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院生での想い

「好きだ」

そう言われて、こう答えた。

「知ってる」

京楽が、浮竹を好きなことは、浮竹自身知っていた。でも、と思う。ずっと長い間、親友であったのに、恋人同士になれるのかと。

「僕は本気だよ?本気で君が好きだ。愛してる」

「俺はそれを知っていた。好きなのかと聞かれると、多分好きなんだろう。でも、愛しているとまでは断言できない」

「いいよ、それでも。君が振り向いてくれるまで、ずっと傍にいるから。振り向いてくれた後も、勿論傍にいるけどね」

京楽は、その日を境に廓に行かなくなった。付き合っていた女生徒とも手を切った。

「浮竹、一緒に食堂に行こう」

好きだと言われた日から、何かが急激に変わるものでもなかった。

いつものように、一緒の部屋で寝起きして、一緒に学院に登校し、授業を受けて食堂で食事をする。

京楽が好きと言い出しのは2回生の終わりごろ。気づけば、もう4回生になっていた。

ある時、現世で虚退治の特別授業があった。

そこで出るはずの虚は、院生でも倒せるクラスのものであるはずだった。

「そんなバカな・・・・大虚(メノスグランデ)・・・いくらなんでも、無理だ!」

引率していた教師が、絶望の声をあげる。

黒腔(ガルガンタ)が開き、そこから1匹の大虚が叫び声をあげた。

「京楽、いくぞ!」

「ああ、浮竹!」


斬魄刀を始解させて、大虚に切りかかる。何度か切りつけていると、大虚が虚閃(セロ)を放った。あまりの速度に、交わしきれなくて、浮竹が目を見開く。

「危ない!」

突き飛ばされた。

虚閃を浴びて、京楽が大地へと落ちていく。

「京楽!この!」

もう一度、虚閃を浴びせられたが双魚の理で何とか吸い取って、反対側の刃から虚閃を収縮して打つとと、大虚は悲鳴をあげて黒腔の中に逃げて行った。

今の力量で、大虚を倒すことはまだ無理だ。

幸いにも、大虚は一体だけで、混乱してた教師たちも生徒も、大虚と一緒になって現れた普通の虚の退治へと移行する。

「なんとかなるか・・・・・」

様子を見て、浮竹は京楽の落ちて行った場所へ降りて行った。

「京楽、しっかりしろ!」

酷い火傷を負っていた。

「なんであんな馬鹿な真似した!」

「君が危ないと思ったら、勝手に体が動いていたんだよ・・・・ごほっごほっ」

肺に穴が開いていた。

血を吐く京楽が、まるで自分のように見えて、背筋が凍る。すぐに念のためにきていた4番隊の死神に声をかける。

「急患なんです、頼みます」

4番隊の席官が、すぐに京楽の手当てのために回道を行った。肺の傷は小さかったのでなんとか血止めがされ、致命傷に近かった火傷も少しましになった。

「あとは入院して治すしかないな。それまでもつかどうか心配だが」

「京楽、しっかりしろ!」

京楽は、すでに意識を手放していた。

「京楽・・・・・」

浮竹は、京楽がこのまま逝ってしまうのではないかと、気が気ではなかった。

その時にやっと気づいた。

涙が頬を伝う。

「お前のことを、愛している・・・・・・」

そう、自覚した。


京楽は入院し、集中治療室に運ばれた。
数日の間は危険な命の境を彷徨ったが、回道で手当てを受けていく間に、なんとか一命をとりとめることができた。

やっと集中治療室から出てきて、意識の戻った京楽に、学院の授業が終わると、浮竹は毎日お見舞いにやってきた。

「京楽、好きだ。愛している・・・・・」

「浮竹?本当に?」

「お前を失うと思って気づいたんだ。こんなに愛していることを」

病室で、抱き合ってキスをした。

「愛しているよ、浮竹」

「分かっている。だから、もうあんな無茶な真似、やめてくれ・・・・・・・」

1か月が経ち、やっと退院が許された。

まだしばらくは通院しなければいけないが、京楽は戻ってきた。

「歩けるか?」

「微妙だね」

京楽に肩をかして、一歩一歩寮の自室に向かって歩き出す。

「まだしばらくは、学校を休め。こんな体じゃあ、通学なんて無理だ」

「早めに日常生活に戻りたくて、退院を早めたんだけど、無意味だったようだね」

「退院を無理に早めただって!?このバカ!」

頭をぽかりと殴ると、京楽は言った。

「ごめんね。君に心配をかけさせたくなかったんだ」

「俺のことはもういい」

「よくないよ。君が死ぬかと思ったんだ、あの時・・・・・」

「俺は、お前が死ぬかと思った。もうあんな想いはこりごりだ」

寮の部屋につくと、抱き締めあった。

そのまま唇が重なる。

その日、初めて体を重ね合った。

告白されて、2年が経とうとしていた。


6回生になった。

お互いを大事にしあい、時には体を重ね、座学に励み、剣術や鬼道の腕を磨いた。

もう、大虚でも倒せそうなくらいの力をつけた二人の行き先は、決まっていた。

浮竹が13番隊の3席に。京楽が8番隊の3席に。

卒業する前から、席官入りが決まったのは初の例だった。

しかも3席。

卒業してからは、お互い忙しく、二人きりの時間をとることができなかった。

ある時、非番の日になった。たまたま同じ日にだ。

いつもは、非番の日でも責務に追われていたり、現世に虚退治の遠征に出かけたりと、時間をとれなかった。

その日は、一緒に過ごした。昼までいつもの疲れをとるためにゴロゴロ寝て、午後から酒盛りを始めて、夕方にはすっかり浮竹は酔っぱらっていた。

「こらー京楽ー」

「好きだよ、浮竹」

「おう、俺も好きだぞー」

そのまま、浮竹を押し倒す。

「京楽のあほー。お前ももっと飲め」」

「浮竹、飲み過ぎだよ」

杯をとりあげた。

「んう」

舌が絡み合う口づけをすると、久しぶりのこともあってか、どちらかが、というわけでもなく貪りあった。

「あ・・・・・」

酔っているせいで、世界がふわふわする。

「ん・・・・」

痕を残されたが、本当に久しぶりだったので何も言わなかった。

次の日は、浮竹は二日酔いで結局休んでしまった。京楽も、休暇が溜まっていたので休みをとった。

「いつも、こうしていられたらいいのにね」

「お前のことだ、体を重ねてくるだろう・・・・いつもは無理だ」

昨日、久しぶりだったのでかなり無茶をさせられた。数回意識を飛ばした。

「今みたいに、数日に1回あえる距離がちょうどいい」

「僕はもっと君に会いたいよ」

「じゃあ、お互い出世しないとな」

そう言って、笑いあった。


それから数年後。

二人は、若くして隊長にまで登りつめた。

くしくも、先代の隊長が戦闘によって一人は死亡し、一人は引退になるまで体を欠損した。

二人とも卍解は使えたし、能力的にも十分とされて、山本元柳斎重國に太鼓判を押された。

浮竹は、病弱であることも考えられて、雨乾堂という、隊首室と執務室を一つにした特別な建物が建てらた。

その雨乾堂に、京楽はよくお忍びで遊びにきた。

8番隊としての仕事を終えてからなので、浮竹も何も言わなかった。

「今日、なんの日か覚えてる?」

「覚えてない」

「やっぱり・・・・・」

少しがっくりした京楽に、浮竹がキスをして機嫌をとる。

「今日はね、僕がはじめて君に告白した日だよ」

「お前は、いつも好きだ好きだというから、そんな日のこと覚えていなかった」

浮竹が、京楽の腕の中で、ごろりと寝転がった。

「今日はするのか、しないのか?」

「する」

再び、唇が重なる。

そのままの関係で、数百年の時を重ねることになるなど、その時は知る由もなかったのだが。

院生時代の想いは、今も胸の中に燻っているのだ。

お互いに。

好きで愛していている。

その想いは、永遠に似ていた。

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わかめちゃん

「うーん。こうでもない・・・・・こうでもない・・・・」

暇を持て余していた浮竹は、雨乾堂の外にでて、盆栽をいじっていた。

「浮竹。僕と盆栽とどっちが大事なの」

同じく暇を持て余していた京楽が遊びにきていたが、することもないので盆栽をいじっていた。

「盆栽」

「酷い!僕とのことは遊びだったのね!」

泣き真似をする京楽を無視して、盆栽をいじる。

枝きり鋏でパチンと切れば、切りすぎた。

「京楽のせいだぞ!盆栽を切りすぎたじゃないか!」

「なんで僕のせい!?」

「もういい、次の盆栽だ」

パチンパチンと切っていたら、丸坊主になった。

「おかしいな?」

次の盆栽に手をかける。

今度は控えめに、切ってみた。

ちょうどよいかんじに仕上がって、浮竹は満足したが、京楽が横から鋏をいれた。

パチン。

ぼとっと枝が落ちる。

「これくらいしたほうがスッキリするよ」

せっかく綺麗に揃った盆栽の右半分が、なくなった。

「京楽、お座り!」

「何それ!僕は犬かい!?」

でも、その場で正座した。

「せっかくいい感じで仕上がったてたのに!」

蹴りを入れられて、京楽は地面に体を投げ出して泣き真似を始めた。

「酷い!盆栽と僕とで盆栽を選ぶ浮竹が酷い!僕を弄んだ!」

じーーー。

視線を感じて振り返ると、日番谷がいた。

「暇だから、遊びにきたら変態ごっこか。すまん、邪魔したな」

「待ってくれ」

浮竹が呼び止める前に、京楽がかさかさと移動して、日番谷の足首をとらえた。

「君も一緒に盆栽で・・・・・・」

「うわあああああああ、来るなああああ!!」

日番谷は、エクソシストのような動きをする京楽に恐怖を感じた。

「ぎゃああああああああ」

日番谷は、京楽に捕まった。

「捕まえた」

にやり。

笑みを刻む京楽に蹴りをいれる。

「なんか僕の扱い、みんな酷くない!?」

「素直に立って移動すればいいだろうが」

浮竹の最もな意見に、日番谷が同意する。

「京楽は、いつもこうなのか?」

「いや、今日は特に酷いな。まぁ、俺が構ってないせいだろうが」

「構ってやれよ」

「盆栽をいじるのに忙しい」

暇で始めたた盆栽いじりに、熱中していた。

「まぁ、日番谷隊長が遊びにきてくれるなんて珍しいから、この辺にしとくか。茶を入れるから中に入ってくれ」

「ああ」

「僕のことは無視!?酷い、僕とのことは遊びだったのね!」

京楽も、日番谷と一緒になって雨乾堂にはいってきた。

湯呑は2つ。

浮竹は、自分と日番谷の分の茶をいれた。

「僕の分はないの!?」

「仕方ないなぁ。清音ーーーー。湯呑1つもってきてくれ」

「はーい隊長!」

できる3席は、すぐに湯呑と、そして茶菓子を数人分用意して現れた。

「あら、日番谷隊長が雨乾堂にくるなんて珍しいですね!」

「まぁ、暇だし近くにきたら寄ってみただけだ」

新しい湯呑に、玉露の茶を入れる。

茶菓子はわかめ大使であった。

「わかめ大使・・・・お前、好きだな」

「ああ、味はいいからな。見た目はあれだが。定期的に白哉のところにいって買ってきてる」

「僕もいってるよ~。荷物持ちで」

京楽は、入れられたお茶をのみながら、わかめ大使を食べた。

浮竹は京楽の頭を撫でた。

それだけで、京楽は満足してしまった。

ちょろいな。日番谷も浮竹も思った。

「こっちが新開発のわかめちゃん・・・・・・・白あんこなんだ」

わかめ大使を少しかわいくしたかんじのお菓子を出す。

「ふーむ。悪くはないな。見た目はあれだけど」

日番谷が素直な意見をする。

「白あんこ合うんだよな、これ。わかめちゃん・・・・・・・・・・」

浮竹が、2個目のわかめちゃんを食べる。

「和風菓子ってところがいいと思うけど、見た目がねぇ」

京楽も、わかめちゃんを食べた。

「「「うーーーん、見た目が」」」

はもった。

その後、日番谷もわかめ大使とわかめちゃんを白哉から買うようになって、浮竹と京楽の他にも浸透したと喜ぶ白哉の姿があったとかなかったとか。

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結婚記念日

白哉が、二人のために建てた朽木家の中の新築の館に、朽木一護となった一護と、ルキアは住んでいた。

食事をする時は、本宅でする。

それ以外の時は、二人きりで過ごせるようにとの配慮で、新築の館で過ごしていた、

ただ、ずっと側仕えとしてきたちよは、相変わらずルキアの世話をやいていた。ちよは、夕方には本宅に移動し、与えられた部屋で一日を終える


「一護、今日は何の日か知っておるか!」

「んー。分かんねぇ!」

「たわけがああああ!!」

回し蹴りを食らって、一護は怒った。

「いきなり何しやがる!」

「貴様、本当に今日がなんの日なのか分からぬのか?」

「んー。俺とルキアの誕生日でもねぇ・・・・うーん、あ、そうだ。俺とルキアの、もしかして尸魂界での結婚記念日とか?」

「当たりだ!愛しているぞ一護!貴様のことだから、忘れているものだとばかり思っていた。ちゃんと覚えててくれたのだな!」

ルキアが、一護に飛びついて抱き着いた。

「んー。式を挙げたのが3月1日で、籍はもう入ってて、現世でも結婚式が6月1日だったな」

「私と一護は、2回も結婚式を挙げておるからな。少しややこしいかもしれぬが、結婚式は3月1日の最初のものが記念日となるそうだ。と、兄様がおっしゃっていた」

「あー、こんなものしか用意してないけど・・・・・」

いつか、結婚してあげようと思っていた、現世のうさぎの大きなぬいぐるみを、一護は現世からもってきた荷物を漁って出してきた。

「おお、なんと愛らしい!嬉しいぞ、一護!」

ルキアの喜びそうなものを、何とか用意できていてよかったと思う一護だった。ソウルチケットを持っている一護は、いつでも現世に戻れる。

義骸に入って、現世に戻って家族と何度もあった。友人である井上、石田、茶虎とも何度か会った。

尸魂界は、遠いが、死神という地位の枠に縛られていない一護は、わりと頻繁に現世に通っていた。

井上と石田が結婚するらしいと聞いて、その結婚式にルキアと出ることも決まっていた。

「私からのプレゼントはだな、これだ」

ルキアの絵が描かれた、謎の紙だった。たたたたたとかいてあって、何かの動物がかかれてあった。

「このできそこないと、たが多いこの感覚・・・・・昔にもあったな。この崩れた生物はたぬきで、言葉からたを抜けと・・・・・何々、チャッピーの着ぐるみ・・・めっちゃいらねぇ」

「なんだと!限定100組しかないのだぞ!」

「いやなんだ、お前俺にこれ着てほしいのか?」

顔のとこだけ、露出するようになっていた。

「そうだ。何かおかしいか?」

「いやまぁいいよ。着るから貸せ」

チャッピーの着ぐるみは、ちょっと窮屈だった。

「おい、ルキアと一護いるか・・・・・ってなんだそのかっこ!ぎゃはははははは」

恋次がやってきて、一護の情けない恰好を見て笑い出した。

「うっせえな、恋次何しに来やがった」

「いや、京楽総隊長からの手紙預かったから・・・・・・うぷぷぷぷ」

「笑うな!帰れ!」

「そうだぞ、これは一護のための特別なプレゼントなのだ。恋次の誕生日にも同じものを用意してある。無論着てくれるであろうな、恋次?」

攻撃の矛先が恋次に向いて、一護は調子に乗る。

「愛しい愛しい、ルキアからの頼み事は断れねぇよなぁ、恋次」

「くそ、卑怯だぞ一護!」

「お前もチャッピー着ぐるみの犠牲者になれ」

「なんなら、誕生日プレゼントを前倒しで渡しておこう。これが恋次の分のチャッピーの着ぐるみだ」

着ぐるみを渡されて、キラキラした瞳で見つめられて、恋次も仕方なくチャッピーの義ぐるみをきた。

「ぎゃはははははは!」

「うっせーー笑うな」

「なぁ、俺らのかっこちょっとシュールじゃねぇか?」

「シュールだな」

恋次が、一護の言葉に答える。

「二人ともそのままで。写メをとるぞ」

一護と恋次は、着ぐるみをきた姿をとられ、それは知り合いの死神に送られて、みんなその写真を見て吹き出した。

「なぁ、一護」

「なんだよ」

「ルキアのこと、大事にしてくれてありがとな」

「なんだよ、気色わりーな」

「いや、お前と結ばれてからのルキアは、暗い顔することなくなったからな。昔は、お前と付き合ってた頃は、いつか死別してしまうって相談されたことあっからさ」

「まぁ、ただ付き合って頃は、俺もいつか別れることになるんじゃないかって悩んだことはある」

「まぁ、俺帰るわ。着ぐるみは脱いで持って帰る」

「俺も脱ぐか・・・・・・」

「なんだ、恋次もう帰ってしまうのか?」

「結婚記念日の二人の邪魔をするほど、野暮じゃねーよ」

「ふむ」

一護は、ルキアを抱き寄せた。

「あ、一護・・・・・・」

キスをして、抱き締める。

「好きだぜ、ルキア」

「私もだ、一護」

そのまま、その夜は体を重ねた。

「ルキア、なんで起こしてくれねーんだよ!」

「たわけ、私も先ほど起きたところだ!」

大分長くなったルキアの髪を、ちよがすいてくれた。

結い上げて、いつの日だったか、ルキアにプレゼントしたアメジストの髪飾りをつける。

「今日は、隊首会があるのだ!遅刻するわけにはいかぬ!飯を食べる暇もない」

「なんか、昨日京楽さんからもらった手紙に、今後俺も隊首会に参加するようにって書いてあったから、行き先は同じか」

「そうなのか?むう、兄様はもう出てしまった後のようだ」

霊圧を探るが、屋敷の中に白哉の霊圧はなかった。

「俺らも急ぐぞ」

「ああ、ゆくぞ」

瞬歩で、一番隊執務室までいく。

急いだが、結局数分の遅刻だった。

「ルキア、一護、今度からはもっと早くに来るように」

白哉に念をおされてしまった。

「さて、隊首会をはじめるとするよー」

京楽が、笠を被り直す。

内容は緊急なことではなかった。ただ、空座町で新種の虚が発見されて、それが駆逐されたということだけが、気にかかったが、一護が隊首会に参加するのは、隊長格以上の実力があり、今後尸魂界で活躍が期待されるために、呼び出されただけだった。

「今日は俺、学院が創立記念日で休みなんだよ」

「おお、奇遇だな。私も、今日は非番なのだ」

二人で、尸魂界でデートした。甘味屋に入ると、ルキアは白玉餡蜜を二人分食べてしまった。

「むう、少し食べすぎたか・・・夕餉を食べれそうにないな」

「ルキアは、もう少し肉をつけたほうが抱き心地がいい」

ルキアは真っ赤になって、一護の頭をはたいた。

「このような場所で、そのようなことを口にするな」

「いいじゃねーか別に。そんなにエロいこと言ってねーだろ」

一護が手を伸ばしてくる。

抱き締められて、ルキアは甘い吐息を吐いた。

「たわけが・・・・・・・」

結婚して、4年が過ぎようとしていた。

ルキアの体内で、新しい命が宿っていることを、二人はまだ知らなかった。



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ルキアと一護

現世での時間は過ぎていく。

いよいよ、6月になった。

6月1日、朽木一護は、朽木ルキアと現世で結婚式を挙げる。

「ごめんね、ごめんね、朽木さん。あの時は本当にごめんなさい」

泣いて、謝る井上を、ルキアはなだめながら謝罪を受け取った。

「もういいのだ、井上。私が井上の立場なら、同じようなことしていたかもしれぬ」

午前中に集まったメンバーで、スピーチをする相手は一護の父親に決まった。本当は、白哉もやりたがっていたのだが、口下手だし、ただおめでとうとしか言いそうにないし、他に言うことといったらルキアの素晴らしさを延々と語りそうで。

「さぁ、ルキア様、こちらへ・・・・」

結婚式の係の者の中には、朽木家の家人も交じっていた。

ルキアは、純白のウェディングドレス、長いウェディングヴェールに、色鮮やかな蒼薔薇をいれたブーケを持って現れた。腕を組んで歩くのは、白哉だった。

一護も、正装して現れた。

「汝、朽木ルキア、健やかなる時も病める時も、朽木一護を愛し、伴侶として生きることを誓いますか?」

「誓います」

「汝、朽木一護、健やかなる時も病める時も、朽木ルキアを愛し、伴侶として生きることを誓いますか?」

「誓います」

二人で神父の前で近いあい、キスをした。

世界が静寂に包まれる。

やがて、指輪の交換をした。

一護がお金をはたいて買ったものだった。白哉ならもっと豪華なものを用意できただろうが、一護の気持ちを汲んでくれたのだ。

ルキアから一護へ。一護からルキアへ。

井上、石田、茶虎が、友人としてスピーチする。

そして、黒崎一心こと一護の父親がスピーチをしていると、白哉が立ち上がった。

「散れ、千本桜」

桜の花びらは、誰も傷つけることなく、ルキアを中心に渦巻いた。

「幸せになれよ、ルキア!」

「ああ、恋次もな!」

「一護、幸せになってね。ルキアを頼むわよ」

「ああ、乱菊さん」

「幸せにな、二人とも・・・・・・・」

「ああ、ありがとう冬獅郎」

尸魂界からやってきたメインメンバーは、主に白哉もいれて4人だった。あとは、むこうの式でも顔を出してくれた夜一と浦原、それに涙を流している席官たち数人も、尸魂界からわざわざきてくれた。

「朽木隊長、お幸せに!」

ルキアは、すでに13番隊の隊長であった。

「すまぬ、皆も息災であるように」

ルキアは、涙を零していた。

白哉の桜の雨が、式場を包み込んだ。

「うわぁ、幻想的」

井上が振袖姿でその花びらを見上げる。

石田も茶虎も、袴をはいて正装していた。

「お幸せに、二人とも」

「む、幸せに」

石田も茶虎も、簡潔に祝いの言葉を述べた。スピーチで十分話してくれたので、それで充分だった。

双子の妹もきている。一護が、大学を卒業したら現世を去ることに、最後まで抵抗していた双子であった、最終的には分かってくれた。

「俺はぁぁあぁ、ルキアちゃんを家族だと思っていますうう、それが一護なんかと結ばれるのは、真咲~~~~~!!!」

一心は、涙を流しまくって、スピーチになりはしなかった。代わりに、白哉がスピーチする。

「私は、妻を娶ったが、僅か5年で亡くしてしまった。一護とルキアには、私と妻であった緋真の分まで幸せになってほしいと願っている」

「兄様・・・・・・・」

ルキアは、尸魂界の婚姻でも涙を流しまくったが、今回も涙を流しまくった。

やがてケーキ入刀をして、朽木家が味付けをした食事が運ばれてくる。

「んーおいしい。流石朽木家ね」

松本は、尸魂界の婚礼の時も飲み食いしたが、朽木家の味を気に入っているようだった。

ルキアと一護は、その近すぎる距離に、ちょっと恥ずかしそうにしていた。二度も結ばれることに、幸せをかみしめまくっていたが。

もう、籍は入れてるので、黒崎ではなく朽木一護だ。この結婚式が終わると同時に、涅マユリの薬を飲むことを承諾している。

人間をやめて、死神代行から、本物の死神になるのだ。大学には、義骸でいくことになる。

一護が手配していた式場を、白哉が追加で金を出すかんじになって、豪華な結婚式になった。蒼薔薇なんていう珍しいものは、京楽総隊長が手配してくれた、尸魂界にだけさく本物で、染料を使用していなかった。
1本で数十万する蒼薔薇を、ブーケにしているだけで、数百万はかかっている。ウェディングドレスもウェディングヴェールも、レンタルの予定だったが、小柄なルキア用にと、白哉が人を雇ってつくらせた。金糸銀糸の刺繍が美しく、宝石も縫い込まれていた。

「ルキア・・・・幸せになろうな?」

「ああ、一護・・・・・・」

最後に、ブーケを投げた。それは、井上の手の中に落ちた。

「嬉しい!」

数百万もするブーケだとは、流石に思わないだろう。

結婚式が終わり、二次開場に移る。

ルキアはマーメイドワンピースを着ていた。一護は、まだ正装のままだ。

二次開場は、ホテルの広場で行われた。立食形式で、酒などが用意されてあった。

一護たちは未成年なので、ノンアルコールの酒を飲んでいた。

「このカクテル、甘くてうまいな」

ルキアが気に入ったカクテルも、ノンアルコールだった。

「もっと飲むか?」

「一護、貴様も飲め」

尸魂界では、一護も酒を飲んだが、現世では法律で禁止されているのでノンアルコールの飲料ばかり飲んでいた。

ノンアルコールなのに、雰囲気で酔ったのか、ルキアは一護に絡みだした。

「そもそも、貴様がかっこいいから悪いのだ!兄様のようになれとは言わぬが、もっと朽木家の者として威厳を持て」

「いや、無理いうなよ」

絡んでくるルキアがかわいくて、啄むようにキスを繰り返していると、白哉の冷たい霊圧に気づく。

「兄は、こんな場所でルキアに手を出すのか?」

「き、キスくらいいいだろ」

「ふむ・・・・・・・」

洋風の結婚式に慣れていない白哉は、スピーチとか結婚式場の拡大、ルキアのためのウェディングドレスとウェディングヴェール、それにブーケなど、いろいろ手配してくれた。

「現世には籍を残していいのか?」

「だめだ。いつまでも死なない人間の籍など、残せるわけがなかろう」

白哉の言葉に、一護はあと数年したら、本当に家族とお別れなのかと少し寂しい気分を味わったが、その代わりにルキアと居れるのだ。

その日、ルキアは一護とホテルに泊まった。

避妊具なしで、体を繋げ合った。
お互い、ぐずぐずに溶けだしてしまいそうだった。何度も貪りあった。

「もしも、子供ができたら名は決めてあるのだ」

「へぇ、どんな?」

「女の子なら苺花、男の子なら一勇だ」

「男の子の名前もいいけど、女の子の名前いいな。俺の名前が入る」

「恋次と相談して決めたのだ」

「恋次は、最後まで祝福してくれたな。お前を泣かせると、とるって言ってたけど、実際そういう行動はとらなかったしな」

一度、井上のことでルキアを泣かした。でも、恋次は手を出してこなかった。

「恋次のことも好きだ、私は。家族だからな」

「まぁ、俺が双子の妹を好き、なようなもんだろ?」

「そうだな。だが、一護、貴様の存在が泣ければ私は恋次と結婚していたであろう」

「俺も、ルキアがいなかったら、きっと井上と結婚してた」

「お互い、別の道を歩んでいたかもな」

「そうだな」

今は、ルキアと結ばれたことに感謝し、愛し合おうと思った。




やがて時はめぐる。

一護は、大学を卒業し、死神として尸魂界で暮らすようになった。

朽木家で寝泊まりをして、ルキアの傍に在った。

真央霊術院の教師として、あるいは一番隊の死神として、日々を過ごしていく。

朽木家の一員ではあるが、元が死神代行の黒崎一護であるだけに、友人で戦友である死神たちからの扱いは、今までと変わらなかった。

「おはようルキア!なんで起こしてくれなかったんだ!学校に遅れちまう!教師なのに!」

「たわけ、何度も起こしたわ!あと5分、あと5分と何度もいうから、そうしたまでだ!」

「ルキアのあほ!」

「なんだと、一護のぼけ!」

「二人とも、朝は静かにするように・・・・・」

「はい、兄様」

「おう、白哉」

結局、一護は義兄になる白哉を義兄様と呼ばず、白哉と呼び捨てのままだった。

もうそれに慣れたので、白哉も何も言わない。

浦原が尸魂界にいろいろなものをもちこんで、尸魂界の歴史も変わろうとしてた。

朝食に、パンが普通に並ぶようになった。

TVなども見れるようになったし、エアコン、洗濯機、掃除機と現世では普通にあったが、尸魂界にはなかったものが普及しはじめていた。

時代は変ろうとしていた。


時は廻る。世界は廻る。

ルキアと一護は、常に傍にいた。もう、二人を引き裂くものはない。

死神となった一護は、ルキアと同じ時を生きる。

ただ、永遠のような時間を、共に。          

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浮竹隊長の受難

「日番谷隊長、匿ってくれ!」

いきなり瞬歩で現れた、白髪の美女に名を呼ばれて、日番谷は戸惑った。

「誰だ、お前?」

「俺だ、分からないか?」

「いや、お前みたいな美人の知り合いはいないが・・・・松本ぉ!ちょっと来てくれ!」

松本は、隊首室から顔を出す。

「はーい隊長、なんでしょ」

「こいつ、知ってるか?」

「いえ、知りません。誰ですか、この美人」

「ヒント。女体化する薬を盛られた」

「白い髪に翡翠の瞳・・・・・お前、まさか浮竹!?」

「あたりー」

「うっわぁ、浮竹隊長、女体化するとこんなに美人になるんですか!」

隊長羽織を着ていないので、誰か余計に分からなかったのだ。

「京楽のやつ、懲りずにまた涅の女体化する薬盛りやがった。今度こそ、おいしくいただかれてたまるか!」

「じゃあ、浮竹隊長、現世にいってみませんか?」

「現世?なんでまた」

「やーん、こんなに美人になるなら、やっぱりいろんな洋服着せたいじゃないですかー、さぁ、いざ現世へ!」

松本に、浮竹は引っ張って行かれた。

「ほどほどにしろよ。あと京楽に見つからないようにな」

日番谷も止めはしなかった。止めてたら、きっと京楽がやってきて、目の前で盛りはじめて蒼天に座せ氷輪丸といってどっかーんしている頃だろう。

長い綺麗な白髪を結い上げて、浮竹は松本と一緒に現世のショッピングモールにいた。

「この服なんて、いいと思いません?」

「ちょっと、胸元が空きすぎてないか?」

「いいじゃないですかー。せっかく胸大きいんだから、強調しないと」

「おい、松本副隊長!」

いろいろと着せ替え人形みたいにされて、最後は黒いマーメイドワンピースに赤いショールという恰好で落ち着いた。

「やーん似合うー。写メとっていいですか?」

「もう好きにしてくれ。京楽とさえ出会わなければ、あとは女体化が解けるか解毒剤を飲むまでだ」

「えー、時間がたったら元に戻っちゃうんですか?」

「ああ。涅隊長の薬はけっこういい加減だからな。24時間たてば自然と元に戻る。だから、急いで解毒薬を探すより、京楽に見つからないように隠れて身を潜めていたほうがいい」

松本は、自分の分も服も買って、満足したようだった。金は全部後払いになるが、京楽に責任をもたせて出すといったので、いつもは手のだせないブランドものの衣服を買った。

「ただなぁ。この格好でいきなり元に戻ったら、俺はただの変態だ」

「薬、あとどれくらいききそうなんですか?」

「現世にきて3時間ってとこだから、あと20時間ってとこだな」

「じゃあ、今のうちに行けるとこ行っときましょ!ケーキバイキングなんてどうです?女性限定なんです」

「何、そんなものがあるのか!行くに決まってる!」

浮竹は、松本と一緒にケーキバイキングのとこにまでくると、松本が驚くほど浮竹は食べた。

「よくそんな細い体で、そんなに入りますね」

「甘味ものは別腹なんだ」

3人前以上は軽く平らげたが、スタイルに異常もない。

「いいなぁ。羨ましい」

甘いものをとりすぎると、体重が増える松本には、羨ましい限りであった。

「で、この後どうするんだ?」

「それが、現世滞在許可を正式にとってこなかったから、もう戻らないと・・・・・」

浮竹が、うんざりするような顔をする。

「京楽との追いかけっこか・・・・・」

結局、死覇装をまとって現世から尸魂界に戻ってきた。

現世にいったことを知った京楽が、穿界門の外で待っていた。

「浮竹~美人さんだねーさぁ僕の胸の中においでー」

「誰のせいだと思っているこのムッツリスケベが!」

股間を、思い切り蹴り飛ばした。

「のおおおおおおおおおおお」

蹲る京楽を見ていた日番谷は、その怒りの大きさに驚く。そして、地獄の痛みを味わっているだろう京楽に、自業自得とは思いながら、少しだけ同情した。

いきなり股間はきつい。

ぷりぷり怒った浮竹は、京楽を放置して、日番谷と松本と一緒に、10番隊執務室に戻った。

「あと18時間、ここで過ごさせてくれ」

「まぁいいが。京楽がきたら、自分で対処しろよ?」

「股間を蹴るからいい」

白い髪の美女は、そう言ってお茶菓子を食べて茶を飲みだした。

外見に似合わない、じいさんくさい仕草だった。

ああ、浮竹だと分かって、安堵できる。

松本は今だとばかりに浮竹の写メをとっていた。

「次号は、禁断の女体化浮竹隊長スペシャルで決まりね!」

「浮竹~」

「きたなムッツリスケベが!」

見ると、黒髪の背の高い美女だった。

「ほら、僕も女体化してるから安心でしょ」

「え、京楽が女体化だって?」

日番谷が興味を覚えて顔を出す。

浮竹もつられて顔を出した。

「何もできないでしょ。ほらほら安心して」

「いやなんかありそうだ・・・・・」

浮竹が警戒する中、松本が写メをとりまくっていた。

「京楽隊長と浮竹隊長、並んでくださいよ!」

10番隊の執務室の中に入ってきて、浮竹と並んだ京楽は、にんまりと笑った。

「隙発見!」

パンと音がして、京楽がもとのもじゃもじゃの男に戻る。瞬間的に女体化するだけの薬で、効果は数分のものだった。

「浮竹、かわいいね」

「やめっ・・・・あんっ」

「蒼天に座せ、氷輪丸!」

速攻だった。日番谷は、氷の龍を出して京楽を吹き飛ばした。

「おい、自分の身くらい自分で守れ」

「あ、ああすまない・・・・・・」

「なんであたしまでえええええええ」

氷の龍に吹きとばされていく松本。

「はー。あと18時間・・・・無事でいられるといいんだが。すまないが、今回はここの隊首室で寝かせてくれ」

「一人じゃあぶねーだろ。俺の屋敷に泊まれ」

「いいのか、日番谷隊長」

「目の前で、お前が襲われるよりはいい。京楽が来る前に移動するぞ」

「ああ」

復活した京楽がやってくると、10番隊執務室は空になっていて、浮竹を探す姿の京楽がいたるところであったという。




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週2か週3か

「元柳斎先生。男同士でやるのって、どう思いますか」

ブバーーーー。

茶を飲んでいた山本元柳斎重國は、茶を吹き出した。

「な、何を言うておる十四郎!」

「だって、京楽のことはご存知でしょう。このままいけば、俺は近いうちに京楽においしくいただかれてしまう。攻めならまだいいが、受けとなると痛みとか気になって、抱かれても快感があるのかどうか・・・・・・」

「京楽から逃げ切れ!それしか言えぬ!」



「ということがあったんだ。日番谷隊長、男同士でやるってどう思う?」

ブバーーーーー!

日番谷は飲んでいたお茶を吹き出した。

「いきなり何を言い出すんだお前は!」

「潤滑油を使うから、思ったより痛くないんだよな。あと、けっこう快感がある」

ブバーーーーー!

日番谷はまた茶を吹き出した。

「こ、ここは保健体育の授業の場じゃないんだぞ!」

「そうなんだ!学院では保健体育の授業はあったが、おしべとめしべの話で、全然役に立たないんだ。男同士の場合、どうするのかって教えてくれる相手がいなくて、苦労したものだ」

昔を懐かしむ浮竹。

「話聞いてる限り、学院時代は嫌を押し通していたんだろう。何故京楽なんかに抱かれる気になったんだ」

「うーん。流れかなぁ?ずっと好きだ愛してるって言われ続けて、それに根負けしたかんじかもしれない。まぁ、その頃には俺も京楽のことが好きになっていたしな」

「両想いなら、別にいいんじゃねぇか?」

傍で、松本が腐った目と耳と脳で、話を聞いていた。

「そう、両想い。それが問題だったんだ。好きだっていった瞬間に押し倒されてそのまま美味しくいただかれて、部屋が同じだからって毎日のように・・・」

ブバーーーー!

日番谷は、また茶を吹き出した。

「ま、毎日!?」

「そうだ。体が弱いって言ってるのに、毎日のように抱かれた。まぁ俺も若かったから、結局は発作や熱がある時はしなくて、それ以外の時は毎日のように抱かれた。流石にいやになって、拒否するようになったが」

「んで、今は週2だろ?」

「そう、週2。十分だと思うんだが、京楽は足りないという」

「浮竹~。何僕らの秘め事、日番谷隊長になんて話してるんだい」

京楽が現れた!

先制攻撃。京楽にクリティカルヒット。1500のダメージを与えた。京楽は敗れ去った。京楽が仲間になりたそうにこちらを見ています。仲間にしますか?

YES
NO

▽NO

「何やってるの浮竹!って、僕を仲間にしないなんて酷い!」

泣き真似をする京楽を無視して、浮竹はわかめ大使を食べだした。

「はっきり言って、性欲がありすぎれると思うんだ。どう思う、日番谷隊長」

「まぁ、確かにありすぎるな。その年齢で週2はちょっと多いんじゃないか?」

「浮竹、僕らの秘め事をほいほい日番谷隊長なんかに話しちゃだめでしょ!」

「秘め事か?今更?日番谷隊長の前でまで盛ったりするお前が?」

「うぐっ」

京楽は、痛いところをつかれた。

「いっそ、お前も抱かれてみるか?そうだな、更木隊長か狛村隊長あたりにでも」

「想像しただけで寒気がする!やめてくれ!」

京楽が悲鳴をあげた。

「抱かれてみれば分かるぞ。週2の大変さが」

「うわー想像したくねぇ。おっさんとおっさんは、片方が容姿のいい浮竹だから成り立つのであって、京楽受けはねぇな」

日番谷は、京楽受け想像して、身を震わせた。

「うわー寒い図柄しか浮かばねぇ」

「浮竹、僕何か悪いことでもした?急にこんなこと言いだして・・・・・」

「この前週3やらかしただろう。懲りずに、先週も週3だった」

「え、あれ?僕の数え間違い?週2のはずだったんだけど」

「いいや週3だった」

「週2だった」

「いや週3だった!」

「週2!」

「週3!」


「お前ら・・・・ここは10番隊の執務室だ。痴話喧嘩するなら他所でやれ!蒼天に座せ氷輪丸!」

ひゅるるるるどっかーーーん。

見事に、浮竹と京楽は吹き飛んで行った。吹き飛ばされながら、「週2」「週3」と言い合いをしている。

「なんてあたしまでーーーーー」

巻き込まれた形の松本は、腐った耳で聞いた話をめもっていた。

十分、巻き込まれるのに値する。

「はぁ。やっぱ氷輪丸を解放するとすっきりするなぁ」

日番谷は、吹き出して少なくなってしまったお茶の残りをすするのであった。

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小鳥の雛

「あちゃ~。どうしようこれ」

京楽の手の中には、傷ついた雀の雛が一羽いた。

8番隊の執務室の前に落っこちていた。周囲を探しても親鳥らしき鳥はいなかったし、猫が狙っていたのでつい拾ってしまった。

「自然に任せるのがいいんだけどねぇ。でも拾っちゃったものは仕方ないか」

京楽は、雀の雛を小さな入れ物にいれて、浮竹のところへやってきた。

「浮竹、ちょっと相談があるんだけど」

「なんだ」

浮竹は仕事をしていた。

「これなんだけど」

小さな箱をあける、ぴよぴよとえさをねだる雀の雛が一羽。

「かわいいな。どうしたんだこれは」

「それがねぇ・・・・」

事情を話すと、浮竹が世話するといって引き取ってくれた。

「こういう雛は、泡玉を食べさせるんだ。俺も子供の頃、小鳥の雛を育てていたことがあるから、少なくともお前よりは扱いは長けているとは思う」

清音にいって、小鳥の餌をうっている店まで泡玉を買ってきてもらった。

泡玉を湯に混ぜて、雀の雛に食べさせると、雛はよく食べた。

「うむ。この調子なら、すぐに巣立つだろう。怪我も自然治癒できる範囲だしな。一番困るのは、餌を食べてくれない子だ。無理やりあげていても、死んでしまうからな」

子供時代を振り返る。小鳥の雛を、親が持って帰ってきたことがあった。売っていた雛だったが、売れ残りで体が悪く、餌もなかなか食べなかった。

まるで自分を見ているようで、必死になって世話をした。その子は大人になって、籠の中で9年は飼っていた。

文鳥の雛で、手乗りになった。

春にやってきたので「ハル」という名前をつけた。

今は初夏だが、名前はもう決まっていた。

「名前は昔かってた子と同じ「ハル」にしよう。俺が臥せってる間は、仙太郎と清音に世話を任すことにする」

「はぁ。君がいてくれて助かったよ。僕じゃあ、小鳥の雛の面倒なんて見切れないからね」

2~3時間おきに、餌をやらなくてゃならない。そんな時間はないとは断言できないが、それが毎日と考えるだけで、無理だと思った。

ハルはぴよぴよ鳴いていたが、お腹が満腹になって満足したのか眠りだした。

「入れる箱を買わないとな」

小さな箱に入っている状態はあまりよくない。

今度は仙太郎にいって、プラスチックの透明な昆虫ケースを買ってきてもらい、そこに木材をくだいた小動物の敷布団かわりになる、ウッドチップをひろげて、雛をいれた。

ヒーターがないので、ウッドチップで体温を保てるようにした。

「よし、これで完璧だ」

寒い夜がある場合には、下に湯たんぽをしいてやるといい。

「君って、意外と小動物飼うのにむいてる?」

「んー。病弱だったからな。妹や弟がいたが、猫とか兎も飼ってた時期もある。全部、両親が俺が寂しくないように、生きる糧になるようにと」

「へぇ、意外だね」

「でも、俺たちは長い時間を生きるからな。どんなペットでも、死別があるから、ある程度年齢を重ねたら、ペットはもう飼わなくなった。妹や弟たちの世話でいっぱいいっぱいだったしな」

「8人兄弟ならねぇ。僕の実家では、見得のためか狼を飼っていたね。よく懐いていい子だったけど、やっぱり先に死んでしまって悲しかったのを覚えているよ」

犬を飼うより、狼のほうが珍しい。珍しい動物も平気で買える金があるのだと、主張するように飼われていた。

敷地内を自由に出入りするようにしていると、よく京楽に走ってきてアタックをかまして、地面
でごろごろと一緒になって戯れた。
泥だらけになって、家人に一緒になって怒られてたものだ。

「僕の家で飼われていた狼も、ちゃんと天国にいけただろうか」

「行けたさ。俺が飼っていた小鳥も兎も猫も、みんな天国にいったと信じている」

死ねば、その屍は土へと還る。

やがてそこから植物が芽吹き、小動物が食べ、それを人間か肉所動物が食べて、また死んで屍は土へと還り、循環する。

尸魂界の住民は長い時を生きる。愛玩動物も、それに合わせて長くいきるように品種改良が進んでいるが、それでも人が生きる時間まで共に生きてくれる愛玩動物はいない。

今は、12番隊の技術開発局で開発された、霊子でできた、疑似愛玩動物が流行っている。犬や猫の義骸の中に犬や猫の義魂丸をいれて、半永久的に生きるペットだ。
主に上流貴族の間ではやっていて、まだまだ庶民には手が出せない。

浮竹も京楽も、そんなペットを欲しいとは思わなかった。でも、この前の京楽の誕生日に、上級貴族の知り合いが疑似愛玩動物の犬をくれた。

疑似愛玩動物とはいえ、生きている犬とほぼ同じなために、京楽はそれを従妹に譲った。従妹は大変喜んでいた。もらっておいて悪いが、とてもペットの世話をする時間なんて作れそうになかった。

「さて、仕事の続きをするか」

ハルは眠っている。あと3時間前後は起きないだろう。

「ここで、見守っていてもいいかい」

「好きにしろ。何も面白いことはないぞ」

「ハルでも見とく」

「寝るの、邪魔するなよ」

2時間ほどがたって、ハルがぴよぴよ鳴き出した。

「僕も、餌をあげてもいいかな?」

見ている間に愛しくなって、餌のやり方を教えられた。

泡玉を口元にもっていくと、美味しそうに啄んでいく。

「かわいいねぇ。浮竹と同じくらいかわいい」

「ばか!」

頬を朱くした浮竹にどつかれたが、それさえ甘い。

ひとしきり餌をやると、ハルは静かになった。

それから2週間ばかりがあっとう間に過ぎて、巣立ちの次期を迎えた。

「本当なら、親鳥が巣立ちまで見守ってくれるんだがな」

「僕らで見守ろうよ」

飼育ケースから、籠にうつっていたハルは、入口をあけられると浮竹の肩に止まった。それから京楽の肩にとまって糞をして、大空にかえっていった。

「僕には最後までこれか・・・・・」

がっくりと項垂れる京楽を見て、浮竹は笑った。

数日後、雨乾堂の庭に小鳥の餌をまいていたら、それを啄む中にハルの姿があった。頭のところが白くて、すぐに分かった。

「無事、巣立ったみたいだ。雛の頃に人間い育てられた小鳥は、巣立ちに失敗して死んでしまうことがあるからな」

「よかったよかった」

自分が拾った責任もあったのだ。

無事巣立ちを確認して、二人ともほっとした。それから長い間、庭に小鳥に餌をまいていると、季節は移り変わり、ハルは番をとヒナを連れてやってくるようになったそうだ。












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花街夜話番外編2

完全パラレル 8番隊隊長京楽×色子浮竹

花街夜話本編https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18440048

番外編https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18449627

を読んだ後にお読みみください

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「翡翠」

そう呼ばれて、浮竹は京楽にすり寄った。

「京楽。また来てくれたのか」

13歳の浮竹は幼く、まだ京楽に初めて抱かれただけだった。京楽が店の主人に金を出しているので、浮竹は他の色子のように、別の男に体を売る必要がなかった。

浮竹は、色子の年齢としては若すぎず年を取り過ぎずで、ちょうと売り盛りの次期だった。

廓の主人にしてみれば、もっと大勢の男に浮竹を抱かせて、もっと金をというところであろうが、京楽から他の男に指名されないようにと大金を握らされていたし、京楽は護廷13隊の8番隊隊長である。

そんな立場の、おまけに上流貴族である京楽に逆らうことなどできない。

「主人、今日は翡翠を外に連れていくけど、構わないかい」

「はいはい、できれば夜になるまでに帰ってきてくださいね」

「おいで翡翠」

上等な女ものの着物を着せられた浮竹は、化粧はせずに、髪に翡翠の髪飾りして京楽の隣を歩く。

花街の外に行こうとする。

「あ、通行手形がないと・・・・・」

「大丈夫、僕に任せておいて」

花街の出入りは、色子や遊女の足抜けがないように厳しく監視されている。

通行手形をもたない浮竹には、外の世界などいけないはずなのに。

「さぁ、おいで翡翠」

京楽に頭(こうべ)を垂れる、門番たちを恐る恐る見ながら、花街の外にでた。

「うわぁ」

花街も人が多かったが、その場所はもっと人が多かった。瀞霊廷でも、3つの指に入る貿易都市だった。

「あそこの料亭で食事をとろう」

「え、でもあんな高そうな店」

「僕は上流貴族だよ?金の心配なんてしなくていいから」

料亭にあがると、高級食材をふんだんに使った鍋を出され

「カニだ・・・・こっちはフグ・・・・」

尸魂界に海はない。現世でとれたものが流通する尸魂界では、海鮮物はとにかく高い。庶民が手のだせそうな安い魚もいるが、カニとフグは高級と有名だった。

「好きなだけ、食べていいから」

京楽に、さぁと勧められて、まずはカニを食べてみた。生きてきた中で、カニを食べるのは初めてだった。

その美味しさに驚く。

次にフグのてっちり鍋を食べてみる。これもまた美味しかった。

「俺は、こんなに美味いもの食べたことがない」

ぽろりと涙を零すと、京楽が焦った。

「どうしたの、どこか痛いの?」

「京楽が優しすぎて、涙が止まらない」

食事をなんとか終えても、浮竹は涙を零していた。

「俺は、こんなに優しくしてもらったことがない」

廓では、熱を出してろくに働けないと、異物扱いだった。足抜けを2回しようとしたせいもあるし、下級ではあるが貴族ということで、他の色子たちとも馴染めなかった。

京楽は、浮竹の頭を撫でて、泣き止むまで待ってくれた。

「すまない京楽。泣いて迷惑をかけた」

「いいんだよ、翡翠。泣いてスッキリしたかい?」

「ああ」

そのまま、街を見回って、簪や髪飾り、着物を買ってもらった。どれも金のかかる一級品ばかりだった。

荷物は、数日後廓で受け取ることになっていた。

その日は、京楽は浮竹を抱かず、ただ一緒に話をして外で遊んで、そのまま廓に帰ってきた。

「帰りたくない・・・・・・」

「翡翠、もう少ししたら、君を身請けするかもしれない」

「え」

「このままこの廓にいたら、君はいつか違う男に穢されてしまう気がする」

「京楽になら、身請けされてもいい」

浮竹は本気で京楽に夢中になっていたし、京楽も京楽で、年の差もあり色子という問題もあったが、関係なく本気で浮竹を愛し、慈しんでくれた。

「今日はもう帰るから」

「京楽!」

京楽黒い長い髪をひっぱって屈ませて、舌を入れるキスをした。

「翡翠、君って子は・・・・そんなこと、どこで覚えたんだい」

「この前、京楽に抱かれた時に覚えた」

「誰にでもしちゃだめだよ。僕以外にしちゃだめだからね」

「分かっている」

京楽を見送った。

その翌日、この前貿易都市を歩いて買ったものが届いた。

「うわあ、どれもいいな。生意気だお前!新入りのくせに!」

色子の先輩が、浮竹のためにと贈られてきた髪飾りや簪、着物を勝手にとっていった。

「返せ!京楽からもらった大事なものだ!」

「お前みたいな出来損ない、戯れに寵愛をいただいてるだけじゃないか」

かっとなって、先輩の色子を殴った。顔を殴って、その色子と周囲の色子が、怒りを滲ませる。

「売り物の顔に、よくも怪我をさせてくれたな!」

「やっちまえ」

「生意気なんだよ!」

簪を手に、色子の一人がそれを振り上げる。

ザシュ。

嫌な音がして、浮竹の頬が深く切れた。

「おい、やべぇんじゃないの。京楽さまのお気に入りだぞ」

「俺、知らないっと」

「僕も知らないもんねー」

「待てよ!俺を置いていくな!」

着物に血が滴ってしまった。逃げた色子たちは、簪や髪飾りを放りだしていった。

顔に傷をつけられたことよりも、贈られてきたものが無事であると知って安堵した。

「この着物は、一度洗わないと・・・・」

上等な絹でできていたが、頬から流れ出す血で汚れてしまった。

「翡翠、京楽様がきているぞ」

「はい」

浮竹は、顔の怪我の手当てもせずに京楽の元にいった。

煙管煙草で紫煙をあげていた京楽は、浮竹の頬の傷をみて、煙管を落とした。

「どうしたの!誰にやられの!まさか、椿姫!?」

「違う。先輩の色子に、この前京楽に買ってもらって、贈ってこられたものを盗られそうになって、殴ったら簪で・・・・」

「ちょっと主人、おおい主人」

「どうなさいました京楽様・・・・翡翠なんだその怪我は!早く手当てを!傷が残っちゃ大変だ!」

浮竹は、消毒されてすぐに怪我の治療を受けた。

「傷跡が残るようなら、4番隊の子を呼んでくるからね・・・・それより、君に怪我をさせた色子は、このうちのどの子?」

店の色子を全員そろえさせた。そして、浮竹は自分を傷づけた色子を指定しなかった。

「もう終わったことだから」

「君って子は・・・・・」

きっと、浮竹がこの子が犯人だといったら、その子は酷い折檻を受けるだろう。そこまで、なってほしくなかった。
色子たちを解散させて、京楽は浮竹を抱き上げた。

「主人、褥を借りるよ」

「はい、奥の座敷に用意してあります」

奥の座敷にいくと、夕飯と酒が置いてあった。まずは夕飯を食べて、浮竹にお酌をしてもらって酒を飲む。

「君も飲むかい?」

「飲んでいいのか?俺はまだ成人していないが」

「ものもためしだよ。一度飲んでごらん。このお酒はきついから、こっちのお酒を」

「甘い・・・・」

その味が気に入って飲んでいたら、浮竹は酔ってしまった。

「こらー京楽ー。俺を抱け」

「酒癖悪かったのか・・・・飲ませないほうがよかったね」

「いいから、抱け」

京楽の着物を脱がせていく浮竹に、京楽もその気になった。

「おいで、翡翠」

「あっ」

触れるだけの口づけは、やがて激しいものに変わり、舌を絡めあった。

まだ幼い浮竹の肢体をまさぐって、京楽は全身の輪郭を確かめるように愛撫すると、浮竹の花茎を口に含んだ。

「ああっ」

直接の刺激に弱い浮竹は、すぐに精液を放ってしまった。

「潤滑油・・・・いつものと違うけど、いいかな」

「早く、来い」

指を潤滑油で濡らして、浮竹の蕾に指をいれる。数本いれて指をばらばらに動かすと、一つが前立腺に触れた。

「ああ・・・・・・」

そこばかりを必要にいじられて、若い浮竹は二度目の精液をはいた。精通を迎えてまだ間もないので、量は少なかった。

「入れるよ。いいかい?」

「いいから、来い・・・・・・」

京楽の熱が、とろとろにとけた蕾に当てられる。

「ああああああ!!「」

一気に貫かれて、幼い体はそれでも反応した。

「あ、あ、あ」

京楽の刻む律動にのって、声が漏れる。それをなんとかしとうと口を塞ぐと、浮竹にキスを何度もされた。

「ううん」

口の中に指をつっこまれ、乱暴にかき回される。

「声、我慢しないで。君の感じてる声は耳にいい」

「ああっ」

突き上げてくる角度が変わって、繋がったまま体位を変えられた。

「ひうっ」

「ここがいいの?」

「ひあっ」

前立腺をすりあげて、最奥までたたきつけると、浮竹は三度目の精液を放った。

「僕も、出すよ・・・・・」

「中でだぜ、俺の一番奥で」

「本当に、君は誘うのがうまいね」

浮竹の最奥を貫いて、京楽も果てた。

京楽はまだ一度しか果てていないので、もう一度抱かれた。浮竹はオーガズムでいくということを、幼い体で知ってしまった。

「んあっ」

貫かれて、揺さぶられる。

「あうっ」

二度目の精液を腹の中でぶちまけられて、そこで浮竹の意識が途切れた。

気づくと、体を清められて、布団の上で京楽の腕の中で眠っていた。

「お前はもう、俺のものだ」

「それはこちらの台詞だよ、翡翠」

京楽は起きていた。浮竹が身動ぎした時に起きたのだ。

「店の店主によく言いくるめておくから。もう、喧嘩なんてしちゃだめだよ」

「売られたら、買う」

「もうこの子は・・・・・・・」

頭を撫でられて、頬の傷を触られた。医者に診せたのだが、傷跡は残らないそうだ。残ったら、京楽は本気で4番隊の死神を連れてきて、回道で治そうと考えていた。

「また明日くるからね!」

「待ってる。いつまでも、待ってるから」

それから数週間後。

椿姫の姦計にかかり、京楽以外の男に穢された浮竹は、もうこの廓に置いておけないと浮竹を身請けすることになる。

浮竹を穢した男たちは半死半生の目にあわされて、それを企てた椿姫は京楽に身請けされるが、病もちの最低ランクの廓に売りとばされ、その後風の噂で、梅毒にかかり脳にまでまわって自殺したらしい。

「おいで翡翠・・・・じゃなかった、十四郎」

身請けされたことで、本当の名、浮竹十四郎という名を明かしたが、時折京楽は翡翠と言い間違える。

「別に、翡翠でもいい。けっこう気に入ってる名だから」

「十四郎、もう15でしょう。廓でのことは忘れなさい」

「でも、俺は色子になってとよかった。京楽と出会えたから」:

「十四郎・・・・・愛してるよ。僕だけの翡翠」

「俺も愛してる、春水」

その後、浮竹は霊圧があるとのことで学院に進み、死神となって京楽の傍にいるのだった。







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簀巻き

「浮竹ーもうしないから許してぇぇぇぇ」

ブラーン。

布団で簀巻きにされた京楽が、ベランダに干されてあった。

つーんと、浮竹は無視する。

「浮竹、ほんとにごめん、僕が悪かった。もうしないからほんとに許してぇぇぇ」

ミノムシのようにな状態で干されている京楽は、動ける範囲でくねくねしていた。

「次、破ったら、俺はこの部屋を出ていく」

きっぱりそう言って、浮竹は京楽を下ろした。でも、簀巻きのままだった。

「できれば、この布団の簀巻きもなんとかしてくれると嬉しいなぁ」

「だめだ。罰にならないだろう。しばらくそうしていろ」

「飯とかトイレは!」

「飯もトイレも我慢しろ」

「そんな殺生な」

まぁ、本気で我慢させるつもりは浮竹にもなかったのだが。



ことの始まりは、休日の朝の湯あみ。

朝からいい匂いをさせていた浮竹に、京楽が飛びついた。

ハグをして、何度もキスをしていたら、浮竹はとろんとした目で京楽を見ていた。

「もう少しだけ・・・・・ね?」

服の上から、背骨をなぞってくる。

「んっ」

それから、服の裾から手をいれて、膝を膝で割ってきた。

「・・・・・・いい加減に、しろ!」

鳩尾を蹴られて、京楽は蹲った。

「ぐほ・・・・・きいた・・・・・」

それから、股間を蹴り上げた。

「ぬおおおおおおおおお」

苦しむ京楽に、怒った浮竹はベッドの上の布団をもってきて、京楽を簀巻きにして縛りあげて、
ベランダに干すように吊るした。

そして今に至る。

キスとハグ以上はしない。

それが、二人の暗黙のルール。

破れば制裁が待っているし、本気で破って抱いてくるようなら、寮の部屋から出ていくつもりだった。

探せば、空き部屋くらいあるだろう。なければ頼みこんで誰かと部屋を交換してもらえばいい。

元々、相部屋の相手は違う人物だった。京楽がコネを使って、浮竹と同じ部屋で生活しだした。

最初は毎日のように好きだといってくるくらいだったが、いつの間にかキスとハグをするようになっていた。

そして、それでもそれ以は京楽に与えないので、飢えた京楽は変態行為に手を出し始めた。

浮竹グッズを作ったり、浮竹の隠し撮りの写真を集めたり、パンツをかぶったりスーハースーハーしたり・・・・・少しずつ、酷くなっているような気がするが、浮竹が部屋を出て行けば、多分京楽は移動した部屋の相部屋相手を金を掴ませてでも出て行かせて、また同じ部屋での生活をするようになるだろう。

「はぁ・・・・・」

もっとまともな相手に好かれたかった。

できれば女性がよかった。

がたいのいい、190センチもある京楽は見栄えはいい。2回生の終わり頃まで女遊びが激しくて、よく廓にいっていた。
浮竹も、何度か連れられて廓にいったことがあるが、いい思い出はなかった。

浮竹が好きだといいだしたのが、2回生の終わりごろ。

3回生になる頃には、あれだけ激しかった女遊びをやめて、付き合っていた女生徒を振った。というか、振られた。

浮竹ばかりを見ていると。

京楽が浮竹に告白したということはすぐに学年中に知れ渡って、それを浮竹が断ったということも知れ渡った。

最初は差別があるのではと、思っていたが杞憂だった。

浮竹の周囲には、そんな友人はいない。言い出す人間がいると、みんなで庇ってくれる。

今では、浮竹と京楽は付き合っていると言われる始末だ。

付き合ってはいないのだが、もうキスとかハグは付き合っていないとしないと知って、ショックを受けたこともあった。

浮竹は恋愛ごとには奥手だ。

それをいいことに、京楽は浮竹を手に入れようとした。

でも、友人たちの厚い壁に阻まれて、京楽は浮竹に最後までできなかった。

それでよかったのだと思う。

好きだという確信がないまま、抱かれて京楽のものになるよりは。

「本当に反省しているな?」

「してます」

京楽を簀巻きにしていた縄と布団をとってやる。

「次やったら、部屋を出て行ってもお前はついてくるだろうから、お前についているものをもぐからな」

あひん。

京楽は、その言葉だけで精神に550のダメージを受けた。

「ひいいい、それは勘弁してえええ」

「お前が余計な手出しをしてこなければしない」

浮竹は溜息をつく。

「食堂に昼飯を食いに行こう」

「あ、うん」

休日ではあるが、食堂は休日でも空いている。院生の、寮に暮らす学生が食べる場所が他にないからだ。

浮竹の跡を、尻尾を振るようについてくる京楽は、さしずめ駄犬というところか。

何度教えても、芸を覚えこまないような、駄犬である。

「今日の昼は焼肉定食だよ」

「うわ・・・・・食いたくない」

「そんなことを言うと思って、サラダとか買ってきておいたから。今年初のメロンが手に入ったから冷やしてもらっておいたんだ」

厨房から、サラダとカットしたメロンを受けとって、浮竹の前におく。

この時期のメロンは高い。

「いくらしたんだ」

「安かったよ。27万」

「それは安いとは言わない・・・・・・」

でも、もう買われてカットまでされてあるので、食べなければもったいない。

まずサラダを完食してから、メロンを食べた。

甘い味が口中に広がる。

にこにこにここ。

焼肉定食(大盛)を食べながら、京楽は浮竹がメロンを食べいる姿をみるだけでも幸せそうだった。

「ほら、口あけろ」

「あーん」

口の中に、やや乱暴に、スプーンでとった果肉を入れてやる。

「んーよく冷えてるし、安かったわりにはいい味だね」

「どこが安いんだ」

「あれ、教えてなかったっけ。去年君に食べさせた初メロンは130万だよ」

聞かなかったことにしよう。

そう思う浮竹であった。

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王様ゲーム

「いえーい、第1回王様ゲーム」

松本が、楽しそうにしていた。

集まったメンバーは、松本、日番谷、浮竹、京楽の4人だけ。本当はもっと呼ぼうとしていたのだが、恥になるからよせと日番谷の命令だった。

それぞれ、くじをひく。何番かがかかれてあって、王様は朱い色をしていた。

「王様は俺だ。1番が3番に肩もみする」

日番谷が王様だった。

「あたし1番だ」

「3番は俺だな」

松本が、浮竹の肩をもみだす。

「ああ、そこそこ・・・・・きくなー」

「ちょっとー浮竹隊長意外と肩こってますねー。一回、専用のマッサージ屋にいってみたらどうです?

「それもいいかもなぁ。でも高くないか?」

マッサージとか、エステ系はどうしても高いイメージが拭えない。

「もみほぐしコースで3千とかの店ありますよ。よければ紹介しますけど」

「それって、浮竹が裸に近い恰好になって、誰かに体を触られるってことだよね?断然却下だよ。浮竹のもみほぐしは僕がする」

「えー京楽が?お前に任せると、いかがわしいことしそうでいやだな・・・・・・」

「いやいや、真面目にするから。これでも、山じいから肩たたきのプロと言われた腕だよ」

「えー意外ー」

松本が、浮竹の肩をもみながら言う。

「次ひきましょ」

「王様誰だ」

「僕だね。2番が3番の胸に顔を埋める」

「2番あたしー」

「3番は俺かよ!」

「さぁ、隊長、神々の谷間にどうぞ」

「窒息させる気だろ!そうだろ!」

問答無用で、松本は日番谷の顔を胸に押し付けた。

「ちょっとうらやましい・・・・・・」

「同意見」

日番谷は、慣れていることとはいえ、松本の豊満すぎる胸に顔をおしつけられて、呼吸ができなくて苦しんでいた。

「ぶはっ、一瞬三途の川わたってた・・・・・走馬燈が」

日番谷が落ち着くのを少し待ってから、続きをする。

「なぁ、この遊びあぶねーと思うんだ。やめねえか?」

日番谷の言葉に、浮竹は賛成したが、松本と京楽は別だった。

二人して、にんまりとあやしい笑みを浮かべる。

「次の王様は・・・・・・また俺か」

日番谷が王様になった。

「3番が2番にパンチ」

「3番は僕だねぇ」

「2番はあたし・・・京楽隊長、歯食いしばってね」

思っきりパンチをしてきた松本に、京楽が吹っ飛ぶ。

「あべし!」

京楽は、けれどにょきっと復活して、すぐに次の王様をきめ出す。

「王様はあたし」

きたきたー。京楽はほくそ笑んだ。

「1番が3番にディープキス」

「1番は・・・・・・俺だ」

浮竹が一番で。

「3番は僕だよ」

きたきたー。これを京楽待っていたのだ。

「仕方ないな・・・・・」

松本と日番谷の目の前で、浮竹は京楽の服の襟をつかんで引き寄せると、ディープキスをしだした。

「んっ・・・・」

一度では足りないと、京楽は貪ってくる。

そのシーンを、松本は写メでとりまくっていた。

「松本おおおお!やめねーか!」

「無理です隊長!(*´Д`)ハァハァ」

「さてはお前ら、こうなることを見越してゲームを・・・・・」

松本と京楽が、繋がっていたのかと気づく。

「もういいだろう、京楽」

「もう少しだけ・・・・」

「いい加減にしろ」

頭をはたかれて、京楽は幸せそうな笑みを零した。

「ごちそうさまでした」

「おそまつさまでした」

と、何故か松本が答える。

浮竹は、情事の後っぽい気だるい雰囲気を出していて、色っぽかった。

「次で最後だ!」

日番谷が決める。

「えー、あたしまだやりたーい」

「僕もしたい」

「俺はもういい・・・・・」

潤んだ瞳と上気した頬のまま、浮竹はもう勘弁願いたいと思っていた。

「次も王様もあたしー!」

松本は調子に乗り出す。

「2番と3番が、ハグの後ディープキス」

「2番は俺だ・・・・・」

日番谷だった。

「3番は僕だ・・・・・」

京楽だった。

松本は鼻息も荒く、様子を見守っている。

「ハグくらいなら平気さ!」

京楽の大きな体が、小さい日番谷を抱き締める。

「もじゃもじゃがいてぇ!胸毛が顔にくる!」

日番谷は散々文句をたれた。

そして、いざディープキス・・・・・・。

「できるわけねーだろ、蒼天に座せ氷輪丸ーーーーー!」

「あーん、せっかく禁断の京楽×日番谷のシャッターチャンスが!」

ひゅるるるるるるどっかーん。

松本と京楽が吹き飛んでいく。ついでに浮竹もふっとんでいった。

顔を真っ赤にさせて、日番谷は舌打ちした。

「松本おおお、覚えてろよ」

当分の間、仕事づけにしてやろうと思う日番谷であった。

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ピザだよ珍しいよ

「日番谷隊長!現世からピザなるものを取り寄せてみたんだ!一緒に食べないか」

「ピザ?・・・・ああ、現世にいたころそんな店あったな。松本、茶を二人前いれてくれ」

10番隊の執務室に遊びにきた浮竹は、ピザのはいった荷物を手にやってきた。

「えーあたしの分はないんですかー浮竹隊長」

「そういうと思って、もう1枚買っておいたんだ。なんでもデリバリーとかいう配達を、電話をすればしてくれるらしくて・・・・まぁ、浦原に頼んだんだが」

藍染との闘いが終わり、浦原と尸魂界とつながりが再びできるようになって、現世の代物がどさりと尸魂界に流れてこんでくるようになった。

「茶はいらんぞ。コーラなる飲み物ももってきた」

「なんだこれは?黒いお茶か?」

日番谷も現世にいたときがあったとはいえ、短期間だったために現世のものにあまり触れていなかった。

「炭酸飲料で、ふると中身がこぼれるから・・・・・・」

「それを早く言え」

松本が思いっきりシェイクしたコーラをあけて、松本も日番谷もコーラまみれだった。
とりあえずふいて、食べた後に湯あみすることが決まった。

「けこっううまいな、この飲み物」

コーラを手に、それを飲んでいく日番谷。

3人でピザをつまんでいた。ハーフ&ハーフで、2枚で4つの味が楽しめるようになっていた。

「お酒にあいそう~~~」

松本は、どこから取り出したのか酒をもちだした。

それを、日番谷が没収する。

「あーん隊長酷い」

「こんな真昼から、仕事もせずに飲むの許すわけねぇだろ!」

10番隊の執務室の窓に、べったりとはりついている何かが・・・・いや、京楽がいた。

「あのおっさん何してるんだ?」

「さぁ、混ざりたいんじゃないのか」

「声をかけてやらねーのか?」

「あいつ、朝からやりにきて満足して自分だけ眠りやがった」

ブーーーーー。

日番谷が、コーラを吹き出した。

「あ、朝から大変だったんだな・・・・・・」

「浮竹ぇ、僕だけ仲間外れにしないでくれー」

「1週間、甘味屋壬生に連れていくこと。それが参加条件だ」

「それでいいなら!」

どよーんとしていた京楽の雰囲気が、すぐに明るいものに変わる。

「そんなことでいいのかよ、浮竹」

「こいつとは、まぁ長年の付き合いだしな」

長椅子の浮竹の隣に座り、ピザを食べだす京楽。

「やっぱ現世の食べ物はうまいねぇ」

何気に4人分のコーラのペットボトルがあったのだ。浮竹も、最初から京楽を誘うつもりだったのだと分かって、安堵したような気持ちになる。

「ピザを食べるのは初めてじゃあないけど、いろんな味があっていいね」

「なんだ京楽、こんな珍しいもの食ってたのか」

「いやね、現世にいった子がお土産にいろいろもってくるから。その中に、冷凍ピザなるものがあってねぇ。火をおこして温めて、食べたことがあるよ」

「いいなぁ、京楽隊長。あたしも、現世にまたいきたーい」

「松本おおお!お前、この前仕事ほっぽりだして現世に買い物にくとかいって2日も行方くらましたばかりだろうが!!!」

日番谷に怒鳴られて、松本が反論する。

「非番の日でした!」

「1日だけな!2日目は非番じゃなかったろうが!」

「あーん隊長、そんなけちけちしないでくださいよー」

「誰のせいだと思ってやがる」

京楽と浮竹は、仲よくピザを食べている。

「はぁ・・・・」

怒っていても、ピザがなくなるだけなので日番谷も食べた。

美味しいが、とても珍しいのだ、尸魂界では。こんなもの、現世に行った時くらいしか食べれない。今後、隊長である自分が現世に行けるかどうかも分からない。

「まぁ、浦原か夜一に頼めば、手に入らないでもないから」

日番谷の考えていることを、浮竹が言う。

「たまには、食べてみたくなる味だろう」

「まぁな」

浮竹がさ、さっと自分と日番谷の居場所を瞬歩で入れ替えた。

「なんだ・・・・・・って、ぎゃあああああああああ」

さわさわ。

尻をなでてくる京楽の手に、日番谷は斬魄刀を解放した。

「蒼天に座せ、氷輪丸!」

「ぎゃああああああ、いつの間に浮竹が日番谷隊長と入れ替わって!?」

「このむっつりすけぺ野郎が!」

浮竹が、氷の龍の範囲の外から京楽にむけて舌を出していた。

「日番谷隊長に氷漬けにされるがいい」

「浮竹、お前も悪いいいいい!蒼天に座せ、氷輪丸!」

「のああああああ」

「隊長、あたし関係ないのになんてあたしまでええええええええ」

松本が巻き込まれて、天高く氷の龍と共に昇っていく。ピザとコーラをなんとか死守した日番谷は、一人で残りのピザを食べてしまった。

「ああああああああああ」

がっしゃん。

松本が、さかさまになって戻ってきた。

浮竹と京楽は、さすがというべきか氷漬けにされた部分を砕いて、瞬歩で逃げ出したようだった。

「浮竹のやつ、日頃から京楽にセクハラされてるのか・・・・・・?」

院生時代はよくあったが、その時はたまたまだったのだが。

「浮竹も、俺に相談すればいいものを・・・・・」

ちょっと心配になる日番谷であった。








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院生時代の部屋32

すんすん。

運動して汗をかいたところを、京楽が近くにきて匂いをかいでくる。

立派な変態行為であるが、慣れてしまっている浮竹は、とりあえず京楽を蹴り転がした。

「君って、汗かいてても花の香のほうが勝るんだね」

「そうなのか。自分ではわからない」

自分の肌や髪から自然と放たれる、甘い花の香に嗅覚はもう麻痺していて、かいでも何も感じなかった。

「もっとかがせてーーー」

「断る!」

京楽を踏みつけて、浮竹は寮の自室に入ると、さっと汗を流して、院生の服も新しいのに変えた。

昼休みだったので、本当に汗を流しただけだ。湯あみもしたかったが、時間がなかった。

食堂にいくと、京楽が待っていた。

「Bランチ定食で」

「同くBランチ定食でお願い、綺麗なお姉さん」

「あらやだ京楽ちゃんったら、大盛ね」

ただでさえボリュームがあるのに、大盛にされてよく食べきれるなと、浮竹は思った。

同じ席に座り、向かい合って食べる。

今日は野菜のサラダがメインの、ヘルシーな食事だったので、浮竹も残すことなく食べれた。

「え、君の食べ残しがない!?くっ、せめて使っていたそのフォークを!」

フォークをぺろぺろしだす変態の脛を蹴る。

蹴ったところで動じないので、浮竹ももうかなり慣れた。

変態京楽。その名の通り、変態である。ただし、浮竹オンリー。

京楽から変態行為を取り除けば、紳士が残るが、変態を取り除くことは不可能なので、浮竹もその対応にたまに困る。

この前は、ベランダで干していたお気に入りの下着をもっていかれた。

今は、浮竹印の抱き枕があるくらいで、浮竹グッズは封印されている。

きっと、浮竹がいない間に浮竹グッズを出して悦に浸っているであろうことは、明白である。

「授業に遅れるから、いくぞ」

京楽は、フォークをなめるのをやめて、食器類を洗いものいればに置くと、浮竹に急かされて教室へと移動した。

今日の午後は、鬼道の練習だった。一度教室に集まり、鬼道の詠唱を覚えさせられて、運動場にでて、的に向かって打つ。

「破道の4、白雷」

詠唱破棄で、的を真っ黒焦げにした浮竹に、教師も舌をまく。

「破道の4、白雷」

同じく、京楽も詠唱破棄した。的は黒焦げになった。

「さすが浮竹と京楽だ。教師でも、もう鬼道の腕は叶わんな」

「そんなことありません、先生」

他の生徒たちは、ちゃんと詠唱を行って、的がやっと焦げる程度だった。詠唱をすると、周囲に被害が出るので、わざと詠唱破棄したのだ。

「まだ教わっていない鬼道もありますし、縛道なんて半分しか使えません。回道も習いたいし・・・・・・」

「おいおい、もう縛道の半分も詠唱できるのか。凄いな」

浮竹も京楽も、鬼道が得意というわけではない。ただ突出した霊圧のお陰で、威力が他の生徒の何倍にもなるのだ。

すでに3回生にも関わらず、席官入りの話が出ていた。

「回道は・・・・得手不得手があるからな。今後の授業で学んでいくが、あまり使えなくても気落ちするんじゃないぞ」

「はい」

「ふあ~」

浮竹が教師と真面目な話をしている間、京楽は眠そうにずっと佇んでいるだけだった。

「先生に失礼だろう」

浮竹の蹴りが、京楽のけつにヒットした。

「あいた!」

「全く、お前は・・・・・」

その後も鬼道の授業は続いた。まだ学んでいない鬼道の詠唱を覚え、放つ。やはり、他の生徒の数倍の威力があった。それでも、威力を抑えたつもりであった。でも、風がおこり、他の生徒の一人が倒れて腰を打った。

すぐに、回道の得意な子が傷を癒してくれたので、大事に至らずにすんだ。

「なんだかねぇ。思いっきり、鬼道詠唱して、威力だしてやってみたいね」

「ばか、そんなことしたら授業じゃなくなるだろう!」

本当なら、高学年に移動するほどの成績なのだが、当時の学院には、スキップ制度がなかった。

一日の授業が終わり、鬼道ばかりを使っていた浮竹は、他の生徒の指導も任されて、疲れていた。一方の京楽は、授業の途中からさぼってしまい、何処かへ行ってしまった。

浮竹のお陰でみんなけっこうすんなりと破道の4白雷を覚えて、授業が早めに終わった。

湯あみをしよう。そう思って、寮の部屋に戻ってきたのだが、鍵がかかっていた。またかと思って、心を落ち着かせて、合鍵で部屋の中にはいる。

この前、盗まれた下着を、京楽は頭にかぶっていた。

「・・・・・・・破道の・・・」

「ま、待った!このまま鬼道を受けたら、僕のコレクションのパンツまで黒こげになってしまうよ!部屋中も滅茶苦茶になるよ!この前みたいに、鬼道を室内で使って怒られたくないでしょう!?」

その言葉は最もだった。

「歯をくいしばれ」

蹴りがくると身構えていた京楽の頬を、ビンタした。10往復ビンタされて、はれがあった頬を手に、京楽は嬉しそうにしていた。

「浮竹の愛を感じる・・・・・いつもの蹴りでも愛を感じるけど、今回は更に愛を感じる」

だめだ。

こいつ、変態だった。

蹴りもビンタもパンチも、愛だと感じ取れるその性分が凄い。

「はぁ・・・・誰か、部屋入れ替わってくれないかな」

退学した友人のいた相部屋は、すでに他の人が入っているので、泊まれない。

ふと、パンツを置いて、真面目な顔をされた。

トクンと、胸が高鳴る。

「君が好きだよ・・・・浮竹」

「んっ」

触れるだけのキスをされて、抱き締められた。

何度かキスしているうちに、パンツを頭にかぶっていたことがどうでもよくなってくる。

今回は、俺の負けということにしておこう。

「キスもハグももういい。湯あみしてくる」

京楽は、浮竹の裸を見れるチャンスなのでそわそわしていた。でも、浮竹もバカではない。脱衣所に鍵をかけるようになった。最初はそれを壊していたのだが、浮竹が怒るので、壊さなくなった。

浮竹が、鍵を開けて中から出てくる。
少し伸びた髪から、雫がぽたりと落ちた。

「風呂上がりの浮竹の匂い~~~」

スンスンと臭いをかいでくる京楽を無視して、ベッドに横になった。食堂で弁当を買ってきたので、夕食は後にとることにする。

「疲れた。少し眠る」

「おやすみ」

当たり前のように、浮竹のベッドに寝転がってくる京楽。最近寒いので、湯たんぽ代わりにしているので、浮竹も文句を言わなかった。

ふと、京楽は真面目な顔で、眠った浮竹に口づける。

「道化である限り、君は迷わなくてすむ・・・・だから、道化を演じる・・・・なんてね」

にんまりと笑みを零して、やっぱり京楽は京楽なのであった。


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朽木隊長と浮竹2

「京楽は仕事、日番谷隊長は現世、なので暇なんだ構ってくれ白哉」

ゴロゴロゴロ。

畳の上を転がる浮竹に、白哉は溜息を零した。

「兄は、仕事はどうした」

「それが、臥せっていた間に3席の清音と仙太郎が全部してしまって・・・・」

「恋次、遊んでやれ」

「ええ、なんで俺なんですか!」

「この中で、浮竹に次いで暇なのは恋次、兄であろう」

「阿散井副隊長でもいい、遊んでくれー」

ゴロゴロゴロ。

転がってくる浮竹を避けて、恋次は逃げ出した。瞬歩だ。

「ああ、逃げられた・・・・・」

転がるのをやめた浮竹は、去ってしまった恋次があけていった窓を見る。

「というわけで、白哉、遊んでくれ」

「兄は・・・・・はぁ」

珍しく、白哉が戸惑っていた。

浮竹に、暇なら遊びに来いといったのは白哉自身だ。だが、こんなにも早くに遊びに来るとは思っていなかった。

「仕事、手伝おうか?」」

「いらぬ。兄に心配されずとも、もう終わる」

そう言って、白哉は仕事を終えた。

「何をして遊ぶつもりなのだ、兄は」

「何も考えてこなかった・・・・・・・」

「ここにわかめ大使の着ぐるみがある」

ごくり。

それをどうしろと?

「着るか?」

「いや、着ない」

「私も着ない。恋次に着させようと思っていたのだ」

「阿散井副隊長に着せて、どうしようと?」

「写メをとって、ルキアに送るのだ」

阿散井副隊長が逃げ出したのには、そんなわけがあったのかと、浮竹は思った。

わかめ大使、おいしいけど、見た目がな。

「ここはシンプルに・・・・トランプでもしよう」

トランプなるものが尸魂界ではやりだしたのは、数年前から。

浮竹の持ってきた荷物の中には、他にも双六、花札、オセロ、人生ゲームがあった。

それらをとりだしていると、白哉は人生ゲームに興味を示した。

「これはなんだ?」

「現世での遊びで、サイコロのコマをまわした数だけ進んで、人生を決めていくんだ。双六みたいなものかな」

「ふむ。これがいい。これを兄としよう」

こうして、二人だけで人生ゲームをはじめた。

結果、白哉は社長になって大金持ちになり、子供も4人もできた。浮竹は借金を背負って結婚したが離婚された。

「子供ができる以外、あまり現実と変わらぬな」

社長という存在も、白哉には分かっているようで、大金持ちなのに人生ゲームでも大金持ちになってつまらないようだった。

「兄の人生ゲームの結果のほうが面白そうだ」

「ええ、借金抱えて離婚されるんだぞ」

「四大貴族なのに、ゲームの中でも金持ちになっても意味がない」

「白哉は我儘だなー」

「兄の人生は・・・・兄は、今幸せか?」

「うん?俺は幸せだぞ。確かに肺の病せいもあって、幼少の頃は生きているのも嫌だったし、家族に迷惑をかけて薬代で借金を両親は重ねたりしてたがな。今は隊長になって京楽と一緒にけっこう羽目外したりして元柳斎先生に怒られたりもするが、比較的幸せなほうだと思う」

「総隊長に怒られるとは、どのようなことを?」

「よっぱらって、隊舎半壊にさせた」

「それは怒られるであろうな」

ふと、白哉の顔に笑みといえる表情が浮かんだ。

緋真を亡くしてから、さらに感情が読み取れなくなったのだが、義妹であるルキアと和解し、雪解け水のように凍っていた関係が解けてきている今は、表情も豊かになった気がする。

「浮竹ー」

「あれ、京楽?」

ここは、朽木家の屋敷にある、白哉のための執務室だ。6番隊の執務室では狭いというので、朽木家に執務室を構えていた。

その部屋に、京楽がやってくる。

「お邪魔してるよ。家人には、ちゃんと許しはもらったから」

隊長格、副隊長格であれば、何も言わずに通せと、白哉は家人に命じてあった。

「浮竹、仕事終わったから・・・・って人生ゲーム?朽木隊長が人生ゲーム!?」

「何かおかしいか」

「いやあ、意外過ぎてちょっと笑える」

「こら、京楽失礼だぞ。あそうだ、これ京楽着てみろ」

有無を言わさず、無理やりわかめ大使の着ぐるみを着せられた京楽は、心なしかしょんぼりしていた。

伝令神機で写真をとられているうちに、どうでもよくなかったのかポーズまでつけだした。

それを、浮竹は笑って写真をとっていた。心なしか、白哉も口元にうっすらと笑みを刻んでいた。

「はぁ。もう十分でしょ。疲れた。この格好、けっこう暑いね」

「兄のお陰でいい写真がとれた。ルキアに送っておこう」

浮竹に手伝われて、わかめ大使の着ぐるみを脱いだ京楽は、散らかっていた人生ゲームとかを片付けて、浮竹に渡す。

「白哉、今日は遊んでくれてありがとう。またくる」

「兄の好きなようにしろ・・・・・」

朽木家を出ると、京楽は浮竹にキスをした。

「んう・・・・・・」

「君が、朽木隊長に大事されて、何もないとは分かっているんだけどね」

「杞憂だ」

浮竹が、京楽の髪をひっぱる。

ねだられて、もう一度キスをした。

「はっ・・・・外でこういうのって、ドキドキするな」

「もっとしてもいいんだよ」

「だめだ。キスとハグまで。仕事は全部片したんだろうな?」

「当たり前でしょ。そうじゃなきゃ、七緒ちゃんが解放してくれないよ。この前暇だから、大分片付けておいたお陰で、午前中だけの拘束ですんだ」

「こんな時に限って、日番谷隊長と松本副隊長は現世だしな」

暇で仕方ないから、白哉の元に遊びにいった。白哉がまだ隊長になる以前からの付き合いだが、昔は少しやんちゃであったが、今では死神と貴族の手本のように生きている。たまにわかめ大使とか変なとことはあるが。

「朽木隊長と浮竹ってけっこう仲いいからね~。この前の乱菊ちゃんの小説のようなことにはならないって分かってるけど、心配になる」

「だから、杞憂だって」

「とりあえず、雨乾堂に帰ろうか」

「そうだな」

二人が去ったのを確認して、白哉は恋次の名を呼んだ。

「兄は、いつまで隠れているつもりだ」

「だって、あんなシーンで出れるに出れないでしょうが!」

「兄は、この後わかめ大使の着ぐるみを着ろ」

「命令系だ!隊長、職権乱用だ!」

「それがどうした」

「あーもう、逃げた意味がねぇ」

結局、恋次もわかめ大使の着ぐるみを着せられて、その写真はルキアの元に送られ、ルキアから一護に送られ、一護から他の死神たちに送られて、恋次は笑われるのであった。





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甘味屋

ここ百年で、尸魂界も大きく変わった。現世で文明開化がおこり、それに合わせて洋風のものが多くなってきた。
技術開発局のパソコンありき、伝令神機ありき、その他もろもろ。

「人間ってすごいな」

「何を突然いってるんだい」

「いやぁ、このこたつを編み出した人はすごいと思って」

こたつが尸魂界でもでできたのはここ数年のことだ。それまでは寒さをごまかすとしたら火鉢しかなかった。雨乾堂でも火鉢は置いてある。
でも、こたつのほうが楽だし暖かい。

「おはぎを考えたのも人間だし、梅干し茶漬けを考え出したのも人間だし・・・・・」

「言い出したら、きりがないよ」

「とにかく人間は素晴らしい。と思う。多分」

「まぁ、学院ができた頃なんて現世の日本じゃ弥生時代とかすごいことになってたからね。文明開化の起こった以後の日本は凄いと思うよ。特にここ数十年は、ほんとにすごい。現世じゃエアコンなるものがあって、夏の暑い時は冷房を、冬の寒い時には暖房を・・・・・それが当たり前の時代になってるからねぇ」

「尸魂界は少し閉鎖的だからな。鎖国してい江戸時代に少し似ている気がする」

「まぁ、古きよき時代をいつまでもってわけにもいかないからね。このこたつみたいに、現世から入ってきたものも多い。伝令神機だって、携帯っていう現世のものを真似ているからね」

京楽は、自分のもっている伝令神機にメールを送る。

それは浮竹の元に届いた。

(今日の夜、抱いてもいいかな)

(却下)

すぐにそう返されて、京楽はがっくりと肩を落とした。

(甘味屋につれてってくれるなら、考えないこともない)

(今すぐ甘味屋へいこう)

京楽は、浮竹の腕をとって草履をはいて歩きだす。

「待て、京楽」

あまりにも急なものだったから、こたつの上に自分の伝令神機をおきっぱなしにしていた。

「とってくる」

肌身離さず、なるべく持っているようにと言われているので、京楽も浮竹を待った。

「またせたな」

外は寒いので少し厚めの上着を着た。

「今すぐ甘味屋へ行こう今すぐ今すぐ」

「どんだけ行きたいんだお前。そんなに俺を抱きたいのか」

「そりゃもちろん。許されるなら今すぐ押し倒して・・・・・・」

その続きを、浮竹は京楽の手で塞いで言わせなかった。

「ここだと、清音と仙太郎に聞こえる」

ちょっと頬を朱くしたところとか、かわいいと思ってその頬にキスをする。

「壬生の甘味屋まで行こう」

少し遠くになるが、味がよく、流行っているお店だった。

二人そろって、歩きだす。

いつの間にか、手を繋いでいた。

「隊長、こんにちわ」

「浮竹隊長、デートですか」

「浮竹隊長、京楽隊長と相変わらず仲いいですね」

すれ違う死神たちは、浮竹と京楽の仲を知っているので、手を繋いでいても誰も不思議に感じない。違和感のない今のほうが不自然であると、二人は気づいていない。

手を繋いで歩く仲。これが二人にとっての自然体なのだ。

寒いなと思ったら、少し早いが雪が降ってきた。

「もう冬か」

「今年は暖冬になるとかいってたけど、いまいち当たらないね。夏も冷夏だっていってたのに酷暑だったし」

「今年の夏は一段と暑かったなぁ。あまりにも暑いので水かぶってたら熱出したし」

「君、僕のいない時にそんなことしてたの!真夏でも、君は水なんかかぶっちゃだめだよ。きっと、濡れた髪のままで、そのまま寝て風邪ひくんでしょ」

「お、正解。よく分かったな」

「君の行動って、たまに規格外のこと起こすから」

「この前、元柳斎先生に給料あげてくれっていったら、飴玉もらった」

「あああ、何してるのこの子!」

はやくなんとかしなければ。でも何を?

「飴玉でごまかされたから、次の日給料あげてくれっていいに行ったら、おはぎをもらった」

「だめだ、もう手遅れだ・・・・・・」

京楽の心配事は尽きない・。

「甘味ものでつられないぞっていって、給料あげてくれっていったら、お茶をだされた。作法忘れがちだったから、思い出すのに苦労した」

浮竹が給料あげてくれと言って、甘味もので誤魔化されいるシーンを想像すると、なんか萌えてきた。

「何このかわいい生き物・・・・・・・」

「ついたぞ。座る場所あるかな」

壬生と書かれた看板と旗があった。

中に入ると人気があるだけあって、混雑していた。幸いにも並ぶほどではなかったので、店の中に入って二人であることを告げると、奥のテーブルに案内された。

「白玉餡蜜3人前」

「いきなりそんなに食べるの?」

「おなか減ってるから」

「昼餉、ちゃんと食べた?」

「食べた。甘味屋にくるとお腹がすくんだ」

どういう体の構造してるんだろうとは思ったが、口には出さない。

「お姉さん、白玉餡蜜3人前と、抹茶アイス1つ」

給仕係を呼んで、注文する。

白玉餡蜜を3人前ぺろりと平らげて、浮竹はさらに注文していく。

京楽も白玉餡蜜を注文してみたが、一人分で十分だった。

「満足した」

3人前くらいは平らげて、浮竹は言った。

「まぁ、こんなに食べればね・・・・・」

テーブルの上には、下げられた分を除いても、けっこうな空の皿があった。

「これで、夕餉も食べるんでしょ?」

「当たり前だ」

「よく食べれるね。僕なら胃もたれおこしそう」

「甘味ものは別腹だ」

ここまで完全に別腹にできるのも珍しいと思うが、口には出さない。浮竹の勘定の分も、京楽が払って甘味屋を出た。

「今日は抱いていいの?」

「1回だけなら」

京楽は、店の外でガッツポーズをとった。

ちらちらと、視線が痛い。

「ほら、帰るぞ」

「はいはい」

また手を繋いで歩きだす。

雪が本格的に降り始める前に帰るために、少し歩行の速度をあげた。その気になれば瞬歩があるが、普通に歩けるときは歩くべきだ。

「雪、つもるかな?」

「んーこの調子なら、積もる前に解けちゃいそうだね」

「残念」

吐く息が白い。繋ぎあった手は、でも暖かい。

雨乾堂まで手を繋いで帰ると、清音と仙太郎がいた。

「どうしたんだ?」

「隊長にお茶を持って行こうと思ったら・・・・・」

猫が一匹、こたつにもぐりかけていた。

「はっくしょん。だめだ、僕猫アレルギーなんだ。なんとかしてよ」

「こんなにかわいいのに」

浮竹が、雨乾堂でこたつの近くで猫をゲットして、仙太郎に渡した。

「この子、5席の子のとこの猫だ。渡しておいてあげてくれ」

「了解であります隊長!」

「ええ、隊長私は!?」

「清音は・・・・・そうだな、玉露のお茶を二人前入れてくれ。お前の出すお茶が一番うまい」

どうだみたかと、清音は仙太郎を見る。仙太郎は、燃えるように嫉妬しながらも、猫を抱いて隊舎に戻っていく。

ちらつく雪が、窓から入ってくるので、窓をしめた。

こたつの中に入って、だらだらしだす。

「隊長、お茶です」

「ああ、ありがとう・・・・・・」

暖かいお茶を飲んでいると、眠気が襲ってきた。

「少し寝るかい?僕が起きておくから、1時間くらいしたら起こしてあげるから」

「そうしてくれ・・・・」

布団をしいて、横になる。意識はすぐに落ちていった。

「浮竹、浮竹」

「んー?」

「もう一時間以上たってるよ。何度起こしてもおきないんだから・・・・・・」

「あー、もうこんな時間か。湯あみして、夕餉にするか」

今日も、平和な何もない一日が過ぎていく。

でも、それもまた幸せの形なのだ。



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双魚のお断り!

「ふむ・・・・・最後はこうでこうで・・・・・こうかな」

瀞霊廷通信に載せるための小説を、浮竹は書いていた。勧善懲悪の、一話完結型の小説だ。月に一度の連載であるが、浮竹の体調によっては休載の時もある。それにも関わらず、瀞霊廷通信の中で人気のある作品であった。

「遊びにきたよー浮竹ー」

「よし悪は京楽の息子ということにしよう」

「浮竹ー?僕、結婚してないから息子なんていないんだけど・・・・・あ、もしかしてそっちのほうの息子?」

下ネタできた京楽を、浮竹は足払いをしてこかした。

「もぎゃっ」

見事に躓いた京楽の潰れた蛙のような悲鳴を聞きながら、浮竹は原稿を完成させた。

「よし、後はこれを檜佐木副隊長に渡せばOKだ」

「浮竹、それより足どけて。僕踏んでるから」

片方の足を、京楽にのせたままだった。わざとしていたので、謝らない。京楽はよく足癖が悪いというが、幼い頃、見目のよかった浮竹は人さらいに攫われそうになったこともある。それを心配した祖父が、幼かった浮竹に護身術として、蹴りに重点を置いた格闘術を授けた。そのせいで、特に京楽には手が出るより先に足が出る。

やっと京楽から足をどかしたかと思うと、今度は京楽の背中に座った。

「ちょっと浮竹、僕は椅子じゃないよ」

「昨日の今日だぞ。よく遊びにこれたな」

1週間に2回と決めているのに、京楽は昨日浮竹に手を出した。1週間で3回目になる。約束を破ったことに、浮竹は腹を立てていた。

「だって、風呂上がりの浮竹があまりにも色っぽかったから」

「約束は破るなと、あれほど口を酸っぱく言っておいたよな?」

「うわーん、ごめんなさい。僕が悪かったよ。1週間は手を出さないから、それで勘弁してくれないかい」

「2週間だな」

「そこをなんとか1週間に」

「いいや、2週間だ」

「1週間」

「3週間のほうがいいか?」

「2週間我慢します・・・・・ガクリ」

力尽きた京楽の上からどいて、浮竹は白い半紙に書をしたためた。そこには大きな文字で2週間禁欲と書かれた。達筆だった。それを、壁に飾る。

「これを見て、反省するように」

「はい・・・・・」

項垂れた京楽は、何か荷物を持っていた。その包みをとると、おはぎが入った重箱があった。

「これで、俺の気を紛らわせようと?」

「うはっ、バレバレ・・・・」

「清音ーーー!」

「はい、隊長!」

「お茶を二人分入れてくれ。この前京楽にもった玉露のやつを」

「分かりました!」

奥の隊舎のほうにひっこんでからすぐに、いい香りをさせたお茶をいれた湯呑が2つテーブルの上に置かれた。

「はぁ。お前は昔から決め事を守らないやつだからな。もう流石になれた。この関係を数百年も保っていくのに、お前の決め事を守らないことにずっと腹を立てていると、生き辛くなるだけだ」

「まぁまぁ、僕だってなるべく守ろうとしてるよ。でもたまにはいいじゃない」

「よくない。決め事は守れ。仕事もまた溜まっているんだろう?」

「はははは・・・・・2か月分溜まってる」

よくもまぁ、2か月分も溜めれるものだと思う。浮竹でも、臥せっている時期が終わればすぐに仕事にとりかかり、溜めても半月分を1週間でこなして終わる。

「仕事もちゃんとしろ。いくら伊勢副隊長が代わりに仕事をしてるといっても、隊長でなきゃ片づけられない仕事も多いだろう」

「そうだねぇ。こういう時は日番谷隊長を見習いたくなるね」

「日番谷隊長は事務系の仕事が得意だからな。他の隊に回そうかって案件になると、よく10場番隊に書類が回される」

日番谷は仕事ができるが、副隊長に恵まれていない。日番谷の副官である松本は、真昼間から酒を飲み、よく仕事をさぼる。この位置に、七緒をいれたら、仕事ができぱきできるコンビが完成するだろう。もしも京楽の副官が松本であれば、8番隊はいつまでたっても仕事が終わらない場所になってしまう。仕事の能力もだが、一番は戦闘能力を重心に隊長と副隊長を分けているため、どうしても仕事の嫌いな死神というのも出てしまう。

護廷13隊で、一番滞りがちなのは、やはり8番隊か。10番隊は日番谷が副隊長の分まで仕事をするため、それほど滞らない。

お茶をすすってから、重箱をあける。おはぎを1つ食べて、またお茶をすすった。いつでもお茶がいれられるように、清音は急須とお湯を置いてくれていた。

「うちんとこの清音と仙太郎も、仕事というか俺の世話とかよくしてくれるけど、京楽の場合は伊勢副隊長に耳を引っ張って持っていかれるもんな」

「ああっ、この前のことは忘れて!滅茶苦茶かっこ悪いから!」

顔を手で覆う京楽が面白くて、浮竹は続ける。

「栄養ドリンク片手に、2日徹夜、だったっけ?」

「あああああ」

地獄を思い出して、京楽が泣き真似をする。

「浮竹が苛める!」

「京楽なんて、苛めたところで所詮京楽だしな」

「酷い!僕とのことは遊びだったのね!」

「おはぎ食えよ。お前の分がなくなるぞ」

「いいよ、全部食べても。まぁ、全部食べたら夕餉が食べれないだろうけど」

「いや、普通に夕餉も食うが?」

「食べすぎじゃない?ああでも、浮竹は甘いもの食べても太らないからね。まぁ、夕餉を食べても変わらないからいいか」

京楽も、重箱のおはぎに手を伸ばした。

「これ、新しくできた甘味屋のやつだけど、悪くはないね。まぁ、特に美味しいというわけでもないけど」

「俺的には、壬生の甘味屋のおはぎが好きだな」

「今度は、そこのを買ってくることにする」

おはぎを入れている重箱の一番下には、チョコ饅頭が入っていた。

「新しくでききた甘味屋の、目玉商品らしいよ」

手に取って食べてみる。

ほんのりとしたチョコの味と、白いあんこがよくあっていた。

「普通に美味いな」

「そうだね」

「これといって新鮮さがない。ちょこ饅頭なんて、他の店でも売ってるだろうし・・・・多分、新しくできたとこ、1年もしないうちに潰れるじゃないか」

行く前から、すでに潰れるを宣言された甘味屋は、本当に1年ほどして潰れることになる。

「今日は泊まっていくか?」

「うん、いいなら泊まっていく」

「夕餉まで時間があるな。先に湯あみして、花札でもやろう」

二人して背中を流しあい、髪を洗いあった。風呂上がりの浮竹は、とにかく甘ったるい香をさせていて、つい手が出したくなのだが、壁に飾られた2週間禁欲の文字を見て、とほほと呟く。

髪が長いため、昔は乾かすのに時間がかかっが、今では現世のドライヤーなるものを取り入れているせいで、長くても湯冷めすることなく髪を乾かせた。

二人して、1時間ほど花札をしただろうか。段々飽きてきた。

「少し早いが、夕餉にしよう」

「そうだね」

「清音、仙太郎!!夕餉の用意をしてくれ!」

「隊長、かしこまりました!」

「あ、インキンタムシ、あたしが先に呼ばれたのよ!ひっこんでなさいよ!」

「なんだとこのクソゴリラ女が!!」

「ほら、二人とも仲良くしなさい。京楽がいるんだぞ」

清音と仙太郎は言い合いをしながらも、それぞれ浮竹と京楽の分の夕餉を持ってきてくれた。

「今日はちらし寿司か。お、うなぎがのってるな」

昔は高級魚として、貴族くらいしか口にできなかったが、養殖が始まって一般隊士や、流魂街の民もある程度は口にできるほどにまで、値段が下がっていた。それでも、いちおう高級魚なので、一般隊士が口にするのも年に数度というかんじだろうか。13番隊の朝餉、昼餉、夕餉は、基本、味噌汁、ごはん、つけもの、焼魚というなんとも質素なものばかりがでていたのを、京楽が金を出して変えさせた。浮竹にもっと美味しいものを食べてほしいからだ。

ちらし寿司に乗っているうなぎは、天然もので脂がよく乗っていて旨かった。

「んー美味しいね」

同じくらい金をかけているのに、8番隊と13番隊ではこんなにも食べるものが違う。8番隊は上級貴族の京楽のために、こった料理が出されるが、冷たくておいしさも半減してしまう。
13番隊のご飯は、夕餉の時間に合わせるように調理されて、ご飯でさえ湯気がたつような温かさで、どこか家庭的で美味しかった。

「僕、13番隊に移動しようかな」

「やめろ、お前のような酒ばっかり飲んで仕事もしない、ごくつぶしを雇用する気はないぞ!」

「酷い!僕とのことは遊びだったのね!」

「お前、最近その台詞多いな」

「あれ、そう?」

「うん」

「うーん、マンネリ化してきたかな」

「どうでもいいが、デザートの梨は食べないのか?」

「いいよ、君にあげる」

浮竹の夕餉は、京楽のものの3分の2しか量がなかった。食が細いのだが、デザートや甘味物といったスィーツ系は別腹らしい。よくこんな量が食えるなというだけ食う。

梨をもらって、幾分ご機嫌な浮竹の白い髪を手に取って、口づける。禁欲生活を強いられているので、できるのはキスとハグまで。それ以上したら、浮竹の怒りを買う。

「はぁ・・・・院生時代はよかったなぁ」

「何が」

「いや、毎日のように体つなげれたし」

真っ赤になった浮竹が、京楽の脛を蹴った。

「あいた!」

「デリカシーのないやつだな!禁欲3週間にするぞ」

「うわああああ、ごめんってば!」

「今度の双魚のお断りは、貞操を狙ってきた悪を退治する話にしよう」

「え、それもしかして僕を敵に見立てて書くの?」

「そうだ。何か文句でもあるか」

「ありまくりだよ!僕はそこまで無節操じゃないよ」

「似たようなもんだろ」

浮竹に言わせれば、京楽は性欲の権化だ。週2でもきついのに、この年で週3にするなど、浮竹にとっては無理があった。
夜は、泊まることになっていた。布団は2組あったが、結局ほだされて同じ布団で寝た。京楽の腕の中で寝ることに慣れすぎてしまって、それが禁欲生活を厳しくさせているのだと、本人は気づかない。

「あー。これって生殺しっていうんだよね」

腕の中で、いい匂いをさせてすうすうと眠る麗人を抱き締めて、京楽もいつの間にか意識は闇の中へ落ちて行った。



「よし、できた」

「何が」

「昨日書いた双魚のお断り!に今日落という無節操なエロ好きの敵をだしてみた」

「今日落・・・・京楽。響き一緒じゃないか!」

「いいだろう、そのくらい」

「絶対、その原稿の敵、僕だって一部の読者というか、死神は気づくんじゃないの」

「別に知られても痛くもかゆくもない」

「僕が痛いよ!やっぱり、僕とのことは遊びだったのね」

「さて、入稿してこよう」

「無視とかひどい!」

泣き真似をするが、浮竹が歩き出すその後を、あひるのひなのようについていく。檜佐木のところまでくると、京楽は相変わらず、浮竹の後ろをついて歩く。

「あれ何っすか、浮竹隊長」

「ああ、新種の生物、キョウラークだ」

「聞こえてるからね!?」

「キョウラークは、人語を理解できる」

「どういう設定!?」

「さて、帰るか。いくぞ、キョウラーク」

「あ、待ってよ」

ぱたぱたと、駆け足で浮竹についていく。その姿が、恋人同士というより夫婦に見えて、檜佐木は溜息をつくのであった。




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