結婚記念日
今日は海燕の結婚記念日だった。
妻である都と結婚して、ちょうど1年が経ったのだ。
浮竹は何をプレゼントしようと迷っていた。
海燕の好きなものはおはぎ。おはぎをあげるのもいいが、それではあまりにもいつもと変わらない。
そこで、京楽に頼んで現世の酒を購入した。
赤ワインとグラスとコースターを一式。
「京楽、海燕は喜んでくれるかな?」
「上官である君が心をこめてくれるものなら、例え安酒でも喜ぶだろうさ」
雨乾堂では、今日は浮竹は海燕の助けを借りず一人でおきた。少しでも仕事の負担を減らそうと、いつもは朝餉をもってきてもらうのだが、自分で取りに行った。
「隊長・・・・今日一体なんなんですか。全部自分で片付けようとして」
「ああ、いいんだ海燕。今日は特別だから、ほんとは休暇を与えたかったんだが、この前まとまった休暇を与えたばかりだから無理だったから、そのな、うん、なんていうか、今日の海燕には休んでほしいっていうか特別だから」
自分でも何を言っているのかよくわからなかった。
「海燕、結婚記念日おめでとう!」
花を、差し出した。
まるで、プロポーズみたいな。
見ていて、京楽がぴしりと凍り付いた。
「え、結婚記念日?・・・・ああ、俺と都、結婚して1年も経ったのか」
海燕は、そんなことすっかり忘れていた。
この前誕生日を祝ってもらったので、差し出された花をみてまた誕生日を間違えたのかと思った。でも違った。この上官は、自分でも忘れてしまうような結婚記念日をしっかり覚えていてくれたのだ。
嬉しさと恥ずかしさがない交ぜになって、海燕を襲う。
「隊長の、きもち、確かにうけとりました」
花を受け取る。
ピシリ。
その言動に、京楽がまた凍り付いた。
嬉しさと恥ずかしさがまざってドキマギしている二人を、べりっと無理やりはがして、浮竹を自分の後ろに隠す。
「いっとくけど、うちの子はあげませんからね!」
「いや、何言ってるんだあんた。隊長は俺の上官だ!」
「違う、僕のものだよ!」
「違う、俺の上官だ!」
「違う、僕のものだよ!」
「違う、俺の上官だ!」
二人して、ぜいぜいと言い争いを続けた。
「あのな。俺は俺だ。誰のものでもない」
浮竹が、呆れた声をだして京楽を押しのけた。
「結婚記念日のプレゼントがあるんだ。受け取ってくれるか、海燕」
「え、この花がそうじゃないんですか」
「それは、ただの挨拶みたいなものだ」
そう言って、赤ワインとグラスとコースターが入っている箱を渡した。
「こんな高そうなもの・・・・」
「お前にはいつも世話になってるからな!」
「ありがとうございます。グラスとかも2つあるようだし、今日帰って都と二人で飲みます」
「ああ、そうしてくれ」
この時代、西洋の酒は珍しいもので、尸魂界に置いていないわけではないが、目の飛び出るような値段がするので、京楽に頼んで現世から購入したのだ。
なんとか、京楽の給料の範囲で買えた。
「はー。うちの上官がどうしようもないって思ってたこと、撤回します」
「何、お前そんなこと思ってたのか!」
「だって、自分で起きないし、放っておいたら熱だすし、やっと下がってまだ安静にしてなきゃいけないのに甘味屋に出かけるわ、甘味物を食べたらその包み紙を放置してほったらかすわ
・・・・どうしようもない上官だけど」
浮竹が悲しそう顔をする。
「でも、陽だまりみたいで。誰にでも優しくて、死神としての矜持をもっていて、見た目は儚いけど芯は強くて、・・・この前、入ったばかりの朽木が隊長にミスってお茶ぶっかけた時も笑って許して・・・逆に濡れた朽木のこと心配して。もう、いろいろと、俺はあんたにメロメロなんですよ。13番隊の副隊長についてよかった。あんたの副官になれたこと、幸せです」
「海燕・・・」
じーんと感動して、浮竹はほろりと涙を浮かべた。
「あー!海燕君が浮竹泣かした!いーけないんだ、いけないんだ!」
京楽は、二人の上官と副官の在り方としての、いいムードをぶっ壊してくれた。
「京楽隊長、あんたは帰れ!」
「言っとくけど、その結婚記念日用のプレゼントも花も、僕が入手したんだからね。浮竹はお金出して、手配してくれと頼んできたんだけど、僕がいなきゃ手に入らなかったんだからね」
「京楽、今海燕といい話をしているんだ。ちょっと黙ってろ」
京楽は恋人である浮竹に冷たくあしらわれて、いじけだした。
「いいもんいいもん。呪いの藁人形で海燕君のこと呪ってやるんだから」
「京楽・・・・・」
仕方ないなと、海燕が見ている前で京楽を抱き締めて、キスをした。
「ちゃんと、お前にも感謝しているから。機嫌を直せ」
「浮竹・・・・もっとキスして」
「ん・・・んあっ」
どんどん浮竹を貪っていく京楽の頭を、海燕がはたいた。
「何するの!」
「あんたは、少し盛るの控えたらどうですか。先週あんたが隊長をしつこく抱いたせいで、隊長熱出しましたよ」
「え、ほんとなの」
「微熱だ。気にするな」
「でも、僕は浮竹を抱くよ。今日は抱かないけど」
「京楽隊長、あんたはダッチワイフでも抱いてろ!」
「何、浮竹のダッチワイフあるの!?あるならぜひ欲しいんだけど」
「京楽・・・・このあほ!」
恋人である浮竹にまで頭をはたかれて、京楽はまたいじけだした。
「いいもんいいもん。どうせ僕はのけものだよ」
いい年をした大人が・・・それも、京楽のようなごついがたいの男がいじけていても、全然かわいくなかった。
京楽を放置して、海燕に浮竹は向き直る。
「とにかく、結婚記念日おめでとう、海燕。子供ができたら、ぜひ俺を名付け親にしてくれ」
「気が早いですよ隊長。まだ結婚して1年目だ。お互い忙しくて、子作りなんかそうそうできやしない」
「休暇が欲しいならいえよ。常識の範囲でなら、融通するから」
「ありがとうございます。ああ、都と新婚旅行に行けてないんで、来週から3日ほど休みもらっていいですか。ちょっと、現世の温泉に新婚旅行にいこうと思いまして」
「3日と言わす1週間休め!」
「でも、この前まとまった休暇もらたばっかだし、3日でいいです。それに隊長を一人にしたら、狼に食べれる羊を守る番人がいなくなるし、隊長の世話をしないと隊長のことだから昼ぐらいに起き出して、朝餉も食べずに昼餉だけ食べて仕事時間守らなさそうだし」
「俺って、そんなか?」
「はい。隊長の生活はだらだらしてます。びしっという人がいないと、昼寝とかするでしょう?勤務時間中に」
「う・・・・・・」
海燕がまとまった休暇をとっている間、浮竹は昼におきて、朝餉を食べずに仕事を昼からしだして、朝から起きている時勤務時間中に2時間ほど昼寝をしていた。
まぁ、仕事はちゃんと全部片すから、きつく怒られはしないのだが、他の護廷13隊の隊長がみたらなんていうか・・・。
病弱なのをいいことに、だらだらした生活を送ってしまうのも、事実だった。
「俺は心を入れ替える!ちゃんと朝に一人で起きて、昼寝もしない!」
「今年に入って、それ言うの5回目ですよ」
「う・・・・・・」
ずっと無視されている京楽は、お茶を飲んで縁側でぼーっとしていた。
「は~。存在を無視される隊長か。は~」
何かを悟ったような顔をしていた。
「海燕君、浮竹は僕が見ておくから、安心して新婚旅行にいっておいでよ」
「京楽隊長なら、確かに隊長をちゃんと起こしてくれるでしょうが、一緒になって仕事さぼって甘味屋にいったり、昼寝したり・・・・狼だし、心配ごとが多すぎて任せられません。俺がいない間の隊長の世話は、朽木に任せます」
「朽木ルキア・・・・白哉の義妹か」
「はい。いずれ、席官になると思っています。まだ13番隊にきたばかリで慣れてませんが、戦闘能力も高い。俺が自ら鍛えてやろうと思ってます」
「そうか。海燕に任せたら安心だな」
浮竹は笑った。
ああ、本当にこの人は陽だまりのような人だ。
海燕は思う。
京楽も、浮竹の笑顔にやられて、自然と微笑んでいた。
結局、海燕が新婚旅行にいった3日の間ルキアが浮竹の面倒を見ようとするのだが、京楽のいいようにいいくるめられてしまうのだった。
そして、狼である京楽に、美味しくいただかれる羊な浮竹の姿があったという。
妻である都と結婚して、ちょうど1年が経ったのだ。
浮竹は何をプレゼントしようと迷っていた。
海燕の好きなものはおはぎ。おはぎをあげるのもいいが、それではあまりにもいつもと変わらない。
そこで、京楽に頼んで現世の酒を購入した。
赤ワインとグラスとコースターを一式。
「京楽、海燕は喜んでくれるかな?」
「上官である君が心をこめてくれるものなら、例え安酒でも喜ぶだろうさ」
雨乾堂では、今日は浮竹は海燕の助けを借りず一人でおきた。少しでも仕事の負担を減らそうと、いつもは朝餉をもってきてもらうのだが、自分で取りに行った。
「隊長・・・・今日一体なんなんですか。全部自分で片付けようとして」
「ああ、いいんだ海燕。今日は特別だから、ほんとは休暇を与えたかったんだが、この前まとまった休暇を与えたばかりだから無理だったから、そのな、うん、なんていうか、今日の海燕には休んでほしいっていうか特別だから」
自分でも何を言っているのかよくわからなかった。
「海燕、結婚記念日おめでとう!」
花を、差し出した。
まるで、プロポーズみたいな。
見ていて、京楽がぴしりと凍り付いた。
「え、結婚記念日?・・・・ああ、俺と都、結婚して1年も経ったのか」
海燕は、そんなことすっかり忘れていた。
この前誕生日を祝ってもらったので、差し出された花をみてまた誕生日を間違えたのかと思った。でも違った。この上官は、自分でも忘れてしまうような結婚記念日をしっかり覚えていてくれたのだ。
嬉しさと恥ずかしさがない交ぜになって、海燕を襲う。
「隊長の、きもち、確かにうけとりました」
花を受け取る。
ピシリ。
その言動に、京楽がまた凍り付いた。
嬉しさと恥ずかしさがまざってドキマギしている二人を、べりっと無理やりはがして、浮竹を自分の後ろに隠す。
「いっとくけど、うちの子はあげませんからね!」
「いや、何言ってるんだあんた。隊長は俺の上官だ!」
「違う、僕のものだよ!」
「違う、俺の上官だ!」
「違う、僕のものだよ!」
「違う、俺の上官だ!」
二人して、ぜいぜいと言い争いを続けた。
「あのな。俺は俺だ。誰のものでもない」
浮竹が、呆れた声をだして京楽を押しのけた。
「結婚記念日のプレゼントがあるんだ。受け取ってくれるか、海燕」
「え、この花がそうじゃないんですか」
「それは、ただの挨拶みたいなものだ」
そう言って、赤ワインとグラスとコースターが入っている箱を渡した。
「こんな高そうなもの・・・・」
「お前にはいつも世話になってるからな!」
「ありがとうございます。グラスとかも2つあるようだし、今日帰って都と二人で飲みます」
「ああ、そうしてくれ」
この時代、西洋の酒は珍しいもので、尸魂界に置いていないわけではないが、目の飛び出るような値段がするので、京楽に頼んで現世から購入したのだ。
なんとか、京楽の給料の範囲で買えた。
「はー。うちの上官がどうしようもないって思ってたこと、撤回します」
「何、お前そんなこと思ってたのか!」
「だって、自分で起きないし、放っておいたら熱だすし、やっと下がってまだ安静にしてなきゃいけないのに甘味屋に出かけるわ、甘味物を食べたらその包み紙を放置してほったらかすわ
・・・・どうしようもない上官だけど」
浮竹が悲しそう顔をする。
「でも、陽だまりみたいで。誰にでも優しくて、死神としての矜持をもっていて、見た目は儚いけど芯は強くて、・・・この前、入ったばかりの朽木が隊長にミスってお茶ぶっかけた時も笑って許して・・・逆に濡れた朽木のこと心配して。もう、いろいろと、俺はあんたにメロメロなんですよ。13番隊の副隊長についてよかった。あんたの副官になれたこと、幸せです」
「海燕・・・」
じーんと感動して、浮竹はほろりと涙を浮かべた。
「あー!海燕君が浮竹泣かした!いーけないんだ、いけないんだ!」
京楽は、二人の上官と副官の在り方としての、いいムードをぶっ壊してくれた。
「京楽隊長、あんたは帰れ!」
「言っとくけど、その結婚記念日用のプレゼントも花も、僕が入手したんだからね。浮竹はお金出して、手配してくれと頼んできたんだけど、僕がいなきゃ手に入らなかったんだからね」
「京楽、今海燕といい話をしているんだ。ちょっと黙ってろ」
京楽は恋人である浮竹に冷たくあしらわれて、いじけだした。
「いいもんいいもん。呪いの藁人形で海燕君のこと呪ってやるんだから」
「京楽・・・・・」
仕方ないなと、海燕が見ている前で京楽を抱き締めて、キスをした。
「ちゃんと、お前にも感謝しているから。機嫌を直せ」
「浮竹・・・・もっとキスして」
「ん・・・んあっ」
どんどん浮竹を貪っていく京楽の頭を、海燕がはたいた。
「何するの!」
「あんたは、少し盛るの控えたらどうですか。先週あんたが隊長をしつこく抱いたせいで、隊長熱出しましたよ」
「え、ほんとなの」
「微熱だ。気にするな」
「でも、僕は浮竹を抱くよ。今日は抱かないけど」
「京楽隊長、あんたはダッチワイフでも抱いてろ!」
「何、浮竹のダッチワイフあるの!?あるならぜひ欲しいんだけど」
「京楽・・・・このあほ!」
恋人である浮竹にまで頭をはたかれて、京楽はまたいじけだした。
「いいもんいいもん。どうせ僕はのけものだよ」
いい年をした大人が・・・それも、京楽のようなごついがたいの男がいじけていても、全然かわいくなかった。
京楽を放置して、海燕に浮竹は向き直る。
「とにかく、結婚記念日おめでとう、海燕。子供ができたら、ぜひ俺を名付け親にしてくれ」
「気が早いですよ隊長。まだ結婚して1年目だ。お互い忙しくて、子作りなんかそうそうできやしない」
「休暇が欲しいならいえよ。常識の範囲でなら、融通するから」
「ありがとうございます。ああ、都と新婚旅行に行けてないんで、来週から3日ほど休みもらっていいですか。ちょっと、現世の温泉に新婚旅行にいこうと思いまして」
「3日と言わす1週間休め!」
「でも、この前まとまった休暇もらたばっかだし、3日でいいです。それに隊長を一人にしたら、狼に食べれる羊を守る番人がいなくなるし、隊長の世話をしないと隊長のことだから昼ぐらいに起き出して、朝餉も食べずに昼餉だけ食べて仕事時間守らなさそうだし」
「俺って、そんなか?」
「はい。隊長の生活はだらだらしてます。びしっという人がいないと、昼寝とかするでしょう?勤務時間中に」
「う・・・・・・」
海燕がまとまった休暇をとっている間、浮竹は昼におきて、朝餉を食べずに仕事を昼からしだして、朝から起きている時勤務時間中に2時間ほど昼寝をしていた。
まぁ、仕事はちゃんと全部片すから、きつく怒られはしないのだが、他の護廷13隊の隊長がみたらなんていうか・・・。
病弱なのをいいことに、だらだらした生活を送ってしまうのも、事実だった。
「俺は心を入れ替える!ちゃんと朝に一人で起きて、昼寝もしない!」
「今年に入って、それ言うの5回目ですよ」
「う・・・・・・」
ずっと無視されている京楽は、お茶を飲んで縁側でぼーっとしていた。
「は~。存在を無視される隊長か。は~」
何かを悟ったような顔をしていた。
「海燕君、浮竹は僕が見ておくから、安心して新婚旅行にいっておいでよ」
「京楽隊長なら、確かに隊長をちゃんと起こしてくれるでしょうが、一緒になって仕事さぼって甘味屋にいったり、昼寝したり・・・・狼だし、心配ごとが多すぎて任せられません。俺がいない間の隊長の世話は、朽木に任せます」
「朽木ルキア・・・・白哉の義妹か」
「はい。いずれ、席官になると思っています。まだ13番隊にきたばかリで慣れてませんが、戦闘能力も高い。俺が自ら鍛えてやろうと思ってます」
「そうか。海燕に任せたら安心だな」
浮竹は笑った。
ああ、本当にこの人は陽だまりのような人だ。
海燕は思う。
京楽も、浮竹の笑顔にやられて、自然と微笑んでいた。
結局、海燕が新婚旅行にいった3日の間ルキアが浮竹の面倒を見ようとするのだが、京楽のいいようにいいくるめられてしまうのだった。
そして、狼である京楽に、美味しくいただかれる羊な浮竹の姿があったという。
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白哉の誕生日
「ふあー」
一護が、大きな欠伸をした。
「どうした、眠いのか?」
ルキアが、心配気味に視線を送る。
「いや、昨日琥珀のやつがにゃんにゃんうるさくて・・・子猫は里子に出したけど、盛りみたいでさ」
「貴様も盛っているからな」
「ぉい!」
「ははは、冗談だ」
「ほんとに盛るぞこのやろう。今日の夜、どうだ?」
一護が、ルキアの細い腰に手を回し、誘ってきた。
「なっ」
自分から、「貴様も盛っているからな」と言っておきながら、ルキアは真っ赤になった。
「今日はだめだ!兄様の誕生日なのだ!」
「へ、白哉の?」
「そうだ。そんな日に逢瀬を重ねるなぞ、ダメなものはダメだ!」
「仕方ないな。でも、白哉の誕生日か・・・・何か贈り物、贈ったほうがいいよな」
「貴様も、何かプレゼントするのか?言っておくが、兄様は並大抵のことでは心を動かされぬぞ」
ルキアの言葉に思案する。
「ちょっと、心当たりがあるんだ。白哉の喜びそうなもの・・・・それよりルキア、好きだぜ。愛してる」
「あっ、一護・・・今日は兄様の誕生日だから・・・ああ!」
ルキアと、舌が絡む口づけを繰り返した。
その細い体を抱き締め、深く浅く口づけを繰り返す。
体の輪郭をなぞり、抱き締めた。
「あ、一護、好きだ・・・・・愛している」
体は重ねなかったが、思い切り甘い時間を、朝から過ごすのであった。
一護は、現世にやってきていた。
一万円札を手に、義骸に入ってスーパーに入ると、カラムーチョをこれでもかというほど買い込んだ。
「くくくく・・・・このカラムーチョの海に、白哉は沈むに違いない」
一護の心当たりとは、カラムーチョのことであった。
現世のお菓子で、名前の通り辛いお菓子だ。けっこう人気があって、ロングセラーになっている。
尸魂界に戻ると、無断で仕事を抜け出して現世にいったと、ルキアに怒られた。
カラムーチョはすでに、ルキアとの寝室に包みにおいて隠してある。
「聞いているのか一護!」
「ん?」
「ん?ではない!13番隊副隊長ともあろう者が、仕事を放りだして現世に遊びにいくなど、言語道断だ!」
ぷんぷんと怒るルキアは、かわいかった。
「ああ、ルキア、かわいいいな」
「なっ!」
ルキアは真っ赤になった。
「貴様、誤魔化そうとしてもそうはいかぬぞ!」
「かわいい。ルキア、かわいい」
琥珀が産んだ子猫たちもかわいかったが、ルキアだって負けないくらいにかわいい。
13番隊の執務室で、一護はルキアをかわいいといって、手放さなかった。
昼休みになって、真っ赤な顔のルキアが、一護の手から逃れようとしている。
「なんなのだ、今日の貴様は!」
「ん?なんかなー。白哉が生まれてこなければ、ルキアが朽木家の養子になることもなかったし、死神になってたとしても俺と出会うこともなかったって考えるとな・・・・」
「一護・・・・・・・」
「好きだ、ルキア」
「私も貴様が好きだ、一護」
昼餉をとって、休み時間は二人でラブラブイチャチャした。
1時になり、一護も気持ちを切り替えて仕事をしだす。先週虚退治をしたが、ルキアも一護も腕は鈍っていなかった。
たくさんの虚を切って、霊子に戻していった。
死神の業務が終わる6時まで仕事をし終えて、ルキアと手を繋ぎあいながら、朽木邸に・・・・一護にとっても、我が家に帰ってきた。
まず二人で一緒に湯浴みをした。
湯殿でもイチャイチャラブラブしていたが、風呂からあがるとルキアは気持ちを切り替えて、白哉の方を向いた。
「お誕生日おめでとうございます、兄様」
その日の夜は、朽木白哉のバースディパーティーが、ささやかながら行われた。
恋次も来ていた。
いつもより豪華な食事が用意される。
「隊長、お誕生日おめでとうございます」
酒も用意された。
一護は酒を飲みながら、そっけなく白哉にいった。
「誕生日おめでとう、白哉」
「ふん」
ルキアと恋次の誕生日おめでとうという言葉は素直に受け取っていたのに、一護にだけこうだ。
「ムキーー!」
抑えろ、俺!
一護は、なんとか我慢した。
ルキアが、白哉に誕生日プレゼントを渡す。わかめ大使の、寝袋だった。
「ほう、これはいいものだな」
「そうでしょう、兄様!これがあれば、虚退治の遠征の時でも安心して眠れます!」
今度が、恋次が誕生日プレゼントを渡した。
現世から取り寄せたワインだった。
「ほう、これはつまらぬものだな」
「そう言わないでくださいよ、隊長!取り寄せるのに苦労したんすよ」
「ワインなど、朽木家の財をもってすれば、いつでも取り寄せれる」
がっくりと、恋次は項垂れた。
そのまま、白哉は一護を無視して酒を飲みだした。
「おいこら白哉義兄様!俺からのプレゼントを受け取りやがれ!」
「兄の?どうせ、ゴミであろう」
「キーーーー!」
「猿」
「ムキーーー!じゃなくって、真面目に用意したんだよ、白哉。これだ」
カラムーチョとかかれたスナック菓子を、白哉に渡した。
「菓子?」
「そうだ。お前、辛いの好きだろ。現世の辛い菓子だ。珍しいだろ」
「このような安いもの・・・・」
「まぁ、一口でいいから、食べてみろよ」
何かの罠かと警戒しながら、白哉はカラムーチョの封を開けると、中身を口にした。
「こ、これは!」
ぽりぽり。
ぽりぽりぽり。
白哉は、あっという間にカラムーチョを食べ終えてしまった。
「兄にしては、よきものであった・・・・・・・」
名残おしそうに、カラムーチョの袋を見る白哉。
「1つじゃ足りないだろ!これ全部カラムーチョだ!」
大きな包みに入れた、カラムーチョの山を、一護は白哉にプレゼントした。
「兄は・・・・」
嬉しそうな表情の白夜。
今日ばかりは、嫌がらせもなしだ。
白哉、恋次、ルキア、一護のメンバーで、夜遅くまで食べて飲んだ。
結果、恋次は酔いつぶれ、白哉は酔った挙句眠り、ルキアはべろんべろんに酔って、一護だけが酒をセーブしていたので素面だった。
「にいさまぁ、誕生日ほめれとうごじゃいます」
酔っぱらったルキアを抱き上げて、一護がパーティーが終わりだとばかりに、一度寝室に去った。
寄ったルキアを寝室に置いきて、酔いつぶれた恋次を客間のベッドに寝かせて、眠ってしまった白哉に、毛布をかけた。
「はぁ・・・・眠っていたら、美人だしかわいいんだけどなぁ」
白哉はルキアを溺愛していて、結婚した一護にいつも嫌がらせをしてくる。
見た目と違い、根性がどこかひねくれていた。
寝室に戻ると、ルキアがふにゃふにゃ言っていた。
「いちごおおおお、貴様、兄様にとりいり、兄様の大切な操を奪おうとしておるな!」
「ぶっ!ありえねーから!」
「兄様はあの通り美人なのだ。女だけでなく男からも想いを寄せられて、困っておられのにゃああああ」
「そうなのか」
「ふにゃー。世界がまわっているぞ、いちごお」
「お前は、もういいから寝ろ」
「ふにゃ・・・・・・」
ルキアに口づけて、消灯する。
次の日の朝、朝餉は一護にだけデザートがついていたし、いつもより豪華だった。
「兄様、ご機嫌ですね!」
「一護、あの菓子はすばらしい。買い溜めをするから、何処で売っているのか白状せよ」
「いや、白状しなくても現世のスーパーやコンビニで普通に売ってるから」
「そうか・・・・・」
白哉は、カラムーチョがよっぽど気に入ったのだろう。
毎日、3時に食べていた。
菓子なので、昼餉を食べ、ちょうど小腹がすくおやつ時間に、好んでカラムーチョを食す白哉の姿が、6番隊の執務室でいつも見れるようになるのだった。
一護が、大きな欠伸をした。
「どうした、眠いのか?」
ルキアが、心配気味に視線を送る。
「いや、昨日琥珀のやつがにゃんにゃんうるさくて・・・子猫は里子に出したけど、盛りみたいでさ」
「貴様も盛っているからな」
「ぉい!」
「ははは、冗談だ」
「ほんとに盛るぞこのやろう。今日の夜、どうだ?」
一護が、ルキアの細い腰に手を回し、誘ってきた。
「なっ」
自分から、「貴様も盛っているからな」と言っておきながら、ルキアは真っ赤になった。
「今日はだめだ!兄様の誕生日なのだ!」
「へ、白哉の?」
「そうだ。そんな日に逢瀬を重ねるなぞ、ダメなものはダメだ!」
「仕方ないな。でも、白哉の誕生日か・・・・何か贈り物、贈ったほうがいいよな」
「貴様も、何かプレゼントするのか?言っておくが、兄様は並大抵のことでは心を動かされぬぞ」
ルキアの言葉に思案する。
「ちょっと、心当たりがあるんだ。白哉の喜びそうなもの・・・・それよりルキア、好きだぜ。愛してる」
「あっ、一護・・・今日は兄様の誕生日だから・・・ああ!」
ルキアと、舌が絡む口づけを繰り返した。
その細い体を抱き締め、深く浅く口づけを繰り返す。
体の輪郭をなぞり、抱き締めた。
「あ、一護、好きだ・・・・・愛している」
体は重ねなかったが、思い切り甘い時間を、朝から過ごすのであった。
一護は、現世にやってきていた。
一万円札を手に、義骸に入ってスーパーに入ると、カラムーチョをこれでもかというほど買い込んだ。
「くくくく・・・・このカラムーチョの海に、白哉は沈むに違いない」
一護の心当たりとは、カラムーチョのことであった。
現世のお菓子で、名前の通り辛いお菓子だ。けっこう人気があって、ロングセラーになっている。
尸魂界に戻ると、無断で仕事を抜け出して現世にいったと、ルキアに怒られた。
カラムーチョはすでに、ルキアとの寝室に包みにおいて隠してある。
「聞いているのか一護!」
「ん?」
「ん?ではない!13番隊副隊長ともあろう者が、仕事を放りだして現世に遊びにいくなど、言語道断だ!」
ぷんぷんと怒るルキアは、かわいかった。
「ああ、ルキア、かわいいいな」
「なっ!」
ルキアは真っ赤になった。
「貴様、誤魔化そうとしてもそうはいかぬぞ!」
「かわいい。ルキア、かわいい」
琥珀が産んだ子猫たちもかわいかったが、ルキアだって負けないくらいにかわいい。
13番隊の執務室で、一護はルキアをかわいいといって、手放さなかった。
昼休みになって、真っ赤な顔のルキアが、一護の手から逃れようとしている。
「なんなのだ、今日の貴様は!」
「ん?なんかなー。白哉が生まれてこなければ、ルキアが朽木家の養子になることもなかったし、死神になってたとしても俺と出会うこともなかったって考えるとな・・・・」
「一護・・・・・・・」
「好きだ、ルキア」
「私も貴様が好きだ、一護」
昼餉をとって、休み時間は二人でラブラブイチャチャした。
1時になり、一護も気持ちを切り替えて仕事をしだす。先週虚退治をしたが、ルキアも一護も腕は鈍っていなかった。
たくさんの虚を切って、霊子に戻していった。
死神の業務が終わる6時まで仕事をし終えて、ルキアと手を繋ぎあいながら、朽木邸に・・・・一護にとっても、我が家に帰ってきた。
まず二人で一緒に湯浴みをした。
湯殿でもイチャイチャラブラブしていたが、風呂からあがるとルキアは気持ちを切り替えて、白哉の方を向いた。
「お誕生日おめでとうございます、兄様」
その日の夜は、朽木白哉のバースディパーティーが、ささやかながら行われた。
恋次も来ていた。
いつもより豪華な食事が用意される。
「隊長、お誕生日おめでとうございます」
酒も用意された。
一護は酒を飲みながら、そっけなく白哉にいった。
「誕生日おめでとう、白哉」
「ふん」
ルキアと恋次の誕生日おめでとうという言葉は素直に受け取っていたのに、一護にだけこうだ。
「ムキーー!」
抑えろ、俺!
一護は、なんとか我慢した。
ルキアが、白哉に誕生日プレゼントを渡す。わかめ大使の、寝袋だった。
「ほう、これはいいものだな」
「そうでしょう、兄様!これがあれば、虚退治の遠征の時でも安心して眠れます!」
今度が、恋次が誕生日プレゼントを渡した。
現世から取り寄せたワインだった。
「ほう、これはつまらぬものだな」
「そう言わないでくださいよ、隊長!取り寄せるのに苦労したんすよ」
「ワインなど、朽木家の財をもってすれば、いつでも取り寄せれる」
がっくりと、恋次は項垂れた。
そのまま、白哉は一護を無視して酒を飲みだした。
「おいこら白哉義兄様!俺からのプレゼントを受け取りやがれ!」
「兄の?どうせ、ゴミであろう」
「キーーーー!」
「猿」
「ムキーーー!じゃなくって、真面目に用意したんだよ、白哉。これだ」
カラムーチョとかかれたスナック菓子を、白哉に渡した。
「菓子?」
「そうだ。お前、辛いの好きだろ。現世の辛い菓子だ。珍しいだろ」
「このような安いもの・・・・」
「まぁ、一口でいいから、食べてみろよ」
何かの罠かと警戒しながら、白哉はカラムーチョの封を開けると、中身を口にした。
「こ、これは!」
ぽりぽり。
ぽりぽりぽり。
白哉は、あっという間にカラムーチョを食べ終えてしまった。
「兄にしては、よきものであった・・・・・・・」
名残おしそうに、カラムーチョの袋を見る白哉。
「1つじゃ足りないだろ!これ全部カラムーチョだ!」
大きな包みに入れた、カラムーチョの山を、一護は白哉にプレゼントした。
「兄は・・・・」
嬉しそうな表情の白夜。
今日ばかりは、嫌がらせもなしだ。
白哉、恋次、ルキア、一護のメンバーで、夜遅くまで食べて飲んだ。
結果、恋次は酔いつぶれ、白哉は酔った挙句眠り、ルキアはべろんべろんに酔って、一護だけが酒をセーブしていたので素面だった。
「にいさまぁ、誕生日ほめれとうごじゃいます」
酔っぱらったルキアを抱き上げて、一護がパーティーが終わりだとばかりに、一度寝室に去った。
寄ったルキアを寝室に置いきて、酔いつぶれた恋次を客間のベッドに寝かせて、眠ってしまった白哉に、毛布をかけた。
「はぁ・・・・眠っていたら、美人だしかわいいんだけどなぁ」
白哉はルキアを溺愛していて、結婚した一護にいつも嫌がらせをしてくる。
見た目と違い、根性がどこかひねくれていた。
寝室に戻ると、ルキアがふにゃふにゃ言っていた。
「いちごおおおお、貴様、兄様にとりいり、兄様の大切な操を奪おうとしておるな!」
「ぶっ!ありえねーから!」
「兄様はあの通り美人なのだ。女だけでなく男からも想いを寄せられて、困っておられのにゃああああ」
「そうなのか」
「ふにゃー。世界がまわっているぞ、いちごお」
「お前は、もういいから寝ろ」
「ふにゃ・・・・・・」
ルキアに口づけて、消灯する。
次の日の朝、朝餉は一護にだけデザートがついていたし、いつもより豪華だった。
「兄様、ご機嫌ですね!」
「一護、あの菓子はすばらしい。買い溜めをするから、何処で売っているのか白状せよ」
「いや、白状しなくても現世のスーパーやコンビニで普通に売ってるから」
「そうか・・・・・」
白哉は、カラムーチョがよっぽど気に入ったのだろう。
毎日、3時に食べていた。
菓子なので、昼餉を食べ、ちょうど小腹がすくおやつ時間に、好んでカラムーチョを食す白哉の姿が、6番隊の執務室でいつも見れるようになるのだった。
見合いの後に
「隊長・・・・顔が朱い。熱あるんじゃないっすか?」
恋次は、6番隊の執務室で、白哉の額に額を当てた。
「うお、まじで熱あるじゃないですか!そんな涼しい顔していないで、屋敷に戻って寝てください!」
「熱など・・・あるのか?」
自分では分からなかった。
ただ、少し気温が暑いと感じただけだった。
立ち上がろうとして、眩暈をおこしてふらついた。
「危ない!」
恋次がその細い体を抱き寄せる。
「う・・・」
寒気を感じて、だんだん体が熱くなってきた。
「すまぬ、恋次。屋敷までもちそうにない・・・隊首室で寝る」
6番隊の隊首室は、恋次が使っていた。
白哉には屋敷があるし、恋次も席官クラス以上が屋敷を構える住宅街に、一応自分の屋敷をもってういたが、滅多なことがない限り使わない。掃除は時折するが、誰かが住んでいる匂いなど全くしなかった。
隊首室のベッドに、白哉は横になった。
恋次が、いつも自分の額に巻いているタオルのうち、新しいのを1枚だしてきて、水に濡らして白哉の額に置いた。
それから、朽木邸にいき、医者を呼んできた。
「ただ疲労からくるものでございます。解熱剤を飲んで数時間もすれば、熱も直にさがりましょう。薬はここに置いておきますので。白哉様、どうか無理などはなさらずに・・・・」
「薬、飲めそうっすか?」
「無理だ・・・・だるい」
恋次は、解熱剤を口にしてかみ砕くと、水を含んで白哉に口移しで与えた。
「んっ・・・・・」
熱に潤んだ射干玉の瞳に、押し倒しそうになって恋次はおし留まる。
隊長は、今は病人なのだ。
「寝れそうですか」
「ああ。ここはお前の匂いがする。まるで、恋次に抱かれているようだ・・・・・」
熱のせいで、自分が何を言っているのか分からないのかとも思ったが、そこまで重症ではなかった。
「少し、眠る・・・・・・」
スースーと、静かな寝息を立て始めた白哉の髪に手をやると、艶のあるそれは驚くほど柔らかくてサラサラだった。
男とにしては整いすぎた美貌が、今は色を少し失い、動かない。
このままずっと動かないような気がして、頬に手を当てる。
暖かかった。
白哉の顔を、飽きもしないで4時間ほど見つめていた。
「ん・・・・」
「隊長!」
「恋次か。まさか、ずっと私についていたのか?」
「はい」
「退屈であったであろうに」
「そんなことありません。あんたの寝顔を見ていると、自然と穏やかなきもちになれるんです。もう、熱は大丈夫なんすか?」
「ああ、心配をかけた」
つい先日、白哉は見合いをした。
恋次がしゃしゃり出て、めちゃくちゃにしたのだが、あの時の夜はお互いを求め合うように抱いた。
でも、まだ抱き足りないのだ。
「なぁ・・・あんたを今すぐ抱きたいって言ったら、あんたはどうしますか。あの見合いの夜は、長くなると思ったけど、一度しか抱かせてもらえませんでした。ねぇ、隊長・・・」
「一度、なら。今抱いてもいい」
「まじっすか!」
恋次は、白哉を押し倒していた。
「そのように、思い詰めて・・・・すまぬ、あの日は私は緋真を想うあまりお前にあまり構ってやれなかった」
「隊長、好きです」
隊長羽織を脱がせて、死覇装を脱がせていく。
しなやかな筋肉のついた、細い肢体が露わになる。
「あまり、見るな・・・・」
「無理言わないでください」
キスをすると、白哉はもっととねだってきた。
「ん・・・んあ・・・・・」
舌が絡みあう。飲み込み切れなかった唾液が、顎を伝った。
「隊長!好きだ、愛してる!」
あの、見合いの夜を思いだす。
シイナという女は、男腹で子を成せばほぼ100%男児を産むという。上流貴族の姫であるが、4大貴族の白哉と縁続きになれるのであれば、妾でもいいと言っていた。
白哉が唯一愛した人・・・・・今は亡き、緋真によく似ていた。
でも、性格が全然ちがった。
恋次には緋真の性格がどんなものであったかは、白哉がたまに語る思い出話でしか分からないけど、少なくとも恋次のような者に、「下賤」などと言わない。
恋次を「下賤な死神風情」と言ったあの言葉がきっかけで、白哉はああこのシイナという女はやはり緋真ではないのだと分からせてくれた。
「あっ、恋次」
一度だけと言われているし、熱が下がったばかりなのだ。
あまり、無理はさせられない。
白哉の自分のものと同じ物に見えない花茎に手をかけてしごくと、それがゆっくりと顔をもたげて、先走りの蜜を零した。
「ああああ!」
快感に、頭が支配される。
恋次は、白哉のものを逡巡もせず口に含んだ。
「ひあう!」
ねっとりとした熱い口の中に含まれて、じゅぷじゅぷと口淫されて、白哉はゆっくりではあるが、白濁した液体を恋次の口の中に放っていた。
「んあああ!」
潤滑油を手にとり、指にかけて蕾に指を侵入させる。
「んっ」
中で指をばらばらに動かすと、一つが前立腺を刺激した。
「あう!」
「ここが、いいんすね?」
「ああっ、恋次!」
こりこりと、前立腺を指でひっかいてやった。
「やああああ!」
びくんと、白哉の体が痙攣したが、精液がでていない。ドライのオーガズムでいったとわかり、そんな淫らな身体にしたのが自分だと分かって、恋次は満足そうだった。
全身にキスの雨を降らせると、白哉は夜鴉のように艶のある瞳でこちらを見てきた。
「私を、犯したいのであろう。好きにせよ」
「隊長、あんたって人は・・・・」
ぐちゅりと、音を立てて、穿った。
「あああ!」
深く深く挿入し、引き戻しては浅い部分をくちゃくちゃと音を立てて突き上げた。
「んあああ・・・・・・」
前立腺ばかりをしつこく、ぐちゅりとすりあげると、白哉はだらだらと先走りの蜜を零した。
「ここをこんなにして・・・・悪い子だ・・・・」
「ああ、ああん!」
紐で、白哉の前を戒めた。
「やあ、いきたい!」
「だめ」
突き上げると、びくんと白哉の体がはねた。
一度だけなのだ。
堪能するしかない。
「隊長好きです、愛してます!」
ぐちゃぐちゃと犯していくと、いきたいのにいけなくて、白哉は生理的な涙を滲ませていた。
「イきましょう、一緒に」
「あ、恋次・・・・・」
最奥を突き上げて白哉の中に熱を放つのと、白哉の前の戒めを解いてやるのが同時だった。
体を痙攣させて、長く白哉は射精した。
「ひあああああ!」
快感で頭が真っ白になる。
何も考えられくなって、意識を白哉は手放した。
「隊長・・・・・・」
意識を失った白哉にキスをして、恋次は白哉から引き抜いた。まだ硬さを保っている。あと2回くらいはいけそうだったが、白哉の体がもたないだろう。
引きびいた場所から、トロリと恋次が白哉の中に吐き出した欲望が、白哉の太腿を伝っていった。
ああ。
もっともっと、ぐちゃぐちゃに犯したい。
泣いて、やめてくれと何度も懇願されるくらいに。
恋次は、白哉のイった時の顔を思い浮かべながら、2回ほど自分で抜いて、すっきりした。
白哉を裸のままでいさせるわけにはいかないので、額に置いて横にどけていた濡れたタオルを手にとって、白哉との情事の痕を消し去って、白哉の中に放ったものをかきだしてふいて、死覇装と隊長羽織を着せた。
毛布をかけて、恋次もその横で眠った。
「ん・・・・・・」
白哉が起きた時、夜になっていた。
5時間は意識を飛ばして眠っていたのだ。
ズキリと痛む腰に眉を寄せながら、爆睡している恋次を起こす。
「恋次、恋次、起きよ」
「んー隊長大好きーーー」
「この愚か者!」
真っ赤な紅蓮の髪を思い切りひっぱると、恋次は飛び起きた。
「隊長!」
「恋次、私は朽木邸に戻りたい・・・・だが、足腰が立たぬのだ」
1回だけの交わりであったが、長くしつこかったので、白哉は腰を痛めてしまった。
「俺が送ります!」
横抱きにされて、瞬歩で朽木邸にまで向かう。
「好きだ、恋次」
「!」
あやうく、白哉を落としそうになった。
「隊長、卑怯ですよ!」
「ふふ・・・・・」
かすかな笑みを、白哉は零す。
それは、幸せに満ちた笑みで、恋次が顔を朱くしながら、白哉を朽木邸にまで届けるのであった。
恋次は、6番隊の執務室で、白哉の額に額を当てた。
「うお、まじで熱あるじゃないですか!そんな涼しい顔していないで、屋敷に戻って寝てください!」
「熱など・・・あるのか?」
自分では分からなかった。
ただ、少し気温が暑いと感じただけだった。
立ち上がろうとして、眩暈をおこしてふらついた。
「危ない!」
恋次がその細い体を抱き寄せる。
「う・・・」
寒気を感じて、だんだん体が熱くなってきた。
「すまぬ、恋次。屋敷までもちそうにない・・・隊首室で寝る」
6番隊の隊首室は、恋次が使っていた。
白哉には屋敷があるし、恋次も席官クラス以上が屋敷を構える住宅街に、一応自分の屋敷をもってういたが、滅多なことがない限り使わない。掃除は時折するが、誰かが住んでいる匂いなど全くしなかった。
隊首室のベッドに、白哉は横になった。
恋次が、いつも自分の額に巻いているタオルのうち、新しいのを1枚だしてきて、水に濡らして白哉の額に置いた。
それから、朽木邸にいき、医者を呼んできた。
「ただ疲労からくるものでございます。解熱剤を飲んで数時間もすれば、熱も直にさがりましょう。薬はここに置いておきますので。白哉様、どうか無理などはなさらずに・・・・」
「薬、飲めそうっすか?」
「無理だ・・・・だるい」
恋次は、解熱剤を口にしてかみ砕くと、水を含んで白哉に口移しで与えた。
「んっ・・・・・」
熱に潤んだ射干玉の瞳に、押し倒しそうになって恋次はおし留まる。
隊長は、今は病人なのだ。
「寝れそうですか」
「ああ。ここはお前の匂いがする。まるで、恋次に抱かれているようだ・・・・・」
熱のせいで、自分が何を言っているのか分からないのかとも思ったが、そこまで重症ではなかった。
「少し、眠る・・・・・・」
スースーと、静かな寝息を立て始めた白哉の髪に手をやると、艶のあるそれは驚くほど柔らかくてサラサラだった。
男とにしては整いすぎた美貌が、今は色を少し失い、動かない。
このままずっと動かないような気がして、頬に手を当てる。
暖かかった。
白哉の顔を、飽きもしないで4時間ほど見つめていた。
「ん・・・・」
「隊長!」
「恋次か。まさか、ずっと私についていたのか?」
「はい」
「退屈であったであろうに」
「そんなことありません。あんたの寝顔を見ていると、自然と穏やかなきもちになれるんです。もう、熱は大丈夫なんすか?」
「ああ、心配をかけた」
つい先日、白哉は見合いをした。
恋次がしゃしゃり出て、めちゃくちゃにしたのだが、あの時の夜はお互いを求め合うように抱いた。
でも、まだ抱き足りないのだ。
「なぁ・・・あんたを今すぐ抱きたいって言ったら、あんたはどうしますか。あの見合いの夜は、長くなると思ったけど、一度しか抱かせてもらえませんでした。ねぇ、隊長・・・」
「一度、なら。今抱いてもいい」
「まじっすか!」
恋次は、白哉を押し倒していた。
「そのように、思い詰めて・・・・すまぬ、あの日は私は緋真を想うあまりお前にあまり構ってやれなかった」
「隊長、好きです」
隊長羽織を脱がせて、死覇装を脱がせていく。
しなやかな筋肉のついた、細い肢体が露わになる。
「あまり、見るな・・・・」
「無理言わないでください」
キスをすると、白哉はもっととねだってきた。
「ん・・・んあ・・・・・」
舌が絡みあう。飲み込み切れなかった唾液が、顎を伝った。
「隊長!好きだ、愛してる!」
あの、見合いの夜を思いだす。
シイナという女は、男腹で子を成せばほぼ100%男児を産むという。上流貴族の姫であるが、4大貴族の白哉と縁続きになれるのであれば、妾でもいいと言っていた。
白哉が唯一愛した人・・・・・今は亡き、緋真によく似ていた。
でも、性格が全然ちがった。
恋次には緋真の性格がどんなものであったかは、白哉がたまに語る思い出話でしか分からないけど、少なくとも恋次のような者に、「下賤」などと言わない。
恋次を「下賤な死神風情」と言ったあの言葉がきっかけで、白哉はああこのシイナという女はやはり緋真ではないのだと分からせてくれた。
「あっ、恋次」
一度だけと言われているし、熱が下がったばかりなのだ。
あまり、無理はさせられない。
白哉の自分のものと同じ物に見えない花茎に手をかけてしごくと、それがゆっくりと顔をもたげて、先走りの蜜を零した。
「ああああ!」
快感に、頭が支配される。
恋次は、白哉のものを逡巡もせず口に含んだ。
「ひあう!」
ねっとりとした熱い口の中に含まれて、じゅぷじゅぷと口淫されて、白哉はゆっくりではあるが、白濁した液体を恋次の口の中に放っていた。
「んあああ!」
潤滑油を手にとり、指にかけて蕾に指を侵入させる。
「んっ」
中で指をばらばらに動かすと、一つが前立腺を刺激した。
「あう!」
「ここが、いいんすね?」
「ああっ、恋次!」
こりこりと、前立腺を指でひっかいてやった。
「やああああ!」
びくんと、白哉の体が痙攣したが、精液がでていない。ドライのオーガズムでいったとわかり、そんな淫らな身体にしたのが自分だと分かって、恋次は満足そうだった。
全身にキスの雨を降らせると、白哉は夜鴉のように艶のある瞳でこちらを見てきた。
「私を、犯したいのであろう。好きにせよ」
「隊長、あんたって人は・・・・」
ぐちゅりと、音を立てて、穿った。
「あああ!」
深く深く挿入し、引き戻しては浅い部分をくちゃくちゃと音を立てて突き上げた。
「んあああ・・・・・・」
前立腺ばかりをしつこく、ぐちゅりとすりあげると、白哉はだらだらと先走りの蜜を零した。
「ここをこんなにして・・・・悪い子だ・・・・」
「ああ、ああん!」
紐で、白哉の前を戒めた。
「やあ、いきたい!」
「だめ」
突き上げると、びくんと白哉の体がはねた。
一度だけなのだ。
堪能するしかない。
「隊長好きです、愛してます!」
ぐちゃぐちゃと犯していくと、いきたいのにいけなくて、白哉は生理的な涙を滲ませていた。
「イきましょう、一緒に」
「あ、恋次・・・・・」
最奥を突き上げて白哉の中に熱を放つのと、白哉の前の戒めを解いてやるのが同時だった。
体を痙攣させて、長く白哉は射精した。
「ひあああああ!」
快感で頭が真っ白になる。
何も考えられくなって、意識を白哉は手放した。
「隊長・・・・・・」
意識を失った白哉にキスをして、恋次は白哉から引き抜いた。まだ硬さを保っている。あと2回くらいはいけそうだったが、白哉の体がもたないだろう。
引きびいた場所から、トロリと恋次が白哉の中に吐き出した欲望が、白哉の太腿を伝っていった。
ああ。
もっともっと、ぐちゃぐちゃに犯したい。
泣いて、やめてくれと何度も懇願されるくらいに。
恋次は、白哉のイった時の顔を思い浮かべながら、2回ほど自分で抜いて、すっきりした。
白哉を裸のままでいさせるわけにはいかないので、額に置いて横にどけていた濡れたタオルを手にとって、白哉との情事の痕を消し去って、白哉の中に放ったものをかきだしてふいて、死覇装と隊長羽織を着せた。
毛布をかけて、恋次もその横で眠った。
「ん・・・・・・」
白哉が起きた時、夜になっていた。
5時間は意識を飛ばして眠っていたのだ。
ズキリと痛む腰に眉を寄せながら、爆睡している恋次を起こす。
「恋次、恋次、起きよ」
「んー隊長大好きーーー」
「この愚か者!」
真っ赤な紅蓮の髪を思い切りひっぱると、恋次は飛び起きた。
「隊長!」
「恋次、私は朽木邸に戻りたい・・・・だが、足腰が立たぬのだ」
1回だけの交わりであったが、長くしつこかったので、白哉は腰を痛めてしまった。
「俺が送ります!」
横抱きにされて、瞬歩で朽木邸にまで向かう。
「好きだ、恋次」
「!」
あやうく、白哉を落としそうになった。
「隊長、卑怯ですよ!」
「ふふ・・・・・」
かすかな笑みを、白哉は零す。
それは、幸せに満ちた笑みで、恋次が顔を朱くしながら、白哉を朽木邸にまで届けるのであった。
浮竹死んだけど幽霊です憑いてます13 水浴びと西瓜
夏だった。
8月の半ば。
その年の尸魂界は、記録的な猛暑で、40度をこした。
「暑いー死ぬー」
1番隊の執務室で、じわじわとした暑さにやられた京楽は、死にかけていた。
エアコンが故障したのだ。
扇風機が生き残ったので、風を送るが生暖かい風だけがやってきた。
「浮竹は、こういう時いいねぇ。温度をかんじないんでしょ?」
「ああ。寒いとか暑いとかないな。便利だぞ」
「僕もなれるものなら幽霊になりたい・・・・」
「だめだぞ、京楽。そうだ、水あびでもするか?」
「お、いいね」
そんなこんなで、じわじわと暑い外に出て、水を浴びた。浮竹も水着姿になって、実体化して水を浴びた。
実体化すると温度を感じるので、汗を流した。
「ああ、きもちいい」
「本当。井戸水だから、水道の水みたいにぬるくなってないし、最高だね」
冷蔵庫には、スイカを冷やしてある。
水を浴びている間に、技術開発局の阿近に来てもらい、エアコンの修理を頼んでいた。
水遊びが終わる頃には、エアコンも直っているだろう。
「はっくしょん」
冷えた井戸水の冷たさに、浮竹がくしゃみをした。
幽霊になってからというもの、熱もでないし、血を吐くこともない。元気そのものだ。
「実体化してると、風邪ひいちゃうのかな?もしひいたら、霊体化した時もひいたまなのかな?」
「さぁ、どうだろう。俺は、そろそろ水浴びを終わらせる」
暑いが、黒い死覇装を着て、隊長羽織を羽織って、すーっと透明になって霊体化した。
「僕は、もう少し涼んどく」
海パン一丁の京楽は、毛がもじゃもじゃだった。
ぱしゃりと音を立てて、水遊びをする京楽を、浮竹は隣にいながら眺めていた。
「涼しいか?」
「うん。井戸水がよく冷えていて気持ちいいよ。この暑さだ・・・・水道水だと、ぬるくてねぇ」
「そろそろ、エアコンの修理も終わっているんじゃないか?それにしても・・・・昔はエアコンなんてなかったから、暑いのは当たり前だったけど、一度文明の利器に慣れると、どうしても昔のように戻ることができなくなるな」
エアコンには電気がいる。
発電機を、それぞれの隊舎に置いてあった。
「京楽総隊長、浮竹隊長、エアコンの修理終わりましたよ」
「お、ありがとう阿近君」
「ありがとう、阿近副隊長。そうだ、スイカが冷えているから、食べていかないか?」
「いいんですか?」
「いいだろう、京楽?」
「勿論だよ」
エアコンで室内の温度を28度くらいに保ちながら、冷蔵庫から冷えたスイカをもってくる。包丁がなかったので、斬魄刀で切った。
綺麗に三等分にカットする。
「今年のスイカはちょっと高いけど、甘くておいしいんだよねぇ」
京楽がかぶりつく。
逡巡したが、阿近もかぶりついた。
浮竹はというと、器用に赤い果肉の部分だけを食べていく。赤い部分だけが消えていき、皮と種だけが残った。
「なんていうか、本当に便利な幽霊ですね。涅隊長が実験体に欲しがるわけだ」
「いくら欲しがっても、うちの子はあげませんからね!」
「いや、いりませんから・・・・」
午後になって、暇なので白哉の家に遊びにいった。
朽木邸ではエアコンは、静かにかけられていて、涼しくも暑くもなかった。
「白哉、その恰好で暑くないか?」
死覇装に隊長羽織姿の白哉は、書道で何か文字を書いていた。
死覇装の上から、上着を着ていたのだ。
「浮竹か・・・・エアコンが利きすぎるのだ。かといって切ると、暑い」
暑いと、文字を書く。
達筆だった。
次に書いた文字は、浮竹十四郎。そばに、わかめ大使も書かれた。
「わかめ大使を用意してある。自由に食せ」
「お、すまないな」
「京楽総隊長は、機嫌が悪そうだな」
「だって君たち、仲良すぎ」
エアコンが適度に利いた室内で、浮竹は京楽に憑いてはいるのだが、最近は10メートルくらい離れてもどうってことないようになってきたので、わかめ大使が用意されてある部屋にいくと、さっさっと食した。食べたものは消える。
10個くらい食べて、なくなった。
「白哉、もう少し食べたい」
「戸棚の中にある。勝手に出して食せ」
実体化して、戸棚からもう10個くらいわかめ大使を出すと、袋を破って食べていく。
京楽は、部屋の隅で白哉が書道をしている姿をただ見ていた。
「面白くもなかろう。浮竹のところに行けばいい」
「そうするよ」
白哉も、大戦で一時が命が危ぶまれたが、なんとか繋がった。
浮竹は、その命を散らせたが。
浮竹が死んだその日は、何も喉を通らず、その夜密かに泣いた。
数百年連れ添った、最も愛した相手が死んだのだ。泣き叫ばないだけましだった。
京楽総隊長に、その頃すでになっていた。
一番上に立つ自分が泣いているままではいかなくて、戦い、大戦が終了した後は復興に尽力し、がむしゃらに生きた。
ある日、幽霊の浮竹がとり憑いた。
その日から、色を失っていた世界が鮮やかな色を取り戻した。
最初は成仏させるために、供養やらお祓いまでしたが、今は成仏してほしくない。
浮竹には悪いけれど、このまま幽霊として、時に実体化して体を交わせ、愛を紡ぎながら生きることを改めて誓う京楽だった。
8月の半ば。
その年の尸魂界は、記録的な猛暑で、40度をこした。
「暑いー死ぬー」
1番隊の執務室で、じわじわとした暑さにやられた京楽は、死にかけていた。
エアコンが故障したのだ。
扇風機が生き残ったので、風を送るが生暖かい風だけがやってきた。
「浮竹は、こういう時いいねぇ。温度をかんじないんでしょ?」
「ああ。寒いとか暑いとかないな。便利だぞ」
「僕もなれるものなら幽霊になりたい・・・・」
「だめだぞ、京楽。そうだ、水あびでもするか?」
「お、いいね」
そんなこんなで、じわじわと暑い外に出て、水を浴びた。浮竹も水着姿になって、実体化して水を浴びた。
実体化すると温度を感じるので、汗を流した。
「ああ、きもちいい」
「本当。井戸水だから、水道の水みたいにぬるくなってないし、最高だね」
冷蔵庫には、スイカを冷やしてある。
水を浴びている間に、技術開発局の阿近に来てもらい、エアコンの修理を頼んでいた。
水遊びが終わる頃には、エアコンも直っているだろう。
「はっくしょん」
冷えた井戸水の冷たさに、浮竹がくしゃみをした。
幽霊になってからというもの、熱もでないし、血を吐くこともない。元気そのものだ。
「実体化してると、風邪ひいちゃうのかな?もしひいたら、霊体化した時もひいたまなのかな?」
「さぁ、どうだろう。俺は、そろそろ水浴びを終わらせる」
暑いが、黒い死覇装を着て、隊長羽織を羽織って、すーっと透明になって霊体化した。
「僕は、もう少し涼んどく」
海パン一丁の京楽は、毛がもじゃもじゃだった。
ぱしゃりと音を立てて、水遊びをする京楽を、浮竹は隣にいながら眺めていた。
「涼しいか?」
「うん。井戸水がよく冷えていて気持ちいいよ。この暑さだ・・・・水道水だと、ぬるくてねぇ」
「そろそろ、エアコンの修理も終わっているんじゃないか?それにしても・・・・昔はエアコンなんてなかったから、暑いのは当たり前だったけど、一度文明の利器に慣れると、どうしても昔のように戻ることができなくなるな」
エアコンには電気がいる。
発電機を、それぞれの隊舎に置いてあった。
「京楽総隊長、浮竹隊長、エアコンの修理終わりましたよ」
「お、ありがとう阿近君」
「ありがとう、阿近副隊長。そうだ、スイカが冷えているから、食べていかないか?」
「いいんですか?」
「いいだろう、京楽?」
「勿論だよ」
エアコンで室内の温度を28度くらいに保ちながら、冷蔵庫から冷えたスイカをもってくる。包丁がなかったので、斬魄刀で切った。
綺麗に三等分にカットする。
「今年のスイカはちょっと高いけど、甘くておいしいんだよねぇ」
京楽がかぶりつく。
逡巡したが、阿近もかぶりついた。
浮竹はというと、器用に赤い果肉の部分だけを食べていく。赤い部分だけが消えていき、皮と種だけが残った。
「なんていうか、本当に便利な幽霊ですね。涅隊長が実験体に欲しがるわけだ」
「いくら欲しがっても、うちの子はあげませんからね!」
「いや、いりませんから・・・・」
午後になって、暇なので白哉の家に遊びにいった。
朽木邸ではエアコンは、静かにかけられていて、涼しくも暑くもなかった。
「白哉、その恰好で暑くないか?」
死覇装に隊長羽織姿の白哉は、書道で何か文字を書いていた。
死覇装の上から、上着を着ていたのだ。
「浮竹か・・・・エアコンが利きすぎるのだ。かといって切ると、暑い」
暑いと、文字を書く。
達筆だった。
次に書いた文字は、浮竹十四郎。そばに、わかめ大使も書かれた。
「わかめ大使を用意してある。自由に食せ」
「お、すまないな」
「京楽総隊長は、機嫌が悪そうだな」
「だって君たち、仲良すぎ」
エアコンが適度に利いた室内で、浮竹は京楽に憑いてはいるのだが、最近は10メートルくらい離れてもどうってことないようになってきたので、わかめ大使が用意されてある部屋にいくと、さっさっと食した。食べたものは消える。
10個くらい食べて、なくなった。
「白哉、もう少し食べたい」
「戸棚の中にある。勝手に出して食せ」
実体化して、戸棚からもう10個くらいわかめ大使を出すと、袋を破って食べていく。
京楽は、部屋の隅で白哉が書道をしている姿をただ見ていた。
「面白くもなかろう。浮竹のところに行けばいい」
「そうするよ」
白哉も、大戦で一時が命が危ぶまれたが、なんとか繋がった。
浮竹は、その命を散らせたが。
浮竹が死んだその日は、何も喉を通らず、その夜密かに泣いた。
数百年連れ添った、最も愛した相手が死んだのだ。泣き叫ばないだけましだった。
京楽総隊長に、その頃すでになっていた。
一番上に立つ自分が泣いているままではいかなくて、戦い、大戦が終了した後は復興に尽力し、がむしゃらに生きた。
ある日、幽霊の浮竹がとり憑いた。
その日から、色を失っていた世界が鮮やかな色を取り戻した。
最初は成仏させるために、供養やらお祓いまでしたが、今は成仏してほしくない。
浮竹には悪いけれど、このまま幽霊として、時に実体化して体を交わせ、愛を紡ぎながら生きることを改めて誓う京楽だった。
浮竹死んだけど幽霊です憑いてます12 涅チャンネル
夏になった。
じわじわと汗ばむ季節。
みーんみーんと蝉の鳴く声がうるさかった。
「ああ、極楽だ・・・・・・」
外は暑い。
でも、室内は涼しい。えあこんなるものとせんぷうきなるものが1番隊の執務室に備え付けられて、それで浮竹も京楽も涼んでいた。
おまけに、京楽の手にはアイスクリーム。
京楽が食べていく他にもそれを浮竹が食べて、さっさっとアイスが減っていく。
「このエアコン。凄いな」
「冬には暖房もつくんだって」
「現世の文明ははかりしれない・・・・・・」
浦原が尸魂界に来るようになって、現世のものが一気になだれ込んだ。
それに負けないように、12番隊の技術開発局でもいろいろ発明されていて、涅マユリは伝令神機を顔が映るようにもしたし、ホログラムが出るようにもした。
「この伝令神機・・・・俺たちが死神になった頃にはなかったけど隊長となってもつようになったが、随分変わったな」
動画も見れるし、現世のネットサーフィンもできるし、音楽も聞ける。
今も、伝令神機で音楽を鳴らしていた。
最近現世で有名なアイドルグループの歌だ。動画が、ホログラムとして再生される。
「あ、この真ん中の子かわいい」
京楽のその言葉に、浮竹はむっとなる。
「どうせ、俺はアイドルグループの女の子のようなかわいさはないさ」
「あれ、浮竹嫉妬してるの~~~?」
京楽が、にまにまとこっちを向いてくる。
「さぁな」
「もう、浮竹かわいいーーー!」
技術開発局に開発してもらった、霊体に触れる手袋をして、京楽は手で浮竹を撫でまくった。
「ふあ・・・変なとこ、さわるなぁ・・・・きゃう!」
漏れてしまった声に、浮竹が自分の口を手で閉じる。
「かわいい~~~~~~」
京楽は、大分夏の暑さで頭がいっているらしかった。
「京楽のばか!」
手だけ実体化してパンチをお見舞いすると、京楽はそのまま床に沈んだ。
「あれ、京楽?」
「むふふふふ。怒る浮竹もかわいい」
「だめだこりゃ・・・・・」
浮竹は実体化して、冷蔵庫に移動して冷凍庫からアイスをとると、それを京楽の頬に当てた。
「ひあ、冷たい!」
「アイスでも食べて、まともになれ」
「んー。夏に浮竹と一緒に、エアコンの利いている執務室で食べるアイスは、格段にうまいね」
院生時代の頃からアイスはあったが、今は本当にいろんな味のものが出るようになった。
ガリガリ君の、ソーダ味を、しゃりしゃりと京楽は食べた。
ガリガリ君を、京楽は2本持っていた。
2本目は浮竹が食べていた。
一口ずつ消えていく。
「あーうまい。アイスも、やっぱ現世のものがうまいな」
尸魂界で出るアイスは、主にバニラ味だ。
甘味屋なら他にも味はあるが、味の多さでは現世に勝てない。
伝令神機を浮竹はいじっていた。
ケルト風味の民族音楽が流れだし、大自然を映した動画がホログラムとして再生される。
「ああ、この音楽いいな。そういえば、最近寝る前に音楽を聞いているよな。確かリラックスできる・・・・ヒーリングとかいう系の音楽か」
「浮竹も聞いてると眠くなってくるでしょ」
「ああ」
「疲れた時や眠る時に聞くのがいいんだって」
「へえ。ああでも、この民族音楽もヒーリングっぽいな」
「現世の民族音楽はいろいろあるからねぇ。それにしても、いくら浦原と競いあっているからって、涅隊長も、伝令神機すごいことにしたもんだなぁ」
チャンネルを涅マユリにしてみる。
ぱっと、毒々しい涅マユリの顔がホログラムになる。
「何かネ。何か用でもあるのかネ」
「この通り、チャンネルを涅マユリにすると、本人が出る」
「うわー」
浮竹は嫌そうな顔をした。
「言っておくがネ、この伝令神機で私のチャンネルにすると、そっちの声も全て聞こえているんだヨ!浮竹隊長を触れるように手袋を開発してあげた礼に、浮竹隊長をぜひとも実験体に・・・・・・」
ブツリ。
涅マユリチャンネルを切った。
でも、伝令神機がいうことをちゃんと聞いてくれない。
「言っておくがネ、私がいじった伝令神機は全部私の方で勝手につなげられるのだヨ。分かったなら、浮竹隊長を実験体に・・・・・」
京楽は、霊体を触れる手袋で、ホログラムの涅マユリの脇腹をくすぐった。
「きゃふふふふ!な、何をするのだネ!」
「あ、これこういう使い方もできるの。面白いね」
「げふげふ、変なところを触らないでくれないかネ。ああもうわかった、私が悪かった、浮竹隊長を実験体にするのは今度にするヨ!」
そう言って、涅マユリはぷつりと切れた。
「面白い。今度から、いやなことがあったら涅マユリチャンネルを開いて、手袋でこそばそう」
「俺を実験体にしたいという以外は、無害なんだがな・・・・」
涅マユリは、確かに言葉にできない非道なことをしてきた。だが、それを含めても12番隊隊長として必要とされているのだ。
大戦で、ゾンビ化した日番谷たちを救ったことは特に大きい。
「一応、君の伝令神機ももらってきたんだ」
「ああ、使わらせてもらう」
実体化して手に取り、透けると伝令神機も透けた。
透けたままでは使えないようで、実体化して京楽にかけてみる。
ブブブと、京楽の伝令神機が鳴る。
「どうしたの」
「いや、ちゃんと俺でも使えるかと思って」
「実体化したら、使えるでしょ?」
「ああ」
本当に。
大戦からここまで復興するとは、誰が思っただろうか。
便利になったものだ。
浮竹と京楽は、そんな時間を享受しながら、時を過ごしていくのだった。
じわじわと汗ばむ季節。
みーんみーんと蝉の鳴く声がうるさかった。
「ああ、極楽だ・・・・・・」
外は暑い。
でも、室内は涼しい。えあこんなるものとせんぷうきなるものが1番隊の執務室に備え付けられて、それで浮竹も京楽も涼んでいた。
おまけに、京楽の手にはアイスクリーム。
京楽が食べていく他にもそれを浮竹が食べて、さっさっとアイスが減っていく。
「このエアコン。凄いな」
「冬には暖房もつくんだって」
「現世の文明ははかりしれない・・・・・・」
浦原が尸魂界に来るようになって、現世のものが一気になだれ込んだ。
それに負けないように、12番隊の技術開発局でもいろいろ発明されていて、涅マユリは伝令神機を顔が映るようにもしたし、ホログラムが出るようにもした。
「この伝令神機・・・・俺たちが死神になった頃にはなかったけど隊長となってもつようになったが、随分変わったな」
動画も見れるし、現世のネットサーフィンもできるし、音楽も聞ける。
今も、伝令神機で音楽を鳴らしていた。
最近現世で有名なアイドルグループの歌だ。動画が、ホログラムとして再生される。
「あ、この真ん中の子かわいい」
京楽のその言葉に、浮竹はむっとなる。
「どうせ、俺はアイドルグループの女の子のようなかわいさはないさ」
「あれ、浮竹嫉妬してるの~~~?」
京楽が、にまにまとこっちを向いてくる。
「さぁな」
「もう、浮竹かわいいーーー!」
技術開発局に開発してもらった、霊体に触れる手袋をして、京楽は手で浮竹を撫でまくった。
「ふあ・・・変なとこ、さわるなぁ・・・・きゃう!」
漏れてしまった声に、浮竹が自分の口を手で閉じる。
「かわいい~~~~~~」
京楽は、大分夏の暑さで頭がいっているらしかった。
「京楽のばか!」
手だけ実体化してパンチをお見舞いすると、京楽はそのまま床に沈んだ。
「あれ、京楽?」
「むふふふふ。怒る浮竹もかわいい」
「だめだこりゃ・・・・・」
浮竹は実体化して、冷蔵庫に移動して冷凍庫からアイスをとると、それを京楽の頬に当てた。
「ひあ、冷たい!」
「アイスでも食べて、まともになれ」
「んー。夏に浮竹と一緒に、エアコンの利いている執務室で食べるアイスは、格段にうまいね」
院生時代の頃からアイスはあったが、今は本当にいろんな味のものが出るようになった。
ガリガリ君の、ソーダ味を、しゃりしゃりと京楽は食べた。
ガリガリ君を、京楽は2本持っていた。
2本目は浮竹が食べていた。
一口ずつ消えていく。
「あーうまい。アイスも、やっぱ現世のものがうまいな」
尸魂界で出るアイスは、主にバニラ味だ。
甘味屋なら他にも味はあるが、味の多さでは現世に勝てない。
伝令神機を浮竹はいじっていた。
ケルト風味の民族音楽が流れだし、大自然を映した動画がホログラムとして再生される。
「ああ、この音楽いいな。そういえば、最近寝る前に音楽を聞いているよな。確かリラックスできる・・・・ヒーリングとかいう系の音楽か」
「浮竹も聞いてると眠くなってくるでしょ」
「ああ」
「疲れた時や眠る時に聞くのがいいんだって」
「へえ。ああでも、この民族音楽もヒーリングっぽいな」
「現世の民族音楽はいろいろあるからねぇ。それにしても、いくら浦原と競いあっているからって、涅隊長も、伝令神機すごいことにしたもんだなぁ」
チャンネルを涅マユリにしてみる。
ぱっと、毒々しい涅マユリの顔がホログラムになる。
「何かネ。何か用でもあるのかネ」
「この通り、チャンネルを涅マユリにすると、本人が出る」
「うわー」
浮竹は嫌そうな顔をした。
「言っておくがネ、この伝令神機で私のチャンネルにすると、そっちの声も全て聞こえているんだヨ!浮竹隊長を触れるように手袋を開発してあげた礼に、浮竹隊長をぜひとも実験体に・・・・・・」
ブツリ。
涅マユリチャンネルを切った。
でも、伝令神機がいうことをちゃんと聞いてくれない。
「言っておくがネ、私がいじった伝令神機は全部私の方で勝手につなげられるのだヨ。分かったなら、浮竹隊長を実験体に・・・・・」
京楽は、霊体を触れる手袋で、ホログラムの涅マユリの脇腹をくすぐった。
「きゃふふふふ!な、何をするのだネ!」
「あ、これこういう使い方もできるの。面白いね」
「げふげふ、変なところを触らないでくれないかネ。ああもうわかった、私が悪かった、浮竹隊長を実験体にするのは今度にするヨ!」
そう言って、涅マユリはぷつりと切れた。
「面白い。今度から、いやなことがあったら涅マユリチャンネルを開いて、手袋でこそばそう」
「俺を実験体にしたいという以外は、無害なんだがな・・・・」
涅マユリは、確かに言葉にできない非道なことをしてきた。だが、それを含めても12番隊隊長として必要とされているのだ。
大戦で、ゾンビ化した日番谷たちを救ったことは特に大きい。
「一応、君の伝令神機ももらってきたんだ」
「ああ、使わらせてもらう」
実体化して手に取り、透けると伝令神機も透けた。
透けたままでは使えないようで、実体化して京楽にかけてみる。
ブブブと、京楽の伝令神機が鳴る。
「どうしたの」
「いや、ちゃんと俺でも使えるかと思って」
「実体化したら、使えるでしょ?」
「ああ」
本当に。
大戦からここまで復興するとは、誰が思っただろうか。
便利になったものだ。
浮竹と京楽は、そんな時間を享受しながら、時を過ごしていくのだった。
浮竹死んだけど幽霊です憑いてます11 花見で外でウフフ
ぽかぽかした春うららのある日。
「花見をしよう」
そう、京楽が言った。
ああ、そういえば幽霊になってから一度も花見にいっていないのだと、浮竹は思い出す。
生きていた頃は、毎年花見にいっていた。
「いいな、行こうか」
「じゃあ、明日なんとか休暇もぎとるから、一緒に花見しようね」
4月のはじめ。
真央霊術院は、入学のシーズンを迎えていた。
花見に決めた場所は、少し離れた山の中。
桜が満開で、桜の他には何もないような辺鄙な場所。だからこそ、人の手が入っていないので、風が吹けば雨のように桜色の花びらが散った。
「綺麗だな・・・・」
「綺麗だね」
シートの上に寝転ぶと、このまま眠ってしまいたくなったが、睡眠は十分にとっていたために眠気は起こらなかった。
「お酒、飲む?」
「飲む」
互いに杯を交わしあった。
といっても、幽霊である浮竹の前に酒を注ぐだけなのだが。
幽霊となってからは、酔っぱらうことがなくなったので、京楽の飲む喉が焼けるような日本酒を飲んでも平気だった。
浮竹の好きな果実酒を注いでやると、浮竹は美味しそうに飲んだ。
飲んだと言っても、液体がさっとなくなるだけなのだが。
「ああ、お前とまた花見ができるなんて嬉しいな」
「僕もだよ。浮竹とこうして言葉を交わしているだけでも泣きそうなくらい嬉しいのに、たまに触れるし交わることもできる。もう死んでもいい」
「死ぬな」
「冗談だよ」
「冗談でも、死ぬなんて言うな」
浮竹は、悲しそうに翡翠の瞳を伏せた。長い睫毛が、頬に影を作る。
「俺は一度お前を置いていった。なのに、またお前を独占している。でも、それが許されるのならこのままでいたい」
「僕を独占していいんだよ、浮竹。君の存在が在る限り、僕らは二人で一つだ」
「京楽・・・・」
少しだけ実体化して、抱き合うと、自然と唇が重なった。
「ほんとは、桜の下で君を抱きたいけど、君は外では絶対にしないものね」
「誰が来るか分からないからだ。こんな辺鄙な場所でも、何か急用が起こって霊圧を辿れてて誰かがやってくる可能性もある」
「心配性だなぁ」
「とにかく、外ではだめだぞ」
「分かっているよ」
ちらちらと、桜の花びらが降ってくる。
「そうそう、朽木隊長に頼んで、特別にお弁当を作ってもらったんだ。僕の家の料理人の食事はいつも口にしているから、たまには違う味を堪能したくてね」
「白哉がか。良く許可したな」
「君のことを話すと、浮竹を頼むといって、了承してくれたよ。そうそう、ルキアちゃんが作ったお弁当もあるんだ」
「なんだって!朽木の手作り弁当だって!」
浮竹は、手がすけていなかったら京楽を揺さぶっていただろう。
「まぁまぁ、そう興奮しないで。今出してあげるから」
朽木家で作ってもらた弁当は、重箱だが螺鈿細工が美しく、箱からして高級感を漂わせていた。
「こっちだね」
一人分の、小さな弁当箱を取り出して中をあけると、浮竹の顔があった。
「キャラ弁・・・・ルキアちゃんもやるねぇ」
「もったいなくて食べられない~~」
浮竹は、嬉し涙を浮かべていた。
浮竹は、ルキアのことを実の娘のように思っている。
年齢から考えて、親子であるのは無理だが、兄妹というのにも無理があった。
まぁ、浮竹が十代の若い頃にこさえた子供にするのなら、ルキアはなんとか親子として通るだろうか。
「僕が食べちゃうよ?」
「お前にはやらん」
まず、卵焼きが消えた。
「うん、美味しい」
「へえ、ルキアちゃん4大貴族なのに・・・まぁ、阿散井君と結婚してるけど、料理できるんだ」
「そうだぞ。俺の副官だった頃、よく白玉餡蜜を一緒に食べた。他にも、出かける日とかにたまにお弁当をもたせてくれたんだ」
生きていた頃を思い出す。
「ルキアちゃんも女の子だねぇ」
「朽木の弁当はうまいぞ。あげないけどな」
「けち」
「ふふふふ」
浮竹は、ぺろりとルキアの作った弁当を全部食べてしまった。それから、重箱の朽木家の料理人が作った弁当も、二人で食した。新鮮な味で、実に美味だった。
桜の雨が、ちらちらと降ってきた。
「浮竹は、桜の精霊みたいだね」
「そうか?」
「透き通っているしね」
浮竹の髪の一部は、数か月まえにつけた柘榴の髪飾りがそのまま太陽の光に反射して、いろんな色を地面に影として落としていた。
実体化すると、さらさらと長い白髪が風に零れた。
「京楽」
京楽を抱き締める。
「どうしたんだい」
「お前を置いて行ってしまって、すまなかった」
舌が絡まる口づけをした。
「ふあっ・・・・・」
浮竹から舌を抜くと、唾液が銀色の糸を引いた。
「そんなこと・・・もう、いいんだよ」
「ああっ」
「外じゃ、だめなんじゃないの?」
「今日だけ・・・・・・だから」
1時間ほど、実体化して抱かせてやると耳元で囁かれて、鼻血が出るかとおもった。
「ああっ・・・・・・」
隊長羽織を脱がせ、死覇装を脱がせていく。
「じゃーん。僕の懐には、いつでもこれがある」
小さな瓶に、潤滑油が入れられていた。
「お前・・・・こうなることを期待して?」
「そうだよ。いつ君を抱けるようになるか分からないからね。ああ、2か月ぶりの君の香・・・甘い匂いがして、それだけでどうにかなってしまいそうだよ」
浮竹にキスをしていく。
首筋にキスマークを残すと、昔は怒られたが今は怒られなかった。
浮竹の鎖骨、胸、臍にかけて、いっぱいキスマークを残し、舌を這わせ、指で撫で挙げた。
「んんっ・・・・・」
立ち上がりかけている浮竹の花茎を口に含み、口淫を行うと、久しぶりなので浮竹はすぐに濃い液体をはきだした。
「濃いね・・・・」
「もう2か月はやってないから・・・・・」
幽霊でも、性欲を覚えて体液の薄い濃いはあるらしかった。
「僕は、君の喘ぎ声をおかずに定期的に抜いてるからいいけど、君がつらそうだね」
「ああ!」
潤滑油で濡らされた指が、くちゅりと体内に入ってくる。
前立腺ばかりを刺激されて、浮竹はまた精液を放っていた。
「早いね」
「本当に、久しぶりだから・・・・」
ぐちゅぐちゅと中を指で侵して、指を引き抜いて京楽の欲望を宛がわれる。
「んっ!」
ずちゅんと、音を立てて蕾が京楽のそれを飲み込んでいく。
「ふあっ・・・・・」
突き上げながら、浮竹にキスをすると、内部がきゅうとしまった。
「ん・・・・いっちゃそうだ。一度、出すよ」
びゅるびゅると、精液を浮竹の中に放つ。
とろりと、太ももを京楽がはきだしたものが伝った。
「お前も、かなりの量だな」
「だって、自虐と君を抱くの、この差はすごいよ」
「んあっ」
再び突き入れられて、浮竹は裸身に桜の花びらを受け止めていた。
「ああああ!」
京楽が突き上げるたびに、浮竹はビクンビクンと痙攣する。
「またいったの?」
「あ・・・・んあああああ!」
ドライのオーガズムでいきまくってしまい、浮竹は朱くなった。
「敏感なんだね・・・・・愛してるよ、十四郎」
「あ、春水、愛してる、キスをしてくれ」
浮竹に口づけて、なるべく前立腺をすりあげて、突き上げていくと、内部がしまって京楽も浮竹の中に二度目の精液を放ったいた。
「ああ!ああん!」
桜の花の下で、二人は乱れる。
騎乗位になって、深く抉られた。
「ひああああ!」
ぐちゅぐちゅと音を立てて突き上げる。浮竹の太ももに、二人の体液の混じり合った液体が伝い落ちていく。
「ひう!」
くちゅりと、浅いいい部分を犯してやれば、浮竹は息を飲んだ。
「ああ・・・・・やああ・・・・またいっちちゃう・・・春水、春水!」
「何度だっていっていいよ、十四郎。ほら」
ぐちゃっと中を蹂躙された。
何度も突き上げられて、浮竹ももう何度目になるかも分かない吐精をしていた。
「はぁはぁ・・・・・・・」
1時間近くが経ち、セックスは終わった。
「おしぼりしかないや・・・何もないよりましだけどね」
おしぼりで、浮竹の体をふいていく。
浮竹の太腿を伝う京楽の精液は、仕方ないので隊長羽織でぬぐった。
「この隊長羽織、もう着たくないや・・・・・」
「んあ・・・・・・」
まだ、浮竹は余韻に浸っていた。数百年睦みあって、初めて外でしたスリルもあり、何度もいった。
「ふあっ・・・・・」
「浮竹、しっかり!」
衣服を着せたが、とろんとした顔をしていた。
「あちゃー。犯し過ぎたかな」
そのまま、すーっと透けていく。
浮竹は、京楽の肩に座って、眠ってしまった。
「おやすみ、浮竹」
いろいろと始末して、帰る準備をする。
最後に桜の花びらと枝を手折って、桜の花を手に、京楽は帰還した。
「ん・・・・・・」
浮竹が意識を取り戻す。
そこは、1番隊の寝室だった。
「ああ、起きた?いきまくってたけど、大丈夫?」
その言葉に真っ赤になって、浮竹は京楽から離れた。
「どうしたの」
「しばらく、もうしないからな!」
「ああ、うん。君もそんなにしょっちゅう実体化を長くできるわけじゃないもんね」
浮竹は言えなった。体が熱くて、まだ抱かれたりないなどと。
「ほら、桜の花びらに桜の花。これで、少しは寝室でも花見気分を味わえるでしょ?」
「ん・・・・・・」
「どうしたの」
仕方なく事情を説明する。
「まだ、実体化できる?」
「30分くらいなら」
「流石の僕も、もういきすぎたから、指でになるけど・・・」
指でいじられまくって、浮竹は結局その後、体の熱がおさまるまで、ドライで何度も高みへと昇らさられるのであった。
「花見をしよう」
そう、京楽が言った。
ああ、そういえば幽霊になってから一度も花見にいっていないのだと、浮竹は思い出す。
生きていた頃は、毎年花見にいっていた。
「いいな、行こうか」
「じゃあ、明日なんとか休暇もぎとるから、一緒に花見しようね」
4月のはじめ。
真央霊術院は、入学のシーズンを迎えていた。
花見に決めた場所は、少し離れた山の中。
桜が満開で、桜の他には何もないような辺鄙な場所。だからこそ、人の手が入っていないので、風が吹けば雨のように桜色の花びらが散った。
「綺麗だな・・・・」
「綺麗だね」
シートの上に寝転ぶと、このまま眠ってしまいたくなったが、睡眠は十分にとっていたために眠気は起こらなかった。
「お酒、飲む?」
「飲む」
互いに杯を交わしあった。
といっても、幽霊である浮竹の前に酒を注ぐだけなのだが。
幽霊となってからは、酔っぱらうことがなくなったので、京楽の飲む喉が焼けるような日本酒を飲んでも平気だった。
浮竹の好きな果実酒を注いでやると、浮竹は美味しそうに飲んだ。
飲んだと言っても、液体がさっとなくなるだけなのだが。
「ああ、お前とまた花見ができるなんて嬉しいな」
「僕もだよ。浮竹とこうして言葉を交わしているだけでも泣きそうなくらい嬉しいのに、たまに触れるし交わることもできる。もう死んでもいい」
「死ぬな」
「冗談だよ」
「冗談でも、死ぬなんて言うな」
浮竹は、悲しそうに翡翠の瞳を伏せた。長い睫毛が、頬に影を作る。
「俺は一度お前を置いていった。なのに、またお前を独占している。でも、それが許されるのならこのままでいたい」
「僕を独占していいんだよ、浮竹。君の存在が在る限り、僕らは二人で一つだ」
「京楽・・・・」
少しだけ実体化して、抱き合うと、自然と唇が重なった。
「ほんとは、桜の下で君を抱きたいけど、君は外では絶対にしないものね」
「誰が来るか分からないからだ。こんな辺鄙な場所でも、何か急用が起こって霊圧を辿れてて誰かがやってくる可能性もある」
「心配性だなぁ」
「とにかく、外ではだめだぞ」
「分かっているよ」
ちらちらと、桜の花びらが降ってくる。
「そうそう、朽木隊長に頼んで、特別にお弁当を作ってもらったんだ。僕の家の料理人の食事はいつも口にしているから、たまには違う味を堪能したくてね」
「白哉がか。良く許可したな」
「君のことを話すと、浮竹を頼むといって、了承してくれたよ。そうそう、ルキアちゃんが作ったお弁当もあるんだ」
「なんだって!朽木の手作り弁当だって!」
浮竹は、手がすけていなかったら京楽を揺さぶっていただろう。
「まぁまぁ、そう興奮しないで。今出してあげるから」
朽木家で作ってもらた弁当は、重箱だが螺鈿細工が美しく、箱からして高級感を漂わせていた。
「こっちだね」
一人分の、小さな弁当箱を取り出して中をあけると、浮竹の顔があった。
「キャラ弁・・・・ルキアちゃんもやるねぇ」
「もったいなくて食べられない~~」
浮竹は、嬉し涙を浮かべていた。
浮竹は、ルキアのことを実の娘のように思っている。
年齢から考えて、親子であるのは無理だが、兄妹というのにも無理があった。
まぁ、浮竹が十代の若い頃にこさえた子供にするのなら、ルキアはなんとか親子として通るだろうか。
「僕が食べちゃうよ?」
「お前にはやらん」
まず、卵焼きが消えた。
「うん、美味しい」
「へえ、ルキアちゃん4大貴族なのに・・・まぁ、阿散井君と結婚してるけど、料理できるんだ」
「そうだぞ。俺の副官だった頃、よく白玉餡蜜を一緒に食べた。他にも、出かける日とかにたまにお弁当をもたせてくれたんだ」
生きていた頃を思い出す。
「ルキアちゃんも女の子だねぇ」
「朽木の弁当はうまいぞ。あげないけどな」
「けち」
「ふふふふ」
浮竹は、ぺろりとルキアの作った弁当を全部食べてしまった。それから、重箱の朽木家の料理人が作った弁当も、二人で食した。新鮮な味で、実に美味だった。
桜の雨が、ちらちらと降ってきた。
「浮竹は、桜の精霊みたいだね」
「そうか?」
「透き通っているしね」
浮竹の髪の一部は、数か月まえにつけた柘榴の髪飾りがそのまま太陽の光に反射して、いろんな色を地面に影として落としていた。
実体化すると、さらさらと長い白髪が風に零れた。
「京楽」
京楽を抱き締める。
「どうしたんだい」
「お前を置いて行ってしまって、すまなかった」
舌が絡まる口づけをした。
「ふあっ・・・・・」
浮竹から舌を抜くと、唾液が銀色の糸を引いた。
「そんなこと・・・もう、いいんだよ」
「ああっ」
「外じゃ、だめなんじゃないの?」
「今日だけ・・・・・・だから」
1時間ほど、実体化して抱かせてやると耳元で囁かれて、鼻血が出るかとおもった。
「ああっ・・・・・・」
隊長羽織を脱がせ、死覇装を脱がせていく。
「じゃーん。僕の懐には、いつでもこれがある」
小さな瓶に、潤滑油が入れられていた。
「お前・・・・こうなることを期待して?」
「そうだよ。いつ君を抱けるようになるか分からないからね。ああ、2か月ぶりの君の香・・・甘い匂いがして、それだけでどうにかなってしまいそうだよ」
浮竹にキスをしていく。
首筋にキスマークを残すと、昔は怒られたが今は怒られなかった。
浮竹の鎖骨、胸、臍にかけて、いっぱいキスマークを残し、舌を這わせ、指で撫で挙げた。
「んんっ・・・・・」
立ち上がりかけている浮竹の花茎を口に含み、口淫を行うと、久しぶりなので浮竹はすぐに濃い液体をはきだした。
「濃いね・・・・」
「もう2か月はやってないから・・・・・」
幽霊でも、性欲を覚えて体液の薄い濃いはあるらしかった。
「僕は、君の喘ぎ声をおかずに定期的に抜いてるからいいけど、君がつらそうだね」
「ああ!」
潤滑油で濡らされた指が、くちゅりと体内に入ってくる。
前立腺ばかりを刺激されて、浮竹はまた精液を放っていた。
「早いね」
「本当に、久しぶりだから・・・・」
ぐちゅぐちゅと中を指で侵して、指を引き抜いて京楽の欲望を宛がわれる。
「んっ!」
ずちゅんと、音を立てて蕾が京楽のそれを飲み込んでいく。
「ふあっ・・・・・」
突き上げながら、浮竹にキスをすると、内部がきゅうとしまった。
「ん・・・・いっちゃそうだ。一度、出すよ」
びゅるびゅると、精液を浮竹の中に放つ。
とろりと、太ももを京楽がはきだしたものが伝った。
「お前も、かなりの量だな」
「だって、自虐と君を抱くの、この差はすごいよ」
「んあっ」
再び突き入れられて、浮竹は裸身に桜の花びらを受け止めていた。
「ああああ!」
京楽が突き上げるたびに、浮竹はビクンビクンと痙攣する。
「またいったの?」
「あ・・・・んあああああ!」
ドライのオーガズムでいきまくってしまい、浮竹は朱くなった。
「敏感なんだね・・・・・愛してるよ、十四郎」
「あ、春水、愛してる、キスをしてくれ」
浮竹に口づけて、なるべく前立腺をすりあげて、突き上げていくと、内部がしまって京楽も浮竹の中に二度目の精液を放ったいた。
「ああ!ああん!」
桜の花の下で、二人は乱れる。
騎乗位になって、深く抉られた。
「ひああああ!」
ぐちゅぐちゅと音を立てて突き上げる。浮竹の太ももに、二人の体液の混じり合った液体が伝い落ちていく。
「ひう!」
くちゅりと、浅いいい部分を犯してやれば、浮竹は息を飲んだ。
「ああ・・・・・やああ・・・・またいっちちゃう・・・春水、春水!」
「何度だっていっていいよ、十四郎。ほら」
ぐちゃっと中を蹂躙された。
何度も突き上げられて、浮竹ももう何度目になるかも分かない吐精をしていた。
「はぁはぁ・・・・・・・」
1時間近くが経ち、セックスは終わった。
「おしぼりしかないや・・・何もないよりましだけどね」
おしぼりで、浮竹の体をふいていく。
浮竹の太腿を伝う京楽の精液は、仕方ないので隊長羽織でぬぐった。
「この隊長羽織、もう着たくないや・・・・・」
「んあ・・・・・・」
まだ、浮竹は余韻に浸っていた。数百年睦みあって、初めて外でしたスリルもあり、何度もいった。
「ふあっ・・・・・」
「浮竹、しっかり!」
衣服を着せたが、とろんとした顔をしていた。
「あちゃー。犯し過ぎたかな」
そのまま、すーっと透けていく。
浮竹は、京楽の肩に座って、眠ってしまった。
「おやすみ、浮竹」
いろいろと始末して、帰る準備をする。
最後に桜の花びらと枝を手折って、桜の花を手に、京楽は帰還した。
「ん・・・・・・」
浮竹が意識を取り戻す。
そこは、1番隊の寝室だった。
「ああ、起きた?いきまくってたけど、大丈夫?」
その言葉に真っ赤になって、浮竹は京楽から離れた。
「どうしたの」
「しばらく、もうしないからな!」
「ああ、うん。君もそんなにしょっちゅう実体化を長くできるわけじゃないもんね」
浮竹は言えなった。体が熱くて、まだ抱かれたりないなどと。
「ほら、桜の花びらに桜の花。これで、少しは寝室でも花見気分を味わえるでしょ?」
「ん・・・・・・」
「どうしたの」
仕方なく事情を説明する。
「まだ、実体化できる?」
「30分くらいなら」
「流石の僕も、もういきすぎたから、指でになるけど・・・」
指でいじられまくって、浮竹は結局その後、体の熱がおさまるまで、ドライで何度も高みへと昇らさられるのであった。
震える尸魂界
京楽春水は、山じいの部屋にこっそり侵入していた。
それが見つかって、怒られる。
「こりゃ春水!勝手に入って来よってからに」
「山じい、別にいいじゃない」
幼い京楽は、山じいのことをからかって遊んだりしていた。
山じいはすぐ怒るので、説教を食らったことなど数えきれない。幼い頃から、京楽を放置する両親の代わりに、山じいが面倒を見てくれた。
「春水、きっと未来で学院に通い、護廷13隊に入るぞ、お主は。死神になるのだ」
「いやだよ。死神なんてかったるい」
「こりゃ!死神は尸魂界を守る大切な存在じゃ!」
「えー、でも忙しそうだし、命の危険もあるんでしょ?やだよ、僕はのらりくらり、ただの貴族として生きたい」
「死神になれ。きっと、大切な存在とも巡りあえるじゃろう」
その時は、そんなはずあるわけがないと思ってた。
学院に入り、京楽は浮竹と出会った。
世界が一気に色づいた。
白い髪に翡翠の瞳の麗人は、にっこりと笑って京楽に手を差し出してくる。
「首席の、京楽春水だな。俺も同じ首席なんだ」
「首席・・・・」
「浮竹十四郎という」
握手を交わして、別れた。
「こりゃ、春水、十四郎」
山じいの部屋に侵入するのが、一人ではなくなった。真面目な浮竹まで、子供のように山じいの部屋に侵入しては悪戯をした。
もっとも、学院に入学したてだけあって、まだお互い少年だ。
やんちゃも、ほどほどに時を過ごしてく。
「春水、十四郎、学院には慣れたかの?」
「楽しいよ、山じい。浮竹がいるからね」
「先生、見るもの聞くもの全てが目新しくて、楽しいです」
「そうかそうか」
「それに、僕たちできちゃったからね」
その言葉に、山じいの目が見開かれる。
「い、いまなんと?」
「だから、僕たちできちゃったの。体の関係結んでるよ」
京楽の言葉に、山じいは失神していた。
「そんなに衝撃的だったかなぁ」
「先生にいうなんて、お前はどうかしてる!」
「でも、いつかばれるんだし」
「それはそうだが・・・・」
浮竹は、白い髪を風にさらさらとなびかせながら、山じいのことを思う。
かわいい教え子が二人、できてしまった。
失神するほどなのだから、その衝撃は計り知れないものだったのだろう。
「隠しておくだけ、僕は無駄だと思うんだよ」
浮竹を抱き締めてくる京楽に、口づけを与えながら浮竹は思う。
恩師である。死の底ばかりを見ていた浮竹に、学院に通うように勧めてくれて、首席で試験を合格した。
京楽のように、幼い頃から世話になっているわけではないが、入学前から山じいの手で浮竹は面倒を見られていた。
山じいがいなければ、死神になろうとすら思わなっただろう。
そんな山じいを失神させてしまった。
心苦しい思いをしながらも、京楽との関係を絶とうとは思わなかった。
「山じいも、いつか理解してくれるよ」
山じいに怒られながら、切磋琢磨して6年。
「春水、十四郎、よくぞここまできた。護廷13隊は、喜んでお主らを迎えいれるじゃろう」
「山じい、僕らのことは何も言わなくなったね」
「先生・・・・・」
「もうよい。春水が十四郎を、十四郎が春水をお互いに必要としているのはよう分かった。もう、何も言うまいて」
それぞれ8番隊と13番隊の席官になり、副隊長になり、隊長になり。
「勘弁してよ山じい。こんな終わり、あんまりだよ」
京楽は、血だらけになりながら、灰となった山じいと、残された流刃若火を掴みあげた。
それは、ボロボロと崩れていった。
「山じい・・・・うっ」
「京楽、無理をするな!」
京楽を支えて、浮竹は涙を流していた。
「先生・・・こんなこと・・・」
ユーハバッハによる、尸魂界の侵攻と蹂躙。
京楽は、右目を失っていた。
右耳も欠けていた。
全部、敵にやられたのだ。だが、まだ京楽のほうがましだ。搬送された白哉は、生きているのも疑わしいほどの重症だった。
「白哉・・・・」
白哉まで失ってしまったら、浮竹は己を保っていられなくなる。
京楽が死んでいたら、気がふれていたかもしれない。
「絶対に、勝とう。山じいの敵を討つんだ」
「ああ・・・・・」
黒崎一護さえ、ユーハバッハに適わなかった。
一護の中に流れる滅却師の血が、一護を救った。
一護の中に滅却師の血が流れているなど、誰が思っただろうか。
その滅却師の王が、千年前に山じいが屠ったはずのユーハバッハの復活。
また、誰か死ぬことになる。
きっと、俺も。
浮竹は、心の何処かで分かっていた。
尸魂界のためならば、この命。
たとえ、愛する京楽を置いていくことになるとしても。
それでも。
俺は、尸魂界を選ぶ。
「早く、卯ノ花隊長のところにいこう。傷の手当てをしてもらわないと」
「この右目は多分、元に戻らない。戻す時間の余裕もない」
次にまたいつ侵攻してくるかも分からない敵の前で、移植手術をして寝ている暇などないのだ。
「京楽、約束してくれ。お前は、先に逝かないと」
「浮竹・・・・・」
「じゃあ、君も・・・・・」
「俺は、きっと・・・・」
お互いに口づけあいながら、その運命の日がやってくるまで、ただ静かにずっと傍にいた。
落ちていく。
山本元柳斎重國、卯ノ花烈。
そして、浮竹十四郎。
落ちていく。
色のない世界へと。
俺は、きっとお前を置いていく。
でも、泣かないでくれ。
お前と過ごしたこの500年、悪くなった。
俺は先に逝く。
お前は、総隊長だ。
あと千年くらいしたら、こちら側にこい。
なぁ、京楽。
愛している。永遠に。
それが見つかって、怒られる。
「こりゃ春水!勝手に入って来よってからに」
「山じい、別にいいじゃない」
幼い京楽は、山じいのことをからかって遊んだりしていた。
山じいはすぐ怒るので、説教を食らったことなど数えきれない。幼い頃から、京楽を放置する両親の代わりに、山じいが面倒を見てくれた。
「春水、きっと未来で学院に通い、護廷13隊に入るぞ、お主は。死神になるのだ」
「いやだよ。死神なんてかったるい」
「こりゃ!死神は尸魂界を守る大切な存在じゃ!」
「えー、でも忙しそうだし、命の危険もあるんでしょ?やだよ、僕はのらりくらり、ただの貴族として生きたい」
「死神になれ。きっと、大切な存在とも巡りあえるじゃろう」
その時は、そんなはずあるわけがないと思ってた。
学院に入り、京楽は浮竹と出会った。
世界が一気に色づいた。
白い髪に翡翠の瞳の麗人は、にっこりと笑って京楽に手を差し出してくる。
「首席の、京楽春水だな。俺も同じ首席なんだ」
「首席・・・・」
「浮竹十四郎という」
握手を交わして、別れた。
「こりゃ、春水、十四郎」
山じいの部屋に侵入するのが、一人ではなくなった。真面目な浮竹まで、子供のように山じいの部屋に侵入しては悪戯をした。
もっとも、学院に入学したてだけあって、まだお互い少年だ。
やんちゃも、ほどほどに時を過ごしてく。
「春水、十四郎、学院には慣れたかの?」
「楽しいよ、山じい。浮竹がいるからね」
「先生、見るもの聞くもの全てが目新しくて、楽しいです」
「そうかそうか」
「それに、僕たちできちゃったからね」
その言葉に、山じいの目が見開かれる。
「い、いまなんと?」
「だから、僕たちできちゃったの。体の関係結んでるよ」
京楽の言葉に、山じいは失神していた。
「そんなに衝撃的だったかなぁ」
「先生にいうなんて、お前はどうかしてる!」
「でも、いつかばれるんだし」
「それはそうだが・・・・」
浮竹は、白い髪を風にさらさらとなびかせながら、山じいのことを思う。
かわいい教え子が二人、できてしまった。
失神するほどなのだから、その衝撃は計り知れないものだったのだろう。
「隠しておくだけ、僕は無駄だと思うんだよ」
浮竹を抱き締めてくる京楽に、口づけを与えながら浮竹は思う。
恩師である。死の底ばかりを見ていた浮竹に、学院に通うように勧めてくれて、首席で試験を合格した。
京楽のように、幼い頃から世話になっているわけではないが、入学前から山じいの手で浮竹は面倒を見られていた。
山じいがいなければ、死神になろうとすら思わなっただろう。
そんな山じいを失神させてしまった。
心苦しい思いをしながらも、京楽との関係を絶とうとは思わなかった。
「山じいも、いつか理解してくれるよ」
山じいに怒られながら、切磋琢磨して6年。
「春水、十四郎、よくぞここまできた。護廷13隊は、喜んでお主らを迎えいれるじゃろう」
「山じい、僕らのことは何も言わなくなったね」
「先生・・・・・」
「もうよい。春水が十四郎を、十四郎が春水をお互いに必要としているのはよう分かった。もう、何も言うまいて」
それぞれ8番隊と13番隊の席官になり、副隊長になり、隊長になり。
「勘弁してよ山じい。こんな終わり、あんまりだよ」
京楽は、血だらけになりながら、灰となった山じいと、残された流刃若火を掴みあげた。
それは、ボロボロと崩れていった。
「山じい・・・・うっ」
「京楽、無理をするな!」
京楽を支えて、浮竹は涙を流していた。
「先生・・・こんなこと・・・」
ユーハバッハによる、尸魂界の侵攻と蹂躙。
京楽は、右目を失っていた。
右耳も欠けていた。
全部、敵にやられたのだ。だが、まだ京楽のほうがましだ。搬送された白哉は、生きているのも疑わしいほどの重症だった。
「白哉・・・・」
白哉まで失ってしまったら、浮竹は己を保っていられなくなる。
京楽が死んでいたら、気がふれていたかもしれない。
「絶対に、勝とう。山じいの敵を討つんだ」
「ああ・・・・・」
黒崎一護さえ、ユーハバッハに適わなかった。
一護の中に流れる滅却師の血が、一護を救った。
一護の中に滅却師の血が流れているなど、誰が思っただろうか。
その滅却師の王が、千年前に山じいが屠ったはずのユーハバッハの復活。
また、誰か死ぬことになる。
きっと、俺も。
浮竹は、心の何処かで分かっていた。
尸魂界のためならば、この命。
たとえ、愛する京楽を置いていくことになるとしても。
それでも。
俺は、尸魂界を選ぶ。
「早く、卯ノ花隊長のところにいこう。傷の手当てをしてもらわないと」
「この右目は多分、元に戻らない。戻す時間の余裕もない」
次にまたいつ侵攻してくるかも分からない敵の前で、移植手術をして寝ている暇などないのだ。
「京楽、約束してくれ。お前は、先に逝かないと」
「浮竹・・・・・」
「じゃあ、君も・・・・・」
「俺は、きっと・・・・」
お互いに口づけあいながら、その運命の日がやってくるまで、ただ静かにずっと傍にいた。
落ちていく。
山本元柳斎重國、卯ノ花烈。
そして、浮竹十四郎。
落ちていく。
色のない世界へと。
俺は、きっとお前を置いていく。
でも、泣かないでくれ。
お前と過ごしたこの500年、悪くなった。
俺は先に逝く。
お前は、総隊長だ。
あと千年くらいしたら、こちら側にこい。
なぁ、京楽。
愛している。永遠に。
7話補完小説
一護は、すでに満身創痍だった。
特殊な檻の中に閉じ込められて、出るのに時間がかかりすぎた。
守りたいと思っていた尸魂界の、たくさんの血が流れている場面を見て、ギリッと唇をかみきった。
「なんだよこれ・・・こんなのありかよ・・・・」
瞬歩で歩んでいく。
死体死体死体。
敵敵敵敵。
白哉の前にくると、血まみれで壁にめりこんでぼろぼろな白夜が、ふと目を開けた。
「黒崎一護・・・」
「しゃべるな!」
「黒崎一護・・・・どうか、尸魂界を・・・・・」
瞬歩で、かき消えた山本元柳斎重國の霊圧の名残があった場所まできた。
斬月によく似た男だった。
「お前か」
「何がだ」
「尸魂界をこんなにしたのはお前かってきいてんだよ!」
血を滲ませながら、叫ぶ一護に、ユーハバッハは残酷な笑みを刻んだ。
「そうだ」
「おまえええええ!」
斬月をぶつける。
けれど、切れぬ。
「うおおおおおお!月牙天衝!」
けれど、手傷さえ負わせられぬ、
「陛下」
去っていくユーハバッハを、見ていることさえできなかった。
完膚なきまでに叩き折られた。心も、剣も。
「俺は・・・・」
振り続ける雨の中、一護は折れた斬月を見ていた。
「山じい!」
消えてしまった圧倒的な霊圧に、京楽は息を飲む。
そんな。
「山じい、嘘でしょ?」
山じいが死ぬなんて、そんなこと。
ああ、浮竹は無事だろうか。
敵の去り際の攻撃をまともにくらって、立っていられない。
血が流れていく。寒気を感じた。意識が遠くなっていく。
「元柳斎先生!」
消えてしまった圧倒的な霊圧に、浮竹は涙を零した。
元柳斎先生が死ぬなんて、そんなことあっていいのか。
京楽の霊圧が弱まってくのを感じた。
「京楽、無事でいてくれ!」
祈るように、去っていった敵が戻ってこないのを確認して、京楽のところにまで瞬歩で移動した。
「京楽、しっかりしろ、京楽!」
揺さぶるが、反応はなかった。
酷い怪我だった。
浮竹は幸いなことに、強い敵にぶつかることなく無事だったが、白哉と一護の霊圧が消えていくのを感じた。
「白哉、一護君・・・・」
蹂躙された尸魂界。
死んでいく死神たち。
「私は長くはもたぬ・・・・・黒崎一護。尸魂界を守ってくれ・・・」
血だらけの白哉のつぶやき。
「ごほっ」
白哉は血を大量に吐いた。
「この尸魂界を守ってくれ、黒崎一護・・・・・・」
けれど、その願いは叶わない。
蹂躙された尸魂界。
死んでいく死神たち。
一護の爆発的な霊圧が消えていく。
「兄ですら・・・太刀打ちできぬ、というのか」
真っ暗になっていく視界。
チャリン。
音をたてて、千本桜が消えていく。
その日、ユーハバッハの手によって、尸魂界はもう二度と戻ることのできない爪痕をたてられた。
山本元柳斎重國の死。
尸魂界が崩れていく。
生き残った隊長、副隊長たちは、消えてしまった山本元柳斎重國の霊圧を感じ、嘆き悲しむのであった。
特殊な檻の中に閉じ込められて、出るのに時間がかかりすぎた。
守りたいと思っていた尸魂界の、たくさんの血が流れている場面を見て、ギリッと唇をかみきった。
「なんだよこれ・・・こんなのありかよ・・・・」
瞬歩で歩んでいく。
死体死体死体。
敵敵敵敵。
白哉の前にくると、血まみれで壁にめりこんでぼろぼろな白夜が、ふと目を開けた。
「黒崎一護・・・」
「しゃべるな!」
「黒崎一護・・・・どうか、尸魂界を・・・・・」
瞬歩で、かき消えた山本元柳斎重國の霊圧の名残があった場所まできた。
斬月によく似た男だった。
「お前か」
「何がだ」
「尸魂界をこんなにしたのはお前かってきいてんだよ!」
血を滲ませながら、叫ぶ一護に、ユーハバッハは残酷な笑みを刻んだ。
「そうだ」
「おまえええええ!」
斬月をぶつける。
けれど、切れぬ。
「うおおおおおお!月牙天衝!」
けれど、手傷さえ負わせられぬ、
「陛下」
去っていくユーハバッハを、見ていることさえできなかった。
完膚なきまでに叩き折られた。心も、剣も。
「俺は・・・・」
振り続ける雨の中、一護は折れた斬月を見ていた。
「山じい!」
消えてしまった圧倒的な霊圧に、京楽は息を飲む。
そんな。
「山じい、嘘でしょ?」
山じいが死ぬなんて、そんなこと。
ああ、浮竹は無事だろうか。
敵の去り際の攻撃をまともにくらって、立っていられない。
血が流れていく。寒気を感じた。意識が遠くなっていく。
「元柳斎先生!」
消えてしまった圧倒的な霊圧に、浮竹は涙を零した。
元柳斎先生が死ぬなんて、そんなことあっていいのか。
京楽の霊圧が弱まってくのを感じた。
「京楽、無事でいてくれ!」
祈るように、去っていった敵が戻ってこないのを確認して、京楽のところにまで瞬歩で移動した。
「京楽、しっかりしろ、京楽!」
揺さぶるが、反応はなかった。
酷い怪我だった。
浮竹は幸いなことに、強い敵にぶつかることなく無事だったが、白哉と一護の霊圧が消えていくのを感じた。
「白哉、一護君・・・・」
蹂躙された尸魂界。
死んでいく死神たち。
「私は長くはもたぬ・・・・・黒崎一護。尸魂界を守ってくれ・・・」
血だらけの白哉のつぶやき。
「ごほっ」
白哉は血を大量に吐いた。
「この尸魂界を守ってくれ、黒崎一護・・・・・・」
けれど、その願いは叶わない。
蹂躙された尸魂界。
死んでいく死神たち。
一護の爆発的な霊圧が消えていく。
「兄ですら・・・太刀打ちできぬ、というのか」
真っ暗になっていく視界。
チャリン。
音をたてて、千本桜が消えていく。
その日、ユーハバッハの手によって、尸魂界はもう二度と戻ることのできない爪痕をたてられた。
山本元柳斎重國の死。
尸魂界が崩れていく。
生き残った隊長、副隊長たちは、消えてしまった山本元柳斎重國の霊圧を感じ、嘆き悲しむのであった。
白哉の見合い
白哉が、見合いをすることになった。
その知らせは、6番隊に一気に広がった。
相手は、4大貴族とまではいかないが、それなりの上級貴族の姫君。年の頃は人間でいうと20前後で、その貴族の家系の女は男腹で、子を成したら必ず男児を産むとして、人気のある家柄であった。
朽木家に、世継ぎを。
そう、親戚連中に口酸っぱくいわれて、仕方なしにお見合いだけすることを、白哉は許可したのだ。
何より、見合い写真を見たが、亡き緋真によく似ていた。
はじめ、白哉は断ろうと思っていた。だが、あまりにも緋真に似ているために、声を交わしてみたいと思ったのだ。
「隊長・・・見合いするって、ほんとですか」
「本当だ」
「あんたには俺がいるじゃないっすか!」
「思い上がるな」
「隊長・・・・・」
「緋真に、似ておるのだ。言葉を交わすだけだ。婚姻はせぬ、安心せよ」
「いやだ。言葉交わすのも許しません」
「私は!お前のものではない!」
そう白哉は叫んで、その場を後にしてしまった。
そして、いよいよお見合いの日がやってきた。
「沢森シイナと申します・・・」
「朽木白哉という・・・・・」
お見合いの籍では、シイナの両親もいた。
白哉には、ルキアがついてきていた。
本当に、緋真に似ていて、ルキアにも似ていた。
「本当に、義妹であられるルキア様とわたくし、見た目が似ておりますね」
「死別した妻、緋真にも似ておられる」
「わたくし、男腹ですの。地位からして正妻を望みますが、緋真様のことが忘れられないのであれば妾でもかまいません」
「兄は・・・・・妾でいいと・・・・・」
「4大貴族の朽木家と縁ができるのであれば、妾でも構わないと両親も納得ておりますの」
美しい着物を着た、美しい女性だった。
シイナは、緋真によく似ていた。
でも、緋真ではない。
緋真は、妾になるくらいなら縁などいらぬというだろう。
「梅の花は、お好きか?」
「あら、あいにくわたくし梅の花が嫌いですの。椿が好きですわ」
緋真は、梅の花が好きだった。
やはり、違うのだ。
シイナを緋真の代わりとして娶るのは、あまりにもシイナに失礼だ。
「わたくし、かまいませんのよ?緋真様の代わりでも。そのつもりで、見合いを受けておりますの。ご希望であれば、立ち振る舞いも口調も緋真様のようにしましょう」
「兄は・・・・・・」
そんな偽物、妻にしても虚しいだけ。
白哉は、見合いを断ろうと口を開く。
「隊長!」
「恋次!?」
「おいあんた、シイナとかいったな、隊長は俺のもんだ。隊長はな、副官である男である俺できてるんだ!あんたじゃ、隊長を満足させることなどできねぇ!」
「なっ!」
シイナはかっとなって、恋次の頬をはたいた。
「本当なのですが、白哉様!このような下賤な男と、できているのですか!」
シイナの両親は、驚きで言葉も出ないようだった。
「恋次、貴様、場所をわきまえろ!ここは上流貴族同士の見合いの場なのだぞ!」
ルキアの言葉に、恋次は吠える。
「上流貴族だろうが、見合いの場だろうが、知ったことか。愛している隊長が結婚するなんて、我慢できねぇ!」
「この下賤な死神風情が!」
シイナは、顔を真っ赤にして恋次につかみかかった。
ああ、やはり緋真ではない。
緋真は、人を「下賤」などと決して呼んだりしない。
「隊長!」
「白哉様!」
「恋次に言っていることは、本当だ。私は、副官であり同じ男である恋次と肉体関係をもっている」
「衆道・・・・汚らわしい!このお話、なかったことにしていただきます!」
シイナも、シイナの両親も立腹して去ってしまった。
「貴様・・・・兄様に、噂が立ったらどうするのだ。朽木家に恥をかけというのか!」
「う・・・そこまで、考えてなかった」
「兄様、念のため口封じをしておきましょう!」
「ああ、分かっている」
殺すわけではない。鬼道の一種で、記憶を少し飛ばすのだ。
目の飛び出るほど高い品を媒介に使うので、4大貴族くらいしか使えない術だった。
朽木家を出ていく前のシイナとシイナの両親に、白哉はその術を施した。
これで、朽木家の面子は潰れずにすむ。
「恋次・・・貴様、少しは場所を弁えよ」
「すみません。でも、隊長が見合いなんて許せなくて」
「もうよい。どのみち、言葉を交わすだけの予定だった。こちらも幻滅したので、未練も何もない」
「じゃあ、結婚は・・・・・」
「破談だ」
「おっしゃあああ」
「たわけ!恋次、貴様は兄様に幸せになってほしくないのか!」
「俺以外の死神と、幸せになってほしくない」
白哉は、長い溜息を零した。
「ルキア、すまぬが席を外せ」
「はい、兄様。恋次、こうなったからには、兄様を幸せにしろよ!」
「勿論だ!」
「恋次」
「はい」
「愚か者。私を、少しは信用したらどうなのだ」
「だって、隊長が見合いするっていうから・・・・」
「最初から、見合いだけのつもりだったのだ。結婚などせぬ」
「隊長、好きです。愛してます。俺には、隊長だけだ」
はぁと、長い溜息をついて、白哉は恋次に自分からキスをした。
「隊長?」
「そうだな。私にも、今は貴様だけだ、恋次」
白哉の細い腰に手を回す。
「もう、二度と見合いなんてしないでください」
「分かった」
恋次は、もう一度白哉を抱き締めて、その桜色の唇に唇を重ねる。
「あんたには、俺がいる」
「恋次・・・・・」
その日の夜は、睦みあった。
長い長い夜に、なりそうだった。
その知らせは、6番隊に一気に広がった。
相手は、4大貴族とまではいかないが、それなりの上級貴族の姫君。年の頃は人間でいうと20前後で、その貴族の家系の女は男腹で、子を成したら必ず男児を産むとして、人気のある家柄であった。
朽木家に、世継ぎを。
そう、親戚連中に口酸っぱくいわれて、仕方なしにお見合いだけすることを、白哉は許可したのだ。
何より、見合い写真を見たが、亡き緋真によく似ていた。
はじめ、白哉は断ろうと思っていた。だが、あまりにも緋真に似ているために、声を交わしてみたいと思ったのだ。
「隊長・・・見合いするって、ほんとですか」
「本当だ」
「あんたには俺がいるじゃないっすか!」
「思い上がるな」
「隊長・・・・・」
「緋真に、似ておるのだ。言葉を交わすだけだ。婚姻はせぬ、安心せよ」
「いやだ。言葉交わすのも許しません」
「私は!お前のものではない!」
そう白哉は叫んで、その場を後にしてしまった。
そして、いよいよお見合いの日がやってきた。
「沢森シイナと申します・・・」
「朽木白哉という・・・・・」
お見合いの籍では、シイナの両親もいた。
白哉には、ルキアがついてきていた。
本当に、緋真に似ていて、ルキアにも似ていた。
「本当に、義妹であられるルキア様とわたくし、見た目が似ておりますね」
「死別した妻、緋真にも似ておられる」
「わたくし、男腹ですの。地位からして正妻を望みますが、緋真様のことが忘れられないのであれば妾でもかまいません」
「兄は・・・・・妾でいいと・・・・・」
「4大貴族の朽木家と縁ができるのであれば、妾でも構わないと両親も納得ておりますの」
美しい着物を着た、美しい女性だった。
シイナは、緋真によく似ていた。
でも、緋真ではない。
緋真は、妾になるくらいなら縁などいらぬというだろう。
「梅の花は、お好きか?」
「あら、あいにくわたくし梅の花が嫌いですの。椿が好きですわ」
緋真は、梅の花が好きだった。
やはり、違うのだ。
シイナを緋真の代わりとして娶るのは、あまりにもシイナに失礼だ。
「わたくし、かまいませんのよ?緋真様の代わりでも。そのつもりで、見合いを受けておりますの。ご希望であれば、立ち振る舞いも口調も緋真様のようにしましょう」
「兄は・・・・・・」
そんな偽物、妻にしても虚しいだけ。
白哉は、見合いを断ろうと口を開く。
「隊長!」
「恋次!?」
「おいあんた、シイナとかいったな、隊長は俺のもんだ。隊長はな、副官である男である俺できてるんだ!あんたじゃ、隊長を満足させることなどできねぇ!」
「なっ!」
シイナはかっとなって、恋次の頬をはたいた。
「本当なのですが、白哉様!このような下賤な男と、できているのですか!」
シイナの両親は、驚きで言葉も出ないようだった。
「恋次、貴様、場所をわきまえろ!ここは上流貴族同士の見合いの場なのだぞ!」
ルキアの言葉に、恋次は吠える。
「上流貴族だろうが、見合いの場だろうが、知ったことか。愛している隊長が結婚するなんて、我慢できねぇ!」
「この下賤な死神風情が!」
シイナは、顔を真っ赤にして恋次につかみかかった。
ああ、やはり緋真ではない。
緋真は、人を「下賤」などと決して呼んだりしない。
「隊長!」
「白哉様!」
「恋次に言っていることは、本当だ。私は、副官であり同じ男である恋次と肉体関係をもっている」
「衆道・・・・汚らわしい!このお話、なかったことにしていただきます!」
シイナも、シイナの両親も立腹して去ってしまった。
「貴様・・・・兄様に、噂が立ったらどうするのだ。朽木家に恥をかけというのか!」
「う・・・そこまで、考えてなかった」
「兄様、念のため口封じをしておきましょう!」
「ああ、分かっている」
殺すわけではない。鬼道の一種で、記憶を少し飛ばすのだ。
目の飛び出るほど高い品を媒介に使うので、4大貴族くらいしか使えない術だった。
朽木家を出ていく前のシイナとシイナの両親に、白哉はその術を施した。
これで、朽木家の面子は潰れずにすむ。
「恋次・・・貴様、少しは場所を弁えよ」
「すみません。でも、隊長が見合いなんて許せなくて」
「もうよい。どのみち、言葉を交わすだけの予定だった。こちらも幻滅したので、未練も何もない」
「じゃあ、結婚は・・・・・」
「破談だ」
「おっしゃあああ」
「たわけ!恋次、貴様は兄様に幸せになってほしくないのか!」
「俺以外の死神と、幸せになってほしくない」
白哉は、長い溜息を零した。
「ルキア、すまぬが席を外せ」
「はい、兄様。恋次、こうなったからには、兄様を幸せにしろよ!」
「勿論だ!」
「恋次」
「はい」
「愚か者。私を、少しは信用したらどうなのだ」
「だって、隊長が見合いするっていうから・・・・」
「最初から、見合いだけのつもりだったのだ。結婚などせぬ」
「隊長、好きです。愛してます。俺には、隊長だけだ」
はぁと、長い溜息をついて、白哉は恋次に自分からキスをした。
「隊長?」
「そうだな。私にも、今は貴様だけだ、恋次」
白哉の細い腰に手を回す。
「もう、二度と見合いなんてしないでください」
「分かった」
恋次は、もう一度白哉を抱き締めて、その桜色の唇に唇を重ねる。
「あんたには、俺がいる」
「恋次・・・・・」
その日の夜は、睦みあった。
長い長い夜に、なりそうだった。
いえいえ、いかがわいいことではないです
「隊長、寝てください」
褥の上に、横になれと恋次は言う。
「するつもりはないぞ」
「今日はそういう約束ですから、手は出しません」
白哉は、大人し横になった。
「あ、うつぶせになってください」
白哉は、大人しくうつぶせになった。
寝るための夜着を着ていた。絹でできており、少し薄かった。
ぐっぐっと、力をこめて、恋次は白哉の腰をもみほぐしていく。
「んっ・・・・」
「隊長?」
「な、なんでもない」
思いっきりではなく、ツボを刺激してマッサージされた。
やはり、声がもれた。
「あっ・・・・」
「隊長、我慢しなくていいっすよ。声出しても。俺しかいませんから」
「貴様、何をかんがえておる」
「別に何も。ただ、最近肩とか腰とか自分で揉んでるようだから、揉んであげようと思って」
恋次は、本当に下心はなかった。
「ああっ・・・・・・」
肩を強く揉んでいくと、白哉はその気持ちよさにあられもない声を出していた。
そんな時間が30分程続いただろうか。
「隊長・・・・隊長のせいで俺、たっちまった。どう責任とってくれるんですか」
白哉は無言だった。
「隊長?」
あまりの気持ちよさに、そのまま白哉は寝てしまっていた。
「うわー、俺お預けですか・・・・・」
仕方ないので、白哉の気持ちよさそうなん寝顔をおかずに、自分を慰める。
「はぁ・・・好きな人が目の前にいるのに、自虐するしかないってどうなんだ?」
恋次はそう思いながら、眠ってしまった白哉に毛布をかけて、寄り添うようにその隣で寝て、意識は闇に落ちていくのだった。
褥の上に、横になれと恋次は言う。
「するつもりはないぞ」
「今日はそういう約束ですから、手は出しません」
白哉は、大人し横になった。
「あ、うつぶせになってください」
白哉は、大人しくうつぶせになった。
寝るための夜着を着ていた。絹でできており、少し薄かった。
ぐっぐっと、力をこめて、恋次は白哉の腰をもみほぐしていく。
「んっ・・・・」
「隊長?」
「な、なんでもない」
思いっきりではなく、ツボを刺激してマッサージされた。
やはり、声がもれた。
「あっ・・・・」
「隊長、我慢しなくていいっすよ。声出しても。俺しかいませんから」
「貴様、何をかんがえておる」
「別に何も。ただ、最近肩とか腰とか自分で揉んでるようだから、揉んであげようと思って」
恋次は、本当に下心はなかった。
「ああっ・・・・・・」
肩を強く揉んでいくと、白哉はその気持ちよさにあられもない声を出していた。
そんな時間が30分程続いただろうか。
「隊長・・・・隊長のせいで俺、たっちまった。どう責任とってくれるんですか」
白哉は無言だった。
「隊長?」
あまりの気持ちよさに、そのまま白哉は寝てしまっていた。
「うわー、俺お預けですか・・・・・」
仕方ないので、白哉の気持ちよさそうなん寝顔をおかずに、自分を慰める。
「はぁ・・・好きな人が目の前にいるのに、自虐するしかないってどうなんだ?」
恋次はそう思いながら、眠ってしまった白哉に毛布をかけて、寄り添うようにその隣で寝て、意識は闇に落ちていくのだった。
恋次の恋文
恋文を書いてみた。
誰でもない、隊長あてに。
恋次は、できるだけ色っぽく、どれだけ愛しているのかを紙に書き綴った。
3日かけて完成したそれを、白哉に差し出す。
「なんだこれは」
「恋文・・・・いわゆるラブレターですね」
「興味ない」
ぽいっと捨てられた。
「ちょっとあんた!俺は3日かけて一生懸命思いをこめて書いたんすよ!冒頭だけでもいいから読んでください!」
「仕方ないな・・・・・」
白哉は、乗り気でなかったが、読んでいった。
白哉は、その綺麗な顔をすましていた。
だが、だんだん顔色が変わってきた。
「よっしゃ!」
恋次は思った。
思いを読んでもらったと。
「これは・・・・・」
紅い顔で、ふるふると手紙を手にしている白哉。
はらりはらりと、手紙が床に落ちる。
「兄様、失礼します。こちらに提出する書類をおもちしました」
ルキアが、6番隊の執務室に入ってきた。
「兄様?」
顔を真っ赤にして伏せている義兄の姿がおかしくて、書類を机の上においた。
「恋次!貴様兄様に何をした!」
「なんもしてねーよ。ただ、ラブレターを読んでもらっただけだ」
「らぶれたー」
白哉の足元に散らばったいっぱい文字の綴られた紙を拾い、内容を読んでいく。
「あんたのあそこはしまりがよくって、俺はつい何度もつきあげたくなる。あんたはイクときの顔はすごくかわいくて、もっと泣かせたくなる・・・・・なんだこれは!ただの卑猥なエロレターではないか!」
「え、そうか?」
「兄様、大丈夫ですか、兄様」
「ルキア・・・私は、何故こんな男を副官に選んだのであろう・・・・・」
「兄様、しっかり!」
「散れ、千本桜」
千の桜の花となった刃は、恋次のかいたエロレターと恋次を攻撃した。
「ぎゃああああああ!なんで!」
「貴様!このような破廉恥な文を私に読ませて!」
白哉は起こって、恋次をボコボコにすると、それから1週間口を聞いてくれなかった。
「俺・・・・なんか間違ったことしたか?」
あほな恋次は、自分がただの卑猥な文章を綴っただけということに、ずっと気づかぬのであった。
誰でもない、隊長あてに。
恋次は、できるだけ色っぽく、どれだけ愛しているのかを紙に書き綴った。
3日かけて完成したそれを、白哉に差し出す。
「なんだこれは」
「恋文・・・・いわゆるラブレターですね」
「興味ない」
ぽいっと捨てられた。
「ちょっとあんた!俺は3日かけて一生懸命思いをこめて書いたんすよ!冒頭だけでもいいから読んでください!」
「仕方ないな・・・・・」
白哉は、乗り気でなかったが、読んでいった。
白哉は、その綺麗な顔をすましていた。
だが、だんだん顔色が変わってきた。
「よっしゃ!」
恋次は思った。
思いを読んでもらったと。
「これは・・・・・」
紅い顔で、ふるふると手紙を手にしている白哉。
はらりはらりと、手紙が床に落ちる。
「兄様、失礼します。こちらに提出する書類をおもちしました」
ルキアが、6番隊の執務室に入ってきた。
「兄様?」
顔を真っ赤にして伏せている義兄の姿がおかしくて、書類を机の上においた。
「恋次!貴様兄様に何をした!」
「なんもしてねーよ。ただ、ラブレターを読んでもらっただけだ」
「らぶれたー」
白哉の足元に散らばったいっぱい文字の綴られた紙を拾い、内容を読んでいく。
「あんたのあそこはしまりがよくって、俺はつい何度もつきあげたくなる。あんたはイクときの顔はすごくかわいくて、もっと泣かせたくなる・・・・・なんだこれは!ただの卑猥なエロレターではないか!」
「え、そうか?」
「兄様、大丈夫ですか、兄様」
「ルキア・・・私は、何故こんな男を副官に選んだのであろう・・・・・」
「兄様、しっかり!」
「散れ、千本桜」
千の桜の花となった刃は、恋次のかいたエロレターと恋次を攻撃した。
「ぎゃああああああ!なんで!」
「貴様!このような破廉恥な文を私に読ませて!」
白哉は起こって、恋次をボコボコにすると、それから1週間口を聞いてくれなかった。
「俺・・・・なんか間違ったことしたか?」
あほな恋次は、自分がただの卑猥な文章を綴っただけということに、ずっと気づかぬのであった。
色のない世界・ゼロ
君がいなくなって、15年が経った。
世界は変わったよ。
もう、大戦の爪痕はほとんどない。
そうそう、君の大切な副官だったルキアちゃんが、阿散井君と結婚したんだ。
苺花というかわいい女の子を産んだよ。
もう8歳だろうか。
班目君の元で、剣の稽古に励んでいるよ。
君のあとは、ルキアちゃんが継いだんだ。
君も、ルキアちゃんなら安心だろう?
ああ、本当に君がいない15年はあっという間だった。
「会いたいねぇ・・・・・・」
君に、会いたい。
一目でいいから。
でも、それは叶わぬ願い。
いつの間にか眠ってしまったみたいだった。
「京楽、元気にしてるか?」
「浮竹!?」
ああ、これは夢か。
そう分かっても、僕にはありがたかった。
「ちょっとな・・・花の神に・・・・」
花の神。浮竹が赤子の頃祝福を授けたという田舎で崇められている名もなき神様。
「花の神は、世界を渡るから。俺も一緒に渡ってきたんだ。夢の中だけだけど、これは現実だ」
「現実?」
「ほら、俺は生きている」
僕は浮竹の隣に並んだ。浮竹ははにかみながら、僕の手をとって、心臓のある位置に置いた。
トクントクンと、鼓動がする。
「本当だ、生きてる」
「夢の中だけだけどな」
それでも。
君が生きていてくれるなら、それだけでいい。
「あの手紙、読んだのか」
「ああ・・・・君が死ぬ1日前に残した手紙だね。読んだよ。いっぱい泣いた。泣きすぎて目が赤くなったよ」
「すまなかった。もっとこう・・・・明るい、未来の話にしておけばよかったな」
「そうでもないよ。あの手紙のお陰で、君への想いがまた生まれた。何度でも繰り返す。君が好きだ。君を愛している」
僕は、浮竹の長い白髪を手にとった。
サラサラとした触覚がして、本当に浮竹は生きているんだと実感した。
「ねぇ、君はこのまま、去ってしまうの?」
「ああ。俺は、この世界では死んでいるから」
「別の世界なら、君は生きているの?」
「ああ」
「いいな。僕もそっちの世界にいってみたい」
「こっちには、こっちの京楽がいるんだ」
浮竹が、困ったように微笑んだ。
「そう、僕が。ややこしいね」
「京楽、一人でいるのか寂しいか?」
「かなりね。でも、みんないるから・・・絶望とまではいかないかな」
「よかった・・・・・・・」
浮竹は、心から安堵した様子で、僕の傍にきて僕を抱き締めた。
暖かった。
「俺は、いつまでもお前を思っている。その証に、これを」
翡翠の石を、渡された。
僕あげたものではない、別の翡翠の石だった。
形も色も違ったから、別物だとはっきりわかった。
「これを、せめて俺と思ってもっていてくれ。俺は、いつでもお前を見守っているから」
「君は・・・・いってしまうんだね」
「ああ。俺はすでに死んでいるからな」
「ねぇ、夢の中なら、またいつか会える?」
「さぁ、どうだろう」
浮竹は、困った顔をした。
ああ。
そんな表情の君さえ、愛しい。
「愛してる、十四郎」
「俺も愛してる、春水」
唇に、触れるだけのキスをした。
「時間切れだ。お前はもう目覚めなきゃいけない」
「嫌だよ・・・・もっと君と語らっていたい。君の傍にいたい」
「京楽総隊長だろ。我儘いうな」
「そうだね。今の僕は京楽総隊長だ。しっかり、しないとね」
ふわりと微笑んで、浮竹は花びらとなって散っていく。
「いつか、お前を迎えにいくよ。それまで、長生きしろよ!」
「浮竹、愛してるよ!」
「ああ、俺も愛してる」
目が覚めた。
「ああ。いい夢だった。覚めなきゃよかったのに」
ふと、甘い花の香がした。
浮竹の匂いだ。
部屋を見ると、桜の花にまみれていた。そして、僕の手の中には夢の中で、浮竹が渡してくれた翡翠の石があった。
「・・・・・・浮竹・・・・」
僕は、ポロリと一粒の涙を流した。
いつかいつか。
僕の命が果てたら。
むかえにきてね、浮竹。
愛してるよ。
色あせることのない、永遠の愛を君に。、
世界は変わったよ。
もう、大戦の爪痕はほとんどない。
そうそう、君の大切な副官だったルキアちゃんが、阿散井君と結婚したんだ。
苺花というかわいい女の子を産んだよ。
もう8歳だろうか。
班目君の元で、剣の稽古に励んでいるよ。
君のあとは、ルキアちゃんが継いだんだ。
君も、ルキアちゃんなら安心だろう?
ああ、本当に君がいない15年はあっという間だった。
「会いたいねぇ・・・・・・」
君に、会いたい。
一目でいいから。
でも、それは叶わぬ願い。
いつの間にか眠ってしまったみたいだった。
「京楽、元気にしてるか?」
「浮竹!?」
ああ、これは夢か。
そう分かっても、僕にはありがたかった。
「ちょっとな・・・花の神に・・・・」
花の神。浮竹が赤子の頃祝福を授けたという田舎で崇められている名もなき神様。
「花の神は、世界を渡るから。俺も一緒に渡ってきたんだ。夢の中だけだけど、これは現実だ」
「現実?」
「ほら、俺は生きている」
僕は浮竹の隣に並んだ。浮竹ははにかみながら、僕の手をとって、心臓のある位置に置いた。
トクントクンと、鼓動がする。
「本当だ、生きてる」
「夢の中だけだけどな」
それでも。
君が生きていてくれるなら、それだけでいい。
「あの手紙、読んだのか」
「ああ・・・・君が死ぬ1日前に残した手紙だね。読んだよ。いっぱい泣いた。泣きすぎて目が赤くなったよ」
「すまなかった。もっとこう・・・・明るい、未来の話にしておけばよかったな」
「そうでもないよ。あの手紙のお陰で、君への想いがまた生まれた。何度でも繰り返す。君が好きだ。君を愛している」
僕は、浮竹の長い白髪を手にとった。
サラサラとした触覚がして、本当に浮竹は生きているんだと実感した。
「ねぇ、君はこのまま、去ってしまうの?」
「ああ。俺は、この世界では死んでいるから」
「別の世界なら、君は生きているの?」
「ああ」
「いいな。僕もそっちの世界にいってみたい」
「こっちには、こっちの京楽がいるんだ」
浮竹が、困ったように微笑んだ。
「そう、僕が。ややこしいね」
「京楽、一人でいるのか寂しいか?」
「かなりね。でも、みんないるから・・・絶望とまではいかないかな」
「よかった・・・・・・・」
浮竹は、心から安堵した様子で、僕の傍にきて僕を抱き締めた。
暖かった。
「俺は、いつまでもお前を思っている。その証に、これを」
翡翠の石を、渡された。
僕あげたものではない、別の翡翠の石だった。
形も色も違ったから、別物だとはっきりわかった。
「これを、せめて俺と思ってもっていてくれ。俺は、いつでもお前を見守っているから」
「君は・・・・いってしまうんだね」
「ああ。俺はすでに死んでいるからな」
「ねぇ、夢の中なら、またいつか会える?」
「さぁ、どうだろう」
浮竹は、困った顔をした。
ああ。
そんな表情の君さえ、愛しい。
「愛してる、十四郎」
「俺も愛してる、春水」
唇に、触れるだけのキスをした。
「時間切れだ。お前はもう目覚めなきゃいけない」
「嫌だよ・・・・もっと君と語らっていたい。君の傍にいたい」
「京楽総隊長だろ。我儘いうな」
「そうだね。今の僕は京楽総隊長だ。しっかり、しないとね」
ふわりと微笑んで、浮竹は花びらとなって散っていく。
「いつか、お前を迎えにいくよ。それまで、長生きしろよ!」
「浮竹、愛してるよ!」
「ああ、俺も愛してる」
目が覚めた。
「ああ。いい夢だった。覚めなきゃよかったのに」
ふと、甘い花の香がした。
浮竹の匂いだ。
部屋を見ると、桜の花にまみれていた。そして、僕の手の中には夢の中で、浮竹が渡してくれた翡翠の石があった。
「・・・・・・浮竹・・・・」
僕は、ポロリと一粒の涙を流した。
いつかいつか。
僕の命が果てたら。
むかえにきてね、浮竹。
愛してるよ。
色あせることのない、永遠の愛を君に。、
世界と浮竹
世界と浮竹。
どっちをとるとしたら、世界だよ。
ごめんね、浮竹。
僕はもう、京楽総隊長。
尸魂界の護廷13隊を率いる、1番隊隊長なんだ。
でも、可能性があるなら君と一緒に生きたかった
この、平和になった尸魂界を。
君と肩を並べて、他愛ない話をして笑いあいたかった。
何もできなかったから、せめて君が愛した場所に君の墓石を建てた。
ごめんね、浮竹。
僕は当分の間、君の元には行けそうにない。
尸魂界に残った大戦の爪痕は色濃く、誰もが必死になって生きた。
僕は、引き取った君の遺品を整理していた。
どれも捨てるつもりはない。想いがいっぱいつまったものだから。
君は本当に、僕を愛していてくれたんだね。
院生時代にあげた他愛もないものから、隊長になってからあげたものまで
君の遺品のほとんどが、僕が君に贈ったものだった。
ふと、1枚の手紙を見つけた。
浮竹十四郎と書いてあった。
封を切り、中身を読んでいく。
それは、浮竹が死ぬ1日前に残した手紙だった。
「君は・・・ずるいね」
ぽたぽたと、眼帯に覆われた目からも涙が溢れてきた。
「愛してる、浮竹十四郎。たとえもういなくても、僕は一生君だけを愛しぬく」
手紙を、鬼道で焼いた。
誰かに見られたくなかったから。
「京楽!」
目を閉じると、君の声も君の姿も、まるで隣にあるように思い出せる。
もう、君を失って1年も経とうとしているのに。
僕は、強くなんかない。
君がいないこの世界は、悲しい。
でも、僕は京楽総隊長、護廷13隊1番隊隊長京楽春水。
君にたくさんのありがとうを。
そして、君にたくさんの愛を。
明日、久しぶりに君の墓参りに行こう。
君に会えるわけじゃないけど、君に少しでも近づけるなら。
僕は、君を愛しているといいながら、君が世界の贄になることをただ黙していた。、
君が選んだ道は、間違っていない。
世界は、今も色づいる。
ただ、僕が見る世界は色を失っているけれど。
僕は生きる。君の分まで。
この色のない世界を。
NEXT 色のない世界シリーズ
どっちをとるとしたら、世界だよ。
ごめんね、浮竹。
僕はもう、京楽総隊長。
尸魂界の護廷13隊を率いる、1番隊隊長なんだ。
でも、可能性があるなら君と一緒に生きたかった
この、平和になった尸魂界を。
君と肩を並べて、他愛ない話をして笑いあいたかった。
何もできなかったから、せめて君が愛した場所に君の墓石を建てた。
ごめんね、浮竹。
僕は当分の間、君の元には行けそうにない。
尸魂界に残った大戦の爪痕は色濃く、誰もが必死になって生きた。
僕は、引き取った君の遺品を整理していた。
どれも捨てるつもりはない。想いがいっぱいつまったものだから。
君は本当に、僕を愛していてくれたんだね。
院生時代にあげた他愛もないものから、隊長になってからあげたものまで
君の遺品のほとんどが、僕が君に贈ったものだった。
ふと、1枚の手紙を見つけた。
浮竹十四郎と書いてあった。
封を切り、中身を読んでいく。
それは、浮竹が死ぬ1日前に残した手紙だった。
「君は・・・ずるいね」
ぽたぽたと、眼帯に覆われた目からも涙が溢れてきた。
「愛してる、浮竹十四郎。たとえもういなくても、僕は一生君だけを愛しぬく」
手紙を、鬼道で焼いた。
誰かに見られたくなかったから。
「京楽!」
目を閉じると、君の声も君の姿も、まるで隣にあるように思い出せる。
もう、君を失って1年も経とうとしているのに。
僕は、強くなんかない。
君がいないこの世界は、悲しい。
でも、僕は京楽総隊長、護廷13隊1番隊隊長京楽春水。
君にたくさんのありがとうを。
そして、君にたくさんの愛を。
明日、久しぶりに君の墓参りに行こう。
君に会えるわけじゃないけど、君に少しでも近づけるなら。
僕は、君を愛しているといいながら、君が世界の贄になることをただ黙していた。、
君が選んだ道は、間違っていない。
世界は、今も色づいる。
ただ、僕が見る世界は色を失っているけれど。
僕は生きる。君の分まで。
この色のない世界を。
NEXT 色のない世界シリーズ
世界と自分と
「京楽、愛している」
ミミハギ様を手放さそう。
京楽はどう思うだろう。
浮竹のいない世界を。
「京楽、目は大丈夫か?もう片方の目はちゃんと見えているか?」
山本総隊長が死に、総隊長となった京楽の傍らにはいつも浮竹がいた。
「大丈夫。いつ敵が襲ってくるかもわからないからね」
でも、その日の夜久しぶりに体を重ねた。
「この右目・・・・義眼をいれているのか?」
眼帯を外すと、緑色の無機質な瞳があった。
「君と同じ色の瞳のがいいと思ってね。でも、眼帯をしているから誰が見るものでもないんだけれど」
「俺の目の色は、みんな翡翠みたいだというんだ。そんなに綺麗な色じゃないのに」
「いいや、浮竹の目の色は翡翠だよ」
エメラルドの色は、日番谷だ。
同じ緑でも、色が違う。
「翡翠の首飾り・・・・してくれてるんだね」
「お前がくれた、お守り石だから」
「愛してるよ、京楽」
ああ。
愛しい。
この男が、どうしようもないくらい、狂おしいくらいに愛しい。
先に浮竹が逝くと知ったら、京楽は全てを捨ててまで止めてくれるだろうか。
世界と浮竹。
そんな選択肢になったら・・・・京楽のことだから、浮竹を選んでしまうかもしれない。
世界と、京楽と共に生きること。
その2つのうちに、どちらかを選べと言われたら、浮竹は世界を選ぶ。
だって、世界がなくなったら京楽も死んでしまうから。
愛しい京楽には、生き残ってほしい。
それは浮竹の我儘だった。
「何を考えているんだい」
「総隊長になり、眼帯をしたお前もかっこいいなって思っていた」
唇が重なる。
「浮竹・・・・・どこにもいかないでよ」
それは、できない約束だった。
世界と京楽。
浮竹は、京楽のためにも皆のためにも、世界を選ぶ。
いつか争いがなくなり、平和な時代がきたら、俺を想ってくれ。そう浮竹は心の中で呟いた。
夜明けがくるまで、ずっと二人きりで静かな時間を過ごしていた。
二人きりでいられるのは夜から明け方にかけてくらいで。
敵がいつ襲ってくるかも分からないので、厳戒態勢がしかれていた。
「おはよう、浮竹」
「おはよう、京楽」
今日も、1日が始まる。
最後の1日が、いつか始まる。
神掛をしよう。ミミハギ様を手放さそう。
それは、つまりは浮竹の死。
京楽は克服してくれるだろうか、俺の死を。
前を向いて歩いていってくれるだろうか。
どうか、悲しまないでほしい。
たくさんの愛をもらった。だから、たくさんの愛を与えた。
これは俺の我儘。
死神としての矜持。
尸魂界のためならば、この命。
たとえ、愛する者を裏切るようなことになっても。
喜んで、この命を手放さそう。
だから、どうか泣かないで。これは死神であるが故の選択。
いつか、二人で引退して、尸魂界を平和に生きたかった。
涙が零れそうになった。
「京楽、愛している」
浮竹は墜ちていく。
色のない世界へ。
先生、卯ノ花隊長・・・・いまそちらにいきます。
「京楽・・・愛している・・・・」
その想いだけは永遠。
ミミハギ様を手放さそう。
京楽はどう思うだろう。
浮竹のいない世界を。
「京楽、目は大丈夫か?もう片方の目はちゃんと見えているか?」
山本総隊長が死に、総隊長となった京楽の傍らにはいつも浮竹がいた。
「大丈夫。いつ敵が襲ってくるかもわからないからね」
でも、その日の夜久しぶりに体を重ねた。
「この右目・・・・義眼をいれているのか?」
眼帯を外すと、緑色の無機質な瞳があった。
「君と同じ色の瞳のがいいと思ってね。でも、眼帯をしているから誰が見るものでもないんだけれど」
「俺の目の色は、みんな翡翠みたいだというんだ。そんなに綺麗な色じゃないのに」
「いいや、浮竹の目の色は翡翠だよ」
エメラルドの色は、日番谷だ。
同じ緑でも、色が違う。
「翡翠の首飾り・・・・してくれてるんだね」
「お前がくれた、お守り石だから」
「愛してるよ、京楽」
ああ。
愛しい。
この男が、どうしようもないくらい、狂おしいくらいに愛しい。
先に浮竹が逝くと知ったら、京楽は全てを捨ててまで止めてくれるだろうか。
世界と浮竹。
そんな選択肢になったら・・・・京楽のことだから、浮竹を選んでしまうかもしれない。
世界と、京楽と共に生きること。
その2つのうちに、どちらかを選べと言われたら、浮竹は世界を選ぶ。
だって、世界がなくなったら京楽も死んでしまうから。
愛しい京楽には、生き残ってほしい。
それは浮竹の我儘だった。
「何を考えているんだい」
「総隊長になり、眼帯をしたお前もかっこいいなって思っていた」
唇が重なる。
「浮竹・・・・・どこにもいかないでよ」
それは、できない約束だった。
世界と京楽。
浮竹は、京楽のためにも皆のためにも、世界を選ぶ。
いつか争いがなくなり、平和な時代がきたら、俺を想ってくれ。そう浮竹は心の中で呟いた。
夜明けがくるまで、ずっと二人きりで静かな時間を過ごしていた。
二人きりでいられるのは夜から明け方にかけてくらいで。
敵がいつ襲ってくるかも分からないので、厳戒態勢がしかれていた。
「おはよう、浮竹」
「おはよう、京楽」
今日も、1日が始まる。
最後の1日が、いつか始まる。
神掛をしよう。ミミハギ様を手放さそう。
それは、つまりは浮竹の死。
京楽は克服してくれるだろうか、俺の死を。
前を向いて歩いていってくれるだろうか。
どうか、悲しまないでほしい。
たくさんの愛をもらった。だから、たくさんの愛を与えた。
これは俺の我儘。
死神としての矜持。
尸魂界のためならば、この命。
たとえ、愛する者を裏切るようなことになっても。
喜んで、この命を手放さそう。
だから、どうか泣かないで。これは死神であるが故の選択。
いつか、二人で引退して、尸魂界を平和に生きたかった。
涙が零れそうになった。
「京楽、愛している」
浮竹は墜ちていく。
色のない世界へ。
先生、卯ノ花隊長・・・・いまそちらにいきます。
「京楽・・・愛している・・・・」
その想いだけは永遠。
院生時代の部屋エクセトラ
今日は、学院の掃除当番だった。しかも京楽と。
浮竹は頭の中にいつも花を咲かせている京楽を急かして、他の掃除当番と一緒に教室内をはいてゴミをとり、窓をふき、床にもっぷがけをした。
机を移動するのが大変だったが、京楽がもってくれた。
京楽は優しい。こういう心使いはけっこうじんわりとくるのだが、京楽が浮竹に懸想していることを知っているので、何も言えない。
ありがとうと言えば、抱き着いてくる始末だ。
「じゃあ、俺ごみを捨てにいってくるから」
「僕もいくよ。浮竹は今日もかわいいね」
ゴミの量はけっこう多く、一人でもつには重かった。
素直に、京楽の言葉に甘える。
ゴミを焼却炉にまでもっていき、その炎の中に捨てると、ぶわっと炎が大きくなった。
「誰か、ガスの入ったゴミいれたな!」
小さく爆発音がした。
京楽は、浮竹を庇っていた。
何かの破片が背中にささった京楽の姿に驚いて、声をあげる。
「京楽、大丈夫か!?医務室にいくぞ!」
爆発は小さかったけれど、至近距離にいた京楽にダメージを負わせた。
「大丈夫、そんなに痛くないし、破片も小さいから。浮竹が無事でよかったよ」
医務室にいくと、誰もいなかった。
時間を見ると、もうみんな下校する時間だ。医務室の先生も、帰るのが早い。
「くそっ」
もっと自分で回道が使えたら。
仕方なしに、京楽の上の服を脱がせて破片をとると、アルコールで消毒して血止めを行い、ガーゼをあてて包帯を巻いた。
「念のため、帰りに病院に寄ろう」
火傷もしているらしかった。塗り薬をぬって、包帯を巻いていく。
「ありがとう、浮竹」
「俺なんて庇うから」
「あそこで庇わなきゃ、男じゃないよ。好きな子を庇うのは当たり前でしょ」
「このバカ!」
怪我をしているので殴らなかったが、頭にきた。
俺なんて庇うから。
そう思った。
ごみ箱を教室に戻して、下校する。
途中で病院に寄ったが、浮竹の処置はほぼ完ぺきで、火傷の痕が残らないように回道で手当てしてもらい、破片をぬいた傷跡は縫うほどのこともなかったので、同じく回道でほぼ塞いでもらって、包帯を巻きなおした。
その病院は、診察料は高いが、元4番隊の医者がいて、回道で傷を癒してくれるので、とても人気があった。
京楽の名を出すと、すぐに診てもらえた。
「帰るか・・・・・」
学院の食堂のある場所ならまだ空いているだろうが、怪我をして包帯を巻いた京楽を連れて行きたくなかった。
下町の店で弁当を二人分買い込んで、寮の自室に戻った。
「このバカ・・・・・・」
部屋にたどりつくと、浮竹は京楽を抱き締めた。
京楽は、優しく笑って、浮竹の頭を撫でた。
「君が無事でよかった」
「もう二度と、あんな真似するな!」
浮竹は怒っていた。
「でも、僕は何度でも君を庇う。君がそれで助かるなら」
「これから・・・俺たちは死神になるんだぞ。その度にお前が庇っていたら、お前の身がもたない。俺は弱くない。今回みたいな突然の事態には無理だったが、死神になったら俺がお前を庇う」
「じゃあ、お互い庇いあって傷だらけだね」
「そうなる前に敵を殺す」
ガスの入ったスプレーか何かをごみ箱にいれた、誰かも分からぬ者に殺意を覚えた。
「適当に買った弁当だから、美味くないかもしれないけど、食おう」
学院の食堂の料理は安くて美味いしボリュームがあったが、病院に寄っていたのですでに閉まっていたし、包帯まみれの京楽を連れていきたくなかった。
次の日には、嘘みたいに傷は治っていた。浮竹が寝ている間に、京楽家のつてを使い、4番隊の死神を呼んでもらって完全に傷を治癒してもらったのだ。
そのことに、浮竹は安堵しながらも、京楽の心配をしまくていたせいで熱をだしてしまっていた。
「今日は、学校休んでね。僕も休むから」
教師に、ガスの入ったスプレーか何かがごみ箱に入っていたことを知らせ、怪我をしたので1日休ませてくれといったら、教師は今後そのようなことが起こらないように徹底的に生徒を指導すると約束してくれて、京楽は病欠ではなく特別欠席扱いになった。
浮竹は病欠だが。
「はぁ・・・・・」
熱が下がらない。
ごろりと横を向くと、同じベッドにいつの間にか京楽がいた。
「なんだ。病人をあんまり刺激するなよ。熱が高くなる」
「うん。僕を心配して熱出しちゃったんだね。ごめんね」
「別にお前のせいじゃない」
いいや、京楽のせいだった。でも、声には出さない。
目の前にで血を流した京楽に、不安を覚えたのだ。今後の人生は、死神として命をかけていくもの。またいつか、京楽が血を流す様を見てしまうのだろうか。
眩暈がした。
「少し、眠る」
「うん、おやすみ」
side UKITAKE
学校の掃除当番だった。正直めんどくさかったが、品行方正、優等生で日々を過ごしているので、さぼることなどできない。
俺は、俺のことを大好きだという京楽と一緒に掃除をした。
京楽は、何かと俺のことをかわいいといって、好きだといってくる。生憎と、その手の趣味はないので俺は京楽を嫌ってはいないし、好きだが、恋愛相手と見ることはできなかった。
京楽は優しい。机の移動を率先してしてくれた。
「じゃあ、俺ごみを捨てにいってくるから」
俺は、一人でゴミを捨てにいこうとして、その量に驚き、重さに少しふらついた。
「僕もいくよ。浮竹は今日もかわいいね」
京楽の今日もかわいいねという言葉を無視して、手伝ってもらえるならと、京楽にもゴミを持ってもらった。
焼却炉にゴミをいれると、ゆらめいていた炎が大きくなり、小さな爆発音がした。
「誰か、ガスの入ったゴミいれたな!」
目の前で炎がちらつく。何かが弾けて、俺は咄嗟に顔を庇い、目をつぶった。衝撃は、何時までたってもやってこなかった。薄く目をあけると、京楽に抱きしめらていた。
京楽の背中から、ぽたぽたと血が滴りう落ちるのが見えて、気が遠くなりそうになる。京楽が、咄嗟に俺を庇ってくれたのだ。
「京楽、大丈夫か!?医務室にいくぞ!」
「大丈夫、そんなに痛くないし、破片も小さいから。浮竹が無事でよかったよ」
このばか!俺なんかのために。
俺には、京楽に庇ってもらうような価値はない。こんな下級貴族の貧乏な長男なんて。京楽を連れて医務室にいくと、頼みの先生がいなかった。
「くそっ」
仕方なく、子供の頃に覚えた救急処置の仕方で、京楽の傷の手当てをしていく。包帯をぐるぐる巻いていくと京楽が漆黒の瞳でこちらをずっと見つめていた。
その瞳は、慈愛に満ちていた。俺は、その視線に応えることができないでいた。
「念のため、帰りに病院に寄ろう」
京楽は火傷もしていたので、塗り薬を塗って包帯をまいた。
「ありがとう、浮竹」
「俺なんて庇うから」
「あそこで庇わなきゃ、男じゃないよ。好きな子を庇うのは当たり前でしょ」
その言葉に、かっと体が熱くなったが、平静を装った。
「このバカ!」
そして、俺なんかを庇った京楽に、頭にきた。俺も男だ。怪我くらいしても大丈夫だし、京楽に守ってもらうほどやわじゃない。
ごみ箱を教室に置いて、帰る準備をした。
俺は京楽の分の荷物ももち、学院を後にする。
念のために、寮に一番近い病院で診てもらい、ちゃんとした処置を施してもらったが、俺の応急処置がよかったと医師に褒められた。
今の包帯だらけの京楽を、誰にも見られたくなかった。俺のせいで、こんな姿になった京楽に申し訳ない気持ちがいっぱいで。
下町の弁当屋で、適当に弁当を買って寮の自室に戻った。
「このバカ・・・・・・」
俺を庇った京楽を抱き締める。抱き締め返された。しばらく、そうしていた。
今、京楽に愛を囁かれたら、俺はきっと落ちてしまう。そう思いながら。京楽の手が、優しく俺の頭を撫でる。きもちよにさに、目を閉じかけた。
「君が無事でよかった」
その言葉に、現実に引き戻される。
「もう二度と、あんな真似するな!」
俺は、思った通りのことを言っていた。
俺なんて庇うな。俺は、そんな価値のある人間じゃない。
「でも、僕は何度でも君を庇う。君がそれで助かるなら」
京楽の言葉に、眩暈を覚えた。ああ、この男。本当に、俺のことが好きなんだな。
「これから・・・俺たちは死神になるんだぞ。その度にお前が庇っていたら、お前の身がもたない。俺は弱くない。今回みたいな突然の事態には無理だったが、死神になったら俺がお前を庇う」
「じゃあ、お互い庇いあって傷だらけだね」
「そうなる前に敵を殺す」
俺は、弱くない。確かに病弱で肺の病をもっているが、戦闘能力は高い。現世で虚退治もした。もう4回生だ。現世に出て、虚退治の実践訓練を受けている。
ふと、腹のむしがないた。何があっても、生きている限り腹は減る。
「適当に買った弁当だから、美味くないかもしれないけど、食おう」
京楽と、同じベッドに腰かけて食べた。唐揚げ弁当だった。適当に買ったわりには美味しかった。
俺は満足して、京楽の方を見る。
「かわいいね、浮竹」
京楽は、そう言って俺にキスをしてきた。
「んあっ」
俺は戸惑う。突き飛ばすべきかとも思ったが、俺を庇ってくれたこともあり、自由にさせた。しばらく深く浅くキスを繰り返して、京楽は満足したのか離れて行った。
ああ。俺のほうもスイッチが入ってしまった。後で処理しなければ、つらいかもしれない。
頭の中は京楽のことだらけだった。京楽に今求められたら、俺は全てを与えてしまうだろう。幸いなことに、そうはならなかった。だが、怪我をした京楽が心配で心配で、その夜俺は熱をだした。
朝になると、京楽の傷が嘘のように治っていた。
「どうしたんだ、傷は」
「京楽家のつてで、4番隊の死神に治してもらった。君の辛そうな顔を見るのがいやだったから」
「今日は、学校休んでね。僕も休むから」
俺が熱を出していることに、気づかれてしまっているようだった。
京楽も、念のため休みをとるようだった。学校側の責任で、特別欠席扱いになった。俺は病欠だが。
学院を、1年間で3分の1以上欠席すると留年になる。俺はそうならないように、体とうまく付き合いながら、なんとか出席日数が確保していた。今日は病欠だけれど。
「はぁ・・・・・」
熱があがってきた。一向に下がらい。このままでは、明日も休むことになる。
俺は寝がえりをうった。すると、同じベッドに京楽がいて驚いた。
「なんだ。病人をあんまり刺激するなよ。熱が高くなる」
射干玉の瞳で、京楽は俺を見ていた。
「うん。僕を心配して熱出しちゃったんだね。ごめんね」
手が伸ばされた。頬の手が添えられて、触れるだけの口付けを受ける。
「別にお前のせいじゃない」
それは嘘だ。
京楽を心配するあまりに熱を出した。でも、そんなこと口が裂けて言えない。
京楽は、優しく俺を抱きしめてきた。
熱い額に、水でぬらしたタオルが置かれた。解熱剤を飲むと、薬の成分で眠気がやってきた。
「少し、眠る」
「うん、おやすみ」
目覚めると、京楽がじっとこっちを見ていた。
「熱、下がったね」
「ああ」
俺の額に、京楽が手を当てる。完全に熱が引いたことを確認される。俺は起き上がろうとした。
腕を掴まれて、押し倒された。
「京楽・・・・・?」
「少しだけ・・・・ね?」
何がと問う間もなく、口づけられた。院生の服の隙間から手が侵入してきて、全身の輪郭を愛撫された。
「んあっ」
漏れた声に、俺は驚いた。女みたいな声を出してしまっていた。
「京楽!」
膝を膝で割られて、敏感な部分に手を這わされる。
「ひうっ」
喉がなる。
呼吸が荒くなる。
ぐちゃぐちゃと音をたてていじられて、俺は何も考えられなくなった。
先端に爪をたてられて、呆気なくいってしまった。
「ああああああ!」
頭が快感で真っ白になった。涙が出てきた。
「今日はここまで。続きはまた今度」
生殺しの状態だが、安堵した。まだ、京楽を受け入れる決心がついていないのだ。
ああ、濡れてしまった下着を取り換えないと。
俺は新しい院生の服と下着を手に、湯殿に消えた。
生々しかった行為を思いだす。京楽は、ああいうことをいつも・・・・俺を犯すようなことを考えているのかと思うと、体が熱くなった。
俺もまだ若い。
既にたちあがってしまっていたものに、京楽がしたようなことをすると、あっという間に精液を放っていた。
京楽を思いながらしたわけじゃない。ただ、自然の欲求だった。
それを消し去るように湯をかぶり、シャワーを浴びた。シャンプーで髪を洗い、石鹸で体洗う。
「しっかりしろ、浮竹十四郎」
京楽の想い通りになるな。
京楽のペースに巻きこまれたら、いつか美味しくいただかれてしまう。
今はまだ、そんな気になれない。
でも、いつか。
いつか、京楽の想いに応えてやろう。そう思う俺だった。
浮竹は頭の中にいつも花を咲かせている京楽を急かして、他の掃除当番と一緒に教室内をはいてゴミをとり、窓をふき、床にもっぷがけをした。
机を移動するのが大変だったが、京楽がもってくれた。
京楽は優しい。こういう心使いはけっこうじんわりとくるのだが、京楽が浮竹に懸想していることを知っているので、何も言えない。
ありがとうと言えば、抱き着いてくる始末だ。
「じゃあ、俺ごみを捨てにいってくるから」
「僕もいくよ。浮竹は今日もかわいいね」
ゴミの量はけっこう多く、一人でもつには重かった。
素直に、京楽の言葉に甘える。
ゴミを焼却炉にまでもっていき、その炎の中に捨てると、ぶわっと炎が大きくなった。
「誰か、ガスの入ったゴミいれたな!」
小さく爆発音がした。
京楽は、浮竹を庇っていた。
何かの破片が背中にささった京楽の姿に驚いて、声をあげる。
「京楽、大丈夫か!?医務室にいくぞ!」
爆発は小さかったけれど、至近距離にいた京楽にダメージを負わせた。
「大丈夫、そんなに痛くないし、破片も小さいから。浮竹が無事でよかったよ」
医務室にいくと、誰もいなかった。
時間を見ると、もうみんな下校する時間だ。医務室の先生も、帰るのが早い。
「くそっ」
もっと自分で回道が使えたら。
仕方なしに、京楽の上の服を脱がせて破片をとると、アルコールで消毒して血止めを行い、ガーゼをあてて包帯を巻いた。
「念のため、帰りに病院に寄ろう」
火傷もしているらしかった。塗り薬をぬって、包帯を巻いていく。
「ありがとう、浮竹」
「俺なんて庇うから」
「あそこで庇わなきゃ、男じゃないよ。好きな子を庇うのは当たり前でしょ」
「このバカ!」
怪我をしているので殴らなかったが、頭にきた。
俺なんて庇うから。
そう思った。
ごみ箱を教室に戻して、下校する。
途中で病院に寄ったが、浮竹の処置はほぼ完ぺきで、火傷の痕が残らないように回道で手当てしてもらい、破片をぬいた傷跡は縫うほどのこともなかったので、同じく回道でほぼ塞いでもらって、包帯を巻きなおした。
その病院は、診察料は高いが、元4番隊の医者がいて、回道で傷を癒してくれるので、とても人気があった。
京楽の名を出すと、すぐに診てもらえた。
「帰るか・・・・・」
学院の食堂のある場所ならまだ空いているだろうが、怪我をして包帯を巻いた京楽を連れて行きたくなかった。
下町の店で弁当を二人分買い込んで、寮の自室に戻った。
「このバカ・・・・・・」
部屋にたどりつくと、浮竹は京楽を抱き締めた。
京楽は、優しく笑って、浮竹の頭を撫でた。
「君が無事でよかった」
「もう二度と、あんな真似するな!」
浮竹は怒っていた。
「でも、僕は何度でも君を庇う。君がそれで助かるなら」
「これから・・・俺たちは死神になるんだぞ。その度にお前が庇っていたら、お前の身がもたない。俺は弱くない。今回みたいな突然の事態には無理だったが、死神になったら俺がお前を庇う」
「じゃあ、お互い庇いあって傷だらけだね」
「そうなる前に敵を殺す」
ガスの入ったスプレーか何かをごみ箱にいれた、誰かも分からぬ者に殺意を覚えた。
「適当に買った弁当だから、美味くないかもしれないけど、食おう」
学院の食堂の料理は安くて美味いしボリュームがあったが、病院に寄っていたのですでに閉まっていたし、包帯まみれの京楽を連れていきたくなかった。
次の日には、嘘みたいに傷は治っていた。浮竹が寝ている間に、京楽家のつてを使い、4番隊の死神を呼んでもらって完全に傷を治癒してもらったのだ。
そのことに、浮竹は安堵しながらも、京楽の心配をしまくていたせいで熱をだしてしまっていた。
「今日は、学校休んでね。僕も休むから」
教師に、ガスの入ったスプレーか何かがごみ箱に入っていたことを知らせ、怪我をしたので1日休ませてくれといったら、教師は今後そのようなことが起こらないように徹底的に生徒を指導すると約束してくれて、京楽は病欠ではなく特別欠席扱いになった。
浮竹は病欠だが。
「はぁ・・・・・」
熱が下がらない。
ごろりと横を向くと、同じベッドにいつの間にか京楽がいた。
「なんだ。病人をあんまり刺激するなよ。熱が高くなる」
「うん。僕を心配して熱出しちゃったんだね。ごめんね」
「別にお前のせいじゃない」
いいや、京楽のせいだった。でも、声には出さない。
目の前にで血を流した京楽に、不安を覚えたのだ。今後の人生は、死神として命をかけていくもの。またいつか、京楽が血を流す様を見てしまうのだろうか。
眩暈がした。
「少し、眠る」
「うん、おやすみ」
side UKITAKE
学校の掃除当番だった。正直めんどくさかったが、品行方正、優等生で日々を過ごしているので、さぼることなどできない。
俺は、俺のことを大好きだという京楽と一緒に掃除をした。
京楽は、何かと俺のことをかわいいといって、好きだといってくる。生憎と、その手の趣味はないので俺は京楽を嫌ってはいないし、好きだが、恋愛相手と見ることはできなかった。
京楽は優しい。机の移動を率先してしてくれた。
「じゃあ、俺ごみを捨てにいってくるから」
俺は、一人でゴミを捨てにいこうとして、その量に驚き、重さに少しふらついた。
「僕もいくよ。浮竹は今日もかわいいね」
京楽の今日もかわいいねという言葉を無視して、手伝ってもらえるならと、京楽にもゴミを持ってもらった。
焼却炉にゴミをいれると、ゆらめいていた炎が大きくなり、小さな爆発音がした。
「誰か、ガスの入ったゴミいれたな!」
目の前で炎がちらつく。何かが弾けて、俺は咄嗟に顔を庇い、目をつぶった。衝撃は、何時までたってもやってこなかった。薄く目をあけると、京楽に抱きしめらていた。
京楽の背中から、ぽたぽたと血が滴りう落ちるのが見えて、気が遠くなりそうになる。京楽が、咄嗟に俺を庇ってくれたのだ。
「京楽、大丈夫か!?医務室にいくぞ!」
「大丈夫、そんなに痛くないし、破片も小さいから。浮竹が無事でよかったよ」
このばか!俺なんかのために。
俺には、京楽に庇ってもらうような価値はない。こんな下級貴族の貧乏な長男なんて。京楽を連れて医務室にいくと、頼みの先生がいなかった。
「くそっ」
仕方なく、子供の頃に覚えた救急処置の仕方で、京楽の傷の手当てをしていく。包帯をぐるぐる巻いていくと京楽が漆黒の瞳でこちらをずっと見つめていた。
その瞳は、慈愛に満ちていた。俺は、その視線に応えることができないでいた。
「念のため、帰りに病院に寄ろう」
京楽は火傷もしていたので、塗り薬を塗って包帯をまいた。
「ありがとう、浮竹」
「俺なんて庇うから」
「あそこで庇わなきゃ、男じゃないよ。好きな子を庇うのは当たり前でしょ」
その言葉に、かっと体が熱くなったが、平静を装った。
「このバカ!」
そして、俺なんかを庇った京楽に、頭にきた。俺も男だ。怪我くらいしても大丈夫だし、京楽に守ってもらうほどやわじゃない。
ごみ箱を教室に置いて、帰る準備をした。
俺は京楽の分の荷物ももち、学院を後にする。
念のために、寮に一番近い病院で診てもらい、ちゃんとした処置を施してもらったが、俺の応急処置がよかったと医師に褒められた。
「帰るか・・・・・」
今の包帯だらけの京楽を、誰にも見られたくなかった。俺のせいで、こんな姿になった京楽に申し訳ない気持ちがいっぱいで。
下町の弁当屋で、適当に弁当を買って寮の自室に戻った。
「このバカ・・・・・・」
俺を庇った京楽を抱き締める。抱き締め返された。しばらく、そうしていた。
今、京楽に愛を囁かれたら、俺はきっと落ちてしまう。そう思いながら。京楽の手が、優しく俺の頭を撫でる。きもちよにさに、目を閉じかけた。
「君が無事でよかった」
その言葉に、現実に引き戻される。
「もう二度と、あんな真似するな!」
俺は、思った通りのことを言っていた。
俺なんて庇うな。俺は、そんな価値のある人間じゃない。
「でも、僕は何度でも君を庇う。君がそれで助かるなら」
京楽の言葉に、眩暈を覚えた。ああ、この男。本当に、俺のことが好きなんだな。
「これから・・・俺たちは死神になるんだぞ。その度にお前が庇っていたら、お前の身がもたない。俺は弱くない。今回みたいな突然の事態には無理だったが、死神になったら俺がお前を庇う」
「じゃあ、お互い庇いあって傷だらけだね」
「そうなる前に敵を殺す」
俺は、弱くない。確かに病弱で肺の病をもっているが、戦闘能力は高い。現世で虚退治もした。もう4回生だ。現世に出て、虚退治の実践訓練を受けている。
ふと、腹のむしがないた。何があっても、生きている限り腹は減る。
「適当に買った弁当だから、美味くないかもしれないけど、食おう」
京楽と、同じベッドに腰かけて食べた。唐揚げ弁当だった。適当に買ったわりには美味しかった。
俺は満足して、京楽の方を見る。
「かわいいね、浮竹」
京楽は、そう言って俺にキスをしてきた。
「んあっ」
俺は戸惑う。突き飛ばすべきかとも思ったが、俺を庇ってくれたこともあり、自由にさせた。しばらく深く浅くキスを繰り返して、京楽は満足したのか離れて行った。
ああ。俺のほうもスイッチが入ってしまった。後で処理しなければ、つらいかもしれない。
頭の中は京楽のことだらけだった。京楽に今求められたら、俺は全てを与えてしまうだろう。幸いなことに、そうはならなかった。だが、怪我をした京楽が心配で心配で、その夜俺は熱をだした。
朝になると、京楽の傷が嘘のように治っていた。
「どうしたんだ、傷は」
「京楽家のつてで、4番隊の死神に治してもらった。君の辛そうな顔を見るのがいやだったから」
「今日は、学校休んでね。僕も休むから」
俺が熱を出していることに、気づかれてしまっているようだった。
京楽も、念のため休みをとるようだった。学校側の責任で、特別欠席扱いになった。俺は病欠だが。
学院を、1年間で3分の1以上欠席すると留年になる。俺はそうならないように、体とうまく付き合いながら、なんとか出席日数が確保していた。今日は病欠だけれど。
「はぁ・・・・・」
熱があがってきた。一向に下がらい。このままでは、明日も休むことになる。
俺は寝がえりをうった。すると、同じベッドに京楽がいて驚いた。
「なんだ。病人をあんまり刺激するなよ。熱が高くなる」
射干玉の瞳で、京楽は俺を見ていた。
「うん。僕を心配して熱出しちゃったんだね。ごめんね」
手が伸ばされた。頬の手が添えられて、触れるだけの口付けを受ける。
「別にお前のせいじゃない」
それは嘘だ。
京楽を心配するあまりに熱を出した。でも、そんなこと口が裂けて言えない。
京楽は、優しく俺を抱きしめてきた。
熱い額に、水でぬらしたタオルが置かれた。解熱剤を飲むと、薬の成分で眠気がやってきた。
「少し、眠る」
「うん、おやすみ」
目覚めると、京楽がじっとこっちを見ていた。
「熱、下がったね」
「ああ」
俺の額に、京楽が手を当てる。完全に熱が引いたことを確認される。俺は起き上がろうとした。
腕を掴まれて、押し倒された。
「京楽・・・・・?」
「少しだけ・・・・ね?」
何がと問う間もなく、口づけられた。院生の服の隙間から手が侵入してきて、全身の輪郭を愛撫された。
「んあっ」
漏れた声に、俺は驚いた。女みたいな声を出してしまっていた。
「京楽!」
膝を膝で割られて、敏感な部分に手を這わされる。
「ひうっ」
喉がなる。
呼吸が荒くなる。
ぐちゃぐちゃと音をたてていじられて、俺は何も考えられなくなった。
先端に爪をたてられて、呆気なくいってしまった。
「ああああああ!」
頭が快感で真っ白になった。涙が出てきた。
「今日はここまで。続きはまた今度」
生殺しの状態だが、安堵した。まだ、京楽を受け入れる決心がついていないのだ。
ああ、濡れてしまった下着を取り換えないと。
俺は新しい院生の服と下着を手に、湯殿に消えた。
生々しかった行為を思いだす。京楽は、ああいうことをいつも・・・・俺を犯すようなことを考えているのかと思うと、体が熱くなった。
俺もまだ若い。
既にたちあがってしまっていたものに、京楽がしたようなことをすると、あっという間に精液を放っていた。
京楽を思いながらしたわけじゃない。ただ、自然の欲求だった。
それを消し去るように湯をかぶり、シャワーを浴びた。シャンプーで髪を洗い、石鹸で体洗う。
「しっかりしろ、浮竹十四郎」
京楽の想い通りになるな。
京楽のペースに巻きこまれたら、いつか美味しくいただかれてしまう。
今はまだ、そんな気になれない。
でも、いつか。
いつか、京楽の想いに応えてやろう。そう思う俺だった。