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院生時代の部屋7

寮の備え付けの風呂が直った。

京楽の視線を気にして公共浴場で入る必要がなくなって、浮竹は安堵した。

先に京楽が風呂に入った。その後に、浮竹が風呂に入った。

「僕、もう一度風呂に入るね。(*´Д`)ハァハァ」

「まて。何をするつもりだ」

京楽の肩に手をかける。

「そりゃもちろん、浮竹の入ったお湯できゃっきゃして、あそこの毛がぬけてないかを・・・」

バキッ。

浮竹は、顔色一つ変えずに京楽を殴った。

「この変態が!」

「愛が激しい!」

京楽は、殴られたことにさえ嬉しさを感じていた。

いつもの変態京楽の顔から、ふと本気の顔になる。

「浮竹、好きだよ」

京楽が耳元でそう囁いてきた。

風呂上がりの浮竹からは、石鹸とシャンプーのいい匂いと、生来からもつ甘い花の香が混ざって、なんとも甘ったるい香を漂わせていた。

上気した頬に、潤んだ瞳で見つめられる。

かなりエロい。

「浮竹・・・」

抱きしめると、ぴくりと浮竹が反応した。壁においつめて、膝で膝をわって、深く口づける。

「んっ・・・・」

甘い声をあげられて、京楽も歯止めができなかった。服の中に手を侵入させると、浮竹が頭突きしてきた。

「もがっ!」

思わぬ反撃を受けて、京楽は鼻血を出した。

「このエロ魔人がっ!」

ぜーぜーと荒く呼吸を繰り返して、浮竹は京楽をテープでぐるぐる巻きにした。

「今日は一晩、その恰好でいろ!」

「そんなぁ。いい雰囲気でてじゃない。もう1回やり直させて」

さっきの浮竹の、感じていたエロい顔とエロい体を思い出して、顔は真剣なのだが、ドクドクと鼻血を流していた。

「お前にそんなことさせたら、俺の貞操が奪われる!」

「優しくするよ」

「そういう問題じゃない!」

テープでぐるぐる巻きしているのに、尺取虫のように動いてこっちに近寄ってくる。

「それとも、こういう緊縛プレイが好きなの?」

裸足の足を舐められた。

ぐるぐる巻きにしたが、その気になれば京楽は鬼道か何かで自由になれる。

それをしないということは、本気で強姦のような真似はしないという証にもなる。

「このテープから中に入ってくるな。約束するなら、そのぐるぐる巻きを解いてやる」

「約束するよ」

鼻血はもう止まっていた。

「本当だな?信じるぞ」

「うん」

浮竹は、京楽からテープをはがした。

もじゃもじゃの腕の毛とかが巻き込まれていて、ベリッとはがした時に抜けて、かなり痛そうだった。

「キス、させて?」

ベッドの周りにテープをはっていた。今浮竹がいるのは、テープの外。テープの内側に入れば、京楽は手を出してこない。

京楽とのキスは好きだった。

「キスだけだから」

「え?」

京楽を京楽のベッドの上に押し倒す。馬乗りになって、浮竹は自分からキスをしてきた。

「うきた・・・・・・」

舌が入ってくる。

京楽は、微笑んで浮竹を抱き寄せた。

そして、その手練手管で花魁を落としてきたように、優しく優しく浮竹に接する。

「んあっ」

息継ぎの間に、浮竹が甘い声を出す。

もっと聞きたくて、何度も角度をかえて深く口づけした。

「浮竹、愛してる・・・・・・・」

「俺は、普通だ」:

「いやん、そこは嘘でも俺もっていってよ」

「言ったが最後、お前に美味しくいただかれて貞操が奪われる」

「ちぇっ」

びくんと、浮竹が朱くなった。

京楽の硬くなったものが、腰に当たっていた。

「これ、浮竹のせいだよ?君があんまりにもかわいいから」

「どうしろと?」

「簡単、くわえて・・・・・」

ドカッ。

京楽の鳩尾に、浮竹の蹴りが決まった。

けほけほとむせてから、京楽は黒曜石の瞳で浮竹を見た。

「冗談なのに」

「お前が言うと、冗談に聞こえない」

「まぁいいや。風呂場いってくる」

「?何をするんだ」

「そりゃ、抜くに決まってるでしょ。このままだとつらいからね」

「まさか俺を」

「正解。おかずにする」

「京楽!」

真っ赤になった浮竹の悲鳴に似た声は、京楽の笑い声にかき消されたのだった。

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院生時代の部屋6

今日は祝日だ。

授業がなくて、他にすることもなくて浮竹はだらだらしていた。

課題は全て片付けた。予習と復習も済んだ。

することがなくて、ベッドでゴロゴロ転がっていた。文字通り、転がるのだ。ベッドから落ちそうな危ういラインまで転がると、反対方向に転がった。

浮竹が、意味もなくその行動をするのを、京楽が見ていた。

「かわいい・・・・・・・」

こんなかわいい生き物、僕は知らない。

「浮竹、暇なら僕と愛を築こう!」

そう言ってきた、京楽の顔を裸足で蹴った。

「おぶ・・・・」

もろに入って、京楽は鼻血を出して倒れた。、

「・・・・・・・実験でもするか」

京楽を実験台に、習ったばかりの回道を試してみる。京楽の鼻血がより一層出てきた。

「細胞を活性化させ、自己治癒能力を・・・・・・」

高めれば高めるだけ、京楽は鼻血をだした。

「京楽、どうなってるんだお前?」

回道で、意識のはざまを彷徨っていた京楽は、誘ってくる浮竹の夢を見て鼻血を出した。浮竹が回道を施すほどに、夢の中の浮竹は乱れて喘いで。

「やめた」

板張りの床が、鼻血の海になりそうだ。

浮竹は、京楽を放置して食堂に昼食を食べに出かけた。

今日は昼から焼肉定食だった。少し食べただけで胸やけを覚え、この残りどうしようと思っているところ、鼻血を出して倒れていたはずの京楽がやってきた。

「お前、なんで俺が食堂にいるってわかったんだ」

「浮竹の匂いがしたから」

アウトー。

浮竹は、京楽の足を蹴った。

「あいた!いや、嘘じゃないよ?君の甘い花の香をたどってきたんだ」

浮竹は、自分の匂いを嗅いでみる。確かに、甘い花の香がした。

それは、浮竹がまだ赤子の時に、両親が花の神に捧げたからだ。病弱な我が子が、少しでも長生きしますようにと。
愛され祝福を受けるようになってから、甘い花の香を肌や髪からにおわせるようになっていた。

「京楽、この残り食ってくれ」

「ええ。これだけしか食べてないの?」

「昼から焼肉定食とか、ちょっと拷問ぽい」

浮竹は、食が細い。元々細いのに、あまり食べないから筋肉もつかないのだ。脂肪など、あるのかさえ疑わしい。

京楽は、浮竹の残した焼肉定食を食べた。

上流貴族の京楽が、残飯係と知れたら、皆不思議な顔をするだろう。

廓で派手に女遊びをして、花魁を買うような京楽が、御馳走ではなく、浮竹の食べ残しを食べるのだ。それはもう、学院に入って友人になった頃からの関係であった。

浮竹は、食事を残すがそれがとても嫌なのだ。せっかく作ってくれた人に悪くて。食堂は安いっけどボリュームがって、そのボリュームの多さに浮竹は辟易となっていた。

でも、浮竹のような下級貴族の身分では、他に食事をできる場所がない。

飲み屋や料亭にいくこともあるが、全部京楽のおごりだった。

「ちょっと待ってて」

京楽は、浮竹の食べ残しを全部食べると、厨房で何かをもらってきた。

「ほら、桃をカットしたやつ。これなら、喉を通るでしょ?」

氷水でよく冷やされていた桃は、おいしかった。もっと食べたいという顔をしていると、また厨房のほうにいって、桃をもってきてくれた。

「僕がむいてあげるから・・・・・」

向かれている桃の、果汁が落ちるのがもったいなくて舐めとると、京楽がごくりと喉をならした。

「なんだ?」

「いや、エロいなと思って・・・あいた!」

机の下の足を蹴ると、京楽はカットした桃を浮竹の口元にもっていった。

パクリと食べると、京楽は嬉しそうだった。

「君のために買っておいてもらってよかったよ」

「まさか。お前の金で?」

「そうだよ」

あっけらかんとする京楽に、浮竹はこの上流貴族のぼんぼんめと思う。

金使いの粗さを、一度たしなめないといけないかもしれない。

でも、デザート類がほとんどでない食堂で、甘い果物を口にできるのは嬉しかった。

親友以上恋人未満。

その危うい関係が、今は心地よい。

求められるわけでも、求めるのでもなく。

ただ、傍にいるだけ。

京楽から桃を与えられた浮竹は、ぺろりと果樹にまみれた唇を舐めた。

「・・・・・・・・・」

「なんだ?」

「勃起した」

「死ね!」

浮竹は、京楽の鳩尾に蹴りを入れた。京楽はしばらく痛がっていたが、反応してしまったあれを抜きに、寮の部屋の風呂に入るのであった。




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院生時代の部屋5

夏祭りに出かけた。

浮竹は、数人の友人と京楽と一緒に夏祭りに出かけた。浴衣を着て行ったのだが、みんな少し恥ずかしそうにこっちを見てくる。

なんだろう?

そう思って、友人の一人に聞くと、

「気づいてないのか?首のとこ、キスマークあるぞ」

ぶちっ。

何かが切れる音がした。

京楽と恋人というわけではない。まだ肌を重ね合わせたことがないのだから。だから、京楽がわざとつけたことになる。

「京楽~~~~~~~~!」

「わーーーーごめんよーーー」

逃げる京楽をどこまで追いかけまわした。数回どついて、気が晴れた浮竹は、京楽も混ぜて夏祭りを楽しんだ。

林檎飴林檎飴林檎飴。

他に選択肢はないのかってくらい、林檎飴を食べる浮竹を、友人たちは心配そうに見ていた。

京楽も含めた友人たちは、たこ焼き、焼きそば、フランクフルト、イカ焼き・・・いろんな食べ物を食べているのに、浮竹だけは林檎飴を食べるのだ。

他の食べ物を勧めてみると、綿あめは食べた。

見ているだけ胸やけを起こしそうで、友人その1は、冷えた酒を買って飲みだした。

すでに成人はしているのだから、みんなわらわらと酒を飲みだす。その中で、浮竹だけがオレンジジュースを飲んでいた。

少し長くなった髪を結い上げて、柘榴の髪留めてとめている。

「浮竹・・・・その、今日は一段と色っぽいな」

「浮竹、京楽煽ってないだろうな?けっこうやべーぞ、お前の浴衣姿」

「浮竹、貞操の危機を感じたら、この前習った鬼道の白雷かまして逃げろ!」

友人たちは心配してくれたり、色っぽいといってきたりだが、その浮竹を見る京楽は、もうこの姿を一生目に焼き付けようとするように、浮竹ばかり映していた。

「寒気がする・・・」

じーーーーーー。

じーーーーーーーーーーーー。

京楽は、ひたすら浮竹を見ていた。柘榴の髪飾りは、この前の誕生日プレゼントにあげたものだった。高価なものを贈っても受け取ってくれないので、色ガラスでできた柘榴の髪飾りをあげた。

じーーーーーー。

じーーーーーーーーーーー。

「ああ、もう、鬱陶しいな。言いたいことがあるならはっきり言え」

「今すぐこの場で押し倒して犯したい」

アウトー。

友人たちは思った。

浮竹は、顔を真っ赤にして、京楽の鳩尾に蹴りを決めていた。

「うぐぐぐ・・・・今日の浮竹の姿は一段と萌える・・・・・・(*´Д`)ハァハァ」

「ああもう、京楽だめだわこりゃ」

「浮竹にも責任はあるんだぞ。無防備すぎるんじゃないのか。こんな変態の前でで浴衣とか・・・・・・・・」

「いや、ここまで酷くなるとは思っていなかった・・・・すまん」

浮竹は、変質者になりつつある京楽のことも含めて謝罪した。

「まぁまぁ。ここは気分を変えて金魚すくいでもしようぜ。あと輪投げとか」

浮竹は、すぐにポイを破ってしまった。

「金魚・・・・・」

金魚が欲しかった。

「僕に任せなさい」

京楽は、30匹はすくっただろうか。

「すごいな京楽。なんて無駄な才能だろう!」

友人たちが笑いあう。

金魚がほしい。

そういえなくて、もう一度金魚すくいに挑戦しようか迷っていると、無言で京楽が2匹の金魚が入った袋を渡してきた。

「ありがとう・・・・・・」

浮竹にしては珍しく、素直に受け取った。

寮の部屋で飼っていた金魚が、先週死んでしまったのだ。

色硝子をいれた浴槽の中で泳ぐ金魚は綺麗だった。見ていると、心が和む。

その後、花火をみて、思い思いにはしゃいで解散となった。寮で寝泊まりしているのは京楽と浮竹だけなので、二人で手を繋いで、帰路につこうとする。

この年一番の、大きな花火が上がった。

「綺麗だな・・・」

「花火を映す、翡翠の君の瞳のほうが綺麗だよ」

恥ずかしげもなく言われる言葉に、頬が赤らんだ。

「このばか・・・・・」

「今年も、夏祭り楽しかったね。また来年もこよう」

「ああ・・・・・・・」


親友以上恋人未満。

その関係は、まだまだ続きそうだった。

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院生時代の部屋4

友達の輪に囲まれて、談笑していた。

その輪の中には京楽もいて、他愛のないことで笑いあっていた。

昼休みが終わるころ、浮竹は京楽の肩の上にひょいっと乗せられた。

「え?」

驚いたのは、浮竹だった。

「浮竹君?京楽君?」

何事だろうかと心配する、女子の友人の輪をかきわけて、京楽は進む。

「やっぱできてるんだよ」

「いや、できてないだろ」

「京楽の変態っぷりは最近目にあまるからなぁ」

「浮竹も、嫌なら嫌って言えばいいのに」

そんな男子の友達からの声に、京楽は顔色一つ変えない。背の高い京楽は、190センチ以上はあって、入口を出入りする時よく頭をぶつけていた。

今回はそんなこともなく、入口を屈んで肩に乗せた浮竹がぶつからないように配慮してくれた。

「はっ・・・・・・・」

今頃になって、苦しくなりだした。

熱を出していたのだ。でも、顔色一つ変えない浮竹が熱があるなんて、友達は誰も気づかない。

何かいって、抜け出そうか迷っていたところを、京楽に見破られて肩の上だ。

横抱きにされることもあるが、今日は肩の上だった。

女生徒が数人いたせいだ。

男子生徒だけなら、横抱きにしている。

そんな細かな配慮が、浮竹の心を揺さぶる。

「寮の部屋に戻るよ」

「待ってくれ、まだ授業が・・・・・」

「こんなに熱だして、授業の内容が頭に入るとでも思っているの?」

「それは・・・・でも、昼に解熱剤は飲んだから」

「安静にしてなきゃ、効果も薄いでしょ」

どんどん教室を遠ざかっていく。

「荷物が・・・・・」

「僕が後で届けるから」

「宿題が・・・・・」

「僕がやっといてあげるから」

「医務室は?」

「今日はベッドがいっぱいなの。だから、寮の自室」

最近風邪が流行っていて、他に発熱や悪寒を訴える生徒で、医務室のベッドは埋まっていた。

寮の自室にくると、どさりと少し乱暴気味に落とされた。

「あのね、君さ」

「分かっている。なぜ我慢するんだ、だろ?」

「浮竹・・・・・・」

京楽が、浮竹の頭を撫でた。

「俺は、あまり病弱だと思われなくないんだ。ただの強がりかもしれないが、みんなの輪に普通に混じっていたい。ただそれだけなんだ・・・・・・」

「肺の病で、吐血してもかい?」

「その時は、流石に大人しくするが・・・・少しくらいの発熱なら、慣れてるから」

「でも悪化させてしまうでしょ?」

京楽の言う通りだった。

熱があるのに無理をして授業をうけた次の日は、高熱をだして数日寝込む。

それを知っているから、浮竹を攫うように教室から連れ出したのだ。

「君は、頑張り過ぎなの。体が疲れたってサインを出したら、素直に休みなさい」

すでに、浮竹のはったテープの内側にいる。

「じゃあ、僕は戻るから・・・・・」

その手を、浮竹が掴んだ。

「傍にいてくれないか」

京楽は目を見開く。黒曜石の瞳いっぱいに、翡翠の瞳が映っていた。

京楽は、浮竹を抱き締めた。いつもは嫌がる浮竹が大人しい。その頭を撫でて、ベッドに横たえてから、唇に振れるだけのキスをした。

そして、水でしぼったタオルを浮竹の額に乗せて、浮竹が眠るまでずっと傍にいた。

「起きたかい?」

「今何時だ?」

「夜の8時」

「食堂しまってるじゃないか!夕飯食べ損ねた・・・・」

おなかがぐーっとなった。

それに苦笑して、京楽は買ってきたお弁当を見せた。

「熱ちゃんと下がってるみたいだね。お弁当食べれそうかい?」

唐揚げ弁当だった。

「食べる。その前に・・・・・」

「どうしたの?」

「ありがとう。傍にいてくれて」

その言葉に、どういたしましてと答えれば好印象になるのだが、京楽はだらしない顔をして浮竹の頭を撫でた。

「かわいい浮竹がいっぱい見れたから、僕は満足だよ。珍しく、酒なしで甘えてくれたし」

でれでれしていた。

「はぁ・・・・・・」

こんな京楽だから、付き合うというふんぎりがつかないだろうなと、浮竹は思うのだった。

友達以上、恋人未満。

その関係は、当分の間続きそうだった。


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院生時代の部屋3

朝起きると、京楽の顔があった。

「またか」

別々のベッドで眠ったはずなのに、京楽は浮竹のベッドに忍びこんで、一緒に眠るのだ。

浮竹が起きていると怒られるので、浮竹が寝てからベッドに忍び込んでくる。

まぁ、一緒のベッドで眠るだけなので、害があるというわけではないが、まだ残暑の残るこの季節には暑苦しかった。

「起きろ、京楽!」

京楽をベッドから蹴り飛ばす。

「あれ~?もう朝かい」

「そうだ。何度も言ってるだろう、勝手に人のベッドに侵入するのは止めろ!」

「いいじゃない。一緒に眠るくらい」

「俺たちは恋人同士じゃないんだぞ!親友同士にしては度がこしているだろう!」

「じゃあ、今すぐ恋人同士になろう!」

むちゅーっと抱き寄ってくる京楽が鬱陶しくて、また蹴りを入れた。

「足癖の悪い子だねぇ」

足首を掴まれる。そのまま、足首にキスをされて、浮竹はまた京楽を蹴った。

「いいか、このテープから内側に入ってくるな。お前のテリトリーは、このテープの外だ!」

毛を逆立てた猫みたいに威嚇してくる浮竹がかわいくて、うんうんと話は聞いているのだが、本当に理解しているのか謎だ。

浮竹は、学校があるので荷物を揃えて、寮の部屋を出た。
その後ろを、京楽が一定の距離をあけながらついてくる。

「うっとうしいな、お前は!」

「え~。いいじゃない、別に」

「もういい。普通に横に並んで歩け」

「わーい(*´▽`*)」

本当に、それだけで幸せそうな顔をする。

朝はぎりぎりまで寝ているせいで、朝食をとらないことが多々あった。

今日も、朝食を取り損ねた。

食堂で朝食をとったのは、何か月前だろう?

「お、浮竹、京楽」

友人の一人が、浮竹と京楽を見て近寄ってくる。

「あ。俺別に用があるんだった。またな!」

友人は、そう言って去って行った。

ちらりと京楽の方を見ると、憤怒の顔をしていた。

「お前な・・・・・友人に嫉妬するのやめろ」

「だって、浮竹と二人きりでいたいんだもん」

「はぁ・・・・・・・」

「よ、浮竹-------------ああ、俺今日日直だった」

「よう、浮竹----------------あ、忘れ物!」

「おはよう浮竹君----------あたし、トイレ」

「おはよう浮竹-------------早めに教室に戻らなくちゃ」

友人が来るたびに、威嚇する京楽。般若の面を被った顔をしていた。

浮竹は、肩まである髪を揺らして、まだ少し身長差のある京楽に背伸びして、噛みつくようなキスをした。

「これで勘弁しろ。友人たちと会話ができない」

京楽は、般若の面を脱いで、でろでろしだした。

そんな京楽を見て、友人たちは今日も京楽はやべぇとか言っていた。

「はぁ・・・・・」

席につく。運がいいのか悪いのか、京楽は隣の席。

ずっとこっちを見てくる。

本当に、こんな俺のどこがいいのかわからない。容姿は整っているほうだが、同じ男だ。しかも病弱で肺の病をもち、下級貴族の貧乏人。

上級貴族の考えることは分からないと、浮竹はため息をつく。

京楽は、別に上級貴族だから浮竹を好きなわけではない。本人に言わせると、運命的な出会いなのだそうだ。

休憩時間になって、浮竹を中心に、友達の輪ができる。初めの頃は般若の面をかぶっていたが、浮竹が嫌がるので、最近では朝にだけ般若の面を被るようになっていた。

「ここ教えて、浮竹君」

「俺も教えてくれ」

「俺も・・・・・ひっ」

何故か、京楽にだけは分かるのだ。浮竹に邪な思いで近づくやつが。

今日も、そんな一人を追い払った。無言で。京楽バリアーとでもいうのはっている。

そんな京楽の気苦労も知らず、浮竹は今日も無邪気に笑顔をふりまく。無防備に。

浮竹は浮竹で、京楽の独占欲に辟易とする。

馬があっているのかあっていないのか分からぬ二人であった。

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500年に一度の世界


やがて、明後日になった。

ボーンドラゴン退治の日がきて、マリアードなどは特にクナイと手裏剣、刀の手入れに慎重になっていた。

「マリアード、どうせユリエスとカリンが倒すんだから、そんなに武器点検しなくていいんじゃないの?」

そんなアルザに、マリア―ドは怒ってアルザの頭にクナイを刺した。

「ぎゃああああ」

痛みに転げまわるアルザに溜息を零す。

「私たちは金のカッシーニャ。4人で一つのパーティーですわ。たとえ少ししか戦力にならなくとも、仲間として力を合わせるのは必須ですわ。駄犬のあなたに言ってもむだでしょうけれど」

駄犬のアルザも、一応は自分の魔剣の手入れを昨日のうちにしておいた。

聖属性付与(ホーリーエンチャント)の魔法は、魔法が苦手なアルザでも使用可能が数少ない魔法の一つだった。

「用意はいいか?集合だ」

ユリエスが皆に声をかける。

「馬車では時間がかかりすぎる。カッシーニャになるから、全員その背にのれ。

「ええっ!?」

「まじですの、ユリエス」

「振り落とされないだろうな?」

心配する3人を置いて、ユリエスは水色の瞳を真紅に輝かせた。

ふしゅるるるるる。

目の前に3メートルはあろうかという、蒼銀のフェンリルが現れた。カッシーニャだ。

まずは、カリンがその背によじ登った。次にマリアードとアルザが。

アルザはすでに落っこちないかと小便をちびりそうになっていた。

「行くぞ!」

真紅の瞳を水色に変えて、ユリエスは空を翔けだす。そのスピードは速く、3人とも振り落とされないように必死だった。

「空のエアリアル!」

(どうした)

「ユリエスの周りに空の結界を!振り落とされても大丈夫なように!」

(承知した)

本当は、風のシルフに頼もうかと思ったが、風の結界よりも空の結界のほうが強そうで。
万が一振り落とされても、風の結界なら緩やかに落ちていくが、空の結界の場合落ちてもユリエスの背にも戻る。

空のエアリアルは、空であれば空間を捻じ曲げることができた。

「はぁ、安心した・・・」

アルザは、振り落とされそうになっていたので、空の結界に守られ、吹き抜ける風さえ感じなくなって、安堵していた。

空を翔けて、1時間くらいしただろうか。

ボーンドラゴンのテリトリーに入った。闇の空気が濃くなる。

「ここからは、歩いていくぞ」

森の開けた場所にユリエスは音もなく、着地した。

カリン、アルザ、マリアードの順番に大地に降りる。

ボーンドラゴンは飛空する。ユリエスは、人の姿に戻ることはなかった。

やがて、気配を察知したボーンドラゴンが現れた。動く骨のドラゴンだ。20メートルはあるだろうか。巨大で、闇のブレスをはいてきた。

「グリーンウッド、緑の天蓋を!」

カリンが命じる。

(緑の天蓋よ、黒き聖女を守れ)

ざあああと、構築された植物の盾が、闇のブレスを受ける。受けた場所から、緑はみるみるしおれ、枯れていった。

「気をつけろ。生気を奪うぞ」

ユリエスは、カッシーニャのままボーンドラゴンの足に食らいついた。

ボキボキメキメキ。音をたてて、ボーンドラゴンの右足が砕かれる。

「まずい」

骨を飲み込むことなく、ユリエスは吐き出した。

これが生前のダークドラゴンであれは、食いちぎてって肉を食らっていたであろう。

「わたくしも行きますわよ!全聖属性付与(ホーリーエンチャントオール!)」

クナイや手裏剣、刀に聖属性が付与される。

「キシャアアアアアアアア」

ボーンドラゴンが、かみ砕かれた右足を高速再生させながら吠えた。

マリアードは構わずに、その巨体に切りかかる。

聖なる力に触れた部分が粉々に砕かれていく。再生はしなかった。

「聖属性がききますわよ!」

「よっしゃ!聖属性付与(ホーリーエンチャント)!」

アルザが愛刀である魔剣に聖属性を付与させて、ボーンドラゴンに切りかかった。

「シャオオオオオオオオオオオ!」

ボーンドラゴンは巨大な尻尾で薙ぎ払おうとする。その尻尾に、ユリエスは嚙みついた。

「ブレスを食らえ!」

太陽の精霊ドラゴンであるカッシーニャのブレスは、火属性だ。アンデット系に効果はあるが、ボーンドラゴンは何千℃というブレスに、骨をきしませるだけで、炎は効果がなかった。

「ちっ」

アルザが、ボーンドラゴンの頭蓋骨に剣を突き立てる。ボロボロになって崩れていく頭蓋骨は、けれど高速再生した。

「なんで!聖属性に弱いんじゃなかったのか!」

「この骨ドラゴン、学習してやがる。聖属性に対抗する古代魔法をまとってやがる」

ユリエスがその体にアルザを乗せて、空を翔ける。

「どこかに核があるはずだ。アルザ、探知できるか?」

ユリエスの体に必死にしがみつきながら、アルザは翠の目を瞬かせた。

「感知の魔法は僕の得意技だからね。ちょっと時間かかるよ」

「構わない。カリンとマリア―ドに後は任せる。俺も魔法で攻撃するが」

マリア―ドは、クナイや手裏剣で骨に攻撃していた。再生されても何度も攻撃すると、神聖魔法をレジストしていた古代魔法がその部分からはぎとられていく。

「いきますわよ!」

マリアードは、クナイでボーンドラゴンの右後ろ足を切り飛ばした。

「アイスティア、凍らせて!」

(わかったのじゃ)

氷の精霊アイスティアを召喚し、切り離された右足を凍らせると、再生はおきなかった。

「世界よ凍れ!我が息吹は神の言葉!凍れる獅子の鬣よ!全てを凍てつかせ、世界よ回れ!
氷魔世界(アイシクルワールド)!」

ユリエスの放った氷の魔法が、ボーンドラゴンを大地に縫い付ける。

「はああああ!」

マリアードが、凍って動けないポーンドラゴンに攻撃する。

「ジュアアアアアアアア」

ボーンドラゴンは闇のブレスを吐いた。

「夜のパンデモニウム!闇の吐息を夜の世界に閉じ込めて!」

(夜よ踊れ。世界の息吹をこの夜の帝国に)

パンデモニウムは、アルビノのロードヴァンパイアだ、眼鏡をかけている。カリンの隣に降臨すると、夜の空間にボーンドラゴンのブレスを封じた。

「ボーンドラゴンね・・・・・」

「ジルフェ!?」

召喚してもいないのに、風の上位精霊ジルフェが降臨した。水色の波打つ髪風に泳がせている。ユリエスも美しいが、ジルフェは精霊だけに人外の美しさをもっていた。

「風刃(エアリアルエッジ)!」

真空を放ち、ボーンゴーレムの骨をスライスしていく。

「黒羽風(フェザースラッシュ)」

ジルフェは、背中にある6枚の漆黒の翼を羽ばたかせた。黒い羽の雨が、ボーンドラゴンの体中に降り注ぐ。

触れた場所から、粉々になってくだけていくが、高速再生が止まらない。

「キシャアアアアアアア!」

「古代語でうるさいんだよ。再生するし、もう知らん」

そう言って、ジルフェは風をまとわせて消えてしまった。

「ちょ、いきなり現れていきなり消えないで!」

すでにジルフェは去った後だった。

「もう一撃!」

マリアードは、ボーンドラゴンの左足を切り離した。骨と骨が分離して、ばらばらになる。

「カリン!」

マリアードが、カリンを庇った。

押し倒された。すぐ上を、ボーンドラゴンの尖った骨が飛んでいく。

「ユリエス、どうにかできる!?」

すでにドラゴンの形を留めることをやめた骨たちは、意思をもってユリエスとその背にいるアルザ、カリン、マリアードに一撃を加えようとする。

「骨のスカルニアボーンを呼べ!」

ユリエスが叫ぶ。

「あ、そっか!」

魔物ドラゴン、骨のスカルニアボーンを呼ぶと、スカルニアボーンは宙を飛ぶ骨を一か所に集めて、圧力をかけた。

「ギュルワアアアアア!」

「ボーンゴーレムの核は、右目だ!」

ユリエスの背の上で、ずっと探知の魔法で核を探っていたアルザが叫ぶ。

「スカルニアボーン、そのまま拘束を!」

(了解した)

「最後はお前が決めろ、マリアード!」

マリアードはクナイを手に大地を走る。ドラゴンの形を取り出したボーンドラゴンの、空洞の右目を貫いた。

「ギャオオオオオオオオオオオオ!!!!!」

狂ったように、暴れだすボーンゴーレムは、そこら中に闇のブレスを吐いた。

そのブレスを浴びると、生命力を取られる。

ユリエスが、カッシーニャの体でカリンとマリアードをくわえて、天高く走る。

「空のエアリアル!」

カリンは、エアリアルを召喚し、その竜の形をした背の上に、カリン、アルザ、マリアードが乗った。

ユリエスは、天を走る。そして、蒼銀の弾丸となって、大地を貫いた。

ボーンドラゴンは、核を失いバラバラになりかけていたが、まだ命があった。そこに、風の魔法をまとわせたユリエスが、その3メートルはあろう巨体でつっこみ、その爪と牙でボーンドラゴンを粉々にしていく。

「圧力(プレッシャー)!」

念のため、骨の破片を粉々に砕いていく。

後に残ったのは、粉々の白い粉になった、ボーンゴーレムの成れの果てだった。

「退治した証に骨の一部もっていく約束だったけど・・・・・白い粉になってしまった」

ユリエスが、フェンリルの姿から人間の姿に戻って、困った顔をしていた。

「過剰殺傷ってやつー?」

アルザが、白い粉になったボーンゴーレムの粉で遊んでいた。

「これ・・・・魔力やどってるよ」

カリンが、白い粉を手に取る。多分、水に溶かせると魔水になる。色々と便利に使えるかも」

魔水は、その通り水に魔力が宿ったものだ。精霊化学の発達したこの世界での燃料の一部となる。

「夜のパンデモニム。夜の空間にこの白い粉を収納して」

(アイテム収集用に、あるのではないのだがな・・・・・・)

「そんな硬いこと言わずに」

夜のパンデモニウムは、粉で遊んでいたアルザも収納した。

「ああん、出してえええ」

泣き叫ぶアルザ。

「出してあげて」

ぺっと、空間からアルザだけが吐き出された。

「いてて」

「これだけの魔水の元があれば、けっこう稼げますわね。ギルドには核を提出して、あとのこの白い粉は報奨の一部としてもらうというのはどうかしら?」

マリアードの言葉に、みんな頷く。

SSランクのモンスターハンター、通称「金のカッシーニャ」には、命の危険があるほどの魔物ではなかったが、それなりに苦戦はした。

「金のカッシーニャ」は、こうして冒険ギルドでSSランクを保ちながら、魔物を駆逐していく。
500年い一度の成熟期を迎えたサーラの世界は、鼓動を高鳴りだす。

魔物の活性化をとめるために、また「金のカッシーニャ」の面子はモンスター退治に追われるのであった。




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500年に一度の世界

カリンはまだ15歳、ユリエスは16歳だったが、カリンをサーラの世界に迎えに行くまでに誕生日がきて、17歳になっていた。

冒険者ギルドにカリン、ユリエスだけでなくアルザ、マリアードも所属していた。

イブル・イフリエータを退治したので、ランクはSS。

最高ランクだった。

今日も、ユリエスは生活のためにモンスター退治をしていた。まだ銀行の口座に、王族とて名を連ねていたときにふりこまれた金があったが、できるだけ自分たちで金を稼ぎ、その金で生きていきたかった。

今回の討伐の対象は、ボーンドラゴン。元々SS級のダークドラゴンが死んで、その後アンデット化したのだ。

何度かAランクの冒険者が退治にでかけたが、大けがをして帰ってくるか、返り討ちにあって死んでしまうかだった。

聖戦を経験した勇者と、銀のメシア、黒き神の聖女と名高い4人のパーティーは、名前を「金のカッシーニャ」と名付け、行動していた。

冒険ギルドの、お偉いさんから直々に、金のカッシーニャのリーダーであるユリエスに、打診がきた。

「ボーンドラゴンに、期待のAランクの新人たちがやれて大けがを負ったのだ。リトリア王国の外れにいる存在であるし、生まれ故郷であるリトリア王国を守るためにも、どうかボーンドラゴンを退治してくれないだろうか」

報奨金はかなりの額だった。

カリンとユリエスの二人暮らしなら、贅沢をしても10年は食っていけるだろう。

「引き受けてくれるかね?」

「一応、皆で検討してみる。答えはそれからでいいか?」

「勿論だとも」

ギルドのお偉いさんは、サブギルドマスターだった。60代の禿げ上がった頭をしているが、精霊魔法のスペシャリストだ。

「あなたの魔法でも、ボーンドラゴン退治は難しいのか?」

ユリエスが、疑問に思ってそう口にすると、サブギルドマスターは禿げ上がった頭に手を当てた。

「私の得意とするのは闇の精霊魔法。ボーンドラゴンはアンデッド、闇属性なんだ。私の魔法では、力を強めるだけで、退治には向いていない」

「ふーん」

ユリエスは思う。闇の精霊魔法は珍しい。命を奪ったり、削ったり、即死させたりする魔法がほとんどなので、すでに死者となっているボーンドラゴンとは相性が合わないのだろう。

ユリエスは、一度自宅に帰って、カリンを呼んだ。そしてお隣さんである、アルザとマリアードを呼ぶ。

「リトリア王国の外れにいる、ボーンドラゴンの退治を頼まれた。報奨金は金貨700枚。俺は引き受けてもいいと思う。お前たちはどうだ?」

「私はいいよー」

カリンは、元からユリエスの意思に賛同している。

「ボーンドラゴンかぁ。剣でいけるかなぁ?」

アルザは、ある程度は魔法を使えるが、職業は剣士だ。

「神聖魔法付与(ホーリーエンチャン)すれば、剣でも火力になる」

「ふむ。じゃあ僕は賛同だね」

「マリアードは?」

「わたくしは、クノイチですわ。アンデット相手にあまり火力になりそうもありませんけれど、ユリエスが引き受けるのでしたら、賛同いたしますわ」

「じゃあ、今回の討伐は引き受けるということで」

カリンは、最近ドラゴニックスペルマスターの力を取り戻している。理由は分からないけれど、今までのように命をけずって召喚することがなくなった。

それはユリエスも同じで、天界に帰ったカッシーニャの残滓で、相銀のフェンリルになることが、命を削らなくても可能になっていた。

世界が、音をたてて軋んでいた。最近、モンスターの活動が活発化している。サーラの世界は、500年に一度の、世界の成熟期を迎えようとしていた。

モンスターだけでなく、動植物から人にいたるまで、存在が色濃くなる。ユリエスとカリンにとっては、とてもありがたいことであるが、モンスターの活発化には問題があるなと思った。

ふと、気が高ぶると、ユリエスは水色の瞳を真紅にさせて、カッシーニャの残滓を漂わせる。そんなユリエスを、カリンは心配そうに見ていたが、緑のグリーンウッドを召喚してユリエスに沈静の魔法をかけると、ユリエスの中のカッシーニャの残滓は、大人しくなった。

「ユリエス、大丈夫?昨日、外でカッシーニャになったでしょ」

カリンの言葉に、ぎくりと身を強張らせるユリエス。

昨日は、冒険者ギルドで適当にうけた退治で、エンシェントウルフの群れの討伐があった。他の3人は街に買い物にでかけていたので、討伐はユリエスのみがおこなった。エンシェントウルフの群れは、切っても切っても、古代魔法で傷を癒して襲い掛かってくるので、業を煮やしたユリエスは、相銀のフェンリルになるとエンシェントウルフたちを食い荒らした。

真紅の瞳で、自宅に帰宅したのを覚えている。

「大丈夫だ。自我を飲み込まれることもない。カッシーニャになっても、暴力的になることもない。ただ、カッシーニャの存続には血肉がいるから、モンスターを食った。それだけのことだ」

かつて、リトリア王家で第2王子でありながら、銀のメシアの呪いがかかっているせいで、幽閉され虐待を受けていた頃、時折ユリエスの中に潜むカッシーニャが切れて、人を食い殺したことがあった。
あの甘美な味を、ユリエスはいまだに忘れられないでいる。

ゴブリンなどの亜人の、Eランクくらいの討伐に名乗りをあげて、その血肉を口にしているのは内緒だった。オークは、特に人間の肉に味が近い。ユリエスは、好んでオークを殺し食べた。
カッシーニャの姿で。

「ユリエス、たまに血の匂いをさせて帰ってくるから・・・私、気づいてるよ?」

「止められないんだ。やめたら、人を襲ってしまいそうで—―—それが怖い」

ユリエスは、カリンを抱き締めた。

ユリエスからは、金木犀の匂いがした。リトリア王家に血に連なる者だけがもつ、特別な香り。

「大丈夫。カッシーニャ本体はもういないから」

ユリエスの波打つ蒼銀の髪は、今日も綺麗に結い上げられて、エメラルドの髪飾りをつけていた。カリンとお揃いだ。

リトリア王国の者は、美しければ少年青年でも、髪飾りをつけたり髪を結い上げたり、花を髪にかざったりして、美しさを人に見せる。

ユリエスは、性別をこえるほどに美しい。カリンは、今までユリエスほど美しい人間を見たことがなかった。

「じゃあ、ボーンドラゴンは退治するということで、ギルドに報告しておく」

シルフの精霊に頼んで、言伝をギルドまで送ってもらった。ギルドからも言伝があり、明後日の昼にはたって欲しいとのことだった。

皆、思い思いの夜を過ごす。

カリンは、契約した精霊ドラゴンの召喚を確認したりしていた。ひとしきりの精霊を召喚したが、現れなかった者もいる。風の上位精霊ジルフェだ。彼はもともと異世界からの来訪者で、精霊になって日が浅い。気まぐれで、召喚に答えてくれないことが多々あった。
後は、特に問題はない。月の精霊ドラゴンは女神リトリアであったから、存在しないし、闇のラグドエルは精霊ドラゴンを見に宿した黒き聖女、カリン自信だ。
光の精霊ドラゴン、レイシャとも聖戦後に正式な契約を交わしたので、呼べないのは、太陽の精霊ドラゴンであったカッシーニャに、月のムーンストリア、闇のラグドエルくらいか。



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院生時代の部屋2

目覚めると、京楽の顔があった。同じベッドで眠っていたのだ。

「なななな・・・・・・・・・」

がばりと起き上がる。ズキリと、頭が痛んだ。

床を見ると、酒の瓶がいくつか転がっていた。何人の友人かが、床で転がって寝ていた。浮竹のベッドには女性の友達が寝ていた。

「ああ・・・・・・またか」

甘い果実酒だけを飲んでいたつもりだが、酒盛りがはじまって、京楽の飲むきつい酒も飲まされた。みんなでわいわい騒ぎあって、深夜まで飲んだ。
楽しかったが、起きた後がややこしいのだ。

浮竹は、まず自分のベッドで眠っている女性をそっと起こす。

「おい、男だらけのとこで眠るなんて危ないぞ」

「あら私、寝ちゃってた?」

こくこくと浮竹が頷くと、女性は衣服の乱れを直して浮竹の頬にキスをした。

「あなた、京楽とできているようでできなていないから・・・・面白くて」

昨日の夜も、そんな話題で賑わった。

「久しぶりに楽しくはしゃいじゃった。ありがとう、浮竹君」

浮竹は、女性に初めて頬にキスをされたせいで、朱くなったが、寝ている友人どもをどかして、女性の友人に寮の自室に帰るように促した。

それに、女性の友人はドアのところで手を振って別れた。

「起きろ――――!朝だぞーーー!授業に遅刻するぞーーー!!」

思い思いに寝転がっている友人たちを起こして、急かしては部屋の外に追いやる。

結局、残ったのは、まだ眠っている京楽だけだった。

「京楽、起きろ」

「んーあと10分」

「起きろ、このバカ」

「あと5分・・・・・」

「京楽、愛してる」

嘘でそう耳元で囁くと、京楽はぱっちりと目をあけて、浮竹を抱き締めた。

「僕も愛してるよ浮竹!」

「ばか、嘘に決まってるだろ」

「ちぇっ、つまんないな。あー・・・・ちょっと飲み過ぎたかなぁ」

「飲み過ぎたどころじゃないだろ」

京楽があけた酒の瓶は5つ以上。どれも喉が焼けるようなアルコール度の高い高級酒。

高級酒がただで飲めると、友人たちを誘ったのは正解だった。二人きりだったら、操の危機があったかもしれなくて。

はぐしたり、キスまでは許す。でも付き合っていないので、それ以上はさせなかった。

「昨日の君、かわいかったなぁ。お酒によっぱらって、僕の膝元にきて・・・・・」

「記憶から抹消しろ!」

浮竹は顔を朱くして、京楽を蹴り飛ばした。

「いやだ!昨日の浮竹は僕に甘えてきてすごかった!こんないい記憶、抹消なんてできない」

京楽の言葉に、浮竹は昨日の記憶を思い出す。

ズキズキ頭が痛んで、欠片しか思い出せなかったが、たしかに京楽に甘てた様な気がする。

「今日は休む」

「じゃあ僕も休もっと♪」

「おまえは二日酔いにも何もなってないだろう。授業に出ろ」

「嫌だよ。二日酔いの君を放置して、学校になんていけない」

「ちゃんと授業に出たら、今日夜キスしてやる」

「京楽春水、この名にかけて授業に参加します」

ちょろいな。

浮竹は思った。

そのまま、浮竹は京楽が学校に行くのを見送って、ベッドに横になった。

騒ぎすぎたせいか、熱が出てきた。

一人なので薬だけ飲んで寝ていると、ふと冷たい感傷が額にして、目を開ける。

「京楽、学校にいったんじゃないのか」

「行ったよ。でも、君のことが心配で昼の時間に抜け出してきた。まだ昼休みだから、さぼっていることにはならないよ」

額には、水で冷えたタオルが置かれていた。

「酒盛りするのはいいけど、君も限度を守らなきゃね」

言い返す言葉は見つからなくて、浮竹は京楽の手をとった。

「何?」

「屈め。礼だ」

大人しく屈んで、浮竹の位置まで顔をもってくる京楽に、浮竹はキスをした。

それに目を見開いた京楽は、顎に手をかけて、無理やり口をあけさせると、舌を入れてきた。

「ううん」

舌と舌とが絡まる。

熱のせいで、ぼーっとなってくる。

舌を引き抜かれると、京楽はそれ以上はしてこなかった。

「今日の夜の分だ。さっさと、授業に戻れ」

「授業終わるまで、ちゃんと寝てなよ。戻ってきて熱があがってたら、またベロチューの刑だからね!」

「勘弁しろ」

京楽とのディープキスは、あまりに心地よかった。それ以上先に進んでもいいかという気になってくる。だから、いつもキスは唇を重ねるだけなのだ。

それなのに、舌を入れられた。初めての経験だった。

朱くなる頬が、初心さを物語っている。

「あー。いつか、絶対操うばわれそう」

京楽は、チャンスがあれば浮竹とそうなりたいようで。

一緒の部屋で暮らすようになって、不便なことは最初はなかったが、今は同じ部屋にいるのが貞操の危機なのだ。

「テープ、またはるか・・・・・・」

床にテープをはって、これ以上こっちにくるなルールをまた発動させよう。

結局夜になっても熱が下がるどころか高くなって、ベロチューの刑に処される浮竹であった。





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色のない世界番外編

季節は冬。

今年も、椿の花が咲き乱れる。

花の神、椿の狂い咲きの王は、ゆっくりと目覚めた。

愛しい二人となった愛児の様子を水底から見つめる----------------。



「京楽、愛している」

「僕も愛してるよ、浮竹」

いつものように、毎日が始まろうとしていた。

朝餉を一緒にとり、一緒に仕事をし終えて、瀞霊廷を見回ったり、甘味屋にいったり、あるいはルキアや苺花と会話したり。

「シロさんは、今日も美人だね。髪を結い上げてかわいいね」

苺花に褒められて、浮竹は頬を染めた。

「京楽が結ってくれたんだ」

翡翠の髪飾りをしていたし、首には翡翠のお守り石をペンダントにしたものを、ぶら下げていた。

「翡翠より、綺麗・・・・・シロさんの瞳」

緑色の中にある光彩が、オパールのような虹色を放っていて。螺鈿細工の中に翡翠が浮かんでいるようで、とても美しかった。

「それに、花のいい匂い・・・・・京楽総隊長も最近、花の匂いがする・・・・」

苺花に話したところで、理解できないだろう。

一度死を選んだ二人は、花の神の力によって蘇った。愛児となった二人は、祝福を受けて甘い花の香をさせるようになった。

苺花は、浮竹の髪を手で触る。

「こら苺花!」

それに、ルキアが注意する。

「ああ、別にいいんだ朽木・・・・・・」

「しかし浮竹隊長・・・・・」

ルキアは、京楽総隊長にも気軽に話かける苺花を叱ったことがあるが、何故叱られるのか分かっていないようだった。

上下関係をくっきりさせないと。そう思って教育してきたが、チカさんと呼ばれる弓親の存在に大分影響されているようだ。

「またね、シロさん、京楽総隊長」

「ああ、またな、朽木、苺花ちゃん」

「浮竹隊長も、京楽総隊長も、これで失礼します。また後で」

苺花の手を握って、ルキアは去っていく。

「子供か・・・・いいな・・・・」

その浮竹のつぶやきに、京楽が反応する。

「養子でももらうかい?それとも、涅隊長に頼んで、子供を生み出してもらうとか・・・・」

「いや、いいんだ。少し羨ましかっただけだから。自然のままが一番だ」

京楽の手をとって、歩き出す。

今日は、特別な日だった。

二人とも、正装していた。

護廷13番隊の隊長、副隊長が見守る中、二人は結婚式を挙げた。

七緒が、二人の上からたくさんの花びらを降り注ぎ、降り注ぎすぎて、京楽は花びらで埋もれていた。

リーンゴーン。

教会の鐘がなる。

西洋風の結婚式だった。指輪を交換しあい、誓いの言葉を口にして、キスをする。

「おめでとうございます、京楽総隊長、浮竹隊長!」

「おめでとうございます!」

ルキアは泣いていた。恋次が寄り添い、二人に同じような祝福の言葉をかける。

「おめでとう、京楽さん浮竹さん」

「一護君・・・来てくれたのか。ありがとう」

わざわざ、現世から尸魂界に、一護が祝福にきてくれたのだ。

浮竹は、ウェディングブーケを持っていた。

それを放りなげる。松本がめちゃくちゃとりたそうにしていたが、苺花の手に落ちた。

「わあ、あたしチカさんと式をあげていい?」

「いや、苺花ちゃん、僕らはまだ早いって」

焦った弓親が、苺花の手からブーケをとりあげて、もう一度放り投げる。

それは、砕蜂の手に落ちた。

「夜一様と、式をあげろということか・・・・・・」

砕蜂は、顔を真っ赤にした。隣に佇んでいた夜一が、面白そうに笑う。

「わしと砕蜂は、式をあげんでもいいだろう」

「夜一様!」

完全に二人の世界に入った二人を無視して、京楽と浮竹は手を繋いで歩きだす。

今日で、京楽と浮竹が、花の神からもう一度命をもらって、ちょうど一年経った日だった。

「みんなありがとう」

「お幸せに」

「もう十分幸せだ」

浮竹は、嬉し涙を零しながら、歩き出す。

空から、花の雨が降ってきた。

「え、何!?」

「なんだ?」

みんな騒ぎ出すが、浮竹と京楽は、花の神の祝福であるとすぐに気づいた。

「椿の狂い咲きの王の名にかけて、永遠を誓う」

「同じく」

京楽と浮竹が花の神にそう誓うと、まもなくして花の雨は止んだ。

永久(とこしえ)を、この伴侶と共に。

京楽と浮竹の、新しい光の道が描かれる。






水底に沈んでいた花の神の元に、椿の花が落ちてきた。

結婚式を挙げた二人が、もう今はない浮竹の墓の前にきてから、池に椿の花を投げ入れたのだ。

「ありがとう、愛児たち---------------------」

花の神が愛する椿の姫は、冬だけに咲く。

これからも永久を誓う二人に、花の神は微笑む。

もう、院生の頃の京楽の姿をとっていなかった。

花の神は、薄紅色の髪に瞳、白い肌をして、流れる花のイメージの衣装を着ていた。

ゆらりと波紋だけを残して、椿の狂い咲きの王は、時空を渡る。

また、違う世界で愛児たちに会おう----------。

花の神は世界を震わせた。

世界は廻る。

時空を翔けた花の神は、もう水底にはいなかった。

次の世界へ。


世界はまた廻りだす。

運命と時をこえて。



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院生時代2

寮の、備え付けの風呂が故障した。

同じ部屋に住んでいる浮竹と京楽は、困った。いや、困ったのは浮竹だけだろうか。

仕方なく、公共浴場を利用する。人がたくさんいた中、京楽はバスタオルを腰に巻いて、浮竹は女性のようにバスタオルを胸までまいていた。

「浮竹、やっぱ京楽と風呂ってやばくねーか?」

級友の一人が、言う。

「せめて時間をずらすとか・・・・・」

「そんなことで、京楽が離れてくれるなら、苦労しない」

胸の位置まで浮竹がバスタオルを巻いたのは、京楽がいるから。京楽は、裸の浮竹が見れると喜んでいたが、そうは問屋が卸さない。

浮竹は、肩くらいの髪をしていた。京楽が囁くままに、髪にはさみをいれなくなったが、二人はまだ付き合っているのかいないのか、曖昧な関係だった。

キスをしたり、ハグはしたりする。

でも、それ以上はしない。

浮竹と京楽は、できているようでできていないと、有名だった。

「浮竹、背中洗ってあげるからバスタオルとりなよ」

「お前が洗うと、手で洗いだしそうだから嫌だ!」

「ちぇっ」

本当に、手で洗おうとしていたのだ。

浮竹は、髪を最初に洗い、京楽が髪を洗っている間に、浮竹はバスタオルをとって体を洗った。

時間差で浮竹の裸が見れなくて、京楽は残念そうだった。

「浮竹、ここは男性浴場なんだから。腰にバスタオル巻きなよ」

「嫌だ!お前はこのまえ、俺の胸を見ただけで鼻血をだしたじゃないか!そんな変態の前で、バスタオルを腰になんて巻けるか!」

「ちぇっ」

なにやかんやで、無事風呂に入り終わり、浮竹は服を着て体重計の上に乗っていた。その軽さに、溜息を零す。

筋肉質な京楽の体を見る。

「どうすれば、お前のような体になれる?」

「嫌だなぁ、浮竹は今のままがいいんだよ。しなやかな筋肉が・・・・・想像しただけで、もうやばい」

京楽は、風呂上がりに火照った体に潤んだ瞳、上気した頬の浮竹の裸を想像して、鼻血を出して倒れた。

「うわあああああああ、この変態がああああああ!!!」

浮竹が悲鳴をあげる。

「浮竹は、筋肉質になっちゃだめだよ。抱き心地が悪くなるから・・・」

京楽を蹴り飛ばして、浮竹は風呂上がりのフルーツ牛乳を一気飲みして部屋に先に帰った。


「あーあ、やっぱり鼻血だして倒れた。おい、誰か助けてやれよ」

「やだよ。浮竹みたいに、惚れられたらもう人生おしまいじゃんか」

「浮竹も浮竹だな。嫌なら、きっぱりと拒絶してトドメをさせばいいものを・・・・」

浮竹と京楽が、できていそうでできてないない。それを気持ち悪いと見る友人はいなかったが、浮竹が不憫だと思う者はたくさんいた。

京楽は、鼻血をふいて起き上がると、浮竹が使ったバスタオルをもってきていた鞄にしまい込んだ。

「浮竹の使ったバスタオル・・・・・・・(*´Д`)ハァハァ」

「うわぁ、京楽のやつやばいぞ」

「誰か軌道修正してやれ!」

「浮竹以外、無理じゃないか?」

京楽は、ひとしきり浮竹と入浴をしたことを漫喫すると、寮の部屋に戻っていった。

ラッキーなことに、京楽は浮竹と同じ部屋だ。

そして、戻るといつものように、床にテープがはってあった。

「このテープから内側に入るな」

「いいじゃない、浮竹。先週は、一緒のベッドで眠ったじゃない」

「あの時は酒に酔っていた!素面(しらふ)の俺は、お前と同じベッドで眠るなんて危険行為はしない」

「じゃあお酒のもう」

「一人で飲んでろ!」

「つれないなぁ」

京楽は、一人で酒盛りを始める。浮竹は、明日の授業の予習をしていた。

京楽は、きつい酒を飲む。

背後に京楽の気配を感じて、浮竹は振り返った。

「僕のものになっちゃいなよ・・・・」

「酒臭い!お前、酔ってるな!?」

抱き着かれて、浮竹は京楽の体を背負い投げした。

病気でか弱いと思われがちだが、浮竹は腕っぷしがたつ。幼い頃、暴漢に攫われそうになっり、変質者にイタズラされそうになったり・・・・・容姿がいいせいで、そんな目にあいそうになってきたので、祖父から蹴りに重点を置く護身術を学んでいた。

「あー。世界が廻る」

「一生世界で廻ってろ!」

浮竹は怒って、そのまま眠ってしまった。

「今日も落とせなかった・・・・・・・」

京楽も、明日こそは落としてみせると決意しながら、眠るのであった。



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情事の後は

「白哉、暇だ構ってくれ」

朽木家の屋敷で、浮竹は広い畳の上をごろごろと転がっていた。

「兄に、構う暇などない」

6番隊の執務室は別にあるが、白哉は自分の屋敷にも執務室を持っており、そっちで仕事することのほうが多かった。

尸魂界に、一護が来ていた。

ルキアに会いにきたのだ。屋敷までくるのを案内した形で、朽木家の屋敷にきた浮竹は、当主の白哉に構ってもらおうと執務室まできたのだ。

いつもなら構ってくれる日番谷は、今は現世でいない。

京楽を取り除くと、残されたのは白哉。わかめ大使をもらいに、よく朽木家を訪れるので、その広い屋敷でも迷子になることはなかった。

「これでも食していろ」

新発売の、わかめ大使・・・・その名も「わかめちゃん」・・・・最近、白哉が生み出した、わかめ大使の妹だ。
中身は白あんこで、このわかめちゃんは浮竹のお気に入りだった。

それをぽいぽい渡されて、浮竹は嬉し気に食べていく。

「お茶がほしい・・・・・」

「恋次」

「はい」

恋次が、浮竹にお茶をだす。

「阿散井副隊長は、けっこう白哉にこき使われているんだな」

その言葉に、ピクリと刺青をいれた恋次の眉が動く。

「こき使われるんじゃありません。ただ仕事の合間に接客してるだけです」

恋次も、白哉と同じように書類の仕事に追われていた。

「うーーーー暇だーーーーーー」

浮竹は、何故か長い白髪を三つ編みにしていた。

一護がしてくれたのだ。

「一護君に会いにいこう」

ふと思い立って、浮竹は立ち上がった。

「ああでも、朽木と付き合ってるらしいからなぁ・・・・仲を引き裂くような真似はなぁ・・・」

ゴロゴロゴロゴロ。

畳の上を転がっていく。

「隊長、あのかわいい生物、なんとかならないっすか」

「兄にできぬなら、私にも何もできぬ」

ゴロゴロゴロゴロ。

転がっていると、誰かの足とぶつかった。

「浮竹ぇ~」

「京楽?」

京楽の髪は、ちりちりになっていた。浮竹が放った鬼道が、京楽にぶつかったのだ。

昼前、臥せっているせいで、あまり使うことのない鬼道の練習をしていた。けっこう腕がなまっていた。

遊びにきた京楽に白雷があたって、京楽は焦げてちりちりになり、意識を失った。

浮竹は、怒られるのが怖くて逃げだした。

いつものように日番谷のところに遊びにいくと、日番谷と松本は現世だと言われた。

そこに一護が現れて、浮竹は人生が薔薇色になって、京楽のことを忘れた。

「ああ、忘れていた。俺の鬼道のせいでちりちりに・・・・・けっこう、似合っているぞ?」

額に血管マークを浮かべながら、京楽は浮竹を抱き上げた。

「君ねぇ。せっかく人が遊びにきてやったのに、いきなり鬼道でちりちりにされて、おまけに放置されて、犯人の君は朽木隊長のところで僕の存在を忘れて、暇ひまと連呼して・・・覚悟は、できてるんだろうねぇ?」

「あ、白哉~~~助けてくれ~~~」

「兄の自業自得であろう。知らぬ」

「殺生な・・・・」

「無断で屋敷に入って悪かったね。暇人の浮竹は、持って帰るから」

三つ編みが揺れた。

「いいんですか隊長・・・・」

恋次が、白哉を見るが、白哉は首を振る。

「あれは、兄の関わることではない。浮竹と京楽の問題だ」



「また、かわいい恰好してるね」

三つ編みのことを言われて、京楽に抱き上げられたままの浮竹が、嬉しそうに話す。

「一護君がしてくれたんだ」

「そう、一護君がね・・・・・」

また、額に血管マークが一つ浮かんだ。

「京楽、怒っているのか?」

「これが怒っていないように、見える?」

にこにこしているが、血管マークがいっぱい浮かんでいた。

浮竹は、これはまずいと思って、京楽の首に手をまわす。

そして、耳元で囁いて、耳をかんだ。

「2回までなら、好きにして構わない・・・・」

甘い花の香にくらくらきて、京楽は雨乾堂につくと、浮竹を押し倒した。

「まて、畳の上は・・・・せめて、布団の上で」

「好きにしていいって言ったのは、君だよ」

「それはそうだが・・・・・・あああっ」

襲ってきた快楽の波にさらわれて、浮竹の思考も鈍化していく。

2回までといったのに、結局3回まで好きに抱かれて、浮竹は意識を失った。

「ちょっとやりすぎたかな・・・・・」

三つ編みにされた髪を手に取って、口づける。

「おーい、浮竹さん」

現れた一護は、真っ赤になった。

浮竹は仰向けに布団の上で意識を失い、死覇装をかぶせられている。京楽は、乱れた衣服のまま、煙管煙草に火をつけて、浮竹の頭を撫でていた。

「なんだい、一護君」

「すすすすす、すんません、なんでもないです」

まさに、情事の後。

真っ赤になった一護は、何か浮竹に用があったのだろうが、走り去ってしまった。

「お子様には、刺激が強すぎたかな?」

「ん・・・・・・・・」

浮竹が身動ぎする。

「君は、誰にも渡さない・・・・・・・・」

浮竹の唇に唇を重ねて、紫煙をあげる。

浮竹の心の色を、僕でいっぱいにできたらいいのにね?

そう思いながら、いつまでも浮竹の髪を撫でる京楽であった。


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プールでひゃっほい

「お子様は、保護者の方と一緒でないと、入れません」

日番谷は、そう言われて額に血管マークを浮かべていた。

「俺はガキじゃね・・・・むがーーーー!」

そんな日番谷を羽交い絞めにして、口元を手で覆って笑顔で浮竹が対応する。

「俺の子なんだ。ほら、瞳の色とか一緒だろう?」

「親子と証明できる書類がないと・・・・・・・」

受付の女性は、頬を赤らめていた。

「そんなこと言わずに、頼むよ」

女性の顎に手をかけて、日番谷を放り出した浮竹が、女性にとどめをさした。

「特別です・・・・・・許可します・・・・あああ・・・・・・・」

浮竹の色香にやられた受付の女性は、倒れてしまった。

「おい、浮竹、誰が誰の子供だって!?」

「俺の子供。だって日番谷隊長くらいの子供がいても、おかしくない年だろう、俺は。おっさんだしな」

笑顔で答える浮竹に、日番谷は頬を朱くした。

受付の女性に見せた顔を見てしまったのだ。

「ああもう、勝手にしろ!」

日番谷は、怒って脱衣所に消えてしまった。


黒崎一護が、現世のプールのある施設の団体割引券をもってきたことから、話は始まった。

朽木ルキアだけでなく、白哉、恋次、日番谷、松本、一角、弓親、京楽、浮竹、砕蜂、夜一、卯ノ花・・・・・・。

少し前、海にいったメンバー+αなかんじで、行きたいというメンバーが名乗りでて・・・現世の井上、石田、茶虎もメンバーの中にいた。

プールは温水プールで、夏の日差しに倒れる浮竹もいけるとのことで、京楽もついてきた。

3席の子がいかないので、念のためにと浮竹の世話係を兼ねて。

卯ノ花がメンバーにいるので、発作や熱を出しても大丈夫だろうと、卯ノ花の診断がおりて、浮竹は来ていたのだが。

みんな、思い思いの水着を着て、プールではしゃいでいた。

「浮竹さんは、泳がないのか?」

一護が、プールに入らず、足だけをプールに浸して水遊びをしている浮竹を見た。

パーカーを着て、首までチャックを閉めているその姿が暑苦しそうで、手をひっぱって中に入るように促すが、浮竹は首を横に振った。

「今日は、泳ぐような気分じゃないから」

「そうか。せっかくなのにもったいねぇ」

「こら一護!浮竹隊長に失礼であろう!」

ビキニタイプの水着を着たルキアが、一護を引っ張ってく。

でも、ルキアも心配していた。

「浮竹隊長、体の具合でも悪いのですか?」

「いや、大丈夫だ」



「ほれ、砕蜂、ここまで来てみろ」

「ああっ、夜一様待ってください!」

夜一と砕蜂は、二人だけの世界に入っていた。水着も大胆で、褐色の肌の夜一はとにかく男性の視線をひいた。

それをいえば、神々の谷間を持つ松本、同じような巨乳の井上も、男性の視線を集めていた。

それだけなら、みんな何も言わなかった。

真っ白な長い髪を結い上げて、ぱしゃぱしゃと水遊びをする浮竹も、男性の視線を集めていた。

それに切れた京楽が、浮竹を隠すように浮竹の前にきて、泳ぎ出す。

「浮竹、泳がないの?」

「誰のせいだと思っている!」

頬を朱くして、浮竹は水を京楽にかけた。

「おい一護、何してる。こっちにこい」

ルキアが、一護を呼ぶ。

「ああ・・・・・」

二人のやりとりが気になったが、一護はルキアの方に行った。白哉が、白いサメのマットのようなものをもっていた。その上にのったルキアが、一護の手をとってマットの上に乗せる。

「兄もか・・・・・」

白哉が少し眉をぴくりとしたけれど、一護ものせて、マットはプールの波の間を漂った。

「お、あれならいいんじゃないの」

京楽が、白哉のもっているマットを見る。

「朽木隊長、他にマットないかな?」

「わかめ大使のであればあるが・・・・」

「それでいい。借りるよ」

京楽が、プールからあがった白哉に渡されたマットに空気をいれていく。それをプールに浮かべて、浮竹を誘う。

「この上なら、足くらいしか濡れないから、大丈夫」

「本当だろうな・・・・・・・」

浮竹は、渋々といった様子でマットの上に乗る。パーカーは羽織ったままだった。

意外と楽しくて、浮竹ははしゃいでしまい、プールの中に落っこちた。

「浮竹!」

京楽が、浮竹を抱き上げる。

「もう、いいじゃない。パーカーなんて脱いじゃいなよ」

「これがないと俺は!」

京楽が、水浸しになった浮竹のパーカーを脱がせた、

真っ白な肌が露わになる。それだけなら問題はなかった。問題は、鎖骨から臍にかけて、いっぱいキスマークがあることだった。

白哉と日番谷が真っ先に事情を察知して、溜息をついた。

プールに誘われた後に、浮竹は京楽と体を重ねた。普段見えない場所なら、痕を残して怒らないので、鎖骨から臍にかけてキスマークをいっぱい残したのだ。その時は、京楽は気づいていて虫よけのためにわざといっぱいキスマークを残した。浮竹はプールのことを失念していた。

やっと事情を呑み込んだ他のメンバーが、顔を朱くする。

その時動いたのが、大胆な水着を着た卯ノ花だった。

「キスマークも、いわば傷のようなもの・・・・・:」

回道で、卯ノ花は浮竹の胸に散らばっていたキスマークを消した。

「ありがとう卯ノ花隊長!」

消えたキスマークおかげで、何も気にせず浮竹が泳ぎだすが、もうみんな知ってしまったので後の祭りであった。

「浮竹さんと京楽さんっやっぱ・・・・・」

「ああ、できている」

一護とルキアは、顔を見合わせた。

「京楽のやつ、後で説教してやる」

日番谷は、怒っていた。

「兄が、何故怒る?」

白哉は不思議そうにしていた。

「そういう朽木も、怒ってるじゃねぇか」

静かに霊圧を迸らせる白哉を、日番谷が見る。

「兄と、想いは同じようだな」

ただでさえ、病弱な浮竹なのに。おまけにプールにいくと分かっているのに、あんなにキスマークを残して。浮竹の身になってみろと、二人は思っていた。

そんな想いも知らず、浮竹と京楽は、楽しそうにウォータースライダーに乗って遊んでいたのであった。



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その日から始まった。

それは、日番谷が隊長になってまだ間もない頃のお話。

いつものように、10番隊の執務室で仕事をしていると、よくお菓子をあげて頭を撫でてくる人物-------------浮竹がやってきた。

浮竹は、何もないのに10番隊の執務室にやってきては、茶菓子を食って茶を飲んで、一服して出ていく。
もうそれにも慣れてしまったので、日番谷は何も言わなかった。

その日の浮竹は様子がおかしかった。

「浮竹、どうした」

「日番谷隊長。操の危機なんだ」

ブーーーーーー!

日番谷は、お茶を吹き出した。

「誰か女死神に追われているのか?」

「いいや、京楽だ」

「京楽?」

確か8番隊隊長の、もじゃもじゃのおっさん。

女好きで無節操。そんな噂を聞いた。

「無理強いされているのか。それなら、俺がなんとかする」

浮竹は病弱だ。守ってあげたくなるような容姿をしているせいで、余計になんとかしてやろうという気になった。

だが、浮竹は頬を薔薇色に染めていた。

「いや・・・・俺と京楽は恋人どうして・・・・・」

ブーーーーー!

またお茶を吹き出した。

書類にかかってしまった。手ぬぐいで、いそいそと水分をふき取る。

「はぁ?恋人同士?男同士で?」

まだその頃、日番谷は浮竹と京楽が付き合っていることを知らなかった。

「まぁ、他人ことをとやかくいう権利はないが・・・・操を奪われるのがいやなら、別れればいいじゃねぇか」

「いや、別に嫌なわけじゃないんだ。でも、昨日3回もしたし」

ブーーーーー!

日番谷は、お茶を吹き出すことは運命なのかと感じていた。

「日番谷隊長はどう思う?男同士で恋人で・・・・その気持ち悪いとか、思わないのか?」

のぞきこんでくる瞳は、自分と同じ緑で。でも輝きが違う。翡翠色をしていて、光彩にオパールのような虹色をもっていた。

「いや別に気持ち悪いとかはかんじねぇけど」

浮竹が、京楽とできているシーンを想像する。

「お前が受けだよな?」

さすがに、あのがたいのいい京楽が抱かれているシーンは想像したくなかった。

ちょっといかがわしい想像になって、日番谷が、頭を振ってその想像を追いやった。

「まぁ、追われてるなら好きなだけここにいろ」

「ありがとう、日番谷隊長!」

抱き着いてくる浮竹からは、甘い花の香がして、それだけでクラリと意識がまわりそうだった。

ああ・・・・・・なんか、京楽の気持ちが、分からないでもない。

恋人がこんな無防備に、誰かに抱きついたり・・・甘い花の香をかぐだけで、浮竹に手をだしたくなるような気になる。

「浮竹、お前」

「なんだ、日番谷隊長」

「俺や京楽以外に、抱き着いたりするなよ」

「どうしてだ?」

小首を傾げてくる浮竹が可愛く見えて、日番谷は頭を抱えた。

「やーん、浮竹隊長きてたんですかー!隊長ずるいー。あたしも起こしてよー浮竹隊長とお話ししたいー」

松本が、隊首室の奥からやってきた。

「浮竹隊長、今日は京楽隊長と一緒じゃないんですかー?」

「雨乾堂で一緒だったが、操の危機を感じて逃げ出した」

「きゃーーーーーーー!」

松本は、腐っていた。

「松本、うるさい!」

「だって隊長、浮竹隊長と京楽隊長のカップルは有名なんですよ?」

「そうなのか?」

「隊長くらいじゃないかしら。知らないの」

「俺にも、ちゃんと教えろ」

「やだー、隊長嫉妬ですか!やーん萌えるーーーー!」

「松本おおおおおおお!その腐った思考をどうにかしろーーーー!」

松本をいれてギャーギャー騒ぎあっていると、例の京楽がやってきた。

「日番谷隊長、失礼するよ」

「京楽!」

浮竹が、日番谷の後ろに隠れた。

「おい京楽!恋人同士だか知らんが、無理強いはよせ」

「それ、浮竹が言ったの?」

「そうだ」

「浮竹が悪いんだよ。3席のいる前でキスしたり抱き着いてきたりするから」

「浮竹、お前は人の目というものを意識しろ!」

3席がいるところでいちゃつかれては、3席がかわいそうだ。

「3席がいなくなって、その気になった僕を置いて逃げ出して・・・・・浮竹?」

「いやだ、しない。昨日3回もした」

「きゃあああああ!」

「松本、うるせええええええ!」

松本を殴ると、それでも松本は一人で萌えていた。

「よっこらせと」

瞬歩で日番谷の後ろにいき、浮竹を肩の上に抱き上げる。

「京楽!」

浮竹が、もがく。

「とろとろになるまで、愛してあげる」

その京楽の顔をまともに見た日番谷は、朱くなった。

なんて顔しやがるんだ。

浮竹も、その顔を見て、頬を上気させて潤んだ瞳で京楽を見ていた。

その顔を見て、日番谷は更に朱くなった。

なんて顔で、京楽を見てやがる---------------。


「ああもう!蒼天に座せ、氷輪丸!」

恋人同士の二人の色香にあてられた日番谷は、斬魄刀を解放させていた。

その頃から始まったのだ。

浮竹と京楽が、10番隊の執務室でいちゃつきだして、斬魄刀を始解するようになったのは。



「蒼天に座せ、氷輪丸ーーーーーー!」

今日も今日とて、人騒がせな浮竹と京楽を巻き込んで、執務室を半壊させる。京楽は浮竹を軽々と抱えて攻撃を避ける。いつも、松本がその余波でふっとばされていた。

「あーーーん、萌えるーーー」

今日も、松本はいい具合に腐っている。

今日も、浮竹と京楽は見せつけてくれる。

もう、執務室を半壊させるのは当たり前。

京楽は金を出してくれるから、執務室はすぐに新しく建て直される。

「はぉ・・・・・疲れた」

氷輪丸を鞘にしまい、なんとか形が残っていた机に置かれていたお茶を飲み干す。

緑茶の渋い味が、口いっぱい広がった。






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育毛剤の謎

「育毛剤・毛が伸びるヴァージョン」

そう書かれた薬と、浮竹は睨めっこしていた。

つい先日、虚と破面の大群が襲ってきて、たまたま近くにいた浮竹たち13番隊がその処理に出動した。いつもなら臥せっているか、仕事をしているか、茶での飲んでるいるか・・・・とにかく、一番争い事とは無縁そうな浮竹も出撃した。

古参の隊長らしく、腕も鈍っていなかった。

次々に虚を駆逐し、率いていた破面にとどめをさす。だが、破面は最期に一撃を放った。
その一撃は、浮竹の首を少し切った。そして左半分の髪を、肩より上でざっくりと切られてしまった。

首の傷自体は大したことはなかった。

だが、散っていく白髪が、ここまで綺麗に伸ばすのに何年かかったと思っているんだと、叫びたくなるほど哀れにざくざくなっていた。

浮竹は迷った。正直に、髪を切られてしまったといって、京楽に肩の上ですっぱりと髪をきってもうかどうかを。

だが、京楽は浮竹の腰より少し短い髪が大好きだった。その長さがちょうどいいのだと、いつも髪を触ってきては、手で白い髪を梳いていた。

浮竹が髪を切られたのを、京楽はまだ知らない。

そんな時、どこから聞きつけてきたのか、12番隊の隊長である涅マユリがやってきた。

「毛に困っているんだろう。私の開発したこの育毛剤を使うといいことあるヨ」

思いっきり怪しい育毛剤を、それこそ無料でおいていった。

その薬を、使うか使わないかで、悩んでいるのだった。

別に女ではないのだから、髪を切られたことであまりどうこうは思わなかったが、京楽のことを考えると、ちくりと胸が痛んだ。

「ええい、悩んでいても仕方ない!」

薬は、塗り薬でなく飲むタイプのものだった、

「あれ?オロナミンCの味がする・・・・・けっこう美味い?」

浮竹が首を傾げた旬案、ぶわりと髪がうねった。部屋中髪の毛だらけになっていた。

「効果に限度はないのか!」

浮竹は、やっぱり飲むんじゃなかったと後悔した。まだ伸びている。

毛根からではなく、毛先から伸びているようで、浮竹は斬魄刀を手に取ると、肩より上でざっくりと髪を切ってしまった。

ぱったりと、髪は伸びなくなった。

京楽に髪を揃えてもらおうと、8番隊隊舎までくると、七緒が浮竹の姿に吃驚した後、京楽が実家に帰って数日は帰ってこないと言われた。

「うーん。床屋なんていきたくないしなぁ・・・そうだ日番谷隊長!」

以前、日番谷が松本の髪を切っているという話を聞いたのだ。おしゃれ好きの松本が切ってもらうくらいなのだから、きっと髪を切るのもうまいに違いない。

そう思って、10番隊の執務室に寄った。

「浮竹?」

ざんばらな髪をみて、日番谷が眉間の皺を深くした。

「誰にやられた。やり返してやる」

「おいおい、日番谷隊長、これは」

ぶわあああああああああ。

いきなり、浮竹の毛が伸び出した。

「ぎゃあああああああああ!?」

うねった髪にぐるぐる巻きにされて、日番谷は悲鳴をあげていた。

「なんだこの髪は!」

「さっきの髪型は自分で切ったんだ。それで、こうなったのは涅隊長のつくった育毛剤のせいだーーーーーーーーーー」

切っても切っても、伸びる髪。

「ちょっと我慢してろ」

「何をするんだ?」

「蒼天に座せ、氷輪丸!」

髪を、氷で凍らせると、髪はぴたりと伸びなくなった。

「やっぱな。毛先が生き物みたいになってたんだ」

「毛先が・・・・・・・」

日番谷は、鋏を何処からか取り出すと、浮竹の髪を切っていく。

ちょうど、腰より少し短い位置で。

「ああ、助かるよ日番谷隊長」

いつもと同じ長さにそろえられた髪をみて、浮竹も安堵した。

「それより、この髪の海、どうするんだ」

「捨てるとか?」

「量がありすぎるだろう!」

「焼くとか?」

「匂いが・・・・そもそもどこで焼く?」

「・・・・・」

「・・・・・」

無言のあと、結局毛を集めて大きな玉をつくり、それを流魂街の外れで燃やすことになった。

「おい、火つけるぞ」

「ああ」

巨大な毛玉に火をつけると、毛玉はきしゃあああああと叫び声をあげた。

「髪が生きている!?どういう育毛剤なんだ涅マユリーーー!」

その髪は、浮竹を襲ってこなかった。日番谷のほうにいく。

「日番谷隊長!」

日番谷の動きを、髪がまるで糸のように邪魔をして、そして日番谷は抵抗も空しく、浮竹の髪の眉の中に取り込まれてしまった。

「くそ、双魚理!」

斬魄刀を始解し、髪の繭から日番谷を救い出すと、日番谷は浮竹に抱き着いた。

「浮竹、好きだ!」

「ええええ!?」




なんだかんだがあって、涅マユリを糾弾する。

髪は結局焼いて始末したが、おかしくなった日番谷が元に戻らないのだ。

「どうすれば、日番谷隊長は元に戻るんだ!」

「おやおや、天才の私としたことが、育毛剤に惚れ薬の成分を混ぜてしまっていたようだネ。まぁ、そのうち元にもどるんじゃないかネ」

「そんな無責任な!そもそも、なぜ薬を服用した俺にではなく日番谷隊長が!」

「そんなの、私の知ったことではないヨ。薬を服用したのは浮竹隊長だろう。自分で後始末をつけることだネ」

日番谷は、しばらくの間おかしかった。雨乾堂の浮竹の傍にずっといるのだ。

言葉を出すと思ったら、

「浮竹好きだ!」

それだけ。


そして、いよいよ運命の日がくる。京楽が帰ってくるのだ。

こんな日番谷隊長と出会わせるわけにもいかなくて、10番隊の執務室に霊圧を消して逃げた。

「うきたけーーー?」

背筋を撫でられて、ぞわりと肌が泡立った。

「京楽、いつの間に!」

「君、なんでも日番谷隊長とできてるらしいねぇ」

「ちょっとまて!これは涅マユリのせいで!」

「問答無用!」

日番谷を引きはがそうとする京楽。

「浮竹、好きだ!」

「日番谷隊長、いい度胸だね?」

花天狂骨を出してきた京楽に、浮竹が怒る。

「日番谷隊長は俺が守る!俺のせいでもあるんだ、これは」:

「うきたけ~~~~~~?浮気するの~~~~~?」

黒曜石に宿った光に、ぞくりときた。

「んうっ」

日番谷をくっつけさせたまま、京楽は浮竹に手を出した。

「ほら、日番谷隊長も悔しかったら、これくらいしたらどうだい」

「ああっ」

死覇装の隙間から手が伸びてくる。
膝を膝で割られ、激しい口づけを受けて、立っていらなくななった浮竹は、自然と京楽に身を任せた。

「やあっ」


「-------------俺の目の前でいちゃつくとは、いい度胸だなお前ら。蒼天に座せ、氷輪丸------!!」

浮竹は、咄嗟に京楽を盾代わりにした。

「ぬああああああああ」

京楽は、氷の龍に、天高くもちあげられていく。

「日番谷隊長、正気に戻ったのか!」

「記憶までばっちり残ってやがるよこんちくしょう!」

氷輪丸を鞘に納める日番谷に、浮竹は謝った。

「今回のことは、非常にすまないと思っている。怒っているなら、好きにしてくれてかまわない」

「別に怒ってねーよ。それに、悪くなかった」

「何が?」

「人を「好き」になる感情がな・・・・・・・・・」

耳まで真っ赤にして、日番谷はそういうと、半壊し執務室を後にした。浮竹は、嬉し気にその後を追うのだった。




「浮竹、今夜は寝かせないからね・・・・」

はるか上空で、氷の龍を粉々に砕いた京楽は、怒っていた。

その怒りと一緒に抱かれて、浮竹は無理をさせられるのだが、それはまた別のお話。




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花街夜話番外編(初夜)

完全パラレル 8番隊隊r長京楽×色子浮竹

13歳と20代後半という設定です

花街夜話本編https://www.pixiv.net/novel/show.php?id=18440048
を読んだ後にお読みください

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「きなさい、翡翠」

花街で、浮竹はただの色子だった。年は13歳。

翡翠色の瞳をしているから、翡翠と名付けられた。

両親は、浮竹の肺の病の薬代を出すために、借金に借金を重ねて、過労で死んでしまった。借金は残された浮竹を含む8人の兄弟に相続されて、妹や弟たちがまだ幼いのに売られて行った。

浮竹も見た目がよいので、色子として一度は高値で売られた。

だが、生来からの病弱さと肺の病のせいで、元に戻された。

そんな浮竹を買ったのが、花街でNO3の位置にある椿という名の廓だった。遊女だけでなく、色子も春を売っていた。

そんな中に、まだ幼い浮竹もまじっていた。

「ほらそんなに嫌がらないの。今日は初見世だからね」

その廓では、遊女だけでなく色子にも初見世があった。化粧をされて、短い白い髪に簪をさして、女ものの着物をわざとはだけさせ乱れさせて、最後に唇に紅をさして終わりだった。

「ほらかわいい。そこらの禿や遊女よりよほど綺麗だよ、翡翠」

廓の主人は、満足気味に微笑んだ。

そして、初見世。男たちの視線が浴びせられる。

「この子、遊女じゃないのかい?とてもかわいいけど」

「色子なんですよ。まだ最初のお客さんがきまっていませんの。初見世なんですよ、この子」

「なかなかいいね。俺が買おう」

びくりと、浮竹は体を強張らせた。

浮竹を買った男は、金のある男だった。色子の中でも、薬代のせいで一番高い浮竹を平気で指名するくらいに。

豪華な夕飯に、酒を交えて会話する。

その酒に、浮竹はくすねていた眠り薬を混ぜた。

「へぇ、貴族なんだ。道理で、気品があるわけだ」

身の上話をしていると、酒の薬がきいてきたのか男は眠りだした。今しかない。

浮竹は、廓を逃げ出した。

数時間後、客の様子をみにきた女将に足抜けがばれて、廓中で捜索がされた。花街から外にでるには、交通許可証が必要だ。客の男の交通許可証をもってきてはいたが、今の浮竹の姿はどうみても色子か、間違われるとしても遊女なので、花街の外に出れそうもない。

建物の影で怯えるように隠れていたところを見つかって、無理やり廓に戻されて、酷い折檻を受けた。

「もう、足抜けなんて真似するんじゃないよ!」

顔は綺麗なままだった。腹部を中心に蹴られたり殴られたりして、浮竹はもう足抜けは無理かもしれないと考えていた。

でも、しばらくしてまた足抜けした。

「またかい、この子は!」

廓の女将に、頬をはたかれた。

「初見世もまだだというのに・・・・もういい、しばらく禿の仕事でもしていなさい」

廓でもNO1の、椿姫の世話を任された。彼女は美しいが、とても乱暴で、粗相をしたといっては浮竹を折檻した。

喉が沸いて、水を求めて勝手に飲むと、折檻された。

「君が、そんな子とは思わなかった----------」

熱があるせいで、意識が朦朧とする。

「この子は僕が買うよ」

意識が闇に墜ちていきそうだ。

ひやりと頬に冷たい感触をかんじて、目をあけた。

「甘露水だよ。飲んでごらん」

喉がからからに乾いていたので、浮竹はその甘い甘露水を飲み干した。

でも、まだ足りなかった。

「こっちは薔薇水、こっちは檸檬水。好きなだけ飲むといい」

甘い水に夢中になった。檸檬水は、少しすっぱいが、その後に甘味が口の中にぶわりと広がった。

気づけば、泣いていた。

そんな浮竹を抱き締める男は、名を京楽春水といった。護廷13番隊の8番隊の隊長であり、花街でも名前の知らぬ者はいないという京楽家の次男。

ただでさえ金をもてあましているのに、隊長という給金が余計に金回りをよくさせていた。、

浮竹は、京楽の存在を知らなかった。

「え、僕を知らないのかい?」

こくりと頷くと、「まいったね~」と言って、自分の身分を話してくれた。

「君、下級だけど貴族なんでしょう?なんでその身分を売らないの」

「父と母が残した、最後のものだから。称号だけは売らない」

売れば、年季が何年か縮むが、それでも貴族という称号を手放す気はなかった。

「熱があるね。何もしないから、寝なさい」

奥の部屋から薬をとってきてもらい、それを飲んでいつの間にか意識は闇に墜ちて行った。


「ん・・・・・」

朝起きると、誰かの腕の中だった。

「あっ」

京楽に買われたのだ。でも、何処も痛くないし、服も乱れていない。

この男は、本当に何もしなかったのだ。

京楽は、目覚めると浮竹を抱き締めた。

「朝餉を一緒にとろう。君、痩せすぎだよ」

そういえば、足抜けをしてからまとな食事など与えられていなかった。

払った金額が金額だけに、朝餉からタイの煮物だの、高価なものがだされた。

それを食べていくと、はしが止まらなかった。普通の食事をするのは何日ぶりだろうか。いつもは椿姫と客の食べ残しを食べたり、厨房に忍び込んで白米をおにぎりにして食べる程度だった。

「よっこらしょ」

抱き上げられて、浮竹が戸惑う。

「僕の分も食べるといい」

京楽の手から、暖かな食事を与えられ、それを食べていく。

「君、見た目もだけど本当にかわいいね。翡翠の名の如く、とても綺麗な瞳だ」

浮竹は緑の目をしていたが、光彩の中にオパール色をもっていて、それが螺鈿細工のようだと言われた。

「またくるよ」

そう言って、去っていく京楽の服の裾をひぱった。

「どうしたの・・・・・・・」

オパール色の光彩が広がる。

精一杯背伸びして、京楽を屈ませて、浮竹は触れるだけの口づけをした。

「昨日と今日のお礼」

「あら。ありがとう」

頭を撫でられた。

このまま、この男のものになりたいと思った。




数日が経った。

あれから京楽は、毎日のように浮竹を買いに来た。

抱き締められたり、キスをされることがあったが。ほとんどが菓子を与えられて頭を撫でられ、外の世界の話を聞かされた。

浮竹の故郷は遠いところだったが、流魂街の中では治安はいいほうだった。

瀞霊廷の近くにあるこの花街は、死神がよく訪れる。京楽もまた、その死神の一人だ。

次の日は、仕事を終わらせてくるから遅くなると言われていた。夕方になると、京楽がやってきた。

「京楽!」

出迎えると、抱き上げられた。肩の上に乗せられて、視界が高くなる。13歳の浮竹は食糧事情も悪かったので、年齢より背が低くて幼く見えた。

「どうしたの。寂しかったの?」

顔をのぞきこんでくる京楽に、浮竹は答えた。

「寂しかった。お前のいない世界は、何も色づかない」

「可愛いことを言うね」

舌が入るキスをされて、浮竹はおずおずと京楽の舌に舌をからめた。

「ああもう。なんでこんなにかわいいの。ずっと我慢してきたけど・・・誰か、遊女でも抱いて発散させるか・・・・・・」

その言葉に、鼓動が高まる。

「京楽、俺を抱け」

「何言ってるの。子供の君を抱くなんて・・・・・・」

「もう13だ。色子は10歳くらいから春をうる」

「ええっ、もう13歳だったの?てっきり、11歳くらいかと思ってた」

浮竹を、横抱きに抱き上げた。、

「13なら、守備範囲ぎりぎりだ。本当にいいの?君を抱くよ」

「俺は初見世もまだだし・・・・初めてだけど、他の男に抱かれるくらいなら、京楽お前に抱いてほしい」

耳元でそう囁くと、京楽は布団を敷いて褥を作ると、その上に浮竹を正座させた。そして京楽も正座する。

「本当にいいんだね?君はまだ13歳だ。本当なら、成人するまで待つものだよ。廓だから、春を売るのは仕方ないけど、僕は基本的に15歳以下の子は抱かない」

「俺ではだめか?」

小首を傾げると、京楽は顔を朱くして答えた。

「あももう、そんな顔して・・・・誘ってるとしか思えない」

「事実、誘っている」

「君って子は」

褥に押し倒された。身長は軽く190はこえているであろう京楽の体は大きかった。

ごくりと喉をならすと、肉小獣の目で見られた。

そくりと、背筋が泡立つ。

「んんっ」

舌をからみあわせて口づけされて、女ものの着物をぬがされていく。

シミ一つない、白い幼い体が露わになる。髪も白いが、短い。

「あっ」

手で包み込むように、胸を愛撫された。

体格差がありすぎて、京楽が戸惑っている。

「乱暴になってもいい。最後まで、俺を抱け。俺をその気にさせた責任をとれ」

「翡翠・・・・・・・」

まだ、本名を名乗っていない。名乗るのは身請けされたか、年季あけかだ。

「あっ」

精通を迎えてまだ間もない、小さい花茎に手をかけられる。片手だけですっぽりをおさまってしまうサイズで、それが余計に背徳感を京楽に抱かせた。

「んあああああ」

今まで、誰にもされたことのない行為。自分でだって、したことがない。

花茎を上下にしごかれて、あっという間に少しの量の精液を吐き出した。

「ああ、まだ精通を迎えてまもないのかな。本当に大丈夫?最後までするよ?」

「いいから、抱け・・・・・・・」

用意されてあった潤滑油を、蕾の中にいれられた。

「ああっ」

内部が、脈打つ。

まずは指は一本つぷりといれられた。次に二本三本と足されたころには、浮竹はすでに熱に苛まれていた。

「あっ、あっ、あっ」

前立腺を刷り上げる動きに、啼くことしかできない。指を入れられているだけでも限界なのに、脈打つ京楽の熱を見た時、顔色をが蒼くなった。

あんな巨大なものを。あんな狭い場所で迎えることが、本当にできるのだろうか。

「入れるよ・・・・・・・・」

「ああああああああ!!!!」

みしみしと、体がきしむ。先端を入れられた後は、けっこうすんなりと、あとは入ってきた。

「人間の体って不思議だね。こんな幼い君の体に、僕のものが入るなんて」

「いいから、動け」

「無理しないで」

「んっ・・・・・・・・」

キスをされて、内部で少し動かれ、浮竹の花茎が少し反応した。

「あああああ!!」

前立腺をすりあげて、限界だと思わせる質量が出入りし、突き上げてくる。

「やあっ」

内部を侵されるのと同時に、花茎に手を添えられて、しごかれる。

精通を迎えて間もない体は、精液を簡単に吐き出した。我慢するということができない。

「やっ・・・」

角度を変えらえて突き上げられた。

「んうっ」

浮竹の口の中に、京楽は指をつっこんだ。それに舌を絡ませる。

「声、おさえないでね」

「やんっ」

「ここかい?」

「あああ!」

内部のいいところを突き上げられて、浮竹は涙を零した。

そこばかりしつこく突き上げれ、ぱんぱんと音がなる。激しい交わりに、結合部がお互いの体液と潤間油のせいで泡立っていた。

「やああああああああ」

一番奥をつらぬかれて、これ以上精液を吐き出せなくなった体は、内部をひくつかせた。

その動きに、京楽の体が動く。

中から欲望をひきぬいて、射精したときにはべっととりた白濁の液体が、浮竹の顔や胸にかかっていた。

「ごめん!中に放ったらまずいと思って・・・・・・」

「大丈夫。もう一度こい。中でだぜ」

命令口調の浮竹の、天性の淫乱さに、眩暈がした。

「君・・・・ほんとに、どうなっても知らないよ。病弱なのに。熱出しても知らないよ」

その日、京楽は浮竹の幼い体を、自分色に染め上げるほどに貪った。出した回数は4回。3回は浮竹の腹の奥でだした。

ぐったりとした浮竹の体を抱いて、湯殿で清めて、褥も新しい布団に変えて、眠りについた。

「ん・・・・・」

次の日起きると、京楽が思っていた通り、浮竹は熱を出した。

「ごめんね。もっと加減するべきだった。こんな幼い君に夢中になるなんて」

「俺は色子だ。春を売るためにいる。お前に抱かれず、いつか飽きられたら誰か違う男に抱かれていた。そうなるくらいなら、初めてを京楽にもらってほしかった」

熱があるのに無理をして起き上がって、あぐらをかいて座っている浮竹の元にまでくると、舌を出すと、すぐに京楽の舌が絡まって、深い口づけをされた。

それから、檸檬水を飲み、薬を飲んで、浮竹は眠ってしまった。

「身請けするか・・・・・:

もう、京楽の想いは決まっていた。

この幼子を、他の男にとられたくない。色子であるから、京楽以外の男に指名されれば、抱かれるしかない。
それを阻止するには、身請けしかない。

京楽は、廓の主人を呼んだ。今までない大金を握らせた。身請け金の一部と、身請けする時期がくるまで必ず浮竹をを他の男に抱かせないことを誓わせた。

「君も、罪な子だね。8番隊の隊長の僕が、色子に人生を左右されるなんてね」

寝ている浮竹の、白いサラサラの髪を撫でる。

「僕だけの翡翠-----------------------」

翡翠という名をもつ色子の浮竹は、この後いろいろあったが、京楽に身請けされ、とても大切に扱われた。




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