとう」

盆栽をいじったり、けっこう土いじりが好きな浮竹は、白い髪の先をよく泥で汚していることがあったので、前から切りたかったのだ。

「京楽、これからも傍にいてくれるか?」

「僕の命が果てるまで、傍にいると誓うよ」

「じゃあ、俺もこの命が果てるまで、傍にいると誓う」

誓い合うように、口づけた。

「なんか、結婚式みたいでおかしいな」

「そうかな。愛を誓い合うのは本当は大変なことなんだよ」

「そうだな・・・・・・」

雨乾堂の庭には、早くも紫陽花が咲いていた。

その色が目に優しくて、一房鋏で切って、花瓶に生けた。

「紫陽花か・・・・もう、そんな季節なんだね」

「6月は、現世では結婚式の季節だそうだぞ」

「なんなら、僕らも式を挙げるかい?」

「そのうちな」

浮竹が笑う。

紫陽花のように、優しい色の笑顔だった。


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媚薬とパンツ王

その日、飲み会があった。

浮竹と京楽は、その飲み会に出た。

なんでも、上流貴族の妻になるために、院生をやめることになってしまった女生徒のお別れ会だった。その少女の名は、浮竹も京楽も知っていた。

まだ少ない女性死神の候補として、席官入りかもしれないと名前があがっていた少女だった。

学院を去るのは悲しいが、華やかな上流貴族の妻としての未来が待っているとあって、少女は幸せそうな顔をしていた。少女は中流の貴族の出身だった。

貴族居住区で、虚に襲われていた将来夫となる人を助けた時に、一目ぼれされたらしい。

何度も熱烈なプロポーズを受けて、ついに学院を退学して妻になることを選んだらしい。

死神は、いつも死と隣り合わせだ。そんなものにならなくて幸せを手に入れれるなら、それにこしたことはないだろう。

「いいなぁ。僕も、虚に襲われいるところを浮竹に助けてもらって、浮竹に一目ぼれして・・・・いや、もうめっちゃくっちゃ惚れてるんだけど、求愛してそれを受け入れてもらえればなー」

ちらちらと、浮竹をみる京楽。

浮竹は、そんな視線のことなど知らずに、果実酒を注文して酒を飲んでいた。

「はははは、京楽・・・・もっと飲めー」

浮竹が絡んできた。

「飲むよ飲むよ。君が飲めというなら泥水でも喜んで飲むよ」

浮竹には珍しく、羽目を外してしまったらしい。

「ほら、飲め飲め」

甘い果実酒かと思うと、喉を焼くような日本酒だった。

「君、こんなの飲んでたの?そりゃ酔うわけか・・・誰が飲ませたの」

「石成」

「ああ、あいつか・・・・・」

最近、浮竹と京楽の友人の輪の中に入ってきて、ことあるごとに京楽から浮竹を奪うみたいに、
行動して、邪魔になっている相手だった。

見目のいい浮竹を狙っているのは、京楽にも分かっていた。

「ん・・・・・・なんか熱い」

「え?熱でもあるの?」

「なんか・・・・へん・・はぁっ」

「ちょっと、浮竹!?」

そのまま、浮竹は眠りこんでしまった。

「僕が、浮竹君を送っていくよ」

石成が、ここぞとばかりに出てくる。

「君、浮竹になんの薬盛ったの」

「いやだなぁ、京楽君。僕はそんなことするような人間じゃないよ」

「分かるんだよね、僕には。浮竹に好意を持つ人間の良し悪しが。君は100%後者だ」

「ちっ、いいから浮竹渡せよ」

「なんの薬盛ったの?」

斬魄刀を手に、石成という男に喉に突き立てる。

「ひっ・・・・・ただの、媚薬だ!」

「ちっ」

今度は、京楽が舌うちする番だった。

「浮竹は連れて帰る」

浮竹を抱き上げて、寮の自室に戻った。

「あ・・・・京楽・・熱い・・・・・」

気が付いた浮竹は、苦しそうにしていた。

「ごめん、君を守り切れなかった」

「どうにかしてくれ・・・変になりそうだ・・・・・」

院生の服の胸元を寛げる。その動きだけで、京楽の心臓の鼓動が大きくなる。

「水を・・・・」

桃の天然水を与えると、コクコクと嚥下していく。その喉の白さにかぶりつきたくなった。

「んっ・・・・変だ・・・・体が熱い・・・・・京楽、まさか酒に何かを入れて・・・?」

「僕じゃないよ。石成のやつだよ。媚薬だって」

「びや・・く・・・・・くそっ」

「辛いでしょ?僕に任せて」

「あっ」

何度かその場所をこすられているだけで、いってしまったらしい浮竹が、甘い声をあげる。

「んあっ」

袴から手をさしいれると、浮竹がびくりと体を強張らせた。

「ぬくだけだから。大丈夫」

「俺だけじゃあ、あれだから・・・・」

お互いの袴の下に手を入れて、いじりあって、浮竹も京楽もイってしまった。

数分がたち、浮竹は湯あみのために風呂場に行ってしまった。

「はー。極楽。僕、もう死んでもいい」

浮竹の手でイかされたという事実は、付き合っていないけど、確実に一歩を踏み出したことになる。

「でへへへへへ」

べろんべろんになってでれている京楽のどたまをかち割るように、浮竹の手刀が飛んできた。

「ぬごっ!?」

「言っとくが、今日のことはノーカウントだからな!俺は薬をもられていた!どうしようもなかった!いいな!」

「浮竹、そんなに照れなくても・・・・」

「ノーカウントだ!」

「わかったよ」

残念ではあるが、薬のせいなので仕方ない。

まだ薬がぬけきっていないのか、浮竹はつらそうだった。

「なんなら、最後までするかい?ノーカウントでいいから」

「しない。さっき風呂場でも抜いてきた。しばらくすればおさまるはずだ」

冷たい水を飲んで、寝転がっていると、そのうち浮竹は酒を飲んだせいもあり眠ってしまった。

「今日を、僕は忘れない。君と歩み出した日だ」

でも、京楽もまたそんなことなど、すぐに忘れ去ってしまうのだが。

何せ、愛しい浮竹のパンツを盗んで被るのに忙しい毎日だ。パンツ王だ。

変態京楽は、媚薬など盛らない。

疑って悪かったと、後日謝罪された。何のことか分からなくて、京楽はぽかんとしていた。

浮竹は覚えているのに、当の京楽が忘れ去ってしまっているので、浮竹ももう完全になかったこととして扱うのだった。

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京楽ホイホイ

室内に、でかいごきぶりほいほいのようなものがあった。

「ふっ、浮竹、こんなもので僕をひっかけようだなんて・・・クンクン・・・この匂いは、浮竹のぱんつ!やっほう!」

ぺたり。

「あああーーー」

べたべた。テープ状になっているそこがべたべたしていると分かっても、浮竹のパンツがそこにあると知って歩みを止める京楽はいない。

「あああ、まるでゴキブリほいほいにかかったゴキブリの気分だよ!」

浮竹はというと、すやすやとまだ寝ていた。

時計を見る。

朝の7時だった。

9時から授業が始まるので、8時半頃までは浮竹は起きない。

「浮竹助けてーーー!」

浮竹は耳栓をしていた。

こうなるのが分かっていて、あらかじめしておいたのだ。

やがて8時20分頃になって浮竹が起き出す。

「ふあ~」

京楽ホイホイにかかった京楽を放置して、顔を洗って歯を磨く。

「うわーん。浮竹助けてー」

「ああ、京楽いたのか」

耳栓をとって、助けを求める京楽を、仕方なくべりべりと京楽ほいほいから外す。

「お前はまた俺のパンツに直進していったのか。こんなに分かる罠を前に」

「だってそこに浮竹のパンツがあったら被りたくなるんだもん!」

重度の変態であるために、浮竹のパンツを被ることくらいは平気でする。

「お前もこりないやつだな。この前の京楽ホイホイのエサは、俺の隠し撮りした半裸の写真だったな。お前のコレクションとかいうやつ」

この前も、浮竹は京楽ホイホイを設置していた。

その時のエサは京楽が買収して隠し撮りさせていた写真だった。体育の時に、各自動きやすい服装をするのが常だった。その時の着換えの時の写真だった。

「(*´Д`)ハァハァ浮竹のパンツ被りたい・・・・・・」

「自分のパンツでも被ってろ!」

洗濯して取り入れたものの中から、京楽の派手な勝負パンツをもってきて、それを京楽の頭にかぶせた。

「(*´Д`)ハァハァ・・・・・なんか、このまま浮竹に悪戯したい気分」

にじりにじり。

京楽は、自分のパンツを被ったまま、浮竹との距離をつめる。

「こっちにくるな変態!」

「まぁそう言わずに・・・・・・」

さっと、瞬歩でいなくなる京楽。京楽は瞬歩を最近使えるようになった。浮竹はまだ使えない。

「くそ、卑怯だぞ!」

さっと浮竹の後ろにきて、浮竹の尻を撫でだした京楽に、浮竹は股間を蹴り飛ばした。

「あうち!僕の息子が大変なことにいいいい」

「その息子とやら、使えないように捩じり切ってやろうか?」

ボキボキと指の関節を鳴らす浮竹。

「はう。ごめんなさい」

自分のパンツを頭からとって、浮竹に謝る。

土下座状態だった。

「おい京楽・・・・・」

「(*´Д`)ハァハァ浮竹の生足・・ぺろぺろ」

「この変態が!」

足の甲をなめられて、浮竹は京楽の顔を蹴り上げた。

「ああ、いい蹴り・・・・・・」

鼻血を出して、京楽は倒れた。

「もう知るか。学校に行くからな。好きなだけ伸びていろ」

浮竹は、気絶した京楽を残して学院に登校した。

「(*´Д`)ハァハァ・・・・浮竹のパンツの海・・・・・・」

浮竹が、鬼道を練習している間、京楽は寮の自室で、とりこまれた洗濯物から浮竹のパンツを盗み、しっかり鍵をかけて封印してある浮竹グッズのうちの、浮竹パンツコレクションをだして、そのパンツの海にダイブした。

しょっちゅうパンツがなくなるのが、浮竹の悩みだった。

寮の同室の変態が盗むのだと訴えたことがあるが、上流貴族の京楽家の人間がそんなことをするはずはないと、一蹴された。

盗んだパンツを取り戻しても、いろいろと妄想とナニに使ったせいで、もうはきたくない。

なので、浮竹は京楽から衣装代を出してもらっていた。主にパンツを買うのに使う。

新しいパンツを買う→京楽が盗む→衣装代をもらって新しいパンツを買う→京楽が盗むとこの悪循環が続いているせいで、いっこうに浮竹のパンツは増えない。

増えるどころか、減っている。

たまに京楽の手に余るほど買って、やっとまともな量のパンツになった。

「また、注文しとくか・・・・・・」

ネットで、パンツを大量に注文する。50枚。

これも、京楽からもらった衣装代から出す。

結局のところ、手元に残るは10分の1なので、50枚注文してそれを吐いたかを確認してから盗むのだから、性質が悪い。

「はぁ・・・・・・京楽ほいほい、また設置しとくか」

今度は少々泣きが入っても助けてやらないことにする。

浮竹の苦労は絶えない。

変態京楽がいる限り、貞操の危機はあるし、いろんな変態行為に悩まされる。

だが、不思議と京楽と縁を切ろうとは思わなかった。

それが、浮竹が知らない間に京楽に抱いた思いからきていることを、本人は知らなかった。

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重度のブラコンとシスコン

18歳で尸魂界にきてしまった一護。

魂魄は死神となった。真央霊術院を半年で卒業し、護廷13隊の13番隊副隊長になった。

隊長は朽木ルキア。本当なら、護廷13隊に入るつもりもなかったのだ。

しかし、尸魂界を二度にまで渡って救った英雄を、護廷13隊がただ放置しておくはずがない。

死神の在り方と鬼道を学ぶために、まずは真央霊術院に入れられた。本当ならそこで1年ほど過ごすはずだったのだが、まるで水が大地に染み渡るように吸収の早い一護は、わずか半年で学院を卒業となった。

「あーあ。副隊長っていっても、何すりゃいいんだか」

一護の愚痴に、ルキアが答える。

「虚の退治や雑務から種類整理まで。多岐にわたるぞ」

「虚退治ならいいんだけどな。この書類・・・俺が片付けるのか?」

「そうだ」

ルキアとは、交際を飛び越して婚姻している。

ルキアの義兄である朽木白哉の仕業であった。義妹の幸せを望む兄は、ルキアが一護を好きであると知って、籍を入れてしまったのだ。

「はぁ・・・・・こんなことなら、もうちょっと学院にいるんだった」

「たわけ!使える人材を腐らせておくほど、今の尸魂界は甘くない!」

「へいへい・・・・」

書類を見て、ハンコを押していく。というか、ただハンコを押すだけの書類であった。

否か応かの採決は、ルキアの役目だった。

浮竹隊長がいなくなり、少しばかりの間隊長代理として隊長の仕事に携わっていたために、仕事もスムーズに終えていく。

「なぁ、ルキア」

「なんだ」

二人そろって、書類整理の仕事をしていた。

「ウェディングドレス着てくれっていったら、怒るか?」

「ぶばっ」

「うわ、きったねぇ」

「ななななな、何を突然言い出すのだ貴様は!」

茶を吹き零したルキアを見て、一護が「だってさぁ」と答える。

「俺たち、白哉のせいでもう勝手に籍入れられて結婚してることになってるじゃねーか。結婚式も6月に挙げるとかいってるし・・・・俺は白無垢より白いウェディングドレスのほうが見たいんだよなぁ。ああ、白無垢が似合わないってわけじゃないぞ?純白のウェディングドレスを着たルキアは、白哉に連れられて俺のとこまで・・・・・はぁ、妄想が止まらない」

「たわけ!」

「ぐおっ」

頭に手刀を受けて、一護がハンコを押すはずだった種類をひらりと床に落とす。

「くだらぬ妄想に浸っている暇があったら手を動かせ。だがまぁ、ウェディングドレスの件は了解した。兄様と相談しておく」

「白哉か・・・・なんでもかんでも白哉なんだな。このブラコン」

「そ、そんなことはないぞ。確かに兄様ほど素晴らしい存在は他にいないが・・・・」

「俺は?」

ずいっとルキアの顔をのぞきこむ。

「たわけ!貴様も一番に決まっておる!兄様と並んで一番だ!」

やけくそ気味に言い放って、ルキアは真っ赤になった

つられて、一護も赤くなる。

「この種類の束、明日までには仕上げるぞ」

「えええ、こんな量をかよ」

「お前の様子を見るのも兼ねて、教師として赴任していたら、仕事がたまりにたまってな。大分片付けたのだが、はやり副官がいると楽だ」

ルキアは、肩をもんでいた。

「肩こってるのか?ちょっと揉んでやろうか」

「あーそこそこ。効く・・・あああ、きもちいい」

真央霊術院で、4番隊の仕事としての指圧マッサージを学んでまだ日はたっていない。ちゃんと忘れずにツボを刺激する。

「ああああ、きもちいい・・・・・・」

「おい、ルキアと一護、何昼間っから如何わしいことしてるんだよ!」

ばたんと、中に入ってきた恋次は、あれ?と首を傾げた。

「なんだ、恋次きておったのか・・・・そこだ、そこがこっておるのだ」

「なんだ、肩もみか・・・・」

「なんだと思ったんだよ、お前はよ・・・・」

一護が溜息を零しながら恋次を見る。

恋次は顔を真っ赤にした。

「べ、別に俺の知らないとこで籍入れられて文句いいにきたとかそんなんじゃねーからな」

「恋次もその気があるのなら、籍を入れるか?4大貴族は、重婚が可能だ」

「ええええええ」

「ええええ」

ないわーと、二人とも思った。

妻の他に妾を数人もつ上流貴族は多い。そのために、最近では一夫多妻制度も認められるようになっていた。反対の、一妻多夫性も認められるだろう。

「いやまぁ、ルキアと結婚できるならしたいけど、一護のやつが邪魔するだろうから遠慮しとく」

「そうなのか、一護」

「ああ、そうだな、恋次が夫としてやってきたら、思いっきりいじめてやる。ルキアと離婚するように」

一護は本気だった。

ルキアを他の男の手には渡すまい。

「ルキアは俺のものだ」

ルキアを恋次の目の前で抱き締めると、恋次はルキアを引っぺがして自分の腕に抱き込んだ。

「ルキアは、俺の大切な幼馴染で家族だ」

「よし、恋次、いっそ俺とルキアの息子になれ」

「はぁ?」

「は?」

「ルキアが好きなんだろう。家族として籍を入れるとしたら、息子しかあいてないぞ」

「あほか!好きな女の息子になりたい男がどこにいるってんだ!」

「どこかにいるかもしれねぇじゃねぇか」

「ええい、二人とも落ち着け。恋次、私は一護が好きなのだ。一護の妻になれて満足している」

「そっか・・・・・・」

恋次は、振られたことになるのだろうか。大分気落ちしていた。

「でも、恋次も好きだぞ?」

「おう」

「どっちなんだよおめーはよ」

一護は、頭を抱えていた。

「おっといけない。兄様とメールの連絡をとりあう時間だ」

どんだけー。

どんだけブラコンで、白哉はシスコンなのー。

二人は思ったが、口には出さない。

「俺はこの書類をもってきただけだ、じゃあな」

恋次が去っていく。

(一護がウェディングドレスで結婚式を挙げたいといっております)

(お前はどうなのだ、ルキア)

(私も、現世のウェディングドレスなるものを着てみたいです)

(分かった)

「おいおい、何メールでやりとりしてるんだよ。家に帰って話せばいいだろうが」

「兄様とのメールなしでは生きていけない!」

どんだけブラコンなの。もう手遅れだった。



その夜、二人で一つの布団で寝た。

「ルキア・・・・いいよな?夫婦なんだし・・・・・」

「あ、ダメだ一護」

「なんで」

「兄様が、結婚式まで処女を保てと」

「俺は我慢できない」

ルキアを押し倒すと。

「散れ、千本桜・・・・」

「白哉!夫婦生活にまでそうくるか!」

一護は、億の花びらの群れを斬月で弾くと、夜中なのに白哉と切り結びあっていた。

「ちょっとはまともになったらどうだ、このシスコン白哉!」

「兄には関係のないことだ」

「大ありだろ。お前のこと、お義兄さんと呼ばなくちゃいけないんだぞ!」

白哉は、めっちゃ嫌そうな顔をしていた。

「兄に、お義兄さんなどと言われたくない」

「じゃあなんで籍いれた!」

「ルキアが兄のことを好きだからだ。だがお義兄さんなど呼ばれたくはない」

支離滅裂だ。

「俺、もう寝るわ。違う布団で寝るし、ルキアには手を出さねーよ」

「そうか。ならば安心して私も眠ろう」

結局、結婚したのに夫婦の営みは訪れることはない。

6月の結婚式まで、あと3か月であった。




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学院生活

それは、まだ一護が真央霊術院の特別転校生としてやっていた日の物語。


一護は、いきなり4回生からの編入生徒になった。

一護の霊圧は荒々しく、虚のそれが混じっているため、友人らしい友人はできなかった。

「こら、一護!貴様、弁当を忘れたであろう!」

「ルキア・・・・こんな学院にまで、何しに来てやがんだ」

「貴様!せっかく弁当を届けてきてやったというのに・・・ええい私が食してやる!」

「ああっ、嘘、ごめんなさい!」

屋上で、いきなり重箱の弁当を広げて食べだすルキア。

「ほら、あーんしろ」

「あーん・・・・って何させやが・・・・むごっ!」

口をあけた一護に海老の天ぷらをつっこんで、次にちくわの天ぷら、また海老の天ぷらをつっこんでいくと、一護が喉をつまらせた。

「げふごふっ・・・・」

なんとか咀嚼して飲み込むと、ルキアの額に額をぶつけた。

「痛いではないか、何をする!」

「そりゃこっちの台詞だぼけ!俺を殺す気か!?」

「貴様と私は一蓮托生・・・・貴様が学院にいくならば、教師として赴任するまでよ」

「はぁ?お前が教師!?この真央霊術院ってとこも、かなり落ちぶれた学校なのか」

「たわけ!そんなわけがなかろう!今いる死神たちは、この真央霊術院を卒業した者がほとんどだ!」

「ふーむ。でもお前が教師ねぇ。なんの教師だよ」

「鬼道だ。少々得意でな。元々私は、この学院をまともに卒業してはおらんのだ。朽木家の養子になり、すぐに卒業させられて死神となった・・・・・・」

ふっと、ルキアに暗い影が落ちる。

「私は・・・・・んっ」

一護に、口づけされていた。

「お前はお前だ。養子にされたから学院まともに卒業してないからって、なんなんだってんだよ。お前はお前の力で13番隊副隊長にまで登りつめたんだろうが」

「一護・・・・・・」

一護は、ルキアを抱き締めた。

「教師として、また学院の雰囲気に馴染めばいいさ。お前はもう、誰がなんといおうと、13番隊副隊長なんだ」

「一護・・・好きだ・・・・・」

「俺もだぜ、ルキア」

授業開始を予告する、10分前の鐘がなる。

一護は急いで弁当を食べ始めた。ルキアもだ。

「なんで俺の弁当、お前まで食ってるんだよ!」

「これは、私の分まで作られておるのだ!」

「道理で一人分にしては量があるはずだ」

なんとか食し終わり、ルキアと別れた。

「ではな、マイハニー!」

何処で覚えたのか、なんか間違った知識をいろいろと身に着けてしまっているルキアだった。

午後になって、ルキアの指導する鬼道の授業になった。

言霊を詠唱し、的に向かって放つ。

ルキアが、手本を見せる。的は粉々になり、クレーターができた。

「凄い・・・流石は13番隊の副隊長様だ」

「素敵・・・お近づきになりたい」

「お姉さま・・・・」

なんか危ない生徒多くないか?

そう思いながらも、詠唱し的にあてようとして、自分が黒焦げになった。

「ええい、もう一回だ!」

霊圧のコントロールに向かない一護であるが、その霊圧の高さは尸魂界でも一番だ。

「やった!」

なんとか的にあたった。

大分それて、後ろの建物を粉々に破壊した。

「やべぇよ・・・・黒崎一護だっけ・・・・そうそう、尸魂界の英雄」

「今更学院になんて、何しに来てるのかしら」

やはり、友人はできそうになかった。


帰り道、ルキアと手を繋いで帰った。

「今日は、兄様が特別にプレゼントがあるそうだ。そうそう、恋次も来ているのだ」

「お、恋次か。なかなか会えなかったからな。酒でも飲んで騒ごうぜ」

一護は未成年であったが、尸魂界に未成年が飲んではいけないという法律はない。

現世では飲まなかったが、尸魂界では一角、弓親、恋次あたりとつるんで飲みあった。


朽木家に戻ると、わかめ大使の着ぐるみを着た恋次がいた。

「ぎゃははははは!」

「あーっはっはっはっは!」

一護とルキアは、二人で地面を叩いて笑い転げた。めっちゃシュールだった。

「笑いたきゃ笑いやがれ・・・・でもなぁ、一護、てめぇの分まであるんだぜ」

「え」

現れたのは、なぜか様になっている、朽木白哉。同じく、わかめ大使の着ぐるみを着ていた。

「おお、兄様、お似合いです!」

「おい、ルキア、その変わり身の早さはなんだ!」

恋次がむきになる。

「兄も、これを着ろ」

「嫌だって言ったら・・・・?」

「散れ、千本桜・・・・・・」

「うわああああ、嘘だ、着る、着るからやめろ!」

朽木白哉も大戦を生き残った。強者であることには変わりない。

「私が着させてやろう」

嬉しそうに、わかめ大使の着ぐるみを一護に着せていくルキア。

「わかめ大使トリオだ」

白哉の言葉に、涙を流しながら笑顔を浮かべる恋次と一護がいた。

写メをとられ、死神という死神にまでメールを送る白哉。

「だから、友達いねーんだな」

「卍解、千本桜景厳・・・・・・」

「ぎゃああ、洒落になんねーぞ一護、早く謝りやがれ!」

「ぎゃあああ、すまねぇ白哉あああって、あああああ!!」

数億の桜の花びらに埋もれて、一護と恋次は仲良く気絶した。

「兄様、その恰好のフィギュア人形をつくるなど、どうですか!?」

キラキラした瞳で、ルキアはわかめ大使の着ぐるみを着た義兄を見た。

「ふむ、それもよいな・・・・・思案しておく」


「ほれ、一護、恋次、いつまで気絶しておるのだ」

「白哉は!?」

「もう、屋敷に戻られた」

「隊長のあほー!」

恋次は、わかめ大使の着ぐるみを脱ぎ捨てた。そして、さっきまで恋次がいたところに、千本桜の花びらが舞う。

「おーこえぇ。地獄耳・・・・」

恋次は、長年付き合った隊長である白哉のことを、一護よりは理解していた。

「おい、恋次、帰る前に飲みに行こうぜ」

「おう、いいな!」

「ルキアもくるだろ?」

「ふむ・・・・まぁよい、仲間にくわわってやろう」

次の日べろんべろんに酔ったルキアと一護がいた。学院は、二日酔いで休みだ。ルキアも教師としての授業を休んだ。

恋次は飲み慣れているし、加減というものを知っているので、二日酔いになるほど飲まなかった。

ルキアは、あまり酒を飲んだことがないので、一護の学院への愚痴を聞きながら飲み交わしていた。そしたら、深酒になってしまった。

「兄とルキアは・・・・もう少し、自分の限界というものを覚えろ」

白哉に看病されるルキアはまだいい。一護など、薬を与えて放置だ。

「くそ・・・・いつか、見返してやる」

「兄様・・・・お花が回っています」

「ルキア、つらいなら4番隊まで連れていくが」

「いえ、そこにまでは及びません。薬も飲んだし、静かにしていれば、直に治るでしょう」

「俺は放置プレイ・・・・・」

「一護は放置プレイが大好きだからな!」

「ルキア、後で覚えてろ~」

一護はむなしく、天井を見上げるのだった。

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それいけ一護君。

黒崎一護が他界した。

職業大学生 年齢18歳

髪の色オレンジ 瞳の色ブラウン

原因、子供を庇って車にはねられて。

藍染を倒し、ユーハバッハまで屠った尸魂界の英雄は、若くしてその魂魄が尸魂界に渡ることとなった。

「いいいい、一護!?」

流魂街に流れ着いた一護は、すぐ様瀞霊廷の中に入る許可をもらい、ルキアと数か月ぶりの再開を果たした。

「何故、何ゆえ貴様が魂魄で尸魂界に・・・・・」

ルキアは、まだ混乱していた。

「死神化はできるんだよ」

斬月をとりだして、粗末な着物姿だった少年は、死覇装をまとう死神へと変わる。

「現世で死んだのか!」

「おう、そうだ!何か文句あっか!」

「たわけ!人生一度きりしかないんだぞ!もっと青春を謳歌してからこい!」

「そう言われてもなぁ。もう死んじまったし、やり直せないんだよなぁ」

「今頃、友人や家族が悲しんでいるぞ!」

「いや別に?死神化すれば、穿界門通じて通って行けば、俺の家族みんな霊力あるから、俺の姿見えるし」

意外と、死んでしまったからこうしたかった・・・・とかいう未練が、全くなかった。




その日、隊首会が開かれた。

死神化できる一護の存在をどうするかというのが、議論の内容だった。

「13番隊隊長があいている。そこにでも、ほうりこめばいいじゃねぇか」

日番谷が、適当にだけれど、妥当な線を言い当てる。

「でもねぇ、あの一護君だしねぇ。死神の義務とか、ないからねぇ・・・・」

京楽は、これは困ったぞという顔をしていた。

「なら、真央霊術院にいれたらどないや。そこ卒業させてから、改めて護廷13隊の中にひきこむちゅう手はどうや」

平子の言葉に、京楽はそれだと、ぽんと手を打った。

「めんどくさいから、いっそ真央霊術院にいれて、一からやり直してきてもらおうか」

京楽は、瀞霊廷を救った英雄であれど、特別扱いはしない方針でいくことにした。



「というわけだ」

ルキアから説明を受けて、やや髪が伸びた一護が、反論する。

「どういうわけだよ!死んでいきなり、死神化できるのに死神になるための学院に通えって、どんな無茶ぶりだよ!」

「まぁそういうな。1学年から6学年まで6年間学べというのではない。貴様は「特別転校生」ということになる。鬼道と死神の在り方について学んでほしいと、京楽総隊長がおしゃっていた」

「京楽さんが言い出したなら仕方ねーけど。泊まるところとか、俺ないぜ」

「それは心配するな!我が朽木家が、貴様の面倒を見てやろうといっておるのだ!」

ルキアは、喜んでいた。

密かに好いていた一護が、尸魂界で死神として生活を始めるのだ。

それに胸がときめく。

「4大貴族のかー。まぁいいか、世話になるぜ」

それから、一護は半年の間で鬼道を身に着け、死神としての在り方を学んで、学院を卒業した。



「案外早いものだな・・・・半年というのは」

いろいろ、教えてやろうと思っていたのだが、学院で学んだ方が早いらしく、鬼道を使えるようになった一護は、多分瀞霊廷の中で一番強い死神であった。

そして、また隊首会が開かれた。

そこで、京楽は、一護に13番隊隊長に就任するように命令した。

「ええっ、俺が隊長!?絶対無理!」

「そんなこと言わないで~。君の力を放置しておくなんてもったいない。今あいてる上位は13番隊くらいしかないんだよ」

「じゃあ、こいつを隊長にしてください。こいつの下になら、俺は副隊長につきます」

ルキアを盾にしだした。まさか、ルキアを隊長にして俺を副隊長になんかしないだろう・・・そう思っていた。

「ええ!本当かい、一護君!」

「おい、一護!」

ルキアの険しい声。

「じゃ、決まりね。ルキアちゃんは今日から13番隊隊長。一護君は、今日から13番隊副隊長だ」

「「え」」

二人して、顔を見合った。


「ということで、兄様、私はこやつの上司ということになります」

「そうか。兄は、幸運であるな」

「あのなー、白哉。飯とか寝るとことか世話になってるけどな、俺はルキアと対等でいたいんだよ!隊長とかめんどくさいから、あえて副隊長になったんだ!」

「そうか。朽木一護よ。これから、朽木家の名に恥じぬよう、己を磨け」

「は?朽木一護?なんだそりゃ」

「貴様、我が義妹を好いているのではないのか」

「いいいいいや、そりゃ好きだけど」

「に、兄様!?」

「心配するな。もう籍は入れておいた。朽木ルキアの夫、朽木一護。結婚式は6月だ。文句はあるまい?」

「「ええええ」」

いつの間に。

そりゃ、ルキアも一護のことを好きで、一護もルキアのことが好きだけど、交際とか一気に飛ばして婚姻とか・・・。

しかも、本人の意思確認なしで。

朽木白哉のすることは、時々わからない。

わかめ大使とか変なもの作ったりするし。


「一護・・・・もう、籍をいれられているそうだぞ。私と貴様はふ、夫婦というやつらしい」

「ルキア・・・・なんでいきなりいろいろすっとばして、籍入れたんだ白哉は」

「緋真姉さまのことがあるからな・・・・私に、幸せになってもらいたいのであろう」

「緋真って、白哉の死別した奥さんか」

「そうだ。そして私の実の姉だ」

「まぁ、籍入れちまったもんは仕方ない。今後もよろしくな、ルキア。好きだぜ」

「うううううう、うむ。私もきききき、貴様のことがすすすす好きだ」

手を繋ぐ。現世にいた間、戯れに恋人同士のようであったが、あくまで疑似的なもので、本物ではなかった。でも、今築かれていく絆は本物なのだ。

「愛している、一護・・・・・」

ルキアが、背のびした。アメジストの瞳を閉じて。

キスを待っていたのだが、一護はルキアをほっぽりだして、すり寄ってきた猫を構っていた。

「貴様は・・・・・乙女心を知らんのか!舞え、袖白雪!」

「あがががが」

凍結させられた一護と、それにおしっこをかける猫が一匹いたそうな。





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アホな京楽と日番谷

「浮竹の子供が欲しいなぁ・・・・・」

雨乾堂で、アホなことを言っている京楽がいた。

「どうだい、涅隊長に頼んで・・・・・・」

「却下」

浮竹は即答した。

何が悲しくて、自分の分身のようなものをもたねばならぬのか。

女性と付き合っているのならわかるが、男同士なのだ。子供などできるはずがないものとして、初めから割り切っているだろうに。

「浮竹の子なら、かわいいと思うんだけどなぁ」

「京楽の子なら、もじゃもじゃだな」

「はっ・・・・浮竹に似ているけどもじゃもじゃ・・・・ぎゃあああ、もじゃもじゃな浮竹なんていやだーつるつるの今のままでいて!」

抱き寄ってくる京楽が鬱陶しくて、座ったまま蹴りを入れた。

「俺は、今仕事中なんだ!邪魔するならどこか・・・・日番谷隊長のところにでもいってこい」

「うん、そうする」

冗談で言ったつもりだったのだが、京楽は本当に日番谷のところへ行ってしまった。

「シロちゃん、切れなきゃいいけど・・・・・」

自分と同じシロちゃんのことを考えながら、書類を片付けて行った。



「日番谷隊長、僕と浮竹の子供なら絶対かわいいよね?」

「どうした、いきなりきて、いきなり脳みそがわいてんのか」

「酷い!僕の乙女心をもてあそんだのね!」

嘘泣きする京楽を放置して、日番谷は松本のいれた茶をすすっていた。

「乱菊ちゃん、僕にもお茶いれて~」

「は~い」

お茶を入れてもらって、その神々の谷間にチップの紙幣を払う。

「何しとるんだ、おのれは!」

「え、いやー、チップだよチップ」

「チップ?」

「そうそう。ホテルの使用人とかに、小遣いをあげるんだよ」

「だからってなんで松本なんかに」

「え、だってこの前本人がチップ胸の谷間に埋めてねvvVとかいうから」

「松本おおおおおお!」

「わきゃあああああ!」

飛び上がって、松本は隊首室に引き下がってしまった。

ひっじょーーーーーに、なんともいえぬ沈黙が広がる。

会話をするネタがないのだ。

浮竹のことならどうだと思いついて、口に出した。

「おい、最近浮竹とはどうなんだ」

「ああ、聞いてくれる?この前蒼い薔薇を99本あげたんだ。そしたら浮竹のやつ・・・・」

以下省略。

「ああ、そうか」

すでに、耳から入って耳から出ていた。

「それでね、赤薔薇を99本送ったら・・・・・・・」

以下省略。

「ああ、そうか」

もはや、それしか言わない。

「ついにで彼岸花が綺麗に咲いていたから、そこでうんこをしたんだよ」

「ああ、そうか」

「・・・・・・・・日番谷隊長のうんこたれ」

「ああ、そうか」

京楽の額に血管マークが浮かぶ。

このお子様、いかにしてやろうか。

「日番谷隊長は大変な変態で、トイレにはいったらうんこを壁になげつけて、手も洗わずに桃ちゃんの胸をさわって、乱菊ちゃんのぱいぱいをもむ、変態星人」

「ああ、そうか・・・・・・っていうわけねーだろうが!彼岸花のところからちゃんと聞いていたこのぼけ!蒼天に座せ、氷輪丸!」

「のぎゃああああああ」

悲鳴をあげて、天高く飛んでいく京楽を見る。

「あ、そういえば今日は浮竹のやつがいないな・・・・・・」

「おーい京楽~。あ、日番谷隊長、京楽を見なかったか?ここに遊びにいくっていって出て行ったまま帰ってこないんだ」

べしゃ。

半分氷漬けになり、奇妙な方向を向いた京楽が落ちてきた。

「やべっ」

日番谷は京楽を隠した。

「あれ?今何か落ちてこなかったか?」

「さぁ?松本の胸じゃねぇのか」

「松本副隊長はどこに?」

「おーい松本ー」

「なんですー隊長。もう怒ってません?」

「怒ってねーからこれなんとかしろ」

小声で、氷漬けになった京楽をもっていかせる。

「あ、そうだ浮竹、実はな・・・・・・」

浮竹に話しかけている間に、松本が京楽の遺体・・・・じゃなかった、気絶した京楽をもっていった。

「京楽のやつ、俺の子供ならかわいいだろうなって、ありもしないこと言い出したんだ。しまには涅隊長に頼んで作ってもらおうかなんて言い出すから、頭にきてな」

隊首室をのぞくと、京楽は復活していた。

「日番谷隊長、やるじゃない」

「あれ、京楽?いつの間にきてたんだ?」

「僕は最初からいたよ。どこかの暴力子供が、いきなり斬魄刀で・・・・」

「あーもううっさいめんどうだから飛んでけ!蒼天に座せ氷輪丸!」

「なんで俺まで!?」

「なんであたしまで!?」

みんなまとめて、氷の龍でふっ飛ばした。

「ははははは・・・・・・アニメで俺は卍解を吸収されるし。ほんと、ろくなことねぇわ」

そう一人ごちて、半壊した執務室を後にした。



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花街恋話7

椿亭の廓の主人に、浮竹を身請けすることを告げた。

主人の松村は、別段驚いたりせずに、今まで言っていた身請け額の2倍の値段を提示した。

「足元を見るか・・・・・」

流石の京楽も、ぽんと出せる値段ではなかった。

京楽は、浮竹のために屋敷を2軒売り払った。

「京楽の旦那!翡翠じゃなく、あたしを身請けしておくれよ!」

「椿・・・・君との縁は、とっくの昔に切れてるよ」

「くそ、翡翠め・・・・あたしから京楽の旦那を奪っただけでは飽き足らず、身請けだって?」

京楽は、いつものようにその日も浮竹を買って、朝方に去って行った。

「翡翠、こっちに来な!」

「椿姉さん・・・・・?」

花魁の椿の後ろには、明らかにやくざ者と思われる男が二人控えていた。

「この子だよ。金を払った分、たっぷりと可愛がっておやり」

「いいのか?京楽って上流貴族のお気に入りなんだろ?」

「構いやしないよ。こんな淫乱、手練手管で京楽の旦那を落としたに違いない。京楽の旦那以外の客をとらないってとこもむかつく!」

悲鳴をあげようとして、口を塞がれた。

「むーーー」

そのまま、薬をかがされて、浮竹は意識を失った。

「あ、いやああああ!」

気づくと、やくざ者と思われる男二人に組み敷かれて、犯されていた。

「いやああ!!京楽、京楽!」

「ちっ、うるせぇな」

猿ぐつわをされて、悲鳴がでなくされた。

「んーーーー」

涙がいっぱい零れ落ちた。

京楽以外に、穢された・・・。

そのショックで、放心状態になる。

「ち、あんまりおもしろくねぇな。人形を抱いてるみたいだぜ」

「でも、悪くはないだろう」

浮竹を犯した男が、浮竹の中に欲望を注ぎ込んだ。

その後で、もう一人の男が、浮竹を突き上げてきて、欲望を浮竹の中に注ぎこんだ。

「んーーー」

「なんだ、言いたいことでもあるのか?」

「やめとけやめとけ。またわめき出すぞ」

そのまま、男たちは散々浮竹を犯して、去って行った。

猿ぐつわを外された浮竹は、すぐに湯あみをして見知らぬ男たちが、自分の腹の奥にだした欲望をかきだす。

「京楽・・・・・」

涙があふれた。

その夜、京楽がやってきた。

戒められたであろう手首の痕と、自分のものではないキスマークに、京楽は浮竹を責めることもなく、静かに問いただした。

「誰?こんな酷いことを君にしたのは・・・・・・・」

「椿姉さんと、その後ろにいた二人のやくざ男」

「そう。ちょっと待っててね」

京楽は、椿のところに顔を出した。

「京楽の旦那!翡翠を見ただろう?あんな淫乱な子・・・・・・」

斬魄刀を抜く。

「ちょ、待ってよ京楽の旦那」

京楽は、躊躇もせず椿の美しい顔(かんばせ)に傷をつけまくった。かなり深く切ったので、傷跡は一生残るだろう。

「ぎゃああああああああああ!!」

「翡翠を犯した男はどこだ。言わなければ、命ももらう」

「下の、下の階にいる女衒(ぜげん)の船橋と二星だよおお」

京楽は、1階に降りて、女衒の男二人を呼ぶと、片腕をそれぞれ切り飛ばした。

「ぎゃあああああああ」

「うわああああ」

「うるさいね。それ以上騒ぐようなら、命もとるよ。僕の翡翠を穢した罪・・・・本当なら、死に値する」

相手は上流貴族だ。

殺傷沙汰になって裁判にもちこんでも、決して勝てない相手だ。

「ひいいい、椿のやつ、こんなことになるなんて一言も・・・・!」

女衒の男たちは、それぞれ傷口を縛って血止めをして、なんとか一命をとりとめたらしい。

だが、椿はその顔の傷が一生治らないことを悟って、3階から身投げした。

中途半端な高さから身投げしたせいで、苦しみ、しばらくは死ねないでいた。

「京楽の旦那・・・・祟ってやる・・・・・」

「ああ、好きなだけ祟るといいよ。さようなら、哀れな花魁」

京楽の犯した罪は、不問にされた。

「本当に申し訳ございません、椿があんなことを起こすなど・・・」

廓の主人の松村は、常に京楽の機嫌を伺っていた。京楽がその気になれば、たとえ花街一の廓であれ、廃業に追い込むことは簡単だった。

「つきましては、翡翠の身請け額をこの前の半額に戻しますので、どうぞそれでお怒りを鎮めてくださいませ・・・・」

京楽は、浮竹を伴っていた。

浮竹を抱き上げていた京楽に、浮竹にも土下座する。

「翡翠、どうかこの方に穏便にことを進めるように言ってくれ。この通りだ」

「京楽。俺はもういい。身請けしてくれ。こんな廓、もう一秒だっていたくない」

「翡翠がそう言ってるから、特別に許してあげるよ」

浮竹の身請けのために集めてきや金銭を、主人である松村の元に投げよこす。

「おおお、こんなに・・・・・」

金の延べ棒などが目立ったが、宝石類も多かった。

銭にすると持ち歩けないので、宝石などを多くした。

「これで、翡翠・・・・いや、浮竹はもう僕のものだ。いいね?」

「は、ははーーーー」

松村は、額を地面にこすりつけた。

花魁の椿を失っても痛くないよな額が転がり込んできたのだ。松村は、内心でほくそ笑んだ。

「行こう、十四郎」

「京楽・・・さっきみたいに、抱きあげて」

軽い体重の浮竹を抱き上げる京楽。そのまま瞬歩で、京楽は流魂街の外れにある自分の別宅へやってきた。

家人たちはいたが、京楽の突然の訪問もに驚かない。

「京楽様、今日はこちらにお泊りになりますか?」

「うん、そうだね。ここで泊まるよ。朝餉までの食事の用意を頼む」

「京楽・・・俺は、もう、お前に抱かれる資格は・・・・・・・」

「ないなんて、そんなことないよ。一緒に湯あみをしようか」

すぐに風呂の用意がされた。

ごしごしと、京楽は浮竹の体を磨き上げた。そして、キスマークの残ったところに、新しくキスマークを残した。

「あっ・・・」

「もう、とろとろに溶けているね」

湯の中で、蕾に指を入れられた。

「ああっ」

前立腺をいじられて、犯された時は恐怖でいけなかったせいで、浮竹の花茎はすぐに反応した。

湯からあがって、雑多に水分をふき取ると、用意してあった潤滑液を自分の欲望に塗り込めて、一気に浮竹を突き上げた。

「あああ!」

「君はもう、僕だけのものだ・・・他の男に穢されたことなんて、忘れてしまいなさい」

激しく突き上げられて、浮竹は涙を零した。

「痛い?」

「違う。お前が、変わらず俺を求めてくれることが嬉しいんだ」

「かわいいことを言うね」

「んあっ!」

引き抜かれて、また一気に貫かれた。

前立腺をすりあげる動きに、欲望を高めた浮竹が精を放った。

「はうっ」

最奥に要望を注がれるその瞬間、京楽は浮竹の花茎をすりあげた。

「一緒にいこう・・・・」

「あんっ」

吐精した次の瞬間にまた吐精をして、浮竹の意識が真っ白になっていく。

「はあっ・・・・・」

深い口づけを受けて、浮竹はそれに答えた。

「京楽・・・・愛している」

「僕もだよ、十四郎」

「春水と、呼んでもいいか」

「勿論だよ」

「春水・・・・もう、俺を手放すな。傍に・・・・」

「もう、ずっと傍にいるよ」

浮竹の身請けまで、出会ってから半年の月日が経っていた。

長いようで、かかった時は短かった。

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死別

「京楽・・・・・・別れよう」

「えっ」

院生試合に想いが実り、4回生の頃から付き合いだした二人は、死神として順調に出世をしていた。
京楽は8番隊の副隊長に、浮竹は13番隊の副隊長に。

お互い忙しい日々ではあるが、逢瀬を重ねていた。

「どうしてだい、浮竹」

「もう限界なんだ・・・・・俺には、もうあまり時間はない」

「どういう意味だい?」

「そのままの意味だ・・・肺の病が、この前の健康診断で・・・。いや、はっきり言おう。余命半年と宣告された」

「そんなバカな」

京楽は、目の前が真っ暗になった。

「でも、浮竹、僕は別れないよ。たとえ、君と死別するとしても、その時までずっと君の傍にいる・・・・・・・」

「ばかだなぁ、京楽は。つらいのは、お前なんだぞ?今のうちに別れて、新しい誰かと恋を始めればいいのに」

「そんな器用なこと、できないよ」

京楽は浮竹を抱き締めた。この頃まとも食べれていないせいか、浮竹の細さが心に痛かった。

「ごほっごほっ・・・」

咳込みだした浮竹を、13番隊の隊舎に抱き上げて連れていく。

「薬、どこにあるの」

「もう、飲んでいない」

「そんな!」

「俺なりのけじめのつけ方だ。延命処置はしないで、潔く散ろうと思う」

「浮竹・・・・・・!」

京楽は、想いを固めてしまった恋人を胸に抱き込んで、涙を流した。

「嫌だよ浮竹・・・・僕を置いていかないでくれ・・・・浮竹」

「まだ時間はある。その時までも、心の整理をしておいてくれ」

その日、京楽は浮竹の部屋に泊まった。

浮竹が発作を起こしたにも関わらず、体を重ね合わせた。

浮竹の細い体は、前に逢瀬をしたときより細くなっていた。

それから数週間が経ち、京楽も浮竹の終わりを受け入れた。もう、副隊長の座をあけた浮竹に、京楽はできるだけ傍にいた。

13番隊隊舎にはいられないので、家をもたない浮竹のために、瀞霊廷の中の屋敷を貸した。

日々、眠るのが多くなる浮竹に、京楽は何もできないでいた。

ただ、傍に在れることしかできない。

何度も4番隊の、隊長にまで診てもらったが、もう手遅れで、余命2か月と診断された。

その2か月も、あっという間に過ぎてしまった。

「京楽・・・・・」

ふと、浮竹が気づいた。

ここ1週間、ずっと昏睡状態だったのだ。

「浮竹・・・いやだよ、いかないで・・・・」

「我儘なことを言うな・・・・心の整理は、もうできているんだろう?」

「できてないよ、そんなもの!」

浮竹を抱き締める京楽。

京楽も、浮竹のせいで食事が喉を通らずに痩せていた。

点滴の管のついた自分の右手をみる浮竹。

「いい子だから、俺の死を受け入れてくれ」

「無理だよ・・・・・・」

京楽の背に手を回し、浮竹は言う。

「お前と、隊長になりたかったな。ずっとお前と一緒に在りたかった。でも、俺はここまでだ。後は頼む、京楽。俺の分まで、隊長になってくれ・・・・」

その言葉を最後に、浮竹はまた昏睡状態に陥った。

「浮竹、浮竹!」

何度声をかけても、反応はない。

浮竹は生命維持装置を使っていなかった。

最期は、穏やかに静かに息を引き取った。


「僕は・・・君の分まで、隊長になるよ・・・・・」

浮竹の遺骸は、火葬されて現世の無人島に遺灰を撒いた。

「見ていてね、浮竹。君の分まで、生きてみせる」

やがて、13番隊隊長に朽木ルキアが就任し、京楽は総隊長となった。

「浮竹・・・ルキアちゃんはいい子だよ。きっと、君とならうまくいけただろうにね」

もういない恋人を想いながら、酒を飲んだ。

珍らしく深酒をした京楽は、夢を見ていた。

その夢の中に、元気な姿の浮竹が出てきた。

「流魂街の右端の花街に、楓という名の遊女が産んだ、「つづり」という名の女の赤子がいる。俺の生まれ変わりだ。記憶も、一部継承している。まだ俺に未練のあるお前のせいで、成仏できないで生まれ変わった」

「浮竹・・・・?「つづり」だね?」

夢から覚めると、ふと浮竹の霊圧の名残を感じた。

会いに、来てくれたのだ。黄泉の国から。


そして、次の日には花街にいき、楓という遊女を探した。そして、お荷物として扱われている「つづり」の身柄を金で買った。

みんな、上流貴族が、将来の妾にするために買ったのだと思っていた。

十数年後、美しくつづりは成長した。

「つづり、おいで」

「はい、京楽総隊長殿」

学院を卒業し、1番隊の3席にまでになったつづりは、ところどころで浮竹という人物の記憶があるらしく、けれどつづりは浮竹ではなく、つづりだった。

「つづりは、京楽総隊長に昔恋人がいて、その人の記憶がなぜかつづりの中にあるのです。でもつづりはつづり。こんな私でも、愛してくれますか?」

「ああ、勿論だよ、つづり・・・・・・」

浮竹の生まれ変わりといっても、性格も全然違うし、記憶をあやふやにもっていて京楽になついているだけだ。

それでも、と思う。

浮竹の魂が少しでも混じっているならと。

「結婚しよう」

つづりは、目を見開いた。

周囲から猛反対されたが、つづりを娶り、子が生まれた。

男の子だった。京楽は、その子に十四郎という名を与えた。

つづりには、もう浮竹の記憶はなかった。

それでも、つづりを大切にして、子を増やしていった。

京楽の中で、一難愛していた浮竹とつづりは、同位置にあった。

もう、つづりを浮竹の生まれ変わりと見ることはなかった。ただ、昔、浮竹という大切な恋人がいた・・・・・。
そうつづりに、言い聞かせた。

「つづりは、その浮竹という方の代わりですか?」

「いや、違うよ。つづりはつづりだ」

つづりの体を抱き締めると、浮竹のように甘い花の香がした。

それだけで、魂は浮竹と混じり合っているんだと分かった。

「君が大好きよだ、つづり」

もう、浮竹と名を呼ぶ相手はいないけれど。

つづりと共に総隊長とて生きた。つづりは、やがて1番隊の副隊長になっていた。

とても仲のいい夫婦として、京楽とつづりは最期の時まで、お互いを愛し合ったという。




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変態と刷り込み現象と

「アヒルの雛になる薬」

なるものを、裏マーケットでネットで購入した京楽は、早速浮竹に飲ませてみた。本当にアヒルの雛になるのではなく、アヒルの雛のように刷り込みで、親と覚えた人物の跡をつけていくという薬だった。

念のため、ちゃんと解毒剤も買っておいた。

「浮竹」

「なんだ、京楽」

「その・・・・近い」

「そうか。俺は気にしていない」

トイレに入って、個室で用を足していたら、浮竹まで入ってきた。別に用を足すわけでもないのに、京楽が入ったから個室であるにも関わらず、浮竹まで入ってきたのだ。

「あっれー。何か思ってたのと違うな、この薬」

「薬?」

「いやいや、なんでもないんだよ」

用を足し終わって、手を洗って出ると、浮竹がその後をついてきた。

「かわいい・・・・」

つい手を出したくなるが、今はだめだと自分に言い聞かす。

京楽は、いつも通り浮竹のパンツを被った。それに対して、浮竹も京楽のパンツを被った。

「いやいやいや!浮竹はそんなことしちゃだめ!」

「どうしてだ?京楽は俺のパンツを被っているじゃないか。俺も京楽のパンツを被らないといけないと、心で誰かが訴えてるんだ」

「僕のかわいい浮竹はそんな変態行為しないから」

「俺は、お前の真似をする」

仕方なく、パンツを被るのを止めると、浮竹も止めた。

そしてはっとなる。

お前の真似をする。もしかして。

京楽はばっと、着ていた服を脱いで全裸になった。フルチンである。

浮竹もきっと全裸になるはず・・・・・じーっと見ていたが、ならなかった。

「どうしてだい、浮竹。僕の真似をするんじゃなかったのかい」

「変態になるなと、頭の中で警鐘が聞こえて、無理なんだ」

「くそお!肝心のところでだめだな、この薬!」

「薬?」

浮竹が首を傾げる。

愛らしい表情に、京楽が飛びついた。

「むちゅーーー」

浮竹は、飛びのいた。

そして、タコのように唇を突き出す京楽の口に、熱くなったやかんを傾ける。

「うん、めっちゃ熱い・・・・・のぎゃあああああ」

「はっはっはっはっは」

浮竹は、心から笑っていた。

「何々・・・・アヒル雛のような童心もあります・・・・・くそっこれか!」

薬の説明書をよく見ていなかった。

服を着た。

「仕方ない、解毒剤を飲ませよう。このまま浮竹まで変態になってしまったら、僕はどうすればいいんだ」

京楽は、変態仲間ができて喜びそうなのに、浮竹には純真なままでいてほしかった。

解毒剤を口に含み、無理やり浮竹に飲ませた。

「・・・・・・・・」

最初はそれに応えていた浮竹であるが、翡翠の瞳に正気が戻りだす。

「いきなり何してるんだお前は!」

股間を蹴り上げられて、飛び跳ねた後で股間を抑えて蹲った。

「ちょっと・・・解毒剤を・・・・」

「はっ!このラベルは・・・・・」

アヒルの雛になる薬というのを手にとって、浮竹は京楽を見下ろした。

「お前、こんな薬を俺に飲ませたのか」

「でも、君トイレにまでついてきたり、僕が浮竹のパンツを頭に被ったら、君も僕のパンツを頭に被った・・・・・」

「なんて薬を飲ませてるんだ、お前!」

浮竹は怒って、プロレス技を京楽にかけた。

「ぎぶぎぶ!足がもげる!」

「このままもげてしまえ!」

「もぎゃああああああ」

少し焦った。あのラベルは、少し前に見たことがあった。

この前買った、変態を治す薬というが、同じラベルだった。

結果的に京楽春子をいいだすおかまに、なってしまったのだが。

もうあの会社の薬は買うまいと思っていたのに、京楽が買ってしまったのだ。

「これ以降、裏マーケットの薬は買わないこと。俺もお前も。いいな?」

「え?僕にも、飲ませたことあるの?どんな薬?」

「変態を治す薬・・・・・・」

「それを僕が飲んで、どうなったの?」

「京楽春子というおかまになった」

「のああああああ!人生の汚点だああああああ!」

京楽は嘆くが、浮竹が言う。

「お前の存在そのものが、人生の汚点だからいいだろ」

「浮竹、酷い!僕とのことは遊びだったのね!この前ずっと一緒にいるって誓ったのに」

「あれはあれ、これはこれ」

ずっと、隊長になるまで傍にいると誓い合った、少しだけ甘かった空気もすでに霧散していた。

「次に俺に何かを飲ませたら、俺はまた変態を治す薬をお前に飲ませて、京楽春子になってもらうからな!」

そんな目にあってまで、飲ませたい薬はなかったので、京楽は素直に引き下がった。

「京楽春子は勘弁してえええ。僕はオカマになんてなりたくないいいい」

しばらくの間、変態行為をしたら京楽春子にするぞと脅したら、大人しくなる京楽の姿があったとかなかったとか。

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発作と変態とパンツを繋いだ服

「京楽、好きだ」

「僕も好きだよ、浮竹」

「我慢できない、愛してくれ」

「僕の胸に飛び込んでおいで!」

朝起きると、一人二役をしている京楽がいた。

それだけならいうほど変態ではなかったが、頭に浮竹のパンツをかぶり、浮竹のぱんつをつなげて作った服を着ていた。

完全な変態だった。

「破道の七十三、双連蒼火墜」

京楽は、真っ黒焦げになった。

「効いた・・・・・ガクリ」

「ふう。朝から変態を退治する清々しい朝だ」

そう言って、ベランダの窓を開け放つ。

冬なので寒いが、新鮮な空気が入ってきて気持ちよかった。

「ん・・・・・ごほっごほっ」

急に冷たい空気を肺に取り入れたのがまずかったのか、肺がずきんと痛んだ。

「ごほっ・・・・・」

ボタボタボタ。

吐血をしてしまい、しまったと思った。最近発作がなかったので、安堵しきっていた。

「薬を・・・・・」

よろめきながら、携帯している箱の中から薬をだして、かみ砕く。

「ごほっ」

ぼとぼとぼと。

「きょうら・・・・・」

親友に助けを求めるが、あいにくと鬼道で伸びていた。

ああ、これは自業自得というやつか。

浮竹の意識は、闇に落ちていった。


次に気づくと、自分の寮の部屋の自分のベッドで寝かされていた。

「次にすぐ発作が起こったら、入院ですよ。今回は発見が少し遅れて危ないところでした。ちゃんと様子を見て、薬を毎日欠かさず飲ませるようにしてください」

「ん・・・・」

「あ、気が付いたかい?」

変態の恰好はどこへ行ったか、普通の院生の服を着ていた。

「俺は・・・・?」

「びっくりしたよ。君の鬼道から復活してみれば、その本人が血を吐いて倒れてたんだもの。変態な恰好をしているのも忘れて、そのまま医務室の先生を呼んだ」

「そうか・・・迷惑をかけたな。って、あのパンツを繋ぎ合わせた服で外に出たのか!」

「そうだよ」

「だめだ・・・・・変態菌が脳に回っているのか・・・・」

「着替える時間も惜しかったから。みんな変な目で見てきたけど、僕は元から変なので気にしない」

変態だという、変態には変態なりのプライドがあるのだろう。

「これ、新しい肺の薬。飲める?」

「ああ」:

コップに水をいれて、もってきてくれた。

錠剤タイプの薬を飲んで、コップの水を飲み干した。

「ん・・・・なんだ、妙に肺がすっきりする」

「新薬なんだって。発作の時には効かないけど、平常時の肺の痛みをすごく和らげてくれる薬だって。いつもの肺の薬も、忘れずに飲んでね」

粉状の薬を飲んで、ざらざらと錠剤タイプの薬を飲む。

院生になって、京楽が薬の面で金を出してくれるようになったおかげで、昔に比べると発作の回数も減ったし、肺の痛みも随分ましになった。

「すまない・・・・・お前に甘えてばかりで」

「いいんだよ・・・・・むちゅーーー」

タコのように唇をつきだしてくる京楽を避けて、浮竹はベッドに横になった。

「死神になったら、きっと今までかかった金額は返す」

それは、はっきり言って無理な話だと分かってはいたが、できれば返したかった。

「いいんだよ。それより約束して?僕の傍にいてくれるって。卒業して死神になって・・・・そうだね、お互い隊長まで登りつめても、一緒にいよう」

「俺は、自分は隊長になれるかどうかわからない。こんな病を抱えた隊長・・・でも、隊長になってお前の傍にいることを誓おう」

その誓いが、数十年後に果たされることになるとは、今は知らない。

「むちゅー」

「そのむちゅーっていうのやめたら、キスしてもいいぞ」

「え、ほんとに!?」

「今日、迷惑をかけた礼だ」

京楽が、そっと寝ている浮竹にキスをする。

「んっ・・・・・」

深く口づけられた。

「あ・・・・」

舌を入れられて、咥内を蹂躙される。

「んうっ」

その浮竹の様子に、京楽は前かがみになった。

「ちょっと、お風呂場で抜いてくる」

「勝手にしろ」

浮竹は、溜息をつく。

変態ではあるが、紳士でもある。約束した以上の・・・キスやハグをこえた先をしてこない。

ぼんやりと浮かぶ、京楽の笑顔。

その京楽の屈託のない笑い顔を思い出すだけで、胸がツキンと痛んだ。

「変態でなければな・・・・・・」

数百年という時を経ても、共に在ることになろうとは、今は知る由もなかった。





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日帰り温泉旅行

お互い非番の日に、少し遠出して日帰りの温泉旅行にいくことになった。

「お菓子のわかめ大使もつめたし、着換えもいれた。よし準備は万全だ」

浮竹は、その日を心待ちにしていた。

京楽がやってきて、日帰りだというのにその荷物の量に苦笑する。

「浮竹、バスタオルやタオルはむこうで貸してくれるし、シャンプーとか石鹸もそなえつけだよ。もう少し、荷物減らした方がいいんじゃないかい」

「お、そうなのか。じゃあ少し待っててくれ」

バスタオル2枚と、タオルを数枚ぬいただけで、荷物はぐっと減った。

シャンプーとボディーソープはいれたままだ。

お気に入りのやつだだった。

「では・・・・瞬歩で出発!」

「ああ、そっちじゃないよ、こっちの方角だよ!」

瞬歩で踏み出した浮竹の手をとって、軌道修正させる。

そして、本来ならば数日かけてたどる道を3時間ばかりで踏破した。

露店風呂だった。

風邪とか大丈夫かなとか少し心配しながら、借りたバスタオルをきちんと腰にまいて、長い髪を結いあげて、温泉風呂に入った。

少しして、京楽がやってくる。

腰にバスタオルは巻いていなかった。

目のやり場に困って、天井を見つめていた。

「何してるの、浮竹」

「お前がまっぱだから、天井を見ている」

「僕の裸なんて、見慣れるでしょ。それよりも浮竹も腰のバスタオル外したら。どうせお互い、見慣れてるんだし」

「断固として拒否する!お前のことだ、風呂の中で盛りそうだ!」

「ちぇっ」

実際その通りだった。浮竹の裸身を見て、京楽は少しその気になっていた。あわよくば露店風呂の中でいただこうとしていたので、浮竹の警戒具合に、これは無理そうだと一人ごちる。

「おいで。髪を洗ってあげる」

素直に、浮竹は下心をなくしたであろう京楽の元にやってきた。

「君の髪は長いからね。僕も長いけど、洗うの大変だから」

シャンプーをつけて頭皮をごしごしあらう。あとは髪をブラシで梳いていく。リンスまでして、さっぱーんと湯をかぶせられて、浮竹の髪は洗い終わった。

「今度は、俺がお前の髪を洗ってやろう」
 
「頼むけど、手加減してね」

シャンプーをつけすぎて、泡泡だらけになった京楽の髪を、櫛でとこうとして、くせ毛がひどいせいでなかなか櫛が通らない。

「ふんぬ!」

無理やり櫛を通すと、べりっと数十本の髪が抜けた。

「あああ、だから手加減してっていったのに!」

「なに、まだまだ」

浮竹が満足するころには、毛玉になった抜けた髪が目立った。

「将来はげたらどうしよう・・・・・」

「その時は、かつらをつけたらいい!」

朗らかに笑う浮竹に、悪意はないのだ。天然なのだ。

そのせいで、怒るにも怒れない。

露店風呂からあがると、ちょうど昼餉の時間を回っており、お腹がすいた。

「お、魚介類の鍋か・・・・・アンコウがいる」

さすがにカニはなかったが、けっこうな海の幸が並んでいた。

海のない尸魂界では、高い魚はけっこう高い。あじやいわしといった、庶民が口にする魚は安いが、貴族を中心とした者は高級魚を好んで食べる。

別に、浮竹はそこまでの美食家ではないし、京楽も同じだった。

アンコウは、高級魚の一種だった。

「今日はアンコウ鍋だね」

京楽が、浮竹に聞く。

「食べたことある?」

「ない」

「そう。それならよかった。おいしいよ」

京楽は、長いこと上流貴族をしてきたせいか、数回食べたことがあるようだった。

まず、浮竹では食べることも躊躇しそうな値段であった。

全部京楽のおごりで、それに慣れてしまっている浮竹も、何も言わない。

あんこう鍋を食べ終わり、一息ついて、お茶を飲む。

浮竹は旅行鞄からとりだしたわかめ大使を食べていた。

「君好きだね、それ・・・」

「白哉いからいつももらうんだ。前は定期的に買っていたが、「兄から金はとれぬ」といって、最近はただでくれるから、結構食べてるな」

兄から金はとれぬという白哉の心にちょっと嫉妬心を覚えながらも、わかめ大使を食べる浮竹を優しい目で見つめていた。

「好きだよ、浮竹」

「どうした、京楽」

もっきゅもっきゅと、わかめ大使をほおばる浮竹の白い髪を手にとって、口づける。

「くすぐったい・・・・俺も好きだぞ、京楽」

二人の恋人は、キスだけ交わして、ごろりと横になった。

「食べた直後に横になると牛になるっていうよね」

「そうだな。まぁいいじゃないか」


「失礼します。鍋を下げにきました」

「ああ、おいしかったよありがとう」

「すまない、後片付けを頼む」

睦みあっていないでよかったと思う二人であった。

宿の人がきて、鍋を下げていった。

「あと3時間くらいはここにいれるけど、どうする?」

「だらだらする」

「そうだね。せっかくの非番なんだし、だらだらしようか」

京楽の腕の中にいたら、暖かくていつの間にか眠ってしまっていた。

気づくと、日も傾きかけていた。

「おはよう、浮竹」

「意外と寝てしまったようだ・・・・雨乾堂に帰るのは夜になりそうだな」

京楽がかけてくれたであろう毛布をぬいで、散らかった荷物をまとめて、外にでる。

「京楽、今日はありがとう」

「どういたしまして」

「また、日帰り旅行に何処かに行こう」

「そうだね。また計画立てておくから」

瞬歩で、雨乾堂に向けて走り出す。

たまに歩いたりしていたので、雨乾堂につくころには、星が見えていた。

「今日もいい天気だな。星が良く見える」

「そうだね」

「泊まっていくだろう?」

「うん」

手を握り合い、雨乾堂までの少しの距離を歩いた。

「こうやって、隊長になってまでお前とこういう関係を続けれるとは、思っていなかったんだ」

「そうなの?僕はその気満々だったけどね。お互い隊長になっても、お互い共在ろうと誓いあったし」

遠い昔の他愛ない約束。

院生時代、卒業前に、隊長にのし上がっても一緒にいようと誓い合った。

あの日のことは、記憶から抜け落ちることはない。

色あせない記憶の一つだ。

「夕餉は、食べるだろう?」

「その前に、浮竹を食べたいけどね」

「京楽!」

真っ赤になって怒る浮竹が愛らしくて、京楽は頭をぽかりと叩かれながら、星を見上げるのだった。




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呪いの藁人形

朝起きると、京楽と目があった。

京楽はパンツ一丁で、どじょうすくいの踊りをしていた。

本来ならば叱責すべきであろうが、パンツはちゃんとはいていたし・・・・って、はいてるパンツは浮竹のものだった。

「破道の4、白雷」

「あじゃぱ!」

「ふん」

朝から恒例の如く京楽を鬼道で焦がして、今日は朝飯はなしで登校した。

少し遅れて、いつの間にか着替えた京楽が追ってくる。

「待ってよ浮竹!」

「ぱんつ、はきかえてきただろうな?」

「ううん、そのまま。浮竹のぱんつ♪ごふっ」

鳩尾に蹴りを入れてやった。

それでも京楽は、パンツをはきかえる気はないようで、浮竹の跡を追って学院に登校した。

「よお、変態京楽。今日も変態か?」

「おはよう!今日も変態だよ♪」

浮竹が溜息を大きく吐いた。

最近、京楽は自分が変態であると認めている。友人に変態行為を見られても躊躇しないし、こうやって友達にからかわれても動じない。

器は大きいが、変態な意味でなので、ちっとも嬉しくはないし、いっそこのまま滅べとか思ったりした。

「浮竹も大変だなぁ。京楽に惚れられるだけならいい、けど。当の京楽がこれだからな」

浮竹の尻をなでだした京楽を背負い投げして、浮竹は教室に戻った。

次は鬼道の授業だった。

詠唱する言霊を学び、理解し、全員で訓練所に移動して、的にあてる。

浮竹と京楽は、的を粉々に破壊した。

「相変わらずだな、浮竹、京楽」

教師が、二人の腕をほめる。

詠唱破棄していたが、それでも絶大な威力だった。

「僕は、浮竹を守るために腕を磨いています」

「そうか。親友を守るためか」

教師は、浮竹と京楽の仲を知らない。

ただいつもつるんでいるので、二人は親友同士だと思っていた。

まぁそれには変わりないのだが、京楽には「変態」を忘れてはいけない。あと、浮竹に妄信的にまで惚れていることも。

鬼道も、将来虚を駆逐するためというより、浮竹を守るために学んでいた。

その日の授業が全て終わり、靴を履き替えようとして、京楽が息を飲んだ。

「どうした、京楽」

京楽の靴をみると、犬のうんこが入れられてあった。

「ぶふっ」

吹き笑ってしまった。

どんないじめだ、これ。

「酷い!こんなことする奴も酷いけど、それを笑う浮竹も酷い!」

「すまない。あまりにも強烈な嫌がらせだったんでな」

「やっぱりこれ、いじめかなぁ?」

「さぁ、どうだろう。ただの嫌がらせの可能性も高いが」

毎日続くようなら、いじめだろう。

だが、京楽はいじめを受けるような性格はしていないのだが。

確かに変態で、常識はずれではあるが、浮竹以外に変態の余波がいくことは珍しい。

次の日、朝登校すると、靴にやっぱり犬のうんこ・・・・しかもほやほやが入れられてあった。

「酷い!僕のこのカッコよさに嫉妬しての嫌がらせ・・・・・・」

「あほか。それより、少しだが霊圧の名残が残っている。辿ろう」

「え、そんなの見えるの?」

浮竹は、京楽より霊圧探査能力が高かった。

「こっちだ」

教室をぐるっとまわって体育館を過ぎ去って、道場に辿り憑いた。

「どういう道順を行っているんだ・・・・・」

犯人の足取りも、かなり奇妙なものだった。

道場の壁に、何かを打ち付けている女生徒を発見する。

「あの子だ」

「ああ、あの子は・・・・・・先月僕が大好きだといってきて、僕が浮竹が大好きな変態だっていったら、それでもいいっていうから3日だけ付き合って、僕が浮竹しか見ないからそれが嫌になったといって別れた女子生徒!」

「細かい説明文だな。とにかく声をかけてみよう」

「あれ、呪いの藁人形?・・・・・・ガクブル」

京楽は、虚や幽霊はどうってことないのだが、呪いとかオカルトちっくなものが苦手だった。

「浮竹、頼む!」

「嫌がらせを受けているはお前だろうに・・・・・」

「僕、呪いとかそういうのに弱いんだ!」

「仕方ないな・・・・・そこの君」

「なんじゃいわりゃああ!あ、京楽め!呪い殺してやるううううう」

なぜか木ではなく、道場の壁に呪いの人形をうちつけている女生徒は、京楽を見て怒りを募らせてひときわ大きく藁人形に釘を打ち付けた。

「うっ」

「京楽!?」

「だめだ、呪いが効いてきた・・・・・」

「んなばかな・・・・」

「浮竹・・・・はぁはぁ・・・僕にキスをしてくれ。そうしたら愛のパワーで治りそうなんだ」

「そんなばかな・・・・っておい、本当に大丈夫か?」

「だめだ、このまま呪われて僕は死ぬんだ・・・・・・」

気分的な問題だろうと思ったが、浮竹は仕方なく倒れた京楽を抱き寄せて、ふれるだけの口づけをした。

「んんっ!」

すると、京楽がむちゅーーと吸い付いてきた。

「んっ」

離そうにも、深く口づけられて離れない。

浮竹は、頭突きをした。

「おぶっ!・・・・・ふふふ、浮竹と久しぶりのキスとハグだーーーーもういいよ、美香ちゃん」

「え、あそうですか?じゃあ、あたしはこれで失礼しますね。お幸せに。きゃっ、京楽先輩と浮竹先輩のキスシーン生でみちゃった」

呪いの藁人形を抱えて、釘を抜いて去っていく女生徒を見る。

「お幸せに~」

「ばいばい、また頼むねー」

「はーい。こんなことであんなに多額のお小遣いもらえるなら、また頑張ります」


「・・・・・・・・京楽?」

「え、いや、浮竹、これはね、あのそのね・・・・・」

会話を理解する限り、美香ちゃんと呼ばれた女生徒は京楽にお小遣いをもらって、呪いの藁人形をうちつけていたり、京楽の靴に犬のうんこを入れたりしたのだろう。

「焦げとくか?」

にっこり。屈託なく笑う浮竹。でも、目が笑っていない。

逃げの体制に入った京楽を、足で素早く蹴り倒す。

バキボキと、拳をならして、とりあえず顎に一発かます。

「ぼ、暴力反対!」

「そうだな。俺の拳も痛くなるし・・・・・・破道の4、白雷」

どごーーーーん。

道場の床に穴があいた。

学院の生徒の中でも、教師を抜くほどの鬼道の達人である浮竹に、こんがりと焦がされた京楽は、それでも満足そうに微笑んでいた。

「焦げたけど・・・・君とのキスとハグをもらって僕は嬉しい・・・・きゅう」

そのまま倒れた京楽は、道場を壊したということで後に弁償する羽目になるのであった。







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水底で揺れるために

「京楽・・・・・好きだ」

それは、院生時代の出来事。

高熱にうなされた浮竹は、京楽に身の想いを告げてしまった。

「浮竹・・・・ごめん、君の想いには答えられない」

「それでも構わない。ただ、傍にいさせてくれ」

同じ寮の部屋に住んでいたので、毎日顔を合わすことになる。ただ、傍に在れればいいと、浮竹は本気で思っていた。

京楽は、次の日女の子とデートしていた。

それを、浮竹は微妙な心境で見送った。

「ただ、傍にいれればいい、そうだろう、浮竹」

自分自身に言い聞かせる。

それから長い間浮竹は京楽だけを見ていた。京楽は、告白はなかったものとして、浮竹と親友という関係を続けていた。

ある日、自室の寮の部屋に戻ると、浮竹が倒れていた。

ベッドのシーツは、吐血したであろう、真紅に染まっていた。

「浮竹!」

「あ・・・・きょうら・・く・・・ごほっごほっ・・・服が・・よごれ・・・・」

「そんなことどうでもいいでしょ!医務室に連れていくよ!」

京楽に抱き上げられて、浮竹は医務室に運ばれた。

幸いにも4番隊の隊士がその日の医務室の保険医として滞在していた。

「すみません、血を吐いたんです。元から肺の病があって、吐血したみたいで」

「そこのベッドに寝かせて」

「はい」

てきぱきと治療が進んでいく。

4番隊隊士のお陰で、浮竹はすぐにはでないが、元気を取り戻せそうだった。

「今日は、この医務室で休んで、明日は寮の部屋に戻りなさい。念のため、1週間は学院を休むように」

「はい・・・・・」

浮竹は、項垂れた。

「どうしたの、浮竹。ああ、ご飯か・・・・食堂で、弁当買ってくるね」

「すまない」

浮竹が真っ赤な血を吐くのは、久しぶりだった。

まだ、京楽の心臓はどくどくと、早鐘を打っていた。

「浮竹・・・・・・・・」

名を呼ぶと、はにかむように笑う浮竹の顔が頭から離れない。

一緒に行動することが、本当に幸せであるかのようで。

「僕は・・・・・」

浮竹のことを考えると、ズキリと胸が痛んだ。

最近、女の子と付き合っているが、行為の最中浮竹の顔がちらついて、最後までできないでいた。

「誰か他の子のこと、考えてるでしょ」

付き合っていた子には、そう言われて振られてしまった。

何、女の子など他にたくさんいる。そう言い聞かせた。誰でもない、自分自身に。

「浮竹が・・・頭から離れないって、かなり重症かな」

食堂で、唐揚げ弁当の二人分買って、医務室に戻った。

「唐揚げ弁当だけど、食べれる?」

「ああ、大丈夫だ」

大分発作もおさまり、ゆっくりではあるが弁当を食べた。

「口元についているよ」

京楽が、浮竹の口元についていたご飯粒をとって、食べてしまった。

それに、浮竹が少し朱くなった。

「すまない・・・・その、こういうことをして平気なのか?」

「何が?」

「いや、なんでもないんだ」

「変なの」

京楽は気づいていない。浮竹に、まるで付き合っていた女子のように接していることを。

次の日になって、寮の自室に帰る日になった。

「ごほっごほっ」

また咳をしだした浮竹に、薬を飲ませようとしても、飲んでくれない。

仕方ないので、京楽は口移しで薬を飲ませた。

「んっ」

浮竹が、戸惑いがちに薬を飲み干す。

「やばい・・・・・」

京楽は、浮竹の声と、口移しで飲ませた時の表情で、たってしまっていた。

すぐにトイレにいって抜いてきた。

「戻ろう、浮竹」

まだ歩けない浮竹を抱きかかえて、寮の自室に戻る。

「すまない・・・・・」

「いちいち、謝らなくていいから」

「あ・・・・・・」

離れていく京楽の服の裾を掴む、浮竹の愛らしい表情に、気づけば京楽は浮竹にキスをしていた。

「京楽?」

「ああ、もう・・・・君のせいだよ。君が僕のこと好きだっていうから、そんな目で君を見てしまう」

「俺は、それでも構わない」

「浮竹・・・・・」

その日、最後まではできなかったが、体の関係を結んだ。浮竹がまだ病症の身であるため、互いに抜きあうだけだったが、すごい快感と、浮竹を愛らしいと思った。

今まで感じてきたどの子よりも、愛らしく見えた。

「浮竹・・・」

「京楽・・・」

互いにキスをしあえば、それはより深いものになった。

「んうっ」

「浮竹・・・・多分、僕は君が好きなんだ。まだはっきりとはしないけど、こんな行為をするんだから」

「京楽、俺はお前が好きだ。初めて告白するずっと前から、好きだった」

「その想いを抱えたまま、僕が女の子と付き合ったり、廓にいったりするのを、じっと我慢していたのかい?」

「そうだ」

「本当に君は・・・・健気な子だね」

1週間は、あっという間に過ぎた。

本調子になった浮竹は、1週間の休んだ間を取り戻そうと必死になっていた。

「破道の17はね・・・・」

新しく習った鬼道を、つきっきりで浮竹に教える京楽。

もう、京楽の周りに女の子はいなかった。

その日、寮の自室に戻って、京楽は浮竹を押し倒した。

「僕が好きなんでしょ?僕を受け入れられる?」

「受け入れられる」

「ああもう、ほんとに君って子は・・・・・」

大事にしたいのに、滅茶苦茶にしたかった。

「好きだよ、浮竹」

その言葉に、浮竹は花が綻ばんばかりの笑顔を浮かべた。

それが余計に愛らしく見えて、京楽は浮竹を抱いた。

その日は、最後まで関係をもった。

「責任はとるから。付き合おう」

「京楽・・・・」

ただ傍にいれればよかっただけなのに。浮竹は京楽を手に入れることができて、とても幸せそうだった。

そのまま6回生の終わりまできた。関係をもったのは4回生の時。2年も付き合っていた。京楽は付き合っても長続きしないと有名だったので、3か月もてばいいほうだったが、浮竹と付き合いだして2年の歳月が流れていた。

時折体を重ねる程度の関係ではあるが、お互いを大切にしあった。

「僕は、8番隊の3席だ」

「俺も同じ3席だ。13番隊だが」

「卒業旅行に行かないかい。現世にでも」

「でも、今現世は戦国時代だろう。野盗とかもでるし、危なくないか?」

「いや、いい無人島を知っているんだ。海の幸が豊富にとれる。キャンプでもしよう」

「ああ、いいな」

浮竹が、京楽に想いを寄せるようになって、4年が経っていた。

そのまま卒業と同時に、お互い死神になった。でも、その前に卒業旅行にいった。無人島であったが、それなりに楽しめたし、夜はお互いを貪りあった。

「俺は、3席から服隊長への昇進が決まったんだ・・・・・・」

「僕は3席のままだよ。おめでとう、浮竹」

「お前と同じじゃなくなる・・・」

「僕も、すぐに追いつくから」

それから数十年の時が流れ、お互い隊長になっていた。

「浮竹、行くよ」

「ああ!」

尸魂界で2つしかないと言われる、二刀一対の斬魄刀をもつ二人は、互いに背中を預けながら虚退治にいそしんだ。

夜になると、雨乾堂に、京楽が泊まりにやってくる。

1週間に一度の頻度で、抱き合った。

行為の後の気だるい雰囲気をもったまま、浮竹が言う。

「学院の頃、勇気を出してお前に告白してよかったと思う。こうなるとは思っていなかったが」

「僕もこうなるとは思ってなかったよ」

くすりと笑いあい、キスをする。

「あっ・・・・」

また熱をもちはじめた京楽に押し倒された。

「君は、いつまで経っても愛らしいね。白い髪もこんなに伸びた」

「お前が切るなというから・・・・・・・」

褥の上で、二人は乱れる。

素百年と、関係を保ったまま時は流れる。



「君はずるいね・・・・・」

先に逝ってしまった浮竹を想い、今日もまた雨乾堂の跡に作られた墓石に酒を注いだ。

「僕も、いつかそっちに逝くから、それまで見守っていてくれ」

愛しい、愛しい、浮竹。

いつか、迎えにきてね。

それから更に数若年の時が流れた。

尸魂界は何度か争いは起こったが、今は平和だった。

死去して魂魄がこちらにきた黒崎一護が、今の総隊長だった。

京楽は、年と病を抱えて引退した。

夢を見ていた。

「迎えにきたぞ・・・・・・」

まだ、若かった頃の院生の姿のままで、浮竹がやってきた。

「ああ、僕もそっちへ行くよ」

京楽の姿も、いつの間にか院生の頃の姿になっていた。

白い髪の麗人を抱き締めながら、キスを交わす。

「いこう、一緒に・・・・」

「ああ・・・・・・・」

京楽は、そのままこの世を去った。

浮竹に想いをつげられて、千年以上の時が経っていた。

まるで、永遠に似た世界を共に生き、そして失った。

また、永遠がその先にある。

二人は、永遠の時を色のない世界の水底で過ごす。

「愛してる」

「僕も愛してる」

永遠を刻む。

永遠(とわ)を永久(とこしえ)に。

ゆらりと、今日も水底で、精神存在(アストラル)になった二人は、愛を囁くのであった。


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