忍者ブログ

プログ

小説掲載プログ
03 2025/04 4 7 8 10 14 15 17 21 23 24 25 2627 28 29 30 05

夜一と砕蜂

「はっくしょん。夜一、頼むから猫の姿のままは止めてくれ!」

猫アレルギーの京楽は、美しい黒猫姿の夜一にくしゃみをしていた。

「こんなに美しのにのう。猫は美しくかわいい」

「そうだぞ、京楽!」

夜一を思いっきりもふりながら、浮竹がいう。

「猫はかわいい!」

「浮竹、お主は分かっているようじゃの。猫のよさを・・・・ごろごろ」

喉を撫でると、夜一はゴロゴロと鳴いた。

「ほれほれ」

猫じゃらしを見せつけると、夜一の体が反応する。

「またたびはどうだ?」

「あ、やめろ、またたびはだめじゃ!」

「ほれほれ」

「はっくしょん」

大きなくしゃみをして、夜一は人間に姿になった。

「夜一、服、服を着ろ!」

浮竹も京楽も真っ赤になった。

「うーむ、服を用意するを忘れておったわ」

「俺の服でいいから着ろ!」

雨乾堂で、夜一は浮竹の死覇装を着た。

「うーむ。さすがにぶかぶかじゃの」

彼氏のシャツみたいなことになっていて、まともに夜一を見れないでいた。

「夜一様、ここにおられましたか・・・・その恰好は!?」

愛しの夜一の霊圧をたどり、雨乾堂まできた砕蜂は、もっていた暗器を浮竹と京楽に向けた。

「貴様ら!美しすぎる夜一様の裸を見たな!」

「いや、ほとんど目をつぶってたし!」

「そうそう」

「問答無用!」

暗器を手に襲ってくる砕蜂から逃げるために、雨乾堂で追いかけっこがはじまる。

「砕蜂、やめよ。騒々しいぞ」

「は、夜一様!」

すぐに砕蜂は大人しくなった。

「砕蜂隊長は、本当に夜一が好きなんだねぇ」

「貴様如きが、夜一様を呼び捨てにするなど!」

「よい、やめよ砕蜂」

「はい、夜一様!」

その繰り返しだった。

どうも、夜一は砕蜂が怒る様を頼んでいるようで、性質が悪かった。

「砕蜂隊長、ここにまたたびがあるのだが」

「またたび!」

「こら、京楽!」

夜一は、人間の姿でもまたたびに弱いのだ。

そのままたびを放ってよこされて、砕蜂はにじりにじりと夜一に近づきだす。

「夜一様・・・・・・♡」

「あ、こら、やめぬか!ぎゃああああああああああ!」

そんな夜一と砕蜂をぺっと、雨乾堂から追い出して、京楽は茶をすすった。

「はぁ。平和だね」

「砕蜂隊長は、夜一のこととなると人が変わるからなぁ」

同じように、茶をすする浮竹。

腹が減ったと押し寄せてきた夜一に、二人分の夕餉は平らげられてしまった。

夜一は大食漢だ。甘味物を食べる浮竹以上に。

夜一はお替りばかりを所望して、10人分は平らげただろうか。それでもまだ足りないと、隠しておいた浮竹のおやつも食べられてしまった。

「しばらく夜一には来てほしくないな。食費がかさみすぎる」

「まぁ、あんだけ食ったらね」

外では、まだ夜一と砕蜂が追いかけっこをしているらしかった。

「ああ、夜一様!もう一度、先ほどの顔を!」

「ええい、しつこいぞ砕蜂!またたびをもって追いかけ回すな!」

「無理です、夜一様!さっきのお姿をもう一度拝見するまで、この砕蜂去りません!」

「だあああああああああ!!!」


「夜一も夜一で、慕ってくれる相手がいるのはいいことだけど、大変そうだね」

「京楽に、ちょっと似てるな」

「ええ、僕はあそこまで酷くないと思うんだけど!」

「その代わり、盛るだろう!」

「う・・・・・」

「その点では、砕蜂隊長のほうがましだな」

「そんなこと言わないでよ、浮竹」

そっと、背後から京楽が抱き締めてくる。

自然と、唇が重なった。

「ん・・・・・・・」

舌が絡まるキスを繰り返し、死覇装をはだけさせる。

さぁ続きをというところで、二人の腹がぐ~と鳴った。

夕餉を、夜一にとられてしまったのだ。

お互い苦笑しながら、13番隊の食堂へ行く。

夜一が10人分も食べたせいで、ろくなものが残っていなかったが、とりあえず果物類やらを大量に食ったので、おなかはまんぷくになった。

雨乾堂の前にくると、真っ赤になって失神した砕蜂と、猫の姿の夜一がいた。

「はっくしょん!僕、先に雨乾堂に帰っておくから」

そそくさと逃げ出すように、京楽が雨乾堂に消える。

「またたび・・・・人間の姿でもきくのか」

「く、それを言うな」

「砕蜂隊長はこのままか?」

「人になるとまた着る物がない。すまぬが、13番隊のあいている隊室にでもねかせておいてくれ」

むんずと、猫の夜一を掴む。

「お前も一緒にいろ。砕蜂隊長が起きて騒ぎだすと困る」

「仕方ないのお」

猫の姿の夜一は、浮竹が抱き上げた砕蜂を見ながら、その肩の上で大きな欠伸をした。

「よく食べ、運動した後は眠いのう」

「夜一、しばらく雨乾堂にくるなよ」

「何故じゃ」

「食費がかさむ!」

「ふーむ。大前田のいる、砕蜂の隊では何も言われぬのじゃがのう」

「大前田は金持ちだからな。夜一がたくさん食っても、何も言わないだろうさ」

「大前田のよなカスが砕蜂の副隊長というのもどうかと思うのだがのう」

「まぁ、カスはカスなりに頑張っているさ」

何気に、浮竹も辛口なのであった。


拍手[0回]

PR

ネオンテトラ(京浮)

ペットショップで、ネオンテトラを見ていた。

まるで、瞬くイルミネーションのようだ。

「欲しいの?」

「あ、いやそんなわけじゃ・・・・」

物欲しそうに見ていた浮竹に、京楽が声をかけた。

「ヒーターあるから、飼えるよ?」

「え、本当なのか!」

熱帯魚は金魚や鯉のように、寒い水温では生きられない。死んでしまう。

ヒーターが必須だった。

「確か、前に金魚飼ってた時に使ってた水槽とヒーターがそのまま置いてある。濾過機もあるし、飼えるよ?」

「じゃあ、買ってもいいのか!?」

浮竹の嬉しそうな顔に、京楽は苦笑する。

「でも雨乾堂には大きな自家発電機ないから、僕のいる8番隊の執務室になるけど、それでいいなら」

「水槽はでかいか?」

「ああ、大きいよ」

浮竹は、ペットショップの店員を呼んで、ネオンテトラ20匹、グッピーペア10匹、掃除屋にシュリンプ5匹と、プレコ1匹、あとはプラティ5匹にバルーンモーリーを3匹。

「そんなに入るかな・・・確かに大きな水槽だけど」

熱帯魚の入った袋に酸素を入れてもらい、水温が下がる前にと、8番隊の執務室の物置にあった水槽を出してくる。

かなり大きかった。

二人で掃除して、じゃり石をいれて水草をはやして、水を入れヒーターを入れる。濾過機をセットして、買ってきた熱帯魚を袋のまま水槽にいれた。

水温が同じになった頃を見計らって、袋から出してやると、色鮮やかな魚たちは水槽の中を自由に泳ぎまわった。

エサをやると、人が近づくと餌をもらえると思っているのか、面白いほど寄ってきた。

「綺麗なだけじゃなくって、かわいいんだな」

「このバルーンモーリーっていうの、ふっくらとしてて本当に風船みたいでかわいいね」

「俺は断然ネオンテトラだな・・・・」

「グッピーも綺麗だと思うけどね」

「グッピーは、卵生だけど子供を孵化させて産むんだぞ。知っていたか?」

「え、そうなの」

京楽が、驚いた顔をする。卵で産まない魚なんて、珍しい。

「妊娠したメスを隔離する水槽を用意しないとな。グッピーは、産んだ子を親や他のグッピーが食べてしまうから」

「綺麗なのに、残酷なんだね」

まるで、浮竹のようだ。

綺麗なのに、不用心に他人が触ると痛い目を見る。

「あーいいなぁ。和むなぁ。しばらくの間、8番隊で泊まってもいいか?」

「勿論!」

雨乾堂でもいいのだが、たまには8番隊で一緒に朝を迎えたい。

数日して、妊娠していたグッピーが子供を産んだ。

食べられないように水草に隠れているのを、網ですくって、小さめの水槽に移す。

「食べられなくてよかった・・・・」

その次の日には、また違うグッピーが子供を産んだ。

8番隊の執務室に水槽が増えていく。

「ここはペットショップじゃありませんよ?」

七緒の冷たい言葉に、京楽が困ったようにいう。

「今ベビーラッシュなんだよ。ある程度大きくなったら、ペットショップに引き取ってもらうから、この水槽の山、しばらく我慢してよ七緒ちゃん」

「まぁ、綺麗なんですけどね・・・・・・」

七緒も悠々自適に水槽の中を泳ぐ熱帯魚を見ていると、夢中になってはりついた。

「七緒ちゃんも、餌やってみる?」

「け、けっこうです!」

ツーンとそっけない態度がまたかわいいと思う京楽だった。

「餌をやりにきたぞー」

「あ、浮竹、またグッピーが子供を産んだんだ」

「またか!?5回目だろう!」

「10ペアも飼育してるからね・・・・・」

8番隊の執務室の棚の上やらテーブルの上は、水槽でいっぱいだった。

「ちょっと増えすぎたな。でも、分けようにもヒーターのある水槽をもっているところなんて・・・・ああそうだ、白哉がいた!」

白哉は、一時期海月にはまって、ヒーターと水槽を用意して飼っていた。

「白哉なら、もらってくれそうだ」

伝令神機で白哉に連絡をとると、了承してくれた。

グッピーをたくさんもって、二人は朽木家を訪れた。朽木家には大きな発電機があり、それで湯をわかしたり冷蔵庫を冷やしたりしていた。

尸魂界ではまだ珍しいエアコンがあり、電気毛布まである。

水槽はすでに用意されており、グッピーだけでは寂しいからと、カラフルな魚たちが泳いでいた。

グッピーをその中に混ぜていく。

まるで踊る宝石。

じゃりのかわりに色硝子が沈められていて、光も明滅するようになっていた。

「今までみてきた水槽の中で、一番綺麗だ・・・・・」

「当たり前であろう」

白哉の自信たっぷりな声に、京楽も頷く。

「流石4大貴族朽木家」

「浮竹、兄に渡したいものがある」

「なんだ、白哉」

「今年の冬は冷えるから、これを」

電気毛布だった。

雨乾堂にも、小さいが発電機がある。

「ああ、高そうだからと買わなくて欲しいと言ってたの、覚えててくれたのか」

「そうだ」

二人のかもしだす空気に、京楽が割って入る。

「例え朽木隊長でも、うちの子はあげませんからね!」

「兄は・・・・あほうだな」

「キーーーー」

「ほら、京楽、行くぞ」

京楽を引きずっていく浮竹。

「あほっていうほうがあほなんだよこの大アホ!」

「見ているこっちが恥ずかしくなるから止めてくれ!」

浮竹は、京楽の頭を殴って黙らせると、朽木邸を後にするのであった。





拍手[0回]

ルキアを攫ってしまおう 虚圏の女王

ルキアが破面になったことを、恋次は結局白哉に打ち明けれなかった。

義妹が、破面になったことを知れば、白哉は命に代えても、ルキアを殺そうとするだろう。そして、強大ばな力をもちすぎた一護に敗れさるだろう。

「恋次?どうしたのだ・・・・」

「もしも、ルキアが生きているとしたらどうしますか」

「ありえぬ。あれはもう死んだ」

白哉の中で、ルキアはすでに死んでいた。

失踪した時は、白哉も必死になって探したが、年を経るごとにそれはなくなっていき、10年が経って殉職という扱いになった時、白哉はルキアの遺体がない棺を葬式に出して、喪に服した。

今更、生きているといっても、白哉を混乱させるだけだろう。

「ルキア・・・・・・」

全く20年前から変わっていなかった。ただ、胸には破面の証である穴があいていた。仮面は髪留めのようだった。

「ルキア、ルキア、ルキア・・・・・」

「ふふ、恋次、好きだぞ」

そう言って、微笑んでいた姿が今でも脳裏にこびりついている。

今の妻を愛していないわけじゃない。

でも、ルキアは家族で特別で・・・・恋次の初恋の相手だった。

もう、戻ってはこないだろう。

ルキアは、一護を選んだ。

虚圏の王になった一護を。


その頃、井上の魂は尸魂界にきて、若いままの魂魄の姿で、真央霊術院を卒業し、4番隊に配属されていた。

迷ったが、井上にも真実を告げた。

「そう。黒崎君生きててくれたんだ。朽木さんと、今も生きてるんだ・・・・」

ボロボロと、涙を零した。

「やっぱり、だめだね、私。黒崎君から朽木さんのこと、忘れさせることができなかった」

それは、恋次の分の涙でもあった。

「会いに行くか?井上、お前くらいなら、虚圏に連れていける」

「ううん、いいの!黒崎君に会って、拒絶されるのが怖いから!」

「井上・・・」

どこで、どう間違ったのだろう。

ルキアは恋次と。一護は井上とそれぞれ結ばれた。

二人とも、お互いの伴侶を愛していた。

でも、ルキアは一護を。一護はルキアを、ずっと好きで愛していたのだ。

それに気づいてやれなかったから、こうなった。


虚圏で、王となった一護は、グリムジョーと戦っていた。

ハリベルやネリエルの姿もあった。

「王となったからには、その力、落とすなよ!」

グリムジョーが虚閃(セロ)を放つ。

それを、一護は卍解もしない斬月防いでしまった。

「ちっ、力の差が大きくなりすぎて全然楽しくねぇ!やめだやめだ!」

グリムジョーが去っていく。ハリベルも去っていくが、ネリエルだけが残った。

「一護、今のあなたは破面になってまで、幸せを手に入れたといえるの?」

「人間もだめ、死神もだめ・・・・じゃあ、破面になるしかねーじゃねぇか」

「探せば、もっと他の選択肢もあったはずよ」

「ありがとな、ネル。でも、俺は今の俺に満足してるんだ。何者がきても、攫っていったルキアを取り戻させねぇ」

「朽木ルキア・・・・あなたが選んだ道だわ。私たちの王でもある。私たちは、ただ黙してあなたに従うだけ」

「ネル、もしも死神がきたら真っ先に教えてくれ。追い出す」

「あなたは、相変わらず甘いのね。殺すと言わない」

何度か虚圏に死神が紛れ込んだことがあったが、ザエルアポロが残した薬で記憶を消して尸魂界へと戻した。

誰かを傷ついてたいのでも、殺したいのでもないのだ。

ただ、ルキアと一緒にいたい。

その願いは、現世、尸魂界、虚圏を巻き込んだ。


「ルキア、起きてるか・・・・」

「ああ・・・・」

「この前、恋次がきた時、尸魂界に帰る気持ちは少しも起きなかったか?」

「この姿だ。行っても、殺されるだけだ」

「もう、俺もルキアもかなり力をつけた。ルキアには、王である俺の力も注ぎ込んである。護廷13隊の隊長だろうが、返り討ちにできる」

「もう、戻ろうなどと思わぬよ。貴様が破面になった時、私の運命も決まった」

「ルキア・・・・好きだ・・・・」

「ん・・・一護・・・・」

体を何度も重ねた。

でも、破面の体には子はできなかった。

子が欲しいと思い、ザエルアポロの残した方法で、子を作った。

「だぁあああ」

「お前は、今日から俺とルキアの娘だ。名は・・・ウルキ」

死んでいったウルキオラの名前を、つけた。

破面の赤子は、男児だった。

いずれ、数百年後、一護の後を継いで、虚圏の王になるだろう。

「ふふ・・・赤子か。かわいいな」

虚圏では、食事は必要なかったが、一護とルキアは好んで人間の食事を口にした。

ああ。

恋次と白哉と食卓を囲んでいたあの頃が懐かしい。

私は、もう尸魂界には戻れぬ。

恋次も兄様も、元気にしているだろうか。

「何を考えてんだ?」

「いや・・・昔のことを」

「もう、昔を振り返るのはやめろ。お前は俺の妻で、虚圏の女王だ」

もう、戻れぬのだ。

こうなるくらいならば、あの高校時代に一護の手をとっていればよかった。そう思うルキアがいた。

一護は虚圏の王として、数百年君臨した。その傍には女王であるルキアの姿もあった。

破面になり、一護と結ばれたことを幸福には思うが、恋次や白哉ともう会えぬだけあって、悲しみにも打ちひしがれた。

ウルキと名付けられた破面の男児は、美しい青年に成長していた。

「ウルキ・・・・よくぞここまで成長してくれた」

ルキアは、ウルキを抱き締めた。

そんなルキアの様子を見て、一護は満足そうだった。

理を捻じ曲げ、虚である破面に落ちてまで-----------------ルキアを愛した男、黒崎一護。

だめだと分かっていながら、それについていって自ら一護と同じ運命を辿った女、朽木ルキア。

共に結婚していた。けれど、お互いだけを見ていた。

ハッピーエンドにはならぬ物語。

そう分かっていて、二人は常に傍にいた。

数百年もの間、お互いだけを必要として。

「愛している、ルキア」

「私も愛してる、一護」


世界が軋む。

星が落ちる。


それでも、狂った二人の愛は続く。

ただ、永久(とこしえ)に。

拍手[0回]

ルキアを攫ってしまおう 虚圏の王

虚圏に、二人はいた。

虚夜宮(ラス・ノーチェス)に、二人はいた。

「このようなこと・・・」

「ルキアは、もう死神じゃない」

ルキアを攫った一護は、その力で虚圏の王になっていた。

ルキアは、その妻になっていた。

ルキアの魂を落として、破面にした。一護もまた、自分の中にある虚を引き出し、破面となった。

もう、お互い死神と人間には戻れない―-―――。


霊圧を完全に虚のものに変えた二人に、従わない破面はいなかった。もっとも、王となったといっても名ばかりで、虚圏の支配権は未だにハリベルにあり、反乱はなかった。

一護は、破面となりさらに圧倒的な力を身につけた。ルキアは最後まで死神で在ろうとしたが、虚化していく一護を放置しておくことができず、自ら破面となった。

もう二度と、恋次や兄様には会えない・・・・。

そうだと分かっていながら、一護の隣にいて必要とされることが嬉しかった。

「お前の言葉通り、お前を攫った。お前はもう、俺のものだ」

ルキアを閉じ込めて、強制的に連れてきたわけではない。

ただ、ルキアを抱き上げて黒腔(ガルガンタ)までの道を浦原にあけてもらい、このことは他言無用とした。


変わって、現世では。

何時まで経っても戻ってこないルキアと一護に、井上は心労から病にかかった。

恋次はルキアを求め探し歩いた」が、現世も尸魂界にも、痕跡は残されていなかった。

霊圧を消して、何処かに隠れているのだと思っていた。

でも、一護は霊圧を消すのが下手で、どんな場所でもどこにいたのかすぐに分かった。

やがて、二人の捜索は打ち切られ、死亡したものとして処理された。

それから20年の月日が流れた。

井上は、心労がたたり、若くして亡くなった。

恋次は、ルキアを求めて探しまくったが、ルキアの心の中に一護がいるのを知っていた。

ルキアとの籍を抜き、恋次は同じ6番隊の違う女性と結婚した。

「なぁ、一護。こんな何もない場所で、何時まで過ごすのだ」

「ルキアと俺が完全に死んだてことになるまで」

「それなら、もうなっている。消息を絶って10年以上が過ぎると、死神は殉職したものとされる」

「そうか・・・・一度、現世に戻ってみるか」

破面だというが、見た目はほとんど昔と変わっていなかった。

ただ、胸の真ん中に破面の証である穴があった。

ルキアも、顔に破面としてのものがない。ただ、胸に大きな空洞があった。

二人は、黒腔を開き、現世にやってきた。

霊圧を0にする技を習得した。

黒崎家にくると、隣人から井上が死んだ話を聞かされた。

悲しいとも、思わなかった。

20年以上が経過しても、我が家は我が家だった。

もう遊子も夏梨も結婚して家を出てしまった。

家にあがると、父親の一心がいた。

「一護、お前生きていたのか!ルキアちゃんまで!」

初老にさしかかっている父親には、昔の覇気が感じられなかった。

「見た目が変わっていない・・・・どういうことだ?」

「俺は、人間でも死神でもない。ルキアもだ。破面だ」

「おい、お前!」

殴りかかってくる父親をいなすのは、簡単なことだった。

「恋次君や白哉君にばれたら、殺されるぞ」

破面は、虚の一種だ。

死神の敵だった。

「もう無理だ。それ以上の力を手に入れた。俺からルキアを取り上げようとするなら、恋次や白哉であれ許さない」

「恋次、兄様・・・・今頃、どうしておられるだろう」

「いくぞ、ルキア」

「あ、待て一護!」

一護とルキアが破面になっていた。

そんなこと、とてもじゃないが尸魂界には伝えれなかった。

だが、その二人の様子を見ていた者がいた。

恋次だった。

波長は全然違うかったが、愛したルキアの霊圧に似た霊圧を僅かながらに感知した。

黒腔をあけて、戻っていく二人に紛れて、恋次も虚圏に来てしまった。

「ルキア・・・愛してる」

「ああっ、一護」

睦み合う二人を、遠くから見ていた。

もう、俺の知る純情なルキアは死んだのだ。

せめて、俺の手で葬ってやろう。

いや、涅マユリに見せれば元に戻る方法もあるかもしれない。

そう思って、ルキアの腕をとって逃げ出そうとした。

「恋次?ああ、懐かしいな・・・貴様は死神だから、あまり見た目が変わらぬのだな。兄様はどうしている。元気か?」

そう口早に言われて、恋次は歩みを止めた。

「なんで破面なんかになった!俺を愛してたんじゃねーのかよ」

「私はな・・・・ずっと、一護を見ていたのだ。一護が破面になる道を選び、私も同じ道を選んだ。今の破面は大人しい。私も一護も、手を出されない限り、何もせぬ」

恋次は、ルキアを抱きしめて、口づけた。

すると、ゆらりとあのユーハバッハさえこす、凄まじい霊圧がぶつけられた。

「何、俺の世界に紛れ込んで、俺の妻を手を出してるんだ!」

「恋次!逃げよ!」

一護は基本無害だ。だが、ルキアのこととなると、人が変わる。

「ルキア、破面になるなんて!涅隊長のところに行けば、元に戻す薬を作ってもらえるかもしれない!俺と一緒に行こう!」

さぁと、元夫であった愛しい恋次が手を差し伸べてくる。

「破面から、死神になど戻れぬ。一度落ちたのだ。それに、涅マユリの実験体にだけはなりたくない」

ルキアは、涙を零しながら、恋次の手を取らず、一護の隣に並んだ。

「兄様には、このことは伏せておいてくれ。今の一護の力はすさまじい。あのユーハバッハや藍染以上だ。たとえ兄様でも、一護には勝てぬ」

「ルキアああああああああ!」

恋次の叫びは、黒腔におちいく。

「それでいい、ルキア」

隣に在ることを選んだルキアを抱き締めて、口づける。

「このような、罪深い存在・・・・・」

「お互い、妻と夫がいた。でも、もう昔のことだ」

ルキアには、もう一護しかいなかった。一護の隣で、何もない虚圏で時を過ごす。




拍手[0回]

ルキアを攫ってしまおう 高校3年の終わり

高校生活最後の冬がやっきた。

あと4か月したら、ルキアは尸魂界に戻ってしまう。

だから、思いのたけをぶつけようとした。

「ルキア・・・・好きだ」

「ありがとう、一護。だが、私は貴様の思いを受け入れられない。人間と死神・・・・この差はどうあがいても、結ばれぬ」

「それでも好きだ、ルキア」

「その心、嬉しく思う。だが、答えるわけにはいかぬのだ」

何度ルキアを好きといっても、ルキアは首を縦に振ってくれなかった。

それでも、一緒に生活し、一緒のベッドで寝て、一緒に起きて登下校を繰り返す。

まるで恋人同士のようであるが、ルキアは頑なに一護の想いを受け入れてくれなかった。

それでもルキアの傍にいた。

片思いでもいい。そう思いはじめていた。

「恋次と、付き合うことになった」

そう報告されて、目の前が真っ暗になった。

「なぁ、ルキア。俺がお前のこと好きだって知ってるのに、そんな残酷なこというのか?」

「あ、違うのだ一護・・・」

「もう知るか。恋次の嫁にでもなっちまえ!」

その日を最後に、ルキアの姿は現世から消えた。

もうどうでもいいと思った。

大好きなルキア。

一護にとっても友人である恋次と付き合い始めたという。

それでもルキアが好きだった。

気づけば、自分のことを好きと慕ってくれる井上と交際を始めていた。

「ルキア・・・・・・・」

ルキアを思わない日はなかった。

ルキアが去って1年が経ち、2年が経ち、3年が経ち・・・5年が経った。

一護の中では、ルキアの姿はあの日のまま凍り付いて、時を止めていた。

一護は、井上と結婚した。

もう、ルキアのことばかりを考える一護はいなくなっていた。

ある日、ルキアが恋次を伴って会いにきた。

「よお」

「よ」

恋次とは言葉を交わせたがルキアの顔は見れなかった。

「貴様!私を無視とはいい度胸だな!」

顔面に蹴りをくらって、さすがの一護もルキアの方を向いた。

「何しやがる!」

「たわけ、それはこっちの台詞だ!5年ぶりになるというのに、言葉一つ交わさぬとは何事か!」

「一護・・・・報告遅れちまったが、俺たち結婚したんだ」

その言葉は、ストンと一護の胸に落ちてきた。

「ああ。俺も井上と結婚した。もう、黒崎織姫で、井上じゃねーけどな」

「みんな!懐かしいね!」

一緒に住んでいる井上が、恋次とルキアの顔を見て顔を輝かせた。

「結婚、したんだ?」

「ああ」

「おめでとう!」

井上は、心底嬉しそうだった。安堵したのだ。

いつまでもルキアのことを忘れない一護も、これでルキアのことに諦めがつくと。

でも逆だった。

一護の諦めがついていた心に火がついた。

気づくと、ルキアを攫うように家の外に出ていた。

「どうしたんだろう、二人とも」

「積もる話があるんじゃねーか?」

「おい、貴様何処へ行く!」

「誰もいない場所!」

そう言って、浦原のところにいくと、地下室をかりてそこでルキアを向き合った。

「死神として、幸せか?」

「勿論だ」

「俺がいなくて、幸せか?」

「それは・・・・・」

「なぁ、ルキア。恋次と付き合いだしたって言ったときも、嬉しそうじゃなかったな。恋次と結婚したって言ったさっきもだ。本当に、幸せなのか?」

「幸せに決まっておろう!幸せでないといけないのだ!兄様も恋次なら私を託せるとおしゃってくださった!」

「じゃあさ。なんで、そんな泣きそうな顔してるんだ?」

「そんなことは」

ポロリと、一粒の涙がアメジストの瞳から零れ落ちた。

「どうすればよかったというのだ。人間の貴様と結ばれぬことが分かっていながら、好きだと告げろと?」

「やっぱり、ルキアも俺のこと、好きだったんだな」

「たわけ。もう、お互い引き返せないところにまできてしまったのだ」

「なぁ、ルキア。5年だ。お前がいなくなってから5年経って、俺は諦めて井上と結婚した。幸せだと思ってた。でも違うんだ。隣にお前がいない。俺は、未だにお前が好きなんだ、ルキア」

「たわけ!私は恋次の妻だぞ!好きだというなら、攫え」

「そうする」

一護は。

ルキアを連れて、行方をくらませた。

拍手[0回]

それいけ一護君 クリスマス

「そういえば、クリスマスだな」

「おお、もうそんな季節か」

「朽木家にねーよな。クリスマスツリーとか」

一護の言葉に、ルキアが顔を輝かせた。

「あるぞ、クリスマスツリー。イルミネーションが綺麗なのだ。今年も飾りつけをしなければ!」

「あんのかよ!いつ誰が買ったんだよ」

「私がクリスマスツリーが欲しいと言ったら、次の日にはでっかいクリスマスツリーがあった。買ってくださったのは兄様だ!」

「ほんと、白哉はお前に甘いんだな・・・・・・」

「兄様は、とても優しいぞ?」

ルキアの処刑を黙って見ていた頃の白哉は、もうどこにもいなかった。

その日は休みだった。

ルキアと一緒にでかいクリスマスツリーを出して、飾りつけをしていく。

あまりにでかいので、脚立とかが必要になった。

「後はイルミネーションのスイッチいれればOKだな」

「いれるぞ」

「ああ」

いろんな色に点滅するイルミネーションは綺麗だった。

現世のデパートなんかに置いてあるクリスマスツリーにも負けない豪華さだった。

「にゃあああ」

「琥珀、貴様もクリスマスツリーを見に来たのか?」

白哉がルキアに買い与えた猫の琥珀は、白猫でオッドアイが綺麗だった。

「やっぱ、クリスマスプレゼントとか用意するべきなのかな?」

「まだなのか?私は貴様の分も兄様の分も用意してあるぞ」

「まじかよ」

一護は、伝令神機で尸魂界ネットワークにアクセスして、ルキアのためのチャッピー抱き枕を注文した。

「ルキアの分は手配できたけど、白哉の分がなぁ・・・・・」

仕方なしに、現世の赤ワインなどを頼んでみた。

けっこうな値段になって、ルキアと違ってお小遣いをもらっていない一護には痛い出費だった。

抱き枕は値段が5千くらいだが、赤ワインは高級なのを選んだから、5万はした。

でも、5万の赤ワインなど、白哉に言わせればきっと水のようなものだろう。

辛いのが好きな白哉のために、辛い味付けのチキンを頼んだ。

クリスマスケーキは、白哉が甘いものがだめなため、ルキアと一護で食べる分を注文した。

「早く、クリスマス当日にならぬかな」

「それよりさ・・・・」

クリスマスの飾りつけも終わり、時間も余った二人は、寝室にいた。

ルキアを座らせて、その膝の上に一護は頭を乗せていた。

「いきなり膝枕させろだなんて、なんなのだ貴様」

「いや、たまには誰にも邪魔されずに二人だけの時間を過ごしたいと思って」

「たわけ!」

ルキアは朱くなったが、まんざらでもないようだった。

ルキアを抱き締める。ルキアは朱くなったが、抱き締め返してくれた。

「はぁ・・・・平和だ。好きだぜ、ルキア」

「あ、私も貴様のことが好きだ・・・・・ふあっ」

触れるだけのキスをした。

今は白哉がいないので、まだ太陽があるうちからいちゃいちゃできた。

「好きだ・・・・」

ルキアの衣服を脱がせていく。

「あ、一護・・・・」

夫婦になってから、夜の営みがないわけじゃなかったが、日があるうちからは初めてだった。

「いちごお・・・好きだ・・・ああっ」

ルキアのいいところばかりを責めてやると、ルキアはあっという間に高みに登ってしまった。

一護も満足して、二人で布団の上で横になた。

丸くなったルキアを抱き締めて、一護も丸くなって眠った。

3時間くらいが経ち、日もすっかり暮れてしまった。

「ああ、そろそろ夕飯の時間か・・・・・・」

ルキアを起こそうとすると、腕の中にルキアはいなかった。

ルキアの姿を求めて彷徨っていると、白哉とルキアが会話しているシーンに遭遇した。

「で、抱き締めると、私もきもちよくなってしまって・・・」

おいおいおいおい。

「ルキア!」

「どうしたのだ、一護!」

「お前、夜の営みを白哉に話てるのかよ!」

「はぁ!?」

ルキアは真っ赤になって、一護をぽかぽかと殴ってきた。

「たわけ、この愚か者!琥珀を抱き締めると、私もその毛並み気持ちよくなってしまったと話していたのだ!いくら私でも、貴様との夜のころを話すほど愚か者ではない!」

ぽかぽか殴ってくるけど、全然痛くなくて、一護はルキアを抱き上げた。

「わあ!」

白哉は険しい顔をしていた。

「白夜のバーカ!ルキアは俺のもんだ」

「・・・・散れ、千本桜」

「ぎゃあああああああ」

ルキアを放りだして、桜の海に一護が溺れる。千の桜の刃を受けて、けれど一護も斬月を取り出す。

「月牙天衝!」

千の桜の群れは、消えてしまった。

「・・・・・卍解・・」

「待ってください、兄様!このような場所で卍解など、いけません!一護、貴様が悪い謝罪申し上げぬか!」

「はいはい、ごっめ~ん白哉義兄様、ついルキアを一人占めにしちまった」

白哉の涼しい顔に、ピキピキと怒りの血管マークが浮いていく。

「明日はクリスマスだし、俺が悪かった」

全然悪びれもしない顔でそういうと、白哉はぷいっと一護を無視して食堂に消えてしまった。

「夕飯の時刻だな。私たちも、食堂にいこう」

食堂にいくと、一護の前の皿に、骨がおいてあった。他には何もなかった。

「おい、白哉義兄様。これはないだろ」

「知らぬ」

「ふん!」

厨房に行って食事をもらおうとすると、白哉の命令で骨以外は出せないという。

「ふーんだ。ルキア、行くぞ」

「おい待て、私はまだ食事の途中!」

「居酒屋に行こうぜ」

「でも」

「いいから」

ルキアをずるずると引きずって、財布をもって一護は瀞霊廷の居酒屋に、ルキアと一緒に行った。

よく恋次と飲み交わす店で、案の定恋次がいた。

「一護にルキアじゃねーか!どうしたんだ?」

「白哉義兄様が骨しか食わせてくれねーから、酒飲むついでに夕飯食いにきた」

「何か、隊長を怒らすことでもしたのか?」

「ルキアとの仲見せつけて、バーカって言ってやった」

その言葉に、恋次が震えあがった。

「隊長にバーカなんて、よく言えるな!俺が言ったら、卍解ものだぜ」

「ああ、卍解しようとしてた」

「根性座ってるな、一護」

「白哉とは、一応家族だからな。卍解しても、本気で切りかかってはこねーよ」

「そうだぞ、兄様は優しいのだ!」

ルキアが、酒を飲んで朱い顔をしながら、いくら優しいのか語ってくれた。

「優しいっていうか、ただの重度のシスコンだろ」

一護が言う。

「そのようなことはないのら~~」

既に酔っぱらったルキアも、重度のブラコンだ。

「あー。また酔いつぶれやがって・・・酒に弱いんだから、あんま飲むなっての」

「このまま、ルキアを美味しくいただくつもりか、一護!」

「いや、昼過ぎにもう美味しくいただいから、今日はもういいわ」

恋次が朱くなった。

「お前ら、淡泊のようですることしっかりしてるんだな」

「そりゃ夫婦だしな。いずれ子供も欲しいし」

「兄様~それはわかめ大使ではなく、こんぶ大使です~ふにゃら~~~」

一護は、居酒屋でお腹いっぱい食べると、べろんべろんに酔っぱらったルキアを連れて、帰宅した。

白哉が待っていた。

「なんだよ」

「ルキアは、酒に弱い。あまり飲ますな」

「へいへい。今度からは飲ませないように気をつける」

日付が変わり、クリスマスになった。

「メリークリスマス、白哉」

白哉は驚いた顔をしていた。用意していた赤ワインをもってきて、渡す。あと、辛い味付けにしたチキンも。

「兄は・・・今回は、私が悪かった」

「え、白哉が俺に謝罪!?熱でもあんのか!?」

額に手をあてると、平熱であった。

「白哉が俺に謝罪するとか、きっと夢だ」

ほっぺをつねるが、痛かった。

「夢じゃない!じゃあ、白哉の偽物か!おいこら、本物の白哉を出せ!」

「兄は・・・・・」

ふるふると、白哉が震える。

「散れ、千本桜・・・・・・」

「ぎゃあああああああ!!」

ルキアをそっと抱き上げ、千本桜をまともに受けて、白目をむいた一護を、ぺっと、朽木家から放りだして、玄関の鍵をかけた。

「ふにゃー兄様、愛していますー」

「私も愛している、ルキア」

一護は、寒さで気がついた。、

「おい、締め出しかよ。まじかよ」

玄関はびくともせず、窓も全部施錠されていた。

「白哉めー。覚えてろ」

仕方なしに恋次のところに行って、泊めてもらう一護であった。



拍手[0回]

禁忌という名の番外編 リピート

それは、願い。

どうかどうか、京楽がこちら側へきませんように。



一度散ってしまった命だ、浮竹の命は。

京楽が、オリジナルの一房の白い髪から作り上げられた霊骸のクローン。

それが今の浮竹だった。

涅マユリの手で生み出されたクローンである浮竹には、花の神によって与えられた特殊な義魂丸が入ってる。

それが今の浮竹だった。

オリジナルの浮竹がもっているはずの記憶を、完全ではないがもっていた。

たくさん愛された。偽りの命でありながら、1年という限られた時間ではあったが、愛され愛しあった。

1年が経った。

お別れの時間になった。

笑って別れようと思っていたのに、涙が止まらなかった。


ああ。

お前は、こちら側にくるな。

でも、京楽はこちら側へくることを選んだ。

たくさんのありがとうを。

一緒に落ちてくる京楽に。


京楽には、生きていて欲しかった。でも、「俺」という存在をつくりだすほどに浮竹を愛していた京楽には、たとえ偽りでも「俺」という名の浮竹を失うのは、もう我慢ができなかったのだろう。


ゆらりと、水底で花の神の愛児となり、眠りにつく二人はまた始める。

二人の物語を。



「俺は、浮竹十四郎という」

「京楽春水だよ」

学院で出会った、違う世界線の二人に、花の神は水底に眠る愛児たちの記憶を与えた。

学院で、たくさんの人が見ている中、二人は逃げるようにお互いの手を取り合って走り出した。

誰もいないのを確認する。

「本当に、浮竹?これは夢じゃないの?」

今の京楽には、過去に浮竹と一緒に落ちることを選んだ記憶があった。

「お前こそ、本当に京楽なのか?」

クローンの浮竹であった記憶が、今の浮竹の中にあった。

「これは現実なのか・・・・」

「本当の本当に?」

二人は、涙をぼろぼろ零しながら、抱き合った。

口づける。

お互い、甘い花の香がした。

「この世界の未来はもう知っている。浮竹、一緒にこの世界をユーハバッハの手から守ろう」

500年以上先の未来まで知っている。

「ああ。俺はもう神掛もしないし、ミミハギ様を失ったりしない。未来を知る俺たちなら、ユーハバッハが完全に目覚めるまでになんとかできそうだ」

もう、二度とこの世界で失わないようにと。

山本元柳斎重國と卯ノ花烈も死なないような、未来を描こう。

誰もが、笑顔でいられるような未来を。

「おっと、授業には出なきゃいけないね」

「そうだな。お互い卍解もできるだろうが、まだ斬魄刀もない。鍛錬して、霊圧を高めないと、未来でユーハバッハと戦えない」

この世界で、もう誰も散ることのないように。

世界の歴史を捻じ曲げるだろう。

そうなることで、この世界がどうなるかは分からない。

それでも。


それでも、もう一度

「君」と

「お前」と


生きることができるのならば。

本望。


永遠の愛を

「君」へ

「お前」へ






拍手[0回]

色のない世界 番外編 山じい

「おはよう」

「ああ、おはよう」

今日も、二人の何気ない一日が始まろうとしていた。

季節は春。

うらかかな日差しを浴びて、植物たちが芽吹き花を咲かせる。

今はなくなってしまった、雨乾堂の浮竹の墓の前まできていた。

墓石がった場所に酒を注いで、桜の花を添えた。

「何か、意味があるのか?」

「一応、君の墓であったことに変わりはないからね」

花の神の力で、もう一度生命を与えられた二人は、愛された証の甘い花の香をさせながら、生きた。

結婚式を挙げた。

今日は、3回目の結婚記念日だった。

「花の神は・・・・桜は嫌いかな?」

雨乾堂があった場所のすぐそばにある池に、桜を沈めた。

椿の狂い咲きの王が欲する椿はもう散ってしまった。椿は冬にしか咲かない。

以前は毎年冬のなると椿を沈めた。

この前は、夢魔に襲われたのを、花の神の助けを受けて現実世界に帰ってきた。

存在理由をなくした花の神であるが、愛児である浮竹と京楽が生きることで、また自分の存在理由を取り戻し、力を取り戻した。

「さぁ、いこうか」

桜が沈んでいったことを確認して、京楽は浮竹と手を繋ぎながら歩きだす。

「結婚記念日だけど、特にすることがないね」

「そうだな」

京楽は総隊長だ。

今日は休暇をとっているが、二人で何処かへ旅行にいけるほど、休みはもらえそうにない。

総隊長としての日々は忙しく、浮竹も仕事を手伝っていた。

「元柳斎先生に、結婚のことを報告するのはどうだろう?」

「ああ、いいね。山じいの墓参り最近行ってなかったし・・・・」

また、酒を用意して、桜の枝を折って、山本元柳斎重國の墓参りをした。

「山じい・・・尸魂界は見ての通り復興して、僕らもぼちぼち幸せにやっているよ。僕たち、ついに結婚したんだ」

「元柳斎先生・・・結婚しました。よりにもよって京楽ですが、毎日楽しくやってます」

「よりにもよってって酷くない?」

「だって、元柳斎先生はいつも京楽のことを叱っていただろう」

「そうだね。浮竹には甘かった・・・・あの差は、今でも悔しいなぁ」

ふと、猛烈な眠気に誘われて、浮竹も京楽もその場に倒れこんでしまった。


「こりゃ春水!十四郎!」

「え、元柳斎先生!?」

「山じい!?」

「ちょいと、お前たちの神様とやらに頼んでな。こうやって、夢の中で言葉を送っておるんじゃ」

「元柳斎先生!」

「山じい!」

二人な涙を零しながら、親のようであった山本元柳斎重國に抱き着いた。

「こりゃ春水、十四郎。この程度のことで泣きだすなど、鍛錬がたりんぞ!」

「平和になったからねぇ、自己鍛錬くらいで、山じいと一緒に戦っていた頃のようにはいかないよ」

「俺は一度死んだのに蘇って・・・・もう隊長じゃなくなったったので、自己鍛錬もあんまりしてないです。すみません」

「まぁよい。結婚じゃと?」

「うん」

「はい」

「はぁ・・・わしは、お主らの子を見るのをずっと楽しみにしておったのじゃがのう。十四郎が死に、春水は身を固めるかと思ったら、十四郎を思うあまりに独り身で。まぁよいわ。二人の元気な姿をみれただけでもよしとするかのう」

山本元柳斎重國は、笑った。

自分の死後、確かに尸魂界は息づいている、

今は平和すぎて、大戦の記憶もない者も多い。新しく生まれてくる命は、大戦のことを知らない。阿散井苺花のように。

「地獄は、あまりよくないが、卯ノ花とまぁまぁぼちぼちやっておる。十四郎も一時はいたので、覚えおるじゃろう」

「それが、元柳斎先生。死んだ後の記憶なんてないんです」

「そうか。ないほうがよじゃろうな。地獄は、生きにくいところじゃて」

色のない世界だ、そこは。

隊長クラスの者は、死ぬと地獄に落ちる。霊子が高すぎるために。山本元柳斎重國、卯ノ花烈、浮竹十四郎と、たて続けに地獄に霊子があふれ、一時期地獄の蓋があき、ザエルアポロといった亡霊が出没した。

それもなんとかなり、尸魂界はまた平穏を取り戻した。

「十四郎。地獄で嘆いておったな。京楽も一緒に落としたいと」

「元柳斎先生!」

「まぁ、その頃の記憶がないのは幸いじゃ。地獄は地獄。お主らは、当分死ぬなよ。死なれては、また地獄の蓋が開く」

「はい、元柳斎先生」

「山じい・・・山じいは、心残りとかないの?」

「あったとも。今目の前にいるお主らじゃ。尸魂界はきっと大丈夫じゃと信じておったらその通りになった。じゃが、死んでしまった十四郎の引きずられるように、こちら側にきそうな春水、お主のことを心配しておったのじゃ」

「山じい・・・」

「じゃが、花の神にまた十四郎を与えられた。もうわしも心に思い残すことは何もない。春水も十四郎も、寿命を全うしてからやってこい。地獄は気安いところではないが、まぁ戦いには飽きるこはなかろうて」

「絶対死なない。地獄なんてやだ」

「俺も嫌です」

「ふふふ・・・まぁ、わしが伝えたいのはそれだけじゃ」

ふわりと、音もなく花の神が山本元柳斎重國の隣に立った。

「もう、二度と言葉は交わせない。言っておくことは、他にないか?」

「元柳斎先生、お元気で!」

「そうそう、山じい、元気でね!霊子が巡り、やがて何かに生まれ変わったらまた会おう!」

「うむ」

山本元柳斎重國も、花の神も花びらとなって散っていく。

「桜の花、悪くなかった----------------」

はっと、二人して目が覚めた。

「夢?」

「いや、夢の中の現実だな」

もってきた桜の枝よりも多い、桜の花びらに二人は埋もれていた。

「山じい、元気そうだったね」

「ああ、そうだな」

もう一度、山本元柳斎重國の墓に酒を注ぎ、冥福を祈った。


「行こうか」

「ああ」

一度、浮竹は死んだ。京楽もだ。

花の神に二度目の命をもらい、今を生きている。

「また、冬になれば椿の花を沈めよう・・・・・」

「そうだね」

花の神、椿の狂い咲きの王のために。


世界は廻る。

軋む音を立てて。

一度終わった生をまた繰り返す浮竹。浮竹のために一度は命を手放した京楽。

花の神に愛されて、二人は同じ世界で同じ道を歩む。


もう、色のない世界はない。

世界は、色づいていた。








拍手[0回]

院生時代の部屋 パンツ星人

浮竹が、湯浴みをしようと自分のたんすの中からパンツを取り出そうとして、1枚もなかった。

「京楽ーーーーー!」

「はーい('ω')ノ」

「貴様というやつは!」

首を締め上げた。

「とったパンツ、全部返せ」

鬼の形相をされて、京楽は悲しげにパンツが入った包みを出してきた。

「さよなら、ジョセフィーヌ、マリア、アリエス、トワ、クルーナ、マリアンヌ、リエット」

パンツ1枚1枚に名前をつけているらしかった。

浮竹は引き気味になりながらも、取り返したパンツが無事であるのを確認してから、湯殿に消えた。

「むふふふふ」

名前をつけたパンツをまた奪い、湯浴みをしている浮竹の用意していたパンツも奪った。

「ぐふふふふ」

湯浴みを終えて、体をふいてパンツをはこうとすると、ぱんつがなかった。仕方なしに、胸元までバスタオルで隠して、京楽の目の前にくる。

「(*´Д`)ハァハァパンツはいてない浮竹・・・」

「パンツを返せ」

「嫌だ!全部僕の物だ!」

「そうか。よほど命がいらないのだな。破道の4、白雷」

鬼道の攻撃を、さっと京楽は交わした。

何度繰り返しても、避けられてしまう。

浮竹は、仕方なしに胸までまいていたバスタオルを、ばっとその中身を全て、一瞬だけ京楽に見せた。

ぶーーーーーー!

京楽は、鼻血を出して倒れた。

京楽の手からパンツを奪い返し、はいてパジャマを着る。

まさか自分が、変態京楽が、コートの下のパンツを見せつけるのと同じような行動に出るしかないなんてと、自己嫌悪した。

パンツは全部で15枚。全部奪い返して、鍵をかけた。

まだドクドクと鼻血をこぼしている京楽の体を蹴りあげる。

「おい、京楽」

「ぬふふふふ、浮竹の裸、ばっちり網膜に焼き付けた」

「忘れろ」

その脳天に、ひじ打ちをかますと、京楽は静かになった。

そのまま消灯する。

次の日、起きると大きめのバスタオルを被った京楽がいた。

ばっと中を見せる。

フルチンのまっぱだった。

「破道の4、白雷」

「あぎゃああああ」

昨日よけまくっていたのは、偶然だったらしい。

黒焦げになったっ京楽の頭をぐりぐりと踏みつけた。

「あん、もっと踏んで浮竹」

ぺろぺろと裸足の足を舐められえて、京楽の体を蹴り転がした。

「愛が痛いけど・・・・幸せ」

ガクリと、京楽は意識を失った。

京楽を放置して学院に登校する。

「お、珍しいな、京楽は?」

「知るか」

「おーこわ。浮竹の奴荒れてるぞ」

いつもの友人たちは、声をあまりかけてこなかった。

昼前になり、京楽が授業に出てきた。

「ふん」

浮竹はご機嫌斜めだった。教室移動になった。

去ろうとする浮竹の手をとる。

「なんだ」

そんな浮竹の顎に手をかけて、口づけられた。

「んっ・・・・」

ちろりと、京楽の舌が浮竹の唇を舐める。

自然と口を開けてしまい、舌が入ってきた。

「んんっ・・・・ふあっ・・・・・・」

何度も浅く深く口づけられて、抱き締められる。

「おまえっ・・・・・・ああっ」

全身の輪郭を確かめられて、うなじにキスマークをつけられる。

立っていられなくなって、京楽に寄り掛かった。

「愛してるよ、浮竹」

「俺は愛してない」

「またまぁ」

なんとか自分の力で立ち、調子に乗っている京楽の股間を蹴り上げた。

「キスもハグも、寮の室内だけだ!外でするなら、もうさせないぞ」

「ごめんなさい~~~」

股間を抑え、悶絶しながらも京楽は言いつけを守るらしかった。

「あと、俺のパンツを盗むのをやめろ」

「それだけは約束しきれないなぁ」

浮竹は長い溜息をついた。

「行くぞ。次は教室移動だ」:

京楽は犬が尻尾を振るように喜んで、あとをついていく。

それからしばらくの間は、京楽は浮竹のパンツを盗まなかった。

すでに50枚以上盗んでいるので、それで我慢しているらしかった。

浮竹は、念のためにネットでパンツを10枚購入した。黒のパンツばかりだった。

「ふふ~~ん」

ある日、帰宅すると京楽は黒いパンツを頭に被っていた。

まさかと思いタンスを見ると、カギが壊されていた。

パンツが全部なくなっていた。

「京楽~~~パンツ返せええええええ!」

般若になった浮竹と、破道の4白雷で黒焦げにされて、半分泣きながらパンツを返して許しを請う京楽の姿があったという。

拍手[0回]

浮竹死んだけど幽霊です憑いてます16 未遂の反乱

「ふあー」

「どうしたの、浮竹。眠いの?」

「んー。幽霊だから普通はないはずだけど、実体化できるようになってから、睡眠欲と食欲と性欲がある」

「性欲があるのはいいことだね!」

「なぜ性欲を強調する・・・・・」

浮竹が、少し嫌そうな顔をした。

「だって、君にも性欲があるってことは、僕とむふふふなことをしたいってことでしょ!?」

手だけ実体化して、京楽の頭を殴った。

「あいた」

「お前は色欲魔人か!この前したばかりだろう!」

「あれからもう1週間だよ」

「まだ1週間だ!」

ぎゃあぎゃあといいっていると、七緒がやってきた。

「ラブラブイチャイチャしてるところ申し訳ありませんが、緊急の仕事です。7番隊の隊士に、反乱の動きあり、と」

京楽の顔つきが変わる。浮竹も京楽の隣にある椅子に座って、話を聞き出した。

「まだ憶測の位置ですが、7番隊の4席と5席が反乱を起こしそうだと。虚を引き寄せる餌を大量に買い込み、1番隊に撒こうとしているらしい、と」

「今すぐ7番隊の4席と5席の捕縛を」

それだけ言って、京楽は7番隊隊舎に向かった。

「違います!私は反乱など・・・京楽総隊長、誤解なんです!」

4席と5席の持ち物から、滅却師がよく使う撒き餌がが大量に見つかった。

「これは、何かの陰謀です!私ははめられたのです!姦計です!」

「それは、取り調べ室でゆっくり聞こう」

引っ立てられていく4席と5席は、最後には京楽に向かって唾をはきかけた。

「お前みたいな上流貴族にはわからねーんだよ1

「そうだそうだ」

「はいはい。四十六室から、追って沙汰がくだるまで牢屋いきー」

「くそおおおおおお、もう少しだったのに!」

悔しがる4席と5席。

「全然もう少しじゃないからね。滅却師の撒き餌で集まった虚程度、護廷13隊はひっくり返らないし、僕もやられて死んだりしないから」

総隊長である京楽の命を狙うだけでも反逆罪だ。

未遂とはいえ、霊力の全てを剥奪されて流魂街に追放は免れないだろう。

処刑にならないだけ、感謝するべきだ。


一番隊の執務室にくると、浮竹が実体化して京楽を抱き締めた。

「どうしたの?」

「未遂とはいいえ、お前を虚に殺させようだなんて・・・・寒気がする」

カタカタと、浮竹の体が震えていた。

「大丈夫。僕はこの通り生きてるし、虚の大群がきたとしても生き残る自信はある」

「それでも・・・・・平和になった瀞霊廷をひっくり返そうだなんて・・・・」

浮竹を抱き締め返した。

そのまま寝室にいき、とさりとべッドに押し倒す。

「30分くらい、実体化できる?」

「ああ・・・・・・」

激しいキスを受けた。

愛撫も適当で、乱暴に潤滑油で濡れた指が体内に入ってくる。

「ん!」

前立腺を刺激することはせず、解すだけにとどまった。

「ああああああ!」

前立腺をすりあげて、京楽が侵入してくる。

抱き合うつもりのなかった浮竹は、京楽の背中に手を回し、爪をわざと立てた。

「んあああああ!」

ずちゅりずちゅりと、中を侵される。

快感はあった。

でも、いつもより少なかった。

前立腺ばかりをすりあげられて、浮竹は白濁した液を零した。

京楽も、浮竹を乱暴に犯して、2回ほど欲望を放った。

二人して、はぁはぁと激しい息を吐いた。

30分が経って、服を脱がされた格好のまま、浮竹は霊体化した。

「ごめん、かき出すことも清めることもできなくて・・・」

「別に、いい・・・・・・・」

波長をかえて、京楽が中に吐き出したものを消した。情事の痕も消し去り、死覇装を着て隊長
羽織を着て、いつもの普通の浮竹に戻った。

京楽はもっと時間がかかったが、のろのろと服を着た。

「ああ・・・・君を愛してるって伝えたいけど、流石に時間が足りないね」

「別に、無理に体を重ねる必要はないだろう」

「君に分かってもらうには一番手っ取り早いから」

「来週には1時間は実体化する予定だったが、今日のでだめになったぞ」

「ええ、そんなぁ」

京楽が、心底残念そうな声を出す。

「急に抱くお前が悪い」

「悪かったってば」

浮竹はふくれていた。怒っているのだ。

「抱きたいなら抱きたいと言え」

「分かったよ。今度から気を付ける」

そう言いながら、京楽は浮竹を抱くとき何も言わずに始めるのだ。

「ねぇ、まだ足りないでしょ?」

「え?」

確かに、一度しかいっていないので、体が中途半端に疼いていた。

京楽が、霊体を触れる手袋をした。

嫌な予感がして逃げ出そうするのを、手首を捕まえられてしまった。

「君を満足させてあげる」

その後、手だけで何度もいかされて、浮竹はぐったりとなった。

「満足する前に死にそうになるんだが」

「それくらい、気持ちよかったってことでしょう?」

「知るか」

浮竹は怒って、それから3日は口を聞いてくれなった。

3日経って、まだ拗ねている浮竹のご機嫌をとろうとする。

「だから、ごめんてば。君をきもちよくさせたいと思っただけで」

「大きなお世話だ。体の疼きは放っておけば消えるんだ。酷いようなら、無理してでも実体化しておまえと体を重ねる」

「ねえ、今週は?」

「なしだ」

「じゃあ、来週は?」

「なしだ」

「ええっ!僕に浮竹とのセックスなしで生きろって言うの!」

「元々、なしで生きていけたろうが!この色欲魔人が!」

ぎゃあぎゃあ言い合っているところに、冷めた顔の七緒がやってくる。

「この間の事件の、判決が下りました。4席も5席も禁固250年です」

「え、霊力剥奪の上に流魂街に追放じゃないの」

「それではあまりにも甘いということで・・・蛆虫の巣に、投獄です」

「うわーよりによって蛆虫の巣かい」

浮竹も噂では聞いたことがあった。

最悪な場所らしい。

「まぁ、自業自得だね」

「京楽隊長」

「なあに、七緒ちゃん」

「あまり、執務室濃い話はやめてください。セックスがどうとか・・・・・」

浮竹が真っ赤になった。

「ち、違うんだ、伊勢、これは!」

「浮竹隊長も、嫌なら嫌と意思表示をするように。狼に食べられるだけの羊ですよ」

真っ赤になった浮竹は、手だけ実体化させて京楽をぽかぽかと殴った。

「あははは、痛い痛い」

京楽は、実に嬉しそうに殴らていたのであった。

拍手[0回]

年末年始

「今年も、もうすぐ終わりだなぁ」

年末年始の休みに入っていた。

虚が出て始末する以外、通常は休みだが、海燕は関係なく働いていた。

といっても、仕事ではなく浮竹の世話のためなのだが。

「海燕、お前も今年こそ休みをとったらどうなんだ」

浮竹がそう言うが、海燕は首を横に振る。

「隊長を放っておくと、昼過ぎまで寝て飯もあまり食べないで寝てばっかりいるからだめです」

「ちっ」

「おい、今舌打ちしたな!?」

「気のせいだ・・・・・」

ああ、だらだらとした年末年始の夢が、今年も叶えられそうにない。

1日でいいから20時間くらい寝たいなぁ。

まぁ、臥せってる時はいつもそれくらい寝てるけど。

浮竹はそう思いながら、畳の上でごろりと横になった。

「ほらそこ、寝転がらない!」

「いいじゃないか。年末年始くらい」

「あんたの場合、年末年始関係なしにごろごろするでしょう!」

「ちっ」

「また舌打ちしましたね!?」

「気のせいだ」

海燕は、よく面倒を見てくれる。まるで母親のようだ。ありがたいが、たまにありがたすぎてうざくなる。

「ああ、やめだやめだ!」

浮竹は布団をしきだした。

「何してるんですか!」

「だらだらするんだ。年末年始くらいだらだらさせろ!俺は昼寝する!」

「許しません!」

「俺の勝手だろう!お前、都はどうした。せっかくの年末年始なのに放置か?」

「あ、忘れてた・・・・・・」

もう、独身ではないのだ。

愛しい妻を放りだして、自堕落な隊長に時間を潰されるよりは、妻を選ぶ。

「俺、帰ります」

「おう、帰れ帰れ」

「隊長は!くれぐれも寝すぎて昼夜逆転にならないように!」

毎年、年末年始はごろごろしすぎて、夕方に起きてくることがある

まぁ、2~3日時間をかければ昼夜逆転も直る。

「は~。極楽・・・・・・」

そのまあ、浮竹は昼餉もとらずに眠ってしまった。

起きると、夕方の7時だった。

少し眠りすぎたかと、副官の名を呼ぶ。

「海燕ーお腹すいたー」

しーんとしていた。

「ああいかん、海燕は帰ったんだった」

13番隊の食堂に行き、年末年始も出勤になり、代わりに年あけにまとまった休暇をもらう死神以外の者はいなかった。

全体的にがらんとしていた。

わざわざ雨乾堂まで夕餉をもっていくのがめんどうだったので、食堂で食べた。

「隊長、珍しいですね」

「仙太郎か・・・・・・」

3席である仙太郎は、年末年始も出勤のようだった。

「海燕が家に帰ったからな。いちいち夕餉をとりにいったり下げにいったりするのがめんどうだったから、食堂でいいと思って」

「隊長、それよりそんな薄着で大丈夫ですか?」

薄着というか、いつもと同じ死覇装に隊長羽織なのだが、いつも雨乾堂では毛布を羽織っているか、上着を着ていたので、そういえば寒いなと思った。

「上着置いてきてしまった・・・・・」

「とってきましょうか」

「いやいい。夕餉をとる間の時間だけだ」

夕餉をとり、雨乾堂まで戻る。身を切るよな寒さだった。

「はっくっしょん・・・ああやばい、熱だすかもな・・・・」

そう思いながら雨乾堂まで戻ると、京楽が来ていた。

「海燕君帰ちゃったんだね」

「ああ、俺が帰した」

「そんな恰好で。こっちおいで。ぬくめてあげる」

京楽は毛布を被り、火鉢に当たってその腕の中に来いといってくる。

浮竹は、なんの逡巡もなしのその腕の中に収まった。

「ああ、あったかい・・・・」

京楽は、人間ほっかいろだ。

京楽の腕の中でぬくぬくしていると、まだ眠気がやってきた。

いい加減寝すぎかもしれないと思いつつも、瞼を閉じた。

次に起きると、京楽と布団の中だった。

毛布を浮竹に数枚かけられていた。

「う・・・眠くない・・・・」

それから何度か寝ようと目を閉じたが、12時過ぎまで寝た挙句、昼寝をして今まで眠っていたのだ。寝れるわけがなかった。

「2時か・・・・・」

時計は、深夜の2時を指していた。

仕方ないので布団から這い出すと、毛布を被って火鉢にあたりながら、最近読んでいた小説の続きを読みだす。

「浮竹?」

「あ、京楽、構わずに寝てくれていいぞ」

「本当は、いけないんだけどね」

京楽は、何かを口にすると、水と一緒に浮竹に飲ませた。

「んっ・・・・何?」

「眠剤。寝れるように。僕、たまに不眠の時に使ってるんだ」:

「京楽が不眠?」

「本当に時折だけどね。いろいろあって、朝方まで眠れないから、寝れないと思った時には服用してる」

数分がたつと、ろとんと瞼が重くなってきた。

解熱剤に含まれるわずかな睡眠薬成分でも寝てしまうのだ。

眠剤など、免疫がなくて眠気はすぐにやってきた。

すーすーと眠りについた浮竹を抱き上げて、京楽は布団の中に入ると浮竹に毛布を数枚かけた。

「明日の朝には、すっきりしてると思うよ」

もう意識のない浮竹に語りかける。

京楽も、眠剤を口にして、眠った。

「あああ!寝すぎた!」

起きると、1時を回っていた。

「京楽、昨日の薬効きすぎだ!」

「ああ、安心してたら僕まで寝過ごしちゃった」

本来なら、京楽は8時には起きる。

でも、久しぶりに眠剤を口にしたこともあり、寝過ごしてしまった。

いつもは起こしにきてくれる海燕は今日は休みでいない。

「ああ、海燕がいないならいないで好きなだけ寝れて嬉しいけど、寝ていたくない時まで寝過ごしてしまう!」

「浮竹は、ほんと海燕君がいないとだめだね」

「仕方ないだろう!海燕がいつも起こしてくれるんだから!」

二人して、13番隊の食堂にいき、遅めの昼餉をとった。

「今日は何をしよう?」

「休みだし・・・年末年始で店も休みだろうから、だらだらしよう」

一人でだらだらするのはつまらないが、京楽と一緒なのだ。京楽と自堕落な時間を過ごすのもいいだろうと思う浮竹であった。

拍手[0回]

山本元柳斎重國の死

「酷いものだね・・・・・」

一番隊があった場所は焦土と化していた。

「元柳斎先生の死体は、見つからなかったらしい」

浮竹が、悲しそうに地面を見る。焦土と化した、1番隊の執務室があった場所にきていた。

燻っていた火は、泣きだした空で鎮火した。

激しい炎だった。まさに太陽。尸魂界の大気から水分を失なわせてしまうような、山本元柳斎重國の卍解であったが、ユーハバッハに奪われ、切られた。

その場面を見た者はいなかったが、切られたのだろうとなんとなくわかった。

その体は自らの炎に巻き込まれるかのように、泣きだした雨にも関わらず、灰となった。

遺体がないので、死んだかどうかさえ最初は疑わしかった。

だが、霊圧は完全に消えている。

死亡したのは、確かだ。

「山じいの代わりに総隊長だなんて・・・・嫌だといいたいのに、肝心の山じいがいないんじゃね・・・」

京楽は、深い溜息をはいた。

山本元柳斎重國の葬儀が、静かに行われた。

白い百合の花でみたされて、中央に流刃若火が置かれていた。

流刃若火は刃が折れていてガタガタで、もう使い物にならないと一目でわかった。

山本元柳斎重國の遺体がないまま、棺に火がつけられる。

パチパチと火が爆ぜて、その踊る火を間近で京楽も浮竹も見ていた。葬儀に参加した隊長副隊長は全員ではない。

白哉などは酷い傷で、動くこともできないという。

呆然とした様子で立っている一護に、京楽が声をかける。

「一護君、君も傷が深い。早く帰って4番隊で治してもらいなさいな」

4番隊で治療を受けていた一護であるが、山本元柳斎重國の葬儀と聞いてやってきたのだ。

「俺が・・・・もっと強ければ」

「一護君、今回のことは誰にも止められなかったんだよ。一護君が最初からきていても、きっと結果は同じだっただろう」

「でも!俺がもっと早くについていたら、死者の数だって!」

「己惚れるな!」

京楽が叫んだ。

「おい、京楽!」

浮竹が止めようとするが、京楽は止まらない。

「山じいを殺すような相手だよ?現に君だって太刀打ちできなかったじゃないの。いくら君が強いと言っても、君は一人だ。そして今後の尸魂界を守ってくれる要だ・・・・頼むから、自分を責めないでほしい」

京楽の言葉に、浮竹は何も言えなくなる。

尸魂界のために死なば本望。

それを、山本元柳斎重國は現実にしたのだ。

ああ。

次の侵略では誰が傷つき、誰が死ぬのだろうか。

現在、副隊長である吉良イヅルの死が確認されている。なんとかなるかもしれないと、涅マユリがその身柄を引き受けていったが、もう「生きる」ということは不可能だろう。

心停止していて、体の実に上半身の3分の1が吹き飛んでいた。

吉良イヅルも本来なら山本元柳斎重國と同じく棺に入れられて、焼かれる存在なのだが。

涅マユリは時に奇跡を起こす。

だから、誰も止めなかった。

そうせ死人だ。それ以上酷くなることはない。

どうかどうか。

もうこれ以上、尸魂界から死者が出ませんように。

浮竹は祈った。

京楽も片目を失い酷い怪我を負った。本来なら移植手術で時間をかければ、光を取り戻しそうだが、そんな時間の余裕もないのだ。


浮竹は、気づいていた。

尸魂界のために死なば本望。

きっと、自分もこの身を尸魂界のために捧げるだろう。

「なぁ、京楽。俺が尸魂界のために散ったならば、泣いてくれるか?」

「何不吉なこと言ってるの。そんなこと、起こるわけないよ」

死神として死のう。

浮竹の決意は固い。

それが死神としての矜持。

どうか、悲しまないでくれ。

でも、少しは俺を思って泣いてほしいな。

矛盾する思いを掲げながら、浮竹も京楽も一護も、煙となって天に還っていく山本元柳斎重國の棺を、飽きることなくいつまでもいつまで、完全な灰になるまで見ているのであった。

拍手[0回]

俺の隊長

隊長が乱れる様を見るのは、俺の特権だった。

俺の下で、隊長を突き上げると、隊長は女のような高い声で、喘ぎ声を漏らす。

「ああっ、恋次!」

隊長は、俺だけを下の名で呼ぶ。

ルキアのことも下の名で呼ぶこともあるが、ルキアは義妹だ。数には入らない。

隊長がルキアを可愛がり、愛していることを知っている。

でも、今ばかりは隊長は俺のものだ。

「んあああああああ!」

ずちゅずちゅと、隊長を犯しているあそこから、水音がした。

「やああああああ」

「いや、じゃないでしょう?」

わざと、気持ちいいところを狙って突き上げると、隊長は体を痙攣させた。いったのだとわかり、中がキュウとしまって、俺も我慢できずの隊長の中に白濁した液をぶちまけた。

「隊長、好きです」

「あ、恋次・・・・」

唇が重なる。

舌が絡み合った。何度もキスを繰り返しながら、隊長を突き上げていると、背中に回さた手が、俺の背中に爪を立てた。

がりっと音がして、鈍い痛みを感じた。

「ひああああ!」

隊長の奥の奥まで突き上げると、隊長は一際高い声をあげて、いくのと同時に気を失った。

隊長から引き抜くと、トロリと中で吐き出したものが太腿を伝って流れ落ちていく。

ああ、隊長を孕ませることができればどんなにいいか。

俺のものだという証を刻みこめる。

すでに、今日はもう何度目かも分からない欲望を隊長の中で吐き出していたが、まだいけそうだった。

でも隊長は意識を飛ばしている。

さすがに起こして続ける勇気はなかった。

とりあえず、濡れたタオルで情事の後をぬぐう。

隊長は、3時間ほどして気がついた。

「私は、どれくらい気を失っていた?」

「3時間くらいです」

「湯あみをしてくる」

隊長は、情事の後は必ず湯あみをする。

痕跡を残されるのを嫌がった。

キスマークを残すなど、もっての他だった。

隊長が消えていった湯殿に、俺も向かう。もう睦みあう気はないが、あの人は一人で俺が出したものをかきだすことができない。

「恋次、出し過ぎだ」

とろとろと、隊長の蕾から俺が出したものが溢れてくる。

「すみません」

言葉だけで謝っておく。

隊長。

あんたがそんなに美人でかわいいから、俺はあんたの中にいっぱい注ぎ込むんだ。

言っても分からないだろうだから、舌が絡まるキスをしておいた。

「あ、恋次・・・もう、しない。今日はもう無理だ」

「分かってますよ、隊長」

隊長。

愛してる。

「隊長、愛してます」

「私は・・・・」

いつも通り、隊長は言葉に出さない。

俺を愛していないのは知っている。

でも、好きでいてくれる。

今はまだ隊長の心の全てを手に入れられないけど、それでもいい。

「隊長、好きです・・・・・・・・」

同じ寝具で眠った。

同じ男とは思えぬ白い肌に細い体、整った美形な顔。でも、女っぽいかんじは微塵もない。

美しく気高く孤高な・・・・まるで、虎か猛禽類のようで。

俺は、眠ってしまった隊長に口づけて、自分も横になった。

睡魔は直に襲ってきて、意識を手放すのであった。

拍手[0回]

恋というもの

「冬か・・・・・」

季節は冬。

椿の花が咲いていた。

ちらりちらりと、空から雪が降ってきた。

「隊長、そんな薄着で大丈夫ですか」

「心配ない」

身を切るような寒さはしたが、この程度で風邪を引くようなやわな体ではない。

実の兄のように慕っている浮竹なら、きっと風邪を引いてこじらせてしまうだろうが。

「これ、着てください」

ふわりと、暖かな体温に包まれた。

「このような安物・・・・・」

恋次が着ていた、安物の着物の上着だった。

「でも、暖かいでしょう?」

「それは・・・・」

確かに、暖かかった。

「恋次の匂いがする・・・・」

そういうと、恋次は顔を朱くしてこういった。

「誘ってるんすか?」

「何故そうなる」

頭痛がしそうだった。

ただ、本当のことを言っただけで、盛るまで盛りのついた雄猫のようだ。実質は犬に近いが。

「今日は、抱かせぬからな」

「えー」

「この前、抱いたばかりであろう」

恋次が、椿の花を手折ってきた。

何をするのかと見ていいたら、白哉の髪に飾った。

「何を・・・・・」

「あんたは、髪飾りや簪贈っても受け取ってくれないから。これなら、つけていても平気でしょう?どうせすぐに散ってしまう」

飾られた椿と同じ椿を見る。

濃い紅色をしていた。

それは、白い肌に少し長い黒髪の白哉によく似あった。

「このような、安物中の安物・・・・・」

金さえかかっていない。ただだ。

「手折られる椿がかわいそうだ。今後、このような真似はするな」

「えー」

何が不満なのか、恋次は先ほどから不満の声をばかりをあげていた。

「今日は、隊長の誕生日だけど・・・何にも用意できなかったから」

「ああ、そういえば誕生日であったか・・・・・忘れていた」

もう、何歳になったのか忘れてしまった。

200をこしたあたりから、年を数えるのを止めてしまった。

「誕生日、おめでとうごいます」

「礼だけは言っておく」

今日は、何か辛いものが食べたい・・・・黒崎一護が教えてくれた、「麻婆豆腐」なるものを料理人に作らせようと決める。

6番隊執務室を後にして、朽木家に帰る途中まで、恋次がついてきた。

「何故、ついてくる」

「いや、ルキアにちょっと用があって」

「そうか」

ルキアは、今黒崎一護と付き合っている。

白哉と恋次のような爛れた関係ではなく、純愛だ。

純愛。

緋真がいた頃は、そんな気持ちもあった。

だが、死別してもう心に決めた。誰も恋愛感情で愛さないと。

ルキアのことは愛している。家族愛だ。

恋次のことは好きだし、逢瀬を重ねているが、愛しているとは言えないでいた。

恋次と一緒に夜を共にすると、時折もやもやとしたよく分からない感情を抱いた。

それがなんなのであるか、分からない。

分からぬままでいいのだと思う。

分かってしまったら、爛れていてるし、この関係も終わりだ。

「兄様、その椿は?よく似合っています」

家につくと、ルキアにそう言われて、椿を髪に飾ったままなのだと気づいて、ルキアの髪にかざった。

「ルキアのほうが似合う」

それは本当だった。

義妹であるルキアは美しい。緋真によく似ている。

「ルキア、その椿は隊長のものだ」

「なんだ、恋次!貴様、朽木家にまでくるとは、よほど兄様が恋しいのだな」

「な、そんなんじゃねーよ!」

「ふーん。兄様、誕生日おめでとうございます」

ルキアは、現世のカラムーチョという、最近白哉がはまっている菓子をいっぱいいれた包みをププレゼントしてきた。

辛い物が好きな白哉のために、わざわざ現世まで・・・・そう思うと、自然と笑みが零れた。

「兄様、ご機嫌ですね」

「恋次、お前はもう下がれ。ここは朽木家だ」

「隊長、好きです」

抱き締められた。

「ルキアが見ている。やめよ」

「それでも、あんたが好きだ」

さすがに義妹の前で、睦みあう真似事をされるのが嫌で、恋次と距離をとる。

「いつか、あんたを攫っていく」

「ふ・・・できるものなら」

恋次は、朽木家を後にした。

「兄様、この椿、お返しします」

なんともいえない感情に支配されて、ルキアに頼んでその椿を氷漬けにしてもらい、氷室で保存することにした。

「この感情は、なんなのであろう」

もやもやしている。

でも、分からなくていいのだ。

分かってしまえしまえば、もうお前とはいられぬのだから。

私が愛するのは、亡き緋真のみ。

それだけが全て。




拍手[0回]

好きから始まる物語 ルキアと一護の一日

結局、2人は死神に戻ってしまった。

長い生を重ねるだろう。記憶置換で、周囲の人間には老化しないことを不思議に思わせないようにしていた。

「なぁルキア・・・・好きだぜ」

「ん・・・・いちごおお」

寝室で、体を重ねていた。

「あ、一護・・・・」

「好きだ、ルキア・・・」

「私も好きだ、一護・・・」

今、ルキアのお腹の中には、一護とルキアの愛の結晶が宿っていた。

次の日、遅くまで睦みあっていたせいで、寝坊した。

「んー、一護、好き・・・・・・」

むにゃむにゃいうルキアを寝かせたまま、一護はその日の仕事を始めた。

黒崎家の通帳は、ルキアの義兄である白哉のせいで、億をこえる金が貯蓄されている。

仕事をしなくても生きていけたが、暇すぎるので、仕事は続けていた。

「いちごお?」

寝ぼけ眼のルキアを抱き締めて、膝の上に座らせた。

「なんなのだ、貴様・・・・・・」

「んー。甘い時間もほしいと思って」

「そんなに白玉餡蜜が食いたいのか。仕方ないな・・」

立ち上がろうとしたルキアを制して、膝の上に乗せたままにする。

「どうしたというのだ」

「好きだから、こうしてる」

「ん・・・・いちごお」

甘ったるい空気。ルキアから、一護に舌の絡まるキスをしてきた。

「誘ってる?」

「ち、違う!」

「あーもう、なんでこんなにかわいいんだよ、ルキア!」

膝の上に乗ったたままのルキアを抱き締めた。

「一護・・・・・」

「ルキア・・・・」

また、唇が重なった。

ちゅっと、触れるだけのキスを繰り返す。

「抱かないのか?」

「昨日抱いたばかりだ」

「そうであったな」

ルキアを抱き締める。シャンプーの甘い香りがした。

「一護、貴様は太陽のようだな」

「そういうルキアは月みたいだ」

「ふふ・・・互いに存在しないと、生きていけぬところとか、そっくりではないか」

ルキアを抱き締めたまま、一護は平らなルキアの腹を撫でた。

「男の子かな?女の子かな?」

「多分ではあるが、男の子であると思うのだ」

「名前はもう決めてある。男の子なら、一勇、女の子なら苺花・・・・」

ルキアを座らせて、その膝に寝転んで、お腹をなでたあと、胸の服のボタンを外して、醜く残ってしまったルキアの胸の傷跡を触り、口づけた。

「なぁ。傷跡消す整形手術受けれるとしたら、どうする?」

「私はこのままで良い・・・・この傷も、貴様と過ごした時間の証だ」

「そうか・・・・」

一護は、それ以上傷跡のことは何も言わなかった。

お腹を撫でる。

「ふふ・・・くすぐったい」

「もっと触っていいか?」

「ああ、もっと触ってくれ。きっと、お腹の中の子に伝わる。貴様の愛が」

暖房の利いた部屋で、ルキアと丸くなって横になる。

ルキアを腕の中で抱きしめる形で。

「愛している、一護・・・・・・」

「俺も愛してる、ルキア・・・・・」

互いの体温を共有し合った。

こんな場面、恋次が見たら真っ赤になって卒倒するだろう。

甘い甘い時間だった。

「ん、一護、もう少しそっちにいってもいいか?」

「ああ、来いよ」

ルキアを抱き寄せる。

ルキアの細い体を抱き締めながら、一護は砂糖みたいに甘いルキアとの時間を楽しむ。

「ああ、一護、暖かい・・・・・」

「ルキアもあったかいな・・・・・」

互いの体温が気持ちよかった。

「あれほど寝たのに、また眠くなってきた・・・・・」

「寝ていいぜ。俺も、ちょっと眠い・・・・・・」

二人は、ソファーの上で、猫のように丸くなって眠った。


「ああ、もうこの二人は・・・・・」

やってきた恋次は、猫のように丸くなって眠る二人に毛布をかけてやり、伝令神機をオフにする。

今日は、一護とルキアが籍を入れた、いわゆる結婚記念日だ。

今日くらい、虚退治は自分が引き受けてやろうと思った。


「ん・・・いい匂いがする・・・・」

ルキアが目を開けると、台所からコトコトと音がしてきた。

「お、ルキア起きたか。今日は俺が飯作るから。メニューは中華スープ、キムチチャーハンに、エビチリ、エビマヨ、麻婆豆腐に杏仁豆腐だ」

「今日は、豪勢なのだな」

「結婚記念日だからな」

「え、そうなのか?」

「ああ。白哉が籍を入れた日だ」

籍をいれて2年目になる。

「兄様が勝手に籍をいれてしまったからな。結婚したという気がいまいち分からぬ」

「でも、こうして一緒にいると、結婚したって気にならないか?」

「どうであろう・・・・」

ルキアを抱き締める。

「永遠の愛を、お前に」

「永遠に愛を、貴様に」

唇が重なる。

「ふふ・・・・・」

「はは・・・・・」

お互いの額に額をぶつけあい、包容を続ける。

「貴様は、空気でさえ甘い。どこもしこも甘くて、蜂蜜のようだ」

「それはお前だろ。ああ、甘いな・・・・・」

耳をかじってやった。

「ひゃん!」

変な声が出た。

「もっと、声、聞かせて?」

「貴様、作りかけの夕飯はどうするのだ!」

「そうだった!」

一護が鍋の中を見る。幸いなことに、焦げてはいなかった。

「おい、一護、ルキア」

「わあ!」

勝手に入ってきた恋次に、ルキアが顔をしかめた。

「たわけ!勝手に入ってくるなと何度言えば分かるのだ!」

「ちゃんとチャイム押した!」

「そうか?聞こえなかった」

「どうせイチャイチャラブラブしてたんだろ?」

「恋次!」

「はははははは!今日はお前らの結婚記念日だから、特別にこの地域の虚退治を引き受けてやったんだよ!こういう日に限って虚はよく出やがるし・・・」

「恋次も食べていけ。私の愛しい夫は、料理も得意なのだ」

「ああ、確かに一護の作る飯がうめぇからな」

恋次も、まるで家族の一員だ。

来年になると、また家族が増える。

「兄様は、元気にしているか?」

「元気すぎて、この前雑魚の虚相手に卍解して、ぎったぎたにしてた」

「兄様も、ストレスがたまっているのであろうか・・・そうだ、一護、麻婆豆腐を皿に入れてラッピングしてくれ」

「どうするんだ?」

皿にいれてラッピングした麻婆豆腐を、恋次に押し付ける。

「兄様は辛いものが好きだからな。恋次、これを兄様に渡してくれ」

「分かった」


白哉は、それを尸魂界で受け取り口にして、目を見開いた。

「恋次。黒崎一護に、このメニューのレシピをメモしたものをよこせと、言っておけ」

「分かりました、隊長」

白哉は現世にこそあまりこないが、伝令神機で義妹のルキアとはよくやりとりをしていた。

「幸せなったのだな、二人とも・・・・・・」

白哉は満足げに微笑んだ。


そして次の年。

ルキアは男児を産み、「一勇」と名付けられるのであった。


         好きから始まる物語

                                         fin


拍手[0回]

新着記事
(04/22)
(04/20)
(04/20)
(04/20)
(04/19)
"ココはカウンター設置場所"