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好きから始まる物語 ルキアと一護の一日

結局、2人は死神に戻ってしまった。

長い生を重ねるだろう。記憶置換で、周囲の人間には老化しないことを不思議に思わせないようにしていた。

「なぁルキア・・・・好きだぜ」

「ん・・・・いちごおお」

寝室で、体を重ねていた。

「あ、一護・・・・」

「好きだ、ルキア・・・」

「私も好きだ、一護・・・」

今、ルキアのお腹の中には、一護とルキアの愛の結晶が宿っていた。

次の日、遅くまで睦みあっていたせいで、寝坊した。

「んー、一護、好き・・・・・・」

むにゃむにゃいうルキアを寝かせたまま、一護はその日の仕事を始めた。

黒崎家の通帳は、ルキアの義兄である白哉のせいで、億をこえる金が貯蓄されている。

仕事をしなくても生きていけたが、暇すぎるので、仕事は続けていた。

「いちごお?」

寝ぼけ眼のルキアを抱き締めて、膝の上に座らせた。

「なんなのだ、貴様・・・・・・」

「んー。甘い時間もほしいと思って」

「そんなに白玉餡蜜が食いたいのか。仕方ないな・・」

立ち上がろうとしたルキアを制して、膝の上に乗せたままにする。

「どうしたというのだ」

「好きだから、こうしてる」

「ん・・・・いちごお」

甘ったるい空気。ルキアから、一護に舌の絡まるキスをしてきた。

「誘ってる?」

「ち、違う!」

「あーもう、なんでこんなにかわいいんだよ、ルキア!」

膝の上に乗ったたままのルキアを抱き締めた。

「一護・・・・・」

「ルキア・・・・」

また、唇が重なった。

ちゅっと、触れるだけのキスを繰り返す。

「抱かないのか?」

「昨日抱いたばかりだ」

「そうであったな」

ルキアを抱き締める。シャンプーの甘い香りがした。

「一護、貴様は太陽のようだな」

「そういうルキアは月みたいだ」

「ふふ・・・互いに存在しないと、生きていけぬところとか、そっくりではないか」

ルキアを抱き締めたまま、一護は平らなルキアの腹を撫でた。

「男の子かな?女の子かな?」

「多分ではあるが、男の子であると思うのだ」

「名前はもう決めてある。男の子なら、一勇、女の子なら苺花・・・・」

ルキアを座らせて、その膝に寝転んで、お腹をなでたあと、胸の服のボタンを外して、醜く残ってしまったルキアの胸の傷跡を触り、口づけた。

「なぁ。傷跡消す整形手術受けれるとしたら、どうする?」

「私はこのままで良い・・・・この傷も、貴様と過ごした時間の証だ」

「そうか・・・・」

一護は、それ以上傷跡のことは何も言わなかった。

お腹を撫でる。

「ふふ・・・くすぐったい」

「もっと触っていいか?」

「ああ、もっと触ってくれ。きっと、お腹の中の子に伝わる。貴様の愛が」

暖房の利いた部屋で、ルキアと丸くなって横になる。

ルキアを腕の中で抱きしめる形で。

「愛している、一護・・・・・・」

「俺も愛してる、ルキア・・・・・」

互いの体温を共有し合った。

こんな場面、恋次が見たら真っ赤になって卒倒するだろう。

甘い甘い時間だった。

「ん、一護、もう少しそっちにいってもいいか?」

「ああ、来いよ」

ルキアを抱き寄せる。

ルキアの細い体を抱き締めながら、一護は砂糖みたいに甘いルキアとの時間を楽しむ。

「ああ、一護、暖かい・・・・・」

「ルキアもあったかいな・・・・・」

互いの体温が気持ちよかった。

「あれほど寝たのに、また眠くなってきた・・・・・」

「寝ていいぜ。俺も、ちょっと眠い・・・・・・」

二人は、ソファーの上で、猫のように丸くなって眠った。


「ああ、もうこの二人は・・・・・」

やってきた恋次は、猫のように丸くなって眠る二人に毛布をかけてやり、伝令神機をオフにする。

今日は、一護とルキアが籍を入れた、いわゆる結婚記念日だ。

今日くらい、虚退治は自分が引き受けてやろうと思った。


「ん・・・いい匂いがする・・・・」

ルキアが目を開けると、台所からコトコトと音がしてきた。

「お、ルキア起きたか。今日は俺が飯作るから。メニューは中華スープ、キムチチャーハンに、エビチリ、エビマヨ、麻婆豆腐に杏仁豆腐だ」

「今日は、豪勢なのだな」

「結婚記念日だからな」

「え、そうなのか?」

「ああ。白哉が籍を入れた日だ」

籍をいれて2年目になる。

「兄様が勝手に籍をいれてしまったからな。結婚したという気がいまいち分からぬ」

「でも、こうして一緒にいると、結婚したって気にならないか?」

「どうであろう・・・・」

ルキアを抱き締める。

「永遠の愛を、お前に」

「永遠に愛を、貴様に」

唇が重なる。

「ふふ・・・・・」

「はは・・・・・」

お互いの額に額をぶつけあい、包容を続ける。

「貴様は、空気でさえ甘い。どこもしこも甘くて、蜂蜜のようだ」

「それはお前だろ。ああ、甘いな・・・・・」

耳をかじってやった。

「ひゃん!」

変な声が出た。

「もっと、声、聞かせて?」

「貴様、作りかけの夕飯はどうするのだ!」

「そうだった!」

一護が鍋の中を見る。幸いなことに、焦げてはいなかった。

「おい、一護、ルキア」

「わあ!」

勝手に入ってきた恋次に、ルキアが顔をしかめた。

「たわけ!勝手に入ってくるなと何度言えば分かるのだ!」

「ちゃんとチャイム押した!」

「そうか?聞こえなかった」

「どうせイチャイチャラブラブしてたんだろ?」

「恋次!」

「はははははは!今日はお前らの結婚記念日だから、特別にこの地域の虚退治を引き受けてやったんだよ!こういう日に限って虚はよく出やがるし・・・」

「恋次も食べていけ。私の愛しい夫は、料理も得意なのだ」

「ああ、確かに一護の作る飯がうめぇからな」

恋次も、まるで家族の一員だ。

来年になると、また家族が増える。

「兄様は、元気にしているか?」

「元気すぎて、この前雑魚の虚相手に卍解して、ぎったぎたにしてた」

「兄様も、ストレスがたまっているのであろうか・・・そうだ、一護、麻婆豆腐を皿に入れてラッピングしてくれ」

「どうするんだ?」

皿にいれてラッピングした麻婆豆腐を、恋次に押し付ける。

「兄様は辛いものが好きだからな。恋次、これを兄様に渡してくれ」

「分かった」


白哉は、それを尸魂界で受け取り口にして、目を見開いた。

「恋次。黒崎一護に、このメニューのレシピをメモしたものをよこせと、言っておけ」

「分かりました、隊長」

白哉は現世にこそあまりこないが、伝令神機で義妹のルキアとはよくやりとりをしていた。

「幸せなったのだな、二人とも・・・・・・」

白哉は満足げに微笑んだ。


そして次の年。

ルキアは男児を産み、「一勇」と名付けられるのであった。


         好きから始まる物語

                                         fin


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好きから始まる物語 人間として

朽木家で、白哉はルキアと一護のほうを向いた。

「ルキアのことを、幸せにすると誓えるか?」

「誓う。命に代えても」

「一護・・・・」

ポロポロと、アメジストの瞳から涙が零れていく。

「ルキア。人として・・・死神の長き命も、この尸魂界も、家族も。何もかも捨てれるか?」

「兄様。一護と共にいれるなら、このルキア。死神を辞めてもかまいません」

「その言葉に、偽りはないな?」

「はい」

「おい、白哉!」

一護が口をはさみそうになるが、それを白哉が制した。

「兄は黙っておれ。これは、ルキアと私の問題だ」

「兄様」

「この私と、今生の別れになるとしても?」

「それは・・・・」

ルキアが少し逡巡する。

白哉を愛しているルキアには、酷なことだろうが、ルキアは涙を流しながら頷いた。

「はい、兄様。それでも、一護を選びます」

「よく分かった・・・・今日をもって、朽木ルキアは朽木家より追放とする。人間になる薬を与えて、現世に永久追放とする!」

「おい、そりゃあんまりだろ!」

「よいのだ、一護。こうするしかないのだ。私は4大貴族、朽木ルキア。それが、ただの人間と結ばれるなど・・・・・・こうするしか、ないのだ」

「でも・・・・」

「兄が、この傷ついたルキアを癒すのだ」

「そんなこと、言われなくても分かってる!」

次の日、ルキアは白哉と一護が見守る中、人間になる薬を飲んで義骸に入った。何度やっても、義骸からは抜け出すことはできなかった。鬼道はかろうじで使えるようであったが、現状は一護に死神の力を託して義骸に入っていた頃に近かった。

「何があるか分からぬ故、死神としての霊圧は残す。鬼道は使えるであろうが、もう二度と斬魄刀である袖白雪には触れることはできぬであろう」

袖白雪は、ルキアの目の前にあった。

「袖白雪・・・・長いこと、世話になった」

袖白雪はリィィィンと音を立てた。

まるで、主との別れを悲しむように。

「空座町に大規模な記憶置換を行った。今日から、朽木ルキアは黒崎ルキアだ。婚姻はまだだが、籍を入れていると認識させた」

「兄様、何から何までありがとうございます」

「念のため、ルキアにはこの伝令神機を渡しておく。死神でなくとも使えるタイプのものだ」

なんだかんだいって、白哉もルキアと別れるのが惜しいのだ。

伝令神機でやりとりをするつもりなのだろう。

「さぁ、現世へ・・・・・・」

白哉の声で、穿界門が開けられる。

「兄様、お元気で!」

「白哉、いろいろとありがとな!」

穿界門が閉じられる。

もう二度と帰ってこないルキアを思い、白哉はしばらくの間そこから動くことができなかった。

ルキアには、大金をもたせておいた。今頃、現世ではちょっとした騒動になっているかと思うと、白哉は少しだけ微笑んだ。


現世に帰ってきた。

一護はアパートではなく、一戸建ての家で暮らしているということになっていた。

一括返済で、家を買った少し金持ちと認識されていた。

「どういうことだよ、これ」

「兄様が、私の身を心配して、貧乏暮らしなどせぬようにと・・・・」

「はぁ!?」

白哉と、そんな会話しているシーン見ていなかったのだが、ふとルキアの伝令神機を見ると、白哉からの着信でいっぱいだった。

「白哉のやつ・・・追放とか言っときながら、やっぱお前には甘いんだな」

「た、たわけ!兄様のお陰で、アパートの狭い家から一戸建ての広い家に住めるのだぞ!」

「俺は、前のアパートでもよかったけどな。掃除とか大変そうだ」

「それなら、問題ありません」

尸魂界でルキアの面倒を朽木家で見ていたちよが、現世の新しい黒崎家に派遣されていた。

「ちよが、これからもルキア様の面倒を見させていだたいます」

「ちよ!」

「おい、俺の存在も無視しするんじゃねぇよ!」

「恋次!?」

「隊長に言われて、ちょくちょくお前らの様子見てこいって言われた」

「兄様・・・・・」

ルキアは微笑んだ。

「白哉のやつ、今生の別れとか嘘ばっかじゃねぇか!」

「でも、私は護廷13隊13番副隊長を辞めてしまったのだ・・・いろいろ、兄様には迷惑をかけることになる」


ちよは、週に2回家事の手伝い、主に掃除と洗濯の手伝いに来てくれるだけで、ルキアと一護の仲を壊すよなことはしなかった。

大学を、一護は卒業した。

一護は出版社に就職して、自宅でドイツ語の翻訳家として働いていた。

「一護、おやつの時間だ!白玉餡蜜を食え!」

「お前、また白玉餡蜜作ったのかよ!おとついもそれ食っただろ!」

「文句を言わずに食え」

無理やりスプーンを持たせられた。

「はい、あーん」

ルキア、平気な顔でそういう。

「あーん」

一護は口を開けた。

白玉餡蜜をこれでもかとつっこまれた。

「げっふごっふ・・・殺す気か!?」

「白玉餡蜜で死ねるなど、本望ではないか!」

「何処がだ!」

「おい、俺がいるの忘れてねーか?」

「なんだ恋次、いたのかよ」

「俺は空気か何かか!?」

恋次は、このバカ夫婦を見るのが日常になっていた。ルキアに想いを寄せていた頃が懐かしい。

結局、ルキアと一護は式を挙げなかった。

だが、ルキアの指にも一護の指にも、アメジスとがあしらわれたエンゲージリングが光っていた。

新婚旅行には、ドイツに2週間いってきた。

ルキアは初めて見る異国にはしゃぎまくっていた。恋次は、よく黒崎夫婦の家の出入りをしていた。そして、見たことを、白哉に告げると、白哉も穏やかな顔になった。

「もうそろそろいいんじゃないっすか?」

「そうだな」

ルキアと一護は、白哉に呼び出された。

そして、突然何かの注射を打たれた。

「あ・・・死神としての力がもどっています、兄様!」

「え、なんか俺もなんか本物の死神になってるんだけど!どういうことだよ、白哉!」

「黒崎一護、黒崎ルキア。本日をもって、現世永住の死神として、空座町赴任の死神とする!」

「はぁ!?」

一護は、わけがわからない顔をしていた。

白哉が、結局ダメだったのだ。義妹が死ねば、元死神であるから、その魂は尸魂界に戻ってこない。ただ、霊子に還るだけ。
一護の魂は尸魂界にくるが、ルキアは散ってしまう。

そんなこと、白哉に耐えれるわけがなかった。

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好きから始まる物語 略奪

その日は休みだったので、動物園に来ていた。

平日だったので、客はまばらだった。

「ああ、あの虎・・・兄様のようだ」

「白哉に?」

「気品があり、気高く美しい・・・それでいて、大人しく見えて獰猛で・・・・・」

「白哉って獰猛なのか?」

白哉の、揺れ動くことのない綺麗な顔を思い出す。

「兄様を怒らすと、怖いぞ」

「お前何やらかしたんだよ」

「秘密だ」

ルキアは笑った。悪戯めいたその微笑みに、一護は見惚れていた。

「そろそろ昼だな・・・・休憩にするか」

昼食は、一護特製の弁当だった。

ルキアのものには一護の顔が、一護にはルキアの顔がかかれたキャラ弁だった。

「ぬう、勿体なくて食べられぬ」

「まだいつでも作ってやるから、普通に食え」

「約束だぞ!」

「ああ」

昼食をとった後は、パンダやコアラなど、かわいい系の動物を見て回った。

そして、動物園の一角にある触れ合いコーナーに行くと、兎とモルモットがいた。

「兎・・・・美味そう・・」

「こらルキア!ここの兎は愛玩用だぞ!」

「わ、わかっておる」

そう言いながら、よだれを垂らしそうな顔をしていた。

奥の方に進み、カンガルー、ワラビー、羊、鹿・・・・大型の動物に触れる。

エサをもって近づくとわらわらと寄ってきた。

「くすぐったい・・・・・」

ルキアは、餌を何度もやった。

3時頃に動物園を出て、今度は近くにある水族館に行った。

キラキラと泳ぐ、アマゾンコーナーのネオンテトラをルキアはずっと眺めていた。

「好きなのか、この魚」

「何故、こんなに美しいのであろう」

グッピーも泳ぐ次の水槽にきても、水槽の前にへばりついていた。

「なんでかまでは分からないけど、綺麗だな。ルキアのアメジストの瞳みたいだ」

「私の目は、ここまで美しくない」

やがて、海月の前にくると、ルキアはまた足をとめた。

「さっきの美しい魚たちとは違うが、これも美しいな」

ゆらゆらと漂う海月。

まるで、自分のようだ。

尸魂界がありながら、現世で人間の一護相手に現を抜かす、漂う海月。

「一護、大切な話があるのだ」

「なんだ?」

「その、家に帰ってからでよい」

「変なやつ」

そのままイルカショーを見て、ラッコを見て、貝がうまそうだと、ルキアは笑っていた。

家に帰宅しても、結局ルキアは大切な話とやらをしてくれなかった。

そのまま夜になり、ルキアは涙を零しながら、眠ってしまった一護を抱きしめ、そっとキスをした。

「たくさんの思い出をありがとう、一護・・・・・・」

明日。

明日、尸魂界に戻らなければならない。

次にやってこれるのは、いつか分からない。

伝令神機があるとはいえ、メールでは思いを伝えることに限度がある。

悲しいが、一護とは別れよう。

白哉に言われていた。

現世の時間を堪能して戻ってきたら、四楓院家の当主に嫁ぐのだ。

「一護・・・永遠に、貴様だけを愛している」

ルキアは、書き置きだけを残して。現世を後にした。

尸魂界に戻ったのだ。

「ルキア・・・・・・」

朝起きると、ルキアがいなかった。

さよならという言葉の書き置きがあった。現世を離れたら、四楓院家に嫁ぐと書いてあった。

一護は、けれど絶望していなかった。浦原のところにいくと、尸魂界に連れていくことできないと言われた。

「ルキア・・・・・」

手紙には、また会おうと書いてあった。

いつかまた、現世にやってくる。

例え、他の男の元に嫁いでも、永遠に俺だけを愛していと書いてあった。

信じよう。

ルキアの言葉を。

でも、いてもたってもいられなくて、空座神社まで来ていた。

神社や寺には、自然の力で尸魂界への穴が開くことがあるのを知っていた。

一護は見つけた。

小さな小さな穴を。

それを、でたらめな自分の霊圧をぶつけて、広げると、空間の狭間に入った。

穿界門から断界に入るのとは違い、どちらかというと黒腔(ガルガンタ)に似ていた。

微かな・・・本当に、微かなルキアの霊圧を辿って道を進む。

虚がたくさん出没した。たくさん殺した。

死覇装は、虚の返り血でべっとりと汚れていた。

やっと出口を見つけて、外に出る。

流魂街の外れにいた。

瞬歩で瀞霊廷にまで移動して、ルキアの霊圧を辿って四楓院家にまでくると、見張りの死神たちを蹴り飛ばして、四楓院家の当主の前にくる。

「一護!?貴様、どうやってここに・・・・」

ルキアが吃驚していた。

ルキアは白無垢姿で、まさに四楓院家の当主に嫁ぐ瞬間だった。

「四楓院夕四郎咲宗、悪いけどルキアは俺のものだ」

四楓院家の当主は驚くことなく、こうなることが分かっていたようで、ルキアの方を向いた。

「朽木ルキアさん。あなたを慕う死神代行がこう言っているのです。僕は、僕を想ってくれない妻などいりません。この結婚話、なかったことにしていただきます」

「四楓院夕四郎咲宗殿!」

「どうか・・・黒崎一護と、お幸せに・・・」

「一護・・・どうしてきたのだ・・・・」

ルキアはボロボロと泣きだした。

「愛しいお前が逃げるなら、追いかけて捕まえるだけだ」

「一護!」

「ルキア!」

ルキアは、白無垢姿であった。

「これって、略奪婚なのか?」

「貴様、ばか!」

朽木白哉は静かに怒っていた。

だが、義妹が一護と離れられないことを確認すると、長い溜息をついた。

「黒崎一護。ルキアの結婚を台無しにしたのだ。責任はとってもらう」

「ああ、いいぜ。この命をかける!」

「一護!」

ルキアに、心配するなと、視線を送る。

「散れ、千本桜・・・・・」

千の刃を、斬月で弾く。

「やめてください、兄様、一護!」

「ルキア、お前はどいていろ」

「兄様!」

一護と白哉は何度も切り結びあった。

お互い、細かい傷がいっぱいできて血を流す。

「兄は・・・・どうしても、我が義妹、ルキアを攫って行くのだな?」

「ああ」

白哉は、剣を収めた。

一護も、斬月をしまう。

「ルキア・・・・黒崎一護を想う気持ちに、変わりはないか?」

「ありません、兄様」

「そうか・・・・黒崎一護。4大貴族同士の婚姻を無駄にしたのだ。ルキアともども、おって沙汰を言い渡す」

「兄様!」

ルキアが目を見開く。

「黒崎一護、ルキア、一度朽木家に来い」

言われた通りに朽木家にいくと、一護もルキアも湯あみをさせられて、虚の血にまみれていた一護の服は洗われた。その血をがついた白無垢を着ていたルキアも、普通の恰好に戻った。

「さて、黒崎一護。私の大切な義妹であるルキアを、奪いにくるまで、愛しているのだな?」

「ああ」

「ルキア、正直に話せ。この黒崎一護を、愛しているのだな?」

「はい、兄様」

白哉は、天を仰いだ。

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好きから始まる物語 初めての夜を共に

「ルキア、もう大丈夫か?」

「ああ、もうなんともない」

ルキアが傷を負ってから半月が経っていた。

最初の頃は大学もバイトも欠席していたが、ルキアが平気そうなので、一護は日常生活に溶け込んでいった。

「今日は、白玉餡蜜作ってやるからな」

「やった!」

そんなことで喜ぶルキアが可愛かった。


夜になり、たつきがやってきた。

「一護、織姫を助けけて!あんたたちの力なら、織姫を刑務所から出すこともできるでしょ!?」

たつき言葉に、一護は首を横に振った。

「もう無理だ、たつき。井上は、自分で罪を犯した。盾舜六花で少し怪我を負わせたくらいなら、謝罪させてなんとかなったが、サバイバルナイフで胸を一突きだぜ。明確な殺意があったし、俺は井上を許せない。もう少しで、ルキアを失うところだった」

「いちごおおおおお・・・・・・・・」

たつきは泣いていた。

たつきを追い出す。

「井上はそうか・・・刑務所に・・・・・」

「助けようなんて思うなよ、ルキア!」

「流石に殺されかけたのだ。そこまで甘くない。たとえ刑務所から出しても、きっとまた私の命を狙う。私が一護、貴様の傍にいる限り」

「井上はもう、10年以上は外に出れない」

「哀れだな・・・恋に狂ったか。私は、例え井上の位置にいても、貴様が他の女とできてしまっても、それを祝福する。でも、井上にはそれができなかったのだな。確かに、尸魂界の私が死んでも罪にはならぬ。だが、それでは意味がない。だから、浦原が記憶置換で、別の人間の女を刺したということにした」

井上は、もう人生そのものが終わった。

「ルキア・・・・胸の傷、見せてくれ」

ルキアが、パジャマのボタンを外して、胸の傷跡を見せてくれた。

酷い傷跡が残っていた。

「これ、4番隊の回道でも治せないのか?」

「そのようだ。井上の特殊な
盾舜六花の力が混ざっていたのだろう。この傷後は、一生残る」

「ごめんな、ルキア。守り切れなくてごめんな・・・・・」

「貴様が謝ることはない。全ての元凶は私にある。私が現世に訪れ、貴様の心をもっていった。貴様を奪われたことを納得できずに、井上は私に手をかけた。
盾舜六花の力ならば、ねじ伏せて言い聞かせることもできた。だが、庇った貴様が血を流すのも厭わず、サバイバルナイフで襲ってきた・・・・私の鬼道を防いで。貴様を手に入れるためならば、私を消しさろうとしていた。私は我慢ならなかった。私を庇って傷を負った貴様を見ても平然としている井上が」

「ルキア・・・・好きだ」

パジャマのボタンを外した格好のまま、押し倒された。

「あ、一護・・・・・」

胸の傷跡に、口づけられた。

好きだと告白して、3か月が経とうとしていた。

どちらともなしに、唇が重なった。

「一護・・・・好きだ。愛している」

「俺もルキア、お前だけを愛してる。好きだ」

ルキアのパジャマを脱がせて、下着も脱がせた。

「ああっ!このよな姿、見るな・・・・・」

「すげー綺麗だ」

「私だけなんてずるい・・・一護、貴様も裸になれ」

ほどよく筋肉がついた、鍛え上げられた体が露わになる。

「いちご・・・・・・」

何度も口づけあった。

「ふあ・・・・・」

深いディープキスを繰り返すと、アメジストの瞳はとろけて、とろんとした瞳でこっちを見てきた。

「一護。貴様は、私のものだ・・・・・・」

「ああ。俺のはお前のものだ」

醜い傷跡に何度も口づけして、ささやかな膨らみしかもたぬ胸を手で触る。

「こんな胸・・・・井上の、豊満な胸に比べれば・・・・」

「俺は、巨乳より貧乳派だから」

「恥ずかしいことを・・・・・」

ルキアの胸をもみしだき、先端を口に含むと、ルキアは一護の下で身じろいだ。

「ああ・・・・・」

「もっと声、聞かせて?」

すでに潤い、濡れてしまっている秘所に指を差し入れる。

「あああ!」

ぐっと、秘所の天井付近をこすりあげて、指を折りまげてやると、ルキアはいってしまった。

「あああ!」

「続けても、大丈夫か?」

「あ、来い、一護・・・・・・」

何度か指で秘所の前立腺を刺激し、陰核をつまみあげると、ルキアは啼いた。

「ああ、いい・・・・・・」

ゆっくりと、ルキアの中に一護は己を埋めた。

ぶちぶちと音を立てて、処女膜が破れる。

血が、太ももを伝った。

「あ・・・・・」

「俺のものだ、ルキア」

「ああ!」

貫いて揺さぶると、ルキアは一護の背中に手を回した。

「ひう!」

中を抉られて、息が止まった。

「ルキア、ちゃんと息して」

「あ・・・・いちごおお」

快感で泣きじゃくるルキアの頭をなでて、突き上げると、キュウ中が締まった。

一護は、ルキアの中に欲望を吐き出した。

「あと1回してもいいか?」

「好きにせよ・・・・やっと、本当に結ばれたのだ」

一度ルキアの中から引きぬいて、ティッシュをとって流れ落ちた血をふき取った、

「本当に、始めだったんだな」

「たわけ!私が操を差し出すなど・・例え相手が恋次であろうが、あり得ぬ!」

「俺が、始めてで最後の相手だ」

「ああん」

再びルキアの中に侵入した。

ルキアの中は、一度交わったせいで、スムーズに入ることができた。

「あ、あ、あ・・・・」

一護が与える振動に、ルキアが声を漏らす。

「ああ・・・一護・・・・」

ルキアの流す涙を、唇で吸い取る。

「一緒にいこう、ルキア」

「ひあああああ!」

前立腺をすりあげていく一護の動きに、耐えきれなくなった体が逃げるようずり上がる。

それを制して、一護はルキアの子宮の中ので白濁した液体を迸らせた。

「ひん・・・・・」

びくりと、ルキアの体が痙攣する。

びくんびくんと、何度もいくルキアの体を抱き締めた。

「俺だけのものだ、ルキア」

「あああっ、いちごおおお」

ルキアは、がくりと意識を失った。

「ごめんな、ルキア。初めてなのに・・・・」

ルキアの体を濡れたタオルでふいて清めて、服を着せて一緒のベッドで丸くなって眠った。

ルキアの細い体を抱き締める。

醜い胸の傷跡を指で辿りながら、自分の方に抱き寄せて眠った。


「ん・・・いちご?」

「目、覚めたかルキア」

「腹がすいた・・・・」

今日は、大学が休みだった。珍しいことに、一護のバイトも休みだった。

「今日はデートしようぜ」

「腰が痛いのだが・・・・」

「若いから大丈夫!」

「そういう問題なのか?」

一護が起き出して、スクランブルエッグを作ってくれた。

トーストをかじりながら、ルキアは幸せそうな笑みを零した。

「どうしたんよ?」

「貴様と、また一歩未来を踏み出した・・・・・」

一護も微笑む。

「お弁当作っていくから、動物園にでもいこう」

ああ、幸せだ。

私は、こんなに幸せでいいのであろうか?

ルキアは黙っていた。

尸魂界に戻る時間が迫っていることを。

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好きから始まる物語 狂った歯車

その日から、一護はルキアと同棲を始めた。

井上の荷物は全部まとめて、井上の家の前に置いてきた。

井上とは、もう終わった。

スマホで電話をかけても、井上は出てこなかった。井上は、そのまま大学にも姿を現さず、心配した一護が一度家を訪ねても、留守のようだった。

「今日は休みだけどラーメン家のバイトがあるから。家で大人しく待っててくれ」

「何時に終わるのだ?」

「夜の8時だ」

「では、7時頃に迎えにいく。ついでに、貴様の作ったラーメンも食べてやろう」

「おう、来いよ。空座町の駅の隣にある」

地図を渡した。

ルキアが現世にきて、2か月が経とうとしていた。

井上は大学を辞めた。

一護は心が痛んだが、どうしようもなかった。

井上は、今は田舎で暮らしてているという。はっきりと別れを承諾してくれたわけではないが、もう井上とは終わった。

「ルキア、かわいい・・・・」

ルキアを抱き締めると、腕の中でルキアはくすぐったそうにしていた。

「くすぐったいぞ、一護」

「おっと、バイトに遅れる。じゃあな、ルキア。夜の7時に、俺のバイト先で」

「ああ。頑張れよ、一護」

一護は、4回生のためが授業がゼミと少しの教科だけで、大学に行くのは週に3回だった。あとの残りの日にはバイトを入れていた。

ルキアと、もっと時間を一緒に過ごしたかったが、一護にも生活がある。

ルキアの分まで食費や光熱費が増えたことは痛かったが、その分はルキアが朽木家からもってきた大金で賄えた。

一護がバイトしなくても生きていけるようにすると言われたが、申し訳なさ過ぎて断った。

ルキアと・・・・いつか、尸魂界に戻るかもしれないが、ルキアと過ごしていく1日1日が大切で、宝物のようだった。

「井上・・・・大丈夫かな」

時折、大学を辞めてしまった井上のことが気になったが、もう過ぎてしまったことだ。

井上の友人・・・特にたつきからが「お前、最低のくず男だ」と言われて殴られた。

本当のことなので、そのまま殴られた。

井上は、一度だけ姿を見せてくれた。

たつきが一護を殴るのを

「止めて!黒崎君が悪んじゃないの!全部全部、朽木さんのせいなの!」

といって止めた。

「ルキアは悪くねーよ。悪いのは俺だ、井上」

「ううん、黒崎君は朽木さんに騙されてるだけ。きっと何か、薬でもつかったんでしょ、朽木さん。涅隊長あたりから、何かもらったに決まってる」

「井上・・・・・」

どんどん醜くくなる井上を見ていられなくて。

「お別れだ」

最後に、キスをして、井上と別れた。

「ずっと、待ってるよ、黒崎君。どうせ朽木さんはいつか尸魂界に帰るんだから。そしたら、迎えにきてね」

井上は、最後まで一護の話を聞かず、井上にとっては別れは一時的なものになっていた。


「あーそろそろ7時か」

客が入ってくのも少なくなってきた。

ふと、ルキアの姿を見つけて、微笑む。

「ルキア!」

「む、一護・・・・貴様、ラーメン店の従業員の姿も似合っているな。かっこいいぞ」

「なんだ、一護の彼女か?」

店長が、ルキアを見た。

「ああ、そう店長」

「井上って子はどうしたんだ?」

「別れた」

「別れて、こんな綺麗な子と交際か。若いっていいな」

「店長まだ30代じゃないですか、十分若いです」

一護の言葉に機嫌をよくしたのか、店長はルキアの飯をおごってくれた、

「ふーん、朽木ルキアちゃんっていうのか。恰好からして、どこかのいいとこのお嬢さんでしょ」

ルキアは否定しなかった。

ワンピース姿ではあるが、どこか気品があって、やっぱり4大貴族の朽木家の姫君なんだなと、思った。

「ルキア、俺が作ったんだ。絶対おいしいから、残すなよ」

ルキアに、豚骨ラーメンと炒飯を出した。

ルキアは、恐る恐るはしを動かしたのだが、すぐに止まらなくなった。

「お、おかわり・・・・」

どんだけ食べるだろ思いつつも、今度は味噌ラーメンを単品で出してやると、それも完食してしまった。

「ルキアちゃん、いい食べっぷりだね」」

「美味しかったぞ、一護!食べすぎた・・・・・」

満腹で苦しそうなルキアに苦笑する。

その日から、一護がバイトのある日は、終わる8時まで店にいて、ラーメンを食べていくようになった。

「貴様の作ったラーメンは、朽木家の料理人にでも驚くだろうほどに美味かった」

「おう、ありがとな」

「これなら、毎日食べてもいい」

「太るなよ?」

「たわけ、ちゃんと運動もしておるし、食べても太らぬ体質なのだ!」

その日の夜も、手を繋いで帰った。

家に帰る途中、黒づくめの姿の、女らしき影が、一護とルキアの跡をつけているのに、2人とも気づいていた。

「貴様、何者だ!」

「黒崎君。あんまり襲いから、迎えにきたよ♪」

「な、井上!?」

その手には、キラリと光るサバイバルナイフがあった。

「危ない、ルキア!」

ルキアを庇うと、一護の腕に傷ができた。

「あは、黒崎君、ダニは駆除しなきゃ」

「破道の4、白雷!」

 「三天結盾、私は拒絶する!」

ばちっと、ルキアの放った鬼道を塞がれた。

「あはははは、朽木さん死んで?・・・・・」

グサリと。

血を流すルキア。

その胸には、井上が持っていたサバイバルナイフが光っていた。

「ルキアーーーーーーーー!」

「あはははは、私、治せるけど治してあげない。死んで?朽木さん♪」

すぐに救急車が呼ばれた。

目撃していた人が多数いて、井上は殺人未遂の罪で捕まった。

ルキアは、自分に回道をかけたが傷は深く、手術が行われた。無事に成功し、集中治療室に運び込まれ、ルキアが井上に刺されたということは浦原の耳にまで届き、4番隊から山田花太郎が治療のために派遣された。

山田花太郎の回道の腕は確かで、ルキアは意識を取り戻した。

「大丈夫かルキア!」

記憶置換で、ルキアが入院していたことを皆に忘れてもらった。

「ああ、なんとか・・・・」

完全ではないが、ほとんど傷は癒えていた。

「後は、自然治癒に任せるしかありません」

「花太郎、ほんとにありがとう」

「いえいえ、ルキアさんのためなら、この身が砕けても回道しに来ます!」

山田花太郎は、尸魂界に戻っていった。

ルキアは、一護の部屋に帰宅して、療養することになった。

「まさか、井上があんな行為に出るなんて・・・・」

井上は、10代ではない。

しかるべき法的処置がほどこされるであろう。

浦原も、流石は今回ばかりはどうしようもなく、ルキアが相手なので記憶置換で別人を刺したということにして、現世の法に任せた。

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好きから始まる物語 まるで雪解け水

ルキアを、自分の家に案内した。

一護は、大学生になってから一人暮らしを始めていた。

そう広くもない、一人暮らし用のアパート。

うなぎ屋をやめて、普通のラーメン店でバイトをしていて、家賃は無理だがせめて食費くらいは自分で出せるようにしていた。大学の費用やアパート代は、父親がもってくれた。

「成人しても仕事につくまでは俺の子供だ」

そう言って、学費の面倒までみてくれるので、甘えていた。

いつか卒業して金が溜まったら、学費を返還する予定だった。

「まぁあがれよ。何もない場所だけど」

「これは・・・・井上のものか」

クローゼットにある女ものの衣服を見て、ルキアが溜息を零す。

「いいのだぞ、一護。無理をしなくても。貴様は、井上が好きなのであろう?」

「確かにそれなりに好きだけど・・・もともと、ルキアを忘れるために付き合っていたんだ。ルキアと井上、どっちかをとれと言われたら、俺はルキア、お前をとる」

「一護・・・・・・」

「夕飯の買い出しにいこうぜ。白玉餡蜜作ってやるよ」

「ああ、行こう」

せめて今だけは、安らかな時間を享受しよう。そう思うルキアだった。

スーパーに行って夕飯の買い出しをした帰り道、偶然であるが井上と会った。

仲睦まじそうに手を繋いで歩く一護とルキアの姿に、涙をポロポロと零した。

「黒崎君、いやだよ!私を捨てないで!」

「井上・・・・・」

一護は、苦しそうな顔をしていた。

「なんでもするから!私を捨てないで!」

「ごめん、井上。俺、やっぱりルキアが好きなんだ。別れよう」

「別れない!私、絶対に黒崎君と別れない!」

「井上!」

「朽木さんも朽木さんよ!今更現れて、横から私の黒崎君を盗っていくなんて!このドロボーー!」

井上の言葉に、一護の顔が歪む。

「井上・・・・お前、そんな酷い奴だったのか」

「ち、違うの黒崎君!これが気が動転してて!」

「もういい。悪いが、お前との婚約もなかったことにしてくれ。俺は、ルキアと共に生きる」

「いやああああああああ!」

井上は、泣き叫びながら去ってしまった。半狂乱であった。

「井上を追わずによいのか!?」

「今追っても、事態は最悪な展開にしかならねーよ。それより時間を置いて、別れるように説得する」

「一護、私は・・・・」

「言っとくがルキア、身を引こうとか思うなよ。もしも尸魂界に戻ったら、俺はどんな手段をとってでも、お前に会いに行く」

「一護・・・・・好きだ」

「俺も好きだ」

帰宅して、一護は夕飯を作ってくれた。

カレーだった。ルキアの好きなメニューだ。白玉餡蜜をデザートして出してくれた。

その味を堪能する。

「やはり、貴様の作ったご飯はうまい」

「おかわりあるぞ?もっと食うか?」

「ああ、頼む」

白玉餡蜜のお代わりをあげながら、一護は言う。

「ルキアが帰ってくるとは思ってなかったんだ。だから、井上と婚約してた」

ルキアの顔が大きく歪む。

「でも、ルキアは俺のこと、忘れてなかった。俺たちの時間は高校3年の時に凍り付いて、やっと雪解け水になってきたんだ」

ルキアを抱き締めた。

一護からは、お日様の匂いがした。

「一護・・・・私は、どうしようもないくらいに、貴様が好きだ」

「それは俺もだぜ」

その日は、昔のように同じベッドの上で、丸くなって眠った。

腕の中のルキアの体は細くて小さい。

自分の方に抱き寄せた。

「なんなのだ、一護」

「俺のものだ、ルキア。何もかも」

「ふふ、くすぐったいぞ」

「もう、離してやらねぇ。俺がお前が大好きなんだ、ルキア」

「一護・・・・」

自然と、唇が重なった。

初めてのキスは、味がしなかったがなんとなく甘い気がした。


朝になり、一護は大学に行く準備をしていた。4回生になったばかりで、キャンバスには桜の花が咲き乱れいた。

一緒についてきていたルキアは、桜を見上げた。

「綺麗だな」

「ああ。高校の卒業式じゃ見れなかったしな」

「桜を見ていると、兄様を思い出す」

「そういや、白哉は元気か?恋次は?」

「どちらも元気だ。病気だったことを知り、恋次には散々好きだと言われた。でも、その気にはなれなかったのだ。私の心の中には、一護、貴様が住んでいたから」

「ルキア・・・・・・」

抱き締める。

細い体は、相変わらず細かった。

「よ、一護じゃねーか」

「よ、お前か」

一護の友人の一人だった。

「なんだよ、お前すっげー綺麗な子連れてるじゃねぇか。井上はどうしたんだ?」

「別れた。正確には別れようとしている」

「ええ!あのお前べったりの井上を振るなんて、お前鬼畜だな!婚約までしてたんだろう?」

「それでも、もっと大切な存在に巡りあったんだ」

「その子か?」

ルキアは、一護の後ろに隠れていた。

「今日、井上休みだよ」

「ああ・・・俺のせいだ」

「電話でさ。殺したい相手がいるって言ってたぜ」

「井上が?」

「ああ」

「そうか・・・・・」

きっと、一護を殺したいのだろう。

そう思っていた。

「紹介する、朽木ルキア。俺の大切な人だ」

「うわ、お前ひでぇな。まじであの井上のを振るつもりなのか。じゃあ、俺が井上に好きだって言っても、止めないよな?」

「ああ」

おっしゃと、友人はガッツポーズをとった。

できることなら、このまま穏便に井上と別れたかった。

そして、新しい恋人と生活をスタートしてほしかった。

一護は知らなかった。井上が、ルキアに殺意を抱いていることを。


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好きから始まる物語 ルキアとの再会

「またか・・・・」

ルキアは、一護のベッドで眠っていた。

そのルキアを腕の中で抱き締める形で、一護も眠った。

高校卒業まであと4か月。

それが、一護に残された時間だった。

一護は、ルキアのことが好きだった。

でも、ルキアはそういうわけじゃなくて、一護をただの大切な仲間として見ていた。

好きだと、告げたかった。だが、ルキアの傍にはすでに恋次がいた。

「なぁ、お前と恋次ってできてるのか?」

「な、たわけ!そのようなものではない。恋次は家族だ」

ルキアは頬を朱くしたが、恋次とできているわけでもなさそうだった。

これって、もしかしたら脈あるんじゃね?

そう思って、冗談のように囁いてみた。

「俺がお前のこと・・・その、異性をとして見ているかもしれないと言ったらどうする?」

「たわけ!そんな冗談は、顔だけにしろ」

ただの冗談として取られた。

ああ、脈なんてなさそう。

好きといっても、断られると思った。だから、思いをひた隠しにしていた。これ以上好きにならないようにと言い聞かせながら、高校生活を送った。

毎日、一緒に登下校を繰り返した。

一緒の部屋で眠り、一緒の家で生活した。

たまに、恋次が遊びにきた。

「おう、一護、元気にしてるか?」

「よお、恋次。お前こそ元気か?」

恋次に、相談した。

「なぁ。恋次はルキアのこと好きなんだろ」

恋次は真っ赤になったが、否定しなかった。

「そりゃ、ずっと一緒にいるしな。でも、告白したけど、家族としてしか見られないって、断られちまった」

「恋次でも無理なのか・・・・・」

「なんだ、お前ルキアに告白したいのか?」

「ああ」

頷くと、恋次は渋い顔をした。

「どうだろうなぁ。お前のこと、特別のように見てるきもするけど」

「でも、この前「俺がお前のこと・・・その、異性をとして見ているかもしれないと言ったらどうする?」って聞いたら、冗談は顔だけにしろって言われた」

「くーーーー、ルキアの奴きついな。でも、ルキアはお前のこと好きだと思っていたんだけどなぁ」

「ルキアの心の中には、誰も住んでいないのかな」

「どうだろうな。俺もしつこく何度かアプローチしたが、全部無視された」

ルキア。朽木ルキア。

例え拒絶されても、お前のことが好きだ。

でも、断られるのが怖くて、ルキアと同じ場所にいながら、結局好きだと言えぬまま。日々を過ごしていった。、



高校を卒業して、ルキアは尸魂界に帰った。

一護は、井上と同じ大学に進んだ。茶虎は別の大学に通いながら、プロボクサーとして、石田は医師の卵として難関大学の医学部に進んだ。

ルキアは、ちっとも顔を見せてくれなかった。伝令神機のメルアドの交換先さえ教えてくれなかった。

一護は諦めていた。

ルキアは、死神。高値の花。

ルキアと別れて2か月が経つ頃、ずっと前から好きだと伝えられて、井上と付き合いだした。

ルキアのことを好きだと、井上は知っていた。

ただ、それでもいいと、井上は言ってくれた。

井上と付き合い、ルキアのことを忘れようとした。つきあって1年目、一護は井上を抱いた。どんなに井上を抱いても、ルキアのことを忘れられなかった。

「ごめんな、井上。俺、まだルキアのこと、忘れられそうにない」

「うん、それでもいいの。黒崎君が私の傍にいてくれるなら・・・・・・私、どんなことだってするよ」

井上はかわいかった。

一護のためならなんでもしてくれた。


「井上・・・・・・いつか結婚しよう」

もう、ルキアのことは忘れよう。

そう思った。

井上は、その言葉に凄く喜んでくれた。

貯金をはたいて、婚約指輪を買った。

アメジストをあしらったもので、まるでルキアの瞳のようだった。

「しっかりしろよ俺・・・・ルキアのことは忘れちまえ」

何度も自分に言い聞かせた。

指輪を贈ると、井上は泣いていた。

アメジストがルキアの瞳の色だから買ったなんて、毛ほどにも知らない様子だった。

ああ。

ルキア、ルキア、ルキア。

もう一度会いたい。声を聞きたい。抱きしめたい、

でも、かなわぬ願い。

ルキアが尸魂界に戻り、現世を去って3年が経とうとしていた。井上との交際は順調で、父親と妹たちに、婚約していることを教えた。

「え、ルキアちゃんは?」

夏梨がそんなことを言った。

一護は眉を顰めて言った。

「俺とルキアはそんなんじゃねーよ」

もう、戻ってこないのだ、あの愛しいアメジストは。



それから3日後のこことだった。

浦原に頼まれて、浦原商店にきていた。

「いやー、黒崎サンすみませんね。どうしてもあなたに会いたいという人がいるものですから」

「もったいつけるなよ」

「朽木サーン」

「え」

一護は固まった。

現れたのはルキアだった。3年前と何一つ変わらぬ姿。

「一護・・・・元気にしておったか」

心を鬼にする。

「ルキア、何の用だよ」

「ふ・・・3年はあっとう間のようで長いか。あの頃の私は、恋愛をすれば発病する特殊なウィルスに感染していた。最近、やっと治ったのだ」

ルキア、ルキア、ルキア。

恋愛をすれば発病する特殊なウィルス?

じゃあ、俺のことを?

「貴様が・・・・・ずっと好きだった、一護」

今更だ。

何す勝手なこと言ってるんだよ。

俺には井上がいる。

「だが、一護は井上のことが好きなようだし。だた、会って想いを告げておきたかったのだ。恋次の想いもあるし、私は身を引くよ。さらばだ、一護。ああ、メルアドを教えておく。会いにくるとこは滅多にないだろうが、せめて友人として傍にさせてくれ」

ルキアを抱き締めていた。

「一護?」

「遅いんだよバカ野郎!どれだけ待たせれば気が済むんんだよ!俺は・・・・昔からずっと、お前のことが好きだった。今でも好きなんだよ!」

こう答えると、ルキアはアメジストの瞳から涙をたくさん零した。

「そうか・・・そうか・・・私たちの心は、通じ合っておったのだな・・・・」

もう、ルキアしか見えない。

井上のことなんて、どうでもよくなっていた。





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院生時代の部屋 山じいの思い

今日は、尸魂界での虚退治の訓練日だった。

浮竹と京楽はペアを組んだ。そして、教師でも手がたたない強力な虚をなんとかしろと言われた。

念のため、6番隊の隊長朽木銀嶺がついていた。山本総隊長も見ていた。

浮竹と京楽は、違いに斬魄刀を始解させて、強力な虚に切りかかった。

30分ほど格闘していただろうか。

虚の放った攻撃を、浮竹が双魚の理で右の剣で吸い取り、左の剣ではじき返す。一瞬の隙をついて、京楽が花天狂骨で虚を真っ二つにした。浮竹が、さらに駒切にしていく。

「見事じゃ、春水、十四郎。たった3年で、よくここまで成長した。まだ斬魄刀を始解出来ぬ者もおるのに、よう己の斬魄刀と心を通わせあった。お主らなら、いずれ卍解を習得し、隊長にまで登りつめることであろう」

「やめてよ山じい。まだ3回生だよ?もうすぐ4回生になるけど」

この冬が終わり、桜の花が咲く季節、浮竹と京楽は4回生になる。

「元柳斎先生、ありがとうございます。いつか絶対に卍解を習得し、隊長になってみせます」

「それより・・・・春水、お主、十四郎に懸想しているとは本当か」

「あれ、ばれっちゃった?」

「学院でも有名じゃ。十四郎、春水を切りすてるつもりはないのか?」

「それは、ありません」

京楽は喜んだ。

自分の気持ちを、踏みにじることは決してしないと、尊敬している山じいに伝えたのだ。

「いつか時がきたら、自分で解決します、元柳斎先生」

「ふむ・・・教え子が、同じ性別でできるなど、歓迎できたものではないが、お主らのことじゃ。禁じればそれを破るのであろう」

「当たり前でしょ、山じい。山じいといえ、恋愛にまで口を出す権利はないよ」

「十四郎のほうは、まだ春水とできることを承諾しているわけではないのじゃろう。それでも、干渉はいらぬというのだな、十四郎」

「はい、元柳斎先生」

「あいわかった。お主らが婚礼し、子を見るのを楽しみにしておったのじゃが、このままではそれもかわなぬか」

「ごめん、山じい」

「すみません、元柳斎先生」

「まぁよい。お互いを大切にするのじゃぞ、春水、十四郎」

「山じいもこう言ってることだし、今日にでも結ばれよう、浮竹!」

そう言い出した京楽の鳩尾に蹴りをいれて、叫ぶ。

「調子に乗るな!あ、元柳斎先生すみません。お見苦しいところを見せました」

「もうよい」

山本総隊長は、朽木銀嶺を連れて、去っていった。

「ねぇ、どうして山じいはいきなり僕らの様子見に来たりしたのかな」

「元柳斎先生なりの、お考えがあるだろう」

真実は違った。

恋愛に現を抜かし、鍛錬を怠っているようであれば、二人の仲を裂こうとしていたのだ、山本総隊長は。

浮竹に、妻を早々に娶らせるつもりだった。京楽は、もう浮竹しか見えていないようだから、まだ正常な浮竹に妻を娶らせて、京楽のことをただの友人として見るように指導しようと思っていた。

だが、互いを庇いあう二人を見て、考えを改めた。

恋愛を強制する権利は、山本総隊長にもない。

「十四郎はああ言っておったが、もう春水の想いを受け入れる覚悟ができている顔じゃった・・・・」

若いな、と思うと同時に、惜しいと思った。

きっと、子ができればその力、受け継がれていくだろうに。

「のう、銀嶺。お主は、もしも我が子が同じ性別でできてしまったらどうするのじゃ。仲を引き裂くか、歓迎するか、黙認するか」

「山本総隊長、もしも私の子がそのようになれば、黙認いたしましょうぞ。子は、一族から養子をもらい、それに跡を継がせましょう」

「そうか・・・・」

山本総隊長の心も決まったようだった。

このまま、自然の流れにあの二人を任せることにすると。


「ねぇねぇ、山じいもああいってたんだし、僕らもできようよ」

「しつこい!」

「おぷ!」

寮の自室で、しつこい京楽の顔に裏拳を入れて黙らさせた。

「はぁ・・・」

山本総隊長に、自分でいずれ問題を解決すると言ったが、干渉はいらないと断言してしまった。つまり、京楽とできることを黙認してくれといったよなものだった。

「十四郎、春水を切りすてるつもりはないのか?」

「ありません」

あのやりとりを、その記憶を、その場にいた全ての者から消してしまいたかった。特に京楽に。

「はぁ・・・・・」

その日、浮竹は何度も溜息をついた。

消灯の時間になって、おやすみのキスを京楽にすると、吸い付いて離れてなかったので、頭突きをかまして気絶させた。

「はぁ・・・・」

しばらくの間、京楽は山じいの言葉通りできようとうるさかったが、1週間ほどすると、いつものように浮竹のパンツを頭に被るただの変態に成り下がっていた。

山じいの言葉通りになろうと、真剣に迫られて、貞操の危機に陥ったこと実に3回。

最後の砦であるパンツは死守したが、パンツの上から直接触れかけられて焦った。

「それ以上すると、キスもハグもなしにするぞ!」

そう脅すと、大人しくなった。

本当に、京楽は厄介だ。

隙をみせるわけにはいかないと分かっていたが、吐血した。

「ごほっごほっ・・・・」

「大丈夫、浮竹!?」

「う・・・・薬を・・・・」

ごぽりと血の塊を吐くと、少し楽になった。

京楽は、服が浮竹の吐いた血で汚れるのも構わず、医務室に送ってくれた。

寮の自室から学院の医務室まで距離をあるだろうに、無理に習得したばかりの瞬歩を使ってくれた。

もってきていた薬を飲まされ、医務室で回道の治療を受けて、発作は静かになった。

「浮竹、苦しいならいってね」

「ん・・・・」

ズキンズキンと肺が痛んだ。

「鎮痛剤を・・・・・」

京楽の手で、薬として与えられえている、発作の時のための鎮痛剤を打たれた。

「傍に・・・・いてくれ・・・・」

「うん、ちゃんと傍にいるよ」

肺の病で、一人きりになるのはとても寂しいのだ。

京楽は、浮竹が眠っても、その傍を離れなかった。

寮の自室に戻された。意識のない浮竹を京楽が運んだ。

寮の自室でも、京楽は浮竹と同じベッドで眠り、傍にいた。

血で汚れた服は、京楽が着換えさせてくれた。

その気になれば、襲える隙などいくらでもあるのだ。でも、京楽は絶対に熱をだしたり、吐血して意識のない浮竹に手を出さない。

京楽は確かに変態でどうしようもないが、とても優しい。その優しさについ甘えてしまう。好きだと毎日のように囁かれて、頷いてしまいそうになる自分を叱咤する。

変態京楽とできるのは御免だった。

変態を辞めたら、京楽を受け入れていいかもしれないと思いながら、変態が治るようにと思いながらも、自分のためにこの変態ぶりが続きますようにと、矛盾の思いを抱える浮竹だった。

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院生時代の部屋 ご褒美

ドンドコドンドコ。

そんな音楽が聞こてきた。

この前配られた、伝令神機という機械から音はでていた。

「ん・・・うるさい・・・・」

ドンドコドンドコ。

「うるさい!」

枕を投げつけた。

でも、音楽は止まらず、仕方なく浮竹は起きた。まだ、朝の6時半だった。

いつも8時前まで寝ているので、早起きになった。

音楽が鳴っているほうを見る。

京楽が踊っていた。頭には浮竹のパンツを被り、でもそれだけだった。

あとはまっぱのフルチンだった。

「またか・・・・」

音楽に合わせて、京楽は自分のナニを隠したり、見せたりしていた。

「おい、変態!」

京楽は一心不乱に踊っていた。

「好きだ、京楽!」

「何、浮竹!」

京楽のどあっぷがきた。

「パンツをまずははけ」

「分かった」

頭に被っていた浮竹のパンツをはいた。

それでもまだ、裸でいられるよりはましかと、浮竹は思った。

「こんな朝早くから、お前はまっぱのフルチンでなんの踊りを踊っているんだ」

「あそこが凄くなる踊り。ネットで見つけたんだ。好きな人を満足させるだけの回数をこなせて、硬くて大きくなって、好きな相手はイチコロだっていう」

「ああ、確かにイチコロだ」

「浮竹!?僕の想いに答えてくれる気になったのかい!?」

「お前の汚いナニを朝から見せられて、眠気がイチコロに飛んだわ!」

浮竹は、京楽の大切に踊りを踊ってまで大きくしたいと思っている股間を思いっきり蹴った。

「オウ・・・・オウオウオウ・・・・・」

京楽は股間を抑えてその場に頽れた。

「ふん!」

眠気は完全に覚めてしまった。

仕方ないので、伝令神機を使って尸魂界ネットワークにアクセスする。

「今日のあなたは、朝から恋人に迫られるでしょう。ラッキーカラーは赤」

京楽ははいている、浮竹のパンツも赤だった。

「オウオウ・・・浮竹、占い通りだね。恋人の僕に迫られて・・・僕の浮竹のパンツも赤だし」

「いつからお前の恋人になった!」

顔面を蹴ると、京楽は鼻血を出して白目をむいた。

「はぁ・・・・・」

朝から、濃ゆい一日だった。

登校すると、ささっとみんなが道を開ける。

何事かと背後を見れば、鼻血にそまったティッシュを鼻につめて、浮竹の赤いパンツを頭にかぶり、はぁはぁと荒い息の京楽がいた。

「京楽・・・学院では、パンツを頭に被るのはやめろ」

近くにいる浮竹まで、同じように見られてしまう気がして、浮竹は嫌がった。

「分かったよ」

鞄の中に、パンツを大切そうにしまう。

「ああ、浮竹は今日もかわいいなぁ」

京楽はにこにこしていた。

変態行為をしなければ、常に傍に置いていてもいいのだが。まぁ、変態でも京楽は常に浮竹の傍にいた。

今日が席替えの日だった。

京楽とは離れていたので、このまま離れていることを祈った。くじをひき、番号順に席につく。

京楽は、浮竹の隣だった。

くらりと眩暈を起こした。

「お前の隣だと・・・・今日は、とことんついてない」

これから、最低1か月は席はそのままなのだ。

授業がはじまる。鬼道の詠唱を暗記する授業だった。

(かわいい、浮竹)

そう、紙を投げてよこされた。

(授業に集中しろ)

(浮竹に集中してる)

(お前・・・教科書に隠して何を見ているんだ)

何か、鬼道の詠唱がかかれてある教科書に隠して、何か薄い本のようなものを見ている京楽のほうをむいて、こっそりとのぞき見る。

衆道の、エロ本だった。しかも、名前を全部浮竹と京楽に修正されていた。

「先生、俺と京楽、気分が悪いので少し医務室に行ってきます」

鬼道の詠唱は二人とも完璧に近いので、教師はその言葉を信じたわけではないが、許可をくれた。

京楽をひっぱって、廊下まででる。

「お前はーーーー!」

京楽が読んでいた衆道の本をびりびりにして破り捨てた。

「ああ、僕のオアシスが!」

浮竹は、院生の服の胸の部分をはだけさせて、こういう。、

「本物の俺のほうがいいだろう?」

ごくりと、京楽が唾を飲み込む。

「ちゃんとしたら、ご褒美あげるから、あんな本を授業中に読むの止めろ。教師に見つかったら没収されるし、俺と京楽の変な噂がまたたつ」

「僕は、浮竹とたつ噂ならなんでもいいんだけど」

「俺が嫌なんだ」

二人はできているようでできていないとして通っているが、最近浮竹が誘ってわざと京楽をいたぶっているという噂を耳にした。

確かに、誘うよな真似をして京楽の変態行為を止めることはあるが、京楽をいたぶったことなどない。変態に対するお仕置きが、いたぶるということになればそうかもしれないが、それを京楽は喜ぶ。

「浮竹ーーー!」

「学院の中では、待てだ、京楽」

まるで犬のようだが、その躾は京楽の身に刻まれていた。

学院でキスやハグをすると、浮竹は口を聞いてくれなくなるし、毎日の習慣であるおやすみの、触れるだけのキスもしてくれない。

大人しくしていれば、寮の自室ならキスやハグは許してくれるし、最近はディープキスも許してくれるようになった。

このままいけば、体を許してくれる日もくるはず。そう考えていた。

授業が終わり、寮の自室に戻ると、京楽は夕食までの間、名前を京楽と浮竹に修正した衆道のエロ小説を読んでいた。

小説に夢中になっている間はこっちに全く被害はでないから、浮竹は好きにさせていた。

夕食を食べ、湯浴みを終わらせる。

「すんすん・・・・浮竹の甘い香り・・・すんすん」

浮竹は、嫌な顔を浮かべなかった。慣れって怖いと、自分でも思った。

消灯前になって、京楽に触れるだけのキスをする。

「今日は、ちゃんと言いつけ守ったから、ご褒美ちょうだい?」

「んっ!」

唇を唇で塞がれる。覆いかぶさってくる京楽。

「あ・・・・・・」

口に指を入れられて、それに舌を這わせる。

「んん・・・」

深いキスを何度もされた。抱きしめられて、浮竹は京楽の背中に、服ごしに爪をたてていた。

「あ!」

ぴりっとした電流が走る。

首に、キスマークを残された。こんなこと、初めてだったが、浮竹は京楽の下から這い出た。

「ここまでだ」

「うん」

次の日、浮竹の首にキスマークが残っていたせいで、2人は結ばれたと勘違いされるのであった。



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狼と羊

「いい加減起きてください」

「んー。今日はまじで無理だー。昨日、夜遅くまで京楽と体を重ねて・・・」

眠そうに、浮竹は布団の上でごろごとしていた。

「京楽隊長が言ってましたよ。拒絶されたって」

「ちっ」

「おいあんた、さっき舌打ちしましたね?俺を騙そうとしましたね?」

「気のせいだ」

「いや、絶対騙そうとしてた!」

布団をはぎとられた。

12月の肌寒い季節だ。

「寒い」

「知りません。顔洗って着替えてください。すぐに朝餉の準備しますので」

「海燕の意地悪!」

「はいはい」

顔を洗って、着替えて上着を羽織ったがまだ寒くて、毛布を被って火鉢に当たっていた。

「朝餉、準備しました。毛布被るの毎年のことなのであまりきつくは言いませんが、京楽隊長以外の隊長や副隊長がきそうな時は脱いで下さいね」

「こんな寒い時期に、他のやつがくるわけないだろう」

「浮竹、邪魔するぞ」

「えええ、白哉!?」

やってきた白哉は、何か大切な仕事の書類を持っていた。

「浮竹・・・・いくら室内だからとその恰好は・・・・・」

「あ、朽木隊長これは違うんです。朝から寒気がしているそうで、今測ったら熱があったんです」

海燕が、咄嗟に嘘をつくが、それを白哉はなんの躊躇のせず信じこんだ。

「そうなのか。浮竹、兄は病弱であるからこの季節はきついであろう。暖かくして寝ろ」

白哉は、仕事の書類を浮竹ではなく、海燕に渡して去っていった。

「はーーー。危なかったーーー」

「白哉がきたからといっても、毛布は脱がんぞ!」

「あーもう、好きにしてください」

書類を読んで、浮竹に渡す。

浮竹はその書類にはんこを押して、8番隊にまでもっていくと言って、毛布を脱いで雨乾堂から出て行ってしまった。

ちゃんと、ペロリと朝餉は食べらていた。

「ほんとに、ちゃんとしてるのかいい加減なのか分からない隊長だな・・・・」

思う。

京楽や海燕の前ではだらだらしているが、肝心な時はちゃんとしている。あまりないが、虚退治の時の強さは本物だ。

ただ惜しいことに、肺を患っている上に病弱だった。

おまけに、京楽とできている。まぁ、京楽とできているのは、海燕が副官になる遥か以前のことだからいいのだが。

8番隊から帰ってきた浮竹には、京楽がついてきていた。

昼餉は8番隊で食べてきたらしかった。

ああ・・・・また、飢えた狼に羊が食べられる。それを知らずに、羊は自分から飢えた狼を連れてきた。

どうなっても知るかと、海燕はその日、急に泊まると言い出した京楽の分の夕餉を確保するのに忙しかった。

「海燕、夕餉の支度を・・・・」

「はいはい」

急だったので、食材の確保からなんやらと忙しくて、今日はくたくただった。

「味わって食べてくださいね。京楽隊長が急に泊まるとか言い出したせいで、食材の確保まで俺がしたんですから」

「すまない、海燕」

「ごめんねぇ、海燕君」

本当にすまないと思っているなら、急に泊まるとかいいだすなよと、海燕は思った。

湯浴みを終えた二人に、甘い時間がやってくる。

「夕餉の膳、下げにきました」

「んあ・・・京楽、こんな時間からなんて・・・・・」

「いいじゃない。深夜にして寝不足になりたくないでしょ」

早速、羊は狼に食べられている真っ最中だった。

海燕の存在に気づいても、二人は止まらない。

浮竹の、腰にくるような甘い声を聞きながら、隊舎に下がった。

「ああ!」

死覇装が脱がされていく。

12月の寒い季節だが、交わるには服は邪魔だった。

「ん・・・・」

かりっと胸の先端をかじられた。

「んあ・・・」

舌が絡みあうキスを何度も繰り返す。

「ああ!」

潤滑油に濡れた指が体内に入ってきた。蕾の中で指を折り曲げられて、ちょうど前立腺の部分にあたって、浮竹は先走りの蜜をたらやらと零した。

「好きだよ・・・」

「あ、京楽・・・・・」

「春水って呼んで、十四郎」

「ああっ、春水!」

灼熱が狭い体内をかき分けて貫いてくる。

「あああああ!」

前立腺をすりあげられて、中がキュウっとしまって、京楽は浮竹の浅い部分に精液を吐き出した。

「君の中、凄いね」

「ああ!」

浮竹も、京楽とほぼ同時に白濁した液を吐き出していた。

ずっずっと音を立てて、京楽が挿入を繰り返してくる。

「ひう」

何度も前立腺を突き上げられて、浮竹は体を痙攣させた。白濁した液体を吐き出しながら、いいところばかりつかれて、ドライのオーガズムでもいった。

「いあああ・・・・変になる・・・・春水・・・やあああ」

「大丈夫、気持ちよくなるだけだから」

ペロリと、京楽は乱れる浮竹を見ながら舌を舐めた。

「あ!あああ!!」

ぐちゅぐちゅと体内で音がする。最奥を突かれる。

抉られて、また浮竹は高みにのぼっていった。

「ひああああああ!」

ビクンと体を痙攣させて、精液を吐き出す。

キュウキュウと締め上げてくる内部に我慢できずに、京楽は浮竹の腹の奥にに二度目の精液を放った。

「ん・・・・もうや・・・・春水・・」

「うん。今日はここまでにしよう、十四郎」

珍しく、京楽が満足した様子で引き抜いた。

トロリと、浮竹の中に吐き出したものが、浮竹の太腿を伝って流れ落ちる。

それを濡れたタオルで拭った。体内に出したものを全部かきだして、浮竹をふいて清めた。

京楽も己をふいた。

そのまま服を着あって、シーツを変えた布団に横になる。

少し早いが、眠気がやってきて二人そろって眠ってしまった。

「んん・・・・京楽、起きてるか?」

「ん・・・どうしたの、浮竹」

「早くに眠りすぎて、目が覚めた」

時計を見ると、朝の4時だった。

「僕も目が覚めちゃたよ。寒いでしょ、もっと近くにおいで」

京楽にすり寄ると、京楽は腕の中に浮竹を抱き締めた。

「まだ、寝れそう?」

「ん・・・京楽と体温共有しあっていたら、多分そのうちまた寝る・・・」

1時間ほど起きていたが、二人はいつの間にかまた眠ってしまった。浅い眠りと覚醒を繰り返す。

「いい加減、二人とも起きてください。朝ですよ」

海燕に起こされて、のろのろと浮竹が起き出す。死覇装の前がいつの間に乱れていて、キスマークがいっぱいついていた。

「ちゃんと服きてください、隊長!そんな、情事の後みたいな恰好」

海燕が真っ赤になった。都という妻をもつが、浮竹の色香にいつもやられそうになって、自分を叱咤する。

「浮竹、おいで」

「ん・・・」

京楽が、浮竹の乱れた死覇装を整えて、隊長羽織を羽織らせた。

浮竹は、京楽に甘えまくった。

ああ、これは熱を出すな。

京楽も海燕も思った。

案の定、午後から熱を出した浮竹を寝かしつける。

「やっぱ冬は毛布被らせないとだめだね」

「毛布被っても、隊長は熱出す時は出しますよ。今回はあんたが抱いたから熱を出したのかまでは分かりませんが、1週間は隊長に手を出さないでください」

「厳しいねぇ、海燕君は」

「当たり前でしょう!病人を抱くつもりですか!」

「いや、そんなことはしないけど。ただ、一緒の布団で寝ることは許してほしいな」

「まぁ、それくらいなら・・・・・」

海燕は浮竹に甘い。そして、結局京楽にも甘くなるのだ。

そんな年月をもう何十年と続けていくのだった。




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般若の海燕

「隊長、いい加減に起きて下さい!」

「ぬおおおおお、あと1時間は寝る!」

布団を死守する浮竹を、海燕がどけようとする。

「もう9時ですよ!他の隊長たちはとっくに起きて仕事してます。さぁ、あんたもいい加減に起きて仕事しろおおおお!!」

10分ほど格闘したであろうか。

海燕は、大きなため息をついて布団を手放した。

「もう、好きなだけ寝てください。でも、今日は夕餉抜きですからね!ちゃんと罰与えなきゃ癖になりそうだし・・・・・」

「もう一度寝れる・・・・むにゃむにゃ」

そのまま、浮竹は惰眠を貪った。

「いい加減に起きろこの野郎!」

海燕が、再び起こしにやってきた。

「あんた、昼餉も食べないつもりか!」

「このまま寝る~~」

「ああ、もう知りません。今日は放置しますよ」

海燕は、自堕落すぎる上司に愛想をつかせてしまった。

「んー・・・起きる・・・」

もそもそと、浮竹が起きだしたのは午後の2時だった。

顔を洗って、服を着替える。

お腹がすいた。

「海燕、ご飯ーー!」

何度呼んでも海燕はきてくれなかった。

仕方なしに、13番隊の厨房にいくと、今日は浮竹の分の食事は夕餉を含めてないという。

「海燕め・・・・・」

そんなことで、反省するような浮竹ではない。

仕事は明日するということにして、8番隊の執務室にいき、仕事をしている京楽に飯がでないんだと手短に説明すると、少し遅めだが昼餉が用意された。

それを食べて、さらに京楽を伴って甘味屋でバカ食いした。

お弁当屋さんで、夕餉の代わりの弁当を買った。

「なんか、海燕君が哀れだね・・・・」

「ふん、海燕のやつ、俺を飯ぬきにしようとしているらしいが、そうは問屋が卸すものか」

京楽を伴って、雨乾堂にいく、角の生えた海燕がいた。

「あんた、仕事さぼって8番隊で昼餉をごちそうになったそうですね」

「さらに、京楽と一緒に甘味屋まで行ったぞ」

カッ。

海燕は般若になった。

「1か月、3時のおやつぬき!」

「ええっ!海燕、俺が悪かった~~~」

こんな他愛なことで、反省する浮竹を京楽はかわいいと思った。

海燕も、怒りながらかわいいと思ってしまった。

「ちゃんと、俺の言うことききますか」

「きく。ちゃんと8時には起きるし、仕事もさぼらない」

「約束ですよ」

「ああ、約束だ」

その日の夕餉は結局用意されなかたので、甘味屋に行ったついでに買った弁当を食べた。

「やっぱ13番隊のご飯のほがいい・・・」

同く弁当を口にして、京楽は言う。

「でもいいのかい?あんな口約束をして」

「俺は心を入れ替えるんだ」

京楽は、今日はお泊りだった。体はこの前重ねたので、ただ泊まるだけだった。

次の日の朝、京楽は仕事があるからと、8時には8番隊の執務室に戻ってしまった。

「あんたは~~昨日誓ったでしょう!8時に起きるって」

「あと2時間寝る~~~」

布団にへばりつく浮竹。

「だめです!」

布団をとりあげられた。

仕方なしに、のろのろと浮竹が起き出す。

朝餉を、食べた。

よし、一安心だと、海燕は膳を下げて、文机に向かった上司を心の中で褒めた。

「昼餉もってきました・・・・・」

返事がない。

熱でも出したのか、肺の発作でも起こしたのかと、必死になって浮竹の方を見ると、幸せそうに眠っていた。

仕事は途中で放りだされていた。

「起きろおおおお!!!!!」

浮竹を揺り動かすか、この上司、一度眠ると梃でも起きない。

「あああああ!!!」

海燕は頭を掻きむしった。

いっそ、水でもぶっかけてろうかとも思ったが、風邪をひかれて熱を出されては困る。

今日の3時にだそうと思っていたおはぎをもってくると、それを浮竹の近くまでもってきて、ぱたぱたろとうちわであおいだ。

「ん・・・・おはぎの匂いがする・・・・」

ゆっくりと、浮竹が翡翠の瞳をあける。

「おはぎ!」

食べようとするのを、さっともっていく。

「海燕、大人しくおはぎをよこせ」

「そういうあんたが、大人しく仕事をしてください!」

にじりにじり。

二人の間に緊張が走る。

「おーい、浮竹入るよーーー」

京楽の声がして、それに意識をもっていかれた一瞬だった。

さっと、皿からおはぎが消えていた。

もっきゅもっきゅとほうばる浮竹に舌打ちする。

「あんたは・・・・ちゃんと働け!」

「あれ、どうしたの海燕君」

「この上司、仕事放置して寝てたんですよ!」

「いいじゃないそれくらい」

「よくありません!」

「僕なんて、1か月分仕事ためて、七緒ちゃんに耳引っ張られて、無理やり仕事させられるけどなぁ」

「だらしないあんたと一緒にしないでください!うちの子はうちの子です!ちゃんと仕事してもらわないと!」

「これくらいの仕事の量、午後にするから昼餉にしてくれ。お腹減った」

「はぁ・・・・なんで、俺、こんな上司の副官になったんだろう」

溜息を強く零しながら、遊びに来た京楽の分まで昼餉を出した。

3時になっておやつの羊羹を手に雨乾堂にくると、浮竹と京楽は囲碁をしていた。

「あんた、仕事は」

「全部終わらせた」

「あの量を!?」

「そっちにあるだろう。できているかチェックするといい」

確かに、仕事は全部片付いていた、

「はぁ・・・・できるんなら、最初から言ってください」

「だからいつも言っている。「あのくらい午後でできる」と」

海燕は、浮竹の仕事処理能力に脱帽した。

これで、ちゃんとした時間に起きてくれれば文句はないのだが。

次の日、また11時くらいまで海燕と格闘の末に勝利して、惰眠を貪る浮竹の姿があった。

仕事ができるので、海燕もあまりしつこく起こさなくなった。

浮竹は、おはぎが大量にやってくる幸せな夢を見るのだった。



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浮竹死んだけど幽霊です憑いてます15 苺花

ルキアと恋次の間に、待望の子ができた。

妊娠していると告げられて、浮竹は意識を失った。ショックではなく、嬉しさのあまりに。

「大丈夫、浮竹?」

「ん、ああ。早く、子供を見に行こう」

浮竹に急かされて、朽木邸までやってきた。

子供が1歳になるまで、実家である朽木家で過ごすことを決めたルキアと恋次であった。

「わぁ、かわいいなぁ」

すやすやと寝ている赤子は女の子ということだった。

「名前は苺花です、浮竹隊長」

まだ産後間もないので、ベビーベッドの隣に布団をしいて、ルキアは横になっていた。

出産も、朽木家で行った。 産婆を呼んでいた。念のためにかかりつけの医師にも待機してもらっていた。

初産は、時間は少々かかったが、何の問題もなかった。

出産には恋次も立ち会った。 白哉は、別室で生まれるのを今か今かと待っていた。

「おぎゃあおぎゃあ」

生まれたのが女の子だと分かって、ちょっとした騒動になった。

男の子だと言われていたのだ。 産着から将来のための服までと、気が早い白哉は用意してしまっていた。女の子分かったので、産着はまぁいいといして、子供用の男の子用の着物がすぐに女の子用のものに変えさせた。

「兄様、気が早すぎます」

「子が成長するのは早い」

朽木家にも縁続きの姫君が生まれたのだ。

「朽木、抱いても大丈夫だろうか」

「そっとなら」

全身を実体化させて、浮竹は恐る恐るベビーベッドから苺花を抱き上げた。

苺花はすやすやと眠っていた。

「かわいいなあ。目元はなどは朽木そっくりだ。美人になるぞ」

「僕にも抱かせて」

京楽の腕の中に入ると、苺花は火がついたように泣きだした。

「なんで!?」

「ああ、多分お乳の時間なんです」

恋次も傍にいたが、浮竹と京楽を部屋の外へ追い出した。

「妻の、お乳をあげる姿を見せるわけにはいきません」

「白哉はいいのか?」

「隊長は家族なので」

浮竹と京楽が顔を見合わせた。

「なぁ、僕らも子供を」

「無理だ!産めない!」

「涅隊長に・・・・」

「却下!」

浮竹は、苺花をみてとても嬉しがり、にこにこしていたが、今は怒っていた。

「いいか、俺との間に子供を求めるな!できないのは自然の理だ!」

「うん、分かった」

京楽は、ちょっと残念そうな顔をしていた。

やがてお乳をあげ終わったことが告げられて、京楽も浮竹も苺花とルキアのいる部屋に戻った。

「女の子ということは、いつかお嫁に・・・・・・」

「浮竹隊長、気が早すぎます」

ルキアが笑っていた。

「浮竹もそう思うか。私は少し年が離れることになるが、四楓院家の当主がいいのではないかと思っておるのだ」

「兄様まで!苺花は一昨日生まれたばりなのですよ!」

ルキアに怒られて、浮竹だけでなく白哉までしょげた顔をしていた。

「ほら浮竹、もう十分でしょ。いつでも見にこれるんだから、帰るよ」

京楽は、家族の時間の邪魔をするのは悪いと、実体化したままの浮竹を引きずって、朽木家を後にした。

霊体に戻って、浮竹はぼんやりと考える。

苺花が花嫁にいく姿を、このまま拝むことがきるだろうかと。 きっと、100年以上先の話になるが、その時自分がまだこうして京楽の隣に在れるかどうか・・・・考えていると、ポロリと涙が頬を伝った。

それに、京楽がぎょっとなる。

「どうしたの。そんなに苺花ちゃんの傍にいたかったの?」

「違う。苺花ちゃんが嫁に行く頃・・・・俺は、こうしてまだ京楽と共に在れるのかと思ったら、不安で・・・・・」

「大丈夫。100年でも200年でも、このままだよ」

少しだけ実体化した浮竹を抱き寄せて、頭を撫でてやる。

「浮竹は甘えん坊だね。大丈夫、君はずっと僕の傍にいれる」

「どうして、言いきれる?」

涙を流す浮竹に口づける。

「君が僕に憑いた日から思ってた。君、存在するのに僕の霊圧を食っている」

「霊圧を?」

「そう。霊圧を食うことで、存在し続けられている。つまりは、僕が生きている以上はそのまま在れるってことだよ」

浮竹が食う霊圧の量はたかが知れていて、浮竹は気づかなかったのだろう。

他の者も気づいていない。 本人である京楽だから分かるのだ。 浮竹は泣き止んでいた。

「俺は、お前が死ぬその時まで傍にいることを誓う」

「僕も、僕が息絶えるまで君の傍にいることを誓うよ」

それは、まるで結婚式で誓いを立てるようで。 二人は、いつまでの抱き締めあっていた。 やがて、浮竹の実体化の限界時間がきて離れるが、心は寄り添いあったままだった。

「甘味屋にでも行って、気分転換でもしよう」

「ああ。食べまくるぞ!」

「そうそう、元気だして!」

浮竹は、京楽が驚くくらい甘味物を食べた。実体化するためのエネルギーにするのだ。いつしかの大食い選手権のように食べまくる浮竹に、苦笑を零す京楽であった。

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浮竹死んだけど幽霊です憑いてます14 懐かしい場所

「ということで、諸君らが死神になるのを応援するよ」

京楽は、その日総隊長として真央霊術院で全校生徒に向かって、挨拶をしていた。

みんな注目している。京楽ではなく、その隣で透けて立っている浮竹を。

「まぁなんだ、大戦を終えてから元13番隊の隊長が幽霊になって僕にとり憑いてね・・」

「お祓いをするべきです!成仏しないなんて、自分勝手すぎる!」

勇気を出して、一人の生徒がそういうと、京楽は笑った。

「きっと、この中の大半の者が知っていると思うけど、僕は元13番隊隊長浮竹十四郎とできていてね。お祓いをしても成仏しなかったし、今のままでいいと思っているんだよ」

女生徒からは、黄色い悲鳴があがった。

「ま、そういうことだから、今後上官になるかもしれない京楽には俺が憑いていると思ってくれ」

浮竹が、そう言って京楽と一緒に真央霊術院の講堂を後にした。

「よかったのか?まだ知らない者のいたかもしれないのに」

「僕と浮竹のことを知っていないと、困惑するだろうからね。早いうちに関係をはっきりしておいたほうがいいよ」

「そういうものなのか・・・?」

その日は、真央霊術院のいろんな場所を見て回って、授業を受ける生徒たちを応援した。

女生徒の黄色い声が半端なく、ふと一人の女生徒がサインをもらいに京楽のところにやってきた。

サインを書くための色紙はなく、何かの本をもっていた。

「ずっと、京楽総隊長と浮竹隊長の話を読んで憧れていたんです!」

松本の書いた、京楽×浮竹の同人誌だった。

「松本のか・・・・・」

浮竹が呆れた声を出す。

死神や、その死神になるためのひよこである生徒たちにとって、隊長副隊長はいわゆる芸能人のアイドルに似ている存在だった。

高値の花なのだ。

もう死んでしまったはずの、浮竹が幽霊として、時に実体化して京楽と一緒にいる姿は、今の隊長副隊長をはじめとする死神たちに受け入れられていた。

真央霊術院の施設は、校舎自体も昔と変わっていて、あまり懐かしさを感じさせてくれなかったが、その存在は懐かしさを駆り立てられた。

校庭に生えている桜の木は、あの下で告白をしあった記念のものだ。

500年以上経っても、毎年春に花を咲かせる桜の巨木は存在した。

「ああ、懐かしいねこの桜の木・・・・・君に想いを告げたのは、この桜の木の下だった」

「そうだな。あと、よく花見にこの木の下にも来た」

京楽は、桜の大木によじ登った。

「ここから見える景色は、あの頃と変わっていないね・・・・」

「いい景色だな」

「ちょっと、午睡しようか。どうせ、この後暇だし・・・・・」

桜の木の大木の上で、京楽は眠ってしまった。その安らかな寝顔を見ているうちに、浮竹も眠くなってしまって、京楽の上の折り重なるようにして眠ってしまった。

「京楽、おい、京楽!」

「ん~?」

「もう夕刻だ。寝すぎた!」

「あ、本当だ。いっけない、七緒ちゃんと仕事の話を午後にする予定だったのに!」

京楽は急いで桜の木の上から去ろうとして、ゆっくりとした動作で起き上がる。

「どうせ、今日はもう無理だ。こんな時間だ、明日に回すよ」

「いいのか?すまない、俺がもっと早くに気づけば」

「君は僕が寝たから、一緒に寝たんでしょ。君は悪くないよ」

「でも・・・・」

「ちょっと実体化して」

言われた通り、透けていた体に輪郭が戻ってくる。

「んあ・・・・・・」

激しい口づけを受けた。

「ああっ・・・・」

服の上から、体を弄られる。

「きょうら・・・く・・・・・」

「僕のことだけを考えて。自分が悪いなんて、思わないで」

「分かった・・・・・・」

そのまま貪られるかと思う激しささだったが、この前1時間実体化して体を重ねたばかりなので、今は数分しか実体化を保てなかった。

それが分かっていながらの行動に、浮竹が不満をもらす。

「お前、俺の体に火をつけといて放置とは・・・・・」

「いつも、君を抱きたいと思ってるのに抱けない僕の気持ち、少しは分かった?」

「う・・・すまない」

この幽霊の体は便利でもあるが、こういう時不便だった。

好きな時に好きなだけ実体化できれば問題はないが、それでは生き返ったのと同じだ。

あくまで、浮竹は死者である。

神様の悪戯か、京楽に憑いて自我を保ち、こうして実体化して触れれるようになったのだ。

「なんなら、霊体をさわせる手袋で、手でいってしまうかい?」

「いや、いい。そこまで飢えてるわけじゃない」

多分、京楽にそうさせると、今度実体化した時にその時の分もと言われて、いつもより激しく抱かれるだろうと思ったので、遠慮しておいた。

「僕は、いつでも君を抱きたいと思っている。今の月2は少なすぎるけど、仕方ないから我慢している」

今、月に2回だった。1時間以上実体化するには、エネルギーがいる。食べたものを実体化させるエネルギーに変えているが、頑張っても月3回が限度だろう。

無理のない範囲でとなると、月2回が限度であった。

でも、その日の夜、結局体が疼いて、霊体を触れる手袋で触られて、2回ほどいってしまった。

霊体でも、性欲を覚えるのだ。食欲と睡眠欲もある。

始めの頃は何もなかったのだが、京楽の霊圧を間近で浴び続けることで、人間化しているようであった。

幽霊だけど、半分生きているに近い幽霊。

変な存在だとは思ったが、こうして京楽の隣に在れるだけで幸せなのだ。

それ以上の欲をもつなど、我儘すぎるだろう。

「はぁはぁ・・・・・」

京楽の手でいかされたけれど、汚れた体は霊体の体を少し波長を変えるだけで元に戻った。

「ああ・・・・君の乱れる姿を見ていたら、僕もたっちゃった」

生前は週に2回体を重ねていた。月2回は少なすぎて、京楽は浮竹の喘ぎ声をおかずに、週に一度くらい自虐して抜いていた。

「喘ぎ声、いるか?」

「お願い」

「あ、ああ、ああん、京楽いい、もっとそこ触って」

耳元で囁くと、破裂しそうな京楽の一物が、先走りの蜜を流し出す。

「ああ、いいね。その調子で・・・・」

恥ずかしいが、京楽の耳元で喘ぎ続けた。

京楽は二度ほど抜いて、すっきりした顔をした。

「ああ、でも本物を抱きたいなぁ。次は・・・来週の終わりくらいかな」

「そうだな」

「甘味物一杯食べて、エネルギー溜めてね。1時間じゃ物足りないから、2時間は実体化してほしい」

「また、そんな無茶を言う・・・・・」

けれど、愛しい京楽のために、浮竹はたくさん食べてエネルギーを補給し、次の週の終わりには2時間は実体化し、京楽にこれでもかというほど抱かれて、霊体化した後もふらふらとするのであった。




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現世の浮竹?

時は院生時代まで遡る。

「京楽!」

浮竹は、京楽と寮の外の甘味屋の前で待ち合わせしていた。

いつもなら、寮の部屋から直接いくのだが、今日はデートだった。

院生の服のままだが、もらった翡翠の髪飾りで、肩より伸びた髪を結いあげてまとめていた。

今、院生の4回生だった。

「浮竹、今日はかわいいね。いつもかわいいけど、いつもよりかわいい」

自分があげた髪飾りをしていてくれることが、とても嬉しかった。

「甘味屋、入ろうか」

「ああ」

甘味屋でまずおはぎを注文した。それから、ぜんざい、白玉餡蜜、羊羹、桜もち、団子、杏仁豆腐・・・3人分をペロリと平らげた。

「うふふふ~~」

「なんだ、気持ち悪いな」

「いや、かわいいなぁと思って」

「かっこいいと言え!」

無理な相談だった。

そもそも、翡翠の髪飾りで髪を結い上げてる時点でかわいすぎるのだ。

ちらちらと、女性客だけでなく男性客の視線を集める浮竹のかわいさに、京楽はできることなら浮竹を隠してしまいたいと思った。

お茶を飲んで一服する。

これだけ甘味物を食べても太らない。おまけに、昼食や夕食も平らげる。

「この後どうする?」

「現世に行ってみたい」

山じいの許可を得て、現世にやってきた。

時は戦国時代。

「姫!」

「え?」

「貴様、姫に何をしている!姫、そのように髪を短くして・・・何があったのですか」

次々と、武装した兵士たちが集まってきた。

一般人に手をあげるわけにもいかず、京楽は大人しく捕まっていた。

「姫、さぁこちらへ」

「あの、俺は違うんだ。姫とかじゃなくって・・・・・」

「何を言っておられる、姫。今夜は殿との結婚式・・・姫の姿が見えず、途方にくれていた次第です。見つかってよかった」

どうやら、現世のどこかの武家の姫が家出したらしい。しかも浮竹にそっくりなそうで、髪の色さえ何も言われなかった。

京楽が捕らえらえられているので、下手な行動には移れない。

仕方なしに、一人で着替えられるといって、十二単を適当に着込んだ。

「あれまぁ姫、着方が間違っております」

侍女に、十二単を整えてもらって、浮竹は殿とやらと会った。

「おお、姫、いなくなって心配したのだ」

とてもごつい、お世辞にも美男と言える男じゃなかった。小太りで、浮竹の傍にくるとねっとりとした視線を送ってくる。

「姫・・・今宵、我らは結ばれる。さぁ、褥へ・・・・」

服の上から体を弄られて、このままではいけないと思い、殿という身分とはいえ、一般人には悪いが気を失ってもらおう。

「破道の4、白雷!」

かなり手加減した。殿とやらは焦げて意識を失った。

見張りの兵士たちを次々と気絶させて、京楽が捕らわれている牢屋にいき、京楽を助け出す。

「いやあ、助かったよ。脱獄もできたけど、騒ぎを広げるわけにもいかないね・・・それにしてもその恰好、恐ろしいほどに似合っているね。姫と言われるだけのことはあるよ」

二人して、城を抜け出した。

途中、女性と出会った。

「え、私?」

「え、俺?」

本当にそっくりだった。違うのは身長と髪の長さくらいで。

浮竹のほうがわずかに背が高かった。

事情を説明すると、姫は泣きだした。

「すみません、私が結婚が嫌になって城をぬけだしたせいで、迷惑をかけてしまい・・・・」

姫は、ここ数日の間で恐怖のあまり髪が白くなってしまったのだという。

姫は、もう決意していた。

この時代、結婚は政略結婚が多い。本当に好きな相手は側室にしてしまうとかも多かった。

「私はもう行きます。どうか、ご武運を・・・・」

姫は、城の方へ行ってしまった。

「止めなくてもよかったのかい」

「止めても、あの姫が結婚しないと、姫の家のほうの武家が責を問われる」

「ああ、そうか・・・・武家って厄介だね。きっと政略結婚だろうけど」

「尸魂界に戻ろう」

「そうだね。現世の海でも見ようと思ってきたんだけど、こんな厄介ごともうごめんだ」

尸魂界にに戻ると、院生の服を取り返すのを忘れていたことに気づく。

「どうしよう。この格好、まるで花街の遊女だ」

「遊女でも十二単なんて豪華なもの、着ないと思うけどね」

浮竹は、山に身を隠した。

「院生の服をもってきてくれ。ここに隠れておくから」

「分かったよ」

京楽は、一度寮に戻ると、浮竹の院生服を手に山に戻ってきてくれた。

「ああもう!どうやって脱げばいいんだ」

「手伝ってあげる」

京楽に手伝ってもらい、浮竹はなんとか院生の服に着替えた。

「君の肌・・・すべすべだね」

「盛るなよ!」

「分かってるよ。でも、姫の姿よかったなぁ。かわいかった。今のままでも十分かわいいけど」

京楽は、珍しいからと、十二単を残すらしかった。

「いつか、また着てほしいな」

「ごめんこうむる」

すっかり夜になってしまっていた。

「また、来週の日曜デートしようよ、今日のやり直しに」

「ああ。でも、もうしばらく現世にはいかない・・・」

また、姫と間違われたくない。

京楽以外の男に、服の上からであるとはいえ、体を弄られた時拒絶反応か、吐き気がした。

「俺は、お前以外の男に触られるのが嫌だ」

その言葉に、京楽が真面目な顔になる。

「あの殿とやらに何かされたの?」

「服の上から体を弄られただけだ。でも、それだけで悪寒がした」

京楽は浮竹を抱き締めた。

「君に他の男が触れるのさえ、僕も嫌だ」

寮の自室に戻ると、どちらともなしに唇を重ねた。

とさりと、ベッドに横になりながら、あの姫は大丈夫だろうかと考えながら、体温を共有しあった。

睦みあうことはなく、その日は眠るだけだった。

次の週の日曜、また甘味屋に行った。

それからは本屋で小説を買い込んで、衣服屋で普段着用の着物を買った。

夜は居酒屋に入り、二人で飲んだ。

「あの姫、大丈夫だろうか。恐怖で髪が白くなるくらいだ。婚姻が嫌だったんだろうな」

「だからって助けてあげることもできないしね。浮竹にそっくりだったから、できれば助けてあげたいけどそういうわけにもいかないし」

その後、浮竹と京楽は気になって仕方なくて、もう一度現世にいった。

浮竹は念のためにフードで顔を隠していた。

「あ、あなたたちはあの時の!」

姫に出会うと、姫は幸せそうな顔をしていた。

「殿が、思った以上に優しい方でした。私、あの方となら幸せになれそうです」

「よかった・・・・・・」

浮竹はフードをとった。

「本当、そっくり。まるで私の兄上であるといっても、通用しそうですね」

「本当に、不思議なくらいに似ているな。俺は浮竹という」

「まぁ。先祖に、浮竹という名の戦神がいたと聞きます。きっと、血がどこかでつながっているのでしょう」

「なるほど・・・・」

昔、浮竹一族のある男が、尸魂界を捨てて人間になり、現世にいったという話を聞いたことがあった。

多分、その血筋なのだろう。

「俺とあなたは、どこかで血がつながっているようだ。このまま、幸せになれることを祈ってます」

「ありがとうございます。殿の世継ぎを立派に産んでみせます。あなたも、その方とずっと結ばれていますように」

「浮竹のことは、僕に任せておけば大丈夫だから」

「なっ」

浮竹が顔を朱くしながら、京楽の耳を引っ張った。

「では、俺たちはこの辺で」

尸魂界へと戻った。現世の人間と会話をすること禁じられているわけではないが、過度の干渉は禁じられていた。

もう会うこともないだろうと思いながら、現世を後にする。

「本当に不思議な方たち・・・・」

姫は、その後10人の子宝に恵まれ、殿と一緒に幸せな人生を送ることになるのだが、それは浮竹と京楽には知らせることは、ついにかなわなかったという。


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凍った砂時計 家族

ルキアに、待望の子が生まれた。

女児で、苺花と名づられた。

3人目の子もできた。男児で、一音と名づけられた。


「父様、今日も稽古をお願いします」

「ああ、一勇。今日はだめだ」

一勇は8歳になっていた。

「ルキアの誕生日なんだ」

「母様の!」

「母様、誕生日なの?」

苺花は6歳で、一音は2歳だ。

やんちゃな一音を、苺花がしっかりと面倒を見ていた。

ルキアは、護廷13隊の13隊隊長に就任していた。副官は一護だ。

「みんなで、ルキアの誕生日を祝おう!」

バースディケーキを用意して、ルキアが帰ってくるのを待った。一護はこの日のために休暇をとっていた。

アメジストのピアスを、一護は大前田の宝石店から買ってきていた。

ルキアが帰ってくる。

「ハッピーバースディ、ルキア!」

ぱんぱんと、クラッカーをならすと、本当に驚いたようで、じんわりと涙を零し始めた。

「母様、どこか痛いの?」

「違う。お前たちの気持ちが嬉しいのだ」

「ルキア、誕生日おめでとう。これ、誕生日プレゼント」:

「ピアスか。だが、ピアス穴がない・・・・・」

「俺があけてやるよ」

消毒した針で、ピアスのための穴をあけた。

「痛いか?」

「少しだけ。でも、この一護からもらったピアスをつけるためだと思えば、痛みすら甘い」

「母様、僕からも誕生日プレゼント!白哉叔父様とつくったんだ!」

それは、ビーズ細工の指輪だった

拙かったけど、義兄である白哉も一緒に作ってくれたと知って、感動も普通の2倍だった。

「ルキア、一護、おるか」

「はい、白哉兄様!」

「どうしたんだ、白哉!」

「誕生日プレゼントだ」

わかめ大使のパジャマを、一護の分まで渡された。

「おう、俺にまでありがとな、白哉。お前がいなかったら、俺は死神にならず、こんな幸せ、手に入れることができなかった」

「兄は・・・十分ルキアを愛してくれている、子も二人もできたし・・・・・」

「白哉叔父様、私、大きくなったら、叔父様の花嫁になる」

苺花がおませことを言うが、白哉静かに微笑んで、苺花の頭を撫でた。

「そうか。その日を楽しみにしている」

「はい、白哉叔父様!」

白哉は緋真以外の妻を娶る気はなく、朽木家時期当主は、女であるが順番からして苺花だった。

かわいそうだ、一勇には罪人の血は流れているとのことで、当主にはなれないようだ。

もっとも、一勇も自分が罪人の血を引いてると知って、一時期塞ぎこんだが、一護の「お前は俺とルキアの息子だ」という言葉に、徐々に笑みを取り戻し、今では克服していた。

「そういえば、白哉も誕生日近いんだよな。ちゃんと祝うから、その日は休暇とってくれよ」

「兄は・・・・私の誕生日まで、祝うつもりか」

「だって、家族だろ」

もう二度と手に入らないと思っていた、家族団らんの愛が、白哉にも向けられていた。

「ルキア、ケーキ食べよう。白哉にはカラムーチョな」

一勇と、苺花と、一音にもケーキを食べさせた。

「おいしいな」

「ああ、美味いな」

朽木家の料理人に頼んで作ってもらったのだ。

その日の夕飯は豪華だった。ルキアにだけ、白玉餡蜜がついていた。

子供たちも欲しがったが、子供たちには特別に菓子を与えた。

夕飯後の菓子なんて、体に悪いのだが、今日は特別だ。


夜になって、ルキアと一護は褥を共にした。

無論、避妊している。

さすがにこれ以上、子供はいらない。

「ああっ、一護!」

乱れていくルキアを見るのは、一護だけの特権だった。

「ルキア、いくつになっても綺麗だ。とても3児の母親には見えない」

「これでも、食事とか運動に気を配っておるのだ・・・・・・ああ!」

朽木一護。

人間であることを捨てて、家族も友人も捨てた。

でも、それ以上の幸せを手に入れた。

10代後半のままで時を止めた二人は、長い長い死神の寿命を、いつも共に在りながら、すごしていくのであった。


             凍った砂時計

              fin




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